ペルソナ使いinロクアカ (アロンアルファ)
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The new teacher who came over is worthless

見切り発車です。
あと、サブタイトルの英語は文法的におかしいとこがあるかもしれませんが、スルーしてくれると嬉しいです。
…ペルソナ要素が冒頭しかない件について


 気づけば不思議な場所にいた。

 青い部屋、とでも言えばいいだろうか? 床、壁、天井全てが青色に包まれていた。目の前にある椅子や長テーブル、そしてカーテンも例に漏れず。

 

 いつの間にこんな所に来たのだろうか? 

 そんな風に思っていた時、突然声を掛けられる。

 

「ようこそ、我がベルベットルームへ」

 

 いつの間にか目の前に長い鼻の老人? が椅子に座り、長テーブルに肘をついてこちらを見ていた。

 

「ほう、これはまた変わった定めをお持ちの方がいらしたようだ」

 

 変わった定め? というかどちら様だろう? 

 

「申し遅れましたな。私の名はイゴール」

 

 イゴールと名乗った老人が話を続ける。

 

「ここは夢と現実……精神と物質の狭間に存在する場所。私はここの主を務めております」

 

 そして、イゴールは自身の隣に目を向ける。誰もいなかったはずの場所に少女が座っていた。

 

「こちらは、同じくベルベットルームの住人であるフランと申します」

 

「……よろしく」

 

 フランと呼ばれた少女はそれっきり口を閉じてしまった。

 

「まだまだ気難しいところがありますが、大目に見てもらえるとありがたい」

 

 了承の意を込めて頷くとイゴールは嬉しそうに言う。

 

「結構。では、本題の方へ移りましょう」

 

 イゴールは続ける。

 

「本来、ここは何らかの形で契約を結んだ者が訪れる場所。近い将来、貴方にそういう運命が待ち受けているのやも知れませんな」

 

 契約? なんの契約だろう。詐欺かなんかだろうか? 

 

「ご心配召されるな、その時になれば分かるでしょう」

 

 うーん、気になるけど……まあいいや。

 

「ふふ……おっと、お目覚めの時間が来たようですな」

 

 イゴールがそう言うと、次第に自身の視界がぼやけ始める。

 

「さて、詳しい話は追々に致しましょう」

 

 意識が遠のいていく……

 

「ではその時まで、ごきげんよう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん」

 

 瞼の先が眩しい。朝になっているようだ。

 

「んー……眠い」

 

 まだ頭がぼーっとする。

 なんか変な夢を見ていた気がするが、思い出せない

 

「って、もうこんな時間!?」

 

 時計を見ると、始業の時間が迫っている。どうやらゆっくりしている時間はないらしい。

 焼いてすらいない食パン一枚の朝食を済ませ、制服に身を通す。そして、軽く身だしなみを整え準備完了。

 

「行ってきます!」

 

 誰もいない家に挨拶をし、学院へと駆け出す。

 今日から新しい講師が赴任することになっている。初対面で遅刻というのは、なかなか勇気がいる行動だと思う。

 

「これならなんとかッ、間に合いそう!」

 

 そう思いながら、僕ことトーマ=ハスクは足を緩めることなく、自身の学び舎であるアルザーノ帝国魔術学院へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルザーノ帝国魔術学院、それは由緒ある魔術学院である。ここに在籍する者は皆、日々魔術の研鑽に励んでいる。

 それは生徒だけでなく、教師にも言えることであり、この学院で教鞭を振るうことを誇りに思い、自身の魔術の研究に勤しんでいる。

 つまり、何が言いたいのかと言うと、例外もいるが基本的に皆優秀なのである。成績であったり、生活態度であったり。

 授業中に居眠りなんてしないし、遅刻なんてもってのほか。

 だが……

 

「遅い!!」

 

 始業のベルが鳴って20分が経とうとしているにも関わらず、未だに姿を見せない新任の講師に怒りを隠せない少女──システィーナ=フィーベルが声を荒らげる。

 長い銀髪に整った容姿。そんな彼女は実技、座学共に優秀であり、その証拠に学年トップの成績を残している。だが、そのストイックな性格から『講師泣かせ』や『説教魔神』などという不名誉なあだ名がある。天は二物を与えずとはよく言ったものだ。

 

「まあまあ、落ち着いてシスティ。もしかしたら何か事情があるかもだし」

 

 そんなシスティーナを宥める少女の名は、ルミア=ティンジェル。

 彼女はその美しい外見に加え、性格も良しというスーパー美少女だ。

 そんな彼女は当然と言えば当然だが、男子から物凄く人気がある。週に一回告白されるぐらい人気がある。天は二物を与えずなんて嘘だった。

 一緒にいるシスティーナも、性格さえもう少し丸くなれば、もっと人気が出ると思うんだけどなぁ……。

 

「甘いわ、ルミア! 真に優秀な人はありとあらゆる事態に備えておくものよ!」

 

「流石にそれは無理があるんじゃないかなぁ……」

 

 僕もそう思う。

 とはいえ、システィーナがそこまで求めるのも少しわかる気がする。何故なら、新任の講師はあの……アルフォネア教授が優秀な奴と言ったためだろう。まさか、初日から遅刻するなんて思いもしなかった。

 ……その初日から遅刻しかけた僕が言うことではない気がするけど。

 

 教室内がざわざわとしている中、大きな音を立てながら扉を開け、一人の青年が入ってきた。

 黒髪で長身痩躯、身なりは適当。濁った目を除けばそれなりに整った顔をしている。

 そんな男に、当然の如くシスティーナが噛みつく。

 

「やっと来たわね! 初日から遅刻なんて一体何を……って貴方、今朝の!」

 

「違います、知りません人違いです」

 

「そんなわけあるかっ!!!」

 

 などとコントを繰り広げている。どうやら訳アリのようだ。

 

「ねぇ、二人は知り合いなの?」

 

「あ、トーマ君。知り合いっていうか、なんていうか……」

 

 後ろからルミアに事情を聞いたところ、どうやらあの新任講師(名をグレン=レーダスという)がルミアにセクハラをしたらしい。それにシスティーナはお冠なのだろう。

 

 とりあえず二人の喧嘩は一段落終え、やっと授業に入るらしい。もう半分も時間が残っていないが。

 そして再び、問題が発生する。

 

「えっと〜ここがこうで〜こうなって〜あれ、こうだっけ?」

 

 要領を得ない説明に、ミミズが這ったような字。(当然読めない)

 全くやる気が見えないまま授業が続く。

 

「先生ッ、いい加減にしてください!」

 

「言われた通りいい加減(・・・・)にやっているだろう?」

 

 システィーナが怒り、それをグレンが適当に受け流すといった形で進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで昼休み。お昼ご飯の時間だ。パン一枚しか食べていないせいで、この時が待ち遠しくて仕方なかった。

 急いで食堂に行き料理を頼む。ここの食堂は早い安い美味いと、三拍子揃っている。

 出来上がった料理を受け取り、空いているテーブルを探す。ちょうど四人掛けのテーブルが空いていたのでそこに腰を下ろす。

 いただきます、と手を合わせた後、料理を口に運ぶ。うん、美味い。

 しばらく料理に舌鼓を打っていると、声を掛けられる。

 

「ここ、座っていいかな?」

 

 声を掛けてきたのはルミアだった。システィーナも一緒にいる。

 僕は料理を口に含んでいるため、頷いて答える。

 二人がありがとう、と言いながら僕の前のイスに着く。そして、各々の料理に手をつける。

 途中、システィーナのメルガリアントークが炸裂したりしたが、二人と軽く談笑したりして平和な昼食の時が続いていた。

 

「ここ、座るぜ」

 

「あ、どうぞです」

 

 グレン先生が来るまでは。

 

「あっ、貴方は!」

 

「食事の時くらい静かにしろよ」

 

「なっ!?」

 

 ワナワナと震えるシスティーナを横目に、バクバクと料理を口に運んでいくグレン先生。

 何も無かったかのように振る舞っているが、この男、先程行われる予定だった錬金術の実験の準備をする際、なんと女子更衣室に突撃したという。なんでも昔と男女逆になっていたから気づかなかったとか。

 今横でキルア豆について語っている先生は、その話を聞く限りこの学院の出身らしい。あっ、ルミアがキルア豆分けてもらってる。

 ……案外、根は悪くない人かもしれない。

 

「お前も食うか?」

 

「えっ、いいんですか」

 

「ああ、その肉を一切れくれたらいいぞ」

 

 ただ人を選んでるだけかもしれない。まぁ、交換するけど。

 その後、システィーナにほんの少し豆を分けた後、スコーンを一切れ無理やり奪っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから何日か経ったが、グレン先生の授業態度が改善することは無かった。むしろ、日を経つ毎に悪くなっていった。

 翌日はさらに適当な説明、汚い字で板書。

 翌々日、教科書のページを破り黒板に貼り付け、先生は寝ていた。

 さらに次の日は教科書そのものを釘で打ち付け、やっぱり寝ていた。

 そして今日、ついに教科書を持ってくることすらやめ、そのまま眠りについた。

 そんなグレンにシスティーナが厳しく言い放つ。

 

「本当はこんな手使いたくないけど仕方ありません。ちゃんとしてくれないと私の父親に頼んで貴方をクビにしてもらいますよ!」

 

 システィーナの実家であるフィーベル家はここら辺ではかなり有名で権力を持っている立場にある。高々学院の一講師をクビにすることなんて簡単だろう。

 だが、ここでも先生は僕達の予想を超える行動にでた。

 

「お父様に期待してます、とお伝え下さい!」

 

 どうやらグレン先生はアルフォネア教授に無理矢理講師をやらされているとの事。クビになると聞いて心底嬉しそうにしていた。

 これにとうとうシスティーナがキレた。左手に付けていた手袋をグレンに投げつける。

 

「グレン先生、貴方に決闘を申し込みます!」

 

 これに対しグレン先生は嫌々ながらも乗った。

 決闘方法は【ショック・ボルト】のみというもので、システィーナが勝ったら、グレンは真面目に授業をする。逆にグレンが勝ったら、システィーナはグレンに対し何も言わない。そういう取り決めの下、決闘は行われることになった。

 

 決闘を行う二人は中庭へと向かった。その決闘を見守るために向かうクラスメイトに混じり足を進める。

 正直、システィーナの勝ち目は薄いと思う。相手は仮にも講師、しかもここのOBだ。かなりの実力があると見ていいだろう。

 それはシスティーナにだってよくわかっているはずだ。それでも許せなかったのだろう。だから、行動に移した。その在り方には素直に尊敬の念を浮かべられる。

 

 この決闘がどのような結末を迎えるか……できるだけ平穏に終わって欲しい、と願う僕であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空いた口が塞がらないとはこの事だろうか……? 

 決闘の結果だけを伝えるならば、恐らくシスティーナの勝利だろう。ギリギリとかではなく、圧勝だ。

【ショック・ボルト】は基本三節だが、一節で唱えることも出来る。よっぽどでない限り、一節で唱えることが可能である。

 しかし、なんとグレンは一節で唱えることが出来なかったのである。

 あの手この手で勝とうとするが、どう頑張っても詠唱の速さにおいて三節は一節に勝てず、ボロボロにされていた。

 そして、システィーナが勝利し約束について言及にしたところ

 

「あっれ〜〜そんな約束、ボクしたっけなあ〜〜。電撃バカスカ打ち込まれて忘れちゃった☆」

 

 とのこと。

 

「と、いうわけで……これぐらいで勝ったと思うなよ!?」

 

 あばよ! と言った後、高笑いしながら走り去っていくグレン先生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら、新しくやってきた講師はロクでなしらしい。

 

 




主人公ステータス

〔知識〕Rank.1_平均的
〔勇気〕Rank.1_なくもない
〔魅力〕Rank.1_人並み
〔優しさ〕Rank.1_それなり
〔伝達力〕Rank.1_そこそこ

コミュ無し


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It is useful for murder!

