爆速追跡さよひなドライブ! (石動大空)
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キャラ設定(随時更新 現在三話まで)

〈今井リサ/仮面ライダードライブ〉

 

若くして仮面ライダーに選ばれた少女。

正義感が強く、いつも明るく周りへのフォローを欠かさない陽だまりのような性格。

歌で高みを目指そうとする幼馴染がいたが、自分は任務で忙しく、最近はあまり逢えていない。だが毎日欠かさずメールでやり取りをしている。

 

 

〈氷川紗夜/仮面ライダーマッハ〉

 

デイブレイクから一年後、仮面ライダーとなった少女。妹へのコンプレックスを抱えているが、そのことを心の中に隠している。練習であろうと妥協を許さず、自他共に厳しい性格に見えるが、根はとても優しく、思いやりがある。

仮面ライダーとなるために一年間地道に努力を重ねていた。

正確無比な射撃と鍛えられた動きによる接近戦でロイミュードを追い詰める。

 

 

〈氷川日菜〉

 

仮面ライダーのメカニック担当。よく奇抜なアイテムを開発する。お姉ちゃん大好きっ子。リサの使うドア銃やハンドル剣などを開発した天才少女。ネーミングは無茶振りされた紗夜がその場でつけた。ダサい。

姉をよく振り回す。ちなみにアイドルでは無い。

 

 

〈香澄/仮面ライダー1型〉

 

デイブレイク事件の時、市民を避難させた人工知能搭載人型ロボ、ヒューマギア。マッハドライバーの原型になったライダーシステムを作った。まあ日菜のアレンジで完成したドライバーはほぼ別物になっていたが。香澄もサイクロンライザーとロッキングホッパーゼツメライズキーを作り上げ、再びロイミュードが現れないかどうかを日夜見張っている。音楽を教えた少女がいる。

とある理由で自我に目覚めており、その立ち振る舞いは人間と変わらない。だが人前ではあまり感情を表に出さないようにしている。原作から見れば誰おまである。

 

 

その他キャラは随時更新。

 

〈シフトカー〉

 

現存するシフトカーはタイヤコウカン用のみ。全て日菜が管理している。

 

〈デイブレイク事件〉

 

大規模な爆破事故。大半のロイミュードはこの事件に巻き込まれて破壊された。回復役のメディックを始めとする幹部クラスもこの事件で破壊されている。ちなみに当時の紗夜達は高校二年生。一年経ったので、今の彼女達は高校三年生である。

 

〈マッハドライバー炎 シグナルバイク〉

 

香澄が作ろうとしていたライダーシステムをヒントに日菜が作り上げた。現在ドライバーは1機のみ。他のシグナルバイクは絶賛開発中。

マッハのメイン武器であるゼンリンシューターは日菜ちゃん曰く、「あたしの趣味だよ、いいでしょ?」だそうだ。

 

〈サイクロンライザー ロッキングホッパーゼツメライズキー〉

 

『悪意』に対抗するためにベルトさんと香澄が作り上げた。

キーのスロットホルダーは一つだけで、片方にはシフトカーのホルダーが取り付けられている。そこに各種チェイサーバイラルコアを装填し、重加速の影響を打ち消している。本人はロイミュードなため、バイラルコアがなくても問題はないはずだが…?

マッハとは一年の実戦経験の差があるため、強さは1型が上。

 

〈ゼツメライザー バイラルライズキー〉

 

『悪意』が生み出したロイミュードの強化デバイスとアイテム。バイラルライズキーにはスパイダー、コブラ、バットの三種類があり、すでにコアを破壊された進化体ロイミュードのデータ【バイラルモデル】が記録されている。

音声は進化体ロイミュードの名前。TYPEはCOBRA、BAT、SPIDER。

キーと同じタイプのロイミュードはゼツメライザーを用いてバイラルモデルからデータを引き出し、能力を使うことができる。だが使い続けると暴走したり、精神が何者かに乗っ取られたりする危険な代物である。

 

 



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一話  10月26日 始まりの雨音

まずはこの小説に興味を持ってくださったことに感謝を。
毎度毎度の拙い文章ですが、よろしくお願いします。
評価、感想、お気に入り登録が作者のエンジンをフルスロットルにします!


降り頻る大雨の中、『彼女』は商店街の路地裏で雨宿りをしていた。いつもなら折り畳み式の傘を常備している『彼女』だったが、今日は会社のカバンに入れ忘れてしまっていた。

 

風に煽られた雨は踊るように地面に落ちていく。斜め上から降る水滴はとても小さな屋根で防げるものではなかった。

『彼女』はズボンのポケットの中からスマホを引き抜いた。慣れた手つきでトークアプリを開き、『ーー』と記されたトークルームを開いた。

通話のボタンを押し、傘を持ってきてもらうことにした。

 

 

 

スマホのデジタル時計の日付は『202X年』を示していた。

 

 

◉ーーーーー

 

[12年前 10月26日]

 

普通の高校生、氷川紗夜は双子の妹、氷川日菜と共に仮面ライダードライブとなった今井リサの戦闘をサポート員。無辜の市民を機械生命体・ロイミュードから守るため、今日も人知れず戦っていた。……のだが

 

「リサちーを置いて逃げろって!?そんなこと出来るわけ無いじゃん!!」

 

ロイミュードが多く潜伏しているという情報を手に入れた彼女達はとある人工知能搭載人型ロボットの運用実験都市へと潜入していた。

ここには敵の本拠地があり、リサ達は3人の幹部の超進化ロイミュードに囲まれてしまっていた。

 

「コイツらを野放しには出来ない。それにほら、外を見てみて。開発区の工場の方から火が出てるでしょ。近くにいる生存者を集めて街から出て!…頭のいい日菜なら、わかるでしょ?」

 

「……ッ…けど!リサちーやベルトさんが居なくなったら、他のロイミュードを止められない!それに…!それに…………」

 

「日菜、今は私達にやれることをやりましょう…?今井さん、ここは任せました。私達は民間人の救助を!」

 

「……ぎぃっ……ぜったい…絶対絶対絶対の約束だから!!約束ッ!!!」

 

リサはいつものように微笑みながら、2人の走り去るところを見送った。

 

『これでよかったのかい?リサ』

 

ここまで共に戦い抜いてきたバディ、ベルトさんが問い掛ける。

 

「…うん。後のことを香澄や2人に任せちゃうこと以外に、悔いは無いよ……無いんだ」

 

『あの幼馴染みの少女は…「言わないでよ、ベルトさん。…エンジンが止まっちゃいそうになるから」…了解した』

 

「友との話は終わったか?」

 

「うん。悪いね、待たせて」

 

ロイミュードのリーダー格、ハートを始めとする幹部クラスの3人と対峙したリサは、ドライブドライバーのイグニッションキーを捻る。

 

「……地獄まで、ひとっ走り付き合ってもらうよッ!!」

『OK…!Start our engine!!』

 

