arcnights AAA (山野化石)
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01
親父の仕事についてくるんじゃなかった。
誘われた時から分かっていた筈だ。最近チェルノボーグで怪しい動きがあるのはニュースでもやっていた事だ。
「しかもあの親父、俺に地図だけ残してどこかに逃げやがった。」
外ではレユニオンが侵攻している。武器はサブマシンガンのみ。何と心許ない事だろう。
「マガジンは装填してるのを含めて5つ……もっと持ってくるべきだったかな。」
幸い地図には目印があり、泊まっていたホテルからはそう遠くはない。これが何なのかは分からないが取り敢えずこの場所に移動すれば何とかなるかもしれない。途中にいるであろうレユニオンには…
「何とかやり過ごしながら移動するしかない。」
生き残るためにはやるしかない。最低限の物だけ持って移動するとしよう。
「どこに逃げやがったあのサンクタのガキ!?」
失敗した。後少しの所だったがレユニオンの奴らに見つかってしまった。武器を持って来たのが不味かったかもしれない。見つかった瞬間に逃げれば良かったかもしれないがつい、撃ってしまった。それもかなり大胆に。
残弾も後はマガジン一つ分しか無い。
そんな事より何とかしなければいけない。
「いつまでも隠れてるわけにはいかないんだ。」
少なくとも逃げる算段がついていないわけじゃない。
「とりあえずで取ってきたこのお面とマントがあれば何とかなるか。」
そう、こうなれば変装して奴らに紛れるしかない。銃を隠して、ナタを持って近づくしかない。上手くいけばいいが。
結果を言えば上手くいった。上手く行きすぎなほどだ。上手くレユニオンの目をごまかし、印の場所にたどり着く事ができた。
「このマンホールに入れって事だよな。」
そこにはマンホールがあった。
むしろマンホール以外に何もなかった。
「マンホールってどうやって開けるんだ?」
マンホールを叩いたりずらそうとしているとマンホールがずれ始め、人が入れそうな隙間が生まれた。
「よし!これで中に入れる!」
マンホールの中に入ればまた何か分かるだろうか。それでも今は逃げ切れた喜びを噛み締めよう。
「よく辿り着いてくれたアリオスよ!」
出迎えてくれたのは俺を置いていったクソ親父だった。
「よくも置いていってくれたな親父……」
「あれはやむを得ない事情があってだなぁ。」
「なら俺も連れて行ってくれたら良かっただろう!」
「でもお前は辿り着いた。それが結果だ。」
「それで良いのかよ!息子の危機だったんだぞ!」
「良いんだよ、お前が無事だったんだから。」
「それでここは何だよ。こんな暗くて狭い場所なら一般のシェルターにでも逃げて寿司詰にされた方がマシだろ。」
マンホールの中は高さ2mくらいの深さで奥行きは大体6〜7mくらいあるだろうが機材なんかで体感的にはその半分もないだろう。逃げるだけならシェルターがいくつもある。ここよりも狭いだろうが、入るのはここよりも楽で安全だっただろう。
「その理由については後で話す。今は無事にここに辿り着けた事を祝おう。」
父はコーヒーの入ったコップをこちらへ渡してくる。この父はやたらとコーヒーを入れるのが上手い。この一杯で全て許してしまいそうになるがそれでも聞きたい事が山程ある。
「それで何で置いて逃げたんだよ。親父なら近い内にレユニオンが攻め込んでくる事くらい分かっただろうに。」
「それについては申し訳ないと思っている。しかし私の研究がようやく完成したんだ。だからお前にもついてきて欲しかった。」
「その研究ってなん…だ…よ……」
コーヒーを飲んでいたら急に眠たくなってきた。睡眠薬でも入れられたのだろうか。
「それは次にお前が起きた時に分かるさ。そして、すまない。お前には俺たちの業に付き合わせることになる。」
「おや…じ…」
「projectSIDにな…」
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02
目覚めると俺は机の様な所にうつ伏せで寝ていた。恐らく父が移動させたのだろう。
そして父は既に居なかった。恐らく既に逃げ出したのだろう。
「クソ!あのクソ親父コーヒーに睡眠薬何て仕込みやがって!」
そんな事よりも何か持っていかれた物はないか確認しなくては。
「持っていかれた物は…無さそうだな。とりあえず銃もある、鞄に入れたパスポートと財布もある。とりあえずは安心だな。」
机から降りて椅子に置いておいた鞄と愛銃の確認をする。父は何も持っていかなかった様だ。
「他に何かないかなっと……これは…手紙か?」
自分が寝ていた机の上には一つの封筒があった。中には手紙らしき物が一枚入っていた。
「何々?『これを読んでいるという事は無事に手術は成功した様だな。おめでとう、アリオス。お前は世界で初めて太陽炉に適合し、太陽炉移植手術を受けた人間になった。鏡でも見て見るといい。背中に円柱形の物体が生えているはずだ』」
何を言っているのだこの人は。冗談だとしたら相当タチが悪い。まさか自分の息子を改造手術の実験体にするなんて…
「まさかな……。」
一応背中を確認してみる。
そこには丁度背中の中心から少し上には円柱形の物体がきれいに生えていた。
「エッ…ナニコレ?」
最悪だ!最悪だ!あのクソヤロウは本当に自分の息子を改造手術の実験体にしたのだ!