今回、ペルソナ要素一切ありません。
早くペルソナァ!!させたい……。


 あれからというもの、特に変わらず数日が過ぎていった。

 グレンは教卓で熟睡。僕達生徒は自習と言った形だ。誰もがグレンに対し何も言わなくなった。言っても無駄だと分かったのだろう。

 それでも時々、システィーナはグレンに対し声を上げていた。その度に軽くあしらわれていたが。

 

 そんな中、一人の生徒──リンがグレンに質問をしに行っていた。なんかの文の訳を聞きに行ったらしい。

 そんな生徒に対し、グレンは辞書で調べろと返していた。

 

「そんな男に聞かなくても、私が教えてあげるわよ」

 

 システィーナがリンにそう告げる。

 

「さあ、私と一緒に魔術の深奥に至りましょう!」

 

 そんなシスティーナにグレンが言葉を発する。

 

「魔術ってそんなにすごいもんかね?」

 

 グレンの言葉にシスティーナは呆れたように返す。

 

「何を当たり前のことを……魔術は偉大で崇高なものよ。貴方には分からないでしょうけどね」

 

「なにが偉大でどこか崇高なんだよ?」

 

「……え?」

 

 いつもなら「ふーん……」と言った感じに受け流すのに、今日は食い下がってきたグレン。

 そんなグレンに対し、驚いた様子だったシスティーナだが、すぐに調子を取り戻しグレンに反論する。

 

「魔術は世界の真理を追求する学問よ」

 

 曰く、人がより高次元の存在になるためのものである──と。

 これ以上ない会心の答えをしたと思っていたシスティーナだったが、グレンが返した言葉に言葉が出なかった。

 

「……で、なんの役に立つんだ?それ」

 

「え?」

 

 グレンは続ける。

 

「なんの役に立つんだって聞いてるんだ」

 

「だから、人がより高次元の存在に……」

 

「より高次元の存在ってなんだよ、神様か?」

 

「そ、それは……」

 

 言葉に詰まるシスティーナ。さらにグレンは言葉を続ける。

 

「そもそも魔術ってどんな恩恵をもたらすんだ?」

 

 医術は病や傷を癒すことが出来る。

 濃厚技術は人を飢えから救う。

 建築術は人がより快適に過ごすように出来る。

 術と名がつくものは大体が人の役に立っている。しかし、魔術だけ何の役にも立っていない。

 それがグレンの言い分だった。

 そして、それはある意味事実であった。魔術の恩恵を受けているのは魔術師だけである。一般人からすれば得体のしれない力である。

 

「ま、魔術は……人の役に立つとか立たないとか、そんな次元の低いものではないわ!」

 

「役に立たないなら、実際趣味だろ?」

 

 グレンの言葉に言い返すことが出来ず顔を俯かせているシスティーナ。

 

「……悪かったよ、言いすぎた。魔術は凄く役に立っているさ」

 

「……え?」

 

 システィーナは顔を上げ、信じられないと言ったような顔をする。

 当然だ。さっきまで散々否定してきたのに、急に逆のことを言い出したのだから。

 

「ああ、すげぇ役に立っているさ……

 

 

 

 

 

 

 

 人殺しにな!」

 

 そういうグレンの顔は憎しみで満ちていた。

 グレンは言う。魔導師団に多くの国家予算が注ぎ込まれていること、魔術を使った犯罪の数やその内容、魔術の多くが攻性を持っていること。

 

「これでわかっただろ!?魔術は人殺しと切っても切れないものなんだ!何故ならッ魔術は人殺しと共に発展してきた碌でもない技術だからだ!」

 

 ここまでくれば流石に極論であったが、誰もがグレンの何かを酷く憎むその形相に何もいうことが出来ずにいた。

 

「こんなもん、勉強してるお前らの気がしれねぇよ!こんなことに人生費やすならもっとマシな──」

 

 

 

 

 

 

 

 パァン!

 

 

 

 

 

 

 

「いっ!?てめぇ……っ!」

 

 システィーナがグレンの頬を叩き、睨みつけている。その目には涙か浮かんでいた。

 

「ちがう……魔術は、そんなんじゃない……」

 

「貴方なんて……大っ嫌い……!」

 

 そういい、システィーナは教室から走り去ってしまった。

 誰もが、何も言うことが出来ない中、僕は後ろからルミアに小さく告げる。

 

「システィーナ、追いかけた方がいいんじゃないかな……?」

 

「うん……私、行ってくるね」

 

 そして、ルミアがシスティーナを追って行った。

 気まずさが教室を埋め尽くす。

 

「ちっ……なんかやる気出ねーから、自習だ」

 

 そう言ってグレンも教室から出ていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、しばらくしてルミアが帰ってきた。システィーナは先に帰したとのこと。しばらく一人になりたいと言っていたらしい。

 そして、僕達は自習を再開したが、全員どこかペンの進みが遅いと気づくのに時間はかからなかった。皆、グレンの言ったことに何かしら思うことがあったのだろう。

 

 一日の授業時間が全て終了し放課後となった。僕はすぐに荷物を片付け帰路につ着こうとするが、それは叶わなかった。ルミアに声をかけられたのだ。

 

「ねえ、このあと時間あるかな?ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ」

 

「えっと……僕に?」

 

「うん、トーマ君がいいんだ」

 

 こんなことを言われては断ることなど出来はしない。了承の意を返し、ルミアの後を着いていく。

 

「ここって魔術実験室?」

 

「そうだよ?」

 

「勝手に使っちゃダメなんじゃ……ていうか鍵かかってるし」

 

 そんな僕の疑問に対し、ルミアは懐から鍵を取り出す。

 

「えへ……取ってきちゃった!」

 

 どうやらルミアは僕が思っていたより大分お茶目なようだ。

 ルミアが部屋の鍵を開け入って行く。僕もそれに続く。

 そして、ルミアは床に何かを並べていく。それらに見覚えがあることに気づく。

 

「もしかして、これって魔力円環陣?」

 

「うん、最近法陣の授業についていけてなくって。復習したいなって思ってたんだ」

 

「それって魔力円環陣だよね。別に手伝いなんていらないんじゃ?」

 

 魔力円環陣──特に今やろうとしている流転の五芒と呼ばれるものは水銀で法陣を描き、触媒を置くといったとても簡単なものである。

 

「あはは……ごめんね、本当は聞きたいことがあって。教室じゃ聞きにくかったし、法陣の復習がしたいってのも本当だったから」

 

「そっか……それじゃあ、聞きたいことって?」

 

「うん、昼間の事なんだけど……」

 

 昼間の事というのは、グレン先生とシスティーナの件だろう。それの何が疑問なんだろう?

 

「トーマ君、凄く落ち着いていたから。なんていうか……魔術の事をどう思ってるのかなって……」

 

「魔術の事を……?」

 

 ……まぁ、確かに他の人より動揺は少なかったとは思う。それにしても、

 魔術の事をどう思っているか、か……。

 

「うーん、なんて言ったらいいかな……」

 

 自身の頭で整理し言葉を返す。

 

「僕は魔術の事を道具(・・)と同じだと思ってる」

 

「道具?」

 

 昼間の話を例に出してみるなら、システィーナは魔術は人が高次元の存在に至るためのものと考えていたし、グレン先生は人殺しのためのものと言っていた。

 

「魔術も使い方次第でどんなものにでもなる、みたいな……」

 

「そっか……うん、そうだね。その通りだと思う」

 

 僕の考えがなんとか伝わって良かった。

 

「あの事が無かったらきっと僕もこんな考え方してなかっただろうしなぁ……」

 

「あの事?」

 

「あーえっとそうだね……ルミアならいっか」

 

 僕は話を続ける。

 

「三年ぐらい前だったかな?悪い魔術師に襲われたことがあるんだ」

 

「えっ!?」

 

「と言っても、その時の事はなんにも覚えてないんだけどね」

 

 襲われたショックでその時の出来事を忘れてしまったのである。自分でそんな目にあったというのに驚いたものだ。

 

「まあ、その時に魔術って怖いものなんだって理解できたというか、魔術をこんな風に使う奴がいるんだって知ったんだ」

 

「……そうなんだ。大変だったんだね」

 

 ルミアが悲しそうに言う。

 

「別にもうなんとも思ってないし、全然平気だよ」

 

「なら、良かったよ」

 

 そういうルミアの顔はまだ少し晴れない。悲しいそうというか寂しそう……?なんでだろう、そんな気がするけど……まあいいや。気にしないでおこう。

 

「えっと……もうこの話は終わり!ほら、早く法陣作ろうよ」

 

「……そうだね、やっちゃおう!」

 

 やっとルミアに笑顔が戻ったようだ。女の子は笑顔の方がやっぱりいいと思う。

 

 ルミアが覚束ない手つきで魔力円環陣を作っていく。僕は教科書を見ながらルミアが間違ったらその都度教えていった。

 そして、何とか完成した魔力円環陣の前でルミアが詠唱する。

 

「《廻れ・廻れ・原初の命よ・理の円環にて・路を為せ》」

 

 が、何も起きない。

 

「あれ?おかしいな……何で出来ないんだろ?」

 

「うーんと、どこかおかしいところは……」

 

 教科書と見比べても特に間違っところはない。ということは、魔力円環陣に何かちっちゃいミスがあるのだろう。

 魔力円環陣をじーっと端から見ていくと簡単に見つかった。水銀が途中で途切れている。これならすぐに直せる。

 

「ルミア、そこの──」

 

 と、言いかけたところでドアがバンッ、と大きな音を立てて開かれた。

 

「生徒による魔術実験室の個人使用は禁止だぞー」

 

「グ、グレン先生!?」

 

 まさかの登場である。というかまずい。仮にも講師だし、なんとか誤魔化さないと……。

 

「ふ、二人だから個人じゃない……とか?」

 

「んなわけあるか」

 

 ですよね。

 

「ごめんなさい!すぐに片付けます」

 

 そう言って片付けをしようとするルミアをグレン先生はやんわりと止める。

 

「いいよ、せっかくここまでやったんだし、最後までやっちまいな」

 

 なんというか……意外だ。あそこまで魔術を嫌ってたのに、こんなことを言うなんて。

 

「でも、上手くいかなくて……」

 

「右上のとこ水銀が途切れてる。多分、それのせいだと思うよ」

 

「え?……あっ、ホントだ!」

 

「ふん、よく見てんじゃねーか」

 

 グレンが水銀の入った容器を手に持ち、描いた法陣の上をなぞるように水銀を垂らしていく。その手際に迷いは一切見られない。

 

「お前らは目に見えないものには神経質になるくせに、見えるものには何故か疎かになる。魔術を必要以上に神聖視している証拠だ」

 

 やがて、垂らし終えたグレンが告げる。

 

「よし、じゃあやってみろ。教科書通り五節な」

 

「は、はい!」

 

 ルミアが息を整え、声を発する。

 

「《廻れ・廻れ・原初の命よ・理の円環にて・路を為せ》」

 

 ──魔力円環陣から光が溢れる。それは見るものを魅了する、とても幻想的な景色だった。

 

「わあ……」

 

「すごい……」

 

 今まで見たものの中で、間違いなく一番綺麗だったと言えるだろう。

 

「すごいです、先生!」

 

「そんなに感激するもんかね、これ」

 

 そういうグレンの目が楽しそうに見えたのは気の所為だろうか?案外、魔術の事嫌ってなかったりして……なんてね、そんなわけないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生ももう帰るんですか?」

 

 片付けを終えた後、ルミアがグレンに問う。

 

「あん?……そうだけど」

 

「じゃあ、三人で一緒に帰りませんか?」

 

「え!?」

 

「はあ?」

 

 突然の事に驚く男二人。

 

「私、先生と一度お話ししたくて」

 

「やだ」

 

「そう、ですか……」

 

 ルミアがとても悲しそうな顔をしているのを見て、僕はグレン先生に非難の目を向ける。

 

「……後ろを勝手に着いてくるのは好きにしろ」

 

「……!やった、じゃあ行きましょう!」

 

 嬉しそうに言うルミアを見て、グレンはやれやれといった感じで部屋を出ていく。

 

(やっぱりグレン先生って悪い人じゃないな)

 

 そう思いながら僕は二人の後を追いかけるのであった。

 




主人公ステータス

〔知識〕Rank.1_平均的
〔勇気〕Rank.1_なくもない
〔魅力〕Rank.1_人並み
〔優しさ〕Rank.1_それなり
〔伝達力〕Rank.1_そこそこ

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Be sleeping if you aren't interested

なんてこった……今話でペルソナァ!するはずだったのに、予想以上に文字を書いてしまった。
というわけで、今回もペルソナ要素無しです。
本当に申し訳ありません。次回は必ず出します。
後、最後らへん駆け足です。

誤字脱字報告など、いつでも待っています!

