異界の太極 (夜叉烏)
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プロローグ
設定集(海軍)
韓国海軍の艦艇をリストアップしました。新たな艦が登場次第更新していきます。
・馬羅島級強襲揚陸艦
本来であればフリゲート艦、潜水艦各数隻で編成される予定であった韓国海軍であるが、ソ連・中国海軍の黄海・日本海における台頭により、それに対処すべく本格的な外洋艦隊の整備に乗り出した。その一環がこの馬羅島級である。
ベースは日本のいずも型軽空母だが、ウェルドックを備え、米軍のアメリカ級強襲揚陸艦に匹敵する揚陸戦力を抱え込むことができるほか、同級と共通した広大なスクエア型甲板が特徴。
構造物は史実強襲揚陸艦『馬羅島』に酷似している。
本級をベースに設計を拡大し、インド空母『ヴィクラント』級に匹敵する純粋な航空母艦を建造する計画もあったが、必要性に疑問符が残るため、一時計画は中止とされていたが、転移により島国となってしまったこと、後の調査でパーパルディアの竜母やムー、ミリシアル、グラ・バルカス、そしてラヴァーナルが海上航空戦力を保持していることが判明し、それらに対抗するため、本計画の凍結解除も時間の問題といわれる。
《同型艦》:LHP-6111『馬羅島』
LHP-6112『
《搭載機》:AV-22K/MV-22K"オスプレイ"12機
CH-53K 4機
AH-64E/AH-1Z/KUI LAH各種攻撃ヘリコプター 4機
KUI KUH"スリオン"Mk.2 3機
AV-8K 6機
F-35K 最大16機
全長 255メートル
全幅 (最大)32メートル
基準排水量 36570トン
最高速力 30ノット
《武装》:K-VLS×32セル
・K-SAAM"
Mk.49 21連装近SAM×2
K-CIWS 25ミリCIWS×2
K40 40ミリ機関砲RWS×3
K6 12.7ミリ重機関銃×3
・
韓国海軍初のイージスシステム搭載艦。アーレイバーク級がベースとなっているが、艦体規模は同級よりも増大している。韓国以外の西側各国は本級を巡洋艦に分類しており、中国海軍の055型駆逐艦に匹敵する巨躯を持つ。
重武装が特徴で、国産のK-VLSからはSM-6、弾道ミサイル迎撃用のSM-3の他、ESSMをベースに開発したK-SAAM"海弓"短距離艦対空ミサイル、K-ASROK"
対艦ミサイルも国産のSSM-760K"
対潜性能も充実し、フリチョフ・ナンセン級フリゲートが搭載しているコングスベルグ社製のMSI-2005Fを参考に開発したASWCS-Kと、K-ASROK同様国産のK-745"
黄海・日本海では、中国やソ連の原潜を追跡し続けた実績もある。
本級は4隻が建造され、いくら経済的に豊かな韓国といえど、すべてを整備するのは簡単なことではなかったが、アメリカをはじめとした西側各国の資金・技術援助を受け、韓国自身も戦力化に血のにじむような努力を続けたため、史実のような「ただの弾薬庫」、「データリンクできないイージス」などといった烙印は押されていない。
《同型艦》:DDG-991『世宗大王』
DDG-992『
DDG-993『
DDG-994『
全長 173メートル
全幅 21.5メートル
基準排水量 11000トン
最高速力 30ノット
《武装》
Mk.45 62口径5インチ砲×1
K-CIWS 25ミリCIWS×1
Mk.49 21連装近SAM発射器×1
SSM-760K"海星Ⅱ"艦対艦ミサイル4連装発射筒×4
K-VLS:前部72セル 後部48セル
・RIM-156 SM-2ER
・RIM-161 SM-3
・K-SAAM"海弓"短距離艦対空ミサイル
・"天竜"艦対地・対艦巡行ミサイル
・K-ASROK"赤鮫"対潜ミサイル
K-745"青鮫" 345ミリ3連装短魚雷発射管×2
K40 40ミリ機関砲RWS×2
K6 12.7ミリ重機関銃×2
・
KDX-1(全艦退役済み)に続いて送り出した韓国初の艦隊防空艦。前述の艦隊整備計画によって10隻が建造された。
前級と比べ、ステルス性に配慮された設計が特徴。幅広の船体を採用しており、復元性も改善している。MTU社製ディーゼルエンジンを搭載し、最大29ノットの最高速力を発揮したが、後に世宗大王級駆逐艦と共通したゼネラル・エレクトリック社製LM2500ガスタービンエンジン4軸に換装され、速力も向上した。
なお、韓国海軍艦艇で初めて女性用区画が設けられた艦でもある。
次級の世宗大王級駆逐艦ほどではないが、艦隊防空艦としてはそれなりの対空戦闘能力を持ち、汎用性も高く、すべての任務に対抗できるとされ、海軍の期待も高い。
《同型艦》:DDH-975『忠武公李舜臣』
DDH-976『
DDH-977『
DDH-978『
DDH-979『
DDH-980『
DDH-981『
DDH-982『
DDH-983『
DDH-984『
全長 161メートル
全幅 17.1メートル
基準排水量 6500トン
最高速力 32ノット
《武装》
Mk.45 62口径5インチ砲×1
K-CIWS 25ミリCIWS×1
Mk.49 近SAM21連装発射器×1
SSM-760K"海星Ⅱ"4連装発射筒×2
K-VLS:前部48セル 後部16セル
・RIM-156 SM-2ER
・"天竜"艦対地・対艦巡行ミサイル
・K-SAAM"海弓"短距離艦対空ミサイル
・K-ASROK"赤鮫"対潜ミサイル
・K-745"青鮫"345ミリ3連装魚雷発射管×2
・K40 40ミリ機関砲RWS×2
・K6 12.7ミリ重機関銃×2
・仁川級フリゲート
黄海・日本海で多発するゲリラコマンド事案への対処のため、蔚山級、浦項級の置き換えである沿岸警備用の艦艇として建造された。
沿岸防衛が主任務でありながら、5インチ砲や32セルもの国産VLSを装備し、航洋性も悪くないため、しばしば外洋演習にも参加している。
ただし、本級の武装は過剰とされ、6隻が建造されたものの、バッチ2からはVLSの搭載数を削減した大邱級フリゲートが就役し、沿岸警備の主役に取って代わられた。
だが、艦隊随伴艦としてもそこそこの性能を持った本級の出番はまだ失ったとは言い難く、揚陸艦隊の随伴艦として、または小規模艦隊の旗艦として活躍している。
転移後、忠武公李舜臣級よりも安価かつ外洋航行能力も持ち合わせる本級の追加建造が決定した。
《同型艦》:FFG-811『仁川』
FFG-812『
FFG-813『
FFG-814『
FFG-815『
FFG-816『
全長 134メートル
全幅 14.8メートル
基準排水量 3560トン
最高速力 30ノット
《武装》
Mk.45 62口径5インチ砲×1
K-CIWS 25ミリCIWS×1
Mk.49 21連装近SAM発射器×1
SSM-760K"海星Ⅱ"4連装発射器×2
K-VLS 前部32セル
・K-SAAM"海弓"短距離艦対空ミサイル
・K-ASROK"赤鮫"対潜ミサイル
・K-745"青鮫"345ミリ3連装短魚雷発射管×2
・K40 40ミリ機関砲RWS×2
・K6 12.7ミリ重機関銃×2
・
仁川級の代替えとして配備された多目的フリゲート。製造工数が少なく、コストも低く使い勝手も良いため、転移前は台湾やインドネシアなどにも輸出されていた。
外洋航行能力もそれなりに良好なため、揚陸艦を中心とした艦隊にも組み込まれる。
K-VLSを16セル搭載しているため、沿岸警備用としては十分な武装である。
韓国海軍は本級14隻を配備しているが、転移によりこれの需要(主に異世界国家への輸出面)が増えたため、計画は見直しがなされている。
なお、VLSからはK-SAAM、K-ASROKのほか、国産の対戦車・対舟艇ミサイルのK-AGM"
《同型艦》:FFG-817『大邱』
FFG-818『
FFG-819『ソウル』
FFG-820『
FFG-821『
FFG-822『
FFG-823『
FFG-824『
FFG-825『
FFG-826『
FFG-827『
FFG-828『
FFG-829『
FFG-830『
全長 128メートル
全幅 14.5メートル
基準排水量 2950トン
最高速力 30ノット
《武装》
Mk.45 5インチ砲×1
Mk.49 近SAM21連装発射器×1
SSM-760K"海星Ⅱ"4連装発射器×2
K-VLS 前部16セル
・K-SAAM"海弓"短距離艦対空ミサイル
・K-ASROK"赤鮫"対潜ミサイル
・K-AGM"隼"垂直発射型対戦車・対舟艇誘導弾
K40 40ミリ機関砲RWS×2
K6 12.7ミリ重機関銃×2
・犬鷲級コルベット
大鷲型哨戒艇の後継として計画された、高度な戦闘システム、対艦ミサイル兵装、強力な砲熕兵器、ヘリコプター搭載能力を備えた沿岸警備用コルベット艦。
現在は24隻が就役しており、前述の大邱級のように増産が行われている。
転移後はロデ二ウス各国やアルタラス、フェン、ムーへと輸出が実施され、海軍力強化に貢献している。
全長 83メートル
全幅 10.9メートル
基準排水量 1240トン
最高速力 40ノット
《武装》
オート・メラーラ62口径76ミリ砲"スーパーラピッド"×1
SSM-760K"海星Ⅱ"連装発射器×2
Mk.49 近SAM21連装発射器×1
K40 40ミリ機関砲RWS×2
K6 12.7ミリ重機関銃×2
閲覧ありがとうございました。
マジでこんなに要らねぇだろってぐらいの数です。その分転移前のソ連・中国海軍(特に後者)の発展度合いがヤバかった設定です。
よろしければ、ご感想の方をよろしくお願いします。
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設定集(陸軍)
本作の韓国陸軍の装備をリストアップしました
新たな兵器が登場次第、更新していきます。
《携行火器》
・K2C1アサルトライフル
K2小銃のアップグレード版。銃身下部にレールを搭載し、フォアグリップやベレッタGLX-160グレネードランチャーを搭載することができる。
評価が高かったため、前世界では様々な国に輸出されてきたが、転移先でも輸出用武器として製造数を増やしている。
・K12軽機関銃
米国製のM60を置き換えるべく開発、生産された汎用機関銃。車載機銃や陣地防衛に使用される。
・K8狙撃銃
米軍のバレットM95を採用したもの。対北朝鮮では、非装甲車両などに対する狙撃で戦果を上げた。
・K22狙撃銃
ドイツ製H&K MSG90を採用したもの。主に警察で配備されており、特殊部隊御用達装備となっている。
・KATM"隼"対戦車ミサイル
米軍のFGM-148"ジャベリン"やイスラエルのスパイクLRをベースに開発した、赤外線誘導式対戦車ミサイル。
実質歩兵1人でも運用が可能で、K21歩兵戦闘車などにも搭載されている。
《戦闘車両》
・K2戦車
K1戦車の後継として開発された最新鋭車両。
開発当初は50口径135ミリ滑腔砲の搭載を予定していたが、後に日本と共同開発した軽量型の55口径120ミリ滑腔砲となった。
新型複合装甲によって防御力が向上している他、新型C4Iシステムやアクティブ防御システムといったソフト面も強化されている。
北朝鮮陸軍の物量に押され、孤立する事態を考慮し、細かな火器が搭載されている。
陸軍は当初、K1A2とのハイ・ローミックスを予定していたが、ラヴァーナル帝国の存在が伝えられたこともあり、戦車保有数を削減しつつ全車を置き換えるよう計画を修正した。
全長 10.50メートル
車体長 7.64メートル
全幅 3.70メートル
重量 52.5トン
最高速度 (整地)時速75キロ
(不整地)時速52キロ
エンジン MTU MB873 Ka501 ターボチャージドディーゼルエンジン 1500馬力
行動距離 520キロ
《武装》
55口径120ミリ滑腔砲×1
K6 12.7ミリ重機関銃連装アクティブターレット×1
K4 40ミリ自動擲弾銃アクティブターレット×1
K12C1 7.62ミリ同軸機銃×1
KPSAM"神弓"4連装発射器×2
60ミリ多目的弾発射装置×24
・K1A2戦車
電子機器をA1型から一新し、日本の10式戦車2型が装備しているものと同じC4Iを搭載し、情報戦能力が格段に向上。主砲も、日本と共同開発したドイツ製オリジナルの44口径120ミリ滑腔砲よりも17%の軽量化に成功した新型砲を搭載した。また、新型複合装甲の採用により防御力が向上し、なおかつK1A1よりもいくらか軽量化に成功している。
また、砲塔が拡大されたことで設計的余裕と搭載弾薬数が増した。
500両の調達が予定され、開発中であるK2戦車とのハイ・ローミックスを目指している。
ソ連陸軍のT-90、中国陸軍の99式戦車といった東側の主力戦車とも互角に戦えるとも評されているが、ソ連が開発した新型戦車T-14"アルマータ"に対してはやや力不足ではないかとの意見もある。
ただ、アジアでは日本の10式戦車2型と並ぶ最強戦車と自他ともに認めており、軍上層部の期待も高い。
全長 9.71メートル
車体長 7.47メートル
全幅 3.59メートル
重量 49.3トン
最高速度(整地)時速70キロ
(不整地)時速48キロ
エンジン MTU MB871 Ka501 ターボチャージドディーゼルエンジン 1200馬力
行動距離 420キロ
《武装》
44口径120ミリ滑腔砲×1
T75K 20ミリ機関砲RWS×1(後にK6 12.7ミリ重機関銃連装アクティブターレットへ換装)
K12C1同軸機銃×1
・K1A1戦車
韓国の地理的事情に合わせ、米国が設計したK1戦車を近代化改修した型。
主砲はK1から据え置きの105ミリ砲L7であるが、新型砲弾の配備によって120ミリ滑腔砲にも劣らない威力を誇る。
複合装甲の変化はなしだが、爆発反応装甲で車体や砲塔を覆い、TUSKキットを搭載することによって市街戦能力や歩兵携行対戦車兵器に対する防御力が向上した。
後継のK1A2の配備によって姿を消すと思われたが、新世界国家に対する輸出用として生産が再開された。
・K21歩兵戦闘車
北朝鮮が配備しているBMPシリーズを圧倒すべく開発された、韓国国産の歩兵戦闘車。30ミリ弾に耐えうる前面複合装甲と、14.5ミリクラスの重機関銃に耐える側面装甲を備え、K40 70口径40ミリ機関砲を主砲とした強力な車両。
砲塔の両脇には、国産の対戦車ミサイル KATM"
非正規戦が得意であり、米軍のM2"ブラッドレー"などとともに中東へ派遣されたこともある。
全長 6.9メートル
全幅 3.4メートル
重量 25トン
最高速度 (整地)時速70キロ
エンジン D2848LXE ディーゼル・ターボ 750馬力
行動距離 500キロ
《武装》
K40 70口径40ミリ機関砲×1
KATM"狼"対戦車ミサイル発射器×2
K12C1同軸機銃×1
・K808装輪装甲車
韓国企業の四星テックウィン社が開発した8輪兵員輸送車。
バリエーションが多く、6輪型、105ミリ砲搭載戦車駆逐車型、自走対空砲型、30ミリ機関砲+対戦車ミサイル装備無砲塔搭載歩兵戦闘車型、自走迫撃砲型などがある。
渡河能力も付与され、時速12キロ程度の速度で航行することが可能。
米国と同様、今作の韓国は民間人の銃器所持が認められており、それに伴う犯罪が多いため、6輪型の同車両は警察にも配備されている。
全長 8.45メートル
全幅 2.48メートル
重量 15.4トン
最高速度 (整地)時速100キロ
エンジン ダイムラー・ベンツ OM368 ディーゼルエンジン 370馬力
行動距離 890キロ
《武装》
K6 12.7ミリ重機関銃連装アクティブターレット/K4 40ミリ自動擲弾銃×1(通常型)
55口径120ミリ滑降砲×1(戦車駆逐車型)※後に55口径120ミリ滑腔砲に変更
KKCB 30ミリ機関砲×2(自走対空砲型)
K40 40ミリ機関砲+KATM対戦車ミサイル"狼"×2(歩兵戦闘車型)
120ミリ迫撃砲RT×2(自走迫撃砲型)
・K151装甲車
国産の小型軍用SUV。ハンヴィーを参考に開発しており、韓国軍の駐留している場所では必ずといっていいほど見かける車両。
多数のバリエーションがある他、装甲を外した型が民間にも販売されている。
警察の特殊車両としても採用されている。
全長 4.85メートル
全幅 2.20メートル
重量 2.41トン
最高速度 (整地)時速113キロ
エンジン 2L 水冷4サイクル 直列4気筒 DOHC ガソリンエンジン