〜〜〜

 

街から離れたところで、ヘッドギアと猫耳のような髪型が特徴的な少女が誰かと通信を取っていた。

 

「…街中の人間の生命反応、無し。ノイズが少しかかってるけど、多分みんな避難できました」

 

 

「私も今さっき、弟子を救助しました。今頃安全なところにいるかと……わかりました。今応援に……リサさん?リサさんっ!?」

 

 

通信越しに聞こえる爆音の正体は直ぐに彼女にも把握出来た。凄まじい規模の爆発が街の中心で起きたのだ。後の世にこの事故は【デイブレイク】と呼ばれることとなり、街一つが廃墟と化す大災害として世間に知れ渡ることとなる。

 

この事故で幹部クラスやその他ロイミュードのコアは砕かれ、生き残ったロイミュードもコアだけとなった。コアとなったロイミュードも、かなりのデータ損傷を被っていたので、復活までかなりの時間を要すると、人工知能は予測した。その期間、約一年。

 

◉ーーーーー

 

[デイブレイクから一年後]

 

氷川紗夜はあの日から鍛錬を続けていた。リサの代わりが務まるような仮面ライダーになれるように。元から努力することは好きな方だった紗夜は、雨の日であろうと風の日であろうと真面目に練習を重ね、みるみるうちに強くなっていった。

 

そんな中、氷川日菜は新型ドライバーとアイテムの開発を進めていた。

持ち前の天才的な発想力と閃きで新型ドライバーは完成間近に迫っていた……

 

 

〈視点 第三者→紗夜〉

 

走り込みの帰り道、私は行き付けのファストフード店へと足を運んでいた。

私の番号札が呼ばれ、アルバイトの店員から持ち帰りの袋が渡された。

二人分のポテトとハンバーガーとケチャップが入っていることを確認し、袋越しにじんわりと伝わる熱を感じながらファストフード店を出る。

外の冷たくなりつつある空気に頬を撫でられる。そろそろ手袋の季節かしら、などと考えていると、私のスマホのバイブがポケットで震えた。ロック画面を顔認証で突破し、トークアプリを起動する。

 

『完成した!』

『HIKAWA♪HINAが写真を送信しました』

『名付けてマッハドライバー炎!』

『早く帰ってきてー!今すぐ!!!』

 

『スタンプを送信しました』

 

私の自慢の双子の妹、氷川日菜。あの子から送られてきた写真には、見たことのない青いドライバーと小さな白いバイクが写っていた。

 

まるで、今井さんが変身するときに使っていたベルトのよう。

遂に完成させたのね。ロイミュードに対抗するもう1つのベルトを......

 

『了解』のスタンプを送信し、スマホを閉じる。私は家まで走ることにした。頑張った日菜には美味しいご飯が必要でしょうしね

 

ついに私が仮面ライダーとなる日が近いのかも知れない。そもそも、ロイミュードが復活しないことが一番なのだけれど。

 

〜〜〜

 

〈視点 ???〉

 

『目が覚めたようですね』

 

男とも女とも判別のつかない、ノイズの掛かった声が聞こえて来る。手足の感覚がある。どうやら復活出来たようだ。

 

『お前達を蘇らせたのは他でもありません。あの仮面ライダーの仲間を始末し、人類滅亡に貢献して見せなさい』

 

俺は弟を人間に殺された。お前に指図されなくても、人類なんざ滅亡させてやるよ……

 

〜〜〜

 

「ただい...」

「おかえりーーーっ!待ってたよーっっ!!」

 

自宅のドアを開けた途端、日菜が飛び込んできた。不測の事態ではあったが、咄嗟にタックル染みた抱擁をかわし、ポテト達の入った袋を守る。

 

「危ないじゃない!?」

「ごめんごめん!それより見てよおねーちゃん!!」

「落ち着いて。ゆっくり夕飯でも食べながら話しましょう?」

 

マッハドライバー炎。とある人工知能が作り上げていた理論を元に、日菜が作り上げていたドライバー。ドライブシステムとは異なる【ネクストシステム】を使ったライダーへと変身することが出来る、と要約すればこんなところでしょうか。実際の説明は日菜語で行われていたので。ポテトを摘んでいた日菜は、何かを閃いたのか、いきなり立ち上がってポーズを取り始めた。

 

「追跡!撲滅!いずれも~マッハ!仮面ライダ〜!マッ……ハ〜!!」

 

「何よそれ」

 

「何って、仮面ライダーマッハの決め台詞だよ!」

 

格好悪くは無いけれど、私の趣味じゃないわ……と、一蹴するのは流石に気が引けたので、適当に相槌をしておく。

 

「なかなかるんッ♪って来る決め台詞だと思ったのにな〜、仕方ない。じゃあもっとカッコいいのを……」

 

日菜がポーズを取っている間に、大皿に出しておいたポテトを数本一気に頬張る。私の頬がリスのように膨らんだ。

 

「あ゛ーッ!ズルい!!」

 

「フフ、早い者勝ちよ。でもあともう一袋……」

 

話を掻き消すようにピーピーピー!!!とけたたましいアラート音が鳴り響く。すると、当たりの時間の流れが遅くなってしまう。

 

「ッ!どんより!!」

「重加速現象...!」

 

腰にシフトカーが装着され、重加速現象から逃れる。日菜が開発したアプリ【どんよりGPS】で重加速の起きた中心を特定する。...そこに、ロイミュードがいる!

 

「...ッ、行きましょう、日菜ッ!」

「うんっ!絶対勝とうね!」

 

重加速の中心へと走り出す。...今は、私しかいないの...だから!止める!

 

 

ーーーーーーー

 

 

「出てこい仮面ライダードライブ!俺の弟の仇ィ!!」

 

商店街の近くで暴れ回っていたのは、いつか今井さんに倒された018の兄的な立場のロイミュード017。倒し損ねていたのね......

 

「おねーちゃん、アイツは確か銃使い...気をつけて!」

「......ええ、行ってくるわね」

 

 

 

私にとって、初めての戦い。...ロイミュードに対抗出来るドライバーは、このドライバーだけ。...決意を胸に、戦場に立つ。

 

「そこまでよ、ロイミュード」

 

「なんだァお前...?ただの人間が重加速の中で動いていられるだと?お前もドライブの仲間か?」

 

「質問は1つずつにしてください。...最も、悪に名乗る名前はありませんが」

 

戦いへの恐怖がないと言ったら嘘になる。でも、今井さんが命を張って守り抜いた日々を、平穏を、守れるとするならば、私は喜んで正義の味方になろう。

 

《マッハドライバー!》

《シグナルバイク!ライダー!》

 

シグナルバイクをマッハドライバーにセット。ド派手な待機音が止まった夜の町に鳴り響く。そして私は、あの言葉を口にする。今より強い私に、妹より優れた私に変身するあの台詞を。

 

「変身...!」

 

《マッハ!!》

 

変身音までド派手だった。これも製作者である日菜の趣味なのかしら?

