USSエンタープライズ号より宇宙戦艦ヤマトへ (コバヤシマル)
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第1話 悪夢再び

宇宙戦艦ヤマト

ー時間断層ー

宇宙戦艦ヤマトがイスカンダルより持ち帰ったコスモリバースシステムによって、ガミラスの遊星爆弾によって悪化した地球環境は改善した。
しかし、その副作用として時間の流れが外界の10倍の速度で進む特異点が出現。地球連邦政府はこの特異点を利用して大量の波動砲搭載艦を建造した。


新スタートレック27話より抜粋

ー「USSエンタープライズ号より宇宙戦艦ヤマトへ、応答願います」ー

 

 

 

デルタ宇宙域

 

「前方カラ艦隊ガ接近。…既存ノデータニ該当無シ。…我々ニ有益ト判断。同化作業ヲ開始スル」

 

それは彼等にしてみればいつもの作業だった。

 

「我々ハ、ボーグ。オ前達ヲ同化スル。抵抗ハ無意味ダ。我々ハ…」

 

ただいつもと違うのは、相手が彼等より強いということ。そして、

 

「ボーグ?我々を同化する?フフフ…ハハハハハ!おもしろい!だが間違っている!我々がお前達を同化する。お前たちの抵抗が無意味なのだ!」

 

彼等より凶悪ということだった。

 

 

 

アルファ宇宙域

 

惑星連邦領域にボーグ接近の通報を受け15隻の宇宙艦が集結していた。

 

ーUSSニューヨークー

 

「提督、全艦配置につきました」

 

「ウム、全艦に告ぐ!早期警戒システムがボーグの接近を探知した。連邦(惑星連邦)の領域を奴等の好きにさせてはならない!諸君の奮闘に期待する!」

 

提督は1度下を向き、息を吐いてから再び正面を見据えた。

 

「全艦、攻撃用意!」

 

「全艦、攻撃用意!」

 

「フェーザー、魚雷発射準備よし!」

 

「シールド出力異常なし!対ボーグ装甲展開!」

 

提督の命令で次々に号令がかかる。

 

「増援の到着まで30分!」

 

「提督!接近中のボーグはボーグキューブ3隻!出現まで20秒」

 

(くっ!3隻か…こちらは15隻。30分…もつだろうか?いや、やるしかない!)

 

「ボーグ出現まで5・4・3・2…ボーグ出現!」

 

「全艦攻撃か…なっ?!」

 

(これはどういうことだ!?キューブが…)

 

「ボーグキューブ3隻とも既に大破しています!」

 

「提督!内2隻から高エネルギー反応。爆発します!」

 

「後退だ!全艦後退しろ!」

 

後退命令から僅か数秒後にボーグキューブ2隻が爆発。跡形もなく消し飛んだ。残る1隻も中からボーグスフィアが出てくる様子はない。

 

「いったい何があったんだ?」

 

提督の呟きに誰も答えられなかった。

 

 

 

ー地球連邦防衛軍中央司令部ー

 

司令部の一室で怒号が響いた。

 

「ガトランティスの残党が存在している!?何の冗談だ!」

 

ガトランティスの太陽系への侵略によって波動砲艦隊は壊滅、地球占領寸前まで追い込まれた。地球が今こうして平和なのはまさに奇跡だ。それなのに…。

 

(彼奴等がまだ生きてる。そんな馬鹿な!)

