戦場を駆ける『白き残響』 (希望光)
しおりを挟む

舞い戻る翼

試験作品。
更新は様子を見て。


 ——宇宙空間を飛ぶ2つの青白い閃光。

 その1つは、背面にガンバレルストライカーと呼ばれる有線式遠隔操作兵装を装備した機体、ガンバレルダガー。もう片方の機体は、ティターンズカラーのガンダムMark-II。

 

『そろそろ敵と接触するぞ』

『了解。ガンバレルはいつでも飛ばせるぞ』

 

 ガンバレルダガーのパイロットが、Mark-IIのパイロットへと言葉を返す。直後、2人の機体がロックオンアラートを鳴らす。

 

『……来たか!』

 

 ガンバレルダガーが見上げる先、ここに居る2機よりも速い速度で飛来する1つの光源。

 直後、発砲音と共に赤と白のビームが2機に向けて放たれる。対して2機は、それぞれ左右に散開しビームをまぬがれる。

 

『今のは……』

『ビーム……マグナム……! じゃあ、あの機体は———』

 

 Mark-IIのメインカメラが、望遠でその姿を鮮明に捉える。

 深淵とは対照的な純白のボディ、一角獣を思わせる1本の鋭利なアンテナ、そして他のモビルスーツと比べやや小柄で丸みを帯びたフォルム。

 それを見たMark-IIのパイロットは、その機体の名を叫ぶのであった。

 

『——ユニコーンガンダムッ!』

 

 予想が当たって欲しくなかった。そんなことを思いながら。

 

『どうする。あの火力じゃあ、掠めただけで何処か持っていかれるぞ?』

『当たらなければどうと言うことは無い。それに、あの機体は角割れ前(ユニコーンモード)だ。この2機なら圧倒できる筈』

 

 そう言って、2機はユニコーンとの間合いを詰める。対するユニコーンは、再びビームマグナムのトリガーを引くも2機は容易く退け、逆にガンバレルダガーが装備していたビームライフルを発砲する。

 

『これで!』

 

 放たれたビームは、確実にユニコーンを撃ち抜く射線を取るが、ユニコーンは動じることなく左腕に装備されたシールドを構える。

 直後、シールドが僅かに上下に展開し、中心部からジェネレーターのような物が露見し接触するはずだったビームが弾かれる。

 

『……な!』

『Iフィールド・バリアだ。奴にビーム兵装は通じない……か』

『どうする?』

『奴を引き付けてくれ。背後から攻める』

 

 そう言ってMark-IIが加速すると同時に、ガンバレルダガーが再びライフルをユニコーンへと放つ。

 ユニコーンは、先程同様に Iフィールドでビームを無力化しながら、頭部に搭載したバルカンでガンバレルダガーに応戦する。

 

 そんな2機の攻防の最中、ユニコーンの背後を取ったMark-IIはリアアーマーにマウントしてあったハイパーバズーカを掴むと、その砲口をユニコーンへと向ける。

 

『逝っちまえ!』

 

 その言葉と共に、砲口からは拡散弾頭が発射される。

 それとほぼ同時にガンバレルダガーは上方へと退避し、取り残されたユニコーンは飛来する無数の弾幕を浴び爆煙に包まれる。

 

『……どうだ?』

 

 固唾を呑んで見守っていると、突然Mark-IIのロックオンアラートが鳴り響く。

 

『『……?!』』

 

 アラートにやや遅れて、爆煙の中から一角獣(ユニコーン)が現れ左腕部のサーベルラックからビームサーベルを抜き、一瞬でMark-IIとの距離を詰めると、その左腕を肩の付け根から切断する。

 

『うわぁ!?』

 

 切断された左腕は爆散し、その勢いでMark-IIは態勢を崩す。

 ユニコーンは、その隙を見逃さず右腕部のサーベルラックから抜いたサーベルを左手で掴むと、今度はメインカメラを切断する。

 

『メインカメラが……! チクショウ!』

 

 Mark-II持っていたバズーカを破棄し、サイドスカートにマウントしていたライフルを掴むとその銃口を自身の前面へと向け無我夢中で引き金を引く。

 だが、ユニコーンはその攻撃に怯むことなく、Mark-IIのコックピットをX字に切り裂き、間合いを開く。そして数瞬の後に、Mark-IIは爆散するのだった。

 

