ダンジョンで手を休めるのは間違っているだろうか (語り下手な語り手)
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ダンジョンで手を休めるのは間違っているだろうか

下手くそではありますが、完結までは時間が掛かっても行くつもりです。プロットは出来てるのでやりますが、時間、どれだけかかるかなあ。


ここから遠い遠いところでの話

ロスリックという国での話だ

そこには黒い手のゴットヒルトという男がいた

黒い手とは端的に言って王を守る者の事をそこではさしていた

ゴットヒルトはその一人

だが、ある時を境に王の前から消えた

その理由を知るものはいない

だが、誰が語った

彼は一つを残して全てを捨て

時を、世界を、

全てを越えて

彼は最後の最後まで

王の黒い手であった、と

 

誰かが言った

かの者に

一時的でいい

その場凌ぎでいい

かの魂に

束の間の休息を

 

永遠の螺旋の中

かの者は王の黒い手である

誰が何を語ろうとも

 

 

 

 

 

その巨大な街の外にある草原の木の下で男が座っていた。

黒い革の防具の上にボロボロなマント、左肩には銀に輝く甲冑を頭には鍔の大きな黒いトップハットの下の外周を黒い布が覆っている。下半身もまた黒い革のズボンに、その外側をスカートを前後の中央を真っ二つ割ったような黒い革が覆っている。

背には弓を、腰には長短2つの刀を携えていた。

そんな男の装備はやけに小綺麗で、黒い革が光に反射して輝いていたどう見ても旅をしてきたようには見えないほどだった。それも最初からここに居たと言ってもおかしくない程に。

 

男の指先がピクリと動く。そして、腰を重そうに立ち上がり、おもむろに腰の長刀に手をかけ、ゆっくり刀を抜く。抜いた刀を天へ向ける。

そこには男1人。

暫く時が過ぎ、刀を下ろして納刀する。その瞬間、全身がぐらつき膝から前のめりに倒れこんだ。

 

男の遠くから何かが此方へ向かって進む音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

何かに揺られている。男が気が付いた時、初めに感じたのはそれだった。重い瞼を開く。

 

「よぉ、兄ちゃん起きたかい」

 

渋い声が響く、聞こえた方を向くが日差しが眩しく、誰がいるか良く見えなかった。

 

「調子の方ははどうだい」

 

男は声を出そうと、口を開け閉めしてあーあーと呻きに近い声を出す。

声の調整が済んだのか、1つ深呼吸をした。

 

「…問題ない」

 

「お前さん、いい声しているな」

 

声の主が感嘆する

目が日差しに慣れ始めたのか、辺りがはっきりと見え始めた。

前、左手、右手、至る所に木箱やアクセサリーらしきものが積まれている。

先程の声を呼びかけてきたのは、馬を操るガタイの良い壮年の男性であることも分かった。そして此処は

 

「起きてすぐで済まないが質問をいくつかいいか?」

 

男の思考を遮るようにして再び声を掛けられる。

 

「問題ない、と言うか答えない、という訳には行かないだろう。」

 

男は手をあげたそこには金属の手枷が付けられていた。同様に足にも付けられていた。

 

「察しがいいじゃねか、話は早い」

 

声の主は少しくすめた。その様子に疑問を抱いた男はたずねる

 

「不服そうじゃないか、何か気にいらないことでもしただろうか?非礼を詫びよう。」

 

「いんや、ただ、肝っ玉が座った野郎だと思っただけさ」

 

「それはまた…褒め言葉と受け取って構わないかな?」

 

「好きにしな…」

 

男の少しおちゃらけた様子に今度は不服だと溜息をした

 

「そんな事はどうでもいい、質問、いやこの状況だと尋問なるが、させて貰うぜ」

 

「なんでも聞いてくれ」

 

「まず、名を聞こうか。ついでに出身も言ってくれりゃ楽だ。」

 

ふむ、と男は口を閉じ考える。そして、顔を顰めた。

幾ばくかの時が経つ、だんまりの男に不審を抱いたカイドウは切り出すこととした

 

「どうした、言えない事でもあるのか?」

 

「いや、そうではない。」

 

大きな溜息をしたのち語り始めた。

 

「私は名は”黒い手のカムイ”。出身は……」

 

口が再び塞る。

 

「…思い出せない」

 

「思い出せないだあ?」

 

あぁと返事を返すカムイと名乗った男

 

「ま、なんらかの理由で話せないとしても、その思い出せない事を追求しても埒は明かねえから置いといてやる。」

 

「済まないな」

 

「…次だ。此処に訪れる前は何をしていた。」

 

「戦っていた」

 

「誰と、なんの理由で」

 

「様々な者達だ。騎士と戦い、魔術を使う奴と戦い、異形の者とも戦った。時には変なヤツらも相手した。」

 

「ほーお、そいつぁ、英雄見たいだなぁ」

 

ククッ、と声の主は笑う

 

「なんの為に戦ってたんだ?」

 

「”それ”が思い出せないのだ。」

 

「都合の良い奴なあ」

 

頭を横に傾け天を仰ぐ

 

「なんだ、ただの戦闘狂って訳か」

 

「…それは…違う。」

 

カムイが劇的に低い声で返事を返す。

抑えてこれなのか、それとも無意識に出したからこれなのかは不明だが

 

「…!…やっぱ理由があるじゃねえか」

 

声の主の声が少し上ずるほどには殺意に似た激情が漏れ出していた。

声の異変にカムイは気付かずに話を続ける。いや、その事に興味を振り分ける余裕がない。

 

「思い出せないから、理由と呼んでいいのかわからんが、確かに理由はあった。」

 

手枷がされた手を見つめるカムイ

 

「だが、覚えていることはある。内容が思い出せなくとも、確かに剣に誓ったのだ。」

 

