黒の剣士に憧れし者 リニューアル (孤独なバカ)
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プロローグ

強さとは何だ。

 

自分の問いかける

 

目の前にある冷たい体の家族が入った棺桶を見つめながら考える。

一週間の時間はあっというまに過ぎる中、俺、飯塚スバルはたった一人で家族を見ていた。

もうそろそろ春が来そうな後二週間で俺の高校生生活が始まろうとしていた時の悲劇だった。

 

死因は刺殺による大量出血。

どうやら連続通り魔事件の犯人が近くの子供を刺し殺したらしい。

子供の家族がお礼を言いに来た。

既に死んでいる両親の姿を見てとても立派だと褒めちぎっていた。

それで自分が死んだら意味がないのに

家族葬はスバル自身が断った

というのも元々スバルの家は昔から剣道屋敷が盛んで門下生が大量にいたのだ。

安くするよりも騒がしい方が少しは両親は楽になると思ったのだ。

事実。葬式には多くの人がこちらに来て黙祷を捧げている。

 

そしてもう一つは理由がありこれから俺を育てていく。いや資産争いを繰り広げているからである。

両親は道場を開いており、さらに古くから剣で優れた名家だったらしい。

遺言書に全て資産をスバルに渡す遺言書を弁護士に渡していたので醜い財産争いが今スバルを目の前で行われていた。

 

……何で葬式に来てくれた人たちが親戚よりも悲しんでいるんだよ。

 

そんなことを思いながらスバルは薄汚い大人の空気に包まれていた。

 

 

あれから三ヶ月が経ったある日の月曜日

高校に入っても未だに相続争いについては何も決まってなかった。

今は幼馴染の南雲ハジメの家に引き止められそこに居候として暮らしている。

そこでの暮らしは少し戸惑いがありながらも、暮らしていた。

 

しかし学校が生活はそう上手くはいかない。

 

週にバイトを二つ掛け持ちやっているのもあり成績が最初からいいとは言い切れない。そして一番は授業中も寝てしまうことが多く、さらに休日は未だゴタゴタしている親戚の話になっている。

それが多大なるストレスになっていた。

スバルは既にハジメたちの両親のことを信頼し通帳から何から何まで預けているために居候先として正式に身元請負人となったことを告げたのだ。

すると大激怒と悲鳴、非難の数々。それで始めてスバルは絶望したのだ。

 

……もう誰も自分のことを見てくれないんだと

 

 

スバルは既に限界だったのだ。

バイト、学校、資産問題。

それを同時にこなしていたので日頃から精神的な負担も肉体的な負担も大きくかかっていることには違いはなかった。

ボロボロであり既に身体ストレスが溜まっていた。

ハジメもそのことに気づいていたのでできる限りのフォローはしていた。

 

いつも通り学校へ向かい一直線で席に座ろうとしたところニコニコと笑いながら隣の席の一人の少女が話しかける。

 

「飯塚くんおはよう!!」

「……おはようさん。」

 

と白崎香織と呼ばれるこのクラスで二大女神と呼ばれ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。

普通なら話しかけてもらえるだけ楽とか優しい性格とか思ってもおかしくはないんだが今のスバルにはそんな余裕はなかった。

 

席に着くと始業まで睡眠を取るべくうつ伏せになるとすぐに睡魔が襲ってくる。

 

こう見えても授業中は未だに寝たことがないが、休み時間やその合間の時間になると糸が切れたように寝てしまうというのがデフォだ。

なので相変わらずすぐに眠りに入ろうとした時

 

「おい。飯塚。せっかく香織が挨拶したんだから。」

 

と何か言いたげの天之河光輝が近づいてくる。天之河は人気が高く、学年問わずの人気者だがそんなもん知ったこっちゃない。

そしていつもの感覚の時間まで寝ている。

スバルの事情を知っている人は多く中学校時に同じクラスの永山グループや昔道場同士で交流のある八重樫雫がそれに当たる。

雫は白崎に何度も言いよっているらしいがそれでも詳しい事情を話せないでいるので困っていることは知っていたが自分のことでいっぱいいっぱいだった俺は謝ることくらいしかできなかった。

