RELEASE THE SPYCE lnherited soul (シロX)
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第壱章 モウリョウ
MISSION:01 Ready Go!


opとedを久し振りに聴いたら書きたくなった!

では!ミッションスタート!


吹き抜ける風。そして、オイルや煙りの悪臭といったものが漂う

 

此処は、空崎市のとある工場地帯。その建物の上で胡座をかいている人物が居た。

タクティカルジャケットとパンツに、上に黒いローブで頭を隠して狐のお面を被り顔全体も隠してる

 

「今回の依頼は完了。後は、今日の夕飯を買って帰るだけなんだけど…」

 

面の上からスコープで工場の屋上を覗くと、マフラーを靡かせてる人影を2人見かけた

 

「誰だろう?気になる…」

 

面を被った人物は右耳に付けてる通信機に手を当てる

 

「濃姫、中の状況とか分かるか?」

 

『はい。先程確認した人影は如何やら、事務室に向かっています』

 

「事務室か…。分かった、これからその人物達に接触してみる。サポート頼むよ」

 

『了解』

 

通信を終えて、狐はその工場に潜入した

 

 

 

 

 

////////

 

『次の角を右です』

 

「あいよ!」

 

工場の中を駆け巡る

 

『正面、3mに敵3名発見』

 

「一気に片付ける!」

 

走るスピードを更に上げて、すれ違いざまに睡眠薬を打ちつけ眠らせる

 

『新たな情報を入手。監視カメラの映像によれば、大人数での敵と交戦中との模様』

 

「場所は?」

 

『2階のB区画です』

 

「少し遠いな。良し!それなら」

 

左脹脛に着けてるケースから小さな木の実を取り出して

 

「──Ready Go!」

 

口にして齧ると面で隠れて見えないが、目の部分の隙間から青色に光るのがわかった

 

『スパイス服用により、脳内神経、身体能力が上昇しました。お気をつけて』

 

スパイス──それは、とある財団が開発した特製スパイス。ひと口齧ると体のありとあらゆる能力が上昇する代物だ

 

彼が今食べたスパイスは、「オールスパイス」。別名「ジャマイカペッパー」とも言う

 

身体能力が上昇した彼は、凄まじい勢いで走り、目に映る敵も全て排除していった

 

彼が使用してる武器はグローブ。グローブの甲には鋼を装備しており、人を殺そうと思えば殺せる接近用の武器。

後はナイフなどあるが、基本は現地調達

 

『間もなく到着します。3…2…1』

 

手すりを超えると、そこにはボブヘヤーの桃色の髪をした少女が交戦していた。

容姿は露出度が高いものの忍装束を身につけ、赤いマフラーを靡かせ、スカートを翻していた。

正に、現代版くノ一だ

 

『敵の数が想定より多いです。殺しますか?それとも殺しますか?』

 

「殺す以外の選択肢は無いの?」

 

1人でブツブツ言いながらも体を動かして敵を鎮圧させる

 

「凄い…!」

 

そんな感心の言葉を漏らし、少女は彼の華麗な動きに魅了していた

 

「…」

 

敵全てを倒してスパイスの効果も切れる。そして、少女に心配の声を掛けようとしたが問題が発生した

 

(あまり声も聴かれたくないんだよな)

 

そして、声を出さない代わりにスマホを取り出して何か操作してから少女に渡す

 

「?」

 

少女は警戒しつつもスマホを受け取ると「大丈夫?怪我は無い?」の一文が書かれてた

 

それを見た少女はハッとして、警戒を解いてペコペコと頭を下げる

 

「はい!大丈夫です!助けてくれてありがとうございました!!」

 

そのままスマホで操作して会話する

 

『偶々見かけたから追い掛けて来た。君の様な子が、こんな危ない事をしたら駄目だでしょ!』

 

「いえ。私だって信念を持ってしている事です!この街が好きで街の皆んなが好きだから!!」

 

「……」

『そうだな、ごめん』

 

頭を下げた事に少女はあたふたする。顔を上げようとする時、少女の右手に怪我をしてる事に気が付く

 

『手を怪我してる』

 

「あ、大丈夫です!これくらいなら平気です!」

 

だが彼は、ムッとして腰に掛けてるバックから消毒液と絆創膏を取り出す

 

『手当てしてあげる』

 

「そ、そんな大丈夫ですよ!」

 

『いいから』

 

押し切られて渋々治療を受ける事にした

 

治療が済み、彼は少女について聞く事にした

 

『仲間はいるの?合流地点を教えてくれたらナビゲートしてあげるけど?』

 

「流石にそれは教えれません!」

 

想定内の反応なので、スマホを操作してこの工場の地図を見せつける。地図には、赤い矢印が幾つも建っていた

 

『この中に合流ポイントはある?』

 

「えっ!?あ…あります」

 

『エスコートしてあげる。付いて来て』

 

彼の背中に少女はオドオドしながらも、付いて来てくれた

 

 

 

 

 

////////

 

着いた場所は工場の屋上。そこには二つ結びでお下げにした青色の髪をした少女が居た。

同じ忍装束の格好をしてるので、彼女の仲間と認識した

 

「遅いわよ百地(ももち)。一体何処に……!」

 

こちらに気付いたや否や、こちらにスマホを向けて鋭い目で睨め付けて来た

 

(スマホだけど銃口がある。凄い仕掛け)

 

「百地何してるの!早く離れなさい!!」

 

「ですが師匠!」

 

話の流れでこの2人は師弟関係と見た。そして、桃色の子は百地と言うらしい

 

一応誤解を解く為にスマホを操作して会話を試みる

 

『怪しい者では無い』

 

「側から見たら凄い怪しいですけど…」

 

隣から辛辣な言葉が聞こえるが聞こえないフリをする

 

「百地聞いて!ソイツは、報酬を貰えばどんな仕事もする協力者(エージェント)よ!」

 

「ええ!?」

 

「私達の間では『狐』と呼んでる。証拠はその面よ」

 

『この面は飾りだ!!それに狐なんて名乗った覚えはないぞ!!』

 

高速で入力して否定する

 

『それに偶々見かけた所を助けただけだ。それからは、俺がルートを割り出して此処へ送り届けた』

 

「百地」

 

「はい!!」

 

「帰ったら説教よ」

 

「はい…」

 

師匠の怖いお叱りが待つ未来を想像すると可哀想で仕方ない

 

『兎に角、保護者の元へ届けました!俺は帰るよ』

 

「そうしてくれるとありがたいわ」

 

帰ろうとすると、ローブの袖を百地が掴む

 

「あの、本当にありがとうございました!」

 

『君が無事で良かったよ』

 

そしてあっという間に離脱した

 

 

 

 

 

////////

 

『最悪の出会いでしたね。信二さん』

 

「お黙り!全く、狐って何だよ!?俺にもちゃんとしたコードネームがあるの!!」

 

『信長』

 

「それだよ!」

 

『信二さん、非通知で連絡です』

 

信二は電話に取ると女性の声が聴こえた

 

『用件だけ伝えるわ。貴方の腕を見込んで雇いたいの』

 

「俺はフリーで活動してる」

 

『だからよ。貴方はモウリョウ(・・・・・)を倒すのに必要な戦力。勿論、報酬は弾む』

 

「10秒頂戴」

 

信二は少し考える。そして出した答えは

 

「その話乗った」

 

『場所は追って連絡する』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の名は緒方 信二(おがた しんじ)。

コードネームは信長

 

彼は、この地に蔓延る巨大な犯罪組織「モウリョウ」と戦う為に、とある対立組織と手を組み、その脅威から街や人々を守る為に身を投じる事となった




次回辺りからオリ主の紹介です

では、ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:02 ツキカゲ、ミッションスタート!

時系列的には、前回のも含め4話と5話の間の出来事です

では!ミッションスタート!


「今日の夕方にこの住所の場所に行けばいいのかな?濃姫、検索かけてみて」

 

『了解』

 

濃姫が瞬時に検索すると、一軒のお店が引っかかった

 

「『Wasabi』。カレー店か、洒落乙な店だな」

 

『小型ドローンを飛ばしますか?』

 

「代わりに情報を集めてくれ。それよりも」

 

信二は机に置かれてる履歴書に目を移す

 

「スパイとはいえ、履歴書はちゃんと書いた方がいいのかな?」

 

『社会人なら同然ですね』

 

「だよね!」

 

信二は履歴書の他に、必要書類にマイナンバーと言った個人情報が記載されている物をコピーして出掛ける準備をする

 

 

 

 

 

////////

 

「此処がWasabi。普通だな」

 

『信二さん、頼まれました情報を集めて来ました』

 

スマホに、濃姫がゲットした情報をスラスラと読んでいく

 

「成る程ね。少しドッキリでも仕掛けようか」

 

信二は、リュックから狐の面を取り出して顔をに着ける

 

「どんな反応するんだろ?わくわくする!」

 

そしてドアノブに手を掛けて中に入ってみると、視界に入ってきたのは6人の少女達と1人の店員だった

 

(さぁ、どんな反応を示すか!)

 

と、呑気に考えてる内に3人の少女が三方向に散らばりこちらに向かって来た

 

右はクナイを持った少女が、左からはスマホを片手に、そして正面からは素手で信二を襲いに来る

 

「っ!」

 

だがそれを、両手と右足だけで全て受け止めた

 

「何故狐が此処に居る!」

 

「…半蔵門雪。コードネームは半蔵」

 

「っ!?」

 

「八千代命。コードネームは千代女。そして、青葉初芽でコードネームは局」

 

「何でメイ達の名前まで」

 

「貴方は一体」

 

信二は振り払い事情を説明する

 

「此処へ来たのは就職活動」

 

「「「は?」」」

 

素っ頓狂な声を思わず出してしまう。信二はリュックから履歴書などの書類は全て手渡した

 

「本当だ!履歴書だ!」

 

「いらっしゃい。待っていたよ」

 

奥から店員の人が歓迎の挨拶をしてくれた

 

「皆んなに紹介するわ。新メンバーの緒方信二君よ」

 

「コードネームは信長。狐なんて呼ばせません!」

 

その場にいる全員が困惑していたが、1人だけ熱い視線を送っていた

 

 

 

 

 

「この人があの狐ですか?」

 

「狐言うな」

 

何とか武器を収めてくれて、話し合いの場が出来て一安心

 

「最近はモウリョウも力を付けてるから、彼を財団が雇ったのよ」

 

先程から親切にしてくれてるこの店員の人は、「カトリーナ・トビー」。昨日連絡をして来たのもこの人だ

 

「それにしても、個人情報が載ってる書類を持って来るなんて、ある意味凄くない?」

 

「嘘偽り無しの情報だよ。そろそろ名前を教えてくれない?」

 

「そうだね!メイは命!この子は弟子のフーだよ!」

 

「フンッ!」

 

サイドテールでオレンジの髪色をした子が「八千代命」。そして、ツインテールで薄紫の髪色をした子が「相模楓」。命が師匠で楓が弟子

 

「私が師匠で!」

 

「弟子です」

 

赤い眼鏡を掛ける金の長髪が「青葉初芽」。黒いく長い髪が特徴の「石川五恵」。初芽が師匠で五恵が弟子の関係

 

「半蔵門雪よ」

 

「源モモです!」

 

昨夜会っていたのがこの2人。雪が師匠で弟子がモモだ

 

「モモって名前か…昨日の傷は大丈夫だった?」

 

「はい!」

 

『私の自己紹介は?』

 

「…紹介したい人が他にいる」

 

その時、信二以外のスマホが一斉に鳴り出す。電話に出てみると

 

『皆さん初めまして。信二さんのサポートを務めるAIの濃姫です』

 

「AI!?」

 

「こうも簡単にハッキングされると心折れちゃいそうです…」

 

『ツキカゲの基地も乗っ取ろうと思えば出来ますよ』

 

「それで私達の情報を…」

 

ひとまず、全員の紹介を終えてツキカゲの基地である地下へと足を踏み入れる

 

地下にはかなりの敷地面積に建物が沢山あった。

武器庫、記録保管室、ラボ、娯楽室、話し合いにうってつけの場所の軍議の社

 

「すんごい!」

 

「あの〜信二さん」

 

「?」

 

「お面って外せますか?ずっと着けてるのが気になって…」

 

皆んなが一番気になっている事を、モモが話す。正直ダメ元で聞いてみたが、今後の関係を築くのに障害となり得る

 

そして面を取る。

だが、取ったからと言って大した事ない。カッコ良くも無ければ、ブサイクという訳でも無い

 

「普通だね。もっとこう…厳つい人相でもしてるのかと思ったよ」

 

「おい」

 

大分ほぐれてきたところで、カトリーナが手を叩いて注目させる

 

「雪ちゃん、今日の任務はモモちゃんと信二君の3人でお願い出来るかしら?」

 

「今会ったばかりなのにいきなり実戦ですか?」

 

「臨機応変に、ね!」

 

「…分かりました。モモ!信二さん!」

 

2人は雪に呼ばれ整列する

 

「今日の任務は私達だけでやる。これから作戦を立てるわよ」

 

 

 

 

 

////////

 

「こちら半蔵。濃姫、中の状況は分かる?」

 

『大丈夫です。スマホに中の映像を流しますね』

 

場所は3階建ての建物の裏。今回の任務は、密売の阻止が目的だ

 

雪は濃姫から貰った映像を基に潜入の準備をする。

雪、信二、モモの順で中へと進んで行く

 

「百地、合図で玄関に居る2人を制圧を。信長は私に付いて来て」

 

「「了解!」」

 

モモは影に隠れ、雪の合図があるまで待機をする。

その間に、3階の取引が行われる部屋まで駆け上った

 

「部屋の外に見張りが2人」

 

『中には6人を確認してます』

 

(本来なら、取り逃しの事を想定して信長を外に配置が理想的。けれど)

 

財団から直々にスカウトされてとは言え、雪はまだ心配の念が振り払えない。その為、信二を自分が監視出来る範囲で任務を進める事を決断した

 

『任せて下さい。取り逃した場合は私が足止めをします』

 

「行くわよ。ツキカゲ、ミッションスタート!」

 

合図と共に雪と信二が一瞬で見張りを気絶させる

 

「ここからはスパイスで行くぞ」

 

2人はそれぞれのスパイス、雪は「ソラサキシナモン」を信二は「オールスパイス」を咥える

 

「──キメるぞ!」

 

「── Ready Go!」

 

スパイスの使用でリミッターを完全に外して、ドアを蹴破り突入する

 

「何だ此奴ら!?」

 

「クソ!」

 

黒服の奴らが銃を抜こうとするも

 

「ハァ!」

 

「遅い!」

 

雪の武器は日本刀。傷付ける訳にもいかないので、鞘の部分で殴ってスマホガンによる睡眠弾で眠らせる

 

信二も頭を思いっきり殴り気絶させる。

だが、爪が甘かった。1人だけ、気絶を免れて窓を打ち破って逃げ出した

 

「チッ!私が追い掛け──」

 

雪が追い掛けよとするが、信二の方が言うが早い。雪が言い終わる前に外へ飛び出した

 

 

 

 

 

「ふぅ〜。何とかなった」

 

一方でモモの方は、難なく仕事をこなして一息ついたところだった

 

『こちら濃姫。1人窓からの逃走。百地、今すぐ確保をお願いします』

 

それも束の間の事、濃姫から連絡を受けてモモは「ソラサキシナモン」を咥える

 

「百地了解。──滾らせる!」

 

モモもスパイスの服用で身体強化、五感の鋭さが上がり急いで確保に向かう

 

「百地発見!確保しま……!!」

 

逃走犯を見つけて確保しようと足に力を込めようとすると、上から信二がガラスと共に降って来た

 

「えぇ〜!?」

 

「逃すか!!」

 

着地と同時に足元にあった小石を拾い、大振りで投げつけて気絶させた。

これにて、全員現行犯逮捕した

 

「信長確保。これにて任務完了」

 

面を外すと同時にスパイスの効果も切れる。

上からは厳しい顔をした雪が降りて来た

 

「勝手な行動は辞めなさい」

 

「口に出す暇があるなら体を動かせば?」

 

「何ですって?」

 

「まぁまぁ、師匠に信二さん!落ち着きましょう!後は警察の人達に任せて!」

 

喧嘩になりそうな場面をモモが何とか、割って入り打ち止めた。

お互いに一旦落ち着いて帰る支度をする

 

「帰ったら話しがあるわ」

 

「…あぁ」

 

「ありがとうモモ。お陰で落ち着きを取り戻せたわ」

 

「それは良かったです…」

 

雪からお礼は言われても、今のモモには素直に喜べなかった

 

 

 

 

 

////////

 

Wasabiで先程の任務の反省会を開いていた

 

「さてと、言いたい事は山程あるのだけど」

 

「なら先にこちらから言わせて貰おう」

 

火花を散らす信二と雪に、モモは肩身が狭くして縮こまっていた

 

「すみませんでした!!」

 

「「えっ?」」

 

突然の謝罪に雪とモモはビックリした

 

「ツキカゲでは雪がリーダーでしょ?咄嗟にとはいえ、敵を逃したうえに勝手な行動。もう少し連携を心掛けます」

 

「は、はぁ…」

 

(あの師匠が困惑しています!)

 

「なので解雇だけは勘弁を!言い値で報酬を貰うのも良いけど、やっぱりちゃんと就職したいし…」

 

それを聞いた雪は何とも言えぬ顔をする。変な理由で怒ってるのか、呆れてるのか。色々な感情が入り混じって結果の表情

 

「ま、まぁ次からは気をつける事ね」

 

「イエッサー!」

 

「取り敢えず今日の所は解散。後、スパイスの事も後日改めて聞くから」

 

「あはは…やっぱりか」

 

「お先に失礼します!」

 

信二とモモは2人して店を出る

 

「店の中では緊張しましたよ〜」

 

「ごめんな。変な気を使わせて」

 

「いえいえ!それよりも、あの咄嗟の判断は私も見習わなくちゃ!」

 

「努力家なんだね」

 

かなり喋り込んで何も思わなかったが、2人とも同じ帰り道の事に気付く

 

「信二さんもこっちですか?」

 

「あぁ。あのマンションに引っ越したんだよ」

 

「私もあそこに住んでいます!」

 

「お!それなら朝練も一緒にする?」

 

「はい!信二さんがどうやって訓練をしてるのかも気になります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツキカゲに加盟してすぐの任務は一応成功という形で終わった。信二はこれから、ツキカゲのメンバー達と共にモウリョウと戦って行くのだった




改めてオリ主を簡単にまとめてみました。若干適当な部分もありますけど…

緒方 信二(おがた しんじ)。19歳/165cm/6月23日生まれ

容姿

黒髪短髪で清潔感のある服装。瞳の色は黒だが、スパイス使用時は青色へと変色する

性格

普段は明るい性格で任務でもそれは変わらず。一応本人は任務の時くらいは、分別はしてるつもりでいる


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MISSION:03 オーバーワーク

他小説の方で中々書く時間がありませんでした!
失踪する事は絶対に無いのでそこは大丈夫です!のんびりとやって行きます

ではミッションスタート!


昨日のミッションで、何故信二がスパイスを持っていたのかを雪は問いただす

 

「ぶっちゃけ言ってしまえば、作り方を盗んで自分用に調整して作った」

 

「盗んだんですね…」

 

「そう言う情報は全く耳にしませんでしたけど…」

 

「当たり前だ。全部濃姫が足跡を消してくれたんだから」

 

まるで自分の事の様にドヤ顔で胸を張る

 

「スパイスの効果自体は変わらないけど、誰でも効果を得られる様にした」

 

「それって私達が使っても大丈夫何ですか?」

 

「ひとつ試してみる?」

 

信二は五恵にオールスパイスを一つ渡した

 

「では…」

 

「駄目ですよ五恵ちゃん!ちゃんと調べてから使用して下さい!」

 

「酷い言い草だな」

 

「後、盗んだとは言え元はツキカゲの物。名前も改名しちゃいましょう!『ソラサキオールスパイス』。なんてどうでしょう?」

 

更にはスパイスの名前まで改名する始末

 

「はいはい、スパイスの話はここまで。俺は明日の任務に備えて帰るよ」

 

 

 

 

 

////////

 

次の日の夜

 

「あっち向いてホイ」

 

「明日、近くのスーパーで特売やるので師匠も一緒に来て下さいよ」

 

改造されてあるトラック内で、任務開始前の小休止で各々雑談を楽しむ

 

「温泉いいな〜。裸か…こっちもこれから裸だよ。お風呂じゃないけどね…」

 

モモはスマホで友達と話してる様だ。その内容はモモの誕生日会だった。やりたくても、ツキカゲや修行で遊ぶ余裕なんて何処にも無かった

 

「妙な顔をしてるわね」

 

「友達と何話してるの?」

 

「師匠!?信二さん!?」

 

曇った表情するモモに雪も信二が気付いて声を掛ける。だけど、そのタイミングで小休止終了のアラームが鳴る

 

改めて任務の内容をおさらい

 

「私達を襲った白虎に付着していた砂は、九天サイエンスの施設でしか使われていないものだった」

 

「そこで今夜は施設に侵入。最上階にあるサーバーに向かい、内部のデータを入手します」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「よ〜し!」

 

「モモ、さっきのやり取りは…」

 

「大丈夫です!任務に集中します!」

 

「……」

 

意気込むモモに不安な雪だった

 

「さてと!」

 

「信さん、毎回任務にお面を着けるの?」

 

「着けるけど、何か気になる事でも?」

 

「視界が狭くなって見えにくいんじゃない?メイ達が預かるけどどうする?」

 

「そうだな。顔隠す為だけに被ってただけだから」

 

信二は命に狐のお面を預ける

 

「良し、任務の準備をしますか」

 

気合いを入れる信二だが、モモ達は何か言いたそうな目で見ていた

 

「出てって貰えますか?」

 

「え?何で?」

 

「準備するからに決まってるでしょ!!」

 

『透明クリームを全身に塗りますから外で待機をお願いしますか?』

 

「大丈夫!目を瞑るから!」

 

しかし、楓に蹴り飛ばされて車外へと追い出された

 

「変態のレッテル貼られたく無かったら、大人しくしていて下さい!」

 

「は、はい」

 

『後、信二さんはサポートなので宜しくお願いしますね』

 

「そうなの!?」

 

信二は大人しく準備が出来るのを待ち

 

「入って大丈夫ですよ」

 

変装した楓が出て来た。許可も下りたので入る

 

「お〜、見事に見えない!」

 

モモ達は透明クリームを付けて全身見えない状態。とても便利だがこのアイテムには欠点がある

持続時間が短い事。衣服の上からでも塗れるが、更に時間も短くなるという物。改良して効果時間は伸びてるもののそれでも短い

 

なのでモモ達は、衣服を脱いで裸の状態でクリームを塗ってる訳だ

 

「本当に見えて無いんですよね?」

 

「うん。認識出来てないよ」

 

そう言って近くの椅子に座るのだが

 

「きゃああ!!」

 

「いで!?」

 

急に信二の体が浮き上がり、背中から床に落ちた。

実は、信二が座ろうとした所にモモが腰を掛けていたので、モモは思わず信二を投げ飛ばした

 

「本当に見えて無いんですよね!?」

 

透明で信二からは見えないが、モモの顔はトマトの様に顔を赤くしていた

 

 

 

 

 

それから暫くして、潜入も上手くいき基地で手に入れた情報を整理していた

 

「九天サイエンスから持ち帰ったデータですが、モウリョウの手掛かりは一切見つかりませんでした。盗聴器から拾える会話にも怪しいものはありません」

 

「珍しく外れたねユッキーの勘」

 

「まだ分からないわ。データを見たけれど、九天サイエンスは優良企業過ぎるのよ。まるで、見て下さいと言わんばかりの」

 

「疑うのも良いけど程々にしなよ」

 

「信二さんは呑気ですね」

 

「意外と皆んな辛辣だね」

 

 

 

 

 

////////

 

更に日が経ち、招集が掛かった

 

その内容は薬物関連のものだった。得体の知れない連中が売り捌いてるとの事

 

それでも雪は抜かり無かった

 

「これは濃姫と協力して手に入れた映像です」

 

「この男はマルコネーロと言って、刑務所を出入りを繰り返す危険人物よ」

 

映し出される映像には、金髪のスーツ姿の男だった

 

「それがここ数日、空崎で目撃されている」

 

「間抜けそうな顔」

 

「じゃあこの人を辿って行けば!」

 

「騒ぎの大元が分かるかもだね」

 

その捜索に立候補する者が2人。ローレル組の命と楓だった

 

 

 

 

 

////////

 

(この人を調査する。それが私の役割…)

 

ローレル組のお陰でマルコネーロを見失わずに尾行に成功。シナモン組の雪、モモ、そして信二の3人で追跡していた

 

只今の場所は空崎駅

 

電車が止まり、マルコネーロは車内に乗り込む

 

「追うわ」

 

「りょ、料金は?」

 

「後で払ってるわ」

 

「払ってるんだ。俺、尾行したりする時は全然払ってねーわ」

 

「そこは払いましょうよ…」

 

信二達は屋根の上から車内へと潜入した

 

マルコネーロが座る周辺に民間人の姿はいない。雪はそれを狙う

 

「覚えておきなさい。先手必勝」

 

雪は一気に距離を詰めて、マルコネーロにスマホガンで睡眠弾を撃ち込む

 

「は、速…」

 

「発信機と盗聴器を教えた通りに付けてみなさい」

 

「はい」

 

雪はモモに教育を含めて、発信機などの仕掛けをモモに一任する

 

「なぁ半蔵。そのスマホガン欲しいです」

 

「局に頼む事ね」

 

「帰ったら頼んでみようかな」

 

そんな会話しながら百地を待っていたら、連結部の方で声が聞こえた

 

「百地は作業を続けてなさい」

 

「念の為、俺は後続車の方を見て来るね」

 

「はい」

 

信二と雪が二手に別れて様子を見に行く。

その間に、モモは黙々と作業を続けて終わらせた

 

「ふぅ…良し!師匠出来ま…っ!?」

 

モモが雪を呼ぼうと顔を上げると、筋肉隆々の女性が佇んでいた

 

「オマエ、ツキカゲ?」

 

「違います」

 

即答で笑顔で返事を返すが容赦無かった

 

「イタダキマース!」

 

「っ!?」

 

なんとか女性の間を擦り抜ける

 

「何…っ!?」

 

逃げようとするも腕を掴まれてしまう。そして、その剛腕でモモの首を簡単に持ち上げる

 

「うぅ…!フン!」

 

手に噛み付いて抵抗するも相手は全く痛みを感じていない

 

「クッ!」

 

更に頭に蹴り2撃食らわすもやはり効かない

 

「攻撃が通じない!」

 

両かかとを鳴らして靴先から仕込みナイフを出す。もう一度、ナイフ付きの鋭い蹴りを繰り出すも

 

「なっ!?」

 

それを歯で受け止め噛みちぎり、そしてモモを力強く床へと叩き付ける

 

「がはっ!」

 

「アーン!」

 

口を開ける相手にモモは容赦無く弾丸を浴びせるが

 

「っ!?」

 

全て歯で弾丸を止めて食べてしまう

 

それを見てモモはアクロバットに車内で飛んで離脱する。

自分1人では無理と判断しての行動

 

「逃ゲテモ無駄。ニオイ覚エタ!」

 

「し、師匠!」

 

焦るモモ。師匠の雪を大声で叫んで助けを求める

 

「ここにいる」

 

追って来る敵にモモは拳ひと突きで、その巨体を沈めた

 

「用心棒がいたのか」

 

「し、師匠!この人睡眠弾を食べちゃって!」

 

「モモ!戦闘の時の心構えは?」

 

「冷静に!」

 

「そう。師匠と叫ぶ暇があるなら頭を働かせて。先ずはスパイスをキメる」

 

モモから喝を入れられて落ち着きを取り戻す。そして、スパイスを入れてるケースに手を伸ばすのだが

 

「え?あれ…?無い!」

 

先程、床に叩き付けられた拍子にケースを落としたらしい

 

「無いってコレ?」

 

敵を挟んで向こう側に帰って来た信二の姿。そして手に持っているのは、モモのスパイスが収納してあるケースだった

 

「それです!」

 

「今からそっちに行くよ!」

 

立ち上がろうとする敵を踏み潰してモモの所へと移動する

 

「はい。もう落とすなよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「信長」

 

「こんな狭い場所では刀は振れないでしょ?ここは任せて」

 

信二は2人を下がらせてソラサキオールスパイスを手に取る

 

「── Ready Go!」」

 

スパイスの服用により瞳の色が青へと変色する

 

「逃ガサナイ!」

 

「単純だね!」

 

信二は、張り手だけで敵を壁際まで吹き飛ばした

 

「…信長、作戦がある。誘き寄せて」

 

「師匠!?あ、えっと…信長任せました!」

 

「ふ、2人共!?」

 

雪は外の景色を見て、颯爽と上へと駆け上がる。モモもそれを見て雪の後を追う

 

「ウガー!」

 

「もう!!」

 

雪は緊急停止ボタンを押して電車を強制的に止める。停止ボタンを押した事により、ドアも難無く片手で開けた

 

「こんな所で何するつもり?」

 

「決まってるわ」

 

「ウガァァ!」

 

「フッ!」

 

襲い掛かる相手に対して、狭い通路で信長とモモは端に避けて雪は反対側へと飛んで蹴りを入れる

 

スマホガンの弾を記憶消去に設定し何発か撃ちつけて

 

「ハァッ!」

 

そのまま電車の外へ蹴り落とした。落とした先は川となっておりそのまま沈んで行った

 

最初から川へと落とすのが雪の狙いだった

 

「泳ぐにはいい季節ね」

 

「お〜怖!ゾッとする!」

 

「凄い師匠」

 

「大関だから」

 

「大…関?」

 

「ツキカゲの戦闘力をランクで表したものよ。モモは序二段。因みに、信二さんは横綱」

 

ツキカゲは相撲の番付で強さを表していた。信二は1番上の横綱。雪はその下の大関。モモは下から3番目の序二段なのだ

 

「すみません。助けられっぱなしで…」

 

「フォローするのが役目と言ったでしょ」

 

「師匠〜!」

 

喜びのあまり雪に飛び付くが

 

「任務中」

 

厳しいかな。雪は飛び付くモモの頭を押さえる

 

「それに感謝するなら信二さんでしょ。私は最後小突いただけ」

 

「信二さんありがとうございます!!」

 

「雪はあまり褒めないから、代わりに俺がいっぱい褒めてあげるよ」

 

信二はモモを抱き寄せて頭を優しく撫でる

 

「あ〜気持ちいい…」

 

気持ち良くなってモモはウトウトし始めると

 

「2人共、早いとこ標的の状態を確認後引き上げるわよ」

 

「は、はい!」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

////////

 

それから後日。泳がせたマルコから色々と情報を入手出来た

 

「マルコは現在、ハマにあるイタリア系のシンジゲートに所属している事が分かったわ」

 

「シンジゲートのボスは『エモ・パチーノ』。モウリョウの傘下のようです」

 

「一連の騒ぎは、空崎に進出して来たこの人立ち上がろうとのせい?」

 

『それはまだ不明です。ですが、空崎を脅やかす敵は排除との事です』

 

「おっと、濃姫の声を久々に聞いた気がする」

 

『出番が欲しいです』

 

そして会議は進む。次のミッションは敵アジトの制圧。決行日は29日との事

 

 

 

 

 

各自、決行日まで準備するのだが

 

「信二さん修行に付き合って下さい!」

 

「少しオーバーワークじゃないか?クマが出来てるよ」

 

「あぅ……でも強くなりたいです。今よりももっと…!」

 

「モモ、時には休む事も必要だよ。頑張るのも良いけど、倒れてしまったら余計に迷惑を掛ける恐れがあるよ」

 

「迷惑が掛かる」。それを言われるとどうしようも無かった

 

「修行するなとは言わない。でも心配なんだよ」

 

「信二さん…」

 

「そんな訳で行ってらっしゃい!」

 

「え、何処に?」

 

モモの背中を押す。その先には、モモの友達2人が居た

 

「俺はこれで!」

 

信二はモモの友達に預けてその場を去った

 

 

 

 

 

////////

 

そしてミッション当日

 

「この崖を登るの?」

 

「そうよ。濃姫が割り出したこのルートが最善よ」

 

「お兄さんは遠慮していただきます」

 

信二が回れ右すると、襟首を五恵に掴まれた

 

「信長の自由奔放には疲れる…」

 

「あはは…」

 

楓は呆れ、五恵は苦笑いをする

 

「ほいほい弟子さん達や。そろそろ任務だよ」

 

そんな雑談しながら制圧ミッションが始まる

 

ラッパが建物のブレーカーを落として暗くなった瞬間、それぞれの役割りを果たしながら敵を制圧してゆく

 

信二は、前日まで心配だったモモの様子を横目で伺う

 

(百地の様子は……大丈夫そうだな)

 

モモの動きはベストコンディションの様で、軽やかに敵の攻撃を避けて手刀で気絶させる

 

モモが最後の敵を倒したと同時に部屋に明かりが灯る

 

「五右衛門は玄関を固めてたとして、私と百地が同じくらい倒したか。いい動きするじゃないのよ」

 

「やり遂げた!」

 

「暗闇でもくっきり見える眼鏡を作った局の功績ね」

 

「いえいえ」

 

弟子達や初芽の発明である暗視眼鏡のお陰で楽に任務が終わる

 

「いい具合に料理もあるから、百地の誕生日会でも開くか?」

 

「それナイスアイディア!」

 

「え?」

 

「何驚いてるのよ」

 

「百地の誕生日なら皆んなで祝わないと」

 

信二がモモの誕生日会を開こうと言う意見に、次々と賛成をする。今日はモモの誕生日なのだ

 

「スパイでもお目出度い事は祝って良いのよ」

 

「皆んな…!」

 

今日も楽しい1日が終わる────と思っていた

 

 

 

 

 

「お疲れ様です」

 

「お疲れ様モモちゃん。信二君、ちゃんと家までエスコートしてあげてね」

 

「は〜い。帰ろっか」

 

2人で並んで店を出ると、モモは徐に夜の月を見上げる

 

「生暖かい夜だな…」

 

「確かに今夜は」

 

「ニオイ…ニオイ…!」

 

聞いた事のある声がして2人が振り向くと

 

「「がっ!?」」

 

「イラッシャイマシター!」

 

前日電車内で戦った女がWasabiまで追って来ており、振り抜く一撃で信二とモモは扉を突き破って店へと殴り飛ばされる

 

「いっで…!」

 

「モモちゃん!信二君!」

 

「か、カトリーナさん…避難して下さい」

 

「傭兵ドルテ…!」

 

『傭兵ドルテ。私が持つデータにこの様な姿はありません』

 

傭兵ドルテ。濃姫のデータベースにも存在しない姿。信二も集中力全開でグローブをはめる

 

「モモ、カトリーナさん。下がってて下さい」

 

信二が立とうとするがそれよりもカトリーナが前に出る

 

「ちょ!カトリーナさ──」

 

「ハッ!」

 

襲い掛かるドルテを容易く床へと投げて叩き付ける

 

「カトリーナさん強い!」

 

「元ツキカゲだから」

 

カトリーナは拳銃を構えるが、すぐに起き上がり体勢を整えるが

 

「二度もモモを狙って来るとは…」

 

起き上がった背後には雪が刀を片手に待ち構えていた

 

「ウガァァァ!!」

 

ドルテが雪に狙いを変えるも、刀を抜き一瞬で峰打ちで倒す

 

「モモ、怪我は大丈夫?」

 

「す、凄すぎです…自慢過ぎる師匠です…」

 

その言葉を最後にモモは倒れてしまった

 

 

 

 

 

『うふふ!あはは!』

 

『マテー!』

 

『ん?』

 

楽しく浜辺を走るモモ。そんなモモに後ろから何者かの声がした。

振り返るとドルテが猛ダッシュで追い掛けて来た

 

『あわわわわわわ!!』

 

 

 

 

 

「うわっ!」

 

という夢を見ていた

 

目覚めたモモの目に最初に映ったのは

 

「あれ?師匠…?」

 

「アイツなら倒したわ。此処は私の家。貴方は疲れとダメージで寝込んでいたの」

 

気を失ったモモの事を、ずっと雪は側で看ていてくれた

 

「信二さんからの伝言。『次からは体調管理をしっかりするように』だそうよ」

 

2人からそんな心配をされるが、自分を気にしてくれていた事に嬉しくも感じる

 

「モモ、今回からのシンジゲートはまるで疑いの矛先を逸らす様に湧いて出て来たモウリョウだと思わない?」

 

「じゃあ師匠はまだ…」

 

「えぇ九天サイエンスを疑っているわ。モウリョウそのものか、もしくはその協力者か。私の勘がそう言っている」

 

雪はまだ諦めていなかった。九天サイエンスの事を。そして、自分の勘が何かモウリョウと繋がりがあると予感している

 

「モウリョウの恩恵に賛同し出資して、恩恵を得ている者達も捕まえないと悪を根絶する事は難しい」

 

雪は話しを切り上げて立ち上がる

 

「刀を振って来るわ」

 

「なら私も!しっかりと休みましたので!」

 

「そう、じゃあ付いて来なさい」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠の背中を見て、心を滾らせて仲良く刀を振る師弟コンビだった




GWに入りますので何とか早目に投稿出来ればと思います

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:04 横綱大乱闘

今回はシンドイ…
場面の切り替わりが多いのと、一回の台詞が長すぎ

それと6話は全カットしました。話しの内容が回想ばかりでしたので…

ではミッションスタート!


