ポケットモンスター !&? (小鳥遊銅拍子)
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WORLD1 旅の始まり!
1.キミに決めた!


 この世界に住む不思議な生き物、ポケットモンスター...縮めて、ポケモン。

 それは海に、山に、街に、空に、果ては宇宙に。

 様々なところに生息している。

 

 中には伝説のポケモンと呼ばれ、人々から祀られて、神話が誕生しているポケモンもいる。創造神としてシンオウ神話に登場するアルセウスなどが有名だろう。

 

 さて。

 ポケモンは、野生に生息しているものがすべてではない。

 一部のトレーナーは、ポケモン同士を戦わせたりもする。ポケモントレーナーと呼ばれるものたちだ。

 さまざまなトレーナーがいるが、やはりデビューは博士からポケモンを貰うところにあるのではないだろうか。

 そう、所謂「御三家」と呼ばれるポケモンをはじめに貰い、ポケモントレーナーとしてデビューするのだ。

 

 ここにいる少年、レン。

 彼は先日、カントー地方からこのメン地方に引っ越してきたばかりである。

 そして、今日は彼の15歳の誕生日である。

 メン地方で15歳ともなると、ポケモントレーナーとしてデビューするものも少なくない。

 彼もまた、多くのトレーナーがそうであるように、トレーナーになってチャンピオンになりたいと思う者である。

 これは、彼の冒険とそのパートナーたちの物語。

 

   【!?】

 

 朝。

 メン地方、マシロタウンに響くぺリッパーの鳴き声。

 今日は俺、レンにとって大切な日だ。

 隣の1番道路にある、ワタケ博士の研究所で一匹ポケモンがもらえる予定。

 ワタケ博士は、15歳になった子供に一匹ポケモンをプレゼントしてくれる。

 俺の夢はこのメン地方のチャンピオンになること。そのためには、強いポケモンをもらわないと。

 興奮して昨日の夜はあまり眠れなかったけど。

 

 1番道路、ワタケ博士の研究所は広い。ヤマブキドーム3個分くらいあるらしい。

 博士はこの広い研究所の中で、数多くのポケモンを保護したり、新しいモンスターボールを作ったりしているらしい。

 

 「やあ、レンくん。おはよう」

 

 ワタケ博士は、おそらく二十代後半くらいの爽やかな青年だ。結構イケメン。メン地方のファンの間では、ジムリーダーのスグリさんとの二台派閥が存在しているらしい。

 

 「おはようございます」

 

「おはよう。とりあえず、15歳の誕生日おめでとう」

 

「ありがとうございます」

 

「それで…ポケモンだよね?用件は」

 

「もちろんです…!」

 

 博士は小さく笑い、「着いてきて」と言って中庭の方へ歩き出した。

 

 研究所の中庭。

 

 「それじゃあ、みんな出ておいで!」

 

 博士は机に置いてあった三つのモンスターボールを宙に投げ、三体のポケモンを出現させた。

 

 「まずは…くさのポケモン、ナエトル!」

 

「ナエー」

 

 ナエトルは近くの木のそばへ歩き、光合成を始めた。

 えーと…ナエトルはシンオウ地方のポケモンだったかな。

 

 「つぎに、ほのおのポケモン。ヒノアラシ!」

 

「ヒノー!」

 

 ヒノアラシは日光を浴びて、気持ちよさそうにしている。

 …ヒノアラシはジョウト地方のポケモンだったな。

 

 「さいごに。みずのポケモン、ケロマツ!」

 

「ケロ」

 

 ケロマツは、池に飛び込んだ。

 …ケロマツはカロス地方のポケモンだったかな。

 

 「さあ、どのポケモンにするんだい?」

 

 三匹を見つめる。

 ふと気になって、博士に尋ねる。

 

 「...どれが一番強いポケモンですか?」

 

 博士はなぜか、少し驚いたような顔をする。

 

「......レンくん、ポケモンはさ、強さももちろんだけど、それ以前に生き物なんだよね。戦わせるためだけに存在してるわけじゃないんだ」

 

 …博士の言いたいことは、何となくだけどわかる。でも…。

 

「...そうかもしれません。でも、俺はいい…強いトレーナーになりたいんです。愛玩動物としてポケモンが欲しいわけじゃない」

 

 俺がそう言うと、博士は言う。

 

「レンくん、たしかにポケモンをペットのように扱っているトレーナーが多いことも確かだ。でもね、ゴルバットがクロバットに進化する条件を知っているかい?」

 

 ゴルバット……。

 

「...たしか、充分に懐くこと...ですか?」

 

「そう。なにもクロバットだけじゃない。ポケモンが強くなるのには、トレーナーとの信頼関係が不可欠だ。協力して、限界を超える。それって、お互いに良いことじゃないかな」

 

 そう言われて、俺はもう一度ポケモンを見直す。

 …たしかに、ナエトルもヒノアラシもケロマツも可愛いな...。

 そう考えたところで、ふと俺は思い出す。

 別居中の父親は、たしかエースバーンとのタッグを組んでいた...。

 そして父親は確か、一度カントー地方で最強のチャンピオンと謳われた...。

 ...超える壁としては上々かもしれない。

 俺はニッと笑い、博士にこう告げる。

 

 「じゃあ...ヒノアラシ、キミに決めた!」




御三家のチョイス・・・世代が偶数のものを採用しました。


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2.謎の少女とキリキザン!

 「ヒノアラシか!いいセンスだね。それじゃあ、これを」

 

 博士はそう言って、モンスターボールをくれた。

 

「これをヒノアラシに見せて、ヒノアラシと対話してごらん。ヒノアラシが応えてくれたら、晴れて二人はパートナーだ」

 

 なるほどね。

 俺はヒノアラシに語る。

 

「ヒノアラシ!僕はこのメン地方で...いや、世界で一番のポケモントレーナーになる男だ。そのためのパートナーとして、一緒に来てくれないか!?」

 

「...…ヒノー!」

 

 ヒノアラシは、俺にゆっくりと近づき、何故か俺の頭に登った。

 

「...すごいね、レンくん。このヒノアラシはおくびょうな個体なんだけど、ここまで懐くなんて」

 

 博士も驚いている。

 俺も不思議だと思うけど……何よりこのヒノアラシ、可愛すぎる!

