転生者ゼムナスが目指す新XIII機関結成 (ペガシア)
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1.目覚め

ゼムナスって格好良いですよねー。


気がついたら見知らぬベッドで寝ていた件について。

 

何処かのラノベのタイトルにありそうだが、今の私の状況を表すのにこれほどぴったりの表現は無いと思う。

 

強いて言えば、このベッドが見知らぬ物ではないと言う事だが。

 

いや、見たことがあるだけで私が使っていたり持っていたわけではない。

 

このベッドは、キングダムハーツのXIII機関の機関員が使っていたベッドだ。

 

似ているだけかもしれないが、確信が私の中にはある。

 

しかし、何故私はここで寝ていたのだろうか?

 

詳しく調べるためにも一度このベッドから降りる。

 

ベッドから降りて分かったこと。

 

一つ、私の記憶にあるものよりも目線が高くなっている事。

 

二つ、この部屋にはベッド以外何も無く簡素だと言う事。

 

一度、声を出してみる。

 

「あ・い・う・え・お」

 

若本ボイスである。

 

自分の格好を一度よく見てみる。

 

黒コートである。

 

これらの情報から、私はゼムナスか黒コートをきた若本キャラになっている可能性が高い。

 

近くに窓があったので、反射を利用して自分の顔を見る。

 

アナゴさんでは無く、ゼムナスだった。

 

(良かった)

 

黒コートを着たアナゴさんではどうも締まらない。

 

しかし、私は何故ゼムナスになっているのだろうか?

 

自分の記憶を振り返ってみると、突如私を頭痛が襲った。

 

「・・を????の世界・・転生・・ます。

何の・・・ラがいい・・・か?」

 

「キング・・ハーツの・・・ゼ・・・・にな・・・です!」

 

「分かり・・・た。それ・・・頑張・・て下・・・ね。」

 

 

途切れ途切れだが、私が転生した時の記憶を思い出した。

 

私はこの時に、キングダムハーツのゼムナスを選んだのだろう。

 

ゼと言っているからまず間違いはない。

 

自分が何なのか分かった以上、まずはこの部屋の外の探索を行おう。

 

その前に、顔を確認した時に気になっていた事を確認する。

 

窓の外には、不気味なビルが立ち並ぶ暗い世界が広がっている。

 

ここは『存在しなかった世界』だと確信する。

 

そして、ここは我々XIII機関の本拠地である巨大な城の何処かの部屋だろう。

 

一応、身嗜みを確認する。

 

他の機関員に見られた場合、だらしなかったら恥ずかしいからだ。

 

適当に整えた私は、部屋の外へと足を運んだ。

 


 

城は一通り調べ終わった。

 

結果を報告しよう。

 

我が城は間抜けの殻であった。

 

機関員は誰一人としていなかった。

 

部屋も全て空の状態であり、今のところXIII機関は私一人。

 

この大きな城に他のノーバディーもいずに私一人。

 

かなり、寂しくなってきた。

 

まぁ、私には心がないから寂しさも感じないんだが。

 

断じて、言い訳ではない。

 

寂しくなど無いのだからな!

 

しかし、本当に何も無いのでどうしようも無い。

 

自分の能力の確認はある程度したが、ゲームで出来る事は私でも出来るようだ。

 

やろうと思えば、でかいドラゴンのノーバディを出すことができるが、今は意味のないことだ。

 

見せる相手もいないし。

 

思い返せば、私を転生させた神はキングダムハーツの世界とは言っていなかった。

 

ノイズが走っていたが、3から4文字だったのは口を見て分かった。

 

しかし、この世界がキングダムハーツの世界じゃないのならあの空に浮かぶ『人の心のキングダムハーツ』は何なのだろうか?

 

この『存在しなかった世界』の備品としてくっついて来たのだろうか?

 

うーむ、謎は増えるばかりだ。

 

一応、目標は立ててある。

 

新しい私だけのXIII機関を作る。

 

これが私の目指すものだ。

 

当然、私だけとはXIII機関全員をゼアノートにするという原作の計画とは違う。

 

完全オリジナルのXIII機関を作るという事だ。

 

だが、この目標は最初からつまづいている可能性がある。

 

我々ノーバディは強い心の持ち主がハートレスに心を奪われるか闇に落ちる事で出現する。

 

ハートレスはキングダムハーツ固有の敵。

 

この世界はキングダムハーツではない。

 

つまり、この世界にハートレスはいない可能性が高い。

 

城の外はまだ見ていないので、そちらにいる事を祈るしかない。

 

この世界でもハートレスは自然発生するはずだ。

 

・・・いるならだが。

 

私は城の外へと降りていった。

 


 

私は歓喜していた。

 

城の外にはハートレスが存在していた。

 

これで、ノーバディが生まれるのは間違いない。

 

「フハハハハ!」

 

私は笑いながら、向かってくるハートレスを両手の平のエアリアルブレードで切り飛ばしていった。

 

ふと、ビルとビルの間の路地に目が入った。

 

何か肌色の物体がハートレスに囲まれている。

 

私の今日の運勢は一位だったのだろうか?

 

速やかに肌色の物体の近くにいるハートレスを切り、消滅させる。

 

ハートレスに囲まれいていたのは、白い髪の幼女だった。

 

奴らはロリコンだったのだろうか?

 

そうなら奴らはロリコン失格だ。

 

ロリは見て楽しむものだと聞く。

 

傷つけていた奴らにロリコン魂は無いのだろう。

 

そう、ハートレス(心・魂がない)だから。

 

機関ジョークだ。笑え。

 

茶番はさておき、彼女はノーバディなので城へ連れて行く。

 

人の形を保っているという事はそれだけ強い心だったという事。

 

よりよい人材が手に入りご満悦である。

 

気絶しているので、起こさない様に抱える。

 

お姫様抱っこの形になってしまったが、仕方あるまい。

 

取り敢えず、彼女の名前を確認。

 

うん、聞いたことのない名前だ。

 

これにXを入れて新しい名前を作る。

 

元々のゼムナスもやっていたのだし、真似をしよう。

 

しかし、どんな名前にするか?

 

私にセンスはない気がする。

 

ああだこうだ考えながら、幼女を連れて私は城へと戻った。

 

 




グダグダですが、ご容赦を。


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2.機関

若本ボイスで脳内補完してください。
台詞については違う感じがするかもしれませんが、許してください!


城についた私は、彼女に我々のシンボルでもある黒コートを着せた。

 

裸のままいられると、此方が寒くなってしまう。

 

黒コートは、専用の部屋があった。

 

並べられたクローゼット全てに黒コートが入っているのを見た時は、少し驚いた。

 

が、当然と言えば当然である。

 

『存在しなかった世界』は『闇の世界』の近くに存在する。

 

故に、闇の力も強まる。

 

これが厄介なのだ。

 

闇の力は使う我々も当然、闇の浸食を受ける。

 

ノーバディは闇に溶けやすく、移動手段も闇の回廊と闇尽くし。

 

それらの浸食を防ぐ黒コートは重要で有り、多くの数を用意して不足の事態にも対応できる様にするのは当然である。

 

それ故に、我々に私服など存在しない。

 

・・・私の私服とか想像できないな。

 

そろそろ、彼女には起きてもらわなければならない。

 

ポーションで怪我は治しておいたので、気持ちよさそうに眠っている所を起こすのは心苦しいが。

 

まぁ、私には苦しくなる心は無いのだが。

 

ポーションは何故かいるモーグリから買った。

 

商売根性が逞しい。

 

取り敢えず、頬を抓るという初歩的な所から攻めて行く。

 

「・・・いひゃい・・・」

 

多少は痛がって顔を歪めているが、起きる気配はない。

 

痛いのなら早く起きて欲しい。

 

心苦しいが、しょうがない。(棒)

 

レベルを上げてビンタでも良いのだが、HPが半分くらい消し飛ぶ可能性がある。

 

私の得意な電撃でいかせてもらおう。

 

少し痺れる程度に手加減はする。

 

話が出来ない状態になったら困る。

 

「あびゃあ!・・・あれ、ここは、どこ?」

 

「目が覚めた様だな。」

 

「・・・あなたはだれ?」

 

私を見て怖がらないのか。

 

心がないノーバディでさえ私には畏怖を示した。

 

怖がられて、痛む心もない。

 

「私はゼムナス。君の名前は?」

 

「わたしのなまえ?わたしは・・・。」

 

ふむ、言葉がまだ拙い。

 

見た目通りの精神年齢だと考えて良いだろう。

 

これは後々勉教でもさせよう。

 

「・・・、君には、選択肢がある。私について来るか、ここから出て行くか。君の好きな方を選びといい。」

 

「でていくを、えらんだら?」

 

「君がいた世界まで送り届けよう。その後は、君の好きにするといい。ついて来るなら、衣食住については面倒をみよう。」

 

無理やり機関メンバーにしても、ゼムナスの二の舞だ。

 

まぁ、元の世界に戻ったとしても野垂れ死にしそうだが。

 

人の形を保ったノーバディは珍しくが、そこまで面倒を見る気は無い。

 

「だが、ついて来るのなら一つ、ルールがある。

私は、裏切りを許さない。裏切れば待つのは死だけと思え」

 

原作での機関メンバーの裏切りには、ゼムナスが心を持った時、怒りや寂しさを感じていた。

 

私も心を持つかもしれない。

 

その時に、その様な感情は感じたくはない。

 

「ついて、いきます」

 

「ならば、君が我がXIII機関のNo.2だ。」

 

「なんばー、つぅ・・・!」

 

まるで心が有るかの様な興奮の仕方だ。

 

私ももう少し言葉に工夫を凝らした方がいいのだろうか?

 

・・・やめておいた方がいい。

 

「そして、君に新しい名を与えよう。

君は、ハウワクス(hawuwax)だ。」

 

「はう、わくす!」

 

意外と反応が良い。

 

もっと、非難を浴びるものだと思っていたが。

 

これは、私の名付けのセンスはなかなかだという事だろう。

 

「ついてこい、ハウワクス。」

 

「はい!」

 

私達は円卓の間へと向かった。

 


 

「ここが円卓の間。我等XIII機関が一堂に介する場だ。

今は、君と私の二人だけだが。」

 

ここは、異様に高い13の席が円状に並んだ白い部屋。

 

私は、その中の一番高い席へと座る。

 

私が一番偉いから高いのだ。

 

「君も座るといい」

 

「うん!・・・とどかない」

 

ぴょんぴょんと跳ねて席に座ろうとするが、まるで届いていない。

 

少し、無邪気すぎてはないか?

 

「高さは君の意思で調整出来る。その席が高いのなら低くなれと思えばいい。」

 

「わかった!・・・・できたー!」

 

無事に席に着いた彼女は、席の高さを私の席の位置よりも高くした。

 

・・・子供に、空気を読めと言うのは無粋か。

 

「ハウワクス、少し席が高くわないか?」

 

「たかいほうがすきー!」

 

仕方がない。今回ばかりは仕方がない。

 

話を先に進めよう。

 

「我等XIII機関の今後の目標は残り11人のノーバディを集める事だ。」

 

「へー。」

 

「我々の様な人の形を保ったノーバディは珍しく、ここで待つだけではいつまでも集まることはない。」

 

「ほー。」

 

「故に、別の世界へ行く必要がある。

君にも手伝って貰う。XIII機関の初めての仕事だ。」

 

「まかさてー!」

 

「・・・しかし、その前に君には勉強や訓練を受けてもらう。拒否権はない」

 

彼女が何処かへ行く時は、同伴の者が必ず必要な事にしよう。

 

これからの前途多難な道のりを思う、ゼムナスだった。

 

 




彼女のノーバディになる前の名前は、考えてみて下さい。
後ほど出るとは思いますが。
ちゃんと、考えました!


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3.勉強・訓練

Fate要素は次回から強くなると思います。


「それでは授業を始める。

ハウワクス、準備は良いか?」

 

「はい!」

 

まだ子供の彼女に授業をする事になった。

 

まず教えるのはノーバディやハートレスなど我々に関わる事柄である。

 

私達の消滅に関わる事を教える必要があるからだ。

 

普通の勉強はまた後日教える。

 

「まず、我々ノーバディの前にハートレスについて教える。

ハートレスは心の闇が形となり具現化した存在であり、心を奪おうとする者達だ。

闇に心が落ちる。またはハートレスや我々のような闇の存在に心を奪われると人はハートレスとなる。」

 

「うばったりしない!」

 

「出来ると言う事を覚えておくのが大事なのだ。

これ以外の方法でもハートレスとなる事はあるが、それは例外だ。ハートレスには、ピュアブラッドとエンブレム。二つの種類が・・・・」

 

しばらくの間、ハートレスについて説明しているとハウワクスから声がかかった。

 

「そろそろ、のーばでぃについておしえて!」

 

「仕方ない。それでは我々ノーバディについてだ。

ノーバディとは、強い心を持った者がハートレスとなった時に稀に誕生する、残された肉体と魂が別世界で生まれ変わった存在だ。」

 

「ハウ、つよかった?」

 

「ノーバディになったという事は、君がかつて強い心を持っていたという事だ。」

 

「わーい!」

 

「続けるぞ。我々はその成り立ち故に心を持たない。

君のその無邪気な性格も、かつての記憶から演じているに過ぎない。」

 

「えんじてないよ?」

 

正直なところ、私も彼女が演じている様には見えない。

 

これはまだ子供であり、心が未成熟だったからなのか?

