上弦の白兎 (ヨーギラス)
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プロローグ

楽しんで頂ければ幸いです。


ここは遠く離れた血と死臭に満ちている荒野の戦場。

 

その戦場に到底不似合いな人物が立っている、兎を彷彿させる可愛げのある顔をした白髪赤眼の少年が立っている。

 

更にその少年の左の腰には目玉模様がある鞘に納められている一振りの刀を差していて、少年は一人の傭兵としてとある国の軍に雇われているのだ。

 

すると、少年の目の前に武装を整えた兵が多勢現れる。

 

その数は千を優に超えている兵士達を前にしても少年は表情を変える事無く無言のまま兵士達に向かって手招きをする。まるで親が子供を呼ぶかのように。

 

兵士達はそれを見た瞬間、怒号を上げながら武器を構えて襲い掛かっていく。

 

それに対して少年は慌てる事無く刀に触れるとこう呟く。

 

【全集中 月の呼吸壱ノ型 闇月・宵の宮】

 

そう呟くと同時に抜刀し横薙ぎに一閃する。

 

すると、その斬撃に月輪の斬撃も加わり、回避不可能の攻撃となっている為襲い掛かった兵士達全員が絶命する事となってしまった。

 

その光景を目の当たりにした後続の兵士達は味方のあまりにもあっさりとした命の幕切れを見て、その少年の強さ・技に恐怖した。

 

このままでは自分は何も出来ずに殺されてただの犬死にになってしまう、死にたくないという想いと本能から起こした行動は敵前逃亡である。

 

戦う事よりも生きるという事を選択した事、決断した事は何も悪い事ではないし、誰も責める事は出来ないのだから。

 

だがしかし、それは圧倒的強者の前では無意味でしかない。

 

少年は地面を蹴って駆け出すと逃げ惑う兵士達との距離を詰め、問答無用で斬り捨てて行く。

 

逃げる兵士達全てを斬り捨てた頃には地面が見えぬ程の兵士達の死体が足元にへと横たわっている。

 

千を超える武装した兵士達をたった一人の少年が傷を一切受ける事無く斬り捨てた事になる。

 

少年の身体は兵士達を斬り捨てて行く際に噴き出してくる返り血を浴び続け、血で赤く染まっているその姿はまるで血に塗れた白兎ではなく血を求めている白髪の鬼の様である。

 

刀を握ったま血に塗れた姿で少年はこう呟く。

 

「まだ・・・足りない」

 

そのくちから漏れ出た一言は不満、一兵も逃さずに斬り捨てたにも拘わず不満を口にする少年は更に言葉を続ける。

 

「この程度では足りないな・・・、英雄になるにはもっと│力《・》を得る必要があるな。」

 

そう言い切ると、少年は刀から滴り落ちている血を払い落としてから鞘へと納めてからこう言った。

 

「お爺ちゃんが死んで三年・・・、傭兵として過ごしたのも三年か・・・。」

 

そう言いながら少年は空を見上げる。

 

すると、背後から殺気を感じ取って前に跳ぶと、そのすぐ後に少年が立っていた場所に無数の失が降り注いでくる。

 

少年が矢の飛んで来た方向を見ると、そこには少年を雇っていた筈のとある国の軍の姿がそこにあった。

 

それを確認した少年はこう呟く。

 

「なる程・・・、用済みになれば消すという事か・・・。」

 

そう、その国の軍は傭兵を捨て駒扱いしており、生き残っている傭兵は殺せと命じていたようだ。

 

少年が抜刀すると、刀が変化を始めて行く。

 

刀身が三又に分かれたと思えば刀自体が巨大になっていきながら少年はこう言った。

 

「なら、こっちも邪魔者を排除するか。」

 

その言葉を最後に少年は先ほどと同様に地面を蹴り、大軍にへと斬り込んで行く。

 

【全集中 月の呼吸捌ノ型 月龍輪尾】

 

さっきの壱ノ型と似た様な技ではあるが、その攻撃範囲は壱ノ型の倍でありその威力も倍である。

 

「ぎゃああああああっ!?」

 

「腕が、俺の腕がぁああああああっ!!」

 

「痛ぇ、痛ぇよおおおおおおお!!」

 

その一刀で多くの者が絶命する中、辛うじて生き残った者さえ腕や足を失い戦意をへし折れてしまっている。

 

そんな兵士達も少年は無慈悲に斬り捨てていく。

 

正に阿鼻叫喚と呼べる光景の中で表情を変える事無くその場に立っている少年の姿に指揮官の男は恐怖を覚えた。

 

「・・・ぁっ!?」

 

恐怖のあまり声が出ずに撤退の指示が出来ない状況になってしまっている。

 

そんな指揮官の元に少年はゆっくりと確かな足取りで歩いて行く。

 

それに対して指揮官の男は足が竦み、尻餅をつきながら何とか少年から遠ざかろうとするが恐怖で体が強張ってまったく離れていない。

 

そうして、遂に少年が指揮官の男に元に辿り着くとこう言って来る。

 

「・・・無様だな。たった一人の傭兵に大軍で襲っておきながら敗北するというのは・・・。」

 

そう言いながら指揮官に刀の切っ先を突き付ける少年の眼には侮蔑の感情が籠っている。

 

「化け物め。」

 

そんな目で見られながらも指揮官の男はそう言った。

 

「最後の言葉はそれだけか。」

 

それに対して少年は横一閃に指揮官の首を刎ね、刀に付いた血を振り払い鞘へと納めた。

 

「行くとするか・・・、迷宮都市(オラリオ)へ。」

 

少年はそう言いながら目的の地・迷宮都市オラリオへ足を向けるのだった。

 

 

少年の名はベル・クラネル、本来であればすでに冒険者となり英雄を目指す者であった。

 

しかして、この世界では上弦の鬼という存在に憧憬を抱いてしまった白兎の物語である。




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【ヘスティア・ファミリア】

傭兵として三年間戦場を渡り歩いた僕ベル・クラネルは迷宮都市オラリオにへとやって来た。

 

「ここが・・・オラリオ・・・。」

 

そう言いながらオラリオに足を踏み入れた僕はまず最初に所属する派閥(ファミリア)を決める事だった。

 

「さて、僕の入る派閥(ファミリア)は一体どこになるんだろうな・・・。」

 

そう呟きながら心を高揚させながら所属する派閥(ファミリア)を探しに行くのだった。

 

数時間後

 

「・・・。」

 

もう日が暮れる時間帯になっても自分が所属する派閥(ファミリア)が決まらなかった。

 

というよりも、見た目で判断をされてしまって門前払いをされてばかりだ。

 

今日ほど自分の容姿について僻んだ事は無いだろうと自己完結していた。

 

「そこの君、派閥(ファミリア)を探しているのかい?」

 

すると、突然声を掛けられて後ろを振り返ると、そこには女神がいた。

 

「貴女は・・・?」

 

「ボクかい?僕の名前はヘスティア、正真正銘の女神さ!!」

 

どや顔と共にそう言って来る神様に対して僕は咄嗟にこう言った。

 

「僕を貴女の派閥(ファミリア)に入れて頂きたい・・・。」

 

「もちろんだよ!!」

 

こうして、僕は【ヘスティア・ファミリア】最初の眷属となった。

 

 

 

 

僕は神様からとある本屋の二階で【神の恩恵(ファルナ)】を授かっていた。

 

「えっ、ベル君はオラリオに来るまでは傭兵をしていたんだ!?」

 

「はい、そうです・・・。」

 

