汚れた暗殺者達の道 (カムラス)
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新生暗殺チームへの道その①

どうも始めまして。カムラスといいます。

初めて書くので誤字脱字、変な解釈もあるかもしれませんがよろしくお願いします。

この作品は荒木飛呂彦氏原作の「ジョジョの奇妙な冒険」の第5部「黄金の旋風」の二次作品です。

この作品は恥知らずのパープルヘイズやゴールデンハート/ゴールデンリングとは別のパラレル設定です。具体的には

・麻薬チームのメンバーは存在しない。ただし麻薬チームは存在する。

・シーラEなどは存在しない。基本的には恥パのキャラや設定は出てきません。

・フーゴはチーム離脱後、組織から逃げ出した後、行方不明

などです。

ジョジョ特有の言い回しなどが出来なかったりするかもしれませんがそれでは楽しんで言ってください。


僕にとって人生を大きく変えた一週間、夢を叶え、今はイタリアのギャング、「パッショーネ」のボスになった僕、ジョルノ・ジョバァーナ。

 

しかし僕にはまだ幾つかの問題が残されていた。

 

パッショーネの前のボス、イタリア語で「悪魔」と言う意味の過去を消し続けた男、ディアボロ。

 

彼の圧倒的能力によって今まで活動の場を押さえられていたスタンド使い達が力の限り振られたビール缶を開けて飛び散るビール各地で犯罪を犯すようになったのが現段階の一番の問題。

 

パショーネの構成員どころか幹部までも多量に動員してもスタンド使い達による犯罪は収まる気配が無かった。そこで僕は最も信用する僕の元仲間で優秀な片腕を呼ぶことにした。

 

 

パッショーネ、ボスの部屋

 

そこではボスのジョルノの相談に親しげに応対している男が居た。彼の名前はグイード・ミスタ。現在のパッショーネNo2の男であった。

 

現在は幹部の統率を担当しており、今はほとんどの幹部は出払っている為、ボスの相談を受けている。しかし相談内容には納得の言ってない顔をしていた。

 

「けどよ~~~戦闘特化のチームの創設はよ~、結構危険だぜ?そりゃ今は必要かもしれない。けど今の状況が終わったらそいつらをどうするんだ?また前みたいに離脱してお前の命狙うかもわからねえんだぜ?」

 

ミスタの発言に少し間をおいた後、ジョルノは丁寧な口調で答えた。

 

「しかし今の状況を打開するにはそれしか方法が無い。現に戦闘可能なメンバーを束ねるチームを率いた幹部達もいい報告は聞いてないんでしょう?」

 

「そうだけどよ~、リスクが危険すぎるぜ。仮に作ったとしても人員が集まるかもわかんねーぜ?」

 

そう言った時、ボスの部屋をノックする音が聞こえた。二人はその方向を見た。

 

「入ってきてください。」ジョルノがそう言うと一人の男が入ってきた。

 

男は顔つきは二十代の顔であった。黒い服に胸元はZ状に開いており、ズボンは網目状の模様は入っていた。

 

「誰だお前?どう見ても幹部には見えねーし、ただの構成員だろ。ボスか俺に様でもあんのか?」

 

ミスタの問い掛けに男はゆっくりを話しはじめた。

 

「お目に掛かるのは初めてですね。僕の名前はビアンコ・タリアッテレ。所属はカーネ配下の第四チーム所属です。」

 

「んで下っ端のおめーが何のようだ?さっさとスタンド使い共をぶっ倒して来い。」

 

「その前に先ほどお話していたことについてお願いがあるのです。」

 

「あ?」

 

ビアンコの発言にミスタはまじまじとビアンコの方を見た。先ほどの話を何処から聞いたのか。そして先ほどの話に喰い付いていたことに興味をしめした。

 

「それで君の願いとは?」

 

ジョルノの問いにビアンコは一呼吸置いて話した。

 

「新生戦闘チームの創設、そして僕をそのチームのリーダーにして欲しいのです。」

 

 

その言葉にジョルノとミスタはビアンコに釘付けになった。二人が戦った戦闘特化のチーム、暗殺チームは前パッショーネ内でチーム全員でボスの命を狙うという行為を行なった。

 

彼らの行いをパッショーネの構成員をふくめてすべてのものは愚かと罵り笑った。

 

そんな扱い、縄張りも地位も冷遇されるであろう戦闘特化のチームに自ら進んで入りたがり、しかもリーダーに成りたいと言う発言に驚いた。

 

「…何故戦闘チームの創設を望むのですか?」

 

その問いにビアンカは少し笑みを浮かべながら話しはじめた。

 

「ボス、今現在でスタンド使い達の犯罪は減るどころか激しさを増す一方です。幹部達も手を焼いていますが幹部達にも他にも今より重要な仕事あるでしょう。それに現在は敵が各方面に多量に居ます。その為に戦闘チームの創設が必要だと思いました。」

 

ビアンコの主張にミスタは合点のいかない顔付きをした。

 

「どうかしましたかミスタ?」

 

「いや、確かに他の幹部はここのところ働き詰めだし何人かの幹部もお陀仏してるがな~、お前の理由はわかったが何で冷遇されるかもしれんチームのリーダーに成りたがる?何考えてんだ?」

 

ミスタの問いにビアンコは少し間を置くと話しはじめた。

 

「僕は尊敬していた人が居たんですよ。名前はリゾット・ネエロ。ご存知の通り貴方達が戦った暗殺チームのリーダーでした。彼の類まれなる仕事振りに僕は尊敬していました。まあ本音を言えば僕が彼に追いつけるか試してみたいだけです。でもどちらにしろ汚れ仕事は必要でしょう?信用が得られないのなら潔白を証明するために何でもしますよ?」

 

そのビアンコの発言にジョルノとミスタは笑みを浮かべた。

 

「ワハハハハハハ!!面白れえ奴だ!!」

 

「ええ。僕達の前でこれだけいえればたいしたものです。分かりました。戦闘チームの創設しますがその前に君の実力と信頼にたるかどうかを見させてもらいます。」

 

ジョルノの発言にビアンコは喜びの顔を改め、しっかりとジョルノの顔を見た。

 

ジョルノはビアンコの顔を見ると実力を信頼するに当たるかどうかを見るための命令を下した。

 

「あなたには犯罪を犯すスタンド使いを五人、一ヶ月以内に始末してください。場所は北部。」

 

ビアンコはその命令を受け取ると深々と挨拶をしてボスの部屋から出て行った。



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新生暗殺チームへの道その②

「それにしても、彼は面白いことを言いましたね。」

 

「しかし本当に作るのか?戦闘特化のチーム…仮に作ったとしてあいつらがいつ俺やジョルノを殺しに来るかも分からない。」

 

「その点は心配無用。そうさせない為にある人物を彼に接触させます。」

 

「誰なんだ?」

 

「それは彼がまず僕達の依頼を達成できたら接触させる予定ですからその時まで楽しみにしていてください。」

 

「何だよそれ~~。気になるじゃねえか。」

 

「それより彼のことを調べましょう。今回は僕も動きます。」

 

「え!?お前が動くほどのものじゃないだろうに。」

 

「そんなことはありませんよミスタ。今は動く者が少ない状況ですから。行きましょう。」

 

「ちょッ!?今からかよっ!!」

 

ジョルノとミスタもボスの部屋から出て行ってしまった。部屋には背中の甲羅に鍵が嵌った亀がうたた寝をしているだけであった。

 

 

自分の夢がまさか叶うとは思っていなかった。あの人と同じ土俵に立つことが出来る。後は追い抜くだけ。

 

ビアンコはそんなことを考えながら現在ネアポリス郊外を歩いていた。この当たりでもスタンド使いによる犯罪が横行しているらしい。

 

その情報を聞いてビアンカはバイクを飛ばしてきてこの場所にやって来た。穏やかな雰囲気であったが、どうも奇妙な緊張感に包まれていた。

 

そしてカフェが目の前にあったので少し食事を取る事にした。幹部のカーネや自分の所属していいるチームに啖呵を切り、ここまでやって来たのだ。その為あまり食事を取っておらず、郊外の気候に当てられたのか腹が空いてきたのだ。

 

案内された席でコーヒーといくつかの軽食を頼んだビアンコはこれからのことを考えていたのだ。

 

まずはボスの信用を得ること。それが第一優先であった。そして次はメンバーを集めるか自分達に反逆の意思が無いことを証明するか…。考えている内にコーヒーが届いたのでコーヒーを一口飲んだ。そして少しだけ昔のことを思い出した。

 

「そういえば昔もこんな感じでコーヒー飲んだっけか。」

 

 

 

まだビアンコが組織に入りたてで、ポルポからの試練でスタンド使いになった当初、カーネの配下になったばかりの時、チームのメンバーの一人と一緒に街を歩いていると、ある男が目に付いた。

 

その男は真っ黒の服で、その服と同じ様に黒目が異常に大きい男であった。その異様な雰囲気はまだ組織に入ったばかりとは言え、ギャングの彼とメンバーの一人を黙らせるには十分であった。

 

するとメンバーがビアンコの耳元でこっそりと囁いた。結構前のほうに居たその男に

警戒してか異常に小さな声で話しかけた。

 

「おい、ビアンコ。見ろよ。あいつ暗殺チームのリーダーのリゾット・ネエロだ。すげえ。生で見るのは俺も初めてだ。」

 

「リゾット……ネエロ?誰だそれ?」

 

「あー、お前入りたてだから知らねーのか。あいつはな、暗殺チームつって汚ねえ仕事ばっかやるチームのリーダーなんだよ。んで馬鹿強いの何のって。今までアメリカのお偉方とか向こうのギャングとかも容赦無くぶっ殺してそれに一度も失敗は無しって話だ。」

 

「そりゃすげえな。……そうだ。今からあの男を追いかけてみないか?」

 

「えーッ!?俺はヤダよー!!行くならオメー一人だけで行けよ。」

 

「じゃあそうするわ。それじゃあな。」

 

「ちょッ!!おいッ!!待てって!!……あーあ、行っちまったよおい……」

 

 

メンバーの一人と別れたビアンコは数メートル先のその男、リゾット・ネエロを追い掛ける事にした。暗殺などの始末の仕方を見ることでチーム内での力を高め、出世のチャンスを掴もうと思ったのだ。

 

彼はスタンドを使ってみることにした。少し力を込めると、彼の背後から一般人には見えない彼のスタンドが現われた。

 

それは化石化した翼竜のような姿で骨で出来た翼を持ち、翼とは別の腕が生え、下半身は足などは無く尻尾しかなかった。

 

「確か俺のスタンドは……名前は“メタル・マスター”って奴だったか。どれ。力を見せてもらおう。」

 

そういうと彼と彼のスタンドが消え始めた。周りの人間は何にも見えなくなってしまった。

 

「よし、追い掛けよう。楽しみだな。本当に。」

 

ビアンコはなるべく足音を立てずに歩いた。時たま人にぶつかりそうになったが旨く避けて追いかけた。

 

 

リゾット・ネエロを追い掛けて二十分、遂にターゲットが潜んでいると思わしき建物にたどり着いた。そこはビアンカがよく知っている建物であった。

 

「ここは……確かあのアメリカから来たギャングのスパイが潜んでいるらしいホテルじゃないか。まさか暗殺チームはもう嗅ぎ付けたのか。……すげえな。」

 

するとさっきまでそこに居た筈のリゾット・ネエロが居なかった。ビアンコはもう建物に入ったのかと思ったが彼の目にはスタンド使いのせいかリゾット・ネエロの姿が薄っすらだが見えていた。

 

「リゾット・ネエロっ……!!俺と同じタイプのスタンドかッ!!これは面白いッ!!使い方や戦い方をここで見れるとは俺は幸運だッ……!!じっくりと見させてもらえるぜッ……!!リゾット・ネエロさんよ。」

 

リゾットがホテルの裏の方に行ったのを確認するとビアンコもそっちの方に遅れて向かった。




ビアンコのスタンドがチラリ…とだけ登場です。


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新生暗殺チームへの道その③

ビアンコの過去回想編です。ビアンコがリゾットを尊敬することとなった一件です。


リゾットは素早い動きで裏の使用人が出入りする入り口から入って行った。ビアンカも忙しなく動く使用人に当たらない様に避けながらリゾットを追いかけた。

 

建物に入ると。周囲を警戒する訳でも無く、まっすぐに、このホテルの使用人のように部屋に一直線に姿を消しながらリゾットは進み、ビアンコもそれを追い掛けて行った。

 

「もうすぐ暗殺チームのリーダーの仕事が見れるのか。」

 

すると144と書かれたホテルの一室に到着した。扉はしっかり鍵が掛けられている様であったが、リゾットは扉を開ける様子も無かった。ただ軽く扉をノックするだけであった。

 

「どうする気だ…?まさか透明で部屋の中に入って殺すつもりか…?」

 

ビアンカが数メートル離れて観察していると、しばらくするとその部屋から軽い呻き声が聞こえたかと思うと扉の下から血が垂れているのを発見した。

 

「やっぱり俺と同じタイプの遠隔操作型のスタンドかッ!!ってことは俺も頂点に立てるかもしれないってことか…!!しかし速い…あっという間にスタンドを使って殺人をやってのけた…。俺もスタンドをしっかり鍛えるか…!!」

 

そう言いながらビアンカもこっそり帰ろうとすると何かの気配を感じ振り向いた。そこには一体のスタンドが拳を構えていた。

 

「何ッ!!いつのまにッ!!」

 

ビアンコは素早く屈んだ。すると壁にスタンドの拳がめり込んだ。まるで子供がダンボール箱を遊びで穴を開けるように。

 

「こいつッ…!!」

 

ビアンコが周りを見渡すとビアンコから数メートル離れたすぐ後ろの場所に黒い服装の男が立っていた。その男のものであろうスタンドは全身に映画で使われるフィルムのような模様をしており、目は不気味に光り輝いていた。

 

「くっ…行くぞメタル・マスター!!」

 

透明化を解除し、ブラックメタルは敵に吠え掛かった。しかし敵は動揺するまでも無くただビアンコを見ていた。

 

(射程距離は十分だッ…一気に決めるぞ!!相手は近距離型、こっちは遠隔操作型!!)

 

 

その時、すぐ後ろにも気配を感じた。リゾット・ネエロがすぐ後ろにまで接近していたのだ。そしてリゾットは静かに呟いた。

 

「…メタリカ。」

 

そういうとビアンカの体から鋏や剃刀が皮膚を抉りながら飛び出してきた。ビアンカが相対していた男も苦しみながらビアンカと同じ様な状態になるとすぐさま倒れてしまった。

 

「うがあッ!!これはッ…!!リゾット・ネエロのスタンドかッ!!この感触はッ!!鉄分が抜かれるッ!!」

 

ビアンカは叫びだしたが。すぐにビアンカの体から出てきた鋏や剃刀はすぐさま鉄分に戻ると体内に戻っていった。

 

「ぐッ…やっぱつええな…さすがは暗殺チームのリーダー…」

 

ビアンコの状態を見たリゾットは再びメタリカを発動させるが、同じ様な結果に戻って行った。

 

「何だお前は…そしてそれはスタンドか…」

 

リゾットの重みと威圧の含む問いと共に近づいてくるリゾットにビアンコは思わず言葉を詰めた。

 

「あ…あの…オ…オレは…ビアンコ・タリアテッレ…あ…あなた達と同じパッショーネの一員です……スタンド使いですけど…てっ…敵じゃ有りません…」

 

ビアンコは手を開げて降参の意思を示した。これが暗殺専門のリーダーに通用するのかは知らなかったが、とにかくそうするしかなかった。

 

リゾットはビアンコの表情を瞬時に見抜いて同じ様に強い威圧のある言葉を話した。

 

「お前の表情……確かに嘘は付いていない。しかしここに何のようだ?俺を監視して組織は何を考えているんだ。」

 

「あのですね…俺は誰かに命令されている訳では有りません……自分の考えであなたを追跡していました……」

 

その発言にリゾットは驚きを含んだ声で話した。

 

「それこそ何の為にだ。俺を追跡してお前に何の得になる。」

 

「あのっすね…あなたとオレのスタンドはよく似ている…あなたのスタンドの使い方を学んで組織の内部での権力を高めようなんて考えたり…」

 

その発言にリゾットは少し黙ると話しはじめた。

 

「辞めておけ。変に力を持った所でお前はボスに“歯向かう者”として殺されるだけだ……特にお前は俺とスタンド能力が似ている……。さっさとここから帰れ。」

 

先程とは違い寂しげな目と口調で話すリゾットにビアンコは黙るしか無かった。

 

 

その時ビアンカは強い気配を感じた。後ろから、すでに“メタリカで倒された”はずの男が起き上がり、その男のスタンドが再び拳を振り上げていた。

 

「何ッ!?あの男ッ……!!を喰らった筈なのに……!!」

 

ビアンカは今度はリゾットの後ろの方に転がり込んだ。リゾットは再び自分のスタンド、「メタリカ」を発動させた。

 

男の皮膚を突き破り、鋏や剃刀、針が全身から多量に噴出すと男は倒れていった。

 

しかし男は起き上がり、スタンドも同じ様に立ち上がっていった。男のスタンドの素早い拳の一撃を避けると、リゾットは逃げていった。

 

