栞の花の名は (天武@テム)
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始業式 「運がなかった少年」

実は自分が作ったオリキャラの学園バージョンの設定書いてたんです。
仲のいい人のよその子と絡ませたりしてたんで、実際に物語にしました。もし良ければ見てってください。


──4月の上旬。僕は高校2年生になった。なんというか、ちゃんと2年生になった実感がない。クラス替えになって友達は出来るのだろうか、苦手な人はいないだろうか、そんな心配はあったけど今はそれどころじゃない。

 

「あぁぁ!始業式なのに寝坊した!!」

 

僕は慌ててベットから跳ね起きて制服に着替えてリビングへ降りる。テーブルには兄さんが作った朝食が並べられていた。ハムエッグにトーストが並べられていて美味しそう……。食べる暇がないのがとても悔しい。

 

「お母さんも兄さんも、なんで起こしてくれなかったの!?」

 

「母さんは店の準備。それに、昨日の夜自分で起きるから大丈夫って言ったのは誰でしたかね?」

 

「確かに言ったけどさぁ、起こしてくれたっていいじゃないか!」

 

「高校になったんだから少しは自分で起きるようになれ。高校入学した時に言ったはずだぞ」

 

「意地悪ぅ!!」

 

「はぁ……ジン、こっち向いて口開けろ」

 

「へ?むぐぅ!?」

 

カバンを手に取って出ようとした矢先に兄さんがトーストを僕の口に入れ込んだ。いくら何でも強引だよ兄さん。

 

「トーストぐらい食べながら走れるだろ。食わないと体もたんぞ」

 

「んー……ありふぁと(ありがとう)」

 

筆記用具を鞄に入れて支度をしたら、靴を履いて家を出る。タイムリミットはあと5分、家から学校までかかる時間は歩いて20分はかかる。僕は全力でパンを食べながら走る。パンを咥えて走るのってなんだかひと昔前の少女漫画みたいだって思ったけど、それどころじゃないから考えるのをやめて全速力で走った。

 

 

 

◇◇◇

 

母は自分で営んでいてる喫茶店「風月街」の準備。父は職場。弟のジンは学校へ行き、静かになったリビング。叢雲家の長男の武は遅い朝食を食べ終え、洗濯物を干していた。普段、武は風月街で働いていて、家事を終えてから準備に取り掛かる。夕方になれば、駅前のバー「新撰組」でバーテンダーのバイトを行っている。

 

武は洗濯物を干し終え、喫茶店へ向かう準備をするためにリビングに戻ると、テーブルに弁当箱が置かれていた。ジンの弁当箱だ。

 

「………まぁ、いいか」

 

渡しに行こうかと考えたが、自分でなんとかするだろうと思い。自分の昼食用に弁当箱を制服と一緒にバックに詰め込んだ。

 

 

◇◇◇

 

遅刻を防ぐ為に僕は全速力で走った。

この先の角を曲がれば学校はもう目の前だ、携帯で時計を確認するとなんとか間に合うと確信してほっとした。だけど、次の瞬間だった。

 

「へぇっ…?うわあああぁぁ!?」

 

ポイ捨てされたバナナの皮を踏んで、勢いよくすっ転んでしまった。コンクリートで頭をぶつけて、僕は悶えながら声を押し殺して泣いた。どんなコメディだよって言いたくなったし、ポイ捨てしたやつを恨む。

 

キーンコーンカーンコーン──

 

ホームルームのチャイムが鳴り響き、遅刻が確定した。

始業式早々遅刻してしまった……

深いため息を吐きながら、ゆっくり立ち上る。僕は明日から、目覚まし離れた場所に置こうと思い。ゆっくり歩き出した。

 

 




いかがでしたか?ジンは遅刻しました。はてさて、高校2年生になったジンはどんな人と出会うのでしょうか。


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1限目 「愛が深すぎると蹴られる」

2話目です、実はジンは女子によく話しかけられることは多いけれど、コミュ障なので1人しか友達は居ません。


 

 

始業式が終わり、僕達生徒は教室に戻っていく。これから、荷物を持って新学年の教室へ移動することになる。

 

「とほほ…寄辺先生に叩かれるなんて……」

 

「仕方ないだろ、遅刻したのが悪い」

 

僕は叩かれた頭を撫でながら、友達と一緒に廊下を歩く、彼は宮崎日向(みやざき ひゅうが)、母さんが営んでる喫茶店でバイトをやっている。ちなみに僕はカイ君って呼んでる。なぜかと言うと、常連の人がそう呼んでるから、僕も便乗して呼ぶことにした。

