この素晴らしい奉仕部に祝福を! (149)
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#0三者三様そしてはじまり

結構長めですがよければ目を通してみてください



「比企谷八幡さんあなたは死んでしまいました」

 

真っ白な部屋の中、俺は唐突にそんなことを言われた。部屋の中には事務机に椅子があり目の前に銀髪の美人な同い年くらいの女性がその椅子に座っていた。その女性は俺をじっと見つめていた。こんなに美人に見られるなんて何これ新鮮など場違いなことを考えていると

 

「私はエリスと言います。俗に言う女神です。あなたと私が今いるところは死後の世界です。恐らくまだ混乱しておられると思いますが現実です。あなたはナイフに刺され死んでしまいました。」

 

そう言われると俺は少し前の記憶を思い出していた。

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俺は帰りながらもずっと考えていた。葉山と戸部の依頼そして海老名さんの依頼この矛盾ともいえる二つの依頼を解決させる方法が他にあったのかを。海老名さんの依頼に気付いて告白の時間まで猶予は1日となかった。そして俺はその短時間で戸部の告白を絶対に成功させたいという依頼と告白を阻止してほしいという海老名さんの依頼の解決ではなく解消をする為「嘘告白」という方法をとった。おそらくこれが最善策。誰も傷付かず一番穏便に平和に終わる。…はずだった。戸部が告白をする前に俺が告白をすることで依頼を解消し、2人のもとに戻った。しかし俺に待っていたのは賞賛でも労いでもなく「拒絶」の言葉だった。雪ノ下は根拠もなく俺のやり方が嫌いだと言い、由比ヶ浜とは途中まで一緒に歩いていたが人の気持ちを考えろと言い雪ノ下の後を追った。

 

(そもそも引き受けたのは由比ヶ浜で任せたと言ったのは雪ノ下だ。なんで否定されるんだ。あの方法以外で何か方法があったのかよ。あれが最善のはずだろ。)

 

俺はそこまで考えて思考を無理やり切った。これ以上考えても答えは出ない。何よりこのまま考えれば黒い感情に心が支配される気がしたからだ。

 

(確かこの辺りで不審者情報が出てたな…。)

 

そんなことを考えながら俺は早足で歩を進めた。

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「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください。」

 

比企谷八幡の口から確かにそう聞こえた。驚いたただ単純に。そしてその次に私を襲ったのは得体の知れない嫌悪感。あれは嘘だそうに違いない。戸部君の絶対に告白を成功させてほしいという依頼が成功する見込みはゼロ。だからその告白を先延ばしにするためにしただけ。それは頭では分かってる十分すぎるほどに。なのに心がそれを許さない。ずっと心を言い知れない何かが蝕む。

 

(なんなのかしらこれは)

 

分からないこれが何か分からないただ嫌なことはわかった。そして彼が帰ってくる。その何事もなかったかのような顔を見た瞬間、確実に蝕んでた何かが溢れ

 

「あなたのやり方嫌いだわ。」

 

そして私は彼を拒絶して逃げるようにその場をさった。

 

(なぜ、何故?任せたのは私なのに彼を拒絶したの?)

 

分からない分からないわからない。彼が告白した瞬間何かが嫌だったそれがわからない。何故拒絶したのかもわからない。そんなことを延々と考えていたら、後ろから声が聞こえた。

 

「待って!ゆきのん!」

 

声の主は唯一友人とも言える由比ヶ浜さんだった。走ってきたのか肩で息をしながら

 

「一緒に帰らない?」

 

今はなんでもいいから気を逸らしたかった私は

 

「いいわ一緒に帰りましょう」

 

了承し一緒に並んでゆっくりと歩を進めた。

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ヒッキーが嘘告白をした。その瞬間姫菜に嫉妬した。難しいことはわかんないけどヒッキーのことだからいろいろ考えてのことでやったんだろうなってわかった。それでも嘘でも状況が理想的なところで告白される姫菜に嫉妬した。なんで私じゃないの?なんで姫菜なの?そんな考えで頭がいっぱいになりそうになった。嫌だったのはゆきのんも一緒みたいでなんとも言えない表情をしてヒッキーを睨んでた。それからヒッキーが戻ってきた時ゆきのんは

 

「あなたのやり方嫌いだわ。」

 

って言ってた。ゆきのんは多分…ヒッキーのことが好き自分で気付いてないだろうけど。ゆきのんは不器用でどこまでも真っ直ぐだから。そんな女の子に好かれてるのに気付かないヒッキーは鈍感だ。それに私の気持ちにも。それなのにあんなのやだ。だからやめて欲しいって頼んだ。でもあれが効率が良かったって言われた。それを言われてもう限界になって心で思ってたことが溢れて

 

「もっと人の気持ち考えてよ」

 

私もヒッキーを拒絶した。

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「ヒッキーのあれびっくりしたね」

 

あれとは十中八九嘘告白のことだろう。また胸がざわつく。それを誤魔化すように

 

「どうでもいいわ」

 

この話は終わりとでも言わんばかりに早足で行こうとすると

 

「ほんとに?」

 

そう言われ思わず私は振り返った。そこにはまっすぐとした眼差しで私を見ていた。由比ヶ浜さんは…ずるい。そんな真面目な雰囲気で言われれば逃げられない。

 

「どうでもいいわ、ええどうでもいいわ彼のことなんて」

 

「嘘だよゆきのんだって嫌だったんでしょ?」

 

私は由比ヶ浜さんの目を見て動けなかった。

 

「ゆきのんは気付いてないかもしれないけど。」

 

やめてそれ以上言わないで

 

「これまで縁がなかったのかもしれないけど。」

 

彼女は鋭い。私が気付いてないような気付きたくないようなことに気付いて

 

「ゆきのんは…」

 

そしてその事実を容赦なく

 

「ヒッキーのことが好きなんでしょ。」

 

叩きつけてくる

 

「わ、私が彼を?冗談にしては「ゆきのん」」

 

また真剣な眼差しで私を見る。その眼差しに私は自分に嘘をつくのをやめた。

 

「…わからないわ彼を好きかなんて」

 

「ゆきのんはさ、ヒッキーが嘘告白をしてどう思ったの?」

 

まるで子供が無邪気に問いかけるようにきく。

 

「それも…わからないわ。ただとても嫌だった」

 

「それはさヒッキーが告白したことが嫌だったの?それともヒッキーがまたあんな方法とったから嫌だったの?」

 

私は言葉に詰まった。その問いに答えることはもう自分で認めるようなもの。別に認めるのが嫌なのではなく、それを認めてしまえば恐らく彼の前では私が私ではなくなってしまう気がする。だから言葉にしたくない。でも本心を言わなければ彼女はきっと気付いてしまう。それでも今の私にそんな覚悟はない。

 

「も、もういいでしょいきましょう」

 

そういい私は早足で信号を渡った。前から走ってくる男に気付かずに…

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信号機の前に雪ノ下と由比ヶ浜が見える。はやく歩きすぎたみたいだな。ちょっとペースを落とすか…何をやってるんだ俺は。周りの目を気にしないのが比企谷八幡のはずだ。なのに。そう考えると何故か気まずくなり目を逸らしてしまった。

 

(ほんとに何やってんだろ俺…)

 

そして目を逸らした先には全身黒ずくめの男がいた。

 

(人を見た目で判断しちゃダメとは言うがあれは明らかな不審者だろ…)

 

その男を見ているとどうも視線が雪ノ下たちに向いている気がする。

 

(気のせいか…?……いや気のせいじゃない確実に雪ノ下たちの方を見てる。)

 

俺はこの時点で嫌な予感がし走り出していた。男は俺に気付いたようで目があった。すると男はにやけ、おもむろにポケットに手を突っ込みナイフを取り出し雪ノ下の方に走り出した。

 

(なん…!でも雪ノ下なら合気道が…。何でそのまま突っ込んでんだ!?まさか気付いてない…!?)

 

雪の下は何かを考えているのかまっすぐと早足で歩いている。男と雪ノ下が接触するまでの距離は短い。俺は無我夢中で走り叫んだ。

 

「雪ノ下ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

雪ノ下はいきなり大声で呼ばれたことに体をびくっと震わせこっちを振り向いた。俺は振り向いた雪ノ下の肩を持ちその瞬間おもっきり後ろへ投げ飛ばした。顔は見てないが恐らく怒ってるだろう。やだな怖いななんて思っていると左腹部に激痛が走る。どうやら黒ずくめに刺されたようだ。男は俺を刺した後ナイフを俺の腹から抜き、そのまま後ろへと走っていった。雪ノ下を襲いにいったんだろう。させるかと思い後ろを振り向くと地べたに転がってた。黒ずくめの男の方が。何なら泡吹いてる。どうやら合気道で倒したみたいだ。男が倒れたことに安心したのか足に力が入らなくなり、そのまま俺は重力に従った。

 

「ヒッキー!!!」

 

「比企谷君!!!」

 

二人が泣きそうになりながら駆け寄ってくる。

 

「だめ!死ぬのなんてだめ!許さない…許さない!だめ…お願い…」

 

「そうだよヒッキー!だめだよ…ほんとに許さないんだから!こんな別れ方やだよ…」

 

涙で顔を歪めながら叫ぶ二人。そんな二人に俺は最後の力を振り絞り

 

「すま…ん。さい…ごまで…お前らの…嫌い…なやり方…しか…できなかった…。」

 

「違うの…!謝るのは私の方なの!何の事情も聞かずにあなたを否定してしまった!任せたのに拒絶してしまった謝るのは私の方なの!ごめんなさいほんとにごめんなさい!」

 

「私も何もできなかったのにヒッキーを勝手に否定した!私たちなの謝るのは、だからごめんなさい!」

 

俺は奉仕部の空気、時間が好きだった。そんな時間が壊れた気がして、怖かった。でも二人の言葉に情けないながらも安堵した。あぁ死にたくないでも自分の体のことは自分でわかる。どんどんとなくなる感覚。痛覚すらなくなっていってる。そして体が冷たくなろうとしてるのがわかる。もうすぐ死ぬのだろう。なら最後くらい素直に雪ノ下と由比ヶ浜に感謝を…

 

「雪ノ下…由比ヶ浜…ありが…とう…奉仕部が…お前らが…好きだったぞ…」

 

そう言い俺は限界が来て瞼を閉じた。




良ければ感想などコメントしていただければ嬉しいです。ではまたあいましょう


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#1異世界へ

「思い出しましたか?」

 

超思い出した。そして最後の何だよマジで一生の黒歴史だろ。無名の神よりきついわマジで。ベッドがあったら今すぐベッドインして布団に蹲り足バタバタしながら自己嫌悪してる自信ある。そんなレベルできつい死にたい…あ、もう死んでた…てへぺろ!…何これ気持ち悪い。しかしもう二度と会えないのか…くそっ

 

「っ…」

 

それよりあいつらは無事なのか?

 

「あの…雪「それでは」いやあの「それでは」」

 

何で発言させてくれないのん?まぁはやく知りたいが話聞き終わってからでもいいか…それに今は気を紛らわせたいし…諦めたのを悟ったのか女神様は話し始めた

 

「それでは比企谷八幡さんあなたには三つの選択肢がございます。一つは今の記憶を失い人間として生まれ変わり、新たな人生を歩むか。そしてもう一つは何もない場所でいわゆる天国ですごs「天国で」…」

 

「え?」

 

「え?」

 

「な、何もないんですよ?」

 

何もないってことは働かなくていんだろ?最高じゃんあとは専業主夫になるために色々すれば…!そんなことを見透かしてエリス様が

 

「あなたの好きなマッカンもラノベも何もないんですよ?」

 

何…だと…。それは死活問題だ。ラノベはともかくマッカンは俺の血であり汗だ。人間血がなければ生きてけないだろ?つまり俺から血を取り上げることになる。何この生々しい表現。

 

「確かに嫌だな」ボソ

 

「そうでしょう!そうでしょう!」

 

だいぶ食い気味に言う女神様ていうか何でこの女神様はこんな目を輝かせてるの?それが顔に出てたのかエリス様はこほんと咳払いをして

 

「そこでです。比企谷さんはゲームはお好きですか?」

 

ゲームか確かに好きではあるな。何なら徹夜してやってるまである。

 

「はい、まぁ好きですよ」

 

好きって言うとあの光景フラッシュバックするからやめてほしい。いやほんとに。

 

「ど、どうしたんですか?目が何というかさらに悪化して…」

 

どうやら黒歴史を思い出して目の腐りが酷くなってたらしい。何だ目の腐り酷くなるって。

 

「そんなことより三つ目の選択肢は何なんですか?」

 

そう言うとエリス様はハッとした表情になり

 

「そうでした。三つ目の選択肢は魔王を倒すために異なる世界にいわゆる異世界転生をしていただきます。その際はこちらで用意している特別な特典を一個だけ持っていくことができます」

 

異世界転生か。しかも確定チート付き。ラノベ読んでる男子なら一度は想像したことあることだな…材木座がいたら発狂しそうだな。俺は少しテンションが上がっているのを自覚しながら考えていた。

 

(死ぬ可能性はあるが記憶もあり、尚且つどう過ごそうが自分次第…。迷う必要はなさそうだ。)

 

「それじゃ三つ目の異世界転生でお願いします。」

 

「わかりました。ではこの中から三つお選びください。」

 

そう言うとエリス様はカタログのようなものを取り出し俺に見せてくれた。ていうか二つ?一つじゃなくて?

 

「あの…一つじゃないんですか?」

 

疑問に思い俺は聞いてみたすると

 

「あなたがあのまま見捨てていれば他にも死人が出てたかもしれません。普通は怖くて何もできないはずなのにあなたは二人を助けるためにすぐに前に出て刺されその結果死んでしまいました。これは私からその勇気と行動を評価した結果です。」

 

「…」

 

「どうしました?」

 

俺は黙ってしまった。なぜかというと

 

「いや、その誰かに評価されるのは珍しくてちょっと驚いただけです。」

 

きょどりながら答えると

 

「ふふっ。あなたは評価されるべき人間です。方法は褒められたものではありませんがその優しさは誰よりも大きく暖かい。もっと自信を持つべきです。それに…」

 

そう言うと優しく子供を見守るような眼差しを俺に向け

 

「我慢はいけませんよ?」

 

そう言われた瞬間ドキッとした可愛いからとかじゃなくていやもちろん可愛いんだけどそうじゃなく、ここに来て死因を思い出してからずっと自分が嫌っていたはずの仮面をつけていたからだ。

 

「っ…神様には通じませんか」

 

動揺した俺に神様は俺に近付き、俺のことを抱きしめた。

 

「死因を思い出した後ほんとにかすかにですけど顔が歪んでましたよ?神様でなくてもわかります。それに死んだというのにあなたのように落ち着いてるなんておかしな話です。さぁ今私とあなたしかいません。何かを吐き出すなら今じゃないですか?」

 

俺はそれを聞いて仮面は壊れ我慢してため込んでいた心の内を全てをぶちまけてしまった。

 

「…まだ…まだ奉仕部であいつらと過ごしていたかった…。まだ…生きていたかった…。生きて奉仕部で時間を過ごし、来年には小町も入って、さらに騒がしくなってそんな時間を過ごしたかった…!」

 

そう言っているうちに視界がぼやけ始めた。そして溜まりに溜まったものは限界を超え溢れ出した。

 

「ぐっ…あっ…あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

泣き出した俺を子供をあやすようにずっと頭を撫でてくれていたエリス様が印象的だった。

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「ほんとにすいません…」

 

泣き終わった俺を襲ったのは溜まったものを吐き出した爽快感ではなく罪悪感だった。だって初対面だよ?初対面の目の腐った男に泣きつかれて挙句の果てに服が俺の涙でぐっちゃぐちゃなんだもん。いやほんとに何やってんだろ俺どんだけ黒歴史作るんだよマジで。

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。それに私が望んだことですから。」

 

そう微笑みながら言うエリス様。何この人まじ天使いや女神か。俺絶対エリス教つくる。毎日崇める何なら仏像作る。でも

 

「いやほんとに服とか俺の涙で汚して一生かけて償うので許してください。」

 

そう言われても消えない罪悪感

そして日本の伝統芸であるDO・GE・ZAをする俺に

 

「いや、ほんとに気にしてませんから!土下座はやめてください!それに服だってかえはありますし!だから!ね?!」

 

本気で慌てふためくエリス様。そしてその傍には土下座をする男子高校生。何この珍妙な光景。でもエリス様のおかげで気分が楽になった。ほんとにすごいな女神様は。

 

「エリス様。」

 

「はい?どうしましたか?」

 

「ありがとうございました。」

 

「いえいえどういたしまして。それじゃ特典選びに戻りましょうか。」

 

そう言われ俺はカタログを手に取り目を落とした。

 

(さすがとしか言いようがないほどある魔剣聖剣最強の鎧に何でもござれ。最低限の自衛をするため必要な特典…)

 

そこまで考えあることを思い出し

 

「ほんとに二つでいいんですか?」

 

「ええ、でもこのことは内緒ですよ?」

 

指を口に当て片目を閉じながら言うエリス様。美少女がこういうことやると男子高校生にはただの凶器だからやめてほしい。

 

(しかし二つか…。明らかにオーバーチートだな…。)

 

パラパラとページをめくりある能力が目に止まった。

 

(これは…)

 

(この能力は使い方次第では汎用性は高い。それに単純に強い。これなら…)

 

俺は主となる能力を決め、それを補助する形の能力を決めた。

 

「これとこれでいけますか?」

 

「承りました。では比企谷八幡さん。」

 

エリス様が俺の名を呼ぶと俺の足元に青く光る魔法陣が現れた。初めてみたけどすげえな。

 

「あなたをこれから異世界へと送ります。魔王討伐のための勇者候補の一人として。そして魔王を倒した暁には、神々からの贈り物を授けましょう。」

 

「贈り物?」

 

「そうです。世界を救った偉業に見合った贈り物。何でもひとつだけ願いを叶えると言うものです。」

 

どんな願いでもひとつだけか。まぁ討伐すると決まったわけじゃないし、その時に考えればいいか。てか雪の下たちのこと聞いてねえ。光が強まっていく中聞こうとすると先にエリス様が口を開き

 

「さようならまた会いましょう」

 

「え?ちょ」

 

そして俺は光に包まれた…!

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全体的に石造りの街中、そしてレンガの家々、中世ヨーロッパのような街並み。電柱も電波塔はもちろん車やバイクは走っておらず、かわりに馬車がある。

 

「…すげぇ。ほんとに来たのか異世界に」

 

そんな街並みに感動していた。陽乃さんお墨付きの理性の化け物とはいえ、やはり男子高校生テンションが上がるのは隠せない。それにしてもエリス様また会いましょうって言ってたけど会えるのかな?それに雪ノ下たちのことを聞きそびれた。まぁまた会えるならその時に聞けばいいか。

 

(こういう時はまずは冒険者ギルドだなそれがそれに似たのをまず探さないと…)

 

それらしき建物を探そうと周りを見渡していると女の子と目があった。すると顔が恐怖に歪み開口一番に

 

「ひっ…ゾンビ…」

 

ゾンビだと言われびびられた

 

「い、いや…あの人間です一応」

 

今度は驚きに顔を染め

 

「え?あ、ごめんなさい!」

 

そう言うとどこかに走って行った。別に泣いてないもんグスン

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 エリスは青白い魔法陣の中に消えていった少年のことを考えていた。

 

「これまでよりはまともな生活をしてほしいですね」

 

そう言いながら微笑む彼女は誰がみても見惚れるだろう

 

「しかしまさか自分たちのことは伝えないでくれと頼んでくるとは」

 

彼のことを考えると同時にその前に来ていた少女たちのことを思い出した。

 

「異世界であなたたちに祝福があらんことを」

 

そう言って静かに願うのだった



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#2そして再会

(冒険者ギルドっぽいものはないな…)

 

俺は辺りを見回しながらどうするか考えていた。

 

(周りの人に聞くか…)

 

近くにいた人にギルドの場所を聞こうとするがある問題に気付いた。それは

 

(俺…話しかけたらゾンビって怖がられない?)

 

いや別に気にしてないよ気にしてないけどまた言われると心が折れるぐらいで全然気にしてない。けどできれば避けたい気にしてないけど。そこで

 

「すいません。この辺りで冒険者ギルド的なものを探しているのですがわかりますか?」

 

近くのおばあちゃんに聞くことにした。だって若い女性だと「ひっ…ゾンビ…」って言われて逃げられるだろ?男性だと襲いかかってきそうだもん。てことでおばあちゃんにしたってわけさ。はっはっはっ…はぁ

 

「あら?あなたもかい。ひょっとしてあなたも他所から来た人かしら?」

 

あなたも?ってことは俺より前の転生者か?もしかしたら会えるかもしれんな…話しかけるコミュ力ないけど。

 

「はい実は遠くからここまで旅してきたものでこの街に来たばっかりなんですよ」

 

「あらあらやっぱりあなたもなのね。この街に来るってことは冒険者志望かしら?駆け出し冒険者の街、アクセルへようこそ。ここの通りをまっすぐいって右に曲がれば看板が見えてくると思うわ。」

 

「まっすぐいって右ですね、ありがとうございました」

 

俺はおばあちゃんに礼を言ってギルドへと向かっていった。

ギルドに行けば俺も冒険者か…ここで八幡は考えた。

 

(待てよ…このまま冒険者にならずに過ごせば働かなくていいのでは…?夢の専業主夫が叶う時が…!)

 

そこまで考えて冷静になった。

 

(いやよく考えたら生活するのにも金がいるし、何より結婚相手いねえし、なんなら女性にゾンビって怖がられたし、なんでだよほんと)

 

そんなことを考えながら歩いていると看板が見えてきた。

あれがギルドか…やっぱりこの世界にもあったんだな…しかし絡まれたりしないか?俺はそんな不安を胸にギルドの扉を開いて入ると…

 

「あ、いらっしゃい…ま…せ。……お、お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら会いてるお席へどうぞー!」

 

単発赤毛のウェイトレスのお姉さんが、顔を引きつらせながら出迎えてくれた。てか俺の目見て一瞬ゾンビだと思ったろ絶対。いらっしゃいませの後にハッとした顔してたもん。てゆうかはっきり言われた方がまだマシなんですけど…

そうしてあらぬ傷を受けカウンターへと向かった。

 

(受付は四人か。まぁ一番少ないとこでいいかめんどくさいし。)

 

俺は一番少ない列に並び自分の順番を待った。そして俺の番がやってきた。

 

「はい、今日はどうなされましたか?」

 

「冒険者になりたいんですが、遠くから来たもので何も分からなくて…。」

 

こう言っておけば色々ノウハウを教えてくれるのが基本だ

 

「そうですか。えーっとでは登録手数料がかかりますが大丈夫ですか?」

 

………手数料?

