鏑矢達の月光曲 -契約者達への鎮魂歌・外史典- (渚のグレイズ)
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第一話

春レンち可愛過ぎて、気付いたら完成していた。
後悔はしていない。今は反芻している。


かつて、日本の首都であった東京の渋谷には、"ハチ公"と呼ばれる犬の銅像があったらしい。なんでも、待ち合わせには定番のスポットなのだとか。

いずれ見てみたいとは思うが、神樹様の教えによって、壁の外へ出る事は禁じられている。

それでなくとも、壁の外は終末戦争の傷跡の残る大地だ。きっと、生身の身体一つでは渋谷にたどり着く事すら、困難だろう。

 

「お待たせしたわ」

 

私───乃木葛葉(くずは)がそんな物思いに耽っていると、正面から声をかけられた。

閉じていた瞳を開くと、目の前に、美少女がいた。

 

ウェーブのかかった長く艶やかな黒髪。

宝石を思わせる煌めく瞳。

それらを彩るかの如く頭頂に添えられた、チャームポイントのいつもの帽子。

服装はいつもと違い、蒼いワンピースの上から上着を着ていた。

普段見慣れないその艶姿に、流石の私も言葉を失う。

 

「・・・・・・・・・・」

「あら?どうかしたの?黙りこくったりして」

「・・・・・・・・・・別に」

「もしかして、弥勒に見惚れてた、とか?」

「違うっ!!」

 

と、売り言葉に買い言葉で吠えてから気付いた。此方をからかうように、妖艶に嘲笑(わら)う少女のペースに乗せられてしまっている事に。

自分の心を落ち着ける意味も込めて、一つ咳払いをする。

 

「・・・・・・・・・・・・服装一つで、こんなにも印象が違うものなのだと、そう思っただけだ」

「つまり、弥勒の艶姿に心奪われた、という事ね」

「何故そうなる・・・・」

 

自信満々に言い切るとは・・・・・相も変わらず剛胆な女だ。

 

「─────────というか、分かっているのか?これは任務なのだぞ?遊びでやっている訳ではないのだぞ」

 

お遊び気分でいるこの女に釘を刺す。が、

 

「ええ、勿論。貴方以上に理解しているわ」

 

私の右隣までやって来て、真面目なトーンで告げてきた。

その横顔は、年不相応の戦士の顔であった。

 

「──────なら、良い。行くぞ蓮華」

「ええ、良くってよ」

 

そう言って女────弥勒蓮華は私の右腕に腕を組んで身体を押し付けてきた。

 

「おい」

「フリとはいえデートなのだから、恋人らしく振る舞うべきではなくて?」

「────────────好きにしろ」

「ええ、好きにするわ」

 

まったく・・・・何故こうなった・・・・?

 

―――――――――――†――――――――――

 

 

神世紀72年

 

 

"終末戦争"と呼ばれる戦いが終わり、激動の時代を生き抜いた人々が皆、死去した年。

神樹様の神託によって、四国内にて"淀み"から産まれる怪物『妖忌』が発生した事が告げられた。

このまま放置しておけば、いずれ人々に影響を及ぼすだろう。

そこで大赦は、神樹様の力を与えられた特別な少女達を召集。同時にその補佐役として、魔術に長けた者───魔術師にも協力を仰ぎ、対策部隊を設立した。

 

 

その名は『鏑矢』

邪気を払う、魔除けの鏃。

 

 

「・・・・・よし。良いわ!」

「──────葛葉流()()破砕松釘(はさいしょうてい)

 

ターゲットは、既に一般男性に獲り憑いていた。なので、路地裏に誘い込んでから、行動を開始。

協力して動きを封じ、蓮華が男に張り付けた護符によって、涌き出てきた黒い泥のような物体に向かい、左拳による()()を繰り出す。

私は、乃木の名が示す通り、かの大戦の英雄『乃木若葉』の孫息子だ。(葛葉の名から女と思われがちだが、れっきとした男である)

しかし、どうした訳か、私には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

それはまるで呪いの如く、刀を振るえばすっぽ抜け、細剣を持てば刃が折れた。

ありとあらゆる剣で試したが、どれも結果は変わらず、悩みに悩んだ末、編み出したのが・・・・・『自身の四肢を剣に見立てる』事だった。

 

「相変わらず、お見事ね」

「・・・・・いや、まだまだだ。このままでは、私はお婆様に顔向けできない」

 

苦し紛れの方法に、それらしい名前を付けて造り上げた、私だけの『剣術』。

認める者は数少なく、故に私は、証明し続けなければならない。

 

「私が、『乃木』である限り・・・・・!!」

「──────ふふ」

「・・・・・・・・・何が可笑しい」

 

嘲られたのかと思い蓮華の方を睨むが、蓮華は優しく微笑んでいた。

 

「気に触ったのならごめんなさい。ただ、貴方のそのひたむきな姿、すごく、素敵だったから」

「──────────またそうやって、お前は」

「あら、言った筈よ?『弥勒は、いつか貴方を弥勒のモノにする』・・・と」

「言った筈だ。『私は誰のモノにもならない、私が"乃木"である限り』」

「知ってるわ。でも、その程度で弥勒が諦める訳、なくってよ」

 

挑戦的に笑う蓮華に、私は辟易しながらも跡処理を始める。

と、その時、蓮華の端末から着信音が鳴る。

 

「弥勒よ───────ああ、瑛次。そっちも終わったのね?──────そう、分かったわ。11(ヒトヒト):50(ゴーマル)にいつもの場所に。じゃあね」

 

どうやら別動隊の方も終わったらしい。

あのふにゃふにゃコンビが無事に事を治められたのか・・・・

 

「葛葉」

「む・・・・・?」

 

跡処理が終わり、路地裏から出た瞬間、蓮華が再び右腕に組んできた。

 

「集合まで時間があるのだし、このままデートの続きをしましょう」

「・・・・・・・何ぃ?」

 

こいつはいったい何を言っている?

 

「あら、弥勒がデートのお誘いをしているのよ?殿方としてはこの上なく名誉な事なのだから、光栄に思いなさい♪」

「───────勘弁してくれ」

 

満面の笑みを浮かべる蓮華から顔を背けつつ、私は、いつも通り、蓮華に振り回されていた。

 

 

 




キャラ紹介①
─乃木葛葉─

英雄・乃木若葉の孫息子。14歳。
祖父母に憧れ剣士を目指すが、才能が全く無かったので虚○流になった少年。
真面目。堅物。
弥勒蓮華に好意を寄せられている事には気付いているが、それに答えるつもりは微塵も無い。一人称は『私』

仁根(ひとね)という妹がいる。


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第二話

よもや、いつかどこかで言ったネタ
『ギャングダンスを踊る赤嶺ちゃん』を自分でやることになろうとは・・・・・


『Vocal percussion on a whole another level!』

『Comming from my mind!』

 

燦々と照らす太陽の下、陽気なリズムに乗って私は踊る。

 

 

『Vocal percussion on a whole another level!』

『Comming from my mind!』

 