「え!?ちょっと!!待ってくださいよォオオオオオオオオ!!」

 

二人は素早く逃げ去り、男と、男のスタンドもそのまま二人を追いかけた。

 

 



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新生暗殺チームへの道その④

再び回想編です。果たして二人は謎のスタンドを使う敵に勝てるのでしょうか。


「なっ、何ですかあのスタンドは!?噂に聞く自動操縦型って奴ですか!?」

 

「違うな。それならば本体がノコノコ出てくるわけが無い。自動操縦型は本体はノーリスクで攻撃できるのが強みだ。それは有り得ない。だがおかしいのそこじゃない。」

 

「え……?」

 

「人間は鉄分を失うと血液は黄色くなって死ぬ。あの男の身丈から計算するに奴は俺のメタリカよってほぼ致死量の鉄分を排出された筈だ。」

 

「ってことは……そういうスタンド能力かもしれません。スタンドの干渉を受けないスタンドとか……」

 

「だが確かに奴のから鉄分の排出は有ったんだ。くそ……こんなスタンドは初めてだ。」

 

会話する二人の後ろで敵のスタンドは動きが早く、二人の後ろで壁や装飾品を破壊していった。

 

「いつまでもこんな調子じゃ行けませんよ!!こうなったら……ッ!!」

 

「おい……何を考えている……」

 

ビアンコは踵を返すとスタンドを出したままそのまま敵スタンドに突っ込んでいった。

 

「何をしてるッ!!相手は近距離型ッ……!!お前は遠隔操作型だ!!パワー負けするぞッ!!」

 

「パンチの一発くらいは耐えれますッ!!それに……僕の命より任務優先の方が大事でしょうッ!!」

 

ビアンコが敵スタンドに接近した時、ビアンコとリゾットは気づいた。

 

敵のスタンドがプロジェクターの前に通った時のようにビアンコに沿って平面になっていた。そして腕だけが立体になるとビアンコに強力なパンチを繰り出した。

 

敵スタンドの強烈なパンチをメタル・マスターは一発だけ受け取った。そしてすぐに間合いを計った。

 

「リゾットさん!!分かりましたッ!!こいつのスタンドは……アレ!?」

 

リゾットの姿はすでに無く、同時にスタンドの姿も消してしまった。

 

「ハア…ハア…あんな反則臭いスタンド持ちやがって…相手が殴ろうとしたら相手の腕が急に伸びて殴られた感じがするぜ。まったく……」

 

 

リゾットは血まみれの男の近くに倒れており、どうやら任務を完了したようだ。

 

「お疲れ様です……なんてスタンドだ……」

 

「自分やスタンドを映写機のように他の場所に映すスタンドとはな……これは報告しないと組織にとって大きな危険になりそうだ。」

 

「任務はこれで終わりですか……」

 

「まだだ。敵の部屋に行って情報を集めないと行けない。」

 

「俺も手伝います。最後まで協力しますよ。」

 

「……好きにしろ。」

 

男の死体をメタリカで分解すると、リゾットは部屋に向かい、ビアンコもそれに着いて行った。

 

部屋でまず倒した男の遺体を同じくメタリカで分解した。部屋のパソコンはどうやら自分の組織に連絡を取ろうとしていた途中らしく、書きかけのメールがあった。

 

それもリゾットがHDごとメタリカでバラバラにして任務は完了したようだ。

 

その後、ビアンコはリゾットと別れるとすぐさま自分の家に帰っていった。

 

 

その数ヵ月後、ビアンカにとっては初めての給料を貰った。封筒を開けると他の皆とは違い少し金額が多かった。

 

「リーダー、どうして俺のだけ多いのですか?」

 

ビアンコの問いにビアンコが所属しているチームのリーダー、ポモドーロは答えた。

 

「ああ、お前暗殺チームの手伝いしただろ?その分上乗せだよ。まあ暗殺チームどもは給料減らされてるかも知れねえがまあどうでもいいや。」

 

「そんな……」

 

 

ビアンコは給料祝いと自分の歓迎のパーティーを早々抜け出すと、かねてから調べていた暗殺チームのアジトに向かった。

 

「なんつう場所だ……まあ身を隠すには最高だな。」

 

アジトと思わしき場所の扉をノックした。しかし中からは何も聞こえず、窓が無かった為、中の様子も分からなかった。

 

「ノックしてもしもお~~~し、入りますよ~~っと。ノックしましたから不法侵入じゃないですよ~~~」

 

中に入った途端、自分の体調の変化に気づいた。とてつもない疲労感に襲われ、そのまま気絶してしまった。

 

 

 

目が覚めると椅子に括り付けられており、目の前には前の開いたスーツを着て、首飾りをつけた男と、その脇にはその男の弟分を思わしき気弱な面の男がいた。

 

周りを見渡すとパソコンを触っている男や坊主頭の男、そして青い髪に眼鏡をかけた男、て大きな鏡の近くに立っている男などがいた。

 

しかし肝心のリゾット・ネエロがおらず、ビアンコはかなり恐ろしくなって震えてきた。

 

やがて目の前のスーツを着た男がビアンコに向かって話しかけた。

 

「よお、お目覚めか?」

 

「ま、まあ。よく眠らしてくれましたよ。椅子に縛られている以外は。」

 

「そりゃよかった。で?てめえはここに何のようだ?俺達の監視か?」

 

「あの…そういうのじゃなくて…」

 

「じゃあ何だ。」

 

「あのですね…皆さんに給料の一部を…返しに来ました…」

 

「あ?」

 

「皆さんが本来貰う分だった給料を俺が貰っちゃって…それを返しに」

 

その答えに男達は思わずビアンコを見た。そして青い髪の男が荒々しく話し始めた。

 

「なんだそりゃあ?嘘臭えな~~~~~!!プロシュートよお、もう関係ないから埋めちまおうぜ。」

 

「そうだな。前にお前が見つけたいい死体の隠し場所があるしな。で、お前が始末するか?」

 

プロシュートと呼ばれたスーツの男と青い髪と眼鏡のかけた男が話している間に坊主頭の男が呆れながら話した。

 

「しょ~~がねえ~~なあ~~。本当に給料還しに来たんじゃねえのか?そうじゃなきゃこんなとこ来る理由がねえっての。」

 

その男の話に今までパソコンを弄っていた男が声を上げた。

 

「俺もホルマジオの意見に賛成だね。こういう奴はすごく…ベリッシモじゃないか。」

 

「メローネは黙ってろよ!!どっちが始末するかで話してんだからよ。」

 

「俺的には今の季節から考えてプロシュートが始末するのがいいと思うよ。ギアッチョの能力じゃ派手すぎる。」

 

男達が恐ろしい話し合いをしている中、玄関が開いた音が聞こえた。リーダーのリゾット・ネエロが帰ってきた。リゾットはビアンカの顔を見るとビアンカに話しかけた。

 

「何しに来た。この言葉を二回言うのは初めてだ。」

 

「あのですね…給料の一部の返還を…」

 

「給料が少し少なかったがあれはお前の分に回されたのか。しかしお前も律儀な奴だ。俺等のような奴らに給料の一部を還しに来るなんて。」

 

一連の会話にプロシュートはリゾットに話しかけた。

 

「こいつ知ってんのか?」

 

「ああ、この前のアメリカのギャングのスパイを殺した依頼で協力してくれた物好きの話をしたろ。それがこいつだ。」

 

「こいつがその物好きか。そりゃ悪いことしたな。おい、ペッシ、放してやれ。」

 

プロシュートが弱気の顔の男、ペッシと呼ばれた男がスタンドを解除したのを感じると、糸が消えた。

 

「あつつ…」

 

するとプロシュートや他の奴が近づいてきてビアンコの顔を見た。

 

「へー、お前があの物好きか。」

 

「まさか俺らの仕事を手伝うとはいい根性してんじゃね~~か!!こっちに入れちまうか?」

 

「しょ~がね~な~。ビビっちまってるじゃねえか。」

 

「おまえ…すごいな…リーダーと一緒に仕事したとか。」

 

「君、健康状態は良好ですか?どの四十八手が好きかボタンを押して選んでくれ。」

 

ビアンコは皆に圧倒されていると、誰かが酒を持ち出し、いつの間にかパーティが開催されていた。

安酒を呑みまくって酔いつぶれたビアンコはそのまま眠ってしまった。

 

 

酔っ払ったビアンコが目覚めると、リゾットがすでに起きていて、コーヒーを出してくれていた。

 

「どうも。すみません。」

 

「例はいらん。」

 

「ありがとうございます。しかし皆さんいい人ですよね。」

 

「いい人か…そんな言葉を言われるのは初めてだな。」

 

「何で皆さんいい人なのに組織は冷遇するんでしょうかね?やっぱり人事がマヌケなのですかね。」

 

「俺たちがボスの素性を調べたからだ。」

 

「え?」

 

「この組織の鉄則が二つある。ボスの正体を調べるな。そして組織の命令は絶対、俺達はその一つ、ボスの正体を調べた。おかげで部下が二人死んだ。一人は生きたまま輪切りにされて、もう一人はその光景を見せられて猿轡を飲み込んで窒息死した。」

 

リゾットの目は悲しい目をしていた。暗殺チームのリーダーとは思えないような顔付きにビアンコはコーヒーを飲むのを止めた。

 

「それにみんなはいい奴なんかじゃないぞ。多分だがな。」

 

「じゃあ何で俺を殺したり埋めなかったりしないのですか?」

 

「……寂しかったからかな。」

 

「…………え?」

 

「仲間を二人失って俺達は首輪を嵌められた。その中で誰も信用できなかった。自分達の砦に引き篭もっていた。それをお前が簡単に飛び越えてやってきたんだ。」

 

「………………」

 

「暗殺チームのリーダーがこんなことを言うのはおかしいと思うか?」

 

「………思いませんよ。」

 

「そうか。そして俺から一つ教えておきたいことがある。」

 

「?」

 

「自分達のチームに誇りを持て。それがあればお前はこんな所に来ない。それだけを肝に命じておけ。」

 

「……分かりました。」

 

ビアンコはコーヒーを飲むと暗殺チームのアジトを出て行った。

 

 

それからビアンコは暗殺チームのアジトに出入りすることが多くなった。そして彼らの仕事を糧にして、自分のチーム内の権限を高めていった。

 

しかし暗殺チームは組織に反旗を翻し、あっという間に壊滅していった。

 

 

 

そして現在、カフェで注文したものをすべて食べたビアンコは会計を終わらせると、スタンド使いの犯罪者五人倒すために向かった。




敵スタンド

スタンド名-『ピクチャーハウス』
本体名-ジェイド

能力-自分やスタンドを映写機のように壁に映し、攻撃する時のみ実体化して攻撃
できるスタンド。
   壁や水などに映すことが可能で、近距離型のスタンドながら本体が離れて攻撃
できる。

ステータス
破壊力-A スピード-A 射程距離-B
持続力-D 精密動作-D 成長性-D


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新生暗殺チーム創設!!

ジョルノ・ジョバァーナはビアンコの報告書を読んでいた。

 

ビアンコは顔や腕に包帯を巻きながらジョルノの前で立っていた。

 

彼は実行通りに一ヶ月以内、正確に言えば27日掛けてスタンド使いの犯罪者を無事仕留めることに成功した。

 

 

「それで……どうですかね……」

 

ビアンコの言葉にジョルノは大きく頷くと少し笑みを浮かべながら言葉を発した。

 

「いいでしょう。新生暗殺チームの創設を認め、あなたをチームのリーダーに抜擢します。チームはグイード・ミスタの直轄になります。」

 

「ありがとうございます……」

 

「その前に……」

 

「何でしょうか……?」

 

「あなたのスタンド、詳しく教えてください。」

 

「?」

 

ジョルノの発言にビアンコは頭にハテナマークを浮かべる。そして少し口調を改めたジョルノが話し始めた。

 

「部下のスタンドを把握するのはボスの努めでしょう。一応ですがもしあなたが組織に仇名したとしたらすぐさまケリを付けれるようにですよ。」

 

「それは確かに。」

 

「詳しく話してください。あなたのスタンドは何が得意で何が不得手か。」

 

「分かりました。」

 

ビアンコは自分のスタンド能力を隠さず一切合財話した。ジョルノはそれを簡潔に纏めた。

 

 

「次はアジトか……」

 

ビアンコは簡単な地図を貰い、アジトに向かって行った。歩きなれた街を進み、裏路地を入ると、そこにはひっそりと、道端に転がる石のように扉があった。

 

「ここか……。」

 

扉を開ける前に念の為にスタンドを出しながら扉を開けた。扉のすぐそばにはスイッチが有った。スイッチを押すと、階段の電球が闇を切り裂いて輝いた。

 

階段を降りるとそこにはかつての暗殺チームよりかは幾分かマシな内装のアジトが広がっていた。

 

「彼らのアジトより幾分かマシだな……敷物はあるし……家具もある……ボスには感謝だな。」

 

ソファーに座り、しばらくぼうっとしていると、階段を降りる音が聞こえた。ビアンコが音の方を向くと、そこにはミスタが立っていた。

 

「どうもミスタさん。」

 

「よお。無事チーム創設は認められたらしいな。」

 

「おかげさまです。」

 

「しかし俺もチームをまたひとつ任されるわけだ。しくじるなよ?」

 

「それはありませんよ。任せてください。」

 

「頼むぜ?それと……今からこのチームに配属される奴が来る。まあ二人だけだがな。」

 

「分かりました。」

 

「メンバーについでだが人数は一桁に収めるよう、増やしたいときは俺に報告しろ。メンバーは外部からスカウトしてもいい。」

 

「了解しました。」

 

「それと!!」

 

「はい。」

 

「メンバーを四人ずつ増やしたりすんなよ!!」

 

「はっ、はい……」

 

「あとお前にメンバーがやってきてから行ってもらいたいところがある。」

 

「何処に?」

 

「ネアポリス中央警察署だ。行けば分かる。」

 

「分かりました。」

 

「それじゃあな。せいぜいくたばらないように頑張れよ。」

 

「はい。」

 

 

ビアンコがすぐそばの食料品店で買って来たオレンジジュースを飲みながら待機していると、階段を降りる音がした。

 

「配属されてここに来た奴か。ライオンの群れのオスみてーにしっかり俺がリーダーとして纏めないとあの人に笑われちまう。」

 

そして配属された新生暗殺チーム第一号のメンバーがビアンコの前に姿を見せた。

 

 

髪型はやや長め、服装は青い腕が穴だらけのシャツを着て、黒いズボンは膝から下が足に巻きついたようになっている。顔つきのせいで全体としては活発と言うよりやんちゃと言う印象であった。

 

今までややこわばった顔付きののビアンコの顔が緩んだ。相手もビアンコの顔を見ると顔つきが大きく緩んだ。まるで連休明けの学校で友達に会う男子学生のように。

 

 

「ビアンコじゃねえかよッ!!何だお前がリーダーかよッ!!久しぶりだなおい!!」

 

「お前こそ相変わらずくたばってないようだな。久しぶりだな。グノッコ。」

 

「ああ。これからはよろしくな。リーダーさんよ。」

 

やや暗い照明のアジトでビアンコとグノッコと呼ばれた男は固く握手した。

 

そして次のメンバーが来るまで二人は楽しげに会話をしていた。

 

 

「そういやお前なんで暗殺チームに配属されたんだ?」

 

その問いにグノッコは計算問題の分からない子供のような顔を浮かべた。

 

「暗殺チーム?ここって戦闘チームじゃないの?」

 

「ん?ああ……そういうことか。すまんな。上じゃ暗殺チームじゃなくて戦闘チームって呼んでんのか。暗殺チームは俺個人の呼び方だ。すまないな。」

 

「おいおい、山猫を一々クーガーって呼ぶエセ知識人みたいなこと言うなよな。」

 

「ああ、すまない。で?何でここに来たんだ?」

 

「ああ。糞ったれのスタンド使いに嵌められてチームに大損欠かせた挙句に幹部候補に重傷負わせた。」

 

「へえ。んでそのスタンド使いは?」

 

「ああ。何とか俺がケリをつけた。しんどかったぜ。」

 

「だろうな。お前のスタンドはパワーはイマイチだもんな。」

 

「うっせーな。そういうお前のスタンドも遠隔操作のスタンドではある意味致命的な弱点があんじゃねーか。」

 

「まったくだよ。ああ、メンバー集めるまでしんどくなりそうだな。」

 

「おいおい、俺とお前のコンビの前に倒せねー敵はいねえよ。」

 

「それもそうだな。赤い糸で結ばれたコンビかもしれねーな。」

 

そういいながら話していると階段を降りる音が聞こえてきた。

 

 




暗殺チーム(戦闘チーム)現メンバー
・リーダー ビアンコ・タリアテッレ
・第一メンバー グノッコ

ビアンコのスタンド

スタンド名-『メタル・マスター』
能力-金属を操るスタンド。射程距離10メートル以内で卑金属(アルミニウム等)や還移元素(銅やコバルトなどの一般的な金属)、5メートル以内でアルカリ金属(アルミニウムなど)やアルカリ土類金属(マグネシウムなど)、2メートル以内 で鉄や鉄分を操る。

破壊力-C スピード-C 破堤距離-5~10m
持続力-A 精密動作-C 成長性-B 

元ネタはメタリカのアルバム。姿はホルス神に翼と腕が生えた感じと思っててください。


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中央警察所へ行け!!

