無の心に愛は灯る (はすきるりん)
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キャラ紹介

キャラ設定や呼吸名、動きなど変なの!って思うかもしれませんがよろしくお願いします!


名前:なしろ 

(苗字はない。もしかしたら途中で発覚するかも)

 

19歳(炭治郎、最終選別時)

 

階級:柱

 

使う呼吸:無の呼吸

 

刀の色:漆黒と純白(二本持ってますが、大体は漆黒の刀だけつかってる)

 

身長:180cm  細身

 

特徴

雪のように真っ白な髪色でサラサラ。長さは腰まで、普段は後ろに結っている(冨岡さんのサラサラ版?)

オッドアイ。右眼は鬼と同じ赤で、左眼は青。

凄い美形の凄い女顔

善逸によると、生まれて初めて見るぐらいの美人だそう。

男と知ったあとは3日間ぐらい信じられなかったらしい

隠の皆さんも男なのか疑う時があるとか…

 

他人に興味がない。無感情で無表情。

 

体質

小さい時から残酷な仕打ちを受けていた事で、痛覚が鈍い。

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚が常人よりも優れている。

また一度見た呼吸技は真似ることが可能。威力は本人達には劣る。

 

稀血の中でも特に希少な稀血

負傷した者に飲ませたり傷口にかけると、治癒力が促進する血

また他人に輸血すると、その相手の血液と適合する都合の良い血

この血の力でなしろ自身怪我の治りが早い?

また無惨の血などにも量によっては耐えれる。

鬼の血を入れられても、入れられた量がなしろの血液よりも少なければ、完全な鬼化はしない。

(ちょっとの間は鬼みたいになるかもです)

 

 

 

 

 

※全体的に名前がダサいです…

 

 

〜呼吸紹介〜

壱ノ型: 一閃無道(いっせんむどう)

ノーモーションから一瞬で敵の方へ移動し、すれ違いざまに攻撃する。

 

 

弐ノ型: 断空、断空羅刹(だんくう、だんくうらせつ)

断空→力強く刀を払うことで真空を作り前方広範囲を攻撃する。

 

断空羅刹→斬撃を飛ばして遠距離に特化した攻撃。

戦闘中なしろは結構愛用している。

 

 

参ノ型: 無明○咲(むみょう○しき)

一咲〜十二咲まであり、数字によって連撃数が変わる突き技。

数が小さければ小さいほど威力は高い。

 

 

肆ノ型: 波紋(はもん)

獣の呼吸の「空間識覚」に近い。

違いはこの型を使いながらも戦闘が可能なところ。そのかわり索敵できるのは、自分を中心とした5mまで。

戦闘じゃなければ、伊之助には劣るものの広範囲の索敵は可能。

 

 

伍ノ型: 死々乱々(ししらんらん)

呼吸で脚力を上げて、足音を消して素早く移動し、鬼を撹乱させ攻撃する。

移動速度を上げたい時も使う。

鬼はなしろの気配は感じるものの、姿や移動してる音などは捉えはことができない。

大体の鬼は迫りくる死に恐怖し、判断能力が鈍る。

 

 

陸ノ型: 羅双無舞(らそうむぶ)

無の呼吸で唯一刀を二本使う。独特の足運びからまるで舞をしているように滑らかな動きで、敵を斬りつける。

敵は本来動きを見て斬撃の軌道を読み攻撃を防ぐが、この型はその軌道を読むことができない。

 

 

漆ノ型: 水無月(みなづき)

殺気を最大にして特攻し、察知した鬼が攻撃する瞬間その殺気を捨てることで殺気の残像を作り、隙をついて背後から攻撃する。

 

 

捌ノ型: 無窮(むきゅう)

目にも止まらい速さで全身を斬りつける技。

あまりの速さに相手は自分が斬られたことさえ認識ができない。

 

 

玖ノ型:無間(むげん)

岩の呼吸の「岩軀の膚」に近い。

自分の周りを素早く切り裂き真空にすることで敵の攻撃を防御する。

また反撃技とも使え敵が範囲内に入ればその体は徐々に削られていく。

 

 

終 型: 無月(むげつ)

説明の仕方がわからないので作中で書けるようにします!

これはモデルがあってBLEACHという作品の方から名前がかっこよくて、最後は絶対これにしよう!って決めてました笑

 

 

無の呼吸 禁忌 天衣無型(てんいむけい)

他の呼吸を、柱と同等のレベルまで使える。

ただ瞬時に呼吸法を変えるため肺への負担が尋常では無い。

 

 

 

無の呼吸 禁忌 一道修羅(いっとうしゅら)

全集中“常中”のさらに上の状態。身体能力が爆発的に上がるが、使用中徐々に鼻血や吐血、目から血が出る。また、解除しても頭痛や吐き気、全身が悲鳴を上げるなどリスクが多いため滅多に使わない。

(これはモデルが落第騎士の英雄譚です!面白いので見たことない人オススメです)

 

 




キャラ設定読んでいただきありがとうございます!

こんなキャラ設定で今後やらせていただきます!
これからのなしろ君の活躍に期待してもらえると嬉しいです!

それでは今後ともよろしくお願いします!


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壱話

初回と言うことで鬼滅の刃をちゃんとイメージできてるか不安でしたがなんとかかけました!

原作開始までは長いですけど楽しく読んでもらえたら嬉しいなと思います!

それではどーぞ!


時は大正 

どこにでもある村の一つに、『忌み子』と呼ばれ、村の者達から蔑まれる子どもがいた。

なぜそう呼ばれるか、それはその子供の特徴にあった。

 

瞳の色は左目が青で右目が赤く、左右で色が違う。それだけでも少し不気味なのだが、それ以外にも他の人とは違うことがあった。それは…

 

「やっぱこいつ人間じゃねえだろ!?見ろよ!昨日(・・)はあんなに殴ったり、刺したりしたのにもう傷が治ってるぞ!」

 

「気色悪いガキだなぁ!なんであの爺さんは、こんなやつを死ぬまで育てたのか不思議でしょうがねえ!」

 

「赤い目に、人間とは思えねえ怪我の治り方、こりゃ噂に聞く人喰い鬼と一緒だな」

 

3人の大人たちは、薄汚い小さな蔵の中でその子どもを囲みながら言っていた。

この村の者達は、男女関係なく誰しも、イライラしたり、悩んだりした時は決まって、この薄汚い蔵に足を運ぶ。

そしてそれらを発散させるために、その蔵にいる忌み子をそれぞれのやり方で虐待を繰り返していた。

 

殴る蹴るはもちろん、水を使って溺れさせたり、火傷をさせたりナイフで死なない程度に刺したりしていた。

だが、どんなに残虐非道な行いを受けても、子どもは次の日には無傷だった。

明らかに人間とは違う体質を持つ子どもは、それでも人間だった。

 

では、赤ん坊の頃からそんなことをされていたかのかと問われたら、そうではなかった。

現在村に住む者達とは違い、優しい心を持ったお爺さんが近くの森で山菜を取りに行く途中、布に包まれる赤ん坊を見つけた。

お爺さんはその赤ん坊を家に連れ帰ると、その赤ん坊を【なしろ】と名付け世話をしていた。

そしてお爺さんがなしろを拾ってから3年が経ったある日、お爺さんは病で帰らぬ人となった。

 

なしろはお爺さんが亡くなる時、

 

「いいかい、なしろ。村の人はみんな家族だ…だから家族を頼りなさい」

 

と、言われたのを思い出し、村の人たちから食料をもらいに行った。

普通の子供になら大人たちは優しく食料をあげたり、いい人なら家に住まわせるかもしれない。だがなしろの姿を初めて見た者たちはみな、なしろを気味悪がった。当時はまだ体質のことは知られてなかったが、瞳の色はもちろん、なしろはずっと表情を崩さなかった。小さい頃から作り物のように整った顔は、笑うことなく、生気を感じないそれは正しく人形のようだった。