『……この、よくもッ!』

 

 それをみたガンバレルダガーのパイロットは、仇を討たんと言わんばかりにユニコーンへと突撃していく。

 そして背面に装備したガンバレルを展開すると、4基のガンバレルでユニコーンを包囲する。

 

『堕ちろッ!』

 

 言葉と共にガンバレルから弾が放たれるが、ユニコーンはその弾幕をバレルロールを駆使して退けていく。

 

『この……!』

 

 ガンバレルダガーは、絶え間なくガンバレルの配置を変えつつ、ライフルとガンバレルを併用してユニコーンへと攻撃を仕掛けていく。

 そんな攻撃を避け続けるユニコーンであったが、突如機体を急旋回させる。

 

『なんだ?』

 

 ガンバレルダガーのパイロットが不審に思っていると、突然1つのガンバレルの制御が効かなくなる。

 

『な、まさか……!』

 

 何故操作が効かなかったのかに気がつくのだったが、それは既に手遅れであった。

 有線式操作武装であるガンバレルは、その接続線を断たれてしまうと操作が不能になってしまう。

 つまり、今の一瞬でユニコーンは、本体とガンバレルの接続を断っていたのである。

 

『やったなッ……!』

 

 ガンバレルダガーは、辛うじて生き残っている、3基のガンバレルでユニコーンに応戦していく。

 だが、ユニコーンに命中するどころか、逆に接続を断たれてしまっていき、遂には4基全ての接続が断たれてしまう。

 それを確認したガンバレルダガーは、ライフルを捨て腰部に設置されたサーベルを抜きユニコーンへと突撃する。

 対するユニコーンも、サーベルを展開して応戦しに行く。

 

『うぉぉぉぉお!』

 

 勢いのまま切っ尖を突き出すガンバレルダガー。

 しかし、下段から繰り出されたユニコーンの斬撃により、右前腕部は切断されサーベルは届かなかった。

 そして続け様に繰り出された2撃目により、ガンバレルダガーは横一文字にコックピット部分を切り裂かれる。

 そんなガンバレルダガーの元からユニコーンは急速離脱を行い、その数秒後、ガンバレルダガーは爆散するのであった。

 

 ——《battle end》——

 

 響くその音は、何処と無く無機質さを醸し出していた——

 

 

 

 

 

 たった今決着がついた試合を見守っていた5人の少女が居た。

 

「——あの白い機体の使い手、凄かったわね」

「ええ。あの機体——RX-0ユニコーンガンダム。ユニコーンモードのままで2機を相手取るなんて驚きです」

「……どう言うことなの紗夜?」

 

 そう言って首を傾げる少女、『湊友希那』に対して紗夜こと『氷川紗夜』が説明する。

 

「あの機体は、今戦っていた姿と俗にガンダムと呼ばれる状態の姿が存在しているのですが……」

「本来なら、今戦っていた状態……ユニコーンモードよりも……ガンダムの状態であるデストロイモードの方が……総合的に見ても強いんです」

「そう。説明ありがとう燐子」

「いえ、そんな……」

 

 友希那の言葉に、燐子こと『白金燐子』はそう返答するのだった。

 

「ところで、リサとあこはあの試合を観てどう思う?」

「んー、私としてはどうやって後方からの近距離射撃を避けたのかが気になるかな」

「あこもです」

 

 友希那に問いかけられた『今井リサ』と、『宇田川あこ』はそう返答する。

 

「確かにそうね。知りたいところだけれど、私達だけではまだまだ能力不足だからそれもわからない……」

 

 考え込む仕草をしながら呟く友希那にリサが提案をする。

 

「なら、私達に教えてくれる人を探せばいいんじゃない?」

「いい考えだわ。けど、それに適した人物なんてあるかしら?」

 

 そう問いかける友希那の傍らに居たリサが、紗夜にこんなことを尋ねる。

 

「そういえば、紗夜のお兄さんってガンプラ詳しいんじゃなかった?」

「ええ、まあ……」

「なら——会わせてもらえないかしら?」

 

 友希那の問い掛けに、やや困ったような表情をとる紗夜。

 その少し後、紗夜は口を開く。

 