 

その場にいる誰もが思った。

 

「あくまでも可能性です。ですが決して無視できるものではありません」

 

「しかしだね、真田君。ガトランティスは安全装置によって人造兵士も兵器も全て機能を停止した。ズォーダーももう存在しない」

 

「その通りです。確かにこの次元には存在していません」

 

「この次元には?どういうことかね?」

 

「第11番惑星から地球を攻撃しようとしたガトランティス艦隊の残骸を調査した結果、この艦隊の分艦隊1000隻程度が別次元への転移実験に使用されたという記録がありました。記録通りなら彼等は平行宇宙への転移に成功しています」

 

(それはつまり…)

 

「つまり、彼等は安全装置の影響を受けなかった可能性があります。さらに、この1000隻に及ぶ艦隊はまだ向こう側にいるため、現状ではこちらから対処できません」

 

「そ、その艦隊は平行宇宙にいるのだろう?ガトランティスの本拠地が消滅した以上放置してよいのでは?あくまでも艦隊が戻ってきた場合に対処すれば良い」

 

「そうですね。それなら今の防衛軍でも大丈夫では?」

 

時間断層を失い、壊滅した艦隊再建の目処がたっていないことから消極的な意見が会議の参加者から出てくる。

 

「お気持ちは分かります。ですが彼等の向かった平行宇宙に文明が存在している場合、その技術を収奪し、更なる脅威となって戻って来る危険があります」

 

「もしかしたら、その文明の方がガトランティスより強いかもしれませんよ」

 

「それはそれで問題です。その文明が次元転移の技術を解析し、こちら側に現れた場合に何をもたらすのか」

 

あくまでも探査か、それとも平和の使者か、あるいはガトランティス以上の暴虐か。

 

「つまるところ、我々も平行宇宙に艦隊を派遣し、ガトランティスの残党を速やかに排除するのが一番リスクを最小限に抑える方法だと?」

 

「ですが、次元転移技術の解析と運用、平行宇宙の調査、大規模な艦隊の派遣、どれも時間がかかります」

 

時間もかかるが予算もかかる。さらに連邦政府と国民の説得もしなければならない。その事実に大半の者が頭を抱えた。

 

「…ガミラス政府に協力を要請しよう。彼等も次元潜航艦を保有している。次元転移技術の解析と運用に役立つかもしれない」

 

「ですが長官。次元潜航艦はガミラス軍の核心技術です。彼等が技術提供してくれるでしょうか?」

 

「ガトランティスの脅威は彼等も身に滲みているはずだ。それにガミラスは今、政治的に軍を動員する余裕がない。頼んでみる価値はある」

 

ガトランティスとの戦いから僅か半年と少し、地球は未知の宇宙に踏みいることを決めた。

 

(ここで悪夢を終わらせる)

 

ただその為に。

 

 




スター・トレック

ーボーグー

半機械生命体。他の種族に対し、ナノプローブを注入 することで自身と同様の存在(ドローン)にできる。これによって、その種族の文明と人的資源を奪い成長する。
尚、ドローンに個人の意思は無く、1人1人が意識の集合体によって動く部品のような存在である。


天敵

生命体8472
キャスリン・ジェインウェイ


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第2話 未知との遭遇

スター・トレック

ーUSSヴォイジャーー

最新鋭の科学調査艦として就役。初任務の途上で管理者と呼ばれる異星人の手によって、元の位置から75,000光年の彼方(デルタ宇宙域)に跳ばされてしまい、帰還まで70年かかる旅にでる。


 

ー宇宙艦隊司令部ー

 

「お久しぶりです、提督。5年振りでしたか」

 

声をかけられた提督は呆れながら振り返った。

 

「…ああ、そうだなレッジ。それと何だその他人行儀な態度は。私達は同期だろう」

 

「提督ここは公の場所ですよ。上官を敬うのは当然でしょう」

 

(どの口がそれを言うか…)

 

レジナルド・バークレー大佐。若き頃USSエンタープライズの危機を救い、USSヴォイジャーの帰還に寄与するなど多大な貢献を果たした。…が、それと同等の失態を繰り返し、周りから宇宙艦隊一の問題児と見られている。

彼が大佐であることに対して、

 

「あれがなければ将官に昇進していたのに」

 

という同情か、

 

「あれだけ問題を起こして大佐に成れたのか」

 

という驚きの2つに評価は別れている。どちらにしてもバークレーが歩けば棒に……何かが起きるという認識だ。

 

「…分かった、レジナルド・バークレー大佐」

 

