ヒーリングっど❤プリキュア リアル・コロナ・オペレーション! (天爛 大輪愛)
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参考資料 旧バージョン前書き

 

 

 

【プリキュアお休みなので勝手にプリキュア書いちゃったスペシャル】ーっ!ドンドンパフパフ!

略して、POKK! パイナッポーペン アッポーペーンッ!!(違)

 

_______

 

 

 

「プリオルSFは?」

 

 これを見かけたみなさんは、そう思われたことでしょう。

 もちろん、あちらは記念すべき私の処女作です。我が子のように、大事に大事に下書きを書き溜め、推敲しています。

 

しかし、プリキュア放送延期! という、私たちプリヲタの人生最大の緊急事態が訪れた今、(親の目を盗んで)行動を起こさせていただきました(多分バレてる)。

 

 コロナ疲れで鬱々イライラとしている私たちには、プリキュアがひとつの命綱となっていて____少なくとも、私にとってはそうです。

 それなのに、放送延期だなんて……みなさん、そう思われたことでしょう。 私もです!コロナは絶対に許さない!! ____と、熱くなっていては進む話も進まないので、本題に入りましょう。

 

 

 ゼツボーグになっているみなさん。

 オシマイダーになっているみなさん。

 「ザケンナー!」と叫んでいるみなさん。

 

 のどかちゃんたちヒープリのみんなが、コロナと戦ってくれることになりました。

 しかし、プリキュアが勝つためには、みなさんの協力が必要です。

 ミラクルライト____もいいですが、相手はウイルス。もっと大事なことがあります。

 

 極力外に出ない!帰ってきたら、手洗い!しっかりうがい!あとマスク!

 

 感染の状況で、プリキュアの戦況も変わります。

 どうかみなさん、お願いします!

 

 コロナは言うなればリアル・ビョーゲンズ。

 プリヲタの意地にかけて!その猛攻をゆるしてはなりません。

 

 

 その助けになるように。

 私の拙い文章で申し訳ありませんが、のどかちゃんたちの様子をみなさんにお伝えすることになりました。

 家でプリキュア小説、読みましょうっ!

 

 私のではパワー不足でしょう、しかし、ここには素晴らしい物書きさんたちがいらっしゃいます!家での時間、楽しく過ごしちゃいましょう!

 

 みんなで、コロナをヒーリングッバイ!

 一緒に頑張りましょう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

(以下 時数稼ぎ)

 

 

____といった具合だったんですね、旧前書き。

 

まぁ我ながら、ここまでペースを保てるとは……

あと、誰得ながら、勢いで、自身の過去の1億倍希釈を流してしまうとは……。

(あくまで希釈です。 包み隠さずは書くつもりは今後もないです。 ご安心を)

 

さぁ、ラストスパートです!!

最終話まで突っ走ります! 楽しみにしててくださいね。

 

 

 



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世界大融合編
第1話 壁の向こうの物語❤ 世界に落ちた陰は何?


 
リアル世界の描写の際に、畏れながら、作者様方のお名前などを拝借させていただくことがあるかもしれませ__いや、ありますっ!!(断言) お気に障るようでしたら、どんどんおっしゃってくださいませ……!!

それと、序盤の方は、放送延期のせいで精神異常を起こしていたため、文章が何か変!になってるかもしれません……ザッとは見直しましたが、正直今でもテンションが戻ってないので……おかしければ、そっと誤字報告をお願いいたします。

あ、作中で、ついでに、SFのほうの伏線をはっていたりいなかったり。

 


 

 __全てのプリキュア世界の、全ての記録を司る、その場所で。

 

 『原作世界』とラベリングされたレコードから、ひとつ、新たなレコードが分岐して…………までは、日常茶飯事だった__

 

「……」

 

 誕生したレコードは記録の集団から離れ、音もなく彼方へと流れゆき、とある透明な壁の前へたどり着いた。

 

 ちょんっ、と、それは壁へと触れる。

 途端バチバチと電流が流れ、そのレコードはわずかな時間怯んでいる……ように見えた。何かの絶対的な力が、それの行く手を阻んでいるようにも思われた。

 そう、そうやって今まで、次元の混濁が起こらずに済んだのだ。

 

 だけどそれは__()()()()()()()()()

 そこからはめげることなく、何度も、何度も……壁に波紋が広がり、歪み、そして思いの外容易く__

 

 

  __パリンッ……!!

 

 

 禁忌が、侵されてしまった____

 

 

 

 

 …………

 ……

 

 

 

 

   __確かに世界は狂っていった__

 

 

 

 

_________

______

___

_

 

 

 

「ふわぁ~…… 平和だねぇ……」

 

「今日は地球が病気にされなくて、よかったラビ!」

 

「ワン!」

 

 ヒーリングっど❤プリキュア の一員・キュアグレースこと、花寺のどかは、家のベランダにて、パートナーの妖精・ラビリン、そして、ラビリンの出身地であるヒーリングガーデン……の姫君・ラテと、休息を楽しんでいた。

 

「ふふ……♪」

 

 短い間ではあれども、文字通りの命の駆け引きを、地球のお医者さんとして、ともにせり勝ってきて育まれた絆は強く、深く、互いの人生にとって尊いものになっている。

 こうして、何でもなさげな緩々とした時間の中、見つめ合うだけでも、自然と笑みはこぼれてしまうものだ。

 

「あっ! のどか、ここから、ハートの展望台が見えるラビねっ!」

 

「そうだねぇ~ でも、展望台が、どうしたの?」

 

 実は……と、ラビリン。

 

「ラビリンたちが最初に地球に降り立った地、それがあそこなんラビ!」

 

「ふわぁっ! そうなの!?」

 

 実はね……と、今度はのどか。

 

「私がすこやか市に引っ越してきて、最初に遊びに行った場所があそこなの!」

 

「すごいラビ! 今思えば、運命だったラビねっ?」

 

「うんっ! すごいよねっ!」

 

 ふふふ、と笑いあう、そんなふたりの周りを、ラテが喜ばしげに駆け回る。

 

「そうだっ! 今度、あそこに行ってみようよ! ちゆちゃんと、ひなたちゃんと__」

 

「ペギタン、ニャトラン、ラテ様も♪」

 

「うんっ!」

 

 その日の夜、のどかの部屋から、友達と電話をする弾んだ声が聞こえ、のどかの父と母は、最近まで病魔に苦しめられてきた娘の、手に入れた幸せを自分たちのことのように噛み締めた。

 

 

 

「のどか~!」

「のどかっち~!」

 

「ちゆちゃん! ひなたちゃん! おーいっ!」

 

 翌日。

 プリキュア仲間(メート)である、キュアフォンテーヌこと沢泉ちゆ、キュアスパークルこと平光ひなた。そして、それぞれのパートナーの、ペギタン、ニャトランが、のどかの玄関先に集まった。

 のどかは友人らに、ベランダから嬉しげに手を振る。

 

「今行くから、待っててー!」

 

「ええ!」

 

「そんなこと言わなくたって、別に、のどかっちを置いてったりなんかしないし~っ」

 

 笑顔で、のどか、ちゆ、ひなたの言葉が交わされる。

 のどかは階段を下りながら、俗に言う『マジレス』をしつつも笑いを取って来るひなたの会話術に感心し、「ひなたちゃんらしいなぁ」と、くすりとしている。

 

 そしてリュックをかるい、玄関を開けたのどかを待ち受けていたのは、温かく差し伸べられた、ちゆとひなたの手だった。

 3人は固く手を握りあい、目的地へと走り出した。

 待ってラビ~などと、妖精達は口々に、楽しげにパートナーを追いかける。

 

 幸せだった。

 

 今、こうして仲間達と触れ合い、外でのびのびと過ごしている時間が。

 

 

 幸せだった。

 

 

 

 それは過去形だった。

 

 

 

 

 過去形に、過ぎなかった。

 

 

 

__________

_______

___

_

 

 

 

「おぉーっ! 着いたーっ!」

 

「懐かしいなぁ、ここ!」

 

「ここで僕たちは、ともに決意をしたんだペェ……」

 

「そうだったのね……!」

 

 ひなたがはしゃげば、ニャトラン、ペギタンが思い出に浸り、それを聞いたちゆが感慨深そうに相づちを打った。

 

「………………」

 

 静寂な時間が続く。

 

「でもさっ」

 

 しかし、突然ひなたが沈黙を破る。

 

「ニャトランたちは、ワープホールみたいなので、バーーッ!って来たんでしょ?」

 

「おぅ、そんな感じだな」

 

「テアティーヌ様の開いたソレでここに来られたんだペェ」

 

「ラビ!」

 

 だったらさ! と、ひなたは目を輝かせる。

 

「またここで、そーゆーのが開いて、何か来ちゃったり、逆にここからどっかに行っちゃったりとか、ないかなっ?」

 

「んー……そうそう簡単にはねぇだろーな……」

 

「でも、そうなったら絶対楽しいよね! こう、『フーーワーーッ』! って、移動するの!」

 

「……のどかっち、昨日スタプリ見まくった?」

 

「ともかくよっ!」

 

 収集がつかなくなってきた話にストップをかけたのは、ちゆだ。

 

「ん? なぁに、ちゆちゃん?」

 

「……ごめんなさい、考えてなかったわ」

 

「ありゃっ、ちゆちーらしくないね」

 

 ちゆ、ずっこけるみんなの前で曰く、のどかとひなたがアニメキャラとしての道を踏み違えそうな発言をしかけため、なんとしてでも止めたかったとのこと。

 

「そうなんだ、ありがとうね、ちゆちゃん!」

 

 のどかはとりあえずお礼を言ってから、ふと、違和感が首をもたげる。

 

「あれ……なんだか私たち、今日、変じゃない?」

 

「のどか? ……確かに、ちょっとおかしいラビ……」

 

「……そういえばそうよね、なんていうか」

 

「う~ん、いつもより、もっと外側の方からものを見ているような感じ?」

 

「それよっ」

「そうだよっ」

 

「……だとしても、何が原因ペェ?」

 

「皆目見当がつかねぇな」

 

 悩む一同。

 そんな中、はいはーい、と元気のいいのがひとり。

 言わずもがな、ひなただ。

 

「外側から物を見るってことは! 私たち、神様的な何かになったとか!?」

 

「「……あぁ……無きにしも非ず だね/ね」」

 

「で、でしょ~!? あれっ、まさかの全会一致……

 

 

「ツッコミ役がいないラビ……」

 

「ほんとに異常事態かもしれないペェ」

 

「どーなってるニャ…… ひなたもいつもより難しげな言葉使ってるし

 

「クゥン」

 

 

 ……。

 

 混沌極めたヒープリチームの頭上遥か、突如として、静かに空中にひびが入り__

 

 __グォアッ!!

 

「! ……何っ!?」

 

「……上よっ!!」

 

「んぇっ、噂をすればワープホール……!?」

 

 レコードの歪み、次元の混濁。

 確かにそれは、少女達へと牙をむいた__

 

「風、が……!」

 

「う、く……!」

 

「何が、どーなって……!」

 

「ラビ~!?」

「ペェ~!!」

「うぉぉおっ!?」

 

 穴へと、強い上昇気流が巻き起こり……

 

「ワンッ……!?」

 

 耐えつづけたのも虚しく、体格も小さく一番幼いラテが、最初に空へと吸い込まれかけてしまう。

 

「ラテっ……! ふわぁっ!!」

 

 ラテの身を案じ、思わず中空へ手を伸ばしたのどかが続き……

 

「のどかっ!? ラビ~!!」

「のどか……きゃあっ!!」

「のどかっち__うぉあっ!?」

 

「ちゆ~……ペェーーーっ!!」

「ひなたっ! くっ……!?」

 

 7人仲良く、時空の乱れの餌食になってしまった____

 

 

 

 

 

 

 

「のどか、のどか……! 起きるラビ……!!」

 

「あ、れ。 私……」

 

 のどかが目を覚ますと、いつのまにか行儀良く、見知らぬ歩道脇のベンチに腰掛けていた。

 

 ちゆちゃんは、ひなたちゃんは、みんなは__

 

 不安でキョロキョロとしていると、ラビリンが、「ばらばらになっちゃったみたいラビ……」と心細そうに教えてくれた。

 

「……今すぐ、みんなを探しに行かなきゃね」

 

「ラビっ」

 

 __しばらく歩いていると、のどかとラビリンは、広い交差点の前にでた。

 

「ここって確か、ニュースでよく見る、スクランブル交差点……!? いつのまに県境超えたんだろう……!」

 

「それも問題だけど、スクランブル交差点といえば、地球の地理のお勉強の時、聞いたラビ! 有名で、人通りが多いところだって……でも」

 

「うん……今はせいぜい数えられるくらいしか通ってない……」

 

「みんなマスクしてて、表情も暗いし……」

 

 不安の高まるふたりに、「おじょうちゃん」と、誰かが声をかけた。

 振り向くと、おばあさんがいた。優しそうな目をしている__けど。

 

 __なんだか、私の知ってる『人間』の姿じゃない……?

 

 __そもそも、この場所自体……??

 

「あ……えっと」

 

「外に出るならマスクしなきゃダメだよ……あっ、もしかして、もう家のストックがなくなっちゃったかい。 いけないねぇ、こんな可愛い子がコロナになっちゃ……よしよし、丁度手持ちがあるから、手づくりで良ければ……」

 

 話を挟む間もなく、おばあさんは、のどかに布マスクを渡して去って行った。

 

 折角なので、のどかは素直にマスクをつけてみる。裁縫の上手なおばあさんだったらしく、とても息がしやすかった。

 マスクの感想もとりあえず、ふたりは、もう一度辺りを見渡す__みんなイライラしているようにも、悲しそうにも見える。

 

 そこに、温かみはなかった。

 いつも人と交流するときの、あのホワホワとして、じんとする感じ。ラビリンたちの言葉で言うなら、「心の肉球にキュンとくる」感じ。

 それが、最早のどかにとって当たり前となっていたそれがまるで__

 

 

「何が、起きてるの……?」

 

 

 

 笑顔の無いこの空間で、のどかはぽつり、呟いた。

 

こうして、プリキュアとコロナの戦いが始まった……。

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 




 

よっしゃ……書けた……
誤字とかしてないよね……

(4月25日 追記)
えーっと、絶望的な状況で第1話終わっちゃって申し訳ありません。
第2話で早々に作者さんを出すつもりでしたので、無断はよくないかなぁ、なんて思いまして……



(26日 10時45分 追記)

なんかさぁ……コロナの厳しい現実を目の当たりにしてきてさぁ……
私、控えめに発狂寸前なんですけど……助けてくだせぇ……
(とはいっても、それはみなさん同じですよね、すみません……)

ところで、来週の深夜アニメ『LISTENERS』には、本名陽子さん・ゆかなさんコンビ__つまるところの、なぎほの__がでるそうで!
よかった、最近プリキュア以外(マギレコとLISTENERS)にも浮気(!)してて……
コレがなかったら、とっくに気が違ってたよ、マジで……

 


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第2話 ちゆとペギタンと物書きさん❤ 交わるリアル・バーチャル!

 

【稚拙さん、(今回は出ていらっしゃらないけど)32期さんへ……】

 最初に申し上げます……!
 本当に、お手数おかけいたしました!!

 それと稚拙さん、温かいお言葉、ありがとうございます!


※不快にさせてしまった場合は、バシバシいってくださいませ……!
 内容を変更いたします……!!

 


 

 

「あ、ら……ここは……」

 

「ちゆ~!!」

 

 ちゆが目を覚ました瞬間、ペギタンが涙目で抱きついてきた。

 ここはどこだろう______地面が砂だらけで近くに遊具もあるので、どこかの公園に違いない__と、ちゆはすぐに結論付けた。

 

「知らない場所にいるし、何だか周りが変な雰囲気だし、ちゆもずっと気を失ったままで心配だしで、心細かったペェ~!!」

 

 ペギタンを胸に抱きながら、ちゆは公園の出口へと移動する。

 

「心配かけて、ごめんなさいね…………ところで、変な雰囲気って____!?」

 

 きれいに整備された都会の歩道から、ちゆは街の光景を見て、愕然とした。

 

 街中、のわりには、妙に寂れているような気がする。

 道を行く人の視線は落ちていて瞳に光はほとんどなく、何か鬱屈として重いものがひしひしと身に伝わってくる。

 そして、不自然なほどに、みんながみんなマスクをしている____おかしい……!

 

「いくら花粉症の時期だからって、こんな……どういうことなの……!?」

 

 動揺するちゆに、パートナーが目を覚まして自信を取り戻したペギタンが、力強い声をかけた。

 

「ちゆっ、調査してみるペェ!」

 

「えぇ!」

 

 とりあえず、公園から目視できた近くのスーパーへと赴くことにした。

 

      shoujoidouchuu…… シリーズちがうとかコマかいコトいうとラパパしちゃうぞ

 

 __スーパーの前には『マスク本日入荷なし 次回入荷時期未定』との触れがあった。

 

「マスク……売り切れるほど需要があるなんて、どうなってるの?」

 

「この()()はやっぱり変ペェ」

 

 そう、スーパーへの道すがら、ふたりは、2点、気づいたことがあった。

  ・ここの『人間』たちは、自分たちの知っている姿と違うこと。

  ・ふたりがお互いを見たときの姿はいつもどおりだが、他の人から見たときは、ここの人間の姿にあった見た目になっていること__ショーウィンドゥに映っている自分を見て判明した。

 

 Q. これはどういうこと?

 A. (ペギタン)たちは異世界に来てしまったらしいペェ

 

 というわけで、先ほどのペギタンの台詞がでたのである。

 

 

「……ちゆ」

 

 どうしたの? と、ちゆはペギタンを見つめる。

 

「あの人……」

 

 ちゆは言われるままに、近くの、買い物帰りであろう人物に視線を移す。

 ……その人は、スマホ画面に没頭しながら、奇怪なものでも見たような()()()()()()表情をしてフリーズしていた。

 

「この人は何を言っているんだ……まさか、『アイデアがかぶってすみません』のそれの延長線の……?」

 

 ブツブツと呟いた後、我に返ったように顔を上げて歩き出し、その瞬間、ちゆと目が合い ペギタンは『顔を上げる』瞬間にちゆの背中に素早く隠れていた ____その人は、またフリーズした。

 さっきよりも、すごい顔で。

 

あ、あの……どうされました、か……?」

 

 ちゆは心配のあまり、遠慮気味に声をかける。 しかし、その人の耳にはマトモに入ってきていないようだ。

 

「__声まで同じだ……本当に『ホンモノ』なら、さっきのメールも事実の可能性が高い__『りんくさん』もレジェンドに会った時はこんな気持ちだったのか……いや、あの時は、『メモリア』たちの事情を知った上で、エンカウントのための いわば 予防接種をした上で会っているわけで……」

 

「えぇっと……?」

「! ……」

 

 ちゆが戸惑いつつ、もう一度声をかけると、彼はハッとしてちゆに目を向け、唐突に言った。

 

「__そこに……あなたの後ろに、ペギタンはいますか?」

 

「「!! ……」」

 

 なぜ、一般には知りえないはずの場所・ヒーリングガーデン……からきた一妖精を、この人は知っているのか__ちゆは瞠目し、逡巡した。

 ペギタンも迂闊には姿を見せずに、ちゆの背中で息を潜めている。

 

 

「あっ__不躾で申し訳なかったけど……」

 

 その人は、やや慌てたように言葉を付け加えた。

 

「あなたが、ホンモノのキュアフォンテーヌ……もとい、沢泉ちゆさんであると信じて、今()()()()()起こっていることの説明を__の前に、ひとつ質問いいですか?」

 

「あっ、はい…… ツッコミどころがたくさんあるけど、今は我慢我慢……

 

「じゃあ……あなたと一緒に、こっちに来た人って、他にいるんですか?」

 

 一緒に来た人……ちゆは確信が持てないながらも答えた。

 

「友達の、のどかとひなた……そして、そのパートナーのラビリンとニャトランも来ているはずです」

()()……?」

 

「急にワープホールで飛ばされてしまったので、どこにいるか、いったい無事なのか、何も……何も、わからなくて…………!」

 

 自分で言っているうちに、ちゆの双眸には涙がにじんでくる。 そうだ、私はずっと____

 

 ちゆが自分の気持ちに気づきかけている間も、その人はなにやら考えているようだ。

 

「そうか、じゃあ、()()()()()とはまた別なのか……でも、『フォースウォール』を超えてくるなんて…… !! ……まさか、この世界自体__」

 

 そこまで考えがいったときに、その人は涙をこらえるちゆに気がつく。

 

「あっ____ちゆちゃん、もしかして……行くあてない感じ……?」

「はい (。_。)」(即答)

 

「う、うわぁ……どーにかしようにも、ここって九州だしなぁ……」

 

「あぁ……そうですか、九州ですか____九州!!??

 

「今、九州って言いましたペェ!!??」

「今、言いましたって言いまし((ry」 「みらい、抑えて抑えて……!」

 

「__ペ、ペギタン……!」

「しまった、姿を見られたペェ……!」

 

 慌てふためくふたりに、その人はポツリ。

 

「でもそれって、今更なよーな……」

「「……」」

 

 しばし沈黙が流れるも、ちゆはその人に勢いよく頭を下げる。

 

「事情にお詳しいなら、ありがたいです……! お願いします、どうか、しばらく私とペギタンをあなたのところにおいてくださいませんか!?」

 

「あっ! ぼ、ボクからも、お願いいたしますペェ!」

 

 そんなふたりに、その人は苦笑を浮かべる。

 

「と、とりあえず顔をあげて…………プリキュアに直接会うことができるなんて正直、嬉しいこと極まりないんだけど____このまま連れて帰ってしまうと、()()()()()()()()()()()()()んだよなぁ 誘拐で ……」

 

   デデドン!!(圧倒的絶望)

「「!! ……((゚Д゚;))」」

 

 ………… orz(↓ちゆ)  orz(↓ペギタン) …………

 

 

 

 

 

「あぁ、でも……」

 

 取り繕うように、その人。

 

「ちゆちゃんとペギタンの場合は、この世界の人じゃないわけだから……なんとか秘密裏にイケるかも……」

 

 ちゆとペギタンは目を丸くして顔を上げ、目前の人物を凝視した。

 

 

 その人は______ニヤリ______と、()()()()()()()いたずらっぽい表情(カオ)をしている。

 

 れっきとした大人……のハズなのに、どこか同じ10代(Teenager)のような純粋さと溢れ出るワクワク感を、ふたりは彼に見た。

 

 

「今から色々説明しよう。 今から__あ、自分のことは『稚拙』とでも呼んでほしいな。 ネット上で『駄文書き』を趣味にしているからね__稚拙の家に来てくれる?」

 

「「……はいっ! よろしくお願いしますペェ !! 」」

 

 

 

 ____私たちは、この人に__稚拙さんに、聞かなきゃいけないこと、聞きたいことがたくさんある。

 

 事情を聞いて、私たちにもし、何か(お手当て)できることがあるならば、その時は______

 

 

 

 

 

 そう胸のうちで決意しながら、ペギタンとともに、ちゆは駆け出した。

 

 

 

 




 
で、できたぞぉ……
次はひなたちゃんじゃオラらっしゃぁい!!


重ねて感謝いたします、お姿お借りすることへのご許可、ありがとうございます……!

 


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第3話 双光と (Darya)❤ミラクルセッションのはじまり!

 

私の神戸住まいは自称です。
その時々に、横浜在住って言ってみたり、神戸って言ってみたり。
やたら地名に詳しいのは、胸張って自称できるように下調べしたんです。
あと、地味に方言が混ざってるのは仕様。

何だろう、なんだか私(と、地の文)のテンションが全体的におかしい気がする……
文字の使い方も、何かいつもより、くだけてるし。
『自分を描写する』って、ここまでやりづらいのか……。

 


 

 

 

 ____神戸市・中央区・脇浜海岸通

 

 

「遅刻じゃないけど曲がり角~♪」

 

 閑散とした街の中、高校生と見受けられる少女が、年に似合わず 落ち着きなく ウキウキしながら走っていた。

 あからさまに暇そうなところを見る限り、息抜きに散歩にでも出たのだろう。

 

「とっても素敵なぁ~……出会いの予感っ!!」

 

 通称『いるか公園』のところの曲がり角で少女は顔を輝かせ、スケートのごとくスライディングする。

 

「なぁんて、プリキュアや絵本みたいには____」

「おいっ、ひなた、ひなたぁ……!!」

 

「____んぇっ?」

 

 少女が滑り台横の木造の床に目を移すと、栗毛のツインテールの女の子が倒れていて、彼女を揺さぶっているのは、しゃべるトラ猫……。

 

「き……!」

 

 にわかには、信じられなかった。

 

「き、き、き……!!」

 

 しかし、それは現実に、目の前で起こっている!!

 

「キラやば~~~~っ☆」

 

 少女の歓喜の叫びは、公園中にとどろいた……。

 

 

_____________________

 

 

 

「ん、んむぅ……?」

 

「おっ、起きたな」

「よかったぁ~」

 

 ひなたが薄目を開けると、ふたつの人影がぼんやりと見えた。

 続けて、それらのものであろう、自分を気遣う声も聞こえる。 そのうちのひとつはよく聞き知っている。

 

「あ、ニャトラ~ン……? ____と、誰?

 

 完全に覚醒したひなたは、パートナーの隣に、当たり前のように見知らぬお姉さんがいることに気づく。

 

「あ、私は____大輪愛(だりあ)って呼んで! 小説サイトのコテハンがこれなんよね」

 

「OK! じゃ、だりあん ね! ____じゃなくて! ニャトラン、これどーなってんの!?」

 

 ひなたは、存在が一般には秘密になっているニャトランが、普通に知られてしまっていることに慌てふためく。

 

「いーんだ、いーんだ。 ()()()()は、どうやら特別みたいだからな」

 

「せやで~! 私、ニャトランのことも、ひなたちゃんのことも、バーッチリ分かっとぅから、安心して!」

 

 詳しい事情はあとで説明するから、と、大輪愛。

 

「そ、そっか……」

 

「うん! ところでひなたちゃんさ、さっきニャトランと相談してたんねやけど____拠点とかどないすんの?」

 

 拠点……。

 ひなたはわずかな間、考えた。 聞くところによると、ここは神戸市だという。

 ____コーベがカンサイのヒョーゴにあるのは、私だって知っている。 いかに すこやか市から離れているか、だって。

 

「どーでもいいこと言うが、正確には『近畿地方』だからな……」

 

 ____今のツッコみは もーしわけないけど 聞かなかったことにしよ。

 ってゆーか、それよりも……!!

 

「うぁあぁあぁあぁっ!? おウチがな~いっ!!」

 

 そこへ、大輪愛の ()()()() () ()()()()

 

「ついでに言っとくと、この世界には『すこやか市』自体あらへん(無い)よ」

 

「やめてぇ~!(建前) やめてぇ~!(本音) 私のライフが0になっちゃ~う!!」

 

 一応まだHPはあるらしい。

 

「イ㌔、ひなた……」

 

 ニャトラン自身も落ち込みながらフォローをする____フォローになってない。

 一方ひなたは、生来のノリの良さを発揮しつつも、お先真っ暗な現状に悶絶する。

 

「うぅ…………オワタ……オワタ……」

 

「ひ、ひなたちゃん……! あっ、せや!!」

 

「どーした大輪愛? なんか有効な策でもあったか?」

 

「アリアリの大アリクイっ! その人にコレを信じてもらえるかどうか分からへんけど____憧れの『ケータイ小説家の先輩』がいるんよねっ」

 

 大輪愛はスマホを立ち上げ なお、現実のだりあんはスマホ持っていない模様。うらやまぢぃ。 某小説サイトの『メッセージボックス』を開いた。

 

ほるぁ((巻き舌))っ!!」

 

「おぉ……ってか、その無駄な『r』音は____まぁいいや。 で、どういう文面にすんだ?」

 

 それを聞かれた大輪愛は、両手を広げ、バッカでかい声で答えた。

 

「稚拙さん大変です! 私の前に、平光ひなたちゃんとニャトランが現れました!! どーすればいいですか? 知恵をお貸しくださいっ!!」

 

「へぇ~チセツ・サンって言うんだ~」

 

 ブラァッ!!!!

 

「大輪愛お前……頭いいって言ったの、嘘だろ……」

 

「いやぁ、流石にもうちょっと詳しくは書くけど……」

 

 ニャトランに呆れられたショックもあって、大輪愛は顔を強張らせながらスマホで文章を作成していく。

 

「____よっしゃぁ、ポチっとな! はい、送られちゃあっ」

 

「これで何とか進むかな?」

 

「大丈夫かよ……」

 

 ※やっぱり、ちゆちゃんたちがいなかったら駄目だった。

 

 

「万一、何の進展もなかったとしてや。 やっぱり、ふたりの衣食住をどないするかが最優先事項になるなぁ」

 

 私のおウチは厳しいからあかん(駄目だ)よ、と大輪愛。

 

「ま、思いつかないから、ここまでして悩んでんだけどな」

 

 ニャトランの言葉を聞きながら、大輪愛はネットをいじっている。

 

「あっ、やっぱ、あかんかった。 そもそも中学生ひとりのみの利用自体、通常でもあかんねやけど。 青少年の家・全28施設で、とっくのとうに受け入れ停止しとぅ」

 

「青少年の家って____ほら、野外活動とかでいく、すっごく安い宿泊施設?」

 

 せやね、と、表情に影を落としつつ大輪愛。

 

 ____そもそも、ひなたはこの世界に起こっていることをまだ説明されていないため、利用停止だとか暗い表情で聞かされても、ワケがわからないのだが……それでも、一大事だということは汲み取り、まじめな顔をして考えた。

 

「う~ん、青少年の家で思い出したんだけどさ? この世界だって、自然がいっぱいあるんでしょ? エレメントさんっていないの?」

 

「「!! ……」」

 

 そ れ っ ち ゃ 。

 

「よっしゃ! 早速 診察器を……!」

 

 ニャトランはヒーリングルームバッグにもぐりこみ、そのまま近くのパンジーに____

 

『あら……なにが起きているんですか? あなたたちは……?』

 

「嘘でしょ「嘘だろ「うせやろ、いたぁ……」」」

 

 唖然としたものの、ひなたが真っ先に花のエレメントさんに名乗る。

 

『プリキュア……有名な伝説です。 まさか、本当にいたなんて……!』

 

 エレメントさんは、ニャトランから簡潔に事情を聞くと、『わかりました』とうなずいた。

 

『六甲山のほうの木のエレメントさんにコンタクトをとってみましょう。 きっと、お二方に自然の隠れ家をつくってくれるはずです』

 

 それって、マジックツリーハウス的な? そんな感じですね、『マジック』はいりませんし、ありませんが。 ひなたとエレメントさんの間で会話が交わされているのを横目に、大輪愛とニャトランが。

 

「六甲山っていうのは____ここが中央区なんやけど、HAT神戸を出て、中央小学校、葺合(ふきあい)警察署と北に進んでいけば……ううん、もっとわかりやすく、新神戸駅を目指して。」

 

「とにかく北に行って、新神戸だな!?」

 

「うん、JRの新幹線の。 その西に、ハーブ園山麓駅があるから____ちょうどお小遣いが入ってたんだ。 これ使って____神戸布引ロープウェイに乗って、とにかくハーブ園!」

 

「そこから、人目のつかないような森に入るんだな」

 

 しばらく行ってないから、どこら辺の森がいいかはわかんないけど、ともかくそうして。 大輪愛はニャトランにお金をしっかりと預けながら相槌を打った。

 

 

「ニャトラーン、何とかなりそうかな……?」

 

「とりあえずはバッチリだ!」

 

『では、六甲の布引の、木のエレメントさんに連絡をとってきます』

 

 喜び合う、ひなたとニャトランを見て、花のエレメントさんは北へ飛んでいった。

 

 

 

 

「こんだけしかできなくて、申し訳ないんやけど……また困ったら、いつでも言ってねぇ?」

 

「何言ってんの~! めぇっちゃ助かったよ~!」

「おう、ありがとな____」

 

 

 

 ____ド──────────────────ンッ!!!!

 

 

 ____コロナビョーゲン!!

 

 

 

「「「!!??」」」

 

 

 それが____ひなたたちと、未知の病原体との、ファースト・コンタクトだった。

 

 

 

 

 

 

「コロ、ナ……?」

 

 

 




 
あぁー、親の目があると、書きたくてもなかなかかけないんじゃあー……

次は、のどかちゃん&ラビリン&32期さん!!
どうぞよろしくお願いします!

 


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第4話 私たちはお医者さん❤ 新型コロナウイルスの陰

 
お待たせしましたぁぁぁ!!

現在、4月30日でございます。
なんでこんな早く書き始めているのに、遅く投稿するのか(もっと書きだめができないのか)というと____親の目ですね。
未成年だからね、しかたありませんね……!(orz)


あと、なんで、のっけからこんな暗い話になった!!??

 


 

 

32期(さつき)さん、この世界では、今何が……?」

 

 現在、お昼時。

 東京の某病院に隣接する広場にて、のどかとラビリンは、自分に声をかけてきた医療従事者・32期(さつき)さんと名乗る男性に、詳しい事情を伺っていた。

 

「わかりました。 ……ことの始まりは、2019年____昨年の大晦日のことでした。」

 

 中国の武漢というところで、原因不明の肺炎のクラスターが発生。 それによって、翌日、WHOは危機対応グループを立ち上げた。

 

「最初は……『人から人への感染はない、または限定的』だなんて言われていました。 でも! ____いや、話を続けましょう」

 

 1月13日、タイで感染確認。 ついに外国へと感染は拡大してゆく。

 そして、『限定的な人から人への感染が起きる可能性』があると、WHOでは述べられた。

 

 その1週間後には、武漢で人と人との間の感染が起きた 証拠(エビデンス) があると指摘され、同日とその翌日、流行が国際的な問題に当たるかを会議した。 しかしそこでは決まらず、30日に再召集され、それに該当すると、決定を下すこととなる______

 

「その日、そのウイルスに名前がつけられたんだね……」

 

「ラビ。 『COVID-19』、通称・新型コロナウイルス……と」

 

「うん……2月中旬には、米・中・独・日・韓・露・ナイジェリア・シンガポール・カナダの専門家チームが武漢を訪問して____その同時期には、WHOなどが、2番目に流行していたイタリアへと行きました」

 

 日本でも、クルーズ船のクラスター(感染集団)の対応に追われており、いよいよ国内で感染者も出始め、マスクが品薄になり始めた。

 

「中国の春節の時期と重なっちゃって、旅行に来た中国の人から感染が広まっていったのだと思われます」

 

 世界の経済は滞り、医療従事者は最前線でのウイルスとのハードな戦いを繰り広げる。 テレワークや学校の休校も行われたが、それでも仕事柄、休めない人だってたくさんいる____

 

「学校、お休みになるんだ……」

「のどか……」

 

 コロナの流行は新年度前から、とっくに始まっていたのだという。

 

 

 

 ________もし。

 

 もし、流行が、私たちの世界で起きていたのなら。

 病後の体調も回復して学校へ行くことを楽しみにしていた、新年度前の私は____どんなに、絶望したのだろうか。

 

 ラビリンとも、ちゆちゃんともひなたちゃんとも、ペギタンともニャトランとも、そしてラテとも、出会うことなく。

 小箱みたいな狭い病室のなかで、外に出ることも許されず、院内感染におびえながら、ただひとり。

 親とだって、濃厚接触を避けるために面会を謝絶され、会うことができない。

 

 病院の先生や看護師さんたちが、日に日にやつれていく。 私はそれを見てるだけ。

 

 私に自由も成す術もなく、本当に、ひとり。 ひとりぼっち______

 

 

 

「きっと、この世界にも、いるはずだよね、そういう子が……」

 

「____いますよ。 実は……私の担当の女の子なんです」

 

「そんなぁ……!」

 

 ラビリンが悲哀をにじませ、彼の話に大きい反応を見せる。

 そんな中で、のどかは険しい表情で、ギリ……と手を強く握り締める。

 

「わたしっ______私、この世界のみんなを守りたいっ!!」

 

 32期さんとラビリンが、のどかを見つめる。

 32期さんは、ただただ驚いているようであるが、ラビリンは(かす)かに優しい笑みを浮かべている。

 

「私たちプリキュアの『お手当て』の力は、この世界のウイルスに通用するのか。 それはまだ、わからないけど……!」

 

「ラビっ! ラビリンたちに、できることしたい____ううん、折角この世界に来たんだもん、一緒にするラビ!!」

 

「ラビリン……うんっ!!」

 

 手を取り合うふたり____だが、そこへ厳しい言葉が浴びせられる。

 

「いけません……!」

 

「「!? …… 」」

 

「協力してくれるのは、嬉しいです、とっても嬉しいですけど! 危険すぎます、あまりにも!」

 

 それは、実際にコロナと戦う、32期さんからの言葉だった。

 

「コロナと戦おうとして、無念にも感染したヒーローだっているんだ……それに、のどかちゃんやラビリンには、向こうの世界に必要としてくれている存在があります!」

 

「32期さん……」

 

「ラビ……」

 

「コロナに対応できる人員は____足りないながらも、ちゃんといるんです。 でも、メガビョーゲンのお手当て部隊は、あなたたち、ヒーリングっど❤プリキュアしかいないんです!!」

 

 彼は、これ以上の言葉をつむぐのをつらそうにしながらも、最後まで叫ぶ。

 

「もっと……もっと、自分たちの体だって、大切にしてくださいっ!!!!」

 

 お願い、します…………!! そう、彼は頭まで下げた。

 

「のどか……どうするラビ……?」

 

 ラビリンに真っ直ぐに見つめられる、のどか。

 いまさら考えるまでもない。 のどかの心は、決まっていた。

 

「ごめんなさい______私、私たちは……退く訳にはいきません!!」

 

「のどか!」

 

「のどかちゃん……!?」

 

 ラビリンが目を輝かせる一方で、32期さんは体を起こし、怪訝な表情でのどかを見つめる。

 

 

「私たちだって、お医者さんだもん! 地球のどこかで苦しんでいる誰かがいるのなら____」

 

 のどかとラビリンは互いに頷きあい、声をそろえて宣言した。

 

「「絶対、絶対っ______立ち向かってみせるッ!!!!」」

 

 

「! ……のどかちゃん、ラビリン……! ____はは、仕方ないですね」

 

 アニメの中のあなたたちも、そういう意志の強い人たちでした。 と、彼は呟いた。

 

 

「一緒に、頑張りましょうっ!」

 

「____はいっ!」

「____ラビっ!」

 

 3人の心が重なった、そんな矢先だった。

 

 ______コロナビョ────ゲン!!!!

 

 

 ()()が、目の前に現れたのは________

 

 




 

ふぃー、何とか雰囲気をV字回復できたかなぁ。
大筋の大筋しか決めてなくて、本当に行きあたりばったりで申し訳ありません。
さて、次は誰の活躍を描こうかな……?

(追記)
引き続き、のどかちゃんパートの予定です。 お楽しみに!

 


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第5話 スゴイ・セカイ・トウライ❤時を駆ける友達!

 


とぅえぇ↑いっ(投影)! フューチャータイム(独特の優しい言い方)

……例のWさんは本編にはまったく関係ございません。


遂に、時を駆けるあの兄妹(のお名前)のご登場ってことで、緊張でテンションがおかしくなり、こんなサブタイに……
お兄さんのほうは、ライダー好きだしセーフ? セーフ……?

どうしよっかな、サブタイ変えるかな……?

