天災探偵と五等分の花嫁 (ダイガスタ)
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序章
第1話 プロローグ
初投稿なので、話の作りが下手かもしれませんが、読んでくれると幸いです。
それではどうぞ。
突然だが、世の中には、天才とそうでないものではっきり分けられる。
天才と呼ばれるものは、幅広い分野で活躍しているが、その多くは必死に努力した結果、天才と呼ばれるほどの逸材に成長したと言えるだろう。
現に、俺の学校にも、毎日時間さえあれば勉強ばかりしている頭のおかしい勉強バカが1人いる。
まあ、俺も学校ではかなりの好成績を修めているので、接触してみようと思ったところ、何故か向こうから話しかけてきて、実は意外と気が合うなと思い、今ではそれなりに話せる奴ではあるが。
しかし、世の中には”天才”などという括りでは表せないような、飛び抜けた異常者もいる。
かくいう俺、白銀祐介もまた、そんな異常者、いや、”天災”と呼ばれる存在であるというのは、十数年生きてきて出した結論である。
だが、この時の俺は思ってもみなかったのである。
この勉強バカ、上杉風太郎との関わりが、あいつらとの出会いのきっかけになるなんて。
だが、今にして思えば、この出会いは運命だったのかもしれないと、あの頃の思い出を思い馳せながら、
俺は珍しく、そんなことを考えていた。
「焼肉定食、焼肉抜きで。」
「はいよ」
学校の食堂のおばちゃんにそんなわけのわからない注文をする変人がいた。
そいつの名前は”上杉風太郎”。根っからの勉強バカで、常に学年主席の天才である。
だが、彼自身、元々勉強は苦手だったらしく、子供の頃のきっかけで勉強を始めるようになり、こうして結果を残しているのだからそこは褒めてしかるべきである。(例え人相が悪く、友達が一人もいないぼっちだとしても。)
「よっ風太郎。相変わらずそればっか食ってんのな。」
「なんだ、祐介か。」
そんな彼に話しかける奇特な人物が一人。
名前は”白銀祐介”。この物語の主人公である。
見た目は白髪に赤目。日本人離れした見た目であるが、れっきとした日本人だ。
ちなみに、彼の容姿については、学校側に理由を説明して、承諾済みである。
そのまま風太郎と祐介は歩きながら空いている席に向かう。
「いいだろ別に。俺はこの学食の食費を節約しつつ、それなりに多く食べられるものを注文しているんだ。普通なら一番安いものと言えば、ライス単品の200円が思い浮かべるだろう。しかし、焼肉定食から焼肉を抜くことで、ライス単品の値段と同じで、さらに味噌汁と漬物が付いてくるのだ。学食最高。」
「それは前に聞いた。後お前はその変な注文を要望通りにやってくれる学食のおばちゃんに日頃の感謝を伝えるべきだな。」
「いつも心の中で感謝してるよ。」
「まあいい。さっさといつもの席で食べようぜ。今日もおかず少し分けてやるよ。」
「いつもすまない。」
「それは言わない約束ですよ。おじいさん。」
「誰がおじいさんだ。」
「そこはボケて欲しかったなぁ。」
そうこうしているうちに、いつもの席が目の前に。そのまま席に料理の乗ったトレイを置こうとするが。
「ガシャン!!」
風太郎が置こうとした所に、たまたま別の生徒が同時にトレイを置いてきた。
その生徒はしばらく風太郎と目が会うなり、自分の方が早かったから席を譲ってくれと言う。
だがそんなことで折れる風太郎ではない。
2人が言い合いして、らちがあかないので助け舟を出すことにする。
「俺は隣の空いている席で食べるから、ここ座っていいよ。」
「あ、ありがとうございます…」
そして俺は席を譲り、1人で注文した料理を食べる。
しかしこの女生徒、昼食にどれだけ食べるんだ…
うどんにトッピングとして、海老天、いか天、かしわ天、さつまいも天、そしてデザートのプリン。
軽く見積もっても1000円超えてるぞ…
この女生徒の胃袋はブラックホールか…
これだけでも、この女生徒がかなりのお金持ちだということが分かる。
まぁ明らかに食べ過ぎだし、その結果が自分の体に現れているのは言うまでもないが。
というかそんなことを口走ってしまったら、彼女からの怒りを買うに決まっている。
1人でそんなことを考えていて、周りの声が聞こえていなかったため、風太郎が突然言い出したことに俺は絶句した。
「あんた食べ過ぎなんだよ。太るぞ。」
「ふ、ふとっ…!?」
女生徒も絶句した。そりゃそうだ。いくらなんでもデリカシーがなさすぎる。
まぁあいつにそんなこと言っても無駄だろうが。
その後、女生徒はしばらく拗ねていたので、なだめることにした。
(全く、なんで俺がこんなことを。後で風太郎はおしおきだな。)
内心でとても悪い顔をしながら、俺は女生徒に話しかけた。
「風太郎が悪かったね。あいつにも後できつく言っておくよ。」
「い、いえ。あなたが謝ることじゃ……」
「いや、あいつのあの変人ぶりは、もはや一種の病気だからね。一度検査したほうがいいんじゃないか?」
「そこまで言わなくても。友達なんですよね。」
「どうかな?」
「え?」
「俺もあいつとは違う理由だけど、周りから浮いているからね。友達と言っていいのか分からない。まぁ唯一気兼ねなく話せる相手ではあるけどね。」
「ふふっ」
「ん?」
「あ、急に笑ってしまってすみません。なんだか不思議な関係だなと思って。」
「そう?」
「ええ。なんだか少し羨ましい気もします。まぁあの人のことはまだ許していませんが。」
「はははっ」
そこで、俺はまだ彼女の名前を聞いていなかったので、自己紹介がてら、教えてもらうことにした。
まぁ、”視れば”分かるけど、不信に思われても良くないしね。
「そういえば、まだ君の名前を聞いていなかった。」
「あ!そういえばまだでしたね。私の名前は中野五月です。よろしくお願いします。」
「中野五月さんね。その制服、君は転校生だよね。」
「ええ。あの、それが何か?」
「いや、だったら”こっち”の方で自己紹介するよ。」
「こっち?」
そう言って、俺は内ポケットにしまってあるあるものを五月さんに渡した。
「これは、名刺?ええと、白銀探偵事務所 社長 白銀祐介
って、ええ!?」
「我が社のモットーは安心と安全。一度受けた依頼は確実に成功させます。何かお困りの際は、ぜひ我が事務所に。」
そう言った時の五月さんは、ポカンとした後、とても驚いていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
読んだ方は気づいたかもしれませんが、オリ主には特殊な力があり、それは周りに秘密にしています。いずれこの伏線は詳しく掘り下げようと考えています。
次話もなるべく早く投稿するつもりなので、よろしくお願いします。
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第2話 末っ子と次女の語らい
残業が重なり、投稿する余裕がありませんでした。
つらい…
それでは、どうぞ。
五月さんと互いに自己紹介した後、五月さんは先ほどの風太郎とのやり取りを聞かせてくれた。