因みに提督とバークレーは宇宙艦隊アカデミーの同期で、彼に対する評価は、

 

(あいつを宇宙艦隊に縛りつけておかないと、どこで何をしでかすか分かったもんじゃない)

 

と、なっている。

 

「それで?私は何故司令部に呼び戻されたんだ?例の件なら報告書は提出して聴取も受けた。もう話せることはないぞ、バークレー大佐」

 

「ええ、もちろんです。分かっていますよ提督!むしろ逆です!今回提督に来ていただいたのは私の話を聞いてもらう為です」

 

バークレーは異様にテンションが高かった。

 

(ハァ…覚えがあるぞ、こいつのテンションが高いときは何か興味があるものに出会ったときだ)

 

提督は久しぶりに会った同期のことをよく覚えていた。特にデルタ宇宙域からヴォイジャーを帰還させる計画に携わっていたときのバークレーは今の様に興奮状態で、その勢いで当時の上官の命令に逆らった行動をとったこともある。

 

(今度は私が犠牲になるのか)

 

バークレーに会って僅か数分で諦めの境地に至った。

 

「それでは提督。どうぞこちらへ」

 

2人は地下に降りるエレベーターに乗り込む。

 

(宇宙艦隊司令部にいるはずなのに地獄に向かっている気がする)

 

バークレーと共に司令部の地下に向かう提督の頭の中は警戒警報が鳴り響いていた。

 

「…バークレー大佐、先程話があるということだったが、どういう話なんだ」

 

「気になります?そうですよね」

 

エレベーターを降りるとバークレーは辺りに人がいないことを確かめると小声で話始めた。

 

「提督はヴォイジャーの軌跡を覚えていますね?」

 

(ああ、あのときのお前はヴォイジャーのクルーかっ!という位のめり込んでたからな)

 

当時のバークレーがホログラムで再現したヴォイジャーに入り浸り、またホログラム依存症が再発したかと心配したものだ。

 

「それでですね、あの旅でヴォイジャーが関わったものの中には機密指定を承けたものがいくつかあるんです」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

ヴォイジャーがデルタ宇宙域に飛ばされてから、アルファ宇宙域に帰還するまで6年以上かかった。想定よりかなり早く帰還できたとはいえ、道中様々な出会い、発見、壁にぶつかったこともあるだろう。

大きな声では言えないが時には連邦の理念をねじ曲げたこともあるはずだ。

 

「だが、ヴォイジャーの話とあの一件に何の関係がある?」

 

「それは保管庫にある物を見ていただいてからお話します」

 

(ある物?ボーグに関係が?)

 

そう考えていると、バークレーが数ある地下保管庫の一室の前で足を止めた。

 

「提督、あなたにその機密指定の1つを解除します。これは宇宙艦隊上層部の命令です」

 

目の前の保管庫にいったい何があるのか。

 

(どうやら本当に地獄に来てしまったようだ…)

 

「コンピュータ、保管庫E-02のロックを解除、レジナルド・バークレー大佐、認証コード○○○○○○」

 

〈レジナルド・バークレー大佐、承認。モウ1人ノ認証コードヲ述ベテ下サイ〉

 

コンピュータがそう言うとバークレーは提督に振り返った。

 

「さあどうぞ提督!」

 

満面の笑みを浮かべるバークレーに、

 

(こいつは地獄の門にいる悪魔だ!)

 

提督は心の中で腐れ縁の同期に新しい評価を加えつつ、覚悟を決めた。

 

 

 

デルタ宇宙域 ~過去~

 

デルタ宇宙域からアルファ宇宙域への帰還を目指すUSSヴォイジャーのキャスリン・ジェインウェイ艦長は、ボーグ領域を通過する為に一時的に彼等と同盟を結び、生命体8472(ボーグのつけた名称)と敵対した。

しかし、この敵対行為によって生命体8472は惑星連邦を脅威と判断。連邦及び宇宙艦隊を調査する為にわざわざ宇宙艦隊施設を再現した宇宙ステーションを建設し、潜入工作員の養成を行っていた。

