マクロスT (naomi)
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第1話 再会

「行っちゃうんだね」

二人の幼子は両親に連れられた1人の少女を見送っていた。

「うん。お父様とお母様が決めたことですもの」

「元気でね」

「お手紙いっぱい書くからね」

「二人とも、この子と仲良くしてくれてありがとうね」

「おじさんと、おばさんもお元気で」

「ありがとう」

「お父様、お母様二人にアレを挙げたいの」

「…いいんじゃないか」

「…」

少女はイヤリングを二人に渡す。

「…なにこれ」

「イヤリングって言いますの。私の家に伝わる【永遠の友情】の証ですわ」

「ありがとう。大切にするね」

「はい。二人とも本当にありがとう。私貴方達が大好きです」


ここは、地球から30光年離れた場所にある銀河系『流星銀河』この銀河系に移り住んだ人類は元来いた生命との融和が果たせず、宇宙をさ迷っていた。

 

「敵主力部隊を確認。バルキリー部隊発進急げ」

 

『流星銀河』を拠点とする新統合軍直属第133次長距離移民船団『サークル船団』旗艦『マクロス・スフィア』にはこの日も敵襲来のアラートが鳴り響いた。

 

「スフィア小隊発進準備OK全機発進する」

 

『マクロス・スフィア』専属のエリートバルキリー部隊『スフィア小隊』が隊長『コニー・マカロニ』大尉の号令のもと速やかに戦場へ飛んだ。

 

「今日は何体ブッ殺せるかな得体のしれない未確認生命体『テラー』」

 

「未確認生命体ねえ…」

 

「なんだガイア。なにか言いたげだな」

 

「ペドロ中尉。向こうからしたら俺達も未確認生命体なのかなっと」

 

「なに悟ったみたいなこと抜かしてんだ。撃ち落とすぞ」

 

「冗談でも止めてください」

 

「お前はあんまボーっと幼なじみのアイドルに見とれて撃ち落とされんなよ」

 

「なっ、そんなことないですよ」

 

「はっ、噂をすれば俺達のアイドルの登場だ」

 

『マクロス・スフィア』の機首の下に設営された特設ステージに1人の女性が現れる。

 

「私の歌よ皆に届けーーー」

 

明るくポップなメロディーが戦場に響き渡る。

 

「おー来た来たサークル船団のアイドル『雲間天(くもまそら)』今日も元気でノリの良い歌頼むぜ」

 

「雲間天のフォールドレセプターアクティブ。各VF-33『コスモス』の機体性能上昇を確認」

 

「よし。今日こそ得体のしれぬうじ虫どもを一網打尽にしろ」

 

『マクロス・スフィア』艦長『ガイル・シュバルサー』によって攻撃開始の合図が出され、一斉攻撃が始まった。

 

(天…お前は今、どこを見てるんだ)

 

ガイアの乗る『コスモス』は無駄の無い動きで次々と『テラー』を撃ち落とす。

 

「どうしたスフィア3。絶好調じゃねーか」

 

「スフィア2後方に敵」

 

「なに、おっとあぶねーサンキュースフィア3」

 

「スフィア小隊各機。敵の拠点らしき浮遊物を発見した。ターゲットをそちらに集中」

 

スフィア小隊がターゲットの浮遊物に近づく

 

(なんか生き物みたいな生々しさだなこれ)

 

攻撃を始めるスフィア小隊

 

(なんだよ…攻撃した場所から液体が出て来てるじゃないか、気持ち悪い)

 

「なかなかしぶといな…よしここは一発デカいのを…」

 

突然止まるペドロの『コスモス』

 

「スフィア2どうした応答しろスフィア2」

 

「誰か…この『歌』を止めてくれ」

 

「歌。雲間天の歌以外に歌など…」

 

ペドロの『コスモス』が周囲にいた味方機を撃ち落とす。

 

「なにしてるスフィア2。そいつらは味方だ」

 

「歌を…歌を止めてくれ。頭が脳ミソがかきみだされて、俺がオレじゃ…な・く・な」

 

機体が完全に止まる。

 

「スフィア2おい、スフィア2…スフィア2のバイタル停止だと」

 

「そんな中尉、ペドロ中尉」

 

「スフィア1よりマクロス・スフィアへ雲間天の歌を止めてくれ、こちらのパイロットが原因不明の症状で戦死した」

 

軽やかなメロディーは突如止まり静寂が流れる。

 

「歌…確かに別の歌が聞こえる…なんだ頭が」

 

「隊長どうしましたか隊長」

 

「ガイア…頭が割れるように痛いんだ、お前は無事なのか」

 

「はい」

 

「発信源を探れこのままでは敵の返り討ちにあう」

 

「了解」

 

ガイアは急ぎバルキリーを飛ばす。不思議なことにガイアの腕は、まるで歌い手のもとへ導くかのように自然と動いた。

 

(この歌声…俺は知っているのか。身体が勝手に動いて…なんで涙が)

 

気がつくとバルキリーは浮遊物の真正面に立っていた。腕のバルカンで浮遊物に穴を開けると歌が止まった。

 

(…人影)

 

モニターをアップすると1人の女性が怯えていた。

 

「…メーアなのか」

 

それは【もう1人の幼なじみ】との再会であった。



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第2話 刹那のひととき

「メーア…メーア・シーリング」

 

その女性は、恐る恐るガイアを見る。少しして彼女の記憶から彼の存在が呼び覚まされた。

 