ゆっくりと手を開く

 

「戦う理由を」

 

手を力強く握り締める。

 

「その誓った剣とやらが、その双刀って訳か。」

 

「そうだ」

 

カムイは声の主の後ろに置かれた刀たちを見て肯定した。

成る程な、と声の主がぼやく。

幾ばくか馬車が揺れる音だけとなった頃。唐突に声の主が話始めた。

 

「カムイ、俺の名はカイドウ。ジンツウ・カイドウという。」

 

呆気んい取られ、返事が遅れる。

 

「カイドウ殿よろしく頼む。」

「よろしくな」

 

 




二話完成後の後書き
リアルがこれから“楽しく”なるのでやばいかな(苦笑


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2話

色々試行錯誤してるので、形式とか全く違うのは許してくだせぇ…
読みやすいのはどんな形なのか、とか、この字数はこのくらいの文量になるとか、色々実験中です
完結させれたら、リメイクして表に出すつもりです。
下手ですが読んで頂けるとありがたいです






「カイドウ殿、よろしく頼む。」

「よろしく」

そこからカイドウは馬車の進む速度を落とし始めた。

カムイは急に自己紹介をしたカイドウに疑問を抱く

「カイドウ殿、何故、今自己紹介を」

「その方が色々都合が良い」

やけにあやふやな回答に更に疑問が高まる。

事を考える内に、カイドウが道の端に馬車を完全に停止させた。

止めた後、カイドウが馬車の先頭から立ち上がり荷台の方へ来た。

そして腰からナイフを取り出して、片手で構えカムイの前に立った。

「カムイ、こんな形だが提案をさせてくれ。」

「わかった」

「先ず、オラリオまでの道の間、傭兵となってくれ。受けてくれるなら、其奴を外す」

カムイの前に鍵を見せる

「2つ目、俺に歯向かわない事。こいつぁ、お前さんの誇り、誓い、プライド関係なく降りるまで俺の元で働いて貰う」

どうだ、とカイドウが投げかける。

「乗らせて頂こう。恐らく、私にはそれが必要だ。」

2つ返事で返したカムイにカイドウは満足そうに口角を上げ、鍵を使い枷を外す。

「誓約成立だ」

カイドウはカムイに手を伸ばす。

「ああ」

伸ばされた手を掴む。

硬い握手をした。

 

 

カイドウが馬車の先頭に戻って双刀を手渡す。

「なあ、カムイこいつはぁ俺の故郷、東の国の技術が使われてるようにしか見えないんだが。どうだ、あってるか?」

貰い受けたカムイは頷く

「あっている。東の国の技術を用いた物だ」

やっぱりかとカイドウはしてやったりと言うように返しながら、弓と矢を刀を置いておいた箱とは別の処から取り出す。

「カムイ、お前さん側から見たら騎士様に見えるんだが、どうもこの獲物たちを見ると狩人でもしていた。いや、騎士の使う物には到底見えないんだが」

受け取り背中に背負いながらカムイは可笑しそうに笑う

「なんだ、面白い事があったか」

「いや、見事に全部当てるもんだと感心したのさ。」

やっぱりか、とカイドウはしてやったりと言うように笑う。

そんなカイドウの様子をみながらカムイが口を開く

「なぁ、貴公は一体何者なのだ」

「そつぁ、馬車を動かしながらにさせてくれ、下手に此処に立ち止まってるとひが暮れかねん。暮れまでには街の宿屋に着きたい」

カムイはそうか、と言いカイドウは元の位置に戻って馬車を動かし始めた。

白い布で覆われた馬車の荷台から、青色で染まった中に点々と白い雲が見える。

カムイにとってこの風景は、ひどく懐かしくなぜか今しか見れないのだと、理由が生まれる過去を思い出せないながらも感じていた。

「さて、さっきのことだが、俺は冒険者兼行商人だ」

「成る程、だからか」

「なんだ、もう謎は解けたのか」

まあな、とカムイは答える。

「最初に此処にいる事がわかった時、馬車である事、荷台の物を見て此処が商品を置いておく為の荷台出ること。この事から何かの商業の物だとわかっていた」

「そんな事なら俺に聞くまででもないじゃねぇか。」

「その通りではあるが疑問は此処からだ。何故1人なのか、という事だ。この品物を見ると多種多様で一国や二国間を旅したところで到底集まる量ではない。と考えると、その距離間をただの商人が1人旅する事はほぼ不可能に近い。」

荷台の商品たちを見る

「だが冒険者と言えば違ってくる。阿呆な者は冒険者を名乗れん。名乗れるまでの力を持つものは単に運の良い奴か、本当に実力のある者のみだ。」

「そらどうも、そこまでの実力を持つものと認識してくれるなんて光栄だ」

カカカと笑う

「だがよぉ、カムイ。冒険者なんて誰でも名乗れるもんだろ」

「いや、そうでもない。貴公が最もわかっていると思うが、旅には相当な経験が必要だろう?」

カムイの問い掛けは続く

「経験のないものは自らの力を見誤り、そこらへんで野垂れ死ぬものと相場が決まっている。見て、戦ってきたからわかっているつもりなんだが、違うか?」

「ああ、間違いねえ。大半は先ず道に迷う。迷わないための知識が必要になる。道に迷わないヤツの半分は人に騙され消えていく。それすらも乗り越えた者の更に半分は自然に飲み込まれて消えてゆく。それも乗り越えて最後に自身の力で人付き合いをウマくヤる事が出来るヤツが生き残る。」