 

「お前達を倒せるのはただ一人、わt」

 

「追跡!撲滅!いずれもマッハっ!仮面ライダー!!マッ...ハァっ!!」

 

「..日菜、ちょっと静かに!!」

 

ああもう!カッコつけようとなんてしなければよかったわ!!!

 

《ゼンリンシューター!》

 

敵が銃なら、こっちも銃。バイクの前輪を模した銃を呼び出す。さっき見たマニュアルの記憶を頼りに応戦する

 

「なってないなァッ!銃はこうやって使うんだぜェ!!」

 

「ぐぅっ...!」

 

「フン、ドライブの方が数倍強かったぜ?」

 

射撃のプロに、勝てるはずがないか......いや、今度は一か八か!!

 

「闇雲に突っ込んで来ても結果は同じだ!蜂の巣になりな!!」

 

一斉射撃...予想通り!!

 

《ズーット!マッハ!!》

 

加速して銃弾をかわす。懐に潜り込み、ゼンリンシューターで殴り付ける。

 

《ゼンリン!!》

「おおォッ!?」

 

後方に吹き飛ばされていくガンマンロイミュードを逃さず、更に加速を続ける。

 

「畳み掛けます!」

「調子に...乗るなッ!」

 

エネルギーを収束させたチャージショットがゼロ距離で直撃、今度は逆に私が飛ばされる羽目になってしまう。

 

「...そうだ、おねーちゃん!!こっち来て!!」

 

銃弾をかわしながら、物陰に隠れていた日菜の横に滑り込む。日菜から緑色のシグナルバイクを受け取り、ドライバーにセットする。

 

《シグナルバイク!シグナルコウカーン! マガール!!》

 

「.........集中。練習は本番のように、本番は練習のように.........」

 

弓道部の練習で精神統一は慣れている。大丈夫、私なら出来ると自分に言い聞かせ、トリガーを引くタイミングを見計らう。

 

「今ッ!」

 

《キュウニ!マガール!!》

 

「ぬぐォッ!?」

 

変則的に動く弾丸が見事にガンマンロイミュードに直撃。怯んだ隙にシグナルマッハに入れ替え、必殺技を発動させる。

 

《ヒッサツ!》

 

「はあぁぁぁぁぁッ!!!」

 

《フルスロットル!マッハ!!》

 

「ぬぐぁぁぁぁ!!!???」

 

ゼンリンシューターを投げ出し、持てる力全てを乗せたキックを繰り出す。ガードもロクに取れなかったガンマンロイミュードは爆発。ボディは壊れ、コアだけがふよふよと逃げようとする。

 

「逃さないもんね〜!」

 

日菜は017のコアにゼンリンシューターで止めを刺す。コアは爆散し、重加速も収まった。

 

 

バイザーを開いて余剰エネルギーを排出する。シグナルバイクを抜き取って変身を解除した。緊張と疲労で倒れそうになったところを、日菜が肩を貸してくれた。

 

「...勝て、たの...?」

「うん、うんっ!勝てたんだよ!ロイミュードに!初戦で!しかも上級!」

 

...実感もわかないし、さっきまで変身していたことも、まるで夢のよう。

それでも、倒した。誰かの日常を守れた。それが、堪らなく嬉しかった。

 

 

誰にも言ってはいないが、私は妹より劣っている。才能もなければ先程のように閃きもない。...しかし、努力だけは裏切らない。そう信じてここまでやってきたのだから。使いこなしてみせます。見ていてください、今井さん。

 




 決意を胸に、少女は夜を突き進む。


マッハ所持アイテム

・マッハドライバー炎
・ゼンリンシューター

・シグナルマッハ
・シグナルマガール


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二話 ワタシが保護者で仮面ライダー

こんにちは石動です。もうすぐモニカ実装ですね。楽しみで仕方がありません。

そんなモニカのメンバーが出る…かも知れない二話をどうぞ!


[12年前]

 

《スピ!スピ!スピード!》

 

「名乗る必要はない。これから倒す相手に」

 

降り頻る夜の雨が降らずに空中に留まっている。怪人ーーーロイミュードが引き起こす重加速と呼ばれる現象だ。そんな凍りつく時間の中、黒の戦士が一体のロイミュードと戦っていた。

 

戦士は拳を突き出す。限界を迎えたロイミュードのボディは消滅し、005のコアが宙を漂う。

 

「…やはり破壊までは至らない、か」

 

戦士は無感情な声色で呟くと、005の肉体を形成していたバットバイラルコアを拾い上げた。そのまま左腕のシフトブレスにバイラルコアを装填する。

 

「グローバルフリーズ…それがロイミュードの目的か。……何?」

 

データを収集していくうちに、驚くべき内容が戦士の脳に流れ込んだ。

 

「……人類、滅亡…?ヒューマギアによる聖戦…もっと調べる必要がある…」

 

時期に重加速も収まる。騒ぎになるのは控えておきたい。戦士は変身を解除し、素顔を露わにする。

コピー元の少女と同じ、猫耳のような髪型の少女が現れる。さっきまで苛烈なパンチを繰り出していた戦士と全く結びつかせない程可憐な容姿だった。

 

 

ーーーーー

 

 

黒い戦士、“ドライブ”の秘密基地はとある珈琲店の地下に存在していた。ここの存在はドライブのバディであるクリム・スタインベルトとドライブ本人、そして協力者である珈琲店の店長のみが知っている。

 

睡眠を必要としないドライブはデスクのパソコンに向かうと、パチパチとキーボードを操作し始めた。

ベルトに意識を写す前、クリム・スタインベルトは“飛電インテリジェンス”という企業で人工知能の研究をしていた。

その際に研究仲間であり親友の“蛮野天十郎”が人工知能に悪意を植え付け、出来上がったのが今のロイミュードである。

蛮野はロイミュードに反逆されて絶命。クリムも殺されかけたが、ベルトに意識を移して生き長らえている状態となった。

飛電インテリジェンスの社長はクリムの意識が移ったドライバーと、唯一悪意を植え付けられなかったロイミュードのプロトタイプの素体に目をつけた。それで生まれたのが今のドライブである。

そして、クリムは飛電からとあるデータを受け取っていた。それこそが……

 

『……調子はどうかな。香澄』

 

「それは亡くなった私のコピー元の名前。私はアナタの娘、香澄じゃない」

 

クリムは「はぁ…」と溜息のような声を出した。対する香澄は表情を一つも変えずにタイピングを続けている。

 

「……重加速が来る。行くよ」

 

『なんだって?まだ何も起きて……』

 

そう香澄が呟いた約5秒後に当たりの空気がどんよりと重くなり始める。香澄の体に搭載されている“コア・ドライビア”の力で重加速の影響を打ち消し、反応がある方へと走り出した。

