オーヴ地方のジムリーダー (雪見柚餅子)
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1話

この作品は作者が気が向いたときのみ更新されます。
場合によっては未完に終わる可能性も有るのでご注意ください。


 この世界にはポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれる不思議な生物が存在する。ポケモンは数多くの種類が存在しており、様々な能力を有している。

 そして人の中にはこのポケモンと強い絆で結ばれ、共に生活を行う者たちが居た。ある者は家族として、ある者は友人として、ある者は相棒として、ポケモンと共に生き共に闘う。彼らはこう呼ばれる。『ポケモントレーナー』と……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木々が鬱蒼と生い茂る森の中。そこに居たのは白衣を身に纏った若い女性。こんな森の中に似つかわしくない風貌の女性の視線の先にあるのは、一匹のポケモン。のんびりとお昼寝している様子のそのポケモンをじっと見つめながら、女性は手に持ったノートにペンで何かを書き込む。

 

「まさかスボミーがこんなところにいるとはね……本来はもっと北にいるはずだけど、生息域を延ばしているのかな?」

 

 集中した様子で独り言を呟く。周りに聞こえるのは、彼女の声と葉が風に揺れて擦れる音だけ。ずっとこの時間が続くかのような空気が流れる。

 しかしほどなくして、その空気が破られる。カバンに閉まっていたとある電子機器が着信を告げる音を鳴らし始めたのだ。

 急に発生した大きな音に眠っていたスボミーも思わず起き上がる。そして近くにいた女性とその背後に佇む紫色のポケモンを見ると、怯えたかのように一心不乱に森の奥へと逃げ出してしまった。

 

「あ、逃げちゃった……」

 

 出来ることならもう少し観察を続けたかったが、逃げられたものは仕方ない。必要な写真などのデータは集まっている。

 女性は一度ノートをカバンにしまうと、音を鳴らし続ける機械-スマホロトムを手に取り電話に出る。

 

「はい、もしもし………はい……え、今日でしたっけ?」

 

 それは彼女の同僚からの電話。これから会議だというのに、一体どこにいるのかという言葉だった。

 

「はい、すみません。急いで行きます」

 

 慌てて電話を切る女性の後ろで、紫色のポケモンがクスクスと笑い声を上げる。それを横目に見ながら、彼女は懐から暗い緑色のモンスターボールを取り出すと、そのポケモンに向ける。

 

「一旦戻って、ムウマージ」

 

 スイッチを押すことで放たれる赤い光がムウマージを捉えると、その姿がボールに吸い込まれていく。次に彼女は別のボールを取り出してスイッチを押す。そこから出てきたのは、巨大なバルーンのような姿をしたポケモン。

 

「フワライド、ザオウシティまでお願い」

 

 その指示に頷いたフワライドは、触手のような腕で彼女を掴むと、ゆっくりと木々を超えて浮上していった。

 

 

 

 彼女の名はタキ。ポケモン研究者の一人であり、自然溢れるオーヴ地方におけるトレーナーたちのトップと称されるジムリーダーの一人でもある。




【キャラ紹介】
タキ
●女性/20代前半/ヨウザンシティジムリーダー
●「ミッドナイトリサーチャー」
●ヨウザンシティのジムリーダーでゴーストタイプのエキスパート。ポケモン研究者でもある。
●一人称は「私」。
●服装はフード付きの白衣。ショートカット。黒髪。三白眼。
●気になったことはとことん追求する反面、マイペースなところも有り、ジムリーダーの会議に遅刻することもしばしば。
●研究者になった理由は、初めて貰ったポケモン図鑑(トレーナーが貰うような機械ではなく、本としての図鑑)に書いてあったゴーストタイプの説明が、噂や都市伝説のようなものばかりで、生態が詳しく乗っていなかったことに対してキレたため。
●トレーナーとしての実力はかなり高い。戦術は、幅広いポケモンの知識と状態異常や状態変化によって相手の動きを封じ、じわじわと追いつめるというもの。


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2話

 かつてオーヴ地方にはジムはおろかポケモンリーグも存在しなかった。そのためポケモントレーナーの最高峰であるチャンピオンを目指す者は、他の地方へと渡らなくてはならなかった。しかし、全てのトレーナーにそれが出来るわけでは無い。大半のトレーナーはその夢を見ながら、他の地方へと渡るための資金を集めるか、あるいは夢のまま終わらせるかの2択しか無かった。

 そのような現状に不満が出ることは自然だったのだろう。しかしポケモンリーグ創設のためにはリーグ本部の承認が求められ、設置を主導するもの自身が高い実力を持ってなければならない。不満は持っていても、それを行うだけの能力、立場を持つ者は限られている。それ故にオーヴ地方にポケモンリーグが出来ることはないと考えられていた。

 だが5年前、この地方にとあるポケモン研究者が訪れたことで事態は一変する。元々この自然溢れる場所に生息する多種多様なポケモンを研究するべくカントー地方から訪れたその研究者は、その過程で関わった人々と共に生活する中で、一つの違和感に気付いた。多くの地方では、街を歩くだけでもトレーナー同士でポケモンバトルを行う姿が有ったが、ここではその数が少ないと感じたのだ。ポケモンバトルを行っているのは、比較的若い子供だけ。大人達が率先してバトルを行うこと自体がほとんどない。そのことを住民に問うと、帰ってきたのは

 

『バトルしたところで、それを見せる場が無い』

『わざわざ他の街へ行くのもちょっと……』

『強くなったところで、何の意味が有るんだ?』

 

といった答えだった。ポケモンリーグが無いことで、一部の夢を見続けている者以外は、ポケモンバトルをすること自体に興味を失うという事態となっていたのだ。このことを知った研究者は、このままではオーヴ地方全体の衰退に繋がるのでは無いかと考えた。

 そこで研究者は、この事実をリーグ本部へと伝え、自らポケモンリーグの招致を行うことを決めた。無論、ポケモンリーグはそう簡単に設置できるものではない。様々な困難が降りかかり、設置を認めてもらうまでに1年も掛かってしまった。

 だが最大の問題はその後だ。ポケモンリーグには誰もが挑戦できるというわけでは無い。挑戦者にも一定の実力が求められ、それを推し量るための存在であるジムリーダー若しくはそれに準ずる役割が必要となる。基本的には一つの地方につき8つのジムが求められるが、オーヴ地方は他の地方と比べ広い面積が有る。そのため、8つのジムを各地に分散させると、全てを巡ることが難しい。かといって特定の地域に集中させれば、それ以外の地域から不満が出る。このことを踏まえ議論を重ねた結果、以下の事が決定された。

 

1:ジムはポケモンのタイプに合わせ、全体で18ヶ所設置する。

2:挑戦者は任意のジムに挑戦し、ジムバッジを8種類集めた者がポケモンリーグへの挑戦権を有する。

3:全てのジムの中から最も高い実力を持つ四名を四天王として設定し、ポケモンリーグに関わる業務を遂行する。また四天王に選出されたジムリーダーは、代理のジムリーダーを選任し、ジムリーダーとしての業務を委任する。

 

 そして各ジムを任せるべきジムリーダーを決める必要が出てきた。それも一度に18人もだ。実力、知識、人格。それぞれがボーダーラインを満たす各タイプのエキスパート見つけなくてはならない。そのためオーヴ地方全体でジムリーダーのオーディションが行われることとなった。当初の予想では難航すると考えられていたが、実際に開催してみると、多くの人がオーディションに参加した。それは人々が心の奥底でポケモンリーグの設置を、満足できるポケモンバトルが行えることを強く望んでいたことを表していた。

 だが問題が無かったわけでは無い。ジムリーダーはそれぞれのタイプのエキスパートが求められる。だが参加した人々が望むポケモンのタイプには大きな偏りがあった。それもそのはずだ。日ごろから慣れ親しんでるポケモンを手持ちとしているトレーナーの絶対数は多いが、逆にあまり触れあうことのないポケモンは捕獲どころか見たことある者すら少ない。そのため「くさタイプ」や「ひこうタイプ」のジムリーダーを志望した者は多いが、「ほのおタイプ」や「ドラゴンタイプ」などを志望する者は少ない。何よりも絶望的だったのは「ゴーストタイプ」だ。ゴーストタイプはその性質から一般の人からは恐れられることも多い。好んで使う者はごく少数だ。それゆえにゴーストタイプのジムリーダーを志望する者は少なく、その僅かな志望者もジムリーダーとして認められるほどの実力が無いと判断され不合格になっていった。

 このままではポケモンリーグを開くことすら困難かもしれない。最悪、一部のジムリーダーを空席にすることも止む無し。そのような考えが実行委員の中から上がり始めたとき、二人の少女がジムリーダー試験の申込に来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、やっと全員集まったようだし、会議を始めようか」

 

 予定の時間から約10分遅れで始まった会議。そこにはオーヴ地方のジムリーダー、総勢18人と現リーグチャンピオンである一人の男が席に着いていた。

 

「それで今日の議題は何だってんだ? いつも通り周りのことでも話せば良いのか?」

 

 青いバンダナを頭に巻いた荒っぽい口調の男―『オールス』が、司会を務めている老年の男性に質問する。

 

「その前に、一体どうして遅刻したのか聞きたいんですけどね」

 

 そんなオールスに対し、テーブルを挟んで向かい側に座っていた男性―『ハルユキ』が逆に質問する。

 

「いや、ちょっとジムで特訓しててな……思わず熱が入っちまって」

 

 どこか言いづらそうに話す彼の態度に溜息を吐く。そして席に着いている全員に視線を回し、改めて口を開く。

 

「他にも遅刻した人がいますが、私たちはこのオーヴ地方の最初のジムリーダーなんです。その自覚が薄れているんではないですか?」

 

 その言葉に数名のジムリーダーが視線を逸らした。その中にはタキもいる。

 ハルユキの言葉により場が静まり返るが、そんな中一人の老年の男性が笑い声を上げた。

 

「はっはっはっ! 別に良いじゃないか。少しぐらい余裕が無いと息が詰まるぞ?」

「っ、ユコウさん……」

 

 彼の名はユコウ。この会議の司会を務めており、同時にジムリーダー最強の座を関する男でもある。

 

「ハルユキ君。ジムリーダーとしての責任感は大事だ。だがそれに縛られていては、いずれその重圧で潰れてしまうぞ?」

「……そうですね、すみません」

「まあ、だからといって遅刻するのはいかんがな」

 

 高らかに笑いながらこの場を収める。長い人生で培われた器の大きさは、並みの人間では真似できない。だからこそ彼はオーヴ地方のジムリーダーの頂点に立ち、同時にこの場にいる全ての者から慕われているのだ。

 そしてユコウは腕を組み、全員に目配せする。

 

「では、話を戻そう。まずはそれぞれのジム及びリーグの運営状況について……」

 

 会議はいつも通りの流れで進む。ジムの挑戦者の人数や実力、付近の治安、野生のポケモンの動向など各自発表をしていく。

 そして特に問題も無く、普段通りに会議が終わるはずだったが、今回はさらにもう一つ議題が有った。

 

「では最後に皆に聞いてもらいたい話が有る」

 

 腕を組みながら、にやりと笑みを浮かべる。

 

「つい先日、リーグ委員会から発表されたんだが、来月カロス地方との親善試合としてジムリーダー同士のポケモンバトルが行われることになった」

 

 それはこの場に居る全てのジムリーダーの興味を引かれる。

 

「さて参加したいという者は手を挙げてくれ」

 

 その言葉に、タキは真っ先に手を挙げたのだった。




【キャラ紹介】
ハルユキ
●男性/30代前半/カタクラシティジムリーダー
●「唸る雷鳴」
●カタクラシティのジムリーダー。専門はでんきタイプ
●元警察官であり真面目な性格。責任感も強いが、逆に力を抜くというのが苦手。
●一人称は「僕」。
●高いスピードとエレキフィールドを活かした戦術を得意とする。
●名前の由来はユキノシタ科の植物「ハルユキノシタ」。



オールス
●男性/30代後半/リアスシティジムリーダー
●「バトルパイレーツ」
●リアスシティのジムリーダーを務める男性。みずタイプを専門とする。
●頭にバンダナを巻き、まるで海賊のような出で立ちをしている。言葉も荒っぽいが、優しい性格。
●一人称は「オレ」。
●名前の由来はフトモモ科の植物「オールスパイス」。



ユコウ
●男性/60代後半/バンジョウシティジムリーダー
●「ジムリーダーを統べる覇者」
●バンジョウシティのジムリーダーであり、全ジムリーダーの中でもトップの実力を持つ男。扱うのはドラゴンタイプ。
●豪快かつ明るい性格で細かいことはあまり気にしない。
●一人称は「ワシ」。
●ドラゴンタイプが持つ強大な力を十二分に発揮させることが可能。
●名前の由来はミカン科の植物「ユコウ」。


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3話

予定されているオリジナルメガシンカポケモンは設定上17種類です。
しかし、それらを全て出すのに時間が掛かりそうなので、今回から一部のポケモンを後書きに記すことにしました。


「早まらないでくださいっ!!」

 

 その日は快晴だった。

 ジムの近くに建てられた、真っ白な外壁を持つ研究所。その一室でタキは数名の研究員に取り押さえられていた。

 

「ちょっと離してっ! これは大事な実験だから!」

「貴女は何を言ってるんですかっ!?」

 

 とあるポケモンに手を延ばそうとするタキを、研究員達は必死に止めようとする。

 

「サマヨールの体の中を覗き込もうなんて、正気じゃないですよっ!?」

 

 てまねきポケモンの別名を持つサマヨール。全身を包帯で包まれているが中身は空っぽで、それを見たものは吸い込まれて戻ってくることは無いと言われている。しかしタキはそれが本当かどうか確かめるべく、自らサマヨールの包帯を外し、覗こうとしたのが事の発端である。

 

「こういうのは実際に試さないと分からないものだからっ!!」

「だからといってもし本当に吸い込まれたらどうするつもりなんですか!」

「それはその時でしょっ!!」

 

 あまりの剣幕に、サマヨール自身も心なしか緊張しているように見える。

 このままでは止まりそうに無い。若い女性とは思えないほどの力でサマヨールに近寄る。じりじりとその手がサマヨールへ触れようとした。

 

 だがその時、

 

「タキさん、アカマツ博士から電話です」

「え、ってうわっ」

 

 電話を持って部屋に入ってきた職員の姿を見て、タキは落ち着きを取り戻す。その瞬間に力が弱まり、押さえていた職員と共に思わず体制を崩し、背中から床に倒れてしまった。

 

「痛た……、アカマツ博士から?」

 

 背中を左手で摩りながら立ち上がると、この惨状にも慣れている職員から手渡された電話に出る。

 

「もしもし、タキです」

「おお、久しぶりだな。元気だったか?」

 

 アカマツ博士はこのオーヴ地方にポケモンリーグを誘致し、タキにとっては同じ研究者として尊敬の対象でもある人物である。普段は自然溢れる田舎に研究所を設け、野生のポケモンの調査などを行っている。

 

「はい。それで何の用ですか?」

 

 そのアカマツ博士がタキに連絡するとするなら、ある程度用件は絞られる。一つはポケモンリーグの業務について。そしてもう一つは……、

 

「実は君に見てもらいたい物があってな。こちらの研究所に来てもらえんか?」

「良いですけど、見てもらいたい物って何ですか?」

「ははっ、それは来てからのお楽しみだ」

 

 では明日よろしくな、とだけ伝えるとそのまま電話が切られてしまった。

 

「……明日って、いきなりすぎるでしょ」

 

 タキの研究所と博士のいる町まではそれなりの距離が有る。空を飛べるポケモンを使っても、数時間は掛かるだろう。

 今から準備しないといけないということを理解し、大きく溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーヴ地方の中央部から少し離れた町。あまり住民は多くは無いが、それ故に時間がゆっくりと進むような雰囲気が感じられるこの町の一角にある建物に、3人の少年少女が集まっていた。

 

「なあ、まだかなあ?」

「おい、まだ5分も経ってないぞ。少しは落ち着けよ」

「でもさ、やっと私たちもポケモンが貰えるんだよ? どんな子がいるんだろう……」

 

 彼らはこの町で生まれ育った幼馴染である。今年彼らは12歳の誕生日を迎え、ポケモントレーナーとして旅立つ許可が出たのだ。その最初の一歩として、初めてのポケモンを貰うべく、このアカマツポケモン研究所に集まっていた。

 そわそわとした様子で全員が期待に胸を膨らませていると、研究所の扉が開き、中から白髪交じりの髪を持つ男性が姿を見せる。

 

「おっと、もう集まっていたか」

「アカマツ博士!」

「ふふっ。もう待ちきれないという表情だな。それじゃあ早速だが中に入ってくれ」

 

 そう言って彼らを研究所の中へと誘う。

 中には様々な機材が所狭しと置かれている。その全てに好奇心が刺激され、博士の後に付いて行きながらあちらこちらへと視線が動く。そんな彼らを微笑ましく思いながら、博士は奥に設置されたテーブルへと向かう。その上にあるのはシンプルな形状の3つのモンスターボール。

 

「博士、あれって!」

「そうだ。今日君たちにプレゼントするポケモン達だ」

 

 その言葉に思わず歓喜の声を上げる。何せ初めてのポケモンだ。感動も一入だろう。これからの冒険でどのような絆を紡いでいくのか、博士も楽しみである。

 

「それじゃあ、順番に紹介しよう。まずはこの子だ」

 

 ボールの一つを手に取ってスイッチを入れると、中から出てきたのは緑色の小さなポケモン。頭についた植物の葉が特徴的である。

 

「チコッ」

「うわー、可愛いっ!!」

「ははは。お気に召して何よりだ。この子ははっぱポケモンのチコリータだ」

 

 少女が手を差し伸べると、チコリータは人懐っこそうに体を擦り付ける。

 

「ねえ、私この子がいい!!」

「おい、それはずるいだろっ」

「まだ2匹いるんだぞ。決めるのは全部見てからでも良いだろ」

 

 ポケモンと触れ合うことはこれが初めてではない。しかし最初の自分だけのポケモンということもあり興奮しているようだ。

 

「では次はこいつだ」

 

 博士はその光景に笑みを浮かべながらさらにもう1匹のポケモンを出す。それは細長い顔に黒い背中が特徴のポケモンだ。この見た目だけでは、タイプすら分からない。

 

「ひねずみポケモンのヒノアラシ。タイプはほのおだ」

 

 眠っているのかどうかも分かりづらい目をしているが、ヒノアラシは少年達をじっと見つめる。

 

「なあ、本当にほのおタイプなのか?」

 

 一人が疑問を浮かべながら指で不用意につつく。それを何度も繰り返していると、我慢の限界に達したのか、背中から炎を吹き出す。

 

「ヒノーッ!!」

「うわっ!?」

 

 突然のことに驚いている暇もなく、ヒノアラシは全身に力を込める。そして口から強力な炎を吐き出そうとした…………、

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

 吐き出そうとしたのだろうが、出てくるのは小さな火種程度にしかならない火の玉。口から少しだけ出てはすぐに消える。

 

「これって……」

「まだレベルが低いからなあ。まともに使えるのは『たいあたり』と『にらみつける』くらいだ」

「えーっ!?」

 

 その事実に悲鳴が出る。確かにポケモンはレベルが上がることによってより強くなるが、今はまだ2つの技しか使えないということに項垂れる。

 

「まあ、どう育てるかもトレーナーの力量だ。それが出来ないのならいつまで経ってもチャンピオンはおろかジムリーダーにも認めてもらえんぞ?」

「うっ、確かに……」

 

 ポケモンの力はトレーナーの実力によって変動する。良いトレーナーが扱うポケモンは、時にレベルやタイプの相性を超えた実力を見せることも有る。逆に悪いトレーナーが扱うポケモンはいつまでも勝つことは出来ず、時にはトレーナーの指示を無視したり、愛想をつかして逃げてしまうことすら有り得るのだ。

 

「……よし、絶対に強くならないと」

 

 自分のためにも、ポケモンのためにも、改めて強くなる覚悟を決める。

 

「では最後の1匹だ」

 

 博士は残ったボールを開く。そこから姿を見せたのは、水色の体に大きな口と鋭い牙を持つポケモン。

 

「みずタイプのおおあごポケモン、ワニノコだ」

「これは、中々強そうだな」

「ワニッ?」

 

 出てきたワニノコは少年達に視線を向けるが、何を思ったかその爪で引っ掻こうとする。

 

「うわっ!?」

「危ないっ!」

 

 距離が有ったため躱すことは出来たが、その荒っぽさに驚く。

 

「こいつはちょっと血の気が強くてな。研究所の備品も少し壊されたことが有る……」

 

 博士の表情は少し気疲れしていた。

 少年達もその姿に少し臆するが、ただ一人そのワニノコに対し興味を持つ少年が居た。

 

「よし、オレはこいつにする」

「え、いやちょっと待てよ」

 

 突然の宣言にもう一人の少年が止めようとする。しかし

 

「俺は絶対にチャンピオンになるんだ。それならこれくらい闘争心が強いポケモンの方が良い」

 

 ワニノコもその強い意志を感じたのか、じっと少年を見つめる。

 

「ふむ、ワニノコも気に入ったようだな」

「よし、それならこいつはオレのポケモンってことで良いよな」

 

 もう一人の少年も文句が無いわけでは無いが、しかしワニノコの姿を見ると自分が強引に扱うというのも間違っていることは感じる。

 

「……よし、それなら俺はヒノアラシを選ぶ。こいつが全力で戦えるように育てるんだっ!」

 

 先程の炎を上手く吐けない姿に対して思うところがあったのか、彼はヒノアラシを選ぶ。

 

「それじゃあ、私はこの子だね。よろしくチコリータ!」

 

 そして必然的に少女のパートナーはチコリータとなる。奇しくも彼女の最初の希望通りとなった。

 

「なあ、折角だしバトルしないか?」

「良いぞ。こいつの実力を見せてやる!」

「まだパートナーになったばかりでしょ」

 

 早速バトルをしようとする少年達。そんな中、研究所の扉が開いた。

 

「失礼します。アカマツ博士は居ますか?」

 

 入ってきたのは白衣を身に纏った女性。少年達より頭一つ分背が高い。

 

「おお、タキ。待っていたぞ」

 

 いきなり入ってきた女性に、少年達は小声で話し出す。

 

(なあ、あの人誰だ?)