 

私に出来る事は予想する事だけであり、答えは分からない。

 

だが、ノーバディにも心は宿るという事実。

 

「心とは芽生え、育むものだ。

それはノーバディも例外ではない。

私達は、たとえ心を失い抜け殻となったとしても再び心を宿す。

当然、個体差はあるが。

君にはもう芽生え始めているのかもしれないな。」

 

・・・私にも、いずれ。

 

「めばえ、はぐくむ・・・」

 


 

ある程度、勉強に区切りがついた私達は訓練の為の準備をしていた。

 

「ハウワクス、このマニーで自分の武器をあのモーグリから買ってくるのだ。」

 

「わかった!」

 

彼女に丸投げしたが、一体どんな武器を持ってくるのだろう。

 

これが、初めてのおつかいの親の気持ちなのだろうか?

 

心のない私でも、不安を感じそうだ。

 

「かってきたー!」

 

「何を選んだ?」

 

「これ!」

 

そういうとハウワクスは、彼女の体よりも大きい大鎌を取り出した。

 

「これで、いいのか?」

 

「きにいったの!」

 

「気に入ったのは分かったが、使えるのか?」

 

「みてて!」

 

そういうと彼女は、大鎌をブンブンと振り回し始めた。

 

適当に降っている様に見えるが、その実同じ動作を完璧に繰り返している。

 

これなら大丈夫だろう。

 

「使えるのは分かった。

だから、鎌を振り回すのをやめろ。」

 

「はーい!」

 

壁や床に傷がついてしまった。

 

いつかダスクが集まったら修復させよう。

 

「ところで、その鎌に名前はあるのか?」

 

「うん!かれんなるねもふぃらっていう。ひびっときた!」

 

「そうか。それでは、訓練にいくぞ」

 

私とハウワクスはビル街へと降りていった。

 


 

「やぁ!」

 

ハウワクスの鎌がネオシャドウを切り刻む。

 

これで100体目だ。

 

最初は少し危なげなかったが、今では鎌を自在に振り回している。

 

マールーシャの技を教えれば、使えるだろうか?

 

能力に関係しないものなら使えるかもしれない。

 

しかし、見かけに寄らないとは彼女の為にある言葉だろう。

 

暗殺者には向いているかもしれないな。

 

いや、彼女の性格では無理だろうか。

 

「ゼムナスさま、まだやるの?」

 

「いや、もう十分だ。

君はそこで休んでいるといい。

私も少し肩慣らしをしておきたい。」

 

「はーい!」

 

私と彼女の位置が交代する。

 

エアリアルブレードを構え、襲いかかるネオシャドウを切り飛ばす。

 

このままでも無双する事は可能だが、今回は技の確認なので

また別の機会に。

 

次々と現れるネオシャドウを吹き飛ばしていく。

 

「わー!すごいすごい!」

 

ハウワクスにもボスとしての姿を見せられている様だ。

 

これで少しはあのお転婆な性格が・・・治るわけはないか。

 

さて、フィニッシュだ。

 

「消えるがいい」

 

決め台詞と共に、体から出る衝撃波と両腕の光線で残りを殲滅する。

 

『オールヴァニティ』

 

ぶっつけ本番だったが、無事に使える。

 

だが、少し威力があり過ぎた。

 

周りのビルが穴だらけになってしまった。

 

誰も使わないのだから別に構わないか。

 

「ゼムナスさま、おわり?」

 

「あぁ、訓練は終わりだ。これから、別の世界へとむかう。」

 

「わー!はやくいこう!」

 

「行くのは、城に戻り準備を終えてからだ。」

 

「えー!」

 

「向かう世界にどんな危険があるかは私にも分からない。

殆どありえない話だが、もしもの時のためだ。」

 

「ぶー。しかたないなぁ」

 

「準備を早く終わらせればその分早く迎える。」

 

「はやくかえろう!」

 

手のかかる娘を持った気分だ。

 

しかし、彼女は何故ノーバディになったのだろうか?

 

こんな子供が強い心を持っているのは珍しい筈だ。

 

どの様な経緯だったのかは気になるが、無理矢理聞き出すことでもない。

 

走り出した彼女を追いかけるため、私は走り出した。

 

 




本名考察とかしても良いんですよ?


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4.原型

初の別ワールドです。
ですが、直ぐに戻ります。




「ハウワクス、準備は出来たか?」

 

「できたー!」

 

「ポーションは持ったか?エーテルは買ったか?」

 

「ちゃんともった!はやくいこ?」

 

行きたくてうずうずしているという感じだ。

 

この世界には何もないし、遊び盛りの彼女では退屈にもなるだろう。

 

・・・城に何か新しい設備でもつけようか?

 

機関メンバー同士で親睦を深められるものがいい。

 

「しっかりとフードを被れ。闇に呑まれては行く意味がない。回廊を出た後も、常に被っている様に。」

 

「らじゃー!」

 

コートに付いているフードを深く被る。

 

被ると顔が外からは見えなくなるのは本当に便利だと思う。

 

闇の回廊を開き、ハウワクスと共に中へと進む。

 


 

闇の回廊から出ると、そこは暗い路地だった。

 

ここから見える大通りには、多くの人々が歩いている。

 

ここはかなり発展している世界の様だ。

 

「わー!ひとがいっぱい!」

 

大通りへと駆け出そうとしたハウワクスの襟を掴む。

 

「ぐえ!」

 

襟を持たれたことで首が締まったようだ。

 

私の方を恨みがましい目で見てくる。

 

だが、私は悪くない。

 

「目立たずに行くと言っている。

我々の服装で人前に出れば注目の的だ。」

 

「えー!それじゃあそべない!」

 

「私達は遊びに来たわけではないのだぞ。

新たなワールドの調査、機関メンバーの確保。

そう言ったことをやるために来ているのだ。」

 

「でもでもー!」

 

「分かった。

後で遊ぶ時間は用意してやろう。

これで文句はないか?」

 

「あるけど、だきょうする」

 

納得いかないみたいな顔をしているが、妥協した様だ。

 

もう少し緊張感を持って欲しいものだ。

 

此方を覗き見る無粋な輩もいるというのに。

 

「まずは、この建物の屋上に登り地理を確認する。

掴まれ。」

 

「うん」

 

闇の回廊で近くのビルの屋上へと出る。

 

ここからなら街が一望できるだろう。

 

「ひとがまめつぶみたい!」

 

そこには、ビルが立ち並ぶ都市が広がっていた。

 

かつての私が生きた世界と同じ様に発展している。

 

海、あの大きさでは湾といった方がいいだろう。

 

街を歩く人々は日本人の様な見た目をしている。

 

ここは日本何だろうか?

 

色々と思考を巡らせていると、ハウワクスから声がかかった。

 

「ねぇ。なんかいやなかんじがする」

 

「見られているからな。・・・そろそろ出てきたらどうだ?」

 

ゆっくりと振り向くと、そこには見知らぬ少女がいた。

 

「・・・貴方、お名前は?」

 

「じぶんからなのるのがすじというもの」

 

「ハウ、少し黙っていろ。私はゼムナス。君は?」

 

だが、彼女からは何か形容し難い力を感じる。

 

いつでも殺せる様、体に力を込める。

 

「私は愛歌。沙条愛歌よ。

聞きたいんだけど、何で貴方達の未来が見えないの?」

 

「むしするな!ぐげ!」

 

ハウワクスを気絶させ、脇に抱える。

 

自分の手元にいる方が守りやすい。

 

少々、騒がしいのもあるが。

 

「私はね。何でも出来て、何でも分かって、何でも視ることが出来るの。

未来だって分かる。でも、貴方からは何も視えない。」

 

「確かに、私達が特殊であるのは確かだ。」

 

「その理由を教えて欲しいの。知りたくなったら聞くのは当然しょ?」

 

「言わなければ、どうする?」

 

「少し手荒な事をしなければいけないわ?でも、仕方ないのよ。私に取って初めての謎なんだから!大目に見てもらってもいいかしら?」

 

この少女は全知全能だからこそ、初めて見た未知に我慢ができないのだろう。

 

アンセムのような探求者タイプだろうか?

 

まぁ、1人ぐらいに話したとしても別に構わないだろう。

 

「分かった。

しかし、別の場所で話をしたい。

どこかいい場所を知らないか?」

 

「じゃあ、私のお家にしましょう!

ついてきて!」

 

私は愛歌と共に、彼女の家へと向かった。

 

ハウワクス、気絶させる必要なかったな。

 


 

「ここよ!さぁさぁ、早く入って。」

 

「おじゃましまーす!」

 

「失礼する」

 

あの後、直ぐに意識を取り戻し怒っていたハウワクスは愛歌の家に行けると言えば、直ぐに機嫌を直していた。

 

今も興味津々で周りをキョロキョロと見ている。

 

私達はリビングへと案内された。

 

「家族はどうしたのだ?」

 

タンスに飾ってある写真立てには、家族の集合写真が飾ってある。

 

最近撮られたものだろう。

 

「出かけてるわ。そんな事よりも早く教えて!」

 

「あぁ、ハウ。分かっているな?」

 

「うん。しずかにほんよんでる。」

 

「それで良い。先ず、私達は外の世界から来た。」

 

「外の世界?外国の事かしら。それとも並行世界の事?」

 

「並行世界とはどういうものだ?」

 

「並行世界というのはね。・・・・・」

 

彼女から並行世界について教えてもらう。

 

大変興味深いものだったが、この世界特有のものだろう。

 

「いや、その並行世界とは違う。外の世界とは、それぞれ独立をしている。似たような世界やたまに世界と世界がくっついたりはするが。」

 

「そんな世界が外にはあるのね!」

 

目をキラキラとさせながら、楽しそうに彼女は笑う。

 

「ねぇ、私も外に行く事は出来るのかしら!」

 

予想はしていたが、とんでもない事を言われた。

 

恐らく、彼女だけの力では無理なんじゃ無いだろうか?

 

「世界を渡る方法は、いくつかある。

が、君が行える方法はない。」

 

これで諦めて欲しいものだが、賢い彼女には無理だろう。

 

「じゃあ、貴方はどうやってこの世界に来たの?」

 

「この、闇の回廊を通って来た」

 

私が出した闇の回廊を、彼女は興味深そうに見つめる。

 

「これも、私には分からないのね。

私も通る事は出来るかしら?」

 

「出来なくわないが、やめておいた方が良い。

心が闇に浸食されてしまうからな。」

 

「あら、そうなの。なら、貴方達はどうして大丈夫なのかしら?」

 

彼女は本当に8.9歳の娘か?

 

私の出していない情報を的確に取り出そうとしてくる。

 

「・・・私達のこの黒いコートは闇の浸食を防ぐ事が出来る。」

 

「なら、私も行けるわね!連れて行って!」

 

「・・・今、予備がないといったら?」

 

「その子から引き剥がすわ。」

 

ハウワクスを見ながら、彼女は答える。

 

正気でありながら、狂気でもある。

 

返答を誤れば、即座に彼女は実行するだろう。

 

「分かった。予備は持って来ている。それを着てくれ。」

 

「ありがとう、ゼムナス!」

 

「だが、条件がある。

君には私達の協力者になって欲しい」

 

彼女は二つ返事で答えてくれた。

 

「協力者でも何でもなるわ!だから、早く出して!」

 

「はぁ、ほら。これだ。」

 

「ちょっと着替えてくるから待ってて!」

 

「一つ言っておく。君のその力『根源』だったか。恐らく、この世界特有のものだ。『根源』が無い世界では使えなくなると考えた方が良いだろう。」

 

「えっ、そうなの?」

 

「検証してみなければ分からんがな。

あまり、長居は出来ないと思え。」

 

「それなら、私が行く理由もちゃんとあるわね!

置いていったら承知しないから。」

 

そういうと、彼女は恐らく自分の部屋へと着替えにいった。

 

「ハウワクス、もういいぞ。」

 

「おわった?もうつかれたからかえるー!」

 

「そうだな。私もだ。」

 

私達は、愛歌を連れて『存在しなかった世界』へと戻った。

 

将来、愛歌はビッグになりそうだな。

 




この愛歌ちゃんはまだ、恋はしていないです。
恋する予定も消えました。

プロットにいなかったのに、つい出しちゃいました。


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5.人間

愛歌様がキャラ崩壊いています。
ご注意下さい。


「ここが外の世界!凄いわ!何も分からない!」

 

愛歌がすごく興奮している。

 

若干目も血走っている気がする。

 

「ゼムナスさま、へやかえってるね」

 

「しっかりと休んでおけ、ハウワクス。」

 

ハウワクスは一足先に部屋へと帰っていった。

 

「ゼムナス、あっちの街は何!」

 

「ただのビル街だ。いるのはハートレスだけだ。」

 

「ハートレス!?気になるわ見にいきましょ!」

 

「行くのはいいが、『根源』の方はどうなっている?」

 

「全く繋がらないわ!今の私は、魔術を一杯知っているだけのただの女の子よ。初めての体験でドキドキよ!」

 

「ハートレスは心を奪う。見に行くのはいいが、あまり私の側を離れるなよ。」

 

「はーい。」

 

見に行くの所だけしか聞こえていないように思える。

 

まだ、万能感から脱したわけではないという事か?

