アズールレーン 赤と青の航路 (RF2)
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設定等
本作を読む前に


※この作品は二次創作です。
 原作とは違う設定や展開が多々存在しています。
 苦手な方はブラウザバックを!


こんにちは!

 

作者の中二病男爵です。

 

本作品はゲーム「アズールレーン」を原作とする二次創作です。

 

そのため原作者様からの削除要請があった場合、削除する方針です。

 

また内容に関しましても、原作とは異なる部分が多々あると思います。

 

個人といたしましては

 

・キャラクターの性格及び言動は原作通りにする

・原作の原型をとどめない内容にはしない

 

などを心がけて作成しておりますが、

 

・私の作品への理解が不足している部分があること

・原作が未完結かつ謎が多数残っていること

・設定を原作から一部改変していること

・本作が原作のIFストーリーであること

 

などから、どうしても原作とは大幅に異なる内容になってしまいます。

 

具体的には"キャラクターが死亡する"ということもあり得ます。

 

これらの要素が苦手な方は、本作を読まれることを推奨できません。

 

ご了承ください。

 

 

 

 

——―以下あらすじ——―

 

 

 地表の71%が水で覆われた青き星。人類はそんな世界で文明を発展させてきた。

 

しかし、そんな人類の繁栄は、突如海より出でた異形の敵『セイレーン』の出現により一変した。

 

世界の90%の制海権は奪われ、人類は孤立し、生存を脅かされる。

 

圧倒的な力を有する外敵に対抗するため、人類は過去のいざこざを水に流し、軍事連合『アズールレーン』を創設。

 

人類のあらゆる英知を結集したアズールレーンの活躍により、セイレーンの攻勢を食い止め、制海権をある程度取り戻すことに成功する。

 

そうした中、人類の総力を持ってしてもセイレーンを完全に撃退できずにいる現状に対して、各陣営間で理念の違いが表面化。

 

アズールレーン創設に関わった四大国家のうちの一つ、『鉄血』は世界連盟『World Federation(ワールド フェデレーション)』の会議にて、セイレーンの技術こそセイレーンを滅ぼす鍵となると主張。

 

しかしセイレーンの技術の導入を認めた場合、セイレーンの研究が進んでいる鉄血が強国になってしまうことを危惧した、四大国家の『ロイヤル』『ユニオン』と鉄血の隣国『アイリス』によって却下。

 

鉄血もはじめのうちは粘り強く主張し続けていたが、アイリスとの国境問題でロイヤルがあからさまにアイリスの肩を持ったことで、アズールレーンとWorld Federation(ワールド フェデレーション)の脱退を決意して、新たにレッドアクシズを設立する。

 

鉄血がWorld Federation(ワールド フェデレーション)を抜けた後も、会議ではセイレーンの技術の導入についてのいざこざはなくならなかった。

 

四大国家の『重桜』もまた、セイレーンの技術の導入を主張していたのである。

 

これにユニオンと重桜の隣国『東煌』が猛反対する。

 

それでも主張し続ける重桜にユニオンは危険思想であるとして、裏で重要な会議への参加をさせないように工作する。

 

そんな中、鉄血がアイリスに宣戦布告。

 

これによりアズールレーンはアイリス側での参戦宣言をするも、重桜が参戦反対を主張し続けたことで実質的な参戦ができたのはアイリスが降伏する二日前だった。

 

これに対する責任として、重桜をWorld Federation(ワールド フェデレーション)の常任理事国から解任。

 

代わりに重桜と敵対していた東煌を常任理事国入りさせる。

 

重桜はこのことを非難し、東煌との戦争にまで発展。

 

さらには、セイレーンたちも自らの「本来の目的」を果たさんと暗躍を開始。

 

人類の運命はますますその混迷度を深めることとなった……

 




pixivでも同じ作品を投稿中です


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用語集(随時追加予定)

ここでは本作に出てくる用語のうち、
・原作とは異なる意味のもの
・原作に登場しない、またはまだ登場していないもの
を中心に記載していきます。


五十音順で記載。英語⇒日本語の順。

 

World Federation(ワールド フェデレーション)

