クロスワールドウォー (根王)
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武器装備集 パート1

 


強化外骨格

 アーマーとも呼ばれる。UDFが結成され半年後に開発されたパワードスーツ。従来の戦法ではモンスターを駆除できず返り討ちに遭ってしまう兵士たちの生存率向上の為、世界中の軍事データをサルベージし開発が始まった。基礎となる骨組み部分のベーシックアーマーから成りそこから各種パーツを組み合わせると各タイプのカスタムアーマーになる。この強化外骨格により人類はモンスターとの停滞していた戦線を巻き返すことができ反撃の狼煙となった。

 

 アーマーには近距離用内蔵無線機、バイザー、センサー、ジェネレーター、人工筋肉が内蔵されてる。 

 

カスタムアーマー

 戦法にあったタイプがあり兵士個人個人の力量に合わせることができ高いパフォーマンスを引き出す。

 

トゥルーパータイプ

 一般的な歩兵タイプ。銃火器を扱う現代の兵士たちが装着し高い射撃管制システムの支援の元、効率的かつ有効的な攻撃を可能とする。一般的なアーマーで多くのUDFが装着している。

 

シューターカスタム

 高い射撃能力を発揮を可能とするカスタムアーマー。高度なシステムの支援により正確無比な射撃でモンスターとテロリストを駆逐する。

 

スナイパーカスタム

 トゥルーパータイプを長距離での狙撃手専用に開発されたカスタムアーマー。システムや高感度センサーの搭載により装甲比率はかなり低く打たれ弱い。

 

ワイルドタイプ

 強化人工筋肉による瞬発力を兼ね揃えたタイプ。動作に影響を及ぼさないように装甲が一部オミットされた為防御力は低いが機動力はかなり高い。

 

イェーガーカスタム

 高い機動力を活かし銃撃戦を展開する。潜入にも適しており工作員や斥候などが愛用している。近接も得意とする。 

 

バーサーカーカスタム

 高い機動力による近接戦を想定して開発されたアーマー。イェーガーカスタムとは正反対で接近戦を主軸としている。現代戦よりもモンスターとの戦闘に向いている。

 

フォートレスタイプ

 装甲と強化人工筋肉、パワーアシストによる攻防一体のタイプ。素の機動性はかなり低いが人間戦車と呼ばれる程重武装である。

 

ハートロッカーカスタム

 フォートレスタイプのインナーに当たるアーマー。この形態から装甲とスラスター、ジェネレーターを付加することで各カスタムアーマーへ移行する。どのタイプも閉所での戦闘を不得意とする為、それを克服する意味で開発された経緯を持つ。

 

ガーディアンカスタム

 ハートロッカーに重装甲とスラスター、ブースターを装備し高出力アシストにより軽火器とタワーシールドを片手で運用可能。現代の騎士と謳われるが閉所での運用は適さない。

 

デストロイヤーカスタム 

 高出力パワーアシストとハイスラスター、ハイブースターを搭載。ガーディアンカスタムより接近戦並び火力を向上させ殲滅力を重視したカスタム。ガーディアンカスタムよりも装甲比率は低いのでガーディアン程の防御力はない。

 

ベーシックアーマー

 骨組み部分。最低限の機能しか搭載されておらず装甲もない。最低限の装備として勤務時間内の兵士たちは着用している。

 

ポリスアーマー

 治安警察向けの強化外骨格。対人用に開発され多くの警察官が装着してる。

 

治安警察とは?

 UDFとは別の組織。世界中の警察機関を吸収し創設された治安維持組織。UDFと協同作戦を展開して犯罪組織の撲滅、対テロ作戦など共に治安維持に貢献している。モンスター騒動が起きた場合、市民の避難誘導やUDFのバックアップとして機能している。

 

バッテリー

 強化外骨格の運用において必要不可欠な存在。このバッテリーがなければ性能を発揮できずただの鎧になってしまう。太陽光発電システム付きだが、付け焼き刃程度なので施設での充電が必要である。

 

カモフラージュナノマシン

 装甲表面に塗布され耐水性は高いナノマシン塗料。バイザー越しに捉えた風景から周囲に溶け込むように自動でカモフラージュさせる。

 

バイザー

 バイザーを下ろすことで多くの情報を可視化できる。更に敵味方識別信号の捕捉、天候、風向き、バイタル、地図などが表示される。

 

センサー

 熱源と識別信号を捕捉しそれをバイザーと地図上に表示させる。 

 

ジェネレーター

 アーマーの駆動部分であり心臓部でもある。バッテリーを消費させることで出力を上昇させる『ブースト』効果を発動させる。体内の神経を活性化させる。

 

人工筋肉

 某大学の教授が開発した発明品。バッテリーを消費することにより身体能力を大幅に強化させるが防御力は高くない。

 

装甲

 取り付け型の装甲。ドラゴニックメタルで精製されある程度モンスターの攻撃を耐える。バッテリーを消費することで電磁コートを纏い防御力を更に高める。

 

回復剤

 新陳代謝を促進し自己治癒能力を最大限に向上させる注射器型薬品。医療機器が整ってない前線や地域での治療行為として開発。簡単に扱え且つ効能が高い為UDF兵士は一人につき2本を所持が義務付けられている。欠点として連続使用は禁物とされ連続して打てない。

 

レーション

 UDFのレーション。そこそこ美味い、温めるだけで食べられる仕様。年々、メニューが増えている。

 

スタミナバーガー

 レーションの一種。UDF創設当初から食されているバーガー。当時の味は微妙だったらしく改良の改良を重ねそれなりに美味になったとか

 



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武器装備集 パート2

ドラゴニックメタル

 ドラゴンの鱗と鋼鉄との合金。ドラゴンの鱗は強度、耐久性、柔軟性に優れ強化外骨格の開発と共に生み出され以後、様々な兵器に転用。人類の大きな反撃の要因となった。

 

高周波ブレード ムラマサ

 モンスターとの戦闘は交戦距離は一定ではなく不意な接近戦も含まれる。生身の人間では太刀打ちできない。その対策として開発された接近戦用刀剣型兵器。その切れ味はドラゴンの鱗ですら切り裂く。しかし、切れ味を維持するには内蔵されてる振動装置を作動させなければならずアーマーの着用が前提である。

 

ナギナタ

 薙刀型接近戦用兵器。基本構造はムラマサと変わらず以下の近接武器も同様である。ムラマサよりリーチは長いがより扱いが難しくなっている。 

 

ワキザシ

 ムラマサの刀身を縮小しナイフよりも長い小型の高周波ブレード。ムラマサよりも使用する兵士は多い。切れ味も負けず劣らずで銃剣としても使用される。

 

ヒートアックス

 斧型接近戦用兵器。絶大威力を誇りドラゴンの鱗ですら紙の様に切れるとされるが重量などから扱いは極端に難しい。

 

コンバットブレード

 高周波ブレードの原理をそのままナイフに落とし込んだ護身用ナイフ。銃火器を扱っていた兵士たちが剣や槍などの兵器の扱いに当然慣れてなく最終的な攻撃手段と運用されているのが多く、メインウェポンとして扱う兵士は少ない。

 

シールド

 モンスターと攻撃に耐えうる耐久性を持つ新型シールド。防弾性も高いので対テロ作戦でも導入され治安警察にも採用されている。

 

タワーシールド

 フォートレスタイプ専用の大型シールド。対戦車火器やアンチマテリアルライフルによる攻撃を防ぐ程の高い防御力を誇る。

 

AM弾 Anti Monster Bullet

 対モンスター用弾丸。拳銃、短機関銃、自動小銃、狙撃銃用に開発された特殊弾丸でモンスターに対して有効打を与えることが可能である。勿論、対人戦にも対応し強化外骨格を貫通する。

 

SG弾 Spike Gauge Bullet

 散弾銃用新型弾丸。モンスターとの交戦距離は個体によって変化し近距離における交戦で確実に撃破するため開発された。射程、貫徹力、威力は従来の弾丸を遥かに凌駕している。

 

SS弾 Smash Slug Bullet

 散弾銃用新型弾丸。SG弾よりも威力は高く一撃必殺の破壊力を誇るが銃身に掛かる負担が大きくSG弾の半分程度の装填、高反動から熟練者向けである。

 

PM弾 Panisher Magnum

 マグナム弾仕様の自動拳銃及び回転式拳銃の対モンスター用弾丸。近距離における破壊力はAM弾仕様の338ラプナマグナム弾と同等の威力を誇る。

 

デザートイーグルⅡ

 近距離迎撃火器。開発経緯は高周波ブレードなど近接武器を扱える兵士は多くなく扱いに慣れない兵士向けに開発された。従来のデザートイーグルよりも銃身が延長し8個コンペイセンターを追加され反動は低下し命中は高い。欠点としては携行性は低い

 

カスタムスティンガー

 弾頭の小型化に成功し継戦力を向上させたスティンガーミサイル。3発入り弾倉を装填しており更に爆発範囲も強化し群がる空中のモンスターを叩き落とす。

 

モンスターキラー

 新型大型ドローン。通常型のA型と携行型のB型の2種に分けられている。8発の対地ミサイルを発射可能、B型は半分程度の装填可能で専用のケースに納まる程の大きさである。

 

サテライトドローン

 衛星の使用が不可能になった場合に開発された大型ドローン。ネオアメリカンフォースによる妨害で衛星が破壊若しくは奪略された局面を想定して運用される。だが、莫大なコスト故に配備数は極端に少なく存在を知る兵士も限られている。開発者もまさか異世界で運用されるとは思っていなかっただろう。

 

セントリーガン

 自律迎撃システムウェポン。センサーやコンピューターを搭載したミニガン。遠隔操作も可能で取り外し可能。威力偵察でも使用される。

 

タイプゼロレールガン

 個人携行電磁投射砲。絶大な破壊力を誇り歩兵では対処不可能と云われたレベルのモンスターを撃破可能である。充電式、バッテリーと弾頭を装填する必要があり、まだ試作段階である為、5発程度の発射で砲身は溶解してしまう。

 



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本編
第1話 遭遇


 どうも根王です。今回は適当に作り過去に思い付いた奴を友人と相談しながら何かできあがってしまった物です。元々お蔵入りかな~と思ったのですが段々設定が出て来てしまったのでお試し感覚で投稿しました
 


 いつからだろうか…この世界にこの地球に怪物が現れたのは

 

 アメリカのホワイトハウスが異形の怪物、竜の炎に焼かれ竜が巣食う場所となったのは。太平洋は巨大な海魔に支配されどれだけの船と命が海の冷たいの底へと沈んだのか。辛うじて生存圏の制空権を握る事ができた人類は『連合防衛軍』を結成した超法規的軍事組織でアメリカ軍やロシア軍を始め自衛隊などもこの組織に統合された。皮肉な事に奴らは国境線をも喰らったのだ。この星を取り戻す為人類は団結し最も被害の少ない極東・日本を起点に世界各地で人類は奮戦した。

 

 7年の歳月を経て地球の8割の地域を怪物から解放させた。だが、7つの大都市、地域と引き換えに太平洋を取り戻した人類は次の手は核爆弾による掃討作戦であった。7つの都市と地域に大群怪物と強力な個体の怪物を誘導しその多くを灰と化した。連合軍は故郷や生存圏を犠牲にしてまでも怪物を掃討したのだ。これを『クリーン・ナップ作戦』と言われ後の禍根を生んでしまったのだ。

 

 その作戦から連合軍から離反する者が大勢いた。かつてのアメリカを再建し世界の主導権を握る『ネオアメリカンフォース』と共産主義の出身者で結成された『共産主義同盟』、荒廃した国家に変わり南米を我が物顔で支配する『ラテンコミュニティ』…俺たちは何時の時代か人間同士で争う世界になってしまった。

 

 

 

 

 

 皆、異世界に夢を抱くだろう…だがな俺たちにとってこの世界の混沌へと導いた元凶は

 

 

 

 

 

 その異世界なんだぜ?レベルもステータスもない、生き残る為には引き金を引き続ける事だけだ。もし魔法や聖剣があったらどれだけ嬉しい事か…でもどんなに望んでも時が過ぎてもそんなもんは存在しない。改めて思ったよ神様なんていないってな 

 

 

 

 

 

 だけど、あくまでも噂だ。怪物たちは伝承や神話、ファンタジーゲームで出てきそうな奴らでこの地球には存在しない生き物たちだ。今も学者たちが頭を捻らせて考えこんでいる。お陰で現代の戦い方では通用しない相手でもあった。現代は機械化…つまりハイテクな装備で最低限な人員で活動することが多い、それが裏目となり火力不足などが生じて怪物の討伐が遅れてしまった事があり、連合陸軍は部隊編成と戦術の考案を余儀なくされた。一方で空軍は強力な個体を除けば連勝続きだ。くそったれのドラゴン共をミサイルやバルカン砲で消し飛ばすからな羨ましい限りだ。空爆も有効打として、退役した戦闘機も駆り出して爆撃で怪物たちを吹っ飛ばしていたな。海軍はミズーリの戦艦を莫大な資産を投じて改修し太平洋の支配者だった『クラーケン』を屠った立役者だ。今も連合海軍の第一艦隊の旗艦を務める。

 

 

 

 

 

 これは今の教科書に書かれている事だ。自衛隊を除隊して傭兵になって旅しようと思ったらまさか化物が襲来するなんてな…現地の義勇兵として戦っていたら連合陸軍にスカウトされ、士官養成教育に投げ込まれて卒業したら大隊の指揮を執るハメになって7年か…今は大尉まで上り詰めてしまった。俺が指揮するのは『ブロッサム大隊』だ。この隊の特徴は多国籍軍だ。AlphaからEchoまでの分隊が存在し戦車部隊の『ウォーリア隊』にヘリ部隊の『カリバー隊』、武装偵察隊『ウィング隊』、狙撃支援部隊『ガイスト隊』で編成されている。俺はAlpha部隊のリーダーで大隊の大まかな指揮を執っている元自衛官元傭兵の白熊徳(しらくま とく)だ。