僕はオラリオに来る前のこれまでの事を話すと、神様は大層驚いていた。

 

「それなら何でこのオラリオにやって来たんだい?傭兵でもお金は稼げるんじゃないのかい?」

 

神様がそう問いかけてくるのに対して僕はこう返答した。

 

「実は傭兵は結構損する事が多いんですよ・・・、ここに来る前に参戦した戦争では僕の事を雇っていた国が用済みと判断して殺しに来たんですから・・・。」

 

その事を話した僕に対して驚きながらもこう言って来る。

 

「えぇっ!?でも、無事な所を見ると逃げ切れたんだね。」

 

「・・・いえ、逆に皆殺しにしました。」

 

それに対して訂正をするようにそう言うと、神様は問い返して来る。

 

「へ?でも、軍で動いていたんだよね?」

 

「そうです・・・。しかし、有象無象の雑兵でした・・・。」

 

「・・・。」

 

その問いに答えると、神様は黙りこんで作業に集中し始めた。

 

「・・・な、何だい、この【ステイタス】は!?」

 

「どうかしましたか、神様?」

 

作業が終わったのか、いきなり叫び出した神様に僕が問いかける。

 

すると、神様は用意してあった羊皮紙に【ステイタス】を共通語(コイネー)で翻訳して写してからこう言って来る。

 

「ベル君、自分の【ステイタス】を自分の目で確認するんだ。」

 

そう言って差し出される羊皮紙を受け取り、【ステイタス】を確認するとそこに書かれていたのは・・・。

 

 

ベル・クラネル

 

level1

 

力SSS9999 耐久SSS9999 器用SSS9999 敏捷SSS9999 魔法I0

 

鬼SSS 剣士SSS 拳打SSS 破砕SSS 狩人SSS 耐異常SSS 再生SSS

 

【十二鬼月・上弦の鬼】

・早熟する

・肉体の超再生

(おもい)が続く限り効果持続

(おもい)の丈により効果向上

 

【血鬼術】

・上弦の鬼の能力行使

 

黒死牟

・全集中の呼吸:常中

・月の呼吸

・武器精製

 

童麿

・対の扇

・氷雪操作

 

猗窩座

・破壊殺

・素流

 

半天狗

・積怒

・哀絶

・空喜

・可楽

・憎珀天

 

玉壺

・異形召喚

・潜水のアビリティを一時発現

 

妓夫太郎

・血鎌

・猛毒

 

堕姫

・帯の伸縮

・帯の硬質化

 

鳴女

・空間移動

・空間操作

 

獪岳

・全集中の呼吸:常中

・雷の呼吸(弐から陸)

 

血浴狂喜(ブラッドバス・マッドネス)

・血を浴びれば浴びるほど全アビリティ超高補正

・血を流せば耐久のアビリティが低下

 

【夜天闊歩】

・暗闇の中であればある程敏捷のアビリティ高補正

 

 

これが僕の今の【ステイタス】か、傭兵として行動していたからこんな感じなのか?

 

いや、幾つかの【スキル】が関係しているんだろうな。

 

そう考えていると、神様がこう言って来る。

 

「君から見てこのステイタスはどう思うんだい、ベル君?」

 

そう聞いてくる神様に対して僕はこう言った。

 

「そうですね・・・、こうして見るのは初めてですのでよく分かりません。」

 

「そうか、それじゃあ簡単に言うとこれはむしろ異常すぎるよ!!」

 

声を大にしてそう言って来る神様に対して僕はこう言った。

 

「異常ですか・・・。神様、あまり大きな声で【ステイタス】の話はしないでください・・・。」

 

「おっと、ごめんよベル君。でも、これは異常だ。」

 

僕の指摘に謝罪する神様はすぐに話に戻ってくる。

 

「そうですか・・・。」

 

それに対して僕は生返事で返す。

 

「ベル君、この重大さを理解しているのかい?」

 

僕の返事に呆れながら神様はそう言って来る。

 

「えぇ、珍しい【スキル(もの)】を得ている事は理解しました。ですが、それだけの事です。」

 

「そんな事無い、他の神々に知られれば確実に玩具にされしまう。」

 

「ですが、バレなければいいのでしょ。」

 

「うぐっ」

 

僕の正論に神様は言いあぐねる。

 

「それでは、ギルドに行って冒険者登録を済ませて来ます。」

 

「う、うん、分かったよ。」

 

僕は神様にそう言ってから上着を着て本屋を出て、ギルドへと真っ直ぐに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

ギルドに向かっている途中、値踏みをする視線を感じ取った。

 

その視線は摩天楼施設(バベル)最上階(・・・)から注がれている事だけを察した。

 

ただ、それだけだ。

 

害を及ぼすのであれば斬り捨てに行くが、何もしてこないのなら関わるつもりは無い。

 

そう考えながらギルドへと足を進めるのだった。

 

 

 

 

所変わって、ここは摩天楼施設(バベル)最上階にある私室(プライベートルーム)

 

その私室の主は迷宮都市(オラリオ)最大派閥の一角【フレイヤ・ファミリア】主神である女神フレイヤ。

 

「ウフフフ、あの子興味深いわね。」

 

外を見下ろして椅子に腰かけ微笑ながらそう言って葡萄酒(ワイン)を飲むフレイヤに問い掛ける者がいた。

 

「いかがされましたか、フレイヤ様。」

 

その者の名はオッタル、【フレイヤ・ファミリア】首領にして迷宮都市に置ける唯一のlevel7であり、神々から授かった二つ名は【猛者(おうじゃ)

 

「ねぇオッタル、今興味深い魂の色を持った子供がいたの。」

 

フレイヤはまるで新しいおもちゃを買い与えられた少女の表情を浮かべながら話していく。

 

「その子供の見た目は白兎の様に愛らしいのに、魂の色は夥しいほどの血と狂気に暴虐、渇望に羨望や憎悪があるのにもかかわらず純粋な夢幻(ゆめ)も入り混じっているの。不釣り合いなはずなのに、矛盾しているはずなのに共存しているのよ。」

 

昂る主神の言葉に従者(オッタル)は静かに聞いている。

 

「こんな魂は今まで見た事が無いわ!」

 

「それでは、お望みとあらばその白兎を連れて参りましょう。」

 

「今はまだ良いわ。もう少しだけ遠くからあの子の輝きを見ていたいから。」

 

主神(フレイヤ)の興奮冷めぬ言葉にオッタルがそう言うと、まだ良いと制した。

 

「出過ぎた真似を。」

 

そう言い頭を下げるオッタル。

 

それに対してフレイヤはオッタルの方を向きながらこう言った。

 

「いいのよ、オッタル。だって、私の為を思っての事なのだから。」

 

「ありがとうございます。」

 

フレイヤの言葉にオッタルは感謝の意を述べるのだった。

 

オッタルから目的の白兎(ベル・クラネル)へと視線を戻し、こう言った。

 

「本当に楽しみだわ。そう思うでしょ、ねぇベル?」

 

そう言ってフレイヤは再び葡萄酒(ワイン)を口にするのだった。




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ダンジョン探索

ギルドに着くと、僕は早速冒険者登録をしようと受付に向かうとハーフエルフの女性職員に声を掛ける。

 

「すみません、冒険者登録をしたいですけど。」

 

「はい、分かりました。それではこちらの紙にお名前と所属派閥(ファミリア)をご記入ください。」

 

「分かりました。」

 

そう言ってハーフエルフの職員は手慣れた様子で紙とペンを取り出し、僕の前に出して来る。

 

差し出されたその神に僕はスラスラと記入し、書き終えるとすぐに渡した。

 