「濃姫」

 

『どうされましたか?』

 

「暇」

 

『クズの極みですね』

 

今日も相変わらずの返事。信二は家でのんびりと時間を潰していた

 

実は昨日まで、モウリョウと疑わしき人物が学校に転入して来たと言われた

 

『昨日、顔を全く見せなかったんですから今日は行かないといけませんよ』

 

「分かってるよ」

 

信二はベッドから起き上がり、ランニングウェアに着替える。顔を洗い、重りを身に付けて朝の運動として今日も走る

 

全力疾走で

 

 

 

 

 

『信二さん、走る速さが遅くなっています。もっと走って下さい。馬車馬の様に』

 

「酷い!相棒を馬呼びなんて!」

 

そんな訳の分からない会話をしながら走ってると、体操着で前を走る弟子組のモモ達を発見した

 

「弟子組でランニング?」

 

「あ、信二さん!」

 

「…何で顔を出さなかったんですか?色々と情報を掴みつつあるのに」

 

「うっ…!」

 

「ま、まぁまぁフーちゃん」

 

そんな痛い視線に耐えながら信二は、モモ達と一緒に神社まで走る

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「この程度で息が上がるなんて…はぁ…まだまだね…」

 

「フーちゃんも息上がってる」

 

「つ、疲れた演技よ!これも訓練の一環!」

 

モモと楓は息が上がってるが、信二と五恵は息ひとつ乱れてなかった

 

「それにしても信二さん凄いですね。私達と会う前は全力疾走でしたのに」

 

「まぁね。両親に嫌って程に鍛えられたから」

 

「皆んなお弁当にしましょう。五恵ちゃんが作ったのよ」

 

木陰でカトリーナの声がした。レジャーシートとお弁当を広げて待っていていた

 

「信二さんもどうぞ」

 

「いいの?」

 

「はい」

 

「作った本人が言ってるなら甘えようかな」

 

信二もモモ達に混ざってお弁当を戴く事になった

 

「本当は白虎ちゃんも連れて来たかったわ。ずっと基地の中で退屈そうにしてるから」

 

「でも、それもあって初芽と仲良くしてるんだろ?」

 

「それが師匠の凄いところ」

 

「私の師匠だって完璧に白虎を屈服させてるわ」

 

楓の話によると、命の場合は力づくで白虎を捻じ伏せたらしい。そしてそれ以来頭が上がらないとか

 

「でも、初芽さんも白虎ちゃんに蹴られたりしてたのに、あんなに仲良くなるなんて」

 

「あの子の執念みたいなものよ。どんな人とでも絶対に仲良くなるって」

 

「へぇ〜。ならテレジアだっけ?その子と友達になるのも案外早いかもね」

 

「きっと出来ます。今の師匠はテレジアちゃんの事に一生懸命だから」

 

 

 

 

 

////////

 

時間が経ち学校の屋上

 

そこでもモモと雪が修行をしていた。肩に水の入ったコップを置き、腰を低くしてその体勢で維持していた

 

「初芽さんとテレジアちゃんとどうなるんでしょう?」

 

「初芽が本当に友達になろうと思ったら、どんな人でもいつの間にか彼女の友達になってるのよ。私もそうだった」

 

修行をしつつも、初芽とテレジアの今後の関係が気になってしょうがないらしい

 

「武の道しか見えてなかった私に彼女はいつも話しかけて来た、しつこいくらいに。それでいつの間にか…ね。初芽は私にとって初めての友達よ」

 

「そうなんですね」

 

「俺の大切な存在はモモだな」

 

「信二さん!?」

 

不意に背後から信二の声がした。思わず反応してコップを落としてしまった

 

「あっ…」

 

「まだまだねモモ。修行中であっても警戒を怠らない。それに交わされる言葉にも注意しなさい」

 

「はい…。あ、そういえば何で信二さんが?」

 

「基地に居てもやる事無いからね。ちょっと様子を」

 

「それなら鍛錬をすれば良いでは無いですか」

 

信二の言動に雪は少し呆れてる

 

「もう夏ね」

 

そんな雪も外で鳴くセミの声に耳を傾けて季節を感じた。

そして呟く言葉にモモが反応した

 

「あの師匠、夏休みに遊園地とか花火を見に行ったりとかしませんか!」

 

「鍛錬と任務の方が優先よ」

 

「ですよね…。信二さんも師匠と同じ予定ですか?」

 

「ん?確かに任務は優先だけど、遊べる時は遊ぶよ」

 

明らかに落ち込むモモ。それを見た雪は溜め息を吐きつつ

 

「…分かったわ。スケジュールを見直しておくわ」

 

「良いんですか!?やったー!」

 

「何やかんや言って甘いね」

 

「勿論その鍛錬に信二さんも強制参加ですよ」

 

「何で?」

 

 

 

 

 

////////

 

そして放課後

 

初芽はテレジアを連れてケーキを

 

それと同時に弟子組は信二を連れて買い物に出掛けてた。

その買い物は夏に向けての水着選びだった

 

「どうかな?」

 

モモが試着したのは黒のビキニ。少し攻めた水着。だけどそれを見た楓は

 

「35点ね」

 

「微妙!?」

 

かなり辛口の評価だった

 

「モモちは自己分析が出来て無いわ。そんな大人びた水着なんて似合わない」

 

「俺は似合うと思うけどな」

 

「信二さんはモモちに甘いんです!!」

 

信二と楓が言い争ってる中、五恵は自分の水着を選んでいた

 

「可愛い…!」

 

「客観的に見なさいよ」

 

「っ!」

 

何を思ったのか、楓の言葉を聞いて手に取った水着を戻した

 

「あれ着ないの?似合ってるのに」

 

「あ…えっと…あ!バイトの時間。行かないと」

 

何かはぐらかした感じに違う話題へと移した

 

「バイトは重要だもんね。稼がないと」

 

「じゃあまた明日。夏休みは絶対師匠達と海とか行こうね」

 

「師匠と…。うん、行けたらいいね。そしたら私も仲良く…」

 

「えっ?」

 

「ううん何でもない。じゃあ」

 

少し府に落ちない別れ方をした。そんな五恵の背中を見た3人は心配した

 

3人は買い物を終えて、その入れ替わりで一機のドローンが広場上空へ飛んだ

 

そのドローンは、怪しげな薬を散布して空崎の市民を暴走させた

 

 

 

////////

 

(始まったか)

 

別の場所で初芽と行動してるテレジアも、その情報を知った

 

「何かあったんでしょうか?」

 

「きっとこの騒ぎですよ」

 

テレジアが、スマホを操作してその騒ぎとなってる情報を初芽に見せる

 

「っ!?」

 

(どう出る青葉初芽。ツキカゲならば街を守る為に動く筈だ)

 

 

 

 

 

基地でもその騒ぎを聞いて招集していた

 

「一体何が起こっている?」

 

「ねぇ、ごえっちは?初さんは今任務から外れてるけど…」

 

この場にいる者は五恵と初芽を除いた全員。初芽は、テレジアの監視も含め不在なのは同然だが

 

「連絡もつかないとなると…」

 

「五恵ちゃんは私と濃姫で捜すわ。皆んなは街の暴徒の対応を」

 

「分かりました」

 

雪とモモ、命と楓、信二と3手に分かれて騒ぎを収めに出陣する

 

 

 

 

 

(動かない…か。一度離れて様子を見るか)

 

未だにスマホを見てるだけで動かない初芽。一旦自分から離れて出方を伺おうとすると

 

「っ!」

 

初芽は急に立ち上がり、お手洗いへと駆け込んだ

 

「…何だ?」

 

待つ事数分。お手洗いから帰って来た初芽は和かな表情だった

 

「何かあったんですか?」

 

「いえ、大丈夫です。ところで」

 

初芽は、一口コーヒーを飲んで驚くべき事を口にする

 

「私はツキカゲの一員です」

 

思わぬ発言。テレジアも、初芽自身からツキカゲとバラすのは予想外。大きく目を見開き驚くしかなかった

 

「何だと?」

 

「私はツキカゲです。そしてテレちゃんは…モウリョウですよね?」

 

「何故明かした?」

 

「テレちゃんの本当の友達になりたいから。これ以上お腹の探り合いは無意味です」

 

本当の友達になりたいが為に、疑いから確証へと変わる発言をして自らの素性を明かす

 

そして初芽は、大切人──五恵を助ける為にある取り引きを提案する

 

「テレちゃんがモウリョウだのいう事を他の仲間には話しませんし、テレちゃんから私への監視も黙認します」

 

「取り引きになってないな。お前が約束を守る保証が無い。それに私は、モウリョウだと暴露されても構わない」

 

「テレちゃん自身がツキカゲを誘い出す為の存在だからですか?」

 

「どちらにしろ、不確かな取り引きに応じる程私はお人好しでは無い」

 

保証の無い取り引きを素直に受けるテレジアでは無かった。

初芽は仕方ないと思い、バックからアイテムを取り出す。自分がツキカゲのアイテムを開発してる事も喋る

 

「鍵開けのヘアピン。目潰し用のブザー。そして…」

 

「うっ!」

 

「毒も使います」

 

話しで気を取られてる隙に、靴先から毒針をテレジアの足に刺した

 

「貴様!」

 

「神経毒。10分で動けなくなります解毒剤は学校の私のロッカーに。この鍵で開きます」

 

「初芽!」

 

一刻も早く五恵を助けに行きたい初芽は上手く駆け引きで勝利した。テレジアに残された選択肢はただ一つしか無い

 

「やっと名前で呼んでくれましたね。動けなくなったら私がお世話してあげます。ずっとず〜っと友達ですから」

 

「くっ…!」

 

テレジアは鍵を持って店を後にした

 

初芽も少しして店を出た

 

「濃姫!五恵ちゃんの居場所は?」

 

『スマホに情報を送ります。只今、信長と交戦中です』

 

 

 

 

 

////////

 

「うわぁ…マジか」

 

信二がいち早く到着した。だけど到着した場所を見渡すと、そこには床に倒れてるヤクザの群れだった

 

「居た!五右衛門!」

 

「敵…排除!」

 

「うわっちょっ!」

 

見つけるなり早々、鋭い拳が襲い掛かって来る

 

「傷付けたら駄目なんだよな」

 

信二は自分が最も得意とするスタイルで戦う。なるべく傷付けないように、ソファーや机といった物を投げるが五恵の拳ひとつで打ち砕かれる

 

「この動き…まさかスパイスを!」

 

「信長!」

 

「半蔵!」

 

遅れて到着した雪とモモ。2人が加勢してスマホガンで発泡するが

 

「ええ!?何その動き!?」

 

デタラメ動きで簡単に避ける

 

「気を付けろ!スパイスを服用して…だっ!?」

 

油断して背を向けた瞬間、五恵の蹴りで信二が壁へと叩き付けられた

 

「くっ!」

 

今度は刀は抜かず、雪が接近して叩こうとするが逆に返り討ちに遭う。防御して、五恵の攻撃を小さい部屋の中で飛び回り避ける

 

モモも援護しようとスマホガンを向ける

 

「辞めなさい!彼女は!」

 

だがそれよりも五恵の方が仕掛けるのが早く、モモに机を蹴り飛ばす

 

「っ!?…うあっ!?」

 

ギリギリで避けるも、追撃で五恵の蹴りを食らう

 

雪が何とかキャッチして床に叩き付けられる事は無かった

 

「3人でこのザマかよ。どんだけ強いんだ」

 

「五右衛門はランク横綱。ツキカゲの奥の手なのよ」

 

「えっ?大関の師匠より上で、信長と同じ横綱?」

 

「同じと言っても信長とは大違いよ。その場にある物で戦略を立てたり、技術で相手を倒すのが信長の戦闘スタイル。いわば柔とする。だけど五右衛門の場合は、圧倒的な力で敵を倒す。正に剛」

 

「それって…」

 

「半蔵!」

 

話しをさせる暇も無く五恵な拳を振るう。雪はモモを抱え、信二は雪と一緒に後退する

 

空ぶった拳は床に殴り崩壊する

 

「どうする?ここまで五右衛門の力が強いのは予想外だ。こんな人今まで見た事も無い」

 

その時、初芽から通信が入る

 

『半蔵、そこに五右衛門は居ますか?』

 

「いるわ。正気を失って組をひとつ壊滅させた。手加減は出来ない。いや、全力でも止められるかどうか…」

 

『私が止めます。私が説得します!』

 

「分かったわ。ならば、貴女の声が聞こえる様にしておく」

 

雪は通信を切る。作戦は決まった

 

「局が五右衛門を説得する。私達の役目はあの子をこのビルから出さない事。被害を拡大させない」

 

「本気を出して良いのか?」

 

「お願い」

 

「了解!」

 

雪とモモはスパイスを使用する。信二もスパイスにグローブをはめる

 

五恵の追い掛け先行するのはモモ

 

「うおぉぉ!」

 

刀を横に振るが後ろに仰け反り回避する。無防備になったモモに蹴りが届く時、上手く雪がカバーに入り直撃は免れる

 

「ハッ!フッ!」

 

信二はジャンプして天井を足場にしてかかと落としを決める。だがそれも通じず

 

けれど狙いはそれでは無い

 

防御で手が塞がった今、雪が背後に回り込んで缶バッチ型のマイクを貼り付ける

 

『五恵ちゃん聞こえますか?落ち着いて私の声を聞いて下さい』

 

バッチから聴こえるのは初芽の声。先ずはマイク越しで説得を試みる

 

『五恵ちゃんがどうしてそんな状態に陥っているのか私には分かりません。でも、五恵ちゃんが本当はそんな事をする子じゃない事は知っています。五恵ちゃんは優しい子なんです』

 

『困ってる人が居たら助けようとして、傷付いている人は放っておけなくて、悲しんでる人が居たら自分も一緒に悲しんで』

 

暴れる五恵を必死に抑え込もうとする三人だが、圧倒的に力で捻じ伏せられる。培って来た努力も、磨き上げた技術も全て潰される

 

「あがっ!?」

 

「信長!」

 

近接に持ち込んだ信二も、グローブに装着してる鋼ごと手を砕かれた

 

『五恵ちゃんは覚えていますか?私と出会った時の事を。貴女は、害獣として処分されそうになったていたラッパを助けようとしていましたね。人見知りで気が強い訳じゃないのに、大人達から必死に守ろうとして…そんな貴女を私は好きになりました。その時に思ったんです。この子と友達になりたい、きっと一番の友達になれるって』

 

『思った通りでした。貴女は私の弟子で、そして一番の友達になりました。私にとって五恵ちゃんは掛け替えの無い人です。貴女は私にとって誰よりも何よりも大切な人なんです!』

 

ようやく信二達がいる建物に着いた

 

「優しい五恵ちゃんが…私の大切な五恵ちゃんが、傷付く姿も誰かを傷付付ける姿も私は見たくない!」

 

「「「初芽…(初芽さん…)」」」

 

初芽が到着した。だが、3人はもはや満身創痍

 

「私は五恵ちゃんの全部を受け止めます。強くて優しくて恥ずかしがり屋で、家族思いで友達思いで…」

 

未だに自我を失ってる五恵に初芽は近付いて行く。

ゆっくりと歩く

 

「料理が得意で可愛い物が好きで涙脆くて…」

 

「ウゥッ!」

 

「そんな貴女が」

 

初芽を目にしてから五恵の様子に変化が生じる。頭を押さえ苦しむ様子に

 

それを取り払うかの様に初芽の襟首を掴み押し倒す

 

「ウウウゥゥ!!」

 

「そんな…貴女だから…」

 

「アアァァ!!」

 

涙を流し、叫ぶ声と共に握る拳を初芽に向ける時

 

「大好きです」

 

その一言で五恵の手が止まる。手だけじゃ無く、催眠状態からも抜け出した

 

「師匠…?」

 

「五恵ちゃん!」

 

「わ、私何で?何でこんな事を?」

 

「五恵ちゃん正気に戻った…」

 

「みたいだな…」

 

五恵は自分の手と周りの状況を見て察した

 

「ご、ごめんなさいごめんなさい!私なんて事を…!」

 

「いいんです五恵ちゃん」

 

「良くないです。私、強いだけが取り柄なのに…」

 

泣きじゃくる五恵を静かに優しく抱き締めてあやす

 

「私、ツキカゲ失格です!人を襲って仲間を傷付けて…」

 

「もう言わないで下さい」

 

「でも…」

 

「五恵ちゃんは私の大切な人です。本人からでもその悪口を聞きたくありません」

 

「師匠…」

 

 

 

 

 

////////

 

今回の事件についてのニュースを基地で眺めていた

 

報道されてる内容は集団ヒステリーで片付けられていた

 

「この情報操作モウリョウかな?」

 

「恐らくね。そこからモウリョウを辿れないかと調べたけど出来なかったわ」

 

「真実は恐らく自我を奪う薬物。それを吸引されられ無茶な命令を実行した」

 

「目的は謎のまま。でも」

 

信二がパネルを操作してとある画像を映し出す

 

「濃姫に頼んで、監視カメラの映像にネットにアップされた動画を解析したところ」

 

『ドローンを飛ばして、霧状物質を散布する不審な男性を複数の場所で確認しました』

 

「変装ですね。骨格と輪郭が合わない」

 

「分かるのフー?」

 

「変装術を極めた私の目は誤魔化せません!」

 

「だったらこの男を辿るのも無駄かぁ」

 

『それだけではありません。初芽さん』

 

初芽はもう一つの手掛かりとなる情報を映像に出す

 

「五恵ちゃんの血液から、沖縄の一地域にのみ自生する植物の抽出物が発見されました」

 

『これで製造元は分かるかも知れません』

 

「次は沖縄か!頑張って行く…!?いででっ!!」

 

腕を上げて気合いを入れようとすると、雪に手を思いっきり掴まれた

 

「信二さんは暫く任務から外す」

 

「何で!?」

 

「この手は何ですか?」

 

雪が掴む手は金属で固定され、包帯が巻かれてある信二の手だった

 

五恵との一件で骨折とまではいかなかったが、手の甲にヒビが入っていた

 

「最低でも1ヶ月は安静って言ってましたよ」

 

「あっ!モモ!」

 

「なら、怪我を治す事に専念して下さい」

 

「は〜い…」

 

不満があり気だったが素直に雪に従うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、初芽は一時入院してる五恵に会って来た。どんな話しをしていたのかは2人だけの秘密

 

そしてモウリョウ側でも、着々と計画が進められていた




基本的にモモとオリ主を中心に書いてるので、大事な場面以外はカットしていく所存で御座います

後、横綱同士の対決は真っ向からの力勝負は五恵が強いですけど、設定的にはオリ主の方が勝ってる感じです。今回は、話しの都合で敗戦でしたけど。何かもう言い訳にしか聞こえないのでこれで終わり!

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:05 それぞれの出来事

今回は超短めです!
読んる方は少ないですけど、それでも自分は頑張ります!

ではミッションスタート!


「沖縄行きのメンバーですが、念の為空崎に何人か残るべきだと思います。テレちゃんに互いの素性を知られたので、私は残るとして後は…」

 

先日の件で知り得た情報。散布された薬の材料が沖縄にあるとの事。それて沖縄行きのメンバーを決めるのだが

 

「私は行かせて欲しい。空崎外での任務、モモにはいい経験になると思うけどまだ未熟だから監督役をやる」

 

「分かりました。じゃあ雪ちゃんに行ってもらいましょう」

 

メンバーが確定されるのだが、約2名は沖縄に行きたがった

 

「えぇ〜!メイも南国行きたいな〜」

 

「俺だってもっと色んな敵と対峙して、スパイとしての経験を積みたい!」

 

「メイちゃんと私は、こちらでやるべき事をやっておきましょう」

 

「信二さんも怪我…治っていませんね」

 

カトリーナと初芽に言われて、2人は渋々高く挙げた手を引っ込める

 

結局行くメンバーは、雪と弟子3人組の4人に決まった

 

 

 

 

 

////////

 

「はぁ〜…本当に暇だ」

 

「そんな信二さんにお届け物です!」

 

基地で寝転がる信二の元に初芽がやって来た

 

「新しいグローブと頼まれてたスマホとアタッチメントです」

 

壊れたグローブの新調と、ツキカゲメンバーが使う携帯端末を貰った

 

「やった!ありがとう!」

 

「いえいえ。携帯端末に関しては使い方は分かりますか?」

 

「見てたから大体理解してるつもり。ちょっと試し撃ちしてくる!」

 

信二は、新しい玩具を買って貰った子供の様にはしゃいで射撃場へと足を運ぶ

 

そんな上機嫌な信二に水を差す出来事が起きる

 

「おろ?電話だ」

 

早速初芽から貰ったスマホから着信音が鳴る

 

「もしもし?」

 

『皆んな大好き!お母s──』

 

元気いっぱいの若々しく聴こえる声。それを容赦無く信二は通話を切る

 

通話を切ると再度着信音が鳴る

 

「…はい」

 

『皆んn──』

 

「いい年した大人が何を言ってるの?」

 

『はぁ…相変わらずフリーで生計立ててるの?』

 

信二と電話してる相手は信二の母

 

緒方 久子(おがた ひさこ)。

年齢は36歳。

信二に話術や潜入術、といった戦闘以外の技術を教え込んだ人。母でもあり、師匠でもある

 

「今は根を張って落ち着いているよ」

 

『そういう情報を簡単に言っては駄目よ』

 

「忙しい母さんに言ったって意味無いでしょ?」

 

『…そうね。意味なんて無い(・・・・・・・)

 

久子は何か含みのある言い方した。だけど、信二はただの返事と解釈して何も疑いはしなかった

 

『ま、頑張っているのなら良いわ!でもお父さんもそうだけど、久し振りに会いたいわ』

 

「俺も久し振りに会いたいな」

 

『良かった!それなら近い内に会えるわ(・・・・・・・・)

 

「?」

 

『じゃあ、そろそろ切るね!バイバ〜イ!』

 

言うだけ言って久子は通話を切った

 

「結局何が言いたかったんだ?」

 

そんな嵐の様な会話が終わった

 

信二はその後、試し撃ちが終わったらメイ達と混ざって遊んで雪達の帰りを待つ事にした

 

 

 

 

 

////////

 

「二ライカナイからもモウリョウには辿り着けないか」

 

「ダミー企業や架空の人物を幾つも仲介し、植物が流れ着く先が分からないようになっている」

 

沖縄でのミッションは空振りに近い内容だったらしいが

 

「でも五恵ちゃんすっごく活躍したそうですね!良い友達も出来たって」

 

「はい!」

 

五恵の方では何やら良い感じのミッションみたいだった

 

その反対にモモは落ち込んでいた

 

「どうしたんだモモ?いつもの元気は?」

 

「えっ…あ、あはは…はぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この短期間でそれぞれの心に何か感じ取った。そんな日だった




オリ主の母親がチラッと登場しましたけど、後々再度登場しますので容姿に関してはその時に明かします

では、ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:06 始まる戦いの鐘

今回もオリストでまた短くなってしまった。別にオリスト書くのが苦手では無いですけど、逆にダラダラ長く書くのが嫌なだけです

ではミッションスタート!


今日も何気無い日が始まる

 

『モモさん大丈夫でしょうか?』

 

「大丈夫でしょ。朝早くに雪と何処かへ出掛けてたし」

 

『信二さん、モモさんを可愛がっているのでしたら少し心配をしたらどうですか?』

 

「えっ?可愛がっていたか?」

 

AIの濃姫でも、これには流石に呆れてしまう

 

『モモさん、信二さんと話す時に心拍数や体温が上昇しています。師匠である雪さんとは違う意味で懐いていますよ』

 

「そ、そう?まぁ、ツキカゲで一番話す相手と言ったらモモだしな」

 

『鈍感』

 

「鈍感で結構。それより、お昼からWasabiでモウリョウの手掛かりとなるものを調べるからね」

 

『了解』

 

 

 

 

 

そしてお昼

 

Wasabiに向かう途中で一件のメールが届いた

 

「…何だこのアドレス。見た事もない」

 

『ウイルスの心配はありません』

 

開いても大丈夫みたいなのでメールを開くと

 

 

『ココデマツ』

 

 

その一文とマップが添付されていた

 

『罠ですよ』

 

「知ってる。だけどモモ風に言うと『滾ってきた』でしょ?」

 

『そう思うのは信二さんだけです』

 

Wasabiに着き、地下の基地まで移動して戦闘服に着替える。明らかに罠と知ってるので、それなりに準備をする

 

そして最後に、狐の面を被って外へ出ようとすると

 

「あ、信さんじゃん!今日は任務無い筈だよね?どっしたの?」

 

偶々基地に居た命が声を掛けた。勿論、馬鹿正直に言う訳でも無く誤魔化す

 

「別件でね。カトリーナさんに頼まれて」

 

「へぇ〜、じゃあ気を付けて!」

 

命が敬礼をとってその場を立ち去る。そしてその入れ替わりでカトリーナが現れる

 

「あら、どうしたの命ちゃん?」

 

「今信さんを見送りに。カトーさん、信さんに何を頼んだの?」

 

「私別に何も頼んで無いわよ?」

 

「え!?」

 

 

 

 

 

////////

 

信長はマップに示されたポイント──とある廃ビルの建物に着いた

 

「此処か…」

 

『敵反応無しです』

 

「妙だな…」

 

信二が建物内に足を踏み入れた瞬間

 

『信……何者…か……電…』

 

「どうした濃姫?聞こえない」

 

完全なセキリュティを誇る濃姫が通信妨害された。こんな事態は初めての事だ

 

「仕方ない」

 

1階、2階とオールグリーン。3階と階段を上がると、ひとつの机を目にした。そして机の上にはスマホが置いてあった。メッセージ付きで

 

「『アソボ』」

 

スマホに書かれた文字を呟く時

 

「ッ!?」

 

何処からとも無く大量の人形が飛び出した

 

「そんな馬鹿な!?」

(あり得ない!通信を遮断されただけではなく、濃姫の目を欺くなんて!)

 

だがすぐに落ち着きを取り戻す。冷静な対応で正面の人形に狙いを定める。

左手で人形の腕を掴み、地面に叩き付けて捥ぎ取る

 

「うらぁ!」

 

捥ぎ取った腕を振り回し、2体、3体と薙ぎ払う

 

「これで…おわっ!?」

 

今度は銃弾の雨嵐と信長を襲う

 

「無理無理無理無理!!」

 

急いで倒れてる人形を盾にしながら柱に身を潜める。

腰から一丁の銃「HK45」を手に取り柱から狙いを定める

 

「一気に仕留める!」

 

柱から柱へと身を隠す場所を移動しながら銃を速射する

 

装弾数10発全て、人形の関節部分に撃ち抜き破壊する

 

「数が多過ぎる!」

 

どんなに破壊しようと蟻の様に湧いて出て来る

 

スパイス、リップクリーム型爆弾、落ちてる鉄パイプ、服に仕込んでたワイヤーなど様々な物を使うも人形の数は全く減らずだった

 

 

 

 

 

////////

 

信二と人形の戦闘は数時間と続き、日が落ち始めた

 

連続での戦闘に、信長の精神は極限状態に近かった。使える物は全て使い果たし、濃姫はおろか外部からの連絡すら出来ない

 

だけどそんな孤独の時間が終わろうとする

 

「はぁ…はぁ…これで、終わり!」

 

最後の1体、人形の内部のコードを引っこ抜き決着がついた

 

「もう夜じゃん。一体何時間動いたんだ…?」

 

そしてポケットが震える。拾ったスマホからのメールの着信だった

 

「『マダマダ』。何なんだ…」

 

『信長…応…して下さ……』

 

「濃姫か!信長だ!」

 

『良かっ…す。……再起動します』

 

通信は回復したが、イマイチ繋がりが悪いのか濃姫は再起動し始める

 

『信長聞こえますか?』

 

「聞こえる。回復したか」

 

『はい。予想通り罠でしたね。報告しますか?』

 

「いや、これは俺達だけの秘密にしよう。少し調べる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何もかもが謎の連続。今回の件、信二がその正体に気付くのはそう遠くは無い

 

案外すぐだったり




地の文、名前を全部統一させるか、又は任務外、任務時でコードネームを使い分けるかで悩んでいます。今は後者でやっていますが、読んでる方から見ればどっちが読み易いのか…

次回から原作通りモウリョウとの戦いです

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:07 そして人は裏切る

地の文全て名前で統一しました。前回までの話しも全て編集させて頂きました。それだけ

では、ミッションスタート!


8月14日

 

 

 

 

 

「標的の女は17日まで出張のようね」

 

「これがまた行き先がよく分からない」

 

「未だに謎だらけか…」

 

「戻って来たその日に仕掛けて決着よ」

 

軍議の社で近々行うモウリョウ殲滅作戦で話し合っていた

 

「あれ、初さんは?居てくれないと困るよ」

 

「作戦日までに、テレジアを見つけられなかったら彼女の事は諦めて合流してもらう。カトリーナさん、今回の動きはスポンサーである財団にま秘密でお願いします」

 

「情報漏洩の危惧ね」

 

「私達8人だけの秘密よ」

 

この場に居る全員の秘密。そう、この場に居る全員の

 

(いよいよ大勝負!)

 

「モモ気合い入ってんな」

 

「勿論です!モウリョウとの戦いは今回で終わらせます!」

 

「そうか。よしよし」

 

「んふふ♪」

 

 

 

 

 

////////

 

「う〜ん…まだまだカメラの精度が甘いですね。濃姫にも手伝って貰いましょうか」

 

初芽はと言うと、今も街中にドローンを飛ばしてテレジアの行方を追っていた

 

色々と思い悩んでると、車のお腹部分からノックの音がした

 

「初めて一緒に行った場所は?」

 

「動物園です」

 

それが合言葉だったのか、初芽がボタンを押すと車の床下がオープンする。開いたら、五恵がよじ登り車内へと移動する

 

「テレジアちゃん居ました?」

 

「居ませんね。テレちゃん、この街から出て行ってしまったみたいです」

 

「あっ…」

 

そして五恵は気付く。初芽の目の下にクマが出来ている事に

 

「師匠、一度帰ってゆっくり寝ては?」

 

「はい、そうしましょう」

 

初芽は捜索を切り上げて、自分の家に五恵を招き入れる。そして五恵は、師匠の為に手料理を振る舞う

 

「う〜ん!美味しいですねぇ!」

 

「張り切り過ぎちゃいました」

 

「肉じゃががまた味が染みて…これだけでお店が出来ます!」

 

「お、オーバーですよ」

 

五恵の手料理を大袈裟に評価するが、実際に本当に美味しいのだろう

 

「こうやって差し向かいで食べてるから美味しさもひとしおです!」

 

「今度はテレジアちゃんも一緒にご飯を食べましょ」

 

初芽と五恵の絆は更に固くなり輪を広げようとする

 

 

 

 

 

////////

 

8月15日

 

 

 

 

 

雨が降る外を見ながら「あめふれ」を命は歌っていた

 

そこへ買い物から帰って来た楓

 

「今日は特売セールだったんですよ!大収穫です!」

 

「へ、へぇ〜…」

 

命は隠れて食べてたアイスを体の影に隠そうとするが

 

「ああー!師匠何でハーゲン食べてるんですか!?棒アイスあるでしょ!」

 

「いや、こう決戦に向けて気合い入れてる的な…フーにもあげるから!」

 

「…まぁ、決戦前ですから良しとしましょう」

 

怒りはしたがすぐに甘やかしてしまう

 

「モウリョウと決着つければ秋ですね」

 

「やがて冬になり春が来る。季節は巡る」

 

季節の話しになり、そして喋るは未来の話し

 

「師匠は卒業したら、身の振り方はどうするつもり何ですか?」

 

「分っかんないねぇ。いつだって、メイはメイにとって一番居心地がいい場所に居るだけさ」

 

「師匠旅人みたいですね」

 

「旅をするのも良いかもね。オーロラを見にアイルランドとか」

 

「良いですね!私も行きます!アイルランド語で『オマケしてよ』って何て言うのかしら?」

 

そんな楓を見て命がひとつ忠告する

 

「…付いて来てくれるのは嬉しいけど、いつか弟子は独り立ちしなくちゃいけないんだぞ」

 

「大丈夫ですよ。実力的には既に独り立ちしてると言えますし」

 

「本当?」

 

「そうですよ!」

 

自信たっぷりの楓。そんな楓の姿を見て、また雨降る外を見つめる

 

「あらあら、あのこは、ずぶぬれだ〜」

 

不穏な歌を歌いながら

 

 

 

 

 

////////

 

8月16日

 

 

 

 

 

作戦決行の前日でもモモは道場に通い、雪と鍛錬に励む

 

いつも通りのメニューをこなした後は、空崎の工場が一望出来る海沿いを歩く

 

「今のモモなら困難に立ち向かえる地力を付けている」

 

「そこまで行って貰えるなんて滾りっぱなしですよ!」

 

「その思いを弟子にも伝えていくのよ」

 

「うっ…それカトリーナさんにも言われました…」

 

「モモがどんな弟子を取るのか楽しみだわ」

 

雪がモモの弟子を楽しみと同じ様に、モモも雪のこれからの事が気になっていた

 

「師匠は卒業したらどうするんですか?」

 

「勉強をしたいわね。世界は広い。色々と巡ってみたいわ」

 

「勉強か…。師匠は何処までも師匠らしいですね」

 

「変わり者の師匠で苦労をかけるね」

 

「いえ!私の自慢の師匠です!」

 

風が靡く。夜風にも当たりそろそろ戻ろうとする時、モモが夜の空崎を回って帰ろうと誘う

 

バイクで颯爽と走り、雪の背中を見ながら思う

 

(師匠…弟子なんて取らずに私は…。ずっとこうしていたいです)

 

 

 

 

 

////////

 

「足跡は辿れたか?」

 

『駄目ですね。完全に消されてます』

 

信二と濃姫は、前の戦闘で拾ったスマホやメールを基に送り主を追跡出来るか作業していた。だが、ここ何日奮闘したが収穫無しと言ったところだった

 

「もう少し粘ってみよう」

 

『良いのですか?明日は大事な任務が…』

 

「知ってる。だからギリギリまで調べる」

 

それから数時間。時計の針は既に深夜の2時を指していた

 

その頑張りが報われたのか、とある単語に辿り着いた

 

「『ヨハネの黙示録』」

 

『ヨハネの黙示録と言えば、預言書でもあり有名な聖書です』

 

「四騎士、天使のラッパ、ハルマゲドン、666の封印。う〜ん、謎が謎を呼ぶ」

 

『それにひとつ気になる事が。何故、この単語だけが引っ掛かったのかが気掛かりです』

 

追跡が不可能で情報の入手が困難の中、何故かこの単語だけ辿り着いたのだ。明らかに不審過ぎる

 

「『罠』」

 

2人の声が重なる。まぁ当然だろう

 

「モウリョウと何か関係があるのか、はたまた無いのか…」

 

『どちらにしろ警戒は怠らない様に』

 

「了解。今日はもう寝よう。明日に響く」

 

『今日もお疲れ様です』

 

信二はヘッドセットを取り、ベッドへと寝転ぶ

 

不安も抱きつつ朝が迎えようとする

 

 

 

 

 

////////

 

8月17日

 

作戦決行日

 

 

 

 

 

「私と来てもらう」

 

車内で標的の女を睡眠弾で眠らせ捕獲する。作戦通り、雪はそのまま自分達が乗る車に連れ込む

 

車内には雪とモモ、初芽に命。その後ろを楓と五恵が後を追い掛ける

 

アジトに向かう途中、睡眠弾の効き目が無くなったのか女は意識を取り戻した

 

「な、何ですか?貴女達は?」

 

「ツキカゲよ。ようやく会えたわね」

 

「派手な車に乗ってた割に可愛い物買ってるんだね」

 

命は女が買って来たと思われるリンゴを齧っていた

 

「学校に転入して来たテレジアはわざとらしく目立っていた。罠を張ってる恐れがあり、ツキカゲとして迂闊に手を出し難かった。だがお前は完全に不意を打てた。時間を掛けて尋問出来る」

 

「な、何をですか?」

 

「モウリョウについて」

 

「も、モウリョウ?何の話ですか?」

 

雪の話にあくまでシラを切る。だがそんなものは通じない

 

「失礼」

 

モモは女の頬を舐める

 

「僭越ながらバリバリに嘘をついてます」

 

「惚けても無駄よ。お前に付けられた傷が痛みだしてきた。2年前、風の塔に現れた般若面…烏丸文子。いや『天堂久良羅』」

 

「…そうか彼処に居た奴か」

 

流石に観念したのか天堂は本性を表した

 

「あれれ?もう認めちゃんうんだ?」

 

「ここまでしてる以上確証もあるのだろう?名前も知られては惚けても仕方ない」

 

「お前の余裕が、靴の中に入れてあった発信機にあるというのなら既に撤去済みよ」

 

天堂の逃げ道を塞いでゆく。これには天堂も感心する

 

「2年前私が倒した相方の仇打ちという訳か。健気だな」

 

「その余裕がいつまで保つか」

 

「お前の相方は中々の腕だった。それだけに斬った手応えがまだ残っている」

 

「黙れ」

 

2年前の事を引っ張り出して雪を挑発する

 

「今度の相方はこの子か?なら今度は、お前の目の前でこの子を斬ってやろうな」

 

その言葉に雪とは過剰反応して、天堂にスタンガンを食らわす

 

「あまり痛め付けるのは駄目ですよ」

 

「スマートに行こうスマートに。ツキカゲは正義の組織なんだから」

 

初芽はWasabiで待機してるカトリーナに現状報告する

 

「こちら局。ターゲットを確保しました。もうすぐそちらに到着します」

 

『了解。順調ね局』

 

カトリーナはツキカゲと協力してる白虎と共に皆の帰りを待っている

 

そしてお店の前。車にを一旦止め周囲の確認をする

 

『こちら風魔に五右衛門。周囲に人影無し』

 

『信長。同じく上からも人影は見られない』

 

外に居る3人からの報告で車外に出ようとする

 

「立って下さい」

 

「丁寧に扱ってくれ百地…いや源モモ。お前面白い舌を持っているな」

 

「何故名前を知っている?」

 

何故か天堂に身元がバレていた

 

「明日は花火だったな。今日はその前夜祭だ。派手に祝おう」

 

その言葉が合図だったのか、Wasabiが爆発した。しかも外からでは無く、店内からの爆発

 

「師匠!」

 

「そ、そんな…」

 

その場に居た全員あまりの惨劇に絶句する

 

「待って!あれ見て!」

 

命がいち早く気付いた。後ろから、仲間であるモウリョウのトラックが迫って来ていた

 

「罠だ!車を出せ!」

 

全てが天堂の手の平の上だった。わざと自分が捕まりツキカゲを一網打尽にする為の

 

『五右衛門、風魔、信長付いて来て!』

 

「で、でも!」

 

「行かないと!」

 

「ボサッとするな!」

 

「…うん!」

 

車を出して逃げるツキカゲ。だが一向に振り払えない

 

『敵、後ろから付いて来ます。…前方!モウリョウと思しき車両を確認!』

 

濃姫の言う通り、正面に追って来る車と同じ車両が壁となり道を塞いでいる

 

「強行突破します!」

 

車に仕込んであったミサイルで破壊しようとするも、直撃はするも焦げ跡が残る程度で破壊までは至らなかった

 

「チッ!特殊防弾か!」

 

完全に退路を絶たれ挟み込まれた

 

正面には数台のトラックにテレジア、後ろからは先程から追って来たトラックが追い付いた

 

そしてトラックの積荷からは人形が大量に湧き出る

 

「数百年の因果は此処で絶たれる」

 

「黙れ!」

 

「こ、これは師匠…」

 

「雰囲気に飲まれては駄目よモモ。私達で切り抜ければ良いだけの事」

 

機器的状況の中、パニックになるモモを雪が落ち着かせる

 

「この女はメイに任せて!厳重に見張っとく!」

 

「頼んだわ!」

 

命以外のメンバーで外の居る人形の相手をする

 

「キメるわよモモ」

 

「滾ります!」

 

モモと雪はソラサキシナモンを咥え戦闘モードに入る

 

「バックアップは頼んだぞ」

 

『任せて下さい』

 

信二もソラサキオールスパイスを齧りリミッターを外した

 

「これが私の答えだ!初芽!」

 

テレジアもモウリョウで開発したスパイスを口にして、ジャマダハルを構える

 

「私はまだ諦めてませんよ!テレちゃん!」

 

「師匠は私が」

 

初芽と五恵も同じくソラサキスイートフェンネルを齧る。五恵が身構え様とすると背中から電撃が走った

 

「なっ…」

 

「ほい」

 

それは命が五恵の後ろからスタンガンを当て付けた痛み。動きが封じられ、その隙に睡眠弾で撃ち抜き眠らせた

 

「えっ?」

 

「何!?」

 

「師匠…?」

 

この行動には誰も予想がつかなかった。そして敵であったテレジアも驚きを隠せなかった

 

「まぁ、つまりはそういう事だったんで」

 

命はソラサキローレルでスパイスする

 

「刺激的な体験…でしょ!」

 

命は楓を押し倒す

 

初芽は楓の元へ行こうとするが、それをテレジアが鋭い一閃で阻止する。

初芽は一旦その場を離れテレジアを誘き寄せる

 

「師匠!私です!」

 

「別に操られてる訳じゃないんだって。初めからメイは少しずつ情報を流してたんだ。モウリョウ側の内通者として」

 

「嘘だ!」

 

「で、一番美味しいタイミングで皆んなの情報を一斉に売り込んだって訳。信二さんと濃姫の加入はビックリだったけど」

 

全てネタばらし。今までの情報漏洩も全て命が行ったものだった

 

「師匠はそんな事しない!」

 

「メイのモットーはフーが一番良く知ってるでしょ?『風のように自由にやりたいようにやる』それがメイだよ」

 

「この街を愛してる師匠がそんな…」

 

「愛しているよ。この街のカオスを」

 

「えっ…?」

 

「メイはツキカゲじゃ堅っ苦しくてさぁ」

 

一番の信頼を持つ師匠の裏切り。楓の中でそれらは崩れる

 

「ピンチのときにてきに哀願する様な目を向ける奴は…メイの弟子失格だね」

 

スマホガンを楓の額に突き付ける

 

「独り立ち以前の問題だ」

 

引き金を引き、睡眠弾で眠らせた

 

「私も混ぜてもらおうか」

 

自由になった天堂が刀を持ち雪と対峙する

 

「メイはテレジアの加勢に行こっと!」

 

「命!!」

 

人形に阻まれて命を追い掛けられず、雪は天堂へと目を向ける

 

「私が相手だ。さぁ、形勢逆転だな雪」

 

「貴様ら…許さん」

 

雪はソラサキシナモンを手に取る

 

「スパイスの二重掛けだと!?」

 

まだ効果が残ってる状態での二重掛け。更に口にする事で、雪の身体能力は更に上昇する

 

二重掛けした事により両眼を開眼し、目の下に血管が浮き出る

 

「ハァァァッ!!」

 

目にも止まらない速さで火花を散らしながら下から斬り込む。天堂も避けようとするが、あまりの速さに直前で避けるのがやっとだった。

天堂の右肘から血が飛ぶ

 

「チッ…!」

 

天堂は一旦後方へ下がり、代わりに人形達が雪を囲い込む

 

 

 

 

 

「私は負けません。テレちゃんに迷いがある」

 

場所を変えた初芽とテレジアとの勝負。初芽が勝ちテレジアを見下す

 

「ほい、選手交代といこうか」

 

そんな2人に命が乱入する

 

「命ちゃん貴女は!」

 

「メイはメイのまま変わらないよ。テレッちとの戦いで疲れちゃってるね」

 

疲労してる初芽に、容赦無くクナイを踊らせる

 

そんな命の姿を見てテレジアは思う

 

(内通者の情報さえ教えてもらえない…私はそこまで信用されてないのか…)

 

勝負は早くもつく。命の投げたクナイが、初芽の膝上に刺さり後ろへとバランスを崩す

 

後ろは海だ。水中へと沈んでゆく

 

「さよなら初さん」

 

そして、追い討ちとばかりにリップクリーム型の爆弾を投下する

 

大きく爆発し水しぶきが舞い上がる

 

「初芽…」

 

「成仏!さて、次の半蔵は気合い入れないと!」

 

 

 

 

 

一方で人形相手に奮闘するモモ

 

「これで全部!」

 

ようやく最後の一体を撃破した瞬間

 

「あがっ!?」

 

「まだ私がいる」

 

背中から鈍い音がした。刀の柄をモモの背中に減り込ませ一撃で倒す

 

「フッ…半蔵門雪」

 

「モモ!?」

 

「体への弊害も恐れず二重掛けを使うとは大した覚悟だが…私がこうしたらどうする?」

 

倒れてるモモへと刀が迫る。天堂に人質を取られてしまった

 

「し、師匠!私に構わずこいつを!」

 

「健気な弟子だ」

 

天堂の目はモモに向けられてる。それを見て信二は、HK45で静かに狙いを定めるが

 

「撃てるものなら撃ってみろ。道連れで源モモは死ぬがな」

 

死角からの狙撃でモモを救けるつもりだったのが、まるで全て視えてるかの様に信二が隠れてる方へ目を向けられた

 

「どうした緒方信二。撃たないのか?」

 

「クソッ!」

 

「我らモウリョウなら人質ごと撃つ。だがお前達正義の味方は違うな?」

 

雪は悟り、刀を下げる

 

「モウリョウの裁きを受けろ」

 

「し、師匠!!」

 

モモに笑顔を向け、振りかざされる人形の刀を自ら

 

「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

 

雪は体を大きく切り裂かれ、血が大量に噴き出る

 

避けれた筈の攻撃をわざと受けて、雪は崩れ落ちて血の池を作る

 

「な、何で…」

 

「先にお前を殺してしまったな雪」

 

天堂は人質として用済みとなったモモを気絶させ、遠くから聴こえるサイレンの音を聴いて引き上げの準備に入る

 

「帰すか」

 

「撃つか?なら撃ってみろ!」

 

天堂は気絶するモモを掴んで盾とした

 

「さぁ!やれるものなら!!」

 

「…濃姫、角度調整で反射して撃てないか?」

 

『無理です。それより一度撤退を』

 

「でも!」

 

『このままではツキカゲは全滅してしまいます』

 

「…クソッ!」

 

信二は急いでその場から撤退した

 

「逃げたか。まあいい。アイツは奴ら(・・)の獲物だからな」

 

「ボス〜!」

 

「引き上げだ。生きてる奴は回収」

 

天堂は人形達に命令を出して、命とテレジアも後始末をする

 

「拷問に掛け、情報を引き出した後生体実験に回す。スパイスを使っていた素体を研究班が欲しがっていたからな」

 

「この子はメイが飼うから貰いますよ」

 

「そうだったな。それと八千代命。ウェルカムゼリーだ」

 

「喜んで頂きましょう」

 

メイは、なんの躊躇いも無くゼリーという名の毒を飲み込んだ

 

「じゃあねユッキー。悪いとは思ってるよ」

 

倒れて動かない雪に言葉を投げ掛け、楓を抱えてトラックの荷台へと運び込む

 

「もはや遮る影は何も無い。予定通り明日、最終作戦『ゲッカコウ』の始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な思惑が働いたこの日。そして明日、今までの戦いに終わりを告げる




う〜ん…うん

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:08 花は咲いた

最近眠たい…

ではミッションスタート!