そうして消えていった奴らをよーく見てきたと呟く

再び静寂が訪れる。馬車の車輪と道の石がぶつかる音を響かせながら、見晴らしの良い草原を駆けてゆく。草原が続く中、突如カムイが口を開いた。

「カイドウ殿馬車を止めてくれ、野盗がいる」

指差す方向には人が隠れるには良い小さめの林が

カイドウは分かったと答え、馬車を止めた。

「カムイ何処に奴らはいる」

カイドウは腰に携えた望遠鏡を覗く

「白い枝を持つ木の左の方にある大きめの木の上とその根元だ」

「距離としては…500mくらいか?」

多分とカムイが同意する

「確かにこいつは野盗だ。カムイ、お前さん望遠鏡も無しに良く気づいたな」

「これでも狩人だからな」

狩人ねぇとカイドウが笑う

「此処なら距離的にまだ攻撃されないが、ちかずきゃ分からん。あっちは進行方向なんだがなぁ」

「どうするカイドウ殿。迂回するか」

「戦いは避けたいが、実のところあの林以外の道はかなりの悪路なんだよな」

面倒そうに頬を掻く

「やる…しかないって感じだな」

「……そうだよ。」

了承したとカムイは言って背の弓手に持つ

「はぁ、カムイ此処から狙えるのか?」

「厳しいな」

「何メーターだそこまでは近ずいてやる」

「150m、あの岩あたりなら上の奴は確実にヤれる」

カムイはカイドウの隣りへ行き草原の岩を指差す

「ただし、上の奴がやれるだけだ。下の奴は角度的に不可能だろう。」

「わかった。近付けよう」

馬が走りる中カイドウが尋ねる

「カムイ、残りはどうする。」

「貴公…わかって言っているだろう」

「ヘヘッ、接近戦は嫌いなのか?」

「まあ、嫌いと言えばそうだろう。」

カイドウは意外な反応に呆気を喰らう

「意外だな。近接の方が得意そうなんだがなぁ」

「弓よりはな、近接はなんせ、一対多数になったら可能がある。そうなればどうにもならん」

「そーいう意味ね」

「そもそも殺し合いなんぞないのが最もだろうよ」

「はッ、違いねえ。まぁ、道さえ塞がれてさえなければスルーしていくつもりさ」

そう言って淡々と馬車を走らせてゆく

 

 

 

「着いたぜ」

カイドウは馬車を岩の隣りに止めていう

止まると同時にカムイは無言で馬車から降りて弓を構え、呼吸を整え矢を放つ。放ったのちにすぐ矢を取り出してもう一度狙いを定める繰り返し同じ事を10回に届く頃カムイが口を開いた。

「あれで全部のはずだが」

「合ってる」

望遠鏡を片手にカイドウが答える

「俺が望遠鏡で索敵しても上にはいない、後は下の4人だけだ。」

「了解した」

荷台へ勢い良く飛び乗ったのを見計らいカイドウが馬車を出発させた。

 

 

馬が地を蹴る間カイドウが言う

「お前さん、弓を扱うのがクソうめぇな」

「そうでもないさ」

「一発目はあらぬ方へ飛んだと思ったら二発目には、首筋へストン。だ」

「それは誰だってそうさ。地面は風がなくても、空がどうかなんぞ誰もわかりはしないものだ」

カムイは謙遜して言う

「だとしてもすげえよ。じゃあなんだそんなにすげぇ奴でもいるのか」

「ま、昔の英雄様だな」

「英雄だあ?」

カムイがそうだと言い頷く

「どんな奴なのさ」

「最初に断っておくが、なんせ古い話だ。本当かどうかは分からん。」

「英雄なんて大抵がそんなもんだ。いいよ、話してみな」

わかったと一息ついて話を始める

「遥か昔のことで、今は亡きアノールロンドという国での話だ

その国には王とその王に使える4人の物がいた。深淵歩きアルトリウス、王の刃キアラン、竜狩りオースタイン、そして最後に話の要の鷹の目ゴーだ。

彼らは1人1人が一騎当千の英傑だった。その中のゴーは一発で竜を撃墜する事が出来たそうだ。竜つながりで悪いが、竜狩りオースタインはよく知らんのだ。話を戻す。ゴーはただの人ではなかったらしい。人の何倍もの大きさがあったという。所謂、巨人の1人だったそうだ。だが、そんな彼はある時王のもとを離れたそうだ。そしてある塔の上で木彫りをしていたらしい、そんなところにとある人物が訪れた、彼らは友好を築きその証としてゴーは弓の腕を見せたそうだ。見事飛び回る飛龍を一撃で落としたそうだ。目の隙間が蝋で潰された兜をつけたまま。」

「そいつは、異次元だな」

だろ、とカムイが同意する

「だがカムイ、それを手本にしても意味がなくないか」

「貴公のいうとうりだが、上を目指すなら一目置いておきたいだけだ。」

「そう言うもんかぁ」

と話をする間に元いた場所からは見えなかったところに木製の野党の拠点が見え始めた。拠点近くの林にはバツ状に組み建てられた塀で囲まれてる。馬車を進めながら様子を確認しながら進む。そんな時、カイドウが口を開いた

「あーカムイ、悪い知らせだ。」

「まぁ、仕方ないさ」

「…やるしかねえのかーはぁ面倒だ。」

頰を掻て嘆いた

 




次の話の完成度40くらい
次こそオラリオに着ける…筈
リメイクするならここの話をもっと簡潔にして素早く本編と絡めるようにしたいな…
(少しづつ、どのくらい完成しているか記していきます)
5月の中旬迄には次出しますね
野党のプロットは勢いで行けるとか思ってたので書いてなかった…
オラリオ?知らない事ですね(震え
次が出来ました