本作オリジナルの組織。

世界連盟のこと。

もともとは後述の軍事組織、アズールレーンに所属する四大国家『ユニオン』『ロイヤル』『鉄血』『重桜』が常任理事国として、組織の中心にいた。

四大国家のほかに、鉄血の隣国『サディア』『アイリス』『北方連合』、重桜の隣国『東煌』などの様々な国が所属していた。

なお、鉄血はアズールレーン脱退と同時に、サディアは鉄血がアイリスに勝利した後に、重桜は東煌との戦争を機に脱退している。

 

・アズールレーン

原作とは多少異なる。

四大国家『ユニオン』『ロイヤル』『鉄血』『重桜』がセイレーンに対抗するため設立した軍事組織。

加盟国は、鉄血が脱退するまで四大国家のみであった。

重桜が脱退後、『東煌』『北方連合』『自由アイリス』が新たに参入した。

 

・KAN-SEN

原作とはたぶん違う設定。

メンタルキューブから生まれる人の姿をした生命体。

素体を元にして作られる。

歴史上の艦船の記憶を持っている。

艤装を装備して戦う(艤装は艦船の姿に展開することで外せる)。

 

・艤装

原作でも登場。おそらく原作と同じ設定。

KAN-SENの装備品。

日常生活では必ずしも必要なものではなく、必要時以外は艦船の姿に展開することで外せる。

 

・皇統派

本作オリジナルの用語。

重桜内の勢力の一つ。

現在のリーダーである長門を中心とした保守系の組織。

重桜内の最終決定権はこの組織が持つ

基本的に物事を穏便に平和に済ませたいと思っている。

新統派を押さえつける権限は持っているものの、実行した際に重桜内で反乱が起きる可能性を考慮しているため、新統派には手を焼いている。

 

・小進歩大躍進論

本作オリジナルの用語。

セイレーンの技術を導入するべきだという主張。

重桜が唱えた論で、少しずつ導入していくという点で"新技術導入論"とは異なる。

鉄血の脱退前から導入に乗り気だった重桜だったが、重桜の中にも「慎重に、各国の軍事的バランスを崩さないように」と主張する"皇統派"と、「即急の導入で、重桜を世界の実権を握りたい」"新統派"の間をとって出来た意見。

しかし、重桜のことをよく思わない東煌が猛烈に否定。

鉄血と仲が良かったことに不満を持ったユニオンも否定。

その動きに合わせて、ロイヤルとアイリスが否定する。

結果、重桜がアズールレーンやWorld Federation(ワールド フェデレーション)を脱退する要因となった。

 

・新技術導入論

本作オリジナルの用語。

セイレーンの技術を導入するべきであるという主張のこと。

鉄血が初めて唱え、各国に多大な影響を与えた。

唱え始められたのはセイレーン研究が始まった当初。

その頃は意外にも各国が導入を検討していたが、解明が進むまでは導入は危険との判断で一致したため、実現はしなかった。

やがて解明が一番進んでいた鉄血は、この力をどの国よりも早く導入し、世界の実権を持とうと考え、鉄血国内での導入実験の許可を各国に求める。

しかし、解明に後れを取っていたユニオンや鉄血と仲が悪いアイリス、北方連合、ロイヤルなどによって否決。

鉄血がアズールレーンやWorld Federation(ワールド フェデレーション)を脱退する要因となった。

のちに重桜が唱えた"小進歩大躍進論"に影響を与える。

 

・新生連合艦隊

原作ではスキルの名前、三笠のセリフで登場する用語。

ピクシブ百科事典によると赤城らに対抗する勢力らしいが、原作でこの用語が解説されているのを見たことがないので、オリジナルの設定を付け加える。

三笠・瑞鶴がリーダーで、赤城の新統派に対抗してできた勢力。

皇統派と似ている思想をしているものの、あくまで新統派の暴走を止める意味での組織である。

 

・新統派

本作オリジナルの用語。

重桜内の勢力の一つ。

新しく就任する大和をリーダーとしているが、実権は赤城が握っている。

表向きはセイレーンを倒すためにセイレーンの技術を導入することを認めさせるために戦争をしているという立場をとっているが、四大国家のトップに立つことを考えている。

好戦的で、行動的。

力を手に入れるためならどんなことでもする。

 