「モウリョウは行ったかな?」

 

『はい。如何やら上手く切り抜けれましたね』

 

「急いで戻るよ。雪も心配だ」

 

撤退したと思われた信二だが、実は少し離れた場所で隠れてやり過ごしていた

 

モウリョウがいない事を確認して急いで、暴れた現場に向かう

 

「えっと…居た居た!」

 

信二は倒れてる雪の元へ駆けつける

 

「信二…さん」

 

「ヒュー!あの一撃をギリギリで避けるとは流石だね!」

 

刀で体を裂かれて死んだと思われた雪だが、実は体をズラして致命傷を避けたのだ。

血に関しては、初芽の秘密道具で液体を噴射した

 

「とにかく此処から離れよう。車に移動するよ」

 

「それなら、自動運転装置がついてるからそれを」

 

信二は雪を抱えて車に乗りその場を離れた

 

車は雪の言う通り自動運転で、信二は雪の手当てをしていた

 

「避けたとはいえ傷はあるな。ほら、服を脱いで」

 

着てる戦闘服を脱がして包帯など応急手当てで済ます

 

「一度病院に行こう。そこでちゃんと治療してもらい、準備を整えてから再度モウリョウに仕掛けよう」

 

「そうね。モモ達も何とか…うっ!」

 

「無理すんな」

 

そして病院に着いて色々と検査した結果、体の傷以外にも右脚を杖が必要な程負傷していた

 

「今日のところは病院で休もう。取り敢えず必要な物を持って来るから」

 

「ありがとうございます」

 

疲れた体をベッドで横になって休ませる。時が来るまで、信二は雪の元で見張りも兼ねて見守る

 

「…信二さん、これからモモの事をお願い出来ますか?」

 

急な会話に信二はビックリする。そしてその内容も

 

「ツキカゲを卒業しようと考えているんです」

 

「確かツキカゲを卒業する時って、スパイスの効き目が短くなって来てからが多いって聞いたけど。もしかして…」

 

「えぇ。ツキカゲのサポートとして活動するか、記憶を消して一般人として生活する。私は後者を考えてるの」

 

「でも…。あ、そうだ!俺のスパイスをあげるよ!そうすれば!」

 

信二が使うスパイスは特別に手を加えて作った物。性別問わず、年齢にも制限が無い。それを使えば、いつまでもモモの師匠であり、ツキカゲとして活動出来る

 

それを提案するも雪は断る

 

「その必要は無い」

 

「理由を聞いても?」

 

「お互いに甘えてるのよ。師匠、弟子離れをしないといけない。それがモモの弱点でもあり、私の弱点でも…ね」

 

喋る雪の表情はとても寂しそうだった。それでもいつもの顔になり

 

「でもまだその時では無い。色々と落ち着いたら、改めて頼もうかしら」

 

「分かった。その時は任せてくれ」

 

雪はクシャッとした笑顔をした。そしてスマホの方へ顔を移すと立ち上がった

 

「如何やらモモ達が動き始めたようね」

 

「何で分かるの?また勘ってやつ?」

 

「言ったでしょ。師匠離れ、弟子離れが出来て無いって」

 

雪は信二に手を借りつつ車へと乗り込む

 

そして走る事数十分

 

 

 

 

 

////////

 

「弟子組発見」

 

信二は車をモモ達の側に停車させる

 

「3人で乗り込む気概は買うけど、サポートがいなければ辛いでしょ?」

 

雪は車から降りてモモ達に顔を出す。勿論、雪の安否を確認したモモは大喜びだった

 

「そっちもそっちで元気で何より」

 

車の窓からは信二が顔を覗かせていた

 

「信二さん!もしかして」

 

「そうよ。色々と助けて貰ったのよ」

 

雪は3人の顔を見て確信した

 

「貴女達は3人だけで戦おうと決めたのね。私無しでも脱出も決断もきちんと出来たの…ね」

 

「「「あっ!」」」

 

よろける雪をモモは受け止め、心配の声を上げる

 

「お体は大丈夫何ですか?」

 

「サポートぐらいなら出来る…」

 

「私、師匠と長穂さんの魂と一緒に戦います!」

 

「良かったね。モモち」

 

「ごえっちも絶対大丈夫よ!私だってバカ師匠を止めるから」

 

「皆んなそろそろ出発するぞ」

 

「はい!やろう、皆んな!」

 

 

 

 

 

////////

 

「常日頃モウリョウに出資して下さる協力者の皆様!本日はようこそお集まり下さいました!我々の一大作戦、ゲッカコウを安全なこのシェルターでごゆるりとお楽しみ下さい!」

 

モウリョウの活動拠点である九天サイエンス。そこでは安全なシェルター内で、これから始まる作戦の宴を開いていた。

勿論、そこには命の姿も

 

「面白そうな宴だな天堂」

 

「お前も来ていたのか」

 

「只の見学だ」

 

天堂と喋る相手はスーツを着た男性だった

 

「それよりアイツは殺して無いよな?」

 

「ああ。寧ろあっちから逃げて行った」

 

「そうか。なら帰るとしよう」

 

「最後まで見て行かないのか?」

 

「負け戦に興味は無い」

 

それだけ言うと、その男を九天サイエンスから出て行った

 

 

 

 

 

「目標は散布装置の破壊。リミットは18時。ツキカゲ、ミッションスタート!」

 

雪の合図と共にモノミが上から爆弾を投下、ラッパが発煙筒での誘導させる

 

その間に信二達は九天サイエンスに潜り込む。

潜り込んだ場所は訓練所と思われる所で、そしてテレジアが待ち伏せしていた

 

「テレジアちゃん!」

 

「わざわざ殺されに来るとは!」

 

「時間が無い。此処は任せて!」

 

テレジアの相手は五恵に任せて、他3人は先を急いで横を抜けて行く

 

「──ボルテージマックス!」

 

「──ピリッとするよ!」

 

五恵とテレジア、お互いにスパイスを使っての完全な武装で2人の戦いが始まる

 

急いだ先に待っていたのは裏切り者の命

 

「ようこそモウリョウの巣へ」

 

「此処は私が!」

 

「健闘を祈るよ!」

 

今度は楓が2人を先に行かせて、上の階へと駆け上る

 

「最上階は今シェルター仕様にしたんだ。人間業じゃ入り込めないよモモち、信さん」

 

「それでも私達で止める!」

 

そして

 

「──弟子とのバトルとは刺激的な体験だ!」

 

「──今のアタシは一味違う!」

 

こちらもスパイスで臨戦体勢に入る

 

「師匠は止めます!」

 

「止まる必要ないね!」

 

 

 

 

走る信二とモモの前に大量の人形が立ちはだかる

 

「全開で行くぞ!」

 

「はい!──滾る心で切り抜ける!」

 

「──全力でReady Go!」

 

 

 

 

 

////////

 

「フッ!ウッ!」

 

「ハァッ!!」

 

五恵とテレジアの戦いはヒートアップしていた。両手で持つジャマダハルの連続を仕掛けつつ、五恵も手甲と盾を上手く使い受け流し攻撃へと転じる

 

「フアァァ!!」

 

振り抜く一撃でテレジアのジャマダハルをひとつ破壊する

 

「何故わざわざ武器を狙った!?」

 

「友達になる為に」

 

「お前もか!」

 

今の五恵は初芽と同じく、テレジアと友達となる為拳を振るう

 

「そうだよ、弟子だから」

 

「もう初芽は死んだ!」

 

「師匠が死んだなんて信じない!それに今、私は師匠も一緒に戦っている。思いは同じだから!」

 

「どいつもこいつも…!今更そっちに行けるかぁぁ!!」

 

テレジアの渾身の一撃。踏み込んだ風圧で地面の砂が舞い上がる

 

「大丈夫」

 

「えっ…?」

 

「大丈夫だよ」

 

「なっ!?」

 

テレジアの一撃を五恵は素手で受け止め砕いた

 

「ハァァァ!!」

 

五恵の振り抜いた拳が、テレジアを直撃し大きく体が吹き飛んだ

 

これにて決着がついた。テレジアは倒れ、武器も全て失う

 

「師匠なら全部許すと思うから、私だってそうするよ。師匠の弟子だから」

 

五恵はテレジアの横を歩きつつ言葉を掛ける

 

「全部終わったらまたお話しようテレジアちゃん。ゆっくり少しずつ」

 

五恵が立ち去ってテレジアは呟く

 

「ゆっくり…少しずつ…。私は行っていいのかな?あそこに…」

 

目を閉じて2人の事を思い浮かべる。

そして目を開けると

 

「っ!?」

 

目の前に、天堂が顔を覗き込んでいた

 

「良くないな敵に感化されるとは」

 

「わ、私は…」

 

「赤のゼリーが起動しなかったのは取り除いてもらったのか?馴れ合いおって」

 

天堂は刀を抜き、テレジアの手首を容赦無く切った。切った所から止めどなく出血する

 

「失敗作め。己の選択を後悔しながら死ね。慰めてくれチッチ。育成をミスった」

 

出血して薄れゆく意識の中でテレジアは手を伸ばす。その先にある光りに

 

だがそれも届かず、力無く腕が地面へと垂れる

 

 

 

 

 

「フー始める前に提案があるよ!フーもメイと一緒にモウリョウに入らない?」

 

「入りません」

 

「モウリョウに入れば悪事で凄く稼げるよ!」

 

「魂は売りません」

 

「楽しい事やりたい放題!」

 

「現実を見て下さい!」

 

命の誘いも楓は全て断る

 

「アタシはモウリョウに入る気はありません」

 

「元からメイはフーだけは助けるつもりだったんだ。フーと一緒に居たいもん」

 

「アタシだって師匠の事は今でも大好きです」

 

「だったら…」

 

「だからこそ間違っていれば全力で否定する!それも弟子の務め!」

 

命の言葉を遮り、正しい事をハッキリと口にして命の考えを否定する

 

「ほぅ、生意気過ぎ!躾けてやる!」

 

楓と命の武器は手裏剣とクナイ。物は違えど中距離武器。それを手に持ち強引に近接へと持ち込む

 

「止められるかな?師匠を!」

 

「止める!止めてみせます!」

 

一度距離を置いて、手裏剣とクナイの投擲で牽制し合う

 

命の着地の瞬間を狙い、手裏剣を四方向同時に飛ばすが、煙幕で姿を撹乱させて上手くかわす

 

そして瞬時に、楓の背後を陣取りスマホからワイヤーを飛ばすが、楓は寸前で体を低くして足を払おうとする。だが、そんな事が通じる事も無く難無く避けられた

 

「やるじゃんフー!」

 

お互いに一歩も譲らずの戦いだったが、命は後ろの階段を駆け上りながら、リップクリーム型の爆弾を幾つもばら撒き立ち去って行った

 

「ちょ!?」

 

勿論大量の爆弾をばら撒いたせいで、その階全て吹き飛んだ

 

何とか窓から脱出して命辛々逃げ延びた

 

「痛たた…。無茶苦茶だわ。でも…」

 

 

 

 

 

「ふぅ〜!派手にぶっ飛ばしちゃった〜」

 

命はやり切った感を出しながら、天堂と合流した

 

「で、肝心のゲッカコウどうやって薬を撒くんです?そろそろ教えて下さいよ〜」

 

「もう作動する。これを協力者の前で読み上げてくれ。私はヘリで現地に向かう」

 

命はメモを受け取り意気揚々とスキップして、協力者が待つシェルターへと行く

 

「さあ!いよいよ皆さんに散布装置をご覧頂きましょう!あちらの工場をご覧下さ〜い!」

 

窓の外へ目を向けると、なんの変哲もない工場が変形して、地下から巨大な花が咲いた

 

あまりのデカさに街の皆んなは、その存在に気付く

 

それは勿論ツキカゲもだった

 

『作戦変更よ!全員今すぐ戻りなさい!』

 

「師匠これって…」

 

『そこは只の避難シェルターで囮りだったのよ!今出てきたのが洗脳装置だわ』

 

『やられましたね』

 

「行ったり来たり面倒くせぇな!」

 

急いで外へ出て体勢を再度整える

 

 

 

日が沈む。時間が迫る

 

「運転行けるわね?」

 

「はい。師匠の愛車お借りします!」

 

「行動開始だな」

 

各々の乗り物に跨り、信二も雪と一緒に車に乗ろうとするが

 

「信二さん、モモと一緒に頼めるかしら?」

 

「え?それは構わないが」

 

信二は車から降りてモモに聞いてみる

 

「モモ、済まないが相席良いか?」

 

「構いませんが」

 

「良し!」

 

信二はモモの腰に腕を絡めて、モモを筆頭に走り出す

 

 

 

 

「という訳で、いよいよ時刻となります!危険な楽しみゲッカコウ!前回より凄〜い洗脳薬を市内に散布しちゃいま〜す!」

 

そして始まるその時

 

「それではメイと一緒にカウントダウンをはっじめっましょ〜!」

 

始まる地獄へのカウントダウン。それはもう止められない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「0」

 

そして散布された




次回でモウリョウ編は最終回です

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:09 ツキカゲに祝福あれ

一度データが消えてしまって、駆け足で書いた今日の話。正直、色々と割愛したと思います

ではミッションスタート!


『モノミが空撮した写真と手持ちのデータを照合して、巨大装置のおおよそが把握出来た。制御室を目指して。私は濃姫と解析を続ける』

 

五恵はスマホで空気中の成分を確認する。スマホには「空気正常」と表示されていた

 

それを見て全員マスクを外す

 

「装置の根元近くは薬が来ないみたい」

 

「自分達だけは助かろうって魂胆ね」

 

薬はドンドン辺りに撒かれて行き、花火大会を見に来た街の人達にも影響が出始めた

 

「装置が見えて来たな。皆んなスパイスの準備を!」

 

それぞれ自分達が持つスパイスを齧り、戦闘モードに入る

 

そして装置付近まで来たのだが、目の前には人形の壁が立ち塞がる

 

「ッ!」

 

だがモモは、迷わずアクセルを全開にして進む

 

「お、おい。目の前に人形がいるんだぞ!ぶつかるぞ!!」

 

「このまま突破します!しっかり掴まって下さい!」

 

「駄目です!」

 

「やぁぁぁ!!」

 

勢い良くぶつかった人形達は、全部吹き飛び何処かへと落ちて行った

 

そのまま勢いに乗り、2人はバイクを乗り捨てて装置を繋ぐ配線の上を駆け抜ける

 

「ったく、危ないでしょ!今回は注意で済ましますけど、次は免停ですからね!!」

 

「何緊張感の無い会話してんのよ」

 

後に続いて楓が後ろから付いて来る

 

門は突破した。けれど次の人形が待ち構えていた

 

「どうする?」

 

たじろいで足を止めてると後ろから

 

「皆んな!」

 

「「「うわっ!?」」」

 

五恵が3人を抱き抱えて人形の上を走る

 

「クラッとするよ!」

 

「「「えっ!?」」」

 

「ハァァァ!!」

 

五恵の力で、3人は更に上へと投げて先へ進ませる

 

「ここは任せて!」

 

今は一分一秒が惜しい時。五恵の判断で自分がその場を引き受けて、装置の破壊を3人に託した

 

「いつもありがとう五恵ちゃん」

 

「頼れる横綱だわ」

 

五恵に感謝するも敵は待ってはくれない。既に待ち伏せしていた人形が、3人に向かって来る

 

「食い止めるよ!」

 

「制御室はアタシが!」

 

「モモは俺が守る!」

 

楓が制御室に向かった為、信二とモモがその場の人形を相手にする

 

ようやく装置の中間地点にまで登り詰めたのだが、いかんせん手が足りない

 

それでも諦めずに拳と刀を振るい続け斬り捨て、打ち砕く

 

街の方では着々と薬が散布されて行き、人々が苦しみ、意識を失い始める

 

「はぁ…はぁ…」

 

「これじゃあキリが無い…」

 

切羽詰まるこの状況。体力に自信のある2人が肩で息をする。更にそろそろスパイスの効力も切れる時間だ

 

『源モモ、緒方信二。洗脳が完了するぞ。無力だな』

 

天堂の声が人形から聞こえる。如何やら、何処からか人形を介して信二達の様子を見、通信してる

 

「お前みたいな奴に負けてたまるか!」

 

『無駄な努力のいうものだ』

 

「そんな事あるか!」

 

信二が駆け出して声がする人形を突き上げる

 

「もっともっと滾る!」

 

そしてモモはジャンプして空中で一刀両断にした

 

人形を破壊した事により通信が切れる

 

「ナイス滾り!」

 

「でもまだまだ!」

 

「だよね!」

 

そして通信が切れると同時に、何処かで爆発が起きて装置が止まった

 

その原因を知ったのは、制御室に向かう途中で足止めを食らっていた楓がいち早く気付いた

 

 

 

 

 

「モモ良く吠えた!」

 

「さぁ、鬱憤を晴らすわよ!」

 

楓が見たのは、カトリーナと白虎の姿だった

 

大量に人形が蔓延る中をカトリーナは二丁拳銃で、白虎はスパイスで身体強化してトンファーで薙ぎ倒す

 

「2人共!やっぱりしぶといわね」

 

『これは…どうなっている?』

 

「死すら偽造してこそスパイ」

 

 

 

 

 

思わぬ事態に呆気に取られる天堂に命から緊急の通信が入る

 

『天堂さん大変!大変なんだよ!乾杯したら皆んな倒れちゃって!』

 

「…貴様の仕業だろうが」

 

裏切りを察した天堂はそう命に投げ掛ける

 

『あれ?もう気付いちゃってた?』

 

「毒を飲まされた事を忘れたのか?」

 

こんな時の場合を想定しての九天ゼリー。それを脅しの材料として使うが

 

『命ちゃんには解毒剤を飲ませましたよ』

 

「なっ!青葉初芽!?」

 

増援もだが一番の驚きは初芽が生きていた事。これには流石の天堂も予想外で、驚きの表情を隠せれなかった

 

 

 

 

 

「五恵ちゃんただいま。お待たせです」

 

『えっ…し、師匠?』

 

「はい五恵ちゃん」

 

『い…生きてるって信じてました!!』

 

初芽の声を聞き、生存を確認した五恵は喜びの感情が爆発して周りの人形諸共吹き飛ばした

 

「モウリョウをたらし込んじゃった」

 

『師匠ダブルスパイだったんですね!ビルで戦った時そうじゃないかと思ってました!』

 

楓も命との交戦で何か感じ取っていたようだ。だが、命が二重スパイだった事より楓が食い付いたのは

 

『それで…たらし込んだって何ですか!?』

 

着眼点が間違っていた楓。そんな可愛い弟子にも分かりやすく命が説明する

 

「いや〜苦労したんだよね〜」

 

時は遡り、2年前にモウリョウの基地を見て命は規模の大きさに驚き、それをカトリーナと共に話し合って決めた計画だった

 

自分が裏切り者となって敵の懐に入り込んで一網打尽。

命以外でも良かったが、初芽では不向き、そして雪に関してはその時期は精神的に不安定だった。だが命は違った。自分の性格も考えた結果、自分が一番の適格者だったから危険を承知して受け入れた

 

それからは長い時間を掛けての計画が始まった

 

今回も命が裏で色々と根回しをしていた

 

Wasabiでの爆発も、事前にカトリーナに逃げる様に連絡して白虎と共に上手く脱出した

 

初芽の時もそうだ。テレジアとの交戦の最中でギリギリの所で、その意図を伝えて一芝居協力してくれた。命にやられたフリをして海中に沈んだ時、待機していたカトリーナが用意していた死体のダミーとすり替えて死を偽造

 

そこまでは完璧だったのだが

 

「でもユッキーは誤算だったよ。モモち人質に取られて斬られちゃったから」

 

命も雪が斬られるのは想定外の事態だった

 

「いや〜、全部が狙い通りにはいかないねぇ」

 

『全く…。信二さんが居たから何とかなったものの。後で覚えていなさいよ』

 

「だ、だから去り際に謝ったじゃん!」

 

これにて全ての種は明かされた。命は最初からツキカゲを裏切っていなくて、初芽やカトリーナ達の無事

 

完全に形勢逆転をしたツキカゲ。装置も破壊し、残るは天堂のみとなったが

 

『詰めが甘いぞ命』

 

動かない筈の装置が再度起動して、薬を散布し始めた

 

「はぁ〜!?」

 

「再起動している!?」

 

『お前が得意げに喋っている間に、予備の動力へ切り替えたんだよ』

 

それを最後に天堂は通信機を破壊して強引に通信を切った

 

 

 

「薬の散布も間も無く再開される。さっきまでの蓄積分と合わせて、すぐに洗脳は完了するぞ」

 

 

 

『装置の解析が終了したわ。真上からの爆発物を投下すれば効率的に破壊出来る!』

 

『でも大きな爆発物なんて今は!』

 

『大丈夫あるわよ!それをモノミに投げ込ませれば!』

 

『阻止される前にあの女を排除しなければ!』

 

準備が出来ているが、全員がその場で足止めされていて動けない。命や初芽も、その場からでは遠過ぎて間に合わない。

しかし2人だけ、今も尚天堂の元へ向かう者が居た

 

「それなら任せろ!」

 

「百地、信長行けます!」

 

スマホに搭載されてるワイヤーを巧みに使い、天堂が居る場所まで辿り着いた

 

装置のアンテナと思われる最上部。円形で狭い場所

 

『モモ、剣の技量では及ばない相手よ』

 

「それでもやってみせます」

 

『奴は服の中に暗器を隠し持っている』

 

「気を付けます」

 

信二とモモは、雪の言葉を聞きながらゆっくりと天堂へ近付き拳と刀を構える

 

『あの時右肘を斬ってやったわ』

 

「参考にします」

 

天堂も自らの体に薬を打ち込む

 

『2人共、持てる力の全てで戦いなさい!』

 

「──滾っていきます!!」

 

「── Ready Go!!」

 

信二とモモはスパイスを含んで目の色を青と金に。天堂も液状化した薬を打った事により、スパイスと同様の効果を発揮し目の色が紅に変わる

 

「先手必勝!」

 

最初の攻撃はモモ。天堂も刀で対抗して鍔迫り合う

 

「源モモ、お前の事は調べたぞ。警官の父親が死んでいるな。何故死んだのか我らモウリョウは真相を知っているぞ!」

 

だが今のモモにはそんな精神攻撃は効かない。これも、師匠である雪の鍛錬のお陰

 

「チッ!」

 

「ぶちかます!」

 

信二の猛烈なラッシュ。刀相手に素手は危険が伴うが、グローブに付いてる鋼で天堂の刀を受け流していく

 

「ハァァ!」

 

そこにモモも加わる。任務では共にしていたが、共闘は初めての2人。だけど連携は完璧

 

信二が攻撃を受け流し、モモがその隙に斬り込む

 

「片手とは私も舐められたものだ!」

 

「グッ!?」

 

「先ずは1人」

 

足に蹴りを入れられ、一瞬隙が出来た信二に天堂は容赦無く刀を振り下ろす

 

「片手だって?」

 

信二は包帯で巻かれてある右手で刀をいなした

 

「なっ!?」

 

「ぜりゃあ!」

 

鋭く、重い一撃は天堂の腹を貫く

 

「まだ完全には治っていないけど、痛みだけ我慢すれば殴れない訳では無い」

 

「なるほど…な!」

 

天堂が手を翳すと服の袖から針が飛び出て来た……が、雪の忠告通り注意していた為簡単に避ける事が出来た

 

「フッ!」

 

「っ!?」

 

今度はモモの番。振り上げる刀を見上げる天堂に向かって、モモの胸に隠れ潜んでいたカマリが飛び出す。さっきのお返しと言わんばかりだ

 

怯んだ隙を狙うもそれすら刀で遮る

 

競り合う中で天堂は一度距離を置き、更にもう片腕から今度はワイヤーを出してモモの刀を奪っていく

 

そして流れ込む様にモモの懐に入るが、その前に信二が立ちはだかる

 

「モモ!」

 

「!!」

 

信二はリップクリーム型の爆弾を、自分と天堂の間に投げる

 

「コイツ!」

 

至近距離での爆発。モモは信二が庇っていた為何事も無かったが、信二は軽い火傷を負う。天堂も寸前の所で鉄扇で防御するが、爆発で彼方へと飛ばされる

 

モモは信二の火傷を心配したが、すぐさま自分の刀を拾う。そして、透明クリームで刀の刀身を透明化させて太刀筋を見せなくさせる

 

「これ以上皆んなに酷い事はさせない!」

 

「素敵な事だ。導いてやるのだから!」

 

斬り込むモモにカウンターで蹴り返されて、外へ投げ飛ばされて落ちそうになるが

 

「モモ!」

 

信二がスマホのワイヤーでモモを捕まえて、そのまま天堂の方へ投げ飛ばす

 

「我らが適切に運用してやる!」

 

鋼と刀のぶつかる音が空に鳴り響く

 

「消してやろう、以前のツキカゲ共と同じように!」

 

「時間が無い!これで決めるぞ!」

 

「出来るものなら!」

 

信二は天堂の足の間を滑り込み、モモは斬り付ける天堂の攻撃をかわして弱点ある右肘を、刀の柄で打ち上げる

 

「魂は誰にも消せない!」

 

「図に乗るな!!」

 

すぐさま刀を引っ込めてモモを掴もうとするが

 

「──ッ!?な、何だ!?」

 

「ツキカゲは、皆んなの想いを背負って戦っているんだ!」

 

天堂の動きを封じ込めた。信二が先程滑り込んだ時、天堂の足下にワイヤーを仕掛けた。後はワイヤーを引っ張れば、自動的に天堂の体に巻き付き拘束

 

勿論モモは見逃さなかった。高く跳び、落下の勢いを付けての一閃

 

「ハァッ!」

 

天堂の胸を切り裂いた

 

「あ…あっ……う…」

 

天堂は後退りながら手すりにもたれ掛かる

 

そして残り時間が僅か。丁度上から、モノミの爆発物の投下

 

「「いっけぇぇぇぇ!!」」

 

それに合わせて、信二とモモはリップクリームを投げ飛ばしてくっ付ける

 

そして爆発物は爆弾を付けたまま落下して行き、装置の破壊と共に空高く花火が打ち上がった

 

「残り0.7秒。一応間に合ったね」

 

「はい!」

 

「私が…こんな子供相手に…」

 

「「……」」

 

「フッ…」

 

天堂は何か満足した表情をして、自ら落下した

 

「信二さん」

 

「何?」

 

「何でもありません!」

 

「そう?」

 

モモは笑顔でそう言って、2人仲良くツキカゲの皆んなが待つ場所へと歩いて行った

 

こうしてツキカゲとモウリョウとの、長きに渡る戦いは幕を閉じるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一週間の時が過ぎる




第壱章、これで終わりとか言っていましたがすみません。あと1話ですね。嘘つきました。でもスパイは嘘をつく生き物
次回で、このモウリョウ編は終了します!

ではここまでの拝読ありがとうございます!


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MISSION:10 空崎の夜明け

感想も貰い始めて自分は嬉しいです。この調子で次も頑張ります!

ではミッションスタート!


「さてと……行くか!」

 

信二は何やら大きな荷物を抱えて家を出た

 

「あっ、面を忘れた…」

 

信二はツキカゲの基地に置いてある、狐の面を置き忘れる事に気が付き急いで取りに向かう

 

 

 

「いらっしゃ…信二君。どうしたの?何か忘れ物?」

 

「顔を隠す面を」

 

「待ってて。すぐに取って来るから」

 

カトリーナが信二の面を取りに地下へ移動し、信二は席に座って待つ事にした

 

「はい。気を付けてね」

 

「ありがとうございます」

 

「これから雪ちゃんの道場の方に行くの?」

 

「最後に少しやる事がありまして」

 

「ふふ。じゃあいってらっしゃい!」

 

Wasabiを後にして、次は雪の道場の方へ足を向ける

 

道場に着くと、雪とモモが今日も鍛錬に勤しんでいた

 

「遅かったですね」

 

「忘れ物を取りにWasabiに寄っていたんだ」

 

「信二さんその荷物は?」

 

「これ?カトリーナさんや雪にはもう言ってあるけど、今日から暫く空崎を離れる」

 

信二は空崎外での調査を2、3日前に、カトリーナや師匠組に相談していたのだ

 

「右手の怪我も治ってないのに!?」

 

「軽い軽い!でも、心配してくれてありがとう」

 

「信二さん急いだ方が良いんじゃ。そろそろ時間が」

 

「本当だ。邪魔して悪かったな」

 

道場を出ようとするが信二は足を止めた

 

「ま〜た忘れてた。雪!」

 

「何かしら?」

 

信二は雪を側へ呼んで、モモに聞こえない様に小声で話す

 

「卒業の件どうするつもり?」

 

「もう少し落ち着いたらにするわ。モウリョウでの騒ぎがまだ片付いてないからね」

 

「という事はあと少しは現役でいるんだね。それなら──」

 

信二は雪に通信機を渡す

 

「これに濃姫の全部が入ってる。ツキカゲの基地と連動させれば良いよ」

 

「連動って良いのですか?」

 

「いいの。ツキカゲの為になるなら」

 

「なら、有り難く」

 

「これで濃姫もツキカゲの一部となる」

 

『嫌な言い方ですね』

 

改めてモモと雪に向き直り

 

「いってきます!」

 

信二は敬礼のポーズを取り今度こそ道場を後にした

 

「あっ…」

 

「モモ?」

 

「いえ…」

 

モモは一瞬、亡き父の姿を信二と重ね合わせていた

 

「…さあ師匠!私達も滾って鍛錬頑張りましょう!!」

 

「そうね」

 

(気を付けて下さい)

 

 

 

 

「先ずは何処から探ろうか」

(手掛かりは殆ど無いが調べるしかない)

 

信二は何か秘密にして事を進めていた。誰にも、何も言わずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モウリョウとの戦いは終わりを告げた。だけどツキカゲの活動に終わりは無い。

何故なら────

 

目標(ターゲット)を発見」

 

既に新たな物語が始まっているのだから




これにより、モウリョウ編は終了です。次回からは新章。ヒロインであるモモとの絡みももっと増えると思います。
雪師匠の卒業はまだ見送り

ここまでの拝読ありがとうございました!


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第弐章 ヨハネの黙示録
MISSION:11 新たな脅威


今回から新章です!本来ならリリフレの物語なんですが、オリストで繋げて行きます。リリフレで帰ってくる信や限定キャラに関しては……察して下さい!!
すみません。ゆゆゆとコラボした辺りからサービス終了まで全くしていませんでした!!なので、リリフレがどんな物語かは途中から全く知りません!!

では、新章スタートです…


モウリョウとの決着から一ヶ月

 

ツキカゲの皆んなは日々学業に励み、楽しく日常を過ごし、そして──

 

「半蔵、これより帰還する」

 

『お疲れ様です半蔵』

 

「貴女もね。濃姫」

 

空崎の治安を守るべく夜の街を今日も駆け抜ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学校終わったと思ったら招集かぁ〜」

 

「しょうがないよ。任務は大切だよ」

 

「信二さん中々帰って来ないね」

 

「「?」」

 

ここ最近のモモの様子はこんな感じだ。何かしら信二の名前を呟いては黄昏れる

 

「モモちそればっかりだね…」

 

「もしかして…信さんの事好きとか?」

 

「ブッ!?」

 

「ぎゃぁぁ!!モモちばっちい!!」

 

不意の言葉に動揺して、口にしていた飲み物を思わず命に吹き掛けてしまった

 

「ゲホッ!…ご、ごめんメイちゃん!」

 

汚くなった命の顔を、五恵は苦笑いしながらハンカチで拭いてあげる

 

「まだまだねモモ。毎日鍛錬に励んでるとはいえ、モウリョウを壊滅させて気が緩んでるのかしら?」

 

「し、師匠!?」

 

モモの背後からヌッと雪が現れる

 

「お!ユッキー!」

 

「…少し離れて貰えるかしら?」

 

「酷い!五恵ちゃん〜!」

 

雪の冷たい対応に命は五恵に泣き付く

 

「それよりも、今日はカトリーナさんから緊急の招集が掛かっているのよ。遊んでないで行くわよ」

 

「は、はい!」

 

Wasabiの看板は準備中となっていた。店に入り地下の基地へ進むと、全員軍議の社に集まっていた。

勿論白虎も、そして五恵の弟子としてツキカゲに入ったテレジアもだ

 

「ごめんなさいね。急に呼び出して」

 

「それより何?緊急事態って話しは聞いてたけど?」

 

此処に居る全員呼び出された理由はまだ知らない。それに対して命が聞くと、カトリーナは重い表情を浮かべた

 

「…先ずはこの動画を観てほしいの」

 

カトリーナが操作して皆んなの前で再生する

 

映し出されたのは、顔が布で被せられ座わらせらてる人と、それを4人の黒服が囲い込むものだった

 

『やっほー!ツキカゲの皆さん!元気ですか?』

 

勿論、顔も民族が使ってる様な面をして隠し、声の方も加工されて特定されない様に細工していた

 

『今日もお日柄も良く……というのは置いといて。本題にチャチャっと移りましょうか』

 

「何ですかこの人達は?てか、何でアタシ達の事を!?」

 

『実は……貴女達ツキカゲのお仲間を捕らえまして!いよ!拍手!!』

 

その言葉に全員が驚愕する

 

「だがツキカゲは此処に居るので全員の筈だ」

 

「いえ、テレちゃん。まだ1人だけ居ない人がいます」

 

「それって…!」

 

「はい。モウリョウ壊滅後から空崎を出てったきり帰って来ていない人物。…信二さんです」

 

信二は今現在まで空崎に帰って来ていないのだ。しかも音信不通

 

『勘の良いツキカゲの皆さんなら……此処で座ってる人物は分かりますよね?正解は──』

 

顔に被せていた布を勢い良く脱がすと、そこには見知った人物の姿

 

『ジャジャジャ〜ン!緒方信二君で〜す!』

 

信二がボロボロの姿で意識を失っていた。体中アザだらけで、血を流し、瀕死の状態

 

『見た目は重症の様に見えるけど、実際は打撲程度で済んでるですよね。だけどね〜』

 

黒服はカートを引っ張り出す。そして置かれてるのは大量の拷問道具

 

『その分死にたくても死ねない、痛みと苦痛を味わせたんだ〜!』

 

『その辺にしとけ』

 

もう1人の黒服が止める。代わりに要点を纏める

 

『場所はこの動画と共に添付してある筈だ。ツキカゲ、お前達がコイツを救いたいと思うなら来るんだな。俺達は待っている』

 

そして動画は終わる

 

「場所は何処ですか?」

 

「そうね。場所は……この廃ビルの様ね」

 

「…ありがとうございます」

 

「待ちなさいモモ。まさかとは思うけど」

 

場所を聞いたモモはすぐに立ち上がり、何処かへ行こうとするのだが、雪がそれを止める

 

「信二さんが待っています」

 

「何の策も無し突っ込んで行くのは無謀よ」

 

「ですが!!」

 

「相手は1人ではないのよ!少しは考えなさい!!」

 

「ユッキー…」

 

命は雪の肩に手を置き落ち着かせる

 

「モモちもだよ。気持ちは分かるけど、ユッキーの言う通り得策ではないよ」

 

命の言葉を聞いて、モモは頭を冷やしてその場に座り直す

 

『ひとつ宜しいでしょうか』

 

「どうかしたのかしら?」

 

『実はこの廃ビル、一度信二さんと行ったことがあるのです』

 

「それはいつ?」

 

『モウリョウが実験で街に薬を散布した少しの後ですね』

 

丁度その時期は信二の手が使えない時だった

 

「濃姫、何でその事を報告しなかったの?」

 

『信二さんが必要無いと判断した為です』

 

「必要無い?違うわね。秘密にしたかったの間違いじゃない?」

 

『信二さんの判断は正しいです。それもあって、皆さんは何も気にせずモウリョウと戦え、たった1人の犠牲でこの様に被害を最小限に抑える事が出来たのですから』

 

これまで苦楽を共にして来た相棒とは思えない発言。これには雪も我慢の限界なのか、立ち上がり一言言おうとする時

 

「ふざけないで下さい!!」

 

雪より早くモモが叫ぶ

 

「信二さんは大切な相棒じゃなかったんですか?なのに何でそんな言い方…」

 

『この世は弱肉強食。強い者が生き、弱い者が死ぬ。信二さんは弱かった…只それだけの事』

 

「濃姫…!!」

 

モモの握る拳から血が滲み出る。それを見た五恵は心配の声を上げるも、モモの耳には届いてはいなかった

 

『貴女もですよ源モモ。モウリョウの幹部である天堂久良羅、彼女を倒したからって思い上がらないで下さい』

 

「そんな事は!」

 

『このツキカゲという組織も論外です。学生の集まり。只のごっこ遊び』

 

「ごっこ…遊び…?」

 

『この際ですからハッキリ言いましょう。────私はこんな組織、どうなろうが知った事ではありません』

 

「それ…本気で言ってるの?答えて!濃姫!!」

 

濃姫の言葉に食い付くモモを命と五恵が抑える

 

「「モモち!!」」

 

「2人共離して!信二さんを…ツキカゲを馬鹿にして!!」

 

今のモモは怒りに満ち溢れてる。普段以上の力を出し、命と五恵が引き摺られていく

 

(すっごい力…!)