  ※変えませんでした。


 


 

 

 のどかとラビリンと32期さんは、唐突に目の前に現れた怪物に動揺した。

 

「何だこれは……まるで『メガビョーゲン』じゃないか……!」

 

 めちょっく……と、32期さんは続けて呟いた。

 

「妙にラビリンたちのことに詳しい理由は、後で聞くことにするラビ!」

 

 今は____ラビリンに顔を向けられたのどかは、力強く頷く。

 

「うん……知らない相手だけど、32期さんの言うとおりメガビョーゲンにそっくりなら、立ち向かえないことはないよね!」

 

 32期さんは、「何でこんなことになっているのか、まだわかりかねるけど」と前置いて。

 

「『コロナ』と名乗る怪物だから、もしかするとプリキュアにも感染するかもしれない____気をつけてください!」

 

「ありがとうございます!」

「任せるラビ!」

 

 32期さんは、危ないから離れててください! わかりました、応援しかできないのが歯がゆいですが、精一杯勝利を祈ってます! 大丈夫、勝つ気で挑むラビ! 応援があるだけで、すごく力になります! ____のどか、32期さん、ラビリン、再びのどかの順番で、そんな会話が交わされてから、のどかとラビリンは横に並んで目前の敵をキッと見据える。

 

「……いくよっ」

 

 のどかがどこからかヒーリングステッキを取り出すと、ふたりから半径3メートルほどの空間が、優しいピンク色の空間に染まる。

 それと同時に、のどかの服がピンクのノースリーブのワンピースに変わる。

 

 

 32期さんは、目の前____とはいっても、若干距離は離れているが____で始まった生の変身場面に、感動を覚えていた。

 いつもはテレビなど、なんらかの媒体越しのそれとは、迫力がまるで違う。 『地球のお医者さん』の変身だからか、ふたりを取り巻く自然が、地球全体が共鳴しているような気さえする。

 

 この純粋なオーラ……近頃の沈んだ街の雰囲気とはまるでかけ離れている______やっと、はっきりわかった。 これは、このプリキュアの変身空間は、何人にも侵されず、そして万人の心を包みこむ、いわば絶対聖域なんだ________

 

 

 のどかがステッキをかざすと、ラビリンが発光するそれへ飛び込み、融合をする。

 

「スタートっ!」

 

「____プリキュア! オペレーション(手術開始)!!」

 

 『花のエレメントボトル』をステッキにセットすると、ふたりは、「キュアタッチ!」____心を重ね合わせた。

 

 

 途端、花びらが優雅に舞い上がり、広場全体を包み込む。

 その中で、のどかは白衣を纏い、『普通の女の子』から『お医者さんのひとり』に変化を遂げていく。

 

 そして、白衣の少女とラビリンは、まるで卵から生まれるかのように____その姿を現す。 ブワッ……! と、空気が花びらとともに揺れた。

 

 

 

「「重なるふたつの花!」」

 

「キュアグレース!!」

「ラビ!」

 

 

 

   プリキュア________

 

 近いようで遠いところにあった、その存在が、今、3次元に爆現した________

 

 

 

 いつの間にか公園には、いわば野次馬たちが集まってきているが、誰も彼もが、公園の内側には入れずにいた。

 謎の怪物が危険だから____それも理由の内だ。

 だけど、本当の理由は、その怪物に対峙する、その少女______輝かしいかな、その姿は、大人の社会にはあまりにもまぶしすぎて…………。

 

 グレースとラビリンは、頷きあうと天高く跳躍し____日の光を背中に受け、グレースの輪郭から溢れた光が、後光のように人々を照らした____鋭い蹴りを、手始めに食らわせる。

 

「コロナっ……!? ビョーゲン……っ!」

 

 コロナビョーゲンは、倒れそうになるものの、踏んじばって体勢を立て直す。

 

「さすが、未知なだけあって強いラビね……」

 

「それでも、私たちの攻撃は効いてるみたいだよ、頑張ろう!」

 

 広場の、病院側の隅っこの木陰で、32期さんはしばらくグレースの勇姿に見ほれていたが、ふたりがイマイチパワー不足なのがわかると、花びらの小雨の中、あらん限りの声をマスク越しに張り上げた。

 

「フレッフレッ、プリキュア~~~!!!!」

 

 

 びっくりしたのは、道路側にいた野次馬たち______それでも、その中にいた、病院帰りか何かであろう子供が、

 

「プリキュア────!! 頑張れ────────!!」

 

ひとたび声援を送ると、一緒にこぶしを振り上げ応援する者。 時勢と人の目もあってか、胸の前で手を組んでひたすら祈る者______

 更に、騒ぎを聞きつけた人々も、どんどん加わっていく。

 

 みんなの想いが、渦になって、大波になって__________

 

 

「ぁ…………!」

 

 グレースは、自分の両こぶしに力がこもっていくのを、はっきりと感じていた。

 ふと、ラビリンを見る。 ヒーリングステッキは厚いオーラに包まれていて、パートナーはその中で微笑んでいた。

 

「「みんな! ありがとう~!!」」

 

 群集から、ワッと歓声があがる。

 小さいお友達や、()()()()たちは、目の前の少女を瞬時にキュアグレースと認め、感動と驚きの中、「プリキュア~!」となおもエールを送り続けた。

 

 

 

「キメるよ!」

「ラビ!」

 

 

「エレメントチャ────ジ!!」

 

 グレースが叫ぶと、舞っていた花々がステッキの元へと集まっていき、花のヒーリングゲージが上昇していく。 それを、ふたりで声をそろえて確認した後______

 

 

 

 

プリキュア!!

 

 

ヒーリング_________

 

 

 

フラワ────────!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドッッッ________シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!

 

 

 

 荒ぶる花の、波、波、波 ______________

 

 

「ヒーリングッバァイ…………」

 

 

 

 ワァァァァァァァァァァァァ……________固唾を呑んで見守っていた人々が、緊張から解き放たれ、興奮と歓喜の雄たけびを上げた。

 

 

 

____________________

___________

______

____

__

 

 

 日もすっかり落ちて______

 

 

「こんな時間まで待っててくれてて、ありがとうございます」

 

「いえ、お仕事お疲れ様でした!」

 

 看護師さんは大変だって伺ったし____のどかがそう付け加えると、彼は、でもやりがいのある仕事ですよ、まさかこんな大変なことになるとは思ってませんでしたけどね、と苦笑した。

 

「大変なことといえば、あのコロナビョーゲン……またじっくり話し合わなきゃいけないラビね」

 

 コロナウイルスと関係があるなら、確かにヤバいものかもしれないし……ラビリンは、のどかの肩で思案するように仰ぎ見た。

 

「それじゃ____私の家に行きましょうか」

 

「あっ、ま、待ってください!」

 

 ん? と、32期さんは振り向き、のどかを見る。

 

「こんな急にお邪魔して……大丈夫なんですか? おウチの人とかは……」

 

「あぁ」

 

 32期さんは、大丈夫ですよと含み笑いを浮かべ、理由を話し出した。

 

 

 

____________________

___________

______

____

__

 

 

 

 ____前々日の夜・32期さんの自宅にて

 

 

「ふぅ、それじゃ、そろそろ『劇場版』の下書きでも……」

 

 翌日の準備も一通り終え、やっとゆっくりできていたその時、ベランダ側の窓から、コツコツという鈍い音が聞こえた。

 

 ____これは……()()()()()()()()()()()

 

「ヤバいな……」

 

 隣の部屋から、家族が「どうしたの?」と呑気に声をかけてきたが、緊張ゆえの生返事をしてから、抜き足差し足で窓へ向かう。

 そして、カーテンをシャッ! と勢いよく開け___________

 

「____はっ?」

 

 

 窓の向こうには、よく見知っているふたつの人影と、SFチックな船があった……。

 

 

 

____________________

___________

______

____

__

 

 

 

「えっと……」

 

「どういうことラビ?」

 

 目を点にする のどかとラビリンに、32期さんは、順を追って説明しますね、と前置いた。

 

「この世界は______()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんです」

 

 アニメ……!? と、ふたりは頭にビックリマークでも浮かべているような顔をする。

 

「録画しているので、気になれば、あとで見てもいいですけど……まぁそういうことで、私たちは、いろんなプリキュアのことを知っているわけです」

 

「んっ? 今、いろんなプリキュアって言ったラビ?」

 

「それって、私たち ヒーリングっど❤プリキュア以外にも、プリキュアがいるってこと!?」

 

 すると今度は、32期さんが、えっ! という顔をした。

 

「確認ですけど、のどかちゃんたちは、『ミラクルン』という精霊を知っていますか?」

 

「「ミラ、クルン……?」」

 

 どうやら「No」なようだ。

 32期さんは、「なるほどそういうことか……」とひとり納得し、

 

「精霊云々はこっちの話ですから、忘れてください____では」

 

と話を続けた。

 

「それで、アニメのプリキュアを長年視聴している私は、とある小説サイトで、独自のプリキュアのお話を作っているんですけど……」

 

 

 ____ヴァールハイト・プリキュア。

 

 少年 時生(ときお) (かける) と、小学校入学を前に亡くなり、訳あって駆と体を共有して『ふたりでひとり』になっている、妹・(たね) が主人公のお話。

 プリキュアが歴史から消され、クラスメート(大事な友達)も消え______ぶっちゃけありえない異常事態の只中に、アカシック王国からやってきた コルーリ と出会い、()()()()()()()()()、輝く未来の キュアシード に覚醒した。

 

 そこから、各 平成プリキュアの存在を固定し、『ネツゾーン』の魔の手から救済するため、ふたりは、時間を越えられる船・プリキュアカーシャに乗って過去へと旅立っていく______

 

 

 

「あーっ、わかった! 窓の外に浮かんでいた、その船が____」

 

「そうです、プリキュアカーシャ、だったんです」

 

 でも、変ラビ! と声があがる。

 

「小説の中の人たちが、どうして……」

 

「それは私にも、さっぱりなんですけど____」

 

 確かに、目の前に現れて、言ったんです。

 

 

 ____僕たちは、少し未来のあなたに頼まれて、伝言に来ました。

 

 駆くん。

 

 ____明後日、世界が歪んで、『ヒープリ』の のどかちゃんとラビリンが、あなたの前に現れるはずなんだよ!

 

 種ちゃん。

 

 ____今、この時代は大変なことになりかけてます! バッチリ彼女たちを保護できるよう、準備を整えておいてください!

 

 コルーリ(人間態)。

 

 

 ____それじゃあ、間違いの歴史を正すために、『他の世界線の時間旅行者』にも声をかけてきます。

 

 ____あと、『消滅してしまった伝説』にもね!

 

 ____そちらの世界を、どうかよろしくお願いします! ……ふたりとも、行きますチュン!

 

 ……こうして、鳥のような姿に戻ったコルーリが舵をとり、プリキュアカーシャはあわただしく飛び立っていってしまった。

 

 

 

「夢、だったのかな……と、一瞬思いました。」

 

 でも、見えたんです、と彼。

 

「プリキュアカーシャが時間を越える時に現れる、美しい碧色の流れ星______」

 

 確信した。 ありえないようなことでも、これは確かに現実だと。

 

 

「そして私は、駆たちを信じて今日のために準備をし……現に、目の前にあなたたちがいる」

 

 そう、彼にとっては、アニメキャラの彼女らが。

 

 

()()()()()()()()のはずの新型コロナウイルスが、なぜこうやって、メガビョーゲンのような姿で現れたのか____きっと、彼らが言っていた『世界の歪み』に関係があるんだと思います」

 

「だったら、少しでも被害を押しとどめられるように、尚更できること、頑張らなきゃね!」

 

「ラビ! 世界を任されたんだもん、精一杯やるラビ!」

 

 そんな気合のこもったふたりを見て、自然と笑顔になった32期さんが、そろそろ家につくと言う。

 

「のどかちゃん、看護師仲間の娘さんってことになってるので……よろしくお願いしますよ?」

 

「はいっ!」

「ラビ!」

 

 

 感染予防にとゴム手袋をはめてドアを開けた32期さんに促され、のどかとラビリンは、暖かな光の漏れる家へと、入っていった。

 

 

 

 




 

なんかわりとコロナが早めに収束しそうで嬉しいけど、現実の状況に執筆が追いつかず、あせっている模様……。
完結させる……がんばる……!!

あと、来週分が間に合うかどうか怪しくて、意気消沈……(現在5月15日)
なんとか書いてみせ____たい!

 


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結ぶ、繋がる____編
第6話 LINK ザ・ネット❤ みんなの影を追いかけて!


 
えー、5月18日です! 24日投稿分書き始めました!
間に合うかなぁ……(遠い目)

実は、この世界云々の説明は、このお話でやる予定だったのですが……遅筆すぎて尺を縮めた結果です、すみません……。

 


 

 

 ____稚拙さんの自宅・リビングにて

 

 

「いや、決して家出中を勝手に保護したとかそういう訳ではなく……」

 

 ちゆ(とペギタン)は、必死な顔で説明している稚拙さんの隣で、こうなった経緯を思い返していた。

 もっと秘密裏にやるんじゃなかったけ。 なんでこうなったの?

 

 

__________________

________

____

__

_

 

 

 ____最初に倒れていた公園に戻って

 

 

「う~ん、おふとんやらお着替えやら色々準備しなければ……」

 

「あ、あの……」

 

 ん? と思案をやめてこちらをみる稚拙さんに、ちゆは遠慮がちに申し出た。

 

「もしもダメだったらいけないし……別にドラえもんみたいに、こっそり押入れで寝ちゃうとか、そういうのでもいいんですけど……」

 

「それは個人的によろしくないんだよね」

 

 結構きっぱりと却下された。

 

 ____ちゆとペギタンは、公園への道すがら、ここはどういう世界なのか(前話参照)すでに説明を受けていた。

 そして、話しているうちに、稚拙さんは、精神が若々しいばかりでなく、『プリキュアシリーズ』などの好きな作品に影響されて性格がとんでもなく真っ直ぐに育ってしまったことが判明した。

 たぶん____いや確実に、向こうからしたら好きなアニメキャラである ちゆたちをぞんざいに扱うことは、稚拙さんとしては許せないのだろう……。

 

 ______もしも本当にやらかして警察沙汰になったら、私とんでもなく責任重大なんだけど……。

 

 自分たちのことを大切に思ってくれていることを非常にうれしく感じる反面、事案だけはなんとしてでも回避しようと、更なる覚悟を決める、ちゆだった。

 

 

「そうだなぁ、こういう設定はどうかな?」

 

 流石はベテランの物書きさんというところで、短時間で ごまかし方を考えてくださった。

 

 

 

 ____ちゆの父親がやむなく数日出張になり、片親ゆえに保護者が不在になる彼女を心配した親が、叔母に連絡を取り、しばらく叔母宅に預けられることになった。

 

 陸上部員のちゆは(ここは事実! ただしハイジャンプの選手)、トレーニングがてら (あとコロナの予防も兼ねて)、わざわざ下関から関門海峡を通って、九州のここまで歩いて(!)やってきた。

 

 しかし、実は叔母は最近、山口県内に越して来ており、ちゆはそれを知らなかった!

 

 所持金を見るが、帰りも歩くにしても、とても数日分宿泊できるような金額ではない。

 途方に暮れていたところを、稚拙さんが保護した______

 

 

 

「なかなかブッ飛んだ設定ペェ……特に徒歩で州を越えたところが

 

「仕方がないじゃない、(第四の壁の外も考慮して)厳密に言っちゃうと、これ考えたの、あの稚拙さんじゃなくて作者(大輪愛)なんだから……」

 

 

 すみません、そこは何とか、お許しください……。

 

 ____と、三人称視点に戻って。

 

 

「で、その『叔母さん』が、稚拙の知り合いってことにするか否か……」

 

「あっ、それはもちろん……」

 

「ここはどうするペェ?」

 

 3人で色々と話し合い、準備を重ね____

 

 

 

__________________

________

____

__

_

 

 

 ______今に至る、のだが。

 

 

 どうも稚拙さんは、性格が災いしてか嘘が下手らしく、「目線が不自然に左上を向いている」とか何とかで、すぐに ご家族に怪しまれてしまった。

 

 ここは自分から説明に行かなければ!

 これ以上頼り切りになることに、不安になったちゆは、リビングへとお邪魔した。

 

 ____私自身、ごまかしやポーカーは得意じゃない、けど……。

 

 ちゆはポケットのひとつに軽く触れる。

 万が一の時のためにと、ペギタンが待機していたが、パートナーがいるだけで、彼女としては相当安心できた。

 ペギタンが、羽を小さく動かし、タッチを返して来る。

 

 大丈夫、大丈夫よ________

 

 

「あ、あのっ! こちら、父が本来叔母にあてた手紙なんですけどっ!」

 

 ちゆが差し出した便せん入りの茶封筒は、先ほど皆でコンビニにて一式買い揃え、工作したものだった。

 

 それっぽい文章を稚拙さんが考え、筆跡の関係で、ちゆが中身を書いた。

 

 

 嘘もつけないほど素直な人なのに、こういうところで用意周到なのは、どういうことなんだろう____という考えがよぎりもしたが、今は……と、ちゆは、ただ、許しがもらえるようにひたすら祈っていた。

 

 

 手紙を読み終わった稚拙さんのご家族が、茶封筒に手紙を戻そうとすると、「一万円が包まれている」ということに気づく。

 ちゆにとっても寝耳に水なことで、動転しかけたが、稚拙さんを見るとウィンクを返されたので、必死で話を合わせた。

 

「あ、あぁ~! 叔母に連絡を取ったら、それを渡せと言われたんですけど、そういうことだったんですね知りませんでしたっ!!」

 

 必死になりすぎて、最後の方は一息に言い切り、息がやや切れてしまったが。

 

 それでも、実際に知らなかったのが ちゆの演技力を高めたのか、3人の努力が功を奏し、やっと許可が下りることとなった。

 

 …………下りるのか。

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

「「「いっえ~~~い!」」」

 

 

 ちゆがお泊りすることになった客間にて。

 

「あぁ~……何とかなってよかった、ちゆちゃん、ありがとうね」

 

 本当に助かったよ、と重ねて稚拙さん。

 

「いえいえ、助けていただいたのは私たちなので……」

 

「本当に感謝しますペェ」

 

 いやいや、気にしないで。 照れ由来の苦笑とともに、稚拙さんは言った。

 

 

「あっ、そういえば、さっきの1万円なんですけど……」

 

 申し訳なさそうに ちゆが言うと、相手は「気にしないで」と笑顔で説明する。

 

「もうじき、政府から国民全員に、10万円ずつ配られる予定なんだ。 こんなお金の使い方ができるなら本望でしかないよ」

 

 最も、経済を回すためっていう、お金を給付した元々の政府の目的とは、ちょっと違うけどね?

 うふふ、と稚拙さんは笑った。

 

 

 

「そういえば、のどかやひなたはどこにいるのかしら……」

 

「ラビリンやニャトランのことも、心配ペェ……」

 

 緑茶の入った湯呑みを両手で包み込みながら、ちゆが俯くと、

 

「あっ! そういえば……!」

 

稚拙さんが、慌ててスマホをいじりだした。

 

「そうだこれこれ……稚拙の知り合いの女の子が、さっきメッセを送ってきて____」

 

 ほら、と、提示されたスマホの画面には、こう書いてあった。

 

 

新着メッセージ

  天爛 大輪愛 2020/4/26 10:01:12 ID:310554

 

 突然失礼いたします!

 にわかには信じがたいこととは思うんですけど、さっき、

キュアスパークル:平光ひなたちゃん と、ニャトランを保

護しました。

 何言っているんだろうと思われるでしょうが、これから

どうすればいいか、知恵をお貸しください!

 

__________

 

 

「ひなた……稚拙さんのお知り合いのところなら安心です」

 

「あっ! なんか来たペェ!」

 

「えっ? あ、本当だ……」

 

__________

 

 

  天爛 大輪愛 2020/4/26 13:13:13 ID:310554

 

 先ほどの件ですが、エレメントさんの支援もあって、ふた

りは布引のハーブ園あたりに移動し……終わったころじゃな

いかなぁ。 とにかく、そこを拠点にしてもらう予定です。

 

 あと、ネットニュース、取り急ぎ確認お願いします!

 きっと、私の言ってることが冗談でもなんでもないって、

わかるかと思います。

 

__________

 

 

 

「布引……なるほど、神戸か。 これはまた遠いなぁ……」

 

「でも、ひなたとニャトランの居場所がわかって安心しました、ありがとうございます!」

 

「そのネットニュースも、確認お願いしますペェ」

 

 任せて! と、稚拙さんは、検索エンジン『Curee!』のトップ画面を開く。

 

 

「!! ……これは!?」

 

 

 

 

まさかのプリキュア!? 戦うコスプレ少女、出現!!

※フェイクニュースではありません

 

 

本日(4月26日)正午頃、東京都・練馬区の某病院付近にて、謎の怪物が出現した。

怪物は、「コロナビョーゲン!」と叫んだ後、辺りを暴れまわろうとしたそうだ。

 

しかし、その直後、コスプレをした中学生ほどの少女が現れ、巨大な怪物を相手に戦いを挑んだ。

目撃者らは、彼女を、女児向けアニメのキャラクター『プリキュア』と呼び、少女にエールを送った。

 

応援の甲斐あって、怪物は消え去ったが、目撃者らの間では今でも、ある種の動揺と興奮が広がっている。

 

 

(以下 目撃者へのインタビュー)

 

「あれは確かに『キュアグレース』です! よくわからないけど、彼女がお手当てしにきてくれたんですよッ!」(30代男性)

 

「プリキュアかっこいい~!」(10代未満女性)

 

「コロナに加えて、怪物の出現だなんて。 不穏な世の中になってきましたが、今はもう、あの女の子のことが、ただただびっくりです」(40代女性)

 

「どういうこと? あれは何かの撮影じゃないんですか?」(10代男性)

 

「色んなアニメの放送が休止になったのに(ツイッターの)トレンド入りしてるから何事かと思ったんですが。 あれ、プリキュアだったんですか!?」(20代女性)

 

「久しぶりに、心から笑顔になれました。 ありがとう、プリキュア!」(10代女性・類似意見 他多数)

 

 

 

 

 

「「「…………」」」

 

 のどかちゃんが、東京の練馬に……。

 稚拙さんが、呆気に取られながら呟く。

 

「さすがのどかね……異世界に来ても、みんなのために一生懸命で」

 

 嬉しそうな ちゆの傍らで、ペギタンも言う。

 

「もしかしたら、ちゆやひなたと同じように、のどかにも協力者がでてくれたのかもしれないペェ」

 

 でも……ペギタンが、言葉を続けかけ、しかし詰まってしまう。

 ちゆが代弁した。

 

「えぇ、『コロナビョーゲン』これは、どういうことなのかしら……」

 

「ウイルスは本来『見えないモノ』____何があって『可視化』されたのか探らなきゃだね」

 

 

 稚拙さんが、そう言いながら、再び記事に目線を落としていると______

 

 

「ん……?」

 

 ______何かに、気づいたようだ。

 

 

「関東、病院付近……いや普通は『ありえない』……でも、もしかして、もしかすると……?」

 

 頼んだよ……! と、稚拙さんは、先ほどの小説投稿サイトを開いた。

 

 

 

 

 

  

~20分後~ ピッポーピッポー♪

 

 

「____来た……」

 

 何がですか? と、ちゆとペギタンはズイっと近寄る。

 

「ビンゴだった……のどかちゃんは、小説サイトの知り合いで看護師さんの『32期(さつき)さん』って人が保護しているみたいだ……」

 

 よかった……と、ふたりが安堵する一方、稚拙さんは、「わけがわからないよ」と言うような顔で、持て余した指でスマホの画面をスクロールしながら思慮した。

 

 

 

 ____プリキュア、異世界同士の交錯、コロナとメガビョーゲン、そして笛吹之書庫(ハーメルン)…………

 

 わからない、何が起きているんだ、こんな奇跡や魔法みたいなこと________

 

 

「とりあえず、ヒープリチームを何としてでも集合させなきゃいけないのはわかる、でも……」

 

 ______自分には、もっとやるべきことがある、そんな気がする。

 

 

 しかし稚拙さんは、この異常事態の只中で、思考回路がショートしかけていた。

 

 いいや、それはこれから、みんなで話し合おう____そう心に決めて、ちゆの服を買いに、立ち上がった。

 

 

 

 ……それでも。

 どうしても気がかりなことがある。

 

 気分転換も兼ねて外に出ようというのに、稚拙さんの顔は、全く晴れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………あぁ______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから、この世界はどうなってしまおうと言うのか__________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The massages are white-outed……

 

 

 

 

 

 

 

 

 もちろん、じっくりと混沌に仕立ててあげるんだよ?

 

 

 

 

 ____そんなこと、(わたし)たちが、させないっ!!

 

 ____改変された時を調()()し!!

 

 ____世界を()()()()()()()()に戻してみせる!!

 

 

 

 

 …………。

 

 

 




 

(5月23日 13時40分)


あれ~? なぁんか、最後は妙に空白が多いなぁ~????(すっとぼけ)

書けました。 おおよそ5000文字です、ヒャッハー!!
時間がないのに、なんでこんなに書いちゃうかなぁ……?

いーや、間に合ったんだし。 結果……オーォライ♪ ハートキャーッチ((殴


さぁ、これからどうなってしまうんでしょうか……。
どうにかなる前に、コロナが終わっちゃう気もするけど。

いや、終わるにこしたことはありませんね。
どっちにしても完結はさせますし、うっかり第2波の餌食になったら、執筆できないので……。

来るなよ……来るなよ…………来るんだろうなぁ……(遠い目)



ってことで、次回、第7話もよろしくお願いします!

 


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第7話 ボルテージ上昇❤ おっしゃ作戦会議だ~っ!

 


タイトル詐欺になりましたごめんなさい



 すみません、すみません……尺が足りなくなって、作戦会議云々は、次回に持ち越しです……。


時間の流れが、1ヶ月くらい遅い!!

 


 

 

「ひ、ひぇ……生で見る怪物は、結構…………」

 

 大輪愛が引きつった笑みを浮かべて、後ずさりする。

 

「この世界にも、メガビョーゲンっていたのか!?」

 

「い、いるわけないでしょ……何がどうなっとん……」

 

 しかも『コロナ』って……大輪愛は続けて呟いた。

 つまりは新しい敵かもしれないってことか……ニャトランが表情を引き締める。

 

 そんな中で、一人ひなたは、自信に満ちた笑顔で振り向いた。

 

「任せて、だりあんっ!」

 

「ひなたちゃん……?」

 

「お、おいひなた____そうだな、案外見掛け倒しかもしんないし、まずはやってみなきゃな!」

 

「あぁ、そういうことね! フレッフレッ、ふたりとも~!」

 

 うん! おぅ! と、それぞれ応え、ふたりはメガビョーゲンもどきを見据えた。

 

 

 

 

「ふっ!」

 

 ひなたがヒーリングステッキを構えると、ひなたのオシャレなファッションが、一瞬にしてオレンジ色のノースリーブワンピースに変わり、『いるか公園』一帯が、レモンジュースのようなきれいなイエローに染まる。

 

「スタート!」

 

 ニャトランがステッキと融合し、ひなたが『光のエレメントボトル』をセットして。

 

「プリキュア! オペレーションッ!!」

 

 のどかが 荘厳さを帯びて唱えたのに対して、ひなたは元気よく『手術の開始』を宣言する。

 ニャトランが『エレメントレベル』の上昇を感知してから、ふたりは声をあわせる。

 

 

「「キュアタッチ!!」」

 

 

 ______キュン!

 

 

 途端、流星雨が到来したかのような光の渦______だけど、中はお風呂か温水プールのように温かかった。

 その中心で、ひなたとニャトラン……ふたりの心は、徐々に、確かに溶けあっていく。

 

 

 

 そんな光景を、大輪愛は圧倒されながら眺めていた。

 

 正直、ポリゴンショックでも起こすのではないかと心配していたが、プリキュアの光は____どこまでも優しい。

 ウイルスの流行で、少なからずとも荒んでいた街や人の心を洗い流していく______

 

 

 

 シュワァ…………光の粒が弾け、中から、白衣をまとった少女とパートナーが出てくる。

 

 眩しく笑い、その戦乙女は名乗った。

 

 

 

 

 

「「溶け合うふたつの光!」」

 

 

 

 

「キュアスパークル!!」

「ニャ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何やあれ……」

 

「怪物……に向かい合っとんのは、ネットニュースの『プリキュア』?」

 

「ここにもいたんや……」

 

 グレースたちの時のように、公園の周りには人だかりができてくる。

 

 

「そーそー! プリキュアは神出鬼没! どっこでもお手当てしちゃうからね~!」

 

「そこの人たちは、もう少し離れてろよ~」

 

 スパークルがVサインをし、ニャトランが注意喚起をする。

 

「わ、私も下がってなきゃ……」

 

 大輪愛は、筒状の滑り台の中で息を潜め、ふたりを見守った。

 

 

 

「トバしてくよ~~~っ!」

 

 たりゃあっ! 鋭い蹴りと突きを数回叩き込むも、今までのメガビョーゲンの感触と比べて、手ごたえが薄めだった。

 

「ありゃ、やっぱ『新キャラは強い』を()()()()していく感じかぁ……」

 

「ま、勝てない相手じゃないらしいけどな。 あと()()な」

 

 確かに、『コロナビョーゲン』は尻餅をつきかけていた。

 

「そだね____うゎぶなっ!!」

「プニシールドッ!」

 

 コロナビョーゲンが出し抜けに禍々しいエネルギー弾を飛ばしてきた。

 しばし群集はおびえるが、目の前のプリキュアの勇姿に、落ち着きを取り戻す。

 

 スパークルは、人々の恐怖に染まっていた表情に____

 

「……これは早くケリつけなきゃだね!」

 

「おぅ!」

 

 スパークルは、ニャトランにコロナビョーゲンを見張ってもらいながら、人々に呼びかける。

 

「みんな~! 私たち、めぇっちゃ頑張っちゃうから、いっぱい応援よろしくねっ!」

 

「「「「はぁ~い!!」」」」

 

 子供たちが元気よく答え、大人は、どう反応すればいいか戸惑った末、無言で頷く。

 

 

「おいスパークル、そろそろ数発くるっぽいぞ!」

 

「うわっ、いよいよ気張んなきゃね!」

 

 ____プニシールド!

 

 シールド展開したふたりは、雷光のようなすばやさで、飛んできたエネルギー弾を防いでいく。

 

 

 

「これ、メガビョーゲンの性質的に、あたったらコロナになるやつやんねぇ……」

 

 大輪愛は興奮と恐ろしさで硬直した笑みを浮かべながら、スパークルを応援した。

 

 

「「「「頑張れ~プリキュア~!」」」」

 

「「「「キュアスパークル~~~!」」」」

 

 子供たちの声援と、大人たちの懸命な祈りが、次第にスパークルとニャトランの元へと集まっていく。

 

 

 想いは、病原体と対をなす、癒しの光へ__________

 

 

 

「キタキタキタ~~~~!!」

 

「オレもなんか漲ってきた!!」

 

 スパークルの全身とヒーリングステッキが黄色に発光し、スパークルがガッツポーズを決める。

 

 

「「みっんな~! ありがとね~/な~ !!」」

 

 

 ここ最近見られることのなかったキラキラの笑顔で答える子供と、熱気に飲まれ、我を忘れてこぶしを振り上げ、声を張り上げる大人______神戸の町は、かつてないほどの輝きにあふれていた。

 

 

 

「キメるぞ、スパークル!」

 

「うん! 想いの力、たっくさんお見舞いしてあげなきゃね!」

 

 

 

 

 

「エレメントチャ────ジ!!」

 

 

 

 

 スパークルの声に、地面から光たちがふわりと浮き上がり、呼応して強く瞬きながら、集まる。

 それにつれて、ヒーリングゲージが上昇していく。

 

「すげぇ、ゲージのメーターが振り切れるレベルで、光のエレメントが集まってきてる……」

 

 ニャトランは、群集の心の力の凄さに呆然とした。

 

 

 

 

 

プリキュア!!

 

 

ヒーリング_________

 

 

 

フラァァァァァァァァァッシュ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

ドッッッ________シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!

 

 

 光が渦巻きながら、コロナビョーゲンを包み込む……。

 

 

 

「ヒーリングッバァイ…………」

 

 

 

 湧き起こる歓声にスパークルは、「いやぁ、どうもどうも~」と再びVサインをした。

 

 

 

 

 

____________________

 

___________

 

______

 

____

 

__

 

 

 

「すっっっごかった! ひなたちゃん、ニャトラン!!」

 

 照れるふたり。

 大輪愛は改めて、事情説明済みのニャトランとともに、ひなたにこの世界のことを話す。

 

 

 ……。

 

「へぇ~、アニメかぁ~っ! 私、めぇっちゃ人気者ってことじゃん! すごーい!」

 

「ひなたちゃん、かっこかわいいもんねぇ……あ、近所の女の子、ひなたちゃん推しやったなぁ」

 

 その言葉に、ひなたは「キャーッ!」と頬を染める。

 

 

「おいひなた、そろそろハーブ園に行ったほうがいいんじゃないか?」

 

「あっ、そうだね! 暗くなる前に、秘密基地、オシャレにしとかなきゃ!」

 

 おーっ! と右腕を突き上げるひなたに、大輪愛は声をかける。

 

「せやったら、私もそろそろ家に戻らんと怒られるし……また何かあったとき、会おうね!」

 

「うん! だりあん、ありがとー!」

 

「またな!」

 

 

 

 

 

 ____その夜。

 

 

 

「あれっ、メッセ来てる……稚拙さん! 32期さんからも!?」

 

 おかしいなぁ、プリキュアのこと、32期さんには送り忘れてたけどなぁ……(懺悔)。

 首をかしげながら、大輪愛はメールを開く。

 

 

「____ぇ」

 

 

 

 

「うぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!!??」

 

 

 ____うぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!!??

 

 ____ぅぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!?

 

 ____ぇえぇぇぇぇぇぇぇえっ!?

 

 ____ぇえぇぇえっ……!?

 

 

 

 マンション周辺に、(元から声が大きいのに、更に)特大音量の大輪愛の絶叫がこだました。

 

 ……怒られた。(自然の摂理)

 

 

 

____________________

 

___________

 

______

 

____

 

__

 

 

 

 ____6日後・5月2日(土)

 

 

『のどか、ひなた、待たせてごめんなさい!』

 

『気にしてないよ、急に敵が現れたんだもんね』

 

「そーそー! ちゆちーお疲れ♪」

 

 

『こんにちは……いや、初めまして? 稚拙と申します』

 

『あっ、32期です……まぁ、顔合わせは初めてですしね』

 

「天爛です~これでもゆりさんたちと同学年(華あるお年頃)です」

 

 

 かくして、プリキュアと、パートナー、そのサポーターたちが、リモートながらも一同に会した……。

 

 

 




 

次回は、順番逆転して、

今回 → ちゆちー回 → のどかちゃん回

となります、フォンテーヌがまだ登場してないとかいう、完全にこちら側の都合……話の立て方が下手ですみません……。
ちゆちゃんの変身も遅れて、すみません……。

 


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第8話 押し寄せる清流❤ 交わる9人の想い!

 


(5月26日)


あっ、気づいてしまった。

ラテ様、どこ……?(ド忘れ)


ま、まぁ、それは、今回少し匂わせて、詳しくは次回ということで……。




(追記)

なぜか「エレメントチャージ」のところだけ、どうやってもプレビューがおかしくなってしまう事件が発生しています。
おかしいなぁ、ほかと同じようにやってるのに。

「《color:#0000ff》「 エ レ メ ン ト チ ャ ー ジ ッ ! 」」

こんな感じになってたらすみません。

(追々記)
なってたので、もう文字カラー消しました。

(ついついついきー)
直したら直したで、なんか下がおかしくなったので、戻しました。
たぶん、サイト側の不具合?
ビューがおかしくてすみません。


(ついついついついーき)
何か色々いじくったり透明にしたりしたら、うまくいきました。
青いエレメントチャージをお楽しみください。



 


 

 

 

 

 ちゆとペギタンが稚拙さんのおウチにお泊りし始めてから、早1週間弱。

 

 滞在時間が長くなればなるほど、ごまかしが苦しくなるため、ここ数日は、次の滞在拠点のことばかり話していた。

 

 しかし今日は、もうひとつの不安要素について相談している。

 ____コロナビョーゲン。

 

 連日のように各所に現れては、神戸市中央区、東京都練馬区、またその周辺限定でプリキュアに浄化されている____のどかとひなたが、浄化の手が回らなくて悔しいってメールで言ってたっけ……。

 

 

 このコロナビョーゲン、通常と異なるところが、『時間経過で自然消滅するが、放っておくと、その日、その地域のコロナ感染者は格段に跳ね上がる』ということ。

 

 人命にダイレクトに関わる事案なため、プリキュア側としては「遠いところに現れないで」というところなのだが……。

 それは不幸中の幸いで、コロナビョーゲンは大都市を中心に現れることが多く、おおよそは対処できている。

 

 

「____で、それがなんで九州にはめっきり現れないのかって話だけど……」

 

「はい……」

 

「大きな都市だってあるのに、変ペェ……」

 

 そう、本日の議題は『なぜ、3人がいる県どころか九州全体にすらコロナビョーゲンが現れないのか』。

 

 

「ネットの『プリキュア&コロナスレ』でも話があがっているけど、数多(あまた)の説の中で気になったのが____これ」

 

 稚拙さんが画像ファイルを開き、ふたりに見せる。

 

「「アマビエ?」」

 

「って、何ペェ?」

 

 

 ペギタンの質問に答えるには____アマビエとは、九州地方(熊本県)の妖怪の一種で、「流行り病が蔓延したら、自分の絵を人々に見せよ」と言い残したという。

 

「そのアマビエの効果で、九州にコロナビョーゲンがでないってことですか?」

 

「あくまで予想の範疇なんだけどね……」

 

 

 出ない答えに、ちゆは焦燥とする。

 

「みんなが大変な思いをしているのに、私だけほとんど何も……」

 

「ちゆちゃん」

 

 ちゆが目線をあげると、稚拙さんが肩を回し、伸びをしたあと強気な微笑を浮かべる。

 

「思いつめてもしかたないよ。 ちゆちゃんもみんなも、普段から頑張っているのは確かなんだから」

 

「そうペェ、今日は、ラビリンたちともビデオ通話できるし、リフレッシュするペェ!」

 

 ____の前に! 稚拙さん、やや遅れてペギタンが、すっくと立ち上がる。

 

 そうだった。 ハイジャンプ選手のちゆは外出自粛でエネルギーがくすぶっており、この日課を殊更に楽しみにしていた。

 

「はい、散歩、行きましょう!」

 

 

 

 

 

「のどかじゃないけど、『生きてるって感じ』ね……」

 

「丁度いい気候ペェ……」

 

 ちゆたちの世界と こちらの世界は、時間がややずれている。

 アニメでも察せられるとおり、すでにちゆは『2020年5月』を体験しており(陸上大会回 参照)、今回で2度目。

 とは言っても、このコロナの渦中で十分に満喫しているとは、とても言い難いけど……。

 

 

「生きなきゃ……」

 

 思わず口をついて出たそれは、3人のうち誰の言葉なのか____

 わからないけれど、誰もが同じ気持ちだった。

 

 生きることへの希望をなくしてしまっては、簡単に病魔に負けてしまう。

 どんなことが起きようとも、いつか訪れる喜びを、信じる、夢見る、思い出す______

 

 

 

 ____その思いを伺い、安心しました。

 

「「「! …… 」」」

 

 清らかな女性の声が柔らかく響く。

 

 発生源は_____海。

 

 

『この流行り病……現代の者らの電脳世界に寄せた()()に応え、せめて九州だけでもと、私は民を守ってまいりました』

 

「あなたは……!?」

 

「さっきネットで見た……!」

 

「ま、まさか本当に……ここ熊本じゃないのに

 

 順に、ちゆ、ペギタン、稚拙さんが、唖然としながらも、言葉を絞りだす。

 

 

 下半身が魚の姿の、神秘的な何かを感じる生物______その正体は、言わずもがな。

 

 

 

 『アマビエ』________

 

 

 

 

『いよいよ病の禍々しき念は膨れ上がり、最早私の力では及ばなくなっております____しかし』

 

 ____プリキュア。

 アマビエの慈しむような目に、ちゆの姿が映る。

 

『あなた方の、この星を根源から癒す、その力……そして、その強固たる決意』

 

 アマビエは、静かに(まぶた)を閉じた。

 

『私は、安心してあなたたちに この地の平安を委ねられます。 そしていずれ(きた)る時に備えて、私も力を養います』

 

 ふわり____彼女は、尾の先から徐々に光になっていき、海に還っていく。

 

 ……嵐のようにやってきては去っていったなぁ……。

 

 

『では、また近日中に______』

 

 

 

 

 

 

「もう……何が起こってもたぶん驚かないと思う……」

 

 呆然としているのか、諦念の境地にいるのかわからないような、微妙な半笑いをする稚拙さんの横で、「任されちゃった……」と、ちゆとペギタンが強張った顔をしている。

 

 

「で、任されちゃったからには、早速()()のよね……?」

 

「怒涛の展開だね……」

 

「何の都合にしたって、あぁぁんまりだペェ……!!」

 

 

 

「コロナビョーゲンッ!!!!」

 

 ____ドゥーーーーーーーン!!!!(取ってつけたようなSE)

 

 

「「「…… アチャァ(ノ∀`;) 」」」

 

 呼ばれて飛び出て……を体言するかのような ご登場。

 3人の表情が、今度ははっきりと 諦念 のそれに変わった。

 いや、 観念 ……?