「えっと、ベル・クラネル氏ですね。所属派閥(ファミリア)は【ヘスティア・ファミリア】、新規ファミリアですね。」

 

「そうです。」

 

「分かりました、それでは登録してまいりますので少々お待ちください。」

 

そう言ってハーフエルフの職員はファミリア登録の為に席を外していった。

 

少し待っただけでハーフエルフの職員が戻って来てこう言って来る。

 

「これでクラネル氏の冒険者登録が完了しました。新規で冒険者登録をされた方に無償でダンジョンの講習を受ける事が出来ますが受講されますか?」

 

そう言って来るハーフエルフの職員に対して僕はこう答えた。

 

「はい、お願いします。」

 

「分かりました、こちらの別室で講習を行いますので入室してください。」

 

そう言われて僕は案内された部屋に入り、一時間程講習を受けるのだった。

 

講習を終えると、ハーフエルフの職員がこう言って来る。

 

「以上で講習を修了とさせていただきます。」

 

「そうですか、お疲れさまでした。」

 

ハーフエルフの職員の言葉を聞いて僕がそう言うと、こう言って来る。

 

「これからクラネル氏の専属アドバイザーを務めさせていただきますエイナ・チュールと申します。」

 

「そうでしたか、これからよろしくお願いしますエイナさん。僕の事は好きに呼んでくれて構いませんので。」

 

エイナというハーフエルフの職員の自己紹介の後に僕はそう言った。

 

「分かったわ。これからよろしくね、ベル君。」

 

こうして、僕は冒険者登録を済ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

冒険者登録を済ませた後、僕は一度ギルドから出ると神様が待っていた。

 

「お帰り、ベル君。登録は出来たかい?」

 

「えぇ、滞らず無事に登録できました。」

 

神様の言葉にそう答える僕。

 

すると、神様がこう言って来る。

 

「そう言えばまだベル君を本拠(ホーム)に案内していないと思ってね、出て来るのを待っていたんだよ。」

 

「そうだったんですね、お手数をおかけします。」

 

「いやいや、ボクの派閥(ファミリア)に入ってくれたんだからこれくらい訳ないよ!!」

 

そう言って来る神様は更に言葉を続けて来る。

 

「それじゃあ行こうか、ボクらの本拠(ホーム)へ!!」

 

「はい。」

 

そうして、僕と神様は【ヘスティア・ファミリア】のホームにへと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

北西と西の目抜き通り(メインストリート)の区画にある廃教会の隠し部屋こそが僕達【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)である。

 

「ごめんよ、ベル君。本拠(ホーム)がこんな汚い所で・・・。」

 

申し訳なさそうにそう言って来る神様に対して僕はこう言った。

 

「そんな事は無いですよ、神様。これから築き上げて行けばいいんですから。」

 

「ベル君、・・・そうだよね!!」

 

僕の言葉を聞いて神様は元気を取り戻してこう言って来る。

 

「これからがボク達の【眷属の物語(ファミリア・ミィス)】の始まりだぁ!!」

 

「はい」

 

こうして、【ヘスティア・ファミリア】の物語が幕開けを迎えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は早速ダンジョンにへと足を踏み入れ、先へと進んでいくとゴブリンが五匹の群れを成して襲い掛かってくる。

 

その事に対して僕は冷静に刀を鞘から抜刀すると同時に斬り捨て、魔石へと変える。

 

「弱い・・・。確か、ダンジョンのモンスターは外に出ているモンスターより強いって聞いてたがそうでもないな。」

 

そう言いながらゴブリンの血を払い落とし鞘に納めてから魔石を回収する。

 

「これなら下に降りても問題ないな。」

 

そう言いながら二階層に降りる階段を目指し、進んでいく。

 

二階層に辿り着いたが、一階層と変わらず更に下の階層へと進んでいく。

 

六階層までやって来ると、新しいモンスターが姿を現した。

 

ウォーシャドウ、別名新米殺しと呼ばれるモンスターの一種だ。

 

それが三体現れ、僕は肩慣らしの為にここで初めてスキルを使用する。

 

【血鬼術 飛び血鎌】

 

いつの間に手に握っていた血で出来た鎌を振るい、薄い刃の様な血の斬撃を飛ばしていく。

 

その血の斬撃は僕の意のままに動き、三体のウォーシャドウを切り刻んでいき、魔石に変えて拾い集めて先にへと進んでいく。

 

七階層ではウォーシャドウと同じ新米殺しのモンスターであるキラー・アントが無数の群れで襲い掛かってくる。

 

【血鬼術 寒烈の白姫】

 

それに対して僕は血で作った蓮が描かれた金の対の扇を取り出し、氷の巫女を生み出した。

 

生み出された氷の巫女の口から冷気の吐息が噴出し、キラー・アント全てを凍らせたと同時に魔石へと変えた。

 

魔石を全て回収すると、自前のバッグパックが一杯になってしまったため今日の所は此処までにしておく事にして換金の為にギルドにへと向かった。

 

地上に戻ってくると、夕日が沈もうとしていた。

 

それだけの時間潜っていたのかと錯覚してしまうが、そもそも僕がオラリオに到着したのが正午近くだった事を思い出すのだった。

 

換金を済ませると、29000ヴァリスという金額を稼いだ。

 

それに一応の満足感を抱きながら、食材を買ってから本拠(ホーム)に帰るのだった。

 

 

 

 

 

本拠(ホーム)に帰って来ると、神様が僕の事を出迎えてくれた。

 

「ただいま帰りました、神様。」

 

「お帰り、ベル君!!初めてのダンジョンはどうだったんだい?」

 

そう聞いてくる神様に対して僕は感じたことを正直にこう言った。

 

「そうですね、上層では手応えを感じられませんでした。」

 

「そ、そうかいなのかい?」

 

僕のその言葉に神様はそう聞いてくる。

 

「えぇ、人間とは違って動きというか行動が決まっているというか人形を相手にしているようでした。」

 

「へぇ~、そうなのかい・・・。」

 

僕がそう言い切ると、神様は本格的に困った表情をしてくる。

 

それに対して僕はこう言った。

 

「神様、そろそろ食事にしましょう。帰りに色々と食材を買ってきましたので。」

 

「そ、そうだね!ご飯にしよう!!」

 

僕の言葉に神様も賛同し、食事にするのだった。

 

食事を済ませ、掻いた汗を風呂で落としてから僕は【ステイタス】の更新を神様にしてもらうのだった。

 

「ベル君、終わったよ。」

 

その声と共に神様は僕の【ステイタス】を写した羊皮紙を手渡して来る。

 

ベル・クラネル

 

level1

 

力SSS10100 耐久SSS10001 器用SSS10200 敏捷SSS10398 魔力I0

 

鬼SSS 剣士SSS 拳打SSS 破砕SSS 狩人SSS 耐異常SSS 再生SSS

 

【十二鬼月・上弦の鬼】

・早熟する

・肉体の超再生

(おもい)が続く限り効果持続

(おもい)の丈により効果向上

 

【血鬼術】

・上弦の鬼の能力行使

 

黒死牟

・全集中の呼吸:常中

・月の呼吸

・武器精製

 

童麿

・対の扇

・氷雪操作

 

猗窩座

・破壊殺

・素流

 

半天狗

・積怒

・哀絶

・空喜

・可楽

・憎珀天

 

玉壺

・異形召喚

・潜水のアビリティを一時発現

 

妓夫太郎

・血鎌

・猛毒

 

堕姫

・帯の伸縮

・帯の硬質化

 