・素体

原作とは異なる設定。

KAN-SENの設計図、データ。個体ごとに存在している。

素体の存在によって修復にかかる時間が大幅に減り、万が一轟沈しても再建造(ただし時間がかかる)が可能で、KAN-SENとしての記憶も復元できる(ただしすべてではない)。

また、量産型艦船も素体を元に作られる。

逆に素体が失われてしまうと、再建造が限りなく不可能に近くなり、たとえできたとしても以前KAN-SENだったときの記憶はない。

 

・四大国家

原作通り。

『ユニオン』『ロイヤル』『鉄血』『重桜』の四か国のこと。

 

・陸上用艤装

本作オリジナル(今のところは)

KAN-SENは通常海上で戦闘するのだが、時には陸上が舞台になることもある。

例えば、鉄血とアイリスの戦争や重桜と東煌の戦争がその例だ。

その際に海上用の装備では性能を生かしきれないため、作られた艤装のことを指す。

 

 

 

 

 




pixivでも投稿してます。


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交ざり合う赤と青
決断


更新遅れました。すんまっそん。
pixivでも同じ内容をあげとるんでよろしく。


地表の71%が水で覆われた青き星。人類はそんな世界で文明を発展させてきた。

 

しかし、そんな人類の繁栄は、突如海より出でた異形の敵『セイレーン』の出現により一変した。

 

世界の90%の制海権は奪われ、人類は孤立し、生存を脅かされる。

 

圧倒的な力を有する外敵に対抗するため、四大国家と呼ばれる『重桜』『鉄血』『ロイヤル』『ユニオン』が過去のいざこざを水に流し、軍事連合『アズールレーン』を創設。

 

さらには四大国家以外の国々も全国で連合を作るべきだとし、アズールレーンを中心とした世界連盟『World Federation(ワールド フェデレーション)』を結成。

 

人類のあらゆる英知を結集した彼らの活躍により、セイレーンの攻勢を食い止め、制海権をある程度取り戻すことに成功する。

 

 

しかし―――

 

「失礼します。イラストリアス様、プリンスオブウェールズ様、エンタープライズ様宛に、ロイヤル参謀本部から報告がございましたのでお伝えに参りました」

 

ロイヤル式の豪華な部屋でティータイムのなか、部屋に入ってそう言ったのはメイドのベルファストだった。

 

「『ロイヤル本土近海ニテ鉄血ノ艦隊ヲ発見。KAN-SENガ1隻、量産型駆逐艦ガ2隻。コレヨリ攻撃ヲ開始ス。本部モ警戒サレタシ』という連絡が、ロイヤル参謀本部に本日の午前7時に届いたそうです」

 

その報告に室内の空気はどんよりとする。

 

「無駄な争いをどうして……」

 

イラストリアスからは、鉄血と開戦以来ずっと口にしているその言葉が漏れる。

 

「それで、戦闘の内容は?」

 

プリンスオブウェールズがひきつった顔で尋ねる。

 

「まず、敵艦を発見した軽巡ニューカッスル様率いる第二哨戒班が先制攻撃、あとからその近くで演習を行っていた戦艦デュークオブヨーク様率いる部隊も加勢されたそうです。こちらの戦力は第二哨戒班の軽巡2隻・駆逐艦4隻とデュークオブヨーク様の部隊の戦艦1隻・重巡2隻及び量産型駆逐艦3隻の計12。鉄血は重巡プリンツオイゲンと量産型軽巡2隻の計3隻です」

 

(相手は数としては4分の1。しかもそのうちKAN-SENは1隻しかなくて、あとは量産型か。)

 

「完全に有利だな」

 

私がそう言うとベルファストは首を縦に振る。

 

「その通りでございます。さらにロイヤルは先制攻撃を仕掛けることに成功しています。」

 

「結果は?」

 

その問いにベルファストは少し言葉が詰まる。

 

