出張、隣の世界の外部講師‼ 夢の世界の特別指南……なのか? (開屋)
しおりを挟む
出張、隣の世界の外部講師‼ 夢の世界の特別指南....なのか?
時系列としてはアニメ版最終回、もしくは単行本2巻(シャミ子が桃の眷属になるよう持ちかける話)の少し前くらいの所です。
「あ、あのごせんぞ?一体どんな夢の吹き回しでこんなことに....?」
シャミ子は、リリスの封印空間に突然呼び出された。
「おお、よく来たなシャミ子!ここ最近は魂のセンサーが大分バリ3になってきてるから、センサーを繋ぐのもだいぶ楽になって来たぞ!いい傾向だ!」
リリスは妙に上機嫌である。
「あ、ありがとうございま....す?ところで今日はどうしたのですか?」
「今日は魔法少女討伐の大きな助けになる人物を連れて来たんだ。負け続きのシャミ子の指南役としてきっと助けになるに違いないぞ」
リリスは得意気に言う。
「桃をやっつけるのに....助けになる?」
シャミ子にはリリスの言っていることがイマイチピンと来ない。
「そもそも桃をやっつけて生き血を得るなんてそれこそ夢じゃないと無理ですよ。まさか前みたいに夢を操って10ガロン分の血を持ってきてもらうなんてそんなこと—」
「だーもう!お主は毎度毎度口を開けば否定から入る!そんな様子だからいつまで経ってもあの魔法少女を討ち取れんのだ。泣き言だけでは勝ち戦も勝てんぞ!」
「でも確かごせんぞも昔から戦には....」
「OK分かったこの話はお互いに触れないことで手打ちにするぞ」
痛い所を突かれかけたリリスは会話を一度切り上けた。平常運転である。こんな会話をしている最中でも今の夢空間の中でシャミ子は突っ込まなければならない所があるのというのに。
「それで、突っ込むタイミングを完全に見失っていたのですが....そちらの方は?」
ようやくこの空間の中にいる『3人目』にシャミ子が触れる。
「そうだったな、まだ紹介できていなかった。このお方こそ今回シャミ子の指南をしてもらう....名前は確か、ドレミファ....」
「『ドレミー・スイート』。よろしくね、シャドウミストレス優子さん」
ドレミ―と名乗る女性がそう言って小さく微笑む。
「な、何か久しぶりにフルネームで呼ばれました....何か久しぶりに旧友に会って気まずい感じのやつに似てる気がします....ド、ドレミ―さん、でしたっけ?よろしくお願いします」
少し変な部分に気を取られたが、シャミ子はドレミ―に頭を下げた。
「そういえばごせんぞはこの人が私の指南役って言ってましたが....この人ってどんな方なんですか?」
シャミ子がリリスに尋ねる。
「そうだな、まずはそこの説明からだったな。とはいっても余もふんわりとしか知らないのだがな」
「そんなフレンチトーストの食感みたいな感覚で外部講師呼んじゃって良かったんですか!?」
「まぁそこは深く気にするな。簡単に言えばこのお方は我が一族と同じように夢に干渉することができるんだ。」
「マジですか!?」
シャミ子がドレミーの方を見て居直る。
「ええ、それに夢を創ったりも一応できますよ」
「創る!?この方スゴいですよごせんぞ!カタログスペックが完全に私達より上ですよ!」
「....確かに事実かも知れんが言わぬが花だぞ、まぁそんなことはどうだっていい。今日はこの方に色々教わることになるからな」
そう言ってリリスも居直る。
「...ごせんぞも気になってるんですか?」
「あくまで余は先生の補助だ。色々こういった話をするにあたって補足を挟まなければ通じない所があるかもだからな。そりゃまぁ確かに気になる話も個人的にあるから聞いときたいってのもあるが....改めて言うが余は補助係だ。」
「(数千年前のご先祖が私と同じ生徒になってます....)」
「そういえば先生は私たちの一族の方なんですが?」
目を輝かせてシャミ子が訊く。
「いえ違います。私は夢の世界の妖怪です」
「この方はいわゆる『獏』だそうだ。一般的に悪夢を食うと言われてるアレだな」
最初の宣言通りリリスが補助に入る。
「へぇ~、獏なんですか!初めて見ました!きっとこれから先拝むことがないでしょうし、今の内に姿を焼き付けておきます!」
シャミ子はドレミーの方をじっと見る。
「他に何か気になることはあります?」
尊敬と好奇心の眼差しを受けるドレミーは優しくシャミ子に訊く。
「えっと、そうですね.....そもそもこれ聞いちゃって良いか分からないんですけど、どうしてこんな弱小まぞくの所に来て下さったんですか?」