 

 「博士、ありがとうございました」

 

「これから君の伝説が始まろうとしているみたいだ。そうだな...まずはチグサタウンに行くといい。ここから北へ真っ直ぐだ。そこからナンドシティまで列車に乗って、各地のポケモンジムにチャレンジするんだ」

 

「わかりました」

 

「あ、それと、これも渡しておこう。はい、モンスターボールを5つと、ポケモン図鑑、それに、ジムチャレンジャーの証である『チャレンジャー手帳』もね。これがあれば、この地方の列車には乗り放題だよ」

「ありがとうございます。必ずチャンピオンになってみせます!」

 

「なに、気楽にいけばいいさ。ジムリーダーだって、結構適当な人がいるからね。まあとにかく、ポケモンを信じること。ポケモンがいれば、僕たちはどこにでも行けるんだ!」

 

   【!?】

 

 「えーと...まずはチグサタウンか...」

 

「ヒノー」

 

 あれからヒノアラシは俺の頭の上にいる。

 …ぶっちゃけ、重い。

 

 「なあヒノアラシ、お前体重8kgくらいあるだろ。重いよ」

 

「ヒノー」

 

「モンスターボールに入ってくれないか?」

 

「ヒノー」

 

 ヒノアラシは首を横に振った。

 ポケモンは気まぐれだ。やれやれ。

 

 突如、謎の少女の声が響いた。

 

「あーっと、そこのトレーナーさん、どいてください!」

 

「え?って、うわ!」

 

 俺はよそ見をしていて、その少女にぶつかってしまった。

 しまった。謝らないと…。

 

「す、すいません、前見てなくて...」

 

「い、いえ...それよりあれを...」

 

 少女が指を刺したその先に、狂暴そうなキリキザンの姿があった。

 わあ…キリキザンとは……たまげたなあ。

 少女は言う。

 

 「私、あのキリキザンさんに襲われちゃって...私のヒトツキさんじゃ手も足も出なくて...おねがいします、トレーナーさん!」

 

 お願いされちゃったよ。困ったよ。でも…この娘結構可愛いじゃないか。断れないし、どっちにしてもあのキリキザンさんが見逃してくれるとも思えないなあ…。

 

「お願いしますと言われても...ヒノアラシ、いけるか?」

 

「ヒノー!」

 

 どうやらヒノアラシはやる気らしい。

 …やるっきゃねえか!

 

 「よっしゃ!俺とお前のデビュー戦だ!ヒノアラシ、ひのこ!」

 

「ヒノー!」

 

 【ヒノアラシのひのこ!】

 

 「ザンッ」

 

 【キリキザンにはまったく効いていない!】

 

  やばいっ!

 

 「ザンッ!」

 

 【キリキザンのきりさく!】

 

「ヒノー!ヒ、ヒノー...」

 

 【ヒノアラシはたおれた】

 

 「ヒノアラシ!おい、しっかりしろ!」

 

 なんだよこいつ…!こんなやつが最初の相手だなんて聞いてないぞ!

 あぁ、しかもキリキザン、なんか溜め始めてるじゃないか…!あれ…「はかいこうせん」とかじゃないよな…?キリキザンはCよりAの方が高いとかいうツッコミをしてる場合じゃないし…!

 

 と、いきなり男の声が響いた。

 

 「ガバイト、インファイト」

 

 謎の少年が現れ、ガバイトを繰り出した。

 

 「バイッ!」

 

 【ガバイトのインファイト!】

 

「キザッ...」

 

 【こうかは ばつぐんだ!】

 

 【キリキザンは倒れた】

 

 なんだあのガバイト…次元が違う……。

 あっ、お礼を言わないと。

 

 「あ、ありがとう...きみ、強いな」

 

「強いな、じゃねえよ。そっちの女子はともかく、お前はトレーナーだろ!?なんで勝てねえんだよ!」

 

 なんかキレられた…。

 

 「え...?だって俺、さっきこのヒノアラシを貰ったばっかりだし...」

「ポケモンを手に入れた時点で、お前は立派なポケモントレーナーなんだよ!つまりだ、ポケモンに対する責任ってもんがあるだろうがっ!」

 

「え、えーと」

 

「これだから弱いトレーナーは嫌いなんだ」

 

 その少年はそう吐き捨てると、ガバイトをモンスターボールに戻し、駆けていった。

 えぇと…あっ、ヒノアラシを回復させないと。

 

 「あの、さっきはすいませんでした。私、アイリっていいます。草むらを歩いていたら、急にあのキリキザンさんが飛び出してきて...」

 

 ふむ。この少女はアイリというのね。

 年齢は…俺と同じくらいかな。薄茶色の髪で、ボブが可愛らしい。…ちょっと可愛いかも?

 

 「いや、こちらこそ、何もできなくて...」

 

「とにかくポケモンを回復させないと...近くにポケモンセンターはありますか?」

 

「...ポケモンセンターはないけど、博士の研究所に持っていけば...」

 

   【!?】

 

 「ごめんごめん、そのキリキザンは僕のポケモンだ。人間に虐待されていたのを保護していてね、人間に対して強い恨みをもっているんだ」

 

 ワタケ博士は俺とアイリのモンスターボールを回復装置にセットしながら言う。

 

「あの、ガバイトを使うトレーナーが助けてくれたんですけど...」

 

 俺は博士に問う。

 

「あぁ、ルドルフくんか。彼にはさっき、ナエトルをあげたところなんだ」

 

「え?彼はガバイトを持っていましたよ?」

 

「あのガバイトはね、僕が彼に貸しているんだ。メンで一番強いトレーナーになったら返してくれるんだって。でも、正真正銘自分のポケモンが欲しくなったって打診を受けてね、プレゼントすることにしたんだ。…ところで、そちらのお嬢さんは?」

 

「わ、私は...」




※ガバイトはインファイトを覚えない。
※ガバイトはインファイトを覚えない。
※ガバイトはインファイトを覚えない。


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3.メン神話としっこくのいし

 「ところで、そちらのお嬢さんは?」

 

「わ、私はアイリといいます。さっき、草むらから飛び出してきたキリキザンさんに襲われて…」

 

「あぁ、ごめんね。…もっとポケモンたちの管理をしっかりしなくちゃな…」

 

 俺はふと気になっていたことをアイリに訊く。

 

 「あのさ…なんでまた、こんな田舎町に?この町、博士の研究所くらいしかないけど…」

 

 アイリは答える。

 

 「『しっこくのいし』……って、ご存じですか?このメン地方に存在している、と言われている石なのですが」

 

 しっこくのいし…?