 

(待って俺お金持ってない。どうしよう)

 

そう考えながらも一応服を弄っていると、

 

(あれ?なんか硬いものがある)

 

その硬いものを触ると手にはジャラジャラとした感触が伝わってきた。もしかしてと思いそのジャラジャラしたものを取り出し受付の人に出すと

 

「はい、三千エリスですね一人千エリスになりますので二千エリスのお返しです」

 

読み通りこれがこの世界での通貨らしい。おそらくエリス様が持たせてくれたのだろう。エリス様万歳まじ天使。

 

「では冒険者について簡単に説明を…まず冒険者とは街の外に生息するモンスターや人に害を与えるものの討伐を請け負う人のことです。ゆうなれば何でも屋と考えてもらって構いません。冒険者とはそれらの仕事を生業としている人たちの総称。そして冒険者には、多才な職業というものがございます」

 

多分ゲームでゆうところのジョブやクラスのことか。それを聞くとちょっとテンション上がって楽しみにしている俺ガイル。すると受付の人が免許証くらいの大きさのカードを差し出した。

 

「こちらにレベルといる項目がございます。ご存知の通りこの世のあらゆるものは、魂を体の内に秘めています。どのような存在も、生き物を食べたり、もしくは殺したり。他の何かの生命活動にとどめを刺すことで、通称経験値を吸収できます。それらは目に見えることはありませんしかし…」

 

受付の人がカードを示した。

 

「このカードを持っていると冒険者が吸収した経験値が表示されます。それに応じて、レベルというものも同じく表示されます。これが冒険者の強さの目安になり、どれだけの討伐を行ったかもここに記録されます。経験値を貯めていくと、あらゆる生物は突然成長します。まぁ要約するとこのレベルが上がると新スキルを覚えるためのポイントなど、様々な特典が与えられるので、ぜひ頑張ってレベル上げをしてください」

 

俺はエリス様の言葉を思い出していた。スキルポイントといい職業制度も含めて確かにゲームだな

 

「ではこちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入をお願いします」

 

受付の人が差し出した書類に淡々と特徴を書いていく。

 

(身体的特徴?何それ…目が腐っているでいいか)

 

「はい、結構です。それではこちらのカードに触れてください。それであなたのステータスが分かりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね。経験を積むことで選んだ職業によって様々な専用スキルを習得できるようになりますので、その辺りも踏まえて職業を選んでください。」

 

やばい心が躍るちょっとどころじゃなくめちゃくちゃテンション上がってる。らしくないかもしれないが。やっぱりここですごいステータスが出て大盛り上がりとか?いや…それはやだな目立ちたくない。平均よりちょっと高いくらいが理想かな。俺は緊張しながらカードに触れた。

 

「…はい、ありがとうござ…いま…す…。…は?」

 

カードを覗き込みその内容を見ると受付の人が固まった。そしては?ってゆわれた。え、なんで?こわ。すると受付の人はゆっくりと視線をあげ、俺と目があった。何か不可解なものを見るかのような目で俺を見る。そして

 

「はぁぁぁぁ!?」

 

受付さんが叫んだ

 

「なんですかこの数値!?筋力幸運が平均値それに知力に敏捷性はちょっと高いぐらいですが、それ以外の生命力、魔力、器用度、どれも平均を上回ってます!特に生命力と魔力が尋常じゃないです!何者なんですか…!?」

 

受付の人は俺のカードを片手に叫んでいた。何生命力尋常じゃないってゾンビなの?俺はやっぱりゾンビなの?てゆうか敏捷性も高いならもう完璧ご◯ぶりじゃん。1匹いたら百匹いるってゆうあれじゃん。てかこんな白昼堂々人がいる中で叫ぶのほんとにやめてほしい。めちゃくちゃ注目されてるもん…ざわめきがおこりはじめちゃってるもん…

 

「いや…あの…ただの旅人です…」

 

なんで俺こんな肩身狭い思いしてんの。そりゃちょっと期待したよ期待したけど俺のイベントじゃないだろ。ここは平均値でしたはいドンマイで終わっとけよ…

 

「な…ただの旅人でこんな…これなら最初から大体の上級職につけますよ!」

 

いやもうほんとにもうやめて俺のライフはもうゼロだよオーバーキルだよ周りが期待の目で俺を見てるからやめてほんとにお願いそんなことを心で叫び、実際声に出せるわけもなく

 

「じゃ、じゃあ職業の説明をお願いします…。」

 

完全に萎縮して声が小さくなっていた。

 

「そ、そうですねまずは攻撃魔法を扱える魔法使い《アークウィザード》、最高の防御力を誇る聖騎士《クルセイダー》、最高の攻撃力を誇る剣士《ソードマスター》、プリーストいわゆる僧侶の上位職である《アークプリースト》など…あれ?見たことない職業がありますね。…黒魔道士?」

 

黒魔道士…?確かF◯とかに出てた気がする、攻撃魔法や黒魔法?を扱う職業か…。見たことないってことはこの世界ではまだいないのだろう。誰もいないなら見習えないしな…。そうやって頭を悩ませていると

 

「個人的にはこれだけ魔力が高いのであれば魔法使い職につくのが良いかと…」

 

まぁ…そうか。俺の特典的にも魔法使い系がいいだろうなでもアークプリーストは別にいいな。となるとアークウィザードか黒魔道士か。普通はアークウィザードなんだろうが黒魔道士が気になる。正直得体の知れないものになるのは恐怖がある。でもそれ以上に

 

「…黒魔道士でお願いします。」

 

好奇心と厨二心が上回った。

 

「黒魔道士ですか?この職業はですね…我々も聞いたことがないのでなんの助言も言えないのですが…すいません」

 

そう言い頭を下げ、あやまる受付の人。

 

「い、いえ聞いたことないのなら仕方ないですし…」

 

「ほんとに申し訳ありません、我々も調べてみます。…では黒魔道士として登録しました。冒険者ギルドへようこそ比企谷八幡様、スタッフ一同今後の活躍に期待しております!」

 

そう言い受付の人は笑みを浮かべ周りの人はどんちゃん騒いでた。もう二度と来たくなくなっていたがなんだかんだこうして俺の異世界生活が始まった。

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冒険者ギルドで期待の新人が出たことを見守る二人の女。

その二人が期待の新人を見ていた。

 

「ははは…。なんかすごいことになってるね…」

 

呆れながらゆうお団子頭の可愛い女の子

 

「そうね。でも生命力がそんなに高いなんて本当にゾンビにでもなったのかしら。」

 

楽しそうに罵倒の言葉を並べる黒髪ロングの美人

その間に目の腐った男がそそくさとギルドを出ようとしている。

 

「あ、行っちゃうよ。」

 

「あの男騒がれて嫌になって逃げてるわね…」

 

頭を押さえながらため息をついている。

 

「それよりいこう!」

 

「ええ、私たちを泣かせた罪は大きいわよ比企谷君」

 

そう言い二人もギルドの扉に手をかけ外に出る。そして

 

「ヒッキー!!」

 

「比企谷君!!」

 

周りの視線も気にせず大声で叫んだ。すると目の前の猫背で目の腐った男がこちらを振り向き、その目を大きく見開いていた。

 

「な…なんで。どうして…いるんだよ」

 

そう言い、怒り、悲しみ、喜び、いろいろな感情がぐちゃぐちゃの顔で私たちに言った。そんな彼に私たちは

 

「また会えたわね(ね!)」

 

目尻に涙を溜めながらそれでも微笑みながら言った。



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#3 解消

最後に設定もあります


「いや…きっつい…」

 

俺は騒がしくなったギルドから逃げるようにして外に出ていた。まぁ騒ぎが起こった原因俺なんだけど。てか騒ぎたてんなよ受付の人。コミュ障にはあの空気はきついんですよ…それにしても…これからどうするかな…そう悪態をつきながらもこれからのことに考えていると後ろから

 

「ヒッキー!!」

 

「比企谷君!!」

 

聞き慣れた愛称に声が聞こえてきた。俺は思わず後ろを振り向いた。幻聴だろうと頭ではそう思いこんだ。それでも心が反応した。そして振り向いた先には

 

「な…なんで。どうして…いるんだよ」

 

幻聴だろうとゆう思いは消え、また会えたという喜びやなんでここにとゆう疑問。

 

(なんでここに…!どうして一体何が)

 

そこには雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣が立っていた。

__________________________________________________________

 

俺たちは話をするために人気のない路地裏に移動していた。

しかし俺は動揺と驚きで喋るに喋れなかった。聞きたいことは山ほどある。なんでここにいるのか。一体何があったのか。しかし心の中とは反対に口は動かなかった。すると

 

「ヒッキーまた…会えたね」

 

俺が喋り出せないのを察してか由比ヶ浜が喋り出した。

それに続き、

 

「そうね比企谷君また会えたわね」

 

軽く目尻に涙を溜めている。でもその表情は喜びに溢れていた。ただ純粋に再会を喜んでいるように見える。でもやっとの思いで開いた口から出た俺の言葉は疑問だけだった。

 

「なんで…なんで二人ともここにいるんだよどうして…」

 

雪ノ下は少し黙り込み

 

「…そうね。そのことを話しましょう」

 

何があったのかを話しはじめた。

 

「私たちもあまり覚えていないのだけれど、私たちは比企谷君が目を閉じた後ただ立ち尽くしていたわ。」

 

その時のことを思い出し、少し顔を歪める。

 

「それでも周りにいた人たちが騒ぎに気付いてあの男を抑えてたの。それで若い男の人が携帯を取り出した時に男は抑えていた人を押しのけてそのまま私たちのところへ向かってきて…」

 

「それでゆきのんも私もボーッとしてるだけだったから反応が遅れて…」

 

「そこでその後エリス様に会ってこの世界に来ることを選んできたのか…。」

 

「そう。そうゆうことよ」

 

俺は頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。

 

(何で…何で周りのやつはまずこの二人を保護しなかったんだ。そもそも押さえつけを甘くしてどうするんだ。それに…)

 

「…ヒッキー」

 

俺は名前を呼ばれて由比ヶ浜の顔を見た。すると由比ヶ浜は俺の心境を知ってか知らずか

 

「ヒッキー多分今色々考えてると思う。なんでなんだーって。私たちが死んだことを悲しんでるかもしれないけど私たちに未練はないよ?」

 

「ええその通りよ」

 

そう言われ俺は驚いた。普通死んで未練がない人間なんて居ないはずだ。その思いが強すぎて霊なんてものになる人もいるのに。それなのにないと言い切った二人をずっとみていた。

 

「確かにまだやりたいことはあったわそれでも」

 

思いを馳せているのか少し俯く雪ノ下

 

「お父さんとお母さんの事とかあるけどそれでも」

 

ちょっと顔を歪めながらゆう由比ヶ浜

でも今度は二人とも満面の笑みで

 

「「比企谷君(ヒッキー)がいないのは嫌だから(だもん)」」

 

その言葉を聞いて俺はまた泣いてしまった。そんな俺を見てか雪ノ下と由比ヶ浜も最初は我慢していたが俺に近寄り泣き始め三人で抱き合う形になってしばらくずっと泣いていた。

__________________________________________________________

 

「…すまん…見苦しいところを見せた」

 

「それ言ったら私たちも泣いてたんだけどな…」

 

「そうねそこはお互い様よ。…後なんであなた正座をしているのかしら」

 

そう不思議そうに聞かれた。そう俺は今絶賛正座中だった。なんでかって?だって雪ノ下と由比ヶ浜に抱き合う形になってたんだよ?てことは

 

『セクハラ谷君。あれはどうゆうことなのかしら?』

 

となって通報されかねない。そんなことになれば楽しい楽しい異世界生活が虚しい虚しい刑務所生活になってしまう。そんなのは嫌だ。だからいつでも土下座に移れるように正座していた。

 

「いやぁ…その…なんと言いますか…抱き合う形になってしまい申し訳ないと言いますか…通報はやめてほしいと言いますか」

 

そうゆうと思い出したのか二人とも顔が一気に赤に変わっていく。

 

「そ、そんなの気にしてるわけないじゃない。そうよ気にしてないわ。だからはやく忘れない今すぐにでも」

 

「そ、そうだよヒッキーそれに近寄ったのは私たちだし…や、やっぱ今のなし!忘れて!」

 

そう早口でまくし立てる二人。なんで早口なの…自分の詳しい分野を語ってるオタク並みに早口じゃん…ソースは俺。てか顔真っ赤にしてまで怒ってるじゃん。やはりここは

 

「本当にすいませんでした。」

 

そうして俺は本日二度目のDO・GE・ZAを繰り出した。

__________________________________________________________

 

「それでこれからどうするのかしら」

 

あのあと二人に本気で焦られ、みんな忘れようとゆうことで話がついた。

 

「ゲームだとパーティーを組んでモンスターとかを倒してレベル上げってのが定石だろう」

 

「ぱ、パーティー?」

 

…こいつまさか

 

「雪ノ下ゲームはしたことあるか?」

 

「いえ残念ながらないわ」

 

そうだよこいつよく考えたらお嬢様じゃん。

 

「ゆ、由比ヶ浜は?」

 

「えっと…友達がしてたのを見たことはある!」

 

つまりやったことないんですね。…今この状況で頼りになるのは俺だけと。てゆうかこいつらゲームやったことないのに特典どうやって決めたんだ?そもそも職業とか色々理解してるかも怪しいな…まずは現状整理だな

 

「雪ノ下由比ヶ浜カードを見せてくれ」

 

「カードってこれのことかしら」

 

そう言いスキルカードを俺に見せた。由比ヶ浜もそれにならいカードを出す。

 

「それであってるさんきゅー」

 

二人からカードを受け取り、内容を見ていた。

 

(雪ノ下はアークウィザードか。さすが氷の女王だな。とうとう氷を魔法で出し始めるのか)

 

「比企谷君何か失礼なこと考えてないかしら」

 

「しょ、しょんなことないですよ」

 

噛んだけど完璧にごまかせたはずだ。雪の下の目線がこれまで以上に冷たいが気のせいだ。サイキンサムイモンナァー。

 

(そして由比ヶ浜が…召喚士?)

 

召喚士は確かテイムしたモンスターとかを召喚する職業か…

 

「由比ヶ浜この職業についてなんか説明されたりしたか?」

 

「確か初めてみる職業だって言われたよ」

 

(なるほど由比ヶ浜も俺同様未知の職業ってわけか。しかしステータスは雪ノ下が生命力が低いが知能、魔力、器用度、敏捷性どれも高い。その中でも魔力は飛び抜けている。あとは筋力と幸運は平均値。由比ヶ浜は、大体が同じ値。おかしいのは知能と生命力と器用度、知能と器用度が低いが生命力がずば抜けている。)

 

俺はあらかた目を通し、雪ノ下と由比ヶ浜に職業やゲームみたいな仕組みのこと大体のノウハウを説明した。

 

「なるほどつまり怪物を倒せばレベルとゆうものが上がり、能力も向上する。それに加えてスキルポイントとゆうものが手に入りそれに応じて魔法などの職業特性の技が手に入るのね」

 

さすが雪ノ下だ理解が早い。そしてその反対に

 

「えっと、うん!わかった!」

 

ほんとにわかってんのかこいつ

 

「とりあえずスキルの会得をしよう。これがないと何もできない。カードのここの部分にスキルポイントと会得できるスキルポイントがかいてある。見たところ二人とも大体が会得できるはずだから会得しといてくれ。」

 

俺は自分のカードを指し説明をした。そして説明したあとなんのスキルがあるのか眺めていた。

 

「比企谷君あなたのカードも見せてくれないかしら」

 

「俺のか?別にいいけど」

 

そういい俺はカードを渡す。

 

「…気のせいかしら。殆どのステータスが私達より高い気がするのだけど」

 

「ほんとだーヒッキー高いね。あんだけ騒がれてたもんね。」

 

え、まって

 

「お前らずっと見てたの?」

 

「ええあなたが女性に何かゆわれて軽く顔が引きつってたとこからバッチリと」

 

まじかよ…てゆうか

 

「最初っからかよ…」

 

俺が軽く絶望してると

 

「…比企谷君ちょっと」

 

「どうした?」

 

俺が覗き込むと雪ノ下はカードを取り出し、俺のカードと並べて俺に見せた。

 

「あなたのスキルと私のスキル覚えるものがほぼ一緒な気がするのだけど」

 

そうゆわれ俺もスキル欄を見ると

 

(ほんとだ…ほとんどかわんねえてか全部一緒?)

 

ほとんど覚えるスキルが一緒だった

 

「…これに関しては俺もわからん。もしかしたら黒魔道士はアークウィザードが主体なのかもしれん。知らんけど。」

 

暫く考えてると

 

「そういえばヒッキー特典何にしたの?」

 

「そういえばそうね何にしたのかしら」

 

「そうゆうお前らは何にしたんだ?」

 

「私は魔力を無限とゆうのにしてもらったわ」

 

「私はテイム能力…?ってのをもらった」

 

魔力無限にテイム能力か。職業にぴったりだ。しかし

 

「よくゲームやったことないのにそれにしたな。それに由比ヶ浜お前実はわかってないだろ。」

 

「これは私たちが選んだとゆうよりエリス様が選んでくださったのよ」

 

「そうそう私たちこうゆうのわかんなかったから」

 

なるほど体力がない雪ノ下は近接戦は不利とよんで魔力を動物好きの由比ヶ浜にはテイム能力をか。でもモンスターってそんな愛くるしい見た目してるのか…?

 

「私の能力はわかるのだけれど由比ヶ浜さんのテイム能力は一体なんなのかしら」

 

「簡単に言えばモンスターとかを手懐けるって感じだ。そしてそのモンスターで戦うって感じだ」

 

「なるほどなるほどそれでヒッキーの特典はなんなの?」

 

「お、俺のはその…」

 

俺は言いたくない理由があった。しかしゆわないわけにもいかないので

 

「ん?」

 

「ら…い」

 

「え?」

 

「ら…いと超回復」

 

「最初の方が全然聞こえないのだけれど」

 

「ら、《雷帝》と《超回復》です…」

 

そうめちゃくちゃ厨二臭いのだ。材木座並みに臭い。いやもうほんとに口にするだけで1日ベッドの上で蹲れるレベルで恥ずかしい。

 

「それはどうゆう能力なのかしらそれに…二つ?」

 

「エリス様のご好意で二つになりました。あと前者の能力は雷を自由に操れる能力です。後者は体力、体の傷を瞬く間に直してくれる能力です」

 

「へぇ〜よくわかんないけど派手で強そうだね!」

 

「そうね雷つまり電気は人も殺してしまうほど強力だもの。強いのは確実でしょうね。あとなんで敬語なのかしら」

 

あまりの恥ずかしさに敬語になっていたようだ。

 

「敬語は気にするな。まぁまだ操り方は分かんないから練習あるのみなんだが…それもこれからクエストを受けて色々試してみたいと思ってる。この世界に来たから当たり前なんだがわからないことが多い。その中でも由比ヶ浜と俺は特に不確定要素が多い。職業に前例がないからな。それを試してからこれからの身の振り方を決めようと思う。二人はどう思う?」

 

「んー私はよく分かんないからヒッキーに任せるよ」

 

「私も由比ヶ浜さんと同意見ね」

 

「じゃあ決まりだな…ん?」

 

俺はふと視線を感じ上を見上げた。しかしそこには誰もいなかった。

 

「どうしたのヒッキー」

 

「いやなんでもないそれじゃあ行くか」

 

俺たち三人はクエストを受けにギルドに向かった。

__________________________________________________________

 

「ふふっどうやら無事に会えたみたいですね」

 

路地裏の上から覗き見をしている銀髪の盗賊風の女の子がそう言い笑っていた。

 

「八幡さんもスッキリした表情をしていますし、これから大丈夫でしょう」

 

子を見守るように優しい眼差しを八幡に向ける。

 

 

「女神失格ですねこんなに肩入れするだなんて」

 

そう言いつつも嬉しそうに笑う。

 

「これから頑張ってくださいね。奉仕部の皆さんに祝福を」

 

そう言葉を残すと何処かへ消えていった。

 

 

 

 

設定

 

比企谷八幡

 

職業:黒魔道士

アークウィザードの魔法を全般操れるが威力は劣る。プラスモンスターの魔法が習得できる。

 

特典:《雷帝》

雷を練習次第で自在に操れる。出力は本人次第。

 

《超回復》

体力、体の傷を回復する。実は魔力も回復するが八幡はまだ気付いていない。

 

雪ノ下雪乃

 

職業:アークウィザード

基本的に原作通りもしかしたらオリジナルの技を出すかも。

 

特典:《無限魔力》

その名の通り魔力が無限になる。これはエリス様が体力のない雪乃には剣や槍などの近接戦闘は向いていないと思いこれをすすめた。

 

由比ヶ浜結衣

 

職業:召喚士

モンスターを召喚し、使役し戦わせる。

 

特典:テイム

どんなモンスターでもテイムできるただし召喚されたモンスターに限る。これもエリス様が自分で戦うのは躊躇すると判断しこれをすすめた。

 




設定は大体こんな感じです。八幡にこの特典を選ばせた理由は後々に出てきます。この作品は私のいわばご都合作品です。設定やストーリーに違和感などが見受けられるかもしれませんが見守ってくださると幸いです。意見などもくださると嬉しいです。ヒロインに関しましてはぶっちゃけまだ悩んでます。ハーレムに行くのか雪乃ルートか由比ヶ浜ルートかはたまたこのすばキャラルートかそこはまたおいおい決めていきます。引き込みたかった理由ですがやっぱり本物や幸せは奉仕部で見つけて欲しいと思ったからです。では読んでいただきありがとうございました。また次回会いましょう。


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#4 出会いと実験

俺たちはクエストを受けるためにギルドに入ったが、パーティー募集の張り紙を見ていた。流石にチート能力を持っているとはいえ、戦闘に関しては素人に毛も生えてない状態。このまま3人で行くのは危険と思ってどこか親切な人のパーティーに入ってみようと思ったんだが

 

「ろくな募集ねえな…」

 

「ええ…おかしい人しかいないのかしら」

 

一応全てに目を通そうと一個ずつ見てるのだが、募集要項がめちゃくちゃなのが多い。

 

[募集要項]十代の女の子募集!男は禁制!大丈夫!危険じゃないよ!

 

[募集要項]美人を募集しています。あと彼女も募集してますぜひいらしてください!

 

など明らかにロリコンとやばい奴しかいない。例にあげただけで他にもある。勿論まともなのがあるのだがクルセイダーや盾役の職業を募集してるところが多い。そろそろ目を通すのに疲れた時に一つの貼り紙に目が止まった。おれはその張り紙を手に取り、内容を見ると

 

[募集要項]上級職のみ募集します。

[メンバー]アークプリースト、冒険者

 

俺、由比ヶ浜はよくわからんがレア職業に違いはないそれに雪の下はアークウィザードで上級職、これなら俺たちでもはいれるかもしれn「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」…え、なにめちゃくちゃ痛い子いない?いきなり大声が響いたのでそちらを向くと十代前半くらいの眼帯にマントを着た小柄な少女が叫んでいた。

 

(…うわぁ…見てるだけで恥ずかしい。)

 

そう思いすぐに目を逸らし募集の張り紙に目を落とした。

 

「雪ノ下由比ヶ浜この募集で行こうと思うんだが…」

 

「何度もゆうのだけれど基本的に任せるわ残念ながらなにもわからないから力になれないもの」

 

「うん!私も任せる」

 

「わかったじゃあ募集してる人たちの席は…」

 

俺は書かれていた席に目を向けた。そこには茶色茶色目の男と青髪の女性そしてさっきの厨二少女がいた。俺はもう一回紙を見た。そして間違いがないことを確認してもう一度席を見た。でもやはりいた。ゆっくりと目を逸らし雪ノ下と目があった。

 

「…任せると言った手前ゆうのは気がひけるのだけど…別のとこにしないかしら」

 

「奇遇だな。俺も同意見だ。他のパーティー募集を探そう。それでいいだろ由比が…は…ま」

 

後ろを振り向くと誰もいなかった。

 

「おい雪ノ下由比ヶ浜がいないぞ」

 

「え?…どこいったのかしら」

 

周りを軽く見渡すと俺たち二人は固まった。

 

「へぇ〜めぐみんってゆうんだいい名前だね!」

 

「なんと我が種族以外にもこの名前の良さが分かる人がいるとは…あなたなかなかいいセンスしてますね」

 

なんと厨二少女と仲良くなっていた。ほんとになんとだよなにしてんのあの子。確かにここにしようって一回言ったけど普通すぐに机いく?てか近くにいる男の人と女の人の顔が引きつってんじゃん…いや男の方はデレデレしてるだけだわめちゃくちゃ鼻の下伸ばしてるわ。

 

「流石のコミュ力とゆうべきなのかしら…」

 

「いやもうバカだよほんとにバカだよ」

 

半分呆れながら悪態をつく

 

「どうするの?」

 

「いやもういくしかないだろ」

 

「…そうねいきましょう」

 

由比ヶ浜とその他3人のとこまで歩いて行き声をかけた。

 

「おいゆいがはm「ターンアンデッド!!」え、ちょ」

 

いきなり青髪の女性が魔法の名前を叫び、俺の足元に魔法陣が出来上がり白い光に包まれた。

 

「カズマ!カズマ!このアンデッド私のターンアンデッド食らっても平然としてるんですけど!もしかしたら賞金首かもしれないわ!待ってなさい!今討伐してガッポガッポ…」

 

カズマと言われた男は無言で立ち上がり、青髪の女性に近寄った。

 

「か、カズマ?なんで無言で寄ってくるのかしら。なに怖いんですけどカズマ?怒ってるの?ねぇカズマ!?」

 

女性の近くまでよると男は女性のおでこに指を当ておもっきりデコピンした。

 

「こっのばっかちーん!!!!!」

 

「はぐぅ!」

 

その時ギルドに男の叫び声と女性の悲鳴が響き渡った。

__________________________________________________________

 

「ほんとにすいませんうちのバカ女神が本当にすいません」

 

「カズマなんであん「このバカちんが!どう見ても人間でしょうが!お前の目は節穴か!?これ以上失礼を重ねるな!」

 

こっちが引くくらいの勢いで怒る男の方。

 

「い、いや別に気にしてませんし、そんな怒らなくても「そうよ私は悪くないわ!」

 

「この駄女神がぁ!開き直ってんじゃねえよ!この人は気遣って言ってくれてんだよ!明らかに悪いのはお前だバカ!」

 

「バカって言ったカズマが私のことバカって言ったぁ!」

 

そうゆうと女性の方は泣き始めた。なんとゆうか…うん…すごい。さっきの厨二少女が霞むぐらいすごい。冒険者ってあれか?キャラが濃いやつしかいないのか?てゆうかないてるけどどうするのこれ

 

「パーティー募集で来たんですか?それに間違いじゃなかったら日本人ですよね?」

 

泣き始めた女性を放置してこっちを向いて最後の方は小声で聞いてきた。放置していいの?ずっと泣いてるよ?時折チラチラ見てるよ?

 

「は、はい3人ともそうです。なにも分かんないのでとりあえずパーティーに入れてもらおうかと」

 

「そうですか俺は佐藤和真歳は十六歳で職業は冒険者です。こっちはアクア職業はアークプリーストあなたたちは?」

 

年下かならお互いに敬語はなしでいいだろう

 

「俺は比企谷八幡お互いに敬語はなしで行こう職業は黒魔道士。後ろの二人は…」

 

「私は雪ノ下雪乃よ。職業はアークウィザードよ。私も敬語はなしでいいわよろしく」

 

「私は由比ヶ浜結衣!職業は召喚士です!よろしく!」

 

「アクア…おいアクアいつまで拗ねてんだ」

 

「だって…だってカズマが無視するから」グスン

 

「それは悪かったよそれにお前もこの人謝れよ。初対面でアンデッドとか言ったんだから」

 

「いやよなんで女神であるこの私が謝らないといけないのよ」

 

プライドが高いのか断固拒否の姿勢を見せるアクア

 

「よーしそっちがその気ならこっちにも考えがある」

 

「な、なによやる気!?言っとくけどね女神であるこの私がそうそう落ちるわけないでしょ覚悟しなさいクソニート!」

 

そうゆうとファイティングポーズを取り佐藤を威嚇する。

 

「あのカエルの前に一人で放置するからな」

 

そう言われると即座にファイティングポーズを解き、こっちを向き

 

「ごめんなさい」

 

九十度の綺麗なお辞儀を見せた。さっきまでのプライドどこいったんだよどんだけやなんだよてかカエルって何。怖いんだけど

 

「いや大丈夫だもともと気にしてないし…」

 

別に傷ついてねえしなもう慣れてきたしただちょっと泣きそうになっただけでもう慣れてるしなんなのこの世界ほんと

 

「早速行きたいんだけどその前にチート能力を聞いてもいいか?」

 

「ああそうだな」

 

俺たちは3人とも自分の特典について説明した。

 

〜説明中〜

 

「なるほど。純粋にいいな。しかも比企谷さんは二つ持ちかよ」

 

「まぁ色々あって。…ところで佐藤の特典はなんなんだ?」

 

そう聞くと苦虫を噛み潰したような表情をしながらアクアを見た。当の本人は誇らしげに胸を張っていた。目のやり場に困るからやめて欲しいほんとに。

 

「こいつです」

 

とアクアを指差す。そしてさらに誇らしげにドヤ顔をするアクア。

 

「こいつ…一応女神で…それで色々カチンときて連れてきました」

 

そうほんとに嫌そうに小声で話す。

 

「まぁこの女神である私がついてきたんだから百人力どころか千人力でしょうね」フフン

 

そう得意げにゆうアクアを見ながら佐藤はどこか遠くを見るような目をしていた。

 

「ところで私のこと忘れてませんか?」

 

「「「「「あ」」」」」

 

「おい」

__________________________________________________________

 

俺たちは街の外に出て平原に移動していた。

 

「さっきジャイアントトードを倒すクエスト受けたから、それを五体倒せばクリアだ」

 

ジャイアントトード?訳すとでかいカエルか?それらしいのを探そうと周りを見渡していると。遠く離れた場所になんかいた明らかに遠近法無視したみたいな奴がいた。

 

「佐藤あれのことか?」

 

そう聞くとうなずく

 

「ジャイアントトード…トード…比企谷君のことかしら」

 

「おい泣くぞお前」

 

昔ヒキガエルとかゆわれてたのもしかして知ってる?