 

 

 

 半ばヤケになりながら、ちゆがコロナビョーゲンと対峙する。

 

「もう、しかたないわ!」

 

「もうすぐリモート会議の時間だし、一気にキメるペェ!」

 

 その言葉に、顔を輝かせた人が約1名いたような____気のせい?

 

 

 

 

 

「っ! ……」

 

 ちゆが表情を引き締め、ヒーリングステッキを構える。

 

 途端に、ちゆの服が瑠璃色に染まり、ノースリーブのワンピースに変化する。

 さらに彼女を取り巻く空間が、晴天をサイダー瓶越しに見たかのような、シュワシュワとした空色に変わる。

 

「スタート!」

 

 ペギタンが流れるような動きでヒーリングステッキと融合し、ちゆが『水のエレメントボトル』をセットして。

 

 

「プリキュア・オペレーション!」

 

 ちゆは、大人びた、穏やかな笑みをたたえ、ペギタンの『エレメントレベル』上昇の確認を待機する。

 さぁ、手術の準備はできた______

 

 

 

「「キュアタッチ!!」」

 

 

 ______キュンッ

 

 

 

 うねり押し寄せる清流の中で、ちゆは白衣を纏い……優雅に舞う。

 水の星・地球の澄み渡るエレメントは、見る者全てに安らぎを与え________

 

 

 波に乗って再び現れた少女は、今 オンステージし、凛とした微笑みをたたえ、ここに名乗った。

 

 

 

 

 

 

「「交わるふたつの流れ__」」

 

 

 

 

「キュアフォンテーヌ!」

「ペェ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 変身を終えたフォンテーヌたちを見た稚拙さんの反応はというと____

 

「(-人-)」

 

 ____なぜか、フォンテーヌとペギタン、拝まれてました。

 

 

「だ、大丈夫ペェ……?」

 

「すごい、すごいこんな……自分で書いたことを追体験してるみたいな……」

 

「あ、あの……だいじょ」

「生変身を間近で見られるとは、人生最高レベルの幸福……」

 

「「……」」

 

「わかったよりんくさん、あなたは初めて生変身を見たとき、文章量過多で鯖落ちしないように感情を抑えてくれていたんだね……実際はこん、な…………バタッ」

 

「どう見ても大丈夫じゃないです!」

「本当にありがとうございましたペェ!! ____ち、稚拙さ~ん!?」

 

 

 お、お気を確かに~! と、フォンテーヌたちが____今しがたの発言について『元ネタ的にプリキュアが言っちゃいけなかったんじゃないか疑惑』を一部の読者の方々から持たれつつも____慌てて駆け寄る。

 

 

 

 

 Q. ところで、倒れた人いるけど大丈夫なの?

 

 A. ヲタの名にかけて、大丈夫です(断言)。

   すぐ目を覚まされます(フライング)。

 

 少なくとも、非ヲタの人……と、画面の外のご本人は多分さぞ驚かれたことでしょうが、まぁ、状況的に当然の反応ですね(✳個人の見解)

 

 むしろ、この反応、わりと控えめな方だと思います(✳個人の感想)

 

 (前話の(大輪愛)の、あの落ち着き具合とか、現実では絶対にありえ) ないです。

 とあるプリヲタ・Dさん (「さん」を除けろよデコ助野郎!) なんか、秒でブッ倒れて後頭部を強かに打ち付けたあと、サマーン語か何かを((割愛

 

 ともかく、喜びの表現に関しては、更なるツワモノもごまんといらっしゃると思うので、何の心配もいらないですね。(✳個人の希望的観測)

 

 

 

 ____とまぁ、茶番はオシマイダー!にして。メメタァ! 語りとか誰得だし。

 

 

 

 

 わりとすぐに再起した稚拙さんを木陰に避難させ、フォンテーヌは再び、コロナビョーゲンをキッと睨み付ける。

 

「のどかとひなたが待ってるの! 一気にケリをつけさせてもらうわ!」

 

「やるペェ!」

 

 ペギタンが頷くと同時にフォンテーヌが跳躍し、得意の回し蹴りを相手の首筋に叩き込む。

 

 ____硬い……!

 

 願いに反して、なかなか手間取りそうだ。

 それに加えて____

 

「あれは……」

 

「プリキュア!?」

 

「ネットニュースの……!」

 

 東京、神戸でもそうだったように、人だかりができてきた。

 

 

「……これは」

「ペェ……」

 

 至 極 不 味 い 。

 

 ふたりは焦った。

 一般の人々に被害が出てはいけない、早くしなきゃ____ひたすら敵へと蹴りを出していく。

 

 次第に戦法が崩れ、慣れない突きまで繰り出すようになる____そうなったのは、相手が強いだけじゃない。

 

 

 力が、出ない________

 

 

 

 

 

 

 もちろん、テレビ画面越しに彼女らを応援してきたこの方には、フォンテーヌが本来の力を出せていないことも察せられるわけで。

 

「アマビエが九州を守るときに、ここの水のエレメントさんの力も借りていたのかもしれない……」

 

 片膝をついて座りつつ見守っていたその人、稚拙さんは、そう分析した。おのれアマビエ

 

 とすれば、フォンテーヌへと残された力の供給源は、どこになる?

 

 決まっているじゃないか。

 

「頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!!!!」

 

 

 

「「! ……」」

 

 それは、少しだけど。

 

 力が戻った。

 ____そう感じたフォンテーヌは、無意識に両こぶしを握りしめた。

 

 うん______でも、まだ足りない。

 これじゃ…………。

 

 

 

 ____大丈夫。

 

 

「プリキュアァァァァァァァアッ!!」

 

「頑張れぇぇえっ!!」

 

「フォンテーヌっ……!!」

 

 

 『みんな』が、いる。

 

 

 

「すごい、こんなに……!」

 

 思わず、口角が上がっていた。

 

 しかも、それだけじゃない。

 

 

 ____ちゆちゃんっ…………!

 

 ____ちゆちー…………!

 

 

「……のどか? ひなた?」

 

 ハッとしたフォンテーヌは、近くにテレビ局のカメラを抱えた人をみとめた。

 

 きっと友達は、四角い媒体越しに、見守り、応援してくれている。

 

 こんなに遠くにいるけれど、心は、いつだって______

 

 

 フォンテーヌは、ステッキを持っていない方の手を胸に当てた。

 数倍も、力が湧きあがる。

 

 強気な笑みを浮かべて、パートナーを見る。

 無言で、力強く頷き返された。

 

 ____行けるわ!

 

 ____オールオーケーペェ!

 

 

 

 

 

 

 《color:#0000ff》

 

 

「 エ レ メ ン ト チ ャ ー ジ ッ ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 澄んだ水の粒子が幾筋も、エレメントボトルのところに伸びていく。

 ヒーリングゲージが上昇し、ボトルはまばゆく輝いた。

 

 

 ____勝った。

 

 これを見てペギタンは、そう確信した。

 勝った、一般世間に言われているフラグをへし折る勢いで、勝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリキュア!!

 

 

 

 

ヒーリング_________

 

 

 

 

 

 

ストリ───────────ムッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッッッ________シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!

 

 

 真っ直ぐながらも柔軟さを持つその波は、街にはびこる病気を洗い流していく______

 

 

 

 

 

 

「ヒーリングッバァイ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 よし______

 

 フォンテーヌは、小さくガッツポーズをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

「リモート会議、大遅刻ペェ……!」

 

「そうね、行きましょう!」

 

 ちゆにそう促された稚拙さんは、駆け出____そうとする。

 

 ____スッテンコロリン☆

 

 

「「????」」

 

 転んだ。

 綺麗に、顔面から転んだ。

 

「だ、大丈夫ですか────!!??」

「ペェェェェェェェェエ!?」

 

 問題ないとでも言うように、稚拙さんは片手をひらひらと振る。

 

「じ、実は、よくつまづいたり転んだりするんだけど……」

 

 

 うぅ、ここ1週間くらいは調子よかったのになぁ____と、稚拙さんは遠い目をした。

 

 

 

 

 

____________________

 

___________

 

______

 

____

 

__

 

 

 

 

 

「のどか、ひなた、待たせてごめんなさい!」

 

 

『気にしてないよ、急に敵が現れたんだもんね』

 

『そーそー! ちゆちーお疲れ♪』

 

 

 

「こんにちは……いや、初めまして? 稚拙と申します」

 

 

『あっ、32期です……まぁ、顔合わせは初めてですしね』

 

『天爛です~!』

 

 

 リモートに遅れてしまったものの、みんなはちゆの労をねぎらってくれた。

 

『そうだ、私、プリキュア関連の何を見るにしても「インプリ」と結び付けて考えちゃうようになったんですよぅ! 「カナルナ」の「スイートマジック」の本名さんゲスト回をニコニコで聞いたときも……ペチャクチャ』

 

 なんか興奮気味にまくしたてている少女が 約1名いるが、別段気にしなくていいと思う。

 

 

『ところで稚拙さんって____』

 

 ザ・二枚目な顔かたち(イケメン)の 32期さんが、困惑しながら画面越しに稚拙さんを見つめる。

 

どっち!!??

 

 

「さぁ、()()()なんでしょうねぇ……♪」

 

 

 ちゆは、不敵に笑う稚拙さんを見つめる。

 

 とっくに成人であろうに、声も顔も髪型も服装も体つきも____全部、中性的。

 数日一緒にいるけど、未だに ()()()()()()()()()() 全くわからない。

 

「そういえば、私と一緒にお風呂、入ろうとしなかったし……」

 

『そこら辺は、それ以前の問題やない……?』

 

 通常テンションに戻った大輪愛が、変な顔をしながらツッコむ。

 

 

『まぁまぁ、折角集まることができたんだし、早速はじめようよ?』

 

『そーそー! 何から話そっか?』

 

 

「それは……」

 

 最早、自明である。

 

 

『『『「「この先、どう過ごして、将来的にどこに集まるか!」」』』』

 

 

 

『あっ、そっか、そだったね!』

 

 議題を確認するやいなや、各人から意見が飛び出る。

 

「さすがに、今ついている()では、ごまかしきれなくなってきましたね」

 

『あ、こっちはまだ持ちそうですけど……うーん、時間の内なんですかね?』

 

『私としては、中学生の女の子が半ば野宿をしている状態が続いてるのが不安なんですけど……』

 

 

「まぁ、特にひなたのためにも、早く3人で集まってコロナの根本を叩くしかないわよね」

『ちゆちー、ありがとー! で、どーする? 間をとって神戸(ここ)とか?』

 

『何だか色々あって、難しいねぇ……』

 

 

 交わされる言葉の中で、稚拙さんがゆっくりとつばを飲み込み、深い呼吸を数度繰り返すのを、ちゆは見た。

 

「稚拙から、提案があって____」

 

 ぴたり、と話がやむ。

 

「もう、ちゆちゃんのことについて、正直になってしまおうか、と思います」

 

 ざわめきが起こった。

 

『ちょ、ちょっと待った稚拙さん! 仕掛けられているかもしれない防犯カメラとか盗聴器とか云々はどうなんですか!?』

 

 初見、大輪愛は何を言っているのだろうと思うだろうが……ちゆは元ネタを知っていた。

 この数日で読ませてもらった、稚拙さんのケータイ小説に、そういうくだりがあったはずだ。

 

『敵側の攻撃範囲が周囲の人に及びやすいなんてことも……』

 

「いや、まぁ、マジレスすると、家の中には防犯カメラはないし、コロナビョーゲン側に『幹部』にあたる知能を持った人物がいなさそうだからっていうのもあるんだけど……」

 

 稚拙さんの双眸から一瞬ハイライトが消え、苦笑と諦めをレッツ・ラ・まぜまぜしたような表情になった。

 

 次の瞬間には、稚拙さんのご家族(と思しき人)が、画面に顔を覗かせていた。

 

 

「この通り、完ッ全に、バレてますので…………」

 

『『うわぁ……』』

 

「後は、『下手な嘘ついてゴメンナサイ』して『しばらくこの子を家に置いてください』するだけで……」

 

 『()()()()()()()()()()()()()()』という表現をわざわざしたのはそういうことか、と誰かが納得の声を漏らした。

 

 まぁ、バレバレならそれもいいかもね。

 無理に見え透いた誤魔化しをして、御家族との仲がこじれてもアレだし……。

 

 

 ということで、しばし稚拙さんは離席した。

 

 向こうから、「そりゃ、あれだけ一緒に見させられたら覚えるしわかる」とかなんとか聞こえてくる。

 南無。(- -)

 

 

 

 

 …………。

 

「お待たせしました~」

 

『ラーメン一丁~』

 

 いやいやいや!? と総ツッコみが上がるが、誰が変な合いの手を入れたのか聞きそびれたぞ(鰤だぞ)! 許せるッ!

 

 

『と、ともかく稚拙さん戻ってきたし、次の話に移ろうよ! ね!?』

 

 のどかちゃんの言葉で一同がまとまる。 神か。

 ……そういえば、『グレース』って『天恵』って意味もあるのね、知らんかった。

 

 

『では、近いうちに集まるであろう場所を決めなきゃですね』

 

 32期さんも議題を再掲示してくださる。

 

「でも、どこにしようにも何だかしっくりこないのよね……」

 

「どこか特別な場所とかないかな……」

 

 その言葉を聞いたひなたが、ガバッ!と顔を上げる。

 

『……すこやか市!』

 

『『『「「「 !!!! 」」」』』』

 

 

『キラやば~っ☆ ひなたちゃん最高! 私なんかより全然デキるよ!』

 

 そもそもお前が賢いなんて証明すら出来てないけどな! と、大輪愛にツッコみが入る。

 絶対ニャトラン。

 

 

 

『でも……すこやか市は、この世界には……』

 

 32期さんの声で、全員我に帰る。

 

『____あるよ』

 

 

「のどか……」

 

『のどかっち……』

 

 

『私たちが日本のすこやか市に住んでるのは確かなんだもん……私たちの中には、絶対、あるよ』

 

 

 

 ふふ……と、ふたつの吐息が聞こえる。

 

『「行きましょうか」』

 

と、言ってから、稚拙さんと32期さんは、顔を見合わせるも、再び微笑む。

 

『すこやか市があるはずの場所に』

 

「やっぱり、ヒープリのみんなには、そこが一番だもんね」

 

 はい!! と、ヒープリ勢の顔が数段明るくなった。

 

 

すごい……

 

 圧倒されたゆえの、かすれ声で大輪愛が呟く。

 人生の先輩って、プリヲタの、プリキュアの大きなお友達の先駆者たちって……こんなにも、頼もしい。

 

 精進しなきゃな、自分の未熟さに苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

「あっ、ところで、ラテ様はどこペェ?」

 

『ペギタンのとこじゃないのか……ラビリーン、そっちにいるんだろー?』

 

 途端、のどかとラビリンが硬直する。

 

『「え……?」』

 

 怪訝な顔をするペギタンとニャトランに、32期さんが代わりに説明した。

 

 

『「とある家庭に預かってもらってる~~~!!??」』

 

 どういうことだとプチ口論が始まるが、ちゆ、ひなた、サポーター勢は特に止めない。

 このコロナ禍、どんなイレギュラーが起きても不思議でない。

 とにかく無事ならそれでいっか、という感じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、やっとペギタンとニャトランの混乱も落ち着いた。

 

「じゃあ、みなさん、そういう感じで動きましょうか!」

 

 各々が頷く。

 

 

 

 すると、のどかが画面の向こうで勢いよく立ち上がり、声を張り上げる。

 

 

『みんなー! 頑張ろうねっ! えい、えい______』

 

『『『『『『「「「お────っ!!」」」』』』』』』

 

 

 様々な声音が、ひとつに重なった。

 

 

 




 


間 に 合 っ た ! (現在7日深夜3時。 勿論親に内緒)



学校とかあったし、間に合わないと思った……。
7577字とか、嘘でしょ……。 長……。

あ、タイプ音で家の人起こすの怖いし、とりあえずここら辺で……。

ストーリーの流れガバッガバで、本当に拙すぎてすみません……。
あと、ネタと無礼を履き違えないように注意しているつもりですが、もしお気に障れば、なんなりと……。


(資料)
私のネタの入れ方。

・自虐ネタは、重くないやつだけ、残す。
・他人とネタを絡ませる場合は、まず自分自身の許容範囲内で下書きをし、そこからネタのキツさを、2から3段階ほど下げる。



 


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第9話 サラウンド・Kodama❤ ラテはどこどこ?

 

間に合った……だと!?

(6月15日 9時半 追記)
腎臓は泌尿器科だ!
素人が書くからこんなことになるんだぞ!!
喘息は心臓が原因の物もあるので、修正いたしました。
すみません……

 


 

 

 

 ぽふんっ。

 

 

「ふわぁ~♪ お布団ふわふわ~♪」

 

「のどかちゃんは普段ベッドで寝てるから、合うか心配でしたが……」

 

「大丈夫です、むしろ素敵♪」

 

 よかった、と32期さんは口元を緩めた。

 

 

「あ」

 

「「?」」

 

 同じくふわふわしていたラビリンが、短く声を上げて、硬直する。

「ラテ様……ラテ様が、いないラビ……!」

 

 あっ! と、のどかと32期さんも硬直する。

 

 一歩ラビリンは、「どうして今までお忘れしてしまっていたラビ……」と、真っ白になっていた。

 

「で、でもラビリン!」

 

と、ここでフォローに走る32期さん。

 

「普通に、ちゆちゃんやひなたちゃんのところに行っているだけかもしれないじゃないですか!」

 

 何なら、今からでも連絡を____そう言う彼を、ラビリンは力なく止めた。

 

「違うラビ……確かに、見たんラビ……!」

 

 

 時空の裂け目に吸い込まれたその時。

 ラテは、凄まじい時流の中、既に気を失ったのどかに抱かれながら、もがいていた。

 

 ある程度流されたところで、ヒープリメンバーが3つに分かれて別々になっていく。

 ラテは未だ、のどかやラビリンとともにいた。

 

 そして、出口を示すがごとく、光が目の前に差し込んできた時。

 とてつもない突風が起こり、気合いで保たれていたラビリンの意識はついに吹っ飛ばされていった____が。

 

「その後にラテ様とバラバラになったとしても、そこからの短時間で、ラテ様がラビリンたちから遠く離れるわけないラビ……」

 

 

 なるほど、と32期さんは唸る。

 

 つまり、神戸____ましてや九州までたどり着いている可能性薄、と。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 のどかから指摘が入る。

 

「神戸とか九州とか、しかも連絡とか……32期さんは、みんなのいるところをご存じなんですか!?」

 

「確かにラビ……!」

 

 

 ふたりからの色々な感情が織り交ざった熱視線に、32期さんは頭をかく。

 

「す、すみません、言い忘れてました……」

 

 かくして、のどかとラビリンに説明がなされた訳だが____

 

「「えぇ~~~~~っ!!」」

 

 ふたりは、本当に嬉しそうに叫び、手を取り合う。

 

 

 しかしそれも、わずかの間。

 我に返ったラビリンが、ラテ様……と零すと、急に部屋の空気が重っ苦しくなった。

 

「ま、まぁ、近くにいそうだということの見当がつきましたし、明日、さっそく探しに行きましょう!」

 

 返事ともため息ともつかない、か細い声を出して、ふたりは頷いた。

 

 

 

__________

______

__

_

 

 

 

 ____翌日。

 

 

「いやぁ、たまたま仕事が休みで良かったですよ」

 

 色々と見て回れますね、32期さんは笑った。

 

「せっかくのケータイ小説の執筆の時間を削らせちゃって、ごめんなさい……!」

 

 のどかは眉毛をハの字にして、可愛らしく手を合わせ、謝罪する。

 まずこれで許さない人はいないよね…………(絶対に許さない4人の組曲さんや、ユグドラシル絶対許さねぇ人や、発音が濁点だらけの太陽の子____をここで思い出してしまった気まずさから目を背けながら)

 

 

「いや、私が進んで協力しているわけですし、悪いのはのどかちゃんたちじゃないですから」

 

 気にしないでください、32期さんは苦笑した。

 

 

「とりあえず、病院の近く、回ってみるラビ?」

 

 ラビリンの提案に、ふたりは頷き、病院へと角を曲がった____

 

「ワンッ!」

 

「あらあらワンちゃん、どうしたの?」

 

 病院の、正面玄関前。

 

「どれどれ……ん? そっちが気になるのか?」

 

 優しそうなおばさんとおじさんに連れられた、カフェオレ色の子犬が一匹。

 

「ワンワン!」

 

「あら、元気がいいのね♪」

 

 …………間違いない!

 

 

「「「ラテ(様)~~~~~!!??」」」

 

 

「ワンッ! ワンワン!」

 

 ラテは跳ねるように、のどかたちのところへと駆け寄ってくる。

 

「ラテ~~~っ♪」

 

 そのまま、のどかの腕に飛び込んだラテは、のどかと頬擦りしあっている。

 

 後から、不思議そうな顔をして、おじさんとおばさんが追いついた。

 その人たちを見て、32期さんは小さく声をあげる。

 

鐘間(かねま)さん!」

 

「「サツキさん!」」

 

 おじさんの方が、「娘がいつもお世話に……」と言葉を続けたことから、いつか話していた『担当の女の子』の親御さんかもしれない。

 

 

「この子犬、あなたのとこのだったんですか?」

 

 おばさんの質問に、のどかが代わりに答える。

 

「32期さんのじゃなくて、私たちの家族なんです」

 

 そこからは、少し嘘も織り交ぜて話した。

 

 

 ____()()()()、のどかが32期さんの家にしばらく滞在することになった。

 その際、のどかはラテを連れていたが、移動中に『滞在先のアパートはペット不可』ということを聞き、まごついているところで、ラテが逃げ出してしまった。

 

 

 ……ごまかしの概要はそんな感じだ。

 

「なるほどねぇ……」

 

「ってことは、ラテちゃんが折角見つかっても、そちらには置けないってことですね?」

 

 おじさんが確認する。

 実際、32期さんのところはペット禁止なため、のどかたちは迷いなく頷いた。

 

「じゃあ、(うち)でしばらく預かっておきますよ」

 

「「! ……ありがとうございます!!」」

 

 ……かばんの中で息をひそめるラビリンとしては少し不安ではあったものの、申し出自体は最高にありがたかったので、短い間で3人で決議し、お言葉に甘えさせてもらった。

 

 

「いつも良くしていただいているんです、これくらい、何も問題ないですよ」

 

 おばさんが上品に笑った。

 

 

 

 しばし じゃれあってから、ラテは鐘間さん夫妻とともに、散歩の続きをしに、のどかたちと別れた。

 

 32期さんもそのまま引き返そうとするが、ふと、おばさんの言葉を思い出した。

 

 ____そういえば、『こだま』ったら、今日サツキさんお休みって聞いて、とても残念がってたんですよ!

 

 

「行きますか?」

 

「「?」」

 

 唐突にそんなことを言われて、のどかとラビリンは首を傾げる。

 

「あの子の____鐘間こだまちゃんのところへ」

 

 

 『担当の女の子』に会う______

 

 のどかは、ゆっくりと唾を呑んだ。

 

 

 

 

 

 …………。

 

 ____練馬の某病院・循環器内科

 

 

「こだまちゃんは、喘息も持っていて____」

 

「あれ? じゃあ、呼吸器じゃ……」

 

「気管支喘息とかじゃなくて、心臓が原因ですからね。 大元の原因が()()()なので、循環器なんです」

 

「喘息にも色々あるラビね? 勉強になるラビ……」

 

 廊下を歩きながら、32期さんは、のどかたちに予備知識を入れていた。

 

「あと、こだまちゃんのルームメイトもいるんですけど、その子は心臓病で____あっ、そろそろ着きますね」

 

 

 ガラリ、と32期さんは扉を開けた。

 

「サツキさ~~~~~ん♪♪♪」

 

 ……開けるなり、女の子の嬉しそうな声が響く。

 

 ____その女の子は……その女の子からは、幾本もの透明な細いチューブがつながれていた。

 のどかは自身の、治療が一番辛かった時期を思い出し、苦い顔をした。

 

「あっ、ねぇねぇサツキさん、その子誰ですかー?」

 

 女の子は、のどかを指差している____32期さんの目が泳いだ。

 と思えば、次の瞬間には、32期さんはのどかに耳打ちしていた。

 

「……この子、プリキュア見てるんですよね。 正直に言っていい物なのか……」

「私は、ごまかしたくないです」

 

 ほとんど間髪を入れない速さの返答に、32期さんは、わずかに目を見開く。

 

「この異世界に来て、ちょっとだけ姿が変わっているとしても、『私』が『私』であること____それだけは、揺るぎないものだと思っていたい。」

 

 ____だからごめんなさい、今は私、自分自身の名前を偽れそうにないです……。

 そう続けたのどかに、32期さんは優しい笑みを向けた。

 

「そうですね____ぜひ、のどかちゃんであってください」

 

 

「サツキさ~ん?」

 

 不信に思った女の子が、声をかけてくる。

 

「あっ」

 

 代わりに、のどかが____堂々と、答えた。

 

「私は、花寺のどか。 よろしくね♪」

 

「……(゚Д゚)」

 

 女の子はポカンとするも、のどかを眺めると、うんうんと頷き、すぐに言葉を返した。

 

「はい、よろしくお願いします! ……大丈夫、()()()()()()()()()()()にするので♪

 

 『クラス』って……院内学級……?

 

「あ、私は、鐘間(かねま)こだま です! よろしくお願いします!」

 

 ガラ…………。

 

「「「! ……」」」

 

「もえはちゃん!」

 

 思い出したように、女の子……もとい、こだまが自己紹介した____と同時に、女の子がもうひとり入ってきた。

 

「こだま、サツキさん……と?」

 

「あ、花寺のどかだよ♪」

 

「! ……花寺さん、初めまして。 燬村(きむら)もえは です」

 

「よろしくね、もえはちゃん♪」

 

 もえはは、ふふっ、と笑い声をこぼした。

 

「……?」

 

「いえ、すみません。 どことなく、こだまと花寺さん、似てるなって思って」

 

 それを聞いた当事者ふたりは、「そう?」とでも言わんばかりに、きょとんとして顔を見合わせた。

 

「確かに声は似てなくもない……けど」

 

「もえはちゃんは、どこが似てるって思ったの?」

 

 そう聞かれても、もえは自身も首を傾げるばかりだ。

 

「なんていうか、もっと根本的なところが似通ってるなって思いました」

 

 これまた抽象的な返事が帰ってきた。

 一同は、「ふ~ん」と「う~ん?」が混ざったような曖昧な反応をする。

 

 

「あ、ところでこだまちゃん、そのペンダント何? かわいいね♪」

 

 のどかの言葉に、こだまは「本当!?」と目を輝かせる。

 

「これ、ずっと前にお祭りに行ったときに、すくったビードロなんです!」

 

 それを、後に穴を開けてもらい、紐を通して、ずっと首飾りにしているのだという。

 

「私ともえはちゃん、いつか変身ヒロインになるのが夢なんです。 これをつけていると、何となく、夢が叶いそうな気がして……」

 

「あっ、私も、こだまとお揃いの、持ってるんですよ」

 

 こだまともえはは、互いに微笑みあった。

 

 

 …………この笑顔。

 

 意地でも守らなければならない、のどかはそう思った。

 

 特に、こだまがコロナにかかろうものなら、持病も相まって、その命はかき消えてしまうかもしれない。

 

 これ以上、この子たちに____この世界の人みんなに、つらい思いをさせては行けない。

 

 私たちが、頑張らないと______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 数日後、リモート会議のあと。

 

 32期さんは、会議でのことを思い返していた。

 

 

 ____稚拙さんの性別はわからずじまい、魅力的な人だけど、ミステリアスだとも思った。

 

 ____他のヒープリ勢も、アニメからそのまま抜け出したと言っていい程、そのまんまだった。

 

 

 しかし。

 

 気にかかった人が……子が、ひとりいる。

 

 ____始終明るくて楽しい子だったけど、どこか話してて違和感があった。

 

 どこに?

 

 ____目線だ。

 

 ____あの子は、絶対に話しているとき、目線を合わせようとしていなかった。

 

 ____たまにチラッと合おうものなら、妙な表情をして、慌てて背けていた。

 

 

 大丈夫、なのだろうか…………。

 

 ……32期さんは、空を仰ぐ。

 

 

 

 

 

 ____時を同じくして。

 

 布引ハーブ園付近のツリーハウスで、ひなたは悩んでいた。

 

「……ちゃんと、だりあんと話し合った方がいいよね」

 

 

 

 だりあん自身のこと______

 

 




 


鐘間こだま→Kanema Kodama→Kanema kodaMa→Kaname Madoka
燬紫もえは→Kimura Moeha→kimuramoeHA→Akemi Homura
__________


つまりはそういうことだ!

まぁ、深い意味はない、ただのアナグラムですよ。
こだまちゃんは中の人つながり。
もえはちゃんは『最高の友達』ということで起用です。


次回……は、まぁ、友情パワーで蘇って!な回です。
ひなたちゃんにはつくづく申し訳ないが、大輪愛が関わると誰得回になる。 もはや宿命。



では、そろそろここら辺で。
ありがとうございました!

 


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第10話 見つめあう目❤ 溢れる気持ち

 

 今回から連続3話で、それぞれのチームの仲が、ぐっと深まります。(予定)

 あと、今話、誰得回になっちゃう……現実の話をアレコレ入れた結果だ……。

(一応、鬱描写が入っているのに配慮して、あまり話が進まないようになっています)

 そして、安定の、ちょくちょく方言混ざってて何弁しゃべってるか不明____な、だりあんである。


(そして執筆が終わり)

 あ、あれぇ? なんか予定よりだいぶ話の雰囲気軽くないかい?
 まぁ、あれだね。 このお話のプロット練ったの、休校中でうつ状態だったときだからね。 そりゃ気分が治れば、変更くるよね。

 それでも念のため。 鬱描写に注意です。
 特に、『ひとりぼっちになったことがある人』。 トラウマを掘られる可能性が。


 ____あっ。 後述の『私』のリア友さんたち、別設定でプリオルSF2話に客演予定です。


 


 

 

 

「やぁ、ひなたちゃーん! おっはよーうルーン!」

 

「だりあん……それどんなキャラ?」

 

 ごめんごめん、直前に『あくいのおともだち(これ)』見てきちゃってさぁ。

 大輪愛は苦笑する。

 

 その当の大輪愛。

 本日は、ブレザータイプの制服に身を包んでいる。

 

「いやー、登校日やで、みなさんっ! 素晴らしいねぇ!」

 

「ど、どしたの一体……」

 

「まさか、ひなたがツッコみ役に徹する日が来ようとは……」

 

 ふたりから変な視線を浴びせられた、悲しき女子高校生……。

 

 ところで、そんな3人がいるところは、三宮駅前である。

 前述のとおり、大輪愛の高校が登校日であるため、こうして一堂に会しているのだ。

 

 

「ところでどう? 気分転換になりそうやろ?」

 

 気を取り直した大輪愛が、ひなたとニャトランに声をかける。

 

「あっ、うん! 列車とか、校外学習以来だし!」

 

「ツリーハウスにこもりっきりで、気分がふさがってきたころだったからな」

 

 よかったー! と、大輪愛は能天気に笑った。

 

 

まもなく2番乗り場に 神戸線(以下略)

 

 

「おっ! 早よ乗ろ乗ろ、どうせなら座りたいやんねっ!」

 

「うんっ!」

 

 どやどやと激しい乗り降りが起こる。

 席を目ざとく見つけて、大輪愛とひなたは(ニャトランはかばんの中)、滑り込むように座る。

 

「ふぃーっ、壁際の2席取れてよかったわー。 あっ、ひなたちゃん、私壁側でいい?」

 

「えっ、うん、いーよー」

 

 ありがと、と言って、大輪愛は頭を壁にもたれかけた。

 

 

 

 ____数学の授業にて。

 

 動画授業の確認テストが催されている。

 単元は数列*1のようだ。

 

「(んっ、楽勝楽勝!)」

 

 大輪愛は、ズレたマスクをくいっと上げて気合いを入れ直し、サクサクとテストをこなす。

 

「(……で、最後の問題は、と)」

 

 

問題: アルファがベータをカッパらったらイプシロンした。 なぜだろう。

 

 

 …………。

 

「知るかぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」

 

 

 

 

____はっ!?

 

 

「……どーしたんだよ、うなされてたぞ」

 

 ひなたのかばんから、ニャトランが心配半分、呆れ半分で囁きかける。

 

 未だここは朝の神戸線。

 ……何だ……夢か……。

 

「大丈夫……ただ、数列ってなんやったんやろうって思った」

 

 傍から見ればとんちんかんな返答に、ひなたとニャトランは揃って首を傾げた。

 

「まーまー、大丈夫ならいいんじゃない? あっ、だりあん、もう少し寝てていいよ」

 

「ありがと……バタッ……ぐぅ…………」

 

 

 

 

 ____そんなこんなで着いた、某高校。

 ……今度はちゃんと現実である。

 

 高校近辺は、大輪愛宅のあるHAT神戸よりも、かなり緑の多さが伺える。

 

 

「さて、今日は午前終わりだから、別に自由に散策してくれてもいいんやけど……」

 

「うん、どうせなら、高校の中見たい!」

 

「だけどどーすんだ? このご時世なら尚更、部外者は入れてくんないぞ」

 

 さて、どうすれば入れるか。

 少し先にある校門に生徒が入っていくのを眺めながら、3人は頭をひねった。

 

「んっ……光のエレメントさんに来てもらっちゃう?」

 

 ……まぁよくエレメントさんに頼る神戸組だな、と思われるだろうが。

 ともかく、大輪愛がそう思いついた。

 

「「おぉ~~~っ」」

 

「って、どゆこと?」

 

 一度は感心するそぶりを見せつつも、わかっていなかった、ひなたである。

 

「いっそのこと、ひなたちゃんが透明になっちゃえばえぇんやないかなって思って」

 

「あれだろ? 視覚効果で透明に見せるために、光のエレメントさんの力をお借りするんだろ?」

 

 そゆこと~、と大輪愛が頷く。

 そゆこと~、とひなたが納得する。

 

 

「……んっふっふ! これで私が頭いいことが証明されたのだー!」

 

「…………」

 

 突然踏ん反り返る大輪愛に、微妙な表情でコメントに困っているひなた。

 そこで登場、ピンチヒッター・ニャトラン。

 

「……最早、ネタになりつつあるよな、それ」

 

「めちょっく!?」

 

 

 ともかく、こういう経緯で光のエレメントさんが召喚された。 プリチー オレッチ トモダチ フクハウチー

 

『プリキュアの噂は、かねがね耳にしています。 協力できて光栄です、どうか頑張ってください!』

 

  ひかり が ほとばしっ た !

  ひなた の すがた が みえな く なっ た!

 

 

「おぉー! CGなしで透明人間ができてしまうとは……」

 

『透明こちょこちょ攻撃~! おりゃおりゃおりゃー!』

 

「ニャハハハハ! ひ、ひなた、やめろって!」

 

 

 こちょこちょニャハハの応酬に、遅刻しちゃうから先行くよー、と大輪愛は笑いながら校門へ向かう。

 

『あっ、だりあん待ってー!』

 

「置いてくなよ~!」

 

 

 なお、1時間目から数学だったが、アルファがベータをカッパらわなかったし、イプシロンもしなかったという。

 ひなたは、ニャトランに呆れられつつも、早々に教室の後ろで船をこいでいたらしい。

 

 あと、夢落ちもしなかった。

 特に意味はないが、大事だと思ったので2度言った。

 

 

 

 ____昼食の時間

 

 尺は犠牲になった。 南無。

 

 

 ……普段なら、談話しながら食べようと、最初に机を移動させる音が響くはずだが、コロナ対策で、全員お行儀良くボッチ飯である。

 

 クラスの人がほとんど食べはじめの中、天爛大輪愛、彼女は5分で美味しく片付け、手を合わせて、さっさと教室を出た。

 5分だって、そんな馬鹿な。 ダイガンさんじゃあるまいし。

 

 

『あれっ、早いね、だりあん』

 

 廊下を並んで歩行するひなた。

 

「まぁ、早食いしてるつもりはないんやけど、美味しいからついね。 普段からひとりで食べてたんもあるかな?」

 

『ふーん…………ん?』

で 、今から図書室行こうかと思っとんやけど、どうしよっか、折角やし、中庭でおしゃべりする?」

 

 ひなたは、大輪愛の横顔を見る。

 つまり、彼女は真ん前を向いたまま、横のひなたと話している。

 ……これは、ひなたが透明だから、怪しまれないためにもしかたないのかもしれない。

 

『あっ、うん、しよしよー!』

 

「って言っても、今日は午前終業だろ? 休憩短くなってるから、あと10分しかないんじゃね?」

 

「まぁまぁ、そこは、気分転換の気分転換ってことで」

 

『そーそー!』

 

 そういうもんか、とニャトランは呟く。

 

 

 中庭で交わされたのは、他愛もない話であった。

 

 今朝の夢で、アルファが(略) のそれとか。

 夢に関連して、ひなたが、最近見た面白い夢を話したり。

 

 ……コン○メパンチのCMの大型犬みたいな着ぐるみに入った()()()が、消防服を着た()()()にジュースをぶっかけられて、退治されたらしい。

 

 よいこのみんなはジュースを人にかけないでね!

