迷子の迷子のスパイカー (風神タバサ)
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原作前
プロローグ


今俺は目の前の現状に驚かされている。

今目に映っているのは知らない女性と男性、そんな二人が俺を抱えてニコニコ笑っている。

記憶は数分前に遡る。

 

 

 

 

 

俺は世間でどこにでもいるオタクというやつだ。そんな俺が特にはまった作品がハイキュー‼だ。適当にアニメを探しているときにたまたま目に入った作品。スポーツアニメはたくさん見てきたが、ハイキュー‼を見た時にバレーをしたいと思うほど影響を受けた。生まれつき体の弱かった俺は、初めて親にバレーボールを買ってほしいと頼みベッドの上でアンダーハンドとオーバーハンドの練習をした。

そんなある日、ハイキュー‼の単行本の発売日なので病院の売店に本を買いに行っていた。今日は親もおらず本を買いに行ってくれる人がいないので、自分で行くことにした。ここ数年病院に住んでいたが部屋から出るのは初めてだったので右手にボールを抱え、左手にハイキュー‼のストラップの着いた財布を持って売店へと向かった。

しかし、売店はおろか、自分の部屋がどこにあるかもわからなかったので、数分歩いているとどこにいるかもわからなくなり、息切れが激しくなり、視界がぼやけ、ついには意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

そして目が覚めると赤ちゃんになっていた、所謂転生というやつだろう。転生と言ったら魔法が使えたりするファンタジー世界のはず。しかし俺を抱えている二人はファンタジー世界では基本の金髪などではなく普通の日本人だった。

 そして今二人は現在絶賛喧嘩中である。

 もめている理由は俺にあった。最初はゴロゴロとひなたぼっこを楽しんでいたら男性のほうが「パパといっちょに遊びまちぇんか~」と誘ってきたので赤ちゃん言葉には少し引きながらも、前世で思いっきり動くということができなかったのでハイハイで向かっていくとおなか話を抱きかかえられ女性の人に「晃君は今からママとおねんねしましょうね~」と言われ、部屋の中に連れていかれようとしたとき父親のほうが「待て」と少し低い声で母親のほうを呼び止め、母親のほうは今まで聞いたことのない声で「何?」と、聞き返していた。

 そして話は冒頭のほうに戻っていく。

「今、晃は俺と遊ぼうとこっちに来たんだ、邪魔すんな」

「あらあら、何を言っているの?晃はまだ赤ん坊なんだから十分な睡眠が必要なのよ、それなのにあなたと来たら『遊びまちぇんか』なんて、いい歳した大人が、恥ずかしくないの~」

「あぁ~」

「なに、やるの?」

「ああ、やってやるよ」

 そう言って母親は俺を先ほどの場所において部屋に戻っていった。父親のほうはスリッパから靴に履き替え、準備運動を始めた。しばらくすると母親がボールを持ってベランダに出てきた。

「三本勝負で二本とったほうが勝ちで」

「オッケー」

 ボールはバレーボール、二人はバレーで勝負する様だ。

(まぁ、うちは一般家庭だし普通のサーブとレシーブの勝負だよね)

 心の中でそう思っていると驚きの事実が発覚する。

「守りの音駒でリベロしてたって言っても、レシーブ力は普通で守備範囲が広いってだけでしょ?」

「うるせぇ、お前だって新山女子って言ってるけど有名になってきたのってここ最近だお?」

(守りの音駒?新山女子?……それって、もしかして、……あっ、眠くなってきた)

 俺はそのまま意識を落とした、この世界がファンタジー世界などではなくハイキュー‼の世界で、うちの両親がどちらもバレー経験者という事実に脳が耐えられなくなってしまった。

 



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四歳

とりあえずある程度ヒロインとは絡み合わせていきます。


俺こと闇影(やみかげ)晃(ひかる)がこの世界に来てから四年が経過した。

 この四年間俺はとにかくボールを触り続けた。最初は両親が音駒や新山女子というのには驚いたがただそれだけだ。今の俺にとっては、ここがハイキュー‼の世界で、激しい運動をしてもいいと言うのだけあれば何でもいい。

 ただ方向音痴という欠点だけは前世から引き継いだままらしい。遠足の時、迷子になってしまい、いくら地図を見ても目的の場所に向かうことができず、地図を見直すと目的地とは全く違う場所に着いてしまうのだ。

 よって、俺は転生してもバレーができればそれでいいかと思うようにしていたが、正直方向音痴もどうにかしないといけないと思うようになった。

 その理由は今現在、地図を使って歩いてた俺がどこにいるかが分からない状態だからだ。

 前世からバレーが好きな俺はこの四年間バレーボールを触り続けていた。父さんが東京に用事があるということで家族で父さんの実家に泊まっており一日中暇だったので室内でバレーボールを触っていたら母さんに怒られてしまい、お婆ちゃんが「公園に言っといで」と、水と地図を渡してきたのでワクワクしながら公園に向かったのに全く公園につかない。

 とりあえず近くに何かないか探しながら歩いてみると数十メートル歩いたところで駄菓子屋があった。

(とりあえず駄菓子屋で道を聞いてみるか)

 思うがままに駄菓子屋に向かった。いざ駄菓子屋に入ると、

「すみませーん、この大福くださ~い」

 おっとりとした声が響いてくる。声の響いたほうを向かってみると、自分より少し身長の高い女の子がいた。声が少し高かったから気付かなかったが、しゃべり方と髪の色ですぐにわかった。

(白福雪絵さんじゃん⁉……まて、まだ確証はないし他人の空似っていうことがあるかもしれない)

 すると彼女がこちらに振り向いた。そこで疑いが確証に代わった。少女の目は原作と同じ整って入り口元に白い粉がついていた。

「ど~したの~?」

 すぐに我に戻る。

「えっと、…………迷子、でしゅ」

 つい緊張しすぎて噛んでしまった。なんせ初めて会った原作キャラ、しかも女性、緊張しないほうが無理というものだ。

「あ~、とりあえず地図とかある~?」

「あっ、こ、これ、」

 右手に持っていた地図を彼女に渡すと彼女はじっと地図を見てうんと頷いた。

「ここなら~うちに近いから、一緒に行く~?」

「うん!」

そう言って彼女は駄菓子屋でもらっていた大福を平らげ、俺の手を握って駄菓子屋を出た。

 初めて女子と手を握ったが彼女の手はとても軟らかかった。…………大福の粉がついてたけど。

 

 

 数分歩くと公園についた。駄菓子屋から公園に向かう途中父方の実家の前を通っていった。どうやら、反対側に進んでいたらしい。

「はい、ついたよ~」

「あ、ありがとう」

「別に~気にしなくていいよ~。……それより~、一緒にあそぶ~?え~と……」

「闇影晃、四歳」

「私は白福雪絵~六歳だよ~、よろしく~」

「よ、よろしく」

 ということは二個上、つまり俺は日向や影山と同じ年代ということになる。これはかなりの吉報だ。

「それで~、何して遊ぶの~?」

 俺はすぐさま左腕に抱えてあったボールを前に着き出す。

「え~と、ボールで遊びたいの~?

「うんっ」

「どうやって遊ぶかわからないから~とりあえず投げればいい~?」

「うんっ」

 そう言って雪絵さんは距離を取る。

「えいっ」

 そして彼女はボールを投げた。……………………上投げで。

(マジっ⁉)

 正直下投げかと思ったから急いでレシーブの構えを取る。

 まだ、雪絵さんは子供だったのでボールはそこまで威力がなかった。しかし、俺の体もまだ子供なのでそれでも痛かった。

 それでもボールは雪絵さんの頭上に返すことができた。雪絵さんが帰ってきたボールを取って口を縦に開いて目をキラキラさせていた。

「晃、すごーい、ボール、ボールが私のところに返ってきたよー‼」

 雪絵さんはボールを持ってこちらにちかずいてきた。

「そ、そう?」

「うん、今のって、レシーブって言うんだよね~?テレビで見たことある~」

 どうやら俺がレシーブするのが雪絵サンには楽しかったようだ。

その日は雪絵さんが投げたボールを俺がレシーブするというのを何十回も繰り返してお開きになり、明日遊ぶ約束を取り付けて帰宅した。

母さんに帰ってきて道に迷わなかったか聞かれたが、馬鹿正直に「迷ったけど駄菓子屋で知らない女の子に連れていってもらい、一緒に遊んだ」といって怒られたのはまた別の話。

 

その日から雪絵さんとは毎日遊んだ。

ある時は砂場で遊んだり、ある時は雪絵さんの持ってきたお菓子でお菓子パーティーをしたり、またある時はバレーの練習を手伝ってくれたり、ある時はおままごとで帰ってきた旦那を妻が癒すのをやったりした。恥ずかしくなかったかって?前世では入院状態だったから少しあこがれてたんだ~。

そして数日過ごして、東京に滞在する最後の日になった。

雪絵さんにそのことを話すと、「えぇ~、もっと遊ぼうよ~」と言ってきた。なんか雪絵さんらしいと感じながら最後に一緒におままごとをして、帰ろうとしたが雪絵さんがなかなか手を放してくれなかった。

「ゆ、雪絵さん?手を放してくれないと帰れないんでけど……」

「……よね?」

「えっ?」

「また会えるよね?」

 彼女の目には少し涙がたまっていた。

「うん、しばらく会えないけどまた会えるよ!」

「最後に私の頼み聞いてくれる~?」

「うん、何?」

「雪絵お姉ちゃんって言って」

「うん、またね雪絵お姉ちゃん」

「晃~、またね~」

そう言って別れ、俺は宮城に帰っていった。

 




今回は雪絵さんでした。
まだまだアンケートを取っていますので是非決めてください


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12歳

この世界に来てすでに十二年たった。

 今では俺も十二歳になった。今では俺も小学六年生だ。小4までは雪絵お姉ちゃんと遊ぶという名のスイーツ巡りをしていたが中学になってから忙しくなったらしく、小5の時から遊ぶことはなくなった。……連絡は来るけど。

 また、六歳の時から早朝ランニングを父さんとするようになり、前世の体では考えられなかったほど体力がついた。今では学校中で俺は体力モンスターというあだ名で呼ばれている。最初は身長もそこまで高くなかったので体力お化けと呼ばれていたが、五年生後半から身長が伸びていき、いつの間にか身長が167センチまで伸びていたことからお化けからモンスターへと昇格?した。

 体力のほうは小3の時の自己紹介で「体力には自信があります」と言ったら、クラスの誰かから「方向音痴だから山の手前までしか走れないんだよな」と言われたので、少しむかつきながら「はぁ、今じゃ山一つ越えたところまで行けるしぃ」と言ったら、体力お化けと言われるようになった。

 そんな体力モンスタ―の俺が今何をしているかと言うと、早朝ランニングで道に迷い路頭に暮れている。最初はほんの出来心で山三つ目に挑戦した結果自分が進んできた道が分からず、迷子になってしまったということだ。母さんに電話したら、「とりあえず晩御飯までには帰ってきなさい」と言われた。最近は生まれて三年目の双子の姉妹が方向音痴にならないように徹底的に教育しているらしい。父さんはその間の家事をしている。

 しばらく歩いていると競技場が見えてきてアナウンスの声がした。何かの競技をしているらしい。今手元に持っているスマホで時間を確認しているとすでに12時を回っており、そのことに気がつくとお腹が好いてくる。

 とりあえず競技場の観客席に座り休憩を取る。今から始まる競技はハードル走のようだ。とりあえず走る選手を見てみるとそこには見知った顔があった。髪を後ろに結んでおり眼鏡を付けていないからわかりずらいが、ほくろの位置は前世で何度も見てきた場所だ。あの人は間違いなく清水潔子さんだと言いきれる。……なんでほくろの位置までわかるかって?実は俺、目がよすぎるらしい。

俺が清水さんだと確信していると、スタートの合図が鳴り選手が一斉に走り出した。俺は清水さんに注目してみる。一本目、二本目は成功したが、三本目には引っかかってしまった。しかし、彼女は諦めることなく残りのハードルを全部跳び切った。結果は4位だったが、俺はこのとき清水さんのことをかっこいいと思ってしまった。俺は立ちあがり彼女に拍手を送る。

すると彼女はこちらを振り向き一度周りを見渡し再びこちらを見た。すると次の瞬間彼女は俺に手を振ってきた。俺は一瞬驚きながらも一度周りを見て、

(男か?)

と思いながらも誰もいなかったので俺は清水さんに手を振り返す。その時彼女が微笑んだのがすぐにわかった。

 俺はその時体に電気が回ってきた。この感覚は知っている。雪絵お姉ちゃんがパフェを美味しそうに食べているときにも回ってきた感覚だ。そして俺は一瞬でこう思ってしまった。

(かわかっこいい)

 清水さんはタオルで汗を拭って控室に帰っていった。

 俺は再び座り五分ほど休憩して家に帰ろうとスマホのマップ機能を使い競技場の外に出るが、今度は競技場の中で迷子になってしまった。俺はとりあえずぐるぐる歩き回っていると誰かが声を掛けてきた。

「どうしたの?」

 俺は声のしたほうに振り向くとそこにはジャージに着替えた清水さんがいた。内心ビック、となったが顔には出さずにしっかり対応していく。

「じ、実は道にまよってしまって……」

 いくら顔に出さなくても緊張してしまう。

「家、どこかわかる?」

 俺は即座にスマホのマップを見せる。

「私のうちに近い。…………一緒にいく?」

「いいんですか⁉」

「うん、私も君に聞きたいことあるから、ついてきて」

 聞きたいこと?不思議に思いながらも俺は清水さんの後ろをついていく。競技場を出るとバス停が見てきてそこの椅子に座る。

「あの、俺、金持ってないんですけど」

「うん、私が払ってあげる」

「いや、そこまでしてもらうのは……」

「気にしなくていい、私の質問に答えてくれれば。」

そのままバスが来るまで沈黙が続く。

バスが来て清水さんが乗ったのに続き俺も乗った。

「…………」

椅子に座った清水さんがまるで『早く座って』という目でこちらを見てくるので、「失礼します」と言い俺も横に座る。

「私二年の清水清子、君は?」

「小六の闇影晃です」

「!?小学生だったんだ、大きいから中学生かと思ってた、それに闇影ってもしかして体力お化け?」

「あ、はい、そう呼ばれてました。今では体力モンステーですけど、にしてもよく知ってましたね」

「多分、同じ小学校」

 なん………………だと。俺は身近に王道ヒロインがいながらも気づくことができないほどの阿呆だったのか。

「それで、質問してもいい?」

「いいですよ」

 おれの思いはそっちのけで清水さんは話を掛けてきた。

「私が走り終わった後、どうして私のほうを向いて拍手を送ってくれたの?」

「そ、その~、清水さんが三本目のハードルで引っかかっても諦めずに走り続けたのが、その、…………」

「……?」

「かっ、かっこよかったからです!」

「っ、あ、ありがと」

「は、はい」

 長い沈黙が続く。お互いに顔を合わせられない状況だ。

「そ、そう言えば闇影は誰かの応援に来てたの」

「い、いえ、早朝ランニング中に迷子になってしまって……」

「早朝ってことは、朝とお昼は?」

「食べてません。」

 それを聞いて清水さんはバッグをあさりウイダーを取りだして俺に渡してくれた。

「いいんですか?」

「しっかりご飯食べないと体に悪い、それ飲んで栄養蓄えて」

「はい」

 その後バスの中で俺が体力モンスタ―と呼ばれている理由などを話していると降りるバス停についた

 そこはまさしくうちの目と鼻の先のバス停だった。

「マップ通りなら家ってそこだよね?」

「はい」

「じゃあ私すぐそこだから…………せっかくだし連絡先交換しとく?」

「いいんですか⁉」

「うん」

 こうして俺は清水さんの連絡先をゲットできた。雪絵お姉ちゃんを入れて二人目の連絡先だった。

 




今回は潔子さんです。
中学は日向と一緒にするか悩みましたが今のところ別々にする予定です。
あと、今は一人称で話を進めていますが原作開始では三人称で話を進めていこうかと思っています。何かあったら感想でお願いします。
あと、アンケートは原作開始直前で終了します。
今後ともよろしくお願いします


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中学編

本日に作品目


今俺は潔子さんと昼食を取っている。

 潔子さん初めて会って数ヶ月、特にこれと言った原作キャラに会うことはなく、俺は潔子さんと同じ中学に進むことになった。小学生の時は方向音痴ということもあって習い事はさせてもらえなかったが、中学では部活をしてもいいということになった。

 もちろん俺はバレー部に入るつもりでいた。しかしこの学校のバレー部は去年三年生を最後居なくなったそうだ。潔子さんには「知ってて晃はこの学校を選んだと思ってた」と言われた。

 ちなみにお互いに名前で呼んでいるのは潔子さん曰く「闇影ってなんか暗いから名前で呼んでもいい?私も名前でいいから」とのことだ。俺は即行で返事をした。

 潔子さんには陸上部の長距離走選手にならないかと勧誘を受けたが、やはりバレーをしたかったので断らせてもらった。その時の潔子さんの顔が少し悲しそうに見えたが、彼女はすぐに切り替えて部活へと向かって行った。

 俺は見送って担任の教師に「バレー部を創りたい」と言ったが五人以上で部活、それ未満は同好会ということになった。同好会なので部費や部室、練習場はなかったが、それでも一人で体育館の隅で壁打ち練習をしたり、女子に混ざってブロックとリベロ、セッターのポジションで練習させてもらったりした。運動場にも行こうとしたが潔子さんに「きたら、だめ」

と言われたので、運動場に入ってない。

 よって、潔子さんとまともに校内で会えるのがこの昼食のみとなった。しかし、日に日に潔子さんの顔色が暗くなっていくのを感じていた。

 そして今日、いつも以上に彼女の顔が暗い。最初は一生懸命作り笑顔をしていたがご飯を食べているときはあまり箸が進んでいないようだった。

「潔子さん、どうしたんですか」

「?なにが?」

「最近なんか、暗くなっていってるから大丈夫かな~、と思って」

「……大丈夫…………と言いたいけどちょっとね、」

「俺で良ければ話し相手になりますけど」

「ありがとう、じゃあ聴いてくれる?」

 そう言って潔子さんは弁当を袋に包み話し始める。

「晃が運動場で練習するっていた時、来たらだめって言ったの覚えてる?」

 俺は静かにうなずく。

「あれね、練習中に失敗する私を見てほしくなかったからなんだ。初めて晃に会ったときに私にかっこよかったって言ったこと覚えてる?私ね、嬉しかったんだ。今まで褒められることはあっても、みんな可愛いや美しいって、女の子なら嬉しいんだろうけど、私は外面だけで決めつけられてる感じで全然嬉しくなかった。だからあの時晃に諦めず走り続けたことがかっこいいって言われてとても嬉しかった。だからこれからも頑張れるって思ったんだけど、技術は身につかなかった。最初は楽しかったはずの部活も、今は行きたくないって気持ちが強くなっちゃって、失望した?かっこいいって言ってくれたのにごめんね」

