SAOー黒剣と鼠 (だけたけ)
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SAO編
1話 SAO


 

 

 

「いよいよ今日だな?!!」

 

興奮気味で話しかけてくるのは俺、拓の友達の隼人だ。

 

「まぁ、拓はシステムアシストとかいう奴は無理だろうけどな!!!」

 

.......こいつは友達じゃない。断じて違う.......

 

「ん?どちら様ですか?赤の他人ですよ?」

 

「ひでぇ!!!」

 

「どっちがだよ!」

 

「あ、今日遅めにログインするから隼人、先にログインしといてくれ」

 

「ん?どしたんだ?....ってあれか」

 

「そうだ。あれだ」ニヤリ

 

俺はαテスターだ。周りには秘密なのではやとしか知らない。正規版で色々特典がついてくるらしいんだがすぐログインすると反映されてないから特典が貰えなくなるって言われた。だから少し開けてから行く。まぁ、正直に言うと時間あけるとかは胡散臭いとは思っていたが貰えなくなるとは嫌なのであとからログインすることにした。

 

「じゃぁな、拓!あっちでな!」

 

「おう!!抜けがけすんじゃねぇぞ!!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

正規版が開始されて30分ぐらいがたった。

 

「そろそろかな!ああー!!もう待てねぇ!」

 

勢いよくナーヴギアを被り地獄への合言葉を言ってしまう。

 

【リンクスタート!!!!】

 

「ぉぉー.......すげぇ.......あれかな?」

 

目の前のウィンドウへ向かい中を覗く。案の定アバターとその他諸々の設定だった。

 

「名前は.......どうしよう.......前のゲームの名前のハキ.........えぇーい!!!もうこれでいい!!!次はアバターはランダムでいいや」

 

よし!!!ついにログインだ!!!どうなんのかな?!

 

最初に耳に入ってきたのは阿鼻叫喚だった。耳の鼓膜が敗れるかと思うぐらいの。

「ふざけんな!!」「ここから出せよ!!」「い....いやぁ........」「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

色々な怒りの声が聞こえる中、1人の少女が人混でバランスを崩し転んでしまった。周りはそんな少女には気が付かない。いや、少女じゃなくて女子か?...ってそんなこと考えてる場合じゃねぇ!!!色んな人に踏まれそうな女子の手を握り、強引に立たせ、人混みの外に連れていく。多分女子の目の前にはハラスメント表示が出てるだろう。でもそんなことを気にせず連れていく。あー.......またやっちまった.......直ぐに行動に移すのは悪い癖だ....

 

「あ、ありがとナ」

 

オレンジ色の髪......いや、黄色か。っていうか髭のペイント?可愛いな.......ってそういう事じゃなくてだな......

 

「お、おう、んで、これどうなってんだ?なんでみんなこんなに怒ってるんだよ」

 

思考が読まれている訳でもないのに何故か、恥ずかしくなり強引に話を変える。

 

「え?あの場にいたんじゃないのカ?」

 

「ああ、リアルの予定合わなくてついさっきログインしたばっかだぜ!!」

 

何故か自慢げに言う男に女子は..

 

「...ぷッ...ニシシッ.....面白いやつだナ!」

 

「お、おう、そうか?」

 

いきなり元気になり、驚いた。多分これが本調子...でも無さそうだな。笑顔がひきつってる。返事をすると次は女子が口を開いた。

 

「アルゴ、ダ」

 

「ん?」

 

「オイラの名前だヨ。アルゴ」

 

女性.......もとい、アルゴは自己紹介をした。

 

「俺はハキだ!!!よろしくな!」

 

「よろしくナ!ところでオイラは情報屋なんダ。今回の騒動のこと知りたいならこれはあるのカ?」

 

親指と人差し指の先っぽをくっつけて笑いながら言う。

ま、まじか金あるかな.......窓を開いたらしっかり初期値.......

 

「なんてナ!こんな情報、価値もないヨ。ここの誰かさん以外みんな知ってるんだもんナ〜」

 

「お、おい!なんか意地悪だな?!」

 

「ニシシッ、反応が面白いからだゾ?」

 

それからアルゴは話し始める。ログアウト不可な事。空に巨人みたいなやつが出てきたこと。そして......

 

デスゲームになったこと

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「アルゴ、俺は今から直ぐにもうひとつ先の村に行く。良かったらついてくるか?」

 

色々なことをアルゴに聞いてから俺が聞くと

 

「ン?オネェーさんに惚れたのか?」ニヤリ

「言っとけ、でもなんかここでアルゴのことを見捨てるとって考えると背中がゾワッてすんだ。」

 

フゥ.......やっとからかわれない方法がわかってきたぜ......

 

「ふーん...まぁいいヤ。」

 

「そうか!!じゃぁ!...」

 

「お、オイ、まてよナ、そういう意味じゃ.....」

 

アルゴは何か言ってるが、嬉しがってる俺の耳に届くはずもなく......

 

「良かったぁー!いやぁ、実はな?断られると思ってビビってたんだよー!いやぁー!ほんとに良かった!」

 

そう言うと直ぐにパーティー申請を出して来た。

 

「え、えとナ〜.......んぁぁ!、わかったわかった!よろしくな!ハー坊!」

 

アルゴはニコニコしてみてくるハキに半分ヤケになってOKボタンを押した。

 

「全く.......大変になりそうだナ.....」

 

「なんか言ったか?」

 

「んや?」

 

「よっしゃ!!.......じゃぁ、早速行くか!」

 

いきなり走り出すハキに

 

「お、オイ!待てヨ〜!!!ハー坊!!!」

 

 

 

 

 

 

 

これはハキとアルゴの出会い、そしてそのあとの物語だ。




はい、処女作です。拙いのは大目に見てぇぇー!!!!これからよろしくお願いします!!!

えー......なんで書いたかって言うとですね......アルゴがヒロインのSSがないなと思ってwwwあと、興味あったしwwwで、勢いで書いたからまぁ矛盾?してるとこもあるかもだけど良かったら見てください!!!一応ストックは相当あるんで暫くは投稿安定すると思います(新参者が何言ってるんだ?)


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2話 一旦の別れ

俺らは次の村に来てクエストを受けた。それも報酬が武器だというのだ。アルゴと違って、全て初期装備同然の俺は迷わずこのクエストを受けた.......のだが.....

 

「何やってル!!!蔓の攻撃が来るゾ!避けロ!」

 

.......アルゴがスパルタだァ!!!いやね?言い訳じゃないけど俺は片手剣を使ってるんだけどなんか違和感があるんだよなぁ.......

 

「はぁはぁはぁ.......やっと倒したぁ.......」

 

ストレージを開いて水を出そうとしたその時......見たことの無いアイコンが目に入った。

 

「...これ、何なんだ.....」

 

「オイ!!!ハー坊!今のはなんダ!」

 

「..アルゴ!これ何か知ってるか?!なぁ!」

 

アルゴはあまりの勢いに目を白黒させつつも可視化したウィンドウを覗き込む。

 

「...なんダ?このアイコンハ.......」

 

「出して見ればわかるだろ!!」

 

そう言ってから直ぐにオブジェクト化させる。

 

それから意識は暗転した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はっ.......ここはどこだ?おい!アルゴ!いるか?!」

 

その声は虚しくエコーのような響きを残し消えていった。

 

「おい!!アルゴ!!!居ないのか?!返事してくれ!」

 

例えるならば精神攻撃。途方もない虚無感に耐えられなくなり、涙を流し始める。

 

「ア....ルゴ......」

 

叫びすぎて声が出なくなった。もういいや.......と諦めそうになった時...

 

「はぁ.......正直に言おう。絶望したよ。」

 

目の前にいるのは自分。ただ色がない。いや、ないと言うより見えない。ただそこには自分が居るのが何故かわかった。自分じゃない自分。自分の鏡写しのような存在がそこには.....居る....

 

「それが俺か?武器も使えず、ただ振り回してるだけ。相棒には叶わなくて.......しかもその相棒が女か。いやぁー!滑稽で笑わしてもらったよ!」

 

クックックッと笑いながら近ずいてくる。でも途端に雰囲気が変わる。

 

「でもな、そんなの俺じゃねぇんだよ。分かるよな?情けなくて見てらんねぇんだ。」

 

「で......でも俺には才能が.......」

 

「あ?才能?必要ねぇんだよそんなの。努力だ努力!!!てめぇが守りたいものはなんだ!!努力せずに守る?笑わせんな!スキル?そんなの知ったことか。お前の守りたいものはなんだ?」

 

「.......アルゴ.......」

 

勝手に口から出てきた。自分でも驚くぐらいスラっと

 

「だよなぁ?....だったら守りたいものに守られんのはどう思うよ?」

 

「情けない.......恥ずかしい.......自分で自分が見てられない.......それのせいで失うのは.......怖い.......」

 

感情が爆発しそうだ。でも.......でもこの気持ちは嘘だ..だってそんなはずは無いんだから。

 

「いい目になったな.......お前は資格を手にした。選べ、絶望とともに力を望むか.......このままでまた愛しきものを失うか」

 

またってなんだ?愛しきもの?誰だ?.....いや、自分を偽るのはやめだ。まだ出会ってから数日しかたってない?知るか。俺は好きになっちまったんだ。アルゴのことを。自分は騙せない。例え、他人は騙せたとしても。自分だけは.......自分で着いた嘘は自分が一番わかってる。失う辛さは母親で知っている。父親で知ってる.......守ろう。愛しきものを。世界で1番好きなあの人を........

 

「俺に.......俺にその力をくれ!!もう何も失いたくない!!」

 

「わかった、それには土台作りだ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「出して見ればわかるだろ!!」

 

そう言うとオブジェクト化を選択した。したのだが、ハキが倒れた。目を開けながら。なんの抵抗もなく。

 

「ハー坊?.......おイ?冗談やめろヨ、なァ!ハー坊!!!ハキ!!!」

 

何度呼びかけても返事がない。目の輝きは失われ、微動打にしない。現実の体が死んだのか?でもまだ数日だ.......でも.......というかなんで前触れもなく倒れた?ナーヴギアの誤作動か?でもそれに限っては.....

 

悪い考えが次々と浮かんでくる。アルゴの心を押し潰そうと。

 

「なん.......で.......守ってくれるって言ったじゃんカ!!!」

 

涙を流しながらハキを背負いホームへと帰っていく。何度も転びそうになりながらも帰宅した。

ハキの部屋は入れないので自分の部屋のベットにハキを寝かせる。

 

「ハー坊.......戻ってくるよナ?オネーサン寂しいぞ.....冗談なら言ってクレ!今なら怒んないゾ?」

 

優しく言ってみても目を覚ます気配がない。

 

「なァ、きつくしたのも謝るかラ!ねェ!」

 

「なんだよ、泣いてんのか?」ということも無くただただ返事が帰ってこない時間が過ぎていくだけ。

 

「ッ....ハー坊.......ハーくん.......戻って.......来てよ.......」

 

ベットの端でアルゴは泣き続けた

 

 




うん....書きたいことが先走って急展開に......自重します......さて、どうでしょうかwwwまぁ、つまんなかったらごめんなさいだけどナ!!!(アルゴ風に)ってここまで、まぁストック切れるまでは一日に1話とかの更新になるので見てね!!

それじゃ!


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3話 修行

「土台作り?」

 

「まぁ.......資格得たって言ってもその力は体に結構負担かけるからな、その力に耐えれるように、って感じ。」

 

「なぁ.......その力ってなんだ?後、性格変わってないか?」

 

「.......記憶..... 記憶だよ。前世の。後、作ってたに決まってるだろ?それともあれが良いか?」

 

「いや、そのままでいい。」

 

真面目な顔で言うもんだから笑い飛ばす訳にも行かず.......

 

「えぇ...と、、、俺の前世はなんだったんだ?」

 

「ん?それは.......受け継いだ時に知るからいいだろ。」

 

胡散臭いが.......自分だからだろうか?なんか嘘ついているような感じはしない。しかも、懐かしい.......客観的にじゃない.......自分のものだった気がする。自分は.......俺は何者なんだ?

 

「始めるか。」

 

自分じゃない自分は剣を構える。俺は自分の腰にさげてる剣を抜こうとした。が上手く抜けない。真っ直ぐ引っ張ってるのに抜けないのだ。

 

「な、なんで抜けない!!」

 

「はぁ.......よく見ろよ。直剣じゃなくて刀だろうが」

 

耳を疑いながらも見てみた。そしたら俺の初期装備...ではなく刀身の曲がった刀が出てきた。

 

「そいつは持ち主にあった姿に変わんだ。ほら、あれだαテスター特典ってやつだ。」

 

「そうなのか.......ってえぇ?!メッチャ強いじゃん!」

 

「そんなんいいからかかってこいよ」

 

テンション上がってるとこにそう言われるとさすがにイラッとする。

 

「.......シッ!!!」

 

「おら!!!もっと早く!!おせぇ!!」

 

そう言うと自分じゃない自分は俺の背中に目に捉えられないほどの速さで一太刀入れる。

 

「グアッ.......なんでそんなに強いんだ?.......自分のはずだろ?.......」

 

「はぁ.......まだ気が付かねぇのかよ。俺は前世のお前だよ。」

 

心底めんどくさそうに言う。

 

「ほらかかってこいよ。こっちではあっちの時間の2倍ぐらいあんだ。要はこっちで2日なにかしてても、あっちでは1日しかたってないんだ。時間はある。俺に一太刀入れろ。器としてはそれで十分だろ」

 

地獄が始まった。簡単に言うとアルゴよりスパルタだ。うん、これは剣を振る暇もない。これは気が遠くなるだろう。だがやり遂げる。絶対にあの娘を守れるようになるために。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「お!アーちゃんじゃないカ!」

 

「あ、アルゴさん、ご無沙汰してます。ハキさんは.......まだ気が付かないんですか.......」

 

アルゴの顔が歪んだのを見て察したアスナは務めて明るく接した。

 

「あ、最近あっちの方にラーメンもどきが出る店を発見したんです!!行ってみませんか?」

 

「アーちゃんは相変わらず食いしん坊だナァ?ニシシッ」

 

苦笑とも取れる笑いにアスナも微笑みながら案内をする。

 

「そう言えばアーちゃん、恋人とは上手くいってるのカ?」

 

「だ、だだ.......誰のことですか?!」

 

「ニシシッ.......その反応.......いるのカ.......あ、もしかしてキー坊カ?」ニヤリ

 

しっかりとカマに引っかかったアスナは必死に取り繕おうとする。身振り手振りで説得を試みようとするが....

 

「ち、違っ、、、違いますよ!!!断じて違います!ぜ、絶対に!!!」

 

「アハハッ.......思いどうり過ぎて笑いが止まらないゼ....アハハ.......ありがとナ、アーちゃん」

 

「え?なんのことです?」

 

「んヤ?なんでもないヨ〜」

 

 

 

そんなこんながあってアルゴはホームに帰ってきた。相変わらずホームに入った途端に気分は暗くなる。最近わかってきた。オイラ.......いや、私はハキのことが好きなんだと.......でもそのハキは意識がないまま。こっちでは何も出来ない歯がゆさに耐えられなくなり、なるべく一緒にいる時間が増えた。情報は集められなくなり、収入はあまりない。簡素な部屋に色々と家具を詰め込みあまりスペースはないしハキはベットを使ってるため、アルゴの寝るところは同じベットになる。

 

いつもどうり、ハキはベットの上で寝っ転がっていた。

 

「いつもの事とはいえ、は、恥ずかしいナ....////」

 

そそくさとベットの中に入り寝ようとした。

 

「ねぇ?ハキ?.......もう1年だヨ?早く戻ってきてクレヨ.......お願いだから.......ねェ....」

 

涙をこらえるためにハキにしがみつく。その温もりを感じながらアルゴは今日も眠りについた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はぁはぁはぁ.......やったぞ.......2年かかった.......やっとだ.....」

 

「フゥ.......ついにやったな、おめでとう。」

 

前世の俺は手を差し出してきた。俺はそれを掴んで起き上がる。

 

「あっちでは1年たってるんだっけ?アルゴは無事なのかな?はぁはぁ.....」

 

「ああ、問題ない。別の人が守ってたみたいだな」

 

前世の俺は安心させようとしたのかもしれないが、今の俺からしたら逆効果だった。

 

「ナッ?!誰だ?!そいつ!もしかして.......アルゴの.......うわぁぁー!!!過去の俺!早く返してくれ!!!あの世界に返してくれぇー!!」

 

「お、落ち着け!とりあえず力を.......」

 

「そんなの知るか!!いてもたってもいられん!!」

 

これが全く聞こえてない.......一切聞こえてない。ので手刀を打ち込んだ......はずだった。というのも受け止めたのだ。死角から襲ってくる気配を頼りに。

 

「成長したな.......あーぁ...これでお別れか.........拓、お前は守りきれよ?絶対にだ」

 

そう言うと過去の俺は光となって俺の中に吸い込まて行った。多分これが力の継承なんだろう。

 

ズキッ.......

 

「ッ.......頭いてぇ.......これは..過去の俺の記憶か?.......」

 

フィードバックしたのは血だらけの女の子。アルゴではない。だが昔、愛おしく思っていた子.......

 

『ぅぁ.......うっ....うわぁぁー!!やめろ!!辞めてくれ!!俺から何も奪わないでくれ!!お願いだ!!!』

 

容赦なく流れていく血の海。

 

『うわぁぁー!!やめろぉぉー!!!!やめてくれ!!!もういいだろ!!俺から奪わないでくれ!!!』

 

俺の頭の中に入ってきたのは悲しい物語と才も無いのに剣で戦い抜いた男の物語。

 

「そうか.......そうだったのか.......過去の俺.......いや、虚白、お前は.......わかった、守り抜く絶対にだ。だから安心して眠れ.......」

 

右目だけから涙を流しながら、決意を新たにする。

 

血まみれの少女.......アルゴに似た少女を見据えながら出口へと向かう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はっ.......戻ってきたのか?」

 

久しい風と色。景色何もかも考え深い。そして甘い匂い..........ん?甘い匂い?ギッギギィィ.......という音がなりそうなほど恐る恐る右横に顔を向ける。何もなかった。

 

「フゥ.....」

 

安心したのもつかの間。起き上がろうとすると体に何かがしがみついているような感覚があった。うん?なんだ?これ.......

 

「え?」

 

黄色い何かが見えた。アルゴだ.......ってぇぇぇぇー?!?!待って?!え?!アルゴさん積極的ぃー!!.......じゃなくてだな!!!え?どういう状況?!ってか離してくれないんだが?!

 

試行錯誤していると...

 

「んんー.......ハー坊.......」

 

アルゴの目は涙で濡れていた。抵抗する気も無くなり、一言だけ声をかけた

 

「ゴメンな、ただいま、アルゴ」




終わりが.......ぐだったぁー............................いやね?俺はこんなつもりじゃなかった。うん。でもね、こうなっちゃった。うん。まぁ、最後まで見てくれてありがとう!


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4話 再開

よし久しぶりだから2話投稿しようかな.......と見てみたらなんと!8人もお気に入りに入れてくれている.......こんな駄作に付き合ってくれてありがとう!!!そしてこれからも頑張ります!!!(笑)
ということで本編どうぞ!


朝、目が覚める。いつの間にか寝てたようだ。目元に涙の感覚が残っている。昨日、しがみついたことを思い出すだけで顔が赤くなる。さてとベットから出て家事をやるか。

 

「ふぁぁぁ.......」

 

「起きたか、アルゴ」

 

耳を疑った。聞こえないはずの声が聞こえた。いや、もう聞けないと思っていた愛しき人の声が聞こえたのだ。急いで振り向く。そこにはハキが笑顔で体を起こし座っていた。

 

「.......ハキ?......」

 

「おう!ハキだ!」

 

おちゃらけて返事をされるのも久しぶりだ。全てのことがどうでも良くなった。ハキが起きた.......ついに起きた.......そう考えると涙が溢れ出て来て目の前が上手く見えなくなった。

 

「..ッ...ハキ.......ハキ!!!!どこいってたんダ!ずっと心配してたんだゾ?!もう...もう一生気が付かないのかって....このバカ!バカ!バカ!」

 

感情が一気に膨れ上がってくる。泣きながら...力なくハキのお腹を殴りながら.......今までの気持ちをぶつける。

 

「.......アルゴ.......ただいま.......ゴメンな、心配させて」

 

「.......ハキ.......おかえり.......もう.......次はないゾ?」

 

そう言うとアルゴは抱きついてきた。ん?だき?え?えぇー?!アルゴはどうなっちゃったんだ?!ん?!ってそこじゃねぇー!!

 

「あの.......アルゴさん?」

 

「.......なんダ?...」

 

多分それぐらい寂しい思いをさせたのだろう。体が小刻みに震えている。

 

「.......いや、なんでもない.......」

 

そう言ってから抱き締め返す。正直すごい勇気がいるんだが?っていうか俺って正解だったのか?ビクッと体をふるわせたが慣れてきたのか、次第に体を預けて来る。フゥ.......どうやら正解だったらしい。っていうか、か、可愛い.......いや、天使か?!ってそうじゃない.......どんだけ俺は脱線するんだ.....

 

「アルゴ.......俺は絶対にお前を守る.......絶対だ.......」

 

新たな決意をする。あきらめそうになったあの頃とは違う。もうこの手は離さない。さらに強く抱きしめる。

 

「.......うん.......ありがとネ、ハーくん......」

 

「おう.......」

 

「.......ところでハーくん、オネーサンを抱きしめるのはセクハラだゾ?」

 

「あ!おま、ズリぃ!俺からもやり返しするからな!」

 

「へぇ〜何すんだろうナ?ニシシッ」

 

そう入ってもまだ心の準備が.......ま、まずは深呼吸して...それから..も、もう1回しとくか?ど、どうしようか.......ああー!!!混乱してきた!

 

アルゴが不安げに見つめてくる

 

ぬァァー!!そんなめで俺を見ないでくれ!!さらに言いずらくなる!だァァー!!!

 

「..............だ」

 

「ん?何だっテ?」

 

「アルゴ、お前のことが好きだ!!!」

 

「ふえぇ?」

 

いきなりのことで目を白黒させる。言葉をあたまのなかでもう1回再生したのだろう。みるみるうちに顔が赤くなっていく。

 

「お、オイラ.......いや、私もす、好き.......です.....///」

 

え?今、私って?え?キャラ作ってたの?!ん?でもいや、作ってるのは(私)の方か......えぇーい!男だろ!俺!根性見せろ!

 

「つ、付き合ってくれ!!!」

 

「え、あ.......んと.......よ、喜んで.......///」

 

アルゴは恥ずかしそうにして、それから俺が見た中で一番の笑顔を見せた。

 

「ところでハーくんって?ハー坊じゃないのか?」

 

悪戯っぽく言ってやった。すると

 

「だめカ?」

 

上目遣いはずるいです。アルゴさん 可愛すぎるだろ.....

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「えぇーと.......ハキくんだったかしら、私は血盟騎士団の副団長のアスナです」

 

「ど、ども」

 

アルゴに連れられてここまで来たんだけど...誰?いわゆる攻略組ってやつ?

 

「ハキは1層からボス攻略でてないし知らないのも無理ないナ」

 

「そうなのか、あ、次から俺はボス攻略出るぞ!!!」

 

「ハキ君はダメ!レベルが足りない!」

 

そうだ、ずっと体は寝たっきりだったのでレベルも上がってなく、15レベだったのは記憶に新しい。だが...

 

「安全マージンは階層数プラス10レベだろ?俺の今のレベルは60レベル、55層まで進んでるからあと5レベか」

 

「ハーくん?!いつの間にかそんなにレベル上げしたんダ?!」

 

「いや、情報収集の合間にアリの巣もぐったりして.......」

 

正直に話す。やっぱり無茶なことしてた自覚はあるだけにこのあとが怖いが、隠すとあとが怖い。

 

「ハーくん.......なんでそんな無茶したんダ!!!またオイラの前からいなくなるのカ?!もうやめテ!!!」

 

「わ、分かったよ.......ゴメンな、アルゴ」

 

アルゴが泣きそうになり、頭をポンポンと優しく叩く。

 

「むぅ.......帰ったら話し合いだゾ。」

 

「わーたよ(苦笑)」

 

途端に笑顔になる。一連のやり取りを見ていたアスナは複雑な顔で...

 

「なんて言うか.......仲良いのね.......アルゴさんがそんな反応するなんて.......」

 

「そりゃ付きあっ...ムグッ」

 

「あー!!あー!!!!!そ、そうダ!!!アーちゃん!!!あそこ行こうヨ!!!」

 

アルゴは俺の口を押え誤魔化すように強引に話を変えた。...ってか、無理あるだろそれは.......

 

「ふふふ.......いいわよ、行こう!」

 

その返事を聞くとアルゴはあからさまにほっとした顔になり、俺の手を引っ張っていく。いや、嬉しいんだけどな?隠した意味ないぞ?な?ほら、アスナも微笑ましそうに見てるし.......これ言ったらアルゴに意地悪されそうだから言わんとこ.......

 

「お、おいアルゴ待てって」

 

こうして俺たちは普通の..でも無いが生活を取り戻した。




キャラ崩壊............................作り置きみたらキャラ崩壊も甚だしい.......ごめんなさぁいぃぃ................


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5話 成長

俺たちはあれから色々と話しあった。今後のこと、それからボス戦のこと。

 

「ハーくんはまだ実践が足りないナ。いくらレベル上げたって戦い方がなってなかったら一緒だヨ?」

 

ニヤッと笑いながらしごきかナ?と続ける。

 

「ああ〜多分大丈夫だぞ?とりあえず行こう!」

 

「お、オイ!!!どこ行くんだヨ!!!」

 

俺はアルゴの手を引っ張りながら目的地まで走っていく。アルゴは顔を真っ赤にしてハキは一心不乱に。目的がクエストって言うのでなければバカップルと言われても文句は言えないだろう。現に周りの反応は....

 

「リア充め」「爆発しろ!!!むしろ爆裂しろぉぉーー!!!」

 

などなど、アルゴは美少女なのだ、こんなものを見せられたら非リア達は激怒も必然だろう。2人はその様子に気が付かず、周りにピンク色の空気を振りまきながら走り去っていく。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「このクエストって.......中ボスクラスじゃないカ!!!無理だヨ!!!」

 

1つ目の巨体が棍棒を振り下ろしてくる。

 

「んー.......この程度か?.......遅いなぁ.....」

 

「何言ってんダ!!!こいつ強いゾ!!!」

 

アルゴから見たら速度はそこそこだが力が強すぎてパリーも出来ないと思う。これは逃げるしかない。

 

ークォォォ!!!!!ー

 

1つ目の巨体がハキを吹き飛ばした。地面がえぐれる。地面が悲鳴をあげてクレーターを作った。

 

「ハーくん!!!」

 

途端に足の力が抜ける。全てのことがどうでも良くなった。もう逃げれないし勝てない.......さっきの一撃でハキの体力はイエローまで落ちただろう.......もうダメだ.......

 

1つ目の巨体が無常にも動けなくなったアルゴに棍棒を振り下ろしてくる。アルゴは来たる衝撃を予想して目をつぶった.......

 

「ゴメン.......ハーくん.....」

 

ガキッ!!!!

 

金属と木製の何かが当たった音がした。恐る恐るアルゴは目を開ける。黒い剣を持ったハキがしっかりと棍棒を受け止めたのだ。

 

片手で持っているだけで。

 

巨体が繰り出す連撃に怯まず次々といなしていく。それはまるで舞のような無駄のない流れるような動きで.......目を奪われた。あの剛撃をただただ淡々と捌いていく。最後に大きく弾いて隙を作る。その間にアルゴの元に戻ってきた。

 

「アルゴ!大丈夫か?!」

 

「え....あ、も、もちろんダ!」

 

アルゴも短剣を構える。ハキはその前に身を挟み、

 

「アルゴ見ててくれ。お前を守れるって証明させてくれ...」

 

「えー?オネーサンが信用出来ないのカ?」

 

わざとからかうように言ってやる。

 

「ダメだ!!.......ごめん.......」

 

語気が強くなったことに謝った。アルゴはと言うと、さっきのハキが見せた表情が頭から離れなくなっていた。辛そうな顔だった。どこか地獄を見てきたような.......

全てを任せようと思った。そう思わせるぐらいの顔だった。

 

 

「シッ!!!うぉらァァー!!!」

 

ークォォォ!!!!!ー

 

徐々にボスのHPが削れていき、もう少しで決着がつきそうだ.......祈るしかない.......そう思い、アルゴは呟いた。

 

「頑張れ、ハーくん」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アルゴが棍棒をくらいそうになっている.......目の前で....また失う...うしな......ってたまるかァァァー!!!!

体が動かない?甘ったれんな!あいつとの戦いはもっときつかった!動かないはずがない!!!なんのために俺は2年も修行をした?!なんのために剣の使い方を覚えた?!誓ったはずだ.......2度と失わないと.......

 

心の中の炎が燃え盛る.......システムを超えて.......全てを支配下に.......これが受け継いだもの...物語だ.....

 

うおおおおぉぉぉぉおおー!!!!!

 

心の中で叫ぶ。システムを支配下に置き自分のストレージを開かずに武器を実体化させる。

 

ー(黒い剣)ー

 

αテスター特典だ.......効果はどんな武器にもなる。望んだ武器種になる。

 

時間が惜しい.......時間がゆっくりと流れる。でも時間が無い.......アルゴには棍棒が迫ってきている。システムの支配によってウィンドウ操作をせずに刀から細剣に変化させる。

 

「...ッ!!!!!」

 

無音の気合いを入れ、地面を蹴る。記憶とともに受け継いだ。俊歩を使って.......

無理やりアルゴと棍棒の間に体をねじ込む。

 

お、重いッ!!!!!

 

咄嗟に狙いをパリィから受け流しに変え、刀身を片手直剣に変える。片手剣の上に棍棒を滑らせる。

 

『よしっ!!!よくやった!!!拓!』

 

「なっ?!虚白?!」

 

頭の中に直接響いてきた。数日ぶりの声。酷く嬉しい....

 

『いやね?その剣出してくれんと喋れんねぇんだよ。まぁ、俺がサポートするから、あくまでサポートだぞ?間違えんなよ?』

 

「おう!!!」

 

嬉しくなり、体をさらに早くした。

 

『無駄が多い!!!右だ!!!やるじゃねぇか。俺いらねぇんじゃねぇか?』

 

「ほんとに思ってんなら出てこないよな?」

 

悪戯っぽく言ってやる。アルゴの小悪魔が移ったかも.......ってそんなことはいい!!!

 

「2人で倒そうぜ」

 

ぼそっと言ってやる。すると剣から嬉しそうな雰囲気が流れてきた。うん...何言ってるかわからんがそんな感じがするんだ....

 

『ったく、しょうがねぇやつだな.......拓は』

 

かっこつけて言ってくる。言ってくるのだが.......気になってしょうがない.......

 

「ぷッ.....全然上手くないぞ?そのダジャレ...ぶっ.....」

 

『う、うるせ!!』

 

今度は恥ずかしそうな雰囲気が流れてきた。

 

30分後見事打ち勝ってみせたのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「フゥ.......大変だったな.......無事か?アルゴ!」

 

無言でコクコクと頷くアルゴの頭を撫でながら考えたのは.......

 

「マジで可愛い....」

 

と思った.......

 

「ふえぇ?か、可愛いなんテ、オネーサンに行っていいのかナー?」

 

なんて強がっているが、顔赤いし取り繕ってるのはバレバレだ.......っていうか、え?声にでてた?心の中にだけと思ってたのに声出てた?!恥ずかしぃぃぃー!!!やばい顔から火が出そう....

 

2人は顔を赤くしてしばらく俯いていた.......

 

すると疲労がピークになりハキは気絶した。

 

「は、ハーくん?!」

 

体制が体制なのでアルゴの方に倒れ込んでしまった。アルゴとハキの体がもつれ合いアルゴは倒れ込んでしまう。

 

どさッ

 

「ハーくん?!ネェ!ハーくん!!!」

 

呼びかけているとハキの刀が光とともに形を変える。人の形に

 

「その、たく.......じゃなかったな、ハキは大丈夫だ。疲労で気絶してるだけだ」

 

アルゴは驚きで言葉が出ない、何せ剣が人になったのだ。しかもハキと瓜二つの。

 

「ハキ.......なの、カ?」

 

「ん?ああー.......」

 

返答に困った.......どう答えればいいだろうか.....前世の俺?それじゃ伝わらないだろう....

 

「んー.......2年間.......いや、こっちじゃ1年間か。こっちの世界だとこいつ眠ってただろ?」

 

そう言いながら気絶したハキを見すえる。

 

「あ、ああ、それと関係あるのカ?」

 

「ん、まぁな、アア.......調子狂うな...」

 

そう言って頭をかきながら面倒くさそうに

 

「俺はこいつのもう一人の自分だ。前世のな。」

 

ほら、キョトンとしてやがる.......

 

「目が覚めなかったのは俺と剣の使い方を学んでいたからだ。こいつの剣は見るに絶えなかった。」

 

呆れたように、お前もそう思うだろ?と続ける

 

「俺は......」

 

 

不安そうに、でもこれだけは誇りを持って.....

 

「異世界の過去の人間だ.....」




うん、意味深な終わり方になった。けど、この後、真実が明らかに!!!ってことで次話もよろしく!!!


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6話 ハキの現状

「俺は異世界の過去の人間だ」

 

何言ってるんだ?このハキ.......いや、この人。異世界?ほかのゲームの事か?いや、.......嘘の言っていないハキの顔をしている.......

 

「ハキ.......なのカ?違うのカ?」

 

同じ問をしてしまった.......いや、知りたい.......この人はどういう存在なのか.......別人では無い気がする.......と言うかなんで剣から?ハキが吹き飛ばされた後に見た時にはあの黒い剣.......この人に変わっていた。.......

 

「そうであると言えるし、違うとも言える。これから説明するから聞いてくれ、那稀」

 

「えぇーと.......那稀って誰ダ?」

 

「ああー.....すまん、忘れてくれ。いや、これから話すから待ってくれ....」

 

ハキじゃないハキは罰が悪そうに頭をかきながら何か決意を固めたような表情で言った。

 

「虚白だ。」

 

「え?」

 

「虚白だ、俺の名前。」

 

「虚白.......カ.......」

 

ズキッ.......

 

何かが頭の中で暴れている.......なんだこれは.......痛い.......頭が.......痛い.....何かが奥から出てくる...

 

「し、しつ...もん.......答えてクレ」

 

「ああ、まずな俺は異世界って言っても多分想像しているものとは違うと思う。魔法もないしましてやスキルなんてものは存在の概念すらなかった。今の時代で言うところのなんて言ったっけか.......そうだ、パラレルワールドってやつだな。」

 

「パラレルワールド.......」

 

無言で頷くハキ、もとい、虚白。

 

「こっちにない存在といえば神.......だな。あそこには絶対なる神がいた。」

 

辛そうなそして全てを憎むような顔で言い放った。それはとても怖くて...でも可愛そうで.......気がつけば虚白の頭を撫でていた。

 

「オネーサンがついてル.......だからその泣きそうな顔直せよナ?」

 

ビックリした顔を見せながらも虚白は言い放った

 

「ったく、ほんとに調子狂うな。」

 

表面はウザそうにしててもアルゴには分かる。照れてることが。ハキと似てるのだ。仕草が、行動が、根が。だから分かる。虚白が言ってることが嘘ではないことを.......

 

「俺は魂を追って神に大事なものを代償にこの世界に連れてきてもらった。」

 

「大事なものってなんダ?」

 

「体だよ。俺は肉体を持たない精神体。宿るものがなければ消滅する。らしい......」

 

「魂.......誰なんダ?その魂って」

 

「........」

 

虚白が口ごもった。言いたいことはすぐ言いそうな性格してるのに。ああ.......聞いちゃダメな事だったのか......

 

「多分だが.......那....いや、アルゴの母親、だと思う。」

 

「ぇ........」

 

聞き間違いかな?オイラの母親?魂が?

 

「な、なんでそう思うんダ?........」

 

「俺は精神体になったことで他人の精神を色で見ることができる。那稀の魂を追っている時に見たのにそっくりなんだ.......だけど何かが混ざってる....知らない色が混ざってる。だからそう思った。」

 

「そ、そんなの信じられるわけないだロ!!!」

 

心の中から出てきた言葉。否、無意識に出た言葉。ああ、そうか、やっとわかった。虚白の話を信じれるのではなかった。信じたかったのだ。ハーくんに似てるから.......でも明らかに違う.......自分に素直になる。すると見えてきた。ハキとは明らかに違うところを。

 

「.......だろうな...」

 

虚白は苦笑した。悲しそうな顔で。

 

「現実離れしすぎてル.......何が何だか分からないんダ。」

 

「ああ、だろうな」

 

「ゴメン.......少しずつ、信じれるように頑張るかラ....」

 

謝った。自分のせいで..たとえ信じられないようなことを言われたからといえ、ホントのことを言ってたとしてギズつけたことは事実なのだから......

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ううーん.......」

 

俺は気絶していたようだ....っていうか.......頭の下が柔らかい.......

 

「えぇーと.......どういう状況?アルゴの顔が至近距離にあって.......頭の後ろが柔らかくて幸せ状態.....」

 

「あ、起きたカ、ハーくん」

 

いや.......えぇー?!いや、ちょっ.......あ、あ、あ、アルゴさん?!だ、大胆...じゃなくてだな!これっていわゆる.......

 

「膝枕ってやつだな」

 

ああーそうかぁ.......ってえぇ?!なんか聞こえてきたぞ?.......え?.......

 

「虚白?!なんでここにいんだよ?!ってちょっと待て.......俺とアルゴの時間をじゃまするなぁー!!!」

 

「いきなりなんだよ?!後、その体勢で言っても説得力ねぇよ!」

 

「ああ?!離れたらこの幸せな感覚がなくなるだろうが!!!」

 

当のアルゴは顔を真っ赤にして耐えてる。でも、それに気がつくはずもなく......

 

「知らねぇよ!!!」

 

「ぷッ.......アハハ!!!オマエら、仲いいんだナ!」

 

「「どこがだ!!!!!」」

 

「アハハハハハハハ!!!!!」

 

アルゴの笑い声がボス部屋に響き渡った。それから5分間ぐらい笑い声が耐えなかったという。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「あー.......時間らしいな、ってことで俺は少し眠るわ」

 

そう言って虚白は剣の姿に戻った。わざわざ俺の腰に吊られてる状態で。ん?ツンデレか?男のツンデレ需要ないぞ?虚白さんよ。

 

『うるせ』

 

「うおっ驚かすなよ。起きてんのかよ」

 

『寝ようとしてたらお前が悪口言ってたんだろうが』

 

「あー.......ツンデレ?」

 

『ぶっ殺すぞ?』

 

いや、こぇぇよ。ってかこんなに可愛げのないツンデレ見たことないぞ?いや、モテたことないから知らんけど。これはツンデレなのか?いや、ツンデレか.......でもツンデレって......ツンデレ.......ツンデレ...

 

『だぁぁー!!!!寝ようとしてんのにうるせぇー!!!!ツンデレじゃねぇって言ってんじゃねぇか?!それとも何か?!それで押し通すつもりか?!』

 

ぇ.......え、えぇーと.......テヘペロ!

 

『おぇー.......キモっ.....』

 

「な、何おう!!!確かに自分でも少しはきもいと思ったが!!.......いや、キモイな.......ん?!俺、黒歴史作った?!」

 

心の中で会話する俺は現にアルゴの膝枕から1ミリも動いてない。そこで強引にも意識を現実世界に戻す。

 

『あ?!ま、待てよ!!』

 

虚白が何か言ってるが気にしない、気にしない

 

『何が気にし.......だ....ぉ.......』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

嗚呼.......最高かよ.......何?ここって天国?ヴァルハラ?ここから動きたくねぇ.......一生このままがいい.......

 

「天に召されてもいい.......」

 

「ふぇ?!や、やめロ!!!縁起の悪いこと言うなヨ!!!」

 

アルゴが焦ったように言ってくるのだが.......それはそれで可愛すぎる。

 

「だってな?アルゴの膝枕って凄い幸せなんだよなぁ.......」

 

「な?!.....そ、そうカ?な、ならここだったらゆっくり.......出来ない....だロ?続きは家で.......ナ?」

 

か、可愛いぃぃぃぃー!!!え?!続きっていいの?!え?!

 

「あっ!!!!!続きって言うのはそういう意味じゃないゾ?!な、なぁ?!聞いてるのカ?!」

 

聞こえなーい聞こえなーい!!!しかもそういう意味ってなんだ?俺知らなーい知らなーい!!!

 

「そうと決まればいざレッツゴー!!ひゃっふぅー!!!」

 

アルゴを抱っこして全力疾走。移転結晶をふんだんに使い早く帰ることに専念する。ふっふっふっ.......モンスターにエンカウントされても知ったことかァァ!!!全部ふりきってやる!!!!!俺は変態じゃない!!!断じて変態ではない!!!はーはっはっはっ!!!

 

 

アルゴの軽率な言葉で一人の人間が壊れた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アルゴはもう既に説得を諦めていた。説得できずに自分たちの部屋に着いてしまったからだ。ああー.....覚悟を決めろ。そう念じながら部屋の中に入る。

 

「よしっ!!!アルゴ!」

 

き、来た.......覚悟はしてたけどこんなはやくとは思っても.......

 

「早く膝枕してくれ!!!」

 

せめて順序だけは!!!...って、え?ぇぇー?!待って?!ちょっと待って?!はぁ.......なんか悩んでたのが馬鹿みたいだナ.......

 

「.......はいヨ.......」

 

安心した.......そう安心したはずなのだ.......だが奥から違う感情が湧き出てくる。最初はハキの幸せそうな顔を見て堪えていた。だが次第にそのダムが決壊しそうになる。本音が漏れ出てしまった.....

 

「ナァ.......ハーくんは男子だよナ?....」

 

「ん?何言ってんだよ.......当たり前だろ?」

 

「その..........とかにきょ.......のカ?」

 

「ん?なんだって?よく聞こえない。」

 

顔が熱い.......今にも爆発しそうだ.......もう既にダムは決壊している。もう手遅れだ。

 

「その.......ハーくんは.......そのえ.....エッチなことに興味はないのカ?」

 

い、言っちゃった!!!痴女みたいになっちゃったよ!!いや、待て?!まだ間に合う!!!ああー!!!!やっぱ間に合わない!!!ってかオイラは何言ってるんだ?!ああー!!!!恥ずかしい!!!

 

ハキは真剣に考えるような素振りをしたあと.......

 

「ないっって言ったら嘘になる、、、、な」

 

アルゴの中で何かが切れた。恥ずかしくて混乱してたのに一瞬にして違う感覚が体を支配する。

 

「それは、オイラが魅力的じゃないのカ?」

 

「は?いや、待てよ!!そうじゃない!」

 

「だってそうだロ?!オイラはあんな事言ったんだ!!!間違ったとしても!!!言い方を間違ったとしてもダ!!!なのニ!.......なのニ...」

 

....違う、こんなことを言いたいんじゃない.......違うんだ.......ハーくんが嫌いなわけじゃない.......むしろ好きだ.......傷つけたくない.......傷つけたいわけじゃない.......違う.......違うんだ......

 

アルゴは混乱する心の中で思った。

 

「あんなに!!!あんなに嬉しそうにしテテ!!!間違ったとしても恥ずかしいだけで嫌じゃないからって覚悟も決めてたんダ!!!。なのニ!!なのニ!!!.....」

 

「アルゴ.......」

 

「.......」

 

ダムの中を全てだしきった.......

 

「俺はアルゴのことを傷つけたくなかったんだ.......」

 

ハキはポツポツと語り出す。

 

「俺は.......この世界ではすべきじゃないと思う.......そういうのは.......俺の勝手だけど.......生き残って、リアルでも付き合って、関係を深めて、.......結婚して.......それからだと思ったんだ」

 

最後の方は恥ずかしそうにしてハキは言いきった.......それはどんなに勇気がいるだろう?あんな剣幕で愛する人に怒鳴られて、それに自分の意見を言う。オイラには無理だ.......

でも.......そうだったよな.......ハーくんはそういうやつだった.......

 

「.......ゴメン.......言いすぎタ...」

 

「んや?意見を言うのはいい事だしな!俺は逆に言ってくれて嬉しかったぜ?こういうのも必要だと思う。」

 

ああ、そうか、やっとわかった。オイラは...私は......ハキのこう言う所に惚れたのか...

 

「.......そうだナ.......大好きダ.......ハーくん...」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あれから一日がたった。関係はすっかり普段どうりだ。

 

「ハーくん!!!そこの皿とってくレ!!」

 

「はいよ、よっと......」

 

「ハーくん、よくとどいたナ」

 

意地悪な顔で言ってくる。でも、もう昔の俺じゃない!

 

「アルゴは届かなかったのか?」

 

「っな?!.......ずるいゾ.......」

 

あてが外れたと言うように顔を顰めて

 

「はっはっはっ!!!もう昔の俺じゃないんだよ!アル!」

 

「アーア...からかい概がないナ〜.......ん?今なんて?」

 

「ああー!アルゴだからアルだ!ダメか?」

 

「い、いや、いいと思うゾ....」

 

顔を赤くしてる。可愛いなぁ.....

 

「ほうか!」

 

「こら!ハーくん!!!口にものが入ったまま喋るナ!」

 

でも.......と続けて

 

「ぷッ.......ハーくんのネーミングセンス.......ぷッ.......アハハ!!!」

 

「う、うるせ!」

 

俺の前だけで見せる屈託のない笑い。心を許してくれていると思う。それが嬉しくて.......そして壊したくない.......

 

「んー.......でもアルはないなぁ.......何にしよう.....」

 

最後の最後で優柔不断なハキだった。




はい!!!調子乗って長編にした挙句、調子乗ってあとがきも書こうと思って書いてるだっちゃんです。まぁ、前から書いてはいたんだけどね、はい......
まぁ、アルゴがかわいぃぃぃぃー!!ということで少々暴走してしまいました!!!ってことで誤字激しいかも!そしてなんか凄い駄文!!!ってことで暖かい目で見てください!!!。調子乗りました!


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7話 黒の剣士

お待たせしました!!!遂に原作主人公登場!!!(遅せぇよ)
すいません!!!!ってことで今回もお楽しみください!!!


「ア゙ア゙ー.......疲れたぁ.....」

 

なんの意味もないのにつぶやく。

 

「ハーくん、おじいちゃんっぽいゾ?ニシシ.....」

 

アルゴは普段道理にからかってくるし.......まぁ、いいか。こういうアルゴも可愛いしなぁ.......おっと、なんだっけか.......何か言いたかったような.......

 

「アーちゃん、17は立派なじいちゃんだ、多分.......」

 

「なんだヨ、それ。っていうか17歳だったのカ?」

 

驚いたように言ってくる。ん?あれ?言ってなかったっけ?あぁー.......ここじゃリアルのことは厳禁だもんな。

 

「ああー、言ってなかったか?ここで1年、お陰様で17歳になりました。」

 

そうおちゃらけで言ってやると.......

 

え?なんか、アーちゃん震えてる?え?!怒ってるの?!待って?!どこに怒る要素が?!

 

あたふたしていると、

 

「ハーくん.......なんで言ってくれなかったんダ!!!」

 

「え?!なんで怒ってるの?!」

 

あ.......しまった.......声に出ちゃった.......アーちゃん、怒りそうだなぁ.....

 

「そうじゃない!!!同い歳なんだヨ!!!」

 

途端にパァと顔を輝かせるアルゴは普段では考えられないほどウキウキしている。

 

「へぇー.......ん?!え?!マジか?」

 

最後は冷静に質問する。無言で首を縦に振るアルゴ

 

いや、奇跡かよってかマジかよ.......

 

「マジか......」

 

すると不安そうに顔を覗き込んでくる。可愛いかよ.......いや、可愛いな

 

「ああー!!!マジで嬉しい!!!どんな偶然だよ!!!」

 

そう言いながらアルゴの脇に手を入れて持ち上げた。うん.......若いから仕方ないんだ.......たとえ外だとしても..仕方ないんだ.......多分.......いや絶対!!!何があってこんな嬉しいこと行動に移さずになんとする!!!

 

「アーちゃん!」

 

「ふえぇ..?」

 

「大好きだぁぁぁぁあああ!!!!」

 

うん.......仕方ないんだ.......仕方....な....くはないな.......

 

あとから思い出し勝手に赤面するハキだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「もう!!ハーくん!恥ずかしいんダ!!!辞めてくレ!!!」

 

「うっ.......すまん...」

 

俺たちは家に帰ってきていた。そう、俺らは家を買ったのだ!!!25層に!!!...っとそんなことよりアーちゃんだな、何とかなだめないと。アーちゃん、勝手に自滅していくから。

 

「あんな事、大勢の前で大声で言うなんテ....////」

 

ほらな?って言ってる場合じゃない。

 

ハキは行動に移す。全てはじぶん.......いや、アーちゃんの為!!

 

「ごめんな?アーちゃん」

 

そう言うとハキはアルゴのことを抱きしめた。いい匂いが鼻をくすぐる。

 

「あ.......もう!!!しょうがないやつだナ〜///」

 

あ、アーちゃんデレた。いや、いい匂いすぎて死ぬ。うん。

 

「昇天する〜.......」

 

あ、声でちゃった。まぁいいか、本心だしなぁ.......アーちゃんも恥ずかしそうにしてるし....

 

「もう!///あ、そういえば今日、仕事入ってるんだったナ」

 

「お、まじかぁ.......早く終わらそうぜ!!!」

 

やる気満々のハキにアルゴは苦笑しながら立ち上がる。それから俺たちは25層の街に向かい.......移転門の前で待っている黒づくめの.......少女?.......に向かうアルゴについていき、話しかける。

 

「よう、お嬢ちゃんが依頼者か?」

 

「「ぶふっ!......」」

 

ん?アルゴと少女が吹き出したぞ?どうしたんだろ.......

 

「ぷくく.......キーぼ.....キーちゃん....ひさしぶりだナ.......ぷくく.......アハハっー!!!」

 

堪えれないというように腹を抱えて笑い出すアルゴ。ショック受けたような少女?に戸惑うハキ。カオスな風景に周りが目線を飛ばしてくる。

 

「辞めてくれよ.......これでも男だ.....」

 

「ふーん.......え?!...マジ?」

 

無言で頷く少女...もとい、男は頷きながら器用に心外というように肩を竦めてみせた。そして....

 

 

「にゃハッハッハー!!!」

 

 

 

 

アルゴが限界を迎えた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アルゴが落ち着いた頃には俺たちは意気投合していた。

 

「でもさ、クリティカルは力じゃない、だろ?!」

 

「おう!!やっぱ1番はタイミングだ!!」

 

「話わかるな!!」

 

と言った具合に.......

 

「はぁ.......そろそろいいカ?」

 

「「あ、すんません」」

 

見事に被った。.......うん、息ぴったり。

 

「えっとナ、こっちが黒の剣士ことキリト。で、こっちが....黒剣ことハキダ」

 

うんうん.......ん?黒剣って?え?!俺にもふたつ名あるの?!攻略出てないぞ?!どこまで攻略進んでるかわからないレベルだぞ?!

 

「ちょっと待て?!え?俺ってふたつ名あったの?知らんかったんだけど?」

 

「ん?ああー、あれだナ、攻略の時1人で階層主倒したロ?軍のヤツらがそれ見てたらしくてナ」

 

ふーん.......納得はしたけどそんな大層な名前.......

 

「黒剣............................ハキ、デュエルしないか?」

 

「ん?」

 

正直言おう。トップレベルのプレイヤーにデュエルを挑まれた。うん、言葉だと軽く聞こえる。...........正直に言おう。

 

 

 

すげぇ嫌だだァァァー!!!!こわぃぃぃぃー!!!ぎゃぁぁぁ!!!

 

よし心の中では叫び終わった。あとは覚悟を決めて.......プライドを捨てて.......この丸ボタンを............無理ゲーじゃね?

 

「ホいっとナ」

 

ポチ.......

 

 

 

え?嘘でしょ?

 

あ、アルゴさん?アーちゃん?ねぇ?俺、勝てるわけないじゃん?

 

「ハーくん、頑張ってネ!」

 

上目遣いはずるいって〜.............

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はぁ.......最初から本気でいいだろ?キリト、」

 

「ああ、来い!」

 

俺は虚白を抜く。まずは様子見だ.......リーチの長い槍に変化させて突いていく。

 

「シッ!!!」

 

「おおー!!変形できるのか?その武器!だが、負けるわけには行かない!」

 

相手の黒いほうの剣を主に使って切りかかってくる。

 

実にやりずらい.......二刀流か.......伊達じゃないな。それにしてもなんで白の方の剣を使わないんだ?

 

そう考えながらどんどん切りあっていく。高速で。轟音と静音の戦いだ。あるものは立ち止まり、あるものは心を奪われ、あるものは憧れる。

流れるような動きと舞のような動き。違ったものに聞こえても似通った部分はある。だからこそやりずらい。ハキの剣は癖が変わり続ける。武器が変化するからだ。一方、キリトは癖は変わらないが、自分でそれを理解し補っている。現に、決め手がない。ここだ!!と思って打ち込んでみても白い剣が邪魔をする。それに......キリトの一撃が重い.......こっちはどんな武器でも使えるように幅広く鍛錬してきた。だがキリトは一途に.......二刀流だけを極めているのだろう。

 

 

 

ーーだがそれがどうした?ーー

 

ーーそんなんで俺は折れるのか?ーー

 

 

ーー自分の守りたいものはなんだ?思い出せ。そして....ーー

 

 

 

 

 

 

 

ーー喰らえーー

 

 

 

ハキの雰囲気が変わる。変化は凄まじかった。黒い剣から黒いモヤが出る。それは生きているのかのようにハキの体にまとわりつき、堕天使のような黒い羽の着いた装備になった。

 

 

 

ように見えた。

幻影だ。

 

デジタルの世界にそんなのは無いと皆わかっている。......でも.......ハキに何かがあったのは事実だ。..のだがいい方向か悪い方向にかは誰もわからなかった。

 

 

 

がァァァァァァァァー!!!!

 

ハキは心の中で絶叫した。痛みで気が狂いそうだ。ペインオブザーバーは?なんで.......全身が痛い.......

 

...............ぃ...............

 

........ぉい................

 

『おい!!!ハキ!!!』

 

なんだ.......虚白か.......全身が痛いんだ。寝かせてくれ...

 

『目の前見ろ!!!』

 

ん?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

雰囲気は変わったがハキが動かない。いや、攻撃は弾くのだ。だが攻撃はしてこない。諦めた?いや、そんなはずは....いや、俺はあいつの何を知ってるんだ.......今日あったばかりだぞ.......でもあきらめはしないと思う。

 

 

キリトは謎の信頼をして2振りの剣を振り下ろす。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

虚白に警告を出され目の前を見るとキリトが俺に剣を振り下ろしている最中だった。

 

 

「白いの!!!ボーとしてんじゃねぇ!!!」「そんな終わり方認めねぇぞ!」「おい?」

 

声援が聞こえる。冷静に突っ込む奴もいる。

 

みんなの熱援を、感情を、勇気を

 

 

喰らう。

 

 

 

 

 

 

少し話をしよう。異世界ものに限らずSFモノにはみんなの声援が届いた瞬間、絶望的な状況から一撃で覆す、という物が沢山ある。ヒーロー、勇者、それらの主人公のお決まりだ。いや、ただ単に俺がそう思ってるだけかもしれない。ただある人は言った。偉大なあのヒトが.......混濁する意識の中であの者が言った。あのモノが言ったのだ。それは前世の記憶。虚白の記憶。みんなが尊敬するあの人は言った。勇者なんて生易しい存在ではない。人間の枠を超えたただ1人の.....

 

英雄が言ったのだ。

 

俺には関係ないかもしれない。ただ英雄が残した言葉は魂を超えて。世界を超えて今伝わった.......

 

《おの子の意志の中には.......人間の意思には全ての理の中にある。全てを理解し精応者になった時、あるものは死か生かだけだ。》

 

ハキはいばらのみちを進んだ。見返してやろうと.......愛する人のことを。全てを

 

 

「ハーくん!!!!!」

 

アルゴの声が聞こえた。システムには感知できない不確定なものを乗せて。

 

 

感情を乗せて。ひとえにいえば.......全能感。

 

なんの関わりのないヒトからの言葉によって更なるシステムの中での覚醒を促した。才能でしか到達できないもの。自分にはなかったものを......

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

周りの時間が引き伸ばされる。背景がなくなる。虚白の世界のようなものになっていく。不安は感じない。どんどん時間が遅くなっていき周りは停止した。いや、僅かに動いてはいる。.......

 

 

「何が起こった.......んだ?....」

 

戸惑いながらも剣を弾く。そう

 

間に合わないはずの剣を弾いたのだ。

 

『はぁ.......使うのか.......持たざる者の自爆術を。』

 

痛い.......全身が痛い.......骨が軋む。だが.....俺はこいつに勝ちたい。勝たなきゃ.......意味が無い.......だってこんなにも楽しいのだから。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ハキはソードスキルを使う。傍から見ると完全に使い所を間違えた発動だった。キリトは迎撃の体制に入る。

 

剣を青いライトエフェクトが....覆わなかった。代わりに覆ったのは黒いライトエフェクト。どこまでも深い黒だ。

 

剣が一気に加速する。挙動はバーチカルアーク。片手剣だ。

 

最後の一撃を弾いた後、勝ちを確信した瞬間、攻撃に移行した。

キリトは勝ちを急いだのだ。だから気づかなかった。エフェクトがまだ消えてないことに。

 

それからは一方的だった。完全に後手に回ったキリトは防戦一方。ハキはシステムを支配し、ソードスキルを好きなようにいじった。いや、いじってしまった。

 

このままではハキが勝つと皆が思った。勝負が着いたのは唐突だった。

 

ドサッ.......

 

ハキが倒れたのだ。口から、鼻から血のようなライトエフェクトを出しながら。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ハーくん!!!」

 

アルゴが駆け寄る。ハキを抱きおこす。

アルゴは自分を責めた。なんで止めなかった?無茶はしていると思った。でも止めることが出来なかった。

 

頭にポンポンとされる感覚を感じる。ハキだ。もう大丈夫だと目線で訴えてくる。それから....

 

「あー!!!負けた負けた!!!我ながら無茶したわぁ!」

 

「お、おい、ハキ大丈夫なのか?」

 

心配そうにキリトが尋ねてくる。

 

「ん?ああ、大丈夫だ!!この通り!」

 

腕を回してアピールするハキに向かって周りから大歓声が.....それはこの塔が揺れる程の。

 

「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁああああー!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」

 

「と、とりあえず場所変えようぜ。」

 

「「だな(ナ)」」

 

勝負はキリトの勝ちで幕を閉じた。この2人が外を出歩けぬほど有名になることを3人はまだ知る由もなかった。




うん.......ごめんなさい、暴走しました。はい.......いやね?ハキとキリトが悪いんですよ(おいこら)フラグ回収できるかな.......俺の文才で.......頑張ります。


ってかハキチートじゃね?ねぇ、誰がこんなことにしたんだよ(お前だよ)ってことで近いうちに更新しマース!調子乗ってる人でした!!!


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8話 ハヤト

今日は特別な日.......とは決まっていないのだが、アルゴがすごく甘えてくるのだ。もう鼠の原型もないぐらいに。

 

「ハーくん?どうしたんダ?」

 

ほらな?俺の足を枕にして寝っ転がってる.......いや、俺も嬉しいよ?でもねぇ.......年頃の男子の俺は.......どう反応すれば.......

 

「むー.......」

 

お?諦めたかな?寂しいような、ホっとしたような.......

 

ギュっ.......

 

あの、ちょっと.......アーちゃん?ねぇ?今日どうしたの?!ねぇ!!!いや、嬉しいよ?!嬉しいんだけど.....!!!場所考えてー!!!

 

ハキの心の叫びはみんなに届くことはなかった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アルゴが甘え出す数時間前、俺はアーちゃんにあることを聞いていた。

 

「ハーくん、そういえば知ってるカ?」

 

「知らなーい」

 

「まだ何も言ってないゾ?!って.......おねぇさんをいじって楽しいのカ?」

 

また懲りずにからかってくるアルゴに俺は......

 

「ん?当たり前だろ?いちいち可愛いアルゴが悪いんですよ!」

 

「ふえぇ?」

 

よし、返しもいい感じだ。っていうかその驚き方好きなのか?可愛いやつめー!

 

心の中でも最大限にふざけながらアルゴの頭を撫でる。

 

「もう!」

 

怒っているように見えて怒っていないのを俺は知ってる。

 

 

そう、俺らはイチャついていた。

 

 

 

 

「でナ?さっきの続きなんだけどナ?階層主が見つかったんだっテ。」

 

「なっ?!どこだ?!」

 

いちゃつきながら驚く。緊張感もくそもない.......

 

「落ち着けっテ、えぇーとなんて言ったっけ.......ハヤトって言ったっけナ....」

 

「隼人?!」

 

隼人とはリア友のSAOに俺より早くログインした奴の事だ。しかしリアルネームを.......いや、あいつならやりかねない......