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3話

ギリギリ中旬ですね?
間に合いました。
え、話は進んだかって?
…読んでみればわかると思います…まぁ、物書き初心者なので許して、許して。


林に続く道に突如として、林に不自然に置かれた拒馬がちらほらと現れる。そしてカーブを曲がったところで、一回りおおきな拒馬が現れ、避けれないと判断したカイドウは、緩やかにブレーキをかける。カイドウとしては、まだまだ目的地が遠い故に馬に負担を傷を負わせるわけにはいかない。十中八九野盗が襲う目的の為に仕掛けたものだろう。馬車を止めたカイドウはカムイに声をかける。

「カムイ降りろ」

「...奇襲はなしでいいのか?」

「ああ、構わん。」

カムイは考えていた。この2人で数も分からない野盗を相手取るなら、片方が馬車の中に隠れ奇襲をかけるのが良いのではないかと。

「おそらくだが、この状況2人で背中あわせて戦った方が勝率は高い。」

「成る程、心得た。」

カイドウは商人でありながら冒険者でもある。メタを入れればこの世界の冒険者であるのだ。生粋の商人ならばこうは行かないだろう。カムイはそれを知らずとも長年の勘でカイドウは腕が立つと、そう考察した。カイドウから忠告される。

「気をつけろ、もしかすると恩恵もちかもしれん」

「どう言う事だ…?」

あーオラリオ行ったことがないのかとカイドウがぼやく。

「とにかくそこらの騎士より強い可能性があるって事だ」

「そうか、そうはならないといいのだが」

「兎に角降りろ、話はそれからだ」

カムイは言われるがままカイドウの方から馬車を降りた。

 

 

周囲を警戒する2人を囲む林の木々や草花、その中獣道と思わしき凹みの方から2つ人影が現れる。人影はどんどん大きくなり木漏れ日が人影を照らす

その2人は獣の皮を用いた肩当てに前だけ開けた長いスカートのような服装のガタイの良い男だった。

「よお!そこのお二人さん!こんな辺鄙なとこに馬車止めてどうしたのさ!」

約10メートルほど距離から此方に歩きながら声を掛けてくる。

「はーろー!名も知らんが親切にありがとさん。俺らよ旅人でよ、次の街、オラリオに向かってるんだが、拒馬に止められちまったよ。どうにかできねぇか?」

カイドウは臆さず返事を返す。カイドウもカイドウでスキンヘッドに強面で筋肉質な男だ。野盗だとわかっていても交渉する様に、この場合ならば威嚇として答える。

その中カムイの耳に微かな草を掻き分け此方に進んでくる音を感知する。

気付きを小声でカイドウに伝える

「此方に1人向かってきてる」

「了解」

カイドウも小声で答える。そんな事に族たちは気づくことなく声をかけてくる。

「おお!そうか、そうか!俺らが手伝ってやるよ!」

2人の野盗との距離が5メートルを切る

カイドウが近づいてくる2人に対して口を開く

「いんや、それは必要ない。柵を退ける事くらいお前さんの手を借りる程非力ではないさ」

と腕を横に広げ、笑う。

「へぇそうかい…まぁ、正直よ…俺らも貧乏だからモノ目当てで臨時バイトしたかったんだが、叶わなくて悲しい…」

言葉を一度切って続ける

「だからよぉー…」

腰に携えた曲刀を勢いよく抜き出しカイドウ達に襲いかかる

「無理やり取らせてもらうぜ」

 

 

言葉を返す暇もなく、刀が最も近くにいたカイドウに振るわれる

カムイもすぐさま剣を抜刀しカイドウの守りに入ろうとするが、もう片方の賊が隙を与えず、カイドウに振るわれた物と同様のもので襲いかかる。視覚の内に入っていたため、横に転んで避ける。所謂中ローリングだ。

その最中、真横で大きな金属音が響く

「おぅっと、親切なのはやっぱ皮だけだったか!」

「野暮な事は言うなよ」

カムイは賊を正面に捉えながら後退する。間合いを保ち、カイドウを見る隙が生まれた。張本人は振るわれた刀を腕で防いでいた。

「金属の籠手か…」

賊がぼやく

「ご名答、そしてお休みだッ」

上段から振るわれた刀を斜め下方向へ弾き、腕が解放されたすぐに構えを作り腰を落とし、前へステップをし、弾きによってがら空きになった賊の足元に潜り込む。勢いそのまま顎へアッパーが叩き込まれる。

賊の体が地面から離れる。

「ム、軽いな」

もう片方で浮いた体の腹ににボディブローを叩き込む。1メートル程飛んで地面に落ちて、そのまま動かない。

「アレは凄まじいな」

数秒にも満たない出来事だった。

 

 

観戦していると、賊が詰めて来ていた。カムイは当然それが見えている。なんならば、この賊はやけに威勢がいいと感じていた。仲間の1人が一瞬にして倒れたのだ、なのにもかかわらず今もこうして距離がなくなると刀を振るって命を取りにくる。

恐らく、というよりほぼ確実に何かがある。まだ別に作戦がある、という訳だろう。まさか3人目という訳ではないだろう。だとしたら、いや、それしかない様に感じる。

まぁ、そんな考えをする前に刀を振う賊の右斜めにローリングし、背後に回り方を掴んで直剣を体に差し込んむ。

「…がっ…!」

そして、引き抜く。刀が抜かれた切り跡から噴水の様に血が飛ぶ。噴水程美しものではないのだが。

と、軽くあしらったところで3人目へ気を向ける、先程カムイが剣で1人を突き刺した所で草むらから何かの音がしたのだ。

ここでカムイは気がついた。この者達は状況が把握しきれないほどのか弱き者達だと。つまりカイドウの攻撃に反応出来ていなかったのだと。それを証明するべく、3人目の元へ近づこうとする。