「敵の損害が轟沈1・中破1、いずれも量産型軽巡だったのに対し、ロイヤルは量産型駆逐艦2隻が轟沈・量産型駆逐艦1隻が大破・駆逐艦クレセントが中破・駆逐艦コメットと軽巡カーリューが小破です」

 

沈黙が室内を覆う。

 

「これが鉄血の"新技術"だというの……」

 

「だろうな。しかも前よりも強くなっている」

 

開戦からすでに半年。

 

ロイヤルとの戦闘が実質的に始まったのはアイリスが降伏した4か月前ではあるのだが、この4か月の間に起きた7回の戦闘で確実に鉄血の力は増していた。

 

「我々は彼らの持つ"新技術"を甘く見すぎていたようだな」

 

 

——―新技術。

 

この戦争の元凶ともなった力。

 

私たちが互いの国のいざこざを水に流し、各国がそれぞれの思惑を捨て、アズールレーンをやWorld Federation(ワールド フェデレーション)を結成できたのは『セイレーン』という共通の、それも強力な敵を持ったからであった。

 

つまるところ人類同士の争いをしている余裕がなかったからだ。

 

しかしその敵が弱体化した今、各国にはその余裕ができてしまい、それぞれが自らの思惑を優先した。

 

それは新技術、つまりセイレーンの技術に関してもそうだった。

 

人類よりも遥かに発展したその技術を使えば、被害を減らせるうえ、セイレーンの殲滅が遂行できる確率も上がるだろう。

 

鉄血はそう主張した。

 

これだけ聞けば納得できてしまうのだが、セイレーンの技術の解明が最も進んでいたのは鉄血が、このアドバンテージを生かして世界の覇権を握ろうとしているとしたらどうだろう。

 

実際のところ新技術の情報を明かさずに、自国だけでこの技術を完成させようとしていた。

 

もし昔アズールレーンで決めた条約で、実際にセイレーンの技術を使用する際はあらかじめ各国の許可をとることが決められていなければ、今すぐにでも新技術を導入していただろう。

 

その野望を止めるため……と言えば人聞きはいいが、どの国も結局自らの思惑を絡ませてこの問題を扱った。

 

重桜もロイヤルも、そしてユニオンも。

 

そしてその自国ファーストの風潮は四大国家だけでなく、アイリス、東煌、北方連合などの大国、そして世界中に広がった。

 

そして遂に7か月前、鉄血は()()()()()()()()()()()

 

アイリスと鉄血の国境問題を利用し、鉄血の国際的地位を下げて、鉄血の新技術導入を延期させようというユニオンの策だった。

 

これに賛同したユニオン・ロイヤル・そして鉄血と仲の悪い北方連合と当事者のアイリスで、鉄血を追い詰めた。

 

彼らはこれに反発しアズールレーン、World Federation(ワールド フェデレーション)を脱退。

 

『レッドアクシズ』という新たな軍事同盟を作った。

 

そしてその1か月後、鉄血はアイリスに宣戦布告。

 

すべての悲劇の始まりだった。

 

 

「ああ、間違いなく強くなっている」

 

プリンスオブウェールズがそう続ける。

 

「鉄血は開戦当初の時点でアイリスがたったの2か月で降伏するほどの力を持っていた。アズールレーンを抜ける前からひっそりと新技術を開発していたとしても、加盟中に大胆な実験はできなかったはず。本格的に実験を始めて1か月でアイリスを追い込む技術力。我々は彼らを完全に見くびっていた」

 

新技術とそれを操る力を十分にもった彼らと、人類の力だけでしか戦えない私たち。

 

この戦いの行方はアズールレーンにとって、決して明るいものではないのだろう。

 

「エンタープライズ様。重桜にはこのことをどう報告するつもりなのです?」

 

イラストリアスが私に尋ねる。

 

「重桜はもはやアズールレーンを、いや、ユニオンとロイヤルを信用していない。これ以上の虚偽の報告は、重桜からの雀の涙ほどの信頼でさえも失わせることにつながるだろう。どうか慎重に決めてほしい」

 

「わかってるさ。ただ重桜が東煌を侵略している以上、これを見過ごすわけにはいかない」

 

