全日本レベルの潔子さん弟 (灰色狛犬)
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第1サーブ
あと赤葦さんが個人的に好きです
烏野高校体育館。俺は廊下を渡り中へ入る。
「どーも」
「どーもじゃなくてちゃんと挨拶して凉」
ジャージ姿のマネージャーに注意される。
「潔子さんと何話してんだあぁ?」
「そうだぞ!! 何話てんだぁ!!」
「威嚇するな田中西谷」
目の前で田中と呼ばれた坊主頭先輩とちびっこさんが首根っこをほかの先輩に掴まれてるのをよそに自己紹介をする。
「どーも初めまして。肺炎にかかって入学早々1ヶ月間入院してました
さっきの坊主先輩がガタガタ震えながら俺とねぇさんを見比べる。
「弟君!! 何かわからないことがあったら何でも聞いてくれ!!」
「多分坊主先輩には聞かないと思います」
「田中が嫌なら俺に遠慮せずドンドン「もういいか田中西谷?」
どう見てもキャプテンな先輩が話を遮る。
「ええっと清水じゃ清水と被るから凉はどこのポジションだ?」
「そこでもいいです。去年全日本で全部のポジションさせられたんで。だけどセッターだけはしたくないです」
「なんでか教えてくれるか?」
「単に疲れるんで嫌です。セッター以外だったらセンターでもサイドでもどこでも」
なんか目つき悪い黒髪に睨まれてる気がする。
「お、おぅ。とりあえずプレー見て決めるべ。とりあえず清水に部室教えてもらって着替えてくれ」
「なぁなぁ!! さっき全日本って言ってたよな」
「言ってないよ」
「全日本手すごい人いっぱいいる?」
「U-15はそこまで。高校生以上だと牛島さんとか宮兄弟、あと佐久早さんかな」
「会ってみてー!! あと俺日向翔陽! よろしく!」
「とりあえず凉交えて3対3するからやりたいやつ集まれ」
ぞろぞろと集まりキャプテンがチームを決める。
俺はキャプテンと菅原さん。相手は田中先輩と日向と影山になった。
「とりあえず5点でいいかやるぞー」
「すみませんちょっと待ってください。ねぇさんヘアゴムない? 目にかかって邪魔」
ねぇさんがテトテトと歩いて持ってきてくれたゴムでまとめる。
「お待たせしました。サーブは⋯⋯あっちか。お二人ともテキトーにしましょう」
「かましてやれ! 殺人サーブ!」
バンッ!! という音とともに強烈なサーブが飛んでくるが澤村さんがきれいにレシーブする。影山君すごいかおだぁ。
「凉!!」
少しネットから離れた高いトスが上がる。
ゆったりと助走して跳ぶ。目の前には日向と影山がブロックに飛ぶのがくっきりと見える。今日は調子が良い感じだ。
背中を大きく反り左手をボールへと振る。
ドンッ!!!