それによると、風太郎にわざと100点の答案用紙を見せられ、風太郎はそれに対しわざと恥ずかしがる素振りを見せ、それでも、風太郎が頭がいいことを理解した五月さんは風太郎に勉強を教えてくださいと頼むもそれを一蹴。しまいに先ほどの失礼極まりない発言である。
どう見ても風太郎が悪いです。本当にありがとうございました。
(マジで改めて聞くとひどいな。断るにしてももう少し穏便にできないもんかね。)
俺は軽くめまいを感じながら、五月さんに向き直る。
彼女も先ほどのことを思い出して、少し不機嫌そうだ。
そこで五月さんも俺に向き直り、今度は俺の話になった。
「それにしても、高校生で探偵なんて驚きました。しかも社長なんて。」
「事務所って言っても、社員は俺1人だからね。そんな褒められたものじゃないよ。」
「何言ってるんですか。十分すごいことですよ。普通、高校生で自立している人なんていませんよ。尊敬します。」
「あ、ありがとう…」
俺は少し気恥ずかしくなってしまい、五月さんから視線をそらす。
「ところで、白銀さんは、勉強の方はできますか?」
「風太郎ほどじゃないけどね。一応全教科80点以上はいつもとってるよ。」
「探偵業に加えて学業まで優秀なんて、羨ましい…
あ、あの!!」
「ん?」
「もしよろしければ、私に勉強をおしえてくれませんか!」
そういった五月さんの表情は真剣そのもので、まるで今にも崩れてしまいそうな崖の上で、必死にもがいている、そんな様子だった。しかし、
(困ったな。一度彼女のことを”視た”ときに、こうなることは予想していたが。今、彼女の頼みを受ける訳にはいかないんだよな。仕方ない。少しずるいが、”この手”でいくか。)
「中野さん。1つ確認してもいいかな。」
「は、はい。」
「俺の予想が正しければ、君はあまり勉強が得意ではなく、かなり切羽詰った状況と言える。そんな状態で、君の親が何も対処していないとは考えにくい。もしかしたら近いうちに家庭教師が教えに来るんじゃないか?」
「ど、どうしてそれを!?」
「やっぱりね。君の様子を見てなんとなく想像できたよ。だとすれば、今君の頼みを引き受ける訳にはいかない」
「ど、どうしてですか!?」
「いいかい。君は既に別の人物に家庭教師の依頼をしている身だ。なのに、突然現れた俺が、「彼女の勉強は俺が見ます」なんて言ったらどうなると思う?」
「両者の間で衝突が起きる、ですか。」
「正解。少なくとも、その家庭教師の先生が教える立場である以上は、俺が横槍を入れるのはあまり得策ではない。だから今は君の依頼を受けるわけには行かない。」
「そうですよね。分かりました。我が儘言ってごめんなさい。」
そういって、五月さんは、俺に頭を下げた。
「頭を上げてくれ。中野さん。別に君を責めているわけじゃないんだ。むしろまだ会って間もない俺のことを頼ってくれて嬉しかった。ただ、こちらの事情も理解して欲しかっただけなんだ。代わりと言ってはなんだけど、他に困ったことがあれば、1度だけ無償で依頼を受けるつもりだ。」
「え!いいんですか!?」
「ああ。俺の仕事は探偵とは言っても、基本何でも屋みたいなものだからね。こういった仕事は人との信頼関係が大切なんだ。」
「分かりました。そのときはぜひ白銀さんに話を聞いてもらいます。今日はお話を聞いてくれてありがとうございます。」
「こちらこそ今後ともヨロシク。」
そろそろお昼休みも終わるので、俺と五月さんはそこで別れた。
(どうやら無事に信頼を得ることができたみたいだな。それにしても、あれが五つ子の1人か。風太郎もこれから大変だな。それは俺もだが。)
今後の展開に俺はどう動くか考えつつ、教室へと向かった。
教室に入ると、どうもいつも以上に騒がしかった。
理由は察しがつく。転校生のことだろう。
どうやら既に転校生が来ることは、学校中でうわさになっているようだ。
俺は1人で図書室で借りた歴史関連の本を読みつつ、担任が来るのを待った。
ちなみに風太郎とは別のクラスである。1年生の時は同じクラスだったが、2年生では別々のクラスになってしまった。
お昼休みが終わり、担任が教室に入ってきたので、俺は本をしまい、担任の声に耳を傾けた。
「えー今日の午後からこのクラスに編入することになった中野さんだ。では中野さん。自己紹介を。」
「中野二乃です。皆さん仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。」
そこには、一般的に見て美少女の部類に入るであろう、とても人当たりがよく可愛らしい女の子がいた。
彼女の制服がお金持ちばかりが通うという黒薔薇女子の制服であることも、より一層注目を集めていた。
しかし、俺が気になったのはそんなことではなく
(五月さんにそっくりだな。さすが一卵性双生児。でも彼女、おそらく猫かぶってるな。)
などと、少しずれたことを思っていた。
「えーでは、中野さんの席は白銀君の隣ね。」
「分かりました。」
そして、彼女はたまたま空いていた俺の隣の席に向かう。
隣同士なので、きちんと自己紹介をすることにした。(この場では名刺は渡していない。五月さんに渡したので、いずれ俺のことは知られるだろうと確信していたからだ。)
「白銀祐介です。ヨロシクね、中野さん。」
「こちらこそよろしくね。白銀くん。」
俺は既に五月さんに会っているので、両方”中野さん”だと紛らわしいのだが、いきなり名前で呼ぶのはいくらなんでも不審すぎるため、この場では苗字で呼ぶことにした。
その後、午後の授業で二乃さんは授業内容があまり理解できていないらしく、先生に指名されるも、困っている様子だった。正直見ていられなかったので、助け舟を出すことにした。
「中野さん。これ」
「あ、え、x=3です。」
「よし。正解だ。これはこの公式を代入して…」
そのまま先生は授業を進める。
「ありがとう。白銀くん。助かったわ。」
「どういたしまして」
その後も、二乃さんは、授業に悪戦苦闘していたので、色々教えてあげることにした。
(それにしても、実際に教えてみると、彼女たちの頭の出来が相当悪いのがわかる。天は二物を与えずとはよく言ったものだが、それにしてもひどすぎる。)
そう、二乃さんの授業の様子を見ていた俺は、あまりにも勉強ができないのを見て、手を貸してしまった。もちろん答えを教えるのではなく、その答えに至るまでの過程を分かりやすく教えたつもりだ。本来ならこんなことはしないが、転校後初の授業であったため、彼女も緊張していたのがわかったので、今回だけ特別サービスで教えることにした。
その後、放課後になり、そのまま帰ろうとすると、二乃さんに話しかけられてしまい、彼女から、今日のお礼をしたいと言われた。しかし、俺は今日これから起きることのため、予定を開けておく必要があるので、丁重にお断りさせてもらうことにした。
「気持ちは嬉しいけど、今日はどうしても外せない用事があるんだ。ごめん。」
「そう。それならしょうがないわね。」
「本当にごめん。もしよかったらまた今度誘ってよ。」
「う、うん!絶対に誘うから!」
そういう二乃さんはとても嬉しそうに、笑っていた。
どうやら今日1日で二乃さんからの信頼を得ることに成功したようだ。
お昼休みには五月さんとも接触できたので結果は上々だろう。
そのまま俺は、あいつからの連絡を待つため、図書室で時間を潰していた。
Prrrr... Prrrr...