 今俺は自分で自分が腹立たしくて仕方ない。前線の記憶を持ちながら潔子さんの苦労に気づくことができなかった。どころか俺自身が潔子さんを苦しめていた。それが腹立たしくて仕方がない。

「失望したって聞きましたよね?」

「うん。」

「そんなわけないじゃないすか。行きたくないって気持ちが強くても潔子さんは毎日練習に行ってるじゃないですか。それに俺知ってるんですよ。潔子さんいつも最後まで残って練習してるって、普通諦めてる人はそんなことしませんって。むしろ誰よりも頑張ってるんだから誰が何と言おうと潔子さんはかっこいいですって。」

潔子さんの顔を見ると涙を流していた。

「あ、あの、なんか悪いこと言っちゃいましたか⁉すみませんっ!!」

「ち、ちがっ…そうじゃなくて、嬉しくて………………、もし、嫌われたらどうしようって、思ってたのに、むしろ褒められるなんて、思わなくて」

「嫌うって、そんなわけないじゃないですか、むしろ俺がかっこいいって言ったせいで無理させてしまったり、近くにいるのに潔子さんがつらい思いしてるって気付かなくてすみません。」

「ううん、晃は気づいてくれたし、晃にかっこいいって言われて頑張ったのは私の勝手、だから気にしなくていいよ」

「でも、」

「じゃあ今日の放課後一緒にどこか行こ?」

「ぶ、部活はいいんですか?」

「たまには休養も必要」

 潔子さんはにやけながらそう言った。

 その顔を見て俺は思わずつぶやいてしまった。

「かわかっこいい」

「フフフフ、なにそれ」

 今までの創り笑顔と違い、今までで一番の笑顔で潔子さんは教室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、待った?」

放課後になり校門前で待っていると潔子さんに後ろから声話掛けられた。

「今来たところです。潔子さんはもういいんですか」

「うん、顧問に高校では陸上をしないってことだけ伝えたから、それより時間無くなるし行こうか」

 そう言いながら潔子さんは俺の手を握ってきた。

「あの、なんで手を繋ぐんですか?」

「横に並んでも後ろにいても迷うんだから、手を繋げば迷わないでしょ?」

「……はい」

 女性と手を繋ぐというのは雪絵姉だけだったので手汗をかいてないかが心配になってくる、にしても潔子さんの手はひんやりしてて気持ちがいい。

 しばらく歩いていると大きなショッピングモールに着いた。

 おれはここに着いてからどうしても行きたいところがあった。それは

「眼鏡ショップ?」

「はい、潔子さん今コンタクトですよね」

「うん、そこまで視力は悪くないんだけど陸上競技だから眼鏡よりコンタクトのほうがいいからね」

「でも陸上やめるんですよね?ならこれからは眼鏡で良くないですか?きっと似合いますよ」

「なんで晃が眼鏡を押してるかわからないけどわかった」

 そう言ってお互いに分かれて眼鏡を探しながら見せあった。結果俺の選んだフレームがピンクとホワイトのシマシマのメガネに決まった。原作ではフレームがピンク色のやつだったので潔子さんが持ってきていた眼鏡を選ぼうとしたら、俺の持ってきた眼鏡のほうが気に入ったらしくこの眼鏡を買うことにした。

 その後はカフェでおしゃべりしたり本屋で本を買ったり、スポーツ用品店でおそろいのバレーボールストラップを買ったりと楽しんだ。

 





シリアス展開からのデート回、だからと言ってヒロインが潔子さんと決まったわけじゃありませんので、是非アンケートに答えてください。
あとアンケートの潔子さんの名前間違えてました。ごめんなさい。


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中学編2

俺は今、陸上競技場に来ている。

 ちょうど一年前潔子さんに初めてあった場所だ。

 どうしてここに来ているかと言うと、今日が潔子さんの中学最後の試合だからだ。

 潔子さんはあの時部活を休んで以来、毎日練習に行っているようだ。どうしても技術面は向上しないらしいが、そこは吹っ切れたようで少しづつだがミスも減ってきているらしい。

 そしてつい先日、潔子さんに「最後の大会だから応援に来てくれる?」と聞かれたので、「行きますっ!場所はどこですか?」と聞き返すと、清香さんはいたずらっぽく笑い「私がかっこよくなれた場所」と言い返した。あの日以来潔子さんはかっこいいというとよく笑うようになった。そしてかっこよくなれた場所と言うとあそこしかない。そう思いいつもの早朝ランニングに財布とスマホを持って出かけた。

 会場に着くとハードルの競技はまだ始まっておらず後ろの空いてる場所に腰を下ろす。

 数分経ってハードル競技の予選が始まった。この予選で記録上位の八名で決勝を行うようだ。潔子さんは予選最後のグループらしく、昨日からとても緊張していた。

 予選がどんどん進んでいく中ついに潔子さんの番が来た。潔子さんは今……笑っている。

 どうやら調子は良さそうだ。そして潔子さんの顔は真剣なものに代わりセットする。

 そして今スタートの合図が鳴り響く。

 

 

 

――――――潔子said――――――

 彼のことを知ったのは小学五年生だった。当初は体力お化けと言う噂でどうせでたらめだろうと思っていた。それはクラスのみんなが思ったことだった。

 しかし、その噂が事実だと分からせる出来事が起きた。それは冬に行われる持久走大会。

 うちの小学校では一二年生、三四年生、五六年生が一緒に走るという習慣がある。距離は全学年同じで学年、グループ、学校で順位を出してそれぞれの三位以上の生徒に景品を渡すというものだ。

 この行事は一、三、五年生は学年順位だけを争い、二、四年生がグループ順位、六年生が学校ナンバーワンを決める戦いと言うのが恒例となっていた。当初の六年生もそう思っていたのだろう。体力お化けと呼ばれていた子も去年はグループ一位を取ったらしいが学校順位を取ることはなかった。よって、ただの噂だと皆が思って、そこまで早くないとみんなが思っていた。

 しかし結果は違った。体力お化けと言われた少年は校内記録を塗り替えるほどの速さを出したにもかかわらず、息切れ一つしていなかった。そしてあろうことか先生に許可を取り二週目に入り、そこでも二位との大差をつけゴールしたのだ。

 当初余裕を持っていた六年生もこの話を聞いた瞬間信じられないと言いたいかのような顔をして持久走に挑んでいたが、結果は体力お化けの少年の記録には全く届くことなく、学校一位は体力お化けの少年になった。

 校長先生に「学校一位、闇影晃」と呼ばれて返事した少年は三年生の列から出てきて賞状を受け取る。最初はみんなが驚いた。その少年はどこにでもいる少年だったからだ。その姿を見て他の教室や私のクラスでも、体力お化けの話で持ちきりだった。曰く体力お化けは早朝に山一つ越えるほど走っている、曰く体力お化けはスポーツ万能である、曰く体力お化けは人間の皮をかぶった本当のお化け、このほかにも本当は小さいオトナや、動物の力を持っているなどのうわさが広まった。

 その翌年も彼は再び校内記録を塗り替え学校一位となり女子のファンも増えていった。

 しかし、私にはそれでも悔しそうにする顔が何故かうらやましかった。

その後、私は中学に進学し陸上部に入った。その時からだろう、告白されるようになったのは、色々な人に告白された。学校一のイケメンと名高い男子、スポーツ万能な先輩、たまに教師や郊外から来る人もいた。しかし決まって告白はみんな一緒で「一目ぼれしました、付き合ってください。」だ。そして断っていくうちに褒めて落とそうという人も出てきた。しかし、それも皆「可愛いね、」や、「きれい、美人」などだ。いつしか私は近所の人に同じことを言われても嬉しいと思わなくなった。

二年に上がってからも同じことを言われ続け、部活でもうまくいかないことから正直逃げたくなった。

その状態で私は大会を迎えた。結果は四位で三本目に引っかかって失速した。それでも走り続けて四位。そんな時、他の人は一位になった人を見るのに一人だけ私を見ている人がいた。最初は私以外の誰かを見ているのかと周りを見渡してみるが私以外誰もいなかった。私はとりあえず手を振って振り返してみると彼も周りを見渡し手を振り返した。私は面白くて笑ってしまった。そのまま控室に戻って着替え帰る準備を済ませて控室を出て歩いているとスマホを持ってうろうろしている人を見つけた。あの時私に拍手を送ってくれた彼だった。そんな彼に私は勇気を振り絞って声を掛ける。

「どうしたの?」

「じ、実は道に迷ってしまって……」

緊張しているのか声が少し裏返っていた。

「家、どこかわかる?」

 彼はスマホのマップを見せ、家のある場所を教えてくれた。少し私を信用しすぎではないだろうか?

 そして、マップを見てみると、私の家の近くだった。

「私のうちに近い。…………一緒にいく?」

「いいんですか⁉」

「うん、私も君に聞きたいことあるから、ついてきて」

 あの時どうして私を見ていたか気になったので案内するついでに聞いてみることにした。

 しばらく歩いていると目的のバス停に着いた。

「あの、俺、金持ってないんですけど」

「うん、私が払ってあげる」

「いや、そこまでしてもらうのは……」

「気にしなくていい、私の質問に答えてくれれば。」

正直脅している感じもあったが気にしないように言い流す。

バスが来るまで何を話したらいいかが分からなくて沈黙が続いた。

 しばらくしてバスが来て乗り込んだ。私は空いてる席を見つけその席の奥に座った。しかし、彼はなかなか座らない。なぜ座らないのか見ていると彼は「失礼します」といい、私の隣に座った。

「私二年の清水潔子、君は?」

 名前を知らないのに話すのは失礼だと思ってとりあえず名乗ることにした。

「小六の闇影晃です」

「!?小学生だったんだ、大きいから中学生かと思ってた、それに闇影ってもしかして体力お化け?」

 普通に大きいから高校生かと思っていたがどうやら小学生だったようだ。

「あ、はい、そう呼ばれてました。今では体力モンスターですけど、にしてもよく知ってましたね」

「多分、同じ小学校」

 あれから二年でだいぶ成長していたので最初は分からなかった。

 彼は私と同じ小学校と聞くと何故か頭を抱えて落ち込んでいた。

「それで、質問してもいい?」

「いいですよ」

「私が走り終わった後、どうして私のほうを向いて拍手を送ってくれたの?」

 とりあえず聞いてみたかったことを聞くことにした。

「そ、その~、清水さんが三本目のハードルで引っかかっても諦めずに走り続けたのが、その、…………」

「……?」

「かっ、かっこよかったからです!」

「っ、あ、ありがと」

「は、はい」

 今までたくさん褒められて感覚がマヒしていたので、初めてかっこいいと言われて顔を見ることもできなかった。どころか何か話さないと、間が悪い感じがした。

「そ、そう言えば闇影は誰かの応援に来てたの」

「い、いえ、早朝ランニング中に迷子になってしまって……」

「早朝ってことは、朝とお昼は?」

「食べてません。」

私はそれを聞いてバッグの中にあったウイダーを見つけ彼に渡す。

「いいんですか⁉」

「しっかりご飯食べないと体に悪い、それ飲んで栄養蓄えて」

「はい」

 その後は彼がなんで体力モンスタ―と呼ばれるかを聞いて笑っているうちに目的の場所に着いた。

 その後は連絡先を聞いてお互い別れた。

 

それから数か月後に晃が中学に入学してきた。私は晃が入学する前「本当に私と同じ学校に入学するの?」と聞き、晃は「はい!」と答えるのでうちの学校のバレー部がなくなったのを知って入学したかと思ったから、知らなかったときは少し面白かった。一応陸上部に勧誘したが、バレーをすると言ったとき私は少し安堵してしまった。

それから晃は一人で練習することが多くなり、「運動場にもいっていい?」と聞かれたとき、私は失敗してかっこ悪いところを見られたくなったので「きたら、だめ」と言ってしまった。その時の彼は残念そうに帰っていった。

私はもう一度かっこいいといってもらうためにその日から更に練習に打ち込んだ。しかし、それでもハードルに引っかかることが多かった、なかなかうまくならずに部活に行きたくなくなってきた時晃に心配された。

私は自分が思っている気持ちを全部話した後晃に「失望した?かっこいいって言ってくれたのにごめんね」と言ってしまった。おそらくここで「失望した」なんて言われたら私はもう経ちあがることはできないだろう。しかし返ってきたのは予想外の言葉だった。

「失望したって聞きましたよね?」

「うん。」

「そんなわけないじゃないすか。行きたくないって気持ちが強くても潔子さんは毎日練習に行ってるじゃないですか。それに俺知ってるんですよ。潔子さんいつも最後まで残って練習してるって、普通諦めてる人はそんなことしませんって。むしろ誰よりも頑張ってるんだから誰が何と言おうと潔子さんはかっこいいですって。」

私はそれを聞いてうれしくて涙をこぼした。

「あ、あの、なんか悪い子と言っちゃいましたか⁉すみませんっ!!」

「ち、ちがっ…そうじゃなくて、嬉しくて………………、もし、嫌われたらどうしようって、思ってたのに、むしろ褒められるなんて、思わなくて」

「嫌うって、そんなわけないじゃないですか、むしろ俺がかっこいいって言ったせいで無理させてしまったり、近くにいるのに潔子さんがつらい思いしてるって気付かなくてすみません。」

「ううん、晃は気づいてくれたし、晃にかっこいいって言われて頑張ったのは私の勝手、だから気にしなくていいよ」

その時私は中学で陸上をやめる決心がついた。

顧問の先生にもその決心を話すと、「その判断に後悔がないなら最後まで頑張りなさい」と言われ残りの部活を頑張ることにし。

次の日から私は練習を再開すると少しづつだが記録が早くなっていくのが分かった。技術は上達しなかったけれど。

そして大会前、私は晃に「最後の大会だから応援に来てくれる?」と頼んでみた。晃はすぐに「行きますっ!場所はどこですか?」と答えてくれた。場所は去年と同じ場所なので私はあえてこういうことにした。

「私がかっこよくなれた場所」

 

 

 

 

どうして今こんなことを思いだしてしまったか自分にもわからない。私は会場を見渡す。晃は来ているのかすると晃を見つけた。晃も私のことを見ている。今日で最後になるハードル走。私は晃にもう一度かっこいいと言いって欲しくて走ることにした。

そして今スタートの合図が鳴り響く。

 

 

 

――――――潔子said out――――――

 

潔子さんは合図と同時に走り出す、一本目二本目は成功、去年は三本目で引っかかって速度を落とした。見ているこっちもドキドキする、潔子さんが三本目を跳ぶ位置に来たスピードを上げ三本目を跳ぶ。結果は

 

 

 

 

無事とぶことができた。そのご四本目五本目と失敗することなく三位でゴールする。その記録が電光掲示板に表記されすぐに全体順位にと替えられた。

結果

 

 

 

 

 

九位と決勝リーグ出場はならなかった。

 潔子さんはその結果を見て笑顔でこちらに手を振ってくる。俺も一応手を振り返す。そのまま控室に戻っていく潔子さんを見て俺も席を立ったベンチに座っていると、

「ごめん、待った?」

 潔子さんが来た。しかしいつもと違うところがある。それは眼鏡をしているところだ。その眼鏡は大会が終わったら付けるといってた眼鏡である。

「へん、だった?」

「いえいえ、そ、とても似合ってて、かっこいい潔子さんの後に可愛い潔子さんがいたから、その、驚いてしまって」

「あ、ありがと」

 そのまま潔子さんは俺のベンチに座った。

「私ね、三位になったとき、やり切った、もう悔いはない、と思ったんだ。でも順位表で総合九位だったときとても悔しかった、なんか変だよね?あんなに、走りたく、なかった、のに」

 潔子さんの声が弱弱しくなっていくのが分かる、彼女の目には少しづつ涙があふれてきている。

 こんな時俺はどう答えればいいか悩む。簡単に声を掛けるだけじゃダメだからだ。しかし、その答えはすぐに見つかった。思っていることを伝えればいいんだ、と。

「全然変じゃないですよ、悔しかったってことはそれだけ頑張って練習して、試合にかける気持ちがそれだけ大きかったってことです。だから悔しくても、泣いていいんですよ。我慢しないでください。胸なら貸します」

「…………ありがと」

 そう言って潔子さんは俺の胸でたくさん泣いた。

 




あと一二話で原作に入ります。


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中学編3

 潔子さんが陸上部を引退してから数ヶ月。その間とくに何も起こらなかった……なんて展開は起きず、眼鏡を付けて学校に登校してきた潔子さんにある出来事が起きた。それは、告白だ。

 もともと告白され慣れている潔子さんだが、断った理由が部活に熱心したいからと勘違いをした連中に合わせ、眼鏡を付けた時の魅力にやられて告白する連中も増えた。

今までは、教師以外普通の生徒だからよかったのだが、最近では彼女持ちなのに告白して来ようとするものまでいた。

彼女持ちが告白、その噂は瞬く間に学校中に広まり学校中の彼氏持ちの女子が一斉に俺のところに来た。なぜ俺のところに来たかを聞いてみると「彼氏が清水さんにラブレターを渡したり、告白したら連絡してほしい」とのことだった。最初は断ろうと思ったが、最近の潔子さんは告白の返事を返すので疲れているような感じだったため、受けることにした。

それ以来、潔子さんあてのラブレターは俺が管理するようになり、彼女持ちのラブレターはその彼女に時間と場所を教える、その後のことはカップルの問題なので関与しないことにした。教師からのラブレターは即刻教育委員会に連絡をして罰を与えてもらえることになり、その他の一般生徒は呪いの手紙を靴箱の中に入れることにして、潔子さんへの告白を無くすことに成功した。

それ以来俺は男子には「清水潔子の番犬」、女子には「清水さんの騎士(ナイト)」と呼ばれる様になり、このことを潔子さんに話すと潔子さんにからかわられるようになった。

 

 

 

 

 

 

それから月日が経ち新しい年になり俺は二年生になった。

潔子さんは原作通り烏野高校に進学、卒業式の日俺はどこに進学するのか聞かれたが「今のところは烏野です」と答えると、「じゃあ来てくれることを願って待ってる」と言われた。

