「んぅ...?」
窓辺から柔らかな光が降り注ぎ、私の顔を照らす。もう朝か...なんて考えつつ、布団でモゾモゾしていると冷たい空気が、私の鼻を撫でた。
「うぅ...さぶ...」
反射的に首から上を布団の中に入れ込んで、目を瞑ってしまった。最近の冷え込みはハッキリ言って異常だ。マトモに布団から出る気にもなれないほどに寒い。もう5月なんだがなぁ...。あーさむい。
「んー...ふあぁぁ...ふぅ...」
とは言え、うれしいことにやるべきことは朝っぱらから大量にある。シアワセダナー。...嫌々のっそりと、年老いた亀のように布団から首を出す。さて、親愛なる掛け布団との別れは惜しいが、いつまでも横になってる訳にもいかない。寝ぼけ眼を擦りながら上体を起こして、一つ大きめの欠伸を.....よし、目ぇ覚めた。
せっせと布団を畳み部屋の隅へ寄せておく。今日は寒いだけで特に雪が降っている訳でもないし、天気も雲一つ無い快晴だ。後で干そうか、なんて考えながらテキパキとその他身支度を済ませていく。
「今日はアレとアレと..あとアレもか...」
部屋の襖を開き、まず自分のやらなければならない事にサッと優先順位を付ける。
「まぁ、いつも通りでいっか」
廊下が軋まない程度の急ぎ足でとある <部屋>まで向かう。最近になって<コレ>を起きてから最初にやってた方が良かったなー、なんて思うようになり今までを思い返す。うん。面倒なことを後回しにするのはいけない。
そんなことを考えながら歩いていると、件の部屋の前に着いた。ガッ、と襖に手を掛け一気に開ける。
「起きてください、紫様」
忙しい一日が今日も始まる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
...しばらく待つが返事は無い、まぁいつも通り
「紫様、朝ですよ」
...布団の中から応答は無い、まぁそんなに珍しいことでもない
「早く起きないと、ご飯冷めちゃいますよ」
まぁ、まだ作ってはいないが
...もぞっ
...現金な人だなぁ、いや妖怪か、なんて思いながら部屋に背を向けて最後に一ついい放つ
「藍より起きるの遅かったら、朝ご飯抜きですからね」
返事も聞かずに私はツカツカと歩き出す、仏の顔もなんとやらだ。作ってもいない朝食を人質にするのはどうかと思ったが、起きないのが悪い。妖怪の賢者と言えど、腹の虫には勝てないらしい。後ろからドタバタと慌てたような音が聞こえるが、気にせず台所に向かう。さぁて今日の献立はどうしたものか...。
在り来たりな始まりでしたねぇ...
一応連載?予定ですので、そういえばあれ...なんて感じで覚えていれば、また見に来て貰えるとありがたいです。
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2話 主人と同僚
それでは、ゆっくり読んでいってね...なんてね
「いただきま~す!」
そう言うのは、朝食にありつけて上機嫌な紫様。良かったですね、藍が寝坊助で。...それにしても、寝坊なんて珍しいな藍の奴。いつもなら、叩き起こされるのは私の方だったんだが...まーた遅くまで仕事でもしていたんだろうか。...仕方ない
「紫様、藍を起こしてきますのでご飯のお代わりは自分でよそってくださいね」
「ふぁーい」
「全部飲み込んでから返事してくださいよ...」
少し呆れながらそう言って、藍の寝ている部屋まで向かう。紫様は最近冬眠から覚めたからなのか、いっぱいご飯を召し上がるようになった。例年通りなら、3月の中頃、遅くとも終わりには起き出して来るのだが、今年は5月に入ってやっとだ。いつもより長く眠っていたのもあり、食べる量が増えたようだが、体重計にのって酷く青ざめた顔をしていたのには笑ってしまった。
「..,大丈夫か、藍の奴」
いつもは紫様、藍、私で手分けして仕事を片付けているのだが、紫様が冬眠に入るとどうしても、一人頭の負担が増えてしまう。まぁ今年はどっかの誰かさんが起きるのが一ヶ月遅かったので余計に、なんだが。
「藍、起きてるか?」
そうこうしていると、藍の部屋の前まで着いていた。身体の調子を崩していたら悪いと思いつつ、部屋の外から声を掛けてみる。
...どうやら、まだ寝ているらしい
少し悩んだが、襖を開けこんもり膨らんだ布団に呼び掛ける。
「朝だぞ、藍」
「...んぅ...ん?...白か...すまないが、もう少し寝かせてくれないか...」
「...また遅くまで仕事してたのか?」
「...うん」
「...分かったよ、朝ご飯、一回下げるから起きたら汁物温め直してちゃんと食べなよ」
「...すまん、白」
そう言って部屋の襖を閉じた。藍も大分参っているんだろう、あんなこと滅多に言ってこない。実際、紫様が眠っている間の書類仕事は、ほとんど藍がこなしていた。なにぶん、私がそういう作業に疎く苦手なので悪いと思いつつも、藍に任せる他無かったのだ。すまん藍、仕事が一段落したら一緒に酒でも飲もう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「んっ...ふぅ...あら、白、藍はどうしたの?」
戻って来ると、おそらく幾度かお代わりをしたであろうお茶碗を置いた紫様にそう聞かれた。
「疲れているみたいでしたので、そのまま寝てもらうことにしました。最近は、藍に頼りっきりだったので...」
「...私だってまだ寝てたかったのに」
半年近く眠ってたのに何を言ってるんだ、うちの主人は
「そんなこと言ってないで、溜まってる仕事、ちゃんと済ませてくださいね」
「むぅ...わかってるわよ、ごちそうさま」
「お粗末様です」
席を立つ紫様を横目に私は席に着く。さぁて、そんな私もやらなければならないことだらけなんだが、朝食くらいゆっくり食べても罰は当たらないだろう。
「いただきます」
あぁ、今日も今日とてお米が旨い
そういえば主人公の名前出して無いなぁと思い、一応補足すると、白とかいてハクと読みます。書きながら思うんですが、0から文章を生み出すのって大変ですね、ほんと。ただ、書いてて楽しいのも事実。また見に来てくれると幸いです。
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3話 人里にて
「うぅ~、さぶいぃ」
私は空を飛びながら、そう独り言を溢す。今は藍に頼まれたお使いと買い出しのため、まずは人里へ向かっている。
朝食を済ませて、溜まっている家事に手を付けていると、しばらくして藍が起き出して来た。
「おはよ、藍」
「ん、おはよう」
一度、家事をする手を止め軽く挨拶をする。まだ少し眠そうに目を擦っているようだが、まぁ眠気より食欲が勝ってしまったんだろう。挨拶もそこそこに台所へと向かっていった。
主人と従者はよく似る、と言うのは案外的を得ているようだ。空腹の藍を横目に、そういえば買い出しにも行かないとなぁ、なんて考えていると盆に朝食を一式揃えて運んで行く藍に声を掛けられた。
「白、少しいいか?」
「どうした...今から味噌汁に油揚げは入れてやれんぞ?」
「いや、それはそれで残念だが...や、違う!そうじゃなくてだな!」
「冗談だって、それで、どうかしたのか?」
「あぁ、実はちょっとな...」
話を聞くと、なんでも最近忙しくて橙に会えておらず、心配だから少し様子を見てきて欲しい、という内容だった。自分で会いに行く!なんて言うようなら寝てろ、と一蹴するつもりだったのでまぁ、藍は藍でちゃんとわきまえてるらしい。
買い出しの帰りに立ち寄れば良いだろうと思い、ひとまず了承した。それにしても、藍の橙に対する甘やかしはかなり酷い。まぁ可愛くないと言えば嘘になるが...それにしても可愛がりすぎだろう、親バカと言うかなんと言うか、困ったものだな。
「む、そろそろか...さむい」
そうこうしていると人里が見えてきた。私は里の入り口手前辺りに降り立ち、門番をしている青年に声を掛けた。
「こんにちは、今日も早くから精が出ますね」
「おぉ、誰かと思えば白様でしたか、どうぞお通りください」
すれ違い様に青年に軽く頭を下げ里の中へ歩を進める。紫様の式神ということもあり、里の人達は総じて歓迎してくれる。
里にはそこそこの頻度で訪れており、ある程度の地理はある。まずは八百屋にでも行こうか、と思っていると声を掛けられた。
「白、久しいな、買い出しか何かか?」
「あ、慧音先生、お久しぶりですね、まぁそんなところですよ」
声の主は慧音先生だった。
「おいおい、先生なんて着けなくて良いぞ...って、言っても聞かないんだろう?」
「えぇ、慧音先生」
少し笑いながらそう返す、慧音先生は文字通り寺子屋で先生をしている。堅苦しいから先生なんて着けなくて良い、と何度か言われているが、先生呼びが落ち着くから、とそのままにしている。
「先生はどうなされたんですか?」
「いやなに、今日は寺子屋が休みでな、里に異常が無いか散歩がてら見回りをしてたところで、お前の姿が見えてな」
「そうでしたか、何かおかしなこととかありましたか?」
「いや、特になさそうだ、そろそろ切り上げようと思っていたところだったしな...そうだ、新しく出来た団子屋がうまいと評判でな、今からどうだ?」
むむぅ...団子...私は自分で言うのもなんだが、甘いものに目がない。評判の団子...食べたい...でも藍にも頼まれてるし...いやでも...駄目だ駄目だ、曲がりなりにも今は仕事中だぞ白。先生の誘いは嬉しいがいけない、ここは心を鬼にして断るんだ、意思を強く持て白。
「すみません、嬉しいお誘いですが今日はやめておきま「ぐぎゅるるるぅぅ」.........」
「ふふっ...よし、じゃあ行こうか」
「.......はぃ」
寒いはずなのに顔が熱い、くうぅ...///仕事中だろうが腹の虫には勝てないらしい...誰に似たんだかなぁ
まだ決まらんようです、はい。
今日は文がスルッと出て来ましたね、当社比ですが。
ほんわかした気持ちで、また見て頂ければ幸いです
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4話 甘いものと異変
「すいませーん、みたらしあと5本追加で」
「あいよ!」
「...よく食べるなぁ、白」
次々と私のお腹へと吸い込まれて行く団子達を見送りながら、慧音先生が半分呆れたような調子で言う。
「む、ほぉーふぇふはへ?」
「ちゃんと飲み込んでから返事しないか、行儀が悪いぞ」
...今朝のやり取りを思い出し、黙ってお茶を口に含み、団子を流し込む。
「んっ、ふぅ...いやぁこんなに美味しいなら、いくらでも入っちゃいますよ」
「そうは言ってもだな...」
慧音先生の視線が、私が平らげた団子の串と皿へ移る。...確かに少し食べ過ぎたかも、えーと、ひぃふぅみぃよぉ......40?!え、そんなに食べたの私、怖っ。
「はい、みたらしお待ちどおさん!」
「ありがとうごさいます、あとお茶のお代わりもお願いします」
「あいよ!いやぁ、嬢ちゃん気持ちの良い食べっぷりだねぇ!見てて気分が良いよ!」
「ふふっ、ここのお団子が美味しいからですよ」
「おっ、うれしいねぇ!」
まぁ、頼んだ分はしょうがない。店主の方にそう言い、受け取った団子を頬張る。んー、甘い、美味しい。
「はぁ、まったく...ところで、少し気になる事があるんだが...」
幸せそうに団子を咀嚼していると、慧音先生にそう投げ掛けられた。
「ここ最近の寒さは流石に異常じゃ無いか?もう5月になると言うのに、雪が降る日もあるくらいだ」
うんうんと頷きながら話を聞く、甘い。
「人里では、この状況を〝異変〟じゃないかと疑う声もいくつか挙がっている」
異変、か。基本的に妖怪達が故意に引き起こす普通では説明がつかない現象。これだけ冬が長引いているんだ、無理もない。とは言え、人里では何かある度に異変だ異変だ、と騒ぐ事も珍しくない。最近魚がほとんど獲れなくなっただの、風邪を引く子供が多いだの、何でもかんでも異変のせいにしたがる。
そんなにしょっちゅう起こって堪るか。事後処理は私達がやるんだぞ。私と藍の胃がいくつあっても足りん、ただでさえ団子でいっぱいな胃が。
...とは言うもののだ、確かに少し、いやかなり変だ。今回は異変と言って差し支え無いだろうなぁ、多分。あー、おいし。
「私もおかしいと思っているが、まだ霊夢も動いて無くてな...」
店主からお茶のお代わりを受け取り、飲みながら話を聞く。
「良ければ少し、異変について調べてみてはくれないか?」
半分ほど飲み終え、口を開く。
「それは出来ませんね、異変を解決するのはあくまで人間ですから」
わざと少し妖気を漏らし、微笑みながらそう言う。
「!...そうだったな、野暮なことを聞いた、すまない」
「いえ、先生も少し心配なのでしょうから、しょうがないことですよ」
ご馳走さまです、と店主に言い腰を上げる。お代は座っていたところに置いておけば良いだろう。
「まぁ、紫様にも伝えておきますからご心配なく、誘って下さってありがとうございました」
「いや、付き合ってもらって悪かったな。それじゃあ、またな、白」
ぺこりと頭を下げ団子屋をあとにする。さぁて、お腹も膨れたし買い出しに行こう。
...今度藍も連れて来よっか、お団子
甘いものは別腹ですから、えぇ。まぁ基本的に日常系ですし、戦闘シーンを言語化するの苦手なので弾幕ごっこはしないかなぁ...のんびり書いて行きますので、また見て頂ければ幸いです
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5話 迷い家と橙
「ふぅ、買い物はこれでおしまいかな」
私は買い出し用の鞄に買ったものを入れながら呟いた。慧音先生と別れたあと、少し急ぎ足で店の連なる通りへと向かい必要なものを片っ端から買って行った。一ヶ月分買い込んだのでかなり時間がかかったが、まだ日は暮れていないようだ。
「...それにしても、ホント便利だなぁ」
鞄の中に目を落とす。そこに買ったものはなく、幾つもの瞳がこちらを覗いてくる異様な空間が広がっている。この鞄は紫様に渡されているものだ。難しいことは良く分からないが、ここに入ったものは家まで転送?されている、まぁ、厳密に言うと少し違うらしいが。ホント規格外な能力だなぁ...。
「さてと、あとは...迷い家に行って橙に会おうか」
歩きながらそんな事を考えていると、里の出入口に着いた。無論、藍に頼まれたお使いも忘れない。私自身も、最近橙には会えていないので様子は気になる所だ。まぁ、十中八九こたつで丸くなって寝てるだろうが。
そんな様子を想像すると思わず笑みが溢れる。フフッ、と笑いながら里を出た私は地面を蹴り、空を飛んで迷い家へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しばらく飛んでいると、眼下に古びた集落が見えてきた。どうやら着いたようだ、私はそのまま降下して行く。
「よっ、と、着いた着いた」
私は、古びた集落の中で唯一外観が綺麗にされている家屋のそばに降りた。縁側の方へと歩いていき、少し大きめの声で呼び掛ける。
「ごめんくださーい」
すると、少し間を置いて家の中からドタドタと音がした。良かった、留守じゃ無いらしい。はいはーいと声がした後、襖が開いた。
「はーい、何度来られても新聞は取りませんよ...って白様じゃないですか!お久しぶりです!」
「ははっ、久しいね、橙」
...どうやらしつこいカラスに絡まれているようだ。
「ホントですよ!最後に会ったのは...ってそれよりどうかされたんですか?藍様ならともかく、白様が来られるなんて...」
「なぁに、買い物がてら藍に様子を見てきてくれと頼まれてな、元気そうで良かった」
「そうでしたか、あ、お茶出しますね、どうぞ上がっていってください」
うん、日暮れまでまだ時間もあるし少しくらいゆっくりしていっても大丈夫だろう。もう少し橙と話もしたいし。
「そうか、じゃあお言葉に甘えさせてもらおう」
そう言うと私は橙に促されるように、部屋へ足を踏み入れた。くつろいでて下さい、と橙に言われ私はこたつに潜り込み温まりながらお茶の到着を待っていた。ぬくぬく。
そうしていると、外から聞き慣れない声が聞こえた。
「ありゃ、ここは一体どこなんだぜ?」
最後の人は一体誰なんでしょうね...いやぁわからない
それにしてもこの辺りから知識不足が響いて来そうな予感...大丈夫かなぁ、まぁ、また読んで頂ければ幸いです
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6話 魔法使いと弾幕
家の外から聞こえた声に珍しいな、と思いつつ急須と二人分の湯呑みを持ってきた橙に声を掛ける。
「橙、珍しく迷い人が来たみたいだ、出向いてやればどうだ?」
「え、ホントですか白様?珍しいですね...いつぶりかなぁ」
迷い家は、人が迷ったときに稀にたどり着く事が出来る少し特殊な場所だ。言い伝えでは、迷い家のものを持ち帰ると幸運が訪れるというが、他人の家財を盗んで幸せになれるだなんて、昔は偉く自分本意の人間がいたものだな。
「わかりました、少し出てきますね」
そんなことを考えていると橙はお茶一式をこたつに置き、来訪者に出向きに行った。残された私は急須に手を伸ばし、湯呑みにお茶をコポコポと注いでいく。橙の分も入れておいてやろうか、猫舌だし少し冷めたくらいが丁度良いだろう。すると、外から橙ともう一人、迷い人の声が聞こえる、かなり声をあらげているようだ。
「...どうかしたのか?」
気になった私はこたつから這い出て、縁側に面している襖を開けた。そこには橙と、白黒の衣服を身に纏った少女が口論をしている姿があった。
「だーかーらー、異変のことなんてなんにも知りませんよ!」
「いーや、こんなところにある怪しい集落、そのうえ妖怪まで出てきたんだ、どう考えても怪しいぜ!」
「全然意味分かんないよ!なんなのよあなたは!もう!」
「ん、私か?私は霧雨魔理沙!普通の魔法使いだぜ!」
「そういうこと言ってるんじゃないの!」
どことなく話が噛み合っていないようで、橙はかなり参っているようだ。どうやら異変について調べている途中、迷い家に迷い込んでしまったらしい。それにしても魔法使いか、この年で珍しい...