 

それから村人たちは、気味の悪さから少年を蔵に閉じ込め、2日に一回残飯を持って行き、ある日からそれに合わせ暴力を振るうようになった。

その時、なしろの傷の治りを知った村人たちは、毎日暴力を振るうようになった。

 

最初はなしろも、殴られ蹴られる痛みに苦しんでいた。

そんな暴力を振るわれる生活を過ごしていたある日、なしろは痛みに耐えきれず、初めて暴力を振るう大人たちに聞いた。

 

「な…んで、ぼくにぼうりょくをするの?おじいさん…がいってた。

むらのひとはみんな…かぞくだって…」

 

なしろは全身に殴られた痕をつけボロボロになりながらも聞き、それに1人の男が答えた。

 

「少し違うなぁ?お前を家族にしてやってるんだ!忌み子なお前を俺たちは仕方なく家族にいれてやってるんだよ!そしてこれは暴力じゃないぞ?家族はみんなやってるんだよぉ!」

 

男は言い終えるとまたなしろへの暴力を再開した。

その時なしろは思った。家族は暴力をするだけの存在だと。

そしてそれからは痛みに耐えながらも暴力を受け続け2年が経ったなしろは5歳になり、なしろの身体にある違和感が起きていた。

 

「おいこいつ、前よりも痛がらなくなったな」

 

「息はしてるんだ、生きてはいるんだろ!」

 

「殺さないで飯だけ与えてれば、こいつは死なねえさ!」

 

「まぁ別に死んじまったらそれでいいけどな!こいつは忌み子、生きる価値がそもそもねえんだからよ!」

 

この男たちが言っている通り、なしろはだんだんと痛みが感じにくくなっていた。そして限界は突然やってきた。

痛がらないなしろをつまんないと思ってきたのか、村人たちは刃物を使って、なしろをいたぶっていた。

 

ずっとされるがままだったある時、体のどこかでプツンッとなにかが切れた感覚がなしろを襲った。

 

あ……なにも…感じない。痛くない。…そっか僕は生きる価値がないのか…

 

なしろの瞳にはもはや光は宿っていなかった。虚な目で淡々と大人たちに嬲られていく。その姿を見たものはみな口を揃えてこう表現するだろう【人形】だと。

なしろは5歳で、“痛み”とそして“感情”を無くし、完全に壊れたのだった。

なしろが壊れて4年が経った。

 

そんなある日の朝、なしろはいつも通り殴られ蹴られ、刃物で切られては刺されていた。

9歳になったなしろは昔よりも、傷の治りが早く身体が慣れてしまったのか、一刻(約2時間)も経てば大体の傷は治るようになっていた。

 

(日が沈みきった(・・・・・・・)らまた誰か来るだろう、それまでは…)

 

なしろは身体を休めるため身体を横にし意識を手放した。

 

きゃあぁ!…い…おい誰か!…鬼がでた!…なんでこんなことに…

あいつだ!あの忌み子のせいだ!…あんなやつ、早く殺しとけば…

 

(何か…聞こえる。夢?…いや違う…何か壊れる音が…)

 

なしろは外がやけに騒がしいことに気付き、目を覚ました。

 

(なにかが崩れる音…外がやけに明るい…火事?とりあえず外に)

 

なしろは蔵から出ると村が火の海に包まれていた。

なしろは目を見開くも、表情はあまり変わらず歩き始めた。

崩落した家、燃える家、血を流す人間、なしろの周りには地獄のような光景が広がっていた。

なしろが歩いていると、瓦礫の下で死にかけの者がいた。

 

「お…前のせいで!お前が…忌み子だ…から!俺たちが…死ぬんだ!気色悪い…その赤い目…お前…の…せい…で…」

 

最後までなしろを恨んだその者は死んでもなお、なしろを睨んでいた。

 

(俺が…忌み子だから)

 

人が目の前で死んでも、なしろは気にしなかったがその者から言われた言葉がずっと頭の中に残っていた。

 

カキンカキンッ!

 

「どうした!弱え鬼狩りが何人いたところで相手じゃねえんだよ!!」

 

どこからか声が聞こえ、なしろはそちらの方へ向かい、物陰から様子を見た。

目線の先には刀を持った人達が5人、それに対峙する形で1人が向き合っている。

 

「お前らが束になったところで鬼には勝てねえよ!俺は十二鬼月【下弦の陸】だからなぁ?」

 

そう言って鬼は対峙していた5人の方へ突っ込み戦闘が始まる。

その戦闘を、なしろは瞬きすることを忘れジッと見ていた。




読んでもらいありがとうございました!
おそらく文の構成などがおかしいと感じる方もいらっしゃるかもしれません!
気軽にコメントなどでおっしゃってください!

ただあまりにも強く言われたら私はメンタル砕けて泣くかもしれないので加減して下さい!笑

とりあえずこんな形でやっていこうと思うのでこれからもよろしくお願いします!
それとコメントありがとうございます!


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弐話

文の構成とか所々読みにくいかと思いますが、よろしくお願いします!


なしろは五感を研ぎ澄ませて、目線の先で行われてる戦いを見ていた。

 

(あの鬼狩りって言われてた人たち、みんながみんな変わった呼吸の音…それに動きのキレが違う。)

 

なしろは5人の呼吸音、刀の振り方や動きをずっと見ていた(・・・・)

戦いは、数に利がある鬼狩り側が優勢かと思えば全然違った。戦いが長引くにつれ、1人、また1人と倒されていった。そして最後の1人になりながらも、鬼狩りの人は戦ったが鬼にとどめをさされた。

グチャグチャと鬼は、先ほど戦っていた鬼狩りの人たちを食い始めていた。

 

そんな光景を物陰から見ていたなしろは、恐怖するでもなくただずっとその光景を眺めていた。

普通の子供なら怖くて泣き叫ぶか、逃げるかの二択だろうがそれはあくまで普通(・・)の子供の場合。

完全に壊れていたなしろは普通の子ならしないだろう行動をとっていた。

 

「あ?まだ生き残りがいたのか」

 

なんとなしろは、鬼の前に姿を現していた。

じっと鬼の目を見るなしろ、そしてそのなしろを頭から足までまるで品定めをするかのように見る鬼。

 

「わざわざ餓鬼の方から来るなんて、余程の馬鹿なんだなぁ!おい餓鬼!なんで来たんだぁ?」

 

「僕は忌み子だから。生きる意味がない。」

 

なしろは鬼を前にしても、特に怖がることもなく淡々と話した。その人形のように無表情で喋るなしろに、鬼は面白いものを見つけたと言わんばりの不気味な笑みを浮かべた。

 

「お前は死ぬのが怖くないのか…だが、それじゃただ食うというのもつまらないなぁ!」

 

すると鬼は先ほど自分が殺した鬼狩りの刀を、なしろの方に投げた。

 

「俺は今機嫌がいいからなぁ!すぐにお前を食うのではなく、少し遊んでから食ってやろう!その刀を取れ」

 

鬼は刀を指差し、なしろに命令するとなしろは言われた通り刀を拾った。

 

「その刀で俺を斬ってみろ!…ああ首を狙えよ?俺の血気術は体を鉄以上に硬化できるが、今はしないでやろう!ほらやってみろ!俺を楽しませればお前のことは見逃してやってもいいぞ!」

 

鬼はゲラゲラと笑いながら「ほれほれ!早くやってみろ!」と指を刺していた。

なしろは黙った刀を抜くと、両手で構えた。

その姿を見た鬼はニタァと不気味な笑みをより深くした。

 

(散々遊んだ後にゆっくり食ってやろう!まずは足を!次に腕を!恐怖と痛みで泣き叫ぶ餓鬼ほど面白いものはないからなぁ!「シィィィ…」…なんだこの音は?)