 

 少しばかりの船旅で揚陸艦に乗り込みハワイ島へと向かっている。アメリカの大陸東を陣取るネオアメリカンフォースの動向を探る為だ。奴らは地下に潜み度々連合防衛軍勢力下の地域でテロ紛いな事件を引き起こしている。しかも、連合軍と同等かそれ以上のテクノロジーを持っているとされているとも噂されるが果たして

 

「よお、徳。バーガーだ」

 

「わりぃな。……今日は照り焼き風味か」

 

「不満か?」

 

「いやいつものじゃないから不満なんざねえよ。昔から食ってきたからな」

 

「……知ってるか?初期生産だった頃は酷いもんだぜ?ソースなりケッチャプなりぶっかけてマシな味にしたもんだぜ」

 

 部屋に入ってきたのは相棒であり腐れ縁のカルロスだ。渡して来たのは連合軍名物の『スタミナバーガー』だ。100%培養肉と保存料たっぷりで化学調味料でカロリーを底上げしたバーガー……単価はかなり安いらしい培養肉は以前コストが高かったが研究の果てにローコスト化に成功、食糧事情はかなり安定したのだが。初期の生産型は味が大変酷かったらしいMREの再来とも言われる程に……俺が士官養成コースの頃には大分マシな改良型が開発されたらしい、意外にも食事っていうのは兵士たちの士気を上げてくれる時もあるから馬鹿にはできないからな 

 

「ワシントンが灰になって2年か…その頃は太平洋をクラーケンから解放した後だったな」

 

「俺たちは東南アジアで植物型モンスターを火炎放射器で焼き殺していたけどな」

 

 カルロスがバーガーを頬張りながら寂しげな表情をする。コーラを飲みながら当時の事を思い出す。空軍が枯草剤を撒いて、弱らせた後にナパームやら火炎放射器で焼いていたな植物型のモンスター。マンイーター達を焼いたのはいい思い出だ。あいつらの噛みつく力は強いからな防弾チョッキなんて余裕で貫通するから油断できない相手だ。世界各地で苦戦する陸軍の兵士の生還率と戦闘能力を向上させる為、パワードスーツ…強化外骨格の開発がスタートした。第二世代まで開発されているがこいつには稼働時間があり長く持って1時間程度だ。バッテリーが切れちまうとただ鎧だ、防弾チョッキよりは遥かに防御能力は格段に高いが過信し過ぎると奴らの餌になるので油断はできない。

 

 しかし、歩兵が運用する小銃では相手にならない奴も現れたりするから高周波ブレードも悪くない選択肢だったりする。最新鋭の技術が数世紀前の武器に注がれる事になるなんてな。試作型も完成しており、脇差サイズだったり槍や斧といったバリエーションも開発中らしいが強化外骨格の装着を前提に開発されてるし、銃とは勝手が違うから別の訓練が必要なるなど問題点も多い

 

 昼食を摂って甲板に出る。食後の軽い運動だ。暇な奴は片隅でハーモニカや部屋で雑誌なり漫画みてたりしている。真面目な奴が近接格闘の訓練や銃の整備をしたりしている。装備に関しては統一したかったがそういう時間も無いし今更だったりするので特に言うことはない。ただ、訓練兵の時から使われているSCARを使う兵士が多かったりする。俺は士官学校時代に89式持たされてそれ以降使っている。カルロスから貰ったレールシステムを無理矢理乗せたり消音器を改造したりと原型が残ってないがな…

 

「大尉、食事は終わったのか?」

 

「ヨハンか、どうした暇か?」

 

「ああ暇だ。羽付いたトカゲ野郎がいれば賑やかだろうさ」

 

「賑やかどころのレベルじゃねえけどな」

 

 背が高くごつい大男はロシア人のヨハンだ。元ロシア軍のスナイパーで神業の腕を持つ狙撃手だ。こいつに対物ライフル持たせれば人間でなんとかなるレベルのモンスターなら倒せる奴だ。確実に弱点を狙い撃ちドラゴン相手でも火を吐かれる前に開いた口に対物ライフルを撃ち込んで頭を吹き飛ばしたり、ゴーレムのコアを全弾叩き込んで粉砕したり、巨大化したスライムの核を破壊する際に一度撃ってスライムの体質により受け止められた弾丸にもう一度撃って命中させ核を貫いて討伐と枚挙、派手にモンスターを屠る野郎だ。

 

 茶を啜ろうと部屋でゆっくりしていると部下のジルベルトが部屋に慌ただしく入ってきた。

 

「大尉大変です!進行方向から見て方位270°にドラゴンの群れが現れました!」

 

「何だと…!?すぐに戦闘準備!無反動砲持ってこい!」

 

「了解です!」

 

 ARX-160を背中に背負いカールグスタフを脇に抱えるジルベルトの背中を追いつつ甲板に出ると部隊の仲間が甲板に集まっていた。ヨハンはKSVKを携えておりやる気満々だ。

 

 ドラゴンはレベル2以上の相手で、大きさによっては無反動砲や対物ライフルで事足りることもある。体内には炎を生成蓄える器官を持つので誘導兵器も有効だったりする。部下の一人のウォンにスティンガーミサイルを持たせているし最悪のケースも考えないとな… 

 

 原子力空母からF/A-18Fが今にも発艦しようとしている。まずは連中が先に仕事をして撃ち漏らしたのを俺たちで対処する形だ。余程の事がない限り俺たちの出番が無いがな、ここまで聞こえるぐらいの爆音を響かせては母艦から発つ蜂共見送り帰還を祈った

 

 

 

 

『こちらキラービー1から各機へ、ドラゴンハントの時間だ』

 

『キラービー2了解。キラービー3遅れるなよ』

 

『勿論ですよ…あ、隊長目標が見えましたミサイルの射程に…ん?』

 

『どうしたキラービー3?報告せよ?』

 

『見間違いか?人がドラゴンに跨ってる!それに翼の生えた人間が!』

 

『何?…でも様子が可笑しい…』

 

『キラービー2からキラービー1へ!先頭の一体が後続のドラゴンから攻撃を受けています!』

 

『よし、各機攻撃を受けているドラゴンを援護するぞ。敵かどうかわからんがそれは後で分かることだ。まずは一体…FOX2!』

 

 

 

 

「何です?人が跨ってる?人に翼が生えてる?本当なんですか、それ?」

 

 通信兵兼補給兵のジルベルトが艦橋の指令室から連絡を受けているがどうにも今回は可笑しいらしい。何でもドラゴンに人が跨っているだの背中に翼生えたと…それもこっちに向かっておりキラービー隊がそう報告したらしい、それにもう遠目でシルエットを確認しているのでどうすればいいのか判断を任されてしまった。

 

「取り敢えず旗でも何でもいいからジェスチャーを送れ!」

 

「徳!いつでも無反動砲は撃てる準備はしとくぜ!」

 

「そうしてくれ…ウォン、スティンガーも撃てる用意はしとけよ!指示を出すまで攻撃は厳禁だぞ!」

 

「襲ってこない事を祈るしかないぞ…!」

 

「そうなったら甲板が炎で包まれるぞ。そうなったら俺たち全員真っ黒こげだ」

 

「そんな死に方はゴメンだぜ!俺は!」

 

 甲板に展開する部下と仲間に指示を出しつつ迎撃の準備だけは済ませておく、ドラゴンなんざ敵でしかないと思っているからなしょうがないし俺も不安だ。無残に焼き殺されるか食い殺されるかだ。俺達歩兵からすれば対戦車ヘリみたいなもんだ、小口径のライフルなんざ豆鉄砲にすらならねえよ。対物ライフルや対戦車火器が無ければ人間なんざただの餌だ

 

「…キラービー隊、帰還しました。損失0です」  

 

「はぁ…マジで受け入れるのか?言葉通じんのか?いきなり襲ってきたら殺すしかないぞ」 

 

「大尉…もう見えます。この揚陸艦に乗船するつもりですかね?」

 

「マジかよ。俺達か…」

 

 揚陸艦の上をぐるぐる飛び続けるドラゴンと翼が生えた人間…あっちもあっちで俺達と同じ考えかもしれんな…

 

「全員、銃を下ろせ向か入れる。責任は俺が取る」

 

「しかし!もしも…」

 

「だから言っている…責任は取る。もし上手く行けば怪物について知る事ができるかもしれない」

 

「分かりました…」

 

 全員が武器を下ろし蛍光灯や旗を振り、自分達なりにジェスチャーを送る。何か伝わったのだろうかドラゴンと翼の人が揚陸艦の甲板に降り立ったが部下や仲間は彼らを鋭い視線で睨んでいた。さて…どうなる事やら…

少なくても平穏が訪れる事はなさそうだな

 




・この世界の知識

連合防衛軍 UDF
 2021年に結成された超法規的軍事組織。地球圏の勢力下では最大勢力である。かなりの権限を持っており国家という存在が無いにも等しい各エリアに統治している。本部は日本の横須賀からフランスに移転している。現在、横須賀は連合海軍の最大の基地として機能、ネオアメリカフォースとにらみ合いを続けている。かつてのアメリカ軍やロシア軍、中国軍などの軍事データをサルベージし最新の兵器を開発している。『クリーン・ナップ作戦』以降一部の上層部の暴走と私欲に溺れていた事が発覚し事故死に見せかけクーデターにより暗殺されている。

強化外骨格
 怪物との戦争最中、従来の戦い方が通用せず、歩兵小火器では対処しきれず死亡する兵士が増加してしまった為、怪物の攻撃に耐えつつ強力な火器を装備を可能とし身体能力を補佐を目的にした強化外骨格をアメリカ軍とロシア軍の軍事機密からサルベージし開発に成功。現在は第3世代を開発中システムのアップグレードと近接戦闘用システムを導入予定、稼働時間に限りがあり最大1時間程度しか持たない、バッテリーが切れてしまうと身体能力の補佐などの機能が失われてしまう 

怪異生物
 またの名を『モンスター』。異世界やファンタジーゲームで登場しているモンスターがある日を境に世界中に出現し甚大な損害を被った。しかし、皮肉な事に国境をも喰らい人類が団結する切っ掛けを与えてたのもモンスターのお陰だったりする。生存圏を争う戦争で7年経過した今でも存在するが確認されるだけで8割近くの掃討に成功している。大戦により人類の総人口は半減してしまった。

怪異生物危険度
 単に「危険度」と称される。所謂、モンスターの強さと危険度を現す。現在、10段階存在しているが新種のモンスターや状況によって変動する。


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第2話 異界の迷い人

 


 取り調べ室を映し出すモニターをコーヒーを啜りながら見続ける。赤く長い髪の毛を束ねルビーのような瞳を持ち鱗と翼が生えた女性と透け通るような碧い目に銀髪、騎士のような出で立ちの女性が丁重に丁寧なもてなしを受けている。遡ること十数分前の話。

 

 甲板にはドラゴンに跨っていた騎士みたいな人間とドラゴンと同じような鱗が生え翼がある人のような存在に大隊の兵士は困惑していた。メンデルが拡声器を構え様々な言語で呼びかける。英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語など……どれも二人には理解できなかったがある言葉に反応したのだ。

 

 語学が豊富なメンデルは隻眼のドイツ人衛生兵で仕事上様々な言語を習得していてそんな趣味で覚えたのがラテン語だ。半ばやけくそ気味に呼び掛けた彼だがまさか返答が来るとは思わず一瞬狼狽えるがすぐに呼び掛けてこの揚陸艦に乗船させたのだ。

 

「大尉、ラテン語ならコミニケーションが取れそうです」

 

「なら俺たちが敵でないこと、指示に従うように伝えろ」

 

「了解です」

 

『この言葉が分かるか? 分かるのなら聴いてほしい。我々は君たちに攻撃しないし危害を加えん、こちらの指示に従って頂きたい』

 

 騎士がメンデルに近付き兜を取り上げる。美しい銀髪を靡かせ明らかになる顔。美女だ。それはかなりの思わず言葉を失う。周りの兵士たちも同じ反応をして女性人から冷たい視線を受ける……

 

『何故、大陸の言葉を知っている? それにここは一体?』

 

『ここは太平洋だ。国、所属を教えてくれ。一体何処から来た』

 

『私はミーティス王国。近衛竜騎兵のエスナだ』

 

『ま、待て』

 

「大尉? ミーティス王国なんてありますか?」

 

「この地球上にそんな国家あるもんか。そもそも国家なんてないだろう」

 

「愚問でしたね……」

 

『どうした? 何かおかしいことでも?』

 

 咳払いして改めて質問を続ける。周りの兵士たちに指示を飛ばし配置に付けさせる。何者が分からないがまだ油断はできない。

 

『ミーティス王国……この世界には無い。本当に実在するのか?』

 

『何? 別大陸のヒトか? しかし、このような出で立ちの兵士

は見たことがない』

 

『一応、ここは太平洋でハワイ島へ向かっている』

 

『……太平洋とはなんだ? 我が国の海域ではないのか?』

 

「これは大変だぞ……さっきから話が噛み合わん」

 

「取り敢えずだ。コスプレイヤーでは無いのは断定だな。よし、取調室へ連れてゆく、赤い女もだ。俺は……報告してくる」

 

「説明できますか?」

 

「それを何とかすんのが俺の仕事だ……はぁ」

 

 思わず溜息が漏れる。与えられた船室に置かれてるノートパソコンを開き報告書を見ながらバイザーを下ろし通信先を直属の上司である笹川大佐へ繋げる。

 

「先程の保護した2名ですが、言葉こそ繋がりますが地名や国家など話題では食い違いが起きています」

 