「ガイアくん…ガイア・ウッドロードくんなの」

 

「そうだよ、幼い頃君と一緒によく遊んだガイア・ウッドロードだ。どうして君がこんなところに」

 

「…お仕事でここに来てたんだけど、外の戦闘に巻き込まれてしまったの」

 

「こんなところで仕事…今はどうしてるのあれから、おじさんやおばさんは元気」

 

「父も、母も…死にました」

 

「そっか…ゴメンよ」

 

「いえ、知らなくて当然ですわ気になさらないで、ガイアくんは…夢叶えたんだ」

 

「うん。あぁ『サークル船団』旗艦『マクロス・スフィア』所属バルキリー部隊『スフィア小隊』のパイロットだ」

 

「『サークル船団』…私達が暮らしていた『トロメア船団』はどうしましたの」

 

「『トロメア船団』は…無くなったよ」

 

「そんな…どうしてですの」

 

「『ヴァールシンドローム』が船団内で流行して統治機能が麻痺。新統合政府から解散宣言が発令されて、跡形もなく消滅したよ」

 

「『ヴァールシンドローム』って突然感染者が暴徒化する奇病ですわよね、なぜそんな物が」

 

「ブリージガル球状星団から来た人がウイルスを知らない内に持ち込んで、耐性の無い人に感染して爆発的に拡がったって聞いたよ、『トロメア船団』を脱出出来たのは感染しなかった僅かな人でそれ以外は皆…」

 

「そうでしたの…天さんは、天さんは無事ですの」

 

「天も『サークル船団』にいるよ。今や『サークル船団』の希望のアイドルとして有名人だ」

 

「そうですの…お元気なのでしたら良かったですわ」

 

「…スフィア3、スフィア3応答しろ」

 

ガイアの無線には隊長からの声が鳴り響いていた。

 

「こちらスフィア3。船内で民間人と思われる女性を保護。これより救助します」

 

「急げ、マクロス・スフィアはその未確認浮遊物の大量破壊兵器による完全破壊を決めた」

 

「なっ、了解です…メーア一緒に来て。もうすぐこの物体に総攻撃が行われる。このままここにいたら危ない」

 

「ガイアくん、ありがとう。貴方は行って、私はこの中にいる人々を置いて行けません」

 

「なに言ってるんだ。この中に君以外の人なんて…」

 

「いますのよ。ガイアくん、統合政府はやはり隠蔽していたのですね」

 

「どういうこと…」

 

「ガイアくん。貴方が未確認生命体として呼んでいる『テラー』は…」

 

そこへ強大な爆風が二人を襲う。吹き飛ばされる二人の身体

 

ガイアは自分の『コスモス』がオートで駆けつけバルキリーに乗り込む。

 

「メーア」

 

コックピットから手を伸ばすガイア。

 

「…変わらず貴方は優しいのね。大丈夫。貴方が私を忘れない限り、また会えますわ」

 

「メーア、ダメだ、メーア」

 

爆風の中にメーアの身体は消え去った。

 

「メーアーーー」

 

ガイアの無念の叫びが真っ暗な空に響き渡った。



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第3話 折れた翼

ガイアがメーアと再会を果たした戦闘から三月が過ぎた。ガイアは車内で手にペンと手帳を持っていた。

 

「この後はPM3時に歌謡番組スフィアミュージックで収録。5時にエリア31でスフィア宣伝大使として広報活動。6時に歌謡番組銀河ライブラリーの生放送にTVスフィアからTV出演。9時に『サークル船団』の責任者である、モーガン大統領との会食が予定されています…どうされましたか」

 

「…」

 

「あの、天さん…」

 

「うるっさいわね。聞いてたわよ」

 

「どうされましたか」

 

「あのね、あんた私を殺す気。何回言ったら改善される訳、こんな殺人スケジュールの日々。スケジュール調整はマネージャーのあんたの仕事なんだからしっかりやってよね」

 

「すみません」

 

「ったく。軍をやめて無職になったって聞いたから昔のよしみでマネージャーで雇ったけど。あなた空を飛ぶこと以外何にも出来ない訳」

 

「すみません」

 

「…ごめん。言い過ぎた」

 

「いや、そんなことないですよ。天さんの仰るとおりです」

 

「…あと、私が頭にキテるのはあなたがいつまで経ってもあかの他人のような態度だからよ」

 

「えっ」

 

「幼い頃から一緒にいる仲でしょうが。立場なんてどうでもいいわ。…今まで通りに話しかけなさい馬鹿」

 

(天…)

 

仕事場に到着し車を降りる天

 

「9時の会食キャンセルしときなさい」

 

「いや、でもそれは…」

 

「いいからしておきなさい。代わりに別の場所で二人でレストランの予約をすること、いいわね」

 

「えっ、ちょっと天」

 

天は足早に仕事場に向かって行った。

 

「ったく」

 

 

 

大統領との会食を予定していた時間。二人は街中の小さなレストランにいた。

 

「…ねえ、もうちょっと場所なかったの。仮にも私この船団のトップスターよ」

 

「仕方ないだろ。急なことで、マスコミよけとか考慮すると限られた場所しかなかったんだから。じゃあごゆっくり」

 

レストランを離れようとするガイアの袖を掴む天。

 

「ちょっと、どこ行くのよ」

 

「天。これから会食なんだろ」

 

「何言ってるの、あなたとよ」

 

「えっ」

 

目の前には沢山の料理が並ぶ

 

「なあ、頼み過ぎじゃないか」

 