やっと連絡が来たので、俺は電話に出る。その相手は
「白銀。俺だ。上杉だ。至急話したいことがあるんだが、今時間は空いているか?」
「ああ。ちょうど暇してた所だ。いま図書室にいる。」
「そうか、ならすぐに向かう。」
そのまま俺は風太郎を待ちながら、今後の動きを見直すことにした。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次もよろしくお願いします。
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第3話 五つ子勢ぞろい
一週間ぶりの投稿です。
登場人物が多いと誰のセリフかわかりづらいところがあったので、分かりにくい箇所はセリフの後に名前を入れました。
それでは、どうぞ。
俺は、風太郎から急に呼び出した理由を聞き出すことにした。
「風太郎。至急話したいことって一体何だ?」
「ああ。実はな…」
風太郎side in
あのセレブお嬢様と一方的に別れたあと、俺は妹のらいはからメールが来ていたので、すぐに電話をすることにした。
その内容は、衝撃的な内容だった。
『お兄ちゃん!うちの借金がなくなるみたい!』
「何?」
どうやら親父がかなり割のいいバイトを見つけたらしい。
最近引っ越してきた金持ちの娘の家庭教師をして欲しいとのことで、
アットホームで楽しい職場!相場の5倍の給料です!
とのことだ。
俺はそれを聞いたとき、すぐに裏の仕事の予感がして、あまり乗り気ではなかった。
だが、
『これでお腹いっぱい食べられるようになるね!お兄ちゃん!』
らいはのこの言葉を聞いて断れるやつがいるだろうか。いやいない!
俺は決意を新たに、その生徒に接触してみようとした。
のだが…
「中野五月です。よろしくお願いします。」
あろうことか、その生徒は、先ほど俺が揉めた相手だった。
(まずい。さっきのことで、彼女から俺への印象は最悪。このままでは家庭教師の仕事がなくなってしまうかもしれない。それだけは何としてでも阻止しなければ!俺のため、そして何よりも、らいはのために必ず仕事を成功させなければ!)
風太郎side out
「なるほどね。そりゃあお前にとってはやっと降りてきたチャンス。絶対にものにしたいところだな。」
「ああ。だがお前も知っての通り、俺は彼女を怒らせてしまった。このままではまずい。」
「それが分かっているんなら、何であの時あんなこといったんだよ。」
「ぐっ…」
「まぁあの後それとなくフォローしたから、そこまでひどいことにはなっていないと思うけどね。」
「ほ、本当か!」
「とは言っても中野さんから風太郎への印象はかなり悪いと思うけどね。」
「だよな…」
「とりあえず、風太郎は明日、中野さんに誠心誠意を持って謝ること。それが出来なきゃ話にならん。」
「わ、分かった。元々俺が撒いた種だ。俺が何とかする。」
「ああ、そうしろ。どうしようもなくなったら俺も手を貸してやる。もちろんタダじゃ動かねえけどな。」
「なるべくそうならないようにする。」
風太郎も分かっていたのか、俺の言葉に了解の意を示す。
どうやら俺に話しかけたのは、自分の考えをまとめるためでもあったらしい。
ところで、風太郎は、教える生徒が彼女だけではないことを知っているのだろうか。
いや、この様子だと知らないな。
当然、俺は現時点で風太郎よりも中野家について詳しく知っているが、ここでこいつに教えてもいいのだろうか。
俺は考えた末、
「じゃあ俺は帰るよ、お前も頑張れよ。」
何も伝えずにおくことにした。
一応理由はある。風太郎がこのことを知って家庭教師に乗り気でなくなる可能性があるので、こいつには直前まで知らせない方がいいだろう。
まあそれとは別に、昼に俺に余計な仕事を押し付けたこのバカに対するささやかな仕返しというのが約8割含まれているが。
まあどちらにせよ、この仕事以上に身入りのある仕事なんてそうないだろう。
(らいはちゃんにも喜んで欲しいからね。がんばれ、風太郎。)
帰宅時、俺は件の中野姉妹を発見した。このまま素通りしても良かったが、知り合いに会って無視するのは今後の関係性に問題が生じるかもしれなかったので、彼女たちに挨拶することにした。
「中野さん。こんにちは。」
「「「「「えっ」」」」」
挨拶すると、5人全員がこちらを振り向く。皆中野さんなんだからそりゃあそうなるよね。
その中で、二乃さんと五月さんは、俺と面識があったため、俺に話しかけてきた。
「白銀君!偶然ですね。」(五月)
「白銀くん!用事はもう終わったの?」(二乃)
「ああ。たまたま見かけたもんでね。用事はちょっとした相談みたいなもので、思ったよりすぐ終わっちゃったんだ。ええと、な、なか…」
俺が彼女たちの名前を言いよどんでいるのを見て察した彼女たちは、
「私のことは名前で呼んでいいですよ。信じられないかもしれないですが、後ろの3人も含めて私たち5つ子の姉妹なんです。苗字だと紛らわしいので。」
「わたしも、二乃って呼んで。」
「分かったよ。五月さん。二乃さん。」
「さんもつけなくていいですよ。」
「分かった。五月、二乃。それにしても5つ子なんて実際に存在するとは思わなかったよ。こうして目の前にいるのを見たら信じるしかないけどね。」
「あははっ、よく言われます。」
それはそうだろう、まず一卵性双生児が生まれる確率が250分の1、それが5つ子ともなると、その確率は3億3211万110分の1にもなるらしい。はっきり言ってこうして実在するのがすでに奇跡とも言えるだろう。
俺が彼女たちと話していると、後ろから3人の中野姉妹がやってきた。
「なになに、君、二乃と五月ちゃんとどういう関係?」(一花)
「二人が男の子と親しくしているの、めずらしい。」(三玖)
「おお!なんだかすごいイケメンさんが二乃と五月と親しくしてますよ!」(四葉)
何だか盛大に勘違いされていそうだったので、説明することにした。
「俺の名前は白銀祐介。二乃とは同じクラスで、五月とは昼休みにたまたま話す機会があったんだ。」
「へえー。あ、私は中野一花。一花でいいよ。」
「中野三玖。好きに呼んで。」
「中野四葉です!よろしくおねがいしまーす!」
「ヨロシク。一花。三玖。四葉。」
三人と挨拶を交わした後、二乃と五月は質問攻めにあっていた。
「それにしても、転校初日でいきなりこんなかっこいい男の子を捕まえるなんて2人ともやるじゃん。」(一花)
「ちょ、そんなんじゃないってば!」(二乃)
「そうですよ!彼とはそんな関係じゃありません!」(五月)
「五月。そんな関係ってどんな関係?」(三玖)
「むむむ、これはあやしいですねー。」(四葉)
二乃と五月は顔を赤くして否定していた。
とりあえず、これ以上変に思われるのはこちらとしても困るので、誤解を解くことにした。
「二乃とは隣同士の席で、授業中困ってそうだったから手助けしただけだよ。五月とは少し頼まれごとをして、その時に、俺の仕事の説明をしたんだ。」
「仕事って?」
「実は俺、探偵なんだ。名刺は五月に渡してる。」
「「「「ええええええええ!!!!」」」」
五月以外の4人は、当然ながら驚いていた。まあいきなり「自分、探偵です。」なんて言ったら、普通驚くよな。
そのまま五月から、昼にあったことを説明した。