(さあ? 見たことないけど)

(多分、研究者だろうが……)

 

 3人がタキのことを知らないのも無理は無い。彼女のジムはここから離れた距離にある事や、彼女自身があまりメディアに映らないため、ジムリーダーの中でも知名度は低い方であるためだ。

 

「それで見てもらいたい物って何ですか?」

「ふふふっ、きっと驚くぞ!」

 

 アカマツ博士はそう言うと、近くに置いていた箱を手に取る。そしてその箱を開くと、中から出てきたのは丸い形をした3つの結晶体。

 

「これは……」

 

 その名はメガストーン。一部のポケモンにメガシンカと呼ばれる現象を引き起こす物質だ。現在も何故メガシンカが発生するのか、メガシンカが可能なポケモンと不可能なポケモンの違いは何なのか研究が進んでいる。

 

「つい先日、私の友人が見つけたものでな。既存のものとは全く異なる新種であることが分かった。君にはこれがどのポケモンと適合するのか調べてもらいたい」

 

 本来ならアカマツ博士自身が調べたい物ではあるが、元々多忙の身であり、来週には他の地方へ行かなくてはならない。そこで信頼できる研究者でもあるタキに託すこととしたのだ。

 

「君も忙しいだろうが、頼まれてくれるか?」

 

 タキは一瞬考えるが、すぐに頷く。元々メガシンカも彼女にとって解明すべき現象の一つである。

 

「期待に応えられるようにします」

「そうか、感謝する!」

 

 そしてタキは研究所から出ようとすると、自身を見つめる少年達に気付く。

 

「ああ、彼らは今日トレーナーになったばかりの子なんだ」

「へえ……」

 

 トレーナーになったということは、いずれ自分に挑みに来るかもしれない。

 

「もしかしたら、未来のチャンピオンになるかもしれんぞ?」

「……それは面白いですね」

 

 彼らがどこまで進むのか、少しだけ気になりながら彼女は研究所を後にする。

 

 後にこの3人の少年達が8つのバッジを集め、ポケモンリーグへと挑むことになるのはまだ先の話である。




【キャラ紹介】
アカマツ博士
●男性/50代前半/ポケモン研究者
●オーヴ地方でポケモンの研究を行っている人物。新人トレーナーに初めてのポケモンを渡す役割も担っている。
●一人称は「私」。



【メガシンカ紹介】
エテボース
●ノーマル ●いたずらごころ
●種族値:75(0)-145(+45)-91(+25)-60(0)-91(+25)-120(5)-582(+100)
●特性がいたずらごころとなり、種族値上はエルフーンより速い。そのため他のいたずらごころ持ちに対して上から「ちょうはつ」を撃つことが可能。無論あくタイプには無効だが。
●こうげきも145とメガミミロップを超えている。
●見た目のイメージとしては、尻尾がさらに二つ増え、その内半分が足替わりとなって体を支えており、残りが腕替わり。本体は浮いている状態。


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4話

いきなりですが、カロス地方編です。


 カロス地方。主に3つの地区に分かれ、それぞれ固有のポケモンが存在する。長い歴史を持ち、独自の文化を持っているが、最大の特徴は『メガシンカ』だろう。

 メガシンカは主にカロス地方とホウエン地方の2つで発生している現象である。今でこそ時代の流れによって交易が盛んとなり、他の地方でもメガシンカを扱うトレーナーは増加している。しかし何故これまでメガシンカが距離的に遠く離れている2つの地方でのみ扱われていたのかは、未だに謎に包まれている。

 

 そんなカロス地方にある道路。そこにタキの姿は有った。

 

「あれがヌメラ……」

 

 視線の先にいるポケモンを観察しながら、誰に言うわけでも無く呟く。

 何故彼女がここにいるのか、それは朝の出来事から話は始まる。

 

 

 

 

 

 彼女は2日後に控えたカロス・オーヴ交流大会というイベントで行われるジムリーダー交流戦に参加するべく、他の2人のジムリーダーと共にカロス地方のミアレシティを訪れていた。数日前から続いていた入念な打ち合わせもやっと終え、本番まで休みを得たのだが、その顔は曇っていた。その理由はただ一つ。本来はこの地方でポケモンを研究しているプラターヌ博士に会おうと思っていたのだが、当の博士が今回の大会の準備に忙しく、予定が合わなかったのだ。折角、この間アカマツ博士から渡されたメガストーンについても相談しようと思っていたのだが、それが出来ないということで、予定がすっかり空いてしまった。

 

「よし、それなら……」

 

 それならオーヴ地方にはいないポケモンでも見つけよう。そう考えてホテルから出ようとした時、

 

「おい待て」

「ぐえっ」

 

 首元を掴まれガマガルのような声が出る。首を抑えながら振り向くと、そこにいたのは同じオーヴ地方のジムリーダーであるヨルガが居た。

 

「お前、何を勝手に出ていこうとしてんだ?」

 

 そう言って顔を近づける。目つきが悪いことも有って威圧感が強いが、タキは一切怯むことが無い。

 

「別に、ただポケモンの観察に行くだけだけど……」

「俺様はハルユキから頼まれてるんだよ。お前を一人にするなってな」

 

 その言葉に目を逸らす。いつも研究や観察で会議に遅刻したり約束をすっぽかす手前、そのようなことを言われても仕方ないが、まさか監視付きとは……。

 

「分かるか? 今回はこっちの人たちも楽しみにしてるイベントなんだ。それを失敗させないためにも、俺様達には重い責任を持たなくちゃならねんだよ」

 

 タキは真面目な表情を見せる彼の顔をじっと見つめると、一言

 

「ねえ、わざわざキャラ作らずに素でしゃべれば」

「……」

 

 その言葉にヨルガは思わず耳が赤くなる。このどこか粗暴な話し方は、彼がジムリーダーになってからのキャラ付けである。本人曰く「あくタイプ使いなんだからこっちの方が良いだろ」とのことだが、元々の気質はどちらかというと真面目な方であり、会議などでは30分前に集合することは当たり前、地元でもごみ拾いのボランティアに積極的に参加するなど、どこから見ても良い人である。

 

「……いや、話を変えるんじゃねえよ。とにかく、お前が何か勝手なことするのは困るんだよ。せめて目が届く範囲内に居ろ」

「私は子供じゃないんですが」

「聞き分けのある子どもの方がよっぽど良かったよ!」

 

 今は時間の余裕が有るが、何かのトラブルで呼ばれるかも分からない。その時、連絡が取れないなんてことになったら困るのだ。

 ただでさえマイペースな彼女のことだ。調査の名目でどこに行くか分かったものではない。

 

「ねえ、それなら一緒にクノエシティに行きませんか?」

「?」

 

 そこにもう一人姿を現す。

 

「マキノ、起きてたんだ」

「ええ、おはよう」

 

 お淑やかな雰囲気を持つ彼女の名はマキノ。2人と同じオーヴ地方のジムリーダーである。

 

「近くにクノエシティっていう街が有るんですけど、その街のジムリーダーが有数のデザイナーなんです。色んな服をデザインしてるから一度見てみたくて」

「ふーん……」

 

 タキは生返事を返す。彼女にとって服にはそこまでこだわりは無く、基本的に安くてシンプルな服装しか着ない。ジムリーダーとしての衣装も、「あまり派手じゃないもので」の一言だけ伝え、後はデザイナーに全て放り投げたほどだ。

 マキノもそこまで服装にお金は使わないが、それはそれとしてジムリーダーが作った服に興味が有るのだろう。折角カロスに来たのだからと観光目的で行きたいらしい。

 タキもスマホロトムを取り出して、何かを調べだす。

 

「……近くに固有のポケモンもいるみたい。それなら私は街の近くで調査することにする」

「じゃあ、俺はこいつに付いて行くから、11時になったら一旦クノエシティのポケモンセンターに集合で良いか?」

「分かりました。それじゃあ途中まで一緒に行きましょう」

 

 今日の予定を決め、3人は共にホテルを出た。

 

 

 

 

 

 そしてタキはこの地域でしか見れないポケモンの観察と捕獲を行っていた。

 

「よし、ゲット。これで一通り揃ったかな」

 

 ヌメラを捕らえたボールを持ちながら満足げな笑みを浮かべる。

 ここに来てから捕まえたのは、ヌメラとカブルモ、チョボマキの3種類。これらはいずれもオーヴ地方には生息していないため、タキの好奇心は強く刺激される。この3種類のポケモンはそれぞれ進化の方法が特殊であるとも聞いているため、その瞬間も見てみたい。

 

「おい、そろそろ時間だぞ」

 

 にやけ顔を隠し切れないタキにヨルガが声を掛ける。

 

「え、もうそんな時間?」

「ああ。さっさとポケモンセンターに行くぞ」

「出来ればもう1匹ヌメラを捕まえたかったんだけど、まあ良いよ」

 

 仕方なくといった様子で了承する。

 

「何でもう1匹捕まえたいんだよ?」

「いやさ、ユコウさんにプレゼントしようかなって」

 

 オーヴ地方には居ないドラゴンタイプだ。お土産としては十分だろう。

 

「まあ、それなら昼食を食べてからで良いだろ。今のところ特に呼び出しも無いしな」

「まあ、そうだね」

 

 そんな他愛の無い話をしながら、2人はそろってクノエシティへと入る。

 だがその時、

 

「誰か、そいつを捕まえてっ!!」

 

 突如として響き渡る女性の叫び声。何事かと2人が振り向くと、黒い影が脇を走り去っていく。

 

「あれは確か……」

「一体何が有ったんだっ!?」

 

 見覚えがあるポケモンの後ろ姿にタキが気を取られている間に、ヨルガが女性に近寄り、事情を聞く。

 

「突然、あのグラエナが私の荷物を奪っていったのっ!!」

「何だと!」

 

 野生のポケモンが人を襲うことは決して珍しいことではないが、まさか街に入り込んでまでそのような行動をするとは……。

 

「あのグラエナ、最近有名になった奴じゃないか?」

「ああ。ここ数日、人の物を奪ってやがる泥棒だ」

「今まで街中に入り込むことなんて無かったのに……」

「こういう時、マーシュさんが居てくれたら……」

 

 さらに近くにいた住民達が集まり、口々に話し出す。

 

「なあタキ、野生のポケモンがいきなりこんなことをしだすものなのか?」

 

 ヨルガの疑問に対し、首を横に振って答える。通常、ポケモンにはそれぞれ縄張りが有り、それを侵さない限り人間に攻撃するということは無い。だからこそ野生のポケモンと戦う意思のないトレーナーは草むらや洞窟を避けるのだ。

 だが、今回はグラエナの方から人間が大勢いるところに侵入している。これは通常有り得ない。

 

「2人とも、どうしたんですか?」

 

 騒ぎを聞きつけたのか、マキノも姿を見せる。ヨルガが彼女に事情を説明している間、タキは考え込んでいた。

 

(そもそもグラエナは普通群れで暮らすポケモンのはず。それが1頭だけで街中に現れるなんて……もしかしたら……)

 

「とりあえず、あいつを追うぞ! さすがにあれを見過ごすわけにはいかねえ!」

 

 異なる地方とはいえ、自分達はジムリーダー。ポケモンによる事件への対処も仕事の内だ。そんな意気込みからヨルガはグラエナを追うことを決める。そんな彼に2人も同意する。

 

「そうだね」

「それなら私は上空から追います」

 

 マキノは3つのボールを取り出して投げる。そこから繰り出されたのは3種類の鳥ポケモン。ヨルノズク、ウォーグル、ネイティオだ。

 

「皆、お願いね」

 

 大切な仲間に声を掛け、マキノはウォーグルの背に乗る。ウォーグルは元々自動車を掴んで飛ぶことが可能なほどの力を持っている。女性一人を乗せて空を飛ぶことなど造作もない。

 

「フワライド、貴方もお願い」

 

 タキも同様にポケモンを繰り出す。まるで気球のような姿をしたフワライドも、見た目以上にスピードはあるポケモンだ。

 

「それじゃあ、行くぞ!」

 

 ヨルガの掛け声と同時に3人はそれぞれ動く。だがその間にもタキは思考し続けていた。

 

(グラエナが単独行動する理由……。幾つか思いつくけど恐らく……)

 

 予想が当たっていれば、急がなければならない。

 まっすぐ前を見つめながら、タキは走り出した。




【キャラ紹介】
ヨルガ
●男性/20代前半/イナワシティジムリーダー
●「ブラックワイルド」
●イナワシティのジムリーダーであり、あくタイプを専門とする。
●ラフな格好を好んでおり、誰にでもぶっきらぼうな態度を取るなど不良っぽい雰囲気が特徴。ただしこれはキャラ付けであり、本人曰く「あくタイプ使いらしくした」ものである。実際は真面目で優しく、趣味はボランティアなど、とことん良い人である。
●一人称は「俺様」。
●名前の由来はヒルガオ科の植物「ヨルガオ」。



マキノ
●女性/20代後半/ケイジョウシティジムリーダー
●「大空に夢見る淑女」
●お淑やかな性格のケイジョウシティジムリーダー。ひこうタイプを操る。
●メガネを掛けており、誰にでも敬語で接する。
●幼いころに足を怪我しており、今も走ると痛む。普通に歩く分には問題ない。
●一人称は「私」。
●名前の由来はムラサキ科の植物「ミヤマムラサキ」の学名から。



【メガシンカ紹介】
マンタイン
●みず・ひこう ●かそく
●種族値:85(0)-40(0)-80(10)-135(55)-150(10)-95(25)-585(100)
●特攻と素早さが大きく上昇しており、特に特攻はメガカメックスと同数値となっている。また特防もドヒドイデを超え、伝説・幻を除いたみずタイプの中ではトップの数値となっている。
●攻撃の値は据え置き。また特防は高くても、4倍弱点のでんき技を食らえば、普通に飛ぶ。
●特性はかそくに変化し、特殊アタッカーとしての運用が可能に。
●見た目のイメージは、ヒレが鋭角になり、ステルス機のような形状に変化した感じ。


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5話

「待ちやがれっ!」

 

 ヨルガの叫びが響く。

 あれから30分。森へと逃げ込んだグラエナを3人は追い続けていた。地上からはタキとヨルガが、空からはマキノが走るグラエナを捉え続けている。

 

「グル……」

 

 グラエナは走りながらも、時折後ろを確認する。それはまるで付いて来いとでも言うように。

 その態度からタキの考えは確信に近づいていく。

 

『これは……』

 

 スマホロトムを使って連絡を取っていたマキノの声が上擦る。

 

「おい、どうしたんだ?」

『多分、そろそろそちらからも見えるはずです……』

「何?」

 

 ヨルガはその言葉に訝しむ。だがすぐに彼も目を疑う光景に絶句する。

 

「おい……まじかよ……」

 

 辿り着いたのは、木々が開けた空間。その中央には焦げた巨木が根元から折れ倒れていた。

 

「多分、落雷によるものだろうね……でもこれほどの大木が折れるとは……」

「……っておい、それよりグラエナはっ!?」

 

 あまりの光景に目を奪われていたものの、すぐにヨルガは周囲を見渡しその姿を追う。

 幸い、グラエナは離れておらず、ちょうど折れた木の根元でこちらをじっと見つめている。そして咥えていた荷物を地面に落とす。

 

「やっと観念したってことか?」

「いや、多分違うよ」

 

 よく見ると、倒れた木の陰にもう2頭のグラエナの姿が有る。警戒を崩さない態度を取り続けているが、タキ達を襲うことはせず、荷物を盗んだ個体とアイコンタクトを交わしている。

 

「やっぱり、予想が当たったかもしれない」

「おい、どういうことだよ」

「2人とも、何かありました?」

 

 マキノが空からポケモンを引き連れて降りて来たところを確認して、説明を始める。

 

「あのグラエナは物を盗みたかったんじゃない。人を呼ぶ為に荷物を盗んだんだよ」

「は? そりゃ何のために?」

「分からない。ただ、実際に感じた方が早いと思う」

 

 そう言ってタキは腰につけていたボールを取り出し、自身の相棒を解き放つ。

 

「マージィ?」

「ムウマージ。彼らのイメージを見せて」

 

 ボールから姿を見せたムウマージはその指示に頷くと、瞳を閉じて集中する。すると、タキ達の頭に直接何かのイメージが映る。それはグラエナの記憶だった。

 

 

 

 とある大雨の日。グラエナの群れは巨木の近くにある洞穴に潜り、雨を凌いでいた。この地域は雨が降りやすく、それゆえこのような強い雨の日には洞窟で止むのを待つのが群れの習慣のようになっていた。

 だが、その日は違った。何かが叫ぶような声。何事かと1頭のグラエナが洞窟から顔を出すと、黒い雲の中に大きな鳥のような影が見えた。

 

『――――――――――ッ!!!!!!』

 

 その瞬間、目の前にあった巨木に大きな雷が落ちる。その一撃は一瞬にして木の幹を裂き、内部を走った電流によって燃え始める。そしてそのダメージに巨木は耐えることが出来ず、根本からメリメリと倒れ始めた。

 不運だったのは、それがグラエナ達が潜んでいた洞窟に向かって倒れたということだろう。

 入り口で見ていた個体が、中に居た仲間へ叫ぶ。それを聞いた仲間が一斉に出口へと走るが、それよりも木が倒れる方が早かった。そのあまりにも大きな衝撃は、洞窟の壁を崩し、多くの仲間をそのまま生き埋めにしてしまった。何とか逃れることが出来たのは警戒の叫びを上げた個体をはじめとする3頭のみ。それ以外は皆、洞窟の中へと取り残されてしまったのだ。

 

「グルッ!!」

 

 グラエナ達はすぐさま洞窟が有った方向に視線を向ける。そこには僅かながら小さな穴が有る。その穴を掘り起こして助けられないかと試してみるものの、地面は異様に硬く、いくら試してもその穴は大きくならない。

 

「クゥーン……」

 

 中にいる仲間が小さな声を挙げる。穴から僅かな食糧は送れるかもしれないが、ずっとそれを続けていくわけにもいかない。このままでは仲間の命が危ない。そう考えたとき、1頭のグラエナがある案を思いつく。もしかしたら、自分が危険に晒されるかもしれない。しかし、仲間の助けるためであれば、躊躇は無かった。

 そしてグラエナは近くにある人間が多く存在する場所、クノエシティへと向かったのだ。

 

 

 

「なるほど……取り残された仲間を助けるために、わざと荷物を盗んで人を呼んだってこと……」

「いやおい、今の何だよ?」

 

 頭に流れ込んだビジョンにヨルガとマキノの2人は狼狽える。

 

「今のはムウマージが持つ能力を利用したものだよ」

 

 ゴーストタイプのポケモンの中には、幻覚を見せることが出来るものがいる。これについてタキが調べたところ、ポケモンは特殊なエネルギーを発し、直接人やポケモンの脳へ干渉することによって幻覚を見せるという能力が有ったことが確認された。この能力を発見したタキは、それをテレパシーのように思考を他者に伝達することに使えるのではないかと考え、ムウマージと共に特訓した。その成果として、ムウマージを中継点として、特定の人やポケモンが持つ記憶やイメージを、別の対象へと送信するという技術の開発に成功したのだ。

 

「とりあえず、やることは決まったね」

 

 タキはゆっくりとグラエナ達に視線を向ける。

 

「貴方達の仲間を助ければ、もう泥棒はしないね?」

 

 その質問に荷物を盗んでいた個体がゆっくりと頷く。それを確認して、タキは洞窟が有ったと思われる場所へと近づく。その行為に木の陰に居た2頭が小さな唸り声を上げるが、タキの質問に答えた個体が一鳴きすると警戒を解く。

 

「……私たちも行きましょう」

「ああ」

 

 ヨルガとマキノもタキに付いて行く。そしてグラエナのイメージから伝えれられた場所へ行くと、そこには小さな穴が有り、中から微かな声が聞こえる。

 

「……もしかしたら中に居る子は衰弱してるかもしれない。ちょっとポケモンセンターに連絡してもらえる?」

「あ、はい。分かりました」

 

 マキノは手に持っていたスマホロトムで電話を掛ける。

 

「ゲンガー、オーロット、出てきて」

 

 さらにタキはもう2つのボールを取り出して、手持ちを呼び出す。

 

「ゲンガーはこの穴から向こう側に行ってくれる? もし崩れそうになったら、サイコキネシスで押さえてほしい。オーロットはやどりぎのタネで補強して」

「ゲンガッ!」

「オーロッ!」

 

 2匹はその指示に敬礼で返す。そしてゲンガーは僅か十数センチほどの穴からするすると液体のように入り込んでいった。

 

「後はこの土砂をどかすだけだね……」

「それなら俺に任せろ。頼んだぞお前ら!」

 

 そう言ってヨルガがボールを投げる。出てきたのは3匹のポケモン。全身に刃を付けた人型のキリキザン、四足歩行の漆黒の体が特徴のブラッキー、赤い甲殻と怪力を持つシザリガーだ。

 

「出来る限り慎重に退かさないとな」

「あ、ポケモンセンターと連絡が取れました。ただ、森の中なので来るのに時間が掛かるそうですので、案内としてヨルノズクを向かわせてます」

「分かった。それじゃあ、急ぐよ」

 

 タキの言葉で3人とポケモン達が動き出す。

 タキ達トレーナーと強いパワーを持つヨルガのポケモン達が主体となって少しずつ土砂を崩していき、マキノのポケモンとムウマージ、フワライドが土砂を遠くへと運ぶ。崩れそうなときにはゲンガーとオーロットがそれぞれ食い止める。グラエナも協力して作業に取り掛かった。

 そんな作業をおよそ20分ほど続けると、徐々に穴が大きくなり、洞窟の中に光が差し込んでいく。

 

「中の様子はどうだ?」

「ちょっと暗いけど、なんとか……」

 

 タキが覗き込むと、そこには倒れたグラエナと心配そうな表情を浮かべるポチエナの姿が有る。巨木が倒れたとき逃げられなかった原因の一つに、このポチエナを心配して留まったものが居たのかもしれない。だが、それは今考えることではない。

 

「マキノ! そっちネイティオってねがいごと覚えてる?」

「え、はい!」

「このグラエナ達を少しでも回復してあげて」

「分かりました。ネイティオお願いします」

 

 マキノが指示を出すと、ネイティオは全身から淡い光を発し、それがゆっくりと空へ昇っていく。ねがいごとによる回復には若干の時間が掛かる。それ間にもタキ達は作業を黙々と続けていった。

 

 

 

 

 

「お待たせしました! 救助対象のポケモンは……っ!」

 

 さらにそれから10分後。ヨルノズクに連れられて来たポケモンセンターの職員達。その目には掘り起こされた洞窟と、倒れているグラエナ達。そして彼らを介抱するタキ達の姿が有った。

 

「あ、こっちのグラエナ達をお願いします!」

 

 心配そうにグラエナに寄り添うポチエナを撫でながら、マキノは優しく微笑みかける。

 

「大丈夫。すぐに良くなりますからね」

 

 ポケモンセンターの職員によってその場で手当てされていく。衰弱が激しい個体は一時的に捕獲され、しばらくセンター内で預けられるだろう。

 

「今回は通報及び野生ポケモンの救助にご協力いただきありがとうございます!」

 

 一通り手当てを終えると、職員の一人がタキ達にお礼の言葉を述べる。

 

「いえ、別にお礼を言われるようなことはしてませんよ」

「そうだな。ただ放っておけないから手を出しただけだし」

「……と言うか、お腹減ったし食事に行かない?」

 

 照れくさそうに答えるマキノとヨルガを尻目に、マイペースに空腹を告げるタキ。その言葉に思わず2人も笑みを浮かべ応じる。

 

「そうだな。昼食もまだだったし、これからどこかで食いに行くか」

「それじゃあ、何を食べに行きましょう?」

「別にどこでも……軽く食べられるのが良いかな」

 

 そんなことを言い合いながらも、ちらりと森に残るグラエナの群れを見ると、彼らは静かにこちらを見つめる。その顔にはどことなく感謝しているかのような雰囲気を感じる。

 

「そういえば、盗まれた荷物も返してあげないと」

「それなら、ポケモンセンターの方で回収して、後日持ち主に返却するそうですよ」

「大丈夫か? 今日盗まれたやつはともかく……」

 

 グラエナが盗んだ荷物はほとんどが泥で汚れてしまっている。盗まれた人には災難だったとしか言いようがない。

 