 

「(ブツブツ.......)」

 

「お、オイ?ハーくん?」

 

「あ、ああ、なんでもないぞ....」

 

訝しげにアーちゃんが見てくる。うん、かわいい。間違いない、世界一だな。うん。

 

親バカならぬ、彼氏バカを発動させながら思考を回す

 

「そのハヤトは仕事依頼してきたのか?」

 

「ああ、今日会うつもりダ。」

 

「え?!」

 

ガタッ

 

勢いよく立ち上がるハキに驚き、アルゴが固まる。

 

「..こぅ.....」

 

「なんだっテ?」

 

「今すぐ行こう!!!!!」

 

そう言うとハキはアルゴの手を掴んで家を出た。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

移転門の前に見覚えのある奴がいる。うん、確定だ。隼人だわあれ......

 

「よウ!!!」

 

声をかけるアルゴに返って来たのは拳だった。ハキは咄嗟にアルゴの前に出てその隼人が放った拳を止める。

 

「.......どういうつもりだ?隼人。」

 

ドスの聞いた声で言い放つ。心無しかハキの体からは虚白では無いオーラがまとわりついていた。

 

「.......殺すぞ?」

 

友達に本気で言ったのはこれが初めてかもしれない。俺らは仕事の仕様上、逆恨みとかよくあるのだがそいつらに向けて言っていたものを咄嗟に出してしまった。

 

「ちょっ!ハーくん!!!待って?!待っテー!!!!」

 

頑張って拳の作ってた方に抱きついて俺を止めようとするアルゴ。

 

可愛いかよ。でもさ、冷静になったのはいいけどさ、それに気を取られて.......ってそうじゃねぇー!!守んねぇと!

 

「はぁ.......もう1回聞くぞ?どういうつもりだ?」

 

アルゴを自分の後ろに隠しながら言う。

 

「.......おい.......なんで来た。」

 

「あ?」

 

何言ってるんだ?こいつ。

 

「遅くログインするって言ってたじゃねぇかよ。なんでここにいるんだよ。」

 

震えてるのか?大丈夫か?こいつ。情緒不安定?

 

「なぁ!!お前、妹はどうしたんだよ!!!なんでそんな冷静でいれんだよ!!」

 

「ああー.......うん.......それは.....心配だよ。」

 

「なら!ならなんでそんなに冷静なんだ!!!」

 

要はあれか?俺の事や俺の妹の事を心配してんのか?でもなんでアルゴに攻撃を?

 

「答えろ!!!」

 

ハヤトの言葉に俺は意識を現実に戻した。

 

「アルゴがいたからだよ。悪いか?」

 

あっけに取られたような顔で俺のことをみてくる。

 

「アルゴとは始まりの町からの付き合いなんだ。いつもアルゴが居たから頑張れた。いなかったらとっくに死んでるだろうし、生きてたとしても今みたいな幸せはない。だから全てはアルゴが救ってくれた。」

 

ハキの.......いや、拓は心の底から言った。伝えたのだ。

 

言いながらアルゴの頭を撫でてやる。

 

「ふーん.......」

 

「で、こっちの質問だ。なんでアーちゃんの事を攻撃した?」

 

「ん?いつもの絡みだからに決まってんだろ?」

 

は?いや、え?

疑問に思い、アルゴの方に視線を向けると、首が壊れそうなほど頷きまくっている。可愛い.......くそ、訳わかんねぇけど許してやるか。

 

「アーちゃんに感謝しろよ?」

 

「ん?なんで?」

 

ボコッ!

 

あ、つい.......まぁいいか

 

アルゴの無言の圧により....

 

いいわけないよなぁ.......と考え直した。うん、アーちゃんが正しい。

 

 

「と、とりあえず場所変えよう。な?な?」

 

雰囲気を変えなければ.......

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ところでさ、なんで攻略来ねぇんだよ!もう62層だぞ?そろそろこいって。情報とかもあればもっと安全になるだろ?」

 

そう行ってくる隼人、いや、ハヤトに俺は......

 

「.......ダメだ......」

 

「えぇー?いいだろ?情報くれるだけでもいいからさ。どれくらいで売ってくれる?な?な?な?」

 

おちゃらけながら言って来るハヤトにまた俺は.....

 

「ダメだ!!!!」

 

怒鳴ってしまった。

 

「ハーくん、そこまでダ。」

 

「...悪い......」

 

アルゴに制止されて冷静を取り戻した俺は冷静に.......冷静に....

 

「.......攻略に毒を入れれば逆に足を引っ張る。必ず動きが鈍る。総崩れする。心に余裕ができる。最後のはいいことだと思うかもだが、余裕は油断と紙一重だ。キリトから聞いたが1層でもそうだったんだろ?」

 

「ああ......えと....もうちょい分かりやすく.......」

 

「真偽のわからない情報は売らないんダ。オイラたちはナ。毒は間違った情報ってことだヨ。まぁ、半分建前で情報屋の意地だけどナ」

 

それがわかってない奴が情報屋すると直ぐにお陀仏ダ、とアルゴが続ける。

 

「そうか.......ゴメンな、」

 

「おう!!言ったの俺らでよかったな!他の情報屋が聞いてたら怒り狂ってたぜ?」

 

わざと明るく振る舞う。

 

「でも攻略に来ないのはなんでなんだ?」

 

「俺は行ってもいいけど、アルゴはダメだ。これだけは譲れねぇ」

 

「ハーくんは行ったらダメダ!!!!!これは譲らないゾ?!」

 

「ってことで行かない。」

 

この期に及んでイチャついているアルゴとハキ。それを見てうんざりしたような顔で。

 

「はぁ.......ナカムズマジイコトデ........」

 

話し方が変になりながらも言うハヤト。それに対して....

 

「ほう......?羨ましいのかナ?ハヤっち?」

 

「べ、別に羨ましくねぇし?俺もガールフレンド欲しいなんて思ってねぇし?」

 

どもりながら返事をする友達.......いや、寂しい友達。どんまいだな、ハヤト。

 

心の中で親指を立てるハキ。それを第六感で感知したハヤトは急いで制裁に加えるためにハキの元に行こうとする。がある人物が邪魔をする。

 

「頼むから店の中で暴れるのはやめてくれよ?はい、お待ち!招待客専用パフェだ!!!」

 

そう言って来たのはエギルだ。しかもいつものと同じパフェだし.......

 

「チェンジで」

 

「ちょ、おい.......」

 

あれ、よくわからないで使ったけど違う意味だった気が.......まぁいいか。

 

 

アルゴの頭撫でとこう。ああー.......なんでこんなに手触りいいの?俺、天国行くよ?ねぇ.......

 

 

「おい!無言になるな!本気になるだろ!.......もしかして本気で言ったのか?」

 

「ん?あ、パフェチェンジで」

 

「はぁ.......あいよ」

 

あからさまにほっとした顔になると、奥に引っ込んで行った。

 

カランカラン......

 

「お?あれ、キリトとアスナじゃねえか?」

 

「ほんとだナ、ちょっとからかって来ようゼ?」

 

「お?いいな.......ハヤトも行くか?っと面識あんのか?お前ら」

 

「まぁ、攻略でな」

 

「じゃぁ行くぞ!!」

 

そう言ってハキはキリトたちの方に行ってしまった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「おい、キー坊とアーちゃん、ここでデートカ?にししっ...」

 

「ちょっ!!!アルゴ?!..ってことは....」

 

「やっほー!!!俺もいるぜー。ヒューヒューお熱いこって!」

 

2人の顔がみるみるうちに赤くなっていく。トマト?ねぇトマトになるの?まぁ、頑張れ!!!.......ふざけはここまでで、マジなのか.......

 

「マジなのかよ.......おめとさん」

 

「へぇー.......この情報いくらぐらいになるかナ?」

 

意地悪な笑みを浮かべながら言い放つ。

 

ねぇ?アーちゃん?もうやめたげて?俺だったらそのからかいもかわせる自信はあるけど俺だけだからな?久しぶりにからかえるって張り切りすぎじゃないか?まぁ、楽しそうだから俺も乗っておくか!!

 

『おい?』

 

なにか聞こえた気がするが気にしなーい。

 

『またこのパターンか......』

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

散々からかったあと、みんなでワイワイさわぐことになったのだが.......キリトってコミュ障とか言ってなかったっけ?なんでこんなにも女子の知り合い多いの?んと、あいつがリズであいつがシリカとか言ったっけ?あいつが呼んだ男、クラインとか言う残念なやつしか居ねぇじゃねぇか。

 

 

「おい、キリト!!!お前コミュ障とか言ってなかったか?」

 

肩を組み、威圧しながら言った。

 

「ん?コミュ障だろ?こんなしか友達いねぇんだから。」

 

「はぁ.......おーい!!!アスナ!!!こいつ、たら(ふごっ....)」

 

たらしになるぞって言おうとして、キリトに口を塞がれた。

すると、

 

「おーい!!!アルゴ!!!こいつ他の女子にで(ぶふぉ!)」

 

こっちも塞ぎ返す。あっぶねぇ.......何いいやがんだ.......こいつ(デレデレしてるぞー)とか言おうとしたに違いない。

 

「んー?ハーくんがどうしたっテ?」

 

「ど、どうもしてないぞ!!!」

 

(今度ケーキ奢るから!)

 

(よし、忘れんなよ?)

 

っていう会話があったのは誰も知らない。

 

まぁそんなこんながあって、アルゴはお酒を飲み、酔っ払っていると言うね。いや、可愛いんだけど.......甘えてくれてありがとうだけどっ............................俺の理性がもってる間に離れてくれぇぇぇ!!!

 

「アーちゃん?離れてくれないか?俺、結構来てるんだけど......」

 

「んーや!離れないゾー!」

 

うん.......ダメだ。離れないな。

 

「アルゴがこんなになるなんて.......前に飲んだ時はここまでになんなかったのに......」

 

ん?今、ハヤトなんて言った?前に飲んだ?ん?

 

「なぁ、前に飲んだってなんだ?」

 

「ん?ああ、情報交換のついでに一緒に飲んでたんだ。」

 

何それ!!羨ましい!!!何?こいつ、たらしになったの?!キリトになっちゃったの?!

 

「アーちゃん?どういう事だ?」

 

「んー?いや?ただ飲んでただけな気が.......するゾ?」

 

ん?ちょっと待て?今なんて言った?気がする?じゃぁ、そうじゃない可能性もあると.......

 

「そうか.......ハヤト、お前そんなやつだったんだな.......」

 

俺は顔を伏せながら.......

 

「ハーくん?」

 

不安そうに覗き込んでくるアルゴ。酔ったらこういうふうになるのか。可愛すぎるだろ.......でもあいつはアルゴを.......

 

殺す!!!!!!

 

理不尽な殺意を当てられるハヤト。

 

キリトとアスナは思った。

 

理不尽だ.......

 

そして、この場にいる当事者以外の心が一致した。




はい、いい所で切っていく。俺。うん、次回はブラックコーヒー必須!!!(の予定)。予定は未定。うん。でも必ずやる!!!(と思う)作者もどうなるのか見たいから!!!ってことで、待っててねー。


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9話 とっておき

「お前、そんなやつだったんだな.......」

 

「ハーくん?」

 

うん、可愛すぎるだろ。反則だァァー!!!!

 

「てことで、しばく。」

 

「ハーくん〜今日、一緒に寝よーゼー?」

 

アーちゃん?その発言場違い!!だけど可愛い.......

 

「アルゴナイス!!!」

 

「.......あ?」

 

「すいませんでしたァー!!!」

 

おお.......ダイナミック土下座......でも許さん!!!

 

さぁ.......何してやろうか.......アルゴにあんなことやこんなことした罪は重い............................

 

ハキは無言で剣を振り下ろす。ちゃっかり、システム支配で相手を麻痺状態に。完全にいたぶる前提のセッティングだ。

 

「..............」

 

「ちょっ!!ちょっと待て!!!待ってくれ!!!俺はやってない!!!断じてそんなことやってない!!!」

 

「ああ?そんなことってなんだ?いってみろよぉぉぉぉおおお!!!!!!」

 

ハキは顔を上げる。血の涙を流して.....

 

「ぎゃぁぁァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

店の中で絶叫が響き渡った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「なーんだ、そんなことなら行ってくれればよかったのに!!!」

 

「し、死ぬかと思った.......」

 

「ん?ヤルつもりだったよ?」

 

「ねぇ?!酒入ってるからだよね?!いつものお前じゃない!!怖い!!!」

 

ハキは適当にあしらってからアルゴの方に向かっていく。

 

「ハーくん♪」

 

「なんだよー!可愛いなぁー!!」

 

もう止まらない域まで来ていた。もう手遅れだ.......

 

「かァァー!!キリトとかには春が来るのになんで俺は.......」

 

クラインの声はみんなが無視しとうとう本気で泣き出すマネをしだした。それでもみんな無視し続ける。

 

「ああー!!!もう理性なんて知ったことか!!!」

 

「「「それは捨てたらダメだ!!!!」」」

 

はい、満場一致。仲良いな。でも俺は捨てる!!!

 

「ハーくん?」

 

不安そうなアルゴに対して俺は辛うじて理性を取り戻す。

 

「....って、俺何言ってんだ!!ふぅ.......危ねぇ......」

 

「「「「ホッ............................」」」」

 

「ハーくん?大好きダー!!!!」

 

プチン.......

 

 

 

何かが切れた音がした。

 

 

「だぁぁぁー!!!アーちゃんは可愛いなぁ!!!な?な?な?!!!そう思うよな!!みんな!!!」

 

あまりの勢いに固まる一同。それに追い打ちをかける。

 

「思うよな?」

 

ドスの聞いた声で繰り返すハキに向かって無言で頷き返す。

 

「だろ?!」

 

と言いながらアルゴにハキが抱きつく。

 

「むぁ!.......にゃへへ.......」

 

普段のアルゴなら怒りそうなことをしてるのに怒らないどころか嬉しそうにしてる.......こんなに人懐っこいアーちゃんは初めてだ.......

 

「なんだ!この超生物!!!天使か!天使が舞い降りたァァァァあああああー!!!!!!」

 

「「「ついに壊れた........」」」

 

みんなの発言が被るとそれを合図に、2人は.......

 

「「チュ........」」

 

「ファーストキス......だったんだゾ?」

 

「俺もだよ。」

 

「もう!////」

 

「もうどうにでもなれ!!!!うわぁぁー!!!!」

 

クラインが男泣き?をしながら店から出てく。それを見ていた人達は心の中をひとつの思考が渦巻いていた。

 

(((((((バカップル(め).......)))))))

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「んんー.......なんだ?朝か.......いつの間に寝たんだ.......ッ!!!!」

 

頭いてぇ!気持ち悪い.......ヤバい.......そう言えば昨日なにかあったような.......なんだっけ.......忘れちゃいけないような事だった気が.......

 

虚白、何あったかわかるか?

 

ーー.......聞かない方が見のためだぞ?ーー

 

本当に何あったんだよ.......

 

「.......ってうわっ!!!」

 

隣でアーちゃんが寝ている。いや、それはいつもどうりだ。でも....ニット着てるだけ?いや、まてまてまて.......待てよ?さすがに.......

 

もう1回布団を途中までめくる。

 

.......ねぇ?!待って?!なんでズボン履いてないの?!際どいよ?!ねぇ!!俺の理性が!!!ああー!!!!!

 

 

アーちゃん、なんつう格好してるんだよ.......誘ってるのか?....って、もしかして昨日したことって......

 

ーーそれは無いーー

 

だ、だよなぁ.......

 

「ふぁぁー........あ、ハーくん起きたのカ?にししっ.......昨日は激しかったナ?」

 

意地悪な顔で言ってくる。

 

って待って?!過去の俺!!何してんの?!ねぇ!!!ねぇってば!!返事しろよ!過去の俺!!!!!

 

ーーはい!!!ーー

 

いい返事!!!.........じゃねぇよ!!誰が前世まで遡れって言った!!!うわぁぁー!!!!俺は.......俺は.......

 

「にししっ.......今日はからかい返して来ないんだナ?」

 

からかい.......そうか.......からかいか.......からかいだったのか.......って納得出来るか!!なんなんだこの気持ち!!!ほっとするはずなのになんか悔しい!!!二つの意味で!!

 

「はぁ.......久しぶりに手応えあるからかいが出来たヨ」

 

「...さいですか....」

 

もういいや.......疲れた.......

 

「二度寝するか.....」

 

「.......なんダ?寝ちゃうのカ?」

 

寂しそうに言うアルゴ。

 

「ああ、お前と一緒にな。」

 

そう言ってからアルゴを抱きしめてそのままベッドに倒れ込む。最初は体がこわばっていたが、しばらくすると次第に体の力を抜き、身を預けてくる。

 

「あ、倫理コードダ......」

 

「押すなよ?!ふりじゃないぞ?!」

 

「押さないヨ、相手はハキだからナ.......」

 

うん、もう死んでもいい。ってかいっそこのまま耐えてる俺を褒めてくれ......

 

安心出来る距離がだんだん縮んでる。信頼関係が.......愛情が確かに大きくなっているのを感じながら眠りにつく。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

そう言えばイチャイチャデー(仮)途中で終わってた.......仕切り直しだな。

 

「ハーくん!ご飯出来たゾー」

 

「おー!今日は何だ?」

 

「シチューだゾ!」

 

シチューか〜.......上手いんだよなぁアルゴのシチュー.......

 

「おお!美味そうだな!いただきます!!!」

 

「いっぱい食べてくレ!!!」

 

うんうん。美味い!すごい美味い.......あ、いいこと考えた。

 

「アルゴ、」

 

「ンー?」

 

「あーん」

 

そう言いながら俺はスプーンをアルゴの方に持っていく。

 

「あ、あーん」

 

ぱくっと擬音付けたくなるような可愛い食べっぷり。いやぁ.......可愛い!!!って語彙力なくね?俺。んとな、天使が舞い降りた.......も前言ったし、んー.......

 

「やっぱ可愛いとしか言えねぇ!!!可愛いのが悪い!」

 

「えぇー?!いきなりどうしたんダ?!」

 

あ、やべっ声出ちまった.......あ、.......そうだあれがあったんだ。とっておきのあれが......

 

「な、なぁ.......頼みがあるんだけど.......これ.......付けてくれ.....」

 

そう言いながら共通化してる画面を映し出し、アルゴに見せる。

 

「え?!こ、これつけるのカ?」

 

「お、おう.......ダメか?」

 

「ま、待っててくレ!!」

 

あれは絶対かわいい.......ああー!!!早くみたい!!

 

妄想という名の思考の海に溺れるハキはそれだけで15分たっていたことに気が付かない。

 

「お、お待たセ.......」

 

そこには猫耳と尻尾を着けたアルゴが立っていた。因みに服装はベッドの時から変わってない。だから.......だから.......仕方ない。もうどうしようも無い。

 

「うわぁー!!可愛い!!」

 

ハキは抱きつく。そして耳を触る。

 

「うにゃァ!」

 

何それ.......俺を萌え死にさせる気か.......なぁ.......もうダメだ.......

 

ハキは耳だけと言わずしっぽも触って行く。

 

「うにゃ.......」

 

 

気持ちよさそうに目を細めるアルゴ。ほんとに猫みたい.......

 

「アーちゃん!!!にゃぁって言って!!!お願いだ!」

 

「え?!.......に、にゃぁ.......」

 

ぐほっ................もうダメだ.......我が人生に悔いなし......

 

ーーアホかーー

 

何おう!!お前!!那季がこの格好してたらどう思う?!

 

ーーどう思うって.......最高だな!!!ーー

 

だろ?!これで可愛くないって言う方がおかしい!!!

 

謎の信頼関係が生まれた。

 

「ああー!!!さい.......こう.....」

 

また抱きつく。

 

「にゃぁ!!....いきなりはやめろヨ.......」

 

「ああー!!!最高!!にゃぁ!!だって!!ねぇ!!!もう無理!ああー!!!」

 

壊れた。ハキが.......




はい.......文才がァァ............................もっとあまあまにしたかった......後、ハードスケジュール.......今日で2話.......楽しかったけど精神的に.......幸せ!!(は?)いや、アルゴが!!!可愛い(おい)ってことで、またな!!


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10話 最後の攻略

おまたせしまぁしたッ!!!!ん?ふざけないで早くしろって?

では早速!


どぞ!


家でいつもどうりイチャイチャしていると家のドアを叩く音が聞こえた。

 

コンコンコン......

 

「なんで、今なんだよ.......いい所なのに.......」

 

憂鬱だなぁ.......このまま猫アルゴとベットのカビになりたい......ごめん、やっぱカビはヤダ。

 

「はぁ...仕方ないから俺、出てくるね」

 

「オイラが出ようカ?」

 

待て待て!!猫化してる(猫耳としっぽ付けてるだけ)アルゴを誰かの目に入れるだと?看過できない!!!笑止千万!!!

 

「い、いいよ、どうせすぐ追い出すし。そして早くこの続きやろうな!」

 

「おウ!」

 

はぁ..適当にあしらってからぱぱっと帰ってもらおう....

 

ガチャっ.....

 

「どちら様で?」

 

「私、アスナだよ!!今、ちょっといい?!」

 

え?なんでアスナがこの家を知ってるんだ?って言うか、なんでそんなに慌ててるんだ?重要な事なのか?アスナなら今のアルゴ見せてもいいか....

 

「と、取り敢えず中入れ!」

 

扉を大きく開けて、中に招き入れる。すると後ろから声がした。

 

「アーちゃん!何があったんダ?」

 

「攻略が!攻略が!....ってなんで猫耳つけてるの?...」

 

「一旦落ち着けって!」

 

 

お茶を飲み、落ち着いたようだ。でも、アスナはアルゴの猫耳が気になるようで....

 

「ゴホン!!!....で?攻略がどうしたって?」

 

強引に話をそらした。それはもう不自然感満載で。

 

「あ、そうだったわね、はっきり言うわ」

 

ここで唇をお茶で湿らせてから言う。

 

「攻略に参加して。」

 

は?この人は何言ってるんだ?俺は行かないと何回も....

 

「昨日、ボス部屋の偵察隊が15名、消息不明。生命の碑を確認し正式に死亡が確認されたわ」

 

短い言葉だった。でもそれはハキ達の心に深く突き刺さった。

 

「脱出は出来なかったのか?」

 

「攻略来てなかったからわからないかもだけど....」

 

「ああ.......結晶無効空間カ....」

 

「ええ、多分ね」

 

一気に暗くなった。雰囲気がだ。

 

「分かった。会議はいつだ?......」

 

「今日よ」

 

「は?なんでもっと早く来なかった?ってくそっ、偵察隊の事か..」

 

アスナの事だから昨日は別れたあと、本部に行った時にそれを知って今まででずっと探していたのだろう。生命の碑の名前を。

 

「.......アーちゃん、待っててくれ。すぐ終わらせてくるから。」

 

「.......オイラも行くゾ.....」

 

「ダメだ、何が起こるのかわからない。俺が守ることも出来ないかもなんだ。そこにアーちゃんを連れていくわけに行かない。」

 

「.........」

 

アルゴは黙りこくる。

 

「それにアーちゃんは速さ重視のステータス割りだろ?.......分かってくれ.......俺は二度と失いたくないんだ.......」

 

「...二度と?」

 

「ああー.......言ってなかったか?俺の両親、居ないんだ。」

 

「ッ!.......」

 

アルゴは何かをこらえるようなしぐさを見せ、アスナは黙って聞いている。

 

「免疫不全症候群だった。しかも、SAOに囚われる前から妹にもその症状が出てな.......俺らがここから出る時にはもう.......そう思うと俺は今でも震えが止まらないんだ.......」

 

「だから夜な夜な起きたりしてたのカ?」

 

「気づいてたのか?」

 

「.....まぁな.....」

 

「.......そうだな.......悪夢を見るんだ.......かぁちゃんも.......親父も.......妹も.......それにアルゴが離れてく.......その後に残されたのは孤独だけ.......そんな夢だ.......普通少し経ったら夢なんて忘れるのにな.......これは頭から消えやしねぇ.......」

 

そう言うとハキは苦笑してみせる。その顔は寂しさに満ちていて...

 

「お、オイラはハキから離れな「わかってるッ!」ッ?!」

 

「分かってるんだよ.......」

 

それからハキは気づ付いたような顔になって言った。

 

「アーちゃん、ごめん.......アスナ行くぞ.....」

 

 

 

 

 

その後に取り残されたアルゴは小さく言った。

 

「..何が失いたくないだ.......オイラの前からたった今いなくなったのはハーくんじゃないカ.......ばか....」

 

アルゴは玄関で泣いた.......夜まで.......そして....

 

 

 

 

 

 

決意をした。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「さぁ、今日は集まってくれてありがとう。私の事はみんな知ってると思う。」

 

とヒースクリフが言った。そして....

 

「さて、早速本題に入ろう。一昨日、我らが血盟騎士団がボス部屋を発見した。そこで緊急的に偵察隊を編成、送り出した。それが昨日だ。そこから半日かけても連絡がなく、生命の碑を確認し全15名の死亡を確認した。」

 

ここまではいいか?と続けるヒースクリフに言葉を返すものはいなかった。それだけ衝撃的だったのだ。会議はシーンとした雰囲気で進んだ。

 

 

(ああ.......あんなこと言ってアルゴになんて言えば.....)

 

ハキは会議などそっちのけでそんなことを考えていた。

 

「さぁ.........その事らを踏まえて準備してきたまえ。決行は明日、この時間に集まって欲しい。今回はフルレイドで挑む。今のうちにレイドメンバーと組んでおけ。以上」

 

そう言うとヒースクリフは壇上から降り、本部の方に入っていく。

 

(でも.......うーん.......怒ってるよなぁ.......というか、何でアーちゃんにあの話を話したくなったんだろう.....うーん...)

 

「.......わっ!!!」

 

「ぬおっ?!!」

 

肩を掴まれたような感触を感じてから直ぐに脅かしの声が聞こえ割と本気でビビった.....

 

「何難しい顔してんだ?」

 

「...なんだよ、キリトか.....」

 

「どうしたんだ?」

 

「..ちょっと.......な?」

 

「そうか.......」

 

それから少し間をあけて

 

「....仲直りなら早めの方がいいぞ?」

 

「なっ?!」

 

キリトめ.......なんでわかった..って言うか、なんでそんなこと知ってる.......

 

「ああー...そうだ、ハキ、パーティ組もうぜ?」

 

「ほう?他のやつ居ないのか?オニィさん以外居ないのか?ん?ん?」

 

さっきの意趣返しにアルゴ(うざさMAXモード)バージョンで言い放つ

 

「ははは、まぁ頼むよ」

 

こいつ...

 

「だから鈍感とか言われんだよ.....」

 

「なんで?!」

 

あ、口にでてた?まぁいいか....

 

「まぁ、俺からしても願ったり叶ったりだからな、よろしく頼むよ。」

 

「そういや、アルゴは?........すまん....」

 

ハキの顔色が悪くなったのを見て即座に謝るキリト。

 

「キリトクーン!あ、ハキ君、今回はよろしくね?」

 

「ああ.......」

 

アスナがいつもどうりに接してくれている。事情も知ってるはずなのに.......でもそれが嬉しい。

 

「あ.......」

 

「どうした?キリト。」

 

「いや、あの外套羽織った人.......パーティもう組んでるらしいけど昔のアスナを思い出すなぁ....と....」

 

「ああー.......ってえ?!もしかしたら、迷宮区で鬼のように敵倒してたあの人か?」

 

「あー.......多分そう.....」

 

「多分そうだね.....」

 

「マジか.......俺声掛けたのに「だから何?」で全て返されて終わりだったもんなぁ.......」

 

「あはは.......あの頃は冷めてたもんなぁ.......アスナは..」

 

「も、もう!キリトくん!!それにハキ君も!」

 

「「はい..ごめんなさい.....」」

 

「お取り込み中わりぃんだが.....俺も入れて?」

 

クラインが後ろから現れた。

 

 

 

 

 

そして当日が来た。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「それでは、行くぞ!!」

 

ヒースクリフの号令でボス部屋の中に入る。それぞれ移転結晶を握りしめて。

 

「お、おい..ボスが出てこないぞ?」

 

「そんな訳あるか!!!もう光は灯ってるんだぞ!!」

 

ボスが居ないことにみんなが混乱し始める。そしてハキは見てしまう。上の方を....

 

「う、上だァァァああああー!!!!!」

 

ハキは咄嗟に叫んだ。それと同時にボスが落ちてくる。

 

「た、退避ー!!!!」

 

前衛の1人が叫んだがもう遅かった。

 

敵は骨のムカデ、名前は《スカルリーパー》

スカルリーパーは前衛に鎌を振り下ろす。砂埃がまう。ガラスが割れた音が連続で聴こえる。

 

パリンパリンパリン.....

 

そこには何も無かった。人の影もボスの姿も

 

「なん..なんだ。なんなんだよアイツ!!!そんなの聞いてねぇぞ?!」「一撃?.......前衛だぞ?」

 

そう、前衛をするにあたって1番必要なのはHPの総量だ。それらが一瞬にして消え去った。タンクもだ。それだけで皆の恐怖を煽るのは十分だった。

 

「うわぁぁぁー!!!逃げろぉぉ!!!」

 

1人が扉に駆け寄るが岩のようにピクリとも動かない。

 

「なんでだよ.....なんでだよ!!!!出してくれよ!!!」

 

それを見てハキは覚悟を決めた。みっともない姿は見せられないと.......

 

「お前ら!!!聞け!!!」

 

隣でいきなり大声出したハキにキリトとアスナとクラインは目を見開く。

 

「お前らは何を背負ってる?!みんなの自由だ!!!じゃぁ何を目指す?!!それはみんなの希望になることだ!!!惨めったらしく泣くのはやめろ!!!俺らはどんな過程があったとしても、ここから出られないなら結果は同じだ!!!ならば!男なら!一人の人間なら!!ここでカッコつけなきゃなんになる!! 怯えるのはやめろ!!覚悟を決めてきたんだろ?!俺らはやるんだ!このボス倒して上に上がるぞ!!!」

 

「「「「「「う、うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」

 

ハキは実際数十秒に満たない時間で士気を盛り返した。

 

「はぁ.......ハキ、おまえ......」

 

キリトは呆れたと言わんばかりに言ってくる。

 

「これは.......アルゴさん、いい人見つけたわね.....」

 

ん?あ、アスナが何か言ってるがき、聞こえなーい

 

さてと.......虚白、やるぞ?

 

ーーはぁ..やっとか。最近出番なかったからな。張り切ってやったるぜ。ーー

 

頼もしいこって.....

 

そう心の中で会話を重ね、虚白を抜く。そして.......虚白は人の形になる。ハキから片手剣を手渡され、2人でダメージディーラーの役目を果たしに行く。さぁここからだ....

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はぁはぁ.......精神的にももうきついか.......」

 

小さくハキが呟く。

 

「虚白、ボスの体力、2本ぐらいいけると思うか?」

 

「無理だな、バグ処理プログラムに引っかかる。」

 

「そうか....」

 

 

システム支配で強制的にボスの体力を削ろうと思ったのだがバグ処理なんちゃらに引っかかると言われた。何言ってるかわからんが引っかかったらなんかなるのだろう。

 

そう考えていたら攻略の時の外套被った人が攻撃を喰らいそうになっていた。

 

「マジか.......くそっ!!!」

 

無理やりボスと外套の人の間に体を滑り込ませる。

 

「虚白!!!」

 

「わかってる!!!」

 

すると俺の傍にも虚白も来て衝撃に備える。ハキが攻撃を受け流し、

 

「虚白!!!スイッチ!!!!」

 

「おう!!!」

 

双子かと思うぐらい似てる2人に心の中で感謝をしてその場を立ち去る外套の人。

 

 

それから1時間.......

 

 

バリン!!!!!.......

 

遂にボスを倒した。

 

「「「「うぉぉぉぉおおおおおお!!!やったぞ!!!」」」」

 

「なぁ.......虚白、」

 

「わかってる」

 

すると3人は自分の獲物をヒースクリフに投げた。そう、自分らの他にもキリトが投げたのだ。すると案の定自分たちのカーソルがオレンジに.......なることは無かった。変わりにヒースクリフの体はなにか障壁みたいのに守られており表示されたのは、《Immortal Object》の字だった。破壊不能オブジェクト。皆の目線がその字に釘付けになる。

 

「やっぱりな....」

 

「お前もか、キリト。」

 

「あいつには不可解なことが多かった。今回のボス戦も。」

 

「確かにな。だろ?ヒースクリフ..いや、茅場晶彦!」

 

そう言い放つハキにヒースクリフは苦笑し、周りは混乱する。

 

「茅場晶彦?なんで団長が?」「そんな訳...でもあの表示....」「嘘よ.......」

 

その茅場を更に貶めるべく、言葉を続ける。

 

「本で見たよ。ゲームをただ見てるだけ程つまわないものは無い.......だったっけ?」

 

「...聞こう、なんでわかったんだ?ハキくん」

 

「簡単さ、戦う限り、HP半減は逃れられない。なのに、イエローに陥ったのを見た事がない?ふざけてる。HP50%固定ダメージをしてくる敵もいるってのに。だから変だとは思ってたさ。でも今回で分かった。お前、ボスにありえない程の速さの攻撃を入れてた。システムアシストの度を超えていた。だから攻撃したのさ。分かったか?」

 

「ははっ...名推理だハキ君。ただ.......その先までは見通せなかったみたいだね。」

 

「その先?」

 

「ああ、はっきりと言おう。私が100層のボスだ。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「.......シャレになんねぇな。希望の光が一転、ボスかよ.....」

 

「ああ、だが正体を見破った褒美に、1回チャンスをやろう。私を倒してみろ。もちろん不死属性は解除するし、倒せたら皆を 解放しよう。」

 

「その勝負受けた。」

 

「おい!ハキ!!!」

 

「大丈夫だ。みんなは見てろ。俺がやる。」

 

「はぁ...俺もやるぞ。」

 

「キリト.......はぁ...きちんと合わせろよ?」

 

「ああ、茅場もいいよな?」

 

「ああ、問題ないさ。」

 

そう言うとヒースクリフもとい、茅場はウィンドウを操作し全損デュエルを申し込んでくる。それをハキは受諾する。それと同時に俺ら以外の人達は体が動かなくなったのか、なんの抵抗もなく倒れ込んだ。キリトはデュエルには参加しないが共闘って形だ。

 

「かかってこい。」

 

「じゃぁ、お言葉に甘え...てッ!!!!!」

 

ズバン!!!

 

ハキの斬撃はバカでかい盾によって防がれる。それから何回もソードスキルを織り交ぜ、キリトとスイッチして......

 

縦、横、横、切り返してまた横、縦.......何回攻撃しても茅場の盾に防がれてしまう。

 

「シッ!!!」

 

「キリト!スイッチ!!!」

 

声をかけてしまえばその後の動きがバレる。相手は人間だ。言葉を発せば必ず対応をしてくる。なら、

 

 

 

反応できないほど速くすればいい。

 

ズバンズバン!!!

 

速く....

 

ズババン!!!

 

もっともっと.......

 

ズババババ!!!

 

 

黒いオーラが立ち込める。ソードスキルのエフェクトが黒く変色する。

 

速く...強く.......強く.......もっともっと.......

 

 

システムを支配し、速さ、力を最大限に強化する。黒いエフェクトに赤い稲妻が迸る。

 

《システムに異常発生、システム復帰を検討、失敗、内部からの攻撃を確認、排除を検討、失敗。予備システムに切り替え、失敗、カーディナルシステムフル稼働準備に入ります。》

 

突然の事だった。皆の頭に直接響いたこの声は無機質な響きを残して消えた。

 

「驚いたな.......どんな手品を使ったのか聞いても?」

 

「手品?いや、無いね、そんなものは。これからだ。勝負は」

 

「はァァァァァァァ!!!」

 

ハキは怒号の連撃を繰り出す。それはヒースクリフを圧倒していた。

 

「ぐっ....重いな.......チートを使ったのか?」

 

「いや?シッ!!!正真正銘、俺の力さ。」

 

ヒースクリフ。どんどん追い込んでいく。そしてついにハキとヒースクリフのゲージが同じぐらいになった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ハキは戦ってる...なのになんで動かない.......俺の足!

 

キリトはヒースクリフとハキの間に入れずにいた。

 

いや、本当はわかっている。足を引っ張るのは目に見えているからだ。だから俺は動けない。

 

頑張れ、ハキ......

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「これで終わりだァァー!!!」

 

渾身のソードスキルを..自由自在に軌道が変わるソードスキルを.......無限に叩き込もうとする。そして

 

盾がハキを攻撃した。

 

「くそっ!!!盾にも攻撃判定あんのかよ.......」

 

ハキの体力はもうレッドだ。

 

くそっ!!!立て!次が来るぞ!

 

ハキは次に備えて立とうとする。だが、

 

 

立てなかった。、、

 

 

自分の体力ゲージの上に何かアイコンが出ている。《転倒状態》(スタン)だ。

 

 

こつ..こつ.......

 

 

茅場が近づいてくる

 

「これで終わりだな.......意外と楽しかったよ。ハキ君?さようなら」

 

茅場が剣を振り上げる。

 

ああ.......死ぬのか.......色々と今まであったな.......ごめんな?アーちゃん.......俺よりいい人見つけて幸せになってくれ............................きっとたくさんいるはずだ.......

 

 

茅場の剣をオーバーアシストの光が覆う。

 

 

って、諦められるかよ.......諦められるわけねぇよ.......こんなとこで死ぬなんて.......せめて.......せめて.......アーちゃんに見守られながら.......

 

 

 

 

 

 

死にたかったな

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ゆっくりとコマ送りのように茅場の剣がハキの命を絶とうと迫ってくる。そしてその剣は.....その先は見ることが怖くなり目を瞑ってしまった。

 

 

いくら待っても切られる不快な感触が来ない.......もしかしてもう俺死んだのか?そう思い恐る恐る目を開けてしまう。

 

目の前にはハキの代わりに切られた、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルゴが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くには外套が落ちている。

 

 

「ハーくんは世話がやけるナ.......」

 

 

ぎこちなく笑いで返すアルゴは力なく倒れた。ハキが抱き起こす。見る見るうちに...無情にもHPが減っていく。元々イエローだった体力はレッドに差し掛かっても勢いは止まることを知らず、あっという間に数ドットも残さず無くなった。

 

「ハーくん.......ごめんナ?」

 

そう言い残してアルゴはガラスのようにエフェクトをまき散らしてその場から永遠に消えた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ハキは今虚無感が心を蝕んでいる。その虚無感は怒りへと代わり、矛先は言わずもがな、茅場に向いた。

 

「茅場、今、俺はどう思ってると思う?」

 

ドスの効いた声で茅場に問う。茅場はあまりの迫力に答えられずにいた。

 

「酷く冷静なんだ...目の前で愛する人が殺されてもだぞ?気持ちわりぃ.......なんでだろうな、悲しみも限度を超えると何も感じやしねぇ.......だがな.......お前は殺す。」

 

そういった後直ぐにハキが発する威圧感が変わった。圧倒的に濃厚な殺意に。

 

《システム第1障壁、破られました。同じく第2、第3も同様。カーディナルシステムフル稼働準備完了。フル稼働開始。攻撃によりフル稼働停止、バグ修復出来ません____》

 

 

一瞬で茅場の背後に回り込んだ。剣で切り付ける。盾に阻まれ、茅場は3メートルほど吹っ飛ぶ。

 

 

 

そして、手元の剣が砕け散った。

 

 

 

 

だからどうした?武器が無くなったなら次は体で、体でもダメなら心で.....あいつには絶対勝つ!!!

 

 

ハキの手刀は黒いオーラが覆い、盾も貫通し、茅場の胸を貫いた。

 

「見事だ.......」

 

「あの約束本当なんだろうな?」

 

「ああ、皆をログアウトさせよう。」

 

「俺はお前を許さない.....」

 

「ああ、許されるとは思ってないさ、ただ、.......いや、今はやめておこう。さらばだ、力強き少年よ」

 

茅場は派手なエフェクトを残して消え去った。同時にハキの纏っていたオーラも消えてなくなり跡形もなくその雰囲気を消した。

 

《バグの抵抗消失、バグを走査.......確認、排除を検討、成功。システム復帰、ゲームはクリアされました......》

 

「おい?ハキ、やったんだよな?」

 

「ああ、あとは頼んだ、キリト」

 

そう言うハキの体は透き通っていき今にも消えそうだった。

 

「ははっ.......そんな顔すんなって、ただ、システムがバグを見つけてそれを処理するだけだ。簡単だろ?」

 

「簡単なわけあるか!!!」

 

「はぁ.......お願いだから行かせてくれ.......もう、疲れた.......アーちゃんが居ないんだ。もう生きてる意味はない.......俺と関わった大切な人はみんな消えていく。そういう運命なんだ。............................あっちでアーちゃんと待ってるよ。あまり早く来すぎたら怒るからな?」

 

そしてこう続けた。

 

「じゃぁな、みんなによろしく言っといてくれ.......」

 

そう言うとハキはぎこち無く笑いながら消え去った。跡形もなく。

 

「.......泣くぐらいなら行くなよ.......馬鹿野郎.......」




はい、疲れた。うん。ユウキのセリフをぶっこみました、ハイ.......本当にすんません!!!反省はしていない!!!ってことでSAO編終わりましたァァ.......いかがでしたでしょうか?ん?短い?ははは...そんな訳.......って短っ!!何?!これ!!わずか10話で1章完結?!!ふざけてるな!!まぁ、いいか、あ、まだまだ続くよォー?ってことでまた今度!!!


あ、後、多機能フォームってなんなんだ?わかる人誰か俺にへるぷみー!!!


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11話 妹

そろそろ書き溜めてた分が終わる......もっと公開頻度落ちるかも.......なのであしからず.....


てことでどぞー


ああ.......終わったな.......アルゴ、今行くぞ......

 

 

「.......ん......ハー君!」

 

「うんん.......」

 

気づいたら白い空間にいた。なんだ?懐かしい感触.......頭の後ろに柔らかいのが.......自分からもう遠ざかって行った存在の気配.......でもそれは無い.......俺の前で消え去ったのだから。目覚めた途端に悲しさが込み上げてくる。

なんで今更こんな夢見るんだよ.......辞めてくれよ.......

もう.....

 

「もう..こんな夢なんて.......こんな希望に縋りたくないんだ.......」

 

そう..あいつは目の前でポリゴンに.......もう嫌だ。全てが嫌だ。何も信じられない.......離れないって言ったじゃんか.......なんでだよ.......なんで俺をかばった時笑ってたんだよ.......なんで満足そうに微笑んだんだよ.......俺が殺したんだ.......最愛の人を。アルゴを。なんで動けなかった?なんでだ?俺はアルゴを見殺しにした.......最低だ......最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低

 

 

無意識に出た言葉はハキが壊れかけていることを表す。いや、もう壊れているのかもしれない.......ただ、外見を取り繕ってるだけだ.......

 

「ハーくん......」

 

「なんでだよ!!!!なんで未だにあいつの声が!!ッ.....聞こえんだよ......」

 

最後は弱々しく泣きながら言う。

 

「なんでだよ.......なんで.......アーちゃん.......なんで死んじまったんだよ.......うぁぁぁぁあぁぁぁぁー!!!!!」

 

「ッ!.......」

 

ガバッ

 

何かがハキに覆いかぶさった。懐かしい匂いを放つそれは......

 

「ぇ.......なん....で.......」

 

「ごめんナ?ハーくん.......もう....もう離さないカラ......」

 

「アルゴ.......なのか?」

 

 

驚きのあまり涙が止まったハキは希望に縋る顔になる。

 

「ああ.......オイラだヨ.....見てたヨ。頑張ったナ」

 

「ッ!.......もう離れるな......」

 

「うん」

 

「もう居なくなるな......」

 

「うん」

 

「俺を1人にしないでくれ......」

 

「うん」

 

短く答えるアルゴに心底安堵しそして.......

 

「...紺野 拓だ.......」

 

「え?.....」

 

「俺の名前だよ。東京の世田谷区だ。多分そこの病院にいると思う」

 

「オイラは帆坂 朋ダ。同じく東京の世田谷区だヨ。偶然だナ?」

 

「マジか.......じゃぁ病室に戻ったらすぐ行くよ。」

 

「体動かないかもヨ?」

 

「車椅子でもあるだろ?」

 

「変わらないナ、待ってるゾ?」

 

「ああ、待ってろ」

 

2人は軽いキスを交わして、それぞれの現実世界に帰っていく。それは優しく.......労わるように..お互いの存在意義を確かめるかのように......

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

戻ってきた.......一気に感覚が重いものになった.......多分現実の体に戻ったからだろう。腕が上がらないどころか、まぶたも満足に開かない.......いや、ダメだ!!泣きごと言って何になる!!逢いに行くんだ.....アーちゃんに.......朋に.....

 

「あ....ぅ.......お......」

 

喉が動かない...声が出せなくなってる.......息が苦しい.......でも!!!.......

 

ハキもとい、拓は体をむち打ち、ベットの隣に置いてあった電動車椅子に乗り病室を出ていく。

 

バカでかい病院をしらみつぶしに探すわけにも行かないので、もう消えかかった記憶を辿りカウンターにたどり着く。

 

「帆坂朋さんの病室ってどこですか?」

 

震える手で頑張って紙に書き、伝えようとしたが上手く書けない.......形にならない.......しょうがなく、しらみつぶしに探そうとする。すると.......

 

「拓君?!なんで起きて.......ってことはSAOはクリアしたのか?」

 

倉田先生だ。

 

「ぁ.......ぁぅ.......」

 

「喉が動かないのか.......よし、前教えたやり方でやりますよ?」

 

ハキは頷いた。

 

「あ、か、さ、た、な、は.....はですか。」

 

そう、まぶたの動きだけで言葉を特定するやり方だ。

 

「は、ひ、ふ、へ、ほ、ホですね?」

 

瞼を動かす。実はまぶただけでも辛いのだが.......でもアルゴに会うためだ.......泣きごとなど言ってられない。

 

それから数分後。

 

「ふむ....... 帆坂朋さんの病室ですか.......分かりました。本当はダメなんですが、行きましょう。」

 

そう言うと車椅子を押すために後ろに回り、押してくれる。

 

「そう言えば妹さん、病気治りましたよ?」

 

ん?何だって?今なんて言った?妹が?治った?エイズが?これはアルゴの後に会いに行かないとだな.......

 

顔に嬉しさをにじませた拓を見て倉田は自分の事のように嬉しそうに微笑んだ。

 

「着きましたよ。では私は報告があるのでこれで.......」

 

ここに.......アルゴが.......覚悟を決めろ.......俺はそのために来たんだろ?すぅ.......はぁ.........よし

 

 

ガララッ.......

 

 

「.................」

 

この部屋にはベットが2つある。そのうちのひとつはもぬけの殻だったが、もうひとつの方にはカーテンがかかっていた。懐かしい雰囲気だ。確信した。ここにアルゴが.......朋が居る。

 

しゃぁぁー.......

 

カーテンを開ける。いや、自動で開いた。そこには色ボケたナーヴギアを膝に置き、座っているさっきぶりの姿があった。いや、髪の色は違うか.......でも愛おしいのは変わりない。

体は痩せこけている。骨ばった手を拓の方に伸ばす。

 

「はー.......くん......」

 

朋は辛うじて話せるようだ。

 

「ぁ.......う.....お.......」

 

アルゴの名前を呼ぼうにも声が出ない。喉が動かない.......

 

「ハー.......くん...いや、たっくん.......でいいか?」

 

喉が本調子じゃないのか、いつもの鼻声ではない.......いや、これが本当の喋り方なのか? いや、そんなことはどうでもいい.......帰ってきたんだ.......ここに.......叶ったんだ.......ここで、現実世界で会うという事が.......

 

その思いを噛み締めて朋と拓は抱き合う。拓は涙を流すアルゴに懸命に手を伸ばし、抱きしめる。弱々しいが確かな感触に朋は涙が止まらなかった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

あの出来事から数ヶ月、俺と朋はデートをしていた!!!

 

ねぇ?天使の隣歩くって拷問?ねぇ!!!嬉しい拷問だな!!!

 

拓はすっかり元の調子を取り戻していた。

 

「ナァ、ナァ!!!これどうダ?」

 

朋は黄色いニットを持ってきて体に合わせる。

 

「お、おう、似合うぞ!!!それはもう天使だ!!!」

 

あ.......またやらかした.......

 

「もう!!!やめろって言ってるだロ?!」

 

「す、すまん.......天使すぎるのが悪い.......」

 

よし、責任転換.......って朋の様子が.......どうしたんだ?

 

 

拓の鈍感ぶりは磨きかかっていた。周りからは、

 

「リア充死ね.......」「くそっ、うらやまめしい!!!!」

「なんだ....あそこだけ空気が違う!!!」「なんで俺わァァ!!!!!」

 

という感じ。うん、大半は予想どうり。でも.....

 

「ちょっと、あの人かっこよくない?」「ちょーイケメンなんですけど?やばなーい?」「クソ、カノもちかよ.......」

 

うん、自覚ないだけで拓もモテモテであった。

 

「たっくーん!!!」

 

「ん?何?」

 

「あれ食べようゼ!!!」

 

朋が指さしながら腕に絡みついてくる.......ってか、俺の腕に当たってるんですけど?いや、何とは言わないよ?言わないけど.......年頃の俺としては.......いや、嬉しいぞ?!ここは譲らん!!!だけど理性が!!!

 

「当ててるんだゾ?」

 

「思考読まないで?!」

 

耳元で囁くように言ってくる朋、ねぇ、小悪魔ぶりに磨きかかってません?

 

「はぁ.......行くか!」

 

「お?賢者モードカ?」

 

「朋こそ発情期?」

 

「ナっ?!」

 

よし、返しは衰えてないな。ふっふっふっ.......顔赤くしてるな.......仕返しだ。にししっ!!!!あはっはっはっ!!おっと、ポーカーフェイス.......

 

「その笑い方気持ち悪いゾ?」

 

「だから思考読まないで?!」

 

幸せな日々が過ぎていくのでした.......。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「あ、朋、妹のお見舞い行くんだけど行くか?」

 

「ああ、そろそろ挨拶もしたいしナ。」

 

そう、俺がSAOに囚われたあとに、妹は奇跡的な回復を見せたという。もうほぼ元どうりということで.......ちょっと悲しいのか嬉しいのか.......だってそうだろ?!俺要らなかったってことじゃん!!俺居なくなったら回復って、俺嫌われてるの?!ねぇ!!!!でも回復したのは素直に嬉しい!!!うん!!

 

「じゃぁ、10時に迎えに行くよ」

 

「分かっタ。待ってるゾ!」

 

うん可愛い、天使、女神、創世神!!!

 

急いで迎えに行こう!うん!!!

 

家に着い手からがすごく大変だった。何せ2年何もせずに置いてたんだからな。ホコリだらけ.......黒光り野郎もいるしな。ああ.......よし駆除しよう......

 

 

色々あって集合場所の時計台の前にバイクを止めて待っていた。いやぁ.......免許更新めんどかった。何?あれ、そんなん覚えてるわけねぇだろ。2年も乗り物とは無縁だったんだ。なんか新しい標識増えてるし.......まぁ、無事取れたけどな?まぁ、俺ってば天才?ん?ん?

 

「天才ではないゾ?」

 

「のわァァァー!!!」

 

後ろから声が.......ってか耳元は反則ですよ.......アル.......じゃなかった、朋さん。

 

「にししっ.......まぁ、ハーくん.......じゃなくてたっくんは天才じゃないけど、オイラの大切な人だからナァ......」

 

「あー!あー!も、もういい!もういいから!行くぞ!!」

 

うん、誤魔化せた.......わけないよな。現に俺の顔は耳まで赤くなってるだろうし.......

 

「って朋も赤くね?!」

 

「な、なんのことかナァ......」

 

「ごまかせてねぇ.......」

 

 

そんなこんながあり.....

 

 

 

 

 

 

 

雑談しながら病院を向かう。

 

「でナ?言ってやったんだヨ」

 

「おまっ!それ俺に言えよ!!!すげぇ危ねぇじゃんか!!!」

 

「何も無かったから結果オーライだナ」

 

「だナ..じゃねぇよ!何かあったらどうするんだよ!」

 

 

みたいに話していました。やっべっ....楽しいなぁ.....ご、ゴホン.....そして......

 

「おーい、来たぞー。」

 

「あ!はいはーい!!待っててー!」

 

うん、元気いっぱいだな。いつも通りだ。

 

「げ、元気いい子だナ.....」

 

アーちゃんはなんか驚いてるなぁ.......うんなんか圧倒されてるって感じ。まぁ、みんなの第一印象は元気いいで評判の可愛い妹だからなぁ.......

 

「ほーい!!!今空けるよー!」

 

中から出てきたのはショートヘアの茶色がかった髪と目、拓とは似ても似つかない可愛らしい子だった。

 

「ボクの名前は紺野木綿季!拓にぃの妹だよ!!」




はい、衝撃の事実!!!......あ、アルゴの出身地は大人の事情ってことで....( ;´꒳`;)。いやぁぶっ込んだぜー........収集つくか心配だった.......何とかなったぜ............................今回はちょっと短いかな.......でも次からはALO入るぞ!!!ってことでまた!!!おい.......拓、その位置変われ!!!


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ALO編
12話 朋と言う人と真実


さぁ......うん、朋が......朋の性格変わった......

 

ん?何が起きたって?こっちの生活に慣れてきた朋は2年前のSAOに捕われる前の性格に戻ってきてる......うん、やっぱロールプレイしてたらしいな...からかいも少なくなったし。

 

「たっくん、ここの食器片づけるよ?」

 

「ん?ああ、お願い〜」

 

「ああ」

 

うん、もう1個大きく変わったことが......朋がうちに住んでいる......いやぁー!!!うれしぃぃぃいいい!!!あと、語尾の鼻声が消えてて字ズラが男みたい......いや、可愛い、カワイイんだけどぉぉおお!!!! いやね?、俺は一人暮らしだったんだよ、で俺の家に住まないか?って言ったら、嬉しそうに頷いてくれたんだよなぁ......それにもう1人......

 

「ただいまぁー!!」

 

玄関から元気な声が聞こえる。

 

「おー、木綿季おかえりー」

 

「ユーちゃんおかえりー、ご飯できてるよー」

 

そう、我が妹の木綿季も順調に回復して、もう、病院から退院したのだ......でもずっと病院暮らしで自分の行くところがないとかで俺の家に来たのだ。賑やかになったな。

 

「あ、明日、用事あるから朋、俺ら帰り遅くなるわ」

 

「ああ、分かった、墓参りカ?」

 

雰囲気を落とさないように最後はわざとSAO時代の喋り方にしたのだろう。もうその癖は治ってるはずなのにな......気使わせてしまったか......

 

「そうだよ、学校終わりに行くから先帰っててくれ。」

 

「なるべく早く帰ってきてよ?」

 

「努力する。」

 

「いやぁ、択にぃたちはラブラブだね!!!」

 

「あったりめぇだ!!」

 

胸を張りながらふざけて返すと、

 

「もう!2人とも......////」

 

うん、可愛い.....凄く女子らしくなったというか......いや、俺の彼女(夫婦だった)最高かよ......もう死んでもいいよね?ね?もう満足......俺は幸せ者だ......

 

作者(択は爆ぜろ)

 

なんで?!俺の行動全部お前のせいだよ?!でもあざっす!!!最高の彼女と妹を......っと、雑談はそこまでにして、朋がやばい、、、、

 

「ラブ..ラブラブ...ふふっ......///」

 

「おーい?朋さーん?アルゴさーん?」

 

ンー......帰ってこなそうだな.....

 

「我を忘れて妄想に走っている朋、うん幸せそうな顔はすごく可愛いぃぃぃぃいいいい!!!けど木綿季が居ることも......」

 

って、声にでてた!!!やばい、朋、どんな反応するかな.....ひかれてたら嫌だな.....

 

「か、かわっ..択が可愛いって....///」

 

あ、ダメだこりゃ......妄想に拍車かけちゃった....

 

 

幸せな気持ちになりながら3人は夜を過ごした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

学校終わりに木綿季を迎えに行こうと校門に向かうと木綿季と共にもう1人誰かがいた。それは.....

 

「あ、たっくん、オイラも行くよ、挨拶したいしね。たっくんの両親に.....」

 

「.......そうか、みんな喜ぶよ。」

 

正直に言おう、今凄く嬉しい。挨拶って、もう故人の親にだ......そんなことをしてくれる...そう考えるだけて幸せな気持ちになった。

 

「そうだね!お姉ちゃんも喜ぶよ!」

 

「え?姉なんていたの?」

 

「ああ、らんねぇの事だな......」

 

俺の姉ちゃん、ランって名前だったんだけどエイズでランは亡くなった。その時は俺も木綿季も荒れて家のもの壊しまくったな.........最後まで耐えてたのがらんねぇだっただけに結構精神に来てた。その時にαテストにスカウトとされたんだっけ.......終わった時に木綿季もなって精神が......いや、ダメだ、木綿季は治ったんだから......そんな話はやめろ.....

 

「じゃぁ行くか、」

 

これからすることがすることだけに気分は暗い。息が詰まる。でも、行ってあげたい。俺らはちゃんとやってるって。彼女もできたんだって......上手くやってるって......

 

「たっくん?大丈夫?」

 

「え?」

 

気づいたら頬を暖かいものが伝ってくる。涙だ。意識すればするほど出てくる。それは止まることを知らずただただ流れ、やがて嗚咽で静寂を破る。いつの間にか墓地に着いていた。

 

「うっ.........ああ......ごめん......な......こんなとこ...見せて......」

 

「択にぃ!泣いたらダメだよ!」

 

「何言ってんだ...お前も涙目じゃねぇか......でもそうだな......」

 

意識を切り替え墓地に入る。

 

「ここなの?」

 

「ああ、俺の家族が眠ってる場所......まずは綺麗にしないとな.....」

 

墓石を丁寧に......柔らかい手つきで拭いていく。いつかしむように.....そのあとは墓石の周りに生えている雑草をむしり取り、石の前で手を合わせる。隣の2人もそれに習い手を合わせる。

 

ーー会いたいか?ーー

 

ッ?!虚白か?!

 

ーーああ、もう一度言う。家族の3人に会いたいか?ーー

 

......会いたい......でも3人でだ。じゃないと行かない。いや、行けない。

 

ーーああ、やっぱりあの世界でもここでもお前はお前か.........ーー

 

慈愛に満ちた雰囲気の声が聞こえる。

 

ーーいいだろう。着いてこい。ーー

 

そう言うと目の前が花畑に....否、この世のものでは無いと直感が告げる。それほど現実離れした光景だった。いつの間にか、2人が隣にいる。

 

「綺麗だね.....」

 

「ああ、綺麗だナ......」

 

朋は思わずSAO時代の喋り方になった。木綿季はすごく嬉しそうに言った。2人ともそれほどの衝撃だったのだろう。

 

そのうち、人影が向こうから見えるようになってきた。

 

「あれは誰だ?」

 

目を凝らしてみる......

 

徐々にその人影が鮮明になってきた。そこに居る3人が手を振ってくる。

 

『見えるか?あれがお前の両親と....』

 

虚白の言葉を俺が受け継ぐ....

 

「らんねぇか......」

 

懐かしい......そして......

 

 

 

 

嬉しい......

 

 

 

『久しぶりだね、択、木綿季』

 

姉ちゃんが言うその声はとても懐かしいもので......

 

『元気にやってるか?択』

 

父さんが言ってくる。

 

「..父さん......元気だよ......」

 

やばい......泣きそう......ダメだ..泣くな......心配させない......

 

「そ、そうだ、紹介するよ!!!この人は朋、俺の彼女だ。だから心配しないでいいよ?ちゃんとやってるから。」

 

「択にぃと朋さん、ラブラブなんだよ!!!」

 

「ちょっ!木綿季!!!」

 

『はははっ、元気見たいね、これは大丈夫かしらね......』

 

『だね......朋さん、択を頼みます。』

 

だんだん声が遠くなっていく。だが....

 

『俺はずっとお前ん中いるからな。何かあったら出て来てやるよ』

 

はぁ...虚白らしいな...でも頼もしいや。よし最後に元気に....

 

「じゃぁね!また来るから!」

 

『『『〜〜〜〜...ーーー』』』

 

もう何言っているかわからないが......でも暖かかった...

 

『あ、あと、ここに来てることは記憶から消すからな?』

 

は?それを先に言えよ!!!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

戻ってきた......ん?戻ってきた?なんでだ?なんか咄嗟にそういうふうに思ってしまったが......なんでだ...?

 

「たっくん?大丈夫か?」

 

「ん?何が?」

 

「涙で出るよ?」

 

朋に指摘されて初めて気づいた。

 

「な、なんでだよ..止まったはずだろ......みんなの前では泣かないって...決めただろ....」

 

本当に決めたのか?...わからない..わかっているのは俺の心の中には寂しい気持ちと暖かい気持ちが同時に包んでいた。

 

 

顔を柔らかい感触が包む。朋に抱きしめられたのだ。正面から。

 

「オイラがついてるから......泣くナ.....」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ピロピローピロピロー

 

電話の着信がなる。今日は休日だぞ?誰だ?