俺は新入部員が来ることを祈って待っていたが、誰も来る気配がなかったので借りることのできた体育館で、一人でサーブ練習をして待つことにした。

とりあえず最初はジャンプフローターから打つことにして構える。両手でサーブトスを上げる。完璧。そこから軽く飛んで打つ。掌にボールが当たろうとした瞬間。

「すいやせ~ん!」

 体育館の出入り口から声が聞こえた。

 打ったボールは全く違うところにとんでいきラインを割った。少しイラッとしたが新入部員ならいっかと思い、声のしたほうに顔を向けるとそこにはガラの悪そうな男子が四人いた。

「あの~、俺たちー、ここで遊びたいんで帰ってもらってもいいですか~?」

「いや、普通にダメだけど」

「おいテメェ、ボスの言うことが聞けねえって言うのか!?」

「そうだぜ、うちのボスはなぁ――――」

「やめろおめえら‼んな恥ずかしい真似してんじゃねえ」

「「す、すいやせん、ボス‼」」

 お、ただのガラの悪い不良かと思ったが、ボスっていうやつの性格はそこまで悪くないようだ。ついでにそのとりまきたちはボスの命令にはしっかり従うらしい。

「それで、ここの体育館かけて勝負したいんですけどのってくれますか~?センパイ」

 先輩、いい響きだ。にしても勝負か、まあ暇だし別にいっか。

「いいぞ、それで何の勝負をするんだ?」

「さっきあんたが打ってたボールを俺が上に上げれれば俺の勝ち。上に上げなければあんたの勝ちだ」

「なるほど、シンプルでいいルールだ、……じゃあ俺からも一つ、」

「あぁ」

「なに、簡単なことだ。ボールを上げるにしても、しっかりラインの中に上げてくれればいい」

「…………そんくらいならいいぞ」

「へっ、うちのボスはな、これまで相手の得意な勝負を挑んで一回も負けたことがねぇんだ!なめてんじゃねえぞ!」

「そこまでにしとけ、それで、俺たちが勝ったらこの体育館だがあんたが勝ったらどうすんだ?」

 俺はそこで考える。今俺が欲しいのは新入部員だ、あと四人いれば正式な部として認められ、体育館の利用がしやすくなる。幸いここには四人いるが勝負は俺と、そこのボスっていう奴の一対一、そのとりまきを巻き込むのはさすがに悪い。なら、

「俺が勝ったら、負けたあんたはうちの部に入ってもらう」

「ああ、いい「まってくだせい」あぁ?」

「なんでボスを掛けるんなら俺を掛けてくだせい」

「いや、ボスを掛けるくらいならオレッチが代わりになります」

「………………………」

「お前ら……俺が負けると思ってんのか?」

「ちっ!、違いや「だがおまえたちの気持ちは嬉しかっったぜ」ボス」

「あんたが勝ったら俺達全員、あんたの部活に入ってやるよ」

「ボ、ボス~~~~!」

 何で俺がこんなヤンキーどもの友情なんかを見なきゃいけねえんだっ!と思ったが話がまとまって全員入ってくれるのは、嬉しい誤算だ。

「さぁ、おっぱじめようぜ」

「三本勝負で一本でもあげたらそっちの勝ち、上げられなきゃ俺の勝ちだ」

「あぁ、なんでそんなハンデ「こちとら経験者なんだ、そんくらいいいだろ」っち、分かったよ、おれにハンデを与えた事後悔させてやる」

いや、後悔って、初めて受けるやつにジャンフロを一本目でしっかり上げるなんて無理だから。

「じゃあ行くぞ。」

 俺は両手でボールを持つ。ここからは極限の集中力を使うことにする。狙うはど真ん中で構えているあいつ。構えは悪いが腰をしっかり下ろしてるのはいい。サーブトスを上げる悪くないがうまく上がったとは言えない、ならジャンプで修正する。さっきの軽いジャンプとは違い次はゆっくり高く飛ぶ。ここで照準が合い腕を振る。さっきの練習では変化を意識したが今度のサーブはスピード重視だ。ボールはきれいに掌に当たりとんでいく回転はかかっておらず、あまりぶれずに進んでいく。相手のボスっていう奴は小学校の体育で習ったのか基本のレシーブの構えをしてボールを待っていた。このサーブの厄介なところは取れると思った瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しぶれるということだ。

 

――――――三人称――――――

 

ボールはボスの両腕に収まると思われた瞬間、右へとぶれ、ボス右腕に当たりラインの外に転がっていった。

 ボスのとりまきは、ボスが取れなかったことに驚いていた。

 当のボスはと言うと、

(んだ、今の、確かにとったと思ったのに、途中で軌道が変わりやがった。)

 打った当人の晃はと言うと、

(次は変化重視にしよう、さっきのミスは修正できたが習ったより変化が小さかった。今度はジャンフロの本当の恐ろしさを見せてやろう。)

 先ほどのミスを反省し次のことを考えていた。

 

 

 

 

 両手でボールを持ち晃はボスが構えるのを待つ。

 ボスは一度、天を仰ぎ再び構える。先ほどとは違い明らかに気合が入っている。

 晃はそれを肌で感じながらも、一度心を落ち着かせボールを上げる。先ほどと違い今度は軽く飛んで掌でボールを打つ。

 そのボールは先ほどと違い速さはそこまでないがぶれながら飛んでいく。

 一瞬この速さなら取れると思ったボスでもぶれ始めたボールを見て困惑していく。そのボールはそのまま進んでいくかと思われたが、急に下へ落ちていきボスの手前に落ちていく。ボスは手を伸ばしたが届かず、ボールはそのまま床に落ちた。

 これで二本失敗、そのことが信じられないのかとりまきたちは声が出ない。

 しかし、ボスは一人落ち着いておりさっきのサーブと今のサーブの共通点を探し出す。

(ぶれ玉、そして自分の腰の位置)

 ボスは再び構える今度は先ほどと違い明らかに楽な姿勢で、

――――――終了――――――

 

 俺は今シンプルに感心している。たったの二発受けただけでボールの変化だけでなく自分の体制に気づいたボスの行動を。さっきまでのあいつは腰が低く動きにくい体制で構えていた。だから、二本目のサーブでボールが目絵に落ちた時反応することができても、ボールに手を届かせることができなかった。そこは素直に誉めてやろう。

 だがこの勝負、勝たせてもらう‼

 

 

 

――――――再び三人称――――――

 

彼にはまだジャンフロの恐ろしさに気付いていないところがある。

 晃は再びボスを見る。しかし先ほど見た構えではなく、今見ているのはボスのいる位置だ。

(本来ジャンフロは少し下がって取るのが基本だ、だが、あいつはさっきの前に落ちたボールを警戒して少し前気味になっている。狙うなら、……頭!)

 晃はサーブトスを上げる、先ほどとは違い少し前気味に上げる、しかし先ほどと同じように軽く飛んで腕を振る。ボールは手のひらに当たりボスの頭にめがけて飛んでいく。

 ボスは先ほどと違い高めに飛んでくるボールに対処しようと両手を頭の上に上げボールを取ろうとする。

 ボスがボールを両手で上げようとした瞬間、ボールは伸びていきボスの中指に当たって外へと出ていった。

 それを見た晃は次の瞬間

「よしっ!」

 ガッツポーズをして笑顔で笑った。

 

――――――終了――――――

 

 初めての対人戦、今まで女子のチームに混ざることはあっても男子で体格もでかいため、レシーブ、トス、ブロックにしか参加させてもらえなかった。バレーを愛して十数年、俺の心は今とても高揚している。

「ボス、大丈夫っすか!?」

「すまねぇお前ら、巻き込んだ上に負けちまって…………」

「そんなこと言わねえでくださいボス、俺っち達は巻き込まれたなんて一ミリも思っちゃいねえっす‼」

「そうっすよ、俺はあんな真剣なボスなんて久しぶりに見たんすよ」

「……………………」

「てめえら」

 なんか話が勝手にまとまって言ったっぽい。

ボスは立ちあがると俺のもとへ歩いてきた。

「えーっと、三本とも俺が勝ったからうちの部活に入ってくれる、ってことでいいよな?」

「もちろん、これからよろしくお願いします‼!アニキ!」

「「お願いします‼アニキ」」

「……………………」

「おう、よろしく、…………アニキ?」

「うちのルールはボスに勝った奴はみんなアニキっていうルールなんすよ」

「と言うやけでアニキ、俺はボスこと山岸(やまぎし)ボス朗(ぼすろう)です。ボスって呼んでください」

「おれっちは、友寄逹(ともよりだち)っす。よろしくお願いします」

「俺は侯隆悠仁(きみたかゆうじん)です、よろしくお願いします」

「……………………」

「こいつは無口斗真。無口なのはすみませんが勘弁してやってください」

「気にするな、俺は「あ、アニキはアニキなので下っ端の俺たちに名のらなくていいっすよ」えあ、あ、うん、分かった」

 初めての後輩、初めての部員、しかし、ボスたちはバレーのルールも全く分からないようなのでこの一年は練習と更生、あと、勉強になった。だって、人数が足りないって言ったときあいつら、「そこら辺にいるやつら脅して入部させましょう」って言ったり。「あいつらの体育館奪って練習しましょう」だったり、「俺達テストで赤点取ってしまったので補修らしいんすけど、サボって練習行きますね」と来た。

 来年にはボスの後輩が入って来るらしいのでそれまでは、ボスたちの更生をすることになったのだ。

 ちなみにこのことを潔子さんに電話で話したら、笑われた後「頑張って」と言われた。やはりまだ部活には入っていないようだ。

 それから一年が過ぎ、ボスたちの素行が少し良くなったところにボスの後輩のチビが来た。最初にそう呼んでいいか聞いたところ、ボスに初めて呼ばれた名前だから気に行っているらしい。身長は小さいが反射神経がよくリベロに向いているんじゃないか、ということだった。幸いチビは勉強はできるらしくバレーのルールを教えるだけだったので、最後の大会には間に合った。

  

 

 

 

前世も合わせて十数年俺にとって初めての公式大会が今始まる。

 




今回で最後の原作前になります。今後の書き方は基本一人称ですが、試合の時は基本的に三人称で書いていくつもりです。
後、今回のオリキャラは高校では基本的に出てきません。
今後ともよろしくお願いします。


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原作開始:中学編
大会


いよいよ原作開始うまく書けるかわかりませんが、頑張っていきます。今後ともよろしくお願いします。




ヒロインは潔子さんに決定しました。
潔子さんが圧倒的に人気があったので驚きました。



 家を出て二時間たった今、俺はようやく試合会場に着くことができた。うちは復活したばかりの成績も残せていない部活なので顧問がいなければ、移動するためのバスもない。よって現地集合だったため、道に迷ってしまった。

 ボスたちはすでにコートでアップを始めているらしく、荷物を置く場所もすでに確保済みらしい。

 ボスたちの荷物を見つけて道具をそこに置き必要なものだけを持ってボスたちのいるところへ向かう。

 ボスたちはすでに体操に入っていた。

「すまん、遅れた」

「大丈夫ですよアニキ、時間前なんで。それより本当に俺がキャプテンで良かったんですか?アニキのほうが歴が長いのに……」

「お前ならできると思って任せたんだ。確かにバレー歴は俺のほうが長いけど、逹たちとの仲の長さはお前のほうが長いだろ?バレーってのは繋ぐ競技だ。ボールをつなぐには?」

「仲間との信頼が一番大事」

「そうゆうこと」

 再び練習を再開しようとしたとき、

『おおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっ‼‼‼‼』

「あぁ、なんだ?」

「おいボス、顔、顔が怖いぞ」

「アニキ、あれ何なんすか?うるせえんですけど、あれ」

「優勝候補の北川第一だ。一応今日勝てば明日の二回戦で当たる。」

「ボッサン、昨日昨日紙渡しましたよね?」

「ああ、あれ?昨日は楽しかったよなダチッコ?」

「あぁ、あれトーナメント表だったんですか?昨日はよく飛びましたよね?」

 まさかこいつら、トーナメント表を紙飛行機にするとか馬鹿か。

「まあ、目の前の試合に集中すればそれでいいわ。」

 とりあえずアップに入ることにした。

 皆、調子は悪くなさそうだ。ボスに至ってはいつも以上に声が出ている。

 北一の声に感化されたようだ。

 試合が始まるため第一試合のあるチーム以外の選手はコートの外に移動させられる。

 そのままトイレに行くと小さい二人が俺の横を通り過ぎる。その姿を見た瞬間俺はそいつらが誰なのかすぐにわかった。緑色のユニフォーム、オレンジ色の髪。それだけでもわかる。あれは日向翔陽だということが。本当は日向対影山の試合を見たいのはやまやまだが、その後に俺達は試合なので作戦を練るため見ることができないのだ。

 荷物を置いていた場所に戻ると、ボスがなぜだか機嫌が悪そうだった。ボスを宥めていた逹に話を聞くと、仙国中のやつらが「初戦は楽なのに次の試合北一じゃん。マジ最悪じゃね?まぁ次の試合は気持ちよく勝って、北一は楽に行こうぜ」と言っていたのをボスが耳にして、跳びかかろうとしたのを逹たちが全力で阻止したらしい。

「おいアニキ、俺ぁあんなこと言われて黙っているほど人間できてません。この試合、俺中心に攻めさせてください!」

 確かにボスの気持ちが分からなくもない。俺だってもし自分のチームメイトたちの悪口を言われたら怒る。だが、

「ダメだ、」

「なんでですか⁉」

「今回の試合、元から俺を中心に攻める予定だ。」

「それを俺に変えるってだけじゃないですか!なんでダメなんです!?」

「二回戦、そこで確実に北一と当たる。その時に俺達は、俺のワンマンチームだということを相手の頭の中に染み込ませておく必要がある」

「アニキ、理由はなんとなくわかったすけど、それだとボスも納得しねえっすよ」

「わかってる。だからボス。お前は一つだけ禁止していたことを解禁させる」

「なんすか?」

「スパイクサーブ、打っていいぞ」

「「「「‼?」」」」

 本来スパイクサーブはこの試合ではピンチの時にしか使わないと決めていた。しかし、このままでは、ボスの怒りは頂点まで達し、試合中に何をしでかすかわからないまである。それに、

「サーブは一対多で行うものだ。お前ひとりのサーブで相手チームを翻弄した時の顔を想像してみろ、たぶんとても気持ちいぞ?」

 俺は時々自分たちをバカにしたやつら、調子に乗っているやつらを相手にしているときにドSになるようだ。自覚はないが、潔子さんのラブレターで彼女持ちを密告するときや、教育委員会に訴える時、呪いの手紙を靴箱に入れる時、いつもにやけながら行っていたらしく、潔子さん曰く「ドSスイッチ」と言われるようになった。

 ボスは考えているようだったがすぐに顔をニヤ突かせ「いいっすね、それ」ということで話はまとまった。前の試合が終わり、俺達は試合のためにアップを開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――三人称――――――

試合開始の笛が鳴る。

晃たちは前衛にボス、晃、無口の最高壁三人だ、今までたくさんの人を見てきた無口の目、見た目は明らかにガラの悪いボス、中学生離れした身長を持つ晃の三人に、最初は楽勝と思っていた仙国の選手はへっぴり越しになる。仙国のサーブはチビのもとへ行き、チビはセッターである無口のもとにきれいにボールを上げ、無口は声を出さずにトスを上げる場所を見る。そのまま高くトスを上げた無口。晃はそのトスに余裕を持って助走し思いっきり飛ぶ。仙国のブロックは三枚付くが晃にはそんなもの関係なかった。晃はブロックの上からボールを打ち抜く、そのボールは大きな音を上げ床に当たりバウンドして客席の二階にとんでいった。

 仙国の選手はそれを見ただけで顔は青ざめ震えた。しかし悪夢は始まったばかりだ。次のサーブは怒りに怒ったボスのサーブ。ラインから少し離れたところでサーブトスを上げるボス。仙国の選手は誰が予想しただろうか。聞いたことも見たこともない無名校がスパイクサーブを打つなんて、ボスのサーブは誰も触ることができずコートにたたきつけられる。

「おいおいボス、サーブ少し手、抜きすぎなんじゃねえか?」

「すいやせんアニキ、でもまだエンジン掛けている途中なのでもう少し待ってください」

「……早くあっためろよ」

 無残な言葉が仙国の選手たちを襲う。あれだけのサーブでまだ全力じゃない。仙国の選手たちは、相手が無名校だからとアップに身を入れずテキトーにしていた。結果、ボスのサーブを取ろうにも身体が言うことを聞かず、ボールに触れるもそのままふっ飛ばされた。

それは、一セット目に限らず二セット目まで起こることとなり、結果はまさかの25-0、25-0のパーフェクトゲームで試合は終わった。

この結果に見ていた観客は驚きを隠せず、それを受けた仙国の選手はすでに目から涙をこぼしている人までいた。

最終的に仙国の3年はまともな試合をさせてもらうことができず、中学最後の大会を終えた。

 

 

―――終了――――――

 

 今のボスの顔は今までに見たことがないほどの笑顔だ。この大会の俺達の初戦は、俺が最初の一点、残り四十九点をボスがたたき出した。相手がしっかりアップしていなかったというのもあるが、初戦にしては上出来すぎるほどの結果だ。

 しかし、明日の相手は北川第一。そううまくいかないだろう。恐らく今日の試合もみているはずだ。

「ボス、喜ぶのはいいが、切り替えろ。明日は北川第一との試合、今日の相手とは違って多いい人数から選ばれた正真正銘優勝候補のチームだ。サーブだって上げられるし、スパイクだって打ってくる。恐らく今日の俺の得点は一点だが、俺から先につぶしてくるだろう」

「それじゃあ……」

逹が不安そうに見てくる。

「心配すんな。ちゃんと手は用意してある。だが、うまく成功しても勝てるっていう保証はねぇからあとは、俺たちがどのくらいできるかってのに掛かってる。それで作戦は……………………明日のお楽しみだ。今日はゆっくり休んで明日に備え解け」

「「「「うっす‼‼」」」」

「……………………」

 

それだけ話して今日は解散となった。

明日はついに影山との試合だ。この時の影山の性格はある程度分かっているからいくらか作戦が思いつく。あとは俺の目と、予想外のことが起きなければ負けることはない。

 




普通じゃパーフェクトゲームなんてありえません。
だからこそ敢えて書きました。何か感想意見がある方は是非お願いします。


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大会2

今日俺たちは北一と戦うため再び試合会場を訪れた。

昨日、試合に勝ったことでテンションマックスだったボスたちだが、今日は昨日以上に落ち着いている。それもそうだろう。昨日の仙国とは違い今日の空いての北一は選手層が厚く、優勝候補としても有名だ。逆に俺達は選手層が薄く、一人でもかければそこで終了。

俺達は第一試合のためすぐにアップに入る。

「アニキ、作戦って本当にあれで良かったんですか?」

「そうっすよアニキ、これがアニキの最後の大会で、負けたらそこで終わりだってのに」

「おれっちたちで攻めろって!?」

「それに俺中心で攻める意味が分かりませんよ、アニキ‼」

「……………………」

 俺は会場に着いてすぐにボスたちに作戦を知らせた。今回の作戦は、チビを中心的に攻めさせ、俺はレシーブ、トスを中心にして試合をするというものだ。本来、昨日の試合で俺がスパイクを打ちワンマンチームだと北一の偵察に教えようとしたが、ボスがサーブで点を取ってしまったため相手チームに俺達の情報は多くない。それでも昨日の試合で俺とボスの情報は少なからず取れただろう。主にボスのを。

しかし、ここがとても重要だった。実を言うと今日の試合ボスを中心に攻めるというものだった。が、昨日のサーブでボスも警戒されてしまった。じゃあ、ボスの代わりに相手の度肝を抜くのに誰が一番、適任か?