 

「クラス替えかぁ……カイ君と離れるのは嫌だなぁ…」

 

「なんでだ?お前の事だからすぐ友達出来るだろ」

 

「兄さん目的で繋がる人が大半だよぉ……そんな人とは友達になれない」

 

「人気者の弟は大変だな」

 

「カイくんだってモテるじゃないか」

 

「そうかぁ?」

 

「そうだよ、気づいていないだけだよ」

 

カイ君は、身長も高くブルーブラックのミディアムヘアーに、美人という言葉が似合う端正な顔立ちだ。それに、人に優しいければ惚れる人も少なくない。

それに比べて僕は、顔立ちは幼く、身長も背の順に並べば男子の中で1番前になる位小さい。男には程遠く、マスコットの文字が似合うくらいだ。はぁ…、自己嫌悪……。

 

教室に戻ると、担任の寄辺先生から2年生のクラス表が書かれたプリントが配られた。

2年生のクラスは4組あり、僕の名前は2組の欄に載っていた。

 

隣のクラスが移動し終えるまで、教室で待機しけとけよ。と、先生は言って教室を出ていくと、生徒達は喋り始め、中には席を外して友達の元へ行く人もいた。僕もその中の一人で、カイ君の元へ行った。

 

「ねぇねぇ、カイ君、次何組に行くの?」

 

「2組だ、お前と一緒だ」

 

「良かったぁ、助かったよ…」

 

ほっと息を撫でおろし、カイくんの前の席に座った。その瞬間、クラスの中で黄色い歓声が響いた。

 

「私らシャーリーさんと一緒のクラスだ!」

 

「えー!?2組はいいなぁ、武先輩と弟にシャーリーさんもいるんだから」

 

「2組、トンプソンさんもいるんだな…」

 

「トンプソンさんって…新入生代表挨拶をした人だっけ?」

 

「そう、俺達有名人と一緒のクラスみたいだな」

 

「みたいだねぇ」

 

「お前ら、隣のクラスが移動し終わったから、移動しなさい」

 

呑気に話してたら、寄辺先生から移動するように言われた。僕らは持っていくものが入った荷物が入ったカバンを持って新しいクラスに向かって行った。

クラス表見た限り、カイくん以外知らない人達ばかりだから心配だけど、多分なんとかなるだろう───

 

◇◇◇◇◇

2年2組の教室、皆は席を離れて喋り合って賑やかだった。そんな中、銀髪の女子生徒と黒髪に銀髪のメッシュがかかった男子生徒の2人のやりとりが僕の目に入った。

「2人共銀色の髪なんて珍しいなぁ、外国人かな?」

「この学校だったら、そう珍しくもないだろ」

 

確かにその通りだ。この学校は、髪色や髪型にあんまりうるさくない。常識外れに盛りすぎた髪型だと指摘されるが、そうそういない。

「やったねグレイちゃん!!やっと念願の同じクラスだ!!これで何時でもグレイちゃんの元へ駆けつけることができるよ!!」

 

「あーはいはい、良かったな。っていうか、とそんなに変わらないだろ」

 

「いいや変わるね!!1年の頃は休み時間しかグレイちゃんを見られなかった。だけどもう違う!授業中も休み時間も、何時でも見ることが出来る!これで──」

 

「あーもー!うるっさい!!」

 

「ぶべらっ!?」

 

銀髪の女子が熱弁してた男子に回し蹴りをした。綺麗なフォームだったな……って、それどころじゃない。僕達は蹴られた彼に駆け寄った。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「ああ…大丈夫。このくらい、俺もこの位は受け止めなければ失格だ」

 

「は…?」

 

「……それって、どういうこと?」

 

言ってる意味がよく分からなかった。蹴りを受け止めなきゃ失格って、格闘家でも目指してるの?

 

「あれはグレイちゃんがする愛情表現だ。この程度どうってことない……はっ!貴様まさか、グレイちゃんを狙っているのか!」

 

「えええ!?違うよ!?」

 

「違うのか!?なら、グレイちゃんに魅力がないって言いたいのか!!」

 

「そんな事言ってないじゃないかぁ!?」

 

何故か鬼のような形相でこっちを見られた、理不尽な。

 

「た、助けてカイ君〜」

 

「いや俺に言われても……」

 

返答に困って助けてもらおうと、カイ君を見る。しかし、銀髪の子が彼を抱き寄せると鼻血を吹き出して気を失った。

 

「ごめんな、真白が迷惑をかけたな」

 