最も、あまりに精巧に作りすぎたせいで、偶々近くを飛んでいたヴォイジャーが宇宙艦隊のシグナルを受信し、この宇宙ステーションを発見してしまうという事態に陥った。

その後、双方が手の内を見せることで武力衝突を回避し、お互いの交流を図っていた。

 

「ジェインウェイ艦長、君達との交流は実に有意義だった」

 

「私もです、Mr.ブースビー」

 

Mr.ブースビー。宇宙艦隊施設で働く庭師で、本来ならデルタ宇宙域にいるはずがない。彼の正体は生命体8472であり、高度な遺伝子変異技術で実在する地球人に化けていた。

 

「それにしても見せたいものとは何でしょう?この施設は隅々まで見学させていただきましたが」

 

「あぁ、確かに。だが、司令部には地下の保管庫があるだろう」

 

(まさかあの場所まで再現したの!?)

 

艦隊司令部の地下保管庫。ジェインウェイも訪れたことは何度かあるが、はっきり言って、あの地獄に向かうような感覚は今も慣れない。

それに、全体構造を把握している者がいるのか?と思うほど広い。

 

「ン?…ハハハ!その顔は、あの場所まで再現したのかと驚いている顔だ。違うかね?」

 

「いえ、全くその通りです。驚きました」

 

自分の頬が赤くなるのを感じた。

 

「うんうん、私も地球人というものを理解してきたようだ」

 

ブースビーは陽気に笑う。

 

(出来ればそこは理解してほしくなかったわ)

 

「フフフ、では保管庫に行こうジェインウェイ艦長」

 

ジェインウェイの心情を知ってか知らずか、ブースビーは先に行ってしまう。

 

(穏やかな散歩だと思ったのに)

 

彼女は散歩から僅か数分で最悪の気分になる。

 

「さあ、こちらへ艦長」

 

ジェインウェイがブースビーに追いつき、2人でエレベーターに乗り込む。

 

(やっぱり慣れないわ、この感覚)

 

そう思いながら、彼に質問する。

 

「…それで、結局のところ何を見せたいのでしょうか」

 

「まぁまぁ、そう慌てなさんな」

 

目的の階に着いたのでエレベーターを降りるとブースビーは話始めた。

 

「我々が君達惑星連邦を脅威と判断した理由、実はボーグと君達が同盟を結んだ事以外にもう1つある」

 

「もう1つ?」

 

彼の立てた人差し指を見ながら聞き返した。

 

「あぁ、そのもう1つを君に見てもらいたい」

 

そう言うと足を止めた。

 

「うん、ここだ。コンピュータ、保管庫E-02のロックを解除しろ」

 

〈スキャン完了、ロックヲ解除シマス〉

 

「さあ、どうぞ艦長!」

 

微笑むブースビーに、

 

(この人、本当は地獄に誘い込む悪魔じゃないの)

 

そう思いながらも覚悟を決めて中に足を踏み入れた。

 

 




スター・トレック

ーレジナルド・バークレーー

スター・トレック界の問題児。
宇宙艦隊士官であるにも関わらず、転送恐怖症・ホログラム依存症等、精神的に弱気な部分があったが、USSエンタープライズで直属の上官であるジョーディ・ラ=フォージ少佐やカウンセラーのディアナ・トロイの助けである程度改善された。
しかし、ホログラムへの依存は中々治らなかった。


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第3話 新たなる脅威


スター・トレック

ーキャスリン・ジェインウェイー

スター・トレック界のボーグデストロイヤー。
USSヴォイジャー艦長(帰還後提督に昇進)。
デルタ宇宙域からアルファ宇宙域への帰還の旅が始まった当初は優秀な宇宙艦隊士官然としていたが、徐々に過激な行動を取るようになり(ストレスのせいか?)、ボーグ領域を通過する辺りから、ボーグドローンを集合体から切り離してクルーにする、難破したボーグ艦からジャンク品を漁る、ボーグ艦内部に魚雷を転送して撃沈する等、ボーグに対しては特に容赦がなくなった。
最後はボーグが運用・管理していたトランスワープハブを利用してアルファ宇宙域に帰還したが、その際ハブを爆破してボーグに甚大な被害を与えた。