「カイドウ、先に3人目を確認してくる。」

「わかった、だが少し待て。先に此奴らを紐で縛る。」

カイドウの指示は攻撃される隙を賊に与える様なモノだった。

「いいのか?」

「ああ、問題ない。確実を俺は取る。」

カムイは困惑した

「確実?何をするんだ。」

「背中を見るんだ。十中八九此奴らは恩恵持ちではないだろう。が、万が一がある」

カイドウは腰にぶら下げているナイフを含めいくつもの道具のうちの、レンジャーが持っている様な縄をベルトから外す。

「カムイ、お前のやった獲物の止血だけしといてくれ。ほら」

縄と同様に筒状に巻かれた包帯をを渡される。だか、此奴らは賊なのだ。助ける理由がない。

「…わかったが、この者たちは死んでも構わなくないか」

「ああ、別に構わん。ただ此奴らをギルドへ渡せば金が手に入り、俺に伯が付く。メリットが大きのさ。」

成る程、カムイは納得した。つまり生け捕りにして賊を渡すと信用や、名誉が得られる訳だ。

しかし、とカムイは思う。なぜ、多く捉えないのか、3人、4人、出す者は多い方が伯が付くに決まっている。それをしないのは謎だ。

捉えないデメリットは何か、 こうして生け捕りにしていると闇討ちの可能性がある事だ。また、賊の長に我々の存在が知られて襲われる可能性がある。

ではメリットは何か、戦わなくて済む。つまり生け捕りにしないという事だ。運ぶ人数が少なくて済む。何だかんだ馬車には荷物が多く乗っている。そこに3人も乗せる、いや、もしも賊の援軍が来た場合更に積む人数が増えるのか。そうなると馬に負荷もかかり、全員を積めない可能性もあるわけだ。その上、生け捕り前提になる故、賊の本隊とわざわざ戦う必要も出てくる。

それならば拒馬を退けて、2人のみ積んで逃げるが吉だろう。更には、情報も売る事が出来る。また、そのまま仕事として受諾すれば更に金が稼げる。恐らく、いやほぼ確実にカイドウはこれを狙っているはずだ、

「成る程な」

「どうした」

「なんでもない、独り言だ」

「そうか」

カイドウ、商人カイドウ。どうりで一人で商人が出来る訳だ。

 

 

考え事をしながら作業を進める。失血で気を失っている賊に包帯を巻き、縄で縛る。縛り終えた後に気がついた。やけに賊の顔色が良い。失血で気を失った顔の青さではなく、少し風邪にかかている程度の悪さなのだ。

「やけに顔色が良い、回復したのか?」

「ああ、回復しているはずだぜ。」

賊を縛り終えたカイドウが答える。

「それはここから一週間ほど旅してたどり着ける隠れ街の特製湿布だからな」

「湿布だと、何もただの包帯じゃないか」

湿布といえば、文字通り濡れて、又は薬品で粘つく。だがこれにはそれが全くと言っていいほどそれがなく、真っ白なのだ。

ああ、それはとカイドウは続ける

「粉状にされた治癒薬を包帯の繊維に組み込んであるんだ、血で溶けて体に染み込んで行くから速攻性も高い。いいだろ?」

「成る程、素晴らしい技術だ。」

そんなものも取り扱うのかと内心で驚く。

「この技術を扱えるのは限られた奴らだからな。因みに俺も含まれるぜ」

「聞けば聞くほど貴公は凄いな。」

それほどでも、とカイドウは鼻で笑う。ああそうだと、言葉を続ける。

「カムイこれ企業秘密だから喋るなよ」

「それは…理不尽ではないか」

くっくっと、抑える様に笑うカイドウ。

「ばら撒かれちまったら、俺の元にディケアンケヒトの奴らが刺客を向けてくるかもなぁ」

「…まさか、とは思うがそれでも一儲けする気ではないだろうな」

「まさか、 俺はしがないか弱い商人だぜ」

なんとも白々しいと、声には出さないがそう思いながら、賊を台車へと積み込む。

「カムイ、俺は此奴らに手枷を付けて、服を剥いで恩恵の確認をする。その間に道の拒馬を退けてくれ」

「心得た」

了解したカムイは道に設置されている拒馬の前へ動く。拒馬は見た目以上に軽い物で成人男性2人ならば普通に運べてしまう。しかし、手が足りてはいないため、一人で行わなければならない。故に時間もかかる。軽く息を吐いた。

「出来る限り早く済ませようか」

そんな事を1人呟いた

 

 

 

 

 




雀魂タノシー
アッ、そんなやってないですよ…?
CODの方がプレイ時間は多いですし…?
次の完成度0
ケータイ、カエタイ…タッチガバグッテル…非正規に勝手に治された故、直してもらえんくなった…
ファック


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4話

取り敢えずアップ…
…此処半年は死んでおりましたが少し生き返れたのでかけました
亀より遅いですが付き合っていただけると幸いです



「カムイ終わったか?」

馬車の荷台から頭を出すカイドウ

「ああ、あれで良いか?」

獣道の様にしか見えない幅の狭い草の生えた道に、馬車を阻むには最小限の大きさの拒馬が置かれていたが、それは既に道の端へと追いやられ、通れる様になっていた。無理に動かしたが故か、地面にミミズがはった様な抉れた跡が残っていた。

「問題ない、お疲れさん。」

だが、と一言置いて続ける

「休む暇はない乗れ。出るぞ」

「了解」

返事を終え、すぐさまカムイは荷台へ。

そしてらカイドウは先頭へ座り馬を引く紐を持ち

「ハッ!」

とカイドウが声を上げ馬車を進めた

 