 と、博士がそれに乗っかる。

 

 「しっこくのいし……ひょっとして、メン神話に登場するあの石かい?…ちょっと待ってて」

 

 博士はそう言うと、研究所の奥に引っ込んだ。

 メン神話…?

 

 博士は少しして、色々な資料を持って戻ってきた。

 

 「おまたせ。これだよね?『心読ミシ者、漆黒ノ石落トス。心護リシ者、黒キ腕輪授ケル』……この、漆黒の石が、どうかしたの?」

 

 アイリが答える。

 

 「はい。私はその石を探しています。理由は…私のヒトツキさんです」

 

 アイリはそう言うと、とある本を鞄から取り出した。

 「この本によると、私のヒトツキさんは特殊な個体で、進化するのに『しっこくのいし』が必要になるみたいです」

 

 博士は驚く。

 「進化に漆黒の石が必要…!?……それは興味深いね。ちょっと調べさせてもらってもいいかな?すぐ終わるし、ポケモンには絶対に危害を加えないからさ」

 

「え、あ、いいですけど…」

 

「ありがとう!ちょっと待っててね」

 

 博士は再び、研究所の奥に引っ込んだ。

 不意にアイリが言う。

 

 「…ありがとう、ございました」

 

「え?」

 

「私、仮にもポケモントレーナーなのに…ヒトツキさんを守れなかった…こんなんじゃダメダメなんです…」

 

「…俺も、ヒノアラシを守れなかったけど…」

 

「違うんです。あー、えーと…お名前、聞いてませんでした…いいですか?」

 

「名前?レン。…それで?なにが違うの?」

 

「レンさんですね。……レンさんとヒノアラシさんは、こう…いきいきとしていたんです。二人で、心を通わせていたんです。…それが、私はポケモンさんを相手にすると、なにもできなくなってしまうんです。足がすくんでしまいます。…怖いのです。自分のポケモンさんが傷ついてしまうことと、相手のポケモンさんを傷つけてしまうことが」

 

「…なるほど」

 

 アイリは続ける。

 

 「あの…本当にわがままで自分勝手なことはわかっています。でも、お願いします。…レンさんの冒険について行ってもいいですか?私は、ヒトツキさんと二人きりだと、上手くいかないんです。さっきのことだって、レンさんやルドルフさんがいなかったらどうなっていたことか…」

 

 …えーと。

 

 「まあ別にいいんだけど…」

 

 実は、「別にいい」どころか、すごく嬉しい。かわいいし。やったぜ。

 

 「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

 「お話は終わったかな?」

 

 急に博士が戻ってきた。

 

 「わっ…びっくりしました」

 

「ごめんね。…大きなお世話だと思うけどね、アイリちゃん。ポケモンはいつでも僕たちの見方なんだ。もちろん、ポケモンを守れるトレーナーは素晴らしい。でも、それだけじゃない。レンくんについて行って、いろんな世界を見てみるといいよ」

 

「…ありがとう、ございます」

 

「レンくん、女の子は守らなきゃダメだよ?」

 

「わ、わかってますって」

 

 なんか恥ずかしい。

 博士は軽く笑ってから、アイリに言う。

 

 「ヒトツキのことなんだけど、まだデータの分析にだいぶ時間がかかりそう。うちのコンピューターが古いっていうのもあるんだけど、なんか…データが複雑で乱雑なんだ。…スマホロトムは持ってる?」

 

「はい、15歳以上の男女には無料でもらえるんですよね…」

 

「そうだね。まあメン地方も少子化が進んできたからなあ……。あっ、そうそう。それで、ヒトツキについてデータ解析が済んだら、アイリちゃんのスマホロトムにデータを送信するね。多分…数日はかかるんじゃないかなあ」

 

「わかりました」

 

「そうだ、ポケモンを返すね。幸か不幸か、キリキザンが強すぎて、目立った外傷はないみたい。衝撃で気絶しちゃっただけだと思うよ」

 

 博士はポケモンを返してくれた。

 俺はふと気になったことを訊いてみる。

 

 「博士、あのルドルフっていう人はどこに向かったんですか?」

 

「ルドルフくん?あぁ、君と同じく、ポケモンリーグに挑戦するためにジムチャレンジだよ。ここから一番近い、ナンドシティに向かったんじゃないかな。君もこの後向かうでしょ?」

 

「そうですね」

 

「アイリちゃんもついて行くんでしょ?」

 

「はい」

 

「青春だねえ…」



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4.ムックルとチャンピオン「アフェラ」!

再び1番道路。

 

 「さてと…ポケモンをゲットしたいな」

 

「なるほど」

 

「やっぱり、仲間の数は多いほどいいよな!」

 

「そうですね…。ここにはとりポケモンが多く生息してるみたいです」

 

「そうなのか……あっ」

 

 あれに見えるは。

 

「ん?どうかしました?」

 

「シーッ」

 

 ムックルだ。たしか、寒い地方に多く生息しているとりポケモンだったかな。…よし。

 

 「いくぞ、ヒノアラシ。あのムックルにたいあたり!」

 

「ヒノー」

 

 【ヒノアラシの たいあたり!】

 

 「ムクッ!?」

 

 ムックルは驚き戸惑っている。

 

 「ムックー!!」

 

 【ムックルの かぜおこし!】

 

「よけろ、ヒノアラシ!よけてもう一度たいあたり!」

 

「ヒノー!」

 

 【ヒノアラシの たいあたり!】

 

 しっかりかわしてしっかり命中!よし、いける、今だ!