 


 

「もう、何もいないじゃない。ハートレスって、どこにいるの?」

 

「機会を伺っているのだろう。間抜けな餌が無防備に歩いているからな。」

 

「間抜けとは酷いわね!私は高校や大学の問題もすらすら解けるのよ。賢いって言って頂戴。」

 

「そういう抜けている所が間抜けなのだ。君は今、何の力もないのだからもう少し気を引き締めろ。」

 

「あー!あっちに何か黒いものが見えたわ!行ってみましょう。」

 

「だから、話を聞けと。」

 

愛歌と私の間に少し隙間が出来た時、ビルの壁面からネオシャドウが彼女に襲い掛かるが、私に蹴り飛ばされ地面を転がる。

 

「・・・へっ?」

 

続けてショットを放ち、消滅させる。

 

彼女は突然の事に混乱しながらも、自分が死にかけた事に気づいたのか少し震えている。

 

「だから、側を離れるなと言っただろう。」

 

この後、彼女はどんな反応をするのだろう。

 

泣くのはやめて欲しい。

 

どう対処すればいいのか分からない。

 

「ゼムナス、ありがとう。」

 

突然の感謝の言葉と共に、彼女がこちらを向く。

 

「何だ?このタイミングでか?」

 

「えぇ、このタイミングでよ。

私ね、分からないってこんなに楽しくて、こんなに怖いものだって初めて知ったの。

息が苦しくなるし、涙も溢れそうになる。

あのままの私だったら、こんな体験をする事は無かったかもしれないわ。

だから、ありがとう。

私は今、初めて人間になったのよ。」

 

嬉しそうに、笑顔で答える彼女はとても綺麗だった。

 

そして、そのように笑える事が何よりも羨ましい。

 

「・・・羨ましいよ。私にはそう思う心が無いからな。」

 

「心が無い?」

 

「あぁ、私達ノーバディはハートレスによって心を奪われたものの抜け殻。魂と肉体だけの存在。記憶から演じているに過ぎない。」

 

「心を手に入れる方法は無いの?」

 

「そのような強引な手段を使うつもりはない。

心とは芽生え育むもの。ノーバディにも、宿る可能性はある。私はそれを待つだけだ。」

 

「そうなの。・・・よし!なら私が手伝ってあげるわ!」

 

「手伝う?やり方もわからないだろう。」

 

「待っているだけじゃ仕方ないわ!貴方に必要なのは、人との触れ合いよ。だから、私が話し相手になってあげるわ!」

 

「いや、ハウワクスもいる。別に必要はない。」

 

「こういう時は、素直に好意は受け取るものなの!

ほら、受け取って!」

 

「・・・分かった。」

 

渋々だが、彼女のいう事にも一理はあるのだろうし受け取っておこう。

 

「そろそろ、帰る時間だ。」

 

「えー!もうちょっと、いいでしょ?今度は離れないわ。

こんな風にピッタリくっついているから!」

 

「逆に暑苦しい。もう少しいてもいい。だから、離れろ。ここまで近くにいる必要はない。」

 

「もうさっきは近くにいろ。今度は離れろ。支離滅裂だわ。

ねぇ、あの色の三角座りしている物体は何?」

 

「それは君のせいだ。あれは、私達と同じノーバディだろう。普通の人間は来る事はありえない・・・?」

 

直ぐに、ノーバディに近づく。

 

「ちょっと、離れるなと言ったのは貴方でしょう!?」

 

「君、大丈夫か」

 

愛歌が何か言っているが、気にしている暇はない。

 

機関に3人目のメンバーが入るかもしれないのだ。

 

「・・・さな・で・・・こ・・ない・・」

 

「すまない。もう少し、大きな声で話してもらえるか?」

 

「ころさないで」

 

「うん?」

 

「じにだぐないよぅ。」

 

「何?この子。」

 

何だこいつ?

 

取り敢えず、連れて帰った。




誰が、こんなにヒロイン力を上げた!
答えろ!

・・・私だった。
筆が勝手に!


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6.残滓

独自設定で出来た子が出てきます。
ガバガバ設定だけど、許して?
あと、本名考察もして?


「あー、あたらしいこ?」

 

私達が城へと戻るとハウワクスが迎えに来た。

 

「あぁ、街で拾ってきた。愛歌、帰る時間だ。」

 

「また、明日もよんでね?時間はいつでもいいから。

貴方達が来れば直ぐわかるもの。」

 

「明日もか?分かった、善処しよう。」

 

「善処じゃなくて、絶対!毎日来てくれなきゃ、いつか私の方からそっちへ行くわよ。」

 

「・・・分かった。さぁ、これを通れば帰れる。」

 

彼女の世界と繋がる回廊を開く。

 

「ハウワクス、見送ってきてくれ。

回廊は開けるか?」

 

「うん、ひらける!いってくる!」

 

「じゃあ、バイバーイ!明日も遊びましょうねー!」

 

ハウワクスと愛歌は回廊の中へと消えていった。

 

遊び感覚で来られると困るのだが。

 

さて、私も私の仕事をしよう。

 

「ころさないできえたくないしにたくない・・・」

 

botになっているこいつを床に落とす。

 

「ひぃ、やだ・・・。」

 

「君の名前は?」

 

「こ・・ころさ」

 

「私は君を殺さない。消さない。死なせない。

少し落ち着くといい。」

 

断言しておいた方が信用されると考える。

 

「・・・は、はい。」

 

話を聞ける程度には落ち着いたようだ。

 

「君には選択肢が二つある。

私についてくるか、元の世界に帰」

 

私の言葉は、再び半狂乱になった彼女によって遮られた。

 

「貴方についていきます!何でもしますから!あの地獄に帰さないでください!嫌だ!もう、消えたくない!」

 

こいつ、やばいな。

 

一体彼女のいた世界はどれだけ危険な世界なのだろう。

 

絶対に行きたくない世界が一つできた。

 

「分かった。ついてくる事はよく分かった。元の世界にも帰さん。だから落ち着け。」

 

「うぐ、ひぐ、ぴゅぐ」

 

「取り敢えず、このコートを着ろ。その格好では見ているこっちが寒くなる」

 

「びゃ、びゃい。(・・・優しい)」

 


 

「一応、聞いておく。君の名前は?」

 

「・・・って、言います。」

 

「そうか。君には機関に入ってもらう。No.3だ。」

 

「は、はい。ありがとうございます!・・・No.2は?」

 

「今、彼女には仕事に行ってもらっている。

後で会えるだろう。そして、君に新しい名を与える。」

 

「ふーん。・・・新しい、名前ですか?」

 

少し機嫌が悪くなった?いや、気のせいだろう。

 

同じサイズだし、仲良くして貰いたいな。

 

「機関に入る通過儀礼のようなものだ。嫌か?」

 

「いえ、記憶も朧げにしか覚えておりませんし、辛いものしかないのでかつての自分の名など必要ありません。

ゼムナス様に名前をつけて貰えるなど至上の喜びです。」

 

「そ、そうか。」

 

何だ?こいつは本当に何だ?

 

さっきまでとは様子が違いすぎるぞ。

 

いや、従順なのはいい事だ。そういう事にしよう。

 

「君の名は、プラクシズ(praxez)だ。」

 

「はっ!大変素晴らしい名前だと思います!」

 

「ただいまー!ゼムナスさまー!」

 

ハウワクスが帰ってきたようだ。

 

「あの女がNo.2ですか?」

 

「あぁ、紹介しよう。

機関のNo.2、ハウワクスだ。」

 

「ハウワクスだよ。よろしくね!」

 

「・・・No.3、プラクシズだ。よろしく。」

 

「同じ機関メンバーとして、仲良くする様に。

私は仲間割れと裏切りを許さない。」

 

「はーい」

 

「分かりました」

 

「そうだ、城の案内でもしてきたらどうだ?」

 

「めいあん!いこう、プラクシズ!」

 

「・・あぁ、ハウワクス」

 

終始、ハウワクスをプラクシズが睨んでいたが何か気に食わないのだろうか?

 

仲間なのだから、争わないで欲しい。

 

それに、プラクシズではハウワクスにはどうやっても勝てないだろう。

 

彼女、死ぬほど弱い。

 

ふぅ、休憩しよ。

 


 

「ひぐ、うぐ、びぇ」

 

「なんか、ないちゃった」

 

「2人とも座れ」

 

話を聞くと、プラクシズがNo.をかけて勝負を仕掛けてきたらしい。

 

結果、ハウワクスにコテンパンに負けた様だが。

 

「何でこんな事をした。」

 

「うぐ、ご、ごべんなざい!ひぐ!」

 

「怒っているわけではない。理由を聞いているのだ。」

 

「ご、ごんなふわふわした奴より、わだじの方がNo.2にぶざわしいと思っで。ゼムナス様の右腕がごんな奴なんて納得でぎない。」

 

「いや、別にNo.は機関に入った順番であって、No.2だからといって右腕というわけではない。」

 

「ぞ、ぞうなのですが?」

 

「えっ、そんなー。」

 

「ハウワクス、右腕になりたいならもう少し勉強をして来い。」

 

「うぐー、べんきょうはやだ」

 

「ぞれならわだじが!」

 

「入ってばかりで問題行動を早々に起こした君が、なれるわけないだろう。もう少し、反省しろ。連携も大切だと言う事を覚えろ。」

 

「ば、ばい。ばんぜいじまず。」

 

「手洗いで、その涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を洗って来い。」

 

「じ、じづれいじましだ。」

 

ふぅ、予期できたのに何もしなかった私も悪い。

 

メンバー内での上下関係も考えておいた方がいい。

 

「ハウワクス、勝負はどうだった?」

 

「んー?ぱんちいっぱつで、のっくだうん!」

 

「そうか、やはりか。」

 

プラクシズには戦闘経験を積ませないといけない様だ。

 

「わたしは、おこらないの?」

 

「怒っていないと言っている。

そもそもお前は勝負を仕掛けられた側だ。

プラクシズが最悪消されていても仕方がない。

その点では、怪我を負わさなかったのは良くやった。」

 

「わーい!ほめられた!」

 

「だが、勉強はしろ。我が機関のメンバーが舐められては困るからな。」

 

「ぺ、ぺろぺろされるの?」

 

「・・・もう、部屋に帰れ。

そうだ、プラクシズに会ったら好きな部屋を使って構わないと伝えておいてくれ。」

 

「りょうかいー!まかせて!」

 

ハウワクスが部屋を出て行った。

 

ふぅ、今日一日は本当に疲れた。

 

明日は、何をしよう。

 

愛歌を回収してから、新しい世界の探索でもするか。

 




書くのって楽しいです。
次回もお楽しみに。

連載になりました。


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7.故郷

ノーバディの武器は基本的にかつての人たちの物が当てはまります。

ちょい修正しました。


「さて、集まったな。」

 

「おはよう、ゼムナスさま!」

「おはようございます、ゼムナス様。」

 

円卓の間に現機関メンバーの全員が揃った。

 

朝はここでの朝礼をする事が機関の仕事の始まりだ。

 

「おはよう。

では、今日の日程を伝える。

午前中は勉強と訓練。午後からは愛歌を回収した後に別世界の探索を行う。では、各自準備をして勉強部屋に来い。」

 

当然、先生は私がやる。

 

「はーい。勉強やだなぁ。」

 

「ハウワクス、弛んでるぞ。」

 

・・・ここは、なんの組織なんだ?

 


 

授業の時間を終え、訓練の時間に入る。

 

「プラクシズ、このマニーで自分の武器を買って来い。

自分が使えるものを買ってくるんだぞ。」

 

「はい!買ってきます!」

 

プラクシズに幾らかのマニーを持たせてモーグリの所に買いに行かせる。

 

見栄を張って、使えない武器を買ってこないといいんだが。

 

「ねぇ、ハウには?」

 

「ハウワクスにはもう自分の武器があるだろう。」

 

「お菓子代」

 

「・・・ちょっとだけだ。」

 

「わーい!」

 

ハウワクスもプラクシズの後を追って行く。

 

私は、甘いのだろうか?甘いのだろうな。

 

「はぁ、はぁ、買ってきました!」

 

行きと同じく帰りも全力ダッシュで来たようで、息を切らしている。

 

「見せてもらおう」

 

「はい、私の武器はこのシタールです」

 

デミックスの使っていた武器か。

 

確かにこれなら戦闘能力が無くとも使えるだろう。

 

「敵に対してダメージを与える事はこの弦の刃でしか出来ませんが、音色に乗せて相手の精神を操作できます。後衛系の武器となっています。あまり前に出るのは得意ではないので」

 

自分の短所をしっかりと理解して、その上で役割を考えられる。

 

少しおかしな所もあるが、とても優秀な子だ。

 

「ぶきのなまえは?」

 

お菓子を持ってご満悦のハウワクスが、プラクシズに聞く。

 

「名前?確か、アムドゥシアスだったような」

 

「へー、かっこいいね!」

 

「そ、そうだろう?なかなか気に入っているんだ。」

 

「しかし、精神か。ハートレスで試す事は無理だな。

プラクシズ、訓練せずに実戦でも構わないか?」

 

「はい!必ず成功させます!」

 

「そうか。無理を言ってすまないな。」

 

「いえ、ゼムナス様が謝られるよう事ではございません!」

 

なんだろう、彼女の忠誠が重いような気がする。

 


 

「待ってたわ、ゼムナス!さっ、行きましょ!」

 

ハウワクスとプラクシズを連れて愛歌を迎えに来たが、彼女はすでに準備を整え私達を待ち構えていた。

 

「随分と準備が良いな。この時間に私達が来ることを知っていたのか?」

 

「簡単よ。ずーーっと準備を終えて待っていたの。そうすれば、直ぐに行けるでしょ?」

 

いや、そんな当たり前みたいに言われても困るんだが。

 

というかそのリュックサックはなんだ?