「あのクソ親父!次会ったら絶対ぶん殴ってやる!」
ゴミ箱を蹴飛ばすと棚にでも当たったのか色々な物が落ちてきた。
「クソが!整理くらいちゃんとしとけよな!」
落ちてきたものを机の上に並べているとあるものを見つけた。
「これは、親父が持ってきたアタッシュケースか?」
ケースの中身はおもちゃの様な銃剣だった。元々、荷物持ちとして親父の仕事について来た俺としては父がいくつものアタッシュケースを持っていたのは知っていたが、何もその一つによく分りもしない武器を説明書もなしに入れておくとは思わなかった。
「しかしながらこれはどうやって起動するんだ?見た所電動っぽいけど…」
色々といじっていると鍔の裏側に当たる場所にネジ穴があった。これなら開けられる。
中を開けて見ると起動スイッチらしいものがあった。
「これがスイッチか?分かりにくい場所に作んないでほしいなぁ。」
スイッチを押すとホログラムパネルが出てきた。
『使用者の名前と遺伝子情報を登録してください。」
「何作ってんだあの親父。使用者の名前ならまだしも遺伝子情報を登録って武器に必要かよ。」
悪態をつきながらも名前と遺伝子情報の登録をする。
『使用者名アリオス様。登録が完了しました。これより太陽炉式銃剣三式は貴方の所有物です。』
太陽炉、それは鉱石に変わるエネルギー源として注目されていたものの、技術的困難さから開発は中止になったと聞いていたが、どうやら完成していたらしい。
「じゃなきゃ兵器に使用されているはずがないか…」
しかし実物だけ持ってきて説明書どころか企画書や設計図の類はあるはずだ。
「この書類の山から説明書とかを発掘するのか。骨が折れるな。」
2日かかった。いや、関係書類自体は半日で見つかったのだがそこに書かれていた文章を読み切るのに2日もかかったのだ。
「太陽炉で精製した粒子を圧縮してビームとして打ち出す。剣の刃の部分に粒子を纏わせて切れ味を上げるねぇ。いろいろと複雑な武器だこと。」
ビームは三連射式で火力もなかなかある様だ。剣の方は自分が扱った事がないので判断に困る。しかし、金属製のコップがバターの様に切れた事から察するに切れ味は良いのだろう。
「でも、残弾を気にしないで撃てるのはいいな。」
これが一番の朗報だった。既に自前のサブマシンガンの残弾はほぼ無いと言ってもいいほどだ。どれだけ使えるかは分からないがこれは嬉しい。
「後は資料にあった粒子稼働式特殊スーツとか列車を探さなきゃいけないのか」
そう、見つけた資料の中には親父が研究していた太陽炉で動くパワードスーツや列車などの情報があった。
「列車は5つのブロックで構成されていて、それぞれ、居住区、研究区、倉庫、農業区そして本部がある。ここは研究区らしいけどどうするかな。」
資料には本部には動力炉があるためそれ単体で動かせるらしいがそれ以外には動けすための機械がないため動かせないらしい。
「しかし、今は食糧の確保が大事か。」
本部が見つかればそれで龍門まで帰れるが
そこからの生活が想像できない。近衛局に入れば食い扶持は稼げそうだがあそこは人外の集まりみたいなところだ。やっていける自信がない。ならば全部見つけて世界を旅するのもいいだろう。親父の故郷であるラテラーノに行ってみるのもいいかもしれない。
「とりあえずは、食糧見つけるために外に出てみますか。」
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03
「コッチに逃げたぞ!追え!」
「ハァ、ハァ、ハァ…」
何故私は追われているのだろうか。
レユニオンに父を殺され、天災で母を亡くした私は生き残っただけでも運が良いと言えるだろうか。
「こんなことになるなら生き残らなければよかったのに…」
身寄りもなく、鉱石病にかかった子供を助ける様な人はもうこの町にはいなかった。
元々鉱石病に対してとても厳しかったこの町は滅んだ後も今まで通りに鉱石病患者を排斥しようとしていた。むしろ、レユニオンに襲われたからか、今までよりも当たりは強くなっだだろう。
実際、食べる物を探し回ってようやく缶詰を見つけたと思えば他の生き残った人に追われている。
「その缶詰を渡しやがれ!このガキが!鉱石病にかかってるお前なんかより俺らの方が有効活用できるだろうが!」
「大人しく渡せば命だけは助けてやるよ!」