 

ー宇宙艦隊司令部地下ー

 

「大丈夫ですか、提督?」

 

バークレーが提督に声をかける。

 

「…あぁ、すまない。何でもない」

 

(デジャブ…とは違うか)

 

保管庫に入ってバークレーの説明を聞いていた提督は一瞬自分がジェインウェイ艦長(当時)と同じ事を追体験している気がした。

 

(あのボーグ絶対コ……偉大なあの方が地下に来たくらいで恐れたりするはずがないか…)

 

余計な考えが過ったが、すぐに頭の中から追い出す。

 

「それでこの金属片が生命体8472の領域に突然出現した為に、彼等の連邦に対する危機感を煽ったと?」

 

保管庫には台の上に金属片が置かれていた。四方がひしゃげていて、爆発によって吹き飛んだように見える。

 

「そうです。ただ、生命体8472が保管していた金属片は複数あり、彼等は復元作業を試みたようです。因みにですが、これは彼等から唯一譲渡された一点ものですよ!」

 

(あぁ、始まったぞこれは…)

 

バークレーが徐々に興奮してきたことを不安に思いながら提督は質問を続けた。

 

「復元作業…元々どういう物かは分かったのか?」

 

「あくまでも推定ですが、紡錘形のような形状をした宇宙船だったのではないかと。最も船体中央部から後ろが吹き飛んでしまったのか正確には分からなかったようです。その後、ヴォイジャーでも調べたそうですが結論は同じでした。コンピュータ、復元した船体の画像を出せ」

 

目の前にホログラム映像が写し出される。

 

(…小さいな)

 

映像を見ると先端部分から30~40m程が再現されており、推定全長200m前後の物体でないかと表示されていた。

 

「さらにですね、先端部分を見ると穴が開いていますが、周囲の構造物の頑丈さから、エンジンの産み出したエネルギーを放出する砲口で、船首に固定していることからかなり強力な兵器と考えられる!面白い!実に面白い!そうは思わないかい?」

 

(…上官を敬う云々はどうした…)

 

最早、上官と部下ではなく、アカデミーで同期と語らう学生に戻ったバークレーに白い目を向けるも、彼には全く伝わらなかった。

 

「…ハァ…、つまりこれは宇宙戦闘艦ということか?ディファイアント級のような」

 

「ああ、そうなんだ。推測だがエンジンから艦首まで砲身が延びていて他にも兵器を搭載していたなら、ディファイアント級よりも居住性は悪かっただろうね。いや、もしかしたら無人艦だったかもしれない!他にも……」

 

「レッジ、落ち着け。これに人が乗っていたか否かは問題じゃない」

 

それにここまで話をしていて肝心なことが抜けている。

 

「これが宇宙戦闘艦なのは分かった。強力な兵器を載せていたのかもしれない。だが我々連邦が脅威と判断された理由は何なんだ?私の知る限り宇宙艦隊にこのような艦はないはずだ」

 

提督は宇宙艦の設計・建造に関わっていないが、これまでにないタイプの艦が造られるとなれば何かしら耳に入っているはずだった。

 

「その通り!宇宙艦隊の艦とは構造どころか設計思想からして違う!だけどね、この金属片をよく見て」

 

バークレーに促され目を凝らす。うっすらと何か書かれている。

 

「……C……F……、ローマ字?…それに……これは地球のシンボルマーク?……レッジ、これはどういうことなんだ?」

 

(これは宇宙戦闘艦。ということはCFは…)

 

「CF、この艦のことを考えれば、CosmoForceの略語だろうね。だから生命体8472は連邦を疑った。連邦はボーグと手を組んで侵略に来ると!だが彼等がいくら調べてもこの艦に関する情報は得られない。それが更なる疑念を抱く、これは秘匿性の高い新兵器だと!」

 

(段々芝居がっかてきたな…またホログラムにはまったか?)