行動距離 480キロ
《武装》
K6 12.7ミリ重機関銃×1/K4 40ミリ自動擲弾銃×1/KATM"狼"対戦車ミサイル×1
・KAI LAH軽攻撃ヘリコプター
OH-58"カイオワ"をベースに開発された国産ヘリコプター。
12.7ミリ弾に耐えられる外板と風防ガラスを持ち、対戦車ミサイルの運用能力を持つ。
AH-64E"アパッチ"よりも運用コストが安く、円滑な運用ができると期待され、前世界のみならず、新世界でも各国へ輸出されている。
民間用のKAI LUHは警察や消防、司法機関等に採用されている。
全長 12.9メートル
全幅 10.76メートル
全高 2.73メートル
重量 2.95トン
最高速度 時速240キロ
《武装》
M230 30ミリ機関砲×1(機首下面)
KAGM"隼"×4
(追加兵装)
ハイドラ70 ロケット弾ポッド×2
又はK4 40ミリ自動擲弾銃×2
又はGAU-19B 12.7ミリガトリング砲×2
又はM134ミニガン×2
閲覧ありがとうございました。
K1A2戦車ですが、単純な性能は米軍のM1A1戦車を上回り、M1A2 SEP2とほぼ同じくらいです。
今作の韓国は、まともで高性能なミサイルや戦闘車両、航空機などを一から国産で作れる程度の技術力がある、という設定です。
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設定集(空軍)
久しぶりにこちらの設定集を投稿します。
本作の韓国は史実日本に匹敵かやや劣る程度の技術力です。
・F-15K
アメリカから輸入したF-15Eに独自のアビオニクスシステムを搭載し、対艦攻撃能力を付与した機体。
F-14のマルチロールタイプとの採用争いに勝利し、改良を重ねながら、長年韓国空軍主力戦闘機の地位にいる。
最大11トンの兵器搭載能力は第二次朝鮮戦争で存分に発揮されたが、対艦ミサイル4発も装備可能な本機は、ソ連や中国の艦隊に対しても有効だと考えられる。
また、空対空ミサイルを最大18発搭載することも可能で、空域制圧能力も群を抜いている。
さらに、固定武装をF-35などが搭載するGAU-22Aに換装し、主翼下にも同砲のガンポッドを装備できるため、地上支援にも威力を発揮する。
60機を保有しているが、ソ中との戦争を見越し、さらに60機の量産が予定された。しかし転移後、ラヴァーナル帝国の存在を知った空軍が、同機の追加調達を申請しており、これが受理されれば倍の120機に増加する予定。
全長 19.44メートル
全幅 13.05メートル
全高 5.63メートル
全備重量 36.74トン
<武装>
GAU-22A 25ミリバルカン砲×1
AIM-120 AMRAAM
AIM-9X "サイドワインダー"
AGM-290K"
ASM-730K"
LRASM-B空対地/対艦ミサイル
Mk82 500ポンド爆弾
Mk83 1000ポンド爆弾
Mk84 2000ポンド爆弾
GAU-22Aガンポッド
・KF-16E
KF-16の後継として米国から購入する予定だったF-16Vの代わりに、既存のKF-16を韓国が独自改修した機体。
同機のアビオニクスを最新のものへ換装したほか、日本のF-2戦闘機を見習い、対艦ミサイル4発の搭載能力も追加された。
F-35K、F-15Kと弾薬の共通化も実施され、固定武装がGAU-12A 25ミリバルカン砲に変更されている。
250機を保有しており、数の上では主力となっている。
全長 15.03メートル
全幅 9.45メートル
全高 5.09メートル
全備重量 20.86トン
<武装>
GAU-22A 25ミリバルカン砲×1
AIM-120 AMRAAM
AIM-9X"サイドワインダー"
AGM-290K"若鷹"空対地ミサイル
ASM-730K"白星"空対艦ミサイル
LRASM-B空対地/対艦ミサイル
Mk82 500ポンド爆弾
Mk83 1000ポンド爆弾
Mk84 2000ポンド爆弾
ハイドラ70 ロケット弾ポッド
・FA-50戦闘攻撃機
米国のロッキード・マーティンから支援を受け、国内で開発した練習機T-50に、兵器搭載能力を付与した戦闘攻撃機。
初期型はAIM-7"スパロー"などを装備していたが、近代化改修によりAIM-9X"サイドワインダー"、AIM-120 AMRAAMの運用能力が追加された。そのほか、空対艦/対地ミサイル、誘導爆弾の搭載も可能である。
コストパフォーマンスに優れ、数が揃え易く、アビオニクスシステム面では北朝鮮のMig-21といった機体に優越していたため、第二次朝鮮戦争でも活躍している他、輸出用戦闘機としてインドネシアやタイ、バングラディシュ、チリなどに売却された。
北朝鮮との戦闘が終わり、ソ中の戦闘機では分が悪いと判断された本機は、すべて練習機として余生を過ごすか、途上国への輸出などで空軍の表舞台から姿を消すと思われていたが、新世界の文明圏外国家への輸出などで再生産が行われることとなる。
全長 12.98メートル
全幅 9.17メートル
全高 4.78メートル
全備重量 11.98トン
<武装>
GAU-22A 25ミリバルカン砲×1
AIM-120 AMRAAM
AIM-9X"サイドワインダー"
AGM-290K"若鷹"空対地ミサイル
ASM-730K"白星"空対艦ミサイル
Mk82 500ポンド爆弾
Mk83 1000ポンド爆弾
ハイドラ70 ロケット弾ポッド
・F-35K
米国が開発したF-35戦闘機を日本とともに改良・発展させた型。
A型の空戦性能をそのままに、B型のVTOL機能も持たせている他、固定武装のGAU-22A 25ミリバルカン砲が標準装備となっている。
共同開発国の日本、イギリス、イタリアをはじめとしたF-35装備国、開発国のアメリカも本機に興味を抱いており、『F-35D』の名称で採用されるに至っている。
有力なステルス戦闘機多数を保有するソ中に対抗するべく、国産ステルス戦闘機『KFX』も配備しなくてはならないため、海兵隊や揚陸艦隊に優先して配備される予定。
全長 15.67メートル
全幅 10.67メートル
全高 4.39メートル
全備重量 31.75トン
<武装>
GAU-22A 25ミリバルカン砲×1
AIM-120 AMRAAM
AIM-9X"サイドワインダー"
AGM-290K"若鷹"空対地ミサイル
ASM-730K"白星"空対艦ミサイル
Mk82 500ポンド爆弾
Mk83 1000ポンド爆弾
MK84 2000ポンド爆
・KAI KUH-2"スリオンMk.2"
欧州企業から技術支援を受け、KAI社が開発した多用途ヘリコプター。米国製のUH-1の代替えとして配備された。空軍では主に災害派遣やパイロット救助のために、海軍では対潜警戒用の艦載ヘリとして、陸軍では特殊部隊や兵員輸送用として配備されているが、警察や消防、法執行機関向けなど、民間にも多く出回っている。
軍用の型にはUH-1にて使用実績のあるM21サブシステムの取り付けも可能で、機体外板とコクピット付近は50口径弾に耐えうる防御力を持つため、簡易的な攻撃ヘリとしても用いられる。
初期型のKUH-1"スリオン"は、機体フレームの亀裂問題などといった事故が多発し、運用に耐えられない状態だったが、改良を重ね、第二次朝鮮戦争終結間際にようやく満足のいく性能を持った本機が完成した。
全長 19.0メートル
全幅 13.80メートル
全高 4.50メートル
全備重量 8.71トン
<武装>
固有武装なし
(追加武装)
K6 12.7ミリ重機関銃×2
GAU-19 12.7ミリガトリング砲×2
K12 軽機関銃×2
K4 40ミリ自動擲弾銃×2
AGM-210"隼"対戦車・舟艇誘導弾×2
(M21 サブシステム)
M134 ミニガン×2
GAU-19 12.7ミリガトリング砲×2
ハイドラ70ロケット弾ポッド×2
閲覧ありがとうございました。
新しい兵器が登場次第更新していきますので、設定集はこまめに見直していただければと思います。
よろしければ、ご感想の方をよろしくお願いします。
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同族争い(前編)
初めましての方は初めましてです。
初めての二次創作投稿からそこそこ経ちましたが、魅力に取りつかれたので、アズールレーンとのクロス以前に構想していた、韓国召喚ものを書いていこうと思います。
よろしくお願いします。
「はぁ・・・。退屈だなぁ・・・」
国境の監視を担当する韓国陸軍の大尉は、いつ見ても変わらない景色に辟易し、欠伸を噛み殺しながら呟いた。
現在アメリカ、日本、韓国、オーストラリア、EUをはじめとした西側諸国、ソビエト社会主義共和国、中華人民共和国をはじめとした東側諸国の関係が、戦後最悪と言われるまでに悪化している。
外洋演習を行っていたアメリカ海軍の駆逐艦を、中国海軍のフリゲートが付け狙ったり、日本の哨戒機にソ連の戦闘機――Su-27やSu-35などが異常接近したりなどは日常茶飯事で、EUとの国境に陣取るソ連陸軍の戦車部隊があからさまに主砲を向けたり、中国海軍のミサイル駆逐艦が台湾海軍のフリゲートと衝突寸前まで近づいたりしたこともあるのだ。
このような対立関係は、2020年になった今も続いている。兵器の生産や開発も進み、双方の主要国家は核兵器を搭載した弾道ミサイルを突き付け合っているのだ。
そして、韓国の北側には同国が現在最も警戒している国家――朝鮮民主主義人民共和国がある。第二次大戦後に国が分裂し、それから間もなく発生した朝鮮戦争で、自分たちの先祖と凄惨な殺し合いを演じた国だ。
勇戦虚しくソウルが堕ち、釜山にまで追い詰められた当時の彼らは、アメリカ、日本、イギリスから派遣された軍の助けも借り、何とか現在の国境線までに狂人たちを押し戻したのだ。
休戦してからというもの、西側諸国の王者ともいうべきアメリカや、戦前から技術と資金を与え、朝鮮の近代化に多大な貢献をしてくれた日本――この世界では、日本と韓国は政治的にも国民感情的にも親しい仲である――などと積極的な技術・軍事交流を行い、工業の発展と基礎技術を養い、物品開発・生産のノウハウを学んだものだ。
そのお陰か、韓国産の製品は東南アジアなどの発展途上国で飛ぶように売れ、さながら「西側の中国」ともいうべき存在となっていた。高価な米国製、日本製品には性能で若干負けても、その分低価格で購入できる韓国製品は、経済的に厳しいものがある国には最適だったのだ。
また軍事面でも、韓国製のK1戦車、大邱級フリゲート、F/A-50戦闘攻撃機といった兵器がそういった国々の目に留まり、導入されていった。
だがソ連や中国は、この動きを黙って見過ごすわけにはいかなかった。西側の小国が強化されれば、その分世界制覇のための障害が多くなる。
そこで両国は、北朝鮮へと話を持ち掛けた。
密かに武器の輸出を行い、同国を強化するその対価として、西側の兵器生産国の一角を堕としてほしい、と遠回しに要請したのだ。堕とした韓国をどうするかはすべてそちらに任せる、という言葉も添えて。――無論韓国をはじめとした西側には知る由もなかったが。
それでも、西側各国の軍事衛星や諜報員の情報で、ソ連製の"イスカンデル"に酷似した弾道ミサイルの存在や、96式戦車と思われる中国製戦車の存在も認められている。
同国が二国の支援の下、何かしらの行動を起こそうとしているのは明らかであり、大統領イ・スンナムの指示の下、韓国も軍事産業に力を注ぎ始め、巡行ミサイル「玄武―3C」の配備を推し進め、K1A1戦車の性能向上型であるA2型の生産を始めるとともに、後継のK2戦車の研究もスタートした。
空軍でも、F-15Kの調達数を現行の60機から80機へと増加させること、米国へ対し、F-35A/B、F-16V、戦闘ヘリコプターであるAH-64Eの購入を打診する一方、日本海を挟んだ友好国――日本と共同で研究しているステルス戦闘機の開発を早めるよう指示が出された。
北朝鮮との戦いでは海戦は生起しないと思われるため、海軍の予算も一部回され、陸空の装備を強化していったのだ。
また、仮に北朝鮮に勝利を収めたとしても、ソ連と中国が黙ってはいないだろう。北朝鮮とは比較にならないほどの軍事力を誇る国家だ。ことを構えることになれば、北朝鮮相手には過剰と思われるステルス機や新鋭戦車を配備することも自明だ。
――話を戻そう。
とはいえ、北朝鮮が何らアクションをとることもなく、彼は退屈な任務を遂行しているのだった。
国境線の向こう側を見ても、陣地の中で一見時代遅れに見える軍服を身に纏い、直立不動で立ち続ける北朝鮮陸軍の兵士がいるだけだ。彼らは常にポーカーフェイスであり、心中で何を考えているのかは分からない。手を振ってみたこともあるが、そんな動きも目に入ってないようだ。
・・・今日ばかりは、数時間前に北朝鮮側の兵士たちが急に見えなくなったのが気がかりだった。一応本部へと連絡したが、厳戒態勢のまま待機することと、こちらに増援を向かわせる旨を伝えてきた。
何か、途轍もなく嫌な予感がする。
そう思った瞬間、何かが空を切る音が聞こえてきた。それに声を上げる暇もなく、陣地内に爆炎が沸き、大量の土煙を噴き上げた。地面に伏せた彼や他の兵士の頭上に、大量の土砂が降りかかる。
タイミングから考えて、北朝鮮が誇る自走砲――M1989 170ミリ自走カノン砲の砲撃に違いない。
1950年の朝鮮戦争から70年の時を経て、再び同族争いの火蓋が切られた瞬間だった。
すぐさま無線機へ手を掛けると、早口で師団司令部へと報告した。
「こちら
『こちら司令部!了解した!撤退を許可する!』
要請が受け入れられるや、彼は地面に落としたK2C1――K11小銃の開発失敗を受け、K2小銃の能力向上型として新たに配備された小銃を拾い上げると、部下へ撤退の指示を出す。
後方からやってきたK808装輪装甲車へ部下を乗り込ませ、自らも続く。
弾着の火柱が上がる中、彼が搭乗したK808は撤退を続けているが、果たして無事にこの窮地を抜け出せるかどうかは、まだわからなかった。
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ソウルは、地獄絵図と化していた。
国境の向こう側から撃ち込まれる170ミリ榴弾が道路をえぐり、ビルに直撃したそれが、大量のガラスとコンクリート片を地面へと降り注がせる。
多くの民間人がパニックを起こし、市外へ逃れようとする人の波が形成されるが、その集団の中にも容赦なく榴弾が落下し、韓国人や少数の海外観光客の区別なく殺傷していく。
大統領は軍の装甲車やトラック、民間のそれを可能な限りかき集め、命からがらソウル郊外へと避難した民間人を、可及的速やかに第二都市である釜山へと脱出させるように指示した。
南北朝鮮が交戦を開始したという知らせはすぐさま日米へと伝わり、自国民救出のため軍の派遣が決定される中、一番早く動いたのはアメリカだ。
在韓米軍にアメリカ人観光客の避難を行わせるとともに、すぐさま部隊を韓国軍の掩護へ向かわせるように通達する。韓国国内の滑走路からAMRAAMやMk82 500ポンド爆弾を満載したF-16、F-35Aが発進すると同時に、日本海へ展開していた空母打撃群から発艦したF-14E"スーパートムキャット"戦闘攻撃機も合流し、韓国空軍のF-15K、KF-16とともに北朝鮮空軍に立ち向かっていく。
日本も揚陸艦2、イージス護衛艦2、護衛艦4、補給艦2の艦隊を派遣し、釜山の港へ着くや否や、大中小問わない73式トラック、12.7ミリ機銃RWSと爆発反応装甲を装備した10式戦車などを降ろしていく。
多数の73式で邦人の救出にあたる傍ら、韓国陸軍、在韓米陸軍と共同で北朝鮮の戦車部隊へ対処するのだ。10式の性能評価も行いたいという、防衛省の思惑も含まれているのだが。
釜山市民や、ソウル、仁川といった都市から避難してきた韓国民、避難誘導にあたっていた韓国軍将兵たちの間から歓声が上がり、友好国の兵士――正確には自衛隊員――と最新鋭戦車の雄姿に手を振っていた。
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同じ頃、山岳地帯へ築かれた陣地で、韓国陸軍と在韓米軍の部隊は数で押してくる北朝鮮陸軍を共同で迎え撃っていた。