周りには、私のダンスに惹き付けられて、いつの間にか人だかりが出来ていた。

 

『Ha』

『We're Golden Wind』

『Kono me amareri maroreri merare maro』

 

「さあ!もっとテンションアゲて行くよ!!」

 

『Ha ha』

『We're Golden Wind』

『Kono me amareri maroreri merare maro』

 

「ほら!みんな一緒に!!!」

「うん!」

 

『It's like a burning sunrise』

『Ahi makareru makare pun pun kete』

『It's like a burning sunset』

『Ahi makareru makare pun pun kete』

 

『It's like a burning sunrise』

『Ahi makareru makare pun pun kete』

『It's like a burning sunset』

『Ahi makareru makare pun pun kete』

 

人だかりの中から()()()()()()()が聞こえ、彼が私の前に来て一緒に踊り始めると、ギャラリーのみんなもだんだんと一緒に踊り始めた。

 

 

うん。やっぱりみんなで踊ると楽しいな♪

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

「んもー、瑛次くん遅いよー!待ちくたびれちゃった」

「ご・・・・ごめんね?」

「また迷子になっちゃったの?」

「実は・・・・・・えへへ」

 

女の子みたいな顔で照れ笑いを浮かべるこの男の子は、弥勒瑛次(えいじ)くん。

レンちの弟さんで、私の恋人。そして────

 

「もう・・・瑛次くんはしょうがないなぁ。ほら、行こっ!早くしないと行っちゃうよ!!」

「あ、まってよ友ちゃ~~ん!!」

 

私の、()()()()()()()()()()()()()

 

―――――――――――†――――――――――

 

私達『鏑矢』のお役目は、敢えて言うなら『治安維持』だ。

旧暦の時代に、神樹様が張り巡らせた霊脈に生まれつつある"淀み"。それが発生し過ぎると、大勢の人に悪影響を及ぼすと、大赦からは説明された。

 

『鏑矢』は、その"淀み"を祓い、乱れた霊脈を整えるのがお役目なのだ。

 

「───────居た。見つけたよ、友ちゃん」

「それじゃ行こうか────────火色舞うよ」

「よぉし─────────仕事の時間だ」

 

スイッチングの台詞を呟き、二人同時に行動開始。

 

 

今回の標的はとある中小企業のOLさん。

瑛次くんの力作『風水スコープ』を使って見てみると、かなりの邪気が溜まっているのが判る。

誰にも見つからないように、OLさんを路地裏へと素早く引きずり込むと、両腕を縛って座らせる。

 

()ッ」

 

瑛次くんが、OLさんの顔にお祓い札を張り付けると、身体から真っ黒な泥みたいなのが溢れだす。

これが"邪気"

私の仕事は、この邪気を祓うこと。

 

「────勇者ぁパンチ!」

 

神樹様から力を貰っている私は、パンチ一つで邪気を祓うことができる。あんまり強いのは、流石に何発か打ち込む必要があるけど・・・・

 

「・・・・・・ふぅ。お役目完了~♪お疲れ様」

「はぁぁぁぁぁぁ~~・・・・無事に終わって良かった~~」

「瑛次くんは心配性だなぁ」

「だって~~・・・・」

 

泣きそうな顔でうじうじする瑛次くん。

もう!可愛いんだから~~♥️

 

「よしよ~し、良い子良い子♪」

「やめ・・・・むぅぅぅ・・・・・・」

「え?止めて欲しいの?」

「──────────────────────続けてくれる?」

「もっちろーーん♪」

 

ぎゅう~~っと抱き締めておもいっきり頭を撫でる。

それだけで瑛次くんは幸せそうな顔でうっとりしてくれるから、すごく可愛い♥️

 

「・・・・・・・・・・・あ、そ・・・そろそろ姉さんに連絡・・・・」

「えー?後にしようよー?」

「だ・・・・ダメだよぉ!報連相は大事!だよ!」

「ちぇー」

 

仕方ないから離してあげる。

 

「ふぅ・・・・・じゃ、電話するから・・・・・いたずら、しないでよ?」

「はーい」

 

さて、それじゃそろそろOLさんを解放してあげなくちゃ。

お祓い札には記憶処理の効果もあるそうで、両腕を自由にしてあげてお札を剥がせば跡片付けはおしまい。

 

さぁて♪瑛次くんにイタズラしーちゃおっ♪

 

「────うん、分かった。11(ヒトヒト):50(ゴーマル)にいつもの場所だね。それじゃ─────うわっ!?」

 

電話が終わると同時に、瑛次くんを押し倒す。

お役目の後は、どうしても、身体が熱くて仕方ないんだよね・・・・・

 

「・・・・・うふふ♪」

「ゆ・・・・・友ちゃん・・・・ダメだよ・・・・こんな場所じゃ・・・・・」

「ごめんねぇ瑛次くん。私、もう・・・ガマンできないや♥️」

「え・・・・あ・・・・ちょ・・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、待ち合わせの時間には、なんとか間に合った。

 

 

 

 

 




キャラ紹介②
─弥勒瑛次─

弥勒蓮華の弟。男の娘型草食系男子。
少女のような風体がコンプレックスだったが、赤嶺に気に入られて(アレ的な意味で)いただかれて以来、どうでも良くなった。
赤嶺とはその時から恋人同士。始まりがそんなんで良いのか。
戦闘は不得手だが、その分、独学で猛勉強し開発した特殊道具等でチームに貢献している。
いつも身に着けているネックレスの指輪には、とある秘密が隠されている。



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第三話

先月号買わずに今月号のGマガ買っちゃったけど、うひみの続きが恐くて読めねぇよぉぉ・・・・・・(ボロ泣き)


「つまり・・・・・えっちな事したんやな?」

 

半眼になって直球弩ストレートな質問をするのは、私たちのお目付け役の巫女、桐生静。エセ関西弁がトレードマーク(?)の中学三年生。ちなみに私も中三だったりするが、上下関係に厳しい静とは違い、私は別にそこまで頓着しない主義だ。

 

現在、我々は寄宿舎の静の部屋に集合している。『鏑矢』の仕事が終わった後は、この部屋にて報告会を行うことになっているからだ。

しかし・・・・・もう少し部屋の整頓を心掛けた方が良いのでは無かろうか?一見、綺麗に見えなくもないが、ギチギチに押し込められた戸棚が、今にも破裂しそうになっている。整理整頓くらい出来ないのか、コイツは・・・・そんなだから男が一人も寄り付かないのだよ・・・・

 

「カツ・・・・今、失礼な事考えへんかったか?」

「気のせいだろ」

「・・・・・・まぁ、ええわ。んでアカナ、えっちな事、したんやな?」

「えっと・・・・・・うん♥️」

「『うん(はーと)』や、ないわぁ!!ど阿呆ゥ!!!!!!」

 

しぱーん!と静が、何処からともなく取り出したハリセンで友奈の頭を叩く。

 

「フッ・・・・良いじゃないですか。愛し合う二人の時間は大事、ですよ?」

 

