二年間剣の世界で生き延びた剣士はまたVRにのめりこむようです (ウィングゼロ)
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プロローグ

 

剣戟が鳴り響く。この二年間で聞きなれた。金属同士のぶつかり合う音…

 

それと同時に思い浮かぶのはあの日の……あの世界で見た最後の光景

 

ぶつかり合う二本の剣(二刀流)剣盾(神聖剣)の攻防、体は忌々しいあの男(ヒースクリフ)卑劣な手(管理者権限)で麻痺され何もできない。

 

ただ指を加えながらその死闘を眺めていると、二本の剣の刀身に輝きが増す。

 

それこそこの世界において唯一の俺たちに与えられた。強力な技(ソードスキル)だがあの男においてその繰り出される攻撃は無慈悲にも等しかった。

 

防がれていく二本の連撃…遂には片割れの剣が折れ、あの男の剣があの人(キリト)へと振り落とされる。その光景はゆっくり感じられて…あの人とあの男の間に割り込む形で彼女(アスナ)がその振り落とされた一撃をその身に受け体力(HP)が尽きると彼女の体はガラスのように砕け散り飛散する。

 

愛する彼女を守れなかった。あの人もその瞳から戦う気力を失い。ただあの男の一撃を体に突き刺されるのをただ見ることしかできなかった。

 

そしてあの人のHPも0になり体は彼女のように砕け散るのだと絶望に心染め上げたその時。奇跡は起きた。

 

動かないはずのあの人の腕が動き最後に一矢報いようと叫ぶあの人の声と共にあの男の体を剣が貫き。両者とも体が砕け散り。その場は静寂に包まれる。

 

そして鐘の音と共に俺たちはこの浮遊する鉄の城から解放されたのだ。

 

 

 

「また、あの日の夢か…」

 

現実へと目を覚ました俺は自分のベットの上でぼそりとそう呟く。

 

いまだに懐かしく思うこの自室だが…何故か落ち着くことができなかった。

 

「…SAOがクリアされて…もう二か月…キリト…アスナ…どうして…」

 

俺は悲しみで目から流れてくる涙を腕で拭うと寝返りを打ってうつぶせになりまた思考の海に潜り込む。

 

 

あの日茅場晶彦は倒された。客観的に見ればハッピーエンドと締めくくるだろうがその場にいた功績者であるキリトとアスナの犠牲の上で成り立っているに他ならない。

 

あの二人と共に戦ってきた俺にとってはどうしても許容することはできなった。

 

だからこそ、毎日というようにあっち(アインクラッド)の夢を見るのだろう。

 

 

「太一!もうお昼よ!」

 

 

思考の海使っていると部屋の外から聞きなれた母親の声が飛んでくる。あの日までは聞きたくてたまらなかった。肉親の声だけど目覚めたときにそう言った感情は沸くことはなかった。

 

「今、行く」

 

短い言葉で母親に返事をするとベットから起きて部屋のドアノブに手をかけるとつい、部屋に置いてある鏡に目に映る。

 

ラフなシャツやズボンを着ている今の俺。しかしかすかにあのアインクラッドで戦ってきた戦闘着の俺の姿が幻視した気がした。ここは命を懸けて生き抜いたデスゲームとは違うというのに…

 

きっと、未だにおれの半身は鉄の浮遊城(アインクラッド)の中に残してきてしまったのだろう。

 



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1話『SAO生還者とVRMMO』

あの悪夢と呼ばれているSAOがクリアされて年が明け2月の終わりが差し掛かってきたある日のこと。

 

 

「なあ、太一…お前まだVRMMOには興味あるのか」

 

 

朝ごはんが食卓に並ぶいつも通りの朝、通勤が近づく中、父さんが味噌汁を飲んだ後、間を開けて訪ねてきた。

 

その言葉の意味は深く考えることもなく。率直の意味と取っていいだろう。台所にいる母さんも驚いた顔をして父さんを見ているためにこの件は打ち合わせもしていないのは明白な事実。

 

急いで洗い物を済ませようとする母さんを尻目に俺は父さんの真意を疑い深く観察しながら訪ね返す。

 

 

「言葉の意味はそのままで取るけど…どうして今更そんなことを?あの世界は俺…俺達にとっては」

 

 

牢獄でしか他ならなかった。それを口にして言おうとしたが父さんは分かっていると一言入れて、少し間を置くと再び口を開いた。

 

 

「太一…多分だが自分でも気づいていないのかもしれんが、VRMMO関連のCMやニュースを見ているとき、お前はどこか恋しそうに眺めていたんだ。」

 

 

お前のその言葉もわかると俺の言い分も頷く。

 

確かにVR関連で思い耽ることはあった。

 

きっとその様子を見て俺がまだVRに興味があると父さんは思ったのだろう。

 

だが、強ち嘘とは言えないのだが。

 

 

「高校もSAOの生還者の集まる学校ではなくて県内の学校に合格するためにリハビリの合間に勉強していたのも俺達も知ってる。だからな息抜きというか…ご褒美というか…」

 

 

あれでもない、これでもないと言い訳?というか照れ隠しをしている。父親に俺は溜息を吐き。思ったことを口にする。

 

「それで、VRMMO関連のソフトなんでしょ?そりゃ抵抗はあるけど…ご褒美を無下にするほどじゃないし」

 

 

そういうと父親もそうかっと苦笑いの笑みを浮かべ、椅子から立ち上がり二階へと上がっていくしばらくして降りてくるとその手にはカセットとそれの扱うハードがあってそれらを机の上に置く。

 

 

「アミュスフィアに… NewWorld Online …このソフトって確か父さんが働いてる会社で作ってるゲームだよな」

 

「ああ、知ってたか…アルブヘイムオンラインの人気とはいかんがベータ版を通してこの前正式サービスをスタートしたがそれなりに評判もいい。家族にどうだと進められてな…もし太一がやりたいなら」

 

「……」

 

 

そんなこと言われると無性にやりたくなるじゃないか

 

しかし正直な気持ち、未だにSAOに閉じ込められた恐怖が残っている。だからまたログインしたら最後戻ってこれないのではないかと思ってしまう。だけどその反面…また仮想世界に行けるという躍動感に駆られているのも事実…やっぱり俺は根っこからのゲーマーの性分は変わらないらしい。

 

諦めに近い感じで俺はアミュスフィアとカセット手に取る。手に取る際、あっといった声が父親から漏れるが直ぐに俺は口を開ける。

 

 

「ちょっと息抜き程度にやってみる。」

 

「…そうか」

 

 

父親の言葉には嬉しそうな声が混じる中、俺はパッケージに書かれた剣と魔法の男女が描かれた表紙をみてにやりと笑みを浮かべる。

 

 

そして朝ごはんも食べ終わり。父さんも会社に出かけ、母さんも買い物い出かけたころ俺は自室のPCにアミュスフィアを接続して初期設定を済ませるとアミュスフィアをかぶりベットに寝転がる。

 

再びあの世界に旅立つ準備は完了した後はあの言葉を口にするだけであちら側へとダイブすることができる。

 

両親に心配させるわけにはいかないから長時間はできないが多少感傷に浸るぐらいの時間はあるだろう。

 

まずは気持ちを落ち着かせるため深呼吸をした後俺は二年目にも言ったあの言葉を口ずさんだ

 

「リンクスタート」

 

その瞬間俺の意識はVRの世界の中へと飛び込んだ。




VR機器に関してアミュスフィアに変更しました。そこのところはご了承を


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2話『SAO生還者とNWO』

VRの世界へと飛び込んだ俺は次に目が映ったのは巨大なウィンドウ

 

恐らくここでキャラクターの設定をするのだろう。

 

 

「まずは名前か…」

 

 

目の前にシステムウィンドウが表示され、そこに名前を入力してくださいと書かれていて俺は空欄に自身のアバター名を入力していく。

 

 

「サイト…これでいいか」

 

 

サイトこの名前は俺にとっての重大なもう一つの名前…やはりVR内でおいてはこの名前でなければならない。

 

 

「さて次は…武器の選択か…SAOじゃあ初期は片手剣だったけど、両手剣になったからな…この場合は両手剣は大剣の部類に入るだろうし…大剣にしておくか」

 

 

最悪は気に入らなければ武器を変えればいいしと割り切り次に表示されたのはステータス…どうやらこのゲーム初期にステータスも決められるらしい。

 

 

「自身のステータスもお好みのままってことか……」

 

 

ここは決めたら最後変更なんてできないところだ。

 

与えられたポイントは100、振り分けられるカテゴリーはHP、MP、STR、VIT、AGI、DEX、INTの七つ、SAOと比べて選べるカテゴリーが多い、それに平均的に割り振うのはあまり好ましくないだろう。

 

 

「そうだなMPとINTは除外して……DEXもプレイヤースキルである程度補えるから問題なし…となると残っているのはHP、STR、VIT、AGIの4つ…ソロでやるならSTRは高いほうがいいしHPは後々上げればいいことか」

 

 

少し考えた後、俺はウィンドウを操作してステータス割り振ると確定ボタンを押し次に容姿の設定に入るがどうやら変えられるのは髪の色や瞳の色だけで根本的なものは変えられないようだ。まあ、二年間も現実と同じ姿でSAOで過ごしてきたから今更、別の容姿にするのも違和感しか感じられないからいいけど。

 

髪も瞳も現実とそのままにして確定を押すと次第に体が光に包まれ次に視界に捉えた光景は多くのプレイヤーが往来する街中の光景だった

 

 

 

 

サイト

 

Lv1

 

HP 40/40

 

MP 12/12

 

 

【STR 40 〈+20〉】

 

【VIT 30】

 

【AGI 30】

 

【DEX 0】

 

【INT 0】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の大剣】

 

左手【初心者の大剣】

 

足 【空欄】

 

靴 【空欄】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

 

この世界に降り立った後、すぐにメニューを開きログアウトボタンを探す。そのボタンをメニューの下の部分で見つけ、ログアウトボタンを押すとログアウトしますか?という再度の通知が出てきてとりあえずSAOとは違いログアウトできることを確認すると俺は息を吐いて安堵した。

 

 

そしてウィンドウを閉じた後。アバターの体を軽く動かす。

 

手をグーパーと開けて閉じたり、軽く飛び跳ねたりとそんな感じに

 

周りからは少し奇怪な目で見られたが直ぐに興味なさそうに視線がなくなる。恐らくVRMMO初心者によくある行動だと認識したのだろう。

 

 

「…帰ってきたんだ」

 

 

あんなことがあったにもかかわらず。俺は戻ってきてしまった。

 

不安はあるしかし、それ以上に湧き出る気持ちは俺の体を迸る。

 

 

「ははっ!」

 

こうやって自然に笑みを浮かべたのは久しぶりな気がする。きっと今の俺は生き生きしている。VRMMOに戻ってきたことに体が心躍っているのだ。

 

そしてこんなところで立ち止まっていられない。やるなら即行動だ。

 

 

 

初期スポーンの広間から俺は駆け足で町並みを抜けていきすぐ近場の森林へと向かう。

 

理由は簡単mobと戦うためだ

 

町を散策するのはあとでもできること。今はとても戦い気分に駆られている、これもまたSAOで戦ってきた剣士としての(さが)だということだろう。

 

 

 

「さて…敵は…いた!」

 

 

早速発見した。前方の草むらから飛び出てきた小さい影、それはウサギだった。

 

しかし見た目で判断は命取り

 

アインクラッドで学んだ教訓だ。油断するつもりはなかった。

 

やるからには全力、そう思い俺は足に力を入れて踏み込む。手に持つ大剣を下段の構えで維持しウサギ狩れる射程に入ると大剣を一気に振り払いウサギを一閃。瞬く間にウサギを撃破する。

 

 

『レベルが2に上がりました』

 

「レベル上がるの早いな…」

 

 

SAOでは到底あり得ない上がり方だ。MMORPGは上がりにくいと言った印象があったけど偏見だったのかもしれない。

 

 

「後、何匹か狩るとするか」

 

 

平日の朝早いということでそこまで長時間するつもりはない。それから何匹か危なげなく狩ってから俺は町へと戻り。ログアウトした。

 

 

 

 

【NWO】 やばいプレイヤーを見た

 

 

1名前:名無しの槍使い

 

とんでもないプレイヤーを見つけた

 

 

 

2名前:名無しの大剣使い

 

Kwsk

 

 

3名前:名無しの槍使い

 

朝少し狩りをしようと西の森に来たら明らかに初期の大剣使いがいてそいつが物凄い動きでmobを屠ってた。

 

 

4名前:名無しの弓使い

 

は?西の森って初心者にはきつくね?俺はログイン初日に調子に乗ってそこで死にました。

 

 

5名前:名無しの魔法使い

 

 

弓使いが調子乗ったらそうなるわwwでも大剣使いならワンチャンあり得るだろ?

 

 

6名前:名無しの槍使い

 

 

>5

 

それが一発も当たらずにだぞ?明らかに初心者の動きではなかった

 

 

7名前:名無しの大剣使い

 

 

マジ?他のVRMMOからやってきたってことか?ALOとか

 

 

8名前:名無しの盾使い

 

 

その可能性は高いな、ALOはPS重視しているからそこからやってきたプレイヤーならありうる話だろう。とにかく、それだけ強いなら直ぐに有名になるんじゃないか?そうしたら名前や情報も入ってくるだろうし

 

 

9名前:名無しの槍使い

 

>8

 

それもそうだな。そろそろ用事だから行ってくるわ。なにか分れば書き込んで

 

 

10名前:名無しの魔法使い

 

>9

 

ラジャー

 

 

11名前:名無しの盾使い

 

>9

 

ラジャー

 

 

12名前:名無しの弓使い

 

>9

 

ラジャー

 

 

そんなスレが立っているとは俺は知る由もなかった。

 

 



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3話『SAO生還者とレベリング』

NWOに初ログインしログアウトした後。俺はすぐには再びログインすることはなかった。

 

普通なら祝日でもないのに朝にログインなど廃人プレイヤーのやることだし…まあ、俺が言ることではないけど(SAO生還者は皆トータルプレイ時間が二年間もあるため)

 

今の俺の立場はSAO生還者というわけで学校には行っていない。行くとしても気まずすぎる。

 

ということで現在は自宅警備員とかしているがもうすぐ高校に行くことになっているし遅れた勉強はしっかりとしておかなければSAO生還者のための学校にいかないとわがままを言っえいる身として申し訳ない。

 

だからこそログアウトした後は机に向かって自主勉強。買い物から帰ってきた母さんも俺の部屋にきて様子を見に来る。やはり父さんから受け取ってやったとはいえVRMMOを再びやるということで心配な顔をしていた。

 

とりあえず少しだけして戻ってきたと軽く話すとそうと心配げな顔で見てくる母さんが去った後、勉強に励んだ後お昼が過ぎ夕方になり始めたころ。今日の勉強も一区切りして再びNWOをプレイし始める。

 

 

 

ログインするとログアウトした場所から再び始められるようで朝よりプレイヤーの多さを実感しながらも俺は軽快な足取りでフィールドに駆け出した。

 

 

「朝とは違うところに行くとするか」

 

『レベル4に上がりました』

 

 

そういいながら草原を駆け走りながら遮っていく狼をすれ違い様に一撃で倒していく。

 

もうレベル4になった。

 

そろそろステータスも上げておくべきかと思い思考を前に向けながらウインドウを開けて空いている左手で素早くステータスポイントを割り振る。

 

 

 

 

サイト

 

Lv4

 

HP 40/40

 

MP 12/12

 

 

【STR 46 〈+20〉】

 

【VIT 32】

 

【AGI 32】

 

【DEX 0】

 

【INT 0】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の大剣】

 

左手【初心者の大剣】

 

足 【空欄】

 

靴 【空欄】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

 

ポイントをSTRに6 VITとAGIに2ずつ割り振る。今のところSTR特化でVITとAGIをある程度上げるつもりだ。

 

割り振った後どこか足取りが少し軽くなった気がする。そう思いながら草原を駆けた。

 

 

 

しばらく、草原を駆けていると洞穴を見つけたが敵は居らず。湖が広がるだけだった。湖を下に何かあるかもしれないがモンスターリソースは美味しくないし長居するつもりもないためすぐにその場から立ち去った。

 

 

それから立ちはだかる敵を軽く倒し、遠くの森の中でレベリングする。幸いにもここは町から遠く離れている。プレイヤーの気配もないしリソースも気にせずに狩れる。

 

 

そんな浮いた気分で微かに聞こえた音に顔を振り返ると巨大なムカデが襲い掛かてくる。

 

「っ!!」

 

 

咄嗟に大剣を上段に構えそのまま襲い掛かるムカデに向かって一気に振り落とした。

 

両手剣SS(ソードスキル)アバランシュ

 

アインクラッドに置いて両手剣で放つことができるソードスキルの一つ。

 

だがこの世界にはソードスキルなんてものは実装されていないし強力な技を放つわけでもない。完全に動きだけを再現しているだけの一撃。だが勢いのあるその一撃はムカデの胴体を深く食い込み一閃。ムカデは光となって消え去る。

 

するとシステム音が頭に中で鳴り響く

 

 

『大剣の心得Ⅰを取得しました』

 

「スキルを取得したのか…どれどれ」

 

 

 

【大剣の心得Ⅰ】

 

 

大剣の与えるダメージが1%アップする

 

 

取得条件

 

大剣を装備し一撃で敵を10体倒す。

 

 

 

「大剣のダメージが1%上昇これはいいな」

 

 

大剣を使っていくにあたってこれは欠かせないスキルになるだろう。

 

それにここに書かれている取得条件を見るとすぐに取れそうな感じだ。

 

 

「さて新手のお出ましか」

 

 

そういって大剣をまた構えるとうさぎやムカデ、終いにはハチと数も十体はいた。

 

普通なら逃げるべきだが…レベリングのためこういったことにもアインクラッドで慣れていた。

 

 

「経験値になってくれよ!」

 

 

そういって俺は大剣を構えて飛び出した。

 

 

 

一方運営陣

 

 

 

「やってるやってる。夕方ぐらいになるとやっぱりログインする人も増えてくるな」

 

「まだサービス開始して間もないってのにやっぱ世代はVRMMOってことだろうな」

 

「今のところ。突出してすごいプレイヤーはこのペインとドレッドだな」

 

「そうだな…ペインなんてなんだよあの動き…明らかにVR慣れしまくってるじゃないか。どんどんレベルも上がっていってるし。ありゃ最強のプレイヤーになるのも時間の問題だろうな」

 

「ドレッドもペインよりプレイヤースキルは劣っているが頭角確実に出てる。こういう奴ほどギルドマスターになるんだろうな」

 

「そうそう…なんだこのプレイヤー?」

 

「ん?どうした?」

 

「おい、凄いプレイヤーがいるぞ。いま映像に出す」

 

「なんだ?大剣使いか?ってなんだよこの動きこいつも人間離れしてるじゃねえか」

 

「複数の敵を同時に相手して、ダメージも最小限に抑えてやがるえっと…名前は…サイト?ログインしたのも今日が初めてだ」

 

「まじか!?ってことはまだそんなにレベルも高くないよな…それでこの動きだからかなりVR慣れしてるな。ここに来る前はALOにでもいたのか?」

 

「かもな…ん?どうしました?坂口チーフ、いきなり固まって」

 

「いやそのなんだ…そのプレイヤー…俺の息子だ」

 

「……え?坂口チーフの息子?確かチーフの息子って」

 

「あのSAO 生還者(サバイバー)だよな」

 

「…………やべえよ坂口チーフの息子やべえよ…SAO 生還者(サバイバー)ってみんなこんな感じなのか」

 

「そこまではわからん。あいつもSAOでのことは固く閉ざしてるし家族もタブーだと思ってる。だが…」

 

「息子さんかなり生き生きしてません?」

 

「ああ、太一に渡したのは間違ってなかったのかもな」

 

「こりゃあ、直ぐにトッププレイヤー入りだろうな」

 

 

そんな予感を全員が思った後サイトの観察を一度やめてNWOのモニタリングを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~疲れた」

 

 

だらしない声を上げながら手頃の木に背中を預け一息つくと俺はステータスを確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイト

 

Lv8

 

HP 40/40

 

MP 12/12

 

 

【STR 46 〈+20〉】

 

【VIT 32】

 

【AGI 32】

 

【DEX 0】

 

【INT 0】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の大剣】

 

左手【初心者の大剣】

 

足 【空欄】

 

靴 【空欄】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

スキル

 

【大剣の心得Ⅲ】【武器防御】

 

 

 

 

 

【大剣の心得Ⅲ】

 

 

大剣の与えるダメージが3%アップする

 

 

取得条件

 

【大剣の心得Ⅱ】を取得した状態で大剣を装備し一撃で敵を30体倒す。

 

 

【武器防御】

 

 

武器で防ぐダメージが15%カットされる。

 

 

取得条件

 

武器で30回以上攻撃を防ぐ

 

 

 

 

「…さてそろそろ町に帰るか…ステ振りは…帰ってからしよう」

 

 

疲れた体を起こすように立ち上がるとマップで町の方向を確認して俺は町に向かって歩き出した。

 



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4話『SAO生還者と新たな仲間』

 

 

町に戻りログアウトした後、俺は風呂に入り母さんと一緒に夕飯の支度を手伝っていると玄関のほうから扉が開く音が聞こえてくる。

 

 

「ただいま」

 

「父さん、帰ってきたな」

 

 

多分疲れてるだろうからぱぱっと済ませるかと少し台所から離れ冷蔵庫を開ける。

 

中は母さんが整理しているためにきれいで直ぐにものを取り出すと居間にでソファーに腰かける。父さんに渡す。

 

 

「お帰り、父さんはいこれ冷えたビール。」

 

「おっ、気が利くな…ああ、沁みる!これにつまみは…」

 

「ないよ。もうすぐ夕飯できるから、それまで待って」

 

「なんだ、しかたねえな…そうだ、太一お前NWOログインしたんだな。仕事仲間が言ってぞ」

 

「モニタリングしてたのかよ…別にいいけど」

 

「あれだけ暴れてたからな…っでどうだった?NWOは」

 

「…楽しかった…それとどこか懐かしく戻ってこれたって感じた」

 

「…そうか」

 

 

俺の言葉になにか察したのか少し微笑みを浮かべる。

 

それからすぐに夕飯ができて家族みんなで食べる中。また父さんから話を切り出してくる。

 

 

「そうだ、太一、今晩はまたNWOにログインするのか?」

 

「どうだろう…中学の復習もしておかないといけないし…」

 

「頑張るのは良いが根詰めるなよ。適度が大事なんだからな」

 

「適度ね…了解」

 

 

夕飯を終え食器を洗い終えた後自室に戻った俺はベッドに寝転がる。そして机とアミュスフィア勉強かゲームか交互に見て考えた後。よし!っと意気込みアミュスフィアを取る。

 

 

 

 

「今日で3度目のログイン…やっぱゲーマー気質は否めないな」

 

 

そんなことをぼやきながら町を散策する俺…この時間帯ならそこまで目立つこともないし、街の散策はしていないから今の内と歩いていると掲示板をみる。

 

どうやらパーティーの募集などが掲載されているようで様々な要望が書かれている。

 

 

「やっぱ、まだ始まって間もないから…あんまり要望を要求する募集はないな…」

 

 

別にパーティーに入りたいとは思ってないし、ソロでやっていくつもりだけど…パーティーはパーティーの強みがあるからな…

 

 

「なんだ?どこかのパーティーに入りたいのか?」

 

「え?っ!?」

 

 

咄嗟に声を掛けられ後ろを振り向くとそこにいたのは赤い鎧に身にまとうまだ若い男性。

 

見た感じでは壁役(タンク)か?と思たが彼の姿をして俺の記憶が刺激し思わず口に漏らす。

 

 

「ク、クライン?」

 

「ん?いや俺はクロムっていうんだが…」

 

 

困ったなと頭をかく彼に対して勝手に違う名前を呼んだことに謝罪するとすんなり許してくれた。その器量の広さもクラインに似ているなっと内心の持っていると。そうだっと彼…クロムさんは俺に向かって話し始める。

 

 

「そうだ、もしパーティーに興味があるならパーティーお組まないか?今から職人プレイヤーを連れて鉱石を取りに行く予定なんだ」

 

 

嫌なら断って構わないと付け加えるクロムさん。どうやら悪質なプレイヤーでもないし町の散策は後でもできる。

 

 

これも何かの縁だと思って組むのも悪くないかもそれない。

 

そう思ったら俺はクロムさんの誘いに頷き、職人プレイヤーとは別の場所で待ち合わせているのかその場所へと向かった。

 

 

「イズ、ちょうどいいプレイヤーを見つけてきたぞ。」

 

「あら?早かったじゃない…あなたがクロムが連れてきたプレイヤーね。私はイズ、クロムから少し聞いてると思うけど生産職のプレイヤーよ」

 

「初めましてサイトです。その聞いた話ですけど護衛…ということですけど」

 

「ええ昨日から情報が流れた町から少し離れたところの坑道の採掘ポイントまで、生産職だからあんまり遠出はできないから」

 

 

なるほど…確かに生産職なら戦闘面はあまり得意ではないし護衛は必要だ。

 

 

俺は了承して頷きクロムさんからパーティー申請を受け取りパーティーに加入する。これによりパーティーメンバーへの攻撃つまりフレンドリーファイアを防止することができるらしい。

 

そういうところ悪質なプレイヤー対策を心掛けているのかもしれないと思いながら早速クロムさん達と一緒に町を出た。

 

 

 

町を出てしばらく。森林が生い茂る通路を歩く俺とクロムさん、イズさん。

 

なんかこう言った感じどこか懐かしく思う中、不意にクロムさんが顔向ける。

 

 

「そうだ。サイトは鉱石とか採取するのにDEX が必要なんだが…何とかできそうか?」

 

「採取にDEX…残念ながら」

 

 

残念ながらDEX0の俺には採取は不向きだ。採取は期待に望めないと伝えると手を顎に当て考えるクロムさん

 

 

「そうか…ってことは俺とイズで採取する方向でいいな。」

 

「ええ、そうね…その分戦闘面で期待させてもらおうかしら」

 

「ご期待に応えます…あのクロムさん…」

 

「ん?どうした?後…敬語はいいぞ」

 

「私もサイトくんも普通に接してくれて」

 

「それじゃあ…クロムとイズって…付き合い長いんですか?とても仲がいいように見えますし」

 

「俺とイズがか?そこまで付き合いが長いわけじゃない。ログインして初めてパーティー組んだのがイズだっただけでそのよしみでってだけだ」

 

「そうよ。ふふもしかして彼氏彼女だと思った?」

 

「いや、そんなわけじゃ…」

 

 

不敵な笑みを浮かべるイズ、それにやれやれとやっぱり付き合い長いように見えるクロム少し困った顔をして俺とイズを見る。

 

それにしてもクロムにイズ…どことなく二人ともSAOでの知り合いに重ねてしまいそうになる…

 

 

そういえば今頃どうしてるかな…俺の知り合いの生産職…片方はキリトに好意を示し。もう片方は俺の専属スミスとして支えてくれていた。

 

どちらも年が近くて仲もよかった…しかし今の俺はあいつらに合わせる顔が

 

 

「どうした?顔色が悪そうだが」

 

「え!?ああ、すまん…ちょっと考え事…」

 

「そう?ならいいけど」

 

 

心配に見てくるクロムとイズに大丈夫と言って俺たちは坑道へ向かった。

 

 



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5話『SAO生還者と戦闘』

めちゃ高評価されていることに驚いている今日この頃
感想を非ログインでもできるようにしました


クロムたちと坑道への道を歩いて約1時間。漸く目当ての坑道へとやってくる。

 

 

「ここね。さてとどんな鉱石が待ってるのかしら」

 

「浮かれてるな。イズ」

 

「真新しい情報だからだろうね…」

 

 

到着して浮かれているイズを見てお互い意見を言う俺達。

 

そんなイズを諌めながら坑道に足を踏み入れる。中は細長

 

岩がごつごつとしている通路、蹴躓いて転倒というハプニングも起きかねないそこでクロムを先頭で先に進んでいく。

 

 

 

「さてそろそろ敵が…来たぞ!」

 

 

クロムの一声に臨戦体制をとる。奥からこういった洞窟に見合った巨大なモグラらしき生物が三体突っ込んでくる。

 

 

先頭のクロムが大盾を 構え攻撃を受け流し隙を見て逆を手に持つ短刀でモグラを仕留める。あれは壁役(タンク)としての役割を確りとこなしている。いい動きだ。そろそろ俺も手伝わないとな。

 

 

「クロム!一体突き放せないか?そいつは俺が仕留める!」

 

「わかった。シールドアタック!

 

 

クロムに残り二体ほど密接されていては中々大剣は振るえない。だからまずクロムにどちらかを引きはがすように頼むとスキルを使って盾でモグラを一体後方に吹き飛ばされる。

 

 

「ナイス!はあぁっ!」

 

 

この隙を見逃さず。短くクロムにお礼を述べるとクロムの横を通り過ぎ吹き飛ばしたモグラに一撃…しかしまだ倒れないのでもう一撃入れるとモグラはあっけもなく倒される。

 

倒した後、クロム達に振り返ると俺を見て驚いていて最後のモグラはクロムが倒したようだ。

 

 

「えっと…なんで驚いてるの?」

 

「い、いやあ…想像していた以上の動きで敵を倒したからな…正直驚いてる。」

 

「これは嬉しい誤算ね。味方で頼もしいわ」

 

「まさか、サイトが噂の大剣使いだったのか?」

 

「え?クロム何か言った?」

 

「いいや何でもない。敵がまた湧く前に奥に進もう」

 

 

なんかはぐらかされた気もするが、俺たちは奥へと進んでいき岩壁に鉱石が出ている場所を発見する。

 

 

「あれが採掘ポイントかイズ」

 

「わかってるわよ。クロムも手伝ってよね…それじゃあサイトくん採掘中の警備お願いね」

 

「わかった。イズも頑張れ」

 

「はーい」

 

 

そう言ってピッケルを手に持ち採掘を始めるイズとクロム。俺は意識を集中しピッケルの音以外の音を拾うことに意識を尖らせる。

 

 

システム外スキル【ハイパーセンサー】

 

 

これはスキルなどに頼らず。足の音や第六感で潜んでいる敵を特定する技法。このシステム外スキルは攻略組の中でも使う人間がいた。俺もその中の一人。

 

 

ハイパーセンサーで敵を感知しながら時間は経ち。10分ほど…その間にやってきた敵は簡単になぎ倒しレベルは10に達していた。

 

 

「もう10か…スキルポイントが10も入ってる…10ごとに二倍もらえるのかもな…今の内に割り振っておくか」

 

 

 

 

サイト

 

Lv10

 

HP 40/40

 

MP 12/12

 

 

【STR 58 〈+20〉】

 

【VIT 36】

 

【AGI 36】

 

【DEX 0】

 

【INT 0】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の大剣】

 

左手【初心者の大剣】

 

足 【空欄】

 

靴 【空欄】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

スキル

 

【大剣の心得Ⅲ】【武器防御】

 

 

 

とりあえず20あったポイントはSTR重視で割り振った。

 

ウインドウを閉じピッケル音が鳴らなくなったのでイズ達を見てみると、どうやら終わったようでかなり豊作だったのか、イズの顔が笑みで緩んでる。

 

 

「豊作だったみたいだな」

 

「ええ、色々取れちゃった」

 

「悪かったな。HPは大丈夫か?」

 

「問題ないです。ダメージは受けてないですから」

 

 

先ほどから攻撃はうまく大剣で受け流しているからダメージ0…そのことを言うとマジかとクロムに引かれ、イズにはあらあらと笑みを零される。

 

 

「まだまだ採掘ポイントはあるからここの坑道のポイント全部採掘しないとね」

 

 

そのイズの声に俺たちは頷き、坑道を探索して採掘ポイントを見つけるとイズとクロムが採掘俺は警護と繰り返ししばらくしてかなり溜まったのか上機嫌なイズの姿を見てクロムもそろそろいいだろうと町に帰る帰路に就こうとした時、俺の耳に確かにこちらに近づく足音をとらえる。

 

 

「っ!!クロム、誰か来る」

 

 

即座に納刀している大剣の柄に手を伸ばしいつでも抜けるように体制を整えると、足音が聞こえてきた方向からプレイヤーが3人。

 

弓使いに槍使い、それとクロムと同じ大楯使いの三人。警戒しつつ出方を窺う俺たちに3人は少し焦った声で話しかける。

 

 

「ま、待ってくれ俺達も鉱石を取りに来ただけだ。あんたたちとことを構えるつもりはない」

 

「…そうか…なら俺達はもう帰るところだ。邪魔して悪かったな…クロム、イズ行こう」

 

 

クロムとイズも頷き。彼らの横を通り過ぎ背中を見せた直後…

 

 

「今だ!疾風突き!!