 

「…とりあえず佐藤実力を見せるのも兼ねて試したいことがいくつかあるだけどいいか?」

 

「別にいいけどどうした?」

 

「実は俺と由比ヶ浜の職業がよくわかってないんだだから実験をさせてほしい」

 

「分かんないって…おいアクア二人の職業聞いたことないのか?」

 

「聞いたことないわ。特典の影響じゃないかしら」

 

「アクアもわかんないんだったらほんとにわかんないんだろうな。…何するんだ?」

 

「由比ヶ浜のスキルカードを見てスキル欄に任意召喚と無差別召喚があった。多分任意召喚はよくわからんが後者は多分召喚獣にするためのモンスターを召喚するんだと思う。だからそれを試してもいいか?」

 

「…危険じゃないか?」

 

「由比ヶ浜に聞く限り必ずテイムできる特典らしい。召喚した瞬間テイムすればなんとかなると思う」

 

正直危険だらけだと思う。でも後回しにできる問題でもないから今やるしかない。

 

「じゃあ由比ヶ浜やってみてくれ」

 

「えっと…どうすればいいのかな」

 

「手を前に出して召喚って叫んでみてくれ」

 

これは日本で見ていたアニメやゲームを元に出した仮説だ。正直正解かどうかは怪しいが試してみる価値はある。と思う。

 

「手を出して…召喚!」

 

由比ヶ浜がそう叫ぶと由比ヶ浜の前にでかい魔法陣が出来上がり魔法陣が白い光を放ち始めた。なんかやばい気がするそう思い由比ヶ浜のそばに行き逃げる準備をする。

 

「ヒッキー!なんか出てる!」

 

そうゆわれ魔法陣を見ると真ん中の方に何かが出始めていた。そして光が強くなり辺りを包み込み俺らは目を瞑った。恐る恐る目を開けると光も魔法陣もなくなっておりさっきまで魔法陣があったところには青くそして液体のようにぷるんぷるん震えているモンスターがいた

 

「「「「「「…」」」」」」

 

そうスライムである。

 

「なんですかあんだけ仰々しい演出でスライムですか。」

 

「ほんとだよ。びっくりさせやがって」

 

「ええーでも可愛いじゃん。でもヒッキーこっからどうするの?」

 

「まぁ…よくわからんがテイムとでも言っときゃなんとかなるんじゃね」

 

召喚もそんな感じだったしテイムもそんなんだろとか適当なことをゆうと

 

「えっと…テイム!」

 

スライムが軽く白に光りすぐおさまった。そうするとスライムは由比ヶ浜の足元により体を擦り付けていた。

 

「わっわっかわいいー!」

 

(ほんとにそうなのかよ単純すぎるだろ)

 

「これで由比ヶ浜さんのことは分かったわね。他は何を試すの?」

 

「次は…お前だ雪ノ下。」

 

「私は何をすればいいのかしら」

 

「氷系の魔法であのカエルの足元を凍らしてくれるか?」

 

少し考え

 

「できるかわからないけどやってみるわ」

 

「じゃあ俺たちが引きつけるよ。…おい、行くぞアクア。今度こそリベンジだ。一応元なんちゃらなんだろ?たまには役に立て元なんちゃら!」

 

「元って何!?ちゃんと進行系で女神なんですけど!」

 

するとめぐみんが不思議そうに。

 

「…女神?」

 

「を自称するかわいそうなやつだ。たまにこうゆうことを口走るけどそっとしといたあげよう」

 

佐藤の言葉にアクアに同情の目を送るめぐみん。アクアは半泣きになりながらヤケクソ気味にカエルに近寄り

 

「なによ、このカエルごとき引きつければいんでしょ!全員見てなさいこのアクア様にかかればこいつらを引きつけるくらい簡単なのよ!行くわよ!フォルスファイア!」

 

手を上に突き出し魔法名を叫ぶと手に青白い炎が灯る。そして瞬く間にカエルがアクアに惹きつけられてゆく。周りにいた全部のカエルが。

 

「おい!バカ!なにやって…おいこっちくんな!」

 

三匹のカエルを引き連れてこっちに走ってくるアクア

 

「カズマが引きつけるって言ったんでしょほら引きつけたわよどうにかしてよ!」

 

「誰が全部引きつけろって言ったんだよ!バカだろお前バカだろ!」

 

「うわぁぁぁん!またカズマがバカって言ったぁ!」

 

俺はやばいと思い自分のスキルカードを見て足止めもしくは三匹ともやれる魔法を探した。そして

 

「雪ノ下!あのカエルに向かって《クリスタルプリズン》って叫べ!」

 

「わ、わかったわ。…《クリスタルプリズン》!」

 

そう叫ぶと泣き叫んでいるアクアの後ろが一瞬にして地面もカエルも全部凍結し、カエルは固まっていた。技を放った雪ノ下も指示した俺も全員固まっていた。

 

「…すげえ」

 

絞り出せた言葉はこれだけだった。近くで見ると相当でかいカエルが三匹きれいに氷で固まっており圧巻の一言しか出ない。

 

「…私には劣りますが紅魔族と比べてもトップレベルでしょうねこれは」

 

そう顔を引きつらせながら言っていた。聞いた話によると紅魔族は生まれつき高い知力と魔力を持っていて大抵は魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているらしい。その種族と同じくらいってことは…やべえよ超やべえよこれからはあらぬ失言をしないことを誓った。

 

「ここまでされたのであれば紅魔族の血がうずいて仕方ありません。次は私の出番です!」

 

そう言い俺たちに距離を取るように指示し距離を取った。距離を取ったことを確認するとめぐみんは詠唱を始める。するとめぐみんの周りの空気がビリビリと振動し始めた。魔法はさっきみたが明らかにさっきのよりやばいのは俺でも察しがつく。詠唱の声が大きくなっていき、めぐみんの額に汗が一筋垂れる。

 

「見ていてください。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段。……これこそが、究極の攻撃魔法です。」

 

杖の先に光が灯り、紅い瞳を鮮やかに輝かせ、カッと見開く。

 

「『エクスプロージョン』っ!」

 

めぐみんの杖の先から出た一筋の閃光が平原を走り抜ける。その光が凍ったカエルに突き刺さった直後、目が眩むほどの強烈な光そして辺りを震わせる轟音や凄まじい突風が俺らを襲った。飛ばされそうになりながらも必死に耐え、爆煙が晴れるとカエルのいた場所は20メートル以上のクレーターができており、カエルは爆散していた。

 

「…すっげー。これが魔法か…」

 

「これは…むやみやたらに使っていいもんじゃないな…」

 

めぐみんの魔法の威力に感心しているとそこら中の地面が盛り上がり始める。そしてその盛り上がった地面からはカエルが次々と出てきた。そのうちの一匹のカエルがめぐみんの近くに這い出ようとしているが動作は非常に遅かった。ここはめぐみんと一緒に離脱をしてその後にもう一回あれを打てば…。同じことを考えていたのか佐藤が

 

「めぐみん!一旦離れて、距離を取ってから攻撃を…」

 

俺も佐藤もめぐみんの方を向き動きを止めた。そこにめぐみんが倒れていた。

 

「ふ…。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。…要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。あっ、近くにカエルが湧き出すとか予想外です。…やばいです。食われます。すいません、ちょ、助け…ひぁっ…!?」

 

カエルはめぐみんを口に加え軽々と持ち上げ上を向き、めぐみんを食べようとしていた。やばいと思い、それを後ろに伝えようと振り向くと一匹のカエルに目がいった。カエルの口から青色の何かが出ている。

 

「ヒッキー!アクアん食べられちゃったよ!ど、どうすれば」

 

やっぱりアクアだった。そして由比ヶ浜の後ろにはカエルがじりじりと近寄っていた。アクアが食べられたことに動揺して周りを見れていないのか近寄っているカエルに気付いていない。

 

「おい由比ヶ浜!後ろ!」

 

「え?…ひっ!」

 

由比ヶ浜は後ろを向きカエルと目があってしまった。

 

「由比ヶ浜さん逃げて!」

 

尻餅をつき完全に萎縮してしまっている由比ヶ浜にカエルは近くまでより大きな口を開くと…

 

「「由比ヶ浜(さん)!」」

 

丸呑みにされてしまった…

 

カエルが。…スライムによって。

 

「「「「え」」」」

 

スライムは由比ヶ浜が食べられそうになった直前由比ヶ浜の前に出ていきなり巨大化しそのままカエルを包み込んだ。その光景を見ていた雪ノ下俺佐藤由比ヶ浜は固まり、スライムは満足そうにゲップをしていた。四人とも動けないで固まっていると

 

「ちょっ…やばいです…もう上半身ほとんど食べられちゃってます…カズマ、ハチマン助けてください」

 

めぐみんの声が聞こえそっちを向くと顔と胸の部分がちょっと出てる位まで食べられてた。俺は頭を回し考えた。

 

(今俺にできること…特典を使えばいやでも使い方が…)

 

迷ってる暇はないと思い、俺はカタログに書かれていたことを思い出しながら、《雷帝》を使おうとしていた。

 

(意識するのは電気の力。俺の体に電気が流れているのを想像してその電気を手元に凝縮させる。形のイメージは槍)

 

集中していると手元でバチバチと音が鳴り始めた。

 

「うお…すげえ…」

 

手には槍とゆうにはお粗末だが鋭い棒が二本出来上がっていた。すこしの間感傷に浸りそうになったけど、無理やり頭を切り替え考える。

 

「佐藤」

 

「はいはい佐藤ですって何それ」

 

「これをアクアとめぐみんを食ってるカエルに投げるから投げた後にめぐみんを回収してきてくれ」

 

「わ、わかった」

 

了承を得た俺はまずめぐみんを食ってるカエルの方を向き

 

「ふんっ!!!」

 

おもっきり槍もどきをカエルに向かってぶん投げた。正直当たるかどうかは運次第だけど時間がなかった。

 

(うっそ…)

 

槍もどきは轟音を轟かせながらすごいスピードでカエルの腹をえぐり抜いた。腹に大穴が空いたカエルはそのまま倒れめぐみんを吐き出した。動揺したがすぐに冷静になりアクアを食ってるカエルの方を向いた。

 

(…このまま投げたらアクアごと貫いてしまう。だったら)

 

そうするとまた集中し槍もどきを刀のような形に整え、成功したのを確認するとカエルに向かって走り出した。そして

 

(刀は使ったことない。けど力一杯振り下ろせば…!)

 

「ふっ!!」

 

技も型もなにもなくただ単純に振り下ろした刀もどきはカエルを切り裂いた。そしてカエルは倒れアクアを吐き出した。

 

「アクアさん、逃げるぞ」

 

泣いているアクアに声をかけ、俺たちは街の方に全力で走った。こうして俺たちは六匹?のジャイアントトード討伐に成功しクエストを完了させ無事(?)アクセルの街にかえった。

__________________________________________________________

 

「うぐっ…。ぐすっ…。生臭いよう…生臭いよう…」

 

俺たちの後ろを粘液まみれのアクアが泣きながらついてきていた。

 

「カエルの体内って、臭いけどいい感じにあったかいんですね…知りたくもない知識が増えました…」

 

アクアと同じく粘液まみれでほんとに知りたくもない情報を教えてくれながら、佐藤の背中におぶさっていた。

 

「今後爆裂魔法は緊急の時以外は禁止だな。これからは、他の魔法で頑張ってくれよ、めぐみん」

 

「………使えません」

 

「……は?なにが使えないんだ?」

 

佐藤はおうむ返しで言葉を返す。

 

「…私は爆裂魔法しか使えないです。他には一切魔法が使えません。」

 

「……マジか」

 

「……マジです」

 

その言葉に全員が静まり返る中、泣いていたアクアが会話に参加する。

 

「爆裂魔法以外使えないってどういうこと?爆裂魔法を習得できるほどのスキルポイントがあるなら、他の魔法を習得していないわけがないでしょう?」

 

アクアの言葉に佐藤が?を浮かべた。その顔を見てアクアは説明を始めた。

 

「スキルポイントは職業についたときにもらえるスキルを習得するためのポイントよ。優秀なものほど初期ポイントが多くて、ポイントを振り分けてスキルを習得するの。例えば、超優秀な私なんかは、まずは宴会芸スキルを全部習得し、それからアークプリーストの全魔法も習得したわ」

 

宴会芸スキルってなにいつ使うのそれを聞くと

 

「「…宴会芸スキルってなにに使うものなんだ(使うんだ)?」」

 

俺と佐藤がハモった。

 

「スキルは、職業や個人によって習得できる種類が限られてくるわ。例えば苦手分野があればその苦手分野を習得する際、普通の人よりも多くのポイントが必要だったり、そもそも習得できなかったり。…で爆発系魔法は複合属性って言って、火や風系列の魔法の深い知識が必要な魔法なの。つまり、爆発系の魔法を習得できるくらいのものなら、他の属性の魔法なんて簡単に習得できるはずなのよ」

 

「つまり上位の魔法が使えるのなら、それより下の魔法が使えないわけがないってことね。」

 

「「それで宴会芸スキルはいつどうやって使うんだ?」」

 

またハモった。てかなんで無視?

 

「…私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード。爆発系統の魔法が好きなんじゃないです。爆裂魔法だけが好きなのです」

 

これはあれか推しが尊い

 

 

的なあれか。つまりそれ以外を推す気はないやつだ。それより宴会芸スキルって結局なんなんだよ

 

「もちろん他のスキルを取れば冒険が楽にできるでしょう。…でも私は爆裂魔法しか愛せないのです。1日一発でも倒れるとしても爆裂魔法だけを愛します。だって、私は爆裂魔法を使うためだけにアークウィザードの道を選んだのですから!」

 

「素晴らしい!素晴らしいわ!その、非効率ながらもロマンを求めるその姿に私は感動したわ!」

 

そんなめぐみんにアクアも同調し始めた。すると

 

「そっか。多分茨の道だろうけど頑張れよ。それじゃあギルドに着いたら今回の報酬を山分けにしよう。うん、まぁまた機会があればどこかで会うこともあるだろう。比企谷さん雪ノ下さん由比ヶ浜さん明日からよろしくお願いします。」

 

そう言いめぐみんをばっさり切り捨てた。しかし

 

「ふ…。我が望みは、爆裂魔法を放つ事。報酬などおまけに過ぎず、なんなら山分けでなく食事とお風呂とその他の雑費を出してもらえるなら、我は無報酬でもいいと考えてる。そうアークウィザードである我が力が、今なら食費とちょっとだけ!これはもう長期契約を交わすしかないのではないだろうか!」

 

下手な押し売りみたいな御託を並べ自分を売り込むめぐみん。

 

「いやいや、その強力な力は俺たちみたいな弱小パーティーには向いてない。そう、めぐみんの力は俺たちには宝の持ち腐れだ。」

 

それに負けじと断固拒否の姿勢を見せながらめぐみんの手を緩めようとする佐藤。

 

「いえいえいえ、私は上級職ですけど駆け出し。レベルも6ですから。もう少しレベルも上がればきっと倒れなくなりますから。で、ですから、ね?私の手を剥がそうとしないで欲しいです。」

 

案外力が強いのか引き剥がせず苦戦している。

 

「いやいやいやいや、1日1回しか使えない魔法使いとか、かなり使い勝手悪いから。くっ、こいつ魔法使いのくせに意外な握力をっ…!お、おいはなせ、お前多分他のパーティーにも捨てられた口だろ、というかダンジョンに潜った際には、狭いから使えないしいよいよ役立たずだろ。こっちには比企谷さん達もいるし。お、おいはなせって。おい!」

 

「見捨てないでください!もうどこのパーティーにも拾ってもらえないんです!荷物持ちでもなんでもしますからから捨てないでください!」

 

通行人がいる中で叫ぶめぐみん。粘液まみれの少女が捨てないでと叫んでたらなんかあれだよなまずいよな。

 

「ーやだ…あの男、小さい女の子を捨てようとしてる…」

 

「ー隣には、…アンデッド!?」

 

「ー違うわよ人間よ多分。それにしても粘液まみれの女二人連れてどんなプレイをしたのよあの変態たち」

 

たちってなにたちって。え?俺も入ってる?嘘でしょ?アンデッドとかゆわれたあげく巻き込まれてる?アクアはそれを聞きにやけ、めぐみんは悪い顔をしながら

 

「どんなプレイでも大丈夫ですから!先ほどの、カエルを使ったヌルヌルプレイだって耐えて見せ「よーしわかった!めぐみんこれからよろしくな!」」

 

佐藤の心が折れた瞬間であった。女って怖い

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「はい、確かに。ジャイアントトードを3日以内に五匹討伐。六匹討伐でクエスト完了を確認いたしました」

 

どうやら由比ヶ浜のスライムが食べたのも討伐数に入るらしい。それに由比ヶ浜のレベルも上がっている。テイムしたモンスターは主人の一部みたいなものなんだろう。そのスライムはどこいったかって?なんかよくわかんないけど消えてった。おれたちもよく分からん。アクアとめぐみんは粘液まみれのため大衆浴場へと向かったらしい。アクアとめぐみんの分を除いて山分けをすると

 

「比企谷さんたちはどうするんだ?」

 

不意に聞いてきた。多分この後どうするかのことだろう

 

「俺たちは適当に宿を探してそこに泊まるよあと呼び捨てでいいぞ」

 

「そっかじゃあまた明日昼ごろにギルド集合で。俺のことはカズマって呼んでくれハチマン」

 

いきなり下の名前呼びかよ

 

「まぁ…善処する」

 

俺たちはそう言いギルドから外に出た。少し歩いた先で俺は立ち止まり由比ヶ浜に声をかけた。

 

「…由比ヶ浜」

 

呼ばれた本人は少しびくっとはね、俺と目を合わせた。カエルと相対してから由比ヶ浜の表情がずっと曇っていた。雪ノ下も少なからず気にしていたみたいだが当の本人も少し陰りを見せていた。それもそうだ由比ヶ浜は死にかけて雪ノ下は友達が死にかけたのだ。正常であるはずがない。恐らく毎日が命がけ冒険者とゆう職業が甘くないことは知ったはずだ。俺も覚悟はしていたけどその覚悟が揺らぎそうになった。

 

「…お前たちはどうしたい。」

 

俺は二人に聞いた。今ここで冒険者を辞める選択もある。恐らく冒険者以外にも職なんていくらでもある。それで生活していけばいい。

 

「…ヒッキーはどうするの」

 

「俺は…続けるよ」

 

俺は…強くなりたい。傲慢でも慢心でもなく俺は強くなれると思う。絶対にこいつらにはゆわないけどこいつらを守れるほど強くなりたい。この世界で生きるためにも。だから俺は続ける。

 

「お前らに冒険者を続けることを強要はしない。今日死にかけたんだそれでやるって方がおかしいし、この世界に来たから冒険者をしなければいけないなんてルールはないしな。それでお前らはどうしたいんだ?」

 

二人ともすこし考え、何かを決意した強い意志のこもった目で俺を見る。

 

「私は…ヒッキーについていく。ヒッキーが冒険者を続けるなら私も続ける」

 

「ええ…そうねあなたについてゆくわ」

 

さっきまでの陰った雰囲気は霧散していた。

 

「じゃあ適当に宿探そうぜ」

 

おれたちは適当に宿を探しそこに入った。のだが

 

「…本当に一部屋しかないんですか?」

 

「残念ながらねぇ…今その部屋以外満員なんだよ」

 

入った宿には一部屋しか空きがなかった。

 

(雪ノ下も由比ヶ浜も慣れないことばっかで疲れてるはず正直俺もだいぶ疲れてるし、もう夜も遅い。だからここは…)

 

「じゃあ二人分でその1部屋泊まれますか?」

 

「まぁいけるけどあんたたち3人だろう」

 

「いえ俺は野宿でも…」

 

そこまでいってすっごい力で両肩を掴まれた。いやてゆうか冗談抜きで痛いんですけど。

 

「「比企谷君(ヒッキー)…?」」

 

「…3人分でお願いします…」

 

なんかすごい圧かけられたんだもん。怖いすぎるよこいつら優しいから見逃せなかったんだろうけどそれでも怖いよ。

 

「あいよ…毎度ありほれこれが部屋の鍵だよ」

 

店の主人から鍵をもらい、その鍵に書かれてある番号の部屋まで行き中に入ると

 

「「「…」」」

 

タンスや机など生活必需品はある程度揃っていてベッドもあった。…一つだけ。それを見て俺は華麗にUターンをし部屋を出ようと…したところでやはり肩を掴まれ圧をかけられる。

 

「比企谷君私たちは気にしないわだから別に逃げなくてもいんじゃないかしら」

 

「それにヒッキーなら…」ゴニョゴニョ

 

何この死地製造少女たち。こうゆう行動でどんだけの思春期の男の子たちが死地へといったのか知らないのか。だが残念俺は普通じゃないからな絶対に勘違いはしない。

 

「いや…いいよ床で寝るよ」

 

そうすると肩にかかった手にさらに力が入った。いや痛いほんとに痛い折れる俺の肩折れる。

 

「男女3人で一緒に寝るのはまずいだろ…」

 

「さっきの言葉が聞こえなかったのかしら私は気にしないと言っているのよ。わかったらさっさと観念しなさい」

 

「そうだよ!かんねん?しろ!」

 

俺をなんとかねじ伏せようとする二人てか由比ヶ浜お前絶対意味わかってないだろ。

 

「………わかった。」

 

諦めそうにないので俺が折れることにした。何とはゆわんけど俺が我慢すればいいだけの話だしな。何とはゆわんけど。

 

「それじゃあ大衆浴場に行ってお風呂に入りましょう」

 

「さんせーい!私お風呂入りたかったんだよね〜。」

 

「さっさと準備して行きますか…」

 

3人仲良く大衆浴場に歩いて行った。

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ガールズトーク

 

「…ねぇゆきのん」

 

「どうしたのかしら由比ヶ浜さん」

 

二人で湯船に浸かりながら話に花を咲かせていた。

 

「ゆきのんもさヒッキーのことが好きなんだよね」

 

前までの私なら全力で否定していたと思う。けど今は

 

「えぇ好きよ訳が分からないほどに」

 

そう言いのけ由比ヶ浜さんを見る。すると彼女は軽く目を見開いて驚いたそぶりをした後嬉しそうな顔をした。

 

「そっか」

 

「なんで嬉しそうなのかしら。普通恋敵が増えるのだから嫌だと思うのだけれど」

 

「確かに他の人だったらやかな。でもゆきのんだから私は嬉しいそれにゆきのん素直になってるし」

 

「ふふっそうかしら」

 

「絶対そうだよ〜。まぁいいことだけど」

 

「由比ヶ浜さんお互い頑張りましょう」

 

「うん!頑張ろうね!」

 

そのあと他愛もない話をしてお風呂から上がり宿に戻った。その夜、寝るときに逃げられないよう八幡が雪乃と結衣にはさまれる形で寝ることになり、八幡は一睡もできなかった。

 

 

 




後書き
今回はざっと能力の確認をしたかったのとかずまたちとあわせたかったのでいろいろ詰め込みました。八幡が冒険者をやる理由受けるためでもあります。あと八幡たちは少し素直になっています。死ぬ前に少し和解したこともう会えないと思ったことでちょっと変わってます。その辺も込みでご覧ください。ではまた次回会いましょう


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#5 邂逅と正体

カエル討伐の翌日。俺は一睡も出来ずにギルドに向かっていた。だって俺を逃さないためとか言って俺の両隣で寝るんだもんあの二人。健全な男子高校生が寝れる訳がない。つまり死にかけみたいになっていた。

 

「佐藤君おはよう」

 

「おはよ〜!」

 

「…おはよう」

 

ギルドの扉を開け、カズマたちを探し見つけると近寄り声をかけた。

 

「おうおはよう…?」

 

カズマは俺の方を向くととじっと俺を見つめた。

 

「どうした俺の顔をじっとみて」

 

「いやなんか昨日より目がすごいことになってる気がして…」

 

あぁ寝てなくて犯罪者ばりに目がやばいことになってんのか。

 

「気にすんなこれはデフォルトだ」

 

そう流しつつ3人とも席に座る。めぐみんは一心不乱に食事をし、アクアは店員を捕まえておかわりをしているようだった。どうやらカズマたちは遅めの昼飯をとってるみたいだ。てゆうかめぐみんは明らかに女の子の食欲じゃないだろもはや思春期男子並だろあれ。

 

「ハチマンたちはなんか食べるか?」

 

「じゃあなんか頼んで食べるわ雪ノ下たちはどうする?」

 

「私もいただくわ」

 

「私も!丁度お腹減ってたんだよね〜」

 

メニュー手にとり、何があるのか眺めていた。

 

(へぇ〜さすが異世界見たことないようなのがいっぱいあるな。…ん?え?ジャイアントトードの肉?あれ食えんの?)