コイツはコイツで何を言っているのか。そして、当事者の片割れたる瑛次は、さっきからずっとおろおろするばかりと来た。

まともなのは私だけか。

 

「・・・・・なんでこんな連中が」

「にーさま、神樹様のご判断なのです。信じてあげなくっちゃ、なのです」

「・・・・・・・・・仁根か」

 

私の呟きに答えたのは、今やって来た少女。私の妹の仁根だ。

 

「おっ、待っとったでーヒトっち~」

「ねーさま方、遅れてすみません、なのです~」

「仁根ちゃん、身体は大丈夫かい?」

「はい~、今日はいつもより調子が良くて・・・・ちょっと近くをお散歩してきてしまって・・・・」

「ふぅん、それで遅れて来たのね」

 

仁根は私の三つ下の妹で、生まれつき体が弱い。

今日はいつもより顔色も良く、私の方から誘ったのだ。

 

「気持ちは理解できるけど、約束の時間に遅刻するのは良くないわ。貴女はいずれ弥勒の義妹となるのだから」

「れんげねーさま・・・・ごめんなさい、なのです」

「人の妹に何を吹き込んでいるか」

 

まあ良い。蓮華の言う事には一理ある・・・・義妹云々は理解出来ぬが。

 

「仁根、お前も乃木家に産まれたのだ。その名を汚すような行いは慎みたまえ」

「・・・・・・はい、申し訳ありません、です」

「──────────散歩なら、この後いくらでも付き合ってやる。それで我慢してくれ」

「!!はいっ♪」

 

やれやれ、たかだか散歩の約束をしただけで、暗い顔だったのが華やかな笑顔に大変身だ。我が妹ながら、単純な奴。

 

「フフフ・・・・♪」

 

・・・・・何故か蓮華がこちらを見て微笑んでいるが、私には関係有るまい。

 

「はいはーい!ヒトっちも来たことやし、定例の報告会、始めよかー」

「では弥勒から」

 

静の号令から、部屋の空気は一変する。

真っ先に手を挙げたのは蓮華だ。

 

「瑛次のスキャニング結果を元に、周辺を探索した処、憑依体が一体ずつ、それぞれ男性とOLに取り憑いていたのでこれを除去。その際、"忌人化"の兆候は見られませんでした」

「前回同様、今回も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。探索の結果、やはり邪気だけが消失していた。これは個人の見解だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思う。以上だ」

 

蓮華の報告に続いて、私が私見を交えた報告を行う。

静は「ふむ・・・・・」と呟き、少し沈黙する。

 

「あのー・・・・・」

 

おずおず、といった雰囲気で手を挙げたのは瑛次だ。

 

「もし、これが前回と同一犯だとすると、多分ですけど、相手はきっと、良くないことを企んでいるとおもいます・・・・・どんなことかまでは、わかりませんけど・・・・・」

 

その意見には賛同だ。どのような目的があるにせよ、邪気なんて物を集めているのだ。ろくでもない事に使うに決まっている。

 

「どうしてそう思うの?瑛次くん。もしかしたら、ボランティアで協力してくれているのかもしれないのに」

 

能天気な事を言う・・・・・コイツは邪気がどんな物なのか、理解しているのだろうか・・・・?

 

「あのね、友ちゃん。邪気は集まれば集まる程、その力を増していくんだ。妖忌が邪気を溜め込むのは、そうやって成長しようとしているからなんだよ」

「そうだったんだ!?」

 

駄目だコイツ・・・・・そんな基礎知識すら無いとか・・・・・・

 

「沢山邪気を溜め込んだ妖忌が、忌人に進化したこと、前にあったよね?妖忌や憑依体が忌人になる前に対処するのも、ぼくたち『鏑矢』のお仕事の一つなんだよ」

「そっかー、気脈を正すだけがお仕事じゃないんだねー・・・・」

 

"忌人(キジン)"

 

人の形をした邪気の塊。知性も人並みで、個々に自我を持つ存在。

かの『終末戦争』に於いて壁の外の人類を駆逐したのが、忌人の群れなのだと、お婆様は語ってくれた。

 

そんな物が、この四国に再び蘇ったとしたら、どうなるのか。そんなもの、火を見るよりも明らかだ。

 

「食い止めねばならぬのだ。我々が・・・・お婆様達が命懸けで護った、この四国を護る為に・・・・」

「にーさま・・・・」

「・・・・・せやな」

「うん・・・・!」

「が・・・・がんばります!」

「貴方に言われるまでも無いわ・・・・!」

 

私の意志に、皆が同意してくれる。

 

時折、『何故』と思う事はあるが、それでも、彼女達の持つ志は、神樹様に見初められるだけの事はあると、そう思う。

 

 

そうして、今日の報告会は終了した。

 




キャラ紹介③
─乃木仁根─

葛葉の妹。文武両道の天才児。
出産時の"事故"により、生まれつき体が弱く、激しい運動はできない。
葛葉と違い、剣に槍に弓に…と、ありとあらゆる武具を使いこなせるが、病弱故にそれが充全に発揮されることはほとんど無い。

普段はベッドの中で空想の世界に浸りながら過ごしているが、体の調子が良い日は、葛葉との散歩を楽しんでいる。

モデルは勿論、乃木園子(小)。イメージとしては、綺麗な園小



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第四話

まさかのゆゆゆいのアニメ化!!しかもショートアニメ!!!ひゃっほうですナ!!!!!!こいつァ楽しみだずェ!!!!!!!!!


「才能が無い」

 

 

その言葉を、私は幾度となく吐きかけられてきた。

それでも努力し、懸命に知恵を振り絞り、そうして葛葉流剣術は誕生した。

だが、それも完成とは程遠い。研鑽の余地は大いに有り、改修すべき事柄も多々ある。

それでも、私は決して諦めない。

 

「積み重ねた物は、いつか、お前の助力となる」

 

仁根以外で、唯一の身内での味方であったお婆様は、生前にそう私に言って下さった。

だからこそ、その言葉に従い、私は努力を怠らない。

全ては、四国に住まう無辜の民の為に………

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

「誘拐事件の調査協力?」

「せやで」

 

仁根との散歩(何故か蓮華まで着いてきた)を楽しんだ翌日、静から言い渡されたオーダーは、どう考えても我々が扱うには分不相応な物だった。

 

「なんで私たちが?そういうのって、警察のお仕事なんじゃ・・・・」

「アカナの言う事は尤もやな。せやけど、これはおカミの決定なんや・・・・みんな、頼むで・・・・」

 

上の決定・・・・つまり、このオーダーを発令したのは、現筆頭巫女か、或いは・・・・・

 

「えっと、とりあえず任務については分かりました。それで、具体的には何を・・・?」

 

瑛次の質問に、静は象頭町周辺の地図を広げて答える。

 

「今回の任務では、男女別々に別れてもらうで。カツとエージはこの辺、アカナとロックはこの辺の調査や」

「なんでいつものペアじゃないんですか?」

「今朝、神託で『そうしろ』って言われたんや。堪忍な」

 

友奈の問いに静はあっけらかんと答えた。

 