 

 

槍使いが動いた。スキルを使ってイズめがけて槍を素早く突き出してくるが、仕掛けてくるのが分かっていた為に対処は簡単だった。

 

仕掛けてきた直前、俺は体を反転させて振り返り大剣を抜き放ち、槍の柄部分を目掛けて振り落とすと槍は真っ二つにへし折れる。

 

 

「…はい?」

 

 

いきなり自身の槍を失ったことで間抜けな声を出す槍使いを一閃し悲鳴も上げさせずにPKすると他二人が散ったプレイヤーの名前を叫ぶ。

 

 

「くそ!なんで俺たちがPKを狙ってるってわかったんだ!?」

 

「あからさま過ぎたからな。弓使いはDEX上げているかもしれないが見る限り職人プレイヤーがいないしむしろ訪れるプレイヤーを狩ったほうが儲かると思ったんだろう?それとVR内じゃああんまり嘘はつかない方がいい。VRは現実以上に感情を隠せないからな」

 

 

「…くそ!」

 

 

図星を突かれてか、弓使いは矢を俺に向けて放ってくるがその矢を大剣で軽く切り落とす。

 

弾速は結構遅いので簡単に対処できる。

 

切り落とされることに焦りを出す弓使い。狙いもおぼつかなくなる。

 

 

「どうする?このまま立ち去るなら見逃すが…不意打ちも失敗した以上、お前たちに勝機はないと思うが」

 

「…っ!!」

 

 

歯を食いしばり悔しさを露にする襲撃者は背を向けて逃げ出し、足音が遠くなっていくのを感じると、大剣の構えを解いてクロム達の方へ顔を向ける。

 

 

「とりあえずまた襲撃されるかもしれないから警戒して帰ろうか」

 

「そうだな…」

 

「そうね」

 

 

 

また襲われることを視野に入れ、帰りは行きよりも遅いペースで町へと帰っていくのであった。

 

 



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6話『SAO生還者と一日の終わり』

漸く、町に帰って来ることができた俺達。戦闘もできるだけ避けていたために既に時間は22時を回っていて、ログインしているプレイヤーも向かう前よりかは少なくなっている気がする。

 

 

「ふう、漸く帰ってこれた。イズもサイトをお疲れ。こんな時間帯になってしまったが…明日は大丈夫か?」

 

「明日は休みだし夜更かししてところで問題ないわ」

 

「俺も予定がなかったから問題ない。」

 

 

夜遅くになってしまったことを心配して尋ねてくるクロムに問題ないとイズと一緒に頷く。

 

しかし、父さんたちは心配しているかもしれない。勧めたとはいえSAOでのことで俺に対しての心配性になっているから。

 

 

「でもそろそろ、落ちないと…今日はありがとう…それじゃあ…」

 

「少し待ってくれ」

 

 

ログアウトの準備をしながらクロム達にお礼を述べる途中クロムに遮られる。

 

 

「もしよければなんだが、フレンド登録しないか?困ったときに連絡もできるしパーティーも組みやすい。悪くはない話なんだが…」

 

「あっ、それじゃあ、私もサイトくんとフレンド登録しておこうかしら。また採取を頼むこともあるだろうし」

 

 

フレンド登録を勧めてくる二人に、俺は別に断る理由も見当たらなかったからウインドウに表示されているフレンド欄に二人から飛んできた申請を承認すると、空白しかなかったフレンド一覧にクロムとイズの名前が加わる。

 

 

「これでフレンド完了だな。困ったときがあったら連絡してくれ、それじゃあな」

 

 

そう言ってクロムは街中へと姿を消し、隣で立つイズもまだ何かするつもりなのか気合の入った表情を見せていた。

 

 

「イズはどうするの?ログアウト…するつもりなさそうだけど」

 

「私はいち早く生産スキルを上達させたいから工房に籠るわ…装備が欲しくなったら私の工房まで足を運んでね。歓迎するから」

 

 

それじゃっと手を軽く振りながらイズも街中に先ほど言った工房に行ったのだろう。

 

 

「さて俺も落ちるか」

 

 

もう残る理由もないので、俺はメニュー画面からログアウトボタンを押すと意識は現実世界へと覚醒する。

 

 

 

 

13:名無しの大楯使い ID:zGdAC4AG/

 

噂の大剣使いとフレンドになった

 

 

 

14:名無しの槍使い ID:pLfY4FrQQ

 

ふぁ!?

 

 

 

15:名無しの魔法使い ID:RF1/Tmzpq

 

一体どういうことだ。説明をkwsk

 

 

16:名無しの弓使い ID:JyufbQOYx

 

というか、このスレで来たの今日なのにその大剣使い朝から夜までこのゲームやりこんでたの?

 

 

17:名無しの大剣使い ID:tUQaK1KiJ

 

同じ大剣使いとしてものすごく興味がある。さっさと情報を

 

 

18:名無しの大楯使い ID:zGdAC4AG/

 

落ち着け、一気に書き込むからな

 

 

 

19:名無しの大楯使い ID:zGdAC4AG/

 

名前はサイト。武器は知っての通り大剣であの尋常ない動きはPSによるものだった。実際、気配察知スキルなしで敵を感じ取ったり襲ってきたプレイヤーの武器を破壊したりと大暴れだった。あと普通にいいやつ 

 

 

 

20:名無しの槍使い ID:pLfY4FrQQ

 

え?なにその人外スキル…本当にゲームのスキルじゃないの?

 

 

21:名無しの大楯使い ID:zGdAC4AG/

 

NWOで用意されているスキルではない。帰り道にそこらへん聞いてみたらやっぱり他のゲームで培った技術らしい 

 

 

 

 

 

22:名無しの大剣使い ID:tUQaK1KiJ

 

マジか、レベル差どうこうじゃなく勝てる気がしない

 

 

23:名無しの大楯使い ID:zGdAC4AG/

 

実際、弓使いの矢も大剣で切り落としていたしpvpも3人相手に楽々だった。

 

 

 

24:名無しの弓使い ID:JyufbQOYx

 

遠距離すら効かない、接近戦は大剣の餌食…勝つの無理ゲーかん

 

 

 

25:名無しの魔法使い ID:RF1/Tmzpq

 

魔法ならワンチャンあるか?

 

 

 

26:名無しの大剣使い

 

何故か魔法も対処されそう…まあ、期待の新人(ニューピー)ってことで今後の成長に期待だな

 

 

 

27:名無しの大楯使い

 

おう!

 

 

 

28:名無しの槍使い

 

おう! 

 

 

 

 

 

29:名無しの弓使い

 

おう!

 

 

30:名無しの魔法使い

 

おう!

 

 

 

 

「ふう…今日一日疲れた…」

 

 

アミュスフィアを外した俺はベッドに寝転びながら。今日のことを振り返る。

 

父さんにNWOとアミュスフィアを渡され無下にはできなかったために朝にログイン。そして少し戦った後人目のない場所でレベリング。そして極めつけは夜に来るとクロムとイズに出会い一緒に戦った。

 

一日とは思えない超ハードスケジュールだった。

 

 

「…もう疲れたから眠ろう」

 

 

やってきた睡魔に襲われながらもアミュスフィアを机に置き、そのままベッドに再び横たわる。そして意識は直ぐに睡魔に襲われ俺は眠りに落ちた。



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7話「SAO生還者とクエスト」

「おはよう」

 

「おはよう太一。遅くまでNWOにログインしてたみたいだな。あんまり羽目を外し過ぎるなよ」

 

 

朝起きて、リビングに降りると私服姿でソファーに座り新聞を読みふける父さんの姿があった。

 

俺が結構夜までログインしていたのは知っていたので目を細目注意されると、分かっていると言って俺は朝ごはんが食べたかったから椅子に座る。

 

すると、もう起きて朝ごはんの支度をしていた母さんが朝食を持ってやってくる。今日の朝食はパンとベーコンエッグか

 

 

「太一、おはよう。今日は確かジムの日だっけ?」

 

「昼からね。朝は勉強するつもりだし夜からはNWOにログインすると思うけど」

 

「そう…やっぱり心配だわ。またあんなことにならないか」

 

「大丈夫、ナーブギアじゃないしログアウト不可能なわけでもない。ちゃんと帰ってこれてるから」

 

 

パンとベーコンエッグを置きながら、俺がVRMMOをやることに不安を顔にする母さん。

 

そんな母さんを安心させようと俺は言葉の限りを尽くす。

 

その言葉に、そうねっといつもの表情に戻った母さんと新聞を折りたたみ朝食を食べようとする父さんと一緒に何気ない朝の日常を満喫した。

 

 

 

 

 

 

「さて…ログインしたわけだけど…」

 

 

時刻は夕方になり、用事を全て済ませた俺はNWOにログインした。朝に言った通り自室で勉強して…昼からはジムで衰えた体力を戻すため体力作り。まあ、ジムのマッチョなお兄さんには「いいよ!筋肉が喜んでるよ!」っと褒めちぎられたが…まあいいだろう

 

 

「今日もレベリングするか…何かいいスキルでも手に入れに行くのもいいな…クロムに聞いてみるか」

 

 

今日はどこに向かおうか胸を高鳴らせながら、昨日フレンドになったクロムに相談しようとメニュー画面からフレンド欄を確認すると、クロムもイズもログインしているのが分かり、メッセージを送るとすぐに返事がすぐに返ってきた。どうやらイズの工房にいるようで書かれている場所を頼りにその場所に行くと、イズ工房と看板が立てられたお店を発見し入るとクロムとイズがいた。

 

 

「あっ、サイトくんいらっしゃい。」

 

「来たか、サイト」

 

「クロムもイズもこんにちは…なんか話してたの?」

 

「ああ、ついさっきやってきたクエストについてな」

 

 

入ってきた時、何か話していたから何かと思い尋ねると隠し事でもなかったようでクエストについてだった。

 

 

「この町から北にずっと行くと北の最果てっていう古戦場が在って、そこにある祠でクエストを受けられる。クエストを受けた後、クエストNPCと戦うんだがそれがかなり強くて負けて帰ってきた。他の奴らからも聞いたら受けた奴は全員負けてるらしい」

 

「北の最果て…それにかなりの高難易度クエストなんだな」

 

 

そういった難しいクエストならやってみたいと思うのがゲーマーだ。俺はその高難易度クエストに笑みを隠せずそれを見たイズは微笑む。

 

 

「サイトくん。笑みを浮かべてるけどクエスト受けに行くつもり?」

 

「ああ、誰もクリアできていないクエスト…やりたいのは当然だろ?早速行って見るよ」

 

「頑張れよ。道中の敵も強いがサイトなら問題ないだろう。そうだ、そのクエストのNPCかなりVITが高いから気を付けた方がいい」

 

「アドバイス助かる。じゃあ行ってくる」

 

 

帰ってきたらどうだったか教えてねっとイズの声が聞こえる中、イズの工房を後にして準備を整え一度ログアウトして夕飯を食べた後、再びログインして北の最果てを目指した。

 

 

 

平原を走り森を抜け、辺り一面は大規模の戦いがあったかのように地面は荒れ朽ち果てた武器など突き刺さっている。

 

空を見上げると、空の色も紫と不気味さが引き立っていてその上武器を持った骸骨などアンデット系が目立つ

 

 

「此処が北の最果て…古戦場っていうこともあってやっぱりアンデット系がいっぱいいるな…さて、クロムの話だともう少し、奥にあるらしいな…行って見るか」

 

 

古戦場の中に入っていき、奥へと進んでいく。出来ればポーションなどの消耗品は使いたくないので戦いは避けたい。

 

そう思いながら襲い掛かってくる敵のみ対処して進むとクロムの言う通り、朽ち果ててボロボロな祠を見つけ中に入るとおおよそ戦いに支障もない広さに中央には膝を地面につけ剣を突き立て来訪者を待ち構える全身を傷だらけの騎士甲冑で身に纏う人型のクエストNPCの姿。

 

 

俺は大剣を構えながら警戒しながら近づくとどこからともなく声が響く。

 

 

”立ち去れ”

 

「!?クエストが」

 

 

【留まりし騎士の魂】のクエストを開始しますか?

 

YES     NO

 

 

恐らく、この古戦場で散った騎士が死してなお留まり続けているという設定だろう。

 

俺はこのコンセプトをそう解釈しながらクエストを受託する。

 

 

「悪いがあんたを倒したくてうずうずしてるんだ。」

 

 

そう言って剣先をクエストNPCに向けると動かなかった。騎士は立ち上がり突き刺した剣を抜きとる。

 

 

”ならば、切り捨てるまで”

 

 

敵意を剥き出しにした騎士は剣を構えて襲い掛かってきた。

 

 



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8話「SAO生還者とエクストラスキル」

留まりし騎士…町から遠く離れた北の最果てと呼ばれる古戦場で待ち構えているクエストNPC……クエストを受けたプレイヤーと1対1で戦いになり。未だにクリアしたプレイヤーはいない。

 

クロムの話だとVITが高く追加情報ではAGIは40くらいと推測して教えてくれたが…

 

 

「どこが40だ、明らかに60はあるだろ!」

 

 

先に仕掛けてきた留まりし騎士を動きでその情報の真偽は嘘であるとわかった。咄嗟に大剣で留まりし騎士の初撃を攻撃を防ぎその動きの速さからそれを実感する。

 

動きが遅ければポーションなので回復しつつ長期戦にもつれ込み…予定だった。

 

しかしここまで連撃が激しかったら回復している余地なんてない。

 

そんなことを考えて大剣で防ぎ機会を伺うが捌ききれなかった。

 

 

「まずっ!?」

 

 

迫りくる剣先、俺は体を動かし何とか回避しようとするが肩に肉薄で掠り。HPが半分以上削れた。

 

 

「このまま引き下がれるか…!」

 

 

掠る程度だったが接近したことでこちらもお返しといわんばかりに大剣を下段から振り上げ、一撃を食らわせると留まりし騎士のHPもかなり減少し危険を察知したのか。

 

 

「…聞いてた話とやっぱりかなり変わっている」

 

 

クロムの話だとVITが高くあまり攻撃が通らず。長時間の戦闘で集中が切れて敗北した。

 

しかし、HPがかなり減少したことでクロムとの話とは辻褄が合わなくなった。

 

 

「…賭けてみるか」

 

 

一か八かの勝負に乗り出したのを決め大剣を構え一気に距離を詰めると横に一閃。

 

だが肉薄してHPは削り切れず大振りで隙を見せた。それを好機とみて剣先を俺に向け突き出そうとするが…計画通り連れてくれた。

 

おれはそのまま大剣の勢いに乗じて高速に一回転してもう一撃横に一閃加える。

 

 

両手剣二連撃SS(ソードスキル)ブラスト

 

両手剣の中でも全方位に攻撃できる範囲攻撃使いこなれていてアシストなしで何とか再現することができた。

 

2撃目が確実に入ったことでHPが全損した留まりし騎士。甲冑音が響く中、先ほどと同じ場所に膝を曲げ剣を突き刺した。

 

 

”…見事だ。まさかここまでの強者であったか”

 

 

再びどこからともなく聞こえる声、その言葉は打ち勝った俺に対する称賛の声だった。

 

 

”…ここまでの強さならあの力も受け継ぐに相応しいかもしれん”

 

 

「あの力?っ!?またクエストがエクストラクエスト?」

 

 

エクストラクエスト【受け継がれし禁断の力】のクエストを開始しますか?

 

YES     NO

 

 

「たぶん、これを逃したら二度と受けられない気がする」

 

 

そんな予感めいた感じで俺はエクストラクエストを受けると再び留まりし騎士が話始める。

 

 

”我が家系に伝わる力でこの力は生命力を消費することで強大な力を放つことができる我が代で途絶えさせると思ったが貴様なら受け継がせるに十分な逸材だ”

 

 

「HPを消費して放てる技?まさか…!」

 

 

留まりし騎士の話に俺は途轍もないデジャブを感じた。

 

HPを消費する技それはまるで俺が持っていたあのユニークスキルと疑似しているそんな感じが

 

そんなことを考えているとシステム音が響く。

 

 

エクストラスキル【暗黒】を取得しました。

 

 

「暗黒…」

 

 

恐らくその名の通りなのだろう。しかし暗黒かSAOで持っていたユニークスキル暗黒剣と本当に同じ力みたいだ。

 

 

”確かに継承したぞ。この祠に眠っている宝も餞別で持っていけ”

 

 

そういうとクエストクリアの文字が突然開いたウインドウに表示され、留まりし騎士の声も聞こえなくなった後、その後ろに宝箱が出現して俺は暗黒のことを思いながらも宝箱に開けシステム音と共にウインドウが開く。

 

 

装飾品【騎士の誓い】を手に入れました。

 

 

「アクセサリーか」

 

 

とりあえず。暗黒のスキルも確認したいために俺はメニュー画面を開けて新しく手に入れたものを確認すると

 

 

 

騎士の誓い

 

【HP+200】

 

【MP+50】

 

 

 

【暗黒】

 

暗黒の力を意のままに操ることができる。

 

HPとMPを消費して暗黒の力を使うことができる

 

取得条件

 

エクストラクエスト【受け継がれし禁断の力】をクリアする。

 

 

【暗黒】消費MP50

 

武器に暗黒を纏わせSTRが2倍と攻撃範囲が拡大する。

 

暗黒が発動中はHPが徐々に減少する

 

 

【黒炎】消費MP100

 

黒い炎の斬撃を放ち、相手に延焼効果を付与する。

 

発動時HPを150消費する。

 

 

【常闇に燃え盛る黒き炎】消費MP200

 

暗黒の最大の一撃。

 

受ける相手は防御力が0になる。

 

発動時使用者の最大HPが半分になる。

 

このスキルは1日に1回だけ使用できる。

 

HP半減は1日経過すると元に戻る。

 

 

 

 

「うわぁ…ぶっ壊れ性能」

 

 

確認するとその性能に頬引きつらせるなか、俺は装飾品に騎士の誓いを装備した後この場から後にした。

 

 

 

一方運営では

 

 

「ああああああっ!?」

 

「おいどうした。そんな大声上げて…」

 

「北の最果ての留まりし騎士が倒された!」

 

「なんだって!?あれは早々クリアできるクエストじゃないだろう!?」

 

「そうだぞ、あのクエストは受けたプレイヤーのステータスの二倍の数値の敵と戦うやばいクエストだぞ。あそこに行けるのもレベルの高いプレイヤーのみで強ければ強い程あの留まりし騎士も強くなる。鬼畜難易度」

 

「それでもクリアされたんだ…」

 

「ッで誰にだ?まさかペインか?」

 

「いや、違う…サイトだ」

 

「え!?サイトって坂口チーフの息子!?」

 

「ああ、HPも40だったし倍にしても80…確かに倒せるよな…しかも初回だ」

 

「ってことは暗黒手に入れたのか!?嘘だろ!?」

 

「あれはHP消費するデメリットがあるがやばいスキルだ…しかもそれがよりによって坂口チーフの息子に…これはトッププレイヤー入り確定だな…」

 

 

こんな話が合ったのは後日、ログアウトした息子から父親も知りドン引きしたのは言うまでもない。

 



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9話『SAO生還者と大事件』

 

 

 

サイト

 

 

 

Lv17

 

 

 

HP 240/240 〈+200〉

 

 

 

MP 62/62 〈+50〉

 

 

 

 

 

 

【STR 67 〈+20〉】

 

 

 

【VIT 39】

 

 

 

【AGI 39】

 

 

 

【DEX 0】

 

 

 

【INT 0】

 

 

 

 

 

 

装備

 

 

 

頭 【空欄】

 

 

 

体 【空欄】

 

 

 

右手【初心者の大剣】

 

 

 

左手【初心者の大剣】

 

 

 

足 【空欄】

 

 

 

靴 【空欄】

 

 

 

装飾品 【騎士の誓い】

 

 

 

【空欄】

 

 

 

【空欄】

 

 

 

 

 

 

スキル

 

 

 

【大剣の心得Ⅲ】【武器防御】 【暗黒】

 

 

 

 

 

 

 

北の最果てからの帰り道、足を止め休憩がてら木下でレベル10から溜まっていたポイントを割り振った後、クロムにメッセージを送りつけていた。

 

 

 

≪クエストクリアしたぞ≫

 

≪マジかっ!?で?何を手に入れたんだ?≫

 

≪一応アクセサリー。結構強い。ただあのクエストNPC明らかにAGI60以上はあったぞ≫

 

≪60!?そんなバカな≫

 

≪あれは絶対40ではない。帰ったら覚えておけよ≫

 

 

 

「さて、動こうかな」

 

 

 

体を起こし、また町への帰路を歩いて行く。

 

そしても夜空が輝く中、既に時間も11時と昨日より夜更かししている時間帯になっており、街に戻ってくると俺は真っ先にクロムがいるであろうイズ工房へやってきた。

 

 

 

「クロム!さあ、年貢の…あれ?いないのか?」

 

「いらっしゃいサイトくん。クロムならついさっき落ちたわよ」

 

「…逃げたか」

 

町に入って直ぐにフレンド欄でクロムがまだログインしているのを確認したのだが…今確認するとログアウトしているのがわかる。

 

 

 

「私も直ぐにログアウトするから…装備の相談ならまた明日ね…多分クロムも明日は日曜だから昼にはログインすると思うし…その時に騙された怨み辛みを言ったらどうかしら?」

 

「…じゃあそうさせてもらいます」

 

 

 

この鬱憤を晴らすのは明日…覚えていろよクロム。そう言いながらイズがログアウトするのを見送った後、俺も後から続けてログアウト現実へと戻った。

 

 

 

「おう、太一。もう寝たと思ったがこんな時間帯までゲームやってたのか?」

 

「父さんこそ明日休みだからって…飲んだくれるのは母さん怒るぞ…後クエスト受ける場所が遠かったからその分でだろう」

 

「わかってるって…クエストかどういうクエスト受けたんだ?」

 

「ああ、留まりし騎士って言う……父さん?何顔色変えてるんだ?」

 

「え?いやその……お前まさか……初回クリアしたのか?」

 

「……そのまさか…とだけ言っておく」

 

「ああ、暗黒取ったんだな…」

 

 

 

父さんが遠い目をしながらぶつぶつと呟き始めた時点で、確実に取らせる気のない鬼畜難易度だったのだと推測する俺は運が良かったのだろう。

 

 

 

そんな上の空の父さんを見ながら、ふと映りぱなしのテレビに視線を向けるとニュースが流れていた。

 

 

 

「今日午後7時半過ぎに、都内の病院で男子高校生に危害を与えた容疑で須郷伸行容疑者が逮捕されました。須郷伸之容疑者は……」

 

「あれ?確かこの男って」

 

「ん?ああ、レクト社のVR部門の主任だ。VRにおいて茅場晶彦の次に優秀って言われていた男だ…」

 

「茅場……晶彦…」

 

 

 

まさかこんな所でまたあいつの名前を聞くなんて……にしても須郷という男、そこまで偉い地位にいたのに関わらずなぜこのようなことを?

 

 

 

「たった今速報が入ってきました!SAOクリア以後未だに眠り続けていたというSAOプレイヤーが目を覚ましたとのことです。現在状況が……」

 

「目を覚ましたって……SAOプレイヤーにまだ目を覚ましてなかった人達が居たのか!?」

 

「噂じゃあ300人居たってよ……だが目を覚ましたんなら良かったじゃねえか……これでレクトも重い荷が下りたってことだ」

 

「?どうしてレクトも重荷が下りたんだ?」

 

「そりゃあ……今現在のSAOサーバーを管理しているのは……レクトだからな……全員帰ってこれたんならもうSAOのサーバーも不要だろ?」

 

「…………」

 

 

 

レクト社のVR部門の主任である須郷伸之の逮捕……そして300人居た未帰還者の生還……これが同時期に起きた……まさか繋がっている?

 

 

 

「なあ……父さんさっきの須郷の件と今の未帰還者の件……どっちもレクトが関わってるんだよな……」

 

「……言われればそうだな……おいまさか……」

 

父さんも俺が考えている事を察したのか、先程の悠々と寛いでいた表情が抜ける。

 

 

 

「物凄く……嫌な予感がする」

 

 

 

確実に何が起きているそんな気がした。

 

そしてそれは現実のことになってしまった。

 

 

翌日朝早くだというのに、俺はNWOにログインし街中を走る。

 

周りを見渡すと、まだ8時前だというのに慌ただしく顔に焦りを出しながらプレイヤーが多い。

 

 

それはみんな考えていることが同じだからだ。

 

昨晩の須郷伸之とSAO生還者300名の帰還これはやはり繋がっていた。

 

ALOのグランドクエストである世界樹の上にその300人を拉致し、非道な実験材料として扱われていたという恐るべき事実だった。

 

 



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10話『SAO生還者とまた会う日まで』(前編)

 

「イズ!クロム!」

 

 

俺は街中を走り、イズの工房に到着し乱暴に扉を開け中に入ると外のプレイヤー同様、今回の件で深刻な状況に頭を悩ましてる二人がいた。

 

 

「サイト、お前もやっぱり来たんだな」

 

「元々は午後からログインするつもりだったけどこんなことになったからな…居てもたってもいられなかった」

 

 

その言葉に同じ気持ちだと頷くクロムとイズ、俺は置いてある椅子に座り高ぶる気持ちを静め、今の現状を確認する。

 

 

「とりあえずALOのことはニュースで見たんだよな」

 

「ああ、正直、今も信じられないと思ってるまさかALOを隠れ蓑にそんなことしていたなんて…」

 

「見た限りだとALOのグランドクエストも存在してなかったって話らしいから…質が悪いわよね…これからNWO…ううんVRMMO自体がどうなっちゃうのかしら」

 

「…SAOから始まったVRMMOは陰りが強かった。そして今回もSAO事件の系譜から発生した事件だからALOはもちろん。VPMMO自体が全て無くなっても可笑しくはない」

 

「そう…よね…本当に残念で仕方ないわ…」

 

 

現状の再確認をしてより一層、今の現状を重く感じるイズは更に落ち込み俯いてしまう。

 

イズの気持ちは痛いほどわかる。あんなことがあったのに関わらずVRMMOを求めている俺もVRMMOに魅了されている一人なのだから。

 

 

静まり返り、暗い空気が立ち込める工房、そんな中クロムはわざとらしくせき込み。俺たちの視線を集めると少し間を開けて口を開けた。

 

 

「暗い話はこれぐらいにしよう…俺たちがここで話し合ったところで何かが変えられるわけじゃないからな…サイトもイズも今日はこの後もログインできるんだよな?」

 

「できるけど?」

 

「俺も…問題ないが」

 

「そうかなら一度落ちて9時にまた集まらないか?朝食も取らずに来たんだろ?俺の予想だが今日中にはこのNWOも封鎖されると思う。だから今日は思いっきり楽しむっていうのはどうだ?」

 

「…そうね、それがいいかも」

 

「俺も元々、勉強する予定だったけど。今回はこっち優先でやることにする」

 

「それじゃあ、一旦落ちて、9時にイズの此処に集まろう」

 

 

そうクロムは取り決めると俺は直ぐにログアウトする。

 

そしてアミュスフィアを外しリビングに降りうとテーブルには朝食が並んでいて母さんは使い終わった食器を洗っている。

 

 

「太一、NWOにログインしていたの?」

 

「うん…母さん今日、午前中は勉強するつもりだったけど…朝からNWOにまたログインする」

 

「そう…わかったわ。お母さんが何言っても…今の太一を止められそうにないし」

 

 

俺の心境を察してくれた母さん…俺はテーブル前の椅子に座り朝食を取っていく中今日いるはずの父さんのことを思い口を開ける。

 

 

「父さん達…大丈夫かな」

 

「…休日出勤して緊急会議が開かれるみたいだし…会社もこの件で窮地に立たされそうだしね」

 

 

此処にいない現実で戦う父さんのことを考えながら、俺は朝食を食べ終わると一服した後、NWOにログインした。

 

 

「あれ?イズ、クロムも…もう居るし、まだ約束を時間まで後30分はあるんだが…」

 

 

明らかに早く着きすぎたと思う中、俺より早くイズとクロムはついていた。

 

明らかに早すぎるだろうと目を細め、ジト目で二人を見ると苦笑いの表情を浮かべる。

 

 

「楽しみたかったから居てもたってもいられなくて」

 

「まあ、よくある話だろ?集まったことだから…早速行くとしよう…何か希望とかあるか?」

 

「…それ聞くってことは全くのノープランだってことか…仕方ないけど」

 

「仕方ないわよ…急だったし…うーんそれじゃあ…」

 

 

 

 

……

 

 

 

「はあぁっ!!」

 

「よし、ここらあたりの敵は片付いたな。それじゃあサイトこの前みたいに警護頼むぞ」

 

 

辺りのmobを一掃した後、イズとクロムは武器からピッケルに持ち替え採掘を始める中、俺はmobがリスポーンするのを警戒しながら採掘をするイズたちが終わるのを待つ。

 

まず、イズが提案したのは二日前と同じ鉱石集めだった。

 

最後精いっぱい、制作したいというイズの願いだった。

 

それならと早速この前来た。坑道に赴くことになった。因みにあと数か所、別の場所を回ることになっていて午前中はこれで完全に潰れるだろう。

 

 

「しかしタイムリミットは午後5時か…」

 

 

メニュー画面からメッセージを見て運営からの通達を再び確認する。

 

俺達の予想通り、運営は今日の午後5時から無期限の緊急メンテナンスを開始すると発表。

 

サービス停止とは言わずメンテナンスといったのはまたできるかもしれないという。運営の悪あがきなのかもしれない。

 

 

そんなわけでタイムリミットが設けられた。ここからは効率よくどうやって楽しむかその問題が浮き彫りになってきた。

 

 

「ふふ、今日もいっぱいだわ」

 

「よし次行くぞ。時間は有限だからな…」

 

「ああ、後わかってると思うけど…」

 

「途中でサイトが提案したあれもやりに行こう」

 

 

採掘が終わったイズたちが帰って来るとすぐに別の場所の採掘ポイントへ直ぐに向かう。

 

坑道自体のすべての採掘ポイントを掘り起こせば別の場所の採掘ポイントへ赴き…2か所ほど採掘した後。俺達は初日訪れたあの地底湖へと足を運ばせた。

 

 

「さてと…ここでいいんだな」

 

「ああ、イズ…例のものは?」

 

「ええ、持ってきてるわ」

 

 

湖のまえまで来ると俺はイズに持ってきてもらっていた必要なものを取り出してもらいストレージから取り出したのは3人分ある釣り竿だった。

 

 

「それにしても意外だったなサイトのことだからどこかにレベリングだと思っていたが、まさか釣りをしたいとは」

 

「別にいいだろ?前のVRMMOで釣りをしてたんだ。戦い詰めるのもよくないからな」

 

 

そう言って俺はイズから釣り竿をもらうと糸を湖へと垂らし、クロム達も釣り竿を垂らした。

 

 

 

一時間後…

 

 

 

「よし、これで12匹目だ」

 

「またかかったわ。これで30匹目かしら」

 

「……」

 

 

可笑しい…可笑しすぎる。

 

なぜ此処まで差がつくのか…

 

 

「サイトはまだ3匹か…」

 

「十倍ね。これってDEXと関係あるみたいね…サイトくんは低かったのよねDEX」

 

「因みに釣りスキルを手に入れた。DEXが20必要らしい」

 

この差は何だ、これでも釣りに関してはSAOでカンスト(コンプリート)した身。

 

それなりに釣り上げる自身もあった…しかし結果は悲惨なもの…これがレベル制MMOの理不尽性か…DEX少し上げるべきか?