「これくらい大丈夫よ」

 

「いや、手持ちが」

 

「そんなの経費で落としなさいよ」

 

「大統領との会食をドタキャンしてそんなこと出来るか」

 

「じゃああなた持ちね」

 

「マジかよ…なんだよクスクスと」

 

「ようやくあなたのいつもの表情が見れた」

 

「そうか」

 

「ねえ。あなたが責任を感じることはないんじゃない」

 

「…いや、無理やりでも連れ出していればきっとメーアは」

 

「元気だった。メーア」

 

「あの頃と変わらずおしとやかだけど綺麗になってたよ」

 

「そう…」

 

「どうかした」

 

「別に」

 

天はふいに顔を逸らした

 

「天、ありがとう」

 

「なによ突然」

 

「時間を作ってくれて、久しぶりに天と過ごせてあの頃思い出せて元気出た」

 

「そう。あんまりウジウジされちゃこっちも困るからね、明日から頼むわよマネージャー」

 

「了解」

 

ガイアに微笑みが戻ったその時

 

「なに、この揺れ」

 

「尋常じゃないなこの揺れ」

 

突如鳴り響く大きな爆発音

 

「天伏せろ」

 

ガイアが天を押し身体の上に覆い被さる。すると辺りのガラスが凄まじい勢いで砕けた。

 

「なんなのよ、もう」

 

そばのテレビが情報番組に切り替わっていた。

 

「非常事態宣言発令。『サークル船団』は現在未知の敵の奇襲を受け敵の突破を許しました、市民の皆さんは速やかにお近くのシェルターへ避難してください」

 

パニックに陥った人々が右往左往している。二人は人々を押し退け近くのシェルターを探した。

 

「未知の敵って、『テラー』じゃないの」

 

「『テラー』じゃないから、未知なる敵なんだろ」

 

「ねえ、あれってバルキリー」

 

天が見上げた空を見ると、そこでは激しいドッグファイトが繰り広げられていた、

 

 

 

 



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第4話 彼女の正体

「なんで船団内でバルキリーが飛び回ってるんだ、マクロス・スフィアは何やってんだよ」

 

次々に落とされていくマクロス・スフィアのバルキリー

 

(相手はYF-29『デュランダル』に形状が似ている…しかし『デュランダル』は対バジュラ用決戦バルキリーで生産は数機しかされてないはず。なのに…量産化されているのか)

 

「ちょっとガイア。空を見てボーッとしてないでよ」

 

「いたいた、二人とも早く乗れ」

 

事務所の先輩マネージャー相沢さんが車を飛ばし俺達を見つけた。

 

(このままじゃ、サークル船団は…)

 

二人とも車を目指し走る。そこでガイアの目に1機のバルキリーが目に入った。ガイア足が止まる。

 

「どうしたガイア、はやく乗れ」

 

「…行きなさいガイア」

 

(天…)

 

「なに言ってるんだ天ちゃん」

 

「貴方がこの船団を、私達を守りなさい」

 

「…わかった。ありがとう天」

 

「おいよいよい、ガイア」

 

「相沢さん大丈夫よ、彼は元マクロス・スフィア直属のバルキリー部隊『スフィア小隊』のバルキリーパイロットなんだから」

 

「へぇ」

 

(パイロットは既に絶命…外傷は無いな不時着か、ってことは…よしこいつ動く)

 

ガイアはバルキリーで再び空を羽ばたいた。

 

(ありがとう天。俺はお前から元気をもらってばかりだな。…VF-31『カイロス』か、『コスモス』と比較すると見劣りするがやるしかない)

 

戦場に割って入るガイア。バルキリーの入り乱れた空を一直線に突き抜けた。

 

ブランクを感じさせない冷静な飛び方が『デュランダル』のターゲットを彼に移した。

 

3機に囲まれるガイア。

 

(歌…天)

 

集中砲火をまるで読んでいたかのように華麗にかわす。そしてピンポイントで砲撃し一発で3機を航行不能に追い込んだ

 

「やるな、そこのパイロット」

 

久しぶりの上官の声

 

「お久しぶりです。コニー隊長」

 

「お前…ガイアか」

 

「戦況はどうなってますか」

 

「所属不明の部隊の急襲で新統合軍のサークル船団守備隊は壊滅状態だ、マクロス・スフィアも奮闘しているがこのままじゃ…」

 

「相手はバルキリーですよね、ってことは」

 

「あぁ、『テラー』ではない…まただ、またこの『歌』だ」

 

「『歌』…」

 

「この綺麗に澄んだ『歌』があのバルキリー部隊に力を与えて、俺達はマインドコントロールにかけられる」

 

「マインドコントロールって…」

 

「あぁ、ペドロをやったのもこの『歌』がもつマインドコントロールが原因だとわかった」

 

「隊長。ということは敵って…」

 

「新統合軍直属第133次長距離移民船団『サークル船団』に告ぐ」

 

突然サークル船団のビジョンに見知らぬ男が写しだされる。

 

「私は、元来『流星銀河』に住む『テラー人』の国家『オリオン銀河皇国』宰相『アドミス・モレロ』、我々はこの『流星銀河』を脅かす新統合政府に対して現時点を持って正式に宣戦布告する」

 

突然のことに、パニックに陥るサークル船団の人々

 

「どういうことだ、この銀河に国家を建国出来るような知性を持つ生命はいないんじゃないのか」

 

「それに見てあの人のなり…私達人類と全く変わらないわ」

 