ついに暗殺(戦闘)チームが創設された!!

そしてメンバーが二人加入し、次の指令は『ネアポリス中央警察署に行け。』

もっとも近くて遠い警察署に三人は向かうことになる……


降りてきた男はスーツを着ていた。髪型は短めで、何よりもスーツには不釣り合いの花のボタンが二個ついていた。

 

そしてビアンコとグノッコはその顔を見ると思わず叫ぶように声を上げた。。

 

「「なっ、フンゴッ!?。」」

 

「よお、ビアンコにグノッコ、お前らが戦闘チームのメンバーか。これからもよろしく頼むぜ。」

 

フンゴはその辺のソファーに荒々しく座り、胸元から煙草を取り出し一服した。

 

「なっ……お前幹部候補だろッ!?それがなんで戦闘チームに?」

 

「そうだよッ!!どうした?お前もなんかやらかしちまった感じか!?ケケケ。」

 

「あのなあ……お前ら噂に振り回されるんじゃあねえよ。ただおいぼれ幹部の小間使いって感じでお傍役を押し付けられてただけだ。」

 

「ちッ、面白くネーの。」

 

グノッコは悔しそうに舌打ちをした。

 

「んで、てめえは相変わらず人の不幸を笑うクセは直ってねーよーだな。」

 

「他人の不幸は蜜の味だろ?」

 

「まったく……そういやリーダーはいないのか?」

 

「リーダーは俺だ。」

 

「ビアンコがリーダーか。まあくたばっちまうことはね~だろな。」

 

三人は軽く雑談し、これからの行動を伝えると、フンゴが煙草を吸い終わったのを見て、三人はアジトから出て、ネアポリス中央警察署に向かった。

 

 

「まったくよォ~、何で今から犯罪やらなきゃいけね~のに警察署いかにゃいかんのだ。」

 

「おいおいフンゴ、一回捕まったからってそう嘆くなよ。」

 

「けどな~、行きたくねえな~。めんどうくせェ~なァ~。ビアンコもそう思わないか?」

 

フンゴの問いにビアンコは少しだけ同意したような顔をした。

 

「確かに面倒臭そうなことが起こりそうな気がする。まあそれなりに覚悟しようか。」

 

「ハァ~~。」

 

 

ネアポリス警察署のエントランス、警察官が嫌に忙しなく動き回っていた。その中で三人は特に異質であった。

 

「何処だァ~~?俺達が会うっていう奴は?」

 

「見ればすぐ分かるって言ってたけど………!?」

 

「どうしたグノッコって……おいフンゴ、見つけたぞ。」

 

三人が見た先には頭がパドランプの警察官が立っていた。明らかにスタンドでそいつも三人を見つめたのか手招きをしていた。

 

 

「あいつだな……」

 

「手ぇ振ってんぞ。」

 

「どうするビアンコ、行くか?」

 

「行こうじゃないか。多分だが警察署、しかも中央警察署で騒ぎを起こす馬鹿は居ないはずだ。」

 

三人は警戒しながらそのスタンドに着いて行く事にした。不思議と警察官達は三人を身向きもせずにいた。スタンドは三人と付かず離れずの距離を保っていた。

 

「なあフンゴ、何で警官共俺達に見向きもしないんだ?」

 

「さあな、忙しすぎて俺がにきずいてないんじゃあないのか。」

 

「今から合う人物はよっぽどの大物かもしれないな。」

 

やがてスタンドは警察官ですらもすれ違わない『資料倉庫』に到達した。『資料倉庫』の扉を開け、スタンドは中へ入って行った。

 

フンゴとグノッコは後ろを警戒し、ビアンコは『資料倉庫』の扉を開けた。

 

 

 

そこには一人のギリギリ中年と言えるような男が一人立っていた。その傍にはあのスタンドが立っていた。

 

男は警戒を怠らない三人をじっくり見ると、スタンドを仕舞い、三人に話しかけた。

 

「君が組織から派遣された戦闘チームかね。」

 

「そうだが……あんたは?」

 

「私はネアポリス中央警察署署長、名前はあえて名乗らないことにしよう。」

 

「おいおい、こんなお偉方が俺たちに何のようだよ。」

 

「いいかね。よく聞け。私はジョルノ君のおかげでここの所長になった。その恩返しに私はジョルノ君達に一部の警察特権を与えることにしたのだ。それが君たちだ。」

 

「「「ハァ?」」」

 

ビアンコ達三人の戸惑いに動じずに所長は話を進めた。

 

「ああ、物分りの悪い奴は大嫌いだッ!!つまり君達は組織の指令は勿論のこと我々警察の為に働いてもらうのだよ。覆面刑事としてな。その間に君たちが行った違法行為や証拠の隠滅は我々が引き受けるのだ。分かったかッ!!マヌケッ!!」

 

「おいおいおいおいおいおい、マジかよ~。」

 

信じられないと言ったグノッコやフンゴとは違い、ビアンコは冷静に話した。

 

「つまり俺達はあんたら警察とのパイプって訳かよ。あんたらが裁きにくい犯罪……スタンド使いによる犯罪者の始末を俺たちが請け負う。仮にこの関係がバレたとしてもあんたの手は一切汚れないわけだ。」

 

「そういうことだ。そして早速だが、君達に始末してもらいたい奴がいる。」

 

「おいおい、いきなりかよ~。」

 

「ああ。こいつは警察という立場を利用しながら市民を殺しまくっているクサレ外道だ。今日はここから西の方でパトロールという名目で獲物を探しているはずだ。探して殺して欲しい。」

 

渡された写真は、いかにもその辺にいるような警察官であった。

 

「おいおい、署長が言う台詞じゃね~よ。」

 

署長の台詞にグノッコが呆れながら写真を受け取り、三人で見た。

 

「何でそんな凶暴な男が警官に入ってんだよ。警察もポルポの糞野郎と同じで人事がなってないな。」

 

フンゴが吐き捨てるように呟くと、ビアンコは男の写真をまだ見ていた。

 

「しかしこういういたって普通の、ありきたりな人生を歩んできたような面の内側にとんでもねー狂気が隠れているもんなんだな。」

 

「いいからさっさと行け。」

 

三人は追い出されるように部屋を出た。いよいよ戦闘チームの最初の任務が始まる……。




現在のメンバーの関係

三人はほぼ同時期に組織に加入、同じチームに三年間配属され、その後フンゴが他の幹部に引き抜かれ、同じくコンディメンも他チームに引き抜かれた。


署長のスタンド

スタンド名-『ホット・アクション・コップ』
本体名-ファッジョーロ
能力-指名手配されたターゲットを追跡するスタンド。
   ターゲットの指紋やDNAなどで追跡する。ターゲットを捕まえるとターゲットを    押さえ付けて身動きを取れないようにし、近くの警察官やパトカーを誘導させ     る。

破壊力-C(押さえる力はA) スピード-B 射程距離-A 
持続力-C 精密動作-D 成長性-C 


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『スパニッシュ・ムーン』と『デストロイヤー』その①

ネアポリス南部、一人の警察官がパトロールをしていた。しかしその目は明らかに市民を守ると言う気高い意思を持っている目では無く、餓えた野獣が獲物を狙っている、残酷な、野生的な目つきであった。

 

やがてその警官は一人の屈強そうな現場作業員に目をつけた。早足で近づき、職務質問をすると言う名目で裏路地に誘い込み、後はじっくりいたぶって殺すだけ……

 

明らかに一般の人間のおよそ考え無い様なことを考えながら男の方を叩こうとした瞬間―

 

 

「あの~、すみません。俺田舎から出てきてここで働いてる兄に会いに来たのはいいんですけどね~~、運悪く地図を忘れてきちゃって。ここどういう風にいけばいいですかね~~。」

 

その警察官の凶行はまだ若い面の男によって運良く未然に防ぐことができた。

 

(糞がッ!!せっかく俺の美しい芸術を作ろうとしていたのにッ!!この田舎者がッ!!てめえは片田舎で美味しいハムの材料の豚でも育ててりゃいいんだよッ!!このマヌケが~ッ!!)

 

心の中でそう吐き捨てたが警察官は張り付いたような笑顔を応対しようとした。

 

「ええと……ああ、ここはネアポリス中央警察署ですね。それならば、ここを北に行けば行けますよ。」

 

「ああ、そうですか。ありがとうございます。あの~~ところで……」

 

「何ですか?」

 

「この辺で最近銃による死体がたくさん見つかってるそうですけど大丈夫何ですかね~~。」

 

「ああ、あれはひどい事件ですよね……銃で被害者を穴だらけにして殺すだなんて。でも安心してください。犯人はすぐにでも捕まえますから。」

 

「あれ?犯人は機関銃とかで殺されたんですか?新聞じゃあ拳銃で撃たれたんじゃあないんですか?」

 

その男は納得の言ってない顔をしていたので、警察官は説明してあげた。

 

「そうなんですよ。被害者の顔は丸太で潰されたみたいに成ってしまっているし。腕や足なんかもほぼ千切れかかっている状態でしたよ。」

 

「そうなんですか……ところで」

 

その男、グノッコは静かに語りだした。

 

「あんた、交通課の人間、アスペッティ巡査長だろ。それが何でそんな詳しい事件の詳細を知っているんだァ~~?」

 

「貴様ッ!!」

 

「やっぱりテメエが乱射魔の殺人鬼かッ!!見つけたぜェ~!!」

 

その男、アスペッティが怒号を上げた瞬間、グノッコがスタンドを素早く出現させた。

 

顔はギザギザの鋭い歯が書かれた口を持ち、ややロボットのような間接を持っていた。スタンドは右手の甲から60cmほどの刀が出現すると、アスペッティの顔を素早く切り裂いた。

 

傷は思いのほか浅く、少し斬り付けられただけであった。アスペッティはすぐさまグノッコを鋭く睨み付けると、アスペッティもスタンドを出した。

 

それは煙突のような、マフラーのようなものが飛び出た重機械から錆びたアームが六本出ており、中央からは大きな機関銃やミサイルが付いていた。

 

「俺の秘密をしったな。知ったからには生かしては置けない。やれッ!!『デストロイヤー』ッ!!」

 

ドバババババババババババババ!!!!!!

 

機関銃から発射された弾丸はグノッコに襲い掛かった。グノッコのスタンドは弾丸を腕で弾いたが、何発かはスタンドの肩に被弾した。グノッコの肩からは血が出た。

 

(くッ!!やっぱ殺人鬼のスタンドは強力だなオイッ!!だが俺の仕事は終わった。あとはフンゴなりビアンコなり……逃げるか!!)

 

グノッコは素早く路肩に止めてあった車に転がり込んだ。『デストロイヤー』と呼ばれたスタンドは車をいとも簡単に穴を開けて言った。

 

「隠れていても無駄だッ!!」

 

機関銃の掃射を終えると、何かをコンディメンに向かって飛ばした。

 

「ンッ?」

 

グノッコは向こうから飛んできたものを良く見た。それは紛れも無いミサイルであった。

 

「何イイイイイイイイイイイイイイッ!?」

 

コンディメンのスタンド、『スパニッシュ・ムーン』はそれを叩いて車の内部に入れた。

 

車は爆発を起こした。あいにく平日で、しかも付近には工事中のビルが有る為、爆発音が幸いにも聞こえては居なかった。

 

「死んだか。」

 

アスペッティはつまらなそうに呟くと、そこから立ち去った。

 

「あの野郎……俺と同じように能力があるのか……。しばらくは芸術は中止だな。あれ?傷が消えてる……。」

 

 

そのころグノッコは周りのビルの屋上の高さ程の場所でビアンコとフンゴと話していた。ただしグノッコは屋上ではなく、空中に立っていた。

 

「どうだ?うまくやったか?」

 

「ああ、肩を撃たれたが俺の攻撃は完了している。」

 

「で、どうする?ビアンコか俺で仕留めるか?俺も動くなら氷がいるぞ。」

 

「ああ、よろしく頼むぜ。俺のスタンドはあんまり戦闘は得意じゃねえからな。」

 

「グノッコ、そのまま奴を追跡してくれ。襲撃のタイミングが来たと思ったら連絡してくれ。」

 

「了解!!リーダー。」

 

グノッコはそういうと、空中をジャンプしながらアスペッティを上空から追跡した。

 

「ヒヒヒ!!俺のスタンド能力にぶブッタマゲんなよッ!!」

 

 

to be continued…




名前の由来

ビアンコ・タリアテッレ→イタリア語で白い麺→ホワイトソーススパゲッティ

グノッコ→イタリア語で団子

フンゴ→イタリア語でキノコ

カーネ(ビアンコの元チームの上司)→イタリア語で犬

ポモドーロ(ビアンコの元チームのリーダー)→イタリア語でトマト


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『スパニッシュ・ムーン』と『デストロイヤー』その②

「ケケケ……『軽くなれる………』!これが俺のスタンド『スパニッシュ・ムーン』!ダイエットに夢中な思春期真っ只中の女子に人気になれるだろうなァ~~~~。」

 

コンディメンは空中を、へんな言い方だがジャンプしながらアスペッティを追跡していた。

 

「ビアンコッ!!アスペッティはお前らの居たビルのすぐ近くの裏路地に逃げてるぞ。どうする!?」

 

「なるべく事故死にさせたいッ!!近くに事故死を装える様な所はあるかッ!?」

 

「ええと……あったッ!!お前らが居たビルから二時の方向に工事中のビルが有るッ!!そこへ向かわせる!!」

 

コンディメンはビアンコに携帯で連絡を取りながらアスペッティを追跡していた。

 

「もう追跡は終わりだ……ここから行くぞッ!!」

 

その瞬間、コンディメンは横に光るものを感じた。

 

「ん?」

 

すぐ横を見ると、光る何かを見つけた。それはコンディメンを捕らえた『デストロイヤー』であった。

 

「何ッ!?」

 

発射された機関銃をすべて躱すと大空を駆け上がった。大空に駆け上がったコンディメンを追跡する為に『デストロイヤー』は背中から四つのプロペラを展開すると、空を飛び、大空を飛んだ。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」

 

銃弾を躱しながらコンディメンは逃げていた。とにかく連絡を取ろうと、携帯を取り出した。

 

「おいッ!!ビアンコッ!!聞いてるかッ!!あいつは俺を仕留めるのを優先しているようだ。さっさとあいつを工事現場まで誘導して仕留めろッ!!」

 

「分かってるッ!!だがな……あいつはお前を追いかけているぞッ!!少しだけ耐えてくれッ!!」

 

「頼むぞッ!!」

 

携帯を切ると、コンディメンは時間を稼ぐことを考えた。とにかく自分達がチームで襲っていること、スタンドを本体に危機があってもすぐに戻されないようにすることを考えた。

 

「だがッ!!もうすぐ俺の攻撃は完成するッ!!」

 

 

「最悪だ……俺はただ道端の『石』のように誰からも見向きにされず『平和』に生きて俺の『芸術』を作り上げる…それが俺の生きがいだったのにッ……!!だがあんな奴はすぐにでも殺せる……今もすぐにでもッ……!!」

 

アスペッティはそう言いながら裏路地を抜けた。そして表の通りに次の一歩を大地に踏み出そうとしていた。しかし、足は地面に付かずに、中に浮いていた。

 

「何だッ!?足が地面につかねえッ!!まるで足から強烈な空気が吹き出してる見てェーにッ……!!」

 

自分の身に何が起こっていたのか理解できていないアスペッティは思わず立ち止まった。あたりを見ても先程の男は居なかった。

 

「確かに奴は遠くに言っているッ!!糞ッ……何なんだこのスタンド能力はッ!?」

 

その時、アスペッティは頭から思わず帽子を拾おうとしていた。しかし帽子を手に取った時、違和感を感じた。

 

嫌に帽子が重い。いつもはすぐさま埃を払って持ち上げるのに、帽子に粘土が詰められた様にずっしりと重くなっている。

 

「あっ、あれ……?何だコレはッ……!?重いッ!!くッ!!」

 

持ち上げようとしていると、不意に足元から強烈な風が吹くと、アスペッティが大きく空中に巻き上げられた。まるで秋風に吹かれる様に宙を舞った。

 

「なッ!?上にッ……!!上に上がるッ!!」

 

アスペッティの体重:現在600g

 

『デストロイヤー』に追跡されながら、コンディメンは遠く、浮き上がったアスペッティから五時の方向に居た。

 

銃弾を腕で弾きながらに本体からスタンドを放していたが、腕や肩に幾分か被弾していたようだ。

 

「くっそーーーーッ!!まだかッ!!まだ来てねーのか……って!!居たッ!!浮き上がっているッ!!その前にこいつを引き離さなきゃいけね~~。さて、どうしたものか……」

 

その時、一瞬強風が吹いた。コンディメンは近くの建物の淵を掴んだ。

 

「フゥ~~……『強風』は動きがかなり抑えられちまうからな……おっと!!あいつが来る!!」

 

しかし『デストロイヤー』は砲台をクルクル回しながら空に浮かんでいるだけで、コンディメンを見失ったようだった。

 

「あれ…?見失った?……ちょっと待てよ。これは大きなことだぞ……慌てるな……じっくり見て……ってかさみ~な。ン?『寒い』?」

 

やがて『デストロイヤー』がコンディメンを再び捕らえた様で銃口を向け、近づいてきた。

 

「理科の先生よォ~~~~!!頼むぜェ~~~~!!あんたから習ったことが合ってるか確かめて貰うぜェ~~~~~!!」

 

コンディメンのスタンド、『スパニッシュ・ムーン』は建物の屋上の給水塔を切り裂いた。

 

給水塔から水が流れ、コンディメンは水を被った。銃口は完全に向けられたが、そこからは銃弾も体からミサイルが発射されるわけでも無かった。

 

(あっぶねェ~~~~~!!日本じゃ打ち水で暑い夏を乗り切る。確か水が蒸発する時に熱も一緒に持って行くからそうなるんだよなァ~~~~。こいつは恐らく体温を探知して追いかけてるらしいな!!遠隔操作は弱点を突けば脆いもんだぜェ~~~~!!)