 

 

「釣り竿じゃなく、素潜りで取って来るとかありじゃないか?」

 

「…VRで泳ぐのって意外に現実と違うんだけどな…まあいいか」

 

 

俺は釣り竿を置き助走をつけて水中へと飛び込む。

 

体は水の冷たさと服が濡れて体が重くなる感覚に陥る中、体が覚えている水中での動きでうまく泳ぎ魚を10匹捕まえることに成功する。

 

 

『水泳Ⅰを取得しました』

 

『潜水Ⅰを取得しました』

 

 

泳いでいるとシステム音が鳴ってスキルを修得、水泳は水中での移動速度がアップ。潜水は潜っている時間が長くなるスキルのようだ。

 

 

一度水面に上がり、息を整終える俺はクロム達がいる方向に目を向けると手を振ってきてクロムは声をかけてくる。

 

 

「どうだ?何匹か取れたか?」

 

「大体8匹!!」

 

「そうか!釣りするよりそっちの方が速そうだな」

 

 

そういって笑うクロムに俺はむすっとした表情になる。

 

別に俺は素潜りで魚取りに来たわけではなく。釣りをしに来たんだ。

 

それに昨日のこともあるしっと考えてると俺はいいことを思い付き水中を潜る。

 

 

目指す場所はクロムの釣り竿の浮、俺はクロムに気づかれないように浮をつかみ深瀬の方にSTRを使い引っ張っていく。

 

 

「おおっ!?これは引きが強い!」

 

かなりグイグイと引っ張られることでクロムはどんどん深瀬の方へ引っ張られていき、そして手頃の場所まで引っ張ってから浮を手放し水面に飛び出てそのままクロムの体に纏わりつく。

 

 

「ぬおっ!?サイト!?いったい何を」

 

「よお、クロム、ちょっと一緒に水遊びしないか?遠慮することはない。さあさあ!」

 

 

グイグイとSTRを全力で使いクロムを水中へと引っ張る。

 

クロムも負けじと浅瀬の方へ逃げようとして膠着状態が続く。

 

 

「往生際が…悪い…な!」

 

「それはどっちの…セリフだ!」

 

「クロム~」

 

 

一進一退の攻防をする中、釣り竿を置いてやってくる。イズ、その表情はとても笑顔だ。

 

 

「えい♪」

 

 

その掛け声と共にイズはクロムの背中を押す。

 

 

「あっ」

 

 

短いクロムの声と共にバランスを崩しイズも巻き込んで三人仲良く水の中に飛び込んだ。

 

 

 

「はあ…はあ…溺死とか冗談じゃあねえ」

 

「ふう、気持ちよかった」

 

「そうですね。何気にイズさんも楽しん!?」

 

 

しばらくしてびしょ濡れで上がってきた俺たちは荒い息を吐きながら一休みし、イズの方向に向いた後俺は直ぐに反対方向に顔を振り向かせた。

 

 

「どうしたの?サイトくん」

 

「いや、その…」

 

「お、おいどうか…い、イズ!服!」

 

「え?服がどうか…」

 

 

息を整え漸く周りの確認をしたクロムからの指摘にイズは視線を下す。

 

そして気づいてしまったのだろう。服が水を含んだことで…透けてることに

 

 

 

「そういえばこんなこと4層でもあったな」

 

 

俺のそんな呟きは羞恥の叫びをあげたイズの声によりかき消されたのは言うまでもない。



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11話『SAO生還者とまた会う日まで』(中編)

なんか中編ができてしまった。


「…………」

 

「……ああ、イズ?そのなんだ……」

 

「…………」

 

 

 

気まずい空気が漂っている。

 

嫌あれは間違いなく事故しかもイズの悪乗りで……「あら?サイトくん何考えてるの」……いえナニモカンガエテマセン

 

 

 

「……俺、ちょっと面白そうな場所ないか掲示板とか探しに行くわ」

 

「はぁ!?嫌まてクロム!お前も今回の発端を担ってるんだから少し……ちょっと待て!!」

 

 

 

っと呼び止めようとしたが颯爽に出ていったクロム。呼び止めることは叶わなかった。

 

 

 

クロムが出ていったことでイズの工房には俺とイズのみ…これどうしようと冷や汗が流れる中。イズの溜め息が静粛な工房に響く。

 

 

 

「そんなに気まずくしなくてもいいわよ…私も悪かったわけだし」

 

「……そ、そうだな気まずい空気もそろそろ「勿論、簡単に許す気もないけど」すいません。その爆弾をしまってください」

 

 

 

ストレージから取り出した大型爆弾を片手にじと目で俺に視線を向けている。

 

女って根深いからな……あいつの剣のメンテ忘れて、口きいてくれなかったときもあったり、一緒にダンジョンの探索する約束をボス攻略と重なりボス攻略を優先したことでふて腐れた仲間など……どっちも女という共通点もあったりする。

 

 

 

それからお昼を挟み暫くして俺達はフィールドに出て洞窟型のダンジョンの前までやってくる。

 

 

 

「此処が毒竜の迷宮だ」

 

「NWO内で唯一わかっているダンジョンの中でボスがいる。場所ね…ということはクロムがやりたいことって……」

 

「ああ、この3人で毒竜に挑もうと思う」

 

 

 

ボスとの戦い……RPGをやっていたらなら誰しも味わうボス戦…本来ならフルパーティ8人でやるべきことなのだが…この3人で倒そうというのだ。結構、至難の業だろう。

 

 

 

「取りあえず。イズもサイトもこれ持っておけ」

 

 

 

そういって手の平にはポーションが四つ、ウインドウが表示されるどうやら毒化無効ポーションのようだ。

 

 

「ボス戦前に一つ飲んでくれ、あともう一本は二人のタイミングで頼む」

 

「ああ、別にいいがこれかなり高かったんじゃないのか?」

 

「少し奮発した。時間的にも一回しかいけない。急ごう」

 

 

そういってクロム先頭の中俺たちは毒竜の迷宮に入っていく。警戒しながら進むとクロムが足を止め。敵が迫っているのを察知した俺も大剣を引き抜く。

 

まず、スライムや蜥蜴(とかげ)の攻撃は全てクロムが受け止め敵を盾で捌くと、横から飛び出た俺が一撃で屠っていく。

 

 

「中々いい、連携だったんじゃないか?それに装備も一新してるし強くなっただろう」

 

「ああ、最後ってことで無償だけどな」

 

 

そう言いながら新しくなった大剣を二、三回空振りして鞘に納めると今度は服装にも目を移す。午前中のログイン初期の初心者の服ではなく。亜麻色のコートに紺色の長ズボンにベルトも巻かれた。軽装備の防具に変わっている 。

 

 

全て、イズが作っていたものだ。スキルアップ途上に作った武具…流石にオーダーメイドの装備を作るには時間があまりにも足りなかった。ことから倉庫にあったこの装備を貰い受けた。

 

 

「本当はサイトくんにあった装備を作りたかったんだけど…」

 

「いや、無いより十分ましだし、AGIとVITが6:4で割り振られているからちょうどいい」

 

「そう?それじゃあ次作るときはそれを参考にさせてもらうわ」

 

 

次があれば…ねっと少し悔しさを滲ませるイズ。気持ちが痛いほどわかる俺たちはそのあとイズをフォローしつつ、奥へと突き進み明らかに変わった扉の前にやってきた。

 

 

「クロム、サイトくん」

 

「ああ、どうやら到着だ。二人とも準備はいいな?」

 

「問題ない。いつでもいいぞ」

 

 

そう言いながら予定通り、毒無効化ポーションを使い僅かながら毒無効効果が付くと扉を開けて中へと入っていく。

 

 

中は毒沼など入っただけでもひとたまりもないガスに充満しているような雰囲気で俺たちが入ると入ってきた扉が閉まり。体が毒により一部溶けている三つ首の竜が現れる。

 

 

「こいつが毒竜」

 

 

迫力のあるボスにたじろいでいるようにも見えるクロムだが直ぐに来るぞと凛とした声で叫びと毒竜は濃い紫色のブレスを吐いてくる。

 

 

「毒のブレスか!」

 

「無効化ポーションで食らうことはないけど気を付けてね!」

 

 

おれはそれが毒竜と言わしめる毒のブレスであると判断しイズもポーションを飲んでいたことでほっとしていたが油断はできないと俺達に警戒するように促した後持って来ていた爆弾を投げる。

 

 

爆弾は胴体部分え爆破し僅かながら毒竜のHPが削れる。

 

クロムも毒竜の牙を盾で上手く捌きながら隙をみて攻撃俺も上手く毒竜の攻撃をかわしながら首に大剣で切り裂く。

 

 

「やっぱ、サイトの攻撃が一番効いてるな…」

 

「そうね…そろそろもう一本も飲んだ方がいいかしら」

 

「だな」

 

 

大剣であることからダメージ総量が多いっと改めて思うクロムそして1本目の効果がもうじき、きれそうなのを見てイズはまた無効化ポーションを飲もうとした時、イズの体を毒竜の胴体が巻き付いてきてイズを締め付ける。

 

 

「きゃああぁっ!!」

 

「イズ!今助けに…「グワアァァァァァっ!!!!」!?」

 

 

まずいと思い助けに入ろうと体を動かそうとしたが、突如毒竜が雄たけびを上げると俺達の身体が思うように動かなくなる。

 

 

「ま、まさか…麻痺か!?」

 

「イ、イズ…!」

 

「うっ…こ、の!」

 

 

 

その場で上手く動けない俺とクロム、イズは苦しみながらも動かせる右手で爆弾を持つと毒竜も首の一つに当たる。

 

 

「私は…ここまでね…」

 

 

無事に爆発させたことに安堵すると、イズのHPは0になり紫色のポリゴンとなってアバターが消滅した。

 

 

 



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12話『SAO生還者とまた会う日まで』(後編)

「イ、ズ…」

 

 

 

イスがHPが0になった(死んだ)。あの時と同じように目の前でイズ(アスナ)が死んだ。

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁっ…!」

 

『警告、心拍数上昇、強制ログアウトする恐れがあります』

 

 

 

俺はまた…何も出来ずに 

 

 

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 

 

クロムが取り乱して俺の元にやってきてくれる。

 

 

 

「凄い汗だぞ!?落ち着けこのままだと強制的に…」

 

「ク、ロム…イ、イズが…!」

 

「ああ、今頃イズは町に強制的に戻されただろう…」

 

「俺…はまた……守れ……なかった……!」

 

「サイト……お前」

 

 

 

あの時と同じだ……結局近くにいたのに仲間(友達)を助けることは出来なかった。

 

 

 

「サイトお前は……っ!くそ!」

 

 

 

何かに気付いた、クロムは驚いて俺を見ていたが毒竜はお構いなしに毒のブレスを俺達に目掛けて吐き、それを見てクロムは大楯を構えて防ぐ。

 

 

 

「クロム……!」

 

「確りしろ!サイト、お前がどこのVRMMOから来たかなんて関係ない。かなりトラウマになっていることがあったのかもしれねえが……今居るところはNWOだ!そのVRMMOじゃねえよ!」

 

「クロム」

 

 

 

そうだ此処はSAOではない…ゲームであって遊びなのだゲームであって遊びではない

 

そんなことわかっているのに今、あの時とは無関係なクロムにその事で迷惑を掛けている。

 

 

 

「くそ!じりじりと毒でHPが…!」

 

「クロム!」

 

「サイト!後は頼むぞ!お前ならひとりでボスを倒せるだろう…」

 

 

 

そういって託してくれるクロム…そうだ、いま俺がすべきことは…

 

決意を新たに毒無効化ポーションを飲むと俺はクロムの横を通り過ぎ毒竜の頭に大剣で切り裂き、HPバーを少し削る。

 

ダメージを与え怯む毒竜…

 

それを見てふと後ろを見るとクロムもHPが0になり消滅…託された以上、毒竜を倒さなければ

 

 

 

「行くぞ…暗黒!

 

 

 

その叫び共に俺が持つ剣が黒紫のエネルギーを纏い、刀身が2メートルを越え確りと柄を握り締めて毒竜へと踏み込んだ。

 

 

 

先ずは一閃、胴体部分を切りつけると頭を狙った時より少しダメージが通る。

 

そしてこっちも暗黒のデメリットで1秒毎にHP5減っている。

 

 

 

つまり制限時間はノーダメで約40秒…それまでにけりを即けなければならない。

 

 

「ダメージが浅い!狙うは頭部か!」

 

残り時間のことを考え、狙いを頭部に定め攻撃してくる頭部に何度も切りつける。

 

一発、一発がダメージがでかいために毒竜のHPをゴリゴリ削っていく。

 

 

「残り20秒!」

 

 

既にHPは100を切った。向こうは後2割ほど…

 

もう少しと馳せる気持ちが昂る中、毒竜の頭の一つがこちらに突っ込んでくる。

 

 

「こうなれば!」

 

 

咄嗟の思い付きで毒竜の頭に飛び乗る。落ちないように大剣で頭を突き刺し確りと柄を持って暴れる毒竜に振り落とされないようにして継続ダメージで毒竜のHPを削っていく。

 

そして10秒後、遂に毒竜のHPは尽き毒竜はポリゴンになって消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、ボス討伐祝い!乾杯!!」

 

「「乾杯!!」」

 

 

町の一角にある飲食店、そこのテーブル席に座る俺たちは頼んだケーキとジュースを片手に乾杯する。イズとクロム…そして俺は先ほどの苦労を労おうと飲食店で祝勝会を開いていた。

 

 

「まさか、本当に3人で毒竜を倒せるとは思ってなかった。」

 

「あら?勝てる見込みがあって提案したんじゃないの?」

 

「それはやってみたいだけで、必ず勝てるとは思ってなかったし…」

 

 

まあ、クロムの言う通りなところはあった。暗黒を使わなければ確実に倒せなかったし…

 

 

「それに一番の功績者はサイトだろ?」

 

 

クロムお言葉に二人とも俺に視線を向ける。確かに最後まで戦って毒竜を倒したのは俺だが…俺だけではどうしようもなかった。

 

 

「俺はイズが全損した時、とても戦える状態じゃなかった。クロム俺は…」

 

 

あれだけ迷惑をかけて理由を言わないのはダメだ。意を決して打ち明けようとした時、クロムに手を突き出して静止される。

 

 

「別にいいぞ…その理由ってのはリアルもかかわってるんだろ?詮索するのは野暮な話だ」

 

「そうね…言いたくないなら。言わなくてもいいんじゃないかしら?」

 

 

…これたぶん察してもらってるな…ならここは言うべきではないだろうっと俺はジュースを飲んで気持ちをリラックスするとイズが思い詰めて口を開けた。

 

 

「それにしても…残念よね…」

 

「……」

 

「イズ」

 

 

とても落ち込んでるイズに俺は無言でジュースを置き、クロムは心配の声を上げる。

 

これだけ聞けばどれだけ、NWOをサービス停止になるのが悔やんでいるのかはよくわかる…本当にそうお思っているのなら

 

 

 

 

 

「毒竜の素材…手に入れられなかったなんて」

 

 

 

ダンッ!(机に何かが当たる音)

 

 

 

「イズ…」

 

 

勿体ないわと素材を手に入れられなかったことに不満のイズにクロムも手を当てて溜息を吐く。因みに俺はテーブルに頭をつけてる。

 

 

あの後…俺も死んだのだ。

 

毒竜を倒した後、頭に突き刺してしがみついていた俺は毒竜が消滅すると空中に放り出された。それから持ち前のPSで体制を立て直して無事に着地する自信はあったのだが…ここで毒竜の迷宮と言われる由縁にとどめを刺されることになる。

 

 

着地する場所は毒沼で使っていた毒無効化も完全に切れている。

 

その上HPもほとんどなかったことでつまり何が起きるか…それは簡単

 

 

 

「サイトくん、きっちり毒竜は倒してのに直ぐに毒沼に嵌って死んじゃうなんて…」

 

 

イズの言う通り…そういうわけで毒竜の素材は入手する事は叶わなかった。

 

 

 

「まあ、これもいい思い出になるだろう…」

 

「…後でいいオチの話になるだろうな…」

 

 

 

ジュースを飲みながらふてくされているとこの世界(NWO)全てに響くシステムアナウンスが鳴り響いた。

 

 

 

『プレイ中のプレイヤーの皆様にお伝えします…』

 

「…遂にか…」

 

「そうね…やっぱり寂しいわね…」

 

 

NWOが終わるたった一人の悪意によって広がった波紋がこの世界を飲み込む。

 

 

「やっぱ…嫌だな…」

 

 

仕方ないとはわかっている。しかしVRMMOという世界がなくなるというのはあの二人(キリトとアスナ)あの世界(アインクラッド)で散っていったプレイヤー達の生き様が全て無意味にされそうで嫌なのだ。

 

 

 

「まだ、完全にVRMMOがなくなるわけじゃない…いつかきっとVRMMOが戻ってくるだろう。その時にまた一緒にパーティーを組もう」

 

「そうね…なら次に会うときにはサイトくんに似合う防具も考えておかないとね」

 

「クロム…イズ…そうだな。生きていればいつかまた会える…もしNWOがまた再開するときが来ればその時にこの世界で会おう」

 

 

 

お互いに約束を交わした直後俺の視界が光に包まれる。そして少しすると現実に戻ってきた…強制ログアウトしたのか…

 

アミュスフィアを外しベットから起き上がり、夕暮れの景色を眺める。

 

きっとまたあの世界(NWO)に戻れると信じて…

 

 

 

 

 

そしてそれは予想以上に早くその願いは叶う事になる。

 

 

突如として現れた。ザ・シードという世界の種子によって



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13話『SAO生還者と再始動』

 

 

 

ALO事件から1ヶ月……あの事件以降波紋は広がりVRMMOという存在が風前の灯火へと陥った中、どこからともなくそれは現れた。

 

ザ・シード…コンパクトなサイズのVRMMOの作成・制御のフリーソフト…これの登場により存在自体危ぶまれていたVRMMOは息を吹き返した。

 

 

 

そして今日…NWOが再びサービスを再開する。

 

平日だということもありサービス再会は午後5時……奇しくもあの日サービス終了した時刻という若干狙ってあるのではと思う時間に苦笑いが出る。

 

 

 

「なに?にやにやしてるの?」

 

「別に良いだろ?にしてもお前も物好きだよな」

 

 

 

俺はNWOのホームページが映ったスマホから視線を外し目の前に座る制服を着ている男に映る。

 

 

 

「友達に言う言葉じゃないよね?太一?」

 

「……俺と仲良かった奴はお前以外全員離れてるよ。明久」

 

 

 

俺の目の前にいるのは吉井明久……中学からの友人でSAO事件後も交遊がある唯一の人物だ。

 

大抵俺の中学にいた奴らは俺のことを避けている。理由はSAOという世界に居たからだ。

 

外から見たら俺は剣を振るって狂進する男としか思われておらず。いつ、自分達に被害が合うか、かなり警戒されている。

 

まあ、するつもりもないけど……

 

といった具合に高校では孤立すると思っていたんだが明久は前と変わらず話しかけてきたときは流石に驚いた。

 

そしてその日の帰り道、明久に聞いてみると…… 

 

 

 

「え?別に友達なんだから、余所余所しくする必要ないよね?」

 

とのこと……

 

 

 

明久らしいと言えばらしいと思う。明久には感謝しかない。

 

 

 

「だからね、楓もやらない?NWO」

 

「理沙ちょっと、落ち着こ?」

 

 

 

 

 

遠くの席から女子生徒が二人そんな話をしているのを横目で見ていると、明久が少しそう言えばと思いだしたのか俺に声を掛けてくる。

 

 

 

「今日、NWOサービス再開だっけ?またVRMMOが始められるのは嬉しいよね~本当に……えっと……「ザ・シード」そうそう、ザ・シード様々だね……ってあれ?よくザ・シードのこと知ってるね?」

 

「そりゃあ、テレビとかで報道されているからな…」

 

 

実際は嘘だ。俺もVRMMOをのめりこんでいる身として、それぐらいの知識は確りとネットで調べた。

 

父さんもザ・シードの登場で意気消沈だった会社が息を吹き返したどころかサ〇ヤ人よろしく。勢いが更に高まったと社員一同狂乱していた。

 

 

 

 

「ねえ、坂口くんも吉井くんもNWOに興味あるの?」

 

俺達の話を聞いていたのか、同じクラスの白峯理沙さんと本条楓さんが俺たちのところに来て白峯さんがNWOに関してどう思っているのか尋ねてくる。

 

この高校に来てまだ日が浅いがオリエンテーションで一緒に行動していた仲だったため、喋ることも周りと比べて多かったりする。

 

 

「僕はALOをやっていたけど、当然、NWOの方も興味あるな…太一は…」

 

「一応興味はあるよ…父さんが運営してるゲームだし」

 

「そうなの!?へえ、坂口くんのお父さんってNWOの運営スタッフなんだ…」

 

 

別に言っても問題ない話なのでそれを聞いた白峯さんは驚き、後ろにいる本条さんは白峯さんに比べて反応は薄いがそうなんだと軽くは驚いている。

 

 

「太一は…またVRMMOやる気にはならないの?」

 

「……まあ、その気になればやるかもしれない」

 

 

 

…既にやってるけど

 

やるかもと思わせると周りは少人数が少しざわっとどよめく。

 

どよめいた人間はきっと俺の出身中学の人間だろう。大方あんなことがあってまたVRMMOをやるかもといったのが正気の沙汰とは見えないのだろう。

 

これで仮にばれたとしても問題はないだろう。

 

 

 

その後、白峯さんが「二人も興味あるっぽいから楓もやってみたら?」っと本条さんに向けてNWOをプレイするように誘っているのを苦笑いで眺め。放課後特に用事もない俺は一目散に家に帰宅。家で今日の授業の復習を軽く済ませ、5時前になるとアミュスフィアを装着しベッドに寝ころび、5時になるのを待ちわびる。

 

 

そして5時になった瞬間…

 

「リンクスタート!!」

 

 

俺は再びNWOへと飛んだ。

 

 

直ぐにログインを済ませ、宿から再スタートすると俺は戻ってこれたことに嬉しい実感をしつつ外から喜びの歓声が聞こえるのを耳にする。

 

これはきっとNWOに戻ってきたことへの喜びだ。俺はそこまでのリアクションはするつもりはないが早速、メニューを開けてクロムとイズがいるかを確認する。

 

 

「クロムは…まだか、でもイズはログインしてるみたい…!早速メッセージが、工房に来て…かすぐ行く…っと!」

 

 

 

イズからのメッセージに直ぐに返事をして直ぐに宿から出て喜び湧き上がるプレイヤーの合間を抜けながら、イズの工房へとたどり着く約一ヶ月、それだけだというのにここに来たのは何年ぶりかと思わせる感じがした。そんな気持ちでイズの工房の扉を開けると、中にはイズがいて俺の顔見るに花が開くように笑みを浮かべた。

 

 

「サイトくん!」

 

「イズ、久しぶり…また会えたな」

 

「ええ、そうね。クロムはまだログインしていないみたいだけど…これからどうしましょう?」

 

「鉱石でも堀りに行きます?」

 

「それ、クロムがすねそうじゃない?どうして3人じゃダメだったのかって」

 

「普段は言いそうにないが今回は確かに言いそう」

 

 

こんな話をするのも1か月ぶり…そんな世間話を空白期を埋めるかのように話題に花を咲かせ、しばらくするとようやくクロムがやってきた。

 

 

「すまん、遅れた。お前たちいくら何でも早すぎないか?」

 

「きたか、クロム…お前が一番遅いとはな…また集まろうって言った張本人なのに」

 

「そうね、私、悲しいわ」

 

「お前ら…俺をいじって楽しいか?」

 

「「さあ?」」

 

 

正直に言ってクロムをいじって楽しいというわけではなくこんな話ができて楽しいと思った気持ちが強い。

 

それは他の2人も同じ、言葉では言わないが顔にすごく出ている。

 

 

「さて…またパーティー組んでどこか軽めに行くか…」

 

「まら鉱石取りに行きましょう?たぶん装備の依頼もたくさん来るだろうしストックは欲しいところなの」

 

「じゃあ、リソースが枯渇する前に行こう」

 

 

善は急げ、そういうことで俺たちはパーティーを組み再開したNWOの世界に再び旅立った

 

 



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14話『SAO生還者と自由課題』

昨日、防振りの1,2巻とアンソロ、SAOP4層の2巻にキス&フライを購入してきました。
アンソロのカレーの話はマジで笑った


 

 

「はぁ…」

 

 

 

とても憂鬱だ……

 

こういう日に限っては何事にも身が入らない。リフレッシュがてら釣りでも行くかと思うがその気も出てくる気がしない。

 

 

 

「溜め息なんて付いちゃって……どうかしたの?」

 

「なんでも~イズ、飲み物なんかない?」

 

「此処はカフェじゃないわよ」

 

 

 

そう言いつつもアイテムストレージからカップを出して紅茶を垂れてくれているイズ。それを受け取り、一口、口にして心を和らぐ。

 

 

 

 

 

「はぁ…落ち着くな」

 

「それで?どうしてログインしてからそこまで溜め息を付いてるのかしら?」

 

 

 

リラックスしたところで腕を組んで、原因を尋ねられると俺は語り出した。そうあれは今日の昼のこと……NWOが復活をして2週間…4月の中旬辺りでの出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、今回は一組八人のグループを作って1週間に今の情勢についてリサーチして纏めてくる。課題はどんな物でもいいが確りと調べてくるように」

 

 

6限目の道徳の時間で、担任の教師が俺達に課題を出してくると教室内は響いた。

 

そりゃあ結構大規模な課題だ。確りリサーチして纏め上げればきっと内申点が貰えるだろう。

 

 

 

「課題か……」

 

「課題なんて別に深く考えなくても良いんじゃない?」

 

 

課題について悩む俺だが、話している明久はどうでもいいと適当に課題を済ませようとしているがそれで済む課題ではないだろう。

 

 

「明久一人ならそれでいいかもしれないが8人で一つの課題をまとめないといけないわけだし…生半可なレポートじゃあダメだろ」

 

 

すると明久はそっか…っと溜息を零しうなだれ、課題をどうするか考え始めたんだがきっと明久ではいい課題を思いつかないだろう

 

 

「まずはあと6人集めないと、まずはそこからだな」

 

「坂口くん、吉井くん。少しいいかな?」

 

「本条さん?」

 

 

この課題の難点である8人を集めないといけない。課題はそれからでいいそう思っていると本条さんが俺達に近づいてきて話しかけてくる。

 

 

「えっと、二人はもう誰かと課題をする予定なのかな?」

 

「いや、まだ明久と俺だけであと6人決まってない」

 

「そうなんだ…あのね、もしよかったら一緒にしないかな?」

 

 

もじもじと指を動かしながらあまり親しくない人と話すのは慣れないのか、本条さんはちょっと遠慮気味に課題について一緒にやらないかと提案してきて、放課後に残っている男子どもはみんな俺達に視線を向けた。

 

高校生ながら小柄な体格に美少女ときたら、それは注目も浴びるわけで…周りからは何本条さんに誘われてるんじゃこらっといった嫉妬と殺意が入れ混じった視線を向けられている。

 

 

 

「えっと、本条さん少しいいかな?」

 

「吉井くん、何かな?」

 

「一緒にって本条さんだけじゃなくて、白峯さんも一緒だよね?」

 

「うん!私たちも2人しかいないし…どうかな?」

 

「別に断る理由もないだろうし…むしろ後6人誰とするか決めかねているところだったから」

 

「そうなんだ!じゃあ、よろしくね!」

 

 

っと満面の笑みを俺に向けて浮かべる本条さん。周りの殺意が一層に高まる中、あと四人と考えているとこちらに3人近づいてくる。

 

 

「よう!明久!それと…確か、坂口だったけ?お前らも課題のメンツ集めしてるんだろ?じゃあ、俺達も仲間に加えてくれないか?」

 

「8人集めるのもやっとだからな、此処は親しい間柄のよしみで集まるのが無難だろう」

 

「だから、いいかな?」

 

 

「渉!それに杉並くんに園部さん」

 

 

やってきた3人右から制服を着崩しチャラそうな顔立ちの板橋渉。板橋とは逆にしっかりと制服を着て、不敵に笑う杉並…名前は自己紹介でも苗字しか言ってなかった。

 

そして紅一点、本条さんにも負けず劣らずの小柄で茶髪の髪をなびかせる園部灯里さん。

 

この3人は俺というか明久と仲のいい3人で、何でも入試の時に一緒だったとか…

 

 

「別に俺は問題ないから…本条さんは?」

 

「私もいいよ、あと…一人だね」

 

「ふむ、ならば…彼女はどうだろうか」

 

 

杉並が指を指し俺達も視線を指の先に向けると、そこには帰る支度をしている眼鏡をかけた黒髪の女子高生。確か名前は…

 

 

「朝田詩乃、東北出身で高校から東京に上京してきた。彼女ならまだ誰も誘っていないだろう」

 

「そうなんだ、私誘ってくるね!」

 

「あっ!本条さん!私もいくよ!」

 

 

思いついたら即行動、そういわんばかりに本条さんと園部さんが朝田さんの席に向かい、帰る支度をしている朝田さんを呼び止め、早速誘っていた。

 

 

 

「本条さんも園部さんも行動力あるよね」

 

「だよな、あの二人似たもの同士だし話せば直ぐに仲良くなりそうだよな」

 

 

明久と板橋は同じことを言って…この二人も同じな気がする。

 

 

「どうやら、朝田を連れて帰ってきたようだぞ」

 

「お待たせ!連れてきたよ!」

 

「一緒に課題手伝ってくれるって!ねえ、楓ちゃん!」

 

「うん!灯里!」

 

「…予想以上に早く仲良くなったな」

 

 

戻って来るのに僅か数分、たったそれだけの時間でこの二人の仲が進展した。

 

ニコニコと笑みを浮かべる二人と対照的に朝田さんはどこか疲れている。まあ、自分を誘いに来たのにいきなり二人が仲良くなるところ目の当りにしたらそうもなるかもしれない。

 

 

「…大丈夫か?」

 

「…ありがとう。その課題の件よね?まだ決まってないのなら、明日に決めないかしら…その買い物があって…」

 

 

朝田さんを労うと素直にお礼を言う朝田さん。どうやら買い物をしようとしていたらしく、長く留まらせるのは朝田さんにとって都合が悪そうだ。

 

 

「じゃあ、提案があるんだけどいい?」

 

 

どうしたものかと考えていると、離れて俺達を見ていた白峯さんが課題についていい案があるらしく、俺達7人は視線を白峯さんに向けた。

 

 

 

 

 

「それで課題が、今のVRMMOに関する情勢…ってことになったのね」

 

「…はい」

 

 

紅茶をまた入れてもらい、マナー違反だがことの経緯をすべて話した俺は溜息をまた零す。

 

 

「今の情勢っていえばVRMMOは確かに当てはまるし、課題にするのも悪くはない話なんだけど…」

 

「ネットで調べるより、ログインして他のプレイヤーにインタビューしたり、実際に経験談を加える。とてもいいレポートができるんじゃないかしら」

 

「…そうでしょうけど…みんなNWOにログインするって話になって…」

 

 

 

本条さん曰く、それ理沙がやりたいだけだよねっと小声で呟いていたのはさておき、問題はここからなのだ、俺はメニュー画面を開け今のステータスを確認する。

 

 

 

 

 

サイト

 

 

 

Lv42

 

 

 

HP 40〈+250〉=290

 

 

 

MP 12〈+60〉=72

 

 

 

 

 

 

【STR 100 〈+32〉=132】

 

 

 

【VIT 58 〈+11〉=69】

 

 

 

【AGI 58 〈+55〉=113】

 

 

 

【DEX 9】

 

 

 

【INT 0】

 

 

 

 

 

 

装備

 

 

 

頭 【空欄】

 

 

 

体 【放浪者の服・Ⅸ】

 

 

 

右手【バスタードソード・Ⅷ】

 