鳴女

・空間移動

・空間操作

 

獪岳

・全集中の呼吸:常中

・雷の呼吸(弐から陸)

 

血浴狂喜(ブラッドバス・マッドネス)

・血を浴びれば浴びるほど全アビリティ超高補正

・血を流せば耐久のアビリティが低下

 

【夜天闊歩】

・暗闇の中であればある程敏捷のアビリティ高補正

 

基本アビリティが一万越えを果たしていた。

 

「全く、君は本当に規格外だね。」

 

「そうですか。」

 

そう言って来る神様に対して僕はそう返答した。

 

神様はそんな僕に対してこう言って来る。

 

「ベル君、くれぐれも無茶な事は避けてくれよ。」

 

「分かりました。」

 

その話が終わると、僕と神様は眠りにつくのだった。

 




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中層へ

初めてのダンジョン探索から翌日、僕は到達階層を更新する為にエイナさんに報告しに行くと・・・。

 

「七階層~~~~!?」

 

「はい、そうです。」

 

エイナさんは僕の機能の到達階層を聞いて驚愕の声を上げ、僕はそれを肯定する。

 

それに対してエイナさんはこう言って来る。

 

「ベル君、君は冒険者になったばかりの新人なんだよ。それに、冒険者は冒険をしてはいけないの!!」

 

「それは矛盾していませんか?」

 

その一言に突っ込みを入れる僕に対してエイナさんはこう言って来る。

 

「それはそうかもしれないけど、ダンジョンでは安全を期した行動を取るべきなんだよ。」

 

「エイナさん、そんなの僕には関係無いんですよ。死ねばただ天に召されるだけなんですから。」

 

「・・・。」

 

僕がそう言い切ると、エイナさんは黙ってしまう。

 

「それでは僕はダンジョンに行ってきますので、これにて失礼します。」

 

 

 

 

私、エイナ・チュールはある一人の冒険者の事が気掛かりである。

 

その冒険者の名前はベル・クラネル、ほんの一週間前にこのオラリオにやってきて新興派閥(ファミリア)【ヘスティア・ファミリア】の唯一の団員になった男の子。

 

見た目的にも冒険者には向いていない可愛い顔立ちをしているじゃなかった、雰囲気を持っている。

 

だからこそ、私は弟のようにも思っているベル君が死ぬなんてことにならないように厳しくダンジョンの厳しさを教えてきたと思っていた。

 

でも、ベル君は私の言う事を聞かずに七階層に降りたというではないか。

 

しかも、そこのに対して注意をしたら彼はこう言った。

 

『エイナさん、そんなの僕には関係無いんですよ。だって、死ねばただ天に召されるだけなんですから。』

 

死に対して恐れていないというか達観していると言えばいいのだろうか、そんな感じがした。

 

「どうしてそんな風に考えてるの、ベル君。」

 

私はベル君に何か兎の様な見た目とは似合わない中身の違いに違和感を感じ始めた。

 

ベル君のあの死への達観した態度はどこから来ているのだろうか。

 

考えのまとまらない私はすぐにベル君の主神である神ヘスティアの元にへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

エイナさんと話をした後、僕はダンジョンに潜って到達階層を伸ばしていた。

 

今、上層の十階層まで降りてきていた。

 

この階層からは大型のモンスターが出てくる上に立ち込める霧の中を行動しなくてはならないのだ、この霧は僕にとっては何の意味を成しはしない。

 

躊躇なく先へ進んでいくと、数人の冒険者とすれ違っていった。

 

その後ろからオークにインプ、ハードアーマードなどのモンスターの大群が迫って来ていた。

 

確か【怪物贈呈(パス・パレード)】だったかな、エイナさんが言うには自分達では対処しきれなくなったモンスター達を他の冒険者に押し付ける行為だとか・・・。

 

まぁ、そんな事はどうでもいい(・・・・・・)

 

【術式展開】

 

ドンという音を立てながら僕は地面を罅割れるほどの力で踏み締め、武術の構えを取った。

 

足元には雪の結晶を模した陣が展開されると、モンスターの方から戦意を感じ取れた。

 

【破壊殺・乱式】

 

その瞬間、僕は拳の乱打をモンスターに放ち、悉く全てを粉砕して見せた。

 

モンスターを殴った瞬間、肉が潰れる感触が拳に伝わって来るけどそんな事お構いなしに僕は拳を振るい続けていった。

 

全てのモンスターを打倒した後、魔石やドロップアイテムを回収して更に質の良い魔石を求めて下の階層にへと降りて行くのだった。

 

十一、十二と階層を降りて来たものの出てくるモンスターは一撃で屠れるものばかりで手ごたえはまるで無い。

 

僕の足は自然と中層への入り口へと向いていた。




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対談

ベルが中層へ足を踏み入れている時、主神であるヘスティアは困惑していた。

 

突然、ギルドの職員が【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)である廃教会の隠し部屋までやってきたからだ。

 

「{ベル君、君は一体何をしたんだい!?}」

 

内心ハラハラとさせながらギルド職員の言葉を待つ。

 

「初めまして、神ヘスティア。私はベル・クラネル氏の専属アドバイザーをさせていただいていますエイナ・チュールと申します。」

 

「う、うん、よろしくねエイナ君。それで今日は何しにここに来たんだい?」

 

自己紹介から始めるエイナに対して何とか平静を保とうとしながら言葉を続けるヘスティア。

 

それに対してエイナは早速訪れた理由である本題にへと入っていく。

 

「実はベル君の事なんですが・・・。」

 

「もしかして、何かとんでもない事をしたのかい!?」

 

深刻そうに語るエイナに対して立ち上がりながらそう言うヘスティア。

 

ヘスティアの反応に対してエイナはすぐに否定する。

 

「落ち着いてください神ヘスティア、何か大きな問題を起こしたという訳では無くてですね。冒険者になったばかりの彼が初日から七階層まで降りていてですね・・・。」

 

エイナの話を聞いてヘスティアは自分の眷属(こども)が大きな問題を起こしてしまったのかと慌てたが、ただ七階層に降りた事だけだったことに安堵した。

 

「なーんだ、そんな事か・・・。」

 

「そんな事ではありません、冒険者になったばかりの新人が多くの命を落としているんですよ!!そんな無茶な探索をしていたらいつか本当に命を落としてしまいます」

 

ヘスティアの反応に声を荒げるエイナ。

 

そんなエイナに対してヘスティアはこう言った。

 

「いいかい、アドバイザー君。」

 

「何でしょうか?」

 

ヘスティアの真剣な表情を見てエイナも緊張感を持って聞きに入る。

 

「ベル君の経歴を知るべきだ。」

 

「ベル君の経歴ですか?」

 

ヘスティアの言葉に疑問符を浮かべるエイナに構わず更に言葉を続けるヘスティア。

 

「でも、それはベル君の口から直接聞くべきだ。ボクからはそれしか言う事は出来ないよ。」

 

「・・・。」

 

ヘスティアのその言葉を受けてエイナは黙るしかなかった。

 

「分かりました、それではベル君から直接聞くことにします。」

 

「うん、その方がいい。その方が君の為にもね。」

 

「突然の訪問に応じて頂きありがとうございました、それでは失礼します。」

 

そう言ってエイナは【ヘスティア・ファミリア】の本拠(ホーム)を出るのだった。

 

 

 

中層の十三階層へと踏み込んだ僕はモンスターの大群に囲まれていた。

 

放火魔(バスカヴィル)と呼ばれるモンスター・ヘルハウンドの吐く炎を躱し、アルミラージュの投げる石斧を掴んでは投げ返したりしていたが、流石に数が多い為スキルを使うために扇子を取り出した。