後方に陣取るK9自走榴弾砲"雷鳴"、M109"パラディン"自走榴弾砲から放たれる155ミリ砲弾が地面を敵兵ごと耕し、M207A1自走ロケット砲、K-139 130ミリ自走ロケット砲"九龍"の遠距離砲撃が着弾していくが、彼らの突撃は止まらない。
ダック・インしたK1A1、M1A1"エイブラムス"が51口径105ミリライフル砲、44口径120ミリ滑腔砲よりAPFSDS弾を放ち、"暴風号"・"天馬号"戦車を貫き、キャニスター弾が歩兵を穴だらけにする。
戦車の陰へ隠れるM2"ブラッドレー" 、K21歩兵戦闘車の25ミリ弾、40ミリ弾の射撃や、TOW対戦車ミサイル、KATM"狼"もそれらに加わり、車両や歩兵を沈黙させていくが、数が全く減らない。
「くそ!こいつら、死に場所を求めてきてるってか!?」
韓国陸軍首都防衛師団の戦車部隊に所属するK1A1戦車長の1人が悪態をつく。
既に攻防戦が始まってから2時間が経過しているが、状況は全く変わっていない。多数の戦車や歩兵を失っていると思われるが、相手はそれを感じさせない量の兵力を送ってきている。
航空支援が欲しいところだが、味方のF-35、F-16といった機体は敵の航空隊との戦闘に忙殺されている。
機体の性能は米韓側が遥かに優越しているが、何分数が多い。
相手はMig-21やMig-23といった骨董品にも等しい機体だが、1機の米韓機に複数で群がり、対空ミサイルや機関砲弾を浴びせている。
このような乱戦の中で戦闘ヘリやCOIN機を出せば、空中戦に巻き込まれ、ひとたまりもなく撃墜されるだろう。
敵側の航空支援も、空軍機の奮戦やK30 30ミリ自走機関砲の射撃、KSAM自走地対空ミサイル"天馬"、KPSAM携帯防空ミサイル"神弓"を持った随伴歩兵が見事な対空戦闘を演じ、Su-25KであれMi-24"ハインド"であれ叩き落しているため、頭上の心配をする必要はなさそうだが。
K1A1の砲塔正面を直撃した125ミリ砲弾が車体を揺らすが、機器に異常はない。彼の戦車は、十分に戦闘能力を残している。お返しに105ミリAPFSDSを"天馬号"へと叩き込む。
随伴歩兵もK2C1、K3分隊支援火器を撃ちまくり、突撃してくる狂人たちを撃ち倒していく。
米軍も、同盟国に負けてはならぬとばかりに射撃を行う。
M1A1の主砲が敵兵を吹き飛ばし、RWSや同軸機銃が薙ぎ払う。
ジャベリン対戦車ミサイルを扱う兵士が、目標とした"暴風号"に一撃をお見舞いし、擱座させていく。
『こちら司令部。敵航空戦力の撃滅を確認。これより航空支援を行うとのことだ!皆、あと少しだけ耐えてくれ!』
その報告が全部隊に伝わるや、米韓問わず兵士たちの間で歓声が爆発し、士気がうなぎ上りとなった。
やがて敵の航空機が消え、味方機が支配する空に新たな機体が登場する。
韓国空軍が世界に誇るF-15Kが、Mk82 500ポンド爆弾を満載した状態で戦場へと到着したのだ。米韓合同軍の上空をフライパスし、腹に抱えた大量の爆弾を送り届けるべく突進していく。
敵の地上部隊に随伴していた9K35対空ミサイル車両やZSU-23-4"シルカ"が、新たな脅威に対しその矛先を向けるが、そうはさせじとK1A1、M1A1がAPFSDSを叩き込み、自走榴弾砲の砲撃に文字通り叩き潰される。
9K310携帯防空ミサイルを持った歩兵をK2C1小銃の射撃が撃ち抜き、味方機への妨害を許さない。
やがて、上空のF-15Kから無数の黒い物体が分離した。面制圧効果を狙って投下された200発以上のMk82 500ポンド爆弾が、敵部隊全域へ降り注ぐ。爆炎とともに発生したどす黒い煙が、米韓連合の視界を遮った。
黒煙が晴れたときには、黒煙を噴き上げた車両が停止したまま残り、倒れたまま動かない兵士たちが横たわっていた。
生き残りの車両や兵士は、突然の大量破壊に怖気づいたのか、進撃速度が低下している。それでもまだ突っ込んでくるあたり、諦める気はないようだ。
だが、彼らに降り注ぐ悪夢はまだまだこれからだ。
在韓米空軍のF-16、F-35A、日本海に展開する空母『カールビンソン』から発艦したF/A-18F戦闘攻撃機、韓国空軍のF/A-50戦闘攻撃機が爆撃を行い、まともな対空兵器を失った北朝鮮陸軍に爆弾の雨を降らせる。
再び爆炎が沸き、履帯と思われる曲がりくねった物体や兵の惨死体が舞い上がり、吹き上がった土砂の下へ埋葬していく。その直後に砲兵隊の長距離砲撃も着弾したが、その痕跡も、空爆の爆弾孔に埋もれてしまった。
統率を失った部隊へ、最後の仕上げが行われる。
米韓が装備するAH-64E戦闘ヘリが、右往左往する北朝鮮兵に70ミリロケット弾と20ミリ弾、30ミリ弾を浴びせる。
密集地帯に叩き込まれたロケット弾が複数の敵兵を吹き飛ばし、機関砲弾を喰らった兵士が文字通り消える。
ヘリに対し、AK-47自動小銃を撃ちまくる勇敢な兵もいるが、防弾素材ケブラーを埋め込んだAH-1も、主要部は23ミリクラスの機関砲弾に耐えうる防御力を持つAH-64Eも、何事もなかったかのように掃討を続けていく。
やがて、敵方から曵痕弾が飛んでこなくなった。
そこには、文字通り最後の一兵まで戦い、指導者に忠誠を誓いながら死んでいった狂人たちの凄絶な墓場があるだけだった。
『どうやら勝ったぞ!』
司令部からの無線が、全部隊へと流れた。
それを聞いた兵士全員の間で歓声が爆発し、韓国兵・アメリカ兵問わず、近場にいた兵と抱き合った。戦車の上で子供のように飛び跳ねる強面の男もいる。
2種類の言語で喜びの言葉が唱和し、煤煙にけぶる荒地に響き渡っていた。
閲覧ありがとうございます。
韓国軍の兵器はかっこいいのに、故障とかが多くてもったいないなぁ。どうにかして活躍させてあげたい、と思ったのが投稿のきっかけです。
政治的な描写などに自信はありませんが、これから頑張って書いていきたいと思います。
よろしくお願いします。
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同族争い(後編)
最近教習所に行き初めまして、連載中の両作品とも執筆に時間がかかりました。
人生で初めて自分で車を運転しましたが、意外と楽しいですね。でもアクセルとブレーキが意外と敏感だった・・・。
臨津江の防衛線では、航空支援へ駆けつけた韓国空軍のF-35KやF-15K、KF-16の編隊へ、航空自衛隊のF-15J、同EJが加わり、制空戦闘や対地攻撃を共同で実施し、敵の撃退へ一役買っている。
防衛戦に圧倒的な勝利を収めた日米韓連合軍は、十分すぎるほどの航空支援を受けつつ、北朝鮮へ逆侵攻を開始。上空は西側の最新鋭機体が支配し、Mig-21、Mig-23といった旧式機を排除していく。
中には、精鋭部隊の装備機であるMig-29B、ソ連からの軍事援助物資に含まれていたらしいSu-27といった機体が上がっていたが、数は少数かつ日米韓のパイロットからすれば低練度の者たちばかりであったため、質を伴った数の暴力ですべてを押しつぶした。
米軍に関してはF-22A"ラプター"をも投入し、本国仕様に遠く及ばないモンキーモデルの機体を文字通り蹂躙していった。
制空権を確保するや、各国のF-35、F-15、F-16に加え、グアムから発進した米軍のB-1Bが北朝鮮の各都市へ爆撃を敢行する。軍事施設のみならず、民間の都市でさえもだ。
逆侵攻作戦開始後、
全人民へ武器が持たされ、最後の一兵まで戦うようにとの命令が指導者の名前で発せられていることを知った連合軍は、この自国民の根こそぎ動員を見て、北朝鮮民は全員が戦闘員としてこちらを迎え撃つ準備を行っていると判断。
味方の被害軽減のため、断腸の思いで民間区域への無差別爆撃を許可したのだ。
北朝鮮の指導者は、連合軍の縛りを無意識に解いてしまったのだった。
各都市を順に制圧しながら、開戦から33時間後、ついに北朝鮮の首都平壌へ、日米韓の戦車大隊および歩兵連隊が到達したのだった。
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遠巻きに見える平壌の街並みへ、三か国の軍人たちは意外そうな視線を向けていた。
彼らの平壌のイメージは、平屋か二階建ての一軒家ばかりで、ビルはあれど、高いものでも全高50メートルを超えることはない。娯楽施設などは皆無に等しく、前時代的な生活――侍の時代だった日本の平民のように農業を行っている、というものだった。
だが、彼らの目の前には、最低でも100メートルを超える高層ビルやマンション、アパートが建ち並んでいる。
ニューヨークや東京、ソウルといった都市と肩を並べられるかもしれない、近代的な都市の姿がそこにあった。最初に抱いていたイメージとは全く違う平壌の街並みに、僅かな驚きの表情を浮かべていた。
ここまで、ゲリラ化した敵兵や北朝鮮国民の襲撃を幾度となく受けたが、戦車の火力と防御力にものを言わせて突破してきた。
彼らは非常に勇敢であり、自らの君主へ対する忠誠を叫びながら連合軍へと突進してきたのだが、そういった者たちは、優れた銃器を持つ連合軍にとっていい的だ。彼らの武器の射程に入る前に、戦車砲の砲撃が薙ぎ払い、歩兵の銃火に刈り取られていった。
『ハットグよりチーズ。前方より敵戦車部隊接近。規模は大隊程度と思われる。車種は96式、およびT-72』
「・・・ちっ!あいつら、余計なものを渡してくれたな!」
上空警戒を務める韓国陸軍のUH-60の報告を聞き、新鋭のK1A2の車長席に座る将校の1人が毒づいた。
目の前に出現したのは、中国製、ソ連製の戦車だ。いずれも後継戦車の配備等で余剰が生じたものを、北朝鮮へと輸出したものだろう。
モンキーモデルのそれらであればこのK1A2の敵ではないし、同盟が持ち込んだM1A2 SEPV6戦車、10式戦車2型と協力すれば、十分対抗できる。
車内へ滑り込み、A1から一新されたC4Iを起動し、味方戦車とのデータリンクを行う。
中央を米陸軍、左翼を日本国陸上自衛隊、右翼を韓国陸軍の各戦車大隊が固め、その後ろに三国の歩兵連隊が続く。
数分後、敵影が見え始めた。報告通り、元の形状が分からないまでに爆発反応装甲で覆われたT-72と、レオパルト2A5を思わせる楔形砲塔が特徴的な96式戦車だ。
125ミリ滑腔砲の砲身を振り立て、こちらへと突進してくる。
『各個に自由射撃!味方との目標重複に注意しろ!』
三国陸軍戦車大隊を取り仕切るグレゴリー・キャメル大佐の命令が、全戦車の車内へと響き渡る。
「砲撃始め!」
K1A2の44口径120ミリ滑腔砲――日本との共同開発によって生まれ、ドイツ製のオリジナルよりも17%の軽量化に成功した――が火を噴き、放たれた
爆発は起こらなかったが、命中した瞬間には完全に動きを止め、沈黙した。
別の96式には、砲塔と車体の継ぎ目にAPFSDSを叩き込まれる。
車内で飛び散った侵徹体が弾薬庫を直撃したのか、巨大な爆炎とともに砲塔が外れて吹っ飛んだ。
陸自の10式戦車2型は、T-72に集中して攻撃を行う。時速70キロの最高速度で突っ走り、正確無比なスラローム射撃を送り込む。
K1A2のものと共通した44口径120ミリ滑腔砲から放たれるAPFSDSが爆発反応装甲の隙間を縫い、砲塔正面へと突き刺さるや、弾薬を貫いたらしく、先の96式と同じ運命を辿った。
続けて、その隣のT-72へ射弾が叩き込まれる。砲塔正面を突き破った侵徹体が再び弾薬を直撃し、爆炎が沸き立つとともに、砲塔が首をはねられたように宙を舞う。
連合戦車大隊の中央を固めるM1A2 SEPV6には、大多数の125ミリ砲弾が飛来してくるが、砲塔正面、車体正面の複合装甲も、主砲塔の天蓋へ設けられた25ミリ機関砲2基を納めた副砲塔のそれも、それらを難なく跳ね返す。
自身の被弾を尻目に、巨大な砲塔から突き出る55口径120ミリ滑腔砲からAPFSDSを撃ちだし、片っ端から擱座させていく。
副砲塔からも25ミリ砲弾が放たれ、歩兵を肉塊と変え、BMP-2と思われる装甲戦闘車を炎上させていく。
大戦後初めて米陸軍へ採用された多砲塔戦車であるが、戦車と装甲車、歩兵を複数の兵装を用いることで同時に相手する様は、千手観音を思わせた。
だが、敵も一方的にやられているばかりではない。
125ミリ砲弾を20発ほど叩き込まれたM1A2が、戦闘能力に異常を来したのか後退し、戦場より離脱していく。
別の車両が履帯を切断され、動きが止まるが、そのまま固定砲台となって砲撃を続ける。
スラローム射撃を行いながら爆走していた10式の砲塔正面に、5発が連続で直撃する。爆発光とともに何かの破片が飛び散り、白煙に覆われた。旋回装置が破壊された10式が発煙弾をばら撒き、高速でバックしていく。
戦果を焦って突出したK1A2が、複数の車両から射弾を集中される。
砲塔正面や車体正面に複数の125ミリ弾が着弾し、大量の破片が飛び散った。
動きを止めた車両から戦車兵が脱出し、カービンタイプのK2C1を構えながら味方陣地へと撤退していく。
だが、戦況は圧倒的に連合側が有利だ。東側諸国の輸出用戦車を次々と火だるまへ変え、乗員諸共火葬していく。
随伴歩兵たちも、歩兵戦闘車と共同して敵兵の掃討にあたり、味方戦車大隊を積極的に援護していく。
自動小銃、分隊支援火器を持った歩兵たちが戦車と歩兵を切り離しているうちに、カールグスタフM3を構えた韓国兵が、96式へと対戦車榴弾を叩き込む。
だが、爆発反応装甲によって阻まれ、撃破するまではいかない。すぐさまその場所から逃れ、着弾する榴弾から逃れた。
カールグスタフを持った歩兵は、戦車に対し自分たちは威力不足だと判断し、敵部隊の側面や後方に回り込みつつ、装甲車や歩兵に集中して攻撃を加えていく。
戦車隊の後方へ控えるK21歩兵戦闘車が、KATM対戦車誘導弾を発射し、T-72の砲塔を吹き飛ばす。
M2A2ブラッドレーからもヘルファイア対戦車誘導弾、89式装甲戦闘車も79式対舟艇対戦車誘導弾を続けざまに放ち、96式、T-72を射すくめていく。
戦車戦も間もなくたけなわになる、といったところで、連合軍の戦闘ヘリ部隊が到着する。
AH-64Eの編隊が低空へ舞い降り、KAGM"隼"やヘルファイア対戦車ミサイルを叩き込み、M230 30ミリ機関砲を射撃する。
まともな対空兵器を失った北朝鮮側にはなすすべなく、上方からのミサイル攻撃により爆散し、30ミリ弾の雨に天蓋を撃ち抜かれ、搭乗員が殺傷されていく。
北朝鮮陸軍の首都防衛戦車大隊は日米韓の機甲師団に粉砕され、各地の部隊も退路を断たれた挙句、悉く壊滅した。
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味方戦車部隊が平壌市外で北朝鮮戦車大隊と渡り合っている間に、北朝鮮国内で唯一街としての外見を保っている平壌で、連合軍歩兵連隊と武装した民間人を含む北朝鮮陸軍が、市街戦を演じていた。
アパートやビルから火箭が撃ちおろされ、通りに設置したZU-23-2 23ミリ連装機関砲、ZPU-2 14.5ミリ連装機銃の待ち伏せにより少なからぬ歩兵が犠牲になりつつも、建物や瓦礫を盾に、小銃を構え応戦する。
カールグスタフを構える歩兵が榴弾を放ち、銃口が突き出た2階の窓を、周囲の壁ごと吹き飛ばす。
フレッシェット弾が無数の小弾をまき散らし、歩兵を穴だらけにしていく。
携帯していた60ミリ迫撃砲から放たれた榴弾が、水平射撃を行っていた対空機関砲を叩き潰し、障害物の後ろへ隠れる兵を爆風で吹き飛ばす。
小銃に取り付けたGLX-160グレネードランチャーの榴弾が窓から室内へ飛び込み、炸裂する。
室内戦を展開しようと飛び込んでくるであろう連合軍兵を倒すべく、農具を持っていた民兵が吹き飛ばされ、倒れ伏す。
地の利を生かした戦闘を展開する敵の前に戦線の膠着を余儀なくされたが、敵戦車部隊の側面を迂回してきた韓国陸軍のK808装輪戦闘車――K808装輪装甲車のシャーシをベースに、ストライカーMGSのそれに似たように51口径105ミリライフル砲を搭載したもの――が到着し、小銃弾や機関砲弾を跳ね返しながら突進し、榴弾を放つ。
敵兵が隠れる建物が爆炎と土煙を上げながら倒壊し、軍人も民兵もひとしなみに生き埋めにしていく。
水平射撃を行う23ミリ機関砲にも砲撃が浴びせられる。至近距離に着弾した榴弾が、砲本体も操作員も吹き飛ばしていく。
米軍のM1128ストライカーMGS、陸自の16式機動戦闘車、そして北朝鮮戦車部隊を蹴散らした各国戦車大隊もそれに加わり、戦線を押し上げる。
廃墟に隠れた兵がRPG-7を放つが、各車両に取り付けられた爆発反応装甲がそれを防ぎ、逆に発射位置を特定した戦車が120ミリ砲弾を発射し粉砕する。