 

鬼は突然聞こえた音に違和感を覚えきょろきょろと周りを見渡した。

 

(この音は先程の鬼狩りがしていた呼吸音だが、鬼狩りは皆殺しにしたはず…なら一体誰が?…………まさか!?」

 

鬼はバッ!となしろの方を見ると、いつの間に刀をしまっていたのか、なしろは体を低くして居合の構えを取っていた。

 

(この構えは鬼狩りの中にいたやつの!?しかもこの餓鬼雰囲気が変わったか!?)

 

さらに呼吸の音が大きくなっていき、

 

(鬼狩りの人はここから一気に距離をつめて…)

 

「まずい!?」

 

鬼は急いで血気術で体の強度を高めようとした、と同時になしろは思いっきり地面を蹴った。

 

「なっ!消えt…」

 

スパっ!

 

 

鬼の視界からなしろが消えると、自分の首から下の感覚がなくなっていた。

重力に従い地面に落ちると自分の体が、目の前で倒れていくのが見えた。

 

「…は?斬られたのか!?この俺が!こんな餓鬼に!?どうなってやがる!?こいつはただの餓鬼なはずだ!なのになんでさっきの鬼狩りの動きができる!?なんで、さっきの鬼狩りよりも速いんだよぉぉ!?」

 

鬼は今だに混乱していた。それはそうだろう、ただの餓鬼だと思って遊びで始めたのに、結果首を切られたのだから。

 

「くそくそくそ!せっかく十二鬼月になれたのに!」

 

ボロボロと崩れる中、鬼は目線だけ動かしてなしろの方を睨みながら見ると、真っ白なサラサラの髪を風で靡かせながら、自分の手をグーパーと繰り返していた。

そしてなしろは視線に気付いたのか鬼の方を見た。

その顔は先ほどと変わらず人形のように無表情だった。

 

「…こんな…餓鬼に…」

 

最後までなしろを睨み続け完全に消えていった。

なしろは鬼が消えるのを見届けたあと、改めて村の方へ視線を移した。

そこにはもう自分の知る村とは全く別の、崩壊した村だった。

その光景になしろは、先ほど言われた言葉を思い出した。

 

「これも全部…僕が忌み子だから…」

 

自分が呪われているから、自分が生きているからこうなった。

そんなことをなしろは夜が明けるまでずっと考えていた。、感情のない人形のように微塵も動くことなく。

 

しばらくして鬼狩りの人たちと同じ服装をしている髪の毛が炎のような色の、人と、なしろよりも少し年齢が上の少年がなしろの前へ現れた。

 

「君はここの村の生き残りかな?」

 

少年がなしろに聞くとなしろは口を開かずただ頷いた。

 

「…お館様どうやら生存者はこの子供だけのようです。それに子供の後ろの血溜まりにあるのは、おそらく隊服かと思います。ということは下弦の陸は逃げたのかと…」

 

「ありがとう槇寿郎。…可能な限りで君に聞きたいことがあるのだけど、ここに鬼が出たと思うのだけれど、どうなったかわかるかな?」

 

槇寿郎と呼ばれた人は片膝をつき頭を下げ、少年の方に報告すると、お館様と呼ばれた少年はまたなしろに質問した。そしてその質問になしろは

 

「鬼なら首を斬って消えた。」

 

と呟くように答えた

 

「…は?」

 

「…やはりね」

なしろの言葉に槇寿郎は思わず変な声が出て、お館様と呼ばれる少年はなぜか納得した。

そのことにも槇寿郎はまたも「え?」と困惑していた。

 

「お館様やはりというのは?」

 

「私の勘のようなものだよ。それにしてもまさか私より小さな子だとは思わなかったけどね」

 

お館様と槇寿郎は、なしろを見て上から下へと順番に見た。

 

「すまないが君が斬ったという鬼は、どんなだったか特徴など教えてもらってもいいか?」

 

槇寿郎はなしろと同じ目線で話しかけた。

 

「鬼の目に【下陸】と書いてあった。あと血気術というので自分の体の硬度を変えれると」

 

「目に字が刻まれているのは、確かに十二鬼月と同じ特徴だ…だが本当にこんな子どもが…どうなさいますかお館様?」

 

槇寿郎は未だ信じられないという反応をするも、困った顔でお館様に聞くと、お館様はなしろよりも下の目線になるようにした。

 

「私の名前は産屋敷耀哉。君の名前を教えてくれるかな?」

 

「…なしろ。姓はない」

 

「なしろ…いい名前だね。なしろはこれからどうするのかな?」

 

「わからない…僕は忌み子だから生きてちゃいけない。」

 

なしろは自身の右眼を見せるように前髪を上げた

 

「僕には生きる意味が、目的がない。僕には…何も無い」

 

「…なら私がなしろに生きる目的をあげる。」

 

「え…」

 

耀哉はスッと立ち上がるとなしろに手を差し出した。なしろは耀哉の言葉を理解できなく、耀哉の手をじっと見ていた。

 

「いま世にはなしろが会ったみたいな鬼がたくさんいる、私たちはそんな鬼を滅する鬼殺隊という組織にいる。なしろには鬼殺隊に入って鬼を倒して欲しい」

 

「鬼殺隊…」

 

「そう。鬼の祖を滅っし、悲しみの連鎖を断ち切るために」

 

「鬼を滅する…俺の生きる目的………いいよ」

 

「本当かい?」

 

「うん…僕は鬼を滅するために生きる。…ありがとう耀哉、僕に生きる目的をくれて」

 

なしろは耀哉の手を取りこの瞬間からなしろは鬼殺隊に入った。

耀哉は嬉しそうになしろを見ていた。

 

が、槇寿郎は途中から、なしろに違和感を感じていた

 

(なんなんだこの子供は…歳は杏寿郎とさほど変わらないはず、だったら感情の一つや二つ感じ取れてもいいはずだ。なのに、なぜこの子からは何も感じない…目の前にいるのに生気を感じられない。有って無いような…まるで…人形だ)

 

槇寿郎は近いうちその違和感の正体を知ることとなる。

 




お館様や槇寿朗のキャラとか崩壊してたらすいません!おかしかったらまた読み返すので教えてください!

それでは次回もよろしくお願いします!


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参話

オリジナル柱がバンバン出てきますが、今だけなのでお気になさらないで下さい!