目が覚めると丁度朝のHRが始まるところだったのでいつも通りの授業が始まろうとしたところだった。



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バイト先にて

ちょっと重めの主人公の過去に触れます。


「いらっしゃいませ〜。」

 

放課後、今とあるサブカルチャー専門の有名店で俺はレジ打ちをしていた。

 

「会計は一万三千四百円になります。」

「は、はい。」

 

と対応しているのは女性客である。どうやら店長曰く俺がバイトの日だと女性客が1,2倍増加するらしい。

というよりも女性客ばかりの対応は少し苦手なのだけど。

 

「雫ちゃんこっちだよ。」

「ちょっと香織!!いくら飯塚くんが南雲くんとゲームの話をしていたからって。いえ。確かに若干オタクの要素はあるのだけど。」

「……」

 

と同級生と思われる声が聞こえてきても無視だ。我慢だ。

俺は笑顔で接客を続けていく

 

「…あれ?スバルくんどうしたの?笑顔が固いけど。」

「いや〜何でもないですよ。大久保さん。」

 

と必死に笑顔を続けながら接客をしていく。

 

「こ、こら香織どこに入ろうとしているの!!」

「うっ。で、でも雫ちゃん。」

 

俺は顔を引きつらせる。さすがにその会話から普通は入らないであろう場所に二人が入ろうとしていることは分かった。

これどうやってレジ打ちすればいいんだよ。

 

恐らく俺はレジ打ちを無心で続けていく。その時にアニメや漫画の話をしながら楽しく話していると

 

「あれ?なんだかこの女の子、雫ちゃんと似ているような。

「はぁ!?ば、馬鹿なこと言わないで!私、こんな四つん這いでお尻を突き出したりなんて!そ、それに!そんなこと言うなら、こっちの女の子は香織に似ているじゃないっ!」

「えぇ!?わ、私、男の子の上でこんなに恥ずかしい格好しないよう。」

 

……限界だった

さすがにクラスメイトが大人向けなコーナーにいて、さらに周辺の人を巻き込んでいて、翌日からどう会えばいいのかわからなくなりそうだったので店内アナウンスをかけスバルは何を悟ったようにため息をはき告げた

 

「お客様の案内をいたします。八重樫雫様。白崎香織様。八重樫雫様、白崎香織様。至急レジ前までお越しください。引き続き松田店長。松田店長。そこのバカ二人を説教するんで2番レジ交換してください。」

「「えっ?」」

 

すると二人の驚いた声が聞こえてくる。店内アナウンスを聞いて店長が引きつっている。アナウンスやお客様のことをガン無視したアナウンスだけどさすがに他のレジの人やお得意様の人は気づいているのだろう

あぁ。いつものか。

実は普段は仕事はダメダメな店長を叱るためタメ口でアナウンスをすることがこの店の恒例行事になっている。今回はお客なのだがまぁ他の人は恐らく知り合いってことを知っているので同情するような目でスバルを見つめる。

 

「えっと。雫ちゃん?今の声って。」

「……飯塚くんここでバイトしてたのね。」

「えっと。もしかして……今の話って。」

「聞かれていたわよ。……あぁ。頭が痛いわ。」

 

すると微妙な雰囲気な二人が遠目を見ている。

 

「店長上がります。ついでに説教するんで少し早いですけど。」

「あの、お客様なんだけど。」

「いや。恐らく俺関係なんで……ちょっと俺の名前を言っていたし。」

「知り合い?」

「幼馴染と高校の同級生です。」

「……お疲れ様です。」

 

店長にさえ同情の目を向けられ俺はがっくりとため息を吐く。

そしてしばらく待つと二人が恐る恐る近づいてきた。

 