 

画面には見たことの無い番号からかかってきていた。うーん...まぁ出てみるか

 

『あ!出た!おい!!!俺は和人だ!!』

 

「はぁ....で?和人さんがなんの用で?」

 

『なんで他人行儀なんだよ!!『おい、キリト、一旦落ち着けって。』あ、ああ』

 

「待て?キリトなのか?」

 

『ああ、そうだ。』

 

「マジか!!で?アスナは元気か?」

 

『ッ......明日菜はまだ目覚めてない......』

 

「....は?目覚めてないって......クリアしただろ!!俺らで!!!」

 

キリトの言葉に驚きを隠せなくなった......それほどの事だったのだ。そんなことも知らずに俺らは呑気な生活を送っていたのだ。そんなことは考えてなかった......いや、考えないようにしていた。でも...よりによって親しい人がなるなんて......

 

「クリアはした...したはずなんだ...いや、確かにした。でも帰ってきてない奴が200人ぐらいいるんだ。」

 

「マジか......その中で誰も帰ってきてないのか?」

 

「ああ、誰一人もな.....」

 

なんでだよ、あいつは全てのやつがログアウトされるって言ってただろ......嘘だったのか?でも、確かに大犯罪は侵したがそんなことをするやつでは無いはずだ.....

 

そんなことを考えながら直ぐに家を飛び出した。焦りながら......最悪なことを次々と頭に浮かぶ。心底そんなことを考える自分が嫌になった。

 

俺は.......俺は間違えたのか?100層まで攻略すべきだったのか?.......あの場面で俺は要らなかったのだろうか.......ダメだ、考えが暗くなる。

 

 

暗くなりながら俺は朋と一緒に夜道を走った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「おい!!キリト!!!!」

 

「ハキ?!おせぇ!!!」

 

「うるせぇ!!なんでもっと早く連絡しなかった!!!なんで今になってそんなこと言い出したんだ!!!」

 

俺は無我夢中に聞いた。攻めるような口調になっていたかもしれない。でもそれだけ拓には余裕がなかった。いや、余裕を作れなかった。

 

「まぁまぁ、2人とも、少しは落ち着けよ」

 

「エギル.......」

 

「おう、エギルさんだ。で、キリト。」

 

「あ、ああ....」

 

場をなごますように少しエギルはおちゃらけてキリトに話すように促す。

 

キリトからの言葉は全て信じられないものばかりだった。200人もログアウト出来てないのは電話で知っていたが.......まさか、アスナもその中に入ってるとは.......これは.......なにかの不具合か?正規の攻略法を採らなかった故の.......そうなのだとしたら.......俺は.......俺は.......

 

「ッ........」

 

不意に頭を撫でられる感覚がした。それは優しく.......包み込むように.....

 

「顔が悲しそうだよ?拓らしくない.....オイラがいるから......何があっても味方だから.......ね?」

 

朋はあだ名ではない名前で呼んできた。それだけ心配させたってことか

 

「ああ.......ごめんな、ありがと.......立ち直るまでこのままでいいか?」

 

「ああ、いいよ?」

 

キリトとエギルは驚いたような顔になっていた。なんでそんなに驚くんだよ。俺ら付き合ってるんだからこれぐらい当たり前だろ?

 

「なんか..どこから突っ込んでいいかわからないけど.......アルゴの喋り方、普通だったらこういう感じなんだな?」

 

「ああ、最近はSAOの頃の癖も抜けてきてね、まだ時々くせが入る時があるけど大体は治ったよ。」

 

「そうか.......」

 

「はぁ.......それで?話の続きは?」

 

「いや、お前らその格好で.......いや、もういいや。」

 

そう。今の体制は俺が朋に寄りかかって朋に頭を撫でて貰ってる感じ。うん、天国。昇天する.........けど罪の意識は消えてくれないか.......消えてもらっても困るんだけど.......

 

「たっくん」

 

「ああ、わかってる」

 

また悲しそうな顔をしていたのだろう。俺は心配させてばっかりだな......

 

「....話戻すぞ」

 

またキリトが話し出す。それは主にリアルでの事だったが.......

 

「写真か.......確かにアスナだな」

 

「......アーちゃんだね」

 

そうその写真は世界樹?とかいう木の枝に吊されたカゴの中を撮ったものだが..画像が荒くて詳細はわからなくなっている.....

 

「写真のゲームの運営会社.......それと須郷か.......黒幕はそいつだろうな.......多分」

 

「そうだね。でもそうなったらゲームのサーバーの方も怪しくなるよ?これは全部ひっくり返して1から調べた方がいいかもね.....」

 

「...だな.......」

 

そこに繋がるとは思ってなかったのか、ポカンと口を開けてこちらを見てくる2人。

 

「..流石は凄腕情報屋コンビ.....」

 

「よせよ、まだ合ってると決まった訳じゃねえんだ。これで警察とかに訴えて違いました...とかシャレにならん。」

 

「これはあれだナ?」

 

「ああ、情報屋の基本、情報の裏付けだ。なぁエギル、このゲームのハードってなんだ?」

 

「ナーヴギアでも出来るぞ?今出てるアミュスフィアはセキュリティー強化版だからな。これもやるよ」

 

そう言ってエギルは何が長方形の薄いものを投げて寄こした。その箱には「アルヴヘイムオンライン」と書かれていた。

 

「ありがとう。助かった。」

 

 

待ってろ.......攻略法の勝手な判断してしまった落とし前は俺がつける....................



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13話 リーファ

「ふぃー.......まずはアルゴとキリトを探さないとな....」

 

そう俺は今、アルヴヘイムオンラインに来ている。体を動かすには問題ないようだ。戦闘の感を取り戻さないとな。

 

「えっと、ステータスってどう見るんだっけ?」

 

やっべー!!!説明飛ばしてた!!!え?ステータス見れない生活始まる?待てって?無理だよ?!無理無理!!!アイテムも取り出せねぇし!!!

 

がむしゃらに指を動かしていたら....

 

ピロン

 

「あ、開いた.......今どうやったんだ?」

 

えぇーとヘルプはどこだ?下の方か?あ、あった。

 

「へぇーSAOとは逆の指で開くのか。てかこのステータスウィンドウの開き方の説明ってステータスウィンドウの中にあったら誰も見れないんじゃ.......」

 

うん、考えたらダメだな。さすがに運営会社全体が無能ってことは.......キリトが言うあいつが運営してるなら有り得る.......

 

 

「さてと.......アルゴ探すか。」

 

「読んだカ?」

 

「うおっ?!」

 

マジか、後ろにいたのかよ.......

 

「このっ!!!驚かしやがって!」

 

お返しにアルゴを抱きしめる。いやぁ〜こういうことしたの久しぶりだなぁ。家には木綿季いるしな。仮想世界にはSAO以来、来てないし。って、え?!アルゴの頭に耳が.......それだけじゃない、尻尾も.......え?最高じゃね?ねぇ?俺の事殺す気?可愛すぎて死ぬよ?俺。いや、もう死ぬ.......昇天する。

 

無意識に俺は耳やら尻尾やらを揉んだり撫でたり.......とにかくしまくった。いや、しようとした。まぁ実際は3回ぐらい揉んだだけだったけど。手触り最高かよ.....

 

「うんっ.......や、やめっ......///ハーくん、う、後ろ.......」

 

「ん?後ろ?」

 

何があるんだ?...ってマジか.......まぁ、見られてしまったのなら仕方ない。いや、なんで俺はこんなに冷静でいられるんだ?

 

そう、ハキの後ろにはポカンと口を開けてみてくるキリトと興味深そうに見てくるユイがいた.....

 

へ?ユイがなんでこんなとこにいるんだ?そしてキリトがなんで居るんだ?

 

 

「や、やぁ!」

 

「お、おう」

 

うん、ぎこちないな...でも...俺は聞きたいことがある....

 

「なんでユイがこの世界にいるんだよ!!」

 

「ん?なんかストレージに入ってたんだ。ほら、ナーヴギアに保存しただろ?」

 

「ああ、でもなんで.......ってそれどころじゃねぇ!!!」

 

ユイがここにいるなら俺のストレージにも!

 

どこだ?!どこだよ!.......ユキ!!!!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

あれから数十分探したのだがそれらしきものは一切ない。でもスキルやらなにやらはSAOの頃を引き継いでいるかのような数値だということに気づいた。あ、ユキの事は今後説明するから待ってね?.......誰に言ってんだ?俺

 

「ハキ兄さんとアル姉さんのストレージのアイテムもデリートしたほうがいいですよ?GMに見つかったら垢BANされるかもです。」

 

「ああ......」

 

そう返事したはいいものの思い出の品もあるわけで.......

 

「あー!!これも捨てるのか.......あ!これ懐かしい!!」

 

盛大に捨てられないものが増えていった。が.......

 

「もうめんどくさいなぁ.......」

 

ポチッ......

 

 

「え?何?何してんの?ねぇキリトさん?」

 

「ん?一斉デリートだけど?」

 

「何してんの?!何してくれてんの?!感傷にぐらい浸らせてよ!!」

 

「だって遅いから.......ああ!すまんすまん。つい...な?」

 

「つい..な、じゃねぇよ!!ああ、思い出の指輪が.......アルゴに貰った品の数々が.....」

 

キリトもここまで落ち込むとは思ってなかったらしく、珍しく戸惑っている。すると不意に

 

 

 

ガチン!!!ドオォォォオン!!!

 

 

激しい戦闘音が聞こえてきた。誰かがやり合っているらしい。

 

 

「そう言えばPK推奨だっけ...このゲーム.......」

 

 

キャァァァァアア!!!!

 

「ッ!!!.......行くぞ!!!キリト!アルゴ!」

 

「「ああ!」」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

そこには垢を主とした男組と緑?を主にした女性1人。うん味方するのはどっちかと言うと.......

 

「お前らはここで隠れて待ってろ。俺はちょっと制裁してくる.....」

 

そう言って俺は睨み合っている間に入っていって。

 

「おい!!!聞け!!!」

 

よし、深呼吸して、

 

「赤いの!!!助太刀する!!!」

 

は?ここでここにいるみんなの心はひとつになった。

 

 

「「「「いや、なんでだよ!!!!」」」」

 

「そんなに強く言わなくてもいいじゃん。冗談なのに.......」

 

思ったよりもみんなに強く言われたので心に来たハキは..

 

「今のは冗談だ!!!」

 

大声で誤解を解いた。うんダサいな.......いや、自分でもわかるよ?さすがにね。すべってもないのに

 

「ゴホン.......さてと、覚悟はいいか?」

 

カッコつけて言うハキに周りの人達は呆れた表情を浮かべ、

 

「見たところ初期装備のインプのお前が俺らに帰るとは思えないが.......」

 

「それはどうかな?」

 

そう言うとハキは腰に提げた刀を掴む。

 

「なぁ?居合って知ってるか?」

 

「ああ?いきなりなんだ?あれだろ?抜くと同時に切る奴」

 

そう答えたリーダーぽいやつにハキは....

 

「ちょっと違うな。過去の侍達が神速の斬撃を出すために考えられたひとつの型だ。」

 

そう、覚悟を持って放つ技なのだ。現に居合自体、考えられた当時は振り抜いたあとの動作のことは考えられていない。正真正銘一騎打ちのための型だ。だが.......そのあとも刀を連続的に振るう為にあらゆる型が考えられた。それが.......

 

「居合(乱)」

 

虚白が俺に伝授した技のひとつ。居合の後に普通不可能なそのままの速度で連続的な斬撃に繋げる技

 

気づけば敵の反対側に来ていた。そこに姿を現した瞬間、一呼吸置いて敵が1人を除いて赤いライトエフェクトに変わる。

そう、システムでさえ反応が遅れたのだ。仮想世界などという処理能力が必要となるものの為に開発された物がだ。そんな技に人が反応できるわけもなく、なんの抵抗もなく。

 

 

死んだ。

 

 

「うーん...やっぱ3撃が限界か.......あ、リーダーさんで良かったか?」

 

そう言うと怯えたように答えてくる。腰を抜かして立てないようだ。

 

「あ、ああ」

 

「そうか、君も戦う?それとも.......そこの金髪のお嬢ちゃんが俺と戦う?」

 

そんなふうに俺はわざと戦闘狂のようなセリフを吐いたせいか赤いやつはより一層怯える

 

「てイ」

 

後ろから頭にチョップを食らう。見てみたらチョップをする為に頑張ってアルゴが背伸びしていた。

 

「ふざけるのはそこまでダ。ハーくん」

 

「わーたよ。楽しかったからついな」

 

あーあ楽しかったのになぁ...でもいいか、アルゴの言うことは聞かないとな.......ん?尻に敷かれるの一直線だって?知るかそんなもん。

 

「い、いや、辞めておこう。勝てるわけないからな。デスペナが惜しい。」

 

「ははっ、素直な人だな?」

 

意外と根っこの部分は綺麗なのかもしれない。女襲ってたけど.......襲ってたけど。

 

パシッ

 

あ、またチョップされた。ごめんなさぁーい。反省してないけど.....

 

パシッ..パシパシパシばしばしばし!!!

 

「ちょ!ちょっとアルゴ!!!い、痛い痛い!」

 

「だって.......ハーくん構ってくれないんだもン.....」

 

え?何?この超生物。この人をダメにする超生物何?いや、やべぇ、可愛すぎて溶けちゃうスライムになっちゃう!!!転生したらスラ○ムだった件てか?やかましいわ!!!ってやかましいのは俺だ!!!

 

「ごめんな〜?...よし!キリト!!!あとは頼んだ!!!」

 

「え?ええー?!」

 

俺はアルゴに謝ってからキリトに丸投げしてアルゴと一緒にイチャイチャしまくった。うん、しまくった

 

その空間はブラックコーヒー必須の空間になったという。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「さてとアルゴとの時間は終わり。これからはアルン?とかいう例のでかい木の所までこの子が案内してくれるらしいから、」

 

え?嘘だろ?この幸せな時間を手放せと?こいつ悪魔か?魔王か?この人でなし!!女ったらし!!!

 

 

「えー?まだいいだろ?この女ったらし....(ボソッ)」

 

「なっ?!俺は女ったらしじゃないぞ!!」

 

あ、聞こえてた?てへぺろ!キモいって?ほっとけ。あのなぁ?アルゴがやったらめっちゃ可愛いんだぞ?これだけは分かる。アルゴ、可愛い!(確信)

 

「嘘つけー」

 

「なっ?!...いいから行くぞ!」

 

「えぇー?まだこの時間を堪能したい!!!」

 

「そーダ、そーダ!」

 

「だーめ!」

 

「ちぇ」

 

「なんか、すごい仲いいんだね?」

 

金髪ロングの子は言ってきた。

 

「「良くない!!!」」

 

「はぁ...仲いいんだね.....」

 

呆れたように金髪の子は言ってくるそして....

 

「私はリーファ、よろしくね!」

 

「「ああ、よろしくな(ナ)!!!」」

 

そして、キリト許さん。

 

この女ったらし、人でなし、悪魔、何かのクズ紙にでもなっちまえ

 

「な、なんか凄い寒気が....」

 

体を震わせてそう言うキリトに俺は

 

ふっふっふっ....この怨念あいつに届け!!!そしてこんな事をした後悔をするんだな!!!

 

「はぁ...まぁいいか、ほら、行くぞ?」

 

は?何考えてるの?こっちに手なんか伸ばして.......まさか?!

 

「お前!!!ついにアルゴにまで手を出すつもりか?!」

 

アルゴを抱きしめながら器用に自分の背中にアルゴを隠す。

 

ぜってー渡さねぇ。キリトの毒牙には絶対かからせるもんか!!

 

「もう、こいつらどうにかしてー!!!!」

 

キリトの絶叫が響き渡る。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ユイから聞いたんだけどアルゴ達が言ってたサーバーも怪しいってやつあったろ?」

 

いきなりそう言い出したキリトは深刻そうに言ってくる。

 

「ああ、あれだろ?んーと、ユイの姿をトレース出来てることとこのゲームの制作期間をネットで見たけどそれも含めて多分、SAOサーバーのコピーか?でも、それだったら基盤が同じってことはグラフィックのパターン形式も.......ダメだ、俺からしたらこれが限界か。」

 

「ハーくん、オイラもそれは考えたけど、グラフィックがSAOの時と比べると僅かに落ちる気がするゾ?多分ベータ版のSAOのデータコピーじゃないカ?正規版のSAOよりも動きの正確性も少し落ちてるしナ」

 

「ああ、たしかにな、それはあまり考えてなかった。」

 

俺らで討論を始めているとキリトが信じられないような目で俺らを見てきた。

 

「お前らのリアル、探偵だったりする?」

 

「な訳あるか、アホ」

 

キリトは何故か動揺していた。リアルのことは御法度ということを忘れるほどに。でもなんで探偵?解せぬ.....

 

「だって推測がユイの行き着いたこととほぼあってるんだ。情報屋ってここまで推理できないとダメだったりするのか?」

 

「ん?そんなことないと思うヨ?情報仕入れて裏付けするだけだからナ」

 

「そ、そうか」

 

何に驚いてるんだ?誰でもこれぐらい出来るだろ?まぁ、少しはこういう推理系、好きではあるけど。

 

ーー相変わらず仲良いんだな?ーー

 

虚白か?

 

ーーおう、あまり驚かないんだな?ーー

 

なんかな、SAOから帰ってきた後にも会ってる気がして...まぁそんなわけないんだけどな?

 

ーーそうか、記憶が消え切ってないのか?まぁ分からないけどなーー

 

記憶?消える?なんの事だ?

 

ーーああ、気にすんな?どうでもいい事だからーー

 

そうか?まぁいいけどな。

 

ーーおーい、とりあえず前見た方がいいんじゃねぇか?ぶつかるぞ?ーー

 

ぶつかる?なんの事だ?

 

そう思いながらも意識を戻すと目の前に壁が現れた。

 

「「あらら.......塔にぶつかっちゃってるよ.......」」

 

見事にハモった2人の呟きが隣から聞こえてくる。

 

「大丈夫カ?ハーくん」

 

「ああ、何とかな...いてて...」

 

「にししっ...ドジだナ?ハーくん」

 

「うるせ、」

 

少し乱暴にアルゴの頭を撫でてから立ち上がる。

 

「よし、今日は遅いし明日からアルンに行くか?」

 

「そうだね、そろそろ家族のご飯も用意しなきゃだし。」

 

「俺はもうちょっと居れるぞ?」

 

俺が提案するとリーファとキリトが答える。

 

「じゃぁリーファはまたな?」

 

「ええ、またね?」

 

リーファはそう言ってから自分の部屋に戻った。多分自分の部屋でログアウトする気なんだろう。

 

「さてと、キリト、リアルの集合場所はどこにする?」

 

「ああ、エギルのとこでいいだろう。飯食ったら行くよ。」

 

「分かった待ってるから来いよ?」

 

そして俺はログアウトした。.......ってあれ?エギルの店ってどこだっけ?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「いや〜、まさかたっくんがエギルの店を忘れてるとはね。」

 

「行く時必死だったからしょうがないだろ....」

 

そう言い訳する俺が居るのはエギルの店だ。なんでかって?リアルでキリトと待ち合わせとちょっとな。野暮用だ。

 

「さてと、キリト来ないなー?」

 

「だね、あ、ほら!あれ、来たよ!」

 

肩を叩きながら言ってくる朋。キリトはなんか女子と男子1人づつと一緒に歩いてくる。それを見ながら俺は考えていた.......アルゴ.....

 

「マジで可愛いな?」

 

「む、だれが?」

 

ちょっと怒ったような顔になり不機嫌そうに言ってくる。

 

「お前が」

 

「なっ?!////あ、ありがとね」

 

「おう、そういう所も可愛いんだよなぁ」

 

うん、しみじみ思う。あ、

 

「そうだ、今度旅行行くんだけど、アルゴも来るか?てか強制な?」

 

よし!これで朋も来るだろう。朋がいれば10倍は楽しくなるぞ?!!最高じゃね?

 

「えっと.......家族水入らずで言った方がいいんじゃないのカ?」

 

なんか寂しそうに言ってくる。って、え?何言ってんの?

 

「アルゴもほぼ家族みたいなもんじゃん。一緒に暮らしてるし.......それに一緒に行きたいから誘ってるんだぞ?」

 

「そうカ?ならオイラも行くぞ!!!」

 

良かった良かった。これで3人だな。俺はこの3人で行きたかったんだ。ふぅ.......朋と行きたいからバイトしてたのにパーになるとこだったぜ......

 

「あのー.......そろそろいいか?」

 

「ん?キリ........和人と......和人の妹ってとこか?そこの女の子は。あと、誰だ?誰だこいつ」

 

「誰だろーナー?」

 

しらばっくれる俺たちに男は反応を見せる。

 

「おい!絶対わかってるだろ!」

 

「んー?なんの事かなぁー?」

 

うん、これで押し通そう。楽しそうだ。恨むなら自分を恨みた前。弄られる方が悪いのだよ。隼人君。

 

「よしっ、そっちがそんな考えならこっちにも考えがあるぞ?いいのか?」

 

「ん?いいよ?後ろめたいことなんてないからな!!」

 

「.......みんなー!!!!ハ....拓と.......んーとなんだっけ?ああ!!!いいや、アルゴとハキは同じ家に住んでいマース!!!そして夜はあんなことやこんなことを.....」

 

「してないわ!!!!」

 

あ、しくった.......たしかに一緒に住んでることは隠してたんだった。その後に言われたことしか否定してねぇ.......てことは.....

 

「え?!拓って朋と一緒に住んでるのか?!」

 

ほらぁー!!やっぱこう来たよ.......どう応えよう.....うわぁー...うぜぇー.......隼人のにやけ顔うぜぇ.......

 

「えぇーと.......な、どう言えばいいん「ああ、そうだヨ?」」

 

「ちょっ!朋?!」

 

おおーい!!!何してんだよー.......隠すって話したじゃんか?まぁいいけどよ。てか、妹さんどうしたんだ?

 

「あの.......和人の妹ってどうしたんだ?様子がおかしいけど.....」

 

見てみると、ハキって...それにアルゴ.......と、うわ言のように繰り返していた。

 

「もしかして、お兄ちゃんがキリトだったり?」

 

「え?そ、そうだけど....どうしてスグが知ってるんだ?」

 

お?衝撃の事実、キリトを知ってるとは.......ってもしかして....

 

「たっくん?気づくの遅いよ?」

 

「ってことは......」

 

もしかして、本当に?

 

「私だよ!リーファだよ!」

 

「え?リーファってスグなのか?」

 

とれそうなほどブンブン首を縦に振るスグと呼ばれた人。

 

「ゲームの中で会った人が運命の人とは.......キリト、やるな?」

 

「ぶっ......、運命って!?妹だぞ??」

 

「知ってるよー?んー?何を想像したのかな〜?」

 

やべぇ、からかうの楽しい。アルゴもこんな感じでからかってたっけ.......口調戻ってからかいも減った今じゃ、少し寂しくもあるな.......後でお願いしてみるか。

 

「拓.......お前.......あのことをバラしてもいいのか?」

 

「へ?あのこと?なんの事だ?さっきみたいな虚偽報告はノーサンキューだ」

 

キリトが耳元で内容を言ってくる。

 

え?ちょっ、待って?!それはダメだ!

 

「ごめんなさい、すいませんでした。」

 

「よろしい」

 

ア゙ア゙〜!!!......く!つ!じょ!く!屈辱!!!!

 

「お兄ちゃん達仲いいんだね?」

 

「おう!心の友だよ!」

 

「脅迫する側とされる側です。」

 

 

また人頓着あったのは言うまでもない。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

談笑が続き、その半ばで......

 

「なぁ.......朋、あのさ......」

 

今の拓は朋から見てすごく罰の悪そうな顔をしているのがありありと分かった。

 

「ん?何?なんでもたっくんのことなら聞くよ?」

 

だから優しく、聞く。受け止める。たとえ、どんな願いでも聞き届ける。

 

「あ、あのさ.......朋も苦労して口調直したのは分かる。.......でも、俺からして見たらやっぱなんか違うなって....」

 

どういう事だろう...不安になってきた。私は嫌われたのだろうか.......

 

「俺が出会ったのはSAOの頃のアルゴであって、SAOの頃と今の朋、どっちも同じぐらい好きだ!比べ物にならないくらい好きだ!」

 

そうか、嫌われてはいなかった。それがわかっただけで安心して聞ける。安っぽい女だって?馬鹿言え、たっくんだからだよ。

 

「だから.......例え、ゲームの中ではそうだとしても、SAOの頃の方も居ないとさ....さ、寂しいんだよ.......だから....」

 

 

そうか.......そういう事か。時々顔に影が指すのは。だったら私は.......いや、オイラは.....

 

2回目の告白を受け取った朋は.....

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「だから.......例え、ゲームの中ではそうだとしても、SAOの頃の方も居ないとさ....さ、寂しいんだよ.......だから....」

 

朋が顔を俯かせて考えるような仕草を見せる。

 

嫌われただろうか?鼓動がうるさい.......静まれよ.....いっその事止まれよ.....嫌われた?引かれた?そうだよな.......まだ昔にこだわってるんだもんな.......女々しいよな.......これから俺はどうすればいい......まずは...

 

 

「な、なーんてな、忘れて「こうカ?ハーくん?」.....へ?」

 

朋は顔を上げて声をかけてきた。懐かしい声で.......

 

「へ?とはなんダ?」

 

「だ、だって俺は朋に嫌われて.......引かれたから.....」

 

「はぁ.......ハーくんはバカだナァー.......オイラが大好きなハーくんを嫌うわけないダロ?」

 

ヤレヤレと手を持ち上げわざとらしく首を振ってくる朋に俺は、

 

「そ、そうか.......ありがとな、朋。」

 

万遍の笑みで抱きしめた。すると横から3人の声が.....

 

「「あのさ、俺たち(私たち)のこと忘れてない?」」

 

「ヒューヒュー。見せつけるねー!!!リア充ってどうなるか分かる?特に男の方。」

 

「知るか。」

 

うん、このいい雰囲気に水刺すやつは......今に見てろよ?

 

「んー?朋ー、なんにも聞こえないよなー?」

 

「そうだナ〜、なんも聞こえないゾー?」

 

そう言いながら俺らはナーヴギアを被り、からかってから逃げるようにアルヴヘイムに逃げた。

 

 

 

 

それからしばらく経ってキリト達と合流し、ただし隼人は居ないが.....

 

「いやー、流石にこのいい雰囲気に水刺すやつなんか居ないよなー?」

 

「居ないよナー?」

 

俺はアルゴをお姫様抱っこしながらキリト達に近づいていく。周りの視線が痛い.......が!!!知るか、そんなもん!

 

ふっふっふっ....どうだ...制裁じゃい!!!

 

「なっ?!.......アルゴはともかく、ハキまでアルゴみたいに.......」

 

苦しそうに胸を抑える。

 

「...ブンブンうるさいな?ハエか?」

 

キリトが膝を地面につける。

 

「...ハーくん、それくらいにしといた方がいいんじゃないカ?ゲームの中にハエは居ないゾ?それにそろそろキリトが泣くゾ?」

 

「泣かないよ!......」

 

 

それからしばらくキリトをからかい続けた。うん最後の方は涙目だったね、いやーあれは泣いてた!泣いてたに決まってる!!

 

「泣いてないって言ってるだろ!」

 

....なんで考えてることわかった?

 

......ハキはこの日からキリトをエスパーと呼ぶことに決めたのであった。......

 

作者コノヤロー、俺は呼ばないからな?

 

「おーい、そこの3人?着いたよー?」

 

「おおー!綺麗だな.......」

 

ーーおおー.......凄いな....ーー

 

虚白か?

 

ーーおう、あ、そうだ俺は今から少し用事あるからこれから話しかけられても反応できないからーー

 

え?ちょっとまてっ

 

ーーじゃぁなーー

 

おおー.......おーまいがー.......なんだよ用事って.......

 

「虚白が居なくなった......」

 

声に出して確認してみたが、そんなに虚無感は感じない。てか、最近、虚白何も話してなかったんじゃ.......マジかよ......

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「なんか、なんというか.......怖くて飛べねぇ......」

 

塔の窓から首だけ出して言い出すハキ。それを見かねたアルゴとリーファは

 

「ほら!男なら早くいけヨ!!」

 

「ほら!お兄ちゃんも!!」

 

「「うそーーーん!!!」」

 

アルゴは俺を、リーファはキリトを窓から放り出す。

 

 

必死になって飛んだ。うん、今までに無いくらい心の臓がバクバク言ってるぞ?!いや、嘘!!!アルゴが酔ってる時に迫られた時の方がバクバク言ってました!!!って誰に俺は言ってるんだ!!知るか!!

 

心の中でハキは1人漫才を繰り広げているとふと塔から出てくる人影に気付いた。

 

「シグルド......」

 

いつの間にか横に来たリーファがそう呟く。

 

「って、アルゴ何やってんだ?」

 

アルゴは窓から身を乗り出しては中に身を引いてを繰り返していた。

 

「アルゴ....まさか?俺にあんだけ言っといて飛べないとか.......らしいな.....」

 

俺はリーファとキリトとその他一名を置いて俺はアルゴに駆け寄る。もとい、飛び寄る。

 

「アルゴ、大丈夫か?」

 

「ハーくん.......」

 

あー結構高所にやられてるな.......

 

アルゴの顔を見て考えるハキはアルゴの背中に腕を回し、膝裏にも手を回して、お姫様抱っこしながらキリトの所へ戻る。

 

 

「前から思ってたんだけど、ハキくんとアルゴさんって、どういう関係なの?」

 

そりゃそうなるか、こんなにイチャついてたら。うん。ちょっとからかってみるか。

 

 

「ん?ああ、夫婦だったんだ」

 

「ちょっ!ハーくん?!」

 

「ん?嘘じゃねぇだろ?」

 

「そりゃそうだけどナ.......」

 

勝った。何にって?................何にだろ.......あっ、おい、今そこで笑ったやつ出てこい?

 

「はぁ.......始まった.......持病が出たか....」

 

なっ.......失敬な、俺は楽しくからかってるだけだっての。俺は持病なんて何も持ってないぞ?

 

「そういうとこが持病なんだよ。」

 

「ナチュラルに心読むのやめて?!ねぇ、なんで誰もかも俺の心読むの?!」

 

「なんか、聞いたらダメなこと聞いたよね?ごめんね?」

 

 

なんかすごく丁寧に謝ってくれる子が居るんですけど?何このいい子。なんでこんな子がキリトの妹なんだよ。勿体ないだろ?不釣り合いだろ?俺にだってこんなにいい子が妹に1人は欲し............................いや、しっかり者だったら俺は大学でバカやれないのでは?え?いや、でも大雑把だったら家散らかるし.......うん木綿季が1番俺にはちょうどいいな。キリトにはリーファが1番なんだろうけど。

 

「なぁ、ぷッ.....ス、スグ、」

 

「ん?何お兄ちゃん......」

 

やばい.......俺、やりすぎた?なんかしおれた花みたいに縮こまっちゃってるんだけど.......

 

 

「.......ハーくん?......」

 

「分かったよ...そんな目で見ないでくれ.......リーファ、さっきのは嘘でもないがほんとでもないんだ。」

 

笑いながらそう言うとリーファが

 

「そうなの?」

 

と聞いてくる。わざとらしく大袈裟にうなづいて、ハキは

 

「ああ、SAOで結婚してたってだけなんだよ。だからまだリアルでは恋人同士って訳だ。どうだ?安心したか?」

 

「安心したかじゃないだロ?!こっちも不安になったじゃないカ!!!」

 

悪い悪いと反省してない返しをしといてアルゴの頭の感触を確かめる。

 

「うん、SAOの頃より感触の再現がなってないな。」

 

「むー.......まぁいいカ」

 

諦めてくれたみたいだ。でも気持ちよさそうにしているのを見てると.......あっと、あかんあかん、理性が飛びかけだぞ.......ん?空飛んでアルゴを抱えてるのにどういう風に頭を撫でてるのかって?そりゃ抱っこして.......あ、そう言えば胸らへんにやわらかい感触が.......おおッ!!!俺の理性よ戻ってこい!!!

 

 

「むー.......何か変なこと考えてるだロ?......」

 

「ん?!な、何が?!」

 

 

てか、(むー)て.......天使かッ!!!いや元々だ!!!ああっと、俺の理性よどこに行くのだ?........

 

 

 

「おい!お前ら!!どれだけ俺を無視すれば気が済むんだ!!」

 

ん?なんか声掛けてきたぞ?こいつ誰だ?なぁ、なんだっけ.......ナグルゾだっけ?随分、喧嘩腰だな。まぁこいつのおかげで俺の理性は保たれた。

 

「んで?ナグルゾさんが一体なんの用で?」

 

「誰だ!それは!!俺はシグルドだ!!」

 

「そうかそうか、でなんの用?」

 

シグルドだったか。いやぁ〜、惜しかった惜しかった。で?俺ら急いでるんだけど?早くしてくれませんかね?アルゴとのイチャイチャ時間を返せ!!!

 

「リーファ、お前、領地を捨てるのか?」

 

捨てる何言ってんだ?遠出するだけだろ?

 

「ええ、捨てるわ」

 

え?!ちょっお前も何言っちゃってるの?!これって俺のせいだよね?!このゲームのことはよくわかんないけど、それって重大な事だよね?!

 

「待って?!待って?!それって俺らのせいだよな!!!謝るからァー!俺、そんな重大な「もういいの!!!私が決めたんだから!!!」さ、さいですか」

 

あっという間に解決だよ。

 

「で?ナグルゾさんは何を言いたいんだ?」

 

「違うわ!!!私はシグ「ハイハイ、で?さっきから俺は聞いてるけど、俺は黙って首切られるなんの用?いい加減答えろよ」」

 

うん。我ながら理不尽だな、自覚はある。でも話が前に進まないんだ。だからさっき使ったのは許してくれよ?ナグルゾ。

 

「ハキ、なんでニヤニヤしてるんだ?」

 

「ん?してたか?」

 

「もう、兄ちゃんたち、うるさい!!!」

 

「「すいませんでした......」」

 

怒鳴られてしまった。これもあれもナグルゾのせいだ!!

 

 

「なんなんだ、お前らは.......」

 

「心の友と妹です」

 

「脅迫する側とされる側とする側の妹です。」

 

「はぁなんなんだお前らは....」

 

「ナグルゾさん、それ二回目」

 

「はぁもう突っ込まないぞ.......」

 

「で?要件は?」

 

「今から言うわ!!!」

 

うん。ナグル....シグルド......不憫

 

シグルドは一呼吸置いて言った。

 

「リーファを引き抜くなら俺と戦え。2人ともだ。それで勝ったら引き抜くことを許す」

 

そう言って剣を構えた。




うお.......1万文字超えた.......過去最高記録だ.......いや、軽く自分に引いてます。俺がここまでかけると思ってなかったから.......いや、結構俺の中でアイデアが湧いて来てた回ではあったんだけど.......11464文字.......次の話からはいつもどうりの文字数になります。


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14話 感覚のズレと無口な少女

遅くなったァァ!!!やばい.......普通にこの小説忘れてたわ.......あ、いや、忘れてないよ?!他の小説書いてただけなんだからね!!!.......男のツンデレはキモイということがわかった..............すいませんでした!!他の小説に夢中になってました!!!あと白テニ!!!ってことで一緒にやってくれる人募集中!!!

そらどうぞ!!!


俺を倒してからいけ.......見たいな奴ほんとにいたんだ.....

 

「えっと.......リーファとナグ.......じゃなくてシグルドって付き合ってるの?」

 

「「な訳あるか(ないでしょ)!!!!!!」」

 

ですよねぇ.......なわけないですよねぇ.......

 

「でもじゃぁなんで?」

 

んー.......解せぬ.......だってさ?!そんなにここにいて欲しいって思うのって独占欲でしょ?!俺だってアーちゃんに対してもあるし.......そうじゃないって言うのは....

 

「自慢じゃないけど、私ってランカーなのよ。結構古参なの、私」

 

リーファの実力でランカー.......ランカーって意外と普通?攻略組にも何人かいたけど.......いや、まだ原石か。サラマンダーと戦ってたのを見て思ったけどな.......キリトと俺とアルゴで鍛えればおそらくは......よしっ.....まずは....

 

「俺がやるか.......ほら、来いよ、シグルドさん?」

 

ハキがアルゴを離して安定したところで口を開いた。

 

「お前倒したらいいんだろ?」

 

暗に俺の方が強いと伝える。するとそれに苛立ったのか、俺に口調を強めて構えていた剣を方に担いでこっちに喋りかけてくる。

 

「ほう?そんなに大口叩くならそれなりに強いのだろうな?」

 

「おいおい、方に担いだら反応出来なくなるだろ?その癖やめろよ。ソードスキルある訳じゃないし......」

 

「....ッ...知ったような口を!!!お前にはこれで十分だ!!」

 

図星らしいな。分かってるだけ上々か.......

 

「 So that's it...... try to prevent it(なるほど.......なら防いでみろ)」

 

最大限の煽りを込めて英語で返してやると意味がわかったのかわからなかったのかさらに怒り出した。

 

あちゃー.......こいつはダメだ.......こんなんで取り乱すとは.....

 

「はぁ....じゃぁ行くぞ」

 

「ふん.......引導渡してやる。」

 

それを聞いた時が最後だ。

 

ハキがそう思いながらも最大限の力を使い、移動を開始した。

 

「って、あれ?」

 

ちょっと待って?!上手く動けねぇ.......感覚が.......いや、動けるはずなんだ....何故かアバターが言う事聞かねぇ.......

 

「ヤバっ.......現実に慣れすぎた.......」

 

2年間ずっと仮想世界に居たとしても現実世界に半年もいて、仮想世界にほぼ触れなかった。ハキは半年のブランクを背負って戦っている。

 

「んー.......これじゃ手加減できねぇな.......」

 

この手加減と言うのもアニメとかマンガとかに使われるものとは違う。ここで言う手加減は力が加減できないのだ。つまり......

 

「力が0か100しか出せない.....」

 

「何ブツブツ言ってる!!!クソっなんで攻撃が弾かれるんだ!!!」

 

傍から見たら子供ががむしゃらに振った棒を大人がその場から動かずに軽くあしらっているような.......しかも暇そうにハキはあくびをしながら。

 

「貴様!!舐めているのか?!なぜ動かない!!!」

 

「だって思いの外弱すぎて動いたらお前一瞬で終わるだろ。今は手加減できねぇんだ。俺だって上手く動けねぇから止まってた方が確実だろ?」

 

「なッ.......クソぉぉおおお!!!!」

 

その叫びさえもハイハイ、ガンバ?と言って軽くあしらう。

 

ハキ達はSAOというデスゲームでのランカーだったのだ。経験の質が違う。

 

「じゃぁレッスン1だ。俺らはSAOでのなんだったでしょう?」

 

「知るか!!!」

 

「ブッブー。正解はランカーのTOPスリーのうちの一人だ。まぁ攻略にはあまり出てなかったが......」

 

自慢するでもなくただ、悲痛な顔で言うハキは続ける

 

「レッスン2、SAOでのランカーとはどんな意味があるでしょう?」

 

「ちっ.......こうなったら.....」

 

無視を決め込んだのか、俺が動かないことをいい事に距離をとって詠唱を始めるシグルド。それにハキは愚策と言うように初めて自分から動いた。だが.......

 

 

 

 

動いた瞬間シグルドの背後に来てしまった。

 

 

やっべぇぇー!!!やっぱ加減出来ねぇわ!!寄りにもよってすぐ後ろかよ!!惜しかったけど惜しくねぇ!!こうなったらカッコつけさせてもらうぜ!

 

「こ、答えはな.......背負うものだよ。」

 

「なっ......いつの間に後ろに.....」

 

いいぞぉー?意外と失敗がかっこ着いた?

 

「なぁなぁ、アルゴ、あれってただ単に加減間違っただけだよな?」

 

「そうだナ.......それになかったことにしようとしてル」

 

かっこついてなかったァァァ.......はっず!!恥ずいわ!!!

 

「攻略には背負うものが山ほどある。羨望、嫉妬、信頼.......それに命だ。皆は色々心の中に気持ちを押しとどめてそれらをトップの連中に押し付けてくる。それはデスゲームだからこそでそれには多大なプレッシャーになっていた。」

 

現に死んでったやつなんて山ほどいたしな.......と続けるハキにシグルドがついにたまらず質問をする。

「.......何が言いたい」

 

「経験が違ぇんだよ。2年間ほぼずっと戦ってたんだぞ?そりゃ経験なんて嫌でも身につく。」

 

「それは俺だって長くこのゲームで戦ってる!!」

 

「それは死ぬっていうプレッシャーが無い所でだろ?」

 

いつの間にか剣戟は止んでいた。ただただ、2人の声が響くだけ。

 

「SAOのプレイヤー.......主に攻略組は死ぬ可能性のプレッシャーを二重に抱えて耐えてたんだ。モンスターに殺されるかもしれない。明日は生きてないかもしれない。明日、現実世界の体が死ぬかもしれない.......ってな」

 

「..........」

 

シグルドはただ、黙るしかなかった。それは理解していたとしても、してないとしても。

 

「それにトップの奴らは大体βテスターかそれに関わってたヤツら.......誹謗中傷、あらぬ噂、嫉妬、暗殺.....そう言う普通のやつらなら病んでも仕方ないようなことにも耐えていた奴らだ。そんな状況で攻略に参加するなんて並な勇気じゃねぇよ。」

 

「帰ってこない兄を待ち続けてる家族が居たり、SAOから帰って来た兄を元気づけるために難病から復活した妹が居たり、まだ会えてないSAOでできた親友が居たり、SAOで知り合って一緒に生活して思い出を作って来たのにまだ帰ってこない人が居たり、それを待っている人が居たり......」

 

ハキは一緒に頑張って、泣いて、喜びを共有し合った仲間たちのことを考えながらポロポロと次から次へと口から出てくる。

 

「それらを全て背負って戦ってきた奴らがいるんだよ。それをお前は貶した。それぐらいでなんだ?と思ってるかもな。だがこれだけは言っとくぞ?」

 

ハキは剣を振り上げ今までに1番の憎悪を滾らせ言った。

 

「死んでもいいゲームなんてぬるいんだよ。人はアイテムじゃねぇぞ?」

 

そう言ってハキは剣を振り下ろした。あっけなくなんか光ったものになった。

 

 

「おーい!リーファ、なんか遊戯王で言うところの死者蘇生的なのないの?」

 

結構昔のゲームだな.....俺が幼稚園ぐらいのやつだ....あれ?じゃぁわかんないんじゃね?

 

「遊戯王?.......死者蘇生なら.....でもここではハキさんの攻撃は効かない筈なのに.....」

 

「ああ、それならなんかシステム支配してデュエル仕様にした。」

 

あ、伝わったらしい、良かったぁ.......なんか驚いてるけど無視だ無視.......説明めんどいし。あ、生き返った。

 

「さてと、リーファは連れていくぞ?」

 

「クソっこの俺が......」

 

なんか言ってるけどあれだけ言って聞かないなら無視だ無視。

 

「はぁ.......皆、行くぞ。」

 

「あア、ほら、キー坊達も行くゾ?」

 

「あ、ああ.....」

 

「う、うん」

 

先を飛んでいるハキを追いかけるようにみんなが着いてくる。

 

「なぁなぁ、リーファ」

 

「ん?何?」

 

「なんか、ごめんなさい.......大変なことになったみたいだから......」

 

「あ、ああ、いいよ、別に.......元々外には出るつもりだったし....」

 

そう言いながらリーファはキリトの方をチラチラと盗み見するのを俺は見逃さなかった。

 

これは.......ほうほう、そういう事か.......ふっふっふっ

 

「そうか.......そう言ってくれると俺も嬉しい.......」

 

「まぁ、これからよろし「ところで!」」

 

ハキが遮るように声をかける。

 

「最近、キリトとはどうだ?」

 

意地悪な笑顔を向けて言い放った。

 

「ちょっ!!!ハーくん?!」

 

アルゴがなんか言ってくる。うんアルゴも気づいてたんだな?

 

ハキは耳元で言い放つ

 

「これをからかわずには居られないだろ?」

 

何を考えたのか、アルゴは顔を赤くしてしまった。

 

「こ、こちょばぃ................」

 

あ.......そういう事か.......道理でその反応なわけだ.......これは.......からかいチャンス!!!

 

「はむっ.......」

 

「きゃッ.........」

 

ふっふっ甘噛みはどうだ?反応が可愛くてヤバいんだが.......続けよう!!

 

「ハムハム..............ん〜.....」

 

「あっ....いやっ.......きゃぁ!.......」

 

あ、俺の理性がやばい.......どうしよう.......手放そうか.......バイバイ俺の理性!!!

 

「あ、えぇっと......」

 

あー.......リーファ困ってるな。でもおかげで理性を.......俺、今惜しいことしたんじゃないか?ログアウトしたらエギルの店.......これ完全に損してるじゃん!!いや、今ならまだ間に合う!!!

 

「あ、あのさ、アーちゃん。ログアウトしよ?」

 

甘噛みしていた口を一旦避けて言ってみる。すると.....

 

「あ.......どうして?」

 

切なそうな声を上げた後、アルゴの口調も忘れて聞いてくる。

 

「ん?今日、イチャイチャしたいから。まぁ、いつもしたいんだけどさ.....」

 

決まってんじゃん。いつもできるもんならやってるわ!どこかで必ず邪魔が入るんだよ!!前だってアスナが押しかけてきて邪魔入ったし。クソっ.......俺だって偶には彼女に甘えたい.......だって男だもん!!

 

「......ん.......いいゾ.......ただし、これ終わってからだからナ?」

 

ええー.......って言いたいのを必死に堪えた。それも甘噛みしながらこらえた。まぁ、腰を下ろして、後ろは木だからみんなには甘噛みしてんの見えてないだろうけど.....位置的にリーファは見えていたが.......

 

「.......わかった.......どっちみち家は一緒だからな、時間ならいくらでもある。」

 

そう。俺らは一緒に住んでいるんだ!!!もう1回言うか?

俺らは!!!一緒に住んでいるんだ!!!

 

「ニシシッ.......楽しみにしてるヨ、ハーくん。」

 

お?動揺が収まったか?そうかそうか.......それは良かった.....

 

ハキは口をアルゴの耳から離す。

 

でも、このままじゃ物足りない.....

 

「アーちゃん、声出すなよ?」

 

「エ?」

 

1回念を押しとかなきゃさすがにバレるからな.......

 

ギュ.......

 

前からモフりたいと思ってたんだ。前は何回か揉んだだけだから。でも、変な感じってどんな感じなんだろう....今度聞いてみるか。

 

「っー…ふ、ぁ‥ぁ!」

 

「へ?」

 

今の反応で変な感覚の意味がわかった気がする.......なんかごめん

 

「せめッ.......て、あっ・・・ちで......」

 

あっち?え?!このままモフっていいの?!

 

「ハキさんは何をやっているのですか?」

 

なっ?!なんでここにユイが!!!

 

「あっと.......ええっと.......ゆ、ユイちゃん?その笑顔は....」

 

すごい満遍の笑顔.....

 

「ALOでの猫妖精のしっぽの感覚のサンプリングは現実世界のせいこ「あ〜〜〜!!!!!!ユイちゃん!ストップ!!ストーーップ!!!」はい?」

 

何この子供!!凄い怖い!!!なんでも知ってる感がすごい!!!コ!ワ!イ!

 

「人には色々あるの!!あまり突っ込まないでくれ!!」

 

「そうですか.......変なこと言ってごめんなさい.....」

 

「え、あ...ちょっ.......俺も言いすぎた.....」

 

「いいえ.......こちらこそごめんなさい.....」

 

ど、どど...どうしよう?!女の子泣き止ませるスキルなんて持ってない!!!この場合精神的に!!!

 

「いや、俺が悪かったんだ!!!えっと.......飴.......いる?」

 

「....はい!!」

 

よ、よ〜しっ!!!危機は乗り越えた!!

 

「ハーくん.......それはないと思うゾ.......」

 

.......乗り越えてなかった.......

 

「じ、じゃぁアーちゃんならいい案あるのか?(耳元で)」

 

「え、えっとナ〜.......あ、そうダ!ユーちゃん、今度肩につけるやつで色々と現実世界で連れて行ってあげるから許してクレ!」

 

「アーちゃん.......」

 

アーちゃんも大概じゃねえか?やっぱアーちゃんは尊い.......だって今まさに恥ずかしそうにしてるもん。こいつに惚れないなら誰に惚れる!!!ってぐらいに可愛い.......けど誰にも渡さん!!!キリトには触れもさせん!!!

 

「む.....しょうがないじゃないカ!!!泣いてる女の子を慰めるスキルなんてオレっちにあると思うのカ?!」

 

「.......いや、可愛いからプラマイゼロ。寧ろプラスに振り切ってる。」

 

「何言ってるんダ?!」

 

分からないかぁ.......自分のことは気づきづらいって言うからな.......俺はそういうアーちゃんも可愛いと思っている。(๑•ω•́ฅ✧キラン

 

「いや、可愛い.....」

 

「この人達、会話になってないです.......」

 

ユイちゃんがなんか言ってるけど、こっちはアーちゃんの可愛さを心という名のアルバムに刻むのだ。

 

ーー.......どんだけお前はデレてんだよ.......ーー

 

あ、虚白。お早いお帰りで....

 

ーーなんで残念そうなんだよ....ーー

 

ん?だって、虚白がいない間、真に2人っきりっていう感じがして.......なんて言うか.......ね?

 

ーーね?じゃねぇよ!俺は邪魔者ってか?!俺は剣に宿ってんだから剣を目の届かないとこに置いたらいいだろ.......ーー

 

その手があった......

 

ーーはぁ.......まぁいいや。本題に行くぞ?単刀直入に言って、ユキの修復がやっと終わった。ーー

 

.......え?!今なんて言った?

 

ーーだから、会えるんだよ。ユキにーー

 

.......冗談じゃねえよな?

 

ーー当たり前だろ....そんな深刻な嘘はつかねぇよ.......ーー

 

 

 

ハキは現実世界に意識を戻した。

 

ーーあ、おい!まだ話し................

 

俺はそれどころじゃねぇんだ.......ユキに会える.......ユキに.......会える。

 

「アーちゃん.......ユキに.......会える」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「アーちゃん.......ユキに.......会える」

 

アルゴは目をまん丸く開きこう言った

 

「なっ!!!本当カ?!」

 

「ああ、虚白が言ってた。」

 

遂に.......遂に会える。長かった.......日々が地獄だった.......思い出さなかった日は無かった。

 

「呼び出し方法は?」

 

「........」

 

聞くの忘れてた.......でもユイちゃんと同じパターンなら.....どうやったら出てきたのか聞いといてよかった....

 

ハキは黙ってアイテムウィンドウを開く。下にスクロールしていくと.....

 

「あ、あった.......」

 

そこにはMHCP000(メンタルヘルスカウンセリングプログラム試作0号)という名のアイテムがあった。それを取り出すと淡く光り出す。

 

「これが.......ユキなのか?」

 

答えはかえってこない。ただそこには確信があった。少なくとも俺には.......

 

「アーちゃん、行くよ?」

 

覚悟を決めて.......

 

「アア.....」

 

お互いの意志を確かめ合い

 

「よし.......」

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、周りにはキリトたちが集まっている。が関係ないとばかりに無視しそのアイテムに向かって2人で囁く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「帰ってきて(くれ)..............ユキ」」

 

 

 

辺りを真っ白の光で覆い尽くす。今までの全てのことを洗い流す様に.......今までの孤独を拭いさろうと.......

 

色々と考えているうちに段々と光が弱まっていく。人影が浮び上がる。中から現れたのは中学3年ぐらいの背丈の女の子。髪はロングの白髪で後ろで束ねてそのまま下ろしている。

 

「ただいま.......お父さん、お母さん......」

 

そう言って僅かに微笑んだ。




ぬぁぁぁぁぁああああ!!!ずっと出したかったユキちゃん!!いやぁ.......イメージは固まってるのに全然出せなかった。.......それはね、



俺が白テニやってたせいです!!ごめんなさい!!!

これからはちょくちょく更新できると思います。よろしくお願いします!!!まぁ、白テニはやるんだけど......


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15話 ユキ

いやぁ.......この章をどれだけ待っていたか.......設定盛モリすぎてちょっと意味わかんない外伝はまた今度書きまーす!!!

ってことで
ほなな、どぞ!!!


「ただいま.......お父さん、お母さん.....」

 

俺は思わずユキに抱きつく。ずっと待ち望んでいた再会。一年以上の会えなかった日々はアーちゃんが居たから耐えれたものの、居なかったら今ごろ俺はどうなっていたのか....

 

「ユキ.......おかえり.....」

 

アルゴもユキに抱きつき、涙を流しながら.......懸命に口を動かしながら掠れた声で言う

 

「ユキ.......おかえり....」

 

同じ言葉.......それしか言えないのだ。嬉しすぎて.......安心して.......彼らにとってその言葉は気持ちを最大限に伝えようとした結果出たものなのだ。それはユキにも分かっていた。だから.....

 

「.......ん....」

 

元から無口なのもあるが、簡潔に.......そして感謝の気持ちを込めたものだった。それはハキ達にも伝わった。

 

「ただいま.....」

 

そうして、ハキとアルゴを抱きしめるユキという少女は満たされたように少し微笑んだ。ユキは普段表情を表に出さないだけにかなりレアな事だがそんなことは微塵も問題にならないらしい。

 

ただただ、ハキとアルゴは再開の喜びに浸り、ユキの温かさを感じていた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

んー.......やっぱりユキはユイと同じナビゲーションピクシー扱いなのか?

 

そうハキが考えをめぐらせるとユキが首を振って察して答えてくる。

 

「ううん.......私は.......プレイヤー扱い。プログラムが、欠損してたのが問題みたい.........」

 

「そうか、そうだ。おーい!キリト!」

 

「ん?どうし.......」

 

キリトが固まる。ユキを見たまま。そりゃここに居ないはずの人を見たりしたらそうなるわな....

 

「ラグってんの?それともユキに惚れた?でも渡さん!!!」

 

「そうじゃねぇよ!!!」

 

ユキをさっき離したのにも関わらずまたキリトから守ろうとユキを抱きしめる。すると......

 

「ん、お父さん、なんか目の前にウィンドウあるんだけど.....」

 

ん?あ、そうか、強く抱きついたから.......って結構前からじゃね?!それ!絶対そうだよな?!最初に抱きついた時からだよな?!

 

「ユキ!それは押すな!お父さんがBANされる!!!」

 

焦って頑張って説得しようとしていると.....

 

「お姉ちゃん!!!」

 

ユイが突撃してくるじゃありませんか............何処のリフォーム番組だよ。

 

「ちょっ?!ユイちゃん!まっ.......グホッ......」

 

ユキに突撃して来たユイに横から抱きしめていたせいで脇腹にユイちゃんの頭がクリーンヒット。痛いです。まぁ、ユイちゃんは痛くなかったらしいし良かった良かった。.......良かったのか?いや、良かったんだ。呑み込め。それが事実....

 

意味不明なことを考えているハキには天罰を.......(By作者)

 

「むー.......」

 

「え?あ、あの.......アーちゃん?」

 

なんか唸っているアルゴにハキは居心地が悪くなりユキを離す。

 

「ん!」

 

アルゴが腕を広げて俺の方に向けてくるんだが.......どういうことだ?

 

「え、えっと.....」

 

「「抱きしめて」ってことだろ?気づけよそれぐらい。」

 

一言多い方が人化した虚白。もう1人はキリト。そして.......

 

「え、えっと...その.......」

 

キリトをちらちら見てモジモジしてる人が1人.......

 

って、え?!何このカオス状態!!!

 

うーんと?ちょっと状況を整理しよう.......

 

①ハキ、アルゴはユキと感動の再会

 

②アルゴが抱きしめるのを強請ってくる

 

③ユイがキリトを見てモジモジしてる

 

 

もう一度言おう。何このカオス状態!!いや、アルゴが俺に強請ってくれるのはすごい嬉しいよ?で、問題はユイだ!焦れったいなぁ.......

 

「キリトー、ユイが抱きしめて欲しそうに見てるぞー?ヒューヒューアツアツだねぇ?」

 

ハキはアルゴを抱きしめながら言った。すると当然キリトも言いたくなるわけで.......

 

「お前にだけは言われたくないわ!!だいたい俺らは親子.......」

 

「.......パパ?」

 

これからキリトがながーい話をしようとしてたんだろう.......だが.......

 

「あーあ、ユイちゃんを泣かせた〜。この情報はいくらかなぁ.......」

 

「5万ぐらいじゃないカ?」

 

「地味に高いわ!!くそぉ.......売らないでください、お願いです。ゴメンなさい」

 

速攻で謝ってきてる。変わりみ早っ.......でも、いやぁー気分がいいなぁ?ふっふっふっ.......もっと遊んでやるか.......

 

「ユイちゃん〜?キリトの胸はどうだい?」

 

「すごく逞し.......(ハッ!)」

 

「にししっ.......ユイちゃんも大胆になったナ〜?」

 

「もう、嫌だァ.......」

 

キリトがなんか言ってるけど無視だ無視。

 

「えい.......」

 

「あの.......ユキ?なんで俺の頭をチョップしてるの?」

 

「んっ.......」

 

俺に向かって腕を広げてくる。

 

「ったく、うちの女達は甘えん坊だなぁ.......」

 

そう言ってハキはユキとアルゴをまとめて抱きしめる。

 

「それにしても、アルゴって変わったよなぁ?前はからかいが生き甲斐!って感じだったのに」

 

どうしたんだ?落としに来たのか?なぁ?アルゴを堕としに来たのか?!

 

「キリト.......てめぇ、ついに本当にアルゴまで.......」

 

「え?!え?!なんでなんで?!」

 

しらばっくれるなよ?てめぇの魂胆は見え見えなんだよ.......

 

「アルゴに手を出したらぶっころ「「んっ!」」あ、あの.......なんで俺は2人にチョップされてるの?」

 

「キー坊が女ったらしなのは今に始まったことじゃないだロ?」

 

「うん.......うん.......」

 

「そうですね、パパ!浮気はダメですよ?もっと自重してもらいたいです!」

 

お、おっふ.......結構な重攻撃.......俺がくらったなら立てなくなる自信しかない.......現にキリトは膝から崩れ落ちてるし.......

 

「え、えーと.....どんまい.......キリト」

 

「うっうっ.......お前のせいだよ.......」

 

俺のせい?なんの事かなぁ?

 

「ねぇ、私たち、完全に空気なんだけど.......」

 

「だな.......」

 

「所で.......貴方誰?」

 

「俺は.......説明めんどい。ここは小説の世界.......ならこれも伝わるだろう.......かくかくしかじか四角いムーブって訳だ。」

 

「事情はわかったけど小説って?」

 

「.......わからん」

 

 

 

こんな会話があったのは2人以外誰も聞いてなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「お父さん、抱いて」

 

「ぶふぁっ!!!!」

 

口に含んでいたコーヒーまがいの液体を勢いよく噴射する。

 

「な、なんて言った?怒ってあげるから言ってみて?」

 

「.......て、.......」

 

「ん?」

 

「構って.......」

 

ん?あ、そうか.......寂しかったんだな.......そりゃ、すごく時間が空いたからな.....1年か?

 

「はぁ.......そんなに回りくどいこと言わなくても.......ほら、」

 

そう言ってハキは腕を広げて膝にスペースを開けてこっちに来るように.......誘うように言う。

 

「.......ん!」

 

少し微笑みながら俺に抱きついてくる。.......ってか、突進.......

 

「んぐっ.......」

 

何とか勢いを殺して受け止めるハキは鈍い息を吐いてからほっと安心する。

 

「おい、勢いがありす.......ぎ...........る.......」

 

どんどん声が小さくなる。尻すぼみになっていく。原因は.......

 

 

「.......グスっ....おとう....さん.......寂しかった.......」

 

腹の辺りに水っけを感じたからだ。そう、ユキは泣いていた。

 

「.......ユキ、ゴメンな?もっと早く迎えに行くはずだったのに.......」

 

「.......ううん.......」

 

強く、強く抱き締めて何度も何度も

 

「ごめん.......ゴメンな?.......」

 

「ううん.......」

 

何度も何度もユキに伝える。

 

「会いたかった.......お父さん.......」

 

「ああ、俺もだ.......俺も」

 

一呼吸開けて言う

 

 

 

 

 

 

 

 

「会いたかった。俺もユキと.......会いたかった.......」

 

 

会いたかった.......ずっとずっと3人で.......

 

 

「暮らそう.......いつまでも.......」

 

「私、AI.......」

 

「わかってる。」

 

「私、ゲームの中でしか.......」

 

「必ずリアルにも来れるようにする。」

 

「絶対だよ?」

 

「ああ..............」

 

確かな約束をする。確かに覚悟し、確かに誓った。今はまだ叶わないけれど、確かに決意し守ろうと.......