後方に陣取るM270やHIMAAS、K139などのロケット車両、M109、99式、K9といった自走榴弾砲の攻撃が、いまだ抵抗を続ける敵部隊の後方へと降り注ぎ、なけなしの車両や弾薬、そして歩兵を吹き飛ばしていく。
全高100メートルを超えるビルにも無数の榴弾が着弾し、その内部や直下に立てこもる者たちを巻き込みながら倒壊する。
その間にも、連合軍歩兵は市街戦を繰り広げ、一軒家からビルの一室に至るまでを掃討していく。
敵の中にはやはり民間人が紛れ込んでいたが、その全員が農具や包丁、挙句の果てには木の棒の先端を鋭く尖らせた急ごしらえの槍や石しか持っていない。
もちろんそのようなものでやられる兵はいない。自国民にまで戦うことを指示する北朝鮮の指導者や、普段であれば絶対に撃ってはいけない民間人に対して発砲しなければならない現実に怒りを覚えながら、効率的に射殺し、銃剣やナイフで斬り伏せる。
――市街戦は連合軍の圧倒的勝利で終わり、北朝鮮の軍官民に立っている者は一人もいない。無論捕虜もいない。
意外な発展を見せていた平壌の街並みも、砲爆撃によって壊滅し、文字通り更地と化していた。
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――いまだに降伏を受け入れない指導者に対し、これ以上の戦闘はソ連および中国の介入を招きかねないと判断した連合軍司令部は、最終手段に打って出た。
平壌の失陥を受け、首都兼司令部が移転された江界に対し、グアムから発進したB-1Bの編隊が、バンカーバスターによる爆撃を実施したのだ。
地下司令部へと籠り、徹底抗戦を命じていた指導者とその側近たちは、安全だと信じていた地下壕の中で、永遠の眠りにつくこととなった。
通常爆弾による絨毯爆撃も行われ、工業地帯も、民間区域もまとめて吹き飛ばされた。
これにより、北朝鮮の都市はすべて焼け野原となったが、それを復旧する力など残っていない。
指導者の死亡を知らず、最後まで戦い抜こうと意気込んだ軍人や民兵も、この爆撃によりほとんどが戦死の末路を辿った。
僅かな生き残りはいたが、生活基盤が軒並み消滅した国内には、まともに暮らせる場所などあるわけがない。
彼らはこのような状況でも協力し合うことなど一切せず、無学・無教育な国民たちは、自らがどう生き延びるかだけを考えていた。
建国から72年を数える朝鮮民主主義共和国は急速に衰退し、歴史の表舞台から消え去るのも、そう遠いことではないと思われた。
閲覧ありがとうございました。
あと一つプロローグを書いたら本編に行くつもりです。
また、作者が韓国艦艇大好き人間なので、陸軍国家らしからぬ海上戦力を保持させる予定になっておりますが、そこはご愛嬌ということで願います。
ちなみに本話に出てきた米軍のM1A2 SEPV6は、映画『トランスフォーマー』の一作目に出てきたディセプティコンのデバステーター(本名はブロウル)をベースにしております。
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転移
今回は短めです。軍拡の様子と転移までの描写を書きました。
海軍が強化されています。
「ふむ、軍拡は概ね予定通りか」
大統領官邸の執務室で、大韓民国大統領『
襲い来る赤い波に対抗する力が日に日に強まっていることに、内心で頼もしく感じていた。
北朝鮮を下した後、復興を推進するとともに、同国との国境線全域に全高5メートルの鉄柵を設置し、繋がりを完全に断ち切った。
いくら西側でも経済が潤っている方である韓国とはいえ少なからぬ北朝鮮人民の生き残りを抱える暇はないため、手を下さずに放置という処分が下された。
戦闘の終結後、ソ連と中国は役に立たなくなった傭兵を解雇するかのように北朝鮮へと侵攻し、領土を分割して占領した。
国境線では近代的な戦闘服に身を包みんだ兵士がこちらを睨み、T-90、99式戦車といったソ中の戦闘車両が陣取っている。
韓国は、北朝鮮よりも遥かに強力な二国と国境線を接することとなったのだ。
陸軍はK1A2の増産および後継のK2戦車の開発を推進し、その他装甲車両の増備が行われる。
AH-64E攻撃ヘリの追加購入も米国へ申請したほか、OH-58"カイオワ"をベースとした国産の軽攻撃ヘリコプターの開発も完了したため、部隊配備が進んでいる。
在韓米陸軍の部隊も順次到着し、最新鋭のM1A2 SEPV6などが国内へ次々と送られており、弾道ミサイル防衛のためのTHAAD、爆撃を担い突撃してくる航空機に対するKSAMなどの自走地対空ミサイルも各地に配備され、報復攻撃を行うための玄武-3C巡行ミサイル、玄武2-C弾道ミサイルの搭載車両が多数展開し、発射準備を整えている。
また、黄海で警戒任務に就いていた忠武公李舜臣級駆逐艦の一隻が、中国海軍の054A型フリゲートに追跡されたり、日本海へ展開する大邱級フリゲートの戦隊が、ソ連海軍のアドミラル・ゴルシコフ級フリゲートに異常接近されたりと、海上でも緊張の動きが高まっている。
海軍は現在、空母としての任も兼ねる強襲揚陸艦2隻、イージス艦4隻、駆逐艦10隻、フリゲート28隻、ミサイル艇24隻、潜水艦8隻、他支援艦艇多数と、陸軍国家らしからぬ海上戦力を保持している。
これは、黄海や日本海で行動を活発化させている中国・ソ連海軍に対抗するためだ。
黄海側は首都ソウル、仁川、水原、光州など、日本海側は釜山、蔚山といった経済都市がある。陸上の国境線のみならず、海上からこれらを占領するために攻めてくることも考えられたためだ。
また、西側でも有数の陸軍を保有する韓国を、なんとしても中東情勢をめぐる紛争へ引き込みたかった各国の要請と支援の下、まとまった揚陸戦力も保持している。
実際、各海の沖合ではソ中軍艦の出没が相次いでおり、そういった動きが顕著となったことから、海軍にもかなりの予算が下りたのだ。
民生品・軍需品問わない韓国製品の大量輸出により、経済的に潤っていたため可能な軍拡だった。
現在は、輸出用を除く艦艇建造はほとんど行っていない。
水上艦艇は、忠武公李舜臣級駆逐艦の建造が10番艦で取りやめられ、大邱級フリゲートや犬鷲級コルベットに的を絞って建造数を増やしている。
対中国では台湾海軍と、対ソ連では日本国海上自衛隊と共同で対処することとなる。
空軍では、F-16Vの購入を米国へ打診したが、自国軍と台湾空軍、イスラエル空軍への供与分でいっぱいであり、購入となるとしばしの時間を必要とするため、その案はお蔵入りとなった。
その代わりに、KF-16のアビオニクスを最新鋭のものへ換装したKF-16Eの配備を進めている。北朝鮮地上部隊への攻撃に活躍したF-15Kは、Su-35や、J-11Bといった機体の国境近くへの配備を見て、当初20機の追加配備案が却下され、倍の40機の増産が決定された。同機は既に、KF-16Eともども各企業で量産が進められている。
日本と共同で開発が進められているステルス戦闘機――韓国名KFXの開発は終了し、量産化のための試験が彼の機体を待っている。採用された暁には、KF-21の名称が与えられることが決定している。
日本でもF-3の名前で採用され、千歳や厚木、那覇の飛行場へ配備する予定とのことだ。
米国より購入したF-35を日本とともに改良し、A型・C型の空戦能力、B型のVTOL能力を兼ね備えた新型の機体を両国で採用し、韓国ではソウル、烏山、大邱といった地域の空軍基地へ積極的に配備されているほか、強襲揚陸艦に搭載される機体も量産が進んでいる。
また、アメリカ製巡行ミサイルのLRASMの導入も決定し、量産が行われ、空軍への配備が行われ、実戦配備されている。
――軍事関連の書類から目を離すと、窓からソウルの街並みを眺める。
北朝鮮の長距離自走砲の砲撃によりほぼ壊滅状態となっていた市街地は復興が進み、足場とクレーンに覆われた高層ビルが散見された。大穴が開いたアスファルトの地面も埋め戻され、瓦礫も片づけられている。
だが、道路のあちこちには銃を持った兵士や、装甲車両などが控えており、物々しい雰囲気を醸し出している。
それを別にすれば、道路にはいつもと変わらない国産自動車が走り回る光景があったが、先の紛争前と比べて、車の流れは不活発だ。交通量も少ない。
自宅が半壊又は全壊した者たちが、郊外へ設けられた仮設住宅へと住まいを移しているのもあるのだろうが、やはり一番の原因は再発した北朝鮮との争いだろう。
彼の国の先制砲撃の恐怖を体験した多くのソウル市民たちが、他の都市へと流出しつつある。
首都が砲の射程内というのであれば、ソ連や中国のものでも十分届く。わざわざ弾道ミサイルなどを使用しなくても、遥かに安価な榴弾を多数撃ち込めば、相手の本丸を制圧できるのである。
ソ連も中国も、恐らくは同様の手段で韓国を攻撃してくるだろう。
どうせまた壊されてしまうのであれば、復興の必要はなかったのではないか。それよりかは軍官民全員を釜山や仁川へ避難させ、復興分の予算を軍拡や戦死者家族への補償、仮設住宅建設へ回した方がよかったのではないか、との考えが、スンナムの脳裏をよぎった。
「失礼します、大統領。これからの予定をお伝えに参りました」
ノックしながら入室してきたのは、大統領首席補佐官の『
「午前10時半から国防省との対ソ・対中戦争に関するブリーフィングを、その後昼食を挟みまして、午後1時半より仮設住宅街への訪問ですね。16時からはヒョンビン重工の新型戦闘機の視察です」
「ほう。あのステルス機が遂にか・・・」
ゴンサンの言葉に反応し、腰を浮かした。日本とともに開発したあの機体があれば、ソ連も中国も恐るるに足らない、と言いたげだった。
だが、すぐに表情を戻すと、冷静にその先を続けた。
「・・・だが、いくら強力とはいえ、数が揃わなければな。その点については、企業の方と会談が必要だ。十分な数を量産できるよう、こちらもできることをしなければならない・・・」
その直後、窓の外から強烈な閃光が執務室へと差し込み、2人の姿を覆いつくした。
閲覧ありがとうございます。
韓国艦艇は結構かっこいいのが多いので大好きです。
兵器の設定集は後々書いていきます。
よろしければ、ご意見・ご感想の方をお願いします。
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ロデ二ウス動乱
接触
『白銀の烏と異世界母港』の執筆で遅れました。申し訳ございません。
同作品と違い、こちらは箸休め的な作品であるので、このように不定期かつ亀更新となりそうです。
今回は短めです。
「皆の者。この件について、どう考える?」
クワ・トイネ公国首相カナタが問いかけるが、重鎮たちは難しい顔をしながら首を捻るだけだ。
会議の議題は、先日同国の領空へ侵犯してきた未確認騎についてだ。
魔信にも応答しなかったため、撃墜を命令したのだが、彼の騎は恐るべき速度でもってワイバーンの迎撃を振り切り、あっという間に空の彼方へ消えていったのだった。
「いや・・・、我々としても不明としか言いようがありません。ですが彼の侵犯騎は、第二文明圏の列強ムーの保有する飛行機械に似ているとの分析結果が得られています。しかし、こんな辺境にそれを送り込むとは考えられません。また、『第八帝国』と名乗る国家が第二文明圏全体に宣戦布告し、暴れまわっているとの報告もあります」
あまりにも無謀な行為に、呆れるどころか笑ってしまう者もいる。
とはいえ、この議題に時間をかけるわけにはいかない。
現在、ロウリア王国との緊張状態が続いている以上、この騎を従える勢力と友好関係を構築し、できるならば軍事同盟も結んでおきたいところである。
「失礼します!」
突如部屋に入り込んできたのは、外交部の若手幹部だ。
ノックもなしの入室に対し、外務局長が声を張り上げそうになったが、その前に彼は早口で報告した。
「哨戒に出ていた軍船『ピーマ』より報告!『我、未確認巨大船団と接触した。なお、同船には大韓民国を名乗る国家の使節団が乗艦しており、我が国との国交締結を求めている』とのことです」
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艦橋の窓ガラス越しに、一隻の船が見える。転移前の世界では運用されてもいないような、古びた帆船だ。
舷側には矢除けの盾の他、バリスタなどが備えられている。
「こいつは凄い。帆船オタクがここに居たら発狂ものだろうな」
強襲揚陸艦『
帆船の船上では、いかにも中世の人々といった言葉がよく似合う、鎧を身に着け、剣を腰から提げた乗組員たちが、こちらを驚愕の表情で眺めている。
強襲揚陸艦『馬羅島』は、馬羅島級強襲揚陸艦のネームシップだ。
日本のいずも型軽空母、米国のワスプ級強襲揚陸艦の設計を参考に建造されており、後者と共通したスクエア型甲板が特徴的である。
搭載機はMV-22K 4機、CH-53K 4機、AH-64EおよびAH-1Z、国産のKAI LAH 4機、KAI KUH-2"スリオンMk.2" 3機、旧式とはいえ火力支援に大きな威力を発揮するAV-8K 6機を運用できる。
F-35の運用も想定され、最大20機の搭載が可能だ。
なお転移前、本級をベースに揚陸戦力を持たない本格的な航空母艦を建造する計画があった。
完成の暁にはインド空母『ヴィクラント』に匹敵するものとなるはずだったが、必要性に疑問符が残ったため、計画は中止となっている。
――同艦の周辺には、
本来であれば、陸軍国家である韓国にこれほどの外洋艦隊を整備する計画はなかった。
だが、黄海、日本海で活動を活発化させている中国・ソ連海軍に対する牽制や対処の必要性があったことから、軽空母としての任も兼ねる強襲揚陸艦2隻、イージス艦4隻、通常駆逐艦10隻の配備が決定されたのだ。
西側でも有数の民生・軍需品輸出国であり、それによって国庫が潤っていた韓国だからこそできるようなものであった。
また、アジアでも日本と並んで精強かつ強力な装備を多数装備する韓国陸軍を、なんとしても中東の戦場へと派遣してもらいたかったため、各国――特にアメリカ――は資金・技術援助を惜しまなかった。
だが、流石にこれだけの戦力では001型、002型航空母艦、20隻以上の052D型駆逐艦を擁する中国海軍、巡洋戦艦の異名をいただくキーロフ級重原子力巡洋艦4隻、アドミラル・クズネツォフ級航空母艦2隻を保有するソ連海軍に対抗できない。
対中国では台湾海軍と、対ソ連では日本国海上自衛隊と共同戦線を張る手筈になっており、そのための演習も繰り返し行っている。
そのためか海軍の練度は高く、米海軍や海上自衛隊も一目置くほどであり、仮想敵国である中国・ソ連も同海軍を危険視している。
「よし、エレベーターを降ろせ。乗艦してもらおう。外交官の方々にも伝えてくれ」
部下に命じると、こちらに近づいてくる古めかしい帆船に双眼鏡を向けなおした。
閲覧ありがとうございました。
今作の韓国は陸空もそうですが、海軍がめっちゃ強化されてます。タグにありますが、本作の韓国軍にはお笑い要素は一切ありません。
設定集については、後程書いていきます。
よろしければ、ご感想の方をお願いします。
それと、第三話を少々編集し、装備するF-35を日本とともに魔改造したものにしました。
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嵐の前
久しぶりにこちらを投稿します。ロウリア戦前夜です。
大韓民国という国家と国交を結んでからというもの、クワ・トイネ公国とクイラ王国の発展ぶりは留まることを知らなかった。
両国の道路は瞬く間にアスファルトで覆われ、電気や水道が整備され、鉄道による輸送網が構築されつつあった。
また、近代的な工場なども建設されており、韓国人技術者たちの指導を受けながら、雇われたクワ・トイネ公国人・クイラ王国人たちが働いている。
驚くべきことに、支援の名目には軍事関連のものも含まれていた。
K2C1小銃の他、軍で採用されているK6重機関銃にK5拳銃、倉庫内で埃を被っていたM79グレネードランチャーをはじめとした歩兵装備のみ供与する予定だったのだが、思ったよりもロデ二ウス大陸を取り巻く状況が予断を許さないものであったため、旧式ではあるが装甲車両も供与することに決定されたのであった。
内訳はK131多用途車、K806装輪装甲車とその40ミリ機関砲搭載型などがほとんどだが、新鋭戦車K1A2の配備によって余剰が生じているK1A1戦車が追加でクワ・トイネ、クイラ両国へと輸出されることに決まった。