 

 「いけっ、モンスターボールッ!」

 

 ………。

 

 【フゥン…フゥン…フゥン………ボワッ!】

 

 【だめだ!ポケモンがモンスターボールから出てしまった!】

 

 …やっぱり、そう簡単にはいかないか。

 

 「ムックル!俺はお前と旅がしたい!」

 

「ムクッ…」

 

「一緒に行こうぜ!楽しいことや、嬉しいことがたくさん待ってるんだ!…もう一度行くぜ!モンスターボールッ!!」

 

 【フゥン…フゥン…フゥン…………カチッ】

 

 …これって。

 ひょっとして。

 

 「……よっしゃあ!ムックル、ゲット!!!」

 

「ヒノー!」

 

 アイリが言う。

 

 「やりましたね、レンさん、ヒノアラシさん!」

 

「あぁ。ありがとう、ヒノアラシ!ありがとう、ムックル!」

 

「それじゃあ、チグサタウンに向かいましょうか。そろそろお昼ですし、お腹が空いてきました」

 

「そうだね」

 

 

 チグサタウン。

 

 「えぇと…ここから電車に乗ってナンドシティに行くのか」

 

「そうですね…あっ、この町港町なんですかね?港の方が随分賑わってますね…!」

 

「ちょっと見てみようか」

 

 

 港。

 何やら歓声が聞こえる。

 

 「皆様、お待たせいたしました!本日のゲストは……我らがメンのスーパーヒロイン、スーパーチャンピオン…アフェラ!!!」

 

 何やらこの町にチャンピオンが来ているみたいだ…!

 

 「こんにちは、チグサタウンの皆さん。メンチャンピオンのアフェラです。…この場にポケモントレーナーはいますか?もしかしたら、これからデビューする、という人もいるかもしれません。そう言う人たちに言っておきたいことがあります。それは…絶対に私は負けません!勝ちたい…そう思う人とポケモンのところに、勝利へのチケットは訪れます。それはみんな平等のものです」

 

 ふむふむ、なるほど。

 と、アフェラさんは少し笑顔になった。

 

 「…まあ何が言いたいかって言うと、みんなで楽しくポケモンバトルをしましょ、ってことです。毎年挑戦者を楽しみに待ってます。それじゃあ、ありがとうございました!」

 

 歓声が巻き起こる。

 …そりゃそうか。チャンピオンだもんな。メンのヒロインだもんな…!



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5.メンの不思議、エヴォル・ブースト!

 チグサタウンのとあるレストラン。

 

 「アイリは、アフェラさんのこと知ってた?」

 

「はい。とは言っても実際にお会いするのは初めてですが。十年前からチャンピオンの座につき、それを守り続けている本物の実力者です」

 

「アフェラさんの手持ちのポケモンは知ってる?」

 

「そうですね……エースはクチートさんで…なんと、ホウエン地方でメガ進化が発見されるより前に、『メガ進化のようなもの』を完成させていたみたいです。その名も、『エヴォル・ブースト』というそうです」

 

 メガ進化のような、エヴォル・ブースト…?

 俺は言う。

 

 「メガ進化…ってたしか、トレーナーとポケモンの絆で起こる、勝負の中だけの進化のことだっけか」

 

「そうですね。特にカロス地方やホウエン地方、アローラ地方などで見られる現象だそうです」

 

 「それで、エヴォル・ブーストっていうのは…?」

 

 聞いたことがない。

 

 「『エヴォル・ブースト』…通称、『エヴォル』は、このメン地方でのみ確認されている現象です。その実態は、先程言った通りカロス地方で発見された『メガ進化』に類似しています」

 

 …なるほど?

 

 「それで、具体的にはどんなものなの?その…エヴォルっていうのは」

 

「はい。戦闘中に一度だけ、パートナーのポケモンをエヴォル…つまり、一時的に進化させることができます」

 

「進化…それはメガ進化とはまた違う…?」

 

「えぇ。一度エヴォルしたポケモンは、試合が終わるまでその姿のままです」

 

 本当にメガ進化みたいだな…。

 

 「しかし、メガ進化とは明らかに違うところがあります。それは、ジムリーダーとチャンピオンだけが使用でき、彼らの手持ちであれば種族は問わない、ということです。つまり、ジムリーダーのパートナーであればどのポケモンでもエヴォルできるわけですね」

 

 …ちょっとややこしい話だけど…。

 

 「そのエヴォルっていうのは…たとえばだけど、エースバーンとかでもできるものなの?」

 

「はい。既に最終進化系であるポケモンでもエヴォルできます。そして、ここが重要なのですが、たとえば…ピカチュウの進化系はライチュウですよね」

 

「そうだね」

 

「ピカチュウがエヴォルしたとしましょう。この場合、このピカチュウはライチュウにはなりません」

 

 …?

 

 「…どういうこと?」

 

「…まあ、ピカチュウのエヴォルの姿はまだ確認されていませんが…。たとえばスオウシティのジムリーダー・シマザクラさんのパートナーはトリトドンさんです。このトリトドンさんは、『シーハード』という姿へとエヴォルできることがわかっています」

 

 「シーハード…」

 

「はい。トリトドンさんに限らず、ジムリーダーとチャンピオンのパートナーさんはそれぞれエヴォルできます。なので、ジムチャレンジの際はそれをお忘れなく、ということです」

 

「なるほどね…そんな強そうな人がチャンピオンなのか……!燃えてくるな…!!」

 

「応援しています」

 

 とアイリは笑い、そしてこう言う。

 

 「私は、この『エヴォル・ブースト』の謎を解明することが夢なんです…!!」

 

 目がキラキラしてる。

 

 「そっか。お互い頑張ろう!」

 

「えぇ!」

 

 

 「ふー、食った食った」

 

「美味しかったですね…!」

 

「それじゃあ、電車に乗って…」

 

 「おい、待て」

 

 ふいに後ろから声がした。

 振り返ると……。

 

 「君はたしか…ルドルフくん」

 

「あぁそうだ。ルドルフ、さんだ。先輩には敬語を使うべきだ、と習わなかったかい?」

 

 …なんなんだ。

 

 「それで、何の用です?」

 

「なに、先輩が祝福してあげようと思ってね。…雑魚狩りなんてするもんじゃないが、かわいそうなポケモンを救い出すことはできる」

 

 …言っている意味がわからない。

 

 「どういうことだ?」

 

「簡単なことだよ。弱いトレーナーに使われるポケモンを哀れんでいるだけさ」

 

 こいつ…。

 

 「そんなに言うんだったら勝負するか?負けないぞ!」

 

「勝負というか…勝負になるかな?まあいい。覚えておけ、これが本当の『ポケモンバトル』だ」

 

 【ポケモントレーナーの ルドルフが しょうぶを しかけてきた!】




 「エヴォル・ブースト」…これはこの物語の中軸です。
 ゆっくり解明します。


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6.vsルドルフ!