 

そう驚きながらも俺たちは注文を済ませた。

 

「ところで聞きたいんだがスキルの習得ってどうやるんだ?」

 

めぐみんがフォークを握り締めたまま顔を上げ

 

「スキルの習得ですか?そんなもの、カードに出ている現在習得可能なスキルってところから…。ああ、カズマは冒険者でしたね。初期職業と言われている冒険者は、誰かにスキルを教えてもらうのです。まずは目で見て、そしてスキルの使用方法を教えてもらうのです。すると、カードに習得可能スキルという項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば習得完了なのです」

 

冒険者は確か全てのスキルが習得可能だったはずだ。要するに器用貧乏みたいな感じか…。

 

「…つまりめぐみんに教えて貰えば、俺でも爆裂魔法が使えるようになるってことか?」

 

「その通りです!」

 

すっごいくいつきをみせるめぐみん。

 

「その通りですよカズマ!まぁ、習得に必要なポイントは馬鹿みたいに食いますが、冒険者は、アークウィザード以外で唯一爆裂魔法が使える職業です。爆裂魔法を覚えたいなら幾らでも教えてあげましょう。というか、それ以外に覚える価値のあるスキルなんてありますか?いいえ、ありませんとも!さぁ、私と一緒に爆裂実を歩もうじゃないですか!」

 

「ちょ、落ち、落ち着けロリっ子!つーかスキルポイントってのは今3ポイントしかないんだが、これで習得できるものなのか?」

 

「ろ、ロリっ子……!?」

 

カズマの一言にショックを受けたのかしょんぼりとうなだれていた。

 

「冒険者が爆裂魔法を習得しようと思うなら、スキルポイントの10や20じゃきかないわよ。10年ぐらいかけてレベルを上げ続けて一切ポイントを使わず貯めれば、もしかしたらしゅうとくできるかもね」

 

そんなまつのか長いな。俺は届いたジャイアントトードの肉を食べながら話に耳を傾けていた。あ、意外にうまいこれ。

 

「ふ…この我がロリっ子…」

 

うなだれためぐみんは「…この胸が…」と呟きながら自分の胸を見た後顔を上げ由比ヶ浜を見ていた。わかるよすごいもんな何とはゆわんけど。めぐみんの視線に気付いたのか由比ヶ浜が

 

「どうしたのめぐみん」

 

「いえ…なんでもないです…どうせ私なんか…」

 

またうなだれ再び定食をもそもそと食べ始めた。まぁどんまいめぐみん由比ヶ浜は格が違うのだろう。などと考えていると

 

「ヒッキー」

 

由比ヶ浜が俺に声をかけ

 

「ごめんなさい」

 

俺は反射的に謝ってしまった。別にやましいこと考えてたからとかじゃないよ?ハチマンウソツカナイ

 

「?…なんで謝ってるの?」

 

「い、いやなんでもないそれよりどうした?」

 

「スキル欄に新しいのが出てるんだけど」

 

そう言い俺にスキルカードを見せる

 

「…スライム召喚…か」

 

(十中八九昨日のスライムだろう。でもそれなら任意召喚ってなんなんだ?テイムしたモンスターを任意で召喚するのかと思ったけど…まだわからないことが多いな)

 

「多分昨日のスライムだろう。また後で召喚してみればいい」

 

「そ、そうだよねわかった」

 

何故か若干顔を引きつらせていた。

 

「なぁアクア。お前なら便利なスキルたくさん持ってるんじゃないか?何か、お手軽なスキルを教えてくれよ。習得にあまりポイントを使わないで、それでいてお得な感じなの」

 

アクアは水の入ったコップを片手にしばらく考え込む

 

「…しょうがないわねー。言っとくけど、私のスキルは半端ないわよ?本来なら、誰にでもホイホイと教えるようなスキルじゃないんだからね?」

 

アクアはコップを指差しそのコップを頭の上に乗せ

 

「さあ、このタネを指で弾いてコップに一発で入れるのよ。すると、あら不思議!このコップの水を吸い上げた種はニョキニョキと…」

 

…これってどう考えても

 

「誰が宴会芸スキル教えろっつったこの駄女神!」

 

「ええーーーー!?」

 

めちゃくちゃ心外とゆう風に叫ぶアクア。いや地味に気になるんだけど確かに覚えたいかってゆわれたら覚える気わかないけど。そしてアクアもめぐみんの隣でうなだれながらタネを指で弾いて転がしていた。どんだけショックなんだよ。ただ落ち込むのはいいけどコップを頭の上から下ろして欲しい。単純に目立つからほんとにやめてほしい。

 

「あっはっは!面白いねキミたち!ねえ、キミがダクネスが入りたがってるパーティーの人?有用なスキルが欲しいんだろ?盗賊スキルなんてどうかな?」

 

横から突然声をかけられそちらを向くと二人の女性がいた。声をかけたのはほおに小さな刀傷のある身軽な格好をした銀髪美少女にガチガチのフルプレートの金髪美少女。てゆうか銀髪美少女の方戸塚に似てるな…あぁ戸塚に会いたい。戸塚に会えるなら死ねる。そんなことを考えていると軽く違和感を覚えた。

 

(…どこかで会ったことある気がする…でもあんだけ可愛いなら忘れるはずないんだが…てかダクネスって誰)

 

「えっと、盗賊スキル?どんなのがあるんでしょう?」

 

その質問に上機嫌で

 

「よくぞ聞いてくれました。盗賊スキルは使えるよー。罠の解除に敵感知、潜伏に窃盗。持ってるだけでお得なスキル盛りだくさんだよ。キミ、冒険者なんだろ?盗賊のスキルは習得にかかるポイントも少ないしお得だよ?どうだい?今ならクリムゾンビア一杯でいいよ?」

 

カズマは少し考え

 

「よし、お願いします!すんませーん、こっちの人に冷えたクリムゾンビアを一つ!」

__________________________________________________________

 

「まずは自己紹介しとこうか。私はクリス。見ての通りの盗賊だよ。で、こっちの無愛想なのがダクネス。昨日ちょっと話したんだっけ?このこの職業はクルセイダーだから、キミに有用そうなスキルはちょっとないと思う。けどなんでキミもついてきたの?」

 

俺は違和感が引っかかりついてきていた。ちなみに雪ノ下由比ヶ浜はまだ食事中だったので置いてきて残り二人はしょぼくれたままだったので放置してきた。

 

「まぁ盗賊スキルが気になっただけだ」

 

「なるほどまぁ特に問題はないからいいけどじゃあ始めようか」

 

「ウス!俺はカズマっていいます。クリスさんよろしくお願いします!」

 

「ではまずは《敵感知》と《潜伏》をいってみようか。じゃあ…ダクネスちょっと向こう向いてて?」

 

「…ん?…わかった」

 

ゆわれた通り反対を向く。するとクリスがタルの中に入りダクネスに石を投げつけそのまま樽に身を隠した。…え?これが潜伏?

 

「……」

 

石をぶつけられたダクネスは無言でクリスの入ってる樽に近づき、

 

「敵感知…敵感知…!ダクネスが怒ってる気配をぴりぴりかんじるよ!…ダクネス!?わかってると思うけどスキルを教えるために仕方なくやってることだからね!?お手柔らかにぁぁぁぁぁ、やめてえええええええ!」

 

タルごと横にひっくり返されゴロゴロと転がされていた。敵感知なくても怒ってるのわかる気がするが…そこは触れないでおこう。そのあと目が回っていたクリスが回復しクリスの一押しスキルである窃盗という魔法を教わっていた。

 

「じゃあ、キミに使ってみるからね?いってみよう!『スティール』っ!」

 

クリスが手を突き出し叫ぶと手には財布のようなものが握られていた。

 

「あっ!おれの財布!」

 

どうやらカズマの財布らしい。幸運依存だからあれかもしれないが幸運が強い奴が使うと確かに便利だ。

 

「おっ!あたりだね!まぁ、こんな感じでつかうわけさ。それじゃ、財布を返…」

 

そこまで言いかけて何か思いついたのかにんまりと笑みを浮かべ

 

「…ねえ、私と勝負しない?キミ、さっそく窃盗スキルを覚えてみなよ。それで、あたしから何か一つ、スティールで奪っていいよ。それが、あたしの財布でもあたしの武器でも文句は言わない。この軽い財布の中身だと間違いなくあたしのものの方が価値があるよ。どんなものを奪ったとしても、キミはこの自分の財布と引き換え…どう?勝負してみない?」

 

とかずまに勝負をふっかける。当の本人は悩んでるみたいだが口元は軽く微笑んでいる。

 

(多分受けるだろう。しかし…)

 

俺は違和感の正体に気付き確信していた。

 

(後でカマをかけるか)

 

「さっそく覚えたぞ。そして、その勝負のった!何とられても泣くんじゃねーぞ?」

 

悩んでた割にノリノリだなこいつ

 

「いいねキミ!そういう、ノリのいい人って好きだよ!さあ何が取れるかな?今なら財布が敢闘賞。当たりは、魔法がかけられたこのダガーだよ!こいつは四十万エリスは下らない一品だからね!そして、残念賞はさっきダクネスにぶつけるために多めに拾っといたこの石だよ!」

 

こっちもか。

 

「ああっ!きったねえ!!そんなのありかよっ!」

 

確かに汚い拾った石を見せびらかしながら超ドヤ顔してるしだから自信満々で勝負吹っかけたのかこの人。

 

「これは授業料だよ。どんなスキルも万能じゃない。勉強になったでしょ?」

 

「よし、やってやる!俺は昔から運だけはいいんだ!『スティール』っ!」

 

叫ぶとカズマの手には何か握られていたそれを恐る恐る開いていくと…白いパンツだった。

 

「ヒャッハー!あたりも当たり、大当たりだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!ぱ、パンツ返してええええええええええええっ!」

 

…俺はいるパーティー間違えたかもな…。クリスは自分の服を押さえながら、涙目で絶叫した。

__________________________________________________________

あの後カズマがクリスの身ぐるみほとんどはいでギルドに戻ろうとしていた。

 

「…クリスさん」

 

「?」

 

半泣きになりながらこちらをみる。

 

「うちのパーティーメンバーがすいません」

 

「いやぁ〜あたしが勝負吹っかけたからなんも言えないんだけどね…まさかパンツとられるとは思わなかったよ。…それよりギルドに戻ろうか八幡君」

 

この話は終わりと言わんばかりにギルドに歩いていく。やっぱりだやっぱりそうだ明らかにおかしい。最初は戸塚に似てるから違和感を持ってるのかと思ってたけど。さっきので確信した。のでカマをかけることにした。

 

「ところでエリス様今日は仕事はないんですか?」

 

「ああ、仕事ですか?仕事なら今日はありませんよ。私に仕事がないのは平和なのでなによ…」

 

今までとは全く違う喋り方で喋るクリスいやエリス様。

 

「な、なにをいってるの八幡君確かにエリス教徒だけどエリス様なんてそんな」

 

「…俺まだあなたに名乗ってませんよ」

 

そして固まった。そう俺はまだ自己紹介をしていないのだ。なのに俺の名前を知っているのはおかしい。

 

「こんなとこでなにやってるんですかエリス様」

 

「…ばれましたか。流石ですね比企谷八幡さん」

 

そう観念したようにエリス様の口調で喋り始めた。

 

「こうしてる事情はまた今度説明します。そしてこのことは二人の秘密にしてください」

 

そう言い頭を下げた。俺は慌てて

 

「わ、分かってますよ。元から秘密にするつもりです」

 

こうやって姿を変えてこの世界に降りてきてるのはなにかしら事情があるのだろう。てゆうかカズマエリス様のパンツとか色々追い剥ぎしたのか…うんあいつクズだな。

 

「ありがとうございます。それじゃギルドに戻りましょう。それと…この姿の時は砕けてもらってクリスとして接してくださいお願いですよ?」

 

そう笑顔で俺に話しかける。俺が違和感を抱いた理由はこれだった。笑う姿がエリス様に似ていたから違和感を抱いたのだ。

 

「わかった…善処する」

 

クリスはふふっと笑うとギルドに戻っていった。

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ギルドに戻ると何故かギルドにいた女性陣が冷ややかな視線を向けており雪ノ下や由比ヶ浜まで引いている。そしてその視線の中心にいたのは

 

黒いパンツを手に持ったカズマだった。なにやってんのあいつなんでまたパンツ持ってんの?

 

「…なにやってんの」

 

このまま他人のふりをしてどっか行こうか迷ったが声をかけた。近寄るのは心底嫌だったが雪ノ下たちを放って帰れんし一応パーティーメンバーだし一応。

 

「ハチマンハチマン聞いてカズマさんったらめぐみんがスキル習得できたのか聞くとまあみてろって言い出してスティールをしたの。そしたらめぐみんのパンツをとって…」

 

「おい待てほんとに待て別にとろうと思ってとったわけじゃないから!ほんと待って!ハチマン!助けて!」

 

まぁしょうがないここは…

 

「確かに路地裏でもクリスのパンツとか財布とか色々はいでたもんな」

 

俺がそう言うといよいよカズマを見る周囲の女性たちの視線が冷たいものになっていく。ふっこれも天罰だ戸塚に似ているしかもエリス様のパンツをとったんだ。天罰だ天罰。そんな空気になっていく中、突然バンッとテーブルが叩かれダクネスが立ち上がっていた。

 

「やはり。やはり私の目に狂いはなかった!こんな幼げな少女の下着を公衆の面前で剥ぎ取るなんてなんと言う鬼畜…っ!それにそこの男の目つきは見られるだけで興奮してしまう…っ!是非とも…!是非とも私を、このパーティーに入れてほしい!」

 

「いらない」

 

「んんっ…!?く…っ!」

 

カズマの即答に、ダクネスが頬を赤らめてブルッと身を震わせた。こいつあれだ確実に変態だ。とゆうかドMだ。なに俺の目つきで興奮するって貶してるのか褒めてるのかどっちなのそれ。

 

「ねえカズマ、この人だれ?昨日言ってた、私とめぐみんがお風呂に行ってる間に面接に来たって人?」

 

「ちょっと、この方クルセイダーではないですか。断る理由なんてないはずではないのですか?」

 

まぁ恐らくとゆうか確実にめぐみんとアクアと同タイプだと思ってるからだろう。アクアは性能は女神だからいいはずだけど中身がポンコツ、めぐみんも火力こそ最高威力なもののやっぱポンコツ。だから断りたかったのだろう。

 

「…実はなダクネスめぐみん。俺とアクアたちは、こう見えて、ガチで魔王を倒したいと考えている。という訳で俺たちの旅は過酷なものになることだろう。特にダクネス、女騎士のお前なんて、魔王に捕まったりしたら、それはもうとんでもない目に合わされる役どころだ」

 

恐らく魔王討伐でビビらせて身を引かせようって作戦なんだろうが…てゆうかちゃっかり俺たちを入れるな俺は極力働きたくないんだ。

 

「ああ、まったくその通りだ!昔から、魔王にエロい目に合わされるのは女騎士の仕事と相場は決まっているからな!それだけでもいく価値がある!」

 

「えっ!?…あれっ!?」

 

どうやらドMには逆効果らしいてゆうか燃えたぎってる。

 

「えっ?…なんだ?私は何かおかしなことを言ったか?」

 

どうやら無自覚らしい。カズマはダクネスのことは諦めめぐみんに標的を移した

 

「めぐみんも聞いてくれ。相手は魔王だ。この世の最強の存在に喧嘩売ろうってんだよ、俺とアクアたちは。そんなパーティーに無理に残る必要は…」

 

それを聞いためぐみんが立ち上がりマントをばさっとひるがえしながら。

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者!我を差し置き最強を名乗る魔王!そんな存在は我が最強魔法で消しとばして見せましょう!」

 

厨二病にも逆効果らしいこっちも燃え滾ってる俄然やる気になっちゃってるよ。てゆうかめちゃくちゃ注目集めてるからやめてボッチは視線に敏感なの。入るパーティーを間違えたかなと後悔をしていたその時

 

『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

街中に大音量でアナウンスが響き渡る。

 

(魔王かなんかが攻めてきたのか…!?それだとまずいまだ駆け出しもいいところなのに)

 

「おい!緊急クエストってなんだ?モンスターが街に襲撃に来たのか?」

 

不安げに聞くカズマに焦っている俺たち四人とは対照的に何故か嬉しそうなダクネスとめぐみん。ダクネスが嬉々とした声で

 

「…ん、多分キャベツの収穫だろう。もうそろそろ収穫の時期だしな」

 

…………………………は?

 

「は?キャベツ?キャベツって、モンスターの名前か何かか?」

 

そんなカズマをかわいそうな人でもみるかのようにみるめぐみんとダクネス。危ねえ俺も聞くとこだったありがとうカズマ

 

「キャベツとは、緑色の丸いやつです。食べられるものです。」

 

「噛むとシャキシャキする歯応えの、美味しい野菜のことだ」

 

「そんなこと知っとる!じゃあ何か?緊急クエストだの騒いで!冒険者に農家の手伝いさせようってのか、このギルドの連中は?」

 

「あー…。カズマは知らないんでしょうけどね?ええっと、この世界のキャベツは…」

 

説明しているアクアの言葉を遮るようにギルドの職員が大声で説明を始めた。

 

「みなさん、突然のお呼び出しすいません!もうすでに気付いている方もいるとは思いますが、キャベツです!今年もキャベツの収穫時期がやってまいりました!今年のキャベツは出来が良く、一玉の収穫につき1万エリスです!既に街中の住民は家に避難していただいております。では皆さん、できるだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに納めてください!くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしないようにお願い致します!なお、人数が人数、額が額なので、報酬の支払いは後日まとめてとなります!」

 

…………………よし帰って寝るか。何キャベツで怪我するって何キャベツから避難って。見ると雪ノ下や由比ヶ浜、カズマもなに言ってんだこいつはみたいな顔をしてた。その時、ギルドの外で歓声が起こった。それが気になり外の様子を見にいくと街中を緑の物体が飛び回っていた。日本人組四人が立ち尽くしているとアクアが解説を始める。簡単に言うとこの世界のキャベツは収穫時期になると食われてたまるかと飛び逃げるらしい。なんなのこの世界ほんと。

 

「比企谷君…やる気は湧かないのだけれど魔法や体ならしにはいい機会じゃないのかしらそれにお金も稼げるみたいだし」

 

……確かに。それに試したいことも色々とある軍資金を貯める意味でもいいのかもしれない。いいのかもしれないけどキャベツか…。

 

「…由比ヶ浜雪ノ下お前らはカズマたちについてけ」

 

「わかった…けどヒッキーはどうするの?」

 

「俺は実験だじゃあまた後で」

 

そう言うと俺は人気のないところまで走って行き、複数のキャベツと対峙した。周りに人がいないことを確認しイメージする

 

(《雷帝》の感覚は昨日で掴んだ。あとはこれでやれることを増やしていくだけだ。今回試すのは出力調整。まずこのキャベツたちがこげるか焦げないかくらいの電気を体に纏わせる。あとはこれを一気に周りに広げる!)

 

俺の周りを纏っていた電気は瞬く間に広がり次々とキャベツを感電させてゆく。

 

(一発目だけどうまく行ったな。これを無意識でできるようになれば…)

 

とりあえず成功したことを喜び、次々とキャベツを狩っていった。

__________________________________________________________

 

「何故たかがキャベツの野菜炒めがこんなに美味いんだ。納得いかねえほんとに納得いかねえ」

 

無事キャベツ狩りが終わった街中では収穫されたキャベツ料理が出されていた。そのキャベツ料理を食べ悪態をつくカズマ

 

(確かにうまいな)

 

聞いたところによると雪ノ下が魔法で動きを止めたりし由比ヶ浜が止めをさすか回収を続けていたらしい。そこでアクア曰く

 

『ユキノは氷や水の属性が得意だけど火はダメダメね。まぁ水の女神である私には劣るけどね!』

 

とのことらしい。さすが氷のじょ…。雪の下に睨まれた。なに心読めるの?そんなスキルあるの?俺が冷や汗をかいていると

 

「しかし、やるわねダクネス!あなたさすがクルセイダーね!あの鉄壁の守りには流石のキャベツたちも攻めあぐねていたわ」

 

「いや私などただ硬いだけの女だ。私は不器用で動きも早くはない。だから剣を振るってもロクにあたらず、誰かの壁になって守ることしか取り柄がない…その点、めぐみんは凄まじかった。キャベツを追って街に近づいたモンスターの群れを、爆裂魔法の一撃で吹き飛ばしていたではないか。他の冒険者のあの驚いた顔と言ったらなかった」

 

「ふふ、我が必殺の爆裂魔法の前において、何者も抗うことなど叶わず。…それよりもカズマとユキノそれにユイの活躍こそ目覚しかったです。魔力を使い果たした私を素早く回収して背負って帰り、ユキノとユイで周りのキャベツを一掃してましたから」

 

「…ん私がキャベツやモンスターに囲まれ、袋叩きにされている時も、カズマは颯爽と現れ襲いくるキャベツ達を収穫していってくれた。それにユイとユキノもモンスターを狩ってくれた、礼をゆう」

 

「確かに、潜伏スキルで気配を消して、敵感知で素早くキャベツの動きを捕捉し、背後からスティールで強襲するその姿は、まるで鮮やかな暗殺者のごとしです」

 

素直に褒められたからか雪ノ下と由比ヶ浜は微妙に頬を染めていた。てかキャベツにスティールって何

 

「カズマ……私の名において、あなたに【華麗なるキャベツ泥棒】の称号を授けてあげるわ」

 

「やかましいわ!そんな称号で俺を呼んだら引っ叩くぞ!…ああもう、どうしてこうなった!」

 

カズマは頭を抱えテーブルに突っ伏した。その理由がどうやら俺がいない間にダクネスの加入が決まったらしくそのことで頭を抱えていた。

 

「…ふふん、うちのパーティーもなかなか、豪華な顔ぶれになってきたじゃない?アークプリーストである私に、アークウィザードのめぐみんにユキノ、レア職業のユイにハチマン。そして防御特化の上級職前衛である、クルセイダーのダクネス。7人中6人が上級職なんてパーティー、どこを探してもいないわよカズマ?あなたすごくついてるわよ?感謝なさいな」

 

さらに頭を抱えるカズマ。確かにそう聞くと最強のように思えるが、一日一発の火力超重視効率無視の魔法使い、攻撃が当たらない防御特化のクルセイダー、未だに活躍を見ていないアークプリースト。それに聞いた話によるとダクネスはモンスターの中心に突っ込むらしい。まさかとは思うが…

 

「んく…っ。ああ、先ほどのキャベツやモンスターの群れにボコボコに蹂躙されたときはたまらなかったなあ…。このパーティーでは本格的な前衛職は私だけのようだから、遠慮なく私を囮や壁代わりに使ってくれ。なんなら、危険と判断したら捨て駒として見捨ててもらってもいい。…んんっ!そ、想像しただけで、む、武者震いが…っ!ああ!ハチマンが私を見ている…っ!あんな目で見られたら…っ!」

 

そのまさかでした。ただ気持ち良くなりにいっただけでした。てかなんか…うん…濃いなすごく。そんなダクネスに呆れていると何故か背筋が寒くなった。何事かと振り返ると

 

「「…」」

 

何故か無言で俺を見ている雪ノ下と由比ヶ浜がいた。心なしか目のハイライトが消えている気がする。

 

(比企谷君はやっぱり由比ヶ浜さんやダクネスさんのような体が好きなのかしら…)

 

(ヒッキーダーちゃんにデレデレしてるしやっぱ異世界の人の方が好みなのかな)

 

俺は何も見なかったことにして前を向いた。だってこええもんまじで。するとカズマと目があい

 

「ハチマン明日は服や防具を買いに行こうと思うんだがどうだ?」

 

「…いいんじゃないか?」

 

「じゃあ決まりだな。雪ノ下さん達にも言っといてくれじゃあまた明日な」

 

「おうまた明日」

 

カズマ達と別れ雪ノ下達に明日のことを伝達していた。

 

「防具ね。よくわからないのだけれど大丈夫なのかしら」

 

防具とかか正直特に考えてなかったからどうするかな。悩んでいるとあることを思い出した。

 

「…俺たちずっと制服じゃん」

 

「「あ」」

 

取り敢えず明日は防具より服だな…そしても二人に挟まれ色々と悶々としながらもなんとか眠ることができた



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#6 思わぬ再会

「…何で私まで付き合わされるのよ、その買い物に」

 

キャベツ騒動の翌日、カズマと文句たらたらのアクアと一緒に武具ショップに来ていた。

 

「いや、お前も一応装備整えとけよ。俺達はジャージだったり制服だけど、お前も似たようなもんだろ?お前の装備、そのひらひらの羽衣だけじゃないか」

 

確かにアクアは羽衣以外普通の服と変わらない格好をしている。するとアクアは呆れたような表情で

 

「バカねー。あんた忘れてるみたいだけど、私は女神なのよ?この羽衣だって神具に決まってるじゃない。あらゆる状態異常を受け付けず、強力な耐久力と様々な魔法がかかった逸品よ?これ以上の装備なんて、この世界に存在しないわ」

 

神具なのかよその羽衣。てかほぼチートじゃんそれ

 

「それは良いことを聞いたな。いよいよ生活に困ったら、その神具売ろうぜ。…おっ、革製だけど、この胸当てとか良い感じだな」

 

売るなよ神具を

 

「…ね、ねぇ、冗談よね?この羽衣は私が女神である証みたいなものだからね?う、売らないわよね?ね?う、売らないわよ?」

 

まぁこいつなら確実に売るな

__________________________________________________________

 

「…ほう、見違えたではないか」

 

「おおー。カズマもハチマン達もよくわからない服装でしたからね。ようやくちゃんとした冒険者に見えるのです」

 

今の格好は、カズマがこちらの世界の服の上から革製の胸当てと金属製の篭手、金属製の脛当てに片手剣を装備してる状態。雪ノ下はこちらの世界の服装にローブを着ており、由比ヶ浜はなんかちょっと露出度の高い服を着ている。そして俺は

 

「ハチマンは真っ黒だな」

 

そう全身真っ黒の服を着ている。なんとなくビビッときてしまったからである。別に厨二心出たとかじゃない断じて

 

「いいじゃないですか。紅魔族のセンスに刺さるものがあります」

 

「…やめようかな…」

 

「おい」

 

「でもいんじゃないかしら似合ってるわ」

 

「うん!なんか…ヒッキー!って感じがする!」

 

そう二人に褒められまって由比ヶ浜のどうゆう意味?褒めてるの?