それはこの中でも一番小さく運動神経がよいチビだった。よってチビを中心に攻める作戦に切り替えたのだ。

正直言ってこれは賭けだ。例え、チビへの作戦がうまくいっても影山がこの試合で交代してしまったら、俺の作戦のいくつかは潰れ、残りは体力勝負になる。そうなってしまったらチビの体力はおろか、他のみんなの体力が持つかわからない。原作では影山は決勝戦で交代したが、俺の作戦が嵌れば影山が交代する可能性はいくらでもある。そうなればフルセットまでやる可能性が高く、チビはもちろん俺とボス以外の体力が持つかわからないのだ。

そんなことをグダグダ考えている間に試合開始の時間が刻々と迫ってきた。

「とりあえずチビを中心に攻めるのは決定、あとは基本的に俺とボスでレシーブ、ブロックは俺が指示を出す。サーブは予定通り六番を揺さぶれ。わかったな?それじゃあ、行くぞ‼‼」

「おっす‼‼」

 コートに一列に並ぶ、相手が十四人いるのに対し俺たちは六人。もちろん相手には、影山だけではなく金田一に国見もいる。

 そして今対北川第一との試合が始まる。

 

 

 

――――――三人称―――――

 サーブは北川第一からだ。サーバーの金田一はもちろん、他の選手も昨日の試合のことは耳にしていた。晃が一本目に強烈なスパイクを打ち、その後はボスがサーブだけで試合を終わらせたということを。これだけじゃ情報が少なすぎると北川第一の監督も思ったが、何もしないよりかは、圧倒的にわかりきっている晃とボスを抑えるほうがいいということに決まった。

(狙うのは一番か二番、一番は前衛にいるからここは狙いやすい二番)

 金田一は予定通り晃のほうにサーブを打った。

 晃は無口の位置を確認し、そこにレシーブを上げる。それを見たボスとチビはともに助走距離を確保、二人同時に走り出す。北川第一のブロッカーはボスに目線を移す。目線を戻す無口がアタックモーションに入っていた。北川第一のブロッカー三人が無口のスパイクを止めるために跳ぶ。しかし無口はスパイクフォームからセットフォームに切り替えもう一人の前衛のチビにトスを上げる。北川第一はがら空きになったボスにトスが上がると考え体の向きをボスの方向に向けていた。トスがチビに上がったことにより体をチビのほうに向けなおし、スパイクが来るのを待っていた。しかし、スパイクは来ることはなかった。

チビは自分に上がったトスを軽く手に当てて相手コートにボールを落としたのだ。それも、誰もいなかったアタックラインの前に。

当然北川第一のレシーバーは反応するも届くことはなくボールはコートに落ちて転がる。

それを見たチビは一言、

「狙いどーり、ごちそー様でした。」

 飛び込んできたレシーバーと騙されたブロッカーに対してチームのもとに戻っていった。

 次のサーブはチビで前衛は無口、ボス、晃の三人だ。晃は元からこうなるようにポジションを組んでいた。セッターの無口とチーム最身長の晃、ボスがブロッカーでそろえるためには一人がミドルブロッカーになる必要があった。本来悠仁がミドルブロッカーだったが、敢えて晃がミドルブロッカーとして大会に挑んだ。それも作戦の一つである影山をつぶすために。

(チビがあそこでフェイントをするのは予想外だったが、第一段階は成功、それじゃあ)

「試合前にいった通りに行くぞ!」

「うっす、」

「…………」

 晃の言葉にボスと無口がそれぞれ返事をする。チビのサーブはリベロのところに行き影山にAパスで返した。しかし影山はネット際でプレッシャーを放ってくる無口、ボス、晃に焦っていた。

(すげープレッシャーだ。普通のスパイクじゃ確実に止められる!なら速さで)

 影山は普通のトスじゃ止められることを悟り、早さ重視のトスを上げることにする。

 しかし、ここまでが晃の罠だった。晃が試合前に無口とボスに出した指示は「絶対に止めるという意志を持って影山を睨みつけるかのように見ろ!」だった。これが晃の作戦の一つ、影山にプレッシャーを与えミスを誘って潰す、というものだった。影山が早いトスを上げようとしたとき、それと同時にスパイカーの位置を見る明らかに助走が完了していない。

「stay」

晃は、すぐに二人に指示を出す。結果ブロッカーの三人はその場から動くことなく、北川第一は影山とのコンビミスで失点した。

これが晃が考えた、あまり体力を奪われない得点方法だった。

再びチビのサーブ今度も影山にAパスが上がり、無口、ボス、晃の三人は影山を睨みつける。

影山はこの三人のプレシャーを浴びながら先ほどのプレーを思いだす。

(こいつらはこの六人しかいない、だからさっきクイックが合わないと思ってブロックしに行かなかった!なら)

 今度は普通のトスを上げる影山。しかしそれを見逃すような晃たちではない。即座にスパイカーの正面に三枚ブロックを揃えスパイカーの打ったボールをシャットアウトする。三度晃たちの得点になる。

 チビのサーブが続く、今度は国見を揺さぶるように目の前に落ちるようにボールを打った。

 国見は前のめり気味にボールを取り上手く影山にはボールが帰らなかった。またもや、プレッシャーが影山を襲う。

(普通にトスを上げて求められる!だったら速さで打ち抜く‼)

 影山は再びクイックを使おうとボールに指を掛ける。

「stay」

 影山の耳にはその声が聞こえた。そして、影山が上げたトスにスパイカーは合わせることができず、またもや晃たちの得点になった。

 そして、影山の悔しさが頂点に達する。

「もっと早く動け、もっと高く跳べ‼俺のトスに合わせろっ‼‼勝ちたいならっ‼‼‼‼」

 影山は自分が何を言ったかに気づく、しかしもう遅かった。影山のチームメイトはもうあきらめたかのようなまなざしを彼に向ける。

 チビのサーブはきれいに影山のもとへ返された、今度は晃たちがプレッシャーをかけることはなかった。なぜなら、影山がトスを上げた先には誰も跳んでいなかったのだ。そして、北川第一の選手交代、交代するのは影山だった。北川第一の監督はベンチを立って一言影山に「お前もう、ベンチさがれ」そして影山はベンチに下がって新たなセッターが入ったことにより北川第一の士気は高まった。

 晃はすぐさま新たな作戦を伝える。それは国見を狙ってミスを誘うというものだった。

(セッターにプレッシャーをかけるというのも一度考えたが、あれは影山だったからこそ通じた作戦で相手が影山出ないと意味がない)

そして晃の新たな作戦通り国見を揺さぶるようにサーブを打ったしかし国見は先ほどと違い前に出てレシーブを返す。そのままレフトからの速攻を使われ身長の低い無口の上を通される。ここで初めて北川第一が点数を取った。ここで、北川第一の応援団が沸く。正直このままでは北川第一押せ押せムードになると思ってしまった晃はあることを実行することにした。

「基本レシーブは俺がする。逹たちは自分の周りを中心に守ってくれ。ボスはストレートを通さないようにブロックを、これで行くぞ!」

「「「「おっす‼」」」」

 そこからの試合展開はとったり取られたりだった。士気の上がった北川第一のスパイクを晃がレシーブしては、チビのジャンプ力に慣れてきた北川第一はブロックでシャットアウトする。晃のスパイクサーブはへたくそながらも上に上げ一本で切ったり、無口がフローターサーブで相手のレシーブを崩してボスがシャットアウトする。

 このような展開が続き一セット目は25-20で晃たちがとった。

 しかし、それでも北川第一の士気が下がることなく、むしろ上がってきているところだった。結果ボスたちの士気が上がらないわけがない。北川第一につられボスたちも調子を上げてきていた。

 そして第二セット目が始まる。第一セット目と変わらずお互いが点を取ったり取れれたりだ。

 そして18-21で逹のサーブになる。逹はジャンプサーブを打ったがリベロに拾われ、セッターに上がっていく。センターから金田一が飛び出しそれに前衛のチビ、無口、悠仁が反応するトスはセンターに上がり金田一はここぞとばかりにフェイントをする。チビの後ろだったので、手を伸ばすが触ることはできず、ボールは落ちていく。それに晃は反応しボールを上げる、着地してすぐに無口はボスにバックトスを上げ、ボスはそれを打ち切って、点数をもぎ取った。そんなボスたちにアクシデントが起こるフェイントを拾った晃が腕を抑えて倒れていた。晃がボールを取った時そのまま倒れ、そこにブロックにとんでいたチビが踏んでしまったのだ。普通ならありえないが、チビの身長は148センチ、それでありながら、自分の身長の倍とんでいたのだ。そして落ちてくるのは他の選手よりも遅く、そこに晃の腕があり自分の体重の倍の重さで踏んでしまった。晃は一度ベンチの外に運ばれる。踏まれた場所は青くはれ上がっており、審判は、

「試合をやめて、すぐに病院に行ったほうがいい」

と申告したが、晃は一言、

「お断りします」

と立ちあがり言い放った。

「危険だと思ったらすぐに辞めさせるからね」

 そう言って審判は戻っていった。

 戻ってきた晃を心配そうに見るボスたち。

「気にすんな、ここから反撃行くぞ。」

 笑顔で戻ってきた晃の言葉を聞きボスたちは一度顔を見合わせ一つ頷いて、

「「「「おっす‼‼‼‼」」」」

 と、今まで以上の声で返事した。無口も手を上げて答える。

 それでも、晃が抜けた穴はでかく、点数を決められ、最後は晃のところにサーブが飛んでいき、そのサーブを正面で取ろうとする晃だが、右腕が上がらずボールを上げることはできなかった。

 二セット目を20-25で北川第一がとったところで主審とラインズマンたちが集まり、そのまま試合終了の合図が出される。最後のレシーブを見た主審がこれ以上は危険と判断し、没収試合となった。

 

 

 

――――――終了――――――

 挨拶を終えた俺たちは一度医療室に行き、応急処置をしてもらい、最後のミーティングをしていた。そんな中、チビはボロボロと泣いており、ボスたちも拳を握り締めてうつむいていた。

「おいおい泣くな、上を向け!」

 そう言ってボスたちの顔を俺に集中させた。

「アクシデントなんてどんな競技をしていてもついてくるもんだ。それだっていうのに、お前ら暗すぎるだろ」

「アニキ……」

「最後くらい俺を元気よく送り出してくれ」

 そして俺はバッグを持って帰ることにした。

 そんな時、

「アニキッ‼‼」

 後ろから声が聞こえ振り向いてみるとボスたちが頭を下げていた。

「こんな荒くれ者たちの俺たちにバレーボールを教えてくれてありがとうございました‼」

「「「したっ‼‼」」」

「アニキに教えてもらったこのバレーで来年こそは俺たちが全国に行って見せます。本当にお世話になりました‼‼」

「「「お世話になりました」」」

 最後の最後まで騒がしい。入部する前もだいぶ騒がしかった。だから俺はこの言葉を贈る。

「全国に行ってお前たちの名が轟くの楽しみに待ってる、頑張れよ‼‼」

そう言って俺はその場を後にした。

 

しばらく歩いていると、見たことのある人影があった。

 最後にあったのは卒業式、その日から俺もあの人も忙しくて電話で話せる機会しかなかった。

「久しぶり、元気にしてた?」

「潔子さん!」

 烏野高校排球部のジャージを着ていた潔子さんがいた。実に会うのは一年半ぶりだった。

「試合、見てたよ、腕大丈夫?」

「ああ、少し痛いぐらいで大丈夫ですよ」

「……そっか、とりあえずそこに座ろっか」

 潔子さんに促されて俺はベンチに座る。

「晃は泣かないの?」

「座って第一声目がそれってどうなんですか?」

「?それで泣かないの?」

「泣くわけないじゃないですか。俺は正直やれることはやり切った感じなんで」

「でも、ここに来ているときの晃はとても悔しそうだった」

「悔しいですよ、悔しくないわけないじゃないですか。これまでたくさん練習して、最後の、大会で、俺が怪我して、終わりって、……すっごく、ハァッ、悔しいですよ」

「やっぱり、泣てるじゃん」

「それは、潔子さんが、誘導して」

「悔しかったから泣かないって言うのは少し違う。悔しい時こそ泣いていいんだよ。晃だって言ってたじゃん。悔しいくても泣いていいって、我慢しないでって、あの時は晃が胸を貸してくれたけど、今度は私が胸を貸してあげる」

「いいん、ですか?」

「うん、好きなだけ泣いていいよ」

 やっぱりかなわない。

 

俺はその日潔子さんの胸で疲れるまで泣いた。

その時の潔子さんが頭を撫でてくれた感覚は忘れられなかった

 




次回から高校編です。
楽しみに待っていたください。


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原作:インターハイ
始まり


試合に負けた次の日、病院に行って診察を受けると全治二か月の骨折で右手を使用することと、運動全般禁止された。

 食事の時も右手で食べられないので左手を使って食事を行っている。その生活が一ヶ月過ぎたころ、右手の使用を許可されたが、一ヶ月間左手だけの生活だったので右手が使えても、左手で生活するのに慣れてしまった。潔子さんにこのことを話したら、「そのまま左利きになったら?」と言われ、少し前世のアニメを思いだす。某バスケットボールのアニメキャラで、ジャンプが得意なキャラが、右手でダンクするために左足でとんでいたが、右足でとんだほうが高く跳べると知り、左利きを得意にしようと左手を使って生活するシーンがあった。

 なので、俺も左利きになったらいいんじゃね?と最初は思ったが、バレーは両足を使って跳ぶスポーツ。だから、足も同時に使わないといけないので、運動全般禁止の俺は跳ぶ練習をすることができなかった。

 二か月たちようやく練習できると思ったが、「受験勉強を優先しろ」と母親に言われたので、基本勉強しないでいいのは六歳になった双子の翠と星、の二人と遊ぶ時だけだ。一応早朝のランニングは許してもらっているが、勉強中心の生活を送ることになった。

 そこから数ヶ月、同じような生活を送りようやく烏野高校に入学することができた。

今日から部活に参加する俺だが潔子さんに「着替えて教室で待ってて」と言われた。流石に入学式に遅刻寸前で登校してきたのは驚いたらしく、校内で道に迷ったら時間がもったいないとのことで、持ってきていた練習着に着替えて教室で待つことにした。ちなみに俺は、二組なので影山とも日向とも違うクラスだ。

とりあえず潔子さんが来るまで携帯を触っとくことにした。すると廊下のほうからざわつきが聞こえ始める。次第に、そのざわつきが大きくなってきたので携帯から廊下側に視線を移すと、ジャージ姿の潔子さんが扉の前で立っていた。

「いた。晃、部活行くよ」

「わかりました。」

 俺は席を立って潔子さんの後についていく。体育館に向かって行く途中によく視線を感じたが次第にそれは少なくなり体育館の近づいてくる。

 その時体育館から声が聞こえた。

「ちょっとくらい嫌なことだって、俺は我慢できる!おまえがどんだけ嫌な奴でも、極力視界に入れないように頑張るっ!」

「こっちのセリフだバカ野郎っ‼」

 そんな声がする方向に潔子さんは歩いていく。

「あの、そこ通してくれる?」

 ここで潔子さんは軽く首をひねって尋ねる。

 二人は何も言わずに道を開けるその間を堂々と歩いていく潔子さんに続いて俺も通る、影山をチラ見しながら。

「っ、お前はっ!?」

 どうやら影山も気づいたようだ。

 潔子さんはそのまま扉を開いて体育館の中へ入っていく。俺も続いて入ろうとしたとき、

「潔子さん、お疲れ様です。お持ちします」

「いい、自分で持っていくから」

「潔子さん今日も美しいっス‼」

「………………」

「ガン無視興奮するっス‼」

 俺は一度立ち止まってしまった。アニメや漫画で見たらそれなりに面白く感じたが、直で見ると少し引いてしまった。

 気を改めて入ろうとすると菅原さんに体育館の扉を閉められてしまった。

「………………」

 後ろからの視線がいたい。一人は不思議そうに、もう一人は敵を取るかのように見てくる?