それではどうぞ!


 僕達三人は夕焼けに染まる街中を歩いていく。グレンが先を行き、僕とルミアが追いかけるといった形であるが。

 

「うわぁ、すごい綺麗!」

 

 学院を出て数分、歩く三人の視界に入ってきたのは、夕焼けに染まる空を背に、堂々たる姿で浮かぶメリガリウスの天空城であった。

 

「おぉ……」

 

「……ふん」

 

 僕達の驚嘆といった感情に対し、グレン先生の反応は冷めきっていた。

 

「あんなもんがあるから、魔術を勘違いする馬鹿がいるんだよ」

 

 そう言うとグレンは歩き出してしまう。

 

「いつまでも、よそ見してないで行くぞ」

 

「は、はい……」

 

 僕達二人は急いでグレン先生の後を追う。

 それからというもの、特に会話もなく歩いて行く。若干の気まずさの中、どうしようかと考えている時、不意にルミアがグレンに話しかける。

 

「先生って、本当は魔術がお好きなんですよね?」

 

「はぁ?なんでそう思うんだよ」

 

「えっと、さっきの法陣の練習をしてた時、先生楽しそうにしてらしたので」

 

「そういえば、ちょっと笑ってたような……」

 

 僕も思わず声が出てしまう。あの時、確かにプラスの感情が表情に出ていた。

 二人の言葉にグレンは固まってしまう。

 

「ははっ、ねーよ」

 

 しかし、すぐに飄々としたいつもの態度に戻り、言葉を紡ぐ。

 

「俺は魔術が大嫌いだ。楽しいなんて、ありえん」

 

 グレンは自虐するような笑みを浮かべる。その顔からはグレンの真意は見えない。

 

「そうですか……でも、先生が本当に魔術が嫌いだとしても、今日のはちょっぴりひどいですよ?」

 

 ルミアはシスティーナが何故、魔術に励んでいるのかを話す。

 システィーナにとって、魔術は大好きだった祖父との絆の証であり、いつか祖父に負けない魔術師になる、と祖父と約束した。そのため、日々魔術の研鑽を積んでいる。

 

「そうだったんだ……初めて知ったよ」

 

「……そうか。それは流石に悪い事をしたな」

 

 これにはグレンも少し罪悪感を抱いたらしい。素直に反省している。

 

「つーか、俺を説教するために誘ったのかよ?」

 

「それもありますけど……聞きたいことがあって」

 

 ルミアは少し考えてから言葉を続ける。

 

「この学院に来る前は何をされていたんですか?」

 

 確かに気になることではある。あそこまで魔術嫌いになるには相当な経験をしたと思っていいだろう。

 そのため、グレンの答えに自然と身構えてしまう。少し間を置いてからグレンが口を開く。

 

「引きこもりの穀潰しをやってました」

 

「「え?」」

 

 流石にこの答えは斜め上すぎた。僕とルミアは何も言えずにいると、グレンが続けて言う。

 

「学院にセリカって偉そうな女がいるだろ?この一年はそいつのスネをかじりまくってた」

 

「一年以上前は何してたんですか?」

 

 僕の疑問にグレンは口を詰まらせると、バツが悪そうに言う。

 

「……すまん、嘘ついた。学院を卒業してからずっとだよ」

 

 そう言うグレンは明らかに何かを隠している雰囲気だったが、何も聞けなかった。

 

「俺の黒歴史を掘り起こすのはもう終わり!」

 

 そう言うと、僕達二人に目を向けた。

 

「今度はこっちが聞かせてもらうぞ。なんでお前らはそんなに魔術に必死なんだ?」

 

 グレンの言葉は続く。

 

「さっきも言ったが、魔術は本当にロクでもないもんなんだぞ?なくても困るものじゃない」

 

 この言葉を受け僕達は考え込んでしまう。

 そして、先に声を発したのはルミアだった。

 

「私は魔術を真の意味で人の力にしたいと思っています」

 

 今、そこに在る(・・)ものを無いようにすることは出来ない。だから、魔術を知ろうとする。どうすれば魔術が人に害を与えずに済むかを。そして、全ての魔術師がそうなるようにしたい。ルミアはそう考えている。

 

「……言っておくが、徒労に終わるぞ?絶対に」

 

「それでもです」

 

「わかっていながら、どうしてそんな報われない道を行こうとするんだ?」

 

 そのグレンの言葉にルミアは笑みを浮かべる。

 

「私……恩返ししたい人達がいるんです」

 

 そして、ルミアは自身の過去を話す。

 三年程前、家の都合で追放され、システィーナの家に住み始めた頃。悪い魔術師に殺されそうになった時、別の魔術師が助けてくれた事。その魔術師にお礼が言えずにいる事。

 これも初耳だった。家を追放された時の気持ちなんて、きっと僕の想像の何倍も上だろう。

 

「その魔術師は悲しいそうな顔をしながら戦ってくれたんです」

 

「悲しそうな顔?助けてくれた魔術師が?」

 

「はい、とても優しい人だったんだと思います」

 

 そして、グレンの顔を真っ直ぐ見つめながら、はっきりと言葉を告げる。

 

「だから、私はそんな悪い魔術師がいなくなればいいなと思ったんです。そうすれば、あの人はもう悲しまなくて済むから……」

 

「……そうか」

 

 それだけ言うとグレンは歩きだそうとするが、何かを思い出しすぐに足を止める。

 

「そういや……恩返ししたい人()がいるって言ったよな。他にもいんのか?」

 

「えっと、そうですね。もう一人います」

 

 何処か遠くを見ながらに言う。

 

「私がシスティの家に居候し始めたばかりの時、どうして私がって塞ぎ込んでたんです」

 

 システィともほぼ毎日喧嘩してたんですよ、と笑いながら言うその顔は、とても懐かしんでいた。

 

「それである日、私家を飛び出したんです。それでずっと泣いてた私に声をかけてきた人がいたんです」

 

「おいおい、泣いてる女の子に声をかけるなんて、危ないヤツじゃないのか?」

 

「いえ、同年代の男の子だったんです」

 

 そのままルミアは続ける。

 

「なんていうか、すごく安心できる人だったんです。一緒にいると落ち着くっていうか。それで私、ほとんどぶちまけちゃったんです、イライラとか不満とかを言葉にして」

 

 何故自分がこんな目にあうのか、自分には居場所がない、誰も味方なんていない等々、出会ってすぐの男の子に愚痴を吐いたと言う。

 無理もないだろう。普通じゃ考えられない状況だ。その時のルミアは、それほど精神的に追い詰められていたのだろう。

 

「その人は最後まで聞いてくれた後、私に言ってくれたんです。本当に味方はいないの?って」

 

 男の子はしどろもどろになりながらルミアに話したという。君の味方になろうとしてくれている人はいないのか、いないと思い込んでいるだけではないか、と。

 

「それを聞いた時、またぐずっちゃったんです。いるわけないって」

 

 それでも、泣くルミアを宥めながら必死に伝えようとした。

 

「散々泣いて、少し冷静になれた私は言われた通りに考えてみたんです。そしたらすぐにわかったんです。システィやシスティの両親はずっと私のそばに居ようとしてくれていたことが」

 

 ルミアはとても嬉しそうに言う。

 

「その後、色々あって名前も聞かずに別れてしまって。いつかお礼が言えたらなって思っていたんです」

 

「ふーん、そんな奴がいたんだな」

 

「はい、今の私がいるのは彼のおかげなんです。本当に感謝しているんです」

 

 そう言いながら、こちらを見て笑っている。

 なんでだろ?そんなことをした覚えはない。

 

「えっと……なんでこっち見てるの?」

 

「ふふ、別に〜?何でもないよ」

 

 モヤモヤとした気分のまま歩いて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからは特に会話もなく歩いて行く三人だったが、十字路に着くとルミアはそこで別れることになった。そして、幸か不幸か僕とグレン先生の帰り道は同じ方向らしく、再び無言のまま足を進めていく。

 そんな中、グレンが唐突に声をかける。

 

「……そういや、聞いてなかったな」

 

「えっ?な、何がですか?」

 

「お前が魔術を勉強してる理由だよ」

 

 そう言いながら、グレンは振り返り続ける。

 

「ルミアは言ったからな。お前だけ言わないなんて、不公平だろ?」

 

「ま、まぁ確かに……?」

 

 そう言いつつ考えてみる。

 

「僕が、魔術を学ぶ理由……」

 

 頭の中を整理しながら、言葉を紡いでいく。

 

「別に、ルミアやシスティーナみたいな確固としたものはないと思いますよ?」

 

「それでもいいから言え」

 

 横暴ではないだろうか?というか意外だ。なにか、ルミアの言葉に感じたものがあったのだろうか?