『なるほど……ネオアメリカンフォースの兵士では無さそうだな。それにただのコスプレイヤーでもない。保護したドラゴンはどうかね?』

 

「現在、揚陸艇の格納庫に移動してますが……信じられないぐらい大人しく未確認の種です。しかも人懐っこいようです」

 

 餌として用意している食料はかなり減ったけどな。まあ、ハワイに着くまでには持つだろう。絶賛、兵士たちに可愛がられてるな

 

『ふむ、彼女たちを引き続き保護したまえ。ハワイ基地で詳しく話を聞きたい。それとモンスターについて質問してくれ異世界の住民ならば知ってるかもしれんな』

 

「モンスターの写真でも見せてどうするのですか? モンスターの研究は進んでるはずですが」

 

『白熊大尉、モンスターはまだ脅威なのだよ。確かに地球上の殆どが我々になった。しかし、それは市民に公開してないだけあって、だな。この星から完全に駆逐するにはまだまだ知識が足りないのだ』

 

 それに、と 

 

『私だって想定外なのだよ、大尉。君の隊がアメリカ西海岸に上陸する予定が隕石でも落ちてきたかのような報告だ』

 

 そりゃそうだ。こんな報告を取り合えってくれそうなのは笹川大佐ぐらいだろう。変人だし

 

「メンデル、モンスターの資料を彼女たちに見せてくれ。大佐からの命令だ」

 

『了解です。それと大尉、彼女たちが所有する地図を拝見しました。結果はこの世界のものではありませんてました。大陸全体の形、地形、地名……人種も何もかも当て嵌まりません。完全に別世界の住民のようです』

 

 メンデルが送付したデータを閲覧し開くとそこには未知な言語で書かれた地図が示されていた。

 

「大佐、聞いての通り。あの二人は異世界住民である可能性は限りなく高いことが証明された……その指示を」

 

「これは笑うしかないな、ははっ」

 

「笑い事じゃ……!」 

 

『失礼、大尉。指示は無事にハワイに到着することだ。それまで二人を護衛するように』

 

 結局の所、ハワイ島まで処遇は見送られることになった。今のUDFにとってネオアメリカンフォースが最大の敵であるため、第三者いや該当しない勢力からの変化球に打ち返してる暇はない。

 

 どうしようもない思いを抱きながら早くハワイに着いてほしいと願うだけだった。

 

「あーこちら白熊。シャドーチーム2の板田軍曹か? 例の客人の護衛を頼みたいのだが……」

 

 ブロッサム大隊に編入されてる特殊部隊〘コマンド・シャドー〙の1つの小隊に護衛を担当させて所で書類仕事を始める。衛生、補給、給養、運営といった各部署の纏められた報告書に目を通し電子印鑑を押していく。最も目が行くのが給養の備蓄食料だ。笑えないぐらいの量が短期間で無くなっているのだ。原因は言わずもがなエスナという騎士が飼い慣らしているドラゴンだ。この個体は珍しく人を襲わず人懐っこい。故に兵士たちからは菓子などをあげ与えていることも記載されていた。

 

 後は特に異常無しで休暇申請や入院中の兵士の確認ぐらいで武器の手入れを始める。サイドアーム、護身用のオペレーターを丁寧に分解していく。かつて大切だった人の物、それが俺に託されてるのはもうその人は

 

 いないからこの世に

 

 何度絶望したか、何度後を追いそうになったか

 

 でも交わした約束があるから

 

 俺は生きなければならない。戦わなければならない

 

『緊急事態発生! 緊急事態発生! 総員戦闘配置!』

 

「何っ!?」

 

 ホルスターにオペレーターを戻し執務室を飛び出る。内蔵無線からの呼び出しを受けすぐに繋げれば嫌な報告しか来ない

 

『報告します白熊大尉! 現在、100近くのドラゴンが接近中です!』

 

 甲板に向かう兵士たちを見かける。無反動砲やスティンガーを担ぐ姿の兵士も見れる。突き当りで部下である上等兵のジルベルトと合流する。ジルベルトからカールグスタフを受け取り甲板へ駆け上がる。

 

「大尉、接敵です! もう来ます!」

 

「キラービー隊は出ないのか」

 

「整備中とのことです! 我々だけでやるしかありません!」

 

 先程出撃からそう時間は経ってない。急ピッチでも間に合わないだろう。銃を構える兵士たちが互いに阻害せず連携できる距離間隔で配置し迎撃の態勢に移る。目視でとドラゴンの影が見える。

 

 そして、俺たちという餌を見つけたようだ。目が狩人のような目だ。

 

「各部隊戦闘態勢に移行。目標ドラゴン、船に取り付かせるな」

 

「って来たぞ! 撃て!」

 

 カルロスのM4A1が火を吹いた瞬間に兵士たちが撃ち始める。俺も89式の銃口にライルフグレネードを差し込みドラゴンの胴体に命中させる。

 

「野郎は海に落ちたようだ。徳、レーダーには30近くがこの揚陸艦に飛び回っていやがる」

 

「ヨルゴ伏せろ!」

 

「危ねえ! クソっ羽付いた蜥蜴野郎がぁ!」

 

「ワキザシでぶった斬ってやりたいが味方の射線に入っちまう」

 

 ヨルゴの腕を掴み立たせたジュリアスは不満を漏らしつつ応射する。それに合わせてヨルゴもFAMASを構え撃つ。

 

「大尉! 蘭州の艦長からです! ミサイルやCIWSでも撃ち漏らしがある可能性が高いと……!」

 

「1体ずつ確実に仕留めるしかない。倒さなくていい撃ち続けろこいつで仕留める。ウォン、ヨハン行くぞ」 

 

「了解、大尉任せてください!」

 

「徳、他の船も襲われ始めてるぞ、早く切り抜けないと不味い。船の上じゃ高射部隊も戦車もいない。俺たちだけで何とかするしかない」

 

 ウォンはジャベリンミサイルを取り出しヨハンはKSVKを構える。どちらもドラゴンを屠ることができる武器だ。後は倒すだけだ。ライフル弾を撃ち続けてチマチマやるより一気に倒さないと押されてしまう。

 

「く、くそ! 小銃じゃ倒し切れない。このままじゃ!」

 

「落ちろ!」

 

 ヨハンの対物ライフルが火を吹く。弾丸はドラゴンを頭部を貫き海面に叩きつけられた。CIWSやVLSによる迎撃によりドラゴンの頭数を減らしている。しかし、それでもその砲火を物ともせず揚陸艦に接近する。甲板に布陣する兵士たちは火器による迎撃が継続し銃声と怒号が絶えない。

 

「顔狙え! 隙を与えるな!」

 

「援護してくれ。串刺しにしてやる!」

 

「なんて日だ! ドラゴンの群れに遭遇するなんて!」

 

「文句を言う暇があるなら撃てぇ! 奴らは待ってくれねえぞ!」

 

 カールグスタフを構え銃撃で動きを止めたドラゴンの首に直撃させ倒し首がもがれ海に沈んでいくのを目視で確認した。だが1頭倒してぐらいでは数はまだ減らない。

 

 1頭のドラゴンが揚陸艦にしがみつき乗り出す。弾丸を物ともせず口から火が漏れ出す。ブレス攻撃だ。ドラゴンは鋭利な爪や牙、鱗を纏い高い防御力を持ち靭やかな尻尾で薙ぎ払いや叩きつけ、そして、辺り一面を地獄と化すブレス攻撃だ。俺たち歩兵にとってドラゴンは最大の天敵だ。陸戦兵器は対空兵器でもなければ上空からの攻撃に非常に弱い。強化外骨格を装着しても脅威度は依然高いのだ。だから皆命懸けだ。

 

 ブレスを吹く前に腕を薙ぎ払い兵士たちを吹き飛ばす。この程度攻撃なら装甲は耐えられるが布陣を崩され攻撃力が落ちてしまう。直ぐに仲間に救出に向かわせるがそれで攻撃する人員が減るので手数が減ってしまう。

 

「火を吹くぞ! 退避しろ!」

 

「も、もう間に合わ」

 

 M2カールグスタフの弾頭が頭部に直撃させブレス攻撃される前に吹き飛ばす。普段なら大戦果だがこんな100頭もの群れ相手ではどうしようもならない。

 

 尚もドラゴンたちは旋回し船に張り付こうと接近する。最悪なことにさっきのドラゴンを仕留めてカールグスタフの弾頭は後一発だけ。ツイてないな

 

 溜息が漏れそうな瞬間、エレベーターが作動する。おかしい俺はヘリの出撃要請を送ってないのに何故?

 

「さあ行くぞ。一宿一飯に命の恩を返さなくてはな」

 

 それはドラゴンに跨ったエスナだった。甲冑に身に纏い槍を構えドラゴンが羽ばたき敵のドラゴンと空中戦を繰り広げる。しかも、敵のドラゴンよりも強く尻尾で叩き殺すなどかなりの強さだ。

 

「よし、いい子いい子。でも油断するな」

 

 エスナと相棒のドラゴンと連携し敵を倒していく。というかかなり手際良く倒していくんだが俺たちより強いのか?

 

「各シャドーチームは彼女の援護に回れ誤射はするなよ」

 

 行動共にしてるコマンドと連携して彼女の援護に回る。

 

「ルーベル様!? 駄目です。甲板に出てはいけません!」

 

「雄二さん。私は恩知らずのままにさせるおつもりですか? それに私は大丈夫です」

 

「なっドラゴン!? 射撃用意! 撃て!」

 

「失せなさい」

 

「一振りで……!?」

 

 板田の静止を無視し甲板に姿を見せたルーベル。ドラゴンの1頭が彼女を引き裂こうとドラゴンを振り被るが両断されていた。いや、溶断か? 彼女が掲げる赤い剣が光り出していた。熱でも帯びているのか。

 

「爆ぜなさい」

 

 ルーベルが掲げた剣が光り炎……いや爆炎を纏い薙ぎ払う。ドラゴンの集団がいた空が爆発に呑まれる。爆風と爆音が襲いかかりバイザーを下ろし顔を守る。

 

「全員、伏せろぉ! クソっなんだこれは!」

 

『な、なんだ今のは!? 敵の攻撃か!?』

 

『レーダーの反応無し! 敵……全滅です!』

 

『蘭州の秘密兵器か? 使うなら早く言ってくれよ。見ろよドラゴンは木っ端微塵だぜ!』

 

『いや我々はCIWSによる迎撃のみで……』

 

『一体誰がやったっていうの? キラービーは発艦していないわよ?』

 

「ルーベル様、今のは一体何を?」

 

「ボルケーノブレード。これは私の愛剣……炎を自在に操ることができます」

 

「今の爆発はまさか」

 

「ええ、私の力です。威力が高まる程マナが減ってしまいますがね」

 

「マナって何だ?」

 

「私が説明致しましょう白熊殿。マナとは魔力であり気力、精神力でもあります。私もまだマナを理解し切れていないのですが」

 

「MPみたいなもんか」

 

「出たカルロスのオタクが」

 

「……朝まで寝かせんぞ?」

 

「勘弁してくれ。まだシールズの選抜試験受ける方がまだマシだ!」



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第3話 出発前夜

徳の89式小銃
 かなり改造されてる89式。レールシステムを外付けで取り付けM4用の消音器を改造し装着可能。かつて自衛隊に配備されていた物よりもかなり改造されている。

64式改
 ACOGサイトを装着し各種パーツをポリマーフレームに変更。マークスマンライフルの運用を前提としている。 

板田のHK416D
 ホロサイト、レーザーサイト、アンダーバレルにM320グレネードランチャーをマウントしている。


 あの戦闘後、属する第1師団が待つハワイに辿り着いた。俺たちは整備、治療が速やかに行われた。一方で基地に駐在する兵士たちがルーベルとエスナの二人を見て驚愕していたが負傷した兵士たちが命の恩人であることを伝えてからは警護部隊が随伴の元基地へと招き入れた。

 

 艦を降りてからは上からの呼び出しを受ける事になった俺はカルロスに後を任せ会議室の扉の前まで来ていた。こういう所には何十回も足を運んで来ているからか特に緊張する事もない。

 

 普段ならばの話であるが、ほぼ異世界からの住民としてあの二人を拾ってしまった以上大変ピリピリしてる。あの戦闘後、UDFか持つモンスターの資料を見せた所二人の返答は

 

「私たちの世界にいるモンスターと一緒だった」

 

 生態系も同じ完全に一致。ただそこで気になるのが

 

 何故この世界にモンスターが現れたのか?