 

 

左手【バスタードソード・Ⅷ】

 

 

 

足 【放浪者のズボン・Ⅶ】

 

 

 

靴 【疾風の靴】

 

 

 

装飾品 【騎士の誓い】

 

 

 

【フォレストクインビーの指輪】

 

 

 

【空欄】

 

 

 

 

 

 

スキル

 

 

 

【大剣の心得Ⅵ】【武器防御】 【暗黒】【水泳Ⅹ】【潜水Ⅹ】【バトルヒーリング】【武器破壊】【HP増加中】【MP強化小】【パワーストライク】【毒無効】【麻痺耐性中】【スタン耐性中】【ノックバック無効】

 

 

 

 

バスタードソード・Ⅷ

 

 

【STR+32】

 

 

放浪者の服・Ⅸ

 

 

【AGI+15】

 

【VIT+5】

 

 

 

放浪者のズボン・Ⅶ

 

 

【AGI+10】

 

 

疾風の靴

 

 

【AGI+30】

 

【落下ダメージ軽減】

 

 

 

フォレストクインビーの指輪

 

【VIT+6】

 

 

10分間毎にHPの1割を回復する

 

 

今のステータスはこんな感じになっていた。

 

体と足の防具はイズのオーダーメイドで作った装備で、毒竜の戦いで使った防具の延線上な見た目をしている。足の疾風の靴に関してはクエストを最高ランクでクリアした一番のプレイヤーが手に入れる装備、効果で落下ダメージを半減してくれる。

 

 

その上、毒耐性を手に入れる過程でドロップしたフォレストクインビーの指輪。

 

これも1分間に1割回復というお得な効果が付いていて、暗黒でHPを削る俺にとってこれほどないほどに重宝する装備だった。

 

他にもHP増加で50増加しMP増加で+10、一応と思って手に入れた大剣のスキルパワーストライクや10秒ごとにHPの1%回復するバトルヒーリング。その他の他耐性のスキルも取得しかなり状態異常に耐性を持たせた。

 

 

ステ振りに関しても一度STRは100で止め今はDEXを上げている…理由は察してくれ

 

 

こんな感じが今のステータス…だからこそ思う…これは確実に浮くだろう。

 

他8人は間違いなく初期装備のレベル1。そんな中レベル42の化け物が紛れ込むのだ。…思っただけでも頭を抱えた。

 

 

 

「はぁ…」

 

「もう、なるようになるしかないんじゃないかしら?」

 

 

改めて確認したことで溜息を零し、イズも諦めろとジト目でそのことについて匙を投げた




渉→D.C.Ⅱの板橋渉
杉並→D.C.Ⅱの杉並
園部灯里→アトリエシリーズのソフィー
明久→バカテスの吉井明久


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15話『SAO生還者と集まり』

 

 

 

 

翌日…

 

 

「さてと…それじゃあ確認しておくけどいい?」

 

 

お昼休み、いつもとは違って食堂の一角で俺達8人は最終確認をしていた。

 

 

「まず、今回リサーチするVRMMOなんだけど…NWO、今ALOと同じく巷を騒がせてるVRMMOの一つね。それで私たちが調べるのは今の現状…やっぱりALO事件を経て復活したゲーム、プレイヤーは思うことがあると思うの。後は実際に触れて自分たちがどう実感したかそれをレポートに加えればいいんじゃないかしら?」

 

「そうだね…それで集合するのは午後8時に初期スポーン地点で集まるってことで」

 

「それで構わない…ただ…その私、前の成績が悪かったから…ゲーム禁止されていて…レポート書くためって昨日親に頼んだんだけど」

 

 

ダメでしたと本気で落ち込んでいる白峯さん。それに本条さんは「理沙はレポートそっちのけでゲームを楽しもうとするからじゃないかな?」っと苦笑いで白峯さんも図星のような顔をする。

 

 

「とりあえず、何だけどそれより先にログインしていても問題はないのかしら?」

 

「問題ねえだろう。先にリサーチをするのもいいかもしれねえな」

 

「実は私も昨日ログインしたばかりなんだ。先に行って確り行動できるようにって理沙が…」

 

 

っと思ったよりやる気なのか、板橋はやる気満々。朝田さんも思いの外、興味津々。その上、本条さんに関しては昨日のうちにログインしていたらしい。

 

 

そのあとのことを決めていたら、昼休みが終わるまで続き、そして夕飯を食べた俺は直ぐにログイン。宿で初期装備に切り替えた後、まだ時間があったからイズの工房に顔出して気持ちを落ち着かせる。

 

 

「ふう、落ち着く…」

 

「落ち着くのはいいけど…そろそろ時間じゃないかしら?」

 

 

そう落ち着いているとイズに指摘され、時間を見ると時間は7時45分

 

そろそろ集合場所に向かわなければ怪しまれるだろう。

 

席から立ちあがりイズ工房を後にしようとした時、工房の扉が開いた。外から来たのはクロムで、俺がいることに気づくと初期装備ということに頭を傾げながら問いかける

 

 

「サイト、何で初期装備なんだ?」

 

「そこは後でイズに聞いて、それと町で俺と会っても知らない感じでお願い」

 

「?ああ、わかった。」

 

 

そう言って俺はクロムの横を通り過ぎ、イズ工房を後にする。

 

 

「そうだ、イズ…俺西の森でとんでもない大楯使いを見つけたんだが…」

 

 

二人がクロムが見たという大楯使いの(後のラスボス)少女の話をしていたのは、俺の知るところではなかった

 

 

 

イズの工房からしばらく歩き、初ログインする噴水広場へと向かった俺は辺りを見渡す。ここからログインする初心者(ニューピー)の姿は多く。一見、探すのが困難だが、リアルと顔が同じだから知った顔ならまだわかる。

 

 

「おっ!いた!いた!」

 

 

探していると聞き覚えのある声が聞こえ、顔を振り向くとそこのは既に集まっている4人の姿があった。

 

 

「これで5人目だな。さてと…俺はワタル」

 

「スギナミだ」

 

「僕はアキって呼んでね。太一は?

 

「えっと、サ…サカタだ」

 

 

お互いにプレイヤーネームを名乗る中、明久…アキは小声で俺の名前を聞く。普通の声の音量で話すと誰かに盗み聞ぎされるかもしれないからという配慮だろう。

 

そんなアキの質問に俺はプレイヤーネームではなく。偽名を使い答える。

 

理由はサイトという名前はかなり知られているから。

 

俺のプレイヤーネーム(偽名)を教えた後、あと一人腕を組んでいる朝田さんに視線が向く。

 

 

俺達4人は髪色や瞳の色を変えていないが朝田さんは黒髪を水色に、瞳も青色とかなり変えていて、その俺の視線に気づいたのか目が合い、間を開けて口を開けた。

 

 

「…シノン…それがこの世界での私の名前。そのよろしくね。サカタくん」

 

「ああ、さて後この場にいないのは…」

 

「園部さんと本条さんだね…」

 

「でも本条さんって昨日ログインしていたらしいし、キャラメイクに時間掛かってるわけじゃあないだろ?」

 

「ふむ…彼女の性格から時間を忘れているということは限りなくないと思うのだが…」

 

「あっ!!みんないた!!」

 

 

今の時間は7:57分、約束の時間まであと少しでまだ来ない二人のことを考えていると、元気な女の子の声が聞こえてくる。

 

 

髪色をリアルの茶髪から赤色に変わって、その子は走って俺達の元へやってきた。

 

 

「えっと、名前は?」

 

「あ、私のことはソフィーって呼んで…あれ?楓ちゃんは?」

 

 

園部さん改めソフィーはきょろきょろと辺りを見渡し、本条さんを探すが見当たらないことで首を傾げる。

 

 

「本条さん、どうしたのかしら…リアルでトラブルとか…」

 

「それはないと思うよ。大体一時間前に〇INEで先に入ってるねって送ってきたし…」

 

「ってことは、本条はこの世界のどこかにいるってことか…」

 

 

ソフィーの話を考えるとそうなるだろう…いったいどこに行ってしまったのか…約束の8時は過ぎ、一向に来ない本条さん一度ログアウトも視野にいれたがここでスギナミが口を開ける。

 

 

「致し方ない。先に始めてしまおう」

 

「そうだな…ぱっぱと調べちまおう…っで組み合わせは…」

 

「なら、俺とアキ、スギナミとワタル、シノンとソフィーこの組み合わせでいいだろう」

 

 

 

ワタルがそう言うと俺は一歩前に出て取り仕切る。

 

6人なのでしっかりと割り振りかつこれなら問題もないだろう。

 

 

「異論はない、それとフレンド登録をしておくべきだと俺は思うのだが」

 

「え‘‘」

 

「そうだね、別々に行動するなら連絡取れるならものすごくいいし便利だもんね」

 

 

不味い…こればれるのでは?

 

こんなことなら偽名を使わず普通に単に名前が同じとかではぐらかした方がよかった。

 

 

そんな後悔を他所に着実にフレンド登録していくアキ達。しかし次第に困った顔をしはじめ…全員の視線が俺に向く。

 

 

「ねえ、サカタ…サカタだけこの周辺のプレイヤー欄に名前ないんだけど…」

 

「そ、そうなのか…それは奇妙だな…もしかしたら、バグかもしれない」

 

「まだ決めつけるには早くないかな?サカタくんからフレンド登録すればもしかしたらできるかもだよ?」

 

「……」

 

 

まずい…なんかどんどんと追い詰められている。

 

ここは…逃げるに限る!!

 

 

「あっ!」

 

 

ソフィーの驚いた声をする。俺は踵を返し全速力で広場から離れる。後ろからアキ達の声が聞こえるが全力無視、うまく町の路地なども使い完全に撒くとそのままフィールドへと駆け出した。

 

 



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16話『SAO生還者と邂逅』

ぶちゃけ、アキ達のステータス回です。



NOSIDE

 

 

「…いっちゃたね、どうしよう…」

 

「そんなにフレンド登録したくなかったのかしら?」

 

「僕が知ってる限りそんなこと拒まないはずなんだけど…」

 

「ということは俺達に言いたくはない何かがあった…ということだ」

 

「それで5人になっちまったけど割り振りどうするよ」

 

 

 

広場で残された5人は逃げて行ったサイト(サカタ)を呼び止めはしたが追わなかった。

 

そして5人になってしまったことで別れるメンバーをどうするかワタルが口を開けて言い、スギナミは少し考えた後口を開ける。

 

 

「ならば、俺とワタル、アキとシノンとソフィー…このメンバーで動くのが最適だろう」

 

「見た感じソフィーさんとシノンさんって後衛だし、万が一フィールドに出ることになっても問題ないよね…僕は片手剣で片手剣のAGIより」

 

 

 

 

アキ

 

Lv1

 

HP 75

 

MP 35

 

 

【STR 20 〈+15〉=35】

 

【VIT 10】

 

【AGI 30〈+5〉=35】

 

【DEX 20】

 

【INT 10】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の剣】

 

左手【空欄】

 

足 【空欄】

 

靴 【初心者の魔法の靴】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

 

「流石は経験者といったところだな。俺は両手斧でSTRとVITを伸ばしてる」

 

 

 

 

ワタル

 

Lv1

 

HP 90

 

MP 10

 

 

【STR 40 〈+25〉=65】

 

【VIT 30〈+5〉=35】

 

【AGI 15】

 

【DEX 5】

 

【INT 0】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【初心者の胸当て】

 

右手【初心者の両手斧】

 

左手【初心者の両手斧】

 

足 【空欄】

 

靴 【空欄】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

 

「ほう、二人ともかなりやりこむ気でいるようだな…因みに俺の武器はこれだ」

 

 

そう言ってスギナミが取り出したのは一風変わった弓

 

 

「それって…ボウガン?」

 

「ああ、装填は弓より時間は掛かるが威力がいい」

 

 

 

スギナミ

 

Lv1

 

HP 20

 

MP 10

 

 

【STR 5 〈+6〉=11】

 

【VIT 0】

 

【AGI 90〈+5〉=95】

 

【DEX 5】

 

【INT 0】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の弩砲】

 

左手【初心者の弩砲】

 

足 【空欄】

 

靴 【初心者の魔法の靴】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

 

 

不敵な笑みを浮かべるスギナミ。まさか彼はステータスがとんでもなくAGIに極振りされていることはこの場の4人の知るところではなかった。

 

 

 

「ほえ~みんな考えて振ってるんだね。まあ私もだけど、私は魔法使いだからよろしくね!でもアイテムも作りたかったからDEXにも振ってるんだ」

 

 

 

ソフィー

 

Lv1

 

HP 20

 

MP 50

 

 

【STR 5】

 

【VIT 5】

 

【AGI 20】

 

【DEX 30】

 

【INT 30〈+8〉=38】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の杖】

 

左手【初心者の杖】

 

足 【空欄】

 

靴 【空欄】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

 

 

スキル

 

 

 

【ファイアーボール】

 

 

 

 

 

 

「私は…正直どうすればいいかわからなかったからとりあえず、こんな感じにしたわ」

 

 

 

シノン

 

Lv1

 

HP 20

 

MP 10

 

 

【STR 20〈+5〉=25】

 

【VIT 10】

 

【AGI 15】

 

【DEX 55】

 

【INT 0】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の弓】

 

左手【空欄】

 

足 【空欄】

 

靴 【空欄】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

 

 

「あ、シノンさんは弓なんだね。じゃあアキくんが居たら安心できるね」

 

「いやそれなら俺が…「では行くとしよう!同志ワタルよ」っておい!」

 

 

ワタルの声を遮りこの場から去っていくスギナミ。ワタルも慌てて追いかけて行き、残ったアキ達もしばらくして行動を開始した。

 

 

 

 

 

サイトSIDE

 

 

「はあ…今頃みんなリサーチどうなってるだろうな…」

 

 

そう言いながらバスタードソードの一撃で西の森の魔物を狩る。

 

流石に遠出する気力もなく今回ばかり、ここらへんで素材集めをしていた。

 

今は10時…既にこの世界の空も夜空が綺麗に輝いていた。

 

 

「今頃、みんなログアウトしたかな?」

 

「きゃああああああああああああっ!?」

 

「!?なんだ!?」

 

 

リサーチ開始から2時間ほど、流石に終わっていると願いたい俺はそろそろ町に戻ろうかと思った矢先、途轍もない悲鳴が響いた。

 

一体何事か、俺は急いで悲鳴が聞こえた方向に走る。

 

その向かう中、その悲鳴に引き寄せられているのか明らかに多数の足音がその方向に移動しているのを感じ取り大丈夫であろうかと、その悲鳴の元へ辿り着くとそこは地獄絵図になっていた。

 

 

「なにこれ…」

 

 

途轍もない数のモンスターに囲まれる大楯を持つ少女…少女は悲鳴と共に短刀で必死に振り落としモンスターを倒そうとしているが、STRが全然足りてないのか全く減る気配がない。

 

 

「助けたほうがいいんだろうが…妙だな」

 

 

流石にこんな現場を見て見過ごすわけには行かないとバスタードソードを構えるが、俺は今半狂乱している少女に目を向ける

 

 

いくら大楯使いでVITをかなり上げているとしても、ここまで死なないというのは明らかに不自然…何か特殊なスキルを会得しているのかと考えるのが普通だった。

 

 

「ってさっさと助けないとな。おい!大丈夫か!?手を貸してやる!」

 

「うえっ!?だ、だれ!?」

 

 

戸惑っている様子の少女。俺は迷うことなく少女に迫りくるモンスターを狩り始め…10分もしないうちに周りの敵は全滅した。

 

 

「これで最後だな…大丈夫だった…あ」

 

「え?坂口くん?」

 

「本条さん?」

 

 

全滅した後俺は再び少女の姿を確認すると俺は驚く。もちろん彼女も同様。そこにいたのは約束の時間が過ぎても一向にやってこなかった本条さんだった

 

 



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17話『SAO生還者と極振り少女』 

現在防振りのハーメルン内では総合評価上から6番目というかなり上位にいることに驚いている中今日も小説を書いてます!続けられるように頑張らなければ!


 

 

 

こんなところでまさか本条さんとは出くわすとは、ソフィーの話通りかなり前からいたのかもしれない。そんな本条さんは頭を掻いてえへへっと照れていると、思い出した様に声を上げる。 

 

 

 

 

 

「そうだ!坂口くんが居るってことはもう課題始めてるんだよね…ええ!?10時!?私、もしかしなくてもやっちゃった?」 

 

「ああ、思い切りな…園部さん…この世界ではソフィーがかなり心配してたぞ」 

 

「あうう…後で謝らないと…みんなもうログアウトしてるかな?」 

 

「さあ、そればかりはわからない。」 

 

「そろそろ、ログアウトした方がいいかも、えっとログアウト、ログアウト…「待った!」ほえ?どうしたの?坂口くん」 

 

 

 

ここでログアウトしようとする本条さん。しかしそれは余りにも無防備だった為に俺はすぐさま呼び止めた。 

 

 

 

「流石にここでログアウトするのは不用心すぎる。フィールドに出てログアウトすると体はしばらくは消滅せずその場に残るらしい。その間に他のプレイヤーに変な事されても困るだろ?後、ここでの俺の名前はサイトだから」 

 

「ええ!?そうなの!?ん~じゃあログアウトするなら町の中でか…ここから戻るの少しかかるかも」 

 

 

 

そう言って苦笑いを浮かべる。本条さん、一応名前も偽名ではないキャラネームを伝えた。もう偽名使ったところで意味もないだろうから 

 

 

 

「それで?なんで本条さんはこんなところでモンスターと戯れていたんですか?」 

 

「えっと、実はスキルを手に入れたくて…気配察知のスキルとかあれば便利だなっと思って、目を閉じて集中していたら…あんな感じに…たぶん3時間ぐらい集中してたかな?あ、あと私はメイプルって名前だから」 

 

「…よく死ななかったな…普通なら死んでても可笑しくないんだが…」 

 

 

 

そう告げるとえ?そうなの?っと驚いた表情を見せるメイプル。 

 

少し話した相手だからそうだと思ったがやっぱり天然だった 

 

それと俺としてもメイプルの防御力には気になるところはある。明らかにただVITを上げてるだけでは説明が付かないしきっとなにかVITを上げる特別なスキルでも取得しているのかもしれない。 

 

 

 

「あ、さっきのでレベル11になってる…10の倍数だとポイントも2倍なんだ…じゃあ全部VITに振ろうっと」 

 

「全部…VIT?まさかメイプルって極振り?」 

 

「え?うん、そうだよ…あ、ステータスって人に言っちゃダメだったよね」 

 

 

 

どうしようっと口に出してしまったことに慌てるメイプル。でもサイトくんなら問題ない…よね。っと完全に開き直ると胸を張って言い出した。 

 

 

 

「VIT極振り!痛いの嫌だったし」 

 

「ああ、そうなの」 

 

 

 

滅茶苦茶単純の理由について簡潔に返事を返す。 

 

まあ、そろそろ帰るべきかと俺はメイプルに町まで戻るか尋ねると、二つ返事で頷き町の方に歩いて行くのだが… 

 

 

 

「ま、待って~」 

 

「え?」 

 

 

 

直ぐにメイプルが声を上げて振り向くと、普通に歩いていただけだというのにその距離はかなり開いていた。 

 

 

 

「…メイプル」 

 

「早いよ、サイトくん」 

 

「…」 

 

 

 

見た限りだとクロムより遅いかもしれない…確かクロムがAGI20といっていたからそれ以下、さっきのメイプルのVIT全振り案件もあるから、もしかすれば0の可能性も否めなくはない。 

 

 

 

 

 

 

 

「私が遅いだけなんだろうけどさ…あれ?」 

 

 

 

自分の遅さに項垂れていると、何かに見つけたのか視線の方向に目を向けると何やら地下へと潜れそうな隙間が存在した。 

 

 

 

「こんなところに洞穴か…俺もここには何度か来たけどこんなの見たことないな…まさか追加された。ダンジョンか?」 

 

「へえ…ねえせっかくだから入ってみようよ」 

 

「もう10時だぞ?いいのか?」 

 

 

 

聞く限りそれだけの時間ログインしていたのだ。親御さんは心配しているのではないかと尋ねると大丈夫だよと言い返す。 

 

 

 

「ご飯は早めに食べたし、今日はその両親遅くなるって言ってたから、大丈夫。それに明日は休みだし!」 

 

「そうか」 

 

 

 

メイプルが問題ないのならいいだろうと洞穴の中に入っていく。 

 

中は夜ということもあって薄暗く、奥は真っ暗で見えない。 

 

 

 

「これは先に進むのは危険だな…一度戻ろう。町で必要な物買ったら、また来よう…マップにピンを刺しておいて…よし!行こう」 

 

 

 

これでここに来るまでの道のりで迷うことはないだろう。 

 

一度、街に戻るとかなり夜だということもあって往来は少ない 

 

 

 

「人少なくなってるね。」 

 

「そうだな、一旦リアルに戻ったらどうだ?水分補給もしておかないといけないだろ?」 

 

「そうだね。それじゃあ噴水広場で集合だね」 

 

 

 

そう言ってメイプルはログアウトし、俺は必要そうな物資を手に入れる為メニューを開けてイズがまだインしていることを確認するとメッセージを送り工房に足を運ぶ。 

 

 

 

「イズ、夜分悪いんだけどさ、メッセージで送ったアイテム揃えた…」 

 

「あら?奇遇ね…サカタくん」 

 

「ようやく、見つけた!まだログインしてたんだね。サカタくん」 

 

 

 

イズの工房には先客が来ていて、初心者の装備で俺にとってものすごく見覚えが得る5人だった 

 

 

 

「…悪い取り込み中なら出直すことにするわ」 

 

「どこに行く気かな?サカタ?」 

 

「そうだぜ、俺達必死にリサーチしたんだから聞いてくれよ」 

 

 

 

直ぐにこの場から去りたい俺は踵を返しこの場から去ろうとするが、アキとワタルに肩を掴まれ身動きが取れない。

 

「ふっ、年貢の納め時だ…」

「サイトくん。もう諦めたらどうかしら?」

 

確実に逃げ場がないと不敵に笑うスギナミ。イズも、じと目でアキ達に肩を持ち、俺も無理だと判断して肩を落とすのであった。

 

 



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18話『SAO生還者とクエスト2』

 

 

 

「…はぁ…何でこうなった」

 

 

 

俺は空の夜空を見上げながら呟く。

 

目的の洞穴まで準備もできたので、メイプルと合流し移動中

 

 

 

「ちょっとした夜中のピクニックみたいだね」

 

「うん、現実じゃあ、こんなことできないもんね」

 

「うおっと、と…今なんかに蹴躓いた」

 

「多分木の幹じゃないかな?ALOじゃあ空飛んですいすい進んでいくんだけど」

 

「未知なる洞穴…中々面白い…探求心が湧き出てくるではないか」

 

「リアルでも、もう夜中なのにみんなで集まって探検できるなんてやっぱりVRって不思議ね…」

 

 

+α愉快なクラスメイトも引き連れて

 

ことの経緯と俺のことをすべて白状した俺は、やっぱり驚かれはしたがそこまでで特にそれ以上の追及はされず、後で高位ランカーとしてのコメントなどをレポートで協力するという約束をし俺の件は手打ちになった。そして俺とメイプルが見つけた洞穴の件に興味を(主にスギナミが)示した全員が参加すると形になり、集合場所で合流したメイプルも驚いたが、直ぐにソフィーと一緒にピクニック気分でうきうきと鼻歌交じりに真夜中の西の森をゆっくりと歩いている。

 

 

「ねえサイトくん…あとどれくらいで着きそう?」

 

「そうだな…このままの速度だと2,3分ってところだな」

 

 

本来ならもう到着していてもよかったんだが、AGI0のメイプルがいる以上どうしても移動に時間を要してしまうのだ。

 

AGIに関してメイプルはものすごく落ち込んで、俺達でフォローしたのは言うまでもない。

 

 

「よし、着いたぞ。とりあえずみんなこれ被ってくれ」

 

 

俺は念のため、マップを見てこの洞穴が先に見つけた洞穴で間違いないことを確認すると、ストレージからフード付きのローブを6着取り出し、他のみんなに配っていく。

 

 

「どうして、こんなものを?」

 

「このローブ、プレイヤーメイドで夜間中は保護色で隠蔽にボーナスが付くんだが本命は顔ばれ防止の為だ。何かあって、居づらくなるのは嫌だろ?」

 

 

そういうとなるほどっと理解してくれたみんなはローブ(イズ製作)を装備し、同じくイズに作ってもらったランタンを片手に付いた明かりを頼りに中へと進んでいく。

 

 

ランタンを持つ俺を先頭に進んでいく中、モンスターもいない為、比較的に早く奥に進む事ができた。それほど広くない岩肌な通路を進むと大きな空間が開いている空洞に差し掛かる。

 

 

「…広いところに出たわね。」

 

「シノンさん。気を付けてこういう場所は間違いなく、強敵が潜んでるはずだから」

 

 

 

空洞に出たことに辺りを見渡すシノン。それに注意して自身の経験談で何かあるとアキは話すとシノン達の顔に緊張が走る。

 

 

 

「…!みんな奥に何かいる」

 

 

そんな中、俺は微かにこの暗闇の中に潜む何かの呻き声を聞き取るとみんなに告げてバスタードソードに手をかけ、片手で持つランタンで奥を照らす。

 

そして照らした先にいたのは案の定モンスターだった。

 

こちらを見据えるモンスター。いつでも仕掛けられるようにバスタードソードを持つ手に力を入れるとメイプルがそのモンスターを見て呟く。

 

 

 

「ドラゴン?」

 

「正確には翼竜(ワイバーン)だな。この辺りでは見かけないのを見るに特殊なモンスターと考えるのが妥当だろう…」

 

 

今までとは違う迫力に弱腰のメイプル。そんなメイプルが呟いたのを訂正しながらバスタードソードを構えるとワイバーンも呻きを上げて威嚇してくる。

 

一触即発…そんな緊張感の中、口を開けたのはソフィーだった。

 

 

「あれ?このモンスター…かなり弱ってない?」

 

「あっ!本当だ!HPものすごく減ってるよ」

 

「ねえ、これってどういうこと?もしかして私達の前に誰か戦っていたってことかしら?」

 

 

ソフィーに続きメイプル、シノンと気づいて思った事を口にする。そしてシノンの疑問に対し俺は首を振った。

 

 

「それはない…後少しで倒せるモンスターを後から来たパーティーが倒す事になれば先のパーティーの努力を無下にする行為だ。それじゃあ不公平すぎる。」

 

「じゃあ、こいつは元からこのHPだったてことか?だったら」

 

「だ、ダメーーーー!!」

 

 

そう言ってワタルは両手斧をワイバーンに攻撃しようとする。しかしそんな合間に割って入ったソフィーが腕を大きく広げ叫ぶ。

 

 

「ソフィーちゃん!?」

 

「こんなに弱ってるのにこのワイバーンが可哀そうだよ!」

 

「可哀そうって…」

 

 

まさかの理由に呆気にとられるワタル。俺も臨戦態勢だが一つ気になる事もありソフィーの思いも一理あると思っていた。

 

 

 

「…ワタル。このモンスター、一向に俺達を襲ってくる気配がない。その気になれば俺達より先に攻撃する事は簡単だったはずなのに、それをせず警戒しているだけというのは些か不自然すぎる。」

 

「……確かにサイトの言う事もあってるか」

 

 

そういって全員を諌しめると俺はバスタードソードを鞘に納め警戒を解くとワイバーンを観察する。

 

 

よく見れば何かとやりあってボロボロの体…むしろ倒してくださいと言わんばかりの状態だ。

 

 

 

「ねえ、ウインドウが勝手に」

 

「本当だ!【彼方の空からの来訪者】だって」

 

「クエストの起動キーになってるモンスターだったんだ…ワタル、攻撃しなくてよかったね」

 

「お、おう…実は俺もそんな気が…」

 

「そんな見え透いた嘘は返って自分を絞めつけるぞ、ワタルよ」

 

 

いきなりのクエスト発生にそれぞれ反応する中。このクエストをどうするかみんなの方へ向き尋ねるとみんな受けようとしているのが顔を見てすぐに分かった。

 

 

全員、クエスト受託を選択しウインドウに一文が記載される。

 

 

「ワイバーンが回復するまで、守り切る…か」

 

「つまりここに留まって守るってことだね!」

 

 

メイプルの言う通りそれであっているだろう。しかしいったい何から

 

 

そう思って周囲を警戒しているがモンスターがスポーンする気配もないし完全に戦いが起きる気配ではない。

 

ならば何から守るのか思考する俺は直ぐにその何かに当てはまるものに気が付く。

 

 

「……まさか」

 

「サイトくん、どうしたの?」

 

 

シノンの尋ねてきたのを他所に目を閉じ意識を聴覚に集中しシステム外スキル、ハイパーセンサーで周囲を感じ取る。

 

 

わいわいと話し合うメイプル達、呻くワイバーン…そして少し遠くから聞こえる鎧の音に俺は目を一気に開けた。

 

 

「プレイヤー…!ここにプレイヤーが来る…!」



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19話『SAO生還者と切り裂きジャック』

俺が口にした一言で、ワイワイと騒いでいた一同を静まり返らせる。

 

 

 

「ランタンの明かりを消して」

 

「え!?それじゃあ、なにも見えない「いいから、早く」う、うん」

 

 

 

メイプルは渋々俺の言うことを聞き、ランタンの明かりを消すと完全に暗闇へと戻る。

 

 

 

「…………数は6…いや7か」

 

 

 

意識を聴覚に集中させ、こっちに進んでくる足音の数を数え、こちらに来る数を明確にする。

 

 

 

大方、深夜もプレイしているガチなプレイヤー…

 

となれば手練れが多い。それに比べるとこっちは殆どレベルが1という初心者が多い。

 

まず真っ向から挑めば勝ち目もない…そして傷ついているこのモンスターも直ぐに彼らの糧となるだろう。

 

 

 

「……みんな聞いてくれ…外から七人ほどプレイヤーが来てる。恐らく確実にワイバーンを狩りに来るだろう。そしてまともに戦えるのは俺一人……正直、守り切れる自信はない」

 

「ど、どうにかならないかな?」

 

「無理言うな……あっちはこんな時間帯までやってる。恐らくベテランプレイヤー………単独で相手取るのはかなり難しい…アキならわかるだろ?」

 

「うん、ALO経験者としてあまりに無謀だと思う…うまく奇襲が決まれば…そうでもないかもしれないけど」

 

 

 

アキの言葉は正論だ。もし不意を付ければこちらに分があるが、そうやすやすとさせてはくれないだろう。

 

そんなどうするかの話し合いがする中、着実にプレイヤーは迫りくる。元よりダメもとで挑んでみるかと呟く中、メイプルが口を開ける。

 

 

「そうだ、いいこと思いついた。えっと…」

 

 

それからどうするかの説明をするメイプル。聞いている俺はとてもじゃないが難しいと思う作戦だが、それなら数の差を覆せるかとメイプルの案に賛同し頷くと、早速やってきたプレイヤーに視線を向けた。

 

 

 

 

 

NOSIDE

 

 

 

「さて、奥はどうなってるんだろうな」

 

 

そう言って、パーティーのリーダー格の男はこのダンジョンの先にあるものに期待を膨らませて通路を進んでいく。

 

彼らがこの場所を見つけたのは偶然だった。たまたま通りかかったとき、見慣れない洞穴を見つけ彼らは好奇心から洞穴に入ってきた。

 

元々、夜間行動だった為に明かりとなるものは揃えており、町に戻ることなくそのまま入ってきた。

 

 

「かなり広いな」

 

 

パーティーメンバーが通路を抜けて広間の入り口付近である程度周囲が広がり、広域に索敵を開始し始めたとき。

 

暗闇の中から長細い鋭利なものが飛び出してくる。

 

 

「うわぁ!ランタンが!?」

 

「くそ!何かいるぞ!みんな気を…うわああああああぁぁぁっ!!!!」

 

 

ランタンを破壊され明かりを失った周囲は暗闇に飲まれ、全員に警戒を呼び掛ける途中、まず一人悲鳴を上げた。

 

 

”まず…ひとーつ”

 

 

悲鳴の後どこからか微かに聞こえる謎の声。それに暗闇で一寸先があまり見えない中、彼らは身動きが取れず、じたばたと周囲を警戒する中、再び何かに切り裂かれた音とパーティーメンバーの断末魔がこの空間に響く。

 

 

”ふたーつ、まだまだ…足りない”

 

 

パーティーメンバーの断末魔の後また謎の声が空間に響く。

 

 

「くそ!正体を…っ!!」

 

 

 

”みっつめ…ふふ、次は誰かな?”