今なしろは産屋敷邸に来ていた。 あの村で鬼殺隊になったあと、詳しい話を聞くために招待されたのだった。

現在なしろは庭が見える縁側で耀哉と座っていた。

なしろの視線は耀哉ではなくその下、庭に膝をついて座る9人に向けられていた。

その中には昨日耀哉と一緒にいた槇寿朗もいた。

 

(耀哉が説明していた鬼殺隊の中で最も階級が高い柱…)

 

柱とは鬼殺隊にある階級【上から甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸】の中で最も高く、鬼殺隊士の中で1番権力と実力がある者たちを言う。

 

昨晩の説明や鬼殺隊などの説明を一通り耀哉が終えると柱の1人が手を上げた

 

「…お館様申し訳ございませんが、こんな子供が十二鬼月の頸を斬れるとは思えません」

 

納得しない顔で言う、雫が刺繍された羽織を来ているのは雨柱・東雲雨竜(しののめうりゅう)

 

「私も雨竜殿の考えと同じです。刀を初めて持ったその日に下弦の陸とはいえ十二鬼月を倒すなど信じろという方が難しいです」

 

鏡柱・写都鏡矢(うつしときょうや)は眼鏡をクイっと掛け直しなしろに視線を向けた。

 

「だったらここで殺りあって見りゃいいじゃねえか!こいつは鬼殺隊に入ったわけだし、そっちの方が手っ取り早く実力がわかるし何より面白そうだしなぁ!」

 

波の模様があしらわれた羽織を着る230cmはある大柄の男は海柱・海原岸士(うなばらがんじ)

 

「海原、お前はなぜいつもそうくだらない考えができるのか俺は知りたい」

 

ため息を吐きながら海原を見るのは土柱・岩廉志門(いわかどしもん)

体格は海原岸士と同じく230cmの巨漢。

 

「お前らうるせえんだよ!もっと静かに出来ねえのかよクソども!」

 

「そう言うお前が一番うるさい」

 

我慢の限界からか怒鳴り散らした男は嵐柱・嵐野剛(あらしやごう)

 

そしてその嵐野に呟くようにツッコんだのが樹柱・木更灘(きさらなた)

 

「なんで柱の人たちはこんなに暑苦しいのよ…」

 

手をパタパタと動かしてあおいでいるのは雪柱・白斗雪(しろとせつ)

柱の中で唯一の女性。

 

こんな騒がしい中端っこでずっと黙って膝をついているのは水柱・川静湊(かわしずみなと)

 

そして今までずっとなしろを見る炎柱・煉獄槇寿郎(れんごくしんじゅろう)

 

以上9名が現鬼殺隊の柱である。

その柱たちの様子を笑顔で見ていた耀哉は人差し指を立て口元に添えた。

するとさっきまで騒がしかった柱含め、みんなが耀哉に注目した。

 

「みんなに説明した通り彼が十二鬼月・下弦の陸を討ち取ったのは本当だよ。でも信じられないと言うみんなの気持ちもわかる。そこでなしろにお願いがあるんだけど、よかったら柱に君の実力を見せてあげてくれないかな?」

 

耀哉の言葉に柱たちは少し驚いていた。それもそうだろう、鬼殺隊の柱ともなれば他の階級の者たちとは隔絶した実力を持つ者達。それほどの実力を持つ柱に刀を握って1日も経たぬ子供が相手になるはずもない。そんな無謀なことを耀哉はなしろに頼んでいるのだから。

 

柱は一斉にバッ!となしろに視線を移す。

なしろはピクリとも動かず座っているだけだった。

その様子に会った時から違和感を感じていた槇寿郎は、困惑していた。

 

(やはりわからない…この子供からは覇気は愚か生気も何も感じない…この子供には何かある…私含め、この場にいる全員にはない何かが)

 

槇寿郎は眉間にシワをよせ険しい顔になった。

そしてなしろは今まで動かさなかった口を開いた

 

「…いいよ」

 

たった一言。けれど確かに了承したその返事を聞いた耀哉は「ありがとう」と言うと産屋敷邸の離れにある道場へ向かうことにした。

 

一同は道場へ着くと、柱たちは誰がなしろの相手をするのかで揉めていた。

 

「俺が提案したんだから俺がやる!」

 

「お前は力の加減ができないだろう!」

 

一番駄々をこねていたのは海柱だった。海柱はその恵まれた体格もあってか柱の中でもトップを争う実力を持っていた。その海柱を止めているのはトップ争いの土柱。この2人は歴代の柱よりも遥かに強いと評されている。

他のものもしばらく揉める柱たちを見ていたなしろは初めて普通の声量で喋った。

 

「だったら複数人でやればいいじゃん」

 

『『…は?』』

 

その発言に柱たちは同時にすっとぼけた声がが出た。

 

「お、おい一人でも厳しいのに複数って何を考えている?」

 

槇寿郎はなしろの肩を勢いよく掴み目を見ると

 

「いつもそうだったからいいよ」

 

なしろの目には何も写ってなかった。

 

(目が合っている筈なのに…なぜその瞳には何も見えないんだ…!?)

 

槇寿郎は未知の恐怖に、思わずバッ!となしろから距離を取った

その槇寿郎の行動に、柱たちはどうした?と聞くと

 

「…いやなんでもない。あちらが複数を希望ならそれでもいいと俺は思うぞ」

 

その言葉に柱たちは驚いた。なぜなら彼らが知る煉獄槇寿郎は曲がったことが大嫌いな男だったからだ。

それ故に柱たちは驚いていた。

 

「お前がそう言うのならそうしよう!だったらあとは…」

 

「俺がやる」

 

そう言って前に出たのは雨柱だった。

他の柱もこの二人で納得したのか特に口出しはしなかった。

こうしてなしろの相手は炎柱・煉獄槇寿郎と雨柱・東雲雨竜となった。

 

なお今回の手合わせは木刀で行われる形となった。

 

(子供だからと言って油断はしない!この子は何かおかしい、それをハッキリさせなければ)

 

槇寿朗は全集中の呼吸により精神を研ぎ澄ましたことから、槇寿郎からは隙が一切ない。

 

一方なしろはというと、構えることなくただ木刀を握っているだけだった。

その姿は無気力に立つ、命を宿さぬ人形のようだった。



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肆話

急いで描いたので文とかおかしいところがあるかもしれません!
読みにくかったらすいません…


「行くぞ少年!」

 

最初に動いたのは炎柱の煉獄槇寿郎だった。

 

炎の呼吸 壱ノ型 不知火

 

槇寿郎は力強く踏み込み、一気になしろとの間合いを詰めて袈裟斬りを繰り出した。その威力は槇寿朗が放てる全力のものだと他の柱たちは分かっていた。

これはもう終わったと誰もが思っただろう、並大抵の隊士でも柱の一撃は防げないのだから9歳の子どもが捌けるようなものではない。

だが槇寿朗には違和感があった。

 

(手応えがない!?…それなら少年はどこに?)

 

槇寿郎の攻撃はなしろを捉えていなかった。そして槇寿郎は壱ノ型を使用する時までなしろを見ていた。なのに今槇寿朗はなしろを見失っていた。

 

「煉獄飛べ!」

 

槇寿郎は咄嗟に上へ飛んだ。その指示を出したのは共闘中の雨柱・東雲雨竜だった。

 

雨の呼吸 参ノ型 篠突く雨

 

雨竜は上から細く激しい雨のように刺突の雨を槇寿郎がいた場所に放った。

雨竜は無駄な攻撃をしないことを、昔任務で一緒になった時に槇寿朗は知っていたため、その雨竜の攻撃がなにを意味していたのかを槇寿郎は知った。

 

(まさかいたのか!?俺の後ろに!)

 

槇寿郎が気付いた通りなしろは槇寿朗の後ろにいた。なしろは槇寿郎の『不知火』をかわした後普通(・・)に槇寿郎の背後に移動しただけだった。

 

「説明しろ煉獄!あの子どもはなんだ!?お前の背後を簡単にとり、あげくには…見ろ!」

 

雨竜は『篠突く雨』で攻撃した場所を指差していた。雨竜の様子を見るに、彼は戸惑っていた。簡単に柱の背後をとったなしろに、柱の攻撃を受けてもなお平然と立つなしろに。

 

「『篠突く雨』は完璧にあの子どもを捉えた…はずだった。だがあの子は平然と立っている。油断してはいけないとわかった以上、全力で行くぞ煉獄!」

 

「ああ!やるぞ雨竜!」

 

槇寿郎と雨竜は木刀を構え直しなしろを見る。なしろはその様子をじっと見つめていた。そしてなしろは初めて木刀を構えた。

 

「…確かこんな感じに」

 

なしろは力強く踏み込み、勢いからなしろは()のように燃え、突撃した

 

「まさかそれは!?」

 

炎の呼吸 壱ノ型 『不知火』

 

炎の呼吸 肆ノ型 『盛炎のうねり』

 

槇寿郎は燃え盛る炎のごとく猛烈な勢いを伴い、前面を覆ってなしろの『不知火』を防いだ。

 

雨の呼吸 壱ノ型 『鬼雨』

 

雨竜はなしろの背後に回り豪雨のような激しい一撃を放った。

なしろは雨竜が振るう木刀の軌道を見て技を放った

 

水の呼吸 漆ノ型 『雫波紋突き』

 

なしろは水の呼吸の中で最速の突きで的確に雨竜の木刀を弾いた。

それにより雨竜は体勢を崩すとなしろは上へ跳ぶと、

 

雨の呼吸 参ノ型 『篠突く雨』

 

槇寿郎と雨竜、2人を狙って刺突の雨を降らす。

攻撃をくらう槇寿郎と雨竜は紙一重で避け、一旦距離をとった。

 

「急に動いたかと思ったら、なぜあの子どもは複数の呼吸を使えるんだ!?