 

「リュックサックには何が入ってる。」

 

「えっと、2、3日の着替えでしょ。ご飯に、お菓子。キャンピングのセットに、魔術の道具。エトセトラ。」

 

「そんなにはいるの!?」

 

私も同意見だ。キャンピングのセットの所から困惑した。

 

この世界ではこれが普通なのか?

 

「『根源』を使って作った『見た目の割に結構入るバッグ』よ。凄いでしょ!」

 

「確かに凄いが、そんなに持ってどうするつもりだ?」

 

「お父さん達には2、3日友達のお泊まり会に行くと言っておいたわ。泣いて喜んでいたから問題は全く無し!」

 

2、3日一緒に来るつもりか。

 

親から許可が出ているなら(騙す形ではあるが)、問題はないか。・・・ないのか?

 

「・・・そろそろ限界だ。貴様、ゼムナスに対して図々しすぎる。少しは身の程を弁えろ。」

 

プラクシズは、静かにキレていた。

 

「あら?私はゼムナスの『協力者』。部下の貴方達に文句を言われる筋合いはないわ」

 

「礼儀がなってないと言っている。連れて行ってくださいとゼムナス様に頭を下げるのが道理だ。」

 

「ふーん、それじゃこうしたら、どうなるのかしら?」

 

愛歌が私のすぐ側に突如現れた。

 

転移の何かだろうか?

 

後、余り触らないでくれ。

 

「ほーら、ペタペタ、ペタペタ」

 

「貴様、余程死にたい様だな!望み通り今ここで殺してやろう。」

 

プラクシズがシタールを取り出す。

 

喧嘩するほど仲が良いとも言うが、そろそろ止めなければならないな。

 

「愛歌、プラクシズを揶揄うのはそれぐらいにしてくれ。

プラクシズもそう怒るな。私は気にしてはいない。」

 

「私は別に。その子が突っ掛かってくるから。」

 

「何だと!・・・分かりました。」

 

「彼女に対しても裏切り・仲間割れのルールは当てはまる。

覚えておけ、プラクシズ。」

 

「はい、ゼムナス様!」

 

正反対な性格をしているからな。

 

堅物と天然。分かり合えると良いのだが。

 


 

私達が闇の回廊から出ると、そこは私にとって見覚えのある場所であった。

 

「うー、くらい。」

 

「何処かの洞窟だろうか。うん?あの絵は何だ。」

 

「塩の香りがするわね。外には海があるのかしら?

早く行きましょ!」

 

「全員、今すぐ戻れ。ここはまずい」

 

この場所は、ゼムナスとなった私にとっては故郷と言えるのかもしれない。

 

だが、今は里帰りなどしている場合ではない!

 

「えー?なんでー?」

 

「どうかしましたか?ゼムナス様。」

 

「理由を言って頂戴。それじゃなきゃ、納得できないわ。」

 

「後で話す。とにかく、今は撤退を」

 

「ねぇ、そこに誰かいるの?」

 

あの声は!私は3人を抱き寄せると、闇の回廊へ直ぐに戻り、閉じる。

 

「・・いい・・」

 

「日記に書いておこう。」

 

「な、なんなのよ・・。もう」

 

三者三様のリアクションをしているが、そんな事は関係ない。

 

少しだけ、回廊に穴を開けて様子を伺う。

 

かつて見た赤毛の少女が、そこにはいた。

 

ここは、始まりの地。

 

ゼアノートの故郷。

 

デスティニーアイランド。

 




ぶつぶつときれていてすまない。

光の守護者の方々に出番はほとんどありません。
面倒になるから仕方ないよね。


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8.冬木

キャンプは行った事ないですねー。


カイリ、セブンプリンセスの1人が何故このタイミングでここに来る!

 

いや、彼女やリク、ソラの故郷もデスティニーアイランドなのだから居てもなんの不思議はないのだが。

 

しかし、タイミングが悪い。

 

「あれ、誰もいない。・・・でも、視線を感じる様な。」

 

くっ、闇の気配には敏感か。

 

覗くに開けた回廊の穴を塞ぐ。

 

これで一先ずは安心だろう。

 

抱き寄せていた3人を離す。

 

「では、外の世界へ向かおう。」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

お願いだから、反論するな。

 

ハウワクスとプラクシズは放心状態なんだから、同じ様に放心していろ。

 

「・・・何だ?」

 

「何だじゃないわ!どうしてあの世界が駄目なのか、教えて頂戴!後で話すと言ったのを、私は忘れてないわよ。」

 

「・・・言わなきゃ駄目か?」

 

「駄目よ。」

 

「・・・かつて敵対した者達があちらの世界にはいる」

 

「敵対?何をしたの?」

 

「・・・私にも、やんちゃな時代があったと言う事だ。」

 

「詳しく、教えてもらっても良いかしら?」

 

くっ、あの笑顔は何だ!

満面の笑みの中に、黒い何かを感じる。

この私が、恐怖していると言うのか!

 

「・・・心を手に入れるために、世界全てを巻き込んだちょっとした問題を起こして、退治された。」

 

「貴方一人でやったの?」

 

「いや、他にも仲間はいた。全員辞めていったが。」

 

「ふーん。・・・その中に恋人とかいたの?」

 

「はっ?」

 

何を言っているんだ?

 

「だから、恋人はいたのか聞いてるのよ!」

 

「いや、いないが。それが何か問題があるのか?」

 

「だ、だったら良いのよ!私にとっては気になる事だから聞いただけで貴方には特に関係ないわ!」

 

そこまで挙動不審で言わなくても、女性が恋愛についての話が大好物な事ぐらいは知っている。

 

しかし、最近の小学生も興味があるのか。

 

随分とませているのだな。

 

「それで、敵対していた人達とはどれぐらい仲が悪いの?」

 

「私にその気はないのだが、彼方が見れば確実に私を倒しに来るだろう。」

 

「本当に、ちょっとした事なの?よっぽど、嫌われてるみたいじゃない。」

 

ゼムナスが彼らに何をしたのか。

 

振り返れば、ろくなことが無い。

 

「私にとっては、ちょっとした事だ。」

 

「・・・良いわ。今回はこれで許してあげる。

あの世界は、今は、駄目なのね?」

 

「あぁ、駄目だ。

彼らと戦闘になった場合、私としては負ける気は無いが、君たちの安全までは保証できん。」

 

・・・何故、ここで顔を赤くする?

 

今の発言の中に怒らせる様な言葉は無かった筈だが。

 

「・・・なら、夜ならどう?その人達も寝る必要はあるのよね?」

 

何故、引き下がらない。

 

この話は終わった筈だ。

 

しかし、夜か。

 

「夜なら、多少リスクはあるが大丈夫だろう。

あそこは無人島で、彼らも家に帰る必要があるからな。」

 

「あら?あそこ無人島なの?ならキャンプしましょう!キャンプ!私のキャンプセットが火を吹くわよ!」

 

「・・きゃんぷするの!」

 

「・・・はっ!ぼうっとしてしまった。」

 

ハウワクスとプラクシズが意識を取り戻した。

 

今日は、厄日だ。

 

「えぇ!今日の夜は無人島でキャンプパーティーよ!」

 

「わーい!きゃんぷ!きゃんぷ!」

 

「そうなのか?意識が飛んでいて、話を聞いていなかったのだが。」

 

ここで、しないと言えば確実に士気が下がる。

 

多分、夜なら大丈夫だろう。

 

最悪、ボコボコにして逃げれば良い。

 

まさか、光の守護者全員を相手にする展開にはならないだろう。

 

「今日の夜は、あの島でキャンプを行う。

それまで気を抜く事は許さん。」

 

「えぇ!今から私は、スーパー愛歌よ!何でも完璧にやってみせるわ!」

 

「すーぱーはう!」

 

「はい!ゼムナス様!」

 

・・・少し、楽しみだったりする。

 


 

 

私達が回廊から出ると、そこは雪の降る森の中だった。

 

「きれいー!」

 

「ゼムナス、離れちゃ駄目よ。ここはアインツベルンの森。

直ぐに迷子になってしまうから。」

 

「『根源』か?」

 

「えぇ。ここは私の世界の『並行世界』よ。この世界からしたら私達の方が『並行世界』なのかもしれないけど。」

 

「ハウワクス、待てと言っている!」

 

「力は何処まで使える?」

 

「2から3割ぐらい?ある程度の事は分かるけど、深い事はさっぱりだわ。」

 

「いや、情報があるかないかは雲泥の差だ。

道案内は任せる」

 

「まてといわれてまつばかはいないー!」

 

「ふっふーん、任せなさい!私がしっかりとエスコートしてあげる!」

 

「そこの2人、遊ぶのを止めろ。

先ずは、この森を出る。」

 

「はーい」

 

「わ、私は遊んでいたわけでは!

ハウワクス、お前のせいだぞ。」

 

「ほっぺ、つねらないでー。」

 

「森の外には街があるわ。そこに向かいましょう。」

 

私達は愛歌の案内で歩き出した。

 

 

 

 

「もうちょっとで森を抜けるわ。そうすれば街はもう目の前よ!」

 

「ふぅ、ふぅ、やっとか。」

 

「プラクシズのほうがたるんでるー!」

 

「はぁ、はぁ、ハウワクス、根に持ってたのか?」

 

何だろう。

遠足に来ている小学生と、その保護者みたいになっている気がする。

 

「ゼムナス、何か知りたい事はある?」

 

「そうだな。何か特異なことは起きていないか?」

 

「なかなか鋭いじゃない。えぇ、起きてるわ。聖杯戦争って言うお祭りがね。」

 

「聖杯・・・戦争?何処かで聞いたことがある様な?」

 

聖杯戦争という単語が吐かれた瞬間、プラクシズがポツリと呟く。

 

「君は、この世界の『並行世界』の何処か生きていたのかもしれないな。」

 

「なんなら調べてあげましょうか?前の名前を教えてくれれば今は無理だけど、後で探してあげる。」

 

「貴様に恩を売るつもりはない。そもそも、これを思い出すと取り返しがつかない気がするのだ。」

 

「ふーん、知りたくなったらいつでも言ってね?」

 

「貴様に頼むことが無いことを祈っている。」

 

「おなかすいたー!」

 

ハウワクス、我々には必要ないだろう?

 

いや、必要なのか?食べられるという事は必要なのか?

 

「そう言えば、私もお昼ご飯食べてなかったわ。

何処か食べにいきましょ!

ゼムナスの奢りで!」

 

「支払いは、マニーでもいけるか?」

 

「・・・マニー?普通にお札だと思うけど。」

 

「少し待っていてくれ。」

 

大急ぎで城へと戻り、モーグリに換金してもらう。

 

「あっ、早かったわね。」

 

「待たせたな。好きなだけ食べて良いぞ。

それで、何処に行くんだ?」

 

「えぇ、良いところを見つけたわ!」

 

愛歌の笑顔を見ていると、一抹の不安がよぎる。

 

今の彼女の笑顔は、悪戯をする子供の様な。

 

「泰山って言う中華料理屋さんなんだけどね!」

 




次回、XIII機関壊滅。


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9.進入

彼らに恨みはありません。
強いて言うなら、いたのが悪い。

今日は、3回です。
普段は毎日投稿です。


私達は愛歌の案内の元、泰山という中華料理屋にやってきた。

 

「かなり本格的だな」

 

「たのしみー!」

 

「食事か。生涯初めての気がする。」

 

「ささ、早く入りましょう!」

 

「いらっしゃいある〜!」

 

入って先ず目に入ったのは、少女の様な店主だった。

 

だが、その腕前は確かなのだろう。

 

あそこの少し暗めな男が、それは美味しそうに麻婆を食べている。

 

ノーバディにも、食欲は湧く様だ。

 

全員でテーブル席に座る。

 

「麻婆、4つで!」

 

「おい、勝手に決めるな!」

 

「ここは、麻婆が美味しいのよ!『根源』で調べたわ。」

 

「おいしかったら、なんでもおっけー!」

 

「プラクシズ、下手に自分たちで選ぶよりも、おすすめを頼んだ方がハズレがない場合もある。」

 

「そうですね、ゼムナス様!」

 

運ばれて来た麻婆は、出来立てで熱気を放っている。

 

非常に美味しそうだ。

 

「「「「いただきます」」」」

 

麻婆を一口食べると、そこは地獄だった。

 

舌を焼くマグマの様な辛さ。

 

脳すら焼ける様だ。

 

私は、レンゲを置いた。

 

ハウワクスとプラクシズも同様の状況に陥っている。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「ごめんなさい、ゼムナス様。先に、逝きます。」

 

ハウワクスは目が死に、プラクシズは逝ってしまった。

 

我々、XIII機関を壊滅まで追い込むとは!

 

「もう、ちょっと過剰すぎじゃない?