「神託かぁ・・・・じゃあ、しょうがない・・・かな」

「瑛次、葛葉の足を引っ張らないようになさい」

「ど・・・・努力します・・・・!」

「問題無い。蓮華も瑛次も、私にとっては然程大差は無い」

「良かったわね、瑛次。葛葉は貴方の事を『弥勒には劣るけど、優秀で必要な人材』と思っているそうよ」

「お前のそういう所、本当に凄いと思うよ。見習いたいとは、小指の薄皮程にも思わないがな」

 

何はともあれ、オーダーは下った。

疑問は有れど下されたならば、遂行するのが我々の使命だ。

各員、早々に準備を行い、指定ポイントへと向かうのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

さて、何気に初めてだな。瑛次と組むのは・・・・

 

「気負わず、いつも通りにやれ。戦闘は私がやる」

「お・・・・お願いします」

 

こいつはいつもオドオドしている。

その癖、魔導知識と機械知識は、鏑矢随一だ。

姉と違い、自分に自信が無いのだ、こいつは。

 

「・・・・・瑛次」

「は・・・はいっ!?」

「私は、お前の知識に関しては、尊敬に価する物であると思っている。蓮華の様に・・・・と迄は言わぬが、自信を持て。お前は、他者に誇れる物を持っているのだから」

「─────先輩」

「・・・・・・・・・・・・行くぞ」

 

・・・・流石に、誰かを褒めるのは照れ臭いな。

 

等と考えていたら、目の前に一人の女性が現れた。

くすんだ赤い髪の長身細身の女性だ。顔つきが、何処と無く友奈に似ている気がする。

 

「はじめまして~♪乃木葛葉くんと、弥勒瑛次くん・・・だよね?」

「───────────だとしたら?」

 

瑛次の前に進み出て、目の前の女を睨み付ける。

 

「まあまあ、そんなに怖い家屋しないで欲しいなぁ」

 

女は嗤って、懐からアンプルのような物体を取り出した。中には黒い泥のような何かが入っている。

まさか・・・・あれは!?

 

「・・・・・邪気!?まさか、貴女が集めていたんですか!?」

「ピンポンピンポ~~ン♪だ~~いせ~~いか~~い♪」

「・・・・・それをどうするつもりだ」

「え~?分かってる癖にぃ~~」

「・・・・・・・・・・・・チッ。何が目的だ」

 

あの量、周辺の通行人を"忌人化"させるには充分な量だな・・・・・

瑛次も居る今、下手に動けない。ここは相手に従う他無いだろう・・・・

 

「じゃ、あたしに着いてきてね~♪」

 

言われるがまま、私と瑛次は女に着いていく。

しかし、このまま奴の言いなりになるつもりは毛ほども無い。

その為にも、蓮華達に状況を伝えなければ………

 



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第五話

本編の補完の意味合いも含む、今回のお話。

どうぞ、御堪能下さい。


それはそうと、今月の新規URの大満開ゆーゆ、ヤバいですね♪
お金無いから回すのは来月だな




連行された先は、『テナント募集中』の張り紙が大量に張られた雑居ビルの地下。

 

「・・・・よもや、こんな場所に基地を併設していたとは」

「気付かなかった?そりゃそうだもん。このビル、()()()()()()()()()()()()()()()()()♪」

「なんだと?」

 

どういう事だ?まさかとは思うが、大赦内に裏切り者が・・・・?

 

「まーまー、そんな事はどうだっていーじゃん。それよりも・・・・はい、とーちゃっく♪」

 

案内された先の地下室は案外広く、室内には大小様々な機器が設置されていた。

 

「ようこそ~♪私のラボラトリーへ。歓迎するよ・・・・盛大にね♪」

「────────」

「・・・・・・・・」

「そんなに警戒しなくたって、別に何もしないよ~~」

 

にへら、と笑って敵意が無い事を示すが、油断は出来ない。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「はー・・・やれやれ・・・・今日はキミ達にお願いがあったから、ここに案内しただけなのになぁ~~」

 

友奈似の女が残念そうに首を振る。

 

「・・・・・・・お願いって、どんな内容ですか?」

「簡単だよ。お願いっていうのはね~~・・・・」

 

瑛次の質問に、女が別の部屋へと何かを取りに行った隙に、瑛次を問い詰める。

 

「おい瑛次・・・・!」

「危険でも、ちょっとでも情報は欲しいじゃないですか・・・・!」

「理解はできるが、何もお前がやる事では無いだろう・・・・」

「あったあった♪まずは、これを見てくれる?」

 

女が手にした紙を広げて見せる。

これは・・・・図面か?十の丸が均等に並んでいて、その間を繋ぐように、配線が敷かれているようだが・・・・

 

「せ・・・・・『十小節の分室(セフィラ・スコア)』!?なんで・・・・そんな物・・・・・あ」

「・・・・・・・瑛次?」

 

なんだ?瑛次の奴、何を知っている?

 

「─────やっぱりね~~。私の思った通りだ♪キミ、()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「なん・・・・・だと・・・・!」

 

『書架』

 

そんな呼ばれ方をする場所は、現在、一つしか存在しない。

 

大赦本庁内にあると言われている、検閲官による添削だけでは事足りぬ危険性を孕んだ数々の書物を秘蔵する場所。

 

お婆様達が築き上げた現代の価値観が、変動しかねない程の危険性故に、名付けられたその名は『悪魔の頭脳』。通称、『書架』。

 

もし、女の言うことが正しければ、瑛次は────

 

「だが、待て。『書架』の正確な場所は我が家にすら伝わっていない。だのに何故、どうやって『書架』へと入れた?」

「そんなの簡単だよ~♪『書架』に入れないのは、"書物の悪魔"が管理しているから。だったら、悪魔のことは、()()()()()()()()()()。だよねー?」

「─────────はい」

 

待て・・・・それは、つまり・・・・・

 

「お察しの通りです」

 

諦めたような、どこか、達観した表情を浮かべ、瑛次は、首にかけたネックレスの指輪を取り出した。

 

「─────出て来て、ファリ・ドゥ」

 

『ええ、仰せのままに・・・・我が主』

 

 

目映い光が指輪から放たれ、収まった時には指輪はその姿を変えていた。

 

「お初にお目にかかります。私はファリ・ドゥ。我が主、弥勒瑛次様と契約した、悪魔にございます・・・」

 

金髪トンガリ頭の青年が、恭しく一礼する。

こいつが・・・・悪魔・・・・!?