「それじゃあ行こうぜ」

「うん」

「はい」

 

 後のことはポケモンセンターの職員に任せ、3人はミアレシティに戻ることとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、一体どうしたん?」

「あ、ジムリーダー! 実は―――」

「へえ。そんなことが……その3人、中々良いトレーナーみたいやね。一度会ってみたいわあ」




京言葉苦手です。正直知らないので、ほぼ雰囲気でしか書いてません。
間違ってたら指摘ください。

【メガシンカ紹介】
ラフレシア
●くさ・どく ●グラスメイカ―
●種族値:75(0)-80(0)-110(25)-145(35)-115(25)-65(15)-590(100)
●とくこうが大きく上昇し、メガジュカインと同数値に変化。また耐久面も上昇している。
●素早さも上昇しているが早いわけでは無い。
●特性はグラスメイカ―となった。これはラフレシアが寄生植物→周囲の草木から養分を吸い取るというイメージから。
●見た目のイメージは「スマトラオオコンニャク」


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6話

 ミアレシティ中心部にあるスタジアム。普段はスポーツなどで賑わっている場所だが、今日はいつにもまして人が集まっていた。道には屋台も並び、まるでお祭りの様相を見せている。

 

『さあ、予選を勝ち抜くトレーナーは一体誰になるのか! どの試合も目が離せない熱戦となっています!』

 

 スピーカーから響く熱い司会の声。その言葉通り、スタジアム内では若いトレーナーたちがポケモンバトルを繰り広げていた。

 カロス・オーヴ交流大会。カロス地方とオーヴ地方の若いトレーナーを対象とした大会である。別の地方同士の交流ともあり、ポケモンリーグ本部も協力しているこの大会は予想以上の観客が集まり、熱狂に包まれている。

 だが、この場に集まった観客の目的は、ただ大会を見に来ただけではない。エキシビジョンマッチとして行われる、オーヴ地方とカロス地方のジムリーダー同士のバトル。その貴重なバトルを全ての観客が待ち望んでいた。

 そしてその主役でもあるオーヴ地方のジムリーダーたちの控室。そこでは場に似つかわしくない怒号が響いた。

 

「あいつ、この期に及んでどこ行きやがったっ!?」

 

 ヨルガが叫んでいる原因は単純。タキが再び姿を晦ましたのだ。

 飲み物を買ってくると言って部屋を出てから、かれこれ一時間。電話も繋がらず、どこにいるのか見当もつかない。

 恐らく、気になったポケモンでも居て、それに目を奪われているのだろうが……。

 

「もうそろそろ出番だぞ……」

「確か、試合の順番は私、ヨルガ君、タキちゃんの順番でしたよね?」

「ああ……仕方ねえ。そっちが試合している間に俺があいつを探しに行く」

 

 試合の準備もある以上、出来るだけ早く捕まえないといけない。ヨルガの言葉にマキノはゆっくりと頷く。

 

「分かりました。もし見つけられなかったら、試合後に私が行きますね」

「ああ、頼んだ」

 

 その言葉と共にヨルガは控室を出ていく。

 予定通りならマキノの試合までもう10分も無い。緊張で唾を飲むが、やるべきことはもう分かっている。

 

「頑張りましょうね」

 

 その言葉に応えたかのように、手に握ったモンスターボールが少しだけ揺れた。

 

 

 

 

 

『さあ、予選も終了したところで、皆さまお待ちかねのイベントです!! これから始まるのはなんと、カロスとオーヴ、各地方のジムリーダー同士によるエキシビジョンマッチ!! 手に汗を握る素晴らしい勝負が行われることでしょう!!』

 

 会場全体に響き渡る司会者の声に気を取られる。

 

「もうそんな時間……」

 

 スタジアム内のとある部屋で呟くタキの足元には、目に涙を浮かべるハネッコが居た。どうやらトレーナーからはぐれてしまったらしく、道の端で泣いていたところを見つけて保護をした。ムウマージに協力してもらって意思疎通を行い、落ち着かせた上で迷子センターへと連れてきたは良かったが、このハネッコはどうやら怖がりなようで、タキの足にしがみついて離してくれそうにない。

 

「……もう少し待ってみようか」

 

 自分の試合まではまだ時間が有るし、それまでにトレーナーが来るかもしれない。そう考えると、彼女は部屋に備え付いているテレビの画面に視線を向ける。これからちょうどマキノの試合が始まる。折角だし、この場で応援させてもらうことにしよう。そう考えると、足元のハネッコを抱え上げ、膝に乗せる。

 

『最初のバトルは、カロスが誇るフェアリータイプのエキスパート。歴史の国から来た乙女ことマーシュ! 相対するは、大空に夢見る鳥使い。ひこうタイプのジムリーダー、マキノ! 一体どのようなバトルとなるのでしょうか!!』

 

 画面ではどこか緊張した様子の表情を浮かべるマキノと、着物のような服を着た女性が相対している。

 

「頑張りなよ、マキノ」

 

 その応援の言葉は、膝に乗るハネッコだけに聞こえていた。

 

 

 

 

 

 大勢の観客に囲まれる中、マキノは正面に居る女性を直視する。一昨日訪れたクノエシティでジムリーダーをしている女性、マーシュ。雑誌やテレビなどで度々見かけることが多い、知名度に関してはトップクラスのジムリーダーだ。

 そんなマーシュはマキノに微笑みかけて口を開く。

 

「なあ、あんさんの事を聞いたんやけど、うちの街で起きてた事件を解決してくれたらしいなあ?」

「え……あ、はい。そうですね」

 

 突然声を掛けられ、一瞬思考が止まるものの、すぐに我に返り答える。その様子を面白そうに見ながらもマーシュは静かに頭を下げる。

 

「ここでお礼を言わせてもらうわ。おおきにな」

「……いえ、別に大したことはしてませんよ。それに私一人だけじゃなく、ヨルガ君とタキちゃん、二人が居なかったら解決できなかったことです」

 

 それは本心からの言葉だった。ヨルガが居なければ、グラエナ達の救出にはもっと時間が掛かっただろうし、タキが居なければそもそもグラエナ達の気持ちを理解できたかも怪しい。全員揃っていたからこそ、グラエナ達を助けることが出来たのだ。

 

「だから感謝を言うなら、二人にも言ってあげてください」

「ふふふっ。そうやね。じゃあまた後で、改めて挨拶しにいくわ」

 

 話していく内に、徐々にマキノの緊張も解けていく。もしかしたら、それを目論んでマーシュは話しかけてきたのかもしれない。

 

「さすがにお客はんを待たせ続けるのもあれやしな。そろそろバトルしましょか」

「そうですね。それでは行きましょう」

 

 二人はそれぞれボールを手に取り構える。

 

『それではバトルを開始します! 使用ポケモンは1体。どちらかのポケモンが戦闘不能になった時点で決着です!』

 

 審判がゆっくりと手を挙げる様子を、誰もが静かに見守る。

 

『それでは開始!』

 

 そして勢いよく審判が手を振り下ろした瞬間に、マキノとマーシュはボールを投げる。

 

「お願いします、ヨルノズク!」

「きなはれ、ニンフィア!」

 

 マキノが出すのはヨルノズク。彼女が最も信頼する鳥ポケモンだ。対するマーシュが繰り出してきたのは、長いリボンのような触角を持つ、犬のような姿のポケモンのニンフィア。

 

『さあ、ついに試合開始です。解説のお二方、この試合は一体どうなるでしょうか?』

 

 司会が視線を向ける先にいるのは、二人の人物。オーヴ地方でポケモン博士と呼ばれるアカマツ博士と、カロス地方チャンピオンのカルネだ。

 

『ふむ、タイプの相性で言うなら互角。そしてどちらも遠距離からの攻撃を得意としているポケモン同士だ。似たような技も覚える分、それぞれのポケモンの地力が求められるだろう。天秤が傾いたら、そのまま決着も有り得る組み合わせだ』

『はい。それに戦術も大きく影響しますね。いかに自分達に有利な状況を作るかがこの勝負の大きな見どころになるでしょう』

 

 二人がそれぞれ見解を述べている間に、フィールドでは既に2体のポケモンが技を放つ態勢が出来ていた。

 

「エアスラッシュ!」

「ムーンフォース!」

 

 そして放たれる風の刃と光の波動がぶつかり合い、バトルの幕が開けたのだった。




【メガシンカ紹介】
ドクロッグ
●どく・かくとう ●ちからずく
●種族値:83(0)-141(35)-90(25)-86(0)-90(25)-100(15)-590(100)
●攻撃面が大きく上昇。特性もちからずくになったことで、物理アタッカーとして高い打点を持つ。反面、かんそうはだでは無くなったため、雨パでの運用は難しい。
●見た目の変化としては、頭部の突起が長くなり、リーゼントのようになっている。


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7話

バトル描写……本当に苦手です。
マーシュの口調について、間違っている点などが有ればご指摘ください。


「なるほどね……」

 

 呟くタキの視線の先では、テレビがヨルノズクとニンフィアのバトルを映し出している。互いに技を繰り出しているが、ヨルノズクの方が僅かながらスピードでは勝っており、さらに鳥ポケモン故に常にニンフィアの頭上を取っているため、一見ヨルノズクの方が有利に見えるかもしれない。

 だが実際は真逆だとタキは感じ取った。その証拠として、マーシュの顔からは焦りは感じられず、むしろ楽しんでいるかのような表情が見て取れる。

 

『ニンフィア、でんこうせっか!』

 

 マーシュの言葉に従い、ニンフィアは一瞬にしてヨルノズクとの距離を縮める。それを見てマキノもヨルノズクに上昇の指示を出すが、その前にニンフィアは猛スピードのまま跳躍し、ヨルノズクの真正面へと並ぶ。

 

『今や』

 

 その瞬間、ニンフィアの触角がヨルノズクを包み込むかのように広がり、そのまま絡め捕ってしまう。

 

『ヨルノズク!?』

 

 さほど強く縛られてるわけでは無いが、自由な動きは出来ず、勝っていたスピードも封じられる。

 

「……なるほど、あんな戦術があるんだ」

 

 静かに眺め続けるタキ。

 マーシュは若くしてカロスのジムリーダーを務めあげる実力を持っている。そんな人物を頭上を取られた程度で攻略できるのであれば、誰も彼女をジムリーダーとは認めないだろう。その肩書は決して飾りでは無いのだ。

 

『ムーンフォース!』

 

 まさに的と化したヨルノズクに、至近距離からニンフィアの容赦のない攻撃が襲い掛かろうとする。並みのトレーナーであれば、何もできずにそのままダメージを受けてしまうだろう。

 だが、マキノは違った。

 

『ヨルノズク、さわぐ!』

 

 指示を受け取ったヨルノズクが嘴を大きく開き、大音量の叫びを上げた。

 

『フィアッ!?』

「ハネッ!?」

 

 会場内一杯に響き渡るその叫びは、画面越しでもハネッコが驚いてしまうほどの威力だ。至近距離にいたニンフィアが受けるダメージは、それこそ想像を超えるだろう。

 ニンフィアはあまりのことに、攻撃態勢を解きその場に踏ん張り続けることしか出来ない。

 

『ニンフィア、一旦離れるんや!』

 

 その様子を見て、マーシュは一度体制を整えるべく撤退の指示を下す。しかし、ニンフィアにその指示は届かない。

 

『おーっと、マーシュが何かを指示しているが、ニンフィアに変化は全く見られません!! これは一体どういうことでしょうっ!?』

『あれほどの叫びを間近で聞いているんだ。今のニンフィアには、文字通り彼女の指示が耳に入っていないのだろう』

『動きを封じられたという状況を逆に利用し、技が避けられない状態に変える。まさに逆転の発想ですね』

 

 ヨルノズクの音波によって、ニンフィアの体には少しずつダメージが蓄積し、そのまま耐え切れずに吹き飛ばされていく。それと同時にヨルノズクも嘴を閉じ、フィールドを圧倒する鳴き声も止んだ。

 

『なかなかやりおすな。久しぶりに楽しめそうやわ』

『お褒め頂き光栄ですね。でも、まだまだここからです!』

 

 互いにまだ体力は残っている。互いににらみ合いながら、次の指示を待つ。

 そして最初に動いたのはマキノだった。

 

『かげぶんしん!』

『ヨノッ!』

 

 ヨルノズクの姿が一瞬にして、ニンフィアを囲むように増えていく。それはまるで檻のようだ。

 

『まさかあれほどの数の分身を一瞬で作り出すとはっ!』

 

 司会も驚きの声を挙げる。普通のトレーナーでは真似できないその技の速度に誰もが目を奪われる。

 しかしマーシュはいたって冷静に目を光らせる。

 

『それなら、こうしましょか。じこあんじ』

『フィア!』

 

 ニンフィアも指示に応えるように一鳴きすると、全身に力を溜める。するとその体から、先程のヨルノズク同様に分身が生まれ始めるでは無いか。

 

『じこあんじは相手の能力の変化をコピーする技。見事にかげぶんしんをコピーして見せたな』

 

 技をコピーされたマキノは歯噛みするが、それを利用される前に攻撃の指示を下す。

 

『もう一度、さわぐ!』

 

 先程同様、空気を目一杯取り込み、叫ぶ準備を整える。だが、それを許すマーシュでは無かった。

 

『させまへん。でんこうせっか!』

 

 ニンフィアは多数の分身と共に身構えたヨルノズクに対して猛スピードで向かっていく。互いの姿がぶつかり合い、一つまた一つと分身が消えていく。そして最後に本体が残るのは自明の理だ。

 

『ヨノーッ!?』

 

 ヨルノズクの技が発動するその直前にニンフィアの一撃が決まり、大きく後ろへと吹き飛ばされていく。

 

『今や、ムーンフォース!』

 

 そしてその隙を狙って放たれたエネルギー弾を躱すことも出来ず、ヨルノズクはまともにダメージを受けてしまう。

 

『大丈夫!?』

『……ヨノッ』

 

 マキノが声を掛けると、ヨルノズクは立ち上がり真っすぐ前を見つめる。その目には未だに闘志が残っている。

 

『ヨルノズク、まだ健在です。勝負はまだ分からないぞ!!』

 

 ヨルノズクはゆっくりと翼をはためかせ浮上する。

 

『それではお返しさせてもらいます』

 

 その言葉にマーシュは疑問を浮かべる。だがその意味をすぐに理解する。

 

『ムーンフォース!』

 

 このバトルにおいて何度も聞き見ることとなった技。だがそれを指示したのはマーシュでは無くマキノであった。

 

『ヨノッ!』

 

 まさか全く同じ技を返されるとは予想しておらず、ニンフィアは一瞬動きが止まる。

 

『ニンフィア、躱すんや!』

 

 しかしマーシュの声を聞いて我に返ったニンフィアはすぐにその場から飛び去り、紙一重でムーンフォースを躱すことに成功する。

 

『エアスラッシュ!』

 

 さらにヨルノズクが追撃を行うが、今度はニンフィアが放つムーンフォースで迎撃される。

 再び膠着状態になるかと思われたが、マーシュがそれを否定した。

 

『随分、面白いバトルやね……本当ならもっと楽しみたいところやけど、そろそろ決着つけましょか』

 

 何か来る。そう感じ取ってマキノとヨルノズクは身構える。

 

『では、いきましょか。とっておき!』

 

 その言葉と共にニンフィアの全身が金色に光り輝く。そして全速力でヨルノズクの下へ駆け出した。

 

『ヨルノズク、避けて!』

 

 指示に従って上空へと飛び立とうとするが、目にも止まらぬスピードへと一瞬で加速したニンフィアから逃れることは出来ない。

 

『フィア―ッ!!』

 

 その突撃を胴体へともろに受けたヨルノズクは、その勢いのままスタジアムの壁へと叩きつけられる。

 

『ヨ、ノ……』

 

 倒れ伏すヨルノズク。誰がどう見ても、これ以上の戦闘続行は不可能だろう。

 

『そこまで、ヨルノズク戦闘不能。よってニンフィアの勝ち!』

 

 審判の宣言の後、スタジアム全体が一瞬静まり返るがすぐに歓声が沸き立つ。それだけハイレベルなバトルだったということでもある。

 

『いやー、一試合目から目が離せない素晴らしいバトルでしたね』

『ああ。どちらが勝ってもおかしくは無かっただろう』

 

 司会とアカマツ博士の会話をスピーカー越しに聞きながら、タキはこの試合について考えていた。

 確かにマキノとヨルノズクも十分な実力は有った。勝敗の結果を分けるものが有るとするなら、純粋な経験の差だと考えられる。マーシュもまだジムリーダーとしての経験は浅い部類だ。しかしまだ出来たばかりのオーヴリーグと比べると、カロスリーグの方が挑戦者は多い。それにオーヴリーグでは攻略するジムの種類を挑戦者自身が選ぶことが出来るという特性上、一つ一つのジムで行われるバトルは比較的少ない。元々、ジムリーダーの負担軽減のためのシステムだがその弊害でもある。同じ時間で行われるバトルの回数ではマーシュの方が多い。つまり、それだけ経験の密度が大きいということでもある。だからこそマーシュはほとんどの場面で冷静に対応してい見せていた。それこそが、僅かな差で今回の勝負を決定づけたのかもしれない。

 

「さて……」

 

 確か次の試合はヨルガ。そしてその次が自分だ。もうそろそろ戻らなくてはならないのだが……。

 膝に乗るハネッコに視線を移す。いつになったら、この子のトレーナーは来るのだろうか。そう思っていると、

 

「あ、ハネッコ!」

「ハネ?」

 

 どこからか聞こえる声にハネッコが反応する。振り向くと、迷子センターの扉に幼い少女と父親らしき男性が居るでは無いか。

 

「ハネッ」

 

 ハネッコはタキの膝から飛び降りると、少女の胸元へと飛び込んだ。

 

「ハネッコ、どこ行ってたの? 心配したんだから!」

「ハネ~」

 

 少女もハネッコも涙ぐみながら抱きしめあう。

 タキはそんな彼女らに近づき、ゆっくりと頭を撫でる。

 

「見つかって良かったね。もう目を離しちゃ駄目だよ」

「うん!」

 

 大きく頷く少女に微笑み、タキはその場から離れようとした。だが、そこで少女の父親が声を掛ける。

 

「すみません、先程職員の方から話を聞きました。あなたがハネッコを見つけてくださったんですよね?」

「まあ、はい」

「本当にありがとうございます! あのハネッコは、娘にとって初めてのポケモンで……」

 

 父親の声色からも、あのハネッコがどれだけ大事にされているかが分かる。

 

「本当に見つかって良かったですね。それでは私はそろそろこの辺で……」

「そうですか……では改めてお礼を。本当にありがとうございました」

「お姉ちゃん、ありがとう!」

「ハネ―ッ!」

 

 頭を下げる彼らに少しだけ手を振ると、急いで控室へと向かうこととした。




【メガシンカ紹介】
ネンドール
●じめん・エスパー ●ハードロック
●種族値:60(0)-70(0)-145(40)-130(60)-160(40)-35(-40)-600(100)
●ふゆうが無くなったことで、じめん技が等倍となったが、特性のハードロックによって全体的な耐性は上がっている。
●すばやさが大きく低下している反面、ぼうぎょ・とくこう・とくぼうが大きく上昇。とくぼうに関しては、メガラティアスを超えている。
●見た目のイメージとしては頭部の直径が伸び、周囲に土塊が浮遊している。


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8話

所々、見直して書き直していたりしてます(内容に大きな変化は特に有りません)。


 タキが関係者以外立ち入り禁止の通路を歩いていると、マキノが急いだ様子でこちらに向かって急いだ様子で向かってくる。

 

「タキちゃん、どこに行ってたんですか?」

「ごめん、ちょっと色々有って……マキノ、試合お疲れ様」

 

 謝罪をしつつ労いの言葉を掛けると、マキノは複雑そうな笑みを浮かべる。

 

「ありがとうございます。負けてしまいましたけどね……」

 

 その表情からは悔しさがありありと感じ取れる。そんなマキノに対し、タキは何も言わない。励ましの言葉なんて必要ないと理解している。この敗北を通して、マキノはまた強くなるだろう。

 

「そうだ、ヨルガ君の試合がもう始まってますよ。急がないと!」

 

 本来の目的を思い出し、マキノは早口になる。ヨルガの試合が終われば、今度はタキの試合なのだ。準備も整えなければならない。

 

「そうだね、急ごう」

 

 タキはマキノのペースに合わせながら、長い通路を進んでいった。

 

 

 

 

 

「ビビヨン、いとをはく!」

 

 スタジアムの中央ではヨルガと虫タイプを得意とするカロス地方のジムリーダー、ビオラによる熱戦が繰り広げられていた。

 ビオラのビビヨンが口から糸を吐き出し、敵を捕らえようとする。だが、

 

「キリキザン、つるぎのまいで糸を切れ!」

 

 キリキザンが踊りながら、全身に備わった刃で周囲の糸を切り裂いていく。さらに踊るにつれて、その全身から力が漲っていく様子が見て取れる。

 

『いとをはくを無効化しながら攻撃力を上げる。見事な対応ですね』

 

 技が通じず歯噛みするビオラ。

 

「メタルクロ―!」

 

 キリキザンが両腕を光らせながら、ビビヨンに肉薄する。

 

「ぼうふう!」

 

 迎撃の指示を受け、ビビヨンの羽から強力な風が放たれる。キリキザンはそれをまともに受け、大きく後退する。

 

『ビビヨンの強力な一撃がヒット! キリキザンは大きなダメージを受けたようだぞ!』

 

 司会の言葉通り、キリキザンは膝をつき、息も上がっているように見える。

 

「今よ、ソーラービーム!」

 

 この隙を逃すまいと、大技を放とうとする。だが、その瞬間キリキザンとヨルガの目が光る。

 

「今だ、だましうち!」

 

 大ダメージを受けたとは思えない速度でビビヨンの下へ走り出すキリキザン。

 ビオラも自身の失策に気付くが、時すでに遅し。ソーラービームは高い威力を持つ反面、発射の前にエネルギーを溜めなくてはならない。身動きが取れないビビヨンに対して、キリキザンの手刀が容赦なく放たれる。

 

「ビビッ!?」

 

 ダメージを受けた反動で、溜め込んだエネルギーは明後日の方向へと放たれる。

 

「まだまだ行くぜ! メタルクロ―!」

 

 さらにキリキザンは追撃で連続で手刀を放つ。これにはビビヨンもたまらず、目に見えてダメージが蓄積していく。

 

「ビビヨン、一度距離を取って!」

「ビビッ!」

 

 何とか上空へと逃れ、互いの動きが一旦停止する。だが、どちらが有利かは一目瞭然だ。

 

『見事にキリキザンがペースを握っていますね』

『通常であればあくタイプはむしタイプを弱点とする。だがキリキザンは同時にはがねタイプを持っている。ビビヨンにとっては厄介な相手だ』

 

 だがこの状況でもビオラは諦めていない。

 

「ビビヨン、ぼうふう!