「なるほどね。そういう理由なら仕方ないか。」
「うん。まあ依頼とかは抜きにして、今後も君たちとは仲良くしたいと思ってるよ。とりあえず今日は挨拶だけってことで、そろそろ帰るよ。」
そういって、俺は5人と別れ、自宅に帰宅した。
自宅にて
俺は今日の出来事を思い返しながら、これから楽しくなりそうだと、心躍らせていた。
だが、同時に、俺自身の秘密をバレないように、より一層気を引き締めなければいけないと感じていた。
俺の秘密は誰にも打ち明けられない。例え親友でも、恋人でも、家族にさえ…
秘密を知られれば、周りの人間が危険に巻き込まれる恐れがある。
(父さん、母さん、俺はもう二度と同じ過ちは繰り返さないよ。例え何があっても俺は俺の大切なものを守ってみせる。)
俺は家族全員が写っている写真を眺めながら、決意を胸に、眠りについた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
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第4話 追跡
少し前話の内容を変更させてもらいました。
自分の中にあるこれからの話の展開的に、そのほうがいいと思いました。
それでは、どうぞ。
翌日、俺は起床したあと、いつもの日課をこなしていた。
俺の朝は一般的に見てかなり早い。
まず5時30分に起床し、その後30分軽くジョギング。そして、約1時間特別なトレーニングを行う。
ちなみに、この特別なトレーニングは、俺のある能力を安定させるために必要なものだ。
その後、朝食を食べ、HRの30分前に学校に向かう。
そのまま教室で時間まで本を読もうと思ったが、二乃がこちらに話しかけてきた。
「白銀くん。おはよう。」
「ああ。おはよう。二乃。」
そのまま2人で談笑していたが、少し気になったことがあるので、言っておくことにした。
「そういえば二乃って、教室だと猫かぶってるよね?」
「え、な、何のこと?」
「隠さなくていいよ。探偵やってるといろんな人と関わるからね。その人がどんな人なのか分かってしまうんだ。長年の経験ってやつだね。」
「そう、バレてたなら仕方ないわ。言っておくけどこのことは…」
「言われなくても誰かに言ったりしないよ。でも1つ条件がある。」
「な、何よ?」
「別に変なこと頼んだりしないって。ただ、俺の前では普段通りに接して欲しいってだけ。」
「え、それだけ?」
「うん。俺は教室での猫かぶりより、普段の二乃の方が個人的に好きだからね。」
「んなっ!!」
そういう二乃の顔は、まるでゆでダコのように真っ赤だった。
少しからかいすぎたか…
「ごめんね。少しからかいすぎた。でもさっき言った条件を守ってくれるなら、誰にも言わないよ。それに君にも普段通りに話せる相手が居るのは気が楽だと思うけど。」
「わ、分かったわ。それでいいならそうする。」
「交渉成立、だね。」
「ええ。よろしく、祐介。」
「あれ、名前?」
「そっちが普段通りにしろって言ったんでしょ。それに祐介は私のこと名前で呼んでるじゃない。」
「いや、まぁそれは…」
「だったら別にいいでしょ。はい。この話終わり。」
そういう彼女はそっぽを向いてしまった。
やっぱりこっちのほうが断然好感持てる。普段からそうしていても問題ないと思うが。
まぁそれは俺から言うことじゃないな。
そのままHRに入り、今日の授業が始まった。
当然ながら、二乃は今日も授業内容にかなり躓いていたので、さりげなく教えた。
彼女は俺に感謝しながらも、その表情はどこか暗かった。
やはり、今のままじゃダメだと、彼女自身も思っているのだろう。
そのまま昼休みに入り、食堂に入ると、いつものやつを注文している風太郎を発見。
どうやら昨日の俺の助言通りに五月さんに謝ろうとしているようだ。
しかし、彼女が1人になるチャンスを伺うも、姉妹で食べているので、話しかけられずそのまま退散。
もっとも、風太郎は、彼女たちを姉妹ではなく、友達と勘違いしているようだが。
その時に、一花と四葉が風太郎と何やら話していた。
俺は、風太郎のことは一旦置いて、五月に話しかけた。
「五月。」
「あ、白銀さん。こんにちは。」
「ああ。ちょっと頼みがあるんだが、いいか?」
「何でしょう?」
「もし風太郎が話しかけてきたら、とりあえず話を最後まで聞いてやってほしい。」
「えっと、それは…」
「頼む。あいつも昨日のことはきっと反省していると思うから。」
「…分かりました。話だけ聞いてみます。」
「ありがとう。」
そのまま五月と別れる。
とりあえず今後の布石は打った。これで彼女が無理に追い出すこともないだろう。
(あとは、風太郎次第だな。
それと、今日の放課後のことも考えて、”これ”の調整もしとかないと。)
そして放課後。
風太郎は、未だに謝る機会を伺っていた。
正直、知らない人が見たら、女子高生を追い回すヤバイ奴にしか見えん。
三玖も風太郎に気づいて通報しようとしてるし。
ちなみに俺は彼女たちからかなり離れたところから見ている。
しかし直接見ているわけではない。あるもの、ドローンを使って彼女たちを尾行しているのだ。
このドローンは、俺の探偵道具の1つで、相手にバレずに証拠写真が欲しい時に活用している。
そのまま彼女たちは自分たちのマンションに向かって帰る。
風太郎も彼女たちに気づかれないようにしてついていくので、俺もその様子をドローンで見ている。
マンションの前まで着いたところで、風太郎は二乃と三玖に待ち伏せされていた。
どうやら三玖が二乃に告げ口したようだ。
このままでは風太郎は今日中に五月さんに謝ることができない。
そう考えた俺の次の行動は、ドローンをマンション前まで突撃させた。
「うわっ!」(風太郎)
「きゃっ!」(二乃)
「な、なに!?」(三玖)
3人は驚いたが、風太郎はこれをチャンスと見るや、マンションに向かって全速力で走っていった。
しばらく呆然としていた二乃と三玖も慌てて風太郎を追いかける。
俺は、突撃させたドローンを撤退させ、自分のところまで回収した。
(もう俺にできることは何もない。あとはあいつがどれだけやれるかだな。まあどのみち近いうちに俺に依頼してくるだろうが。)
そんなことを考えながら、俺は帰宅することにした。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
更新頻度はしばらく1週間に1度ぐらいになるかもしれません。
時間が空けばなるべく多く投稿するつもりです。
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第5話 風太郎からの依頼
連日投稿になりますが、キリのいいところまで書き進めたかったので、2話投稿します。
翌日、風太郎に呼び出された俺は、何があったか話を聞くことにした。まあ実際には聞くまでもなく、何があったかは分かるのだが、話のつじつまを合わせるために聞いておく。
「で、何があった?」
「ああ、実は…」
そこで聞かされたことは、実際に聞いてみると10人中10人「これはひどい」といってもおかしくないレベルの仕打ちであった。
まず、風太郎は、五月さんとあの後無事に話すことに成功し、そこで、先日の件についてきちんと謝罪したらしい。