 

(モモちにこんな力があるなんて…!)

 

「楓ちゃん、2人と一緒にモモちゃんを外へ連れて行って下さい!」

 

「わ、分かりました!」

 

3人掛かりでやっと、モモを軍議の社から追い出した

 

「雪ちゃん、信二さんを救出するのにモモちゃんは作戦から外した方が…」

 

「モモは連れて行く。全員が一丸となって任務に就かないと。問題は…」

 

『…私を任務から外しますのね。良いですよ。こんなお遊びに付き合っていられませんから』

 

「…確かに、数年しか活動してない私達は他から見れば只のごっこ遊びかも知れない。だけど、受け継がれて来た想いは誰よりも強い。濃姫、貴女も任務には参加するのよ」

 

『…了解』

 

その後は、雪と初芽とカトリーナが中心となり信二救出作戦を練り上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日に作戦を皆に伝える。救出は更にその2日後。各々それまで鍛錬や準備に勤しむ

 

モモも大切な人を救出する為に、いつも以上に滾らせていた




ちょっとした話、放送当時は初芽さんが推しでした!ですが最近は、モモの魅力にやっと気付きヒロインとしてやらせて頂きました!

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:12 黙示録の四騎士

かなり時間が空いてしまい申し訳ないです!
今回は救出作戦!

ではミッションスタート!


『こちら局。一階は問題ありません』

 

『千代女。二階も問題無いよ』

 

例の廃ビルに潜入。信二救出作戦が始まっていた

 

「了解。こっちはまだ捜索してるわ」

 

初芽、テレジアと命、楓、白虎に分かれて一階と二階を見張っていた。

そして、本作戦において最も重要な役割りとなった救出編成。雪、モモ、五恵、カトリーナの超攻撃的な人選

 

モウリョウ壊滅以来の総出だった

 

「いない…ですね」

 

「いや、気配は感じる」

 

「上手くこちらに気付かれないよう誤魔化してるわね」

 

「当ったり〜!遅かったよ〜!」

 

突然の第三者の声。正面から、暗闇の中から1人の人物がこちらへ歩いて来るのが分かった

 

「その声のトーン、その体つき。貴女女性ね」

 

「へぇ〜、流石トビー一家ってところね。目の付け所が最高」

 

カトリーナと喋る相手は、動画でも良く喋っていた人物。

黒いスーツに身を包み、おかめの面を付けていた。声も加工では無く、自身の声で喋る

 

「貴女ですか?信長を…信二さんを捕まえたのは?」

 

「正確には私を含めた4人。彼には私達組織にとって大事な人。この気持ち分かる?」

 

「何を言っているのか分かりません」

 

「冷たい。まあ良いわ。案内ついでに全部説明してあげる。その為に、貴女達ツキカゲを呼んだのだから」

 

彼女はルンルンな足取りで更に上へと階段を登る

 

「師匠」

 

「罠…という可能性もあるけど、案内してくれるというのなら好都合」

 

雪達は警戒を最大限までに高めながら彼女の後を追う

 

「こちら半蔵。局、千代女応答して」

 

信二の元へ辿り着けると思い、ツキカゲ全員を招集させて一気に奪還しようと目論むのだが

 

「局?千代女どうしたの?」

 

「半蔵門雪ちゃんだったよね?通信は妨害させてもらってるから意味無いよ」

 

「…どうして名前を」

 

「その返答は間違い。自分の名前当てられても、最後まで足掻かないと。自分で言ってるのと同じ事だよ」

 

階段を上り、最上階である六階へと着いた。別に変わった事も無く、只広々とした暗闇の空間が広がってるだけ

 

「レッツエンジョイ!!」

 

女性が高らかに叫び指を鳴らすと、ライトアップする。そして光りが照らされた事により、初めて自分達が何処に居るのかが初めて分かった

 

「これは…劇場!」

 

雪達が連れて来られたのは、劇場ホールだった

 

「何でビルの中にこんなホールが?」

 

「お客さんをお迎えするんだよ。それなりに準備しないとね」

 

いつの間か舞台上に移動していた

 

「そろそろ自己紹介といこうか!」

 

更にもう一回指を鳴らすと、舞台下から3つ煙りが上がりその中から新たな人物が登場する

 

「先ずは私から。私は戦争の『ウォー』」

 

ウォーの隣りに居る、能面で杖を突いてるご老人が

 

「ワシは飢饉の『ファミン』」

 

もう一人、ウォーとは別のひょっとこのお面を被ってるのが

 

「死の『デス』」

 

そして全員が黒服を着てる中、1人だけ白いスーツを着て目立つ白い面を被った人物

 

「私が支配の『V(ブイ)』」

 

「そんな感じで、私達は『ヨハネ』という組織。他にも下の子は居るけど、今回はこの4人『黙示録の四騎士』のみの参加」

 

「ヨハネ…聞いた事あるわ。女子供、誰彼構わず目的の為なら手段は選ばず始末する。最低な組織よ」

 

「最低とは心外だトビーの娘よ。未来の世界には必要無いと判断したまで」

 

「じゃあ、信二さんも必要無いと判断したから襲ったのですか?」

 

今まで黙っていてモモが口を開く

 

「それは違うぞ。寧ろ必要だからこその実力行使。ウォーが言った通り少し説明しよう」

 

Vは観客席に座り込み、1人で喋りだす

 

「我々は彼を…緒方信二を支配の座に置こうと思うんだ。私も歳だから世代交代みたいなもんだ」

 

「そんなの組織内ですれば…」

 

「色々と事情があるんだよ。それに後の計画に欠かせない逸材」

 

「計画?」

 

「最終戦争──ハルマゲドン」

 

「私達は世界を巻き込んでの戦争を起こすの。ありとあらゆる国がこぞって戦争しまくるよ〜!」

 

世界規模の戦争。そんな事をすれば、その先に待つ結果は目に見えてる筈。なのにそれを敢えて自分達で引き起こそうする

 

「世界を巻き込んでの戦争?馬鹿げてるわ!」

 

「空崎の皆んなだけじゃなくて世界の皆んなまで…。戦争でどれだけの人達が犠牲になると思ってるんですか!100万人ですか?500万、1000万!」

 

「もっとだ。そんな生温い数では無い。言っただろ、世界規模の戦争を起こすと」

 

「先ずはこの空崎から。はぁ…この老体に鞭を打つなんて、相変わらずVは人使いが荒いのう」

 

雪とモモが中心となって情報を得てる中、五恵は信二を静かに探していた

 

(いない。一体何処に…)

 

「そこの黒髪の少女!石川五恵だったね?緒方信二を探してるんだよね?目の動きで分かるよ」

 

目の動きだけで察知されてしまった

 

「では諸君!そろそろ彼に登場してもらおうか!」

 

Vの言葉と共に舞台の幕が開く。開かれたカーテンの奥からは、見るも無残な信二の姿だった

 

「信二さん!!」

 

信二を視界に入れた瞬間、モモの表情は一気に強張った。そして左手にソラサキシナモン、右手は刀へと手を伸ばす

 

「その目…面白い。殺る気に満ち溢れた目だ。ファミン!ウォー!デス!……丁重に」

 

「「「仰せのままに」」」

 

「師匠」

 

「分かっているわ。本番はここからよ!」

 

雪と五恵もスパイスを持つ

 

「──キメるぞ!」

 

「──全力で滾らせる!」

 

「──ピリッとするよ!」

 

3人の五感が鋭くなる。目の色がそれぞれ金と緑色に変わり、身体能力が超人に。そして目に映る物の全てがスローモーションに映る

 

「私が信二君を助けるから、皆んなは他を引き付けて!」

 

「「「了解!」」」

 

カトリーナがV、雪がファミン、モモがデス、五恵がウォーをそれぞれ相手をする事になった

 

 

 

 

 

////////

 

「ツキカゲの奥の手。フフッ…いいデータが取れそうね」

 

「行きます!ハァッ!」

 

五恵が走り出す。構えもせずに立つウォーに向けて拳を振り抜こうとする時、その間に一体の人形が割って入る

 

「えっ!?」

 

人形は五恵の拳を片手で受け止めていた

 

「モウリョウの人形を拝借したの。そこから改造して強化した。まぁ、まだ製作段階。プロトタイプって事ね!」

 

「プロトタイプ…」

 

人形が五恵を宙へ放り投げ、そのままロケットパンチで追い打ちを掛ける

 

「ッ!?」

 

だが、スパイスの効いた五恵には効かない。手甲でガードして致命傷を避けたも、防刃防弾の戦闘服は多少焦げてしまう

 

「危なかった…それにこの人形」

 

「お〜!流石ランク横綱。これぐらいじゃあビクともしないね」

 

「ランクまで…!一体その情報を何処から」

 

「簡単だよ。只単に調べた。それだけだよ?」

 

ウォーはさぞ当たり前の様にツキカゲの情報を得て、タブレットでその情報を五恵に見せつける

 

本名から身長、体重に家族構成。スパイスの情報やアジトの内部も全て、ありとあらゆる情報が事細かに表示されていた

 

「私の役目は戦争を起こさせたりする事。情報を操作して組織内部で争いを起こしたり、ヨハネ全体をサポートとするのが私」

 

「何でそれを私に…」

 

「貴女は死に行く人。別に言ったって意味無いよね」

 

人形が襲い掛かる。そのスペックは従来の人形を超えていた。身軽な動きで連続の打撃攻撃

 

(強い!どんな改造をしたらここまで!)

 

たった一体の人形に五恵が苦戦する。苦戦だけならいい。五恵の攻撃が通らない

 

「なっ!?」

 

焦りを覚えた五恵が大振りに。その瞬間を狙って、人形は五恵の腕を掴んで床に叩き付ける

 

「がはっ!?」

 

「ほら立って。もうちょっと頑張ってくれる?じゃないとこの人形を完璧に造れないから!」

 

倒れる五恵を強引に立たせて再度攻撃を加える

 

 

 

 

 

「良い構えじゃ。地道な鍛錬をひたすら積んでそこまでとは。いやはや、若いって良いのぉ」

 

「御託はいい!」

 

先手必勝の雪。鋭い一閃がファミンの杖とぶつかる

 

(斬れない!只の杖って訳じゃなさそうね!)

 

「この杖は世界で最も硬く重い木材『リグナムバイタ』と言う樹から作られたんじゃ。別名『生命の樹』とも言われおる」

 

「通りで硬い訳ね」

 

「そうそして、硬い分当たれば──」

 

今度はファミンが仕掛ける。刀を薙ぎ払い、雪の首元に杖が減り込む

 

「あっ…!ぐっ…」

 

「当たれば痛みを感じ、傷も付く。そして死ぬ事だって」

 

骨が折れたかの様な錯覚。それぐらいの痛みが雪の首に走る

 

「黙示録で言う飢饉のというのは、それをもたらす事。じゃがこの組織での飢饉の役目は、敵の武器や物資を破壊する事。それが対人との戦闘となると──」

 

雪の溝に、カチ上げられる様に拳が叩き込まれる。その威力に雪の体が宙に浮き天井へと叩き付けられた

 

「──ッ!?」

 

更に天井からの落下で体の中にある空気も全て吐き出される

 

「敵の持つ武器や体を破壊する。要するに蹂躙じゃよ」

 

(ま、マズ…いわ。体に、力が入らな、い。スパイスの効果も切れる…)

 

「哀れじゃ」

 

 

 

 

 

「やあぁぁぁ!!」

 

「…」

 

一ヶ月前と比べてモモの戦闘力は格段に上がっている。

なのに

 

(当たらない!)

 

休む暇を与えず、隙があれば容赦無く斬り付け行くも全てあっさりと避けられている

 

(だったらこれで!)

 

モモはかかとを軽く打ち付け、ブーツの先から仕込みナイフで回し蹴りで牽制する

 

「単純だな」

 

しかし、後退されてしまい回避される。

だがそれも計算の内。避けられるのは最初から分かっていた。だから次の手を考えていて、それを撃ち込む

 

ナイフ付きの蹴りを繰り出した勢いを利用して一回転。回転しながら腰にあるアタッチメントを取り出して、瞬時にスマホと組み合わせる

 

4発。振り向きざまに睡眠弾を撃つ

 

「クッ…」

 

睡眠弾は見事デスの腹を撃ち抜いた

 

フラフラとよろけるデス。完全に無防備な状態をモモは見逃さない

 

「これで終わりです!」

 

最大の一撃を喰らわす為に大きく振り被る。勝利の確信を得た……だがそれが命取りとなった

 

「あう!…な、何?」

 

お腹にチクリと痛みが走る。モモ本人も何が起きたのか分からずじまい。今分かるのは、お腹の痛みと激しい眠気

 

「勝利を確信した瞬間が一番の隙が出来る」

 

それに引き換えデスは睡眠弾を撃たれた筈なのに、元気に起き上がっていた

 

「な…何、で…」

 

「あの程の距離、躱せれないと思ったのか?」

 

デスの手には、先程モモが撃った睡眠弾を持っていた

 

モモが撃った直前、デスは弾を素手で受け止めた。そして一発、指で弾いてツキカゲの戦闘服で露出してる部分のお腹に撃ち込んだ

 

デスは演技していたのだ。モモの油断を誘う為に

 

(ね、眠ったら…だ…め)

 

「眠いか?だが寝るな。もし眠るとしたら、その時君は死ぬ」

 

「ま、負けない…。信二さんを助け出すまでは絶対に!うおぉぉぉ!!」

 

激しく叫び鼓舞する。縦一閃の攻撃にデスは

 

「言った筈だ。単純だと!」

 

デスはモモの刀を両手の平で挟み込んで受け止めた。俗に言う真剣白刃取りだ

 

「白刃取り。この技で君の刀を止めたという事は」

 

「抜けない!」

 

「君の刀は、それ程取るに足らないと言う意味だ」

 

その瞬間モモの刀は折れ、同時に顎を跳ね上げられた

 

 

 

 

 

カトリーナの放つ銃弾が嵐の様にVへと撃ち込まれる

 

「そんな豆鉄砲が効くとでも?」

 

Vは弾丸に合わせてトランプを投げ、弾の軌道をズラして躱していた

 

Vは余裕の表情でトランプをリフルシャッフルでカードを切っていた

 

「マジックの時間と行こうか」

 

Vはトランプを宙へばら撒く。パラパラと落ちる筈なのだが、空中でカードが止まりカトリーナの方へ向けられる

 

「行ってらっしゃい」

 

Vがカトリーナへ指を向けると一斉に飛び出した

 

「撃ち落とす!」

 

カードを弾丸で撃ち落とそうと当てるも、何故か弾丸の方が真っ二つに切れてしまう

 

「!?」

 

急いで舞台の上を走り回る。けれどもカードの枚数は52枚。避けるも体中をカードが切り刻んでいく

 

「やるわね」

 

「私としてはまだまだですけどね!」

 

Vが床に手を付くと、逃げるカトリーナの足下から槍が射出される

 

「下から!?」

 

即座に後ろへと後退するも、追撃に上からナイフの雨が降り落ちる

 

「これでどうかしら!」

 

リップクリーム爆弾を四方八方へばら撒く。爆発と爆風で槍とナイフが吹き飛ばされて、回避に成功した

 

「本当に良い動きだ。……でもそれだけ」

 

爆発の煙りが晴れてカトリーナは気付いた。いつの間にか、足下にカードがばら撒かれている事に

 

「しまっ──

 

何か危険を察知して、その場から逃げようとした瞬間カード1枚1枚が爆発した

 

Vが仕掛けたトランプ爆弾

 

「ここまでの様だな」

 

カトリーナはその場に崩れ落ちる

 

これにより、信二を目の前にして4人のツキカゲは倒された

 

「勝利の上の勝利。それが支配。相手を完膚無きまで叩きのめすのが私の役目で、絶対の勝利条件」

 

「でも子供相手にやり過ぎたかしら?」

 

「そうかのぅ?1人はそう思ってなそうじゃが…」

 

ファミンはデスの方へ目を向ける。

デスは乱暴にモモの頭を掴み上げ、ゴミの様に床へと捨てる

 

「V、何でも良い。銃をくれ」

 

「相変わらずだな」

 

Vはハンカチを取り出して左手を覆い隠すして、ハンカチを除けると弾丸一発は手の平に転がっていた

 

「君ならこれで充分だろ?」

 

「まぁ…な」

 

デスは弾を指に掛けてモモの額へと狙いを定める

 

「死の役目はとにかく相手を殺す事。四騎士の中で誰よりも戦闘力が高く、殺しに関しては無慈悲に。死はそれらを求められる」

 

Vはこの様子をビデオカメラを回して撮っていた

 

「終わりだ」

 

(私…死ぬんだ。何も出来ず、何も守れず、何も助けれず……此処で死ぬんだ)

 

「せめてものの情けだ。痛みも感じさせずに殺す」

 

モモに出来る事は何も無い。抗う力も、助けてくれる仲間もいない。死を覚悟してモモは目を瞑る

 

「安らかに眠れ」

 

デスの指に力が入り、弾を弾こうとする時

 

「──ッ!?」

 

弾を持つ手を何者かに蹴り飛ばされた。弾は床へと音を立てながら転がる

 

「大丈夫かモモ?」

 

「あ……あっ…!」

 

蹴り飛ばした人物はモモを抱き寄せてしっかりと守る。

モモは目にする。その人物は、届きそうで届かなかった人。一時も忘れず、今助けたくてしょうがなかった人

 

それは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、信二さん…!!」

 

緒方信二だった

 

色んな感情が巡りモモは涙を流す

 

「スパイスで強引に体を動かしてるのか。だがスパイスは取り上げた筈だ」

 

「仕込みが大事。今度からは口の中もチェックしとけよ」

 

信二は口の中、歯に少量のスパイスを隠し持っていた。そして、ボロボロの体に鞭打ってスパイスで強引に動かしていた

 

「取り敢えずは通信機を貸してくれ」

 

「は、はい!」

 

モモは涙を拭って自分の通信機を信二に渡した

 

「濃姫聞こえるか?」

 

『ご無沙汰です信二さん』

 

「状況が状況なんでね。手短に話すよ」

 

信二と濃姫が何か話してるが、それを悠長にVは待ってはくれなかった

 

「敵の目の前で通信とは大胆だな!」

 

「モモ!振り落とされるなよ!」

 

「きゃっ!」

 

信二はモモをお姫様抱っこでカードからの攻撃を避ける

 

「ほれほれどうした?」

 

「グッ…!」

 

次々と投げ込まれるカードを避けるので精一杯。しかもスパイスは少量しか含んでないので、そろそろ効果も切れてしまう

 

「そこだ!」

 

カードが信二の脹脛に突き刺さる

 

「信二さん!」

 

そして囲まれた。正面はV、後ろからはウォーとその人形、右からはファミン、左からはデスは迫って来た

 

「鬼ごっこはここまでだ」

 

(3…)

 

「諦めた方が身の為だと思うけど?」

 

(2…)

 

「終いじゃ」

 

(1…)

 

「鬼ごっこは終了」

 

「そうだな。……確かに終了だ!」

 

その時、大きな爆発音と共にビル全体が揺れ動いた。そして床にヒビが入る

 

「さっき通信で濃姫に頼んだんだ。『ビルの柱で脆い部分を解析して爆弾を設置してくれ』って」

 

「この爆発は他のツキカゲの仕業か」

 

「そうだね。爆弾に関しては多分、通信を聴いていた他の皆んなが協力したんだと思うよ」

 

「私が逃すとでも?」

 

「逃すよ。このビルは崩壊する。早くしないと皆んな死んじゃうよ?」

 

それを聞いてVはトランプを懐に仕舞い込む

 

「今回の所は私達の負けだ。全員退くぞ」

 

そしてV達は何処かへと消えた

 

「五恵!動けるか?」

 

「は、はい!何とか!」

 

「雪とカトリーナさんを頼む!」

 

崩壊する廃ビル。崩れ落ちるコンクリートを上手く足場に使って脱出した

 

 

 

 

 

////////

 

「師匠!雪ちゃん!」

 

全員無事で合流すると、初芽が雪とカトリーナの元へ駆け付ける

 

「五恵ちゃんも大丈夫ですか?」

 

「はい。私はまだ軽症ですけどお2人が…」

 

「信さんもモモちもボロボロだね!」

 

「師匠、呑気な事を言ってないで治療するの手伝って下さい!」

 

信二を救出に成功はした。その分代償は凄まじかったが

 

「無事で良かったです」

 

「そうだな」

 

信二は無事で、犠牲者は出さずに済んだ。

それに安堵して、モモは信二の手を握って喜びを噛み締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったの?信二を引き込まなくて」

 

「人形が出来るのが冬だったよな?それに間に合えば問題は無い」

 

「最終戦争ね」

 

Vは懐から白い懐中時計を取り出して時間を確認する

 

「暫くは泳がせる。一時の平和を楽しめツキカゲの諸君」

 

モウリョウとの決着に終わりを告げたが、それは新たな戦いの始まりでもあった




人数多いと中々書きにくいな…

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:13 心配、そして期待

リップクリーム爆弾万能

ミッションスタート!


信二を救出してから翌日。軍議の社では2人を除く全員が集まっていた

 

「信二さんはともかくモモちはどうしたのよ?」

 

「モモなら信二さんのお見舞いに行っているわ」

 

「こんな時に何してんだか…」

 

信二は全身打撲で一ヶ月の入院。モモは信二を心配して学校帰りに病院へ訪れていた

 

「私が許可したのよ。モモにも後で説明するわ。それよりも…」

 

「ヨハネですね。濃姫と協力してみたものの、これといった情報が出て来ませんでした」

 

「そこは心配しないで。保険を掛けて、シン様と財団が情報を入手したのよ」

 

「「シン様??」」

 

カトリーナが言う名前から、信二の事を想像した楓と五恵なのだが

 

「メイの師匠だよ。名前は『高坂信(こうさかしん)』。今思えば師匠と信さん名前が似てるね〜」

 

「怪我で戦線離脱してるけど、いつか戻って来るって言ってたのよ!!」

 

「か、カトーさん話しが逸れてますよ…」

 

熱の入ったカトリーナを落ち着かせて当初の話しに戻る

 

「ヨハネはヨハネの黙示録を題材にそれぞれ役目があるらしいの」

 

「それ、戦ってる最中に聞きました」

 

「その中でも最も危険な『死』。四騎士の中で容赦無く襲って来るのよ。生きていて不思議なくらい」

 

「う〜ん。他に情報ってありますか?」

 

割と単純な情報で命がぼやく

 

「そうねぇ。敵が言っていた計画『最終戦争』については詳しくはまだ…」

 

「師匠、信二さんとの関連はどうですか?」

 

「それはシン様が見つけてくれたわ。あるとすれば『お面』ね」

 

「お面…ですか?」

 

「ヨハネはこれまで、全員が面を被って素顔を晒した事無いのよ。そして信二君も面を被っていた」

 

カトリーナは信二もヨハネの一味だと少し疑うが

 

「けど、敵は信二君を引き込もうとしていた。恐らくだけど『後々向かい入れる為に最初から持たせていた』が正しいかも」

 

「はい!カトリーナさん質問良いですか?」

 

楓が元気に手を挙げて質問の許可を得る

 

「その言い方ですと、敵はかなり前から信二さんと接触していた事になりますが…」

 

「そこら辺は直接本人に聞いた方が良いわね。一応これで全部かしら」

 

「これといった情報は無かったな」

 

「そうね。存在自体上手く隠せてるから中々情報が無いのよ。入手した情報も本当かどうか…」

 

情報もかなり限られて、どれも大したものでも無い。会議の内容は殆ど進展せずに終わる

 

「とにかく今は体を休める事と、次に備えての鍛錬。新しい情報が入手次第また呼び出すわ」

 

「じゃあ解散しましょうか」

 

雪とカトリーナがそう言うと全員席を立つ

 

「雪ちゃんはこれから病院へ?」

 

「ええ。信二さんに説明ついでにお見舞いを」

 

雪はそそくさ病院へと向かって行った

 

「五恵ちゃん、テレちゃんちょっと良いですか?」

 

「どうした初芽?」

 

「実は手伝って貰いたい事がありまして──」

 

 

 

 

 

////////

 

「信二さん、お怪我の具合はどうですか?」

 

「見ての通り」

 

病院にお見舞いに来ていたモモが信二の容体を確認する

 

今の信二は、全身包帯巻きで車椅子生活という少々不慣れな生活を送る事になっていた

 

「林檎剥きますね」

 

静かに林檎の皮を剥く音がする。そして信二はある事を聞いた

 

「濃姫とぶつかったって聞いたよ」

 

「えっ!?聞いたんですか…」

 

「うん、ごめんな。濃姫にはちゃんと説教しとくよ」

 

「私もちゃんと仲良くします…」

 

そんな短い会話を済まして林檎が剥き終わる

 

「信二さん口を開けて下さい。食べさせてあげます」

 

「えっ?別にいいよ。自分で食べるから」

 

あーんを要求するモモなのだが、信二はそれを断る。だけど、今の信二が自分で食べれるとは思えない。その事もありモモはジト目で見つめる

 

「開けて下さい」

 

「い、嫌!」

 

「…では食べてみて下さい」

 

「よ、よ〜し」

 

フォークを林檎に突き刺そうとするが、包帯を撒かれてる上握力が殆ど無い。そして仕舞いには、フォークを皿の上に落としてしまう

 

「そ、そんなに見られては食べにくい…」

 

「嘘ですね。観念して口を開けて下さい」

 

「は〜い」

 

優しく近づけ食べさす。自分から言ったが、食べさすという行為、しかも異性に対しては些か恥ずかしくなる

 

「ど、どうですか//」

 

「どうって言われても。美味しいけど?」

 

「ではドンドン食べて下さい!」

 

 

 

 

 

他愛もない話しをして30分が経過した

 

 

「それでな──」

 

「へぇ〜!そんな事があったんですか?」

 

 

楽しく会話をしてると

 

「随分と楽しそうね」

 

「「雪!?(師匠!?)」」

 

病室のドアの隙間から顔を覗かせて様子を見ていた

 

「何で覗いているんだよ。怖いよ」

 

「元気そうね」

 

「元気だよ」

 

「師匠はどうして?」

 

「ヨハネについて話しをね」

 

今日話した事を雪は説明した

 

 

「大した情報は無いな」

 

「信二さんがちゃんと秘密を話していれば、色々と時間を掛けて調べれましたよ」

 

「うっ…!それは触れてはいけないや〜つ」

 

「それより…信二さんが持つ面について」

 

雪は少々信二の事を疑っていた

 

「面?あれは親から貰った物だよ。素顔を隠すのには最適だって言うから持たされた」

 

「…」

 

「疑う気持ちも分かるけど、本当に何も知らないよ」

 

「別に疑っていないですよ」

 

「信二さんは私達の仲間です!あっ…」

 

モモは窓の外を見て初めて気がつく

 

「もう夕方ですね」

 

「そろそろ帰るわよ。信二さんお気を付けて」

 

「お見舞い毎日行きますから!」

 

「毎日かよ!」

 

 

 

 

 

それから一ヶ月の月日が経つ

 

 

 

 

 

////////

 

「緒方信二!ツキカゲに復帰しました!」

 

10月に入ってようやく退院。Wasabiでそう高らかに宣言した

 

「任務の方はもう大丈夫ですか?」

 

「任務はまだよ。一ヶ月も動いていないとすると、それなりに筋力も落るてるだろうし暫くはサポート役をお願いするわ」

 

「今回は大人しくしとくよ」

 

「あっ!そうです!信二さんに渡したい物があるんです!」

 

初芽は何やら袋に包まれてる物を信二に渡す

 

「以前まで使っていた戦闘服がボロボロでしたので、心機一転で新しく作り直しました!」

 

広げるとツキカゲで使っている戦闘服だった。勿論男性用に手直しはしている

 

「これで信二さんも私達と同じツキカゲの一員です!」

 

「一員だよ!今まで何だと思ってたの!?」

 

「信二さん着てみて下さい!」

 

物凄い期待の目でモモが信二を凝視する

 

「う、うん」

 

新しい戦闘服を着る為に一度部屋の外へ

 

「男性用にアレンジするのに結構難航しましたよ!ですが、五恵ちゃんとテレちゃんの協力で力作が出来ました!」

 

どんな格好なのか全員待ってる事数分

 

「着てみて分かったけど、かなり凝ったデザインだな」

 

「「おぉ〜!!」」

 

モモと命が思わず歓喜の声を上げる

 

元をベースとして、スカートのところはズボン、腰には紫のローブ、スカーフ部分もマントに変化していた

 

「スパイスのケースは腰の後ろで…。あっ、HK45を入れるホルダーまである!」

 

「信二さんのは特別に手の甲の部分の所は、鋼にしてます!えいえい!」

 

「本当だ」

 

拳を打ち付けて甲高い音をカチ鳴らす

 

「勿論!防刃防弾防水にカメラに映らないようしています!」

 

「くっ!早く任務に行きたい…!」

 

「駄目ですよ」

 

「あ痛!?」

 

ワクワクする信二の頭をチョップして落ち着けさせる

 

「これ以上私達に迷惑をかけないで下さい」

 

「雪お前……デレた?」

 

「フフッ……死にたいのですか?」

 

「じ、冗談ですよ…」

 

「では皆さん!今一度」

 

初芽の言葉で全員が信二の方へ向けて一言

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「おかえりなさい!」」」」」




この小説って全4章なんですよね

本文でも出ていました、男性用のツキカゲの戦闘服。友達に描いてもらいました!イメージとしてはこんな感じです


【挿絵表示】


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MISSION:14 命短し恋せよ乙女

ヒロイン力爆発?

ミッションスタートです!


「……」

 

雪は信二と楽しく喋るモモの姿を見ていた

 

「どうしたんですか雪ちゃん?」

 

「別に何も…」

 

「知ってるよ〜。ユッキーはモモちの事をずっと見てるんだよ〜」

 

図星を突かれたのが癪に触ったのか、命に鋭い目を向ける

 

「…信二さんが退院してからモモがずっと付き添っているのよ」

 

「ユッキーに?」

 

「どうして私に付き添うのよ。信二さんよ」

 

「確かにここのところ一緒にいる時間が多いですね」

 

初芽は少し思い出してみる

 

信二がWasabiに来ると真っ先にモモが駆け寄り話しかける。

移動の時や座る時もそうだ。いつだって何かと隣に居る事が多い

 

「何々ユッキー、信さんにやきもち妬いてるの〜?」

 

「違うわ」

 

「これは事件です!正にトライアングルLOVE!」

 

「だから違うわ。後、勝手に巻き込まないでちょうだい」

 

「う〜ん。これは本人に聞いてみるのが一番かもね!」

 

命はノリノリな気分でモモの所へ歩いて行く

 

モモは、信二と五恵とテレジアの4人でカレーを食べていた

 

「モモち、ちょっと良いかな?」

 

「何?」

 

命は手を引いて雪達の元へ

 

そしてそのまま地下へと移動させられて

 

「えっと…これは何でしょう。し、師匠?」

 

「モモ、今後の任務に支障が出ない為にも正直に答えて貰うわ。これは鍛錬じゃない」

 

「モモちって信さんの事絶対好きだよね?てか好きでしょ」

 

「なっ!?///」

 

その一言で顔が一気に真っ赤になる

 

「前々から思ってたんだよね。モモち、かなりベタついているから。見てるこっちまで恥ずかしくなるよ」

 

「あ、あの…師匠…//」

 

「別に恋愛について何も言わないわ。モモも女の子。好きなら好きでいいのよ」

 

「では何で…?」

 

「信二さんの救出作戦の時の事覚えてるわよね?あの時の貴女は、信二さんの事で頭がいっぱいで只々前の事しか見ていなかった」

 

「運が良かったですけど…下手をしたらモモちゃん死んでましたよ」

 

赤くなった顔が青ざめる。そう言われても仕方ないのだ。そのせいもあって、濃姫とぶつかったりしたのだから

 

「すみません…」

 

意気消沈してしまったモモの頭を雪は優しく撫でる

 

「あまり任務中の時は私情を挟まない様にって意味だから。次からは気を付けなさい」

 

「はい!」

 

「それでモモち。……信さんに告ったの?」

 

「──ッ!??!!」

 

再度青から赤に染まる

 

「モモちは忙しいなぁ〜」

 

「そそそそそんな!そもそも私、信二さんの事は何も…///」

 

「そうなの?それなら信二さんは私が貰うわ」

 

サラッとそんな事を雪が呟く

 

「師匠!?」

 

「何かしら?私も信二さんには惹かれてるのよ」

 

雪は立ち上がって再びWasabiに行こうとする

 

「師匠…ど、何処へ行かれるのですか?」

 

恐る恐る聞くと

 

「信二さんの所よ。モモが何もしないなら、私が仕掛けるまでよ」

 

「ま、待って下さいィィィ!!」

 

雪の腰にしがみ付き懇願する

 

「な、何?」

 

「す゛み゛ま゛せ゛ん゛!!嘘をつきました!まだ、自分の気持ちが分からないんですよ!!」

 

「では話しを聞こうではないか!」

 

命は目をキラキラさせていた。完全に玩具を見つけた顔をしている

 

「じ、実はね、信二さんの事が好きかどうかよく分からないの。こう、何というか…心がポワポワするって言うか、落ち着くって言うか…」

 

「なるほど。それが恋心かどうかが判断出来ないと…ふむふむ」

 

初芽は唸る様に考え始めた。でも実際はそんなに考え込む程でも無かった

 

「2、3質問して良いかな?信さんの事をいつの間か考えてる?」

 

「う、うん」

 

「さっきモモちが言ってたけど、本人目の前にするとドキドキとかする?」

 

「する!」

 

「信さんの事を目で追っている?」

 

「メイちゃん凄い。当たってるよ!」

 

こんなに当てはまってるのに、気付いていない事に少々苦笑いする

 

「モモちそれ絶対恋だよ」

 

「こここ恋ぃぃぃぃ!!?」

 

「そ、そんな大声で叫ばなくても…」

 

モモは頬を両手で押さえて熱を上げる

 

「お〜!照れてる照れてる!」

 

「良いですね〜」

 

「モモも大人になったものね」

 

「か、からかわないで下さ〜〜い!!」

 

モモは恥ずかしさのあまり、走り去ってWasabiに向かった

 

「あ〜あ、行っちゃった。最近引っ付いてる理由も聞きたかったのに」

 

「あまり意地悪しては駄目ですよ」

 

「ところでユッキー、信さんに惹かれてるって話し本当?」

 

「嘘よ。見ていられなかったのよ」

 

雪は、モモの本当の気持ちを曝け出す為だけに嘘をついた

 

「ユッキーは弟子思いだね〜」

 

「それは貴女もでしょ?師匠は皆同じ。弟子が可愛くてしょうがないのよ」

 

一方でモモはというと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これからどんな顔をして、信二さんの前に立てばいいの〜〜///)

 

上がるエレベーターの中で、今後の信二との接し方に悶えていた




そういえば、楓ちゃんが地の文ですら登場して無かった。
モモのヒロイン伝説はここから始まる!

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:15 合宿で始まる計画

ちょっと今回は卑猥な事があります。苦手な方は回れ右です。

ではミッションスタート!


