Chief × Manager (蒼星緋咲)
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たどり着くその先に

えっと……てすてす……おっけー。

えっ? もう始まってる?!

は、初めまして! 蒼星緋咲と申します!
せっかくCUEの作品書いたしな……ってことで、ハーメルン進出してみちゃいました!
仕様とか色々わからないので手探りですけれど、よろしければこれからよろしくお願いしますm(_ _)m


── わたしにとって声優は、羽ばたくための空なんです

 

 すべての始まりの日に聞いた、彼女の決意。その目に嘘や曇りなんてなくて、目指す場所まで、見えている。君から見た彼女は、そう見えた。だから、君は決意した。憧れの景色がみられるように、”先導者”になってあげようって。

 

 

 

 

 

「どう? キミから見たみんなの様子は」

 舞台袖から様子を眺めている君は、りおにそう尋ねられる。君がマネージャーとして事務所に入ってから、目まぐるしく変わっていった毎日。それは君だけが感じていたものじゃないと、舞台の上を眺めながら実感する。

「なんていうか……ここまでやって来た甲斐があったなって思います」

 そう答えた後に、きれいだ、と小さくつぶやく。それはまさしく君が見せたかったもので、なにより君自身が一番望んでいた景色。

「えへへ。そうでしょ~。なんだって自慢の子たちだからね」

「ええ、ほんとに。ここまで支えて来た甲斐がありました」

 これは君にとって、紛れもない事実で。立会人として、大空に羽ばたく瞬間を見守ってきた。そして、その子たちが今、君の目の前で飛び立った。

「本当に、感謝しかないです。真咲さん達にも、みんなにも」

 舞台袖に置かれた椅子に戻って、君はそうりおに話す。りおは頷いた後、君をからかう。君はそれを制止しようと詰め寄る。りおは「公演中だよ」と君を止める。煮え切らない君は、そのまま椅子に腰を下ろした。

「ありがとね」

 入れ替わりに立ち上がったりおが、君にそう告げた。心当たりがなくて首をかしげると、りおは「もー」と詰め寄ってくる。

「あの表情、作ってくれたのはキミでしょ?」

「何言ってるんですかりおさん。私は何もしていないですよ」

「ほんとに?」

 そう念を押されたから、君は直前までの彼女との会話を思い出す。陽菜や悠希、美晴に利恵。たしかに、彼女たち16人それぞれに相談をして、迷いを払ってきた。自信を、勇気を与えてきた。でも、それは。

「彼女たちが、それぞれ内に秘めていたものなんだと思います。私はマネージャーとして、最後のきっかけを与えたに過ぎませんから」

 それに……と、君は続ける。

「初めてのスカウトの時に、りおさんは『目に見えない可愛いが大切』って、教えてくれたじゃないですか」

 君がりおにそう語りかけると、りおは呟くように「そうだったね」と返す。君はりおの背中しか見えていないけれど、その背中はなんだか小さく見えて、小刻みに震えている。

 君はりおに声をかけようとして、その口を閉じる。その姿は、いつか桐香を見届ける姿と重なったから。

 君は、その背中の向こうに、再び視線を移した。

 

 

 


 

 

 

 

 昨日までと、何も変わらない駅前。忙しなく歩き、時には走る人々、高架線の上を走る鉄道。時にはゲーム、また時にはアニメといったものを宣伝する駅前広告。君たちを取り囲む景色は、何も変わっていない。

「春だねぇ」

 温かい風が頬を撫でてから、君の隣を歩くりおが話しかける。そうですねと返すと、キミは無愛想だねと笑われる。

 2人で合わせて16個の紙袋。先日の感動を確かにするものは、これだけ。でも、そこからは確かな重みと、温もりを感じられる。16人それぞれが掴んだ、彼女たちへのプレゼント。もちろん、届けられなかったものもあるけれど、可能な限りをつめた、宝物。