これに関しては、俺の助力も大きいだろう。
その後、風太郎は、あの5人が5つ子の姉妹だと知り、これは悪夢だと思ったそうだ。
(やっぱ、こいつに5つ子の件は言わなくて正解だったな。)
自分の過去の行動を褒めたたえつつ、話の続きを聞いた。
気を取り直して彼女たちの家庭教師を始めようと思ったが、ほとんどが自分の部屋に閉じこもってしまい、唯一協力的だったのが四葉だけだったらしい。
俺としては、五月もだめだったのかと少し呆れていた。
やはり、彼女にとっては、初日の件はかなり根深いらしい。
その後、四葉の協力のもと、なんとか5人を集めることには成功したのだが、
彼女たちは一向に勉強を始めず、おやつを食って話し始めてしまう。
そして、風太郎は二乃から渡された睡眠薬入りの水を飲んでしまい、眠ってしまう。
以上が、昨日の大まかなあらすじだった。
(頭が痛くなるな。少なくとも自分の今の学力を理解してるんなら少しは協力すべきだと思うが。)
俺は少しばかり苛立ちを感じ、風太郎にこの話をした意図を問いただす。
「で、俺にこの話をしに来たってことは、俺に協力して欲しいって事か?」
「ああ。本当ならお前に頼むのは筋違いだと分かっているが。」
「まあ事情が事情だしな。依頼としてなら引き受けてやる。」
「ああ。すまん。で、報酬の件なんだが…」
「言っておくが、俺は報酬に関してはびた一文まける気はないからな。」
「だ、だよな…」
「はあ。お前があの5つ子の家庭教師で手に入れた給料。その半分を出世払いでいつか俺に返してくれ。」
「い、いいのか?」
「ああ。流石に俺も今のお前から報酬をもらうほど鬼じゃねえさ。」
「すまん。助かる。」
そのまま俺達は今日の予定を確認する。
どうやら今日の放課後、彼女たちの家で家庭教師の予定があるらしい。
そこで、彼女たちの学力を図るための小テストを行うつもりらしい。
それに俺も参加しろとのことだ。
風太郎はどうやら5人全員ではなく、彼女たちの中の赤点候補だけに勉強を教えるつもりらしい。
(だが残念だったな、風太郎。お前の思惑は見事に外れることになるだろう。)
俺は既に分かりきっている未来を想像して、今日の放課後風太郎と一緒に姉妹のマンションに向かうことにした。
なんか文字数が少なくなってしまった。
今日はあと1話投稿します。
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第6話 祐介と5つ子の実力
祐介の実力の一端が垣間見えます。
放課後、俺は風太郎と一緒に中野姉妹の住んでいるマンションに向かう。
(そういえば、1つ確認してなかったことがあるな。)
俺は、風太郎に重要なことを確認してなかったことに気づき、確認を取った。
「そういえば、俺が家庭教師の手伝いをすることは、中野姉妹には言ってあるのか?」
「いや、まだ言ってない。」
「おまえバカか。いくら俺と彼女たちの面識があるからって、いきなり男が女性の家に来たらどう思う?」
「…完全に不審がられるな。」
「ああ。どうせ昨日の様子からして、まだ彼女たちと連絡先交換してないだろ?」
「ああ…」
「そんなことだろうと思ったぜ。いいか。家に着いたら、俺のことを至急伝えろ。これはお前の仕事だ。」
「わ、分かった。」
「じゃあ行くとしますか。」
そして、俺たちはマンションの前まで到着した。
風太郎が何故かオートロックの自動ドアの前で部屋番号を押さずに足止めを食らっているのを見て、俺は呆然と立ち尽くす。
(マジかコイツ。今時オートロックも知らねえのか。うわー。監視カメラに向かって1人で喋ってるよ。は、恥ずかしい…)
流石に見ていられなかったので、俺は風太郎にオートロックの開け方を説明する。
「ドアの横のボタンがあるだろ。そこに用がある部屋の番号を入力して中の人に開けてもらうんだよ。」
「そ、そうなのか?」
「ああ、というか今時オートロック知らないってかなり恥ずかしいぞ。」
「し、仕方ないだろ。今までこんな高級マンションに行く機会なんてなかったんだよ。」
そういう風太郎の顔はかなり赤かった。
どうやら本人も恥ずかしかったらしい。
そのまま風太郎は、部屋番号を入力する。
呼び出しに出たのは五月だった。
「はい、中野です。」
「上杉だが。家庭教師の仕事に来た。」
「分かりました。今開けますね。」
「待ってくれ、実は1つ伝えていなかったことがあってな。」
「何ですか?」
「実は、家庭教師のサポートをしてもらおうともう1人呼んでるんだ。」
「誰ですか?」
五月は、少し怪訝な様子でこちらに問いかける。まあいきなり連れてきましたなんて言ったらそうなるな。
「安心してくれ。お前たちも面識がある」
「え?」
「白銀祐介だ。初日にあっただろ。」
「白銀さんが!?」
「今横に居る。とりあえず2人で部屋に上がらせてもらっていいか?」
「分かりました。今開けます。」
そして五月はオートロックを解除し、中に入れてくれた。
「とりあえず門前払いは何とか避けられたな。じゃあ行くか。」
「ああ。」
俺たちはマンションの中に入っていった。
部屋の中に入ると、5人が中で待っていた。
(さすが最高級マンション。部屋の内装も豪華だな。)
俺が部屋に入ってそんなことを考えていると、二乃が話しかけてきた。
「ちょっと祐介!どういうことよ!」
どうやら俺が急に家に来たことに対して怒っているらしい。
彼女からしたら、俺も風太郎もいきなり家族の中に割って入ってきた異分子。あまりいい気分ではないだろう。
「すまない、二乃。既に風太郎から伝えられていると思ったんだが、まさか伝え忘れているとは思わなかった。家庭教師の件は今日急遽決まったことだから、報告が遅れてしまった。本当に申し訳ない。」
「…まあ事情は分かったわ。いきなり怒鳴ったりしてごめんなさい。」
俺が頭を下げると、彼女もそれ以上強く当たることはせずに、渋々下がっていった。
そこで、風太郎から改めて紹介する。
「事後報告になって申し訳ないが、今日から家庭教師のサポートをしてもらうことになった白銀祐介だ。」
「改めて、白銀祐介だ。ここにいる上杉風太郎から依頼を受けて、君たちの卒業までの家庭教師のサポートをすることになった。事前に言っておくと、俺は毎日来れるわけじゃないからそのあたりは承知しておいてくれ。あともう一つ、俺が依頼を受けた以上、俺の誇りにかけて君たちは全員笑顔で卒業できるようにしてみせる。どうかこれからよろしく頼む。」
俺の挨拶が終わると、歓迎する声、否定の声、、戸惑い、はたまた無関心。様々な感情が彼女たちから見られた。
(まぁ最初はこんなもんだろう。一応事前に顔合わせしておいてよかった。)
そして、風太郎から今日のことについて説明される。
「さて、紹介も済んだことで、今日は集まってくれてありがとう。」
「まあ私たちの家ですし。」(四葉)
「zzz…」(一花)
「まだ諦めてなかったんだ。」(三玖)
「………」(五月)
「友達と遊ぶ予定だったんだけど。あと家庭教師はいらないって言わなかったっけ。祐介には悪いけど、そういうことだから。」(二乃)
彼女達はやる気がないようだが、そうは問屋がおろさない。
風太郎はあくまで自分の意見を押し通す。
「だったら証明してくれ。今日はこの小テストを受けてもらう。合格ラインを超えたものには金輪際近づかないと約束する。勝手に卒業して行ってくれ。」