 JKとのお約束だよ!! ←

 

 

 

 まぁ、そんなこんなで昼休みが過ぎ、暮会も済み。

 大輪愛とともに校門からでたひなたは、エレメントさんの力を解除し、晴れて脱透明化するわけだが。

 

「やっほー、よるちゃーん!」

 

「やっほー!」

 

 大輪愛が、別クラスのリア友さんと合流した模様。

 ひなたが、その人に紹介されることとなった。

 

 紹介されながらひなたは、先刻よぎった一抹の不安が解消され、内心、安堵の息をついていた。

 

 

 

「でねー、よるちゃん、休校中のことなんやけどー」

「えーっ! そうなの?」

 

「あ、ポッ○ーいるー?」

「いるー。 あーんっ」

 

 現在、神戸線。

 

 大輪愛と、同級生のよる、ゆめ、なつみは、雑談に花を咲かせている。

 さすがにひなたも、不必要に会話に突っ込むのを控えているが、たまに話題を振ってもらったりして、楽しげに話している。

 

 話しながら、ひなたは4人をこっそり観察した。

 

 関西人にしては標準語に近いしゃべり方をする よるに釣られて、たまに大輪愛が標準語をしゃべっているのが面白い。

 

 色白でかなりの高身長な ゆめと、健康的な小麦色の肌で小柄な なつみも、一見でこぼこコンビに見えて、()()()()()仲がいいのも、なんだか素敵だ。

 

 

「…………」

 

「ひなた、やっぱ気になるか? 視線」

 

「ん……誰に対しても目をそらしてるんだ」

 

「なんでだろな」

 

「こっちを全然見てなくても、話はバッチリ聞いてるもんね」

 

 ひなたは、ニャトランと小声で会話をしたあと、物憂げに窓のずっと向こうに目をやった。

 

 普通だったら、こんなこと流しちゃうのかもしれないけど、直感にひっかかるものがあった____というのが、ひなたの意見だ。

 

「ちょっと、不自然だよね……」

 

 ……どうすれば、さりげなく訳を聞けるだろうか。

 少なくとも、()()()()()ないようにしなきゃな……ひなたは考え疲れて、軽く目をつぶった。

 

 

 

「ひなたちゃん、ひなたちゃんっ」

「平光さーん?」

 

 どうやら寝落ちていたらしい。

 ひなたが目を覚ましたのは、三宮駅が近づいた頃だった。

 大輪愛と、もっと先の駅で下りる よるが、ひなたを揺すぶっている。

 

「あっ……ごめんごめん…………んむぅ」

 

 ひなたは背伸びをする。

 そのうちに、三宮駅のホームへと入り、ドアが開いた。

 慌てて立ち上がり、ひなたは大輪愛とともに、よるに手を振って車外へ出る。

 

 

 外出自粛中でも、平日昼は人が多い。

 各所でぎゅうぎゅうとされながら、ふたりは改札口をでた。

 

「し、死ぬかと思った……」

 

 一番の被害者……もしかして: ニャトラン

 

 南無。(今話 2回目)

 

 

 

 …………。

 

「ひなたちゃんってさ、すごいよね」

 

 前を向きながら、大輪愛が唐突に話しかける。

 

「ひなたちゃん自身は、よく『やっちゃう』ことあるって思っとぅかもしれんけどさ」

 

「……?」

 

 ひなたが言葉選びに迷っているうちに、なおも言葉が続けられる。

 

「それでも、友達とうまくやっとるって、本当にすごいと思うよ」

 

 目の前の女子高校生は、歩みを止め、ゆっくりと目を閉じた。

 

「私は____あかんかった(ダメだった)

 

 

 中学に入学した時。

 彼女は____マイルドに言えば、ガッツリ『箱入り娘』だった。

 

 比較的閉じた環境の中で、これといったトラブルもなく____いや、実際にはあったのだが、鈍感ゆえに気づいていなかった____小学生までを過ごしていたその人は、精神面の発達が、()()()()()未熟だった。

 

 中学受験をして地元外に進学したため、まるっきり新しい環境に放り込まれた、そんな人。

 まぁ、まず上手くいくはずがない。

 

 単刀直入に言えば、嫌われて、夏には既に、対人関係をかなりこじらせていた。

 

「明らかーに私が原因なんやけどね。 それでも、結構ここ()にキたよ」

 

 ひとりぼっちは。

 

 

「実はねぇ、私、中学受験を始めたとき……小6の夏ごろから、プリキュアから一旦離れててさ。 まー本当に心の中まで、ひとり。 誰もいなかったわけね?」

 

 目を再び開いて、笑いかけるが、やっぱり目線は微妙に、ひなたからずれている。

 

 その満面の笑みのまま、サラッと恐ろしいことを言い放った。

 

「いやー、何度この手で人生終わらそうと思ったことか!」

 

「え”っ!?」

「ニ”ャ”っ!?」

 

 ひなたに加えて、今まで大人しく聞いていたニャトランまでもが、変な声を出して驚いた。

 

「それでも、今まで()()()()()()分、良心がとがめるわけね。 しかしそれも限界が近くなる。 そんな時、私を救ってくれたのが____」

 

 

____プリキュア

 

 

「動画サイト漁ってて出てきたのを見てたら……さっきとは違う意味で、キたんよね」

 

「俺たち流の表現なら、心の肉球にキュンと来る____感じか」

 

 せやね、と頷く。

 

「どこまでも光を以って闇を切り拓き、みんなの希望になって心を照らし続ける存在______画面を越えて、私を救ってくれた」

 

 あと、めっちゃカッコかわいい!

 

「せやから、私はプリキュアが大好きやし、私の永遠の、ヒーローなの」

 

 ひなたは内心、歓喜しながら、大好きを受け止めていた。

 話の流れが流れなので、表に喜びを出せないのが歯痒いが。

 

 

「で、その頃から、プリキュアの2時創作小説を書くようになったし、副作用で、空想癖もついちゃったんよねー」

 

 その後もしばらくひとりぼっちだったが、今度は()()()がいたから____

 

 ……いや、「ひとりぼっちだった」と言うのは語弊がある。

 仲良くしようという子がいたらしいが、自分から、友達作りをしばらく拒んでいたのだ。

 

 ひとりにされたんじゃなく、ひとりを選んでいた、その理由は。

 

「小学生までは『知り合いみんな友達』思考やったけど、そこからは『相手が友達だと言ってくれるまで、その人は()()()と思え』『私には基本、友達はいない』ってスタンスを取り始めたわけ」

 

「えっ、なんで?」

 

「そりゃあ、傷つきたくなかったもん」

 

 今こそ、こうしてネタにできているものの、当時はもちろん…………だ。

 

 

「でも、主に高校生になってから、ぽつぽつと誰かと帰り始めて」

 

 そのうちの一人は、1年生の夏休み、一緒に旅行に行ってくれた。

 

「宿泊先でね、スタッフさんに、私のこと『友達だ』って紹介してくれたんやけどね」

 

 その時の喜びは、半端じゃなかった。

 

「その後も、そうやって言ってくれる人が数人いてくれて」

 

「……さっきの人たちが、そうなんだよね?」

 

 えっ、うん。 と、食い気味に話をさえぎられた大輪愛がうろたえる。

 

「友達ならさ」

 

 せめて、と言葉をつぐ。

 

「ちゃんと____目を見て話してよ」

 

「うぐ……」

 

 痛いところを突かれたらしい。 目が泳ぐ。

 

「ひ、ひなたちゃん……そんな急には変われんって……」

 

 ____いわゆるKYのこの人は、多弁だが、一種の話下手だった。

 

「目は口程に物を言う____ってあるやろ? 実際、視線を合わせたら、()()がドバッと流れ込んでくるわけ。 その瞬間が怖くて、どーしても……」

 

「それでも見てっ」

 

 あの人たちも、私のことも____と、ひなた。

 

「せっかく世界を越えて友達になったし、もっとわかりあいたいよ」

 

 …………。

 

「えっ、ヤバ、優し……ひなたちゃん女神……!」(感涙)

 

「えぇっ!? なんでそんな反応になるの!?」

 

「……まーまー、お願いきいてくれよ大輪愛。 第一、アニメでこっちのこと知りまくってるくせに、そっちのこと教えてくれないのもフェアじゃねーし」

 

「それは……ごもっともで……」

 

 正論を突き付けられ、うなだれるも、覚悟を決めたように顔を上げる。

 

 

「「………… 」」

 

 ____あっ。

 

「ひなたちゃんの目、すっごく綺麗……っていうか、いつの間にか目を見ても平気になっとる

「き、きれ……ふぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!!??」(赤面)

 

「あーっ、照れた! ひなたちゃん、もう少し自己肯定感高めてかんと! あっ、そーだ、私これが言いたくて、延々語ってたんやん (おい)

 

「た、高めるって……」

 

「ひなたちゃん大好き~! ひなたちゃん超美人! スタイル抜群! コミュ力の塊! あと、つぉい! ……ほらー、ここまで言われて自分が好きにならんのはおかしいぞ~!」

 

「ひゃ、ひゃ~~~!?」

 

「やめとけ大輪愛! それ、ただ褒め殺してるだけだ!」

 

 

 てんやわんやになっているところ、ビルに取り付けられた超大型テレビから、ニュースが流れた。

 

 

 

ただいま入った情報です。

 

例の巨大不明生物が、東京都練馬区で、人間を媒体にし、発生しました。

 

繰り返します。 例の______

 

 

 

 

「「「!!??」」」

 

 

「お、おい、練馬って……」

 

「しかも人間に手を出してくるやなんて……!」

 

 愕然とするパートナーとサポーターの横で、ひなたは、こぶしを胸のあたりで握りしめた。

 

 

 

「のどかっち…………!!」

 

 

*1
とある数の並びの規則性を見出したり、それを利用して、なんじゃかんじゃ ややこしいことする おべんきょ。




 

 最終決戦が近づいてまいりました。

 ____ということで。(脈略0)

 (実質の)オールスター小説を書いてらっしゃる方____の一部の方。
 とあることへのご協力を賜りたく存じます。

 ……後ほど、詳細をメッセージで送る予定ですので、その時は、何卒宜しくお願い致します。

___________

(急に思いついた おまけスキット)

みなと「レッツ・プリ・キュオール____」

????? ??「タァーイム!」
  ドゥーン……!!

みなと「!?」

 


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Change & Cross The World 編
第11話 私の友達❤ 救え ELEMENT of HEART(いのちのエレメント)


 

前回、地名をミスったのを何事もなかったかのように直していくスタイル!(23日 火曜日夜)
練馬です! 練馬です!!

で、プリキュア始まりましたねぇ、嬉しーっ!!
もともと、全話再放送されると思って構成を立てていたので、今回含めて、3話オーバーしちゃいます。
しかしその辺りも、苦し紛れに話に組み込んでいくのですよ、わっはっh(殴)

……最終話、絶対長くなるから、今週で、来週分まで書ききって時間確保しなきゃ……。
    ※書ききれませんでした※
   ※今週分すらギリギリでした※


(今回、随所に(わかる人にはわかる)他作品ネタを盛り込んでますが……あえて元ネタから流れを外してあったりするものも。 特に、まどマギ)


 そして。
 そろそろ分かってきたんじゃないのでしょうか。

 この作品のサブテーマ。


 答え合わせは、最終決戦にて。



 


 

 

 

 

 …………。

 

 

 ____『源泉の世界』が、遂に元に戻りだしてる……!

 

 ____はっぷっぷ~、安定したら、干渉できなくなっちゃうのに~……

 

 ____お、お兄ちゃん、もっと早く送信できないの~!?

 

 ____ダメだ、拒絶反応が、前に起こりかけたんだ……週に1度、ウォールが緩くなる、『プリキュア本来の放送時間帯』じゃなきゃ……!

 

 

 

 ____頑張らなきゃ……目の前で苦しんでいる人も、応援してくれる人も、こんなにいるんだ!

 

 

 

 

 

 

のどかちゃん____

 

 

 

ちゆちゃん____

 

 

 

ひなたちゃん____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ってて________

 

 

 

 

*********

 

 

 

 ____5月末・午前中

 

 

 ____練馬区・某病院

 

 

 

「ぇほっ、げほっ……!!」

 

「こだまっ! どうしたの!?」

 

 胸を押さえて、急に咳き込む こだまの肩を、もえはが支える。

 顔が妙にほてっている。 片手を離して額を抑える。

 

「熱い……!? こ、こだま……!」

 

「もえは、ちゃ…………苦しいけど、なんか、変なの……何かが、違____」

 

「それ以上しゃべっちゃダメっ! 誰か、誰かっ…………お願い、サツキさんっ……!!」

 

 ぎゅっ……! と、祈るように、もえは はナースコールを押した。

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

「32期さん、おかえりなさーい!」

 

「…………」

 

「? ……どうしたラビ?」

 

 終始無言の彼を、玄関口で、のどかとラビリンは心配そうに見つめる。

 

 

 うつむいたまま手をやけに入念に洗い、更にうがいと洗顔をしてから、32期さんは、やっと重い口を開いた。

 

「こだまちゃんが……!」

 

 

 

 ____ えぇ~~~~~っ!!

 

「様子がおかしいから検査したら」

 

「コロナだったラビ~~~!?」

 

「感染経路は不明……そりゃそうでしょうね、おかしいですよ、なんで……!」

 

 しかも、持病持ちゆえに、容体は急変し、重症化しているという。

 ……不幸()()()()中の幸いと言うべきか、直ちに検査をした濃厚接触者の 燬村(きむら)もえは は陰性だったらしい。

 

「この間病室に行ったのどかちゃんも、保健所から指示が来ているので、明日、行きましょう」

 

「は、はい……」

 

「あ、あと、心配されちゃうので、家族には内密に……」

 

 ()()()()で、32期さんの後ろについて、のどかはフラフラと歩いた。

 

 32期さんはリビングに腰も下ろさずに、無表情で、深底のフライパンに冷凍食品のちゃんぽんを入れ、加熱しながら卵を静かに割って落とした。

 隣のコンロでも、同じことをする。

 

 次々と器に盛られるちゃんぽんをぼんやり眺めながら、のどかはショックのあまり、意識が半分吹っ飛びかけつつも鎮座していた。

 32期さんのご家族が、何があったのか聞こうとするも、二人の様子を見て、口をつぐんだ。

 ラビリンは、のどかの膝元から、眉を下げてパートナーを見上げた。

 

 

「「「いただきます」」」

 

 下手なホイップクリームみたいな重い雰囲気の中、一同は黙々と麺をすすった。

 確かに、美味しかった。

 美味しかった……はずなのに、妙なもので、どこか美味しく感じられなかった。

 

 

 そこからずっと上の空だったのどかは、気づくと、その日の行動をすべて終え、お布団の中だった。

 

「……………」

 

 相変わらずふわふわな寝具に、顔をうずめる。

 

 どうしよう、眠れそうにないな。

 羊でも、頭の中で数えてみようか。

 

 ……ダメ。 何だか逆に目がさえちゃう。

 ため息をつきかけ、顔を横に向けると、苦い表情を浮かべて眠っているラビリンが目に入った。

 

 ____ラビリンを数えてみよう。

 

 らーびりんがいーっぴき、らーびりんがにーひき……あれ、兎型だから一応『()』なんだっけ。

 

 ……そうだね、数えなおそ。

 いーちわ、にーわ、さーんわ、よ____あっ、ペギタンがでてきた、ニャトランもいる。

 あーっ、ラテが柵を飛び越えてきたっ。 また抜け出しちゃったんだね?

 うふふ、みんな、ラテを追いかけてる♪ あれっ、ペギタンがこけた、頑張れ!

 

 

 ____そんなことを考えているうちに、のどかの口元は自然とほころんでいた。

 心がスッと軽くなったみたいだ。

 

 寝返りを打って、大の字になる。

 数時間ぶりの穏やかな笑顔のまま、のどかは深い眠りに入った。

 

 

 

 

 

 

 ____翌朝・8時

 

 

「「行ってきまーす」」

 

 のどかと32期さんは、寄り道なしで保健所に向かった。

 

 少女の為に仕事の時間休を取った優しい男! スp(( 32期さん! <コッペパーン(ジャム以下略)

 

 ____えぇ、結果は陰性でした。 ホッ。

 これで陽性だったら残り3話じゃ終わらなくなっちゃうだろ! いい加減にしろ!!

 

 

 まぁ他作品のネタもほどほどに留めおいて。

 

 32期さんは仕事に行くために(あと、検査結果の報告)。 のどかはもえはに会うために。

 某病院に入っていった。

 

 

 手を消毒してから、のどかは病室に入る。

 

「もえはちゃ~ん、こんにちは~」

 

「! ……花寺さん」

 

 もえはは、ハッと顔を上げるも、すぐに俯いてしまう。

 

「……花寺さん、こだまは、どうなっちゃうんですか?」

 

 のどかは、スッと姿勢を低くして、顔の高さを合わせた。

 

「死んだり……死んじゃったり、しないですよね? また、一緒に笑ったり、できますよね!?」

 

 もえはは、目にたまった涙をこぼさないよう、切れ長の目をいっぱいに見開いていた。

 

「ねぇ、ぅくっ……助かり……ますよね……?」

 

 のどかは、凛とした表情で、もえはの両手を包み込む。

 

「信じよう、もえはちゃん。 少なくともこだまちゃんは、生きようって頑張ってると思うよ」

 

「! ……どうして、わかるんですか?」

 

「『一緒に笑いたい』って、友達のもえはちゃんがそう願ってるなら、こだまちゃんだって同じはずだもん」

 

 未来の笑顔を願えることは、生の源へと繋がっていくから……。

 

 ……それにね____

 

「私も、そう思ってたから」

 

「えっ……」

 

「私も、つい最近まで、ずっと病気でお休みしてたから……」

 

 

 わかるの。

 

 どうしようもなく苦しい時、お父さんやお母さんと笑いあった幸せな日が、蘇ってくる。

 未来を、諦められない。 また、外で元気に過ごしたいって思う。

 

 絶対に、何が何でも、生きたい____どんな時も、そんな気持ちでいっぱいだった。

 

 

「だからね、なんとなく、そうなんだろうなって____でもそれは、ずっと一緒に過ごしてきた もえはちゃんのほうが、実はよくわかってるんじゃない?」

 

「……どこか似てるなって思ったの、そういうところだったんですね____」

 

 えぇ、そうなんです____

 

「こだまは、希望そのものみたいな子()()()……いえ、子()()()()

 

 ____私は、生まれつき体が弱くて、心臓の病気で入退院を繰り返していました。

 

 当然、幼稚園にも小学校にも碌に通えなくて。 ほとんど院内学級で勉強しました。

 

 私、自分で言うのもなんですが、かなり内向的____引っ込み思案で、学級内の友達ができなかったんです。

 ずっと、ぽつん、とした日々を送っていました。

 

『ねぇねぇ、一緒に遊んでくれる?』

 

 体調がいい時、病院横の広場で暇つぶししていたら、突然、こう声をかけてくれたのが____こだまでした。

 あの子が笑うと、桜がパッと咲いたみたいになるんです。

 薄ピンクで、華やいでいて。

 私の____憧れの女の子です、今でも。

 

『きむら、もえはちゃん? ()く、って書いて()()()()なの!? かっこいー!』

 

 照れくぎてゆだっちゃうぐらい、かわいい、カッコいいって言ってくれて。

 

『苗字と名前、どっちも燃え上がれーって感じなんだね! すごい!』

 

『で、でも私……体も弱いし、全然、そんなメラメラしてないよ……』

 

『そうだねぇ……もえはちゃんは、燃え盛って焼き尽くすというよりは、とっても優しい、みんなを温める炎だよね』

 

 すごく、考え方も前向きで。

 

『そんな素敵なもえはちゃんなら、みんなに尊敬されるような、もっとカッコいい人になれるよ!』

 

『そ、そんっ、む、無理だよ……!』

 

『そんなことないよ、私は素敵だなって思ったよ?』

 

 どこまでも、肯定してくれて。

 

『可憐に輝く花……そう、白百合みたいで。 だから私、仲良くなりたくて、何日も迷ったけど、声をかけたんだよ?』

 

『鐘間さん……!』

 

 

 ……。

 

「そんな彼女が、急病で倒れたのは、2年ほど前____一緒に遊んでいた時のことでした」

 

 

『鐘間さんっ、鐘間さんっ……!?』

 

『っぁ、胸がぁっ……!!』

 

『し、しっかりして、鐘間さんっ、起きて……! こだま────────っ!!!!

 

 

 元々その頃は、こだまの体調が芳しくなくて____兆候は、あったんです。

 それなのに私、病院を早く勧めていればよかったのに……!

 

「もえはちゃんが悪いんじゃないよ? それ以上、自分を責めないで」

 

「花寺さん……」

 

 ……話を戻します。

 

 私と同じく心臓の病気だった彼女は、奇しくも、私と同じ病室になりました。

 

「ただ……私よりも急に悪化しやすい病気だったらしくて……」

 

 しばらくすれば、次第に痛々しい見た目になっていきました。

 

 

『ねぇねぇもえはちゃんっ、今度、近くで小さいお祭りあるんだって! 行きたいなぁ~』

 

『えっ、でも……大丈夫?』

 

『平気平気! もえはちゃんと一緒なら、つらいはずのことも全然つらくないよ!』

 

 その夏のこと、そういう経緯で、主治医さんと、何人かの看護師さんと一緒に、お祭りに行きました。

 思い返せば、すごい厚遇ですよね。 元から、もう長くないって言われてたのかも____

 

 

「もえはちゃん、しっかりして。 お祭り、楽しかったんでしょ? 悲しい気持ちで塗り替えたら、台無しになっちゃうよ」

 

「! ……そうですよね、すみません____で、そこの『たからものすくい』の屋台で……」

 

 

『ぅわーっ! もえはちゃん、見て見て!』

 

『……わっ、本当、奇麗だね、こだま』

 

『でしょー? ____看護師のお兄さーん! これ、何ですか?』

 

 ____この質問に答えてくださったのが、32期(サツキ)さんでした。

 思えば、ここからどんどん仲良くなったんですよね、懐かしいなぁ。

 

『あぁ、それはビードロですね。 綺麗ですよね~……すくってみます?』

 

『『はいっ!』』

 

『頑張ってくださいね~』

 

『……ティヒヒ、うまくいったら、それはとっても嬉しいなって』

 

『……こだま?』

 

『ん~? 何でもないよ~♪』

 

 案外こだまは、入院前の人生でやりなれていて、あまり苦労しなかったんですけど____私がどうしようもなく下手で。

 

『もえはちゃん、そこはこう、斜めにね~?』

 

『こ、こうかな……あっ……あ~落ちちゃった……』

 

『難しいよね~』

 

『そうだね……サツキさん、代わりに、お願いできますか?』

 

 

 …………。

 

「それで、32期さん、なんて?」

 

「優しく、拒否、されちゃいました」

 

「そうだろうね~……あの人なら……」

 

 

『それは、できかねるかなぁ……折角お揃いにするんでしたら自分で手に入れたほうが、思い出になりませんか?』

 

 それに____と、サツキさんは、至極単純な理由を付け加えました。

 

『幸いにして、まだ()()はほとんど破れてません。 諦めるには、あとちょっと足りませんよ?』

 

『は、はいっ、やってみます!』

 

『もえはちゃん、頑張れー!』

 

 ____ほんの数分後。

 

『『できたー!』』

 

 

「すごいっ、すごいよ、もえはちゃんっ! 頑張ったね!」

 

「ふふふっ、こだまも、おんなじこと言ってくれたなぁ」

 

 そのあと、ふたりでお揃いのペンダントにして。

 

「小さいころに見ていた、アニメの『プリキュア』に再燃したのも、その頃でしたね」

 

 現行のものはもちろん、離れていた間のもの、小さいころに見ていたもの、果ては生まれる前のものまで____何度も周回しました。

 

 

 

 …………。

 

「そういえば、花寺さんって、不思議ですよね。 名前も姿も何もかも、アニメから出てきたみたいで」

 

「えっ!? あ、はは……そう? 青天の霹靂だぁ……

 

 まぁ、深くはツッコみません♪ と、もえはは笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テ↓レレテレレテ↑ テ↓レレテレレテ↑

 

 

 

「!?」

 

 軽快な電子音____電車の発車メロディにありそうな____が廊下のスピーカーから流れる。

 

 もえはがポツリと反応した。

 

「あ……非常時訓練の時に聞いたやつだ……」

 

「もえはちゃん、何が起こってるの!?」

 

「詳細はわかりませんが、とにかく大変なことが起こったみたいです。 ついでに言うと、サツキさんはこのメロディが大好きらしいです。 前、ソードなんたらとか言ってたような……

 

「ありがとうっ!」

 

 言うなり、のどかは廊下へ出る。

 そして、緊急放送を聞いたあと____サッと顔色を変えて、どこかへと、なるべく早い駆け足で行った。

 

 

 

********************

 

 

 ____コロナ感染者専用エリア

 

 

 

『うふふ、だいぶ弱ってきたかな、エレメントちゃん♪』

 

 人型をしているものの、明らかに人外と見て取れる20代ほどの女性が、中空に体を横たえている。

 

「っぁ……あなた、人を利用したりして、何が目的なの? そもそも、何者なの……!?」

 

 かすれた声で、こだまが聞く。

 

『んー? ビョーゲンズ の仲間のようなものって言ったらわかるー?』

 

「ビョーゲンズ……!? でも、私、あなたなんか知らない……!」

 

『だろうね、イレギュラーだし♪』

 

 さてと、と女性は体を勢い良く起こす。

 

『余興は、これにて終了だからねー……さぁ、実験でも始めますかっ』

 

 女性は、こだまに手をかざす。

 こだまの胸から何かが抜き取られ、それが禍々しいオーラを放つ。

 

「あぁっ、ぅああぁっ……!」

 

 時間経過に比例してオーラは強まり、余計にこだまは苦しむ。

 

『偉大なる私のアート第1号になるんだから____』

 

 女性は邪な笑みを浮かべ、()()()そっくりの声で言った。

 

 

 

 

『 死 ん だ ら 感 謝 し て よ ね ! ! 』

 

 

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!??」

 

 

 抜き取られたそれは、ぐしゅっ! と潰れ、中からあふれた瘴気を纏い、肥大化していった。

 

 

「____た、大変っ……!」

 

 それをたまたま目にした、女性の看護師さんが、どこかへ知らせに行った____

 

 

 

********************

 

 

 

 ____全ての忘れられた時空が混濁する、その場所にて____

 

 

 ……本当は、あんまり干渉するのも、感づかれる可能性があるから、よくないんだけどね。

 

 ちょっと手詰まりしそうだから、今回だけ。

 本当に少し、少しだけだよ!

 

 それに、真にアイツに対抗できるのは、あなたたち、ヒープリのみんなだけなんだから……。

 

 

 ……ふふっ、じゃあ____みらいちゃん、いつもお世話になってます、よろしくね。

 

 

 

********************

 

 

 

「こだまちゃんっ、っは……こだまちゃん……!」

 

 あえぎながら、のどかは現場付近に着く。

 

「!! ……」

 

「むにゃあ……のどか、おはようラビ、今何時____」

 

 保健所での検査の途中からずっと眠りこけていたラビリンが、やっと目を覚ましたようだ。

 

 焦っているのどかが、珍しく強めの口調を使う。

 

「寝ぼけてる場合じゃないよ、こだまちゃんが大変なの……!」

 

「ど、どうした____ラビ────っ!?」

 

 

 

 

 

「リヴ・コロナビョーゲン!!!!」

 

 

 

 

 

「ラ、ラ、ラビィ……(○_○)」

 

「これの素体が、こだまちゃんらしいのっ!」

 

「ほ、本当に大変ラビ! 今すぐ変身ラビ!」

 

「勿論っ!」

 

 

 …………。

 

「「重なるふたつの花!」」

 

「キュアグレース!」

「ラビ!」

 

 

 即刻、変身を終える。

 

「あの、おどろおどろしいのは、いったい何ラビ!?」

 

「パワーアップしてる……よね」

 

 確か、『リヴ・コロナビョーゲン』と名乗ったか。

 

「早く片を付けなきゃ……」

 

「しかも、場所を移さないとラビ。 これ以上暴れられたら……」

 

 窮屈そうにする、リヴ。 今にも天井を突き破ってしまいそうだ。

 しかし、この巨体をどうやって移動させたらいいものか。

 

 強張った顔を見合わせた____その時。

 

 

 ____ Cure up ・ Rapapa! Kabe yo hiraite!

 

 

 

「「!? ……」」

 

 女の子の声が背後から響いた____

 かと思えば、目の前の壁が淡く発光し、扉のように開いた。

 

 驚いて振り返ると、ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()が縮小し、静かに消えていくのみだった。

 

 

「何が起こったんだろう……?」

 

「ともかく、よっしゃラッキー、ラビ!」

 

「そうだね、この『奇跡』、ありがたく使っちゃおう!」

 

 

 ____プニシールド!!

 

 ラビリンがシールド展開するやいなや、グレースがシールド越しにリヴを押す。

 

「ん~~~……ぇえいっ!!」

 

「ビョーゲンっ!?」

 

 扉から外に押しやられたリヴは、その勢いのまま、飛んで飛んで飛んで飛んで____

 

「リヴ……!」

 

 あの病院横の広場に、砂煙を上げて墜落した。

 

 

「ビョーゲン……ク、クリー、ムヒル、トォ……!」

 

「早い!」

 

「機動性、抜群ラビね……!」

 

 しかし、グレースが追って着地するのと、ほぼ同タイミングで、リヴは奇声を上げつつ立ち上がる。

 

「グレートヒェン!!」

 

 そう、リヴが両腕を天へかざした瞬間。

 

「「!! ……」」

 

 ウイルスの弾丸が。

 

「なんなんだぁ、これはぁっ!?」

「あの怪物よ!」

「何か飛んで来るぞー!」

「助けてぇ……!」

 

 四方八方へ____

 

「ウェヒヒー!」

 

「やめて──────────っ!!!!」

 

 

 

 ____あぁ、みんなひとしく、くるしんでる。

 そうして、なかよく、おそらへいくんだね。

 

 せんそうがおわったあとは、みんなひとしく、つらかった。

 ひとしかったから、つらくてもえがおだった。

 びょうどう。 すなわち、しんの、しあわせ。

 

 くるしいのは、いまだけ。

 そんなかお、しないで。

 きづくから。

 つらいのをのりこえたら、たのしいてんごくが、まってるんだよ。

 

 ほんとうのさいわい。

 わたしは、みんなをみちびくの。

 

 いまのわたし、あこがれてた、ひろいんみたいだね。

 

 うれしいなぁ。

 

 

 ウェヒヒ ウェヒヒ ウェヒヒ ____

 

 

 

「うっ、くぅ……!」

 

「リヴ?」

 

「やめて、こだまちゃんっ! もう、やめて……!」

 

 

「ビョーゲン────!!」

 

 

 じゃま、しないで。

 

 そのたてで、わたしのすくいをとめないで。

 びょうどうじゃ、なくなっちゃうよ。

 

 こんなのって、あんまりだよ。

 

 

「こんなこと、こだまちゃんが本当にやりたいことじゃないよね!? 変身ヒロインに、なりたいんでしょ!?」

 

 

 やりたいこと、だよ。

 

 ほら、みんな、おんなじに、くるしん____

 

 やりたい、こと、なのかな。

 

 くるしんでるね。

 そうだね、みんな、いま、わたしの。

 

 わたしの、せいで。

 

 

『そうだよ、今更、正気に戻ろうが、もう遅いの』

 

 

 あ、あたまのなかに、こえ、ひびいて____

 

 

()()()()()。 みんなを』

 

 

 ______ぁ

 

 

 

 

「ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」

 

 ____新たに、多数の弾丸が雨のように降ってくる。

 

「こだまちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

 グレースは、ラビリンと連携を取りながら、できる限りプニシールドで防いだ。

 

 ……が、あくまで、できる限り、だ。

 

 既に、周囲に苦しむ人々が多数いる。

 

 

「お願いっ……やめて、こだまちゃん!! 目指してたんだよね!? もえはちゃんと、ふたりで! もえはちゃんが、こんなの見たら、どう思う!? ねぇ、こだまちゃんっ……!」

 

「ウェヒ、ヒ……リヴ?」

 

 ぴたり。

 

「止まったラビ……!」

 

 

 ほっ、と息をついたとき、リヴの目が、大きく見開かれた。

 その視線は、グレースたちの後ろへと____

 

 

「こだま────っ!!」

 

「モ、エハ、チャ……?」

 

 

 そこで地を踏み締めていたのは。

 

 

 燬村もえは。

 

 鐘間こだまの親友、その人。

 

 

「もえはちゃん……!?」

 

 

「も、もえはちゃーん!」

 

 そして、後から駆けてくる人。

 

「32期さんラビ!」

 

「はぁっ、はぁっ……だ、ダメじゃないですか……」

 

 息切れしながら注意する32期さんに、もえはは一瞬怯むも。

 

 

「グレース、サツキさん、ごめんなさい、勝手に抜け出したりして……」

 

 ____でも。

 

「誰かがコロナビョーゲンにされたって院内放送で聞いて。 しかもそれが、こだまだって……黙って寝ていられなくて……!」

 

 

 

 もえはは、小さい声を裏返り気味にして、叫ぶ。

 

「こだまーっ! 私、こだまに、ずっと頼ってばっかりだった!!」

 

 

 ____私と、友達になってくれた。

 一緒に遊んでくれた。

 寂しい気持ちも、みんな吹き飛ぶくらい、嬉しかった。

 

 でも、その喜びは、こだまに与えられてばかり。

 果たして、私は、何かできていたのか。

 

 私の中の答えは……

 

「こだまが病気になって入院したとき、思い返せば私、もっと何かできたはず……なのに、その時だって、全然……!」

 

 だから。

 

 

「今度は、私があなたを守ります! あなたに守られてばかりじゃない私に……私は! 自ら! 変わります!!」

 

 

 その言葉に、32期さんは、ハッとした表情を浮かべた。

 そんな彼の横で、もえはは言葉を続ける。

 

 

「大丈夫だから! こだまひとりで、背負わなくていいから! ____戻ってきて、こだま────っ!!!!」

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

「____モエハ、チャ、ジブン、ヲ、セメ、ナイデ」

 

「「「「 !!!! 」」」」

 

 リヴが、こだまの自我を取り戻したのか……?

 そのまま、言葉を紡ぐ。

 

 

「モエハ、チャ、わた、し、私ね、もえはちゃんに、いっぱい幸せ貰ったんだよ」

 

「こだま……」

 

 

「もえはちゃんこそ、私と遊んでくれて。 友達になってくれて。 病気で倒れちゃったときも、朦朧としてる私を、すごく心配してくれて」

 

 

 

 ____私のこと、愛してくれて。

 

 

 

「ごめんね、私、こんなにも、ふたりで幸せだったのに、そのこと忘れちゃってた」

 

「い、いいよ! 状況が、状況だし……!」

 

 

「ティヒヒ……もえはちゃん、大事なことを思い出した今。 私ね、改めて、思うんだよ」

 

 

 

 

 もえはちゃんは。

 

 

 

 

 永遠に。

 

 

 

 

 

 私の。

 

 

 

 

 

「____私の、最高の友達なんだ____って」

 

 

 

「…………っ」

 

 

 

 

 もえはが、今にも泣き出しそうな笑顔になる。

 

 リヴの、つり上がった目の奥。

 こだまの、いつもの金色がかった明るい茶色の瞳が、細められた。

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

「これは、なおさら早く浄化しないとですよね」

 

「そうだね、32期さん」

 

「応援よろしくラビ!」

 

 任されました! と彼は頷く。

 

 

「もえはちゃん、下がりましょう。 後はプリキュアが頑張ってくれます。 精一杯、フレフレしますよ!」

 

「! ……はいっ!」

 

 

 宿主の人格を戻したリヴは、もはや無抵抗である。

 浄化されるその時を、静かに待っていた。

 

 

「こだまちゃんが、どのあたりにいるか、確かめよう!」

 

「ラビ!」

 

「「キュアスキャン!」」

 

 

 ____レーダーに反応が出る。

 

 現れたのは。

 

「……? これは?」

 

 こだまじゃなくて。

 

「何、ラビ?」

 

 非常口を示す緑色のアレに描かれている人型のそれ____が、シャボン玉のように、カラフルで半透明になったみたいなのだった。

 

 

『……僕が、見えるのかい?』

 

 突然、それがしゃべりだす。

 

『僕は____いのちのエレメント』

 

「いのちの……」

 

「エレメントさんラビ?」

 

 いつものエレメントさんとは、見た目が大きく異なるが。

 

 

『そうさ。 全ての人の心に宿っていて、生命力を司っている。 今まで、ずっと、コロナに侵されて苦しかったけど、なんとかしてくれるんだよね?』

 

「もちろんです!」

 

「任せるラビ!」

 

『頼むよ。 僕は、この子のこと、心優しいから好きなんだ』

 

「はい!」

 

 

『……あえてお願いするまでもなさそうだ。 ありがとう、いずれ、協力させてもらうよ____』

 

 

 スキャン時間が終わり、ゆっくりと、いのちのエレメントさんの姿が、かすんで、見えなくなった。

 

 それを見届けて、ふたりは、リヴを見据えた。

 

 

 祈る32期さんと、もえはの横で、グレースとラビリンは、花のエレメントをチャージする。

 

 

 

 

「プリキュア! ヒーリング……フラワ────っ!!!!」

 

 

 

「ヒーリングッバァイ……ウェヒヒ…………」

 

 

 こうして、強敵・リヴは浄化されていった。

 

 

 

********************

 

 

 ____32期さん宅

 

 

 

『あっ、やっぱりなんですか!?』

 

「そうなんですよー、のどかちゃんたちも、かなり苦戦して」

 

 大輪愛と32期さんは、ビデオ通話をしていた。

 のどかたちは、入浴中である。

 

『せやなぁ、人を素体にするとか、明らかにまずいですからねぇ』

 

 元にもどったあとも、こだまはしばらく集中治療室入りである。

 

「こだまちゃん曰く、ビョーゲンズの仲間を名乗る女性がいたとのことですし、これは早急に____」

 

『はい、集まらんとですね。 ひなたちゃんにも、伝えます。 横浜付近でしたよね?』

 

「えぇ、すこやか市があるであろう辺りは、そうですね」

 

『ありがとうございます……あっ』

 

「? ……」

 

『父が呼んでるんで……失礼します』

 

「了解です、稚拙さんの方には、私から」

 

『お願いします』

 

 

 ふぅ、と、32期さんは息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよもって、大変なことになりそうですね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

『当然………………♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


お、およそ、10000字www
どうしてこうなったwwwww

(草を生やすのは普段しないのに、ついするほど、たまげた)

これでこの分量なら、最終話どうなんねん!


……いやぁ、本当にぎりぎりでした、時間的に。
多分、最終回は、1週間延期になるでしょうね……
くっ、ここまで遅延せずに来たのに……

ともかくみなさん、読了、お疲れ様でした…………。



 


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第12話 始まる答え合わせ❤ ハイエニア降臨!

 


 …………。


『小部屋』のみなと「ほらー謝ってきなよ」

大輪愛「そうだね……みなさんっ! すみませんでした!!」

小部屋みなと「今日(7月7日)は、学校あるんだけど、交通が麻痺してて行けないから、慌てて仕上げたんだよね」

大輪愛「うん……それで、最終話も執筆期間に2週間以上必要なんですけど、この後すぐ、執筆に取り掛かりますので、お許しください!」


小部屋みなと「よし……じゃ、行こっか?」

大輪愛「はーい、あ、私、7月1日、初彼氏できました」

小部屋みなと「……へっ?」

大輪愛「年下の、エグゼイド ガチ勢の男の子です。 あぁ、あの日はびっくりしたなぁ……」

小部屋みなと「びっくりしたなぁ、じゃないよ! 彼氏いない仲間だとおもってたのにっ!」

大輪愛「ごめんね~」スタスタスタ

小部屋みなと「あっ、待ってよー! だりあんの馬鹿ー! ありえなーいっ!」



 変なお茶濁しをして、すみません……。

 あと、裏設定上、日曜朝8時30分にしか投稿できないことも、お許しください。


 本当にお待たせしました、それでは……どうぞっ!