 

 少しでもダメージを与えるべく、まずはキリキザンの動きを封じる。強力な突風に呑まれないように、その場に踏ん張るキリキザンだが、動きが止まるということは格好の的になるということでもある。

 

「シグナルビーム!」

 

 続けて放たれるのは七色の光線。キリキザンは避けることが出来ずに、まともに攻撃を受けてしまう。さらに今の一撃はビオラにとって幸運をもたらす。

 

「キリ……キリザッ?」

『これはキリキザン、なんと混乱してしまったーっ!! まさかの状況。一転してピンチだーっ!!』

 

 シグナルビームの眩い光を受けてしまい、混乱してしまったキリキザン。このチャンスを逃すまいとビビヨンはさらに上昇する。

 

「ビビヨン、ソーラービーム!」

 

 再度エネルギーを溜め込む。先程と違うのは、キリキザンが止める術を持たないということだろう。

 

「しっかりしろキリキザン! 攻撃が来るぞ!」

 

 ヨルガが叫ぶものの、キリキザンは状況を理解できず、避けるべく動くことも出来ない。

 その間にビビヨンがエネルギーの充填を完了する。

 

「ビビーッ!!」

 

 そして放出される強大な光の奔流。キリキザンはそれに飲み込まれた。

 

「キリザーッ!!」

 

 吹き飛ばされ、何度も地面に叩きつけられながら転がっていく。しかしその衝撃で我に返ったようで、ビビヨンをじっと睨む。

 

「ビビヨン、ぼうふう!」

 

 三度強力な風がキリキザンを襲う。しかしそれまでと異なり、既にキリキザンは満身創痍だ。耐えきることが出来ず、その体は旋風に巻き込まれ宙へと投げ出される。

 

「止めよ、シグナルビーム!」

 

 空中では自由に動くことが出来ないキリキザン。そこへ無慈悲に放たれる光線がキリキザンを捉えた、はずだった。

 

「意地を見せろキリキザン!」

 

 ヨルガからの掛け声を聞いたキリキザンは目を見開くと、両腕でシグナルビームをガードする。そのままでは僅かな体力を削りきられるだろう。だが、それでは終わらない。

 

「メタルバースト!」

 

 キリキザンの両腕が光に包まれ、巨大な刃が形成される。両腕を振りぬくと、シグナルビームを容易く切り裂く。そして伸びた刃はビビヨンを貫いた。

 

「ビビーッ!?」

 

 それまで受けたダメージを増幅し、取り込んだキリキザンの一撃がビビヨンの意識を刈り取る。

 残ったのは満身創痍ながら立つキリキザンと、気絶したビビヨン。

 

「ビビヨン戦闘不能。よってキリキザンの勝ち!」

「……っよっしゃあぁっ!!」

 

 勝利を手にし、喜びのあまり叫ぶヨルガ。ビオラも悔しさを滲ませながらも、倒れたパートナーに労りの言葉を掛けながらボールに戻す。

 二人の手に汗握る勝負に会場全体から惜しみない拍手が送られるのだった。

 

 

 

 

 

「ヨルガ君、お疲れ様です」

「おうっ! っておい、タキ。お前どこに行ってたんだよ!」

 

 やっと姿を見せたタキにヨルガが怒鳴る。試合前にあちこち探すはめになった彼からすれば、その怒りはもっともなものだろう。

 

「ごめん」

「ったく……ほら、お前の出番なんだから、さっさと行けよ」

 

 そう言ってヨルガは親指で扉を指し示す。

 

「忘れ物とかしてないですよね?」

「大丈夫だよ」

 

 後ろから声を掛けるマキノに対しては、ポケットから取り出した懐中時計を見せることで応えた。

 

「それじゃ、楽しんでくる」

 

 静かに笑みを浮かべながら、タキは控室から出ていった。

 

 

 

 

 

『さあ、いよいよラストです。エキシビジョンマッチの最後を飾るのは、ミッドナイトリサーチャーの異名を持つタキ! 対するはカロス地方最強のジムリーダー。熱く厚い堅氷ことウルップ! 一体どのようなバトルとなるでしょうか!?』

 

 司会の捲し立てる説明を聞きながら、タキはゆっくりと歩く。これほどの大人数の前でバトルすることは、今までにない。だが、緊張は全くしていなかった。それ以上に、目の前の相手が一体どのようなポケモンを使うのか、どのような戦術を見せるのか、それが楽しみだった。

 ウルップもタキを睨みながら笑みを浮かべる。

 

「お前さん、あれだな。良い目をしてる」

「それはどうも」

 

 ぶっきらぼうに返事をするタキ。しかしその目に油断などは無い。

 

「ねえ、お父さん!」

「ああ」

 

 そんな彼女を笑顔で見る観客が居るが、その声は周囲の歓声で掻き消される。

 

「まあ、あれだ。前置きはいらないよな。早速バトルを始めようや!」

 

 その言葉に対して、タキもボールを構えることで応える。このままではすぐにバトルを始めかねないと判断した審判は、慌てて手を挙げる。

 

「それでは試合開始!」

「ムウマージ、出番だよ」

「行ってこいや、クレベース!」

 

 互いに信頼するポケモンが繰り出され、決戦の火ぶたが切られた。




【メガシンカ紹介】
レントラー
●でんき ●エレキメイカ―
●種族値:80(0)-150(30)-89(10)-95(0)-89(10)-120(50)-623(100)
●こうげきとすばやさが大きく上昇。こうげきの数値はエレキブルを超え、でんきタイプ最高となった。
●特性はエレキメイカ―となった。これによって火力がさらに上昇する。
●見た目のイメージは鬣がより大きくなり、また頭部に鬼のような小さな二本角が生える。
●当初はエレキブルをメガシンカさせようと思ったが、それだとブーバーンもメガシンカさせないとバランスが悪いと考え、変更した。


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9話

やっと主人公がバトルします。


 最初に動いたのはウルップだった。

 

「クレベース、あられだ!」

 

 クレベースが冷気を溜め込むと、それを空へと打ち上げる。すると、スタジアムの上空に灰色の雲が生まれ、氷の粒が降り注ぎ始めた。

 

『まずはクレベースが先制。天候をあられに変えたーっ!』

『あられではこおりタイプ以外が少しずつダメージを受ける。最初に自分が有利なフィールドを作ったな』

 

 いきなりクレベースが有利な状況となったが、タキとムウマージは未だに動かない。ただウルップたちが次にどう動くかを観察している。

 

「どうした? 来ないならこっちから行くぞ!」

 

 指示すら行わないタキを訝しみながらも、ウルップはクレベースに攻撃を命じる。

 

「ゆきなだれ!」

「クレベェッ!!」

 

 クレベースが叫ぶと、ムウマージの頭上に大きな雪の塊が生まれ、ムウマージを押し潰さんと落下してくる。

 

「ムウマージ、マジカルフレイム」

 

 しかしタキは一切焦ることなく、手短に指示を出すと、ムウマージは口から火球を生み出し、落下してくる雪の塊を溶かし切って見せた。

 

「クレベース、ストーンエッジ!」

 

 クレベースが今度は地面を強く踏みしめると足元から岩のトゲが生まれ、ムウマージへと襲い掛かる。

 

「躱して」

 

 しかし、ムウマージはまるで踊るかのように軽い身のこなしで、ストーンエッジを避けて見せる。

 

『クレベース、怒涛の攻めを見せるがムウマージにダメージを与えられないっ!!』

『ムウマージはカロス地方には生息していない。知らない者も多いだろうから、簡単に説明しよう。ムウマージは別名マジカルポケモンのゴーストタイプのポケモンだ。魔法のような独特の技や動きが特徴で、一部の地域では幸せを呼ぶとも、逆に不幸を呼ぶとも言われる、悪戯好きのポケモンでもある』

『私も以前、ムウマージを使うトレーナーとバトルしたことが有りますが、あのムウマージはかなりのスピードですね。あれを捉えるのは至難の業でしょう』

『なるほど。言わばパワーのクレベースとテクニックのムウマージと言ったところでしょうかっ!』

 

 カルネの言葉通り、スピードで大きく劣るクレベースは中々ムウマージを捉えられない。ストーンエッジは避けられ、ゆきなだれにはマジカルフレイムによって迎撃する。完璧なまでにクレベースの技を対処して見せている。

 だが、それでも一向にムウマージの方からは仕掛けてこない。スタジアム全体で、それを訝しむ言葉が出始める。

 

「どうした? 守ってばかりじゃ、オレには勝てないぞ?」

「さあ、それはどうでしょう。もしかしたら既に何か仕掛けてるかもしれませんよ?」

「ほう? だが、あれだ。お前さんのポケモンはいつまでこのフィールドに耐えられるかな?」

 

 ウルップの言葉通り、このフィールドにはあられが降っている。それが徐々にムウマージの体にダメージを蓄積している。一つ一つはそれこそ僅かであるが、積み重なれば大きなダメージに変化する。

 

「まあ、あれだよ。お前さんに本気を出させるなら、こっちからやるしかないようだな」

 

 そして新たに指示を下す。

 

「クレベース、あれをやるぞ。ゆきなだれ!」

 

 再びクレベースが雪の塊を生成する。しかし、それが生み出されたのは、クレベース自身の頭上だ。落下を始める塊。このままではクレベース自身にダメージが与えられるだろう。一見、何かの間違いかと思われるその行為。だがそこにはウルップの戦略が有った。

 

「よし、ジャイロボールだ!」

 

 突如としてクレベースが激しく回転をし始める。すると、落下してきた雪の塊が回転によって弾かれ、四方八方へと高速で飛び散っていく。

 

「ムウマージ、躱して!」

 

 指示に従い、ムウマージは飛んでくる雪の塊を避けようとする。だがその速度は落下する通常のゆきなだれとは比べ物にならないほど速い。

 

「マッ!?」

 

 完全に躱し切ることは出来ず、一つの雪の塊がムウマージの顔面に直撃。さらにそれに続くように、二つ三つと連続でムウマージにヒットしていく。

 

「今だクレベース!」

「ムウマージっ!!」

 

 そこに高速回転するクレベースが突撃し、ムウマージの体は大きく吹き飛ばされていく。

 

『今の一撃は重いっ!! ムウマージの体が宙を飛んだぞーっ!!』

『ジャイロボールは自分のスピードが遅いほど威力が上がる技。見事にクレベースの能力を活かしている』

 

 だがムウマージはすぐに態勢を整え、宙に浮く。

 

「大丈夫、ムウマージ?」

「マージィ!」

 

 タキの言葉に応える声にも力が有る。まだまだ余裕が有りそうだ。

 相対するウルップはそれを見て、獰猛な笑みを浮かべる。

 

「ほう、今の技を喰らってそれだけ体力が残ってるのは、あれだな。随分と良く育てられてる」

「それはありがとうござます。こっちこそ、今の技には驚きましたよ。まさか自分に向かって技を繰り出すとは」

 

 タキはウルップの戦術を素直に称賛しながら、ポケットに手を入れ、あるものを取り出す。それは手のひらに収まる大きさの懐中時計だ。

 

「ムウマージ、そろそろ行こうか」

「マージィ!」

 

 ムウマージが強く頷く。

 

「見せてあげます。私達の力を」

 

 そしてタキは懐中時計の蓋を開いた。

 

 

 

 

 

「本当に厄介だよな、あいつの戦い方」

 

 控室でタキの試合をモニター越しに見ながらヨルガが呟く。

 

「何というか、最初はまるで本気を出していない見たいなのに、急に攻め立ててくるのがよ……」

「まあ、それがタキちゃんの戦い方だし」

 

 前半はひたすら相手の動きに対処しながら観察し続けるその戦い方は、ある種の不気味さを感じさせる。

 

「しかも、こっちが気を抜くと、容赦なく毒だのなんだの打ち込んできやがるし……正直、あいつとバトルするのが一番疲れるんだよな……」

 

 かつてバトルした時のことを思い出し溜息を吐く。ゴーストタイプに有利なあくタイプ使いだったため、勝てると踏んでいたが、結果は惨敗。ひたすらこちらの攻撃を受け流され、徐々に手持ちに状態異常を与えられ、いつの間にかペースを完全に握られてしまっていた。

 

「でも、今回の相手のウルップさんは強敵ですね」

 

 相手を観察しながら、隙を見て状態異常を与えるという戦術上、タキが最も得意としているのはフルバトルだ。後半になれば対戦相手はいつの間にか手持ちのポケモン全てに状態異常を与えられ、タキのエースであるムウマージに為すすべもなく圧倒される。

 だが今回は1on1のバトル。しかも相手は一流のトレーナーだ。タキには分が悪い。

 

「まあ、あいつなら勝つだろ」

「そうですね。タキちゃんなら、きっと勝てます」

 

 だが二人はタキが負けるとは全く思っていなかった。

 

「なんせあいつは……」

 

 モニターではタキが取り出した懐中時計の蓋を開けていた。その内部には遠目では分かりづらいが、透き通った石が嵌め込まれている。

 

『可能性のその先へ……』

 

 その石に右手の人差し指で優しく触れる。すると石とムウマージが―正確にはムウマージの首元に掛けられた紫色の結晶が強く光り始める。

 

『メガシンカっ!!』

 

 その言葉と共に光がムウマージの全身を包み込む。

 

「あいつは、ジムリーダーの中で2番目に強い、オーヴ四天王の一人なんだからよ」

『マージィッ!!』

 

 そして光が晴れると、姿を大きく変えたムウマージ―メガムウマージがクレベースを睨んでいた。




【メガシンカ紹介】
ビークイン
●むし・ひこう ●じょおうのいげん
●種族値:70(0)-90(10)-122(20)-90(10)-122(20)-80(40)-574(100)
●すばやさが大きく上昇。他の能力値は少し上昇しており、全体的には耐久型の性能は変わっていない。
●特性がじょおうのいげんに変化。これによって先制技を無効できるという強みを獲得。ただしアマージョと異なり、相手のすばやさを下げる技が無いのが残念なところ。
●見た目のイメージとしては、羽が巨大化し、腕が小型化した。下半身の巣も巨大化し、中央に鋭い針が生まれた。
●当初は特殊アタッカー版スピアーのイメージでアゲハントをメガシンカさせようと思ったが、しっくりこなかったため没。


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10話

使うか不明の裏設定
●オーヴ地方に生息するポケモンは、伝説と幻のポケモンを含めて341種類。


 四天王。それはポケモンリーグ公認の4人のトレーナーを指す存在。チャンピオンに挑むための最後の試練とも言えるだろう。総じて彼らは高い実力を有しているが、その選定基準は各地方によって様々だ。厳しい試験をクリアする必要がある地方も有れば、実行委員からの推薦という形で任命される地方も有る。そもそも四天王を置いていない地方すら存在する。

 そしてオーヴ地方では、全ジムリーダーの中で実力が高い四名を四天王として認定するという形態を取っている。そこで全てのジムリーダーが揃った際に最初に行われた業務が、各ジムリーダー同士のバトルだった。実力を確かめるのであれば、それが最も手っ取り早い。そして勝ち残った四名が四天王として認められた。

 一人はでんきタイプの使い手である元警察官。誰よりも真面目で、この地方が少しでも活気づけばという強い思いを持っていた。

 一人はオーヴ地方では知らない者はいない歌手としての一面を持つ、エスパータイプをこよなく愛する女性。独特な戦術は、彼女の歌と同様に、誰もが引き込まれる不思議な魅力を持っている。

 一人はジムリーダーの中で最も強い、ドラゴンタイプのエキスパート。年齢に見合った経験の濃さから引き出される無数の戦術が、高い能力を持つドラゴンポケモンの実力を完璧なまでに引き出していた。

 そして最後の一人。それは誰よりも知的好奇心に満ちた、ゴーストタイプを扱う少女。年若いが、ポケモンに対する知識と愛情は誰にも負けていなかった。

 

 

 

 

 

『なんと、これは驚きましたっ! まさかのメガシンカです。ムウマージがメガシンカしたーっ!!』

 

 あまりのことに司会の声も熱を帯びる。その場に居た観客は勿論の事、チャンピオンのカルネすらも、この状況に目を見開く。

 メガシンカとは一部のポケモンにのみ確認された、特殊な形態変化の通称である。いずれも姿が大きく変わると共に、能力が格段に跳ね上がり、タイプや特性も変化する場合が有る。だがこれを行うには、キーストーンと各ポケモンに適合したメガストーンと呼ばれる二つの石が必要であり、互いに信頼しあったポケモンとトレーナーでなければ引き起こすことが不可能な現象である。

 

『ムウマージのメガシンカ……初めて見ました』

『あのメガストーンが発見されたのはつい最近のことだ。実際、使いこなせているのも現段階では彼女だけだろう』

 

 ムウマージの姿は先程と比べ一回り大きくなり、腕だった部位はより長く、まるでリボンのような形状へ変化した。下半身もドレスのように伸びたほか、胸元に有った宝珠は頭部へと移動し、まるで帽子を彩っているかのようにも見える。

 

「ほう……まさかメガシンカとは。あれだな、本当に驚かせてくれる」

 

 ウルップも驚きが表情に表れるが、それ以上に満足げな笑みが深まる。

 

「それがあれか、お前さんの本気ってやつか」

「はい。それじゃあ、楽しいバトルの続きをしましょうか」

「ああっ!」

 

 そしてバトルが再開する。

 

「クレベース、ゆきなだれ、そしてジャイロボールだ!」

 

 先程見せたのと同様に、クレベースは自身の頭上に大量の雪の塊を作り、落下させる。そして高速回転することにより周囲に猛スピードで飛び散らせる。

 

「ムウマージ、マジカルフレイムでガード!」

 

 それに対してムウマージは口から火炎を吐き出し、真正面から対抗して見せる。それまでとは段違いの威力の火炎が飛んでくる全ての雪の塊を溶かしつくし、果てにはクレベースに届いて見せる。だがクレベースのパワーも負けてはいない。放たれる火炎を、高速回転によって弾き返している。

 

『おっと、先程とは異なりパワーとパワーの対決の様相を呈しているっ! メガシンカによって高まった力がをクレベースは受けきれるのかっ!?』

『これは……』

 

 タキの戦術にアカマツ博士が気付く。

 フィールドは雪が溶けることによって発生した水蒸気に覆われる。その中、やっと火炎が止み、クレベースも回転を止める。今の攻防によって大きく体力を削られてこそいるが、このクレベースの特性はアイスボディ。初手で降らせたあられが、クレベースの体を少しずつ癒していく。相手はメガシンカによって能力が上昇しているものの、今優勢なのは間違いなくクレベースだ。このままリードを保つべく、追撃を行おうとするが、いつの間にかムウマージの姿がウルップとクレベースの視界から消えていた。

 

「クレベ……?」

 

 周囲を見回すクレベース。周囲に気配すら感じられない。

 

「ムウマージ、でんじは」

「っクレベース、気をつけろ!」

 

 ウルップが警戒の指示を出すが、その時には既にムウマージがクレベースの顔の前に姿を現していた。突如として目の前に現れた敵の姿に一瞬驚くクレベース。その一瞬の隙を狙い、ムウマージが電撃をクレベースへと放つ。

 

「クレベッ!?」

 

 それはダメージを与えるほど威力が有るものではない。だがその技の真価はそこではない。

 

『なんと、クレベースが麻痺してしまった! これは一転ピンチかーっ!?』

『さっきのマジカルフレイムは水蒸気を作ることによって、自分の姿を隠すための布石だったみたいですね。それに加え、クレベースの大きなシルエットや弾いていた火炎によってウルップさんの視界からも消えることで、このような奇襲が成功したのでしょう』

『しかも今のでんじはには、通常の時以上の意味が有るな』

『それはどういうことでしょう?』

 

 司会の問い掛けにアカマツ博士が解説する。

 

『麻痺になったポケモンは一瞬動きが止まることが有る。もしそのタイミングが、先程のゆきなだれとジャイロボールのコンボの時だったらどうなる?』

『あっ!』

 

 その言葉に誰もがイメージする。落下した雪の塊を弾こうとした瞬間に動きが止まれば、クレベースの自滅は必至だろう。

 

『だが同時に今回の場合はデメリットもある』

 

 アカマツ博士が先述したが、ジャイロボールはすばやさが低いほど威力が上がる技。それは麻痺の影響によっても同様である。

 

『相手のコンボを封じるメリットと、ジャイロボールの威力が上がるデメリット。この二つを天秤に掛けた結果として、でんじはを使うという選択肢を取ったのだろう』

『なるほど……』

 

 フィールドでは未だにバトルが続いている。だが麻痺の影響も有り、クレベースの技のキレは格段に落ちていた。

 そして今までクレベースを支えていたあられもついに降りやむ。

 

「くっ。クレベース、あられ!」

 

 少しでも戦況を有利に変えるべく、再度あられを降らせようとする。だが、それを見逃すようなタキではない。

 

「ムウマージ、マジカルシャイン!」

「マージィッ!」

 

 ムウマージから放たれる閃光が、冷気を溜め込んだクレベースの顔に直撃する。突如として目の前に強力な光を受けた影響で、技が不発となりさらにムウマージの姿を見失う。

 

「マジカルフレイム!」

 

 そこを狙って火炎が襲い掛かる。だが、ウルップも歴戦のジムリーダーである。

 

「9時の方向にストーンエッジだ!」

 

 的確な指示によって、火炎を防ぐ。たとえどれだけ不利な状況でも、決して諦めることは無い。

 

「やっぱり楽しいですね」

「ああ、あれだな。最高のバトルだ!」

 

 観客も皆、このバトルに目を奪われていた。出来ることなら、ずっとこのバトルを見ていたいと思うほどに。だが、終わりは必ず訪れる。

 

「クレベース、ジャイロボール!」

 

 技の応酬で態勢を崩したムウマージが、高速回転したクレベースによる突撃で大きく弾かれる。

 

「よし、もう一度だ!」

 

 このチャンスを逃すまいと、ウルップはさらに畳みかけようとした。だが、

 

「クッ、クレベッ!?」

 

 このタイミングになってクレベースの体が痺れ、動きが止まる。その瞬間を待っていたかのように、タキがムウマージに指示を出す。

 

「たたりめっ!」

 

 ムウマージの眼から放たれる薄暗い波動。それがクレベースの体を包み込むと、クレベースは大きく苦しみだす。

 

「クレベースっ!!」

 

 ウルップの声を聞き、クレベースは最後の意地と言わんばかりに、再度ジャイロボールを行い、波動を弾き飛ばす。だが、その頭上にはいつの間にかムウマージが陣取っていた。

 

「これで決める。マジカルフレイム!」

「マージィッ!!」

 

 強力な火炎がクレベースを包み込む。たたりめを弾くのに全力を使ったためか、もはや抗う気力すら尽き、ただ叫び声だけを挙げる。

 

「クレベ―ッ!?」

 

 そして火が止むと、倒れ伏すクレベースの姿が現れた。

 

「……っそこまで!」

 

 審判すら一瞬言葉すら失ったが、すぐに我に返り、宣言する。

 

「クレベース戦闘不能。よってムウマージの勝ちっ!」

 

 その言葉を聞くと同時に、スタジアム全体から歓声と拍手が惜しみなくタキとウルップに送られる。

 

「お疲れ、ムウマージ」

 

 タキはいつの間にやら元の姿に戻っていたムウマージに対して、手のひらを挙げる。

 

「マージィ」

 

 ムウマージも同じように手を挙げる。そして互いに静かに笑みを浮かべながら、ハイタッチを交わした。




【メガシンカ紹介】
ムウマージ
●ゴースト ●マジックミラー
●種族値:60(0)-60(0)-70(10)-155(50)-130(25)-120(15)-595(100)
●とくこうが大きく上昇しギルガルドと同じ数値となった。またとくぼうも上がっている。
●特性はマジックミラーとなった。これは「マジカルポケモン」の別名のイメージから。タイプと特性がヤミラミと被るが、種族値と技範囲から差別化は可能。