私の今の言葉が純粋な正義から来たものではないことは、ここにいる誰もが分かったことだろう。

 

鉄血と友好的で、同じような思想を持っている重桜をユニオンはよく思っていない。

 

重桜もまた鉄血を、そして鉄血の肩を持った重桜を追いやろうとしているユニオンを、アズールレーンを、World Federation(ワールド フェデレーション)を自らの敵と思っているはずだ。

 

重桜の東煌侵略は、アズールレーンやWorld Federation(ワールド フェデレーション)の警告などどうでもいいという心の表れだろう。

 

そしてその事実に対して東煌を守ろうという気持ちよりも先に、重桜を追いやる供述ができたという考えに走った我々に、果たして正義はあるのだろうか。

 

鉄血に越されまいと自らの技術を極めるのではなく、鉄血を陥れる方向に事を運んだ。

 

もし我々がその向上心を持っていれば、セイレーンを殲滅し、平和な世界を創れていたのではないか。

 

そんなことを考えてしまう。

 

(だとしても、今更引き返せない。)

 

沈黙の部屋に受話器を取る音が鳴る。

 

「……ユニオン統合参謀本部に伝達。以下の内容を重桜に連絡されたし。"ロイヤルと鉄血が、ロイヤル本土近海にて戦闘。ロイヤルの損害、大破1・中破2に対し、鉄血の損害、轟沈1・大破1"……以上だ」

 

受話器を置くと、また部屋に沈黙が走る。

 

もう後戻りはできない。

 

「それが……ユニオンの、いえ、エンタープライズ様の選択なのですね」

 

イラストリアスが私に告げる。

 

「そうならば仕方あるまいな」

 

プリンスオブウェールズは席から立ちあがり部屋を出ていく。

 

では私は紅茶を取りに行ってまいります、と言ったベルファストも彼女についていく。

 

弱体化したとはいえ強大な敵を前にしてなお、人類は人類同士で争う。

 

しかし、それもまた未来を賭けた戦いであることは否定できないのだ。




見直しはしてないニャ。誤字脱字があったら教えてくれなのニャ。
評価もよろしくニャ?
少しでも暇がある指揮官は感想も書いてくれるとありがたいのニャ!

アズールレーンをやったことがない君!
ゲームをインストールして指揮官になってよ?
かわいい子がたくさんいるよ!?

ではまた次回。


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決断2

もうそろそろ前回の投稿から二週間たちます。
すみませんでした。
コラそこ!その割に分量少ないとか言わない。



「また異なっておる」

 

重桜の国に咲く神木『重桜』の下にある神殿。

 

その玉座に座る、巫女の恰好をした少女は報告書を見てため息をつく。

 

「戦果の報告というものは、多少の誤差が出てしまうものだというのは分かる。生死をかけた戦場で敵船が何隻沈んだかなど確認している余裕がないことも多い。しかし、これはあまりに違いがありすぎる。もはや誤差の範囲ではあらぬぞ」

 

鉄血の報告書。

 

ロイヤルとユニオンの報告書。

 

戦果が大幅に異なっているのはこれで何回目なのだろう。

 

「東煌に潜らせたスパイからの報告がこちらになります」

 

赤城の隣で座っていた加賀が立ち上がり、書類を長門に渡す。

 

「これは……やはりと言うべきなのか」

 

「東煌に情報を渡しているのはロイヤルとユニオン。なぜ情報源が同じなのに重桜に渡された報告書とこれほど違うのでしょうね。しかも、東煌のデータは多少違いはあれど鉄血のものと類似していますわ」

 

「……ロイヤルとユニオンは重桜に虚偽の報告をしていたというのか」

 

長門のその言葉に驚きはない。

 

虚偽の報告については以前から感づいていたのだろう。

 

「長門様。やはりアズールレーンを脱退すべきですわ」

 

玉座の前で正座をしていた赤城が強くそう進言する。

 

鉄血が抜けた今、アズールレーンは重桜・ユニオン・ロイヤルの三か国のみ。

 

そしてユニオンとロイヤルは重桜に虚偽の報告をしている。

 

重桜は仲間外れにされている。

 