「……とりあえずここじゃ迷惑になるし、簡単に説教するぞ。てか雫。こいつの面倒はお前が担当なのになんで大人向けのコーナーであんな大声をだす。」

「えぇ。ごめんなさい。」

「えっ?雫?」

「幼馴染だよ。昔道場の師範の息子と娘同士結構仲はよかったから。ってそういう問題じゃないんだけど。」

「うぅ。ごめんなさい。」

 

俺は息を吐く。

 

「俺もう上がるからちょっと待ってろ。着替えてくるから。」

「えぇ。どこで待ってればいいかしら?」

「近くのサ◯ゼに集合。せっかくだし飯食っていこうぜ。言いたい事も聞きたいこともあるだろうしな。」

 

すると二人はキョトンとする。

 

「えっと。どういう事?」

「天之河いるところで話したらめんどくさいことになるだろうが。あいつ俺のこと嫌いだろうし。せっかくバイト先見られたんなら俺の事情話しておいた方がいいだろうが。」

 

お互いのためにもな。これで話掛けられないようになればベストだろうし。

そんなことを思いながら俺はバックに着替えを取りに戻ったのであった。

 

 

「……ってことで今回は保護者には連絡しないけど二度と年齢制限のあるゲームは指定年齢になるまで入らないこと。いいな。」

「「ごめんなさい。」」

 

10分ほど軽く説教した後たくっと一息いれ、軽くため息を吐く。

 

「てか、最初からずっと気になっていたんだけどお前ってなんで俺と話したがるんだよ。俺白崎と共通点なかったはずだけど。」

「……やっぱり覚えてないんだ。」

「覚えてない?」

「この子スバルにあったことがあるらしいのよ。中学校の時に二度。」

 

そうだったか?

俺は考えるとすると苦笑する二人がいる

 

「覚えているわけないわよ。香織が中学一年のころ助けてもらったわけで2回目は香織すら関係の。」

「あぁ。そういや一度高校生に絡まれていたやつ一度助けたっけ。もしかして白崎?」

「覚えているの?」

「いや。詳しくは覚えてない。でも、よその中学の女子に関わったのそれくらいしかなかったしな。」

 

一度礼を言われてそれっきりだったしな。言ってくれなかったら気づかなかったな。

 

「それと高校二年生の時もお婆さんを南雲くんと助けていたでしょ?」

「……あったな。そういや。」

 

あの出来事はよく覚えている。ハジメの作戦に乗ったとはいえ二人で大学生に土下座をしていたのはちょっとした黒歴史だ。

確かソースで大学生の特注品のズボンを汚したのを無理やりお金をむしりとろうとしたのを土下座したんだっけか

 

「……その時二人のことを凄く強くて優しい人だって思ったんだ。」

「は?」

「だって、二人共。小さな男の子とおばあさんのために頭を下げてたんだもの」

 

あぁ。なるほどな。

 

「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝くんとかよくトラブルに飛び込んでいって相手の人を倒してるし……でも、弱くても立ち向かえる人や他人のために頭を下げられる人はそんなにいないと思う。……実際、あの時、私は怖くて……自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった」

「それが普通だろ。……というよりそれが正解だろうな。俺は一応護衛手段持っていたからな。あんな真似ができたんだろうし。というよりも普通なら突っ込まないのが正解なんだよ。余計にこじれてめんどくさいことになったら責任取れるのかって話になるし。」

「……そうなの?」

 

雫が聞いてくる。

 

「あぁ。というよりも自分が迷惑を掛けているのかなんて自分では理解できないんだよ。天之河なんて典型例だろ。あいつは俺の事情知らないだろうし。」

「そうね。まぁ……正直香織のこと面倒くさいって思っていたでしょ?」

「……まぁな。事情を知らなかったらただの意味のわからないやつだと思ってた。」

「ひどい!!」

 

と言っているが知らなく目立たない男子がカーストトップの白崎に話掛けられるだけでどれだけ目線がきついしな。

 