 

 その答えをすぐに知る事になった。

 

「私の国と敵対する国家がかつてとある世界に怪物を送り込んだという話を聞いたことがある。その世界の技術、資源を手に入れるため、と」

 

 エスナから語られる言葉にとある歴史を思い出す。

 

 植民地支配、その国家はこの世界を植民地にしようとしていた。

 

 かつてヨーロッパの国々がアフリカや東南アジアを植民地にしたようにこの世界を我が物にしようとしていたのだ。人類はモンスターとの生存戦争と見て7年間戦い抜いた。だが、真実は意外な物だった。

 

 つまり侵略。その国家ペルグランデ帝国という彼女たちが敵対する勢力が侵略のためモンスターを送り込んだのだ。世界各地に殺戮と破壊をもたらし国家の垣根を喰らい尽くした災厄共は奴らに使役された魔物に過ぎなかった

 

 会議室の卓上での見解はこの通りで、ではその後はどうするのか? ペルグランデ帝国がモンスターという生物兵器を何らかの方法で送り込み侵略行為を行った。ここまではいい。だが

 

 異世界に殴り込むのかのどうか。そもそも行き方も知らんし多分二人なら知ってるだろうが。たとえあったとしてもネオアメリカンフォースを放っておくこともできない。

 

 実はネオアメリカンフォースだけが抱える問題ではない。残存するモンスター、国家が無くなり新たに力を求め独立勢力によるテロ行為、破壊された地域の復興……人口の半分もいない人類に異世界に構うほどの余裕がない。 

 

 だがどんなに嘆いても軍という組織は上官の命令には絶対。アメリカに行けと言われれば行かないといけない。もし異世界に行けと言われれば仲間を連れ行くしかないのだ。もう頭が混乱しそうだった。

 

 合間の休憩時間、売店に寄ると板田軍曹とルーベルが物色していた。艦に乗せて食事を用意した所、かなり好評だったようでグルメツアーを楽しんでいる。ここの売店はかなり広くいくつもの企業が出店していた。規模の大きい基地には企業がよく出店する上に兵士たちも娯楽を求めてくるのでよく儲かるだろう。

 

 大戦以前よりも軍と企業の距離感がかなり近くなってる上に強化外骨格のアップグレードや製造も企業への委託の増加。兵器テスト要員やアドバイザーとしての退役軍人の雇用とかが見られ軍事企業の力は日に日に増している。

 

「大尉、お疲れ様です。おつまみですか?」

 

「そんなとこ」

 

「雄二さん、この輪っかみたいなパンは?」

 

「ドーナツという食べ物です。まあお菓子ですかね」

 

 売店の外にはテーブルと椅子が置かれそこで買った物を食うことだってできる。普段なら埋まってるところだが空いているようだ。

 

 それにしてもルーベルよ、なんだそのドーナツの山は売り切れてやがる。店員が焦って作ってんぞ、周りの奴らの視線を釘付けにしてどうする。

 

 ドーナツを食べ終わるまで待つ時間は残ってはいない。さて、そろそろ本題に入ろうじゃないか。

 

「あんた迷い込んだじゃなくて俺たちに会いに来たんだろ? 帝国が送り込んだモンスターの群れに呑まれず生存圏を守り抜いた俺たちの戦力が目当てなんだろ」

 

「た、大尉?」

 

「……分かってしまいましたか。そうです。私の国、アエテルヌム王国は敗北寸前。全ての手段を用いて帝国の情報を得てある高位な魔道士を捕え吐かせました。それであなたたちという存在を知ったのです。私たちの文明を凌駕し未知であったモンスターたちをほぼ返り討ちにした。そして、その魔道士の力を使い、あなた方と接触しようとしたのです。しかし、この世界のドラゴンに襲われたのは予想外でしたし、あの戦闘機やらが現れた時も新種のモンスターかと思いましたし」

 

「迷い込んだという訳ではなく、我々に会いに来たのですね」

 

「でもな、俺の一存じゃ決められない。連合防衛陸軍第1師団隷下のブロッサム大隊指揮官でしかないんだ俺は、だから」

 

 俺に頼んでも無駄であることを言おうとした瞬間に大佐からのメッセージが送られその文章には 

 

 決議の結果、最低限の戦力を持った先遣隊の派遣が決定されその後、状況に応じて大隊の戦力を贈り続ける……といったことになった。また、この世界と向こうの世界へ転移する水晶を渡された。これがあれば行き来できるらしい。

 

 その為に起点を作らないといけないらしくこの世界での起点はここハワイに決まった。

 

 どういうことだ。時間を掛けて決めることじゃなかったのか。

 

「笹川大佐は話が分かって下さるお方ですね。交渉の甲斐がありました。あなたでは無理ならばもっと権力をある方と話しをすれば良い事、交渉した甲斐がありました」

 

 ルーベルを睨みつける。しかし、彼女の赤い眼は揺らぎはない。不敵な笑みを浮かべ板田は困惑してる。この女、何処か違和感を感じていたが

 

「なんだって? お前! 大佐に何を吹き込んだ!」

 

「大尉、大佐がさっきメールで呼んでいます。話があると……」

 

「ちっ!」

 

 ルーベルを問い詰めたいところだが大佐に会わなくては、一体何を吹き込まれた。大佐がいる部屋まで急ぐ

 

「大佐! 派遣とはどういうことだ!」

 

「すまない大尉。決議の結果、第1師団の部隊を中心に派遣が決まった」

 

「まだ検討中でなかったのか!? 説明しろ!」

 

 いつもの雰囲気じゃない。机の上にはいつも整理整頓してる筈の書類がバラバラになっている。

 

 大佐とはそれなりの付き合いだ。彼女がいなくなった時から俺たちの部隊を支えてくれた。そんな彼がいきなり裏切るような事はするのかと聞かれたらまずない

 

「大佐……何吹き込まれた?」

 

「これを見てくれ。ここに来る前に渡された鉱物資源だ。上層部を虜にしやがった」

 

「これは銀?」

 

 大佐は懐から銀のような物を取り出し渋々と説明し始めた。

 

「ミスリルという金属だよ。異世界に存在する金属で上層部の連中は夢中でそれにペルグランデ帝国がまたこの世界を侵略するかもしれないだろうとな。その時、またモンスターを大量に送り込まれたらUDFの信頼は全ての無になる。君なら分かるだろう、モンスターが再び侵攻すれば民衆たちは困惑し暴動を起こすだろう。その民衆に兵士は銃を向けられるかな?」

 

 UDFが民衆から信頼されたのはモンスターとの戦い生存圏を守った事と治安維持に貢献してる事だ。もし、それが崩れたら? UDFの信頼は無くなり民衆の離反が起こり治安の悪化は免れない。

 

 そして、その帝国という存在がもし再び侵略してきたら? それはモンスター達との戦争が勃発するという事だ。モンスターに荒らされた土地、崩れた治安。人類はあの恐怖と戦う事になるだろうが

 

 いくつかの勢力に別れたこの世界で人類は共に戦えるのか? 

 

「それにこの金属……とんでもない。この世界の金属より硬度かつ柔軟だ。軍上層部に彼女たちは鉱山の所有権や国土の譲渡の証明書まで持ってきたんだよ。だから、異世界に行くことにデメリットよりもメリットは大きいということだ。こいつを兵器転用すればネオアメリカンフォースも敵じゃない」

 

 美しく輝くミスリル。その魅力と異界から脅威に臆したのか。あの女にまんまと嵌められた訳だ。

 

 異世界なんて信じられない。だが、明らかに人ではない竜人を名乗り圧倒的な力を持つ女、ドラゴンを手懐ける女騎士。信じる材料は少なからずある。

 

 そして、異界の脅威。元よりモンスターの恐ろしさを知ってる人達だからこそこうなってしまったのだろう。苦渋の判断を迫られた結果だろう

 

「彼女はUDFの特性とこの世界の情勢を見抜いたよ。一杯食わされた気分だ」

 

「大佐……指示を」

 

「君には申し訳ない。一週間後に異世界に発つ、編成については私が決めておく、後で胃薬を買ってきてくれ限界だ」

 

「俺もだ……」

 

 一週間後ハワイ基地にある滑走路に兵士、車両が集められていた。その中心には水晶を持つエスナがいた。どうもあれは時空歪めて世界を渡り歩く物らしい。説明を受けたが皆、さっぱりだったが

 

 シャドーの板田も相変わらずルーベルに付き添っている。あの日の事があっても普段通りの対応だ。ただ、曇った表情をしていたが

 

「本当に人が中にいるのか」

 

「そうだよ。昨日、麻婆豆腐奢ったウォンだよ」

 

「いやバイザー上げろよ……」

 

 エスナはウォンと絡んでいる。ウォンはフォートレスガーディアンカスタムを身に着けてるからねバイザーで顔が完全に隠れている。それは誰だか分からんよ

 

「しかし、このヘッドギアか? 使い方が分からんな」

 

「まあ昨日の教えた通り使えば会話できるから」

 

 周りの兵士がエスナにバイザーの使い方を教えている。真実を知らないからいいけど、知ってる身としては複雑だ。彼女もルーベルと同じく国を守る立場なのだ。

 

「あの人、隊長に気があるんじゃないんですか?」

 

「そうだな。まあ、あの人美人だしな隊長も格好良いしお似合いじゃね」

 

 シャドー2の隊員であるスナイパーの長野伍長と工兵の山田伍長が隊長である板田とルーベルを見て話してる。こいつらも元特殊作戦群の隊員でありかなりの猛者だ。というか皆緊張感がねえな。まあ、モンスターとやりあってるから馴れたか……行きたくないなら行かなくてもいいと言ったんだがな……

 

「流石に大人数は連れていけない。私の魔力なら200人までなら連れていける」

 

「陸上戦力が欲しい。戦車部隊1個小隊、装甲車も欲しいな。弾薬たっぷりのトラックに歩兵を数十人連れて行こう。後は順々にだな」

 

「分かった。それでは参ろうか」

 

 異世界に転送される時間が来てしまった。エスナが掲げる水晶が光り始め兵士たちがどよめきの声が上がり段々と空や背景が歪んでいく

 

「ご安心を我らの城に着くでしょう。これから先はあなた方が客人だ」

 

「丁重なおもてなしを待ってるよ」

 

 眩しさが増し目を瞑ってしまう。波の音と海鳥の声が聞こえなくなって瞼を少しずつ開ける。

 

 最初に写った光景は

 

 傷を負った人の集団だった。俺達に目もくれず多くの人間が血を流し倒れていた。視界の端には布で覆われている死体もあった。

 

 野戦病院なのか?

 

「ここは一体……っておい何が起きてる?」

 

「そんな、皆……嘘……」

 

「まさか私達が不在の時に、やってくれましたね。帝国……!」

 

「ぼさっとする暇はない。ヘリクリサム隊、負傷者がいる手当てしてやってくれ」

 

 ヘリクリサム隊に負傷者の治療を任せる。唇を噛み締めるエスナにそっと肩に手を置く

 

「何が起きたが知らんが切り換えるしかないぞ。何故怪我人がいる」

 

「奴ら……帝国の仕業だ。よくも皆を……」

 

「俺たちの世界に化け物送り込んだ奴らか、近くのあの騎士に話を聞こう。共同戦線を張っているし異世界に来て早々に死ぬ訳にはいかないしな」

 

「分かっている。父上……いや、国王と将軍に会おう。今の状況が分かるはずだ。付いて来てくれ」

 

 エスナの後を追い城の門まで着いて門番と話し込むエスナ。

 

「エ、エスナ様! ご無事で! その者は?」

 

「噂の異界の軍隊だ。中に入れて欲しい」

 

「今は厳戒態勢で、エスナ様だけしか許されません」

 

「彼らの力は強大だ。必要になる、私の頼みでも無理なのか?」

 

「残念ですが……ただフローラ様とローズ様が来られるでしょう。お二人なら存じているはずです。異界の方、来て早々申し訳ない理解してくれ」

 

「了解した。状況が判明次第我々も協力しよう。まずは重傷者を搬送する為のテントを建てるとしよう」

 

 最低限の人間を警戒に回し、余ってる人間でテントの部品を運んでいく。エスナと彼女の部下達だろうか数人の騎士が快く手伝ってくれた。

 

 だが、エスナは一体何者なのだろうか。誰でも丁寧に対応されるしテントも彼女が持とうとすると彼らが代わりに持とうするから彼女の地位は高い者と見える。

 

 正体はまだ知る時ではないまずは目の前にいる全ての諸悪の根源と戦はなければならない。奪われた物を取り戻す為なら皆引き金を引ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の晩

 

「よお」

 

「……随分と殺気立っていますね」

 

「あれも計算の内か? 中々演技だったな、お前は本当に味方なのか?」

 

「そうですね、確かにあれは狙ってやりました。余裕で私が勝てました。ですが……」

 

「帝国軍の一員と認識されるのは間違いです。私はあの国を心底憎んでおります」

 

「私はどれだけ堕ちようとあの国を滅ぼします。どんな手を使っても、奪われた物を取り返す」

 

「危険だなお前は」

 

「あなたが灰になるか」

 

「お前の脳漿が飛び散るか、だな。まあいいお互いにいい関係を築こうか」

 

 

 

 

 

 

「行ったか、雄二。あの女をよく監視していろ」

 

「了解」




追記
 大幅に書き直しました。


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第4話 異界の国で

M1A3エイブラムス
 旧アメリカ軍に配備されていた第3世代主力戦車。モンスターとの激しい攻撃に耐えられるように装甲強化と最新システムの搭載によりA3へとアップグレードされた。ウォーリア隊には4個小隊が配備されている。


「なんでこんなことになっちまったんだ」

 

「厄日だな、今日は」

 

 隣にいる少年程の若者が震える手で弓矢を構えている。机だの樽だの障害になりそうな物を積み上げバリケードを構築する。だが、問題は兵士でもない若い若者たちと作業していることだ。まともな軍人はというとエスナとその部下だろうか同じ鎧を着込んだ女兵士と少数の兵士だけ、後はボロボロな服を着て明らかな一般市民。この国の住民。翻訳アプリのお陰、意思疎通に問題ない。

 

「くそっ手が回らん! 包帯と止血剤持ってきてくれ! もっとだ!」

 

「痛いけど我慢しろよ。血が無くなると本当に死ぬからな」

 

「もう駄目よ。残念だけど……彼はもう」

 

「誰かメイドたちに包帯の巻き方と止血の仕方を教えてやってくれ。見てられん」

 

 同行していたヘリクリサム衛生隊の1個小隊が負傷した王国軍の兵士と国民の治療に奔走していた。感謝の声が度々上がるがこっちそうでもない

 

 王宮に仕えるメイドたちの手を借りながらも治療に専念しているが手が一杯だ。医療現場は崩壊に近い、幸先が思いやられてしまう。

 

 この光景に言葉を失う一同、エスナの握る手に力が入り唇を噛み締めている。

 

「エスナ様! 敵襲です! 奴らが来ました!」

 

「してやられたのか」

 