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幕間1

本編とはあまり関係のない話です。


 海を進む一隻の貨物船。大量のコンテナを運ぶその船の中央部で、サングラスを掛けた白いスーツの集団が、1つのアタッシュケースを囲んでいた。

 

「これが例の物か……」

「ああ。これが有ればきっと……」

 

 彼らが話し込んでいると、背後で何者かが走る足音が聞こえだした。

 

「お前たち、そこまでだっ!!」

 

 姿を現したのはトレンチコートを着た男性。彼はアタッシュケースを見つめながら叫ぶ。

 

「お前たちが奪ったそれを返してもらうぞっ!!」

「くっ!」

 

 サングラスの集団は急いでその場から逃げようとするが、既に周囲には男性と似た服装の面々が囲んでいる。

 

「大人しく捕まってもらうぞっ!」

「そうはいくか! お前らっ!」

「おうっ!」

 

 リーダー格の男が号令を掛けると、一人の男がボールを取り出し投げる。そこから姿を現すのは、ポケモンの中でも危険度ならトップクラスと呼ばれる、ギャラドスだ。いくら大きな貨物船とはいえ、船内が特別広いわけでは無い。6.5mもの体長を誇るギャラドスにとってはかなり狭く感じるだろう。実際、ギャラドスもどことなく苛立った様子を見せる。

 だがサングラスの集団はさらに予想外の行動を取る。

 

「ギャラドス、あばれろ!」

 

 その言葉に従ったのか、はたまた怒りのままに動いた結果か、ギャラドスはその巨大な体躯を船内のあちらこちらに体をぶつけながら、狂ったように暴れだす。

 巨大なポケモンのパワーの前では、人間は時として無力である。彼らを囲んでいた者の大半はポケモンを出す暇も無く、ギャラドスの尾によって吹き飛ばされる。

 その間に船内から脱出しようとするサングラスの集団。トレンチコートの男性達も、ギャラドスを抑え込むためにポケモンを繰り出したメンバーを残し、彼らを追って船内から出る。

 甲板に出ると、アタッシュケースを持ったサングラスの集団が、いつの間にか準備したボートに乗り込もうとする。

 

「待てっ!」

 

 トレンチコートの男性が追おうとするが、サングラスの集団はボールからポケモンを放ち、妨害をする。

 あのアタッシュケースの中身を奪われるわけにはいかない。男性もグレッグルを繰り出し対抗するが、中々相手のポケモンの数が減らない。

 

「はははっ。じゃあな、国際警察さんよ!」

 

 そう言ってリーダー格の男はボートを括り付けた縄を切ろうとする。

 

「ノクタス、ミサイルばりだっ!」

 

 だがそこで突如として、数㎝の長さの針が複雑な軌道を描いてボートに乗った男達を狙う。

 

「うわっ!?」

 

 それは、トレンチコートを着た男性の部下が手持ちであるノクタスに指示したものだ。逃げられないように牽制の目的で放たれたそれは、何の因果かアタッシュケースを持った男の手を掠る。そしてその衝撃に驚き、思わず男が手を放してしまった。

 

「なっ!?」

 

 思わずそこに居た全員が見つめる。

 男の手から離れたアタッシュケースは、重力に従って海面へと落ちる。

 

「おい、お前らすぐに回収するぞ!!」

「そうはさせませんよ!」

 

 リーダー格の男が命令するが、いつの間にかボートが粘着質の糸に絡め捕られている。

 

「よくやったよ、アメモース」

 

 トレンチコートの男性の背後に居た女性が声を掛けると、ボートの下からアメモースが姿を見せる。これでもう、逃げることは出来ないだろう。

 

「さあ、大人しくしてもらおうか……」

 

 ポケモン達を倒しながら、ボートに近づく。

 

「ちっ、お前ら緊急退避だ!」

 

 このままでは捕まる。そう判断したリーダー格の男が指示を下しながら、腰に装着していたボールを取り、起動させる。

 

「シィ?」

 

 中から出てきたのは、細い目をした黄色いポケモン―ケーシィだ。

 それに気づいたトレンチコートの男性が慌てて叫ぶ。

 

「待てっ!!」

 

 だが伸ばした手が彼らを捉えることは無い。

 

「テレポートっ!」

 

 その言葉と共にケーシィの技によって、彼らはボートごと一瞬にしてどこかへ消えてしまった。

 

「……」

 

 男性は彼らが消え去った後の空間をただ見つめる。ここで彼らを取り逃がしたのは大きな痛手だ。それにアタッシュケースも海に落ちてしまった。この辺りの海流はとても速い。ポケモンに捜索させるのも難しいだろう。

 

「申し訳ありません!!」

 

 ノクタスを連れたトレーナーが頭を下げる。あのアタッシュケースの中身は重要な代物だ。もし自分が技を指示しなければ……。

 

「いや良い」

 

 だが男性は首を横に振って、その謝罪を止める。

 

「むしろ奴らに奪われなかっただけ良かった。今は我々のやるべきことを遂行するんだ」

 

 その言葉に、部下の二人の顔を引き締める。

 そしてギャラドスを抑え込んでいるだろう仲間の元にへと駆け出しながら、男性は思案する。

 

 あのアタッシュケースの中に入っていたのは、とある地方で捕獲された七種類のポケモン。それらはいずれも強大かつ未知の能力を兼ね備えている。もし、何かの拍子で解き放たれでもしたら……。

 

「早く回収しなければ……」

 

 この先、起こりえるだろう事件に、男性は焦りを募らせた。

 

 

 

 

 

 それから数週間後。とある浜辺にある物が流れ着いた。それは一見モンスターボールのようにも見える、紺色の球体。

 そのボールが突如として震え始めると、中から何かが飛び出してきた。

 

「デンショック!!」

 

 飛び出したそれはどこかへと走り出す。その姿を見ていたのは、浜辺に居た僅かなポケモン達のみであった。




今更ながら、本作の時系列としてはアローラリーグにチャンピオンが就任して数か月後のイメージです。
世界線としては、USUMに近い世界です。ただしレインボーロケット団の事件は起きていません。


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11話

 オーヴリーグ。オーヴ地方に住むトレーナー達が目標とするこの施設の一室に、3人のジムリーダーが集まっていた。部屋の中は静かで、誰も口を開こうとしない。

 だが、その静寂は突如として破られる。

 

「おはよう……」

 

 タキがどこか眠たげな表情を見せて部屋の中に入ってきた。

 

「おう、お疲れさん。カロス地方はどうだった?」

 

 椅子に座っていたユコウが笑みを浮かべて声を掛ける。

 

「まあ、それなりに楽しかったですよ」

「カロス地方、良いよねあそこ! ヒャッコクシティには行った?」

 

 どこか興奮した様子で畳みかけるのは、エスパータイプを用いるジムリーダーであるバニラだ。

 

「いや、行ってないけど」

「えー、勿体ない。あそこの日時計、とっても凄いんだよ!」

 

 彼女の本業は歌手であり、時折別の地方に赴いてはコンサートを開いている。タキとは年齢が近いことも有り、お互いに良い友人だ。

 

「……雑談はそのくらいにして、そろそろ向かいましょう」

「えー、もう少し話してても良いでしょー?」

 

 堅い表情でハルユキが発した言葉にバニラが文句を述べる。だが、ハルユキはその言葉を受け入れない。

 

「今も待っているトレーナーが居るんです。私達の役割を忘れた訳では無いでしょう?」

「そうだな。折角待ってくれているんだ。その期待には応えないとだろう!」

 

 バニラはなお何かを言いたげな表情を見せるが、ユコウの言葉も有ってそれを受け入れる。

 そして4人は部屋を出て、長い通路を歩く。

 

「ねえ、タキちゃん」

「どうかした?」

 

 その最中、バニラが再びタキに声を掛ける。

 

「何か楽しそうだね?」

「……まあね」

 

 タキの脳裏には、数日前までの交流大会が思い起こされる。あの試合の後、カロス地方でメガシンカ継承者としても活動しているジムリーダーと連絡先を交換したり、プラターヌ博士の研究所を訪れたり、オーヴ地方には居ないポケモンを捕獲したりと、満足な活動を送ることが出来た。そのテンションが漏れ出しているのかもしれない。

 

「まあ、これで遅刻とかなければ何も文句は無いんですがね」

「……」

 

 ハルユキの言葉をスルーしながら歩みを進めると、目の前の通路が4つに分かれる。

 

「それでは、行くぞっ!」

 

 ユコウの掛け声に、他の3人は静かに応え、それぞれ別々の通路へと進んだ。

 

 

 

 

 

 彼は地元では名が通ったトレーナーだった。幼いころから何度もバトルを経験し、勝利をもぎ取ってきた。そんな彼が現在目指しているのは、オーヴ地方最強のトレーナーの称号。つまりチャンピオンとなる事だ。

 ポケモンリーグで四天王全員を倒すことが出来れば、チャンピオンとのエキシビジョンマッチの切符を手に入れることが出来る。それに勝つことが出来れば、きっと自分は誰もが憧れる存在になれるだろう……。

 そんな妄想をしながらポケモンリーグの入り口である巨大な門を潜った。

 

 だが、そんな彼が今目にしているのは、まさに悪夢としか言いようがない光景であった。

 

「くっ、あくのはどうだっ!!」

 

 指示を受けて、口から漆黒の閃光が放たれる。

 

「ゲンガー、躱して」

 

 だが、その攻撃はまるで宙を泳ぐかのように動くゲンガーには命中しない。

 

「地面に向かって、きあいだま」

「ゲンガッ!」

 

 ゲンガーが巨大なエネルギーの球を地面に向かって放つ。その威力によって砂埃が舞い、ゲンガーの姿が視界から消える。

 

「ヘルガー、気をつけろ!」

「ルガッ!」

 

 彼とヘルガーはゲンガーの攻撃を警戒し、砂煙を注意深く見つめる。しかし、いつまで経っても攻撃が来ない。何かがおかしいと思い始める。

 

「……なっ!?」

 

 そして砂煙が晴れると、彼は驚愕に目を見開く。そこにゲンガーの姿が無かったのだ。

 

「一体、どこにっ!?」

 

 彼とヘルガーは慌てて辺りを見回す。相手はその焦りを見逃さなかった。

 

「今だよ」

「ゲンガッ!」

 

 突然、ヘルガーの影が蠢いたかと思うと、その中からゲンガーが飛び出してきたでは無いか。あまりのことに彼の動きが止まる。その隙を狙って、ゲンガーは至近距離できあいだまをヘルガーに向かって放った。

 

「ルガ―ッ!?」

 

 その強力な一撃を食らったヘルガーは倒れ伏し、戦闘不能となる。

 

「くっ……」

 

 これで倒されたのは計3体。残りの手持ちも3体。対して相手の残りの手持ちは、場に出ているゲンガーを含めて2体。数だけなら有利に思える。だが実際はそうではない。既に残りの手持ちのポケモンは全てダメージを受けているのだから……。

 

 当初はあくタイプのポケモンで一気に倒そうと考えていたが、相手が最初に繰り出したヨノワールのかわらわりによってマニューラが一撃で倒されてしまい、そのまま相手のペースに呑まれてしまっていた。

 回復のためのアイテムを使えば、その間に強力な攻撃を受けてしまうため、バトルに追いつかない。

 

「さあ、次のポケモンを出したら?」

 

 慈悲を感じられないその言葉に心が折れそうになる。だが一度挑んだ勝負を逃げ出すわけにはいかない。それがトレーナーとして彼に残された最後のプライドである。

 彼は震えを気力で抑え込み、ボールを投げた。

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

 全てのバトルが終わり、裏の通路でタキは溜息を吐く。

 彼女の下へ来た挑戦者は2人。いずれもこちらの弱点であるあくタイプを使ってきたが、それで簡単に負けるようでは四天王と呼ばれるわけがない。切り札であるムウマージを繰り出すまでも無く、二人とも倒した。しかし、出番が無かったということで、ムウマージは少し不満げなようだ。

 

「お疲れー」

 

 一足早く、休憩室へと戻っていたバニラがドリンクを飲みながら手を挙げる。

 

「そっちも余裕だったみたいだね」

「まあね」

 

 今日の挑戦者は、誰一人として四天王を倒すことが出来ず散っていった。

 全員、初のリーグ挑戦ということも有ってか、四天王と他のジムリーダーを同一に考えている様子だったが、それは間違いである。

 オーヴリーグと他の地方のポケモンリーグは、それぞれの地方の活性化するために設置されたという点は同じであるが、細部が若干異なる。他の地方が最強のトレーナーであるチャンピオンの選定を目的としているが、オーヴリーグは各トレーナーのスキルアップが目的である。ジムはそれぞれのタイプの特色や戦術など、基本的な内容を実践を通して教えることが役割である。そして積み重ねた経験が一定のラインを超えているか判断するために四天王とのバトルを行う。つまりオーヴリーグ制覇とは、オーヴ地方においてトップクラスの実力であることを証明するものである。

 この性質上、四天王自身も用いるポケモンのレベルは本来のものより低くなっているが、ジムリーダーとは異なりバトルまで手加減するということは無い。ジムリーダーとのバトルを「授業」と表現するなら、四天王とのバトルは言わば「試練」。ジムバッジを集めただけで簡単に攻略出来るほど甘いものではない。

 

「ねえ、もし暇ならわたしとバトルしない? ちょっと燃焼不足でさ、本気のバトルしたいんだよねえ」

 

 バニラが突然笑みを浮かべて提案する。

 

「まあ、良いけど……」

 

 この後は特に予定はない。それにバトル出来なかったムウマージのフラストレーションを発散するにはちょうど良いかもしれない。

 

「ほう、二人のバトルか!」

 

 ちょうどそこにユコウとハルユキも入ってくる。

 

「面白そうだな。ワシも混ぜてくれないか?」

「良いですよ! むしろこっちからお願いしたいです」

 

 バトルする相手が増えてはしゃぐバニラ。

 ハルユキも興味深そうに近づく。

 

「僕もご一緒させてもらいます。ユコウさんのバトルは勉強になりますし」

「ちょっとハルユキさん。その言い方だとわたしのバトルには興味無いように聞こえるんだけど?」

「悪いが、君のバトルスタイルは僕のものとは違いすぎるでしょう?」

「ふーん」

 

 拗ねるバニラと溜息を吐くハルユキ。そんな二人を横目で見ながら、タキはユコウに声を掛ける。

 

「ユコウさん。送ったヌメラの様子はどうですか?」

「ん? ああ、あの子か。今はまだ新しい環境に慣れてないみたいで、落ち着きが無いことが多いな。ただバトルに興味が有りそうな様子だったから、時々ジムに連れて行ってる」

「そうですか。もし何か有ったら、教えてください」

 

 ユコウはその言葉に頷く。

 折角のカロスから連れてきたポケモンだ。出来るならその進化の瞬間も見てみたい。

 

「ねえ、そろそろ行こうよ!」

 

 いつの間に機嫌が直ったのか、バニラが声を掛けてくる。

 

「絶対、ボッコボコにしてやるんだから!」

「言っていると良いですよ。今日こそ、僕の方が上であると証明しましょう」

 

 いつの間にか二人がバトルするという流れになっているが、これでハルユキの参加も決定した。さて、それではバトルの順番はどうするか。タキがそう考えていると、休憩室の扉が突如として開いた。

 

「面白そうなこと話してるね」

 

 四人が一斉に扉の方へ視線を向ける。そこに居たのは、タキやバニラと同年代の青年。茶髪でツリ目が印象的な男だ。

 

「俺も混ぜてよ。久しぶりに本気で戦いたいし」

 

 好戦的な雰囲気を醸し出す彼の名は『レイジ』。このポケモンリーグの頂点。オーヴ地方の現チャンピオンだった。




【キャラ紹介】
バニラ
●女性/20代前半/アンドウシティジムリーダー
●「ワンダーシンガー」
●アンドウシティの正式なジムリーダーで四天王の一人。オーヴ地方では有名な歌手でもある。エスパータイプを得意とする。
●明るく、だれとでもすぐに仲良くできる。
●一人称は「わたし」
●トリックルームやワンダールームなど特殊な場を作り出して相手を翻弄する。
●名前の由来はラン科の植物「バニラ」。



【メガシンカ紹介】
ユキメノコ
●こおり・ゴースト ●すりぬけ
●種族値:70(0)-80(0)-85(15)-125(45)-90(20)-130(20)-580(100)
●とくこうが大きく上昇したほか、すばやさがメガゲンガーと同数値に変化した。
●特性はすりぬけとなり、みがわりを無視して攻撃可能。当初はゆきふらしを想定していたが、ライバルが多いため変更した。結果としてこおりタイプ唯一のすりぬけ持ちである。
●見た目のイメージとしては、身長が伸び、頭部から青い髪のような長い毛が生える。また顔には氷の結晶のような仮面が装着される。


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12話

本話で新たに二体のオリジナルメガシンカポケモンが登場します。


 ポケモンリーグチャンピオン。それは全てのトレーナー達の頂点。誰もが憧れる存在である。

 多くの場合、チャンピオンとなるためには、ポケモンリーグで全ての四天王を倒し、その上で現チャンピオンとバトルで勝利する必要がある。そしてポケモンリーグに挑むため、トレーナー達は各地のジムに赴き、8つのジムバッジを集めるのだ。

 しかしオーヴ地方では、少しばかりルールが異なる。

 オーヴ地方ではジムバッジには二つの種類が存在する。一つは縁が銀色の通称ルーキーバッジ。もう一つは縁が金色の通称マスターバッジだ。トレーナー達はまず、8つのルーキーバッジを集めることで、四天王への挑戦権を獲得する。そして四天王全員を倒すと、次の段階として、チャンピオン認定戦へ挑む権利を獲得する。

 チャンピオン認定戦では、まずオーヴ地方の各ジムリーダーと本気のバトルを行う。その際に勝利の証として渡されるのが、マスターバッジである。このマスターバッジを18種類集めた人物、つまり全てのジムリーダーと本気のバトルをして勝利した者のみが、再度ポケモンリーグに赴き、四天王に再度挑戦することが出来る。そして見事勝利すれば、その者がチャンピオンと認定されるのだ。

 このような回りくどいシステムにしているのは、オーヴ地方のポケモンリーグの目的の一つがトレーナーの育成にあるためである。ジムチャレンジ及び四天王とのバトルは、指導の一環という側面があるため、どうしても本来の実力とはなりがたい。それで四天王を全員倒したところで、真の意味でオーヴ地方の頂点とは言い難いだろう。しかし、四天王が最初から本来の実力でバトルをすると、ジム攻略者とは大きな差が出来てしまう。

 これらの問題を解決すべく、オーヴ地方ではポケモンリーグ攻略とチャンピオンの選定にこのような仕組みを設定することとなった。

 無論、それでもポケモンリーグ攻略は狭き門である。通常の攻略ですら、数か月に1人出るか出ないか。その攻略者達も、待ち構える本気のジムリーダー達とのバトルに苦戦している。

 だが、これらの長き道を唯一完全に制覇した人物がいる。その者の名は『レイジ』。現オーヴ地方のチャンピオンとして君臨する人物である。

 

 

 

 

 

「シンボラー、エアスラッシュ!」

「ムクホーク、はがねのつばさで迎え撃て!」

 

 ポケモンリーグ内にあるバトルフィールド。通常時はチャンピオンがチャレンジャーとのエキシビジョンマッチを行う際に使われる場所だ。しかし、今チャンピオンに挑んでいるのはチャレンジャーではない。四天王の一角であるバニラだ。

 レイジも参加することとなり、総勢5名によるバトルを行うこととなり、厳正なるジャンケンの結果、最初にこの二人が勝負することとなった。

 ルールは3対3のシングルバトル。先に手持ち全員が戦闘不能になった方の負けというシンプルなものである。

 

「やっぱり強いね! でも負ける気なんて無いよ! サイコショック!」

 

 シンボラーが翼を広げ、強力な念動力を弾丸に変化させ放つ。

 

「でんこうせっかで躱せ!」

 

 ムクホークは瞬間的に加速し、放たれた念動力を紙一重で避ける。そしてシンボラーを肉薄すると、鋭い嘴がその胴体を貫く。

 

「続けてブレイブバード!」

 

 レイジの指示の下、ムクホークは急激に高度を上昇させる。そしてでんこうせっかの一撃で体勢が崩れたシンボラー目掛け急降下をする。

 

「ラスターカノンで迎え撃って!」

 

 それに対してシンボラーは強力なエネルギーを放つことで迎撃しようとする。ムクホークの突撃とシンボラーの光線。互いがぶつかり合い、一時的な拮抗状態となるものの、僅かにムクホークのパワーが上回る。

 

「ホォークッ!!」

 

 その一撃は光線を貫き、シンボラーにクリティカルヒットする。

 

「ボ……ラァ」

 

 強烈な攻撃を受けたシンボラーは地面に叩きつけられ意識を失う。

 

「まずはこれで一体だな」

「そうだね。でもまだまだここからだよ!」

 

 バニラはシンボラーをボールに戻し、新たなボールを構える。

 

「次のパートはカラマネロっ!」

 

 ボールから出て来たのは、逆立ちをしたイカのような紫色のポケモン。鋭い眼光でムクホークを睨む。

 

「それを見るのは初めてだな。だが、相手にとって不足無しだ!」

 

 レイジと同様にムクホークも油断せずにカラマネロを見つめる。

 

「先手必勝! ブレイブバード!」

 

 ムクホークはシンボラーと同様に急降下からの突撃でカラマネロを貫こうとする。だが、

 

「ばかぢから!」

「何っ!?」

 

 カラマネロが二本の触腕でムクホークの体を受け止めた。

 

「カラマネロのパワーは伊達じゃないよ!」

 

 さらにカラマネロは触腕を使ってムクホークを振り回す。その遠心力にムクホークは為す術がない。

 

「マァーネッ!!」

 

 勢いよく地面へと叩きつけられる。二度のブレイブバードによる反動を受けていたムクホークはそのまま戦闘不能となる。

 

「よくやったムクホーク。ゆっくり休んでてくれ」

 

 自らのポケモンに労りの言葉を掛けながらボールに戻すと、レイジは次のポケモンの準備をする。

 

「パワーにはパワーだ! 行けっ、カイロス!」

 

 姿を現したのは、二本の太い角が特徴的な虫ポケモン。

 

「まずはビルドアップ!」

「カイッ!」

 

 カイロスが全身に力を込めると、細かった腕が一回り大きく膨張する。

 

「それならこっちはばかぢから!」

 

 カラマネロは力強く触腕を振り上げる。

 

「カイロス、こっちもばかぢからだっ!」

 

 しかし、その触腕はカイロスの腕によって掴まれる。全力のパワーで押し切ろうとするが、互いの力はほぼ互角。鍔迫り合いの様相を呈する。

 

「前はそのカイロスにやられたけど、今度はそうはいかないよっ!」

「それは楽しみだな! シザークロス!」

 

 カイロスは頭部の角で挟もうとする。だが僅かの差でカラマネロが後ろに飛び去り、距離を取ったためその一撃は空を切った。

 

「カラマネロ、もう一度ばかぢからだよ!」

 

