蘭たんファンタジー (ジャムカ)
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美竹蘭 暗黒騎士になる

ある日の夜、あたしは夜遅くまで起きていた
Roseliaのドラム…巴の妹、あこからお勧めされた本を読んでいて日付が変わるまで読み耽っていた。

モカ達みんなはもう寝てるだろうし、あたしも寝ようとしてベッドの中に入って寝ていた。
だけど、あんな事になるなんて……



ー 上空 赤い翼 ー

 

 

赤い色をした飛空挺五隻が上空を移動している。その一隻に全身黒づくめの鎧を着込んでいる姿が見える。

 

 

「蘭隊長、間もなくバロンに着きます!」

 

 

軽装な鎧を着ていた兵士が蘭に話しかけたが

 

 

「………」

 

 

美竹蘭はそこにいた、しかし微動だにしない。

 

 

「……すぅ…Zzz…」

 

 

立ったまま蘭は寝ていた。

 

 

「おい!隊長寝てるぞ」

 

「ずっと任務続きだったんだ、仕方ないさ」

 

「この上、今回の任務ときたら……」

 

 

兵士達が話している、さっきまでの出来事を。

 

 

 

 

 

「(あれ…これは夢?)」

 

 

見知らぬ建物の中で、鎧姿の人物が無抵抗な人達を攻撃指令を出していた。そして動けなくなった。

 

 

「(何やら、酷い事をしてるような…?)」

 

光り輝く物体、【クリスタル】を台座から取るとそのまま出ていった。

 

 

「(え…?これあたしなの!?)」

 

 

 

 

 

兵士達の話が終わり、蘭は目が覚めた。

 

 

「我々【赤い翼】は誇り高き飛空挺団!か弱い者から略奪など」

 

 

「うわぁぁ!」

 

 

蘭は驚くしかなかった、突然の事に。そして自分が何者なのかもわからなかったからだ。

 

 

「大丈夫ですか隊長?随分うなされていたようですが…」

 

 

側にいた兵士が蘭を心配そうに聞いてきた。

 

 

「え?え?…何何?…これは、夢じゃない?」

 

 

ちゃんとあたしは自分の部屋で寝たよね?なのに何でこんな知らない場所にいるの?

 

 

「ここはどこなの!?あたしは一体何なの?」

 

 

訳わかんない!鎧とか着てるし何がどうなってるの!?

 

 

「た、隊長お気を確かに!高高度の飛行で酸素欠乏症にでもかかりましたか?」

 

 

違うよ!あたしは正常…だよ。

 

 

「敵襲!!」

 

 

船の先端にいた兵士がそう言ってきたけど敵襲って何!?

 

 

「総員、戦闘配備!!」

 

 

あたしの近くにいた兵士が指示すると、みんな散らばっていった。そして翼の生えた一つ目の怪物があたしに向かって襲いかかってきた!

 

 

「え、ちょ、まっ…!」

 

 

あたしは無意識に、手に持っていた赤色の牙みたいなのをその怪物に向かって投げていた。

 

 

「ギュピィァァァィィイ!!」

 

 

うまくその怪物に刺さり、光と共に炎がでて全身を燃やし尽くしていった。

 

 

「うわぁ!?」

 

 

あたしの側にいた兵士が怪物と接触して倒れていた。

 

 

「だ、大丈夫?」

 

 

あたしは倒れた人に近づいていった。

 

 

「隊長、ふたたびきます!」

 

 

今度は怪鳥?とても大きい鳥があたしに向かって来ていた。

 

 

「ひっ!」

 

 

すんでのところであたしは避けた、そして旋回してきたので腰にあった袋から青色の牙を取って鳥めがけて投げた。

 

 

「ピュウゥゥゥゥイイ!!」

 

 

またうまく鳥の体に刺さって、今度は頭上から雷が鳥に落ちてきていた。

 

 

その鳥は黒焦げとなって空から落ちていった。

 

 

「大丈夫、怪我はない?」

 

「平気であります!しかし流石は隊長ですね!」

 

「う、うん…」

 

 