 

「ふふふ・・・・・これでキミは、もう彼らの下にはいられないねえ・・・・」

「────────────」

「なっ・・・!?待て!!確かに悪魔との契約は、神樹様が固く禁じておられる!!だが─────」

「良いんです」

「瑛次・・・・・!?」

 

悲しそうな瞳で、瑛次は私を見つめ、一言告げた。

 

「今まで、お世話になりました・・・・さよなら」

 

それと同時に、女が何かのスイッチを押した。

 

「っ!?」

 

気付いた時には既に遅し。

女が押したのは、私の足下に仕掛けられた落とし穴のスイッチだった。

 

「クソ・・・・!おい瑛次!!瑛次ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」

 

私の叫び声は、私共々、奈落の暗闇へと墜ちて行ったのだった………

 




─悪魔との契約─

現在の大赦では、禁忌中の禁忌として、固く禁じている行為。
契約した者は、判明次第、専門の懲罰部隊が出動。即座に"処理"される決まりになっている。


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第六話

真っ暗闇の中を落ちた先は、配水管の中だった。

「ぷはぁ!・・・・・・まったく、瑛次の奴・・・・・」

底は案外浅く、立って移動する事は可能なようだ。
しかし、こんな場所を配水管が通っていただろうか・・・・?

「───────待てよ。この水、まさか!?」

瑛次作のスコープを使用し、水を調べると────

「なんて事だ・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

この配水管が何処まで続いているのかはわからないが、もし、この水が四国中に配布されでもしたら・・・・

「・・・・・なんとかして、脱出しなくては」

まとわりつく寒気を振り払うように、私は何処かも知らない出口を探して、歩き始める。






「・・・・・宜しかったのですか?」

「──────────」

 

ファリの言葉には答えないで、僕は友ちゃんによく似た女性に問いかける。

 

「その図面。魔方陣のものではありませんね?」

「そのとーり~♪よく分かったね」

 

十小節の分室(セフィラ・スコア)』とは、カバラ式魔術の極北で、十個の魔法陣を"生命の樹"の(カタチ)に繋ぐことで、その魔法を半永久的に持続させられるようになる、という特別な代物。

但し、少しでも扱いを間違えてしまえば、その莫大な魔力量に耐えきれず、"十小節の分室"は崩壊。詳細な記録は無いが、とにかく大惨事が起きる、と言われている。

 

「それを機械に組み込もうだなんて・・・・何をするつもりなんですか・・・・?」

「只の機械なんかじゃないよ~?」

 

そう言って奥からカートで運んできた水槽を見せびらかしてきた。水槽の中には黒い水が入っている────待って、この水、まさか・・・・・!?

 

「『邪気』・・・・ですね。瑛次様方がおっしゃる処の」

「なんだって!?」

 

やっぱりこの人が、昨今の邪気泥棒・・・・!

 

「よっこいしょ・・・・・これを見て!」

 

革手袋をはめた手で、水槽の邪気の中から何かを取り出すと、それを僕の目の前に見せつけてきた。

 

青鈍色の輝きを放つ黒い金属。これって────

 

「・・・・・ミスリル?それにしては、色が黒いけど」

「ぶっぶー!ちょっと違うんだな~♪まあ、これを発見したのって私だし、大赦もこれの存在を隠蔽してるみたいだから、知らないのも無理は無いけど・・・・」

 

大赦が・・・隠蔽?それほど危険だってこと?

 

「いったい・・・・これは・・・・?」

「ミスリルを邪気の中に漬け込むことで、ミスリルはその強度を増すの。物理的にも、魔術的にも、ね」

「ミスリルを邪気の中に漬け込むだって!?」

 

人が邪気に触れると、(程度の差はあれど)忌人化してしまう。

そうでなくとも物を妖忌化させたり、植物なんか枯らすどころか燃やしてしまう。

そんなものの中に、漬け込むだなんて・・・・!

 

「なるほど・・・・・ミスリルの持つ『邪気吸収』の特性が過剰反応を起こした結果、といったところですね」

「お、悪魔さんの方は理解があるね」

 

確かに、ミスリル金属には邪気を吸い取って内部に溜め込む特性を持っている。

けど、それだけで強度が上がるなんて・・・・・

 

「私はこの、強化されたミスリルを『オリハルコン』と名付けて、大赦で発表したの。これがあれば、人類は更なる発展を遂げるだろうと思って・・・・・でも、大赦の老害達は、私の研究成果を握り潰したのよ・・・・・・!!」

「え・・・・?」

「それだけに飽き足らず、私の仲間を"処理"した上、私を、大赦直属の研究室から追放までしたんだっ!!!」

「そんな・・・・事が・・・・・」

「─────おかしいですね?」

 

どういう、こと・・・・?

 

「たかが金属一つに、そこまでやるとは思えませんが・・・・?」

「大赦────いいえ、神樹は人間がオリハルコンを精製する事を良しとしなかったのよ。何故か分かる?」

「──────いいえ」

 

 

 

 

 

「かつて、勇者達が終末戦争時に用いた神威の武具。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「そんな・・・・そんなバカな!?」

 

終末戦争時に勇者様方が用いた武具は、神々がその力の一端を分け与えただけの物。

この人の語るオリジナルとはつまり─────

 

「現代人達が語る、神話の中に登場する数々の武器は全て、オリハルコン製だった。という訳ですか・・・・・」

「らしいよ」

「そして、貴女はそのオリハルコンを精製してしまったが為に、神の怒りを買ってしまった・・・・と」

「ほーんと、身勝手だよねぇ。カミサマって奴はさあ!!!」

 

怒りに任せて、女性が足下にあった機械を蹴飛ばした。

大赦から追放された科学者・・・・・あれ?それって確か、五年前にニュースで─────

 

「思い出した・・・・・貴女は、藍原(あいはら)友奈さんですね?大赦直属の『旧暦技術復興機関』に所属していた」

「あら、私のこと知ってるの?嬉しいなぁ」

 

知ってるも何も、僕が魔導技術に興味を持ったきっかけになった人なんだ。写真よりもだいぶ窶れてしまっていたから、気付けなかったけど・・・・忘れたりなんて、するもんか。

 

「僕、貴女の記事を読んで、魔導技術に興味を持ったんです・・・・『いつかこの技術で、人々に明るい未来を用意してあげたい』そう言っていた貴女は、いったい何処に行ってしまったんですか・・・・?」

「─────────そんなの、もう忘れちゃったよ」

「そんな・・・・・!?」

「それより・・・・・私の研究に、協力してくれるよね?」

「─────────」

「今更断るなんて、しないよね・・・・?」

「──────────瑛次様」

 

気づけば、後ろに沢山の人がいた。この人達は・・・?