「ふぅ…良い空気ですね!」

 

「此処なら思う存分鍛錬に励めそうね」

 

「じゃあ、荷物置いて始めようか」

 

信二達が今居る場所は何処かの山の中

 

何故そんな場所に居るかというと

 

 

 

 

 

////////

 

「合宿ですか?」

 

「そう合宿!」

 

いつもの様に任務を終えて、信二と師匠組とカトリーナ達で集まって話してる時、信二からそんな提案をした

 

「ヨハネの奴らは強い。それに備えての合宿だ。1日でも、ひとつ屋根の下で暮らせばその人の事が良く分かり連携にも繋がる」

 

「まぁ、個人の鍛錬でも限界はあるし」

 

「確かに良い案ですね!」

 

「雪ちゃんはどう思う?」

 

「…信二さん、本当の狙いは何ですか?」

 

行くか行かないかの話の筈が、その合宿で何か意味があると思いそう聞き返す

 

「連携を高めるっていうのは本当だよ。でも雪の言う通り本当の目的は、全員がスパイスの二重掛けが出来るくらいまで成長」

 

「結構無茶苦茶な要求ですね〜」

 

「確かに。でも、それくらいやらないとヨハネに対抗出来ないと考えてるのよね?」

 

「カトリーナさん大正解。実際、俺もそれで捕まった様なもんだし」

 

「そうなりますと、かなり鍛えないといけませんよ」

 

「だから合宿なのね」

 

ヨハネとまともに戦うなら個々の強化が重要になってくる。全員それが理解した為、合宿する事が決まった

 

「でも場所は?」

 

「私の方で用意も出来ますけど」

 

「少し遠くなるが俺がとっておきの場所を用意する」

 

全部信二が用意してくれるらしく、合宿する事を皆んなにも伝えて次の休み

 

 

 

 

 

深夜0時。Wasabiの前で全員が集まっていた

 

「信さんとカトーさんは?」

 

「2人は車の用意をしている。私達は気長に待ちましょう」

 

それから待つ事数分。白の乗用車と黒いアメ車がWasabiの前に停まった

 

「うわぁ…すっごい車。一体誰の?」

 

「これしか無いんだ。文句言うな」

 

アメ車から降りて来たのは信二だ。

信二の乗ってる車はシボレーのインパラ。少し珍しい4ドアの1967年ものだ

 

「命にはこの良さが分からのか」

 

「いやカッコいいとは思うけど」

 

「何故この車なんですか?」

 

「合宿場所が山だからね。それならに装備を整えないと」

 

信二はインパラのトランクを開けると、中には物自体は少ないものの、散弾銃や鉈といった物騒な物が目に映る

 

「あ、一応全部仕事道具だから」

 

「これ全部使うの!?怖!!」

 

「話しは済んだかしら?荷物を運ぶわよ」

 

インパラに信二とモモと命と楓が乗り込み、乗用車はカトリーナが運転して残りの者が乗り込む

 

金曜日も学校はあったのだが、全員休みをとった。日曜日までの2泊3日の合宿だ

 

「ねぇメイちゃんフーちゃん。私助手席に乗っても良い?」

 

「それは構わないけど…」

 

「ありがとう!」

 

ニコやかな笑顔で信二の隣へと座り満足げな顔をする。その様子に楓は

 

「師匠、モモちどうしたんですか?信二さんといつもくっ付いてる感じがしますけど」

 

「フーや五恵ちゃんには言ってなかったけど、モモちって信さんの事好きなんだよ」

 

「へぇ〜………はぁ!?モモちが信二さんの事を…むぐっ!?」

 

「しーっ!声が大きい!!」

 

大声をあげる楓を強引に手で抑え込む。そして2人に聞こえない様に楓の耳元で喋る

 

「フー、デリカシーがないよ。モモちが信さんを好きなら応援しなくちゃ!」

 

「まぁそうですけど…。それよりも」

 

「ん?」

 

「師匠もデリカシーは知っていたんだ」

 

「酷くない!?ねぇ酷くない!?」

 

連呼する命に嫌な顔をしながら車に乗る。そしてようやく出発した

 

 

 

 

 

////////

 

 

そんな訳で金、土、日の3日を使っての強化合宿だ。空崎から約9時間のドライブを経て辿り着いた山奥。そこには大きなログハウスが建てられてあった

 

「射撃場は勿論、広場もあれば裏に滝もある。この自然に囲まれた中で合宿するぞ」

 

「質問良いですか?」

 

五恵が手を挙げて質問する

 

「これは何の為の合宿ですか?ヨハネに対抗する為の合宿って聞いたんですけど」

 

「大雑把に言うと身体強化だ。全員がスパイスの二重掛けに耐えれる体作りを主とする」

 

「「「全員が二重掛け!?」」」

 

弟子3人組が驚く。それもその筈、そもそも二重掛けは体の負担が多い為禁止されてるものだ。それも全員が使う事前提であるのだから

 

「それ程私達ツキカゲは弱く、追い込まれているのよ」

 

「時間が無いんだ。先ずは全員着替えて重りを着けて貰う。1人20kg」

 

「何だ。意外と緩いですね。どんな鍛錬があると思ったら──」

 

「そうか?それなら準備運動は1時間のつもりだったけど倍にするか」

 

楓の一言で準備運動が倍になる。

そしてその準備運動というものが

 

 

 

 

 

「これのどこが準備運動なのよーー!!」

 

カトリーナを除いた全員が山の中を駆け回っていた。みっちり3時間、休む事無く只山を走る

 

山の中は足場がとても悪く、走るのはおろかまともに歩くのも厳しい。だがそれで良い

 

「ファルトレクって言うトレーニング知っているか?」

 

「はい。色々とありますけど、掻い摘んで説明すると、変化に飛んだ地形を走って総合筋力アップ…ですよね?」

 

「ピンポーン。雪正解。そんな訳で俺はもう少しペース上げるから皆んな頑張ってね」

 

足場の悪い山を、簡単に走り平行で走っていた雪達を置いて行った

 

「もお〜!フーのせいでこんなキツい事を3時間もする羽目になったじゃん!」

 

「何だ命?もうギブアップか?この白虎様は全然余裕だぞ!!」

 

白虎も更にペースを上げて雪達を置いて行く

 

「流石と言うべきかしら。私達もグズグズしていられないわ」

 

こうしてかなりキツい準備運動が終了する

 

 

 

 

 

「無理!もう無理!!」

 

「朝食前に毎朝するからな」

 

命は膝を突き絶望を感じていた

 

「次は何をしたら良いの?」

 

「朝食だ!」

 

「うぇっぷ……食欲が…」

 

命は口に手を当てて少々吐き気も感じていた

 

「吐くなよ!朝食も食べないとお昼まで保たないぞ!」

 

「はぁ…師匠少しアッチで休みましょう。食べる時になったら呼んで貰えますか?」

 

「う、うん」

 

楓は命を風の当たる所へ移動させて、残りの人達で朝食を作るのだが

 

「しまった。当番の割り振りをしてなかった」

 

「私が作るわ」

 

「それでしたら私が作ります」

 

「私も参加させて頂きます!五恵ちゃん先生に料理の手ほどきも!」

 

五恵と初芽とカトリーナがが名乗り出てくれたお陰で、思ったより早く決まり準備に取り掛かれた

 

朝食を終えると、それぞれの師匠の元で鍛錬に励む事に。

この自然に囲まれた環境でしか出来無いやり方で

 

 

 

「あばばばば!!」

 

「モモ集中よ」

 

雪とモモは精神統一の為滝行

 

 

 

「フー遅れてるよ。ほらほら頑張って!」

 

「まだまだ行けますよ!!」

 

命と楓は中距離武器であるクナイと手裏剣を更に活かす為、木に彫られてある的に目掛けて投擲する。

それも、木から木へと飛び移りながら

 

 

 

「テレちゃん大丈夫ですか?」

 

「休憩しますか?」

 

「大丈夫だ。続けてくれ」

 

初芽と五恵はテレジアのパワーアップも含めて対人戦をしていた。テレジアの要望もあり加減抜きで相手をしてる為、テレジアの体は既にボロボロだった

 

 

 

 

 

「皆んなお疲れ様。ハウスのすぐ裏に露天風呂があるからゆっくり汗を流すと良いよ」

 

「露天風呂まであるですね。ご、豪華〜…」

 

「信さんも一緒に入る?」

 

悪戯めいた顔をして信二に切り出すが

 

「何でだよ!?…他にする事があるから後で入る」

 

用事があるらしくハウスの外に出る

 

「全く。…さてと」

 

信二はソラサキオールスパイスを二つと、何やら変な装置を体に身に付ける

 

「データ収集の始まりだ」

 

信二はスパイスの二重掛けをして走り出す

 

 

 

 

 

「生き返える〜〜……」

 

「ひゃっほー!ひろ〜〜い!!」

 

「きゃっ!?もうメイちゃん危ないよ!」

 

湯に浸かるモモの目の前に思い切り飛び込む

 

「え〜。こんなに広いんだから楽しまなくちゃ!」

 

「恥ずかしいですからやめて下さい!子供ですか!?」

 

「メイは子供だよ〜」

 

暴れる命と楓を横目にカトリーナは白虎の頭を洗う

 

「2人共静かにね。どう白虎ちゃん気持ち良い?」

 

「気持ち良いぞ〜!」

 

そんな2人を見て、五恵もテレジアの頭を洗わそうと迫る

 

「テレジアちゃんおいで」

 

「じ、自分で洗える!」

 

雪も初芽と一緒になり今日の疲れを癒していた

 

「気持ち良いですね」

 

「そうね」

 

「あっ師匠」

 

「何?」

 

「少し相談したい事がありまして…」

 

もじもじしながら雪にとある相談事をする

 

「師匠!信二さんともっと仲良くなる為にはどうしたら良いでしょうか!」

 

「良いアドバイスをしてあげようではないか」

 

「あ、メイちゃん。アドバイスって?」

 

「そ・れ・は」

 

真剣に命の言葉に耳を貸し、雪と初芽もどんなアドバイスをするのかと興味を示していた

 

だが命の性格上ロクな事を言わない

 

「SEXすれば仲良く…いや、それ以上の関係になれるよ!」

 

「せせせせッッッッ!?///」

 

「はぁ…」

 

「プッ…」

 

モモはあわあわと慌てて、雪はやっぱりといった表情、初芽は笑いを堪えていた

 

命はというと、悪い顔をして右手で丸を作り、その丸に左手の人差し指で抜き差ししていた。

なんとも卑猥な表現である

 

「SEXって命貴女ね」

 

「そうです師匠!言って下さい!」

 

「モモには早すぎるわ」

 

「違います!そうではないです!!」

 

「モモちはもっと積極的にならないと!」

 

命はモモに抱き付き体を弄り始める

 

「ひゃっ!?ちょっとメイちゃん!」

 

「モモちだってスタイル良いんだから、信さんをメロメロにしちゃえばいいんだよ!」

 

胸を揉み、クリクリと弄る

 

「ちょ!待って!…ひゃう♡」

 

「ほれほれ〜。モモちはココが弱いのかなぁ〜?」

 

普段味わった事の無い感覚が襲い、頭が真っ白になり始める。それは快楽だ

 

「んぁっ♡はぁっ♡」

 

快楽に流れつつあるモモの体に変化が訪れ始める

 

小さく痙攣し、手足に力が入らず、顔もだらしなく口を開けて蕩けた表情へ

 

そして

 

「〜〜〜っ♡」

 

モモの意識が一瞬で飛ぶ

 

「あれ〜?もうイっちゃったの?胸だけで感じるなんて舌と同じで敏感?」

 

モモの目は完全に泳いでいて、意識も朦朧としていた

 

「あへぇ……♡」

 

「どう?まだほんの序の口だよ。これよりも刺激的な体験…してみる?」

 

「あっ♡しょこはだめぇ〜…♡」

 

墜ちる寸前のモモに、遂に下にまで手を伸ばそうとする時

 

「このエロ師匠!!」

 

「あ痛!?」

 

強烈なチョップが脳天に直撃した

 

「ばば、馬鹿な事をしないで下さい!///」

 

「これからがムラムラするところだったのにぃ〜」

 

「おっさんですか!?」

 

楓は首を絞めながらモモから命を引き剥がす

 

「ほらモモ、大丈夫?」

 

「うぅ〜師匠〜!何か…何か大事なものを失いそうになりました〜…」

 

涙目になりながら雪に抱き付き、雪は優しくなだめる

 

「そろそろ上がりましょう。信二さんも待っていますし」

 

「そうね。それとモモ」

 

湯船から出る直前に雪は大事な事を言う

 

「想いを伝えるなら早い方がいい。私達がしてる事は、いつ死んでもおかしくは無いのだから…」

 

それを語る雪の表情は変わらないが、声色が少し寂しげだった

 

「師匠…」

 

 

 

 

 

露天風呂から上がり、リビングの方へ行くとびしょ濡れの信二が立っていた

 

「川に滑り落ちた…」

 

「い、急いでお風呂に入ったら良いわ!冷えたら大変だもの」

 

カトリーナがタオルを渡して、急いで信二は露天風呂の方へ行った

 

「あっ、信二さん!」

 

「ヘックション!…っん、それで何?」

 

「い、いえ…。先に温まって下さい」

 

「そう?じゃっ!」

 

モモはその背中を見つめる事しか出来なかった

 

(想いを伝えるのってこんなに難しいとは思わなかったな…)

 

それからは何事も無く鍛錬が続き

 

そして最終日

 

 

 

 

 

////////

 

最終日は昼食を済まして空崎へ帰る予定。

最後の鍛錬はとにかく体力作りに励んだ

 

「汗でもな〜がそ!」

 

「そうだな。汗流した後に作ろうか」

 

「あ、私もうちょっと走って来ます」

 

「それならアタシも」

 

鍛錬が終わっても、楓と五恵だけはまだ物足りなく感じて走り込む

 

「2人共、熊除けの鈴を忘れてるよ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「そんなの要らないです。この合宿で更に磨きが掛かったアタシ達なら、熊なんて目じゃないわよ」

 

「でも安全に。此処に住む熊は少しばかり凶暴だよ」

 

「心配性ですね。大丈夫ですよ。今日まで一度も出会さなかったみたいですし」

 

そう自信満々に言って2人は走りに出た

 

「信二、本当に大丈夫なのか?」

 

「う〜ん。多分大丈夫なんじゃない?鈴は着けていたが、熊が居る気配は無かったし」

 

「そうか…」

 

テレジアは森の方へ目を向けて2人の心配をする

 

そしてその心配が2人を襲った

 

 

 

 

 

((出会ってしまった…))

 

「グルルゥゥゥゥ!!」

 

2人の目の前には熊。しかも2m以上の体長

 

「フーちゃん…」

 

「分かってるわ。此処は一旦退いて静かに…」

 

静かにその場を立ち去ろうとするが

 

「グルルァァァ!!」

 

「「ッ!?」」

 

楓が落ちてた小枝を踏み付けてしまい、その音で熊が襲って来た

 

「ごえっち!」

 

「フーちゃん!」

 

2人は目配せで合図を出し瞬時にかわす

 

「ごめんね!」

 

五恵の右が熊の腹に突き刺さる。加えて

 

「ハッ!」

 

楓のカカト落としが首根元に直撃する

 

「ガルルゥゥゥ!」

 

「危な!?」

 

「クッ!?」

 

加減をしたせいもあったのか、熊には全く効かず更に暴れる

 

「こうなったら本気で行くよ!」

 

「うん!」

 

2人はポケットからスパイスを取り出して服用する

 

弟子組ならではの連携。楓は手裏剣を所持して無い為、落ちてる小石を拾い五恵のフォローを。五恵は牽制を交えつつ、熊との距離を保って拳を入れる

 

そして2人は気付く

 

(こんなに足場が悪いのに)

 

(普通に動ける!)

 

鍛錬の成果が身に染みて実感する。山の中を走り込んだお陰で、足場の悪い場所でも思うように動けてる

 

だが熊も速い。スパイスを服用してる2人について行けてる

 

「うっ!?」

 

「フーちゃん!…がっ!?」

 

人間や人形とは違い、予測出来ない動きで繰り出す攻撃に対応出来なかったのか、振り回す腕が直撃して木に叩きつけられる

 

「そ、そんな…」

 

「このままじゃ…っ!」

 

2人の前に聳え立つ熊。絶対絶命のこの状況で五恵はある事に気付く

 

「フーちゃん、私達何の為に此処へ来たと思う?」

 

「それはスパイスの二重掛けに耐えれる為の……あっ!」

 

「可哀想だけどやるしかないよ!」

 

2人は更にスパイスを取り出す

 

「──今のアタシは一味違う!」

 

「──ピリッとするよ!」

 

遂に2人は禁止されてた初めての二重掛けを行使する

 

2人の目は更に輝きを増し、目の下に血管が浮き上がる

 

そして理解する。これなら勝てると

 

「ガアァァァ!!」

 

2人は左右に散り熊の脇腹に拳を放つ

 

「ガルルゥゥ…」

 

「「せーのっ!」」

 

熊が前のめりに崩れ落ちた所に、すかさず2人の張り手が熊の腹に減り込む。流石の熊もこれには参ったらしく起き上がる事は無かった

 

「死んだのかな?」

 

「う〜ん…脈はあるみたいね」

 

五恵は安堵する。やはり少し襲って来たとはいえ、罪悪感はあったらしい

 

「それよりも…っ!」

 

スパイスの効果が切れる。楓は自分の体の痛みに訴える

 

「痛たた!反動が…」

 

「良かったね。この合宿で鍛えれて」

 

この程度で済んだのは今回の合宿のお陰だ。改めてこの合宿を提案してくれた信二に感謝する

 

「それにしてもごえっちはどうなの?」

 

「私?私はあまり痛みとかは…」

 

「す、凄いわね…」

 

 

 

 

 

「2人共大丈夫ですか!?」

 

2人は何とか帰って事の顛末を話すと、初芽が物凄い勢いで迫って来る

 

「やっぱり鈴を持たせた方が良かったか」

 

「信さん!こっちに銃口向けないで下さい!!」

 

信二が肩に担いで持ってるライフルが命の方へ向けられる

 

「大丈夫。中身は睡眠弾で……実弾だ」

 

「撃たないで!絶対だよ!」

 

「2人共、山を降りたら一度病院へ行きましょう」

 

「「はい」」

 

そしてトラブルがありつつもようやく出発する

 

「で、わざわざこっちに乗らしたのは何故かしら?」

 

口にしたのは雪だ。信二は雪と初芽と五恵をインパラに乗せて山を降りていた

 

「楓と五恵のお陰で一応全員が二重掛け出来る事が証明された。だから次のステップへ移ろうと思うの」

 

「次のステップですか?」

 

「五恵、確か二重掛けしてもあまり反動は無かったて言ったよね?」

 

「はい」

 

「初芽、一つお願いしても良いか?」

 

信二が口にしたのはあまりにも馬鹿げた内容だった

 

「そんなの許可出来ないわ」

 

「実験は俺自身でやる。流石に、安全が確認出来るまでは使わないよ」

 

「そう言う意味で言ってるんじゃありません。下手をしたら身を滅ぼします。……だからこの合宿でしたのね」

 

「その可能性はある。だけどならない可能性を持つ人もいる」

 

「私ですか?」

 

信二は頷く

 

「あと2人、俺と雪だ」

 

「師匠や命ちゃんには?」

 

「後で話す。雪はともかく五恵にも話したのは初芽がどう思うかだ。賛成か反対か」

 

初芽は少し考えた

 

「将来的には必要かも知れません。ですが、自分の身を考えたら反対します」

 

「私は賛成です」

 

反対する初芽に対して五恵は賛成の意見だった

 

「それを作ると言うのでしたら、二重掛けも通用するか怪しいって事ですよね?でしたらツキカゲの為、皆んなの平和の為に私はその力を使います」

 

「五恵ちゃん…」

 

「雪はどうする?」

 

雪は真剣に考える。街か己か

 

深く考えた答えは

 

「…ふぅ。仕方ない」

 

「雪ちゃんまで!?…分かりました。私も付き合います」

 

「ありがとう。後はカトリーナさんと命を説得か」

 

「カトリーナさんは絶対反対だと思いますけど」

 

「さっきも言った通り、実験は俺自身で試す。それで実戦可能になったら改めて皆んなに言うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この合宿の裏で、信二が計画していた事が動き始める。その計画に選ばれた者は3人。自分である信二と雪と五恵

 

その計画が達成出来るかでツキカゲの未来が決まる




セーフかアウトか結構悩みました…

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:16 天使は舞い降りる

1週間に1本投稿。こんな感じでやって行きます!
寧ろ、始めの方が飛ばし過ぎなんだよ…

ではミッションスタート!


『準備はいいですか?』

 

「おう!」

 

『では実験を始めますね』

 

信二はソラサキオールスパイスを4つ(・・)含む

 

「──Ready Go!」

 

誰も試した事の無いスパイスの四重掛け

 

「あがぁぁ!!」

 

四重掛けとなると、もはや普通の人間が耐えれるのは不可能。より鋭く五感が敏感になり、感覚さえ狂う

 

『心拍数が劇的に上がっています!このままでは死んでしまいます!!』

 

『雪ちゃん!』

 

「ッ!」

 

暴れる信二に睡眠弾で強制的に大人しくさせる

 

「これは骨が折れる作業ね」

 

『心拍数が安定してきてます。落ち着いて来ました』

 

濃姫が信二のバイタルチェックする。眠りにつく信二に異常が無い事を確認する

 

「手間の掛かる人ですね」

 

雪は膝枕をして髪を優しく撫でる

 

「今日も任務があります。ゆっくり寝て下さい」

 

『雪ちゃんが母性に溢れています!』

 

(こうして見ると寝顔が子供ね。案外可愛いわね)

「…柔らかい」

 

ぐっすり眠る信二の頬を突きながら笑みを溢す

 

その様子を初芽は笑顔で伺っていた

 

 

 

 

 

///////

 

「それで今日の任務はラブホテルに潜入よ」

 

「何故またそんな所を…?」

 

「そこで、秘密裏に薬物の取り引きが行なわれる情報を入手したのよ」

 

雪は潜入するメンバーを発表するのだが

 

「今回は私と信二さんで行くわ」

 

「「えぇ!?」」

 

意外なメンバー編成。それに驚くのは2人。モモと楓だった。楓は変装のスペシャリストでもあり、てっきり自分が選ばれるかと思っていた。

でもモモの場合は

 

「何でモモちが驚くのよ?」

 

「えっ!?いや、その…」

 

「信二さん行けますか?」

 

「あ、あぁ。そんな所に誰かと潜入は初めてだけどな」

 

「決まりね。サポートは初芽と楓にお願いするわ」

 

これまた珍しい組み合わせだった。だけどこれにはちゃんとした理由があった

 

「潜入も大事だけど、それをサポートするのもいつかは必要となる。その時の勉強と思えば良いわ」

 

「勉強ですか…分かりました!」

 

「以上。準備に取り掛かるわよ」

 

 

 

 

 

////////

 

「半蔵、愛想良くするのは良いがくっつき過ぎだ。歩き難い…」

 

「この方がそれらしい関係に見えるのよ」

 

雪は今、信二の腕に抱き付いてる状態だった。胸を押し当て、それらしい関係を見せる為の演技

 

そして自分達の部屋に辿り着く。部屋に着いて早々に2人は離れて顔つきが変わる。服装も戦闘服に着替える

 

「風魔、ターゲットは?」

 

『そこから上の階に居る事を確認しました。案内の準備は出来てます』

 

「行くわよ信長」

 

2人は最小限の装備をしてすぐに部屋を出る

 

『丁度、半蔵達の部屋の上です』

 

「それは分かりやすくて嬉しい」

 

順調に進んで目的の部屋の前へ着いた

 

「局、隣の部屋は空いてるか?」

 

『待って下さい……空いてますね』

 

「どうするんですか?」

 

「こうするんだよ」

 

信二はピッキングツールを取り出して、隣の部屋の鍵を開けた

 

「楽勝。お邪魔しま〜す」

 

「そうゆう事ね。私は廊下から」

 

雪は廊下で待ち伏せ、信二は窓の淵を掴んでいつでも突入出来る状態で待機する

 

「行くぜ!ツキカゲ、ミッションスタート!」

 

その合図と共に2人は突入する

 

「やっぱり!現行犯だ!」

 

「逃さないわ!」

 

部屋に入ると男女合わせて6人。スパイスを使用せずとも最も容易く制圧完了する

 

「2人での制圧は初めての任務以来だな」

 

「そうね。早いとこ引き上げるわよ」

 

2人が制圧した奴らを拘束して、警察に通報しようとした所で部屋に何かが乱入した

 

「な、何だ!?」

 

「局!」

 

『分かりません!カメラには何も映ってはいませんでした!』

 

入って来たのは人形。それも白く目立つ人形

 

「白い、人形…」

 

『待ってたよツキカゲ!お?今回はお2人だけなんだ』

 

その人形からは聴き覚えのある声がした

 

「ウォーか…」

 

「何故この場所が?」

 

『自力で調べ上げた……と言いたい所だけど情報が入ったのよ。貴方達ツキカゲが今晩、此処に潜入するって言う情報をね』

 

「情報がリークされてるだと!?一体誰が」

 

『そんな事より信二に会えて嬉しいわ!今度は逃がさない!』

 

あり得ない速度で接近する。人形の腕を受け流して、部屋の隅へと放り投げる

 

「局、風魔!車を!」

 

2人は急いで窓から飛び出す。そして着地点には雪の指示で待機していた車が

 

屋根に着地して急いで乗り込む

 

「逃げるぞ!」

 

急発進。その場を急いで離脱するも人形はその後を追い掛けて来る。それも、建物を次から次へと飛び移りながら

 

「何あのハイスペック人形」

 

「やはり、五右衛門を圧倒しただけのスペックですね」

 

「それより急いで下さい!」

 

「局、次を右に。人目の付かない所で交戦するわよ」

 

雪の指示で人形を誘き寄せる。人形は周りに人が居るのにもお構いなく銃を乱射する

 

「う、撃ってきますよ!」

 

「局急いで!」

 

向かう先は港。だが、目前で防弾タイヤが撃ち抜かれてバランスを崩す

 

「風魔こっちへ!」

 

「局!」

 

信二は楓を、雪は初芽を車から連れ出して避難した

 

「無茶苦茶だわ。局大丈夫?」

 

「なんとか…」

 

雪と初芽はなんとか無事だった。信二と楓はというと

 

「大丈夫か!」

 

「な…なっ!!?///」

 

楓は顔を赤くしていた。何故かというと、外へ連れ出し際に地面へ押し倒す感じになってしまったのだが、それがとんでもない事に

 

楓の胸を鷲掴みする感じに手をついて覆いかぶさっているのだ

 

「ゆ、許して?」

 

「…で、済むわけないでしょ!!」

 

楓は信二を蹴り飛ばして退かす

 

「この変態!やはり貴方は変態野郎です!!」

 

「この〜…」

 

「来るわよ!」

 

起き上がると人形は佇んでいた

 

『どう?この完成された人形──「天使」の性能は』

 

白い人形にも名前があるらしい。それが天使と言う名だ

 

「天使と言うより悪魔だな」

 

4人はスパイスを2つずつ取り出す

 

「──Ready Go!」

 

「──キメるぞ!」

 

「──今のアタシは一味違う!」

 

「──スパイスを効かせましょう」

 

最初から全力。全員が二重掛けで天使に対抗する

 

「信長行くわよ!」

 

「おう!」

 

信二と雪が挟み込んで殴り、斬りつける。天使は両腕で2人の攻撃を受け止める

 

「「クッ!」」

 

『無駄よ。天使には勝てない』

 

「そうでもない!」

 

その隙に、楓が手裏剣で天使の手足の関節部目掛けて投擲する。投げた手裏剣が関節部を切断してダルマ状態

 

「私達ツキカゲは負けません!」

 

止めの一撃。初芽の槍が天使を貫いた。これで完全に停止した

 

『急激な成長。今回は負けたわ』

 

天使のメインカメラが発光する

 

『でも次はそう簡単にはいかないよ。では』

 

初芽は何か異変に気付いて、槍をすぐさま抜いて後ろへ跳ぶと天使が爆発した

 

間一髪の所だった。異変に気付くのがもう少し遅かったら初芽は重症になっていた

 

「雪、初芽。もう少し例のアレ(・・)の開発を急ぐぞ」

 

「……」

 

「雪?」

 

雪の表情は曇っていた。予想はつく。恐らくは信二の体の事を思ったの事だろう

 

「気にすんなよ。これでも丈夫な方だから」

 

雪の肩を叩いてフードを被る。雪達も被り、急いでその場から離れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日から信二は一層アレの開発に勤しんで行く




そろそろ決戦に向けて仕上げようかな。この章までは、何気ない日常回は書かないつもりだし。ほんわかした話が書きたい。
3章に入ったらそういう日常的な話を書くつもりだし。

ではここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:17 正体と新しい力

戦闘以外となると内容が短い。頑張ります

ではミッションスタート!


「がはっ!……ゲホッ…」

 

床に吐く血。信二は倒れる体を四つん這いで何とか支える

 

『おめでとうございます信二さん。5回目の実験でようやく必要なデータが揃いました』

 

「そ、そうか。ハァ…早速初芽と作ってくれ…」

 

『了解しました』

 

例のアレの第一段階が終了した。信二の体はボロボロ。そんな信二を心配して現れたのが

 

「大丈夫ですか?」

 

「五恵か…。うん、ありがとう」

 

「あまり無理はしないで下さい」

 

「そう言ってはいられないよ。この前襲って来たという事は、ヨハネの奴らも準備が出来始めてる証拠だ。それに敵の正体もまだ──」

 

「ビックニュース!ビックニュース!ヨハネの正体が分かったよ!!」

 

大声を出しながら走って来たのは命。大慌ててで来たのか、肩で息をしながら報告してくれた

 

場所は変わって軍議の社

 

「正体が分かったって本当ですか!?」

 

「えぇ、濃姫が入手したのだけどね…」

 

カトリーナがチラッと信二の方へ目を向ける

 

「信二君、何があっても取り乱さないでね」

 

「??」

 

カトリーナはモニターに手に入れた情報を見せる

 

「先ずはヨハネのボスのV。本名は『武蔵野勝利(むさしのしょうり)』。彼は元マジシャン。どうして彼がこの道へ進んだかは不明。でも、それを利用しての戦闘を得意としてる」

 

開示される情報は事細かなものまであった。勿論顔写真まで

 

「次に飢饉のファミン。本名を『荒川宏(あらかわひろし)』。十代の頃から飢饉の座について、それからは卓越な戦闘力で敵を倒してる」

 

表示される顔写真は見た目通りの老いた人だった

 

「次からが問題の…」

 

そこに映し出されたのは

 

「ふざけてるのか?」

 

「いいえ」

 

「認めるか!こんな…こんな!」

 

カトリーナが映したのは、ウォーとデスの写真なのだがそれが問題だった。信二の両親なのだ

 

「戦争のウォーが『緒方久子』。死のデスが『緒方光(おがたひかる)』。御両親よね?」

 

「気分を害した」

 

信二は苛立った様子で軍議の社を出て行った

 

「信二さん待って下さい!」

 

信二の跡をモモが追い掛けて行った

 

そしてエレベーター前で

 

「信二さん…」

 

「分かっている。いつかはこうなる事を。でも!認めたく無かった!自分の両親が無差別に人を殺してるなんて…」

 

信二は両親と戦うから苛立っているのではなく、その両親が女子供問わず無差別に殺してる組織にいる事に腹が立っていた

 

「辞めますか?」

 

「逆だ。徹底的に潰す。最終戦争とかいうやつも止めてやる」

 

「それでこそ信二さんです」

 

「ありがとうモモ。よし!戻るか」

 

「はい!」

 

再び戻り来るべき準備の話をしていた

 

「覚悟は出来たようね。それじゃあ信二君、例のアレの説明もしましょうか」

 

「アレって?」

 

「モモや楓、テレジアには話してなかったけど、私達はヨハネに対抗する新たなアイテムを作っていたのよ」

 

「アイテムって?」

 

「これです」

 

初芽がそのアイテムを手の平の上に転がす

 

「まだ試作段階で改良は必要ですけど、見本としては出来ましたので」

 

「「「スパイス?」」」

 

3人が見たのは、信二が使っているソラサキオールスパイスだった

 

「このスパイスは通常の5倍の効力があります」

 

「「ご、5倍!?」」

 

「二重掛けでも体の負担が凄いのに、5倍の効果があるスパイスを摂取したら…」

 

「はい、間違い無く体は耐え切れず、精神的にも異常をきたします」

 

「だから合宿。あの合宿で全員が二重掛けに耐え切れる体が仕上がった。中でも信二さん、五恵、私がそのスパイスを使えるまでに仕上がっているのよ」

 

この3人がヨハネを迎え討てる切り札という訳だ

 

「名付けて『ツキカゲスパイス』。仮ですけどね」

 

「ちゃんと完成出来るのは?」

 

「そうですね。この調子ですと…12月24日。クリスマスの日ですね」

 

 

 

 

 

////////

 

「ウォー。天使の量産は後どれくらい出来る?」

 

「予定より早く出来るから、12月中旬だよ」

 

「それなら最終戦争も12月に始める」

 

Vはカレンダーを見て決めた

 

「ハルマゲドン計画を邪魔をする者は排除する。手始めにツキカゲ。24日だ」

 

「聖なる夜を血に染める…楽しそう」

 

「緒方信二を引き込みたいけど、もし死んでしまっても恨まないでくれよ」

 

「当たり前。死んだらそれまでの事」

 

ウォーの返事は残酷で、とても冷たい目をしていた

 

 

 

 

 

////////

 

『もしもし俺だよ。緒方信二』

 

「ああ、お前か。それで何か用か?」

 

とある部屋。暗い部屋の中で誰かが電話をしていた。その相手は信二だ

 

『12月24日に来てくれ。場所は伝えるから』

 

「24日な。分かった」

 

短い会話をしまして電話を切った

 

「最後に会ったのは夏の花火以来。ツキカゲにヨハネ。楽しみにしてるぞ」

 

その人物は月明かりに照らされながら、綺麗な金髪を靡かせながら不敵に笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして12月24日。その時が来た




着々と戦力を上げていく

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:18 ヨハネ襲撃

結構書いたなぁ〜と思っても数字で表すとそれ程でも無いと…
かなちぃ…

それではミッションスタート!


「雪ちゃん、五恵ちゃん、信二さんようやく完成しましたよ」

 

「お!やっとか!」

 

完成した新スパイス。雪は『ツキカゲシナモン』、五恵は『ツキカゲスイートフェンネル』、信二は『ツキカゲオールスパイス』を渡される

 

「これがツキカゲの新しい戦力」

 

「はい。ですけど幾つか注意点があります」

 

一つ目は連続使用。従来のスパイスより遥かに負担が大きい為、連続の使用が禁止。使うにしても1日1回が限度

 

二つ目は反動。効力が切れた後は体中の痛みと凄まじい脱力感が襲う。動けない事はないが、戦闘続行はほぼ不可能。鍛えれば訳も無いが現実的では無い

 

「ですので、緊急時以外はあまり使用は控えて下さいね」

 

「いいな〜!メイも欲しいよ初さん!」

 

初芽の後ろから寄り掛かり命がせがむ

 

「もう少しだけ頑張りましょう!一応皆んなの分は作っていますので、こちらの判断で大丈夫だと思えたら渡して行きます」

 

「ちぇ〜」

 

「新しいスパイスも出来たし今後の話もしようか。少し話したい事もあるし」

 

武器庫から移動しいつもの様に集まろうとする時、基地中から警報機の音が鳴り響いた

 

『皆さん侵入者です。数は20強。Wasabiに続くエレベーターからです』

 

「そんな大人数はお店に入れないわ」

 

「以外と呑気ですねカトーさん…」

 

「急いで迎え撃つわよ」

 

 

 

 

 

////////

 

全員が武器庫に戻って準備を整えてから正面玄関へと急ぐ

 

「セキリュティがザルだな。こんなので良く情報機関としてやっていけたな」

 

「デス!いや、父さん!」

 

「成る程な」

 

信二の父親、光はツキカゲを見渡す

 

「前よりはマシにはなったところか。だがまだ弱い」

 

光の後ろから弟子と思われる者が5人。そして大量の天使

 

「皆んな、此処は俺に任せろ」

 

「いやいや、どう考えてもこの人数を相手に1人は無理だって」

 

「だが奴らは全員で4人。更に仲間や天使だっている!手分けしてヨハネを潰さないと!!」

 

「信二さん何をそんなに焦っているのです?」

 

「別に焦ってない!今は目の前の敵をぶっ潰すだけ!只それだけだ!」

 

「信二さん!信二さん!!こっちを見て下さい!!」

 

「何だ!!」

 

信二の怒号、そして鋭い目つきにもビクつきながらも、モモは信二の目を真っ直ぐ見る

 

そしてモモは信二の胸に手を当てる

 

「私達は皆んなでツキカゲ。戦って、守って、勝利して、生きて……笑顔で明日を迎えましょう」

 

モモに言われて頭が冷めた。元々は自分が起こした問題なのに、それをツキカゲの皆んなは全員でここまで協力してくてる

 

「信二君、確かに私達は色々と未熟な所もある。だけどそれをカバーし合うのが仲間よ」

 

「そう…か。なら甘えようとしようか。頼むよ」

 

「此処は私達に任せて、雪ちゃん達は他に侵入されてないか見回って来て!」

 

「分かりました。皆んな!」

 

雪達が信二達に任せて背中を見せる時

 

「モモ、貴女は信二さんと」

 

「えっ?…分かりました。師匠御武運を」

 

結局デスを相手にする為に残ったメンバーは信二、モモ、カトリーナ、白虎の4人

 

「前の俺…俺達じゃない!!」

 

「そうでなければ意味が無い」

 

信二、モモ、白虎がスパイスを齧った瞬間──始まりの鐘は鳴り響いた

 

 

 

 

 

////////

 

「遅かったじゃな」

 

「ファミン!」

 

基地を駆け抜けている最中、飢饉のファミンとその弟子、天使達が居た

 

『雪さん。ドローンで外を見渡していましたら、秘密のルートに続く神社前にウォーが…信二さんの母の久子さんが居ます』

 

「クッ!初芽!五恵!テレジア!貴女達は隠し通路からウォーを!」

 

「「「了解!」」」

 

ファミンの相手は雪、命、楓が相手に。初芽達は先を急いだ

 

「御主らの基地機能はほぼ停止した」

 

「それがどうした?」

 

「こっちには新兵器もありますんで!」

 

「やっぱり?さっきから気になってはいたけど、フーの腰に掛けてるそれって…」

 

実は言うと楓の腰には、腕と同じくらいの長さの武器が二つ装備されていた

 

「アタシだって只指加えて待っていた訳では無いのですよ。初芽さんに頼んで新しい武器を作ってもらったんです!」

 

「何かやる気が出て来た!」

 

「2人共!」

 

それぞれスパイスを服用して基地内での激戦が始まる

 

 

 

 

 

////////

 

隠し通路から抜けると、やはりと言うべきか信二の母のウォーこと久子が待ち受けていた。勿論、弟子と天使も

 

「あら!久し振りね五恵ちゃん!」

 

「この前のリベンジです」

 

「そう……でも無理よ。貴女達では絶対に勝てない」

 

久子が指を鳴らすと、空から更に大きく重装備をした人形が舞い降りた

 

「これが天使の完成形──『大天使』よ。さぁ!天使のラッパは吹かれた!」

 

「私達は諦めない!」

 

「五恵ちゃん!テレちゃん!」

 

「いくぞ!」

 

初芽達がスパイスを含んだ事により全ての戦いが幕を開ける

 

そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ずはお手並み拝見といこうではないか」

 

その様子をVは──勝利は高みの見物をしていた




まさかの楓にも新武器をサラッと持していく

次回からはそれぞれの戦いを分けてお送りします

ここまでの拝読ありがとうございました


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MISSION:19 VS死

最近ねむちんです。6時間以上寝たい

ではミッションスタートです


「数は多いし強い!だぁー!鬱陶しい!」

 

「白虎ちゃん後ろ!」

 

モモと白虎は2人で天使の排除

 

「これが弟子クラス?冗談は辞めて欲しいわね!」

 

カトリーナは銃で光の弟子達を撃ち抜いていくが、防弾仕様の服を着てる為傷ひとつ付かない

 

「これでどうだ!」

 

HK45とスマホガンの二丁で攻め立てるが、全て拳で弾かれる

 

「相変わらず父さんは凄い。でも!」

 

「ハァァ!!」

 

「ッ!」

 

光の背後からモモが斬りかかる。だがそれを察知して横ステップで避けた

 

「力を合わせれば勝てる…か。それも一つの強さ。でもな」

 

ワンステップでモモの間合いに踏み込んだ

 

「速──」

 

「フッ」

 

モモの顎に軽く小突いた

 

「あれ?」

 

モモの体から力が抜ける

 

「終わりだ」

 

(やられる!)