 【ポケモントレーナーの ルドルフが しょうぶを しかけてきた!】

 

 「はぁ。まあすぐに終わらせてやるよ。…いけ、ナエトル」

 

「ナエー」

 

 【ポケモントレーナーの ルドルフは ナエトルを くりだした!】

 

 そういえばワタケ博士も、「彼にはナエトルをあげた」って言っていたな…。

 

 「いけっ、ヒノアラシ!」

 

「ヒノー!」

 

 相性的には有利…だよな?

 

 「ヒノアラシ、ひのこだ!」

 

 【ヒノアラシの ひのこ!】

 

 「ナエトル、構わずたいあたり」

 

 【ナエトルの たいあたり!】

 

 ナエトルのたいあたりとヒノアラシのひのこがぶつかって…。

 

 「ヒノー!」

 

 っ…!ひのこを掻い潜ってたいあたりがヒットしたか…!

 ルドルフは言う。

 

 「そんな軟弱なひのこでナエトルを止められるとでも思ったのか。お笑いだな」

 

 「うるさい!ヒノアラシ!こっちもたいあたりだ!」

 

「ヒノー!」

 

 「ヒノアラシの たいあたり!」

 

 「ナエトル、かわせ」

 

 【しかしヒノアラシのこうげきは はずれた!】

 

 「ナエトル、はっぱカッター」

 

 【ナエトルの はっぱカッター!】

 

 「ヒノッ!」

 

「ヒノアラシっ!」

 

 モロにダメージを受けたか…。まずいな。

 

 「弱い」

 

 …なに?

 

 「弱すぎる」

 

 …。

 

 「ポケモンに対して失礼だと思わないのか?」

 

「………」

 

「ヒノアラシだって、弱いトレーナーの元にいるくらいなら野生で暮らしている方が幸せに決まっているだろ」

 

 「ヒノッ!!」

 

 ルドルフの発言を聞いて、ヒノアラシが叫んだ!

 

 「ヒノ!ヒノヒノ!ヒ…ヒノ!!」

 

「ヒノアラシ…?」

 

 ルドルフのナエトルが反応する。

 

 「ナエ…ナエ。ナエー…」

 

 ……?

 

 「どうしたナエトル。…まあいいや。きみ…名前は」

 

「…レン」

 

「レン、きみは、強いトレーナーにはなれない。なぜなら…ポケモンの特徴を理解していないからだ。たしかに新米トレーナーなんだろう…。でもな……うん。単純に、イライラするんだよ。努力?友情?勝利?そんなもんでポケモンバトルに勝てるか。勝てるわけがない。そんな『あまいミツ』よりあまい考えが俺は嫌いだ」

 

 えーと…。

 

 「…ふぅ…もどれ、ナエトル」

 

「えっ?」

 

「きみと勝負しても得られるものはなにもないということに今更気付いたよ。…どうせジムチャレンジも突破できないだろ。俺が倒す必要もない」

 

 ……言わせておけば…!

 

 「お前っ」

 

「ヒノー!!!」

 

 ヒノアラシ…!?

 

 「ヒノ!ヒノヒノ!!ヒ…ヒノー!!!」

 

 【ヒノアラシの ひのこ!】

 

 「あっつ!!あっつ!!」

 

 ひのこがルドルフに命中した…!

 

 「おいヒノアラシ!てめぇ!やめろ!何すんだよ!」

 

 「ヒノー!」

 

 ヒノアラシは全身に炎をまとって…。…ん?これってひょっとして…!

 

 【ヒノアラシの かえんぐるま!】

 

 「ヒノー!!!」

 

 やっぱりそうだ!かえんぐるまを覚えたのか!

 

 「あつ痛い!死ぬ!死ぬから!港の海水で火を消さないと死ぬ!!覚えとけよ!!」

 

「ナエー」

 

 叫びながら走り去っていくルドルフと、それを追いかけるナエトル。

 …えーと…とりあえずポケモンセンターに行くか。




え?文章のクオリティが下がった?
ハハ、気のせいですよ(震え)


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7.ナンドジム!vsメラン!(前編)

駅。

 

 「えぇと…この『オオスバメ号 ナンドシティ行』っていうのに乗ればいいのかな?」

 

 俺が呟くと、近くにいた駅員さんが俺に言う。

 

 「ん?お客さん、オオスバメ号に乗りたいの?それだったら急いだほうがいいよ。チャレンジャー手帳は持ってる?」

 

「あ、はい」

 

「それじゃあ2番のりばに急いで。もう少しで発車するよ!」

 

「はい!」

 

 危ない危ない。急がなきゃ。

 

 

 電車内。

 

 「なんとか乗れたね…」

 

「はい…ここからは大体1時間程でナンドシティに到着するようです」

 

「一時間、か…」

 

「ナンドシティのジムリーダーは…今年からジムリーダーに就任した、メランさんという方だそうです。女子学生さんで、使用するタイプは『フェアリー』ですね」

 

「フェアリー、ね。パートナーとかは?」

 

「えぇと…。何しろ今季からデビューしたばかりのジムリーダーなので、情報が少ないですね……。ふむ、このサイトによると、パートナーは『マホイップ』みたいです。エヴォル形態については…謎ですね」

 

 マホイップ、か…。

 アイリは言う。

 

 「どうやら、駅からすぐのところにジムがあるみたいなので、着いたら早速行ってみましょうか!」

「そうだね」

 

 

 ナンドシティ。

 

 「んー!着いたあ!」

 

「結構な都会ですね!」

 

「そうだね…あっ、あの建物がジムかな?」

 

 ということで、ジムに向かってみる。

 

 

 ナンドジム。

 

 「なんか、トレーナーズスクールみたいな感じのジムだな…」

 

「ですね…」

 

 そこへ、女性スタッフが声をかけてきた。

 

 「お二人は、ジムチャレンジ希望者の方ですか?」

 

「あぁ、はい。そうです」

 

「あっ、私は違います。見学したいんですけど…」

 