 

 

遂に3人目もあっけなく倒されたことにより、相手はこの暗闇に軽快に動いているのは確実ならばなぜと彼らは思考すると直ぐに何が原因なのか思い当たる。

 

 

(そうか、音で俺達の位置を)

 

 

声や足音たったそれだけの情報だけで動いている。ならば、声を出さず、動かず息を殺せばばれることもない。後は機会を見計らうだけだっと生き残りは全員、そう思ったのだが現実は非情だった。

 

 

”ねえ、そんなところで口元抑えて縮こまってる。あなた?あなたがよにんめ♪”

 

 

その声の直後、何かが振り落とされた音と男の断末魔が響くとリーダー格の男は困惑した。

 

 

(な、なんで!?音も完全に殺したはずだ。なのにどうして!?)

 

 

予測していたことが外れ、更なる犠牲者が現れたことで恐怖感が増す。そしてついに恐怖に耐えきれなくなったプレイヤーが我武者羅に走り出す。

 

 

「うわああああああぁぁぁっ!!!!う、ううわああああぁ!”ねえねえ、逃げちゃだめだよ。5にんめさん♪” !!!?」

 

 

 

悲鳴を上げていた声がぷつりと途切れ、やられたんだと悟ると不意にどこからか詠唱が唱えられる。

 

 

 

ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!

 

 

 

一心不乱に先ほど逃げようとした仲間がいた場所に狂乱でファイアーボールを放つ杖使い。火の玉が断続してその場所に放たれるがそれは着弾する前に切り捨てられる。

 

 

男はファイアーボールによる明かりではっきりとその暗闇に紛れていた人物を捉える。

 

 

黒いフード付きのローブを羽織り、大剣でファイアーボールを切り捨てていく謎の人物の姿を

 

 

(モンスター?いいやプレイヤーか!?なんでこんなところに!?)

 

ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイ…

 

 

断続的に続いていた杖使いの攻撃だが、突如として大剣使いとは別方向の暗闇から放たれた矢が杖使いの頭部に二つ突き刺さり、そのまま紫のポリゴンになって消滅した。

 

 

 

「………!!!」

 

 

自分以外全員死んだ…しかも敵がどれだけなのか何者なのかも掴めていない。

 

しかし彼らもかなりのベテランなのだ。それがこうも術中はまり自分以外、全員やられてしまった。

 

 

どうすればいいと心拍数が高まりアミュスフィアの警告が流れる中、男は自身の後ろから伸びる二つの腕に気づく。

 

 

「あなたが…さ・い・ご」

 

 

その言葉と共にその腕で男の頭をヘッドロックし、そのまま男の首を折り曲げ鈍い音と共に男のHPは0になり体はポリゴンとなって消滅した。

 

 

 

この出来事は、暗闇の切り裂きジャックとNWO内での本当にあった怖い話としてプレイヤー全体に知れ渡ることになる。

 

 



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20話『SAO生還者と重なる思いで』

「…敵はあれで全滅だな」

 

 

聴覚と確り見えている視界で空洞に俺たち以外誰もいなくなったのを確認し、俺はメイプル達がいる方に声をかける。

 

 

「おーい、敵全滅したから明かりつけても問題ないぞ」

 

 

その声に従って明かりが灯る。

 

明かりが灯るとよくわかるが、ジト目で声で判断してこちらを見つめるシノン。顔を青ざめ体を震わせるワタル。顔を引きつらせ苦笑いをするアキ。お互い顔を青くし抱き合っているメイプルとソフィー。ニコニコと今のみんなの状況を楽しんでいるスギナミ。

 

 

約一名、楽しんでいるようだが他のみんなからすれば暗闇から聞こえる男達による。絶叫の断末魔を聴いていただけだから怖いのも頷ける。

 

 

そしてメイプル達の元へ戻るとジト目のシノンが口を開けた。

 

 

「お疲れ様…ずいぶん、楽しそうに戦っていたじゃない」

 

「まあ、あれで怖がって再度来ないことを…祈るしかない…それを言うならシノンとスギナミも援護してくれたじゃないか。あれは助かった」

 

「そう言うサイトは、魔法を叩き切ってダメージを受けていないようだが…それに途中から息を殺したプレイヤーを倒していたが…」

 

「ああ、それな倒してる途中に新しいスキルを取得したんだ。【暗視】暗闇でもある程度の補正が付く。取得条件は暗闇の中、敵を3体倒すこと」

 

 

そのおかげで相手は更に混乱してくれてこちらとしてはやりやすかった。これで夜間での戦闘も比較的にやりやすくなったというものだ。

 

 

「さて、これで第一陣は退いたとみていいがサイトよ。このクエストお前はどう見る?」

 

「どうって…そうだな明らかに防衛系…一定の時間守り切ればいいクエストだろう」

 

「一定て…何時間よ」

 

「うーん…このワイバーンの自然回復量からみて…おおよそ3時間」

 

「「「「「3時間!?」」」」」

 

「まあ、よくある話だ。今の時刻は23時46分だから、大体3時までだな」

 

 

メニュー画面からリアルの時刻を確認し凡その終わる時間を割り出す俺。そして横目でメイプル達を確認するとみんな複雑そうな表情を浮かべていた。スギナミ以外

 

 

 

「完全に夜更かしだよ…明日は休みで問題ないけど。」

 

「で、でもあれだよね。理沙とはお昼ぐらいに集まってレポートを書く予定だったけど…」

 

「…正直、起きられる自信ないわよ」

 

「…なんか、回復を早くする方法とかねえのか?」

 

「あったら…僕だって知りたいよ」

 

「うむ、これはこれでレポートの内容がより豪華になるではないか…寝不足面に関してはもう諦めるしかないだろうがな」

 

 

 

そう言ってランタンを囲うように座る俺達。

 

無理もないこんな何もないところで3時間…待機しなければならない。普通に考えても苦痛だ。

 

無言が辺りを包む中…俺は良かれと思って買ってきていた物をストレージから取り出した。

 

 

 

「ほらこれ…町の露店で売ってたやつ。色々買いそろえておいたから」

 

 

串に刺さった肉やクレープ。露店にあったものをとりあえず一通り買い揃えた。

 

それを持って来ていた布の上に置きみんなの目に置く。

 

 

「こんなに…これだけの量なら結構な額したんじゃない?」

 

「金額のことは気にしなくていい。俺が一番金持ってるわけだから…出しただけだし」

 

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおっと」

 

 

そう言ってソフィーが買ってきた食べ物に手を付けると次第に他のみんなも食べ始める。

 

その光景を見て俺は思わず

 

 

「…懐かしいな」

 

「サイトくん?何か言った?」

 

「…ちょっと、懐かしく思っただけだ。こうやって夜通しでクエストをするのが久しぶりだなって…」

 

 

”ここで夜を越さないといけないのか…ねえレイン。ストレージに食料ってどれぐらいあるの?”

 

”うーん元々夜通しでクエストフラグを立てるつもりだし、一夜分の食糧は持ってきてるよ”

 

”サイト、仮休みが出来るコテージの設置できた?”

 

”あともう少し…たくなんでこういうところは簡易化してないんだよ”

 

”こういうのも冒険の醍醐味だからじゃないかな?”

 

”まあ、もう慣れたけど…今のところフロアボスの間が見つかってないし…安全マージンも取れてるからレベリングする必要もない。こうやってレインとフィリアの用事に付き合って冒険出来て良い息抜きにもなるしな”

 

 

 

 

「…本当…懐かしい…」

 

 

目を閉じると思い浮かべる。SAOでの楽しい冒険が思い浮かべる。

 

フィリアとレインとのダンジョンに探索や珍しい鉱石集め。ギルドメンバー達の交流どれも楽しい毎日だった

 

 

だからこそ…俺は自分を許せない…あの二人を何もできず失ったことを…

 

 

 

 

翌日…

 

 

 

「っで、みんなして眠たくしてる理由はわかったけど…それで?楽しかった?」

 

「うん、みんなで達成できたって感じで楽しかったよ!」

 

「でも、あの後2パーティも来たんだよね…ほとんどサイトくんが倒しちゃったけど」

 

「ああ、シノンとスギナミも後方から援護してたしな…」

 

「二人とも暗視取っちゃったからね」

 

「そうなんだ…ああ、私もやりたかったな」

 

 

某所のカフェテリアで集まった俺達もちろん集まった理由はレポートの作成だ。

 

 

因みにシノンこと朝田さんと杉並は来ていない。前者は寝不足。後者は不明…

 

 

「そういえば、噂で聞いたんだけど来週にNWOで大規模イベントがあるんだよね?」

 

「え!?そうなの?」

 

 

白峯さんはどこかで調べたのかNWOでイベントがあることを告げると、そういうことに疎い本条さんが驚く。

 

 

「俺もそのことは聞いた。みんな、そのイベントに向けてレベリングしてるって話だ」

 

「そうなんだ。僕らも参加してみたいよね。」

 

「じゃあ、みんなで参加してみようよ!楽しそうだし!」

 

 

来週のイベントもちろん俺も参加する予定だ。そして参加する以上、上位にはランクインして見せる。本条さんの提案でみんな乗る気になる中、一人だけ白峯さんはNWOができないことに項垂れたのは言うまでもない。

 

 



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21話『SAO生還者と第1回イベント前』

「さてと、今日は…ふあぁ…」

 

「お疲れみたいだけど…今日は何をするつもりかしら?」

 

 

 

イズの工房で装備のメンテをしてもらっている中。俺は今持っている情報を元に今日の予定を頭の中で組んでいた。

 

 

 

「もちろんレベリング。…第一回のイベントに向けて頑張らないといけないしな」

 

「そうなの?それにしては…関係ないスキルを調べてるみたいだけど?」

 

「……実は昨日シノンと約束したんだ。レベリングを手伝ってほしいって」

 

 

 

”ねえ、サイトくん。お願いがあるんだけど…明日の晩…付き合ってくれない?”

 

”…はい?”

 

”ああ、少し言葉が足りないわね。レベリングに付き合ってほしいの…NWOもう少しプレイしてみたいから”

 

 

 

そう言われて俺は気軽に了承し、もうすぐシノンとの待ち合わせ時間だ

 

 

 

「そうだったの…サイトくんもしっかりリードするのよ」

 

「その言葉はこのゲームの先輩として助言しろという意味で受け取ります」

 

 

 

そういうと、あら残念と少し残念そうな顔をしているのは放っておくとして…すると

 

 

 

「あら、いらっしゃいクロム。どうしたの?まだ盾のメンテには早いはずだけど?」

 

「ああ、ちょっと大盾装備の新入りを見つけてな…衝動的に連れてきた」

 

 

 

店に入ってきたのはクロムで、後ろに誰かいるが横からぴょこっと顔を出すと誰なのか直ぐに分かった。

 

 

 

「え!?メイプル!?」

 

「あれ?サイトくん!?会うなんて偶然だね」

 

 

 

クロムの後ろから出てきたメイプルは、知った顔である俺が居たことで笑みを浮かべ近づいてくる。

 

 

 

「あら、可愛い子ね……クロム、衝動的にこの子を連れて来たの?通報した方がいいかしら?」

 

「……見損なったよクロム。お前はクラインのような人間ではないと思っていたのに」

 

 

 

せめてもの情け……俺達は運営に通報しようとメニューを開くと慌ててクロムが止めに入る。

 

 

 

「ち、ちょっと待てよ!それは、何ていうか言葉の綾だって!」

 

「ふふっ…分かってるわよ。冗談冗談」

 

「はー…心臓に悪いから止めてくれ」

 

「メイプルも知らない人に付いていかない。下手をすればとんでもないことになってるかもしれないぞ」

 

「あぅ……分かりました」

 

 

 

本当色々とメイプルは見ておかないと何をするかわからない。

 

 

 

そしてメイプルが一緒に来た理由はカッコイイ装備を一式揃えたいらしく、偶々通りかかったクロムに話しかけ、イズの工房まで連れられて来たということだ。

 

 

 

と言っても今のメイプルに一式揃えるぐらいのお金もあるはずもなく……金額を聞いて立ちくらみを起こしていた。

 

 

 

「……おしゃれは後回しかな」

 

「あ~なんだ、お金なんて気付いたら集まってるもんだ。そうだ、此処からそんなに遠くないが毒竜の洞窟っていうダンジョンがある。そこなら素材や宝箱から良いものも取れるからお金も集まるだろう」

 

「ダンジョン!はい、行ってみます!」

 

「毒竜の洞窟は毒沼とか一杯だから気をつけてね……何処かの誰かさんは誤って落ちて貴重な素材取りそびれたことがあったから」

 

「???」

 

「イズ……」

 

 

 

イズの忠告を受けたメイプルはイズの工房を後にし、クロムもまた何処かへと出ていき、暫くするとシノンが工房に入ってくる。

 

 

 

「お待たせ、待たせちゃったかしら?」

 

「いいや、それほど……さてと……取り合えずシノンは弓使いだから弓使いに見合うスキル取得とレベリングだな」

 

「ええ、それで…何処に行くの?」

 

 

目的地を尋ねてくるシノンに、イズの店に飾られているこの世界の地図を眺め口を開けた。

 

 

「此処から南…断崖絶壁が生立、渓谷地帯だ」

 

 

 

町から南へ離れた渓谷地帯。高差が激しく誤って落ちれば確実に死に至らしめる断崖絶壁を見下ろしながら、次に空を見上げた。

 

 

空には大量の小型の蜥蜴に羽が生えたモンスターが群れを成して飛んでいるのが分かる。

 

 

マルチショット!!

 

 

そう言って叫ぶシノンが放った矢が枝分かれするように分裂し、空を飛ぶモンスターを次々と射止めていく。

 

マルチショット

 

STR20以上DEX50以上で弓でモンスターを倒すと修得できるスキル。

 

DEXに応じて枝分かれする数が増え複数狙える強みがある。

 

 

これにより、渓谷の空に飛ぶモンスターは完全にシノンの格好の的となり、次々とポリゴンへと変わっていく。

 

 

「これで12レベル…ここにきて1時間ぐらいだけどものすごく上がるのが速いわ」

 

「…まあ、元々10そこらじゃ来れない場所だしな。その分レベルも上がるのが速いんだろう…それでスキルポイント溜まってるんだろ?どうするつもりだ?」

 

「とりあえず。DEXは上げていくつもり…ねえ色々スキルが覚えたんだけれど」

 

「うん?どれどれ?」

 

 

 

 

シノン

 

Lv12

 

HP 45

 

MP 10

 

 

【STR 25〈+5〉=25】

 

【VIT 15】

 

【AGI 20】

 

【DEX 70】

 

【INT 0】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【空欄】

 

右手【初心者の弓】

 

左手【空欄】

 

足 【空欄】

 

靴 【空欄】

 

装飾品 【空欄】

 

【空欄】

 

【空欄】

 

 

スキル

 

 

【暗視】【弓の心得Ⅲ】【遠見】【マルチショット】【パワーショット】【アンカーショット】【必中】【狙撃手】

 

 

 

横からシノンのステータスを見て色々とスキルを修得していた。

 

 

「必中は弓で攻撃は全てクリティカルの判定になるみたい。取得条件は一度も弓の攻撃を外さずに50体撃破すること。それと狙撃手は50メートル以上離れた相手に攻撃した場合STRが2倍ねえ…取得条件は50メートル離れた敵を20体倒す」

 

「どっちもやばいスキルじゃないか」

 

 

聞くだけでそのスキルのやばさが身に染みて分かった。ようは50メートル以上離れていた場合シノンの攻撃はSTR2倍その上クリティカル確定とやばすぎる威力を誇っていた。

 

 

「そうね、これは期待の新人ね。これなら上手く立ち回れば次のイベントいい線まで行けるかもしれないわね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ところでイズ。そもそもなんで突然俺達に同行するって言ったんだ?」

 

 

そう言って後ろから着いてきているイズをジト目で見つめると、苦笑いしながらイズはあれと指をさす。

 

 

「あれはサイトくんは知ってるわよね?」

 

「あの方角…そういうことか。…来たついでに行きたいってわけね…まあいいけど」

 

「あっちにはなにかあるの?」

 

 

俺はイズの目的を理解することができたが、シノンは何のことかさっぱりで首を傾げる中。俺は直ぐにそこに何があるのか答えた。

 

 

あっちには渓谷だというのに聳え立つ1本の巨木…

 

 

「あっちの渓谷には一際目立つ巨木があるんだ」

 

 

 



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22話『SAO生還者と第1回イベント前2』

 

 

 

 

渓谷地帯に1本そびえ立つ巨木……

 

明らかに目立つそれの根元に訪れたプレイヤーは数知れず。しかしその場所に行っても徒労で終わる。

 

 

 

巨木の周辺にはダンジョンも宝箱もなく、あるのは木材を手に入れることが出来るだけらしい

 

 

 

らしいというのは、実際採取したプレイヤーが存在しないから、職人プレイヤーによる推測でそう言われているだけだ。

 

 

 

「それじゃあ、あの巨木の素材を誰も取ったことないのね…」

 

「ええ、伐採に関してはDEXよりSTRが関係してるのは分かってるのよ…前に他のプレイヤーがドラグに頼んで伐採してもらったみたいだけど…駄目だったって…」

 

「ドラグって今現在でSTRが高い高位ランカーだろ?それで無理って本当にそれ取れるのか?」

 

「もしかしたらもっとSTR要求してるのかも…現状居ないのかもね」

 

 

ドラグっていうプレイヤーのSTRがどれぐらいのか知らないが、それで無理というのはどれだけ要求しているのか。

 

そんなこと思っているとその巨木の根の元、下まで来て改めてその大きさに驚嘆する。

 

 

聳え立つ巨木は高さが50メートル以上、太さは半径でも10メートルはあるだろう。

 

上を見上げれば、草木が空の明かりを遮って昼には木陰になって気持ちいいだろう。

 

 

 

「サイトくん。見て此処に切り口があるでしょ?これが伐採の採取ポイントの証なの」

 

 

そう言って、巨木の少し切られている部分に手を当てるイズさんに近づいてその切り口を見る。

 

 

「それで、俺に取れるか試して欲しいと…木材はどっちかって弓の素材だろ?」

 

「そうねえ…」

 

「…まさかシノンの弓作る為の素材って言えないよな」

 

「…ちゃんと取れてくれるといいんだけど」

 

 

そう言いながらニコニコと話を逸らした辺り、そういった思惑があるのだろう。

 

シノン本人は目を大きくして驚いてるから、本人の計り知らないところだったんだろう。

 

 

「…まあ、試すのはいいけど…俺のSTRで足りるかね」

 

「ねえ、サイトくん。昨日のクエストで手に入れたリング使ったら?」

 

「ああ、そうだな…えっとドラゴンリングを装備してと…」

 

 

 

 

ドラゴンリング

 

 

【STR+30】

 

【VIT+10】

 

 

 

これでSTRは162。今出せる俺の最大数値だ。

 

ドラゴンリングは昨日のクエストの達成報酬の一つ。みんなも1万ゴールド手に入れたがこれだけ一つだけしか貰えず、誰が持つかと話し合った結果、一番働いていた俺がと全員に勧められあの時は渋々だったが受け取った。

 

 

 

「それじゃあ、行くぞ!!はあああっ!!」

 

 

バスタードソードを引き抜き、全力で切り口に向けてスウィング。それにより巨木は揺れ草が何枚か落ちてくるが木材はドロップせず。

 

 

「…ダメか」

 

「ダメね。本当、一体どんな無茶な要求してるのかしらね。この木」

 

 

これでも駄目だということにイズは不服そうに木を見上げる中、シノンも少し欲しかったのか残念がっている

 

 

「シノンも素材欲しかったのか?」

 

「え?ごめんなさい確かに欲しいとは思うけど…」

 

「……まあ、俺もここまで要求されてる素材っていうのは見てみたいし…仕方ない。イズ、シノン。今から見せるスキルは少なくてもイベントが終わるまでは誰にも言わないでくれよ?」

 

「??いいけど?何かあるの?」

 

「クロムにも悟られてないのがな…暗黒

 

 

そういって暗黒を発動、刀身が漆黒のエネルギーを纏い。初めて見せたことでイズもシノンも驚いて刀身を凝視している。

 

 

「危ないから離れてて」

 

「ええ、分かったわ。シノンちゃんも」

 

 

俺は下がるように促し、戸惑いつつもイズはシノンを連れて俺の元から離れると、それを確認して俺はバスタードソードを構える。

 

暗黒でSTRが2倍。324という破格の数値これで駄目なら…

 

 

「はあああああああぁぁぁっ!!!!!」

 

 

雄叫びと共に振り回されるバスタードソードは、切り口を切りつけると先ほどとは段違いの衝撃音とともに先ほど以上に巨木を揺らす。

 

そして切り口から木材が何十個と束になってドロップ。これがお目当てのものだと分かり、暗黒を解除して回収すると、先ほどの迫力でしゃがんでいるイズ達に手を振り。二人の元へ向かおうと足を動かそうとした時、足元が大きく揺れた。

 

 

「なっ!?」

 

 

揺れたことで上手く歩けず、その場に手を地面に置いて体制を保とうとしたが、いきなり足元の地面が真っ二つに割れそのまま抵抗もできず地面の裂け目に落ちていく。

 

落ちる最中、慌てて助けようとこちらに向かうイズとシノンの姿が映ったがあの二人は間に合わず、俺は地面の裂け目に落ちていった。

 

 

 

 

 

シノンSIDE

 

 

 

「サイトくん!!」

 

 

何が起きたか分からなかった。

 

 

サイトくんがスキルを使って巨木の素材を取ったまでは良かったんだけど、いきなりサイトくんのいた場所の地面が割れてサイトくんはその裂け目に落ちていった。

 

その後、裂け目は元通りに戻り、私たちは立ち尽くすことしかできない。

 

 

「大変なことになちゃったわね…一度ここで待ってみましょう…きっとサイトくんなら大丈夫よ。しばらくしたらメッセージが飛んでくるわ」

 

 

慌てていたイズさんだけど冷静さを保ち、ここで待つ事を決める。

 

 

「サイトくん…無事でいて」

 

 

そんな中、私達は巨木を背にサイトくんの応答を待った。

 

 



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23話『 SAO生還者と第1回イベント前3』

FF7リメイク買ってきました!!
もしかしたら更新が遅くなるかもしれません。ストックは…とりあえずあるけど


「いっつ…ここは…」

 

 

地面がいきなり割けて落ちてきた俺は、何とか起き上がるとまずは辺りを見渡す。

 

 

どうやらかなり広い空間で、落ちてきた天井は完全に塞がっていて密室。地面は岩で至るところにデコボコと凹凸が目立つ。

 

まあ、それ以上に目立つのが一つ…

 

 

「あれ明らかにボスだよな」

 

 

そう呟く目線の先には、体が岩で出来ていて苔も生やし、四足の足で巨体を支え、背中には木まで生えている。

 

 

そして強面の顔面は完全に俺に向いていて、敵意を完全に向け雄叫びを上げる。

 

 

 

「逃がしては…くれないよな」

 

 

そんなことを愚痴りながら、バスタードソードを構える俺はHPを確認。

 

疾風の靴のおかげで落下ダメージは軽減してあまりダメージは食らっていないが、暗黒のダメージでそれなりに減っている。

 

 

「ポーションでまずは回復。って簡単にはやらしてくれないよな!」

 

 

ストレージからポーションを出そうとしたが、既にボスの方が仕掛けてきた。

 

 

前足を大きく上げて振り落とすとその衝撃で地面が割れ、岩石がボスの広範囲で振り落ちていく。

 

ボスとの相対距離はそれほど近くないが、何個かは俺のところに届いてきて俺はよく見て回避する。

 

 

「動きはかなり遅いが…うまく回り込むか!」

 

 

ポーションを蓋を開けて口にくわえ俺は走り出す。空になったポーションをを吐き捨て、取りあえず横から攻めようと動く。

 

AGIは確実に俺の方が上でボスは旋回するのが遅く。ボスの横に辿り着くとまず手始めにバスターソードを振るうが切りつけることなく固い皮膚に弾かれる。

 

 

「見た目通りVITが高い!」

 

 

元々、あの巨木が原因で落ちてきたのだ。それ相応のSTRだからこそ戦えるボス。ならばVITも高く設定されているのであろう。

 

 

「そうとなれば…暗黒!!

 

 

俺はMPが自然回復で50溜まったのを見て暗黒を発動。すかさずポーションを飲み暗黒のHP減少をポーションのHPリジェネで相殺すると一気に切りつける。

 

 

先ほどは弾かれた攻撃だが、打って変わって皮膚を裂き、ボスのHPが減少しているのを確認するとそのまま一気に4連撃叩き込む。

 

 

両手剣SS(ソードスキル)4連撃 ライトニング

 

ライトニングを叩き込み続けて仕掛けようと思ったが、ボスは雄たけびを上げ飛びあがるのを見て咄嗟に距離を取ると、ボスが地面に落ちると周りの地面が抉れ岩で出来た鋭利な棘が無数に地面から生えてくる

 

 

「全方位技だなあれは…」

 

 

旋回の遅さからそれ対策はあると踏んでいたが、予想以上の破壊力に当たればひとたまりもないと考えていると再びボスが雄たけびを上げる。

 

また攻撃かといつでも回避できるように足に力を入れたが攻撃するそぶりが見えず、背中の木を揺らし木から光の粒子が舞い落ち、ボスの身体に当たると体が癒えていくのが分かる。

 

 

「回復するのかよ!!」

 

 

ボスのくせに卑怯な!っと嫌な仕様にそんな言葉を吐き捨て、ボスのHPが急激に全回復しているのを見て考える。

 

 

「全方位技に回復まで…おまけにVITまで高い始末だし…これはどうするか…」

 

 

本来なら複数人の上高火力で追い込むのが正解なんだが生憎、俺一人だし…

 

 

「あれ使うか」

 

 

ここで負けるのも嫌なのでそうと決まればメニュー画面を開けるが、その前にボスが飛ばした岩石が迫ってきていたので走って回避。ボスの動きと振ってくる岩を注視しながら回避を行い、手慣れた指先でメニュー画面を操作。そして俺の装備を変えていく。

 

 

いつも着ている亜麻色のコートと紺色の長ズボンは一気に白を強調する導師の服へと変貌し、ストレージからMPポーションを取り出して飲む。

 

 

 

 

導師の服・Ⅳ

 

 

【MP+70】

 

 

導師のズボン・Ⅴ

 

 

【MP+60】

 

 

導師の靴・Ⅳ

 

 

【MP+50】

 

 

 

以上が俺が今装備した一式だ。

 

 

この装備はMPを底上げしたイズのプレイヤーメイド。イズには前に魔法を取得するかも知れないから欲しいと嘘を言って大金をはたいて作ったものだ。

 

実際はあの技を使う為の必要コストを確保する為の装備。

 

そしてイズ特製のMPポーションでMPはぐんぐんと回復していき、あっという間に完全にMPが回復する。

 

 

 

「さあ、行くぞ。暗黒常闇に燃え盛る黒き炎

 

 

 

まずは暗黒でSTRを二倍にしてから、俺は暗黒の最強スキル、常闇に燃え盛る黒き炎を発動する。バスターソードを上段で構えると刀身を纏っているエネルギーがまるで炎のように激しく燃え盛り、刀身は10メートル以上も伸びそれは他から見れば黒い激しく燃え上げる火柱のように見えるだろう。

 

 

「はあああああああぁぁぁっ!!!!!」

 

 

そしてそのバスターソードをボス目掛けて思いっきり振り落とす。

 

振り落とすとボスの皮膚を溶解させて切り裂き、あふれている炎は一気に辺りへと燃え広がるとボスの身体を燃やし尽くすと共にボスのHPを消し飛ばしたのを確認。

 

もし他にも敵がいたのなら炎巻き添えにあって全滅しているだろうが、単体しか使ったことがないから実際は分からない。

 

 

しばらく黒い炎が俺の前一帯を燃やし尽くし鎮静化すると、そこには地面が黒く焼け焦げボスの素材だったものしか残っていなかった。

 

 

「…終わった」

 

エクストラスキル【大地の怒り】を取得しました

 

 

そう言ってバスターソードを鞘に納め、装備をいつもの一式に戻すと新しいスキルを手に入れて視界には宝箱が出現したのを捉える。

 

「なんだこれ?」

 

先ずは宝箱の方が気になり、罠ではないよなと恐る恐る開けるとウインドウが二つ開いた。

 

ユニーク装備【大地シリーズ】を手に入れました。

 

【大地のフードコート】

【HP+1500】【STR+20】【VIT+15】【AGI+20】【破壊不能】【大地の祝福】

【大地のジーンズ】

【HP+1000】【VIT+10】【AGI+30】【DEX+25】【INT+20】【破壊不能】【大いなる実り】

 

 

 

「……強い…SAOでいうラストアタックボーナスか…取得する方法も初回の上単独での撃破か…中々難しいな…それと大地の怒りか…」

 

 

大地の怒り

 

地面から無数の岩石の棘を発生させる。使用した場合1時間は使用不可、一日に三回だけ使用可能。

一方の場合最大射程30メートル

全方位の場合最大半径15メートル

取得条件

大地の守護神を初回単独撃破する。

 

 

あの全方位攻撃か回数制限はあるけどそれでも強い。

 

「後は【大いなる実り】と【大地の祝福】か……うーんこれは……」

 

二つのスキル詳細を見て深く考える。見なければ直ぐにでも装備するのだがスキルに問題があった。

 

「……仕方ない。今はこの装備で良いか」

 

装備することを諦め、出現した転移陣に乗ると転移エフェクトに包まれこの場を後にした。

 

 

 

一方運営陣

 

 

「ああああああっ!?大地の守護神が倒されたぞ!?」

「そんなバカなことがあるか!?まず出現方法が鬼畜だったろ!?STR300以上だぞ現状そんなプレイヤー存在していな「サイトだよ!あいつがやりやがった!」サイト!?さ、坂口主任!」

「ん?ああ、太一か…」

「そうです!主任!これを見てください!巨木を叩くときサイトは暗黒まで使ってSTRを底上げしたみたいです!これで大地の守護神の出現条件を満たしたんです!」

「なるほど…確かにそれなら可能か…まずあの巨木の素材の取得条件もSTR200以上だから基準が見えてなかったのがその要因だろうな」

「だけど暗黒が使えても、大地の守護神の売りはSTR300にも耐えられるVITと回復能力…いくら暗黒を使っただけで…倒せるような設定じゃねえぞ」

「それが…どうやら…暗黒の最強技を放ちやがった。」

「まさかあれか!?でもあれはMPが200必要だろう!?そのリソースはサイトにはないどっから…」

「守護者の攻撃を避けながらMP特化の装備に換装しやがったんだ!後はMPポーションで回復して」

「嘘だろ…ってことは守護者がワンパンか?そんでもってスキルやユニーク装備も持っていったんだよな!?あれってHP重視だったよな!?暗黒を使うサイトにはぴったり…いや?あのスキルが邪魔で今の所渋るか」

「だろうな…だがこれからの行動で装備するだろうよ」

「まあ、サイトを見守ろう…今後どうなるか少し楽しみなところもあるしな」

「そうだな…さて、モニタリングの続きだ…えっと…「ぎゃああああああっ!?毒竜が初回単独撃破された!!!!」はあぁっ!?」

 

 

この日ユニーク装備保持者が二人現れ、片方の奇想天外な方に運営が頭を悩ましたのはプレイヤー達の知るところではなかった



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24話『SAO生還者と第1回イベント開始』

 

 

「っと、戻ってこれたみたいだな」

 

転移エフェクトが終えるとそこは地面に落ちていく前の巨木の前で、地面は何事もなかったかのように罅が入っていない。

 

 

「サイトくん、無事だったのね。いきなり地面に飲み込まれた時はどうなるかと思たけど…見た限り無事みたいね」

 

「…できれば無事だってメッセージで送ってくれてもよかったんじゃない?」

 

 

近くで待っていたイズとシノンが、俺が戻ってきたことで走って駆け寄ってくる。

 

イズもシノンもそこまで心配してなかったのか至って冷静で、シノンに対しては何も連絡が来なかったことに不服そうにジト目で俺を見つめる。

 

 

「仕方ないだろ?落ちた先にボスがいて、連絡は入れられなかったんだし」

 

「此処にボスがいたの!?もしかしなくても情報にないボスってことよね?」

 

「そうだろうな。取りあえず町に帰ろう。ボス戦もあってもう疲れたから、取りあえず俺は攻撃を捌くからシノンが攻撃してくれ」

 

 

そう言って俺を先頭に町への帰路へと付くのであった。

 

 

 

 

 

 

某掲示板にて

 

 

 

 

1:名無しの大楯使い ID:zGdAC4AG/

 

お前ら、新しいボスが見つかったぞ

 

 

 

2:名無しの片手剣使い ID:X4+EXn1Rt

 

マジか!?そこのところkwsk

 

 

 

3:名無しの槍使い ID:7H0paYvIB

 

この時期に新しいボスとかクロムは有能

 

 

 

4:名無しの大楯使い ID:zGdAC4AG/

 

俺じゃなくて、フレンドからの情報。南の渓谷地帯は知ってるよな?あそこでボスと遭遇したらしい

 

 

 

5:名無しの魔法使い ID:RF1/Tmzpq

 

クロムのフレンドか…まさかメイプルちゃんではないだろうな?