 

「彼らも私と同じ。大赦に切り捨てられた人達だよ」

「───────ファリ」

「彼らの持つ拳銃やナイフ、()()()()()()()()()()()

「やっぱり・・・・」

 

この様子だと、もう既に藍原博士の仲間全員が、オリハルコン製の武器で武装しているのだろう。

流石、僕が憧れた人。大赦を追放されても、その科学力は健在ってわけだ。

 

「────────わかり、ました」

「うふふ、そうこなくっちゃ♪」

 

どのみち、今の僕には博士に従うより他に道が無い。

 

「・・・・・・ごめんね。友ちゃん」

 

どうか、僕よりも素敵な人に出会って、幸せになって下さい・・・

そんな、身勝手な事を祈りながら、僕は博士の後ろを着いて行く。

 




─オリハルコン─


神話の武器───通称『宝具』の素材となる特殊金属。
大量の邪気にミスリルを漬け込むことで精製できる。

ミスリルよりも耐久性が高く、武器の素材としてはオリハルコンの方が優秀。
しかしその分加工し辛く、発見当初は武器どころかインゴットの鋳造すら困難だった。
が、しかし………



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第七話

葛葉と瑛次が行方不明になって、一週間が経過した。

二人の消息は依然として掴めず、シズさんと友奈は、少し窶れていた。

かく言う弥勒も、ここしばらく箸の進みが悪く、ほんの少し、体重が減った。

 

(正直、これには自分でも驚きだわ・・・・確かに、葛葉も瑛次も、弥勒にとってとても大切な人。それでも弥勒ならば、普段通りに振る舞えると思っていたのに・・・・)

 

血を分けた姉弟と、唯一弥勒の伴侶足り得る(ひと)。やはり弥勒にとって、とても影響力のある者達という訳ね・・・・

 

「皆さ───ぐふっ!?げほっ・・・・げほっ・・・・」

「仁根ちゃん!?」

 

そんな時、訓練場に仁根が駆け込んで来たのだった。

しかし生来の身体の弱さ故に、訓練場に足を踏み入れた途端、咳き込んでその場にしゃがみこんでしまった。

 

「仁根、そんなに無理をしては駄目よ。それで、何があったの?」

「げほっ・・・・げほっ・・・・ごほっ!!ごほっごほっ!!!」

「仁根ちゃん、大丈夫・・・・?」

「一度落ち着きなさい。背中をさすってあげるから、それに合わせて深呼吸をするのよ」

「すぅ・・・・・はぁ・・・・・すぅ・・・・・はぁ・・・・・」

 

うん。平気そうね。呼吸も大分落ち着いてきた。

 

「それで仁根ちゃん、いったい何があったの?」

「今日は確か、シズさんと一緒だったはずよね?シズさんは─────」

 

と、その時。件のシズさんが訓練場に駆け込んで来た。

 

「アカナ!!ロック!!お役目の時間や!!!忌人が出おったで!!!!!!」

「なんですって!?」

「忌人が!?場所は何処なんですか!?」

「何処も何も、今─────」

 

一瞬後ろを振り返ったシズさんが、何かに気付いて弥勒達に向かって飛び込んで来る。

 

()()()!!!」

 

次の瞬間には、シズさんが立っていた入り口が粉砕され、馬面の奇っ怪な形状をした忌人が地面から現れたのだった!!

 

 

aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!

 

 

「なっ・・・・!?」

「なに・・・これ・・・・?こんな忌人、見たことないよ!?」

「ウチかて、こんなん知らへん!せやけどな・・・・」

「忌人であるならば、弥勒達の敵よ!!はぁぁぁ!!!」

 

先ずは動きを封じる呪符を使用する。が、馬面の忌人には全く効果が無い様子。

 

「瑛次の呪符が効かない!?生意気っ!!」

「レンち下がって!てやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そこに友奈が割り込んで来て、忌人の馬面にパンチを決めた。流石友奈ね。

 

「怯んだ!今がチャンスや!!」

「言われなくとも!はぁぁぁぁぁぁ!」

 

尽かさず弥勒は『霊力刀』(瑛次作)を抜刀し、忌人に斬りかかった。

 

!!!

「くっ・・・・・浅いっ・・・・・!」

 

が、忌人は弥勒の剣筋を見切り、寸での所で回避してしまった。せいぜい切っ先が馬の鼻っ面を掠めた程度。

しかしそのおかげか、馬面にヒビが入り、右半分が砕け散った。

 

「仮面だったの・・・?」

 

馬の面の下に素顔が見える。いつもの、口なのか目なのかよく分からない顔だと思い、気にも止めなかったのだが─────

 

 

 

 

 

「─────────────にーさま?」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・え?」

 

仁根の、その一言で、場の空気が、変わった。

 

「────────ホンマや」

「葛葉・・・・先輩・・・・・?」

 

葛葉の顔をした忌人は、素顔を庇うようにしながら、来た道を帰って行ってしまった。

 

「───────────────あり得ないわ・・・・・そんなの・・・・・・・なにかの・・・・・間違いよ・・・・・・・!」

 

目の前で起きた事実を認めたくなくて、思わず弥勒は、弥勒らしからぬ事を口走ってしまうのだった………

 

 



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第八話

信じたくは無いけれど、葛葉先輩は忌人化した。

彼が逃げた穴を見つめる親友の心中は如何程か・・・・想像するだけ、辛すぎるよ・・・・・

 

「・・・・・友奈、もう一度二人が失踪した地点を洗い直して。あれだけの忌人が居たのに、それに誰も気付かなかったということは、大赦内部に裏切り者がいるかも知れない・・・・大赦保有の物件を中心に調べてみて」

「レンち・・・・?」

「弥勒はあの忌人を追い掛けるわ・・・・!」

「待ってよ!相手は葛葉先輩なんだよ!?」

「だからこそよ!!!」

「っ!?」

 

振り向いたレンちの瞳は、少し潤んでいたけれど、それでも、お役目をする時の瞳をしていた。

 

「だからこそ、弥勒が討つの。この役目は、誰にも渡さない・・・・・」

「レンち・・・・」

 

それだけ言って、レンちは葛葉先輩の消えて行った穴に降りて行った。

 

「・・・・・アカナ、ここはロックに任せよ。ウチらは」

「────────はい」

 

―――――――――――†――――――――――

 

仁根ちゃんを私達の寮に送った後、私とシズ先輩は二人が消息を絶った地点にやって来た。

レンちは大赦保有の物件が怪しいとか言ってたけど・・・・・

 

「警察の話やと、大赦の物件は捜索しとらんっちゅーこっちゃ。ロックの推理も、あながち間違っておらんかもな」

「・・・・どうして調べなかったのかな」

「そらアレやろ。『大赦なら平気やろー』言うて、スルーしとったんちゃう?」

「──────」

 

とにかく、シズ先輩が取り寄せた資料を基に捜索を開始。

しばらくして、一件の廃ビルに当たる。

 

「大赦保有の雑居ビルっちゅー話やけど・・・・・めっちゃ怪しいなぁ」

「怪しいですよね・・・・・どう見ても」

 

『テナント募集中』の貼り紙こそあるが、どう見ても管理なんてされている気配が無いし、立地も通りから少し離れた場所にある。

 

明らかにここでしょ。

 

「行くで」

「はい・・・!」

 

私が先頭に立ってビルの中へ。

地上階部分は普通の空きビルだった。だとすると・・・・

 

「地下階がある?」

「あるんやろな。何処にも書いておらんけど」

 

という訳で、私達は地下への入り口を探すことにした。

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

 

十分後────

入り口は割りとあっさり見つかった。

ビルの裏手、立ち並ぶ室外機に隠れるような配置でそれはあった。

 

「・・・・・・なんや、あっさりと見つかったなあ。もっとこう・・・・隠し階段~、みたいなのを想像しとったんやけど」

「どんな忍者屋敷ですか・・・・」

 

慎重にノブに手を掛け、捻る。

が、扉は開かない。どうやら鍵がかかっているみたい。

 