(なんで今回、こんな作風になったんだろう……)


今更ながら、ボスについて『狂気を催す邪悪』タグがつきます。
ご注意ください。
吐き気よりも断然、狂気。 狂気。



 


 

 

 

 

「う"わ"~~~~~~~~~~~~~っ!!」

 

 

 寝室に、悶え声が響き渡る。

 

「だ、大丈夫ですよ、そんな最悪の事態にはなりませんって!」

 

「それでも、やらかしてしまった 正確に言えば、不可抗力によって『やらかされた』 ことは変わりないしなぁ……」

 

 ちゆが、声の主____稚拙さんをフォローする。

 

本当に、なに小説家の先輩を悩ませてるんだペェ、大輪愛は……

 

 ……えっと。

 まぁ、とりあえず、『やらかした』内容は、皆さんご存知の____

 

 知能を持った幹部いないし、何かバレちゃってるし、嘘も苦しくなってきたから、正直になっちゃえ!

 

 ____の、それである。

 

 

 現在、32期さんから連絡を受けて、幹部の出現に、絶望なさってる訳で……。

 えー、本当に申し訳なく……。

 

 

 

 ____壁の向こうで土下座をする女子高校生を傍目に、稚拙さんは前向き思考に切り替え、上体を起こした。

 

 

「でも、裏を返せば、相手が本気を出してきたらしいコレを乗り切れば……!」

 

 当面は難を逃れられるかもしれない!

 

「その調子ペェ! 笑ってる方が()()()ペェ!」

 

「そうね、頑張りましょう!」

 

 

 じゃあ、気晴らしにでも、と、稚拙さんは腰を浮かせて立ち上がり……

 

「あべしっ!?」

 

「「 !! 」」

 

 そのまま足を滑らせ、前のめりに、三つ折りにされた布団の上にダイブした。

 

「…………散歩にでも、行こうか」

 

「は、はい……怪我ないですか……?

「賛成ペェ……!」

 

 

 

 ____と、いうわけで、6月始め、気持ちのいい小雨の中。

 

 プリアラを連想させる、黄色い無地の傘をさし、一同は、海沿いの遊歩道へと繰り出した。

 アマビエさんにエンカウントした、あの遊歩道である。

 

「リヴ・コロナビョーゲン……でしたよね?」

 

「話を聞けば聞くほど、今まで以上に危険な存在だと痛感するよね……」

 

「人間に宿る『いのちのエレメント』を取り込むなんて……恐ろしいペェ」

 

 

「あの、実は____」

 

 ここで、ちゆが、敵について、32期さんに個別に質問したことを明かす。

 

「……彼に伺ったところ、『こだまちゃん』は……」

 

 

 ____あの女の人、死んだら感謝してよね、とか言って、すっごく怖かったけど……プリキュアに助けてもらって、とっても嬉しかったなって、ウェヒヒ____

 

 

「……と、言っていたそうです」

 

「ぅわぁ……それぞれ、どんな声してるか察してしまった……敵側は、よりによって『神浜のヤベーやつ』かぁ……まいったな……

 

「神浜? ヤベーやつ? どういうことペェ?」

 

「まぁ、一言でいうと、マッドアーティスト____あと、なんでこんなあだ名がつけられているのかイマイチ腑に落ちない*1けど、一部の動画投稿サイトでは、『神浜の檀黎斗』とも呼ばれてるらしい」

 

 その名前を聞いた瞬間、ちゆとペギタンが、なんとも言えない……強いて言うなら、強張った表情を浮かべた。*2

 

「……まぁ、なんにしても、とんでもない人ってことね……」

 

 そこまで話して、一同の頭に、こんな短文が浮かび上がった。

 

 

  もしかして : ラスボス級

 

 

『そのとぉ~~~~りっ!』

 

 ※ピアノの音が空耳で聞こえたあなたはテレビっ子 ピアノ ウッテ チョーダイ

 

 

「「「!!!!」」」

 

 途端、雨雲がモーゼのそれみたいにスパッ! と裂け、一筋の光が差した。

 

 その差した先の地面から、にょっきりと生えてきたのは____

 

『フハハハハハハハハハハ!!』

 

 ____正面に、『Byo-gens』と書かれた、濃い紫色の土管。

 ……いや、なんで? そんな前から潜んでたの?

 

 さらにそこから、上記の笑い声を、満面の笑みとともにあげ、これまた にょっきりと……。

 

 

「……女の子……ペェ?」

 

「女の子というよりかは、若い女性ね」

 

「外見年齢22くらいかな?」

 

 

 女性は、指パッチンして土管を消滅させた後、フワリと中空に浮かぶ。

 

『愚かな人間さん共よ、サービスはこれでおしまいね!』

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 そして、ニコリ____いや、ニタァリ……とし。

 

『いかにも、私が、この世界の結末を握る____いわば! (ゴォォォォォォォォッド)のような尊い、存↑在↓ッ!!』

 

 その名も! と、くるりと優雅に回った。

 

ハイエニア(肺炎)! だよ────っ!!』

 

 

 『(クァミ)』じゃないのか……という、困惑の色が見えるツッコみを流しながら、女性・ハイエニア*3は、恍惚の表情を浮かべ、セルフ拍手をしている。

 

 ……苦しい解釈をすれば、あえてネタを外したのは、本当に『サービス』を終え、これからは本気で挑むことを暗示したかったのかもしれない。

 

稚拙さん「そんなこと言ったって、おおよその『自称・神』は、見掛け倒しで、器の小さいキャラなんだよなぁ……」

 

 

 

 ともかくとして。

 

 どんな登場の仕方であれ、CV.神浜のヤベーやつ な自称ラスボスさんが出てきた現在、控えめに言って、とんでもなく危ないシチュエーションである。

 

「……あなたが、まだ年端もいかない少女を実験台にしたのね?」

 

『実験台? やだなぁ、アート___って言ってよね?』

 

 ちゆの確認に、相手はセルフ拍手をやめ、やや不満そうな表情で首を傾け、片手を頬に添えたポーズで3人を睨む。

 

 

『ショージキ、私の初めてのアートが、あんなむざむざとヤラレちゃって、今、チョー気分悪いんだけど?』

 

 周りの空気が張り詰めてくる中、一同が緊張した面持ちをするも、稚拙さんはただひとり、内心で、「元ネタと微妙に口調があってないのも、変な気分だなぁ……」と、比較的呑気なことを考えていた。*4

 

 

 しかし、そんな考察時間も長くは続かず。

 ハイエニアも、あの注釈のような心持ちだったらしく、いよいよもってオーラがガラッと変わる。

 

『そこの青いの、あの憎らしいピンクの仲間でしょ? ってことで、連帯責任で、その命をもって____この世界を覆すような、私のアートの一部になってよね!!!!

 

 

「ッ! 不味い、いますぐ構えて!!」

 

「は、はいっ!」

「やるペェ!」

 

 

 …………。

 

「「交わるふたつの流れ____」」

 

「キュアフォンテーヌ!」

「ペェ!」

 

 

 

「来るわ!」

 

『あなたたち、チョー邪魔なんだけどぉ──────────っ!!!!』

 

 ____プニシールド!

 

『効かないねぇ____こんなのがどうした!!』

 

 美人台無しの、鬼のような形相で突貫してきたハイエニアは、シールドとぶつかり、鈍い金属音を立てる。

 

 この宇宙を取り巻く『作用・反作用の法則』によって、双方、大きくノックバックした。

 

「っ! ……」

 

 フォンテーヌは、さっきの衝撃で、少し手がしびれたようだ。

 軽くグーパーを繰り返し、再び対峙する。

 

「負けない……!」

 

『!! ……その澄んだ瞳、ムカつくんだよね。 変身を望む この世界に、あなたたちみたいなのは要らないの____』

 

 ハイエニアは、こぶしを握り、足に力を籠める。

 

『大人しく、滅されろ!! 何故お前たちが紛れ込んだんだ____滅されて、この宇宙から、記録ごとなくなれっ!!』

 

 力を開放し、腕を振りかぶるハイエニアに対し____

 

「もうっ! 何がそんなに、いちいち腹立たしいの!」

 

『! ……』

 

 と、短い周期でキレてばかりの敵に、呆れを込めて、回し蹴りを打ち込んだ。

 

『っくは……!?』

 

 回転の余韻が残る中、フォンテーヌは、吹っ飛んでいくハイエニアを、注視していた。

 

「稚拙さん……」

 

 敵から視線を外さないまま、フォンテーヌは話しかける。

 

「うん……相手の発言、結構気になるところ、多いよね……」

 

「それってどういう……あっ、『変身を望む』とかペェ?」

 

 ふたりは、頷いた。

 

 頷いたその時に、ハイエニアが、平然とした表情で、ムクリと起き上がった。

 

「「「……!」」」

 

 ほぼ無傷……!

 

『あぁ、そうだよね? アートの意図が勘違いされてると、もっと腹立たしいしね。 教えてあげようか』

 

 

 私の創作意図の源泉を____

 

 

 

 

Back to the log of another world (別の世界の物語)……

 

 

「わぁーっ、きれーい!」

 

 そこは美術館のようだ____3歳ほどの幼い少女が、カラフルな現代アートの数々を見て、目を輝かせている。

 

「どう、気に入った、エナちゃん?」

 

「うん! チョーすてきだよ、ママ!」

 

「ふふ、よかった。 ほら見て、ここら辺は、ママのアートワークなのよ?」

 

 そのキャンバスに描かれるは、ひとつの心臓____中には、無限の星空が広がっている。

 

「すごぉい、キラキラだね!」

 

 少女がそういうと、何故か母親は、その端正な顔を、わずかに歪めた。

 

 

 ____4年後

 

 

灰味(はいみ)さん、それは?」

 

「ただの落書き。 溢れるインスピレーションを吐き出してるわけ」

 

「えーっ、もったいないよ! それも展覧会に応募したらいいじゃん!」

 

「ダメ。 いつもみたいに金賞取ってるのは、もっとソウル込めて描いてるの。 惰性で描いたのは世に出せないから」

 

「……? よくわかんないけど、わかったー」

 

 芸術の世界にはまり込んだ少女は、早くもその才能を開花させ、大きなコンテストなどの勝者の常連となっていた。

 

 ただ、人と掛け離れた才能の持ち主は、すなわち、世からも離れ、浮いた存在になる訳で____

 

「…………」

 

 生活の隅々をフィールドワークの場と化し、題材を探す少女の目は、『飢えたハイエナのようだ』と同級生から恐れられた。

 

「別にいいから……私には、アートがあるから」

 

 キラキラの、夢いっぱいの、私のアート……。

 

 

 

 ____さらに1年半後

 

 

 世の中は、新型の病気が蔓延していた。

 感染したものは、重症の肺炎を起こし、ほぼ確実に死んでしまうという、恐ろしい病気。

 

 世界中が自粛ムードに包まれる中、少女は相変わらず、題材探しに走り回っていた。

 

「いってきまーす!」

 

 …………。

 

「フィールドワーク行ってくるからー!」

 

 …………。

 

「いってきま……ん"んっ、風邪引いたかな……」

 

 …………。

 

「い"って"き"ま"ぁ…………」

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

「っ! ゼェッ、ゼエッ……な、なにこれ、げほっ、息が、苦し……!」

 

 

 

 ____電話の音、母の声。

 

 ____防護服にガッチリ包まれた救急隊員が、少女を担ぎ上げる。

 

 ____少女を乗せて、サイレンが街中に響き渡る。

 

 

 

 

 

「手は尽くします。 ですが、お子さんは………」

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

「あぁ、げほっ……病院……そうだ、私……」

 

 ふ、と、母親の姿が目に入る。

 

「____ママ、筆とキャンバスちょうだい…………」

 

 キラキラを描きたい……。

 

「嫌よ」

 

「……!?」

 

 母親は、憎しみに満ちた表情で、横たわる少女を見下ろす。

 

「私のアートは、あんたが思ってるような、キラキラした物じゃないの。 社会という枷に押し止められる、誰もが持つ狂気、邪でありながらも輝くフィーリング____千差万別で、無限に心の中に広がっていく様を……あの日、あんたに見せた絵に、私は表現したのよ」

 

 ……なのに。

 なのに、なのに、なのに!!

 

「前からそう、審査員のあいつらは、私のアートをわかってくれない! 表面の()()()()を見て、それだけで評価しようとする。 何が審査員だ、偉そうに……」

 

 母親は、キッと、少女を睨む。

 

「お前もだ、娘のお前なら、わかると思っていたのに、なのに……お前は、母譲りの才能を空費した。 審査の奴らのご機嫌取りの才ばっかり伸ばしやがって…………」

 

 そして、吐き捨てるように、言い渡した。

 

「お前なんかもう、私の娘ではない! 娘でない物に渡す画材はない____ 二度と! 絵を! その吐き気のする絵を描くな!!」

 

「! ……」

 

 

 

 絶望。

 

 タールや原油のようなドロリとしたそれが、一瞬のうちに心を染色した。

 

 

 崖で宙ぶらりんになったときに、命綱を切られたような、絶命へ加速する、絶望。

 

 取り返しのつかない、絶望。

 

 

 

 ……なんでだろ。

 むしろ、笑えてきちゃう……。

 

 

 あはっ…………。

 

 私、もう、死ぬまでも、死んでからも、キラキラできない、夢を見られない…………空っぽ、無価値、ゴミ屑同然になって、骨の燃えかすに、灰色の顔料になっちゃう…………。

 

 あぁ、でも、それもいいかも。

 顔料があれば、絵の具ができる。

 私の骨で描くアートワーク……きっと誰も____

 あいつ(母親)でさえ、それが芸術だって、あまりにも高次元すぎて、わかんないよね。

 

 もう、キラキラしてなくたっていい。

 ううん、最初っから、私に輝きなんてなかった。

 空っぽなハートを、ジュエリーで飾ってただけ……そう、私は、死んで、あるがままの姿に戻って行く!

 

 名付けるなら____新・私……❤

 

 一見安直だけど、それが私に相応しい❤

 根底の私は私のまま……芯の、真の、新の私へ回帰し、生まれ変わるのだから!

 

 あぁ、全然アリナんだけど……このソウルをもって、世界をキャンバスに描く、グレイなアートワーク……❤❤❤

 

 

 あはっ、これから私は、血ヘドを吐くほど、苦しんで、死んでいく____だけど、それにさえ感謝したい……!

 

 早く行きたいなぁ、私を渇する、その広大なフィールドへ………………❤

 

 

 

 …………。

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 ____ここは、忘れ去られた時空が混在する場所。

 

 そこに、あの少女が、漂っていた。

 

「何ここ……天国……でも、地獄でもなさそうだよね」

 

 意識を取り戻した彼女は、平泳ぎのようなフォームで、ゆったりと移動していく。

 

「私、死んだんだよね……? 死んで、アートになるんだよね……?」

 

 

 あてもなくさまよう中、どこからか、ひとつの大きな種のような物が飛来してきた。

 少女は、それを上手くキャッチする。

 

「これは……あはっ、チョー毒々しいカラー。 嫌いじゃないんだけど」

 

 ____本当に、アートに、なりたいか?

 

「……はっ?」

 

 ____お前の望み通りのことを可能にする力を、我は秘めている。

 

「あっ、何、この種みたいのがしゃべってるわけ。 で、あなた、チョー面白そうなこと言うよね」

 

 どうすればいいわけ? 少女は、享年9歳であることを忘れさせるほどの、闇に満ちた笑顔で聞く。

 

 ____我を、飲め。

 

「飲むの!? チョーでかいよ、あなた!」

 

 まぁいいけど……と、恐る恐る口に含む。

 案外、するりと喉を通っていった____

 

「んぐっ……❤ ん、ぅ……!?」

 

 何これ、私、変わってっちゃう……脳みその奥の奥から、遺伝子組み替えされちゃう…………!

 

 だけど、それが、イイ…………❤

 

 どこかアダルティな新感覚ぅ…………↑↑↑

 

 チョー、エキサイティン………………!!

 

 

 あ、は…………。

 

 あはっ……………………!

 

 あはっ、あはっ、あはっ、あはっ、あはっ、あはっ、あはっ______

 

 

 

 

 

 

 

 わ、たしが、ぬりつ、ぶされ、て

 

 

 

  きえ、てく

 

 

 

 

   あはっ

 

 

 

 

 

    わたしって

 

 

 

 

 

 

 

     わたしって?

 

 

 

 

 

 

 

    あ

 

 

         は

 

 

 

      あ

 

 

        は

 

 

 

      は

 

 

 

 

         は

 

 

 

      は

 

 

 

 

        ・

 

        ・

 

        ・

 

 

        は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな はずじゃ なかった

 

 

わたしだって しあわせになりたかった

 

 

どこで まちがったのかな

 

 

 

 

 

どこで____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

「風邪なんか引いてなきゃ、入試に受かってたはずなのに……!」

 

 誰…………?

 

「あの野郎、俺をいいように使い捨てやがって……再就職先、どうすんだよ……」

 

 声が、聞こえる……。

 

「ダメ、やっぱり相談なんてできない……! お腹の赤ちゃん、どうすればいいの……!」

 

 現状を、嫌う声……。

 

「なんで、なんで僕ばっかり、こんな理不尽な目に……!」

 

 運命を、呪う声……。

 

「あぁ、もうやだ、死んでもいいかな……」

 

 みんなの声……。

 

 

 …………今の世界を恨む、みんなの声、変えたがっている、みんなの声……!

 

 私を、求めている…………!

 

 待ってて、今行くから……!

 

 

 ____バチッ!!

 

 

 何、この壁、チョー邪魔……どいて…………よっ!!!!

 

 

 ……あっ、通れた。

 あっけな。 あはっ。

 

 ……ふぅ…………。

 

 

 

 

 

「あー、今日も楽しかった!」

 

 

 ____は? 何、この声……。

 

 

「明日は、初デート……よし、シュミレーション、シュミレーション……」

 

 

「お父さん、今度の誕生日、ライダーのベルト買ってね! あと、プログライズキー!」

 

 

 

 

 …………忌ま忌ましい声。

 

 

 世界はこんなにも変化を望んでいるのに、救世主で、ゴッドたる、私が現れたというのに。

 こいつらにも、わからせなきゃ、感謝させなきゃ……!

 

 

 ________!!

 

 

 …………ん!?

 

 何か、光るものが向かってくる…………もしかしなくても、別の世界……?

 

 ……はぁ、みんな私の邪魔する。

 

 

 いいもん、全部、変えてあげるから____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____どうか

 

 

 

 

 

 

 

わたしに ほんとうの えがおを

 

 

 

 

 

 

 

わたしに ほんとうの やすらぎを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

********************

 

 

 

 

 

 

 ____ハイエニアの過去、そして、正気を疑う思考回路に、3人は絶句した。

 

 

「どうかしてる……! 結局ここは、君を望んでいないんだ! その証拠に、コロナを止めようとする人が、たくさんいるんじゃないか!」

 

 とっとと おウチに帰りなさい! と、いつになく強い口調で、稚拙さんは立ち向かう。

 

 

 しかし、ハイエニアは顔色を変えず____むしろ、能面のような笑みを保っている。

 

「本当に、そう?」

 

「……!?」

 

 

「人ってのはね、大人になるにつれて、何かしら、世界のくすんだ……それどころか、ドロドロしたところを知っていき、大半は渋々ながら適応していくわけ」

 

 

 間。

 

 風の音。

 

 

「ま、あなたは適応せずに、キラキラのまま大人になれたっぽいけど」

 

 

 目が合う。

 

 波は、静か。

 

 裂けた雲が戻ってきて、頭上から細い雨が落ちてくる。

 

 

「本当に、いつも現状に、世界に満足してた? 変化を望んだこと、なかったって、言いきれるかな? ん?」

 

 

「…………」

 

 ハイエニアの口が、横に横にと三日月のように広がり、気持ち悪い笑顔を浮かべる中で、稚拙さんは、終始無言だった。

 

 

「稚拙さん……?」

 

「大丈夫ペェ……?」

 

「…………」

 

 

 悔しかった。

 そんなことないって、言い切りたかった。

 

 だけど、その材料、証拠がない。

 むしろ、頭は認めてしまっている。

 

 そもそも、大人特有の思考回路、判断基準が理解できていなければ、『あの電調のメンバー』*5 *6 だって、生まれていなかったはずだ……。

 

 どう返せばいい? どれが正解なんだ?

 ノベル系のホラゲよりも、下手な真似はできない……!

 このまま睨み合って、冷戦としゃれ込むか……そうだそうしよう、時間稼ぎにはなる。

 何気なく言った一言が、*7*8死亡フラグになることだって、あるんだし……。

 

 ____違う、そんなのは、ただの言い訳に過ぎない……!

 悔しい……こんな奴に……!

 もう死亡フラグとかどうだっていい、今からでも遅くない、何か、何か言わないと……!

 

 

「…………」

 

『あはっ、何? 黙ってるけど……あぁ、()()()ってやつ? じゃ、この世界、私のアートワークにするよ? いいよね? いいよね?』

 

「黙りなさいっ!!」

 

 

 調子をこくハイエニアに、綺麗ながらも、鋭い叱咤の声が飛んだ。

 

 

()()()()()()()()わ!」

 

 その発言主____フォンテーヌは、軽く目を閉じると、カッ! と見開く。

 

「稚拙さんは、かーなーり! いい人よっ!!」

 

 

「!! ……」

「フォンテーヌ……」

『はぁ……↓ ……はぁっ?』

 

 

 フォンテーヌは、なおも言葉を続ける。

 

「確かに、稚拙さんは大人だわ……でも、それはいい意味でよ! 私よりも人生経験があって、私たちにない深みと、世界を知っているからこそ一層輝く純粋さは、私含め……人の憧れになるものであり! 決して! 決して____蔑まれる物にはならないわ!!」

 

「ちゆちゃん……!」

 

 稚拙さんっ! ____フォンテーヌは、真剣な眼差しで、相手を見つめる。

 

「変わって、いいんです!」

 

「! ……」

 

「これからも、歳を重ねて、もっと素敵な大人になってください! 夢や希望は、『なりたい自分』、『起きてほしい未来』を描くもの! 未知へと行くことは、決して悪いことではないわ!」

 

 そう、敵の異常さに惑わされていたが、ハイエニアの言う『変身』は、あくまで偏見にまみれた狭義。

 他人に歪められるソレとは違えども、自ら望み、高みへと進化していくこともなお、『変わること』である。

 

 そして____

 

「私も、変身する…………変身して、プリキュアになるし、きっとこれから成長して、稚拙さんみたいなカッコいい大人になります」

 

 でも。

 

「私は、プリキュアとして、きちんと決着が付くまで地球をお手当てしていく……地球やエレメントさん、そして、私たちを応援してくれている、この世界のみんなの、希望でありつづけるわ」

 

 それは有常不変のものでなく、例えるなら、輝きつつも、その命を刻む、夜空の星____

 

 

「だから、信じてください____あなたの、信じたい物を! どこまでも!」

 

 私は。

 

 私たちは____

 

「未来へと歩んでいくあなたの、そして皆の道標に! 希望の星になります!」

 

 

『な、何それ……なんでそんな……』

 

「最後に! もう一度言わせてもらうわ!!」

 

 フォンテーヌは、半分ドヤ顔で、再びハイエニアを見た。

 

 

「稚拙さんは! か──な──りっ! いい人よ!!」

 

 

 

 

「…………」

 

 稚拙さんは、フォンテーヌから受けとった言葉のひとつひとつを胸に染み込ませるかのように、微かな笑みをたたえ、大きく息を吸った。

 

 そのあと、にやりと笑い、強気に宣言した。

 

なんか____()()()()イケ()る気がするッ!!

 

 

『ふざ____けるなァァァァァァアッ!!!!』

 

 やりこめたつもりが、やりこめられた____自尊心を傷つけられた怒りで、ハイエニアは、稚拙さんの方へと向かってくる。

 

「させないわっ!」

 

 ____プニシールド!!

 

『ぐぅ!!??』

 

 フォンテーヌとペギタンが、稚拙さんと同じような勝ち気な笑みで割って入る。

 

 敵は____今度は、わざと気を抜いて吹っ飛ばされたのではない____純粋な力負けで、吹っ飛んでいく。

 

 

「頑張れ────っ! ペギタン、フォンテーヌ!!」

 

 そこに、稚拙さんの声援が加わった。

 稚拙さんの胸の辺りから、暖かで透明な光があふれている。 これは一体……?

 

『ぐ……この光は…………!!』

 

 ハイエニアの表情が、焦り一色に変わる。

 反比例して、光を浴びたフォンテーヌには、力がみなぎっていく。

 

「今なら……っ!」

 

「やるペェ!」

 

『それは____ターンマっ!

 

 ……ご存知だろうか。

 近づいてくる敵に怯える動物は、概して、一定のテリトリー内に立ち入られると、攻撃態勢に転じることを。

 

 ハイエニアは、ピシュンッと、姿を消したかと思うと____

 

 

「フォンテーヌっ! 後ろだ──────!!」

 

 

「……!?」

 

Too late(トロすぎ) ……ってね!』

 

 

 

 ________トン。

 

 首元に、軽く打たれた。

 それだけだった。

 

 

 …………。

 

「──────!」

 

「~~~! ~~~!」

 

 

 ____遠のいていく意識の中で、ハイエニアの声が、やけにはっきり聞こえた。

 

 

 

 

『あなたたち、すこやか市に集まるんだよね?』

 

『じゃあ、慈悲で、あなたたちの墓場、そこにしてあげる』

 

『次は、容赦しないから』

 

『全世界公開のアートショー____あぁ、考えただけでもゾクゾクしちゃう♪』

 

『じゃあ、待ってるから________♪』

 

 

 

________あはっ……♪

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 ____なるほど、マズいことになりましたね……。

 

 ____32期さん、どうしたんですか?

 

 ____最後の()()()()()()が近づいてきたようなんです……!

 

 ____ラビ……! ってことは……!

 

 ____えぇ、行きますよ、横浜市郊外……いえ、すこやか市へ

 

 

 

 ____ちゆちゃん、ちゆちゃん……!

 

 ____ちゆ~~~!

 

 ____……ぁ、ここは……。

 

 ____! ……よかった……!

 

 ____稚拙さんの家ペェ!

 

 ____そう……ごめんなさい、迷惑かけて。 ……いよいよなのね。

 

 ____そうだね、時が来るまで英気を養おう! 久々の列車旅がこんなシチュエーションになろうとわ……

 

 

 

 ____めちょっく! これはすぐにでも……!

 

 ____ん? なんか動いたか!?

 

 ____うん……ひなたちゃん、ニャトラン、近日中に出立やで!

 

 ____おーっ! って、ちょっと、学校は!?

 

 ____今は世界平和優先! それ即ち学校内平和だし*9 てなわけで、天爛大輪愛、()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 ____ふぅ、情報量が多すぎて、転送が遅れたときはどうしようかと……よかった。

 

 

 ____残りあとちょっとの準備も、しっかり進んでるよ、お兄ちゃん!

 

 

 ____よし……そろそろライブ配信できるかな!

 

 

 ____みんな! このままハッピーエンド目指そうね!

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 ____舞台裏 ~おまけ~ ____

 

 

 

関西弁の金髪のお姉さん 「あの子が5歳の頃から付き合ってきたけど……まぁ今回はすごいな」

 

白髪に大きいリボンの女の子 「私たちの世界からも、なんとか協力したいイメージだよ!」

 

栗毛の広島弁の女の子 「見とぅだけは、歯がゆいけぇね……」

 

黒髪ショートカットの女の子 「何とか私の力で、干渉できないかな~!? (>A<)」

 

メロンのベレー帽の女の子 「大丈夫……だと思うよ。あの世界は、正確には____」

 

デコ上げツーサイドテールの女の子 「よぉし! ギャラリーに紛れ込んで、力貸しますか!」

 

薄桃色の天使の羽みたいな髪型の女の子 「心のつながり……届けよう!」

 

マゼンタのツインテールの女の子 「果汁100% で頑張るよっ!」

 

工事現場のおじさん 「何事も、気合と根性と熱いハートで乗り切るぞ!!」

 

 

「「「「チーム大輪愛! えい、えい、お────っ!!」」」」

 

 

 

 ________以上、過去のオリキュア&オリ魔法少女 歴代主役級の談義

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
双方ともにヤベーやつはヤベーやつだが、ベクトルも根底にある理念も違う。 詳しくは、ピクシブを参考されたし。 マギレコはともかく、ライダーは語れるほど知識がありません……

*2
バッチリ布教済みだった。

*3
ハ↓イエ↑ニア↓ が、想定しているイントネーションである。

*4
本来なら、「(名前)のファースト・アートワークが、あんなむざむざとブレイクされて……あぁぁ、思い出しただけでもゾワゾワするんですケド! 許さない、あのクソガキ、(名前)のジュエリーを……ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな____ヴァァァアアアッッッ!!((割愛」 あたりが妥当だろうか……

*5
『インストール@プリキュア!』に出てくる、第3勢力。 日本政府の機密機関。 メンバーのひとりとは、『大人の理屈』と『こどもの理屈』の違いで、初登場時、対立が起きていた。

*6
……正直に言ってしまえば、およそ3年前、中2の時に初めて電調編を拝見したとき、大人の理屈というものが、よくわからなくて。 頭を抱えながら読み進めてました。 今頃になって見返したら、すんごく面白いんですけどねぇ……私も大人になってしまったのか……(遠い目)

*7
もう何も怖くない!

*8
まゆみの実がなってる……

*9
どう見てもこじつけです。 本当にありがとうございました。




 

【『第13話 PRECURE ❤ CORONA・OPERATION』予告】

※以下のセリフがそのまま使われるとは限りません※


『これが……私の____我のフルパゥワ……ソウルアァァァァァト ↑↑↑』

「じゃじゃーんっ! 助っ人に来たよー!」

「僕たちがみんなの、希望になる!」

「また、会いましたね」

「エェクリプスゥゥゥゥゥっ!!!!」(迫真)

「あなたは……『みなと』ちゃんやない、みなとちゃんなんやね……?」

「お願いだ……せめて、せめて! 『あっちの世界の』あなたたちなら!」

『もう、しかたないわね……』

「こだまの、分まで……! えぇぇいっ!」

「私は、消滅したもうひとつの____」

『いよいよですね____水よ______!』

『僕の力を______!!』

「「「ヒーリングっど❤プリキュア オーリヴァーズ・ドクター!!」」」


「本当は、この世界はね____」




「______またね」




________________



現在:10529文字 とは……ついに10000字超えた……。

大変お待たせいたしました。
次回でいよいよ最終回です。
よっしゃ、頑張る!!


(あっ、「おまけ」にあったとおり、挿絵に歴代うちの子が、大勢のギャラリーの中に、モブキャラ装って出演しますので、暇があれば、次回の挿絵で探してみてください……モロわかりですが)

(それと、もえはちゃんの絵は、モデルにかなり寄せてるのに、ハイエニアさんは自分絵です……まぁ、描いたときはキャラ固めてなかったし……)


(なんか下に歌詞コード載せてますが____初稿で使っていた歌詞を削って、もう使わないからコード消そうとしたのに、なぜか消えないので、残してるだけです)

運営さんでもどなたでもよろしいので、消し方教えてください……!


 


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第13話-A PRECURE ❤ CORONA・OPERATION

 


  __Caution __


・開幕不穏
・ネタだらけ
・プリオルSFネタバレあり
・はっちゃけた。 特にBパ。
・電車だらけ
・Nさん、あの挿絵は出番まだなので、暫しお待ちを。
・テンションぎゅいんぎゅいんこ の キラやば~っ☆


 『Go To』を利用した旅行先から、キュアっと……じゃなかった、壁を越えて、大・配・信 です!

 ていっ!





    Now Loading …………



     …………



      …………



 


 

 

 

 

 

 

ピロリロリン ピロリロリン ♪

 

 

 

 

【JBA ニュース速報】

 

 

本日15日 正午ごろ、世界各地のTV局で電波ジャックがあり、その上で、犯人が『世界を混沌に変える』旨の犯行予告を行った模様。

 

犯行予定日時は今月21日 正子(深夜0時)。 場所は、神奈川県横浜市郊外の、○○広場で、警察は、厳重警備を行っており、近隣住民は____

 

 

 

 

 …………。

 

 

 ____6月20日 土曜日 早朝

 

 

 

 NERIMA____

 

「夕方6時頃、出ますよ! ……あれっ?」

 

Balwisyall(バルウィシャル) Nescell (ネスケル) gungnir (ガングニール)tron(トローン) ……♪」

 

「のどか……アニメ、見すぎたラビね……」

 

「クゥン」

 

 

 SAGA____

 

「青春18きっぷでの列車旅……初めてです♪ (>∀<)」

 

「楽しいよっ!!」(ズイッ)

 

「近いペェ……」

 

 

 KOBE____

 

「よっしゃ、ニャトラン、だりあん! 行こーっ!」

 

「ごめん待って、朝は、いつも お腹が…… イタタ ……」

 

「おいおい……」

 

 

 

 

________________

 

 

 ____某所

 

 

「そろそろ来るね……!」

 

「準備は大丈夫?」

 

「100点満点!」

 

「笑顔も満点、ウルトラハッピー!」

 

 

________________

 

 

 ____再び、三ノ宮駅。

 

 

「ねえねぇ、みんなとも車内で合流できるかな~?」

 

「残念だけど無理だろ。 出発点が違いすぎる」

 

「しかも、稚拙さんたち、新神戸からは新幹線に乗り換えるそうやからね。 私たちは全て鈍行やし。 さすがに佐賀から全部鈍行は厳しかったか……

 

 

 

 ____そして、佐賀駅。

 

 

「朝ごはん、足りた?」

 

「大丈夫です! 2時前まで持つはずです」

 

「僕もバッチリペェ 多分……

 

 

 5:36 佐賀駅発____

 

「すーすー……」

 

「寝ちゃったペェ」

 

「緊張して、昨晩眠れてなかったかな……」

 

 

 ____数度乗り換えの末、8:23 小倉駅着

 

「5分しかないよー、お手洗い大丈夫?」

 

「あ、さっき車内で……」

 

「ならOKだ____ぶっ!?」

 

「か、顔からこけちゃったペェ……」

 

 8:28 小倉駅発____

 

 

「ふふふ、今は海の中を走ってるんだよー」

 

「海……? あぁ、関門海峡!」

 

「もうすぐ本州ペェ!」

 

 

 なんだかんだで、宮島口駅 通過____

 

「あっ、お腹なっちゃった……///」

 

「じ、実は稚拙もさっきから……あ、いけない、宮島口駅周辺の車窓見逃した……くっ……!」

 

「時間があればフェリーで観光に行けたのにペェ……」

 

 

 ____13:48 広島駅着

 

「あーっ、本当に時間があれば、広島ekieで『揚げもみじ*1』買えたのに……! とりあえず、コンビニで、『生もみじ』買ってきたよ!」

 

「あと15分ですね!」

 

「お昼はそこ*2のうどん屋さんペェ?」

 

「そうそう。 新幹線の方の立ち食いのうどん屋さんも美味しいんだけど、ここも良いみたいだよ!」

 

「へぇ~、あ、カープ*3関連のメニューがあるのね!」

 

「真っ赤ペェ~」

 

 

 14:05 広島駅発____

 

 JRの糸崎(広島)、姫路(兵庫)、三ノ宮(兵庫)で乗り換え、神戸市営の三宮駅から、新神戸駅へ。

 

 

 ____19:43 新神戸駅着

 

「まだほんのり明るいなんて……」

 

「ここからは新幹線だよ____晩御飯、何買う?」

 

「あっ、ここ、肉まんが美味しいって聞いたペェ!」

 

「私もそれにします!」

 

「あれっ? 駅弁とかじゃなくていいの?」

 

「6月だけど、急に温かいのが欲しくなっちゃって……」

 

「僕も、なんだか緊張しちゃって……ちゆに同じペェ」

 

「そっか、じゃ、それにしようか____すみませーん、肉まん9個くださーい!」

 

 

 19:55 のぞみ56号 東京行 新神戸駅発____

 

「「「もぐもぐもぐ…………」」」

 

「お、美味しい……(感涙) さすが5○1……」

 

「考えてみれば、久しぶりに食べたわ……もぐ」

 

「美味し……あ、熱いペェ……はふはふ……」

 

 

 …………。

 

「ちゆちゃん、新横浜まで寝る? 夜更かしして戦うことになりそうだし……」

 

「うーん……わかりました、そうします」

 

「僕も……ペェ……zzz……」

 

「寝落ち早いなペギタン…………あれっ、なんだかつられて眠く……仕方ない、スマホの目覚ましセット! イヤホンセット! これでよし……すぅ…………」*4

 

「……あんまり人のこと言えないんじゃ……(;・・)」

 

 

 ____22:16 新横浜駅着

 

 そこからは、再び青春18きっぷを使い、鈍行で目的駅へ行く。

 

 ____23:00手前で、目的地の広場着。

 

 

__________

 

 

 ____一方、練馬組。

 

 

「いやぁ、家族に外出を止められたときは、焦りましたよ」

 

「一時期は、事情を正直に説明するかどうか悩んだけど、結局隠し通しちゃったし……」

 

「何とか予定通り出発できて、よかったラビ!」

 

「ワン! (おでかけ、楽しいラテ!)」

 

 現在、19:30頃。

 無事に新横浜に着き、一同はファミレスを探していた。

 

「ここにしようかな……あっ、消毒、消毒……」

 

 カランッ、とトアベルが鳴った。

 

「いらっしゃいませー、何名様でしょうか」

 

「さんに……いえ、ふ、ふたりです」

 

 うっかり、ラビリンを含めるところだった (ラテは、元々ペット禁止の店なので、隠すつもり万全だった。 現実の良い子の皆は、ペットをお店に入れないでね☆)。

 危ない危ないと、32期さんは大きく息をついた。

 

「こちらのテーブル席にご案内いたします」

 

 美人なウェイトレスさんに案内され、3人は窓際へと移動する。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

 ぺこりと礼をして、美人さんは下がった。

 

 

「さて……のどかちゃん、ラビリン、何にします?」

 

「あれっ……32期さん?」

 

 唐突に、隣のテーブル席から、声をかけられる。

 

 びっくりして声の方を見ると、眼鏡をかけた高校生くらいの女の子がいた。

 

「あっ……そうですよね、いつもは掛けてなかったし」

 

 と、女の子は眼鏡を外して胸ポケットに差し、ついでに束ねていた髪も解いて (なんで結んでたかって、そりゃ首元暑かったんだもん) 、顔をあげる。

 

「だ、大輪愛さんっ!」

 

「ふふっ、チャオでーす♪」*5

 

 

「ひなたちゃーん!」

 

「のどかっち~!」

 

 

「ニャトラン!」

 

「よぉ、ラビリン!」

 

 

 思いがけない、画面を通さずしての再会である。

 

「そういえば、ラテ、鐘間さんとこから引き取ってきたの?」

 

「うん、鐘間さんに、いっぱいお礼言ってきて……ここに来る直前にね。 今までお世話してくださったこと、本当に感謝してもしきれないよ♪」

 

「そっか~、ふふ♪」

 

 ひなたは、かばんに息を潜めるラテに微笑みかける。

 ラテは、声を出してはいけないとわかっているので、目を細めて、ひなたを見つめ返した。

 

 

「せや、32期さん、稚拙さんは何時頃になるんでしたっけ?」

 

「うーん……23時までには着くって聞きましたけど」

 

「あー、ハードスケジュールやなぁ……南無……」

 

「はは……。 じゃあ、腹ごしらえしたら、素直に敵の指定場所に行きますか。 長居もお店に迷惑ですし」

 

「ですね」

 

 

 適当に各自注文し、料理を待っている間に、色々な会話が交わされる。

 

 ____そうだ、ひなたちゃんたちは、ここに何時頃着いたの?

 

 ____うーん、2時過ぎくらい?

 

 ____ふわあっ、早いねー!

 

 ____ですね、何して時間つぶしてたんですか?

 ____ひなたちゃんに付き合って、オシャレな飲食店街をひやかしに行ってました。

 

 ____おぅよ、もう足パンパンだぜ!

 

 ____ニャトラン、本当に歩いたラビ……?

 

 ____いや、まぁ、ひなたの肩に乗ってたけどよ、まぁそこはノリで……。

 

 

 ____あっ、料理来たよ~!

 

 ____美味しそ~、いっただっきまぁす!

 

 

 

 …………。

 

 

「美味しかったですねー!」

 

 32期さんを先頭に、一同はぞろぞろとファミレスから出る。

 

「20:50やね~、時間経過、早っ……」

 

「とりま、移動しよ?」

 

「そうだねぇ……あ、ラテ、もう大丈夫だよ~」

 

「ワンッ!」

 

「ラテ様、お疲れ様! あ、お腹すいてないか?」

 

「さっき、早めの夕飯にしたから大丈夫なはずラビ……うんしょ」

 

 ラビリンは、聴診器をラテにあてる。

 結果は、問題ないとのことであった。

 

 

「あ、そうそう、鐘間さんに『ラテ、風邪よくひいてたりしませんでしたか?』って聞いたら、『前はそうだったけど、最近はひいてなかった』って……なんで、あの症状がないんだろう?」

 

「最近……リヴ・コロナビョーゲンが出るようになってから?」

 

 なぜだろうか。

 やはり、『いのちのエレメント』は、他のエレメントさんとは、一線を画しているのか。

 

「うーん、不思議だよねー」

 

 

 あれこれ雑談して、時間をつぶしている間に、21時を軽く過ぎ。

 22時は、鬼ごっこをしたあと、自販機へ水分補給に行った間に過ぎ。

 

 22:45 頃。

 

 

「あっ、みんな来てる……おーい!」

 

「のどかーっ! ひなたーっ!」

 

「ラビリーン、ニャトラーン、ラテ様ーっ!」

 

 あっ! と、先着組の顔が輝く。

 

 

「待ってました、稚拙師匠!」

 

「なんかいつの間に格上げされてる……(;・∀・)」

 

「ちょ、ちょっと落ち着きましょう……?」

 

 やたらとはしゃぐ大輪愛を、32期さんがなだめる。

 稚拙さんは目を点にしつつも、無事に集合できたことを喜んだ。

 

 

__________

 

 

 

「それにしても、やっぱりどことなく、すこやか市に似てるわね……」

 

「んー、でも、こっちのほうが、もうちょっと都会してるかなぁ?」

 

「自然も多めだし、社会の教科書で見た、仙台っぽいかも」

 

 時間を待つ間、一同はハイエニアの登場予定場所の広場をぐるぐる歩いていた。

 

 

「やっぱり、野次馬が続々と集まってきてますね~」

 

「危ないんだけどなあ……大丈夫かな」

 

「そこで待機しとる警察に頼るしかないなぁ」

 

 

 

 23:59 ____

 

 

  ぱちんっ!