 

「それはそうと金がつきそうだからなんか手軽にクエストに行きたいんだが…」

 

ダクネスがふむとうなずき

 

「ジャイアントトードが繁殖期に入っていて街の近場まで出没しているから、それを…」

 

「「「カエルはやめよう!」」」

 

言いかけたダクネスに、強い口調でアクアとめぐみんと由比ヶ浜が拒絶した。

 

「…なぜだ?カエルは刃物が通りやすく倒しやすいし、攻撃法も舌による捕食しかしてこない。倒したカエルも食用として売れるから稼ぎもいい。薄い装備をしていると食われたりするらしいが、今のカズマの装備なら、金属を嫌がって狙われないと思うぞ。アクアとめぐみん、ユキノにユイとハチマンは私がきっちり盾になろう」

 

「あー…。アクアとめぐみんはカエルに喰われてるし、由比ヶ浜さんは喰われそうになったことがあるから、トラウマになってるんだろう。頭からぱっくりいかれて粘液まみれにされたからな。しょうがないから他のを狙おう」

 

カズマの説明にダクネスが頬を赤らめ

 

「…あ、頭からぱっくり…。粘液まみれに…」

 

こいつ興奮してやがる

 

「…お前、ちょっと興奮してないだろうな」

 

「してない」

 

嘘つけ即答したけど嘘つけ

 

「そういえばまだハチマンの戦闘を見ていないな」

 

「俺か?俺は…」

 

…俺の戦闘スタイルってなんだ?そいやまだ魔法使ってないな…あとで試すか

 

「基本的に魔法で戦うと思ってくれていい」

 

「そうか。まだ見たことないからな次の戦闘を楽しみにしておく」

 

「そうだな。それにキャベツ狩りは除くとして、このメンツでの初クエストだ。楽に倒せるやつがいいな」

 

カズマの意見にめぐみんとダクネスがクエストを探しに行くと

 

「これだから内向的なヒキニートは…そりゃあ、カズマは一人だけ最弱職だから慎重になるのもわかるけど、この私を始め、上級職ばかり集まったのよ?もっと難易度の高いクエストをバシバシこなして、ガンガンお金稼いで、どんどんレベル上げて、それで魔王をサクッと討伐するの!という訳で、一番難易度の高いやついきましょう!」

 

「…お前、言いたくないけど…まだ何の役にも立ってないよな」

 

「!?」

 

そこからカズマの逆襲が始まり、アクアはとうとう泣き出した。そこからいきなり語りだし話をまとめるとカズマは日本の知識を使って商売をするつもりらしい。

 

「てゆうか回復魔法をとっとと教えろよ!スキルポイント貯まったら覚えるからさ!」

 

「いやーっ!回復魔法だけは嫌!いやよぉっ!私の存在意義を奪わないでよ!私がいるんだから別に覚えなくてもいいじゃない!嫌!いやよおおおっ!」

 

ここでカズマがイラッときたのかとどめの一撃

 

「そいや八幡の特典って《超回復》らしいな」

 

やめろ俺に話を振るなそうなったら…恐る恐るアクアを見ると俺のことをガン見してた怖くなるくらい

 

「あ、アクアさん?」

 

「ハチマンが…ハチマンが私を捨てたー!」

 

そう言って泣き出した。何で捨てたことになってんのあれか回復いらないから用済みだってことになってんのか。こいつの中での俺どうなってんだよ

 

「比企谷君…女性を捨てるのはどうかと思うのだけれど…」

 

「うわぁ…ヒッキーが女の子泣かせた…」

 

「さいってい!」ウラゴエ

 

「いや待て俺は悪くないだろ確実にいやほんとに待ってくださいてゆうかカズマなにどさくさに紛れて言ってんだおいお前にだけは言われたくないんだけど」

 

そこにめぐみんたちが帰ってきて

 

「…何をやってるんですか?…カズマは結構えげつない口撃力がありますから、遠慮なく本音をぶちまけていると大概の女性は泣きますよ?」

 

「うむ。ストレス溜まっているのなら…アクアの代わりに私に口汚く罵ってくれても構わないぞ。…クルセイダーたるもの、誰かの身代わりになるのは本望だ」

 

こいつ確実に罵倒してほしいだけだろ。そう思い俺が呆れながら見ていると

 

「…んっ!ハチマンが私を見ている…!あの目つきで…!」

 

俺こいつのこと二度と見ないわ

 

「まぁアクアのことは気にしなくていい。しかし…」

 

カズマはダクネスをチラッと見ると

 

「……ダクネスさん、着痩せするタイプなんですね…」

 

なぜか敬語になるカズマ。でも確かに思春期の男子高校生には刺激が強すぎるスタイルをしている。何とはゆわんが由比ヶ浜とも張り合えるレベルだな。そんなことを考えてると

 

「ヒッキーが鼻の下伸ばしてる…ばか」

 

「そんなに大きさなのかしらそんなにいいのかしら」

 

なんか雪ノ下が壊れてるてかバカってなにしょうがないでしょ俺だって男の子だもん!……男が〇〇だもんってきついなやめよう

 

「いや別にそんなこと…」

 

一応弁明はしようと思ったが二人がジト目で睨んでくるためやめた。だってこええじゃん。

 

「……む、いま、私のことを『エロい身体しやがってこの雌豚が!』と言ったか?」

 

「「誰も言ってねえ」」

 

俺とカズマがハモった。こいつとハモること多いな。しかしパーティーの女性陣を見ても顔面偏差値高いなほんとに。中身ポンコツ多いけど。

 

「おい、いま私をチラ見した意味を聞こうじゃないか」

 

どうやら似たようなこと考えてバレたやつがいたらしい。

 

「ハチマンなんでチラッと私を見たのかしら」

 

俺もだった。

 

「い、いや別に?特に深い意味はないよ?」

 

ホントダヨ?

 

「ハチマン?何で目を合わせてくれないのかしら。ハチマン?ねぇ!?ちょっと?!」

 

俺は聞こえないふりをした。しかしアクアはめちゃくちゃツンツンしてくる。てゆうか痛えなどんだけ強くしてんだよこいつ流石に我慢できなくなり

 

「わかった!すまん悪かったよ」

 

「わかればいいのよわかれば」

 

ふふんと胸を張りドヤ顔を披露する。心の中で単純と思ったのは黙っておこう。てゆうか後ろの二人がめっちゃ見てる気がする気付かないふりしてるけどめっちゃ俺のこと見てる気がする。だってそんなこと言ったら

 

『自意識過剰もいいところね。自惚れ谷君』

 

『そうだよヒッキー見てないし!』

 

ちょっとダメージを負った八幡だったが当の二人は

 

((イチャイチャしてる…))

 

と嫉妬してるだけだった。

 

「おいアクア今回はお前のレベル上げをすることにしたからそれでいいか?」

 

どうやら俺とアクアがバカやってる間に決まったらしい。

 

「てゆうことは私の活躍が見れるってわけね!ふふんいいわよ大賛成よいきましょうすぐいきましょう」

 

いつもより俄然やる気を見せるアクアだった。

__________________________________________________________

 

「ヒッキー、カズマンたちと別行動でよかったの?」

 

「あぁ、まだ試したいことも試し終えてないしなここいらで全部試しとこうと思って」

 

俺たちはカズマたちとは別行動を取り夜に集合することにしていた。

 

「試すって何を試すの?」

 

「俺の魔法の威力と《雷帝》そしてお前のスキルだ。」

 

戦闘に関してはまだまだだけど経験はした、ならいまある手持ちのカードをまずは揃えること。それをするには不確定要素を取り除くことが一番だ。まずは俺の魔法の威力を試してみることにした。結果だけゆうなら全て雪の下の下位互換ぐらいだった。威力が弱いってわけじゃないが雪の下には劣る。おそらく黒魔道士はそうゆうものなんだろう。次は…

 

「由比ヶ浜《スライム召喚》をしてみてくれ」

 

そうゆうと顔を引きつらせた。前も引きつらせてたがどうしたんだ?

 

「?どうした?」

 

「よ、呼ばなきゃダメ?」

 

「まぁ…一応戦力だしな。何で嫌なんだ?」

 

「その…私、食べられない?」

 

…あー。そいやスライム、ジャイアントトード食ってたしな…それですり寄られてるのは餌だからとでも思ってるんだろう

 

「スライムはお前守るために食べたんだぞ?だから大丈夫だ」

 

「うぅ〜…わかった。じゃあ行くよ」

 

手を前に突き出し

 

「『スライム召喚』っ!」

 

由比ヶ浜がそう叫ぶと……何も起きなかった。

 

「あ、あれ?」

 

無反応…めちゃくちゃ恥ずかしいやつやん現に顔真っ赤だししかし召喚されないかなら

 

「由比ヶ浜頭にスライムを思い浮かべてサモンって叫んでみてくれ」

 

まぁゲームでありがちなやつだが

 

「わかった。えっと…『サモン』っ!」

 

そうゆうと魔法陣が現れスライムが出てきた。

 

「成功だな…由比ヶ浜ちょっとカード見せてくれ」

 

スライムを召喚したことでなんかスキルがあるのか…あった。感覚共有に魔法転送?モンスターを媒介として魔法をうてるのか?そうなると便利どころの話じゃないけど

 

「ヒッキー?」

 

「ん?あぁすまん。由比ヶ浜この魔法転送と感覚共有をとっといてくれ」

 

「んーわかった」

 

感覚共有はテイムしたモンスターとの視覚や聴覚の共有だろう。索敵なんかにばっちしだ。後は…やっぱ任意召喚か…

 

(任意の相手が何なのか…もし知能のある魔物とのコンタクトで任意が取れて召喚ならまずいか…いや由比ヶ浜の特典があるから何とでもなるにはなるか…)

 

悩みに悩んだ結果

 

「由比ヶ浜任意召喚やるぞ。雪ノ下一応魔法の準備をしといてくれ」

 

「わ、わかったわ。そんな危険なの?」

 

「正直わからん。だから万全の状態で待機しておく」

 

「ひ、ひっきーやるよ?」

 

俺は由比ヶ浜に視線を送り頷く。さぁ吉と出るか凶と出るか。

 

「『任意召喚』っ!」

 

そうすると由比ヶ浜は目を瞑った。

__________________________________________________________

 

(なにこれ)

 

私はヒッキーに言われた通り任意召喚って言うのをやってみた。任意召喚を行って今はただ前が見えず誰のかわからない感情が私の中になだれ込んできた。

 

(なにこれっ!怒ってる…?と思ったら悲しみ?いろんな感情がすごいくる誰の感情なのこれ)

 

いろんな感情が私に伝わってくる。誰かを憎んでる感情怒ってる感情悲しんでる感情、でもその中で一際大きいのはある人に会いたい感情そのある人かは誰かわからないけどものすごく会いたくなる。そんな感情がずっと渦巻いてる。

 

(誰かわかんないけどすごくすごく深い感情それにか細くて消えてしまいそうなほど弱ってる。そしかして私が召喚しようとしてる子の感情?)

 

そんな感情が渦巻いている中だんだんと何かが見えてきた。

 

(何か見えてきた!…えっ…何で!?どうゆうこと!?)

 

私は見えてきた子に驚きながらその子に話しかけた。

__________________________________________________________

おかしい。由比ヶ浜が目を瞑ったままピクリとも動かないし、魔法陣にも変化がない。さっきから呼びかけてはいるが反応もない。

 

(今まさにコンタクトとってんのか?それで同意を?)

 

「…ヒッキー!」

 

どうやら意識が戻ったようで俺に呼びかける。俺も呼ばれ由比ヶ浜の顔を見ると目を見開いた。

 

「なにがあった…!?何で泣いて…!」

 

「呼ぶよ!『任意召喚』っ!」

 

魔法陣が当たり一体を包み込み、しばらくすると消えた。

 

「成功…か?何が召喚…っ!?」

 

「なん…で」

 

雪ノ下も俺も驚き言葉がこれ以上出なかった。しばらくたつと俺より早く硬直から立ち直った雪の下が口を開き

 

「何で…何で…小町さんが召喚されてるのかしら…」

 

光が消えて魔法陣の真ん中にいたのは猫耳がついた小町だった。



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番外編 独白と救済

お兄ちゃんが死んだ。雪乃さんも結衣さんも。それを知らされたとき嘘だと思った。嘘だと思いたかった。でも警察に連れて行かれて真っ白の布を被せられたお兄ちゃんを見てから嘘じゃないってわかったその瞬間小町の中の何かが壊れた。何を食べても味がしなくなった。誰の言葉も届かなくなった。いつも仮面をつけて人と接するようになった。今の小町を見たらお兄ちゃんは軽蔑するかもしれない。それでも外せなかった。平塚先生、葉山先輩達、沙希さん、戸塚さん、陽乃さん小町の友達いろんな人がいろんな言葉をかけてくれた。特に平塚先生と葉山先輩と沙希さんと戸塚さんあの陽乃さんですら本当に残念がってたなんなら涙を流しながら話すくらい。それなのにお兄ちゃんがこんなに人に慕われてて嬉しいはずなのに小町の心は何も動かなかった。学校も休んで部屋の中で何日も何日もずっと一人泣いてた。何でお兄ちゃんなの何で小町からお兄ちゃんを奪ったの。こんな考えがずっと頭でループする。いつまで経っても消えない悲しみとお兄ちゃんを刺したやつへの憎悪。もう何日布団にそうやってくすぶってるか覚えてない。ご飯もそんな食べてない。久しぶりに下に下りて洗面台に立ち鏡を見た。そこには少し痩せこけてて、お兄ちゃんと同じ腐った目をした小町がいた。それを見てまた泣いた。小町的にポイント低いよごみいちゃん。小町だけ残して最低だよ。今なら許してあげるからお願い会いに来てよ。お願いします神様お兄ちゃんに会わせてください。お兄ちゃんがいないこの世界にもう小町が生きてる意味なんてない。来年には小町も奉仕部に入って、みんなで楽しくしたかった。結衣さんと雪乃さんとお兄ちゃんと小町で奉仕部として活動したかった。もう生きる意味がわかんないよ…わかんないわかんないよ。…………もういっそ死んでしまえば…その時頭の中で声がした。

 

『…小町ちゃん』

 

ははっ…結衣さんの声が聞こえ始めた。もう小町も行くところまでいってるのかな。

 

『小町ちゃん!結衣だよ!由比ヶ浜結衣だから話を聞いて!ヒッキーも関係あることだから!』

 

お兄ちゃんの名前に反応してしまう

 

「…どうゆうことですか」

 

『信じられないかもしれないけど今ヒッキーとゆきのんと一緒に異世界にいるの!何でこうやって小町ちゃんに話せてるかはわかんないけど、もしかしたら小町ちゃんもこっちに来れるかもしれないの!』

 

「…お兄ちゃんにお兄ちゃんにまた会えるんですか…?」

 

『小町ちゃんが多分そっちの世界に未練がないならだけど』

 

お兄ちゃんにまた会えるまた…!会えるなら何だってする

 

「行きます!」

 

『待って!もう戻れないかもしれないんだよ!?』

 

それでも会いたいもうこの世界に未練はない

 

「お願いします結衣さん小町をお兄ちゃんに会わせて!」

 

『…わかったそれじゃ行くよ。《任意召喚》っ!」

 

結衣さんがそう叫ぶと小町の足元に白い光を纏った何かが現れ、その何かが発する明るい光に包まれた



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#7 自覚

「お兄ちゃん…お兄ちゃん!」

 

そう言い小町?は俺に飛び込んできた。

 

「ばか!ぼけなす!八幡!小町を…小町を一人にしないでよぉ!」

 

いまだに状況を理解できてない俺は理解しようと必死だった。

 

(小町…?なのか…?でも猫耳に尻尾がついてどうゆう…いやそもそも死んだのか?それとも任意召喚は任意でこっちに来れる魔法…?だとしたら小町はあっちを捨てたことになるぞ)

 

訳がわからないまま必死に考えていたが泣きじゃくる小町を見て俺は一回考えることをやめ、そっと頭を撫でた。状況を何一つ理解できていないが俺は

 

「…すまん小町。心配かけた」

 

そう言葉をかけ小町が泣き止むまで撫で続けた。

__________________________________________________________

 

「お恥ずかしいところを見せました」

 

少し恥ずかしそうに頬を染める。可愛い。可愛いんだが…

 

「…由比ヶ浜どうゆうことだ?」

 

「…私にもよくわかんないんだけど召喚って叫んだ後何も見えなくなった。それですぐに私に感情が流れ込んできて最初は誰のかわかんなかったけど次第に誰か見えるようになってきて…そしたら小町ちゃんが見えたの」

 

「多分その後ですかね結衣さんの声が小町に聞こえてきたんです。そして未練がないか聞かれて小町は即答でないって答えてそしたら光に包まれて…」

 

「…ここにきたってわけか…でも何で猫耳…?」

 

そう小町の頭には猫耳何と尻尾までついている。てゆうかさっきから雪の下がそわそわしてる。明らかに猫に対する禁断症状出てるなこれ…。

 

「それは…小町にもさっぱり…」

 

任意召喚と言うか召喚自体魔物を呼び出すためのもののはず。人間のままでは呼び出せないから魔物に近い人間である亜人にした…?そもそもあっちの世界から呼び出すなんて神でもないのに…違うそもそも特典は神からもらったもの。それなら神に匹敵する力を出せてもおかしくないのか?でも流石に厳しい条件があると思うが…もし仮にあったとしたら

 

(それを全部クリアできてたのか…?)

 

色々考えていたがそこで考えるのをやめたおそらくこれは神の領域の話俺たち一般人が考えてもわかるはずがない。今度アクアかエリス様に聞いてみよう。それよりも

 

「小町」

 

俺は小町に話しかけた。

 

「…」

 

「心配かけた。どこか調子悪いところとかはないか?」

 

「ほんとだよばか。ほんとごみいちゃんだよ。でもこうやって会えたのは小町的にポイント高い!」

 

「すまんな小町」

 

そう言い俺は頭を撫で小町もされるがままにしていた。

 

「その…仲睦まじいの良いことなのだけれど小町さんはこっちの世界に来てよかったのかしら」

 

「ええ…小町はあっちにもう未練はありません。お兄ちゃんがいないのは嫌ですから。いまの小町的にポイント高い!」

 

「はいはいたかい高い」

 

「ぶーっお兄ちゃんのいけず。…それよりこの世界はなんなんなの?お兄ちゃん」

 

「そうだなこの世界は…」

 

俺はこの世界のことを説明した。ここは死んだ日本人がとんでも移民政策で来る場所だとゆうこと冒険者制度のこと職業や魔法のことこの世界の諸々を説明した。

 

「へぇ〜、なんかすごい世界に来たんだね」

 

意外にも感想はあっけらかんとしてた。

 

「そんな驚かないんだな」

 

「だって結衣さんの声が頭に聞こえてくるし、いきなり変な場所に来るし驚き疲れたよ」

 

「あはは…いきなり喋りかけてごめんね?」

 

「いえ結果的にプラスどころの話じゃないんで小町は全然気にしてません!」

 

そういい俺に抱きつく小町。こんなに妹に慕われて兄冥利に尽きる。それに可愛い。可愛いは正義。可愛いはジャスティス。つまり小町は正義。まぁ側から見たら猫耳少女に抱きつかれてる不審者なんだけどね!

 

「それよりここからどうするの?試したいことは試したと思うし小町ちゃんのことも…」

 

「ああそのことなんだけどこの世界にそもそも小町のような亜人がいるのかわからないだからアクアのとこに行って聞いてきて欲しいどうせ集合しなきゃいけないしな」

 

「聞きに行ってくれってことはあなたは行かないのかしら?」

 

「…ああちょっとな」

 

雪ノ下は一瞬怪訝な顔を浮かべたが

 

「…わかったわ」

 

「助かる。確か透明化の魔法があったはずだ。それで小町を隠してけもしそうゆう人種いるならこの先こまちが堂々と歩けるし。」

 

「了解じゃあ先に行かせてもらうわ」

 

「ああそうゆうことだ小町由比ヶ浜また後で」

 

「わかった!また後で!」

 

「うう、お兄ちゃんとせっかく会えたのに…」

 

名残惜しそうな小町を連れて三人は墓地の方へと向かった。

 

「じゃあ早速…」

 

俺はそんな三人を見届けて実験を始めた

__________________________________________________________

 

「…多分ここでいいのよね」

 

「た、多分ここ…かなぁ…?」

 

私たちは佐藤君たちに会うために墓地に来ていた。来ていたのだけれど…

 

「…なんで墓地でテントがはられてるんですか?」

 

何故か墓地の近くでテントがはられその中はすごい騒がしくなっている。

 

「…はいりましょう」

 

いつまでもウジウジしててもしょうがないので入ることにした。私たちはテントに入りアクアさんを呼ぶため手招きをした

 

「あら、ユキノにユイじゃない。……え?こっちに来い?しょうがないわねこの女神がいってあげるわよ」

 

アクアさんをテントの外に連れ出し

 

「で、どうしたの?回復して欲しいの?」

 

「いえ、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

 

「…?てゆうかユキノかたいわよ!呼び捨てでいいし敬語でいいわ!まぁ私を敬いたくなる気持ちはわかるけどね!でもパーティーメンバーだもの特別に許してあげるわ」

 

「わ、わかりました善処してみます」

 

「ほんとに善処する気あるのかしら」

 

「そうだよゆきのんアクアンもこう言ってるんだし私に接する感じでね?ね?」

 

まぁ由比ヶ浜さんがゆうのなら

 

「そうそう。わかってるわねユイ……ちょっと待ってアクアんって私のこと?」

 

「そんなことよりアクアさんこの世界に亜人?ってゆうのはいるのかしら。例えば猫耳の種族とか」

 

アクアさんがボソッと「そんなことって…めぐみんみたいな名前つけられたんですけど」とぼやいていたけど無視することにした。

 

「亜人?亜人はいるわよエルフとかドワーフとか。猫耳の種族は聞いたことないけど」

 

聞いたことないのならどうすればいいのかしらそこへ丁度比企谷君がやってきた。

__________________________________________________________

 

「あら比企谷君案外早かったのね」

 

「…ヒッキーどうしたの?目が酷いよ?」

 

墓地の近くで雪ノ下たちが見え近寄ると声をかけられた。どうやら実験で疲れ切って目が酷いことになってるらしい。

 

「気にするなちょっと疲れただけだ…それよりどうだった?」

 

「ええ亜人と言うのはいるみたいなのだけれど猫耳種族は聞いたことないみたい」

 

「アクアでも聞いたことないのか…すごい珍しいのかそもそも存在していない…か」

 

どちらにしても希少性から狙われるか…?でも小町に窮屈な生活はさせたくないし。危険はあるが俺たちが守れば…いやでもリスクがでかいか…?頭を悩ませていると

 

「ねえねえさっきからなんの話してるの?」

 

「いやまぁ…見せた方が早いか雪ノ下解除を…」

 

「わかったわ。『解除』」

 

そう言うとどんどん魔法が解け小町が姿をあらわす。いきなり現れた小町に驚くアクア。そんなアクアに説明する。

 

「妹の小町だ訳あって猫耳やらなんやらがついてる」

 

「小町ですはじめまして!」

 

アクアは最初こそ驚いていたが考えるそぶりを見せ長く考えた末出た言葉は

 

「……………………………お米?」

 

なんでだよ

 

「ちげえよ名前だよ名前」

 

「あぁ、名前ねわかってるわよちゃんと」

 

嘘つけお前

 

「…とにかく色々あって妹がこっちにきたんだ。それで外を歩かせていいかどうか…」

 

「多分いいと思うわ。確かに珍しいけど何かあったらハチマン達が守ればいいと思うしそれに」

 

「それに?」

 

「女神であるこの私がついてるんだからまずみんな私を見るものね!」

 

超胸を張り超ドヤ顔を見せるアクア。

 

「ま、まぁそうだな」

 

まぁ頼りになるかならないかは置いといてこれからのことは決まった。

 

(そうだ小町は俺が守ればいい。雪ノ下のことも由比ヶ浜のことも守るって決めたんだなら守るしかない)

 

「てゆうかほんとにハチマンの妹?目が全然違うんですけど」

 

「アホか小町を俺と一緒にすんな。小町は天使で可愛い俺なんかがにててたまるかふざけんな」

 

「う、うん」

 

あのアクアも若干引いてた。後ろ見ると三人ともひいてた。えひどくね?