「帝国です! やれました……奮戦虚しく南地区は陥落! 他の地区は何とか守りきれてますが時間の問題です!」

 

「私たちが居ない間に他の者は?」

 

「ルーベル様、それが何処にいるのかは分からず。申し訳ありません」

 

「混戦しているのですね。厄介です……私の力を使えば街は火の海になってしまいます。カエルレウスたちも他の区の防衛に奮戦してるのでしょう」

 

 言語翻訳アプリを更新したお陰でこの世界の言葉は理解できる。南の方角に振り向けば煙だのドラゴンとかが見える。戦争じゃねえか

 

「なにやら立て込んでますね。我々はどうしますか?」

 

「今は負傷者の救護と来るであろう敵の迎撃準備だ。あの門を破ってくるだろうな。ウォーリア、M1A3の砲塔を向けさせている。敵がなだれ込んでも先制はできる」

 

「怪物が来ない事を祈りたいもんだな。おいエスナが来てるぞ」

 

 ヘリクリサム隊員たちが治療を始めている。テントをいくつか張り重傷者を運び軽傷者は応急処置させる。運び込まれる重傷者は王国軍の兵士だという、民の盾となったのだろうか。白い布で覆われる遺体が増えている。

 

 その遺体に縋る遺族たち。けして家族の元へ帰ることなく物言わぬ死体になってしまった。別の世界の人間とはいえやはり心に来るものだ。

 

 状況は芳しくないのは理解して早速エスナに国の役員と話をしたいと交渉を頼んだ。現場の指揮などを調整したかったがどうやら俺達をまだ信頼されてないらしい。全く酷い話だ。こっちから来てやったというのに笑えない。

 

「白熊殿……王に謁見させたかったのが。まだ城の内部までは入れない厳戒態勢だ」

 

 城門には派手で大きな盾と槍を持つ騎士が何とも申し訳無さそうな表情をしていた。彼も彼らで役割があるのだ、しょうがないものはしょうがない。

 

「そうか、まあそんなもんだ。だがなエスナ、もっと言いたいことがあるんだろう。そうだな、手を貸してくれ、と」

 

「き、貴様……エスナ様に無礼を!」

 

「辞めないか。それに私たちが巻き込んでしまったのだ。文句は言えない。白熊殿、では話を聞いてほしい。こっちだ」

 

 エスナに連れられテントの中に案内される。卓上に地図が置かれており少数の兵士が集められていた。

 

「会議を始める。その前にこの方は白熊徳殿で帝国の異世界侵略に屈しなかった軍の士官だ。失礼がないように」

 

「帝国の……」

 

「本当なのかよ……モンスターの群れを打ち破ったのかよ。すげぇ」

 

 エスナの紹介で半分信じて半分信じてない兵士が居た。まあ、顔見れば分かるさ。それから、会議が始まる。それまでの経過をエルフという種族の男が説明してくれた。名はウェインという。

 

「6時間前、突如として南区の防御戦線は崩壊しました。工作員が紛れ指揮系統も混乱し崩壊の一途を辿り南区の門が制圧されまひた。およそ5万近くの兵士に侵攻を許し防戦一方のまま生き残りを集め城の前まで撤退したのです」

 

「成程な、そんでここで迎撃態勢を取っていた訳か」

 

 頷くことから戦況は悪い模様。空気は重く敗色ムード、対策も浮かばない。というよりかなり若い士官たちだ。経験もないのだろうか。

 

 地図を見て、現在の戦力、武器、敵。それを鑑みて答えは一つ。

 

「埒が明かないな。門を開放するんだ」

 

「貴様! 降伏しろというのか! エスナ様、この男は信用できるのですか!?」

 

 胸倉を掴みかかる激昂する士官を諭し、ほかの士官が彼を宥める。まあ分からなくもない。俺が彼の立場だったら一発殴るかもしれんが

 

「あんたは知らないだろうが俺らにとってここは最後の居場所なんだぞ! 降伏なんてしてみろ! 帝国軍に皆殺しにされるんだぞ!」

 

「最後まで聞いてくれ。いいか、敵が門しか侵入できないのなら、攻撃を集中させやすいし少ない戦力でも何とかなる。そして、敵はこの城を落したいから戦力を多めに振ってるはずだ」

 

 地図に指を指しそこから、俺の考えた戦略を伝える。特にエスナとウェインは身を乗り出しながらも話を聞く。それに連れられ他の士官たちも食い入るように話を聞こうとしてくる。

 

「城門の前は扇状の地形をしている。この位置に戦車と装甲車を配置し射手も同伴させる。そして、バリケードを構築し敵の進行速度を落とさせる。動きのトロい奴なら撃ち抜くのは簡単だ。勿論、弓も然り。弓が使える奴を集めてくれ俺たちと同伴する」

 

「……あなたの言うとおりにしよう」

 

「おいっ!」

 

「異世界の士官の戦法しかないんだよ! このまま立て籠もっても負けるだけだぞ。それにペルグランデ帝国の侵略に負けなかった軍隊なんだ。この人たちに掛けるしかないんだろ」

 

 理解者が増えたか、もしくは俺に賭けたのか。まあ、どちらでも構わない。もう戦うしかないのだから

 

「あくまでも提案だ。採用するかはどうかは自由だ」 

 

「我々に切れる札はもうありません。各地区の防衛に戦力を回しており見事に分散されておりあなた方に依存する形になります」

 

 この国には4つの地区に分かれているという。その内の南区が陥落寸前で城にまで攻め込まれようとされている。更に戦力も分散されているという。最低限の戦力しかおらず実質UDF頼みということになる。

 

「ウェイン殿、確認したい。敵はどれだけの戦力なんだ? それに南区も取り戻さんといかんだろう? こっちにも事情があってこの国を滅ぼされるのは困るんだよ」

 

「戦える者は守るべきはずの民と少数の我々だけなんです」

 

「分かった。エスナ、張中尉を連れ俺たちの世界へ戻ってくれ」

 

「何故?」

 

「もっと応援を呼ぶのさ。何、張に任せれば直ぐに来てくれる。だが、そこまで耐えるのは俺たちの仕事だ。それと」

 

 反対の意を唱えた士官に向き直り頭を下げる。

 

「すまなかった。だが俺たちも奴らに借りがあるのでね」

 

 正直に言おう。戦力は少々心ともない、戦車3両、装甲車4両、81mm迫撃砲が2門に歩兵が100人近く。少ない少な過ぎる。強化外骨格を着てるとはいえ皆、ヒーローのようには戦えないがあいつらなら来てくれるはずだ。

 

 だからと言って援軍が来る前提で戦わないつもりだ。なんなら弓や剣を拾ってでも戦うつもりだ。

 

「エスナ、頼んだぞ。あいつら呼べば勝てるはずだ」

 

「分かった。私がいない間、この国を頼む。二人も彼を手助けしてやってくれ」

 

「「御意」」

 

 エスナの護衛に付いてる二人の女騎士。彼女たちも竜騎士で俺が提案した作戦に賛同しており反発していた王国軍の士官たちを説得させていた。

 

 配下の二人も俺たちを気にかけている。逃げてきただろう市民が義勇兵として弓や剣を携え加わろうとしていた。

 

「エスナ様があなたに掛けるのならば私たちもあなたに掛けましょう」

 

「民で戦える者を集め兵の配置は任せます、手を煩わせるようでしたらお申し付けてください」

 

「助かるよ。後、地図を一枚くれないか? ウィングの連中に渡したい」

 

「ウィング? 直ぐに手配しましょう。ローズ、そっちは任せるね」  

 

「フローラそっちもね。白熊様、早速ご指示を」

 

 理解者たちの助力もあり民の中から義勇兵として参加。まあ、今隣にいる若い兄ちゃんは生まれたての小鹿みたいに震えている。初陣なのだろうか

 

「歳は?」

 

「先月で15歳です……まさか戦うことになるなんて」

 

「うちじゃ戦える歳だ。危なくなったらこれの後ろに隠れろ。安心しろ矢なんざ効かんさ」

 

 ストライカー装甲車を見てゆっくりと頷くが息遣いは荒かった。矢を握る手も未だ震えている。 

 

 後はウィングの報告を待つだけ。彼らは王国軍から提供された地図にドローンで撮影した情報を落とし込み王国に情報提供している。

 

 味方のM1A3とストライカー装甲車を停車させ歩兵の盾として配置させ、狙撃小隊のガイストは弓兵たちと同伴している。

 

 積み上げられた土嚢に89式の二脚を乗せ迎撃の準備を乗せ暫くすると、無線が繋がった。

 

『大尉、2万の兵士が迫っています。先頭には攻城兵器の破城槌です』

 

「そいつがこんにちわしたら、次はさよならだ。ウォーリア3−2頼むぞ。フローラ、ローズ、敵がそこまで来てる。王国軍の兵士に伝えてくれ」

 

『了解! あんな木造建築なんぞ木っ端微塵ですぜ!』

 

「分かりました。私たちは空を守ります。エスナ様程ではありませんが……」

 

「無理すんなよ。死なせたらエスナに顔を合わせられん、まだ会ったばかりだ。信用しろとは言わん、味方であることは忘れないでくれ」

 

「徳、声が聞こえてくる奴らだ。構えな、おいでなすったぞ」

 

 門が破城槌に叩かれヒビが入り、破られる。その産まれた空間に王国軍の兵士とは異なる黒い鎧と旗を掲げた騎士たちがなだれ込んできた。雄叫びを上げこちらを威圧しながら突っ込んでくる。

 

『ウォーリア3−2、射撃開始。撃てぇ!』

 

「丸で鉄の猛獣だ、帝国軍が吹き飛んでいる」

 

 M1エイブラムスの主砲が火を吹き破城槌が木っ端微塵になる。爆風や破片で周辺に展開していた敵兵が巻き添えを喰らい薙ぎ倒される。設置したバリケードに苦戦したのか思った以上に距離感がある。 

 

「全隊射撃開始。撃て!」

 

『81mm発射!』

 

『着弾確認! どんどん撃ってくれ!』

 

 俺の号令から一斉に射撃が始まった。無駄弾は可能な限り減らす為、セミオートで確実に当てる。二脚のお陰で照準がブレることなく胴体に命中させる。

 

 放たれるライフル弾は騎士たちの甲冑を貫いた。空いた穴からは血で溢れ崩れ落ち隊形が崩れ始める。

 

 追い打ちに後ろから味方が放つ矢が飛んでいる。足止めされる帝国軍の兵士たちは都合のいい的で素人でも当たるはずだ。バリケードを排除しようともう一つの破城槌が迫るがウォーリアの砲撃で粉砕する。

 

「す、凄い。これがこの人たちの力のなのか!?」

 

「破城槌を破壊したが敵はまだまだ来るぞ。徳、あいつら何としても突破するつもりだぞ。見ろよ、仲間の死体を踏み台にしてでも来るぞ」

 

 バリケードと死体によって進行を遅延させようとしたがバリケードは突破されつつ有り仲間の死体を踏み潰しても尚、立ち向かってくる。戦車の砲撃や装甲車に搭載されてる重機関銃、迫撃砲の攻撃に臆することなく止まることを知らない。

 

 いや止まれないのだ。止まったら将棋倒しになり大惨事だ。足を掬われ転倒する兵士たちがよく見える。

 

 俺たちは銃というアドバンテージがあるが弾が無ければ意味は無い。すでにマガジンは4つが尽きている。無線のやり取りで弾が無いと叫ぶ味方が多々いる。弾薬を積んでるトラックもあるがもう在庫は無いに等しい。

 

「大尉、ミニガンが尽きそうです。MK46に換装します」

 

「やばい弾が無くなりそうだ。ジュリアス、そっちはどうだ」

 

「後、マガジン3つだけだ。フラググレネードとワキザシもあるさ」

 

「突っ込むのは俺はゴメンだぜ。正気じゃない、呑み込まれそうだ」

 

 ミニガンは弾切れか、カールグスタフも後2発か。本当に2万人か? 次々と増援が送られてるだろきりがないぞ。物量の差は戦術で補える所はある。だが、こんな人海戦術だと限界はある。  

 

『ウィング7より各部隊へ! ドラゴンが来たぞ! それにミノタウロスもだ。なんて奴だ、斧を持ってる!』

 

「おいおい、あいつらモンスターを飼ってるのか!?」

 

「帝国軍はモンスターを使役して戦力の一つして送り込んで来るんだ! くそっこんな時に来るなんて! 弓でどうにかなる相手じゃない!」

 

 ドラゴンか、エスナみたいに人が乗ってる奴のことだな。ミノタウロスが武装だと? こっちじゃまあ牛頭の大男でタックルで戦車を吹き飛ばすやばい奴だ。そんな怪力を有す奴が斧なんか持ったらアーマーごと斬り裂かれるじゃねえのか?