「どういうことなんだ、政府はどう説明するつもりだ」

 

船団に住む人々は不安からか荒々しい口調で新統合政府を糾弾する。動揺は新統合軍の兵士とて同様であった。

 

「どういうことだよ…俺達は今まで未確認生物と戦ってたんじゃないのかよ」

 

「いや、人の姿をした化け物かもしれないあいつは」

 

「隊長」

 

「…まずいな、完全に指揮系統が崩れている」

 

「サークル船団の人々よ安心したまえ、我々の敵は新統合政府であり私達『オリオン銀河皇国』はあなた方を救済しに来たのだ」

 

「あいつ何言ってるんだ」

 

「我らの歌姫の歌声があなた方の魂を必ずや救済してくれます」

 

(歌姫だと…あの歌声はまさか)

 

「さぁ我々『オリオン銀河皇国』の第一皇女『メーア・オリンポス』皇女殿下の歌を」

 

そこに写しだされた救えなかったはずの歌姫。その歌声はガイアの第二の故郷を破滅へと導いた。



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第5話 足枷

『オリオン銀河皇国』により『サークル船団』を奪われた『マクロス・スフィア』

 

生き残った『サークル船団』の人々の居住艦としての役割も担い。『流星銀河』を放浪としていた。

 

「マクロス・スフィアに所属していたバルキリー部隊は、俺を除き全滅。サークル船団もオリオン銀河皇国の皇女『メーア・オリンポス』の『歌』によるマインドコントロールによってオリオン銀河皇国の支配下となりました。現有戦力はこの艦と俺あとは、『元』バルキリーパイロットが1名です」

 

「ご苦労、コニー大尉…で元パイロットというのが君かねガイア・ウッドロード君」

 

「お久しぶりです。ガイル・シュバルサー艦長」

 

「挨拶いい。ここに呼び出した意味わかるな」

 

「考えさせてください」

 

「お前この状態が解って…」

 

「勿論ですコニー隊長。俺の力が役に立つのなら、俺はその力になりたいです。ですが復隊をする気はありません、俺は新統合軍の兵士としては、戦いたくありません」

 

「…ただの一般市民にバルキリーを託すことは出来ないな」

 

「艦長。そんなこと言ってる場合じゃ…」

 

「大事なことだぜコニー隊長。民間人を強引に徴兵するのは軍規違反だ。俺達軍人は、本来法を遵守しその中で職務に殉じていなければならないんだ」

 

「…」

 

「…こんな状況が状況だ。こちらとしては早い復帰を待っているぞ、ガイア『元』小尉」

 

「…失礼します」

 

ガイアが司令室を出るとそこで待ち構えていた天に壁へ叩きつけられた。

 

「あんた、それだけのパイロットの腕をして戦わないってどういうつもり」

 

「天。俺はメーアを殺せない」

 

「殺すって、何言ってるのよ」

 

「メーアは今、俺達にとって絶対にどうにかしなきゃいけない標的だ。新統合軍はまず排除しようと考えるだろう。そうしてマクロス・スフィアに命令が出た場合。俺は従えない」

 

「どうするつもりなの」

 

「彼女を説得する」

 

「どうやって、そんなこと出来る保証あるの」

 

「…ない」

 

「冗談じゃない。貴方の個人的な感情で折角奴らの魔の手から逃れた人々が犠牲になるのよ」

 

「じゃあ、お前はメーアがこのまま死ぬことになってもいいっていうのかよ」

 

「あの子は私達を裏切ったの。どうなろうと知らないわ」

 

「天…お前本気で言ってるのか」

 

「…故郷を失うあの悲しみを、あそこで住んでる人達に味わって欲しくないのよ。私は」

 

「あの…お取り込み中悪いんだけど、いいか」

 

恐る恐る相沢が、二人に話しかけた。

 

「なんですか、相沢さん空気読んでください」

 

「手厳しな天ちゃん。話は聞かせてもらったよ、成る程なあの皇女さんは二人の知り合いで。そのせいでガイアの復隊の足枷になっていると」

 

「相沢先輩。何が言いたいんですか」

 

「おいおいガイア。そんなドギツイ目を向けるな。…実はな悩みを解決出来る糸口を提案出来るかもしれないんだ」

 

二人の苦悩を解決する糸口を、まさかの男が提案した。



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第6話 女神がいた星

艦長からの許可を得てマクロス・スフィアを離れたガイアは、相沢と共にある場所へ向かっていた。

 

「相沢さんが『星間企業体 ケイオス』の元社員だったとは知りませんでした」

 

「まあ、俺が誰かに話したことは無かったし在籍したのは1年半だから、向こうの記録にもあまり残ってないんじゃないか。恐らく事務所の社長くらいしか知らないと思う」

 

「…でどこに向かうのよ」

 

「…なんで付いてきたんだ。天」

 

「興味があるからよ」

 

「『ケイオス』ってあちこちの銀河に拠点を持つ一大企業だけど、お前が興味を持つような事業なんて」

 

「『戦術音楽ユニット ワルキューレ』。彼女達をプロデュースした企業よ」

 

「『ワルキューレ』…。バールシンドロームの鎮静化に多大な貢献をしたって言うあのアイドルグループか」

 

「そうよ。そして私の予想が正しければ、行き先は」

 

「天ちゃんご明察。『惑星 ラグナ』だ」

 

「やっぱり。『ワルキューレ』の拠点だった『ラグナ』ね。これは私が更に魅力的なアイドルになるのに間違いなく役に立つわ」

 