 

 

 

6:名無しの弓使い ID:JyufbQOYx

 

此処はメイプルちゃんのスレではないのでお帰りを

 

 

 

7:名無しの大楯使いID:zGdAC4AG/

 

メイプルではない。あの子はお金集めでパーティ組んで毒竜の迷宮行ってる。この情報を教えてくれたのはサイトの方

 

 

 

8:名無しの大剣使いID:tUQaK1KiJ

 

ほう?あの噂になってた。大剣使いか…今のところ話題がなかったから意外なところからの情報

 

 

 

9:名無しの弓使いID:JyufbQOYx

 

話題にはなってないけど、あのPSは健在だぞ。あっこの前地底湖で釣りしてるのも見た。

 

 

 

10:名無しの魔法使いID:RF1/Tmzpq

 

マジで?あのサイトが釣りしてるとか想像ができねえ

 

 

 

11:名無しの大楯使いID:zGdAC4AG/

 

意外にサイトは釣りしてるぞ。あの一時サービス停止の日も一緒に行動した時に釣りを提案してた。因みにスキル取るためにDEXを上げてるとか

 

 

 

12:名無しの槍使いID:7H0paYvIB

 

意外に釣り好きだった。っていうか釣りのスキルを取得しようとしてるってどういうこと!?あれってDEX20あればとれるだろ?まさかDEXはそれ以下だった?

 

 

 

13:名無しの片手剣使いID:X4+EXn1Rt

 

まさか、DEX0ってありうる?ちょっと待て、ってことはDEX0であの動きしていた?趣味の為にDEX上げただけなのに更に手先が器用になるってこと!?ウソダドンドコドン!

 

 

 

14:名無しの魔法使いID:RF1/Tmzpq

 

諦めろ。どちみちサイトもイベント優勝候補に入ってる強者だ。俺達には変わらないこと。というか話が脱線してる。ボスの情報詳しく。

 

 

 

15:名無しの大楯使いID:zGdAC4AG/

 

脱線してたな。あの渓谷にある巨木は知ってるな?あれの素材を入手した後、地面が割れて強制的にボス戦に突入したとのこと。ボスのHPはそれほどだがVITが物凄く高い上回復能力も備わってるとのこと。生半端な攻撃では持久戦で負けるって

 

 

 

16:名無しの槍使いID:7H0paYvIB

 

うわぁ…なんか運営の悪意を感じる。っていうかあも巨木の素材取れたの!?ドラグでも無理だったよな?

 

 

 

17:名無しの片手剣ID:X4+EXn1Rt

 

今は分からんが…つまりサイトはドラグよりSTRが高い可能性があるってことか…下手な防御力だとワンパンで沈むかもな

 

 

 

18:名無しの大楯使いID:zGdAC4AG/

 

どうやって、取ったかは不明。はぐらかされたから多分スキルを使ったのかもしれないてんまあ、きっと第一回イベントで使うだろうその時に判明するだろう

 

 

 

 

 

第一回イベント当日

 

 

町の噴水広場。そこには今回のイベントに参加するプレイヤーと観戦するプレイヤーで大勢集まっている。

 

 

「いよいよだな」

 

 

そう呟く俺。なんたってNWO始まって以来に大規模イベント。ゲーマーとして心躍らないわけがない。

 

 

「へへ、俺達も時間がある時にレベルアップしたんだぜ。いい線までは行けるだろう」

 

「僕もできるだけのことはしてきたよ…メイプルの装備が気になるけど」

 

「メイプル凄い。どこでそんな装備一式手に入れたの?」

 

「うん、ダンジョンで手に入れたんだ」

 

「ほう?ダンジョンでか…中々面白いことになっていたようだな」

 

 

横では初心者の装備から一新したアキ達の姿。きっと一生懸命に集めたのだろうが、俺はメイプルの装備が気になって仕方ない。

 

 

黒を強調する大楯と短刀に鎧…明らかに市販で手に入れた武具ではないのは見て分かった。

 

 

「ねえ、()()()。メイプルの武具ってどう見たって…」

 

「ああ、ユニーク装備かもしれない。まさか毒竜のところを攻略したのか?」

 

 

一体どうやって…幾らメイプルでも無理があるようなと目を細め観察するが。直ぐに視線をシノンに向ける。

 

 

シノンもこの1週間で一気に急成長した。殆ど付きっきりだったし装備も全てイズに作ってもらっている。

 

そして俺の名前を呼び捨てにしたのもどこか他人行儀だったのもあり、俺が呼び捨てでいいと言ってからは普通に自然体で話しかけるようになった。

 

 

 

「それでは、第一回イベント!バトルロワイヤルを開始します!」

 

 

開始を宣言すると、周りのプレイヤーが一気に歓声で湧き出す。

 

 

「それでは、もう一度改めてルールを説明します!制限時間は三時間。ステージは新たに作られたイベント専用マップです!倒したプレイヤーの数と倒された回数、それに被ダメージと与ダメージ。この四つの項目からポイントを算出し、順位を出します!さらに上位十名には記念品が贈られます!頑張って下さい!」

 

 

説明アナウンスが聞こえる中、暗黒のデメリットは問題ないだろうと思う中遂にカウントダウンが始まる。

 

 

「サイト、負けないからね」

 

「言ってろ。一週間の新人(ニューピー)に負けるつもりはない。」

 

「私もがんばちゃうんだから!」

 

「言っとくが手加減なんかしねえぞ」

 

「いいだろう。この俺も存分に力を披露してやろう」

 

「腕がなるわ」

 

「えへへ、負けないよ」

 

 

アキが俺にそう言うとそれぞれ意気込みを述べた後、俺達は一気にイベント専用ステージに転移しイベントが始まった。

 

 

 

サイト

 

 

 

Lv45

 

 

 

HP 290/290 〈+250〉

 

 

 

MP 72/72 〈+60〉

 

 

 

 

 

 

【STR 100 〈+62〉=162】

 

 

 

【VIT 60 <+23>=83】

 

 

 

【AGI 60 <+55>=115】

 

 

 

【DEX 15】

 

 

 

【INT 0】

 

 

 

 

 

 

装備

 

 

 

頭 【空欄】

 

 

 

体 【放浪者の服・Ⅸ】

 

 

 

右手【バスタードソード・Ⅷ】

 

 

 

左手【バスタードソード・Ⅷ】

 

 

 

足 【放浪者のズボン・Ⅶ】

 

 

 

靴 【疾風の靴】

 

 

 

装飾品 【騎士の誓い】

 

 

 

【フォレストクインビーの指輪】

 

 

 

【ドラゴンリング】

 

 

 

 

 

 

スキル

 

 

 

【大剣の心得Ⅷ】【武器防御】 【暗黒】【バトルヒーリング】【武器破壊】【HP増加中】【MP強化小】【パワーストライク】【毒無効】【麻痺耐性中】【スタン耐性中】【ノックバック無効】【暗視】

 

 



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25話『SAO生還者と第1回イベント』

転移エフェクトが終え、町中だった光景がゴツゴツとした岩が並ぶ岩場に変わっていた。

 

 

 

「さてと…行きますか!」

 

 

 

転移した直後、俺は走り出す。ある程度の一定距離は離れているだろうがそこはハイパーセンサー頼りで探す。

 

軽快に動くともちろんそれにプレイヤーは反応する。その微かな動きを頼りに俺は直進。そしてプレイヤーを捉えると一気に距離を詰めてバスタードソードで胴体を真っ二つにすると後ろを見ず、次のプレイヤーを探す。

 

 

なぜ此処まで速攻に徹するか、それは周りと比べて範囲技という技を会得していないから。

 

ついこの前取った大地の怒りは強力だが、回数制限の上に一時間のクールタイムがある為に容易に使えない。

 

 

「これで八人目!」

 

 

そうこうしていると一撃KO即離脱で8人目倒し、また次の獲物を狙う。

 

 

「くそ!いたぞ!」

 

 

横からそんな叫び声が聞こえ目線を向けると、先ほど倒してリスポーンした倒したプレイヤーが目の敵にして俺に向かって突っ込んでくるのがわかる。

 

 

「返り討ちにしないとな」

 

 

笑みを浮かべて、駆け出している足を上手く速度を殺さずに迫りくるプレイヤーに向かって走り出した。

 

 

 

シノンSIDE

 

 

 

「此処は…森林かしら」

 

 

イベントが開始して転移した私の開始位置は森の中で障害物が多くて弓使いとしてはあまり好ましい地形じゃないけど、私にとっては優位に立ち回れる戦場だ。

 

 

 

「まずは…アンカーショット

 

 

近くの木の太い枝に矢の照準を合わせ放つと枝に鎖が撃ち込まれる。

 

 

「よっ…と」

 

 

撃ち込まれてしっかりと鎖が刺さっているのを確認すると鎖をよじ登って木の上に上り、遠見を使って手頃な高さの場所を探す。

 

 

「あそこなんていいかしら?」

 

 

そしてよさそうな場所を見つけ、移動を開始するけどここで前方で人影が見えた。

 

 

「敵…ね。相手はこっちに気づいてない」

 

 

大体距離は90メートルといったところ。なら問題なく射程範囲内だった。

 

 

 

周囲に敵がいないか確認した後、私は弦を引いて狙いを絞り放つ。矢は勢い良く飛んでいき気づいていないプレイヤーの頭を射抜き一撃で倒した。

 

これもサイトと行動していた賜物かしら?

 

 

 

シノン

 

 

 

Lv25

 

 

 

HP 45 <+50>=95

 

 

 

MP 10

 

 

 

 

 

 

【STR 35〈+45〉=80】

 

 

 

【VIT 15】

 

 

 

【AGI 25<+35>=60】

 

 

 

【DEX 90<+110>=200】

 

 

 

【INT 0】

 

 

 

 

 

 

装備

 

 

 

頭 【空欄】

 

 

 

体 【狩人の服・Ⅷ】

 

 

 

右手【エンジュ・ボウ・Ⅸ】

 

 

 

左手【空欄】

 

 

 

足 【狩人のショートパンツ・Ⅶ】

 

 

 

靴 【狩人の靴・Ⅷ】

 

 

 

装飾品 【空欄】

 

 

 

【空欄】

 

 

 

【空欄】

 

 

 

 

 

 

スキル

 

 

 

【暗視】【弓の心得6】【遠見】【マルチショット】【パワーショット】【アンカーショット】【必中】【狙撃手】【跳躍】【HP強化小】

 

 

 

 

 

これを作ってくれたイズには感謝しかないわ。もちろん、エンジュ・ボウの素材である巨木の木材を渡してくれたサイトにも。

 

DEXが上がってより精密な射撃ができるようになったし、今のところ遠くから狙撃いてるからダメージもない。

 

 

 

「…ふぅ…さて絶好の狙撃ポイントに急がないと」

 

 

出来れば上位を狙いたいし…見つけた時は、みんなごめんだけど手加減はしないわよ?

 

 

 

 

NOSIDE

 

 

スラッシュ!!

 

「うわああぁぁっ!!」

 

「これで122人か…うーん上位の人間っていまどれだけ倒してるんだろう」

 

 

 

片手剣スキル、スラッシュでプレイヤーを倒したアキはとりあえず誰もいないのを確認して一息付く。

 

アキもこのイベントが始まって何とか襲い掛かるプレイヤーを倒し、着実に順位を重ねてきていた。

 

左手に購入した盾で敵の攻撃を捌き、隙を作るとスキルを使い確実にダメージを与える。堅実な戦いが実を結んでいる。

 

 

「うーん、そろそろ盾の耐久値も心もとない気がするな…」

 

 

しかしここに来て盾を酷使しすぎたのが耐久値を削り、壊れるかもしれないという現状を作り出してしまっていた。

 

 

「替えの盾は買えなかったもんな」

 

 

そう言いながら買っていたポーションで削れていたHPを回復。まあ何とかなるかと開き直ると草木が揺れてアキは臨戦態勢を取ると直ぐに誰なのか分かった。

 

 

 

「ワタル!」

 

「よう!アキ、そっちも順調みたいじゃねえか」

 

 

姿を現したのは仲間であるワタル。アキも気さくに挨拶を取るがいつでも仕掛けられるように剣は構えたままだ。

 

 

「こんなところで会っちまうとはな…さてやりあうか」

 

 

いくら仲間で友達だろうと今は敵同士。そのことは百も承知とお互い武器を構えいつ仕掛けるかの機会を伺う中、再び新たな来客者が現れる。

 

 

「ほう?こんなところで友と相対するとは、どうやら俺達は切っても切れない何かに繋がれているのやも知れんな」

 

「スギナミくん」

 

「ここでスギナミも来るかよ」

 

 

現れたのはこれまた友人であるスギナミ。どこかの忍びのような装備に装填済みのボウガンを見て三つ巴になるかと二人に緊張が走る。

 

誰かが動けば他も全員が動く。そんな緊迫な状況の中スギナミは少し後ろを気にして、ふむと考えると口を開けた。

 

 

「残念ながら、俺は負けが分かっている戦いに興じるほど熱血ではないのでな…早々に退散することにしよう」

 

「おいおい、そんなことさせると思ってるのか?」

 

「そうだよ、あったからにはちゃんと戦ってもらわないと」

 

「安心しろ。お前たちの2人の相手は時期に来る潜伏

 

 

戦わず逃げようとするスギナミに逃がさまいとアキとワタルはスギナミに武器を構えるが、スギナミは持ち前のAGIと姿を一定時間隠すことができる潜伏を使い姿を消すと、この場所から颯爽と立ち去って行った。

 

 

「俺達の相手?どういうことだ?」

 

「まさか…」

 

 

スギナミが残した言葉に腑に落ちないワタルだが、アキには何となく嫌な直観が働いて汗がにじみ出る。

 

そして、そのアキの嫌な予感は直ぐに現実のものになった

 

 

「あれ?スギナミ追いかけてきたら、アキとワタルか…まあいい此処であったが百年目…潔くポイントになってくれ」

 

 

スギナミが来た方角からやってきた。サイトはアキとワタルを見つけると標的変更と言わんばかりにバスタードソードを構え二人に襲い掛かってきた。

 

 



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26話『SAO生還者と第1回イベント2』

イベント開始からもう90分が経過してイベントも折り返した頃、俺は出会う敵を一撃で屠りながら着実にポイントを増やしていく。

 

「さてと…あんたで最後だ…フレデリカさん?」

「…本当に最悪…」

 

ちょっと前に二十人ほど乱戦状態だったこの場所へやってきて、取り合えず半数以上を一撃で葬り去り、残りは高位ランカーであるフレデリカさんが片付けたようだ。

つまり1対1の状況で相対しているということだ。しかもフレデリカさんは魔法使いビルド…俺とは確実に分が悪い。

この場合、やられるのを避けて逃げに手するべきだが、不幸なことに既にフレデリカさんでは逃げ切れないほどの距離で確実に仕留める自信もある。

 

「自信たっぷりな表情だね。だけど簡単にやられる気はないからね」

 

顔に出ていたのかそれを見た。フレデリカさんは捨て身の覚悟を決めた顔つきで杖の先端を俺に向けていつでも魔法を放つ構えを取るが、俺とフレデリカさんと俺は激突することはなかった。

 

「は?」

「え?」

 

お互い短い戸惑いの声と共に、フレデリカさんの頭に矢が突き刺さり、そのままHPが全損でポリゴンとなって消滅した。

 

「……」

 

呆気ない終わりに無言で矢が放たれた方向を見ると…何時からいたのか見知った人物がボウガンを携え不敵に笑っていた。

 

「残念だったな。隙だらけだったから美味しくいただいたぞ。では俺はこれでさらばだ!!」

「待ちやがれ!スギナミ!!」

 

 

そう言ってこの場から立ち去っていくのを見て、横取りされた鬱憤を晴らすべく、俺はスギナミの名前を叫び追跡を開始した。

 

大体10分以上は杉並を追いかけたが、遭遇したプレイヤーもきっちりと倒し、あたかも追いかけてくださいとギリギリ見失わないように調節して逃げるスギナミを追いかけて…遂にスギナミは俺の視界から消え…スギナミがいた場所まで辿り着くと、アキとワタルがいた。

 

これ以上スギナミを追いかけて順位に響くのは嫌だから、まずはアキとワタルを片づけることにした。

 

「スギナミの奴、最悪な奴に連れてきやがった。」

「後で覚えておけよ。スギナミの奴」

 

運が悪いことに、俺と遭遇してしまった原因を作ったスギナミに対して愚痴る二人。逃げることは叶わないと相槌だけで二人で戦うことを決め、俺に武器を向けるが残念ながら2人を相手にしている時間はない。

 

「は?」

「まず一人」

 

一気に間合いを詰めて一閃。AGIが低いワタルには避けることはできず、その上ワタルのVITでは受け切れるわけもなく、なすすべなくポリゴンになって消滅。

 

「ワタ…ルぅっ!!」

 

アキがワタルのHP全損に対して叫ぶ中、すかさず返し刃でアキに斬りかかるが、流石はVR慣れしていることもあり紙一重で回避。だが詰められたことは変わらない。再度素早くもう一撃決めると紙一重で耐性を崩していたアキには避けることは叶わず、ワタル同様、ポリゴンになったのは言うまでもない。

 

「はぁ…なんとかだな…もうすぐ残り一時間…」

 

それだけしかないが、今の順位はどれぐらいなのか少し気になるが、今はポイントを稼がなければ。

 

 

 

シノンSIDE

 

マルチショット!!…もうここもバレてるから移動しないといけないわね」

 

結託して近づいてきたプレイヤーを全員仲良く倒した後、もうここに居続ければ今度は対策をされかねないと踏んだ私は軽快な動きで別の狙撃ポイントに向かう

狙撃ポイントの目処はしっかりと立ててあるから問題はない。

迷うことなく、敵に警戒しながら進んでいると突然アナウンスが流れる。

 

【現在の一位はペインさ。ん二位はドレッドさん。三位はメイプルさんです!これから一時間上位三名を倒した際、得点の三割が譲渡されます!三人の位置はマップに表示されています!それでは最後まで頑張って下さい!】

「…………え?メイプルって……」

 

正直耳を疑った。トップ3の中に私と同じ時期にこのNWOをやり始めたメイプルがサイトすら差し置いて3位ととんでもない大健闘している

 

「今の順位は……」

 

 

1位ペイン

2位ドレット

3位メイプル

4位ミィ

5位サイト

6位ドラグ

7位カスミ

8位シン

9位マルクス

10位クロム

………

 

「あいつも上位にはいるのね……私は…13位か……何とか上位いけるかしら」

 

まだまだランキング範囲内だ。だったら頑張らないと

そう思っていると、狙撃ポイントに辿り着いたから高所を確保すると再び狙撃を開始した。

 

 

サイトSIDE

 

「現在5位……か」

 

今の順位を確認した後、直ぐにマップを確認する。

 

イベントマップに点灯する点が3つ。これが上位3位までは居場所が分かる。

だがしかしだ…

 

「3位が…メイプルって…一体何してるんだ?」

 

正直あの装備はユニーク装備だったのは間違いない。スキルも普通では無いと分かっているが…まだ1週間の初心者が3位とはそれは経験者のプライドというものがあった。

 

「普通ならメイプルを狙いに行くべき何だが…嫌な予感しかしない…となれば…今此処から1番近い反応…ドレットの元へ行くとするか」

 

 



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27話『SAO生還者と第1回イベント3』

 

【NWO】第一回イベント観戦席3

 

 

 

241名前:名無しの観戦者

 

やっぱ優勝はペインか?

 

ゲーム内最高レベルだし無双してんな

 

 

242名前:名無しの観戦者

 

あれはやばい

 

動きが人間辞めてるw

 

 

243名前:名無しの観戦者

 

でもやっぱ順当に勝ちを重ねてるのはよく聞く名前ばっかだな

 

 

244名前:名無しの観戦者

 

トッププレイヤーが強いのはそりゃ当然よ

 

 

245名前:名無しの観戦者

 

は?何こいつ…やばくね?

 

 

246名前:名無しの観戦者

 

うっわ映ってる奴ら強っ

 

 

247名前:名無しの観戦者

 

暫定成績ランキング

 

メイプルっていう大盾

 

百二十人潰して被ダメなんとゼロ

 

 

248名前:名無しの観戦者

 

ふぁっ!?

 

 

249名前:名無しの観戦者

 

チート?いや…無いか

 

 

250名前:名無しの観戦者

 

って言うかそんだけ暴れてたらそろそろスクリーンに映るんじゃね

 

 

251名前:名無しの観戦者

 

こいつか?今映ってる

 

 

251名前:名無しの観戦者

 

盾がw剣食ってるw

 

何これw

 

 

252名前:名無しの観戦者

 

可愛い顔してやることえぐすぎんよー

 

状態異常とあの大盾で殆ど無抵抗のまま潰してる

 

 

253名前:名無しの観戦者

 

でも動き遅くね?

 

さっきからカウンターばっかり

 

 

254名前:名無しの観戦者

 

確かにあの立ち回りならダメージ貰って普通だよな

 

ほら言ってるそばから…は?

 

 

255名前:名無しの観戦者

 

は?

 

 

256名前:名無しの観戦者

 

は?

 

 

257名前:名無しの観戦者

 

あいつ何で頭に振り下ろされた大剣頭で弾き返してんの?

 

 

258名前:名無しの観戦者

 

え?真面目な話そんなことできんの?

 

 

259名前:名無しの観戦者

 

出来たら皆やるわ

 

 

260名前:名無しの観戦者

 

大盾よりも状態異常よりも本体の方が謎すぎてやばい件について

 

 

261名前:名無しの観戦者

 

っておい!サイトが物凄い移動を開始したぞ!

 

 

 

262名前:名無しの観戦者

 

まじか!?うわ…道中の敵一撃で切り捨てながら進んでる。どこに向かってるんだ?これ

 

 

263名前:名無しの観戦者

 

もしかしてこれ、ドレットの元へ向かってるくね?

 

 

264名前:名無しの観戦者

 

まさかのドレット対サイトか!?やばい高位ランカー同士が戦うとかマジで取れ高案件!

 

 

 

265名前:名無しの観戦者

 

さっさと映せ!映すんだよ!!

 

 

266名前:名無しの観戦者

 

少し落ち着け

 

 

 

 

 

 

「もう少しで辿り着けるはずなんだが…」

 

 

開けっ放しのマップで位置を確認しながら突き進む中、遭遇するプレイヤーを轢き逃げの要領で一撃バスターソードで葬り去ると、もう少しでマップに表示された地点に到着する。

 

 

「…騒音が聞こえる。こっちか」

 

 

剣戟と断末魔の悲鳴により、その場にいるであろうドレットが戦っている場所は正確に特定することができた。もうすぐ戦うことになるからマップを閉じ、戦闘に集中しドレットの元に辿り着くとその光景を視界に捉える。

 

 

集まっている大勢のプレイヤー。みんなの視界は聳え立つ岩壁を見上げていて、何人かは魔法を使ってその見上げている岩壁に向けて放っている。

 

 

「…ドレットは岩壁の上で時間を稼いでる…集まっている敵は300ぐらい…みんな密集している…だったら!」

 

 

状況を把握しAGIを全力で出して空高く跳躍、その時跳躍のスキル獲得のシステムアナウンスが鳴るが、そんなことお構いなしにバスタードソードを眼前の真下にいる敵に向ける。

 

 

 

「お、おい!あれサイトだ!!」

 

 

ドレットに集中しすぎていて、今まで俺の接近に気づかなかったのか、誰かが俺に指を指し叫ぶと自然に俺に視線が集中するがここで立ち止まらず逃げるべきだった。

 

 

大地の怒り

 

 

技名を叫び、そのまま集団の中心に剣先を突き立てて急降下すると、標的になっていると分かったプレイヤー達は魔法で迎撃しようと魔法の準備をするが、それより先に俺の剣先が地面に突き刺さるのが先だった。

 

 

突き刺した直後、周囲15メートルの地面から岩で出来た棘が無数の飛び出てきて突き刺された、または吹き飛ばされたプレイヤーはみんな仲良くポリゴンとなってこの場から消えていった。

 

 

「今ので大体200ってところか…意外に残ってるし、さっさと片付けてドレットを倒さないとな」

 

「先ずはサイトを倒せ!!その後にドレットを倒すんだ!!」

 

 

せっかくドレットを倒す為に集まっていたプレイヤーの半数を消し飛ばしたことで、ドレットより先に俺を片付けることを決めたのか、全員俺を取り囲み始める。

 

 

そんな中、俺も待っているわけには行かないので、近場の敵を切り捨てて、一人ずつしっかりと倒していく中、VITが高いタンクも現れて振るったバスタードソードをよく見て盾で防がれた。

 

 

「動きを確りと見ていればいくらサイトであってもぉ!?」

 

「悪い隙だらけだった」

 

 

盾に弾かれたが、直ぐにタンクのプレイヤーにバスタードソードを突き出し体に突き刺し、それにより継続ダメージでタンクのプレイヤーのHPが減っていく中未だに倒れず、抜いてもう一撃食らわせようとするが、あろうことかタンクは両手に持つ大楯と短刀を捨ててバスタードソードを確りと持ち、俺に抜かせないようにした。

 

 

 

「今だ!捨て身のプレイヤーの犠牲を無駄にするな!!」

 

「…そう来るかよ!だがな!!」

 

 

剣が使えなければ素手で対抗するまで。バスタードソードから手を放し、まず左右の迫り切る敵の攻撃を最小限にかわすとそのまま頭部を掴み、地面に叩きつけHPを全損させる。

 

武器を封じられ丸腰となって好機と思った矢先、今度は素手で二人倒されたのを見て思考が停止するプレイヤー達。

 

取りあえず唖然としているタンクからバスタードソードを引き抜き、もう一撃くわえて倒すと残りの敵に視線を見据える。

 

その後簡単に…集まってきていたプレイヤーは全滅。途中からドレットも岩壁から降りてきてプレイヤーの全滅が早くなり、漸く俺とドレットという1対1という状況に持ち込めた。

 

 

「流石は俺達と並んで優勝候補と言われているサイトなだけはある」

 

「知られていて光栄だな…それで俺が来た目的は分かってるんだろう?」

 

「ああ、俺を倒して更に上を目指そうって腹積もりなんだろ?だがそうやすやすと倒せると思うなよ」

 

 

そう言って、短剣の二刀流…双剣を構えるドレット。こっちもバスタードソードを構えドレットの動きを見定める。

 

確りと見据えているドレットの姿が急に消えると、ハイパーセンサーで地面の蹴る音を頼りに素早く視線を向けると姿勢を低くして俺に切りつけようとするドレットの姿を捉え迫りくる。双剣をバスタードソードで防ぐが連撃ができるドレットの攻撃を弾き洩らし一発胴体に攻撃を貰う。

 

 

「ちぃっ!!」

 

 

これ以上の攻撃をさせまいと両手剣SS (ソードスキル)全方位攻撃のサイクロンでドレットを後退させる。

 

 

 

「危ない…っと流石はサイト。いい太刀筋だ。流石はSAO生還者ってわけか」

 

「!?どうしてそれを!?」

 

 

後退してまた探り合いに膠着状態に戻ったが、俺の剣の腕を見てドレットが口走った言葉がとても信じられない発言で咄嗟に言い返した。

 

 

「その反応…当たりだったみたいだな」

 

「っ!!」

 

 

しまった。迂闊だった。あくまでドレットの中では半信半疑だった。しかし、今鎌をかけられ口を滑らせたことでその信憑性は大きく高まってしまう。

 

 

「言いふらすつもりはねえよ。高位ランカーの中じゃあ、お前さんのPSの噂がよく飛び交っている。それであくまでの仮説としてSAO生還者って線もあるってもっぱらな噂だ。因みにペインもそうじゃねえかって直感で答えたよ…」

 

 

まさかそこまでそういった憶測が流れていたなんて…

 

なんて軽率に動いていたんだろうと、自分の軽はずみを呪いながら今は戦う場であると心を落ち着かせる。

 

 

「まあ、お前がSAO生還者であってもなかったとしてもやることは変わらない…!!」

 

 

そう言ってまた俺の視界から姿が消え、今度は周囲を物凄く走り回りながらも空いている箇所があればすかさずそこに双剣を切り裂いてくる。

 

 

「このままじゃあ…」

 

 

落ち着け…意識を集中するんだ…

 

目を閉じ視界から入る情報を全てシャットダウンし、音と俺の直感に賭ける。

 

 

「諦めたか!?だったら…!」

 

 

……今だ!!