再び扉が開く。

「……やっぱり一人、増えてね?」

「増えてるな」

「増えてますね」

 菅原さん、澤村さん、田中さんの三人が立っていた。

「オウオウオウオウ、お前、バレー部に何か用でもあるのかぁ?」

 田中さんにガンを飛ばされる。正直あんまり怖くない。

「田中、その顔やめろ、それで、君は入部希望者なのか?まだ入部届が出てないけど」

「ああそれなら―――――」

「澤村」

荷物を置いた潔子さんが一つの紙を持ってこっちまで来た。

「これ、晃の入部届」

「……確かに、名前は闇影晃、間違い……うん?」

「き、潔子さん、今この一年のことな、な、なななな」

「落ちつけ田中、それで清水、この一年と仲良いのか?」

「晃とは小学、中学一緒だから」

「でも潔子さんと関わるようになったのって、潔子さんが中学生で俺が小六の時でしたよね」

「でも私は小学生の時から知ってた。」

「俺も驚きましたよ、まさか二個上の潔子さんが俺の名前を知っていたなんて」

「二人ともそこらへんでやめてくれ」

「おい、田中っ‼大丈夫か、返事をしろっ‼!」

「そういや、中学じゃ、潔子さんに手繋がれたときはとても驚きましたよ」

「ブハァッ‼」

「おい田中、ゆっくりでいい、息をしろ!?」

 放心状態の田中さんと、息をするように呼びかける菅原さん。見ていて少し面白かった。

 その時、潔子さんに頭を小突かれた。

「先輩の言うことはしっかり聞く」

 そう言って、潔子さんはマネージャーの仕事をしに戻っていった。

「そう言うわけなんで先輩方、よろしくお願いします」

 そして、俺はバレー部の練習に混ざった。最初は潔子さんの手伝いとボール拾いをすることになった。潔子さんの手伝いをしているとき、田中さんは明らかに俺を睨んでいた。結局澤村さんに怒られて見られることはなくなったが、スパイク練習の時は、明らかに俺に向かって打ち込んできた。それを俺がきれいにレシーブすると、明らかに不機嫌になってきたので、

「さすが田中先輩!こんなに強いスパイク打てるなんて、すごいですよ、田中先輩!」

「ハッ、このくらい当然だぜ、なんたって俺は、田中先輩、だからな‼!ガッハハハ」

 どうやら機嫌を直すことができたようだ。その後は何事もなく練習は進んでいき、時間になると練習を終了した。

 俺はあえて今聞くことにした。

「外の二人って何かしたんですか?」

 しゃべりやすそうな田中さんに、

「ん?ああ、実はな」

「おい田中!」

「やっぱ秘密だ」

「もしかして体育館で因縁の再開をしたあの二人が、喧嘩をしていたところに教頭が来て、目を付けたくないから澤村さんが止めようとしたのを無視してそのまま勝負を始めて、影山の打ったサーブをちっさいほうがレシーブできずに教頭の顔面に当たって桂が飛んでしまい、その後澤村さんが再び注意するけど、また喧嘩してしまったってところですか?」

「…………もしかして、見てた?」

「なんとなく連想しました。その様子じゃあたりですね」

 嘘です。本当は知ってました。あのシーンは本当に笑ったから、鮮明に覚えてた。

「勝負で勝ったら入れてくださいっ!って言ってきそうじゃないすか?あいつら」

「あり得る、頭冷やしてちょこっと反省の色見せればいいだけなんだけどな」

 日向と影山なら絶対にそうする。そろそろ

「「キャプテン!?」」

 外から声が聞こえた。俺もそっちに行こうとしたが、潔子さんに「ちゃんとストレッチしなさい」と言われ、行くことができなかった。潔子さんの目を盗んで行こうとしても、肩を掴まれ「ストレッチ」と言われ、行くことができなかった。

 しばらくストレッチしていると、澤村さんから呼ばれ、日向、影山のところに行く。

「土曜の午前に三対三のゲームをするんだけど、この二人のチームでいいか?」

「……すみません、話が読めません」

「一年生で三対三の試合するから、この二人のチームに入ってくれ。何でも影山はお前に因縁があるらしいから、仲良くな?」

「は、はぁ」

 つまり土曜の三対三の試合で俺は影山、日向とチームを組んで行う。……えぇ、なんか、面倒だな、この単細胞二人と俺一人って。

「おっほん、あー、あー、明日は朝練は七時からでしたよね?」

 田中さんの言葉に一応耳を傾けておく。しかし、

「晃、帰るよ」

「……わかりました」

 そうして、俺と潔子さんは一年半ぶりに一緒に下校した。

 途中体育館のほうから叫び声が聞こえたが気にせずに帰ることにした。

 翌日朝六時に起きて潔子さんに連れられ学校に行ったのを田中さんに見られてヘッドロックをかけられたのは、また別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館の叫び声の原因。

――――――三人称―――――

 田中は明日の時間を言いながら帰っていった日向と影山を見た後もう一人の一年に時間を報告しようとした。

「おーい、闇影~、…………縁下、闇影どこに行った?」

「闇影ならさっき清水と帰ってたぞ?」

 唐突に話に入ってきた菅原の言葉を聞いて田中は一瞬フリーズするも次の瞬間。

「闇影ゴラァァァァァァぁ‼?」

「田中、うるさぁぁいっ‼?」

 この声はその時学校中に響いたのだった。

 



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決戦前の平日

「おはよう、朝練あるから早く準備して」

 目を覚ますと制服姿の潔子さんがいた。

 俺はすぐに起きあがり、学校に行く支度をして家を出る。

高校に入ってから朝練もあるということで早朝ランニングはしないことにしたが、正直いまだに違和感がある。

 本来、正式な部員ではない俺は朝練に出る必要はないが、まだ道を完全には覚えていないため、潔子さんと登校をし、ついでに朝練にも参加することにした。

 ついてそうそう田中さんにヘッドロックをかまされた。その時言葉にならないような声で叫ばれた。

 菅原さんに話を聞くと日向、影山の早朝練に来なかっただけでなく、潔子さんと一緒に登校してきたのを見てしまい、脳がパンクしてしまったらしい。結果、田中さんから逃げるように澤村さんに言われてしまい、朝練には参加することができなかった。

 昼休みにジュースを買いに自動販売機で行くとそこには菅原さんとレシーブの練習をしている日向がいた。とりあえずジュースを買って戻ろうとしたらそこに影山がいた。

「おい」

「……何か用か?」

「……お前、名前とポジションは?」

「闇影晃、ポジションはWSもMBもSもLiも全部できる。」

「そうか、明日朝五時から練習だ、遅刻すんじゃねえぞ!」

 確かに合わせないとミスが出る可能性が高い。でも、

「悪いが六時から参加させてもらう」

「あぁ?」

「それが早朝練に参加する最低条件だ、いいな?」

「チッ、分かった。遅刻すんじゃねーぞ」

「了解」

 俺だって早朝練に参加したいんだよ。でも潔子さんが「一人で行ったらだめ、絶対迷子になるから」ということで、朝の五時に行くのは無理なのだ。一応潔子さんに先ほどのことを連絡しておくと「分かった、それなら明日からは早く迎えに行く」とだけ返ってきた。

 放課後になり今日も潔子さんを待つことになった。昨日と同じように着替えて教室で待っていると、またもや廊下がざわつき出して視線を向けると潔子さんが立っていた。俺は席を立ち潔子さんのもとに向かう。昨日と同じように注目を集めた。

 体育館に入るとそこには制服姿の二人組がいた。

澤村さんは俺が来たのに気づき制服の二人のところに連れていかれる。

「お前と同じ今年入部する一年だ。仲良くやれよ?」

俺は二人の前に立つ。

「俺は一年二組、闇影晃、よろしく」

「一年四組、月島蛍」

「同じく山口忠、よろしく」

 月島はともかく、山口は友好的だった。

「君、あの闇影晃だよね?」

「あの?」

 自然と聞き返してしまう。

「中学最後の試合、北川第一相手にワンセットとったにもかかわらず怪我してしまって没収試合になった中学の怪我した張本人、もうけがは大丈夫なの~?まだ無理せずに休んでたほうがいいんじゃな~い?」

 こいつ早速煽ってきやがった。そもそも怪我っつっても。

「何ヶ月前の話してんのお前。もしかして特進クラスの四組にいて相当バカなの?」

「はぁ?」

「ブォフッ‼‼」

 途中田中さんが吹いたように聞こえたが無視する。

「大体君、後輩にアニキって呼ばせて試合してたらしいね、何?年上でも気取ってたの?ダサくない?」

「残念、それはうちの後輩共のグループのルールの一つでボスに勝った人はもれなくみんなアニキになるらしい。残念だったね、予想が外れて‼大体「晃」……わかりました」

 ヒートアップしたところで潔子さんに止められる。もう少し言ってやろうとしたが潔子さんのあの目は早く練習しろという目だった。

「澤村」

 次は澤村さんに圧が掛けられる。

「……はっ、お前ら練習再開するぞっ‼」

「「「「「はいっ‼」」」」」

 他の部員も潔子さんの圧を感じたようだ。急いで練習に取り掛かる。

「どうしたの闇影君、もう終わり?逃げ「一年生」……何ですか?」

「練習に参加するなら着替えてきて、参加しないなら練習の邪魔になるから早めに帰って」

「…………」

 圧のある潔子さんの前には月島も何も言えない模様。

「…………ちっ、キャプテン着替えてきます。行くぞ山口」

「あっ、待ってツッキー!」

 舌打ちをしながら月島は出ていった。その舌打ちを一人見逃すはずのない男が一人いた。

「ゴラ、月島ぁぁぁぁ‼潔子さんに向かってなに舌打「田中」……」

 月島を追いかけようとする田中さんだったが、潔子さんに止められ静かになってしまった。

 月島たちは着替えて練習に参加したが田中さんが月島にキレて、昨日よりうるさかったこと以外は特に変わりがなかった。そのまま練習は終了し、月島たちは一年でちゃんと入部していないため帰っていった。

 同じ一年の俺は潔子さんと一緒に帰るため後片付けまでやっている。

「そういや闇影、影山と合わせなくて大丈夫なのか?」

「あ、菅原さん、俺も明日の六時から参加します。」

「おいおい、早朝練は五時からだぞ、なに遅刻宣言すんな」

「田中さん、一応影山には許可取ってるんで大丈夫です」

「へ~、あの影山が遅刻をね~、少し意外だわ」

「そうっすね、影山のことだから、堂々と遅刻宣言してんじゃねぇボケ‼、ぐらい言って従わせると思ってました。闇影はどうやって許可もらったんだ?」

「普通ですよ、早朝練に参加する最低条件として六時参加、って言ったらあっさり認めましたよ」

 片付けながらそんな事を話していると、潔子さんが着替え終えてて体育館に戻ってくる。

「晃、帰るよ」

「あ、はい、わかりました。と言うわけで先上がります。お疲れ様でしたー!」

「おう、お疲れー、また明日なー」

「………………」

 田中さんには何も言われずに体育館を出た。その後体育館から「闇影のヤロォォォォォォ」と聞こえたが無視して帰った。

 次の日、潔子さんが昨日より早く迎えに来てくれて五時五十分には体育館に着くことができた。潔子さんは着替えてくると更衣室に向かい、俺は着替えてきたので直ぐに体育館の扉を開く。そこには菅原さんとレシーブ練習をしている日向と、田中さんにトスを上げている影山がいた。

「おはざまーす」

「おーす」

「うぃーす」

 先輩たちは返事を返してくれる。肝心の一年はと言うと、

「おい、あと一時間もねーんだ!さっさとアップしてこい‼」

影山は相変わらず上から目線

「なぁなぁ、お前が闇影か?俺一年の日向翔陽、よろしく!」

「同じく一年の闇影晃、よろしく」

 それだけ言っておらはアップに入る。俺がアップを終えると潔子さんが来た。田中さんと菅原さんは、驚きの顔をしていた。逆に日向と影山は「誰?」って顔話している。

「き、潔子さん今日は早いっすね、どうしたんっスか?」

「確かに、清水がこの時間に来るなんて珍しくないか?」

「晃に早朝練するって聞いて、いつもより早くに晃を迎えに行っただけ。大丈夫、澤村には言わないから」

 そして練習が再開した。最初は俺が打つつもりだったのに田中さんに「ブロックに跳べ」と言われ、ブロックに跳んで田中さんのスパイクをシャットアウトした。それは、田中さんが決めるまで続いた。最終的に影山と合わせる時間は十数分しかなかったが影山にトスの注文をしたらその通りのトスが来た、一回一回トスの変更を注文するが毎回その注文通りに来たので正直気持ち悪かった。

 そんな生活が金曜日まで続いた。雨の日も日向はレシーブ練習で影山は俺だけにトスを上げ続けた。金曜日だけは刺激的だった。なんせ体育館に入った瞬間日向の嘔吐処理になってしまい練習時間が少なくなった。でも、影山と日向の溝が浅くなって結果オーライだった。

 そして影山の運命の土曜日になる。



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三対三

今回、日向と影山の回みたいになってしまいました。



 今日は久しぶりに早朝ランニングをすることにした。最近はしていなかったので途中途中道を間違えそうになることはあるけど、前よりも気持ちよく走ることができたような気がする。それにいつもより体が軽い。

 今日の俺は絶好調のようだ。

 家に帰りつくとすでに潔子さんが家の前で待っていた。

「お疲れ、翠ちゃんと星ちゃんが晃の荷物準備してくれたから早く行こ」

 それだけ言って潔子さんは俺の荷物を持ってきてくれた。俺は荷物を受け取ってバッグの中に入っていたタオルを取って汗を拭った。

 学校につくと潔子さんとはマネの仕事があるため途中で分かれた。体育館につくと、入り口で日向、影山と月島、山口がにらみ合っていた。

 とりあえず、

「お前ら、さっさと中はいれ、体温められなくてミスしても知らねーぞ」

「あぁ?一番最後に来たテメェが何言ってんだ?」

「なになに?早速仲間割れ~?そんなんで今日の試合大丈夫なの?僕、王様のトス楽しみにしてるから~、先になかでアップすることにするよ、行くぞ山口」

「待ってよ、ツッキー!」

 そう言い残し月島と山口は体育館の中に入っていった。その後に続くように、俺、影山、日向も体育館に入る。

 しばらく体操をしてると潔子さんが入ってきた。

「おはようございます」

「潔子さん今日も美しいッス‼」

「…………」

「ガン無視興奮するッス‼」

 もう見慣れた田中さん恒例の無視され興奮する挨拶。それを見て平和だと思っていると、

「よーし、じゃあ始めるぞー!月島たちのほうには俺が入るから」

「えー、キャプテンが!?」

「ははは、たぶん大丈夫だよ。清水が言うには闇影は攻撃力、守備力ともに高いらしいから」

 それを聞いて日向が俺を見てくるので、俺は逃げるように潔子さんを見る。潔子さんは小さくピースをしている。今の俺なら潔子さんが何を考えているのかわかる気がする。多分『晃のことある程度教えておいた』だろう。

「あー、んふん、小さいほうと影闇クン、どっち先に、潰しましょうか?」

 俺は月島のほうを見る。絶対にさっきの潰すはわざと大きく言ったはずだ。

「ああ、そうそう、王様が負けるところも見たいですねぇ」

 今、俺の中にある何かが解放されようとしていた。

「冷静さを欠いてくれるとありがたいなぁ」

 本当にいい性格の悪さをしている。だからこそ、

「特に家来に見放されて一人ぼっちになっちゃった王様が見ものですよね?」

 こういう奴は、

「日向、影山、一ついいこと教えてやる」

 俺は日向と影山のほうに行く。教えてやろう、とても気持ちのいいことを。

「ああいう嫌みったらしいこという奴の度肝を抜いた時の表情ってさぁ、」

「ひぃっ!」

「見てると、とーっても気持ちいんだよ」

 何故か日向の顔が恐怖におびえているが大丈夫だろうか。

 そんな時、田中さんが口を開く。

「おい月島!流石に言い過「晃、さっきのタオル汗でぬれてたから、これ新しいタオル」「あ、すみません、ありがとうございます」……闇影の野郎はぶっ潰せぇ‼いいなっ!?」

「え、あ、はい」

 田中さんの豹変に月島は戸惑いながらも返事をしていた。

 そしてようやく三対三の試合が始まる。

 

 

 

――――――三人称――――――

 最初はお互いにサーブミスから始まった。次は澤村のサーブから始まり、日向はそのサーブを上げることができた。影山はネットより少し離れたところにトスを上げた。晃は上がるトスを見ながらブロッカーを見る。月島だけだ。そこから助走を開始。ボールの落下地点に着くとそこで足を止め助走の勢いを上に向けてジャンプする。晃はスパイクモーションに入ると同時にブロッカーを見る。そして狙いを定める。

(狙うは月島、山口、澤村さんの三人の三角形の間に落とす)

 そして晃は狙い通りフェイントで三人の間に落とす。澤村も山口も反応したがボールを取ることができなかった。誰もが最初はスパイクで来ると思っていたので予想外のフェイントに驚いていた。

「へいへい、闇影、最初は一発思いっきり打って行けよ~!」

 田中は晃の最初のフェイントに不満げだったが、

「人それぞれでいいだろ田中!」

「そうだぞ、ばか!」

「頭使えよアホ~!」

「おい、誰だ、悪口行ったの‼?」

「田中、うるさい」

「潔子さんに、怒られた」

 清水に怒られ嬉しそうな田中を見て、晃は

(そろそろやばいぞ、この人)

 口には出さず心の中で思っていた。

次は晃のサーブの番、晃はエンドラインから八歩、歩いて構える。

 右手で高くボールを上げ、タイミングよく跳ぶ、サーブトスが少し低かったため晃はあまり溜めを作らず打つ。そのボールは少し伸びてしまいアウトになってしまう。

 月島たちのサーブを晃はレシーブで影山に返して日向は助走を開始する。

「日向っ!」

 影山は日向にトスを上げ、日向は高く跳ぶ。そのジャンプの高さを始めてみた縁下たちは一瞬の驚きを現す。日向は腕を振り下ろすが月島にブロックされる。

(ここにも、高い、高い壁)

日向は月島を見上げながら中学時代ブロックに止められた時のことを思いだす。

「この間もびっくりしたけど、君よく跳ぶね。それであとほーんの三十センチ身長があれば、スパースターだったかもね」

日向は悔しそうな顔をするが「もう一本!」と、まだあきらめている様子はなかった。

そのまま試合は進んでいく、晃はスパイクを決めることができるが、日向は連続で月島に止められていた。

「ほらほら、ブロックに罹りっぱなしだよ。王様のトスやればいいじゃん!敵を置き去りにするやつ、ついでに味方も置き去りにしちゃうやつね?」

「うるせぇんだよ」

 次の山口のサーブはネットにかかり、影山のサーブのターンになった。

「速い攻撃なんか使わなくても、勝ってやるよ」

(要は、自分一人で点を稼ぐってわけだろ?絶対無理だろ)

 晃は影山の言った言葉を否定した。

「いけーっ!殺人サーブ!」

 日向は影山を鼓舞するように声を掛ける。日向と同じチームの晃は相手チームの上級生である澤村を見ていた。

 影山はサーブトスを上げジャンプサーブを打つ、しかし澤村はそのボールに反応しレシーブを上げた。そのまま攻撃を行う月島と山口、晃は日向のとこに行くようストレートを絞めた。山口の打ったボールは日向のほうにとんでいく。しかし、日向は反応が遅れレシーブを上げることができなかった。