「強情なヤツだな、こうなったら弾幕で勝負だ!私が勝ったら洗いざらい吐いてもらうぜ!」
「ちょっ、何勝手なこと「スペルカード三枚、被弾三回でいくぜ!」...あぁ、もう!」
そう一方的に戦いの宣言をした白黒の少女は、持っていた箒に跨がり宙に浮く。臨戦態勢と言った所だろう、それにしても話が飛躍したなぁ...。まぁ、橙がどれくらい強くなったか見れるのは良いかな。
スペルカードルール、通称弾幕ごっこ。最近になって幻想郷全土に制定されたものだ。人と妖怪にはどうしても実力差が出る、それを防ぐために様々な制限を設け、そのうえで戦うようにさせる為、産み出されたそうだ。まぁ簡単に言えば、力を一定にして死なないように戦って下さい、ということだ。...ちなみに私はそんなに綺麗に戦えない、魅せる弾幕って撃つのに頭つかうんだもん。まぁ、見る分には綺麗だしいいけどね。
「...さて、ゆっくり魅せてもらおうかな」
私は縁側に腰を降ろし、お茶を飲みながら空を見上げた。
はい、魔理沙さんでしたね。白は弾幕苦手なようです。もう少し長めに書いたほうが見やすいですかね?分かんないですが。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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7話 決着と情報
...さて、5分ほど経っただろうか。まぁ、戦況としては橙が押されている。魔理沙さんだったか、中々の実力者らしい。会話の内容からしても、弾幕ごっこにはかなり自信のあるようだったし、橙には厳しいかな?...ちなみに、橙は被弾数2と、後がないうえにスペルも残り1。それに対して、魔理沙さんは被弾0でスペルも2枚残している。流石に勝負有ったかな?
「これでトドメだぜ!喰らえ!『恋符 マスタースパーク』ッ!!」
最後の一撃と言わんばかりに声高らかにカードを宣言する。魔理沙さんの手元が光る、刹那、そこから極太のレーザーが発射される。うわぉ、ド派手なこと。
「へっ?うにゃぁああああー?!」
あっちゃー、直撃。橙は瞬く間に光の奔流に呑み込まれていった...って大丈夫かな?橙。ともかくこれで被弾3回、決着が着いた。放たれたレーザーは次第に勢いを落として行き、魔力の放出は収まった。私は橙達が戦っていた近くまで向かう。
「えーっと、橙はと...あ、居た」
辺りを見回すと、少し離れた雑木林に頭から突き刺さっている橙を見つけた。大丈夫だろうか、もろに喰らっていたようだが。ひとまず落下点まで向かう。
「おーい橙、大丈夫かー?」
...返事がない、気絶してしまったようだ。まぁ仕方ないか。私は目を回している橙を背負い、勝者に目を向ける。
「ふぃー、ま、ざっとこんなもんだぜ、さぁ約束通り知ってること話してもらおうか」
「きゅー...」
「って、ちょっとやり過ぎちまったか...てか誰だアンタ」
気絶した橙の顔を覗き込みながらそう聞かれる。
「私ですか?私は白です、この子の上司?みたいなものですかね、取り敢えず寝かせてあげて良いですかね、この子」
「白か、よろしくな、私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ!」
元気に自己紹介をされる、まぁさっき一方的に聞いたんですがね。それよりひとまず橙を寝かせてやろう、特に目立つ怪我も無いようだし、すぐに目を覚ますだろうが。
「んー、それにしても気絶しちまったら聞けるもんも聞けないしな、どうしたもんか...」
「そこまで重症でも無いですし、少し待てば起きると思いますよ。なんなら起きるまで上がって休んで行きますか?」
そう言いながら橙の家に目線をやる。
「お、ホントか?...ならちょっと待たせてもらおうかな」
...ふぅ、これで私から聞き出す為に弾幕ごっこで勝負だぜ!、とはならないだろう。まぁ、異変の情報なんぞ橙からは十中八九出てこないだろうが、代わりにお茶くらいは出してやろうかな
ちょっと執筆スピードが上がった気がする。そんなわけで戦闘シーンほぼなしですが魔理沙さん勝利ですね、はい。さてここからどうなるか、また読んで頂ければ幸いです
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8話 お茶と妖狐
「ふぃー、あったけぇ~...」
「よっ、と、取り敢えず寝かせて置けば良いかな、...それじゃ、お茶でも淹れますね」
「お、気が利くじゃん」
ひとまず橙が目を覚ますまでは、最低限もてなしておこう。橙の住まいに上がった魔理沙さんは、すぐにこたつへと潜り込んでいた。急須に手を伸ばしてお茶を...っと、流石に冷めちゃってるか。...仕方ないか。
私は急須の底に手をかざす。ボゥッ、と蒼白い炎が左手から産声をあげる。それを見て少し驚いたのか魔理沙さんが声を掛けてくる。
「んぉ、魔法か?」
「んー、どちらかと言えば妖術寄りですかね、そこまで出力は出ませんが」
「へー、妖術ねぇ...詠唱も無しに、便利なモンだ」
そんな会話をしつつ急須を熱していく。...そろそろいいかな?私は左手を握り込み、炎を消す。そのまま本来は橙の分だった湯呑みにお茶を注いで、魔理沙さんの手前に置く。
「どうぞ魔理沙さん、少し熱いかも知れませんが...」
「お、さんきゅー...てか、さん付けと敬語はよしてくれよ、なんかムズムズする...」
んー、敬語はともかく確かに魔理沙さんってちょっと言いづらいんだよね、同じ音が重なるとどうにも。
「善処しますよ、魔理沙」
「んー、まぁいっか...所で妖術ってことは白は妖怪なのか?見た目じゃ分かんないんだが」
「普段はできるだけ隠してるんですよ、今日は里に用事があったので尚更ですけど」
「そんで、何の妖怪なんだ?」
「それはですね...よっ、と」
ぴょこん、と私の頭には二つの耳があらわになった。
「うお?!...ビックリしたぜ、えーと...白狼天狗か?」
「残念、ちょっと惜しいですかね」
「ってなると...猫又!」
「はずれ、まだ狼の方が近いですね」
魔理沙はこたつから出て来て私の顔の周りやらなんやらを見回して、うーん、と唸っている。
「ん~...わからん!ギブアップだ!」
「あれ、結構いい線いってたんですけどね、残念」
「それでなんなんだよ、答え」
「妖狐ですよ、そんなに意外でもないでしょうけど」
「へー妖狐ね、そんじゃ藍と一緒か、珍しいな」
藍の名前が出たことに少し驚く。そう言えばここで妖狐がいる、なんて話は聞かないし珍しいというのも間違いでは無いだろう。
「藍のこと知ってるんですか?」
「ん、あぁ、この前の宴会でな、あの胡散臭いスキマ妖怪の従者だろ?」
...胡散臭い、まぁその通りか。あんなの初対面ならまず疑う所からスタートだ。人前に出る時は取り敢えずミステリアス(笑)みたいな雰囲気出すのやめないかなぁ、紫様、ちょっと恥ずかしいんだが。
「白は藍の知り合いなのか?」
「えぇ一応、まぁ、頼りになる同僚ですよ」
「へぇ、そう...ん?ってことは」
わざとらしくそう洩らす。...流石に気づくかな?
「改めまして、八雲 白です、よろしく魔理沙」
「...マジかよ」
苦笑いするしかない魔理沙に私は微笑みを返した
はい、普通に妖狐でした。ちなみに白の外見、白髪に白い肌、うっすら紅い眼をしてます、まぁ白狼天狗と間違われる訳ですね。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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9話 巫女と再開
「そんで、どーしてこんなとこにスキマの従者がいるんだ?」
「ん?あぁ、それはですね...」
私は寝ている橙の方に目をやる。
「藍の式神なんですよ、あの子」
「あー、そういうことだったのか...そういや、上司みたいなモンだとかなんとか...」
「...それと、恐らく橙は異変に関してなんにも知らないと思いますよ」
魔理沙が一瞬固まる。そしてこっちに顔を向けて、マジで?、と言ってきた。私は静かに頷く。
「...そんな気はしてたぜ、まーた無駄骨かよぉ...」
どうやらここに来る前にも同じようなことが有ったらしい。まぁ、事実である以上仕方ないことだ。
「...というか、ホントはあのスキマが黒幕なんじゃないのか?ほら、四季の境界を弄くってさ」
「流石にないですよ、疑り深いですね」
「...だよなー、はぁやってらんねーぜ...熱ッ?!」
「あーあー、言わんこっちゃない」
湯呑みを持って必死にふーふーしてる魔理沙を横目に、私もお茶を注ぐ。...まぁ、異変解決に乗り出してくれたなら良いことだ、そろそろ春の陽気が恋しい。
「んー、それにしても博麗の巫女はいつ動き出すのやら...」
「ん、霊夢なら私と一緒にさっきまで異変の調査してたぞ?」
お、どうやら霊夢と魔理沙は知り合いのようだ。霊夢も異変解決のため動いてるなら、解決までそう時間は掛からないだろう。
「さっきまで?...二手に別れて調査でもしてるんですか」
「え、あー...うん、まぁそんなところだぜ」
...どうやらはぐれて迷子になったらしい。そりゃ迷い家にたどり着く訳だ。そんな話をしているとまた外から、今度は聞き覚えのある声がした。...ちょっと声色が変わったかな?