 

提督の心配を余所にバークレーは話続ける。

 

「もちろん連邦及び宇宙艦隊はこの艦を建造していない。いくら調べても情報なんて出てくるはずがない。じゃあ誰が?誰が作ったのか?」

 

さぁ答えて、と提督に問いかける。

 

「……平行宇宙の地球……そう…言いたいのか?」

 

提督は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「それしか考えられない。しかも僕達の把握している鏡像宇宙とも違う。これは金属片の成分分析の結果から明らかだ」

 

鏡像宇宙は惑星連邦の存在しているこの宇宙とまるで鏡合わせのようにそっくりな世界が広がっている平行宇宙だが、鏡像と表現するのは理由があった。

この提督達のいる宇宙では多くの異星人による連合組織である惑星連邦が誕生したが、もう一方の宇宙ではテラン帝国(地球帝国)が誕生し、異星人に対して徹底的な弾圧を行っていた。

そして厄介なのがこの2つの宇宙はその存在の近さ故かごく稀に干渉しあい様々なトラブルを引き起こした。

 

(ある意味生命体8472の判断は正しかったのかもしれない)

 

提督はアカデミーの同期ではなく上官としてバークレーに問い質した。

 

「…バークレー大佐、もう1つ質問がある」

 

バークレーも部下として答えた。

 

「…何でしょう?提督」

 

「何故これを私に見せた?そして何故その話を私にした?」

 

「当然の疑問ですね…理由としては上層部より現時点では情報開示は必要最小限に抑えるとの判断があったからです」

 

提督は無言で続きを促す。

 

「提督、貴方が先日遭遇したボーグ艦を調べました。残念ながらボーグ艦を攻撃した犯人が誰かは分かりませんでしたが、攻撃跡から同じパターンを見つけました」

 

「同じパターン?」

 

「えぇ、これとです」

 

そう言ってバークレーは金属片を指差した。

 

「つまり、この宇宙艦はボーグを攻撃した誰かと同じ者から攻撃を受けたということになります」

 

「思わぬ共通点だな。だがそれだけではないだろう」

 

そう指摘すると、

 

「さすが、鋭いですね。実はアルファ宇宙域の外縁部に設置した警戒衛星が不審船を探知しました。コンピュータ、不審船の映像を出せ」

 

(この宇宙船は…)

 

「おそらく、この金属片の宇宙艦と同型でしょう。私達が事態の把握に努めている間に向こうからやって来た」

 

「…バークレー大佐、艦隊上層部のこの事態における方針を教えてくれ」

 

「はい、艦隊上層部は貴方を現場責任者として臨時に編成された艦隊の司令官に任命します。そして……」

 

バークレーは一瞬言い淀んだ。

 

「そして、彼等と接触を試みて下さい。また、何があろうともこちらからの先制攻撃及び挑発行動は厳に慎むこと」

 

(艦隊の理念だけじゃないな、それは…)

 

艦隊上層部は確証はないものの可能性としてボーグ以上の脅威があると判断していた。

 

「これは早期解決を図らないといけないぞ。相手が友好的あるいは好戦的だとしても、長期間好き勝手にこの宇宙を飛び回れると何が起こるか分からない」

 

下手をすると戦争が勃発しかねない。

 

「これは難しいな…」

 

突然宇宙全体の平和を任された提督はそう呟くしかなかった。

 

 





宇宙戦艦ヤマト

ー金剛改型宇宙戦艦ー

地球連邦防衛軍創設時の主力戦艦。金剛型宇宙戦艦の設計に波動エンジンを搭載したことで兵器の強化、ワープによる移動、波動防壁の展開が可能となった。
さらに土星でのガトランティスとの戦いでは艦首陽電子衝撃砲を波動砲に換装したものが投入されていた。


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