「分かりました。今日は在宅してるので、直接会いにいきましょう」

「え、直接?」

 

 紗夜の提案に驚愕するリサ。

 そんなリサに紗夜は訳を説明する。

 

「基本的にアポ取りすると拒否するので何も言わずに行った方が会えるんです」

「そ、そっか……」

 

「紗夜がそういうなら……」と言って納得するリサ。

 そして一同は、その場を後にし氷川家へと移動するのだった——

 

 

 

 

 

 氷川家のとある扉の前には、紗夜を先頭にした5人が立っている。

 

「——入るわよ?」

 

 3回のノックの後扉を開く紗夜。その先に広がっていたのは、無数に積まれたプラモデルの箱。

 その光景に、紗夜を除いた全員が慄く。

 

「どうした紗夜……って、誰?」

 

 部屋の中にいた少年が、首を傾げ4人へと問いかける。

 

「前に話した私の知り合いよ」

「ん……ああ、ガンプラバトル一緒にやるって言ってた」

「そうよ」

 

 肯定する紗夜に続いて、一同は名乗っていく。

 

「湊友希那よ」

「アタシは今井リサ。よろしくね☆」

「白金……燐子です……」

「宇田川あこです!」

 

 全員が名乗り終えたところで、少年は椅子から立ち上がり名乗る。

 

「氷川洸夜だ。で、結局何の用?」」

 

 洸夜となった少年の問いかけに、友希那が答える。

 

「単刀直入に言うわ。貴方に私達のチームに入ってもらいたいの」

「断る」

 

 友希那の言葉に即答する洸夜。

 

「理由を聞いても?」

「俺はガンプラは好きだが、ガンプラバトルは好きじゃない」

 

 そう答えた洸夜は、背を向け5人に告げる。

 

「分かったら、部屋から出てくれ……」

 

 そう言って、再び机に向き直り作業に取り掛かる洸夜。

 

「申し訳ありません……。ああなってしまうと……」

「……分かったわ。失礼したわね」

 

 紗夜の言葉を聞いた友希那は、洸夜に一声かけ部屋を後にする。

 それに続いて他の4人も部屋を後にする。

 

「ガンプラバトル……ね」

 

 静けさを取り戻した部屋の中、1人呟く洸夜だが即座に気持ちを切り替えると机の上に置かれた作りかけのガンプラを作り始める。

 そして打ち込む事早2時間。

 集中力の切れた彼は、部屋を出てリビングへと向かう。

 

「……まだいたのか」

 

 すると、先程の5人がリビングにいた。

 

「ええ」

「メンテか……」

 

 それぞれの手に握られたガンプラを一瞥しながら、紗夜の傍らに腰を下ろす洸夜。

 そして、正面に座っていたあこに尋ねる。

 

「それ、見せてもらってもいいか?」

「どうぞ!」

 

 差し出されたガンプラを受け取った洸夜は、そのガンプラを細かく観察していく。

 

「デスサイズか……。塗装変更だけか?」

「はい。どうやって改造しようかを悩んでいて……」

「なるほど」

 

 そう返した洸夜は、デスサイズを机の上に置く。

 そんな彼に、友希那が問いかける。

 

「あなた、今の一瞬だけで改造のプランが浮かんだわね」

「……なんでだ?」

「一瞬だけ、あなたの目がそうだと告げていたわ」

「そうか。だとしたらどうする?」

「教えて頂戴」

「断る」

 

 即答する洸夜。

 そんな彼に、友希那はこう告げる。

 

「なら——私達とバトルして」

「どうしてそうなるんだ」

「そっちの方が手っ取り早いと思ったからよ。それとも負けるのが怖いのかしら?」

「……はい?」

 

 友希那の言葉に過剰に反応する洸夜。

 

「負けるのが怖いの、って聞いただけよ?」

「負けるのが、怖い……か」

「ちょっと友希那……」

 

 友希那の傍らで彼女を止めようとするリサ。

 だが、すでに時遅し。

 

「いいぜ。そこまでいうなら乗ってやるよ。なんなら、負けたらお前らのサポート入ってやるよ」

「それ、本当かしら?」

「嘘は付かない」

 

 そう断言する洸夜。

 

「なら決まりね。試合は明日でいいかしら?」

「異論は無い」

 

 そう答えた洸夜は、足早にリビングを出て行く。

 