怪物の襲撃を無事に撃退したのであった。

 

 

「間もなくバロン上空です!総員、着陸に備えよ」

 

 

「え、備えよって言ったってどうしろ…と?」

 

 

モカ、ひまり、巴、つぐみ、助けて…

 

 

「うわぁっ!?」

 

 

飛空挺が着陸した、蘭はその場で転んでしまっていた。

 

 

「隊長まだ寝ぼけていますのですか?それでよく魔物を倒せるとは…」

 

「我々の隊長は底知れん強さなんだ、気にしたらキリないぞ?」

 

「そうでありますね」

 

 

兵士達の話をよそに蘭は船から降りていった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

バロン王国

 

この世界で一番の軍事国家であり、最強船団【赤い翼】を所有していて、バロン王は世界に散らばるクリスタルを全て集めており、世界征服を企んでいる。

 

 

 

ーバロン城ー

 

中性ヨーロッパを彷彿とさせる石垣造りであり、城の回りには堀がある。城下町もあるけど今は寄っている暇はない。

 

 

 

「お待ちしておりました蘭様、王さまがお待ちです」

 

「……」

 

 

城に入ると、建物の中にいた人があたしが待っていたと言う。まるで最初から知り合いみたいに…

これってどういう事?あたしってまさか、だけど…誰かになっている話になっているの!?

 

だとしたらこの鎧とか腰に差してる剣とか…

 

 

「おやおや~お困りのようですな~?」

 

 

その間の抜けた声はまさか…!?

 

 

「モカ!!」

 

「モカちゃんですよ~」

 

 

そこにいたのは…青い槍を持っていて、竜の形をしていた青い鎧を着ていた青葉モカ本人であった。あたしは思わずモカに抱きついていた。

 

 

「およ?およよ~~?蘭、どうしたの~?もしかしてモカちゃんが恋しかった~?」

 

「違うよ馬鹿っ!あたしだけが…こんな訳のわからない世界に放り込まれちゃったと思ったから…!!」

 

「……そうだね~、あたしも最初はそうだったから」

 

 

 

数分後…

 

 

「落ち着いた~?」

 

「うん、ありがと…モカ」

 

「ど~いたしまして~、あ!この城にはひーちゃんもいるから王様に報告が終わったら会いに行くといいよ~」

 

「ひまりがいるの!?巴とつぐみは?」

 

「ここにはいないみたいだね~、モカちゃんの他に麻弥先輩もいるみたいだから~」

 

「麻弥さんも?ふーん…とりあえずあたしはこれから王様に会ってくるから、待っててね」

 

 

ひまりだけじゃなくて麻弥さんもいたんだ…!

もう夢じゃないのかぁ?

 

 

「待って蘭~、モカちゃんも一緒にいくよ~」

 

「ありがと、助かるよ」

 

 

あたしとモカはバロン城の王様の間へと向かっていった。

 

 

 

「これはこれは蘭殿、待っておりましたよ。ささっ、王様がお待ちですから中へどうぞ」

 

 

一際飾りが目立つ鎧を着ていた人物があたし達を促してきた。

 

 

「蘭~、この人はこの城の近衛隊長さんでベイガンさんって人だよ~」

 

「ん、ありがと」

 

 

そういえばモカはいつからここに来たんだろうか?

 

 

ー バロン城 王の間 ー

 

 

「おお戻ったか蘭よ…」

 

 

髭蓄えたいかにも王様っぽい人があたしの名前を呼んでいた、どうして知っているんだろうと訪ねようとしたけど。

 

 

「蘭殿、クリスタルを渡してもらいましょうか」

 

「えっ?あ、えっと…これの事?」

 

 

あたしの腰にある袋から光輝く物体というか、大きいダイヤモンドみたいのをその人に見せた。

 

 

「ん、確かに水のクリスタルですね」

 

 

あたしからそれを奪うように取ると、そのまま王様の所へと向かっていった。

 

 

「あ、あのっ!」

 

「蘭!?」

 

 

モカが心配そうにあたしを見ている。

 

 

「何だっ!?」「何です!?」

 

 

王様と話していた人、ベイガンさんは凄く驚いていた。

 

 

「ちょっといいですか?あたしって何者なんですか?それにここは…クリスタルも、一体何なのです?」

 

 

クリスタルが何なのかわからないし。

 

 

「蘭よ…そなたはワシを疑っておるのか?」

 

「はい?」

 

 

疑う?どうゆう事なの?