 今度はその触腕を足元に叩きつけ、地面を隆起させた。足場が崩れ、若干動きが鈍ったカイロスにカラマネロが接近する。

 

「つばめがえしっ!」

 

 素早い一撃がカイロスに直撃し、大きなダメージを与えることに成功する。

 

「カイロス、大丈夫か!?」

 

 カイロスはまだ戦えると、腕を挙げる。だがカラマネロのパワーには押され気味であり、余裕があるとは言い難い。

 

「まだまだここからだよ。やっと仕上がってきたんだから」

 

 このカラマネロの特性はあまのじゃく。本来ばかぢからは使えば使うほど力が下がっていく技だが、この特性を持つポケモンは逆にどんどんパワーを増していくという性質がある。カラマネロは何度もばかぢからを使ったため、今のカイロスのパワーを超えた力を有している。

 

「つじぎり!」

 

 カラマネロが力を込めて放った触腕の一撃がカイロスを捉える。

 

「カイロス、シザークロスだ!」

 

 だが接近した一瞬の隙を突いて、カイロスが角でカラマネロを切り裂いた。

 

「マァーネッ!?」

 

 むしタイプの技はカラマネロにとって最大の弱点。一撃で大きく体力を削られる。

 

「つばめがえし!」

「シザークロス!」

 

 互いに技を連発し、一進一退の攻防が続く。高いパワーを持つカラマネロの触腕がカイロスを薙ぎ払い、相性が良いカイロスの角がカラマネロを切り裂く。

 

「「ばかぢから!」」

 

 その果てに互いに全力を込めたパンチを放つと、精根尽き果てたのか両者は少しよろめいた後、同時に倒れた。

 

「これは引き分けだな。それにしても、中々見ごたえのあるバトルだった」

 

 ユコウの言葉通り、全力の二体のバトルは見ていた全員を引き込むほどのものだ。

 だがまだバトルの決着は付いていない。互いに最後の一体が残っている。

 

「ふふふっ」

「はははっ」

 

 二人は揃って笑いだす。それだけこのバトルが楽しいということでもある。

 

「それじゃ、行こうか」

「ああ。全力で相手してやる!」

 

 そして互いに最後のボールを投げる。

 

「最高のステージにするよ、ネンドール!」

「行くぞ、フライゴン!」

 

 奇しくも互いが出したのはじめんタイプ。それぞれが最も信頼するパートナーを繰り出すが、それだけには留まらない。

 バニラは首に掛けたネックレスに、レイジは左手首に着けた腕輪に触れる。するとネンドールとフライゴンの全身が光に包まれていくでは無いか。

 

「煌け、私達のステージ!」

「究極の頂を駆け上がれ!」

 

 光の中で二体のポケモンは徐々に姿を変えながら、その力を増していく。

 

「「メガシンカっ!!」」

 

 そして光が晴れると、そこには新たな力を得た二体のメガシンカポケモンが姿を見せ、互いに睨み合った。




前半で長々と書きましたが、要はチャンピオンになるにはポケモンリーグを二回攻略する必要があるということです。

【メガシンカ紹介】
クリムガン
●ドラゴン ●かたいツメ
●種族値:77(0)-160(40)-125(35)-60(0)-115(25)-48(0)-585(100)
●こうげきが大きく上昇し、さらに特性がかたいツメとなったため、物理打点が大きく上昇した。その数値はメガメタグロスを超えており、同特性持ちのポケモンの中ではトップとなった。
●反面すばやさは全く上昇していないため、何かしらのサポートが求められる。
●見た目のイメージは、両腕が肥大化し、全身にトゲが生えた。また眼の上に二本の角が伸びている。


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13話

 光が晴れると、ネンドールとフライゴンはそれぞれより力を増大させた姿へと変貌していた。

 ネンドールは頭部が肥大し、周囲には念動力によって操られた土塊があたかも自らを守る盾のように浮遊する。

 対するフライゴンは翼が透き通り、一対から二対へと増えた。また触角や尻尾も伸び、神秘的な雰囲気を醸し出す。

 

「「だいちのちから!」」

 

 そんな二体が最初に繰り出したのは、奇しくも同じ技だった。ネンドールは強力なサイコパワーで、フライゴンは長い尻尾で地面に刺激を与え、強力なエネルギーを放つ。威力はほぼ互角、しかし若干ながらフライゴンが放った技の方が有利に見える。相手のだいちのちからを押し込みつつも、ネンドール本体には届かない。

 

「やっぱり、強いな!」

「まだまだ、私達のステージはここからだよ!」

 

 だいちのちからが相殺しあったのを見届けると、続いてバニラは新たな技の指示を下す。その動きを見ていたレイジは、過去の対戦でも使われた技であることを見抜き、すぐさま妨害しようと目論む。

 

「フライゴン、むしのさざめき!」

 

 透明な二対の翼を震わせ、強力な音波をネンドールへと放つ。その音量の前には高い耐久力を持つネンドールでさえも大きなダメージを受けた。だが、技の発動を封じるまでにはいかない。

 

「トリックルーム!」

 

 ネンドールを中心にバトルフィールドが特殊な空間によって包まれる。その光景を見ていたレイジは歯噛みする。このフィールドこそ、かつてレイジを追いつめたバニラの得意戦術だ。

 

「それじゃあ行くよ。れいとうビーム!」

 

 ネンドールの目から強力な冷気が放たれる。フライゴンは持ち前のスピードで躱そうとするが、特殊なフィールドによってその動きが阻害される。まるで水中の中に居るかのような抵抗を受け、うまく体を動かすことが出来ず、れいとうビームが尻尾に掠る。

 

「大丈夫か、フライゴン?」

「フラッ!」

 

 ダメージは大したことが無かったようで、力強く応える。だがフィールドはトリックルームで包まれている。普段通りのパフォーマンスをすることはほぼ不可能だ。

 

「フライゴン、だいちのちから!」

 

 再度フライゴンが地面を振動させ、強力なエネルギーを放つ。だがネンドールはまるでテレポートをしたかのようにその場から一瞬にして消えることによって、攻撃を躱して見せた。

 一体どこに消えたのかと、レイジとフライゴンは周囲に気を配る。

 

「れいとうビーム!」

 

 バニラが指示を出した瞬間、フライゴンの背後にネンドールが姿を現し、冷気を無防備な背中に向かって放つ。並みのトレーナーやポケモンであれば、為す術も無く攻撃を受けてしまうだろう。しかも放たれたのはこおりタイプの技。フライゴンにとって最大の弱点でもあるその攻撃をまともに受ければ、ただでは済まない。

 

「フライゴン、だいもんじを身に纏え!」

 

 だがここに居るのはオーヴ地方最強のトレーナとそのパートナーだ。

 フライゴンは口から「大」の字を模した火炎を吹き出して、自身の周囲を包み込んだ。

 

「なっ!?」

 

 強力な炎はフライゴン自身にもダメージを与えるが、それは軽微なものである。れいとうビームを熱気によって防ぎきって見せると、フライゴンは羽ばたき一つで炎を振り払った。

 普通なら思いつかないだろう防御方法に、バニラを含めた面々は唖然とする。

 

「よくもそんな無茶をするね……」

 

 バニラは溜息交じりに言うが、あんな戦術を思いつく思考とそれを実行して見せたフライゴンとの絆には素直に感嘆する。

 

「でも、まだ私のステージは終わらないよ。サイコキネシス!」

「ネンドッ!!」

 

 ネンドールが集中すると、フライゴンの体の自由が奪われる。強力な念動力によって動きを封じられたフライゴンは、そのままネンドールの意のままに操られ、宙へと舞い上げられたり、地面に叩きつけられたりする。

 

「フライゴン、耐えろ!」

 

 サイコキネシスへの対策は、強引に力で支配から逃れるか、技の影響が消えるまでひたすら耐え続けるしかない。そしてメガシンカしたネンドールのサイコパワーの力を考えると、取れる戦術は後者に限られる。だが、振り回され続けるフライゴンの体力は徐々に削られていく。

 

「フィナーレっ!!」

 

 バニラの言葉と共にフライゴンはより高く宙へと持ち上げられると、勢いよく地面へと落とされた。発生する轟音はバトルフィールドだけでなくリーグ全体に響きそうなほどである。

 だが、反動で舞い上がった土煙の中、立ち上がる影が一つ。

 

「まだいけるか、フライゴン?」

「フラッ!!」

 

 体力を大きく奪われたにも関わらず、その瞳からは闘志が消えていない。

 

「行くぜ、むしのさざめき!」

「躱して、ネンドール!」

 

 しかし、未だにトリックルームによってフィールドは支配されている。どんなにフライゴンの闘志が強くても、ネンドールは悠々とその技を躱してしまう……はずだった。

 

「えっ?」

 

 バニラの気の抜けた声。彼女が見たのは、フィールドを覆う空間が消えていく光景。それが意味するのは、トリックルームの時間切れである。

 

「ネンドッ!?」

 

 その瞬間、ネンドールの動きが急に鈍くなる。否、元に戻ったと言うべきだろう。メガシンカしたネンドールの素早さはメガシンカ前と比べ極端に落ちる。だからこそトリックルームとの相性が良い。しかしそれ無しで有れば、まさに的である。

 強力な音波をその身に受け、大きく体勢を崩す。

 

「ネンドール、もう一度、トリックルームだよ!」

 

 再びフィールドを支配すべくネンドールはゆっくりと宙に浮かぶ。だが、それをレイジがただ見ているわけが無い。

 

「フライゴン、だいちのちからでネンドールのバランスを崩すんだ!」

 

 ネンドールの足元に向かって、フライゴンは渾身のエネルギーを放つ。それ自体が与えるダメージはたかが知れている。しかしそれは攻撃するための一撃では無く、次に繋げるためのもの。ネンドールはメガシンカした影響で頭部が巨大化し、体幹のバランスが悪い。それを念動力によってサポートしているわけだが、今はトリックルーム展開のために集中している。必然的に体を支えている力も低下しているのである。

 

「ネンッ!?」

 

 右足を掬い上げるかのように放たれたエネルギーによって、ネンドールはバランスを崩し、後ろへと倒れこむかのような体勢となる。

 そして生まれた隙を狙って、レイジは最大の一撃を指示した。

 

「りゅうせいぐんっ!!」

「フライッ!!」

 

 フライゴンが溜め込んだエネルギーを頭上に向かって放出すると、それは幾重にも別れまるで夜空の流れ星のようにフィールドに降り注ぐ。

 

「れいとうビームでガード!」

 

 ネンドールも降り注ぐエネルギー弾に対し、冷気の光線で対抗するが、身動きが上手く取れない中で数えきれないほどの量を打ち落とすのは無理が有る。

 

「ネン―ッ!?」

 

 一つ、また一つと光弾をその身に受け、ネンドールは大きなダメージを受けながら、巻き上げられた砂煙にその姿が消えていく。

 

「ネンドールっ!?」

 

 そして砂煙が晴れた後に残っていたのは、もはや動く気力も無く、メガシンカも解けて倒れ伏したネンドールだった。

 

「……私の負けか~」

 

 ぽつりとバニラが呟く。その言葉には強い悔しさが感じられた。

 

「二人とも、お疲れ様。良い勝負だったな」

 

 ユコウが手を叩きながら観客席からフィールドに降りる。

 

「本っ当に楽しかった。多分、あの場でトリックルームが解けなかったら負けてたかもしれないな」

 

 レイジの言葉通り、トリックルームの解除時間がもう少し遅かったら、バトルの結果はまた違ったものになったかもしれない。

 

「大体、五分程度かな。もう少しデータが有ればちゃんとした効果時間がはっきりすると思う」

 

 懐中時計を手にしながらタキが言う。トリックルームの持続時間が明確になれば、もしもの時に慌てずに済むだろう。

 

「うん、それじゃあ後でバトルしながら計測してくれる?」

 

 バニラの言葉にタキは頷いて答えた。データが取れればそれだけバニラにとってもタキにとっても有益だ。

 

「それじゃあ、次は私とユコウさんだね」

「二人とも、今のうちに回復させて来い。戻ってきてからバトル始めるからな」

 

 ユコウの言葉に従って、レイジとバニラはポケモン回復装置へと向かう。

 

 それからポケモンリーグでは夕方までバトルの音が響き渡るのであった。




【キャラ紹介】
レイジ
●オーヴ地方チャンピオン
●男性/20代前半
●オーヴ地方でで唯一全てのジムリーダーとバトルをして勝利した青年。
●若いながらもチャンピオンとして、オーヴ地方でポケモンバトルを教える役割などを担っている。
●茶髪でツリ目。
●一人称は「俺」。
●名前の由来はキンポウゲ科の植物「オオレイジンソウ」。



【メガシンカ紹介】
フライゴン
●じめん・ドラゴン ●てきおうりょく
●種族値:80(0)-100(0)-85(5)-135(55)-85(5)-135(35)-620(100)
●特攻が大きく上昇し、さらに特性がてきおうりょくとなったことで高い打点を獲得した。素早さはメガゲンガーを超えた数値となっている。
●反面、防御と特防は僅かしか上がっていないため、耐久面には不安がある。
●特殊型にしたのは、ガブリアスとの明確な差別化のため。


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番外編 四天王&チャンピオンの手持ち

ゲームの攻略本的なノリで纏めました。
なおレベルはあくまで、ゲーム(一週目)だったらこの位だろうというイメージによるものです。
表形式は初めて書いたので、見づらかったら申し訳ございません。


【ハルユキ(でんき)】

ポケモンタイプ性別特性レベル
サンダースでんきちくでんLv54ほうでんシャドーボールシグナルビームかげぶんしん
ジバコイルでんき・はがね不明がんじょうLv5410まんボルトラスターカノントライアタックエレキフィールド
ランターンみず・でんきちょすいLv55かみなりあまごいハイドロポンプれいとうビーム
ゼブライカでんきひらいしんLv56ワイルドボルトニトロチャージでんこうせっかあばれる
レントラーでんきいかくLv58ワイルドボルトアイアンテールこおりのキバこわいかお

●弱点であるじめん技を持ったポケモンで挑むのが良い。問題はランターン。「あまごい」によって威力が上がった「ハイドロポンプ」は驚異の一言に尽きる。さらに必中となる「かみなり」も危険だ。ジバコイルは「エレキフィールド」を張ってでんき技の威力を上昇させてくるので注意が必要である。

 

 

 

 

 

【バニラ(エスパー)】

ポケモンタイプ性別特性レベル
シンボラーエスパー・ひこうマジックガードLv54サイコショックエアスラッシュエナジーボールラスターカノン
ヤドランみず・エスパーマイペースLv54サイコキネシスかえんほうしゃねっとうワンダールーム
エーフィエスパーシンクロLv55サイコキネシスマジカルシャインシャドーボールめいそう
カラマネロあく・エスパーあまのじゃくLv56サイコカッターつじぎりばかぢからつばめがえし
ネンドールじめん・エスパー不明ふゆうLv58サイコキネシスだいちのちかられいとうビームトリックルーム

●ヤドランが使う「ワンダールーム」は防御と特防が入れ替わる技。特防が高いポケモンを繰り出して返り討ちに遭う場合があるので注意しよう。カラマネロは特性のあまのじゃくを利用して、「ばかぢから」による強化をしてくる。相手が強くなる前に早めに倒したい。

 

 

 

 

 

【タキ(ゴースト)】

ポケモンタイプ性別特性レベル
ヨノワールゴーストプレッシャーLv54シャドーパンチれいとうパンチあやしいひかりかわらわり
シャンデラゴースト・ほのおもらいびLv54オーバーヒートシャドーボールエナジーボールおにび
オーロットゴースト・くさしぜんかいふくLv55シャドークローウッドホーンシザークロスやどりぎのタネ
ゲンガーゴースト・どくのろわれボディLv56シャドーボールサイコキネシスきあいだまどくどく
ムウマージゴーストふゆうLv58たたりめマジカルフレイムマジカルシャインでんじは

●全てのポケモンが何らかの手段で状態異常・状態変化を与えてくる。特に厄介なのはゲンガーとムウマージ。ゲンガーの「どくどく」のダメージはバトルが長引くほど危険。ムウマージは状態異常の時にダメージが倍になる「たたりめ」とのコンボが厄介。「なんでもなおし」を購入するか、「しぜんかいふく」などの特性持ちのポケモンを用意することが望ましい。

 

 

 

 

 

【ユコウ(ドラゴン)】

ポケモンタイプ性別特性レベル
チルタリスひこう・ドラゴンしぜんかいふくLv54りゅうのいぶきムーンフォースれいとうビームコットンガード
ガチゴラスいわ・ドラゴンがんじょうあごLv54ストーンエッジドラゴンテールかみくだくじしん
ドラミドロどく・ドラゴンてきおうりょくLv55りゅうのはどうヘドロウェーブハイドロポンプ10まんボルト
カイリュードラゴン・ひこうせいしんりょくLv56ドラゴンダイブほのおのパンチつばめがえしりゅうのまい
クリムガンドラゴンさめはだLv58ドラゴンクローばかぢからシャドークローがんせきふうじ

●ドラゴンタイプの弱点であるこおりタイプやフェアリータイプの技が有効。しかし使用ポケモンの中にはそれぞれに対し弱点を突けるガチゴラスとドラミドロが居るため注意が必要。またカイリューは「りゅうのまい」によって能力を上昇させてくる。何度も使われると止められなくなる危険があるぞ。

 

 

 

 

 

【レイジ(チャンピオン)】

ポケモンタイプ性別特性レベル
ムクホークノーマル・ひこういかくLv57ブレイブバードでんこうせっかインファイトはがねのつばさ
カイロスむしかたやぶりLv58シザークロスばかぢからビルドアップストーンエッジ
ラプラスみず・こおりシェルアーマーLv59ハイドロポンプれいとうビームぜったいれいど10まんボルト
キュウコンほのおもらいびLv59かえんほうしゃサイコショックエナジーボールわるだくみ
エルレイドエスパー・かくとうふくつのこころLv60サイコカッターインファイトリーフブレードつるぎのまい
フライゴンじめん・ドラゴンふゆう→てきおうりょくLv62りゅうせいぐんだいちのちからむしのさざめきだいもんじ

●バランスが良く、目立った弱点が無い。いずれも強力な技を持っており、それぞれ対応する必要がある。さらに切り札であるフライゴンはメガシンカしてくる。重要なのは自分もバランス良くポケモンを育てること。相手に合わせて有利なポケモンを繰り出せば必ず勝てる。



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14話

今回はタキは登場しません。

使うか不明の裏設定
●オーヴ地方にはアクセサリーショップが存在し、キーストーンを所持していると、好きなアクセサリー(バングルやラベルピン等)に加工してもらえる。


 カンザンシティ。オーヴ地方の中部に位置するこの街の目玉は、オーヴ最大の規模を誇るカンザン博物館と、その隣にあるジムだ。

 かつては博物館も来場者が少なく、街も寂れていた。だがポケモンリーグが設立され、この街にもジムが建てられたことにより、状況は一変。多くのトレーナーがこの街を訪れ、ジムチャレンジ中の寄り道として博物館に訪れるようになった。この影響で街は活気を取り戻し、今ではオーヴでも有名な都市となった。

 そして今日も、ジムリーダーとチャレンジャーのバトルが行われている。

 

「プテラ、つばさでうつ!」

「かたくなる!」

 

 広いジムの中を悠々と飛ぶ化石ポケモンの翼が、全身に力を込めて防御する草ポケモンの体を捉える。巨体から放たれる一撃は、いくら表面を硬くしていても、その勢いを封じることは出来ず、風に吹かれた木の実のように軽い体が飛ばされる。

 

「タネボー、戦闘不能!」

 

 たった一撃で戦闘不能となったタネボーをボールへと戻した少年は、次のポケモンを構える。

 

「行け、ラクライ!」

 

 繰り出したのはひこうタイプを兼ね備えるプテラに有効な、でんきタイプのポケモン。

 

「頼んだぞ、ラクライ!」

「ラーイッ!!」

 

 元気の良い鳴き声で少年に応えるラクライ。

 初めてのジムチャレンジでありながら、ポケモンとの確かな絆を感じさせるその姿を見たカンザンシティジムのジムリーダー、ロベッジは優しい表情で微笑んだ。

 

 

 

 

 

 彼がジムリーダーとなった理由、それはこの街の活気を取り戻したかったということ。博物館の職員でもある彼は、毎日のように展示物の確認や掃除、その他様々なことを率先して取り組んでいた。それは偏に、彼自身が博物館のことが好きだったためである。この街で生まれ育った彼は、毎日のようにこの博物館に通い、古代のポケモンの化石や隕石の破片を眺めたりすることが好きだった。大人になった彼は、その思いを他の子供たちにも知ってもらいたいと、この博物館に就職し、毎日のように活動をしていた。

 だが、この街に限らず、オーヴ地方は年々寂れていく。トレーナーを目指す若者達は別の地方へと消えていき、この博物館を訪れるのは近くの学校の生徒や自分のような物好きのみ。若者達と同様に、この博物館はいつか消えてしまうのではないか。言いようのない不安を何年もの間ロベッジは抱いていた。

 

 そんな折、オーヴ地方にポケモンリーグが設立され、ジムリーダーの候補を探しているという話を聞いたとき、彼はチャンスだと考えた。もし自分がジムリーダーとなってこの街にジムを開けば、ジムチャレンジによってこの街は活気を取り戻すのではないか、博物館にも興味を持つトレーナーが増えるのではないか。

 自分の武器は、()()()()()()()の知識、そして愛だ。それなら他の地方のトレーナー、いやチャンピオンにだって負けはしない。

 そして彼は自身のポケモン達と共に、ジムリーダー認定試験の門を叩いた。

 

 

 

 

 

 そんな彼だが、最近はチャレンジャーとのバトルを楽しみにしている。昔から子供は好きだったが、若いトレーナーが、それぞれ手に入れた思い出深い仲間と共に挑む姿は、とても美しい。それこそ希少な宝石にも劣らない輝きを感じさせる。

 

「ラクライっ!?」

 

 だからと言って、簡単に勝たせるわけにはいかないが。ジムリーダーはあくまでチャレンジャーの実力を測る存在。チャレンジの際の手持ちはレベルが低く、技も制限されている。しかし、それでも新米のトレーナーが簡単に勝てる相手ではない。

 既に少年は三体の手持ちを倒されている。確認出来る限り、残った手持ちはあと一体。後が無くなったが、少年はそれでも諦めた様子はない。

 

「頼んだぞ、ヒノアラシっ!!」

 

 繰り出したのは、プテラとは相性が悪いほのおタイプのポケモン。だがその目には確かな闘志が感じ取れる。

 

「でんこうせっか!」

 

 ヒノアラシは猛スピードで走り出す。

 

「プテラ、上昇しろ!」

 

 だが宙を自在に飛ぶプテラには三次元的な動きが可能。飛べないヒノアラシの攻撃はプテラには届かない、はずだった。

 

「壁を走れーっ!!」

「ヒノッ!!」

 

 ヒノアラシはなんとでんこうせっかのスピードを利用して、ジムの壁を登って見せた。一瞬でプテラと同じ高さまで到達すると、壁を蹴り、プテラに飛び掛かる。

 

「ひのこだ!!」

 

 そして口から放たれる小さな火がプテラの顔に見事命中する。

 

(見事だな……)

 