馬車が林を抜け、もう一度草原を通り森へ入ったころカムイが捕らえた二人を一瞥して、声を出した

「この者達起きないな…」

お、気付いたかとカイドウはクククと笑う

「そうだ、そいつらには薬を打ったからな」

「薬…か…」

「ん?ただの睡眠薬だよ市販の」

成る程と小さく呟くカムイ

「なんだ?死んだとでも思ったか?」

「まぁ、整備されているとは言えど道は道…多少なりとも凹凸があり、何時間も我らは進んでいる。当然、不思議になる」

死ぬのは困る故に厚めの布などを敷いてはいるが、さまざまな物がひしめき合う荷台を無理矢理開けて、載せているので良いとは言えず、むしろ悪いぐらいの寝心地になっている

「だからこそ、やけに効果が続くと思っただけさ」

「まぁ、市販とはいえども俺の改良が加わった物だからなぁ」

なんとと、荷台のカムイが声を漏らす

「貴公、薬学にも精通しているのか」

「伊達に、薬学の知識ファミリア1を名乗ってないからな。」

「家族一か、貴公が居るその家族はさぞ手強い物たちで溢れているのだろうな」

おっかないとカムイは笑う

「いやな、そうなら良いんだが、入ってきたばかりの奴らの手当てをファミリアの奴らができないからって俺に押し付けてくる面倒者ばっかだよ」

「信用されてるんだな」

 

褒められてむず痒いのかカイドウは手を光り輝く頭へ伸ばす

「あぁ、そうだカイドウ、いくつか質問させてくれ」

「わかった、というか話させてくれ」

「……貴公は人の心でも読めるのか?」

「いや、経験と予想だ」

「本当か?」

カムイは疑いの意を表す

「おうとも、心を読むなんぞできやしない。だがな、お前さん。辺境の奴らと似たような反応してやがるんだ。」

「辺境…私は辺境出身だったか…?」

「ああ、いやそうじゃない。お前さん記憶が混濁してたって言ってたな。そうじゃないんだ」

というと、とカムイは相槌を打つ

 

「単純な話さ、俺の住んでる街にいる奴らとは全く違う反応してるって事だ。」

それにと一息着いて言う。

「大方、“オラリオ”、“ファミリア”、“モンスター”この3つの説明も出来ないだろうさ」

 

カムイは肩を窄めて返す

「貴公は人の考えをよめないのではなかったのか?」

「読めないが」

「ならば、貴公は嘘つきだな」

それも大嘘つきだとカムイは言う

「いひひっ、光栄だな?」

笑うカイドウ

「そして、もう一つ分かったことがある。」

馬車の綱を握る片手で一を作る

「カムイ、お前さんは正直者であり、なんらかの運命がここにお前さんを呼んだみたいだ。」

カムイは眉間に皺を寄せて聞く

「どうにもこうにも出来過ぎたシナリオだ。身なりからして辺境出身どころか、何処かの傭兵や王族お抱えの騎士の様に見える。そんな奴が此処に居るわけがない。だが、現にそんなお前が此処にいる。」

片手を中にあげる

「だから俺にはお手上げだ。そして、その運命を進める1人は俺の様だ。感謝しやがれ」

と再びイヒヒと笑う

「運命か、…そうか、ならば進めるのみだな。」

一層眉間の皺が深くなる

「あぁ、そうとも。だがお前さん今は喜べ、今は俺が居る。“拾う神”と呼ばれた俺がいるからよ」

不適に笑うカイドウ

「運命だろうとお前さんの骨の一本ぐらい無理やり回収してやる。やりきりな」

「…そう、だな」

カイドウは宜しいと一言

「さて、切り替えて、オラリオだの、ファミリアだのの話をさせて貰うぜ。授業料は出世払いで頼む」

「宜しく頼むよカイドウ先生」

なんだか高くつきそうだと、カムイは天を仰いだ

 

 

 

そんなこんなで、道を進み、オラリオの城壁へとたどり着いた

此処では名ばかりの検閲が行われている

だが緩いのには訳があり、将来のスーパーヒーローの為である

とは言っても流石に指名手配犯等は捕まえたり追い返したりする

「とまぁ、こんなんだし、俺の顔パスもあるから気にするな」

「…よくこれで治安が保ててるな…ファミリアという存在は大きいのだな…」

「まあな」

と、それより俺らの番だぜ?

と言い、入場者の列に倣いながら門へと進んでゆくと、少し背の低めの恰幅の良い男が現れた

「おおカイドウさんじゃないですか!お久しぶりです!」

「よう、チャーマ。今日は1人荷台に冒険者志望の奴を一人連れて来たんだ、それと“お土産”も」

チャーマと呼ばれた男は苦笑いをする

「はは、またですか…私どもが本部にかけあっておきますのでどうぞお進み下さい。」

「おう!」

あぁ、とチャーマがいう

「忘れる所でした、荷台の冒険者志望の方お顔を拝見させて頂きたい」

カムイは素直をカイドウの方へゆき、荷台の幕から顔を見せる

カムイの顔を見たチャーマはおおと声を漏らす

「強き方ですね…」

「いや、私はそこまでの者ですよ。街へは…入っても宜しいですか?」

「ああ、失礼しました。勿論お入り下さい。ようこそ、オラリオへ」

チャーマは軽く敬礼をする

カムイは敬礼を返し、荷台へ戻る

「いやぁ、素晴らしい方を見つけられましたな。」

「たまたまな、どうだ強いだろ?」

「ええ、私のスキルもそう言っております」

「そうかそうか、ありがとうなチャーマまた“お土産”でな」

「はは…」

苦い顔をするチャーマを尻目に馬車を進める

「させ、馬車の中で話した通りギルドに降ろした後は自分で地図を頼りに行動してくれ。3日分の宿代は渡した通りだ。だが、無駄使いは厳禁だとも言ったな。」

「あぁ、貴公には感謝をしても仕切れないな」

「出世払いをわすれんなよな?」

「忘れないとも」

「ならば良い」

 




お読みして下さりありがとうございます
貴公に感謝を


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5話

…亀より遅い、ってのと、辞めないって言う誓いは守ったよ…?
あの、その、私受験の身で“悪く無い結果”になったので書き切れるました。
その、アドバイスを下さると凹みながら喜びます(?)