 

「ま、まぁ今テントの中でバーベキューしてるから早く戻りましょう!」

 

そう催促され4人ともテントに入ると

 

「あああああ!私が目をつけてた肉がない!誰よ!とったの!」

 

「このあたりにあった肉か?それならお前が戻ってこないから食っちまった」

 

「なんで食べるのよ!こっちの野菜食べなさいよ!こっち!」

 

「いや俺、キャベツ狩り以来どうも野菜苦手なんだよ、焼いてる最中に飛んだり跳ねたりしないか心配になるから」

 

(確かにわかるその気持ち、なんか野菜が跳ねてるって普通におかしいからな受け入れてる方がおかしんだよ。)

 

「まぁまぁ私の肉をあげるからアクアも落ち着け。それよりハチマンその子は誰なんだ?」

 

「ああ、俺の妹の小町だ色々あって俺と一緒に行動することになった」

 

「どもども!小町です〜!よろしくお願いします!」

 

「そうかよろしく頼むそれより妹か…なんとゆうかその…似てないな」

 

「ええ確かに短い付き合いですけどハチマンは必要以上のことを喋らない感じなのにこの子はなんとゆうか真逆ですね」

 

どうやらこの短期間で俺のことを把握されたらしい。確かにそんな喋ってないしな俺。と言うかあんまり気にされないんだな猫耳って。

 

「ハチマンの妹?てことは日本人か?え、でもどうゆう…」

 

「あー…カズマには後で説明するわ」

 

「わかったそれより猫耳…」

 

カズマが小町を見つめ頬を緩ませる。こいつ…

 

「おい」

 

「ん?…ひっ」

 

「小町に手出したら…覚えとけよ?」

 

「そそそそそそれはもちろん手を出そうだなんて思ってませんはい」

 

「それは小町に魅力がないって言うのか?」

 

「なにこの人めんどくさい!」

 

「…まぁ出す気がないならいい」

 

(((((((…こっわ…)))))))

 

「そ、それよりコーヒーつくるけどハチマン達もいるか?」

 

コーヒーか…あぁマッカンが恋しい…待てよ。そうだよないなら作ればいいじゃん甘さも俺が調整できるしあれ神?今度作るか…

 

「いや俺は遠慮しとく」

 

「私も」

 

「私も〜苦いの苦手なんだよね…」

 

「小町もいいですかね〜」

 

「了解」

 

そう言うとマグカップを取り出し、コーヒーの粉を入れ何やら手から水を出し火を出して炙っていた。

 

「へぇ〜便利そうだな」

 

「ああ初級魔法だけどわりかし便利だぞ」

 

「……すいません私にもお水ください。ってゆうかカズマは、何気に私より魔法を使いこなしてますね。初級魔法なんてほとんど誰も使わないものなのですが、カズマを見てるとなんか便利そうです」

 

「いや元々そういった使い方をするもんじゃないのか?初級魔法って。あ、そうそう『クリエイト・アース』!……なあ、これって何に使う魔法なんだ?」

 

カズマが魔法を唱えると手のひらにはさらさらした土が出てきていた。

 

「…えっと、その魔法で創った土は、畑などに使用すると良い作物がとれるそうです。…それだけです」

 

その説明を聞きカズマの隣にいたアクアが吹き出した。

 

「何々、カズマさん畑作るんですか!農家に転向ですか!土も作れるしクリエイト・ウォーターで水もまける!カズマさん天職じゃないですかやだー!ぷーくすくす!」

 

珍しい笑い方をするアクアにカズマは手のひらを向け

 

「『ウインドブレス』!」

 

「ぶああああっ!ぎゃー!目、めがあああっ!」

 

突風で吹き飛ばされた土がアクアに直撃しそれが目に入った女神は地面を転がり回っている。

 

(何やってんだか…)

 

俺は初級魔法の『クリエイト・ウォーター』を会得して使用し手のひらに水を貯めた。

 

「ほらアクア下を向け」

 

アクアに下を向かせ、土の入った目に水を貯めた方の手を当て

 

「アクア、数秒くらい瞬きしてみな」

 

アクアはゆわれた通り瞬きをしているのか少し水が揺れている。

 

「どうだ?取れたか?」

 

「とれた…グスン、ありがとう」

 

「ん気にすんな」

 

軽く涙目のアクアの頭を撫で水を捨てるために外へ出る。

 

(頭撫でられてる…ずるいよアクアんてゆうかみんな当たり前のように下の名前で呼んでるし…)

 

(このたらし谷君はなんなのかしらほんとに…あ、でも撫でられてるアクアさん気持ち良さそうね…羨ましい…)

 

(ぬぬ〜…!小町のポジションが…!)

 

それをみてた三人はそれぞれ嫉妬していた。

 

「流石妹がいるだけあってお兄ちゃんって感じがしますね」

 

「確かにすごい手際が良かったな。流石はお兄ちゃんだ」

 

中では嫉妬と称賛が入り混じっていたが当の本人は外で

 

(やべえ、小町にやる癖で頭撫でてしまった…)

 

頭撫でたことを軽く後悔して、気持ち悪がられてないか心配していた。

__________________________________________________________

 

「……冷えてきたわね。ねえカズマ、引き受けたクエストってゾンビメーカー討伐よね?私、そんな小物じゃなくて大物アンデッドが出そうな予感がするんですけど」

 

今回の依頼はゾンビメーカーの討伐。ゾンビを操る悪霊の一種で自らは質のいい死体に乗り移り、手下代わりに数体のゾンビを操るそうだ。

 

「…おい、そういったことをゆうなよ、それがフラグになったらどうすんだ。今日はゾンピーメーカーを一体討伐。そして取り巻きのゾンビもちゃんと土に返してやるそしてとっとと帰って馬小屋で寝る。計画以外のイレギュラーなことが起こったら即刻帰る。いいな?」

 

(そのセリフも十分フラグだと思うんだけど…)

 

敵感知スキルを使えるカズマを先頭にどんどん進んでいく。

 

「何だろう、ピリピリ感じる。敵感知に引っかかったな。いるぞ、一体、二体…三体、四体……?」

 

確かゾンビメーカーの取り巻きは多くても2、3体のはずだけど、まぁ誤差の範囲か…?フラグのこともあって神経質に考えているときろうとすると墓場の中央で青白い光が走る。怪しく幻想的な青い光。その光は大きな魔法陣の光だった。そしてその隣には黒いローブの人影が見える。

 

「…あれ?ゾンビメーカー…ではない…気が…するのですが…」

 

めぐみんが自信なさげに呟く。確かにそうは見えない魔法使いのようななりをしている。ゾンビがそんな格好するのか…?よく見ると周りにはユラユラと蠢く人影が数体見える。

 

「お、お兄ちゃん…」

 

「ヒッキー…」

 

「比企谷君…」

 

後ろにいた三人は怖がり俺の服の裾を掴む。俺はそんな小町を抱き寄せ

 

「大丈夫だお兄ちゃんが守ってやる」

 

「私たちは!?」

 

お前らを抱き寄せれるわけないだろ後で布団に蹲るぞまぁ守るけど

 

「突っ込むか?ゾンビメーカーじゃなかったとしても、こんな時間に墓場にいる以上、アンデッドに違いないだろう。なら、アークプリーストのアクアがいれば問題ない」

 

そう言いそわそわしている変態。小町が怖がってんだろ静かにしろ変態

 

「静かにしろ変態」

 

「んんっ!?」

 

俺のいきなりの罵倒に身を震わせる変態。その時アクアが動く。

 

「あーーーーーーーーっ!?」

 

突如アクアは叫び出し、立ち上がりローブの人影に向かって走り出す。

 

「「ちょっ!おい待て!」」

 

俺とカズマの制止の声も無視して、ビシッと人影を指差す。

 

「リッチーがのこのここんなとこに現れるとは不届きなっ!成敗してやるっ!」

 

リッチー…!?リッチーって確かアンデッドの王だろ!?何でこんなとこに…!俺はリッチーと聞きすぐにパーティーメンバーの前に立ち

 

「下がるぞっ!」

 

下がるように指示し、ジリジリと後ろに下がろうとしていると

 

「や、やめやめ、やめてええええええええ!誰なの!?いきなり現れて、なぜ私の魔法陣を壊そうとするの!?やめて!やめてください!」

 

明らかにアクアじゃない声で叫び声が聞こえた。アクアじゃないとするとあのリッチー…?え?

 

「うっさい黙りなさいアンデッド!どうせこの妖しげな魔法陣でロクでもないこと企んでるんでしょ、なによ、こんな物!こんな物!?」

 

グリグリと魔法陣を踏みにじるアクアとそのアクアの腰に泣きながらしがみつくリッチー?。あれどっちが悪役なのかわかんないんですけど…なんかいじめられっ子にしか見えないんですけど…

 

「やめてー!やめてー!!この魔法陣は、いまだ成仏出来ない迷える魂達を、天に返してあげるための物です!ほら、たくさんの魂達が魔法陣から空に昇っていくでしょう!?」

 

リッチーのゆう通りよく見ると青白い人魂のようなものが魔法陣に入るとそのまま魔法陣の光と共に天に吸い込まれていく。

 

「リッチーの癖に生意気よ!そんな善行はアークプリーストのこの私がやるから、あんたは引っ込んでなさい!見てなさい、そんなちんたらやってないで、この共同墓地ごとまとめて浄化してあげるわ!」

 

「ええっ!?ちょ、やめっ!?」

 

明らかに今の状況が善行じゃない気がするのは黙っておこう。アクアの宣言に、慌てるリッチー。それに構いもせず、アクアは大声で叫ぶ。

 

「『ターンアンデッド』ー!」

 

墓場全体がアクアを中心に白い光に包まれた。アクアからでているその光はリッチーの取り巻きのゾンビや人魂もろとも存在を消失させる。そしてもちろんアンデッドの王たるリッチーにも影響は及び…

 

「きゃー!か、身体が消えるっ!?やめてやめて、私の体がなくなっちゃう!!成仏しちゃうっ!」

 

「あはははははは、愚かなリッチーよ!自然の摂理に反する存在、神の意に背くアンデッドよ!さあ、私の力でかけらも残さず消滅するがいいわっ!」

 

確実に悪役みたいな台詞を吐くアクア。そんなアクアに俺とカズマは近寄り

 

「おい、やめてやれ」

 

「やめてやってくれアクア」

 

俺はやめるようにいい、カズマは後頭部を剣の柄でゴスっと小突いた。容赦ねえこいつ。

 

「っ!?い、痛、痛いじゃないの!あんた何してくれてんのよいきなり!」

 

小突かれたせいか白い光を放つのをやめ頭を涙目でカズマに食ってかかる。

雪ノ下達もやってきたところでリッチーに声をかけた。

 

「だ、大丈夫ですか?えっと、リッチー…?」

 

見るとリッチーの足元は半透明になり軽く消えかかっている。やがて徐々に足が元に戻り、涙目のリッチーはフラフラしながら立ち上がり

 

「だ、だ、だ、大丈夫です…。危ないところを助けていただき…あれ?あなたもアンデッドでしたか…?よく浄化されませんでしたね。あれ、でもアンデッドじゃない…?」

 

………………とりあえず後ろで笑ってる七人覚えとけ。

 

「一応人間です…」

 

それを聞き慌てふためくリッチー。

 

「え、あ、ご、ごめんなさい!その…目が独特でして…ほんとに悪気はないんです…」

 

「い、いえ大丈夫ですよよく言われるんで」

 

俺は気にしてない旨を伝え、名前を聞く。後ろの奴らは許さんけどな絶対に許さないリストにメモするからな小町は可愛いから許す。

 

「えっと、おっしゃる通り、リッチーです。リッチーのウィズと申します」

 

言って目深にかぶっていたフードをあげると、現れたのは月明かりに照らされた二十歳くらいの茶色い髪の美女だった。

 

(この世界顔面偏差値たけえ…)

 

「えっと…。ウィズ?さんはこんな墓場で何やってたんですか?」

 

「ちょっとハチマン!こんな腐ったみかんみたいなのと喋ったら、あなたまでアンデッドが移るわよ!ちょっとそいつに、ターンアンデッドをかけさせなさい!」

 

俺がウィズさんと話しているとアクアがいきり立ち魔法をかけようとする。どんだけアンデッド嫌いなんだよ。てゆうかアンデッド移るって何比企谷菌かよ。比企谷菌バリア貫通するらしいからな超強いぞ。

 

「ま、まぁ落ち着けアクア。悪い人かどうかは話して決めるから、な?」

 

そう俺がゆうと「ハチマンがそうゆうなら…」とさがってくれた。

 

「まぁありがとなアクア」

 

「なんでこいつハチマンのゆうことは聞くんだよ」

 

俺はアクアにお礼を言い、ウィズさんと話をしようとウィズさんを見るとアクアにビビりまくって俺の背中にひっつきながら

 

「そ、その…私は見ての通りのリッチー、ノーライフキングなんてやってます。アンデッドの王なんて呼ばれてるくらいですから、私には迷える魂達の声が聞こえるんです。この共同墓地の魂の多くはお金がないためろくに葬式すらしてもらえず、天に還ることなく毎晩墓場を彷徨っています。それで、一応はアンデッドの王な私としては、定期的にここを訪れ、天に還りたがっている子達を送ってあげているんです」

 

どうやらいい人らしい。なんか久しぶりにまともな人と会った気がする…人じゃねえけど。そこにカズマが

 

「それは立派な事だし良い行いとは思うんだが…そんなことはこの街のプリーストとかに任せておけばいいんじゃないか?」

 

カズマの疑問にウィズさんは言いにくそうに憮然としたアクアを気にしながら話した。要約すると

 

「つまり、この街のプリーストは金儲け優先のやつがほとんどで、こんな金のない連中が埋葬されてる共同墓地なんて、供養どころか寄り付きもしないってことか?」

 

ちょうどストレートに要約するカズマ。その言葉に言いにくそうに肯定するウィズさん。そしてその場にいる全員の視線がアクアに集まった。当の本人はバツが悪そうに目を逸らす。

 

「それならまあしょうがない。でも、ゾンビを呼び起こすのはどうにかならないか?俺たちがここにきたのって、ゾンビメーカーを討伐してくれってクエスト受けたからなんだが」

 

ウィズさんは困った表情を浮かべながら

 

「あ…そうでしたか…。その呼び起こしている訳じゃなく、私がここに来ると、まだ形が残っている死体は私の魔力に反応して勝手に目覚めちゃうんです。……その、わたしとしてはこの墓場に埋葬される人たちが、迷わず天に還ってくれれば、ここに来る理由もなくなるんですが……。………えっと、どうしましょうか?」

__________________________________________________________

 

墓場からの帰り道。

 

「納得いかないわ!」

 

アクアがまだ怒っていた。時刻はすでに空が白みがかってくる時間帯だ。

 

「しょうがないだろ。つかあんないい人討伐する気にはなれないだろうに」

 

俺たちはウィズさんを見逃すことにし、暇を持て余しているアクアが定期的に墓場を浄化しに行くと言うことで折り合いがついた。まぁめっちゃ駄々こねてたけど。めぐみんとダクネスは、モンスターを見逃すことに抵抗があったみたいだがウィズさんが人を襲ったことをないことを知り同意した。俺たちも抵抗なく同意した。

 

「しかしリッチーが街で普通に生活してるとか、この街の警備はどうなってんだ」

 

カズマはウィズさんからもらった紙切れを眺めながら呟いた。その紙はウィズさんの住んでる住所が書かれていた。どうやら普通に生活しているらしい。しかも店まで営んでいるそうな。

 

「でも穏便に済んでよかったです。いくらアクアがいると言っても、相手はリッチー。もし戦闘になってたら私やカズマは間違いなく死んでいましたよ」

 

あの人そんな凶暴そうに見えなかったけどな…やっぱリッチーってやばいのか?

 

「げ、リッチーってそんなに危険なモンスターなのか?ひょっとしてやばかった?」

 

「やばいなんてものじゃないです。リッチーは強力な魔法防御、そして魔法のかかった武器以外の攻撃の無効化。相手に触れるだけで様々な状態異常を引き起こし、その魔力や生命力を吸収する伝説級のアンデッドモンスター。むしろ、なぜあんな大物にアクアのターンアンデッドが効いたのかが不思議でならないです」

 

わお…まじやっべーやっべーわ。そうだよアンデッドの元締めだよ。なめちゃいけねえんだ。

 

「カズマそのもらった名刺、渡しなさいよ。ちょっとあの女より先に家に行って、家の周りに神聖な結界貼って涙目にしてくるから」

 

「や、やめてやれよ…」

 

カズマが引き気味にゆう。てゆうかアンデッドに親でも殺されたの?そんな時ダクネスがポツリと言った。

 

「そういえばゾンビメーカーの討伐クエストはどうなるのだ?」

 

「「「「「「あっ」」」」」」

 

「?」

 

唯一事情を知らない小町は首を傾げていた。

 

クエスト失敗。

__________________________________________________________

俺は今宿屋まで来て、雪ノ下達に提案をしていた。

 

「流石に4人で同じベッドはきついからそろそろ新しい部屋を…」

 

「え!?お兄ちゃんこれまで雪乃さん達と一緒に寝てたの!?きゃ〜お兄ちゃん大胆っ!」

 

そう流石にベッドが狭いだろうから部屋を増やそうと提案しているんだが…

 

「それは部屋代がもったいないは確かに狭いかもしれないけれどもっと詰めればいい話だと思うの。ええ、変える必要はないと思うの」

 

「そ、そうだよヒッキー!それとも…嫌…?」

 

捨てられた子犬かのような目で上目遣いをする由比ヶ浜。ずるいこいつまじで。でも俺も男ここで引くわけにはいかねえ。だってそろそろ我慢の限界なんだもん!まじで!ほんとに!

 

「い、嫌とかじゃなくてだな…ほら…あれがあれで…」

 

「あぁ〜」ニヤニヤ

 

理由が分かったのか小町がニヤニヤしながら俺を見る。こいつ腹立つけど可愛い許しちゃう。その時

 

「あんたら…」

 

店の前で騒いでたからか女将が俺たちに声をかける。怒られると思ったが

 

「丁度二つベッドがある部屋が空いてるけどそこに変えるかい?」

 

女将はとんでもない提案をしてきた。いや根本的な解決になってない気が…

 

「「「!そこでお願いします!」」」

 

「え、いやちょっと…なんでもないです。是非そうしましょう」

 

三人が有無を言わせぬ顔で睨んでくる。へたれだって?だったら歯向かってみろしぬぞ。そして女将からもらった新しい鍵をもらって部屋に向かおうとしているときにチラッと女将を見るとウィンクをして親指を立てていた。何無駄な気使ってんだこの馬鹿野郎がああああああっ!?ふざけんなとゆう意思を込めて女将を睨むすると口パクで

 

『礼いらねえよ』

 

感謝してねえよこのやろう。そんなやりとりを交わした後部屋につき扉を開くと前とはほとんど変わらない部屋だったそして離れたところにベッドが二つ置いてあった。

 

(ああよかったこれでやっと…)

 

そう安心したのも束の間、三人はそのベッドを見つけるなり、そのベッドに近寄り…………同時に動かし二つとも合体させた。何やってんのこの人たち。

 

「お兄ちゃんこれで4人で寝れるね!」

 

そう満面の笑みでゆう小町。うんお風呂行こ。

__________________________________________________________

 

「あらユキノにユイにコマチじゃない。奇遇ね」

 

私たちはお風呂に入りに来ていたけどそこに偶然アクアさんがいた。

 

「アクアんまた会ったね!一緒にお風呂入ろー!」

 

由比ヶ浜がそう提案し一緒にお風呂に入った。

 

「しかしまさか小町さんがくるとは…」

 

「ええ小町もびっくりです。まぁお兄ちゃんに会えたからありがたいですけど」

 

「ヒッキーも最初はびっくりしてたけど結構喜んでたねー」

 

三人で微笑みながら会話を交わす。小町さんは頭には猫耳お尻には尻尾がついていた。ええ全くもふもふしたいだなんて思ってないけれどこれからのためにも触っておきたいわね別にもふもふしたいわけじゃないのだけれど。そこにアクアさんが会話に加わりとんでもない爆弾を落とした。

 

「ねえねえ今思ったんだけど、一回死んでるから兄妹とかないんじゃない?」

 

私はそれを聞いて固まった。確かに比企谷君は一回死んでいて小町さんも別の種族になっている。もうそれは他人なんじゃないか。そんな考えが頭を支配した。

 

(そんなことを小町さんに言ったら…!)

 

(小町ちゃん…!)

 

由比ヶ浜さんもその考えに至ったみたいで小町さんの方を向く。そして当の本人は

 

(お兄ちゃんと小町が兄妹じゃない…?確かに…でもそれって…小町もお兄ちゃんと結婚できるってこと…!?)

 

すごくにやけていた。

 

「「えっ」」

 

「つまり小町もお兄ちゃんを好きになってもいい…」

 

「「えっ」」

 

「お兄ちゃんと…えへへぇ〜」

 

頰に手を当てクネクネしている小町さん。

 

「…こ、小町さん?」

 

「え?はい!どうしました雪乃さん」

 

まるで何事もなかったかのように私の返事に答える。

 

「その…ショックとかないのかしら」

 

「あー…ないって言ったら嘘になります。でも兄妹じゃなくてもお兄ちゃんと一緒にいたいのは変わりませんし、何より…」

 

「小町も義姉ちゃん候補に立候補できますからね!」

 

小町さんも小町さんでとんでもない爆弾を落としていった。

__________________________________________________________

 

「どうしたお前ら」

 

現実逃避をするために風呂に入っていた俺は宿屋に戻り小町たちが帰ってくるのを待っていた。そして帰ってきた三人を迎えるとなんかものすごく微妙な空気になっていた。

 

「いや、その、えっと…」

 

少し言いにくそうにしている雪ノ下。え?なに?

 

「お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「お兄ちゃんは一回死んじゃってるでしょ?」

 

いきなりそんなことを聞いてくる。

 

「…まあ死んだな」

 

「それで小町もなんか召喚の時に変な種族にされてるでしょ?」

 

「まあ確かに猫耳と尻尾生えてるしな」

 

「それでさ…小町達ってさ兄妹なのかな?」

 

………………え?ちょっとまてステイステイ。え?確かに色々変わってるし死んでる。え?マジで?でも確かに言われたら…小町はそれを気にして…

 

「お兄ちゃん色々考えてると思うけど小町は気にしてないよ?もし兄妹じゃなくなってもお兄ちゃんとは仲良くしたいし。あ、これ小町的にポイント高い!」

 

気にしてないのかよ。まぁ気にしてないことはいんだけどそれはそれでショックなんですけど…

 

「だからねこれから1人の女として仲良くしてね!お兄ちゃん!いや八幡!」

 

そう言いながら小悪魔的笑みを浮かべていた。何この子怖い。そしてその夜どんだけ抵抗しても無駄だと分かったので4人で一緒に寝たけど悔しいことにちょっと意識した八幡であった。

 

 




後書き
投稿遅れました。今回も長めですが読んでいただけると幸いです。さて小町なんですが番外編で書いた通り八幡への思いとゆうか会いたい思いが爆発してます。でも妹とゆうリミッターがあったので外れることはありませんでしたがアクアの一言で外れてしまいました。まぁ要するにヒロイン決まってないのにヒロイン候補増やしました。馬鹿だと思いました?俺も思ってます。だって思いついちゃったんだもん。まぁ次回はほのぼのとまではいかないけどそんな感じでやっていきます。ではまた次回お会いしましょう


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#8 襲来

ウィズとの邂逅があった翌日。カズマと話し合いをして今日は休みにしてもらった。理由としては正直昨日いろいろしすぎて疲れたのもあるが一番大きいのは小町だ。小町はまだこの世界を知らない、俺たちもきて間もないが小町よりは知識はある。それに冒険者登録もしていないしあとは色々説明しようと思っていた。思っていたのだが。

 

「…やべえ…昼じゃん…」

 

疲れていたせいかめちゃくちゃ熟睡してた。

 

「あら起きたのね寝坊谷君おはよう」

 

俺が目を覚ますとそれに気付いた雪ノ下が、俺に声をかける。

 

「…おはようぐっすり寝てたわ…あれ由比ヶ浜と小町は?」

 

「あの二人ならあなたより早く起きてちょっとスキルが出たから試してくるって言ってどっかいったわよ」

 

「まじか…あの二人大丈夫か?」

 

「一応ついていくとは言ったのだけれど大丈夫って言ってたから多分大丈夫だと思うわ」

 

「なら俺たちも準備して行こうなんかあってからじゃ遅いしな」

 

あの二人特に小町は戦闘経験もないし、心配だな…どこ行ったか知らんけど。俺は準備を終え雪ノ下と宿から出ようとすると

 

「あれ?ヒッキー起きたんだ」

 

「八幡おはよ〜!」

 

ちょうど小町たちと鉢合わせた。てゆうか小町の下の名前呼びはすげえ違和感するしなんかちょっとやだ…。

 

「…おはよう。その小町…呼び方を戻してくれないか?その…違和感とゆうかなんとゆうか…」

 

「えぇ〜。まぁ…お兄ちゃんがゆうなら…」

 

そう言いつつも戻してくれた。さすが小町。

 

「ヒッキー今日はなんかするの?」

 

「ああ、とりあえず小町の冒険者登録をしてこの世界について説明しようかと思ってる」

 

「冒険者登録?」

 

「その辺もギルドへの道すがら説明するよ」

 

俺たちは宿を出てギルドへと向かった。

__________________________________________________________

 

「はい今日はどうされましたか?」

 

「えっと冒険者登録をしたくてきたんですけど」

 

「…冒険者登録ですか?」

 

「はいその」

 

そういい小町の方を向く

 

「小町の登録を…」

 

「はいわかりました。では…」

 

受付の人は俺がきたときの同様の説明をし、小町は書類に特徴などを書きカードに触れる。

 

「……はい、ありがとうございます。ヒキガヤコマチさん、ですね。ええと、生命力、魔力に知力、幸運は平均値ですね。でも筋力と敏捷性がとてつもなく高いですね。まぁハチマンさんのパーティーですしあんまり驚かないですけど、とんでもないですねええ」

 

何故か目が死んでいる受付の人を気の毒に思いながら

 

「な、なんかすいません…」

 

「いえ別に非はないですよ。ただ常識外れなだけですから」

 

いやほんとにすいません…

 

「話を戻しますがこれだと職業は……?拳闘士?とゆうのがありますね」

 

拳闘士?確か拳で戦う職業か…小町が拳で戦うのか…

その姿を想像するとなんか…うん…拳血塗れの小町なんて見たくないな…ここは断って別の職業を…

 

「それでお願いします〜!」

 

「え」

 

「はい拳闘士として登録しました。この職業は私たちもよくわからないのでなにも助言はできませんが…。では冒険者ギルドへようこそコマチ様。スタッフ一同これからの活躍に期待してます!」

 

勝手に登録して小町の職業は決まった。待って俺の話を聞いて!

__________________________________________________________

 

俺たちは冒険者登録をすますといつも通りの平原に来ていた。

 

「はい今日も色々試します」

 

「…なんでそんなげんなりしてるのかしら」

 

いや別に?小町が拳血だらけでモンスター狩ってる姿を想像して萎えてるとか別にそんなんじゃない。まぁ結局可愛いんですけどね!

 

「…取り敢えず小町カード見せてくれ」

 

「はいはーい!」

 

そういいカードを俺に渡す。あと小町ちゃん?はいは一回よ

そんなことを言いつつ小町のカードに目を通しあることに気づく。

 

(受付の人も言ってたけど敏捷と筋力俺より高くないか…?いやそれどころか倍近くないか…?)