いやぁー.......すぐ更新できるとか言ってすいません.......他のSSに目移りしてて気づいたら.......(土下座)

本当にすいませんでした!!!!

って事で不定期でちょくちょく頑張りマース.......では、また次話で.......ってかさ?!自分で書いててなんだけどユキ可愛くね?!.......ゴメンなさい.......


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16話 アルン

久しぶりの更新!今回はうん 。弁明のしようもありません。ゴメンなさい。ストックは一応作ったからこれからは2日二一回更新になりそうだよ。ではどうぞ!


 

「ユキ!初期動作見ればどこ狙ってるかはわかるんだ!目をつむんないで相手の動きを見ろ!」

 

「.......」

 

こくんと頷くユキ。それを見てまた剣を交じ合わせる。ユキの成長速度は目まぐるしいものがあった。なんでも1回で吸収して動きに反映させる姿は圧巻としかいいようがない。

 

「いやぁー、本当にすごいナ?」

 

「そうですね.......プログラムだからでしょうか?」

 

そうリーファが言った瞬間隣にいたアルゴが苦い顔をした。

 

「そう.......だナ。でも余りユキやユイちゃんのことをプログラム扱いしないでくレ.......変かもしれないケド、オレっち達と同じ知性を持ってるんダ」

 

「あっ.......ご、ごめんなさい!」

 

そう言われてはじめて気づいたのか、リーファが慌てて謝る。

 

「いいサ、まぁハキもオネェさんも最初はそういう感じだったからナァ〜。人には言えないんだケド.......リっちゃんだから特別ね!」

 

そう暗い雰囲気を吹き飛ばすように務めて明るく振る舞うアルゴそれに対してリーファは.......

 

「り、リっちゃん?!」

 

「ん?嫌だったカ?」

 

「い、いや、そういうことじゃないですけど.......そう呼ばれたことがないので.......」

 

「ほうほう.......とりあえずこれは情報料取るようなものじゃないな.......」

 

「え?もしかして売れそうだったら売るつもりだったんですか?!」

 

「そりゃそうサ!なんたって鼠のアルゴと黒剣ハキはコル積まれたら自分のステータスだって売ってたしナ!」

 

「俺は売ってねぇよ?!」

 

ハキが稽古が終わったようでこっちに来る。それはそれは可愛らしく剣を前に抱いて歩いてくるユキと一緒に。

 

「え〜?.......」

 

「なんだよ、その“え〜“は!現に売っちまったらレッドギルドからアルゴを守れねぇだろうが.......」

 

「あ、そうだったネ?にししっ.......」

 

最近、アルゴの小悪魔っぷりがすごい増えてきた気が.......嬉しいけどからかい甲斐が無い.......もう、ウブなアルゴは居ないのか.......

 

「あー、所でアルゴ.....ユキの成長速度早すぎて軽く自信なくすんだけど.......」

 

なんとなくいたたまれなくなって話題を強引に変える。

 

「そんなになのカ?ユキすごいナァ?」

 

「よしっじゃぁ次は俺と.......」

 

「.......キリトはユキでさえ落としそうだからダメ」

 

「なんで?!」

 

あらら.......でも、アルゴもユキの可愛さに陥落ですか.......

 

「あ、そう言えば絶剣って知ってます?」

 

「なにそれ、体育会系チックな名前.......」

 

「ゼッケンじゃないですよ!絶剣!!!」

 

お、さすがリーファ、キリトの妹だけあってツッコミ冴えてるぅー

 

「最近すごく強いプレイヤーらしくてさ!通ってる喫茶店あるらしいんだよ!それでさ、行ってみない?」

 

 

「ってか、あれ何があったんだ?あの、洞窟で別れた時のやつ。」

 

そう、俺らは一回アルゴと俺、リーファとキリトで別れてアルンを目指すことになった。そして、今ここでまた集結したのである!!!って大仰なことの様に言ったけど、実際なんで別れたかなんて知らん。

 

「え?!あ、いや.......インプには関係ないかなぁ.......なんて.......」

 

「ひどっ.......」

 

「オレッチは知ってるけどこれは流石に漏らしたらケットシー全体に迷惑かかるからナァ.......ごめんね?ハーくん。お詫びって言ったらなんだけど、アーちゃん助けたらめいいっぱいイチャイチャしようナ?」

 

「よォっし!元気百倍!1ミリも落ち込んでないもんねぇー!!」

 

この場にいるアルゴとハキ以外.......ユキやユイまでもが現金なヤツ.......と呟きそうになったという。

 

__________________________________________________________

 

 

「ここが噂の何とか剣って人が通ってる店なのか?」

 

「うん!そうだって聞いた!」

 

聞いた.......一気に信憑性が無くなった.......ってあれ?まさかっ!

 

「あれってもしや木綿季か?アルゴどう思う?」

 

「髪の長さは違うけど間違いなさそうだね.......」

 

アルゴも驚いているようで素の喋り方に戻っている。

 

「紫単調の服装、目が赤い.......特徴が一致してる!あの人が絶剣だよ!」

 

「へぇあの人.......強いのかな.......?」

 

リーファとキリトがなんか言ってるがこの再無視だ。なんでこのゲームやってるか問い詰めてやる!あ、優しく聞くってことね?ユウキは元気だけど溜め込んだりして傷つきやすいからね、ちゃんとやさ〜しく〜.......

 

「よっ、木綿季!」

 

「えっと.......お兄さん、誰?」

 

おっふ.......アバターが現実と違うからか.......髪の毛とか、インプで肌色も濃いし.......

 

「俺だよ、俺!」

 

これでわかるでしょ.......

 

「えっと.......もしかしてナンパ?」

 

「実の妹をなんぱする奴がいるかっ!」

 

俺はナンパ兄なのか?.......結構ショック.......うわぁ.......

 

「え?もしかして拓にぃ?」

 

「そうだよ.......ナンパ兄か.......俺はなんぱしてない........ナンパなんてしてない.......でも妹が可愛いことには違いない.......」

 

「えっと.......ごめんね?」

 

「あはは.......、いいんだよ。それより、木綿季アバター名教えてくれ!リアルネームは色々とまずい........俺はハキだ。」

 

「えっと.......アバター名はユウキです.......」

 

.......は?え?いや、え?リアルネームそのまま?身分バレとか怖くねぇの?いやいや、え?でも呼び慣れてて良いんじゃなかろうか.......

 

「そうか、ユウキ、手伝って欲しいことがある。」

 

__________________________________________________________

 

 

「へぇ〜、そういうことならボクも協力するよ!」

 

世界樹のことを話し終えた瞬間ユウキは話に乗っかってきた。それも.......

 

「世界樹かぁ.......強い敵いるのかな?.......」

 

.......結構重度なバトルマニア(戦闘狂)だったからだ。お兄ちゃんは悲しいよ。あんなに可愛かった妹がキリトと同類なんて.......いや今も可愛いんだが」

 

「ちょっ!ハキ?!俺は戦闘狂じゃないぞ?!」

 

「あらら、ハーくん、シスコン発動させちゃってるネ.......」

 

俺ってシスコンなの?いやいや、そんな訳.......思い当たる節がありすぎる。いや、ユウキが可愛いのがいけないんだ。俺は悪くない。次いでにランねぇも可愛かった!

 

「いつ行くの?!今?!ねぇ、拓にぃ!」

 

「あ、ちょっ!揺らすなよ!あと遊びじゃないんだぞ?」

 

「分かってるって!それより、そのアスナ?って人がいる所まで早く行かなきゃなんでしょ?早く行こうよ!」

 

随分やる気だな。まぁいいや、早いに越したことはないからな!

 

「.......行くか、キリト。先走るなよ.......っておい!!」

 

声をかけた瞬間キリトはユイと一言づつ言葉を交わした後、真上に飛び上がった。

 

「アスナ.......アスナァァァァァ!!!!」

 

そう叫びながら我武者羅に突き進むキリトの体は何かに弾かれたようにバランスを崩し下に落ちてくる。

 

「.......はぁ、どうしたんだよ?キリト」

 

「この上にッ!!!この上にアスナが居るんだよ!」

 

そう言いながらまた飛び上がる。だが、俺は首根っこを掴んで言った。

 

「冷静になれ、ズルできないように障壁でもあるんだろう?ユイちゃん、声だけでも届けられないか?」

 

「ああ、それなら行けるかもナ」

 

いつの間にか隣に来たアルゴがそう呟く。それに対して俺はだろ?と言って視線をキリトに戻すとユイちゃんがそれを実践しているところだった。

 

「ママ!ママ!」

 

それを見ながら絶対助けると覚悟を決めていると上から何かが降ってくる。カード?

 

「.......キリト行くぞ。早く助けるんだろ?」

 

「.......ああ」

 

__________________________________________________________

 

 

「ゼァァアアア!!!!」

 

「オラァァァァァ!!!」

 

キリトは大剣を、俺は黒剣(虚白)を持って目の前の大群に切かかる

 

「えっと.......あの二人バケモノですか?」「アチャ〜.......あの二人が本気になったら出来ないことがないって本気で思っちゃうヨ.......」「パパ、ハキさん、かっこいいです.......」

 

そう、2人は無双していた。

 

「スイッチッ!!!」

 

「おうッ!」

 

キリトが声を上げた途端後ろからハキが出てくる。荒々しいプレイスタイルのキリトに流れる様な剣技のハキ。それが合わさって芸術とも劣らないものが出来上がっていた。それに.......

 

「ユウキ!!!」

 

「りょ〜かいッ!!!」

 

ズバンッ!!!.......一際大きい音が鳴る。だが、まだ敵の向こう側が見えない。前に出ていたハキがしゃがむ。するとそのすぐ上からキリトの剣が振り抜かれる。

 

「き.......れい.......」

 

「にししっ.......あの二人は息が合うからナ〜。恐ろしい程にネ。それにしても、ユーちゃんがこんなに強いとは思わなかったナ、やっぱり血かナ?」

 

そう呟くリーファを見てアルゴはそう言い微笑む。ユウキは他人に合わせるのが圧倒的に上手いのだ。もう、キリトの動きを見てちょくちょく援護入れるくらいには。ハキとは言わずもがな、やっぱり兄弟だなと言わんばかりの連携のうまさだ。

 

「チッ!拉致があかねぇ!キリト!俺とユウキで道開けるから突っ込め!!!」

 

そう言うと、飛行限界なのを無理やりシステムに干渉して時間をリセットする。鋭い頭痛がするが気にしない。

 

ーー無茶しやがって.......ーー

 

うるせぇ、大事な人が帰ってこないって想像しただけですごく辛いんだ。現にそんな立場のキリトもっとだろう?ならせめて手伝えるところは手伝わねぇとな。

 

ーーはぁ.......そう思ってても実際に実行出来るやつは限られてるってわかってるのか?ーー

 

俺はそんな大層なやつじゃないってことだけな。唯、やりたいことには嘘をつかない。欲望に忠実ってことはわかってる

 

「行くぞッ!」

 

「「おう!(うん!)」」

 

ユウキと俺は突っ込んだ。

 

まず俺が一陣目を担う。横薙ぎに切り込み、その後にパリィした敵ごと他の敵も切り伏せる。その先に見えたのは弓を構える敵(雑魚)だった。

 

「ユウキッ!」

 

「任せて!」

 

すぐさま後ろに引きユウキを前に行かせる。今までの戦いぶりで戦闘センスは俺らと拮抗しているのは分かっていた。俺は状況判断に優れ、キリトは反射神経。ユウキは圧倒的VRとの適合力。つまり、電磁パルスのやり取りが俺らと比べ物にならないほどに早い。

 

「お前の妹すげえな.......俺の二刀流で勝てるかどうか.......」

 

「.......正直俺も驚いてる.......」

 

やっぱ兄妹だな。と呟くキリトに声が掛かる。

 

「お兄さん!」

 

「「おう!!!.......ん?」」

 

どっちだ?ユウキが呼んだのはどっちだ?俺か?俺だな。俺以外ユウキが兄と呼ぶのを俺は許容しない。

 

キリトも自分が呼ばれたと結論を出したのか、何故か、2人で突っ込む。

 

「てめぇの出番は無ぇ!!!」

 

「なっ、俺が呼ばれたんだろうがっ!」

 

........両者は譲らなかった。ハキはプライド?を、キリトは合理性を。

 

「さっきもやってたんだからハキは引っ込んでろっ!」

 

「うるせぇ!!!ユウキが俺の事呼んだんだ!ユウキとアルゴが呼べばどこだって行くんだよ!」

 

ハキの後半の大半は惚気だった。それを聞いた周囲の反応は次のようなもの.......つまり、呆れだった.......

 

「.......拓にぃ、シスコン.......」

 

とユウキが.......

 

「.......ハーくん、重いよ.......」

 

とアルゴが.......

 

「あはは.......なんか凄いですね、ハキさん.......」

 

とリーファが.......

 

「妹にそこまで肩入れできるって.......すごいな.......」

 

とキリ.......いや、ほっとこう。

 

「「ぜァァァァァァ!!!!」」

 

それはともかく、圧倒的な速さで敵をなぎ倒し、引きちぎりを繰り返す2人の中にさらにオーバーな戦力が加わる。

 

「.......ボクもっ!!!ほら!アルゴさん、リーファさん!行こ?!」

 

そう言って腕を引っ張るユウキはもう他の意見を聞く様子がなかった。

 

ガギッ!

 

「ッあっぶねぇ.......ありがとうな!ユキ!」

 

そこには敵の剣を防いで切り伏せたユキの姿があった。だが、褒められたのに関わらず顔は冴えない。

 

「むぅ.......わたしの.......ためには来てくれないの?」

 

そう。拗ねていた。ハキはやっちまったと心の中で頭を抱え、弁明に移る。

 

「いや、ユキの為にも駆けつけるよ?ただ、俺は四六時中ユキと一緒にいるから駆けつけるまでもなく守れると思ったんだよ.......ごめんな?」

 

「.......そう.......」

 

短い言葉だったが顔は緩みまくっていた。ハキはホッと安心し、敵に視線を戻す。ごまかせた様だ。

 

「見えたぞっ!!!」

 

扉が見えた。後、10メートル。

 

「撃てぇぇえええええ!!!」

 

後ろから大きな声と共に大火力の魔法が放たれる。それと同時に後ろに影が出来たと思った途端に後ろからもうひとつの攻撃が降ってくる。

 

「サクヤさん!」

 

「リーファ、遅くなった。済まない。」

 

「やっほ〜!スプリガンとウンディーネの大使さん?会いたかったヨ〜!」

 

誰だ?あの二人.......いや、その前に.......

 

「アルゴとキャラ被ってんじゃねぇか!!!」

 

「「「「「「そこ?!?!」」」」」」

 

全員がハモった。この場にいる各領主とハキ以外がだ。

 

「あ、拓にぃ!せっかく出来た道が閉じちゃうよ!」

 

ユウキが鋭い声を飛ばす。その声に釣られ振り向いてみると敵が倒され、一直線にできていた道が次々に湧いてくる敵に塞がれつつあった。

 

「くそっ.......爆発付与、大火力広範囲攻撃(大).......」

 

システムに干渉してまた無茶な改変を行う。それが終わったあと、すぐ扉に向かって手に持っていた武器を投げ込んだ。それが着弾した途端に武器自体が爆発し、あたりの敵ごと吹っ飛ばした。

 

「うぐっ.......」

 

脳が耐えれなかった。頭痛が酷くなる。意識が朦朧としてナーヴギアでは無くアミュスフィアでログインしていたならあともう少しで強制ログアウトされる寸前.......

 

「ハーくん!」「拓にぃ!」

 

「.......アルゴ.......後、ユウキ」

 

アルゴに支えられユウキに前から抱きしめられる形になり、お陰で意識が戻ってきたハキは名前を呟いた。

 

「何?拓にぃ.......」

 

ハキはユウキのおでこにデコピンをする。

 

「イタイ!.......何すんのさ!」

 

「リアルネーム禁止.......」

 

「あ.......」

 

やっと気づいたようだ。そして.......

 

「アルゴ、ありがとな?」

 

ユウキも。と続けて限界の脳を酷使しシステムで扉の奥へと進む。

 

「ロックされてるとか.......救いようねぇな.......」

 

扉があかなかったのだ。だから使うしか無かった。

 

「うグッ.......いけよ、キリト.......これで連れてこなかったらただじゃ置かねぇ.......」

 

ガチッ

 

鍵が空く

 

そう言って羽の力を抜き背中から落ちていく。ALOのメンタルシステムに強制ログアウトされるのであった。




どうでしたでしょうか?久しぶりに書いたから口調とか微妙に違うかも.......許してね?じゃあまた今度


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17話 アルゴ(彼女)とユウキ(妹)とデートの約束.......何このシチュ.......

はい。だけたけです。今回、ほのぼの系だよ。深夜更新すまない。こういう時サイトだとみんなに通知行かないから迷惑かけることもないし便利だよね!.......はい。調子乗りました。ゴメンなさい。そんなに見てくれてる人いないってわかってるのに調子乗りました。だってさっき見て見たら初めての感想が.......名前出していいのか分からないので出さないですが、ありがとうございます.......めっちゃ嬉しいっす.......。


では本編どうぞ.......


「.......これはどう言う状況?」

 

目の前には現実世界の明日菜に抱きつく木綿季の姿が.......そう。救出は成功した。須郷とかいうクソ野郎は刑務所行き。これで全部丸く.......とも行かない。少なくとも被害にあった者たちは1年の観察期間を言い渡された。実害がなかったとはいえ、仮にも脳を弄り回されていたからだ。だが、アスナは.......いつも通りだろう。

 

「えっと.......あはは.......」

 

誰も説明できないらしい。いやね?別に相手が男じゃなきゃいいんだけど.......だけどね?

 

「......仲のよろしいことで.......」

 

そうとしかいいようがなかった。ちゃっかり呼び捨てで呼びあってるし.......しかもちょっとキリトの複雑そうな顔が面白い....

 

「ぷッ.......か、かおっ.......ぶふっ.......」

 

「たっくんわかるけどちょっと抑えよう?」

 

朋に怒られているうちにリズ達も合流したらしい。これでやっとフルメンバーだ。

 

「それにしてもお兄ちゃん、周りに女の人居すぎじゃない?」

 

「キリトはタラシだもんね?私の事だってさんざん.......」

 

アルゴ.......あ、キリト死んだ。お疲れ様。来世で会おう。っと.......俺は木綿季に言いたいことあったんだ。

 

「木綿季?なんでキリトのことを兄と呼ぶのかな?」

 

向こう側でキリトが言葉という名の暴力でフルボッコにされている中俺はそう尋ねた。

 

「え?あっと.......その.......」

 

黒い笑顔を貼り付けた拓の顔に木綿季は怯えてしまう。

 

「な、なんと.......なく?」

 

小首を傾げる木綿季。

 

ッ.......ちょっと待て、待てよ?俺は今怒っているはずだ。決して可愛いから許そうとか思ってない!!思って.......

 

「ッ.......そ、そうか、何となくか.......」

 

ぬァァァァ!!!!俺の口、言うこと聞けよ!俺の顔だろ?!俺の顔のパーツだろ?!なんで許す方向に言ってんだよ!!!!

 

「.......キリト.......ぶっ殺す。」

 

「え?!シスコンがすぎるだろうが!今の流れでなんでそうなる?!」

 

「はぁ?!見ろよ!あの凶悪的な可愛さ!怒れるはずねぇだろ!だったらこの苛立ちどうすれば良い?キリトに当てればいいんだよ!!!!大人しくお縄につきやがれ!!!!「てイ」へぶっ.......」

 

後ろから朋がチョップを繰り出す。拓が起こしかけた暴走を止めたのだ。だが.......拓の頭から煙が出てることでもう明白だろう。そう、チョップが強すぎたのだ。現にチョップした本人も痛がっている。そんなカオス空間に木綿季と明日菜、そしてキリトは苦笑いを隠せなかった。リズは面白そうに笑っているが.......

 

「あ、あんたら情報屋より漫才師の方が向いてんじゃないの?ぷッ.......」

 

「痛い.......」

 

相変わらず朋は涙目で痛がっているが、一応大丈夫らしい。そう考えたところで意識が飛んだ。体が糸の切れた人形みたいにガックリと.......その後すぐに起き上がる

 

「.......はっ!ここは.......って朋?!どうしたんだよ?!泣いたりして!ど、どこか調子でも?!き、救急車ー!!!!」

 

「落ち着け!」

 

そういうキリトはまた拓の頭をチョップをする。朋がしたところと同じところに。結局また気絶した。

 

「あ.......」

 

__________________________________________________________

 

 

「ぅうん.......俺は一体.......ん?」

 

えっと、説明します。某小説みたいで悪いのですが.......

 

まず、俺の頭の後ろ側にはなんとも言えないやわらかさが.......そして温もり。俺の視界の先には愛しの朋の顔と木綿季の顔が.......

 

「.......マイ、エンジェルワールド.......」

 

「え?!ちょっと朋さん!やっぱり頭おかしくなってるよ!」

 

とユウキが言った途端に朋が慌て出す。

 

「トドメさしたのは私じゃない。キー坊。私じゃない私じゃない.......」

 

「何の話してるんだ?」

 

「え?拓にぃ?えっと.......まとも.......なの?」

 

は?なんだよ、その質問。そんなんまともなわけねぇだろ!!こんなにも可愛い朋と木綿季に膝枕されてまともなわけがねぇ

 

「.......朋と木綿季が一緒にいてくれるだけでまともではいられない。」

 

「拓にぃ.......やっぱり.......」

 

え?何この反応?てっきり苦笑いかと.......

 

「たっくん、ごめんね!ごめん!!」

 

なんで?!なんで朋がそんなに謝ってんの?!なんかもう思考が追いつかない。

 

「えっと.......俺がふざけただけでなんでこんなにカオスに.......?」

 

ふざけたって言うか、もう外に出さなきゃ尊さのダムが.......ってアレ?なんで俺はこんなにキモイ考えをするようになってるんだ?

 

「.......え?.......ふざけた?」

 

「.......たっくん?」

 

「え?なんか悪いこと言った?」

 

何度振り返って見てもいつもの絡みと何ら変わらないような.......

 

「「バカァァァああ!!!!」」

 

「うぐほッ.......」

 

腹パンされました。はい。地味に痛かったです。

 

「あわわ!ご、ごめんね?拓にぃ!つい.......」

 

「.......シャレにならないよ.......そのふざけ方は.......」

 

なんか.......ごめんなさい.......俺が悪い気がしてきた.......

 

「あ〜.......拓、ご愁傷さま.......」

 

「あはは.......」

 

笑ってないで助けてよ.......キリトに明日菜.......まぁ、それでも最近の俺らは前にも増して仲良いんだけどね.......早く家帰ってイチャイチャしたい。

 

「あ、拓にぃ、今日ボクアスナの家に泊まるから!」

 

.......ふぁ?!

 

泊まるってことはアスナと寝る.......百合?!お兄ちゃんは認めんぞ!!そういうのに偏見は持ってないけど認めん!!!!シスコンシスコン言われようともこれだけは.......

 

「拓にぃ?.......」

 

あ.......ァァァああ!!!そんな目で見るなよ!俺が悪いみたいじゃんかよ!シスコンの何が悪い!!!

 

「たっくん?.......」

 

え?朋もどうしたの?!まさかアルゴも.......

 

「.......朋も明日菜の家に泊まるのか?」

 

「いや、ノリだけど.......」

 

ノリかい!!!びっくりしただろうが.......いや、俺ひとりで寝るのが寂しいわけじゃないけど........俺の抱き枕が.......幸せの根源が.......いや、我慢してるなら朋の要望を尊重したい.......

 

「.......我慢してるならいいぞ?俺ら家族だし.......」

 

「なっ?!///.......我慢なんてしてないよ.......それに.......」

 

言葉を区切ってから俯いてた顔を上げ拓を見る。

 

「わ、お、オイラはハーくんと一緒に寝る方が幸せだし.......////」

 

.......ちーん.......

 

ーーおお、死んでしまうとは情けない.......ーー

 

あれ?今なんか虚白の声が.......気のせいか?あ、そうか。天使を見て昇天したんだった。あれ?俺の天使はどこいった?それと胸の辺りに幸せな感触が.......

 

そう、拓は朋のことを抱きしめていた。

 

「な、ななっ////」

 

「うおっ!いきなりすまん!!!!.......あれ?いや、もう恥ずかしがるようなことでもないのか?」

 

悟りだよ悟り。これを使いこなせれば俺はスーパーサ○ヤ人に.......

 

「は、ハーくん?///」

 

「ごめん、可愛くて我慢できなかった。」

 

「なっ?!////」

 

この一時はもう最高。溶けそうだよ精神的に。ってか、もう最高すぎて死ぬ。無防備のまま抱きしめたから朋の体のやわらかさがモロに.......あ、理性.......どこ行くんだー?

 

より一層腕に力を入れる拓。それに朋は.......

 

「きゃっ///.......」

 

「俺達のこともう頭にないよな?あれ」

 

「そうだね.......」

 

「妹の前でやるのはちょっと控えて欲しいんだけどなぁ.......」

 

それからしばらくピンク色の空気に包まれたらしい。当事者以外は全員ブラックコーヒーを買いに行ったと言う。それからというものの、そのイチャイチャが終わってからは和人(キリト)と明日菜のイチャイチャが始まったという。真偽の程はわからない。

 

__________________________________________________________

 

 

「デート?」

 

今は家にいるんだが.......

 

「.......男一人と女2人はデートと言えるのか?」

 

そう。三人なのだ。デートの定義は知らないが俺は男女の2人で行くものだと思う。

 

「え?あ、いや.......その.......うん。まぁ、出かけるって感じで.......」

 

すごいしどろもどろになって返してきた。何が目的なんだ?.......

 

「いや、まぁいいけど。で、どこ行く?」

 

「えっと.......ここ.......」

 

そう言って木綿季が手渡してきたのはひとつのパンフレット。

 

「有島遊園地.......」

 

片方の手で我が妹の頭を撫でながら1番目立つ文字を音読する。遊園地だ。

 

「うん、なんで?」

 

正直いって遊園地なんて俺は嫌だ。怖いもん.......(小物感)

 

「ええ〜?!行こうよ!絶対楽しいって!」

 

「どこかの戦闘民族か.......はぁ、仕方ねぇ、可愛い妹と彼女の頼みだ。行くか。」

 

腹は括った!あのSAOの恐怖よりはマシだろう!

 

ーー腕、ブルってんぞ?ーー

 

今なんか虚白の声が.......?まぁいいか。それよりあれだ。

 

「たっくん?震えてるの?」

 

意地の悪い顔で聞いてくる朋は現在とても危ない格好で.......

 

「ふ、震えてねぇし!」

 

朋の格好のご紹介をしよう。まず、下はショートパンツ。上はダボッとしたパーカーで姿勢は前かがみ。当然襟元から胸あたりが見えるわけで、何故か、下着をつけておらず.......大きめのパーカーがショートパンツを隠し下を履いていないように見え.......

 

バゴッ.......

 

「「え?!たっくん(拓にぃ)?!」」

 

「いや、ちょっと朋に対して邪な思考をしそうになったから.......」

 

彼は自分を殴る。これ以上考えないように。だが、逆効果だった。なぜなら心配した朋がさらに近づいてきて見えるものが本当に見えてしまったのだ.......

 

「あ.......ああ.......」

 

そうなってはもう男という名の狼を抑える理性は残っているはずもなく.......

 

「よ、邪.......えっと.......////」

 

その後に少し離れてくれたが萌え袖の左手を口元に持っていった格好でさらに理性を削られついに彼は抱きついてしまう。

 

「ごめん、もう俺は我慢できないみたいだ.......」

 

「えっ?////」

 

スパァァァン.......

 

心地よい音が彼の頭から鳴った。驚いて後ろをむくと片手にスリッパを持った木綿季の姿が.......

 

「あ、あわわっ.......そ、そういうことは妹のいない所でやってよっ!///」

 

「.......あ、ごめん、助かった.......」

 

何故か、彼が助かったと言い、逆に彼女は不満げな声を出す。

 

「むぅ.......ハキのバカ.......」

 

「なんで?!」

 

え?!俺は襲ってしまいそうになったけど未遂だよ?!ってか、それ以前に抱きつくぐらいなら今までも結構してるし.......なんか嫌だったのかな?.......

 

拓はあからさまに落ち込んだ。それを見て2人は焦る。いつも通り?の日常が流れて行った。

 

ーーほんとにいつも通りか?ーー

 

虚白.......?やっぱり居るんだな。この穀潰しが。

 

ーー俺、何も食べてないよ?!ーー

 

なんとなくだよ、なんとなく。今イライラしてるからサンドバックになれ。

 

ーー理不尽ッ!!!ーー

 

「え、えっとごめんね?拓にぃ、でも妹の前であんなことをやろうとするのは.......////」

 

「あ、あぅ.......嬉しかったけど場所は考えようナ?////」

 

「.......ごめんなさい.......」

 

今回は完全に俺の失態だ。理性をコントロール出来なくなった時点で俺の負けなのだ。何と戦ってるか知らんが.......

兎にも角にも2人が改めて可愛いということはわかった。向ける感情はそれぞれ違うが.......

 

「さてと.......」

 

「ん?行くの?」

 

ユウキが聞いてくる。息場所は毎回恒例のあの場所だ。

 

「ああ、どうせならみんな誘った方が良いだろ?どうせなら2回行こうぜ。一回目は3人で。そして、2日目はみんなで。その方がいいだろ?」

 

「おお?さすが私の彼氏。やるぅ!」

 

「ったく、調子いいな。まぁ、これは家族への甲斐性か.......」

 

「か、家族.......///」

 

「どうでもいいけど2人のどこでもイチャつく癖どうにかならない?って言うか、大体拓にぃから始まってるんだけど.......」

 

「あ.......すまんな........」

 

確かに妹が彼氏と俺の近くでイチャイチャしてたらいい気はしない。多分殺○。(相手を)

 

「えっと.......彼氏は居ないからね?」

 

「なんで心読むの?!って言うか、作るなって言ってるんじゃなくて、ユウキに見合う相手だったらいいんだよ。」

 

うんうんだいたい言い寄ってくるのは可愛さに引かれただけのホコリやろうだからな。多分。いや、知らんけど。

 

「えっと、具体的には?」

 

「俺より強くて、優しくて、ユウキの隣歩いてても見劣りしなくて.......」

 

「「もうそれキリト(キー坊)しか居ないじゃん」」

 

「キリトは俺より弱いからダメ。」

 

負けず嫌いを発動させる拓。それを見て2人は長いため息をついた。まぁ、結局誰にも渡さないということで.......




久しぶりにこの作品を見直した.......多分みんなも思っただろう?

『なんだ?この拙い文は.......』と。

うん。自分でも思う。そしてよくこんなのを挙げられたよなって考えると恥ずかしいことこの上ない。正直、アルゴへの愛だけで描き続けてきた感じがあるので.......。うん。もう、視点バラバラだし口調定まってないやらとんとん拍子で話が進んでるやらでもうツッコミどころ多すぎ。最早、直すより1から書き直した方がいいと思うほど。

いやね?実はこの話も結構前に書き上げててハーメルンにあげふのわすれてただけなんでこれからの文はもっと読めるものになってると思う.......。

という事でこの話までみてくれている人たちありがとう。それと同時にこれからも精進するのでどうか見捨てないで.......最後閉まらないけどまぁ、いいか。それじゃぁまた次話で!!!


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外伝
外伝 通じる心


「なぁ、アーちゃん?今日って何かすることあったっけ?」

 

俺はのんびりと聞いた。そう、2人ともだらけきっていた。ソファーさの上に横になり、俺の上にアルゴが横になっている。

 

「ンー?んとナー......あ、アルゲートでスキルについて教えて欲しいって依頼があったナ......」

 

「そうか〜......」

 

「なんダ?おねぇさんがいなかったら寂しいのカ?」

 

おっと、ひとつ訂正。アルゴはからかうことにおいては休む気は無いみたいだ。

 

「当たり前だろ?」

 

「ムー......最近思いどうりの反応が帰ってこなくて悲しいゾ......」

 

ふっふっ......俺だって成長はするもんねぇー!躱し方ぐらい覚えますよー。

 

ハキはアルゴの頭をなでなでして言った。

 

「躱し方ぐらい覚えるよー。あと、俺も行くからな?」

 

「いいよー、オイラだけで出来るような事だしナ。ただ.....」

 

アルゴは顔を赤くして......

 

「あー......どうしたんだ?」

 

「あ....あうっ.......一緒に......はぃらなぃカ?」

 

「ん?」

 

なんて言った?どこに入るんだ?

 

「だかラ!!終わったら一緒に風呂に入らないかって言ったんダ!!!」

 

ああー、そういう事ね?.........ん?ん?待て?待て待て待て?!?!どういう事?!アルゴさん?!大胆!!って、俺はどう答えれば?!ねぇ、これ本心で言っていいの?!これ、本心でいいのか?!ねぇ!助けて!!

作者さん!!!

 

作者(そこの位置変われ)

 

つ、使えねぇー......って、マジでどうすればいい?って、これ、からかいか?なぁ!どっちなんだ?!そんな顔で見ないでくれ!!俺だって困惑してんだ!!!

 

「な、なーんてナ、からかってみたけどこんなふうに通用するとはナァー......」

 

なんでそんな泣きそうなんだよ......そうか、からかいじゃなかったんだな......そうと決まれば.....

 

「忘れてくレ、じゃ、行って「風呂ならいいぞ?いやな、困惑して返事遅くなったけど、いいぞー?てか、 こんなことお願いしてくるとはなぁ?」」

 

俺の上から降りようとするアルゴに努めて明るく返すと、その行動を辞めてアルゴはリンゴになった。ん?ああー......リンゴみたいになった。

 

「ん......あうっ......あ、ぁりがとぅナ......」

 

「おう!何かあったら連絡くれ!!!」

 

うん......心の準備をしなきゃな.........

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「よウ!待ったカ?」

 

アルゴが話しかける。その目の前にいたのは......

 

「いや、全然待ってないのでござる」

 

生粋のロールプレイングプレイヤーだった。

 

「2回目のご利用ありがとうダナ?で?スキル何が聞きたいんダ?あのスキルのことならダメだゾ?」

 

「スキルは建前......本意は呼び出した所にあるでござるよ.........」

 

「ああー......じゃぁなんダ?」

 

そう言うと相手は顔を上げてアルゴを睨む。

 

「復讐......復讐でござる......」

 

「誰へのダ?」

 

相手の言葉を聞いて顔を顰めながらアルゴは言う。

 

「着いてこい.........」

 

その一言だけキャラのなりきりをせず負の感情をめいいっぱい詰めて言葉と目線で訴えてくる。

 

アルゴは圏外に連れてこられる。そう、ダメージが通る圏外に。それが判断の誤りだった。

 

「どこまで行くんダ?」

 

「ここでいいでござるな......」

 

そう言うと素早く相手はアルゴの後ろに回りこみ、上から袋を被せられる。中でアルゴは暴れるが出られるわけもなく......

 

「何すんダ!!!出セ!!!」

 

「ダメでござる。ヤシャマルのかたきでござる故.........」

 

静かに怒りを含ませる、ヤシャマルの敵と言う人はシロマルと言うらしい。

 

アルゴはハキにインスタントメールを送ろうとするが、迷宮区だったのを忘れていた。袋に入れられただけなのでハラスメントも出ない......

 

助けて......ハーくん.....

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ーー助けて......ハーくん......ーー

 

「アルゴ?!」

 

今、アルゴの声が聞こえてた気が......

 

ーーごめんね......さよなら........ーー

 

「は?......ふざけんじゃねぇ!!!」

 

何がさよならだ!!!なんでメッセージ来ねぇーんだよ!!!いや、迷宮区か?待ってろ......今行く......待ってろよ!!

 

ハキは走り出す。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「な、何するんダ!!!」

 

鎖で繋がれながら......抵抗しながら言う。

 

「お前のせいでヤシャマルが死んだ.....いや、お前が殺したんだ」

 

「ぇ.........」

 

今、なんて言った?この男はなんて言ったんだ?オイラが殺した?いや、殺してない......でもこの人はすごい勢いで怒っている。

 

「お前が殺したんだ。あの時スキルを......体術スキルの体得場所を教えてくれれば......あの時ヤシャは死ななくて済んだんだ!!!」

 

ヤシャマルをヤシャと呼ぶシロマルは怒りが今にも爆発しそうな程激情に心を支配されていた。

 

「あの時......武器を手放してしまったヤシャが体術を使えれば....あの時死ななかった!!!」

 

なんだよ......それ......それって

 

「八つ当たりじゃないカ!!!」

 

「事実だ!!!!」

 

そんな.......そうなのか?....いや、そうだよな......オイラが殺したんだ......なんで....オイラが......事実......か

 

「鼠には同じ苦痛を受けてもらう......」

 

「なっ......やめロ..!!!辞めてくレ!!!」

 

「ヤシャも最後はそう言っていた!!!」

 

「ッ..!!!!」

 

2人とも話題が微妙にすれ違っていることに気づかない。

 

アルゴは困惑していた。オイラが殺した。でも殺してない。なんでだ?......殺してないはずだ......でも.....

 

思考は永遠のループに入る。

そのアルゴの目の前には既に剣が迫ってきている。

 

ごめんね......さよなら.........

 

 

 

 

 

 

 

ハーくん

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「アルゴ!!!」

 

ハキの声が聞こえる。でも.......そんな訳はないか.....あと体力も3分の1....本格的に死ぬなぁ.......

 

「アルゴ!!!起きろ!!!!」

 

なんなんだよ.......もうオレッちは死ぬんだ.......最後ぐらい色々と思い出させてよ......

 

ハキが必死に語りかけているのにアルゴはそれを現実だと受け止めれない.......心がかたくなに受け入れようとしないのだ。でも.......

 

「んぅっ?!」

 

いきなり弾力があるものに唇を塞がれた。そこから何かが流れ込んでくる。

体力が回復していく。

 

「んっ....気がついたか?」

 

「なっ///......何すんだヨ.......びっくりするだロ?これでも..一応、女の子なんだゾ?」

 

「ん?知ってるよ?」

 

「カーソル...オレンジに.....」

 

「ん、知ってる。」

 

「はぁ.....もう、ばか....」

 

その途端にアルゴはハキに抱きつき泣き始める。体を張って助けてくれた人に。お尋ね者になってまで守ってくれた大切な人に。弱い所を見せてしまう。

 

「...怖かっタ.......死んじゃうかと思っタ.......もう...もう離れ離れは嫌だヨ......」

 

「俺はどこでもお前のことを守る。だから心配すんな?」

 

「うん.......うん....」

 

アルゴは口から嗚咽を漏らしながら落ち着くまで一緒にそこに居続けた。

 

それから少し経って......

 

 

 

「あのナ?さっき死んじゃうと思った時、思い出したことがあるんダ。ハキの事が好きになったきっかけ。」

 

「ああ、きかせてくれ......」

 

「んとナ、あれはまだ一階層の頃かナ、、、」

 

それからアルゴは語り始めた....

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「あれは1階層の時だヨ」

 

そう続けるアルゴは昔を思い出すように話し出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルゴ、戦闘での立ち回りは……」

 

「極力前に出ずに、戦いもしなけりゃしない方がいいと思うゾ。戦いの実績がいるなら、適当なモンスターを騎士さんに弱らせてもらって、それを倒せばいいんじゃないカ?」

 

騎士とはディアベルの事だ。

 

「それ経験値泥棒じゃ.......まぁもし、不意打ちとかで万全の状態の魔物との戦闘になったら、とにかくいのちだいじにで。とはいえ、表層の魔物なら、俺とアルゴの二対一なら問題なさそうだけどな」

 

「油断は禁物だヨ?ハー坊」

 

 戦闘時の動きを確認しあったり……。

 

「それにしても、部屋の中ってやることないナー」

 

「確かに、やることやっちゃうと暇だな」

 

「というわけで、オイラは寝まス。ハー坊、膝かりるゾー」

 

「え、あっ、ちょ!」

 

「お休みなさーイ。んっ……すやぁ」

 

「寝るの早くないか!?」

 

 昼寝にかこつけていちゃついたりしながら夜をすごした。

それからハキたちは、始まりの街の宿屋に泊まった。迷宮探索は明日からである。最初は初めのあたりの比較的安全な所を攻略する。まずは実戦の空気に慣れよう。ということだ。

ハキとアルゴは相部屋だった。男女で同じ部屋なのは問題があるのでは……と、思われたが、何も言わなかったのでなし崩しである。若干一名、クラインが二人を目の笑っていない笑顔で見つめ、エギルに引っ張って行かれていったが、決定は覆らなかった。

 

「おー、普通の部屋だナ。野宿は背中が固くて落ち着かないんだよナ.......」

 

「そうだな……。というか、アルゴはこの状況に何か言うことないのか?」

 

「んー……ハキと同じ部屋で寝るのカァ……。あっ、夜中にごそごそって物音がしても、ちゃんと気づかないフリするから、安心しロ!」

 

「何も安心できない! そうじゃなくて、男と同室とか嫌じゃないかってことなんだが……」

 

「……ああ、そんなことカ」

 

「そんなことって……重要じゃないか?、こういうのって」

 

「そんなことだゾ?ハー坊の心配事はナ。にししっ.....オイラ、ハー坊と同じ部屋でも、全然嫌じゃないヨ?」

 

 そんなことを、無邪気な笑みを浮かべながら言うアルゴ。絶対からかってるのはわかってるんだが............................ハキの頬がさっと赤くなった。うん、しょうがないのではなかろうか....

 

「そっ、それならいいんだけど……」

 

「あれれーエ?? ハー坊、ほっぺが赤いゾ? もしかして、照れてル?照れてるのカ??」

 

「て、照れてない! 照れてないから!」

 

「にゃははッ.....必死になってるハー坊、可愛いナ!」

 

「なっ.......もうからかうの辞めてくれ.......」

 

「ゴメンゴメン!!!!!いやーァ、反応が面白くてナ?」

 

そう言いながらアルゴはベットに座ってる俺に背中を預けてくる。

 

「ち、ちょっ!あ、アルゴ?!」

 

それに俺はびっくりして素っ頓狂な声を出してしまう。

 

「ん?なんダ?ハー坊?」

 

自分に体を預ける女性の体は小刻みに震えていた。それを感じとった俺は.....

 

「.......んや、なんでもない......」

 

「...そうか、ありがとナ?ハキ...」

 

意識はしてないだろうが、あだ名じゃなく名前で呼んだことからも平静を装っていても心は無事じゃなかったということを実感すると共に、気づかなかった事に対しての歯がゆさが心の中で渦をまいていた。それ故に、

 

「.......アルゴ......」

 

「ン?」

 

こちらを振り向くアルゴはとても可愛らしく儚げで.......思わずドキッとしてしまった。可愛いと綺麗が同居した様子に心打たれた。そのなんとも言えない気持ちに戸惑っているあいだに体は知らず知らずのうちにアルゴを抱きしめていた。

 

「.....ハー坊?」

 

男にいきなり抱きつかれたのにも関わらず一切取り乱さないアルゴに心配になる気持ちと残念な気持ちが入り交じり複雑な気持ちになった。

 

「............................るから」

 

 

「なんて言ったノ?」

 

柔らかくアルゴが聞いてくる。それに俺は.....

 

「アルゴは俺が守るから.......今はアルゴよりも弱くても....強くなって、絶対にアルゴを守るから.......」

 

それを聞いたアルゴは僅かにビクッと体を震わせて言った。

 

「.......うん.......」

 

 

そう言いながら俺はアルゴを後ろから抱きしめる。アルゴは抱きしめているハキの腕を優しく掴んでシンプルに返してくる。ハキにはまるでアルゴに自分を受け入れてくれたみたいで嬉しくなった。

 

 

 

 

 

 

「そんな事もあったナー.......でもアレがなきゃ今のオイラ達は無かったかもダナ.....だってその時にハーくんのことを好きになったんだからナ!」

 

そう言いながら眩しいくらいの笑顔で俺の事を見てくる。少し頬を赤くして。

 

「赤くなるんだったら無理して言うなよ.......でもそうだな.......俺も.......あの時はなんで《守る》って言葉と嫌われるかもなのに抱きしめたのか......いつの間にか口から出てきたのか分からなかったけど、今思えばあの時に俺はお前に恋したのかもな.......」

 

しみじみと思う。これは紛れもない俺の本心だ。そして今も変わらない気持ちだ。それをアルゴに素直に伝えた。

 

「あとは、アレだナ。ハーくんが目覚めたあとのやつ。あったロ?」

 

「ああ、あれか......」

 

 

 

 

 

「おーい!!!アルゴ!!!お待たせ!!!....................ってアイツら誰だよ.......」

 

ハキは耳を澄ませる。するとその連中の声が聞こえてくる。

 

 

「なぁなぁ、嬢ちゃん.......少し俺と遊ぼうぜ?」「いいだろ?いいこと教えてあげるからよ。」

 

なんだよこれ、デスゲームなのによくナンパする余裕あるな。

 

ハキは1年、意識がなかったことでまだ攻略に必死になって取り組んでいる奴と街に閉じこもってる奴とで別れてる事を知らなかった。

 

「結構ダ、待ってる人がいるんでナ、失礼するヨ」

 

そう言うとアルゴは男共の間を通ろうとする。しかし、男がアルゴの腕をハラスメントが出るか出ないかの強さで掴む。

 

 

イラッ.......

 

 

ハキはもう爆発寸前だ。

 

「おい、お前らちょっといいか?」

 

全く笑ってない目で笑いながら話す。

 

「あ?なんだお前?部外者は引っ込んでろ!!!」

 

「はぁ.......だから馬鹿は.......」

 

呆れたと言うような仕草を大袈裟に見せて相手を煽る。

 

うん少しはスッキリするかと思ったけど全然しねぇわ.......てかコイツらなんなんだ?絡むしか脳のない蛇か?ネズミか?害虫代表ですかー?ぷッ、お似合いですね?

 

心でめいいっぱい煽ってから行動に移す。

 

「あのな?手を出してる人、嫌がってるだろ?」

 

第三者みたいに言ってやる。すると狙い道理に勘違いしてくれたようだ。

 

「第三者が出しゃばるんじゃねぇ!!!」

 

「はぁ.......だから馬鹿って言ってんだ.....」

 

「あ?少し顔がいいからって調子乗んじゃねぇぞ?ヒーロー気取りか?」

 

なんなの?マジで、コイツら煽んなきゃ気がすまねぇのかよ。じゃぁ教えてやるよ。

 

俺はアルゴを掴んでいる腕をひねり上げ、開放されたアルゴの腕をこちら側に引く。もちろんアルゴは抵抗しないで俺の背に隠れる。

 

「てめぇら!!!俺の女に何してくれてんだ!!!いいご身分だな?!人の、しかも知らない第三者が奪うか?!あ?!第三者がでしゃばんじゃねぇ!!!」

 

完全なブーメランだった。それは清々しいほどに綺麗にその言葉はナンパ男に突き刺さった。あまりの衝撃にナンパ男は黙り、周りはなんだなんだとこっちをジロジロ見てくる。

 

「なんだっけ?部外者だっけ?お前ら頭の構造どうにかなってんじゃねぇのか?大丈夫か?ここ」

 

ハキは自分の頭を人さし指でトントンと叩く

 

「だいたいな、何?自分モテるとか思ってんのか?思い上がりも甚だしいわ!自分で鏡みてからナンパできるか考えろ!!」

 

そう言うとアルゴが恥ずかしそうに言ってくる。

 

「ハーくん?.....その........周りみてるしこの位で.....ナ?」

 

「いや、ダメだな。」

 

そこに復活したアルゴの腕を掴んでいた男は驚きから復活したようで俺にまたつっかかってくる。

 

「おい!てめぇ!よくもやったな?!」

 

そう言いながら殴りかかって来る男を見ながらハキは

 

「アーちゃん、少し待っててね、」

 

そう言ってハキは殴りかかってきた男の腕を掴み、相手の勢いを利用し、腕をつかんだまま、その腕をその男の背中に押さえつける。

 

「はぁ...懲りないな....」

 

そこから少しシステムを弄り、ペインオブザーバーのレベルを落とす。もちろんこの男にだけだが....それからハキは押さえつけている腕を少し上にずらす。すると男の口から絶叫が漏れ出す。

 

「痛てぇ!!!痛いわけねぇのに.......グアッ!!!」

 

「はぁ.......根性ねぇな?これくらい自分で骨折って逃げるくらい根性見せろよ。どうせすぐ直るんだしよ.......」

 

「わ、悪かった!!!謝るから!!!だから離してくれ!!!」

 

「ダメだね、まだ足り「ハーくん!!!もう辞めてクレ!!!」アルゴ......」

 

ハキは渋々腕を解放し、ペインオブザーバーも元に戻す。

 

「アルゴに感謝しろよ?俺は許してねぇからな。アルゴ、行くぞ。」

 

そう言ってハキとアルゴは去っていき、残ったのは地面に座り込む男とそれを呆然と見る男。それと周りのギャラリーだけだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「あー!またあれを思い出すと腹たってきた.......」

 

「にししっ、でもかっこよかったゾ?流石、オイラのダーリンだナ!!!」

 

そうふざけながら言ってくるアルゴの頭を撫でながら俺らは話を続けた。その日の夜はその部屋から聞こえる声は絶えることがなかったという。




はい、思いつきの番外編。惚気を書きたかったのに.......なんか違う方向に.....こういうのちょくちょく入れていきマース。


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外伝 新たなる創造主(1)

はい。いきなりの外伝です。みんなに読んでもらうために外伝の章を最新話の次に出るようにしているんですけどもう1話あげる時になったら本編の前に付けます。はい。

後、いい機会だと思い前までの拙い文法から大幅に方向転換しているので読みにくいなどがあれば感想にて意見をよろしくお願いします。


では外伝をどうぞ!


俺は誰だ?なんのために生まれた?その理由を探すために生きていると誰かは言った。だが、だからなんだ?最初から与えられたものじゃ無きゃ本当にその理由であっているのか分からないじゃないか。

 

「.......クソっったれな世界だな....」

 

拓はそう吐き捨てる。部屋のベットでうつ伏せになりながらも頭は回転したまま。そのまま寝落ちするのが日常になりつつあった。

 

「.......俺ってとことんひねくれているよな。」

 

自覚はしてる。ひねくれている理由もわかっている。ただ、治らない。世の中の条理を見るとどうしても考えてしまう。父親、母親、そして姉も亡くそうとしてる......俺は寄り付く場所がない.......こんな格差の産む世界なんて無くなればいいと何回思ったことか.......口には絶対出さない。出せば天国の父さんと母さんに悲しい顔をさせてしまう。

 

 

 

 

 

 

人は上下つけなきゃ生きていけない生き物なのだから......

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はぁ.......なんか訳分からずに叔父のつてで‪α‬テスターってのになったはいいけど.......どうせまた下らないんだろ?」

 

「ううん!ボクは拓にぃに行って欲しいんだ!!」

 

「はぁ.......わかったよ。行くだけ行ってみる。」

 

とことん木綿季には弱いな。でもこんなにひねくれている俺にもちゃんと接してくれるあたり救われている部分はある。まぁ、言葉には絶対出さないが.......

 

「あー!また何か考えてる!!!ファイトだよっ!拓にぃ!!」

 

「ハイハイ.......あまり動くと体にさわるぞ?」

 

「えっ?!だ、ダメだよ.......まだお風呂.....入ってないし....」

 

.......え?!勘違いしてないか?それは言葉の意味が違う....

 

「触るじゃねぇよ!体調悪くなるって言ってんだよ。」

 

「えへへ.......ドッキリ大成功?」

 

なんで疑問形なんだ.......って言葉は言わないどいた。代わりに頭を撫でる。

 

木綿季は普通の場合面会なんて出来ないのだ。ただ後先短いのと、木綿季が頼み込んだのが医者の心を折ったのだ。

 

「さてと.......姉ちゃんのとこ行ってくっか....」

 

「あ!待って?ボクも行く!!」

 

「じゃぁ待ってろ、車椅子持ってきてやる。」

 

そう言って外に出ていく拓の背中を見ながら木綿季は呟いた。

 

「はぁ.......心配性なんだから.....」

 

と、頬を赤くしながら言った.......それは部屋中にこだましてそして虚しく消える。

 

 

 

そう何事もなくことが運び、この日の面会は終わりを迎えた。

 

「じゃぁな、またくる。」

 

「うん!!待ってる!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

この世は理不尽ばかりだ。弱者の声は正しい正しくない限らずに一蹴される。人と運命はどっちが強いか.....答えは運命だ。漫画とかで運命に立ち向かう!!とか言ってる奴いるけどバカかって思うね。

 

「‪α‬テスト.......か.......」

 

俺は昔、プログラミングをしていた事がある。まぁ.......人に手伝ってもらってだけどな.......気になんないといえば嘘になるし.......もう一度やってみるか....

 

「唐突だな.....」

 

自分でも思う。ただ無性に今は現実から目を背けたい。

 

 

プルルルル.......プルルルル.......

 

ベットの上の携帯が鳴る。知らない番号からだ。

 

プルルルル.......プルルルル.......

 

「めんどくせぇな.......はぁ.......もしもし?」

 

『おめでとう。』

 

はぁ?何がおめでとうだ?意味がわからないしまずこいつ誰だよ。

 

『自己紹介が遅れたな。「ほんとだよ」.......』

 

電話の向こうで苦笑する雰囲気がする。意外と俺の嫌いなタイプかもしれない。

 

『では、改めて.......私は茅場晶彦。‪α‬テストをするゲームとハードの作成者だ。』

 

「.......はぁ.......そうですか.......それで?」

 

『日時と場所を伝えに電話したのだ。』

 

「すいません。それ俺じゃないです。じゃ」

 

ピッ....

 

やっぱやめよう。あんな元気なやつのところでテストなんてしてられっか.....

 

ピンポーン......ピンポーン......

 

誰だよこんなにいらいらしてる時にきやがって.......まぁ、友達だったら追い払おう。まぁ、友達は隼人しか居ないんだけどな。

 

「はい、なんの用?」

 

「電話切られると思って来たんだよ。随分捻く《バタン!!!!!!》あらら....」

 

「行ってやってもいいが、条件がある。」

 

「.......なんだい?」

 

そう来ると思わなかったのか、時間を開けてから返事をする茅場晶彦。そのまま聞いてくる。

 

「俺にAIを作らせてくれ。それを正規版に反映して欲しい。」

 

茅場は目を見開く。

 

「勿論、クソみたいなやつだったり、全く要らないものだったら反映しなくて結構だ。ただやりたいだけだからな。」

 

「.......でも素人では...」

 

ああ、渋ってたのはそういう事か。

 

 

「.......はぁ.......俺が作りたいのは汎用AIじゃない。固有AIだ。作る前から言うのは嫌だったんだが.......重要性はないと思うが?」

 

なんだろう.......プログラムの勉強といい、AIを作ることと言い.......久しく忘れてたな.......この気持ち。

 

 

 

 

 

 

 

楽しみだ.......

 

 

 

 

 

 

 

茅場晶彦は顎に手をあて、考え込む。

 

「.......色んなデータが必要な汎用じゃ無く、1点の役割に特化したAIを作るってことでいいかな?」

 

「ああ。後、言語化エンジンのサンプルも要らない。全部1から俺が作る。」

 

これは俺の意地だ。せめてこのゲームに俺の痕跡を残したい。それが俺の.......これが俺のやり方だ。これで俺の生きる意味が見つかればいいんだけどな.....

 

「わかった.......その条件で飲もう。」

 

「助かる。」

 

そう言って茅場晶彦と握手を交わした。これがあんなことになるとは思いもせずに.....

 

「さてと.......早速伝えに来たことを聞いてもいいか?」

 

「ああ、まず日時は丁度2週間後、場所は友愛市まで来てくれ。」

 

「東京じゃねぇんだな?」

 

「東京だと回線は混むし維持費が馬鹿にならんのでね。」

 

そういう事か...土地代なんてやばいくらい高いしな。知らんけど。

 

「さてと.......それまで何してるか.......作るしかないよな....」

 

そう言いながら部屋に戻っていく拓はいつもより少し早足で歩いていった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ふぅ.......ついに完成した。あとはデータの蓄積だけか.......取り敢えずメンタリストのネット情報全部詰め込んで.......あとは.......最低限の言語化機能はつけて他のAIとやり取りさせれば勝手にデータ蓄積してくだろ.......手始めにSiriからだな。」

 

そう言いながら黙々とpcのデスクに齧り付く。

 

 

ピンポーン.......ピンポーン.......

 

はぁ.......もう来たのかよ....

 

「茅場!!!ちょっと待て!!!今終わる!!勝手に入ってこい!!!」

 

そう言いながら高速タイピングを続けていく拓は気づかなかった。いや、気づけるはずがなかったのだ。

 

「はぁ.......これは凄いね。こんなプログラム初めて見たよ。独学かい?」

 

「うわっ!!!!!」

 

既に入ってきてることを.......

 

「いやぁー、すまんね、タイピングの音が聞こえて居てもたってもいられず......それにしても.......《メンタルヘルスカウンセリングプログラム試作型YUKI》か。これは汎用AIより難しいのにこれまたどうして.......」

 

「ネットで真偽の照合プログラム作ってそれで真って出たやつだけAIに吹き込む。あとは言語化の難しいやつは前からあるAIと喋らせてデータ取ればもう完成も近いだろ?」

 

「でも、それは私から言語化プログラムを貰えば良かったんじゃないかね?」

 

「それだったら固有性が無くなるだろ。全部同じ喋り方だったら。俺はひとつしかないAIが作りたいんだよ。」

 

「.......なかなか君も変わってるね.....」

 

そう.....なのか?俺は俺の家族も神から見捨てられた奴だぞ?こんなものはただの俺の自己満だ。まぁ、神ってもんがホントにいたんならな.......

 

 

「まぁ何もともあれ、時間だ。そのデータ持って来てくれ。外に車を用意してある。」

 

車を.......ね?用事してるって言葉は誰かに運転でもさせてんのかね......

 

「あー.......ハイハイ。なるべく早くしてくれよ?これ展開したいからさ。あとは外見のデータはこれに入ってるから何とかしてくれ。」

 

「随分アナログだな.....」

 

俺が渡したのはUSBメモリーのスティックだ。もう10年近くも前に使われなくなってきているものだ。

 

「悪いかよ。こっちのファイル形式の方がやりやすいんだ。ファイル形式変換が必要ならフィルター通せば一発だろ?」

 

「そんな簡単に.......」

 

 

「やれるのか?やれないのか?」

 

「.......いや、元々SAOのサーバーはメンテが必要のないように設計されているし唯一のメンタルヘルスも機械に任せてみるってのもいいかもしれないな」

 

なんだよ結局やるのかよ。まぁ、こっちも願ったり叶ったりだけどな?

 

「なんて、考えてる俺は相当ひねくれてんな....自覚何度目か知らんけど」

 

「ん?何か言ったかい?」

 

んや?何も。と返す拓の顔は優れないまま自虐的に成るだけだった

 

何はともあれ、やっとだ。俺の作った初めての本格的なAIまだ不完全だが、あとは学習させるだけ。これが失敗していたら.......

 

「エラーで自壊する.....」

 

とまぁ、バックアップはとってあるし気にする事はないんだがそれでも今までの努力が報われないとなると少しばかり悲しいがそれはそれで俺の能力が足らなかっただけだ。つまり今回のゲームに搭載されてないだけでその改良版が他のゲームに配備されるだろう。色々とつらつら並べたが失敗しないことに勝るものは無いのも事実。成功して欲しい。

 

「.......ふむ、私が見た限り問題は無いだろう。このまま取り込み作業に入ろうか。」

 

茅場専属の運転手が車を動かす中、茅場はパソコンを取り出して複雑なプログラム群を読みといていた。

 

「ただ、ここのプログラムはなんだい?まるでループしているような.......」

 

「ん?.......ああ、そこは人間性.......いや、個々のAI性をつける部分だ。トップダウン型じゃなく、ループ型.......という感じか.....ほら、ここの部分に経験や他人の思考パターンを自動ではいるようになっててそれを元に言動、発言の方向性を変える。ゲームリリースすぐは多分ここのリソース取り込みが主になるから役に立つ様になるまで1年ぐらいか.......」

 

長々と説明していた気がする。その甲斐あって何とか茅場には理解して貰えたがここで言動を間違っていれば採用はされなかっただろう。

 

「ふむ.......成長するAI、か。」

 

多分茅場も考えてはいたのだろう。ゲームの件が終わったら手をつける気だったのかもしれない。だが、俺は完成させた。寝る間も惜しみ、4年前(・・・)から手をつけていたプログラムを完成させた。俺の勝ちだ。ナーヴギアという世紀の大発明をした男に勝った。これ程嬉しいことは無い。

 

「.......ループ.......ああ、そうか。だからこのプログラム.......」

 

気付いたようだ。ループとは性格を変えるためのもの。さっき言ったような人の経験や思考パターンを記録し、自信を変化させ続ける。その上で古い思考パターンを削除し、新しい常に新しい物へと変わり続ける。経験、ゆっくり変化、古いものを削除、経験etc。といった感じにループし続ける。

 

「思想が面白い。どうだい?私の研究チームに.......」

 

「悪いが断る。それだといつまでたってもあんたを越えれない。俺は自分の限界が見て見たいんだよ。」

 

とカッコイイことを言ったは良いが、正直勝てる気がしない。茅場ははっきりいって才能の化け物だ。

 

「.......ふぅ........さてと。着いたよ。拓くん。」

 

それから一泊置いてからもう一度茅場は口を開いた。

 

「ようこそ、我が研究室へ。歓迎するよ。短い間だが共に仕事をできることを嬉しく思う。」

 

大袈裟に腕を左右に広げそうのたまう。その姿は道化そのもので...でも様になっていた。だがこの時点で拓の人生はいい方向にも悪い方向にも揺れ動く。今更感はあるがその原因の一部をここに記そうと思う。




はい。だけたけでございます。これ書くだけで寿命が2年縮まったかも.......それくらい難産でしたー.......はい。本編も筆が進まないし、だからって書かない訳にも行かないしどうしよう.......となった時に思いついたのが

「あ、前にユキのストーリー書くって前書きとか後書きに書いたじゃん.......それ書こう!」

となった次第でございます。はい。この頃の拓くんは荒れてますね。捻くれてます。いや、ほんとにね。本編ではあんなに元気だったのに.......まぁ、その性格の変わりようにも注目していただければ。

ではではまた次話で.......