 

「「「「 !! 」」」」

 

 

「第一特殊部隊、用意!」

「目標はどこです!?」

「知るか、目を皿にして探せ!」

 

「え、何、停電?」

「怖~」

「……スマホは使えるか」

 

 ヒープリ御一行と警察が身構え、野次馬たちが突然の町内一斉停電にざわつく。

 

 

 ____パッ!

 

 間もなくして、広場と その周辺のみが点灯され____中空に、半透明のキューブが1つ、出現する。

 

 

「おっと、このキューブは?」

 

「ですよねー……」

 

「やっぱりサービス心、強いじゃないか……」

 

 キューブは静かに拡張し、筆記体で、

 

High-Enier

__ハイエニア__

 

と記されたものが浮かび上がる。

 ……案の定、野次馬から、「アリナパイセンじゃねーか!」と声が上がった……。

 

 

 ____そして、拡張されきったキューブが雲散し、中から女性が……。

 

「! ……ハイエニアっ……!」

 

「この人が、ですか……」

 

「ほんまや、姿はあんまり似とらんのに、なぜか()()()味を感じる……」

 

 

 サポーター組がヒソヒソと会話を交わす中、ハイエニアは、スッ……と真っ直ぐ地面に降り立つ。

 

『怯まずにちゃんと来るの、偉いよね。 偉いけど、チョー馬鹿だよね』

 

 テンションを抑えめにして、ハイエニアは呆れたような目線を投げかけてきた。

 しかしその瞳の奥には、微かに____

 

『私、あなたたちのせいで、全然エキサイトできないの。 ……ぁあっ、今まで受けた数々の屈辱ぅ……腹立つんだけど……』

 

 確かに____憎悪の、炎が。

 

 

『公開処刑だから。 滅してあげるから……アートにもなれないくらいにぃっ! 骨のリン酸カルシウム1結晶たりとも残さないくらいにぃっ!!

 

 ギリ……握りしめたこぶしから、痛々しいくらいに、きしんだ音が鳴る。

 

 

『最高のおもてなしをしてあげる!!!!』

 

 

 

 ________ドォウッ!!!! 

 

 おぞましい表情で両腕を広げたその瞬間、街を、県を、国を、世界を____

 

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”↑↓↑」

 

「うぐっ……痛……っ!」

 

 

____紫色の衝撃波(秒速340m超)が、襲っていった。*6

 

 

「っ……! みんな重心を低めろォ!! 伏せて表面積を減らせェェェ!!」

 

 元来声の大きい大輪愛が、うろたえる野次馬に向かって、自身もうつぶせになりながら絶叫した。

 

 頼りになるはずの警察も、マッハ超えの威力が来たとなっては、射撃も当たるはずなかろうし、まずは安全優先だ。

 この場にいる誰も彼もが、ダメージを最大限軽減できるような体勢で、場をやり過ごしていた。

 

 

 

 ____次第に、衝撃が収まっていく……。

 

 それぞれ、既に疲れた顔をしながら、ゆっくりと立ち上がった。

 

「何を……したんだ……!?」

 

 稚拙さんが、うなるようにハイエニアに向かって叫ぶ。

 あはっ、と、ハイエニアは可笑しそうに言い放った。

 

『テリトリーを設定して、この広場以外の全世界に、あなたたちの言う『コロナウイルス』をばらまいたんだよ?』

 

 リヴ・コロナビョーゲンを媒介としてね。

 

「なっ……!?」

「っ……!?」

「は……!?」

 

「え……!?」

「なんてこと……!」

「嘘……!」

 

「ラビ……!?」

「ペェェ……!?」

「おいおい!?」

 

 

 一同は、あまりにも容易く行われる非道な行為に、動揺を隠せなかった。

 

「現場から速報です____!」

 

 後ろで野次馬とともに控えているニュースキャスターも、早口でカメラに向かって語っている。

 

「ま、マジかよ……!」

「家にいる姉さんは……!? クソ、回線が混雑してて……!」

「こんなことって……!」

 

「先輩、どうしましょう!?」

「で、できる限り落ち着け……犯人を抑えるタイミングを逃すな……」

 

 広場が混乱に陥る様子を眺めながら、ハイエニアは邪悪な笑みをたたえ、自画自賛する。

 

 

『あははははは♪ ついに世界を変えるための序章(プロローグ)が記されたァ!! やはり私はゴォッド! 救世主!! ジィィィィニアァッス(天↑才↓)*7!!』

 

「「……ボトルヤロー……!」」

 

 『ジーニアス』という単語を拾って、32期さんと、稚拙さんが、神妙な顔をして声をそろえた。

 このやり取りで、すっかり緊張が緩んだ女子高校生は、

 

「この敵さん、属性過多すぎちゃう……?」

 

と、もっともすぎるツッコみをした……。

 

 

 

 ……近いところから、異形の、リヴたちの吠える声が聞こえる。

 

 テリトリー外では、早くも濃い紫色の瘴気が充満し始めていた。

 消防署のほうも大変なのだろうか。 救急車の音が聞こえる様子もない。

 どこも、闇夜の中で、しん……と静まって____あぁ、そうだ、今は停電が起きているのか……。

 

 病院。 世界中で停電が起きているなら、病院は大丈夫なのだろうか。

 コロナ以外でも、重病で苦しんでらっしゃる方たちは、当然、いる。

 自家発電できる病院も多いけど、今回はただの停電じゃないし……。

 

 

 早く。 早く、助けなきゃ______

 

 

 ____恐怖と混乱に染まる人々の表情を見て、しばらく押し黙っていた少女が、口をきゅっと結ぶ。

 

「やるしか、ないっ……!」

 

 ひざも、声も震えさせながら……しかし、確固たる意志と、ブレない強い眼光をもって____花寺のどかは、自身を鼓舞した。

 

「のどか……! そうラビね!」

 

「一刻を争うことだわ、早くしなきゃ!」

 

「頑張るペェ!」

 

「怖い……けど、この世界の、友達のために!」

 

「緊急大手術と、しゃれこむか!」

 

「ワンッ!!」

 

 

 32期さんも、稚拙さんも、大輪愛も、野次馬たちも警察も____いつの間にか静まり返って、3人と4匹の動向を、見つめていた。

 

 

「みんな_____行くよっ!!!!

 

「えぇ!」

「うんっ!」

「ラビ!」

「ペェ!」

「おぅ!」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

スタート!! 」

 

 

プリキュア・オペレーション!!

 

 

 

 

エレメントレベル 上昇 ラビ/ペェ/ニャ !!

 

 

キュア タッチ!

 

 

______ !!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「重なるふたつの花!」」

 

「キュアグレース!!」

「ラビ!」

 

 

 

 

「「交わるふたつの流れ__」」

 

「キュアフォンテーヌ!」

「ペェ!」

 

 

 

 

「「溶け合うふたつの光!」」

 

「キュアスパークル!!」

「ニャ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

______地球をお手当て!!

 

 

ヒーリングっど

プリキュア

 

 

 

 

 

「わ──────っ!!」

 

 人々の歓声を浴びながら、まず、中空の敵へと突進していったのが、スパークル。

 

「はぁ”────────っ!!」

 

『この圧倒的な力を目にしても、まだゴッドに歯向かうのかっ!!』

 

「神様って……何っ!!」

 

 重い追撃を打ったのが、グレースだ。

 一方フォンテーヌは、地上で構えている。

 

「ここは、ここに住むみんなの世界だよっ! あなたがどうこうしていいものじゃない!」

 

『……シャット・アップ!』

 

 ハイエニアが精神面で、やや劣勢になったときに、

 

「氷のエレメント!」

 

フォンテーヌが____地表と、空中の2方向に____冷気を同時放射する。

 

 テンプレ通り、地面が凍っていき、丁度食らわせたグレースの鉄拳で、ハイエニアが墜落していく。

 

 ただ凍っただけでの地面では、スリップは起きないが……墜落する際に抵抗が起きて発生した熱で、氷の表面がわずかに溶け、敵は見事に受け身に失敗し、滑ってしまった。

 

 

 しかも、これで終わりではなかった。

 

「スパークルっ!」

 

「おーけぃ!」

 

 フォンテーヌの合図で、空中に漂っていた氷塊が、スパークルに砕かれる。

 鋭利な破片のひとつひとつは、真っ直ぐ落下していき____

 

『ぐぅ…………!?』

 

 ハイエニアに確かなダメージを与えたあと、相手の姿は、氷塵などに紛れて見えなくなった。

 

 

「このまま決めよう!」

 

「えぇ!」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

「「「トリプルハートチャージ!!!」」」

 

 

 ____パンッ!

 

 

「届け!」

 

 ____パンッ!

 

「癒しの!」

 

 ____パンッ!

 

「パワー!」

 

 

 

 

 

プリキュア! ヒーリング…………

 

 

 

____オアシスっ!!!

 

 

 

 ____3つの手が伸びていき、ハイエニアの周りの氷の煙幕を払うと……。

 

「「「「 !!?? 」」」」

 

『甘いんだけど……?』

 

 見守っていた全ての人が驚愕の表情を浮かべる中、平然と立っていたハイエニアは____

 

「嘘……!」

 

 光る手を____

 

「こんなことって……!」

 

 紙屑のように____

 

「あぁっ……!」

 

 

 

『あはっ…………♪』

 

 揉み消してしまった………………。

 

『やっぱみんな、ゴッドをナメてるよね? いいよ、ゲームは終わりだから……私の力、見せてあげる……!』

 

 

 ____えぇーっ、マジかよお前、今までのが お遊びとか、ふざけんなよぉ! そーゆーのは少年マンガでお腹いっぱいなんだよ! あぁクソ、人生オワタ……オワタ……

 

 以上、皆の心に浮かんだ感想の、概略である。

 

 しかし、そんな人の気も知らないで、ハイエニアはどんどんハイになっていく。

 

『あははっ……あーっはっはっはっ……ひゃはっ……あははははっひひっはーぁはっあはははははははははっ!!!!

 

 

 カッと見開かれた目は、ハイライトを失って、ただ真っ赤に染まり。

 

『あはっ……見るがいい!』

 

 口は気味悪く、大きく裂け。

 

 

『これが……私の____我の! フルパゥワ…………ソウルアァァァァァト ↑↑↑』

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 背後に錆色の地球のホログラムを鈍く輝かせながら、ハイエニアは、その姿をおぞましく変貌させていった……。

 

 

 

 ____そんな中で。

 

モウイヤ

 

 ____きっと、聞こえていたのは、プリキュアだけだったのかもしれない。

 

ワタシハワタシ モウキズツケナイデ

 

 ____だけど、確かに、救済の余地が。

 

ハヤク ホントウノ アートニナリタイ

 

 ____勝利の余地が、あった。

 

 

 

「! ……みんな、今の聞こえた?」

 

「えぇ……どうやら、前に取り込んだ物に、半分操られてる状態みたいね……」

 

「……っていうか、素でもアート言ってるんだ……」

 

 未来の勝機を見出だすと同時に、なんとか頭をクールダウンしようとしたが____

 

「「「 ………… 」」」

 

 目の前で起きている『とんでもないこと』を見てしまうと、どうしても焦りが来てしまう。

 

「……っ、やらなきゃ……! やぁぁぁぁあっ!!」

 

 その焦燥を払拭するかのように、グレースが無鉄砲にも駆け出していく。

 

「「グレースっ!!」」

 

 ____ガッ!

 

 そして確かに、一発、相手に叩き込んだ。

 

『あは』

 

「! ……プニシ____間に合わなっ……!?」

 

『愚か者めが』

 

「──────!」

 

 ____十数倍返し。

 そう形容しても過言でないほどの、重い一撃に、グレースは呼吸が数秒止まり、口をぱくぱくと動かした。

 

 花火が上がるときのような高い音をたてて吹っ飛び、コンクリートがえぐれる程、激しく叩っつけられた。

 ギャラリーから悲鳴が上がる。

 

「っは……っはぁっ……ぜぇっ、はぁっ…………!」

 

「無茶しすぎラビ~っ!」

 

「グレースっ!」

「大丈夫!?」

 

 特にラビリンは涙目になりながら____仲間が駆け寄って、グレースを気にかける。

 

「……どうすればいいんだろう」

 

 なんとか上体を起こしたグレースは、真っ先に、ぽつりと、そうこぼした。

 

「身をもって感じたからわかるけど、力量が全然違うの……そんな相手、どうやってお手当てすればいいのかな」

 

「スピードも、すごかったラビ……シールドが、間に合わなかったラビ……」

 

 ……今までに現れた『強敵』は、強くても、気合いや3人と3匹の絆で、なんとかなりそうな力量差だった。

 

 だが今回は……ドラクエソードで言えば、エルヘイムの森攻略して、セティアちゃんにエンカウントするかしないか辺りで魔王降臨する感じ。

 ドラクエ3なら、シャンパーニの塔でカンダタと初めて戦ったあと、ノアニール攻略中に、ゾーマ降臨しちゃう感じ____つまりレベチ、レベルが違いすぎる、無謀としか思えないのだ。

 

 こいつドラクエしか例に出さないな……というツッコみは、この際スルーする。*8

 

 

 

『あーっはっはっはっはっ!!』

 

「「「 ………… 」」」

 

 狂気を誘うようなタガの外れた笑い声は、尚更プリキュアたちから気力を奪っていった。

 

『もう終わりか?』

 

 動かないと……手に邪悪なエネルギーを貯めていく強敵を見て、頭ではそう思うも、何故か体が動かなかった。

 

 再び、悲鳴が上がる。

 

「~~~~!」

 

 サポーターたちの声も聞こえる。 ただ、何て言っているかは、耳に入ってこない。

 

『____抹消されろ』

 

 もう、一巻の終わりだ。 両手から、ビームが放た……

 

「「「ちょーっと待ったぁぁぁあっ!!」」」

 

 放たれ……?

 あれ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「リンクル・アメジストっ!!」

 

 ビームが、なんか魔法陣に吸い込まれて……?

 ____消えた! ビームがラパパされた!!

 やったー!!

 

 

 

「誰だあの子ら」

「さぁ……プリキュアっぽいけど、あんな子知らんぞ」

「あーでも、ひとりキュアミラクルに酷似してる」

「っていうか、あの男の子の服、もろ『ウィザード』じゃない?」

 

 色々な会話が後ろで交わされる中、中空に現れていた紋章は消え、突如出現した『3人』が自由落下しながら名乗る。

 

 

 茶髪の旅人風の衣装の女の子が……

 

万時(ばんじ)の調律者・キュアアデッソ!」

 

 黒髪で『キュアミラクル』風の女の子が……

 

「小さな種から花開け! 二人の奇跡!キュアミラクル・シード!」

 

 ミラクル・シードにそっくりな顔の、やや長めの髪の毛の男の子が……

 

「小さな種から花開け! 二人の魔法!キュアシード・マジカル!」

 

 最後のふたりはチームだったらしく、ふたりで続けて名乗りを上げる。

 

「偽りの闇に消えた光を」

 

「正しき歴史へ紡ぐ使者!」

 

「「ヴァールハイトプリキュア!」」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「とっととおウチに帰りなさい……ってね?」

 

「「さぁ____ショータイムだ / 終わりの時よ!」」

 

 

 

 

 

 

「じゃじゃーんっ! 助っ人に来たよ♪」

 

 あ、さっきのは『白鳥座のブラックホール』辺りに飛ばしておきました! と、胸を張るミラクル・シード。

 

「この状況は、僕たちとしても見るに堪えなくて……」

 

「そうそう、ひどい改変のされ具合だったよねぇ」

 

 シード・マジカルの言葉に、アデッソが苦笑いで応える。

 

 

「『ヒープリ』のみなさん____」

 

 シード・マジカルが、しゃがみこんで、グレースと目を合わせる。

 

「今まで、みなさんだけで持ちこたえてくれて、ありがとうございました……本当にお待たせしました! しばらく、僕たちがアイツの相手をしますから、少し休んでいてください」

 

 さながら王子様のようなイケメンっぷりに、特に目線のあっているグレースは、緊張して「ひゃいっ!」と上ずった声で返事をする。

 

「そして____本当にアイツを『お手当て』できるのは、『地球のお医者さん』である、あなたたちだけです。 できる限りサポートするので……どうか、よろしくお願いします」

 

 

 ____僕たちで、みんなの希望になりましょう!!

 

 

「「「! ……はいっ!」」」

 

 

 

 ゆっくりと下がるヒープリ勢と入れ替わりに、32期さんが進み出る。

 

「また、会いましたね?」

 

 彼の言葉に、シード・マジカルが笑って答える。

 

「今まで、サポートありがとうございました。 この通り、みんな連れてき____あれっ?」

 

 

「お兄ちゃーん! あの子がいないよー!?」

 

「えぇっ!?」

 

 ミラクル・シードの言葉に、困惑した表情のシード・マジカル。

 

「あー、あの子だけ、黄泉の流れに耐性ないからなぁ。 直前ではぐれちゃったかな……」

 

「何、妙に冷静になってるの、アデッソ! 控えめに言ってヤバいよ!?」

 

 私たちが『配信』で動けなくなったとき、どうするの! と、シードがツッコむ。

 

 そうだね、探しに行こっかな……と、アデッソが呟いた時に、広場に幼い声が響き渡った。

 

 

その必要はないわ!!

 

 

「もえはちゃん!?」

 

 グレースが驚きのあまり叫んでから、痛た……と、脇腹のあたりを抑える。 自身の声が怪我に響いてしまったようだ。

 少女・燬紫もえは は、なおも言葉を続ける。

 

「今までお世話になったプリキュアが戦うというから、来てしまいました!」

 

 以下、続いた説明をまとめたものである。

 

・なんか途中で変なオーラが襲ってきたけど、以前、病院付近で、リヴの浄化があったからか、平気だったこと。

・道中で、プリキュアっぽい女の子を拾って……たまたま台車の上に落ちていたので、そのまま押してきたこと。

 

 

「ごめん、もえはちゃん、ひとつ聞いていい?」

 

「何でしょうか?」

 

「病院からは……?」

 

「前みたいに、脱走しました!」

 

 はぁーっ…………32期さんは、大きなため息をついて、うなだれた。

 

 

「ってゆーか、この子だよ、いなくなってたの!」

 

「別の地点に落ちていたのか……」

 

 ヴァールハイト組が台車に駆け寄り、肩をぽんぽんと叩いてみる。

 

「ん、んぅ……はっ!?」

 

「あっ、起きた!」

 

 台車から降り、立ち上がった少女を見て、稚拙さんが、あれっ? と首を傾げた。

 

「キュアハッピーに……似てる?」

 

 ご名答! 少女は、ウインクをし、名乗った。

 

 

「私は____消滅した、もうひとつの『スマイルプリキュア!』の姿

 

 

「「「 !? 」」」

 

 サポーターたちの顔に、疑問と衝撃が走る。

 

「もっと言うと、『東日本大震災』がなければ存在したであろう、『ひとりだけのプリキュア』の具現化」

 

 それが、私。

 

 

「! あの幻の……!」

 

「『失われた伝説』って、そういうことか……」

 

「うーん、確かに、本来の『みゆきちゃん』より、精神年齢が高いような……」

 

「ふふっ、ずっと、ひとりぼっちだったからね」

 

 少女は、ヒープリのほうを向いた。

 

 

 

 ____私の物語も、本来はちゃんとあったんだよ。

 

 元々は普通の女の子で。

 ひょんなことから、プリキュアに変身して。

 この秘密を誰とも共有できないまま、それでも、一生懸命戦った。

 

「だけどね____ある日突然、私たちの世界は、崩壊してしまったの」

 

 私たちを『認識』する『現実』が、世界をまるごと淘汰してしまった。

 

「そして、全ての忘れられた時空が混濁する場所・通称『時流の黄泉』に放り出されて____」

 

 いっぱい泣いたよ。

 なんでこんなことになっちゃったの? 私のしてきたことは、全部無駄だったの? って。

 

 でも、ある時思ったの。

 

 ううん、無駄になんてさせない。

 私みたいに悲しむ世界がないように、頑張らなきゃいけないんだ____

 

「そこから私は、現実には勿論 干渉できないけど、『プリキュア時空』を揺るがすような不穏要素を取り除くように、なるべく努力してきた」

 

 だから今回、こんなひどいことになっちゃって、ごめんね。

 ここまで来たら、あなたたちの運命、そして、あなたたちの後輩にも、きっと多大な影響が出てしまう。

 

「ここで____止めなきゃいけないの! シード、アデッソ、そして、解決へのキー・『ヒーリングっど❤プリキュア』のあなたたちと!」

 

 ____みんなと、一緒に!!

 

 

 ヒープリ一同は、表情を引き締め、無言で頷いた。

 

 

 

 ……後ろでは、既にシードとアデッソが、交戦を始めている。

 

『先日から邪魔ばっかりしおって!』

 

「邪魔するにきまってるでしょ!」

 

「現状態の時空は、とても危なっかしい形なんだ! 元に戻さないといけない!」

 

「私の『運命』、今こそ使わなきゃいけないのっ!!」

 

 最後のアデッソのセリフを聞いていた大輪愛が、「おっと?」と目を見開いた。

 アデッソは言葉を継ぐ。

 

「あんたねぇ! 妙にあの人と、()()()()のよ!」

 

 完全に私怨だけど、尚更どーしても倒さないと気が済まないの! とアデッソ。

 そして、鬼のような形相で、こぶしに力をため、走り出した。

 

「エェクリプスゥゥゥゥゥっ!!!!」

 

 ……超重量級のパンチが叩き込まれる。

 

『誰だそれは……ぐっ!?』

 

 

 おぉっとぉ? と、何かを確信したように笑う、女子高校生。

 

「アデッソー! お取込み中、悪いんやけど!」

 

「! ……何?」

 

 彼女は、跳躍してJKの元に駆け付けた。

 

「あなたは____『みなと』ちゃんやない、みなとちゃんなんやね……?」

 

 アデッソは____見た目よりもやや大人っぽい笑みをたたえ、頷いた。

 

「流石は……『作者さん』と言ったところかな? 大正解。 今の『私』は16歳だよ」

 

 そして、厳密には、『藤村みなと』じゃない。

 

「現在『投稿』されている『プリオルSF』からは遥かに離れた未来……どころか『本編外』だね」

 

「なぁるほどねぇ~」

 

「いやいや、ちょっと待ってください!?」

 

 ん? と、アデッソが、32期さんのほうを向く。

 

「まだ『認識外』の姿が、『現実』に干渉しちゃって、大丈夫なんですか?」

 

 あー! と、大輪愛もアデッソに聞く。

 

「っていうか、『現実』にそんなダイレクトに関わっちゃって、絶対よくないよね?」

 

 

「……えっ? ここってそもそも、現実じゃないんじゃない?」

 

「「 ………? 」」

 

 キョトン顔で、そう発言したのは、稚拙さんである。

 

「今まで色んな話を聞いて……っていうか、わりと最初のほうから感づいていたけど____」

 

 ____ここは、『現実世界と極めて近く、限りなく遠い世界』なんでしょう?

 

 

「ひぇー、 すごい……」

 

 アデッソは、そう呟いたあと、しばらく無言になった。

 

「____全く、その通りですね」

 

 えぇーっ! ……32期さんと大輪愛の叫び声が響く。

 

 

 それを横目に、アデッソは、ヴァールハイト組と、途中から加勢していた『アナザースマプリさん』に呼びかけた。

 

「種ちゃーん、駆くーん! 待たせてごめんね、交代お願い! アナザーさんは、続投、私とよろしくね!」

 

 はーい! とそれぞれ返事し、ハイエニアを食い止めに行ったアデッソの代わりに、ミラクル・シードと、シード・マジカルが来る。

 

「では、ここからは僕たちが説明しますね」

 

「じゃあ____キュアップ・ラパパ! 映像よ、現れて!」

 

 ミラクル・シードは、近くのガラス張りのビルの壁に、魔法をかけた______

 

 

 

 

 

 ………。

 

 

 本当は、この世界はね____『干渉された現実が、歪みを抑えるために自身を切り離してできた、世界』なの。

 『疑似的現実』……1.5次創作的な世界、って言ったらいいのかな?

 

 

 まぁ、結果として、『本物の現実』も、ハイエニアからの影響を少なからずとも受けて、『新型コロナウイルス』が、現在蔓延しているんですけどね。

 それで、現実を修復するために、『こちら』に移された元凶を叩きに____今ここにいる、『原作に近い姿の ヒーリングっど❤プリキュア』が、呼ばれました。

 

 

 疑似的と言っても、本来、源泉の世界と創作の世界が混ざるはずがないから、色々な場所に異変が起きて、『別の次元』から人が流れ込んできたりしてるんだよね。

 

 

 ……誰とは言わないけど。

 

 

 あはは……。

 でもまぁ、元通りになるために、『禁忌』を犯したこの世界なんだけど……あまりにも『お手当て』が長引くと、現実も創作も、2次創作以降の『分枝(ブランク) 的世界』も、今の状態に合った形に書き換えられてしまうんだよ。

 

 

 そうなれば、この世界近辺が仮に安定したように見えても、ここより下位や上位の存在の世界が、最悪の場合崩壊するかもしれない。

 それは、言わずもがな、極めて危険なことなんです。 特に、上位の世界が崩れれば、ここもじきに、跡形もなく消滅してしまう。

 加えて、書き換えが起きれば、この『新型コロナウイルス』は、『お手当て不能』となり、聖域であるはずの、現実の歯車が狂ってしまいます。

 

 

 もっと言えば、現実が2つあることになるんだから、それだけで危なっかしいよね。

 

 

 そうだね。

 源泉が狂えば、そこから流れる河川にも異常をきたす____『原作』の『舞台裏』では、時の進みを止めて、辛うじてまだ食い止められてますが、それでも歯止めが利かなくなるのも、時間の問題でしょうね。

 

 

 さっき『アナザーさん』が言ったみたいに、破壊される世界、運命を変えられる世界が、増えちゃうからね。

 

 

 

 

 

「____あっ、ふたりとも」

 

「ん? 32期さん、なぁに?」

 

 ミラクル・シードが反応する。

 

「ちょっと確認したいんだけど……ふたりって、どういう存在なの?」

 

「と、言うと?」

 

「駆……も、種も、あと、この間会ったコルーリも、私が知ってる『ヴァールハイト・プリキュア』じゃ、ない」

 

 ……でしょ? と、彼は、既に答えがそうであると確信したかのように、力強い語調で聞く。

 

「____そうですね。 僕は、僕たちが本来辿るべき結末とは、違う流れにいる、『僕』です」

 

「じゃなかったら、こういう風に、ヒープリのみんなを助けにこれてないよ~」

 

 シード・マジカルの言葉に、ミラクル・シードが付け足した。

 無言で首肯して、シード・マジカルは言う。

 

「言わば、僕たちは、『闇に埋もれた正しい歴史を光に戻す』意志が、人々の希望と反応して実体化した、『支流』ですね」

 

「その影響もあってか、お兄ちゃんの『絶望』……Aq(アーク)ライトは薄まってて、逆に、Qa(キュア)ライトが高まってるんだよ」

 

「ふんふん、なるほどね」

 

 

 

「か、駆く~ん、種ちゃ~ん!」

 

「ちょっとピンチ、助っ人お願ぁい!」

 

 振り向いて空を見ると、ふたりはやや押され気味になっており、広場の人たちを守るために、時折、庇いに行って被弾すらしている。

 

「! ……ちょ、ちょっと待ってください!」

 

「まだ大事なこと、話してないんだよ~!」

 

 うぇ~!? と、返ってきた声には、明らかに焦りの色がにじんでいる。

 

 

 

 …………。

 

 

 そして____これが一番大事なこと、正常にお手当てを終え、世界が戻った後のことです。

 まず、単刀直入にいいます____役目を終えた、この『擬似現実』、そして、『原作に近いヒープリ』は……。

 

 

______根本の世界に統合され、存在は抹消されます。

 

 

 

「「「「 !!?? 」」」」

 

 

 

「……それって……?」

 

「段階としては、まず、2つ存在してはいけない現実が、1つに統合されるんですが____『現実』での常識に則って、プリキュアがこの世界にいたこと云々……まぁ、分離してからの記憶全てが、消去されます」

 

「あと、擬似現実をお手当てするためにできた『近似ヒープリさん』の世界も、存在意義が消えて、不安定になっちゃうから、自動的に……こっちも記憶が消えて、統合されちゃうんだよ」

 

 

 

【挿絵表示】

※イメージ図(もっと詳しい説明をするつもりだったため、余計なものまで描かれている)

 

 

 人々がどよめく。

 

「32期さんたちとの思い出……全部、無かったことになっちゃうの……!?」

 

 それは、プリキュアたちも同じことだった。 

 

「……ごめんね、動揺させるようなこと言って。 でも____これは、確かに起こることなの」

 

 苦しそうな表情のミラクル・シードの隣で、シード・マジカルは、何かを思い出しているかのような遠い目線をする。

 

「話そうかどうか迷いましたが、今まで紡いできた絆を失ってしまうことは、忘れられた側にも忘れた側にも、大きいショックが来るものです____隠し通すのも、なんだか裏切ることになるような気がして……」

 

 

「____ありがとう、駆くん、種ちゃん」

 

 一同は声のほうを見る。

 

「グレース……」

 

 誰かが、ぽつりと呟いた。

 ……彼女らは、おおよそ回復したようで、服は汚れていても、しっかりと立っていた。

 

 グレースは続ける。

 

「……私たちはね、これ以上、みんなの苦しむ顔を見たくないの」

 

 この世界にも、守りたい大切な人ができて、それを忘れてしまうのは寂しいことだけど。

 でも、今まで応援してくれた人、生を欲しながら命の絶えてしまった人は、どうなってしまう?

 

「もし対価を払うのを惜しんで、今ここで災厄を止めなかったら、きっと一生後悔するわ」

 

「それに、今までのこと全部忘れちゃっても、ぜぇ~ったい忘れないし!」

 

 次いで前に進み出たフォンテーヌとスパークルも、強気に言い切る。

 

 

 

「……プリキュア!」

 

 野次馬たちの中から、体格のいいお兄さんが声を張り上げる。

 

「俺、ネットのとある『スレ*9』の『イッチ』してるんだけどさ! スレ民一同、命がけで応援してる! それだけじゃない、動画サイトやTV局の関係者までいる! みんないるんだ! 見えないたくさんの人が、ここにつながってるんだ!」

 

「はいはーい、うちも応援するするー! てゆーか、明日、彼氏に渡す誕プレ、まだ決めてなくてさー、ヤバいんだよね! このままじゃ死んでも死に切れんから、マジ、元気ならいくらでも分けちゃうから!」

 

「みんな言ってるけど、決して、あなたたちだけじゃないのよ! 私だって、体は老いぼれていても、心で戦うわ! いつでも頼って頂戴!」

 

 

 これらを皮切りに、各所から声援が浴びせられる。

 

 ____稚拙さんは、こっそりスマホを立ち上げ、動画サイトのニ○動を開いた。

 

「……こ、これわ……! ((゚Д゚;))」

 

 ……画面はカラフルなコメントで、びっしりと埋め尽くされていた。

 まさしく、『お前らの愛で見えない現象』の極致。

 愛が重い。 ついでに画面も重い。 カクカクニナールを使ったんだわさ。(わかる人にはわかる、某動画のネタ)

 

 

 

「みんな……!」

 

 目頭が熱い____グレースはにじんだ涙をそっと拭って、今までのことを思い返していた。

 

 最初は、怖いところだなって思った。

 街も人々の心も荒んでいて。 そのあと32期さんに出会うまで、ずっと不安でいっぱいだった。

 

 でも、全然そんなことはない。

 みんな、こんなに優しかった。 心が温かい人だから、長い間、不安にさらされて元気がなくなっちゃっただけだったんだ、きっと。

 

 ニュースで、店員さんがお客さんに理不尽な文句を言われているのを見た。

 店員さんも勿論傷ついたはずだけど、お客さん側だって、家に帰って、お布団の中にいるときに、思い返して後悔したと思う。

 自分が、怖くなったと思う。

 いつもなら、こんなことしないのに。 なんでこんなことで誰かに当たっちゃったんだろう、自分はこれからどうなってしまうのだろう____って。

 

 

 …………私。

 

 毎日、たくさんの人がコロナに罹患して、命が奪われていって。

 ずっと、胸が痛かった。 もっと、助けられたはずなのになって。

 私の心も、知らず知らずのうちに 限界になっていたのかもしれない。

 

 いつの間にか少し、記憶が薄まってしまっていた____誰かが、私たちのために一生懸命になってくれている、それが、こんなにも素敵な気持ちになるんだって。 こんなにも嬉しいんだって。

 

 

 

 …………。

 

「みんな______」

 

 数多の視線が、グレースに集まる。

 

「私たち、頑張りたい____負けたくない、負けない、生きたい、行きたい、明日に、笑って、生きたいの!!」

 

 

 少し間を開けるけど、無音____ではない。

 

 今も、助っ人さんたちが戦ってくれてる。

 分身してたり、魔法を使ってたり。 私たちよりもずっと長く、戦ってきたんだろうなって思う。

 それでも、やや苦戦しているところを見ると、やっぱり敵は『大きい』んだなと、痛感する。

 

 でも、もうくじけない。

 だって、だって……!

 

 

「みんなお願い、私たちに、力を貸して! 私たち、地球のお医者さんとしてはまだまだだし、あんなとんでもないのが相手で、正直怖いけど____応援してくれるみんながいるから、何度でも立ち上がれる!」

 

 ____みんな!!

 

 

「本当の夜明け、目指そうね! みんなの手で、みんなの朝を、迎えようね!!」

 

 

 

 

 

 

 ____グレースが、言い尽くした反動でやや荒い息をつく中、大きな拍手と歓声があがる。

 

 ……仲間が、そっと肩に手を置く。

 

 

「グレース、ありがとう」

 

「私たちも、とーぜん同じ気持ち!」

 

 だから____

 

「「絶対最後まで、走り切 りましょう/ろうね !」」

 

「ふふっ____もちろんっ!」

 

 

 

 

 

 …………。

 

 さぁ、これで、最後____

 

 

「みんな……

 

 

  …………

 

 

   …………

 

 

 

    …………

 

 

 

 

     ()くよっ!

 

 

 

 

 

 ────────!!

 

 

 

 

 フォンテーヌが。

 スパークルが。

 ラビリンが。

 ペギタンが。

 ニャトランが。

 ラテが。

 32期さんが。

 稚拙さんが。

 大輪愛が。

 アデッソが。

 ミラクル・シードが。

 シード・マジカルが。

 アナザーさんが。

 そして、もえはたち含む群集が。

 

 ひとつに声を揃え、お手当てが始まった______

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
揚げた紅葉饅頭のこと。 宮島以外でも、駅付属のこの施設で買える……らしい。Google情報

*2
広島駅在来線改札内 4・5番ホームと7・9番ホームの間のところ。 店名はあえて伏せる。ネットで店名を見たとき、漢字が読めなかったとは、口が裂けても言えない。

*3
広島東洋カープ。 言わずと知れた、やきうのチーム。 (広島風)お好み焼きと並んで、広島県民の魂。 シーズンが到来すると、広島駅と天神川駅の間にある『MAZDA Zoom Zoom スタジアム』と、原爆ドーム付近にある『本通り』が特に真っ赤に染まるのが、もはや狂気。 テレビ越しでも凄いんだから、現場に行くと、とんでもないことになっているはず。 はず。

*4
実際問題、5分以内に眠りに入れる方は、明らかに睡眠不足である……らしい。

*5
32期さんが、感想の締めの言葉として使われていた。 今回は、無論、出会いの挨拶としての「チャオ」である。

*6
こんな威力の衝撃波、本当は受けた瞬間に人体なんて木っ端微塵ですが……こまけーことは気にすんな!()

*7
ジーニアスは英語で「天才」、さらに語源であるラテン語では「守護神」を意味する。 ハイエニアは、救世主、守護神と自認し、民衆は彼女を厄災、破壊神と認識する。 なんとも言えない皮肉である。

*8
しかも、3

(スーファミ仕様)のwii復刻版と、ソードしかやったことないとかいう偏食具合。 旧担任には、4だったか5だったかが神だと聞いた。 ……はい脱線。

*9
スレッドのこと。 ネットの掲示板にある、個々のトピックみたいなの。 後述の『イッチ』は、スレッドの発言番号1の人のこと。 スレを立てた人がイッチになる。 また、スレ民は、スレの参加者のこと。




 

ってことで、キリの良いとこまで5000字ちょっと削って、『Aパート』として投稿したものが……こちらです。

あんまり、お待たせしすぎるのも良くないなぁと。

しかも、13話長すぎ……Aだけで、17330字だって。
うん、長い。(確信)


まだ拾いきれてないフラグとかいっぱいあるので、Bパートをお楽しみに!