「……まぁ。さすがに納得した。そういえばそんなことあったわ。」

「覚えてないのも仕方はないと思うけど。」

「両親殺された前は結構覚えていたはずだぞ。てかお前に何度同じ話を聞かされたか。」

「……えっ?」

 

白崎は驚いたように俺の方を見る。

 

「……ちょっと待って。どういう。」

「雫には黙っていてもらっていたんだけど、俺の両親が連続通り魔事件の最後の被害者なんだよ。今はハジメのところで居候している。」

「……雫ちゃんは知っていたの?」

「えぇ。元々スバルのお母さんと、私のお母さんが同級生だから。幼馴染ってことも光輝がいるから話さないでいたし。」

「あいつの性格上俺にはお互いに合わないからな。もし死んだ両親を理由にしっかりしろっていうのは目に見えているしな。」

 

正直馬が合わないのだ。俺は今生きることで必死だしな。

 

「そういえば大丈夫なの?」

「ん?両親のことについては一区切りついているからな。まぁ問題は身内の引き取ってもらう先がちょっとな。」

「そういえば引き取り先どうなりそうなの?もしかしたら転校もありえるって。」

「いや。ハジメの家に正式に養子になりそう。」

「……意外ね。そういや。今って南雲くんのところで面倒見てもらっているのだったかしら?」

「あぁ。ちょっと高校が控えていたからな。親戚の家全部遠かったし。一人暮らしはさすがにお金がな。」

 

どうしようかと悩んでいるとハジメの家族から打診を受けたわけだしな。甘えっきりにならないようにスマホ代と生活費の一部をバイトで稼いでいるわけだし。

 

「まぁ、ちょっとしたことで今もめているんだよ。しばらくはゴタゴタした雰囲気が続くだろうし。どっちかというならこっちの方がな。」

「……そっか。」

 

とコーヒーを飲む。苦々しい雰囲気が周辺をつつむと

その後重い空気の中スバルが出ると合図するまで誰も一言も話さなかった。



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ハロウィン

「おはよ〜。スバルくん。」

「ねぇご飯もう食べた?もしよかったら一緒に食べないかな?」

「スバルくん今日バイト?もし空いていたら一緒に帰らないかな?」

 

とあの日からもう三ヶ月がたったとある昼休み

 

「……白崎怖いんだけど。」

 

すでに身内問題や裁判に一区切りをついた俺はハジメにそう呟いた。

1日の大半を白崎が話しかけてくるようになっていた

 

「あははは。……スバル何かしたの?」

「なんで俺が何かした前提なんですかね?てか突き放したはずなのになぁ。」

「えっ?」

 

俺は苦笑してしまう。

 

「いや、バイトの都合上俺って交友関係に時間費やす暇ないし。」

「そういうわりには白崎さんと話している時多くない?」

「いやだって話しかけてくるのに話しかけないって。」

「そういうこと言って最初のころは無視してたじゃん。」

「うっ。」

 

それを言われると痛いところだけど

 

「いや。だってな。あんなに純粋に話しかけてくるとさすがに罪悪感が。」

「そういえば話したんだったよね?」

「あぁ。それに白崎ってあれじゃん。……あ〜なんていえばいいんだろう。」

「……もしかして白崎さんの気持ち気づいているの?」

 

俺は少し困ったように頷く。いや。あれで気づかないというのは無茶があるだろう。

明らかに幼馴染よりも話しかける機会が多いって。

 

「……まぁ白崎は自覚ないだろ。雫にも聞いたし。」

「……だろうね。」

「はぁ。たく。」

 

と言いながらも自分で作った弁当をハジメと食べる。愛ちゃんの凡ミスにによりハジメの家に居候していることがバレているので弁当を作っているくらいは余裕になっていた。

 

「でも、スバルも僕と白崎さんくらいでしょ?」

 

学校で話す人のことだろう。

 

「まぁな。なんだかんだで面白い奴ってわかるしな。」

「やっぱり白崎さんいじるの楽しそうだしね。」

「反応がウブだからな。結構面白いぞ。ハジメもいじってみれば。」

「本当にスバルは母親似なんだね。」

「よく言われるな。」

 