「魔ー理ー沙ー、どこいったのよー...たくアイツ」
「んぉ、この声は...」
どうやら、はぐれた魔理沙を探しているらしい。すると、魔理沙が縁側の方へ行き襖を開ける。外に出て少し周りを探しているようだったが、空を覗き込み手を振りながら声をあげる。
「おーい!霊夢ー、ここだぜー!」
「!、ってやっと見つけた...アンタねぇ!人に押し付けといて何してんのよ!」
少し声が近くなった。霊夢が降りて来たんだろう。私も縁側の方に向かう。
「悪かったって、そんであの氷精はなにか知ってたのか?」
「はぁ、特にこの異変とは関係なかったみたいよ...それにしてもなによ、ここ」
「ここは、迷い家ですよ霊夢」
「あぁ、そうなの珍しい...ん?」
どうやら異変に気づいたようだ。
「久し振り、立派になったね霊夢」
「...って、白!?」
かなり驚かれたようだ。それにしても大きくなったなぁ、なんて考えていると二人の顔を見て魔理沙が一言放った。
「え、お前ら知り合いなの?」
はい、霊夢とは古くから知り合ってたようですね。紫さんの式だもんね、そりゃ。とまぁこんなところで、また読んで頂ければ幸いです
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10話 昔とお世話
魔理沙が驚いたような声で私たちに問う。
「えぇ、私は霊夢がまだ幼いころ、お世話係として神社で一緒に住んでましたから」
そう、今から少し前のことだが私は博麗神社に住み込み、霊夢の世話を何年かの間任されていた。
「へ?...ほ、本当か?霊夢」
「...まぁ、そういうことよ」
まぁ、当然の反応と言うか、魔理沙は口をポカンと開けながらこっちを見ている。そりゃそうだ、なんたって妖怪を滅する博麗の巫女が、妖狐と住んで、もとい妖狐に育てられていたなんて知る由も無いだろう。
「はぁ...それでアンタ、こんなところで何してんのよ」
「...前みたくおねーちゃんって呼んでくれていいんですよ?」
「はぁ!?誰がそんな「ぶふぉッ...」
魔理沙が吹き出した、...もう少し遊んじゃおうか。
「昔なんてことあるごとに、おねーちゃんおねーちゃんって引っ付いてきて...」
...魔理沙が背中を丸めてうつ向いたまま、くっくっ、と震えている。
「お風呂も、一緒じゃなきゃやだー、なんて...」
...霊夢はうつ向いたまま動かない。...良く見ると、耳を真っ赤にして両腕をわなわなさせている。
「終いには、お化けが怖くて眠れないからって私の布団の中に「あーっはっはっはっ!ひー、お腹痛っ、霊夢が、そんな、ぷっ、だーっはっはっはっ!」
魔理沙が霊夢を指差しながら腹を抱えて爆笑している。霊夢はぷるぷる体を震わせながらうつ向いたままだ。
「あ、あの天下の博麗の巫女様が、お、お化けが怖いって、そんな、あーっはっはっはっはっ!ひー!」
プツン、となにかが切れる音がしたような気がした。すると、霊夢が未だに笑い転げている魔理沙の方へ近づいて行く。アブナイマリサニゲロー。
ゴスッ
かなり鈍い音が響き、魔理沙が大人しくなった。声も発せないほどに。...お祓い棒からして良い音じゃないんだが。
「...それで、なんでまたこんなとこに居んのよ」
「あれ、呼んでくれないんです?」
無言でお祓い棒を振りかぶられる。怖い怖い、そんな子に育てた覚えないですよまったく。
「冗談ですよ、ここには藍の式が住んでるんです、それで様子を見に来てただけで偶然魔理沙が通りかかっただけですよ」
魔理沙の方に目をやる。...でっかい帽子の上からでも分かるくらいのたんこぶができているようだ。ピクピクと痙攣している。
「そういう訳だったのね。...どうやら異変とは無関係...みたいね、はぁ」
「そういうことです、残念でしたね霊夢」
ため息と共に分かりやすく肩を落とす。私は一応魔理沙に近寄ってみる。
「魔理沙ー、生きてますかー?」
「...ぐ、あ、あぁなんとかな...」
「アンタいつまで寝てんのよ、もうここに用はないんだから、早く行くわよ」
未だ倒れ伏している魔理沙に向かって声を掛ける霊夢 ...霊夢が強く逞しく育ってくれていて良かったよまったく
人が笑う描写ってわりと文字にしずらいと思いました、はい。そんなわけで話数的には一つ節目ですね。変わらず毎日書いていきますので、また読んで頂ければ幸いです
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11話 冥界と決断
「...ちょっとは手加減してほしいぜ」
霊夢には聞こえない程度にボソッ、と魔理沙が立ち上がりながら一人ごちる。ご愁傷様、なんて声を掛けようとしたとき、
ザザッ
「ー、ッ?!」
頭の中にノイズが走る感覚、そして頭痛に声を漏らす。...あー、これは...
『白、聴こえるかしら?』
『...えぇ、聴こえてますよ、紫様』
脳内に直接音の振動が響く、...正直な話、かなりしんどいので緊急時以外はやめて欲しいとお願いしたんだけどなぁ...
『ッ、...それで、ご用件は?』
『えぇ、申し訳ないけれど...』
私と藍は、紫様から直接指示を貰う場合があるため、こうやって紫様と念話?ができる。とはいえ、紫様からほとんど一方的にだが...
『今すぐ、霊夢を探して貰えないかしら?』
『...理由を』
『... この異変、少し不味いことになっててね、もう一刻を争う状況なの、今すぐ向かって間に合うかも怪しいわ』
どうやら、紫様もかなり焦っているようだ。声色がいつもと違う、明らかに焦りが見てとれる。
『...運がいいですね、ちょうど目前にいますよ』
『本当!?...良かったわ』
『それッ、...それで、何か言伝てでも?』
『...えぇ、白、冥界まで霊夢を案内してあげて』
...どうやら、終らぬ冬、始まらぬ春の原因は冥界にあるらしい。
『場合によっては、異変解決の手伝いをしてあげてほしいの』
『!...それは、』
『言いたいことはわかるわ、...でも、それくらいには切羽詰まっているの...分かって頂戴』
『...』
異変を解決するのは人間、妖怪は起こす、又は傍観するのみ。それを破るほどなんですか紫様...
『入り口はその付近の上空に開けるわ、今何処にいるの、白』
『...迷い家です』
『そう、分かったわ、...ごめんなさいね、白...』
それを最後に、ノイズは消え去った。...気が進まないなぁ、まったく
「おい、大丈夫か白、顔色悪いぞ?」
「...えぇ、大丈夫ですよ魔理沙」
私は、霊夢に顔を向ける。
「霊夢、紫様から今すぐ冥界に向かえ、とのことです」
「...紫が?」
「異変の原因がそこにいます、状況は最悪、一刻を争うそうです」
「...どういうことよ」
「冥界への入り口は、紫様が作ってくれています、案内は私がやります」
「だから、ちょっと待ちなさ「霊夢」っ...なによ」
「博麗の巫女として、なすべきことをなさい」
「!...分かったわよ」
話はついた、魔理沙の方へ目をやる。
「聞いての通りです、魔理沙、貴女も来てくれますね?」
「...よくわかんねーけど、冥界に終わらない冬の元凶が居るんだろ?文句の一つでも言わないと気がすまないぜ」
...頼もしいものだ。元凶の本丸に行くのだ。戦力は多い方がいい。それに、できることなら直接元締めに手を出したくない。
私は妖怪なのだから
ちょっと路線が...あやしい気がしますね。次の次くらいにはまた日常パートになりそう。とまぁ、そんなところで、また読んで頂ければ幸いです
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12話 庭師と黒幕
見上げると、空に切れ目が見える。その間からは不気味な冷気が漂っていて、言葉にできないおぞましさを感じる。
「急ぎましょう、紫様の力もまだ万全ではありません」
冬眠から明けたばかりの紫様は、能力の半分も使うことができない。そのせいか、直接冥界にスキマを開くことが困難らしい。あの空の切れ目も、少し不安定に見える。
「...アイツ、まだ寝起きなの?」
「寒さのせいで、起きたのは数日前です」
「アレが入り口か?なーんか嫌な感じだぜ...」
私達は、迷い家を後にする。...橙になにか書き置きでもしておけば良かったか、まぁ仕方ない。多少の申し訳なさを感じつつも空の切れ目に向かった。
「さて、行きましょうか」
「あぁ、さっさと親玉ぶっ飛ばして神社で宴会だ!」
「できればウチ以外で騒いでくれないかしら...」
切れ目に入ると、そこが冥界に続いていると生存本能が告げる。どうやら私の魂が、まだ行きたくないと叫んでいるように思えた。元来人も妖怪も死ねば、魂は冥界へ行く。それが分かっているのだろう、まぁ今は身体も一緒だ。大丈夫だろう。
「なんて言うか、外とは別の寒さを感じるわね」
「だな、悪寒ってやつか?背筋がゾッとするぜ...」
他の二人も同じように感じるようで、魔理沙は箒に跨がりながら身体をぶるっ、と震わせていた。そんな時、
「ー、!これは...」
突如としてそれは目の前に現れた。途方もなく続く長い階段。その脇には一定の間隔で石灯籠が淡い紫色の炎を灯し、妖しく揺らめいている...恐らくこの上だろう。
「...明らかに空気が違うわね、嫌でも分かるわ」
「ここが、冥界か...」
いつか、藍に聞いた覚えがある。冥界には白玉楼という美しくも妖しい屋敷があると。
「行きましょうか、二人とも」
私は階段を上る。少しずつ、死がこちらに近づいて来るような、いや、私から出向いているような感覚。...長居は無用だろう。二人も着いてくる形で階段を上って来ている。...どれほどの時間が経っただろうか、ようやく階段に終わりが見え始める。
上り終えると、そこは庭園のようだった。いくつかの石灯籠が炎を揺らめかせている。辺りを見回していると、正面から足音が聞こえてきた。
「ここは、冥界。生者のお客様とは、珍しいですね」
腰に刀を一振り携えた少女。その周りにはふわりと白い...恐らく魂だろう、が漂っていた。
「アンタが、異変の黒幕?」
「いえ、私はただの庭師ですよ。ただ、少し主のお手伝いをしているだけ」
「だったら、そのご主人サマの所まで案内してもらおうか!」
「それはできませんね、幽々子様の邪魔はさせません」
恐らく首謀者である者の名前が出た。少女の後ろを見ると、そこには枯れ果てた大樹が目に映る。...そして、着物を纏った誰かがいるのが確認できた。十中八九、アレが黒幕で間違いない、かなり厄介な相手だろう。
となると私のやるべきことは...
「霊夢、魔理沙、奥に向かってください。ここは私一人で十分でしょうから」
あくまで助力、従者の相手位が丁度良い
戦闘描写がありそう、次ですけどね。苦手なりに練習の意味も込めて書きますか。とまぁ、こんな感じで、また読んで頂ければ幸いです
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13話 戦闘と能力
「...分かったわ。魔理沙、行くわよ」
「あぁ、あの奥に居るやつが黒幕みたいだな。ここは白に任せるとするぜ」
二人とも聞き分けのある子で助かる。そう言って二人は、首謀者である幽々子の元へ飛んだ。
「幽々子様の元には行かせません!」
少女の手が刀に触れる。
私は地を蹴り、少女へ肉薄。刀は抜かせない。二人には元凶を叩いてもらわなければならないんだ、大人しく私の相手をしてもらおう。とりあえず一発叩き込んでおこう。私は突っ込んだ勢いのまま、引き絞った右腕を突き出す。私に気づいた少女はそのまま横っ飛びに拳をかわし、此方に向き直る。
「あれ、かわされちゃいましたか。残念」
「...何も言わずに殴りかかってくるなんて、些か無作法では?」
「あー、まぁそうですね。...名乗りくらいは上げましょうか」
無事に黒幕の元へ向かう二人を見送り、少女と言葉を交わす。
「私は白、ただの妖狐ですよ。...貴女は?」
「...私は魂魄妖夢、ただの半人半霊です」
そう言って妖夢は刀を抜いた。...さて、聞くところによると相手はただの人間では無いらしい。半人半霊ねぇ、まぁ普通よりは丈夫だろうし、そこまで加減する必要も無いかな。
「...参ります」
妖夢が視界から消える。背後に気配、んー結構速い。振り下ろされる得物を見ることなく、間合いを外すように前に跳ぶ。跳びながら空中で身体を反転させ敵を視界におさめる。着地を待たずに妖夢が此方に肉薄、刀の位置、刀身の向きからして左下から右上への切り上げ。軽く身を捩る。うん、大体予想通りの軌道を刀がなぞる。綺麗な太刀筋だなぁ、だから読み易い。
暫くの間はかわし続けた。しゃがみ、横に跳び、身を捩り、流し、捌いていく。
振り上げられた刀を見る、恐らく左肩から右脇腹に架けての袈裟斬り。私は後ろに翔んだ。
ゴッ
何か硬い感触が背中にぶつかり、動きが止まる。視界の端に石灯籠が映る。あ、まず
肉が裂かれる感触がした
獲った。妖夢は手にした刀から伝わる感触を肌身に感じていた。致命傷、妖狐であろうとしばらく動くことの出来ないほどの重症だろう。深く斬り込んだ刀身からそう思う。後は引き斬るのみ。刃を加速させる。
ガッ
「っな!?」
妖夢は驚きの声を上げる。振りきった刀を勢いそのままに踏みつけられたのだ。辺りには鮮血が舞う。刀は深く地面に斬り込んで動きを止めた。
「な、なにを...?!」
妖狐に目をやると、今斬ったはずの深い傷が無い。いや、正確にはかなり浅い切り傷が見えるだけになっている。おかしい、確かに斬った、手に残る感触は嘘では無い。...今の一瞬で治したとでも言うのか?