 

 一人の王国軍兵士が言うとおり帝国軍はモンスターを使役して戦わせてるようだ。モンスターは死ぬことを恐れずただ前進してくる。人間と比べ生命力が高い。生半可な火力では倒しきれず呑み込まれてしまい幾つの街や村が蹂躪されてきた。

 

 大きな足音が聞こえてくれば雄叫びを上げるミノタウロスが現れた。足元にある死体やバリケードを踏み潰し突っ込んでくる。義勇兵たちからどよめきと悲鳴、嘆きのような声も聞こえるがこっちには銃火器がある。ミノタウロスは強靭な筋肉と生命力を誇るが図体のデカさと小回りが利かず遠距離攻撃と航空攻撃に無防備なのが弱点で接近戦を挑もうものならば間違いなく死が待っている。

 

「風よ、よしこの一撃で! 喰らえ!」

 

 ウェインが矢を放つ。風圧が凄かったが何をしたんだ? 矢がミノタウロスの頭部に直撃したが絶命に至っていなかった。

 

「頭に当てたのにまだ生きてるとは……おのれ、強化させたのか」

 

「スナイパー。アンチマテリアルライフルで排除せよ」

 

『了解、アンチマテリアルライフルによる狙撃支援開始』

 

 ガイスト6による対物狙撃銃の狙撃支援を要請する。ガイスト小隊は狙撃手で構成された小隊。彼らは後方からの狙撃支援を得意としており強力なモンスターやカウンタースナイプなど多岐に渡る遠距離火力支援を可能とする。なんて説明してる間にミノタウロスの頭は無くなっていた。

 

『ガイスト6、命中確認。頭部を吹き飛ばした』

 

「アルファ1、こちらでも確認。よくやった」

 

「魔法……なのか? でもマナを感じなかった。それになんと威力だ、ミノタウロスの頭部を吹き飛ばして仕留めるとは流石は帝国軍の侵略を退けたことはある」

 

「もっと仲間がいれば凄い武器があるんだけどな」

 

「それは楽しみですね白熊殿」

 

 50口径の弾丸がミノタウロスの頭を吹き飛ばす。その巨体は地に伏せられた。ミノタウロスを撃破したことにより義勇兵と王国軍の士気が高揚し始める。

 

 ミノタウロスと同時に現れた竜騎兵たちはローズとフローラたちとこちらのスティンガーミサイルで殲滅しつつあり敵の竜騎兵が地面へと堕ちていく。ミサイルから逃れるのはドラゴンの機動では至難の業だろう。

 

「ローズか! すまん助かる!」

 

「空なら任してくれ! まだまだ! 王国竜騎兵団の戦いを刻み込め!」 

 

「弓矢だぁ! 皆隠れろ!」

 

 弾薬が残り少なく弾幕が薄まったせいか反撃の隙を与えてしまった。敵からの矢が飛んでくる。かなりの数だ、戦車や装甲車を盾にやり過ごす。

 

「しまった、もうマナがない!」

 

「ウェインこっちに来い! これを盾にすればいい! 坊主! お前もだ!」

 

「ぐわぁ! あ、足が……!」

 

「待ってろ!」

 

 あの少年は逃げ遅れてしまい足に矢が刺さってしまった。倒れてしまいそのまま動けない。すぐに少年の元へ駆けつける。

 

「しっかりしろ! こんなところで死ぬな!」

 

「は、はい……ぐぁ……!」

 

「出血が酷い……! このままだと!」

 

 左足の大腿部に刺さっており出血も酷くこのままだと彼は死んでしまう。すぐに彼をおぶってストライカーの後ろに回り込む。

 

「メンデル彼を頼む。出血が酷いようだ」

 

「了解です。後は私に任せてください」

 

『エコー6、義勇兵が10人以上がやられた! 反撃だ!』

 

『こちらナイト2−1、重機関銃の残弾残り僅か。おいSCAR取ってくれそいつを使う』

 

 UDFの兵士に被害は無いが義勇兵たちに犠牲が産まれてしまった。今にも多くの義勇兵が命を落としている。銃を持たないがそれでも戦力の一つだった。 

 

「ぐぅ!」

 

「フローラ!? そんな!」

 

「やばい、フローラが落下した! 矢が刺さってる!」

 

 更に追い打ちを掛けるかのように今度はフローラが落とされてしまった。遠目で見る限り息はあり右腕を抑えている。彼女の相棒であるドラゴンは彼女を助けようと駆け寄るが敵の矢で降りられない。

 

 一人のガーディアンカスタムの兵士が盾を構えながら前進し始め彼女の元へ向かっている。

 

『これよりデルタチームは彼女を救出するため前進する!』

 

「了解、援護する。突入せよ」

 

『勝嶋! 盾を構えたまま進め。攻撃は俺たちに任せろ!』

 

「了解や! ほんま頼むでぇ!」

 

『シャドー2−1。デーヴィッド少尉、分隊を援護します』

 

 デルタチームが彼女を救出するため前進する。高い防御力を誇るガーディアンカスタムを着用する勝嶋が先頭に立ちフローラの元へと向う。シールド矢の攻撃を全て弾き返し突き進む。

 

 勝嶋を守るようにデルタチームが勝嶋の背後から援護する。勝嶋がフローラの元へ辿り着き担ぎ上げる。姫様抱っこか、シールドは背部にマウントし撤退する。

 

『彼女を回収しました! 今から撤退します! 援護を!』

 

 勝嶋の撤退を支援するため、彼らを妨害する敵を撃ち抜く。だが、敵との距離は近い離すためにも援護しなければならずその分の火力割いてしまう。

 

「なぜ、私を……敵を倒せば……」

 

「仲間を連れて帰る。それが俺らの部隊や、後方に下げさせて治してもらい、だからもうちょいの辛抱やぞ」

 

 勝嶋が戦線に辿り着きフローラをヘリクリサム隊へ送り届けたが先程火力低下が響いたのか、かなりの接近を許してしまった。バリケードも大半が破壊されてしまった。更に騎馬隊など機動力のある騎士たちが切り込んできた。

 

『不味い! バリケードが破壊されてきた! 200mまで来てるぞ!』

 

『ウォーリア3−3より3−1へ! 主砲の残弾無し! 弾切れだ!』

 

「大尉、このままでは押し切られます! って、うわ!?」

 

「ジルベルト、伏せろ!」

 

 騎馬隊の一人がバリケードを飛び越えジルベルトの背後に降り立ち槍で刺そうしたところをブレードで返り討ちにする。これは本格的に不味い

 

 弾切れを起こした兵士たちが手榴弾も投げ尽くし高周波ブレードに持ち替え王国軍の兵士と義勇兵たちと一緒に切り込みに掛かった。銃火器主体による近代的な戦闘から剣による古風な戦闘へと移行してしまった。オペレーターも弾切れ、やむを得ずブレードに持ち替え最後のバリケードを乗り越えた兵士たちを斬る。フォートレスタイプを着用する者は自慢の腕力で捻じ伏せ無数の矢、剣、槍、斧ですら傷の1つも付かず最前線で殿を努めている。ワイルドタイプとトゥルーパータイプの兵士は近接武器に持ち替え応戦状態、なれない接近戦だが装備のお陰でまだ戦える。

 

 攻撃から防御、ブーストによる身体能力強化、アーマーの機能をフルに使えばバッテリーの消耗は激しくなりバイザーが映すインターフェイスにバッテリー残量が20パーセントを切っている。バッテリーが尽きたアーマーはただの鎧に成り下がってしまう。そうなってしまうと相対的に死亡率は跳ね上がる。

 

 だが、何とか城門は守り続けている。UDFも王国軍も義勇兵たちも皆、剣、槍を握って戦い続けている。向かってくる3人を斬り伏せ大男と鍔迫り合いになるがブースト機能で剣ごと切り捨てる。しかし

 

「バッテリー残量9パーセントか……」

 

『シャドー2よりアルファ1へ、このままでは城内へ侵入されます。せめて弾薬の補給さえあれば』

 

「すまん徳。サイドアームも無い、万事休すだな」

 

 ブレード片手に戦い続けたがもはや戦線は崩壊寸前だ。もう少し戦力があれば……例えばヘリとか。この先には負傷者を治療しているヘリクリサム隊と情報を掻き集めているウィング7がいる。行かせる訳にはいかない、それにまだ死ねない。娘とまた会うためにもこんなところで倒れる訳にはいかない。まだ、この剣を手放さない。

 

 今度の敵はバカでかいトカゲだ。いや、翼の無いドラゴンか。徹甲榴弾も仕掛けたC4も既に無い。バッテリーも無いし交換できる時間なんて無い。

 

「これで最後だ」

 

 ヨハンのSV−98による狙撃。最後の一発だが額の鱗にヒビが入っただけで、そのヒビに向かけて高周波ブレードを投げる。脳天に刺さり息絶えるが一体倒した程度では変わりがない

 

「もはやここまでか……くそっ」

 

 後のないことを悟られたのか。帝国軍の兵士たちが我先と剣、槍を構え始める。戦果を上げたいのか首を狙ってるようだ。残ってるのはコンバットブレードと拳のみ、最期まで抗うか諦めるか。神様も残酷な判斷を押し付けるものだ。

 

「後ろから光……? この音はなんだ?」 

 

 後ろから何が光出して敵が爆発に巻き込まれ吹き飛ばされていきローター音が聞こえあちこちで爆発してる。敵の兵士たちが薙ぎ払われモンスターも吹き飛ぶ。

 

 これは間違いなくあの二人が来てくれた。いや、多くの仲間も

 

『待たせたな、徳。連れてきたぜ命知らず共を』

 

『カリバー1−1、敵を確認した。攻撃開始』

 

『フォックストロット到着! 挨拶代わりだ、RPG!』

 

『各分隊は先遣部隊の撤退及び補給を支援せよ。メタル隊、モンスターキラーを出動させろ』

 

「味方だ! 増援が来たぞ! 敵を一掃してるぜ!」

 

 張の声が聞こえる。来てくれたのか、あと遅かったら殴ってやりたいが間に合ったからまあいいだろう。攻撃ヘリ、アパッチとミサイル積んだドローンで城門に展開する敵軍一掃する。

 

「動ける者は負傷者を一箇所に集め撤退準備。急げ!」

 

「大尉、後は任せてください! 一度引いてください!」

 

「分かった」

 

 その後、応援に駆け付けた味方に助けられ俺たちは一旦後方へ下がった。アーマーを外しデジタル迷彩の軍服姿になった俺は報告を受け補給を受けていた。部下の一人でガンスミスのマイケルが89式を携えて来た。

 

 銃にかける想いは人一倍高く腕も確か、兵士たちからは絶対的な信頼を寄せマイケルもそれに応えようとする職人気質の男だ。職人の手により整備された89式を受け取る。

 

 安堵した様子で敬礼するもんだから余程に心配していたのだろう。色々と動いてくれたようだ。補給と整備は滞る無く進んでいる。

 

「大尉、ご無事でなによりです。敵性勢力は後退を開始しています」

 

「手間を掛けさせたなマイケル。UDF側に損害はない弾薬、糧食、バッテリーの補充を頼む。30分後に出撃だ、南にまだ敵はいる」

 

「了解です、現在、ウィングとクナイが情報を収集に努めています。マップデータの更新も済ませました。現在、南区の戦況ですが酷いの一言です」

 

 マイケルは手に持った地図を広げ説明する。城の防衛に成功したことにより王国軍の本格的な反撃が始まろうとしていた。敗北寸前から主要拠点を守ったことにより各地の王国軍が奮起し他の地区の防衛に成功し南区の奪還に企図しているという。

 

「カエルレウスという竜人が率いる青い騎士団は態勢を整え西区の防衛から南区の奪還に移行するとのことです。王国軍のある士官は我々に協力的で詳しいことを教えてくれます。特にウェインというエルフという男はよく教えて貰っています」

 

「ウェイン……礼を言わんとな。彼のお陰で異なる世界の軍事組織が最小限のすれ違いで済んでる。その地図で表してる赤いピンは何だ?」

 

「ここは、王国軍の生き残りが篭城してると思わしき教会です。王国軍将軍からの要請でここにいる王国軍兵士の支援して欲しいとのことです」

 

「了解した。まだ会ってないが了承したことを伝えてくれ。補給が完了次第ヘリボーンによる作戦を立案させる」

 

 戦いはまだ終わってない。まだ、始まったばかりなのだ。王国軍の兵士たちが集められ階級の高そうな男が彼らを鼓舞している。軍のヘリも着地し次々と兵士たちが乗り込んだりアーマーを急ピッチに修理したり時間はそう多くはなさそうだ。

 

 生還者たちは中庭に集められていた。共に戦った少年もそこにいた。彼は簡易ベットに寝かされていて衛生兵から治療を受けて負傷者も次々と手当てされていた。中には獣耳や翼が生えているヒト?のような存在。今思えば変わった連中だ。

 

「聞いた話ですが獣の耳や尖った耳をしてるヒトは亜人という種族です」

 

「亜人か……確か義勇兵で多く見かけたな」

 

「彼らにとって生まれ故郷はありますが国という概念が無いようです。そして、この王国は彼らにとって最後の希望と言えるてしょう。王国は彼らを国民として迎い入れてるのです」

 

「道理で戦う者たちが多かった訳か。国か……俺たちにとっては過去の産物になってしまったな」

 

「この流れを止める訳にはいかない。奴らをこの国から追い払うぞ」

 

 彼らにとってこの地が最後の安住の地だった。忠誠を誓う国家だった。何故だろう、ネオアメリカンフォースを超越する為にミスリルを求め軍事利用する事と世界を混沌に陥れた帝国に報復措置の為にこの世界にやってきた俺たちが醜く見えてしまう。

 

 少しだけ彼らを羨んでしまうが直ぐに整備が終わったアーマーを着込み89式を持ち上げ脚を畳む。垂幕を持ち上げ信じる仲間たちとヘリの元へ向かう。まだ戦いは終わっていない。

 




アエテルヌム王国
 ペルグランデ帝国の侵略活動に抵抗する国家。異界の存在を偶々知り帝国が送り込んだモンスターたちを退けたUDFを知り帝国の高位の魔道士を捕縛しUDFに接触し反攻しようとしていた。見事、接触に成功し城下町に侵攻してきた帝国軍の軍勢をUDFと共同作戦を展開している。ヒトと亜人に平等な地位と権利を与えられており亜人の貴族も多く亜人の奴隷売買は禁止されており王国軍の占領下地域にて取締が行われている。


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第5話 市街地制圧戦

ペルグランデ帝国
 亜人排他主義を掲げており虐殺や奴隷売買が横行しており多くの亜人がアエテルヌム王国軍に加わっている。 

UDF
 亜人族に対し差別的な発言及び行為を禁じられているが現場の兵士達が彼らとよく共闘する為殆ど見かけない。


 異界に来て早々戦いに巻き込まれた俺たちは王国との共同前線で城を守り抜いた。元の世界から増援が来て今、反攻へと転じる頃合いだ。

 