 

やがて『デストロイヤー』はどうやら戻る為にアスペッティの元へ戻ろうとしていた。

 

「マヌケェ~~~~~~!!俺の方が早いっつーのッ!!」

 

コンディメンは建物を強く蹴ると、『デストロイヤー』よりも早くアスペッティの元へ向かって行った。

 

「ケケケ!!お前のスタンドは確かに強いッ!!だがなッ!!俺達を舐めて貰っちゃ行けねえッ!!」

 

to be continued……




スタンド名-デストロイヤー
本体-アスペッティ
遠隔操作型
能力-六本の足で歩き、弾丸やミサイルで攻撃する。人や動物の体温を探知し、追跡、発   見が出来る。弾丸やミサイルを喰らうと、弾痕から発する熱でさらに細やか追跡が
   可能。
   背中の部分から四つのプロペラを展開し、空を飛ぶことが可能だが空中での動きは
   少し遅い。

破壊力-B スピード-B(空中-C) 射程距離-数10メートル 
持続力-B 精密動作-E 成長性-C 


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『スパニッシュ・ムーン』と『デストロイヤー』その③

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 

アスペッティは猛烈な勢いで地上から離れていった。風が吹くと建物に激突し、思わず血反吐を吐いた。

 

どうにか建物の窓の縁を掴んで吹き飛ばされないようにしていたが、ひと風吹くたびにコンビニのビニール袋のように吹き飛ばされそうになった。

 

アスペッティの現在の体重:60g

 

 

「糞ッ!!なんて日だ……。こんなにもツイてない日は初めての『芸術』を作った日以来だ……ッ!!確か……こういう時は……。」

 

アスペッティが携帯を取り出そうとしたとき、突如自分の上に人影を感じた。素早く上を見ると、そこには、肩や腕から血を出していたコンディメンが立っていた。

 

 

コンディメンのスタンドが手の甲から鋭い刀を出すと、アスペッティの肩に突き刺し、ビルの屋上に上げた。

 

 

「うがあああああああああああああああッ!!」

 

「おいおいおいおい、今まで人殺しまくった奴がちょっと肩刺された位でギャーギャー騒ぐなよォ~~~。」

 

アスペッティにグノッコが裏拳を当てた。それでも黙らない為、もう何発か拳を当てた。

 

「うるせえぞッ!!おもちゃ買って貰えない子供かッ!!俺は騒がしい奴と金持ちが嫌いなんだよッ!!」

 

その時あの異様なまでに禍々しい砲塔とやかましい機械音を鳴らしている『デストロイヤー』が現われた。ビルをしっかりと掴んでいるのかコンクリートにはヒビが入っていた。

 

そして暴れる精神障害者のような音を立てながら砲塔から弾丸が発射された。しかしコンディメンの体は穴が開く訳でも無く、弾丸は弾かれてしまった。

 

(何ッ!?バカなッ!!こいつの体に穴が開かないッ!?こいつは体が岩にでもなってんのかッ!?)

 

グノッコは澄ました顔をした。そして『デストロイヤー』を『スパニッシュ・ムーン』が蹴りを噛ました。

 

「グハッ!!」

 

「おいおいおいおいおい、何をそんなにビビッてんだよォ~~~~~。お前は「軽く」なってんだぜ?お前は紙風船当てられたら一週間も入院するような怪我をするか?え?」

 

その時、グノッコの懐の携帯がなった。

 

「おっと。」

 

コンディメンは電話を取った。相手はビアンコの携帯であったが、出たのはフンゴであった。

 

「おい!!テメエ今何処にいやがんだ!?」

 

「おいおい、相変わらず任務になると口悪いな~。大丈夫だ。相手はもう捕まえてるぞ。場所はえ~と、アパートだ。」

 

「アパート?ああ、そこか。ちょいと遠いからてめえが仕留めろや。」

 

返事しようとした瞬間、突如アパートの一階から爆発音が聞こえた。

 

「あ?」

 

その瞬間、アパート全般から大爆発が起こった。爆風から逃れる為、グノッコは思わず体を軽量化してしまった。

 

「しまったッ!!この野郎!!まさか!!」

 

その時、『デストロイヤー』から弾丸が発射された。弾丸はグノッコの腹や胸を貫通し、グノッコはそのまま吹き飛ばされてしまった。

 

(くそう…、こいつ…このアパートのガス線に破壊しまくって放火したのか…。)

 

アスペッティは『デストロイヤー』に捕まると、『デストロイヤー』はミサイルでコンクリートを爆破し、その反動で地面に降り立った。

 

「クッ!!あいつはまだ死んでない…軽量化が終わってねえ…。しかしこの爆発じゃ生憎探せはしねえ…。」

 

当たりには燃えたコンクリート片に木炭のようになった人型が燃えているだけであった。

 

(つまらない…。糞、携帯も落としてしまった…)

 

そういいながらアスペッティは周りを見た。この当たりは労働者階級が多く住んでおり昼はほとんど人はおらず、ガラも悪い為、めったに人は近づかない。

 

それこそがアスペッティが選んだ最高の『芸術』を行なう為のアトリエであった。

 

彼が『芸術』に目覚めたのは小学生の時、近くの場所で飛び降り自殺があった。その時、脳を垂らしながら死んでいた男の血しぶきが何ともいえない『美しさ』を感じた。

 

彼はそれを見て、とても味わったことの無い高揚感を感じた。そしてあることを感じた。

 

「『芸術』というのは人間にとって最も重要なもの、『美しさ』を理解できるのは人間だけであるッ!!『美しさ』は人間の素晴らしさ!!最も優先するのは『美しさ』ッ!!すなわち『芸術』だッ!!」

 

それ以降、彼は金で浮浪者を廃ビルに誘い込んでは突き落とすという犯行を警察に入隊するまで続けていた。

 

しかし今ではスタンド能力で『芸術』を行なっていた。誰かをミンチのようにしてその血飛沫を『美しさ』、つまり『芸術』として楽しんでいたのだ。

 

「しかしあの男…。中々いい体つきだったな。いい血飛沫を見せれるのに…。まあ仕方が無い。無いものねだりは人生を無駄にするからな。」

 

そういいながらアスペッティは警察署に戻ろうとしていた。

 

アスペッティの体重:現在1kg

 




グノッコのスタンド

スタンド名-『スパニッシュ・ムーン』
本体名-グノッコ
能力
両手の手の甲から飛び出た刀で傷つけた相手の「重量」を操るスタンド。ただし相   手を重くしたりするのではなくあくまで「軽量化」に特化している。
「軽量化」を喰らうと攻撃はほぼ威力が無くなり、地面にまともに立つことができず、そよ風程度で吹き飛ばされてしまう。本体は自由に軽くなれる上、軽量化しても筋力などはそのまま。
ただし相手と同じ軽さになると攻撃が通用してしまう。

破壊力-D スピード-B 射程距離-E(能力射程-A) 
持続力-A 精密動作-C 成長性-C


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『スパニッシュ・ムーン』と『デストロイヤー』その④

「何ださっきの爆発は!?」

 

駆けつけようとしていたビアンコとフンゴは突然の爆発音に驚いていた。

 

「何だッ!?」

 

上を見ると異常なほど真っ黒の煙が昇っていた。フンゴはその光景を見て静に呟いた。

 

「あのイカレ警官め…。どっかを爆破したらしいな…。」

 

「ああッ!!グノッコのスタンドはあまり決定打に欠けるッ!!かなり追い詰められているだろう。救援に行かなくてはッ!!」

 

「おい、ちょっと待て。」

 

フンゴはビアンコを呼び止めた。ビアンコは焦っている様子で忙しなく「何だ!?」と答えた。

 

フンゴは後ろを指差すと、どうやら爆発を見に来たの野次馬の人だかりが出来ていた。

 

「あれ、どうするよ?」

 

ビアンコは少しだけ考えるしぐさをすると

 

「そうだな…。お前に任せるわ。」と言った。

 

「分かった。今回はオメーに譲ってやる。しっかり片付けて来い。」

 

「言われずともだ。」

 

するとフンゴを中心に白いガスが出てきたと思うと野次馬たちが次々と倒れて行った。喉を押さえながら苦しげに声を上げないまま倒れて行き、数分も立たないうちに辺りは墓場の様な静けさになってしまった。

 

ビアンコも少しふら付いたがフンゴは別段、何も起こっていないようだった。

 

「おいおい大丈夫か?俺のスタンドじゃせいぜい二十分と言ったとこだろうな。」

 

「任せろ。その間には終わる。終わったらすぐに能力を解除して撤収するぞ。」

 

ビアンコも少しふら付いたがフンゴは別段、何も起こっていないようだった。

 

ビアンコは、近くのビルの窓枠の金属などで階段を作ると、そのままビルの上から現場に急行した。

 

 

その場から離れようとしていたアスペッティは突如、声を聞いた。それはまるで今まで自分が殺した人間達の怨みの声のようであった。

 

「おいコラァ…まだ終わってねえぞッ…!!」

 

「なッ!!なにッ!?あの野郎ッ!!何処だッ!?」

 

「あせんなよ…すぐに戻ってやるからな…覚悟しとけッ…!!」

 

アスペッティは辺りを見回した。当然の様に何処にも先ほどの声の主の姿は無く、ただ爆発したアパートが燃えている音が響いているだけであった。

 

「何処だッ!!何処にいるッ!!来るならさっさと来いッ!!」

 

その時、恐怖のせいか、突如、足元に力が入らなくなってしまった。座りこもうと少しでも力を緩めると、再び空へ飛んでしまいそうであった。必死に足を踏ん張っていた。

 

(今度は何だッ!?足が痺れて…口が…目が乾くッ!!)

 

思わず屈んだその時、地面に血が垂れていた。その傍には靴があり、誰かが自分のすぐ傍に来ていることは確実であった。

 

アスペッティは恐怖で顔を上げることが出来なくなっていた。体に力が入らず、先ほどから瞬きすらもろくに出来てない。そんな中、

 

「来てやったぜ…。糞野郎…」

 

血だらけで火傷だらけのグノッコはそう静かに呟いた。胴体や顔からも血が流れ、歯も何本か折れてるようであった。

 

しかしその眼はしっかりとアスペッティを捉えていた。それはただのチンピラの目でもましてやギャングの目でもない、『暗殺者』の目であった。

 

その目で見られているアスペッティはもはや恐怖だけが支配していた。

 

(殺されるッ!!殺されるッ!!殺されるッ!!殺されるッ!!殺されるッ!!殺されるッ!!)

 

その時、グノッコはアスペッティにかなり近づいた。その距離は約2m。かなりの近距離に近づいていた。

 

「この距離ならよ、もうお互い絶対にはずしっこしねえぜ。」

 

「ああ……、ああ……。」

 

「試してみるか?お前が勝つか。俺が勝つか。」

 

アスペッティがスタンドを出した瞬間、グノッコもスタンドを繰り出した。

 

 

 

「スパニッシュ・ムーンッッッーーーーーー!!」

 

「うわあああああああああああああああああああ」

 

 

 

『デストロイヤー』の弾丸はグノッコの体に命中した。コンディメンは静かに倒れていき、スタンドも消えてしまった。

 

辺りは再び物が燃える音だけが聞こえ、再び燃える音だけが響いた。アスペッティは辺りを見回したが、幸い彼の見方はいないようであった。

 

「フフフ…ハハハ…!!俺の勝ちだッ!!天は俺を選んでくれたんだッ!!ハハハハッ!!」

 

その時、余裕が出来たのかアスペッティは地面を見た。地面には『スパニッシュ・ムーン』がつけた傷跡が付けてあった。

 

そして異様な違和感を覚えた。『軽量化』が解除されていない。足元の不安定感が『まだ終わっていない』

 

「ああ……?ああ?」

 

そして突如、地面のコンクリートごとアスペッティは空に舞い上がったッ!!先ほどの同じ様にッ!!今度はコンクリートと同じに枯葉のように舞い上がった。

 

「うあああああああああああああああ!?まさかッ!!あの野郎ッ!?コレを狙っていたのかッ!?」

 

 

ビアンコは宙に待った男の姿を捉えた。窓枠の金属をバネのように変えると、一気にその男に近づいた。

 

「グノッコ…!!よくやった。後は任せろッ!!あの男をしとめてやるッ!!」

 

←to be continued…



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『スパニッシュ・ムーン』と『デストロイヤー』その⑤

舞い上がったッ!!グノッコの決死の作戦によりアスペッティはコンクリート片にと共に大きくッ!!舞い上がったッ!!

 

「仕留めるぞッ!!」

 

窓枠の金属を延ばして乗ると、浮き上がったアスペッティに向かって走り出した。チラリと燃えている瓦礫の中で倒れているグノッコを見つけた。

 

(グノッコ…お前のおかげで倒せるんだ。ありがとう……本当に……ありがとうよ。)

 

 

「フハハハハーーーーーーッ!!お前もッ!!細切れのミンチにしてやるぜーーーーーッ!!」

 

血走った目でビアンコを見ていたアスペッティの『デストロイヤー』は狂った銃撃音を発射した。しかし軽量されている為かビアンコには効かない。

 

「あっ…ああ?」

 

「お前は『軽量化』されているんだッ!!マヌケッ!!」

 

付近の窓枠が歪に音を立てると、鋭い茨の蔦の様にアスペッティに襲い掛かった。それはアスペッティの肩に突き刺さり、頭を掠めた。

 

「ぐっ!!」

 

その隙にビアンコは一気に接近しようとしていたが、突如、自分の乗っていた窓枠の金属が爆発した。

 

「なっ!?」

 

「フフフ……俺が撃てるのは銃弾だけじゃねえ。ミサイルだって撃てるんだよッ!!しってかあ!?ミサイルはどんなに軽くても爆発するんだぜ!?」

 

デストロイヤーからはミサイルが多量に発射された。それはフワフワと風船のように漂いながらも、はっきりと、獲物との間合いを詰める肉食動物のように漂っていたッ!!!

 

「くッ…!!グノッコのスタンドがアダになったな……クソッ!!」

 

ビアンコとアスペッティとの距離は約12mッ!!うかつに距離を詰め様にもミサイルが機雷のようになっているッ!!

 

「フハハハハハハーーーーッ!!我が『デストロイヤー』のミサイルは防御シールドにしてお前への爆殺処刑を兼ねたッ!!」

 

思わぬ反撃を受けたビアンコが動けずにいた。偶然がそれらは美しい幾何学模様で囲まれていた。

 

(くそ~~~あいつのミサイルの美しい幾何学模様が出来てるじゃねえか~~~!!)

 

そして、ほんの偶然に何気なしにとチラリと下を見ると、グノッコの死体がなかった。

 

(なにッ!?グノッコの死体が無いッ!?馬鹿な……炎で完全に燃えてしまったのか?)

 

その時ッ!!ビアンコの前、つまりアスペッティから悲鳴が聞えた。そこにはッ!!なんとッ!!アスペッティの凶弾に倒れたはずのグノッコが血だらけであったが、浮き上がり、『スパニッシュ・ムーン』の鋭い刃が

 

アスペッティの喉を貫いていたッ!!普通の人間なら即死であろうが、興奮状態のためか口や鼻から血が噴出していただけであったッ。しかしその行動は確実にッ!!ビアンコに勝利をもたらす事になったッ!!

 

軽量化されたミサイルの機雷が消えたッ!!グノッコの思わぬ攻撃に怯んだのかスタンドを解除したのだッ!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおッ!!突っ切って間合いを取るッ!!」

 

そしてビアンコは2mまでに近づいたッ!!射程距離は十分ッ!!鉄分操作を可能と出切るのだッ!!