呼吸も一瞬で切り替えてる、まだ子どもだから俺たちほどの力はないが…」

 

「どうやら少年は見ただけで呼吸を真似ることができるみたいだ。昨晩、下弦の陸と対峙した隊士の中には水の呼吸の使い手もいたと聞く。だから先程使えたんだろう、そしてその考えが正しいのなら、おそらく少年はあと雷、風が使えるだろう。昨晩に殉職した隊士5名の中に使い手がいたからな」

 

「それが本当ならかなりまずいな」

 

「だが先ほどの水の呼吸を見るに、少年が放つ技の練度は見た相手に少なからず影響されるようだ。…改めて考えると凄いな」

 

槇寿郎はなしろを分析していた。

そして槇寿郎の分析通り通り、なしろは見ただけで呼吸を真似ることができる。なしろが残酷な虐待を受け続け得た視力に、もともと秘められていた身体能力、何よりなしろにはなにも無い、形がない『無』だからこそできることだった。

 

(先ほどからの違和感はこれだったのか!人形のようではなく、人形だからこそ動きを真似できるということか…)

 

槇寿郎は少し悲しそうになしろを見た。

いったいどれほど、辛いことをされたら人がここまで壊れるのか。少年はどれほど傷つけられてきたのか。そんなことを考えていた。

 

一方でなしろは居合の構えをすると一瞬で雨竜と槇寿郎との距離を詰めた。

距離を詰める際に、強く踏み込んだことによって起きた音はまるで雷が落ちたかのように響いた。

 

雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃』

 

炎の呼吸 肆ノ型 『盛炎のうねり』

 

槇寿郎は再度、肆ノ型で防御しようとした、だがなしろは一度見た肆ノ型に対応しようと、『霹靂一閃』を槇寿朗にあたる寸前でやめ、槇寿郎の背後をとった。

 

風の呼吸 壱ノ型 『塵旋風・削ぎ』

 

なしろは槇寿郎の背目掛けて地面をえぐる様に螺旋状に突進していく。

だがなしろはその時気付いていなかった。もう1人の柱の存在を

 

雨の呼吸 弐ノ型 『霧雨』

 

雨竜は霧のように気配を消し、細かい連続斬りを放ち、なしろは不意をつかれたことでもろに攻撃を受けてしまい吹っ飛んだ。

 

「雨竜すまない!助かった!」

 

「柱として情けないが、ようやく捉えた。…しかし煉獄の言った通り、雷と風の呼吸まで使ってきたな」

 

「流石に加減はしただろうが、もろに入ったんだ、これ以上続行は無理だろう。気を失ってなければ良い…が……なん…だと…?」

 

槇寿郎はなしろを見て驚愕の表情をしていた。

なぜならなしろは、柱が加減をしていたとしても子供は愚か隊士ですら気絶してもおかしくない雨竜の斬撃をもろに受けたのだ。

それなのになしろはゆっくりと立ち上がると、俯きながらも自分の身体をパンパンと叩いて埃を落としていた。

 

「加減はしたが、気絶はしなくとも痛みで身体が動かないはずだ…なんなんだあの子どもは…!」

 

雨竜は焦りからか徐々にだが汗が滲んできていた。

槇寿郎もなしろの様子に混乱していた

 

(なんなんだあの少年は!?まだ子どもなのに、なんでそんなに平然としていられるんだ!?)

 

槇寿郎も汗が垂れる。

柱2人はなしろに動揺したながらもなしろの様子を伺っていた。

 

対してなしろは顔を上げると、槇寿郎と雨竜と目があった。

 

「「!!」」

 

槇寿郎と雨竜はなしろと目が合った瞬間思わず一歩後ずさった。

 

(なにも…感じられない。会った時から、こうやって撃ち合い続けても少年からはなにも感じられない…なんなんだ…なんなんだこの子は…この子はいったいなにを見ているんだ!…なんで俺はずっとこの少年に恐怖を抱いているんだ!)

 

なしろの瞳にはただ虚無が写っていた

そしてなしろは雨竜の攻撃が全く効いていなかったかのように、強く踏み込み2人に向かっていった。




次でなしろ君と槇寿朗&雨竜の戦いは終わるかなとおもいます!
早くヒロインたちとの接触シーンを描きたいです笑


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伍話

「…!煉獄!」

 

「わかってる!」

 

炎の呼吸 肆ノ型 『盛炎のうねり』

 

槇寿郎は雨竜を庇うように前に立つと、肆ノ型でなしろの突撃を防いだ。

だがなしろは、先ほどよりも連撃の速さを上げ、無理やり槇寿朗の技を破ろうとした。

 

(くっ!先ほどよりも速く重い!雨竜の技が効いてないのか!?)

 

雨の呼吸 弐ノ型 『霧雨』

 

雨竜は先ほどと同じように気配を消し、なしろの横から連撃を放つ。

だがなしろはその動きを読んでいたのか、連撃があたるのを宙返りで避けると

 

水の呼吸 壱ノ型 『水面斬り』

 

空中で逆さになりながらも、雨竜の首を狙った。

これには雨竜も予想ができず目を見開いた。

だがそんな簡単に殺られるようでは、鬼殺隊の柱の名が廃る

雨竜は刀を下から上へ全力で振り上げた

 

雨の呼吸 肆ノ型 『驟雨・壁礫』

 

急に降り出す雨のごとく瞬時に刀を振り上げ、雨の壁を作りなんとか防いだ。

なしろは空中で隙だらけになってしまい、槇寿朗は一気にたたみかけた。

 

炎の呼吸 伍ノ型 『炎虎』

雨の呼吸 陸ノ型 『御山洗』

 

槇寿朗は燃え立つ闘気が炎の猛虎となってなしろを砕くように振るう

雨竜は山をも呑み込む豪雨を槇寿朗の技と挟むように放った

技を放った二人も、その戦いを見ていた柱たちも、みんな勝利を確信した。

 

水の呼吸 陸ノ型 『ねじれ渦』

 

なしろは逆さになりながらも、大人顔負けの体感で体を捻り、激しい渦となって二人の斬撃を弾き返した。

それには全員が驚愕のあまり、顔が固まってしまった。

槇寿朗と雨竜は、弾かれたことにより大きく後ろにのけぞり、なしろは着地した後に雨竜の方を向くとすぐさま居合の構えを取り、

 

雷の呼吸 壱ノ型 『霹靂一閃』

 

無駄のない流れで技を放った。

 

「しま…!」

 

雨竜はすぐに体勢を整えようとしたが、雷の速さには間に合わず雨竜は胸を斬られた。

 

(…まさかこんな子どもに一本取られると思わなかったな)

 

雨竜は木刀を置くと両手を上げて降参した。

これにより雨竜は離脱し、残りは槇寿郎となしろの一騎討ちになった。

雨竜が綺麗に一本取られたことが信じられない柱たちはなしろをじっと見た。

そしてまだ残っている槇寿郎も、先ほどと比べられないぐらい集中し、なしろを警戒していた。

 

(まさか雨竜がやられるとはな…確かに少年は強いが、この勝負負けるわけにはいかない!)