「ううん、大丈夫……君はえっと…」

 

「グレイだ。グレイ・アンダーソン、お前は?」

 

「僕は叢雲ジン、こっちはカイ君、同じクラスなんだしよろしくね」

 

「よろしくジン、カイ」

 

「ああ、本名は宮崎日向っていうけどな」

 

なんやかんやで、友達が一人出来た。あと、愛が深すぎるのもやっぱりダメなんだなって学んだ。




銀髪の少女グレイ
ルイズのコピペ並にグレイちゃんが好きな真白
なんとも濃いメンツがジンの前に現れました。ジンの学校生活はどう変わるのだろう。


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2限目 【爽やか系イケメンが担任の先生】

 

 

時は同じく、武は家を出て下の階の喫茶店「風街月」に入る。喫茶店の中は、セピア色の床に壁に、木製の家具で統一され、レトロな雰囲気を醸し出している。厨房には、武とジンの母親、叢雲=凪がコーヒーを飲んでいた。

 

「洗い物と洗濯、してくれた?」

 

「ああ、コーヒーメーカーはまだ動く?」

 

「そうね、まだ大丈夫」

 

「いい加減買い替えたら?もう寿命だろ」

 

店で使っているコーヒーメーカーは使い始めてから8年は働いてもらっている。因みにコーヒーメーカーの寿命の平均は約5年と言われている。

 

「そんなお金ないわよ、ただでさえ最近お客さん少なくなってきちゃってるんだから」

 

最近、駅前に有名なカフェチェーン店が開いて、今まで来ていたお客さんがそっちに流れてしまったのだ。これによって、収益が右肩下がりになっている状態だ。

 

「まぁ、どうにかしないとお店続けられないから何か案考えとかないと」

 

「そうだな……店は続けたいしな」

 

武はそう呟きながら厨房から出て、店内の照明を付け、開店準備に取り掛かった。

 

「あ、そういえばジンの奴、弁当忘れていったんだけど、連絡した方がいいか?」

 

「確かあの子始業式でしょ?午前中で終わるでしょうから大丈夫でしょ」

 

「ああ、それもそっか。なら、心配要らないな」

◇◇◇◇

 

友達が一人新しく出来たところで自分の席に戻ると、スーツ姿で金髪の男性がやってきた。すらっとしていて、爽やかな顔つきだ。始業式中眠ってて分からないけど、多分このクラスの担任なんだろう。

 

「今日から2年の英語と、君達2組の担任をやらせてもらうことにしました、東レオと言います。2年生の担任を持つのは初めてですが、皆と仲良くしていきたいと思います。これから1年間、よろしくお願いします」

「ねぇねぇ、あの先生かっこよくない?」

 

「金髪だし、ハーフなのかな?爽やか系でいいね」

 

「あの先生知ってる、去年武先輩のクラスの担任してたよ」

 

自己紹介が終わると、女子生徒達を中心に、先生を見ながらひそひそ話をしていた。

なんか見たことあるなと思ったら、兄さんが高校3年の時の担任だった。

 

「英語の先生だったんだ。担任だったらわかんない事とかあったら聞きやす……マシロ君!?」

 

隣の席だったマシロ君に話しかけようとして振り向いたら、マシロ君が両肘を立てて口元に手を持ってきて、険しい顔になりながらなにか呟いていた。今なにか気に触るような発言あったかな?

 

「な、なんで怒ってるの…?」

 

「なんで……なんで僕はグレイちゃんの隣じゃない」

 

予想と全く違う返答が出てきて、ずっこけそうになった。一先ず、顔が良くて嫉妬してるみたいな感じじゃなくて良かった。だけど、新しく友達はできたらいいけど、ここまで愛が深い人と合うのは初めてで、これからの学校生活どうなるんだろうと、ちょっと不安になった。

 

 



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3限目 「バイト」

喫茶「風街月」、ジンの母親叢雲・凪が経営している喫茶店
ジンは週に3日放課後は母の喫茶店の手伝いを良くしている。
客層は若い女性が多く、今日も武目的で来客する人も沢山……


 

 

先生の話が終わり、ホームルームが終わりの合図のチャイムが鳴り響くと、生徒達は立ち上がり帰り始めた。僕は、貰ったプリントや教科書を詰め込むんで帰りの準備をしていたら、うちのクラスの女子達に囲まれた。

 

「ねぇねぇ、武先輩って今日シフト?」

 

「え…ああ、うん。多分今いるんじゃないかな…?」

 

「ありがと!じゃあまたジン君明日ねー!!」

 