 

 

ーーーーー

 

 

負けた。完膚無きまでに。地を這い蹲ることしか出来ない香澄を、バッファローのような姿に進化したロイミュード、“ハート”は抱え上げた。

 

「クリム、お前の人形は俺が預かる。俺達の同胞になってもらう」

 

『よせ!彼女に手を出すな!』

 

「そんな姿で俺には勝てん。…さらばだ」

 

『待てッ!ハートッ!…香澄ッ!!!」

 

 

◉ーーーーー

 

[1年後]

 

 

「……ハッ!?あっいだっ!?」

 

ガバっ!っと机に突っ伏した状態から跳ね起きるとその上の物にぶち当たり、痛みで思わず間抜けな声が出る。ロボットなのに嫌な夢でも見たかのような気分だ。

 

「もうこんな時間か。約束に、遅れたくはない…」

 

机の上のアイテムをカバンに仕舞い込み、私は“ヒューマギア”としての役割を果たすためにある場所へと向かった。

 

〜〜〜

 

[視点:香澄→語り手]

 

紗夜や日菜が元々通っていた高校はデイブレイクによって消し飛んでしまっていた。デイブレイクの事故で友達を失った生徒も少なくない。

今の2人は二つの高校を併合してできた【羽咲丘女子学園】に在学中だ。

 

新たなクラスメイトとの生活も馴染み、学園は日常を取り戻し始めていた。先生達の尽力で修学旅行にはなんとか例年通り行けるそうだ。

 

「また難しい顔してますね、紗夜先輩」

 

「羽沢さん…いえ。少し考え事を」

 

紗夜はここ最近、練習帰りに寄っている店があった。【羽沢珈琲店】という彼女の後輩、羽沢つぐみの家族が経営する喫茶店だ。

この店の看板娘であるつぐみと常連客である紗夜は、最近なにかと話すことが多くなっていた。

 

「あんな事故があったばっかりで…心穏やかじゃない…ですよね」

 

「羽沢さんも…辛いですよね。あお…」

 

「…紗夜さん」

 

笑顔だったつぐみの表情が曇る。それを察した紗夜はすぐに頭を下げた。

 

「すみません。配慮に欠ける発言でした…」

 

「い、いえ……私、品出しして来ますねっ!」

 

気を遣わせないようにつぐみが店の奥に行ったその時だった。あたりの空気がどんよりと淀んだのは。

紗夜はいち早く重加速に気が付き、頼んでいたコーヒーとサンドイッチの代金を机の上に置き、店を後にした。

 

(……今は雑念は捨てて、ロイミュードを倒さないと…!)

 

 

ーーーーー

 

 

その少し前、香澄は自分が世話をしている白髪の女の子と一緒に公園に来ていた。

 

「かっこいいおと…」

 

優しく微笑みながら、星のような赤いギターを奏でる。コピー元だったクリムの娘の形見、と香澄は聞かされていた。

 

「ロボットのねえちゃん!もう1きょくやってよ!」

「おれも!」「どはでなきょくもききたい!」「さいごのぎゅいーんってとめるの、もっかいやって!」

 

気が付けば香澄の周りには公園中の子供達がわらわらと集まって来ていた。わかったわかった、と子供達の言葉を流しながらギターのペグを回しチューニングを整えていると、どこからか不審な男が現れ、こちらに近付いて来た。

男の姿がぐにゃりと変わり、胸に089と刻まれたロイミュードへと変貌した。

 

「俺は…子供達の悲鳴が…聴きたいなァ?」

 

「……ッ!?」

 

重加速が発動し、その場にいた全員の動きがどんよりと鈍くなる。

 

「まずはァ…この白いガキから…」

 

089が手を伸ばしたのは香澄が面倒を見ている女の子だ。香澄は重加速の中、鋭い眼光を089に向けた。すると、銀色の三台のミニカーのような物体がどこからともなく現れ、089を撹乱した。そのうちの一台は香澄の腰のホルスターに挿さり、香澄は重加速から解放された。

 

「…これ、持っててね。大切なものだから」

 

隣に座っていた白髪の少女の膝に星のようなギターを置いた。香澄のコピー元の大切なものだ。傷付けたくはない。

 

「何ィ…!?何故人間が【バイラルコア】を使えている!?」

 

香澄の使役する銀色のミニカー、【チェイサーバイラルコア】は089を子供達から遠ざけていく。089に弾き飛ばされた二台のバイラルコアは先程と同様に腰のホルスターに入った。

 

「私は人間じゃないから。…子供に手を出そうとしていたけど、これが初犯じゃないよね」

 

冷えた口調と凍えるような目で089を睨み付ける。だが089は怯まない。

 

「ああそうさ。多くの子供達の魂のお陰で…こんなのが出来上がっちまったよ……」

 

《エンジェル…!》

 

089が取り出したのは、血のような赤に染まったアイテム【スパイダーバイラルライズキー】。TYPE:ANGEL099と書かれたキーを起動し、腰に巻いた銀色のデバイスに装填した。

 

《バイラルライズ…!エンジェル・ロイミュード……!》

 

天使の羽のような武装が089の背中から生える。香澄は鉄のような顔を崩さず、銀と赤のバックルを腰に装着した。

 

《サイクロンライザー!》

 

「何者だ、お前」

 

《KAMEN RIDER!》

 

「名乗る必要はない。これから倒す相手に」

 

バッタの絶滅種【ロッキートビバッタ】のデータが内包されたティールブルーのキー【ロッキングホッパーゼツメライズキー】を銀と赤のバックル【サイクロンライザー】にセット。

黒いバッタが出現し、香澄の周りをどしん、どしん、と飛び跳ねる。

 

「変身」

 

待機音声が鳴り響き、レバーを引く。

香澄の姿が黒煙に包まれ、重なったバッタを突き破る。赤き稲妻と共に香澄を仮面ライダーへと変えた!

 

《ロッキングホッパー!!》

 

深藍色のアーマー、襟の赤いサイクレッドマフラーが特徴的な仮面ライダーへと変身した。

ぎゅっと拳を握り締め089と改めて対峙する。

 

「子供の夢を守るのが、私の使命。それが私の仮面ライダー、1型だ!」

 




バイラルライズキーや学園の情報は次話の投稿後、設定に追加します。

ちなみに時系列ですが
今回の香澄プロトドライブの戦闘は一話のデイブレイク事件より前
1型やマッハはデイブレイクの一年後の話になっています。冒頭のシーンは……まだ秘密です。
そしてすべての始まりの日、13年前の話は過去編として出そうかと思っています。

最後になりますが、ジーク・フリューゲルさん、無限の槍製さん、希望光さん、眠らない聖剣さん、ヴァンヴァさん、恋文さん、その他2人、お気に入り登録ありがとうございます!!!!!!
私と話したい物好きな人はTwitterで @kisekisouzou と検索してくださいね。バンドリ×ライダーについて隣のDMで一晩語り明かそう……

それでは次回もお楽しみに!