 女性スタッフが答える。

 

 「わかりました。そちらの道を進むとスタジアムの座席になるので見学はご自由にどうぞ。そちらのジムチャレンジャーは、こちらへどうぞ」

 

「あ、はい」

 

「レンさん、頑張って下さいね!応援してます!」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 アイリに礼を言い、俺はスタッフについていく。

 

 

 女性スタッフは言う。

 

 「ここは一つ目のジムになります。よろしいですね?」

 

「はい」

 

「このジムの使用タイプは『フェアリー』になります」

 

「知ってます」

 

「『エヴォル・ブースト』についてはご存知ですか?」

 

「えぇ、まぁ何となくは」

 

「結構です。まあ、エヴォルに関してはご自身の目で確かめて下さい。…バトルに参加できるポケモンは二体。どちらも倒れてしまうと、その時点で負けになり、」

 

 その時。

 

 「キミが今回のジムチャレンジャー?良い顔してるねっ!」

 

 女性が登場した。

 桃色のショートヘアで、いかにも活発そうな女子だ。多分俺と同じ10代だろうな。

 

 「メランさん、まだ説明の途中ですけど」

 

 メランさんは答える。

 

 「長い説明はいらないのっ。要は、2対2のシングルバトル。意味はわかるわよねっ?」

 

「まあ、はい」

 

「じゃ良いじゃないっ!わたし、早く勝負がしたくてねっ!時間がもったいないわっ!!早く、早くスタジアムにいらっしゃい!待ってるわよ!」

 

 そう言ってメランさんはスタジアムへと走っていった。

 スタッフは言う。

 

 「まあ、だいたいわかりましたか?それでは、準備が良ければ、スタジアムへどうぞ!」

 

 準備も何も、俺はヒノアラシとムックルしか持っていない。この二体に頑張ってもらうしかないな!

 

 俺は、スタジアムへと足を踏み出した。

 

 

 スタジアム。

 観客は、アイリを含めても数えるほどしかいない。

 スタジアムも、何だか学校の体育館みたいだ。

 

 「来たわねっ」

 

 メランさんは言う。

 

 「わたしは、まだジムリーダーになって日は浅いわっ。それでもね、ジムリーダーはチャレンジャーの壁にならなくちゃいけないのっ!……対戦、よろしく頼むわねっ!!」

 

 【ジムリーダーの メランが しょうぶを しかけてきた!】

 

 【ジムリーダーの メランは クレッフィを くりだした!】

 

 「頼むわよっ、クレッフィッ!キミもポケモンを出して!」

 

 クレッフィは確かフェアリーとはがねタイプ…。それなら。

 

 「頼んだ、ヒノアラシ!!」

 

「ヒノー!」

 

 メランさんは言う。

 

 「まあ、タイプの相性というものは無視できないわねっ。でもそんなの関係ないって思わせてあげるわっ!クレッフィ、たいあたり!」

 

「ヒノアラシ、かわしてかえんぐるま!」

 

 【クレッフィの たいあたり!】

 

 【クレッフィのこうげきは はずれた…】

 

 【ヒノアラシの かえんぐるま!】

 

 【クレッフィに こうかはばつぐんだ!】

 

 「レッフィ…」

 

「クレッフィッ!…まだ大丈夫よねっ?」

 

「レッフィ!」

 

「よしっ!おどろかす!」

 

「レフィ!」

 

 おどろかす…近寄っちゃいけないな、多分。

 

 「ヒノアラシ、ひのこだ!」

 

「ヒノー!」

 

 【クレッフィの おどろかす!】

 

 【しかしクレッフィのこうげきは 当たらなかった!】

 

 【ヒノアラシの ひのこ!】

 

 【こうかはばつぐんだ!】

 

 「レッフィ……」

 

 審判が言う。

 

 「クレッフィ、戦闘不能!ヒノアラシの、勝ちっ!」

 

 よしっ、まずは一体突破!

 

 メランさんは呟く。

 

 「ありがとうっ、クレッフィ。…あなたの分まで頑張るわねっ…!」

 

 そして俺にこう言う。

 

 「ポケモンを交代するなら今よっ。どうやらその子、キミのエースでしょ?エースを軽々しく失いたくなければ、交代するのが吉よっ」

 

 …そこまで言われたら、一応交代しておくか。

 

 「わかりました。…ヒノアラシ、一度戻ってくれ。ありがとう」

 

 そこで、メランさんは叫ぶ!

 

 「これがわたしの相棒よ!頼むわっ、マホイップッ!!!」

 

「マホー」

 

 マホイップ。事前にアイリから聞いていた情報通りだ。

 さて、俺もポケモンを出さないと。

 

 「いけっ、ムックル!」

 

「ムクッ!」

 

 「『エヴォル・ブースト』を見せてあげるわっ!!いくわよマホイップッ!エヴォルゥゥゥ・ブーストォォォ!!!」

 

 メランさんはそう叫ぶと…一度マホイップをボールに戻し…自身が付けている腕輪に引っ掛けた。そしてそのボールを「カチャッ」と捻った。

 するとボールが青い光を放ち始めた!

 

 「初めてでしょう?エヴォルをよーく堪能すると良いわよっ!!いけっ、『デコレクション』ッ!!!」

 

 そう叫び、メランさんはマホイップ…が進化したような、そう…『デコレクション』の名にふさわしい姿のポケモンを繰り出した…!!




 次回で一章はおしまいです。
 クレッフィの扱いがあんまりですね…。クレッフィファンの皆さんごめんなさい。いつか活躍させます。


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8.ナンドジム!vsメラン!(後編)

 メランさんは言う。

 

 「エヴォルしたポケモンは名前も変わる。この試合の中では、この子は『マホイップ』じゃないわ。『デコレクション』よっ!!」

 

 『デコレクション』と呼ばれたそのポケモンは…まるでデコレーションをしすぎたケーキのような姿をしている。

 

 「デコレクションッ!マジカルシャインよっ!!」

 

『マホー』

 

 あっ、進化しても鳴き声はそのままなのね。

 と、こっちも指示を出さないと。

 

 「ムックル、かぜおこしだ!」

 

「ムクッ」

 

 【デコレクションの マジカルシャイン!】

 

 「ムクッ!?」

 

 なんだあのマジカルシャイン!?とんでもない光量で…眩しすぎて…!