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外伝 新たなる創造主(2)

はい。2日?3日?それぐらい空いたけどみんな元気かーい?

はい!それでね。今頃気づいた。この番外編。アルゴ、絡ませる隙間ないじゃん.......とな!いやぁ.......アルゴが居ないだけでこんなにもモチベーション下がるとは思わなかった.......創作スキル上がってると思うからそこら辺はカバーできてると思いたいけど.......でも、本編より設定も設定だし、甘さが控えめになるのは仕方がないとして.......全体的にシリアス親愛物語的なものになりそう。

という事で外伝どうぞ!


嬉しく思う、そう言われた。ここがVRMMOのサーバーが置かれている所か。そんな感想しか出てこない。

 

「早く案内しろ。」

 

なんの感慨も感情も湧いてこなかったゆえの返答。ほかの人から見たらさぞかし滑稽に見えただろう。無礼にも見えたと思う。

 

「はは、釣れないなぁ.......まぁいい。こっちだ。ついてきたまえ。」

 

自信からか僅かに茅場の歩幅が大きくなったのを俺は見逃さない。俺も詳しくは知らないが、ナーヴギアの性能が高すぎてそれ故にマップ創造、物質の感触やら匂いの設定。味など全てにコストがかかりすぎた。それ故にMMOというRPG系のものはまだ出てきていないらしい。だが、またしても茅場は作り上げようとしていたのだ。偉大な発明とやら、つまりフルダイブ式のMMOをだ。

 

「これに乗っからない訳には行かない.......」

 

ボソッと呟く。最近は退屈をしなくなった。AIの事を考えていれば大抵のことは考えずに済むからだ。現実逃避と言ったらそれまでだが、そこら辺で親のスネをかじりながら閉じこもる奴らに比べればまだマシだろう。いや、逆かもしれない。スネをがじれる親がいるからな。

 

「はぁ.......だからダメだって.......ったく。」

 

思考が暗くなる癖。それを強引に立て直す。

 

「ん?どうしたんだい?」

 

前を歩き先行している茅場が聞いてきた。その声音は特に興味を持たない、つまり形式上のものだった。

 

「何も。AIの3Dモデルの形式がわからなかったから原案だけ持ってきた。」

 

どうせ形式なんて今までにないものなのだろうがな。仮想世界をリアルに見せるための情報量。そしてそれを読み込む速度。全てをとっても既存のファイル形式じゃ役不足だ。

 

「ふむ.......本当に頭は回るんだね。」

 

「......喧嘩売ってんの?」

 

それに対して茅場は首を振りながら苦笑して言い募る。

 

「いやいや、そういうつもりは無いさ。ただ改めて感心しただけだ。その歳でよく先も見えている。」

 

まるで大人と接しているみたいだと、そう続けた。俺からしたらそんな柔らかい言い方でなくても捻くれていると自覚しているから良いのだが、いい言い方をすると達観している.......か。

 

「.......ほんとに滑稽な話だ。」

 

そんなつぶやきは誰の耳にも届くことなく天井に吸い込まれていった。

 

 

________________________________________________

 

 

あの日から数日たった。3Dのモデル基盤はできた。さすがにリアルフォントは自分では作れないのでほかの作業員にお願いしたが、それでも自分でも傑作だと思う。白髪で髪はそのまま下ろしている。背丈は成長しきっているかいないかの狭間くらい。151cmぐらいが妥当だろう。

 

「拓さん。こんな感じでどうですか?」

 

仕事が一段落し、あとはモデル完成を待つだけとなった頃。何回か注文を追加して自分の望みの姿に近づいたモデルサンプルがついに出来上がった。

 

「よし、これで行こう。」

 

それからどれくらいたっただろう。色々な不安と色々な期待が織り交ざり感じていた時間は一瞬。刹那に思えるほどに早く過ぎていった。

 

「.......展開、完了したよ。挙動のシステムはほかのAIと一緒だからね。」

 

「.......ああ。ありがとう。」

 

「.......さてと。君にも役目を果たしてもらわなければな。丁度いい。基本データは埋め込ませてもらった。ここ数日でスタッフとやり取りをしてもらったしコードネームユキも人格を持っている頃だろう。ナビゲーションとして連れていってくれたまえ。」

 

おそらく特別措置だろう。俺が作ったAIが役に立つのかの確認もあるのかもしれない。

 

「αテストか.......わかった。これか?」

 

研究員が持ってきたナーヴギアを目線で示しそう問うと大袈裟に茅場はうなづいてみせる。

 

「.......どうした?」

 

彼があまり見せない驚いた顔でこちらを見てくる。

 

「いや、疑いなく被るとは思わなかったからね.......」

 

俺を騙す理由がないし、それに俺だって疑いたい訳じゃない。そこまで捻くれてないし、ひねくれる気もない。

 

「まぁ、そんなことどうでもいいから始めよう。ちゃんとAIが動いてるのを確認したい。」

 

「はは、相変わらずだね。電源入れるよ。じゃぁ行ってらっしゃい.......」

 

そのつぶやきとともにリアルの五感が遮断された。初期設定はもう済ましてあるようだ。相変わらずの化け物さに引く。

 

「はぁ.......めんどいな.......」

 

 

________________________________________________

 

 

 

「ようこそ、始まりの町へ。」

 

気付けば目の前には大きな街。後ろには草原が広がっていた。門の前にいるNPCに定型文と思われる言葉を投げかけられ、中に入るのを促される。

 

「これ、本当に仮想なのか?」

 

それ程の衝撃だった。一つ一つのオブジェクトにどれ程のデータが詰まっているのだろうか?これはゲームという域を超えている。もはや芸術じゃないか。

 

周りにいるのは全てAI。ほぼ全てのNPCが同じAIプログラムに接続しているとはいえ、これを作り上げるのにどれだけの年月がかかったのだろうか?自身の勝負をしているところが低いところにあるようで落ち着かない。

 

「ったく、何が誰にも作れないようなAIを作るだよ。それ以前に俺、負けてたんじゃねぇか。」

 

「.......だい、じょうぶ?」

 

拙い言葉が聞こえた。声は高く澄み、本当に心配をしているような声。

 

「ん?あ、俺が作ったAIか。」

 

「ん。コード、ネーム。ユキ。」

 

「ああ。ユキ.......ね。」

 

文句を言わせない圧が凄かったのでとりあえずその呼び名のままにしておく。

 

「調査内容、わかる。」

 

だいたいわかった。彼女は無口だ。いや、たどたどしいと言うべきか?この世界においてこのしゃべり方は特異だ。四苦八苦俺の作ったAIで合っているだろう。ユウキから真ん中の『ウ』を撮っただけの安易なネーミングだが、気に入っているようだから良しとしよう。

 

「触って。」

 

そう言われる。目の前の彼女は掌を上に向けてこちらに突き出しているが、その上には何も載っていない。

 

「.......何を触ればいいんだ?」

 

「....ん。」

 

これ。と言うように腕を動かし、掌を強調するユキ。さすがの俺も混乱が隠せない。

 

「.......掌、握って。」

 

.......は?いや、待って?たとえ相手がAIだったとしてもそれは余りにもハードルが高い。

 

「触覚調査。」

 

なるほどね?.......

 

「それ、そこら辺の男性モデルでも良くね?」

 

「男性と女性の質感、違う。そして女性モデルは論理コードが発動するから」

 

ほうほう。聞いたことあるぞ?決まった秒数触ってたら吹き飛ばされるってあれだな。ん?

 

「.......それ、ユキでもダメじゃね?」

 

「私、あなたに作られた。だから、いい。」

 

「そう、か....ん?」

 

疑問が腫れてない気がしたがもう手遅れ。体は動き始めていた。相変わらず無表情。特に物腰も大人しい。でも人と関わるのが嫌ってことではないみたいだ。人見知りでもない。まだ人との話の経験が足りない弊害なのか、拙いがある程度の意思疎通ができるのは分かった。だいたい相手はプログラムで意識する方が間違っている。

 

「....柔らかい.......な。それにサラサラしてる。」

 

.......ごめんいくら捻くれててもこれは無理.......実際、プログラムだとしても見た目は美少女だし、なんというかこう.......保護欲?を掻き立てるような見た目をしているわけで。まぁデザインしたの俺なんだけど.......。

 

「罪悪感ハンパねぇ.......」

 

それに尽きる。俺みたいなめんどくさい男に手を握られて嬉しい女子なんかいるわけないことぐらい自覚しているのだ。

 

「パラメータ....変える。いい所..で言って。」

 

そう言うなり目をつぶるユキ。より一層の罪悪感に押しつぶされそうになるが、鋼の意思で乗り切る。手のひらを意識してみれば少しづつユキの肌の質感が変わってきている。

 

「ここ。サラサラなのは変えなくていい。」

 

「....ん。わかった。」

 

そう言っておずおずと手を離そうとすると何故かユキが離すまいと指を絡めてくる。俺だって年頃だ。そこまでやられて動揺しないわけが無い。

 

「な、何やってんだ?」

 

「....話して?」

 

いきなりだった。一瞬何を言っているのかわからなくなった。混乱する頭の中からどうにかして引っ張り出してきた言葉は....

 

「.......何を?」

 

疑問だった。誤魔化すような言葉にユキが反応しないわけが無い。案の定敏感に反応したユキは顔をしかめながら言う。

 

「私、カウンセルプログラム。感情、読める。」

 

見透すような視線でこちらを射抜いてくる。反論は許さないとでも言うように

 

「あなた、何を?って言った。なんの事?じゃなくて。」

 

つまりこう言いたいのだろう。本当に何も無いならなぜ、あるようにも取れる言葉を使ったのかと。心当たりがあるんだろ?と。

 

「.......話せ、ない?」

 

「....色々と理由があるが、プログラムだからとか子供だろとか。他にも挙げようとすれば沢山ある。」

 

これは嘘ではない。遠慮でもなんでもなく、捻くれを発動させた訳でもない。ただこれは人に話す内容じゃないってだけ。それだけなのだ。

 

「家族....だったら話せるの?」

 

「ん?ああ.......」

 

思わず、言葉をろくに聞かずに返事をしてしまった。考えている時こんな悪い癖が出てくる。

 

「...........娘?」

 

見た目5歳くらいしか違わない子供を持つというのはあかがなものか.......

 

「いや、なぜ疑問形?.......」

 

一生の不覚だ。一瞬でも可愛いと思ってしまった.......目の前で小首を傾げるこの子を。

 

「....娘にも話せ、ない?」

 

「.......はぁ、嫉妬だよ。努力しても天才に追いつけないっていうな。ほら、くだらねぇだろ?それより次のテストやらないのか?」

 

不満気な顔でこちらを見てくる彼女はとりあえず目の前のことを優先するようだ。この後質問攻めされるかも知れないが、とりあえずは難を乗り越えたと見ていいだろう。

 

「....次は動き。ジャンプ、ダッシュ。色々試して....みて」

 

現実との差異を調べるのか。色々と思うところはあるが1番最初よりもまだ健全だ。試しに1歩踏み出してみよう。

 

「ッ.......早速1個」

 

「....ん。」

 

「重力の掛かり方が変。慣れないと転びそうになる。」

 

「わかった。」

 

転ばないように注意をしてに褒めを踏み出す。思ったより前に足が出ない。その原因は肩を回してみたりと色々と動いているうちにわかった。

 

「関節の可動域が狭い」

 

「....ん。」

 

次々と問題点をあげていく傍らでユキはつまんなさそうに岩に腰をかけている。完全に暇な子供そのままだ。

 

「....パパ?」

 

「ッ?!.......え?」

 

「いや....違う。お父さん?うん、こっちだ.......」

 

どうやらしっくりくるものを見つけたようだ。だがこちらとしては心中穏やかではない。ユキの一言一言、何故かこっちも反応してしまうのだ。

 

「ち、ちょっと.......え?お父さん?」

 

「ん。....ダメ、だった?」

 

そんな言い方されたら言葉に詰まってしまう。返答なしに黙った俺を見て何かを納得したようにユキは1人頷く。

 

「....お父さんは....懐に入ったら、甘い.......わかった。」

 

思わずずっこけそうになる。自分でも分からないような弱点を見つけられたからもあるが、結構策士だと言うことにだ。

 

「.......次は何をやればいい?」

 

「.......遊ぶ。」

 

「は?遊ぶ?」

 

「....ん。」

 

このゲームをって事か?って言うか、こんなもんどう遊べと?なんの説明もなしに何をやればいいかも分からない状況で何ができるんだよ。

 

「.......髪、邪魔。留めたい。」

 

「.......そりゃぁ悪うござんした。モデルデザインしたの俺でごめんなさい。パーカーのフード被れば邪魔にならないんじゃないか?」

 

心のこもって無い謝罪をしたあと改善案を出すと案外すんなりとユキはこちらをじっと見てくる。

 

「....その手が....」

 

なんか驚いてるし。目をきらきらさせながらこっち見て来るのやめて?なにか期待されても何も出ないから。

 

「.......ほんとにAIかよ。」

 

もろ人間じゃん。というつぶやきは何とか心の中でつぶやくに留めたが挙動といい、言動といい。どこを取っても普通の人間と同じところしか見当たらない。

 

「....もしかして裏で動かしてる人がいる?」

 

「....む....私は私。」

 

本当に怒ったように言ってくるが如何せん表情が動いてないので感情が読みづらい。

 

「....じゃぁ、人間じゃできない事やって?」

 

表情を変えず左手をあげる。萌え袖気味の手を猫の形に丸めて顔の横に持っていき子首を傾げる。

 

「....にゃ〜?」

 

と一言。内心はもう暴れそうなくらい悶えてます。はい。ゴメンなさい。正直舐めてました。侮ってました。AIだからSiriと同じレベルだろうと思ってました。ごめんなさい。尊いです。確かに普通の人間はこんな表情なしで出来るわけないもんね。ごめんね?疑って.......

 

「.......お父さん?」

 

ごめんなさい。今俺の顔見ないで?ちょっと親愛という何かが芽生えてそれが暴れようとしてるから。多分顔は君の....俺の娘の尊さで表情筋ユルユルだろうから。

 

「........感情表現....システム、壊れた?」

 

「え?.......な、なんで?」

 

「お父さん....幸せのパラメータ、限界突破。」

 

.......ごめんなさい。それ、間違いないです。俺、自分の事、捻くれてる。って思っててごめんなさい。なんか知らんけどユキの前だと自然体でいられる。何言ってんだ、俺。

 

「....そこ、座って?」

 

地面を指さしてそう言う。どうせ、テストだろうから素直に言うことを聞く。

 

「あぐらでいいか?」

 

「ん。」

 

許可を貰ったので座るといきなり、ドサッと言う音と衝撃と共に俺の足が何が柔らかいものに包まれた。

 

「.......ん。パラメータ、壊れてない。また上がった。ロリコン?」

 

「ち、違うわい!!」

 

不名誉な称号をつけられるのを未然に防ぎ、自身の心の中で今までの行動をふりかえってみる。膝に乗っかられるだけで上がるパラメータ。手を握るだけで意識するぐらいのピュアボーイ。パパとか、お父さんって言われて嬉しいこの精神。

 

「.......やばい、否定しきれない........」

 

大丈夫。多分.......151cmはロリじゃなくね?大丈夫だよな?誰聞いてんのか分からないけど.......

 

「ほら、データ撮り終わったなら降りてくれ。」

 

「....ん、気持ちいいから....この、まま。」

 

ごめんなさい。降りてください。俺の心が持たないです。もちろん邪な感情ではないけれど。

 

「ッ....降りてくれ.......」

 

「.......分かった。」

 

少し不満げな顔をしてからいそいそと俺の足からおりる。

 

「.......ユキはAIだ。俺が作った。」

 

「.......ん。」

 

「俺をからかうな。」

 

「ッ....ごめん、なさい.......」

 

罪悪感がない訳では無い。だがここの線引きをしなければまた俺は間違いを犯してしまう。昔を繰り返してしまう。お互い、嫌な思いをしたくなければこうするしかない。

 

「.......ちぐ、はぐだね.......お父さんは。」

 

だからこそこの呟きは俺にはこたえた。まるで俺が責められているような気がしたから。ユキからしてみたら純粋な興味だったのだろう。感情パラメータと言動が一致しないことに対しての疑問。それ。ただ口に出しただけなのだろう。

 

「ッ!.......お前っ!!!」

 

でも、俺の過去はそれを許容できなかった。それ故に暴発した。感情の嵐が外に出ていく。

 

「.......」

 

ユキは珍しく感情を表情に出していた。その顔は.......

 

 

 

 

 

酷く怯えていた。

 

 

 

 

その顔を見た瞬間一気に頭が冷めた。俺は今何をしようとした?AIだとしてもこんな年端も行かない女の子に掴みかかろうとしたのか?

 

自問自答だ。自己嫌悪だ。後悔と申し訳なさだけが残った。この状況。俺はこの後に言う言葉を持ちあわせていなかった。でもやらなければいけないことはわかる。

 

「ッ.......ご、ごめ「ごめんなさい.......」.......え?」

 

俺が謝ろうとしたタイミングでユキが声を出した。その内容は皮肉にも俺と同じ言葉で、体を振るわけながら目の前の俺に必死で伝えようとする姿を見て俺はもう何も言えなくなった。

 

「ご、めんなさい。私、ま、まだ人がどうしたら怒る.......とか分からなくて.......何が良くて何が悪いか、分からない.......」

 

「ぁ.......」

 

言葉が出ない。まだ産まれたばかりの彼女は知らない事ばかりのはずなのに俺は全て、知っている前提で話して、関わって。そんな浅はかな行動が今に繋がるのだとしたら。俺はどんなに愚鈍なことをしたのだろう?

 

「....わ、私、プログラムだから、思考だって....多分おとう....あなたと違うし.......どう考えればいいか、分からない.......」

 

ユキの顔から光る雫が落ちる。それが涙だとわかるまでにそう時間はかからなかった。感情に任せて怒鳴り、怯えさせて、そして謝罪させているこの現状。俺はどんなにクズで馬鹿でそれでいてこんなことしか思いつかない俺は.......

 

「.......ごめん。ユキは悪くない。俺が感情に任せて怒ったのが悪いんだ。ごめん.......」

 

俺は.......

 

「嫌いに.......ならない?」

 

「ああ、ならないさ。でも俺の事怖がらないでくれ。」

 

俺は.......

 

「うん.......」

 

「これから、色々と教えてやる。もう俺は怒鳴らないし、怖いことはしない。」

 

だから俺は.......

 

「本当に、ごめんな?」

 

ユキの頭を人撫でして抱き締める。

 

だから俺は甘い言葉でしか贖罪できない俺自身が嫌いなんだ。




はい。だけたけです。外伝どうだったでしょうか?いやぁ.......あのさ?聞いて?実はさ、少しでも描きやすいようにってもうこの外伝の結末書いちゃってるんだけど、その結末がなんともいい感じにできてしまって逆にクオリティを落とせないって言うプレッシャーがかかっているこの状況。つらたん。

という事でまぁシリアス強めでお送りしました。でもこれ以上は暗くならないよ。これ以上主人公が落ちることは無い。.......多分。まぁあくまでシリアス親愛物語だからね!

ちなみにαテスト編終わったら次は、製品版編?語呂悪いな.......まぁ考えとくけどそっちも書くつもりです!俺のスキル的には本編も書いて外伝も書くのは無理ぽだからしばらくは外伝オンリーになると思う。暇あれば本編も執筆するから鈍足亀更新ならできるかも.......

という事で今回も見てくれてありがとう!誤字報告やら、感想やらマジで待ってます!知ってる?うさぎって寂しかったら死ぬんだよ?


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外伝 新たなる創造主(3)

はい。遅れてごめんなさい.......そしてそれでも見てくれてる人には最大限の感謝を.......定期試験間近で執筆の時間取れなかったのです。という言い訳ひとつ。本当にごめんなさい。

そしてもう一個ごめんなさい。冒険まで書けなかったです。さんざん匂わせること書いたにもかかわらず行けませんでした。というか、前半暗いです。元々こんな作品じゃなかったんだけどなぁ.......

この話終わったら後はラストにちょい暗いの入ってるだけでそれ以外は親子でワチャワチャ微笑ましするだけなのでお願いします。読んで.......

では外伝どうぞ


俺はクズだ。ユキも薄々気付き初めているだろうか?全て察されているような気もする。新たに浮かんだ疑問をふとユキに聞いてみたことがあった。それはαテスト2日目。

 

「おは、よう。おと.......拓さん。」

 

他人行儀な言動。行動。全てにおいて俺とユキの間にぽっかりと溝が出来てしまっていた。その現実はあまりにも残酷でこの挨拶をきたいた時は思わず膝を折ってしまいそうになった。

 

「.......ああ、おはよう。」

 

声を出す俺。罪悪感に打ちひしがれながら必死に隠す。どうせ、パラメータとやらで無駄だろうが.......。

 

ともかく、俺は後悔をしていたのだ。あの時は自分自身が嫌いだ等と思っていたが、一日頭を冷やして考えている内に俺にはそう思うことすら許されない。そう考えさせられた。

 

「....なぁ、なんで君はあんなことした俺に着いてきてくれるんだ?」

 

希望が欲しかった。システムから命令されているのはわかってるが、救いが欲しかった。それがどんなに愚かで卑しいことだと知っていても。

 

「.......」

 

頭を下げて謝れもしない(ヘタレ)はこんなことを望んではいけないのに。無言になるユキを見れない。気まずい。そんなに自己中心的な思考しか出来なくなっている俺には一方方向しか見れない。

 

「....怖い....から。」

 

理解できなかった。俺が怖いならなぜ着いてくるのか。なぜそれが理由足り得るのかが。希望が、救いが消えていく。自業自得。そんな言葉が頭をよぎる。

 

「.......どこまで行っても俺は愚者.......か。」

 

そう。愚者にしかなれない。あの人生を狂わせた事件から何も変わっていない。大人ぶったって、何をしたって本当の大人にはなれなかった。自身を追い詰めて。被害者面して。見殺しにして。折れて逃げて。

 

それでも成長できなかった俺は愚か以外の何物でもないのはもうわかっていたことのはずだ。

 

「そう....だよ。分かってたんだよな.......」

 

でも、その仮面もユキと会って本当に心を許せる存在に出会えたと思った瞬間俺から拒絶した。

 

「ほんとに....ほんとに滑稽だよな。」

 

いつか呟いた言葉をもう一度口にする。もう口癖になりつつあるその言葉は口に馴染み、嫌でも自分がどれだけ堕ちているか実感させられる。

 

「.......周りが、怖かった。」

 

唐突にユキが口を開いた。またもや理解が出来なかった。周りというのは俺も含まれているのだろうか?それとも俺だけのことを言っているのだろうか?と。

 

「周りは、予想出来る言葉しか話さ....ない。」

 

そう続ける。昨日、ユキは俺の事。人間の事を理解出来ていないと言った。なのに予想出来る言葉しか話さない?

 

 

変。

 

 

ただそのぼんやりとした疑問だけが浮かんだ。希望の光がまた見える。餌を得た犬の様な浅はかさに辟易するしかない。また自身の思考に吐き気がしてきた。

 

「当たり前の会話、出来ない。だから....怖かった。」

 

そんな俺の思考を置いてきぼりに彼女の独白は続く。疑問が晴れない。ポツポツと俯く彼女から発せられる音は俺には届かない。真意が分からない。察せないのだ。次の言葉を聞くまでは.......

 

街の人(AI)、みんな同じ...........作り物の表情、動き。」

 

全てが怖かったと続ける彼女の顔は俺が怒鳴ってしまった時以上に酷い顔だった。その表情を見た瞬間場違いにも思った。

 

ーユキは.......ユキは強いんだな。ー

 

と。俺が偉そうに言えることでもないし、考えることでもないけどでもそれだけしか出てこなかった。そんな感想しか。

 

覚悟を決めた。今までさんざん情けない所を見せて、ユキを追い詰めて、酷いことをした俺だけど。そこまでユキに話させて、疑問ばかりを一方的に聞いて.......。先に言葉を発さなければならないのは俺なのに。遅いかも知れない。いや、『かも』じゃない。もう遅い。けれどこのままじゃぁ後悔してるだけで俺が望んでいる成長は得られない。

 

「だ、だから拓さん、がこの世界に....来た時は嬉し「ごめんなさいッ.......」ぇ.......」

 

これ以上彼女を傷つけたくない。その一心で声を出した。結果的にユキの言葉を遮る形になってしまったけれど。

 

「....ぇ....な、何して.......」

 

俺の姿を見てユキは赤くなった目を見開き驚いている。本当に優しいと思う。こんなことをした俺にもそんな目を向けてくれるなんて思っていなかった。

 

「ごめん....」

 

今しているのは土下座。部屋の中で俺とユキ2人だけ。こんな格好とこんな言葉しか俺には用意できなかったけど最大限に謝る。ケジメはつけなければならない。

 

「怖がらせるようなことしてごめん。八つ当たりしてごめん、関係ないのに私情を持ち出して混乱させて、紳士に向き合ってくれていた君にどんな仕打ちをしたか。」

 

まとまっていない言葉で懸命に伝える。愚者は愚者のまま愚者らしく謝る。今はそれしか出来ないが、それができるならやらない手はない。それが俺にとってどんな結果をまねこうとも構わない。それが俺としての。彼女との関係に対しての転換期になるなら。

 

「俺にはユキと一緒にいたいなんて言えないし、言う資格も無い。でも最低限の償いはしたい。こんなことになったのは全て俺のせいだ。君が人を知らないとか、そういう問題じゃない。」

 

彼女が気に病まないように。優しい彼女が悩まないように。もうAIなどとは口を割いても言えない。それほど彼女からはこの短い間に沢山教えて貰ったし、伝えてくれたから。

 

「言ってくれ。俺は....俺は君に何をして償えばいい?何をすれば気が晴れる?」

 

だから、二度と近づかないでと言われたらそうしよう。殴りたいなら殴られよう。罰という名の罪滅ぼし。あまんじて受けよう。

 

「....なん、でもいいの?」

 

そう聞いてくる。覚悟を決めていたとはいえ、怖いものは怖い。

 

「あ、ああ....」

 

それしか言えない。言えなかった。伝わっただろうか?俺の覚悟は。

 

そう考えてるだけで俺はまだ愚者なのだと思う。フィクションのように少しづつ変わっていけばいいなどと思っていては少しも変わらないことはもう嫌という程実感させられた。

 

「.......じゃぁ.......」

 

途端に周りがスローモーションになる。ユキの口の動きが鮮明に見え、その目の前には裁きを待つ俺がいる。

 

「じゃぁ....また、お父さん....って呼んでいい?」

 

緊張していた故に言葉を飲み込むのに時間がかかった。言葉をゆっくり噛み砕く。理解した途端そんなのでどこが罪滅ぼしに....と思ったが、彼女の顔を見るとその考えも消し飛んだ。今までに無いくらいに泣いていたからだ。

 

「....もう、孤独は嫌だ。私を、否定しないで....1人は.......もう嫌だ....私を.......私を家族にして....」

 

高い声でそうすすり泣く彼女を見て俺が思ったのはただ1つ。

 

「また、泣かせた....か。」

 

「ぅぐ....ひっく....ぅぅ.......」

 

気づけば頭を撫でていた。その手はぎこちなく動き、それに合わせて少しユキの頭が揺れる。

 

「....こんな、こんな父さんでいいなら....」

 

「うん....うん、....うんっ!大好きっ!」

 

そう言って抱きついてきた彼女は前よりも俺に心を許しているようでなんとも言えない気持ちになると同時になにかむず痒いものを感じた。

 

 

________________________________________________

 

 

「.......恥ずい.......」

 

今に言えたことではないが、散々醜態をさらした手前、ユキの事を正面から見ることが出来ないでいた。

 

「お、お父さん、かっこよかった....よ?」

 

フォローは嬉しいが、今、そのフォローをされると余計に惨めに感じるから少しやめていただきたい.......

 

「私は.......元気なお父さんがすき....だな.......」

 

 

、、

 

、、、、

 

 

そ、そんなこと言われたらさ?元気出さない訳にも行かないよね?(チョロい)

 

「.......ごめん、気分転換に冒険でも行くかっ!」

 

「.......うん!」

 

やばい。俺の娘が可愛い件について。さっきのシリアス返せって?ごめん無理。

 

「どこに、行くの?」

 

「ぁ.......」

 

ジト目で俺の事を見るユキ。親しくなった代わりに遠慮も無くなってきてるような....いや、割と序盤から遠慮なかったな。

 

「と、取り敢えず外の人に何をすればいいのか聞いてくるよ。遊べって言われても何をすればいいか分からないからね。」

 

そう。次のテスト内容は『遊べ』というなんともふざけた内容だ。遊ぶ仕事ってなんだよ....と言いたくなる。

 

「戻って.......来るよね?」

 

「おう、一、二分で戻ってくるから待っとけ?」

 

悲しそうな顔をするユキの頭を撫でながらそういうとコクンと頷く。それを見届け、指を振りログアウトボタンを探す。

 

「お、あったあった.......一日ぶりのリアルだな。」

 

前日はゲームの中で寝たのでプチ旅行みたいなものだった。内容はとてもそうとは思えないけれど.......

 

「.......ん、待ってる。」

 

頭をひと撫でしてからログアウトのボタンを押す。徐々に崩れていく景色を見ながら....最後までユキの笑顔が頭から離れなかった。

 

ー何があっても守ってやるからな.......ー

 

今度こそ、堅固な決意を胸に抱き意識を現実世界に浮上させる。

 

 

________________________________________________

 

 

「.......ぃ?」

 

なにか声がする。まだ遠い意識が何科に引っ張られるような感覚。遮断されていた体の感覚が戻る。

 

「現実と仮想。見分けが着くだけで安心するな.......」

 

随分と遠い所に言っていた気がする。現実だが、現実ではない。そんな感覚。

 

「楽しんでくれたかい?」

 

さっきの声が今度こそちゃんと音になって耳に届く。声の方向を向くと相変わらず張り付けた微笑み顔の茅場が立っていた。

 

「ッ.......達観してる感じが気に食わない.......」

 

「はは、まぁこっちにも色々あるからね....所で予定外のログアウト。何があったんだい?」

 

あまり話したくないのだろうか?この男にはあまり興味がないから今までそんなに気にしてはいなかったが.......

 

まぁ、そのことを聞きたかったところなので素直に流れになっておこう。

 

「遊べ.......ってまだこのゲームの概要やら何を目指せばいいのかとか聞いてないんだが。」

 

「ほう....コードネーム《ユキ》には何も聞いてないと?」

 

「.......詳しい内容はインストールされてなかったらしいぞ?」

 

コードネームと聞いて少し不快になるが、話を途切れさせてはいつまでたっても話が進まないので我慢しておく。ここも自分で実感できるほど変わった部分だ。もうユキをプログラムとは見れない。

 

「ふむ.......いいところを見せたい、か....。名誉挽回かい?」

 

「なッ.......見てやがったのか?趣味悪ぃな.......」

 

正直この男に弱みを見せてしまったのは悔しい。ってか、純粋に怒りさえ感じる。

 

「はは、覗きをしてしまったことは謝るよ。事実だからね。」

 

掴みどころがない。第一印象で抱いたものであり、それは今も変わらないようだ。何を考えているのかが分からない。それは彼故なのか、それとも俺が人と真剣に関わってこなかった故の弊害なのか。分からない。分からないことが多すぎる。

 

「さてと、冗談はここまでにして、目的は最上階到達。としているが正直に言うとモデリングは最下層のボス部屋までしかできていない。取り敢えずそのボス撃破が目的かな。」

 

悪気がなさそうに話を続ける彼に俺は怒ることもバカバカしいと思い始めてきた。

 

「居るとなると.......あの塔か.......」

 

フィールドに出るといつも見えていたあの天井に続く高い塔。多分そこだろうと当たりをつけ言葉に出してみたが結果は当たりだったようだ。

 

「ああ。でも今のレベルだと間違いなく瞬殺だろうから.......」

 

「わかってるよ。MMO初心者じゃあるまいし。集団戦が想定されて作られてるなら軽くレベルはマージンの4倍ってとこだろ。40レベくらいか.......」

 

ブツブツとつぶやく俺にただただじっと見つめてくる茅場。言葉じゃ言い表せれない様な微妙な空気感の中で次々と思考をめぐらせていく。

 

「決まったなら戻ってあげないの?すぐ戻るって言ってきたんだろう?」

 

もう隠すつもりもないのかそう俺に問いを飛ばしてくる。かくいう俺も忘れていた訳ではなく、多くの知識を茅場から引き出そうとしての行動だった。多分見破られているのだろうが.......

 

「.......ああ。そうするよ。」

 

コンビニのおにぎりを大口を開けて二口で平らげる。1日も何も食べていなかったので腹も減っていたゆえの行動だった。

 

「.......リンク・スタート。」

 

 

 

________________________________________________

 

 

「.......ん。おかえり、お父さん。」

 

「ああ、今帰った。それより目標がわかった。この階層のボス撃破だとよ。」

 

そうユキに言ってやると黙ってしまった。

 

「.......お父さん、弱い。」

 

「あ、ああ。レベル上がってないからな。」

 

いきなりの罵倒にたじろぐが何とか冷静に返す。

 

「素の、運動神経.......ない。」

 

「う、うぐっ.......ま、まぁゲームだしなんとかなるんじゃ........」

 

「だけど、お父さん.......負ける。」

 

そうだ。ゲームがそんな不公平なものであってはならない。みんな平等なスタートだから楽しいのであってスタートがバラバラなものは全てクソゲーと相場が決まっている。

 

「って言う理論もこのVRじゃ意味ないんだけどな.......」

 

このゲームは今までのリアルでの経験が生かされる。そんな気がする。

 

「食事以外ログアウトしないって言うのも考慮しなきゃな.......」

 

そう。第一、俺がログアウトしようとするとユキが普段あまり動かない表情筋を動かして必死に止めて来るのだ。その泣き顔も可愛いのだが、ずっとみていることも出来ないのでこの世界で暮らすというのは元々選択肢の中に入ってはいた。

 

 

「さてと。塔に向かいますか!途中でいいレベリングスポットがあったらそこで永遠と敵を倒しまくっ45レベを目指す。」

 

長い道のりになるだろうが行けないことは無い。αテスト1週間の間にできるだろう。多少無理すればだが.......

 

「ん。塔はこっち。」

 

見えている塔を指さしながら手を引いてくる姿はなんとも可愛らしい。でもひとつ言わなきゃいけないことがある。

 

「ユキ、初日は俺一人で行かせてくれ。今の俺じゃユキと一緒に行くと多分守りきれない。俺はリスポーンするからいいけどユキは違うだろう?」

 

多分ユキも復活はするのだろう。でも記憶が残っているかは別だし、そもそも同じ存在なのかどうかはまだ分からない。というか、もう一度ロードされるなら四苦八苦同じではないだろう。

 

「....私も、戦う.......」

 

そう言って近くにあった斧を持とうとすると斧自体がユキを拒むように青い光が弾けた。

 

「ッ....?!」

 

「おい、ユキ!大丈夫か?!」

 

そう心配の声を掛けるとヨロヨロと起き上がるユキ。心配させまいと思っているのはわかっているが無茶はしないで欲しい。今のは防ぎようが無いのは分かっているが、それでもそう思ってしまうのは親心というものなのだろうか。

 

「だい、じょうぶ。」

 

そう言いながらもう1回掴みに行こうとしているので腕を優しく掴みその動きを止める。

 

「無茶はするな。もっと自分を大事にしろ。それでも無茶するようだったら俺が強くなってても連れて行けない。」

 

「ッ....わかった....」

 

よしよしと頭を撫でてやる。少し厳しい口調になってしまったためこういう所で釣り合いを取らないと俺の方が罪悪感に押しつぶされそうになる。まぁシンプルに言うとエゴだな。

 

「んぅ.......くすぐったい....」

 

.......え?え?何この子。なんか色っぽい声出してるんですけど.......俺そんなにいかがわしいことしてないよね?え?してないよね?(混乱)

 

「おっと.......ごめんな。」

 

クールに.......そう、クールにだ。対応を間違えれば俺は社会的に死ぬことになるぞ?茅場が見てるんだからあながち間違いじゃないだろう。ってかあいつだけには見られたくない。

 

「もう見られてんだろうけどなぁ.......」

 

「?.......」

 

不思議そうな顔で俺の事を見てくるユキは色々吹っ切れたせいか今までよりも親愛の意味で愛しく思えた。




はい。どうでしたでしょうか?『話が違うじゃねぇかッ!』って怒ってる人もいるでしょう。ってかそんな人おるのか?読んでくれてるかも怪しいこの作品に.......ま、まぁ次話からは明るい話なので.......じゃあまた次の話で.......


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外伝 新たなる創造主(4)

はい。更新遅くなってごめんなさい。本当にごめんなさい。でも言い訳させて?って言うか補填.......かな?まぁいいや。とりあえずコレ見て?


【挿絵表示】


はい。ユキちゃんの絵描いてみた。構成的に元絵があるからどっかで見たことある気がするぞ?っていう人は凄い。その元絵見て構成決めて書いたから良かったら感想よろしくお願いします!

では外伝をどうぞ.......


ここからは話が一気に飛ぶ。戦術、技術共に拙いまでもレベル差でゴリ押しができるようになった頃。

 

「.......もう4日か。長いようで短かったな.......」

 

レベ上げに邁進していたこの頃。ユキが拗ねるので一日ごとに一日中ユキに構う日を作り実際は2日間しか冒険をしていないが、残りの時間はあとわずかだ。1週間という話だったので残り3日。

 

「ん。まるで、ダメ。イメージに体がついて行ってない。」

 

分かってるんだ。これが付け焼き刃だってことも。せめて体を自動的に動かす決まったモーションがあれば.......

 

「無い物ねだり.......か。」

 

「ん。ボス倒すの、無理。」

 

今のレベルは42。茅場に聞いた話だと45でカンストらしい。迷宮区のモンスターは武器を振り回してれば勝てるからここまで来れたが、ボスだけがいかんせん勝つイメージが湧かない。

 

「あの太った犬っころめ.......」

 

「私、連れて行ってくれない....から、知らない。」

 

少し拗ねた顔になりながら此方を見てくる。でも仕方が無い。失うのはもうこりごりなんだよ。

 

「.......ごめん。でも....」

 

「ん、今の、意地悪だった。私もゴメンなさい。お父さん。」

 

距離縮まったよね?ちゃんと親子してるよね?これ。なんか色々あっただけに感慨が深い。事実、この数日でユキの喋り方がこれでデフォルトになりつつある今、言葉足らずではあるものの自身の考えを伝えようとすることが多くなった。いい傾向だと思う。

 

「俺のpsでこれしか行けないならカンストさせたところでたかが知れてるよなぁ.......はぁ、体を動かす才能はないってのに.......」

 

「....複数からデータ、取れない。から、お父さんがどれくらいなのか....分からない。」

 

まぁユキの言ってることも分かるさ。でもこのままだと撃破どころか、一方的にリンチされて終わる事実は変わらない。かろうじて1回の攻略で5回の攻撃が最高である。壊滅的だ。

 

「だいたいあの巨体であのスピードは理不尽だろ....ゲームバランス、絶対おかしい。」

 

そう愚痴を吐く。まぁ本当はわかってるんだけどね。才能がないことぐらい。

 

「.......ん、元気出す!」

 

自分の前に腕を持っていき両手で小さくガッツポーズをとるユキを見ていると闘志では無く、微笑ましさが先に出てしまう。でもこれを口に出すとユキが怒るので言えないのが残念だ。

 

「....まぁ、行ける.......かな。3日もあるんだし........」

 

自信なさげに言うとユキが座っている俺の前に来て頭をなでなで。気を使わせた.......というより、1種の俺らのスキンシップなので前みたいなマイナス思考は起きない。ってか起こしたら今度こそユキに嫌われる気がする。

 

「.......うしっ!元気だしますか!!!」

 

「.......」

 

いきなりテンションを上げた俺を怪しむような目で見てくるユキ。うん。あまり見ないで?まだこのテンションは慣れてないから。自分を変えようと思って性格改編を試みた結果だから.......ほんとに恥ずい.......

 

「こ、コホンッ.......さてと.......またレベ上げ行くからユキも着いてくるか?」

 

咳払いをひとつ。

 

迷宮区じゃ無ければユキを守る自信があるので最近は連れて行っている。何せ、剣を振り回してれば当たる。当たればレベル差で相手が勝手に死ぬ。大胆な話、ユキを背負いながらでも戦えるってことだ。

 

「.......ん。行く。」

 

短く返事をした。無愛想だがその中にも信頼があるのがわかる為、なんともむず痒い。それはともかく俺の上着をつまみながら着いてくるユキを連れて宿を出た。

 

 

________________________________________________

 

 

「キャインッ!」

 

悲痛な悲鳴をあげてポリゴンを散らしていく狼。《フォレストウルフ》を狩りながら周りを見渡しユキが万が一にも襲われないように注意する。滅多に出れない外という事もあり、表情と声とは裏腹に足は年頃の子供みたいに跳ねている。

 

「ウォラッ!」

 

力任せに振った剣は運良く狼を両断した。実に7空振り1ヒットだ。ほんとに才能がないなと落ち込みそうになる。まぁしょげてはいられないんだが。

 

「お父さん、お父さん。これ.......」

 

指を指していたのは草むらだった。剣を鞘に入れ近くに行く。するとそこにあったのは.......

 

「アクセサリー?」

 

装備品かと思いウィンドウで操作してみるも、出てきたカテゴリー表示は《貴重品》細いチェーンの先にひし形のクリスタルのような石が付いている。そして肝心な名前は.......

 

「.......無い。なんでだ?」

 

見事に何も無い。空欄だったのだ。

 

「からっぽ.......」

 

「ん?」

 

ユキが何かを呟いた。吸い込まれるようにこのネックレスに視線を向けて只只呟いた。心做しかユキも感情を落としてきた様な雰囲気。心配になりユキを抱きしめてみるも何時もの子供っぽい反応もなし。

 

「これ、か.......」

 

鍵はこのネックレス。試しにユキから見えないところ。つまりストレージにしまってみるとあっさりユキが元に戻った。

 

「....あ、れ.......?おとう、さん?」

 

記憶が無いのか虚ろな目から焦点のあった目に戻り、俺がユキを抱きしめているのを見て俺のことを呼んでくる。

 

「何か、変な所ないか?」

 

「.......ん。大丈夫だと思う。どう、したの?」

 

そう答えてからユキが疑問を飛ばしてくるがなんでもないと返し、あのアクセサリーはユキの前に絶対出さないと誓う。

 

「あのアクセサリー、は?」

 

そう聞いてくるがありのままを話す訳にも行かずウィンドウにしまってあると返す。

 

「ん。了解。」

 

そう興味を無くしたように答える姿にホッとしユキに回していた腕を解く。

 

「....ッ.......お父さん.......」

 

またもやユキの目が一点に集中する。今回は意識はしっかりしているようだが.......

 

「ッ.......フォレストウルフ.......」

 

そこに居たのは何も変でもない敵だった。だが恐怖を覚える。自分自身に。こんな敵地の真ん中でこんな隙を晒していたのだ。攻撃されなかったからいいもののされていたらユキに当たっていてもおかしくない。

 

「ちッ.......この....「待って!」ッ?!」

 

俺がさやから剣を引き抜き攻撃をしようとするとユキが普段出さない大きな声で止めてくる。普段なら止まらなかっただろう。でも今回は動揺していたからか、止めてしまった。それが命取りになるということをわかっているはずなのにだ。

 

「.......この子、雰囲気....違う。」

 

確かに攻撃もしてこないし何か、周りの奴らと違う気もする。

 

「....笑って、無い。」

 

本来、笑うという行為は挑発。捕食欲の表れと言われており、野生の動物は皆獲物を追っている時は笑っているのだとか聞いたことがある。それが本当かは分からないが、確かにこの狼は笑ってなくてさっきまでの狼は笑っていた。

 

「でも、そこまでゲームに正確性を求めるか?」

 

声に出すほどの疑問。茅場の狂気の一端に触れた気がした。キャラのモデリングの正確性。動きの自然さ。全てがリアルに再現されているとはいえ、モンスターの生態まで再現しているとは思わなかったのだ。

 

「データ、参照。.......状態、テイム待ち」

 

ユキが声を発する。サーバーのデータベースにアクセスしたのだろう。

 

「テイム.......ね。ゲームではオオカミには肉が王道だけど.......」

 

「私、やりたい.......」

 

オオカミと戯れるユキ.......うん。ありだな。ってか可愛い。

 

「よし、じゃぁこの肉でいいか?」

 

コクリとうなづいてから小走りで狼に駆け寄っていく。

 

「くぅぅん.......」

 

お前は犬かと思うくらい可愛く鳴く狼。尊厳はどこへやったのだろうか?そう考えるも答えは出るはずもなく気付けばユキが狼の背中に乗ってこっちに来る。

 

「その狼仲間になったのか?」

 

敵対行動を取らない時点でだいたい予想は着いているが念の為確認をする。結果.......

 

「....お手。お座り....」

 

成功していたようだった。言い終わったあとにわしゃわしゃと狼を撫で回す。ツッコミどころはそこでは無いのだが.......

 

「えっと......何一つ言うことを聞いてないんだが....」

 

「可愛い、から。大丈夫.......」

 

「それでいいのか、娘よ.......」

 

俺の子は少し天然が入っているようだった。

 

 

________________________________________________

 

 

4日目のαテストも終わり俺のレベルは44。あと1レベでカンストなのだが、今日はテスト始まって1回目の帰宅の日。茅場に家まで送ってもらいドアを開ける。ちなみにユキはスマホに落としてきた。これでスマホ通話のかんかくでしゃべることができる。

 

「ただいまー.......」

 

部屋は暗い。妹はまだ帰ってないのだろうか?

 

「あ、拓にぃ!おかえり!」

 

愛しの妹がこちらに飛び込んでくる。いつもの事なのでこちらで妹.......もとい、木綿季(ユウキ)を怪我させないようにと優しく受け止める。

 

「ッ.......」

 

「ん?どうした?」

 

「う、ううん。なんでもない!」

 

少し表情が曇った気がしたが、気の所為だったみたいだ。今日はユウキが料理の当番だったみたい。木綿季のご飯は個人的に美味しいと思うから楽しみだ。だが、年齢的には思春期真っ只中だ。筈だ....筈なのにこんなにも兄妹仲がいいのは凄いのではないだろうか?と最近は考える余裕が出てきている。

 

「そうだ。木綿季。」

 

「ん〜?どうしたの?拓にぃ。」

 

いつものテンションでキッチンにいる彼女は返事をした。元気ないつも通りの声。でも、少し声が震えているのは気の所為だろうか?

 

「俺、娘出来た。」

 

疑問を棚上げし爆弾を投下する。

 

ガシャンッという音がキッチンから聞こえてくる。視線を向けると真っ赤な顔でこちらを見ながら目をまん丸に開いた妹が居た。

 

「.......え?ご、ごめん。もっかい言って?」

 

「娘が出来た。」

 

「.......は、」

 

「ん?」

 

「はぁぁぁぁぁぁあぁあああああ?!?!?!」

 

絶叫が家の中にとどまらず近隣に響き渡った。キッチンから走って出て来る。俺の寝っ転がっているソファーの背もたれに手を着いて俺の顔のすぐ上に頭を出してくる。距離だけ見ればバカップルのそれだ。兄弟だが.......

 

「拓にぃ!、いや、お兄ちゃん!」

 

「お、おう?」

 

昔の呼び方に戻る木綿季を見て若干狼狽える俺。それを知ってか、知らずしてか。激しく攻めたてるような口調で俺に問い詰めてくる。

 

「相手は誰?!どんな人?!ボクも知ってる人なの?!いつ?!いつからそんな関係になった人が.......というか高校生でそんなのはやすぎるよ!」

 

あ、わかった。これ盛大に誤解してるやつだ。というか俺の発言ってこんな誤解しか出ない言い方だな。反省反省。

 

「娘はユキって言うんだ。」

 

「雪ちゃん?!いい名前だね!ってそうじゃなーいっ!なんで言ってくれなかったのさ!ぼ、僕がお姉ちゃんになるだなんて.......なるだなんて.......えへへ.......」

 

「お、おーい?悪ふざけしたのは謝るから。娘って言っても俺がプログラムしたってだけだから!AIだから!」

 

「へ?.......」

 

誤解は解けたようだ。さっきとは違う意味で目をまん丸にしている。顔はさっきまでの興奮で赤くなったままだが。

 

「へ、へぇ....お兄ちゃ....拓にぃにそんな趣味が.......」

 

さっきの恥ずかしさを紛らわせるためか、半目になり俺の事をからかってくる。

 

「う、うん。そこに関しては弁明したいが、取り敢えずひとつ言いたいことがある.......」

 

「ボクは何を言われても聞かないからね?さっきのは事実としてネットに.......」

 

「やめて?!社会的に死ぬの必至だから!頼む!後生だから.......」

 

ネットのさらし者になればもう俺の人生はお陀仏だ。最悪、自殺まである。しないけど。

 

「イッ.......」

 

腕を掴むとなにかに驚くように腕を引き戻し自分の胸に持っていった。

 

「ぇ.......?」

 

「えっと、あはは....コーヒー入れるね?」

 

嫌われたかと思ったがどうやら違うようだ。そうなれば考えうるのは一つだけ。

 

「お前.......」

 

後ろから抱きしめる.......なんてことは出来ない。だけど大体は察した。優しく手をとる。距離を置こうとする木綿季を物理的に止め、こちらをむくことを強要する。こうでもしなきゃ俺の妹は弱音をはこうとしないからだ。

 

「....何があった?」

 

「.......な、なんの事?」

 

この期に及んでまだ言い逃れしようとする木綿季に視線を合わすと取り繕っていた仮面が少しづつ取れて行く。

 

「....話してみろ?」

 

「.......」

 

口を開かず、ただ佇みながら顔を歪ませていく木綿季。強引に聞き出すのはしたくないし木綿季も傷つくかも知れない。そんな博打は打ちたくない。

 

「.......俺にも、話せないか?」

 

「ッ.......」

 

そう言うと木綿季の足元に透明な水滴が。さっきからずっと我慢していたのだろう。元気という仮面が剥がれた今、目の前にいる彼女は感情をむき出しにする準備(覚悟)をしていた。

 

「はぁ.......よし、じゃぁこうしよう。先ずはその怪我、処置しようか。その間に話すか、話さないか決めていいよ。」

 

「気付いて....たんだ?」

 

「そりゃ変だとは思ってたさ。歩き方とか変だし。何時もなら駆け寄ってくる位なのに今回は抱きついてきたし。何かあったんだなぁ.......位には。まぁ確信に至ったのは腕掴んだ時の反応だけど。....ほら、腕出せ。」

 

そう言うと俯きながらコクンと頷き萌え袖ぎみの服をめくる。

 

「ッ.......酷い.......な。」

 

「.......」

 

俺の目に入ったのは青白いアザがいくつも出来た痛々しい腕だった。赤く腫れてるだけだったらまだ良かったと言えるくらいに腫れて、折れてるんじゃないかと思うくらいに細い腕に打撲、裂傷。痣。見ていられないほどに酷い有様だった。

 

「.......ちょっと痛むぞ?」

 

傷口を消毒する。少し顔を顰めたが声は発さずじまい。少し踏み込みすぎたか?と反省しかけたが、まだ早いと思い直す。

 

「傷口の処理は分かるが、青痣って冷やす以外どうすればいいんだよ.......」

 

とりあえずハンカチで包んだ保冷剤と一緒に包帯で巻き、患部を冷やすだけで落ち着く。素人だからこれぐらいが限界だろう。

 

「この後、少しでもこの腕で違和感があったら言えよ?最近、まとまった金が入ったから病院代とか気にしなくていいんだからな?」

 

「....うん、ありがと」

 

それ以外話そうとしないので話さないことに決めたのかと諦める。ここで踏み込みすぎたら多分木綿季も精神的にもっと追い詰められるだろう。はっきり言って想像は着いているし、イラつかないと言えば嘘になる。むしろ、激怒だ。

 

だが、今、木綿季が欲しいのは自分のために怒ってくれる誰かではなく、自分自身を見てくれる人だと思う。今まで、木綿季のメンタルケアをしていたランねぇに変わって俺がしっかりしないといけない。

 

「木綿季、風呂はどうするんだ?」

 

「先、入って.......」

 

「........了解」

 

完全に仮面が取れた木綿季は上手くも無い作り笑いでそう言った。雰囲気を悪くしたいわけじゃないんだがなかなか上手くいかない。

 

「人間関係はやっぱり難しい.......」

 

妹のことを考える兄は次の手を考え始めた。いつか妹が悩むことが無いようにするために。




はい。ユウキ...それとユウキファンの皆さん、ごめんなさい。書いてたら予定になかったけどこんな感じになりました。はい。なんか、本編の雰囲気のシチュを書こうとすると前の書き方に寄っちゃうから自動的にシリアスっぽくなっちゃうんだよね.......キツいわ〜.......

まぁ今回はめっちゃ待たせたってこともあるし今日の夜にもう1話更新するよ!見てくれる人が居れば.......いいなぁ.......

ではまた次話()で.......


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外伝 新たなる創造主(5)

はい。外伝です。朝、1つ前の話をあげたのにも関わらず4件ものアンケート応募ありがとうございます。そして満場一致のアルゴかけや!という事で.......いや、まじでごめんなさい。筆の徒然なるままに書いてたらもう引き返せないところまで来ていて.......

感想の方で俺の自由にしていいと言う暖かいコメを貰ったのはいいのですが、正直に言うとあと1、2話で外伝完結なんですよ。はい。そして今週から俺はテスト期間なわけで.......更新は1週間の間に完結できるかどうかと言ったところ。これで完結出来てたら奇跡ということで.......どうするかはあとがきにて

俺も読み返してみて思いました。はい。なんでオリ主とアルゴのカップリング小説なのにアルゴが出てこない外伝に5話とか続けてんの?って。..........いや、ほんとにまじすいません。

長くなってもあれなので(既に長い)外伝の方をどうぞ


 

「って言うことがあったんだけど.......」

 

『....ゆうき....お姉ちゃん。』

 

今、俺は風呂場にて湯に浸かっている。木綿季の体の痣を見て聞いてみたものの見事にはぐらかされ、今こうやって1人でお風呂に入っている。

 

傍らにはスマホが。そこからユキの声が流れてくる。

 

『どう、して....私に?』

 

「いや、同じ女子だし俺より女心をわかってるかなぁ....と。」

 

『....安易』

 

サラッと毒を吐くユキ。それに対して全く微動打にしていないのが紺野拓。話にでてきた木綿季(ゆうき)の兄だ。

 

『でも、お父さん、怒ってる。』

 

「ん?ああ。こんなにへらへらしてないと物に当たっちまいそうなんだよ。理性が働いてるなら制御できる時はしないと。」

 

流石、ユキだ。一瞬で見破ってくる。俺はただ物が壊れたらお金がかかるという一点だけで頑張っているのだが....。がめついが、叔父叔母にお世話になっている身。できるだけ節約し、負担を減らさないと。

 

『.......あの時、怒鳴ってきた....のに.......』

 

「うぐっ.......それは.......ごめんなさい。」

 

謝る姿に父の威厳はない。でもそれがユキには心地よかった。思わず微笑みがもれる。面と向かっていないのが功を奏し拓にはバレはしなかったが.......

 

「まぁ、ユキには感謝してるよ。」

 

『ぇ?』

 

いきなりだと拓は思った。でも伝えるならここだと。誤りはせど感謝を伝えたことは1回もなかった。だから伝えるのは今だと考えた。

 

「こんなに心が軽くなったのは久しぶりだ。今でこそイライラしているとは言え普段の生活でここまで感情が動くことなんてなかった。だからありがとう。」

 

捻くれていた時期.......なんて言ったら恥ずかしいが、周りにいっぱい迷惑をかける俺にストップをかけてくれたユキには感謝してもしきれない恩がある。

 

『....好き、なんだね。ゆうきお姉ちゃんのこと。』

 

「好き....とはちょっと違うかな。恋愛の好きじゃなくて親愛の好きかな。ライクの方。そういう意味ではユキに向ける好きと木綿季に向ける好きは同じだな。」

 

小さい時はよく木綿季が『将来ボク、お兄ちゃんと結婚する!』なんで言ってくれていたが鈍感とかはなんでもなく、今はちゃんと親愛と恋愛の区別は着いているだろう。

 

「あいつは....木綿季は凄いんだ。両親が無くなった時、いち早く立ち直ったのがあいつだった。1番泣いていたのもあいつだ。でも、俺は薄情で涙も出なかった。」

 

『....苛立ちが先に来て?』

 

「ッ....そうだ。なんで俺達を置いて逝った?ってな。まぁ根本的には寂しいって感情が先に来ちまった。そして後から悲しいって感情が来て部屋に閉じこもりっぱなし。」

 

『学校は?』

 

「行かなかったさ。いや、行けなかった。まともに通いだしたのは中三の秋からだ。」

 

『.......』

 

ユキが黙り込んでしまう。さすがに暗くなりすぎたか?と反省し、務めて明るい声音で話を続ける。

 

「でもさ?閉じこもってる俺の部屋の前に毎朝毎晩。来るんだよ。木綿季が。学校行こう?とかご飯一緒に食べよう?とかな。」

 

『.......』

 

ユキに隠し事をしたくない一心で話すあまり、ドアの曇りガラスに映る人影に俺は気づけなかった。

 

「勿論、申し訳なく思ってたさ。俺を説得するために毎回学校にはギリギリなのも知ってたし、夜中までドアに背中を合わせてウトウトしながら待ってたのも知ってた。俺はなんで俺みたいなやつに構うんだろうって会う疑問と同時に凄いなって思った。」

 

風呂場なのに唇が乾燥してカサカサになってしまう。お湯を掬い顔にかけ、1回湿らせてからまた話し続ける。

 

「あんなに泣いてたんだから悲しんでいるはずなのに誰よりも早くあんなに取り繕って.......今までそんなに積極的じゃなかったやつがいきなりあの性格になるなんて考えられなかった。明らかに無理してる。そしてそんなに追い詰めたのも原因の一端に俺もいるのだろうと思うともう顔を合わせるなんて出来なくなってた。」

 

『お父さんは....ゆうきお姉ちゃんの事、どう思ってるの?』

 

「元気で可愛い大切な妹だよ。当たり前に悲しむことが出来て当たり前に喜ぶ事が出来て。正直に言うと引くかもしれないけど親愛じゃ無くて、恋愛の面で好きになった時もあったんだぜ?」

 

ガタッとドアの向こうから音が鳴るがものが落ちたのだろうと特に気にもせずにユキの反応を待つ。ちなみにその恋を初恋カウントはしていない。妹だったからって言うふざけた理由だが、親愛と同じカウントだ。

 

『....なんて.......言ったらいいか、分からないけど....ロリコン?』

 

「なんでそうなる.......木綿季は2回俺の事を救ってくれたんだ。両親が亡くなった時と.......去年....だな。」

 

『去年?』

 

「ランねぇがエイズを患って入院した時。」

 

そう言うとすぐにユキが謝ってきた。大丈夫だ。そう返して話を続ける。

 

「このままだったら木綿季はクラスで一二を争う美少女になってただろうし実際そうだしな。」

 

"このままだと"という部分にユキは突っ込まなかった。それが有難い。これは俺が勝手に話していい事じゃないからだ。

 

「とまぁこんな感じで俺は木綿季に救われ、守ってくれた恩返しをしようと部屋から出て支えてあげようと思ったわけだ。できてるか分からないけど.......」

 

そう言いきった。清々しく、なんの疑問もなしに唯信じて疑わないように。その彼を見てユキは眩しいものを見たように目を細め優しく微笑んだ。

 

 

 

________________________________________________

 

 

拓にぃに話す覚悟が決まり今お風呂場のドアの前に居る。でもいざ話すとなると言葉が詰まって.......思うように声が出なかった。

 

「た、たく.......」

 

拓にぃ。そう声を出したいのに喉が震えない。か細い吐息と一緒に音にならない声が出ていくだけ。その時だった。

 

『あいつは....木綿季は凄いんだ。』

 

そうお風呂場から声がした。

 

誰かと話しているのだろうか?なぜボクの話題が出る?