 

 

「蘭、そなたには失望したぞ…今日より赤い翼の隊長の任を解く!そなたにはミストの村に行ってもらう。よいな?」

 

「えっ…?」

 

「ベイガン、あれを蘭に渡すのだ」

 

「蘭殿…これをミストの村に届けて貰いたいのです」

 

 

ベイガンさんから指輪を貰った。

 

 

「ちょっと待ってください!蘭はただ聞いただけで…」

 

「モカ…」

 

 

モカがめったに見ないような大きな声で王様に言った。

 

 

「むっ?モカよ、そなたも蘭と一緒に行くがよい。出立は明日の朝じゃ!」

 

「人の話を…!」

 

「蘭殿、モカ殿、話はもう終わりです。さっさと出てってください」

 

「くっ…!」

 

 

あたしとモカはつまみ出されるように部屋から出された。

 

 

「何なのあの人達は!…それにあたしはまだここの事を何も知らないし!」

 

「ここの事はモカちゃんが話すよ~」

 

 

 

 

モカは色々の事を話してくれた

まずあたしについて、あたしは暗黒騎士としてここバロンの飛空低団【赤い翼】の隊長だった。

そしてモカは竜騎士だと…それとこの世界では魔法という存在があるという事。あたしとモカは入れ替わり、転生しているとは違うらしく、元の人物と変わってるだけみたい。

 

 

だから元の人物の能力とかは引き継いでいるところもあるみたい。だからさっきの怪物に対応できたのかな?

 

 

「あたしが知ってるのはこれくらいかな~?」

 

 

モカが話終えてくれた。

 

 

「とりあえずそのミストの村ってのに行くしかなさそうだね~蘭。モカちゃんはまだ仕事が残ってるからこれで失礼するよ~、ひーちゃんは多分蘭の部屋で待ってるよ?そこの階段降りて少し進んだところに蘭の部屋があるみたいなんだって」

 

 

モカはそう言ってあたしと別れた。階段降りたらその先には。

 

 

「おや、美竹さんではないですか?」

 

「麻弥さん!?」

 

 

大和麻弥さんがそこにいた、って何で作業着?

 

 

「どもです、上から読んでも下から読んでも『やまとまや』ッス」

 

「いつからここに?それに…その格好は」

 

「いやー、それがいつからここにいるのかジブンにもよくわからないッス。でも何だかここの世界はジブンには性に合ってるかもなので、何せ自由に機械いじりが出来るので、フヘヘ…!」

 

「あ、そうですか…」

 

 

あたしは逃げるように麻弥さんと別れた、どうやらこの先にあるのがあたしの部屋みたいだ。

 

 

ー 蘭の部屋 ー

 

 

「だ、誰っ!?」

 

「ひまり…?」

 

 

部屋に入ると白いワンピースみたいのを着ていたひまりがいた。

 

 

「蘭…?らーーーーん!!」

 

 

ひまりは蘭に抱きついた。

 

 

「むぐっ…く、苦しい!」

 

「らーーん!らーーーん!らーーーん!…あ痛っ!!」

 

 

蘭が着ている鎧のトゲに刺さったみたいだ。

 

 

「蘭…よがづっだ…無事でぇ~~!!」

 

 

ひまりは痛いのか感動かわかんないけど凄く泣いていた。やめてよ、あたしまで泣いちゃうじゃん。

 

 

「わかったから、涙拭いてよ…」

 

「う"ん"……」

 

 

ひまりはワンピースの裾で涙を拭いたけど、何やってんの。それにその服、一部分だけ強調しすぎてない?

 

 

「ひまり、落ち着いた?」

 

「……うん、大丈夫だよ」

 

 

ここにモカいたら何言われるんだろうか?