周りの部員が静まり返る。
日向の腕に当たった俺のスパイクはブロックを抜け床へと叩きつけられた。はじかれた日向の身体と共に。
「ごめん。さっきねぇさんにふざけたら怒るって言われたから強めにしたけど大丈夫?」
俺は日向へと近寄る。
「でもその顔してたら大丈夫だな」
日向は満面の笑みでこっちを見てる。
「次は俺たちの番だ」
「おう!!」
田中先輩の声で日向と影山の顔が引き締まる。
次は日向が田中先輩のレシーブと同じタイミングでスパイク助走をとる。何も見ないでもう飛んでいる。影山のドンピシャトスを日向が打つ。
「追いついた」
3対3というコートが広く視界も広い中見えているなら追いつくのは簡単。
腕が振り下ろされたタイミングで日向は目を開ける。映る景色は自分の体の横をボールが落下していく。
トントンというボールが転がる音だけがコートに響く。
「見え見えじゃ意味ないね」
俺はそれだけ言い。試合は過ぎていく。
「凉。一発で止めた」
「だな。おれが対戦した中で一番うまかった」
「「もっとうまくなりてぇ」」
影山は苦虫を嚙み潰したような顔でうつむく。
「二人とも何してるの? 帰らないの?」
「清水先輩」
「あいつなんであんなうまいんですか?」
影山が清水先輩に聞く。
「凉はバレー始めたのは中一の終り頃だったの。その時に全力で遊んだからって凉は言ってた」
でも、と清水先輩は言葉を続ける。
「凉はいつもやる気なく過ごしてるんだけど、今回は初めからまじめだったから良かったね」
それだけ言い残し、先輩は帰っていった。
「日向、俺らは左手の手加減に負けたんだ、次は勝つ!!」
「おう!!」
俺は盗み聞ぎしてしまったのを後悔しつつ二人にばれないように帰路についた。ただ楽しくなりそうな予感と共に。
フォント使ってっみたいって思ってからどこでできるかわからなくてめっちゃ探した。
続きは期待しないで。
ではサラダバー
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第2サーブ
「凉ってさめちゃくちゃバレーうまいじゃん?」
「まあ日向が赤ちゃんレベルだからな。俺巨神兵だなレベル差的に」
朝練に一応来たら速攻で日向に掴まってしまった。
「俺にバレー教えてk「やだよめんどい」
「そこを何とか」
土下座しそう勢いで頼み込んでくる。
「俺基本感覚でやってるから教えれないよ。それに大地さんにレシーブやスガさんにトス教えてもらいな」
「でも凉が一番うまいじゃん」
この目だ、見透かすような透明すぎて直視できない目。こういうやつはキライだ。
「日向ぁ! 凉! お前ら話してないでちゃんと混ざれ!」
「すすすすみません! すぐ行きます!」
「はい」
朝練も終わりみんなが片付け始めるのを横目にスガさんに気になっていたことを聞く。
「スガさん、ねぇさんが言ってた旭さんってなんで来ないんですか?」
スガさんのほか周りの2、3年が急に下を向き始める。「あいつはな⋯⋯」とスガさんが話をしてくれる。
曰く、大会で彼が徹底的にマークされ、彼のスパイクは全く決まらず敗戦してしまったと。そしてその敗戦の原因を全く決めれず、トスを呼ぶことも怖くなった自分が戦犯だとしてしまったようだ。
エースが狙われることなんてよくあることだ。俺も全中インハイでやられた。だが狙われ敗戦してしまっても切り替えれるか切り替えれないかだ。彼は切り替えれなかったというだけの話だ。
「そういうことですか。でもそういうのってちょっとした衝撃で戻ったりしますよ」
こういうのは日向たちに任せよう。あいつエースになりたいらしいし。
「んローリングッサンダァァァ!!!」
目の前に馬鹿な先輩がいる。今来たけど西谷先輩が馬鹿なことしてる。
「ノヤ先輩あれなんですね、動きはでかいんですね」
「凉君、お前が潔子さんの弟だとしても許さん!!」
「おつかれさま。今年もやるんだよね⁉
「ハイ! まだまだ練習が足りないですから先生」
武田先生に合宿をするか? という問いに大地さんはすぐさま回答をする。先日復帰したノヤ先輩と肺炎でこれなかった俺とエースがいないという不安定な烏合の衆を。ちゃんと見ている答えだ。
「GW最終日練習試合を組めました!! 東京の古豪『
武田先生がめちゃくちゃ頼んだんだろうな。しかし周りのみんながはしゃぎすぎててうるさい。
なんかノヤ先輩が試合でないとか言ってたけど出たくなかったら出なければいい。とりあえず残りの練習をどうさぼるかだな。
「お疲れさまっしたぁー!!」
「凉」
「何? ねぇさん」
「さぼりすぎ、怒るよ?」
やっちゃった⋯⋯ばれてーた
この後家でめっちゃ怒られた。
「お疲れ様です! 紹介します! 今日からコーチをお願いする烏養君です!」
「音駒との試合までだからな」
「すみません。日直で遅れましたぁ」
「凉、4日連続の日直って何?」
「ねぇさんより遅いとは一生の不覚!」
ねぇさんが無表情で怒ってる。
「凉、フライング3周してから参加してね」
「⋯⋯」
「返事は?」
「はい」
「えぇーっと、いいか? とりあえず遅れたお前はフライングしてろ。時間無ぇから6時半から試合だ!」
「どことですか!」
「烏の町内会チームとだ」
これフライングだらだらやってたら試合でなくてよくね?