これ、ただのピリ辛の麻婆よ?」

 

「これを、ピリ辛だと?」

 

愛歌、何故平然とその生物兵器を食べられる。

 

いや、この世界の人間は辛味だけは滅法強いと言うことか。

 

決意した。この世界で、二度と辛いモノは食べない。

 

しかし、残すのは駄目だ。

 

残しては、いけない。

 

私はハウワクスとプラクシズの分も含めて、ただ食べた。

 

此方に手を振る、マスター・ゼアノートが見えた気がした。

 

 

何とか麻婆を全て食べた私はハウワクスとプラクシズに手を引かれながら、泰山から離れた。

 

「胃が、痛む」

 

「ゼムナス様、これお薬です」

 

「すまないな。ぐっ!」

 

「ハウにも、ちょうだい」

 

「あぁ、ほら先ずは水を含んでからだ」

 

「あー、美味しかったわね!また来ましょ!」

 

「貴様、よくアレを美味しいと言えるな」

 

二度と来ない。

 

美味しいという愛歌にプラクシズも引いている。

 

「愛歌、何処か心が安らぐ様な場所はないか?」

 

「そうねー。立派なお屋敷でも見て、心を紛らわしましょう!」

 

「そうしよー」

 

「もう、何処でもいい。」

 

「ぜ、ゼムナス様。お気を確かに!」

 


 

「ここは、間桐さんというこの辺りでも有名な人のお屋敷よ!」

 

屋敷と言えば屋敷だが、少しボロくはないだろうか?

 

「なか、はいってみたい!」

 

「そうね!折角来たのだから、中も見ていきましょう!」

 

「おい、不法侵入だぞ。ゼムナス様も止めてください!」

 

常識人のプラクシズが暴走するハウワクスと愛歌を止める。

 

いつもなら私も止めるだろう。

 

だが、今はむかむかする。

 

「私が先陣を切る。後に続け。」

 

「お前達、早く行くぞ!後ろは任せてください、ゼムナス様!」

 

「まんなかはまかせて!」

 

「えっ?本当に入るの?私が言ってなんだけど」

 

「入る。これは決定事項だ。愛歌、遅れるな。」

 

「ま、待ってよ、ゼムナス!」

 

私達は進入した。

 

侵入ではない。進入だ。

 

正々堂々、正面から進んで入っていく。

 

門には鍵がかかっていたが、切り壊した。

 


 

「お、お前何処から入って!」

 

「黙れ。」

 

「ぐはっ!」

 

「だ、誰だ!」

 

「眠っていろ」

 

「さ、桜ちゃん・・・」

 

アル中とボロボロの男を葬り、私達は間桐邸の探索を進める。

 

「鮮やかな手腕です!ゼムナス様!」

 

「たんけん!たんけん!」

 

「確かに、拳一つで解決する姿は鮮やかと言えるかもしれないわ」

 

力こそパワーという言葉を聞いたことがある。

 

今程、それを実感している時はない。

 

しかし、気になることがある。

 

「愛歌、あのボロボロの男は何をされている?

あれも魔術か?」

 

「見た限り、蟲ね。体の中に蟲が入れられているわ。

あんな気持ちの悪いのと私の魔術を一緒にはしないで欲しいわ。」

 

「そうか。確かにあの姿は、見ていて気持ちのいいものではないな。・・・分かっていて、ここに連れて来たのか?」

 

「いえ、魔術師の家だから観光場所にピッタリ!と思ったのは事実だけど、こんな場所だと知っていたら来ていないわ」

 

「ふむ、他にもあるか?」

 

「魔術師の家?えぇ、遠坂邸があるわ。

そこにも殴り込みをかける?」

 

「いや、それはまた今度にしよう。今はこの場所を私達の拠点とする準備をしよう」

 

「・・・もう、大胆なんだから!」

 

まぁ、中々大胆なやり方であるとは思っている。

 

顔を赤らめる愛歌の思考は、私には読み取れなかった。

 

「プラクシズ、その時は周りの家への記憶操作を頼むぞ」

 

「はい、完璧に証拠隠滅して見せます!」

 

「ゼムナスさま!ちかへのいりぐちがあったよ!」

 

「地下か。きな臭いな。」

 

「魔術師なんて、きな臭いのしかいないわよ。

当然、私はいい香りがするわ」

 

「そうだな。確かに近づかれた時には、いい香りがした。」

 

「そ、そうでしょ!いい香りのシャンプー使ってるんだから当然よ!」

 

地上の探索を切り上げ、私達は地下へと足を踏み入れた。

 




やっちゃったぜ!


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10.異形

殺っちゃったぜ!


「・・・悍ましいな。」

 

地下に広がる蟲達を見て、呟く。

 

その大きさ、色、形は見ていて良いものではない。

 

「中々の魔術工房ね。気持ち悪いのは論外だけど。

後で綺麗に作り替えちゃおうかしら。」

 

「うへぇ、ばっちい!」

 

「蟲・・・蠱毒・・・それ以上いけない!」

 

愛歌はこの地下自体に興味を示し、ハウワクスを気持ち悪がり、プラクシズは・・・何だろう?

 

あれだけの蟲を集めるのにどれだけの労力がかかったかは知らないが、私達の拠点として必要ないものだ。

 

・・・その前に、邪魔者から消そう。

 

「お主ら、ここで何をしておる!」

 

蟲の中から、老人が姿を現した。

 

「私達の新しい拠点として、この間桐邸を下見に来た。

そこに蔓延る妖怪の退治も兼ねてな。」

 

「上の者達はどうした?殺したか?」

 

「気絶させた。いちいち殺すほど、私は物騒ではない。

当然、貴方は例外だ。ここで消えろ。」

 

この老人は、心も体も腐りきっている。

 

その様な状態になるまで何を目指したのか。

 

気になる所ではあるが、彼の存在は害でしかない。

 

「は、はは、ははははは!よく言った、青二才が。何処の魔術師かは知らんが、退治できるものならしてみるがいい。

当然、抵抗はするがな?」

 

今まで微動だにしなかった蟲達が、突如動き出す。

 

全ての蟲が私達の方へ向かってくる。

 

「ゼムナス、手伝うわ!」

 

「ハウも!」

 

「撹乱は任せてください!」

 

「いや、その必要はない。私1人でやる。」

 

「そんな、無茶よ!」

 

「これは命令だ。見ていろ、私の力を。」

 

ただの一匹もこの地下からは逃がさん。

 

皆殺しにする。

 

先ずは、ファーストステップ。

 

この地下全てを飲み込む程の暗黒空間を形成する。

 

これでもう、何処にも逃げられない。

 

次に、セカンドステップ。

 

『念動力』で全ての蟲の動きを止める。

 

これには、1秒かかってしまった。

 

より隙がなくなるよう、鍛えなければ。

 

そして、サードステップ。

 

『全方位ショット』を放つ。

 

文字通り、全方位から360度全てからショットを放つ。

 

奴らは逃げることも、動くことも出来ず、ただ受けることしかできない。

 

更に、フォースステップ。

 

『イバラビーム』、【レーザーシャワー』、『オールヴァニティ』によるレーザで、カケラも残さず焼き切る。

 

念のためだ。私は慎重なのでな。

 

最後に、ファイブステップ。

 

満身創痍のマキリ・ゾォルゲンを掴む。

 

身体中が蟲で構成されているようだが、その蟲さえ今は私の『念動力』で動くことは出来ない。

 

「き、貴様は、一体!」

 

「殺しはせん。生かしもしないがな。闇へと飲まれるがいい。」

 

闇の回廊を開き、彼を放り込み閉じる。

 

『闇の力』を持たない彼では、出ることは出来ない。

 

ハートレスとなるまで、彷徨い続けるといい。

 

「さて、終わったぞ。探索を続けるとしよう」

 

そう言い後ろを振り返ると、3人がすごい顔でこちらを見ていた。

 

「・・・何だ?」

 

どう言う感情を表しているんだ?

 

怖がられているのか?

 

「・・・凄く、カッコよかったわ!ゼムナス、やっぱり貴方は最高ね!」

 

「うん、すごくきらきらしてた!かっこいい!」

 

「不肖、プラクシズ。ゼムナス様の勇姿をこの目で見ることができ、感涙の極みであります!うっ、鼻からも涙が。」

 

怖がられているわけではないようだ。よかった。

 

突っ込みどころは沢山あるがな。

 

プラクシズ、お前の涙は赤いのか?

 


 

地下を洗浄し、地上へと戻る。

 

そこでは、ボロボロの男が待っていた。

 

もう一度、気絶させようと拳を構える。

 

「ま、待ってくれ!俺はアンタ達と争う気はない。」

 

「ふむ、そうか」

 

構えを崩す。

 

彼の言葉を信じたわけではない。

 

彼を気絶させるのに構える必要自体がないからだ。

 

「アンタらの目的は何だ?聖杯戦争についてか?」

 

「いや、手頃な家があったので我らの拠点として拝借しようと思っただけの事だ」

 

「は、拝借?」

 

「あぁ、何か問題が?」

 

「完全に開き直ってるわね。」

 

最初はムカムカしていたからだが、ここまでした以上貰うに決まっている。

 

「ここは人の家だぞ!それに、あの男が許すはずが」

 

「あの蟲の御老人の事なら、私が消した。

家主がいない家なら、私が貰っても構わんだろう?」

 

ボロボロの男、間桐雁夜は硬直した。

 

と思いきや、いきなり私を掴んできた。

 

「本当か!本当に、あの妖怪を倒したのか!」

 

「あぁ、二度とこの世界に戻ってくることはない」

 

「こ、これで桜ちゃんは!あ、アンタ達には何てお礼を言えばいいか!」

 

「礼はいらん。家を寄越せ。」

 

「いや、流石にそれ・・は。ぐ、ぐふっ。」

 

雁夜は今度は自分から倒れた。

 

家の譲渡の為に話をしたいのだが。

 

「愛歌、治療してやってくれ。」

 

「えー、私が?」

 

「この中で魔術について頼れるのは君だけだ。」

 

「頼られちゃ仕方ないわね!ピカピカにしてやるわ!」

 

「そうか、私はもう少し探索する。探し物も出来た」

 

「この人の言ってた桜って子?」

 

「あぁ、ハウワクス、プラクシズ。仕事だ。」

 

「なにー?」「何でしょう?」

 

「桜という子を探す。この屋敷の中にはいるはずだ。

手伝ってもらう」

 

「どんなこ?」

 

「ふむ、少なくともそこに転がる男よりは幼いだろう。

私はアル中の男を連れてくる。あまり手荒な真似はするな」

 

「うん、いってきまーす!」

 

「おい、フライングだぞ!」

 

仕事なんだがなぁ。

 

さて、私もアル中を連れてこよう。

 




てへぺろ!

聖杯戦争への乱入は確定しました。

次は、18時だドン!


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11.星空

初期プロットでは敵役だった愛歌様が、どうしてこうなった?


アル中には幾らかの金を握らせると喜んで出て行った。

 

あの紙の束がそれだけいいのだろうか?

 

「つれてきたよー!」

 

「わ、私が先に見つけたんだぞ!卑怯者!」

 

ハウワクスが少女を小脇に抱えて持ってきた。

 

その後ろをプラクシズが追いかけている。

 

「よくやった。ハウワクス、プラクシズ。

飴をやろう。」

 

「わーい!あめだ!」

 

「頂きます」

 

ハウワクスは食べて、プラクシズはポケットに入れた。

 

今、食べないのだろうか?

 

「さて、愛歌。そちらはどうだ?」

 

「もう、完璧よ!綺麗さっぱり治しておいたわ。

てっ、うわー。その子も結構弄られてるわね。」

 

「おじさん達、誰?」

 

・・・おじさんかー。

 

そんなに、老けて見えるのか。

 

「弄られてるとは?」

 

「麗しき美少女の口からはとても言えない事よ。

そのままだと、女性としても終わっちゃわね。」

 

「プラクシズ、眠らせられるか?」

 

「了解です!これが私の初仕事だ!」

 

シタールを取り出し、音を響かせる。

 

桜は、直ぐに眠ってしまった。

 

「愛歌、もう一度頼む」

 

「はーい、別に構わないけど。何か、ご褒美頂戴!」

 

「ふむ、褒美か?」

 

「えぇ!これだけ色々教えてあげたり、やってあげたりしてるんだからそれぐらいいいでしょ?」

 

確かに、彼女には知識の面で色々と助けられている。

 

それぐらいは当然か。

 

「そうだな。ハウワクス、プラクシズも聞け。お前達に褒美をやろう。なんでも一つ言え。私のできる範囲でだがな。」

 

「な、何でもって言った!今、言ったわよね!」

 

「あぁ、そう言ったが?」

 

「後で、やっぱり無しとかは駄目よ!ふふ、言ってみるものだわ。」

 

「なにたのもうかな?おかし?おもちゃ?」

 

「ぜ、ゼムナス様!わ、私もでしゅか?」

 

「あぁ、当然だ。これからも宜しく頼む」

 

「ひゃ、ひゃい!ふへー!」

 

今回のプラクシズは一段とヤバイな。

 

仕事があるので正気に戻って貰おう。

 

「プラクシズ、早速仕事だ。」

 

「はい!何でしょうか、ゼムナス様!」

 

「桜の記憶を操作して、精神に害を及ぼす記憶を消してくれ。」

 

「了解です!」

 

シタールの音色が優しく屋敷の中に響く。

 

「・・・ぐぅ。」

 

ハウワクスは寝てしまったようだ。

 


 

「本当に、ありがとう!アンタ達には、頭が上がらないよ。」

 

「おじさん達、ありがとう!」

 

雁夜も桜も元気になった。

 

子供には元気が1番だ。

 

「さて、この家の話に戻ろう」

 

「俺たちにも住む場所は必要だ。恩人のアンタでも渡すわけには」

 

「では、この屋敷の管理をするというのはどうだ?私達もずっとこの屋敷にいるわけではない。使えなくなってはいけないからな。勿論、私達が使う時も住んでいて構わない」

 

「あぁ、それで頼む。」

 

「ゼムナス、そろそろ時間よ」

 

時間?何の話をしているんだ?