大の大人が子供に対して二人がかりで一個の缶詰を奪い取ろうとしている。そんな事が当たり前になっている事にどうしようもない絶望を感じる。
「オラッ!散々逃げ回ってくれたじゃねぇか…これは缶詰一個じゃあ割に合わないなぁ。」
遂に追いつかれてしまった。既に缶詰は奪われ、私は男に暴行を受け続けていた。
天災の後に自分というものが希薄になっていて良かったと初めて思った。痛いことは痛いが自分が殴られている感覚は希薄だった。おそらく、今目を瞑ればもう二度と目覚めなくなれるだろう。それもいいかもしれない。生き残ってもいい事はなかった。助けてくれた両親には申し訳ないがここで終わってもいいだろう。
あぁ、でももう一回だけオムライスを食べたかった…。
「大の大人が女の子をいじめてカッコ悪いとは思わないわけ?」
天使がいた。オレンジ色のパーカーを着て、緑色の剣を持った天使だった。
「なんだお前?俺達はコイツに奪われた食糧を取り戻してただけだ。」
「缶詰一個取り戻すのにそこまでボコボコになる?ならないだろ。」
「うるせぇぞ!お前もこのガキみてぇになりたいのか!」
「それはコッチのセリフだ。」
そう言うと天使は持っていた剣を構えた。
次の瞬間、謎の音と共にピンク色のビームが男達の間を通り抜けた。ビームは壁に大きな穴を開け、その威力をものがたっていた。
「次は当てる。死にたくなければここから立ち去れ。」
「クソが!こんな物くれてやるよ!」
男は缶詰を地面に叩きつけそそくさと去っていった。
「フー。大丈夫だった?もう安心だからね。」
「この状態を見てよくそんなことが言えますね。大丈夫なわけないでしょう。」
「あっ、ごめんね。確かに大丈夫じゃなかったね。」
でももう安心だから。
そう言うと天使は私に手を差し出してきた。
私はその手を掴んだ。
それが彼との出会いだった。
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04
食糧と列車を探していたら幼女を拾った。
何を言っているのか自分でもわからない。
怒鳴り声が聞こえたので追いかけてみれば女の子が暴行を受けていたので助けて、手当てをして今に至る。
「それで、なんで追いかけられていたんだ?」
「缶詰を持っていたから。それと、感染者だから。」
随分と簡潔な答えが返ってきた。感染者なのは手当てをしている時に分かったが、たかが缶詰一個で諍いが起きるほどこの町は退廃していたとは思わなかった。
「たかが缶詰一個、それもトマト缶でそこまでなるのか。随分と危険な町なんだな。」
「あなただって知ってるはず。この町が感染者に対して厳しい町だって。それに天災で町はあんな有様。あれで人が荒れないわけがない。」
天災。今までなんとなく気付いていたが無意識に避けていた結論だった。
おそらく眠らされていた間に起こったのだろう。親父はこれを見越してコーヒーに睡眠薬を仕込んだのだろうか。
「それはないか。」
少なくともあのクソ親父は自分のためにに息子に改造手術をする様な男だ。睡眠薬だって抵抗されないために仕込んだのだろう。
「やっぱ、起こってたかぁ天災。」
「まるで知らなかったみたいな言い方。何、気絶でもしてたの?」
「それに近いな。親父に改造手術を受けてた。」
「なにそれ。冗談ならもう少しマシなのを言って欲しい。」
「冗談じゃないぞ。背中に機械が生えてるだろ。緑色の光を出してるやつ。」
「それ、飾りじゃなかったんだ。」
「飾りだったらどんなによかったことか…」
そんな他愛もない話をしていると幼女の方から切り出して来た。
「なんで私を助けたの?」
一番答えにくい質問が来た。
「んー、難しいな。正直成り行きで助けたとしか言いようがない。」
大した理由もない。どうしても助けたかったわけでもない。
「強いて言うならこの町に詳しい人が仲間にほしかったからだな。」
「ふーん。それで私を助けたと。」
「そうだな。だから治療代として案内くらいはしてもらうぞ。」
「分かった。それじゃぁ名前教えて。」
「名前?」
「聞いていなかったから。」
「アリオス。龍門在住、年は今年で17。そっちは?」
「アーシェル。年は10歳。チェルノボーグ生まれチェルノボーグ育ち。」
「なら、これからよろしくなアーシェル。」
「こっちこそよろしく、アリオス。」
こうして二人はコンビとなった。