 テントの中に分隊を集め作戦会議を始める。疲労感はあるだろうが敵は近い、ゆっくりと休ませてやれない。まあこいつらなら大丈夫だろう屈強な奴らだからな

 

「取り敢えず状況の整理だ。敵は南の地区に侵攻し火災も起きてる。放火だな……そして、このように城まで道に続く門が開いて敵を迎撃しこれを撃破。だが、南地区にはまだ残存勢力がおり王国軍兵士たちが孤軍奮闘中という訳だ」

 

「その友軍は何処にいる? 英雄は死んで行った奴しかなれんぞ。未亡人も増えるしな」

 

「孤立してる友軍はこの教会に立て籠もっている。これよりアルファチームはブラボー、チャーリーと共に先んじてヘリボーンにより降下、展開し現地での戦闘に加わる。その他の部隊は城門から南進しローラー作戦で南区を上から制圧していく」

 

「応援は? まさか俺たちだけじゃないだろう?」

 

 後ろに親指を指して視線を誘導する。かつて日本が誇る傑作の戦車、実戦経験は少ないがその性能は高い10式戦車。補給を既に済ませているようで即出撃できる。

 

「10式戦車の1個小隊、ウォーリア5とストライカーMGS率いるナイト8が教会に向けて前進する」

 

「そいつはいい。なら、行こうぜ。その友軍は長くは持たんぞ、俺らが加勢する頃に教会が燃えていたらお終いだ」

 

「そうだな。全員、ブラックホークに乗れカトラス6−1だ。ミニガンの射手はヨルゴ頼むぞ」

 

 ブラックホークに乗り込みパイロットたちの離陸点検を終わるのを待つ。一応捕捉するがここは城内の中庭である。騎士たちが演練する場でエスナの計らいで借りている。

 

 城門の防衛に成功したのを知って聞いたか、貴族や地位の高い軍人たちが顔を覗かせている。その中に勇ましく風格のある中年男性が見えたがまさか国王なのか?

 

 点検を終えたのかブラックホークのローターが回り始め機体が浮き始める。ローズ率いる生き残りの王国軍の竜騎士と共に南区の教会へと向かう。さっきの男を含め俺たちを見送っていた。果たして心配か品定めか……それはその男しか知り得ないだろう。

 

「ブロッサムアルファ分隊アルファ1だ。ヘリ部隊状況を報告せよ」

 

『こちらレイピア4−1。現在、LZを確保中。尚、敵航空戦力と交戦中である。ドラゴンに注意せよ』

 

「各員、市街地戦だ。お互いに死角をカバーしろ、強化外骨格の性能を過信するな」

 

 攻撃ヘリがドラゴンと空戦を繰り広げている。ドラゴンをカモにする高射部隊ブーリァ大隊は城を防衛にあたり前線には来れないし乱戦状態だ。そんな所に高射部隊は放り込めない。

 

 しかしながら、ドアから見える光景は悲惨なものだ。あちこちで火災が起き血の海に死体の山。騎士や兵士は勿論、市民も含まれていた。それから目を逸らすようにバイザーを下ろす。更新されるデータを目に通していくシャドー2が友軍と合流し前進したようだ。

 

「!? 大尉! ドラゴンがこっちに! うぉ!」

 

 異変というものは前触れもなく訪れる。パイロットからの忠告がそれを告げた。

 

 建物の影からドラゴンが現れ尻尾がテイルローターに触れバランスが崩れた。激しい揺れにより身体が宙に浮いてしまう。

 

「姿勢制御不能! 掴まれ!」

 

 しがみつき耐え忍んだが体勢が崩れた瞬間、体が宙に浮いてしまった。

 

「不味った!」

 

「ぐわぁ!」

 

「くそっ!」

 

「徳っ! 掴まれ、ああくそ!」

 

 機体の外に身体が投げ出されカルロスが伸ばした手を掴み切れずそのまま地面に落下してしまう。脇目だがギリアンとジルベルトも落ちてしまったようだ。

 

 衝撃吸収機能を活用し着地の衝撃の緩和させる。それでも中々起きれなかったがカルロスの声が聞こえ何とか起き上がる。

 

「徳! 大丈夫か!」

 

「俺たちに構うな! 作戦遂行を優先しろ!」

 

「分かった! 先に教会に行ってるぞ! それまで指揮は執っておくぞ!」

 

 ここで戦力を削る訳にはいかない。カルロスたちを先に行かせブラックホークを見送る。ギリアンとジルベルトも起き上がり現状を確認する。 

 

「ジルベルト、ギリアン。状況を整理するぞ。ヘリからのリペリングを失敗して俺たちは見知らぬ街へ落ちてしまった。無線が混線し繋がらない。おまけにジルベルトの広範囲無線機は破損してしまった」

 

「最悪だ……仲間と連絡が取れないなんて、内蔵式は混線しやすいですし」

 

「落ち着けジルベルト。集合地点を設けてるはずだ。確か、教会だ、そこには生き残ってる王国軍の兵士がいるはずだし中尉たちもいるだろう」

 

「向かう先に帝国軍の兵士に見つかる可能性がある。仕留められるなら仕留めるぞ」

 

 89式の薬室を確認しギリアンとジルベルトもそれぞれの得物、モスバーグM590とARX−160を構えバイザーを下ろす。

 

 センサー機動させ反応を探る。何かしら反応はあるはずだ。それが敵か味方かは分らないがそれでも進む他ない。

 

「大尉、戦闘準備完了です。ショットガンならモンスター相手でも戦えます」

 

「カールグスタフもある。無理するなよ」

 

「弾は沢山持ってますよ。足りなければ言ってください」

 

 コンパスを頼りに兎に角南へ向かう。しかし、懐かしい自衛官の頃、訓練でコンパスを使っていたのが懐かしい。だが足音と声でそんな気分は消え失せた。

 

「前方に敵、何かをこじ開けようとしています」

 

「開けろ。王国は今日滅ぶのだ。その血を絶やせ」

 

 先の戦闘で嫌ほど見た風貌の兵士、何かしらの倉庫かそれとも家か、扉を開けようとしている。

 

 奴らはこじ開けて中に入れば家財を外へ投げ捨て何人かの悲鳴、奴らの怒声が聞こえる。

 

 殺せ、根絶やしにしろ。それと同時に子供の悲鳴が聞こえそれを聞いたギリアンが鬼気迫る表情で意見具申というよりもはや訴えだった。

 

「大尉、止めましょう! このままですと!」

 

「マジかよ。イカれてやがる!」

 

「お前もアフリカで見たろ、民族浄化という名の虐殺を。それを奴らはしようと言うんだよ。クソッタレ!」

 

 ギリアンの前職はイギリス軍の特殊部隊「SAS」の隊員だ。多くの戦場に赴いたといい悲惨な光景を何度も見てきたらしい。それ故か目の前にある命を救え切れなかったという。だからこそ義憤に溢れ止めなくても一人で突入しかねない。

 

「室内戦闘だ。フラッシュバンを投げ込む一気に制圧するぞ、ギリアンMP5に換装しろ」

 

 指示を出し室内戦闘に備える。相手が時代遅れの騎士で良かった。銃火器相手なら流石に不味かったが慎重に扉の前に立つと喧騒が聞こえる。

 

「やめて! この子たちだけは!」

 

「黙れ薄汚い亜人共め。我らの大地にお前たちの居場所は無い。もういい殺れ」

 

「それでも、あなた達は騎士なのですか! 子供の命を奪う事に何の躊躇も無いのですか!」

 

「貴様、亜人の癖に生意気にも貴族だな。心底気に食わん……俗物者共め」

 

 物陰から覗き込むと耳と尻尾が生えた女性が同じような子供たちを庇うように立ち帝国軍の兵士に楯突いている。しかし、彼女の主張を無視し剣を鞘から抜き始める。

 

 もう時間が無いジルベルトにハンドサインを送る。ジルベルトがフラッシュバンのピンを抜き投げ込む。炸裂音が聞こえた瞬間にギリアンを先頭に突入を開始。

 

「GOGO! 突入! 市民に当てるな!」

 

「ぐぉ!? な、なんだ……眩しい、ぐはぁ!」

 

「お前たちは一体、がぁ!?」

 

「このレイシスト共が! くたばれ!」

 

 先頭のギリアンがMP5で敵の頭を撃ち抜きジルベルトも続いて発砲する。

 

 怯んでいる帝国軍の兵士を89式で射殺する。残りも迅速に排除する。その内の敵の一人が剣を構え突進してくる。

 

「貴様ぁ許さん!」

 

「来い」

 

 コンバットブレードを抜き距離を取りお互いに間合いを探り合う。先に敵から仕掛け真上から斬り掛かってくるが手を掴み受け止めた瞬間に首元に刃を当てそのまま引き抜いた。丁度、脈を裂き仕留める。

 

 最後に生き残った兵士は子供たちを庇っていた女性の腕を掴み首に剣を突き立て人質にする。これに全員が引き金なら指を離す。

 

「く、来るな! 来るとこの女の命が! 武器を捨てろ!」

 

「ちっ……面倒なことを」

 

「しまった……!」

 

 男に従い武器を下ろそうとしたが人質にしてる女性は目で何かを伝えようとしていた。それを見たギリアンは俺とジルベルトに視線を送る。

 

「分かったよ、降ろすぞ」

 

「そうだ、それでいい。よくもやってくれたな。必ずお前らを殺してやる、あがっ! て、てめぇ俺の腕を……!?」

 

 彼女は男の腕に噛みつき脱出。怯んだ男は腕を抑え蹲りギリアンがサイドアームのP228を抜き頭に押し付ける。

 

「あ、待て殺さないでくれ頼む」

 

 後がないのを知ったのか命拾いし始めるが

 

「腐れ騎士がくたばれ」

 

 頭を撃ち抜いた。人質にされてしまった女性をギリアンが受け止める。彼女以外にも子供たちもいて逃げ遅れて守っていたようで最悪な結果にならなくてよかったものだ。

 

 彼女は緊張から開放されたのか安堵した表情だ。ギリアンがゆっくりと彼女を座らせる。腕に痣が残ってるがそれ以外に目立った負傷はなさそうだ。

 

「大丈夫か? しっかりするんだ」

 

「あの、ありがとうございます……あなたたちは王国軍の兵士ですか?」

 

 ギリアンと目が合う。話していいだろうかの前にこの格好ではもはや隠せない。慎重に言葉を選んで話す

 

「いや、訳あって別の世界から来た。今、王国軍と協同し街の奪還作戦を展開している。ここから北の地域は安全だ、だが我々は3人は仲間と逸れてね。酷だが君たちだけで北に行ってもらう」

 

 本来なら護衛を付けておきたいが3人しか以内状況であり逸れている。つまり、余裕がないのだ。

 

「……分かりました。ですが、安全を確保して頂いただけでも感謝します。避難していたのですが、この子たちを見つけて見捨てておけずここに隠れていました。私は戦えず身代わりになることしかできなかったのです」

 

「間に合ってよかった。君の勇気が奇跡を起こした、さて移動しよう。ここはまだ敵の行動地域だ。北に向かうんだ」

 

 彼女たちを連れこの場を後にする。幼い子供を抱き上げ外に出る。突入前よりも煙が増えている。街での戦闘は激化している証拠だ。ローター音と爆発音も聞こえ仲間たちは各地で戦っている。

 

「変な格好、銀色の鎧だ」

 

「うんだろうね。さあ、このお姉さんと一緒に行くんだ。いいね?」

 

「うん! ありがとう銀色の鎧のお兄さん!」

 

 子供たちに言い聞かせて素直に応じさせる。後は彼女らの無事を祈るしかない。弾倉を換え体勢を整える。

 

「兎に角北へ行ってくれ。安全なはずだから、生きて帰ったらまた会おう」

 

「名は? せめて名前だけでも」

 

「ギリアン、ギリアン・タイナーだ。さよならお嬢さん」

 

「私は……」

 

 その時、レーダーにモンスターの反応が出現し一気に警戒を高める。物陰から一人の王国軍の兵士が足を引き摺りながら現れた。

 

「警戒しろ。モンスターの反応だ近くにいるぞ」

 

「た、たすけて……くれ」

 

「に、逃げろ! う、後ろ!」

 

 ジルベルトが王国軍の兵士を助けようとしたが間に合わず眼の前で噛み付かれてしまった。蛇型モンスター、ナーガだ。世界最大の蛇として知られるオオアナコンダは最大9Mまで成長するが、こいつの場合は平均20Mで自分より小さい奴を丸呑みにしてしまうモンスターだ。兵士を噛み付け地面に叩きつけ力尽きた兵士を丸呑みにしてしまう。そして、次の獲物を捉えたようだ。

 

「こんな時に……!」

 

「くそっ、カール・グスタフは使えん」

 

 通路が狭く後ろには彼女と子供たちがいるためカール・グスタフのバッグブラストに巻き込まれてしまう。ナーガは巨体故に攻撃は命中し安いが生命力が高く獲物仕留める際の噛み付きは俊敏であり接近戦のリスクは高い。

 

 ギリアンのモスバーグにスラッグ弾を込めれば倒せるチャンスはあるが返り討ちに合う可能性が高い。しかも、こんな逃げ場がない所ではますます不利だ。

 

 ブーストを使えば屋根に上がれるが彼女たちを置いて行くことになる。それはできない、フラッシュバンも温存しておきたいが……どうする?