 

「ぐッ!!」

 

アスペッティがそう言ったのと同時に、アスペッティの貫かれた喉から金属の杭が、魚篭から逃げ出す魚のようにボトボトと出てきた。

 

「カハーーーーーッ」

 

そういうとアスペッティは軽量化されたコンクリートの上に倒れこんだ。しかしどうやら死んではおらずに潰れかけた声で話し始めた。

 

「カッ……カハッ!!……しかた……ないな~……、俺を……ゴプッ!!……仕留めるのも……よォォー……楽じゃ……なかっただろ……え?これからは……お前らは“欲望”に飲み込まれねーように……せいぜい…あがいていけよ……」

 

 

「おいッ!!大丈夫かッ!?」

 

血まみれのグノッコをビアンコは抱えた。グノッコは気絶していた。それと同時に、浮かんでいたアスペッティと傷つけられたコンクリートは下に落ちていった。

 

傷口を見てみたが、どうやらフンゴの“能力”のおかげで出血が抑えられていたようだった。ビアンコはフンゴの連絡をして、“能力”の解除を頼んだ。下に付く頃にはすっかりフンゴの“能力”は解除されているようであった。

 

ビアンコはグノッコを抱えていた。すっかり気絶していたが、その顔つきは確かに“暗殺者”の顔であった。少なくともビアンコはそう感じた。

 

 

「しょおおがねーなああああ~~~~ 、ビアンコ。何よりも重要なことはよォォ~~~『ココ』を使うことだぜ。」

 

ビアンコは暗殺チームのアジトに出入りしていた時にスタンド使いの始末の依頼を受けた時に負った傷を摩っている時に、ホルマジオから頭の方を指差しながらそう言われていたのを思い出した。

 

「どんなくだらなくてしょぼくて弱いスタンドでも『ココ』を使えば案外勝てないことも無い。これはスタンド使いにとっては大きな事だと思うぜ。」

 

「なるほど……」

 

「弱くても強くても『ココ』が弱い奴は『弱い』んだぜ。お前もスタンドで戦う時は使い勝手がよくてもしっかり頭使えよ?」

 

 

「こいつも頭をフルに使って追い詰めたんだろうな……『くだらねー』能力でよ。よく頑張ったぜ。」

 

そう呟きながら二人の“暗殺者”はフンゴの元へ向かった。

 

 

アスペッティ―死亡 スタンド―デストロイヤー




ビアンコのスタンド名変更しました。

メタル・マスター。メタリカのアルバムです。


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「敵」の姿

ピー、ピー。と単調な笛の音が当たりに響く。大勢の野次馬が「アパートの爆発事故」の見物に着ており、警官が現場に入らない様にしている。

 

 

そのすぐ傍の自販機に体中血だらけの火傷だらけの男、グノッコがコーラを飲んでいた。その傍を二人の男、ビアンコとフンゴが立っている。

 

「奴は完全に殺した。スタンドが消えて行った。完全に始末したぞ。」

 

ビアンコはそう静に呟いた。それと同時にグノッコが勢いよく立ち上がると叫んだ。

 

「あああああッ!!しまったッ!!」

 

「何だ?どうした?やっぱりやり損ねたとか言うのはやめろよ?」

 

フンゴの問いにグノッコは焦りながら叫んだ。

 

「違げえよッ!!あの野郎は確かに死んだッ!!それはさっきビアンコが言ってたし今頃っは警察の鑑識の奴らが喉が少し抉れたのをちょっぴり変と思うくらいだッ!!さっき思い出した!!」

 

 

「あの野郎携帯持ってやがったッ!!」

 

「それは…まさか。」

 

「ああ!!あの野郎!!誰かと連絡を取るつもりだったはずだ。あの現場にまだそれがあるんだよッ!!速く取りに行かなきゃ!!」

 

するとビアンコが取り乱すグノッコを押さえた。

 

「分かった分かった。俺が取りに行ってやる。お前は水分補給しっかりしとけ。」

 

そう言うと近くの建物の鉄筋を操作して足場を作ると携帯電話を取りに行った。

 

 

結構な数の野次馬の中をビアンコは自分の体を砂鉄を纏って姿を消しながら携帯を探していた。

 

(こういう時はなるべく呼吸を抑えろってあの人が言ってたからな…。まあ周りを見る限りバレてはないと思うけど。)

 

立ち入り禁止のテープを潜り、まだ燃えている家具や高熱で真っ赤になった金属が散乱している事件現場の地面をハイエナの様に探していた。

 

(ねえな…。もう持ってかれたか?あの署長にはあんまり会いたくは無いが…」

 

そう思いながら顔を上げた時、ビアンコの目の前に何か浮いているものがあった。

 

球体の直径は30cmほど、球体に四本の平たい板のようなものが四方についていた。それはしばらく

ビアンコを見るように浮遊すると、突如、球体がバナナの様に剥けた。そこには清流の様に綺麗なレンズがあった。

 

(敵かッ!?)

 

ビアンコがスタンドを出すと、それはコマの様に空中で激しく回転すると、砕けたコンクリートなどで砂埃を起こした。

 

(ぶわっ!?くッ…前が…!!畜生!!)

 

スタンド能力を使い、コンクリートに含まれていた微小な金属を操作し、目から排除した。

 

しかし、すでにそれは何処かへ行ってしまい、ビアンコの足元にはひび割れた携帯電話が落ちていた。

 

(あのスタンドが渡したのか…?)

 

周りを見渡しても怪しい人影はおらず、スタンドエネルギーも感じなかった。

 

(糞!!舐めやがってッ!!遠隔操作のスタンドか…)

 

ビアンコはひび割れた携帯電話を拾った。どうやら使用できるようで動かせるかすこしテストした。

 

(え~と…ここが着信履歴で…ここがメールフォルダだっけか…?携帯はあんまり得意じゃないからな…)

 

するとメールフォルダにほんのついさっき送られたメールがあった。

 

「我らアヴィディータ(欲望)に勝てるかな?パッショーネのボスによろしく。」

 

 

ビアンコはジョルノの前に立っていた。ジョルノの机には件の携帯電話が置かれていた。

 

「これではっきりと分かりましたよ。今までのスタンド使いによる犯罪はこの携帯電話を所持していた男、このアスペッティの所属していた組織、仮に彼らをアヴィディータと呼びましょう。そのアヴィディータの犯行でした。」

 

ジョルノは溜息交じりに離し始めた。自分達の敵がスタンド能力者で構成された犯罪者集団だったのであったからだ。

 

「現在はパッショーネの息の掛かったすべての場所にスタンド使いを配置させました。また幹部も極力目に付くような行動は控えさせています。」

 

「アヴィディータは携帯の情報から判断するに敵の構成はこちらとほぼ同じ、そしてそれらを束ねるボスが一人と言う構成です。」

 

「…アヴィディータ…欲望ですか…。糞イケすかねえ…」

 

「君達戦闘チームにはアヴィディータ討伐を命じます。彼らの討伐は勿論、敵のアジトの発見、協力者の洗い出し、資金元まで調べてその情報をこちらにください。情報を渡し次第、すべてを始末する事。」

 

「分かりました。ところで…」

 

「何でしょうか?」

 

「グノッコの姿を見ていないのですが…」

 

「ああ、そんなことですか。彼なら僕の能力によって治療しました。今、戦闘特化の人間を欠けるわけには行きませんからね。来なさい。」

 

すると扉を開けてグノッコが入ってきた。すっかり火傷や弾痕は治っており、すぐにでも仕事を

こなせそうであった。

 

「ボ、ボス、感謝します。」

 

ビアンコはコンディメンと共に跪いた。そしてジョルノは顔色一つ変えずに話を続ける。

 

「君達に送る伝令はしばらくネアポリス警察署長経由で送ります。その風呂敷の中に警察無線を傍受する装置があります。持って行きなさい。」

 

ビアンコは風呂敷を担ぐと、ジョルノの部屋から出た。部屋から出る瞬間、グノッコがビアンコに話しかけた。

 

「よおよお、何かすげー事になっちまったなあオイ。幹部連中なんか幽霊みてェーに真っ青になってたぜ?」

 

「関係ないね。幹部連中がドンだけ騒ごうが知らない。」

 

「あ?って…何でそんなに「笑顔」なんだよ?」

 

「ワクワクするじゃねえか。これでやっとリゾットさんと同じ土台に立てたんだぜ?コレが嬉しくなくて何なんだ?」

 

「リゾット・ネエロと同じ土台ねえ…」

 

「ヘヘヘ…リゾットさん以上に組織に名を売ってやる。」

 

そう言うビアンコの眼は次の獲物を狙う「暗殺者」の顔になっていた。



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歩く姿はまるで…その①

組織の敵が本格的に分かり、幹部達は不安の色を濃くし、下っ端は敵の気味悪さに恐怖を覚える中、

緊急的に行なわれた幹部会議により、各商店に数人のスタンド使いが常駐することになった。

 

ただしこれはあくまで『迎撃』、そこからの『追跡』、及び敵の『殲滅』は『新生暗殺チーム』の出番であった。

 

 

三日前

 

組織の参加の商店の人間が行方不明になっていた。行方不明になったのは店に関わっていたもの『全員』、つまり客や店に品物を配送していた配送員、常駐していたスタンド使いですらも行方不明になっていた。

 

緊急に呼び出された調査チームにより、まるで最初から人など居なかった様から商店から情報を吸出し、どうにか犯人の姿を割り出す事が出来た…

 

 

「どうだ?グノッコ、それらしい奴は見つけたか?」

 

砂鉄を身に纏い、透明になって道行く人を観察しているビアンコは同じ様に砂鉄を纏わせた携帯電話でグノッコに連絡していた。

 

「いや、駄目だ。さっきから空中に浮いて探してるが該当する男は見つからない。」

 

グノッコの電話にビアンコは溜息をついた。誰も居ない所から溜息が聞えたら普通なら驚く所だが、幸い周りには誰も居なかった。

 

「えっと…情報チームが吸い出した情報によると『異国風の男』だっけか。ボス曰く『アラブ系』に似ているんだっけか。」

 

「ああ、だから外国人街に来て見た訳だが…見当違いか。クソッ」

 

「まあもうちょい窓から覗きをしてみるわ。」

 

そう言うとグノッコは電話を切った。ビアンコは再び別の所に電話を掛けた。

 

 

フンゴは外国人街を探していた。街はイタリア料理の匂いではなく、遥か西の香辛料を使った料理の漂い、イタリア語では無い言葉が時々飛び交う。

 

しかしフンゴはそれらに見向きもしない。ただ『アラブ系』と思わしき人間を探していた。

 

「くそ…この辺はアラブ系じゃあない。アフリカ系だ……何処かにアラブ系の人間が主に住んでいる場所は無いか。」

 

フンゴはしばらく歩き回っていると、その群衆の中を組織のバッジを付けた人間が歩いているのを見つけた。

 

「ん……何だあの幸の薄そうな奴は……ああ、組織の構成員か。何か知ってるかもな。聞いて見るか。」

 

フンゴはその男に近づいた。その男は髪型が蟹の様で、右目の額と喉には弾痕があり、足を少し引き摺っていた。

 

「よお。お前、パッショーネだな。」

 

「あ?何だテメェー?」

 

「俺も組織の一員、フンゴだ。バッジも持っている。ホレ。」

 

「ああ?マジで組織の人間だな……で?そのフンゴとやらが俺に何のようだ?」

 

「俺は今、アラブ系の男を追っている。この辺でアラブ系の人間が集まっている所を知らなねえか?」

 

「俺が今からみかじめ料を取りに行く場所がよォー、丁度「アラブの奴ら」が不法に住んでいる場所でな。何なら来るか?」

 

「本当かッ!?」

 

「ああ。俺も何回か言った事があるからよ。ウッセー言葉で喋る砂漠の奴らが何人もいたぜ。」

 

丁度その時、フンゴの携帯が鳴った。

 

「pronto(プロント)。ああ、ビアンコか。ターゲットの潜伏場所らしき情報を入手したぞ。」

 

「本当か?」

 

「これから向かう所だ。ターゲットを確認次第連絡を取る。」

 

「分かった。ターゲットを確認次第コンディメン、もしくは俺を呼べ。現場に着いたら連絡をくれ。……「一人で戦う」なよ。昔のお前と今のお前は違うぞ。」

 

「……分かっている。」

 

そう言うとフンゴは電話を切った。その顔は何処か寂しげであった。

 

「ああ、すまんな。早速だが案内してくれ…ええっと、あんたの名前は?」

 

「俺の名前はサーレーだ。じゃあさっそく行こう。」

 

 

移動を開始したが、サーレーは足を引き摺っている為、歩幅に差が出ている。

 

「大丈夫か?脚でも挫いたんじゃあないか?」

 

「……ほんの数ヶ月前に脚を撃たれちまってな。まだ少し痛ェーんだ。」

 

「へえ。」

 

「……オイオイ、誰に撃たれたとかキョーミねーのかよ?」

 

「銃で撃った撃たれた何か子供の時から聞きまくってるからな。今も昔も状況は何一つ変わってねー。」

 

「ほォー。じゃあ俺がパッショーネのナンバー2に撃たれたって言っても信じねーか?」

 

「信じられねーな。」

 

「いやマジだってッ!!」

 

「全然興味ないね。誰これに撃たれたとか俺はガンマンじゃ無いからどうでもいい。」

 

「チッ、面白くねーな。」

 

「ンな事よりまだか?」

 

「もうすぐだ。訳分かんねェー象形文字だらけの建物に奴らはいる。」

 

「それってアレか?」

 

フンゴの指差した方向には、古くて黒い外壁の建物があった。外壁にはいくつものヒエログラフや象形文字の落書きが書かれていた。

 

耳を澄ますと確かにイタリア語でも英語でも無い言語がヒソヒソと聞こえた。

 

 

「ああ、ここがその場所だ。じゃあ俺は先に入ってるからよォー。」

 

そう言うと脚を引き摺りながらサーレーはドアを開けて先に入っていった。

 

フンゴは携帯を取り出すと、コンディメンに電話を掛けた。

 

「pronto(プロント)、ああ!!フンゴか?今何処に居るよ?」

 

「外国人街の東の方だ。その近辺にいてくれ。」

 

「了解了解。」

 

携帯電話を切ると、フンゴは建物を方へ歩み寄っていった。




フンゴは仕事の際は物凄く厳格です。

ただしスタンドの都合上や本人の性格により、仲間と連携するのが少し苦手です。


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歩く姿はまるで…その②

建物の内部は不法滞在者が多数住んでいる様で、廊下にゴミ袋が捨てられ、壁や扉は落書きだらけであった。

 

「汚ねえなぁ。その辺の道端の方が綺麗だぞ。」

 

そう言いつつも、フンゴは荒々しくゴミ袋を踏んだ。ゴミ袋からは不愉快な匂いを放つ液体が飛び散った。

 

「うげげ!!汚ねえな…こんな場所なのかよ…」

 

「別にどうってことねェーだろ。ホレ、お前もさっさと来いよ。」

 

「こんなクソみてーな場所に取り立てしなくてもいい様な地位に尽きてェーなー。」

 

サーレーとフンゴはゴミを踏み潰し、蹴り飛ばしながら建物に入っていった。

 

 

二人はしばらく進んで行った。やがて二階に上がる階段が見えた。階段には余りゴミは無く、程よくだが掃除されている様だった。

 

「じゃあな。大家は二階に居るからよ。聞きたい事あったら二階に来い。」

 

「ああ、一階に何もなかったら二階に行く。」

 

サーレーは建物の二階に上がって行った。フンゴはゴミを荒々しく踏み潰し、蹴散らしながら自分の近くの扉を叩いた。

 

「おい、すまねえがここを開けろ。少し聞きたい事がある。」

 

そう言ったが、ドアの向こう側からは何も聞えなかった。最初から誰も居ないような静けさが辺りを包んでいた。

 

「おい、聞いてンのかッ!?ここを」

 

そう言おうとした時、ドアを叩こうとした手が思わず止まった。

 

「静だ…静かすぎる…」

 

先程、建物からは少なからず数十人が話しているような声や生活音がしたが、今ではその騒がしさは無い。

 

フンゴは扉のノブを少し捻った。鍵は掛かってないらしく、簡単に開いた。開いた扉の向こうは少々散らかり、何かしらのスパイスの香りがうっすらと漂っていた。

 

「……ここが辺りのようだな……。」

 

フンゴは当たりを警戒しながら部屋の中へ進んでいった。部屋は広さ的には四畳ほどの広さで、壊れた机や倒れた椅子、バラバラになった本棚が存在していた。

 

「なんだこれは……」

 

フンゴは辺りを見渡した。窓は破壊されておらず、床には先程まで部屋の十人が食事を取っていたのか、泥の様になった食べ物と粉々に成ったガラス製品、ここではコップの破片が散らばっていた。

 

「クソ、どうやら「敵」はここにいるみたいだ。ビアンコに連絡を……」

 

そして携帯を取り出そうとした時、自分を覆う影がぬっと現われた。静かに。死神の様に。

 

急いで振り返ったフンゴは見た物は映画やフィクションなんかで見る死神よりもさらに恐ろしく、不気味なものだった。

 

自分と同じ身長ほどで、人型、衣服を着ており、耳や首には装飾品を身に付けていた。

 

しかしその顔や腕は黄土色で、目は大きく窪み、そこにはあるはずの眼球は存在しない。

 

腕も皮膚が張り付いている様な状態でおおよそこの世の者とは思えなかった。

 

それは俗に言うリビングデッド、ミイラがフンゴの目の前に立っていた。

 

「なッ!?何だコイツはッ!?人形か!?」

 

フンゴがそう言った途端、ミイラは拳を振り上げた。

 

「まずい!!奴の攻撃がッ!!」

 

フンゴは、陶磁器のような太い、腕、つまり彼のスタンドの腕だけを出現させ、ミイラの攻撃を防御する耐性を取った。

 

ミイラの鋭い一撃は強烈で防御した状態でも、フンゴは大きく吹き飛ばされてしまった。

 

「うごォっ!!」

 

フンゴは壁に激突した。近くにあったボトルサーバーや壊れた本棚が彼の周りに倒れる。

 

「ぐっ!がっ!糞!!なんだアレはッ!!」

 

ミイラはのっそりと、両腕をだらんと垂れ下げながら、フンゴに近づいて来た。

 

(糞ッ!!大体分かってきたぜ…あの映画の世界からひょこりでてきた『ミイラ』みたいなのを操るスタンドってので間違いねえと思うが……スタンド使いはここに居る事は間違いねえ…ビアンコ達に連絡を…!!)