 

【血鬼術 枯園垂(かれそのしづ)り】

 

強力な冷気を纏わせた扇子を舞うように連続で振るいながら中層のモンスターを魔石やドロップアイテムへと変えて回収していく。

 

「本当に数が多い・・・。」

 

そう、中層は上層とは違いモンスターの出現速度が速い。

 

一度モンスターの群れに捕まれば抜け出すには相当の労力を要する、一部の者達を除けばの話だが。

 

「あぁ、腹立たしい(・・・・・)。」

 

僕はその一言と共に手に持った錫杖(・・・・・・・)を地面に突き立てた。

 

その瞬間、錫杖から雷が放たれ、いとも簡単にその場にいたモンスターを全て駆逐し魔石やドロップアイテムへと変えると回収していく。

 

「一つ目の袋にはもう入らないな・・・。」

 

そう言うと、僕は琵琶を取り出してべんと弦を弾いた。

 

その瞬間、大量の魔石やドロップアイテムの入った袋は消えて入れ替わりで何も入っていない袋が足元にあった。

 

魔石の入った袋はどこに行ったのかというと、僕の作った異次元空間「無限城」へと置いてある。

 

その空の袋を拾い上げて僕は更に下の階層にへと足を運んでいくのだった。




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邂逅

お久しぶりです!!

期間が開いてしまいまして申し訳ありません。

これからも楽しんで頂けたら幸いです。


十三階層を降りて十四、十五、十六階層へと降りて来て僕は十七階層にへと降りて来た。

 

一層に気を引き締めながら先へと進んでいくと、三匹のミノタウロスが現れる。

 

「「「ヴモオオォォォォォォォォッ!!」」」

 

三体同時に咆哮(ハウル)を仕掛けてくるが、吼える際に晒された首に向かって刀を振るい、切り落とした。

 

「level2のモンスターであってもこの程度なのか・・・。呼吸を使うまでも無い。」

 

どこか冷めた様子でミノタウロスの魔石とドロップアイテム(ミノタウロスの角)を見た後、回収して先にへと進んでいく。

 

そうやって歩いて行くと、一番奥までやって来ると巨大な壁がある大広間らしき空間に辿り着いた。

 

「ダンジョンにも綺麗な場所が存在しているんだな。」

 

そんな暢気なことを言っていると、その大壁に大きな亀裂が生じる。

 

どうやら、今までのモンスターとは毛色が違うものが出て来るようだな。

 

そう考えながら僕は刀を抜刀し、臨戦態勢に入る。

 

雄叫びと共に壁を破壊しながら産まれてきた巨人型のモンスターは僕のことを視認すると拳を作り、振り下ろしてくる。

 

その事に対して僕は慌てることなど無く、モンスターの方にへと駆け出した。

 

駆け出した俺の後ろで振り下ろされた拳が地面へ激突し、粉砕音と共に爆風が吹いた。

 

後ろから迫る爆風を利用して僕は移動速度を速め、足下に辿り着く。

 

その瞬間、刀が巨大化し刀身も三叉に分かれると技を放った。

 

【全集中月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾】

 

技を放つと、モンスターの足は見事に切断された。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」

 

足を一本失ったモンスターは悲鳴に似た声をあげながら地面に倒れ込み、そのモンスターに対してうるさく思った。

 

倒れ込んだモンスターはなんとか起き上がろうとする。

 

そんな事はさせないと僕は続け様に技を放っていく。

 

【全集中 月の呼吸拾ノ型 穿面斬・蘿月】

 

回転鋸の様な形状の斬撃横に複数並べて放たれたその攻撃はモンスターの身体を斬り刻んでいく。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」

 

またも悲鳴に似た声を上げるモンスターに対して僕はこう呟いた。

 

「耳障りだ。」

 

その一言と共にモンスターの首を落とすために渾身の力を込めて刀を振り下ろした。

 

ザシュッ、その音と共にモンスターは魔石とドロップアイテム()を残して消えたのだった。

 

そ僕は琵琶を取り出すと、べんっという音と共に魔石とドロップアイテムを無限城にへと送り込むと、更に下の階層へと進んでいく。

 

大広間にあった穴の先へ行くと、そこは緑が豊かな空間が広がっていた。

 

「ダンジョンにもこんな場所があるんだな。」

 

予想とは違った十八階層にそう声を漏らしながら僕は足を進めていく。

 

すると、あることに気づいた。

 

「モンスターが現れないな。」

 

そう、この十八階層に入ってからモンスターに一向に現れない。

 

その事に疑問を抱きながらも先へと進んでいき、下の階層に降りる穴を見つけた僕は躊躇無く先にへと進んでいく。

 

穴を抜けた先に広がる光景は密林(ジャングル)様な光景だった。

 

傭兵時代、生い茂る木々の間を駆け抜けて敵を屠ってきたことを思い出す。

 

その土地の兵は地形を利用して白兵戦など仕掛けてきたりして苦戦したが、最後は破壊殺でねじ伏せたことを思い出した。

 

「ここからはより一層周囲を警戒しないとな。モンスターが隠れる場所も多そうだ。」

 

そう言いながら先に進むと、宝石が実る木を発見した。

 

「へぇ、宝石が実るなんて本当にダンジョンは不思議だなぁ。それに、あれなら神様の手土産に出来るな。」

 

そんな暢気な事を言いながら木に近付いていくと、翼を生やした緑色の鱗を持つ蜥蜴が現れた。

 

「差し詰め、宝石の木を守る番人と言ったところかな。」

 

そう言いながら僕は手に十字槍を持ち、こう言った。

 

「哀しいなぁ、必死に守ろうとしているのに倒されてしまうと言うのは。」

 

そう言うと、僕は槍の石突で蜥蜴の下顎を殴って上体を起こし、胸の辺りを刺し貫くと、魔石にへと変わった。

 

僕は魔石を回収し、蜥蜴が守っていた宝石を全て回収した。

 

全て回収し終えた僕は槍と入れ替わりに琵琶を取り出し、さっきと同じように膨れ上がった袋と空の袋を交換する。

 

「今日はこのくらいにして戻ろうかな。」

 

そう言いながら僕は今来た道を引き返していく。

 

そうして、魔石やドロップアイテムを集めながら五階層まで戻ってくるとなにやら騒がしい気配を感じた。

 

すると、目の前にミノタウロスが現れた。

 

「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

咆哮(ハウル)を上げながら迫ってくるミノタウロスに対して僕は抜刀して頭から一刀両断すると、魔石とドロップアイテム(ミノタウロスの角)を落として消え去った。

 

それらを回収していると、後ろから話しかけられた。

 

「あの、ミノタウロスを見ませんでしたか?」

 

そう言って来るのは長い金髪に金の目をした少女だった。

 

僕はすかさずこう言った。

 

「あぁ、ミノタウロスでしたらこれですが。」

 

そう言って僕はミノタウロスの魔石と角を見せる。

 

「!! ごめんなさい・・・。」

 

突然の謝罪をしてくる少女に対してぼくはこう問いかける。

 

「何故、謝られるんですか?」

 

「実は、このミノタウロスは私のいる派閥(ファミリア)が逃がしちゃって・・・。」

 

そう言ってくる少女の言葉を聞き、僕は理解した。

 

恐らく、ミノタウロスが上層までやって来る出来事が中層で起こったと言うことだ。

 

「別に気にしませんよ。」

 

「えっ」

 