 

いくら見ても筋力と敏捷の高さがおかしい。どうゆうことだ…?

 

「どうしたのヒッキー難しい顔してるけど…」

 

どうやら考え込みすぎて顔が強張っていたらしい

 

「いや…これを見てくれ」

 

俺はカードを由比ヶ浜達に見せる。

 

「どれどれ…へぇー…あれ?」

 

「…気のせいじゃなかったらとんでもなく筋力と敏捷が高い気がするのだけれど」

 

「ああ男であるはずの俺の倍はある」

 

「なになに?もしかして小町ってすごいの?」

 

そうゆう小町に俺はステイタスカードをだし、小町に見せる。

 

「へぇ〜確かに小町のおかしいですね…」

 

「……もしかして小町さん猫の特性をついでるのじゃないかしら…」

 

…なるほどそうゆうことか。確かにそうかもしれん。

 

「なるほど敏捷は猫の素早さ、筋力はそれをこなすだけの力ってわけか…」

 

しかし…体格は前の小町とも変わってないしそんな力あるのか…?試してみるか…

 

「……小町ちょっとそこの岩を持ち上げて見てくれ」

 

まぁ無理だと思うけど岩の大きさ俺たちより断然大きいし流石に…

 

「わかったやってみる!ええっとこう?」

 

小町は岩に近寄り岩を持つと可愛い掛け声とともに…そのまま持ち上げた。

 

「「「「え」」」」

 

持ち上げた小町自信も驚いている。そりゃそうだ可愛い女の子がいきなり自分よりでかい岩持ち上げたら驚くわ。

 

「お、お兄ちゃん…」

 

「…取り敢えずその岩を下ろそうか…なんとゆうかものすごく絵面がやばい」

 

「う、うん」

 

そう言い小町は岩を下ろした。

 

「…ヒッキーこの世界に普通ってないんだね…」

 

「いやそんなことはないはずなんだが…」

 

てゆうかあのパワーで殴られるモンスターが…しかし

 

「…小町…何回も聞くがほんとに良かったのか?」

 

「?」

 

「この世界に来たことだよ。いきなりいなくなって親父たちも心配してるだろ」

 

由比ヶ浜と小町はそれを聞きはっとし、

 

「そういえばそのことなんだけど…小町ちゃん自由にあっちとこっちを出入りできるみたい」

 

「……え」

 

話を聞くとどうやら召喚魔法を媒介として小町はどっちの世界も行き来できるらしい。朝スキル欄を見てそれらしいのが見つかったから試してわかったみたいだ。

 

「朝試して見てあっちに帰って親には当分引きこもるって伝えたから大丈夫だと思うよお兄ちゃん」

 

娘の引きこもる宣言を受け入れるなよ

 

「それが許されちゃうのかよ…」

 

「最初は反対されたけどお父さんにお願いしたら許可してくれたよ」

 

それでいいのかよ親父…甘すぎだろ…

そのあとは小町のスキルを試しその日はもう終わりにし街に帰った。

__________________________________________________________

 

キャベツ討伐から数日。あのキャベツの報酬が支払われることになり、久しぶりにカズマたちと集合していた。

 

「カズマ、ハチマンみてくれ。報酬が良かったから、修理を頼んでいた鎧を少し強化して見た。…どう思う?」

 

報酬を受け取ろうとする冒険者たちによってひどい混雑していた。そんな中ダクネスが嬉々として鎧を見せてきた。

 

「まぁいいんじゃないか?」

 

…ここで主人公とかは気の利いたセリフを言えるのだろうが俺には無理だ。

 

「…なんか、成金趣味の貴族のボンボンがつけてる鎧みたい」

 

「…カズマはどんな時でも容赦ないな。私だって素直に褒めてもらいたい時もあるのだが」

 

ダクネスはちょっと凹んだ顔をしていた。カズマも主人公には向かないな確実に。

 

「…なぁカズマなんかダクネスを超える変態がいる気がするんだけど…」

 

「あれは…多分手遅れだほっとこう」

 

俺とカズマはそのダクネスを超えそうな変態の方を向く。

 

「はぁ…はぁ…。た、たまらない、たまらないです!魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色艶…。はぁ…はぁ…っ!」

 

めぐみんが新調したであろう杖を抱きかかえ頬擦りしていた。その杖にはマタナイトと言うのを使ったらしい。マナタイトとかいうのは希少金属で杖に混ぜると魔法の威力を上げるらしい。どうやらキャベツの報酬で杖を強化し、めぐみんも朝からこの調子らしい。正直側から見てもヤバいやつなので放置している。俺たちもすでに換金を終えており意外に報酬があり財布がホクホクになっていた。キャベツ狩りの報酬はそれぞれ自分の分をそのまま報酬にしようとアクアが言い出し、そうすることになったのだが

 

「なんですってえええええええ!?ちょっとあんたどういうことよっ!」

 

ギルドに響き渡るアクアの叫び声。ギルドの受付のお姉さんの胸ぐらを掴み、何やら揉めている。…別に揺れる胸なんて見てないよ別に見てないからポロリしないかななんて考えてないからだから俺を睨むのやめてね三人とも

 

「なんで五万ぼっちなのよ!どれだけキャベツ捕まえたと思ってんの!?10や20じゃないはずよ!」

 

「そそ、それが、申し上げにくいのですが…」

 

「何よ!」

 

「…アクアさんの捕まえてきたのは、殆どがレタスで…」

 

「………なんでレタスが交じってるのよー!」

 

「わ、私に言われましてもっ!」

 

少し文句を言い続けてたが無駄だと踏んだのかアクアが後ろに手を組み、にこやかな笑顔で俺たちに近づいてきた。

 

「カーズマさん!ハーチマンさん!今回のクエストの、報酬はおいくら万円?」

 

「百万ちょい」

 

「「「「「「ひゃっ!?」」」」」」

 

「俺もそんくらいだな」

 

「「「「「「なっ!?」」」」」」

 

どうやらカズマのとったキャベツは質が良かったらしく俺は単純に数を取りまくり俺とカズマはいきなり小金持ちになったのだ。

 

「カズマ様ー!ハチマン様ー!前から思ってたんだけど、カズマってその、そこはかとなくいい感じよね!ハチマンもその、その目が魅力的ね!」

 

「特に褒めるところが思い浮かばないんなら無理すんな。言っとくが、この金はもう使い道決めてるからな、分けんぞ」

 

「お前にこの目見てアンデッドって決めつけられた気がするんですけど…」

 

先手を打ったカズマの言葉と俺の言葉にアクアの笑顔が凍りついた。

 

「カズマさあああああん!ハチマンさああああああん!私、クエスト報酬が相当な額になるって踏んで、この数日で、持ってたお金、全部使っちゃったんですけど!ていうか、大金入ってくるって見込んで、ここの酒場に十万近いつけまであるんですけど!!今回の報酬じゃ、足りないんですけど!」

 

半泣きで俺とカズマに交互に縋り付いてくるアクア。

 

「知るか、そもそも今回の報酬は『それぞれが手に入れた報酬をそのままに』って言いだしたのはお前だろ。と言うか、いい加減拠点を手に入れたいんだよ。いつまでも馬小屋暮らしじゃ落ち着かないだろ?」

 

まぁ十万くらいならいいかと思い、お金を出そうとすると

 

「そんなああああ!カズマ、ハチマン、お願いよ、お金貸して!ツケ払う分だけでいいからぁ!そりゃカズマもハチマンも男の子だし、カズマは馬小屋でたまに夜中ゴソゴソしてるの知ってるから、早くプライベートな空間が欲しいのはわかるけど!五万!五万でいいの!お願いよおおおおお!」

 

「よし分かった、五万でも十万でもお安いもんだ!分かったから黙ろうか!!」

 

「待って何で俺今その話に巻き込まれたの」

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結局あのあと俺とカズマで半々払い一件落着し、みんなでクエストを受けようとゆうことになったのだが、どうやらこの近くに魔王の幹部が住み着いたらしくクエストが激減していた。なのでまた当分は休みとゆうことになったのだ。なったのだが。

 

「なんで俺まで…」

 

「いいだろ俺とハチマンの仲なんだし、めぐみんの日課に一緒に付き合うくらいさ!」

 

そう俺たちは今めぐみんの日課である一日一爆裂に付き合わされていた。休みが貰えた俺は当分だらだら怠惰に過ごす気だったのにカズマのやつ『ハチマン暇だったらちょっと付き合ってくれないか?』とか言いやがってついてきたらこれか。ただ道連れにしたかっただけだろこいつ。あぁ…働きたくない。ちなみに雪ノ下と小町と由比ヶ浜は街で何やら買い物をしているらしい。

 

「もうその辺でいいだろ。適当にうって帰ろうぜ。」

 

そう提案するもめぐみんが首をふり

 

「駄目なのです。街から離れたところじゃないと、また守衛さんに叱られます」

 

待て今こいつまたって

 

「今お前、またって言ったな。音がうるさいとか迷惑だって怒られたのか」

 

めぐみんがこくりと頷く

 

「前にやって怒られてんのかよ…」

 

そんなめぐみんに呆れながら、歩を進める。すると

 

「……?あれはなんでしょうか。廃城?」

 

遠く離れた丘の上。そこにポツンと佇む、朽ち果てた古い城が見えてきた。

 

「薄気味悪いなぁ…。お化けでも住んでそうな…」

 

確かにお化け屋敷みたいではある。

 

「あれにしましょう!あの廃城なら、盛大に破壊しても誰も文句は言わないでしょう」

 

そういい魔法の準備を始めた。風が気持ちの良い丘の上で明らかに似合わない爆発音が響き渡った。

こうして俺とカズマとめぐみんの新たな日課が始まった。くる日も来る日もかかさず俺とカズマが交互にめぐみんをおぶって帰り、そしていつの間にか

 

「『エクスプロージョン』ッッッ!」

 

「おっ、今日のは良い感じだな。爆裂の衝撃波が、ズンと骨身に浸透するかの如く響き、それでいて肌を撫でるかのように空気の振動が遅れてくる。相変わらず、不思議とあの廃城は無事なようだが、それでも。ナイス爆裂!」

 

その日の爆裂魔法の調子が分かるようになり、カズマに関してはソムリエみたいなことを言い出した。しかしあの廃城ほんとに壊れない。何日も連続で撃っているが微塵も壊れる気配がない。なんかおかしいよな…。そんなモヤモヤを抱えながら1週間がたった、ある日の朝。

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』

 

街中に緊急のアナウンスが響き渡り、そのアナウンスを聞いた冒険者たちは急いで正門に向かった。そしてそこについた俺たちは凄まじい威圧感を放つモンスターの前で呆然と立ち尽くしていた。そのモンスターは自らの首を腰に掲げ馬に乗った騎士風のモンスターつまりデュラハンである。そしてデュラハンは自分の首を前に出し話し始めた。

 

「……俺は、つい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部のものだが…」

 

やがてプルプルと震え始め…

 

「まままま、毎日毎日毎日っっ!!おお、俺の城に、毎日欠かさず爆裂魔法を打ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は、だれだああああああー!!」

 

爆裂魔法?爆裂魔法といえば…。自然とめぐみんに視線が集まる。そして当の本人は横にいる魔法使いに視線を送りそれに釣られ全員がその魔法使いを見る。

 

「ええっ!?あ、あたし!?なんであたしが見られてんのっ!?爆裂魔法なんて使えないよっ!」

 

まぁそりゃそうだこの街で習得してんのめぐみんくらいだろうし。それにしても城ってもしかして…やがてめぐみんが前に出てそれに伴い冒険者たちが道を開けめぐみんとデュラハンが対峙する。

 

「お前が…!お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法ぶち込んでいく大馬鹿ものか!俺が魔王軍幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城に攻めてくるが良い!その気がないのなら、街で震えているが良い!何故こんな陰湿な嫌がらせするの!?この街には低レベルの冒険者しかいないことは知っている!どうせ雑魚しかいない街だと放置して居れば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポン撃ち込みにきおって…っ!!頭おかしいんじゃないのか、貴様っ!」

 

よほど怒っているのかプルプルと震えていた。流石に気圧されめぐみんが怯むがマントをひるがえし

 

「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操るもの…!」

 

「…めぐみんってなんだ。バカにしてんのか?」

 

「ちっ、ちがわい!」 

 

ツッコミを入れられたが気を取り直し

 

「我は紅魔族のものにして、この街随一の魔法使い。我が爆裂魔法を撃ち続けていたのは、魔王軍幹部のあなたを誘き出すための作戦…!こうしてまんまとこの街に、一人で出てきたのが運の尽きです!」

 

ノリノリでデュラハンに杖を突きつけるめぐみんとは逆に

 

「…おい、あいつなんか言ってるぞ。毎日爆裂魔法撃たなきゃ死ぬとか駄々こねて俺とハチマンをあの城の近くまで連れ出しただけなのに。いつの間に作戦になったんだ」

 

「…うむ、しかもさらっと、この街随一の魔法使いとか言い張っているな」

 

「しーっ!そこは黙っておいてあげなさいよ!今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろにたくさんの冒険者が控えてるから強気なのよ。今いいところなんだから、このまま見守るのよ」

 

囁き声のつもりなんだろうが確実に聞こえてるぞだってほらめぐみんの顔があかくなってるし、あと俺連れ出したのお前だろカズマ。

 

「めぐみんってそんな変な名前かな?」

 

「バカ今は静かにしとけ」

 

デュラハンはといえば納得したような雰囲気で

 

「…ほう、紅魔のものか。なるほど、なるほど。そのいかれた名前は、別に俺をバカにしていたわけではなかったのだな」

 

「おい、両親からもらった私の名に文句があるなら聞こうじゃないか」

 

デュラハンの言葉に言い返すめぐみんだが当の本人は微塵も気にしていないそれどころかこれだけの冒険者の大群を見ても気にしてすらいない。さすがは魔王軍幹部だ。

 

「…フン、まあいい。俺はお前ら雑魚にちょっかいかけにこの地に来たわけではない。この地には、ある調査に来たのだ。しばらくはあの城に滞在することになるだろうが、これからは爆裂魔法は使うな。いいな?」

 

「それは、私に死ねと言ってるも同然なのですが。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を打たないと死ぬんです」

 

「お、おい聞いたことないぞそんなこと!適当な嘘をつくな!」

 

デュラハンは器用に、やれやれと肩を竦めて見せた。

 

「どうあっても、爆裂魔法を撃つのをやめる気はないと?俺は魔に身を落としたものではあるが、元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない。だが、これ以上城の近辺であの迷惑行為をするのなら、こちらにも考えがあるぞ?」

 

有無を言わせぬ雰囲気にめぐみんが後ずさるが、不敵な笑みを浮かべ

 

「迷惑なのは私たちの方です!あなたがあの城に居座っているせいで、私たちは仕事もろくにできないんですよ!…ふっ、余裕ぶっていられるのも今の内です。こちらには、対アンデッドのスペシャリストがいるのですから!先生、お願いします!」

 

そう啖呵を切ったあとアクアに丸投げをした。お前はそれでいいのか自称最強。

 

「しょうがないわねー!魔王の幹部だか知らないけれど、この私がいるときに来るとは運が悪かったわね。アンデッドのくせに、力が弱まるこんな明るいうちに外に出てきちゃうなんて、浄化してくださいって言ってるようなものだわ!あんたのせいでまともなクエストが受けられないのよ!さぁ、覚悟はいいかしらっ!?」

 

先生呼ばわりされたせいかまんざらでもない感じで前に出る。そしてアクアはデュラハンに片手を突き出す。それを見たデュラハンは自分の首をアクアに向かって突き出した。おそらくまじまじとみる行為なのだろう。

 

「ほう、これはこれは。プリーストではなくアークプリーストか?この俺は仮にも魔王軍の幹部の一人。こんな街にいる低レベルのアークプリーストに浄化されるほど落ちぶれてはいないし、アークプリースト対策はできているのだが…。そうだな、ここは一つ、紅魔の娘を苦しませてやろうかっ!」

 

デュラハンはアクアが魔法を唱えるより早く左手の人差し指をめぐみんへと突き出した。

 

(っ!まずい!)

 

そう思い飛び出そうとすると俺より早く飛び出した奴がいた。そしてデュラハンはすかさず叫ぶ。

 

「汝に死の宣告を!お前は1週間後に死ぬだろう!!」

 

デュラハンがそう叫ぶと同時に俺より早く出ていたダクネスがめぐみんを俺の方へ投げ飛ばす。

 

「なっ!?ダ、ダクネス!?」

 

「っ!?あっぶな!」

 

俺は投げ飛ばされためぐみんをキャッチする。ダクネスは呪いを受け身体がほんのりと、一瞬だけ黒く光る。

 

(くそっ間に合わなかった…!あれを使ってれば間に合ったかもしれないのに…!)

 

「ダクネス!何か異常は!?」

 

パーティーメンバーが駆け寄る中俺は慌てて聞くも

 

「……ふむ、なんともないのだが」

 

特に問題はなさそうに言ってのけた。でもデュラハンは死の宣告ができるモンスターつまり

 

(確実に1週間後に死んでしまう…)

 

そんなダクネスをアクアはずっとペタペタ触る中、デュラハンは宣言する。

 

「その呪いは今はなんともない。若干予定が狂ったが、仲間同士の結束が固い貴様ら冒険者には、むしろこちらの方が応えそうだな。…よいか、紅魔族の娘よ。このままではそのクルセイダーは1週間後に死ぬ。ククッお前の大切な仲間は、それまで死の恐怖に怯え、苦しむこととなるのだ……。そう、貴様の行いのせいでな!これより一週間、仲間の苦しむ様を見て、自らの行いを悔いるがいい。くはははっ、素直に俺のゆうことを聞いておけばよかったのだ!」

 

めぐみんが青ざめ杖を握りしめる。そんな中ダクネスが叫ぶ。

 

「な、何てことだ!つまり貴様は、この私に呪いをかけ、呪いを解いて欲しくば俺のゆうことを聞けと!つまりそういうことなのか!」

 

「えっ」

 

…人の話聞いてたの?違うよ確実にほらデュラハンの人驚いてんじゃん。目の焦点があってないじゃん。てゆうかほんとブレねえなこの変態。

 

「くっ……!呪いぐらいではこの私は屈しない…!屈しはしないが…っ!ど、どうしようハチマン!カズマ!見るがいい、あのデュラハンのカブトの下のいやらしい目を!あれは私をこのまま城へと連れて帰り、呪いを解いて欲しくば黙って言うことを聞けと、凄まじいハードコア変態プレイを要求する変質者の目だっ!」

 

ほんとにどうしてやろうかこいつ。さっきまでどう助けるか考えてたのがバカらしくなるんですけど。てゆうか何言ってんのこいつ。そんな変質者扱いされたデュラハンはと言うと

 

「…えっ」

 

ご愁傷様です。

 

「この私の体は好きにできても、心までは自由にできると思うなよ!城に囚われ、魔王の手先に理不尽な要求をされる女騎士とかっ!ああ!どうしよう、どうしようカズマっ!!予想外に燃えるシチュエーションだ!行きたくはない、行きたくはないが仕方がない!ギリギリまで抵抗してみるから邪魔しないでくれ!では行ってくる!」

 

「ええっ!?」

 

「「待て待て待て待て!」」

 

俺とカズマの二人がかりでノコノコついていこうとするダクネスを止める。てかこいつ力強いんですけど!

 

「と、とにかく!これに懲りたら俺の城に爆裂魔法を放つのは止めろ!そして、紅魔族の娘よ!そこのクルセイダーの呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るがいい!城の最上階の俺の部屋まで来ることができたら、その呪いを解いてやろう!…だが城には俺の配下のアンデッドナイト達がひしめいている。ひよっこ冒険者のお前達に、果たして俺の所まで辿り着くことができるかな?くくくくくっ、くははははっ!」

 

デュラハンはそう宣言すると笑いながら城まで帰っていった…そんなデュラハンを眺めながらみんな呆然としていた。

そんな中俺はずっと考えていた。

 

(どうする…今からでも奥の手を使ってあいつを…いやでも使っても勝てるかどうかわからないそれに反動が凄すぎる…)

 

ずっと考えていると俺を裾がひかれる。

 

「「「比企谷君(ヒッキー)(お兄ちゃん)…」」」

 

俺の裾をひいている三人は少し震え、俺を見ていた。おそらく仲間が死ぬかもしれないことに恐怖が芽生えたのだろう。…迷う必要はなさそうだな。

 

「おいハチマンどこいく気だ」

 

デュラハンの後を追うように歩いていく俺を見てカズマが声をかける。

 

「……別にただの気晴らしの散歩だ」

 

そんな俺をみてカズマ達は少し笑い

 

「…今回の件は私の責任です。私が行ってきます」

 

どうやら嘘は通じなかったらしい。

 

「俺もいくに決まってんだろうが。大体俺とハチマンは幹部の城だって気付かなかったまぬけだしな」

 

間抜け言うな間抜け

 

「……じゃあ一緒にいきましょう。でも相手はアンデッドナイトがひしめいてるらしいですから、武器ではなく魔法攻撃が効果的なはず。…なのでこんな時こそ私とハチマンを頼りにしてください」

 

なるほど魔法攻撃かならアークウィザードの劣化版みたいな俺でも大丈夫か?その時にチラッと雪の下達をみるとニヤニヤして俺をみていた。なんだこいつら

 

「お兄ちゃんも素直じゃないなぁ〜。しょうがない!散歩に小町もついて行ってあげるよ!あ、今の小町的にポイント高い!」

 

くっそ…筒抜けなんだろうけど腹立つ可愛いから許すけど

 

「そうだね!私もついてくよちょっと怖いけど」

 

「私もついてくわ比企谷君が迷子になったらいけないもの」

 

お前にだけは言われたくないんだけど超絶方向音痴

 

「なにか?」ニコッ

 

「ナンデモナイデスエエ」

 

うわぁすごくいい笑顔なのになんでだろ怖いなーナンデダロー。

 

「これなら魔王軍の幹部も怖くないですね」

 

「そうだな。…おいダクネス!呪いは絶対になんとかしてやるからな!だから、安心…」

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

全員で乗り込む覚悟を決めカズマが声をかける最中。それを遮る形でアクアが唱えた魔法を受けてダクネスの体が淡く光る。そしてアクアが嬉々として

 

「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ!どう、どう?私だって、たまにはプリーストっぽいでしょう?」

 

「「「「「「………えっ」」」」」」」

 

……空気読めばか俺たちのやる気を返せ。

 

 




後書き
おはようございます。今回はみなさんが懸念してらした八幡と小町の親のことなんですけど、その点はちゃんと考えてありました。そしてようやくデュラハン襲来なんですが、今日から学校が始まるため更新頻度が下がると思います。なのでその点は申し訳ないです。ではまた次回お会いしましょう。


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#9 怒り

魔王軍の幹部襲撃からダクネスに何事もなく1週間が経ったある日。

 

「クエストよ!キツくてもいいから、クエストを請けましょう!」

 

「「えー…」

 

突然そんなことを言い出したアクアに、カズマとめぐみんが不満の声を漏らす。俺も声には出さなかったが不満を抱いた。だって働きたくねえもん。

 

「私は構わないが…」

 

「私も構わないわよ」

 

「私も!」

 

「小町も大丈夫です!そろそろ戦ってみたいし!」

 

やめろこまちだけは戦わせない。血塗れなんてみたくない。血も滴るいい女的な?黙れやかましいわ

 

「「ええー…」」

 

それでも不満の声を漏らす二人に

 

「お、お願いよおおおおおお!もうバイトばかりするのは嫌なのよぉ!コロッケが売れ残ると店長が怒るの!頑張るから!今回は、私、全力で頑張るからあぁっ!!」

 

そういい二人に泣きつくアクア。流石に思うところがあるのか二人は顔を見合わせ

 

「しょうがねえなあ…。じゃあ、ちょっと良さそうだと思うクエスト見つけてこいよ。悪くないのがあったらついてってやるから」

 

そう言うとアクアは嬉々としてクエストボードに向かって行った。

 

「…なあ、アクアだけ行かせて大丈夫なのか?何というか、とんでもないの持ってくる気がするけど…」

 

その言葉に付き合いの浅い小町は首を傾げ(可愛い)他のメンツはそれぞれが顔を合わせ

 

「「「「「ハチマン(比企谷君)(ヒッキー)よろしく」」」」」

 

丸投げかよこいつらまぁ見に行くんですけど。クエストボードでうろちょろしているアクアのもとへ向かい様子を見る。

やがて一枚の紙を剥がし…

 

「……よし」

 

「待ってそんなの死ぬ軽く死ぬ」

 

『マンティコアとグリフォンの討伐』

 

「ええーでもめぐみんが爆裂魔法を食らわせれば一撃よ?」

 

「…これを請けたってカズマが知ったらどうするだろうな」

 

それを聞くとアクアは無言で張り紙を戻し、クエストを吟味する。普段なにしてんだよあいつ。

 

「ちょっと!これこれ!これならどう!」

 

俺は手を引かれアクアがさすクエストを見る。

 

『湖の浄化町の水源の一つの、湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーターが住み着き始めたので水の浄化を依頼したい。湖の浄化ができればモンスターは生息地を他に移すため、モンスター討伐はしなくても良い。※要浄化魔法習得済みのプリースト。報酬は三十万エリス』

 

「……浄化魔法使えるのか?」

 

多分使えるだろうけど一応聞いてみると鼻で笑い

 

「ふふっ〜ん私を誰だと思ってるの?水よ水の女神様よだから浄化なんてちょちょいのちょいよ!」

 

「ちなみに浄化には何日かかるんだ?」

 

「……半日?」

 

「ながいな…」

 

半日か…その間ずっと守りきれる自信はないな…

 

「…一応カズマたちに相談してみよう」

 

そう思いクエストの紙を持って行き、カズマたちのもとに戻り、クエストを見せる。それをみるとカズマが首を捻り考え始めた。少しすると何か思いついたのかアクアの方を向き

 

「おいアクア。多分、安全に浄化ができる手があるんだが、お前、やってみるか?」

__________________________________________________________

 