「あ痛たた...とりあえず得物は捕まえた、と」
「ーッ、」
咄嗟に刀を地面から抜こうとする。が、びくともしない。地に深く根を張った、巨大な樹を相手にしている気分だ。だが、目の前の妖狐にそんな力があるようには見えない。
「まぁ、とりあえず寝といてもらえますか?」
「ガッ、?!」
重い。一瞬、何をされたか分からなかった、恐らく殴り飛ばされたんだろう。吹き飛ばされた私は、何度か地面を跳ね、地面に倒れ伏す。
「...申し訳..あり..ません...幽々子..さ..ま....」
私は意識を手放した
「...やりすぎたかな?」
倒れている妖夢を見て一人呟く。んー、半人半霊だからって、少し〝重く〟し過ぎたかな...死んでなきゃいいけれど。
私は〝軽く〟した怪我に目をやる。うん、大丈夫そう。ぶった斬られた時はちょっと焦った。普通なら重症だったもんなぁ...危ない危ない。
「二人は、と」
奥に目をやると、色鮮やかな弾幕が見えた。...どうやらまだ決着は着いていないようだ。まぁ、霊夢達なら大丈夫だろう。
私は三人が放つ美しく弾幕に暫し魅せられていた
さて、白の能力がちょっと見え隠れしてましたね。皆さんは、どんなのだと思いますか?ちなみに次は宴会の風景になりそうですね、お酒お酒。とまぁ、そんなところで、また読んで頂ければ幸いです
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14話 宴会と桜
...まぁ結論から言うと、異変は終わった。なんでも西行妖とか言う妖怪桜を開花させるために、幻想郷中の春を集めていたらしい。長引いた冬はその異変の副産物に過ぎない。今はもう雪も溶け、なんなら桜まで咲いている。そして...
「ちょっと白ー、お料理運ぶの手伝ってくれないー?」
手伝いを呼ぶ声...
「それでだ、白と霊夢、そしてこの私!三人は異変を解決すべく、魑魅魍魎の跋扈する冥界へと乗り込んで行ったんだぜ!」
かなり改変された武勇伝を話す声...
「あら~、これ美味しいわね~」
何故か来ている黒幕...
「ちょっと、幽々子様!流石に食べ過ぎですよ!」
その従者...
「...賑やかですね」
そう、今は異変解決を祝って博麗神社で宴会の真っ最中だ。
ひとまず、呼ばれたことだし霊夢の手伝いでも行こうか...の前に、まずコイツをどうにかしないと...。
「それでだなー、その時の橙の可愛さといったらもう...なんだ...言葉にできないほどでなー!」
「はいはい、それは良かったね藍」
すでに出来上がっている藍の話を多少流しながら聞く。...まったく、最近いろいろ溜まってたからっていくらなんでも呑み過ぎだろう。左腕をガッチリ掴まれている。
「ほら、私は運ぶの手伝って来ますから離してくださいよ」
「ええー、ダメだ!まだ橙の可愛さについて話し足りん!もっと付き合え!そんで呑め!」
「ダメですよ。ほら、また後で話聞いたげるから離してください」
「...や!」
赤子か。...まったく、普段からは想像できないよホントに。お酒って怖いなぁ...
「我が儘ばっかり言わないでください。ほら、藍」
「うぅ~...紫様ぁ、白がいじわるするぅー」
こんの酔っぱらいは...橙が見たら幻滅するぞこれじゃ。私はもう半ば無理矢理藍を引き剥がす。あうぅ~、なんて声が聞こえるが無視だ無視。
「じゃあ紫様、藍が変なことしないか見ててくださいね」
「えぇ、わかったわよ。ほら藍、こっちいらっしゃい」
「紫様ぁ~...」
珍しく呑んでいない紫様に押し付けておく。さて、霊夢の手伝いに行こうか。私は霊夢のいる神社まで向かう。
「...藍って呑むとああなっちゃうのね、意外だわ」
「いつもと比べればまだマシな方ですよ...」
「ちょ、アレより酷いの!?」
私は霊夢の持っていた料理を受け取りながら話す。ひとまずあっちへ運んどいて、と言われたので持っていく。...というかほとんどが酒の肴みたいだが。やって来たのはすでに空になった皿が何枚か重ねられた場所。
「...すごいですね、こんなにたくさん」
「ん~?あら、紫のお連れさんね~。...それ、もらってもいいのかしら~」
「ちょ、幽々子様!?さっきので最後って言ってたじゃないですか!」
返事も聞かずに手に持っていた皿をかっさらわれた。...この方は今回の異変の黒幕、そして後から聞いた話だが紫様のご友人らしい。隣で焦っているのは私が相手した庭師の...妖夢、だったかな。うん、多分そう。
「...それにしても、紫に藍ちゃんの他に式神さんがいたなんて知らなかったわ~」
「はい、藍様は何度か白玉楼にいらっしゃっていましたけれど...それにしても、まさか紫様の式神だったとは。通りでお強い訳です」
「私もあんな形で初めて冥界に訪れることになるとは、思いませんでしたよ」
時々二人して出掛けることはあったものの、紫様は友人に会いに行くわー、と言って出ていくものでまさか冥界にご友人がいるなんて知る由もない。
「ん~、お代わりはもう無いのかしら~。美味しいのに残念だわ~」
「ええ!?もう食べちゃったんですか!?」
一言二言しゃべっている間に、持ってきた大皿はまっさらに成っていた。...なにがなんでも速すぎないか?
「白ー!お料理足りないから、作るの手伝ってー!」
後ろから霊夢の悲痛な叫び。...恐らく八割は目の前の亡霊さんのせいだろう。仕方ない...
「はいはーい、今行きますねー」
神社の台所に立つのはいつ振りかな
はい、宴会風景ですね。白はお酒強い方です、藍がかなり弱いだけかもしれませんが。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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15話 酔いと睡魔
私は台所で宴会用の料理、もとい酒の肴を作っている。霊夢はどうやら作ったり運んだりで忙しかったらしく、あー、はやくお酒呑みたーい!、なんて言っていたので、後は私に任せて呑んでおいで、と伝えておいた。今頃は、もうべろんべろんだろう。出来上がった分からお皿に盛っていく。
「白様、これとこれお出しして来ますね」
「ん、ありがと。助かるよ」
そう言うと妖夢は両手に大皿を抱え走って行った。少し前に幽々子様のところへ料理を持っていった際、私もお手伝いします!、と元気に言われせっかくの好意だし、と思って手を貸してもらったが、かなり手際が良い。刀が振れると包丁捌きも上手なのか...。
「んー...幽々子様は紫様がなんとかしてくれたし、こんなところで良いかな」
さっき料理を運んでいたところ、紫様の機転もあり幽々子様は早々に酔い潰れていた。近くには『鬼殺し』、と書かれた空の一升瓶が5~6本乱雑に転がっていた。...アレをあの数でやっとなのか、末恐ろしい。手を止めて一休みしていると妖夢が台所へ帰って来た。
「お疲れ様、妖夢。ごめんね、手伝って貰っちゃって」
「いえ、元はと言えば幽々様のせいですから...。あ、最後ですか?持っていきますね」
「ん、あぁ、これは大丈夫。私達用だからね」
「え、それって...」
私は机の上に一升瓶を置く。
「ちょっと付き合ってくれるかな、お話しもしたいし」
「それでれすねぇ!!幽々子様ったら何ッ、回言っても聞いてくれないんれすよぉ~...私は幽々子様を想っていっひぇるのにぃ...ぐすん」
「そう...えらいね、妖夢は...」
私はお礼と言ってはあれだけど、妖夢の愚痴を聞いてあげることにした。同じ従者同士そういうのに敏感なのだろうかなんとなく、あ、溜まってるなぁ、と思っていたが案の定だった。今は正座している私の足に泣きついて来ている...色々あるんだろうなぁ、と思いながら妖夢の頭を撫でている。
「...白様はお母さんみたいれす...」
「今は甘えてもいいですよ、少しの間ですが...」
「.........」
「ん?あぁ、ちょっと疲れちゃいましたか...」
妖夢はすぅ...すぅ...と、静かに寝息を立てている。...無理もないか、異変で疲れていたんだろう。それに久しい春の陽気も相まって...ふあぁ.........
「おーい、白ー...いないのかー?」
私は今、白を探している。なんやかんやあって異変を一緒に解決したんだし、どうせなら酒のひとつやふたつ呑みながら話したかったんだが...。その辺を粗方探し終え神社の方へ向かう。すると霊夢が縁側に座り込んでいるのが見えた。
「お、霊夢ー、白見なかったかー?」
「ちょ、魔理沙、しーっ!」
「んぉ?なんだなんだ急に」
霊夢が指さしたのは神社の中、居間にあたる部屋だった。たく、なんだってんだ?
「どうしたんだよ...ってあー、そういう...」
「ふふっ、結構レアなのよこういうの...」
そこには壁に寄り掛かって眠る白と、白の足を枕にして眠る妖夢の姿があった。
「...こう見ると、なんか、姉妹みたいだな」
「そうね...さ、今くらいそっとしといてあげましょ」
「...だな」
流石の魔理沙さんでもそれくらいは空気読めるぜ
白は面倒見が良いですね...いいお嫁さんになりそう。にしても東方の従者さんはなんか、いつも苦労してるイメージなんですよねぇ。とまぁ、そんなところで、また読んで頂ければ幸いです
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16話 八雲家とお花見
異変解決を祝う宴会も終わり、いつもの日常が帰って来た。今は朝食を済まして、食器を洗っているところだ。冬が終わって洗い物も楽になったなぁ...。
「ねぇ、白」
仕事をこなしている最中、不意に紫様に呼び掛けられる。...何か急務だろうか。
「どうかしたんですか、紫様?」
「お花見行きましょ」
「...はい?」
「わぁ~、すっごく綺麗ですね!藍さま!」
「...あぁ、そうだな」
「あら、楽しそうね橙ったら」
「...そうですね」
先頭を元気良くはしゃぎながら橙が走って行く。時折、振り返りながら楽しげに藍と話しているのが聞こえる。少し後ろを着いて行くのが紫様、そして私だ。今はお昼前、散歩がてら昼食を摂る場所探しをしている。
「それにしても、どうしたんですか急にお花見だなんて」
「ん~?...家族サービスってヤツよ。それに橙は宴会に来てなかったんだから、藍も寂しそうだったし」
「...本当は?」
「宴会のとき呑めなかったから今日くらい「紫様しばらく禁酒ですね」ひどいっ!!」
紫様がこの世の終わりみたいな顔をしている。そんなに落ち込まなくてもいいのに...。
「冗談ですよ、冗談。...まぁ、べろべろにならない程度なら構いませんよ」
藍(酔っぱらい)の押し付けやら、幽々子様(大喰らい)の対処やらで呑むに呑めなかったようだし...多少はね。
「やった!白、大好き!愛してる!」
熱烈なハグは避ける。んもぅ、いけず、なんて言われてるがシカトだシカト。
「白、この辺でお昼にしないか?」
「ん、そうだね、あの桜の下辺りにしよっか。...橙ー、ご飯にするよー」
もうちょうど良い頃合いだろう。太陽もほとんど真上だし。私は、蝶々を追いかけ回している橙を呼び掛ける。一瞬耳がピコンッ、としたと思ったら、振り返って駆け寄って来た。ホント猫みたいだなぁ...。
「んー、!美味しいです白様!」
「そう、それは良かった。急拵えだから心配だったけど...」
紫様を見て言う。責めて前日の夜とかに伝えて欲しいものだ、おにぎりだとか玉子焼きみたいな簡単なものしか作れていない。あ、こら、目を逸らすな目を
「まぁまぁ、紫様のご厚意でお休みも貰ったんだしいいじゃないか」
「そうよ!藍の言うとおり!橙も皆とお花見できて嬉しいわよね?」
「もが、ふぁい!ゆふぁりふぁま!」
...はぁ
ため息を溢して私は橙にお茶を渡す。...従者は主人に似るとかなんとか。食に対する貪欲さなんて似ないでもいいのに...
...まぁ、こんな日もたまには良いかな
八雲家のお花見回でした。しばらくはこんな感じの日常予定ですので。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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ー40話 白と金
私は嫌いだ
私を嫌う皆が嫌いだ
私は嫌いだ
こんな見てくれに産んだ神が嫌いだ
私は嫌いだ
忌み子だと嗤う奴らが嫌いだ
私は嫌いだ
私なんか嫌いだ
...今日も雨か。私は一人薄暗い洞穴の中でぼんやりと考える。もう里には帰る気もない、しばらくはここで過ごすことにしようか...
私は忌み子だ。妖狐としてあるまじき病的なまでに白い肌、毛並み。そこに爛々と妖しく鈍く光る紅い眼。私の周りにはそんなヤツは居なかった、居る訳が無かった。
私には名がない。お前だとか貴様だとか、その時々に応じて雑多に呼ばれてきた。...名前なんて有っても無くても変わらない。
ため息を一つ吐く。...白い息が見える、寒い...。まだ冬に入る前だと言うのに、雨のせいか凍えるようだが、今は狐火を出す妖力も惜しい...。
すると、外から音が聞こえた。雨が地面を叩く音とは違う。バシャバシャと、誰かが水溜まりを踏む音が近付いて来る。
私は咄嗟に隠れる。...人か?だとすると面倒だ。折角見つけた雨風を凌げる場所なのに...。
「うぅ~...ビショビショだぁ...」
...最悪だ。そこには雨宿りに来た同族、私と同じ位の妖狐が居た。尻尾は私と同じ様に一本、産まれてまだ数年程度だろう。
「なんでこんな急に降りだすかなぁ...はぁ」
妖狐の少女は雨を疎ましく見上げながら、衣服の袖やら裾やらを搾っている。...間が悪い、このままでは雨が降り止むまでここに居座られる。なんでこんな時に降るんだ、止む気配も一つもしない...
「「...早く止まないかなぁ...ーッ、!」...あれっ?」
口走っていた。何故?思っていたことが口をついて出た、全くの無意識。しかも同じことをそこの妖狐も言っていた、まずいバレた。
「...だれか居るの?」
こちらに声を掛けられる...どうしようもない。先程洞穴の奥を見に行ったが、程なくして行き止まりだった。奥から誰か来ても嫌だったので心底安心していたのだが、今は違う。逃場が無い。
...しょうがないか、私は少女の前に出る。
「わっ!...」
少女が少し驚いた顔をして止まる。...こんな見てくれに絶句しているんだろう、慣れたものだ。なんなら、罵詈雑言の一つや二つ飛び出して来ても珍しくないのに。
「...きっ」
汚い、か?聞き慣れた単語だ。もう少し捻れないのか、なんて考える...気持ち悪い、か?尚更だ、他に何か...