僕がそう言うと、少女は戸惑った声を出す。

 

「力が無ければ飲み込まれてしまう、そういった場所なんですよ、ダンジョン(ここ)は。」

 

僕はそう言ってその場を立ち去るのだった。

 

 




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対談と襲撃

金髪の少女と別れた後、地上に戻ってすぐに集めた魔石を換金しにギルドに行くとエイナさんが駆け寄ってきてこう言ってくる。

 

「ベル君、ちょっと話良いかな?」

 

「別に構いませんけど、先に換金だけ済ませて来ます」

 

そう聞いてくるエイナさんの言葉に僕は同意をする。

 

「うん、解ったよ。それじゃあここで待ってるから早く来てね」

 

「はい」

 

そう言って僕は換金所に行き、集めた魔石と怪物素材(ドロップアイテム)を換金すると合計3億ヴァリスの大金になった。

 

換金されたヴァリスを担いでエイナさんの所にへと戻ると、こう言ってくる。

 

「ベル君、たくさん稼いできたんだね・・・」

 

「はい」

 

エイナさんは担いでいる袋を見て圧倒されているみたいだ。

 

「それで話っていうのは何ですか?」

 

僕がそう言うと、エイナさんはこう言って来る。

 

「うん、ここじゃ何だからこっちの個室で話そっか」

 

「解りました」

 

そう話しながら個室に向かっている途中、声が聞こえてくる。

 

「エイナが弟君を個室に連れ込んだ!?」

 

「あれがエイナちゃんの好きな異性(タイプ)!?」

 

「あーいうのが好みなのか!?」

 

周囲が何を言っているのか解らないけど、危険が及ばないなら放っておこう。

 

「い、行こうかベル君」

 

「あっ、はい」

 

エイナさんの後ろを着いて行き、ギルドの個室に入ると早速本題に入る。

 

「実はね、今日君の事で神ヘスティアに相談に行ったの」

 

「そこで、僕の経歴を知るべきだと言われたんですね」

 

「‼ うん、そうなの」

 

僕が神様に言われたことを当てるとエイナさんは驚きながらも肯定する。

 

「解りました、それじゃお話しますよ。僕の経歴を」

 

僕は今までの経歴の全てをエイナさんに話した。

 

僕は辺境の山奥で11歳まで農家として祖父との二人暮しをしていた事。

 

祖父を亡くしてからの三年間は傭兵として過ごしていた事。

 

傭兵として初めての仕事では足がすくんで動けなかった事。

 

傭兵になった事を後悔した事。

 

その後に傭兵として生きることを覚悟した事。

 

二度目の戦場で大将首を挙げた事。

 

そこから傭兵としての実績を上げていった事。

 

依頼主に契約を反故にされて殺されかけた上で逆に徹底的に追い詰め、当初の契約金の十倍を支払わせた事。

 

昼夜問わず五日間戦い続けた事。

 

他の傭兵達からは【血鬼白兎(ブラッドオウガ・ヴォーパル)】と呼ばれるようになった事。

 

そうして、最近傭兵最後の仕事を終えて三年間の傭兵生活に終止符を打ち冒険者となるためにこの迷宮都市オラリオにやって来た事。

 

「これが今までの僕の経歴です」

 

全てを話し終えてそう言うと、エイナさんはこう言って来る。

 

「そうだったんだね、ベル君は元傭兵だったんだ…」

 

そう言いながら暗い表情を見せるエイナさんに僕はこう返した。

 

「エイナさん、僕はこの生き方に後悔はありません。むしろ、自分を高めることが出来て丁度良かったと思っているので」

 

「でも、ベル君は農家として生きていく道だってあったんだよ。それを捨ててまで傭兵や冒険者のような危険な職業をしようとするの?」

 

そう問いかけてくるエイナさんに対してこう答える。

 

言うことは決まっている。

 

「祖父が子供の頃から読み聞かせてくれた英雄譚に僕はなりたいからです」

 

「英雄?」

 

「はい、子供っぽいとは思いますけどね…」

 

そう言いながら僕は椅子から立ち上がってこう言った。

 

「それじゃあエイナさん僕はそろそろ帰りますね、神様が待ってますから」

 

「う、うん。引き止めちゃってごめんね」

 

「いえ、いつかは離さないといけませんから」

 

そう言いながら僕はギルドから本拠(ホーム)へ帰路に着くのだった。

 

街中を歩いていると、離れた位置から数十人単位で後を付けて来ている集団がいる。

 

このまま本拠(ホーム)まで行くのは神様に危険が及ぶと判断した僕は進路を路地裏に変える。

 

「{それにしても、下手な追跡だな。これなら野生の肉食動物の方がマシに思えるな}」

 

そう思いながら路地裏に飛び込んだ瞬間、僕は琵琶を取り出して金の入った大きな袋を無限城に移動させた後追ってくる集団を路地裏の奥に誘い込む。

 

路地裏の奥に行くと丁度良いと言っていい程に行き止まりになっていた。

 

「へへっ、ようやく追い詰めたぞクソガキ!!ぜぇぜぇ…」

 

追いかけてきていた冒険者らしき集団の全員が僕を取り囲みながら息切れを起こしていた。

 

「随分と息が上がっているみたいですけど…、大丈夫ですか?」

 

その言葉と共に嘲笑を含んだ笑みを浮かべる。

 

「このクソガキィ、大人しく金だけ渡せば命までは取らねぇでやったのに…。テメェ等構わねぇ、殺しちまえ!!」

 

すると、一人の男の声に従って集団は額に青筋を浮かべながら各々の得物を手にして襲い掛かって来る。

 

「馬鹿が」

 

その言葉を言うと同時に刀を抜いた。

 

【全集中 雷の呼吸参ノ型 聚蚊成雷】

 

襲い掛かってこられた瞬間、僕は参ノ型を放つ。

 

その瞬間、黒雷を纏った斬撃の波状攻撃が集団に牙を剥く。

 

本来、雷の呼吸参ノ型 聚蚊成雷は標的の周囲を回転しながらの波状攻撃だが今の状況のように集団に囲まれた状態で一対多を制する事が出来る。

 

追い詰めていたと思っていた相手からの予想外の反撃に集団の殆どが絶命している。

 

「な、なぁ…っ!?」

 

運良く生き残った一人の男は何が起こったのか解らずにいた。

 

襲い掛かった瞬間、雷鳴が聞こえたと思えば他の連中は血の海に沈み自分も両腕を失っていた。

 

「ど、どうなってんだ!?こりゃあ、一体!?」

 

「うるさい、黙れ」

 

目の前で喚く男に対して僕は不快感を抱き、刀の切っ先を突きつける。

 

「ま、待ってくれ!殺さないでくれ!!」

 

「何を言っている、最初に殺しに来たのはお前達だろう。それに殺そうとする奴等が殺される覚悟がないというのは滑稽を通り越して呆れてしまうな」

 

僕は今目の前にいる男に対してどういった顔を向けているのだろう、怯え方が普通じゃないからまともな顔はしてないだろうなと思った。

 

「来世では真っ当な生き方を薦めておく」

 

「やめ…っ!!」

 

なんの躊躇もなく刀を振るい、男の首を跳ね飛ばした。

 

「さて、帰るか」

 

ポツリとそう言いながら縮地を使い、消えるように移動するのだった。

 

その後、すぐに雷鳴を聞きつけた冒険者達が路地裏で死んでいる同業者を発見する。

 

最初にこの場に辿り着いたのは都市の守衛を担っている派閥(ファミリア)【ガネーシャ・ファミリア】団長であるシャクティ・ヴァルマ、LEVEL5の第一級冒険者であり二つ名は【象神の杖(アンクーシャ)