 ムックルもひるんでる…!

 

 「驚いたっ?デコレクションに限らず、エヴォルしたポケモンの繰り出す技には、ほぼ必ず追加効果が発生するわっ!」

 

 そういうもんなのか。

 でも、ひるんでばかりもいられない!

 

 「ムックル、頑張れ!かぜおこしだ!」

 

 「デコレクション、ホイップショットッ!!」

 

 ホイップショット…?聞いたことない技名だな…。

 と、マホイップ…じゃなくてデコレクションは、手を銃のようにして、クリームのような弾丸をムックルに放った!

 その結果…。

 

 【ムックル、戦闘不能!デコレクションの勝ちっ!】

 

 ムックルは何もできずに、ホイップショットの餌食になってしまった……。

 

 「少しはエヴォルについてわかったかしら?エヴォル時は、オリジナルのワザが使えるのっ!わたしの場合は『ホイップショット』。何もかもを撃ち抜くクリームの弾丸よっ!!」

 

 ……悔しいけど、デコレクションの強さは認めざるを得ない。

 

 「…でもまだ俺には相棒がいます!」

 

「いいわねそういうのっ!」

 

 「頼んだっ!ヒノアラシッ!!」

 

「ヒノー!」

 

 「デコレクション、たいあたりっ!」

 

『マホー』

 

 【デコレクションの たいあたり!】

 

 「ヒノッ…!」

 

 モロにたいあたりをくらっちまった…。

 …反撃しないと。

 

 「ヒノアラシ、かえんぐるまだ!」

 

「ヒノー!」

 

 【ヒノアラシの かえんぐるま!】

 

 『マホー』

 

 …ほとんど効いていない!?

 

 「マホイップはもとから、華奢な見た目に反してとても硬いポケモンよっ!それがエヴォルによって更に強化されたのっ!生半可な攻撃じゃあ、突破は不可能よっ!!デコレクション、ホイップショットッ!!!」

 

『マホー』

 

 【デコレクションの ホイップショット!】

 

 アレはまずい…!

 

 「ヒノッ…!!!」

 

「ヒノアラシー!!」

 

 ヒノアラシはホイップショットをくらい、俺の後ろまで飛ばされた…。

 俺はヒノアラシのところへ駆け寄る。

 

 「おい、ヒノアラシ、大丈夫か?!」

 

 その時。

 

 「ヒ……ノォォォー!!!!!」

 

 ヒノアラシの背中の炎が強く燃え上がった!!

 これは…そうか!

 特性「もうか」だ!

 俺はヒノアラシに言う!

 

 「ヒノアラシ、まだギリギリいけるな!」

 

「ヒノー!!!!!」

 

「よっしゃい、ヒノアラシッ!かえんぐるまっ!!」

 

「ヒノー!!!!!」

 

 【ヒノアラシの かえんぐるま!】

 

 『マホー!!』

 

 流石のデコレクションも、これは効いたみたいだ…!!

 

 「ウソッ!?何その火力…最早かえんぐるまを超えてるわそれっ!フレアドライブみたいになってるじゃないっ…!!」

 

 とんでもない火力みたいだ。

 

 「続けていくぞっ!ひのこだ!」

 

「ヒーノー!!!!!」

 

 「くらいっぱなしでたまるもんですかっ!デコレクション、ホイップショットッ!!」

 

『マホー』

 

 【ヒノアラシの ひのこ!】

 

 【デコレクションの ホイップショット!】

 

 二つの技のぶつかり合い…。さあどうなる!?

 

 「わたしのホイップショットが…ひのこに溶かされた…!?」

 

 そう、お互いにダメージはない。ということは、ひのこがホイップショットを溶かした…ってことか!

 

 「おかしいわよっ!明らかにひのこの火力じゃないわっ!かえんほうしゃみたいになってるじゃないっ!」

 

 でも、ヒノアラシも体力の限界みたいだ。

 …次で決めるべきだな。

 

 「決めるぞヒノアラシっ!かえんぐる…いや!フレアドライブッ!!!」

 

 「デコレクション!最高のホイップショットをよろしく頼むわっ!!!」

 

 【ヒノアラシの フレアドライブ!】

 

 【デコレクションの ホイップショット!】

 

 ……。

 

 『マホー……』

 

「デコレクション、戦闘不能!ヒノアラシの、勝ちっ!よって勝者、チャレンジャー・レン!!」

 

 …え?

 マジで?

 ……。

 

 「いよっしゃあああ!!ありがとう、ヒノアラシ!ムックル!」

 俺はヒノアラシを抱きしめる。ちょっと熱いけど、関係ない!

 メランさんは、デコレクションに、バンドから出ている青い光を浴びせると…デコレクションはマホイップへと姿を戻した。

 

 「…本当にありがとうね、クレッフィと、デコレクション…いや、マホイップ」

 

「メランさん、対戦ありがとうございました!」

 

「こちらこそ。楽しい試合を、本当にどうもありがとう。…それじゃあ、バッヂをあげるわねっ」

 

 そう言ってメランさんは、ポケットから丸いバッヂを取り出した。

 

 「『スイートバッヂ』。チャレンジャー手帳にはめるところがあるわっ。…キミたちの旅が、楽しく、愉快で、幸せなものになるように。わたしはここで祈っているわねっ!」

 

 『スイートバッヂ』、ゲット!!

 

 

 スタジアムを出ると、アイリが駆け寄ってきた。

 

 「あの、レンさん!すごくかっこよかったです!私…感動しました!」

 

「あ、ありがとう」

 

 …なんか照れくさいな。

 

 「なに照れてんのよっ」

 

 メランさんにツッコまれて恥ずかしい。

 

 「メランさんもカッコ良かったです。あの…頑張ってください!」

 

「それはこっちのセリフよっ。わたしはこんなんだけど、他のジムリーダーたちはこんなもんじゃないわっ。ポケモンを信じて、二人とも突き進みなさいっ!」

 

 「ありがとうございます!」

 

 メランさんは言う。

 

 「次のジムは…アケシティのアソリちゃんだったかしら。彼女、だいぶ変わった人だけど、頑張んなさいっ!」

 

「はいっ!」




 一章おしまいです。
 ひとまず、ここまで読んでくださりありがとうございます。
 まだまだ続きますので、よければ読んでいただけると嬉しいです!