「なんだか、緊張してきました」

 無意識に、君の口から出た言葉。今の君は代弁者そのもので、彼女たちに宝物を届けるのだから。

「私もなんだ。こんなに貰ったの、初めてだもん」

 君と話しているはずなのに、その声色はどこか遠くに感じた。まるで、泣いてるような。

「りおさん、昨日からずっと泣いてません?」

「女の涙を見ようって、キミは悪趣味だね」

 そう言われて、君はたじろぐ。そんな君を見て、りおは笑う。からかわれた君は、りおに制止の言葉をかけるが、それはなんだか楽しそうに見えた。

「なんだかさ、感動しちゃってね」

 再び遠くに視線を戻したりおが、そう君に話しかける。君が返事を考えていると、りおが話を続ける。

「ここまで、こんなにファンのみんなから貰ったことなかったからさ。私たちが頑張って育ててきた子たちが、こんなにみんなから愛されてたなんて、わからなくって」

「……ええ。ほんとに。度々ファンレターとかは貰ってましたけど、ここまで集まるのは初めてです」

 君は、そう返事をする。そんな君の中の感動も、りおほど表には出ていないけれど。確かにあって、君自身の本心の言葉。ここまで出会いや別れを経て、掴みとった結果。

「ねね、みんなにこれ渡したら、どんな顔するかな」

 いたずらに聞くりおに、君はこう答える。

「きっと、喜ぶと思います。紛れもない“宝物”なんですから」

「じゃあ、早く届けに行くよ!」

「ちょ、りおさん?!」

 君とりおは、寮までの道を駆け出す。その胸に感動と、期待を抱えながら。




後書きとか書いたことない……
基本的に、二人称視点で進めていきます。どうかな。読みやすかったかな?
色々練習中というかリハビリ中というか……そんな感じなので、生暖かい目で見ていってください

ではでは、また次の投稿でお会いいたしましょう!


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Anniversary

次世代声優育成アプリ『CUE!』1周年おめでとうございます!!



 こんな時間になんなんですかと、愚痴をこぼしながら。あなたは通い慣れた事務所まで向かう。スマホとにらめっこしていたのは、陽菜を新しいオーディションに挑戦させるためのスケジュール調整のため。そこに飛び込んできた、りおからの招集命令。もっとも、招かれたのはあなただけだけど。

 店じまいまで終えた一階のカフェを素通りして、あなたはビルの裏側へ。通用口の鍵を使って、裏口からビルに入って。この時間のエレベーターはもう止まっているから、階段を使ってオフィスのある3階まで。営業で、収録で走り回った後の身体だから、相当疲労がたまってるけれど。業務命令なんて言い方されたら断れないじゃないか、なんて独り言を呟いた。

 オフィスの扉の前まで来て、深呼吸を一つ。気を抜いたら眠ってしまいそうな頭を無理やり叩き起こして、扉を開ける。お待たせしましたと挨拶をすれば、遅刻だよってりおが言う。

「で、わざわざこんな時間に呼び出してなんなんですか?」

 少しだけ怒りを混ぜた口調であなたが問うと、まあまあと宥められる。直結する談話室まで招かれると、コーヒーを渡される。

「……薄くないですか? それに少し冷めてるし」

「こんなものじゃない? 冷めてるのは──」

 私が遅れたから、ですよね。そう、りおのセリフを遮る。よくわかってるじゃんなんてあなたを煽るから、こっちだって好きで遅れたわけじゃないって反論する。

「知ってるよ。お疲れ様」

「……なんなんですか? ほんとに」

 呆れた顔で。ため息までついて、あなたは返す。りおはそこまで見届けると、ちょっと待っててねと席を外した。

 薄いコーヒーは、眠気を覚ますには足りなくて。またため息をついて、あなたはお湯を沸かしに行く。コーヒーのドリッパーを用意して、挽いてあるコーヒー豆を入れる。こんな時間にコーヒーを飲むと眠れなくなってしまうけれど、この時間にりおがあなたを呼び出したということを、あなたは寝かせるつもりがないことだと解釈する。

 また残業に付き合わされるんですかと、独り言。明日……日付的には今日の朝、寮に顔出したら心配されるんだろうなと、今から想像して苦笑いをこぼす。

 ひとつ、大きくあくびをして。コーヒーをこぼさない様に注意して、ドリップする。物音がオフィスの方から聞こえてくるけど、きっと押し付けられる書類を探してるんだろうって、またため息をひとつ。