今年度分は各50両であるが、生産設備が整えられれば両国内でもライセンス生産が行われる。
空軍に関してはFA-50戦闘攻撃機が供与され、既に訓練が始まっている。
今まで両国の空を守ってきたワイバーンたちは対地攻撃用に育成されることも考えられたが、軽攻撃ヘリコプター『KAI LAH』が配備されることが決まったため、表舞台から姿を消していくことだろう。
海軍についても、韓国の協力を受けることで港湾設備や建造ドッグの整備も進んでいる他、犬鷲級ミサイル艇やチャムスリ級の設計をベースにした軍用高速哨戒艇――武装はK40 40ミリ機関砲RWS1門に加え、対戦車ミサイルやグレネードランチャー、小銃なども積み込んでいる――を供与することになった。将来的には、大邱級フリゲートやそのライセンス生産権も与える予定だ。
民間・軍事支援ともに、タイやインドネシア、バングラディシュなどで行ってきた内容に等しい。
また、食物や鉱物資源の大量輸出と引き換えに、クワ・トイネの一部地域を租借し、韓国陸軍の駐屯基地を建設する許可を求めてきたのだが、作物の育たない不毛の地を提供すればよいとのことだったため、上層部は合意した。
「いやぁ、凄い国だな韓国とやらは。接触から3か月ほど経つが、生活水準に関してはもう文明国を超えているかもしれないぞ」
「ええ。しかも、軍事支援付ですよ。軍務卿に至っては、『応援をもらわなくても、ロウリア軍を返り討ちにできる』と再三申されております。彼らが友好的で、本当に良かったです」
仮に召喚された国家がソ連や中国であれば、植民地化されるまではいかなくとも、両国にとって不利な条件を呑むことになっていただろう。
また、東側国家の主要3カ国が近隣に存在する地理的要因故、韓国は国家規模に比して膨大な軍備を揃えていたため、やや旧式とはいえ有り余った装備多数の供与に恵まれたことも、彼らにとっては幸運だった。
韓国としても、最新装備への転換の際に生じる多数の旧式装備多数をすべて売り払えること、支援の対価として資源や食糧を大量に手に入れられるのであればと、進んで両国の近代化に協力していた。
「それで、ロウリアの様子はどうなっておる?確か、韓国も接触を図ったと聞くが・・・」
「同国の大使館によりますと、ほとんど門前払いだったとのことです。外交団はコンタクトを取ろうと粘ったそうですが、結局大事をとって帰還したとか」
ロウリア王国のある方向に目をやりながらのカナタの問いに、秘書はそう応える。
「・・・負けはしないだろうが、なるべく早く済ませたいな」
最近韓国もK21歩兵戦闘車の後継を開発してるみたいですね。主砲はやはり40ミリなのでしょうか。
それと、韓国企業が提案しているK808の120ミリ砲搭載戦車駆逐車型めっちゃカッコいいです。
クワ・トイネ、クイラへの供与戦闘機は練習機のTC-1やA-29Kでもよかったのですが、魔帝との戦いにも備えてのFA-50です。
よろしければ、ご感想の方をよろしくお願いします。
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開戦
本命とその外伝として執筆している作品の合間に書いたものなので出来は微妙かなぁって感じですが、それでも良ければどうぞ。
近いうちに年表的な回を出して、本作の韓国が台湾もびっくりの親日になったのかを描きたいと思います。
ロウリア王国の宣戦布告は、韓国の転移から8ヵ月が経ったところで行われた。
既に同国より輸入した武器・兵器は国境近くの街であるギムに配備され、支援によって鉄条網や簡易的なトーチカが建設された他、首都と直通している複線線路が敷設され、供与されたディーゼル列車が走っている。
既に、ギムへ住んでいる民間人の避難はすべて完了しているため、民間人の被害を気にせずに戦える。
そして何より、韓国から供与された武器兵器に絶対の信頼があった。
韓国の軍事顧問団は旧式と言っていたが、現在騎士団長モイジたちが手にしているK2小銃は、弓矢よりも遥か遠距離を攻撃できるし、同じく供与されたK105A1 105ミリ自走榴弾砲――旧式化したM2A1 105ミリ榴弾砲をベースに長砲身化したK3 105ミリ榴弾砲をKM809 5トントラックの荷台に乗せた輸出用の自走榴弾砲。山岳地帯が多いため、韓国にも装備部隊がある――に至っては、10000メートル以上の射程を持っているという。
さらに、韓国の援助を受けて拡大され、韓国空軍のF-15Kなどの運用も可能となった滑走路には供与されたFA-50――機体とともに空対空ミサイルも供与されたが、AIM-9Xにとどまっている――が並べられており、戦況次第ではいつでも発進できる態勢が整っていた。
いくらクワ・トイネ公国人やクイラ王国人の竜騎士が空を飛ぶことに慣れていても、流石にワイバーンと戦闘機では操縦特性が大幅に異なるため、慣れるのに非常に苦労したという。
一回パイロットの1人にスケジュール表を見せてもらったのだが、かなりハードなものであった。
それでも、韓国空軍から派遣された教官たちを相手にした模擬空戦訓練を積み、一応彼らを唸らせる程度の空戦技術を身に着けたらしい。
「団長。韓国陸軍の部隊が到着しました」
「おお。流石に早いな」
部下からの待ちわびた報告に、思わず顔を綻ばせる。
先ほど政府からの通達で、韓国もロウリア王国戦に参戦すると表明したことが明らかとなっている。
同国の言い分では、仮にクワ・トイネ公国とクイラ王国が戦争に負けた場合、資源や食糧の調達に支障が出ること、両国を占領した勢いで韓国へ侵攻してくることが予想されたからとのことだった。
国境の向こう側に陣取っているロウリア軍よりも装備面では遥かに優越したとはいえ、数では未だ大きく劣っていたところだ。
かなりの良タイミングでギムへと到着してくれた韓国軍の部隊には、感謝の他なかった。
「よし、歓迎に行こう。そうだ、食料も備蓄してあるはずだ。ささやかではあるが、それで何かこしらえるよう給仕の者たちに言っておいてくれ」
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ジューンフィルア伯爵率いる東方征伐軍先遣隊は、ギム西方20キロまで接近し、敵陣をつぶさに観察していた。
「わからんな・・・。あの鉄の象は何なんだ?」
ジューンフィルアはそう言いながら、ギムの外側に陣取る鉄の象――韓国陸軍のK1A2戦車と、供与されたクワ・トイネ陸軍のK1A1戦車を物珍しそうに眺めている。
その他にも、自動で動き回る鉄製と思われる箱や、背中に筒のようなものを載せたより大型のそれも確認できた。
「ふむ。ミリシアルやムーでは馬で曳くことなく走る箱があるとの噂がありますが、それによく似ておりますな」
「ほう・・・流石は文明国だな」
部下の言葉に思わず感嘆の言葉を漏らすが、すぐに真顔に戻った。
「ということは、あれはムーやミリシアルからの・・・?」
「いえ、このような僻地の戦争に肩入れするような国ではありませんし、違うのでは・・・」
互いに考えを巡らすが、結論には達しなかった。
「まぁ良い。早くアルデ様に報告を・・・」
魔信器を取り出し、上官へとありのままを報告し始めた。
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『ロウリア王国軍部隊の侵攻を確認!数およそ8万!ワイバーン多数の存在も認める!』
クワ・トイネ公国軍に供与されたKUI LAH高機動軽攻撃ヘリコプター――OH-58"カイオワ"をベースに装甲を施し、機首下面にM230 30ミリ機関砲、機体側面にK-AGM対戦車ミサイル4発かハイドラ70 19連装ロケット弾ポッド2基を搭載可能な、主に輸出用に開発されたヘリコプター――に搭乗するパイロットからの無線連絡がモイジのもとへ届いたときには、既にギムからでも進撃に伴う土煙が確認できた。
「戦闘配置!後方の航空隊にも連絡しろ!」
モイジが部下全員下命し自らもK2小銃を手に取ったとき、後から声がかかった。
「モイジ団長。戦闘ヘリ部隊は後退させましょう。いかに貴軍や我々のLAH、アパッチ、スリオンが高機動を誇るとはいえ、制空権が取れない状況での地上攻撃は危険です。ここは空軍の支援が終わるまで攻撃を控えるべきかと」
ギムへと派遣された韓国陸軍の指揮官
いくら高機動が売りの韓国製ヘリと西側最強の戦闘ヘリである米国製AH-64Eとはいえ、最高速度がほぼ同等のワイバーンに狙われるのはよろしくない。
「わかりました。先ほど連絡しましたので、戦闘機隊は間もなく到着します」
「助かります。こちらも地上支援にF-15KやKF-16を投入するとのことです。敵のワイバーンは貴軍に任せることになりますが・・・」
「お任せください。我が軍のパイロットたちも貴国の教官たちに鍛えられておりますし、戦意も旺盛です。ロウリアのワイバーン如き、すべて叩き堕としてくれるでしょう」
そのとき、ギム後方の空域から轟音が聞こえてきた。
アフターバーナーを曳きながら飛行するクワ・トイネ空軍のFA-50の編隊がAIM-9X"サイドワインダー"6本を抱えて飛来したのだ。
各機の両翼から槍を思わせる白煙が吹き伸びたのはそのときだった。
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ロウリア軍ワイバーン部隊を指揮するアルデバランは驚愕した。
敵のワイバーンの姿が見えないことを確認し、地上攻撃に移ろうとしたしたとき、白煙のようなものが複数の味方騎へ突っ込み、叩き堕とされたのだ。
「くそっ!!敵は一体どこに・・・!?」
直後、甲高い轟音が前方から聞こえてきた。
と思ったのも束の間、白い異形な物体が遥か前方から迫ってくるのが確認できた。
「あいつか!全騎、導力火炎弾の発射態勢に・・・っ!?」
命令したときにはもう遅い。彼らの想像を遥かに超える速度で接近したFA-50の胴体に閃光が走った。
毎分3600発の発射速度で放たれた25ミリ弾がワイバーンの外殻を打ち砕き、直撃を受けた竜騎士を木端微塵に粉砕した。
飛び散る肉片や鱗の只中を飛び抜ける愚を避けるべく、FA-50の編隊は水平旋回や急上昇で離脱していく。
「くそっ!!待ちやがれ!!」
部下多数を殺された怒りから、顔を真っ赤にして追いかける。
だが、ワイバーンの最高速度はFA-50のそれには程遠い。彼らの追跡をあっさりと振り切り、遂には視界外へ消えた。
「畜生!・・・ん!?」
その瞬間、旋回に伴って晒された愛騎の至近でAIM-9Xが炸裂し、肉片と成り果てた彼はそのまま地面へと落下していった。
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「対空戦闘始め!」
韓国陸軍のK30自走高射機関砲が装備する30ミリ機関砲、K-SAM自走地対空ミサイル"天馬"、KP-SAM"神弓"地対空誘導弾の弾幕が張られ、FA-50の迎撃を辛くも潜り抜けたワイバーンたちを容易く撃ち落としていく。
30ミリ弾がワイバーンの頭を吹き飛ばし、至近で炸裂したK-SAM、KP-SAMの衝撃波をまともに喰らった騎がバランスを崩し、身体のあちこちに断片を食い込ませた死体が落下する。
僅かに生き残ったワイバーン隊も自走対空砲の射撃に射すくめられ、遂には全滅した。
『敵地上部隊、なおも近づく!距離15000!』
「モイジ団長。我々の部隊が攻撃を開始します」
哨戒ヘリの報告を受けた葛堅がモイジに伝える。
「わかりました。お願いします」
「砲撃始め!」
モイジの返答を聞き、5キロ後方へ陣取るK9A2自走榴弾砲の部隊へ命じた。
巨大な砲声が響き渡り、風切り音が聞こえてきた直後、それが急になくなった。
未だ視界外にいるロウリア王国軍の隊列の只中へ無数の火柱が立ち上り、兵士や魔獣の惨死体が舞い上がった。
閲覧ありがとうございました。
早く海戦回書きたい(韓国海軍オタク並感)
クワ・トイネとクイラへ供与されたK1A1戦車はK1無印と同じ105ミリ砲なので、重量問題等はありません。
活動報告の方にアンケート的なものがありますのでコメントお願いします。
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蹂躙
最近まで日本国召喚×アズレンの本編とそのR-18版の執筆、そしてオンライン授業の合間を縫っての投稿です。
本命であるそれらよりも出来は悪いかなぁってところですが、それでも良ければどうぞご覧ください。
「何ですって!?我が方のワイバーンが・・・!!」
ワイバーン全滅の報を受けたアデムは、信じられない面持ちで空を見上げた。
先ほどまで威風堂々と大空を羽ばたいていたワイバーンの姿はなく、僅かな黒煙が地面へと伸びている。
「ひっ、怯むな!航空支援は無くなったとはいえこの数!奴らに抗し得るものではない!!」
アデムの命令を受け、歩兵や魔獣たちが前進するが、彼らの耳に風切り音が聞こえてきた。
思わず上を見上げた瞬間、隊列のあちこちへ爆炎が奔騰した。
魔獣や人間問わない惨死体が舞い上げられ、隊列が瞬時に四分五裂となり、進撃が停止する。
この戦いに30両が参加しているK9A2 155ミリ自走榴弾砲"雷鳴Ⅱ"――史実とは異なり、K1戦車のシャーシをベースにした初期型の52口径155ミリ榴弾砲に替えて、日米とともに共同開発した58口径のものを搭載している――から放たれた巨弾が、ロウリアの戦列を引き裂いたのだ。
K9は砲撃を連続する。
長大な砲身から直径155ミリの砲弾を次々と放っては敵の頭上から叩きつけ、もしくは時限信管によって直上で炸裂させ、20万を超える兵力を少しづつ削っていく。
「くそぉ!!全員、散開して突撃しろ!!固まっているとやられるぞ!!」
アデムの命令にすぐさま従い、兵たちは仲間との間隔を広めに開けて突撃するが、そこへ新たな敵弾が飛来する。
距離が縮まったため、クワ・トイネ陸軍へ供与されたK105A1 105ミリ自走榴弾砲も砲撃に加わったのだ。
立ち上る爆炎はK9の155ミリ砲弾よりも少ないが、これを搭載したKM809 5トントラックはギムに50両が配置されており、砲門数で勝負している。
さらに、榴弾砲部隊よりも後方へ陣取る韓国陸軍のK239自走ロケット砲"天武"と、クワ・トイネ陸軍のK139 自走ロケット砲が射撃を開始する。
白煙を噴きながら発射された130ミリロケット弾が地面を抉り、K239の227ミリM26A1弾頭から分離した518個の子弾が敵部隊の頭上から降り注ぎ、魔獣や人員の惨死体が舞い上がり、部隊としての体を成さなくなっていく。
『こちら、第12戦闘飛行団である。これより航空支援を開始』
無線機のレシーバーからの報告に両軍の兵たちが歓喜の声を上げる中、後方から轟音が聞こえてきた。
Mk.82 500ポンド爆弾を抱えたF-15K、KF-16Eの編隊が戦場空域へと到着したのだ。
アフターバーナーを曳きながら猛速で飛行する両機の腹から黒い物体が分離し、数百発のそれが風切り音を響かせながら落下していく。
それらが地面へと到達した瞬間、大量の爆炎がロウリア軍の戦列を飲み込んだ。
死体が舞い上がる様が見えるようなことはなく、兵たちに見えるのはただの「炎」である。
その炎が晴れると、無数に形成された爆弾孔、その中で転がる肉片、中途半端に生き残った兵が救助を求める声を上げている光景が広がっていた。
奇跡的に無傷を保っていた者も、たった今の大破壊を目にし、身体を動かすこともままならなくなっていた。
「「戦車、前へ!」」
葛堅とモイジの命令でK1A2、K1A1が履帯を軋らせながら前進を開始する。
120ミリ滑腔砲と105ミリライフル砲を振り立てながら時速70キロの高速で接近する戦車を確認した敵兵が踵を返して逃亡を図るが、それよりも先に小ぶりな砲塔から突き出る砲身に発射炎が閃いた。
2車種の砲から放たれたキャニスター弾が右往左往する歩兵の群れを撃ち倒し、車載のT-75K 20ミリ機関砲RWSの連射が愛馬ごと騎兵を肉片に変える。
生き残りの魔導士が各種魔法を戦車に向けて放つも、複合装甲で鎧われたK1戦車の砲塔や車体には傷1つつかない。
戦車はそのまま突撃し、驚愕の表情を浮かべる彼を轢き飛ばし、高速回転する履帯が肉体を擦り潰す。
その直後、空気を叩く音とともに新たな空の刺客が参上する。
韓国陸軍のAH-64EとKAI KUH"スリオンMk.2"、クワ・トイネ空軍のKAI LAHが来襲したのだ。
先ほどの空軍機の空爆とは異なり、その場空域に留まって自分たちを狙う異形に恐怖を覚えた瞬間、機首下面と胴体左右に閃光が走った。