「鍵穴は・・・・・・あれ?」

「どないした?」

「この扉・・・・・鍵穴が無い」

「はぁ?そんなアホな・・・・・・・・ホンマや」

 

電子ロックかとも思ったけれど、それらしい端末も無し。

いったいどうやって・・・・・

 

「しゃーない。こんな時こそシズさんの出番や!」

「何か方法が?」

「えーっと、ちょい待ち」

 

仁根ちゃんを寮に預けてきた時に持ってきたリュックをごそごそし出すシズ先輩。

そういえば先輩、なんか色々と準備してたっけ・・・・

 

「あった!ちょい下がっとき」

 

ドアノブ付近にリュックから出した何かを取り付け、扉から少し離れる。

 

「ファイヤー!!」

 

掛け声と共にスマホを操作すると、ボンッ!と音を立てて扉が開いた。

 

「爆弾!?そんな物、いつの間に・・・・」

「備えあれば嬉しいナ♪っちゅーやっちゃ!ほな、行くで」

「はい!」

 

 

 



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第九話

地下へ続く階段を降りると、そこは何かの研究室のような場所だった。

 

「ここで、いったい何を?」

「それは、これから調べたら分かるこっちゃな」

「・・・・・・・・そう、ですね」

 

シズ先輩と手分けして捜索。だけど、特に何も見つからなかった。

 

「アカンな・・・・資料的なんは全部処分されとるみたいや・・・・アカナの方は?」

「こっちもです。パソコンのデータも消されていて・・・・・」

「んん?パソコンやて?それ、何処や」

「え?こっちですけど・・・・」

 

パソコン、完全に初期化されちゃってて、データなんて残ってなかったけど・・・・・どうするつもりなのかな・・・・?

とりあえず、シズ先輩と一緒にパソコンの前にやってきた。

 

「えーっと・・・・これやったかなーっと」ゴソゴソ…

「USBメモリ?」

「エージ作の復元ソフトや!初期化してあってもデータをある程度は復元できる優れモンや!」

「さっすが瑛次くん!!こうなる事を見越して、シズ先輩に渡していたんだね!!」

「うんうん、せやねー。エージは凄いなー。憧れるなー」

 

あれ?シズ先輩、ちょっと不満そう・・・・なんで?

 

「っと、復元完了や。データ吸出しつつ、確認してみよか」

「はい」

 

―――――――――――†――――――――――

 

 

オリハルコンから抽出した素粒子群は、一定値以上の魔力を付与する事で、情報集積回路として接続される。あたかも、生物の神経細胞────ニューロンのように・・・・

ここから転じて、この接続された素粒子群を、私は素粒子式・神経細胞(クォンタム・ニューロン)────"キューロン"と名付けた。

同時に、このキューロンを使用し、旧暦にも存在しなかったであろう『最高の電子頭脳』を創造する事を決めた。

 

プロジェクト名は『フォトン・ドライヴ計画(プロジェクト)

 

・・・・なんて、どうだろうか?

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

 

「フォトン・・・・ドライヴ・・・・?」

「どうやら、このフォトンなんたらを造るんに、大量の邪気が必要やったみたいやね・・・・」

 

最高の電子頭脳?素粒子で出来た神経細胞?

話が突拍子も無さすぎて頭が追い付かない・・・・

 

「とりあえず、この資料は全部大赦に持ち帰ろか。ウチらだけで判断するには・・・・ちぃとばかし、事が大き過ぎや・・・・」

「そう・・・・です、ね・・・・」

 

混乱する頭で荷物をまとめ、研究室跡地から立ち去ろうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

「だれか・・・・いるの・・・・・?」

 

 

 

 

 

「ッ!!!今の声!!」

「え?声?あっ、アカナ!?」

 

微かにだけど、確かに声が聴こえた。

研究室の奥。牢屋の中に、ずっと会いたかった"彼"は居た。

 

「瑛次くん!」

「・・・・・ゆう、ちゃん?」

「瑛次くん・・・・瑛次くぅん・・・・!!」

「あぁ、ほんとに、友ちゃんだ・・・・」

 

牢屋越しに手を繋ぐ。だいぶ窶れてしまっているけど、瑛次くんはちゃんと瑛次くんだった。良かった・・・・

 

「おっ、エージ!」

「先輩も・・・・とうとう、ここを見つけたんですね」

「今出してあげるからね!」

 

牢屋の鍵を気合いでこじ開け、瑛次くんを牢屋から出してあげる。

 

「瑛次くん!!良かった・・・・良かったよぉぉ・・・・・(泣)」

「友ちゃん・・・・」

「つもる話は後や。今はここから逃げるのが先や」

「・・・・はいっ」

 

私は、瑛次くんをお姫様抱っこして、研究室を後にした。

 

 



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第十話

──────それは、三日前のこと………───

 

「ちょっと・・・・・ちょっと待ってくださいよ!!」

「んー?なぁに、質問でもあるの?」

「ありますよ!!この資料を見てください」

 

契約者であることがバレた僕は、藍原友奈の助手として彼女の手伝いをしていました。

しかしその途中で、僕は、おぞましい事実を、知ってしまったんです………

 

オリハルコンから抽出された素粒子は、魔力をエネルギーにキューロンへと結合します。

その後キューロンは、邪気をエネルギーにしてどんどん結合していき、最終的に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その事実を知った僕は、藍原さんに実験の中止を求めました。けれど………

 

「おっ、順調に育ってるじゃなーい♪」

「なんて暢気な・・・・・これは明らかに異常事態でしょう!?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に、僕は耳を疑いました。

 

「・・・・どういう意味ですか?」

「陰と陽、二つの霊力(ちから)を受けて製錬されたオリハルコンはね、只の金属じゃないの・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()

「・・・・・・・・・・・・は?」

「そこから抽出された素粒子は、言うなれば受精卵ってとこね。私は()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()

「──────あなたが、何を言っているのか、分かりませんよ」

「私がおかしいって思ってるでしょ。でも違うよ、私はちゃんと真実を話している。その事はちゃんとデータが語っているでしょ?」

 

否定したかった。けれど、彼女の語っている事が真実である事は、僕が集めたデータが裏付けていたんです。

 

「これから産まれてくるであろう彼らの事を私は、キューロンで構成されたアンドロイド──────『無機生命体(キューロノイド)』と名付けたわ」

「キューロ・・・・ノイド・・・・」

 

嬉々として語る彼女の様子は、まるで、筋肉について語っている時の友ちゃんみたいでした。

 

「AIは・・・・・・最高峰のAIを造るって話は、何処に行ってしまったんですか・・・・・!?」

「勿論造るよ?」

「は?」

 

何を言っているんだ、とでも言わんばかりの態度に、さしもの僕もすっとんきょうな声を上げたものです。

 

「実をいうと・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()~♪」

「──────────────え」

 

照れた様に暴露する彼女の言葉に、僕は再び耳を疑いました。

 

「これまで出来上がったキューロン結合体は全部、小脳とそれに付随する脊椎くらいにしか成らなくてねえ・・・・・仕方ないから、その小脳をカプセルに詰めて量子コンピュータと接続する方針にしたんだよ」

 

正気の沙汰とは思えない行いに、僕はもう限界でした。

 

 

 

 

 

その日の内に僕は、キューロノイド研究に関係する資料や機材を、破壊する事を決意しました。

 

 

 

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

「しかし、藍原さんは僕のその行動を読んでいたみたいで・・・・・」

「なるほどなあ・・・・阻止されて、あの牢屋に閉じ込められてたっちゅーワケや」

 

瑛次くんが頷く。

彼からもたらされた情報は、突拍子の無いものばかりで、現実味が感じられなかった。けれど、瑛次くんが言うことなんだから・・・・・・

 

「エージが嘘言っとるんやないっちゅーのは分かるんやけど・・・・」

「まあ、現実味ありませんよね」

「信じてあげたいのは山々なんだけど・・・・・ごめん・・・・・」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・」

 

瑛次くん?