兄さんがいるって事を聞くと、喜んで帰っていった。まるで嵐のようだったけど、高校に入ってから良くあることだったから、気にしないことにした。鞄に全部詰め込むと、カイ君の元へ向かった。カイ君とは帰り道が途中まで一緒で、2年の頃からずっと一緒に帰っている。

 

「カイ君ー!一緒に帰ろ!」

 

「ああ、帰りにゲーセン寄るのか?」

 

「ううん、今日は手伝いがあるから寄り道しないよ」

 

「大変だな、家が自営業っていうのは」

 

「いつもの事だしもう慣れたよ。カイ君も大変なんじゃない?妹と二人暮しで、バイトしてるんでしょ?」

 

本人曰く、カイ君の所は両親が離婚して、一人暮らしをしていた所に、家出した妹ちゃんがやってきて一緒に住むことになった過去があって、バイトをしている。

帰り支度を終え、教室を出ようもすると、ドアを前で何かを囲うように生徒達が道を塞いでいた。

 

「シャーリーさん、私達カラオケに行くんですけど、一緒に行きませんか?」

 

「いいですね、私も行きたいのですが、習い事があるので……。誘ってくれたのに申し訳ありません」

 

「いえいえ!こっちこそごめんなさい!」

「ほら言っただろ、無理だって」

 

「でも、誘わないとわかんないじゃん!」

 

囲まれていたのは、シャーリーさんだった。シャーリーさんを取り巻く生徒達が言い争いをしてる最中に、シャーリーさんは困った顔をしながら教室を出ていった。残った人は残念そうな顔をしていたり、仕方ないと言わんばかりの顔をしたりしていた。

 

「……やっぱり人気者だね、シャーリーさん」

 

「だなぁ……あんだけ人気者だと、毎日大変だな」

 

そんな事を言いながら教室を出て、家に帰って行った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「じゃあ、またねカイ君」

 

「ああ、明日は遅刻すんなよ」

 

家の前でカイ君と別れると、そのまま着替えずに店に入った。

店は平日の昼間なだけあって、客も少なくて、お母さんがカウンターの席に座ってる常連の西野婆ちゃんと喋っていた。

 

 

 

「おかえりジンちゃん、2年生になったんでしょ?友達は出来た?」

 

「ただいま西野婆ちゃん。友達と一緒だし、新しい友達も出来たよ」

 

「ほんと?よかったわねぇ」

 

西野婆ちゃんは僕に気づくと、朗らかに笑って話しかけてくれた。西野婆ちゃんは僕が小さい頃から店に通い続けていてる常連さんだ。いつもお昼頃にやって来てお母さんとよくお話してる。

「お弁当作ってあるから休憩室で食べておいで」

 

「はーい」

 

カバンを置きにそのまま休憩室へ向かうと、兄さんが机に突っ伏して仮眠を取っていた。起こさないようにそっと、荷物をロッカーに置き、作り置きしてあった弁当を冷蔵庫から取り出して、食べ始めた。

弁当を食べていると、店のドアが鳴り、女子達の喋り声が聞こえた。帰る前に兄さんのことを聞いてきた人達かな?と考えながらたべ続けていると、突然兄さんの携帯のアラームが鳴り響いて驚いた。

兄さんは唸り声を上げながら、ゆっくり起き上がった。

 

「おはよう兄さん」

 

「ああ…帰ってきたのか」

 

「ちょうどさっきね。昨日もバーに行ってたんでしょ?」

 

「ああ……欲しいもんがあるしな」

 

気だるそうに欠伸混じりで答えると、そのまま休憩室を出ていった。それと同時に、店から黄色い声が聞こえた。

兄さんは週に2、3回、友達の親が営んでいるバーでバーテンダーとして働いている。

その日は夜遅くに帰ってくるから、いつも休憩室で眠っている。

 

「あ、ジン!丁度良かった、赤居君の席に料理持って行って!」

 

弁当を完食して、ロッカーに入れてあるエプロンを着て休憩室を出ると、お母さんに料理を持っていくように言われた。店内は帰ってきた時と比べると、客が明らかに増えていた。

 

「お待たせしました、カレーライスです」

 

「お、待ってました〜」

 

窓際の席で、煙草と見せかけたココアシガレットを咥えた白髪に赤い目をした男性が、こちらに気づいて笑みを浮かべた。この人が赤居さん。いつも来る常連さんの1人。

 

「ん?プリンないじゃん、どうしてくれるのよ」

 