 Twitterやってます。大したことは呟いてませんが。https://twitter.com/yTAC_29


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???

番外編。読まなくても特に、ストーリーに影響はありません。


 ベルが鳴った。

 ガチャン。

 

 「よー、元気してたか?」

 

「……」

 

「相変わらず無口だな。まあいいや。…んで?何よ、用ってのは」

 

「…とぼけるな」

 

「…なんのことだ」

 

「とぼけるな、と言っている」

 

「…はぁ。あのさ、おじさん一応元警察官だよ?そりゃ、違法っぽいことを見つけたら関わらないわけにはいかないよ」

 

「約束したはずだ。『あれ』はビジネス。互いに、もう干渉しない、と」

 

「…だとしても、犯罪を見逃すのは違うと思わないか?」

 

「意味のない法律、憲法。そんなものを守って何がしたい?」

 

「一応さ、理由があって決まりってのはできてるんだよ」

 

「あんたもこのビジネスに関わった以上、下手に動くことは愚かだと思わないか?」

 

「…まさか『悪の組織』様に利用されるとは思ってなくてな。とは言っても信じないか?まあいいや。ともかく、犯罪はやめておけ。というか俺が止める」

 

「法律などは我々には関係ないことだ。とにかく、今後余計な干渉は避けていただきたい。もし今回のようなことが続くのであれば、こちらとしても考えがある」

 

 ガチャン。

 

 「実力を買われて国際警察。カプに指示された通り島キングとやらをやって、今度はマイセオに認められてジムリーダー。はぁ、やんなっちまうね……。まぁ、エヴォルシステムは面白いとは思うが、いつまでこの平穏が続くか…。民衆に隠し通すことはできても、ボロス団の奴らはその内行動に移すよな…。マイセオコンビがキレたら、メン地方は終わるな、確実に」

 

 コンコン。

 

 「こんにちは、クチナシさん。…一人ですか?」

 

「アオイか。あぁ、そうだけど?」

 

「一つ相談したいことがあります」

 

「わざわざご苦労なこったね。で?相談ってのは?」

 

「はい。……先日、シャレガキの森周辺にて非公式な『エヴォル・ブースト』の存在が確認されました」

 

 やっぱりか。

 

「そうか」

 

「もし、エヴォルシステムの流出が起こったのであれば、これは非常事態です。クチナシさん、何か情報はありませんか?」

 

「…マイセオコンビの身に何かが起こった、ってことだろ、つまり」

 

「その可能性がかなり高いですね」

 

「……仮に、『中央深部』に異常が起きているとすれば、シド湾なんかに来ている暇は無いんじゃないか?」

 

「…クチナシさん、何か知ってますね?」

 

「……鋭いね。エスパータイプのジムリーダーになったらどう?」

 

「誤魔化さないでください」

 

「『中央深部』。そこの管理を怠れば、メンは崩壊する。エヴォルシステムは、マイセオコンビの協力で成り立っているものだ」

 

「なにを今更…」

 

「これだけは言っておくよ。……『悪の組織』様は、活動を開始しているよ」

 

「貴方、何者なんですか…?」




伏線を沢山練り込みました。
ここまで露骨なのはしばらく書きません。


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一章あとがき

 こんにちは、作者の小鳥遊銅拍子です。

 

 まず初めに、ここまで読んでくださりありがとうございます。

 

 ここでは、物語の魅力を知ってもらうために僕の方から少しばかり解説を。とばしていただいても何の問題もありません。

 

 

☆レン

 

 本作の主人公。

 

 平凡な少年です。歳は15。

 

 相棒はヒノアラシ。

 

 ジムバッヂを8個集めて、ポケモンリーグを目指します。

 

 名前の由来は、「蓮」。

 

☆アイリ

 

 本作のヒロイン。

 

 優しく、不思議な過去を持つ少女。

 

 パートナーは特別なヒトツキ。

 

 アイリの目標はチャンピオンになることではなく、『エヴォル・ブースト』の謎を解明しつつ強いトレーナーになることです。なので、ジムチャレンジには参加しません。

 

名前の由来は、「愛」と「理」です。

 

☆ルドルフ

 

 本作のメインライバル。

 

 「強さ」を絶対のものとして突き進む少年。

 

 相棒はガバイト。

 

 既に「かませ」感が凄いですが……えーと、なんとかします。

 

 名前の由来は、「シールド」→「ルド」→「ルドルフ」みたいな感じです。雑だな…。

 

☆メラン

 

 メン地方、一人目のジムリーダー。

 

 使用タイプは「フェアリー」で、パートナーはマホイップ。

 

 ナンドシティの専門学校で物理学を学ぶ、現役女子学生です。実はかなり頭が良い。

 

 最初のジムリーダーでなかったら、もう少しクレッフィも活躍できたかな…。

 

 名前の由来は、「メランポジューム」。

 

☆ヒノアラシ

 

 レンの相棒。

 

 本作では、オリジナルのポケモンへ「変化」するかもしれません。

 

☆ヒトツキ

 

 アイリのパートナー。

 

 ギルガルドへの参加には、メン神話に登場するとされる「しっこくのいし」が必要だ、とされていますが、果たして…?

 

☆ガバイト

 

 ルドルフの相棒。

 

 序盤にしてはぶっ壊れのバランスブレイカーです。

 

 終盤、どういった形でレンと戦うのでしょうか。

 

☆マホイップ、及びデコレクション

 

 メランの切り札です。

 

 専用技は、「ホイップショット」。フェアリータイプの特殊技です。

 

 「メランの」マホイップの専用技です。

 

☆アフェラ

 

 メン地方の女性チャンピオン。

 

 メン地方内では最強で、かつては伝説ポケモンをも従えたという噂があります。

 

 パートナーはクチート。もちろんエヴォルします。

 

 名前の由来は、「アフェランドラ」。

 

 

 さて。

 

 二章の予告ですが、章タイトルは「アイリの過去…?」です。

 

 うんまあ…細かくはいいません。タイトル通りです。

 

 投稿が遅れるかもしれませんが、気長に待っていただけると嬉しいです!

 

 それでは、二章でまたお会いしましょう!!



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