アパッチから放たれたK-AGM"隼"がゴーレムを木端微塵に粉砕し、LAHから70ミリロケット弾が連続で放たれ、集団で逃げる敵兵を吹き飛ばす。
K21歩兵戦闘車やK808/K806装輪装甲車から降車した歩兵がK2小銃を発砲し、背中を見せる兵を撃ち倒し、K21やK806 40ミリ砲搭載型の40ミリ弾の射撃が射くすめる。
K808戦車駆逐車の105ミリ砲がこの期に及んで向かってくるゴーレムやゴブリンを粉砕し、後方のK30 自走対空砲が自身にとっての脅威がないことをいいことに前線まで出張り、30ミリ機関砲の水平射撃で薙ぎ払っていく。
「にっ、逃げろ!作戦は失敗だ!撤退しろぉっ!!」
半ば発狂したアデムの命令で、僅かに生き残った兵士たちが尻尾を巻いて本陣へ逃げ帰っていったが、それを逃がす韓国軍ではなかった。
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「パンドール将軍!アデム様が・・・」
天幕へ飛び込んできた兵を押しのけ、アデムが憔悴しきった様子でパンドールの前へ現れた。
「どっ、どうしたのだねアデム君!?一体何があったのだ!?」
「将軍!!逃げましょう!!早く逃げねば・・・!!」
彼の身を案じるパンドールだったが、アデムはそれに応えずに上司の肩を掴んで揺さぶりながら必死に訴える。
ただならぬ様子の部下を見た彼は考えを巡らすが、その直後、天幕の外側から赤い光が差し込んだすぐ後に轟音が響き渡った。
「何事だ!?」
大声でパンドールが事態の把握に努めようとした瞬間、彼のいる天幕を突き破り、内部へ侵入してきた物体の先端がアデムを押し潰したのを目の当たりにした。
刹那、パンドールの視界が真っ赤に染まり、彼の意識はそれに飲み込まれた。
――韓国軍がクワ・トイネ公国内に持ち込んだ巡行ミサイル"玄武3-C"10発が東方征伐軍の本陣内へ着弾し、その場の全員を木端微塵に粉砕した瞬間だった。
閲覧ありがとうございました。
取り合えず爆発オチ。
本命のリクエストが活動報告にありますので、コメントいただけると幸いです。
よろしければ、感想の方もよろしくお願いいたします。
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ロデ二ウス沖海戦
暫く滞ってた本作を久々に投稿します。
韓国の援助によって拡大・近代化されつつあるクワ・トイネ公国のマイハーク港では、大邱級フリゲートの輸出型――クワ・トイネ海軍ではネル級と命名された――がガスタービンエンジンの甲高い音色を響かせ、出港準備を整えていた。
韓国製の艦船はインドネシアやタイ、台湾、シンガポール、チリ、ペルーといった国家で人気を博し、韓国経済を潤す要因の一つとなっていたが、その中でも特に相手国の目を奪ったのがこの大邱級フリゲートだった。
新生クワ・トイネ海軍旗艦のフリゲート『ネル』の艦橋では、パンカーレが司令官席に腰掛けて準備が整っていく様子を眺めていた。
「敵は4000隻の大艦隊らしいな。以前の戦力ならば絶望しながら戦いに赴いていたところであるが、今は違うぞ」
まだ見ぬ敵に対して闘志を燃やす。
現在のクワ・トイネ海軍の戦力はネル級フリゲート4隻、キラ級コルベット8隻のたった12隻だが、個々の戦闘力はロウリアの軍船などとは比較にならないほど強力なものだ。
韓国の支援で造船所が設置され、間もなく各種兵器を国内で自己完結できるようになれば、ノックダウン生産によって造船所でネル級やキラ級の大量建造が行われる予定だ。
上層部は、建造も自力で可能な程度に技術力を高めようと、韓国へ留学生の派遣を行わせたりと、技術者の教育に力を注いでいる。
「韓国海軍は確か17隻が参加すると言っていたな?」
「ええ。…少なくないですかね?」
部下が言うが、パンカーレはそう思っていない。
韓国海軍が自分たちの乗るネル級よりも遥かに大きく、強力な艦を多数保有しているのは、同国軍事顧問団との交流で把握している。
『水上レーダーに感あり!IFFに反応。韓国海軍第2戦隊です』
CICに陣取るレーダーマンが報告する。
この戦いには、韓国海軍の艦隊も派遣されている。
陣容は強襲揚陸艦兼航空母艦1隻、ミサイル駆逐艦6隻、フリゲート8隻だ。
やがて、水平線の彼方から一群の艦影が現れた。
輪形陣を形成して近づいてくる艦隊の中央には、右舷側に寄った構造物が特徴的な巨艦が陣取っている。
強襲揚陸艦『江華』率いる韓国海軍第2戦隊だ。
転移前は黄海やシナ海の警備を担当し、領海侵犯を行う中国海軍に目を光らせていた艦隊で、日本海警備を担当する第1戦隊とともに、韓国海軍の双璧を成す存在である。
『江華』の他、世宗大王級駆逐艦『西厓柳成龍』、『義慈王』と忠武公李舜臣級駆逐艦『姜邯賛』、『崔瑩』、『東明聖王』、『崔茂宣』がその周囲を固め、さらに外側を仁川級フリゲート『全北』、『江原』、大邱級フリゲート『春川』、『水原』、『天安』、『安山』、『城南』、『益山』が囲っている。
大邱級は対空担当と対潜担当各3隻づつが配備され、それぞれK-SAAM"海弓"、K-ASROK"赤鮫"のいずれかのみを搭載することになっているが、今回は潜水艦の脅威がないため、全艦がK-SAAMを積んでいる。
韓国艦隊と合流したクワ・トイネ艦隊は、マイハーク強襲上陸を試みるロウリア海軍東方征伐艦隊の予想進路へと向かっていった。
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韓国海軍第2機動艦隊旗艦『江華』からリフトファンを用いて発艦したF-35K 12機は、ウエポンベイと両翼に各種武装を満載したビースト・モードの状態で巡行飛行を行っていた。
武装の内訳は、CBU-97Kクラスター爆弾6発だ。
北朝鮮陸軍の人海戦術へ対抗すべく導入したクラスター爆弾は一度に多数の木造船を葬り去れること、何よりも木造船に空対艦ミサイルや巡行ミサイルを用いるなど勿体ないことから、今回の作戦に使用された。
また、B型とA型のハーフとも言うべきK型は、25ミリバルカン砲が標準装備となっており、爆弾を投下し終えた後は同砲による機銃掃射で艦艇攻撃を行う。
この世界ではワイバーンにはワイバーンで対抗するという法則があるらしく、基本的に地上や艦艇からの攻撃で撃墜することはないらしい。
一応遠距離攻撃が可能な魔導士が配備されているらしいが、一般的に魔法の射程は短く、爆弾を投下する予定高度である3000メートルまで届くことはないし、そもそも音速を超えての巡航飛行が可能なF-35Kには掠りもしないだろう。
『敵艦隊発見。攻撃を開始せよ』
ガンカメラによる光学索敵で夥しい数の艦影を発見した隊長の命令を受け、編隊が散開する。
高度3000メートルを飛行しているためジェットエンジンの音は聞こえていないらしく、カメラに映る人影はどこか優雅に船旅を満喫しているかのように見えた。
各機ウエポンベイの扉が開き、内部に搭載されたクラスター爆弾を露わにする。
『
直後、腹の下や主翼ハードポイントから爆弾が分離し、風切り音を響かせながら落下を始めた。
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東方征伐海軍艦隊提督シャークンは、目の前で起きた大破壊に目を丸くした。
威風堂々と進撃していた艦隊の頭上から風切り音がしたと思いきや、上空に黒い雲が出現したと同時に何かが高速でまき散らされ、複数の帆船を穴だらけにしたのだ。
黒雲は艦隊を覆い尽くすように出現し、飛び散った"何か"が今なお次々と船を引き裂いている。
あまりにも一方的な展開に、もはや頭が追いつかない。
「何なんだ…!?どういうことだこれは!?」
そう口にするので精一杯であり、今まで経験したことのないこの事態に対処指示を出すなど思いもよらなかった。
麾下の軍船も右往左往するばかりで、中には勝手に逃げ出す船もいる。
シャークンには確認する術はなかったが、300隻もの軍船が海面下へ消えたそのとき、空を裂くような轟音が聞こえてきた。
すぐさま双眼鏡で空を舐めるように見回すと、その正体らしき黒点が凄まじい速度で向かってくる様がはっきりと視認できた。
無駄を承知で魔導士による対空戦闘を命じようとしたその瞬間、ワイバーンとは明らかに異なる謎の飛行物体――F-35Kの胴体から光弾が放たれた。
獣が唸るような爆音の連なりとともに押し寄せるそれらが帆船の1隻に突き刺さるや、マストがすべて薙ぎ払われ、人だったものがあちこちにまき散らされ、甲板を炎と鮮血で彩った。
GAU-12Aから毎分3300発の発射速度で放たれた
舷側にも多数の風穴が開けられ、そこから浸水した船が水面下へ消える。
弾切れした機体が次々と身を翻し離脱する頃には、4000隻以上の大艦隊はその数を2000隻以下にまで減らし、隊列も大幅に乱れていた。
K型(そして日本仕様のJD型、米国で採用されたD型)の25ミリ機関砲の装弾数はA型の150発に比べて500発と多いため、多数の船に機銃掃射を行うことができたのである。
「提督…」
部下が怯えた表情で指示を求めるが、シャークンも呆然とした表情で目の前の惨劇を眺めるだけだ。
「提督!前方に島が!」
その報告に正気を取り戻した彼が見張りが示した方向を凝視すると、確かに黒い影が視認できた。
しかし、あのような場所に島があるという情報はないし、何より僅かにだが動いている。
「違う!あれは島じゃない!船だ!」
叫んだ瞬間、敵船の甲板へ閃光が走った。
座乗船の隣にいる船が大爆発を起こし、木材の破片や乗員の肉片が飛び散った。
「なんだありゃあ!?」
「船が一撃で沈んだぞ!?」
軍船を一発で破壊する威力に目を剥く兵ばかりの中で、シャークンは(彼らと比べれば)比較的冷静だった。
「ほ、本部にワイバーンの応援を要請しろ!急げ!」
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輪形陣の先頭に位置するイージス駆逐艦『西厓柳成龍』のCICに、レーダーマンの報告が飛び込んだ。
「レーダーに感あり。IFFに反応なし。敵ワイバーンと思われる飛行物体接近。方位30、距離500、高度1000、数350」
不利を悟った敵将が、本国へ航空兵力の増援を頼んだのだろうと判断した艦長が、ごく短く命じた。
「対空戦闘用意」
『対空戦闘用意!』
全区画へ警報が鳴り響き、乗員がヘルメットや救命胴衣を身に着け、艦内隔壁を閉鎖し、ダメージコントロールの準備を整える。
「右対空戦闘、CIC指示の目標!攻撃はじめ!」
相手はミサイルや戦闘機ではないため、電子戦は行わない。そのまま長距離対空ミサイルのSM-6Kの発射を命じた。
「SM-2発射始め!…撃て!」
その瞬間、前甲板と後甲板に備えられた合計120セルものK-VLSのいくつかが解放され、轟音とともに白煙を引きながら必中の矢が放たれた。
世宗大王級、忠武公李舜臣級の攻撃は連続し、データリンクシステムにて目標が重複しないよう対空ミサイルが放たれる中、SM-2の第1陣が敵編隊へ到達する。
音速を遥かに超える速度で突撃してきた弾体を視認する間もなく竜騎士たちは愛騎諸共木端微塵になり、仲間のあっけない最期に呆然としていた同僚たちも遅れて到達してきたSM-2の炸裂に巻き込まれた。
僚騎が何の前触れもなく血煙とともに消える事態に困惑と恐怖の感情を持ちながら突撃する彼らに、新たな兵器が牙を剥く。
SM-2を放った駆逐艦たちの他、仁川級や大邱級、ネル級にも搭載されているK-SAAM"海弓"が到達したのだ。
米国のESSMをベースに作り上げた韓国製短距離艦対空ミサイルは、マッハ3以上の飛翔速度でワイバーンに喰らいつく。
総勢350騎ものワイバーンは総崩れとなり、各艦の見張り員が編隊を目視する頃には小隊単位、中には単騎で飛行している者も少なくなかった。
「主砲、撃ち方始め!」
『発砲!』
各艦に搭載された2種類の砲が対空射撃を開始する。
5インチ砲の狙撃がワイバーンを撃ち抜き、肉片に成り果てたそれらが海へ散っていく。
一応RAM近接防空ミサイルやK-CIWS 25ミリCIWSがいつでも発砲できるよう待機していたが、それらは結局火を噴くことはなかった。
静寂が海域を支配した。
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「艦長、ヘリ全機を発艦させたまえ。その後本艦は『城南』『益山』とともに現海域にて待機。他艦はクワ・トイネ艦隊とともに先行せよ」
強襲揚陸艦『江華』に将旗を掲げる
帰還したF-35Kは格納甲板へ仕舞われ、代わりにドアガンのGAU-19 12.7ミリガトリング砲や"隼"対戦車ミサイル、M21サブシステムを搭載したKAI KUH-2"スリオンMk.2"と、海兵隊が運用するAH-1K"スラムヴァイパー"が次々に発艦していく。
同時に、『江華』と大邱級2隻を残して戦闘艦艇がさらに前進する。
先陣を切る駆逐艦『西厓柳成龍』、『義慈王』が、真っ先に砲撃を再開する。
放たれた榴弾が各一隻を爆沈させたところで、後続の『姜邯賛』、『崔瑩』、『東明聖王』、『崔茂宣』、大邱級6隻が順次砲撃を再開した。
標的となった帆船の中に、無事なものは1隻もない。
直径5インチの榴弾を喰らった船は爆炎と木片とまき散らしながら消し飛んでいく。
即応弾を撃ち切った艦が長い装填に入る中、空からの刺客が参上する。
低空へ舞い降りたスリオンMk.2が12.7ミリガトリング砲の射撃を浴びせ、前方固定のM134ミニガンを乱射する。
甲板で呆然としていた兵たちが暴風を浴びたように薙ぎ払われ、50口径弾や7.62ミリ弾の弾幕によって穴だらけにされたマストが倒壊し、被弾多数によって強度が低下した船体が波に揉まれ、バラバラになった。
AH-1Kの機首に装備されたGAU-22C 25ミリバルカン砲――GAU-22Aを3銃身に減らし、発射速度を毎分600発に改めた――の射撃が軍船の舷側を構成する木材を穴だらけにし、70ミリロケット弾が甲板で炸裂し、木片や人間の惨死体問わず吹き飛ばす。
両機はさらにK-AGM"隼"を発射し、狙った船を木端微塵に爆砕していく中、装填が終了した戦闘艦艇が砲撃を再開する。
突撃することで距離が縮まっているため主砲のみならず、各艦が搭載する対小型船用K40 40ミリRWS、K6重機関銃、30ミリCIWS、そして対空兵器であるRAM近接ミサイルまで動員し、手動照準によって攻撃していく。
『敵艦隊、順次反転を開始。逃亡を図る模様』
「逃がすな」
逃走進路上へAH-1Kとスリオンが回り込み、機銃掃射を浴びせる。
後方からも戦闘艦艇が砲列を並べ、射弾を浴びせていると、敵船のマストから帆が下ろされ始めた。
「司令、クワ・トイネ艦隊のパンカーレ長官より通信!」
『江華』CICのディスプレイに、パンカーレの顔が映る。
『金司令。帆を降ろすのは降伏の合図ですが、いかがいたしますか?』
「…これ以上は弾の無駄ですし、無抵抗の敵を虐殺するのは気分が悪いです。剣はここで収めましょう。我々はこれより救助活動を行いますが、貴艦隊はいかがいたしますか?」
「…我々もご協力しましょう。彼らを皆殺しにするのは簡単ですが、我々が悪魔になる必要はありません」
「では…」
通信を切ると、起立して新たな命令を出した。
「これより本艦隊は敵兵の救助活動を行う。短いとはいえ戦闘後であり、諸君には苦労を強いることになるが、もうひと踏ん張り頑張ってもらいたい」
すぐさま各艦から武装を外したスリオンMk.2が発艦し、救命ボートが降ろされる。
「負けたら皆殺し」の概念が定着している彼らは手を差し伸べてくる敵に困惑していたが、冷たい海水によって意識が朦朧としていた者たちは、無意識に救助へ赴いた韓国水兵・クワ・トイネ水兵の手を握った。
ヘリと救命艇が往復していくうちに、各艦の治療室や甲板には負傷した兵たちが溢れかえっている。
前世界でも屈指の性能を持っていた韓国艦艇は戦闘後、全艦が巨大な病院船へ早変わりしたのだった。
閲覧ありがとうございました。
後々活動報告を更新しますので、コメントしていただければ幸いです。
よろしければ、ご感想の方をよろしくお願いします。
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決着
おはようございやす。夜叉烏です。
久しぶりに本作を投稿です。