 

フンゴは胸元の携帯を取り出した。しかし携帯は大きな穴が開いており、とても使えるような代物ではなかった。

 

(ツイてねえ…まったく…!!昔からこんなんばっかだぜチクショウ……!!)

 

そうこれからの事を考えている間に、再びミイラは拳を振り上げると、乱暴に振り落とした。

 

「ガードッ!!間に合うかッ!?」

 

再びスタンドの腕でガードの構えを取った。しかしミイラは突如、不自然な行動を取った。

 

フンゴが壁に激突し、倒れたボトルサーバーを攻撃した。ボトルサーバーは破壊され、当たりに水が撒き散らされる。

 

「外したッ!?いや違うッ!!フェイントかッ!?もしくは目潰し…!!」

 

だがミイラは突如、向きを帰ると、壁や床を攻撃し始めた。コンクリートの壁や床がいとも簡単に破壊され、砕けた破片が当たりの家具に深く食い込んでいるのが破壊力の強さを物語っていた。

 

ひとしきり当たりを破壊しつくすと、砕けた壁や床の破片を拾うと、ぺチャぺチャとキャンディーを舐めるかのように口に含み、音を舐め始めた。

 

(コイツは……何をしてるんだ…?一心不乱に壁や床を…最初にボトルサーバーを破壊して……まて……奴が破壊しているのは……コイツ…!!もしかして……!!)

 

ひとしきり満足したのか、ミイラはクルッとフンゴの方へ顔を向けた。ダラしなく開いた口からは壁や床の破片がこぼれ出ていた。

 

「テメェ…お前はオレの能力では倒せないかと思ったかッ!!テメエやテメエを操っている奴に勝つ算段はもう出来たッ!!

 




新年明けましておめでとうございます。
投稿ペースがかなり遅れてしまいましたが、今年もがんばります。


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反撃の生と死(ライブ・デッド)その①

何処かの一室、1人の男が座っている。男の背後には王冠を被り、アンクを手にした異形のものが立っている。

 

男はテレビを見るわけでも、本を読むでもなく、ただ椅子に座っていた。その顔は気難しそうな顔をしており、何か不機嫌な事でも起こったかのようであった。

 

「チッ、気付かれたか。『ミイラの弱点』が。」

 

男は不機嫌そうに呟いた。しかしすぐに薄らな笑みを浮かべた顔になる。

 

「まあいい。今の所、『スタンド使い』は二人、もう1人は今ミイラと戦っている、もう1人は…」

 

男の背後にはサーレーが立っていた。すでにサーレーはスタンドを出していたが、男は逃げる様子も戦う様子も無い。

 

「てめェー、『スタンド使い』だな。どうりで怪しいと思ったぜ。だぁ~れもいやしいねえし、大家の部屋には大家じゃあない奴がいるし、一階からは変な音が鳴ってる。」

 

「……。」

 

男はサーレーの言葉に返信せず、顔も向けていない。

 

「おい、くそやろう!!余裕ブッこいた態度取ってんじゃねえッ!!面と向かえばお前の貧弱なスタンドなんざ相手じゃねえ。」

 

その時、男が懐からナイフを取り出すと、サーレーに向かってナイフを放り投げた。

 

しかしサーレーのスタンド『クラフト・ワーク』はナイフを弾き飛ばした。ナイフはサーレーから2mくらい離れた空中にピタリと『固定』されたように動かなくなった。

 

「へえ。糸で釣ったみたいに固定されているなぁ。それが我等から奪った『矢』で身に付けた能力かね。」

 

「な、何ッ!?何を言ってるッ!!テメエ!!何で矢のことをッ!?」

 

サーレーは思わず二歩ほど後ろに下がる。ナイフも同じ様にサーレーに伴って浮いていたが、突如違和感を感じた。

 

しっかりと『固定』されているはずのナイフがガタガタと揺れ始めていたのだ。それに気付くと同時に、全身に力が入らず、地面に倒れてしまった。

 

「うがあぁ!!な、何が!?うおっ!!」

 

サーレーが腕を見ると、いつの間にか上腕二頭筋までが黄土色になっていた。痛みなどは一切無いが、一切動かす事が出来なかった。

 

「なッ!!何だこりゃああああーーーーーーーーッ!!」

 

騒いでいるサーレーを男は後ろに振り返り、話を始める。

 

「かつて、我が故郷の国は『9栄神』と呼ばれる偉大な神々が存在し、国は大いに繁栄していた。」

 

「な、何の話。」

 

「神々は人の身を通じてその姿や能力を人々に御見せしていた。そして彼らは自らの国が長く繁栄するように『あるもの』を創り出し、人々に渡した。それらは後世の時代に神の力の恩恵を与えさせ、代々国を治めるものを決めさせていた。その力を見せる際、神々は選ばれたものの傍に現われた。後世の人々はその光景を見て、神々の力を『傍に立つもの』をそばに立つものという意味で『スタンド』と呼んだ。」

 

「てっ、てめェー!!いい加減にしろッ!!」

 

クラフトワークの鋭い拳が男に襲い掛かる。しかし男の傍の異形のもの、『スタンド』が両手で受け止める。

 

「話を最後まで聞きたまえ。ええと…そうだ。しかし後世になるに従って『スタンド』の事を人々は忘れていった。忘却は神々ですら止める事はできず、やがて故郷の国は他の国に侵略され、神々が創り出したものも歴史に埋もれてしまった。」

 

男は初めてサーレーの方に振り返る。顔はヌビア人系の顔で、年齢は30歳にちょっぴり届かない程度のだと思われる。

 

「しかし1986年ッ!!何処かのアホガキが矢を掘り出し、両手が右腕の不気味な婆に売り払いッ!!世界中で神々の力を乱用するようになったッ!!この私、9栄神の奴隷の指名は…お前達の組織が持っている我らが9栄神が創り出した『もの』を再び故郷に戻しッ!!我が故郷に9栄神の栄光を取り戻す事だッ!!」

 

「な、なに言ってんだてめっー!!」

 

その時、下の階で大きな音が鳴り響いた。男は再びサーレーに背を向ける。

 

「ほう、奴を倒したか、ゾンビが微動だにしていない。まあ人質はコイツとあのミイラにした奴で話は通せるはず…」

 

その時、ミイラが大きく吹き飛ばされた感覚を男は覚えた。

 

「なっ、なにッ!?」

 

ミイラを通して、彼の脳内に映像が流れた――穴だらけの部屋の内部にスタンドが立っていた。

 

陶磁器の様な体表で下半身が無く、足の変わりにイバラ状の触手が数本生えており、脚の替わりに太い大きな腕で地に脚を付けていた。

 

全身に花のような模様が描かれており、そこから不思議なガスを噴出している。

 

「ほ、本体はッ!?神の御技の像(ビジョン)には本体が居なければ発動するは出来ないはず…くそっ!!攻撃が来る!!」

 

スタンドは片腕であったが、鋭いラッシュを繰り出した。ミイラはある程度はラッシュを裁いていた。

 

「所詮片腕での攻撃か。不思議なスタンド像だが…ミイラだけでもカタを付けれるはず…」

 

その言葉の通りにラッシュを片付けると鋭い拳の一撃を喰らわした。

 

スタント同時にフンゴも吹き飛ばされる。口からは血を吐いていた。

 

「フフフ…さあ、ミイラよ。止めを」

 

そういい始めた途端、男を激しい倦怠感と立ちくらみが起こった。思わず椅子に座ってしまった。

 

「な、なにが…あの野郎…何をしたッ!!」

 

← to be continued



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反撃の生と死(ライブ・デッド)その②

「ハアーハアーどうやら…解除したらしいな…ハアーハアー」

 

フンゴの目の前には先程までミイラだった男を見下ろしていた。男は長い髪を後ろに巻いており、イガだらけの服を着ていた。そして胸元にはパッショーネのバッジを付けていた。

 

「どうやら無事みてーだな、おい、起きろ。おい。」

 

先程までミイラだった男の頬を二、三回叩く。男は目を覚ました。

 

「お、おめェーは?お、おれは確か…」

 

「お前はスタンドに支配されてたんだよ。」

 

「そ、そうだ!!あの九栄神の奴隷とか言う奴だッ!!あいつが突然商店に現われて…」

 

「九栄神の奴隷?それが敵の名前か?」

 

「ああッ!!奴は「矢」を知ってるんだよッ!!」

 

フンゴはその言葉に思わず戸惑いを受けた。ポルポの居る刑務所に「試験」を受けに行き、自分の胸元に突き刺された「矢」。まさかその「矢」?

 

「矢ってのはあの…」

 

「ああ…オレも、恐らくはお前も突き刺された「矢」だ。あの野郎はそれを取り戻す為に俺達を攻撃したんだ。」

 

「そうか。今から俺の仲間に連絡しろ。ここに電話番号が書かれている。ここは俺達がどうにかするからさっさと行けッ!!」

 

フンゴは走り書きされたメモを男に渡した。そこには電話番号が書かれていた。

 

「速く行けッ!!今スタンド使いは俺らのことが恐らくは見えていない。今しかチャンスはね。」

 

そう言うと、男の体が突如コンドームの様にペラペラになった。男の後ろには手に短いレイピアを手にしたスタンドが立っていた。

 

「あとはまかしたッ!!」

 

そう言うと破壊された部屋の隙間に消えていった。

 

「あれがアイツのスタンド能力か……人質を取るには最適のスタンドだな。」

 

そう呟いた途端、上階から多数の人々が歩き回る音がした。

 

「行くか。」

 

そう言うとフンゴは長い腕を脚代わりに使って歩くスタンドと共に階段を歩いていった。

 

二階は誰も居なかったが、内部は大きく装飾が変えられていた。壁には松明が掲げられ、奇妙な絵柄で彫られた絵が存在していた。

 

床にはサソリやスカラベが這いまわっており、座った姿勢の石像も立てられている。

 

「不気味なところだな。」

 

フンゴはそう言っただけで顔色一つ変えずに進んで行く。フンゴが進むに連れて、火が激しく燃える。

 

ある程度進んだ時、突如として壁が割れると、多量のミイラが飛び出してきた。

 

「ライブ・デッドッ!!」

 

フンゴのスタンドが片腕だけを上げると、ミイラを薙ぎ倒した。吹き飛ばされたミイラは壁や床に投げ出され、窓から外へ飛び出していったものも居た。

 

「大人数は能力でどうにかするんだがな……やっぱり能力にエネルギーを使ってるからな…スタンドだけで戦うのはちと骨が折れるな…」

 

壁から這い出るようにしてどんどんミイラが現われ、フンゴを取り囲んで行く。ライブ・デッドの格闘能力では徐々に対処しきれなくなっていた。

 

(スタンドのパワー全快のだ。何故ミイラがどんどん湧いてくる?敵のスタンド能力がまったく衰えていないのか?それとも…)

 

そのような考えが起きた瞬間、強烈な死の気配を漂わせる集団の中を凄みを感じるほどの生の気配を漂わせる存在があった。

 

(ミイラに紛れて俺を直接叩くつもりかッ…!!なら俺も『直』で喰らわせてやるッ!!)

 

「そこだーーーーーーーーーーーッ!!」

 

ライブ・デッドはミイラの一団を吹き飛ばすと太い腕で生の気配の正体をはっきり掴んだ。ミイラなどとは違い、はっきりとした温かみを感じた。

 

「掴んだッ!!くらえッ!!『ライブ・デッド!』」

 

ライブ・デッドで掴んだ敵を引きずり出した。しかしその顔はッ!!

 

 

「ま、待てッ!!敵は俺じゃないッ!!お前の後ろだぁーーーーーーーーッ!!!」

 

先に二階に上がったサーレーであったッ!!能力でミイラにされていたのか、腕の先や顔の一部はまだミイラの様にしわしわになっていたッ!!

 

「何ッ!?後ろ!?」

 

フンゴが振り向くと振り上げた拳をこちらに向けたスタンドが存在していた。その後ろには本体のエジプト人、恐らくミイラにされていた男が言っていたが立っていた。

 

「ここだ。」

 

ライブ・デッドはサーレーを掴んでいた為、ガードが送れた。フンゴはスタンドのパンチをまともに受け、吹き飛ばされてしまった。

 

「解除したなッ!!『クラフト・ワーク』ッ!!」

 

クラフトワークの鋭い拳が九栄神の奴隷の頭部を捕らえようとしたが

 

「まだお前には使い道がある。戻ってもらおう。」

 

そう言うと、サーレーの手足の先から再びミイラ化が進行して行き、クラフトワークは薄くなり、九栄神の奴隷のスタンドの頭部をすり抜け。消えてしまった。

 

しかし完全にはミイラ化しておらず、膝から地面に倒れてしまった。

 

九栄神の奴隷もフンゴのスタンド能力のせいかふらふらとした足取りで吹き飛ばされたフンゴの方へ進んで行った。

 

「乾燥には強い体質だと自負していたが……そろそろ厳しくなってきた……脱水症状を引き起こすスタンド……始末せねば……!!」

 

九栄神の奴隷は多数の乾燥した生ける死の軍団を引き連れ、フンゴの方へ向かって行った。

 




スタンド紹介


スタンド名-ライブ・デッド

本体-フンゴ

破壊力-B スピード-E(近接格闘はB) 射程距離-B(200m)
持続力-A 精密動作-E 成長性-C

能力-生物や物体を無差別に乾燥させる能力。
   乾燥化を防ぐには条件がある。  


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反撃の生と死(ライブ・デッド)その③

「くそおおおおおおおおおおおおお!!俺もあいつもやられちまう…!!頼みの綱はあいつしかいねえ…だが…」

 

サーレーはどうにか動いて九栄神の奴隷を倒そうとしたが、手足は乾燥し棒の様になっていた為、這い回るようにして九栄神の奴隷を追った。

 

するとサーレーは何かを見た。その顔は生き生きとした顔付きになる。

 

「敵のスタンド能力の術中に嵌った時はマジに焦ったが…反撃の手段を手に入れたぜ…ヤル気と希望がムンムン湧いてくるぜ…」

 

 

「くそ…左腕に罅が入った程度か…あんまり破壊力は無い様だな…」

 

フンゴは吹き飛ばされたが、すぐさま起き上がり、反撃に移ろうとしたが…

 

「?」

 

攻撃を受けた左腕に違和感を感じた。何となく動かしにくいのだ。正確に言えばある地点を境に力が入らない。

 

フンゴはすぐさま左腕の袖を上げた。そこには…

 

「なんだ……これはッ!!」

 

フンゴの左腕は…黄土色に変色していたのだッ!!皮膚は荒野の様に水分を失い、筋肉が衰退して行き、脂肪が汗腺から蒸発して行くのをフンゴは感じたッ!!

 

「こ…これは…奴の「スタンド能力」か…!!まさか俺も…!!」

 

その時、初めて部屋の内部を鮮明に確認した。そこは広さはさほど広くはないが、部屋に付けられた棚という棚には不思議な置物が置かれていた。

 

顔が猫になった木で出来た置物であった。そしてよく聞くと…

 

ナァー ナァー ナァーと掠れた音が聞える。

 

「何か居るッ!!『ライブデッド』ッ!!」

 

自由に動くライブ・デッドの右腕でその置物を破壊した。そこには体が墨の様になった動物の「ミイラ」が掠れた声で鳴いていた。

 

「これは……猫の『ミイラ』ッ!!まさかッ!!」

 

そう言うと置物が一斉に弾ける様に壊れると、多量の猫のミイラがフンゴに飛び掛った。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

巨大な腕で猫のミイラ達を倒そうとしたが、片腕な上に素早く動く猫のミイラをすべて対処出来ずにいた。

 

猫のミイラの鋭い爪がフンゴの脚を切り裂く。血が吹き出て思わず倒れてしまう。

 

「うおおおおおおおおッ!!くそっ!!」

 

フンゴが地面に倒れると同時にミイラ達に手足、そしてスタンドですらも抑えられてしまった。骨と皮のみのはずなのにその力は万力の様にフンゴの手足を抑えて放さない。

 

「ぐッ…ミイラ野郎…!!」

 

するとミイラ達に紛れて声が響く。その声は酷くしゃがれている。

 

「ようやく捕らえたぞ…貴様…我らが神の道具を返してもらう為に貴様には人質になって貰う…」

 

「馬鹿言え。お前の欲しいものは絶対に手に入らない。何故なら俺がお前を殺すからだ。」

 

「…ならば貴様をバラバラに引き裂いてやるだけだ…」

 

ミイラ達はフンゴの両手両足を引っ張り出す。服は音を立てて破れ始め、間接や人体は音を立て始める。普通ならとっくにスタンド能力を解除してもおかしくはないが、フンゴは能力を解除する様子も見せない。

 

やがて右肩から嫌な音が鳴る。フンゴは思わず顔を歪める。だがそれ以上ミイラはフンゴを引っ張らず、それどころかガクガクと震え始めた。

 

「たとえ腕や足を折られようが、スタンドは解除しねえ。そして我慢強いお前にもようやく限界が近づいているようだな…」

 

「き…さま…!!」

 

「限界のはずだろうよ。今この建物内はサハラ砂漠なんて目じゃないくらい湿度はない。そんな状況じゃどうなるか分かるだろう?」

 

「う…がが…」

 

その声に応じてか、ミイラたちが一斉に震え始める。すでに何体かは倒れそうで猫のミイラはすでに動かない。

 

フンゴはミイラに手放されており、肩をスタンドに殴らせ、脱臼を元に戻した。

 

「ほら、「ミイラ」がだんだん倒れてきている…俺の「ミイラ化」された左腕も元に戻って来ている。どうした?頭痛、吐き気でもするか?」

 

「うぎぎ…GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

しかしミイラ達が突如動き出すと、再びフンゴを掴み上げ、強力な力で引っ張り出した。

 

「ぐあァ!!」

 

フンゴの手足は徐々に引き裂かれていき、血が滴り落ちてくる。だがミイラ達も綱渡り師のようにフラフラとしている。

 

(この野郎…!!根競べをしようってか…ッ!!)