「クソッ!」

「そもそも、影山にサービスエースを決めさせないために澤村さんが入ったんだろ、じゃなきゃ、攻撃力だけなら田中さんの方が上だろうから、田中さんを入れるはずだ」

 晃がたどり着いた答えを影山に教える。

「何点か稼げるかと思ったか?」

「っ!」

「突出した才能はなくても二年分、お前らより長く、体に刷り込んできたレシーブだ。

簡単に崩せると思うなよ?」

「か、カッコイ~!」

「ほんと、かっけーっすわ」

 日向だけでなく晃にもそのカッコよさがしみわたっていた。

「ほら王様、そろそろ本気出したほうがいいんじゃない?」

「あ?何なんだお前!こないだから突っかかりやがって。王様のトスって何だっ?」

「君、こいつがなんで王様って呼ばれてるか知らないの?」

「こいつが何かすげー上手いから、他の学校のやつがビビッてそう呼んだからじゃないの?」

「ハハ、そう思っている奴も結構いると思うけどね」

「?」

「でも噂じゃ、コート上の王様って異名、北川第一の奴らが付けたらしいじゃん。王様のチームメイトがさ、意味は自己中の独裁者、横暴な王様、噂だけは聞いたことあったけど、あの試合見て納得いったよ。横暴が行き過ぎて、闇影君との試合、開始早々ベンチに下げられてたもんね。」

 そのことを知っていた月島、山口、清水、張本人の影山、晃以外のメンバーは晃と影山の二人を交互に見た。

「クイック使わないの?それとも、闇影との試合のせいでビビってるとか?」

「……」

「テメェ、さっきからうるせえんだ「田中」」

 外から突っかかろうとした田中だが、それを澤村は止める。

「折角トス上げても誰も跳んでないんじゃ「ああ、そうだ」」

「トスを上げた先に誰もいないっつうのは、心底怖―よ」

 とても暗い雰囲気だ。そんな中、その雰囲気を壊すものが二人いた。

「でも、それ中学の話でしょ?」

「だよなあ」

 日向と晃だ。

「俺にはちゃんとトスが上がるから、別に関係ない」

「俺は、トスさえ上げてくれれば打ち抜くつもりだから、影山に損はさせないし」

「それより、どうやってお前を打ち抜くかだけが問題だ!」

 日向の陽気さにみんな小さく笑う。

「月島に勝って、部活入って、お前は正々堂々セッターやる!そんで俺にトス上げる!それ以外になんかあんのか?」

 影山は正論を叩きつけられて何も言えない。

「そう言う、いかにも純粋でまっすぐな感じ、イラッとする」

 さっきまで煽っていた月島が感情を出したことに澤村と晃は珍しいものを見る目で月島を見る。

 月島のサーブを晃が上げる。

(どっちに上げる日向はまだ真っ向勝負で月島に勝てないっ、)

(まだ迷ってるな影山、なら)

「日向、跳んで影山を呼んでやれ」

「っ!おう」

 晃は日向にアドバイスをやる。この先、ともにやっていく二人の距離を縮めるチャンスだった。念のために晃も助走に入る。

「闇か「影山!」っ」

「いるぞっ‼」

 影山は日向にトスを上げる。そのトスは何とか手に当たるもアウトだった。

「あっぶね~、からぶるとこだった。アウトだけど」

「お前何をいきなり「でもちゃんとボール来た!」っ」

「中学のことなんかしらねぇ、俺にとってはどんなトスだってありがたーいトスなんだ!俺はどこにだって跳ぶ、どんなボールだって打つ。だから、俺にトス、持ってこい‼」

 




今回、日向と影山の回みたいになってしまいました。
次はあの速攻が出るかもしれません。
次も頑張りますのでよろしくお願いします。


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「おいお前ら、クイック使えるのか!?」

 田中がコートの外から驚きの声を上げる。

「クイック?」

 日向はクイックが何かわかっていない。

「日向、クイックってのは超早い攻撃のこと」

 晃は分かりやすいように、クイックについて教える。

「?全然、俺、ポーンて山なりになるボールしか打ったことないです」

「でも今やったろ~!それにお前、中学の時素人セッターのミスったボール打ったろ?ああゆう……」

「へっ?でもどうやったかは覚えてないです」

「ぬぁぁ」

あまり伝わっていないことに田中は、肩を落とす。

「でも俺、どんなトスでも打ちますよ‼打つからな‼」

「……合わせたこともないのに、速攻なんて無理だろ!」

(今無理って言った!?こいつ無理って単語知ってんのか⁉)

 日向は影山が無理と言ったことに心底驚いていた。

 そして日向は影山を指さして言った。

「なんだお前変!そんな弱気なの気持ち悪い‼変!」

「うんうん。」

 日向の言葉に晃も同意していた。

「うっせーな!」

影山はそのままポジションへ戻っていく。

「王様らしくないんじゃな~い?」

「っ‼今打ち抜いてやるから待ってろ‼」

 影山を再び煽る月島に日向は再び突っかかる。

「まーた、そんなムキになっちゃってさ~、何でもがむしゃらにやればいいってもんじゃないでしょ?人には向き不向きがあるんだからさ。君、明らかにスパイカーに向いてないでしょ」

 田中が殴りかかろうとしに行くが晃がそれを止める。

「確かに、中学んときも、今も、俺、跳んでも跳んでもブロックに止められてばっかだ。バレーボールは、高さが必要。いくら高く跳べても、圧倒的身長差は埋まんねぇ。だけど、あんな風になりたいって思っちゃったんだよ!だから、不利とか不向きとか関係ないんだ。この体で戦って、勝って勝って、もっといっぱいコートに居たい!」

 影山は晃と戦ったときにベンチに下がった時の記憶がよみがえる。日向も影山に負けた時の記憶がよみがえる。その時二人の考えていたことは一致していた。

((まだ、コートに立っていたい!))

「はぁー」

 日向の思いに対して月島は溜息を吐く。

「だからその方法がないんでしょ?精神論じゃないんだって!気持ちで身長差が埋まんの?リベロになるなら話は別だけど」

 そんな時、影山には先ほどの日向のトスを読んだ声がよみがえる。

「スパイカーの前の壁を切り開く、そのためのセッターだ!」

 このとき、スパイカーを主張する影山の言葉に、二、三年は驚いた。

 影山は隣にいた日向を強引に連れて速攻の説明をした。

 それを聞いた晃は単調すぎることに笑った。

「ははは、それでできるのか?」

「とりあえず、やってみる!」

「そもそも影山、さっきまでガチへこみしてたよな?」

「へこんでねぇ」

「よっしゃー、やってやんよ!」

 日向にトスが上がるのは確定しているので、晃はレシーブに専念する。

月島のサーブから再開する。ボールは日向のほうにとんでいくが晃がその横から横取りする。

日向は助走を開始する。影山はトスを上げるが日向は間に合わず、ボールはそのまま通り過ぎていく。

「おい、何してる‼もっと早っ!?……」

「出た王様のトス」

 月島は影山のトスと暴言を吐きかけたことに煽りを入れる。

 その後も何度も挑戦するが、十分にジャンプすることができなかったり、ジャンプするもボールが早く振り切る時には過ぎていたり、何とか手に当たるも前に跳びすぎて網に引っ掛かったりと全くうまく言ってない。

「お前、反応早いんだからもっとこう、バッと来いよ、バッと‼」

「バッなのかグワッなのかどっちだ!?」

「いや、まずどうやったら決まるかだろ……」

「影山」

 コート内で言い合っていると菅原がコートの外から声を掛けてきた。

「そんじゃ、中学の時と同じだよ、……んぁ、えーと」

 菅原は何を言って言いのか言い止まる。

「日向には、反射やスピードも、……ついでにバネもある、慣れれば速い攻撃だって」

「日向のそのすばしっこさって言う武器、お前のトスが殺しちゃってるんじゃないの?」

「!」

「日向には技術も経験もない」

「!菅原さん……」

「中学でお前にぎりぎり合わせてくれた優秀なプレイヤーとは違う」

 菅原の無意識な口撃に日向は落胆する。

「でも素材はぴか一」

「え!そんなぁ、天才とか大げさです、えへ、えへへへへへ」

「いや、そこまで言ってなかったぞ?」

 照れている日向に晃は訂正する。

「お前の腕があったらさ、んなんつうか、もっと日向の持ち味ってうか、才能って言うか、そお言うのもっとこう、ええっと、なんかうまいこと使ってやれんじゃないの‼?」

「……」

「俺、お前と同じセッターだから、去年の試合、お前見てビビったよ。ずば抜けたセンスと、ボールコントロール。そんで何より、敵ブロックの動きを冷静に見極めるめと判断力、俺には全部ないもんな」

 田中がかばおうとするが澤村に止められる。

「技術があって、やる気もありすぎるぐらいあって、何より、周りを見る優れた目を持っているお前に、仲間のことが見えないはずがない!」

 菅原は持っていたボールを影山に投げて返す。

(……なんかうまいことって何だ!?)

 影山はさっきの菅原の言葉を思いだしていた。一度ボールを見てから日向のほうを見た。

「俺は、お前の運動神経がうらやましい!」

「はぁ!」

「だから、宝の持ち腐れのお前が腹立たしい!」

「はぁ⁉」

影山の理不尽の言葉に、日向は驚く。

「それなら、お前の能力、俺が全部使って見せる!お前の一番のスピード、一番のジャンプで跳べ!ボールは俺が持っていく‼」

「持っていくって何?どうゆうこと」

 日向には『持っていく』の意味が分かっていなかった。

 そんな日向を見て晃は小さく「さっき、『俺にボール、持ってこい』って言ってなかったか?」と小さくつぶやいた。

「お前はただ、ブロックのいないとこにマックスの速さと高さで跳ぶ。そんで全力スイングだ!俺のトスは見なくていい、ボールには合わせなくていい!」

「はぁ、ボール見なきゃからぶるじゃん!」

「かもな‼」

「うおいっ!?」

「でも、やってみたい」

「……、分かった」

 影山と日向のやりたいことは決まった。

「まだ何かやるつもりか?王様の自己中トスなんて誰も打てないってば」

「だよね~」

 月島たちは否定的だった。それを聞いていたもう一人の一年である晃は、月島の考えに否定的だった。

(自己中トスでも、影山が合わせれば普通の早いトスになるでしょ)

 外野が見守る中試合は再開する。

 影山は全神経を研ぎ詰める。ブロックの位置、ボールの位置、スパイカーの位置、次にどう動くか、どこに跳ぶか、日向のジャンプの頂点、全てを見る。そしてボールの下に行き、日向の打つ打点に照準を合わせる。日向が腕を振ると当時に影山のトスは日向の打点につき、そこに日向の振った手が当たる。 日向の打ったボールは誰の目にも留まることなく月島たちのコートに打ち付けられる。

月島はその速さに驚きを隠せず、影山はうまくいったことに喜び、日向は

「手に、手に当たった~!?」

手に当たったことに喜んだ。

「大げさだな~」

「おい!今日向、目、瞑ってたぞ……」

「「はぁ⁉」」

「ああ、やっぱり?」

澤村の言葉に月島、影山は驚き、晃は確信した。

「あの、どお言う……」

「ジャンプする瞬間から、スイングする瞬間、日向は目を瞑ってた。つまり影山が、ボールを全く見ていない日向の掌に、ピンポイントでトスを上げたんだ!スイングの瞬間に合わせて、寸分の狂いもなく」

 日向は今だに喜んでいる。それを聞いた影山は日向に向かって叫ぶ。

「おおい、お前ぇ‼目ぇ瞑ってたって何だぁ!」

「お前がボール見るなっていったんだろー!?目開けてると、どうしてもボールに目行くから」

「確かに言ったけどっ」

 この事実に得点を付けていた木下たちも驚愕している。

 その後も日向と影山は速攻をするが、いっさいあわなくなった。そのたびに晃が日向と影山の直線状に行き、カバーする。おかげで日向たちはあまり点差が開いてない。

 山口のサーブは晃がきれいに影山に返す。月島はまた失敗すると思い晃をマークするが、日向の気迫に驚き山口にブロックすることを言う。しかし日向は途中で方向を変えサイドに走る。

 晃も助走に入っていたが日向の道を作るために途中でブレーキした。

そして日向はジャンプし手を振ってスパイクを決める。

影山と日向はお互いに手を見て

「よしっ!」

と喜びながらガッツポーズをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晃はそれを見て溢れんばかりの闘気むき出そうとしていた。

 




次回は晃が少し暴れます。


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晃の武器

今回の試合は晃の一人称でお送りします。


日向と影山の速攻が決まりだしてから、こちらのペースになった。俺がレシーブを上げ、影山がトス、そして日向が打つこのサイクルが続いた。一セット目の最後は月島が日向を完璧にマークしていたので、俺のところにトスが上がる。とりあえず、誰もいない所へ軽く打って一セット目を取る。

 このままいけば二セット目は何の問題もなくとることができるだろう。

 ボトルを持って壁に背を付ける。

 水分を取ろうとすると右手に持っていたボトルを潔子さんに取られる。

「潔子さん、水取りたいんでボトル返して下さい」

「じゃあ、一セット目、なんで、ちゃんとブロックしなかったの?外から見ていたけど、ブロックするとき後ろ見ていたの気付いた。」

「……」

「それに、今日のスパイクはあんまりかっこいいとは思わないから、晃がそんなことするのは理由があると思う、体調が悪いの?」

「…………、はぁ、まぁ一セット目は軽く言っていたことは認めます。最初は影山、日向がお互いがチームメイトとして自覚するほうが大事だと思ったんで、ニセット目からちゃんとやります」

「わかった。じゃあちゃんとしてないと思ったらすぐ澤村に言うから」

 そう言って潔子さんはボトルを返してくれた。

 俺は日向、影山のもとに行き、簡単な作戦を伝えた。日向はあまりわかってなかったようなのでいつも道理にすればいいと伝え、影山には「できるのか?」と聞かれたので俺は素直に「できる」とだけ伝え、コートに戻った。

 相手のサーブから始まる。サーブは俺のもとに来たので影山にAパスで返す。と、同時に日向と俺で助走を開始する。月島はそれを見て日向のほうをマークする。日向は助走で付けた勢いでジャンプする。

「王様のトス合わせられるのなんてチビちゃんだけなんだから、闇影が囮になろうがわかってれば通用しないんだよ‼」

 月島はもちろん日向のほうに跳ぶ。レシーバーの澤村さんと山口も日向のほうに体を向けている。コートの外の人たちも日向と月島のほうに目が行っている。ただし、潔子さんだけは俺を見ていた。まだ跳んでおらず、移動をし始めた俺を見ていた。

 そのまま日向とは反対方向に走っていき、ジャンプする。影山はそれに合わせてトスを上げてくる。練習で移動攻撃の練習なんてしたことない。だからこそ思う。影山、マジモンの天才だ、と。

 その攻撃はしっかり決まる。月島は日向にボールが上がらないと分かると俺のほうを見ていた。澤村さんは俺にトスが上がるとこちらを向いていたがボールには反応できていなかった。

 そして、俺のサーブの番。今日はまだスパイクサーブしか見せてない。だからこそそれ話警戒してレシーバーは少し後ろに下がっている。だからこそ次は五歩半。狙うは月島、サーブトス完璧、ゆっくりと助走し高く跳ぶ、身体をそりながら溜めて、腕を振る。無回転でボールはあまりぶれず月島のほうにとんでいく。月島はレシーブを構えるがボールは月島の腕に当たると思われた瞬間、横にぶれ、コートに落ちる。

「よしっ‼(83点)」

 今のサーブに自分なりの点数を付けて次のターゲットを定める。次に狙うのは山口。さっきとは違い五歩歩いてサーブを構える。次は変化重視。若干長いが修正不要。ゆっくり助走を開始、軽く飛び、軽く腕を振る。ボールはいつもより遅いスピードで山口のほうにとんでいく、……かと思われたが白帯に当たってネットイン。

「64点、(少し前過ぎた)」

 狙って撃たずにネットインしたボールなんて、ただのラッキーと何ら変わりない。

 再び俺のサーブの番。今度は八歩、右手でボールを持つ、狙いは澤村さん。ジャンフロを警戒して少し前に出てきている。笛と同時にサーブトスを上げる。今度のサーブトスは完璧。助走は右足からスタートを切る、そのまま高く跳び、ボールを打つ。ボールは澤村さんのもとに飛んでいく。澤村さんは跳んできたボールを何とか上げるが、俺のもとに帰ってきた。

「チャンスボール」そう言いながら影山に返す。今度は俺だけで助走を開始する。日向は助走に入ることができない。俺が日向の走るコースに入ったからだ。もちろんそれを見ていた月島は俺一人をマークする。影山がトスを上げる。俺は相手のレシーバーの位置を見てジャンプをする。ブロッカーは月島だけ。山口はストレート、澤村さんはクロスを守っている。そして俺は狙いを定め、しなやかに腕を振って超インナースパイクを決める。

 クロスに構えていた澤村さんも目で追うことしかできていなかった。

「月島、俺と日向を潰すんじゃなかったっけ?今のところ俺を止めることで来てないし、日向はお前の見たがっていた王様トスを打ってから止めることできてないけど、どうやって潰すの?」

「ちっ!」

 ああ、その顔、最初は粋がっていた奴が、悔しそうにするその顔、それを俺がやったっていう時の快感、たまらねぇ~。

 その快感に浸りながらも、俺のサーブはまだ続くので切り替える。次は七歩歩く。右手でボールを持って少し高く上げる。これは普通のフローターサーブ。だが、普通とは少し違うところがある。右手でサーブトス、右足が前にある。右利きなら左手でサーブトス、左足が前が普通だ。ならどうして、俺が逆のことを行っているかと言うと左手でサーブを打つためである。しかし、強いサーブをフローターサーブで打つにはラインからじゃ強すぎてアウトになってしまう可能性がある。よって、七歩で打つことによって左で強いボールを打てる。

 狙うのは月島。狙いを定めてから左手で打つ。今度は回転がかかっていることを理解したのか月島は正面でレシーブを構える。周りはボールをとらえることができたかと思われたが、月島のレシーブしたボールは壁に当たりアウトとなった。

「闇影、お前今、左で打ったか……?」

「?はい、左で打ちましたけど」

 澤村さんは日向の速攻を見た時くらいに驚いていた。

『ハァッ‼‼』

「?」

 何もわかっていない日向と、俺が左も使えると知っていた潔子さん以外が声を上げた。

「え、なになに?どうしたんだ?闇影ってなんかすげーのか?」

「日向、左利きの打つボールは右利きの打つボールと回転が違うんだ、右利きの人が多い中、バレーでの左利きは相手にとっては脅威になるんだ」

「で、でも、闇影ってずっと右で打ってましたよ?」

「だから驚いてんだ、ボケ‼?菅原さんの説明ちゃんと聞いてねぇのか!?」

 日向と影山がまた言い争いを始めると思われたが、その前に菅原さんが日向を抑えた。

 気づくと潔子さん以外のみんなが俺のことを見ていた。

「晃、みんな気になってる。教えてあげたら?」

 潔子さんに言われ、隠すことでも、教えたくないことでもないので教えることにした。

「中学最後の試合、影山のチームと試合して、右腕を怪我したので医者に診てもらったら一ヶ月間の右手の使用禁止、二ヶ月間の運動全般禁止を言い渡されてしまったので、渋々左手で生活していたら、いつの間にか左でも生活ができるようになり、両利きになりました」