(ケイオスか…ここに、俺の進むべき道のヒントが)

 

ラグナの宇宙港に到着した3人を、1人の女性が出迎えた。

 

「初めて、ケイオス・ラグナ支部で芸能部門マネジメントリーダーをしています。『カナメ・バッカニア』です。貴方の案内をさせて頂きます。よろしくね」

 

「お久しぶりです。カナメ先生」

 

「本当に相沢くんなのね。元気にしてた」

 

「お二人は知り合いなんですか」

 

「カナメ先生は、俺が芸能部門に入社した時から一人前になるまで指導してくれた方だ」

 

「懐かしいわね。相沢くん優秀なんだけど、どこか抜けてて指導が大変だったわ」

 

「先生その話しは蒸し返さないでください」

 

「ゴメンゴメン」

 

「お逢い出来て光栄です。カナメ・バッカニアさん」

 

「貴女が雲間天さんね、活躍はよく耳にしてるわ」

 

(カナメさんって有名人なんですか)

 

(カナメ先生は『ワルキューレ』の初代リーダーだった方だ)

 

「この人がワルキューレの初代リーダー」

 

思わず声を張り上げたガイア。周囲の人が反応し押し寄せてくる。

 

「カナメさん。サインください」

 

「私も」

 

1人1人に丁寧に応対するカナメ。

 

「ガイアのせいでだいぶ時間押しちゃったじゃない」

 

「すみません」

 

「気にしないで…」

 

「カナメ先生どうかしましたか」

 

「有り難いなって。私がワルキューレで活動していたのはもう30年くらい前なのに、今でもこうして私のことを覚えていてくれるファンの人達がいるのって、私は幸せ者だわ」

 

「カナメさん…」

 

(この容姿で年齢は50代なんだぜカナメ先生は)

 

(そうなんですか…)

 

「相沢くん。なにか言った」

 

「いえ。なにも」

 

「そう…。まあいいわ、案内するのでついてきてください」

 

ラグナの町をカナメに案内されながら、目的地にたどり着いた3人。

 

「えっと、ガイア・ウッドロードくんは」

 

「俺です」

 

「ちょっと待っててね、担当の人を呼んでくるから。雲間さんと相沢くんは私についてきて」

 

「じゃあガイア。健闘を祈っているよ」

 

3人は奥の方へ進んで行った。

 

(俺の担当どんな人なんだろう。関係者ってことはやはり軍事部門の人なのかな…)

 

「貴方が、ガイア・ウッドロードさんですか」

 

「はい」

 

そこには、紫の髪をした地球人とゼントラーディー人のハーフの女性が立っていた。



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第7話 決意のとき

「貴方がガイア・ウッドロードさんですね」

 

ガイアの前に地球人とゼントラーディー人のハーフの女性が現れた。

 

「私はケイオス・ラグナ支部 バルキリーパイロット育成教官『ミラージュ・ファリーナ・ジーナス』です。よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします。ミラージュさん」

 

「事前に貴方の経歴を調べさせて頂きました。ガイア・ウッドロード。元新統合軍所属艦マクロス・スフィア直属のバルキリー小隊『スフィア小隊』小尉26歳。20歳の時に新統合軍の長距離移民船団『サークル船団』の第31バルキリー分隊に入隊。数々の功績を挙げ22歳の時にサークル船団防衛軍バルキリー特務部隊『インフィニティー』に転属。そこでの実績を買われ、昨年から『スフィア小隊』に所属。しかし、3ヶ月前に一身上の理由により、『スフィア小隊』だけで無く新統合軍から除隊。現在はマクロス・スフィアの歌姫『雲間天』のマネージャー…ですか」

 

「アポイントを取って3日間でここまで」

 

「ケイオスならこれくらい当然です。ところで、貴方は私と共に行動する理由をご存じですか」

 

「バルキリーパイロットなんですよね。ミラージュさん」

 

「えぇ、今は戦場よりも教官としての職務が大半ですが」

 

「俺をテストして頂けませんか」

 

「…わかっているようですね。ついて来てください」

 

辿り着いたのはバルキリーのドックだった。

 

「30分後にテストを開始します。貴方にはあちらのVF-1を用意していますので機体をチェックしテストに向けて万全に調整しておいてください」

 

「わかりました」

 

ミラージュは呼ばれその場を離れた。

 

(VF-1か、学生の頃の訓練以来だな。成る程、機体性能は最新鋭機に近い状態にアップデートされているのか)

 

「ウッドロードさん。準備はよろしいですか」

 

「いつでも行けます」

 

「では始めましょう」

 

一斉に飛び立つVF-1達

 

(何機飛んでいるんだ)

 

「今、飛んでいるのはラグナ支部の訓練生総勢20名です。貴方が最低限達成するべき目標は貴方が最後の1人になること、訓練生とはいえじきにラグナ支部のバルキリー部隊を背負う将来期待の有望株達です。油断されないことをオススメします」

 

「ご忠告。ありがとうございます」

 

ラグナの空へ飛び立つガイア。一斉に後続からロックオンされる。

 

「コイツら、全員俺狙いか」

 

「彼等には貴方を撃ち落とした者に卒業時に最新鋭のバルキリーを受領出来るよう手配すると発破をかけています」

 

「…リップサービス感謝します」

 

ラグナの空を入り乱れるバルキリー達。天はその様子をモニターで観ていた。

 

(ガイア…)

 