 だとしたら、何も言わないと言うのは良くないだろう。もう正直に言ってしまおう。

 

「えっと……分からないからです」

 

「分からない?魔術が?」

 

 言いたいことを思い浮かべ、言葉にしていく。

 

「その、なんと言いますか……実は僕も悪い魔術師に襲われたことあるんですよ」

 

「お前らどうなってんの!?普通そんなホイホイいるもんじゃねえだろ!最近の若者は襲われ属性でもついてんのか!?」

 

 ごもっともである。後、グレン先生も若者だと思います。

 

「まあ、その時に思ったんですよ。魔術ってなんであるんだろって」

 

 正確には、襲われたことがあると知った時であるが。

 

「それで魔術に本当の意味で興味を持った……そんな感じですかね」

 

「ふーん、じゃあ魔術の事なんか分かったのか?」

 

「いや、それがあんまり」

 

「はあ?」

 

 実際、そうなのだから仕方ない。

 満を持して魔術学院に入学したが、魔術そのものについて深く追求するのではなく、魔術の使い方を重点的に教わってきたのである。

 講師に聞いても、あまり真面目に取り合ってくれなかったりもした。ちゃんと聞いてくれる講師もいたが、つい最近辞職してしまったのは悲しいことだった。

 

「というか、魔術ってなんで使えるんですかね」

 

「……ん?」

 

「いや、呪文唱えたら魔術は起動するけど、それがなんでかもよく分かんなくて」

 

「ほう……」

 

 術式が世界の法則に介入するとか言われてもよく分からない。世界の法則ってなんだよ、僕が知りたいのはそこなんだよな。

 こんな感じの愚痴をグレン先生に言ってしまったが、何故かグレン先生は少し真面目な顔で何か考えていた。

 そんなこんなで僕の家の近くに来たので、声をかけることにする。

 

「あ、えと……僕の家こっちなんで」

 

「おう、じゃあな」

 

 グレンはそれだけ言うと、スタスタと歩いていった。

 

「グレン先生、どうしたんだろ?最後、なんか変だったけど……」

 

 考えても分からないので「まあいいや」と考えるのを止めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日はすまんかった」

 

 教室中は驚愕に包まれていた。

 何故なら、あの(・・)グレン=レーダスが頭を下げていたのである。それも、つい先日に言い負かし泣かした女子にである。

 ……字面にすると当たり前のことような気がするが。

 

「俺は魔術が大嫌いだけど、それは人それぞれというか……とにかくすまんかった!」

 

 そして。嫌々ではなく自身の非を認めながらである。

 やはり、当たり前のことであるが、グレンがしたとなると話は変わってくる。

 

 グレンはそれだけ言うと、教壇の元へ行き、備え付けの椅子に座りながら目を閉じ、じっとしていた。

 

 ざわざわと教室中がさわがしくなる中、グレンはそのまま身動き一つ取らなかった。

 そして、始業のベルが鳴るとカッと目を開き、声を上げる。

 

「それじゃあ、授業を始める」

 

 まさかの言葉に誰もが言葉を失う。

 そんな中、グレンは授業で使う教科書をペラペラとめくっていく。その顔はどんどん苦いものになっていき、最後までいくとそのまま開いている窓の方へ向き

 

「そぉい!

 

 その教科書を投げ捨てた。

 そして、こう言葉を発した。

 

「さて、授業を始める前に一つ、お前らに言っておきたいことがある」

 

 グレンは続ける。

 

「お前らって本当に馬鹿だよな」

 

 その言葉に、生徒が騒ぎ立つ。

 

「【ショック・ボルト】程度の一節詠唱も出来ない三流魔術師に言われたくないね」

 

「まあ、それを言われちゃあ耳が痛い」

 

 すっとぼけた表情をしたが、すぐに笑みを浮かべ言う。

 

「だが、今【ショック・ボルト】程度(・・)とか言ったな?」

 

 そう言いながら、グレンは黒板に文字を書いていく。

 

《雷精よ・紫電の衝撃以て・打ち倒せ》

 

「さて、これが【ショック・ボルト】の基本詠唱だ。センスのあるやつは《雷精の紫電よ》の一節詠唱ができるが……それじゃあ問題な」

 

《雷精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》

 

「三節が四節になったらどうなる?」

 

 沈黙が教室を支配していた。誰も答えることが出来ないのである。正確にはどう答えたらいいのか分からない、のかもしれない。

 

「おいおい、まさか全滅か?」

 

 グレンの煽るような言葉に負けじと生徒が「まともに起動しない」「何らかの形で失敗する」と反論する。

 が、グレンが聞きたい答えではないと一蹴する。

 

「もういい。答えは……右に曲がる、だ」

 

 そして、グレンが四節で詠唱すると、言った通りに右に曲がった。

 さらに、グレンは続ける。

 今度は五節にすると、射程が三分の一に落ちる。

 三節に戻し、一部を消すと、威力がすごく落ちる。

 全てグレンの言う通りになった。誰も何も言えない。悔しいが自分たちには見えない何かが、この男には見えているのだから。

 

「お前らはなんでこんな変な言葉を口にして、魔術が使えるかわかってんのか?」

 

 グレンは真面目な顔で続けていく。

 

「術式が世界の法則に介入するとして、何故言葉の羅列が世界の法則に介入出来るんだよ?人が作ったものだぞ?まあ、おかしいと思ったことはねーんだろうな、普通は。だって、それがこの世界の当たり前だからな」

 

 そして、教室を見渡しながらこう言った。

 

「つーわけで、今日はお前らに術式構造と呪文のド基礎を教えてやる。興味無いやつは寝てな」

 




主人公ステータス

〔知識〕Rank.1_平均的
〔勇気〕Rank.1_なくもない
〔魅力〕Rank.1_人並み
〔優しさ〕Rank.1_それなり
〔伝達力〕Rank.1_そこそこ

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I am thou, thou art I

やっとです。お待たせしました。



 ダメ講師グレン、覚醒。

 

 この報せは学院を震撼させた。今までのグレンはどこに行ったのか。授業に遅れずに来て、しっかり授業をする。さらに、その授業の仕方が今までのやり方とは一線を画すものであり、なによりその質の高さに誰もが驚かされた。

 

「……時間だな、今日はここまで。あー疲れた」

 

 そう言いながら、使った教材を持ち教室から出ていくグレン。それには目もくれず、板書を取ったり、授業の復習に取り掛かったりする生徒達。グレンの授業のことを誰もが認めているのである。

 

「まさか、ここまでなんて……」

 

 あのシスティーナですら賞賛している。そんなグレンの授業は別のクラスからも受けたいと願う生徒が出る程であり、実際立ち見の生徒だっている。

 ただ、グレンの魔術嫌いな態度は変わらないので、グレン自身はあまり好かれてはいない。本人は一切気にしていないが。

 それでも、グレンを慕う生徒はいる。

 

「先生、それ運ぶの手伝いましょうか?」

 

 ルミアがまさにそうだ。なんだかんだで、ルミアは最初からグレンのことをあまり嫌っていなかったような気がする。ルミアの人を見る目は確かなようだ。

 

「おっ、悪いな。だが結構重いぞ?」

 

「大丈夫ですよ」

 

「そうか……なら少しだけ頼む」

 

 そう言い持っていた教材を数冊ルミアに渡す。そして、僕の方へ向きこんなことを言う。

 

「おい、トーマ。お前も持て」

 

 何故か僕にお呼びの声がかかる。

 

「えー……またですか?」

 

「うるせぇ。暇そうにしてるお前が悪い」

 

 最近、こんな感じで何度も手伝わされている。どうやら、目をつけられたらしい。後、別に暇してる訳ではない。ただ、授業で少し疲れたので、ぐでーっとしてるだけだ。

 

「というか、なんで僕なんですか?」

 

「なんとなくだ」

 

 そういった後、グレンは悪い顔をしながら言う。

 

「おいおい、可愛い女の子のルミアが手伝ってんのに、いつまでもグチグチ言ってていいのか?」

 

「ぐっ……そう言われると何も言えない……」

 

 僕は観念してグレンから数冊受け取る。そうして、教室から出て行こうとすると、後ろから声をかけられる。

 

「ま、待ちなさい、私も手伝うわ!」

 

 システィーナだった。おそらく、ルミアが手伝っているのに、自分が手伝わないのは何となく嫌なのだろう。

 

「ほう?じゃあ頼んだぞ」

 

 そう言って、持っていた残りの本──最初の半分くらいをシスティーナに全部押し付ける。

 

「きゃあ!ちょっと、いきなり重いじゃない!」

 

 システィーナがそう捲し立てるが、グレンには何処吹く風。

 

「いやー、楽チンだなぁ〜?」

 

「なんでこんなにルミアと扱いが違うのよ!?」

 

「ルミアは可愛い。お前は生意気。以上」

 

「くぅ〜〜!!!」

 

 グレンとシスティーナのいつものコントを繰り広げる。もはや日常茶飯事になっているので、特に何も言わないでおく。ルミアだって苦笑いしながらも何も言わないし。

 とはいえ、システィーナだって歴とした女の子であるはずだ。流石に重いだろう。

 というわけで、システィーナが持っている本を半分ほど貰うことにする。

 

「えっと、半分持とうか?」

 

「え、いいの?」

 

「まあ、うん。重い……よね?」

 

「なんで疑問系なのよ!?……はあ、そう言うならお願いするわ……」

 

 そう言い、本を受け取る。これは結構重い。

 

「きゃあ〜、流石男の子!トーマ君かっこいい!」

 

「だったら、先生が男見せて全部もってくださいよ!というか、少しくらい持ってくれません?」

 

「やーだよ!俺は楽がしたいんだっ!そのためなら、生徒だって顎で使ってやる!」

 

 なんてこと言いやがるんだ。とても講師とは思えない発言である。

 まあ、こういう軽口を叩ける気安さ?もグレンのいい所なのだろう、多分。

 

 そんな感じで日々は過ぎていったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日の夜、僕は明日の授業の準備をしていた。本来、明日は休校日なのだが、僕達Ⅱ組は担当講師交代のゴタゴタのせいで、登校日になっているのだ。

 前任のヒューイが学院を辞め、グレンが来るまで時間がかかった上、そのグレンも最初は真面目に授業をしなかったため、日程が押しているのだ。

 この事実を知った時が、今までで一番グレンに対して怒りを感じた。

 

「これでよし、と」

 

 準備を終え、いざ寝床に入ろうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我は汝……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぐぅ……!」

 

 突如、頭の中に声が響き、それに伴い頭痛もし始める。

 

『汝は我……』

 

「なんだ……これ……っ!」

 

 僕は頭を抑え、蹲る。

 

『汝、力を秘めし者』

 

「な、にを……っ!」

 

 誰のものか分からない声は続く。

 

『契約の時、覚悟を示せ』

 

 それっきり声は聞こえず、頭痛も治まった。

 

「はあ……はあ……さっきのは、一体?」

 

 謎の声はこう言っていた、我は汝、汝は我……と。つまり、あの声は僕自身ということになるのか?

 ダメだ。意味がわからない。僕は僕で、それ以上でもそれ以下でもない。

 

「……明日も早いし、もう寝よう……」

 

 そうして、僕はベッドに入る。するとすぐに睡魔がやってきた。僕は意識を睡魔に任せ、そのまま眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開けると、そこは見覚えのある青い部屋だった。確か……ベルベットルームと言ったか?

 僕が部屋で立ち尽くしていると、突然声をかけられる。

 

「ようこそ、我がベルベットルームへ」

 

 いつの間にか目の前に見知らぬ人達がいた。……いや、前にも会ったぞ。そうだ、イゴールとフランだ。なんで忘れてたんだろ?こんなにもインパクトがあるというのに。

 

「ふふ、とうとう貴方の旅が幕を開けるようだ」

 

 僕の旅?えっと……何が起きるんだろう?