 


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第13話-B PRECURE ❤ CORONA・OPERATION



- Caution -


・相変わらずの突貫小説

・『現在27952文字』 長い。 お気を付けを。

・のどかっち、中の人ネタ炸裂!

・途中 掲示板描写などあり。

・不安しかない広島弁の使い方。 間違ってたら教えてください。

・基本的に、対象の作品が『ニワカ』だとキャラ崩壊が怖いのでしゃべらせない。
 今回の該当者はふたり。 お許しを……。

・「ラテとアナザーさんが空気してる……」
 アナザーさんは、災害で崩壊した『世界』の実例を示してもらう目的だったんで……
 できる限りカバーしたけど、やっぱりよくない……
 ラテ様! ラテ様、本当にごめんなさい!

・敵を『強く』するのがしんどかった。 力量不足

・ついでにプリオルSFの伏線を張ってるので、一部ト書きわかりづらい?

・途中でフォントがガラッと変わるので、読みづらいのにはルビふってます


・疑似現実世界の人たちの絵柄は割とシンプルにして、キラキラ感抑えてます

・Nさん、挿絵ですが、中性的な見た目のあの人が、『あの人』です。






 それでは どうぞ!








   Now Loading____






 


 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

 

 

 疾走____ののちに、闇の根源へと、桃色の光は大きく跳躍する。

 

「みのりのエレメントっ!!」

 

 不意打ちのビームぶっぱ……だが、当然敵は倒れない。

 

『____この期に及んで宣戦布告か』

 

「ちょっと違うよ! あなたをお手当しにっ、宣()()布告に来たんだから!」

 

 放った拳は、いなされ……。

 

『素体の女は、我が既に蝕んだ! もう遅いのだ!!』

 

 諦めろ____と、手首を握られ、放られる。

 

「くぅっ……!?」

 

 受け身を取ろうとするも、ここは空中、うまくいかない。

 

「グレース!」

 

 ____急に、足の裏に硬い感触が現れた。

 

 はっとして振り向くと、特徴的なピンクのツインテールの女の子が微笑んでいる。

 女の子は、自分の足場も生成しつつ、グレースのところにも星形のパネルらしきものを設置してくれていた。

 

「ありがとう! でも……あなたは?」

 

 ____名前は、32期さんとこのTVの録画で見たから、知っている。

 グレースの先輩プリキュア、『スター☆トゥインクルプリキュア』の『星奈ひかる/キュアスター』だ。

 

 だけど、なぜここにいるのか、急に現れたのか____理解が追い付かず、つい訪ねてしまった。

 

 スター(?)は優しい笑顔を保ち、こう言った。

 

「ふふっ、ここで先輩らしく()()()()()()名乗りたいところなんだけど____『本人』じゃないからね、種明かしはあとあと!」

 

 ____それより、来てるよっ!

 

 スターの緊張した声に、グレースは向き直って、足場を思いっきり蹴る。

 

「はぁっ!」

 

『! ……』

 

 突き、突き、蹴り、蹴り、蹴り、突き____掠るだけでも、避けられても、彼女は止まらない。

 

「____確かにっ、時間がたてば手遅れになっちゃうし、どのくらい大掛かりになるかわかんないけど! それでも確かに言える……私たち、諦めないよ!」

 

「スタァァァァァァッ パァァァァァァァンチッ!!」

 

 ここで、キュアスターの強烈な追撃が入る。

 

 そのまま、スターが光に包まれ、中から現れたのは____

 

「アデッソ!?」

 

「オリ主・オールスター小説の定番だね……『キュアスター』に、なりきってました!」

 

「ふわぁっ、そんなことできるの!?」

 

 まぁね、と特に照れる風でもなく、返事が来る。

 

「でも、私としては、さっきの言葉を堂々と言い切った、グレースのほうが凄いと思うな」

 

 あんなこと、誰でもできるわけじゃないんだよ____すごく、かっこよかった!

 

「そうかな……?」

 

「自信持ちなよ____おわっ!?」

 

『余所見とは悠長だなぁ!?』

 

 ハイエニアの不意打ちを、腕をクロスさせて受ける。

 

「悠長? 冗談……! いつも、いっぱいいっぱいよ!」

 

 ねぇ、ところで____

 

「私みたいな、一乱入者ごときにかまけててもいいのかな?」

 

「はぁっ!」

 

 ____次の瞬間には、ハイエニアは脳震盪におそわれていた。

 

 見えたのは水色の影____

 

『キュアフォンテーヌ……!』

 

 鋭い蹴りの入って痛む首を、手で思わず押さえかけるも、死角の方に、微かに気配を感じた。

 

「ふっ! ……!?」

 

『何度もやられはせんっ!!』

 

 放たれたこぶしを両手のひらで受け止め、息つく間もなくやってくる回し蹴りを払い____ハイエニアは、先ほどより苦戦する。

 

「はっ、ふっ____てやっ、とりゃあっ!」

 

『ちぃっ、動きの煩い奴だ!! ふん”っ!』

 

「ひゃぁぁあ!?」

 

 衝撃波で、スパークルの体は、宙に真一文字を描く。

 

 

 

トパーズ

Topaz

 

ランドォゥ↓』

 

 

 

 

「よっと……! 大丈夫?」

 

「種たん! ありがとー!」

 

 『ヴァールハイト・プリキュア ver. 魔法つかい クォーツスタイル・トパーズモード*1』になったミラクル・シードが、あの黄色いぽよぽよしたやつをクッションにして、スパークルを受け止めた。

 

 助けた当人のミラクル・シードは、「種たん……?」と、突然つけられたあだ名に、やや反応に困りつつも。

 

「どういたしまして! よかったら、これ1個使ってよ!」

 

「うぇっ、いいの~!? ありがとう……おぉ、ぽよんぽよんだ~!」

 

 ____スパークルは、ぽよぽよを手に、もう一度向かう……。

 

 向かう……つもりだった。

 

 

____ ドッドッドドンッ ドンッドッドッドン

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!!!!」

 

 ……ポリバケツを被って我武者羅に走ってくる、シード・マジカルを目にするまでは。

 

 

 

 

 チョーイイネ! キックストライク サイコー!____と、土塊を纏って、少年が飛び上がったところを、ハイエニアは呆然として凝視していた。 なんだこのベルトは。 黙ったら死ぬのかと疑いたくなるレベルでよくしゃべるな。

 ……そう思いはしたが、勿論他人事ではないので、気を取り直して身構える。

 

 ところでシード・マジカル、こちらは本来なら斜め上からの跳び蹴りになるが、今回、水平に蹴りを放っている。

 それは、標的が空にいるからではない。

 

 

「んーっ? ……あぁ、なるほどね、さすが駆くん、賢いなぁ……」

 

 ____そう、真正面からこられると、相手から、どうしても距離感がはかりにくくなってしまうのだ。

 何かしらのエフェクトつきなら、尚更。

 

 

 ……なお、エキサイト中の張本人は、

 

 

「サイコォォォォォォォォォォォォオッ!!!!」

 

 

と、バケツ越しの、くぐもり気味の声で叫びながら、相手には最初受けられつつも、百メートルほど吹っ飛ばしていた。

 

 

 ____吹っ飛ばされた先で。

 

『……くっ! なんだったんだ、あのバケツは____』

「とりゃあっ!」

 

 続けて誰かに不意打たれかける____ハイエニアは、迫ってくる黄色いボールをしっかりと受け止め、回避する。

 

『また不発だなぁ、キュアスパークル……!?』

 

「ふっ!!」

 

 ____次の瞬間、ボールは網に変形し、ハイエニアを捕らえた。

 

「よっしゃ! ……たぶん、あんましもたないけど……」

 

「ダメ押しで私も手伝うよ! ぐるぐる~っと!」

 

「種たんナイス!」

 

 

 

「駆くん、そういえば、あのポリバケツのって、何なの?」

 

 あぁ……、と、シード・マジカルは照れながら、フォンテーヌに顔を向ける。

 

「ウィザードの、ランドスタイルっぽい姿になったので、ついついやってみたくなったんですよね」

 

 ちなみにバケツは、そこの隅っこにバナナの皮と一緒に放置されてたので拝借しました。 と、彼は続けた。

 

 

 …………。

 

「へぇー、これが例のポリバケツですか」

 

 32期さんが、つんつんと突いてみる。 元の場所に返却されたそれは、傷ひとつついていなかった。

 

「でも、本家の方は、アクシデントで*2 ()()()()()になったんですよね……未回収のバナナ要員は誰なんだろう____」

 

「あべしっ!?」

 

 ……悲鳴とともに、すぐ側で、ドテッ! という音がしたため、驚いてそちらを見ると____

 

「稚拙さんでしたか……」

 

「転倒フラグは、何が何でも回収する体質みたいで……いたた……うぅ」

 

 32期さんは しゃがみこみ、稚拙さんの足元のバナナの皮を、危ないから、とポリバケツに入れた。

 

 

 

 

 …………。

 

「それで、種ちゃんったらね~?」

 

「ひどいよアデッソ! 私、大食いじゃないのに!」

 

 うっかり話の弾んでしまうプリキュアたち。

 作戦会議をしていたはずなのに……どうしてこんなことになっちゃったのぉ……!(CV. 引坂理絵)

 

 唐突に浮かんできた『オールスターズメモリーズ』の一場面は頭の隅にでも置いといて____要するに、気づかなかったわけである。

 頭に被さろうとしている暗黄色の網に。

 

 

「……しまった!?」

 

「だ、大丈夫! 私のぽよぽよだし____あれっ!? 操れない!」

 

『無駄だ!』

 

 プリキュアは、網越しに敵の姿を見た。

 

「一体、何をしたの!?」

 

 噛みつくように問うアナザーさんに、相手は勝ち誇ったように笑う。

 

『それは闇に浸しておいた、もはやお前のものではない!』

 

 

 そして、彼女はそのまま、ストンと地に降り立つ。

 

「ん?」

「なんだなんだ」

「待って、嫌な予感しかしない」

 

『さっきから目障りだ、奴らへの見せしめに、消えてもらう』

 

「「「「 /(^o^)\ 」」」」

 

 ____ギャラリーさんたち、絶体絶命!

 

 

 

「……待って」

 

『何だ____キュアフォンテーヌといた奴か』

 

 内心で冷や汗を流しながら、その人は____稚拙さんは相手を見据える。

 

「先ほどグレースが言っていたように、ここは元々、この世界の人の物だ!」

 

「えぇ____」

 

 看護師の制服の襟を正して、32期さんも言う。

 

「私たちも、それなりに抵抗させてもらいますよ」

 

宜しゅう(よろっしゅ)……!」

 

 やや引け腰ながらも、大輪愛も宣戦布告した。

 

 

『ほぅ、面白い____』

 

 邪悪に笑い、彼女は拳を放つ。

 

『だが、お前たちごときが、どうやると言うのだッ!』

 

 放たれた先の稚拙さんは、いきなりよろめいて____ハイエニアは、『当たり』を確信した、が。

 

「コケたと思ったかな?」

 

 グッと足を踏みしめ、体勢を直し____

 

「____残念♪」

 

『!!』

 

 ポケットから何かを取り出し、フリスビーのように、鋭く投げた。

 

 ……鈍い痛みを感じ、ハイエニアは腕を見る。

 腕の皮膚が、真っすぐ、浅く切られていた。

 

 稚拙さんは、もう1枚 同じものを取り出すと、思いっきりドヤ顔で言い放った。

 

「名刺でした♪」

 

 

『ナメた真似を……!』

 

「ちょ、ちょっと待ったっ!」

 

 振り向くと、ビビり顔で仁王立ちするという、多大なる矛盾を体現している大輪愛がいた。

 

「わ、私とも対決してや……!」

 

『どの方法でだ?』

 

お勉強対決(脳内再生CV. 久川綾)(ここだけややドヤ顔)

 

『いいだろう、では、我が問題を出させてもらう!』

 

「! ……ま、任せんしゃいっ! 9歳には負けんよ!」

 

『ほぅ?』

 

   第1問

   付近を流れる寒流が原因で形成された砂漠の例を1つ答えよ。

 

はっ!? あ、アタカマ砂漠*3 っ……?」

 

『正解だ』

「いやいや、おかしいやろ!!」

 

『何もおかしくはないな。 征服しようとする所の地理を把握しておくのは当然だろう』

 

「いや~……(汗) ん? ってことは、それ以外 小3レベル?

 

『お前もなんか出せ。 高校地理B限定で』

 

「えーだって私、まだそんな習っとらん……」

 

『出せ』(禍々しい光弾をチャージしながら)

 

ごめんなさい、 出します

 

   第2問

   乾燥地帯の外から流れてきて、枯れずに海に流れ込む川は、何と言うか。

 

外来河川 例としてはナイル川……どうだ、合っているだろう?』

 

「正解……」

 

 ____いや、征服したいなら地名だけでえぇやろ。 なんで地理用語まで勉強してるん?

 というツッコみをグッと堪えつつ、大輪愛は考えた。

 

 さて、このまま呑気にクイズ合戦を続けていいものなのか。 この先、どうすればいい?

 

 ……その時、女子高校生の目に、何かが映って____彼女は、ほくそ笑んだ。

 ____よっしゃ、続行や!

 

 

『では、第3問だ』

 

 …………。

 

「だ、第18問っ!」

「ぃよっしゃ──!!」

 

 お勉強対決もかなり続いた頃、そんなスパークルの歓喜の声が聞こえた。

 

『っ! まさか____』

 

 慌てたハイエニアは振り向くも……。

 

『!?』

 

 突然起こった出来事に、文字通り目が眩んでしまう。

 背後では、稚拙さんと大輪愛が、その出来事より前に、既に目を固くつむっていた。

 

 ____そう。

 

「胸ポケットに刺さっていた小型ライトを見て、思いついたんですよ!!」

 

 勝ち誇った笑みを浮かべ、ライトを敵に照射する 32期さん をはじめとして、スマホのライトモードをONにして相手の目に向ける 野次馬たち、大型の照明を煌々と照らしている 警察たち

 

____ここに集まった、この世界に生きるもの代表たちが、ハイエニアを取り囲んでいた。

 

 

「たぁぁっ!!」

 

 そして、目くらまししている間に飛んでくる、グレースの渾身の一撃。

 

『ぐっ!?』

 

 解放されたプリキュアたちが、スタッと降り立つ。(Z戦士というよりも、フレプリ変身時の着地のSE)

 

「時間稼ぎ、本当に助かったよ! ありがとう」

 

 アデッソが言うと、(いつの間にか基本スタイルに戻った)ミラクル・シードが、その隣に立って。

 

「そろそろ色んな世界に『応援要請』しなきゃね」

 

「シードたちが動けない間のサポートは、私に任せて!」

 

 アナザーさんが、可愛らしくウインクする。

 

 

 3人が準備にかかろうとした、その時だった。

 

『____お待ちください!』

 

 涼やかな声が聞こえてくる。

 

「その声は!」

 

 フォンテーヌには、思い当たった節があったようで、顔を輝かせ、広場を囲むビルに設置されてある大型モニターに目を移す。

 

『時が来ましたね。 私からも、ぜひ力添えを……!』

 

「「「アマビエ!」」」

 

 アマビエはモニター越しに微笑むと、唖然とする現地のキャスターを傍目に、透明な力を纏った。

 

『母なる水よ____地球の医師たちに、生命の輝きを!!』

 

 ____程なくして、地平線の彼方から、煌めくオーラが運ばれてくる。

 

 

『____僕も、約束通り協力させてもらうよ』

 

 ふわり、と淡い光を放ちながら現れた小物体に、グレースは目を見開いた。

 

「命のエレメントさん……!」

 

『そう、厳密にいうと、個人個人のそれではなくて、この星自体の『命』が具現したものだね』

 

 そして、エレメントさんは腕を天にかざし、群衆の手元にピンク色の物体を出現させた。

 

「こ、これは____ミラクルライト!」

 

 誰ともなく感動して叫ぶ声に、エレメントさんの周りの空気が和らぐ。

 顔がないからわからないが、たぶん笑ったのだろう。

 

『そう、ミラクルドクターズライトだ。 いざとなったら、頼むよ。 君たちの生命力を、彼女らに届けてくれ』

 

 緊張した面持ちで、みんなは頷いた。

 

 

 

「____始めましょう」

 

 シード・マジカルの言葉に、アデッソが無言で頷き、片手で何かを広げるかのように、サッと払う。

 透明なキーボードが出現し、彼女が何かをローマ字で打ち込むと、それを変換した。

 

観永遠

 

 

「ちょっとぉ! ネタバレになるやろがぁぁ!」

 

 それを見て抗議する大輪愛だが、「うるさい!」の一声で、一蹴されてしまう。

 

「言っとくけど、『第1部』のラストの件、絶対許してないからね!」

 

「う”……それを言われると……」

 

 もぅ……と、ため息をつく調律者の前に現れたのは、いわば『ワールドマップ』的なもの。

 

「種ちゃん、何かあったときはよろしくね」

 

「うん!」

 

 笑いかけるアデッソに、ミラクル・シードは力強く頷いた。

 

 

「管轄者の名の元に開け コネクション・スタート____」

 

「接続先・笛吹ノ書庫 現在・エラー無いよ!」

 

 補佐を務めるシードの「問題なし」の声に、アデッソが次々と接続を進めていく。

 

 

 

ヴァールハイト・プリキュア :司「命」「記録」 217036

 

プリキュアオールスターズif :司「可変」「団結」 24832

 

プリキュアオールスターズ ~観永遠~ :司「運命」「中今」 220693

 

花を護る騎士 ブレイドナイト :司「救命」「育愛」 70682

 

ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~ :司「追紡」「慈愛」 117088

 

 

 

 

 ____どこかの世界たちにて____

 

 

「あっ! やっと、みなとさんから要請が来ましたわ!」

 

 マゼンタの髪の少女が口角を上げると、金髪の少女も、ポンポンを持つ振りをして、手を突き上げる。

 

「よぉし、張り切って応援だね! フレッフレー!」

 

 その隣で、静かに祈っているのは、アカシア様だった。

 

「みなとさんたち、どうか……!」

 

 

 …………。

 

 また、別の世界。

 とあるキッチンカーの近くで、大学生ほどの女子ふたりが、送られてきたメッセージを見て、頷きあう。

 

 おもむろに立ち上がると、茶色い髪のほうが右に、黒髪のほうが左に並び、ギュッと内側の手をつないで、外側の手を、真っ直ぐ空に伸ばす。

 

 キラキラと、オーロラのような光が、世界を超えていった。

 

 

 …………。

 

 またまた、別の世界。

 花咲き誇る大樹の下。

 高校生ほどの男女ふたりが、仲睦まじげに笑いあっている。

 

 メッセージを受けとると、それぞれ変身し、男性のほうは黒騎士を彷彿とさせる姿に、女性のほうは月下に輝く百合の花の如く可憐な姿になる。

 

 ……突然、色とりどりの花吹雪が舞い上がる。

 その花びらたちは、天高く、遠く、どこまでも……。

 

 

 

 ………………。

 

Error! Error! Error!

 

「! ……あ、アデッソ!」

 

「……その世界かぁ……『完結前の干渉』にロックがかかってるから……」

 

「どうしよう……パワー足りるかな……」

 

 

 トラブルが発生している傍らで、激しい交戦が起きている。

 

 アナザーさんとヒープリ組は、ハイエニア相手に何とか持つか持たないか……という状況だった。

 

「はぁっ!!」

 

 アナザーさんが、ハッピーシャワーに酷似したビームをぶっぱすると、フォンテーヌが、光に紛れて接近、回し蹴りを放つ。

 更に、間髪を入れずにスパークルがパンチラッシュを決め、グレースが駄目押しとばかりに右ストレートを打ち込んだ。

 

 それでも、やはりラスボスというだけはある。

 

 もくもくとあがる砂塵をなぎ払いつつグレースの脇腹に手刀をヒットさせ、スパークルには背後から肘打ち、フォンテーヌとアナザーさんには、闇色の光線がお見舞いされた。

 

 

「うぅ……がんばえーぷいきゅあーっ!!」

 

 ____それを見て、野次馬の親について来たらしい幼女が、早くもミラクルライトを点灯させた。

 

「「「「……!」」」」

 

 人々は一瞬戸惑う、が。

 

「頑張れー!」

「プリキュア負けるなー!」

「勝たんと一発入魂するぞ、うらぁっ!」

「ちょっとあなた! そんな言葉遣いしないの……プリキュア、頼むわよ!」

「がーんばー!」

「プリキュアーっ!!」

 

 次々と、ライトが点灯されていく。

 

 そんな中、稚拙さんが、慌てるシードたちに気づいた。

 

「……どうしたの?」

 

「ひとつだけ、接続できない世界があるんです」

 

 シード・マジカルが、その言葉に続けてアレコレ説明する。

 

「……なるほど」

 

 そう呟いてから、しばし……考えた。

 

 ____その世界は、ほぼ確実に、うちのところだ。

 

 そして、ここが現実ではないなら、『干渉不可』のロックは外せない可能性が高い。

 その制約の中で、どうすべきか……。

 

 稚拙さんは、ライトを胸の前で点灯し、唇を結ぶ。

 

 

「____そうだ、これなら、せめて……」

 

 遥か遠く。

 ある場所が、鮮やかな青色に輝く。

 

 

「せめて!」

 

 

 流れ星の如く。

 青……いや、『蒼』は、引き寄せられていく。

 

 

 

「『あっちの世界』の、あなたたちなら!」

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

インストール@プリキュア! :司「超越」「交錯」 108564

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

『____もう、仕方ないわね?』

 

 

 

 

 ビルの屋上、3つの影が映る。

 

 そのうちの、真ん中に、パッ____とスポットライトが当てられ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 その、『真ん中の影』は、蒼い軌跡を描きながら、サイレントに降り立った。

 

 

 

『銀河に光る 虹色のスペクトル!』

 

 猫のような手つきをして、片足立ちのポーズを決め____

 

『キュアコスモ!!』

 

 

 ……名乗った直後、背後で青い花火が パァンパァン! と打ち上げられる。

 

 

『____こと、『蒼の怪盗団』が一員、ハデに参上ニャン♪』

 

「本当に派手にキメたなぁ……(^∀^;)」

 

 苦笑交じりのツッコみを聞きつつ。

 こんしゅうのニチアサはおやすみです。(こんニチ)の世界から応援に来たコスモは、澄まし顔をする。

 

 

『この疑似現実は、本物より『認識範囲』が狭いみたいで、『範囲外』のヒトが下手に動くと『崩壊』しちゃうのよ』

 

 だから、こうして大っぴらに動けるのは、残念ながら私だけなワケ。

 まっ、でも、夜闇に紛れて躍動するのも、()()()()アリかもニャン____

 

『そうよね?』

 

 彼女の顔は、屋上に残る、ふたつの『ヒーロー』の影へと向けられる。

 

 その内のひとりが、くるりと1回転、銃らしき物を弄び、漆黒の空へと……。

 

 

A T T A C K  R I D E : A N I M A

 

 

 ____ソレが、コタエだった。

 

 

『行くニャン♪』

 

 ひらり____

 コスモがスポットライトからフェードアウトするのと、屋上の影たちがアクロバティックな回転キメながら降りてくるのが____同時。

 

 

 

「よし! 書庫内、ほぼ全て接続完了!」

 

「コネクト先、変えるよ!」

 

「安定してしまわない内に、『配信』日時設定、準備!」

 

 シードたち3人が慌ただしく動き始め。

 

 

『コスモシャイニングっ!』

 

「ふわぁっ! 誰!?」

 

「夜闇に紛れてよく見えないわね……」

 

『宇宙を駆ける、通りすがりの怪盗ニャン♪ ま、別に覚えておかなくてもいいわよ?』

 

「いや~、そんなこと言われたら逆に覚えちゃうし……」

 

 コスモが乱入し。

 

 

「わぁ~、何これ、カードが刺さってるのかな~? あっ、マントだー、マスクが怪盗のハットっぽい! すごぉい!」

 

『『…………』』

 

 アナザーさんがちょくちょく衣装をいじってくるのを、グッと、グッと堪えるふたりがいて。

(特に後者。)

 

 

 

 

 何度目かの仕切り直しで、戦闘が始まった頃、接続先を別の世界へ____『本物の現実』へと変えた3人は、非常に難儀していた。

 

 何せ、普段は難攻不落の現実さんである。 おいそれと干渉できるような物ではない。

 

「……仕方ない、本気出しちゃうかぁ……嫌だったけど……」

 

「OK アデッソ! 私の力で均衡を調節するから、任せて!」

 

「僕の干渉力がオリジナルより弱い分、サポート面で頑張ります!」

 

 アデッソは一度ゆっくりと瞬きをし、唇を微かに開く。

 

 

 

「明堂・花咲式 第五呼吸法____」*4

 

 再び瞼は閉じられ、スカーフがバスタオルレベルまで伸び、彼女はそれで身をくるむ。

 

 ____Let it wake, my eternal ”Zeit“.

 

 そうメロディにのせて口ずさむと、どこかから____多分、スカーフに隠れている『ティックコミューン』から、電子音声が響く。

 

『Okay?』

心醒神臨(しんせいしんりん)!」

 

 呼応して言葉を発すると同時に、彼女は目を開き、右目のみ淡いショッキングピンクに染まった____いわゆるオッドアイがあらわになる。

 

 スカーフをひらりと翻して、電子チックなラインの入ったドレスが披露目られると、髪も全体的に伸び、後ろ髪は三つ編みにされる。

 

 胸の飾りの時計っぽいのが……短針が12・2・4・6・8・10を、長針が6を指したデザインにグレードアップする。

 

 

「ヤァヤァ 遠かれば音にも聞け! 近くば寄って、目にも見よ! 我こそは!」

万世(ばんせい)の管轄者・キュアアデッソ・デスティニー アウェイク!」

 

 

 ってなわけで、『あっち』の本編は1話しか更新されてないのに、ノリで最終フォームがお披露目されてしまったのである。

 重大なネタバレは隠してるし、いいだろ……の境地である。 反論ウェルカム。

 

 

「じゃあ、私も行くよ!」

 

 ふたりのシードが光に包まれ融合し、通常のキュアシードに戻り____彼女は、Qaウォッチを取り出した。

 

 

「「プリキュアプリケーション!アップデート!!」」

 

スーパーQaライト:アクティベーション……

< Ready?>

 

「「インストール!!!」」

 

 ふたりの声が揃った、途端____

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 シードは、スーパーQaライトの暖かな希望の光に包まれ、空へと打ち上げられ、さなぎの中で蝶が形作られていくように、姿を変えていった。

 

 

【挿絵表示】

 ↑とってもシンフォギア演出です。

 

 鳥の翼を思わせるスカートを纏うと ふわりと羽が舞い、降ってきて衣装の各所に飾られる星は、眩く輝いている。

 左手首にも、右手首にあるような、希望の赤いリボンが巻かれ____

 

 少女は、今、夜空に開花する。

 

 

輝く種から花開け!

未来を照らす星の種!

 

キュア アストラル・シード!

 

 

 

 

 …………。

 

 ____今はまだ潜在する運命に翻弄される、管轄者。

 

 ____星のない夜空を彩り、華やがせ、希望を遍く与える、時空の特異点。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ふたりは……いや、3人は笑い、並んで宙に浮かぶ。

 

 

祝え!!

 

歪められし時空に流れ着いた 真実と希望の双乙女!

 

その名も アデッソ・デスティニーアウェイク そして アストラル・シード!!

 

宇宙の歯車を調律し、輝きを与える 明日への可能星が現前した瞬間である!!

 

 

 Qaウォッチの中の駆くんは、かなりノリノリだ。

 

 

 

「アデッソは、とりあえず『フォースウォール』に穴をあけることだけに集中してください」

 

 種は……と、駆くんは言葉を継ぐ。

 

「種は、現実からの拒絶反応や均衡の崩壊を緩和してくれる?」

 

「力押しね! 嫌いじゃないよ」

「OK、頑張るね!」

 

 アストラル・シードがアデッソの肩に手をのせると、アデッソの両目が鈍く輝き、目線はどこか遠くに行く。

 

「「「…………」」」

 

 次第に、彼女の額に汗がにじんでくる。

 

 ____2次創作の人間が現実に干渉しようなど……さっさと『エネルゲイア』になっておけばよかったものを。

 

 頭にそんな声が響く。

 

「うるさい……私はまだ、私でいたいのよ……! 後悔なんて絶対してない……!」

 

 小さく、声が漏れる。

 

「……アデッソ____みなとちゃん、大丈夫?」

 

「大丈夫だよ種ちゃん、()()行ける……!」

 

 ……周知のとおり、人が『まだ』を使うときは、大抵、無理をしているときである。

 

 実際、彼女は内心穏やかじゃなかった。

 小さい傷が入ったかどうかも、わからない。 このまま、ちゃんと成功するのか?

 

 

 …………。

 

 ____ちょっと協力させてもらうねっ!

 

「「「 !! 」」」

 

 途端、3人の脳内に直接、誰かが語り掛けてきた。 こいつ……ニュータイプか!?(違)

 

「何だろう……すごく、聞き覚えのある声……」

 

 そんな誰かの呟きをわざと無視して、声の主はぼやく。

 

 ____あーあ、これでしばらくは『戻れない』なぁ? ふふ♪

 

 その言葉の後、アストラル・シードとアデッソは、不思議な力が漲ってくるのを感じた。

 

 ____力の調節はそっちでお願い! 私だって、こんなの……厳密にいえば2度目かぁ

 

「わかった! はぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 

 ____ぴし……

 

 

 …………!

 

「開いたっ! 細かい接続先は、僕が選びます!」

 

「よろしくね、お兄ちゃん!」

 

 

 

笛吹ノ書庫 :司「創造」 000000

 

…… …… …… ……

 

 

???????????? ??????????????? :司「??」「??」 221273

 

- SYSTEM ALL GREEN -

- C O N N E C T I O N  C O M P L E T E -

 

 

「来たっ! 配信、行くよっ!」

 

 

 

 

第1話 壁の向こうの物語❤ 世界に落ちた陰は何?

 

第2話 ちゆとペギタンと物書きさん❤ 交わるリアル・バーチャル!

 

第3話 双光と(Darya)❤ミラクルセッションのはじまり!

 

第4話 私たちはお医者さん❤ 新型コロナウイルスの陰

 

第5話 スゴイ・セカイ・トウライ❤時を駆ける友達!

 

第6話 LINK ザ・ネット❤ みんなの影を追いかけて!

 

第7話 ボルテージ上昇❤ おっしゃ作戦会議だ~っ!

 

第8話 押し寄せる清流❤ 交わる9人の想い!

 

第9話 サラウンド・Kodama❤ ラテはどこどこ?

 

第10話 見つめあう目❤ 溢れる気持ち

 

第11話 私の友達❤ 救え ELEMENT of HEART(いのちのエレメント)

 

第12話 始まる答え合わせ❤ ハイエニア降臨!

 

第13話-A PRECURE ❤ CORONA・OPERATION

 

 

第13話-B PRECURE ❤ CORONA・OPERATION

 

 

 

 

________

 

 

 

 

 

 

ライブ配信に切り替えます……

 

 

 

 

 

5

 

 

 

4

 

 

 

3

 

 

 

2

 

 

 

1

 

 

 

 

 

< LET'S GO >

 

 

________________

 

 

 

 

 

「ひ、ひゃぁぁぁ……」

 

 アデッソは通常フォームに戻って、息をつく。

 

「いやぁ、何とかなりましたね」

 

「やっほー! 現実のみんな、みてるー?」

 

 安堵の言葉を述べる 駆くんの(そば)で、同じく通常フォームに戻ったシードが、画面越しのあなたへと、手を振る。

 ……が、すぐに、戦場(せんじょう)に向き直ると、「みなとちゃんは、ちょっと休んでてね!」と、早くも飛び出す。

 

 

「「小さな種から花開け!元気のプリキュア!キュアエール・シード!」」

 

 

 

 よぉし! と、エール・シードは、野乃はな本人がよくするように、ぐるんぐるん腕を回す。

 

「フレッフレー!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 ____ CAMERA CHANGE(してん へんこー)

 

 

「み・な・ぎっ・て・キ・タぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 普段から全身を使って戦うことの多いスパークルが、ハイテンションになりながら 普段はあまりしないような回転やロンダードをキメつつ、相手に向かっていく。

 

「やるぜ相棒!」

 

「おぅけぇっ! はぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

 

 跳躍し、ヒーリングステッキと相手の肘とで小競り合う。

 

「っ!」

 

 が、思うように()せない。

 跳ね飛ばされるのも時間の問題なので、反動を使って、自分から(はな)れ____

 

「プニシールド!!」

 

 背後にシールドを出して足場生成(あしばせいせい)。 もう一度飛び出す。

 

 

「もう……負けないんだから……!」

 

 突いた右(うで)を掴まれたので、左腕で殴り掛かる。

 

『言葉だけなら何とでも言える! 所詮お前たちなど我に及びもしないのだっ!!』

 

 ……スパークルは、腕に突然、生理的に気持ち悪い(かん)覚を覚えた。

 

「っ!? 何これ……!」

 

 それは____闇色の絵の具。

 先ほど掴まれたスパークルの右腕に、それは徐々に広がっていく。

 

 

「ヒーリング・ストリ────────ムっ!!」

 

 突然入った誰かの____フォンテーヌの助太刀に、スパークルの顔が思わず輝く。

 

 ストリームはスパークルの右腕ごと巻き込み、流れ去った頃には、絵の具は綺麗に洗い流されていた。

 

「ありがとー、フォンテーヌ!」

 

「えぇ……でも、何だか埒が明かないわね……」

 

 うん……とスパークル。

 

「なかなかキマってくんないよね」

『だったら____』

 

 ふたりが同時に振り向くと、先ほど『コスモシャイニング』で加勢してくれた彼女____キュアコスモが不(てき)な笑みを浮かべて立っていた。

 

 ____シュッ

 

 コスモが自身に香水を振りかけると、姿が光り輝き、変化する。

 そのまま再びスポットライト下に躍り出る。

 

「! ……(うそ)~!?」

 

「私……!?」

 

 そう、コスモは、フォンテーヌそっくりな姿へ、変化していたのである。

 

『そうよ……ま、アデッソ(あの子)と違って、見た目だけだけど……』

 

 優雅に回転し、ウィンクする。

 

『打ち合わせはナシよ____アドリブで一芝居、ヨロしくニャン♪

 

「えぇ!」

 

 

 

 ____その頃グレースは、子供が敵を怖がって泣いているのを、なだめていた。

 

 なんじゃそりゃ! とツッコみが多数(たすう)入ることが予想されるが、子供に無言でスカートを掴まれた、上目遣いで見つめられた上に、グレースの性格も相まって、とにかく仕方なかったのである。

 

 そのため、盛大に出遅れてしまった。

 今までのことで、闇雲に突っ込んでいっても 跳ね返されるのがオチであることは、わかっている。

 

 じゃあどうしようかと、グレースが悩んでいるところ、背後に気配を感じた。

 

「……あなたは……!」

 

 ____32期さんと見たブルーレイで、エアロビクス修行してた人っ!

 とのセリフが喉まで出かかったが、映像中の彼の言動からして、確実に逆鱗に触れて、低い声で何かしら言われてしまうことは目に見えてるのでやめた。 声出したら消えちゃうらしいし。

 

「____すごく料理の上手な怪盗さん!」

 

 仮面に隠れているので、相手がどんな表情かはわからないが、続けてグレースは手を合わせる。

 

「ハイエニアの所に、気づかれないように行きたいの。 協力、お願いできますか?」

 

 ちらっと見上げると、『世話が焼ける……』と、顔に書いてあるかのようにダイレクトに向こうの気持ちが伝わってきた。

 が、彼は前に出ると、ベルトのバックルを取り外し、ワイヤーを射出した。

 

「ふわぁっ!」

 

 驚くグレースをふわりと抱き上げ、米俵のように肩に抱え、向こうの電波塔に取り付けたワイヤーを持って____

 

「ふわわわわわわわわわ!!」

 

 ____滑空。

 

 

「ふわぁーっ! 私、お(ヒメ)様抱っこなんて、初めて!」

 

「だいぶ違うラビ!」

 

 感動していると、ハイエニアの頭上付近で、静かに放られる。

 

「(ありがとう……!)」

 

 自由落下から、縦回転の体勢に変え、そのまま脳天へ足を振り下ろす。

 

「ふっ!」

 

『相変わらず(げい)がないっ!』

 

 直後、右足を受け止められるが____

 

「ぁっ!」

 

 Uターンして戻ってきた彼が、グレースの両腕を掴み、空中ブランコのような姿で横回転。

 勢いで敵の腕を振り切ると、余った勢いで、グレースが上に跳ね上がり、グレースと彼の位置が逆になる。

 

 彼は、そのままグレースを宙に打ち上げる。

 

 一方自身は縦方向に半回転しつつ、ルパンソードを取り出して切り込み、さらに立て直しきれていないハイエニアのお腹に(かかと)落とし。

 長い間叩き込むことで、相手のバランスを崩し墜落させ、背中からもダメージを与える。

 

 突然、彼が飛び退くと、息つく間もなく、グレースが腕を振りかぶって急降下。

 

「届いて────────っ!!!!」

 

 

 ____直後、こぶしに伝わってくる、突き抜けるような感覚。

 

() () っ た

 

 

 

 

 もうもうと立ち込める砂煙を傍目に。

 

「ありがとうございました! ……機会があれば、『ジュレ*5』に、お腹を空かせて遊びに行きますね♪」

 

 茶目っ気たっぷりにグレースは笑う____その時。

 ブワッと砂煙が晴れる。

 

「……来たっ!」

 

 ____これ以上、やらせないわよっ!!

 

 咄嗟に構えたところ、上空からフォンテーヌが突っ込んでくる。

 

『……タフな奴め』

 

 フォンテーヌは目をやや細めて強気に笑い、再び巻き起こった砂塵を、右手でサッと払う。

 社交ダンスと洒落込みましょ____左手の人差し指を唇にそっと当て、立ちポーズをキメると、タッと軽快な音をたて、飛び出す。

 

 

「ち、ちゆちゃん……?」

 

 グレースはキョトン顔 →(・∀`・;) で、そんなフォンテーヌを、棒立ちして見つめる。

 

 ____こぶしの突きあい。

 片方が突いては 片方が避け、足を出して足を引き……地上にて、小回りの効いた応酬が繰り広げられる。

 カッ、カッ……と耳障りのよいステップ音が、広場に響く。

 

『……?』

 

 ふと、ハイエニアは相手の挙動を疑問に思う。

 ……こ奴、こんな猫みたいな 小賢しい立ち回りする奴だったか?