「あ、あった……よかった……」

 お疲れ様です。あなたは少し離れたりおに向かってそう伝えてから、淹れた二杯分のコーヒーを持って、談話室のテーブルに戻る。

「ありがとね……って熱い!」

 今淹れたんだから当たり前でしょ、って。ため息交じりにそう話しかける。

「わたしは猫舌なの!」「りおさん、意外と可愛いところあるんですね」「意外とってなによ!」

 なんて、あなたたちは会話を繰り返して。まるでいつもと逆の光景に、おかしくなったかのように、どちらともなく笑いあう。

 あなたが淹れたコーヒーを一口飲んでから、一息ついて。「どうして私が呼ばれたんですか?」と、再び問う。

「キミがここに来てから、もう一年経ったでしょ?」

「もうそんなに経ったんですね……」

「ほんとはみんなもお祝いしたいって言ってたんだけど、1人のマネージャーのために歓迎会はともかく、感謝会開くのも事務所としては変かなって話になってね」

 もしかして、昨日今日と仕事詰めてたのはこのためですか、とあなたは問うと、清々しいほどの笑顔でりおは頷く。

「それだと、みんな諦めて貰えるかなって。実際キミだって今まで気付いてなかったわけだし」

「それは……そうですけど……。そうするとこんどみんなが可愛そうじゃないですか?」

 だから、と。りおはさっき鞄から出したものを、机の上に置く。

「これは……?」

「みんなからのボイスメッセージ。社長から無理言って、レコーダーを一つ使わせてもらったんだ」

 ひとつ流してみてよ、とりお。言われるがままに、あなたはレコーダーの一番上のボイスメッセージを再生する。

 

 


 

 わたしたちAiRBLUEの、花鳥風月それぞれのチームが揃ってから、そろそろ1年が経とうとしています。でも、その前からわたしたちFlowerは、何かと4人一緒にいることが多かったから、その実感は実はあまりないんです。

 わたしも、みんなも。出会ってすぐの右も左もわからない頃から、大きく進めた。そんな気がします。でも、それは1人じゃできなかったことで。みんなの言葉があって、色々な人に支えられて、わたしたちはここに立ってる。もちろん、これを聞いてくださってるマネージャーさんの応援も、ですよ。

 そういえば、わたしたちがマネージャーさんとお会いしたのも、ちょうど1年前でしたね。駅前でわたしを助けてくれたこと、ほのかちゃんがびっくりさせてコーヒーをこぼしたこと。きっと、忘れられないと思います。

 直接、この言葉を伝えられないのは残念ですけど……来週はAiRBLUEとして、大事なステージがありますし、本当に伝えたい言葉は、そこまで取っておくことにします。だから、楽しみにしてくださいね!

 以上、AiRBLUE、チームFlowerのリーダー、六石陽菜でした! ……ふふっ。

 

 

 

 

「……これは……」

 聞き終えてから、りおに顔を合わせると、りおは得意げな表情で、にこにこと笑う。

「どう? これをあと15人分、ここに集めてあるの」

 ありがとうございます、と言いかけたところを、りおに制止される。

「その言葉は、来週のライブのあとに、みんなに言ってあげて」

「……わかりました」

 それじゃあ、せっかくだしと、冷蔵庫から缶ビールを2本取り出す。そんなもの入れてていいんですかとあなたは尋ねると、今から飲めば大丈夫でしょとりおは返す。

「仕事はどうするんですか?」

「まさか、残業に付き合わされると思ってた?」

「まあ、はい……」

「ごめんね。さっきのを渡したかっただけなんだ」

「じゃあなんであんな書き方したんですか?」

「業務命令って言わないと、キミ来ないでしょ?」

「……」

「黙らないの」

 耐えきれなくなって、あなたは渡されたビールのタブを押し上げる。それを見て、りおも慌ててビールの缶を開いた。

 




改めまして、『CUE! -See You Everyday-』1周年おめでとうございます!!
あのライブが、本当に1週間前とはにわかに信じ難いです……
さてさて、こちらですが、我々マネージャーが盛大に祝われるのもなんか違うな、という思いで、りお(上司)と2人でささやかな、というイメージで、でもタレントたちは感謝してるよ、という、そんなことを考えながらやってたら……まあ、こうなりました。実はアニバーサリーライブも踏まえてたり……ってね
それじゃ、また次の作品で!!



P.S.当シリーズの更新遅れて、本当にごめんなさい!!
面白い題材が浮かばないんです。傍観者、として


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