 

「それは分かりませんが、貴方の運命を大きく変える出来事が起きるでしょう」

 

 イゴールは笑みを浮かべながら続ける。

 

「それは長く険しい道。私達はそんな貴方の旅路の手助けをする者」

 

 よく分からないけど、手伝ってくれるらしい。

 

「さて、そろそろお目覚めのようだ」

 

 ここに来てまだ数分だが、もうそんな時間らしい。どうやら時間の流れも違うようだ。

 

「貴方の旅路、楽しみにしております。それでは、ごきげんよう」

 

 そして、視界が白く染まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、朝か……」

 

 目が覚めると、自分の部屋の天井が見えた。

 ベッドから身を起こし、支度を始める。そして、昨夜の出来事に思いを馳せていた。

 

「結局、なんだったんだろう?」

 

 謎の声のこともあるが、それとは別に引っかかるものがある。寝ている間に何かあったのだろうか。何故か、体が緊張している……気がする。

 

「……よくわかんないけど、今日何かあるのかな」

 

 どうしても、それが気のせいとは思えなかった。なので、今日は一段と気合を入れていこうと思う。

 しっかりと朝食を取り、食後に冷えたミルクを一気飲み。身だしなみを完璧に整える。少し時間を掛けすぎたが、なんとか始業には間に合うだろう。

 さあ、いざゆかん。アルザーノ帝国魔術学院へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカか僕は……」

 

 朝っぱらから冷えたミルクを一気飲みしたせいで、腹を下してしまった。登校中に腹痛が来たので、一階のトイレに慌てて駆け込んだ。割と始業ギリギリにトイレに行ってしまったため、今は完全に授業中だ。

 用を済ませ、体調は万全になった。急いで教室に戻ろうとしたその時だった。

 

 

「……」

 

 不意に足が止まった。何故か、昨夜の出来事が頭をよぎったのだ。

 何故、今その事を考えたのか。それについては特に理由がある訳では無い。ただ、なんとなくだった。

 僕はトイレから出て、周囲を見渡す。とても静かだった。それもそのはず、今学院にいるのはⅡ組の生徒とグレンだけだからだ。

 だが、この静けさが不気味でならなかった。心がざわつき、肌にまとわりつくような何かを感じる。

 僕は教室へ向かい始める。早く日常に帰りたくて、この不安が気のせいであって欲しくて。

 

 しかし、現実は非常だった。階段に差し掛かり、登りながら上を向く。

 

 その時。

 

「えっ?」

 

「……他にもまだいたのか」

 

 一目で不審者だと分かる男と目が合った。

 何故ここにいるのか?一体何者なのか?いくつも疑問が湧いてくるが、もっと気になることが起きていた。

 

「と、トーマ君!?」

 

 ルミアがいたのだ。あまりの事態に思考が停止しかけるが、なんとか踏みとどまる。

 分からないことばかりだが、これだけは分かる。今、この学院で何か大変なことが起きている。

 そんな中、一番先に言葉を発したのは不審者の男だった。

 

「ふん、見たところただの学生か」

 

 そう言いながら、左手をこちらに向ける。

 

「《雷帝の閃槍よ》」

 

「え──」

 

 視界が光に染る。その時、足を踏み外し間一髪それ(・・)を避ける。

 階段を転げ落ちた先の床には小さく、しかしはっきりと貫かれた穴があった。

 

「ほう、運がいいな」

 

「あ、え?」

 

 知っている。今の呪文は【ライトニング・ピアス】、軍用魔術だ。そして、相手はそれを僕に向けて撃ってきた。

 つまり、あと少しで僕は死んでいた。そう理解した瞬間、どっと汗が吹き出す。

 

「お願いします!やめてください!私は抵抗も何もしませんから!」

 

「……」

 

 不審者の男──レイクは考える。この学生をどうするか。正直、どうでもよかった。ここで殺さずにおいてもどうせすく後に同じ結末を辿ることになる。ましてや、ただの学生に何が出来るというのか。

 そう結論づけたレイクはそのままルミアを連れ、階段を下り、トーマの横を通り過ぎて行こうとした。

 

「待って……下さい」

 

 レイクはその声に足を止める。その声の主へ向くとそこには、身体を震わせながらも、こちらを見つめている少年がいた。

 

「ルミアを……どうするんですか?」

 

 レイクは少し感心した。つい先程、死にかけたばかりだと言うのにこういう行動に出るとは思っていなかったからだ。

 

「貴様が知った所でどうなる?」

 

 だが、それが教える理由にはならない。遅かれ早かれ死ぬとはいえ、喋ることではない。

 

「どうにもならない、けど……このまま見捨てるなんて出来ない」

 

 この時、トーマ自身が何故、この行動に出たのかよく分かっていなかった。ただ、許せなかった。このままルミアを見捨てることが。二度と(・・・)あのような後悔はしたくなかった。そんな思いに身を任せたのだ。

 

「……ふん、青いな」

 

 レイクはそう言うと小さく呪文を唱える。すると、トーマの目の前にゴーレムが現れた。

 

「っ!?」

 

「やれ」

 

 レイクはここでトーマを殺すことを選択した。今、目の前の学生は自身の脅威となる存在ではない。ただ、直感したのだ。

 そして、トーマを殺すなら、ゴーレム一体で十分と判断し行動に移した。

 

 ゴーレムが拳を振り上げる。トーマはそれを見つめることしか出来なかったが、

 

「トーマ君!逃げて!」

 

 と、ルミアが叫ぶ。その声に反応して、後ろに飛び退く。そして、さっきまで自身がいた場所は粉々になっていた。

 しかし、ゴーレムは止まらない。すぐにこちらを向き攻撃しようとする。

 

「ヤバいっ!」

 

 すぐにゴーレムから逃げだす。それをゴーレムは意外と素早い動きで追いかける。

 

「トーマ君……」

 

「ふん……」

 

 レイクはそれを見届けると、ルミアを連れ歩き出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、ヤバ、もう逃げれない……」

 

 それから逃げ回ったが、次第に追い詰められ、ついに行き止まりに追い込まれてしまった。

 

「どうすればいいんだよっ!」

 

 ゴーレムはもうすぐそこに来ている。このままでは殺されてしまう。だが、どうしようもない。色んな魔術をぶつけてみたりしたが、特にダメージは入らなかった。かろうじで風属性が効いてたような気がするが、雀の涙程度だ。

 

「ここで……終わり?」

 

 これから自分が死ぬと考えると、体が震えてしまう。

 

 本当にここで死んでしまうのだろうか?あのゴーレムに潰されて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──嫌だ。

 

 嫌だ。まだ死にたくない。こんな所で死んでたまるか。

 でも、どうしようもない。僕にはなんの力もない。あの時(・・・)も。今も。ただ、見ているだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでいいのか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 っ!?

 

『目の前の理不尽な現実に、抗いもせず、ただ受け入れるがままでいいのか?』

 

 それは……

 

『過去に感じた後悔は……屈辱はその程度のものだったのか?』

 

 ……違う。そんなものじゃない。何も出来ない自分が情けなくて、悔しくて、どうしようもなく許せなかった!

 

『力が欲しいか?どこまでも残酷で、理不尽な世界に抗う力が』

 

 欲しいさ!目の前の現実をぶっ壊せる力が!

 

『いいだろう。ならば、契約だ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、トーマを中心に風が吹き荒れ始める。その風はゴーレムの足を止めるほどであった。そして、トーマの足元から光が溢れ出す。

 

『我は汝、汝は我……』

 

 光が集まる。

 

『己が覚悟を胸に秘め、世界の闇に抗いし者よ!』

 

 光が一枚のカードを形作る。

 

『強き意志を、その名と共に解き放て!』

 

 そのカードに右手を伸ばす。そして──握りつぶす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ペルソナァッ!!」

 

 青い炎が吹き出し、そして、その炎が人型を作っていく。

 

『我は汝、汝は我……』

 

 緑のラインが入った白い鎧と兜を身につけ、右手に剣、左手に盾を持つ。

 

『我は汝の心の海より出でし者』

 

 そして、兜の奥から覗くのは黄色に輝く目。

 

『破邪の顕正者【ペルセウス】なり』

 

 そして、剣を一閃。その刃はゴーレムの左腕を切り落としていた。

 それにたまらず、ゴーレムも反撃、その拳がペルセウスの腹を捉える。

 

「ぐうっ!?」

 

 自身の腹に凄まじい衝撃が走る。思わず膝を着きそうになるが、なんとか堪えて、ペルセウスに指示を出す。

 

「<ガル>!」

 

 不思議な事にペルセウスが使える技の事は知っていた。

 ゴーレムの回りに風が吹き荒れ、表面を削っていく。そして、ゴーレムを機能停止一歩手前まで追い詰める。

 

「トドメだ──<スラッシュ>!」

 

 ペルセウスの剣がゴーレムを真っ二つにし、とうとうゴーレムが動かなくなった。

 

 ゴーレムが朽ちていくのを見届けると、ペルセウスは消えていく──否、心の中に帰っていく。

 

 つい先程までの出来事が嘘のような感覚に陥るが、心の中にペルセウスがいることを確認し、嘘ではないと確信する。

 そして、自分が目覚めた力に興奮を隠せず、笑みを浮かべ呟いてしまう。

 

「これが、力。僕のペルソナ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが僕の物語の始まりであった。

 




主人公ステータス

〔知識〕Rank.1_平均的
〔勇気〕Rank.1_なくもない
〔魅力〕Rank.1_人並み
〔優しさ〕Rank.1_それなり
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We will laugh together, won't we?

オリジナルペルソナの簡単な能力を載せておきます。

【愚者】ペルセウスLv1
物火氷雷風光闇
ーーー弱耐耐ー

《スキル》
スラッシュ
ガル

属性表記はP4式です。銃撃属性は物理属性に含まれています。


「すごい力だった……」

 

 先程の戦闘を思い出しながら呟く。

 正直、自分でもペルソナがどういうものなのかはまだよく分からない。ただ、この力は間違いなく僕の力になってくれるだろう。

 

「そういえば、昨日の夜……」

 

 僕は寝ている間に起こったことを思い出した。イゴールが言っていた僕の旅路がどうとかいう話。もしかして、この力が関係しているのか?

 

「……それより、これからどうしようか」

 

 現状、よく分からない事ばかりだ。あの不審者の事が気になる。それにルミアの事だって。

 そもそもの話、なんでルミアがあの不審者に連れられていたんだろうか。誘拐して身代金とか?いや、確かにルミアはフィーベル家に住んでいるが、あくまで居候だと聞いている。誘拐するならシスティーナだろう。

 というか、こんな真っ昼間からすることではない。だとしたら、もっと別の要因か。何故、このタイミングで事を起こしたのだろうか。

 ……学院に講師がいないからか?今、学院にいる講師はグレンだけだ。それなら、確かに普段より制圧は容易いだろう。だとしても何故?

 

「……やっぱりわかんないな」

 

 これ以上考えても結論が出るとは思えないので、一旦思考を打ち切ることにする。

 とりあえず今すべき事は助けを呼ぶことだろう。幸い、付近に誰もいないはずだ。今が学院から脱出するチャンスだ。

 そうと決まれば、早く実行しよう。何が起こるか分からない以上、早急に対処しなくてはいけない。

 そして、僕は学院の正門に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正門に近付くと、誰か倒れているのが分かった。

 

「だ、大丈夫ですかっ!?」

 

 その人物は学院の守衛だった。急いで駆け寄り、無事かどうか確かめる。

 しかし、時すでに遅し。守衛が僕の声に答えることは無かった。

 

「なんで、こんな……」

 

 この守衛とは何度か挨拶を交わしたこともある。そんな日常の一部が失われたことに、混乱せずにはいられなかった。だが、すぐに自身のすべき事を思い出し、なんとか持ち直す。

 

「早く助けを……」

 

 しかし、正門から一歩踏み出そうとするも、見えない結界にそれを阻まれる。何度も出ようとするが、その壁は僕にはどうしようもなく硬かった。

 

「ど、どうしよう……」

 

 これでは助けを呼ぶことが出来ない。これからの事を考えようとしたその時。

 

 

 ドゴォーン!!

 

 

「っ!?」

 

 背後から凄まじい音と光が発生したのが分かった。

 すぐに振り返り、それの発生源を確認する。学院の四階部分から、巨大な閃光が、放たれているのが見える。

 

「何なのさ、あれ!?」

 

 まさか、あの不審者がやったのか?

 そう考えると、すぐに不安が押し寄せてきた。何故、あんなのが発生したのか。まさか、人に向けて使われたのか?