「凉?」
ばれてーた、これ人数集まるまでに終わらせて最初っから俺入れるつもりだ。真顔のねぇさん怖いわー。
いったんここで切らせていただきますね。
次回 エース登場!! 無気力少しだけ仕事する!!
☆9もくださった紅頚黄鼓光慧航行さん、ヤコウさん。☆5もくださったぼるてるさんそれにお気に入り登録してくださった皆様。ありがとうございます!
それではどうぞ良しなにご容赦を
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第3サーブ
「凉おつかれ! みんな集まったぞ」
日向がタオルとスポドリを渡してくれる。
「ありがとう日向」
「おい遅刻くんお前町内会チーム行ってくれるか?」
「あぁー、はい。いいですよ。サイドですかミドルですか?」
「それは町内会のやつと話してくれ」
あ、俺戦力としてみられてないやつ。
「旭さんだ!」
ワイワイ始めてる。
「きみ、とりあえずミドルお願いできる?」
「あ、はい」
聞くところによると来れるはずだった大学生が来れなくなったらしく自分がミドルブロッカーとして入ることになったらしい。
さてさて試合が始まりましたねぇー。スガさん寄せ集めチームなのに合わせるの上手いなぁ。あと何故だかわからないんだけど俺にばっかりサーブを打ってくる影山くんは何したいんだ?
「ゴメン! ロン毛の兄ちゃんラスト!」
月島たち3枚で塞ぐのね。
ブロックされたボールはまるでコマ送りのように落ちていく。
ボールと床の間に一枚の受け皿が入る。
「うぉぉー!! 上がったぁぁ!!」
西谷先輩の右手がボールを繋ぐ。
「だからもう一回トスを呼んでくれ!! エース!!!」
スパイクフォローされたボールをスガさんが旭さんへと届ける。
打ち切られたスパイクは静寂を生み、余韻と共に驚愕の景色を生む。
「次はおれの番です!」
「日向めっちゃ張り切るの良いけど下手がバレるよ」
「凉うるさい! 凉こそ今のところ何もしてないじゃん」
「残念でしたぁぁ! 俺は先輩たちの顔を立ててサポートに回ってただけでしたぁ」
「なぁ先生。あの遅刻くんは?」
「あぁ凉くんですか。彼はなんと言うか僕にもわからないです。そこはマネージャーの清水さんに聞いてください。彼女たちは姉弟なので」
「マネ、教えてくれねぇか?」
「凉はただやろうとしない風に見せてるだけです。凉が練習を真面目にしてないのは練習は人に見られる物じゃないってミニバスやってた頃に言ってたからだと思います」
「なるほどなぁ、これまた扱いづらいやつだな」
「凉! ラスト!」
「体勢悪いよーw」
「止めるぞ!」
3枚ついたブロックの内側、抜け穴に体を反転させながら思いっきりスパイクをする。
「なんだあのインナー……」
「日向、俺はやらないだけで全部できるよ?」
俺の爆弾発言で周りが凍りつく。
日向と影山の熱視線以外が自身に突き刺さる。
「やべーべ、お前」
「旭さんそんな引かないでください」
「いや、全員引くだろあのインナースパイク」
「凉お前ほんとすげーな!」
旭さんやスガさんが真顔で引いてるのを見て悲しくなってしまう。
「みんな褒めないで、凉がちゃんとしなくなる」
「ねぇさん変なこと言わないで、コーチに使えるアピールしただけだから」
とりあえず試合は終わって勝者は町内会チームだった。
そして課題としてはレシーブ。拾わないとまずスパイクまでつながらないからねー。
淡々と時間は過ぎ、GW初日5月3日。猫が来る。
コロナで最近すごいですねーまぁコンビニと寿司屋のバイトで気にせず働いていますが。
評価していただいた皆様と誤字を指摘していただきありがとうございました。
それではどうぞよしなにご容赦を
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