 

「なんだ、コレは…!?」

 

目の前に広がる惨状に息を呑む【ガネーシャ・ファミリア】の冒険者達。

 

「月と盃の徽章(エンブレム)という事は殺されている者達全員が【ソーマ・ファミリア】か…」

 

シャクティが遺体から徽章(エンブレム)が刻まれた布を取り出し、所属派閥(ファミリア)を確認する。

 

「【ソーマ・ファミリア】といえば日頃からギルド職員と換金の事で問題視されていました。今回のこの惨状もそれが原因なのでしょうか?」

 

「…まだ、断定することは出来ん。もしかすれば、闇派閥(イヴィルス)が関連している可能性も捨て切れてはいないからな」

 

闇派閥(イヴィルス)ですか…、また七年前のことのようなことが起こるのでしょうか?」

 

「それはなんとしてでも防がなくてはならない」

 

話しながらも思考を巡らせていると団員の一人が走ってやって来る。

 

「シャクティ団長、大変です!!」

 

「どうした、落ち着いて話せ。何があった!?」

 

「我々が遺体を収容しようと触れた途端、身体に亀裂が入ったと思えば全身が罅割れていき塵となってしまいました!!」

 

「なんだとっ!?」

 

団員の驚愕の報告にシャクティは声を上げる。

 

「くそッ、どうしてこうも予想外の事が起こるんだ…。」

 

そう悪態をつきながら頭を抱えるシャクティは、現状出来ることをすることにして団員達に指示をする。

 

「ハシャーナ、お前は何人かを連れて【ソーマ・ファミリア】にこの事を知らせた上で内情を探ってくれ。イスカは調査班を編成してここら一帯を隈なく調べろ。残りの者達はここら一帯の住人達に不審人物を見なかったか聞き込み捜査だ!!」

 

「了解!!」

 

団長の指示に団員達は自分の役割を果たそうと動き出す。

 

 

 

 

 

 

襲撃してきた集団を蹴散らした僕は本拠(ホーム)に辿り着くと、装備を外してから椅子に腰掛ける。

 

「ふぅ、やっぱり人形を斬っているようにしか感じないな」

 

そう言いながら僕はコップに水を注ぎ、一気に飲み干した。

 

「神様はまだバイトなのか…」

 

そう言っていると、隠し扉が開いて神様が入ってくる。

 

「おかえりベル君!!それから、ただいま!!」

 

「はい、ただ今帰りました神様。おかえりなさい」

 

互いに帰宅の挨拶をした後、今日もジャが丸くんを食した後眠るのだった。



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合同部隊

【ソーマ・ファミリア】の襲撃から翌日、僕は朝目覚めるとやるべきことをやって支度を調えてダンジョンへと向かうのだった。

 

ダンジョンに向かっていると、ギルドの方が騒がしいことに気付き一度向かってみるとある張り紙に冒険者達が集まっていた。

 

僕は人だかりの中から出てきた白妖精(エルフ)の女冒険者から張り紙の内容を聞くことにした。

 

「すまない、あの張り紙には何が書かれていたんですか?」

 

「えっ、あぁ、なんでも昨日【ソーマ・ファミリア】の冒険者が大勢死体にされた上に塵みたいになって消えちまったらしいです。ギルドはこれを闇派閥(イヴィルス)の仕業かも知れないから注意しろとのことらしいです」

 

闇派閥(イヴィルス)・・・、すみませんこのオラリオに来て日が短いので教えて戴けませんか?」

 

「えぇ、構いませんよ。闇派閥(イヴィルス)は七年前にオラリオを恐怖を刻み込んだ集団のことです、当時の冒険者達が死力を尽くして打ち破ったそうですが」

 

「・・・そんな集団が居たんですね」

 

「えぇ」

 

「教えて戴き感謝します、お礼はダンジョンでの稼ぎの半分でどうでしょう?」

 

「いやいや、そんな大したことは教えてはいませんのでお礼なんて・・・」

 

僕の提案に対して白妖精(エルフ)の女冒険者は断ってくるが、更に言葉を重ねる。

 

「よく言いますよね、「無料(タダ)より怖いものは無い」「情報は武器であり宝」と」

 

「~~~~~~~~~っ、解りました・・・」

 

白妖精(エルフ)の女冒険者は葛藤の後、根負けしたように了承するのだった。

 

「では、部隊(パーティ)を組みますので自己紹介しましょう。僕は【ヘスティア・ファミリア】団員でベル・クラネルです、今日はよろしくお願いします」

 

「私は【ヘルメス・ファミリア】団員でローリエ・スワルです、こちらこそよろしくお願いします」

 

こうして、僕は他派閥の団員とダンジョンへと潜るのだった。

 

 

 

 

ローリエさんとダンジョンに潜って十階層まで降りてきた僕は迷い込んできたオークと対峙する。

 

階層についてはローリエさんが僕のLvを聞いてこの階層で行動することになった。

 

「グォオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「死ね」

 

「グォオオオンッ!?」

 

襲いかかってくるオークを刀で一刀両断し魔石へと変えて回収する。

 

「すごいですね、クラネルさんオークを一撃で倒すなんて」

 

「そうなんですか?」

 

「えぇ、冒険者になりたてなのにオークを一撃で倒せるのは凄いです」

 

オークを一撃で倒したことをローリエさんが褒めてくれるが僕としては木偶を斬っているようにしか思えない。

 

「ぎゃぁああああああああああああああああああっ!!?」

 

「悲鳴っ!?」

 

すると、野太い悲鳴が聞こえたと同時に反応すると数名の男冒険者達が走り込んでくる。

 

「おい、お前らも逃げろ!!どっかの馬鹿が罠肉(トラップアイテム)をばら撒きやがってモンスター共が上がって来やがった!!ギャァアッ!!」

 

その言葉を最後に冒険者達はモンスターの波に呑まれた。

 

「なんですって!?」

 

「ほう・・・」

 

僕とローリエさんの反応は異なってはいるがモンスターの大量発生は不味い。

 

僕達も逃げたところでモンスターを地上に案内するようなものだ、ここで取るべき行動は・・・。

 

「ローリエさん、」

 

「クラネルさん、ここは逃げましょう」

 

「それはお一人でどうぞ、僕はここに残ってモンスターを食い止めます」

 

「何を言っているんですか!?」

 

僕の言葉にローリエさんは大声で怒鳴る。

 

「貴方は今自分が何を言っているのか解っているんですか!?」

 

「解っています、それにやるべき事があなたにはある。それはこの異常事態(イレギュラー)を一刻も早く地上に伝えることだ」

 

「!?」

 

冷静、冷静すぎる。

 

ローリエは目の前に居る白兎を思わせる少年に歴戦の雄の姿を見た、見てしまった。

 

「それにローリエさんのような綺麗で可愛い女性に死んで欲しくないですから」

 

「それじゃあお願いしますね」

 

そう言って少年は駆け出していくと同時にローリエは地上に向かって走り出す。

 

命を賭して自分を信じて送り出してくれた少年を救うために。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・さて、・・・始めるか・・・」

 

【全集中 月の呼吸・捌の型 月龍輪尾】

 

僕は刀を変化させ、強烈な力で素早く繰り出す抉り斬るような横薙ぎの一閃を放つとモンスターは細切れとなっていく。

 

【全集中 月の呼吸・拾肆の型 兇変・天満繊月】

 