「言っておくが、負ける予定はないからな」

「それはこっちもよ」

 

 こうして彼は、まんまと友希那の策に乗せられてしまった——

 

 

 

 

 

 翌日、指定された場所ライブハウス『CiRCLE』へと集まった6人。

 ここCiRCLEは、スタジオ共にガンプラバトル用のスペースが併設されている。

 

「逃げ出さなかったわね」

「当たり前だ」

「それでルールだけれど、勝ち抜き戦でいいかしら?」

「5人まとめて相手してやる」

 

 そう告げた洸夜は、GPベースをバトルシステムに差し込む。

 それに続いて5人もGPベースを差し込む。

 同時に、システムが起動しそれぞれの周りにコックピットのホログラムが投影される。

 

「さて……言ったこと、後悔させてやる」

 

 そう呟いた洸夜は、自身のガンプラを定位置へとセットする。

 

「ヒカワ・コウヤ、アークフリーダム出る!」

 

 画して、1人の少年がガンプラバトルの世界へと舞い降りていくのだった。




今回はここまで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

意地と意地

モチベなくて書けてなかったが、なんとか出来たので。
↓そのうち別で出すだろうけど主人公機の武装に関してを少し。

GAT-X10Aα アークフリーダム
武装
MMI-GAU2 ピクウス76mm近接防御機関砲
側頭部両側に配置されるバルカン。

MA-M20 ルプスビームライフル
フリーダムのライフル。

MMI-M15 クスィフィアスレール砲
フリーダムのレールガン。
バックパックに搭載されてる。

M100 バラエーナプラズマ収束ビーム砲
ストライカーに接続されたウイング内の砲門。
左右のウイングに一基ずつ搭載されている。

MA-M01 ラケルタビームサーベル
クスフィアレール砲のプラットフォームに搭載されるサーベル。
隠し武装として運用される。

ビームサーベル
エールストライカーに取り付けられた武装。
基本的な近接兵装。

対装甲コンバットナイフ・アーマーシュナイダー
ストライクの武装。
サイドスカートに左右一基ずつ搭載されている。
フェイズダウンしても運用可能な武装。

対ビームシールド
ストライクのシールド。
色が赤、青、黒に変更されている。

350mmレールバズーカ ゲイボルグ
デュエル用に設計されたバズーカ。
本機は、サブバッテリーも兼ねてこの武装を左手に持っている。


「……どこにいるんだ」

 

 出撃した洸夜のアークフリーダムは、ステージである『デブリ』を飛びながら、標的を探っていた。

 

「デブリでレーダーも使えないしな……」

 

 今回のデブリにおいては、レーダーにデブリの影が映り込んでしまいほとんど使えない。

 そのことに頭を抱えながらも、洸夜はどんどん進んでいく。

 すると突然、ロックオンアラートが鳴り響く。

 

「なんだ……ッ!?」

 

 直後、正面から向かってくる極太のビーム。

 彼は機体を強引に旋回させ、間一髪で射線から退く。

 そして機体を即座に立て直した洸夜は、ビームの発生源へと向き直る。

 

「あれは……」

 

 そこにいた機体は、ガンダム00の劇場版に登場した機体『ラファエルガンダム』。

 だがその機体は、オリジナルのラファエルとは一線を画していた。

 本来ならば、赤いGN粒子を散らす『疑似太陽炉』と呼ばれる機関を搭載した機体なのだが、彼の目に映るその機体は他のガンダムが搭載するオリジナルの『太陽炉』が放つ緑のGN粒子を散らしている。

 

「なるほどな……。オリジナルの太陽炉に変えたことで、実質エネルギーは無限か……」

 

 太陽炉ことGNドライブは、半永久的にエネルギーを生み出す機関。

 つまりは、ドライブが稼働している限りはあの機体は止まることはない(最も機体内部の粒子の貯蔵が絶たれると、暫くの間チャージしなくてはならないが)。

 

 1人納得する洸夜の手前、ラファエルは頭部に装備した『GNクロー』2基をアークフリーダム目掛け発射する。

 洸夜は、即座に機体を後方に向かって動かすと頭部に搭載されたバルカン砲『MMI-GAU2 ピクウス76mm近接防御機関砲』で迎え撃っていく。

 だが所詮はバルカン。

 GNクローには一切ダメージを与えられる気配がない。

 