 

「ファリ・ドゥ」

「はい、我が主」

 

瑛次くんのネックレスに付けられた指輪が光り、紳士服を着た金髪トンガリ頭の青年が現れた。

その手に、カプセルに入れられた人の脳みそを持って………

 

「っ・・・・・・!」

 

目の前で起きた出来事に、理解が追い付かない。

 

「──────エージ、そのおっちゃん」

「おっちゃん・・・・・ですか。まあ確かに、貴女方から見れば、おっちゃん処かおじいちゃん位の年齢ではありますが・・・・」

「ファリ・ドゥもショックを受けたりするんだ・・・・」

 

肩を落とすファリ・ドゥさんに瑛次くんが静かに突っ込む。

いやいや、そんな事よりも!

 

「そのカプセルの中身・・・・それって・・・・・」

「おや?先程までの話を聞いてなかったのですか?()()()()()()()()()()()()()()

「これ・・・・が・・・・?」

 

どこからどうみても人間の脳みそだよね・・・・これが、金属から出来たっていうの・・・・?ほんとに?

 

「ちゃんと"生きて"ますよ。今も霊力探知で周辺情報を獲得しています」

「へ・・・・へえ・・・・」

「んー・・・・エージの話が事実なんは分かった!んで?藍原友奈の目的は、結局何なん?」

「────────」

 

そうだ。私もそれが気になっていた。こんなものを造って、その人はいったい何をしようとしているんだろう・・・・

 

「藍原さん─────藍原友奈の目的は─────」

 

一度瞳を閉じ、意を決した瑛次くんは、瞳を開けて告げた。

 

 

 

 

 

「キューロノイドによる、神樹様の抹殺です」

 

 



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第十一話

象頭町の廃ビル地下

「遂に完成!!!みんな、ここまでありがとうね!!!!!!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「それじゃ、私達の悲願・・・・成就させようか」

巨大な機械に繋がれた、円形に並べられた五つの球体。
スイッチを入れて、順にその球体に火を入れていく。
全ての球体が起動したことを確認した相原は、此方も機械と繋がったヘルメットを被ると、ヘルメットのスイッチを押した。





「起動コード『I'm a thinker』」





「『承認 起動シマス』」


「ぎっ!?………あァぁぁァぁぁァぁぁぁぁぁぁァぁぁぁぁァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

相原の悲鳴を轟かせ、絶望が今、産声を上げた。



違和感に気付いた時、既に事態は手遅れな状況だった。

 

「なんや・・・・周りがえらい騒がしいなあ?」

「この感じ・・・・なんだろう。嫌な予感がする・・・・」

「・・・・・とうとう、その時が来たようですね」

「その時って──────」

 

どういうこと?と聞こうとした私の声は、風水スコープからの緊急警告音に遮られた。

 

「邪気!?こんな時・・・・に・・・・」

 

スコープを装着し、レーダーを確認した私は、思わず絶句してしまった。

 

忌人クラスの反応が六つ……七つ……八つ……まだ増える!?

 

「ふむ、この気配・・・・・魔獣、もとい忌獣の出現も視野に入れておいた方が良いかもしれないですね」

「忌獣・・・?なんやそれ」

「分かりやすく言うならば、忌人が更なる進化を遂げたもの、です」

「忌人が進化・・・?そんなことが、本当に?」

「今の四国内では、本来有り得ないことです。が、その有り得ないことを成し遂げる為に、彼女は()()を造り上げたのでしょうね」

 

ファリ・ドゥと名乗る悪魔が、持っているカプセルを指してそう言った。

 

「つまり・・・・相原っちゅーのは、忌人やら忌獣やらを仰山つくって、神樹様をへし折ろうとしとるワケやな?」

「・・・・・それだけなら、良いのですが」

「───────ファリ・ドゥ?」

 

なんだか引っ掛かる言い方をするけど、とにかく今はこの状況をどうにかしなくちゃ!

 

「行こう、瑛次くん。みんなを助けよう!!」

「待って!場当たり的にやってもダメだよ。ここは、大元を叩かないと」

「大元?」

「相原のアホウんとこ、殴り込みに行くんやな!!」

「えーっと、概ねそんな感じです!」

「うん、分かった!瑛次くん、案内してくれる?」

「ファリ・ドゥ」

「お任せを」

 

指輪の形に戻った悪魔を右手の人差し指にはめると、瑛次くんは私達を先導し始めた。

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

 

町の中は、泥を焼いて作ったような質感の黒い人形が人々を襲っていた。

 

「これが・・・・忌人の・・・・」

 

『忌人は、強い邪気に充てられると攻撃的になる』

事前に知らされていたとは言え、実際目の当たりにすると、かなり、気持ち悪い。今まで私達が相手していた忌人が、可愛く見えてくるレベルだ。

 

『ふむふむ・・・・やはりこれは、大規模召還術式(サバト)ですね』

「サバト?」

「というか、そないな姿でもしゃべれるんやな・・・・」

 

道すがら、襲われている人々を助けつつ、悪魔の話を聞く。

 

『その名の通り、大規模な召還術です。貴殿方の言う旧暦の時代にも一度使われたことがあります』

「それって・・・・終末戦争の?」

『呼び方は存じませんが、恐らくは』

 

つまりこれは、あの戦争の再現・・・・ってこと?

 

『狙いは先程瑛次様が申した通り、神樹の打倒でしょう。ですが、それは飽くまで過程にすぎません』

「と、言うと?」

 

 

 

 

 

『相原友奈氏の最終目標、それは、全人類の悪魔化です』

 

 

 

 

 

それは、衝撃的過ぎる、話だった。

 

「全人類の悪魔化て………んな、アホな………」

『元々、この術式は悪魔召還の為のものです。尤も、今私に理解できるのはそこまでで、彼女が何故、こんな事を思い付いたのか迄は、わかりませんが・・・』

「─────なんにせよ、相原を止める。私達鏑矢は、その為にいるんだから」

 

迫り来る忌人の群れを蹴散らしながら、私達は相原のいるであろう場所へ向かって地獄と化した象頭町を走り抜けて行く。

 

 

 



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