「綺麗...!」
「...は?」
驚愕と共に勝手に口が動いた。今、なんて言ったんだ?
「えっ、あ、ごめんなさい。急に...」
「いや、え、えーと...別に...」
私は困惑した。私が綺麗だ?意味が分からない。皆から忌み嫌われて来た忌々しいこの姿の何処が?
「...とっても綺麗な白だったから...つい」
...分からない、私はコイツが解らない。理解出来ない。こんな私を...綺麗、だなんて...
「あ、えっとね...私は藍って言うの。...貴女は?」
「ッ、...」
次から次へとなんなんだコイツ...藍とか言うヤツは...。
「...ない、名前なんて持っていない」
「...そっか、あ!じゃあ、私が付けてあげよっか!」
「...は?」
そう言うと困惑した私のことはいざ知らず、一人で名前を考えているようだ。...もう、訳が分からない...
「ん~...あ!そうだ!」
少しして、難しい顔をして唸っていた藍が声を上げた。私は考えるのも疲れてしまった。
「真っ白で、綺麗だから~...ハク!どう?いいでしょ!」
過去話でした。話数はそんなに気にしなくて大丈夫です。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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17話 雨宿りと魔法の森
ポツリ、と私の額が濡れる。見上げた空は気持ちまでどんよりとしてしまうような曇天だ。...一雨来そうかな、早めに帰ろう。
私は洗濯物の心配をしながら、いつもより急ぎ足で帰路についた。季節は変わって6月、幻想郷にも梅雨が来る。
「...流石にすぐには帰れそうに無いですかね」
私は木の幹に背中を預け、雨宿りをしている所だ。霊夢に野暮用があり顔を出しに行ったは良いものの、少し話し込んでしまった。気がつくと天気も悪くなっており、帰路についたが間に合わず。今は魔法の森で雨の勢いが弱まるのを待っている。
「それにしても、凄いなぁ...この森」
魔法の森は普通人が入ることは出来ない。長時間居座れば身体に異常が出るうえに、最悪死んでしまう。私は木々に目をやる。...ほとんど雨が落ちてこない。それほどまでに鬱蒼と生い茂っているのだ。
ふと、気が付く。ぬかるんだ地面を踏む音が近付いて来るようだ。私はその音がする方を見やる。
「...あれ?白じゃんか、どうしたんだこんなところで」
「魔理沙でしたか...なに、少し雨宿りしているんですよ」
音の主は魔理沙だった。手には得体の知れない植物やらキノコやらが入った籠を携えている。
「お!そこにあるの珍しいヤツじゃん!ラッキー!」
魔理沙は私の足下あたりを見て、嬉しそうに近付いて来た。私も目をやると、色彩鮮やかなキノコがいくつか木の根っこに生えている。...残念ながら口に入れようとは思えない見た目だ。
「魔理沙さんはキノコ狩りですか?こんな天気ですが」
「ひぃふぅみぃ...こんだけあれば足りそうだぜ。ん、あぁ魔法の研究に使ったりするから時々採ってるんだ。そしてこんな天気だからこそ、探しに来たんだぜ」
目当てのキノコを採り、よいせ、と立ち上がった魔理沙はこっちに向き直る。
「こんだけじめじめしてれば、キノコは生え放題だからな。キノコ狩りに関して言えば、理想的なコンディションだぜ」
雨も気にしなくていいしな、と続ける。
「私は目当てのモノも手に入ったし、帰るけど...折角ならウチ寄ってくか?結構近いしな」
「ホントですか?それじゃあ、御言葉に甘えましょうか」
私は魔理沙のお家に行くことにした。
「.........」
「なんか飲みモンでも用意するから、適当に座っといていいぜ...よいしょっ、と」
絶句した。物が多いとかの次元じゃあ無い。物しか無い。一体どこに座ればいいんだコレ...。
とりあえず言われた通りどうにか座ろうか...。手頃な場所に積み重ねられた魔導書のような本を端に寄せる。
グラリ、
あ、まず
轟音
「お、おい!なんだ今の音...って白?!大丈夫かよ!?」
...片付けてから帰りましょうか...はぁ
結局、雨が弱まるまで魔理沙の家の片付けは続いた
魔理沙は片付け出来ないのは、なんか想像しやすいですね。私は雨結構好きなんですよね。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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18話 湿気と尻尾
「お、お帰り白、遅かったな。雨、大丈夫だったか?」
「ん、ただいま。一応雨宿りしてたからね、びしょ濡れにはなってないよ...あ」
玄関を入ると、藍が出迎えてくれた。どうやら昼食が済んだようで両手に食器を携えている。一言二言喋っていると、危惧していたことを思い出した。
「洗濯物は「ちゃんと取り込んだよ、少々ギリギリだったけどな」...ありがと、藍」
今朝早くに干していた布団達はどうやら無事らしい、朝は日がでていたのになぁ...。もう6月とは言えお空も多少不機嫌らしい。
私は履き物を脱ぎ、食卓へ向かう。少し遅いがお昼にしようか。今日は藍の当番だし、のんびり食べよう。
昼食を終えた私は縁側に座って、一人雨の降る空を眺めている。庭先には早くも紫陽花がうっすらと紫色を帯びて佇んでいる。...あの日も、こんな雨だったかな。
物思いに耽っていると、廊下の軋む音が雨音に混じって耳に入ってくる。目をやると、藍がそこに立っていた。
「隣、良いか?」
「ん、勿論」
藍は湯呑み二つとお茶菓子の乗った盆を置き、私の隣に腰を降ろした。どうやら家事も一段落ついたらしい。湯呑みを受け取り一口、...ふぅ。
「.,.今日、紫様は?」
「幽々子様に会いに冥界へ行ったよ、夜になる前には帰るそうだ」
「...そう」
「白は、何か考え事か?...悩みなら聞くぞ」
「...そんな風に見えた?」
コクリ、と藍は頷く。
「ずっと上の空というか...雨の日はいつもそうじゃないか?」
「...私ね、雨、好きなんだ」
あの日もこんな雨の日だったから。と、心の中で続ける
「...私も好きだな、雨。なんというか、うまく言えないけれど...心が落ち着く」
まぁ、尻尾の手入れが大変だがな...と藍は言う。...どれ、と私は立ち上がる。
「ん、どうかしたか?白」
「なに、同僚の労いも兼ねて一つ尻尾の毛繕いでも、と思って」
私は藍の後ろに座り込み、懐から櫛を取り出す。もふもふと柔らかい尻尾の感触を楽しみながらスイーッ、とといていく。
「ちょ、別に自分でやるから...」
「いいよ。私も楽しくてやってるから、藍はゆっくりしてて」
順番待ちの尻尾たちがパタパタと動いている。...口ではそう言うが、まんざらでもないらしい。
「む、...まぁ、そこまで言うなら...」
「はいはい、素直でよろしい」
今日は簡単に折れたなぁ...なんて思いながら毛繕いを続ける。...それにしても、凄いなぁ尻尾。流石は金毛九尾の大妖怪様、立派なことで。
「少し、羨ましいよ...」
「...そうか?」
私も妖狐ではあるが、尻尾は持っていない。...いや
自ら捨てた
まだしばらく日常回です。...まだお話に出てない方とかとも会わせていこうかな。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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ー34話 白と金
今日は雨だ、朝から降り続いている。私はこの洞穴を根城にして、生活している。初めは直ぐにここを離れるつもりだったが不思議と腰を落ち着けている。
そんなことを考えていると雨音ではなく、何かの足音が聞こえた。...この妖気は...
「よ、久方ぶりに会いに来てやったぞ、ハク」
「...」
番傘を畳み、洞穴にやって来たのはあの妖狐だった。...あの雨の日に会ってから時々、訪ねてくるようになったのは記憶に新しい。
「...私みたいなのに構うなんて、どれほど暇なんだか...」
「む、これでも将来有望なんだぞ...ほれ」
「!...お前、それ...」
振り返り誇らしげに三本の尻尾を見せてくる。また増えたのか。十数年でここまで増えるなんて...。
妖狐の尻尾はまさしくその者の力の象徴。生きた年月は勿論、修行や強い意思も関わり、増えていくと言われている。
「それよりも、ハク、昼はまだ済ませてないだろう?」
「...いや、もう食ったよ」
目をそらしながら言う。正直、早く帰って欲しい。居座られると色々と面倒だ。
「...お前、嘘つくとき目を合わせないよな...」
「......なんのことやらもがっ?!」
「観念して食え、久しぶりに作って来てやったんだから」
んぐっ。...とぼける間もなく口に握り飯を捩じ込まれた。しばらく帰りそうに無いか...はぁ
コイツは私が忌み嫌われていたことを知らない。私がいた里とは別の里に住んでいるからだが、そんな妖狐の噂の一つや二つくらい耳に入ってもおかしくないと思うが...
洞穴にやって来るのは決まっていつも雨が降っているときだけだ。初めて会ったのもこんな日だったか...。
「前に会ったのも、もう1年前くらいだな。...よっと」
そう言いながら私の隣に腰を降ろす。
「...今日は何の話だ?」
「おっ、そっちから聞いてくれるとはな、少しは素直になったか?」
「...無いなら寝るぞ」
「む、じゃあ聞いてもらおうか。...最近はなぁ...」
いつも通り、話し始める姿にため息が出た。自分の身の回りで起きたことやら、見聞を広めるために親と旅に出ただとか、今回は旅についてらしい...。
...本当に楽しそうに話す。笑顔を振り撒きながら、身振り手振りを交えて、この雨の間だけ...
「...それで、私は三尾になったんだ」
「...そうか...」
いつの間にか話は終わり、雲の合間から光が射し込んでくる。それに気付いたのか、立ち上がる。
「晴れてしまったし、抜け出して来たのがバレると面倒だからな。そろそろ帰るよ」
番傘と握り飯を包んでいた風呂敷を手に、振り返る。
「...またな、ハク」
「......また...」
「!...あぁ、またな」
私は日に照らされる背中を見送った。...妙に嬉しそうに帰っていくのが見えた。
そういえば〝また〟なんて、初めて言ったかな...
過去話でした。次回は日常の予定です。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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19話 図書館と静寂
ぺらり、と、紙と紙の擦れる音だけが広く薄暗いこの空間に響いている。蔵書ならではのインクの匂いが鼻を突く。...へぇ、コレで幕引きなのか。案外簡単に終わらせるなぁ...ま、一冊で完結してるのは読みやすいし悪く無かったかな。
私は興味を惹かれた小説を読み終え、本を閉じる。
「...あら、もう読み終わったの...?」
「はい、さほど長くは無かったので。面白かったですよ」
「...そう、それは良かったわ...」
そう言うと、パチュリーは本を読みながら、右手の人差し指を立てる。淡い光が一瞬見えた気がする...。すると私の手に持っていた本も同じ様に光り始め、ひとりでに何処かへ飛んでいってしまった。...魔法って凄いなぁ、ホント。
ここは紅魔館にある図書館だ。紅魔館の方たちとは異変の事後処理のときに知り合い、今では時々このように本を読みに来たりするような仲だ。...いやぁ、まさか弾幕ごっこ一つで館が半壊してるとは思わなかった...ほぼ瓦礫の山だったもんなぁ。
「...そろそろお茶でも出そうかしら...こぁ」
「は~い、お待ちくださ~い...」
パチュリーが呼び掛けると、少し遠くから声と小さな羽音が聞こえてくる。
「お呼びですか?パチュリー様」
「紅茶...でいいかしら...?」
「...あ、えーと...はい、構いませんよ」
「...そう。...淹れてきて頂戴」
「分かりました。最近、ちょっとイイ茶葉入ったんですよ」
パチュリーに突然問われ、少し返答が遅れてしまった。いつも日本茶だしたまにはね...。こぁ、と呼ばれて来たのは小悪魔さん。パチュリーの使い魔らしい。パタパタと羽を鳴らしてお茶を淹れに飛んでいってしまった。
「すみませんね、本を読ませてもらったうえにこんな...」
「構わないのよ...客人をもてなすのは最低限の礼儀だもの」
「...今度、菓子折り持ってきますね」
「そう、楽しみにしてるわね...」
そんな風にしばらく話していると突然、図書館の扉がバァンッ、と大きな音を立てて開かれた。...私以外にお客さんかな?
この図書館は話を通せば誰でも利用可能だ。しかし貸し出しはしておらず、あくまでここで読んでいく場合に限るが。
「...そっちから入ってくるなんて珍しいわね...」
「うっせ、そういう気分なんだよ」
そこには、箒の先に大きな袋を引っ掛けた魔理沙がいた。...袋からは、本が幾つか顔を出している。
「あら、死ぬまで借りるんじゃなかったの...?明日はお葬式かしらね...」
「勝手に殺すな勝手に...って白、お前も来てたのか」
この前雨宿りで魔理沙の家にお邪魔した時、掃除をすることになったのだが、その時に見覚えのある本がわんさかあった。パチュリーから魔理沙についての話を聞いた事があったので、かなりしつこく返すように言ったておいたが...どうやら聞き入れてくれたようだ。それに、あんなに本があると片付けても片付けてもキリがない。
「あ、返しに来たんですね、本。...ところで、また散らかしたりしてないですよね...」
「えっ、や、あー...あはは」
「...また行きますね」
「ぐぅ...」
まぁ、本が返ってくるのは良いことだ。この前も小悪魔さんが、蔵書の整理が滞るだのいつも窓を割って入ってくるだの言っていたので、これで一安心だろう。
「あー!」
急に後ろから声が聞こえた。振り返るとティーセットを載せたカートを押す小悪魔さんが
「魔理沙さん!また、本を盗みにきたんですか!?今度はそんなにたくさん!!」
小悪魔さんが指差すのは大量に本の入った袋。...あー、そうなっちゃうか...。
「いや待て小悪魔、これは「もう!今日こそは盗らせませんからね!!スペルカード三!被弾三です!!」だー!なんだよ?!」
...迷い家でこのやり取り見た気がする...。二人はそのまま飛び上がり私達の上空で弾幕を撃ち始めた。...私は取り残されたカートを持ってくる。
「...お茶にしましょうか、お砂糖は?」
「...そうね、二つお願いしようかしら...」
私も三つくらい入れようか...