 

槇寿郎は真っ直ぐなしろを見る、対してなしろは木刀を持ってはいるが、最初と同じように構えようとはしなかった。

 

(…まただ!呼吸を使っている時は少年の存在がはっきりしていた。感情が読めなくとも、気配はあった。だが今はまた人形のように何も感じずそこにいるだけ…!なんなのだこの胸のざわめきは!)

 

槇寿郎はグッと木刀を握り、最大限に集中しなしろをみる。

なしろはそんな槇寿朗をじっと見ている。

 

(あれは…あの目は俺を見ていない!少年は何を見ている!あの子には一体何が見えると言うんだ…)

 

槇寿郎はずっと違和感を感じながらも、さすが柱というだけあり集中はより鋭いものとなっていた。

 

柱ほどの実力者ともなれば、相手と戦う時相手の動きだけでなく、性格や考え方から動きを予測して戦う。

もちろんそれは同じ柱である槇寿郎も同じである。

先ほどまではなしろの動きもいくらか読めた。だがそのタイミングは決まってなしろが真似した呼吸法(・・・・・・・)を使っている時だった。

あくまでそれはなしろが見本にした相手の動きや癖であって、なしろ自身の動きではない。なしろがなにも無い、“無“そのもの( ・ ・・・・)だったから、他者の呼吸という衣を着て真似することで槇寿郎や雨竜は動きが分かっていたのだ。

それではもし、なしろが()そのもののまま、他者の呼吸という衣を着ないで、『無の呼吸』という衣を手に入れたとしたら?

 

なしろは止まっていた足を動かした。

 

(来る!)

 

槇寿郎は木刀を構え身体からは闘気が溢れ出ていた。その迫力は獲物を睨む猛虎の如く。

槇寿朗郎はどんな展開が来ても対応できる状態でいた。

 

そしてなしろが歩く動きをした瞬間

 

トスッ

 

槇寿郎の背中に何かが当たっている感触があった。

先が少し細く硬い、当たっている皮膚がその形に沿って凹んでいる。

槇寿郎は徐々にそれがなんなのかがわかってきた。

そしてわかってきたと同時に身体中から汗がブワッと出てきた。

 

(ま、まさか…そんなはずはない!そんなバカなことがある訳ないだろ!俺は少年から警戒を一瞬たりとも……な!)

 

槇寿郎は先ほどなしろがいたところを見るとなしろはいなかった。

槇寿郎はバッ!と後ろを振り向いた。そんなはずはないと、冗談であってくれと願いながら。

 

「…いったい…どうやって…」

 

そこにいたのは、自分の背中に木刀の切っ先を押し当てるなしろだった。

そんな槇寿郎となしろの光景に、本日何回驚かされたかわからない柱たちはまたも目を見開いていた。

槇寿郎は振り向いてから動きが止まり、周りは静寂に包まれていたが、そんな状況だからか槇寿朗にはある音が聞こえた。

 

スゥゥゥゥ…

 

あまりにも小さく聞こえづらい音。それはよーく耳を済ませないと全く聞こえないであろうかなり小さな呼吸の音だった。

その呼吸音がどこでなっているのかと探ると答えは簡単で、目の前の少年から出されていた。

槇寿朗はこんなに小さな呼吸をする流派を知らなかった。柱である槇寿郎が知らないとするならばそれは未だ誰も使っていない、存在しない呼吸だった。

 

「まさか…自分の呼吸を…」

 

(作ったのか(・・・・・)?)

 

槇寿郎の推測通りなしろは自分で呼吸を作った。

たった9歳の子供が柱に勝利するだけでもあり得ないことなのに、あろうことかなしろは自分オリジナルの呼吸を作ってしまったのだ。

 

そして静かな空間に槇寿郎の声だけが聞こえたため、他の柱たちもなしろがなにをしたのか気付いていた。

誰もが予想できなかった結果に身動きが取れないでいた。

 

そして当人のなしろは、特に気にした様子もなく、木刀を下げるとずっとこの戦いを見ていた耀哉の前に向かった。

 

「…これで鬼殺隊になれる?」

 

なしろは首をコテンッと傾げた。

 

「うん。なしろが良ければお願いしたい。どうかな?」

 

耀哉はニコッと微笑みながらなしろを優しい眼差しで見ている。

それに対してなしろは微笑むでもなく、人形のような綺麗に整った顔を崩さずに

 

「初めてだ。初めて耀哉は僕に生きる目的をくれた。だから僕はその目的のために、鬼を滅するために生きる…」

 

こうして後に鬼殺隊、歴代最強の無柱になる少年の物語が始まった。

 




ちなみに今の柱の強さ順は
海>土>>炎>嵐>鏡>雨=水=雪
って感じです!
海と土はこの時には歴代最強の柱なんじゃないか!って言われるぐらい強いです!
他の柱の人たちも原作の柱とほとんど遜色ないんじゃないかな?って感じに見てもらえたらと思います!


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陸話

「かっかっかっ!とんだ化け物だなこりゃ!自分の刀でやりてえぐらいだ!」

 

「…ああ。俺たちが普段使う日輪刀とは形が違う木刀を使っていたとはいえ、まさか負けてしまうとは…とても人とは思えん」

 

「「「「「ハァ…ハァ…ハァ…」」」」」

現鬼殺隊最強の柱と言われる海柱の海原岸士と土柱の岩廉志門は片膝を地につけ、雨柱と炎柱以外の柱は肩で息をしながら倒れていた。そんな柱たちは自分たちを負かした相手を見ていた。

 

「…」

 

少しボロボロになりながらも、相変わらずの無表情で柱を見下ろしていたのはなしろだった。

雨柱と炎柱の勝負のあと、なしろの実力に気になった柱たちがさらになしろに試合を持ち込んだのだが、結果はご覧の通り柱たちの完敗だった。

 

「いや〜随分楽しませてもらった!…なぁ耀哉様、このガキの階級を最初っから柱にできねえか?」

 

『『『『は?(え?』』』』

 

海原岸士の発言に他の柱たちは驚愕の表情を浮かべた。だが柱のそのリアクションも仕方ないだろう、なぜなら本来鬼殺隊の階級は1番下の癸から始まり、任務で鬼をたくさん殺すことで段々と上がっていくのだ。

 

それなのにも関わらず海原はそれらの行程を飛ばして、なしろを最初っから柱に就任させろということだった。

 

「情けねえ話だが今のこいつに本気で殺り合っても傷はつけれど勝てはしねぇ。そんな実力のあるやつを柱にしねえでどうすんだよ。それにどーせすぐ柱になるんだったら今のうちに仕事とかも慣れていた方がいいだろーよ」

 

海原の考えに他の柱たちは納得していた。現に自分たちを負かした実力があるのならすぐにでも柱になれる条件など達成してしまうだろうと。

 

「まさかお前がそんな細かいことを考えているとは時の流れは恐ろしいものだ…俺もその案に賛成だ。だが…これだけははっきりさせなくてはならない、この子どもの呼吸はどうする?」

 

土柱の岩門の疑問にみんなも頭を悩ませていた。なしろは一応柱たちの呼吸は先ほどの戦闘で大体は扱えるようなっていたが、それもまだ少々なしろ自身の癖があったりした。それに同じ呼吸を使う者が柱にはなれないため、なしろを何柱にするか決めかねていた。