 

ミイラは体を震わしながらもフンゴの手足を引き千切ろうとする。だがスタンド能力が弱ってるのか、最初ほどのパワーはない。

 

しかしフンゴの肉体を引き裂き、限界が近づいている事は確かで意識がうっすらと和らいでくる。

 

(ぐっ…まだか…まだ解除しねえのかッ…!!意識が…)

 

その時、ミイラの一団が吹き飛ばされた。見ると、足元を芋虫の様に這い回るサーレーのスタンド、クラフトワークがミイラの大群を蹴散らしていた。

 

「まだくたばってないだろうなッ!?ええ!?おい!!」

 

しかしすぐさまサーレーの手足の先が黄土色に変色して行き、スタンドも薄っすらとなって行くがまだ完璧には消えていないようでまだミイラ達を吹き飛ばしていた。

 

「往生際の悪い…ゴミ野郎がァーーーーーーーーーーー!!!」

 

もうとっくに限界を迎えているはずだが、サーレーを一瞬で顔の近くまでミイラ化してしまった。




サーレーが乾燥状態に耐えれているのは敵のスタンド能力の影響下にあるからです。


スタンド名-ウォーク・ライク・エジプシャン
本体-九栄神の奴隷(ホフソン)

破壊力-C スピード-C 射程距離-E
持続力-A 精密動作性-D 成長性-E

能力-本体もしくはスタンド触れた生物をミイラにして操る能力
   一度触れられると元に戻ったりミイラ化されるのは本体の意思で自由自在。
   ミイラ化されると乾燥に強くなり、水分を含むものを優先的に攻撃する。


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反撃の生と死(ライブ・デッド)その④

もう一発、九栄神の奴隷のスタンドの鋭い拳がサーレーに振り下ろされる。サーレーは忽ちハンパな状態ではない完全なミイラになってしまった。

 

「ハァー、ハァー、残りはお前だけだ……僕達よッ…!!!そいつをオシリス神のように八つ裂きにしろォォーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

そう叫んだ一瞬ッ!!その一瞬がフンゴ達を勝利へと導き、九栄神の奴隷が敗北へと導いたッ!!

 

何処からとも無く、まるでナチスのV-1ロケットの様に、一直線にッ!!ナイフが飛んで来ると、グサリと九栄神の奴隷の背中に深々と突き刺さったッ!!

 

「な……かはっ!!」

 

フンゴは力の弱まったミイラをライブ・デッドで吹き飛ばすと、九栄神の奴隷の腕を掴み、壁に叩きつけた。

 

「ぐっ…、う、うわああああああああああああああああ!!!」

 

九栄神の奴隷の腕はミイラになっていた。彼の能力ではなく、ライブ・デッドのスタンド能力で腕から一切の水分を奪われたのであった。もうピクリとも動かない。

 

そしてフンゴは九栄神の奴隷の首をライブ・デッドで掴み、さらに壁に叩きつけた。叩きつけられた衝撃は腕は枯れ枝の様に折れてしまった。

 

「ハァーハァー、腕はへし折ってやったぜ…もっとも、俺のスタンド能力でもうミイラは増やす事はできねーようだな…」

 

「ぐっ、く…が…」

 

「さあ、テメエが知ってる事、洗いざらい吐いて貰おうか。」

 

少しライブ・デッドに力を込める。その力は弱った九栄神の奴隷を痛めつけるには十分tらしく口や鼻から血を吐き出す。

 

(ここに助けも始末にも来ない時点でコイツが下っ端なのは分かるが…何か情報をでも持って帰らないと脱臼損はゴメンだ。)

 

そう考えていると九栄神の奴隷は咳き込みながら何かを呟いていた。

 

「ガキに話しかけるみたいにゆっくりと大きな声で話せ。」

 

すると生気の無くなった目がかっと開くと、警報機の様に大きな声で叫んだ。

 

「貴様達に話すことは一つもないッ!!やれッ!!!僕共ッ!!」

 

火事場の馬鹿力と言うべきか、この建物中のミイラが壁や天井を砕いて一気にフンゴに向かって津波の様に襲い掛かってきた。

 

しかしそのような状況でもフンゴはアメコミのヒーローの様に眉一つ動かさない。

 

「最後の悪あがきするくらいの根性はあるってか。だがな……」

 

そう言った途端、九栄神の奴隷は一瞬の内に体中の水分を蒸発させられた。と同時にミイラ達の進撃もドミノの様に倒れると動かなくなってしまった。

 

「か………は。」

 

そう言うと九栄神の奴隷はミイラになった。しかしそれは単なる死体で彼には二度と復活の機会は訪れないであろう。ライブ・デッドはその死体を放り投げるとすぐに砕け散ってしまった。

 

「終わったか…。」

 

ふと当たりを見渡せばそこにはミイラは一つも無く、不法入国してきたエジプト系の人間達とサーレーが転がっているだけであった。

 

「おい、起きてるか?」

 

その問いにサーレーは頭を抑えながら立ち上がり、周りを見渡し、元に戻った人間達や枯れ木の様になってしまった九栄神の奴隷の姿を見て、どうやら状況に気付いたようだ。

 

「勝ったのか。」

 

「ああ、見てみろよ。オシリス神の居る冥府に送ってやったからアイツも本望だろうな。」

 

「へへへ、こりゃすげえや。」

 

やがてサーレーの相棒、ズッケェロが呼んだビアンコと数名の組織の人間が駆けつけ、新たに創設された医療チームによって二人は治療を受けた。

 

 

「フンゴ」―スタンド名 ライブ・デッド――右腕脱臼

後に医療チームにより回復

 

「サーレー」―スタンド名 クラフトワーク――中度の脱水症状及び負傷

後に医療チームにより回復

 

「九栄神の奴隷」―スタンド名 ウォーク・ライク・エジプシャン――死亡

 

 

フンゴが九栄神の奴隷を倒した丁度その時、ビルの上空を何かが浮遊していた。それはビアンコがかつて遭遇した謎のスタンドであった。

 

そのレンズで一部始終を確認するとレンズを隠し、何処かへゆっくりと飛び去って行ってしまった。

 

 

何処かの屋上

 

そこには一人の男がケバブサンドを食べながら当たりを見渡していた。やがて彼の元へ衛星のスタンドが戻ってくる。

 

それは彼の手の平に降り立つと消えて行ってしまった。そして男は何かを分かったかのように頷き、呟く。

 

???「せっかく与える情報を与えてやったのに負けやがって。まああいつはやるべきことはやってくれたよ。だがあいつ……自分で九栄神の奴隷とかいっときながら俺達の持っているのに反応しなかったな。所詮その程度か。さすがにしばらくは「増やす」のはやめようか。」

 

そう吐き捨てると、男は屋上から去っていった。手にした数百年は立っていそうな弓と矢を持って……

 

to be continued……




リアルが忙しかったので遅れました。すいません。


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危険なふたりがやってくる!! その①

この日、ビアンコは所謂「くだらない」依頼を受けていた。

 

幹部の一人が自分の資金、と言っても恐らくだが組織には隠して集めた「隠し財産」を盗まれたので取り戻し、盗んだ奴を「確保」する…そんな任務であった。

 

アビディータ関連の依頼は警察経由で来るのだが、組織関連の仕事はパソコンから電子メールで来る。ビアンコはその電子メールを読むと準備を始めた。

 

電子メールを見てから数分後、別の電子メールが来ていた。送信者はグイード・ミスタであった。

 

そこには短い文で「新しいメンバーを紹介する。ケイティ・ライドっていうレストランに来い。」と書かれていた。

 

「珍しいな。ミスタさんが直に連絡を寄越すなんて。」

 

そうビアンコが呟くと隠し財産を隠した周辺の地図などを片すと、レストランへ向かって行った。

 

 

ケイティ・ライド

ネアポリス近くの観光客よりは地元の人間の方が多く利用するやや大きめのレストランで、内部はやや薄暗いが店内を穏やかな音楽が流れている。

 

ミスタはそんなレストランの一つのテーブルに座っていた。テーブルの傍には彼以外に三人の男が座っており、そばには二人の見張りが立っている。

 

一人の男はミスタと座っている二人の顔色をチラチラと見ており、その様はサーカスの調教師の様に、特に座っている二人を注意深く見ていた。

 

さてその二人だが……

 

一人はやや細めの体格の男、名前はポローと言い、目に付く金髪で顔付きは常に口角が上がっており、幹部の前だと言うのに使用済みの紙ナプキンを少し千切り何かを弄っている。

 

もう1人は冷蔵庫のような大柄の体格にイカ墨の様に真っ黒な髪、そして鷹の様に鋭い目をしているヴィーノという男だったそしてもう数十分も立つのに一言も言葉を発していない。

 

ミスタはそんな二人から片時も目を離さなかった。何故ならこの二人、つい最近まで封印されていたのだからだ。

 

(畜生……こいつらから『目』が離せねえ……)

 

今持ってきている銃は卸し立てでどうにも二人の前では持ち前の射撃力が100%発揮できるか自身がどうしても持てなかった。

 

(報告書を読んで思わずブルッちまってる。さっさと忘れちまわねえとな。)

 

ミスタが貰った二人の行動に関する報告書は一度ジョルノ・ジョバァーナの目にも留まり、かつての激戦を繰り広げた二人ですらも身震いするものであった。

 

 

かつてパッショーネと争った対立組織があった。抗争が始まってすぐに組織は瓦解寸前だったが、組織のボスを含め側近連中はまだまだ生存していた。

 

当時二人は情報操作チームに所属しており、二人の任務はその組織のボスや側近連中の居場所を掴み、組織に報告する事であった。

 

だが当時から情報操作チームきっての優秀な人材と言われた二人は組織のボスを捕らえる事に成功した。

 

すぐにパッショーネに報告するとすぐに返答が来た。内容は「側近連中の居場所を吐かせる事。」

 

その後しばらく連絡を絶った二人がチームに側近連中の居場所を届けに来たのはわずか三日後であった。二人と共に連れられて来た組織のボスの姿に情報チームは思わず絶句する。

 

恰幅の良かった体格は枯れ枝の様にガリガリになっており、髪の毛は赤黒くガビガビになっており、歯はボロボロ、舌はズタズタになっており、すっかり廃人と化していた。

 

何が起こったのか。チームの連中はすぐさま拷問に使った郊外の廃墟のに向かい、残ったメンバーは組織のボスの脳内の記憶を吸い出した。

 

その記憶を見たメンバーは思わず卒倒し、拷問に使われた廃墟に向かったメンバーも憔悴しきった顔で帰ってきた。

 

吸い出された記憶によると二人は捕らえたボスと共にその家族、妻と娘と息子を捕らえていた。

 

やがて組織の命令を受け取ると、二人はまず娘と息子をボスと妻の目の前に引きずり出した。

 

 

ここまで報告書を手に読んでいたミスタであったが、手から嫌な汗が滲んでいた。どうしても次のページに進みたくない。指が動かない。

 

前にこの報告書を読んだ者もミスタと同じ様に感じたようで報告書がシワシワになっていた。だが意を決して指を動かし、次のページをめくった。



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危険なふたりがやってくる!! その②

娘と息子を二人はバラバラに切断し、破片を敵対組織のボスと彼の妻の前に乱暴に放り投げた。ボスの妻はその光景に涙と叫び声を上げ、敵対組織のボスも顔を大きく歪めた。

 

するとポローが『娘だった破片』を軽く踏みつける。するとバラバラにされ二人の前に一番近くに放り投げられていた娘の首から音が出た。

 

「痛い!!」と。それをきっかけに娘の首から声がダムから放水された水の様に吐き出された。

 

それに共鳴するかのように息子の首からも叫びが聞える。親に助けを求める声が廃墟内に響いていた。

 

「痛い、助けてママ、助けてパパ、腕が無いよ、足が千切れちゃった」肉片と化した二人の子供は壊れたラジオの様に同じ事を叫んだ。

 

ポローとヴィーロはスタンド能力を使って一番「長く生きさせる」ように体をバラバラに刻んだのだ。娘と息子の破片は数本の神経で繋がれており、数分、数十分は生きながえる様にされていたのだ。

 

やがて叫びが小さくなると、破片は冷たくなっており、ボスは歯がボロボロになり、自決を図ったのか舌が血だらけで、妻の方は悪魔でも見たかのような顔で絶命していた。

 

結局最後はポローのスタンドから無理やり脳内の情報を奪い、ボスの身柄はパッショーネに送られた後、始末された。

 

事の顛末を聞いたパッショーネのボスはすぐさま二人を抹殺対象に上げた。自分の情報を探り、ましてやその性質はチョコラータやセッコにも匹敵する危険な性格の二人を放って置くはずが無かった。

 

だが情報チームのリーダーであるオーリオが情報収集に置いて優秀な二人の能力が失われるのを防ぐため、命がけの直談判を強行した。

 

それにより二人はどうにか命は助かったが、ボス親衛隊に監視と言う形で配属され、その後はその能力を使い内部調査を担当していたらしい。

 

 

報告書の内容を思い出したミスタは思わずビクッと震える。それを誤魔化すようにワインを一杯飲み干した。

 

すると千切った敷き紙で折り紙を完成させたポローが静かに呟いた。

 

「持ってるハジキは卸し立てですか?」

 

ミスタは思わずドキリとし、傍に座っていたオーリオはポローを嗜める。だがポローはお構いも無しに話を続ける。

 

「だって無意識かどうか知りませんがズボン付近を触ったり見たりしてますし。そんなに俺らの事を警戒しないでくださいよ。」

 

その発言にミスタは吐き捨てる様に言葉を返した。

 

「そうだよ。おまえらの額に三発ずつぶち込めるかワカンネーからな。」

 

幹部であるミスタの発言を聞き、ポローはまじまじとミスタの顔を見ると溜息を付いた。

 

「あァ~、だから俺達は仕事以外じゃ聖ペテロの様に穏やかなのに。報告書でも書かれてるでしょ?仕事以外じゃ他人を攻撃したり傷つけるのは実にくだらないことですからね。」

 

報告書に書かれた事をしておきながらしゃあしゃあと述べるポローに思わず銃に手が伸びるが、その時部屋の扉が開き、ビアンコが入って来た。

 

「どうもミスタさん、わざわざ呼んでくれるとは何かあったのですか?」

 

少し深刻な顔付きをしたビアンコに、ミスタも同じ様な顔をして告げる。

 

「いや、戦闘チームに新しいメンバーを加えることになった。そこの二人だ。」

 

ビアンコが二人を見た。情報チームのスタンドは大体が射程距離が長く、破壊力が小さいと聞いていたが幹部から直々に加えられると言う事はそれなりの実力があるんだろうと思った。

 

「分かりました。丁度今から仕事が入ったのでこの二人の実力を試させます。早く来い。」

 

「あいよ、新しいリーダー。」

 

そう言われると先程までとは打って変わって二人は立ち上がるとビアンコと共に付いて行き、レストランを後にした。

 

 

ビアンコが三人で歩いていると、脳内に声が突如響く。ふと周りを見渡すと自分の腕に糸が付いており、先程まで居たレストランに続いていた。

 

(確かオーリオのスタンド能力だったか?それにしてもオレになんの…)

 

そう思っていると糸を通じて脳内に声が響いた。果たしてその声はオーリオの声であった。

 

(君があの二人のリーダーになる男だね。)

 

(ああ、そうだが。)

 

(一つ言い忘れたことがある。ミスタさんからの命令だ。)

 

(?)