「チッ……」

 

 舌打ちした彼は、機体を翻しGNクローを退けた後、ラファエルの方へと機体を飛ばす。

 

「本体を落とせば……」

 

 そう呟いた直後、彼の頭をとある感覚が駆け抜ける。

 

「……?!」

 

 驚いた彼は咄嗟に振り向く。

 するとそこには、アークフリーダム目掛け飛来する1機のモビルスーツの姿があった。

 その機体を見た洸夜は、思わず叫ぶ。

 

「エクシア……てことは紗夜か!」

 

 近接特化機であるエクシアに、今の状態では勝てないことを瞬時に把握した洸夜は、ブースターを吹かし急速でその場を離れる。

 だが、紗夜の駆るエクシアはそれを許してはくれない。

 

『逃がさないわ!』

 

 紗夜の機体こと『エクシアアクセル』は『アヴァランチエクシアダッシュ』をベースに『ガンダム試作1号機フルバーニアン』のパーツを組み込んだ高機動戦専用の機体。

 つまり、重装を施してある彼のアークフリーダムとでは比較にならないほどスピードが速い機体なのだ。

 無論、そんな機体からアークフリーダムが逃れられるはずもなく、すぐさま追いつかれる。

 

「追いつかれた……!」

『貰った!』

 

 右腕部に装備した『GNソード』を展開しアークフリーダムの左腕部へと斬りかかる。

 

「……ッ!」

 

 その刹那、洸夜は即座にスロットをいじり1つのシステムを起動させる。

 それと同時に、灰色だったアークフリーダムの機体色がトリコロールへと変化し、アークフリーダムはGNソードを右腕で受け止める。

 

『これは……!』

『まさか……!』

 

 眼前で起こる光景に、紗夜は愚かラファエルガンダムを駆る燐子も声を上げる。

 

「そのまさか……『P(フェイズ)S(シフト)装甲』さ」

 

 洸夜がそう返すと同時に、アークフリーダムはGNソードを振り払いエクシアアクセルを殴り飛ばす。

 

『ッ……!』

『氷川さん……!』

 

 ラファエルに受け止められる形でエクシアは体勢を立て直す。

 

『実体弾が効かないなら……白金さん!』

『はい……!』

 

 言葉を交わした後、2機はビームライフルを放つ。

 

「チッ……!」

 

 連続して放たれるビームを退けながら、彼はバックパックの機動兵装ウイングから、『バラエーナプラズマ収束ビーム砲』を展開し2機へと放つ。

 その攻撃は回避され2機にあたることはなかったが、攻撃を止めることには成功する。

 直後、音も無く目の前に機影が現れアークフリーダム目掛け大鎌を振り下ろす。

 

「な……!?」

 

 驚きながらも洸夜は、機体を45°横へと回頭させ左手のシールドで大鎌を抑える。

 

『りんりん、紗夜さん、無事ですか!』

『宇田川さん……!』

『あこちゃん……!』

 

 現れたのはあこの駆る『ガンダムデスサイズ』。

 

「見えなかった……そうか、ハイパージャマーか……!」

 

 デスサイズは『ハイパージャマー』と呼ばれるジャミングシステムを搭載しており、レーダーにその姿が映ることがない。

 故に、洸夜はここまでの接近を許してしまった。

 

『このまま!』

「そうはさせない!」

 

 アークフリーダムは再び頭部バルカン砲をデスサイズに向けて放つ。

 対するデスサイズは、間合いを開く。

 

「逃すか!」

 

 叫ぶや否、洸夜はアークフリーダムが左手で担ぐ武装『350mmレールバズーカ ゲイボルグ』をデスサイズに向けて放つ。

 あこはとっさの判断でバスターシールドを構え、ゲイボルグの一撃を退ける。

 だがその直後、急速接近してきたアークフリーダムにビームサーベルでバイタルエリアを斬り付けられ、機能を停止してしまう。

 

『宇田川さん!』

『あ、あこちゃん……!!』

 

 紗夜と燐子は唖然としていた。

 開始早々、味方が1人墜とされたという事実に。

 

「……1つ」

 