(風太郎がドヤ顔で言っているが、こいつの思うとおりにはならんだろう。)
「それと祐介。お前にもテストを受けてもらう。この中にはお前の学力に疑問を持つ奴もいるかもしれんからな。お前にも家庭教師の素質ってやつを証明してもらいたい。ちなみにテストはこいつらに渡したものとは別で、難易度はかなり上げてある。」
「へえ。面白いじゃん。」
「ちょっと待ちなさいよ。何でアタシたちがそんな面倒なことを…」
二乃は未だに乗り気ではなかったので、少し口を挟むことにする。
「そう言わずに頼むよ。これをクリアできれば少なくとも面倒な家庭教師の授業を受ける必要もなくなる。君にとっては願ったり叶ったりだろ。」
「いや、それは…」
「分かりました。やりましょう」
「五月!?」
どうやら五月さんがやる気を出したようだ。
それに触発されて、他の皆もやる気になり、最後に二乃も渋々ながらテストを受けることを了承した。
(まぁさっきの発言でターゲットにしたのは実は二乃ではなく、五月なんだけどね。ああいえば、五月は受けざるを得ないと思っていた。風太郎に対し苦手意識のある五月なら。)
俺は、内心でそんなことを考えながら、テストの準備をする。
「よし!ではテストを始める。合格ラインは60…いや、50あればいい。」
「別に受ける義理はないんだけど、あんまりアタシたちを侮らないでよね。」
そういって二乃も他の皆と同様にテストを受ける。
(いや、すげえ自信満々に言っているところ悪いんだけど、それできるやつのセリフだから。)
俺は二乃のセリフに呆れつつも、テストを始める。
(なるほど。確かに難しいな。少なくともあいつらのやっているテストより数段レベルが上だ。風太郎のやつ、家庭教師の素質を見せろっていって、これでダメだったらすげえ恥ずかしいぞ。まぁ俺に限ってはそんなことありえないんだが。あいつもそこは信用してくれてるのかね。)
そんなことを考えながら、俺は解答用紙をスラスラと埋めていく。
そして他の5人も終わったようだ。
「採点終わったぞ!まずは祐介の点数だ。全問正解。100点だ!」
風太郎からそんな声を聞き、5人は驚いている。
一方俺は、当然の結果だったので、あくまでも冷静だった。
「そうか。少し難しかったが、結果を残せて良かった。」
「いや、お前に限ってそれはない。」
(やっぱこいつ分かってやりやがったな。意地悪な奴だ。)
俺が風太郎に対して、呆れた目を向けつつも、続いて中野姉妹の採点結果発表に入る。
「そして、お前らの点数も出たぞ!凄え!100点だ!」
「全員合わせてな!!」
(やっぱりね…)
俺はその言葉に、呆れつつも、自分の考えが正しかったことを認識する。
そして…
「逃げろ!!」
5人全員自分の部屋に向かって走り出した。
つまり、彼女たちは、5人揃って落第しかけて転校してきた赤点候補の問題児なのであった。
(依頼を受けたはいいが、これは今までで一番骨が折れそうだな。)
俺は、これから退屈しなそうだと思い、自然と笑みを浮かべていた。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
話の進むペースが遅い気がする。
早く林間学校まで書きたい…
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第7話 三玖の秘密
毎回ひと通り見直して誤字、脱字等はないように気をつけています。
何か気づいた方がいたら教えてください。
翌日、俺はHRギリギリに登校していた。理由は昨日から家庭教師のサポートに入ることで、その分やることが増えたためである。
1人1人に合わせた教材の作成、試験に合わせた模擬問題の作成など、やることをあげればキリがない。
ただでさえ問題児が5人もいるのだ。やりすぎということはないだろう。
俺がそんなことを考えていると、風太郎が後ろから追いかけてきた。
「よ、よう、祐介。」
「おう、おはよう風太郎。」
風太郎は息を切らしながら、こちらに走ってきた。
どうやらこいつも俺と同じようなことをしていたようだ。
家庭教師と自分の勉強の両立が大変だと、身にしみていることだろう。
「それにしても、昨日はとんだ災難だったな。」
「全くだ、まさか全員が赤点候補だとは俺も思わなかった。」
「ははっ、まあ仕方ないさ。こうなってしまった以上、やれることをやるだけだ。」
「そうだな、これも仕事と割り切るさ。」
そうこうしているうちに、学校の前まで着くと、黒塗りの高級車が学校の前で止まった。
風太郎は車の前まで行き、ジロジロと眺めている。
(そういう所が貧乏臭いんだよなあ。)
車から降りてきたのは中野姉妹で、俺たちを見るやいなや、さっさと逃げようとする。
風太郎と俺は逃すまいと声をかける。
「待て!、俺は手ぶらだ、害はない!」
「そうだよ、別に無理やり勉強させようなんて考えてないよ。ホント」
そう言っても、彼女たちはなかなか信じようとはせず、警戒している。
そして彼女たちは俺たちに向かってこんなことを言い出した。
「私たちの実力不足は認めますが、自分の問題は自分で解決します。」(五月)
「勉強は1人でもできる。」(三玖)
「要するに余計なお世話ってこと。」(二乃)
彼女たちはそんなことを言っていたが、それに対し、俺は呆れていた。
(よくもまあこれだけ自信満々に言えるな。少なくとも昨日の小テストの結果を見る限り、自力でどうにかできる状態ではない。それは彼女たちも理解していると思うのだが。とにかくこれ以上茶番を続けるつもりはない。そろそろ幕を引かせてもらおう。)
俺は、彼女たちに決定的な一言を言った。
「じゃあ、前回の小テストの復習はもちろんしたよな?」
「「「「「………」」」」」
(こ、こいつら…)
「問1、厳島の戦いで、毛利元就が破った武将を答えよ。」
そう言うと、五月は俺たちの方に不敵な笑みを浮かべた。
風太郎は一瞬期待したが、その期待はすぐに崩れ去ることになる。
なぜなら彼女の反応は…
「………」
無言。他の4人も同様だった。
それだけで、風太郎は理解した。今の彼女たちでは自力でどうにかするなんて不可能だと。
一方、俺は先ほどの問いに対して、1人だけ答えなかったことに疑問を感じた。
(どうして”アイツ”は答えなかった?前回の小テストでは正解していたはずだ。)
俺の視線は自然と5つ子の一人に向いていた。
教室で、二乃は俺に少し視線を向けるも、すぐに目をそらしてしまう。
どうやら、俺は昨日のことで思った以上に彼女からの反感を買ってしまったらしい。
(仕方ない、今はそっとしておくか。二乃もしばらくすれば落ち着いてくれるかも知れないし。)
昼休み、食堂にて、昼食を食べる場所を探していると、風太郎と一花と三玖と四葉が一緒にいた。
なにやら風太郎の様子がおかしいが。
理由を聞くと、どうやら風太郎に恋愛話をしてしまったらしい。
(こいつにその手の話は禁句だからな。まあ俺から見てもかなり痛々しいが。)
「まぁ恋もいいが、それが勉強をないがしろにしていい理由にはならないぞ。」
俺がそんなことを言うと、四葉が三玖に話を振る。
「まあ恋愛したくても、相手がいませんけどね。三玖は好きな人とか出来た?」
四葉がそう言うと、三玖は慌ててどこかへ行ってしまう。