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三話 夜にすれ違う

まずは一ヶ月以上更新を開けてしまい申し訳ございません。
いろいろいろいろありましてモチベが上がらず、そして小説も難産でござんした。

前回のあらすじは香澄1型が初めて変身して、バイラルライズキーなるアイテムを使った089との戦闘直前でした。今回は戦闘メインです!ではどうぞ!


 

 

《ロッキングホッパー!! TYPE:1》

 

「子供の夢を守るのが、私の使命。それが私の仮面ライダー、1型だ!」

 

「…さっき名乗る名などない的なこと言ってなかったか?そのキーも御丁寧にカメンライダーって言ってたような…」

 

「あ…」

 

沈黙。仮面の下で表情までは伺えないが、仏頂面が少し緩んでいるのではないだろうか。

 

「……昔の癖。今は“アレ”ではないことを忘れていた。とても、恥ずかしい」

 

「声が恥ずかしがってないじゃねぇかよ!?」

 

「バイラルライズキーを使った途端に重加速が無くなってる。その力、使い熟せてないんじゃないか?」

 

「なんだかいきなりバカにされたんだが……まあ、すぐに順応してみせるさ…オラァ!」

 

089エンジェルが飛ばした銀色の羽根を1型の得意分野である高速移動で難なくかわして接近していく。

 

「こう……ッ」

 

「ッぶねぇな!」

 

眼前に迫った1型の拳を念動力で身体ごと跳ね飛ばし、宙を舞う1型に追撃と言わんばかりの無数の羽根を投擲した。

1型は空中で体を捻り、かわせない物は拳で真っ向から破壊。被弾を最小限に抑えた。

 

「中々やる…が!本命はそっちのチビなんだよォ!!」

 

「なッ…?」

 

089エンジェルが放った光弾は香澄のギターを抱いた白髪の少女へと向けられていた。

 

「貴様……ッ!」

 

《ロッキング・スパーク!!》

 

1型の姿がゆらりと歪む。超高速で移動して光弾を先回りし、真上に蹴り上げた。

 

「チッ…惜しかった。だが次はお前諸共消し去って……えっ?」

 

089エンジェルの腹部を音速の拳が捉えた。加速した勢いに任せて背中から思いっきり地面に叩きつける。

 

「お前は…許さない」

 

再度ドライバーのレバーに手をかける。すると089エンジェルは何故だか変身を解除し人間の姿となった。

 

「だ、だれか……助けてくださいっ!!」

 

「お前…どこまでッ!」

 

人間の姿を取ったが、1型の拳は止まるはずもない。悪党にトドメを刺そうとした時だった。もう1人の仮面ライダー……マッハが現れたのは。

 

「待ちなさいっ!」

 

「……貴女は。彼女の…」

 

「その人から手を離しなさい。ロイミュードの好きにはさせません」

 

「あ、ありがとう!」

 

089は怯えた演技を続けながら公園の奥へと逃走していく。

 

「待て…ッ!」

 

「待つのはお前よ、ロイミュード…!」

 

《シグナルバイク!シグナルコウカン!》

《トマーレ!》

 

緑のシグナルバイクを用いて1型の動きを封じようと試みる。だが加速を打ち消しただけで1型の行動を完全に制限するには至らなかった。

 

「仕方がない…ッ!」

 

「でやぁっ!」

 

1型とマッハの蹴りが交差する。1型がパワーで押し勝ち、倒れたマッハを羽交い締めにする。

 

「落ち着いてッ!私も仮面ライダーなのッ!」

 

「仮面ライダーなら…無抵抗の人間を傷付けようとはしないっ!!」

 

1型を押し除けたマッハは、1型のホルスターに挿さっているバイラルコアをシューターで狙い撃ちし、全て弾き飛ばす。

そしてマッハドライバーに隠された『奥の手』を使う。

 

「なら…『リミッター解除』!」

 

奥の手、それは重加速と同じ現象を引き起こす力。当然周囲への影響も大きい。

近くの子供達は二度目の重加速の恐怖に陥って、パニック状態になる子がほとんどだった。

 

「ッ!お前……!」

 

マッハ以外の動きが鈍くなる。相手が仮面ライダー、人間なので攻撃を躊躇っていた1型だったが、動かざるを得ない。レバーを操作して必殺技を発動させた。

右の拳に赤いエネルギーが溜まり、跳躍。

 

《ロッキング・ジエンド!》

 

「ッらぁ!!」

 

「後ろ……ッ!?」

 

ダメージ過多でマッハの重加速が打ち消される。1型は倒れたマッハを掴み、口調を強めて言い放つ。

 

「勘違いは誰にでもある。でも…市民がどれだけ重加速を怖がっているかぐらい貴女でも知っているでしょう!?そんな力を躊躇いも無しに振るう?ふざけないでッ!子供達の泣く声が聞こえないのッ!?」

 

「……貴女…ロイミュードじゃ…」

 

「そんなことはどうでもいいッ!貴女は何のためにヒーローやってるんですかッ!正義のためなら手段を選ばなくていいとでも思っているなら……ヒーローなんて辞めてしまえッ!」

 

マッハを乱暴に振り払い、1型は拳を握り締める。

 

「なんの、ため……」

 

「いやー助かったよ。アンタは俺のヒーローだ」

 

俯くマッハの前に、人間態の089が現れる。

 

「貴方…さっきの……」

 

「アイツが私が戦っていたロイミュードです。それも、かなり強力な……」

 

「!?で、ではさっき貴女は……」

 

「いいねェその顔!これと遊んでな!アディオス!」

 

羽を撒き散らしその場から消え失せる089。かわりに下級ロイミュードが何体も出現した。

 

「考えるのは後にしましょう。今は…ッ!」

 

「…そうですね。わかりましたっ!」

 

拳一発でナンバーのない下級ロイミュードを破壊。立ち尽くしていたマッハも顔をパパッと叩き戦闘を再開する。

 

「私が一箇所に集めます!」

 

《イマスグ!トマーレ!》

 

加速したマッハがロイミュードの周囲を走りながらシグナルバイクで能力を付与させた弾丸をロイミュードの中心目掛けて何発も撃ち込む。

 

「—————ここッ!」

 

「合わせますっ!」

 

ロイミュード達の動きが完全に停止した隙に2人はドライバーを操作。必殺技を発動させる。

 

《ロッキング・ジエンド!》

《フルスロットル・マッハ!》

 

「「やああああーっ!!」」

 

双方からのキックに耐え切れず、全てのロイミュードが爆散した。

紗夜はドライバーからシグナルバイクを取り外して変身を解除し1型を探す。

 

「…すみません。勘違いどころか足を引っ張ってしまって…あれ?」

 