周囲を埋め尽くす量の渦状の斬撃を折り重ねて放たれると更にモンスターを細切れにしていく。

 

「これ・・・で・・・終わり・・・か」

 

そう言った瞬間、地響きが起こり十一階層へと繋がる出入り口が破壊され同時に一体のモンスターが姿を現す。

 

「これは・・・竜・・・、いや姿的には飛竜(ワイヴァーン)・・・か」

 

「グルゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

咆哮を上げる飛竜は両の眼で僕を捉えている。

 

「面白い、馬鹿の一つ覚えのように突っ込んでくるだけのモンスターは飽きていたところだ」

 

その瞬間、僕が見せた顔は闘争に溺れるいや、血に溺れる狂気に染まる悪鬼だった。

 

【全集中 月の呼吸・玖の型 降り月・連面】

 

開幕の一撃は譲らないと言わんばかりに刀を背中から前方に振るい、敵の頭上から降り注ぐような軌道の複雑かつ無数の斬撃を放つ。

 

確かにその一撃は飛竜を抉ったが、再生を始めていて踏みつけてくる。

 

「再生能力・・・、面白い」

 

再生能力があるのならば攻め方を変えるまでだ。

 

【全集中 雷の呼吸・陸の型 電轟雷轟】

 

踏みつけを躱しまだ癒えていない傷を中心に周囲にギザギザした雷のような無数の斬撃を繰り出し、敵の全身を切り刻む。

 

すると、再生しかけていた飛竜の肉体は瓦解し始める。

 

「これで終わり」

 

その一言と共に僕は飛竜の首を落とし魔石に変えるのだった。

 

そうして、全てのモンスターを殲滅させた僕は魔石や怪物素材(ドロップアイテム)を無限城に移動させると休息のために腰を下ろす。

 

「再生能力があるだけで只の木偶だったな」

 

そんな感想を言っていると九階層への入り口が騒がしくなってくる。

 

「クラネルさん!!」

 

最初にやってきたのはローリエさんで、その後ろからは救援の冒険者がやって来る。

 

「無事で良かったです、それでモンスターは何処に?」

 

ローリエさんはそう言いながら細剣(レイピア)を構えながらそう聞いてくる。

 

「遅かったですね、もう片付けましたよ」

 

「えっ?」

 

その返答を聞いたローリエさんは唖然とした顔をする。

 

「だから、もう終わりました。モンスターは全て斬り捨てました」

 

「えぇ~~~~~~~~~~~~~~っ!?」

 

ローリエさんは白妖精(エルフ)らしくなく大声を出して驚く。

 

「帰りましょうか」

 

この後、エイナさんからの説教をされることになるが別の話。

 

 

 

その日の夜、【ヘルメス・ファミリア】の拠点に戻ったローリエは今日出会った白兎の様な少年のことを思い出していた。

 

「クラネルさん・・・、ベルきゅん・・・」

 

少年のことを思い出すだけで気持ちが高揚し顔を赤く染める様になったのだった。



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後日

異常事態(イレギュラー)が発生した日の夜、僕は本拠(ホーム)に帰って【ステイタス】の更新を神様にお願いした。

 

その結果・・・。

 

「おめでとうベル君、昇華(ランクアップ)だよ!!」

 

「意外と・・・早かったな・・・」

 

「まぁ、君の場合は下積みがあったからだろうね」

 

昇華(ランクアップ)の知らせに僕が淡泊にそう言うと神様がそう言ってくる。

 

「なるほど・・・、それでは昇華(ランクアップ)お願いします」

 

「任せたまえ!!」

 

ベル・クラネル

 

level2

 

力I0 耐久I0 器用I0 敏捷I0 魔力I0

 

鬼SSS 剣士SSS 拳打SSS 破砕SSS 狩人SSS 耐異常SSS 再生SSS

 

【十二鬼月・上弦の鬼】

・早熟する

・肉体の超再生

(おもい)が続く限り効果持続

(おもい)の丈により効果向上

 

【血鬼術】

・上弦の鬼の能力行使

 

黒死牟

・全集中の呼吸:常中

・月の呼吸

・武器精製

 

童麿

・対の扇

・氷雪操作

 

猗窩座

・破壊殺

・素流

 

半天狗

・積怒

・哀絶

・空喜

・可楽

・憎珀天

 

玉壺

・異形召喚

・潜水のアビリティを一時発現

 

妓夫太郎

・血鎌

・猛毒

 

堕姫

・帯の伸縮

・帯の硬質化

 

鳴女

・空間移動

・空間操作

 

獪岳

・全集中の呼吸:常中

・雷の呼吸(弐から陸)

 

血浴狂喜(ブラッドバス・マッドネス)

・血を浴びれば浴びるほど全アビリティ超高補正

・血を流せば耐久のアビリティが低下

 

【夜天闊歩】

・暗闇の中であればある程敏捷のアビリティ高補正

 

そうして、僕は今日から上級冒険者となった。

 

 

 

 

その翌日、僕はローリエさんに報酬を払うために中央広場(セントラル・パーク)で待ち合わせをしている。

 

すると、ローリエさんは私服で現れた。

 

「こんにちはクラネルさん、お待たせして申し訳ない」

 

「こんにちは。いえ・・・、僕も今来たところなので問題はありません」

 

そうして、挨拶をした後僕達は店に入り本題に入る。

 

「それでは、約束通り報酬です」

 

「いや、これは流石に多すぎないか!?」

 

そう言ってくるローリエさんの前にはパンパンに膨れた麻袋があった。

 

「これは貴方のLv.を加味してのものなので受け取って貰わないと僕が困ります」

 

「しかし・・・」

 

僕の言葉にローリエさんは戸惑いを見せる。

 

「ローリエさん個人が受け取るのを躊躇われるのなら【ヘルメス・ファミリア】に還元するというのはどうでしょうか?それであれば罪悪感もなくなりますし、ファミリアにも資金面で工面できますから」

 

「・・・・・・・・・解りました」

 

様々な葛藤があったのだろう、百面相しながら悩み抜いた末にローリエさんはそれに同意する。

 

ヘルメス・ファミリアってそんなに気苦労が絶えないのだろうか・・・。

 

そう考えているとローリエさんがこう言ってくる。

 

「クラネルさんはこの後どうされるのですか?」

 

「今日は完全に休息日にしようと思っています」

 

「それじゃあ・・・」

 

「おーい、ローリエヘルメス様がさっき帰ってきてさ昨日のダンジョンのことについて聞きたいって・・・」

 

ローリエさんが何か言おうとしたときローリエさんの同僚であろう犬人(シアンスロープ)の女性が声を掛けてくるとローリエさんは能面のような顔になってしまう。

 

その顔を見てしまった同僚の犬人(シアンスロープ)の女性は途中で言葉を噤んだ。

 

「クラネルさん、主神の呼び出しがあったので今日はこれで」

 

「えぇ、お疲れ様です」

 

ローリエさんに労いの言葉を掛けると一礼してからローリエさんは同僚の女性と退席するのだった。

 

その後、僕も店を出ると本拠(ホーム)にへと帰って行くのだった。




ヘルメス・ファミリア本拠(ホーム)

「あぁ、お帰りローリエ、待ってたよ。ルルイも探しに行ってくれてありがとう」

「・・・・・・・・・・・・」

「あの・・・ローリエ?なんでだんまりなんだい・・・?」

「痛いっ!?なんで脛を蹴ってくるんだい!?いたたたたたたたたたたたたたたっ!!!」

ローリエの怒りの脛蹴りは二時間続いた。

団長含む眷族達はいつものことと無視するのだった。


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