「雲間さん。貴女も時間よ」

 

レッスン着に着替えた天を待ち構えるカナメ。彼女も自らに課せられた試練に挑もうとしていた。

 

(流石に、6年間順調なステップを踏んでいるだけありますね。訓練生達では相手になりそうにありません…)

 

「これで、最後だ」

 

約2時間の空中戦を制したガイア。

 

(これで…ロックオンされた)

 

急速に接近する1機のVF-1

 

(こいつ、巻けない。さっきまでの訓練生とは違うぞ)

 

「流石ですね。ガイアさん、今度は私の相手をしてください」

 

「その声…ミラージュさん」

 

「見せてください。貴方の力を」

 

一進一退の攻防を繰り広げる2機。

 

(基本に忠実な飛び方なのに、ターゲット出来ない)

 

「どうしましたか、最前線の力は今はこの程度なのですか」

 

「なにを…」

 

「貴方は何故再び空を飛ぶことを選んだのですか」

 

「えっ」

 

「闇雲に戦場に出ても死ぬだけです。貴方を再び空に突き動かしたモノはなんですか」

 

「俺は…俺は」

 

(♪~♪)

 

(歌…この声は天)

 

 

 

(わー。あれがバルキリーですの)

 

(そうだ。僕達の空を守る翼だ)

 

(カッコいい…)

 

(…大きくなったら僕が二人をバルキリーに乗せて挙げるよ)

 

(本当ですの楽しみにしていますわ)

 

(うん。待ってる。早く乗せてね)

 

 

「俺は…二人との『約束』を果たす為に戦う」

 

(雲間さんとウッドロードくんのフォールドレセプターの同調を確認。そっか、この二人は…)

 

「迷いを振り切ったようですね」

 

ミラージュのバルキリーが背後を取る。

 

「もらった」

 

ロックオンの瞬間。ガイアのバルキリーは急上昇し機体を反転させる。ミラージュが目追うがガイアのバルキリーが日の光と重なり、思わず目を反らす。その隙にガイアのバルキリーの攻撃が命中した。

 

(この戦法は…私もまだまだですね)

 

「よし」

 

「テスト終了です。お疲れ様でした…貴方が飛ぶことを選んだ時のことは思い出せたようですね」

 

「はい。ありがとうございます。ミラージュさん」

 

「その時の想いを忘れないでください。その時の想いが貴方の進む道を導いてくれるはずです、さあ手続きをしましょう此方へ」

 

ミラージュから案内されて始めた手続きを終えた頃には日が沈んでいた。

 

「お疲れ様。合格したみたいね」

 

「天。そっちは」

 

「なんとかパスしたわ」

 

「そうか。ありがとうな、またお前の歌に救われたよ」

 

「そう…。どんなテストだったの」

 

「自分が空を飛ぼうと思った時のことを思い出す為の総勢22機のドックファイト。思い出したよ『あの時の約束』」

 

「約束…」

 

「そっちは」

 

「私も似たようなものね、何故。歌手を目指したのかを思い出すためのレッスンだった」

 

「天が歌手を目指したきっかけ…そういえば聞いたことなかったな。何でなんだ」

 

「それは…その…」

 

「二人とも大変だ」

 

相沢が慌て二人の前に走ってきた。

 

「相沢さん。どうしたんですか」

 

「マクロス・スフィアがオリオン銀河皇国に見つかった」

 

サークル船団最後の要に危機が迫っていた。



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第8話 選んだ道

「レーダーに反応。オリオン銀河皇国のバルキリー部隊です」

 

「遂に見つかったか、コニー大尉に発進準備を急がせろ」

 

マクロス・スフィアはガイア達が惑星ラグナに出発してから二月あらゆる手段を使いオリオン銀河皇国から姿を隠していたが、遂に見つかった。

 

「お前ら、志願してくれてありがとう。いいかバルキリーの乗り方を教えただけだ。お前達はただマクロス・スフィアの周囲を飛び回って数を誤魔化してくれればいい。ひたすら飛んで逃げ回れ。いいな」

 

「はい」

 

マクロス・スフィアからバルキリーが4機出撃する。

 

(志願兵募って囮として使う…我ながら最低な作戦だ)

 

 

「マリス様。マクロス・スフィアからバルキリーの出撃を確認、4機です」

 

「各機散開。常にスリーマンセル…最低限でもツーマンセルで各バルキリーを追い込み撃破だ。その後敵艦をやる」

 

「了解」

 

(くそ挟み撃ちか、これではあいつらの援護に行けない)

 

数々の戦場を潜り抜けてきたコニーだが3対1の状況では自分を守ることで精一杯であった。

 

(このバルキリー。反撃する気はないのか…)

 

「マリス様。戦列を離れてどちらへ」

 

「私は敵艦をやる。お前達でそのバルキリーを仕留めろ」

 

「ですが…」

 

「そのくらいの相手ならお前達でも充分やれると判断した。どうだ」

 

「やってやります。マリス様の期待にお応えしてみせます」

 

「よく言った。あとは頼む」

 

「敵バルキリー1機。急速に本艦に接近」

 

「全砲門を集中し撃ち落とせ」

 

(まさかもう悟られたのか)

 

(このままではマクロス・スフィアが)

 

敵に囲まれ身動きのとれないコニー。

 

「隊長助けてください。隊長」

 

「スフィア3落ちつけ、振り切れ」

 

コニーの目の前で爆散するバルキリー。

 

「ちくしょう、よくもナイルを」

 