マッハの近くにいたはずの1型は白い髪の少女の元に駆け寄っていた。

 

「……ッ…う…」

 

少女は任された赤い星のギターを抱きしめて、必死に涙を堪えていた。

 

「…よくここまで泣かなかったね。他のみんなも。怖い思いをさせてごめんね」

 

正体を知られたくないのか、変身を解かないままで子供達を落ち着かせていた。

少女は立ち去ろうとした1型の脚をちょいっと掴む。

 

「だい、じょうぶ。もう…ありがと…ございます…」

 

「うん。私も…みんなを守りたいから。みんなの夢を」

 

「……それが、ヒーローさんの“ゆめ”…?」

 

「夢、か…うん。そうだよ。みんなの夢を守るのが…仮面ライダー、だからね」

 

涙を拭い取り、頭を撫でる。仮面の中で笑みを浮かべて、1型はその場を後にした。

 

「マッハ…紗夜さんですよね。明日、このお店で10時に会いましょう」

 

そう紗夜の耳元で呟き、1型は紫のバイクで走り去った。

 

“仮面ライダー”という言葉の意味、自分に課せられた使命。

何事もなかったかのように遊び始める子供達の喧騒の中、紗夜は1人マッハドライバーを見つめていた。

 

「おーい!おねーちゃーん!!」

 

「…あっ、日菜」

 

「今日もお疲れ様。あたし何もできなかったけど、平気?」

 

「大丈夫…というわけでは無かったわ。もう1人の仮面ライダーと明日話すことになったから、2人で向かいましょう。……“羽沢珈琲店”に」

 

———私は、仮面ライダー。先程の仮面ライダーの言う通り、無辜の市民を守るべき存在。そう、今の私は、まぶしい(おひさま)に隠れる(おつきさま)ではないのだから。

 




次回はもっと早く投稿できるようにします!コロナ課題がつらい!!
バイラルライズキーや各ライダーの所持品を設定に纏めておきました。
感想や評価いつもありがとうございます!相変わらずの更新速度ですが、これからもよろしくお願いします!!


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四話 情報交換

えー長く投稿期間を空けてしまいました。申し訳ございま1000%
今回は戦闘無しで軽くストーリー整理です(メタ)
原作崩壊上等で我が道を行くのでついて来たい人だけついて来てください()



 

———余興だよォ?×××ゥ…!

 

2人の男が言い争う声が聞こえる。1人の声は聞き覚えが無いが、もう1人の声はうっすらと覚えがある。

 

———×××エンタープライズの連中も!お前も!お前の娘も!皆邪魔だ!

 

———やめろ!君には家族が!娘達がいるだろう!何故罪を重ねる!?

 

———オレに家族ゥ?…ああ、彼女達は実×××に過ぎ_____ピピピピッ_______ピピピ____

 

 

聞き取れない、もっとはっきり言っ…

 

ーーー

 

 

就寝前に仕掛けたアラームではなく、自分の体内時計で目を覚ます。空腹で目が覚めた、というのが正解だろうか。昨晩、家に帰ってから何も食べずに寝てしまった。

 

今日は1型との待ち合わせがある。朝御飯と着替えをしないと。

 

 

 

……起き上がれない。まるで誰かに押さえつけられているような。

 

「むにゃ…」

 

犯人は私の横にいた。起きる様子がないので犯人のほっぺをむにむにしてみる。

 

「日菜。ちょっと、日菜」

 

「んぁ…おはよぉ」

 

「おはよぉ、じゃないわよ。なんで私のベッドにいるの」

 

「おねーちゃんすごい魘されてたんだよ。だから心配で…」

 

「ここにいたのね…なるほど…。ちゃんと眠れた?」

 

「うん!いつもより快眠できたかも?」

 

「そういうものなのね……なら良いわ。心配してくれてありがとう。日菜」

 

最近は妹への劣等感も消え、以前より格段に落ち着いて対応できる。仮面ライダーだもの。常に余裕を持たないと。

 

氷川家には私と日菜しかいない。小さい頃からお父さんと3人で暮らしている。ここ数年、お父さんは仕事先から帰ってきていないが。

 

「…そろそろ時間ね。日菜、待ち合わせ場所に行きましょう」

 

 

ーーー

 

 

AIテクノロジー企業、飛電インテリジェンス。社員だけが泊まれる施設にて、香澄は二台のPCと向かい合っていた。

 

「三つの希望を残せ…だよね。クリム」

 

一つ目の希望、始まりの戦士から受け継がれ、幻の戦士が使用した『ドライブドライバー』

 

「あと二つ、しっかり完成させなきゃ」

 

二つ目の希望、遠くない未来、病魔と戦う為の力。

三つ目の希望、全人類の夢と未来を照らす力。

 

「香澄、そろそろ時間じゃない?」

 

この施設…いや、この家には3人が住んでいる。飛電インテリジェンス社長のお孫さん、まだ3歳の『倉田ましろ』、ましろの保護者代わりの人工知能搭載人型ロボであるヒューマギア、『花園たえ』と『戸山香澄』だ。

 

「時間?」

 

「時間。ほら、マッハとの…」

 

「ああっ!?忘れてた!ありがとおたえ!行ってくるね!」

 

「ましろちゃんのことは任せて。いってらっしゃい」

 

1型に変身する時とは違い、明るい声と表情で香澄は家を後にした。

 

 

ーーー

 

 

「ね、もしかしてあの人じゃない?」

 

「まさか…。1型のときのイメージとはかけ離れているわよ?」

 

羽沢珈琲店にて。今日は紗夜の同級生、つぐみの姿は見えない。

カウンターテーブルから離れた席に座っている猫耳の生えたような髪型をした少女に手招きされるまま、2人は彼女の向かい側の席についた。

 

「すみません。待ち合わせの5分前になってしまい…」

 

「いや、気にしないでください(5分前で謝られた…!?私ついさっき慌てて来たんだけど!?)」

 

こうして2人のライダーは再会した。

 

 

 

「それにしてもそっくりですね!話には双子って聞いてたけど、似てる〜っ!」

 

「でしょ?よく言われるんだ〜!」

 

香澄と日菜はすぐに打ち解けていた。感性が近かったのだろうか。

 

「あ、あはは……昨日と雰囲気が違いすぎてどう離せばいいんだか」

 

「ねーねー、まずは貴女のことを聞かせて欲しいな!」

 

 

 

戸山香澄。クリム・スタインベルトの娘の姿をコピーしたロイミュード000にして人類の守護者。デイブレイク事故のさらに一年前。ロイミュードの一斉反乱の時、大規模な重加速現象や破壊活動の被害をシフトカーと共に最小限に食い止めた英雄。元・仮面ライダープロトドライブ。

ハート・ロイミュードとの戦いに敗北し、ロイミュードの番人として改造される寸前で施設から脱走したという。

デイブレイク当時に完成したサイクロンライザーを使い、正式にドライブに選ばれた今井リサと共にロイミュード達を掃討。通信衛星アークの打ち上げを阻止した。

 