「シャ、シャミ子よ....その卑下は意図しないところでこちらに跳弾が飛んできてるぞ....」
リリス予期せぬ精神的ダメージを負った。ドレミーはそちらをリリスの方を見たあとに答える。
「まずここは貴方たちの世界とは違う場所です」
「え?」
「ここは私の世界。それを元の貴方たちのいる世界のモノに合わせている、といった感じです」
「そうだったんですかごせんぞ!?」
「お、おお。そうだ。誰かがシャミ子の世界のよく分からない本をお供のつもりかは知らんが置いて行ってな。それでこの方のことを知ったんだ」
リリスが説明する。それに続く形でドレミーは
「それでリリスさんの夢に私が出る機会があって、その時に夢の中で頼まれたので、今こうしてる訳です」
と、補足する。
「ということは、えっと....」
「私の世界にリリスさんを呼び出して、その上でリリスさんに貴方をここの世界に呼んでもらった、というわけです。つまり今は実際には寝ているというわけです」
「夢魔が別の夢の世界に呼び出された、ってことですか。何かマトリョーシカみたいですね....」
「なぁシャミ子よ、どうしてお主の例えと言うのは余も含んで少し惨めな感じになっちゃうのだ?」
「へぇ....それにしてもどうして私たちにこんな機会を作ってくれたのか気になります」
「それは....そうですね、一つだけ忠告をしておきたかったと言うのが―」
「ちゅ、忠告ですか!?もしかしてまぞくとしての操業停止命令を....」
「別にそこまで言うつもりはありません。ただ貴方の力は使い方次第では重大な事態をも引き起こす恐れがあります。なので扱いには気を付けること、というのを伝えておきたかったんです。もっとも今の貴方ならその心配は無いとは思いますが....一応の忠告と言う感じです」
「そ、そうなんですか....気をつけないといけないんですね....でも私たちの力ってそんなにスゴいものだったんですか....なんだか少し自信がついた気がします!」
シャミ子は目を輝かせる。
「(まぁ、有意に使えるのかも自分次第ですが....ね)」
「今何か言いました?」
「いえ、何も言ってませんよ」
「それで本題なんですが、私が桃に勝てるようになるにはどうしたらいいでしょうか?」
シャミ子はドレミーに尋ねた。
「予めリリスさんから話は聞いていますが....正直なところ真っ直ぐにぶつかって勝つといつのは、かなり難しいことだと思います」
「うぅっ、このレベルの方にこうまで直接的に言われるとより現実がすぐ近くに感じる....」
「ただし勝つと言っても、勝負の決まりと言うのは人それぞれです。なので『貴方なりの勝ち方』を見つければいいのです」
「私なりの勝ち方....」
「あまり具体的な事を教えることはできないのは申し訳ありませんが、今の貴方ならそれは可能だと思います」
「い、いやいやとんでもない!こんな含蓄のあるアドバイスもらえることはありませんでしたから!その考え方は大事にしたいと思います!」
「シャミ子よ、余はもう負う傷もないぞ」
「そろそろ貴方の本体が起きる頃ですね」
「そんなぁ....もう少しお話聞きたかったです....」
「まぁこれに関しては仕方ない。....この前のパンケーキの一件みたいなのはもうごめんだがな」
「あ、あれはごせんぞだって笑顔で見送ってくれたじゃないですか!」
「とは言え余の話を忘れるなど言語道断!第一お主は―」
「まぁまぁ、それくらいで大丈夫でしょう。きっと彼女も反省しています」
「むぅ、そう言われると何も言えぬ....」
「(この短期間で明確なヒエラルキーが完成してます....)」
ドレミーとリリスのやり取りを見てシャミ子は心の中で呟いた。
「コホン....とりあえず今日はお主にとって参考になることがあったのなら余は満足だ」
「はい、とってもタメになりました!先生にこせんぞ、今日はありがとうございました!」
「役立てたのなら私もよかったです。これからも頑張って下さいね」
「ええ、そしてご先祖様の封印も完全に解いて見せます!」
「シャ、シャミ子....!」
『....ミ子ー....シャミ子ー!早く起きないと学校遅刻しますよー!』
「あっ、お母さんの声....私はそろそろみたいです」
「何でそんな縁起でもない言い方をお主は....まったく、余り無理をし過ぎるんじゃないぞ!これも余からのありがたい―」
「ふあぁ....おはようございます、おかーさん....」
頑張れシャミ子にリリスさん!夢の支配者の教えを承けてまぞくとしてランクアップを目指すんだ!
目次 感想へのリンク しおりを挟む