 

 

俺は確りとドレットの気配を捉え、攻撃してくるタイミングに合わせ、もう一度ソードスキルのサイクロンを放つ。

 

 

「タイミングを合わせたか!だがな!遅い!」

 

 

確りとしたカウンターに賞賛するドレットだが、自分の回避の方が速いと突っ込んできていた足を止め、後ろに飛び退きサイクロンの刀身から紙一重に避けられる距離。

 

きっとこの攻撃から一気に畳みかけてくるだろう。

 

それはあくまで仮定の話だが

 

 

暗黒

 

 

その言葉と共にバスタードソードの刀身が伸び、飛び退けている途中のドレットは避けることは叶わず、伸びたバスタードソードの一閃の餌食となった。

 

 

「くそ、詰めが甘かった…これで2位からは転落か…あははは…まあしかたねえか…」

 

 

そう言い残し、ドレットはポリゴンとなって消滅した。

 

 



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28話『SAO生還者と第1回イベント4』

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

 

ドレットを倒したからか、緊張が解れた俺は荒い息づかい。

 

敵を居ないのを完全に確認してから岩壁に背中を預け、HPポーションを飲み干す。

 

 

 

「はぁ…何とか勝てた…今の順位は…2位か…なんとかメイプルに勝ってる。ゲーム歴先輩としての威厳は保てそうだな」

 

 

 

いくら可笑しいとはいえ、やり始めたメイプルに順位で負けるのは些か精神的に堪える。

 

 

 

「俺が2位になったってことは…次は俺が狙われるってことだし…包囲されない内にそろそろ…っ!!」

 

 

 

木の根元から起き上がり、有利な場所に陣取ろうと体を動き出そうとしたその時、茂みから音が聞こえ直ぐさまバスタードソードをその先に構えると、その先に現れた人物は俺の予想を遥かに超えた人物だった。

 

 

 

「冗談…ただ似てるだけのプレイヤー…ってわけじゃないよな」

 

 

 

流石に連戦は辛い…一介のプレイヤーなら問題は無かった…だが目の前に立つ人物はそんな茶々なものではない…

 

金髪に青い瞳…西洋の甲冑に剣と盾…直接会ったことはなかったが、この人物のことは少なからず知っていた。

 

 

 

「ペイン…」

 

「君こそ、サイト…だね。噂は聞いているよ。その様子だとドレットは負けてしまったか」

 

 

 

遅かったかっとあまり悔しそうにも見えないが、目を閉じた後再び目を開ける。

 

言葉からペインはドレットと合流して、二人でランキングを維持するつもりだったのだろう。

 

だが、それはドレットを倒した俺によって崩された。

 

 

 

「ドレットの仇討ちでもするか?」

 

「いや、止めておこう…個人としても君とも戦いたいが…今は…」

 

「………囲まれてるな」

 

 

 

疲れていてここまで接近を許してしまったが、聴覚と気配を辿ると100、200という数ではない。

 

恐らくペインと俺。トップスリーが二人居ることから物凄い人数が押し寄せる事になってしまったのだろう。

 

 

 

「流石にこれを全ては捌ききれないだろうね……」

 

 

 

ペインも流石の数に苦笑いの笑みを浮かべた後、俺の方に視線を移す……それで何を意図しているか勘づくと、メニューを開き装備を換装する。

 

 

 

導師の靴・Ⅳ

 

 

 

 

 

【MP+50】

 

 

 

【大地のジーンズ】

 

 

 

【HP+1000】【VIT+10】【AGI+30】【DEX+25】【INT+20】【破壊不能】【大いなる実り】

 

 

 

 

 

足と靴を装備を替え、靴心地を足踏みして確かめると、MPポーションを飲んでバスタードソードを構える。

 

 

 

暗黒

 

「見たことのないスキルだね、それは」

 

「あの数となると出し惜しみ出来ないんでね……それとペインあんたも味方ってことでいいんだな」

 

「ああ、そう考えてもらって構わないよ」

 

 

お互い背を向け迫りくる。鬼気迫る形相のプレイヤーを向けて同時に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

【NWO】第一回イベント観戦席3

 

 

 

653名前:名無しの観戦者

 

やべえ、どっちも人間やめてるよ。

 

 

 

654名前:名無しの観戦者

 

サイト対ドレット、マジで半端ない…サイトが何とか勝って二位に上り詰めた。

 

 

655名前:名無しの観戦者

 

ってことは今度はサイトが上位を狙う集団に襲い掛かられるわけか

 

 

656名前:名無しの観戦者

 

ふぁ!?

 

 

657名前:名無しの観戦者

 

おい、どうした?他のモニ…うわぁ…なにあのラスボス…毒の霧に麻痺らせて動けなくするとか…

 

 

658名前:名無しの観戦者

 

…しかもそれをやってるのが美少女っていうおまけつき

 

 

659名前:名無しの観戦者

 

…あれは誰も倒せねえだろう。ほら、様子見していたプレイヤーも逃げていって…他のペインやサイトのところに集まって…あれ?

 

 

660名前:名無しの観戦者

 

上位3位までわかるはずなのに数一つ足りなくね?まさか…

 

 

661名前:名無しの観戦者

 

ペインとサイトが同じ場所にいる!?

 

 

662名前:名無しの観戦者

 

まじかよ!?まさかペイン対サイトか!?

 

 

663名前:名無しの観戦者

 

その可能性もあるけど、周りのプレイヤーの数www

 

 

 

664名前:名無しの観戦者

 

何人いるの?これ…

 

 

665名前:名無しの観戦者

 

分らんけど1000は確実に居る。

 

 

666名前:名無しの観戦者

 

それもう、大規模ボスレイドどころじゃないwww

 

 

667名前:名無しの観戦者

 

これはペインもサイトもきつ…嘘だろ?

 

 

668名前:名無しの観戦者

 

なん…だと…!?

 

 

669名前:名無しの観戦者

 

ペインとサイトが手を組んだ?

 

 

670名前:名無しの観戦者

 

マジで胸熱案件

 

 

671名前:名無しの観戦者

 

いったいこのイベントどれだけのドラマが巻き起こるんだ!?

 

 

 

 

「終了!結果、二位のドレットさんを見事倒したサイトさんがドレットさんのポイントの3割を獲得。これにより順位が変動してサイトさんは2位。1位と3位は変動ありません。それでは表彰式に移りたいと思います。先ずは見事1位になったペインさん。今の気持ちはいかがですか?」

 

 

威版と開始前の広場に戻された後、司会進行の指示に従い3位までの俺達は壇上に登り、インタビューが執り行われる。先ずは1位であるペインからマイクを渡されると、おもむろにペインは自身の気持ちを口にした。

 

 

「1位になれたことはものすごく嬉しいと思う反面…何処かやり残した気持ちもあります」

 

「それはどうしてですか?」

 

「ドレットを倒して2位になったサイト。彼とはお互い万全を期して戦ってみたいからです。今回はお互い狙われている身になってしまったのでそれが残念で仕方ありません」

 

「なるほど。ペインさんありがとうございました。では続きまして、元2位に君臨していたドレットさんを倒し、見事2位に上り詰めたサイトさん。今のお気持ちはどうですか?」

 

 

ペインのインタビューも終わり、次は俺の番になりマイクを渡されると、俺は口を開けてインタビューに応じた。

 

 

「正直、ほっとしています。あのペインと出会った時、俺はドレットとの戦いで疲れていて、あのまま戦っていれば恐らく負けていたでしょうから…あの時のペインからの共闘はまさに渡りに船だったと思っています。あとはそうですね…このゲームはかのALO事件が起きる前からのプレイヤーだったので玄人プレイヤーとしての威厳も守れたと思っています」

 

 

後者の話に気づいたのは俺のクラスメイトやクロム辺りだろう。ちらっと見えたアキの顔は苦い笑みを浮かべている。

 

 

「ありがとうございます。次は、メイプルさん!一言どうぞ!」

 

 

「えっあっえっ?えっと、その、一杯耐えれてよかったでしゅ

 

 

かんだ…それもこんなところで…その後メイプルは録画されているのにも気づかずに羞恥心でその場で蹲り、表彰式が終わると景品を貰って直ぐに宿屋にへと消えていった。



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29話『SAO生還者と打ち上げ』

 

 

 

 

「というわけで、第1回イベントお疲れ様!かんぱーい!」

 

 

 

そのワタルの音頭で始まったパーティー。ワタルの一声に俺達も続けて乾杯とグラスを鳴らす。

 

 

 

「いや~俺達やれることはやったと思うけどよ、お前らどうやったら上位にランキングできるんだよ」

 

「えへへへ」

 

「まあ、教える人が普通じゃなかったからね」

 

「キャリアが違う」

 

 

 

そう言って羨ましそうに見るワタルに対して、照れるメイプルに俺を横目で見ながら教える師が強かったときっぱりというシノン。そして俺は普通にプレイ時間の差だと断言して言った。

 

 

 

「くそぉ!サイト!シノンと二人きり…羨ましいな!このやろー!!」

 

「一応言っておくが、ワタルが思っていることはなかったぞ」

 

「ふーん、ワタルってそんなこと思ってたのね」

 

「え?なんで俺…冷たい目で見られてるの?」

 

 

 

戸惑いの声を上げるワタル。本人はあまり分かっていなかったようだが、あんな言葉を言えば冷ややかな視線を向けられるのも無理はない。

 

 

 

「ワタルに関しては身から出た錆しか言えんが…今回の大会は大いに番狂わせだったろうな」

 

 

 

 

 

そう言ってスギナミは、運営の掲示板に記載されている今大会のランキングをみんなに見えるように表示すると、俺も改めてそれを見て苦笑いの笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

1位ペイン

 

 

 

2位サイト

 

 

 

3位メイプル

 

 

 

4位ドレット

 

 

 

5位ミィ

 

 

 

6位ドラグ

 

 

 

7位カスミ

 

 

 

8位シン

 

 

 

9位シノン

 

 

 

10位クロム

 

 

 

 

 

「俺とメイプルとシノンがトップ10にランキングしたからな…シノンもランクに入ったけどどうやったんだ?」

 

「ああ、それね…9位だったマルクスっていう人いたでしょ?その人、罠を使う人でね、近くにいた人は全員その罠に嵌ってやられていたわ」

 

「ふむ。トラップか…中々いいスキルではないか」

 

「ああ、私も移動してた時にその罠にかかって一度死んだんだ。あははは…」

 

「いかにも後方支援型だな…」

 

「接近戦重視のサイトや僕、ワタルは苦戦しそうだね」

 

「…なんとなく、シノンがやった方法分かったかも」

 

 

 

ランキングを見た後、9位に食い込んできているシノンを見てどうやったか尋ねると、途中まで9位だったマルクスの話が持ち上がってくる。

 

ソフィーも掛かったのか苦い笑みを浮かべ当時の記憶を思い出し、スギナミは罠スキルに興味を持ち、ワタルはスタイルが後方支援と呟くとそれにアキが頷き、接近戦重視の俺達には苦戦を強いられる相手だと指摘すると俺も同意するように頷き、最後に何となくだったがシノンがどうやったのか想像が付いた。

 

 

 

「罠はマルクスの周囲にしか設置してなかったから遠くから弓で倒したのよ」

 

「因みに何メートル?」

 

「うーんざっと150はあったかしら」

 

 

 

それはもう弓で当てる距離ではない。

 

そんな思いを俺だけではないみんな…いやメイプル以外はそう思っただろう。

 

 

 

「何かしら?弓の射程が可笑しいって言いたげね…それを言うならメイプルの存在自体も可笑しいと思うけど」

 

「え!?私!?そうかな?普通にプレイしてただけ「どこが!!」うええ!?」

 

 

 

自覚のないメイプルの言葉にみんな声を揃えて反論し、メイプルが戸惑う中しばらくして打ち上げが終わり、各自ログアウトするのであった。

 

 

 

 

【NWO】第一回イベント感想

 

 

 

1:名無しの槍使い

 

第一回イベントお疲れ

 

 

2:名無しの魔法使い

 

お疲れ

 

 

 

 

 

3:名無しの片手剣使い

 

マジでお疲れ…因みにみんなどうだった?俺は開始早々サイトにやられた。

 

 

 

4:名無しの大槌使い

 

開始早々?動くの早すぎねえか?

 

 

 

5:名無しの双剣使い

 

開始早々か…よく直ぐに見つけたよな

 

 

 

6:名無しの片手剣使い

 

多分、気配察知のスキルを持ってたからかもしれない。そのスキルのおかげで速攻仕掛けられた。

 

 

7:名無しの斧使い

 

不運だったなそれは…まあ俺達の話はこれぐらいにして今回のイベントで会った出来事をまとめて感想を述べよう

 

 

 

8:名無しの槍使い

 

サイト対ドレット高位ランカーによる激戦

 

サイトとペインによる共闘からの無双

 

ダークホース歩く要塞メイプルとクールスナイパーシノンちゃん

 

 

 

9:名無しの双剣使い

 

他も色々あったけど、やっぱこの辺りが妥当だな。

 

 

 

10:名無しの魔法使い

 

今大会のダークホースが二頭いたしな。因みに俺は気づいたらシノンちゃんにHS(ヘッドショット)されてました

 

 

 

11:名無しの大槌使い

 

そうか…じゃあ先ずはシノンちゃんについてだな。弓使いで弓の射程を完全に超えている長距離狙撃が出来る。

 

 

 

12:名無しの槍使い

 

観戦プレイヤーからの情報では100メートル以上は離れていても確りとHS(ヘッドショット)ワンキルしてたのを見るとDEXとSTRは振ってるだろうな。

 

 

 

13:名無しの片手剣使い

 

それで間違いはないだろうけど…俺もシノンちゃんと戦ったけど、マルチショットで一緒に共闘していたプレイヤー共々全滅した。その中にはタンクもいた

 

 

 

14:名無しの斧使い

 

は?タンクもワンパンされたの?STRも化け物並みか?

 

 

 

15:名無しの片手剣使い

 

くそ!シノンちゃんに関する情報が不足している。誰かいい情報を持っていないのか!? 

 

 

 

 

16:名無しの大楯使い

 

よう、お前ら…なんだ?シノンについて知りたいのか?

 

 

17:名無しの槍使い

 

お前はクロム!?まさかメイプルだけではなくシノンともフレンドになっていたとか言わないよな。

 

 

 

18:名無しの大槌使い

 

それが事実なら俺達はクロムであろうと挑む覚悟がある。

 

 

 

 

19:名無しの双剣使い

 

俺達が力を集めればいくら上位10位であっても…

 

 

 

 

20:名無しの大楯使い

 

お前ら落ち着け。フレンドにはなっていないが間接的に関係がある。サイトがフレンドだ。

 

 

 

 

21:名無しの槍使い

 

意外なところから名前が出たな。シノンはサイトの関係があるということ?

 

 

 

22:名無しの大楯使い

 

ああ、そうだ。始めて1週間ぐらいらしいがその間サイトと行動を共にしていたらしいぞ。因みにシノンの武器は前に話が出てきた南の渓谷の巨木から取れた木材を使ったプレイヤーメイド。

 

 

 

23:名無しの魔法使い

 

寄生…いやかなり短期間で頭角を現したということか…やばいな。二大新人に負けている俺達の威厳が…!

 

 

 24:名無しの大槌使い

 

イゲン?なにそれおいしいの?…まあ冗談だけど…シノンの強さはサイトの教えの賜物ということで…次行こう次…!

 

 

 

 

 

 

こんな掲示板で今回の大会の感想戦があるとは俺達は知る由もなかった

 

 



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30話『SAO生還者と日常』

更新が途切れてしまいました。

理由として言えることは…FFⅦRが楽しすぎて時間がそっちに割いてしまったからかな?


 

 

 

 

 

 

「行ってきます」

 

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 

 

いつも通りの朝、休み明けで眠たいが学校に登校するためにそれを我慢しながら通学路を歩いて行く。

 

 

 

 

第1回イベントが終わって翌日…昨日の戦いの疲れはまだ残っているのか本当に体がいつもより遅く感じるが、決して熱や病気ではなく単に脳が疲れているだけだった。

 

 

 

 

「学校着いたら少し寝よう」

 

 

 

 

そんなことを呟きながら、歩き続け学校に辿り着き、教室に入ると教室には本条さんと白峯さんが既にやってきていた。

 

 

 

 

「あっ!坂口くんおはよう」

 

 

「おはよう…」

 

 

 

 

挨拶してくる本条さん達に俺も寝ぶたげながらも挨拶を返し、椅子に座るとそのまま倒れるように俯せになって目を閉じる。

 

 

 

 

「あっ、寝ちゃった」

 

 

「寝不足…もしかして夜遅くまで起きてた?」

 

 

 

 

微かな声が聞こえる…どうも直ぐに寝る体制を取った俺について少し心配してるのだろう。そんな二人のために徐に顔を上げる。

 

 

 

 

「寝不足じゃない…ちょっと脳が疲れてるだけ…昨日の大会で」

 

 

「大会?ああ、楓やみんな出たっていう大会ね…楓から聞いたけど2位だったんだよね?」

 

 

「元2位だったドレットを倒してな…あそこまで集中したのは久しぶりだ」

 

 

 

 

そう久しぶり…あのSAOがクリアされてそれぐらいになるか…

 

 

 

 

「……坂口くん?」

 

 

「っ!?いや何でもない」

 

 

 

 

感傷に浸って黄昏れていたところを横から本条さんが心配して名前を呼ぶと、俺は悟られないようにはぐらかす。

 

 

 

 

……本条さん達にも勘づかれる位に顔に出ていたのか……以後は気をつけよう。

 

 

そう胸の内で決意をして暫くすると、他のクラスメイトもやってきて予定通り授業が開始された。

 

 

 

 

 

 

「さてと…今日は何をしようかな」

 

 

 

 

放課後、何事もなく授業を終えて家に帰った後、今日の宿題や復習を終わってからNWOにログインした。

 

 

 

 

イベントの翌日ということもあり、ものすごく見られているのも気にせず、俺は街中を進んでいく。

 

 

「レベリングは…いいかな…となると…」

 

 

一度足を止めて、今日やることを思い付いた俺は町の外へと駆りだし…向かった先は地底湖…目的は息抜きの釣りをするためだ。

 

 

「さてと……誰もいないみたいだし……」

 

 

周囲に誰もいないのを確認すると、メニュー画面を出して装備を一式変更する。

 

 

 

【釣り師の帽子】

 

 

【DEX+30】

 

 

【釣り師の上着】

 

 

【DEX+45】

 

 

【釣り師のズボン】

 

 

【DEX+20】

 

【AGI+15】

 

 

 

【釣り師の靴】

 

 

【DEX+15】

 

【AGI+20】

 

 

先程の戦闘服からラフな釣り師の服装に一新、そして釣り竿を取り出すと糸を湖に投げ……1分もしない内に釣り上げる。

 

 

「ああ、始めた頃を思い出す……あの時は悲惨だったからな…」

 

 

始めて間もない頃、中々釣れなかった頃に比べ今はぽんぽんと魚が釣り上げられていく。

 

 

 

「心が落ち着く…釣りのスキルは修得できないのは素のDEXが20ないとダメか…」

 

 

まあ、装備の性能でステータス要求されているスキルがポンポン手に入ればゲームバランスが崩壊するだろうし仕方ないというべきだろう。

 

 

「よっとこれで50匹目。これだけイズに売り払えば中々な値段になるんじゃないか?」

 

 

傍らに置いたバケツの中には大量の魚…時折体を跳ねたりして逃げようとしているが逃がすつもりは当然あるはずもない。

 

 

 

 

「…もう少し、釣ったら何処か気分転換に散策でも行くかな…」

 

 

そんなことを思いながらも釣り糸を垂らしていると、出入り口から誰かがこちらに近づく足音が聞こえてくる。

 

 

「…!?プレイヤーか」

 

 

こんなところに何のようだ?釣り糸を引きバケツと釣り竿を岩場に隠してバスタードソードを装備すると、足音を殺し出入り口の岩場の陰に隠れプレイヤーを見計らう。

 

 

「足音から6人…軽快な足取り……PK狙いじゃないのか?」

 

 

こんなところにこの人数で来るのは些か不自然さを覚えながらやってくるプレイヤー達をそっと岩陰から見つめるが、その人物達が誰なのか分かると、急に気が抜けた。

 

 

「うわー!綺麗な湖だね!」

 

「ここがイズさんが言ってた素材が手に入る。地底湖なんだね」

 

「綺麗なところだな…」

 

「へえ、こんなところもあるのね…」

 

「これは絶景、絶景…ここには何か面白いものが眠っていそうではないか」

 

「そうだね…みんなで力を合わせて頑張っていこう!!」

 

 

入ってきた集団はメイプル達クラスメイト。みんな釣り竿を手にして悠々と湖に向かっていく。

 

 

メイプル達なら生産職を狙うわけでもない…警戒は解いてもいいだろう。

 

そう思ってバスタードソードを構えを解き、岩陰から出てメイプル達の元へ

 

 

足音も立てて普通に歩いて行くことで、当然メイプル達に気付かれその中のシノンが咄嗟に振り返る。

 

 

「誰!?って…あんた何で此処に」

 

「それはこっちのセリフなんだが……」

 

 

俺が居たことに驚くシノンが問うが、俺はそっくりそのまま返した。

 

 

「あ!サイトくん!みんなでお魚釣りに来たんだ。サイトくんは?」

 

「…息抜きがてら、釣りだ」

 

 

そう言って、メイプル達と一緒に湖の近くの岩場で手頃の岩に座って釣りを再開する。

 

そんな中、お互いここに来た経緯を話すとメイプルはへえーっとそうなんだと意外そうな顔を向けてきた。

 

 

「サイトくんって釣りが趣味なんだ」

 

「実際、趣味ってわけではないが…前にやっていたゲームの時に息抜きで釣りをして以来。それが続いているだけだよ」

 

「そうなんだ…因みに前やってたゲームでどんなのだったの?」

 

「!?」

 

「どうかした?」

 

「え?いや…別にどうもしないよ」

 

 

釣りに関して花を咲かせるメイプルと俺、それを聞いていたソフィーが俺がこのゲームをやる前にやっていたゲームがどんなのものだと尋ねると、聞いていて俺の事情を唯一知っているアキが目を大きくして動揺し、シノンがその表情から気になって尋ねるが、動揺を隠せずに気の所為だとはぐらかし、シノンとあとスギナミに怪しまれる。

 

 

「…別に、NWOとさほど変わらない世界観なゲームだ…今はサービスが終了してしまったけど」

 

「そうなんだ…それだからNWOをプレイしてるんだね」

 

「考えたこともなかったそうなのかもな…」

 

 

 

失ったものを似ているもので補っている…だけどそれで俺は本当にいいのだろうか…



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31話『SAO生還者と2層』

 

 

 

「回避盾になる!」

 

「……はい?」

 

 

翌日、早めに学校の教室に辿り着き、扉を開けると中からそんな言葉を発する白峯さんと本条さんがいて、白峯さんの意味不明の言葉に思わず言葉を漏らした。

 

二人しかいない教室。その空間だと俺の漏れた言葉も確りと教室に響き、二人の視線はもちろん俺に向く。

 

 

「…まあ、あれだ……聞かれたのは俺でよかったな。後、もう少し声を抑えるべきかと…」

 

「…うん、そうする」

 

「あはは…そだね」

 

 

取りあえず、白峯さんに忠告をした後、席に荷物を置くと気になることを言っていた白峯さんが気になり、二人のいる席まで近づき声をかけた。

 

 

「本条さん、白峯さんもちょっといいか?さっき回避盾がどうのこうのって言ってたけど。NWOの話だよな?」

 

「…どうしよっか」

 

「別にいいんじゃないかな?坂口くんなら」

 

回避盾は恐らくNWOでの役割 (ロール)のことを指示しているのではないのかと予想し二人に問いかけてみると、二人はお互い顔を合わせ、話すべきか小声で話合うと俺なら別にいいかと本条さんがそう言うとそれならいいかっと白峯さんも納得して俺に顔を向ける。

 

 

「実は漸く、私もNWOをプレイできるようになったから、楓のプレイスタイルに合わせて回避盾とVIT極振りのタンク。二人でノーダメ!ってわけ」

 

「なるほど…でも2人でノーダメはちょっと無理があると思うぞ?」

 

「ほう?坂口くんはその根拠があるっていうの?」

 

「白峯さんは…回避盾って断言するにあたってPSはそれなりにあるのは推測できる。問題なのは本条さんの方」

 

「え?私?」

 

 

いきなり自分の名前が出てきて驚く本条さん。

 

驚いているのを他所に俺は話を続ける。

 

 

「まず、本条さんはVITが高すぎるからノーダメだったけど…多分アプデでゲームバランスの調整入るんじゃないか?」

 

「具体的にどんな調整?」

 

「そうだな。流石にステータスには調整は入らないだろうが…あるやばいスキルには確実に修正が入るし、後は…防御を貫通技かな?」

 

「貫通!?ってことは痛くなるの!?」

 

 

自分が思うアプデで追加される要素を口にし、対メイプル用に実装するであろう防御貫通を口にすると本条さんが酷く動揺する。

 

 

「普通はダメージ受けるものだしな…いつまでも無敵…なんてありえないことだから…たぶんこれは確実…第1回で大暴れしすぎたのが原因だろうんな」

 

「ふええ…そっか…仕方ないよね…痛くなるのか…」

 

 

痛いの嫌だな…っと項垂れる本条さん。そんな光景を見て俺も苦い笑みを浮かべた後、これからのNWOのことを3人で話している内にクラスメイトも着実に集まり始めていた。

 

 

「おい、あれ…」

 

「あの3人で何話してるんだ?」

 

「聞き耳立てたら、ゲームの話らしい…しかもVRMMOの」

 

「VRMMOってあのか?でも確か坂口って…」

 

「……」

 

 

集まってきたのは良いが、クラスメイトがこっちを見てこそこそと話していて、目立つ上何処か俺に関してだけ特に警戒されている気がする。

 

 

「そろそろ、席に戻る…今日はたぶん、あっち(NWO)では会わないと思うし…また機会があれば、その時にレベリングとか付き合うよ」

 

 

そう言って俺は本条さんたちから離れ、授業の準備を始めた。

 

 

 

 

「よし、ついたな…ここが2層に辿り着くためのボスがいるダンジョンか」

 

 

時間は経ちリアルでは夜。俺とクロム、イズは北の最果てにあるダンジョンにやってきていた。

 

目的は誰もが目指すであろう2層への到達。

 

今日漸く第2層行けるようになり、その条件であるボスを倒すためにここまで来た。

 

 

「よし行くぞ。でもサイトよかったのか?」

 

「なにが?」

 

「いや、俺達と2層に行かなくても、しばらく待ってメイプル達と一緒に行くっていうこともできただろうに」

 

「ああ、そういうこと…一応俺が2層に行くことはあっちも知ってるし、別に気にするなとも言われたから…それに、実装されたエリアにいち早く行きたいっていう気持ちに馳せられるのはゲーマーの心情だろ?」

 

「まあ、間違ってはいないな。ほら敵が来たぞ」

 

「そうみたいね…サイトくん、クロムお願いね」

 

 

ダンジョンに進む中、奥から突撃してくる熊。それを見て戦闘準備に入るとまずクロムの大楯で熊の攻撃を受け止めた後、俺がサイドに周りバスタードソードの一撃を畳み込む。それだけで熊はHP全損する。

 

 

「相変わらずのSTRだな。流石は第2位だ」

 

「そっちこそ、10位のクロムもタンクであの順位は中々だと思うけど」

 

「それを言うならメイプルが…「あれはタンクじゃないいいな?」…おお、分かった」

 

 

そんなやり取りをしているとボスの間の前まで辿り着き、準備を整えると迷うことなくボスの間へと入っていく。

 

中は天井の高い広い部屋な奥行きで、一番奥には大樹がそびえ立っている。

 

 

しばらくすると開けた扉が閉まり、大樹が巨大な鹿に変わり足元に緑色の魔法陣が展開される。

 

 

「さて、やるとしますか」

 

「ああ、イズは下がって」

 

「そうさせてもらうわ」

 

 

俺とクロムは巨大な鹿を見上げ、イズを部屋の隅まで待機させるとボス目指して俺達は地面を斬った。

 

 

 

1時間後…

 

 

 

「此処が2層か」

 

 

1層の町からメニュー画面を開け2層に転送されると、俺は2層の町に降り立っていた。

 

見た感じは1層と雰囲気は変わらない気もするが、町並みは変わっている。

 

 

あの後、ボスに関しては簡単に撃破した。

 

始めはギミックによって攻撃が通らなかったが、鹿にぶら下がるリンゴが解除のキーだと気が付き俺が叩き落し、ギミックを解除した後は俺の暗黒を発動し2倍になったSTRでものを言わせザクザクと切りつけ、そこまで時間を掛からずに倒し切った。

 

 

1層の町に帰った後、クロム達とは別れ、馳せる気持ちに従って2層に降り立った。

 

 

「さてと先ずはマッピングから始めないとな。どんなものが待っているか楽しみだ」

 

 

まだ見ぬ冒険に期待を膨らませ笑みを浮かべると、俺は2層の町を歩き始めた。

 

 



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32話『 SAO生還者と消えない傷跡』

 

 

 

 

2層に到達して数日、平日なので学校で何時も通り、お昼休みにもう固定グループのように明久や杉並達と話していた。

 

 

「じゃあ、白峯さんはその地底湖の隠しダンジョンに挑もうとしてるんだな」

 

「うん、確か坂口くんって朝田さんから聞いたけど水泳と潜水持ってるのにどうして気が付かなかったの?」

 

「…ただ泳いでいただけでそこまで深くは潜らなかったから…見つからなかったのかもな」

 

 

こうやって8人で集まり話し合うのは何度目のことか話の花を咲かせている俺達男子面に嫉妬の視線もちらほら向けられる。

 

 

「楓このおかずと交換しよ」

 

「いいよ、それじゃあ…灯里ちゃんのこれとで」

 

「うんいいよ」

 

「なあ、本条さんと園部さんのやり取り見てるとよ……なんかこう…心が癒されていく気がしなくね?」

 

「渉。大げさだよ。といいたいけど本当に見てるだけで癒されるよね~」

 

「あんたたち、鼻伸びてるわよ」

 

「まあ、間近に受けるこの尊さ…男ならやられて仕方あるまい」

 

「そういう、杉並君は至って普通に見えるのだけど」

 

「鍛え方が違う」

 

「まあ、片や非常識の塊ではあるんだがな」

 

 

おかずを交換する本条さん(メイプル)園部さん (ソフィー)

 

その光景を見て本人も気づかずに鼻の下を伸ばす板橋 (ワタル)明久 (アキ)にそれをジト目で指摘する朝田さん (シノン)

 

そして杉並 (スギナミ)が理由を淡々と述べる中その中心にいる

 

そんな中俺は本条さんを見て本条さん(メイプル)がかなりぶっ飛んだプレイヤーであることを内心苦笑いに尽きない。

 

 

そんな楽しい団欒を交えた昼休みが過ぎる中教室の戸が開き外から一人の女子生徒が入ってくる。

 

 

 

「あなたが…坂口くん…だよね」

 

「ん?えっと君は…」

 

 

当たり前だが此処の制服を着ておしとやかな少女が俺の元にやってくる。

 

見た限りこのクラスの生徒ではないし、中学が同じだった?とかそんな関係だろうかと考えていると彼女の表情はとても穏やかなものではなく何処か怒りが煮えたぎっているように見えた。

 

 

 

「どうして…」

 

「?」

 

「どうして、あなたはそうやってのうのうと生きていられるの!?」

 

「……え?それはどういう…」

 

 

女子生徒から放たれたそれは非難の言葉だった。いきなりのことで俺や周囲は凍り付いたように固まりどういうことなのか理解が追い付かなかったが、怒りが収まらない彼女は言葉を続ける。

 

 

「あのゲームで生き残ったあなたがこんなところにいて……良くも平気でいられるよね!?」

 

「っ!!」

 

 

女子生徒のその言葉で漸く彼女の怒りの根元が見える。彼女はきっとSAOに関係する何かを持っている。しかも好意的ではなく憎悪を

 

 

「ま、まって!?えっと気のせいじゃ…」

 

「部外者は黙っていて!?どうして早く助けてくれなかったの!?助けてくれたら……彼は……っ!死んだりなんかしなかった!!」

 

「っ!!」

 

 

明久がはぐらかそうとするが一喝して押し黙らせるとまた俺に睨みつける。そうか、理解した…彼女がなぜ俺に憎悪を向けているのか……きっと、彼女にとって大切な人があちらで全損になって死んだ…それもクリアされる少し前だったのかもしれない。

 

 

「返して……私の大切なものを返してよ!!」

 

 

彼女の言葉が俺の癒えていない傷跡に突き刺さる。きっと俺に当たることは間違っているだろうが目の前に彼女の知り合いと同じ境遇者がいて、彼女はいてもたってもいられなくなったんだろう。

 

 

 

「何の騒ぎだ!?」

 

 

騒ぎをかけてきたのか、休み時間なのに教師がやってきて生徒から事情を聴くと、直ぐに女子生徒と俺を連れて教室を後にした。

 

 

 

 

 

詩乃SIDE

 

 

いきなりのことだった。

 

突然やってきた女子生徒に罵声を浴びせられ、今まで見たこともないぐらいに顔色を悪くしていた坂口くんは、生徒指導の西村先生に連れられて行き、残された教室内ではしばらく騒然とした後、坂口くんは昼休みになっても帰って来ることはなかった。

 

 

「授業を始める……っと、その前に坂口は気分を悪くして早退した……気になってる奴も多いだろうが、あまり気にするなよ」

 

 

「……大丈夫なのよね…あいつ……」

 

 

とてもそうは思えない。それにあれはまるで、銃に関してトラウマを持つ私のようで……

 

 

「っ!!」

 

「ん?おい朝田。顔色が悪いようだが大丈夫か?無理なら保健室に……」

 

「だ、大丈夫です…」

 

 