気持ち長めになりました。もうちょっと書けると良いんですがね...。そんな訳で紅魔館メンバーとも交流。ちなみに小悪魔は後で、黒コゲになって本の山に頭を突っ込んで目を回してたそうな...それでは、また読んで頂ければ幸いです
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20話 買い物と半霊
「えーっと、後は八百屋さんと...」
今日は人里へ買い出しに来ている。この前訪れたのがもう一ヶ月以上前だろうか...。とはいえ、買い出し抜きにして個人的に来ることはあったし、様々な理由で足を運んでいる。
残りは野菜を幾つか買っておしまいかな...なんて考えながら歩を進める。道行く人達に挨拶を返しながら、時には足を止め世間話なんかもしてのんびりと歩いていく。
「えと、じゃあ大根と...あと白菜もお願いします」
「毎度ありがとうね。可愛らしい従者さん」
目的の八百屋さんに着くと、そこには店主のお婆さんが見覚えのある少女の応対をしているところだった。
「こんにちわ、久しぶりですね妖夢」
「あ、白様。お久しぶりです」
「あら、いらっしゃい。今日は買い出しかい?」
「えぇ、そうですね。ひとまずいつものお願いします」
ちょっと待っててね、と言うと店主は店の奥に歩いて行った。妖夢に目線を移す。
「妖夢も買い出しですか?...結構凄い量ですね...」
「はい...幽々子様はたくさん召し上がりますから...」
妖夢の両手には既に食材で溢れかえっている袋がいくつもあった。私は宴会を思い出す。...いつもあんなに食べてるとしたらお金がいくらあっても足りない気がする...。
「...それより白様、さっき仰っていたいつもの、ってなんですか?店主さんは何か取りに行ったようですが...」
「あぁ、見れば分かりますよ...ほら」
お待ちどう様、と店主が持ってきたのは数種類の野菜がかなりの量詰められた木箱だった。これでだいたい一月分だ。
「んー、それじゃああと...コレとコレもお願いしますね」
「あいよ、今日もたくさん買ってくれてありがとうねぇ」
私は表に並んでいた野菜の中からめぼしいのを幾つか手に取り木箱に入れていく。まぁ、こんなものだろう。
「...こんな風に、私のところでは月に一度たくさん買って行くんですよ。あ、コレ代金です」
「そうだったんですね...人里で白様を余り見かけないのはそういう...」
私は話しながら慣れた手つきでいつもの買い物袋に野菜を放り込んで行く。便利で助かるよホントに。
「...それ、入りきるんですか?流石に無理なんじゃあ...」
「大丈夫ですよ。紫様の特製ですから」
と言い、私は妖夢に袋の中身を見せる。すると合点がいったのか、へぇ、と声を漏らしていた。
「...なんだか、二人が並んでいると家族みたいねぇ...」
「はえっ?!」
店主の突然の一言にすっとんきょうな声を漏らす妖夢。...確かに髪だとか肌の色は似通っているし、初対面の人なら簡単に騙せてしまいそうかな...。
「いやいやいやそんな!親子みたいだなんて...」
「ほんとに姉妹みたいねぇ...」
「え、あ...」
妖夢が止まる。...店主は家族みたいとは言ったが親子とは一つも言っていない。...あれ、もしかして...と思い妖夢の耳元で声を掛ける
「...おかーさんみたいれす...」
「はぅあっ?!いや、それは、その、あのときは...お、おおお、お酒!お酒が入ってたので!!つい...」
...どうやら妖夢、酔ってる時の事も覚えてるタイプのようだ。赤面しながら手をわたわたさせている。...なんというか...ちょっと可哀想になってきた
「...まぁ、また聞いたげますよ、愚痴の一つや二つくらい」
「あうぅ...」
周りに漂う半霊もほんのり紅くなっていた
妖夢とばったり人里で、てな感じでした。酔ってる時のこと思い出すと軽く死にたくなる...ので、そんなに飲まないんですよね。とまぁ、こんなところで、また読んで頂ければ幸いです
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21話 屋台と予兆
「どこかなぁ...」
買い出しを終え、妖夢と別れた私は帰路についた。辺りは夕日に照らされている。帰る途中に夕食の献立を考えていると、そういえば最近食べて無いなぁ...と、思い浮かぶ物があった。少しおぼろげな記憶を頼りにソレを探す。
しばらく空を飛んでいると、眼下の木々の合間から白い煙が立っているのが見えた。...良かった、今日はやってるらしい。
私は付近に降り立つ。...するとそこには、暖簾を引っ提げた移動式の屋台が一つ。大きな赤提灯が爛々と光を放っている。四人程度が座れる長椅子には、どうやら先客が一人いるらしい...。
「こんばんは、一人ですけど大丈夫ですかね」
「いらっしゃい、って白さんじゃないですか、お久しぶりですね。ささ、座って座って」
「...お隣、よろしいですか?妹紅さん」
「ん、構わんよ。...一人呑みも味気無いと思ってたところだしさ」
暖簾をくぐり軽く挨拶を交わす。...先客は私の見知った顔だった。一応確認してから隣に腰を降ろす。
「あはは、残念ですけど長居は出来ないんですよね...とりあえず、タレと白焼きを一つずつ。...あ、あと持ち帰りでタレを三つお願いしますね」
「はいよ、直ぐ焼いちゃうからねー、少々お待ちを」
「なぁに、帰るまでで良いさ。ミスティア、枡一つ借りるよ」
「いいよー、勝手に使っちゃってて」
そう言うと妹紅さんは新たに一つ手に取った枡に日本酒を注いでいく。...うわぉ、なみなみ一杯。
「ほれ、私の奢り。ちょっとは付き合ってくれよ?」
「...帰るまでなら構いませんよ、おっとっと...」
今にも零れそうな枡を受けとる。妹紅さんは自分の枡をお酒で満たしこちらに差し出す。
「そんじゃ、うざったい梅雨との別れに」
「「乾杯」」
夕日もいつの間にか山の向こう側に顔を隠し、辺りは静かな闇に包まれた。聞こえるのは炭火に油の落ちる音と、人と妖が呑みながら交わす、なんてことは無い世間話だった。
「...もう梅雨も終わりだな...夏ってなるとミスティアは書き入れ時だろう?」
「そうですねー、いつも夏になると人里の直ぐ近くに屋台を出してますから、皆さんいっぱい買ってくださるんですよ」
はい、どうぞー、と目の前に八目鰻の蒲焼きが二種置かれる。鰻と言うと蒲焼きのイメージが強い、美味しいのも確かだけど...。
「やっぱり白焼きだよなぁ...分かってるな、白」
「むぐ、...そうれすね...んっく...素材の味が活かされる分、嘘が吐けませんからね。勿論蒲焼きも好きですけど」
「日本酒にも合うもんねー。あ、持ち帰りの分ももう焼いちゃおうか?」
「えぇ、お願いしますね」
「ん、もう帰るのか...っと、ありがとな」
私は妹紅さんの枡に日本酒を注ぐ。夕飯の為の鰻を焼いてもらいながらまだ少しある時間で話しをしていた。
「そういえば、明日博麗神社で宴会があるんだってー、白さん知ってた?」
「そうなんですか、初耳ですね」
「魔理沙が言ってたよ、なんでも梅雨明けを祝って、だとさ。まぁ、理由をつけて呑みたいだけだろうねぇ」
「そうそう、この前屋台に来てねー...そういえば白さんと呑みたいって言ってたよ。はいこれ」
魔理沙がねぇ...なんて思いながら、焼き上がった八目鰻を受け取る。どうやら二人は参加するみたいだ。
「白も来なよ、人が多くて困ることなんて無いだろうし」
「そうですね...紫様にも言っておきましょうか」
私は代金をミスティアさんに渡して屋台を出る。妹紅さんが、またなー、と手を振っているのに手を振り返しておく。あー、美味しかった。
「...宴会、ねぇ...」
「...?」
ふと、少女の声が聞こえた気がした。振り返る...が、誰も居なかった。疑問に思ったのもつかの間、夕飯の時間が迫っていたのもあり私は急いで家路についた。
「面白そうだね...」
暗い森に少女の声が木霊し、霧の様に消えた
気持ち多めでした。妹紅とは慧音繋がりで知り合いのようです。そして少し不穏な終わり方...。どうなるのやら...とまぁ、そんなところで、また読んで頂ければ幸いです
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22話 宴会to宴会
「「「「かんぱーいっ!!」」」」
妖怪に亡霊や妖精、そして人間の少女達が声高らかに言う。各々酒で満たされた器を持ち喧騒を肴に次々飲み干していく。...皆が楽しそうだ。
「...白、ちょっと良いかしら」
「...私もちょうど話したかったんですよ、霊夢」
...ある妖狐と巫女を除いて
私は今、霊夢と一緒に神社の居間で机を挟んで座っている。境内では、色んな種族の呑んだくれ達が騒ぎ立てているところだ。
「ねぇ、いくらなんでもおかしいと思わない?」
「...そうですね、明らかに異常です」
二人はいくつかの不信感を抱いていた。原因は宴会、今も外で行われているどんちゃん騒ぎ。
「7月に入ってもう4度目よ?...それなのに皆なんにもおかしいなんて思ってない」
そう、あの日妹紅さん達に聞いた梅雨明けを祝う宴会。それを皮切りに三日間置きに宴会が行われている。
「これは異変よ!絶対にそう!」
「...その心は?」
「勘!」
立ち上がり自信満々にいい放つ霊夢。...勘と言われるとなんだか信憑性に欠けるが、今回は当たっているだろう。
実は、人里でも誰が始めたか分からない宴会が何度も開かれているそうだ。慧音先生も参っているようだった。...ただ
「一体何の為にこんなに宴会を?」
「...それは、そのー...あ、あれよ!酒が呑みたいっていうどっかの酒好きが...」
そう、動機がわからない。一体誰が、何の為に終わらない宴会を、この異変を起こしているのか。
今までの異変にはどれもある程度は動機、目的があった。例えば紅霧異変。紅魔館の主、レミリア・スカーレットが自らの弱点である日光を遮る為に紅い霧を発生させた。例えば春雪異変。冥界の女主人、西行寺幽々子が西行妖という妖怪桜の開花の為に幻想郷の春を集め、終わらない冬が続いた。
私も少し困っている。藍や橙も宴会にでずっぱりなのだ。いくら妖怪とは言えそんなに何度も酒を呑んでいては体に悪いだろう...。だが、気が付くと宴会に参加している。見えない何かがそうさせているような...そんな感覚。紫様は最初の宴会には私用で来れず、その後も姿を見ていない...。
「とーもーかーく!異変であることは火を見るより明らかなんだから!さっさと元凶ぶっ潰して異変解決よ!」
...なんだか頼もしく見えてきた。霊夢、こんなに立派になって...私は嬉しいよ。
「こう何度も宴会されると後片付けが面倒なのよ!毎回毎回!」
おい、それでいいのか博麗の巫女
こんな感じですかね、はい。そういえば、活動報告にてお知らせがあります。良ければ目を通しておいて貰えると...それでは、また読んで頂ければ幸いです。
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ー33話 金と白
雨上がりの空、木々に未だ残る雨の雫が太陽の光を受けて虹色に輝きを放つ。私はいつもより少し軽い足取りで帰り道を歩いていた。
『...また...』
最近になって、また増えた尻尾が揺れる。その言葉をあいつから聞けただけで嬉しくなってしまっている。
思えば出会いは...十年は前か。にわか雨に降られて逃げ込んだ洞穴...あの時は驚いた。誰かの声が聞こえ見てみると私と同じく、まだ幼かったハクがいたのだ。
...私に出来た、初めての友達だった
私は独りだった
産まれながらに人の姿をした妖狐だった
両親には将来を期待された
両親は私がいつか九尾になれると言った
私が言葉を話せるようになると修行が始まった
辛いこともあったけど父と母のために頑張った
両親は色々なものを与えてくれた
両親は盲目だった
何も見えていなかった
私のほんとに欲しいものがなにか
見ようともしなかった
...私は...私は
独りだった
全てが嫌になった。お友達がほしい、皆と遊びたい、こんな生活嫌だ...
「独りは...寂しいよ...」
私は家を飛び出した。明け方でまだ両親が寝ている間にどこかへ行ってしまいたかった。
まだ霧のかかる森の中をがむしゃらに走った。あそこから、離れたかった。父と母は私のことを見てくれない。私は二人にとって、都合のいいお人形だった。
いつの間にか私は、樹の根本に座り込んでいた。少し寒い...。
私はどうして周りの子たちと違うんだろう...いつもそう考えていた。幼子でありながら、人の姿をした妖狐だったから?初めは嬉しかった。けれど、それも最初だけ...私は気付いた。独りだった。
それでも、私は頑張れば誰かが私のことを見てくれる。そう思って修行をしていた。でも、いつまで経っても何も変わらなかった。
「...みんなと同じが良かったなぁ...」
まだ暗い森に、弱々しい声が虚しく響く。...いらないよ、こんなの。
少女は瞼を下ろした
「...んぅ?」
額に何か、冷たいものが触れるのを感じ目が覚める。...そっか、走り回って寝ちゃったのか。ふと空を見上げる。
ぽつり、ぽつり、と雨が降ってきた。季節は冬、このままずぶ濡れになってしまうと風邪をひくはめになってしまう。
「...雨宿り、しなきゃ...」
次第に強まる雨脚に少し焦りながら、私はどこか雨を凌げる場所を探した。
しばらくしてから洞穴を見つけた。...ここなら大丈夫だろう。
私は昔を思い返し、あの日の雨に感謝をする。
私は雨が好きだ。なんというか、うまく言えないけれど心が落ち着く。...まあ、尻尾の手入れが大変だけれど...。
それにさ...