今は飛電インテリジェンスで研究、開発をしており、ロイミュード等の対策を独自に進めている。

 

ーーー

 

 

「…え、全部メモ取ったのおねーちゃん」

 

「勿論。…さて、ロイミュードについての情報交換をしましょうか」

 

 

ーーー

 

 

デイブレイクから一年の時を経て、現在複数のロイミュードがコアの自己修復を終え、続々とボディの取り戻している。

重加速に対抗できるのは日菜の開発したシグナルバイクと、香澄のチェイサーバイラルコア三種のみ。シフトカーはデイブレイク以来姿を消しているという。

 

何者かがロイミュードのデータをクリムと香澄の発明品の一つ『プログライズキー』を悪用し、ロイミュードの戦力強化を図っている。前回紗夜と香澄が交戦したロイミュードがその強化体だ。

 

 

ーーー

 

 

「そういえばおねーちゃん」

 

「…何?今は前のロイミュードの対策を…」

 

「来週から修学旅行だよ?」

 

「……ああっ!?そ、そう言えば…」

 

紗夜達高等部は来週から沖縄修学旅行を控えていたのだ。

 

「仕方ない。私はこの街に残るわ。日菜1人になるけれど…」

 

「えー!?やだよー!何とかならないの!香澄ちゃん!!」

 

「えーっと、エンジェルのキーを使ったあのロイミュードは、傷が癒えたらまた動き出すと思います。計算上…修学旅行中には再出現しないと思いますよ。だから行って大丈夫だと思います!」

 

「し、しかし…」

 

「ほらほら!風紀委員委員長が学校行事サボるワケには行かないよね!ね!!ねーお願い!!」

 

「ああもうっ…わかったわ。戸山さん、万が一再出現したらお願いします」

 

「はい!任されました!」

 

3人はそれぞれ会計を済ませ、羽沢珈琲店を後にした。

 

(羽沢さん…今日はお休みなのかしら)

 

仲の良い後輩の姿は店内の何処にも見当たらない。少し辺りを見回した後、紗夜は店を出た。

 

 

 

「来週って台風が近づいて来るらしいよ?ちゃんと楽しめるか心配だな〜」

 

「あ、日菜さん」

 

香澄が日菜を呼び止める。そして、とあるUSBメモリを手渡した。

 

「クリムの遺したシフトカーのデータがあるんです。それを渡しておきたくって」

 

「助かるよ香澄ちゃん!これがあれば“アレ”もすぐに作れそう!修学旅行には間に合うかな〜」

 

「何か作ってるんですか?」

 

「ふっふっふ…実はおねーちゃんにも言ってない。できてからのお楽しみだよ」

 

「日菜ー?置いていくわよー」

 

「ほほーう…じゃあ楽しみに待ってますね!」

 

「うん!またねー!待ってよおねーちゃーん!」

 




色々と伏線を張り巡らせた回になりました。

RAS実装……タノシミタノシミ……


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五話 夜の追跡者


七夕までに間に合ったーっ!!!
ついに日菜が…!!ではどうぞっ!!

〜〜〜
記録:200X年 ドライブシステムの完成

記録:2006年 グローバルフリーズ発生。仮面ライダープロトドライブがロイミュードを討伐。戦闘の末捕らえられる

記録:2006年 ロイミュード***の裏切りでプロトドライブは改造手術所から脱出。プロトドライブの変身者の思考ルーチンに変化アリ

記録:2007年 新たなるライダーシステムの製作を開始。試作品である『サイクロンライザー』を3基製作完了

記録:2007年9月 ドライブの後継者として****の記憶を転写したサイバロイドをZ**A社が製作

記録:2007年10月 デイブレイク事件。復活したロイミュード達の一斉反乱を鎮める為、後継者のドライブが戦死

記録:2008年10月 氷川紗夜が仮面ライダーマッハに変身

記録:2008年11月 —空欄—



 

氷川姉妹との会合からしばらくして、日菜は香澄の作業場に遊びに行くことが多くなった。

香澄が現在制作中のライダーシステムの開発を2人であーでもないこーでもないと言い合いながら試行錯誤していた。

 

「どうですか?日菜さん」

 

香澄が手渡したアタッシュケースの中にはさまざまなアイテムが入っていた。

 

「うーん…悪くないと思う!というか凄いよ香澄ちゃん!ゼツメライズキーとサイクロンライザーに加えてこんなのを隠してたなんて〜!」

 

目をキラキラ輝かせる日菜、その手には“紫色のキー”が握られていた。

 

「隠してたわけじゃないんです。“プログライズキー”はまだ実践には使えなくて…」

 

「ドライバー側のアプデが間に合ってなくて使えない感じかな。なるほどね〜」

 

プログライズキーの他に、アタッシュケースの中からはまだ塗装されていないサイクロンライザーのようなものが見つかった。

 

「これなに?香澄ちゃんの予備サイクロンライザー?」

 

「それは“フォースライザー”…と言ってもガワしか完成してないんですけど」

 

フォースライザー、自分の理想である『ヒューマギアの笑える世界』の為に必要な『力』だと香澄は語っていた。

 

「ふーん、そっか…人工知能も人間も、みんな笑える世界か…」

 

ふと腕時計を見た日菜は、もうそろそろ紗夜との約束の時間が迫っていることに気がついた。

 

「香澄ちゃんなら絶対できる!あたしはあたしにできることをするから!」

 

日菜はそう笑うと自分の鞄からマッハドライバーを取り出した。

 

「それって、紗夜さんの…?」

 

「ううん。これはあたし専用の!昨日完成させたんだ〜!あ、でもまだおねーちゃんには内緒にしておいてね!」

 

「あ、はい……わかりました…」

 

いとも簡単に2台目を制作した日菜の才能に呆気に取られる香澄。

困惑する香澄の顔を見た日菜は首を傾げるも、姉と修学旅行に必要なものを買いにいく約束の為、ラボを後にした。

 

「それじゃ、またねっ!」

 

「また!肩の力抜いて楽しんできて下さいね!」

 

 

〜〜〜

 

数日後 沖縄

 

 

修学旅行は確かに楽しい。だがその楽しさは昼間の学校行事をキチンとやってからこその楽しさである。

ホテルに着いた後、紗夜は夕食までの時間で今日の出来事をレポートにまとめていた。

 

「……こんなところかしら」

 

「おねーちゃんお疲れ様!」

 

ホテルで同部屋に割り当てられていた日菜が紗夜の言葉に続けて食い気味で叫んだ。

 

「ねねっ!おねーちゃんに話があって待ってたんだ!」

 

「話?」

 

レポートをクリアファイルにしまいながら日菜の話を小耳に挟む。

 

「今日の夜、ホテルの近くの砂浜に出れるらしいんだ!一緒に行こうよっ!」

 