下手なのは変わりませんが読んで下さると嬉しいです


ギルドの前にで降ろされたカムイは カイドウの地図、実際には注意書きや当面のオラリオにおいてカムイが出来そうな事。のまとめ書き、にある様にギルドに入って行く。カムイは取っ捕まえた賊供を手渡すため、ギルド正面から遠のいて行くのが見える。

 

カイドウ曰く、“それ”専用の窓口があるらしく、当然街の役場でもある正門に置いて賊の処罰を下すのは“良くない”らしい。何故か、を考える事はここに置いておいて。

 

どんな形であれ、どんな場所であれ、新天地など良い記憶、良い経験がない。何処ぞの灰は街中で”たくしー“に新天地に連れて行って貰ったことがあるらしいが、何処も彼処もまともな所はなかった。

 

体に染み付いているらしいこの感覚が“そう”言う。

 

そんな不安などお構い無しに前に進まねばならぬ今、ギルドの扉を叩いた。

 

 

 

とは言うものの。どのみち、考える事が無駄である事には変わりない。そもそも、ギルドを含む“此処”が既に新天地であり。もう、踏み入れているのだから。

 

 

 

扉の先には身嗜みが良く整った。様々な役員と思わしき人達が働いていた。

 

「此処がギルド…成る程、街を管理する者達の拠点。と言うに相応しい場所だな…」

 

カウンターで人と会話してたり、様々な書物を運ぶ役員や、建物そのものの作りを無意識の内に役場を観察していた。己が知っている何かと比べると様に。

 

「そこの方ーどうかいたしましたかー?」

 

 そんな状態でぼぉっと突っ立っていたカムイは、ひと通り話が済んだらしい女の職員に声をかけれた。

 驚いたのか微かに目を大きく開いたカムイは、ああ、そうだったと、カイドウの言葉を思い出し始める。

 ギルドで冒険者登録をしなければならないのだ。

 

「何かお困りでしたら、此方でお聴き下さい」

 

カイドウに話は聞いていたけれども、冒険者の勝手すら、彼に何たるかを教えてもらうまで知らなかったのだ。

 

知識に関しては赤子も同然。1つ会釈を声を掛けてくれた職員の方へし、声をかける事とした。

 

「冒険者登録をしたいのですが。」

「冒険者登録ですか、承知しました。では、先ず此方の紙に情報の記入をお願いし…」

 

と話を進める職員にカムイは慌てて、まったをかけた。

 

「ああ…!すまないのですが、その…」

「はい。何でしょうか。」

「今、私は少々厄介な立場でして…」

 

言葉に詰まりながらも、兎に角懐から手紙を取り出してて見せる

 

「ええ、今は何も聞かずにこの手紙を確認してもらいたいのです」

 

と、カムイは”へファイストス・ファミリア 副団長 カイドウよりギルドへ“と書かれた手紙を職員へ手渡した。

 

「…これは」

 

職員ははこめかみに皺を寄せて考える

 

「少々お時間をいただけますか?」

 

行く当てが元々ないカムイにとって、職員の質問は無問題、当然了承する。

 

「ええ、問題ありません。」

「ありがとうございます。私がこの手紙の確認をしてきますので、あちらの椅子に掛けてでお待ちください」

「わかりました」

 

ことを告げると職員は受付口の奥の方へと向かって行った。

 

言われた通りにギルドのカウンター前にある長椅子に座って待つカムイ。

 

意識している訳で無いのだが、どうにも人々の営みを“観察”してしまう。必要ないとわかっておれど、どうにも記憶しておかねばと、真摯になってしまう。

 

そんな時ではないと、頭を振って切り替えようとした時、

 

「あのー…隣、良いですか?」

 

赤い目、白髪の兎のような少年に声をかけられた。ふと、周りを見ると自分の席以外は数人のグループや、他の人で埋まっているのが見えた。

 

 

 

 

 

少年は“ベル”と言う名の冒険者だった。

話に寄れば此処にきてまだ“5ヶ月”の新参者らしく、今日とてダンジョン攻略のアドバイスをギルドに貰いに来たらしい。

だが、肝心のアドバイスをくれる者が別の要件で忙しいらしく、外である程度暇を潰し欲しいと頼まれたそうだ。

「ほんとうにカムイさんが優しい方で助かりました!」

「はは、大袈裟な」

慌ただしく話すベルは、なんとも微笑ましいものだった。

 

ベルは暇を潰すのにどうしようかと、暫くの間ギルド周りを歩いていたが、余りにやる事がなく、ギルドへ戻り椅子に座ろうとしていた所だった。

 そんなところにカムイがいた。神妙な雰囲気を醸し出すカムイが、近付きがたく感じられどうしようかと。考えたが、ほかに椅子がなく。カムイに尋ねる事とした。

 カムイとしては、連れも何も断る理由などないのでごく普通に、隣に座って貰っただけであったのだが、大袈裟なまでに感謝された。

なんだかんだで、そこから両者の身の上話が始まり、共に長らくの暇をこれを良い事に、駄弁って潰していた。

 

「カムイさんは、“傭兵”を辞めてダンジョンに来たんですか…成る程、だから、装備が珍しいですね。」

「まぁ、ざっくりとしてはそうだ。どうにも稼ぎが悪くてね。」

 

勿論、そんな事は嘘である。ただカイドウが都合の良い話の一つや二つがあった方が良いと。

カイドウはやはり侮れないと内心で感謝と尊敬をしていた。

 