 

色んな疑問が頭の中を駆け回る。不安とともに動かなくなる体が恨めしい。色んな思考が刹那に駆け巡る中、拓にぃの会話は続いていく。

 

『閉じこもってる俺の部屋の前に毎朝毎晩。来るんだよ。木綿季が。学校行こう?とかご飯一緒に食べよう?とかな。』

 

心当たりがある。ラン姉ちゃんに同じことをやられてボクも立ち直れた。だからきっと拓にぃにも効くと思ってやってただけなのだ。でも本当はそれをすごく迷惑に思っていたのだろうか?付きまとわれている感覚だったのだろうか?

 

『俺を説得するために毎回学校にはギリギリなのも知ってたし、夜中までドアに背中を合わせてウトウトしながら待ってたのも知ってた。俺はなんで俺みたいなやつに構うんだろうっていう疑問と同時に凄いなって思った。』

 

「すご.......い?」

 

何を言っているのか分からなかった。ただただあの時は必死で寂しさを紛らわすために拓にぃの部屋の前に行って話しかけて。そんな私のわがままみたいな理由でしていた行動なのに?訳が分からなかった。

 

『お父さんは....ゆうきお姉ちゃんの事、どう思ってるの?』

 

女性の声だ。途切れ途切れの言葉はコミュニケーションが下手と言うよりこれがデフォルトだと分かる言葉遣い。拓にぃが女性と入ってるのか?と思い体が動きかけるが、AIの娘が居ると言う言葉を思い出し踏みとどまる。大方スマホで会話をしているのだろうと当たりをつけて。

 

『元気で可愛い大切な妹だよ。当たり前に悲しむことが出来て当たり前に喜ぶ事が出来て。正直に言うと引くかもしれないけど親愛じゃ無くて、恋愛の面で好きになった時もあったんだぜ?』

 

今度こそ体がビクッと動き近くの小さい時に遊んでいたアヒルのおもちゃを蹴飛ばしてしまう。なかなか大きめの音が鳴るが幸い中に居る彼には聞こえなかったようだ。

 

ボクに対して恋愛感情抱いていたなんて聞いて反応しない人がいるだろうか?いや、探せばいるのだろうが、少なくともボクはそれに当てはまらない。

 

「初耳.......だよ.......」

 

不思議と嫌な感じがしなかったのはボクがそういう感情を昔に拓にぃに対して抱いていたことがあるからだろうか?もしかしたら同時期なのかもしれない。今はその分の愛が全て親愛に変換されているとはいえ、そんな言葉に照れないなんてことは出来ない。

 

『ロリコン.......?』

 

思わず吹きそうになる。さっき悩んでいたのがうそのようだ。緊張は不思議と消えて体の震えも消えている。その変化に自分自身驚きながら耳を風呂場の中に傾ける。

 

『なんでそうなる.......木綿季は2回俺の事を救ってくれたんだ。両親が亡くなった時と.......去年....だな。』

 

話が一気に暗くなる。それにつられてボクの気持ちも沈みかけるが次の一言にまた気分が良くなる。

 

『このままだったら木綿季はクラスで一二を争う美少女になってただろうし実際そうだしな。』

 

上げて下げてまた上げて.......この性格の拓にぃは女たらしになりそう.......

 

そんな危機感が頭をよぎるが、すぐにその思想を消して静かに部屋に戻りある準備をしに行く。脱衣所を出る過程で風呂場から『守ってくれた恩返しをしようと部屋から出て支えてあげようと思ったわけだ。できてるか分からないけど』と聞こえ、ニヤけが止まらないまま出ていく。その足取りは入ってきた時とは違い軽く弾むようだった。

 

 

________________________________________________

 

 

「ってこんなに暗い話じゃなくてもっと明るい話にしよう。そうだなぁ.......俺、ボスに勝てない疑惑について。」

 

『疑惑....確信じゃなくて?』

 

「ユキ、なんか今日辛辣じゃない?」

 

『鈍感お父さんが、悪い。』

 

言っている意味がわからない。まぁ多分俺の気づいてないことにユキは気付いているのだろうということは分かった。

 

『それよりも、覚悟決めた方が....いい。』

 

「え?なんのかく」

 

いい切る前に勢いよく風呂場のドアが空く。勿論ポルターガイスト.......なんてことは無くそこに居たのは....

 

「ゆ、ゆゆ、ゆゆゆ?ゆ、木綿季ッ?!?!?!?!!」

 

「入るよ〜!!拓にぃ!!」

 

「入るよ〜じゃねぇよ?!お前には羞恥心というものが無いのか?!」

 

そう。入ってきたのは木綿季。俺の妹だった。ビキニを着ているがここはお風呂。妹とは言え俺は仮にも思春期真っ只中なので反応はしてしまう。

 

『.......お父さん、切るね。』

 

「え?!ち、ちょちょ、ちょっと待っ(ブチッ....ツーツーツー).......アカン奴やん.......」

 

速攻で気を使わせてしまった。でも2人きりは色々ときつい所がある。思い俺の精神状態が。

 

「えっと.......どうしたの?拓にぃ」

 

「なんでお前はそんなに冷静でいられるんだよ.......」

 

「昔一緒に入ってたじゃん?」

 

「いつの話だ!!」

 

ほんとに何考えてるんだ?悪くなった雰囲気を回復させるにも、もっとやり方があっただろうに。

 

「話に来た!」

 

「.......は?」

 

え?話に来たってあの事を?ここで?

 

「ち、ちなみにリビングに移動という案は.......」

 

恐る恐る聞いてみると案の定な返答が帰ってきた。

 

「ない!」

 

「さいですか.......はぁ.......んで?」

 

視線と言葉で先を促す。木綿季が務めて明るく振る舞うなら俺もそうしよう。暗いままだと話が続かなくなるし俺もいつイラつきが爆発するか分からない。

 

「いじめられてるんだ。ボク、エイズだから。」

 

「.......」

 

「黒板消しを紙に擦り付けられたりとか、トイレしてる時に上から水とか。」

 

何とも捻りの無いいじめだった。根源は1人であとはノリとか嫌われたくないとかそんなくだらない理由だろう。集団に伝播する思想とはこんなにも恐ろしいものだとは。

 

「....ごめん。俺にはどうすればいいか分からないんだ。聞いてやるって偉そうなこと言った手前すごく情けないことだけど.......」

 

「....そんな事ないよ。拓にぃは、ずっと味方だって信じてるから。」

 

情けないことを言って帰ってきた答えが全幅の信頼。兄の俺は立つ瀬がなくなる。信じて疑わないその瞳は何とも保護欲をそそらせるもので.......

 

「.......木綿季、お前なら大丈夫だ。」

 

情けない俺はそんな言葉と裏で行動するしか出来ないが、木綿季を助けるためならどんな人脈でも使おう。それがたとえ褒められたことじゃなくてもだ。

 

「....うん。もうちょっと頑張れそう。」

 

「ああ、もうちょっとでいい。お兄ちゃんが必ず助けてやる。」

 

ビキニを着ているが故に全身の打撲やら怪我やらがむき出しになりさっきよりも痛々しい姿になった妹を見て密かに拳に力を入れる。

 

「....だから、言ってくれ。お前が俺に望むのはなんだ?それが聞ければ俺は覚悟を決めれる。」

 

俯いた木綿季が顔をあげた時にはさっきまでの笑顔はなく、ただ必死さが滲む表情で声を出してきた。

 

「.......助けて.......お兄ちゃん!」

 

「任せろ。」

 

助けを求める妹に手を差し伸べない兄はいるのだろうか?いや、いるのだろうが、俺はそんなクソ兄にはなりたくない。必ず助けてやる。木綿季を気づつけたヤツら、年下だからって容赦しねぇぞ.......




何でこうなったかは聞かないでくれ.......ただ友達が木綿季のデレてるところを見たいって言ってそれにノリノリになっただけなんだ←大戦犯

妹と娘がヒロインしているこの外伝。拓が2人に向けているのはあくまで親愛です。恋愛感情など一切ありません。その目で見て下さい。浮気などしてないです。はい。そもそも過去の話だしね。

言い訳タイムありがとうございました。そして悩んだ結果ですが、外伝を速攻で完結させて本編に戻ろうと思います。ガンゲイルでアルゴがどう絡んでくるかを楽しく妄想しながらお待ちください。ではまた次話で.......


○追記 紺野ランの設定に不手際があったので修正しました。(3月1日12時22分)


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外伝 新たなる創造主(最終話・長編)

はい!本っ当にお待たせしました!!本当にあと1日で1ヶ月更新無しになるところだった.......。いや、本当にごめんなさい。正直に言うと3日前に国家試験は終わっていました。はい。いや、勉強合間にチョコチョコ進めてたり、この3日間春休みなのを利用して全力で書いていたりとたった今書き終えました。これ以上待たせても正直反応が怖い.......。1ヶ月更新無しはヤバい.......(←過去にやってる人)

何はともあれ、やっと出来ました!超長編です!

では.......どうぞ!


《木綿季救済編》

 

木綿季が俺に助けを求めてきて1時間後。猶予は今日だけ。明日にはまたαテストに戻らければいけない。木綿季の為なら辞退することもやぶさかではないが、このバイト代が出ないとなると生活も危うくなる。完全な板挟み状態だ。

 

「教育委員会は.......ダメだな。」

 

どこの委員会か忘れたが隠蔽していた過去がある。あまり頼りにしてはいけないだろう。

 

「となると.......はぁ......余りこういうことは教えたくないんだが........」

 

『私の....出番?』

 

俺がユキに頼むしかないかと考えついたと同時にスマホからユキの声が聞こえてくる。もうこれしきのことで驚くことは無いが、どうしても前置きは欲しい。通知音鳴らすとか。

 

「ユキ、頼めるか?」

 

『お父さんの....為なら。私は何をすれば良い?』

 

「教育委員会は隠蔽して逃げるかもしれない。だが、俺らが手を直接下したら禍根が残って更に木綿季の立場が悪化する。ならどうすればいいと思う?」

 

そう質問する。ユキにはゲームの中だけでなく、外のことも知って欲しいからだ。こんなきっかけになったことは何とも複雑だが.......

 

『誰かに、やらせる?』

 

「確かにそうだ。だが足りない。然るべき所がやらざる負えない状況を作るんだ。」

 

『.......もしか、して....』

 

「お?わかったか?」

 

さすが俺の子供。頭がよく回るらしい。答えを出すのが早い。元々これは俺が昔から考えていた方法だ。人脈がなくて達成できなかったが今回はユキが居る。

 

『教育委員会.......?でもさっきお父さん、ダメだって.......』

 

「それこそ、やらざる負えない状態を作ってやればいい。誰だって追い詰められれば単純になる。大量の証拠を見せる.......とかな。」

 

然るべきところがとった措置なら文句も言えないだろうし、子供がいくらピーチクパーチク言ったって首になるかもしれないと思ったら何がなんでも木綿季を守らざる負えないだろう。

 

「見逃したら見逃したで....あ!やたや'p"'*首を切られるだけだ。評判を地に落としたってな。」

 

『.......私の出番....ない?』

 

「ユキには仕上げをやって貰う。裏で情報操作だ。」

 

万が一に逃げられた時の為にユキには裏で手を回してもらう。SNS、サイト。手段は色々あるしマス・メディアに知らせるって手段もありだ。兎に角、木綿季が傷つかなければいい。

 

「頼めるか?」

 

『やり方は....なんでも、いいの?』

 

「ああ、任せる。」

 

『.......わかった。任せて。』

 

ユキがこっちに着くならもう怖いものは無い。これからはこっちのターンだ。

 

 

________________________________________________

 

 

木綿季が虐められているという証拠を掴むため、久しぶりに不登校だった俺が学校に行く。幸い木綿季とは2歳差で教室も近い。別校舎だが.......俺は高二で木綿季は中一。

 

「という訳で茅場、俺は明日少し遅れるけどいいか?」

 

『ああ、構わないよ。久しぶりの学校、楽しんでね。』

 

お前は俺の父さんかと言いかけたが、ここでそるをいってしまうとせっかく成功した作戦を壊しかねないのでグッと我慢する。

 

「ああ。じゃぁな。」

 

『ああ、また明日の夜に会おう。』

 

よし。バイトには話をつけた。休むのはこの際仕方ない。一日延長の話もつけたから給料は大丈夫だろう。次は木綿季だ。行くとはいえ、木綿季も年頃の女子だ。木綿季を助ける為とはいえ一緒に登校したり、一緒に行動するのは嫌がるかもしれない。だから事前に聞いておかなければ.......

 

「うん。いいよ?」

 

「そうだよなぁ.......流石に兄が一緒に行動は.......いいの?!」

 

思わずアニメみたいな反応をしてしまう。いや、確かに木綿季なら....って予想してはいたが、そんなにあっさりと許されるとは思っていなかった。と言うか、むしろ嬉しそうでさえある。

 

「.......お前....いや、もう何も言わない。明日は宜しくな。」

 

「うん!ありがとうね?拓にぃ!」

 

守ろう。この笑顔。

 

 

________________________________________________

 

 

夜ご飯も食べてあとは寝るだけだが、久しぶりに孤独だ。近くに抱きついてくる某娘も居ないし、モフモフの狼もいない。いや、狼とは一緒に寝たことは無いんだけど.......

 

「久しぶりに1人か.......寂しい....な。何時ぶりだろう。こんな気持ちになったのは。」

 

『....私、居るよ?』

 

「う〜ん.......話をしてて癒える寂しさじゃないと言いますか....人肌恋しい?って言うのか?」

 

『う〜ん.......あ、そうだ。ゆうきお姉ちゃんのところ、連れて行って?』

 

そう言われたのでとうとう愛想をつかされたかと思い1人ナーバス状態に入る。ユキが必死で説明をしてくるのを途中から楽しみながら廊下を歩く。

 

『.......お父さん、嫌い。』

 

拗ねられた。結構なダメージを受けるが鋼の精神で何とか耐える。

 

「.......ごめんなさい.......」

 

『.......ふんっ.......』

 

姿が見えていたらきっと頬をふくらませてそっぽをむいておるのだろう.......あれ?なんか可愛い.......

 

「と、とにかく木綿季の部屋の前に来たけどどうするの?」

 

『はいって.......?』

 

仰せのままにユキ様。

 

「という事で木綿季、起きてるか?入るぞー?」

 

ノックしながらドアを開ける。中には木綿季がベットに入って小説を読んでいた。

 

「木綿季.......?」

 

「ぇ....あ、拓にぃ。どうしたの?」

 

さてと。どう言ったものか.......俺は知らないって言ったらそれこそ怪しまれるだろう。それこそ本末転倒だ。これ以降の計画と俺の精神が狂う。

 

「あ〜.......う〜ん.......どういったものか.......」

 

『.......初め、まして。ゆうきお姉ちゃん。お父さんの娘の....ユキ、です。』

 

俺がどう伝えようと四苦八苦しているとユキが喋りだした。この場合俺はどうすればいいのか分からない。完全に空気だ。

 

「あ、は、初めまして!」

 

『お父さん、寂しいらしい....から、一緒に寝て欲しい』

 

「ふえぇ?!」

 

「ぶふぅッ.......は、はぁ?!お、おまぇ、な何言ってんだよ?!」

 

ユキが爆弾発言をしたせいでこの部屋で居場所が無くなるどころか、この家でなくなるんだけど.......とりあえずあの世界に行ったらグリグリの刑だな。教育も親の義務だ。賢すぎて今まで必要なかったけど.......

 

「い、いいよ....」

 

「ごめん。木綿季のことが嫌いとかそういうんじゃないんだが、それは兄としてダメというか終わると言うか尊厳が無くなるとかそんなこんなで色々あるからちょっと遠慮する。」

 

早口で捲し上げて部屋を出る。廊下をしばらく歩いた所でスマホを忘れたことを思い出し、来た道をもどる。

 

「はぁ。勇気が変な事言うから焦って出てっちまったじゃねえか.......。無理があるだろ。妹と一緒に寝るとか危険臭しかしねぇ.............」

 

この歳になってまで一緒に寝るのはプライドが許さないのだ。確かに大きくなった木綿季に興味が無い訳では無いが、そんな目では見れないし見たくない。

 

「木綿季は妹なんだから.......」

 

木綿季は友達と関わってこなかったからそんな話も聞かないし、知識もつけていないんだろう。警戒心が足りないし天然じゃないのに恥じらいが足りないところがある。反抗期が来ていないのは頼れるのは俺とランねぇしか居ないからってとこか.......

 

「とことん人生狂ってんな.......」

 

考えれば考えるほど腹立たしくなっていく。今まで押えていた分が今にも爆発しそうだ。木綿季を虐めていたやつ。それを見て見ぬふりをしている先生。教育委員会。地域の人に社会。全てが憎くなる。そいつらのせいで木綿季の病気の進行は早くなり寿命が縮む。あいつらは木綿季の首を締めているのだ。

 

「許さねぇからな。こんなクソッタレな世界....俺が助けてやるよ。抗ってやる。木綿季が知ろうが知らまいが関係ない。俺は俺のやり方で木綿季を助ける。誰にも文句は言わせない。」

 

ーー.......ったく、世話がやけるな.......ーー

 

なにか声が聞こえた気がした。それは懐かしい声だった気がしたが、ぼんやりしていて今ではもう声も思い出せない。

 

「はは....まぁいいか.......待ってろよ。お前らは木綿季の人生をめちゃくちゃにしたんだ。逆にされてもしょうが無いよな?」

 

そう誰もいない廊下でつぶやく拓の顔はかつて無いほどに歪み、憎悪を浮かべていた。

 

________________________________________________

 

 

 

「飯野 咲」

 

「はい。」

 

「今野川 太陽」

 

「うーすっ!」

 

ここは小中高一貫学校。来るのはこれで2ヶ月ぶりになる。前の定期テストに出た時以来、来ていない。勿論結果は惨敗。見事に赤ペケがいっぱいだった。

 

「今川 隼人」

 

「おーす」

 

「紺野 拓.......は居ないか.......」

 

勝手に結論づけてこのまま流そうとしたので俺は驚かしてやろうと後ろを取り耳元で.......

 

「居るよ?先生.......」

 

「うおッ!紺野?!」

 

「プククッ......」

 

おい、隼人。笑っちゃうのはわかるけど我慢はしてやれよ。そして先生も驚きすぎだ。俺、影薄いキャラじゃないんだからよ。

 

「って事で出席も知らせたし、俺は妹見に行くんで.......」

 

「え?あ、は?お、おい待て!」

 

なんか言ってるけど聞こえないふり。第1今日をもって多分俺はシスコンやら、ストーカーやら、変態やら。まぁ色々なあだ名が着けられるだろう。まぁもう学校来ないからいいんだけども.......必要なら高校卒業試験受けに行けばいいし.......

 

「って事で木綿季の教室は.......」

 

ん?あんな所に黒板消しが.......

 

「あ〜.......成程。ほんとにベタだな。芸がない。いや、芸を求めても意味無いけど.......」

 

不意にガララと音がなりドアが開く。その上にセットしてあった黒板消しは当然下に落ち頭に当たりそうになる。

 

「っと.......危ねぇな.......」

 

「拓....にぃ?」

 

そこに居たのは木綿季だった。四苦八苦この(ブツ)は木綿季を狙ったものだろう。上から受け止めて助けれたのは運が良かった。

 

「少し、粉が髪に着いたな。大丈夫か?」

 

そう声をかけると家の元気さはなく静かにうなづいた。学校ではずっとそうなのかと無理やり納得しながら頭を撫でる。

 

「この時間だとHRが終わった頃か.......」

 

「うん....ありがとう。」

 

そう言って俺の前からいなくなる。これは結構やられてるなと思いながらもその姿を見るだけしかできなかった。つくづく自分のことしか考えられていなかったということが身に染みてわかったのだ。

 

「わかってたことだけど.......辛いなぁ.......」

 

教室の奥には舌打ちをする女子にオドオドする男子。その他取り巻きといかにも見方がいなさそうな構成だ。気が滅入るのもわかる。木綿季の後を追う女をつけながらそう独りごちる。

 

「あらら.......トイレ.......どうしようかなぁ.......」

 

女子トイレに入る度胸はないが、木綿季が耐えきれなくなって入ったことはほぼ確定だろう。

 

「ったく.......最悪俺、犯罪者かもな.......」

 

そう呟いて歩を進めた。

 

 

 

________________________________________________

 

 

「この水上からかけたらどんな顔するかな?」「あの病原菌、洗浄した方がいいもんな?」

 

クラスの女子たちが外で話し合っている。こうなったらもう無理だ。四苦八苦上から水が降ってくる。その度にびしょびしょになりながら教室に行って先生には見て見ないふりをされる。もううんざりだと何度も思ったが一向にいじめは収まらずにむしろエスカレートしていく。

 

「ほら行くぞー」「はい!のさんー、のにー、の.......」

 

あ〜.......今日も心配させないように拓にぃが帰ってくるまでに着替えとかなければ。悩みを話したと言え、心配をさせたくないのは変わらないのだ。

 

「ッ.......な、なんでこんな所に男子が入ってくんだよ?!」

 

いじめっ子の声音が変わった。焦る様な、嫌がるような。遂に男子にさえいじめられるのか。ボクが.......ボクが何をしたって言うんだよ.......

 

「ん?あ〜.......こっちの校舎久しぶりだから忘れちった.......ここ、女子トイレ?ってかお前ら何やってんの?」

 

「ッ.......で、出てけよ!先生呼ぶぞ?!」「き、キモイんですけど!」「そ、そのネクタイ先輩ですよね?後輩のトイレ見ようとしてたんですか?警察呼びますよ?」

 

酷い言いようだ。でも助かった。これで私が外に出ていけば水をかけられないで済む。

 

「ふむ.......中に入っている子に水をかけようとしてた事を伝えてもいいならだけど。ほら、これ写真。正直、この学校退学になっても親の伝手(つて)あるからこまんないんだよね。」

 

耐えられなくなった。ここまでかばい立てされて相手がボクだとわかった途端に態度を変えられるのを何度も見てきた。でも、でもだ。こんな希望を毎回持ってしまう。今度こそはと。

 

バタンッとドアを開ける。目の前にはいつものいじめっ子3人組と1人の赤いネクタイをした先輩が立っていた。その先輩は見覚えがあって.......不意に口から名前が飛び出でる。

 

「はや.......と、先輩?」

 

「ん?あ〜.......確か拓んとこの妹だったか?」

 

目の前にいたのは今川隼人その人だった。昔、拓にぃとボクとこの人とでいっぱい遊んだ覚えがある。色々とツッコミどころはあるが、とりあえずお礼は言わなきゃ行けない。

 

「えっと.......あ、ありが「いじめはダメだぞぉー!!!」ぇ.......?」

 

入ってきたのは拓にぃだった。随分と遅い登場である。色々と突っ込みたい気持ちを抑えながら疑問を口にする。

 

「えっと.......先輩たちの間で後輩の女子トイレにはいるの流行ってるの?」

 

「「いや.......そんなわけないじゃん。」」

 

まさかのハモリでツッコミ入れられた。突っ込みたいのはこっちなんだけど。と言うか、なんで拓にぃは来たの?まるで意味の無い登場じゃん。と言うか、流れ的になんで隼人先輩が拓にぃよりも早く来ちゃってるの?

 

「えっと.......隼人?これってもう解決した?」

 

「ん?ああ。お礼言ってくれてもいいんだぜ?」

 

「いや、結構ガチめにありがとう。」

 

調子が狂ったように「お、おう」と返す隼人先輩。ずっと置いてきぼりのいじめっ子たちと言うと勢いに押され何も発言できなくなっていた。

 

「はぁ?!女子トイレに男子が二人入っていった?!」

 

女性の先生の声が聞こえた。余りの怖さに身をすくめてしまう。先輩たちはと言うと.......

 

「あ、やべっ........」

 

「木綿季は置いてったらまた此奴らがいじめるし.......あ、そうだ。ちょい木綿季、勘弁な。」

 

「キャッ!」

 

そう拓にぃが言うなり自分の体が90度回転する。所謂お姫様抱っこだ。そしてそのまま窓の外へダイブ。思わず拓にぃの首にしがみついてしまう。1階なので大した高さは無いが、多少の衝撃は来る。

 

「ははっ!いやぁやばかった!」

 

「久々にやんちゃしたなぁ〜おい拓。このままサボっちまおうぜ?」

 

「そうしたいんだけどよ?あのいじめっ子ら〆なきゃなんだわ。木綿季のことだから手を抜きたくないし今日はサボんねぇ。」

 

「はぁ.......お前妹のことになると容赦ねぇよな。やりすぎんなよ?」

 

「保証は出来ねぇな。」

 

当事者であるボクにとってはこの話を聞くだけで気恥しいものがある。

 

「この場合だとあれだ。退学とか?」

 

「まぁ、暴力じゃないならいいか.......それだけの事をしてきた訳だし。」

 

「後、見逃してた教師は全員ぶん殴る。後でさっきの写真、くれ。」

 

「結局殴んのかよっ!」

 

「ぷっ.......あははっ!」

 

やり取りがあまりにも昔と同じで笑ってしまった。あまりにも変わらない関係性に安心した。最近暗くなっていた拓にぃも明るくなり、元通り。これほど嬉しいことは無い。

 

「やっと笑った。っと。もう歩けるか?さっきの窓。もう多分誰もいないからそこから入るぞ?」

 

「体育館の非常口開けといたんだ。そこから入ろうぜ。」

 

拓にぃがそう提案すると「お前、天才か?」という表情で見る隼人。悪知恵が働くのは昔から変わってないようだ。

 

「あ、今日。全校集会あるんだっけか?」

 

「ん?あ〜.......そんな話もあったな。まぁ俺は寝るけど。」

 

「隼人先輩.......」

 

いきなり指を指された。指を向けている本人の隼人は少し不満顔で抗議した。

 

「それ、昔みたいに呼んでくんないの?」

 

「.......でも.......」

 

「へぇ.......恥ずかしいと.......?ふーん?」

 

挑発される。元来の性格が負けず嫌いなだけありこの挑発に乗らない手はなかった。

 

「は、隼人」

 

「よーしよしよし!」

 

頭を撫でられる。昔みたいに優しく。拓にぃよりもゴツイ手だけど柔らかく。痛み物を扱うかのように。

 

「お前.......木綿季のこと好きなの?」

 

「.......はぁ?」

 

心底心外だという顔で言われてしまった。お前何言ってんだ?と言うように。

 

「お前、俺が年上好きなの知ってんだろ?」

 

「知ってるよ。恋愛対象が高3からなのもな。」

 

「よくわかってんじゃねぇか。」

 

そんな会話が交わされた。実際。隼人のことはどうとも思ってないしただの友達だ。お互いそんな目で見ていないし見ない事をわかっている。だから木綿季が隼人に惚れるとか、隼人が木綿季に惚れるとか微塵もない。あくまで幼なじみで一緒に昔から遊んでいたからこのスキンシップが当たり前化しただけなのだ。最初、よそよそしかったのは虐められててそれどころじゃないのもある。そんな話をしながらそれぞれの教室に戻っていった。

 

________________________________________________

 

 

そんなこんなで俺と隼人で木綿季を守り続けて昼休み。なんだかんだで重労働だった。

 

「取り敢えず、これで、証拠は集まったな。」

 

「うへぇ.......よくこんなに一日で虐めれるな。ざっと5回超えてるじゃねぇか。」

 

「ぇ.......?」

 

驚いたようなか細い声を上げたのは木綿季だった。知らないという事は.......

 

「朝のうちにこんなになったのは俺のせいもあるだろうな。でもだ。木綿季。お前にも味方はいたんだよ。」

 

多分そういうことだ。表立って助けるのは怖くて出来ないからできる限り裏で守っている存在が居るという事だろう。それを木綿季に伝えると俯いてしまった。

 

「.......ありがとう.......お兄ちゃん。」

 

「おう。俺もだけど隼人と出来れば助けてくれたやつにも言っといてやれ。後は.......6時限目まで耐えてそこから勝負だな。」

 

覚悟はもうできている。言葉も考えてきた。表立って俺が手を下すのが悪手と言われても俺は納得できない。だったらズバッと言ってスカッとした上にいじめの主犯格と見逃してた教師が居なくなれば後腐れがないんじゃないかと。俺がやったって事が分かれば抑止力にもなる。だからと言って俺を退学にすると評判が落ちる。

 

「後は.......耐えるだけ........わかった。」

 

「まぁまだ証拠集めはやめないから昼休み前まではやろう。その後パソコンでスライド制作だ。機材の手回しは隼人に頼んであるし問題ないだろう。」

 

それよりもだ。それよりも今は守ることだけを考えなければ。失敗しっぱなしだけど今のところ木綿季に被害は来ていない。この調子だ。

 

「辛かったら泣きついて来い。慰めてやっから。」

 

「な、泣かないよ!」

 

「ハハッ、その調子だ。いいか?絶対助けてやるからな。これが終わっても辛いなら学校辞めてもいい。俺が養ってやる。だから遠慮なく言え。頼るための兄なんだからな。」

 

「うん。」

 

表情を見るに覚悟が決まった感じだな。大丈夫か.......よし。

 

「ほら、帰った帰った。影で見てやるからこってり虐められてこい!」

 

「なっ....意地が悪いよ?拓にぃ。」

 

俺の冗談も通じるくらい回復したみたいだし、あともう少しは大丈夫だろう。この作戦が上手く行けばこのまま俺らに利益しかない状態でおわれる。万々歳だ。

 

「.......さすがに今のは俺でも引いたわ。寄りにもよっていじめられて来いってなんだよ。」

 

「なに、ちょっとした確認だ。って事で監視続けるぞ?」

 

「は?お、俺もやんの?」

 

「何言ってんだ?当たり前だろ。巻き込んでやる。ほら、双眼鏡。」

 

こんなん何に使うんだよとか言いながら俺に着いてきてくれるあたりやっぱり優しい。

 

「(今度見返りはするから.......)」

 

と小声で言ってやった。案の定聞こえなかったみたいであ聞き返してくるが、俺はそれを無視。影ながら木綿季を見張っている。

 

余談だが、この行動のせいで俺は『中等部の後者を徘徊するやばい先輩』という名が広まったらしい。なんで隼人は噂が立てられないのかが疑問だ。

 

そんなこんながあり、監視が終わった。昼休みになったのだ。案の定あれからも虐めは一向に止まず、その度に俺と隼人が止めに入っていた。

 

________________________________________________

 

 

「うん。こんなもんでいいだろ。隼人には護衛について貰ってるし、俺が1人パソコン室でスライド作ってるなんて先公も思ってないだろうしな。」

 

そう独りごちていたら不意に扉が開く音がする。誰かが入ってきたのだ。

 

「(やべっ)」

 

ないとは思っていたが先生が俺の事かぎつけたのだろうか?そんな疑問が頭の中に浮かぶが、あいにく考えている時間はない。急いで机の下に隠れやり過ごすことを決める。.......決めたのだが.......

 

「ここに拓にぃは居るの?」

 

「って言ってたんだけどな.......あ、パソコンの電源ついてんじゃん。」

 

強ばっていた体が一気に緩む。入ってきたのは木綿季と隼人だったのだ。

 

「ったく、ビビったろ。先生が入ってきたのかと思ったわ。」

 

「お、いたいた。どうだ?進捗具合は。」

 

悪びれもなくその事に触れずに話題を変える度胸は少し認めてやってもいいかもしれない。見習いたくはないが.......

 

「まぁ、出来っちゃ、出来た。後は木綿季がこの内容で大丈夫かって事だな。木綿季にとっちゃ自分がいじめられてる姿を全校に知らせるってことになるんだ。ここまでやってきた俺が言うのもなんだけど嫌なら言ってくれていいぞ?」

 

「ううん。大丈夫。覚悟はしたよ。」

 

ほんとに強い子だ。恐れはしているだろう。怖いと思う。これからのことに不安になっているのもわかる。でも変わりたいって覚悟を持つのは並大抵じゃできない。強引な形になったが、改めて兄としてできることはしてやろうと思う。

 

「よし。後は周回で乱入するだけだ。機材の運び役。頼んだぞ?隼人。」

 

「ああ。乗りかかった船だ。任せとけ。」

 

ほんとに心強い。良い友達を俺は持ったみたいだ。これで準備は出来た。チャンスは今日しかない。必ず成功させる。

 

 

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『ーーーーーであるからして、今学期は今一度自信を見直し.......』

 

長い校長の話が終わる頃には俺は寝そうになっていた。心の中ではうつろな意識の中目の前の大人に対しての恨み言が沢山。末期だ。

 

ーー長ぇし、喋り方うぜぇし、乱入する隙がないしでもう限界なんだが?と言うか、この話に意味あんのか?聞いてるやつ居ねぇだろ。こんなの。ーー

 

 

.......もう一度言おう。末期だ。

 

 

『.......という事で長くなったが私からは以上だ。』

 

 

やっと終わった。15分に渡る熱弁。流石に舌が乾いたのか横に着席しては水を飲んでいる。やるんなら今しかない。

 

「.......」

 

「.......」

 

無言で隼人と目線のやり取りをする。すると隼人は分け目も振らず走り出し、体育館の出口へ。俺はそれと同時に立ち上がり、校長席のマイクをかっぱらう。

 

「な、なんだね!君は!」

 

「ちょいと借りますよ。校長先生(無能)さん?」

 

何やらわめきたてる先生と校長(外野)を無視して壇上に上がる。生徒は混乱するもの。隣とヒソヒソ声で話すもの。色々居たがこの際、皆が起きていればいい。

 

『あーあー.......マイクの調子はいいな。無駄に長い話で飽きてきた頃だと思う。そこでせっかくだから俺の無駄話に付き合ってもらおう。』

 

そう言ってマイクをスタンドにつける。その際、ボンッとノイズが走るが俺は気にしないで話を続ける。

 

『っとその前にひとつ言いたいことがある。無能共にだ。』

 

そう言って俺は先生がたむろしている一角に視線を向ける。真っ先に俺を止めようと壇上に上がってきた担任が俺の肩を掴んで来たタイミングで言ってやった。

 

『お前ら。俺達が子供だと思って舐めてたろ?最近は校内の治安がいいもんな?こんな事起きるとは思わなかったんだろ?でもな。そんなお前らに言ってやる。いつまでも逃げられると思うなよ?』

 

ここまでヘイトを集めるのにも理由があった。隼人を追わせないためだ。比較的近くにノートPCとプロジェクターを隠してきたとはいえ、追われて止められれば説得力はなくなりこの作戦は水の泡だ。

 

『俺がこの場で言いたいのは一つだけだ。至極簡単。察しがついてるやつもいると思う。問題の中等部の件だ。』

 

幾人かの教師の息を飲む音が静けさに満ちた体育館に響いた。

 

『ふぅ.......知っての通り、俺は不登校生徒だ。単位もろくに取ってないし、正直こんな学校なら自主退や、強制退学も屁でもない。だから誰も言えないことをなんのリスクもない俺が言ってやろう。』

 

このタイミングで隼人が機材を持って壇上に上がってきた。それを見た教師が三人がかりで捕まえようとするが俺の声に行動を止めた。

 

『生徒に暴力を振るった。教育委員会にそう報告する。証拠もこうして撮ったしな。』

 

そうして隠していたスマホをみなに見えるように掲げる。

 

「お、お前たちが周回中に妙なことを始めるからだ!そもそも学校内でのスマホ使用は没収だぞ?!」

 

『へぇ.......やってみればいいじゃん。皆が甘んじて受けてきた罰だよな。それが正当なら俺もそれに応じよう。』

 

「そ、それならッ!」

 

『正当なら.......な?』

 

言ってる意味が分からないとでも言いたげに担任は俺の顔を凝視する。今までの俺の発言から下手なことは出来ないと悟っているからだろう。だから俺の発言を待っている。

 

『俺だって詳しくは知らない。でも、盗難?盗み?強制?どれが日本の法律に当てはまるんだろうな?』

 

「そ、そんなことほかの学校もなってることだろ?!」

 

まぁ、そうだよな。でも違うんだよ。違う。こんなことで時間を使ってるつもりは無いから手短に済まそう。

 

『それで罪にならないのは生徒の方も没収されることに同意してるからだ。学校卒業して学校に勤務。何処のアニメとは言わないが、到底社会なんて経験してないからそんな甘っちょろいこと言えるんだろうな。時間の無駄だ。失せろ。』

 

ズバッと切る。これでまだ反論してくるなら本当に腐ってるってことだ。そんな相手に説得するつもりもないしそこまで優しいつもりもない。

 

『.......話がそれた。機材の準備が出来たみたいだからこれを見てほしい。』

 

体育館のステージ奥の壁に映ったのは1人の女子の靴がゴミ箱に捨ててあるところだった。名前もバッチリ写っている。

 

『あ、自己紹介が遅れたな。滅多に学校に来ないから俺のことを知らないやつもいるだろう。初めまして。あるいは久しぶり?紺野 拓と言います。まぁ言ってしまえばこの上履きの持ち主。紺野 木綿季の兄だ。』

 

いじめっ子の主犯格はこちらを睨んでいる。取り巻きは顔面を蒼白にしてこちらを焦点のあっていない目でこちらを見て来る。今までのつけだ。それを見ながら楽しませてもらおうか。

 

『ぶっちゃけ、この期に及んで学校に顔を出したのはこれをする為。学校の汚物を消毒するためだ。偉いだろ?俺。』

 

そのジョークは全くウケなかった。空気が重い。だがそれでいい。ウケてもらっちゃ、俺の理性が耐えられない。

 

『まぁ次行こうか?』

 

次に映ったのは例の黒板消し。そして今回は動画を撮っていたためそれを切り取ってこまどりの写真にしてみた。写っているシーンは黒板消しがセットされているシーン。落ちてくるシーン。その1連が終わって笑ってみている3人組。この3枚。

 

『これはこのままだな。見てくれればわかる通り、虐め.......だよな?これ。黒板消しの罠なんていつの時代だよ。頭悪いとしか思えない。』

 

もう誰も一言も声を発しない。当たり前だ。これ以上ないくらいの証拠を今、全校生徒に見せているんだ。どんなに学校が裏で手を回したとしても隠し通せるものではない。もうほぼこちらの勝ちは確定した。

 

『陰湿だ。やられて嫌なことはしないって言われなかったのか?親に教えてもらわなかったんならお前ら少年院入ってその中で勉強し直してこい。』

 

誰かの歯ぎしりが聞こえる。まぁ主犯格の奴らだろうけど。

 

『でも、その中でも誰かは分からなかったが、木綿季のことを助けてくれていた人が居たみたいだ。その人には感謝を。』

 

そしてここからが勝負どころだ。ここで間違えればまた木綿季に敵が増える。

 

『.......そして次。』

 

冷や汗が頬を伝う。映ったのはひとつの記事だ。題名は.......

 

ーエイズの感染実験。ー

 

『.......知ってるやつもいるだろうが、紺野家は両親に長女。そして俺の妹がエイズに感染してその内の2人が命を落としている。1人はもう末期で回復の手立てが骨髄移植しかない状態だ。』

 

不安を拭う。木綿季のエイズが感染しないと分かれば味方が増えるかもという諸刃の剣。失敗すれば学校は愚か、街にも居れなくなるだろう。

 

『この記事を見てくれるとわかる通り、この実験で空気感染、接触及び飛沫。血液や、体液を摂取しなければ感染のリスクはないと結論づけられている。汗や、唾液。それらにもリスクはない。第一リスクがあるなら俺はとっくに感染してる。』

 

後は学校の授業でやっただろうと説明を端折る。この話をする上で決して気持ちいいものでは無いからだ。それでも効果はあったみたいで敵意より、道場の目を木綿季に向けるものは少なくなかった。

 

『ふぅ.......回りくどいことは言わない。どんどん行こう。』

 

疲れた舌を少し休ませ、いくばかトーンを落として話す。出てきた内容は、上から本を落とす。トイレで水をかける。といったものから、殴る、蹴るといった惨いものまで。色々な証拠を計7個提示された。どれもこれもあの3人がやった事だった。

 

『まぁまだまだあるがこれで俺の掴んだ証拠は以上かな。一日でこんななんだ。俺らが護衛してない時なんてもっとやられることだってあっただろう。』

 

ざわめきが多くなっていく。いじめっ子たちには事情を知らなかった子から距離を取られ、知っていた子からは責めるような目で見られていた。

 

『さてと。こんな頻度でいじめが横行してて教師たちが誰も知らなかった.......とか言わないよな?一日で7回だぞ?1回は見た事があるだろう。』

 

そういうと1人の教師が口を開く。

 

「つ、追求して酷くなったらダメだと思って.......」

 

『ダメだ.......ねぇ?仮にも100歩譲ってその気があったとしよう。でもそれでどうなった?』

 

それだけ言うともう何も言えなくなったのか、黙り込んでしまった。

 

『はぁ.......黙ったままだな。もう俺から言うことはひとつ。今後こんなことがあったら教育委員会に報告。必要なら裁判。SNSに投稿してわざと炎上させるからな。分かったら解散。言いたいことはもう言った。後は無能どうし仲良く話しあって決めろ。』

 

そう言ってパソコンからUSBメモリを取り外し、機器をそのままにして体育館を後にする。その際、ちゃんと木綿季を回収することは忘れない。あの中にいても気まずいだけだろうからな。

 

そうやって濃い一日は幕を閉じた。

 

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後日談

 

 

「拓にぃ!ありがとう!学校で友達ができたんだ!」

 

家に帰り....もとい、早退して早く帰ってきたことをいいことにリビングでゆっくりしていたらいきなりドアが開き、1言目に木綿季がそう言った。

 

「おー!それは良かったな!ちなみにそれは男子?女子?」

 

ここは大事だ。そうとでも言いたげな真剣な表情になる。

 

「男子!」

 

「よし、ちょっと殴り込み行ってくるわ。」

 

あんなに男らしいことをした拓はちっとも変わることがなく、逆に悪い方.......つまり、以前よりもシスコンが極まったらしい.......

 

 

 

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《αテストクリア編》

 

 

 

空が灰色だ。あの向こうには今は無い次の層があるのだろう。第二階層。行ってみたい気もするが目的は1層のフロアボス討伐。こんな短時間でできるゲームバランスじゃない。と言うか、大勢で挑むものを1人というのが無茶だ。

 

「考えてみたら無理難題.......だよなぁ。なんで引き受けたんだろ。」

 

「おはよう.......お父さん。」

 

ユキが寝室から起きてきた。物理演算やらモデル処理。全てが現実と遜色がない。現実世界が作ったもう1つの世界。その中に生きる者がいる。

 

「おはよう。前の件は助かった。ありがとう。」

 

「別に、いい。結局出番....なかったし.......」

 

その様子から役に立ちたかったという気持ちがひしひしと伝わってきて思わず頭を撫でてしまう。

 

「んぅ.......お父さん?」

 

この声にも慣れてしまった。別にいやらしいことをしているわけじゃないから動揺する理由がないでも思春期の男児にとって容姿が年下でも、来るものは来るのだ。.......これ以上はよそうか。

 

「あそこまで大胆に手を打てたのはユキがバックアップしてくれたからだよ?それにまだ無事って決まったわけじゃないんだから。」

 

「.......ん。」

 

微妙に納得していなさそうだがこれ以上色々と言うと逆効果になりそうなので何も言わない。

 

「さてと.......あと2日。頑張りますか.......」

 

「一日で迷宮区攻略、2日目でボス討伐。」

 

.......え?あのバカ広い迷宮区を1人で?

 

「.......客観的に聞くと結構無茶だな。これ。」

 

「ペースが、遅かった。ばか父さん。」

 

俺への呼び方がワンランク下がった今日この頃。反抗期が来たことに喜ぶべきか、悲しむべきか.......

 

「17歳で娘について悩むお父さんの気持ちが分かる.......犯罪臭やばいな?!」

 

「....何となく考えてる事、わかる。けど反抗期とかじゃ無い。」

 

「へ、へぇ〜.......」

 

さすがメンタルヘルス役。相手の気持ちを読むのもお手の物ってことか。.......え?怖.......

 

「お父さんのことは好きだし、この世界でしか会えないの、悲しい....けど。」

 

「お、おう?」

 

え?何?これ俺の羞恥回ですか?俺何かした?嬉し泣きするよ?俺。と言うか、これはこれでいいと思っちゃうあたり俺はもうダメかもしれない。

 

「けど、お父さん。調子乗る.......から。上手くいくとすぐ死ぬ。」

 

「うぐっ.......攻撃的じゃない?今日。」

 

「そんな事ない。」

 

さいですか。最近ユキの喋りが流暢になってきた気がする。と言うか遠慮がない。

 

「まぁ、いいこと?なんだろうけどさ。」

 

「よし、茅場にユキは死なない設定にしてもらったし早速行くか。」

 

そう。俺がさすがに1人で攻略って言うのは辛いと言ったら相手の攻撃パターンの分析ができるユキを《ノンブレイクオブジェクト》として設定してくれた。その際、製品版は名前を改めると言っていたが.......まぁ今は関係ないだろう。

 

「あたり.......前。来るなって言われても、着いていく。」

 

ある程度は守るが、守ると言っても守りきれないってこともあるだろう。そのための保険だ。死なない。ただそれだけでどれだけ気が楽か。

 

「迷宮区.......よし。行くか。」

 

 

 

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「オラッ!」

 

「.......掛け声、ダサい。」

 

ほんとに遠慮なくなったな。まぁいいんだけど。これくらいがちょうどいい。

 

「お父さん、ごめん.......」

 

だんまりを怒ったと勘違いしたのか謝って来る。頭を撫でて違うと否定しておき、不安げな顔が無くなるまで撫でる.......ことは出来なかった。

 

「....ッお父さん!後ろ!」

 

「ッ?!....愛娘とのやり取りを邪魔するのはいい趣味じゃないな.......」

 

「まな.......むすめ.......」

 

レベル差により、迷宮区のモンスターを一撃で屠る俺の後ろで何かを呟いているユキ。嫌われたくないので追求はしない。最近反抗期に入ったみたいだから。

 

「お父さん、おんぶ。ここら辺なら大丈夫そう....だから。」

 

「ん〜?ハイハイ.......って、え?!嫌じゃないの?!」

 

「....ん。」

 

.......秒で反抗期が終わった。あれぇ〜....こんな早く終わるものだったっけ?あ、でもこんなこと言って俺が素直におんぶしようものなら

 

「でも、お父さんの背中臭い!とかい気持ち悪い!とか.......」

 

言われるかもしれない。

 

「.......ん!」

 

有無を言わせない勢いで俺に両腕を差し出してくる。勢いに負け、今回は折れることにした。

 

「ん〜.......ここはどっち行けばいい?」

 

「こっち。」

 

ユキが指示をしながら進む。元から完成されているマップを覗けるユキにとって、迷路なんてあってないようなもの。ボス戦に役立ちそうなものだけ回収して、それ以外は無視していく。

 

「次、右はポーション。真っ直ぐで次の迷路。」

 

「ポーション取りに行こう。」

 

「.......物好き.......」

 

こんな感じ。正直、公式チートだ。無駄なく進んでいけば最速迷宮攻略になるって言う事もあるのか?最後に呟いたユキの言葉に疑問を持ちながら通路を進もうとする。

 

「ん。....降りる。」

 

そう言っていそいそと俺の背中から降りていく。何か俺の背中に不備があったのだろうか?.......やばい。奴隷根性になりつつあることに危機感が.......

 

「こっち。」

 

「え?あ、ああ.......わかった。」

 

ごめんなさい。何も分かってないです。嫌いになった?あ、反抗期?終わってなかった的な?ああ〜.......ツラい

 

「ん。ここ.......」

 

ユキが指を指していたルームに入ると真ん中に宝箱が一つだけ。それ以外は何も無かった。

 

「.......ユキ、罠は?」

 

「ない。あれと、あれとあとは.......」

 

3つ並んでいる宝箱を指さしてから言葉を切り壁へ向かって行ってしまった。ダメージはすべて無効化されているから大丈夫だろうけどまだ反射的に手を目の前に出して止めようとしてしまう。

 

「ッ.......ダメだな。束縛って言うのは案外、俺とは切っても離れないらしい.......」

 

この場合束縛というのは語弊があるが、心配だから俺から離れるな。と言うのは過保護だろう。

 

「あ〜....はぁ。宝箱開けるか.......」

 

人きしり唸ってから溜息をつき頭をガリガリと掻く。まるで何かを我慢している子供のようだった。

 

「こっちはハズレか....ポーション、ポーションは.......こっちもハズレ....」

 

残る宝箱の数は1。四苦八苦この中にポーションが入っているのだろう。本来感じるはずの攻略する面白さが無いため実感がないが此処はもうボス部屋の近くだ。ボス戦の準備段階としてこのアイテムたちを設置したのかも知れない。

 

「まぁ、どっちでもいいけどな.......」

 

恐れもせずに箱に手をかけ開けてみる。すると中に入っていたのは.......

 

「.......ぇ?」

 

中に入っていたのは小さく縮こまったユキだった。

 

 

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「.......ぇ?」

 

理解が出来なかった。なんでここに?とか、2人目のユキなのか?とか色んな疑問が頭の中に渦巻く能登は裏腹に体は1ミリも動いてくれない。それほどに衝撃は強かったのだ。

 

「....やっと、来た。」

 

「ッ.......ゆ、ユキ....その姿って.......」

 

そう。服装は変わらないもののおしりには獣の尻尾が着いていた。だが耳はない。なんとも言えないアンバランスが逆にユキを立たせていた。

 

「ん.......これ、ポーションの効果。」

 

「あ、あ〜....身体能力上がる的な?」

 

こくんと頷くユキを見て思考の海に沈む。

 

ーーこれは茅場の趣味か?いやでも、そんな趣味を持っているようには....。と言うか、そもそもこれはどの身体能力が上がるのだろう?何故、ユキが宝箱の中に居た?箱の中に転移したならなにかの音は外に漏れていいはずだ。いや、防音か?どっちみち、目の前のユキは本物だ。当たり前のように俺と会話しているのもあるが、仕草の一つ一つが同じ。新種のミミックって訳でも無さそうだ。ーー

 

「これで....私も戦える。」

 

「っ.......あ〜....よし。腹括った。」

 

そう言ってから頭を撫でてやる。背中を任せるであろう娘のを気遣うということは案外恥ずかしいことだった。

 

「危険なことはするなよ?一撃でもくらったら無理やりにでも後ろにさがらせるからな。」

 

そう約束させる。親子だから最低限の躾は必要だ。特に最近になってやっと俺ら人間の気持ちを理解してきたところなのだ。これ以上ないタイミングなのは間違いない。

 

そうこうしてる内に時間はすぎていき、あっという間にモンスターとエンカウントしてしまった。

 

「.......目の前にコボルトだ。」

 

「ん。行く.......」

 

そういうなり止める暇もなく、駆け出して行った。というか、控えめに言って早すぎる。移動スピードがありえないくらいに早い。

 

「.......ユキ、久々のレポート報告。そのポーション、1層にしては効果が高すぎ。」

 

「ん、わかった。」

 

早々に殴るやら蹴るやらでコボルト達を片付けたユキにそう言ってやる。武器を使わずに殴打一撃だけで沈むとかいくらなんでもやりすぎだろう。カンストしている俺でも二撃だと思う。やった事ないけど。

 

「.......ユキ、フード被ってみて?」

 

「?.......ん。」

 

そこには猫耳が追加されたみたいにフードの耳部分がベストマッチしているユキの姿があった。

 

「.......どう、したの?」

 

「可愛い.......」

 

気がつけば口から出ていた言葉。愛娘に向ける最大の褒め言葉。親バカならもっと褒め称えるだろうが、俺は娘に嫌われてまでそれをする勇気はない。

 

「ん。行こ?」

 

反抗期疑惑があるから反論して来るかと思ったが以外にもしてこなかった。頬を赤く染めたユキがやけに可愛く見えたのはここだけの内緒だ。

 

 

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案の定、あの後すぐの所にボス部屋があった。俺の勘って結構馬鹿にできないのかもしれない。まぁ、それはともかく相変わらず戦闘は上手くならない。まるで成長していない。ユキに聞くと言葉をにごらせるし多分PS(プレイヤースキル)は上がってないのだろう。カンストした俺からしたら戦闘ではもうこのゲームを楽しめ無さそうだ。

 

「なんだかなぁ.......」

 

先行するユキの背中にピッタリとくっついて護衛する。ユキも今なら戦えるので完全に気休めだが。

 

「ん....その先に2体。」

 

「.......了解。」

 

強い相手が来ないのをいいことに油断していた。それが行けなかったのだろう。上から技術もなんもなくただ叩きつけるだけの動作。もちろんステータス補正があるとはいえ、当然攻撃速度は遅い。

 

「なッ.......くそっ!」

 

次は横なぎ。ブォンと鈍い風切り音がなる。空気の抵抗ですこし斜めで繰り出された刀身は案の定起動をブレさせる。それでもお構い無しに振り切ると又よけられてしまった。

 

目の前にいるのはハチ型のモンスター。でも大きさがおかしい。大きいのだ。サイズ感で言うと小動物ぐらいだろう。猫とか小型犬とか。

 

「なんで当たんねぇんだよッ!」

 

「ッ!」

 

無音の気合を入れたかのような鋭い音と共にユキがすぐ側をを通り過ぎ、手に生えた爪で傷を与えていく。

 

「.......」

 

俺はそれを黙って見ているしかなかった。心の中では悔しいのか、羨ましいのか、嬉しいのかよくわからなくなっていた。

 

「.......ッ!うぉおぉぉぉおおあああああ!!!!!」

 

気が付けば体が動いていた。どこに向けているかも分からない黒い怒りに任せて。切り刻む。音を聞きつけて来たモンスター諸共。ユキ以外の全てを蹂躙した。動きの清廉さ等そこには欠片もなくただ荒々しく剣を振り回すだけの姿がそこにはあった。

 

「ッ.......お父さん!!!」

 

それを停めてくれたのは他ならぬユキだった。その強化された素早さを生かし後ろから抱きついてくる。

 

「落ち着いて!」

 

「ッ.......」

 

何も言えなかった。劣等感を娘に感じてそのどうしようもない怒りをモンスターにぶつけていたことに気がついたからだ。どうしようもなくそのダサい行動を思い出し、数秒前の自分を恥じる。

 

「ッ.......くそ.......」

 

「お父さん、今は落ち着いているように見えてずっと心が不安定だったのは知ってる。」

 

今までにないくらいスラスラとユキの口から音が出てくる。今までのたどたどしい口調はなんだったんだと思うようくらいに。

 

「大丈夫....大丈夫だから。」

 

「ッ.......」

 

ユキと出会ってからずっと俺はダサいところしか見せてない気がした。みっともなく取り乱し、ユキを悲しませ、自分を偽り、劣等感を感じて怒る。まるで成長していない。ワガママな子供のようなその行動に自分で辟易する。

 

「自分の望む姿.......か。」

 

例えば目標があればこんな性格にはならなかったのだろうか?目指す先があれば自分のみっともなさを前面に出さないことが出来たのだろうか?

 

答えは返ってこない。当たり前だ。心の中で思ってても言葉を返してくれる人はいないから.......

 

「お父さんは、充分かっこいいよ。」

 

そう思っていたのに、返してくれた人がいた。人の心を読めるこの人は俺の心に寄り添って1番欲しい言葉をかけてくれる。ダメになりそうだった。このままユキに甘えていたら俺はダメ人間になるということを理解していたのだ。だから.......

 

「.......もう大丈夫だ。ありがとう。」

 

もうすがるのはやめようと思う。この弱い自分と決別するために。

 

俺がそう答えると俺の決意を読み取ったのか、いつも無表情の顔を動かし、微笑んでくる。ユキは母性が強いのだろうか?包み込む力が半端じゃない。覚悟を守るには、甘やかさないように、引き込まれないようにする必要がある。骨が折れそうだ。

 

「よし立ち直った。ごめんな。毎回迷惑かけて.......」

 

頬に1発活を入れ攻略を再開するように促す。

 

「ん。.......行こう。」

 

ここからだろうか?数時間後、俺の精神が安定してきたからかユキの母性が薄まり、代わりに子供相応の表情、行動が目立つようになり微笑ましく思うことが多くなった。何度気を取られそうになっていたか分からない。普段よりは攻略スピードが下がっていることは自覚していた。色々な雑念を抱えながら最深部へと歩を進める。

 

 

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「へぇ.......?ここがボス部屋.......」

 

「ん。....扉、重そう。」

 

少しズレた返答をしてくるユキの頭を撫でながら俺は明日の対策を練るため少しだけ中に入ることを決意する。

 

「少しだけ見よう。大きさとか、形状から大体は想像がつく。」

 

「ん。......」

 

俺と戦えるのが嬉しいのか満足気に頷くユキ。だが、俺的に本当は行かせたくない。それも当然だ。娘を心配しない親なんて居ないだろうしいたら頭おかしいとしか言いようがない。

 

「ったく.......よし、行くか。ユキは俺の後ろに居ろよ?で、見るだけだけど俺死んだら家まで走って逃げろ。」

 

「.......ん。了解。」

 

釘差しは済んだ。不死状態とはいえユキが攻撃を食らうと自分で自分のことを許せなくなるだろう。

 

ギギィ.......と甲高い音が聞こえ、少し隙間を開けて仲を覗き込む。中にいたのは.......

 

「ひ.......と?」

 

ユキが呆然としながら呟いている。上から覗いている俺の目にもただの人に見え.......いや、少し大きいだろうか?3メートル位だ。スーツを着ている。執事.......?

 

「.......クエストNPCか?」

 

「.......いや、ステータスは黒い。モンスター。」

 

人型のモンスター。それもカーソルが黒なら俺らよりも圧倒的に強いってことだ。

 

「.......か、てんのか?」

 

声がか細くなって音が出ない。当たり前の行動ができないほどの恐怖心。

 

「.......ユキ、逃げろ.......」

 

扉よりこっちには来ない。それは分かっている。そう出なきゃゲームが成り立たないからだ。だけどアイツには常識が通用しない。本能が叫んでいる。逃げろと。

 

「かな、わない.......逃げれ、無い。」

 

どうにも出来ない。これはどうしようも無い。あまりの圧倒的な存在感で死ぬ事を許容しそうになる。ユキを見捨てたくないのに気を抜けば足を後ろに向けてしまいそうになる。

 

「....これはこれは.......皆さんお揃いで.......」

 

淡々と声を出すボスモンスター。羊の顔、着ているのは執事服というのだろうか?左腕にはタオルを下げ、自分の体の前に出している。その頭上に現れたカーソルは.......

 

「申し遅れました。(わたくし) 【Ilfang・Albatle】(イルファング・アルバトラー)と申します。以後お見知り置きを.......」

 

 

喋った。その事実に驚く余裕もない。この世界でかくはずの無い脂汗が全身からから出てくる感覚がある。今、現実世界の体は脈が早くなり、小刻みに震えているだろう。

 

「お父.......さん?」

 

俺の服を掴むユキは小刻みに震えていた。多分、俺の状態を訝しみ精神状況やら、バイタル状態を見たのだろう。俺のありえないほどの恐怖心をもろに浴びて抵抗も虚しく伝播したに違いない。

 

「は、話ができる相手でよかっ....た。」

 

絞り出したのは心が籠っていない安堵の声だった。音は震えていたし、表情もとりつくろえてなかっただろう。それを見ても笑みを絶やさずこちらを見ている得体の知れない相手を敵視するどころか、殺されるとまで思っている。はっきりいって異常だった。

 

状況だけを見るとイタズラが執事に見つかって青ざめているシーンだろう。だが俺とコイツは敵同士、人とモンスターだ。相容れない関係。そして倒すことがクリア条件。

 

「.......また、戦いに来る。明日だ。それまで待ってくれ。」

 

ダメ元だった。こんな交渉なんて相手が受け入れるわけないとわかっていた。なのに、なのにだ。話せると言うだけで希望を持ってしまうのは悪いことだろうか?