 そんな事など露知らずの洸夜は、呟くいた後機体に搭載された砲門全てを開き唖然とする2機をロックする。

 直後、ロックアンアラートが鳴り響く。

 

「熱源反応……?!」

 

 砲撃態勢をやめ、即座に回避する洸夜。

 その数瞬の後、アークフリーダムが居た地点にビームが放たれる。

 その攻撃から、洸夜は機種を解析しにかかる。

 

「今の火力……ツインバスターライフル……?」

 

 そう呟いた瞬間、アークフリーダムが猛スピードで迫り来る機影を捉える。

 鳥の様な姿のその姿に、洸夜は声を上げるのだった。

 

「———ウイングゼロッ!」

 

 ネオバード形態と呼ばれる、MA(モビルアーマー)の姿で現れた機体は、ガンダムWの後期主人公機であるウイングガンダムゼロ。

 そしてラファエルとエクシアの前まできたところで、ゼロはMA形態からMS(モビルスーツ)形態に変形する。

 

『2人とも無事?』

『ええ今井さん……ですが宇田川さんが……』

『あこが?!』

 

 紗夜の言葉を聞いたリサは、激しく動揺しながら目の前のMSを見つめる。

 

『これは下手なことはできないね……』

「3・1の構造になったか……」

 

 舌打ちをした洸夜は、サーベルをしまうとリアアーマーにマウントしている『MA-M20 ルプスビームライフル』を掴む。

 

「だけど……!」

 

 その言葉と共に携行武装を含めた全ての砲門を開く洸夜。

 

「これなら!」

『不味い……! 回避を!』

 

 直後アークフリーダムのフルバーストが3機へと襲い掛かるが、咄嗟に紗夜が出した指示により3機は退ける。

 

「逃すか……!」

 

 ウイングバインダーに搭載された『M100 バラエーナプラズマ収束ビーム砲』2門とビームライフルによる追撃を行う。

 

『……今井さん、氷川さん、私の後ろに!』

 

 頷いた2人は燐子のラファエルガンダムの後ろに回る。

 そしてラファエルの発動したGNフィールドにより、追撃を免れる。

 

「GNフィールド……!? クッ……!」

 

 再度ライフルを下げた洸夜は、サイドアーマ内に格納している武装『対装甲コンバットナイフ・アーマーシュナイダー』を抜くとそのままラファエルへと突撃していく。

 

「実体剣なら!」

 

 叫びと共に突き立てられる刃。

 だが、その刃は火花を散らすばかりで通る気配が一向にない。

 

『白金さん!』

『燐子!』

 

 直後、アークフリーダムの、真下から現れた2機はアークフリーダムへとライフルを向ける。

 それを見た洸夜は()()()()()()()()

 

「———かかった!」

 

 その言葉の後、2機を襲う激しい衝撃。

 

『……ッ!』

『キャッ!』

『今井さん! 氷川さん!』

 

 彼女達を襲ったのは、アークストライカー下部から伸びる『クスィフィアスレール砲』。

 

『私の方は大丈夫です……今井さんが……』

『損傷が激しいけどギリギリ無事だよ』

 

 紗夜の機体の損傷は大したものではなかったが、直撃を貰ったリサのウイングゼロはウイングバインダー1基を失ってしまっていた。

 そんな彼女達の手前、ラファエルから離れたアークフリーダムは、デブリの裏へと飛んでいく。

 

『……?』

 

 不審な行動に首を傾げる紗夜だが、その隣にいたリサが追撃をかけに行く。

 

『逃がさないよ!』

『今井さん、待ってください!』

 

 追いかけるリサを呼び止める紗夜であったが、その声はリサには届いておらずウイングゼロはデブリの中へと消えていく。

 その直後、デブリ帯の内部が眩く発光する。

 

『……今井さん!』

 

 その後を追うように、紗夜と燐子もデブリの中へと切り込んでいく。

 その2人が目にしたのは、大破こそしていないが機能を停止しているリサのウイングゼロと、その傍らに佇むアークフリーダム。

 

「……2つ」

 

 そう呟いた彼の声を、紗夜は聞き逃さなかった。

 

『今井さんまで……』

「残りは後3つ……!」

『これ以上は……やらせないわ!』

 