 

「僕は…」

 

「ん?」

 

すると今まで静かだったなしろが口を開いた。それに反応した槇寿朗はなしろに視線を移した。

 

「僕にはなにも“無い”。感情も痛みもなにもない、僕はただ鬼を殺すためだけに生きる。それが僕の生きる目的なんだ…僕は…“無”でしかない」

 

(なにも無い…無い…無…)

 

「…少年」

 

なしろの言葉に引っかかっていた槇寿郎はなしろの正面に移動し、真っ直ぐなしろを見た

 

「俺はずっと君に違和感を感じていた。君の刃は他人の呼吸を真似る時は多少殺気などが分かるが、君自身で刀を振るう時、俺はなにも感じなかった。いや感じれなかったと言う方が正しいだろう。君は自分には何も無いと言うが、俺はその“無”は君にしかないと思っている。最後に俺にやった技…あれはまさに君の技だった。なにも感じない無の流派、すなわち無の呼吸。

無柱というのはどうだろうか?」

 

「無…柱」

 

なしろは槇寿郎が考えた無柱と言うのを聞いて、一瞬だが無意識に瞳に光が宿った。

そしてその一瞬を耀哉は見逃していなかった

 

「《無柱》なしろ…どうやら気に入ったみたいだね。槇寿郎もよく思いついたねありがとう。…それじゃなしろ無柱として最初の任務はまず、鬼を滅しながら無の呼吸を完成させてほしい。お願いしてもいいかな?」

 

「…わかった」

 

「無柱かぁ!なかなか良いじゃねえか!おいなしろ!早く無の呼吸を完成させろよ!そして俺と殺り合おうぜ!」

 

「柱とはいえ新人なんだ。海原お前はもう少し気遣いというものを知った方が良い」

 

新しい柱《無柱》の誕生に海原は心底楽しそうに、岩廉はそんな海原を注意しながらも表情はどこか嬉しそうだった。

そして他の柱も先ほどの勝負を引きずるような事も

 

「チッ!ガキが調子に乗んなよ!?お前が自分の呼吸を完成させたらもう一回俺と殺れ!次は本気で叩き潰してやる」

 

「おいやめろ嵐野、その件はもう終わったんだからもう忘れろ。これからは協力する仲間なんだから」

 

「うるせー木更!お前から叩き潰してやろうか!?」

 

「暑苦しい…」

 

…一部を除いて引きずってなく、みんな新しい柱を受け入れていた。

 

「それじゃこれから10人、この顔ぶれでまた柱合会議が出来ることを願っているよ」

 

「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」

 

「…」

 

耀哉の言葉を最後に、今回の柱合会議は完全に終了した。

 

そしてこのあとわずか3日で無の呼吸が完成するとは誰も知らない。

 

 



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漆話

無の呼吸を完成させたなしろは、あれからすぐに正式な柱になった。

耀哉から屋敷をもらい、自分の隊服と日輪刀が来るまでの数日間待機するよう命じられた。

だがなしろは、鬼を斬ることが生きる目的となっているため、槇寿朗から刀を借りて一日中鬼を斬っては移動を不眠不休で行っていた。

 

そんな何かに取り憑かれた様に一心不乱に鬼を斬る生活をして数日後、他の鎹鴉よりも一際大きい鴉がなしろの肩に飛んできた。

 

「明日には屋敷に刀が届く。周囲にもう鬼はいない。帰るぞなしろ」

 

「…了解クロ」

 

なしろの鎹鴉の名前はクロと言い、他の鎹鴉よりも知性が高く、人の言葉を流暢に喋れる。

耀哉がなしろのために選んだ鎹鴉だ。

 

「なしろの足なら日が昇るまでには着くな。今日ぐらいは休め。耀哉からもそうさせる様頼まれている」

 

「…ん」

 

なしろは移動しながらも返事だけ返すと、さらに速度を上げ数日ぶりに屋敷へと帰っていった。

 

クロの言った通り日が昇るまで少し時間があるぐらいで屋敷に着くと、なしろは縁側でぼーっと空を眺めていた

役割を終えた人形の様に微塵も動くことなく上を向いていた。

その姿は他者から見たら、“幻想的で美しい絵画のようだ”と感じる人もいれば、ただただ子供が座りながらも生き絶えてる様な痛々しく感じる人と分かれるだろう

 

そんな状態から数時間が経つとクロが「来たぞ」となしろに声をかけた。

なしろも気付いていたらしく、玄関に向かうと丁度玄関がガラガラと開かれた。そこにいたのはひょっとこの面をつけた男だった。

 

「貴方が無柱のなしろさんですね?私は鉄鵞矢鋼豪(てつがやこうごう)と言います。今後貴方の刀を担当します。ちなみに歳は12と若いですが腕には自信がありますのでよろしくお願いします!」

 

鋼豪は元気よく頭を下げ挨拶した。

 

(…え?これいつまで頭下げてればいいんですか!?無柱様のことは向かう前に少しお話は聞きましたがこれはどうしたらいいんでしょうか!?)

 

鋼豪は自分が思ってた以上に無反応ななしろに、内心ではかなりパニックになっていた。そしてずっとしばらく頭を下げているとずっと動かなかったなしろが突然動き始めた。

 

(え〜!?ちょ、ちょっと無柱様!?どこ行くんですか!?私は!私はどうしたらいいんですか〜!?)

 

自分をほったらかしにして何処かへ行ってしまったことにさらにテンパる鋼豪。だがそんな鋼豪に声をかけるものがいた。

 

「もう顔を上げていい鋼豪。なしろは飲み物を取りに行ったよ。なしろは小さいがそれまでに色々あって人との接し方が分からないんだ。すまないが許してほしい」

 

「…あ、ああはい!いえ、大丈夫です!分かりました!私も無柱様がどんな人なのかもっと詳しく知ったけばよかっただけですので!」

 

それはなしろの鎹鴉のクロだった。クロの言葉に鋼豪は頭を下げペコペコしていた。

すると奥からなしろが水を持って来たので鋼豪は再度頭をペコペコし、ありがたく飲み物を飲み、落ち着きを取り戻した。

 

(改めて見ると無柱様って子供なのに凄い雰囲気が落ち着いてるなぁ。

雪のように白い綺麗な髪に人形のようなお顔…男って知らされても信じられないくらい美しいなぁ…)

 

鋼豪はなしろの姿を面越しにじっくり見るとその人離れした容姿に見惚れていた。

 

「…刀、いい?」

 

「あ!すいません!」

 

しばらくしてなしろに声をかけられ、まだ刀を渡して無かったと聞いた鋼豪は急いで自分で打った刀をなしろに渡した。

 

「こ、これが無柱様の日輪刀です!どうぞ抜いて見て下さい!日輪刀は別名《色変わりの刀》、私は初めて色が変わるところを見るので楽しみです!」

 

鋼豪は鼻息を荒らしながらさぁさぁ!と目で抜いてくれと訴えている。

今回なしろには二本の刀を持って来ている。なしろは二刀流とまでは行かないが、なしろが使う無の呼吸の型には刀を二本使用する型もあるため鋼豪に二本打ってもらったのだ。

 

なしろはまず一本目の刀をゆっくりと抜いた。刀身には柱の称号たる『悪鬼滅殺』の文字が刻まれている

完全に刀を抜くと徐々に刀身の色が変わった。

 

「黒い…真っ黒です!凄い綺麗な漆黒ですね!ということはもう一本も黒色ですね!どうぞ!美しく染めちゃって下さい!」

 