 

「.......ええ、勿論です。あなたの新たなる門出を私との戦いで彩る。なんと美しく、そして殊勝ことでしょうか.......」

 

うっとりした表情になり上を見上げる。その仕草は感情を必死に押し殺しているような我慢するような。そんなものだった。だが、唐突にこちらを視線を落とし、全てを見透かすような瞳に吸い込まれそうになる。

 

「....明日、お待ちしています。この行事が終わる時には私はいないでしょう。あなたたちに倒されているだろうから。つぼみ達が咲く姿を見れないのは残念ですが.......とやかく言っても詮無きことでしょう。」

 

靴底を鳴らしながらこちらに来るそれも、扉の透明な壁に阻まれてこちらまで来れなかった。でもそれを気にする様子もなくこちらを見てくる。

 

「いつまでも待ちますよ。この世界が終わりへと近づくのを防ぐのがカーディナル()に託された役目なのです。」

 

そう言うと同時に羊顔が歪な笑みに変わって行く。歪んだ感情が表に出ていくのが分かる。

 

「では、ごきげんよう.......」

 

そういうなり、初期位置に戻っていくボス。近づかれてからただ黙って見ているしか無かった俺はそっと扉を占めることしか出来なかった。

 

「あ....れが1階層のボス?」

 

はっきりいって次元が違う。勝てる気がしない。見るだけで、敵意がない目を向けられるだけで萎縮して動けなくなる相手にどう勝つ。普通に考えて無理だ。

 

「.......ーーーーさん」

 

「くそっ.......止まれよ震え.......」

 

「ーーーさん!おとーーーん!!!お父さん!!!」

 

何かが聞こえるが怯えている俺には何も聞こえないのと同じだった。頬に衝撃を受けるまでは。

 

パチーンと軽快な音がなる。既にユキからは尻尾が見当たらない。強化時間が終わったようだ。不快な感覚が残る頬を打ったであろうユキの手を見るとかすかにダメージエフェクトが入っていた。味方には無敵化が効かないのだろう。

 

「.......ユキ.......」

 

顔を見ると困ったような、心配しているような顔だった。ここまで表情が動くのは見た事がない。過去に色々と表情は動いたことがあったが、こんなにも全面に出すことは無かった。

 

「.......勝てる?」

 

「....かて....ない。」

 

「諦めるの?」

 

「.......」

 

短いやり取り。ユキの表情が変わらない。だから、だからこそ悲しませたくなくて嘘をついてしまう。直ぐにバレてしまう嘘を。

 

「.......いや、勝てる。あんなの雑魚だ。行けるさ」

 

さっきと反対の言葉。見事な程の掌返しだ。自分でも都合が良すぎて滑稽に感じる。それほどの下手くそな嘘。顔も怯えながら無理やり笑ったようなものになっているだろう。でも、それをユキは許してくれなかった。

 

「.......強がりは要らない。お父さん、怖かったんでしょ?」

 

表情が良くなる所かより険しくなっている。何を間違えたのだろうか?分からない。全てが分からない。

 

「.......」

 

認めれば良いのだろうか?そしたらユキは笑ってくれるだろうか?

 

「ああ、怖かった。足が震えたし、声もまともに出せなくなった。」

 

「.......」

 

ユキはまた表情を険しくさせる。もう訳が分からなかった。

 

「お父さんは、私の事信用してない?」

 

「.......ぇ?」

 

「私が、お父さんの娘になってから私の顔色伺ってる。距離を感じて悲しい。」

 

ド直球に伝えてくる。耳の痛い話だった。自覚はあったはずなのにいつの間にか後回しにしていた問題だ。

 

「.......す、すまなか「ほら、それ。私が何か注意とかしたら直ぐに謝ってくる。」.......」

 

もうユキの言いたいことを分からないフリするのは無理だ。当たり前のように顔を伺ってご機嫌取りしていると思われてもおかしくない。それどころか依存と言っていいほどに気にしてしまう。それは親愛だったり、スキンシップだったり。色んな形があったがユキが不快だったのは行動や言動なのだろう。

 

「.......」

 

「人はね?苦しいから逃げるんじゃないんだよ?逃げるから苦しくなるの。お父さんは、今、精神的に参ってるでしょ?私はわかる。でも、それは私から嫌われたくないって逃げから生まれたものなんだよ?」

 

たどたどしい口調はどこへやら。淡々と喋るユキの言っていることが途端に分からなくなった。少しズレているような、自覚のないところで自分自身を追い詰めていたのだろうか?

 

「.......あ〜....そういう事か。」

 

考えた。そして理解した。なんとも不器用なユキらしい事だ。

 

「発破、掛けようとしてくれたんだな。途中まで事実を言ってたけど最後が無理ありすぎだ。」

 

「.......楽に、なった?」

 

途端にユキの苦しそうな表情は柔らかく笑うものになり、緊張感が霧散する。

 

「ああ。でも、すぐ謝るのも自分が間違ってるって理解しているからだ。決して嫌われたくない訳じゃない。」

 

「嫌われ、たいの?」

 

「うぐっ........いや、容姿的には思春期なわけだし、反抗期ってことでお父さんのことを嫌いになるって言うことも.......やばい、涙出てきた。」

 

クスッと、笑うユキを見ていると無性に頭を撫でたくなった。やっぱりこれは依存では無いのかもしれない。苦しいほどに愛おしいのだ。愛娘のことを考えるのが楽しくて仕方がないのだ。だからこれは依存ではない。家族愛が依存というのなら世の中の大半が依存者という事になるだろう。

 

「ってのは屁理屈か.......」

 

そう考えながらも帰路につく。明日の為に色々と用意する。それだけの事なのになぜ、こんなに奮い立たせてくれるのだろうか?ユキはクール小悪魔属性.......いや、矛盾してるな。まぁいい。とりあえず今は寝よう。

 

ユキが布団の中に入ってきたので快く中に入れてやる。そのまま意識をまどろみの中に意識を落として行った。

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

「う、ぅん.......」

 

耳元で聞こえた声で意識は浮上した。体を動かそうとすると腕と足以外の体前面が柔らかいものでおおわれている。顔には何か特に柔らかいものが当たっている感覚がするし、抱き枕にしては形が少々歪だ。恐る恐る目を開けてみると....

 

「真っ暗.......」

 

顔が全面包まれているせいか声を出すと熱がこもる。意識が完全に戻っていないからか、頭は正常に回らず、この状況をまだ理解出来ていない。

 

「頭の後ろに固定具?」

 

無論、正体はユキである。魘されていたお父さんを安心させようと抱きついたままそのまま眠ってしまっていたのだ。非常に犯罪臭のする絵面である。

 

「なん....だ?この柔らかいの.......」

 

顔を動かそうにもがっちり腕でロックされているので動かせないらしい。それが不幸中の幸いだった。

 

「んっ.......ふぁぁあ....」

 

「ッ........」

 

一気に頭が冴え、反射で寝たフリをしてしまう。この行動がダメだったのだろう。

 

「んぁ?ぁ、お父さん.......だぁ〜.......」

 

より一層腕に力を入れてくる。離れるのではなくもっとくっつきたいと言わんばかりの甘えっぷりだ。普段のクールなユキからは想像のできないほどの甘い声。正直に言おう。

 

「(か、かわえぇ.......俺の娘最高かよッ!!!)」

 

声には出さない。見つかったら1日しかないのにほぼ口を聞いてくれなくなりそうだったから。それよりもそろそろ苦しい。息が続かないのだ。鼻も口も全てユキの体に阻まれている。仮想世界で行きは必要ないと言っても窒息バットステータスはあるのだ。意識が落ちそうになる。まだ堪えるが.......

 

「むにゅう.......」

 

何その寝言、可愛すぎる。というか、普通に息苦しいのに幸せって初めてだぞ?

 

「お父さん、娘って言ってくれて....ありがとう。大好き.......」

 

「.......」

 

娘にこんなことを言われて嬉しくない親などいるはずもない。かくいう俺なんてもう死んでもいいって比喩でもなく本気で思っているくらいだ。無意識に俺もユキを抱きしめてしまった。

 

「....?んぁ....?」

 

様子からして意識が段々と浮上してきたみたいだ。みるみるうちにユキの体温が上がっていく。多分顔は耳まで真っ赤だろう。あくまで予想でしかないが.......

 

「.......///お父さん、起きてる?」

 

「.......」

 

せめて俺は紳士であれ。そう願いながら窒息のバットステータスで意識を手放した。

 

 

________________________________________________

 

 

「よし。一先ずありがとう、ユキ。」

 

「ん?....なんのこと?」

 

少し意地悪な笑みを浮かべながら横目で俺の事を見てくる。最近は表情が着いてきて人間性って言うのが随分と育ってきたように思える。

 

「発破の事だよ。俺の悪い所を指摘しながらも俺の自信が無くならないようにしてくれたんだろ?」

 

「....え?」

 

シラを切るような声ではなかった。素で出た声だった。なんの捻りのない声。表情からも俺が考えていた意図は無かったのだと納得出来るような意表をつかれた顔だった。

 

「私は、お父さんに気持ちを伝えただけ。あれはそんなに考えないで.......勝手に口から出てった。意図して喋ったのは最後だけ。発破掛けるとこだけだよ?」

 

「なっ.......じ、じゃぁ本当に俺はユキから距離取ってたのか?」

 

「少なくとも私はそう、感じた。」

 

いや、確かにユキに構いすぎると俺は親バカって言うかなんかダメな方向に進んでしまいそうで我慢してたのだが、もしかしてそれのことか?

 

「我慢しなくていいのか?ユキ的には。」

 

「ん....親子なら当たり前」

 

「俺の事嫌いにならない?」

 

「.......めんどくさい彼女?」

 

それは俺も思った。でもそんなに的確な突っ込みを貰ったら俺何をいえばいいのかわからなくなるからやめようね?それにしても我慢無し。それだけで俺は長年背負っていた肩の荷が降りたかのような開放感で溢れる。

 

「よ、.......」

 

「.......?」

 

「よ....しゃぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」

 

「ッ.......?!」

 

ビクッとユキが体を震わすのを確認しながらも叫ばずにはいられなかった。

 

「これからはユキが可愛いって言ってもいいんだな?!自慢の娘だって周りに紹介したりとか、抱っこして、おんぶして....あ!お姫様抱っこも捨てがたい.......」

 

「あ〜.......地雷、踏んだ?」

 

ユキが何か言っているようだが俺の耳には届かない。顔は興奮で真っ赤だろう。

 

 

 

 

 

数十分後。

 

 

「.......恥ずかしい.......」

 

「ああ....ごめんなさい。」

 

褒めちぎった結果、ユキが顔を真っ赤にして蹲ったところで俺は頭が冷えた。それももう完全に。それと同時に暴走していた最中に口走ったものは全て事実とは言え、穴があったら入って埋めて欲しい位には恥ずかしい。というか、父の威厳とは.......

 

「....本音出すのは2人だけの時。それ以外はダメ。」

 

「勘弁してくれ....恥ずかしくて.....いや、なるべく努力する。」

 

恥ずかしいからと言って我慢していたらせっかく指摘してもらったのに全てが無駄になる。

 

「え、えっと....朝は可愛かっ.......むぐっ?!」

 

我慢せずに頑張って羞恥を押さえつけ、朝の寝ぼけユキのことを褒めようとすると両手でユキが口を抑えてきた。

 

「.......忘れた?忘れたよね?」

 

コクコクと頷く。それしか道は残されていなかったからだ。他の道は全てユキの無言の圧力によって通行止めになっていた。男の弱いところだ。

 

「そ、それにしてもあいつどうしようかな?」

 

「羊の執事?」

 

「.......いや、睨むなってわざとじゃないのはわかってるから。でもその天然いいね。可愛いからもっとやって?」

 

そう言っ他にもかかわらず無視された。解せぬ。

 

「あの強化ポーションがあれば何とかなりそうだけどなぁ.......って、あのポーション、このためにあったんじゃね?」

 

「.......」

 

ユキがいつの間にか飲んでいた強化ポーション。戦闘なんてやった事のないユキでさえワンパンで迷宮区のモンスターを屠れる性能。今思えば絶対そのためのアイテムだった。

 

「.......てへぺろ?」

 

「可愛いから許す。」

 

「やった。」

 

どうせ、あの人なら詰みゲーなんて作らないだろうから多分再湧きありだろう。手元に1本あったら再湧きなしだろうけど。

 

「ユキ、励まして?」

 

「.....あの人に勝ったら何でもひとつ言うこと聞いてあげるでどう?」

 

「よっしゃぁ!ヤッタルデェ?!」

 

いやらしい頼み事なんて論外だ。そんなのイエス娘ノータッチの俺からしてみたら下の下の外道だ。あれ?俺意外とユキに触れてない?

 

「難しいことは置いといて、取り敢えず行くぞ!」

 

いやぁ、張り切るしかないでしょ?こんな条件で。

 

 

 

 

 

 

 

と思っていた時期が俺にもありました。

 

 

正直に言おう。めっちゃ怖い。足とか腕とか至る所が震えているし前ほどの動けないようなものでは無いが恐怖という鈍器に体を殴られているようだ。

 

「おや?思ったよりも早かったですね?さてと.......物語を進めに来たのでしょう?」

 

言葉では歓迎ムードだ。だがどうしようもなく悪寒がする。その原因のひとつに執事の顔が戦闘狂(バトルジャンキー)のそれだったからだ。

 

「昨日ぶりですね。相変わらず俺の足はブルってるんですがとりあえず一つだけ。」

 

「なんでしょうか?」

 

「愛娘の為なのでね。何度死んでも勝つまで挑み続けます。それだけです。」

 

自分の覚悟を決めるために敢えて声に出す。でも怖い!いや、目線だけで射殺されるかと思うぐらいには。

 

「美しい家族愛....いいですね.......では、それを1層輝かせる為にもこの私を越えていきなさい。」

 

羊の頭上に体力のゲージが4本現れる。相変わらずゲージは真っ黒。かすかに赤いんだろうとわかるぐらいの濃さだ。

 

 

「シッ!.......ッらぁぁあ!!」

 

力任せに剣を床に叩きつける。そこには既に執事が居なくなっていた。ユキは家で留守番だ。ここでは一切の邪魔が入らない空間。2人の雄が戦う場。だからといって全力で戦えるという図太い精神は持っていない。本番では全力が出せないとは良く言ったものだ。

 

「ふむ.......基礎能力は高いようですね。でも技術がない。美しくありません。」

 

そう言っていつの間にか後ろに立っていた執事が手を振り上げ、勢いよく振り下ろす。すると特殊能力なのだろうか?周りからマネキンのようなのっぺらぼうのメイドが5体出てきた。

 

「仲間かよ.......」

 

そう悪態をつきながらも薙ぎ払いの要領で腕を動かしマネキンメイドに切りつける。否、気をつけようとした。

 

「....」

 

「ッ!くそっ!涙流すとかありかよッ!」

 

残り数cmで刃が届きそうだった。だがその瞬間マネキンたちは涙を流したのだ。咄嗟に無駄に身体能力が高くなった体で振るっていた刃を自ら止めてしまう。

 

「チッ」

 

「メイドには演技力も必要なのですよ?美しく暗殺するには相手を騙すことも必要ですから。そして貴方もお優しい。人間を切ることは出来ないのでしょう?ならばこちらは人間の演技をするまでです。」

 

生き物を殺すのに美しいというのはどういうことだろうか?殺したらポリゴンが飛び散るこの世界で特有(・・)の価値観なのだろうか?様々な雑念が頭をよぎるが、既にメイドたちの刃は自信に迫ってきている。早々に思考を切り上げ、回避する。

 

「へっ.......技術も何も無い俺の動きに美しさなんて無いだろうよ。お前らみたいな礼儀もないし俺とお前の常識も違う。けどな.......?」

 

だからこそ行動で証明する。動き、外観が全てでないことを。当たり前のように抱いている人間特有(・・)の価値観を知らしめる。

 

「気持ちにだって美しさってのはあるんだよッ!」

 

それをユキに教えてもらった。今までその当たり前が出来ていなかった俺にその価値を、自信を取り戻させてくれた。何も無かった俺に理解をくれた。

 

「ええ.......理解していますとも(・・・・・・・・・)

 

「ッ!」

 

振り上げた剣を叩きつける前に弾かれた。それに驚き一瞬すきを作ってしまう。両手を上に上げたままの硬直。切ってくださいと言っているようなものだ。技術がない故の失敗。

 

「言葉の節々には色々なものが詰まっている。その中には勿論、美しさも含まれています。どれだけ自分を偽ったとしても当たり前のように私たちにはわかるのです。だからあなたの本心も分かる。」

 

執事の猛攻と横からのメイドによる攻撃で話を聞く余裕が無い俺はあちこちに傷ができていく。この調子だとあっという間に体力がなくなりそうだ。もう2割なくなってきている。

 

「貴方は恐怖しているのではない。.......いや、語弊がありますね。正確には私たちに恐怖しているのではないのです。」

 

その言葉だけは集中している意識の隙間を通り抜けすんなりと頭の中に浸透していく。

 

「娘さんが居なくなるのを、そばにいないことを怖がっている。私を倒せなければ消去されるかもしれないという恐怖。それが体の基礎胆力、思考を鈍化させている。」

 

心当たりはあった。ずっと考えないようにしていたことだ。この世界が不良品だと判断されれば改変が入る。それは街だったり、マップだったり仕様だったりと色々なものがあるが、その中にはユキも入っているのだ。この世界のプログラム群の1部であるユキが改変、消去される可能性も無きにしも非ずなのだ。俺の事をちゃんとサポートしなかった。不要なところまで干渉しようとした。こじつけをあげればキリがないだろう。

 

「.......」

 

「ほら、また動きが鈍りましたよ?」

 

指摘をされるも相変わらず口は動かず、無口を貫いてしまう。

 

「娘さんに対しての感情は親愛ではない。依存です。」

 

「うらぁぁぁああ!!」

 

ユキと同じことを言われてもう堪忍袋の尾が限界だった。感情に力を任せ、どこにも向けれない自己嫌悪の念を消化しようと無我夢中で殴り掛かる。だが、所詮殴打だ。毛すらも効いていないのは明白だった。

 

「ふむ.......」

 

当然大ぶりの攻撃を避けられあっさりと勢いあまり地面に転んでしまう。さっきから隙を晒しても攻撃してこないのはさしずめ舐めているからだろう。

 

「はぁはぁはぁ.......」

 

疲れるはずのない仮の体。それでも息切れをしてしまうのはまだ画像の体に慣れていないからなのだろうか?

 

無駄な思考をしている暇がないのは分かっている。でも考えてしまった。息切れして体が泊まっている今、思考までもがあさっての方向に向いてしまった。

 

「貴方は努力していたのではありません。自分より弱い敵を作業的に叩いていただけです。それは美しくない.......自分の願望を、欠点を克服する意思が無くなった人は醜く、そして汚いものです。」

 

「チッ」

 

図星だった。全くもってその通りだ。自分よりはるかに格下のモンスターを倒して技術なんて上がるはずもない。

 

「くそッ.......がぁぁああ!!!」

 

「はぁ.......成長しないですね。醜い。」

 

そういうと容赦なく俺の左腕をもぎ取っていく。

 

「あなたのスタイルは片手剣の両手持ち。片手無くなれば扱い切れない。貴方の負けです。」

 

そういうとあっさりと胸の辺りに手刀を入れてくる。周りのメイドもここぞと言うタイミングでナイフやら、ピックやらを体に突き立てていく。その状態で体力が残っているわけも無くあっさりとアバターが崩壊した。

 

________________________________________________

 

 

「ッ.......がぁ.......」

 

まだ体が覚えている不快感に身を震わせ、鈍い悲鳴を出す。上には見慣れた俺の家の天井。そして隣にはユキが心配そうな顔でこちらをを見ていた。

 

「あ〜と.......やられちまったわ。でもゲージ半分減らせたから勝機はある。って事で2回目行ってくる。」

 

本当は1回も攻撃を当てられなかったとは言えない。

 

ともかく怖さは無くなったように思える。このままいけば勝てないことは無いだろう。まずは攻撃を当てることに全力を注ごう。

 

「大丈夫?」

 

「ッ.......あ、ああ.......」

 

あの執事に言われたことが頭に引っかかる。そのせいでユキの問いかけにぎこちない声を出してしまった。ユキはそれを訝しんだのか俺のこころののステータスを覗く。覗いてしまった。

 

それを察した俺は一足先に謝ろうとする。

 

「.......ごめん。少し、悩んじゃって.......」

 

「.......ん。」

 

「俺はこのゲームがクリア出来ないって理由をユキにしたくないんだ。でも、あの執事にはそうだと言われた。」

 

「.......クリア出来なかったら私のこと大切に思ってないって?」

 

ユキはいつも確信をついてくる。自分でもその理論はおかしいとわかっている。でも割り切れるかは別だ。理性の感情は違う。

 

「ああ....確かにって思っちまった。少しでも納得したならもう俺の負けだ。このゲームがクリア出来なければ.......」

 

「.......お父さんのばーか。」

 

いきなりの罵倒。余りにも前フリがなかったために思わず目を白黒させてしまう。

 

「クリア出来ても出来なくても私に対しての感情って変わらないよね?」

 

「ッ.......」

 

それもその通りだった。

 

「自分の感情がわからなくなった時にこれから起こる物事に結果を委ねたらダメだよ。人生経験はお父さんの方が圧倒的に多いけどこれだけは言えると思う。自惚れてるんじゃないけど、私は十分お父さんに大切にしてもらってるよ?だから不安なんてすぐ吹き飛ぶし、お父さんのことを考えると幸せなんだよ?だから自分のことを嫌わないで?」

 

毎回思っていた。ユキ()の前では情けないところを見せないようにしようと頑張っていた。でもそれは全てから周りで脆い俺の心の壁は簡単に決壊する。しかもそれは心を許している家族の前でほど酷くなるのは必然だった。結果、恥という恥をユキに見られた俺はどこかこんな関係が当然と思えるようになって来ている。

 

それが怖かった。当たり前のように娘に甘える俺が嫌いになりそうだった。頼られたい。悩みを話して欲しい。そう考える程にこの自己嫌悪は大きくなっていく。結果、触れられればすぐ爆発するような不安の塊を抱え、それを執事につつかれた。その瞬間不安は爆発し、自身の心を闇に落とした。

 

 

『こんな俺は嫌だ。』と嫌悪した。

 

 

 

 

『当たり前のように娘に甘える俺は俺じゃない。』と拒絶した。

 

 

 

 

『そんなことのためにユキを産んだ(作った)んじゃない。と。』と後悔した。

 

 

 

 

 

『もっと頼って、もっと話して、もっと悩み話して欲しい。』と願った。

 

 

 

 

こんな俺は嫌だ。嫌いだ。否定したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

否定したいのに怖くて否定できない自分が1番.......

 

 

 

 

 

嫌いだ。.......と。

 

 

 

 

 

でも、その状態で、他ならぬユキが光をくれた。

 

感情は変わらないと言ってくれた。

未来に自分の感情の答えを委ねたらダメだと言ってくれた。

ユキが大切にしてくれてると言ってくれた。

不安なんてすぐ吹き飛ぶと、一緒にいれて幸せだと言ってくれたのだ。

 

「嫌わないで.......か。」

 

今まで心の奥底に追いやっていた結果。当たり前のように無視して無いものだと思い込むようにしていたもの。

 

「ユキは.......俺の事を頼りないと思うか?」

 

「.......思ってる。」

 

その瞬間全てが崩れた。唯顔には静かに流れる涙の感触があるだけ。四肢は冷たくなり、この世の終わりのように感じる。

 

「それはあんなに泣きついてきたり、情けないところを見ちゃったらね.......信用はできない?」

 

容赦ない言葉の攻撃が来る。頭が真っ白になった。何も考えられないほどに。

 

「ぁ.......」

 

か細い声しか出ない。全身が固まったかのように世紀を失い感覚は遠いくなる。

 

「でもさ?期待はするよね。家族って多分こういうものでしょ?どれだけ失望してもその失望を取り戻して欲しいと思う。信用はしてないけど、信頼はする。」

 

信頼できない家族は本当の家族じゃないと続けるユキの顔は至って穏やかに笑っていた。

 

「だから、信頼させて?そして信用させて?私はお父さんを裏切らないから。」

 

「.......証拠....証拠が欲しい。」

 

それでも疑ってしまう。いつか愛想をつかして俺の元から離れてしまうんじゃないかと。その時はもうすぐじゃないのかと。

 

「.......怖い....んだよ?」

 

唐突に関係の無いような話が始まった。でもユキの表情は真剣そのもので横槍を入れる気にはなれない。

 

「こうしているうちにも私の寿命はあと僅かかもしれない。どんどん迫っているのかもしれない。」

 

そこでやっと言いたいことがわかった。でもそれは俺から言ってしまえば意味がなくなってしまう。ユキの覚悟が無駄になる。

 

「クリア出来なかったら私が消えるかもっていうのは多分お父さんも気づいてるよね.......多分、私の口調が変わってるのも気づいてると思う。」

 

確かに流暢に喋っている。今までのたどたどしい物ではなくあくまでも少しという範囲でだが明らかに変わっている。

 

「これが本当の性格って訳でもないし、むしろ元々の方が素なんだけどね.......」

 

「な、なんで........」

 

「私が変わったとしてもお父さんは本当に私のことを見てくれるってことを確認したかった。正直に言うとお父さんが死んでこの家に戻ってきた時、心を読んで中身を理解した途端に嬉しくなったんだ。」

 

言葉とは裏腹に苦しそうな表情でそういうユキ。絞り出すように鳴るユキの呼吸音が家の中に響き渡る。

 

「ああ、私で悩んでくれてるんだなぁ.......って。私の外見じゃなくて私自身を見てくれてるんだなぁって自己満足した。汚れてるのは一緒だよ?醜いなんて思わない。そういうユキのも含めて同じなんだよ?私とお父さん。紛れもなく似た者同士(家族)なんだよ。」

 

それでもと続ける。ユキは視線を落とし、顔を見られないようにする。その上で正面から俺にぶつかり、両手でお腹あたりの服をキュッと摘む。

 

「それでもさ.......希望....持っていい?」

 

ユキは元の口調に戻りそう口に出す。ユキが押し付けている頭辺りがだんだん湿ってくる。

 

「.......言って見て?」

 

せめて促すことしか出来ない。細かく震えるその小さい体を抱きしめる。さっき、俺は不安に溺れそうだったのに今ではそれが霧散している。それどころか、今までよりもスッキリとしていた。原因はユキで間違いない。そのユキが今度は俺と同じく不安で震えている。ならばやることはひとつだ。

 

「.......死に....たくない。消えたくない...........」

 

ひと呼吸おいて涙ながらに訴えるであろう言葉を肯定する準備はもう整っていた。

 

「助けて.......お父さん。」

 

俺がこの世界に来てユキが泣いた2回目の訴えだった。2回目の肯定。その言葉を口にする。

 

「任せろ。」

 

その一言の後には唯々ユキの嗚咽が響くだけだった。

 

 

________________________________________________

 

 

「.......よし、気合い入れた。行くか.......」

 

ガゴンと音がなりボス部屋の扉が開いていく。中には案の定、羊の執事が居る。

 

「ふむ.......どうやらその表情...........私の言葉を乗り越えたようですね。なんという親子愛.......美しい.......どうやらこれは私も正々堂々とやらなければやらないようですね.......」

 

そう口を開く執事は腕をゆっくりと上に上げていく。それを警戒して剣を目の前に突き出す形で構えをとった。

 

ただそれは杞憂で次に起こしたモーションは指パッチン。乾いたいい音が部屋中に響く。音が止むか止まないかのタイミングで執事の頭上に何かが浮かび上がった。

 

「リバース.......バーサーカー?」

 

「ええ。あなた達の美しさを少し試させてもらいました。あなた達、芽は遂に蕾になった。狂った私が相手をしてもその美しさを汚すだけでしょう.......なので、強化状態を解かせてもらいます。」

 

今思えばあの狂ったような戦い好きの笑顔はあの強化の影響なのかもしれない。

 

「.......倒すためのキー回収が出来たってことか.......」

 

そう小さく呟くと共にもう少しNPC(村人)の話を聞けばよかったと後悔をする。それでも精神的に前へ進めただけこの執事には感謝しなければならないだろう。

 

「認めてくれた.......ってことで良いのか?」

 

「ええ.......我が主。あなたの為にこの体、存分に使っていただけますよう.......」

 

何回も私の肩を使えと言っていたのはこの事だったのだろう。分かりずらいヒントだ。でもそれもこれも全てが過ぎたことだ。

 

「行くぞ.......」

 

「.......」

 

もう言葉は要らなかった。お互いに切りつけ、殴り合う。

 

「ッらぁぁぁああ!」

 

「ッ.......フッ!」

 

横に剣を薙ぎ払えば素早くしゃがんで難を逃れ、縦に叩き付ければ刀身の横っ腹を殴って逸らされる。その度にカウンターを入れられるがお互いに決定打にかける戦いだった。

 

「ッ!」

 

素早く手を振り上げ、そして下ろす。弱体化しているとはいえボスだ。動作が早いことには変わりない。

 

「ッ.......またメイドかよ.......オラッ!」

 

「えぇ.......使用人全てで相手させていただきます。」

 

「.......ッ、クソ!」

 

メイドを切ることは出来ない。これは精神的にでは無く、物理的にだ。メイド達が全体的に速度が上がっているのだ。おそらく操っている執事が正気を保っているがために操作の緻密さが増したのだろう。

 

「お前が弱くなったから行けるかもって気持ちを返せッ!」

 

「いいえ、それだけでは美しくありません.......搦手を使い華麗に戦う。これが私の求めている美しさです。技術や身体能力など付属品でしかないのです。さて....そろそろ行きますよ?」

 

戦いながらも会話をしている時点で俺とは違う。俺は会話など十分にこなすことなど到底できないだろう。せめて問いかけて答えを聞く程度だ。考えて答えを出して口に出すなどしていたらあっという間にこの執事に取って食われる。

 

「さてと。さっきから思っていたのですが.......あの小さいお嬢さんはどうなされたのでしょう?」

 

「....ユキなら家で留守番だッ!」

 

自分から距離をとって質問に答えながら全力で前に踏み込みそして投げた(・・・)

 

「ッ!ピック?!」

 

初めて余裕そうな羊顔を歪ませることが出来た。驚きに染めた顔を見るだけで満足しそうになるが、それだけでは問屋が下ろせないのも事実。

 

「シャラぁぁぁああ!!!」

 

「うぐっ.......」

 

初めていい攻撃が入った。執事の顔に赤いダメージエフェクトが現れる。ゲージは一気に1ゲージと半分。元々のレベル差のおかげとクリティカルのお陰だろう。元々HPが高い敵ではないのかもしれない。モンスターの強さを表しているゲージの色は階層ごとのモンスターの種類比較で分けるんじゃなくて自分とモンスターの力量で色を変えた方が面白そうだ。後で進言しておこう。

 

「やり....ますね。ではこちらも.......」

 

そう言って両腕を前に出し、自分の前で交差させる。その瞬間周りで沈黙を保っていたメイド達が俺の方に突進してくる。躱そうとするが隙間なくメイドたちが殺到している為、動けなかった。結果、

 

「うぐっ.......」

 

ドゴッという鈍い音が連続で鳴る。痛覚はないが不快感はあるこの世界で鈍器というものはタチが悪すぎる。頭突きもまた同じだ。衝撃でクラクラするバットステータス

に不快感のコンボは凶悪だ。だがそれでは終わらなかった。

 

「メイド達.......花を咲かせなさい........」

 

そう言った瞬間メイドたちの体の節々から赤い光が漏れてくる。それを認識した途端、体のあちこちにあの嫌という程味わった不快感が襲いかかってきた。

 

「ガハッ.......爆発.......かよ.......くそったれぇぇええ!!!」

 

地面を転がり終わり、立とうとすると違和感がある。バランスがとりずらいのだ。それもそのはず。右腕が肩から先がないのだ。

 

「また右腕かよ.......ッあっぶねぇ!」

 

「ふむ.......これを防ぎますか。」

 

ふらついている隙を逃すほど甘いはずもなく容赦なく手刀を振り下ろしてくる執事。それを咄嗟に片手で剣を持って防ぐ。

 

「.......へぇ。やっぱり剣で防御したらお前がダメージを受けけるんだな。」

 

「はは....ええ。当たりです。私だけ攻撃部位がダメージ通らないなんてそれは美しくない.......。我が主はこの状況でも冷静なようだ。」

 

「.......とか言ってるけどメイドたちを自爆させるのは美しいのか?」

 

「.......爆発は芸術です。美しいに決まっている。」

 

そう言い捨てた。だが、俺はそこで違和感を抱いたのだ。表情が一切動いていない。その理由はすぐにわかった。

 

「はっ、そんなん思うタマかよ。お前は。」

 

「....はは。いやはや手厳しい....」

 

多分だが、今.......いや、あの一瞬だけでも自分のこだわりを捨ててまで俺に勝ちたいと思ってしまったのだろう。美しさを捨てて勝利を掴もうと。

 

途端に執事が構えをゆっくりと確かめるように作り始めた。お互いに距離をとって剣激や戦闘音が鳴り響かなくなった中での行動。話は終わりだとその雰囲気が物語っている。

 

「お互いの体力的にもこれで終わるでしょう。美しく勝ち、花弁を開かせるか、負けてその蕾を落とすか。さて.......最後の1合としましょう。」

 

「.......ああ。そうだな。終わりにしよう.......」

 

体感では途方もなく長い戦い。でも外から見ればたった20分の出来事。お互いに全力でぶつけ合った闘志には漫画であるような友情が芽生えていた。

 

以心伝心、とでも言うのだろうか?なんの合図もなしに全く同時に動き出す。その距離は15メートル。あっという間に縮む距離だ。

 

「「ッ!!!」」

 

鋭い呼吸音が2人の口から漏れ出る。最後はあまりにもあっさりとしたものだった。崩れ落ちたのは.......

 

「まじ....かよ.......」

 

「そう....なりましたか.......」

 

2人だった。この勝負は引き分けだろう。またもう1回挑まなければならない。次は負けない。そんな確信があった。だが.......無慈悲にもテロップで流れるアナウンスは.......

 

《Congratulations》

 

「は....?」

 

「あ〜.......負けてしまいましたか.......楽しかった。出会い方が違えば....ほんとう....に、あなた、の....執事に....」

 

いい切る前にゆっくりと散っていくポリゴン片は口部分に差し掛かっていた。

 

「ッ....茅場ァ!!!俺はクリアしたぞ!.......見てんだろうが!!!」

 

力の限り叫ぶ。自身の足が消えているのを近くしながら....何故か遅い体の崩壊をありがたく思いながら。唯々叫ぶ。

 

「なんの見返りもなしか?!お金を渡してはい終わりってか?!助けろよ!助けてくれよぉぉぉぉぉおお!!」

 

支離滅裂な理論を並べ立て、自分を正当化させる。そんなにも必死な彼に執事は笑って見せた。

 

「ッ.......」

 

もうわかる。お互い悟っているのだろう。執事....いや、1層ボス【Ilfang・Albatler】(イルファング・アルバトラー)は消えると。死ぬという概念もなく無慈悲にシステムによって消されると。

 

ーーまた会えるといいですね.......ーー

 

そう聞こえた気がした。叶わない願いとわかっていながら運命に抗えないことに歯痒くなる。そして全てがポリゴン片になったのを見届けて俺のアバターも消滅した。

 

 

________________________________________________

 

 

ベッドの中でリポップした俺の隣にはユキが寝ていたので頭を優しく撫でながら複雑な感情を落ち着かせる。

 

「あ〜......終わったな....このゲームも今日が終われば出来ないのか.......製品版が出るまでユキとはお別れか?........いや、何とかしてスマホに移さなきゃな.......」

 

わざと色んな関係無いことを考え紛らわす。理性ではしょうが無いと割り切っている。だが、感情はすぐに整理はできない。

 

「んぅ.......おとう....さん?」

 

「あ〜、すまん。起こしたか?」

 

「ん。.......大丈夫。執事さん....は?」

 

当然の疑問だろう。俺だって同じ立場なら気になるところだ。当たり前のように聞いてくるあたり、俺が勝ったことを疑っていないのだろう。

 

「勝ったよ....ユキとの約束だからな。」

 

「ん。.......ありがとう。」

 

会話が止まる。でもユキは本当に嬉しそうに笑い、そして抱きついてくる。それだけで幸せでこれからの事など後回しにしてしまうほどの幸福だった。

 

俺が頑張っていたのはこのためなんだと。

 

そう、やっと理解出来た。依存していたっていい。ただそれが相手の自由を縛らなければ。執事の事はまだ割りきれていないが、時間が解決してくれるだろう。そして出来ればずっとユキの行く先を見届けて、いつかユキのことを理解してくれる人が居ればいいなと願うのであった。




はい。如何だったでしょうか?まさかの36000文字.......うん。普段のだいたい6倍.......いつもは6000文字ぐらいなので.......

いや、正直疲れた。これは.......だいたい1週間で1話のペースの俺からすると4週間掛かからないで6話分書けたのは快挙じゃないでしょうか?というか、毎日投稿してる人って化け物?正気の沙汰じゃな(ゲフンゲフン.......

はい。次回からは本編に戻ります!GGO編!遂にシノンが出るという.......とまぁ、感じなんですけども.......ひとつ言わせてください。燃え尽きました。いや、燃え尽きる寸前です。なので、1週間半時間下さい。まじでお願いします.......ほんとに.......ごめんなさい.......。なるべく早く書くので予定より早まるかもだけど.......

ということで以上、『外伝 新たなる創造主』でした。ではまた本編で.......


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GGO編
18話 新しいハードと問題のゲーム


はい。まず最初に.......多分予想着いている人もいるでしょう。


ごめんなさい.......


えっと、言い訳はしません。ゲームしてました。APEXハマってしまいまして......一週間半とか言っときながらのこの体たらく。ほんとに存分に罵ってくれて結構です。はい。毎回自分で決めた締切を守れないことに嫌気がさしてきました。

という事で前置きはこの辺で.......今回、ついにシノンさん登場です。あと久々のアルゴ!これを待っていた人は大半.......というか、全員でしょう!取り敢えず甘さは控えてめでリハビリしていきましょう!

では本編をどうぞ.......


今、俺は猛烈に感動している。

 

なぜそんな始まり方をしたかはこの説明を聞けばわかるだろう。まず俺は胡座をかいている。そしてその上には柔らかい桃.......いや、朋が座っているのだ。Tシャツを着た朋が。背丈の差によって朋の頭の上からでも目の前のものが見える。これだけいえばわかるだろう。そう。色々と....見えるのだ。

 

「たっくん。これ見てよ。」

 

そう言って差し出されたタブレットには大きくこんな見出しがあった。

 

『GGO、ガンゲイルオンラインの中で音信不通者多発』

 

こんな不穏な見出しに俺の顔は思わず眉をひそめてしまう。新しいハード『アミュスフィア』にはナーヴギアの時の反省を活かし、多彩な制限が掛けられているのだ。その上でのこの見出し。多発と言うだけにナーヴギアを政府に差し出さずに持っていたとしてもそんなに多くは無いだろう。ならば考えれることはひとつ。

 

「セキュリティの解除方法が出回ってるのか?」

 

「そう考えるのが妥当だね。それにしても.......」

 

「ああ。情報屋の血が騒ぐ.......」

 

その見出しを見ただけでは何も判断出来ないが、真実を知りたいという欲求はどうにも切っても切り離せないらしい。アミュスフィアは2人とも持っているし、ナーヴギアも政府に渡した。もう処分されている頃だろう。この事件はマスメディアが用意したデマなのか?それともネットでばらまかれた真っ赤な嘘なのか。はたまた本当なのかは知らないが、この世界(GGO)の中で何かが怒っているのは間違いないだろう。

 

「情報の裏付けだな。」

 

「だナ。」

 

楽しそうに笑う2人は無性に面白くなり吹き出してしまう。楽しそうな声が夜の街に消えていった。

 

 

________________________________________________

 

 

『ーーーーーってことなんだよ。』

 

電話の先にいるのはキリト....もとい、和人だ。相変わらずのイケメンボイスで相談して来るのは一種の優越感を感じる。案件は当然GGO関連で俺もお世話になった菊岡さんが提案してきたらしい。

 

『病院でバイタルを監視しながら潜る。ってことらしいんだけどアスナにバレずにいられる自信がなくてな....』

 

「そこで情報操作と.......」

 

『ああ。嘘までは行かなくとも真実にたどり着くまでは時間を稼げるだろう?』

 

「ふむ....気は乗らねぇな。実際、情報でアスナを騙す訳だし厄介事に首を突っ込和人を弁護できる自信が無い。」

 

実際SAOで色々とやらかしているのだ。自信をかえりみないやり方は一種の恐怖を感じる。せっかく出来た2人目の親友なのだ。このまま黙っていかせる訳には行かない。

 

「....俺も行く。お前一人だと何やらかすか分からん。」

 

『うぐっ....お、俺だって進んでやらかしてる訳では無いんだけどなぁ.......』

 

「βテスターの罪を被る。女子を勘違いさせる万年タラシ。1人迷宮攻略にソロプレイ。挙げればあげるほどまだまだあるぞ。」

 

『わ、わかったわかった!それも相談しておくから。というか、今日俺も初ダイブだし、明日以降になるけど.......ってタラシ?!俺がタラシだったらみんなタラシだろ?!』

 

相変わらずの鈍感っぷりにはある意味敬意を表す必要がありそうだ。アスナを始め、リズにシリカ。それに妹であるリーファ。もう何度ラノベ主人公か?!と突っ込みたくなったことか.......当たり前のように優しい言葉をなげかる。そしてそのタイミングは絶妙。ほんとに意識してないのか疑わしいくらいだ。俺より先に朋がキリトと出会っていれば朋は堕ちていたのだろうか?それだと俺はキリトを親友ではなく、敵として見なければ.......

 

「.......やっぱりお前は天性のタラシだ。ネットで晒すぞ?」

 

『いきなり口悪いな?!それはもういいだろ。それよりも、ハードはあるのか?』

 

「ああ、新しいのを買った。GGOをインストールもしてあるしなんなら今からでもあぞ。もう既にアルゴが情報収集に入ってるし、俺も今から潜ろうと思ってたところだ。」

 

え?という間の抜けた声が電話越しに聞こえた。

 

『.......お前、もしかして俺がこの事件のことを国から依頼されてるって知ってたのか?』

 

「んな訳あるか。和人なら首突っ込むだろうなとは思ってたけど半分は興味本位だ。アルゴにも血圧計は付けてもらってるし、アミュスフィアの方の計器も参照中だ。血圧が80を下回ったら無理やりにでもアミュスフィアを引き剥がすし、なんなら今でも引き剥がしたいのはやまやまなんだけどな。」

 

『....なんて言うか、お前変わったな。』

 

それはそうだろう。最近やっと自分の愛しいという感情を制御する術を会得しつつある俺だ。いつもとは違い落ち着いてはいるだろう。

 

「そうか?取り敢えず俺も情報集めとくから進展あったら連絡くれ。」

 

『お、おう。取り敢えずはそれで行くか。相談の結果はまた電話する』

 

そう言って電話が切れた。その途端に部屋が静かになる。アミュスフィアのファンの音だけが部屋に響き、ランプの色でアルゴが無事なのがわかる。

 

「....ったく。無茶するよ。ホント。朋も俺も厄介事に首を突っ込むって言うのは同じ....か。」

 

「キー坊と同じって言うのは何とも感想の出づらいもんだナ。」

 

「ッ?!」

 

体をビクッと反応させてしまう。隣で寝ている朋から声がしたからだ。いつの間にかランプの色は赤になっており電源が切れていることに気付いた。

 

「にゃははっ、そんなに驚かなくてもいいだロ?」

 

現実世界に戻ってもロールプレイが抜けきって居ない朋の体をお仕置と言わんばかりに強く抱きしめる。

 

「ちょ、い、痛い痛い!」

 

背中をパンパン叩かれるが本気では無いので照れ隠しなのだろう。痛くなるまでは締めていない。

 

「....お仕置だ。我慢して。」

 

「....ムゥ.......ならオレッチはこうダ!」

 

そう言ってなにか姿勢を変える朋。何をするのか身構えていたら首筋にチクリと痛みが走る。その後に皮膚がなにかに座れるような感覚を感じた。

 

「朋.......お前.......」

 

「いや、だった?」

 

上目遣いに言われてはもう限界だった。感情を制御出来ると言ったな?あれは嘘だ。やっぱり無理だった。こんなに可愛い仕草をしてくれるのは俺にだけ。そう考えると途端に優越感。独占欲が頭の中を駆け巡る。

 

「はぁ....ズルいよな。朋は。」

 

「それが私だからね。ここまで自分を制御できるようになるまで結構時間経っちゃったけど。」

 

最近のアルゴ.......いや、朋は俺にまでからかいが出来るようななってきている。さらに上達したのだ。前までは俺の行動一つ一つに冷静さを失っていたらしい。その為、からかいも満足にできず俺に撃退されていたのだが最近は顔を赤く染めるだけにとどまるくらいに慣れたらしい。嬉しいのか、嬉しくないのか分からないが朋が成長したと言うならまぁいいことなのだろう。

 

「最近は俺の方が余裕無くなるからな....男としては余裕のあるところを見せたいんだが.......」

 

「いつも余裕ある顔して色々こなす癖に何言ってるんだか....今でもその様子にドキッとさせられる私の身にもなってよ.......」

 

「ハイハイ。仰せのままに?カリーナ様。」

 

そう言うと軽く頭突きをしてくる。加減をしているのか、全く痛くないが、少し反省することにする。

 

「....なんか距離感じるから元の呼び方して?」

 

「毎回反応がいいからまだまだからかい足りないんだけど.......」

 

「さんざん私の事今までからかってたよね?!」

 

だからなのだが。これは中毒みたいなもので当たり前のように常日頃から言葉遊びをしていると相手の断りづらいものを考えてしまう。これが結果的にからかいにつながっているのだ。俺の場合は可愛い朋が見たいって言う方が大きいけど。

 

「ごめんごめん、辞める気は無いけど自重はするよ。取り敢えず休憩は終わり。入るよ?」

 

アミュスフィアを手に取って声をかけるなり、渋々といった様子で朋も頭に同じリング状のものを被る。

 

「「リンクスタート」」

 

2人同時に唱えた瞬間意識は現実世界から離れたのだった。

 

 

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

 

「へぇ.......ここがGGOの中か。画像では見てたけどやっぱり体験するのとじゃ違うな。感触的に、《ザ・シード》起因なのは間違いないな。コンバートもできるらしいし、リアルラック高めだな。実用性もある。流行るわけだ。」

 

廃れた感じの世界観は現実世界の面影を残しつつも独特な雰囲気を醸し出していた。

 

「ハーくん!」

 

アルゴの声が聞こえる。どうやら迎えに来てくれた様だ。ほんとにおらにはもったいない気立てのいい彼女だと思う。

 

「おう。こっちでもアルゴなのか?」

 

「当たり前だロ?どんなゲームでも一定数の顧客がいるのが売りだからネ」

 

事実なのだから本当に頭が上がらない。仕事が出来るパートナーが居ると男の立場が危うくなるというのは本当だったらしい。

 

「あ、そういえばあそこでオイラナンパされ「よし、そいつ教えろ。なに、PVP推奨ゲームだろ?多少酷いことしたって問題ない。」早いナ?!」

 

間髪入れずに俺が制裁宣言をする。アルゴをナンパする気持ちは分からんでもない。だって可愛いし、美人だし、可愛いし可愛いし.......でも実際にするのは頂けないなぁ.......

 

「いや、なに....現実っていうのを解らせてくるだけだ...」

 

「嘘!嘘だから!からかおうとしただけだゾ?!」

 

思わずずっこけそうになってしまう。相手を倒すと意気込んでいただけに途端に恥ずかしくなり、目線を少し下げながら安堵の声を漏らした。

 

「ったく、良かったけど心配になるようなことは言わないでくれ。重いかもしないけど何かあったらって考えると居てもたってもいられないんだ。」

 

「ああ、わかったヨ。それに重いって思ってたらもうとっくに別れ話してるんダ。その気持ちが嬉しいからここまでオイラはハーくんのこと好きになっちゃったんじゃないカ」

 

全く嬉しいことを言ってくれる。欲しい言葉をいの一番に言ってくれる。それがどれだけ嬉しいか。それで俺がどれだけ救われたか。完全にあの荒れていた頃の俺と決別できたのはアルゴのお陰なのだろう。

 

「よし、行こ.......う.......」

 

俺の視線の先には2人の美少女が武器屋らしき場所に入っていく姿だった。

 

「あ〜、早速浮気カ〜?」

 

その様子に気付いたアルゴがからかってくる。その言葉の中には一切のトゲがない事が俺への信頼だと思うと途端に背中がむず痒くなっていく。

 

「違うよ。ほら、あの黒い方を見てみろ。」

 

「ん?黒い方.......あ〜....なるほどネ。」

 

俺の目線を追い、見つけた途端にアルゴの顔が獲物を見つけた猫....いや、鼠のそれになった。アルゴも気付いたようだ。そう考えているうちにアルゴは行動に移していた。

 

________________________________________________

 

 

 

「そこの銃なんかは使いやすいわよ?」

 

「へ、へぇ.......そうなんだ。」

 

アルトよりの低音ながら整った声で喋るその姿、身のこなし。全て取って見てもあいつにしか見えない。

 

「やぁやぁ、まさかこんなところに同じ女性プレイヤーが2人(・・)も居たとはナ〜?」

 

「ッ.......」

 

その反応は相手に肯定の意を伝えているようなものだ。その事を理解していないだろうあいつは感情表現過多なこの世界において隠し通せるものでは無い。顔中冷や汗で凄いことになっている。

 

「あら?珍しいこともあるのね。」

 

彼女が言っているのは多分2人も女性プレイヤーに会ったという事にだろう。うん。水を刺すようなことは言うまい。

 

「おい?アーちゃん。先に行くなよ。何かあったらどうすんだ?」

 

そう普通を意識しながらその一見女性集団にしか見えない中に自ら飛び込む。それにより、周りの男どもからさっきが飛んでくるが気にしない。人を恨むより自分を変えろと言いたい。

 

「いや〜、ほっとけなくてナ〜。特にそっちの初心者さんネ。」

 

「ほう....その心は?」

 

「にししっ.......多分.......」

 

そう言ってから言った数々は今までのアルゴのからかいの中で1番にえげつないものだったと思う。

 

「アーちゃんの風呂シーンを覗いたり、アーちゃんの裸エプロンとかケーキを作っている時に失敗して白いホイップクリームが鼻についたのを凝視してたり、それによってはだけた服の隙間から見えてるものをチラ見してたり.......」

 

多分俺があいつの立場なら死にたくなるだろう。それも結構ガチなレベルで。

 

「それがバレて次の日、頬っぺにでっかいモミジを付けて集合場所に現れてその横には顔を真っ赤にしたアーちゃんが.......「あァァああ!!!わかったから!わかったからやめてくれぇえ!!」ぷッ.......あはははっ!!」

 

なにこれ?何?この天使。

 

このくだり、最近やってなかったけどもう我慢できんぞ?その笑う仕草の一つ一つが俺の琴線を刺激するって言うことをわかってないのか?いや、アルゴのことだからわかっててやってる節もある.......

 

「あはは.......あ〜笑ったヨ。んでこんなとこで何してるんダ?!キー坊。」

 

「バラされた.......ハキにも聞かれた.......死にたい.......」

 

ショックが大きすぎて話聞いてないぞ?こいつ。

 

「えっと.......何が何だか分からないんだけど、取り敢えずあなた達いつもそんな感じなの?」

 

そんな感じ、とは俺たちの格好のことを言っているのだろう。俺がアルゴを後ろから抱きしめている形だ。俺に対してだけ、論理コードを解除しているのでコンバートしてもそのまま残るらしい。まだ裏付けのしていない情報だったのでついでとしてはいい成果じゃなかろうか。まぁ、俺はイチャイチャしたいだけなんだけどな?

 

「まぁネ。ハーくんは自重できていると思ってるらしいけど意外と直ぐに限界くるから説得力がないんだヨ。」

 

「うぐっ.......アーちゃんが可愛すぎるのが悪いと思う。っと、俺の事はまぁいいとして。うちのキリトが迷惑かけました。状況から察するに性別を偽ってたみたいで.......」

 

「お前俺のなんなんだよ.......」

 

そう愚痴るあの人....もとい、キリトを放っておきながらアルゴを離し、本当の女性の方に頭を下げる。

 

「え?!そのアバターで男?!嘘でしょ?」

 

「あはは.......えっと、ごめんなさい。」

 

笑ったはいいものの居心地が悪くなったようで直ぐに謝罪を口に出す。最初からそうしてればいいもののなんでそう相手の気を逆撫でするような事を.......

 

「ほんっとにお前は.......アーちゃんを見習え。本当に悪いことした時はいの一番で謝ってくるんだぞ?涙目でな。それもすごい可愛くて.......お前にも見せてやりたい。あの可愛い顔.......普段の顔もめっちゃ可愛いけどなんか、涙目の顔って違った良さがあるよな.......」

 

「は、ハーくん、話し逸れてるゾ////」

 

照れで顔を赤くしながら俺の服を少し持ったままつんつんと引っ張ってくる姿はもう可愛すぎて頭がとかされそうだった。尻に敷かれようが知ったこっちゃない。来るならドンと来いだ。それくらいゾッコンだという自覚はある。

 

「ほら!ほらこれだよ!可愛いだろ?!俺のだからな?!誰にも渡さんぞ?!」

 

ーーはぁ.......出たよ。択の発作。こうなったら落ち着くまで待つの一択しかないからな.......ほんとに面倒だわ。まぁ、那稀(なき)を前にしたら俺もああなる自信はあるが.......ーー

 

どっちもどっちだった。

 

まぁ、そんなこんながあり無事買い物が終わり受付にも間に合ったのだった。

 

 




はい。読んでくれてありがとうございます。今回、あの超長編の後ということもあり、めっちゃ書くのが楽に感じた今日この頃なんですけども.......はい。

APEX楽しいよね。(開き直り)

冬キャンプ楽しいよね(関係ない)

後輩入ってきて忙しいよね。(言い訳)

という事で結局言い訳をしてしまう俺はもうダメなのだと思います。(混乱)

次回はなるべく早く出します。2週間はかからない予定。予定は未定です.......同じ過ちは繰り返さないのが俺なのだ。


ではまた次回。



改定、ハキのアルゴに対しての呼び名に不手際があったので訂正しました。(2021/04/24 09:43:01)


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19話 問題の試合、心の戒め



はい。ごめんなさい。めっちゃ期間開きました。.......ホントに申し訳ない。こちらも余裕がなかったというか.......コロナ関係で色々と忙しかったもので、執筆時間をとることができませんでした。作者がコロナにかかったということは無いのでこの作品はまだまだ続きます。(完結には何年かかかるかも)

そしてこれからの投稿は今までのような実質不定期更新になります。予定を出したとしてもおそらく守ることが出来ないと思います。それを理解した上で読んでくれる心優しい方は長い目でこの作品を楽しんでくれれば幸いです.......

尚、この話は予定の合間合間に書いたのでいつもよりも短編です。すいません。

では、本編をどうぞ


(2021/05/19 18:58:14)


「うぐっ.......」

 

うめき声が上がる。目の前の男の上には赤く染ったHPバーが浮かんでいた。

 

「うーん.......やっぱり感覚が少し違うな.......SAOの時より精密になってるせいか上手く狙ったところに打撃が通らん.......」

 

今、俺は絶賛PVPをしているのだ。試合まであと1時間。それまでにこの世界に慣れなければならない。どういう思考で相手が動くのか。銃撃戦の経験が皆無な俺としてはどうしても間合いが狂ってしまう。

 

「素手ならダメージ入るかもって思ったけど少ねぇのなんのって.......当たり前だけど。」

 

「....あなた、無茶な戦い方するのね。銃相手に素手で応戦するとか正気の沙汰じゃないわ。」

 

シノンがバカ長い銃を背中にこさえて近付いてくる。

 

「完全に間合いが剣のそれじゃないか。」

 

「剣使ってるお前に言われたかねぇよ」

 

アルゴは今、情報屋の仕事をしているため近くには居ない。フレンドリストで常に居場所はわかっているので問題ないが.......

 

「はぁ.......そんなに心配ならついて行けばよかったものを.......」

 

「しょうがねぇだろ。俺には試合があんだから。ってことで!とりあえず戻るか!」

 

そうして草原を後にした。

 

 

________________________________________________

 

 

 

建物の中に入ると辺り一面人だらけ。屈強な体と顔面の二拍子を持った人方だ。どれだけシノンとキリト、そしてアルゴがレアなアバターなのかがわかる。

 

「おっと.......大丈夫ですか?」

 

そんなことを考えながら歩いていると足元で誰かに当たった感覚があった。

 

「ん、だいじょ.......お父さん?」

 

そこには愛しの愛娘。ユキが立っていたのだ。しかも開口第一声がお父さんだ。周りの視線と主にシノンの視線に耐えかねて急いでユキを抱っこしてその場を離れる。

 

「なんでお父さんは急いでるの?」

 

「えっと.......俺の歳で子供がいること自体がおかしいって事.......って分かる?」

 

「ん、結婚は18歳から」

 

「そう。女性は16からね。まぁだから周りに俺がユキに無理やりそう呼ばせてると勘違いされたって訳だ。」

 

実際はそこまで考えてる人はいないだろうが、ユキ(AI)には論理的に伝えた方が伝わりやすい。これも最近学んだことだ。

 

「なるほど....わかった。じゃぁ....お兄ちゃん?」

 

小首を傾げて手を後ろに組みながら行ってくる。要は可愛いのだ。

 

「ぶっ.......え?ごめん、耳が変になったみたいだ。エラー修正したからもっかい言ってくれるかな?」

 

あまりにもいきなりのことで動揺が隠せずに吹き出してしまう。だが父親の威厳がある俺は務めて冷静にそう返した。

 

「お兄ちゃん?」

 

....ごめんなさい。死にます。

 

 

 

「ッハ!....意識飛んでた。娘からお兄ちゃんと呼ばせる外道になっちまった....」

 

「?、自分から進んで呼んでるんだよ?」

 

もうやめて。俺のHPはゼロだから。とりあえず次くらったら死んじゃう。

 

「も、戻るか!」

 

「ん。わかった!行こ?お兄ちゃん!」

 

あ〜.......この時間が一生続きますように.......

 

 

無事?この後死にました。

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

「お?戻ってきたな。」

 

「遅かったじゃ....ない....その子誰?」

 

おいおい、シノンのセリフ、メンヘラみたいになってるぞ?俺に気があるのか?ごめんなさい、アルゴという先約がいるから.......

 

「ウゴホッ.......な、なんでいきなり殴んだよ!」

 

「生理的嫌悪感がしたから。」

 

純粋な顔で言ってくる姿に何も言えなくなる。そうこうしているとユキがいきなり俺の腰に抱きついてくる。背丈は中学生くらいなので普通にブラコンの妹くらいに思われるだろう。流れで決めた割には理にかなっている作戦かもしれない。

 

「お兄ちゃん、浮気ダメ。」

 

「ぶふっ.......」

 

「してねぇよ?!」

 

いきなりぶっ込んできたユキにキリトは吹き出し、俺は全力で否定させてもらった。

 

「ったく、あまりににぃちゃんを困らせるな.......」

 

そう言って頭を撫でてやるとえへへ....と嬉しそうな声を出す。ほんとにどうした?ユキが壊れたのか?最近感情を出してくれるなぁとは思ってたけど妹設定になった途端にギャップがすごいぞ?

 

「き、兄妹だったのね.......変な緊張した。はぁ....」

 

ほんとに迷惑かけます。シノンの姉御.......あ、これいいかも。

 

「という事で姉御、俺は一足先に試合みたいなんでいってきます。」

 

「ええ....って姉御?!ち、ちょっと、それはどこから.......」

 

転送が始まり外の声が聞こえなくなった。甲高い音が耳に届く。不思議なことに不快ではないその音に身を任せながら目を閉じる。

 

「行ってくる。待ってろよ。多分すぐ終わる。」

 

「わかった。頑張って?」

 

「ああ。」

 

外の音が聞こえないのにユキの声が聞こえた。多分幻聴なのだろうが俺にはわかった。それは多分今まで育んで来た絆ゆえだろうと思う。アルゴもだ。多分、今アルゴは俺の背後に居るだろう。見なくても分かる。いて欲しいところにいつもいてくれる存在。俺が1番に愛する相手だ。この信頼を裏切ることはないだろう。

 

 

だから.......

 

 

 

 

 

だから俺はその期待と信頼を裏切らないように今回も勝つ。それが攻めてもの恩返しになるのだから。

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

さっきまでのふざけた雰囲気は一転して今は落ち着いたものへと切り替えていた。

 

「さてと.......何処だ?」

 

周囲の音に耳をすませる。キリト程の聞き分けはできないがやらないよりはマシだろうという判断だ。そしてその判断は間違っていなかったらしい。

 

ビュッと風を鋭く着る音が聞こえる。その後に続いて銃撃の音。予測線は見逃していたが、関係ない。音さえ聞こえれば.......