 今、この学院にいるのは、Ⅱ組の生徒とグレンだけだ。そう考えると、居ても立っても居られず、その現場へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある程度近づくと、先程の閃光が放たれたせいで瓦礫になりかけている四階から見慣れた銀髪が突き落とされるのが見えた。

 

「あれって、システィーナ?」

 

 急いで、システィーナの落下地点へ向かう。そこには魔術で器用に着地していたシスティーナがいた。

 

「システィーナっ!」

 

「っ!?」

 

 僕の声に驚いたのか、ビクッとしながらこちらを向く。そして、すぐに安堵の表情を浮かべる。

 

「なんだ、トーマか。よかった……」

 

「大丈夫?四階から落ちてきたみたいだけど」

 

「あっ、そうだ!グレン先生がっ!」

 

 システィーナが件の四階にいるであろうグレンを心配して目を向ける。

 

「グレン先生がいるのか?」

 

「今、グレン先生はテロリストと戦っているのっ!」

 

 そう言いながらも、悔しそうにしているシスティーナ。おそらく、グレンはシスティーナを助ける為に突き落としたのだろう。助けに行きたいが、それではグレンの行動を無駄にしてしまう。

 きっと、心の中で葛藤しているのだろう。今のなんの力もない私が行っても仕方がない、と。

 

「システィーナはここに居て。僕が行く」

 

「えっ?」

 

 今の僕には不思議な力がある。戦うのは怖いし、それで何かが変わるかどうかは分からないけど、何もせずに後悔はしたくない。それだけは確かだ。

 

「ど、どうして?私達に出来ることなんて……」

 

「ううん、何かあるはずだよ。どんなに小さい事だとしても、今の自分にできることが」

 

 それだけ言うと、すぐにグレンがいる場所へ向かう。

 

「先生はなんで魔力の量を……?後、「なら、よし」ってどういう?」

 

 この場を去る時、後ろでシスティーナが何かをブツブツと呟く声が聞こえたが足を止めることはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 階段を駆け上がり、グレンの元へと走る。すると、曲がり角の向こうから激しい物音が聞こえてきた。

 身を隠しながらそっとその先を覗くと、グレンと不審者改めテロリストが激しい戦いを繰り広げていた。ただ、明らかにグレンが劣勢であった。やはり、一節詠唱が出来ないことが原因だろう。

 

(どうする?今すぐ介入していいのか?)

 

 自分が突入することで、今の流れを切る事はできる。ただ、先生が僕に気を取られて、その隙を突かれたりしたら最悪だ。

 

(まだだ、落ち着け。チャンスは来るはずだ)

 

 その時はすぐに来た。グレンとテロリストの攻防が止まり、二人の会話が始まる。

 今しかない。そう感じた僕はその場に躍り出る。

 

「グレン先生!」

 

「なっ!?」

 

「貴様は……あの時の!」

 

 二人は共に驚きの感情を示したが、すぐにグレンが吠える。

 

「馬鹿野郎っ!なんで来たんだ!」

 

 グレンのその問いには答えず、テロリスト──レイクを睨めつける。そして、右手を向ける。

 

「なぜ、貴様は生きている?」

 

「さあ?なんでだろうね」

 

 レイクの質問に惚けて答えるが、その心中はドキドキしっぱなしだ。一歩間違えれば死ぬと理解しているからだ。

 タイミングを間違えてはいけない。相手の一挙一動に注目する。

 

「だが、ここに来たのは自殺行為だったな。無謀な学生よ」

 

「やめろっ!」

 

 グレンの必死な声が響く中、レイクは詠唱を開始する。

 

「《雷帝──」

 

「(今ッ!)ベルソナッ!」

 

 レイクの詠唱の途中でペルセウスを呼び出し、一気に突撃させる。

 

「──なっ!?」

 

 レイクはすぐに詠唱を止め、咄嗟に浮いていた剣で迎撃する。

 

「くっ!」

 

 流石に判断が早い。だが、隙を作ることは出来た。

 

「《猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て》──ッ!」

 

 グレンの【ライトニング・ピアス】が発動する。だが、レイクはそれに対し、剣を一本犠牲にすることで防ぐ。

 レイクは態勢を整えようと後ろへ飛び退くが、そうはさせまいと僕はペルセウスを再び突貫させる。

 

「<スラッシュ>!」

 

 渾身の一撃をレイクは剣を三本使い鍔迫り合いに持ち込む。拮抗するかと思われたが、それは思わぬ援軍により叶わぬものになる。

 

「《力よ無に帰せ》──ッ!」

 

 それはシスティーナの【ディスペル・フォース】による魔術支援だった。これにより、ペルセウスと鍔迫り合いをしていた三本の剣は力を失う。ペルセウスはそのまま、レイクが持っていた最後の一本を叩き折る。

 

「くっ!《目覚めよ刃──」

 

「遅ぇッ!」

 

 グレンが一枚のアルカナ──愚者のアルカナを引き抜き、【愚者の世界】を起動させる。

 この時、トーマは知らなかったが【愚者の世界】は発動者を中心とする一定効果領域内における全ての魔術起動の完全封殺するものである。

 これにより、レイクは今この瞬間完全な無防備になった。グレンはこの隙を逃さず、落ちていたレイクの剣を一本拾い、そのままレイクの左胸部分を貫く。

 

 一瞬、この場を静寂が支配する。最初に言葉を発したのはレイクだった。

 

「……見事だ」

 

 レイクは直立不動なまま続ける。

 

「そこの学生二人には驚かされた。そして……『愚者』、貴様にもな」

 

「……何が言いたい?」

 

「さぁな?」

 

 そして、レイクは崩れ落ちそのまま息を引き取った。

 

「ちっ……胸糞悪い」

 

 そう吐き捨てると、グレンも膝を着く。

 

「「先生ッ!!」」

 

 僕とシスティーナはグレンに駆け寄る。グレンの体に触れると普通ではないほど冷たくなっていた。

 

「冷たい……一体、何で」

 

「あのテロリストと戦う前に先生、【イクスティンクション・レイ】を使って、それでマナ欠乏症になってるの!」

 

「えっ、あの神殺しの!?」

 

 その言葉を聞いて、驚きを隠せなかった。【イクスティンクション・レイ】はあのセリカ=アルフォネアが大昔に使ったとされる大魔術である。

 グレンの保有魔力量では使うことは出来ないはずだが、何らかの方法で無理やり使ったというとこだろう。そして、その代償がこれだ。

 

「ク、クソッ……」

 

 それでもグレンは無理やり起き上がろうとするが、すぐに倒れ込んでしまう。

 

「早く……行かねぇと」

 

「先生ッ!」

 

 システィーナの呼び掛けも虚しく、グレンは気を失ってしまう。

 

「先生、先生!ど、どうしよう……このままじゃ」

 

「と、とりあえず先生を安全な所に運ぼう!」

 

「え、ええ!分かったわ」

 

 近くにある保健室──安全面の問題により学院には各階に保健室がある──にグレンを運び、傷のある部分に包帯を巻いていく。

 応急処置として二人で【ライフ・アップ】をかけていく。数分間続けているが、傷は塞がらず、そして、マナ欠乏症も治ってはいない。それでも、二人は【ライフ・アップ】をかけ続ける。少しでもグレンの容態が良くなると信じて。

 その甲斐あってか、すぐにグレンが呻き声を上げ、目を開く。

 

「う……ここは……?」

 

「先生ッ!大丈夫ですか!?」

 

「……ッ!よかった……!」

 

 グレンが目を覚ましたことに気づき声をかける。システィーナも安堵したのか目に涙を浮かべている。

 

「お前ら、やめろ……もう大丈夫だ」

 

 グレンがそう言い魔術の施行を止めさせようとするが、すぐにシスティーナが窘める。

 

「大丈夫なわけないじゃない!放っといたら貴方死んじゃうわよッ!」

 

「というわけで、大人しくしててください。お願いします」

 

 そう言うとグレンは渋々と引き下がる。

 

「……分かった」

 

 そして、グレンは再び目を閉じ、眠りについていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、二人で【ライフ・アップ】をかけ続けていたが、突如甲高い音が部屋に鳴り響いた。

 

「「ッ!」」

 

 二人して肩を跳ねさせる。そして、音の発生源を探す。それはグレンのポケットからであった。

 取り出すと宝石のようなものがでてきたが、未だに音を鳴らしている。

 

「えっと……なにこれ?」

 

 わけも分からずに適当に触っていると、突然宝石から声が聞こえてきた。

 

『グレン!無事か?』

 

 どうやら、通信機のようなものらしい。そして、おそるおそる返事をする。

 

「えっと、どちら様でしょうか?」

 

『ッ!?誰だ!』

 

「は、はい!グレン先生の教え子のトーマ=ハスクです!」

 

 ドスの聞いた声に驚いたが、なんとか自分の事を話す。

 

『……何?グレンはどうした!?』

 

「えっと、グレン先生は……」

 

 通話の相手にグレンの容態を伝える。

 

『そうか……一応、生きてはいるんだな?』

 

「は、はい。ところで貴方は?」

 

『ああ、セリカ=アルフォネアだ』

 

 まさかの人物である。驚きすぎて、返事が出来なかった。

 

『おい、どうした?』

 

「あ、いえ!なんでもありません!」

 

 しかし、これはチャンスかもしれない。なにせ、セリカは第七階梯(セプテンデ)だ。これほど頼もしい味方はいない。

 

「あの!なんとかこっちに来ることは出来ませんか!?そうしたらきっと──」

 

『悪いが、それは出来ない。試したが、転移できなかった』

 

 僕の言葉を遮って返ってきた言葉は否定だった。やはり、現実はそんなに甘くないということだろう。

 

「そ、そうですか……」

 

 ただ、やはり期待はしていた為、少し落ち込んでしまう。

 本当にどうしようか。グレン先生が目を覚ますのはまだ先だろうし、それまでに取り返しのつかないことにならない保証もない。

 うんうんと考えていた僕の耳にセリカの声が入ってくる。

 

『そういえば、少し妙なことがあってな……』

 

「?」

 

『魔力回線を通して、そっちの結界の詳細を調べたんだが……』

 

 さらっと凄いことを言っているが、今は置いておこう。

 

『どうやら、何をどうやっても中から外に出られなくなっているらしい』

 

「えっ?じゃあ、テロリスト達はどうやって外に?」

 

『わからん』

 

 セリカも分からないといった様子だ。これからどうしたらいいのか、全くわからず途方に暮れようとしたその時。

 

「あの……学院の転送法陣から転移させたり出来ないんですか?」

 

 グレンに【ライフ・アップ】をかけ続けていたシスティーナが声を上げる。

 

『いや、それは無理だ。一度完全に構築された転送法陣の設定を変えるなんて──』

 

 そこまで言ってセリカの声が一旦途切れるが、すぐにまた聞こえてきた。しかし、先程とは様子が違い、何かを考えているようだった。

 

『学院の結界をいじった奴なら……』

 

「えっと……アルフォネア教授?」

 

『……あーいや、すまない。だが、もしかしたら奴らの計画が分かったかもしれない』

 

「本当ですか!?」

 

『ああ、あくまで可能性だが──』

 

 話を簡単にまとめると、学院にある転送法陣をテロリスト達が行き先を変えて使う、との事だった。そして、グレンが倒れてから襲撃がないことを考えると、テロリストはあと一人──転送法陣の改変をしている者だけである。さらに、転送法陣の改変には五、六時間はかかるらしい。

 

「という事は、後三時間ぐらい……」

 

『あくまで予想だがな』

 

 これで首の皮一枚繋がったという感じだ。だが、まだ大きな問題がある。

 

「先生……後三時間以内に起きるのかしら?」

 

「うーん、どうだろう……」

 

 グレンの顔色は以前良くない。マナ欠乏症は簡単に治るものではないから当然だが。

 

『とりあえず、後一時間程は寝かしといてやれ。今起こしたところで動けんだろう』

 

「そうですね……」

 

『それじゃあ一旦切るぞ。こちらでもなんとか出来ないか試してみる。また一時間後に』

 

 そう言うとセリカの声は聞こえなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 僕は考える。

 グレンが目を覚ますまでこのままでいいのだろうか?