友達に会えるから
過去話でした、はい。...タグにシリアスって入れとこうかな、流石に。...そういえば平行して書いてる小説もありますので、時間があればそちらも読んでみてください。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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23話 旧友と月見酒
私は縁側で夜空を見上げていた。...今日は満月みたいね。少しばかり雲がかかっているけれど、その切れ目からは月明かりが淡く、辺りを照らしている。
可愛い式神達はもう眠りについている。話を聞くに、明日博麗神社で梅雨明けを祝う宴会があるそうな...。
ふと、何か空気の流れに違和感があった。...軽く身構えたものの、少し懐かしい妖気に肩の力を抜く。
「...久しぶりね、萃香」
「ん、そんなに経ってたっけか?」
何の前触れも無く、私の隣に一人の少女が現れる。小柄な、10歳程度の少女。只、異質なのは頭部に二つ、捻れた角が生えていること。
「どうかしたの?貴女から訪ねて来るなんて...」
「なぁに、古い友人と酒でも呑もうかと思ってさ」
萃香はそう言うと、手に持っていた酒瓶をこちらに見せてくる。
突然辺りが明るくなる。見上げると、月を隠していた雲が霧散し、月明かりが一層はっきりと地上を照らしていた。
「ほら、月見酒と洒落混もうか」
「...そうね」
悪戯っぽい笑みに私は、変わらないなぁ...なんて思いながら微笑みを返した。
「...藍のやつは元気してるかい?」
「ん...そうね、私が永く眠っていた間も頑張ってくれてたわ...」
あの子達には感謝している。妖怪としての性質上、冬眠を余儀無くされる私。その間、この幻想郷を任せることができる存在にとても助けられている。
「あー、今年は冬も長かったしなぁ...あんまり迷惑かけてやるなよ?」
「...そうね、二人には頼りきりだものね...」
残り少なくなっていた枡を傾け、萃香の持ってきたお酒を流し込む。
「...そういえば、新しく式神が増えたんだって?」
「ん、ありがと...そうね。藍と同じくらい、優秀な子よ」
空になった私の枡にお酒を注ぎながら、萃香が聞いてくる。...そういえば、話してはいたけれど会わせてはいなかったかしら...。
「んー、挨拶くらいしたかったんだが...もう寝てるみたいだしな...」
「そうね、明日も用事があるみたいだから...」
最後の一滴が枡に落ち、瓶を置く。萃香は瓢箪を取り出し呷る。
「...藍とどっちが強い?」
藪から棒に聞いてくる。
「白かしら...貴女とも良い勝負するかもしれないわよ...」
「...へぇ...それはそれは...」
私が喉を鳴らす度に、数度瓢箪を呷る萃香。ぷはぁ、と息を吐き、そのまま続けた。
「...実は一つ、異変でも起こそうと思っててさ」
「...そう、貴女がねぇ...」
「今年は冬が長かった分、春はあっという間だったからねぇ...」
よいせっ、と立ち上がる萃香。
「花見酒、し足りないんだよなぁ。...ま、久々にお前と呑めて良かったよ」
その言葉を残し、鬼の少女は霧のように消えた。...私は手に持った枡に目をやる。
綺麗な月が私を覗き込んでいた
紫さん視点でした。...こういう日常を切り取ったような描写が上手くなりたいですね。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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24話 妖霧と鬼
騒がしかった宴会も終わりを迎え、いつのまにやら博麗神社には片付けをする霊夢と私以外は居らず、雑多に転がった酒瓶が去っていった喧騒の跡として残っていた。
「ったく、少しは手伝ってから帰りなさいよね...アイツら」
「まあまあ、私が手伝いますから...」
呑むだけ呑んで帰っていった者達に悪態をつく霊夢を宥め、空の瓶を集める。...それにしても、何処からこんな量のお酒が湧いて出てくるんだろうか...。
今日までにも数回の宴会が行われている。3日に1回の頻度で開かれる宴会...原因は分からない。一体何がどうなっているのか...。
様々な憶測を飛ばしながら、境内の掃除は続く。...まずはこの惨状を何とかしてからかな...。
宴会の後片付けを終え、私は帰路についていた。霊夢も明日辺りから異変解決に繰り出すらしい...。
どちらかと言えば酔いずらい私だが、魔理沙にしつこく呑まされたのもあり、少し酔いがまわっている。この状態で空を飛びでもしたら、ぶちまけてしまいそうだ...うぷっ...
そんなわけで、歩いて帰っている。宵闇にのまれた森の中では、私の出した狐火だけが光を放ち、辺りを照らしている。
ふと気が付くと、足下に霧が出ているのが目に入った。...こんな時間に霧が?酔いのせいか、あまり頭も回っておらず、特に気に留めることも無く帰路を急いだ。...少しずつ濃くなっていく霧に何の不信感も抱かぬまま...
いつの間にか、少し開けた場所に出た。...どこかで道を外れてしまったのだろうか...。周りを木々に囲まれ、私が立っている所を中心に円を描くように広がる空間には、霧が立ち込めている。
「...ここは」
「んお、やっと捕まえられたか」
独り言に呼応するように、誰かの声がした。何かおかしい。声の出所がかなり曖昧だ。狭い部屋で声が反響しているような...そんな感覚。
「いや~、慣れない使い方するもんじゃないね...」
「?!...貴女は...」
立ち込める霧が、人の形を型どっていく。...そういうチカラ、か。現れたのは声の主。瓢箪を携えた少女...いや、それよりも...
私の目線は頭部に二つ、異様な捻れた角に注がれていた。十中八九鬼、で間違いないか...。
「...アンタが紫の言ってた...えーっと、名前は...なんだったか...」
「...紫様のご友人ですか」
「んー?...ま、腐れ縁みたいなモンさね」
そう言うと、鬼の少女は瓢箪を数度呷る。
「それで、だ」
「......?」
周りの空気が震える、見据える鬼の顔は
「アンタ、藍より強いんだって?」
獰猛な好奇心に彩られていた
次回、戦闘パートですかね。かなりの急展開ですが...頑張って書いて行きましょうか。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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25話 闘争と本能
私は闘うのが好きだ。鬼として産まれ持った性、だろうか。強い奴となら尚の事良い。...紫のやつ、分かってて言ったのか?あれだけ骨のあった藍より強いって、アタシと良い勝負するって、そりゃあ
私の〝鬼〟が黙ってらんねえよなぁ...
...好奇心は猫を、いや、狐を殺す...とでも言えば良いのか。ほとんど殺気と変わらない。
「...藍には劣りますよ」
「嘘つけ、アイツがそんなしょうもない嘘つくかよ」
元来、鬼という種族は闘争の中に生きる。妖怪の中で最強と言って差し支えない。
「闘え、と言われてもこちらとしては挑む理由も「三日置きに開かれる宴会」!......貴女が?」
会話を遮った言葉に少し驚く。
「アンタは元凶の私を倒し、異変を止める。...理由はソレだよ」
「...異変を解決するのは人間の「まあ、もうしばらく宴会続きってのも悪くは無いと思うが...」...!」
またも遮られた私の言葉。それと同時に鬼の少女は霧のように消えた。
「アタシは神出鬼没だ。...次いつ会えるか分からんぞ?」
「!...何が言いたいんですか」
いつの間にか私の真後ろに立つ鬼の少女。
「アンタが闘うって言うなら逃げも隠れもしないよ、博麗の巫女から」
...おそらく、霊夢ともやる気だろう。この鬼が今みたいに自由に姿を消すことができ、本気で異変を続けようと言うなら...こんなことしない。私とやり合う為の口実だろう...。でも、万が一を考えると...
「...受ける他ないでしょう...」
「いいね、物分かりが良いやつは嫌いじゃない」
強いって言うなら尚更な、と言い私の正面に立つ。
「さぁて、アタシでも無理言ってるってのは分かってる...そんな訳で...」
両腕を開き、言い放つ。
「先に一発、蹴りでも拳でも、なんなら妖術だって良い。譲ってやるよ」
かなり余裕があるらしい...なんというか、鬼って皆こうなんだろうか...。さて、やるとなったからには全力だ。
「それじゃあ...」
「お、なんだなんだ?」
私は前のめりにしゃがむ様に両足を折り畳み、つまさきに力を込める。おそらく、今出せる一番〝重い〟一撃はこれだろう。
両足の力を真下に打ち出す、と同時に私自身を〝軽く〟する。気が付くと、視界が白に埋め尽くされる。...?...あぁ、雲の中か。少し跳び過ぎたかな?まあ鬼相手ならこれくらいでいいかな。
少し身体を〝重く〟し、雲から抜ける。眼下には森と、先程まで私がいた開けた場所。...このまま落ちて大丈夫そうかな。
私がしようとしているのは平たく言えば、踵落とし。大事なのは〝重さ〟と速度。結果は後から着いてくる。
さて、これで決まれば良いけれど...私は私を〝重く〟した
白が持っている能力は、重さを変える程度の能力です。概念的な重さを変えることもできるので、重症が軽症になってた訳ですね。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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26話 一撃と決着
「...消えた、いや、上か?」
空を見上げる。...かなり跳んだな、まだ姿は見えない。...居た。雲の中から出てきたのを見つける。...一瞬であそこまで...へぇ...。
「さぁて、どう出る...ッ?!」
咄嗟に両腕を頭の上で交差、そして衝撃。身体が周りの地面ごと、深く沈み込む。それが相手から放たれた蹴りだと気付いた辺りで遅れて、轟音が耳をつんざく。
「んの...ギギッ...がっ?!」
受けきれ無かった両腕を弾き、相手の踵が脳天を貫いた。
振り抜いた脚を確認し、重さを戻す。私は爆心地より後ろへ跳ぶ。...手応えは合った。ひび割れた地面に、脚を半分突っ込んだような形で立っている鬼。両腕は力無くだらん、と下ろされ、俯いたまま静かに佇んでいる。
さて、これで終わればいくらか楽なんだけれど...
「......アッハハハハハハハ!!...ハァ」
「...そうですよねえ...」
気持ちが良い程の高笑いと共に鬼の少女は顔を上げる。表情は変わらず、見開かれた目は爛々と輝いてさえ見える。
「...いやあ、やってる中で意識がトんだのは久々だよ...勇義とやって以来か」
「...?」
何かぼやくように言い放つ鬼の少女。最後の方は良く聞こえなかったが...アレで一瞬気絶するだけって...何でこうも鬼ってヤツは頑丈なんだ...。
「アタシは伊吹 萃香...鬼の四天王が一人...アンタは?」
「...八雲 白、只の妖狐ですよ」
「ッハ、鬼の意識刈り取っといて良く言うね」
名乗りを上げられる...ここから本番と言った所だろうか...。昔みたいなハンデはもう無い。
「さてと、それじゃ早速「はーい、そこまで」っんな!?」
闘いの火蓋が下ろされようとしたその時、突然空間が裂ける。...なんというか、どうにか助かったようだ...。
「おまっ、紫!何で邪魔すんだよ!?」
「貴女ねぇ、この辺り一帯更地にするつもりなの?それに、貴女一回気絶したでしょ?勝負ありよ」
「うぐっ?!...最初から見てたのかよ...」
だー!、良いトコだったのに!!と、地団駄を踏む萃香さん...うわお、地面がバッキバキ。
「というか、なんでスペルカードルールで戦わないのよ」
「...なんだ?それ」
「...はぁ...そうだったのね...」
紫様が額に手を当ててため息を一つ溢す。...てことは、霊夢とも殴り合う気だったんだろうか。
「良いかしら、スペルカードルールって言うのは...」
そこからはみっちり紫様の説明が続いた。...異変を起こすからには確かに覚えて置いてもらわないと不味いだろう。
...ていうかこれ、私帰って良いよね
鬼にガチで暴れられると危ないですもんね。しゃーない。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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27話 終幕とサシ呑み
うやむやになった萃香さんとの一騎討ちから二日明け、私はいつもと同じように家事をこなし、縁側から見上げた初夏の夜空に思いを馳せていた...いたのだが
「す、萃香さん...もう勘弁してください...うっぷ」
「なぁんだよ、まだ呑み始めたばっかりじゃんか」
いつの間にか件の鬼とサシで呑んで...呑まされていた...
さて、ひとまずなぜこうなってしまったのか。結局、あの決闘?があった明くる日、萃香さんは博麗神社へ赴き、霊夢と一戦交えたらしい。...勿論弾幕で
流石に鬼と言えど、百戦錬磨の博麗の巫女に対して付け焼き刃では敵わなかったらしい。これにて異変解決、めでたしめでたし...そう、問題はその後。
普段なら異変解決を祝う宴会が開かれるのだが、繰り返される宴会が異変そのものだったこともあり、宴会は無し。これは霊夢の決定である。
...後はお察しの通り、そのしわ寄せが私に押し寄せて来た、という訳だ。...酒気で意識が少し朦朧とする...。どんだけ呑ませる気なんだこの鬼は...。
「...そういえば、萃香さんは何故こんな異変を起こしたんですか?」
「んー?...そうさなぁ...」
私は押し付けられる盃を押し留め、話題の方向に舵をきった。...どうやら無事、逸れたらしい。
「今年の春は、あっという間だったろう?...花見の宴会も殆ど無かったからなあ...」
萃香さんは手元の瓢箪を数度呷る。...鬼の肝臓は無限か?