「赤居さん、食後でいいって言いましたよね?」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

「そうですよ……自分で言ったこと忘れないでくださいよ」

 

「あははっ、ごめんごめん。それにしても、今日は女の子がいつにも増して多いね?」

 

「今日、始業式だったんで、午前中で学校終わったんです」

 

「それでか、モテる男は大変だねぇ」

 

「僕じゃなくて、みんな兄さん目的なんですから……」

 

大抵の女性のお客さんは兄さん目的で来ることが多い。自分としては複雑な気持ちになるけど、お客さんが多く来てくれるのは嬉しい事だ。

 

「すみませーん!注文お願いします」

 

「ほら、お客さんが呼んでるよ〜」

 

赤居さんは頑張れ〜とヘラヘラ笑いながらココアシガレットを差し出して来た。

 

「頑張って♪」

 

「要らないです」



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四限目 「青春ってこんな感じ」

1年と何日か飽きましたね……すみませんでした……


 

 

始業式の次の日、校内に朝礼が始まるチャイムが響く、それと同時にジンは教室に駆け込んできた。

 

「ぎ、ギリギリセーフ…!」

そういいながら汗をかき、息を切らしながら自分の席に向かう。

 

「お前…また寝坊したのか?」

 

「アハハ……最近新しいゲーム買っちゃってさ、楽しくて夢中になってたら…夜ふかししちゃってさ…」

 

「それで寝坊しちゃったと……」

 

隣の席のマシロは、半分呆れた様な表情で見ながら暑そうに襟首をパタパタと仰ぐジンを見つめると、ジンは苦笑しながら言った。

 

 

 

 

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時は経ち、4時間目終了のチャイムが響く。

生徒達は昼食を食べるをする為に集まったりしている。そんな中、ジンはお昼ご飯を食べようとしていところ、女子達に囲まれている様子だった。

 

「ねぇジン君、一緒にお昼食べない?」

 

「武先輩の弟君でしょ?私武先輩のこと知ってるよ!」

 

「ご、ごめんね…!友達と一緒に食べる約束したから!」

 

女子達は小動物を見るような目でジン達を見つめている。それに対し、ジンはバツが悪そうに顔を逸らし席を立って逃げ出した。

パタパタと弁当を持って走り出して、階段を駆け上がって行った。屋上まで上がっていくと流石に息切れして屋上のドアの前で座り込んだ。

 

「はぁー、卒業するまで続くのかな……?」

 

ため息を着きながら日向を待つことにした。ジンと日向は、1年の頃から屋上で昼休みを過していた。そろそろ来るかな……そう思って立ち上がると、下を見下ろした。すると、鍵を持った日向と後ろをついて行くグレイとマシロが見えた。

 

「あれ?2人ともどうしたの?」

 

「クラスの奴らに囲まれてウザったくてさ……マシロが暴走しないために連れて出たら、ちょうど日向が屋上開けるっていうから着いてきたんだ」

 

「暴走しないためにって……そんな大袈裟なことしないでしょマシロ君は-」

 

「いいや、するね」

 

「ええ……」

 

誇らしげな顔でマシロは言った。それを見てグレイは呆れた顔で、ジンと日向は困惑していた。

 

 

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屋上は広く、春風の暖かい風がそよいでいて砂埃が少し舞っている。しかし、春の季節で暖かく誰もいない為か過ごしやすそうな雰囲気だ。

 

「1年の頃は2人で食べてたんだよな?」

 

「そうだよ?カイ君が1人で食べてるところに偶然僕が来てから、いつしか2人で食べるようになったっけ」

 

懐かしなぁ…とジンはしみじみ思った。

4人はドアの前の段差に座るとそれぞれの昼食を取り出した。

 

「日向って…弁当なんだな」

 

「まぁな、コンビニで買うよりも、そっちの方が安く済むしな」

 

「そりゃそうだけどさ……俺、料理苦手なんだよなぁ……」

 

「俺はグレイちゃんがどんな料理を作ろうと喜んで食べるよ」

 

「うるさい黙ってろ」

 

辛辣だ……と日向は思いながらマシロを見ると満更でもなさそうな、いやむしろ喜んでいる様子だ。

 

「早起きして作ってるんだよね。カイ君凄いなぁ、僕なんか早くなんて起きられないよ」

 

「お前はまず夜更かしするのをやめとけよ……」

 

「直さなきゃいけないのはやまやまだけどさ、やめ時がわかんなくてさ」

 

ジンはこんな時間が青春っていうのかな…そんな事をふと思いながら3人と談笑をしていった。




次回は年内には終わる筈です、多分


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