「スフィア1やめろ。攻撃するな」

 

「このこのこの…かっ囲まれた。うゎー」

 

「スフィア1ー。…ちくしょうがスフィア2いいか、絶対に手を出すなひたすら逃げまわれ」

 

「でも隊長。燃料が残り僅かです」

 

「なんだと」(実戦経験のない素人がいきなり戦場を飛んでるんだ。必要以上に燃料を使ってしまったか)

 

「スフィア2。マクロス・スフィアの付近にある岩陰に身を隠せ」

 

「そんなことしたら全機隊長に」

 

「死にたくねーなら黙って従え。バカヤロー」

 

あさっての方向に飛ぶスフィア2。敵前逃亡と判断した追ってのバルキリー達は標的をコニーに変えた。

 

(総勢11機…遂に俺も終いかな)

 

コニーを追っていたバルキリーが2機撃ち落とされる。

 

「なんだ」

 

「どこから」

 

(コードVF-31ジークフリート…まさか)

 

「こちらケイオス・ラグナ支部所属。ミラージュ・ファリーナ・ジーナス。マクロス・スフィアからの救援要請を受け援護に来ました」

 

「こちら、新統合軍直属第133次長距離移民船団サークル船団旗艦マクロス・スフィア所属スフィア小隊隊長コニー・マカロニ大尉。援護感謝する。あいにくなんだが旗艦であるマクロス・スフィアが敵バルキリーに標的にされているそちらの援護に向かってくれ」

 

「大丈夫です。そちらは彼らが向かいました」

 

「彼ら…」

 

「艦長。ピンポイントバリアダメージ甚大これ以上は持ちません」

 

「総員。衝撃に備えよ」

 

(9時方向から攻撃…)

 

マリスはマクロス・スフィアから距離をとり攻撃を交わす。

 

「急速に接近するバルキリーが1機。本艦所属ではありませんがパイロットシグナルに該当者…」

 

「帰ってきたか」

 

「こちらケイオス所属ガイア・ウッドロード。旗艦を援護する」

 

「それが。貴様の見い出した答えか」

 

「俺は新統合軍はもう信用出来ません。これからの出来事は自分で考え、自分で決めます。そして自分は今マクロス・スフィアとの専属契約を交わしたいと思います」

 

「ふん青二才が…。契約期間はオリオン銀河皇国との紛争が終結するまで。どうだ」

 

「交渉成立。これより正式にマクロス・スフィアの所属機として援護する。あと1機輸送船の保護を要請する」

 

「好きにしろ」

 

「ありがとうございます。艦長」

 

敵バルキリーに向かい飛び立つガイアのVF-31カイロス

 

(VF-31カイロス…確か星間企業体ケイオスに配備されていたバルキリー)

 

ガイアとマリスのドックファイトが始まる。

 

「こいつ、動きを読んでいるのか全然当たる気がしない」

 

(悪くはないが、俺の予測の範囲内で対処出来るか…マクロス・スフィアから歌だと。まさか)

 

「この声は…彼女も帰ってきたか」

 

(さぁ、見せてあげなさい。貴女の歌に対する想いを)

 

マクロス・スフィアに設営されているステージにあの歌姫が戻ってきた。

 

「私の歌よ…皆に…届けーーー」

 

雲間天によるライブ。艦内のモニターにも映し出され、絶望の淵に立たされていたマクロス・スフィアに残された人々は、自然と笑みが溢れ始めた。

 

(機体性能が雲間天の歌で向上してるがこれは…この前と比べると段違いだ。この機体ポテンシャルなら切り抜けれる)

 

(VF-33コスモスは『歌の力』をバルキリーに引き立たせるために予め機体内部に『メロディーコア』と呼ばれる装置が内蔵されているから機体性能向上はわかる。しかしVF-31ジークフリートやカイロスが開発された頃は『メロディーコア』は内蔵されていないはず。しかも機体性能の向上の仕方がVF-33コスモス以上だと…)

 

「あのジークフリートは特別仕様なのです。ガイル艦長」

 

「貴女は」

 

「雲間天の専属マネージャーに着任しました。ケイオス芸能部門のカナメ・バッカニアです」

 

「カナメさん…特別仕様とは」

 

「あの機体はVF-31ジークフリートW及びカイロスW。今の最新鋭機に合わせ改良した機体です。『メロディーコア』内蔵は勿論のこと、かつて歌姫達と共に戦ったとある小隊の記録をもとにケイオスラグナ支部が独自開発した『歌の力を最大限反映』出来る機体となります」

 

「ラグナ支部独自開発…確かにそのようなバルキリーも開発出来そうですな」

 

(この歌に吊られてか、このバルキリーの動きが格段とよくなった)

 

「マリス様。敵機体が急に反抗を我が部隊の半数が撃墜されました」

 

「そうか…撤退だ」

 

「撤退ですか」

 

「恐らく敵は皇女殿下のような『歌に力を込められる』人間を手にしている」

 

「この嫌悪感のする歌声はやつらの…」

 

「左様。しかし我々は今皇女殿下のお力をお借り出来ない。このままでは機体性能に圧倒され壊滅も時間の問題だ。無意味に血を流す必要は無い。退くぞ態勢を立て直す」

 

「敵バルキリー部隊の撤退を確認」

 

「なんとか…生き残ったか、助かりましたカナメさん」

 

「いえ。それでですねガイル艦長。ガイアくん同様、私カナメ・バッカニア及びもう1人ミラージュ・ファリーナ・ジーナスもオリオン銀河皇国との紛争の間お手伝いさせて頂けませんか」