その様子を見て、一花と四葉は三玖が恋をしているんじゃないかと考える。
だが、これは風太郎からすれば勉強に集中して欲しいだけに都合が悪いだろう。
(俺に恋愛というのはよく分からないが、少なくとも、三玖がそう簡単に誰かに心を許すとは考えにくいな。)
俺
教室に戻ると、机の中に手紙が入っていた。
差出人は三玖。どうやら伝えたいことがあるから、屋上まできてほしいとのことだ。
最後にこの気持ちが抑えられないなどという一文も添えられていた。
これだけ見れば、ラブレターだと勘違いしてしまう人もいるだろう。風太郎とか。
だが俺は全く別の要件だと考えていた。
屋上まで行くと、先に風太郎がいた。
どうやらあいつも三玖に呼び出されたようだ。
一方、あいつは俺が来るとは思っておらず、動揺していた。
「え、なんで祐介が。三玖は?」
「そりゃあ俺もあいつに呼び出されたからな。」
そう言うと、風太郎は混乱していた。
(コイツやっぱり勘違いしてやがった)
もしラブレターだったら、2人を呼び出すとか意味がわからないだろう。
ほどなくして、三玖も屋上に来た。
何やら三玖の様子がおかしい。
妙に恥ずかしがっている素振りなので、これは勘違いしても責められないだろう。
誰にも聞かれたくないだの、ずっと言いたかっただの三玖の言葉はとても紛らわしい。
しばらく様子を見ていると、三玖から言われた言葉は今日の朝に言った問1の答えだった。
三玖はスッキリした様子だったが、風太郎は意味が分からず三玖に詰め寄る。
その時に、三玖は自分のスマホを落としてしまい、待ち受け画面の武田信玄の武田菱を見られてしまう。
その後、三玖は恥ずかしがりながらも、俺たちに話してくれた。
「誰にも言わないで…。戦国武将、好きなの…」
どうやら三玖は歴女というやつらしい。四葉から借りたゲームで、戦国武将の魅力に惹かれたらしい。
だが、周りが好きなのは、イケメン俳優や、美人のモデル。明らかに自分の趣味とは正反対。
三玖はそのことがコンプレックスになっているようだ。それと元々自分に自信がないのだろう。
俺と風太郎は、三玖を元気づけることにした。
「変じゃない!自分が好きになったものを信じろよ。」
「そうだよ。君は周りと違うことを気にしているようだが、そんなことは勝手に言わせておけばいい。三玖はもっと自分に自信を持つべきだ。」
「2人とも…ありがとう。」
その様子を見て、風太郎はチャンスと思った。
歴史関係の授業を中心的に行うことで、三玖に積極的に授業を受けさせるようにするらしい。
風太郎は自分の方が頭がいいから三玖の知らない日本史の事をたくさん教えられるとアピールする。
だが、三玖は少なくとも武将関連については誰にも負けないと自負しているので、不満そうだ。
その後、ひと悶着あったが、なんとか三玖と授業を受ける約束を取り付け、風太郎は勝利を確信した。
しかし安心するのはまだ早い。
彼女達から本当の意味で信頼されなければ、本当の勝利とは言えないだろう。
そして三玖は自動販売機からお気に入りの抹茶ソーダを買い、風太郎と俺に1本ずつ渡そうとした。その時、
「大丈夫だよ。鼻水なんて入ってないよ。なんちゃって。」
「は?何て...鼻水?」
「あれ...もしかしてこの逸話知らないの?頭いいって言ってたけどこんなもんなんだ。やっぱ教わる事なさそう。」
そう言い、三玖は俺たちの前から去っていった。
俺は風太郎の様子を確認したが、どうやら三玖の発言に相当頭にキテるらしい。
こうなった風太郎はもう止まらないので、放置することにし、俺は先手を打つ為に三玖を追いかけた。
「三玖!待ってくれ。」
「何?もう話は終わったけど。」
「いや、まだ終わっていない。さっきの話だけどな。俺は知ってるぞ。」
「え?」
「だから、俺はあの逸話を知っていると言った。」
そう言うと、三玖は驚いていた。
「じゃあなんでさっき言わなかったの?」
「それは俺があくまで風太郎のサポートだからだ。おそらく風太郎は明日までに詰め込めるだけの戦国関連の知識を調べてくるだろう。三玖と対等に話せるようにな。今回の失敗はアイツにとってもいい教訓になっただろう。明日はもっと成長しているはずだ。その成長の妨げをしたくない。アイツには自分の思う通りに行動してほしいんだ。」
「...」
「それにこれはお前たち姉妹にも言えることだ。」
「え?」
「お前たちはお世辞にも頭がいいとは言えない。だがそれは裏を返せば伸び代がたくさんあるという事だ。だが生憎お前たちには優れた指導者がいない。しかし俺と風太郎が揃えば100人力、いや、200人力だ。だから俺はお前たちに協力したいと思った。」
「どうしてそこまでしてくれるの?まだ出会って1週間も経ってないのに、しかもただの家庭教師がどうしてそこまでしてくれるの?」
俺は、三玖の質問に自分の本心をぶつけた。
「...もったいないと思ったんだ。」
「え?」
「お前たちを見て、今の自分から少しずつでも変わりたい。でもどうしたらいいか分からなくて立ち止まっている。そんな風に見てとれたんだ。」
「!!」
三玖は自分の考えを当てられて動揺している様子だったが、構わず話を続ける。
「それに、俺にとってはただの家庭教師と生徒なんかじゃない。まあ今言うのは少し早急だと思うから、それはまた機会を見て伝えることにするよ。とにかく俺と風太郎を信用してくれるなら俺たちもその気持ちに全力で答えるつもりだ。別に今すぐって訳じゃない。明日風太郎とも話してみてそれで少しでも俺たちの事を考えてくれると嬉しい。」
「...分かった。まあ期待しないでおく。」
「ああ。今はそれでいい。」
三玖は少し納得いってない様子だったが、それでもこちらの言葉に一応は頷いてくれた。
これで明日の風太郎次第で三玖も俺たちを信用してくれるだろう。
俺は、この作戦が成功することを確信していた。
ちなみに、三玖からもらった抹茶ソーダは絶妙に不味かった。
(これを普通に飲んでるってどんな味覚してるんだ…)
俺はなんとか苦戦しながらも、抹茶ソーダを全部飲み干した。
その後、体調が悪くなり、家に帰るなり倒れるように眠った。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
オリ主が入ると話の持って行き方が若干変わるので少し難しい。
これからも頑張って投稿していく予定ですので、よろしくお願いします。
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第8話 5つ子の可能性
風太郎side in
「三玖!お前が来るのを待っていたぞ!」
「何か用?フータロー」
「俺と勝負だ!お前の得意な戦国クイズでな。」
翌日、俺は三玖を呼び出した。俺はあの後、図書室であらゆる日本師関連の本を読み尽くした。今の俺なら三玖とも対等に会話できるはずだ。
しかし、三玖はあまり乗り気ではないようで、俺は少し挑発してやると、直ぐに乗っかってきた。
だが三玖はまともに取り合おうとせずに、直ぐに俺から逃げてしまう。
「待て三玖!逃がすか!」
俺は急いで三玖を追いかける。すると曲がり角で四葉とぶつかった。
「わお、上杉さん!ちゃんと前向かなきゃダメですよ。」
「す、すまん。」
(あれ、三玖は?どこに行った?)