と苦笑してしまう。

実際俺は母さんから弄られる機会が多かったし、逆に揚げ足をとったりしていたからな。

 

「スバル。ちょっといいかしら?」

 

すると雫が珍しくこっちの席に香織がいないところで話しかけてくる。

 

「ん?どうした?」

「今日バイトかしら?もし良ければ帰り道香織に付き合って欲しいのだけど。」

「……なんで雫が?」

「さぁ?」

 

すると首を傾げる雫。

しかしそれがふりということはすぐに見抜けた。

 

「……?あぁ。そういうことか。」

「えっ?」

「お前顔ニヤついているぞ。少し頰が緩んでいるし。」

「嘘!?」

「マジで。」

 

すると雫は頰を触る。するとハジメが頷く。

雫は嬉しい事に限ったらかなり顔に出やすい。雫の猫に対するデレっぷりを見たら普段のクールビューティというイメージは簡単に消え去るくらいだろう

 

「うん。緩んでいたね。」

「あぁ。雫結構わかりやすいからな。まぁ香織関係ってことは確定で恐らく……ってか白崎あいつ自分の気持ち気づいたのか?」

「えぇ。最近愛ちゃんと話す機会多かったでしょ?」

「……先生に嫉妬するなよ。」

 

俺は少し呆れたようにしてしまう。ハジメも軽く顔が引きつっている。

ついでに愛ちゃんと話す機会が多いのは進路についてで、第一志望が高卒の公務員なだけあってどうすればいいのか早めに相談しているからだ

できれば気づかれないようにしてきたのだが……

するとハジメも少し大人しめに告げる。

 

「まぁお似合いの二人だと思うよ。」

「おい。ハジメ。どういうことだ?」

「えっ?断るの?」

「……いや。でも。」

「……それでいいの?」

 

幼馴染二人に少しタジタジになってしまう。

正直なところこの二人に対してはかなり弱いのが俺だし、あんまりこの二人には通用しない。

俺が白崎に対する気持ちも二人は気づいているはずだ。

 

「……いや。何というか……まだ決まったわけじゃ。」

「香織今日告白すると思うわよ。あの子一つ決めたらそれに一直線だから。」

「……だよな。」

 

気持ちに気づいていることは知っているので雫の直球な問いかけに少し悩んでしまう。

だがどうせ後伸ばしにしたところで、白崎から逃げられるとは思わないし、ここで気持ちに応えられないとしてもここで返答を返すことがいいだろう

 

「はぁ。まぁ今日は空いているから別にいいけど。」

「あれ?バイトないの?」

「今日ハロウィンだろ?今日社員たちがコスプレで徘徊する日なんだよ。」

「「あぁ。」」

 

コスプレが苦手なスバルは店長と壮絶な争いの上コスプレをしない権利を手に入れたのだったのだが。

 

「そういえば今日お前なんのコスプレするんだ?恐らくソウルシスターズがこのクラスに来たら。」

「……それ以上言ったらぶつわよ。」

「さーせん。それともう戻った方がいいんじゃないか?さっきから白崎の視線がいたい。」

 

めっちゃ睨んでいるし雫は後から事情聴取を受けることになるだろうなぁ。

そんなことを考えながらスバルは話を打ち切るとそうねと答えた

 

 

 

「スバルくんどうかな。」

 

と放課後のハロウィンパーティーの時間がやってきた。ついでにほとんど全員参加なのでいない人の方が珍しいので目立たないようにハジメも参加していたのもありハジメと話をしていると少し照れ臭そうにしている白崎が俺の方を上目遣いで見てきた。

白崎の見た瞬間俺は一瞬固まってしまった。隅っこにいたのにかなり目立ってしまう。

猫耳をつけた少女がミニスカの浴衣姿をしたのはなんとも目に毒だ

おそらくだけど谷口というちびっこのクラスのムードメイカー的存在の奴が主体になっているんだろう

 