 

「それはそれは大歓迎です。是非我々にをお貸しください」

 

「では、よろしくお願い致します」

 

こうしてマクロス・スフィアはケイオスから戦力を補充することに成功した。

 



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第9話 帰還した先

「これはマリス殿。お早いご帰還で」

 

マクロス・スフィア強襲に失敗したマリスのバルキリー部隊はオリオン銀河皇国軍宇宙強襲艦『モネラ』に帰還した。

 

「…作戦は失敗した。次の行動に移る」

 

オリオン銀河皇国軍宇宙強襲艦『モネラ』艦長『モルドレッド・ファイナンス』は不敵な笑みでマリスに詰め寄った。

 

「オリオン銀河皇国国王親衛隊である『ペガサス騎士団』騎士長『マリス・ルクセンブルク』殿にしては些か芳しくない結果ですな」

 

「…」

 

「態々本国からお越し頂いて。指揮権までマリス殿にお渡しして差し上げたのに、もう少し自ら立案された作戦について検討のし直しをされてはいかがですか」

 

「ご安心をモルドレッド殿。舟一隻2月かけて見つけられなかった貴殿の部隊の能力と我々の驕りを鑑み、既に修正し立案しております。次の作戦では一定の成果をお見せしましょう」

 

「うぬぬ…」

 

「では失礼」

 

何食わぬ顔で立ち去るマリスの背中にモルドレッド苛立ち持っていた扇子をへし折るのであった。

 

「全くあの髭オヤジ。自らの失態を棚に上げてマリス様に嫌味を言うなど」

 

「そういうなキャロル。我々が作戦に失敗したのは事実。批判を受けるのはやむ終えないことだ」

 

「ですか…」

 

「ここのパイロット連中に次の作戦のミーティングを3時間後に行うことを伝えてきてくれ、私は定時報告に行ってくる」

 

「わかりました」

 

自室に戻り、モニターをつけるマリス。

 

「ご無沙汰しております。メーア様」

 

「マリス。お勤めご苦労様です、上手く進んでいますか」

 

「対象の敵艦は発見しましたが、撃墜とはいきませんでした。詳細は後程報告が上がるはずです」

 

「そうなのですね、あの依頼していた件はどうでしたか」

 

「まだ、確認出来ておりません」

 

「そうですか…すみません私事で」

 

「私のここでの目的はメーア様の願いを果たす為です。気にされないでください」

 

「ありがとう。マリス」

 

「メーア様。その通信は兄上ですか」

 

後ろから粋のいい若者が顔を覗かせる。

 

「…クリス。務めはしっかり果たしているのだろうな」

 

「勿論だぜ兄上。兄上の代わりにメーア様の身辺警護はしっかり務めているよ」

 

「ならばいい、気を緩めるなよ。ではメーア様。失礼致します」

 

「はい。マリス貴方のお早い帰還を待っております」

 

「最善を尽くします」

 

モニターを切り、長い髪を結いマリスは自室を後にした。

 

 

その頃。マクロス・スフィアではガイアが初めてマクロス・スフィアに乗る二人に艦内の案内をしていた。

 

「お二人もマクロス級に乗られたことあるんですよね」

 

「えぇ。どこか懐かしさを感じるわ」

 

「ここがドックになります。隊長お二人をお連れしましたよ」

 

「初めまして、カナメさん。ミラージュさん。マクロス・スフィアのバルキリー部隊スフィア小隊隊長コニー・マカロニ大尉です」

 

「よろしくお願いします」

 

「いやぁー。伝説のアイドル『ワルキューレ』の初代リーダーとそれを守護したΔ(デルタ)小隊のパイロットにまさかこのような形で御会い出来るとは、特にミラージュさんにはスフィア小隊に参加して頂けるということで、感謝しております」

 

「実戦を離れて暫く経つのでお役に立てるかはわかりませんが、よろしくお願い致します。ところで他のスフィア小隊のパイロットはどちらに」

 

「…。ケイオス所属として復隊したガイアと私、最近志願してパイロットになった彼『ガナード・ロン』の3人です。他のパイロットはこれまでの戦いで皆…逝きました」

 

「そうでしたか…」

 

「ミラージュさんには是非。ガナードの指導をしてやって欲しいのです。ようやくバルキリーで飛べるようになった新人ですので、生き残る術をみっちり仕込んでやってください」

 

「わかりました。よろしくお願い致しますガナード…」

 

「俺は軍人じゃねぇ」

 

ガナードはガイアを睨み付けその場所を立ち去った。

 

「私。彼の気に障ることを」

 

「気にせんでください。こんな環境に置かれたんです。相当ストレスを抱えているのでしょう」

 

(むしろ、原因は俺か)

 

「じゃあ隊長。もう少し俺は二人を案内してきますね」

 

「わかった。では私はこれで失礼します」

 

コニーはバルキリーの調整に戻った。

 

「報告では聞いていたけど、想像以上な戦力不足ね」

 

「拠点であるサークル船団を奪われたので、補給もままならない状態です」

 

「…」

 

突然なるアラート

 

「敵…」

 

「スフィア小隊のパイロットは至急発進準備を整えてください」

 

「艦長。何事です」

 

「スフィア小隊は、たった今見つかった。サークル船団から脱出したと思われる輸送船の救助に向かってくれ」

 

漂流する一隻の舟。船内にいるのは…



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