戦闘が終了し、一般兵が一息ついていたギムでは、韓国政府が提案したロウリア王国への逆侵攻計画が葛堅を通して、先ほど到着したノウ将軍やモイジらに伝えられていた。
「逆侵攻…ですか」
普通であれば考えつくこともない内容だが、こうして被害なしで敵を壊滅させ、自分たちにそれを成しえる力があることが判明した今、驚くようなことではなくなっていた。
「はい。我が国政府はこの戦争を早期に終結させるべく、敵首都ジン・ハークの占領および、国王ハーク・ロウリア34世の捕縛作戦を実施する、とのことです。その際、貴軍の助力を求めたいのですが…」
それを聞き、クワ・トイネ側は内心で韓国の態度を評価した。
韓国軍であれば、公国の手を借りずとも作戦は遂行できるだろうし、仮にノウらに知らせないまま実行もできるはずだ。
韓国は、クワ・トイネ側にも活躍の場を与えようとしていてくれているのだ。
「なお、この案件は貴国の上層部へは伝達済みです。カナタ首相は参加について、現場の判断に任せると仰っておりましたが…」
モイジはノウの顔をチラリと窺う。
彼はその視線に気づくと、やってやろうじゃないか、と言いたげに力強く頷いて見せた。
話の分かる上司に笑みで返すと、ノウがクワ・トイネ軍を代表して答える。
「是非、我が軍も参加させていただきたい」
力強い返答に葛堅は笑顔で頷くと、作戦の説明を始めた。
「まず、貴軍と我が軍がジン・ハークへ点在する各軍事拠点に長距離攻撃を実施し、後に市街地へ突入。敵軍の混乱を狙います。出撃してきたワイバーンは空軍が対処。制空権確保が完了次第、特殊部隊を乗せたヘリをハーク城へ飛ばし、降下した特殊部隊によって城を制圧。国王ハーク・ロウリア34世を捕縛します。貴軍には、我々とともに特殊部隊突入前の準備攻撃を行っていただきたい」
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ハーク城の寝室にあるベッドの上では、国王ハーク・ロウリア34世がシーツに包まったままガタガタと震えていた。
自信満々に戦勝報告を齎しにくるはずだったパタジンは、東方征伐軍が文字通り全滅した旨を伝えてきたのだ。
震える声で詳細を話すパタジンの言葉もショックのあまり耳に入らず、耐えられなくなったハークは民間人の疎開と残存全軍を首都防衛に回すように指示して彼を下がらせ、その後即座にベッドへ滑り込んだのだった。
彼の頭の中にあるのは、戦争を引き起こした自分を血眼になって探し回っているであろう敵に対する恐怖と、せめて無辜の民を守らなければという責任感だ。
民間人の疎開は始まってはいるが、まだ時間は掛かる。
攻撃を開始するのはせめて民の避難が終わってからにしてくれと、相手に聞こえないのもお構いなしに祈り続けた。
彼の願いは叶うことになる。
MQ-9"リーパー"の偵察によって民間人の避難を確認した韓国政府は、人道的見地から攻撃を待ったのだ。
完全にもぬけの殻となった民家は戦後の再建を約束して家主から徴用し、それらを最大限利用することで地の利を生かした市街戦を展開していくことになる。
無論、郊外にも多数の軍勢を配し、ワイバーンの哨戒飛行もローテーションで行っている。
来るなら来い、と虚勢を張り、再びシーツに包まって目を閉じたが、結局彼は朝まで一睡もできなかった。
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ジン・ハーク東方30キロの地点では、多数のテントによる陣地が形成され、そこに葛堅やノウ、モイジたちがディスプレイを見つめながら作戦開始の時宜を見計らっていた。
「葛堅殿、民間人はすべて疎開したようだ。攻撃を開始しても何ら問題はないと思うが…」
ノウが葛堅に催促する。
疎開が終わるまで3日がかかり、クワ・トイネ側の兵士は殺気立っている者も多い。
ディスプレイにはMQ-9"リーパー"の偵察活動によってジン・ハークの街並みが映し出されているが、鎧を着た兵士以外、民間人らしき者は見当たらない。
「…そうですね。仮にまだ残存していて戦火に呑まれたとしても、それは彼らの自己責任として片付けられます」
「では…」
そう言ったモイジに軽く頷くと、麾下の部隊に指示を出す。
「空軍に援護要請!戦闘機掃討を実施せよ!」
「目標、敵首都郊外の敵部隊!攻撃開始!」
「全部隊に告ぐ!手筈通りに攻撃開始!」
葛堅とノウの命令が無線を通して伝えられ、まず砲兵たちがK9A2 155ミリ自走榴弾砲"雷鳴Ⅱ"、K239 MLRS"天武"、K105A1 装輪105ミリ自走榴弾砲"天雷"、K136 MLRS"九龍"に乗り組んだ。
一拍置いて、耳に響く砲声が幹部たちに聞こえてきた。
後方に陣取る韓国陸軍のK9A2は日米と共同で開発された58口径の長砲身155ミリ榴弾砲を装備しており、65キロ先の敵を正確に砲撃できる性能を有する。
また、クワ・トイネ軍へ供与されたK105A1 装輪105ミリ自走榴弾砲は口径は小さいものの、砲身長は65口径と長いため、同口径の榴弾砲の中では最も射程が長く、最大32キロを誇る。
直径155ミリ、105ミリの榴弾が放物線を描いて敵の頭上から落下し、敵部隊の直上で信管が炸裂するや、着弾点に存在した兵士や魔物を吹き飛ばし、投げナイフのように破片を撒き散らし、肉体を切り刻んでいく。
ほぼ同時に、K239 MLRSからはKTSSMが発射されている。
これは米国製のATACMSミサイルを見習って開発されたMLRS発射用の大型戦術ミサイルだ。
基本的には高性能炸薬を搭載した簡易的な弾道ミサイルだが、小型誘導滑空爆弾を撒き散らすタイプの弾頭も搭載できる。
"玄武-1"の後継として、最新鋭巡行ミサイル"玄武-3C"、同じく最新鋭の"玄武-2C"、開発中の"玄武-4"弾道ミサイルよりも安価な戦略兵器として、北朝鮮軍の人海戦術に対する有効な攻撃手段だと太鼓判を押されていたが、その性能は異世界の戦場でも存分に発揮されていた。
ほぼATACMSの踏襲に等しいが、威力や射程はそれに劣らず、コスト面と命中精度では有利であり、シーカーを変更すれば対艦ミサイルとして使用することも可能だ。
一方、クワ・トイネへ輸出されたK136 MLRSも簡素な造りながら、130ミリロケット弾36発を18秒で撃ち尽くす性能を持っている。
MLRSの部隊はワイバーンの飛行場を目標に砲撃し、石畳の滑走路を余すところなく耕し尽くし、煉瓦で建てられた管制塔や竜舎を木端微塵に吹き飛ばしていく。
KTSSMは大型の通常弾頭(高性能炸薬350キロ)を搭載したバージョンを1両当たり2発づつ発射しており、着弾の炸裂音は葛堅たちのテントへも微かに届いていた(だが、絶え間なく鳴り響く砲声によって彼らが気付くことは無かった)。
『中将!空軍の来援です!』
通信兵が葛堅にそう報告した直後、ジェットエンジン特有の轟音が聞こえてきた。
韓国空軍のF-15Kだ。
圧倒的な爆弾搭載量でもって敵地上部隊を駆逐するのが主任務であるが、AIM-120"AMRAAM"20発も搭載できるため、同じくAIM-120"AMRAAM"を8発抱えるKF-16Eとともに制空戦闘へ参加していたのである。
ワイバーン部隊は中距離空対空ミサイルの前に次々と肉片に変わり、数分も経たないうちに直掩隊は制空権を韓国・クワ・トイネ側へと開け渡した。
やや遅れて、爆装したクワ・トイネ空軍のFA-50が城壁へMk.82 500ポンド爆弾を一斉投下して崩壊させ、25ミリバルカン砲の機銃掃射を浴びせる。
通りに沿って夥しい土煙が上がり、直撃を喰らった兵士が文字通り消え、魔法使いの使役する魔獣も木端微塵になるか、四肢のどれかを吹き飛ばされて絶命していく。
「「戦車、前へ!」」
葛堅とノウの命令で、擬装用の草木を纏ったK1A2、K1A1戦車が、その後ろへ隠れるようにK21歩兵戦闘車とK808・K806装輪装甲車が前進を開始した。
少なからず長距離攻撃を生き残った兵が、時速70キロ近い速度で突進してくる異形に驚きの表情を向けたが、そのときには轟音とともに120ミリ滑腔砲、105ミリライフル砲からキャニスター弾が放たれていた。
銃弾並みのスピードで飛び散った鉄球が鎧を纏う屈強な兵たちを薙ぎ払い、無数の凶弾を体中に食い込ませたゴーレムが絶叫を上げながら地を這う。
砲塔上のT75K 20ミリアクティブターレットとK10B 7.62ミリ同軸機銃も火を噴き、背中を見せる敵を撃ち倒しつつ騎兵を轢き飛ばしながら前進を続ける。
戦車の後方を行く歩兵戦闘車・装輪装甲車たちも40ミリ機関砲、105ミリライフル砲を乱射しながら荒地を駆け抜け、各車が崩壊した城壁を超えて市街地へと侵入していく。
「総員降車!市街戦になるぞ!各自十分注意しろ!」
K2C1小銃を抱えた韓国兵、クワ・トイネ兵が車両から降り、待ち伏せを警戒しつつ建物のクリアリングを実施する。
銃身下部のレールへ装着したM203グレネードランチャーでドアを突き破り、またはC4爆薬で木っ端微塵にし、部屋に侵入するや、爆発に驚いている兵を5.56ミリ弾で蜂の巣にする。
隙を衝いて向かってくる勇敢なロウリア兵もいたが、近接戦闘に特化した北朝鮮兵との戦闘を経験してきた韓国兵、国防のため厳しい訓練に明け暮れていたクワ・トイネ兵は怯むことなく銃剣やナイフで受け流しては斬り伏せ、訓練で叩き込まれた体術を駆使して戦闘不能にしていく。
『
後方上空から、ジェットエンジンとは違う空気を叩くような音が聞こえてくる。
十数機のAH-64Eを従えたKAI-LUH“スリオンMk.2”が飛来したのだ。
「葛堅殿、特戦司とは?」
「我が大韓民国陸軍の中で、最も精強な戦闘部隊になります」
米軍のグリーンベレー、日本国自衛隊の特殊作戦群も認める、大韓民国陸軍の特殊部隊である。
構成員は一般歩兵など比較にならない厳しい訓練を受けた、文字通りの精鋭だ。
国王の捕縛まで30分はかからんだろうと思いつつ、葛堅は部下へ指示を出し続けた。
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「降下!」
隊長
ハーク城の無駄に広い庭園のど真ん中に足を降ろした彼らに、隠れていた近衛兵が驚きの表情を浮かべていたが、弓を向ける間もなくスリオンMk.2のドアガン――GAU-19 12.7ミリガトリング砲と、前方固定のM134ミニガンの射撃を浴びせられて沈黙する。
護衛のAH-64Eは城の外壁に70ミリロケット弾、K-AGM″隼″を叩き込み、特殊部隊の突入孔を形成した。
個人の趣味でフォアグリップやレーザーサイトを取り付けたK2C1小銃を抱え、城内へ侵入すると、やはりというべきか近衛兵の待ち伏せに遭う。
だが、優れた銃火器と、死と隣り合わせの厳しい訓練で叩き込まれた格闘技術を持った隊員たちにとって、精鋭の近衛兵と言えど雑兵に変わらなかった。
少しでも時間を稼ごうと構築された即席のバリケードはGLX-160グレネードランチャーの榴弾で兵諸共吹き飛ばされ、近距離戦で勝機を見出そうと向かってきた近衛兵は銃身下部へ取り付けたイサカM37ショットガンの射撃と毎分700発以上の発射速度で放たれる5.56ミリ弾、銃剣やマチェットソードの剣戟によって返り討ちにされる。
「次だ!」
安宋が両開きの扉を蹴破ると、鎧を着込んだ壮年の大男に数人の部下、メイド2人が彼らを出迎えた。
男たちは憮然とした様子で特戦司の隊員を見据えているが、後者は絶望的な表情を浮かべ、脚と直下の床が濡れている。
「皆様、お初にお目にかかりm…」
前口上を無視し、兵に向けてK2C1小銃の引き金を握る。
一瞬で眉間を貫かれ、床へ崩れた死体を目の当たりにしたメイドは卒倒し、それらを尻目に玉座の間へ続く扉を乱雑に開け放った。
中に居たのは、体格の良い老人だ。
僅かに怯えはしていたが、肝が据わっているようで見苦しく逃げるような真似はしなかった。
「ハーク・ロウリアだな?此度の戦争について、聞きたいことが山ほどある」
「…好きにしろ」
あっさりと降参を宣言した彼の両手に手錠がかけられた。
「…貴様らは魔帝軍か?」
「魔帝とやらは知らんが…それも後でたっぷりと聞かせてもらおう」
閲覧ありがとうございました。
次回は戦争を受けての軍拡について書いていこうと思います。
よろしければ、ご感想の方をよろしくお願いします。
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軍拡
新兵器が登場します。兵器集へ載せておきますので、後程ご確認ください。
執務を一通り終わらせた韓国大統領李舜南は、コーヒーを飲みながら一息ついていた。
「まったく…アメリカだったら原子力空母の2隻や3隻、イージス艦8隻は余裕で建造するだろうがな…。なぜわざわざ陸軍国の我が国なんだ?」
韓国を転移させた存在に向けて質問するが、当然答は返ってこない。
異世界転移によって島国となってしまった韓国にとって、今必要とされているのは軍艦であり、それを操る海軍軍人だ。
『最低でも海上自衛隊並みの戦力を揃えるべき』との結論が先の会議で出され、既に各企業や海軍の方では計画が立てられ始めている他、例年以上に艦艇の一般公開が行われており、若者へ海軍への入隊を遠まわしに促している。
幸い、入隊希望者は増加傾向にあるとの報告が海軍より届けられている。
「転移するのが分かっていれば、嘗ての我が国はあの時、戦艦・巡戦各2隻を手に入れられたかもしれませんし…残念です」
首席補佐官の金平尙も、同じように寛ぎながらそう言う。
前世界の1968年に、米国がサウスダコタ級戦艦とアラスカ級巡洋戦艦各2隻の売却を持ちかけてきたことがあったのだ。
当時の米国における戦艦の整備はアイオワ級、モンタナ級各4隻に移行していたことから、半ば厄介払いの形だったのだろう。
突然の申し出に、当時の海軍上層部は狂喜したものだったが、北朝鮮の膨大な陸軍に対応しなければならなかった韓国は、陸軍へ出す予算の都合でこれを拒否したのだ。
覇権国家がうようよいるこの世界では、良い砲艦外交役になってくれるはずだったが…。
「過ぎたことはしょうがない。それに、あの4隻を戦力化するなど、流石の我が国でも厳しいからな」
とは言っても、陸軍の特殊部隊出身とはいえ元軍人で、軍事マニアの1人である舜南としては、その雄姿を見てみたかったという気持ちもある。
「…まぁ、今の所は″KDX-2″と″KCVX-1″各4隻の新規建造が決まっただけでも良しとしよう。というか、それだけでも十分すぎる気がする」
″KDX-2″とは、世宗大王級駆逐艦の能力強化型として計画されている新型艦だ。
主砲には、退役済みのM44A2自走榴弾砲の搭載砲である65口径175ミリ砲が採用され――米軍も、タイコンデロガ級巡洋艦の主砲を国内で順次同砲に換装させている――キーロフ級と同等のミサイル搭載量を目指している。
″KCVX-1″は、馬羅島級とは違って揚陸戦力を持たない、韓国初の純粋な航空母艦である。
カタパルトの装備は費用対効果の面から見送られ、スキージャンプ方式となったが、ソ連海軍のアドミラル・クズネツォフ級に準じるサイズと、F-35K 40機以上の搭載能力を持つ。
この他、世宗大王級駆逐艦、忠武公李舜臣級駆逐艦をはじめとした既存艦、ロデ二ウス各国用の大邱級の追加建造も続けられている。
また、計画が中止されていたKSS-Ⅲ通常動力潜水艦の建造も、6番艦まで容認された。
これは、209型潜水艦の後継として構想していたもので、水中発射型巡航ミサイル8発を搭載する戦略兵器として位置づけられた。
「それに、いくら島国になったからと言って、陸軍や空軍を手抜きにするわけにはいかん」
そう言うとカップを置き、積み上がった書類――軍事関連が大半――を1枚づつ決済し始めた。
「まったく…楽しみにしていたんだがな…新型戦車…」
「気になってしまうのはわかりますが、大統領にはやるべきことが山ほど残されています。部下には動画を撮ってくるよう命じていますので、映像で我慢してください」
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韓国の大手企業"現南自動車グループ"が開発を担当した新型戦車のお披露目が行われていた。
大統領の舜南も視察に訪れる予定だったのだが、激化した職務に忙殺されているため、ここにはいない。
走行試験場の一角に駐められたK1A2の隣に、別の戦車が比較するように駐車されている。
全長は10.50メートル、全幅は3.65メートルとK1A2よりも大きな車体上には、ゴツゴツした印象のある砲塔が載せられ、それからは長大な砲身が突き出している。