 

「キャンプよ!キャ・ン・プ!忘れてたの?」

 

「あぁ、そろそろ日も暮れる頃か。

では、雁夜、桜。また明日来る。」

 

「キャンプ、するの?」

 

桜、その期待に満ちた目をやめてくれ。

 

雁夜、お前も何とか言え。

 

「・・・そのキャンプに俺達がついていく事は出来ないか?

桜ちゃんにも、思い出を作ってやりたいんだ。」

 

雁夜、お前甘いなぁ。

 

「えぇ!キャンプは人数が多い程良いわ!でしょ、ゼムナス?」

 

「・・・そうだなぁ」

 

この際、人が2人増えたところで変わらんか。

 


 

「・・÷よし。誰もいない。行っても良いが、騒ぐな。明かりは最小限。出来るだけ裏側で遊べ。いいな?」

 

「「「はーい!」」」

 

「桜ちゃんの笑顔が見られるなんて。・・・ぐす、感無量だ。」

 

愛歌、ハウワクス、桜は揃って遊びに行った。

 

黒コートは着ているから、余程のことをしない限り大丈夫だろう。

 

雁夜、嬉し泣きしてないでテントを張るのを手伝え。

 

「プラクシズ、お前は行かなくていいのか?」

 

「私は奴ら程子供ではありません。う、海ぐらいなんだというのです!」

 

「・・・行ってこい。命令だ。」

 

「め、命令なら仕方がないです!」

 

プラクシズも彼女らの後を追う。

 

行きたそうにチラチラ見ていたからな。

 

「しかし、外の世界か。そんなものがあるなんてなー。」

 

「雁夜、あまり口外するなよ。」

 

「分かってるよ。これは言ったらまずいやつだって事は。

なぁ、どんな世界があるのか教えてくれないか?気になってさ」

 

「ふむ、いいだろう。先ずは、ネズミが王様の世界の話だ。」

 

「それ、大丈夫か?」

 

ただ黙々と作業をするよりも話しながらの方が良い。

 

それに、いちいち驚く雁夜の反応も面白いしな。

 


 

キャンプも終わりに近づいてきた。

 

皆が寝静まっている中、私は1人、外の浜辺で見張りをする。

 

ふと、空を眺めると満面の星空が広がっていた。

 

人はこれを見て、何を感じるのだろう。

 

「ゼムナス、どうしたの?こんな所で」

 

「見張りだ。いつ奴らに気づかれるか分からんからな。」

 

「ふーん。・・・何で、その人達に負けたの?貴方が負ける姿なんて想像がつかないわ」

 

「・・・心だろうなぁ。私は二度彼らに敗れたが、どちらも心が原因だ。」

 

「心?」

 

おかしな事を聞くように、愛歌は首を傾げる

 

「あぁ、一度目は彼らの心の繋がりに。

二度目は、自分の・・・心に。

そう言うのなら、彼らに負けたな実質一度だけだと言えるな」

 

「心は無いんじゃなかったの?」

 

「あぁ、今は無い。植え付けられる形ではあったが、私は心を手にした。かつての仲間達も共にな」

 

「それなら条件は彼方と同じはずよ。貴方にだって心の繋がりがある。負けるはずがないわ!」

 

「我らに、繋がりなど無い。結局は寄せ集めの集団だったという事だ。機関からは裏切り者も出た。

そして、心が感じたのは怒りと寂しさだけだった。」

 

「・・・寂しさを?」

 

「そこに行き着くまでに、多くの仲間を捨て駒として来た。

私は、なんだかんだ彼らも仲間だと思っていたのだろう。

心を手に入れても、残ったのは、孤独だけだった。

そんな脆弱な心で、彼らに勝てるはずがなかったのかもしれないなぁ」

 

「・・・確かに、弱い心かもしれないわね」

 

「やはり、そうか」

 

「でも、私はそれを尊いものだと思うわ。

たとえ、貴方がどんな悪行をなしてその結果に行き着いたのだとしても。

誰かを思うことの出来た、貴方の心は」

 

「少し、こそばゆいな」

 

今話した事は、私ではないゼムナスが行なった事だ。

 

そう言ってくるなら、彼も救われる気がする。

 

「・・・綺麗な星空ね、ゼムナス。」

 

「私には判断できないな。感じる心がないからな」

 

「心がある私が言うんだから間違いないわ。

この空も世界も、美しいの」

 

優しく微笑む彼女の姿の方が、綺麗な気がするな。

 

「君が言うのなら、そうなのだろう。

・・・寝なくて大丈夫なのか?」

 

「良いじゃない。一緒に星を見ましょ?」

 

「仕方がないな」

 

燦然と輝く星の下で、2つの影はただ空を見つめている。

 

「それはそれとして、バーベキューセットも持ってきたのは感化できんぞ」

 

「良い雰囲気なんだから、余計な事は言わないの!」

 

 




本当に、どうしてこうなったんだろう?

だが、後悔はない!
書いてて非常に楽しかった!


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12.戦争

第四次聖杯戦争編、始まります。


「たのしかったー!」

 

「うん。また行きたいね。」

 

「桜ちゃんに、友達が!ひぐっふぐぅ」

 

「ゼムナス様、今後の方針はどうしましょうか?」

 

「遠坂邸に行く?この地を私達の物にするのも良いと思うわ!」

 

キャンプを終え、無事に間桐邸に帰ってきた。

 

ハウワクスと桜は年齢が近いからか、とても仲良くしている。

 

雁夜は何でもかんでも泣きすぎだ。

 

愛歌は物騒すぎ。

 

「土地の管理など面倒なだけだ。

それより、聖杯戦争だったか。

それについて教えてくれ。」

 

「えぇ、良いわよ!やる気になったみたいね!

聖杯戦争というのはね。・・・・・」

 

愛歌からの説明を聞く。

 

「ふむ、かつての英雄達がマスターに従って争い、最後の勝者が聖杯を手に入れる。面白い。」

 

「そこの雁夜もマスターよ。どうする?右腕奪う?」

 

「えっ!折角綺麗な体になったのに、あんまりじゃないか?」

 

「はは、冗談よ。冗談。」

 

「あぁ、マスターになる気もサーヴァントを従える気もない。私自身が、参戦しよう。」

 

「おぉ!組織としての初の戦ですね!」

 

「ぜんいん、たおしてしまってもかまわんのだろう?」

 

「もう、話を聞いてたの?人間じゃ英霊には勝てないのよ。

私は例外だけど」

 

最後はボソッと言って聞こえなかったが、彼女は勘違いをしているようだ。

 

「私達はノーバディ。人間ではなく、外から来たものだ。」

 

「・・・そうだったわね。じゃあ、どういう形で参戦する気?」

 

「私をサーヴァントと偽る。宝具だったか。それを理由にすれば騙せるだろう。」

 

「普通、英霊以外が参戦するなんて思わないものね。

良いわ!じゃあ、私がマスター役ね!」

 

「わたしたちは?」

 

「今回、出番はなしですか?」

 

「いや、三騎のサーヴァントを従える正体不明のマスター。

こういうのはどうだ?」

 

「えぇ!他の参加者達全員が、度肝を抜くと思うわ!」

 

「あー、俺も参加する必要があるか?」

 

「当然よ。だけど、貴方の魔力量は貧弱だし、英霊を召喚しても搾り取られて終わりそうね。

しょうがないわ、魔力を貸してあげる。」

 

もう参加する理由がない雁夜が質問するが、愛歌により参加が決定された。

 

「そうか。・・・俺には一泡吹かせたい奴がいる。

よし、参加するよ!」

 

「だから、参加って言ってるのに」

 

「しかし、マスター役をすると言ったが、愛歌。

大丈夫なのか?」

 

「何が?」

 

「後、2日で家に帰らなければならないだろう。」

 

「・・・直ぐに帰って、もう一回来るわ」

 

愛歌、完全に忘れていたな。

 

家族に対しての扱いが酷くないか?

 

「いや、それは無理だろう」

 

「大丈夫よ!夏休みだから学校はないし、お父さん達もちゃんと説得するから!今度はあー、2週間!」

 

夏休み、終わりそうだが?

 

 

 

 

地下で行った、雁夜の召喚が終わった。

 

そこにいたのは漆黒の騎士。

 

名は、ランスロット。

 

「これが、俺のサーヴァント!見てろよ、時臣!」

 

雁夜がうつ伏せになりながらも、やり切ったような顔で吠える。

 

聖杯戦争が始まる前に、脱落しそうだな。

 

「ほら、これを使いなさい。結晶に貯めた私の魔力。

二週間フルでバーサーカーを動かしても、問題はないはずよ。」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「雁夜、私達は同盟を結んでいるという設定で行くぞ」

 

「ふっ、時臣が驚く顔が目に浮かぶようだ。」

 

雁夜、少しトリップしてないか?

 

「ハウワクス、プラクシズ、本物の英霊を見てどうだ?勝てそうか?」

 

「もんだいなし!」

 

「私は無理そうです。素直に後衛に徹します。

ゼムナス様はどうですか?」

 

「そうだな。互角以上にはやれるとは思う」

 

「流石、ゼムナス様です!」

 

結構、よいしょと言うのは心地いいな。

 

「さて、開戦するまでは各々の好きに動け。

目立つ行為は控えてもらうが」

 

「えいきをやしなう!おこづかいちょうだい?」

 

ハウワクスには、自分で稼ぐ方法を教えた方がいいだろうか?

 

・・・散財しそうだ。

 

「あぁ、プラクシズも受け取れ」

 

「はい!大切に使います!」

 

「ハウワクスを見ておいてくれ。そそっかしいからな」

 

「はい!行くぞ、ハウワクス!」

 

「おかしー!」

 

「ゼムナス、先に一度帰るわ。ついて来てくれる?」

 

「問題ない。雁夜、桜、少しの間だが、家は任せたぞ」

 

「いってらっしゃーい」

 

「あぁ、任せてくれ!」

 

 

愛歌を送り届け、一度『存在しなかった世界』へと帰ってきた。

 

空に輝く、人の心のキングダムハーツはこの世界を照らしている。

 

今まで、試さなかった事を試す。

 

下級ノーバディであるダスクに来るよう念じる。

 

すると、数体のダスクが現れる。

 

今はこれだけしかこの世界にはいないのか。

 

はたまた、これだけしか呼べなかったのか。

 

「お前達、他の下級、上級ノーバディ達をこの城に連れてこい。」

 

私の命令に、ダスク達がコクリと頷く。

 

「では、行け。」

 

彼らが闇へと消える。

 

続けて、あのドラゴンのノーバディを呼び出す。

 

消滅していて、出せないかもしれないが。

 

空に巨大な闇が現れ、その中から何かが顔を出す。

 

あのラスボス戦で見たドラゴンがいる。

 

ゆっくりと闇の中から這い出てくる。

 

実に、カッコいい。

 

闇の回廊でドラゴンの背中へと乗る。

 

ドラゴンの背中には、あの玉座が用意されていた。

 

ゆっくりと座る。

 

ゼムナスもここに座りながら、ソラやリクと戦った。

 

聖地巡礼をしている気分である。

 

あの、鎧も着れるのだろうか?

 

ふと思い浮かべると、気づいた時には着ていた。

 

かつてのXIII機関の武器を呼び出す。

 

空中に13の武器が現れる。

 

これだけ色々出来るゼムナスに勝ったソラとリクは、どれだけ強いのか。

 

会うこともないだろうし、気にする必要はないか。

 

・・・少し、寝るか。

 

今日は、本当に疲れ・・た・。

 

 

機械のような竜の上で、1人の男が玉座に座り、微睡む。

 

竜は、彼の眠りを邪魔しないよう静かに空に浮かぶ。

 

ビル街には、続々とノーバディ達が集まり、ハートレス達を駆逐する。

 

第四次聖杯戦争は外の世界の者達で、より混沌を極める事となった。

 

開戦の時は、近い。

 




英雄王の立ち位置が難しい。


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13.開戦

アンケートは今日の22時までです。


つい寝過ごしてしまった。

 

途中で愛歌を回収して、間桐邸へと戻ってる。

 

「おかえりー!」

 

「随分と時間がかかりましたね。何かありましたか?」

 

「いや、少し試したい事があった。それだけだ。」

 

「もう、私1日待ってたのよ。このこの!」

 

「愛歌、つつくな。雁夜、今何時だ?」

 

「夜の21時だ。桜ちゃんはもう寝てる。」

 

「ふむ、夜か。ちょうどいい。ダスク、仕事だ。」

 

呼びかけると空間からぬるりと1体のダスクが現れる。

 

「30体ほどで、この街の監視をしろ。何か有れば直ぐに私に報告しろ。隠密に徹し、見つかるな」

 

ダスクはコクリと頷くと、またぬるりと消えていった。

 

素直に言う事を聞くし、色々とできるからダスクは便利だ。

 

近くにある椅子に座る。

 

前を見ると、全員が唖然としていた。

 

「どうかしたか?」

 

「・・・あれ、なに?」

 

「ダスクだ」

 

「ゼムナス様、ダスクとはなんでしょうか?」

 

「あぁ、言っていなかったな。下級のノーバディだ。

主な仕事は下働き。中々、優秀だぞ」

 

「そんな便利なのがいるなら、早く出して欲しかったわ。」

 

「それは無理だ。つい昨日集めたばかりだからな。」

 

「試したい事とはそれでしょうか?」

 

「いや、他にもある。

だが、切札は最後まで取っておくものだ。」

 

「ふーん、気になるけどしょうがない。

見られるのを楽しみにしてるわ!」

 

切札は見れない方が良いのだがな。

 

使うのは危機的状況に陥っていると言う事だ。

 

「あれは、人間を襲わないよな?」

 

雁夜、一般人らしい質問だ。

 

「襲えと言えば襲う。命令しなければ襲わん」

 

「そうか。いきなり変なの出すから驚いたよ」

 

あのフォルム、結構可愛いと思うのだが。

 


 

間桐邸に来てから2日がたった。

 

今のところ、あちこちで殺人事件が起きている以外の変化はない。

 

当然、ダスクにも調査を行わせている。

 

ちょうど、来たようだ。

 

「何か見つけたのか?」

 

ダスクから私に情報が伝えられる。

 

「金髪のサーヴァントが、黒い仮面をつけたサーヴァントを倒した。倒し方は?」

 

「金髪の背後に波紋が現れ、そこから剣や槍が射出されていた。よくやった。ご苦労、ダスク。引き続き頼むぞ」

 

ダスクは敬礼をすると、消えていった。

 

ダスクにも個性が存在するのだな。

 

「ゼムナス、アサシンが倒されたみたいよ。」

 

「あぁ、今、ダスクから報告が入った。」

 

「くー、私が報告しようと思ったのに!