「私よりも仲のいい友達と一緒に行った方が楽しいと思うのだけど」

 

「……あー、いや、おねーちゃんと一緒に行きたいなって!!」

 

「…仕方ないわね。食事は6時半だから…8時半のお風呂に間に合うようにするために…あれ、6時半…!?」

 

紗夜は慌てて腕時計を見る。現在の時刻は…

 

「「6時25分っッ!?」」

 

2人はそれこそマッハのスピードで夕食会場に向かった。

 

「あははは!らしくないねおねーちゃんっ!」

 

「貴女も気をつけなさいよッ!?」

 

 

〜〜〜

 

 

時間ギリギリで滑り込みんだ2人を待っていたのは豪華な夕食会場だった。

 

「おおおーっ!?すごい!すごいよっ!はやく取りに行こっ!」

 

「走らないの。それにしても…綺麗ね」

 

海が一望できるガラスからは星空が覗いていた。

 

「…よし撮れたっ!香澄ちゃんに送っておこーっと!」

 

「ほら、取りに行くんでしょう」

 

「そうだね!いこっか!」

 

 

 

〜〜〜

 

 

夕食後、砂浜に出た2人は夜空を見上げていた。夕食会場からみた空も良かったが、こうして暖かい潮風と波の音に包まれて見る空をまた趣がある。

 

他の生徒達は波打ち際まで歩いて行ったり、砂浜に文字を書いたりと海辺を満喫している。

 

「おねーちゃん知ってる?沖縄の空って、南半球の星座もちょっと見えちゃうんだって」

 

「…確かに。地理的にあり得ることね」

 

「あと一ヶ月ぐらい先だったら、もう少ししたら南十字星が見れたりしたんだけど…しょーがないよね〜」

 

キョロキョロと星を見つめる日菜。頭の中の星座早見と照らし合わせ、あれだこれだと言う日菜を見て、紗夜は微笑んだ。

 

「でもさ、いつかは南半球の星座も見てみたいな〜って、思わない?思うよね!」

 

「まったく…海外旅行してる時間はないのよ?…それでも、いいかもしれないわね。ロイミュードの脅威が去ったら」

 

「…ならあたしも頑張らないと!双子旅行のためにぃーっ!」

 

そんな時、紗夜とガッツポーズ中の日菜の携帯が突然鳴り出す。

 

「戸山さんからだわ」

「もしもし香澄ちゃん?」

 

『修学旅行中にすみません!2人の近くに先日のロイミュードが…!』

 

「…ッ!?わかりましたッ!迎撃します!」

 

『2人でもやり辛かった相手です。気をつけてっ!』

 

通話を切り、あたりの生徒へと避難指示を出そうとするが……

 

 

「なーんかすごい久しぶりな気がするなァ?マッハさーん?」

 

バイラルライズキーに保存されたエンジェルロイミュードの力を身に纏ったロイミュード089が、砂煙を巻き上げて現れた。

 

「…いけない、まだ避難が…!」

 

「今回は1型はいないんだろォ…そこまで情報は掴んでるぜェ?それに、まだマッハの正体は公になってない…だからここで変身も出来ないだろ?」

 

089の言う通りだ。“仮面ライダー”の存在はまだ世間には知られていない。下手に変身しようものなら世界そのものに影響してしまうだろう。

 

「なら生身で…ッ!日菜!生徒達の避難誘導を願いッ!!」

 

「日菜だけに避難って?….……わかったよっ!!」

 

紗夜は生身でゼンリンシューターを構え、089を相手取る。

 

「既にこのキーの力は100%使い熟せている…生身はおろか、マッハに変身できたところで勝ち目は無いぞ」

 

089は下級ロイミュードを数体生み出し、日菜を追わせた。紗夜はゼンリンシューターで即座に一体破壊するも、形勢はどんどん傾いていく。

 

「だからって…退く理由にはならないッ!」

 

 

 

 

逃げ惑う生徒を日菜は一人で誘導していた。パニックを起こした生徒を別の生徒に肩を貸させて岩場の後ろへと向かわせた。

 

「あとは…っ!?」

 

ほぼ全員の避難が終わった頃、下級ロイミュードに襲われている生徒を発見した。

 

「あ…っっぶないっ!!」

 

不安定な砂場ではあったが、正確な飛び蹴りでロイミュードの胸を蹴り飛ばす。

 

「…日菜…?」

 

「友希那ちゃん!?」

 

湊友希那、一年前のデイブレイクの日に親友のリサを失い、目指すべき目標に向かえずにいた歌姫。そのか細い右腕には木の枝が握られていた。

 

「…もしかしてロイミュードを…!?」

 

「ええ…そうよ……!リサを殺したのは…コイツらなんだから…っ!」

 

涙を滲ませて木の枝を強く握る。そんな友希那を見て、日菜は鞄からマッハドライバーを取り出した。

 

「……仮面ライダーじゃない友希那ちゃんが、ここまでやってるんだ。力を持ってるあたしが頑張らないなんて…全然るんっ♪て来ないっ!」

 

「日菜…?」

 

友希那の前に立ち、ロイミュードと相対する。そして、姉と同じドライバーを装着した。

 

《マッハドライバー!》

 

香澄と共に作った黒いシグナルバイク、“シグナルチェイサー”をマッハドライバーに装填!

 

《シグナルバイク!》

 

変身前に倒そうと突進してくるロイミュードをかわし、ドライバーの上部を軽く押す。

 

「変身っ!!」

 

《ライダーッ!チェイサーッ!!》

 

シルバーのボディに黒と紫の意匠の仮面ライダー、その名も!

 

「仮面ライダ〜〜!チェイ…サーっ!」

 

生徒達が、いきなり同学年の生徒が世間で噂されている仮面ライダーに変身し、驚きの声が漏れる中、チェイサーに変身した日菜が下級ロイミュードに回し蹴りをお見舞いする。

 

「名前もデザインも香澄ちゃんが付けたんだよね〜、もっと可愛くして欲しかった……なっ!なんて!」

 

「そんな、一撃で…!?」

 

「ふっふーん!!さっすが天才日菜ちゃん!試運転してないけど、やっぱなんとかなった!じゃねー!向こうの親玉ぶっ倒してくるから!」

 

目にも止まらぬ速さで下級ロイミュードをいとも簡単に倒し、嵐のように仮面ライダーは去って行った。

 

「あれが…リサと同じ仮面ライダー……」

 

友希那の瞳には、走り去るチェイサーの姿しか写っていなかった。まるで、何か新しい“信念”を見つけたかのように—————

 

 

 





更新空きすぎて忘れてる人もいるでしょうし補足します。デイブレイクで破壊された二校は一校の女子校に纏められています。なので紗夜も日菜も同じ学校に通っています。

相変わらずの原作崩壊度。是非も無いよネ!
ではまた次回もお楽しみに!


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