 たとえ最後の一匹になったとしても、どれだけ不利な相手だとしても、迷わずに食らいつく。そんな姿を見てロベッジの脳裏には、かつて自身と激戦を繰り広げたあのトレーナーと同じ雰囲気を感じられる。

 

「プテラ、がんせきふうじ!」

 

 だがヒノアラシの攻撃でプテラに与えられたダメージは僅か。そして空中という身動きの取れないフィールドに居る獲物を逃すほど、ジムリーダーは甘くない。

 プテラが大量の岩を落下するヒノアラシに向かって放つ。自由に動けないヒノアラシはそれを躱すことが出来ず、押しつぶされるかのように岩と共に地面に叩きつけられた。

 

「大丈夫か、ヒノアラシっ!!」

「ヒノ……」

 

 満身創痍といった状態のヒノアラシ。だが、未だにその目はプテラを捉え続ける。

 

「さて、ここからどうするつもりだ?」

 

 発破代わりに少年に問いかける。ここまでのバトルを見れば、この程度で諦めるわけが無い。

 

「……よし、えんまくだ!」

 

 少年の指示に従い、ヒノアラシは口から煙を吐き出す。それは地面を覆う隠すように広がり、プテラの視点からではヒノアラシの姿は見えなくなる。

 

「なるほど!」

 

 これでは上手く攻撃を与えられない。見事に自身の不利を打ち消す戦術を取って見せた少年に感心する。

 

「だが、それなら直接煙を吹き飛ばすまでだ。つばさでうつ!」

「プテッ!」

 

 プテラは地面すれすれまで降下すると、翼を広げて滑空する。そのスピードで発生した風によって煙は吹き飛ばされ、プテラが通った場所だけきれいに煙が晴れた。

 このまま隠れ続けては、いずれ位置を特定されかねない。だが少年はこの状況を待っていた。

 

「今だ、プテラに乗れっ!!」

「ヒノッ!!」

 

 彼が待っていたのは、プテラが地面ギリギリまで降下するこの瞬間。これならヒノアラシのジャンプでも届く。

 煙の中から飛び上がったヒノアラシは身軽にプテラの背に上る。

 

「プテラ、振り払えっ!!」

 

 プテラは上昇や下降を繰り返し、ヒノアラシを振り落とそうとする。だがヒノアラシは意地でも離さないと言わんばかりに、しっかりとしがみついている。

 

「ヒノアラシ、ひのこだっ!!」

 

 その指示を受け、ヒノアラシは背中から火柱を上げる。先程までとは段違いのパワーを感じさせるが、その理由は特性にある。ヒノアラシの特性『もうか』は体力が一定以下になるとほのおタイプの技の威力が大きく上昇するというものだ。今、ヒノアラシはそれによって強力なエネルギーを獲得していた。

 

「ヒノ―ッ!!」

 

 もうかによって威力を挙げたひのこがプテラの背中へと当たり、その勢いで揚力を失ったプテラは地面に墜落していく。

 

「プテッ!?」

「ヒノッ!?」

 

 プテラと背中に乗っていたヒノアラシは共に落下し、土煙を巻き上げる。

 

「ヒノアラシっ!?」

「プテラっ!?」

 

 二人が心配していると、土煙の中から大きな火柱が上がる。そこに居たのは、倒れこむプテラの上に乗る見覚えのないポケモン。しかし、その姿はどこかヒノアラシにも似ている。

 

「これって……」

「なるほど、進化か」

 

 ヒノアラシは運よくプテラがクッションとなったことで、落下のダメージを最小限に抑えることが出来た。それと同時にバトルによって高まったエネルギーの影響でマグマラシへの進化を遂げたのだ。

 

「プテラ戦闘不能。よってチャレンジャーの勝利となります!!」

「……よっしゃあーっ!!」

 

 初めてのジムバトルを勝利で彩った少年の歓喜の叫びに、思わずロベッジの嬉しさを感じる。たとえ負けたとしても、トレーナーの成長をこの目で見るのは、何物にも替えがたい喜びがある。

 

「お疲れ様プテラ。ゆっくり休んでくれ」

 

 倒れたプテラをボールに戻したロベッジは、ゆっくりと少年に近づく。

 

「よくやったぞヒノ……じゃなかった。マグマラシ!」

「マグッ!」

 

 マグマラシの自信満々で胸を張るかのような動きを見て笑う少年は、目の前に来ていたロベッジを見て背を正す。

 

「あ、ありがとうございました!」

「ああ、別に緊張しなくても良い。君は私に勝った。よって君にはこのジェムバッジを渡そう」

 

 そう言ってロベッジは認定の証であるジムバッジを渡す。

 

「知っているだろうが、このジムバッジを八つ集めればポケモンリーグへの挑戦権を得ることが出来る」

「はい!」

「もし君がポケモンリーグを攻略して見せたのなら、今度は本気の私と勝負することが出来る。その日を楽しみに待っているよ」

 

 そしてロベッジは少年にバッジと技マシンを渡すと、倒れたポケモン達を回復させるために治療室へと行く。

 

「待ち遠しいな……」

 

 きっとあの少年とは()のように、また相対することとなるだろう。その時にはどれほど成長しているだろうか。

 挑戦者たちの冒険を見れないことを少しだけ悔しく思いながら、ロベッジは次のチャレンジャーの相手をする準備を整えるのだった。




【キャラ紹介】
ロベッジ
●男性/40代前半/カンザンシティジムリーダー
●「古代を解き明かす者」
●カンザンシティのジムリーダーを務めている男性。カンザン博物館の職員でもある。いわタイプの使い手。
●いつもスーツを着込んでいる。
●一人称は「私」
●化石採掘を趣味としており、手持ちにも化石ポケモンが多い。
●パートナーはプテラ。
●名前の由来はセリ科の植物「ロベッジ」。



【メガシンカ紹介】
ヨルノズク
●ノーマル・ひこう ●かげふみ
●種族値:100(0)-50(0)-60(10)-126(40)-126(30)-90(20)-552(100)
●特攻と特防が大きく上昇し、特殊アタッカー及び特殊受け性能が上昇した。メガピジョットに比べると火力が劣る反面、豊富な技範囲が武器。
●素早さも若干上昇した。ただし特別素早いわけでは無い。
●特性がかげふみとなり、他のひこうタイプには無い特色を獲得した。
●見た目のイメージとしては、頭部の冠羽が下にも伸び、髭のように変化。また腹部や足が黒くなる。


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15話

今更ですが、本作のポケモンの技は第七世代を参考にしています。
そのため、剣盾の技は登場しません。ご了承ください。


 ヨウザンシティ。オーヴ地方の中央に位置するこの街のとある建物にタキの姿は有った。

 

「ふむ……」

「何やってんのよ、あんた」

 

 ソファに寝ころびながらテレビを見ていた彼女の背後から声がする。振り向くとそこには、タキと同世代の女性が居た。

 

「どうしたのアルス?」

「それはこっちの台詞よ。久しぶりに戻ってきたと思ったら、寝転がってるんだもの」

 

 彼女の名はアルス。かつてタキとジムリーダーの座を賭けて争ったトレーナーであり、現在は四天王となったタキの代理としてチャレンジャーの相手を行っている。

 

「ちょっと研究が行き詰ってて……、それで気分転換がてら、面白いニュース探してた」

「ふーん」

 

 タキが行き詰っているのは、アカマツ博士から渡された三つのメガストーンについてだ。

 カロス地方でプラターヌ博士に相談をしてみたが、進捗は芳しくない。メガストーンにはそれぞれ特定のポケモンが発するエネルギーの波長を増幅させるという特徴がある。そこでミアレシティにある研究所内で記録されていた、カロス地方に生息するポケモンの持つ波長のデータを確認してもらったのだが、三つのメガストーンはどのポケモンとも適合しなかった。これが示すことは、カロス地方に生息していないポケモンのためのメガストーンということだ。そしてこのメガストーンは、オーヴ地方で発掘されたもの。それならオーヴに生息しているポケモンが適合すると予測出来る。だが、そこまでだ。オーヴ地方に生息するポケモンは、確認されているだけでも300種類近い。それら全てのデータもまだ集まりきっていないというのが現状だ。ある程度は絞り込めているが、結局は未だに適合するポケモンを見つけるまでに至っていないのだ。

 

「まあ、大きな事件とか起きてないのは良いことじゃない?」

「そうだね」

 

 タキは上半身を起こしてソファに座りなおし、アルスもその隣に腰を掛けてテレビに視線を向ける。

 流れるのはいつも通りのニュース。天気、ポケモンの大量発生、イベントの告知……。ちょっとした事件なども有るが、既に解決済みであり、目立って大きな騒ぎは無い。そんなありふれたニュースがずっと続くと思っていたが、その予想は裏切られた。

 

『続いてのニュースです。ミヤザワシティとコジカタシティを結ぶ道路で、謎のポケモンによる襲撃事件が発生しました』

 

「ん?」

 

 それまでのつまらなそうな表情から一変し、目を輝かせる。

 

『そのポケモンとはどのような姿でしたか?』

『確か、俺より一回り大きいくらいの背丈だったな……。ヒトみたいな姿なんだけど、頭が丸くて、派手な色をしてた』

『そこの草むらに入ったら急に現れたんだ。初めて見るポケモンだったから捕まえようと思ったんだけど、あっという間に手持ちが全部倒されちゃって……』

『私が見たのは、沢山のレンガが積み重なったような姿をしてた。他のトレーナーとのバトルの最中に乱入してきて……私も戦ってたトレーナーも協力して倒そうとしたけど、全然敵わなかった』

 

『現在もこの正体不明のポケモンは捜索中とのことです。皆さんも草むらに入る際には気をつけてください。以上、リアスシティよりユウカがお届けしました』

 

 レポーターの言葉で締めくくられ、CMが流れ始める。すると、一部始終を見終えたタキはソファから立ち上がった。

 

「それじゃ、行ってくる」

「は?」

 

 突然の宣言にアルスは思わず固まる。

 

「いや、行ってくるってどういうことよ?」

「ニュースに有ったでしょ? 正体不明のポケモンが現れたって」

「……まさか」

「うん。探してくる」

 

 タキは目を輝かせて言う。これがあるから手に負えないのだ。無暗に周囲へ迷惑を掛けないだけまだましではあるが……。

 

「それじゃ」

 

 思い立ったが即行動。颯爽とジムから出ていくタキの後ろ姿を見送り、アルスは溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、この先は現在、正体不明のポケモンが出現する可能性が有ります。ジムバッジを三つ以上持っていないトレーナーは、勝手に入らないようにー」

「何でだよ! 別に少しくらい……」

「そう言って怪我する奴が出てるんだから、こうして立ち入りを制限しているんですよ」

 

 ミヤザワシティの北側。コジカタシティへと繋がる道路は警官によって検問が敷かれていた。

 ポケモントレーナーの旅は自己責任が基本。ポケモンをゲットするために危険な目に遭うことも少なくないが、それでどのような傷を負ってもそれは自分が悪いとされる。だからと言って、実力が無いトレーナーが勝手に危険地帯へ向かうことは良しとされない。こうして警官によって通行できる道が制限されるのも、珍しい光景では無かった。

 だが今回は、テレビの影響もあってか、多くのトレーナーが検問を通ろうと試みていた。突如として現れた謎のポケモン。それを手に入れるためだ。

 

「通して貰える?」

 

 そこに新たな一人とトレーナーが姿を見せる。

 

「いや、ここを通りたい方は、ジムバッジの提示を……」

「これでいい?」

 

 上空からフワライドに掴まって降りたそのトレーナーは、自身のトレーナーカードを見せる。

 

「貴方は……っ!?」

「悪いけど、ここの調査させてもらうよ」

 

 年上の警官に対して、一切の敬いを見せない口調のタキは、自らの興味の赴くまま警官の横を通り過ぎる。

 

「あ、ちょっと待ってください!」

「悪いけど、私は忙しいから」

 

 警官の制止の声も聞かず、エリアへと入り込む。

 その先に有るのは、オーヴ特有の自然溢れる道。しかし、何度かこの道を訪れたことがあるタキは異変を感じ取っていた。

 

「静かだね……」

 

 普段なら、どこからともなくポケモンの鳴き声が聞こえるはず。しかし今日は気配が全く感じられない。

 

「サマヨール、出てきて」

 

 タキが繰り出したのは、ずんぐりとした体で全身が訪台に包まれた姿が特徴のポケモン。いつも使っているバトル用の個体では無く、捕獲に特化した個体であり、フィールドワークのお供でもある。

 

「みやぶるで野生のポケモンを探して」

「ヨールッ!!」

 

 サマヨールがその単眼で周囲を見回すと、ある一点に注目した。

 

「マヨールッ!!」

「そっちだね」

 

 指し示した方向へと走る。木々が入り組み、日の光が遮られた薄暗い獣道を突き進むと、タキの目にも見えてくる。背の高い草の陰に隠れるナゾノクサやパチリスの姿。けがをしている様子は無いが、何かに強く怯えているように見える。

 

「ムウマージ、お願い」

「マージィ」

「この子達のイメージを私に伝えて」

 

 タキは相棒を呼び出して、指示を下す。そしてムウマージの持つ能力によってビジョンが脳裏に映る。

 

 

 

 そこに見えるのは、見たことも無い二体のポケモン。片やダンスを踊るかのような動きをしながら、不思議な色をした火炎を放つ。片や鈍重な動きながらも、向かって来たポケモン達の技を重厚な体で弾き返す。

 

―ッ!!―

 

 相反する性質を見せる二体のポケモンは、我が物顔で野生のポケモン達が暮らしていたこの森を踏み荒らしていった。

 

 

 

「ふむ……」

 

 この出来事は野生のポケモン達にとっても恐怖の対象のためか、明確なイメージは少なく、ほとんどがノイズによって掻き消された。だがそれでも、見知らぬ二体のポケモンの姿などははっきりと分かった。

 

「早く捕まえないと……」

 

 ビジョンから察するに、元々この森には居なかったポケモン。もしかしたら他の地方の外来種かもしれない。即急な対処をしなければ、この環境に悪影響が出る可能性が有る。

 

「ーッ!!」

 

 そこに突然、叫び声が響きだす。音の大きさから、そこまで離れていないはず。タキは急いで声がした方向へと走り出す。

 

「ーッ!!」

―ガキィンッ!!―

 

 徐々に近づくと、叫び声だけでなく何かがぶつかる音も聞こえてくる。

 

「今だ、かみなりパンチ!!」

 

 そしてその音の全貌が見えて来た。

 森から少し出て、木々が開けた場所。そこで一人のトレーナーがあの謎のポケモンの一匹と戦っていたのだ。

 

「レブッ!」

 

 トレーナーが繰り出したエレブーが、レンガが積まれたような姿のポケモンに対して、電気を纏った拳で殴り掛かる。

 

「ーッ!!」

 

 だがその攻撃は、全くと言って良いほどダメージを与えた様子は無い。

 

「くっ、それならスピードで撹乱するぞ。でんこうせっか!」

 

 今度は猛スピードでそのポケモンの周囲を走る。どこから来るか分からない攻撃。これなら少しはダメージになるだろう。そうトレーナーは考えていた。

 だが、謎のポケモンは慌てる様子が全く無い。ただ全身から青い光の点を見せるだけである。しかしタキはそのポケモンの変化を観察して、あることに気付く。

 

(もしかして……)

 

 そしてついにエレブーが、そのポケモンの右前足と考えられる場所に対して右拳でパンチする。見た目から体重はかなり重いと見えるなら、バランスを崩してしまえばいい。トレーナーのその考えは間違いではない。だが、相手が悪かった。

 

「何っ!?」

 

 そのポケモンは、エレブーの攻撃に合わせて体を構成する欠片を動かすことによって、右前足に強固な装甲を構築する。その適切な防御の前にエレブーの攻撃は一切通らない。

 

「ーッ!!」

 

 さらに全身をまるで鋼のように輝かせると、エレブーに向かってヘッドバットをする。

 

「レブッ!?」

 

 脳天に直撃したエレブーは、そのまま意識を失い倒れる。

 

「おい、エレブー! しっかりしろ!?」

 

 トレーナーの声にすら反応しない。完全に戦闘不能となったエレブーに対し興味を失ったかのようにそのポケモンは視線を別の方向へと向ける。その先に居たのは、エレブーの持ち主であるトレーナー。

 

「おい、嘘だよな!?」

 

 そしてそのポケモンが足を動かしてトレーナーへと近づく。

 これは不味い。タキは急いでトレーナーとそのポケモンの間へと躍り出た。

 

「サマヨール、まとわりつく!!」

 

 サマヨールが全身の包帯を伸ばして、そのポケモンの体を絡め捕る。

 

「貴方は早く逃げて」

「え?」

「逃げて!」

「あ、はい!」

 

 有無を言わさないタキの言葉に、トレーナーの男はエレブーをボールに戻すと慌ててその場から走り出す。近くで警官が見回りをしているはず。きっとポケモンセンターまで安全に送り届けてくれることだろう。

 問題は、目の前のこいつである。

 

「ーッ」

 

 そのポケモンはまるでパズルのように全身を組み替えることで、サマヨールの包帯から逃れる。

 

「やっぱり……」

 

 タキは先程のエレブーとのバトルから、目の前のポケモンの特徴をある程度理解した。第一に、このポケモンの外殻はかなり硬い。物理的なダメージはほとんど通らないだろう。そして何よりも、このポケモンはタマタマのような群体であるという最大の特徴を持っている。体を構築する欠片の一つ一つに意思が有り、大量に集まったそれらが重なり合うことによって、一個体のポケモンとして形成されているのだ。先程のエレブーのでんこうせっかに対して、あのポケモンは全身から目のようなものを出すことでエレブーのスピードを見切り、さらに攻撃に対して体を組み替えることで防ぐという芸当を見せているのが何よりの証拠だ。

 

「こんなポケモンがいるなんてね……」

 

 タキは知らない。このポケモンは別の地方どころか、別の世界からやって来たポケモン、ウルトラビーストと呼ばれる存在であることを。そして今、対峙しているそのポケモンの名は、UB:LAY。またの名をツンデツンデ。

 本来であればオーヴ地方に存在するはずの無いそのポケモンは、その無数の目でタキを見つめる。

 

「さあ、行くよ」

 

 タキは自分のポケモン達に声を掛け、戦闘態勢を取る。

 ここにオーヴ地方初の、ジムリーダーとウルトラビーストによるバトルが始まろうとしていた。




幕間が本編に関係ないと言ったな。あれは嘘だ。

当初は本編とは同時進行の別のストーリーにするつもりでしたが、こっちの方がキャラ的にしっくり来たのでこうなりました。



【キャラ紹介】
アルス
●ヨウザンシティジムリーダー代理
●女性/20代前半
●「暗闇の語り部」
●ヨウザンシティジムのジムリーダー代理を行っている女性。ゴーストタイプを扱う。
●タキとはジムリーダーの座を賭けて争った関係。しかし現在は良き友人の関係である。
●地元では時折怪談話を行っている。
●一人称は「あたし」
●パートナーはジュペッタ。
●名前の由来は単子葉植物の「アルストロメリア」。



【メガシンカ紹介】
マニューラ
●あく・こおり ●フリーズスキン
●種族値:70(0)-160(40)-75(10)-55(10)-100(15)-150(25)-610(100)
●攻撃はメガバシャーモと同数値。素早さはメガプテラと同等と高速物理アタッカーとして最高のステータス。ただし耐久も上がっているとはいえ、格闘技を受ければあっという間に倒れる。
●特性はフリーズスキン。ねこだましがタイプで無効化されなくなるというメリットを獲得。
●先手で相手を倒す。攻撃を耐えられたら負ける。そんな潔い物理アタッカー。
●見た目のイメージとして、頭部の赤い飾りに氷の結晶が張り付き、爪も氷によって硬化され刀のような形状と化している。


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16話

使うか不明の裏設定
●本作においてスマホロトムは開発されて日が浅く、さらに安定供給が難しい段階のため、所持している人物はごく僅か。タキが所持しているスマホロトムは、元々所持していたロトムをスマホに入れたもの。


「ーッ!!」

 

 最初に動いたのはツンデツンデだった。エレブーを沈めた、全身を硬化させて放つヘッドバットがサマヨールに向かって放たれる。

 

「避けてっ!」

 

 質量の大きいその一撃を受け止めるのは無理と判断し、サマヨールに回避させる。そしてツンデツンデの背後へと回る。

 

「シャドーパンチ!」

 

 そしてサマヨールは自身の腕から拳状の影で攻撃を放った。

 

「ーッ!」

 

 だがツンデツンデは全身を硬化させることによって、その攻撃を弾き返す。

 

「やっぱり、死角は無いね……」

 

 体の欠片一つ一つが生命体。それらが全て目としての役割を果たしているため、このポケモンに背後と言う概念は存在しない。

 

「ムウマージ、そっちはどう?」

 

 タキが声を掛けると、ムウマージは静かに首を横に振る。あのポケモンの情報を手に入れるべく、ムウマージには少し離れて、ビジョンを読み取ってもらおうとしていた。だが今のツンデツンデはかなり興奮状態にある。それに加えタキは知らないが、ツンデツンデはこことは異なる世界の生物。そのためムウマージはツンデツンデの思考を正確に読み取ることが出来なかった。

 

「分かった。まずはロトム、録画をお願い。あのポケモンの行動を撮影して」

 

 タキがバッグからスマホロトムを呼び出して指示を下すと、スマホロトムはツンデツンデの全身が写るように、カメラを向ける。

 

「行くよ、サマヨール、ムウマージ」

「ヨールッ!」

「マージィ!」

 

 改めてツンデツンデを見つめるタキ。ツンデツンデも闘争心が刺激されたのか、足で地面を何度も踏みしめる。

 

「ムウマージ、でんじは!」

「マージィ!」

 

 まずは動きを封じるためにムウマージが電撃を放った。ツンデツンデはそれを、体の構造を組み替えることにより、まるで取りぬけるように躱して見せる。

 

「シャドーパンチ!」

 

 今度はサマヨールがエネルギーの拳を再度向けるが、それもツンデツンデの硬い体には通じない。

 

「ーッ!」

 

 お返しとばかりにツンデツンデが猛スピードでタックルを放ってくる。しかし、闘争心に任せた大振りな攻撃が当たることは無く、ムウマージとサマヨールはやすやすと回避する。

 

「よし、ムウマージ。あのポケモンを囲むようにマジカルフレイム!」

 

 ムウマージがツンデツンデの頭上へと飛ぶと、口から火炎を放ち、炎の檻を形成する。これで動きは封じたようだが、ダメージは全くない。しかしこれは、次の攻撃のための布石に過ぎない。

 

「サマヨール、もう一度シャドーパンチ!」

 

 その炎の壁を貫いてツンデツンデを拳状の影が捉えた。炎がブラインドの役割を果たしていたため、ツンデツンデも反応が遅れ、その一撃をまともに受けよろめく。しかし……

 

「それほど効いて無いか……物理防御はかなり高いみたいだね」

 

 すぐに体勢を整えたツンデツンデに大きなダメージは見られない。サマヨール自身も決して甘い育て方はしていないが、それでも痛打にならないということから、目の前のポケモンのレベルも高いことがはっきりと感じ取れる。

 

「ーッ!」

「っムウマージ、たたりめ!」

 