何とかこみ上げる吐き気を抑え込み、みんなに悟られないようにする私は先生に問題ないと言い、授業を受けた。

 

 

 

そして2時限の授業を終えて放課後、帰宅した生徒もそれなりにいるがまだ何人か教室に残っている。

 

私達もその中の1グループで、みんな坂口くんのことが心配でならない表情で一か所に集まっていた。

 

 

「…坂口くん……大丈夫かな?」

 

「楓が気負いすぎることはないだろうけど……あれはただごとじゃあなかっただろうしね。ねえ、吉井君」

 

「え?何かな?」

 

 

早退した坂口くんのことを気にして落ち込んでいる様子の楓に、理沙もそんな楓に対してのフォローをしながら、あの時唯一坂口くんのフォローをしようとした吉井君に声をかける。

 

 

「あんまりこんなこと聞いちゃいけないのは分かってるんだけど…坂口くん…って生還者…ということでいいんだよね」

 

「……」

 

「間違ってたら、ごめんなさい。でもそうだとすると……「うん、そうだよ」……そっか、やっぱり、それなら色々納得もできるわ」

 

 

二人の間でコミュニケーションがしっかりと取られる中、私達は端的な単語だけで話がついてこれず、説明を求めようとすると担任の先生がこっちにやってくる。

 

 

 

「ああ吉井、ちょっといいか?」

 

「え?は、はい」

 

「坂口のことでなんだが…荷物置きっぱなしで早退したから、届けないと行けないんだが、先生は外せない用事があって持っていけない。だから同じ中学で仲の良い吉井が坂口の荷物を家まで持っていってくれないか?」

 

「別に構いませんけど」

 

「そうか、じゃあ頼んだぞ」

 

 

そう言って担任も教室から去っていき、視線は吉井君に向けられる中、理沙が手を叩き口を開ける。

 

 

「色々聞きたいことはあるけど、ここで話せる内容じゃないし…みんなで坂口くんの家まで行きましょう。その道中で生還者についても聞くとして」

 

 

そう言って私達を纏める理沙は、私達と一緒に坂口くんの机にある教材や荷物を坂口くんの鞄に纏めると教室を後にした



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33話『SAO生還者と訪問』

 

学校からいつもの帰る道とは別の道をみんなと一緒に歩いていき、暫くすると歩きながら理沙が口を開けた。

 

「まず、改めて確認するけど、坂口くん……今はサイトって言わせてもらうけど、彼は生還者。これは間違いないよね?」

「うん、太一はあんまりそのことを言わないけど、僕と太一の中学出身は大体の人が知ってるかな。」

 

理沙の問いに吉井君は肯定し、そっかと事態を重く見ている理沙は顎に手を当てて考える。

そんな中、流石に端的で坂口くんが何なのか、それが今一つ私たちには分からなかった。

 

「えっと、理沙、吉井君も…出来れば私たちにもわかるように言って欲しいんだけど」

 

私たちの疑問に先立って、灯里が困ったように手を上げて、二人に尋ねると二人とも、ああそうかと私たちは分かってる前提だと思っていたようで改めてそこらへんを説明しようと口を動かそうとした時、後ろにいた杉並くんが先に声を上げた。

 

「ふむ、ならば生還者の前にSAOという言葉を付け足せば、自ずとわかってくるだろう」

「杉並君、わかってたの!?」

 

「というか、その口ぶり、大体坂口くんの素性も知ってたぽいんだけど」

「ふっ、この俺の情報網を甘く見ないでもらおうか。坂口がある日から2年以上も出席していないという事実とその始まった期間を考えれば、推測することは簡単だ」

 

どや顔でいきり立つ杉並くん。

 

だがその情報は本当に裏付けされているのか、吉井君の顔が引きつっている。

 

杉並君が言ったSAOという言葉。それを意味することは誰だって知っていることだった。

 

「ねえ、吉井くん、本当なの?坂口くんが……あのSAO……HPが全損すれば死ぬ、デスゲームに居たって」

 

 

正直信じられない気持ちだった。

 

 

ソードアート・オンライン…2年前、始めてフルダイブ技術を用いて作られた VRMMOで、それはゲームマスター茅場晶彦によって本当の命を賭けたデスゲームへと変貌し、4000人近い人が亡くなった過去最大のサイバーテロと呼ばれている。

 

噂ではSAOに巻き込まれた学生の専用学校があると聞いたことがあるけど、坂口くんはそこに行かなかったということだろうか

 

 

 

「うん、元々僕も一緒にプレイする予定だったんだけどね。ちょっと家庭の事情で当日のプレイが出来なかったんだ。巻き込まれなかったことは幸いなんだけど…太一のことを考えると……複雑なんだ」

 

そう言いながら、落ち込んで表情を暗くする吉井くん。それに理沙も便乗するように口を開けた。

 

「それは仕方ないわよ。実際、私も絶対プレイしてやるって息巻いて、蓋を開けてみれば命がけっていうデスゲームだった。その事実に私も一時期VRMMOが怖くなったわ」

 

 

「そういえば、理沙もSAOは絶対買うって悔しがってたもんね」

 

 

理沙の言葉に実際、その場にいた楓がその時のことを頭の中で思い出しているようだ。

 

 

「でもよ、どうして坂口はそのことを隠していたんだ?」

 

 

「板橋よ、打ち明けてそれで終わりというわけにはいかんのだ」

 

 

「そうなのよね。SAO生還者のことを批判する人は少なくないし多くの人たちは生還者は人格異常者っていうのが常識になってるからね。煙たがっているのは事実なのよ」

 

 

今日の一件もその影響が大きいと理沙が頷く。

 

でも表情から納得なんてしていないように見えた。私も坂口くんとは何度も話したから人柄は知っているから

 

だからこそ、話し合わないと

 

そう心の内に吉井くんが足を止める。ある一軒家に顔を向ける。

 

 

ここが坂口くんの家なんだ

 

立派な一軒家で吉井くんが家のインターホンを鳴らすと直ぐにインターホン越しから声が聞こえてくる。

 

 

「はい、どちら様でしょうか?」

 

「あっ、明久です……その……太一は帰ってきてますか?」

 

「明久くん?え?太一……まだ帰ってきてないみたいだけど」

 

 

インターホン越しの……女性で多分、坂口くんの母親と思われるその声は家に坂口くんがいるかという問を否定した。

 

 

坂口くんがまだ帰ってきていない……だが早退したのはお昼過ぎで帰ってきていないというのは不自然すぎた。

 

 

「……太一に何かあったのね……入ってきて頂戴」

 

 

そう言うと玄関の扉のロックを解除した音が鳴り、私達は頷き合うと中へと入っていき、吉井くんが先頭にリビングに向かう。

 

 

リビングには坂口くんの母親が居て、吉井くん1人だと思っていたのか私達を見て目を大きくする。

 

 

「あらあら、大所帯で来るなんて……えっと……」

 

「みんな、太一の友達なんです。安心してください」

 

 

坂口くんのお母さんを落ち着かせるとリビングのソファーや床に座って、ことの経緯を話した。

 

 

 

「……そう……やっぱりこういうことになっちゃったのね……」

 

「……え?わかってたんですか?」

 

 

驚く吉井くんに坂口くんのお母さんはそれはもちろんと予想していたのか、あまり驚くことはしなかったが顔色は暗くなっていた。

 

 

「地元の学校に行けば自ずとそうなって……太一にも忠告したわ。けどあの子はそれで良いって……あの子に取ってSAOは過酷なものだったのかもしれない……だからこそ、関わりのある高校には行きたくはなかったのかも」

 

 

そう落ち込んだ表情を浮かべる坂口くんのお母さん。

 

それからしばらく坂口くんの家に滞在したが滞在中、坂口くんが帰って来ることはなかった。



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34話『SAO生還者と再会』

どうも
FFⅦRのストーリーも先週終わったけど今度は聖剣伝説3をプレイしていて中々執筆に力が入りません。
一度ストックをため込むべきかもしれませんね


 

 

「……はぁ……何をしているんだろうな……俺は」

 

 

窓から見える街並みを見ながら、俺は憂鬱気味にそんな言葉を口走った。

 

 

体調が優れない……というより気分が優れなかった俺はそのまま家には戻らず、学校を去った足で電車に乗り込んだ。

 

本来なら自宅待機するべきところだが……衝動に駆られ今にいたる。

 

そんなことを考えながらも制服だからか、一際他の利用客からの視線を感じながら気付かない振りで窓を眺め続ける。

 

 

《間もなく、○○駅……》

 

 

駅が近づいてきてアナウンスが車内に鳴り響く。宛てもなく電車に乗ったので特に降りる駅はなかった。

 

 

あてもなく唯々、電車から流れる景色を見ていると不意に声をかけられる。

 

 

「あの~景色をずっと見ているみたいですけど、何かあったんですか?」

 

 

とても若い女性の(聞きなれた)声……俺はその声の主に振り向くこともせずに少し話し相手をしてちょうどいいと、口を開けた。

 

 

「ちょっと、嫌なことを突き付けられて……憂鬱気味だったので、こうやって眺めて気を紛らわしているんです」

 

「それは、災難でしたね。でもそんな制服姿でこんな時間に居たら人目とか気にしませんか?」

 

「はは、家には親が居るんで……帰るのも気まずい気がして……」

 

「あはは、それは大変だね。」

 

 

今、色々とはぐらかしているとはいえ、胸の内の抱えていることを偶然話しかけられた人に打ち明けていることに何やってるんだろうと自分自身にそう思いながらも、流石にこれ以上迷惑は掛けられないと停車した駅で降りてUターンで家の最寄り……自分が電車に乗った駅まで戻ろうと電車が駅に止まり扉が開いたのも見計らって座席から立ち上がろうと足を動かそうとするが、そこでまた女性に声をかけられる。

 

 

「もう少し、お話しできたら嬉しいな……漸く、会えたんだもん。()()()()()

 

「え?」

 

 

今、この女性は何と言った?

 

その名前を知っているのはNWOだが顔を知らないというプレイヤーも多い。

 

だが、この女性はなんも躊躇いもなく確信づいている声音で俺のもう一つの名前を言い当てた。

 

NWOでないとするならば、もう一つ……あの世界(SAO)での知り合いということになる。

 

相手の顔を見ぬ気もしなかった俺は、その言葉に思わず話相手の顔を確認すると漸く誰なのかすぐに分かった。

 

 

髪は見慣れないベージュ色だが(見慣れた赤色だったが)、容姿や顔つきはあの時と同じなので直ぐにその人物の名前(プレイヤーネーム)を呟いた。

 

 

「レイン……」

 

「うん、こっちでは枳殻虹架(からたちにじか)だよ。扉閉まちゃったしもう少しお話でもしようか」

 

 

そう言って、枳殻虹架 (レイン)はクスッと笑みを零し、逃げ場などないと思わせる表情に俺は逃げられないと悟り、立ち上がりかけの腰をまた座席に腰かけた。

 

 

「……」

 

「無言は少し酷くないかな?まあ、この電車でサイトくんを見つけたときは本当に驚いたよ。」

 

「……それはこっちのセリフだ。大体、枳殻「虹架でいいよ」……虹架も学生だろう?なんだってこんなところに」

 

「ああ、私、SAOの学校には行かずに今は通信制の高校に通ってるから、それとサイトくんも名前教えてくれないかな?プレイヤーネームはリアルではタブだから」

 

「……坂口太一」

 

「太一くんか……えへへ」

 

 

俺の本名を知ったからか何故か上機嫌な笑みを浮かべる虹架。そんな彼女に疑問を持ちながらも、虹架はまた口を開けた。

 

 

「うーん、ここで話し合うのも、他の人に聞かれると不味いよね……それに太一くんの服装も目立つから……太一くん、時間あるよね?次の駅で降りて私の行きつけのお店で色々話し合おうか」

 

「……ご自由に……」

 

 

もう諦めた俺は流されるように虹架の提案を受け、承諾してくれたことに虹架は笑みを浮かべ、その光景を見て俺は小さくながら溜息を付いた。

 

 

 

次の駅で降り、駅からしばらく歩く中、ふと気になったことを口にする。

 

 

「なあ、虹架……他の七卓のメンバーはリアルでも交流あるのか?」

 

「……太一くん以外?うん、みんな知り合ってるよ。直接ってわけじゃないけどグループ通信で何度か話してるよ。」

 

「そうか……他のメンバーの所在とか分かるのか?」

 

「うん、ルフレとリュウは大学に進学、ブレイは通信制の学校で勉強しながら家業を継ぐ為に頑張ってて、フィリアはSAO生還者の学校に手頃のアパート借りて単身こっちに越してきたよ。後、キリンちゃんもSAO生還者の学校通おうとしてたみたいだけど、家族間の問題で行けなかったんだって」

 

「……そうか、みんな元気そうだな」

 

「うん、太一くんだけ消息が絶ってたからみんな心配してたよ。着いたよ、ここが私の行きつけのお店」

 

「……ダイシーカフェ?」

 

 

連れられてきたそこは細い路地にひっそりと佇むお店で、どこか入るのには少し勇気がいりそうな、そのお店に虹架は迷うことなく入っていき、俺も連れられて入ると内装も中々いい雰囲気を醸し出していてその上聞き覚えのある音楽が店内に流れていた。

 

 

「この曲アインクラッド50層主街区の……」

 

 

これを知ってるということはこの店の店主はSAO生還者、そう間違いないと考え、虹架も知ってる人だよと顔をこっちに向けて話すと、扉が開いた時に鳴った来客を知らせる呼び鈴で奥から現れた店主に俺は目を大きく開けた。

 

 

「いらっしゃい……お前、サイトか?」

 

「エ、エギル」

 

 

黒人の巨漢で頭がスキンヘッド、見に覚えがありすぎる。その男は俺と同じSAOの攻略組にいた。知り合いのエギルで間違いはなかった。

 

 



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『SAO生還者と再会②』

 

 

エギル……俺と同じSAO生還者であのラストバトルを同じく見届けることしか出来なかった……キリトの……数少ない友人。

 

 

「何俺の顔を見て辛気くさい顔してるんだよ……そんなところ突っ立ってないでカウンターに腰掛けたらどうだ?」

 

 

エギルにそう注意されると俺は戸惑いながらも頷き、こっちと虹架に手招きされてカウンター席に座る。

 

 

「さてと、此処なら色々話せるよね」

 

「確かに……ていうか、店持ってたのかよ……えっと……」

 

 

エギルを見て言葉を詰まらせる。そういえばエギルの本名を知らないし此処でエギルというのは御法度だろう。

 

 

「そういえば名乗ってなかったな。アンドリュー・ギルバート・ミルズだ。……長い名前だろ?普通にエギルで良いぞ」

 

「……ああ、そうだな」

 

「にしても、あったのは半年ぶりか……当時担当だった総務省に聞いてもお前だけ、所在が判らなかったから心配していたんだ」

 

「……そうだな」

 

 

俺の行方が判らなかったことに心配していたエギル。その事を聞いて俺は間を開けながらもそれに言葉を返した。

 

 

恐らく判らなかったではなく、知らせなかったのだろう。

 

 

SAOクリア当初の俺は現実を受け入れることが出来ず、約1ヶ月間、精神が不安定だった。

 

両親にすらまともに話せないほど酷く……漸く落ち着き、家族とまともに対面できたのも12月の中頃だった。

 

もし仮にその期間に誰かと会っていれば不安定な精神が傾き、俺は俺ではなかったのかもしれない。

 

嘗ての俺の状況を鑑みれば総務省のとった措置は適切だった。

 

 

「……それじゃあ、話してくれる?どうして太一くんがこんな昼間に電車に乗ってたの?平日だからまだ授業中だよね?」

 

 

隣のカウンター席に座る虹架が心配している顔で俺の顔を覗き込むと、俺も徐に口を開きことの経緯を説明した。

 

 

「そっか……そんなことがあったんだね」

 

「SAOの被害者か……居るだろうとは思ってたがお前が責められる必要はねえだろう」

 

 

説明を終え、エギルと虹架は今の俺の現状がとても良いものではないことを聞くと難しい顔つきで俺は関係ないと優しくフォローする。

 

 

「……それでも、気にしないわけには行かないんだよ」

 

 

だがそんなフォローも俺は簡単には割り切れることはできなかった。

 

 

「まあ、落ち着け……ほらアイスコーヒーだ。サービスだお代は良い」

 

 

気分を高ぶる俺に落ち着かせようと注いでくれたコーヒーを目の前のカウンターに差し出すと、砂糖とミルクを入れて一口飲んで一息つく。エギルがそう言えばと近場のパソコンを見せるとその映る画面に顰めっ面になった。

 

どうやら動画のようだが、この映像を見て何なのか俺は直ぐに分かった。

 

俺の表情を見て、虹架も隣から顔を寄せてパソコンに映る映像を見ると直ぐに俺に顔を向けてくる。

 

 

「これって……サイトくんだよね?」

 

「ああ、NWO第一回イベントの映像だ。だがどうやってこんな映像を……」

 

「俺は色々と伝手があってな。そのうちの一人から、この映像が送られてきたってわけだ」

 

 

 

そういうと、また視線をパソコンに移す俺。場面は俺とドレットが戦っているところで、隣の虹架は集中して映像を見ていた。

 

 

「……太一くん。今もVRMMOやってたんだね」

 

「まあな。結局あんなことがあったのにやめられなかった……」

 

 

虹架の言う通り、二年間もSAOに囚われていた噂では生き残れたプレイヤーの殆どはVRMMOから離れていく人は多い。俺みたいなまたのめりこむ人間が稀というものだろう。

 

 

「ううん、別に気にしてないよ。でもどうしてって気になるかな」

 

「……多分、俺は今もアインクラッドに残した物を追いかけているんだろうと思う」

 

「アインクラッド?どういうことだ?」

 

 

アインクラッドっという言葉にエギルは眉をひそめる。その言葉が出れば生還者にとって黙っていられるわけがない。

 

 

「あの日……キリトとヒースクリフの相打ち……俺は見ることしかできなかった」

 

「何も出来なかった俺がとても情けなくて……その未練がまだあの世界に残っているから……」

 

「だから、NWOをやってるってか?」

 

「……似ているあの世界に俺の残したものがあるってわけじゃない……でももしかすれば……」

 

 

確証はない、根拠もない……でもあるのかもしれない

 

そんな雲を掴む可能性で深刻な表情で考えているとエギルが俺の顔を見て話し遮ってくる。

 

 

「サイト……ゲームをやってるのは俺にとっても喜ばしいことだがSAOに拘るのはやめろ。俺やキリトたちだってそんなこと望んだりなんてしてねえよ」

 

「……キリト……か、あいつなら確かにそう言いそうだな。けど俺にはとても簡単に忘れることはできない。俺はいや、俺達は確かにSAOから解放されたのかもしれない。でもそれは生き残ったわけじゃない。生かされたんだアインクラッドで散っていったキリトたちの命と引き換えに」

 

「お、おい!?」

 

 

……気分がとても損ねた俺は、コーヒーを飲み干すと席を立ち店の玄関に手をかける。

 

 

「それじゃあ、俺は行くとするよ……また会えて話が出来て嬉しかった」

 

「待ってって!サイト……実は来月に此処でSAO生還者のパーティーがあるもしよかったらお前も……」

 

「悪いエギル。その話は俺は遠慮していく。俺にそこに行く資格はない」

 

 

そう言い残して俺は扉を開けて外の路地を駅に向かって歩き出した。

 

 

 

 

NOSIDE

 

 

 

「……サイトくん」

 

「あれは重症だ」

 

「…っ!」

 

「待て!レイン」

 

 

サイトが去ったダイシーカフェで扉を見ながらサイトの様子を見て二人の顔に影を落とす。

 

話せばわかると思っていた。しかし、二人の想像をはるかに超えるほどにサイトは心に深い傷を負っていたことに何もできなった。

 

呆然としていた虹架も急いで本当の真実を話そうと席から勢いよく立ち上がり、後を追おうとするがエギルに呼び止められる。

 

 

「早くしないと、このままじゃ」

 

「わかってる!だがな、今のあいつに真実を告げるのはやめておいたほうがいい」

 

「ど、どうして!?それを知ったらサイトくんだって……」

 

「あいつの精神はSAOのことに関することになれば、かなり不安定だ。下手に刺激してあいつの精神が崩壊でもしてみろ。レインの知るあいつは完全にいなくなる」

 

「じゃあ、ただ見ていることしかできないの?」

 

「……今の段階で真実を話すのはダメなだけだ。いつかは話さないと行けなくなる」

 

「……サイトくん」

 

 

悲しげに去っていったサイトを思って下唇をかみしめる虹架。そんな虹架をみて溜息を零すエギルは口を開ける。

 

 

「でもまあ、どちみち今の状態で一人にさせるのも危険だな……レイン気晴らしでサイトを追いかけろ。それとこの件は誰にも言わねえ。俺の知る限り下手に教えれば間違いなくサイトのために動き出しそうなお人よしが大勢なんでな」

 

「エギルさん……ありがとう」

 

 

そう言って虹架もサイトの後を追いかけ、客がいなくなったダイシーカフェでエギルはやれやれと言葉を零し、カウンターに置かれている飲み干された二つのカップを洗い始めた。

 

 



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36話『SAO生還者とデート』

……中々執筆が進まない。
コロナによる外出自粛の中ゴールデンウイークいかが過ごしでしたか?
自分は通常通りでした(遠目)
休業することなく回り続けましたようちの会社は……元々ゴールデンウイークも通常通り動いてるから……ゴールデンウイークなんてないも等しかったです……
他からしたら仕事出来て良いなとか言われそうだけど……俺としては休みもう少し欲しかったな


 

 

「はぁ……はぁ……サイトくん、何処に……」

 

 

エギルと少し話し合った後サイトの後を追いかける虹架。

 

 

時刻は3時を回り、学校が終わった学生の姿がちらほら見えて目立っていた制服姿も完全に周囲と溶け込める時間帯になっていた。

 

 

(どこ!?サイトくん)

 

 

あのまま別れるわけには行かない。そう焦る気持ちで探す虹架は視界に駅へと向かっている太一の後ろ姿を目に捉えた。

 

 

「太一くん!」

 

 

息を上がりながら、太一の腕を掴む虹架。

 

太一も振り返ってエギルの店から追ってきたことに驚いた顔を浮かべた後。体を振り返らせてどうしたんだと冷静に言葉を返した。

 

 

「……虹架」

 

「……な、何とか追いついた」

 

「……まだ何か用か?」

 

 

ちょっと冷たい言葉を虹架に向ける太一。

 

彼からしたら嬉しくはあるがこれ以上一緒に居る必要もないし、目の前で死んでしまったキリトとアスナのことを昨日のように思い出すために余り関わりたくもなかった。

 

 

「関係あるよ!……そんな状態の太一くんを放っておけないし……」

 

「……レインが気にするほどのことじゃないよ」

 

「むっ、太一くん。私のことは虹架だよ。そういった些細なことからぼろが出てる」

 

「……」

 

 

心配する虹架に無理して問題ないと言い張る太一だがゲームネームで呼んだことを指摘され無理していることを見抜かれ太一は何も言えなかった。

 

しばらく立ち止まり往来する人が二人の左右を行き来する中お互い何も言わずにいると先に口を開けたのは虹架だった。

 

 

「ここで立ち止まってるのもなんだから何処か行かない?」

 

「どこかって……もう帰る予定なんだが」

 

「……えっとまだ時間あるよね。その……」

 

(ここで手を離したら一生後悔する。何としても一緒にいなくちゃ)

 

「……デート」

 

「はい?」

 

 

このままここに居ても往来の邪魔になると考え、また何処かに一緒に移動しようと虹架が促す。だがもう家に帰ろうとしていた太一は直ぐに話を終えて駅に向かおうと話しを短く終えようとすると、慌てた虹架が咄嗟に言葉を零すと流石に予想していなかった太一も短い驚きの声を上げた。

 

頬を赤くして指で前髪をいじる虹架は、また口にするのも恥ずかしりながらまた口を開けた。

 

 

「デート、しよっか」

 

 

 

 

太一SIDE

 

 

どうしてこうなった。

 

エギルの店を出た後、時間も制服があまり目立たない時間になっていたから人目も気にすることもなかった。

 

そのまま駅に直行するだけだったというのに今現在というと……

 

 

「~~♪」

 

 

狭い小部屋に中央にテーブルが置かれその上にセルフで取ってきたジュースと軽い食べ物が置かれ、俺と反対側のソファーに座る虹架は流れる曲に沿って歌詞を楽し気に歌い、軽くリズムよく振り付けもしている。

 

あの虹架のデートという言葉に呆気を取られ、そのまま連れられて来たのは駅前のカラオケ店だった。

 

 

突拍子もないデートいうことでプランなんて元からないため少し歩きながら悩んだ末、虹架がカラオケに行こうと言いまだ空いていたカラオケ店に簡単に入れた。

 

 

「ふう、歌った歌った。ねえ、太一くんも何か歌ったら?」

 

「俺はいい、虹架みたいに歌には自信ないから」

 

「そうかな?仮にそうだとしても私は気にしないよ。ほら!……何だったら私とデュエット曲でも歌う?」

 

「歌うつもりはないぞ」

 

 

そう言って虹架はカラオケボックスの隣に備え付けられた収納ケースからマイクを取り出し、俺に差し出してくる。

 

俺は躊躇いながらも手に取るが虹架とデュエットは遠慮した。

 

 

「乗り悪いよ。もう一曲行って見よーっと」

 

「……なあ虹架……どうしてあんなことを言ったんだ?」

 

「……あははは、どうしてなんだろうね。わたしも咄嗟に出ちゃった言葉だったから……あの後、わたし自身動揺してたから……でもそんな太一くんもわたしの誘い断らなかったよね?」

 

「……まあな」

 

 

そっくりそのまま返されて、ぐうの音もでない。

 

そんな俺を見てにやにやと笑みを浮かべる虹架。そんな顔も一変して真剣な顔つきになると俺に顔を向けて口を開けた。

 

 

「ねえ、太一くん……太一くんはNWOかなりやりこんでるんだよね」

 

「?ああ、それはもちろん」

 

 

いきなり虹架も知っていることを改めて聞かれると俺は戸惑いながら頷き、それを確認した虹架が一度深呼吸で息を整えると真っ直ぐ俺を見つめ口を開けた。

 

 

「じゃあ、太一くんの専属鍛治士(スミス)……は必要だよね」

 

「ちょっと待て!?まさか」

 

「うん、私……NWOにログインしてみようと思う」

 

 

虹架……いやレインから出た言葉はあまりにも俺にとって重大な出来事で、告げられた終始何も言えなかった。

 



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37話『SAO生還者とその後』

 

 

 

《全く、漸く連絡してきたけど今何時だと思ってるの?》

 

「……10時半」

 

《うん、そうだよね。いくらなんでも遅すぎやしないかな?》

 

 

そう言いながら、ベッドで仰向けになってスマホで夜中に連絡を寄こした俺に対して、少し不機嫌ながらも明久の質問に横目で時計を見ながら答えると案の定の答えが飛んでくる。

 

 

虹架と別れ、気分もある程度戻った俺が家に帰ったのは8時過ぎ

 

当然連絡を1つの寄こさなかったことで、父さんも母さんもかなり怒っていて2時間もの説教を受け、解放された俺は風呂に入って髪を乾かした後、学校に残してきた荷物などを明久達が持ってきてくれていたことを母さんに聞き、そのお礼の為に明久に連絡した。

 

 

《まあ、太一が無事だったからよかったけど……おばさんもものすごく心配してたよ》

 

「ああ、2時間ほどこっぴどく怒られた」

 

 

まあ、仕方がないことなのだがっと呟き……非は完全にこちらにあった為に反省している俺はそれからあれこれ明久と話し合った後、お休みと言って電話を切り、一度時計を確認すると11時前で改めて今日あったことを考える

 

 

まず、ことの発端である学校での出来事。

 

これに関しては、俺の噂を聞き付けたSAO被害者による一方的な誹謗中傷で本来なら俺達SAO生還者が受けるのは角違いと言っていい。

 

だが元凶の茅場晶彦は死亡し、運営のアーガスも解体されている以上、その矛先はSAO関係者なら誰でも良くなっているのかもしれない。

 

この件に関しても学校側は重く感じているのか……しばらくの間、俺は自宅謹慎という連絡が夕方頃学校からあったらしい。

 

明らかに被害者である俺より誹謗中傷した方に非があるだろうと思うが、これは生活指導の西村先生の提案らしい。

 

母さんの話を聞く限りでも、今俺がSAO生還者という話は学校中に広まっている。

 

元々二年間教育の遅れとSAOでも起きていた犯罪などで社会不適合者と見られることが多いSAO生還者。そんな中いつも通り登校すれば腫れ物を見る目で見られより一層の淘汰されることを見越して、騒ぎが鎮静化するまでの一時的な措置として取られた。

 

この措置は学園側と俺とで適切な措置が取られている

 

先ず学園側は先も言った通り、原因である俺を謹慎にして学園から離れさせ、騒ぎの鎮静化とSAO生還者でも通えるようにする措置を施す。その間謹慎せずに登校しようものなら事態の悪化も懸念される。

 

俺の措置も、もし登校し誹謗中傷を受け続けて精神的に異常をきたさない為のもの。

 

仮に今回の件が収まらなかったら、仕方のないことだがきっと学園側はSAO専用学校の編入を勧めてくるだろう。

 

 

 

これからの学校生活がどうなるか不安になりながら一度頭を切り替え別のことを考えることにする。

 

 

「レインのことは……どうしようもないか」

 

 

そう呟いて溜息を零す。

 

あのカラオケ店でのNWOをプレイするというレイン……基虹架の言葉は本当に驚かされた。

 

SAO生還者の殆どはVRMMOというジャンルをよく思っていない理由として、二年間もアインクラッドに閉じ込められていたんだ。もしまたあの時の状況になったらという懸念がVRMMOを遠ざける要因となっている。

 

それでもあの興奮が忘れられないとプレイしている人間もいるとは聞くが、案の定虹架は前者の人間で七卓のみんなとの交友はまだあるもののVRMMO自体からは遠ざかっているようだった。

 

NWOを始めるといった時も、虹架の身体が小さく震えていたのが見えて見栄を張るなと心配して声をかけたが、レインの気持ちがくじけることはなかった。

 

 

”心配してくれてありがとうね。その気持ちだけでも嬉しいよ。でもね、サイトくんが困ってるのに助けないほど、私達七卓の繋がりは脆くないよ”

 

 

そう言われて改めてSAOが終わっても俺達の繋がりの強さを思い知らされることになった。

 

虹架の言う通り、俺が未だにSAOのことを引きづっているのならみんな手を貸してくれるだろう。

 

ギルド方針は無く、みんな点でバラバラな方針でギルドらしからぬギルドだった。

 

だが、誰かが困っている時はお互い様と団結して事に辺りお互い支えあっていた。

 

だから今回も同じ仲間だから放って置く事はできないだろう。

 

 

そんな仲間のことで少し嬉しくて微笑んでいるとスマホに着信が入る。

 

 

「虹架からか」

 

 

スマホを操作して確認すると、着信主は虹架からで内容を見ると俺は眉をひそめた。

 

 

[夜分ゴメンね。取りあえず、アミュスフィアとNWOのカセットは買ったよ。予定もあるからプレイするのは今週の土曜日になると思う。それともう一人同じタイミングで七卓のメンバーと始めるから、誰なのかは会ってからのお楽しみだよ]

 

 

といった内容だった。

 

今日言ったことで、今日中にゲームプレイするためのハードとソフト一式を揃えるとは思っていなかったが気になるのは後半の方

 

 

レインの他にも七卓の誰かがやってくる。

 

一体誰が。ルフレとリュウは大学に行ってまだ慣れていないから確率は低い。

 

キリンも同じく。キリンの家はかなり厳しいみたいでそれも確率は低いそれならブレイとフィリアのどちらかだが……

 

 

「それはあってからのお楽しみってことか……」

 

 

一体誰が来るのか……仲間との再会が迫る中、期待と不安を抱きながら俺は目を閉じ、しばらくすると俺は眠りに落ちていた。

 

 



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