「……似合っているんじゃねーの。猫又だろ。それ。」

「そ、そうかな?」

「……ただ寒くね?」

 

10月としてはちょっと寒そうな気がするんだけど。

 

「えっ?う、うん。ちょっと寒いけど。」

「たく。……差し入れ。」

 

と俺はあったかいお茶を取り出す。

 

「えっ?これって。」

「甘い物ばっかりじゃ喉乾くだろ?一応冷たい奴も買っていたから臨機応変で。」

 

と軽くお茶を取り出す。

 

「それでなんでスバルくんはスーツ?」

「いや、執事服だと思う。よくわからないけどこれに着替えてって言われた。」

「……へぇ〜。」

 

するとじっと見つめてくる白崎。

全身を見てそして少し頰を赤くさせる

 

「……そんなに変か?」

「えっ?ううん。似合っているよ!!」

「そうか?あんまりハロウィンぽくないし。」

 

と少し困ったように自分の格好を見てしまう。

普通おばけとか妖怪の格好するのになぜ執事と思っていると

 

「でも、かっこいいと思うよ。」

「……そうか?」

「うん。似合っているよ。」

 

と顔を赤く染める香織に少し照れくさくなってしまう。

 

「そういえば今日この後雫ちゃんの家で二次会やるんだけど。」

「天之河来るんだろ?それなら行かない。」

「……うぅ。」

 

すると予想はしていたのだろう。少し苦い顔をする。

俺の天之河嫌いは恐らく学校中に広まっている。実際文化祭などのことで堅実派のスバルと理想型の天之河で争い、しかも天之河の意見を打ち切って俺の意見が最終的な文化祭の案になったことは自他のクラスを他にして知れ渡っていた。

 

「……てか今日一緒に帰るんじゃなかったんかよ。」

「だってスバルくん下校中は付き合ってくれるけど。付き合い悪いよね?」

「……いやだって俺スポーツチャンバラの代表だし。練習しないと腕鈍るし。一応これでもスポーツ推薦だから。」

 

マイナーなスポーツだが実はスポーツチャンバラという種目で大人も交えた世界大会でベスト4を記録するなどの成績を誇っている。

中学時代からトップクラスの成績を誇っていたし、大学からの剣道に戻り二刀流をすることを軸にスポーツ推薦を取り入れたのがきっかけだったのだ。

 

「……それじゃあこのパーティ中はどうかな?」

「それくらいなら別にいいけど。」

 

としている中であることに気づく

 

……ハジメ逃げやがったな。

 

軽く舌打ちをしてしまうあいつと一緒なら友達と一緒に回っていると言い訳ができるのに。

 

「んじゃ行くか。」

「うん。」

 

と嬉しそうにする香織を連れて俺たちは回り始めた



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告白

まぁ、男子がお菓子を出し女子が美味しそうにお菓子を食べているのが特徴的だった。

時々同じ中学校のやつと話をしたり、雫を弄ったり、谷口を弄り中村に止められたり。愛ちゃんを弄ったり、香織を弄ったりしているうちに1時間程度楽しんでいた。

……女子しか周りにいないのは気のせいだと思いたい。

 

「……うぅ。体重。カロリー。」

「……悪い。言いすぎた。」

「本当だよ!!」

 

はい。思いっきりカロリーのことで香織と愛ちゃんを弄ってました。リスみたいにぽりぽり食べている愛ちゃんが涙目になるのが面白くてついやりすぎてしまった。なお流れ弾が白崎に当たった模様。

 

「しかし、女子のコスプレが見たいからってここまで大きな規模でやるか?」

「えっ?このハロウィンってそれが目的だったの?」

「実行委員会がそうしたんだって。てか予算どれくらいおりたんだよこれ。本気出しすぎだろ。」

 

と少し苦笑している

 