 それまでに何も起こらないという保証は無いはずだ。

 そんな僕の耳にシスティーナの声が聞こえてくる。

 

「ルミア……」

 

 そんな彼女の顔は不安に満ちていた。今この瞬間にも取り返しのつかないことになってしまうのではないかと心配で仕方ないのだろう。

 

「大丈夫よね……?きっと、またみんなで笑い合えるわよね?」

 

「……」

 

 システィーナが絞り出すように言うその言葉には、心からの願いが込められていた。

 

 システィーナのその言葉に僕は意を決し、言葉を発する。

 

「僕……行くよ」

 

「……えっ?」

 

 システィーナの目を見ながらはっきりと言う。

 

「ルミアを助けに行く」




主人公ステータス

〔知識〕Rank.1_平均的
〔勇気〕Rank.1_なくもない
〔魅力〕Rank.1_人並み
〔優しさ〕Rank.1_それなり
〔伝達力〕Rank.1_そこそこ

コミュ無し


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Struggle till the last!

遅れて申し訳ありません。大学の遠隔授業に振り回されてました、アロンアルファです。

この前P5Sクリアしたんですけど、思ったよりずっとペルソナしてて面白かったです。ソフィアかわいい。


「ど、どうして?後一時間待てば先生が……」

 

「──起きると思う?」

 

 僕がそう問い掛けると、システィーナは黙ってしまう。

 

「システィーナも分かってるでしょ。マナ欠乏症はそんなに軽いものじゃない」

 

「それは……そうだけど」

 

 例え、目が覚めたとしても、満足に体を動かすこともできないだろう。

 そして、歯噛みするシスティーナに僕は続ける。

 

「それに、今この瞬間にもルミアの身に何かあるかもしれない!だから──」

 

「でも、だからってなんの力もない私たちが行っても……」

 

 不安を隠せない様子のシスティーナ。そんな彼女に僕は安心させるような笑みを浮かべる。

 

「大丈夫、僕にはペルソナがあるんだ」

 

「えっ……ぺる、そな?」

 

 突然、訳の分からないことを言い出した僕に、システィーナはぽかんとしてしまう。

 

「ほら、さっき戦った時、変な鎧着た巨人いたでしょ?あれだよ」

 

「え?そんなの……そういえばいたような……」

 

「僕、あれ使えるんだ。だから大丈夫だよ」

 

 正直、全然大丈夫ではないが、今はこう言わなければシスティーナを不安にしてしまうだろう。

 いくらペルソナが使えるといっても、先程の様な相手だと勝ち目は薄いだろう。だが、おそらく相手は今も尚結界を改変し続けている。不意をつけば、その邪魔をすることができるだろうし、それだけ時間を稼ぐこともできる。

 まあ、時間を稼げたとしても大した時間にはならないだろうが、何もしないよりはマシだ。

 

「システィーナには先生の治療を頼みたい。僕より保有魔力量が多いし、単純に魔術の技量も上だからさ」

 

「私が……?」

 

「少しでも先生の回復してあげて欲しいんだ。先生、結構やばい状態だし」

 

「トーマ……私は……」

 

 システィーナは何かを言おうとしたが口を閉じ、覚悟を決めたように頷く。

 

「分かったわ、先生の事はまかせて……だから、ルミアのことをお願い……ッ!」

 

「うん……約束するよ。絶対助けるから」

 

 それだけ言うと、僕は扉に向かう。

 目指すは転送法陣がある転送塔だ。何があるか分からないがやるしかない。

 僕はそう覚悟を決めると扉に手をかけ、ゆっくりと開き外に出る。回りは静寂に包まれている。パッと見は大丈夫そうだが、油断はせずにいつでもペルソナを呼び出せるようにする。

 

「よし……いくぞ!」

 

 そう言い、目的地に向かって駆け出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……凄いな」

 

 転送塔の近くまで来たが、その転送塔を守るようにゴーレムが群がっていた。

 どんだけいるんだよと愚痴を言いたくなるが、これで確信することができた。

 

「ルミアはここにいる……!」

 

 それが分かれば十分だった。僕は四肢に力を込め叫ぶ。

 

「──ペルセウスッ!」

 

 ペルセウスを呼び出し、転送塔へと駆け出す。

 ゴーレム達が僕を止めようと、攻撃を繰り出そうとする。

 

「〈スクカジャ〉!」

 

 先程覚えたばかりの魔法を使う。すると、ゴーレムの動きが遅くなったような感覚になる。その為、ゴーレムの攻撃を避けながら転送塔へと駆け抜けていく事ができる。

 

「そこどいてっ!〈ガル〉!」

 

 邪魔なゴーレムをガルで吹き飛ばす。

 

「どわぁっ!危なっ!痛い!」

 

 ゴーレムの攻撃により、砕けた地面の欠片が体へ降りかかるが、ペルソナによる身体強化で無理やり走る。

 

「よし、着いた!」

 

 そんなこんなで目的地に到着した僕は転送塔の扉を蹴破り、階段を駆け上がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遂に転送法陣がある部屋の前に到着し、扉を開け中を確認する。すると、すぐに目的の人物を発見する。

 

「ルミア!」

 

 薄暗い部屋に飛び込み、ルミアの元へ駆け寄る。

 

「ルミア、大丈夫!?」

 

「トーマ君、危ない!」

 

 ルミアがそう言うのと同時に、僕は結界の壁にぶつかる。

 

「痛っ!?な、なにこれ……?」

 

「おや、これは驚きました。まさか君がここに来るなんて」

 

 後ろから男の声が聞こえる。すぐに僕はその声がした方向に向き構える。すると、声の主が闇の中から歩み寄ってくる。

 僕はいつでもペルソナを呼び出せるようにしていた──が、その男の正体を知ると、驚きで固まってしまった。

 

「──えっ?」

 

「お久しぶりです、トーマ君」

 

 その男は、僕達Ⅱ組の前任の担任講師──ヒューイ=ルイセンだった。

 

「え……?なんで、ヒューイ先生が……?」

 

「それは、私がルミアさんを誘拐するための仕立て人だからですよ」

 

「な、なんでですかっ!?どうして、先生がそんなことを……」

 

 自身の記憶にあるヒューイ=ルイセンという男はこんな事をする様な者ではなかった。生徒達に慕われ、またヒューイ自身も生徒達を愛していた。そんな姿が嘘だったなんて信じられない。

 

 さらに、ヒューイは続ける。自分はルミアを転送法陣で送り届けた後、この学院を爆破する為の人間爆弾である──と。

 

「なっ!?そんなのって……」

 

「もうやめてください!ヒューイ先生、あなたはこんな事する人じゃなかったはずです!」

 

 ルミアが必死にヒューイを説得しようと試みるが、ヒューイは首を横に振る。しかも、元々ヒューイは王族、または政府要人の身内が入学してきた際に殺害する為に在籍したと言う。

 

「しかし、ルミアさんは少々立場が特殊ですからね。殺害ではなく誘拐という形になりましたが、些細な事です」

 

「…………」

 

 どうやら、ルミアはやんごとない身分というやつらしい。だが、今はそんな事はどうでもいい。

 どうすればルミアを助けることができるか、ただそれだけを考える。

 

「……いくら考えたところで、ただの学生にこの法陣を解呪することはできませんよ」

 

「そ、それは……ッ」

 

 僕自身、それは言われるまでもなく分かっていることだった。全部で五段によって構成されているこの法陣、見た限り僕では一段目すら解呪できるかどうか怪しい。

 僕では解呪するのは難しい。だったら他にできそうな人は、と考えるが思い当たるのはグレンぐらいだった。だが、そのグレンも今はマナ欠乏症で、できるかどうか分からない状態だ。

 何かないかと考えを巡らせている、そんな時だった。

 

「ですが、転送法陣が発動するまで、まだ時間があります。学院の地下にある大迷宮へと避難すれば、助かる見込みは十分にありますよ」

 

 突然、ヒューイがそんな事を言い出す。それはつまり──

 

「ルミアを見捨てろってことですか……?」

 

「まあ、そういう事になりますね」

 

 そんな事は認められない、認められないが……現状、ルミアを救う方法に見当がつかない。

 ここでルミアを見捨て、グレンやクラスメイト達を地下迷宮に連れて行けばルミア以外の皆が助かる。とても簡単な事だ。

 だが……

 

「そんな事、出来るわけない……ッ!」

 

 僕は一体何の為にここに来た?何の為の力だ?

 ルミアを救うと決めた筈だ。だったら最後まで足掻いて見せろ!

 そう決意すると共に、僕は法陣に近づこうとする

 

「だ、駄目!早く逃げてっ!私の事はいいからっ!」

 

「……やはり、そうしますよね」

 

 僕の行動にルミアとヒューイ、二人それぞれの反応を見せる。

 

「お願いだから!このままじゃ皆が……!」

 

「僕にとってその()の中には君も入ってるんだ!このまま見捨てるなんてできない!」

 

「でも!」

 

 それでも、僕に逃げてというルミアに僕は言う。

 

「システィーナと約束したんだ、絶対助けるって。また皆で笑い合うんだって!」

 

「っ!」

 

「システィーナは勇気を出してテロリストと戦った!グレン先生だってマナ欠乏症になるまで戦った!皆そうまでして、ルミアを助けたいんだ!」

 

「システィ……先生……!」

 

 僕は感情に任せて言葉を続ける。

 

「僕達の日常にルミアがいなかったら意味が無いんだ!ルミアと一緒に居たいんだ!一人で勝手に諦めるなッ!」

 

「トーマ君……ッ!」

 

 僕は涙を浮かべているルミアに問いかける。

 

「ルミアはどうなの?いつもの日常に、帰りたくないの?」

 

「わ、私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りたいっ!」

 

 

 一度溢れた感情は止まらない。

 

「また皆で笑いたい!色んな事を知りたい!だから、だから……」

 

 ルミアは涙を流しながら最後にこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い……助けて……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たな見出したり

 

ち、

一筋なり

 

「恋愛」のペルソナをせし

みへと祝福えん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、これは……!」

 

 心が満たされるのを感じる。一瞬だが、確かにルミアとの繋がりができた。そして、新たな力を手に入れたことも理解した。その力が今まさに欲していたものだということも。

 

 トーマが右手を突き出す。すると、一枚のカードが舞い降りてくる。そして、心の中にある新たなペルソナの名を叫ぶ。

 

「来い──アンドロメダ!