 

「モモ!!」

 

信二が瞬時にモモの前に立ち、小刀で光の拳を受け止める

 

「小刀。抜かりないな」

 

「うるさい!」

 

拳を受け流して光の腹に蹴りを入れて距離を離す

 

「あと一歩。モモ!白虎!」

 

「分かりました!」

 

「一気に片付けてやる!」

 

「──Ready Go!」

 

「──滾らせる!」

 

「──狩ってやる!」

 

ヨハネ相手に初めての二重掛け

 

「モモいくぞ!」

 

「はい!」

 

猛スピードで光に迫り拳と刀を振るう

 

「クッ…ッ!?」

 

いくら光とはいえ、二重掛けを2人を相手に防戦一方。少しずつだが拳は頬を擦り、刀は肌を斬る

 

「なるほどな。流石天堂を倒しただけの事ある」

 

「余裕だな」

 

「そっちは精一杯の様だな。けれどこの程度でへばっては困る」

 

光は懐からとある物を取り出す。それは皆が良く知り、ツキカゲの生命線とも言える物

 

「スパイスか」

 

「お前を拉致した時だ。覚えてるだろ?」

 

光が持っているのは信二が使っているソラサキオールスパイス。本来、ツキカゲで使うスパイスは全て若い女性にしか効果は持たない。だが信二が使うのは特別製。誰でも年齢関係無く使える

 

「──死滅する」

 

勿論光も例外無く使える。スパイスを含んだ光の目は青く光る

 

「残念だったな。これで最初に戻った」

 

光もスパイスを服用した事により、実力差が逆転された

 

「死ね」

 

「モモ!」

 

信二がモモを突き飛ばした瞬間

 

「なっ!?」

 

信二の体は宙へ飛び、左脇腹の肉を抉り取られていた

 

「信二さん!!」

 

「今のに反応するか」

 

抉れた脇腹から大量の血が止めどなく溢れ出る

 

(いくらなんでも化け物だろ!初芽お手製の戦闘服だぞ!それを…)

 

「信二、お前なら知ってるだろ?俺の拳は全てを──死滅させる」

 

(あ〜、これは本当に不味い状況。勝てるかどうかも怪しくなってきた。でも)

 

「えっ!信二さん!//」

 

信二はモモを抱き寄せて宣言した

 

「モモとならいける。誰が相手でも勝てる!」

 

「全て出し切ったお前達に今更何が出来る?」

 

「全て?違うね。俺達はまだ──」

 

その時であった。大量の天使が次々と爆発を起こして破壊されていく

 

「フッ…!少し遅かったな!」

 

「馬鹿言え。これでも騒ぎを聞き付けて急いで来たんだぞ」

 

煙り中からひとつの影が現れる。その人物は

 

 

 

 

 

「久し振りだな。ツキカゲの諸君」

 

元モウリョウの天堂久良羅だった。刀を1本と後ろ腰にも3本を携えての派手な登場

 

 

 

 

 

////////

 

「何で貴女が此処に!?」

 

「死んだんじゃ!」

 

「死をも偽造してこそスパイだろ?カトリーナ」

 

天堂が介入した事により天使はほぼ全滅。一撃で仕留めていた

 

「倒された相手の肩を持つとは地に落ちたな」

 

「勘違いするな。私は信二を助けに来たまでだ。ツキカゲなどどうでも良い」

 

「何を〜!」

 

「まぁまぁ」

 

何故か白虎が食い付くのでカトリーナが抑える

 

「信二さん、『遅かったな』って…?」

 

「あぁ、実はこっそり天堂と連絡を取っていたんだ。ヨハネを倒すのに1人でも人材が欲しかったからね」

 

「だからって何でこの人を…」

 

「でも実力は折り紙付き」

 

溜め息を吐きつつも、それでもこの助っ人は大変心強いと思ってしまう。それ程天堂の実力は相当で、身に染みている。

だから一緒に戦う事に反対はしない

 

「信二スパイスを」

 

信二は天堂にケースを渡す。中身は信二が天堂専用の為に作ったスパイス。『ソラサキレッドペッパー』。一般では赤唐辛子とも呼ばれる物をベース

 

「俺も!」

 

信二も切り札であるツキカゲオールスパイスを出す

 

「──リリース・ザ・スパイス!」

 

「──宴を始めよう!」

 

ツキカゲオールスパイスを口にした瞬間、信二の雰囲気が一気に変わる。瞳はツキカゲを表す三日月マークが浮かび青く光る

 

天堂も血のように瞳が紅くなる

 

「足引っ張るなよ」

 

「お前こそ」

 

信二が腰を落として突進する構えを取った瞬間、目の前から消えた

 

「食らえ!!」

 

いつの間か、光の背後に信二が現れ蹴りを思いっきりぶちかます

 

「ッ!!」

 

光もこのスピードには対応出来なかったが、培ってきた直感が体を動かして両腕で防御するも

 

「うグゥッ!?」

 

「おわっ!?」

 

「何て衝撃!」

 

直撃は避けたものの、衝撃は全身に伝わり、周りにいる者を吹き飛ばした。勿論、近くに居た白虎やカトリーナも巻き込まれる

 

「ゴハッ!」

 

衝撃だけで光の体の中はボロボロになる。防御した両腕は完全に骨が木っ端微塵になり、肺が傷付き、心臓にも大きな負担が掛かった

 

「腕が使い物にならなくなったか」

 

「なら追い討ちを掛けるまで!」

 

息つく暇も与えずに天堂が斬りかかる。光は足を使って避けようとするも、痛みが全身を襲い動きを鈍らせる

 

「どうした?その程度か!」

 

「調子に乗るなよ」

 

使い物にならない腕を鞭の様にしならせて天堂の頬を叩く

 

「チィッ!」

 

「こっちも二重掛けするまでだ」

 

腕を強引に動かして2つ目のスパイスを口にする

 

「フッ!」

 

光が即座に仕掛ける。一歩踏み出した瞬間、天堂の懐に一気に詰め寄った

 

「ガハッ!?」

 

天堂も油断し、蹴りをまともに食い壁へと吹き飛ばされ叩き付けられる

 

「馬鹿が油断したな」

 

「もらった!」

 

「させるか!」

 

狙いを天堂に変えた光。追撃を掛ける前に信二が前に躍り出る

 

「ハァッ!」

 

立ちはだかる信二に鋭い蹴りを仕掛けるも、一瞬で目の前から消える

 

「消えた?…いや後ろか!」

 

「うぅ!!」

 

「グアァァ!!」

 

振り返り防御の姿勢を取ろうとするも、体勢に入る前にお返しと言わんばかりに脇腹に強烈な蹴りをお見舞いする

 

「が…ハ……これが、ツキカゲの…力、か…」

 

倒れる光を信二は只見つめていた

 

「さぁ殺せ。そしてたら全てが終わる」

 

「ッ!?…無理だよ。たった1人の父親にそんな事は出来ない」

 

「それが甘いんだ!」

 

足だけで起き上がり、その勢いを利用して信二の腹に蹴りを入れた。そして倒れた信二の首元に足を掛ける

 

「どんなに強かろうと捕まえれば終わりだ。このまま踏み殺す!」

 

「殺せ、ないよ!ぐぁ…何故なら俺達の勝ちだから…!」

 

「何を言って──」

 

その瞬間、光の腹から刀が飛び出る。溢れ出る血が刀を伝って地面へと滴れる

 

「言ったろ。モモとならどんな相手でも勝てるって」

 

突き刺したのはモモだった

 

「この瞬間の為の布石…か。なるほど、理解した……」

 

天堂が助っ人に来てから、モモは一度たりとも光に攻撃を加えてない。それどころか戦ってすらなかった。全ては光を確実に仕留める為のもの

 

敢えて攻撃には参加せず、気配を殺して自分から注意を逸らす。そして光が油断した所をモモがトドメを刺す算段

 

「モモ、ナイ…ス……」

 

「信二さん!」

 

スパイスの効力が切れた信二は全身の力が抜けて崩れる。モモが咄嗟に体を支える

 

「ヤバイよこれ…。初芽の言った通り、痛みと脱力感が半端ない…」

 

「ゆっくり、ゆっくりで」

 

「上手くいったな」

 

完璧な勝利を3人は噛み締める

 

そして光の弟子達もその姿を見て構える事をやめた

 

「どうやら私達の勝ちのようね」

 

「当然だな!」

 

「早く師匠達の援護へ!」

 

けれども現実はそう何度も思い通りにはいかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はこの私が相手だ。ツキカゲ」

 

一難去ってまた一難。ヨハネのボス、勝利が信二達の前に現れた




通常のスパイスとの差別化をはかり、ツキカゲスパイスを使う時キャラの決め台詞をそれ用に考えました。勿論、キャラ全員分用意してあります。
今回はオリ主。長穂が、ノベル版1話のみしか使われなかった台詞をオリ主に使わせました

それと天堂が助っ人として登場!この小説を始める時から決めてた事です

ここまでの拝読ありがとうございました


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MISSION:20 VS飢饉

今回はオリ設定がメチャメチャ追加されました。その為、ウチの雪が超覚醒します

てか今回の話が1番書きやすかった

ではミッションスタート!


建物内を駆けるは4人の影。刀と杖が入り交わる

 

「この短期間で更なる成長を遂げた?」

 

「逃すか!」

 

ファミンを──荒川を逃すまいと刀を振り続ける。基地の中を縦横無尽に動く荒川に苦戦を強いられる雪

 

「フー挟み撃ち!」

 

「はい!」

 

刀を避けて先では、命と楓が待ち受けておりクナイと手裏剣が荒川を襲う

 

「良い連携じゃが…」

 

荒川は杖を思いっきり床へ突き付けて、自分の体を宙へ浮かす

 

「「何ぃぃ!?」」

 

突き刺さる相手がいなくなったクナイと手裏剣は、お互いが甲高い音を鳴らしてぶつかる

 

(敵は空中!これでキメる!)

 

雪は刀を鞘に納めて再度構える

 

(ほぅ、その構えは居合い術)

 

「半蔵門流抜刀術・壱門!」

 

抜剣し、鋭い一撃が荒川へ刃が届く時、雪の目の輝きが失い元に戻る

 

(スパイスの効力が!)

 

「甘い!」

 

荒川は天井を足場にしてそこから更に跳躍し、雪の抜刀術を難無く避ける

 

「ユッキー!」

(やっぱりスパイスの効力が…)

 

(戦闘を始めてそんなに時間は経っていない。体感的に10分続くかどうか…)

 

「そろそろワシも本気で行くぞ。ツキカゲよ」

 

荒川はソラサキオールスパイスを取り出す

 

「そのスパイスは信二さんの」

 

「──滅する」

 

一気に二重掛け。身体能力は爆発的に上がる

 

「クソ!」

 

雪も荒っぽくソラサキシナモン2つ齧る

 

お互いに二重掛け。だが実力は──

 

「消え──」

 

雪の視界が反転する。一瞬で床へと叩き付けられた

 

「ユッキー!!」

 

「師匠!」

 

楓が命の頭を強引に下げさせる。そして命の頭があった位置の空気が裂ける

 

「アタシが前へ!」

 

「フォローする!」

 

楓は腰に装備された新武器を1つ握り斬りかかる

 

「クッ!ハァッ!」

 

「後方支援の者が前へ出るか。舐められたものじゃの」

 

荒川は巧みに杖を操り楓の武器を受け流し、左手で腕を掴み拘束する

 

「これで…どうだ!」

 

命は一度に8本のクナイを投擲

 

「フッ」

 

楓を拘束しながらも、右手で杖を回してクナイを全て弾く

 

「離せ!」

 

起き上がった雪はすぐさま斬りかかるが呆気なく避けられ、荒川は雪を巻き込み楓を投げた

 

「次はワシからじゃ!」

 

「ッ!退きなさい!」

 

雪は楓を退かして代わりに受け止める

 

(実力が…違い過ぎる!)

 

「ガラ空き」

 

荒川は杖から手を離し

 

「ブハッ!?…がッ…」

 

高速の突き手で全身の急所、顔面からアキレス腱にかけて24箇所に食らわす

 

前へと崩れようとするが、雪は踏ん張り構える

 

「半蔵門流抜刀術…拾…門!」

 

10連撃。超至近距離の抜刀なのだが、雪の構えを見て体を反り斬撃を避けた。天井、そして両端の壁に大きく斬撃跡が残る

 

「ホリャア!」

 

強引に蹴りを入れて、雪の間合いから遠ざける

 

(拾門を避けた…。しかもあの至近距離で)

 

雪の使う抜刀術は壱門から陸拾参門まである。数が増えれば斬撃数は勿論、抜刀スピードも跳ね上がる。その代わり威力は徐々に下がるのが難点

 

(ならばもっとスピードを上げるまでだ)

 

「半蔵門雪…じゃったの。ツキカゲの頭の割には単調な」

 

「弐拾門いや……弐拾漆門!」

 

拾門より更に上の速度の弐拾漆門。27連撃の抜刀術

 

「ッ!!」

 

避けられた…というより

 

(弾かれた!?)

 

たった2回の抜刀術で雪の太刀筋を見切られた

 

「伏せて下さい!」

 

頭を下げるとその上を手裏剣が通った。荒川へ正面に5つの手裏剣が襲いかかるも

 

「緩いわい」

 

最小限の動きだけで躱した

 

「出し惜しみはしない!」

 

楓は持っていた武器を展開させて変形させる

 

4方向に鋭い刃が展開した武器。名を──

 

「風魔手裏剣」

 

楓が持っていた武器は折り畳まれていた風魔手裏剣だった

 

「いっけえぇぇ!!」

 

投げた風魔手裏剣は壁を抉りながら荒川へと飛んで行く

 

「デカイだけで何も変わらない」

 

しゃがみ込み風魔手裏剣を躱す。そして風魔手裏剣は、荒川から直線上に居た命へと変わる

 

「ちょ!?フー!」

 

「ッ!」

 

楓は両手で何かを引っ張る様な動作をする

 

すると風魔手裏剣は、回転しながらも命の目の前で止まり戻って、背後から荒川に襲いかかる

 

「何!?」

 

有り得ない状況に判断が遅れる。上体を反らして避けるも胸元部分を裂かれる

 

「完全無欠のアタシは何事にも動じず、常に先を読む」

 

先程の風魔手裏剣の仕組みは、手裏剣に硬いて細く透明なワイヤーが結ばれていた。そのワイヤーを引っ張れば、ブーメランの様に戻って来る仕掛けだ

 

「今度は確実に仕留める!」

 

楓はもう一つの風魔手裏剣を構えて投げる

 

縦回転と横回転の風魔手裏剣。狭い廊下を切り刻みながら

 

「狭い場所でのその攻撃は良い。じゃが…」

 

荒川は迫り来る風魔手裏剣を素手で受け止めた

 

「「「!?!」」」

 

驚くのは無理も無い。いくら強かろうと刃に対して素手で受け止めたのだ。手の平は切れて血は流れる

 

「この程度の傷で驚くなんてまだまだ未熟者じゃ」

 

風魔手裏剣から手を離すと、後ろ居る命へと狙いを定めて拳を握る

 

一瞬だった。命の顎を跳ね上げて、天井へと顔を減り込ませてぶら下がる

 

「よくも師匠を!!」

 

今度は怒りに任せに突っ込む楓の額に裏拳で食らわせる。あまりの衝撃に吹き飛んで廊下の壁を打ち破って埋もれる

 

「命!楓!」

 

「お遊びもここまでじゃ」

 

一瞬で刀を叩き落とされ、雪の首元を掴み持ち上げる

 

「あがッ…!」

 

首を締め上げるにつれて、雪は口から泡を吹き、意識が朦朧としていく

 

「滅しろ」

 

もがく雪の力は次第に抜けていき、先程摂取したスパイスの効力も既に消えていた。

それでも雪は諦めない。最後の力を振り絞ってケースに手を掛ける

 

「今更!」

 

(今だ!)

 

弱ってるとはいえ、確実な勝利を収める為にケースに手を掛けるのを振り払おうとする。

けれど、雪はそれを狙っていたのかもう片方の手からリップクリーム爆弾を取り出して投げ付ける

 

「な──」

 

爆発で2人は吹き飛んだ

 

「がは…っ…はぁ…はぁ」

 

「なんて勝利に対する執念。気に入ったわ」

 

(もう…後が無い)

 

雪はツキカゲシナモンを取り出して齧ろうとするが

 

(勝負は超短期戦。でないと、スパイスの効力が切れてまともに動けなくなる)

 

雪の頭にネガティブな思考が入り混じる。だがそれでもと思い、首を振って雑念を払う

 

(倒せばいいだけの話。ここで朽ち果ててでもコイツだけは!)

 

雪は覚悟決めてツキカゲシナモンを齧る

 

「──冷静に、迅速に」

 

瞳の輝きは今まで以上になり、ツキカゲの紋様が浮かび上がる。超人は更に強くなる

 

(酷く冷静だ)

 

先程まで雑念に溢れてた脳内は今クリアな状態

 

「いくらスパイスを積んだところでワシが負ける筈が…!」

 

殺気を感じる。その殺気は、荒川がこれまで相手にして来た人達より鋭く、強靭で、恐ろしいものだっだ

 

そして何より驚いたのが

 

(間合いが…分からない!)

 

雪は歩きながら抜刀の構えを取る

 

「半蔵門流抜刀術・壱門」

 

壱門は最も威力が高くその分最も遅い斬撃……なのだが、その速さは圧巻だった

 

「いつの間に…」

 

視えていた。雪が柄を持ち手がブレた。だが、そこから先が視えなかった。

更に間合いも格段に広がっている

 

「時間が無い。ここからは本気でお前を────殺す」

 

静寂がこの空間に広まる

 

お互いの出方を伺い────

 

「「ッ!!」」

 

「壱門!」

 

「ホォォ!」

 

雪が踏み込んだ床は大きくひび割れて、鈍い音を出す。そこから体全体を捻り一気に

 

(これは…マズい!)

 

刀と杖が接触した瞬間荒川は大きく伏せた

 

「グォォ!?」

 

杖は豆腐の様に柔らかく斬れて、廊下の壁ごと切り崩した

 

「本能で避けたか。だが次こそは!」

 

「小娘が調子に乗るなよ」

 

荒川は真っ二つに斬れた杖を両手で持ち構える

 

「半蔵門流抜刀術・肆門」

 

今度は4連撃。荒川は雪の手元を凝視する。でも、もはや手のブレさえも認識は出来なかった

 

「おごぁ!!」

 

手元に集中し過ぎて肆門全てをまともに食らう

 

「ハァッ!!」

 

更に追撃で、風魔手裏剣で裂かれた胸に拳をひと突き。肋骨は砕け、肺のひとつが破裂、もうひとつは砕けた骨が突き刺さる

 

ツキカゲスパイスはどんな人でも、力だけなら横綱クラスまで跳ね上がる。しかもスパイスを含んだ五恵と同等か、それ以上の強さを

 

更にそこから従来の剣術を加える。雪の振るう刀は高速を超えた高速。『光速』の領域に達した

 

「光速の抜刀をお前に防げるか?」

 

「ウオオォォォ!!」

 

荒川は雄叫び上げて自分を鼓舞する。内臓の痛みに堪えながら

 

「此処でお前を!」

 

「小娘!御主だけは!」

 

「「絶対殺す!!」」

 

「陸門!」

 

「コォォォ!!」

 

光速で繰り出す連撃を全て杖でいなそうとする。だがそんなの無謀な事

 

「この!!」

 

2撃しか躱せれなかった。残りの4撃は四股を斬られる。噴き出す血が廊下を赤く染める

 

「仕留める」

 

雪の表情が豹変する

 

「半蔵門流抜刀術・陸拾参門!」

 

最高速度の陸拾参門とツキカゲシナモンの組み合わせは無敵

 

瞬きする前に全て終わる

 

荒川の左腕が斬られ、両目を横一文字に斬られて失明。その他、体の至る所に斬り刻まれる

 

「私自身も驚くわ。何せ、機械ですら視認出来無い程の速さ。出来たとして、それはもっと先の事。現時点で誰もこの陸拾参門を視認は不可能」

 

このまま命と楓を介護して、他の人達の所へ向かおうと考えてると

 

「へっへ…」

 

「こいつ…」

 

血ダルマになろうがお構い無く荒川は立ち上がる

 

「人生最後の相手が…ゴフッ…御主で、良か良かじゃ…」

 

雪は悲しい表情しながらも構える

 

「壱門」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決着はついた。降り注ぐ雨が雪の体を濡らす

 

血という赤い雨に




ツキカゲスパイスを使うと、一般人でも横綱になれるよ!化け物量産アイテムです…
強さ的には個体差によりますけど、全員コンクリートは粉々に出来ます(という設定)。
歩く圧砕機と考えれば早いと思います。簡単に調べたら100〜300トンの力でコンクリートを砕くらしいです。
そういえば、アニメ7話で五恵ちゃん建物の床を砕いてしましたよね…

あ、雪が振るう刀の速度は、1番速い陸拾参門で1秒63連撃です。正直、作者自身ですら速いかどうか分かりません。馬鹿ですから。
一応、刀と鞘の摩擦係数を減らせばもうちょい速くなります

仮◯ライダーかよ!?

ここまでの拝読ありがとうございました


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MISSION:21 VS戦争

ちょいと時間掛かってしまいました

ではミッションスタートです


「倒してもキリがないぞ!」

 

「ハァッ!」

 

「ありがとうございます師匠!」

 

初芽、五恵、テレジアは大量の天使との戦闘に全力を注いでいた。久子もその弟子も、天使に紛れては初芽達に牙を剥く

 

「一応言うけど、天使達を率いているのは私達なの。その分、此方の天使は他と比べて数は多い。それを凌ぎれるかな?」

 

「ハァッ!」

 

初芽とテレジアは流石に苦戦はしてるが、五恵の方は力で圧倒してる事もあり多少なりの余裕が生まれ始める

 

「ツキカゲの奥の手は侮れないわね。ここはやっぱり!」

 

五恵の周りに居た天使が退いて、代わりに大天使が目の前に現れる

 

「降伏してくれたら痛くはしないよ」

 

「しません!逆に言います。降伏して下さい!」

 

「嫌だよ!」

 

大天使の腕装備されてあるブレードが五恵へと振り下ろされるが、華麗に避けて攻撃へと転じる

 

「ハァッ!」

 

五恵の渾身の一撃が大天使の胴体にクリーンヒットした

 

しかし

 

「ッ!」

 

傷を負ったのは胴体では無く、五恵の拳の方だった。あまりの頑丈さに五恵が負けてしまったのだ

 

「大天使は他の天使と違って特別製。戦車の砲撃をものともせず、核でやっと壊れるぐらいの強度なの。それにね」

 

久子はソラサキオールスパイスを2つ齧る

 

「私も前へ出るから既に詰みだよ」

 

「それでも!」

 

すぐさま五恵も、ツキカゲスイートフェンネルで対抗しようとするが齧る直前で手を止める

 

(もし通用しなかったら…)

 

力という一番の武器が通じなかった。それも二重掛けをしても。ツキカゲスパイスを使っても通用しなかったら、自分だけじゃ無く他の2人にまで迷惑を掛けてしまう

 

そんな不安がよぎる

 

「「五恵!(ちゃん!)」」

 

でもそんな心配は無かった。五恵を見る初芽とテレジアの目は、信頼で満ち溢れていた

 

五恵は意を決して、切り札のツキカゲスイートフェンネルを齧る

 

「──スパッといくよ!」

 

緑に輝く瞳にツキカゲの紋様が浮かび、大天使を見抜く

 

「大天使!」

 

振り下ろすブレードを五恵は避けようとしない。地面にまでヒビが入る程の衝撃波が流れる

 

「無駄です」

 

五恵で片手の手甲だけで防いだ。

掴み上げ、手甲に隠されてたかぎ爪で大天使の胴体を切り裂く

 

「嘘!?」

 

頑丈な大天使の表面に傷が付く。只、かぎ爪は耐えれず割れてしまう

 

「こけ脅しね!」

 

大天使はブレードを変形させて、銃器に換装する

 

五恵は走り出す。容赦無く銃弾の嵐が襲うが、全て手甲で守り進んで行く。

そして五恵の間合いに入る

 

「ハァァァ!!」

 

二重掛けでもビクともしなかった、大天使を五恵は腕の力だけで大きく後退させた

 

(振り切れなかった)

 

多少強引に突っ込んだ為、五恵も腕を振り切れず全力は出せなかった

 

「五恵!そのまま一気に決めろ!」

 

「やああぁぁぁぁ!!!」

 

怯んだ隙に拳と蹴りの連続攻撃。大天使の装甲が凹み始める

 

「大天使がここまで相手にならないなんて…。でもね」

 

「これで終わりです!」

 

「信二に罠術を教え込んだのは私。目の前ばかり気を取られてたら死ぬわよ」

 

その瞬間、五恵の足元から幾つ物の槍が飛び出した。足を踏み込む瞬間を狙われた。ツキカゲスパイスを含んだ五恵なら、反応して避けられるが体はそういかない

 

踏み込もうとする動作から変えれず、槍は五恵の体を串刺しにした

 

「あがッ…!?」

 

刺さったのは1本や2本の話ではない。10本近くの槍が貫通した

 

「五恵ちゃん!!」

 

「今助ける!」

 

だが2人の前に弟子や天使達が立ちはだかる

 

「退け!!」

 

 

 

「くぅ……ふ…」

 

「動けば傷が開くだけ。やめといた方が良いよ〜」

 

そして久子は五恵の首元に小さな針を刺した

 

「私お手製の毒針。5分であの世行き。フフッ」

 

嘲笑う久子に向かってジャマダハルがひとつ飛んで来る。でもそれを大天使がブレードで弾く

 

「貴様!!」

 

「テレジアちゃん…」

 

テレジアは強引に敵の包囲網を掻い潜り、五恵の元へ。

突き刺さった槍を破壊して自由にする

 

「ありがとうテレジアちゃん。でも安心して」

 

「馬鹿を言うな!こんな傷で…」

 

「それなら5分以内で片付ける。それなら後でいっぱい文句を聞くよ」

 

「私を5分?なら約束してあげる。5分で大天使を倒したら解毒剤を渡してあげる」

 

その言葉と同時に五恵は駆け出す

 

「大天使!殺しなさい!!」

 

大天使の両ブレードが襲う

 

「ッ!」

 

五恵は盾の方の手甲で防いだ

 

「もう手加減する必要無いよね!」

 

大天使のブレードのエッジが動き出す

 

斬り付けられる音が鳴り響く

 

「壊れろ!」

 

手甲が一刀両断された。血飛沫が舞う

 

「避けたか!」

 

手甲が切断される瞬間、後ろへ避けて腕が少し切れた程度で済んだ

 

「ハァァァ!!」

 

カウンター。後ろへ引くと同時に前へ飛び出して渾身の力で殴った

 

辺りに衝撃波が飛び、鈍い音が響いた

 

「少しヒヤッとしたけど」

 

「クッ…!」

 

大天使の装甲にヒビは入ったのだが、その頑丈さと五恵の力に耐え切れずもう片方の手甲が砕け散る

 

「まだ…あ…」

 

膝を落とす。毒が身体中を巡り五恵の体力を奪っていく。残された時間は少ない

 

(強い装甲…もうアレしかない!」

 

五恵は思い出す。少し前に信二と話した会話の内容を

 

 

 

『──え?自分の力が通用しなかった時どうすれば良いか?』

 

『──はい。今は鍛えて天使には通じていますが、いつかそれ以上の敵が現れたらどう対処すべきか…』

 

前回戦った時の記憶が蘇る。自分の全力を出しても為す術もなくやられる姿を

 

『──初芽に言って、新武器を作って貰う事は出来ないの?』

 

『──師匠に頼らず、自分自身の力で何とかしたいんです。でないと、この先も甘えてしまいそうで…』

 

信二は考えた。どんな強靭な敵にも通用する技を。そして考えた結果ひとつだけ思い付く

 

『──なら、五恵の力を最大限に活かす技を教えてあげる』

 

『──本当ですか!』

 

『──ああ!その技は──』

 

 

 

五恵は攻撃を避けながら、大天使が隙を作るのを待っている

 

体力も落ち、スパイスの効力も時間が迫る。焦りもあるが、冷静に分析して待つ

 

「──ッ!」

 

その時が来るまで

 

五恵は腕を負傷しながらもブレードを受け流して、強引に懐に潜り込んだ

 

遂に来た。最初で最後のチャンス

 

(その技は体を極限にまで捻り、そこから捻りを開放して拳を繰り出す技)

 

 

 

『──これにより、受けた物は衝撃が内部を駆け巡り破裂し破壊する。その名を──』

 

 

 

「ハァァァッ!!」

 

五恵の拳が大天使に直撃した。物凄い音が空崎の空に響く

 

静寂が支配する

 

「ぶばっ…!」

 

最後の力を振り絞り、五恵はその場に崩れ落ち吐血した

 

「はぁ…はぁ…ごふッ……」

 

毒が体を蝕み、風前の灯火ともいえる命の火を消しに掛かる

 

「結局のところ、貴方では大天使には敵わなかった。でも善戦した五恵ちゃんには」

 

久子の腕が挙がる。大天使に命令を出そうとする

 

「このまま苦しまず、楽に死なせてあげる。じゃあ〜ね〜」

 

久子の手が振り下ろされる

 

「…どうしたの?」

 

だが、いつまで経っても大天使はピクリとも動かない。疑問に思った久子は、大天使に触れた瞬間

 

「えっ?」

 

亀裂が入る。その亀裂は木の枝のように大天使の装甲に伝染していく

 

そして最終的に

 

「──ッ!?」

 

大天使は形を保てず、内部から爆発して跡形も無く破壊された

 

「何で?」

 

「──鎧通し。信二さんから教わった技です…」

 

「そう、あの子から」

 

久子は注射器を取り出して五恵に刺す

 

「貴方達の勝ちよ」

 

 

 

 

 

「五恵ちゃん!」

 

「大丈夫よ。薬の作用で眠ってるだけ。毒が抜けるには時間が掛かるけど、時期に目を覚ますわ」

 

久子の弟子や天使達は下げさせていた。勝負は着いたのだ

 

「大丈夫そうだな。良かった」

 

テレジアのその様子を見て一安心した。そして次の場所へと向かおうとする

 

「初芽、五恵をお願い出来るか?私は他の奴らの様子を見て来る」

 

「分かりました。テレちゃん気を付けて下さいね」

 

「初芽もな」

 

テレジアは、地下のツキカゲ基地に続く地下ルートを通って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五恵が戦争を──久子を倒した事でヨハネは殆どの戦力を失った

 

残る敵はただ1人────




五恵は鎧通しを覚えた!内部からの攻撃も可能となったので、実質五恵は直接戦闘に関しては死角なしです。

後、完全に大天使がポ◯モンでした

この章は、後2話で終わらせる予定となっております。(今のところ)

ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:22 ツキカゲVSヨハネ

のんびりし過ぎました。この章ももうすぐ終わるのにね

ではミッションスタートです


光は倒したのも束の間、勝利が信二達の前に立ちはだかる

 

「それなりに仕事は果たしたか。だが、負けるとは些かどうかと思う」

 

「「──ッ!!」」

 

勝利の背後、カトリーナと白虎が同時に仕掛けるのだが

 

「あぁ、君達か」

 

カトリーナの銃と白虎のトンファーが粉々になった

 

「「なっ!?」」

 

「もう君達に興味は無い」

 

勝利は2人の顔を掴んで地面に叩き付けた

 

反応出来なかった。勝利はただ普通に2人の間に入っただけなのだ。だけど、それがあまりにも自然過ぎた。

それ故に反応が出来なかった

 

「カトリーナさん!白虎ちゃん!」

 

「もう終わりにしようではないか!」

 

勝利は両手からトランプを出し、数十枚の量のカードを信二とモモに向けて放った

 

((避けられない!)

 

モモは反動で動けない信二を庇う様に覆い被さる。目を瞑り、痛みに耐えようとする

 

そして2人の前にひとつの影が飛び出した

 

「半蔵門流抜刀術・伍拾肆門!」

 

カード1枚1枚を刀で切り刻む。ハラリと落ちる紙の中に1人の少女

 

「師匠!」

 

「どうやら滑り込みセーフね。それに…」

 

「相変わらず可愛くないな。雪」

 

「何故生きてる?貴様もヨハネに」

 

「おっと勘違いするなよ。私は信二に頼まれた通り助けてるまでだ」

 

雪と天堂の睨み合いが続く。だが、お互いに目を伏せて今倒すべき敵へと視線を向ける

 

「裏切ったら殺す」

 

「やれるものならやってみろ」

 

「お前らもっと仲良く出来ねぇのか!?」

 

「信二さん傷が開きますよ。師匠お願いします」

 

「えぇ」

 

雪と天堂は刀を構え、勝利はトランプを腕全体を使ってシャッフルする

 

そしてシャッフルしてる途中、瞬きをしたらカードがいつの間にか消えていた

 

「フッ」

 

「…上だ!」

 

天堂が先に気付いた。見上げると、大量のカードが降って来た

 

「任せたぞ」

 

「盾にするな!」

 

天堂は雪の影に隠れ、雪はカードを全て捌く

 

「これならどう?」

 

勝利は布を取り出して翻すと大量の機関銃が宙に浮いていた

 

「死ね」

 

機関銃が火を噴く。今の雪なら楽々と躱せるが、後ろには信二とモモが居る。逃げる事は出来ない

 

だから一歩踏み出す

 

「半蔵門流抜刀術奥義・陸拾参門【月影】!!」

 

その瞬間、銃弾は目に見えない何かに弾かれる。その目に見えないものとは雪の刀だ

 

陸拾参門【月影】は、常に毎秒陸拾参門を繰り出し続ける技だ。ツキカゲスパイスならではの神業だ

 

しかし

 

(マズい…)

 

少しずつ、弾が雪の体に傷を付け始める。

原因は刀だ

 

雪が振るうのに対して刀がそれに耐え切れてないのだ。刀身にヒビが入り、刃こぼれも目立ってきた

 

「逃げるぞ」

 

「ですが師匠が!」

 

「つべこべ言うな」

 

信二と天堂でモモをその場から連れ出した

 

雪も庇う負担が減り、少しずつ自分の逃げ道を作りすり足でちょっとずつ移動する

 

そして一瞬の隙間が出来た。雪はそれを見逃さず、そこへ飛び込み弾丸の嵐から身を解放させた

 

「なるほど、アレを躱すとは。だが…」

 

雪は倒れた状態からピクリとも動かない

 

「スパイスの、効力が……」

 

「お前達の使う新しいスパイスは素晴らしい物だ。しかし使う場面を誤ったな」

 

雪が動けなくなり、まともに戦えるのは2人だけ。モモと天堂のみ

 

「信二、私にもスパイスを」

 

「初芽に言って作ってはあるが駄目だ。いくらアンタでも体が!」

 

「そう言うと思って他の奴にもう頼んである」

 

そこへ、天堂の足元にラッパが駆け寄る

 

「よしよし良い子だ」

 

若干警戒しつつもラッパは天堂にスパイスを渡した

 

「面白い。来い…と言いたいがそのアライグマ、他の奴も引き連れて来たぞ」

 

全員が後ろへ振り返るとテレジアが走って来るのが見えた

 

「皆んな無事…何でお前が!?」

 

「またか…」

 

このやり取りに飽きたのか、天堂は頭を抱えて面倒だと思い始める

 

「天堂は味方!敵はあっち!以上!」

 

もはや説明するのも面倒になったのか、少々雑に説明した

 

「そ、そうか」

 

「テレジアちょっと──」

 

信二はテレジアに耳打ちする

 

「そう言う事だテレジア。いくぞ」

 

「命令するな」

 

「──狂乱の時」

 

「──ボルテージマックス!」

 

天堂はツキカゲレッドペッパー、テレジアはソラサキスイートフェンネル2つ齧る

 

瞳に映る十字に三日月が加わり、テレジアも合流してからの二重掛け

 

「どれ程ご細工をしようと私には勝てない」

 

「それは──」

 

天堂の姿が一瞬で消える

 

「面白い!!」

 

一瞬で勝利の上に姿を現す。だが勝利は読んでいた

 

「──ッ!?」

 

カード1枚で天堂の刀を受け止めたのだ

 

そして腕を掴み、引き寄せてみぞに一発強烈な膝蹴りを打ち込んだ

 

「ハァッ!」

 

その影でテレジアも攻撃を仕掛けるのだが、ジャマダハルが意図せずバラバラに砕け散った

 

「何だと!?」

 

何が何だが分からないが、急いで後退して体勢を立て直そうとするが、勝利は逃してはくれなかった

 

後退するテレジアの体にはトランプが数枚貼り付けられていた

 

「しま──」

 

瞬間、爆発した。ゼロ距離からの爆発で、テレジアは大きくふっ飛び起き上がる事は無かった

 

「テレジアちゃん!!」

 

「こんなものか!!」

 

「──ッ!!」

 

天堂は走る。腰に付けていた刀を投げる

 

しかし、トランプで弾かれた上に刀身を真っ二つにされた

 

「──ッ!!」

 

それも想定内。今度は腰に付けていた二本の刀を手に持ち連続で斬りかかる

 

(コイツ!)