 

 

「ひまり、あたし達ってさ…」

 

「それについては、モカと話したんだけどやっぱり私達ってこの世界に違和感なく住み着いているみたいなんだって。ちなみに私はここバロンの宮廷白魔導士なんだ、だから魔法を使えるよ」

 

 

やっぱり魔法ってのがあるんだ、モカも言ってたけど信じられなかったから。

 

 

「蘭に会えたし私は図書館でこの世界の事を調べてくるね、蘭は疲れたから休んでなよ」

 

「うん…ひまり、お願い」

 

 

ひまりが頼もしい…

 

 

「あ、待ってひまり!あたしとモカは明日の朝、ミストの村ってのに行かないといけないの、王様の命令で」

 

「明日行っちゃうの?…だったらミストの村についても調べておくね!」

 

 

ひまりは部屋から出ていった。あたしは疲れがどっときたから鎧を脱いでベッドで寝る事とした。

 

 

 

 

…………

 

 

 

はぁ~…本当に凄く疲れたよ。どうしてあたしが暗黒騎士なんて…もう色々と非現実すぎてさ…生きて元の世界に帰れるのか不安だよ。

 

 

「……蘭、まだ起きてる?」

 

 

モカが部屋にやってきた、ここって鍵ついてないの?

 

 

「…………」

 

「起きてるんだね、狸寝入りは通用しないよ~?」

 

「……何か用?」

 

 

暫くの間、沈黙が続いた。

 

 

「蘭、もしかして泣いてるの…?」

 

 

モカは少し小さく、か細い声で。

 

 

「……悪い?」

 

「大丈夫だよ蘭~、きっと何とかなるって~」

 

「……っ!」

 

 

あたしはベッドから起き上がりモカに言った。

 

 

「だって!こんな訳のわからない世界に何もかもが非現実なんだよ!?色々ありすぎて混乱するに決まってるじゃん!モカは平気なの!?」

 

 

まるで八つ当たりだ。

 

 

「大体根拠もないのに大丈夫とか…モカも麻弥さんも、今の状況わかってるの?」

 

「蘭、モカちゃんは…」

 

「どうしてモカはそんな簡単に受け入れてるの!?怖いとか思った事はないの?」

 

 

あたしは思った事を吐き出していた、泣きながら。

 

 

「あたしだって…怖かったよ!でもね、蘭が隊長やってるって聞いた時にはさ、とっても安心したんだよ?なのに…」

 

 

モカは部屋を出ようとした。

 

 

「だから蘭も!蘭もいつも通り、やろうよ…?」

 

「モカ…」

 

「……あたしのスキ、な蘭は…

 

「えっ…?」

 

 

モカは部屋を出ていった。

 

 

「……そう、だよね。モカの言う通り、あたしは…」

 

 

蘭は施錠をして眠りについた。

 

 

 

 

翌朝 バロン城門前

 

 

「………モカ」

 

「………蘭」

 

 

二人共準備は終えていていた。

 

 

「モカ、昨日はごめん…あたしはもう大丈夫だから」

 

「そっか…蘭は一夜でなんだね、そっか……」

 

 

一夜?どういう事なの?

 

 

「蘭、バロンを出たら魔物が出てくるから大丈夫~?」

 

「………自信ない」

 

「そこはモカちゃんが指導してあげようぞ~」

 

「お願い」

 

 

魔物って…あの時に出てきたヤツかな?

 

 

「それじゃ、そろそろ出発しよ~」

 

「うん、行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして

 

 

バロン国飛空挺団【赤い翼】の隊長であった美竹蘭は、その地位を剥奪されてしまっていた。

 

竜騎士の青葉モカと共に、ミストの村へと向かうのであった。

 

この指輪は何を意味するのかは、今の蘭には知る由もなかったのであった。

 

 

 

何故蘭達はこの世界にやってきたのか

他の皆はどうしているのか

 

 

そして、元の世界には戻れるのか?

 

 

 

 

 

クリスタルはただ静かに

 

その光を湛えていた

 

 

 



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