何故か三玖が姿を消してしまい、俺は慌てて探すが、俺はまたしても四葉を見つけた。
「わお、上杉さん!ちゃんと前向かなきゃダメですよ。」
「よ、四葉!?」
(どういうことだ?四葉はあそこにいる。ドッペルゲンガー?)
だが、俺は少し注意深く観察すると、前の四葉は少し髪が長いことに気がついた。
そのまま、リボンを取って、ヘッドホンをつけて、
「お前三玖だろ!トリッキーな技を使いやがって。」
三玖はそのまましれっと逃げ出すが、俺も後を追いかける。
「三玖!この前は騙して悪かった。俺は図書室の戦国関連の本に全て目を通した。今ならお前と対等に話せる自信がある。」
俺はそういうが、三玖はなかなか心を開いてくれない。
その後、三玖は戦国武将しりとりなるものをやろうとし、俺から逃げるも、俺も負けじと答えてあとを追う。
しかし、だんだんと体力の限界が近づき、倒れそうになる。
だがそんな時、三玖が走っているさらに前方から俺たちに近づいて来る影。
「捕まえたよ。三玖。」
そいつは俺の悪友、白金祐介だった。
風太郎side out
三玖も風太郎も体力が既に限界だったようで、そのまま芝生に倒れこんでしまう。
俺は二人に声をかける。
「大丈夫か?」
「ああ、なんとか。それにしても、何故祐介がここに?」
「ああ。風太郎が三玖を呼び出していたのは分かっていたからな。しばらく様子を見させてもらったが、二人が追いかけっこを始めたのを見て、俺は二人が必ず通るであろう道で待ち伏せさせてもらったって訳。」
「そ、そんなことが出来るの?」
「この学校の地形は一通り記憶しているからね。そこから逆算してルートを割り出すのはそんなに難しいことじゃないよ。」
俺がやったことに対して、二人共驚いているようだ。
「やっぱりお前はチートだな。」
「はいはい。それより風太郎。ちょっと飲み物を買ってきてくれないか。」
「は?なんで俺が」
「いいから、早く行ってこい。」
「わ、分かったよ。」
俺は風太郎を追い出し、三玖と二人で話をする。
風太郎なら俺の意図に気づくはずだ。
「三玖。大丈夫か?」
「う、うん。ありがとう。」
三玖は少し体を楽にしながら、俺に話しかけてきた。
「どうして二人共そんなに必死なの?」
「どうして、か。俺の気持ちはこの前と変わらない。お前達はまだ諦めるには早い。俺も依頼を受けた以上、その手助けをしたいと思ったんだ。それに風太郎もな。」
「フータローを?」
「アイツとは高校入って以来の付き合いだが、色々助けられたこともある。アイツの頼みは可能な限り叶えてやろうと思ってるんだ。」
「そっか。二人は仲がいいんだね。少し羨ましい。」
そんなことを話していると、風太郎が戻ってきた。手には抹茶ソーダを持ち、三玖に渡そうとする。
「これ、好きなんだろ。もちろん鼻水は入っていない。」
その後、風太郎はこの逸話の真相を語る。どうやら調べ物をしている最中に偶然通りかかった四葉にスマホで調べてもらったらしい。
しかし、三玖は自分の趣味を知られたくなかったのか、不満そうに風太郎を見つめる。
風太郎は姉妹にまで秘密にする必要があるのかと三玖に問いただす。
三玖にとっては誰にも知られたくないことで、それはたとえ家族であっても言えないことのようだ。
(誰にも知られたくない、か。俺も少しだけその気持ちが分かる。俺にも誰にも言えない秘密があるからな。)
俺が三玖の言葉に共感していると、三玖は自信なさげに自分のことを落ちこぼれと言う。
(これで風太郎も気づいただろう。三玖は自分の趣味に自信がないんじゃなく、自分に自信がないのだと。)
風太郎は三玖のことを励まそうとするが、三玖の考えは変わらない。
「私程度にできることは、ほかの4人も出来るに決まっている。5つ子だもん。」
三玖のこの言葉は、風太郎にとって一筋の光明となった。どうやらコイツも気づいたらしい。
「風太郎。気づいたか。」
「って事は、やっぱり…」
「ああ、間違いない。じゃなければあんなにバラバラになるわけがない。」
「何話してるの?」
三玖は俺たちの話がわからないようなので、解説することにする。
「とりあえずこれを見てくれ、前回の小テストを1問づつ正解、不正解で1人ずつまとめたものだ」
「これが何?」
「これを見てなにか気づかないか?」
「あ、正解した問題が1問もかぶっていない。」
「その通りだ。そして、これこそが、お前たちの希望になる。」
「どういうこと?」
「さっき三玖が自分で言ったことだ。自分に出来ることはほかの4人にもできる。それは他の4人にできることは三玖にもできるということだ。つまり、お前達は1人ができることは全員ができるポテンシャルを秘めているということだ!」
「!!」
「なにも全員が100点の潜在能力を持っているなんて、そこまで過信するほど俺は考えなしじゃない。しかし、俺たちが協力すれば可能性は0じゃない。0じゃないなら、俺たちが諦める事は決してしない。だから、少しでもいい、俺たちを信じてついてきてくれないか。きっと最後には5人そろって笑顔で卒業できる、俺はそう信じている。」
「そうだぞ、祐介の言うとおりだ。もっと自分に自信を持て。俺たちはお前たちを決して見捨てはしない。」
俺たちがそう言うと、三玖は少し恥ずかしくなったのか、顔を赤らめる。
俺たちに顔を見せることはなかったが、
「屁理屈だね。本当に…5つ子を過信しすぎ。」
三玖のその素直じゃないが、どこか救われた様子を見て、俺も自然と笑みを浮かべた。
ちなみにこの後、風太郎から密かに買った抹茶ソーダを飲まされ、また体調を崩した。
その翌日、俺は風太郎のサポートとして、図書室で風太郎の手伝いをしていた。
もっとも、実際に来ているのは、四葉だけなので、俺が手伝うことはほとんどないのだが。
(しかし、四葉は5つ子の中で一番勉強ができないとは思っていたが、予想以上だな。まだ問題は山積みだし、早急にどうにかしなくてはな。)
俺がそんなことを考えていると、どうやら問題の1つは解決できたようだ。
なぜなら、そこには三玖が来ていたからだ。
「三玖。来てくれたのか。」
「待ってたよ。三玖。」
「うん。ユースケとフータローのせいで、ほんのちょっとだけ、私にもできるんじゃないかって考えちゃった。だから…」
そこで、三玖は俺たちの方に視線を向け、
「責任、とってよね。」
その言葉に対して、俺と風太郎は、
「ああ。絶対に後悔させないさ。」
「任せろ。」
そう返事した。
そこで、四葉は何やら5つ子特有の直感が働いたのか三玖に質問する。
「もしかして、三玖の好きな人って、上杉さんか白銀さんのどっちかだったりする?」
それに対して、三玖の返答は、
「どうだろうね。」
その顔は、まだ自覚はないが、どこか恋する乙女を彷彿とさせる、そんな表情をしていた。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
今のところ、三玖はヒロインの1人に考えています。
あと1人ほどヒロインは追加で考えています。
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