それどころかロイヤルとユニオンは、重桜と戦争中の東煌の肩を持っている。

 

このままアズールレーンにいても、メリットはない。

 

「お言葉ですが、ここでご決断されないと重桜に未来はありません」

 

加賀も強く進言する。

 

『決断次第では最悪の戦争が起こるだろう』

 

三笠様が繰り返し言っていた言葉。

 

争いをさけ、世界中と協力する道を選ぶ。

 

ここで決断してしまえば、その道は閉ざされる。

 

しかし——―

 

「……皆を集めてくれ。緊急会議を開く」

 

深く考え込んだ後、長門はそう口を開いた。

 

「仰せのままに」

 

彼女たちは礼をし部屋を後にする。

 

「戦いはいつの世も変わらないということか」

 

その背中をみてこれから起こる悲劇を受け入れる覚悟を決める。

 

今後襲いかかってくる厳しい選択を躊躇なく選べるように。

 

すべては重桜を導けるように。

 

 

 

「よろしかったのですか」

 

赤城らが立ち去った後、真っ先にそう言ったのは江風だった。

 

「そうだよ長門姉!三笠先輩には慎重に決めるべきだった言われてたのに」

 

陸奥も純粋な疑問をぶつけてくる。

 

「ああ。余もそう思っておった。この判断は、おそらくこれから人類は今までに見たことがない戦乱を起こす。セイレーンとの闘い以上のな」

 

「だったらなんで?長門姉?」

 

「前回ユニオンが押し付けてきた東煌との戦争の停戦条件。江風は知っておるだろう」

 

「……はい。あれはひどいものでした」

 

「うむ。もともと東煌の土地だった場所だけでなく、明らかに重桜の土地であった場所の譲渡。莫大な賠償金。東煌を今後10年物資を支援し続ける条約の締結。どれも重桜が圧倒的に不利な条件」

 

「そして今回のこの仕打ち」

 

「もはやあちらに、重桜との和平の道を歩む気はない」

 

以前からセイレーンの技術の導入についてなので、ユニオンらとは亀裂が入っていた。

 

余は亀裂が入るくらいなら導入しないと思っていたのだが、赤城達率いる新統派の強い主張とそれを応援する多数の民の意見を尊重し、結局導入を推し進めてしまった。

 

結果として、重桜はWorld Federation(ワールド フェデレーション)の常任理事国から除名。

 

代わりに東煌がその地位につき、重桜の民は以前からの東煌への怒りの感情が爆発して戦争に至った。

 

(余があの時、導入しないことを主張していたら……)

 

「もうユニオンやロイヤルの子とは仲良くできないのかな」

 

陸奥の言葉が心に深く刺さる。

 

自分の意志を強く持たなかったから戦争は、悲劇は起こってしまった。

 

きっとまた仲良くできる日が来る、と返答することは長門にはできなかった。

 

 

 

廊下を行く赤城と加賀。

 

それを照らす夕日と舞い散っている大樹『重桜』の花びら。

 

大樹が花びらを散らすたび、心なしか弱ってきているように感じる。

 

「……ようやく決断してくださったわ。ここまで長い道のりだった」

 

赤城が口を開く。

 

「今になってようやくの決断とは……。長門には覚悟が足りん」

 

加賀は不満を言い始める。

 

「そんなことをいうものではないわよ、加賀。それもまた深い愛があってのこと」

 

「ですが、姉さま」

 

「この決断は重桜だけでなく世界をも動かすもの。長門様は自分で考えたのか誰かに助言されたかは知らないけれど、そのことの重みを知っていた。慎重になるのも無理はないわ」

 

「しかし、その慎重さが重桜の危機につながるのですよ?」

 

「ええ。だから私たちがいるのでしょう?」

 

赤城の足音が止まる。

 

天を見上げた彼女はささやくように言った。

 

「平和のために、愛のために、選択を躊躇しない私たちが……」

 

彼女のどこか悲しげな眼は、加賀の頭から離れなかった。

 




何とか文字数増やそうと試行錯誤してたら、こんなに時間たった上に内容がゴミになったので元に戻した感じです。


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