 GNソードを展開した紗夜は、アークフリーダムへと襲いかかる。

 対する洸夜は、左手のゲイボルグを砲身を後方に向けアークストライカー上部にマウントし、両手でビームサーベルを抜き迎え撃つ。

 そして激しくぶつかり合う2機。

 しかしながら、近接戦においては紗夜の駆るエクシアの方が上手。

 洸夜のアークフリーダムは次第に追い詰められていく。

 紗夜の斬撃を退けた直後、洸夜は機体のバランスを大きく崩す。

 

『貰った……!』

 

 一瞬の隙を逃さなかった紗夜は、GNソードでアークフリーダムのコックピットへと斬りかかる。

 対する洸夜は、眼前に迫りつつある刃を見据える。

 そして、彼の中で何かが()()()

 それとほぼ同時に、バーニアを蒸しエクシアの斬撃よりも早く()()()()()()をエクシアにかます。

 

『アッ……!』

 

 その衝撃により今度はエクシアがバランスを崩し隙を生み出してしまう。

 即座に体勢を立て直そうとする紗夜だが、すでにアークフリーダムは襲いかかってきていた。

 咄嗟の判断でGNソードをアークフリーダムとの間に構えたが、洸夜は突然直線で振り下ろしたサーベルをCの字の軌道へ変更する。

 

『え……?』

 

 その洸夜の動きに対応できなかった紗夜は、そのままエクシアの右腕を二の腕付近から切断される。

 

『……ッ!?』

 

 あまりのことに処理の追いつかない紗夜の操るエクシア対して、洸夜はハイライトの消えた冷酷な視線のまま両手のサーベルをコックピットに突き立てすぐさまその場を離れる。

 僅かの後、エクシアは爆散する。

 

「3つ……ッ!」

 

 無機質な声で呟いた直後、ロックオンアラートが鳴り響く。

 すると洸夜は、即座にストライカーパックを切り離す。

 その数秒後、アークフリーダムとアークストライカーの間を2本のビームが駆け抜けていく。

 

「お出ましか……ッ?!」

 

 そう呟き砲源を向いた途端、洸夜はその目を疑った。

 

「ラダー……デスティニー……?!」

 

 デスティニーガンダムを改造した機体である『ラダーデスティニー』。

 彼はその機体をよく知っていた。

 何故ならば、ラダーデスティニーは第2回『ガンプラバトル選手権世界大会』において3位を獲得した人物の使っていた機体だからだ。

 

「なぜ……ここに……?」

 

 困惑する彼の目の前で、背面から展開されていた2門の砲塔をしまったデスティニーはラファエルの元へと近づく。

 

『燐子、無事?』

『は、はい……友希那さん、その機体は……』

『後で説明するわ。今は……アレをなんとかすることが先よ』

 

 そう告げアークフリーダムと対峙するデスティニー。

 

『私が切り込むから援護して』

『は、はい……!』

 

 燐子が答えると同時に、光の翼を展開したデスティニーは最大速度でアークフリーダムへと襲い掛かる。

 対するアークフリーダムは素早くストライカーを付け直すと、ウイングバインダーを展開し、クスィフィアスレール砲に取り付けられた『MA-M01 ラケルタビームサーベル』を抜いてラダーデスティニーを迎え撃つ。

 

「『はぁぁぁあ!』」

 

 シールドとサーベルぶつけ合い、激しく火花を散らしながら対峙する2機。

 

「なんでそんなに……!」

『……からよ』

「……?」

『負けられないからよ! 正しいってことを、証明するために!』

 

 そう叫んだ友希那は、間合いを開いたアークフリーダム目掛け背部に2門設置された『M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲』を放つ。

 咄嗟の判断でシールドを前に出しビームを防ぐ洸夜だったが、シールドが火力に耐えきれず爆散する。

 

「な……!」

 

 爆発の勢いにより体勢を崩したアークフリーダム。

 洸夜は即座に機体を安定させるが、友希那はその一瞬の隙を見逃しておらず、ラダーデスティニーは既に眼前にまで接近していた。

 

『貰ったわ……!』

 

 そして友希那は、掌に装備された武装『MMI-X340 パルマフィオキーナ 掌部ビーム砲』を起動し、アークフリーダムのコックピットへと手を伸ばした———




今回はここまで。
続けるが、次がいつになるかはわからないのでご了承を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。