 

勝利はカードで全て受け流す。カードで刀に戦うのも驚きだが、ツキカゲスパイスを服用してる天堂相手にここまで互角な戦闘力は驚愕

 

「早く天堂の援護に…ッ!」

 

「動いては駄目です!傷が…」

 

「でもこのままじゃ…天堂1人では無理だ。俺も」

 

信二はツキカゲオールスパイスを出して齧ろうとするのだが、それをモモは取り上げて止める

 

「何考えているんですか!本当に死んでしまいます!!」

 

「このままだと、どちらにしろ全員殺される!だったら一歩でも前に進まなきゃいけないんだよ」

 

モモからスパイスを取り返して齧る

 

「──リリース・ザ・スパイス」

 

「あっ…」

 

「俺を死なせたくなかったら協力してくれ。これで決めるよ」

 

 

 

 

 

天堂も限界に近付いてきた。少しずつ、体の至る所から痛みを感じ始める

 

「無様だな。どれだけ助っ人が来ようと意味など無い」

 

「まだだ!!」

 

信二の蹴りが勝利に向けられる。だが、お見通しらしく簡単に防御した

 

「私、1人で充分…かはっ!」

 

「こんな時に強がんな。…全員で(・・・)行くぞ」

 

「あぁ…」

 

天堂を立ち上がらせて2人は構える

 

「これで最後だ」

 

天堂が走り、その後ろから信二が銃で援護しながら付いて行く

 

「付け焼き刃の連携で勝てるものか!」

 

対して、トランプで対抗する勝利。信二は致命傷になるカードだけ撃ち落とし、天堂の行く先を切り開く

 

掻い潜り、天堂の間合いに入った

 

「仕留めた!」

 

2本の刀が勝利の腹を斬り裂こうとするが、刀が交差する一点を狙い、肘と膝を使って受け止めた

 

「私が真に得意とするのは!」

 

力を込めて刀を砕く

 

「肉弾戦!」

 

天堂の顎を跳ね上げる。崩れ落ちる天堂を掴み、容赦無く殴り続ける

 

「ハァッ!!」

 

「グフッ…!」

 

勝利に殴られ地面を跳ねながら転がる

 

「トランプを使っていたのは、己の強さを隠す為だ」

 

「より弱く見せる為に武器を使っていたのか!」

 

「そうだ。そしてこれで詰み。諸君らに満に一つの勝ち目など無い」

 

圧倒的な実力差。ツキカゲスパイスを使った人間が何人相手だろうが構わず倒す。信二自身、ここまで差があるのは想定外だった

 

「ここまでか…」

 

雪も言葉を溢す

 

「まさかここまで……信二さんの作戦通り(・・・・)とはね」

 

「何だと?」

 

この様な展開になるのは予想通りと言わんばかりの台詞

 

「相変わらず信二は凄いな」

 

「かなりの代償でしたけど」

 

天堂とモモも同じ反応を示していた

 

「何を言って──」

 

そして、地面から大量の鎖が飛び出る。その鎖は勝利の体に巻き付いて封じ込めた

 

鎖は元を辿って行くと、モモ、雪、天堂、テレジアへと繋がっていた

 

「鎖如きで私を止めれるとでも!」

 

無理矢理壊そうとするが、4人が鎖を引っ張り更に締め付ける

 

「グゥゥ!…だが!」

 

勝利は諦めては無い。

上からヒラヒラとトランプが落ち、鎖の上に落ちると爆発した

 

これには鎖でも耐え切れず破壊されて、勝利は自由となった

 

「作戦は失敗だな!」

 

「失敗?まだ信二の作戦は続いてる!」

 

一瞬の油断を見逃さず、天堂は後ろから羽交い締めで捕えた

 

「寧ろ、さっきので大人しくなったらラッキーなもんだ。本命は──」

 

「こっちだ!!」

 

信二が走っていた

 

「やはり信二か!」

 

最後に来るのは信二と予測していた。羽交い締めする天堂に頭突きし、緩んだ隙に拘束から解け、信二へとカウンターを打ち込む為拳を突き出す

 

この勢いは止められない。拳をもう片方で払い除け、脇腹に重たい一撃を打ち込んだ

 

「フンッ!」

 

「がっ!?」

 

勝利も負け時と、腕を掴み蹴り飛ばす

 

「結局失敗に終わったな!」

 

「ツキカゲを舐めるな…」

 

「何……何だと!?」

 

勝利に影が包み込む。影を作ったと思われる上を見上げると、モモが飛んで刀を振り上げていた

 

「俺が本命だが、大本命はモモだ!」

 

「キメなさい、モモ!!」

 

2人の声に背中を後押しされ、モモは最後の一太刀を振りかざした

 

肩から大きく上半身を斬られて、血飛沫が舞い散る

 

「かはっ…!」

 

「信二さんはテレジアちゃんが合流して、すぐにこの作戦を伝えたのです」

 

 

『──テレジアちょっと』

 

 

「あの時か…」

 

「私達の勝ちです」

 

「そうだな。ツキカゲ諸君の勝利だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてヨハネの野望は打ち砕かれた

 

「信二さん、師匠…私やり遂げました!」

 

雪降る聖者の夜が終わりを告げる




さっぱりと決着が着きました。
次回は事件後のちょっとした雑談。
そして、雪の今後が決まります

ここまでの拝読ありがとうございました


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MISSION:23 ツキカゲの黙示録

連日投稿

ではミッションスタート


ヨハネとの戦いから4日が経った

 

ツキカゲ基地は只今修復中。一部の機能は使えるが、その殆どがヨハネや基地内での激戦で使えなくなっていた

 

「勝利と父さんは病院で入院中、母さんはその介護、荒川は死んだ。ヨハネは現状壊滅状態」

 

「暫くは奴らも大人しくするだろう」

 

天堂はコーヒーを飲みながら信二と話すのだが

 

「何故まだお前がここに居る?」

 

テレジアはカレーを食べながら、ジト目で天堂を見る

 

テレジアの言う通り天堂はWasabiで寛いでいた

 

「天堂は正式にツキカゲメンバーとして迎えたよ」

 

「はぁ!?」

 

「喜べ」

 

「何を考えている!信二、お前だって知っているだろ!」

 

テレジアは天堂のメンバー入りに猛反対の様子

 

「雪やカトリーナには話は通してある。信頼を得られるまでは、裏切りは死だそうだがな」

 

「当たり前だ。お前はそれぐらいの事をしでかしたんだからな」

 

「それはテレジアもだろう」

 

一触即発になる前に、命が間に入って場を和ませる

 

「2人共それくらいで。天堂さん、預かってたチッチだよ」

 

「すまないな。寂しかったかチッチ?」

 

文鳥のチッチを肩に乗せて可愛がる。久し振りに会えた主人に、チッチも翼を広げて喜ぶ

 

「そういえば天堂さん、今は何処に住んでんの?」

 

「信二の所だ」

 

「これはこれは。…モモちは本当に大丈夫かな?」

 

「モモがどうしたの?」

 

「何でも無い!…それよりも」

 

今度は信二に今後の事を尋ねる

 

「これからのリーダー誰にする?」

 

「順当に考えたら初芽か命の2人だけど」

 

「メイはパス。そうゆうのはメイには向いてない。やっぱり初さんかな?」

 

「初芽ちゃんは駄目よ」

 

その会話にカトリーナが参加した

 

「初芽ちゃんも、皆んなのサポートもあるからそんなに周りの状況を見ていられないわ」

 

「それなら信二が適任じゃないのか?」

 

「それも考えたけど、ツキカゲの将来を考えたら…」

 

「そうね。ちゃんと決まるまでは、仮のリーダーは一応命ちゃんとしましょう」

 

「そこは信さんじゃないの?」

 

仮とはいえ、信二の能力ならリーダーでもおかしくはないのだが

 

「1ヶ月程実家に帰るよ」

 

命とテレジアは、「また1ヶ月!?」といった表情をした

 

「母さんが──

 

 

『──父さん達の介護があるから、暫くは家に帰れそうにないから掃除など諸々宜しく!』

 

 

「なんて言われたよ。組織は組織で、弟子達に任せっきり」

 

「今度は変な事件を持って帰るなよ」

 

「酷い言い草だな…」

 

「そろそろ帰るとする。信二の手伝いをしなければならないからな」

 

「今日の夜には帰省するからね」

 

最後に挨拶だけ済ませてからWasabiを出た

 

 

 

 

 

////////

 

「えぇ!?信二さんまた出掛けてしまうの!?」

 

モモ、命、楓、五恵といつものメンバーが偶々揃ったから、命は信二について話した

 

「そうなんだよ〜」

 

「そんな〜。色々と誘おうと思っていたのに〜…」

 

中々落ち着かない日々が続き、ようやくヨハネとの決着が付いた。疲労などが溜まってるだからこそ、そんな信二と一緒に出掛けたかったモモ。

リフレッシュも出来、尚且つ距離を縮めれるという一石二鳥の計画。その計画がモモの中で崩壊する

 

「ドンマイモモち」

 

「実家に帰ってる間にあっちで彼女が出来てたり」

 

冗談で言ったが、モモはそれを間に受けてかなり凹んだ

 

「あー!じ、冗談だって!」

 

「フー駄目だよ。今のモモちに冗談が通用しないんだから」

 

「こうなったら…」

 

「モモち?」

 

モモは覚悟を決めて皆んなに宣言した

 

「告白する!!」

 

「マジ!?」

 

「うん!このままだと、いつまで経っても進展しないと思うから!」

 

「頑張って!」

 

意気込むモモだが

 

(無理ね)

 

楓だけは失敗すると予想していた

 

 

 

 

 

////////

 

その夜、見送りにはモモと命と五恵に楓、そして天堂がする

 

「同じマンションに住むモモは分かるけど、何で他3人も?いや、ありがたいけど」

 

「「「いや〜…」」」

 

この3人はモモの勇姿を見る為に集まったのが半分

 

「気を付けろよ」

 

「天堂も皆んなと仲良くしろよ」

 

夜も遅い。そろそろ出発しようとインパラに乗り込む

 

「あ、あの!信二さん!」

 

「雪はもういない。モモも頑張れよ」

 

「はい!…じゃなくて信二さんに伝えたい事が」

 

顔を赤くしながらも勇気を振り絞る

 

「私、その…す、すっ…!」

 

「す?」

 

「す……素敵な1ヶ月にして下さい」

 

3人は肩を落とす。楓に関してはやっぱりといった表情だった

 

「ありがとう。まぁ実家に帰っても、鍛錬と夜のパトロール。場所が変わってもツキカゲのやる事は変わらないよ」

 

「が、頑張って…下さい」

 

「何かあったら、初芽か濃姫に連絡するようにしてるから」

 

信二は優しく頭を撫でてエンジンをかける

 

「行ってきます」

 

走り去って行くインパラを見て、モモは静かに涙を流す

 

「言えなかったよ〜…」

 

「「「…」」」

 

「何だ?まさか信二の事好きなのか?」

 

「ゔぇ!?///」

 

「まだまだだなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだまだモモの恋路は遠い。

そして師匠である半蔵門雪は、記憶を消去してツキカゲを卒業

 

来年から、ツキカゲに新たな出会いと任務が待ち受ける




雪師匠は原作通りに記憶を消去して卒業でした。この話の前日に、雪が卒業している事なので名前しか出さなかったです。

次回は更にその前日、オリ主と雪との最後の絡みを書いてこの章は終了です

ではでは、ここまでの拝読ありがとうございました


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MISSION:24 半蔵門雪の魂と願い

第弐章最終回です。予定では10話分で終わる筈なのに、オーバーしてしまった!

ではミッションスタート


雪が卒業する前日

 

信二は、ツキカゲ基地の復旧で毎日遅くまで作業していた。この日も、その疲れを癒す為朝の鍛錬を休んで寝ていたが

 

「流石ですね。モモより気付くのが早いです。早過ぎ気もしますが…」

 

信二もモモと同じマンションに住んでいる。構造上が同じなので、モモと同じ様にクローゼットに忍び込んでいたのだが、ものの数秒で察知され見つかってしまった

 

「おはようございます」

 

「モモにもこうしてたのか?ちょっとしたホラーを感じるよ」

 

「…」

 

雪はプイッと顔を背ける

 

「で、何の用だ?疲れてるし、今日も基地で作業するんだけど」

 

雪は2枚のチケットを信二に見せる

 

「遊園地」

 

「え?」

 

「一緒に遊園地に行きましょう」

 

そんな訳で雪に遊園地に誘われた。

急いで身支度をして、インパラで空崎を出て遊園地まで移動した

 

 

 

 

 

「珍しいね、雪が俺を誘って遊園地なんて」

 

「信二さんとは一度出掛けてみたかった」

 

「そう…。それなら今日は楽しもう」

 

入園早々2人は何に乗るか迷っていた

 

「やっぱり最初は…定番のコーヒーカップかな?」

 

「私は、こうゆうのは良く分からないので信二さんに任せます。いいですか?」

 

「なら頑張ってエスコートしないとな」

 

最初に乗る乗り物はコーヒーカップになった

 

「ハンドルを回せばカップが動く仕組みですか」

 

「そうそう。懐かしいな。昔は馬鹿みたいに回して絶叫マシン化となったなぁ」

 

「そうなんですか。では回しましょう」

 

「ま、マジで?嘘で──」

 

信二達が乗るカップから絶叫の声が鳴り止まなかった

 

降りると信二は青白い顔で頭を抱えていた

 

「こ、怖い…。雪が回すとマジでヤバい」

 

「今度は何乗りますか?」

 

その後もフリーフォール、ミラーハウス、迷路と色々巡りお昼となった

 

「並ぶのに時間が掛かりましたね」

 

「そうだね。お昼だし何か食べるか」

 

食事とはいっても、遊園地で食べる物は基本お菓子類が割合占めてる

 

「折角だから奢るよ。何でも食べて良いぞ!」

 

「では…このページのメニュー全部で」

 

「えっ…」

 

テーブルに置かれた大量の飲食。到底2人では食べ切れない量

 

「大丈夫です。全部食べれます」

 

「雪ってこんなに食べる人だっけ?」

 

食べ終えて、再度アトラクションを回る

 

お化け屋敷、メリーゴーランド、ジェットコースターなど巡り、そして最後は

 

「観覧車」

 

「やっぱり最後のシメは観覧車だな」

 

夕暮れ時の観覧車で2人っきりでの観覧車。ちょっとロマンチックを感じる

 

「今日がもうすぐ終わりますね」

 

「…明日はモモと会うのか?」

 

「はい。最後はモモに頼もうと思ってます」

 

雪の言う最後とは記憶消去の件だ

 

「隣失礼します」

 

雪から信二の隣に座り込む。この行動もそうだが、今日の雪はいつもと違う

 

「モモは本当に立派に育ちました。あの調子だと、私なんてすぐ追い越す。そしていつかは弟子を持つ」

 

「危なっかしいところはあるけどね」

 

「…信二さん、改めてお願い出来ますか」

 

雪はいつか病院で行っていた頼みの事を言う

 

「これからのモモの事を…宜しくお願いします」

 

「分かった。モモの事は俺がしっかりとフォローする。魂受け取った!」

 

「短い間でしたがありがとうございました」

 

「こっちこそお世話になったよ」

 

そして次の日となり、半蔵門雪はツキカゲを卒業した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

////////

 

空崎から約11時間のドライブを終えた。信二は実家である家に着いた

 

「やっと箱山市に着いた〜」

 

信二が住む箱山市は、少し前に訪れた合宿場から2時間程車移動した場所で住んでいる

 

(雪との遊園地は何やかんや楽しかったな…)

 

先日の事を思い出して、しんみりとした空気を醸し出す

 

「いけないいけない。気持ち切り替えて、空崎を守らなくちゃな」

 

信二は、整理する為持って帰った荷物を持つ

 

その時、ポケットに入ってるスマホが地面に落ちる

 

「やべ」

 

スマホを取ろうとすると、偶々通り掛かった人が代わりに拾ってくれた

 

「どうぞ」

 

「ありがとう」

 

「大丈夫ですか?画面とか割れてないですか?」

 

「大丈夫大丈夫。結構頑丈のスマホだから」

 

その人は信二にスマホを拾ってくれただけでは無く、壊れてないかも心配してくれた

 

「では私はこれで失礼します。急いでますので」

 

「それは悪かったな。道中気を付けてね」

 

「はい!」

 

その人は笑顔で応えて、用事があると思われる方向へ歩いて行った

 

信二はふと気付いた

 

(あれ?確か今って朝の6時前だよな。ランニングにしても私服だし…散歩?)

 

信二はその人の背中を見つめて考えるが

 

「どうでもいいか。今は荷物を下ろさないと」

 

すぐに考えるのをやめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし姫です」

 

先程スマホを拾ってくれた人物は、スマホの着信音が鳴り電話に出る

 

『姫ちゃんごめんね。急に仕事が入って。学校もあるのに…』

 

「いえ、アイドル歌手ですから。こんな時もありますよ」

 

『ありがとう!いつものように、駅の方でスタッフが車で待機してるから』

 

「いつもありがとうございます」

 

『今日も早いけど頑張ってね!No. 1アイドル歌手「豊歌(ゆたか) (ひめ)」ちゃん!」




実は、卒業する前に遊園地に出掛けてました。という話でした
残念ながら、雪師匠の登場は今回で最後となります……多分
これにて第弐章は終わります

次回からは新章です。今までは戦闘中心の物語でしたが、参章ではとにかく溜まってるネタを大量投入しますので、恐らく一番話数が多く比較的平和な章となります。勿論、任務も忘れずにあります

そして新章序盤では、話の最後に出てきた新オリキャラ「豊歌 姫」の視点で物語が進みます

あまり読んで下さる人も少ないですけど、これからも頑張って精進します。
ここまでの拝読ありがとうございました


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第参章 サイバーブラッド
MISSION:25 私だけの師匠


新章開幕です!
今回の話は、前回言った通り新オリキャラからの視点で物語が始まります!

ではミッションスタート!


「お疲れ様でした!」

 

「「「お疲れ〜!」」」

 

そう言って彼女──豊歌姫は今日のイベントを終えて帰宅する

 

 

 

 

 

「お母さんただいま〜!」

 

「お疲れ様。疲れてるんだから早く寝なさいよ」

 

「は〜い!」

 

姫は日本No.1アイドル歌手。最近は世界にも注目され始めている。

姫は現役の女子高生。学年は1年だが、今年から晴れて2年生。

両立を何とか頑張っている

 

 

 

そして次の日の朝

 

姫は日課としてるランニングをする為に家を出る。日が昇る前、町内を1周するのが当たり前

 

「う〜ん!箱山市の朝は気持ちいい〜!」

 

「ふわぁ〜。気を付けなさいよ。最近ニュースで、色んな犯罪犯が捕まってるって聞くけど、世の中にはまだまだ危ない人が居るから」

 

「分かってるって!」

 

母の注意を聞いて、軽く準備運動をしてから走り出した

 

歌手とはいえ体力も必要。姫はデビューしてから毎日欠かさずしているのだ

 

「ハァ…ハァ…」

 

走って少しの時間が経った。橋の上を通り抜けようとするが、その道中で図体のデカイ男に絡まれた

 

「金を寄越せよ」

 

「無いですし、あったとしてもあげません。失礼します」

 

横をすり抜けようとするが腕を掴まれた

 

「離して下さい」

 

「お前女だな。それなら俺と遊びやがれ!」

 

大男は強引に腕を引っ張る。その表紙に被っていた、ランニングウェアのフードがズレ落ちる

 

何故フードを被っていたかのか。姫も有名人。顔を晒してしまったら大騒ぎとなる。それを避ける為に被っていたのだが

 

「お前…歌姫の豊歌姫か?」

 

「それが何ですか?」

 

大男は怪しげな笑みをした

 

「来い!」

 

「離し…離して下さい!」

 

姫は危機感を察知し、大男の顔を叩いた

 

「へぇ〜。強がりもいいが相手を考えな!」

 

大男は姫を何処かへと連れ去ろうとする。

姫も踏ん張ってみるもの、力で負けてズルズルと引きずられる

 

もう駄目と思われたが

 

「あの〜すみません。邪魔なんですけど」

 

大男の後ろから声を掛けたのは、先程まで、ランニングをしてたと思われる男性だ

 

「邪魔な上にその子嫌がってます。離して下さい」

 

「あぁ?お前が邪魔なんだよ…殺すぞ?」

 

大男は男にナイフ向けて脅す

 

「ち、違います!私はこの人と揉めてなんか…。じ、戯れていただけです…」

 

姫は関係無い人が巻き込む事を恐れてそんな事を口走った

 

「ふぅ〜ん。戯れていただけか…」

 

「そうだ!何か文句でもあんのか!?」

 

大男もそれに便乗する

 

「ねえ君」

 

「はい…」

 

「『助けて』って顔に出てるよ」

 

「えっ?」

 

瞬間、大男の握ってたナイフの刀身が真っ二つに折れた

 

「なっ!?」

 

ランニングウェアの男がナイフを蹴りだけ折ったのだ

 

「ふざけてんじゃねぇよ!」

 

「は?何言ってるの?」

 

ランニングウェアの男は、大男の腹を殴り地面に倒れる。そして、折れたナイフを眼球に向ける

 

「先に仕掛けたのはそっちだ。文句言うなよ」

 

「お、覚えてろよ!」

 

大男は捨て台詞を吐いて、その場から急いで立ち去った

 

姫を助けた脅すも、仕事は終わった感を出してランニングに戻ろうとするが

 

「あ、あの!」

 

「何?」

 

「助けてくれてありがとうございます!」

 

「気にするなよ。いつもの事だから」

 

いつもの事。少し気掛かりになったがあまり詮索はしないようにした

 

「それと…私を助けたのは何故ですか?」

 

「?」

 

姫は、「自分があの有名人だから」と思って助けてくれたのかと思ったが、男は完全に何を聞かれているのか全く分かっていなかった

 

「す、すみません!変な事を聞いてしまいましたね…」

 

「……困っていたから助けた。それだけ」

 

男はそう言って走り去った

 

 

 

 

 

////////

 

「姫それ大丈夫だったの!?」

 

「う、うん。さっき話した通り、偶々居合わせた人が助けてくれての」

 

姫は朝起きた出来事を友人に話していた

 

「良かった。でも気を付けなさいよ!有名人な上に姫は美人なんだから!」

 

「わ、分かってるよ!」

 

「おっともうこんな時間!帰らなくちゃ!」

 

窓を見れば夕暮れ。2人は喫茶店に居たのだ。友人は門限があると言ってすぐ店を出た

 

姫も別れを告げて帰宅する

 

その帰宅途中、朝で一悶着あった橋の上で川を眺めていた

 

「あの人誰だったんだろう…」

 

「よう、また会ったな」

 

振り向くと、今朝出会った大男が目の前に。姫は何の抵抗も出来ずに、車へと乗り込まされて誘拐された

 

 

 

 

 

その夜。誘拐された事はあっという間に知れ渡り、豊歌家の前には警察は勿論、報道陣やギャラリーで溢れかえっていた

 

「何の騒ぎだ?…あのすみません。これって何があったんですか?」

 

姫を助けた男。夜もランニングしてたら、その集まりを見てしまったので群がる人に尋ねてみた

 

「あぁ、あの歌姫が誘拐されたんだってよ」

 

「歌姫?」

 

「豊歌姫だよ」

 

 

 

 

 

////////

 

「身代金が目的ですか?」

 

「それもあるが…舐められっぱなしも癪に障る」

 

姫は何処かも分からない場所へと誘拐されてしまった。分かる情報といえば、此処が工場内って事ぐらいだ

 

更に言うと、大男以外にも何十人の人数が揃っていた

 

「本当なら、あの男をターゲットにしたかったが何せ居場所が分からないからな」

 

「こんな事をして何の意味が!」

 

「意味?さっきも言ったろ。癪に障ると」

 

「警察の人がすぐに此処を突き止めます!貴方達なんて…」

 

「無理無理。此処は誰にも見つからな──」

 

「大変です!」

 

突然扉から勢い良く開け放たれた。下っ端と思われる奴が、息を切らしながら報告をする

 

「襲撃されました!」

 

「はぁ!?今になって警察に見つかったのか?」

 

「いえ、相手は警察ではないです。只の変なコスプレをした変人です!」

 

「チッ!お前も来い!」

 

姫を強引に連れ出して渡り廊下を歩いてく

 

「人数は?」

 

「それが…1人です」

 

襲撃されて戦闘中と思われる場所へと着くと、そこには忍者の服装をし、赤いフードを被り狐の面を被って者が素手で大人数を相手にしていた

 

「アイツは『狐』じゃねぇか!」

 

「狐ですか?」

 

「裏社会じゃ知らぬ者はいない。報酬さえ貰えばどんな仕事もこなす危険人物だ。何で奴が此処へ?」

 

狐と呼ばれる人物は、大男の存在に気が付き獲物をロックオンする

 

「おい!ロケットランチャーを持って来い」

 

「は、はいっす!」

 

大男は渡されたロケットランチャーを狐に向かって標準を合わせる

 

「止まれ!大人しく当たれば人質は無傷で返してやる。だか避けようもんなら」

 

姫の頭に銃口が突き付けられる

 

狐は大人しく言う事を聞きその場に立ち尽くす

 

「死ねえぇぇ!!」

 

時速約900km/秒の速さでロケット弾が狐に向かい爆発した

 

「あの狐を俺が殺してやった!!」

 

「流石ガッ…!?」

 

下っ端も歓喜の声を上げようとするが、肩に鋭い痛みが走り尻餅をつく

 

「武器の密売もしてる事は調査済みだったけだ、まさかロケットランチャーまで持っているとはビックリした〜!」

 

「な、何だと!?」

 

土煙りの中でそう呟く声が聞こえた。そして晴れると、姫と大男はその狐という人物の正体を知り驚愕する

 

「お、お前は!」

 

「あの時助けてくれた…!」

 

「あっ…。さっきので壊れたか…」

 

ロケットランチャーの爆風で面が壊れ、フードはずれ落ちていた。

狐の正体は、橋の上で姫を助けた人物だった

 

「一体どうやって…!」

 

「簡単だよ。当たる前に爆発させた」

 

そう言って、手には4つのリップクリームを持っていた

 

「降りて来いよ。勝負を決めようじゃないか」

 

「ふざけるなァァァ!!」

 

未だに倒されてない残りの奴らが、一斉に銃口を向ける

 

「使う予定では無かったけどな」

 

男は、腰から小さな木ノ実を取り出して齧った

 

「── Ready Go!」

 

そして男は姫の視界から消えた

 

「何処…?」

 

「此処だよ」

 

「えっ…」

 

男は一瞬で姫の側に移動していた

 

「ついでだから、他の人は気絶してもらってるよ」

 

周りを良く見ると、男の言う通り何十人と居た輩が倒れていた。

残るは大男のみ

 

「こんな筈は…!」

 

「拍子抜けだな」

 

男はまたも、姫には捉えきれない速さで移動して大男を地面へと叩き付ける

 

そして銃口をおでこにくっ付ける

 

「警察に突き出すけど一応警告。…次は容赦はしないよ」

 

最後にそう言って引き金を引いた

 

「こ、殺したんですか?」

 

「殺してないよ。麻酔弾だから」

 

よく見ると、大男は息をして静かに眠っていた。確かに麻酔弾を撃っていた

 

「後は、記憶を消して終わりだけど…」

 

男は姫に近付いて銃口を向ける

 

「見られたからには忘れてもらうよ」

 

「ま、待って下さい!」

 

引き金を引く直前で姫は止める

 

「私は忘れたくない!」

 

「それは無理だ。決まりだからな」

 

「だ、だったら──私も連れて行って下さい!」

 

意外な展開になった

 

「一応言うけど、記憶を消すのはこの場面だけ。全部消すという訳じゃ…」

 

「なら尚更です!」

 

「君の事は知っている。豊歌姫、16歳。小学6年生から歌手としてデビューし、今の経歴に至る。学校とも両立も出来ており、親と共に3人で暮らしてる…ところかな」

 

男は腰のバックから取り出した資料を見てそう言った

 

「危険な世界に来る理由が見つからない」

 

「…私は皆んなを笑顔にしたいんです。だから歌手になりました。ですが!」

 

姫は真剣な眼差しで目の前に居る彼に言う

 

「今のを見て良く分かりました。私達が安心して暮らす裏では色んな事があるのを。その世界で悲しい思いもする人々もいます…。だからこそ──」

 

「分かった分かった。…もう元の生活には戻れない。死ぬかも知れない。それでも?」

 

「はい。危険は承知です」

 

男は姫の押しに負けて肩を落とす

 

「そうか。では改めて……俺は緒方信二。コードネームは信長だ。宜しくな」

 

「ゆ、豊歌姫です!よ、宜しくお願いします!」

 

2人は手を取って握手する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが緒方信二と豊歌姫の出会いだった




そんな訳で弟子です。
次回も姫視点で話が進みます

ここまでの拝読ありがとうございました


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MISSION:26 受け継ぐ魂

豊歌 姫 ゆたか ひめ
16歳/164cm

容姿
髪色は作者が見た感じでは、楓はオーキッドに近い色味の紫に対し、姫はちょっと濃い紫、藤色をイメージしてます。ロングです。五恵や初芽も同じくらいの長さ。
瞳の色も同じく藤色。
胸の膨らみ?皆んなデカイから姫もデカイですよ


前回、姫のプロフィールを書き忘れたので置いときます。

最近、お気に入りが増えて満足です。感想も沢山頂いでるので励みになります!

ではミッションスタート!



『続いてのニュースです。あの人気アイドル歌手の豊歌姫さんが引退との事です』

 

信二はTVを切り、姫の方は体を向ける

 

姫は今、今後の生活について詳しく説明を貰うのに信二の自宅にお邪魔していた

 

「姫って有名人だったんだね」

 

「はい。知らなかったのですか?」

 

「アイドルとかには興味無くてな」

 

それを聞いて少し凹んでしまった

 

「…まぁ、君の事を知る為にあれから色々と調べたよ。MVの動画配信も1000万再生が普通とか」

 

「あの信二さん、世間話も良いですが本題はどうなったのですか?」

 

「そうだったな」

 

ようやく本題に入れた事にホッとする

 

「君は先ず、スパイとして技術を身に付けて貰う。1ヶ月後、つまり2月にはそれなりの戦闘力を付けて空崎へ引っ越して指定する高校へ転入。大雑把に説明するとこんな感じだ」

 

信二が出す最低な課題は、1ヶ月の間で戦力になる体と技術を身に付けろと言う無理難題だった

 

「詳しく事は順を追って説明するけど、何か質問はあるか?」

 

「はい!信二さんって狐何ですか?」

 

その質問に肩がずり落ちる

 

「そ、それは周りが勝手に言ってるだけ。コードネームだってちゃんとありますよ」

 

「訓練は明日からですか?」

 

「あぁ。…そうだ言い忘れてた」

 

信二は懐から小さな木ノ実を姫に渡した

 

「俺達が所属する所ではスパイスが生命線。必要な時以外使うなよ」

 

「あの…スパイスって何ですか?」

 

スパイスの説明はまだしていなかった。姫に、スパイスの効果とそれに必要な体力などを説明した

 

「俺達が使うのは「ソラサキオールスパイス」だ。さっきも説明した通り、俺達のは特別生だから無くすなよ」

 

「はい!」

 

「最後に、今からは俺の事を師匠と呼ぶように。これからは師弟関係だからね」

 

「分かりました師匠!」

 

 

 

 

 

////////

 

早朝5時。姫は待ち合わせの場所へと到着した

 

「5分前。次からは30分前行動で。現場に行くと、準備とか何やらでやらなくちゃいけない事があるから」

 

「気を付けます!」

 

「じゃあ走るよ!」

 

黙々と走る2人。

その途中、姫は何処まで走るのか気になったので聞いてみると

 

「う〜ん…6時半頃には家に着く感じで」

 

「えっ!?それもうマラソンじゃないですか!」

 

「これでも少ないよ!知り合いの子なんて、町内とか余裕で走り切ってるよ!それにまだ、全力ダッシュじゃないだけいいじゃん!」

 

なんて言いながらも、姫は最後まで信二について行けていた

 

 

 

 

 

「次は体術だ!」

 

信二の自宅の地下へと移動した。地下にはトレーニング場や射撃場が設けられていた

 

「ひ、広過ぎです…」

 

「うんいい反応だ。初見はそう思うだろう」

 

「ここで体術の訓練ですか?」

 

「これ着けとけ」

 

信二が渡したのはヘッドギアとグローブだった

 

「リングに上がれよ。俺と勝負だ!」

 

「え、あ、あの……お手柔らかにお願い、します…」

 

素人相手にプロが相手みたいなものだ。それはもはや虐めに近い内容だった

 

姫は完全にノックダウン。白目を剥き、泡を吐いて痙攣しながら気絶していた

 

 

 

 

 

午後となり、信二は姫をとある場所へと連れ出した

 

「こんにちは!」

 

「あら〜信二君じゃないの!こんなに大きくなって〜!」

 

「師匠此処は?」

 

「此処は競技かるたの教室」

 

何故かるたなのかが分からなかった。それがどうスパイと結び付くのか、何が役に立つのか

 

「師匠、私は何をすれば?そもそもこれって何の訓練?」

 

「答えは簡単!反射神経だよ」

 

信二が指差す方へ向けると大人達が百人一首をしていた

 

「見てご覧」

 

札を取る手をよ〜く見てみる

 

「速!?」

 

「何で此処で反射神経の訓練をするのか分かった?」

 

現役の人達の動きを見て分かった。反応する速度が速いのだ。信二は、この中で混じってすればそれなりに訓練になると踏んだのだ

 

「因みに相手をするのは、今目の前にいるおばさんだよ」

 

「宜しくね〜!」

 

「補足すると元クイーン」

 

「え゛っ!?」

 

結果は当然の如く全敗。それどころか1枚も取れなかった

 

その後は話術、罠術とその他諸々と信二に叩き込まれる

 

 

 

 

 

それから一週間が経過した

 

この日も訓練に明け暮れて、身も心もボロボロの姫。そしてそれは、自身を無くしネガティブな考えとなっていく

 

(何やっても上手くいかない…。私向いてないのかなぁ…)

 

重い足取りで夜道を帰る

 

「あっ…」

 

姫は信二の家に忘れ物をした事を思い出した

 

(気不味いなぁ…)

 

今の自分の顔をきっと酷いものだろう。疲れきった顔をして、嫌そうな顔

 

今の自分を信二が見ると怒るだろうと思ってると玄関前に着いた

 

インターホンを鳴らして呼び出すのだが

 

(出ない?)

 

いくら鳴らしても応答が無い。仕方なく勝手にお邪魔する事に

 

「師匠〜?」

 

廊下の奥からドタバタ音が聞こえる。音が鳴り止むと、ひょこっと頭だけを出した信二が見えた

 

「姫じゃん!どうしたんだ?」

 

「忘れ物を…」

 

「そうか。なら、ゆっくりして行けよ。もうすぐしたら上がるから車で送るよ」

 

「では…お言葉に甘えます」

 

信二は浴槽に戻り、姫は忘れ物をしたリビングへと行く

 

「え〜と…あった」

 

忘れ物のタオルを取り椅子に座る。改めて部屋を見渡して思う

 

(師匠はあの鍛錬を毎日難無くこなしてる。それも本来なら私以上のメニューで…)

 

タオルを鞄にしまい帰ろうとする時、ふと机の上に置いてある一冊のノートが目に入った

 

「ノート?師匠のかな?」

 

姫は失礼と思いながらも、好奇心には勝てずに勝手に中身を読み始める

 

 

 

1月5日

豊歌姫という人物が俺の弟子となった。初めての訓練。まだまだ甘いところもあるが見込みはある。

俺にしても初めての弟子だ。彼女の事を考えつつ今日から訓練メニューを考えよう。

 

 

 

1月12日

あれから1週間が経った。彼女は吐いたり、気絶したりとするが無事について来てる。普段から体力作りをしていたのか、朝の運動にも慣れてる様子。もう少しペースを上げてみよう。

 

 

 

1月14日

最近どうも様子がおかしい。疲れてる…と言うよりも不安そうな表情をしてる。恐らく原因は……。

何とかして自身をつけてあげなきゃ。こんな状態でツキカゲに入れても足を引っ張るだけだ。最悪の場合も想定しなければならない。

それを避ける為に師匠である俺が支えなきゃ!

後日、もう少し訓練の内容を改めて改善しよう。

 

 

 

中身は日記だった。それ以外にも、姫を思っての訓練メニューがびっしりと計画されていたり、細かい癖までも書き出していた

 

このノートは、全て姫の為を思って作った物

 

「何勝手に読んでるの」

 

見るのに集中していたせいか、風呂から上がった信二に気付いていなかった

 

信二はノートを強引に奪い取り机に置く

 

「師匠ごめんなさい…。でもこのノート」

 

「……甘やかしていると言われるかもな」

 

「えっ?」

 

「でもね、それでも俺は甘やかすのを辞めない。だって可哀想じゃん。努力しても実感出来ないなんて。俺はお前の事を大切にしたい」

 

「師匠…」

 

「俺は師匠で姫は弟子。無理に歩幅を合わせなくていい。俺が支えて合わせるから。姫はゆっくり成長すれば良いよ。最後まで付き合うから」

 

その言葉で姫は知らぬ間に涙を流していた

 

「ど、どうしたの?」

 

「すみません。私があまりにも情け無くて…。師匠は私の為に色々としてくれていたのですね…」

 

「うん」

 

「無意識に甘えていたのか……。師匠もう大丈夫です!おんぶに抱っこの関係はここまでです!私、もっと頑張るから師匠と同じメニューでやらして下さい!」

 

涙を拭い、改めて覚悟を決めて信二にお願いする。甘えきった自分を変える為に。師匠ともっと近く居たいから

 

「今ので何が変わったのか俺には分からないけど、何か心を動かす事をしたんだな。…いいよ。なら、明日から容赦無く訓練するからね」

 

 

 

 

 

////////

 

次の日からより過酷な訓練が始まった

 

朝の走り込みも全力ダッシュに変わっていた

 

「ハァ…ハァ…ッ」

 

「姫無理するな!ゆっくり自分のペースで走れ!だが、常にダッシュを怠るなよ!」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

体術もヘッドギアも退けて教え込んでいた

 

「ガードが甘い!動きも遅い!」

 

「は、はい!やあぁぁ!!」

 

姫の拳が信二当たった…と思ったが難無く受け止めていた

 

「脇が広がってる!もっと締めて拳を振るわないと威力が分散して力が出ない!一つ一つの動作に丁寧にしろ!」

 

 

 

 

 

「──ッ!!」

 

競技かるたでも集中して札を取り続けていた

 

(自分でも分かるくらいの集中力。これなら幾らでも取れる!)

 

「……」

 

 

 

 

 

爆発的な成長を見せ始める姫。その成長スピードは目を見張るものだった

 

それから訓練を始めて4週間が経とうとした

 

「姫、今日から訓練内容を大幅に変える。最終段階だ」

 

「今の私は何でも行けますよ!」

 

「良し!最後の訓練は……武器選びだ!」

 

「武器ですか?」

 

「ああ、此処にはある程度の武器なら何でも来いでいっぱいある。その中から自分が「これだ!」と思う武器を選んでくれ。これからの任務で自分の命を預けれる物を」

 

姫達が訓練として使っていた地下には、武器が大量に置いてある。刀は勿論、鞭や鉄球と多種多様の品揃え

 

「本来なら、俺みたいに石ころでも武器にして戦えるオールラウンダーに仕上げたかったが、今は時間が無いからな」

 

「ひとつ以上選んでも良いですか?」

 

「勿論だ。使える武器を増えれば、その分戦略、戦術、応用にも幅がきく。だけど今回はメインの武器を。少しでも巧みに扱える様にしないといけないから」

 

「分かりました。う〜ん、どれから手をつけよう…」

 

「3日以内に見つけろよ」

 

それから姫は黙々と武器選びに没頭するのであった

 

 

「斧……重いよ〜!」

 

斧を手に取るが重い為に、長期の戦闘には向かないと判断し却下

 

 

「槍に鎌か」

 

ブンブン振り回して試すのだが、致命的な弱点に気付いた

 

「長柄武器って狭い場所では使えないよね…」

 

 

「いっその事師匠と同じ拳で!」

 

だが拳での戦いも未だに未完成なところが多い。中途半端な状態で使うなら辞めた方が良いと判断した

 

色々と試したが、どの武器もしっくりとは来なかった。でも気になる物はあった

 

姫はトンファーと鎖鎌を並べて眺めていた

 

「むむむ…」

 

「悩んでるな」

 

「あ、師匠。そうなんです。どれもしっくりとは来なかったですけど、この2つだけは気になって…。でも何か違う様な」

 

またも唸り始めて悩む。それで信二は少し案を出した

 

「それなら、この2つの武器をベースに「こんながあったら便利だなぁ」と言うのを言ってみて」

 

「トンファーは、この長さくらいの刀剣が欲しいと思ってます。普通に刀でも良かったのですが、違和感を感じたので辞めました」

 

「鎖鎌は?」

 

「これは、この鎌の様に鎖が繋がっていたら使い易いなと思って」

 

「…分かった。先ずはトンファーの方を片付ける。少し待ってろ」

 

姫は信二を待つ事に。それからすぐに帰って来た

 

「お待たせ!これならどうかな?」

 

信二が渡したのはロングブレードのサバイバルナイフだった

 

姫は試しに数回素振りをする

 

「これです!私コレに決めました!」

 

数回振っただけで決まってしまった

 

「でも鎖鎌はどうしましょう?」

 

「なぁ、さっき言ってた通りこの鎖がナイフに付いていたらどうする?」

 

「それは嬉しい案と思いますが…」

 

「なら手配しよう」

 

信二はスマホを取り出してとある人に連絡した

 

「初芽、ちょっと頼みたい事があるんだけど」

 

数分後

 

「武器の方は何とかなりそうだ。残りの時間は、自分の手足の様に扱える練習だ」

 

1日で決まった武器選び。姫は訓練に追加し、練習に勤しむのであった

 

 

 

 

 

////////

 

「お休みですか?」

 

空崎へと旅立つ2日前。信二から言い渡されたのはお休みだ

 

「両親とちゃんと会っとけよ。空崎に行ったら会える日は殆ど無いからな」

 

「はい!」

 

「それともうひとつ。もうちょっと距離縮めないか?こう…気楽に?」

 

「気楽に…」

 

深く考えた結果

 

「こう…かな?」

 

姫は信二にハグする

 

「俺は言葉使いの事を言ったんだが…」

 

「あ、な〜んだ!それならそうと言ってよ!」

 

 

 

 

 

////////

 

そして今日、空崎へと旅立つ時

 

「お母さん、お父さん!行って来るね!」

 

「体には気を付けてね」

 

「お前がそう決めたのなら何も言わん。頑張れ」

 

両親との別れを告げて、姫は信二の自宅へと向かう

 

「師匠おはよう!」

 

「これから11時間のドライブだ。途中朝飯買うからな」

 

「新しい出会い!胸が膨らむ〜!」

 

姫は、これから起きる出会いに期待を胸にする

 

「荷物荷物〜……うん?」

 

姫はトランクの中を見て首を傾げる。

それも当然、インパラのトランクの中はちょっとした武器庫なのだから

 

「それ全部仕事で使うやつ。後ろの席にでも置いといて」

 

「あぁ…全部仕事で…」

 

2人はインパラに乗り込む

 

「そうだ、忘れてたけど姫のコードネームは『秀吉』だから」

 

「そんな大事な事をサラッと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は空崎へ向かう

 

新たなツキカゲの歴史が刻まれ始める




次回からはツキカゲ組と対面です。
視点もオリ主へと戻します。

後、次回からは投稿を2週間に1本になります。理由としては、私が色んな小説書き過ぎ問題で忙しいからです…
書こうと思えば1週間に2本はいけますよ。4章序盤まではプロットは出来ていますので、文字に起こすだけですから

そんな訳で、ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:27 新生ツキカゲ

何故こんなにも遅く更新するのかって?

この小説、自分の他小説とコラボさせる為に調整もしてるから!!
リリスパに気を取られて、コラボさせる小説が全然進んで無い!早く書かなければ!

では、ミッションスタート!