 

 手の平にあるカードを握り砕く。すると、トーマの背後に金色の髪を靡かせ、白の衣を見に纏い、大きな杖を持つ女性型のペルソナが現れた。

 

「え……?」

 

「な、なんですか……これは?」

 

 それを見ていた二人は共に驚きを隠せずにいた。

 

「アンドロメダ、〈アナライズ〉!」

 

 そのスキルを使用すると、転送法陣に関する情報が頭に流れてくる。その情報を元に解呪術式を組み立てていく。

 

「《原初の力よ・我が血潮に通いて・道を為せ》!」

 

 右手の手首を噛みちぎり、そこから流れ出た血を黒魔【ブラッド・キャタライズ】で魔術触媒に変化させた。そして、〈アナライズ〉によって作り上げた解呪術式を法陣の一段目に書き込んでいく。

 

「《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし》!」

 

 解呪術式を描き終えると、黒魔儀【イレイズ】を起動させる。すると、法陣の一段目が光の粒子となって消えていった。

 

「やった……!」

 

 解呪に成功したという事実に舞い上がりそうになるが、まだ四つも残っている。すぐに同じように二段目に取り掛かるが、やはり当然と言うべきか、難易度が上がっている。

 

「えっと……こっちが……」

 

 先程より増えている情報を整理し、解呪術式を組み立てていく。幸いな事に時間はまだまだ残されている。ゆっくりと、しかし着実に組み上げていく。

 

 そして、二段目、三段目と法陣の解呪を終わらせる。だが、四段目に取り掛かろうとしたその時、自身に異変が起きる。

 

「はぁ、はぁ……次っ……て、あ……」

 

 視界が歪む。そして、体に上手く力が入らずにそのまま倒れてしまう。

 

「トーマ君っ!?」

 

 ルミアの悲痛な叫びが響く。

 何とか体を起こすが、先ほどまでとは比べ物にならないほどの疲労が浮かんでいた。

 

「はぁ、はぁ……〈アナライズ〉……!」

 

 そして、再び解呪術式を組み上げようとするが、明らかに集中できなくなっている。それでも、先程の二倍以上の時間をかけながらも、何とか解呪術式を組上げ、法陣に書き込んでいく。

 

「《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし》……!」

 

 そして、四段目の解呪も成功。だが、ここでトーマの動きが止まる。

 悟ってしまったのだ。このままでは解呪できないと。今の自身の保有魔力量では五段目を解呪するのに少し足りない。しかも、何故かは分からないが、ペルソナを呼び出すことができなくなってしまう。

 

「クソっ……!後、少しなのに……」

 

 ゴールまであと一歩だというのに、その一歩が果てしなく遠い。

 焦り、恐怖、絶望。様々な負の感情が頭の中に渦巻いている中、それでも諦める事はできず、ペルソナを呼び出そうと右手を前に出す。しかし、いつまで経ってもカードは降りてこない。

 

 もうダメなのか?やはり僕では無理なのか?所詮ただの学生にはこれが限界だというのか?

 トーマの中で何かが崩れようとした、その時──

 

 

 

 

「やっと、届いた……!」

 

 伸ばした右手に何かが触れた。それは、ルミアの手だった。

 

「トーマ君……私も、一緒に頑張るから……諦めないで!」

 

「ルミア……?」

 

 その瞬間、ルミアの体が光り始め、その光が触れた部分からトーマの体に伝わる。

 

「……ッ!力が溢れてくる……!」

 

 何が何だかよく分からないが、今ならいけると確信した。

 

「うぉおおお!ペルソナァッ!」

 

 アンドロメダを呼び出し〈アナライズ〉。頭の中を巡る膨大な情報の中から、必要なものだけを抜き出し、解呪術式を作る。

 

「よしっ!……これで、最後だ!」

 

 勢いよく手を動かし、法陣の上に書き込んでいく。そして、最後の解呪術式を書き終える。

 

「《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に解放すべし》──!」

 

 その瞬間、法陣から溢れんばかりの光を発し始める。そして、視界が白に染る中、ピシリ、と何かが壊れるような音がした。

 次第に光が収り、目の前にはルミアがいた。その足元にあったはずの転送法陣は、最初から何も無かったかのように、綺麗さっぱり消えていた。

 

「はは……やった、やったぞ……!」

 

「トーマ君ッ……トーマ君ッ!」

 

「おわぁっ!」

 

 感極まったルミアが飛びついて来た為、尻もちを着いてしまう。

 

「……僕の負けですか、ふふ」

 

 そんな二人を見ながら、ヒューイは知らず知らずの内に笑みを浮かべていた。それはまるで、守りたいものを守れたというように。




主人公ステータス

〔知識〕Rank.1_平均的
〔勇気〕Rank1→2_やるときはやる
〔魅力〕Rank.1_人並み
〔優しさ〕Rank.1_それなり
〔伝達力〕Rank.1_そこそこ

コミュ
「恋愛」■□□□□□□□□□
ルミア=ティンジェル


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Wonderful days

現在、久しぶりにP4Gをやっているアロンアルファです。
とりあえず、前回のオリジナルペルソナの「アンドロメダ」の簡易ステータスです。

【恋愛】アンドロメダ
物火氷雷風光闇
ーーーーーーー

《スキル》
アナライズ

後方支援型ペルソナですね。トーマ君一人で戦闘も解析もやってもらいます。

にしても、中途半端な文字数になってしまった。前話と合わせてしまおうか……



 アルザーノ帝国魔術学院自爆テロ未遂事件。

 

 この事件が解決してから早一ヶ月が経とうとしていた。

 この事件は関わっていた組織──天の知恵研究会──が組織であっただけに、周りへの影響も考えて、内密に処理された。学院にできた数々の破壊痕も、魔術実験の暴発ということで公式に発表された。

 

 だが、実際に被害にあった生徒が存在し、街でもひと騒ぎ起こしていた為、完全に闇に葬られたという訳ではなかった。

 様々な噂が噂を呼んだりしたが、一ヶ月も経てば人の関心は薄れていった。今ではほとんどの人が日常に戻っている。事件の当事者達も例にも漏れずに、平和な日々を過ごしている。

 

「……にしても、大変だったなぁ」

 

 ルミアを助けた後、力を使い果たした僕はその場で気絶してしまったらしい。

 次に目が覚めた時に聞いた話では、あれからしばらくして、警備員達がやってきたらしい。そして、ヒューイ先生が連行されようとした際に、ヒューイ先生は伝言を残していった。それは『ありがとう』という言葉だった。

 どうやら、今回の一件はヒューイ先生にとって何かが変わるきっかけになったらしい。それが何なのかは分からないが、きっと悪い事ではないだろう。

 

 そして、目を覚ました僕に待っていたのは事情聴取だった。その時にペルソナの力に関して洗いざらい吐いた。言葉だけでは信用できないと思い、実際に召喚しても見せた。幸い、グレンやシスティーナ、ルミアらの証言もあり、信用して貰えたようだ。

 

 次は事件の当事者達──トーマ、グレン、システィーナ──に今回の事件の中心人物とも言えるルミアの素性について聞かされた。

 なんと、ルミアは三年前に病死したはずのエルミアナ王女だった。そして、異能者であるということも。まさかの正体に開いた口が塞がらなかった。この事はシスティーナも知らなかったらしい。

 そして、僕達三人は事情を知る者として、協力を要請された。

 

「といっても、ルミアとの関係は前と変わらない。そうですよね?先生」

 

「んあ?いきなり何言ってんだよ、お前」

 

 隣で怠そうな声をあげるグレン。この一ヶ月の事を思い耽っている間にいつの間にか来ていた。

 

「いや、やっぱいいです。ところで、先生は何やってるんですか?」

 

「面倒くさくなりそうだったから逃げて来た」

 

「……ああ、今日の授業のやつですか」

 

 たしか、『金にとてもよく似た別の何かを作り出す方法』だったか?これはシスティーナがすごく怒りそうだ。

 そんなどうでもいい事を考えながら、前から聞きたかったことを質問する。

 

「ところで、話は変わるんですけど……」

 

「なんだよ?」

 

「グレン先生、軍で働いていたって本当ですか?」

 

「……ああ、本当だよ。前にも言ったが、四年だけやってすぐ辞めた愚か者だよ……って、こんなくだらねぇ事聞きたかったのか?前にも少し話したろ」

 

 グレンの言う通り、事件の後に少しだけ教えて貰ったのだ。

 

「あはは、そうですね。先生にお願いがあって……」

 

「はぁ?お願い?」

 

 トーマはグレンの方に向き頭を下げる。

 

「先生!僕の事を鍛えてくれませんか?」

 

「……何?」

 

 グレンの目が見定めるような目付きになる。

 

「今のままじゃダメだって思うんです。僕がペルソナの力に目覚めたのだって、きっと何か意味があるんだって……」

 

「…………」

 

「後悔したくないんです。大事なものを目の前で失うような事は嫌なんです……!」

 

 必死に頭を下げ続ける。すると、ため息を着くような音がする。

 

「……仕方ねぇな。いいぜ、やってやるよ」

 

「いいんですか!?」

 

 驚きのあまり、聞き返してしまう。

 

「まあ、元からそうするつもりだったしな」

 

「え?どういう事ですか?」

 

「言っとくけど、今じゃお前だって異能者の一人なんだぞ?これは自衛できるようなる為でもある」

 

 どうやら、自分の事を心配してくれていたらしい。

 

「お前のペルソナだったか?正直、かなりチートだ。魔術と似ていても決定的に違うところがある。なんだか分かるか?」

 

「えっと……分かんないです」

 

「はぁ……自分の事なんだし、もう少し理解しておけ」

 

 呆れられてしまった。

 

「魔術ってのは、まあ簡単に言うと対象に手を向け、呪文唱えてから発動するが、お前のペルソナの技はそれらの過程をすっ飛ばしている。これじゃ魔術じゃなくて魔法(・・)だな」

 

「……確かに」

 

「魔術なら対抗呪文唱えたりして対処できるが、お前の魔法じゃそれができん。これが魔術師同士の戦いでどれだけ優位に立つか……」

 

 そして、グレンは真面目な顔つきでトーマに告げる。

 

「これからお前も危うい立場になるかもしれん。だから、ある程度までは俺がしごいてやる。感謝するんだな?」

 

 そう言うグレンの顔には笑みが浮かんでいた。

 

 グレンの不器用な好意が伝わってくる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たな見出したり

 

ち、

一筋なり

 

「魔術師」のペルソナをせし

みへと祝福えん…

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、明日の朝から始めるぞ」

 

「……はいっ!よろしくお願いします!」

 

「……ふん」

 

 そう言うグレンの頬は少しだけ緩んでいた気がする。

 

「さて、それじゃあ俺は──」

 

 グレンがそれを言い切ることはなかった。

 

「探しましたよ!先生!」

 

「げっ、白猫……」

 

 そこにやってきたのはシスティーナだった。後ろにはルミアもいる。

 

「今日という今日は許しません!何ですか、あの授業は!?」

 

「ちっ、また説教かよ……そんなんだから白髪が増えるんだぞ?」

 

「だから、銀髪です!」

 

「まぁまぁ、システィ落ち着いて」

 

 ギャーギャーと騒ぐグレンとシスティーナ、それをを宥めるルミア。

 こんなくだらなくて騒がしい日常。でも、何より替え難いモノだ。あの時、頑張って良かったと心の底から思う。

 これからも、この平和な日々を守れるように頑張ろうと、僕は改めて決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たな見出したり

 

ち、

一筋なり

 

「愚者」のペルソナをせし

みへと祝福えん…

 

 

 




主人公ステータス

〔知識〕Rank.1_平均的
〔勇気〕Rank.2_やるときはやる
〔魅力〕Rank.1_人並み
〔優しさ〕Rank.1_それなり
〔伝達力〕Rank.1_そこそこ

コミュ
「愚者」■□□□□□□□□□
???
「魔術師」■□□□□□□□□□
グレン=レーダス
「恋愛」■□□□□□□□□□
ルミア=ティンジェル


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