 

「なッ!!!!」

 

綺麗に足が吹き飛んでいた。それもそうだ。銃弾は音の速度も超える。それが頭になかった俺はまんまと弾を受けてしまったのだ。

 

「ったく.......まだ剣の感覚で戦ってるな.......」

 

言わ陰に隠れながらそう呟く。それは戒めであり認識の切り替え。そうなったらハキを止められるのはキリトがアルゴ。そしてユキに今は亡き茅場。それだけだろう。

 

「よし、理解した。」

 

岩陰から出ていくとすぐに赤い線が俺の方に伸びて来る。その無数の線はバラツキがあったのだ。

 

「へぇ.......」

 

その瞬間に全てを理解した。情報屋家業で培った自前の情報処理能力。それをフルに活用しこのゲーム性を理解した。これがハキの強さの秘密。相手の動きの癖をすぐに見抜き、理解する。虚白(こはく)との訓練でそれに対応する実力を得たハキは今では片足を失いつつも佇まいを崩さず笑う余裕がある。

 

「っらぁ!」

 

繰り出した拳は綺麗にみぞおちに入る。ダメージエフェクトはないが、確かにダメージは入っているようだ。

 

「ダメージ換算ちゃんとしろよ.......ほんとに.......」

 

しかしなんせ、ダメージ量が少ない。まぁ考えてみればそうだろう。殴打と銃撃。どっちが強いかなんて目に見えて明らかだ。だからといってSAOの体術スキルを経験してきたハキからしたら理不尽に感じるのも無理は無いだろう。

 

 

「だからって諦める理由にもならないが.......なッ」

 

 

再び鳩尾に掌底を当てる。与えるダメージは小さくとも不快感はちゃんと感じているようでその場にうずくまる。そのまま首に攻撃を当てようと手を振りかざしたその瞬間、あるものが目に入った。

 

「ライトセイバー?」

 

そう。彼が取りだした物はレーザーらしきものが先端から出てくる黒と銀の棒だった。出てきた光は紫。それを見た瞬間、長年のシミ着いた動作をトレースした。そう、してしまったのだ。

 

〜剣がない.......ッ?!〜

 

思わず迎撃をしようと腰の辺りに手を伸ばしたのが運の尽き。もちろんそこに件はなくただただその手は空を切るだけだった。

 

「しまッ.......」

 

次の瞬間見事に左手を切られてしまう。慢心だ。エゴだ。自信から来る油断だ。その全てが相手に動きを読ませるまでに精度を落とした。

 

「もらったぁあッ!」

 

相変わらずあの世界でであったランカーたちの県筋よりは遅い。なってない。だが、隙を晒したこの体制では防いでも次刃で仕留められる。もうなりふり構ってはいられなかった。

 

〜速度弱化ッ!!!〜

 

相手の動きが遅くなる。それと同時に仮想世界には無いはずの頭痛に襲われるが関係ない。すぐ様、縦20cm程の腰のホルスターに手を伸ばし、前に突き出し.......心臓に突き刺した(・・・・・)

 

「なッ.......グゾッ.......」

 

呆気なく相手はポリゴン片になり、そしてそこに残されたのは.......刃渡り70cm程の刀身を持った銃剣だった。

 

「.......汚ねぇ勝ち方.......」

 

そんな後悔を滲ませるような声を呟きマップ上から消えるハキ。平和ボケは彼の心の楔となり戒めとなった.......

 

 

ーー..............お前は間違っていない.......ーー




どうだったでしょうか?色々と至らないことがあると思いますがこれからも読んでくれると嬉しいです。ではまた(*´︶`*)ノ


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20話 この世界を望んだ君は幸せを全身に受ける

やっとあげれた.......困難だったよ。難産だった。でも楽しくなってきたかも.......前よりはスランプも落ち着いているかも.......

では、本編どうぞ.......


ナイフ。そう言うとみんなは納得するかもしれない。この銃剣。20cm弱のホルスターから出たのにも関わらず70cmの刃渡り。もう察しが着いているだろう。

 

ーーお前は間違ってない。ゲームは自分の持っているものを全て使ってやるものだ。ましてや、チートなんてしてないだろ?ーー

 

剣から声が聞こえる。もちろん、虚白だ。虚白の変形機能を使ったのだ。本来、"速度弱化"だけでここまで頭が痛くなることは無い。並列で使ったのだ。武器変形との同時利用。初めてやったからにはどんな副作用があるかは分からなかったが頭痛だけでよかった。

 

「さぁ.......ここからだ。」

 

結局まだ予選を勝っただけ。本番はこれから。それに違いはなかった。直に元の場所へ転送されるだろう。それまで待つだけだ。

 

________________________________________________

 

 

 

「っと、戻ってきたか。このまま現実に戻ってもいいんだが.......」

 

足を止めて後ろを見る。そこには誰も居なかったが気配だけする。何かが見ているという悪寒だけが自分の背筋を駆け巡る。それを察されないように言葉を紡ぐ。

 

「なぁ?ラフィンコフィン。いや、.......相棒(ザザ)

 

殺気が彼に似ていた。陰から見てくるという点が共通。勝算が無ければかかってこない陰湿さ。

 

彼だ。

 

そう確信した。元に何も無いはずの空間の筈なのにその言葉に反応して何かが動く。光が歪む。

 

「そういう事か....トリックは分からないが.......またてめぇか?」

 

「.......お前、危険、殺る」

 

このゲームの利点である遠距離.......ではなく意外にもエストックという刺突専用武器を構えてくる。

 

「へぇ、どこで手に入れたんだ?」

 

「情報屋に、タダで、教える奴は.......居ないッ!」

 

その言葉を皮切りにザザが地面を蹴り距離を詰めてくる。

 

「おうおう、怖いな。あのイカした骸骨の仮面はもうしないのか?」

 

「.......」

 

無言だった。どんどん剣速が早くなっている。

 

「ふむ.....鍛えてたのか。」

 

「ッ.......」

 

なぜ捌けるかが疑問なのだろう。簡単だ。刺突武器の強みは攻撃範囲の小ささにある。捌きにくいのと同時に、空気の抵抗が少ないため動きを最小化、剣速の増加などが比較的なぎ払い武器よりも簡単に出来る点にある。だが簡単に成長できる武器には才能と限界がある。

 

ステータス値(・・・・・・)のほぼMAXを瞬間的に出せる代わりに才能にものを言わせる奴が多い!」

 

特にエストックなどの色物武器を使う場合は特にだ。昔モルテとか言う奴がいたが、あいつがいい例だ。

 

「刺突相手には刺突で返す。同じもので返すのが俺の流儀でね。」

 

適当なことを言いながら先っぽと先っぽを合わせて捌いていく。

 

「いいぞいいぞぉー!もっとやれぇえ!!!」「す、げぇ.......」

 

様々な歓声。よく見て見たらその中にアルゴとシノンの姿も。キリトは試合中らしい。

 

「へぇ.......ああ、そうか。俺を殺そうとする理由.......うん。」

 

断片的なじょうひうをくみたてある仮説を立てる。

 

「お前が死銃か.......」

 

「良く、わかったな。半分、正解だ。でも。まだその時じゃ....ない。」

 

エストックを投げてくる。横からなぎ払って阻止するがそこにはもうザザの姿はなかった。

 

「なんだったんだ.......あいつ。」

 

「あなた、何者?」

 

シノンが声をかけてきた。あの監修の中からわざわざ抜け出してまで。その隣にはアルゴが。ユキはアルゴに肩車をしてもらっている。

 

「SAOサバイバー....だけど?」

 

「サバイバーって.......まさか、アルゴさんもキリトも?」

 

「そうだけど.......ちなみにあんなチャランポランだがキリトも俺と同じトップランカーだったぞ。」

 

「あいつが?!.......ぁ....コホン.......」

 

声を荒らげたあと周りの視線があるのを思い出したのか、か細く後悔の声を出し顔を赤くしながら咳払いをした。

 

「まぁ、とりあえずここは目を引くし.......」

 

「アア、離れた方がいいだろうナ」

 

ユキが俺の肩に乗り換え、皆で歩き出した。ちなみにその姿を見た周りの男性達は血走った目でハキを凝視していたと言う。

 

 

________________________________________________

 

 

 

「で....なんで席は足りてるのにあなたは膝にアルゴさんを載せてるの?」

 

そこには手に持ったフォークを握りしめて下を向きながら震えているシノンがいた。

 

「え?ダメ?」

 

「ッ.......周りから視線を集めてるって気づかないの?」

 

「だってアルゴが乗ってきたんだし.......」

 

「あなたから誘っていたでしょうが!!」

 

はぁはぁと息切れを強引に直しながらまくし立ててくるシノンに内心冷や汗が止まらない。怖い。怖すぎる。

 

「まぁまぁ、ハキは今に始まったことじゃ「あなたは抵抗しないの?!」」

 

食い気味に言ってくる。アルゴのフォローが玉砕した。俺の必殺土下座もアルゴが乗っている為できない。

 

「ああ....頭痛い.......」

 

「えっと....あはは.......」

 

おいキリトは笑ってないで何とかしろよ。

 

「はい。ご注文の品です。」

 

NPCが運んできたドリンク。シノンにはカプチーノ、アルゴはトロピカルジュース。ユキはりんごジュースだ。そして俺は.......おれ....は.......

 

「えっと、ブラックコーヒー頼んだはずなんですが.......」

 

「ええ、コーヒーでございます。」

 

目の前には綺麗なカップとその下にしかれている皿。カップの中に液体が入りながらも底が綺麗に見える。

 

「えっと、これコーヒ「コーヒーでございます。」.......」

 

それでもコーヒーだと一点張り。

 

「えっと、いつからコーヒーは透明に?」

 

「期間限定でございます。」

 

期間限定のコーヒーが物の見事に透明ってなんだよ?

 

「えっと、コーヒーの香りがしないんですが.......」

 

「周りのお客様も飲んでいらっしゃいますので、匂いが紛れているのかと.......」

 

おい、周りのコーヒーはどんだけ激臭なんだよ?期間限定激臭透明コーヒーってか?ふざけんな

 

「色の着いたコーヒーひとつ。」

 

「品切れでございます。」

 

ッ.......こいつ.......プレイヤーだな?

 

「お前.......はぁ.......わかった。」

 

指を鳴らす。コップの中の液体は見る見る間にいらのついたいい匂いのする液体になった。脳内操作だ

 

「なっ.......ご、ごゆっくり.......」

 

ざまぁみろだ。ちゃっちな嫌がらせをするからこうなる。そう。俺が勝ったのだ。でもこんなに虚しいのは何故だろう。頭痛い.......ああ、このせいか.......

 

 

________________________________________________

 

 

 

「っと.......戻ってきた?」

 

目の前にアルゴ、朋の顔があった。それどころかユキの顔もある。.......なんで?

 

「へっ?」

 

そんな間抜けな声をあげた朋達。理由は簡単。俺が抱きしめたからだ。ユキはタブレットだが.......

 

「いやぁ、積極的だね〜.......」

 

と余裕をかましている朋を愛おしく思いながら情報を整理する。

 

「....赤目のザザ...........それに死銃。カマかけたけど見事にハマったなぁ。」

 

「ザザ、ね。あいつが今回の黒幕なの?」

 

「だと思うよ。もしかしたら生き残ってるラフィンコフィン全員がグルかもしれない。」

 

「そこは要観察だね。」

 

「お父さんのアミュスフィアのデータ....と、キリトさんから貰った音声....データ。比較しても喋り方、違う.......」

 

「ん〜.......グルはほぼ確定か、それとも犯人はラフィンコフィンでは無いか.......」

 

考えれば考えるほどドツボにハマっていく。第1、択達は情報屋であって探偵では無い。よって推理は得意ではない。

 

「ああ!もう!.......飯だ飯!」

 

「ぷッ、.......おじさんみたいになってるよ?今作るから待ってて。」

 

これだから朋には頭が上がらない。というか、夫婦みたいなもんだろ。こんなん.......幸せすぎて死にそう。

 

「あ、そういえば私も出るから。本戦」

 

「ッブゥ!.......は、はぁ?!」

 

口に含んでいたコーヒーをぶちまけてしまいそうになる。それほどの爆弾発言を朋はなんでもないように言ったのだ。

 

「だからさ?守ってね、あ・な・た?」

 

大きめのニットを着てキッチンでエプロンをつけるために腕を後ろに回している。そしてその姿のままこちらを向いて笑いかけてくる。もちろんほっぺたは赤い。

 

「ッ.......」

 

瀕死になった。死にそうになった。言うだけでは簡単だが、正直この可愛さに勝てるものは他にないだろうと思う。自分の彼女だから補正がかかってる?お前ら、その言葉はこの姿を見てから言え!

 

「あ、ああ.......守るよ.......」

 

男は弱い。特に惚れた相手には。その事実を知らしめられた。くっ.......可愛い.......

 

________________________________________________

 

 

 

「兄さん.......この人を殺せるんだよね?俺と一緒になれるんだよね?」

 

「ああ.......勿論だ。たの、しみだ........」

 

暗闇での会合は誰にも知られずに空へ溶けて行った




スランプ故の3000文字.......短くてすまん、とりあえず書き上げたからあげる。これからの更新は不定期でやります。結末が見れずに終わるなんてことはないので根気強く待っていただければ.......

外伝を書いたあとの燃え尽きが尾を引いてる.......


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21話 極悪チーミングそしてアルゴ、怒る

どうもすいませんしたああああああああぁぁぁ!小説投稿欲が復活しましたあぁぁぁぁ!前みたいな頻度では出来ないですが、今回みたいに日がまたぐことは無いですッ!ッテコトデェ!


本編をどうぞ。m(_ _)m


さて、今回俺らが参加する本戦。一緒に行動するのがこいつらだ。俺、キリト、アルゴ、シノン。.......これ、チーミングじゃね?って思ったわけ。それをそのままキリトたちに言ったら

 

「2人組で行動すればいい。俺とシノン、ハキとアルゴで。鉢合わせたらそれぞれ無視で。」

 

そう言ってきた。それの方がマシとはいえチーミングには変わりない。そしてチーミングが2組居るとなれば過去一の泥仕合間違いなしだ。

 

「合図は.......あー.......まぁ何とかしよう」

 

「「「適当(なの)かよ?!」」」

 

思わずズボラなキリトにツッコミをみんなでしたところで強引に話題を戻す。

 

「マップって事前にわかるのか?」

 

「ええ、マップはメールに添付されてたはずだけど.......」

 

見てみるとそこには1枚の画像があった。見落としてたとは俺としたことが........

 

落ち込みながらもそれに目を通し、案を出す。

 

「一旦ここで落ち合おう。敵がいたら殲滅で。できるな?」

 

「そこはキリトにおまかせで。」

 

「オイラはハキに働いてもらおうかナ」

 

女性陣は俺らに任せると....まぁいいけども。

 

「ユキ、いい子で留守番してるんだぞ。」

 

頭を撫でながら言うと気持ちよさそうに目を細めて返事をしてくる。

 

「うん。お兄ちゃんも頑張って。」

 

さて....と。では行こうか。

 

ザザ、てめぇはここで消す。

 

 

________________________________________________

 

 

 

《転送開始》

 

自分の体が光に包まれ、ポリゴンのプログラムデータの数字と共に存在が薄れていく。ホルスターから銃を取り出し、剣を構える。

 

「よっしゃ、暴れるか。」

 

久しぶりのバーチャル世界での命のやり取り。戦闘狂ではないが、少し心が踊るものがある。普段のゲームでは味わえないこのスリル。

 

「って心情になれればいいんだけどなぁ」

 

.......そんな考えはすぐに消えた。言い聞かせなきゃやってけない。こんなゲームなぞ。とりあえず合流が先だ。幸い俺は比較的合流場所に近いようでマップを開くと地形とぽつんと光る俺の位置が目に入った。

 

「おお....ん?」

 

近くで音が鳴った。ガサッ.......そんな異音。すかさずハンドガンを握りしめて(虚白)をふりかぶる。

 

「ちょ、ちょっと、やめて!」

 

そこに居たのは水色....いや、ライム色の髪を持つシノンその人だった。

 

「あ〜、.......まじか。」

 

スナイパーというポジション故に移動速度が早い彼女は一直線に集合場所に来たのだろう。俺らと同じ集合場所に(・・・・・・・・・・)

 

「困ったわね、まさかあんたと同じ場所を集合場所にしてたなんて.......」

 

「仕方ねぇ.......とりあえずお互いパートナーと会えるまでツーマンセルだな。」

 

「それしかないわね。」

 

そう言って背中のでっかい銃を担ぎ直す。

 

「はぁ....シノン、動くな。」

 

そう言ってシノンの肩越しに後ろの敵に数発発泡した。新調したハンドガン。調子はいいみたいだ。それだけで相手は怯み逃走を図るが伊達にあのデスゲームをクリアした訳では無い。あの時に培ったVR世界の動き方をフルに活用して一瞬で移動して見事に剣で一閃。

 

「....驚いた。あのキリトより早いんじゃない?」

 

「ステータスのおかげでもあるけどな。まぁ多分、技術はあっちが上だろうけど速さでは勝ってるとは思う。」

 

キリトは効率重視の動きに対して俺は無駄のない流れる動き。似て非なる思想の元導かれた我流の剣術である。もっと詳しく言おう。キリトはピンポイントで弱点をつける。俺はどこを狙おうと一定のダメージ量を与える。技術ではキリトの方が上だが、手数の多さは俺の方が上だろう。

 

「さて....と。シノン姉ちゃん、囲まれてるようだぜ?」

 

「ね、ねぇちゃッ.......ああ、もう!ほら、さっさと行ってきなさいよ。」

 

「ねぇ、扱いが雑なのはいいけどバックアップはしてね?」

 

「はぁ.......了解。」

 

そんな呆れた声出さなくても.......

 

 

________________________________________________

 

 

 

「早く合流しないと.......」

 

絶賛キリトは走っていた。つまり、.......

 

「なんでこんなに集合場所が遠いんだッ!」

 

そんな愚痴を吐きながらどんどんスピードを上げていく。敵の攻撃を避けるように木々を避けてすり抜けるその姿はもう人外の一言だった。そしてそんな走り方をしたら.......

 

「っ.......敵かッ!」

 

人とのエンカウントも避けようがない。

 

「っ、急いでるのニッ!」

 

「っ、ち、ちょっ、あぶっ!」

 

見事にぶつかり合いました。はい。それはそれは見事な放物線を描いてお互い吹っ飛びました。それだけで終わればいいものの、キリトは今までの経験を生かして相手に剣を振るいに行こうとする。相手は起き上がる速さは凄かったものの、反撃の銃を構えない。

 

「なっ.......き、キー坊?!」

 

「っ.......アルゴか.......驚かさないでくれよ.......」

 

「こっちのセリフダ!」

 

速度的にはアルゴが上。速度重視のステータスなので当たり前だがその速度で当たっていたらダメージは免れなかっただろう。

 

「参ったなぁ.......」

 

「知らない仲じゃないだロ?」

 

アルゴの方からツーマンセルを申し込まれる。それを快く了承したキリト達は移動を始めた。

 

 

________________________________________________

 

 

 

「....キー坊。」

 

自信無さげにそう呼ぶアルゴ。いつも元気でからかってくる彼女を知っている身としては違和感が拭えない。

 

「ハーくんは.......」

 

「アルゴらしくもない。どうしたんだ?話なら聞くぞ?」

 

そう声をかけたのがいけなかったのか、それ以降何も喋らなくなった。躊躇している表情を浮かべ1人で一喜一憂している。紛れもなく彼が彼女を変えた結果だ。

 

SAOのベータテスト時代、SAO製品版の序盤の頃は取り繕った仮面を決して外そうとしなかった彼女だ。彼と関わるようになって少しづつ自然体だとわかるような行動が目立つようになった。情報屋として休みなく働くアルゴに彼がひとつ『休め』と言えば休む。『愛してる』と言われれば頬を緩まし、嬉しそうにからかう。典型的な仲のいいバカップルだった。今は落ち着いたが、その分、彼女の素の部分が露見している。万人と一定の距離を保っていた彼女は1人.......いや、2人にその内側に入ることを許している。

 

「(アスナがいなかったら俺も惚れてたかもな....)」

 

今はそれくらいに魅力的だった。そうしたのは誰でもない彼なのだ。だから応援したい。仲違いなどありえないと分かっているが、それでも気には掛けたい。最近、彼らを見ているとふとそう思う。

 

「ハーくんは優しいよナ....」

 

ポツポツと語りだす。その声は消えそうな自信の無い声だった。

 

「それに強いし、かっこいいし.......」

 

この時点で察した。自身の価値が分からないのだろう。当たり前のように寄り添ってくれる彼に疑問を持っている。アルゴも人間だ。どれだけ才能があろうが努力しようが自信をつける前に彼の方に目がいってしまう。追いつけない気がする。相手のいい所はわかっても自分のいい所が分からない。誰しも経験したことのある感情だ。

 

キリト自身も経験したこと。有能なアスナに劣等感を感じ、なんで俺なんかと.......と考え続けているうちに不安が膨らんでいくのだ。

 

「不安、なんだろ?」

 

そう問いかけるとアルゴは小さくコクンとうなづいた。それを見て助けようと思った。昔、キリトも同じような事で悩んでいた時、ハキに助けられたからだ。言葉を選んでゆっくりと音を出す。

 

「昔、俺もハキも同じような事で悩んでいた。お互い相談しあっていたんだ。その大半は傍から見るとただの惚気にしか聞こえないかもしれないけど.......」

 

そうキリトが言うとアルゴは驚いたのか少し目を見開いた。ハキも同じことで悩んでいたとは思わなかったのだろう。あいつはアルゴの前で弱く見せるのが嫌らしいからな。

 

そこからはたんたんとその頃のことを喋った。

 

 

 

 

 

 

 

妖精の国の上空に浮かぶ高い塔の中で彼は唐突に声を出した。

 

「なぁ、キリト。お前ってベータテストの頃からアルゴのこと知ってるんだよな?」

 

「ん?まぁな。世話になってたよ。」

 

戦闘が終わり、キリトとアスナの家でゆっくりしていた頃のことだ。アスナはキッチンで料理を作っていてますます夫婦みが増してきている。

 

「あの、さ。俺ってアルゴと釣り合ってるのかな?」

 

「.......初めてだな。俺に面と向かって弱音言うの。」

 

「初めてじゃねぇよ。.......多分。だけどな、今回、アルゴが夜な夜な電気をつけて色々と何か紙に書いてるのを見つけてな。夜、トイレに起きた時に見たんだよ。そしたらな。びっしりと情報が書き込まれてた。死銃の声の特徴、被害にあった人達の共通点。」

 

まとめていたのだろう。今までの情報でなにか掴めないか、手探りで。デスゲーム時代にもやっていたのを何回か見た。

 

「それ見て自分は何呑気に寝てんだ?ってな。自分の大切な人が身を削って努力してるのに無関係じゃない俺は頑張ってる気になって全部アルゴに押し付けてんるんじゃないかって思った。」

 

「自己嫌悪か?」

 

ハキは黙った。顔は下を向き目元は見えない。アスナには秘密の内容だが、正直キリトは自分よりアスナの方がこの悩みは適任だと思った。だからアスナが戻ってきた時にはもう所々を隠して事情を話していた。

 

「.......ハキくんは今までアルゴさんに何を貰ってたの?」

 

「ぇ.......?」

 

「好きとかそういう言葉だけでなく、行動でも行為を伝えてくれていたと思うの。」

 

静かにそう淡々と話すアスナは紳士にハキの目を見て向き合っていた。

 

「それどころか、好意を通り越して愛すらと貰っていたと思う。好意は見返りを求めるものだけど愛は見返りを求めない。アルゴさんから求めてきていないのならそれはもう愛だよ。」

 

ハキの脳裏に今までのアルゴが再生される。

 

「ハーくん、ありがとう」はにかんだ満遍な笑顔で

「さすがハーくんだナ!」何故か自慢げな顔でにしし.......と笑いながら

「たまにはオネーさんに甘えてもいいんだゾ?」慈愛に満ちた、俺の事を心配するような顔で

 

『なんで?』

 

そんな疑問が頭に浮かぶ。全てはアルゴから貰っていた献身的な愛だった。ハキを愛する一人の少女だったから。だからその疑問が深くなった。俺のどこがいいのか?俺はそれに何を返せているのだろうか?そんな疑問が頭の中で暴れる。

 

「これで悩みが晴れないなら.......多分、ハキくんは自分を騙してるんだよ。例えば....自分に自信がないだけとかね。」

 

ここぞと言うようにアスナは言葉を並べてハキを追い詰めていく。

 

「自分は仕事をしていない。自分では釣り合わない。これってさ、自信の無いだけだよね?」

 

「ち、ちがッ.......」

 

理由も考えも何も無く反射で否定しようとしてしまう。

 

「一言で言うね。ハキくんの悩みは贅沢だよ。」

 

「ッ.......」

 

「普通の人だったらそんなふうには考えない。貰える好意や愛は貰って返すなんて考えない。その関係を維持しようと考えてそのまま時を過ごす。でもね、ハキくんはそれを問題だと捉えた。すごいよ?尊敬するし偉いと思う。」

 

アスナは少し微笑みながら話した。

 

「その性格を繊細だと言う人もいるけど、私はそうは思わない。相手を真剣に考えて、自分から変わろうとしてる証拠だもん。」

 

1呼吸置いて少しお茶を飲む。

 

「男の人は分からないけど、女の人が愛を示すのは怖いし勇気が要るんだよ。この人は大丈夫、信じても大丈夫って確信がないとダメなの。」

 

アスナはキリトをちらっと見る。

 

「それに、アルゴさんもそういうハキくんの優しい所も好きだと思うよ。1番は話し合ってみることだけど男の人って変なところで意地っ張りだしね。」

 

「いてっ.......」

 

アスナは隣にいるキリトの脇腹を小突いた。

 

「うん。ありがとう.......」

 

少し楽になったかもしれない。自分なりに接すればいいとわかっただけでも良かった。

 

「..............」

 

「..............」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「いや、泣くとは思わなくて.......」

 

アスナが困った顔をしてキリトはただ単に驚いている。そして問題のハキは.......

 

「あれ、ほんとだ.......ッ.......アスナ、ありがとう。キリトお前、いい嫁持ったな.......」

 

「よ、嫁ッ?!?え?あ、いや.......////」

 

「だろ?自慢のパートナーだ。」

 

そんなふうに惚気も見れたところで俺はある疑問を提示する。

 

「ところで料理はどうしたんだ?」

 

「「あ.......」」

 

 

 

 

 

 

「ってなことがあってな。まぁ、ハキは自分にはもったいないって思うくらいにはアルゴの事大切に思ってるし感謝してた。」

 

「そう.......そう、なんだ......」

 

あからさまにほっとした顔で胸の近くに手を固く握るアルゴの姿を見て力になれたか?と少しキリトもほっとした。

 

「所で.......そんなこと思ってたなんてナ。ハーくんのやつ、オイラが魅力のない相手を好きになる位軽い女だと思ってたのカ.......説教だナ」

 

一瞬で悟った。やらかしたと。

 

元々ハキに口止めされてた内容だけにアルゴがハキを怒ることはキリトにも被害が行く。

 

「そ、それは勘弁してあげても.......」

 

「ン?もう1回言ってくれるカ?キー坊。」

 

「い、いや、なんでもないです.......」

 

アルゴの背後に見える黒いスタンドから目を逸らしながらハキにエールを贈る。

 

 

 

 

 

南無(なむ)




さて.......作者の今までのあらすじ。

ある日、先生から告げられた。「就職先を決めろ」残酷なお告げに俺は撃沈!学生を辞めたくない!でも未来を考えればやるしか無い!会社を選び、志望動機を書くッ!リテイク!リテイク!リテイクリテイクリテイクリテイクリテイクリテイクッ!計25リテイクだああああああああぁぁぁ!!!これにて文を描く気力が失せたッ!なんだこれはッ!小説とは違い自分の考えを書くなんてなんか、めっちゃムズい!


次回!どうもすいませんでしたああああッ!〜だけたけ、死す。デュ○ルスタンバイッ〜


あとがきをノリだけで書いたこと。伏して謝罪します


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22話 即興コンビネーション

亀より、そしてナマケモノより遅い更新です。それでもまだ読んでくれている人にはほんとに感謝しかありません。.......いや、マジで!!

ってことで久しぶりの更新です。なぜおそくなったかというと、まぁ色々あるのですが.......第1に就職し、新人として働くうちに執筆時間が取れなかったのが大きいですね。そして、普段ネットが繋がる環境にないのも大きい点かと。

そんなこんなで何とか書き上げた話ですので良ければどうぞ。本当にすいません<(_ _)>


さてと。どうしたものか.......

 

「敵よ。12時の方向。」

 

「あ、ああ.......」

 

横でスコープを覗いて周りを索敵するシノン、当たり前のように言うが、あの長い銃身を前に出して覗くその姿は.......

 

「アンバランス.......」

 

「なんか言った?」

 

「いえ.......」

 

どこでも男女では女の方が強いのだ。これはホントなのだ。考えても見てくれ。クラスで女子に文句を言う。女子泣く。そしてクラスの女子に言葉で滅多刺し。背筋が凍る思いになる。だが、男子は変なプライドのせいで泣かない。女子がどれだけ男子に悪口を言おうと許される。学校で教師がそれを発見しても男子が女子に言った場合鬼のように怒るのに女子が男子に言ったとしても注意だけだ。つまり.......

 

「男尊女卑.......ではなく、男卑女尊の社会なのだッ!」

 

「はぁ.......」

 

ため息をつかれた。その点、まぁシノンはクールだし、言っちゃ悪いがクールな人って学校で一人でいるイメージ強いし.......

 

「危険は少ない.......か?」

 

「何バカのこと言ってるの?あまり変なこと言ってると両腕と胴体にグレネード括りつけて特攻させるわよ。」

 

うん、十分きついわ。なんなら集団よりダメージでかいかもしれない。心がえぐれた。逆らわないようにしなければ行けないな。うん。そう、俺は犬、忠犬だ。そう.......俺は.......犬.......

 

「ワンッ!」

 

「.......」

 

無言でグレネードを手に待ってこちらを見据えてくるシノン。さすがにここまでだと思いあっさりと負けを提言した。

 

「待って?!いや、待ってくださいッシノン様!か、勘弁をッ!」

 

「ちょうどここから50m先に敵が居るわ。近いわね。そういえば近接.......得意だったわよね?」

 

般若が見える。ついアルゴにするようにからかって煽ってしまった。それが運の尽きだったようだ。

 

「え?う、嘘でしょ?ぎ.......ぎゃあああああああああああああッ!」

 

 

 

 

悲痛な悲鳴の元、4つの爆発の音がフィールド上に響き渡った。

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

「うっ.......ひ、酷い.......」

 

「犬なら言うことを聞きなさい。」

 

「わ....んじゃないです。ゴメンナサイソウイウコトジャナイデスネ。スイマセンデシタ。ダカラ、グレネード特攻だけは勘弁を.......」

 

すっかり俺は調教されていた。半分ノリなのだが、どうもこのノリはシノンに受けが悪いらしい。どうも難しいな。場を和ませようとすればきつくなる.......

 

「....そんなに私怖かった?」

 

「それはもう、背後に般若の化物が.......」

 

気づいた時には遅かった。シノンはすごい冷めた顔でこっちを見ていた。だがその雰囲気もすぐに霧散し、シノンが深いため息を出す。

 

「はぁぁぁ.......ほんとに....いや、なんでもないわ。自覚はしてるから。」

 

そう言ってスコープを覗き直すシノン。それを横目にボソリとハキは言う。

 

「ふむ.......でもそんな性格も嫌いじゃないけどな.......」

 

ボソッと吐いたその声はシノンには届かなかったようだ。まぁ実際嫌いじゃないってだけで好きって訳でもないからこっちとしても複雑なのだ。ただひとつ言いたいことは.......

 

「クールにも色んなタイプがあるんだなぁ.......」

 

我が娘、ユキとシノンを較べてしみじみ思う。口数が少ないか、性格が冷めているか。それだけの違いだがそれでも勉強になった。

 

「にしても....シノン」

 

「なに?」

 

「君、何歳?」

 

デリカシーも何もあったものじゃなかった。真剣な顔をしながら聞いた。彼女の顔はどんどん赤くなって行き、無言で体を起こす。

 

「それが君の最後の言葉かしら?」

 

「ち、ちょっ、タンマ!!!へカートはやりすぎだろ?!お、おまっ、俺トマトケチャップになるぞ?!」

 

「なれば?」

 

もう般若どころじゃなかった。悪魔だ。正真正銘の悪魔。小悪魔?そんなの知らん。ただの悪魔だ。

 

「っ.......はぁぁぁあああ.......15よ」

 

「なんだ。中学生じゃねぇか。」

 

「ッ.......こんのッ」

 

年上感があるこの性格で圧倒的年下は反則だろうよ?俺のストライクゾーンはアルゴと決まっている。.......ん?なんか話が変な方向に飛んだな。

 

「いつまで、俺は待ってればいいの?」

 

「「あっ.......」」

 

後ろには敵が行儀よく三角座りで待っていた。咄嗟にホルスターからハンドガンを抜いて発砲。見事に相手はポリゴン片になりました。

 

「....やったわ、この人やったわ.......」

 

「ぇ.......いやっ、咄嗟にうっちゃっただけで.......ご、ごめんなさぁぁぁぁあああい!!!!」

 

 

全力の謝罪が響き渡ったとさ。

 

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

 

「アルゴ、情報を買いたい。」

 

「珍しいナ?最近ご利用はなかったダロ?」

 

草むらでハイドしている中でキリトはそう声を上げた。第一、アルゴはこう見えて身持ちが硬い。信頼出来ない相手に客以上の行動をするかと言ったら否だ。それはキリトに対しても同じだった。アルゴはハキがいなかったらソロで行動してどっかでおっちんでたかも。と公言してるのだ。

 

「俺の質問を当ててくれ。」

 

「はぁ?なんだよソレ。情報でもなんでもなイ」

 

「いいから」

 

「.......ハキの、ことカ?」

 

ほんとに、この旧友は俺の事を理解してくれているらしい。

 

「ん〜内緒、だな。」

 

「はぁ?!なんだヨ、ソレ!」

 

心底不思議だと言うような表情になり、そして飛び出して行った。

 

「アルゴ!バックアップ頼む!」

 

「え?!イヤイヤ、突っ込むのかヨ?!」

 

 

________________________________________________

 

 

 

「だいたいあんたはッ「シッ.......」ッ?!」

 

ふざけた顔から一気に真剣な顔になり、人差し指を自分の口に持っていき、シノンの言葉を止めた。

 

「敵さんだ.......」

 

そう小さい声で教えてやる。走って場所を移動しているのだろう。武器を閉まって全速力で森の中を駆け回る姿があった。

 

「.......シノン、へカートをアイテムボックスの中に入れておけ。この距離でライフルは重荷にしかならん。」

 

ギャーギャー騒いでいたおかげでもうその敵との距離は50メートルまで接近を許していた。

 

「でも、この距離ならまだ狙撃でき「いいからしまえ。お前は俺が守るから。」ッ.......」

 

「シノンはサブマでバックアップだ。カウントするぞ.......3、2、ぃ」

 

『1』と言う寸前でそれは起こったのだ。

 

敵との距離は約20メートル。目算でそれを測った俺は飛び出そうとした。その瞬間。左の視界にある地面に砂埃がたった。それと同時に青いスパークがとほばしる。それと同時に力が抜けたかのように敵が膝から崩れ落ちた。

 

「ッ.......スタン弾.......」

 

「麻痺薬みたいなものか.......?」

 

そう聞くと隣で伏せている少女はコクンと頷く。そこから約15秒。黒いローブを着たアバターが出てきた。その顔には.......

 

 

「骸骨.......の仮面?」

 

「ザザか.......」

 

その黒ローブの男はわざわざハンドガンに持ち替えて空中に浮かぶ中継用のカメラに向かって口を開いた。その声はどす黒い物のように耳に残る声だった。

 

「これが死銃の力だ!!!」

 

はっきりと聞こえた。

 

 

パンっと乾いた軽い音と共に弾丸が吐き出され、胸へと吸い込まれて行った。

 

「相手の勝ちね。」

 

いや、そうじゃない。何故かわかった。そしてそれはその通りになった。勢いよく起き上がり、銃口を相手に向けて引き金に指をかける男。だがそれを見て尚、動かないザザ。2人の間にテロップが出る。

 

《回線切れ。》

 

有り得ない。全くもって有り得ない。大会という大事な時に不安定な回線を使っているゲーマーが何処にいるだろうか。あまりにも不可解だった。

 

「なっ?!.......」

 

「偶然としては出来すぎだ.......」

 

回線切れが起こって当然だ。とでも言うような行動。その前のセリフ。あの銃にわざわざ持ち替えた意味。ザザ、。SAOサバイバー。

 

「考えろ.......かんがえろ.......」

 

....まず、多分重要なのは銃を持ち替えた点だな。あそこでスナイパーライフル頭にドカッとやれば1発で相手をダウンさせられてた。

どうしてもハンドガンじゃないとダメだった?

 

いや、そもそもスタン弾なんて高効果のアイテムが安いはずがない。そんな高い金を払ってまでする目的ってなんだ?ハンドガンってあんな音か?あんな乾いた音、運動会のピストルの合図でしか聞いた事が.......

 

「いや...それだ。」

 

ピースが繋がった。答え合わせは.......

 

「ハキ!あいつ、逃げるわ。撃つ。」

 

「っ、待て。.......」

 

思考を中止する。シノンの功をあせる声が聞こえたからだ。だが相手は腐ってもラフコフ。予測線がなかろうとも躱すだろう。その実力がなければとっくに討伐されているはずだ。

 

「ふぅ........」

 

「..なんでとめたの?」

 

当然の疑問だ。一般的に見ればさっきのは好機以外の何者でもなかっただろう。背中をスナイパーに向けていて、なおかつ、風は自分たちの後ろから吹いている。だが足りない。だからこそハキはこう答える。

 

「通じないから。」

 

「ッ....私の狙撃が「そういうことじゃない。」」

 

「言い方が悪かった。訂正するよ。SAOサバイバーには不意打ちは通じない。」

 

そう。普段、見張りを立てるとはいえ野外で野宿をする時、誰かが寄ってきたことを敏感に察知しなければいけない。まだ回路結晶が出てこない頃、ランカーたちの寝泊まりは野宿が多かった。安全地域で休むのはもちろんだが多くははまだ路上で寝るという危険性を理解していなかった、というのが理由。だが安全地域とてモンスターの声はする。怖いという気持ちもあり、外ではゆっくりと休めないのだ。だからといって宿を取るにしても最初の頃には、宿代は痛手。お金が全て無くなるほどだ。

 

「経験の質が違う.......命のやり取りを2年間続けてきたんだ。俺らは.......」

 

「.......ッ、スキャンが来る。」

 

シノンは素早く端末を取りだし、ハキは見張りに戻る。もう連携が取れつつあった。元々の相性が良かったのかもしれないが自分の役目がわかっているその動きにシノンは少し眉を動かした。

 

最初に抱いたのは違和感だ。そこから疑念になり、最終的に不可解へと変わっていった。

 

「「黒マントがいない?!」」

 

スキャンに映らなかったことにシノンは驚きハキと同じ方向を見る。姿がないのを確認したハキは立ち上がろうとするシノンを押さえつける。

 

「待て!」

 

ハキは並外れた情報処理で規則的な自然音の中から歩く不自然な音を聞き分けていた。まだ近くにいると察していたのだ。

 

「まだいる.......」

 

「いないわよ!あそこに遮蔽物はない。隠れる場所もないの!」

 

「ッ.......いなくなった.......姿が消えた.......透明化?」

 

事前に集めた情報ではそういう効果のものはボスクラスのモンスターしか使わないと言う結論に至った。特異なアイテムがある?その可能性は捨てきれないだろう。しかしその情報がなかった。VRMMOで、トップを張る情報屋2人の収集能力を持ってしても把握できないアイテム。さすがに動揺した。

 

「なん、でッ.......こっちに大量によってきてる。敵が.......」

 

消えかかっている赤い点を見ながらつぶやくシノン。ざっと見るに20は居る。それを見て下した決断は....

 

「移動するぞ.......」

 

逃げの一択だった。

 

 

________________________________________________

 

 

 

「ちっ....数が多い!」

 

「なんでこんなに.......」

 

シノンは自前のサブマシンガンで応戦。俺も片手ハンドガンで片手ナイフで戦っていた。早々に引いた為に囲まれるのは阻止できたが数が多く、シノンとハキは反撃しながらの逃走の最中であった。

 

「やっぱりライトセーバーより虚白の方が使いやすい。」

 

ーたりめぇだ。それより、後ろ来てるぞー

 

後ろを振り向くと次々と切り伏せる俺に危機感を覚えたのか必死の形相で銃口を向けてくる姿があった。それも3人

 

「やべっ」

 

そういったのもつかの間。その敵の真横からぶっとい弾道を描きながら飛来する弾に3人とも撃ち抜かれていた。

 

「にゃははっ!アルゴ様のお通りだゾ!!!」

 

「その割には何もしてないんだが?!」

 

飛び込んできた2人の姿をみた瞬間ハキは余裕の笑みを浮かべる。

 

「遅せぇよ!!!」

 

「これでも走ってきたんだ。文句言うな!」

 

銃弾を軽々しくライトセーバーで弾きながらそう返答してくる。一見、男子は俺だけ。敵さんからはハーレム男が女子に助けられているように見えるだろう。つまり.......

 

「あいつぶっ殺すッ」「爆発爆発爆発」「爆ぜろ、我が(かいな)の中で.......」「美少女さんにんだとぉぉ?!?!」

 

ヘイトが集まりに集まりまくっていた。そこで俺はいい事を思いついたのだ。

 

「はっはっは!!!お姉ちゃん!やっておしまい!!!」

 

「はぁ?!.......あんた.......調子乗るんじゃ「後でコーヒー1杯」はぁ.......」

 

呆れたようなため息を出してからスナイパーライフルを構える。

 

「はっはっ!!次に、我が親友よ!君に前衛を託そう!!」

 

「俺は普通なのかよ?!」

 

え?普通じゃ嫌だった?じゃあ....

 

「オトコの娘?」

 

「間違っちゃないけど!!でもなんか釈然としない!!」

 

注文多いな。そんなこと言うならトッピングつけませんよ?オムレツにケチャップで『オトコの娘』って書くオプショントッピング。

 

「まぁいい!!!そして最後に!我が愛しの嫁よ!やっておしまぁぁあああああい!!!!!」

 

「に"ゃぁあ?!ちょ、ちょっと放送のやつ飛んでるんだゾ?!そんな大きい声出したら.......」

 

「事実だから問題ないのだァ!!!」

 

ゲーム中の全ての非リアプレイヤーを敵に回した瞬間だった。

 

「ぶっ殺すッ!」「殺殺殺殺殺殺」「我が腕の中で殺す慈悲もいらないわ!!ぶっ殺してやる!」「くそがああああああああぁぁぁ」

 

さらに怒りによって敵が強化されました。なんかシステム的にありえないけど背後に修羅が見える.......え?あれ俺ら勝てる?いや、勝つ!か、勝つし?!か、勝てるし?!

 

「あ、足ガクガクでもか、勝てるし?ビ、ビビッチャネェカラな?」

 

足ガクガクの歯ガタガタの剣ブレブレでお送り致しまぁす。

 

ーービビんな....よし、ならやる気出る言葉を俺が送ってやろう.......これ、勝たなかったらアルゴに情けない秘密全てばらす。

 

「おうおう、化け物さんめ.......かまって欲しいのかい?いいだろう。遊んでやるよ.......」

 

ーーキャラ変わりすぎだろ.......そんなに嫌なのか?今更何を知っても嫌いになんてならないと思うけどな?あのアルゴだぜ?ーー

 

うるせぇー!そんな問題じゃないんですぅ!!これは俺の尊厳の問題なんですぅ!

 

そんな言葉を心の中で言いながら体は自動的に動いていた。

 

使うことがなかった自分のライトセーバーをキリトに投げ渡す。二刀流の完成だ。これで鬼に金棒。猫に小判。俺は背水の陣.......ん?なんか余分なのあるって?気にしない気にしない。

 

「さてやりますか。右頼むよ。キリト」

 

「ッ.......たりめぇだ!!!うぉぉぉぉおおおお!!!!!」

 

10人は残っているだろうか?相手もチーミングだ。こっちが不利に見えているだろう。でも相手が悪かった。

 

「アルゴ?キリトに変なことされなかった?心配してるフリして変なところ触られたり.......」

 

「え?あ〜.......心は触られたかナ.......?」

 

「よし。相手さんがた。俺ともチーミング組もうぜ?そいつ強いだろ?俺がぶっ殺してやらァァああああああああぁぁぁ」

 

「ちょ、は、ハーくん?!」

 

血涙を流しながらそんな叫びをあげる。虚白を持ち直し、サブマシンガンをブッパするその姿は二つの意味で鬼であった。

 

「え?!ハ、ハキ?!」

 

相手のチーミング勢は驚きで攻撃が止まっている。苛烈にハキが攻めたて、キリトは防ぐ。

 

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス.......コロコロコロコロ....」

 

「怖っ?!」

 

キリトが脅えた。ハキが暴走した。シノンは困惑している。アルゴは頭を抱えた。

 

「うがぁぁああああ!!!!」

 

戦いの余波で周りの敵が次々に切り刻まれていく。ついにはそこには四人しかたっていなかった。

 

後に観客はハキのことをこう呼んだ。

 

 

愛の混沌者(ラブカオス)』と

 

そしてこの大会を見ていたプレイヤーからはしばらく『女を女に取られた男』という同情の目線に晒されることはまだ知る由もなかった。




見てくれてありがとうございます。次話がいつになるかわかりません。もしかしたらふと題名を見ると.......『凍結』の字があるかも.......そうならないために精一杯頑張って行きます。


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23話 ザザの手口

何かと早く書き上げれたので投稿。久しぶりに書くとやっぱり筆が乗りますね。


本編どうぞ


「なんだぁ!言ってくれればよかったのに.......」

「お前が早とちりしたんだろ?!」

 

この味方は自分自身だけのはずの大会。何とここには4人のチーミングがいます。大会外ではだいぶ叩かれているでしょう。しかし....

 

「いや、ライトセーバー返せよ」

「どうせ使わないだろう?俺に使わせてくれよ。」

「何おう?!シノン直伝!グレネード人間ランチャー!」

「お、おい、ポケットに何入れ....どわぁ!!」

 

ハキはキリトのポケットにピンを抜いたグレネードを入れてキリトを持ち上げ投げる。

 

ドカァン.......

 

「さ、さすがシノン....なんて凶悪な技を.......」

「はぁ?!それは私じゃない....とは言えないわね....」

 

よろよろと帰ってきたすすだらけのキリトが発した言葉を否定しようとした。だが、先程ハキにしたことを思い出したのか急激に勢いは減速し、釈然としなさそうにしながらも否定を辞めた。

 

「うっ、うっ....」

「お、おい?キリト?あの、配信のやつ飛んでるんですが?.......あの....」

「うっ.......ハキに穢された.......」

 

うぉぉぉい?!?!やりやがったぞこいつ。ゲーム中の男、全てを敵に回す発言を!被害者は俺!おのれぇ.......キリト.......恐るべし!

 

「アハハ....ハーくん、これからどうするんダ?」

「.....トリックが解けたんだ。ザザ....いや、ザザたちが行っている悪事がね。」

 

そう自信満々にドヤ顔をしながらアルゴに言うと呆れた顔でこちらを見てきた。

 

決着の時は近い。

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

 

あれから俺たちは元の計画通りのチームになり、別れた。

 

「アルゴ....お前、このままリタイヤ.......」

「するわけないダロ?第1トリックが割れたんだから危険がないことぐらいわかル。」

「いや、でも.......」

 

なおも食い下がる。どうしてもまだ確信が持てない。こればっかりは情報の裏取りができていないため仕方ないだろう。もしも違っていたら。あの画像の銃弾が本当に人を殺すのならば。そう考えただけで背筋が凍る。

 

「はぁ.......ハキ。私はあなたを信じてる。ハキの情報分析能力の高さは近くで見てきた私がいちばんよくわかってるんだから。」

「....わかった。ならもう言わない。」

 

ゲーム内ということもあり、本来の口調に戻しつつも名前はプレイヤーネーム。少しカッコつかないなとアルゴも思ったのだろう。少し眉が下がっていた。

 

「ねぇ、ハキ。君は言ったよね?SAO、最後の攻略の時に。もう二度と大切な人を失いたくないって。」

「....ああ」

「その大切な人の中に私が入ってるのは嬉しいけど、それは私も同じ。大切な人を失いたくない。大切な人が危険な所に行くのを黙って見てるのはあのときで終わりにしたんだ。」

 

見透かされている。俺にまだ迷いがあるのを。アルゴの意見を第一に考えるばかりにその迷いを押し殺していることを。なんて健気だろうか。

なんて思いやりのある人だろうか?ここまで相手を考えれる人などそう多くはないだろう。

そのうえで自分の意見をしっかりと言葉にしている。

 

「はぁ.......アルゴは俺にはもったいない女性だよ.......」

「にししっ.......ダロ?でもそんなオイラはハーくんと一緒にいたいのサ」

 

かなわない。そう何度思ったことか。アルゴの心の内はわかるつもりだった。だけどこんなことが毎回起こる度に思い直すのだ。理解しているのではなく理解されているのだと。

だから俺は彼女が好きなのだ。

 

最初は一目惚れという理由もない『好き』だったかもしれない。だが今となってはその一目惚れは間違いではなかった。正解かは分からない。でも最適解だったとは思う。

 

だってこんなにもアルゴ....朋のことを愛しているのだから。

 

 

「....気を引き締めるぞ」

「りょーかい、ハーくん」

 

隣にいるだけで頑張れる。隣にいてくれるだけで勇気が出る。きっとそんな関係が.......

 

 

 

ロマン溢れる恋になるのだ。

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

「.......次のスキャンが来るゾ」

 

双眼鏡から目を離して端末を取り出す。画面を見ると近くに赤い点が1個ともう1つ。ひとつはアルゴだとして自分は表示されない。つまり....

 

「なっ?!」

 

どこからか驚いた声がした。

 

しまった....同じところにハイドしてたのか。今の今まで気づかなかったのは相手の隠密のスキルも高いからか?

 

そんな思考も一瞬。

 

「チッ!!!....」

 

すぐさま赤い予測線が視界に出てくる。これが近接戦。銃で相手がまともに撃ってくる近接戦は2度目のハキ。初戦闘以外、速攻でねじふせてきたが故の弊害だった。このゲームでの経験が足りない。

 

あくまで天才《虎白》の指導の元、訓練した凡才なのだ。キリトのような適応能力を持っている訳でもない。飛び抜けたセンスや技術がある訳でもない。

 

それ故に

 

反応が遅れた。脇腹に1発貰ってしまった。次弾からは剣で弾くことが出来たがラスボスが残っている状態でHPが削れるのはまずい。

 

ーー腕!肩!次は右足ッ!ーー

 

脳内に響いてくる虚白の指示の元動く。そのサポートがあったおかげか、ワンマガジン、数発受けただけでとどまる。

 

「クソっ.......ッらぁぁあ!」

「チッ....」

 

虚白を投げる。それに驚いた敵はリロード仕掛けていたマガジンを離して回避を行う。

 

「へぇ....お前、サバイバーだな」

「....だったらなんだ?お情けってか?」

 

俺の剣を投げる攻撃。あれはSAOではタブーだった。元々ある装備枠のメインウェポンを捨てるなど愚策も愚策だ。ソードスキルも使えなくなる上に完全に自分が無防備になるからだ。ピック如きで武器を持っている相手やモンスターを相手取るなどあのデスゲームでは誰もしなかった。

 

だがハキは違う。

最初からソードスキルなどに頼ってはいなかったハキは相手を切るためだけに自力で戦ってきたのだ。攻撃力バフはかからない。むしろ悪手なのにも関わらずどうしてそこまでソードスキルを使わなかったのか。

 

それは培ってきた自分の剣技が錆びるからだ。

 

決められた剣筋を辿るだけの剣で何が出来る。やがて壁にぶつかる。ありえない。本当の剣とは自由自在なものでは無いのか?決められたレールなどない。

 

水のように不確定に斬る。それが虚白の極意だ。

 

フォトンソードは展開にラグがあるッ!

そう思考したのは一瞬だった。相手がフォトンソードを取り出したが故の思考だったがハキは迷わずビーム部分が出てくるであろう場所に向かって剣を振り下ろす。

 

「なッ?!」

 

結果、相手の腕が切れた。展開は間に合わずガードは出来ずにその先にある腕を切り落とされた。部位欠損。そのバットステータスは重い。特に剣を振れる利き手という点が痛いだろう。

 

「チッ.......」

 

腰に手を伸ばすが呆気なくハキが心臓部分を貫いた。後ろで見ていたアルゴも当然と言う表情だ。

 

「経験が浅いな。でも強くなるよ。俺なんかよりも....」

 

SAOのランカーの1人であったハキがそう言った。アルゴは否定したかったが空気を読んで口を噤み、私の前だからカッコつけたいのだろうと思考を読む。途端に愛おしく見えてくるのだからアルゴも相当だ。

 

「アルゴ、移動するぞ。」

 

「オーケーダ。ダーリン?」

 

先を行くハキの顔は見えないが耳が赤くなっているのを見ると照れているのが丸わかりだ。もう付き合い初めて結構経つのにも関わらずこういうところはウブなのは変わらない。

 

VRは感情表現が大袈裟だということに感謝しながらアルゴはあとを着いて行った。

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

「ハキが言ってたことは本当だったみたいだな。」

「そうね。」

 

暗い中、キリトとシノンの2人は腹ばいになりながらそうつぶやく。その姿はまるで美少女の同士がお喋りしているようだが騙されてはいけない。片方は男だ。

 

端末に送信されてくる電波は洞窟の中までは届かない。そんな簡単な知識が何故出回ってなかったのか。それは一重に試す人が居ないからだ。洞窟とはグレネードを投げ込まれれば瞬殺。良くて瀕死だ。そんな危険な賭けを大会で出来る人など居ない。

 

キリトが洞窟の外に出て端末を見てシノンがスコープで見張り。適切な配置だった。

 

「にしても、スティーブン....あと2人か.......一緒にいる点はハキとアルゴだな。」

「ええ。にしても確かに強敵だけどやけに神経質じゃないかしら?」

 

探りを入れてきた。キリトももう隠している必要は無いのではないかと思い始めてきている。このゲームに潜入してほぼ一緒に行動している彼女。否応も無くこの事件にもう巻き込まれていると言っていい。.......巻き込まれる?

 

そこまで思考を進めた瞬間、ある仮説が頭の中に浮かぶ。

 

「シノン!....あ、いや、すまん.......何か、何かハキは言ってなかったか意味がわからないことや気になったことでもいい」

 

シノンがビクッと反応したことで自分の声が思ったよりでかかったことを悟る。咄嗟に謝ってから質問を続けた。

 

「え?と、突然言われても....」

「些細なことでもいい!」

 

いきなり詰寄るキリトにシノンは少し身を引きながらもその必死さに考えざる負えない。それが功を奏した。

 

「....そういえば『偶然にしては出来すぎだ。』っていきなりつぶやいて考え込んでた....」

「いつだ?」

「ちょうど骸骨の仮面と戦ってる相手がハンドガンを1発打ち込まれたあと直ぐに回線切れになったんだけど.......」

 

それだ。そう思った。キリトの中でもパーツが揃ったのだ。

 

「シノン、大会の景品の住所打ち込んだよな?」

「え、ええ....まさか家を回って大会出場者のアミュスフィアの電源を切って回っているって言うの?それこそ無理よ。だってアバターを操作しながら侵入なんて......「1人ならな。」ッ.......」

 

シノンはチートを疑っていた。VRMMOにおいてその可能性は限りなく低かった。その原因としてリソースのかたよりがある。

本来、部屋一個分ほどの機器が必要なナーヴギア。それの小型化をするにあたって避けて通れなかったのが処理量の削減だった。

それのほとんどをサーバーに委ねることで脳波の信号を送るだけでよくなったのだ。

チートとはプログラムを書き換える行為。つまりサーバーを書き換えるということになり、それは不可能に近い。

 

だがそれをシノンとキリトが知るわけもない。

 

ではなぜキリトが答えにたどりつけたのか。それは一重に菊岡の情報だった。

 

「....心して聞いてくれ。ここまで俺らと関わっているシノンはもう他人では無い。」

 

説明が始まった。回線落ちした人が全員心臓が止まったことで死に至っているという事実、そしてその魔の手を選定してるのはあの大会の住所記入だと。

 

「そして多分やつの標的にシノン、君も入っている」

 

今、一人暮らしのシノンの部屋の中に誰かがいる。隣でずっと大会のモニターを見ながら。ただ淡々とその時を待ち続ける姿。それを想像した途端、表しようのない恐怖がシノンの体を駆け巡る。

 

「ぅぁ.......ひっ.......ぁあ.......うぁぁぁあああッ!「シノン!!」ッ!」

 

「アミュスフィアには脳波の異常を感知すると自動的にログアウトされる機能があるんだ!今戻ったらそれこそ危ない!」

 

見られた相手が逆上して反撃してくるかもしれない。いつもは気丈に振舞っている彼女。だが本物の死の恐怖の前ではこんなにも取り乱す。正真正銘、ただの少女だった。

 

守れる者が守る。これは必然だ。そして義務だ。綺麗事かもしれないが在り来りな言葉だけではこと足らない。そんな思考に背中を押され、気づけばシノンの頭を撫でていた。

 

「ぇ....」

「命のやり取りが怖いのはわかる。本物の殺し合いだ。いや、一方的な殺しだな。だが、それは俺らの領分だ。SAOで2年間も命のやり取りをしてきた俺らの。」

「....」

「シノン、自殺してロビーに戻っていてくれ。あとは俺らに任せろ。ロビーに行けばユキが居るだろう。その子に話しかけるといい。小さいが頼りになるぞ?」

 

そう優しく微笑む。その姿に正気に戻された。本来の彼女の性格が顔を出す。

 

下に見られていると。

 

保護される対象に見られていると。

 

それでいいのか?

 

そんな問いがシノンの心の中を流れる。先程までの自分を恥じる。みっともなくうずくまって、目の前の彼に縋って。まるでか弱い少女じゃないか?と。

 

だがそれは他ならない彼女自身が否定する。私はか弱くないと。殺しなんて怖くない。と。だってもうしてるじゃないか。人殺し(・・・)なんてと。

 

「ッ....行く。」

「え?」

「ついてく。じゃないと私は弱いって自分で証明することになる。それは嫌。」

 

自分の意見を自由に言ったのは初めてだった。それは彼を信用しているのか?それとも場の雰囲気に流されている?

だが、どっちにしろ悪い気分ではない。

 

怯えが消えてやる気の溢れるシノンの表情を見てキリトは説得を諦めた。あの表情は何度も見たことがあったからだ。

 

(....もう、止まらない....か。)

 

覚悟を決めた者の目。それは決まってみんなギラギラしている。やってやるぞと。そんな意思がむき出しになるのだ。

 

「....わかった。なら、シノンは後方のバックアップだ。近接戦は俺がやる。」

「へカートの弾が当たるわよ?」

 

先程のうろたえようはどこへ行ったのだろうか?片方の頬を釣り上げてこちらを煽ってくるシノン。それを見てキリトも覚悟を決める。

 

「ああ、望むところだ。全て斬り避けてやる。」

 

薬殺なんてさせない。そんな覚悟をキリトは再び固めるのであった。

 

 

 

________________________________________________

 

 

 

決戦の時。それは唐突だった。もう大会開始から1時間。参加者の集中力も切れて隙が出てくる頃だ。

その中で彼らは待っていた。洞窟の中でじっくりと。

 

「ッ....上....」

 

崖をくり抜いたような構造の洞窟。天井と崖上の厚みはそんなにない。だからこそだ。聞こえた。

 

「....2人.......」

「上ね。」

 

このままだと中距離から接近戦になるためへカートは使わずにサブマで応戦するためホルスターから抜く。キリトは両手に剣だ。

 

「ッ....目の前から敵影!」

 

シノンから小声の鋭い指示が聞こえる。正面を見ると黒装束の骸骨仮面だった。正真正銘、ハキが言っていたラフコフのザザ。

 

「ッ....チッ....シノン、応戦する!」

 

もう迷う必要はなかった。生き残っているのは5人。キリトとシノン。ハキとアルゴ。そしてスティーブン。決まりだった。

 

「ッはァァァアアアアアアアッ!」

 

キリトが切り込んだ。

 

 

________________________________________________

 

 

崖上。視界が広いこの位置はザザを探すのにはピッタリの位置取りだった。アルゴはVR適正が高い。視界は俺以上にクリアに見えているだろう。

 

「アルゴ....見えるか?」

「見えないナ。というか平和以外何も無いヨ。」

 

ここにとどまってからもう結構たった頃だろう。敵影がないことを見ると数は結構減ってきているらしい。

 

「さて....どうするか」

 

このまま待っているのも手だろう。しかし動かなければ次のスキャンで位置バレする。そうすると不利になるのはこっちだ。

 

「ッ...下?!.......」

 

気づいたのは偶然だった。金属と皮が擦れた時に起きる独特な音。それを聞き取ったのだ。多分下にいる敵がホルスターから銃を抜いたのだろう。

 

「........」

 

静かにその時を待つ。ここは崖。飛び込んでくるなら正面からしかない。後ろは気にしなくていい。

 

冷たい風が頬を垂れてきた汗に当たり肌が冷える。

 

「....」

 

その時は来た。下で動く音が聞こえた。そして次に聞こえた音は....

 

剣戟の音だった。



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