「あの〜、カムイさん。もし良かったら何ですけど…」

目を少し逸らして申し訳なさそうに言うベル

「何かな」

「その、良ければ自分のファミリアに入ってくれませんか?…あの、他のファミリアが駄目だったで良いので…ハハ…」

 

恥ずかしそうにそう言うベル

だが、カムイにとっては渡りに船

 

「それは、ありがたい。折角の勧誘を無駄にしたくは無いが、流石に何も見ずに入るのは無理だ。だが、巡り合いによっては入らせて貰うかもしれない。だから、ベル。期待だけはしないで待ってくれ給えよ」

 

と苦笑するカムイ

だがそれに対し

 

「いえ!そう言ってくれるだけでありがたいです!」

と笑顔で答えるベル

 

先輩であるベルだが懸命な姿が微笑ましく、“守りたい”それと何処か似ていると思った時。自然と頭を撫でていた。

 

「ベルくーん!お待たせー!終わったよー!」

「エイナさん!わかりました、すぐ行きますねー!」

 

どうやらベルは行くらしい

 

「カムイさん!また何処かで!」

「ああ、ベルまたいつか」

 

そう言うとベルは手を振って行ってしまった。

 

 

ベルを見送った後、間も無くして此方にも声が掛かった。

 

「カムイさん、お待たせ致しました。此方の個室の方へお越しください」

 

指示通り、部屋の方へ向かった。

 

 

部屋に入ると女の職員が立っていた、白髪のショートヘアに横に長い耳の端正な顔だった。

 

「改めまして、お待たせ致しましたカムイ様。私は貴殿のアドバイザーとなる“アスモ・サラ”と申します。サラ、とお呼び下されば幸いです。よろしくお願いします」

 

綺麗な礼をする彼女にカムイは思わず“貴人の一礼”をする

 

「よろしくお願い致します。サラ殿。貴公に感謝を。」

 

一通り自己紹介を済ませた後、早速本題へと入り始めた。件の手紙について。

 

「あの手紙ですが、我々ギルド、へファイストスファリア両者の確認が取れた公式な文書だと確認致しました。“特殊”な対応の必要があると判断され、私が任命されました。」

 

一枚の文書を机に出す

 

「そして、此方が秘密を守る契約してです。内容としては、貴殿に関する情報を消去する魔術が私には掛けられている。という話です。」

 

どうぞ手に取ってお読み下さいとサラに言われ、言葉に従う。

文書をとるが、まぁ、読めない。

実は言葉が通じていた事が奇跡なのだ。

なので

 

「了解致しました」

 

と言う他ない。

カイドウのことであるから、それを考慮しての対応のようではある。

話に戻る

 

「カイドウ様の文書から貴殿へ、適当なファミリアの斡旋と、宿の紹介を頼まれています。此方にペンと紙がありますので、メモをお願い致します。」

 

サラに言われるがまま、ファミリア、宿の話をメモする。

そして、疑惑が完全なものへと変わった瞬間であった。

 

「お疲れ様です。次に迷宮についてになりますが、よろしいですか?」

「はい、問題ありません」

 

そうして様々なオラリオにおけるルールを簡潔に教えられた後

 

「本日はここまでです。また、要件があり次第私達にお尋ね下さい。できる限り力になりますので、」

「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」

「ええ、こちらこそ宜しくお願いします」

 

と言い部屋を出る事とした。

 

 

 

用が済み、サラのアドバイスに 通り動く事とした。他にやるべきことも思いつかないのもあるが。

 

それはそうとして、ファミリアに行く前に宿を取らねばならぬ。

なんだかんだ日も沈み始める時間帯のようで、若干空が赤くなり始めたのが見える。

 

宿については、カイドウ曰く、ギルド付近の宿はギルドと連携がよく取れているらしく、町外れの宿よりモノも良く安いらしい。

 

ただ、冒険者志望、と言うのがミソらしく。それ用の券をギルドは発行しているので、カイドウはこの券を含んだギリギリの宿代を貰っていた。

 

故にそれ以外の選択肢は無い。が、文句の言いようなどがない良い待遇でもあった。

 

そうして石畳の道を歩き周り、条件として居酒屋が付属している宿を求めて、宿を数軒梯子した。

 

そうして、カイドウ、サラ、2人のアドバイスから知った、宿に着く事が出来た。

地理を知らないだろうとの事で、ギルドを中心とした一定の円の中にある宿を数個出してもらい。お店を営む人などから場所を聞き、見ず知らずの土地で宿を取る事ができた。

 

排他的な人が少なく、多くの者が親切にしてくれて、少々驚いた所もあるが。それだけ盛んな街だと言う事だろう。

 

 

 

宿主に部屋の鍵を貰い、部屋へ入る酒屋で情報収集と行きたい所だが、今日は今日とて、情報で一杯一杯だ。故に、部屋に篭り、整理する事に決めた。

 

 

さて、今日あった事だ。

 

・目が覚めたらカイドウの馬車にいた

 

・カイドウの護衛をした

 

・オラリオへ着いた

 

・アドバイス通りに冒険者志望になった

 

・ついでにベルにも会った

 

そして、疑問点、これから解決すべき点は

 

・記憶が“混濁”している事

 

・私が“此処”で為すべき事は何か

 

・思い出せない事は何か

 

・どのファミリアに加入するか

 

と、言った所だろう。

 

 

      “剣に誓って”

 

 

そうだと言える。

さて、夜はどう過ごそうか。

“カタリナの騎士”になぞって此処は寝るとしようか。

 

決めたカムイはベットに横になりグゥーと寝始めた。

 

 

 





今回も読んで頂きありがとうございました
次回もまた半年掛かるかもですが、それで良いなら読んで下さると嬉しいです


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