「アリオス、3人そっちに行った。引きつけて。」
「了解。射線が通ったら撃ってくれ。」
「了解。」
コンビを組んで、1週間が経った。
アーシェルには意外にもアーツ適正が高く、探知などで食糧や暴徒などの情報がいち早く分かった。これで他の人よりも早く行動することができた。
生き残った人は学校に避難しているようだが感染者や外の人間は入れないらしい。
あぶれた奴らは仕方なく残された資源を奪いあって生活している。そこで俺達は数少ないちゃんとした武器を持つ二人組として注目された。
高いアーツ適正を持つアーシェル。謎の光学兵器を使う俺。角材を持って喧嘩をしている他の連中からすれば十分羨ましい存在だろう。その為、狙われる事も多く、探索の半分が暴徒との戦闘で潰れてしまう事もある。
そんな事をしていたため、未だに列車のパーツは見つかっていない。
そんな事を言っているとアーシェルの
「アリオス、そっちは終わった?」
「あぁ、終わったよ。」
「じゃあ、あのガレキをどかすの手伝って。下に反応がある。」
「何か使える物だといいけどな。」
「できればアリオスの探してる列車の倉庫があると嬉しい。そろそろ新しい鉱石銃が欲しい。」
「今使ってるのレユニオンが残してった粗製のコピー品だからな。」
「そう。いい加減目視で狙うのをどうにかしたい。」
「じゃあどかすぞー。」
そして、ガレキの下から出てきたのは、レユニオンの残党だった。
高評価、感想お待ちしてます。
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05
「この人、どうする?」
「どうすると言われても…助けるとしか…」
ガレキの下敷きになっていたのはレユニオンのメンバーだった。おそらく隊長クラスの人物だろう。普通の重装歩兵としては装備が豪華だった。このタイプの兵は見た事があったが、これほどの重装甲スーツは見た事がなかった。
「レユニオンの残党がいるのは知っていだけどこうして見るのは初めてだな。」
「そうですね。レユニオンの生き残りは今の町でも肩身が狭いですから。基本は夜に活動しているみたいですし。」
天災の時に置いていかれたメンバーはその多くが死に、生き残ったメンバーも徒党を組んではいるらしいが通常の感染者よりも強い非難を浴びている。その為、夜にしか活動していないらしい。
「しっかし、この装備からして重装隊の隊長クラスか。」
「たしかに。この装備はゴミ山でもあまり見た事がない。」
ゴミ山とは天災で壊れた建物の残骸や死んだ兵士の死体をひとまとまりにした場所の事だ。アーシェルの銃もそこで拾ったものだ。
「なら壊れていてもこのスーツには利用価値がある。」
「この厚さなら何処の部位を使っても良い装備ができる。」
「とりあえずこのスーツ脱がそうぜ。そうじゃないと分解も出来ないし。」
「まずは着ている人の確認が先。」
「分かってるよ。」
眩しい。スーツを着ている時にはなかった感覚だった。四六時中スーツを着ていたせいか
直接光に当たる事がほとんどなかったからだろうか。あの時、私の隊は味方の逃走ルートの確保を命じられていた。指揮官らしい白髪の子供からは
『君達にはこのまま僕たちが逃げ切るまでここを死守しておいてよ。』
と言われ、それでは自分達の隊は全滅すると反論したところ近くの建物を爆破させて自分達を生き埋めにしようとしてきた。
なんとか隊のメンバーは倒壊から逃れる事ができたが自分は生き埋めになってしまった。
その後、天災が起きた。幸いにも直撃する事はなかったので生き残る事は出来たがもう身動きも取れない自分にはできる事はなかった。背中にある生存栄養水は3日分しかなく、少しずつ飲んでも1週間ももたない。その間に救助が来ると良いと思っていたが、運良く助け出されたようだ。
「うわっ!起きたぞこの人。」
「生きてる事は知っていただろう。」
「いやだってさ、死んだように寝てたじゃんこの人。」
子供の声がした。少なくとも自分の隊のメンバーが助けてくれたわけではなさそうだ。
「助けてくれたところで申し訳ないがまだ目が慣れていない。ここは何処だ?」
「俺達の暫定家だよ。お姉さん。」
「地下にある列車の一部らしい。」
なるほど。子供達は恐らく二人で生活しているのだろう。
「もう少ししたら私も動けるようになるだろう。そうしたら君たちと行動を共にしたい。