 しかも、なんだか、妙な尻尾と耳が____

 

 ____猫?

 

 

「はぁっ!」

 

 背骨が折れるかのような重い衝撃を覚え、ハイエニアは横に飛んで、前と後ろの相手から、間合いを取る。

 

『やはりか……! 我としたことが……』

 

 眼前に毅然と立っているのは____()()()のフォンテーヌだった。

 

『遅かったわね……それじゃ、世界征服なんて考え物ニャン』

 

 軽口をたたきつつ、片方のフォンテーヌが、自身に香水を振り掛ける。

 

『ゲリラショーの お味はいかがかしら?』

 

『クレームレベルだ……!』

「とぁっ!!」

 

 悔し紛れに述べたハイエニアに、無慈悲に追撃がくる。

 

「深夜だけど、元気にトバしてくよーっ! フレッフレッ私ーっ!」

 

「「シード!」」

 

 グレースとフォンテーヌが、エール・シードに歓声を送ると、あの子が乱入してくる。

 

「元気と聞いて、ジャジャジャジャーン! 一緒に行っちゃお、種たん!」

 

「スパークル! ……おーっ!」

 

 

 ____「おー!」と叫んだまま、エール・シードは直線的に、相手の懐に入っていく。

 

「はぁっ!」

 

 斜め上に吹っ飛んだところで、スパークルが追って跳躍。 右、左と こぶしを放ち、しかし両方掴まれ、悶着した状態になる。

 

「ふっ!」

 

 悶着状態から抜け出そうと、スパークルは足を前へ鋭く突き出し、咄嗟にハイエニアは足裏で受け、作用・反作用で、互いに離れる。

 

 シュタッとそれぞれ近くの木に、ビルに、()()すると、それを蹴って飛び出す。

 

「ん”ん”っ!!」

 

『千日手をするつもりか!』

 

 気合いとともに、右ストレートを繰り出し、ハイエニアが先ほどのように捕えようとしたところ。

 

「プニシールド!」

 

 ニャトランが反射。 怯んだ隙にシールド解除で、左こぶしを打つ。

 

「ずっと おんなじこと繰り返して持久戦するの、苦手なんだよね!」

 

「ワンパターンで相手に挑むほど、オレたちはアホじゃねぇ!」

 

 

 左が直撃し、受け身を取ろうとするハイエニア。

 

「たぁっ!」

 

 そこへ、巨大なポンポンを携え仕掛けるのが、エール・シード。

 

「フレッフレッ!」

 

 背後に回り、ゼロ距離まで接近、ハイエニアと並行飛行。

 

「ハ────ト……」

 

 チャージの間に、ポンポンがどんどん膨らんでゆく。

 

 

「フォ────ッ ユ────────ッッ!!!!」

 

 

 ゼロ距離の光量に、ハイエニアは()()()()()()避ける。

 ____それがいけなかった。

 

「「 あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!」」

 

 アナザーさんが、回復したアデッソとともに追撃。

 

 アデッソは『お(ねえ)さん』直伝の重く鋭い一撃をこぶしに込め。

 アナザーさんは、ハッピーシャワーみたいなのを、これまたゼロ距離ぶっぱで。

 プリキュアって、ゼロ距離好きよね。(個人の感想(かんそう)

 

「高校生は年増(としま)じゃない! いいね!?」

 

 手首を軽くストレッチし、敵の着地点(ちゃくちてん)から目を離さないまま、アデッソは あなたにキメ台詞(?)を吐いた。

 

 

(たわ) け ! 」

 

 ハイエニアが飛び出してきて____最初から注視していたアデッソが即座に反応し、続けてシードとフォンテーヌが1フレームほど遅れて対応する。

 

 だがしかし。

 悠長に会話をしていたグレースとスパークル、そして、気づいていたもののアワアワしていたアナザーさんは出遅れてしまう。

 

「「「きゃあっ!*6」」」

 

 結果、相手を支えるバランスが崩れ、3人は吹き飛ばされ、続けて、残りの3人もやられてしまう。

 

 

 

 ________。

 

 

 突然、風景がピタリと静止画のようになる。

 その中で、ただ一人動いているのが____『(あお)の怪盗団』のひとり、士を10年以上追いかけ続けているらしい、あの人である。

 

 

 そして、ファンの方々の周知の通り、彼にとってのお宝は、何も『見えるもの』だけではない。

 

 ここまで沢山の人たちの思いが踏みにじられているのは、看過できないな____とばかりに、彼は、止まった時間の中で、敵に接近。

 

 プリキュアのソレを見ていたからかどうか知らないが、これまた距離0ミリで、シアンカラーの銃から、小さい爆発音をパンパンと数発響かせた。 無慈悲。

 

 

 

 ____時間停止、解除。

 

 解除直後のハイエニアは、絵面(だけ)がちょっと可哀想なので、あえて皆様のご想像にお任せする。 名目だけは子供向け小説だし……ウゾダドン((

 

 で。

 短い間、撃たれた場所を押さえ、顔をしかめて痛がっていたハイエニアは、すぐに満面の笑みになる。

 

『やはり(あか)い絵の具は良いなァ?』

 

 

 なんだコイツ、バケモンかよ……バケモンだったわ。(納得)

 

 ともかく、これでは取り込まれてる9歳が気の毒なのではないか、そう思ったグレースは跳躍。

 

 

「んーっ?」

 

 ニ○動とプリキュアスレを2窓している稚拙さんは、レスを見て首を傾げた。

 

 ……「なんかイッチのカメラ位置付近に飛んで来てる?」「わざわざギャラリーの近く戦場にするのか……」との困惑の声が上がっている。

 まぁ、ギャラリー付近にいるのは事実だが……稚拙さんは、飛翔中のグレースのドヤ顔を目にして、気づいた。

 

 ____何を()()()()()としているんだ……。

 

 

 

 跳んでいたグレースは、片足をまっすぐ前に出し、縦回転しながらの急降下。

 

 

ダンッッッ!!!!

 

 彼女は、その片足のかかとを、思いっきりたたきつけ____

 

 

 

 

 

781:書き込むふたつの名無し ID:N2CiohWHm

wwwwwwww

 

782:書き込むふたつの名無し ID:XEi+mkk/D

うわーっ! ヒール砕きやがった!

 

783:書き込むふたつの名無し ID:o1PnAhntB

しかも花びら舞う演出付きかよ……

 

784:書き込むふたつの名無し ID:kmG+2pyTc

俺たちは何を見せられているんだw

これもうわかんねぇな

 

785:書き込むふたつの名無し ID:NoB67sqUr

いいかお前ら……言うんじゃねぇぞ……

例えネタがわかっても……言うんじゃねぇぞ……

 

786:書き込むふたつの名無し ID:yDsVzLP7i

>>785

シン……

 

787:書き込むふたつの名無し ID:CImPkOS71

>>786

ゴジラ?

 

788:書き込むふたつの名無し ID:Ihvxs8fv6

>>786

カリオン?

 

789:書き込むふたつの名無し ID:GacK94DV2

>>787 >>788

やめとけお前らw

 

790:書き込むふたつの名無し ID:ZnQuu/xwQ

あぁ^~すごい速度でレスが消費されていくんじゃあ^~

……何スレ目?

 

791:書き込むふたつの名無し ID:nykUIlvjq

おっとグレースさん?

 

792:書き込むふたつの名無し ID:LL7yOvhoB

花びら付きで跳躍とな……

 

793:書き込むふたつの名無し ID:Eif7JkJ4x

ヒント:あの作品の1話

 

794:書き込むふたつの名無し ID:EecCtoqD7

花吹雪綺麗だな……

 

795:書き込むふたつの名無し ID:kYZlyVdph

>>790

0時待機の頃からカウントすれば7スレ目

除外すれば6

 

796:書き込むふたつの名無し ID:sFLhPwlhS

>>793

それヒントちゃう……ヒントやった

え? ヒント?

 

797:解説ニキ ID:zJGoSRAsY

お前らすまん

さっきの紫のアレで罹患したコロナがヤバい離脱する……

俺のことは気にせずに 実況頑張ってクレメンス

 

798:書き込むふたつの名無し ID:8y+iXtb/k

あぁぁぁぁぁあ

解説ニキぃぃぃぃぃ!!

 

799:書き込むふたつの名無し ID:nTXh8O0te

お大事に

死ぬなよ(迫真)

 

800:書き込むふたつの名無し ID:gkCh+HTTu

ひとり またひとりと……

だいぶ減ったよな

俺もしんどい

 

801:書き込むふたつの名無し ID:gkZJP0eZf

じゃあニキの書置き通り……

おっ! クォレハ……

 

802:書き込むふたつの名無し ID:mnjbwM9zK

ライダー(?)キックの体勢やね 間違いない

 

803:書き込むふたつの名無し ID:Dttf/pDhl

>>793は未来が視えていた……?

 

804:書き込むふたつの名無し ID:trT7wxiZ7

空気の輪っかを発生させつつぅ?

 

805:書き込むふたつの名無し ID:KDr35JsQs

イヤホン越しでも風の音が凄い

 

806:書き込むふたつの名無し ID:201p39rR5

直撃ぃ!!

 

807:書き込むふたつの名無し ID:9uUx0k0HH

シュゥゥゥゥッ!

超! エキサイティンッ!

 

808:書き込むふたつの名無し ID:dgO1u/18R

>>805

いいイヤホンを持っているじゃあないか……

 

809:書き込むふたつの名無し ID:S77lfmUOa

花びらブワァッ!

※なお地面はコンクリートの模様

 

810:書き込むふたつの名無し ID:jgXhc8xrb

あぁぁぁあ!!

これは!

これはフローラだぁぁぁぁあ!!

 

811:書き込むふたつの名無し ID:05XqyAfBs

ゴープリ1話のキックのオマージュか

いいな

 

812:書き込むふたつの名無し ID:fnsCKztH1

Go is God!

Go is God!

 

813:書き込むふたつの名無し ID:79nKP4rr/

ゴープリ祭りの場所は ここかァ……?

 

814:書き込むふたつの名無し ID:3t75lSE/v

あっ

グレースまた跳んだ

 

815:書き込むふたつの名無し ID:KLZonolWx

ヒール復活してるじゃねぇかwwwww

 

816:書き込むふたつの名無し ID:2JrNC77x+

のどかっちどこ行ってるんだ

 

817:書き込むふたつの名無し ID:dqJySt33K

>>815

見返した

マジだwww

 

818:>>1 ID:Rw8tTMM+L

>>816

なんかニ○動生配信のカメラの真ん前移動したぞ

 

819:>>816 ID:2JrNC77x+

お イッチありがとナス!

ん?

 

820:書き込むふたつの名無し ID:S0tVzieLQ

 

821:書き込むふたつの名無し ID:1H4XxU1Cy

 

822:書き込むふたつの名無し ID:GTd5fUxdQ

 

823:書き込むふたつの名無し ID:Ydq3Gt1P2

 

824:書き込むふたつの名無し ID:1BSafeNBJ

 

825:書き込むふたつの名無し ID:VYRxA+WP4

お前ら仲いいな……この2秒で……

ん?

 

826:書き込むふたつの名無し ID:wY+pS1R68

何をしようとしているんだ花寺……

 

 

 

 

 

 

 グレースは、目の前のカメラにグルッ! と顔を向ける。

 

 その時の彼女の表情を目にした者は、きっと失笑していたことだろう。

 アニメじゃ滅多にお目にかかれないような、(きわ)め切ったキメ顔をしていたのである。

 

 

 そして、彼女は絶『叫』した。

 

 「これが……」

 

 

これが私の……!

 

g u n g n i r

- ガングニール -

 

 

 

「____だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!!!」

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

ニ○ニ○動画

 

 

コメント欄

 

 

・wwwwwwwwwwwwww

 

・wwwwwww

 

・ん?

 

・wwwwwwwwwww

 

・言wいwやwがwっwたwww

 

・wwwwwwwww

 

・クッソwwwww

 

・www

 

・ごめん ガングニールって?

 

・これはニチアサ専ヲタ困惑

 

・ネタ知らんけど本人が楽しそうだからヨシ!

 

・『戦姫絶唱シンフォギア』ってアニメに出てくる単語だな

 ジャンルとしては……魔法少女でいいだろ……

 さぁ こっちの世界においで……

 

・あのアニメに勧誘するのか……いいぞもっとやれ

 

・魔法少女……魔法少女……?

 

・それに関してはプリキュアも大概だしまぁ……

 

・『魔法つかえプリキュア!』……(ボソッ)

 

・いいじゃないか 秋映画素晴らしかったし

 

・全部素晴らしいだろ! いい加減にしろ!

 

・ともかく

 グレースこっちの世界でなんかあったな?

 

・保護者はアニヲタだな間違いない

 彼とは良いビールが飲めそうだ

 

 

 

 

 

 

「「あちゃぁ……(;´∀`)」」

 

 稚拙さんは、32期さんと画面を眺めながら、つい、そうこぼしていた。

 特に、そのアニメを見せていた32期さんは、まさかの事態に驚愕しすぎてお腹いっぱい。

 

 が、気を取り直して、プリキュアたちへと、声を張り上げる。

 先ほどのプリキュアスレで、気になったことがあったのだ。

 

「みなさん! アレがあってから、もう相当数コロナに苦しんでるみたいなんです!」

 

「これ以上は、こっちも消耗しちゃうから、そろそろ……!」

 

 

 スレの方で、「今の声は?」「ダリナンダアンタイッタイ……」などの言葉が散見されたが、見なかったふりをした。

 

 

 ……一方、ハイエニアは、先ほどの『消耗』なる単語を聞いて、考えた。

 ____向こうも限界が近いのか……一気に押せば、いけるか?

 

 ……イケる。(確信)

 

 

 その結論に瞬時に至った彼女は、おもむろに立ち上がり、さっきの絵の具を____

 

 

 …………。

 

 悲鳴が聞こえ、プリキュアたちは、気づいた。

 少し離れて、控えていた怪盗団たちも気づく。 真っ先にコスモが一歩踏み出すも、考え直した。

 

 ____どう転ぶかわからない……いざという時に対応できるよう、様子見ね……。

 

 

「リンクル・アメジスト!」

「えっと……リンクル・ムーンストーン!」

 

 いの1番に、ヴァールハイト組がフォームチェンジ(ちなみにトパーズ)、魔法を使う。

 

「プニシールド!」

「私も行きます! 酷使に定評のある……リンクル・ピンクトルマリン!」

 

「「プニシールド!」」

 

 順に、ペギタン、アデッソが変身したフェリーチェ、ラビリン、ニャトラン。

 

 

 

 が、すごい勢いで、絵の具弾が飛んでくる上に、バリアでおおわれていない範囲は、やっぱり被弾する。

 特に、ピンクトルマリンさんは、実際のサイズより防御の当たり判定が広くなっているものの、元が小さめなので、やっぱりマズい。

 

 その内、絵の具とともにやってくる突風に、吹き飛ばされてしまった。

 

 

「「「きゃあ────っ!」」」

「ラビー!」

「ペェー!」

「うぉわーっ!」

 

「お兄ちゃーん!」

「種! つかまって!」

 

「わ、わ、わ、あ~~~れ~~~!?」

 

「くっ……この絵の具、まさか____は~っ!?」

 

 総員、変な絵の具だらけである。

 しかも、上述の理由でダメージが大きかったフェリーチェは変身解除……えっ?

 

 一部の読者の気持ちを、ミラクル・シードが代弁する。

 

「み……じゃなかった、はーちゃん、変身前の姿もできるの!?」

 

「そうみたい……それはともかく、マズいよ、この絵の具!」

 

 ……聞き返す前に、それぞれ、その言葉の意味を理解した。

 

 

「何これ……!」

 

「力が、抜けて……!?」

 

 

「……そうなの。 早く絵の具を取らないと、この世界が……!」

 

 言い終わる前に、花海ことはの姿も解除され、16歳の藤村みなと(正確には違うが)が現れる。

 

「浴びてる量が多いと、(こと)の外ね……時生兄妹さんはラッキーで良かったよ、ふふ」

 

「もう、すぐ 冗談言うか強がるかして! 悪いクセ抜けてないよ、みなとちゃん!」

 

「最悪、奪われた力がそのまま向こうに行ってる場合があるんですけど……まだどうかわかりませんね」

 

 

 そうこうする内に、ヒープリ組変身解除。

 

 アナザーさんは、『変身後』が普段の姿なので解除に至らないが、意識がもうろうとしていて、動けない。

 唯一の非バリア使いなので、当然っちゃ当然……これ誰よりも危ないんじゃ。

 

怪盗団は、まだ絵の具が出続けているため、下手に動けない。

 

 ヴァールハイト組は、リンクルしなおしたため、辛うじて無事だが、既に付着している絵の具に、力を奪われ続けている。

 

 マ ジ や ば 。

 

 

 

「(ピンクトル)マリンつながりで! マリィィィン・ダァァァァイブッ!!!!」

 

 

 突如、おでこを光らせながら敵に飛び込んでいった影があった。

 

『ぐっ! なんだ、離せ!』

 

「離すかぁぁ! うりゃ────!」

 

 絵の具が止まる。

 

 

「えっ、えっ、私、何もしてない、ありえない……えりかちゃん なんでいるの!?」

 

 ひとり慌てている みなとに____その影、キュアマリンは敵にしがみついたまま叫ぶ。

 

「可愛い『ふっちゃん』の教え子のピンチと聞けば、どこにでも駆け付けるに決まってるでしょーが!」

 

「いやいや、決まってないです、えりかさんっ! (うれ)しいけど!」

 

 ツッコんでから、みなとは、まてよ……と考える。

 

「あの、えりかちゃん、もしかして、勝手に私の体分身して、勝手に変身したの……?」

 

うん。(フリーダム)」

 

 16歳は、ひそかに、来海えりかという人物を畏れた。

 本人の一部分のコピーに過ぎないのに、なんてことだ……なんてことだ……。

 うかうかしてると、乗っ取られちゃうんじゃないかな……。

 

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」」

 

 続けて、高速でふたつの青い流星が飛び込んでくる。

 マリンは咄嗟に避けると、直後に、それらがハイエニアに回し蹴りをし、マリンの付近に着地をした。

 

 

「やっほー!」

 

 その内のひとりが、笑顔で手を振り、もうひとりも、優しい笑顔をたたえて解説を入れた。

 

「『トパーズ』の力で、僕たちも分身したんです もっとも、マリンみたいに勝手にやったんじゃなくて、オリジナルが手配したんだけど……

 

 駆くん! 種ちゃん! と声が上がる。

 

「おっ、ねぇねぇ駆、種! さっきのマリンダイブで絵の具がついて、絶賛 力が抜けちゃってるんだけど……なんとかなんないかなぁ?」

 

 見ると、マリンは軽い調子で話していながらも、額には汗がにじんでおり、既にしゃがみこんでいる。

 とてもじゃないが、自分に浄化技を使える体力が残っているような状況じゃない。

 

「んーっ! サファイアは水だけど……この決め技はオーバーワークだよね……」

 

「普通に水が出る魔法を使ったら、サファイアの力で浄化力が付加されてるなんてことは、ないかな……」

 

 青い駆くんの呟きに、一同は、それだ! と声を合わせる。

 

 

「「キュアップ・ラパパ! 聖流よ、みんなを清めなさい!」」

 

 魔法を使うと、光る水がどこからか流れてきて、みんなの体を包む。

 

「お”ゎぁあぁあぁあぁあぁぁあぁぁあぁっ!!??」

 

 ……その中でただひとり、渦に流され、右へ左へと振り回される少女____マリンがいた。

 こらえきれなかったのかギャラリーから笑いが起こるが、本人は必死に顔芸をキメつつ。

 

「笑うなーっ!」

 

 と大声でツッコみ、マントをまとって飛んで抜け出すと、1枚のカードに戻って、みなとの腰元のポーチに吸い込まれていった。

 

 このタイミングで、怪盗団合流。 重ダメージ者を介抱する。

 

 

 

 …………。

 

「ふわぁぁぁぁっ……」

 

 のどかが、へなへなと座り込む。

 

「うぅぅ、厄介だね、絵の具が消えても、力が戻らないんだ……」

 

 やっと意識を回復させたアナザーさんが、かすれ声で呟く。

 

「唯一、変身が解けていない、駆くんと種ちゃんのふたりも、かなりギリギリみたいだし、ピンチね……」

 

 ちゆが、そう言いながら、ギャラリーを見る。

 何だか、思っていた以上に騒がしくなっている。 しかも、彼らはプリキュアたちを見ていない。

 

 どういうこと……? と、ちゆが、そちらに目を移す。

 

「っ!? み、みんな!」

 

 ちゆの焦った声に、みんなは()()見て____絶句した。

 

 

オオオオオオオオオオオ オ オ オ ! ! ! !

 

 

 ____そこには。

 

 

 先ほどまで戦っていたはずの、ハイエニアが。

 

「まさか『最悪』を引き当てるとは……!」

 

 

 惑星サイズにまで、膨張して、屹立していた。

 

 

 「「「「……!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 ……………。

 

 

「……一般に、巨大化は退場フラグって言われるけど、コレはなかなか……(・・;)」

 

 はい……と、32期さんが、稚拙さんに相槌を打つ。

 

「絶望的、ですね……」

 

 

 漆黒の空が、奴の活動で、絵の具を無造作に吹き散らしたような毒々しい模様になる。

 

『みんなーっ、みんな、ミラクルドクターズライトを……!』

 

 いのちのエレメントさんが、呼びかけるも、混乱が起きていて、届かない。

 

 

「……やってやろうやないの」

 

 それを見て、女子高校生が、斜め上を向いて、大きく息を吸った。

 

 

「みっんな~! ちょっと、聞いて欲しいんだし~~~!」

 

 

 なんか、マスコット系のアニメ声が聞こえる! と、やや、騒ぎがおさまる。

 

「ボキュはぁ、プリキュアとアニヲタの味方・『大声の妖精』なんだし~!」

 

 そしてぇっ! と、大声の妖精さんこと、声を張り上げる大輪愛。

 

「今ぁっ、すぐぉーく、プリキュアがピンチだからぁっ! エレメントさんから、みんなにお願いがあるんだしぃ!」

 

 

 はい、どうぞっ! と、彼女は、肩で息をしながら、呆気にとられている いのちのエレメントさんに話を振る。

 

 

 

「……みんな、もう一度、ライトを使うときが来たようだね」

 

 正念場だよ、と、彼。

 

「さっき以上の、ありったけの思いを込めてっ、どうか、プリキュアに力を送ってほしい!」

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 ____あなたたちも、頼むわよ?

 

 ふと、蒼の怪盗団の3人が、()()()に近づき、目を合わせる。

 

『現実と創作。 それぞれは、決して、全くの別物ではないの』

 

 このふたつが つながりきれない、最後の砦____

 

『あるとしたら、それは……心の壁』

 

 ふたつの世界を別個に割りきって見ていると、無意識に現れるものだと、コスモは言う。

 

『だから______』

 

 

 ____パァンパァンパリィン!!

 

 突然、低音ボイスの彼が、VSチェ……ゲフンゲフン、じゅ、銃を構え、目の前の何かを破壊した。

 

 もうひとりの彼も、『アタックライド インビジブル』を応用して、『何か』を、駄目押しとばかりに、視覚的に透明化する。

 

 

 ……何かが取っ払われた、その先。

 広場の人々の心が光として、薄ピンクの暖かいウェーブを作り出しているのを、あなたは、はっきりと見た。

 

 

『ミラクルライトは、ないかもしれないけど……それでも、全力で届けてほしいニャン……!』

 

 後輩が頑張っている手前、コスモも、より一生懸命に呼びかける。

 

『さぁ____』

 

 

 あなたは、輝く桃色に吸い込まれて____

 

 

『____一緒に、行きましょ?』

 

 

 

 もうひとつの現実と、心が一緒になった。

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

「「「「頑張れーっ、プリキュアーっ!」」」」

「ヒープリ頑張れー!」

「こだまの分まで……! 頑張れぇっ!!」

 

 口々に、応援の声がうねり、響く。

 

「あっ……『声』が、増えた……?」

 

 のどかの呟きに、コスモが近づき、答える。

 

『えぇ、本来とは別ルートで手配したけどね』

 

 あのままエネルギーを通していたら、過労で力尽きちゃう人が出たはずニャン……コスモは、呆れ気味に続けた。

 

 

 

 ……のどかは、ふと、再び空を見上げる。

 

「ふわぁ、キラキラだ……」

 

 ほぅ、と感動の息をつき、視界が『思い』の奔流にのまれていくのを、夢見心地で眺めていた。

 

 

 ____ふわり。

 

 途端、浮遊感に襲われ、のどかは、抵抗無しで、ふよりふよりと漂っていく。

 

 

「のどか、ひなた……」

 

「のどかっち、ちゆちー……」

 

 隣を見れば、ちゆと、ひなた____

 

「ボクたち、どこに行くペェ……?」

 

「なんか、温泉の中っぽくて不思議な感じだな」

 

「(安心するラテ……)」

 

 ペギタン、ニャトラン、ラテ____

 

「のどか……」

 

 そして、ラビリン。

 

 

「うん____行こう……!」

 

 

 そう、のどかが力強く言った瞬間、景色か後ろへ、後ろへと、加速して行く。

 

 そして、ただっぴろい光の空間に放り出されて……。

 

 

 

「____やぁ」

 

 

「あっ、いのちのエレメントさん!」

 

 ひなたが反応すると、エレメントさんは、ふっ、と柔らかな笑い声をあげる。

 

「自分で名乗っておいて、今更なんだけど……僕は、厳密に言えば、『エレメントさん』とはちょっと違うんだ」

 

 ブルーレイで過去作を見たのならわかると思うけど____

 

「僕は、どちらかというと、『ハートキャッチプリキュア!』の『こころの花』に近い立ち位置なんだ」

 

「それってつまり、どういうことペェ?」

 

『地球を構成する要素というよりは……生き物の『生命力』、言い換えれば『命の元気度』を可視化したものってことさ』

 

 あぁ~、と、一同は納得する。

 

「ラテが感知できなかったのも、そこら辺が原因なの?」

 

 そうだね、と、エレメントさん。

 

『僕らは元々、ビョーゲンズ関係無しに、個人個人で、弱ったり元気になったりするから……そもそも僕エレメントさんじゃないし……システム外なんだろうね』

 

 

 彼は、くるっと回って、指を鳴らす。

 

『さぁ、オペを始めよう、みんな待ってる』

 

 

「うん!」

「えぇ!」

「うんっ!」

 

「ラビ!」

「ペェ!」

「おぅ!」

「ワン!」

 

 

 

 

 花の色。

 

 泉の色。

 

 光の色。

 

 

 それぞれ、カラフルな光流にくるまれて、姿を変えていった____

 

 

 

 

 

 

 

 ____ プリキュア・オペレーション

 

 

 

 

 

 

 

 

 医者のズボンっぽい、長いレッグガード。

 

 衣装に、時計の針のデザインが盛り込まれ。

 

 髪飾りには、レッドクロス____赤十字が踊り。

 

 聴診器を首にかけ。

 

 

 最後に纏うは______医者の白衣。

 

 

 

 より実際の医者に近いデザインになりつつも、さっぱりとして可愛いものになっている。

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 ____私たちは、お医者さん。

 

 

 地球の。

 

 そして、地球に生きとし生ける全ての生命の____

 

 

 

 

 だから私たちは、今の私たちを自ら、こう名付ける。

 

 

 

 

 

 

____みんなをお手当て____

 

 

 

ヒーリングっど❤プリキュア

オーリヴァーズ(All-Livers') ドクター(Doctor)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 ヒープリ組は、また光の通路を通り____

 

 

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 ____スタッ……!

 

 

「「「みんな、ありがとう!!」」」

 

 

 人々の前に、降臨した。

 

 

「おぉお……!」

 

 と、喜びと畏敬混じりのどよめきが起こり、ギャラリーは、一層、ライトを強く振る。

 

 

 

「「「ふっ!」」」

 

 天高く跳躍すると、通過するだけで周囲の空を清め、星空が現れる。

 

 

 それを見て、某・平成ライダー10周年2号ライダーの彼が、楽しそうに出てきて、小型のラジオを地面に置く。

 

 

 グレースが口を開くのと、彼がスイッチを押すのが、同時だった。

 

「ハイエニアっ!」テレーン…!

 

 

 ……グレースに申し訳なく思いつつも、ギャラリーが盛大に失笑。

 

 そう、お説教のテーマ(『パラレルワールド』)である。

 

 

 

「私はっ!」

 

 

 

 

 ____私はね、この世界に来て、そして今、みんなの心を受け取って、わかったの!

 

 

 ____命は、生きてるってことは、こんなにもあったかくて、キュンとする気持ちであふれてるんだって!

 

 

 ____ここは、『本物』の世界じゃないかもしれないけど……でも、みんなはここで! 本当に、確かに、生きてる! 変わっていっているんだよ!

 

 

 

 ____大切な誰かのために、一歩踏み出して、勇気を纏って『変身』すること!

 

 32期さんは、いつかの もえはを思い出しながら、その言葉を聞いた。

 

 

 ____過去からの囚われを振り払って、未来へと、心を通わせること!

 

 大輪愛は、ゆっくりと1回瞬きをし、グレースを見上げた。

 

 

 ____そして、変わることは怖いことじゃないっ、今までの自分も自分を支え、愛するものとともに成長し、深く、高く! よりよい自分になる!

 

 稚拙さんは、穏やかに笑って、『お説教』を聞く。

 

 

 ____それが、そういうことが、ハイエニア、あなたの心無い行為で、たくさん失われていったんだよ!

 

 

 ____ハイエニアの中のあなた……あなたは、拒絶されて、苦しくて、絶望して……自分には輝きがないって言ったんだね、それは、本当にそう?

 

 

 ____生きている時、照る太陽の下、(しず)かな月の下、闇の中 煌々と灯る電灯の下でだって……どんな時でも、人は綺麗だよ。 私はそう思う。

 

 

 ____あなたは、芸術活動をしていたんでしょ? その時のあなたの心……気持ちは、どうだったの?

 

 グレースは、深く、深く深呼吸をする。

 

 

「あなたの命は、もう消えてしまっているけど……それでも、本当はあなたの中にあったはずの『キラキラ』を思い出してほしい!」

 

 だから!!

 と、グレースは、『内側』から『外側』に視線を移した。

 

 

「その子を開放して、みんなの未来から、どいてぇぇぇぇぇぇぇえっ!!

 

 

 

 

 その叫びのタイミングで、BGMが切り替わり____

 

「みんなっ! 全力で、届けるよっ!!」

 

 ____『ヒーリングっど❤プリキュア』のOPが流れる。

 

 

 

 

 

オールハートチャージ!

 

 3人がそう唱えると。

 

 

 キュン! キュン! キュン! キュン! キュン! キュン! キュン! キュン!

 

 各所から、みんなの心がトキメく音が聞こえる。

 

 

「ラビッ!」

 

「ペェッ!」

 

「ニャッ!」

 

 

 アニマルたちはステッキを飛び出し____パートナーの横に並んだ。

 

 3人のプリキュアは、首元の聴診器を耳に装着し、構える。

 

 

 そして、3+3人のみならず、地上で見守る みなと、駆くん、種ちゃん、コスモ、アナザーさん、とにかくみんなが、声を合わせる。

 

 

「「「「届け! 命の! パワーっ!!」」」」

 

 

 

プリキュア! スーパー ヒーリング…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ____3人の聴診器から、怒涛の勢いでパステルカラーのビームが出る。

 

 

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 すぐに相手を飲み込んで終了してくれるわけもなく、向こうから押し返されて、ヒープリ組は苦悶の表情を浮かべる。

 

『見ろ 命は面白いほど儚い 命の力など束になっても所詮はその程度だ!』

 

 

「生きる力を馬鹿にするあなたには、わからないかもしれないけど……!」

 

 グレースが言い返す。

 

 

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「ことわざに『一寸の虫にも五分の魂』とあるように! どれだけ小さく見えても、その底力は、遥かに強くて、大きいし! そして儚いからこそ、いつかは命絶えてしまうからこそ、私たちは! 宇宙の歴史と比べて 一瞬ともいえるほどの時間に、天遠く飛躍できるんだよ!」

 

 

 

 グレースが、唇をキュッと結び、再び開く。

 

 

「ここで、倒れるわけにはいかないの! 私は____ううん、私たちは、もっと!」

 

 

 

 

____生きたいんだからぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!

 

 

 

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 ……………………。

 

 

 

 暗闇の中、幼い少女が泣いている。

 

 

 ____突然、シュ────ッ! と、何かが降ってくるような音がして、顔を上げると、桃色の流星が近づいてきていた。

 

 目の前で、パァンとはじけ、中から、白衣のお姉さんが現れる。

 

「どうしたの?」

 

 お姉さんは腰をかがめ、少女に優しく聞く。

 

「私は____もう、なにもかも真っ暗になって……早く、自由になって、好きなこと、色々したかったんだけど」

 

 だけど……

 

「なんか、騙されるし、脳みそいじくられるし、乗っ取られるしで、チョー最悪……さっさと抜け出したいわけ」

 

「そっかぁ……」

 

 お姉さんは、しっかり頷き____少女に手を差し伸べた。

 

「じゃあ、一緒に出よう? あなたが、もう苦しまないように」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ハッとして、少女はお姉さんを見つめる。

 

「キラキラ……してる……」

 

 思わず、そう、呟いていた。

 

「私も、次は……」

 

「うんっ」

 

 

 微笑むお姉さんの手を、少女は、そっと______

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 …………。

 

 

 

 広場上空から、暖かい光が、流星雨のごとく、降り注いでいた。

 

 

 

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 わぁーっ……と、ギャラリーから歓声があがる中、燬紫もえは は、いつの間にか流れている涙に気が付いた。

 

 力が抜けたかのように、ペタンと膝立ちになり、夜空を見上げる。

 

 ____どうして、どうしてこんなに あったかいのに、涙が出るんだろう……。

 

 そんな彼女に、ギャラリーの中から、金色のミディアムヘアの うら若い女性が近づき、ハンカチを差し出す。

 

「これ、みぃんな命の光なんやなぁ、すごいなぁ……」

 

「命の、光……」

 

「あなた、看護師さんとのやりとりから察するに、入院してはるんやろ? それで余計、こういうのには……なんとちゃう?」

 

 さらに、中学生ほどの女の子も寄ってきて言う。

 

「よぉ頑張りんさったねぇ、あの子たちが勝てたんも、あなたが一役買ったけぇよ。 お友達も もう心配ないはずじゃけぇ、ゆっくり休みんちゃいね?」

 

「! ……はいっ!」

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 …………。

 

 

「寂しく、なりますね」

 

 32期さんの言葉に、のどかは「はい……」と頷く。

 

「全て終わったから、もう、この世界は崩れてしまうのよね……」

 

「ほんと、なんか、残念だよね……」

 

 みんながしょげこんでいると、稚拙さんが励ました。

 

「……記憶からはなくなっても、記録からは、なくならないよ」

 

「えっ、どういう意味ですか?」

 

 大輪愛が聞くと、ぐるっとみんなを見回し、答える。

 

 

「ヒープリのみんなは、蝕まれた世界を確かにお手当てして、時空の均衡を保ったんだ。 個人単位では忘れちゃっていても、それは揺ぎ無く、記録されたことだからね」

 

「あなた本当に何者ラビ……」

 

 ()()()()()()説明に思わずツッコみが入るが、それでも、みんな先ほどより、安らいだ顔をしていた。

 

 

「そうですね、さっき干渉したのもあって、『本物の現実』には、何らかの形で、このことが残ると思いますよ」

 

 駆くんも同意する。

 

「そうなんだぁ、よかった________あっ!?」

 

 突然、ブワッと花びらのつむじ風が巻き起こり、一同を包み込む。

 

 

「……時間みたいね、私たちは『本物』のほうを様子見に行ってから、元の世界に帰るニャン。」

 

 このお手当てで大分減ったけど、まだ『ウイルス』自体は残ってるから、気になるのよ____コスモは言う。

 

「あっ、じゃあ、私も、『プリオルSF』の世界に……」

 

「私とお兄ちゃんも、おウチに帰ろっかな!」

 

「そうだね」

 

 みなと、種ちゃん、駆くんも、そう言うので、計6人は、灰色のオーロラカーテンをくぐって、それぞれの目的地へと、旅立っていった。

 

 

「あれっ、アナザーさんは?」

 

 32期さんが問うと、まだ残っていたアナザーさんは、微笑む。

 

「私は、ここが崩壊するまで、ちょっとお散歩して……崩れたタイミングで、いろんな世界の間を、また漂流しにいこっかな?」

 

 そして、「またね!」と元気に手を振り、どこかへと歩き去った。

 

 

 

 …………。

 

「あの、のどかちゃん……!」

 

 32期さんは、ポケットから、何か小物体を取り出す。

 

「折角だから、これを」

 

「えっ? ____ふわぁ~っ!」

 

 のどかの手のひらに乗せられたのは、ひとつのヘアピン。

 桜の花をかたどった、陶器のようにつるりと滑らかな飾りがついている。

 

「かわい~ぃ! ありがとうございますっ!」

 

 そう言うと、既につけてある髪留めをずらし、それをつけた。

 かわいい、似合ってる、と声があがる。

 

 

 ……心なしか、風が強くなったような気がする。

 

 のどかたちは、慌てて言った。

 

「私、このピン、絶対! 大切にします!」

 

「ブルーレイの中の戦術、参考にして、地球のお手当て頑張ります!」

 

「元に戻ってからも、また神戸行きたいな♪」

 

「また会えたらいいラビねっ!」

 

「お散歩楽しかったペェ!」

 

「とにかく、お互いしっかりやってこーな!」

 

「ワンッ! (ラテも、いつか……!)」

 

 

「これからも、テレビ越しで見守っていきますね!」

 

「ずっと、全身全霊をかけて、応援してるからね!」

 

「えっと、えっと……プリキュア万歳っ!」

 

 

 

 のどかは、みんなの言葉をしっかりと聞きながら、微笑む。

 

 微笑みながらも、何か熱いものを抑えきれずに、双眸から、透き通った涙をこぼした。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 ____花びらが、視界のほとんどを覆っている。

 

 もう、いよいよ最後なんだな____体が崩れていくような感覚を覚えながら、そう思った。

 

 

 少しずつ遠のいていく意識の中で、誰もが、ある希望を未来に託して。

 

 

 

 

 

 「またね____」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界は、ゆっくりと戻っていく________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

みんな 待っててくれてありがとう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ____2020年 6月28日 日曜日 AM8:30

 

 

 

 

 およそ2か月ぶりに 『ヒーリングっど❤プリキュア』 が放送再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミラ~?」

 

 

 そして、秋。

 

 大きな舞台に、桜が咲き誇る。

 

 

 

 

 

 

*1
名前は勝手につけてしまった。

*2
あと、監督の仕業で

*3
チリのアンデス山脈と太平洋の間にある砂漠

*4
『呼吸法』云々は、2話でチラッと触れます。 マジで第2部終盤までの大事な要素になるので、ご着目を。

*5
料理店の名前。 ビストロ・ジュレ。

*6
アデッソの母親は、某映画にて、相方が「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”っ!!」(ガチ)なのに対して、「きゃあっ!」とか「あぁっ!」とか、わりと可愛い声あげてたので、それに準じた。




 

 完結だぁぁぁぁぁあっ!!

 みなさん、本当に、ありがとうございましたっ!!
 細かい解説とか、あとがきとかは、また後日……?

________


 ここで、特に多大なるご協力を頂いた方々へ。
 お礼の代わりと言ってはなんですが、執筆なさっている小説のリンクをば。


 ……あっ、の前に。
 とある作品名を、無許可で書いてしまったので、おわびに。

あくいのオトモダチ
https://syosetu.org/novel/221971/

 まぁみなさんご存じかもしれませんが、神作品です。
 ぜひぜひ、読んでプリーズ! お願いします。


 ……では、URLです!


インストール@プリキュア!
https://syosetu.org/novel/108564/

ヴァールハイト・プリキュア
https://syosetu.org/novel/217036/

花を護る騎士 ブレイドナイト
https://syosetu.org/novel/70682/

ハートキャッチプリキュア!~もう一人の戦士"大樹の騎士"~
https://syosetu.org/novel/117088/

プリキュアオールスターズif
https://syosetu.org/novel/24832/





本当に、本当に! ありがとうございました!

メインで更新している『プリキュアオールスターズ ~観永遠~』のほうで、またお会いできたら嬉しいです!



 ____ 天爛 大輪愛 より ____


 


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