「そういえばスバルくんはこれからどうするの?」

「ん?今日は休みだし少し体休めようかなって思っているけど?」

「それじゃあこの後時間あるの?」

「一応な。」

 

とそういえばと思い少し苦笑する

 

「それじゃあ少しどこか寄らないかな?」

「お前雫たちと二次会だろ?」

「……そうだけど……」

「約束を優先しろよ。せっかく誘ってもらったんだろ?友達と遊ぶことができている時間は大事だぞ。」

 

と軽く苦笑してしまう。

 

「……むぅ。」

「むぅじゃねーよ。」

 

と帰り道を歩いていく俺と白崎。てか

 

「そういえば今日お前ずっと名前呼びしているけど。どうしたんだ?」

「えっ?ダメだった?雫ちゃんたちもそう呼んでいたから。」

「別にいいけど。」

 

すると急に手を繋いでくる香織にぎょっとしてしまう。

こいつ攻めすぎだろ。

俺は恋愛に関してはとことん弱い。というより恋愛経験がないことが原因であるしな。

結構攻めるのが好きで押されるのが苦手なのは母親譲りだろうとそんなことを考えていた矢先だった

 

「ねぇスバルくん。」

「なんだよ。」

「私。スバルくんのことが好きです。」

「そっか。…………って。ん?」

 

今なんて言ったと思い足を止めてしまう。目の前には顔を真っ赤にさせている香織がいて恐らく聞き間違えではないと気づく。

それでも確信が持てず聞き直してしまう

 

「……ごめん。聞き間違いかもしれないから、もう一回言ってくれるか?」

「私はスバルくんのこと好きです。私と付き合ってください。」

「……」

 

聞き間違いじゃなかった。いや。聞き間違いであって欲しかった。

というよりも脳が追いつかない。ここは通学路であり、多くの学生や同級生がいるところで告白して来たのである。

 

「……えっと言いたいことはいろいろあるのだけど。なんでここで?」

「雫ちゃんがスバルくんのことだから絶対に逃げるだろうって言っていたの。だからこうやって急に告白しないと逃げられるって。」

「……あいつどれだけ俺がひどいやつだと思っていたんだよ。」

「違うの?」

「さすがに気づいているのに目を逸らす真似はしないだろ。さすがにバレバレだったし。」

「…へ?」

 

白崎は驚いたようにしている。

だがこれで攻めるのをやめないどころかより指摘を強める

 

「いや。さすがに幼馴染よりも俺の方を優先しているのはさすがに。」

「うっ!」

「てか、ファミレスで話した時から露骨だったからな。てか俺あそこで香織を切り捨てたような気がするんだけど。」

「それ雫ちゃんからも言われたよ。それ。」

 

少し苦笑している香織だけどそれでも諦めなかったのは香織の美徳だろう。

 

「……でも諦めきれないもん。私はスバルくんのことが好き。」

 

でもその一言は俺でもわかるほど真剣な様子だった。

 

「……知っている。知っているけどなぁ。……はぁもう。プランも全部台無しだよ。」

「……どういう事?」

「……はぁ。そういうところは鈍感なんだなお前。」

 

ジト目で香織を見ると首をかしげる。

まぁ白崎だから仕方ないかと息を吐きため息をつく

 

「……告白俺の方からしたかったんだけど。」

「へ?」

「雫にメールして白崎遅れるって雫にハロウィンパーティーの時連絡送っていたんだよ。……ちゃんと蹴りはつけたかったしハジメからの後押しもあったから。」

 

苦々しく笑う俺にその言葉を理解したのだろう。

少し驚いたようにそして顔を真っ赤にしている白崎。

 

「はぁもう。こんなところになったけど。……俺も白崎のことが好きです。俺と付き合ってください。」

 

シンプルながら簡単な言葉。

でもそれだから真剣にまっすぐな気持ちが伝わると思う

すると涙ながら少し恥ずかしそうに、そして嬉しそうに笑い、

 

「うん。」

 

と満点な笑顔で俺の手に抱きついたのであった。



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