 

「おじさんたち、こっち来て。道があるよ」

 

 少年が足にしがみつき指を指す。狭いが道はある。ここならナーガの追撃は躱せる。確かに狭いが何とか通れそうだな

 

「ギリアン、先導して行け。俺たちは後で行く」

 

「了解! さあ付いて来るんだ!」

 

「伍長と民間人の避難を確認しました。大尉どうしますか?」

 

「もう一回フラッシュバンで怯ませる。その隙に逃げるぞ」

 

 フラッシュバンのピンを抜いてナーガの前に転がす。炸裂して怯んでる間に狭い通路に逃げ込む。

 

「ああくそ、表面が擦れる。塗装が剥げそうだ」

 

「我儘は言えんぞジルベルト。この先が広い場所ならカール・グスタフが使えるんだがな。祈るしかあるまい」

 

 装甲を擦りながら漸く出口に辿り着くと市場の通りに出た。ここなら問題なく無反動砲が使える。無反動砲に手を掛けナーガを待ち伏せる。

 

 あの地面を這いずる音が聞こえる。音が大きい方に砲口を向ける。建物の影から奴が顔を出す。

 

「倒せるのですか? あのモンスターを……!」

 

「安心してくれ、少なくても君たちだけは逃がすつもりだ。さあ、来いここならこいつを遠慮なく撃てる。俺から離れろ」

 

 バッグブラストに巻き込まれないように彼女たちを離れさせる。二人をバックアップに付けさせ狙いを定める。じりじりと接近するナーガ、涎を垂らしてる辺り余程に腹を空かせてるらしい

 

 接近された分狙いは定めやすい引き金に指を掛け始める。外したらお終いだ。再装填は間に合わない。チャンスは一回

 

「大尉、来ます! 奴はとんでもない速度で噛み付いて来ます!」

 

「今だ!」

 

 奴が噛み付く兆候を狙って無反動砲を撃つ。弾頭が突き刺さると同時に炸裂ナーガの悲鳴と共に胴体が真っ二つに千切れた。

 

「仕留めた……ん? 何っ!?」

 

 完全に仕留めきれなかったようだ。最後の悪足掻きと頭だけ残っても尚噛み付いて来た。不味い、避けられそうにない

 

「させるか!」

 

 ギリアンがモスバーグで怯ませ撃ち続ける。止めにスラッグ弾を込め頭に銃口を押し付けて

 

「終わりだ!」

 

 止めを刺した。ナーガの脳漿が飛び散りもう動く事はないだろう。安全が確保されたが懸念すべき問題がある。

 

「大尉、彼女たちだけでは危険かと。寧ろ連れて行った方が安全では」

 

「ということだ。残念だがここいら一帯の安全は保証できない。俺たちは友軍勢力が取り残されている南区教会へ目指している。そこは激戦区だし守れる自信がない」

 

「私もただで助けてもらう訳にはいきません。その教会なら知っています。道案内なら私だって」

 

 彼女は死体から矢筒と弓を取る。もう覚悟は出来て結局のところ進むしかないと分かったようだ。

 

「分かった。案内を頼む、警戒しながら前進するぞ」

 

「……そういえばお嬢さん、お名前は?」

 

「あ、その忘れてまして……アリシアといいます。ギリアン様」

 

「アリシア……必ず君たちを守ろう。さあ行こう」

 

 アリシアを先頭に教会へと再び前進して敵と遭遇することなく十字架が見え始めると銃声が聞こえてくる。カルロスたちがいるかもしれない。

 

「大尉、そろそろ無線を使用してみてはどうでしょうか? この距離なら無線機は繋がるのでないでしょうか」

 

「そうだな、やってみよう。こちら、アルファ1誰か応答せよ」

 

『……徳? 徳か!? 今何処にいる!』

 

 戦友の声が拾えた。無線機が繋がり安堵する

 

「カルロスか、詳細は不明だが教会が見える距離までいる」

 

『そうか! こっちは現地の友軍勢力とウォーリア5たちと合流して拮抗した戦況を覆す所だ! 早く来ねえと俺が全部手柄にしちまうぞ!』

 

「そうなったらお前が大隊を率いることになって面倒くさい書類が待ってるぞ」

 

『それはゴメンだぜ! とっとと来いよ! ティナ、これを使え! ピンを抜いて投げるだけだ!』

 

 かなりホットな戦況らしいそういえば展開されていヘリは思ったより少ない。撃墜されたのか?

 

「大尉、アパッチが壁の外へ飛んでいます。壁の向かい側に攻撃してるようです」

 

 城壁の越えた先に敵の大群の対峙してるのか、ドローンからの対地ミサイルが降ってるのが見える。

 

『な、なんだあの緑色のロープの奴? なっ弾丸が逸れた!?』

 

『何だと? 南の方向に見える屋根の上のあいつか!』

 

「カルロス、その位置は何処だ? 高所を奪って援護する」

 

 無線の越しだが何か起きてしまったようだ。バイザーのマップデータにマーカーが示された。住宅の屋根に何がいるようだ。

 

『マーキングした! お前たちの方が近い頼むぜ、そいつら戦車の砲弾ですら逸す魔法だ、気を付けろ!』

 

「よし聞こえたな。カルロスたちを苦戦させている敵兵がいる。聞こえた通り魔法が使える。まさに異世界だな」

 

「大尉、あの屋根にいて緑色の外套を着てる奴です。俺が先頭に立ちます。アリシアたちはここで待っていてくれ」

 

「ええ、気をつけて……」

 

 マーキングされた建物に接近を試みるが開けた場所に出なければいけないようだ。敵兵が通り過ぎのを待ち合図を出して一斉に走り出す。建物に張り付くことに成功して出入り口を探す。

 

 側面にあった扉を見つけゆっくり開けて潜入。倉庫のようでクリアリング開始、そのまま廊下に出ると出合い頭に敵兵とぶつかりギリアンが取っ組み合いになり、がら空きの脇腹にコンバットブレード突き刺し排除する。

 

「助かりました、大尉。相変わらず格闘得意ですね」 

 

「自衛官の頃は格闘指導官の資格持っていたからな、よし進むぞ」

 

 二階の階段を登り廊下を除き込み誰もいない。そのまま3階へ進む。やはり敵はいない、だが部屋を確認してないので何とも言えんが屋根裏へ続く部屋を見なければならない。一つ一つ確認していく

 

 幸い敵はおらず最後の部屋でようやく屋根に続く梯子を見つける。梯子を登り抉じ開けられた格子戸を潜り抜けて屋根に登ると弓と杖を持つ敵を見つける。

 

『あの野郎を早く何とかしないと接近されるぞ! 奴らが使役してるモンスターが飛び込んできたらこっちがやられる!』

 

『ミノタウロス、サイクロプスを確認! このまま接近されると壊滅します!』

 

「よし弓矢を持ってる奴を頼む」

 

 ギリアンとジルベルトに弓兵の排除を任せコンバットブレードを89式に装着し銃剣にする。フラッシュバンのピンを抜き放り投げる。閃光と爆音に怯む敵に肉薄する。

 

「なっ貴様ら!」

 

「逃がすか!」

 

 コンバットブレードで構え攻撃する。まずは足を狙って相手の動きを封じさせようとするが躱され杖の先端が光り始めて風が吹いたと同時に肩の装甲が吹き飛んだ。

 

「ただの風じゃないなこれは……」

 

「我らに刃向かったことを悔いるがよいぞ」

 

「なら俺たちの世界に化け物を送り込んだことを後悔させてやるよ」

 

 緑のロープの男と接近戦を展開する。オペレーターを右手に握り構えて撃つ。胸に向かって撃ったが弾丸は逸れてしまった。それと同時に右頬に痛みが走る。切れている

 

「なるほどそれが風の魔法か。間接攻撃を無効にするだけではなく風を斬撃にして飛ばし攻撃するのか」

 

「御名答、どこの国か世界の人間かは知らんがその奇怪な武器は通用せんな。後ろを見てみろ貴様の仲間が苦戦してようだな」

 

「それはお前を殺せば変わることだ。ならとっとと退場願おうか」

 

「来るのならば我が魔法でその身体を引き裂いてやろう!」

 

 また杖の先端が光り出した瞬間にフラッシュバンを投げ付け炸裂させる。炸裂したと同時にコンバットブレードを構え懐へ飛び込む

 

「ぬぉおおお……! 貴様、何がを、がふっ!? ぁぁ!?」

 

「悪いなもう手段は選べなかった」

 

 喉元を裂いて声を潰して最後にオペレーターで胸と頭を撃ち抜く。奴の手品が解けたのか帝国軍の兵士が戸惑い始め纏う風が無くなったからか後退し始めた。

 

 更に追撃で一団にカールグスタフを撃ち込んだ。敵が吹き飛ぶ光景を見れば手品が解けたのを分かるはずだ。 

 

「よしこれでどうだ。カルロス、例のやつを始末したぞ」

 

『確認した! 風の加護が無くなったぞ! 一気に押し返せ!』

 

「俺たちも合流するぞ。付いて来い!」

 

 ブーストで屋根から降りて教会へ向かう。10式戦車とストライカー装甲車、歩兵の一斉攻撃で敵は倒していくアパッチとコブラも加わり他の分隊もブラックホークから降下していき王国軍の竜騎士たちも参戦する。その中にエスナの姿が見え別の方角からはシャドー2とルーベルの他の竜人と青い騎士団も応戦していた。

 

「来たな戦友! 指揮権は返すぜ! デスクワークは勘弁だからな」

 

 走りながら撃ちカルロスたちと合流する。カルロスたちの装甲にら返り血を浴び先程の戦闘の激しさを物語っていて血が滴るコンバットブレードを片手に持っていた。

 

「ああ! 全員聞け! 敵は逃げてる! 追撃だ、手を休めるな! カルロス、状況を教えてくれ」

 

「お前が殺ってくれた奴が現れてから戦況が悪化し始めてそれまでは押していたがな。現地の友軍勢力並び義勇兵と戦っていたんだ。ティナ、こいつが俺たちの隊長だ」

 

「そうなのか、私はティナだ。白熊殿、カルロス、敵が引いているぞ」

 

 カルロスの隣に剣を持っていた銀髪の女性。よく見ると耳が長く尖っている。亜人の一人のようでカルロスが無線で手榴弾の使い方を教えていた人物のようだ。

 

「カルロス達に協力してくれたことに感謝する」

 

「私たちも助けられた。敵の魔法は解けている。後一押しで奴らを外に追いやることができる」

 

「ヴァルゴ5に連絡しよう。ヴァルゴ5、俺だ。アルファ1たちと合流した」

 

『了解、尚シャドー2が友軍勢力を連れ到達する模様』

 

 敵群の側面にロケット弾が直撃し弾丸の嵐と騎士達が突撃し肉薄、シャドー2が仲間を引き連れ敵は大混乱を起こしていた。

 

「アルファ1了解、今確認した」

 

『こちらシャドー2。友軍を連れ攻撃に加わる、各員は敵を撃滅しろ逃すな』

 

「なんて奴らだ! 逃げろ! 殺されるぞ!」

 

「あんな武器見た事が無い! それに何だあの鉄の様な猛獣は!」

 

『ウィング4より全軍へ敵は撤退! 繰り返す撤退している!』

 

「全員よく聞け奴らは戦意喪失した。城門まで前進し完全に締め出せ」 

 

 外へと逃げる敵を追いがら空きの背中を撃つ。盾を持った王国軍騎士が盾を叩き叫び始めそれに後押しされかのように皆が叫んだ。

 

 出ていけと、騎士も民衆も皆叫んでいた。その叫び声は帝国軍にとって恐怖しか感じなかっただろう。

 

 戦う意志も武器を捨て重い鎧も脱ぎ捨て奴らは門を潜り逃げて行った。

 

「敵は去った! 門を締めよ!」

 

「は!」

 

「よし彼らを守るぞ! 門が完全に閉まるまで油断すんなよ!」

 

 歯車を回り門が少しずつ閉まっていく、しかしとてもじゃないが遅い。その遅さに不安が募り始める。

 

「まだ閉まらないのか! 急いでくれ!」

 

「そう急かすな! ドラゴンのブレスを防ぐぐらい頑丈なんだ!」

 

「あれだけ痛め付けたんだ流石に来ねえ……よな?」

 

「知るかよ。でも弾は残ってねえぞ」

 

「おい見ろモンスターキラーだ。えげつねえ、ミサイル撃ちまくりだ」

 

 無人攻撃機がミサイルを落としていく、敵が逃げる先に着弾している土煙が上がっている。空からの非情な一撃は味方をも畏怖する。少しだけ敵に同情してしまう。だが戦争は悲しい事に情けという物が存在しない。勝つ為ならどんな手でも

 

「後半分で閉まる。あんたら頼むぞ、もう仲間はいないんだからよ」

 

「任せなって、戦車も来てる。勝てるぞ」

 

 戦車隊も合流し砲塔を向ける。だが聞こえるのはミサイルの爆発音だけ門も閉まっていく

 

「そろそろだ、来るなよ頼むぞマジで来んなよ」

 

 祈りが通じたのか敵の気配はなく門は完全に閉じたのだ。

 

「閉まった、閉まったぞ」

 

「取り敢えず一息つけそうだな。勝ったのか?」

 

「それは知らんが街を国を守った事に変わりない。聞け歓声だぞ」

 

 拳や剣、槍を空に高々と掲げ歓声を上げる大衆を観て戦いが終わった事を意味しUDFの兵士達も混ざっており銃を掲げていたのだ。

 

 壁にもたれ掛かり空を見上げ沈む太陽を見て元の世界と同じ光景に少しだけ安堵した。

 

「さてさて、この後はどうなんだろうな。今度こそ王様に会えそうな気がする」

 

 別の形で会いたかったけどな、ジープから役人っぽい奴が降りてきてる辺り面会できそうだ。どの道顔合わせはしたかったからな

 

「白熊大尉、国の役員です。国王様が是非、と」

 



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