「じゃあ、なんで左で打たねーんだ?左利きってすげーんだろ?」

 質問が多いぞ。日向。答えてやるけど。

「怪我して二ヶ月間運動できなかったから、とりあえず一ヶ月を過ぎてから左でスパイクを打つシャドーだけしてたんだけど、運動解禁になってからは親が勉強勉強うるさくてさ、ジャンプの練習があまりできなくて、跳んで左で打つってのがまだできないんだよね、フローターサーブはジャンプする必要ないし左で打てるから、打ってみた。さぁ、試合再開しましょう」

 そのまま試合再開することになった。とりあえず納得したのか、みんなその後は何も言わず再開することになった。

 次のサーブはジャンプサーブで澤村さんのところに打つが、次はきれいに拾われ、月島のトスを山口が日向の方向に打ち、日向はレシーブを上げられず、月島たちの得点になった。

 月島のサーブは俺のもとに飛んでくるので、影山に返し日向の速攻で点を取る。

 次の影山のサーブもアウトとなり次は澤村さんのサーブだ。

 日向のところにとび、日向はこれを影山に返す。そして、俺はスパイクを打つために、影山がトスを上げるのを待つ。影山が高いトスを上げたので俺は助走を開始する。月島は当然のように俺をマークする。十分な助走、十分な高さのあるトス、これさえあれば俺には十分だ。いつも以上にジャンプに力を入れて跳び、月島の上からスパイクを叩きこむ。ストレートにいた山口の前に落ちるそのボールは大きい音を上げて跳ね上がる。

次は日向のサーブの番。日向のサーブは澤村さんの正面、山口がスパイクを打つため助走を開始する。月島は山口にトスを上げ、山口が飛ぶと同時に俺もブロックに跳ぶ。そして俺は見る。山口の体の向き、手の向き、フェイントはあるか、そして俺は一つの答えにたどり着いた。フェイントはなく、クロスに打つ。山口がスパイクを打つ瞬間、俺は左手だけでクロスを絞める。

結果、山口のスパイクは俺のブロックに捕まりシャットアウトされる。

試合はそのまま続いていき、日向にミスはあるものの、俺の持っている武器を活かし点を取って、25対23、25対14で勝利した。

 



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試合終了後

誤字報告をしてくれた方、とても助かりました。
自分で気づかないところも気づいてくれて、とても助かりました。
ありがとうございました。


試合が終わり影山も日向も既にへとへとになっていた。

「お疲れ、どうだった?試合」

「……悪くなかったです。ネット越しにあそこまで話すとは思ってませんでしたけど」

 潔子さんからボトルを受け取り、水分を取る。

「闇影ー、月島たちのところに握手しに行くぞっ!?」

「…………、なんで?」

「試合との最初と最後には握手しないといけないんだぞっ、いくぞ!」

「……はいはい、じゃあ潔子さん、ちょっと行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」

 俺は日向についていく、影山に関しては嫌そうな雰囲気を出しながら歩いていた。

「月島!」

「?」

 日向は何も言わずに右手を出す。

「…………、…何。」

「試合の最初と最後に握手すんじゃん。今日の最初はしてないけど、それにこれからチームメイトだし、嬉しくないけど…」

「…………」

「はやくしろよっ、お前知らねーの!?ちゃんと仲間の自覚を持たないと体育館放り出されるんだぞ!」

 日向は澤村さんのほうを見ながら小声で話していた。大体日向たちが放り出された理由って、

「…君らが体育館出禁になったのは、主将の注意をしかとして勝手に勝負始めた挙げ句、教頭のズラをふっ飛ばしたからでしょ」

「‼?」

「俺はしてねえけどな」

「い、いいじゃねぇか細かいことは」

 いやいや、細かくないから。

 日向はどうにか月島と握手しようと、飛びついていた。

 まだ水を十分に取れていなかった俺は、左手に持っていたボトルの水を飲み干す。

「キャプテン!?」

「「「っ!」」」

月島のほうに来ていた澤村のもとに、日向、影山は紙を前に差し出して待っていた。それは、体育館を放り出されると同時に澤村さんが二人に返した入部届だった。にしてもぐちゃぐちゃだし、字が汚い。日向のはまだ読めるけど、影山の字は、字と字が重なっているところもあり読みずらい。

 澤村さんは二人の紙を受け取る。

「清水!あれもう届いてたよな?」

「うん」

澤村さんはマネージャーの仕事をしていた潔子さんに荷物が届いていたかを聞いた。

日向は「あれ」と言うのが気になるようで、潔子さんが段ボールを持ってくると、興味津々に近づいていった。段ボールを開けると、中にあったものを取りだして嬉しそうに喜んでいた。

「多分サイズ大丈夫だと思うけど、何かあったら言って」

「「あザース‼!」」

 早々に着た日向、影山とは対照的に月島は着るのを渋っていたが、田中さん、菅原さんに着ろと言われ続けて最終的には来ていた。

 俺も着て山口の横にならばされた。

 日向は嬉しそうに、背中にある『烏野高校 排球部』の文字を先輩たちに見せていた。

「これから烏野バレー部として、せーの!」

『よろしく』

「「……オッス!?」」

 その後、田中さんがジャージを着た時のかっこいいポーズの仕方を教えてくれた。日向はノリノリで真似をして、影山と山口は手の動作だけをまねをした。俺と月島はそのポーズを傍観していた。

「おい日向‼休んだか⁉休んだな!?もっかいクイックの練習すんぞ!感覚が残ってるうちに‼」

「オオッ」

「田中さん、ボール出しをお願いします」

「おう、任せとけ!?」

 日向と影山はもらったばかりのジャージを投げ捨てクイックの練習をしようとしたとき、体育館のドアが勢いよく開けられた。

「組めた‼組めたよーっ」

 扉のところにはジャージを着ている人が膝に手をついていた。

「練習試合っ‼!相手は県のベスト4‼青葉城西高校‼」

「青城!?」

「ゲッ」

「ウソ」

「県ベスト4と練習試合!?」

 先輩たちは青城の名に驚き、月島、山口は嫌そうに顔をしかめ、日向に関しては県ベスト4と練習試合ができることに喜んでいる。

「おっ!君らが問題の日向君と影山君か!」

 緑色のジャージを羽織り直し日向、影山のもとへ歩いていった。

「今年からバレー部顧問の武田一哲です」

「…おす」

「バレーの経験は無いから、技術的な指導はできないけど、それ以外のところは頑張るから、よろしく!」

「……おっす!」

「先生…」

「いやあ、あちこち練習試合のお願いに行ってたから全然こっちに顔だせなくて…」

「先生、青城なんて強いところとどうやって…」

「まさか、また土下座を……」

「してないしてない、土下座は得意だけど、してないよ今回は」

 澤村さんと菅原さんは安心したのか一つ息を吐いた。それでも土下座得意なのはどうかと思うが。

「ただ、条件があってね…」

「条件?」

「影山君をセッターとしてフルで出すこと」

「なんスかそれ、烏野自体に興味はないけど、影山だけはとりあえず警戒しときたいってことスか、何スか舐めてんスかペロペロスか?」

 田中さんは全く関係ない先生に上からガンを飛ばしている。

「いや、そう言うわけじゃなくて…」

「いいじゃないか、俺は日向と影山の攻撃が、四強相手にどこまで通用するのか見てみたい」

 なんか素早く話がまとまった様だ。田中さんはまだ何か言いたげの表情だけど、澤村さんが詳細を聞く。試合の日は来週の火曜、放課後に1ゲームだけ行い、学校のバスで行くらしい。

 夕方になり練習が終わり今は潔子さんと一緒に帰宅している。

「来週の火曜日はデビュー戦だね」

「と言っても一年の俺が試合に出れるかわかりませんよ?」

「……意外、晃なら自分が出れるって確信してると思ってた」

「俺は、公式戦でレギュラーを取るつもりです。だから練習試合で出られる確信がなくても、公式戦でレギュラーを取れればいいと思ってます」

「……それって今回みたいに勝ちに行く練習試合でも?」

「…………はっ!勝ちに行くための練習試合でレギュラー取れなかったら、公式戦でもレギュラーなんて取れませんよね!?先ほどの出られるかわからないって言ったの訂正します。今回の試合レギュラーになって、青葉城西に俺の実力を見せてあげます」

「うん、頑張って」

「あと、潔子さん。気を付けて下さいね」

「?」

「向こうの主将さん、聞いた噂じゃあ、イケメンでバレーもうまいらしいですけど、女子にモテまくってて、たまにナンパまがいなことをしているって聞いたことがありますから」

「心配しなくても大丈夫。私、外面だけで褒めてくれる人は好きじゃないし、向こうの学校についても方向音痴な晃がいるから、基本一緒に行動しないといけないから。もし、ナンパされても晃が追い払ってくれるんでしょ?」

「もちろんです。一緒に行動しないといけないのは初めて聞きましたが、その時は追い払いますよ」

 平日でも休日でも学校から帰る道のりに潔子さんと一緒に帰る時にしゃべるのは中学の時から変わることはないようだ。

 

日曜日は休みで月曜日の朝、青城戦のスターティングメンバーが発表された。俺はWSとして試合に出ることになった。対角はもちろんのこと田中さんで、原作では縁下さんが守っていたポジションだ。

「影山と日向はセットで使いたいし、月島と闇影はうちでは数少ない長身選手だ。青城相手にどれくらい戦えるか見たい。闇影に関しては、身長だけでなくサーブやブロックなど武器もまだまだ持っているようだから、その武器がどこまで通用するのか使ってみてくれ」

「はい」

 山口が外れたことにとてもへこんでいた。

「てか、でかさが重要なポジションに日向スか」

「はっ!MBってノッポ野郎月島と同じポジション!?」

 MBという言葉に武田先生が反応して大まかなポジション確認をする。今回はWS、MB、Sだけの説明だった。

「いいか、日向。お前は、最強の囮だ!?」

「!おおお!?最強のおと、り…、なんかパッとしねぇ」

 日向は最初、最強という言葉に反応したがその後ろについてきた囮という言葉に膝を落とす。

影山は最初、囮の気持ちのいいところを教えていたが、その後に囮の重要性の悪いところを教えて日向を落としていた。

「良かったね晃、レギュラーで」

「そうですね、でもここで出きるだけアピールしておかないと、公式試合ではベンチスタートっていうこともありますから気を抜かないようにします。まぁあんな風にはならないとは思いますけど」

 俺は今だに緊張でがちがちの日向を見ながらそう言った。

 その日の放課後も日向は緊張でがちがちになっており、一度は何度か持ち直したが、部室で田中さんがプレッシャ―を与え、ジャージの上下を間違えたり、田中さんのジャージを間違えてきたりと、相当参っていた。

 

 

 

 

 

そして火曜日、ついに日向は緊張と睡眠不足、乗り物酔いによって隣に座っていた田中さんの股間に嘔吐していた。

 




今回もご愛読ありがとうございました。
ぜひ評価していただけると嬉しいです。


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迷子

今回は少し違うスポーツをさせました。
それではどうぞ!


日向が嘔吐した後一度バスを止めてその処理をした。

その後は何の問題もなく、青葉城西高校に着くことができた。平日ということもあって、帰宅している生徒や部活を行っている生徒がちらほら見える。俺は荷物の整理をしている。周りを見渡してみると、田中さん、影山、山口、月島、日向が見当たらない。日向はトイレに行っているのだろう。澤村さんが影山たちを探しに行っている間に、俺は荷物の整理を終わらせる。しばらくすると、澤村さんたちが戻ってきた。そして練習試合会場である体育館に向かう途中、道に迷い体育館に着くことができた。しかしそこにはバレー部どころか男子なんていなかった。そこは青城の女子バスケ部らしく、体育館を間違えたようだ。

「そこの大きい君‼うちの学校の生徒じゃないようだけど、どうかしたの?」

 後ろから声がしたので振り向いてみるとそこには影山より少し身長の高い女子がいた。右手にバスケットボールを抱えているので、青城の女子バスケットボール部だろう。

「すみません、俺、烏野高校のバレー部なんですけど、青城の男子バレー部がどこで練習してるか知りませんか?チームメイトと離れてしまって……」

「ほうほう、つまり君は今迷子と、……教えてあげてもいいけど、かわりにうちの練習につき合ってちょうだい。人数が足りなくて試合形式ができないの」

「え、いや、俺もこれから練習試合なんですけど……」

「ちょっとだけだから、一人来てくれたら私が案内してあげるから」

「いや言いですよ、なら一人で歩いていきますから」

 俺はそれだけ言って体育館を後にしようとした、しかし

「いいの~?私は一人来てくれるまでしてくれればいいって言ってるんだよ?もしまた道に迷って男子バスケ部のところに行ってごらん。今日の部活終了までバスケの練習に使われるかもしれないよ?うちの男バス、強引なところあるから可能性はゼロじゃないんだ。で、どうするの?通路が多くて体育館が四つ近くあるこのマンモス校で道に迷っても部活の時間により誰もいない廊下を一人でさまようか、男バスに捕まって終了時間までバスケさせられるか、私達のところに残って一人来るまでバスケしてその後道案内されるか?どうするの?」

 そんなの決まってる。

「しばらくの間お世話になります!」

 方向音痴の俺がこんなに広い学校で迷子になってみろ。時間がかかってしまい着いた頃には試合終了になってしまうなんてことがある。男バスも同じ理由でだめだ。なら、少しでも可能性があるここに残って人が来た後に道案内してもらうほうが断然いい。

 よって、俺は少しの間バスケをすることになった。

「みんな、試合形式始めるよ、一人遅れてくるらしいけどこのカラス君がそれまで練習に参加してくれるらしいから、色々バスケのこと教えながらよろしくね?」

『はいっ!キャプテン!?』

 この女性はバスケ部の主将だったらしく、勝手にチームを決められ試合を開始した。

………………てか、カラスくんって何?

 試合は始まりこちらのボールからスタートだ。俺は跳んできたボールを持って、ドリブルをしながら進んでいく。何故か誰もボールを取りに来ないので、ゴール下まで行きそのままボールを持ってダンクをしようとした。しかし、

 

「ぴぃーーーーーー‼?」

 

 笛が鳴ったので俺はボールを持ったまま着地する。笛を吹いたのはキャプテンさんらしく、俺のもとにちかずいてくる。

「トラベリング!ダメだよボールを持って三歩以上歩いたら」

「?」

 何のことか全くわからない。

「君は今、ボールを持って右足、左足、右足、左足で止まって上に飛んだんだよ。せっかくのジャンプ力が急に止まったせいでそこまで高く跳べてないよ。バレーではボールを持ってないからいいかもしれないけど、バスケはボールを持ってるんだから片足で跳ばないと」

 そう言われてキャプテンさんにボールを渡される。そして再び片足で跳んでダンクを決めようとするが今度は思ったよりも前に跳びすぎて、おでこがリングに当たってしまった。

「今度は前に跳びすぎ、次は少し後ろのほうでとんでみて?」

 そう言われ俺は少し後ろのほうでとんでみた、その時、

「晃!なにしてるの!?」

 声がして俺はボールを持ったまま着地した。

声がしたほうを見るとそこには息を切らした潔子さんがいた。

「あらら、カラスくんの彼女さん?めっちゃ美人じゃん。にしても、彼女さんが来たってことは私の案内が必要無くなったってことだね、とりあえず、勝手にカラス君を借りたことに変わりないから挨拶に行ってくるよ、自分の荷物とってきない」

 そう言ってキャプテンさんは潔子さんの方に行った。俺も自分の荷物を持ち、潔子さんのもとに向かう。

「話は終わったから、じゃあねカラス君。頑張てね」

「はい、お世話になりました」

 そう言って俺は潔子さんの後をついていく。

「晃、試合もう始まってるから。今、晃の代わりに縁下が出てるけど、二セット目から出られるよね?」

「はい、」

「じゃあついたらまずみんなに謝って、分かった?」

「はい、すみませんでした」

「みんなにも謝るんだよ、じゃあはい」

「?」

 潔子さんは俺のほうに手を出してきた。

「また迷子になったらいけないから手、握って」

「いや、さすがに校舎内では……」

「その校舎内で迷子になったのは、誰?」

 声と顔で潔子さんが怒っているのが分かった。渋々手を握り、早歩きで試合会場に向かった。コートに着くと、日向がサーブを打ち影山の後頭部にボールをぶつけているところだった。

そして、第一セット目、25対13で青城がとった。

「おいこら日向!?」

「!?」

「お前」

「はい」

日向が反射的に正座した。

「他の奴みたいに上手にやんなきゃとか思ってんのか?イッチョ前に」

「……ちゃ…、ちゃんとやんないと……交代…させられるから…、おれ…最後まで試合…出たいから……」

「おい、…ナメるなよ‼お前が下手糞なことなんかわかりきってることだろうが!」

「ヴェ…」

「わかってて入れてんだろ大地さんは!」

「え?」

「交代させられた時のことはなあ、あー…、うー…、交代させられた時に考えろ‼」

「えっ…」

「いいから余計な心配はすんじゃねぇ!頭の容量少ないくせに‼良いかァ!バレーボールっつうのはなあ!ネットの“こっちっ側”にいる全員!もれなく“味方”なんだよ‼」

「!」

「下手糞上等‼迷惑かけろ‼足を引っ張れ‼それを補ってやるための‼」

 一拍溜めて、

「“チーム”であり、“センパイ”だ‼!」

 その後日向は田中さんのことを田中先輩と呼び続けており、田中さんも上機嫌になっている。

「晃、行くよ」

 そして俺は潔子さんに手を繋がれたまま澤村さんのもとに連れていかれる。

「澤村、連れてきた」

 潔子さんは繋いでいた手を離し、俺を澤村さんの前に立たせる。

「澤村さん、道に迷ってしまい遅れました。すみません」

「ああ俺たちも、お前が方向音痴だと知らずに置いてきてしまって悪かったな、とりあえず二セット目から行けるか?」

「はい!」

最初は怒られて試合に出られないのではないかと心配していたが、試合には出られそうだ。一応縁下さんにも謝罪をしておいた。

二セット目ではあるが俺のデビュー戦が今、始まる。

 