初めて刀身が染まるところを見たからか鋼豪はかなり興奮しながらなしろに刀を渡す。

鬼殺隊士の刀を造る鍛治氏はみな刀が絡むと人が変わるらしい。

なしろはもう一本の刀を取り刀を抜き色が変わった。

基本日輪刀は新しく刀を貰っても色がバラバラになることはない。つまり一本目でなしろの刀は漆黒に染まったので必然的に同じ漆黒になるのだが…

 

「し…白?それも何色にも汚されてない雪のように純白な色!二本で色が変わるなんて聞いたことないです!凄いですよ!しかもどちらもとっても美しい!無柱様にピッタリですよ!こうしちゃいられません!早く里の皆んなに行って来ます!どうか今後ともよろしくお願いします!それじゃ失礼します!」

 

鋼豪は刀が関わってからは嵐のごとく興奮すると颯爽と屋敷を出て行った。

一方でなしろは特に気にすることなく刀を収めると庭にある2mを超える大岩へと移動した。

 

漆黒の日輪刀を抜くと横に一振り、次に純白の刀を抜くと今度は縦に一振りした。

クロが岩をよく見るとスゥーと十字に線が入っているのがわかった。

そして縦に切れたことに岩のバランスが崩れ、四当分に岩が崩れ落ちた。

切れ味に満足したのかなしろは再び縁側で腰を下ろすと刀を抱えながらもまた空を眺めた。

なしろの横顔を見たクロは、(どうやらかなり気に入ったようだ)と自分の主は感情が無くともまだ子供なんだなと認識した。

 

そして太陽が真上に昇る頃なしろの隊服と白藍色の羽織りが届いた。

 

なしろはその日の任務に早速それらを着て行ったのだが、どこか前よりも楽しそうに任務を行なっていたように感じたと、なしろを見かけた隠たちが話していた。

 

 

 

 




オリキャラですね鉄鵞矢鋼豪くん!今後の物語でなしろの兄的な位置になっていけたらなと思います!

鋼豪くんは名前はゴツいですがひょっとこ面の裏は中性的な美形顔です!
歳は若いけど里の中でも腕は大人顔負けなので今回から柱の刀を任されました!

こんなキャラ達もいてやっていこうと思いますのでよろしくお願いします!


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捌話

すいません、なんか感覚が鈍ってて、話がおかしいかもしれません。
これから頑張って書いていこうと思います!よろしくお願いします!


なしろが柱になって、数ヶ月が経った。

なしろは何も変わらず、全国を回りながら任務をこなしていると、ある日なしろの鎹鴉であるクロが、なしろに指令を言った。

 

「なしろ、耀哉から指令だ。今すぐ戻って来てほしいらしい。なんでも、なしろに護衛を頼みたいと」

 

「…わかった。朝には着く」

 

「了解だ。耀哉にはそう伝えておこう」

 

クロはすぐに上昇すると他の鴉とは段違いの速さで飛んでいった。

そしてなしろも、今自分がいる場所から、耀哉のもとまでは25里(100kmほど)離れているのだが、朝までにつかなければいけないので早速向かい始めた。

なしろの脚力は柱の中でもダントツに速い、そのため朝までに100km走ることなど容易いため、道中に鬼を1体2体…と滅しながら向かっていた。

 

 

「やあ、なしろ。遠いところからわざわざごめんね。よく来てくれたね、少し休憩していくかい?」

 

「…別にいい。それより、どこへ向かう」

 

「ある人物へ会いに行きたくてね。でもその人は今、事情があって投獄されていてね。私はその人物に会って話がしたいんだ。だからなしろには道中私と一緒に来てほしいんだ。そして良ければなしろとも話したいと思っていたからね」

 

「僕はない。……早く行くよ。僕は“鬼を斬る“ただそれだけなんだから」

 

「私が言ったことなのだけれど、いつか君の生きる目的が幸せなことになってくれることを願うよ」

 

「…行くよ」

 

なしろは耀哉の言葉を無視して、先に歩き出した。

 

(なしろ、私はね君に色々なものを、経験してほしいと思っているんだよ。君がこれまで経験して来たことは、地獄そのものだったんだろう。でもこの世には、君の知らない素晴らしいものが、希望が溢れている。私は君に幸せになってほしい。そして、君さえ良ければ私の初めての“友”になってほしいな。そのためにも…)

 

「ねえなしろ」

 

「…」

 

なしろは足を止め、ゆっくりと振り返り耀哉を見る。

 

「まだ出会ったばかりだけど、これからもよろしくね」

 

耀哉はニコッと微笑んだ。それに対してなしろは特に反応することもなく、再び歩みを始めた。

耀哉はそのなしろの小さく悲しそうな背中を、少し切なそうに見つめていた。

 

 

結局その後2人は、耀哉がなしろに話しかけて、それをなしろがスルーか一言二言話すだけだった。

そして2人は無事目的についた。2人の目の前には、牢屋に入れられている大柄な男がいた。

 

「初めまして、私は産屋敷耀哉、隣にいるのは私の護衛をしてくれているなしろだよ。君が悲鳴嶼行冥だね?」

 

「…はい。…あの、私に何かようですか」

 

「君に聞きたい事があってね。君の事は知っているよ。そして君の無実も」

 

「…!それは一体どういう!?」

 

「鬼が出たんだよね?それで君は勇敢に素手で立ち向かい、朝になるまでに鬼を殴り続けた。人間よりも強い鬼を素手で倒すなんて、とても常人には真似できない事だ。そして君はその鬼から子供を助けることができた」

 

「ですが私はその子供に裏切られ、こうして牢に入れられています。私は…………」

 

悲鳴嶼はグッと拳を握った。盲目な目からは憤怒の涙が流れていた。

その悲鳴嶼を見て、耀哉は悲しそうにしながらも、優しく微笑んだ。

 

「この世には、君が倒した人を喰らう鬼が、実は沢山いるんだ。そして私たちは、そんな鬼を滅する鬼殺隊と言う組織に所属している。

 

「鬼殺隊…」

 

「そう。今回私たちが来た理由は、君に鬼殺隊に入ってもらいたいんだ。

人を喰らう鬼を、そしてその鬼を今もなお生み出している鬼の始祖を討ち取り、この悲しみの連鎖を断ち切るために。私たちに力を貸してもらえないだろうか?」

 

耀哉は頭を下げてお願いした。耀哉が頭を下げたことを見えなくても感じた悲鳴嶼は、慌てて耀哉に頭を上げるよう言った。

そして悲鳴嶼は鬼殺隊に入ることを了承した。

 

「そう言ってもらえてよかったよ。もう君がここを出ることは知っているから、早速行こうか。なしろお願いしてもいいかな?」

 

耀哉は笑顔で悲鳴嶼の入隊を喜び、なしろに悲鳴嶼を牢から出すようにお願いした。なしろは牢の前に行くと自分の刀を抜いた。

 

「行冥、少し離れた方がいいよ」

 

「は、はい」

 

悲鳴嶼は耀哉の言葉に多少戸惑いつつも、言われた通り牢から離れた。

悲鳴嶼が離れるまで待っていたなしろは、悲鳴嶼が離れたところで刀を数回素早く振るった。すると頑丈な牢は綺麗に切断された。

 

「まさかこんなに小さな子が…」

 

「彼は9歳で鬼殺隊の“柱”という一番強い階級の1人でみんなからは無柱と呼ばれていてね。彼も過去に色々と苦しめられているんだ。鬼殺隊に入る子たちは、ほとんどが壮絶な経験をしている子たちが多い。君は今は子供が苦手だろうけど、いつかちゃんと克服できるよ。これからよろしくね行冥」

 

「…はい!これからよろしくお願いします。無柱様もこれからよろしくお願いします」

 

「…うん」

 

こうして未来の柱、悲鳴嶼行冥は鬼殺隊に入隊した。

 



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