「此処がWasabi?」

 

「さっき教えた合言葉をちゃんと言えよ」

 

信二と姫は空崎に着いた。そして、カトリーナに挨拶する為にWasabiに遊びに来た

 

「いらっしゃい!」

 

「オリジナルカレー蜂蜜抜きガラムマサラ増し増し!」

 

「…こちらへどうぞ」

 

店の奥に案内されて地下へと移動する

 

「久し振りね信二君。その子って…」

 

「お久し振りです。俺の弟子です」

 

「豊歌姫です!宜しくお願いします!」

 

「やっぱり豊歌姫ちゃん!アイドル歌手だったよね!この前引退したけど」

 

カトリーナも姫の事は知っていたらしい

 

「私はカトリーナ・トビーよ。元ツキカゲで、今は皆んなのサポートをしてるの。困った事があったら遠慮無く聞いてね」

 

自己紹介も済んでエントランスに着いた

 

「皆んなはまだ学校だからゆっくりして行ってね」

 

カトリーナは店の方へと戻って行った

 

「師匠、待っている間はどうすればいいのかな?」

 

「中に入ってもいいけど、まだツキカゲに入った訳でも無いし…。素直に待つか」

 

「うん!」

 

「コンビニにでもちょいと出掛けて来るよ」

 

「いってらっしゃい〜」

 

信二はWasabiを出て、近くのコンビニまで足を運ぶ

 

適当な菓子を買い上げて、その帰りの道中

 

「ひったくりよー!!」

 

偶然にもひったくり犯がこちらへ向かって来る

 

信二はひったくり犯を捕まえようとするが、間を挟んで1人の女の子が居た

 

「ハッ!」

 

女の子を退かしてる暇は無い。信二は転がっていた石をひったくり犯向けて投げる。

見事、女の子の横を抜けて石がひったくり犯に命中する

 

「おっしゃ!君大丈夫だったか?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「俺はこの人を警察に突き出すから。君は気を付けてる帰ってね」

 

信二はひったくり犯を引き摺りながら、交番へと歩いて行った

 

「伊智香ちゃんお待たせ…どうしたの?」

 

「あ、師匠!今凄い人を見かけたんです!」

 

 

 

 

 

「少し遅くなったな。急いで帰らないと」

 

「信二さんですか?」

 

声が聞こえて振り向くと初芽が居た

 

「久し振り!今帰りなのか?」

 

「お久し振りです。今日は日直でしたので遅くなりました。これからWasabiですか?」

 

「あぁ、色々話す事があるからね。それよりこの前頼んだ武器ってどうなった?」

 

「それならちゃんと完成していますよ!それにしても、急に武器を新調なんて何かあったのですか?」

 

初芽は頼まれた当初から気になっていた事を質問する

 

「集まってから話そうと思ったけど…。実は弟子が出来たんだよ」

 

「それで武器が必要に。それにしても信二さんも弟子ですか」

 

「も?」

 

違和感のある言い草に首を傾げてるとWasabiに着いた

 

「お帰りなさい。皆んなもう集まってるわよ」

 

エレベーターで初芽とカトリーナと一緒に降りて行く。エントランスに着くなり何やら騒がしかった

 

「皆んなどうしたの?」

 

「カトリーナさん聞いて…あ、変態」

 

「会って始めの第一声が『変態』って…」

 

会って早々に楓から変態と呼ばれた。それに気付き他の人も信二の存在に気付く

 

「おっつ〜信さん!」

 

「どうも。それより何の騒ぎ?」

 

「侵入者ですよ。見て下さい」

 

楓達の後ろを覗くと姫が体操座りで縮こまっていた

 

「…何やってんだ?」

 

「凄いでしょ!あの歌姫が何故か知らないけど基地に居るんだよ!テンション上がる〜!」

 

「有名人だろうと侵入者です!」

 

姫は「助けて!」の視線を信二に向けるも

 

「あぁ…侵入者だな」

 

「師匠!?」

 

「「え、師匠!?」」

 

思わず声を出した姫に、命と楓が反応した

 

「ふふ!紹介しよう!俺の弟子の豊歌姫だ!」

 

「信二さんも弟子ですか?」

 

「…だから何だよその『も』って?他に誰か弟子を取ったの?」

 

五恵がモモに向けて視線を向ける

 

そしてモモの背中に隠れてる1人の人物を見た

 

「君…さっき会わなかった?」

 

「は、はい。あの時はありがとうございました!」

 

「2人共知り合いなの?」

 

「師匠、さっき言ってた人がこの人です」

 

「師匠…という事はモモの弟子?」

 

「はい。『才賀伊智香』です」

 

先程助けた才賀伊智香と言う子は、モモの弟子だった

 

「緒方信二だ。頑張ってね」

 

「は、はい!」

 

「信二君、姫ちゃんもツキカゲに入れるつもりなの?」

 

「あれ?連絡はしては無かったけどその予定で連れて来たのだけど。駄目でした?」

 

「驚かせたかったのは分かるけど、連絡はして欲しかったわ。試験の準備もあるのに」

 

ツキカゲの試験は鬼ごっこが定番なのだが、今からするにしても少しばかり遅い。

試験は明日にしようと思った矢先

 

「なら模擬戦で決めてはどうだ?」

 

信二の背後から天堂がそう提案した

 

「天堂…」

 

「安心しろ。言い出しっぺの私が相手をしてやる」

 

「天堂さんですか?宜しくお願いします!」

 

「ちょ!ちょっと待って!」

 

モモは信二と天堂を連れて話し出す

 

「反対です。姫ちゃんにもし何かあったらどうするつもりですか?」

 

「だそうだ。師匠である信二はどうなんだ?」

 

「え?まぁ、良いんじゃね?」

 

信二の事だから、てっきり味方してくれるかと思ったがそんな事は無く、寧ろ投げやりな返事で許可をした

 

「なっ!?」

 

「決定だな」

 

天堂は準備運動しながら姫の元へ歩いて行った

 

「信二さん!」

 

「良い機会だ。これで姫の実力を皆んなに見せれるよ」

 

「だからって…。せめて相手を変えるべきです」

 

「そんな心配は要らないよ。…姫!」

 

信二は姫に、模擬戦用のロングナイフを渡した

 

「試験内容は天堂との模擬戦。勝ち負け関係無く、君の実力を皆んなに認めさせれば試験は合格」

 

「分かった」

 

「因みに天堂は、モウリョウという元敵組織に所属していて、俺とあそこに居るモモと協力してやっと倒した相手だ。南無」

 

「手を合わせないでよ!?しかも天堂さん強!?」

 

「はいはい。天堂準備はいいか?」

 

天堂は木刀を構える。姫もそれを見て両手にナイフを構える

 

お互いに準備は万端

 

「いざ尋常に──始め!!」

 

先手必勝。姫は駆け出して天堂へと切り掛かる

 

「ハァッ!」

 

「緩い!」

 

天堂は木刀でナイフを受け止め、そのまま蹴りを入れる

 

「弱いな」

 

「まだ始まったばかりだよ!」

 

すぐさま姫は立ち上がり、ナイフに蹴りを連続で仕掛ける

 

(行ける!このまま行けば!)

 

防御する天堂に勝てると思い始める。だけどその思い込みが命取りとなる

 

 

 

「はぁ…伊智香ちゃんよく見て勉強するだよ。少しの油断が命取りとなるのを」

 

「油断…」

 

 

 

「──ッ!?」

 

姫のナイフが打ち上げられた。そして木刀が突き付けられる

 

「勝負ありね」

 

「本当にそう思うか?」

 

「それはどうゆう意味ですか?」

 

楓の言う通り勝負は天堂の勝ちは目に見えてるが、信二はそう思ってはいなかった

 

「ハァ…ハァ…。負けない、私は絶対に…師匠と共に世界を笑顔にするんだ!!」

 

ナイフを逆手持ちに変えて切り掛かる

 

「お前に、私は倒せない!」

 

「うあっ!?…まだまだ!」

 

蹴り飛ばされるが、再度立ち上がり先程弾き飛ばされたもう一本のナイフと手に取る

 

天堂はナイフ避けるが、段々とナイフを避けるのでは無く受け流し始めた

 

(コイツ…キレが良くなってる。ならば!)

 

天堂は一度距離を取ってスパイスケースから、ソラサキレッドペッパーを齧る

 

「──宴を始めよう!」

 

「それなら私も!」

 

姫も1ヶ月前、信二から貰ったソラサキオールスパイスを齧る

 

「──響かせる!」

 

姫の瞳も青く光る。そして、自分の身体能力が爆発的に上がっている事に気付いた

 

「絶対に負けられない!」

 

「来い!」

 

姫の姿が消えると同時に天堂の顔が跳ね上がる

 

(速い!?)

 

姫はしなやかな体を利用して、天堂に反撃の余裕すら与えずに攻め続ける

 

「クソッ!」

 

「ハァァァッ!」

 

姫の攻撃速度が速くなっていく

 

そして

 

「がはっ…!」

 

受け切る事も出来ず、みぞに一撃が決まる

 

「これで終わり」

 

倒れた天堂にナイフを突き付ける。それが決着となった

 

「はい終わり!文句無しの姫の勝利だね」

 

「ふぅ〜!ありがとうございました!」

 

「姫ちゃん、こっちにシャワーがあるから浴びて来て」

 

「は〜い!」

 

カトリーナの案内で浴室の方へ向かった

 

「姫の一番の武器は『才能』。今はまだ危なっかしい場面もあるけど、集中すればする程その才能は一時的だけど開花する。将来はあれぐらい強くなるって事だよ」

 

「はぇ〜!今の状態でもスパイス有りで天堂さんを圧倒したのに、あれ以上強くなるって事?」

 

「番付すると十両。集中時は恐らく大関クラスだろう」

 

「確かに、それぐらいの戦闘力はある様に見えましたけど…」

 

「いくら何でも成長スピード速くない?まだ1ヶ月くらいだよね?」

 

姫の成長スピードに、初芽と命は疑問を持っていた

 

「言ったろ。才能がある、センスがある」

 

「なんか自信無くすよ…。私この前、前頭になったばかりなのに…」

 

「モモちも大概だと思うけど…」

 

姫に対して少し焦りを感じるモモ。だけど実際、一番焦っていると思われるのは

 

「……」

 

「伊智香ちゃん、姫がおかしいだけなんだよ。そう落ち込む事は無いよ。自分のペースでやっていけば良いんだから」

 

信二は伊智香にそう元気付けた

 

「それより、姫をツキカゲに入れるかどうかは?」

 

「良いんじゃない?」

 

「はい、私も賛成です!」

 

命と初芽の了承も得たので、姫もようやくツキカゲの一員となった

 

「それなら後で報告しなきゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たなメンバー、姫とモモの弟子の伊智香が加わったツキカゲ

 

これからとても騒がしく楽しい日常が始まる




割とザックリで雑な終わらせ方!毎回の事です

次回は、そんな弟子2人の初任務!

ここまでの拝読ありがとうございました


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MISSION:28 ルームメイトの死

サブタイはお飾りです

では、ミッションスタート!


「今日から転校して来ました。豊歌姫です。変なタイミングでやって来ましたが宜しくお願いします!」

 

楓と伊智香のクラスに姫が転校して来た

 

つい最近までアイドルをやっていたのだ。休み時間になった瞬間、姫の周りは人混みで溢れ返ってた

 

「随分と人気者ね。対応面倒くない?」

 

「一応ファンは大切にしないとね!」

 

そして今はお昼休み。屋上で、2年生組と1年生組とでお昼を取っていた

 

「それにしても、姫ちゃんのお弁当は自分で作っているの?」

 

「これ?師匠が作っているの」

 

「えっ!じゃあ、信二さんと一緒に住んでいるの!?」

 

「生活に慣れるまでは師匠と同居するつもりなの」

 

「そうなんだ。でも、師匠にお弁当を作ってもらうのはどうかと思うよ。そこはしっかりしなきゃ」

 

伊智香の言葉に楓は命に向けて凝視する

 

「そうね。自分の食べる物くらいは、作ってくれないと駄目ですよね師匠?」

 

「何で我を見るマイ弟子よ」

 

「家事はフーちゃんが殆どしてるもんね」

 

「五恵ちゃんはともかくモモちは仲間だと信じてるよ!」

 

モモも同じく、自分と同じ様に料理が出来ないと思っていたが

 

「私も一応師匠に教えて貰ったから簡単なやつなら出来るよ」

 

「ユッキー!!」

 

雪の事だ。もし、この場に居たならピースをしていたに違いない

 

「師匠の師匠…抜け目無いですね」

 

そんな時、伊智香の頭の上にモノミが舞い降りた。モノミが飛んで来たという事は

 

「任務…ですね」

 

「伊智香ちゃんと姫ちゃんは初めての任務だよね。頑張ろうね!」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

学校も終わり、軍議の社で今日の任務について話していた

 

「今回は、ここ最近ニュースにでもなっている連続殺人犯を捕まえる任務です」

 

「あのルームメイトの死を模倣してるやつのアレか?」

 

「ルームメイトの死?」

 

『それは私が説明します』

 

姫の疑問に濃姫が答える

 

ルームメイトと2人で暮らしている女性が、ある日帰るのが夜遅くになったため、気を遣ってルームメイトを起こさないよう電気をつけずに真っ暗なまま寝る

 

そして朝目覚めると、そこには血塗れになって殺害されたルームメイトの死体と、血文字で書かれた「電気をつけなくてよかったな」というメッセージだけが残されていた

 

『これは、帰宅する寸前に殺人が行われており、殺人犯が部屋に隠れていて、電気をつけてしまっていたら殺されていたというメッセージの意味です』

 

「この内容で4人の人が殺されてるわ」

 

「急いで対策を立てないといけません」

 

「だが初芽、どうやって次のターゲットを探すんだ?ルームメイト2人の女性に限定しても空崎は広い。散らばって探すにも…」

 

『安心して下さいテレジアさん。もう次の場所は特定しております』

 

仕事の早い濃姫。流石と言いたいところだが

 

「濃姫、どうやって見つけた?母さんでも、手掛かりが無ければ多少は時間掛かるぞ」

 

『私はとても有能ですので』

 

正直気掛かりだった。いくら濃姫が凄いとは言え、こうも簡単に見つけるなんて

 

相棒である濃姫に何故か深く考えてしまう

 

「メンバーはどうする?」

 

「そうですね…折角ですから、伊智香ちゃんと姫ちゃんを連れて行くのはどうでしょう?何事も実戦あるのみ!」

 

「い、いきなりですか!?」

 

「くぅ〜!私はいつでも行けますよ!」

 

狼狽える伊智香に反して姫はやる気充分。少女不安でしかない

 

「勿論、師匠であるお二人も行ってもらいます。後1人念の為欲しいですね。弟子達に気を取られて何かあっても嫌ですか…」

 

「それならメイが行くよ!」

 

「それならアタシも!」

 

「では、楓ちゃんはサポートをお願いします。現場に行くのは5人で」

 

「「「「「「了解」」」」」」

 

 

 

 

 

////////

 

弟子2人は初めての任務。ツキカゲの戦闘服もこれが初めてだ

 

『はー!早く敵現れないかなぁ〜!』

 

『少しは落ち着け。やる気があるのは良い事だが、空回りだけはするなよ』

 

『はい師匠!』

 

現在深夜帯を回っている。そして、次狙われると思われるアパートに見張りを立てていた

 

命が玄関が見える1番近くを、楓は遠くでドローンを操作しながら車に乗って全員のサポート、そして他4人はアパートを取り囲む様に配置して、逃げられた時に備えていた

 

『緊張する〜…』

 

「大丈夫だって!何かあってもメイ達がカバーするし、百地だって居るんだから気楽に気楽に!」

 

『何で千代女が励ますの?』

 

『アンタら任務に集中しなさいよ!それと孫市と秀吉!アンタ達は自分の役割りだけに集中してなさい!』

 

とうとう楓の堪忍袋の緒が切れたようだ。通信器から聴こえる怒号に、全員の耳が悲鳴を上げる

 

「もう風魔はすぐ怒る。そんなに怒ってたらシワが出来ちゃうぞ☆」

 

『誰のせいですか!?』

 

「…さてと、そろそろお仕事の時間」

 

命の声色が変わった。どうやら見張っていたアパートの一室に誰が侵入したそうだ

 

命は音も立てずに部屋に侵入したのだが

 

「なっ!?そんな馬鹿な!?」

 

命が見た光景は

 

「殺されてる!しかも2人共!…ッ!?」

 

そして壁には殺されてる2人の血で文字が書かれていた

 

『残念。遅かったな』

 

「やられた!2人は既に殺されてる!それに…」

 

命は窓の方へ目を向ける。風に靡くカーテンが命の鼻を擽らせる

 

「この方向なら…百地!秀吉!そっちに…」

 

『待って下さい師匠!これ…』

 

楓の方でも異変を察知した

 

『師匠マズいです。ドローンで確認したところアパートから3人の人影が』

 

どうやら今回の連続殺人の犯人は3人。しかも、その内の2人は既に侵入していてらしく3人目が合流し、命達を撹乱する為に三方向に散らばって逃げ出した

 

『俺と百地で東に逃げた奴、秀吉と孫市で西に逃げた奴、千代女は北の奴を!』

 

「了解!…って、何で信長が仕切ってんの〜!」

 

 

 

 

 

////////

 

「なんか最近情報が漏れてないか?」

 

「私もそう思います」

 

「正直、ツキカゲのセキュリティーを突破しても濃姫が作ったファイヤーウォールでガードしてる筈なんだけど…」

 

ここ最近の情報漏洩に不可解さを隠し切れない。情報の保管も完璧な筈なのに

 

「誰かが漏らしてるとか?」

 

「嫌な事言わないで下さいよ〜」

 

「だがな……居たぞ」

 

モモと話しながらも周りを見渡してると、3人の内の1人を見つけ出した

 

「行くよ百地」

 

「はい!」

 

「──Ready Go!」

 

「──滾らせます!」

 

 

 

 

 

「やあ犯人さん、空崎の夜は楽しめたかな?」

 

命も犯人の1人に追い付いた

 

「その格好…ツキカゲだな」

 

「そうそうツキカゲ。だから、ここいらで観念した方が身の為だぞ!」

 

「そう簡単に捕まるものか!」

 

犯人──男は一本のナイフを取り出して命に襲い掛かる

 

「よっと!」

 

命もクナイでそれを防ぐ

 

(コイツ意外と強い!)

 

「ツキカゲもこの程度か?」

 

「面白い!」

 

クナイとナイフの競り合いはお互いに一度引き、体勢を立て直す

 

そして命は

 

「そんなにツキカゲの本気を見たいなら見せてやる!」

 

命は太腿のスパイスケースからツキカゲスパイス「ツキカゲローレル」を齧った

 

「──混沌(カオス)な体験の始まりだよ」

 

全ての限界を解放して、命は最強の領域へと足を踏み入れた

 

瞳は、綺麗な赤色に変色しツキカゲを表すマークが浮かび上がる

 

「いくよ」

 

クナイを飛ばすと同時に命は走り出す

 

投擲したクナイのスピードも速いが、それを抜き去って命が先行する

 

「食らえ!」

 

命が蹴りを食らわせた後、更にクナイが男を襲い傷を負わせていく

 

「グッ…」

 

「まだまだ!関係の無い人達を殺したんだ。それなりにお仕置きしないとね!!」

 

「多少強くなったからって調子に乗るな」

 

暗い空間に火花が飛び交う。両者共に譲らない

 

「がはッ!?」

 

しかし、ツキカゲスパイスを服用した命には敵わない

 

「これで止めだよ!」

 

「この!」

 

男の方が速い。だが、命はナイフが突き刺さる瞬間、残像を残して目の前から消えた

 

「ハァァァッ!!」

 

硬い拳を作り、男の頭を地面に叩き付けた

 

「どうだ!」

 

命はガッツポーズを取り勝利した

 

「風魔、こっちは済んだよ。でも…」

 

命はその場で崩れ落ちて、反動による痛みを必死に我慢する

 

「お願い…迎えに来て」

 

『ちゃんと任務が終わりましたら迎えに行きます。こんな雑魚相手にツキカゲスパイス使うなんて』

 

「ぐへぇ〜」

 

 

 

 

 

「もう逃しません!」

 

「…追い詰められたか」

 

姫と伊智香もようやく追い付いた

 

「フッフッフ!観念の時だよ!」

 

姫は、ハンドルの中に仕込みの鎖が入っているロングブレードのサバイバルナイフ。

伊智香は刀を構える

 

「やぁぁぁ!」

 

先ずは伊智香が仕掛ける。意外も意外。伊智香は引っ込み思案な子。今みたいに自分から積極的に前へ出る事は珍しいのだ

 

「私も!」

 

新たな弟子同士の連携。まだ数日しか会っていないにも関わらず上手く噛み合っている

 

「2対1か。数ではそちらが上だが…」

 

2人の刀身を、男が持ってるナイフ1本と足だけで受け止めた

 

「そんな!」

 

「クッ…!」

 

「弱い!」

 

男は身体を柔軟に動かして、2人纏めて左右に蹴り飛ばした

 

「孫市!行くよ!」

 

「は、はい!」

 

「──響かせる!」

 

「──狙いを定めて!」

 

姫の瞳が青、伊智香の瞳が金へと変色した。スパイスを服用した証拠だ

 

姫は、ハンドルキャップを開けて小さな鉄球付きの鎖をぶら下げる

 

「これでどう!」

 

大きく両腕を開かせて、左右から鎖を襲わせる

 

「この程度で」

 

男はジャンプして避けるが

 

「これで…終わりです!」

 

伊智香はスマホガンを麻酔弾に設定して3発撃つ

 

最初の1発はナイフを弾かせ、残りの2発は頭と胸に撃ち抜いた

 

的確な射撃

 

正直姫は驚いていた。姫から見て伊智香の第一印象は「とても頼りない」だった。でも今の射撃を見て180度変わった

 

(凄い!)

 

射撃だけなら信二以上と確信した

 

「これで任務完了ですね」

 

「伊智香凄い!あんな射撃が出来るなんて知らなかったよ!」

 

「え…そ、そう?」

 

こんなに褒められたのは師匠のモモ以外では初めてだ

 

「姫ちゃんも凄かったよ!」

 

「「フフッ」」

 

『ちょっと2人共まだ任務中。最後までコードネームで呼びなさいよ』

 

「「は、はい!」」

 

通信機から聴こえる楓の声に2人はビックリする

 

 

 

 

 

////////

 

「お疲れ様2人共」

 

信二は姫と伊智香の頭を撫でて褒め称える

 

「それにしてもメイちゃん、いつの間にツキカゲスパイスを使えるようになったの?」

 

実は、命がツキカゲスパイスを使える事は誰も知らなかったのだ

 

「ん、あれ?ぶっつけ本番。イケるかなぁ〜っと思ったから」

 

「えっ!?そ、そうなんだ…」

 

「駄目だこの師匠…」

 

師匠組に呆れる中で姫達は

 

「ねぇ伊智香」

 

「はい?」

 

「これからも一緒に頑張ろうね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弟子同士、新しい絆が生まれた瞬間であった




姫の武器
ロングブレードのサバイバルナイフを2本(全長400mm、刃長245mm)。
ハンドルの中に仕込みの鎖が入っている。重りである小さい鉄球付き。トリガーを押すと巻き戻しも可能。

小型ナイフを腰に複数所持している

といった感じです。

命もようやくツキカゲスパイスデビュー

そしてちょっとしたお知らせです。
私の現在進行形でマルチ投稿している小説「HUGっと!プリキュア ROAD TO MAESTRO」でコラボする事になりました。

あちらの作品の方で3人登場させる事に。その内の1人は、この小説の看板役のオリ主です。残りの2人は読んでみてのお楽しみです

下記に登場する話数とURLを貼りますんで、興味のある方は是非ご覧下さい


第20話、第21話
https://syosetu.org/novel/227575/




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MISSION:29 聖バレンタイン

前回でも言っていました「HUGっと!プリキュア ROAD TO MAESTRO」の方のコラボ。次のコラボ話が出来ました!
前回のも含めて、改めて紹介しておきます

第20話、21話
https://syosetu.org/novel/227575/



2月12日

 

「バレンタインまであと2日。モモちは信さんに渡すの?」

 

「う、うん!何としても渡す!」

 

「ゴエっちは…やっぱり初さんに?」

 

「師匠にもだけど、テレジアちゃんや白虎ちゃんにも」

 

いつもの3人組は、バレンタインに向けて渡す相手について話していた

 

「あ、でもモモち」

 

「何五恵ちゃん?」

 

「信二さん、バレンタイン興味無いと思うよ」

 

「「えっ!?」」

 

バレンタインに興味が無い?そんな筈は無い。男の子だったらソワソワする日なのに

 

「な、何で?」

 

「この前、それとなく聞いてみたんだけど…」

 

 

『──もうすぐバレンタインですね。信二さんは貰えたりするですか?』

 

『──……』

 

『──あ、あの〜…』

 

『──バレンタイン?別にいつもと変わらない日常が続くだけだよ』

 

 

「それ興味無いとかじゃなくて、貰ったこと無いから現実逃避してるんじゃない?」

 

「えぇ!?そ、そうなんだ」

 

「でもこれはチャンスだよモモち」

 

チャンス。この言葉に何の事が思い浮かばない

 

「貰った事が無いなら、初めて貰った時きっと喜ぶと思うよ」

 

「そうか!!」

 

「「モモち頑張れ」」

 

 

 

 

 

別の場所では

 

「2人は師匠に友チョコみたいな感じで渡すの?」

 

こちらは新弟子組の姫達

 

「そうね。何か作ろうかしら」

 

「伊智香は?」

 

「私も師匠に渡すよ。それに…」

 

「「それに?」」

 

伊智香は顔を赤くしてモジモシする

 

「信二さんに渡そうかと///」

 

「もしかしてもしかして!伊智香、私の師匠に惚れちゃったとか!!」

 

「ち、違います!でも確かに信二さんは、何と言うか…優しいです」

 

「2人共騙されては駄目よ!あの人は変態なんだから!!」

 

「…まっさか〜!」

 

完全に信じていない様子。でもその内、化けの皮が剥がれると思って楓は何も言わなかった

 

 

 

 

 

////////

 

そしてバレンタイン当日

 

信二は別にソワソワしたりと何も無く、普通にその日を過ごしていた

 

逆に、モモと伊智香はどのタイミングで渡そうかとソワソワしていた。姫は姫で、誰かが渡した後に渡そうかと思っていた

 

「「モモち」」

 

「「伊智香」」

 

命と五恵、楓と姫がそれぞれ背中を押す

 

2人して信二の所へ

 

「「あの!」」

 

「「えっ?」」

 

同時に2人が話しかけた。2人は驚くが、声を掛けられた信二も驚く

 

「伊智香ちゃんはど、どうしたの?」

 

「し、師匠もどうかなされたんですか?」

 

顔を痙攣らせながらお互いに問い掛ける

 

「信二ここに居たのか」

 

「天堂どうしたんだ?俺を探してたのか?」

 

「今日はバレンタインだったな。ほら受け取れ」

 

渡されたのは10円程度のチョコだった

 

「て、天堂…」

 

信二はそれを見て涙を零していた

 

「な、何だ。不服か?」

 

「ありがとう天堂!俺、女性にチョコ貰ったの初めてだったんだ!!」

 

信二は泣きながら胸元に飛び付いた

 

「それは…良かったな」

 

「師匠師匠」

 

「何?」

 

「はいどうぞ。私からもチョコです」

 

「「姫ちゃん!!」」

 

未だに泣き止まない信二はお礼の言葉を言うが、啜りながら泣いてる為何言ってるか分からない

 

「では私はこれで!」

 

そそくさ姫はその場から逃げ出した

 

「さて、2人は何かな?」

 

意を決して渡す事を決める

 

「「どうぞ!!」」

 

「2人共もしかして…」

 

「「──ッ!///」」

 

2人はチョコを押し付けて全力で地下へ走って行った

 

「信さん信さん」

 

「ん?」

 

「モテモテですなぁ〜」

 

「モテモテって義理でしょ?」

 

「えっ?」

 

信二はどうやら、全て義理チョコだと思っているらしい

 

「本命って考えないの?」

 

「ないない!だって俺だよ。彼女いない歴歳の数。モテるなんて夢のまた夢だよ」

 

信二は、お返しを何しようかと全力で考えながらスキップして地下へと向かう

 

「オーマイゴッド…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モモの恋は未だ届かずなのだが、伊智香も信二の事が少し気になり始める




次回もモモ達が振り回されます

では、ここまでの拝読ありがとうございました!


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MISSION:30 夫婦旅行 前編

めっっっっっっちゃ!久し振りの投稿です!!
最後の投稿から、ちょくちょく今日まで書いててましたけどもう他の小説が多忙で…

では、久し振りのミッションスタート!


「はぁ?代わりに依頼した仕事を受けてくれ?」

 

「そそ!いや〜、母さん達他の仕事で手が離せなくて」

 

ツキカゲの基地で、信二の母である久子から連絡が入った

 

「何で捌けない仕事を受けたの?」

 

「その時は余裕かなぁ〜と思ってたの。だからお願い!」

 

「…カトリーナさんが了承してくれたらね」

 

 

 

 

 

「そう言う訳で、私達ツキカゲでこの任務を担当する事なったの」

 

カトリーナは久子の任務を引き受けた……と言うより仕方なくなのだ

 

任務の為の予算全額ヨハネが負担、更に土下座までされたのだ。本当に手一杯みたい

 

「師匠、誰が行くか決まっているんですか?」

 

「決まっているわ。信二君とモモちゃんの2人だけよ」

 

「俺は分かるが何でモモ?」

 

「久子さんの指名よ。今回の任務は外からの応援は無理と言っていたわ。そこで、前の戦いを見て2人の連携が理にかなっている…と言ってたの」

 

「モモ先輩で無く私では駄目なんですか?」

 

確かに、信二と組む人は別に弟子である姫でも良いと思う

 

「姫ちゃんでは経験が浅いわ。今回の任務は丸二日使っての内容だから」

 

「丸二日!?一体どんな任務…」

 

ヨハネがする予定の任務、しかもそれを丸二日使って。相当な内容だと覚悟して全員が生唾を飲む

 

「列車旅行よ」

 

『……はぁ?』

 

全員がそんな間抜けの声を出す

 

「緒方夫妻は、そこの車両長と仲良いの。でも最近不思議な事が起きてるから、調査をして欲しいって依頼されたのよ。勿論、名目上は夫婦水入らずの旅行で」

 

「何だよそれ…」

 

「それとこの任務中、2人は『夫婦』として客として潜入、調査、出来れば解決して欲しいの」

 

「夫婦!?」

 

モモがその単語に過剰に反応した

 

「出発は明後日の朝1番。警備が厳守だから、道具は全部車両長が裏で根回ししてくれるそうよ。だから持って行く荷物は、2泊分の着替えだけ」

 

それで話は終わった

 

「夫婦…夫婦……」

 

「お〜いモモ?」

 

「ひゃい!?」

 

「面倒だけど宜しくな」

 

「私こそ末永く宜しくお願いします!!」

 

混乱してるモモ自身何を言ったのかも理解していなかった

 

「き、気合い十分だね…」

 

「え?あっ!今のはですね!その…」

 

「気にするな。とにかく宜しくな」

 

 

 

 

 

////////

 

任務当日。プラットホームでは、ツキカゲメンバーが見送りに来ていた

 

「2人共頑張ってね」

 

「「はい!」」

 

「『緒方モモ』さんや。ハネムーンを楽しんで来てちょ!」

 

「ちょっ///」

 

「信二君、モモちゃんコレ」

 

初芽から渡されたのは指輪だった

 

「師匠お幸せに〜!」

 

「茶化すな」

 

「初芽さんコレって?」

 

「何かあった時の万能薬です。捻れば液体上のお薬が出てきますので、塗っても良し飲んでも良し。後は、お2人がより夫婦に見えるようにと!」

 

指にはめるとベルが出発の合図がなる

 

「やば!モモ、そろそろ」

 

汽車に乗り込んで皆んなに手を振る

 

「お土産宜しくね〜!」

 

「命の奴、絶対それが1番の楽しみだよな…」

 

「あはは…荷物を部屋に置きましょう」

 

「そうだな」

 

汽車は20両編成。2人の部屋は、12両目の車両

 

「お〜!ゴージャス!」

 

「そうですね!あ、荷物が」

 

部屋に入ると、自分達が持つ以外の荷物が置いてある事に気付いた。

その荷物は、予め用意していた任務で使う道具が入っている

 

「と言っても、調査し始めるのは夜から。それまでは、2人でのんびりと旅行しようぜ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

「とは言いましたが、列車旅行って何をすれば良いのですか?」

 

「それが良く分からん。適当に探索でもしよう!」

 

「結構大雑把ですね…」

 

「いいからいいから!」

 

信二はモモの腕を絡めて歩き出す

 

「し、信二さん!?」

 

「何度も驚くなよ。俺達は今夫婦何だから。気にせず行くよ」

 

長い車両を2人で見て回り、お昼も済ませて一度部屋へと戻る

 

 

 

「見た感じでは何もありませんでしたね」

 

「夜になってからのお楽しみだな。ふわぁ〜…」

 

「欠伸?お疲れですか?」

 

「暫くゆっくり寝るよ。起きてたら適当に起こして」

 

「えっ!?」

 

それだけ言うと、信二は横になり夢の中へとダイブした

 

 

 

 

 

////////

 

「信二さん起きて下さい」

 

「んっ……もう夜?」

 

目を開けて窓の外を見ると陽は沈んでおり、スパイが活動するには丁度良い時間帯だ

 

「それじゃ着替えるか」

 

「はい……」

 

「ん?どしたの?」

 

モモは何やらモジモジして恥ずかしそうに信二を見る

 

「あの…少し後ろを向いて貰えますか//」

 

「あ〜悪いな。お互い背を向けて着替えるか」

 

それから着替え始めた。衣服が擦れる音、スパイ道具がカチカチとなる音が部屋の中で鳴る

 

「うし、行くか」

 

「はい」

 

そうしてモモは車窓から出ようと開ける

 

「ちょっとちょっと!何してんのモモ?」

 

「え?ですから、天井に上がってバレないように調査を…」

 

「いくらバレない為でも、上からじゃ見えないだろ?普通に車両を跨いで調査するよ」

 

信二は、モモのパーカーを頭に着させて準備をさせる

 

「ッ///」

 

「俺は車両長と会って現在の調査報告するから前方の車両。モモは後方の車両をお願い」

 

「了解!」

 

二手に別れて効率的に調査を開始した

 

 

 

 

 

(調査って言われても、もうお昼に調べたんですけど…)

 

多少の愚痴りはあるものの、就寝して静かになった車両の中の廊下を歩き続ける

 

怪しいと思われる部屋に聞き耳を立てるも至って静か

 

車両も20両目と差し掛かった

 

「何も無い…ですね。一度戻って報告を…」

 

向きを変えて戻ろうとする時、外から物凄い衝撃と音が鳴り響いた

 

「わっ!?な、何!?」

 

慌てて外に出てみると、本来ならある筈の無い21両目の車両が存在した

 

(何で?確か、この汽車は20両編成だった…よね?)

 

完全に怪し過ぎる。しかし、目の前には何か確たる今日まで起きた事件の証拠があるに違いないと思い、モモは1人で潜入する事にした

 

「これは…ッ!」

 

中は大量の人──それも女性が裸で寝転んでいた。更に、空気が異常なものだった。視界全てはピンク色に視えてる

 

(これって…)

 

スマホで空気の状態を確認すると、「異常」という文字が映し出されていた

 

(異常…毒って事だよね?でも……)

 

毒ならば、この場にいる者全員が何かしらの異常をきたしてるか、死亡してる筈。だがは、見ればどうだ。ぐったりしてるだけで何も異変などは見受けられない

 

けれど、機械が異常と判断してるのだ。モモはマスクを着けてもう少し先へ進む

 

「あれ?」

 

奥へ進むと更にもう1両ある事に気付いた

 

(此処にも人がいる)

 

最後の1両も同じ様に女性と男が居た。少し違うと言えば、男性に群がっている様にも見える

 

「そこまでです!」

 

モモはドアを蹴破りスマホガンを構えて男に銃口を向ける

 

信二を呼び戻したいが、今からでは遅いし通信も出来ない。

仕方ないが、ここは単独で動くしか無いと判断した

 

「…あ?あ〜、言ってたツキカゲの連中か」

 

「言ってた?それはどういう意味ですか?」

 

「匿名でお前達ツキカゲが来る事が知らされていた。まあ、そんな事はどうでも良いだろ」

 

男は立ち上がりモモに近付いて行く

 

「と、止まって下さい!」

 

「聞いた話では、ツキカゲの殆どが女性と聞いた。良いじゃないか!お前も快楽漬けで俺の肉便器として一生側に置いてやるよ!」

 

「止まらないなら容赦はしません!」

 

引き金を引く時、裸体の女衆がモモに群がり押さえ込み始める

 

「あ、ちょっ!…うわっ!」

 

流石のモモも、関係のない一般人を傷付ける訳にもいかず力を出せずに取り押さえられてしまう

 

「流石正義の味方さん。一般人相手には手は出せないか」

 

「クッ…」

 

「さて」

 

男は注射器を取り出す

 

(まさか…!)

 

「君の察する通りこれは『薬』。でもね、君の思う薬とは少し違う」

 

プスリと首筋に針を通して薬を注入する

 

「薬は薬でも『媚薬』なの」

 

「ッ!!?」

 

注入された瞬間、薬が体内を駆け巡りモモの体調を変化させてゆく

 

全身の力が一気に抜け倒れ、何故だか興奮して頬は紅潮し、下半身がムズムズとして来た

 

「び、媚薬って…ひうっ!?」

 

軽く頬を触れられただけで変な気持ちに襲われる

 

「や…やめて……」

 

「そんな上気した顔で言われてもなぁ」

 

今度は強引に上半身を起こされ、後ろから女性2人が羽交い締めする。

そして終いには、両脚を強引に開かされてスカートの中が露わになる

 

「あ〜あ、そんなシミを作っちゃって」

 

男の指が下半身に届く時、車両の窓ガラスが勢い良く割れ、信二が飛び込んだ

 

「百地大丈夫か!?」

 

「うぇ…は、はい…」

 

信二は、モモに纏わりつく女性達を引き剥がす

 

「ここは一旦引く」

 

モモを脇に抱えて、飛び込んだ窓から外へ出て退却した

 

 

 

 

 

「だぁ〜、何だったんだ?あれ」

 

急いで自室へと戻りその場にへたり込む

 

「車両長にこの事を報告して来る。モモは休んで……?」

 

信二が部屋を出ようとする時、モモが服の袖を掴んで引き留めた

 

「信二さん…はぁ…ごめんなさい」

 

「気にするな。それよりも大丈夫か?薬でも一応飲んどけ」

 

信二は自分の指輪を軽く捻り、液体状の薬をモモに飲ませた

 

「効果は後で効くだろう」

 

「それ、じゃあ無理です……」

 

モモはスカートの中に手を入れて色々と弄くっていて、ポタポタと液体と垂らして足下に小さな池を作っていた

 

「おま…何されたんだ!?」

 

「び、媚薬って言っていました……首に」

 

「首にって──」

 

そしてモモは信二をベッドに押し倒した

 

「信二さん♡信二さん♡」

 

「モモ落ち着い──」

 

今度は口を口で塞がれた。強引にキスをされてるのだ。それも、口内に舌を入れられた濃厚なものを

 

完全に理性を失っている。表情はトロンとして、目はハートが浮かぶ程

 

「もう限界れすぅ♡信二しゃんの全部欲しいですぅ♡」

 

段々と呂律も回らなくなっている

 

「離れろ!」

 

それでも離れない。それどころか、モモは下半身を信二の脚に擦り付けるばかり

 

「あっ♡ぁっ♡」

 

「いい加減に…あ痛!?」

 

モモから離れようとする時、ベッドの頭辺りにある棚に頭をぶつける

 

そして、その拍子に一個の箱が顔に落ちた

 

「これ…」

 

それは避妊用具だった

 

「……」

 

「もっと気持ち良く♡」

 

こうなっては致し方ない。モモを落ち着かせない限り一日中こんな状態が続いてしまう

 

「…だったら望み通りしてあげる!」

 

信二はモモとの上下を入れ替えて決めた

 

「後悔させてやる!逃げようとしたり、嫌と言おうがお構いなくしてやるからな!」

 

「あっ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、モモを満足以上にさせて終わった




最後書いてて虚無ってました。
もっと過激な内容でも良かったですけど、もしBANみたいな事されたら嫌だったのでチキリましたw

ここまでの拝読ありがとうございました!


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