「寂しく思ってた矢先に、宴会の話が耳に入ってな。...まぁ、それに乗っかった感じだな」
「...そうでしたか」
私は話を聞きながら水を流し込む。...酔った時は同じくらいの水を飲むのが良い...。それに、と萃香さんは続ける。
「少しばかり退屈してたんだ...昔は今と違って腕っぷしに自信のある喧嘩馬鹿がたくさんいたからなぁ...。毎日退屈しなかったよ...」
「...」
静かに聞く。その時の萃香さんは、どこか寂しそうな...そう、見えたから...。
「いやなに、今みたいな平穏は別に嫌いじゃあない。...こうやって誰かと呑みながら話すのも悪くないしな...」
「...そう、ですか...」
ぐいぃ、と水の入ったグラスを傾ける。空になったそれを置き、脇に置いてある盃を萃香さんの方へ突き出した。
「...私で良ければ朝まで付き合いますよ、萃香さん」
「...っは、全く...紫みたいなヤツには勿体ないよ...すまないね」
その夜が明けるまで二人の晩酌は続いた
皆さんも、呑みすぎたなぁ...と思ったらお酒と同じくらいのお水飲みましょうね。ホントに楽になりますから。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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28話 闇夜と仕事
「...いつ振りかな」
ふと、口を突いた言葉。私は今、一人闇夜に人里の近くにある森の中に立っている。時間はもう日付も変わって少し経った。静寂が耳に痛い。
...さて、今日は紫様の命で〝仕事〟が一つ。最近になってめっきり無かったのだが...平和に越したことは無いんだけれど。
標的を探し、しばらく森を歩いていた。...そんな中、ばったりと遭遇することになった。...そうですか、紫様はコレを知っていて私に来させたんだろうか。
「...はあ、いい性格してるよホント」
『...貴様、誰ダ』
目の前に居たのは化け狐、私の嫌いなモノ。
ここ、幻想郷には外の世界で忘れられた妖怪やら何やらが紛れ込む。大半は物分かりの良いヤツなんだけれど...。こういう話の通じない生粋の人喰いの化け物もいる。
ソレの掃除。式神である私の仕事。
「...手短に行きましょう、あなたはここ、幻想郷で何がしたいですか?」
『人ヲ喰ラウ、ソシテコノ地ヲ我ガ物トスル』
...そう
『...貴様、スキマ妖怪ノ式カ...尾ヲ持タヌ妖狐トハ...滑稽ダナ』
くっくっ、と嘲るように嗤っている
『我ハ八ツノ尾ヲ持ツノダ...コノ地デ人ヲ喰ライ、イズレ九尾トナル...ソシテ管理者ヲ殺ス』
静かに佇む
『無論、式ノ金毛九尾モロトモナ』
......
『貴様ノヨウナ者ニ用ハ無イ...喰ラワレタク無ケレバ消エ「もういいよ」ッガァ?!』
私は化け狐周りの大気を重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く「白、もう終わってるわ...」重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く重く「...白」重く重く重く......?何か呼ばれた気がした。
「......紫様?」
「......もう、構わないわ。白」
「?」
振り返ると、スキマを開きその縁に腰掛ける紫様が私の肩に手を置いていた。...構わない?何が?...私は顔を元に戻す。
そこにはもう原型の無い肉塊が周りを紅く染めていた。足下の地面がかなり陥没している。...あぁ、そうだったっけ?私はチカラを解く。ひとまず仕事は終わった。
ふと、視線を感じる。目をやると、見覚えのある少女がいた。宵闇の妖怪...だったかな。
「ソレ、食べてもいーか?」
「えぇ」
適当に返しておく。それを聞いた少女は肉塊へ一直線、後処理の手間が省けた。さてと
「紫様、帰りましょうか」
「...そうね」
明日も朝から家事があるしね
こんな感じです。投稿に関してまた活動報告の方、一ヶ月だとかのヤツに書いてますので、良ければ目を通して貰えれば...それでは、また読んで頂ければ幸いです
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ー29話 金と黒
私は闇夜を駆ける。どうして、なんで、そんな言葉達が頭の中で反響し続けている気がした。肺が、心臓が締め付けられるような感覚。
目指すのは友のいる場所。...あぁ、なんで私は話してしまったんだ...。言葉に出来ない後悔が涌き出る。
「...?じいや、父上の姿が見えないのだが...」
いつもより静かな夜。少し変に思い、屋敷の中を歩いてみる。...すると、父上の姿が見えなかった。こんな夜更けにどこへ...?疑問に思った私はじいやを見つけ、その事を聞いてみた。
「...おお、藍様。御主人は里の若いのと共に、外へ出ておりますよ。なぁに、すぐに帰るでしょう...」
「...?こんな時間に何処へ...」
疑問はそのままだった。...一体何をしに里の外なんかへ?そんな事を考えながら、ふと窓の外へ目をやる。...今日は新月のようだった。
「...?」
すると、外から誰かの話し声が聞こえた。どうやら屋敷の守衛が駄弁っているようだ。
「...それにしても、まさか里の近くに居たなんてなぁ...考えただけでもゾッとするよ...」
「...あの災いの白狐がなぁ...とっくにの垂れ死んでるモンだと思ってたが...」
「まぁ、#-/*.:様達が退治に行ったなら安心だよ」
「ま、そうだな」
...は?
私は立ち尽くしていた。今の...話っ、て...ハ、ハク...なのか...?白狐と聞こえた。はっきりと、そして...災い、とも。...なんで...そんな、ハクはそんなんじゃ......は?退治...?父、上?...いや、待て。ハクの...ことなのか?...ほんとに...でも...
気づいたら私は屋敷を抜け出し走っていた
「...っはぁ...はぁ...」
息を切らして走る。...なんでハクが......私のせいだ。私が、ハクのことを話してしまったから...初めて出来た友達を、誰かに自慢したかったから...。
「...頼む、間に合ってくれ...!」
「っはぁ...はぁ...ハク...?」
私は友のいる洞穴まで着いた。...そこにはハクの姿は無かった...あるのは、血の跡だけだった。暗くて見えづらいがかなりの出血だろう。...血痕は森の中へと続いている。
...ほんとに、ハクのことだったのか...。持っていた淡い希望は砕かれ、災いの白狐が自分の友のことであると、事実だけが残された。
「...行かなきゃ...」
私は血の跡を追う。数人の足跡があるのも分かった。...父上、どうして...
「...?」
森を進んでいる最中、ふと、血の臭いが濃くなったのを感じた。...この先は、開けた場所があったはず...私は走る。
「...あれは?」
見えたのは一つの影、どこか見覚えがある。声を掛け、すぐに駆け寄る。
「父...う、ぇ...?」
そこには...
禍々しいほど黒い妖狐が立っていた
藍視点の過去話でした。それでは、また読んで頂ければ幸いです
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29話 夏と氷精
「......あっつい...」
そんな言葉が口から漏れる。...ここ幻想郷にも、本格的な夏が来た。
さて、紫様にちょっとしたお使いを頼まれ、人里でその用事をたった今済ませて来たんだけれど...煌々と輝く日の光をこんなに煩わしく思ったのは今年に入って初めてである。
今、私は少し暑さに当てられてしまったのもあり、湖の畔にある樹に背中を預け座り込んでいる。水辺に木陰と、涼むには最適な場所だ。生い茂る木々の合間からは紅々とした館が見える。
空を見上げる。...太陽は天辺を越え、少し傾いた辺り...1日で一番暑い時間だ。...しばらくここで休んでおこうか。
ふと、視界の端に光弾が映る。ん、湖上で弾幕ごっこをやっている先客がいたようだ。...今は余り見る気も起きない。...一眠りでも「あっ!ちょ、危なーい!!」...はい?
「なにがーっへぶっ?!」
危険を報せる声を聞き、そちらに目をやったその時、何かが飛んで来た。腹部に直撃。...変な声出た。一体なにが......?...子供?...いや、妖精...かな。青い髪の少女が、私の足の上で目を回している。...なんかひんやりする。
「...きゅ~...」
「チ、チルノちゃん!...あっ、だ、大丈夫ですか?」
「ん、...えぇ、私は特になにも...」
「えへへー...ちょっとやり過ぎちゃった...」
飛んで来た妖精を心配するように、おそらく友人?の緑色の髪をした妖精が近くにやって来た。こちらに気をつかって声を掛けてくる。遅れて、...あれ、見知った顔だ...日傘を持った金髪少女が申し訳無さそうな感じでやって来た。
「...あれ?...貴女は確か...見たことある!」
「フランちゃん、知り合いなの?」
「時々、紅魔館にお邪魔する位ですよ...」
確かレミリアさんの妹さん。...名前が、フランドール、さんだったか...実際に話すのは初めてだ。...というか、それよりもだ...
「...この子は...どうしましょうか」
「「あ」」
気絶した子に膝枕をしたまま、こうなった経緯を聞いた。...どうやら、弾幕ごっこでフランさんがやり過ぎてしまい、チルノさんがここまで吹き飛ばされてしまったらしい...。
「...そうだったんですか...びっくりしましたよ...」
「...えへへー...」
「あ、ご、ごめんなさい!白さん!」
「構いませんよ、悪気があった訳でも無いでしょうし...」
舌を出して可愛く誤魔化そうとしている...のかな、フランさん。それを見た、大妖精さんが頭を下げる。...まぁ、ホントに大丈夫なんだけどね。それに...
「...まぁ、起きるまで待ちましょうかね...」
ひんやりしてて気持ちいいし...
こんな感じです。活動報告にてお知らせがあります。良ければ目を通して頂けると...また読んで頂ければ幸いです
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30話 旧知の仲と向日葵
「あ!大ちゃん、白!こっちこっち!!」
「ちょっと、チルノちゃん!」
「おっとっと。ほらほら、そんなに引っ張らないでも...」
気絶していた氷精、チルノさんに手を引かれバランスを崩しかけながら後についていく。目の前に広がるのは一面の黄色。...さて、何故こうなっているかと言うと...
「...っは!ここはどこ!?アタイはチルノ!」
「あ、大丈夫みたいです」
ガバッ、と飛び起きたチルノさんが支離滅裂な発言をし出したが、軽く流す大妖精さん...しっかりしてるなぁ...。かくかくしかじか、と起きたばかりのチルノさんに色々説明している。
さて、フランさんは、と言うと...
「...ふあぁ......んー、眠くなって来ちゃった...」
「?...まだお昼ですけど...」
「んー、いつも寝てる時間だから...」
そう言えば、吸血鬼は夜行性だったか...。どうやら皆と遊ぶ為に起きる時間をずらしていたらしい。うとうとしながら寝ぼけ眼を擦っている。
「...大ちゃん、私もう帰るね...チルノちゃんにごめんって言ってたって伝えて......くあぁ...」
「へ?...でも...って、フランさーん!?」
大きな欠伸を残してチルノさんが起きる前に帰ってしまった...。自由というかなんというか...残された大妖精さんはわたわたとしている...
と、いう訳である。...それも含めて、チルノさんに説明を...どうやら終わったようだ。
「えー、フラン帰っちゃったのー!?...どうしよう...あ、そうだ!」
「?」
チルノさんは私の目の前に立ち言う。
「ねえ!一緒に遊びに行きましょ!」
はえ?
「すっごーい!ぜんぶまっ黄色ー!!」
まぁ、そんな訳である。一人欠けてしまったから、という理由で私は同行することになった。...ひんやりしてるからいいかな。
ここは、通称太陽の畑。一年中、四季に合った花達が自由気ままに咲き乱れている。...この花は...たしか向日葵?だったか...。目に痛い程に黄色である。
「凄い...こんなにおっきいんですね......」
「ねー!アタイ2~3人分くらいおっきい!!」
そう、とても背が高い。私がそんなに身長の大きいほうでは無いけれど、それでも私を優に越す程だ。
「...この花、少し面白いんですよ...ほら、全部太陽のほうを向いてるでしょ」
「え?......ホントだー!面白ーい!!」
様々な反応を見せる妖精二人に、楽しそうで良かった...なんて思う。...そんなとき、聞き覚えのある声が聞こえた。
「あら、ウチの畑に何か用かしら...?」
こんな感じです。ストーリーが固まり次第、また投稿していきますので...それでは、また読んで頂ければ幸いです
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31話 お花畑とティータイム
「...あら、さっきの妖精二人は?」
「ん...あっちで遊んでますよ」
ここは太陽の畑の真ん中、小さな家の外にあるバルコニー。運ばれてきたのは人数分のティーセットとお茶請け...足りない客人を気にしたのか、先程再会したばかりの家主はそう溢す
「そう...元気なのは良いことね」
「あはは...そうですね。この暑さであんなに元気なのは、妖精だからですかね?」
他愛ない話をしながら、目の前に置かれたティーカップへと注がれるのは...ハーブティー?ですかね。鼻腔をくすぐる爽やかな香りと、ボトルの中でカランと響く氷の崩れる音が、自然と私の喉を鳴らす
「ありがとうございます。これは...」
「ウチで採れたハーブよ、味は保証するわ」
作法などがあるかは知らないが、カップを口へと運ぶ。...ん、美味しいや。普段は余りこういったものは飲まないけれど、暑い日には良いかもしれない
ふと目線を変えると、花畑の脇で楽しそうに走り回る二人の姿...頭には其処らに生えていた向日葵を頭につけている。うん、楽しそうでなによりですね
「久しぶりね...ホントにいつ以来かしら」
「スペルカードルール制定前、ですかね?吸血鬼の件はお世話になりました」
「そう...まあ、退屈しのぎにはなったわ」
久々の再会に昔話をしながら、お茶請けを手に取る。これも手作りですかね?案外器用なんですね
「それで、殺り合いに来てくれたんでしょう?」
「あはは...変わりませんね、貴女は」
出来れば殺気は仕舞って欲しいですが...ホントに戦闘狂なのは変わりませんね、こわいこわい
「私と殺り合っても面白くないでしょう?」
「楽しいわよ?とっても」
「その辺の鬼とでも殴り合っててくださいよ...」
手に取ったお茶請けを口に放り込む...ん、果物の洋菓子ですね。甘さは控えめでお茶に合う...っと
「むぐむぐ...んくっ。ほら、面白くないでしょ」
お茶請けを頬張り、空いた右手で突如突き出された拳を止める。ぱしり、と軽く肌同士が触れる音...幽香さんの不敵な笑みは変わらない
「フフ...ホントに面白いわね、貴女は」
力を
「あー!お茶にお菓子!二人だけでずるーい!」
「わぁ、美味しそうですね...!」
「あら、ちゃんと皆の分もあるわよ?手、洗ってらっしゃい」
すると、遊んでいたお二人が戻ってくる。チルノさんは少しばかり服に泥が着いていて、わんぱくさを感じる
「分かったー!行こ、大ちゃん!」
「うん、チルノちゃん!」
「...」
素直に手を洗いに行くお二人の背中を見送る。まぁ、なんと言うか...
「夏、ですね...」
からん、と氷の崩れる音がした
ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
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