 今度はツンデツンデが岩塊を連続で射出しだす。だがそれはムウマージが放ったエネルギーによって撃ち落とされた。

 さらにその隙を狙ってサマヨールがシャドーパンチを繰り出すが、寸前でツンデツンデは防御形態を取り、攻撃を防ぐ。

 一進一退の攻防。だが圧倒的にタキ達の方が有利である。二対一という状況に加え、ツンデツンデはスピードが遅く有効な攻撃手段に欠けている。時間を掛ければ掛けるほど、タキがより一層有利となるだろう。

 それをツンデツンデも本能で感じ取ったのか、突如として動きが変わる。複数の欠片が積みあがったその体が、ボロボロと崩れ始めたのだ。

 

「これはっ!?」

 

 あまりの出来事に言葉を失うが、すぐにその意図を理解する。崩れたその体は地面を這うかのように、草むらへと逃げ出したのだ。これが巨大な体を持っていたにも関わらず、中々見つからなかった理由。この分離した姿こそ、ツンデツンデの逃走形態なのだ。

 

「くっ。サマヨール、くろいまなざし!」

 

 逃がすものかとタキがサマヨールに指示を下す。どんなポケモンであろうと動きを封じる技。これでツンデツンデを捕らえる。そう考えていた。

 

「ヨルッ!?」

 

 だがそれに水を差すように、何かがサマヨールの頭に当たり、気が散ったサマヨールの技が失敗する。

 

「あっ!?」

 

 その隙にツンデツンデは多数の欠片となって、深い草むらの奥へと姿を消した。

 サマヨールの頭に当たった物。それは黄色い線が入った黒いボール。ハイパーボールと呼ばれる種類のモンスターボールだ。一体誰が投げたものかと辺りを見回すと、その主が姿を現す。

 

「くっ、逃げられたか!」

 

 それは白い独特な服を着た、緑色の髪をした集団。目にはゴーグルを掛けており、怪しい雰囲気を纏わせる。

 

「おい、トレーナーが居るぞ」

 

 彼らはタキの存在に今まで気づいて無かったようで、一人が指を差して言う。

 

「おい、ここは我々が調査を行っている。大人しくここから出ていけ!」

 

 不遜とも感じられる言葉に、タキは反感を覚える。

 

「……そんな怪しい恰好をしている貴方達こそ何者?」

「ふん、答える必要など無いが、敢えて教えてやろう」

 

 タキの質問に、彼らは大仰な身振りで返答する。

 

「我らこそ、新たな世界の扉を開く者。その名は()()()()()()!」

「ギンガ団……?」

 

 その名前には、どこか聞き覚えがある。だが何のことか思い出せず、タキは首を傾げる。そんな彼女を無視しながら、ネオギンガ団はさらに続けた。

 

「あのポケモンは、我らが手に入れる! 我々の計画に重要なピースとなるのだからなっ!」

 

 彼らの言葉にタキは不穏な気配を感じ取る。正体不明の組織。あの未知のポケモンを用いるという計画。きな臭い匂いしかしない。

 

「詳しいことを聞きたいから、付いてきて貰える?」

「ふんっ、お前にこれ以上教えることなど無い! さっさとどかないのなら、力尽くでっ!!」

 

 彼らはそう言うと、ボールからポケモンを繰り出す。

 

「さあ、行けっ!!」

 

 そして多数のポケモンがタキに襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らの不幸は、ジムリーダーでも屈指の実力者であるタキを敵に回したことだろう。

 

「それじゃ、彼らの取り調べをお願いします」

 

 数十分後。倒れ伏したネオギンガ団は、タキによって警官に引き渡された。

 

「それじゃ、そういうことで……」

 

 警官への説明を終えたタキは、懐中時計を見る。移動に時間が掛かったため、もうすぐ夕暮れになるだろう。その前に、やらなくてはならないことがある。

 

「あまり柄じゃないけど……招集しないとね」

 

 今回の未確認のポケモンと、謎の集団。放っておいたら、重大な事件に繋がるかもしれない。

 タキは宙に浮かんでいたロトムを呼び寄せ、全シムリーダーへメッセージを一斉送信した。件名はシンプル。

 

『緊急のジムリーダー総会の開会要請』

 

 そしてタキは、謎のポケモンが消えた森の奥へ視線を送る。今日は逃がしてしまったが、次は必ず捕らえて見せる。そんな思いを心に秘めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、使えん奴らめっ!!」

 

 オーヴ地方にあるとある洞窟。そこは自然とはかけ離れた、未知の機械によって埋め尽くされ、ネオギンガ団を名乗る者達のアジトと化していた。

 

「まあ、落ち着けよ。まだマシンも完成していないんだ。焦ったって仕方ないさ」

「しかし、サンプルは早めに手に入れた方が良いだろっ!!」

 

 互いに言い争うメンバー。お世辞にも一体感は感じられない。だがその言い争いは突如として止まる。

 

「――――――――――」

「も、申し訳ありませんっ!」

 

 洞窟の奥。日の光が差さないため機械から漏れる僅かな光しかない場所から、ある人物が彼らを一喝した。

 

「――――――――――」

 

 その人物は、洞窟内に居るメンバーに指示を下しながら作業を行い続ける。多種多様なメンバーもその人物の指示には大人しく従う。

 

「――――――――――」

 

 暗闇の中で、その人物の目が怪しく輝く。そこには確かな、強い欲望が感じられた。




【メガシンカ紹介】
キリキザン
●あく・はがね ●テクニシャン
●65(0)-155(30)-130(30)-60(0)-85(15)-95(25)-590(100)
●攻撃が大きく上昇。メガギャラドスと同じ数値となった。また素早さも上昇している。
●特性はテクニシャンに変化。主にあくタイプの技やサブウエポンの威力上昇がメリット。反面、いかくなどに弱くなるほか、はがね技で恩恵を受けにくい。
●個人的にメガハッサムと戦わせた絵が見てみたい。
●見た目のイメージとして、両腕の刃が肥大化。頭部の刃も2本に倍増した姿。


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番外編 オーヴ図鑑

オーヴ地方のポケモン図鑑です。読む必要性は特に有りません。
重要度は低いですが、オーヴ地方のトレーナーは基本的にこの図鑑内のポケモンだけを使用します(一名除いて)。

※諸事情から一部のポケモンを変更しました。総数及びストーリー上の影響は有りません。(9月3日)


図鑑番号ポケモン
1チコリータ
2ベイリーフ
3メガニウム
4ヒノアラシ
5マグマラシ
6バクフーン
7ワニノコ
8アリゲイツ
9オーダイル
10ムックル
11ムクバード
12ムクホーク
13ホーホー
14ヨルノズク
15オタチ
16オオタチ
17キャタピー
18トランセル
19バタフリー
20ビードル
21コクーン
22スピアー
23オニスズメ
24オニドリル
25タネボー
26コノハナ
27ダーテング
28スボミー
29ロゼリア
30ロズレイド
31パチリス
32ラクライ
33ライボルト
34ルリリ
35マリル
36マリルリ
37ハネッコ
38ポポッコ
39ワタッコ
40エネコ
41エネコロロ
42ミツハニー
43ビークイン
44コイキング
45ギャラドス
46アーボ
47アーボック
48ナゾノクサ
49クサイハナ
50ラフレシア
51キレイハナ
52チェリンボ
53チェリム
54アメタマ
55アメモース
56フシデ
57ホイーガ
58ペンドラー
59ウパー
60ヌオー
61ロコン
62キュウコン
63ガーディ
64ウィンディ
65ズバット
66ゴルバット
67クロバット
68イシツブテ
69ゴローン
70ゴローニャ
71ワンリキー
72ゴーリキー
73カイリキー
74ノズパス
75ダイノーズ
76ココドラ
77コドラ
78ボスゴドラ
79ケーシィ
80ユンゲラー
81フーディン
82ピィ
83ピッピ
84ピクシー
85タマタマ
86ナッシー
87エイパム
88エテボース
89キャモメ
90ペリッパー
91カラナクシ
92トリトドン
93マーイーカ
94カラマネロ
95テッポウオ
96オクタン
97タマンタ
98マンタイン
99コイル
100レアコイル
101ジバコイル
102ギアル
103ギギアル
104ギギギアル
105ドガース
106マタドガス
107ヤブクロン
108ダストダス
109ゴース
110ゴースト
111ゲンガー
112ムウマ
113ムウマージ
114トゲピー
115トゲチック
116トゲキッス
117ピチュー
118ピカチュウ
119ライチュウ
120コリンク
121ルクシオ
122レントラー
123ヤミカラス
124ドンカラス
125デルビル
126ヘルガー
127チラーミィ
128チラチーノ
129ラルトス
130キルリア
131サーナイト
132エルレイド
133ペロッパフ
134ペロリーム
135イーブイ
136シャワーズ
137サンダース
138ブースター
139エーフィ
140ブラッキー
141リーフィア
142グレイシア
143ニンフィア
144コンパン
145モルフォン
146ウソハチ
147ウソッキー
148マネネ
149バリヤード
150ピンプク
151ラッキー
152ハピナス
153エレキッド
154エレブー
155エレキブル
156ブビィ
157ブーバー
158ブーバーン
159チルット
160チルタリス
161ゴチム
162ゴチミル
163ゴチルゼル
164ユニラン
165ダブラン
166ランクルス
167フワンテ
168フワライド
169グライガー
170グライオン
171ドンメル
172バクーダ
173マグマッグ
174マグカルゴ
175コータス
176イワーク
177ハガネール
178アサナン
179チャーレム
180モグリュー
181ドリュウズ
182テッシード
183ナットレイ
184エアームド
185キバゴ
186オノンド
187オノノクス
188ポリゴン
189ポリゴン2
190ポリゴンZ
191ヤドン
192ヤドラン
193ヤドキング
194ベロリンガ
195ベロベルト
196グレッグル
197ドクロッグ
198スコルピ
199ドラピオン
200モンジャラ
201モジャンボ
202カブルモ
203シュバルゴ
204チョボマキ
205アギルダー
206ヘイガニ
207シザリガー
208ヤヤコマ
209ヒノヤコマ
210ファイアロー
211ネイティ
212ネイティオ
213リオル
214ルカリオ
215コジョフー
216コジョンド
217コマタナ
218キリキザン
219タッツー
220シードラ
221キングドラ
222チョンチー
223ランターン
224プルリル
225ブルンゲル
226クズモー
227ドラミドロ
228ヤンヤンマ
229メガヤンマ
230キリンリキ
231アブソル
232シママ
233ゼブライカ
234ダルマッカ
235ヒヒダルマ
236ヒトモシ
237ランプラー
238シャンデラ
239ワシボン
240ウォーグル
241バルチャイ
242バルジーナ
243ゾロア
244ゾロアーク
245シェルダー
246パルシェン
247ムチュール
248ルージュラ
249ユキワラシ
250オニゴーリ
251ユキメノコ
252タマザラシ
253トドグラー
254トドゼルガ
255ユキカブリ
256ユキノオー
257クマシュン
258ツンベアー
259バルキー
260サワムラー
261エビワラー
262カポエラー
263ポニータ
264ギャロップ
265ストライク
266ハッサム
267サイホーン
268サイドン
269ドサイドン
270ツボツボ
271ラプラス
272ズルッグ
273ズルズキン
274ナックラー
275ビブラーバ
276フライゴン
277ヤジロン
278ネンドール
279サボネア
280ノクタス
281ヒポポタス
282カバルドン
283メグロコ
284ワルビル
285ワルビアル
286ドーミラー
287ドータクン
288シンボラー
289カゲボウズ
290ジュペッタ
291ヨマワル
292サマヨール
293ヨノワール
294デスマス
295デスカーン
296プテラ
297リリーラ
298ユレイドル
299アノプス
300アーマルド
301チゴラス
302ガチゴラス
303アマルス
304アマルルガ
305メタモン
306ソーナノ
307ソーナンス
308ロトム
309ゴンベ
310カビゴン
311カイロス
312ヘラクロス
313シビシラス
314シビビール
315シビルドン
316ラブカス
317ボクレー
318オーロット
319バケッチャ
320パンプジン
321ミニリュウ
322ハクリュー
323カイリュー
324ニューラ
325マニューラ
326ヤミラミ
327クチート
328クリムガン
329フリージオ
330ルチャブル
331ヒードラン
332フカマル
333ガバイト
334ガブリアス
335フリーザー
336サンダー
337ファイヤー
338ライコウ
339エンテイ
340スイクン
341セレビィ



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17話

「この映像を検証した結果、このポケモンは物理防御能力に非常に優れていることが分かります。現在確認されている技は、アイアンヘッド、ロックブラスト、てっぺきの三種類。このことからタイプはいわかはがね、及びその複合と考えられます。ただしサマヨールのシャドーパンチがあまり効いてなかったことから、エスパーとゴーストタイプは持ち合わせていないことが予測されます」

 

 ポケモンリーグの中にある会議室。そこにはタキに呼ばれたジムリーダー達が集まっていた。議題は『オーヴ地方に出現した謎のポケモンについての調査報告』。彼らを呼んだ張本人であるタキが、スマホロトムによって撮影された動画を用いて、説明を行っている真っ最中だ。

 

「またこのポケモンに関係することとして、『ネオギンガ団』を名乗る組織が存在しています。目的は不明ですが、何らかの計画のためにこのポケモンを捕まえようとし、さらに他のトレーナーに対する暴行行為が確認されており、現在ミヤザワ警察署で身柄を拘束して、聞き取りが行われています」

「これについてはアタシから説明をするわ」

 

 説明を代わるように、眼鏡を掛けた女性―リンドウが椅子から立ち上がった。

 

「ギンガ団というのは、シンオウ地方で活動していた組織よ。表向きは新エネルギーの開発を行っていたとされているんだけど、裏では当時のリーダーと一部のメンバーによって、様々な事件を起こしていたことが確認されてるわ」

「さすが新聞社の編集長。そういう情報には詳しいな」

 

 対面に座っていたヨルガが感心する。

 

「詳細な目的は不明だけど、噂では伝説のポケモンを利用して、新しい世界を創造しようとしていた、なんて言われてるわ」

「新しい世界ねえ……」

 

 噂という眉唾物の情報ではあるが途方もないその目的に、赤髪の青年―ザンカが呆れたように溜息を吐いた。

 

「ただ、その事件については、シンオウリーグのチャンピオンであるシロナ氏と一部のトレーナー達の手によって阻止され、中心人物達は行方不明。現在は残ったメンバーによって組織の改革が行われ、信頼も回復しているようね」

「じゃあ、その行方不明になった人たちがー、関係してるのかなー?」

「それはまだ、なんとも言えないわね」

 

 間延びした口調の女性ジムリーダー―キリの質問に対し、リンドウは静かに首を振る。

 

「実際、この事件はシンオウ地方に限らず他の地方でも知っている人が居るくらい、大きな事件だったわ。だから、この『ネオギンガ団』を名乗る奴らがギンガ団の残党ではなく、名前を借りただけのものとも考えられるのよ」

「ふむ……」

 

 ユコウが考え込む素振りを見せる。例えそのネオギンガ団がかつてのギンガ団との関係が有ろうが無かろうが、このオーヴ地方の平和を脅かす存在には変わりないだろう。

 

「リンドウとハルユキ。そのネオギンガ団についての調査を二人に頼みたいが、良いかな?」

「はい」

「ええ」

 

 ユコウの言葉に二人が頷く。

 

「こちらのポケモンについては、私の方で調査を進めます。一応、カコウさん、オールスさん、タリスさんも、街でこの事実を広めてください」

 

 タキも発見場所近くのジムリーダーへ依頼をする。

 

「今回の事件はオーヴ地方全体に関わるかもしれない。全ジムリーダー一丸となって解決に動くぞ!」

『はい!!』

 

 そしてユコウが放った団結を促す言葉に、全てのジムリーダーが力強く返事をした。

 

 

 

 

 

 その会議から一週間。各地のジムリーダーからの注意喚起によって、謎のポケモンを探そうとするものは、目立って少なくなった。無論、自らの力を過信し、注意を無視して探そうとするものも居たが、そんな彼らの熱意に反して、謎のポケモンの目撃情報は無く、肩を落として大人しく街に帰るほかなかった。

 

「マグマラシ、かえんぐるまだ!」

 

 そんな中、謎のポケモンが発見された場所からほど近い街であるミヤザワシティの東にある道路。そこでは一人の少年が、野生のアーボを相手にバトルをしていた。

 

「マグーッ!!」

 

 炎を纏いながら回転するマグマラシの攻撃を受け、アーボは倒れ伏す。

 

「よし、早くあいつに追いつかないとな!」

「マグッ!」

 

 意気込む少年の傍らで、マグマラシが同意するように鳴く。

 つい先日、二つ目のジムバッジを手に入れた少年。そんな彼が急ぐのには訳が有った。それは、同じ日に旅に出た幼馴染の一人。事ある毎に張り合って来たライバルの存在だ。彼がジムに挑むためにミヤザワシティに訪れたとき、既にそのライバルはバッジを手に入れており、次の街へ進むための準備をしていた最中だった。

 そんな彼の姿に、対抗心を燃やした少年は、三つ目のバッジを手に入れるべく、次の街へと向かっていた。当初は一番近いコジカタシティへと行こうと考えていたが、危険なポケモンが出没したということで、コジカタシティまでの道路が封鎖されており、仕方なく海辺のリアスシティを次の目的地に決めた。

 

「それにしても、野生のポケモンが多いよな……」

 

 少年の呟き通り、先程から頻繁に野生のポケモンが姿を現して来る。草むらを進めばポケモンが出現するのは当たり前だが、それにしては異常とも思えるほどだ。バトルが続き、手持ちのポケモンも何匹かは疲労している。

 

「気のせいか……?」

 

 単純にこの道路ではポケモンが多いというだけかもしれない。そう考えて少年が進むと、不意に草むらがざわざわと揺れだした。また野生のポケモンかと身構える。だが姿を現したのはポケモンでは無かった。

 

「何だ、こいつは!?」

 

 姿を現したのは、白い服に緑色の髪、真っ黒なゴーグルといかにも怪しげな風貌の男だった。

 

「全く、この近くのトレーナーは全員排除したと思ったんだがな……。まあいい。お前もポケモンセンター送りにしてやるよ!」

 

 そう言って男はボールを取り出して、ポケモンを繰り出す。

 

「ズバッ!」

 

 出て来たのはズバット。紫色の体と翼を持つ、こうもりポケモンだ。

 

「行け、ムクバード!」

 

 少年も対抗するようにポケモンを繰り出す。選んだのは、相手と同じく空中戦を得意とする鳥ポケモン。

 

「ズバット、かみつく!」

「ムクバード、でんこうせっか!」

 

 ズバットがムクバードの体に、その鋭い犬歯を突き立てようとするが、素早い動きで躱される。さらに隙だらけとなったズバットの背中にムクバードが回り込むと、勢いよくぶつかって地面に叩き落とす。

 

「追撃のつばさでうつ!」

「ムクバッ!」

 

 ムクバードがさらにその翼でズバットの体を打ち据えると、あっという間にズバットは倒れ伏した。

 

「ちっ、やっぱり弱いな。もっと強いポケモンを手に入れないと……」

 

 負け惜しみのように言う男。その言葉に少年は怒りを覚える。

 

「おい、あんたのポケモンだって必死に戦ってただろ。それなのに、そんな言い方するのか!」

 

 勢いよく捲し立てる少年。しかし男は鼻で笑う。

 

「はんっ。所詮ポケモンなんて、都合のいい道具なんだよ。弱い奴に弱いって言って何が悪い!」

 

 悪びれもしない態度に、少年は拳を握りしめる。

 

「あら、どうしたの?」

 

 だがそこに、バトルの音を聞きつけたのか、男の仲間と思われる似たような姿をした連中が姿を現す。その数は四人。全員が傍らにポケモンを置いている。

 

「ちょうどいい所に来た! お前ら、こいつを倒せ!」

「何、命令してんだよ。っていうか、お前が倒せばいいんじゃね?」

「お……俺は良いんだよ。さっさとしろ!」

「あれあれ~? まさか負けちゃったの?」

「う、うるさいっ! 俺が負けたんじゃない。このズバットが弱かっただけだ!」

 

 少年に負けた男を揶揄う仲間たち。その隙にこの場から逃げられないかと少年は辺りを伺うが、よく見ると目の前に居る連中は、皆こちらに視線を向けている。もし逃げ出そうとすれば、後ろから攻撃されるかもしれない。

 

「まあいい。さっさとこいつを倒すぞ。四人がかりならどうにでもなるだろ」

 

 最も背が高い男が歪んだ笑みを浮かべて言う。1VS4。普通のポケモンバトルならまずありえない状況。時に野生のポケモンの群れとバトルするトレーナーも居るが、今の少年にはそれだけの技量は無い。数の暴力で圧倒されることは簡単に予想できる。かといって、目の前の連中が大人しく逃がしてくれる訳も無いだろう。覚悟を決めてボールを握った。

 

「さあ、行くぜ!」

 

 そして目の前の不審者たちがボールを振りかぶった、その瞬間

 

「バアルクッ!!」

 

 突如として赤い巨体が、不審者たちの背後へと降り立った。




【キャラ紹介】
リンドウ
●女性/30代前半/チトセシティジムリーダー/新聞記者
●「パーフェクトリポーター」
●チトセシティジムのジムリーダーで、普段は新聞の編集長をしている人物。彼女が勤める会社の新聞はオーヴ地方全土で読まれている。
●世話好きでおせっかいを焼くことも多いが、他のジムリーダー達からも慕われている。
●一人称は「アタシ」。
●パートナーはエテボース。
●名前の由来は「リンドウ」。



ザンカ
●男性/20代前半アオバシティジムリーダー
●「燃え滾る熱い魂」
●アオバシティジムのジムリーダーでほのおタイプを扱う。
●ホウエン地方の出身。
●熱い心を持っており、全力の勝負を求めている。
●一人称は「俺」。
●パートナーはバシャーモ。ホウエン地方で手に入れた最初のポケモンである。
●名前の由来はツバキ科の植物「サザンカ」。



キリ
●女性/20代後半/ハグロシティジムリーダー/画家
●「ファンタジードリーマー」
●ハグロシティのジムリーダー。フェアリータイプを得意とする。
●画家でもあり、普段は様々な絵を書いている。
●間延びした口調が特徴。
●一人称は「わたし」。
●パートナーはクチート。
●名前の由来はシソ目の植物「キリ」。



タリス
●女性/30代前半/コジカタシティジムリーダー
●「デッドリーエレガント」
●ハッコウシティのジムリーダー。どくタイプを得意とする。
●富豪の家系でいつもドレスを身に纏っているが、本人曰くこれはキャラ付けのためである。一番好きな格好は、ジーパンにTシャツというラフなもの。
●一人称は「わたし」。
●パートナーはドクロッグ。
●名前の由来はオオバコ科の植物「ジギタリス」。
●今回は名前だけの登場。



カコウ
●女性/60代後半/ミヤザワシティジムリーダー/花屋
●「今なお美しく咲く花」
●ゴシキシティのジムリーダー。くさタイプを扱う。
●四天王のユコウとは幼馴染。他のジムリーダーからも慕われている。
●一人称は「わたし」。
●パートナーはラフレシア。
●名前の由来はリュウゼツラン亜科の植物「ゲッカコウ」。
●本話で少年が攻略したと言ったジムリーダーはこの方。


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