でっ、貴方はこれをどう見る?」

 

「裏があるとは思っている。

貴重なサーヴァントを使い潰しにするとは考えにくい。

それか、考えなしの馬鹿か。」

 

「正解よ。倒されたのは百貌のハサン。倒したのはギルガメッシュよ。百貌のハサンは、百体で1つのサーヴァント。

今回のこれはアサシンが死んだと思わせる為の見せ物ね。」

 

「そうか。ギルガメッシュの方は?」

 

「古代バビロニアの王様。

数多の宝具の原典を持つ、英雄の王。

この聖杯戦争での文句なしの優勝候補よ」

 

「それも、我々がいなければの話だが」

 

「ふふ、自信があるのね。堂々と構えているのが貴方には似合ってるわ。後、ハサンがアサシン。ギルガメッシュはアーチャーよ。」

 

「あれが、アーチャー?」

 

あの戦いの何処に弓兵の要素があるというんだ。

 

「疑問に思うのも仕方ないけど、アーチャーよ。」

 

意外と、クラスというものは判定が広いのだろうか。

 


 

倉庫街にランサーが現れたという情報が入り、私達は闇の回廊を使い倉庫街へ向かう。

 

「本当に、一緒に来るのか?」

 

「えぇ、マスター役なのだから当然よ!」

 

「いや、マスターなら後衛にいた方が」

 

「駄目よ!他のサーヴァントにはマスターが近くに居るのに、貴方にはマスターが居ないなんて!」

 

「ゼムナス様だけでなく、我々もだぞ。

まぁ、一理はある。強キャラアピールは大事だ。」

 

「いふうどうどう!」

 

「はぁ、分かった。

全員、自分の力を理解した上で好きなように動け。

命令は1つ。死ぬ事は許さん。」

 

「はい!」「了解しました!」「えぇ、分かったわ!」

 

「では、行くぞ。我らXIII機関、聖杯戦争へ介入する。」

 

 

闇の回廊から、1人出る。

 

場所は、倉庫と倉庫の間の細い通路。

 

眼前では、セイバーとランサーが争っている。

 

戦争だと言うのに正面から戦うとは、願いを叶える為にもっと血眼になって欲しい。

 

闇の回廊で短距離を一瞬で移動し、傷を負ったセイバーの横っ面にエアリアルブレードで切り込む。

 

「な!?」

 

直撃し倉庫の壁へと吹き飛ぶセイバー。

 

だが、最優と呼ばれるだけはある。

 

すんでのところで剣を使い防がれるとは。

 

「セイバー!貴様、一体何処から!」

 

「喋る暇があるのか?」

 

ランサーの後ろに回廊が開き、ハウワクスが奇襲をかける。

 

『後ろだ、ランサー!』

 

ランサーのマスターだろう男の声が響く。

 

即座にランサーは、横へ飛び上がり、ハウワクスの鎌がかすめる。

 

あと少しで一騎落とす事が出来たのだが。

 

「惜しかったが、タイミングは良かったぞ。」

 

「えへへ、ほめられた!」

 

「ぐっ、貴様ら何者だ!」

 

「大丈夫、セイバー!」

 

「すみません、アイリスフィール。遅れを取りました」

 

「突然現れたんだもの。仕方ないわ。」

 

あれが、セイバーのマスターか?

 

あのペアはマスターの事を名前で呼ぶのか。

 

「ハウワクス、セイバーを仕留めるぞ」

 

「うん、りょうかい!」

 

「貴様ら、2対1とは卑怯な!助太刀するぞ、セイバー!」

 

「卑怯汚いは弱者の戯言。騎士道精神などこの聖杯戦争で最も不要な物だ」

 

「何だと!」

 

『冷静になれ、ランサー!そんな煽りに簡単に引っかかるな!』

 

「ランサーのマスター、サーヴァントよりも自分を心配した方がいいぞ」

 

『な、何を・・・!き、貴様ら何処から!』

 

「マスター!くっ、すまんセイバー!」

 

マスターの危機にランサーが離脱する。

 

あちらも上手くやっているようだ。

 

さて、邪魔が入ったが先ずは一騎。

 

「下がってください、アイリスフィール!」

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

空から男の悲鳴が聞こえる。

 

「ひゃあ!」

 

咄嗟に、ハウワクスを抱え後ろへと下がる。

 

同時に、私達がいた場所を戦車が通り過ぎる。

 

下がっていなければ轢かれていただろう。

 

止まった戦車からは1人の大男が現れた。

 

「双方、剣を収めよ。王の御前である!」

 

王?何処かの王様か?

 

収める義理もないが、いいだろう。

 

「武器を下ろせ、ハウワクス。」

 

「はーい」

 

さて、彼は武器を下させてどうする?

 

奇襲か?それとも、今日はもうお開きという事か?

 

「余は征服王、イスカンダル!

此度の聖杯戦争ではライダーの得て現界した!」

 

とんでもない阿呆だった様だ。

 

 




戦闘描写は苦手。
上手い人は本当に凄いです。
あと、キャラの口調も。


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14.真名

自分の文才の無さが憎いです。
キャラクターをちゃんと書ける人って凄いです。



「何を、考えてやがりますか!この馬鹿はぁぁぁぉ!」

 

先程の悲鳴を上げていた、彼のマスターが悲痛な叫びを上げる。

 

いきなり自分のサーヴァントが真名もクラスもバラしたのだから当然だ。

 

弱点を曝け出した様なものである。

 

「小僧、少し静かにせんか。まだ話は終わっとらん。

こほん。

うぬらとは聖杯を求めて・・・・」

 

ライダーの話が、長かった。

 

もっと端的に言え。

 

「長い。聖杯を諦め部下になるか、聖杯を奪い合う敵となるか選べという事だな?」

 

「おお。直球な言い方をする奴だな。

まぁ、間違ってはおらんが。

で、どっちだ?」

 

「愚問だな、征服王。

そんな戯言に乗ると思うか?

その減らず口、叩けなくしてやろう」

 

「面白い。だが、他を当たれ。

私も上に立つ者としての義務がある」

 

世界征服という言葉には少し心躍るものがあったが、それはまた機会が有ればやろう。

 

今の私の目的は、この戦争の勝利者となることだ。

 


 

〜その頃の愛歌様とプラクシズ〜

 

回廊の中にて

 

「アイツ、私のゼムナスに軍門に降れって言った!?言ったわよね!はっきり聞こえてたわよ!一体何を考えているのかしら!そんな事をゼムナスのマスターである私が許すと思ってるの!お・も・っ・て・い・る・の!ゼムナスはね!未来永劫、いえ!過去未来現在何もかもを超越して全てにおいて私のものなのよ!同時に、私はゼムナスのものでもあるのよ!前世今世来世別次元外宇宙であろうとね!貴方にはゼムナスの髪の一本、皮膚のかけら、吐いた空気であろうと渡す気はないのよ!全て!全て私のものなの!ゼムナスと私は一心同体比翼連理偕老同穴なのよ!それをアイツ!自分の軍門に降れですって!アイツの人生!いえ、存在そのものをこの私の手で直々に消してあげるわ!だから早くその手を離しなさい、プラクシズ!」

 

「離すと思うか!この馬鹿!正気に戻れ!」

 

狂乱していた。

 


 

「くー、交渉決裂とは残念だなぁ。実に惜しいなぁ。

そこのちっこいのは、どうだ?」

 

「ゼムナスさまがしないなら、しない」

 

「むっ!ゼムナスとはこいつの名か?」

 

そう言ってライダーはセイバーの方を指差す。

 

「そっちじゃなくて、こっち!」

 

ハウワクスはそれを否定し、私を指差す。

 

これではライダーを馬鹿にできない。

 

自分の名がバレているのだからな。

 

これは私が悪い。

 

口止めをしていなかったからな。

 

する必要も無いのもあるが。

 

「や、やったな。ライダー!

総スカンされた時はもうダメだと思ったけど、真名が分かれば弱点も分かる。

これであいつは倒したも同然だ!」

 

倒したも同然とは中々言ってくれる。

 

少し、尺に触った。

 

「ふむ、ライダーのマスター。喜んでいる所悪いが、私は真名がバレても不利益はない」

 

ライダーのマスターの方向を見ながら言う。

 

このまま言われるのは面白くない。

 

そう思ってしまった私のちょっとした嫌がらせだ。

 

「な、何だよ。負け惜しみか?

た、確かに名前は聞いた事ないけど、それはアンタがマイナーな英雄って事だろ?

詳しく調べれば情報は出て」

 

「勘違いをするな。

私はな、真名が暴かれ、自分の弱点が露呈したとしても、君達に勝つ事に問題はない。

絶対的な力の前では何もかもが無力であると、教えてやろう、ウェイバー・ベルベット」

 

「ひぃ、な、何で僕の名前を!?わっ、わわ!」

 

ライダーのマスターが戦車の上でバランスを崩し、倒れる。

 

つい、無意識に力が入りすぎていた様だ。

 

少し、威圧するだけのつもりだったのだが、かなり怖がらせてしまったらしい。

 

セイバーのマスターも座り込んでしまっている。

 

自分達のマスターを守る為に、セイバーもライダーも戦闘態勢に入っている。

 

不審な行動をすればいつでも切りかかってくるだろう。

 

「驚かせすぎた様だ。私としては少し怯む程度のつもりだったのだが」

 

「あの殺気を、少し怯む程度だと?笑えない冗談だな、ゼムナス」

 

君の方が殺気だだ漏れだろ、セイバー。

 

いつでも切れますと言っている様なものだ。

 

「セイバーをどうにかしろ、ライダー。

今宵はもう、私に戦う気はない。

挑んでくれば潰しはするがな」

 

「いや、余に言われてもなぁ。

その、何だ。セイバー、此奴もこう言っている。

剣を下ろしたらどうだ?」

 

「征服王、その言葉を、私が信じると思うか?」

 

「せ、セイバー。彼の言葉を信じても良いんじゃないかしら?引き際というものもあると思うわ」

 

「アイリスフィール!・・・分かりました」

 

セイバーも落ち着いた様だ。

 

・・・ここでハウワクスを攻撃させたら、どうなるだろうか?

 

いや、しないがな?

 


 

〜その頃の愛歌様とプラクシズ〜

 

回廊の中にて

 

「ふぅ、ごめんなさい。取り乱したわ、プラクシズ」

 

「本当だ!死ぬかと思ったぞ!」

 

「ちょっと。言い過ぎじゃない?」

 

「・・・お前が今、手に持っているのは何だ?」

 

「これ?マナカ虐殺ウィップよ」

 

「・・・もう、貴様の相手は疲れた」

 

「あっ、今日の戦いは終わりですって!

さぁ、ゼムナスを迎えにいきましょ!」

 

「・・・この、自由人め」

 


 

「ふはは、ふはははははは!」

 

突如、高笑いが倉庫街に響く。

 

声の方を向くと、電灯の上に黄金のサーヴァントが立っている。

 

「つまらん祭りに呼ばれたと思っていたが、貴様の様な拾い物をするとはな。名をゼムナスと言ったな。

一体、何処から我の庭に入り込んだ?」

 

それは私達の核心を突く言葉だった。

 

一体、どうやってそれを知った?

 

愛歌の様に奴も『根源』に繋がっているのか?