 

(奴らが使えないと思ったらすぐさま殺す事。以上だ。)

 

目の前をスタスタと歩く二人を見た瞬間、スタンドの糸はレストランに戻って行ってしまった。

 

「どうかしたかい?」

 

暫く立ち止まっているとポローがビアンコに話しかけてきた。改めて顔を見れば親しみを湧く顔付きをしていた。

 

「何でもねえよ。」

 

「そうかい。」

 

そう言うとまた前を歩き出した。仕事の出来る奴や愛想のいい奴も命令されれば殺さないといけない。

 

ギャングにとっての常識を見せ付けられてビアンコは思わず呟いた。

 

「やれやれだぜ。」



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金!金!金! その①

「ここがその『隠し財産』を埋めた場所だ。」ビアンコは二人に指令の内容を伝えながらアポリスの比較的富裕層の多い地域の工事現場に居る。

 

イラつく声で仕事を依頼した幹部の声が脳に嫌に響く。それによると組織が買い取った土地にその隠し財産は埋められていたらしい。

 

事の始まりは数日前、工事現場が激しく破壊されているとの一報があった。現場は建築機材は薙ぎ倒され、地面は爆撃でもあったかのように大きな穴が幾つも開いており、そして隠し財産を入れてたらしい大きな金庫が“まるごと”奪われていた。

 

『隠し財産』は組織内でもどちらかと言うと黒に近いグレーゾーン、迂闊に自分や他人の息のかかったチームにも漏らしたくない、情報チームなどは論外、ボスの粛清に合うかもしれない。

 

そこで名目上、グイード・ミスタの配下だが実質どのチームの仕事を請け負い、深く追求しない自分ら戦闘チームに白羽の矢が立った。指令の内容は隠し財産の“子鼠”の確保。

 

殺しをしないがかなり難しいだろうな。ビアンコは呟く。自分のスタンドは戦闘に特化し、捕まえるとしても五体不満足だろう。そして目の前の二人は“子鼠”を獰猛に食い殺すタカだ。手綱を旨く引けるか。それがビアンコの不安要素の一つだ。

 

 

「それで、リーダー、何すりゃいい。」ポローはビアンコの顔を見て話しかける。「好きにしろ。」とは言おうとしたが考えてみればこいつらのスタンド能力を知らない。

 

「お前らのスタンド能力を見せてみろ。」かつてリゾット・ネエロが新たにチームに加入した人間と仕事する時と同じ様に言った。

 

かつて暗殺チームのアジトに出入りしていた時に非番だったリゾット・ネエロと個性的なメンバー達との出会った頃の話をしていた。

 

波乱万丈だった頃をどう乗り切ったかという話に入り、ビアンコは血生臭く、雄ライオン同士の様な争いが起こったのだろうと思った。だがリゾットは一言「自分と相手のスタンドを互いに見せた。」とだけ言った。

 

その時はイマイチ納得が行かなかったが、自分のチームで新入りが入った時もチーム全員が同じ様な事をした時に理由は分からなかったが当時の所属チームに新入りが入った時に同じ様な事をした。

 

その時、何とも言えないが新入りとの間に確固たる“繋がり”を、大河を挟んだ向こう岸の相手と糸電話をしている様なか弱いが同じ仲間である事を感じた。

 

 

「まず俺のを見せる。」そう言うとビアンコは自身のスタンドを発言させ、そこからの地面から鉄板をせり上がらせ、自分達の姿を隠した。

 

「工事現場の仮囲いだ。こんなとこで不審者がられるのもメーワクだからな。さ、つぎはお前らのスタンドを見せろ。」

 

そう言うとポローは鉄板を興味深そうに触った。そしてニヤつきながらビアンコの方に顔を向けた。

 

「へえ、遠隔操作のスタンドの割には強力だな。俺とヴィーロでもこの距離じゃ肉変にされちまうよ。だがまず相棒のスタンドを見てやってくれよ。俺のスタンドは後じゃないと意味が無い。」

 

そう言うと傍に立っていたヴィーノが前に出るとスタンドを発言させた。それはサーチライトの様な目に凶暴な牙を生やし、上半身は機械の様だが下半身はズダボロの布に覆われ、そこから見える足は血の通った生物の足をしている。

 

「近距離パワー型か。能力は何だ?」その質問にヴィーノのスタンドが素早く腕を動かすとビアンコの服から何かを摘んだ。それは彼自身が付いていたのを自覚していないほどの小さな食べカスであった。

 

「スタンド名は確かランナウェイだったっけな。能力は探索(サーチ)だよ。そのスタンドを出している間はハンパじゃない探索能力を出せる。で、その後は」そう言うと今度はポローの背中から何か小さな物が素早く動くとヴィーノのスタンドの掌に移動した。

 

それは原始的な爬虫類の様だが鼻先に小さな機械を乗っけた奇怪なスタンドであった。スタンドは涎を撒き散らしながら小さな食べカスを咀嚼した。

 

食べカスを喰い終わるとポローのスタンドは突如大きな襟巻きを展開させる。しばらく当たりを見渡すとポローが言葉を発した。

 

「リーダーが最近食べたものはボロネーゼだな。へえ自作なんだ。けど少し麺を煮過ぎだね。あとトマトペーストが少し傷んでいるよ。」

 

「凄いな。さすが情報チームに所属していただけある。情報収集に長けてるな。」

 

ビアンコは冷静に判断する。付け加えるようにポローは自分のスタンドを説明した。

 

「スタンド名はイッツマイライフ、能力は証拠を得た時だけだが広範囲の捜査能力、相棒が証拠捜し、俺が広範囲捜査で追い詰める。ちなみに遠隔操作だから破壊力は期待しないでね。」

 

「十分だ。これで俺達はひとつの“共有”を持った。」

 

「“共有”を持つか。いい言葉だね。『一蓮托生』大好きな言葉だ。で、互いのスタンドも見せ合った。こっからどうする?」

 

「それなんだがヴィーノ、お前のスタンド能力を使う。」

 

ヴィーノは頷き、スタンドを発言させ指示を待つ。能動的だなと思いつつビアンコは命令を下した。

 

「ここら一帯の『地面の土』をすべて探索(サーチ)しろ。」




更新遅れてごめんなさい。忙しかった。


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金!金!金! その②

ポロー→鶏
ヴィーノ→安いぶどう酒

酒と肴からコンビを思いつきました。一応ソルベとジェラートも二人と似た様な感じのスタンドを使っていたと想像しています。


「『サーチ』?土なんてサーチしてどうする?」

 

「いいからやれ。」

 

ビアンコの発言を聞いて、ランナウェイは近辺の地面をサーチする。先程は分からなかったがランアウェイは光の波の様なものを出している。どうやらあれが探索能力に役立っているようだった。

 

「なるほどね。『靴』か。それは一番いい。敵が靴を履いてない野生児でもない限り確実に終える訳だ。」

 

ポローもビアンコの考えを理解した。彼についてミスタが自分達に言っていた「創立したのチームを引っ張るだけの力量と器がある奴だ。」の通りだなと心の中で思った。

 

「さすがは情報チームに所属していただけはあるな。察しがいい。工事のしない夜中に破壊活動をした。つまりはそいつは“変装”などをせずにここに筈だ。俺の推測が正しければな。そしてもう一つ。」

 

「もうひとつ?」

 

ビアンコが頷いたと同時に周りをサーチしてきたヴィーノは戻って来た。スタンドの手の中には小さなゴミクズが幾つか存在していた。

 

「これが工事現場では到底出ない様な靴の『靴底』の一部か?」

 

「スーツの切れ端と……革靴やラバーソールの破片……それと普通の工事現場では出ない金属の『破片』…これでいいか?」

 

ビアンコはランナウェイの差し出した金属を手に取る。そして自分のスタンドでその金属を小動物の様に動かした。そして再びランアウェイの手に戻す。

 

「十分だ。ポロー、証拠が揃った。お前の“出番”だ。」

 

そう言うとポローの背中から素早く彼のスタンド、イッツマイライフがランナウェイの腕に素早く這い回る。

 

「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

心から不愉快な感情を湧き上がらせる声を上げながらランナウェイはゴミクズを喰い散らかす。すべてを喰い終わった後、また鮮やかを通り越したケバケバしい襟巻きを開き、当たりを探る。

 

そして素早くその場からシュッと去ってしまい、大通りの方へ出て行ってしまった。

 

「おっとっと、もう見つけたようだね。行こうか。」

 

「ああ。」

 

三人もポローを戦闘に大通りの方へ出て行ってしまった。ある程度三人が進むと鉄の仮囲いはボロボロ風化し、あとには三人の足跡以外、何も残らなかった。

 

 

「スタンドの射程距離はどんなものなんだ?」

 

「せいぜい30mくらいなものかな。一応単体でも戦えない事は無い程度の戦闘力は持っていた様な記憶はあるよ。」

 

「『記憶』?以前の仕事でもスタンド使ってたんじゃあないか?」

 

 

「スタンドの“能力”は使ったが『戦闘』は長らくご無沙汰でね。相棒は“近距離パワー型”だから問題ないが俺はイマイチ自信が無くてね。このチームで活躍できるか少し不安だよ。」

 

当然だな、ビアンコは心の中で呟く。だがこの二人は報告書に書かれている様な遊び半分で小鳥や子猫をイジめてスカッとする様な人間ではではないなと自然にそういう考えを思い浮かんでいた。

 

それのもっと逆…『無害な羊の皮』を被った『狡猾な獣』だ。油断すればすぐさま喉笛を噛み千切り内臓を喰らい尽くす。彼らの言動からはビアンコはそう感じだ。

 

 

薄暗い裏路地を青年は走っていた。荒々しく肩で息をし、殴られた痕跡が多数見られ口の端からは血が出ている。しきりに後ろを確認しながら手には不釣り合いな鞄を抱え込んでいる。

 

鞄には銃創や凹みが見られ、それらの隙間にはぎっちりと万札や装飾品が見られた。普通の人間なら何処かのお高くとまった金持ちから盗んだとでも見るだろう。

 

しかし実際は大きく違うッ!!この『青年』は彼の持つ『能力』によって奇妙かつ血生臭い戦いに巻き込まれてしまったのだッ!!

 

「大丈夫なんだよな…?ハァ…ハァ…おい、おいッ!!」彼は周りに誰も居ないのにまるで誰かに助けを求める様な独り言を喚く。勿論誰も答えない…ハズだった。

 

「大丈夫に決まっているだろう?焦るなよォ……今は逃げる事だけを考えろ…」彼の肩には円柱の頭部にコインが連なった髪の毛を持つ奇妙な小人の様なものが座って青年と会話していた。

 

それはMONEYと掘られた金色の歯をカタカタと鳴らしながら金属音を含んだ声で青年に話し掛けた。

 

「あいつは強過ぎる……俺とお前とじゃ話しにならねェ……」「まったくお前の能力はいつもこうだッ!!今回は特に酷い!!」

 

肩に乗った存在とのおしゃべりに夢中になっていたのか足元のゴミに躓き、転んでしまう。手にした鞄は放り出され路地裏の地面を転がる。

 

「く、くそっ!くそっ!くそっ!」青年が叫んだと同時に青年にとってはこの世で最も聞きたくないであろう革靴の音が路地裏に響き渡る。

 

恐る恐る青年は後ろを振り返る。カツカツと小刻みに革靴を鳴らしてくる男の姿があった。カカシの様に細いが高身長の男が居た。その高さを稼ぐように大きな帽子を被り、手入れされた口ひげを盛んに手で弄っている。そして服には+記号の模様が散りばめられていた。

 

「人は元来、七つの大罪を持つという。聞いているかね?オーロ君?」

 

「けっ、聞いてるぜ。さっきも話してたぜ。」

 

男の質問に青年、オーロは強がりながらも言い返す。だが膝はガクガク震え、歯をガチガチと鳴らしてしまう。男はその様子をみて思わず大きく口を裂けて笑う。

 

「ああ、また一つ天国に送る魂が一つ増えます。増えると言うのはいいことですね!!そう思いませんかッ!?」

 

興奮しながら話す男達の頭上、ビアンコ達は状況を静かに見ていた。

 




スタンド名-『ランナウェイ』

本体ーヴィーノ

破壊力-A スピード-B 射程距離-E
持続力-C 精密動作性-A 成長性-E

能力-光の波を出す事で射程距離分の範囲内で強力かつ精密な『サーチ』を行なう。
サーチされた物体はスタンド及び本体しか認知できないが砂漠の中から指定された砂粒を発見できる程度は可能なようだ。


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金!金!金! その③

「おいおい、何か始まっちまったみたいだぜ。どうするゥ~?」

 

遊園地に連れて行ってもらった子供の様に笑みを浮かべたポローにビアンコは見向きもせずに問いかけた。

 

「金庫の『金属片』があったアジトに残っていた『靴底』はアイツので間違いないか?」

 

「ああ、俺のスタンドも反応している。カカシ見てェな奴が今回が獲物(ターゲット)だ。だがあのスタンド使いのガキはどうする?」

 

イッツマイライフは口からボタボタと涎を垂らしながらサイケデリックな襟巻きを広げて、原始的な目でカカシの様な男を見ている。

 

一方のビアンコは無様に地面に転がりながら虚勢を張るオーロを見る。ターゲットから物取りでもしたのであろうか。チラリと見えたがあのガキもスタンド使いだ。組織の現状を考えると、とっ捕まえて色々聞き出すのが上策だろう。

 

「俺があのノッポ野郎とガキを引き離す。俺はガキを追う。お前らコンビであのノッポを仕留めろ。いいか?」

 

「了解。」とポローは返事をし、ヴィーノは頷きながらランアウェイを出そうとする。だがビアンコを手で制す。

 

「待て。まず俺が先に仕掛ける。お前はアイツを背後から攻撃しろ。あいつのスタンドの正体が分からん内は近距離パワー型のお前のスタンドを無闇にぶつける訳のは愚作だ。」

 

ヴィーノは頷き、鷹のような目でノッポ野郎を見る。ポローはこの光景を見て少し驚いた。酷く受動的な相棒は普段は自分以外の人間の指示は動きはしない。その彼がここまで能動的に動くのだ。相棒もこの男に何かを感じたのだろう。中々すごいじゃあないかと思った。

 

「行くぞ。」そう言いながらビアンコのスタンド、メタルマスターは近くの建物のコンクリートや骨組みから金属を抽出する。

 

メシッ!メシッメシッ!メシッメシッ

 

音を立てながらビアンコの足元は削れ始め、彼の周囲を長さ30センチほどのミサイルの様な鉄のスパイクが出現した。

 

「あのガキとノッポの間にコレを撃ち込む。恐らくガキはノッポとは正反対に逃げる。俺はガキを追う。お前ら二人でアイツを仕留めろ。」

 

「了解…え?」

 

ビアンコの発言にポローは思わずを二度見する。命令内容にではない。今まで自分達を「危険だ」と言い続けた周りとは違い、『完全に自分達に任せた』事に驚いたのだ。

 

「どうした?久し振りの戦闘で勘を取り戻してもらわないと困るからな。」

 

「それはいいけどホントに『俺ら』に任せてもいいのか?もし俺達が敵をブッ殺した後で逃げちまったらどうするつもりだ?」

 

その問い掛けにビアンコは氷の様に冷たく、不気味な目でポローを見た。

 

「その時は世界中どこにいようがどんな手段でも使ってでも追い詰めて息の根を止めてやる。」

 

今まで人に対して恐怖など抱かなかったポローも思わず身震いする。その言葉に嘘偽りは見つけ出せない。

 

(どうやら『マジ』でやるつもりだ。やるといったらやる『覚悟』がある。)

 

一種の『スゴ味』とも言えるものを感じたポローはいつもの笑みを浮かべる。

 

「嘘だよウソ。ノビノビと殺しが出来るなんて良いチームだ。」

 

「そうか。」とビアンコが言ったのを皮切りに二人との間を鉄のスパイクは狙う。そして、

 

ドバッ!ドバッ!ドバッ!

 

発射された複数のスパイクはノッポとオーロとの間にセンターラインの様に突き刺さる。オーロはその隙を見逃さずノッポとは正反対の方向へ逃走した。

 

「やれッ!!」そう言うとビアンコは猟犬の様に屋上を駆け出し、逃げたオーロを追うッ!!一方、残された二人はヴィーノが屋上から飛び降り、降下しながらランナウェイの鋭い右ストレートをノッポに向けて振り下ろす。

 

「ちっ、新手…いや『俺達』の『敵』か……棚からボタモチ、運がいいッ!!」

 

そう言うとノッポの男が両目が×印、異様なほど大きく裂けた口、全身筋骨隆々の人型スタンドが出現する。

 

その拳がランナウェイの拳をガードする。激しいスタンドがぶつかり合う音が響くがスタンド使い以外は聞えない。

 

ノッポのスタンドはガードした腕からランナウェイの手首を掴もうとする。普通ならば素早く手首を引くかもしくは左腕で殴るなどの掴まれるのを阻止するであろう。

 

だがヴィーノは違ったッ!降下中の彼は左腕で壁を掴むと逆にノッポのスタンドの手首をガッシリと掴んだッ!!そして右腕の反撃を受けない内に自分が掴んだ壁にノッポを投げつけたッ!!

 

ノッポはスタンドごと壁に叩きつけられた。この路地裏の両建物はどうやら廃墟で壁はボロボロと崩れる。ヴィーノはすぐさま間合いを取る。

 

そしてすぐ上からイッツマイライフが壁を伝って降りてくる。その喉からは陰惨ではあるがポローの声が響く。

 

「弱点を探ろうぜ。しばらく気絶しているだろう。その隙にコイツの血液から『能力』を探り当てる。少し下がってろ。」

 

その時、ガレキから青白い光が放たれた。正確には元は壁だった破片一つ一つから球状の光がガレキ内部に入って行く。

 

「な、何をしてくる…?」二人はガレキの中に埋まった敵の次の一手を警戒していた。



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