この日は陸軍装備の一般公開――若者に軍へ興味を持ってもらうことで、遠回しに入隊を促している――も兼ねていたため、車両の周囲はカメラを持ったマニアで囲まれ、焚かれたフラッシュが車体を断続的に白く染めている。
本来であれば、市民に扮装した舜南もここに混ざっていたはずだった。
K2"
大韓民国陸軍の最新鋭主力戦車の姿が、初めて一般人の目へ公開されたのだった。
K1A2や日本国の10式戦車、ドイツ陸軍のレオパルト2A7などよりも無骨な外観は、見るからに攻撃的だ。
砲塔上にも、左側にK6 12.7ミリ重機関銃連装アクティブターレット、右側にK4 40ミリ自動擲弾銃アクティブターレット、KP-SAM"神弓"4連装発射筒2器が据えられているのが、その印象により拍車をかけている。
北朝鮮陸軍の物量に押され、敵中に孤立する状況を想定した武装だ。
砲塔正面、上面にも、60ミリ迫撃砲を応用した多目的弾発射筒を多数装備している。
――展示が終了し、演習も兼ねてK2を含む車両の走行・砲撃デモンストレーションが始まった。
1500馬力のディーゼルエンジンが始動し、履帯を軋らせながら前進を始める。
巨体の割に、速度・加速性能はかなり良好だ。K1A2よりも機敏に動いている。
既存戦車よりも大きく、武骨で多くの武装を満載し、まるで小さな要塞とでも形容できるかもしれないK2だが、そのような車両が高機動を見せる様は、ある意味不気味だ。
K1A2はやや重々しい感のあった車両だが、K2の動きはあたかも日本国陸上自衛隊の保有する10式戦車を彷彿とさせるものだった。
所々にある50センチはある段差を軽々と乗り越え、土煙を巻き上げながら爆走する様に、思わず感嘆の声が漏れた。
荒地を走破するK2の1個小隊4両は砲塔を旋回させ、55口径120ミリ滑腔砲――これもやはり日本との共同開発で生まれた軽量型――の照準を、戦車を模した標的に合わせる。
次の瞬間、爆走する4両の砲身から爆炎が噴出し、放たれた演習弾が標的を貫通して後方へ着弾した。
過剰なまでに搭載した多目的弾発射器から発煙弾がばら撒かれ、白煙がK2の姿を一時的に隠すが、それも一瞬だ。
白煙を突っ切って再び現れた車両が第2射を放ち、先程の的の後方へ土煙が沸く。
K1A2よりもスピーディーな戦闘を見せるK2の雄姿に、ギャラリーが口々に感想を言い合っていると、新たな車両が進入してくる。
外観はK808装輪装甲車だが、上面にはK2のものと共通した長大な主砲が、ストライカーMGSに似た形で載せられている。
K808戦車駆逐車――初期型の51口径105ミリ砲を55口径120ミリ滑腔砲に換装し、対戦車能力を高めた新型車両である。
戦車ほどの防御力はないものの、日本の16式と同様、行進間射撃が可能な性能を持っている。
既存のK1A2も、行進間射撃を移動する的へ叩き込み、K9A2自走榴弾砲の砲撃をタイムラグなしに着弾させていく。
相変わらずの練度の高さに、観客として招かれていた在韓米軍の軍人たちが唸った。
演習も終盤に入り、武装型スリオンMk.ⅡとAH-64E"アパッチ"、OH-58ベースの国産軽攻撃ヘリKAI LAHの地上攻撃が行われる。
各機の胴体両側面へ装備されたK-AGM"隼"が、戦車を模した移動する的へ吸い込まれるように直撃し、連続して放たれる70ミリロケット弾が標的を土煙で覆い隠した。
機首下面のM230 30ミリ機関砲とドアガンのGAU-19B 12.7ミリガトリング砲を地上へ射撃し、小規模な土柱をしぶかせる。
最後に、Mk.84 2000ポンド爆弾を満載したF-15KとKF-16Eの各4機編隊が猛速で飛来した。
胴体から複数の黒い物体が分離し、落下していく爆弾が目標の山肌へ到達するや、この日最大の爆炎が奔騰したと同時に、ギャラリーの歓声と拍手が巻き起こった。
新型兵器のお披露目も兼ねた軍事演習は大成功に終わり、軍事マニアや評論家、在韓米軍の幹部たちは大満足のまま帰路に着いた。
閲覧ありがとうございました。
戦艦配備させようかな、とも思い、色々と理由もつけていたのですが、まだ保留です。
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軍祭
久しぶりに本話を投稿します。
「パーパルディア皇国と戦争になるかもしれない」
フェン王国国王シハンの言葉に、会議に参加していた幹部たちはどよめき、一部は冷や汗を垂らした。
この国には魔法はおろか、ワイバーンすらない。
武器も、剣や槍、弓矢が主流だ。
対してパーパルディア皇国は、最新鋭兵器であるマスケット銃を装備し、高性能な魔導砲も配備している他、陸戦生物兵器リントブルム、ワイバーンの改良型も保有している。
歩兵にしても、一個人の実力はともかく、数が違いすぎる。
局地的なゲリラ戦なら勝利できるだろうが、大勢を覆せる可能性は皆無だろう。
「…皆の思うことは分かる。だが、如何に列強とはいえ、我が国の土地をそう易々とくれてやるわけにはいかぬ。…各人、戦の準備を急げ」
それで、場はお開きとなった。
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全員が去った後、側近のモトムが話しかけてきた。
「剣王、大韓民国という国の使節団が応接室にて待機しておりますが…」
「あぁ…。クワ・トイネ、クイラとともにロウリアに勝利したというあの…」
戦争後、国王ハーク・ロウリアは捕縛されたが、ロウリアそのものは滅ぼすことなく、戦後復興を支援しているところから、理性的かつ人道的な国家だと考えられた。
国力がどうにせよ、フェンは現在、少しでも味方が欲しい状態だ。
シハンも、ロデ二ウス3国共々要請文を送ろうとしていたところだが、向こうから来てくれた格好になった。
「よし、直接会ってみよう」
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「まるで江戸時代の日本だな…」
大韓民国外交官
道中、街のあちこちを軽く見て回ったが、建物の外観といえ雰囲気といえ、日本――それも数百年前の同国に酷似している。
国民の暮らしは決して裕福ではないが、精神レベルが非常に高い。
日本国内の韓国大使館に勤めていた経歴を持つ許沈は、過去へタイムスリップしたような気分になった。
「剣王の御成りです」
案内人が襖を開ける。
側近らしき男を連れ、壮年の偉丈夫が入室してきた。
(ほう…。なんと精悍な顔つきだ。鍛え上げられた肉体。軍人上がりかな?)
フェン王国のトップを、頭の先から足まで数秒で見終わった許沈は、そう仮説を立てた。
立ち上がり、一礼した後に名乗る。
「大韓民国使節の許沈と申します。本日は急な来訪にも関わらず取り合って下さり、感謝致します」
「うむ。使節殿、ここまでの長旅、ご苦労であった」
「ありがとうございます。早速ですが、貴国と国交を開設したいと思い参りました。挨拶として我が国の品をいくつか…」
許沈に着いてきていた部下が、持ってきたものを差し出す。
畳まれた韓服、瓶詰めされたマッコリにソジュ、韓国アクセサリーブランド自慢のネックレス、大手企業サムソン電子が誇るタブレット端末。
シハンはスタンドに立てかけられたタブレットを、様々な角度から眺め始めた。
「この石板のようなものは何なのだ?」
「はい。こちらはタブレットといいまして…」
側面の電源ボタンを押すと画面が光り、企業のロゴが映る。
試しにカメラアプリを起動させると、突然光った石版擬きに驚く彼らを余所に内カメラに切り替え、自分の顔へシャッターを切った。
撮影した自身の顔が映った画面をシハンらへ見せると、彼らは面白いほど困惑していた。
「なっ!?き、貴殿がこの中にいるぞ!一体どうなっておるのだ!?」
(あ…カメラとかテレビを初めて見る人は、やっぱり中に人がいるって思うのか)
数あるSF作品等でよく見かける光景に、許沈は少し納得していた。
シハンは咳払いすると、タブレットを置き、話し始めた。
「失礼ながら、我々は貴国…大韓民国についてよく知らない。親書は読んだが、国ごとこの世界へ転移してきたことや、島のような大きさの戦船など、とても信じられないのだ」
そこで区切ると、言葉を続ける。
「そこでだ。貴国には水軍のような組織があると聞く」
「海軍ですか?確かにありますが…」
「近々、我が国は軍祭を開催するのだが、それに貴国の軍船を派遣させてはくれぬか?我が国から廃船4隻が出るから、それを敵と見立てて攻撃してほしい。要は、力が見たいのだ」
それを聞き、許沈は考え込んだ。
国交もなしに他国の軍が来るというのは、前世界では考えられないことである。
だが、武の国であるフェンからすれば、当たり前のことなのだろう。
許沈はそう解釈し、本国に報告した。
後に、訓練を兼ねて済州島に駐屯する第3戦隊を派遣することに決定する。
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軍祭に呼ばれたガハラ神国竜騎士団所属のワイバーン3騎は、眼下の海面を遊弋している巨艦の上空1000メートルを通過した。
騎士団長スサノウは、周りに停泊する文明圏外各国の船に比べて一際異彩を放っている灰色の艦隊を見下ろす。
「でっかいなぁ…」
灰色の艦隊――韓国海軍第3戦隊に所属する巨大な艦の感想を呟いた。
第3戦隊は済州島を拠点としている、上陸作戦に特化した艦隊だ。
陣容は、最新鋭の天王峰級ドック型揚陸艦『天王峰』『天子峰』、護衛として忠武公李舜臣級駆逐艦『階伯』『柳誠源』、仁川級フリゲート『忠北』『光州』、大邱級フリゲート『群山』『羅州』、張保皐級潜水艦『羅大用』『李億祺』、孫元一級潜水艦『李範奭』『申乭石』、天池級補給艦『天池』『大清』。
天王峰級は元々、基準排水量5000トン弱の中型揚陸艦として建造が予定されていたが、急遽設計が変更され、結局1万トンを超える大艦となった。
中国海軍の071型揚陸艦のサイズダウン版とでも呼ぶべき外観の天王峰級は、LSF-Ⅱエアクッション揚陸艇2隻が入るウェルドッグに、戦闘車両24両、兵員500名、ヘリコプター4機の運用が可能であり、迅速な部隊揚陸が可能だ。
前甲板には62口径76ミリ速射砲"スーパーラピッド"が、両舷に40ミリ連装機銃"露蜂Ⅱ"が装備されており、ある程度の自衛能力を持つ。
インドネシアの発注を受けて建造されたこともあり、『タンジュン・ダルペレ級』の名称で同国海軍が採用している。
世界的に見ても高性能な部類に入るこの艦を、陸軍国家である韓国は、あろうことか2隻保有している。
これにはやはり、西側各国の要請があった。
馬羅島級の例があるように、東側国家へ上陸作戦を行うことになった場合、米国を中心に日本、オーストラリア、EU、カナダ等が共同で実施するのだが、それに何としても韓国を加えたかったのである。
無論ただ頼むだけでなく、強襲揚陸艦の設計・運用のノウハウを余すことなく教え、上陸作戦のイロハも叩き込んだ。
北朝鮮を仮想敵とし、強力な陸戦兵器と屈強な将兵多数を有する韓国軍は、そうしてまで引き込みたい存在なのだ。
また韓国国内でも、馬羅島級は軽空母としての任も兼ねるため、揚陸艦としての能力が制限される場合があることなどが指摘された。
それにより、揚陸能力へすべてを割り当てた艦の建造が認められたのだった。
また、転移によって島国となってしまったこともあり、本級2隻の追加建造が決定している。
護衛に関しては、第1、2戦隊よりも少ないものの、主な任務は上陸部隊の支援であるため、問題視はされなかった。
それを補うように潜水艦の護衛が付いている他、新規建造される駆逐艦・フリゲートが配属される予定だ。
《眩しいな…》
「ん?…あぁ、今日は快晴だしな」
相棒の風竜が話しかけてくる。
彼らは知能が高く、竜騎士とコミュニケーションが取れるほどだ。
《いや違う。あの船団から光があらゆる方向へ照射されている。我々が同族と会話したり、何が飛んでいるのかを確認するものだ。人間には見えないがな》
「へぇ…」
思わず目を凝らすが、相棒の言う通りその光が見えることはない。
《しかし、あまりにも強すぎる光だ。儂は120キロ先のものを見ることができるが、あの船たちはそれよりもずっと遠くの敵を探索できるようだな》
「…大韓民国か。凄い国だな」
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「あれが韓国の戦船か…まさに、海に浮かぶ城だな」
「えぇ…。私も何回かパーパルディア皇国へ赴いたことがありますが、これほどの巨体を持った船など、見たことがありません」
そんな彼らを他所に、韓国艦船の1隻――駆逐艦『階伯』が前進する。
前甲板に据えられたMk.45 5インチ速射砲が旋回し、長大な砲身が廃船の1隻へ指向した。
「あそこから狙うのか?『剣心』でもあの距離では無理だが…」
直後、砲門へ発射炎が閃き、僅かに遅れて砲声が届いた。
発射された直径127ミリの砲弾は、木造の舷側を紙のように貫通し、船内で炸裂する。
一瞬、船全体が大きく膨らんだように見えた直後、標的は紅蓮の炎とともに跡形もなく吹き飛んだ。
3秒おきに4回の射撃が実施され、そのすべてが廃船へ命中し、燃え盛る残骸へ変えていた。
「これは…何とも…凄まじいな」
自分たちの知る攻撃方法とはかけ離れたそれに、フェン側は唖然としている。
他の文明圏外国家からやってきた者たちも、売店で買った食べ物を驚きのあまり落としていた。
「すぐにでも、韓国と国交を開設する準備に取り掛かろう。不可侵条約は勿論、安全保障条約も結んでおきたいな」
シハンは、満面の笑みでそう言った。
部下たちも、異論を唱えはしなかった。
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その頃、韓国海軍第3戦隊旗艦『天王峰』CICでは、乗組員たちが首を捻っていた。
同艦が装備する長距離対空レーダーAN/SPS-48Eが、西方より向かってくる20機編隊を補足したのだ。
ほぼ同時に、僚艦のレーダーもこの編隊を探知している。
「確か、西にはパーパルディア皇国という国があったな」
「えぇ。確かに」
艦隊司令
朴は顎に指を当て、考え込むような仕草を見せる。
「フェン側へ、軍祭へパーパルディアは招かれているのか問い合わせろ。万一のため、対空警戒は厳とする」
同国へ派遣された外交官が門前払いを喰らったことを思い出した朴は、心中で嫌な予感を感じながら命じた。
――しかし、フェン側からの返答はないまま、未確認編隊はアマノキ上空へ姿を現した。
ロウリア軍が使用していたワイバーンによく似ているが、情報よりも優速なようだ。
(噂に聞く、ワイバーンの改良型か?)
朴が心中で呟いた瞬間、20騎のワイバーンが二手に分かれた。
半数がフェン王国の王城へ、残りが『天王峰』へと向かってくる。
驚く間もなく、王城へ向かった騎が導力火炎弾を吐き出した。
木造の天守閣はひとたまりもなく炎上し、紅蓮の炎が全体を包んでいく。
それを見た朴は、とっさに命じる。
「接近中の編隊は敵だ!対空戦闘!」
両舷の、ステルスシールドで覆われた40ミリ連装機銃"露蜂Ⅱ"が指向する。
マッハ2で飛行する対艦ミサイルも撃ち落とせる性能を持つ機銃が、火器管制システムによって操作され、ワイバーンへ対しその砲火を放った。
発砲の度、2本の砲身が互い違いに後退し、毎分660発の発射速度で40ミリ弾を送り出している。
突っ込んできたワイバーンが、真正面から押し寄せた大口径弾の連なりに貫かれ、木っ端微塵の肉片と成り果て、海中へばら撒かれた。
後ろに位置する騎にも順番に射弾が浴びせられ、鮮血と肉片の残骸が海に落下し、海面を赤く染める。
『全騎撃墜!』
その報告が上がった直後、王城を攻撃した残りの編隊も向かってきたが、それは護衛の駆逐艦・フリゲートが対処に当たる。
忠武公李舜臣級、仁川級、大邱級の主砲が上空を向き、5インチ砲弾を撃ち上げる。
近接信管の炸裂がワイバーンを叩き落とし、導力火炎弾の射程に入る遥か前で全滅させた。
『脅威目標なし!』
「状況終了。…しかし、何だったんだあいつらは…?」
竜騎士の救助を命じた後に、ワイバーンの墜落地点へ飛んでいくスリオンⅡのプロペラ音を聞きながら、朴は独り言ちていた。
閲覧ありがとうございました。
次回は監査軍を蹂躙します。
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