時間がなくて試合まで入ることができませんでした。
次回は青城戦です。
評価等もよろしくお願いします。


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二セット目

 第二セット目は烏野高校サーブで始まる。

 青葉城西はサーバーを見て烏野がメンバーチェンジしていることに気づく。

「渡、強烈なの来るかもしれないから一本できるぞ」

「はい!」

 岩泉は同じ後衛の後輩二人に注意を促す。

「闇影!一本ナイッサー!」

 そしてここで晃は集中する。相手のレシーバーの位置。どのサーブで行くか。どこを狙うか。そして晃はエンドラインから八歩歩いた。

(おそらく、ウシワカの左を受けたことのある青葉城西相手には、俺の左サーブなんて通用しないはず)

 そして晃はサーブトスを上げる。

(一本目は……完璧なサーブトス。修正必要皆無。狙い変更なし。)

 そしてジャンプサーブを打つ。打ったボールはリベロとセッターの間。しかしセッターである矢巾は、トスを上げるため前衛のほうに向かっていた。そこに晃の打ったサーブが向かい、矢巾はとっさに頭の上でレシーブをするが、ボールは二階席に飛んでいき烏野の得点になる。

「闇影ナイスサーブっ‼この遅刻魔が‼」

「ちょっ!痛いです‼田中さんっ!髪ワシャワシャしないでください!」

「田中、そこまでにしてやれ、闇影もう一本ナイッサー」

「うっす!」

 髪をいじられた晃は、自分の手のひらを見る。

(なんか、サーブが決まって先輩に褒められるっていいな)

 かれこれ十数年、晃は初めての感覚に浸るのだった。

(よかったね晃、長年我慢してやっと良い先輩たちに敢えて)

 初めての感覚に浸っている晃を、清水は優しい目で見守っていた。

 再び晃のサーブのターン。晃はこの試合ジャンプサーブ以外打つつもりはなかった。よって、今回も八歩。しかし、先ほどとは狙う場所が違う。

(今度のターゲットはあなたです。岩泉さん)

 サーブを打つ、そのボールは岩泉の少し横のライン側に飛んでいく。岩泉は横にとびボールを腕に当てるが、そのボールは再び二階席に飛んでいく。

「わりぃ、次はとる!」

「ドンマイです!岩泉さん!」

(このサーブ、下手したら今の及川の全力サーブと同じ威力だぞ‼)

 岩泉は受けきれなかったサーブの威力を体で感じて、小学生の頃から一緒にやってきている及川のサーブを思いだす。

「闇影、もう一本ナイッサー!」

(ふう、次は回転の強いサーブトス、ボールの落ちるタイミング。狙いは、ライン上)

 今の晃には周りの声はあまり聞こえていなかった。

 再び晃のサーブ。サーブトスは先ほどの二つのサーブよりも強い回転がかかっている。ボールはリベロのライン側に飛んでいく。

「!アウト!」

サーブを見逃す渡。最初は青城側の誰もがアウトと思った。しかしそのボールは急降下をはじめライン上に落ちていった。結果はイン、再び烏野の得点になった。

「すみません!」

「ドンマイ、次々!」

 再び晃のサーブ、今度の晃のサーブは、岩泉狙い。サーブトスを上げる。しかし、

(やっべ、サーブトス前過ぎる!?考えろ、助走しながら考えろ、前過ぎた時はどうすれば良い?今までのジャンプじゃ届かない可能性だってある。前のほうに跳ぶためには…………あ!)

 晃はここに来る前に教わったジャンプを思いだす。この間約一秒。

 そして晃はエンドライン手前でジャンプする。右足を後ろに上げて左足だけで。よって前過ぎたボールには届いた。しかし慣れておらず、ぶっつけ本番だったため体が少し傾いてしまった。

 結果、狙い道理のコースに打つことはできたが威力はそこまで高くならなかった。岩泉はそのボールをセッターに返す、矢巾は国見を使い攻撃をする。国見はスパイクを打ち、そのスパイクは月島の正面でかろうじてボールを上げた。

 影山は上がったボールの真下に入り、日向は助走を開始する。日向は目を瞑りジャンプして腕を振る。

(あれ?手に当たんない)

 違和感を感じた日向は目を開けるとボールはネットにかかって烏野のコートに落ちていった。

(クイックあんのか?それともただの張ったり。でもまあどっちみち)

「今のみたいなのちゃんと当てなきゃ、王様が怒りだすよ?」

 小心者の日向を煽った。

「日向!」

「ほら来た」

「悪い、今のトス少し高かった」

「!?影山が…」

「……謝った…」

 影山の元チームメイトの金田一と国見は驚きを隠せないでいる。

 青城のサーブで試合再開、晃は自分のもとに飛んできたボールを影山に返す。

 日向は助走を開始し跳ぶ。影山はその日向にドンピシャのトスを上げた。

 青葉城西のブロッカーは反応することができずに得点が決まる。

「「っしゃ‼!」」

「「おーし!」」

「よっしゃー!」「おおお…‼」

「でたよ…、変人トス&スパイク…」

「いいねぇ、この気付いた時にはスパイクが決まっていた時の相手の反応」

『おおおおお!?』「なんだ今の、はえー!」

 会場に来ていたギャラリーがざわついた。

 澤村のサーブはあっけなく返されて青城の得点になる。

 青城のサーブは澤村が上げ、晃はバックトスを要求する。

 影山は迷うことなく晃にバックトスを上げる。青城ブロッカーは三人でブロックに跳ぶ。晃はブロッカーの指先をめがけてスパイクを打ち、ブロックアウトで点を稼いだ。

 青葉城西も離されることはなかったが、日向の囮に引っかかって点を決められることが多々あり、タイムアウトを取った。

「晃、お疲れ、どう?調子は」

「悪くないですよ、むしろまだまだ上がれそうなくらい」

 そんな二人の雑談を簡単に見逃さないものが一人いた。

「おい!闇影、お前だけ潔子さんと雑談なんてうらやまけしからん‼!潔子さん、俺とも一緒に雑談を」

「しません」

「今日の俺の調子は」

「聞いてません」

「今度一緒にご飯に」

「行きません」

「潔子さんに断られるのもなんか、いい!」

「「……」」

 新たな性癖に目覚めた田中を晃と清水は異常な目で見ていた。

 タイムアウトが開け試合が再開する。

 影山のトスを打った月島は「お前のトス精密過ぎて気持ちわる」といい、影山と月島は言い争いになったが、澤村の一言で言い争いは収まった。しかし、その二人はブロックでも言い争い、それだけでなく、場所争いも始まった。この二人の争いを見て楽しく思わない晃ではない。

「そんなこと言い合って止めれなかったら二人ともダサいよな!」

「あぁ?」「はぁ?」

「敵はネットの向こうだっつうの‼おい、来るぞ!?」

「「「!?」」」

 田中の一言で我に返る三人。ブロックに跳んで場所を争い合う影山と月島、スパイカーである岩泉のフォームを見てストレート側だと気づき、がっかりする晃。結果、止めたはいいが、自分のところに来なかった晃は一気に落ち込み、月島と影山はどちらが止めたかで言い争っている。この二人には澤村の雷が落ち、晃だけ無傷、影山と月島だけ怒られるということで収まった。その後少しづつ点差が広いていき、最後は日向の速攻で第二セット目は烏野がとった。

 晃は清水から受け取ったボトルをのみながらタオルを顔にかけ、ベンチに座っていると

『きゃああああ‼』

 急に奇声を上げたギャラリーに驚き後ろに倒れてしまい。タオルを取ると青城に人が増えていることに気付きこう思う。

(青城に及川徹、降臨ってか?)

 




試合風景、とても難しいデス。


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VS大王様

今回はすべて晃目線で行きます。


「影山君、あの優男誰ですか、僕とても不愉快です?」

「あれが青城の主将だ」

「…及川さん…、超攻撃的セッターで攻撃もチームでトップクラスだと思います」

 田中さんの、怒りの質問に影山は及川さんの実力、性格の悪さを答える。例えを月島にするのは少し面白いが、それで即理解する日向も面白い。

「晃、そんなところに寝転がってたら、身体が鈍るよ?」

「あっ、はい」

 俺は及川さんの登場に気を取られて後ろに転げ落ちたことを忘れていた。起き上がって及川さんのほうを向いてみると、潔子さんが隣に座ってきて俺のほうを向いてきた。

「……潔子さん?俺の顔に何かついてますか?」

「……晃は、ああいう風にちやほやされたいの?」

 どうやら潔子さんは俺が転げ落ちた理由が、女子にちやほやされている及川さんを見て「うらやましい」と気が緩んで転げ落ちたものだと思われているらしい。

「いや、ただ驚いてしまって転げ落ちただけです」

「じゃあ転げ落ちてもなかなか起き上がらずに青葉城西ベンチ見てたけどなんで?」

 誤解はまだ解けてないらしい。

「いや、田中さんたちの会話が面白くって、起き上がるのを忘れていただけです」

「そっか、ごめんね?誤解しちゃって」

 なんか納得いかない。ここは反撃に出よう。

「潔子さんは、青城の主将を見てなんとも思わな「晃、私が初対面の人と関わるときどこで判断するか忘れた?」…………外見ではなく、その人の性格……デス」

 そして潔子さんは人差し指を俺の唇に当てて

「正解、次あんなこと言ったら、この唇無理矢理閉じるから、分かった?」

「は、はい、しかと理解しました」

「ふふ、何それ、三セット目も期待してる」

「ハハハハハハ……」

 今この風景をうらやましいと思う奴がいたら俺は眼科に行くことを進める。今俺が潔子さんに抱いている感情は恐怖の一点だ。外側から見たらイチャイチャしているように見えるかもしれないが、正面から見るととても強いプレッシャーを感じた。

 幸い、田中さんは観客にちやほやされている及川さんに夢中になっていたので突っかかれることはなかった。

 セット間の休憩も終了しファイナルセットが始まる。

 田中さんは始まる前から威嚇している。

 青城のサーブから試合再開だ。正直まだ全然暴れ足りない。なので、折れないでくださいね?青葉城西高校。

 サーブは俺のところに飛んできたので影山に高く上げて返す。

「影山、俺によこせ」

 これだけ伝え俺は助走距離を確保、いつでも走り出す準備はできている。影山のもとにボールが落ちてくる瞬間に助走スタート。そして跳ぶ。影山はそこに合わせてくれた。ブロックは三枚付いてくるが、それも想定道理。

 相手のMBの手のひらめがけて力いっぱい腕を振る。打ったボールはそのまま飛んでいき、壁に当たってブロックアウト。

「影山、ナイストス!だけど、もう少し高くてもいいぞ」

「わかった、修正する」

「闇影ナイスキー‼影山!俺にもジャンジャン寄こしやがれ‼」

 三セット目のファーストポイントは烏野がとることができた。次の澤村さんのサーブはレシ-バーに上げらセンターからの速攻だったが日向がワンタッチしたことにより簡単にボールを取ることができた。

「影山、もう一本上げろ、次は打ち崩す!」

 再び俺は影山にトスを要求する。そして先ほどよりも早いタイミングで助走を開始する。そして跳ぶと同時に青城のブロッカーが三人釣れる。

 そして影山はトスを上げるのではなくツーアタックを決める。

青城のリベロが反応するがボールには届かず烏野の連続得点になる。

「ナイスだ影山!闇影もいい囮だったぞ!」

「「アザッス!」」

 次の澤村さんのサーブはレシーブを上げられた後、レフトからの攻撃で月島のほうに打たれ、月島はこれを上げることができずに青城の得点になった。青城のサーブは澤村さんが上げ、及川さんへの完成にストレスのたまっていた田中さんがきっちり決めてくれた。日向のサーブはネットにかかり青城の得点、青城のサーブはエンドラインを割りアウトになって俺は前衛に回った。田中さんのサーブはきれいに上げられるが、俺はただでは通さなかった。相手がブロックのいないほうに打とうと視線を向けた時、打つ瞬間に片手で進路をふさぎブロックをして得点につなげたり、影山、月島の二枚壁でフェイントしてきたときは手の動きでそれを読みレシーブを上げそのままカウンターにつなげたりした。もちろん烏野にもミスが出たりしたため、ずっと連続得点を続けることはできなかったが、それでも相手スパイカーとセッターに相当なストレスを溜めさせてミスを誘うことはできた。結果現在24対16でリードしており相手サーブの番である。

 そこでピンチサーバーとして及川さんが出てきた。

それと同時に女子の奇声が響いた。

「いくら攻撃力が高くてもさ、その攻撃までつなげなきゃ、意味ないんだよ。」

 及川さんはボールを持って人差し指を月島に向けてきた。

 そしてサーブトスを上げ月島の方に向けたサーブを打つ。

 月島は腕にボールを当てるがそのままボールは後ろに飛ばされる。

「うん、やっぱり、途中見てたけど、六番の君と五番の君、レシーブ苦手でしょ一年生かな?」

 これは言わば『次も狙うから頑張ってね』という意味だろう。日向は現在前衛なので狙うとしたら月島、だったら簡単だ。

 及川さんは再び月島めがけて打ってくる。しかし、月島にボールが行くことはなかった。

 その前に俺がレシーブを上げたからだ。流石に無理な体制で取ってしまったので相手のチャンスボールになってしまう。

「少し狙うのが分かりやすかったかな?よく腕だけで上げたね、えらーい。でも、こっちのチャンスボールなんだよね。」

「よくしゃべるし、なんか腹立つ!」

「ホラ、おいしいおいしいチャンスボールだ。きっちり決めろよお前ら」

 及川さんのレシーブで青城は攻撃の動きに入った。そしてセッターの後ろから金田一が走っているのが見えたが反対がわにいる俺ではもう間に合わない。しかし、真ん中にいた日向はすでにボールを追って跳んでいた。スパイクに触り、威力をやわらげチャンスボールにした。

 日向は着地してすぐに助走を開始した。青城の前衛は日向に追いつくことができず、フリーの状態で日向はスパイクを決め、三セット目を取った。

 今回の練習試合15対25、25対18、25対17で烏野の勝利だ。

「整列‼」

『あざーっしたーっ』

「集合」

 挨拶し終えた俺たちは武田先生のもとに向かう。

『お願しアースっ!』

「しあーす!」

日向だけ挨拶が遅れた。武田先生は一瞬戸惑っていたが、菅原さんから「なんか講評とか」と言われ理解していた。

「えーと、……僕はまだバレーボールに関して素人だけど、なにか……、なにか凄いことが起こってるんだってことは分かったよ。」

「??」

「…新年度になって…、すごい一年生が入ってきて…、でも一筋縄ではいかなくて……だけど、今日分かった気がする、バラバラだったらなんてことない、一人と、一人が出会うことで、化学変化を起こす。今、この瞬間もどこかで、世界を変えるような出会いが生まれていて、それは遠い遠い国のどこかかもしれない。地球の裏側かもしれない。もしかしたら…東の小さな島国の、北の片田舎の、ごく普通の高校の、ごく普通のバレーボール部かもしれない。そんな出会いがここで…、烏野であったんだと思った。根拠なんかないけど、信じないよりはずっといい。きっと、これから、君らは強く、強くなるんだな」

「…………」

 



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青葉城西戦終了後

今日はあまり乗ることができなかったため超短めです。


「「??」」

 日向と影山は先生の言葉の意味を理解できていなかった。

「ごめんっ!ちょっとポエミーだった!?引いた!?」

「いやいやいや、そんなことないです!」

「あざす‼!」

『アザース‼!』

 先生の講評を聞き終えた俺たちは、帰る支度をしていた。

「そう言えば闇影、お前試合前どこに行ってたんだ?」

「ああ、実は第一体育館のところに行ってて、そこで女子バスケ部にお世話になってました」

 菅原さんに聞かれたので俺は素直に答えた。しかし、馬鹿正直に答えたのが間違いだった。このことをあの人の耳が聞き逃すはずがない。

「やっみかっげクーン、今ー、聞き捨てならないことが聞こえたんだけどー、もう一回言ってもらっていいかなー?どこでお世話になってたって?」

「バスケ部にお世話になってました!」

「あれれー?おかしいぞー?僕の耳にはバスケ部の前に言葉が聞こえたんだけどな~!闇影‼お前、俺たちが試合しているさなか女子バスケ部といちゃこらしてたのか!?」

「いやいや、帰ろうと思ったんですけど、色々と脅されてバスケをする羽目になっただけです‼」

 正直に答えてもなかなか田中さんは掴んだ胸ぐらを話してくれなかったが、菅原さんが収めてくれた。

『ありがとうございましたーーッ‼!』

 片付けを終えた俺たちは青城の選手に挨拶をして体育館を出た。

「武田先生はああ言ってくれたけど、正直、及川のいる青城と真っ向勝負で戦って勝つためにはまだ、決定的に足りないものがある」

「ほお、さっすがキャプテン、ちゃんとわかってるね」

 そう言うと及川さんは上からものを見るかのようにこっちを向いた。正直めっちゃ腹立つ。

「出たな、大王様!」

「なんだ、コラ」

「なんの用だっ」

「やんのかコラ」

「やんのかァ、コラァ」

 日向、喧嘩売るなら隠れないで売りなさい。

「そんな邪険にしないでよ~、小ちゃい君」

「ヴェッ」

「最後のワンタッチとブロード、すごかったね」

「えっ、ああえへへへ」

「次は最初から全力でやろうね、まだセットアップは見せてなかったし、あぁそうそう、もちろんサーブも磨いておくからね?」

「「!?」」

 ここからなんかイラついてボールを投げてしまいそうなので、先にバスに戻ることにした。

「潔子さん、先にバスに戻ってもいいですかね?」

「……私も一緒に行く」

 どうしようか迷っていたけれど、潔子さんも一緒に戻ることになった。

 それを縁下さんに伝えてバスに戻ることにした。縁下さんに止められそうになったけど、止められる前にバスに戻った。

 

その後体育館の掃除を済ませて今日の部活は終了した。そして現在潔子さんと一緒に帰っている。

「今日の試合どうだった?」

「……そうですね、正直言って及川さんサーブをきちんと上げられなかったのは悔しかったけど、サーブもスパイクもレシーブも高校では通じることが確認できてよかったです」

「…………そう」

「そう言えば潔子さん、髪はもう結ばないんですか?」

「ううん、夏や料理をするときは結ぶけど春や冬の時は結ばない、やっぱり晃は結んだほうが嬉しい?」

「いや、俺的には結んだ時の潔子さんはいかにもできる女感が出ていていいと思いますけど、結んでいない時の潔子さんは、外面は美しいけど内面の性格がギャップに感じていいと思います」

「そ、……そうなんだ、ありがと」

「?」

 その後俺たちは無言で家まで帰っていった。

 




最近乗ることができなくなってきたので今後、更新速度を遅らせたいと思います。
ご了承ください。
今後ともよろしくお願いします。


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