物資のある場所を知っている。」
「ほんとですか!やったな。これで当分の間食事には困らないぞ!」
「武器も有ればなおいい。」
「武器もあったはずだ。これで助けてくれた礼になるかは分からないが。」
「いや十分だよ。ありがとうお姉さん。」
「いや、命の恩人に対する礼としては足りないくらいだ。」
「じゃあ自己紹介しないと。俺はアリオス。
こっちにいる女の子がアーシェル。お姉さんは?」
「私の名前はアレイオン。レユニオンで重装部隊の隊長をしていた。」
高評価、感想お待ちしております。
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06
アレイオンと名乗った女性はあっさりとレユニオンのメンバーだった事を明かした。
「なんで素直に話したのですか?町でレユニオンの装備を使ってる奴は少なくないです。誤魔化す事もできたはずです。」
「ここで嘘をつくのは命の恩人に対して失礼にあたってしまう。だから素直に明かさせてもらった。」
「じゃあ何故自分達の物資のある場所に案内するんです。アーシェルは感染者だが、俺は違います。お前達にとって敵のはずです。」
「私にとって敵とは感染者に対して差別を行う者達の事だ。非感染者を無差別に襲うような過激派が多いのは認めるがそんな輩とは違う。少なくとも受けた恩はかえさせてもらう。」
それなら少しは安心できる。アーシェルは既に新しい装備の事で頭がいっぱいのようだ。
本人は大人っぽく振る舞おうとしているらしいがこういったところは年相応らしい。欲しがっているのが銃なのはどうかと思うが。
「やはり、レユニオンのメンバーでは信用されないのでしょうか…。」
言葉が少し崩れている。これが素なのだろうか。
「すみません。あの騒動の時にレユニオンに襲われたもので。」
「あぁ、そういう事ですか。私の隊ではないといいのですが…」
「貴方の様な装備は見なかったので別の隊だったのでしょう。」
「なら少しは安心できますね。天災がこの光景を起こしたとはいえ、私たちはこの町に危害を加えすぎましたから。」
やはりこの人はあの騒動には反対だったのだろうか。
「貴方はあの騒動に反対だったのですが?」
「いえ、あの作戦は必要なものだったと今でも思っています。ただ、人への被害はもっと抑えられたと思います。」
「何故その作戦は必要だったのですか?」
「私も多くは知りません。ですがあの作戦はロドスとの競争でしたから。」
競争?あのロドスと?ロドス製薬は感染者に対する治療や研究を行なっているはずだ。
親父もロドスとは協力関係にあった。主な取引先や研究はライン生命と行っていたが、ロドスからのデータは貴重だったらしい。
「ロドスとの競争とはどういうことですか?」
「ロドスのメインドクターを知っていますか?」
「いえ、誰ですかそれ。」
「とても優秀な研究者だったと聞いています。鉱石病治療の第一人者だと。」
「それでレユニオンはその人が欲しかったと。」
「そうですね。彼がいればいつか鉱石病を治す事もできると言われていましたから。」
「では何故その人はロドスではなくチェルノボーグにいたのですか?」
「すみません、それは私も知りません。」
「大丈夫ですよ。それよりもすみません、質問責めにしてしまって。」
「ではこちらからも質問があります。何故貴方は彼女と一緒にいるのですか?家族ではない様ですし。」
「そうですね。彼女が暴徒に襲われている所を助けて、以来成り行きで一緒に生活しています。」
「フフッ。成り行きですか。これは予想外でした。」
「いえ、自分はこの町の住人ではないので、町の事を教えて欲しかったというのもありますが…」
「それでもとても面白い理由ですよ。そんな事で感染者と一緒にいる人は初めて見ました。」
「父は鉱石病の研究者でしたので感染者とはよく会っていましたから。それにサンクタ族は感染しにくいですし。」
「それでも差別や偏見はあるものです。貴方にはそれがありません。それは我々にとっては喜ばしい事です。」
「ありがとうございます。それで目的地には、後どれほどで着きますか。」
「もうすぐです。ガレキなどで埋まっていないといいのですが。」
こうして3人は目的地に向かって歩いて行った。
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