 

確か、出会った時の愛歌は私達の未来が見えないと言ったか。

 

それに準ずるものを奴も持っているということか。

 

「英雄王、ギルガメッシュ。

話す気がないと言ったら、どうする」

 

「ほう、我の名を知っていて、その様な妄言を吐くか。

言わぬのなら、無理矢理にでも吐かせるまでよ!」

 

彼の背後の空間に、次々と黄金の波紋が生まれ、そこから数え切れないほどの武器が向けられる。

 

一目で、それがただの武器では無いことがわかる。

 

一つ一つが強力な英雄の武器となれるポテンシャルを秘めている。

 

「迎えに来たわよ、ゼムナス!」

 

それが私に向かって放たれ。同時に愛歌が回廊から現れた。

 

どうやら、私の運はとても悪いらしい。

 

 




最初ギャグでしたが、なんか違うと思い書き直しました。

愛歌様の暴走はその名残です。
上手いキャラの書き方、誰か教えて。
後、愛歌様は裏で色々しています。
ケイネスは犠牲になりました。


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15.天敵

展開に難産しました。
イマイチです。
泣きたい。


私に向かって、膨大な数の武器が放たれる。

 

避ける事は容易いが、それでは後ろの愛歌達に被害が及ぶ。

 

セイバー達にもここで落ちてもらっては私が戦う事が出来ず困る。

 

だから、私はあの鋼の雨を正面から防がなくてはならない。

 

今からやるのは「全方位ショット」のちょっとした応用だ。

 

全方位からのショットを一つの方位へと集中させる。

 

「全方位ショット」が球であるなら、これは面だ。

 

一つの面から大量に打ち出す。

 

「全面ショット」と名付けよう。

 

ギルガメッシュの模倣に見えるが、これは私のオリジナル技だ。

 

断じてパクリではない。

 

コストパフォーマンスは圧倒的に此方の方が上だ。

 

ギルガメッシュの武器と、私のショットがぶつかり合い、爆発があちこちで起こる。

 

爆発が起きたという事は、私のショットが押し負けたという事だ。

 

ただの武器ではないのだろう。

 

当然、想定内だ。

 

出来れば、押し勝ちギルガメッシュを蜂の巣にしてやりたかったが。

 

爆発を受けた武器達は、あらぬ方向へと飛んでいく。

 

爆発により、彼の武器の進行方向を逸らす事はできた様だ。

 

放たれ続ける武器と、爆発し続けるショットで均衡し始める。

 

今のうちに、彼を倒す。

 

「ねぇ、ゼムナス。作戦があるんだけど」

 

「いってくる」

 

「えっ?ちょ、ちょっと!」

 

一言言い残し、闇の回廊で彼の真後ろへ移動する。

 

「はぁー、ハウちゃん。貴方が切札よ」

 

「とうぜん!」

 

「・・・その自信はどこから来るのかしら」

 

 

回廊で移動する中、考える。

 

彼の狙いは私だ。

 

私の姿が見えなくなっているのも気づいているだろう。

 

英雄王とまだ言われるのだから、回廊から出た瞬間に知覚されると思うべきだ。

 

なら、知覚が間に合う前に切るしかないだろう。

 

彼が何かする前に。

 

私は、最高速で回廊から出て、彼に斬りかかった。

 

私の刃が彼を切り裂く・・・事は無かった。

 

「ほう、暗殺者の真似事とは。

随分と多芸な様だな、来訪者」

 

「多芸なのは君の方だろう、ギルガメッシュ」

 

鎖が四肢に巻きつき、動きを止められた。

 

「話す気にはなったか?

話すというのならその鎖、外してやろう」

 

今の状態でこの鎖を引きちぎるのは難しいだろう。

 

鎧か牛柄になればまた別だが。

 

回廊を使えば、抜けられるか?

 

「その鎖は特別でな。

貴様の黒い門でも抜ける事は不可能だろう」

 

やってみたが無理だった。

 

というか、何故ここまでして知りたがる?

 

「何故、そこまで知りたがる。

知ったところで何の意味もないぞ」

 

「それを判断するのは我だ。

それにここで話した方が貴様の身のためだ。

我がここで逃げられて、諦めると思うか?

話さなければ、常に周りを警戒しなければならない。

我が言うのもなんだが、面倒くさいぞ?」

 

それは確かに面倒くさい。

 

戦いどころか私生活まで邪魔されるという事か。

 

・・・話しておこう。

 

これでは、殺す殺さないの戦いに至る事はない。

 

「・・・口外しないというのなら。

当然、君のマスターにもだ」

 

「いいだろう。

少し待て。それ用の宝具があったはずだ」

 

そう言って、彼は金の波紋の中に手を突っ込み探し始めた。

 

武器の放出も終わっていたので、私の「全面ショット」も止める。

 

どうせなら、解いてから探して欲しいが。

 

「ゼムナスさまー!」

 

此方にハウワクスが走ってくる。

 

・・・鎌を持ちながら。

 

これはまずい。

 

「気をつけろ、ギルガメッシュ」

 

「何だ?今いそが・・・こ、この気配はまさか!」

 

「ゼムナスさまをはなせー!」

 

ギルガメッシュがこけ、その上を鎌が通り過ぎていった。

 

「き、貴様!何処でこれに会った!」

 

私がハウワクスに会ったのは『存在しなかった世界』。

 

「説明できないな」

 

「や、やめさせろ!いますぐ!なっ、時臣!

ーーーくっ、来訪者、次会う時までに準備はしておく!

その時に話せ!勝手な退場は許さん!我、帰るから!」

 

ギルガメッシュは帰っていった。

 

同時に鎖も消え、自由となる。

 

ギルガメッシュは子供が死ぬ程苦手なのだろうか?

 

「ゼムナスさま、ぶじ?」

 

「あぁ、問題ない。

それより、ハウワクス。

ギルガメッシュが何で君から逃げたか、分かるか?」

 

「マナカはそんざいがてんてきとかなんとか」

 

「そうか」

 

よく分からんから、気にする必要もあるまい。

 




しゃーないやん!
本気でぶつけ合ったら慢心してる人死ぬし!
よしんば慢心してる人も本気になったら冬木壊れる!
言い訳です、すみません。
ギャグに逃げました。


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16.会議

まず初めに誠に申し訳ないです。
モチベーションが吹っ飛んだので描けなかったです。
これからは少なくとも月1はできる様頑張ります。
後、次回から書き方を三人称っぽく変えようと思います。
自分の文見返すとクソ恥ずかしいです。
今までのはいつか書き直します。
クソ中途半端な話ですが、次回は頑張るので許して?


あの後、セイバーがお礼を言ったり、ライダーが秘密を聞きたがったり、愛歌から小言を言われたり、プラクシズが落ち込んだり、ハウワクスは通常運転だったり、ウェイバー君が叫んだり、セイバーのマスターが数がおかしいとか言い始めて言い訳したりしたが、特に何もなかった。

 

そんなこんなで間桐邸に帰ってきた私達は、今までの情報をまとめる会議を始めていた。

 

「第一回XIII機関第四次聖杯戦争会議を行う。

出席を取る」

 

「沙条愛歌、いまーす!」

 

「ハウワクス、いまーす!」

 

「プラクシズ、います」

 

「間桐雁夜、います」

 

「間桐桜、いまーす!」

 

しっかりとした返事が5人から返ってくる。

 

元気があるのは良いことだ。

 

「よし、全員いるな。では、会議を始める」

 

「うん、ちょっと待ってくれ。何で桜ちゃんがいるんだ?」

 

「そこにいたからだ。

戦いに巻き込むわけでは無いのだから、構わんだろう。」

 

「客観的視点から忌憚のない意見を出します!」

 

「さ、桜ちゃんが知らない間に大人に・・・!」

 

本で覚えたばかりの言葉を言う桜に目を潤まさせている阿保は置いておこう。

 

「では、第一の議題にうつる。

今回の聖杯戦争のサーヴァントについてだ

現在判明しているのは、アーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカーの四騎。

今回はこれらから未だ未発見のキャスターを除いた二騎の真名について考える。

意見があるものは挙手をしろ」

 

「はい!」

 

「プラクシズ、発言を許す」

 

「ゼムナス様、ランサーの真名が分かりました。

ランサーは、ディルムッド・オディナ。

ケルトの英雄です。」

 

「情報源は何処だ?」

 

「ランサーのマスターの頭の中を覗いて記憶を弄っている時に分かりました」

 

「マスターなら知っていて当然か。

よくやった、プラクシズ。

それで、記憶をどう弄った?」

 

「はっ!ありがとうございます、ゼムナス様!

ランサーのマスターの好みのタイプを男にして来ました!」

 

・・・どうやらランサーは自分のマスターが最大の脅威になったらしい。

 

だが、これが悪い事だと果たして言えるだろうか?

 

始まりとはいつだって唐突なもの。

 

きっと、この不幸も彼らにとって幸福へと変わってくれるだろう。

 

私は、彼等に対しての罪悪感をポジティブに考えて清算する。

 

「・・・よくやった。」

 

「ふぁっ!あ、ありがとうございます!」

 

一言褒めると、褒められたプラクシズは恍惚とした表情で舞い上がる。

 

「セイバーについて分かるものはいるか?」

 

「そうねー。女騎士なんて珍しいし無難にジャンヌダルクとかじゃないかしら?」

 

会議は夜遅くまで続いた。

 



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17.蚊帳の外

三人称風とか言いましたが、もうわっかんないですね。
でも、悪く、無いんじゃないかな?
一口サイズだね!

ちょい日過ぎてごめんさい。


早朝、ゼムナスの姿は台所にあった。

エプロンを装着し、台所に立つ姿は組織のトップにはとても見えない。これがアットホームな職場なのだろう。アットホームってなんだ?

慣れた手際で米を洗い、炊飯器へとシュート。スイッチを入れるとすぐ様次の作業へと取り掛かる。

フライパンに油を引き、卵を数個割り中へと投入。さらにウィンナーも投入。白身の所にくっついてしまわないか心配だが、彼にとっては詮ない事らしい。

冷蔵庫から市販のサラダを皿へと盛る。サラダには暖かさを求められていないから市販でもしょうがない。

そうやってテキパキと朝食の支度をしていると、部屋の外から階段を降りる音が聞こえ、扉から眠そうな愛歌が入ってきた。

 

「ふわー、おはようー」

 

「おはよう、朝食の準備ができた。運ぶのを手伝ってくれ」

 

「いいわよー。でも他の人達を起こさなくていいの?」

 

「問題はない。起こしに行け、ダスク1,2,3,4」

 

ゼムナスがそういうと、影の中から頭に番号が書かれたダスクが飛び出して行く。

 

「・・・ふふっ、あれに起こされるなんてどんな反応するかしら?楽しみだわ」

 

愛歌は突然白い人型に起こされる者達の不幸を笑いながら、ゼムナスと共に料理を配膳し始める。

そして、料理を全て置き終わった時、哀れな男の悲鳴が館に響いた。

正直、彼が驚くのは予想通りだったので愛歌は小さくため息をつきながら落胆した。

ゼムナスは彼がそういうキャラだと思っていたので特に何も思わなかった。

 

 

「・・・おい、あの起こし方は無いんじゃないか?」

 

朝食後、先ほどの悲鳴を上げた張本人である間桐雁夜はTVのドッキリ番組のような起こし方に顔をしかめていた。幸せに寝ている所で体が揺れるのを感じ、目を開けたら白い何か(ダスク)が目の前にいるというのはまさしくホラーである。

 

「雁夜、ダスクは前にも見たことがあるだろう?害がなく、友好的な存在だとは分かるはずだ」

 

「いや、普通朝アレに起こされたら驚くだろ!」

 

「アレとはひどいな。ダスク4も拗ねているぞ」

 

ゼムナスは部屋の隅で三角座りをするダスク4を励ますダスク1,2,3とちびっ子達の方を指差した。

 

「えー、俺が悪いのか?」

 

「私も少しは悪かったかもしれないが、悲鳴を上げたのは君だけのようだが」

 

「ぐぅ、それを言われると・・・。謝ってくるよ」

 

桜が平然と受け入れているのに自分だけが悲鳴を上げたのは本人も情けなく思ったのか、素直に雁夜はダスク4に謝りに行く。そんな雁夜と交代する形で、愛歌達がゼムナスの側へとやってきた。

 

「ゼムナス様、ダスク達の報告から気になる情報がありました。1つは山側の道路でセイバーと目が前に飛び出したヤバイ男、おそらくキャスターが接敵。2つは冬木市内のホテルで1つのフロア全体が爆破されるという事件がありました」

 

「ほう、もう動き出していたか」

 

プラクシズがダスクからの報告を受けているという事に、ゼムナスは内心順応早すぎと思いながらも、聖杯戦争の動きの早さに少し驚き、目を細めた。キンハー本編でも長期的な計画ばっかりだったからね。

 

「ちょうどテレビでやってるよー!」

 

『・・・昨晩、冬木市内のホテルで原因不明の爆発が発生し、フロアの1つが全焼しました。幸い怪我人はいないと言うことです。関係者からの話によりますと、フロアは貸し切りとなっており・・・』

 

ハウワクスが指を指すテレビの画面には、ホテルの爆発する姿が映されていた。アナウンサーが言うには、貸し切りだったらしい。

 

「ゼムナス様、今日の予定は一度取りやめ我々も動くべきでしょうか?」

 

「気にする必要はない。今日の『何もない城に彩りをツアー』は予定通り行う」

 

ゼムナスは彼らがどう動こうと自分達の予定を変えるつもりはなかった。それは相手にそこまで合わせる必要が何処にあるのかという至極単純な思考から来ていた。

 

「はっ!ゼムナス様の決定は!」

 

「絶対!」

 

プラクシズとハウワクスに異論はない。プラクシズにとって、ゼムナスは自分を庇護してくれる対象であり崇拝もしている。ハウワクスにとって、ゼムナスは自分に優しくしてくれる人であり胸の所が暖かくなる。そして彼女達にとってゼムナスは絶対の存在であるからだ。

 

「貴方達、仲良いわね。妬いちゃうわー」

 

そんなゼムナス達を少し不満に思いながら、微笑ましく愛歌は見ていた。見ているだけなので、彼女の手の中にある愛歌虐殺ウィップはきっと幻覚なのだ。そうに違いない。

 

こうして彼らは朝の団欒を過ごすのだった。

 

 




頑張ると言ったら死ぬので頑張らないです。

キャラ変わってる気もするけど、
意外と出来はいいんじゃないかな?


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