町から少し離れたところにある大きな湖。なるほど。確かに濁ってる。みんなで湖を眺めているとおずおずと声がかけられる。

 

「……ねえ…。本当にやるの?」

 

「俺の完璧な作戦になにが不安なんだよ」

 

「…私今から売られていく、捕まった希少モンスターの気分なんですけど…」

 

…希少モンスターを閉じ込めておく、鋼鉄製のオリの中で体育座りをしながらアクアは言った。カズマが立てた作戦はオリに入れたアクアを湖に投入し、その中からアクアが湖を浄化するというものなのだが…どう考えても 

 

「クズだな」

 

「クズですね」

 

「か、カズマ…あとで私も…」

 

「だ、誰がクズだ!あと黙れ変態!」

 

「んっ!」

 

「……小町湖の近くまで行ってつけるぞ」

 

「あいあいさー!」

 

そういうと小町はアクアの入ったオリを軽々と持ち上げ、俺と一緒に湖の近くまで歩いていく。

 

「聞いてはいたんだがその…規格外だな」

 

「ええ…あれはやばいですね」

 

「何というか絵面がやばいな」

 

そんな各々が感想を述べていく中アクアがポツリと呟く。

 

「…私、出汁をとられてる紅茶のティーバッグの気分なんですけど…」

__________________________________________________________

 

アクアを湖につけてから2時間弱がたった。だが、未だにモンスターの気配はない。カズマとダクネスとめぐみんと雪ノ下と由比ヶ浜と小町はアクアから20メートルほど離れた陸地でアクアの様子を見守っていた。そして俺はというと

 

「アクアー異常はないかー!」

 

湖の付近で待機し、いつでも助けに入れるようにしていた。それと同時に指と指の間で電気を発生させたりして、体に慣らす練習もしていた。

 

「特に異常はないわー!浄化のほうも順調よー!」

 

「おーいアクア!トイレ行きたくなったら言えよー!」

 

「アークプリーストはトイレなんていかないわよ!!」

 

昔のアイドルかよ。

 

「ふふ〜んこれなら楽勝そうね!」

 

どう考えてもフラグとしか思えないことを言うアクア。そんなこと言ってると…その直後湖の一部が揺れる。そして姿を現したそれは地球のと比較しても変わらない程度の大きさのワニ。一つ違うとすれば群れで行動していることだ。

__________________________________________________________

 

浄化開始から4時間後

 

その場には一生懸命魔法を唱える叫び声に似たアクアの声が響いていた。

 

「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!」

 

アクアが入っているオリを大量のワニたちが囲みオリをガジガジと齧っている。

 

「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』っっ!ギシギシいってる!ミシミシいってる!オリが、オリが変な音立ててるんですけど!」

 

そもそもこの作戦の前に一応他の作戦を立てていたんだがアクアが『いやよ!今回は私が活躍できる場所なの!これだけは譲れないわ!!まぁないと思うけど、もし私が助けを求めたらその作戦でいいわよ!ないと思うけどね!』と言っていたためずっと俺たちは手を出さずにいた。

 

「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』っっ!!…わああああーっ!メキッていった!今オリからなっちゃいけない音がなった!!」

 

「アクアー!ギブアップならそう言え!」

 

「いやよ!ここまできたら一人で………。…ハチマン!!助けてええええええええ!!!」

 

アクアがそう叫ぶのを確認すると

 

「小町!!」

 

小町に合図を送り、例の作戦を開始する。

 

「了解っ!ほい!」

 

「いいいいいやあああああああっ!!」

 

小町はオリをつないでいる鎖をもつと自分のもとに一気に引っ張り込む。すると湖にあったオリは猛スピードで陸の方に引っ張られて行き、俺はオリが陸に上がったのを確認すると湖に手を突っ込み

 

「ふっ!!!!」

 

思いっきり湖に向かって放電する。すると俺が放った雷が湖全体に広がり、こちらに向かってきていたワニは感電し、死体が湖に浮かぶ。

 

「…ハチマンのたたかい?は初めて見たんだがすごいな」

 

素直に感嘆するダクネス。

 

「ええ…正直一番規格外だと思ってます。持ち前の頭とセンスがいいのでしょう。だいぶ使いこなしてますしね。」

 

「あいつチートだからなマジで」

 

ちょっと引き気味に言うめぐみんに悪態をつくカズマ。それと反対に少し誇らしげにしている奉仕部三人。そこに八幡が帰ってくる。

 

「多分終わった。一応湖に薄い電気張って確認したけど、特に反応もなかったし多分大丈夫だろ」

 

雷帝を使い過ぎると疲れるんだよなぁ…帰って寝たい…

 

「そうか、それじゃあアクアを湖に戻すか。おーいアクアー?」

 

みんながアクアを覗き込むと俺並みに目が死んでる奴がいた。

 

「ええ…今から浄化してくるわね…コマチ…はこんで…」

 

「わ、わかりました」

 

小町は少し遠慮しながら慎重に持ち上げ湖に入れアクアは浄化を開始した。そのあとさらに三時間が経過し、あのあとワニが出てくることもなく無事(?)終わったんだけど

 

「あ、アクア?もう帰るからオリから出てきてほしんだけど…それとみんなで話し合ったんだが、報酬は全部アクアのものでいい。」

 

「……おいアクア、いい加減オリから出ろよ。もうアリゲーターはいないから」

 

カズマの言葉にアクアが小さくつぶやく

 

「…まま連れてって…」

 

「何だって?」

 

「……オリの外の世界は怖いから、このまま街まで連れてって」

 

……どうやらアクアに相当なトラウマを植え付けてしまったらしい。

__________________________________________________________

 

「ドナドナドーナードーナー……」

 

「……そのアクア、ものすごく注目されてるから、やめてほしんですけど」

 

「そ、そうだぞ。街中でボロボロのオリに入って膝抱えた女を運んでる時点で、注目集めてるんだからな?というかもう安全だから出てこいよ」

 

「嫌。この中こそが私の聖域よ。外の世界は怖いからしばらくでないわ」

 

すっかりワニのことがトラウマになったアクアは街についても未だにオリの中に引きこもっていた。俺たちは当然注目を浴び、そんな生暖かい視線を向けられながらギルドに向かっていた。頑なにオリから出ようとしないアクアを引っ張っているため、俺たちの歩みも遅い。最初は小町と俺で引こうと思ったのだがよく考えて欲しい、可愛い女の子が人の入ったオリ引いてるんだよ?やばくない?そんなことを歩きながら考えていた時

 

「め、女神様っ!?女神様じゃないですかっ!何をしているのですか、そんな所で!」

 

いきなり叫び出し、折に引き篭もっているアクアに駆け寄り鉄格子を掴む男。そして掴んだと思ったら、いとも容易くオリをねじ曲げた。

 

(おいおい誰だよバケモンかよ)

 

俺たちが唖然とする中、その見知らぬ男は、アクアに近寄り手を……

 

「……おい、私の仲間になれなれしく触るな。それに貴様何者だ?」

 

「ええそうね。気軽に触らないでもらえるかしら。アクアさんの反応を見る限り、明らかに知り合いではないでしょう」

 

手を取ろうとした男に、雪ノ下とダクネスが詰め寄った。こいつ普段は変態なのに、何でこんな時こんなかっこいいの。普段もそうであってください。アクアに詰め寄ろうとした男は、二人を一瞥するとため息を吐いた。まるで厄介ごとには巻き込まれたくないけど仕方ないと言った感じで。男のその態度にうちのパーティーメンバー全員がイラッとしていた。

 

(…おかしいなぁ…まだ暑いはずなんだけどなぁ…)

 

明らかにこっちの空気が凍り付きつつある中、カズマがアクアに話しかける。

 

「……おい、あれお前の知り合いなんだろ?女神様とか言ってたし。お前があの男を何とかしろよ」

 

アクアは一瞬は?みたいな顔を浮かべたが

 

「……ああっ!女神!そう、そうよ、女神よ私は。それで?女神の私にこの状況をどうにかしてほしいわけね?しょうがないわね!」

 

そう言いながらようやくオリから出てきて男の顔を見ていた。てかおい女神なの忘れんなよ。

 

「……あんた誰?」

 

知り合いじゃねえのかよ。…相手すごい驚いてんじゃん…絶対知り合いだろお前忘れてるだろ

 

「何言ってるんですか女神様!僕です御剣響夜ですよ!あなたに、魔剣グラムを頂いた!!」

 

それでもなお、首を傾げているが俺はピンときた。名前的に日本人だろうし概ねアクアに特典をいただいたんだろう。ミツルギと名乗ったその男は、茶色い髪をしたイケメンで漫画の主人公みたいなやつだった。それに美少女連れてるし、リア充滅びろ。

 

「ああっ!いたわね、そう言えばそんな人も!ごめんね、すっかり忘れてたわ。だって結構な数の人を送ったし、忘れたってしょうがないわよね!」

 

どうやら、ミツルギの説明で思い出したらしい。相手若干顔引きつってるけど。

 

「ええっと、お久しぶりですアクア様。あなたに選ばれた勇者として、日々頑張ってますよ。職業はソードマスター。レベルは37にまで上がりました。……ところで、アクア様はなぜここに?というか、どうしてオリの中に閉じ込められていたんですか?」

 

ミツルギはチラチラとこちらを見ながら言ってくる。こいつ俺らが閉じ込めたと思ってやがるな。まぁそう見えるのが普通なんだろうけど。それにこいつ多分ほんとのこと言っても信じないだろうし…カズマも同じ考えなのか顔をしかめている。それでもカズマはこれまでのことを全て説明するが……

 

「…ばかな。ありえないそんなこと!君は一体何考えているんですか!?女神様をこの世界に引き込んで!?しかも、今回のクエストではオリに閉じ込めて湖に浸けた!?」

 

ミツルギはいきりたちカズマの胸ぐらを掴む。それをアクアが慌ててとめる。

 

「ちょちょ、ちょっと!?いや別に、私としては結構楽しい毎日を送ってるし、ここに一緒に連れてこられたことは、もう気にしてないんだけどね?それに、魔王を倒せば帰れるんだし!今日のクエストだって、怖かったけど途中でハチマンが助けてくれたし、結果的には誰も怪我せず無事完了したわけだし。しかも、クエスト報酬三十万よ三十万!それを全部くれるって言うの!」

 

その言葉にミツルギは憐憫の眼差しでアクアを見る。

 

「……アクア様、こんな男達にどう丸め込まれたのかは知りませんが、今のあなたの扱いは不当ですよ。そんな目に遭って、たった三十万…?あなたは女神ですよ?それがこんな……。ちなみに、今はどこに寝泊りしているんです?」

 

今にもキレそうなミツルギに少しイラつく。

 

「え、えっと、みんなと一緒に、馬小屋で寝泊りしてるけど…」

 

「は!?」

 

ミツルギはカズマの胸ぐらを掴む手に力が込められる。俺は流石に見過ごせず止めようとするが

 

「おい、いい加減にその手を離せ。お前はさっきからなんなのだ。カズマとは初対面のようだが、礼儀知らずにも程があるだろう」

 

…ほんとこうゆう時かっこいいな。普段物静かなダクネスは見るからに怒っていた。見れば、めぐみんは詠唱をはじめ、由比ヶ浜はスライムを召喚し、雪ノ下と小町はそれぞれ杖と拳を構えていた。って待てほんと待ってシャレになんない死ぬ全員死ぬ。ミツルギは手を放すと、興味深そうに観察する。

 

「…クルセイダーにアークウィザードが二人…?しかも未知の職業まで…それに随分と綺麗な人達だ。パーティーメンバーには恵まれているんだね。それなら尚更だよ。君は、アクア様やこんな優秀そうな人達を馬小屋で寝泊りさせて、恥ずかしいと思わないのか?それにそこの君も、さっきから何も言わないし何一つ関わろうとしない。さっきの話じゃ君は最弱職、君も似たようなものだろう」

 

…自分がばかにされるのは構わないが何も知らないくせにずけずけとこちらに干渉するその姿勢にまた少しイラっとする。そしてさらにこいつは俺をイラつかせる。

 

「君達、今まで苦労したみたいだね。これからは、僕と一緒に来るといい。もちろん馬小屋なんかで寝かせないし、高級な装備品も買いそろえてあげよう。というか、パーティーの構成的にバランスが取れていていいじゃないか。ソードマスターの僕に、僕の仲間の戦士と、そしてクルセイダーのあなた。僕の仲間の盗賊と、アークウィザード二人にアクア様。そして未知の職業の子二人。まるであつらえたみたいにぴったりなパーティー構成じゃないか!」

 

すると身勝手な提案に後ろの女性陣はひそひそ話を始めた。

俺はダメだとわかっているが聞き耳を立てる。

 

「ちょっと、やばいんですけど。あの人本気で引くくらいやばいんですけど。ていうか勝手に話を進めるしナルシストも入ってる系で、怖いんですけど」

 

「ええそうね。少し関わりたくはない人種ね。それになんだか比企谷君に声が似ててムカつくのだけれど」

 

「確かに似てる…。でもヒッキーはもっとこう陰気な感じで…」

 

褒めてるんだよな?それは褒めてるんだよな?

 

「そうですよお兄ちゃんの声であんな爽やかやってるとちょっとうざいです。きついですよ。お兄ちゃんはもっと根暗でネチネチしてますよ」

 

おいなくぞお前

 

「確かにそうだな。それにあの男はなんだか生理的に受け付けない。攻めるより受けるのが好きな私だが、あいつだけはなんだか無性に殴りたいのだが」

 

「撃っていいですか?あの苦労知らずの、ハチマンもどきのスカしたエリート顔に爆裂魔法を撃ってもいいですか?」

 

案外大不評なミツルギさん。ていうかボロクソすぎだろ俺だったら泣いてるぞ確実に。と、アクアが俺とカズマに近寄り

 

「ねえ、もうギルドに行こう?私が魔剣あげておいてなんだけど、あの人には関わらない方がいい気がするわ」

 

まぁ俺もそれに賛成し、カズマも賛成したので

 

「あー。満場不一致で拒否みたいだ。じゃあ俺たちは行くから…」

 

俺とカズマは馬を引き、立ち去ろうとした。

 

……。

 

「どいてくれます?」

 

カズマの前に立ちはだかるミツルギにカズマはイライラしながら告げる。でもこいつの性格的に絶対

 

「悪いが、僕に魔剣と言う力を与えてくれたアクア様を、こんな境遇の中に放ってはおけない。君達にはこの世界は救えない。魔王を倒すのはこの僕だ。アクア様達は、僕と一緒に来た方が絶対にいい。」

 

「いい加減にしろ」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

小町達は少し怒気を孕んだ俺の声に驚く。

 

「お前がこっちの事情の何を知ってる。何お前といる方がみんな幸せって決めつけてんだよ。さっきから聞いてるとそれはお前の意思だろう。一つもこいつらの意思が入ってねえじゃねえか。それに俺から見たらアクアはあんたと話してるよりもカズマと話してる方が幸せそうに見えるけどな」

 

「……そんなのわからないじゃないか」

 

「わからない?さっきパーティー全員が拒否って言ったはずだけど。聞いてなかったのか?」

 

「……なら、君かそこの君は僕と勝負をしよう。僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ、君が勝ったら、何でも一つ、言うことを聞こうじゃないか」

 

こいつはやっぱり何もわかってない。まぁこうなることはわかってたけど俺も

 

「よし乗った!!じゃあ行くぞ」

 

いい加減俺と同様我慢の限界だったのだろう。その言葉を聞くや否やカズマはすぐに襲い掛かった。カズマは左手で怪しい動きをしながら、右手で剣を鞘ごと引き抜き、殴りかかる。

 

「えっ!?ちょっ!待っ…!?」

 

慌てたミツルギだが、咄嗟に腰の魔剣を抜き、それを横にしてカズマの剣を受け止めようとする。するとカズマは剣が当たる寸前に、左手を突き出し

 

「『スティール』ッッッっ!」

 

そう叫ぶと同時にカズマの手には魔剣が握られており、魔剣でガードするはずだったミツルギの頭にカズマは剣でおもっきり強打し、ミツルギは気を失った。

 

「ひ、卑怯者!卑怯者卑怯者卑怯者ーっ!」

 

「あんた最低!最低よ、この卑怯者!正々堂々勝負しなさいよ!」 

 

ミツルギの仲間はカズマを罵倒する。

 

「…最上位職が最弱職に勝負を挑んだ時点で卑怯なのはどっちだ。その実力差を埋めるための作戦だろ。文句を言うのはお門違いじゃないか?」

 

初対面の女子の前で噛まないよう気をつけながら言う。

 

「「うっ…」」

 

そう俺に言われ黙り込む二人。

 

「それじゃあ俺の勝ちってことで。こいつ、負けたら何でも一つ言うこと聞くって言ってたな?それじゃあ、この魔剣をもらっていきますね」

 

「なっ!?バ、バカ言ってんじゃないわよ!それに、その魔剣はキョウヤにしか使いこなせないわ。魔剣は持ち主を選ぶのよ。既にその剣は、キョウヤを持ち主と認めたのよ?あんたには、魔剣の加護は効果ないわ!」

 

…へぇ〜、そんな決まりがあったのか。まぁ奪われて好き放題されたら意味ないもんな…

 

「……マジで?この戦利品、俺には使えないのか?せっかく強力な装備を巻き上げだと思ったんですけど」

 

「マジです。残念だけど、魔剣グラムはあの痛い人専用よ。装備すると人の限界を超えた膂力が手に入り、石だろうが鉄だろうがさっくり切れる魔剣だけれど。カズマが使ったって普通の剣よ」

 

「…じゃあな、そいつが起きたら、これはお前が持ちかけた勝負なんだから恨みっこなしだって言っといてくれ。…それじゃ、ギルドに報告に行こうぜ」

 

「ちょちょちょ、ちょっとあんた待ちなさいよっ!」

 

「キョウヤの魔剣、返して貰うわよ。こんな勝ち方、私たちは認めない!」

 

二人の少女がカズマにそう言うと、カズマは手をなんかすごい動かし方をしながら

 

「別にいいけど、真の男女平等主義者な俺は、女の子相手でもドロップキックを喰らわせられる公平な男。手加減してもらえると思うなよ?と言うか女相手なら、この公衆の面前で俺のスティールが炸裂するぞ」

 

カズマの言葉に少女達は後退り、俺たちは

 

「「「「「「「うわぁ……」」」」」」」

 

単純に引いた。

__________________________________________________________俺たちは借りていたオリを引きずって、ようやくギルドへと帰ってきた。そして俺はクエスト完了報告をしにいき、カズマは魔剣を手にとある所に向かった。

 

「……ハチマンって怒るとあんな感じなんですね。正直ちょっと怖かったです」

 

「確かに怖かったわ。カズマさんの比じゃないくらい」

 

「そうだな。その何というかあのハチマンにちょっと攻められ…じょ、冗談だ!だからそんな目で見ないでくれ!」

 

パーティーメンバーの冷たい視線に狼狽えるダクネス。

 

「でも私たちも彼が怒るところなんて見たことないわ」

 

「ね、ヒッキーは優しいから」

 

「今回は多分小町達のために怒ってくれたんでしょうけどね」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「多分今回小町達が物みたいに意思を聞かずに、扱われていたことにイラついてたんでしょう。どうせ、聞いたところで単にムカついたとしか言いませんけど。」

 

「…やっぱ優しいですねハチマンは」

 

「ん?俺がどうかしたか?」

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

「?」

 

「ななな何でもないですよええ」

 

「そそそうだぞハチマン乙女の会話に入ってくるんじゃない」

 

「お、おおすまん」

 

なんか怒られたんですけど…

 

「あー、そのアクアさんちょっとお話が…」

 

「?」

 

首を傾げるアクアにオリの弁償が必要なことを告げる。それに二十万かかることも…すると

 

「な、何でよおおおおおおっ!」

 

「……どうしたんだよ一体」

 

そこにカズマが顔をしかめながら帰ってくる。

 

「借りたオリは私が壊したんじゃないのに!?何で私が弁償しないといけないのよ!」

 

しばらく文句を言っていたが、諦めたのか明らかにテンションが落ち込む。さすがにちょっとかわいそうなので

 

「…アクア」

 

「…ん?」

 

「ほれこれ」

 

俺は財布から二十万近くをだし、アクアに渡す。

 

「!!ハ、ハチマンサン!本当にいいの!?」

 

「ま、まぁ今回はお前悪くないしな。別に好きな時に返せばいいよ。それにキャベツ討伐の金は手につけてないから結構あるし」

 

そう実はキャベツ討伐のお金は大して手もつけてないし、一応貯めてはいるが使い道は特になく、そんなに困らないのだ。

 

「ありがとうハチマン様!!神よ神!ハチマンは神よ!」

 

女神に神様認定されたんですけど…

 

「あの男、今度あったらゴッドブローを喰らわせてやるわっ!そしてオリの弁償代払わせてやるから!!」

 

とアクアが悔しげに嘆く中。

 

「ここにいたのかっ!探したぞ、佐藤和馬!腐り目!」

 

ギルドの入り口には例のミツルギさんとパーティーメンバーが立っていた。確かに名前教えてないけど腐り目って…てかカズマも名乗ってない気がするんだけど…ミツルギは俺たちに近寄り机を叩く。

 

「佐藤和馬!君の事は、ある盗賊の女の子に聞いたらすぐに教えてくれたよ。パンツ脱がし魔だってね。腐り目のことは聞くと濁されたけど。それに君は他にも、女の子を粘液まみれにするのが趣味な男だとか、色々な人の噂になっていたよ。鬼畜のカズマだってね」

 

「おい待て、誰がそれ広めてたのか詳しく」

 

エリス様ぁ…プライバシーもくそもねえ…まぁ俺のこと言わなかったから全然いいですけど。取り敢えず俺はカズマをなだめる。

 

「落ち着けカスマ」

 

「いやでも…待てお前今何つった」

 

「……アクア様。僕はこの男から魔剣を取り返し、必ず魔王を倒すと誓います。ですから……。ですからこの僕と、同じパーティーぐぶえっ!?」

 

「「ああっ!?キョウヤ!」」

 

アクアは無言でミツルギを殴り飛ばす。殴られた理由がわからないミツルギは狼狽え、アクアはそんなミツルギに近寄り胸ぐらを掴み上げると。

 

「ちょっとあんたオリ壊したお金払いなさいよ!おかげで私が弁償することになったんだからね!五十万よ五十万、あのオリ特別な金属と製法で出来てるから高いんだってさ!ほら、さっさと払いなさいよっ!」

 

これあれだよな?女神と勇者だよね?恫喝するチンピラといじめられっ子とかじゃないよね?ミツルギは殴られたところを押さえ、アクアに気圧されながら素直に財布からお金を出す。ミツルギから金を受け取ったアクアは、俺の方を向いて静かに親指を立て、メニューを取り注文を始めた。やめろこっち向いてグッジョブすんな。共犯みたいだろ。

 

「……あんなやり方でも、僕の負けは負けだ。そして何でもいうことを聞くと言った手前、こんなことを頼むのは無視がいいのも理解している。…だが、頼む!魔剣を返してはくれないか?あれは君が持っていても役には立たない物だ。君が使っても、そこらの剣よりは斬れる、その程度の威力しか出ない。……どうだろう?剣が欲しいのなら、店で一番いい剣を買ってあげてもいい。……返してはくれないか?」

 

…こいつ虫が良すぎる。勝負を仕掛けておいて負けたら返して欲しいなんて舐めてるとしか思えない。どうやら雪の下も気に食わないみたいで杖を構えていた。だからやめろマジでほんとに

 

「私を勝手に景品にしておいて、負けたらいい剣を買ってあげるから魔剣返してって、虫がいいとは思わないの?それとも、私の価値はお店で一番高い剣と同等って言いたいの?無礼者、無礼者!仮にも神様を賭けの対象にするって何考えてるんですか?顔も見たくないのであっちへ行って。ほら早く、あっちへ行って!」

 

メニュー片手にシッシと手を振るアクアの言葉にミツルギは青ざめる。ていうかアクアが正論を言っている…?

 

「ままま、待ってくださいアクア様!別にあなたを安く見ていた訳では……っ!」

 

慌てるミツルギにめぐみんが袖を引く。

 

「……?なにかな、お嬢ちゃん……、ん?」

 

ミツルギの注意を引いためぐみんはそのままカズマを指す。…?…あれあいつ…

 

「…まず、この男が既に魔剣を持っていない件について」

 

「!?」

 

そいやここにくる前にどっか行ってたなまさか…

 

「さ、佐藤和馬!魔剣は!?ぼぼぼ、僕の魔剣はどこへやった!?」

 

顔中脂汗塗れでカズマに縋り付くそんなミツルギにカズマが一言

 

「売った」

 

「ちくしょおおおおおおおおお!」

 

ミツルギは泣きながらギルドを飛び出した。

 

「……一体何だったのだあいつは。……ところで。先ほどからアクアが女神だとか呼ばれていたが、一体何の話だ?」

 

まぁ…あんだけ騒げば当たり前か。どうするのが気になり二人を見ると何やら目を合わせ頷く。おそらく話す気なんだろう。

 

「今まで黙っていたけれど、あなたたちには言っておくわ。……私はアクア。アクシズ教団が崇拝する、水を司る女神。…そう、私こそがあの、女神アクアなのよ…!」

 

「「ていう、夢を見たのか」」

 

「違うわよ!なんで二人ともハモってんのよ!」

 

…そりゃこうなるよな…

 

その時

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』

 

緊急か…最近多いな…

 

「またかよ…?最近多いな、緊急の呼び出し」

 

次から次へともうやだ。…サボろうかな、サボってもバレねえだろ。

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!…特に、冒険者サトウカズマさんとヒキガヤハチマンさんとその一行は、大至急でお願いします!』

 

え、名指し?さぼれないじゃん…。…待てよ俺らが名指しってことはまさか…




後書き
今回も読んでいただきありがとうございます。とうとう次回はデュラハン戦です。自分は学生で受験生なので投稿頻度は低くなるかもしれませんが待っていただければ幸いです。ではまた次回お会いしましょう。







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#10 再来

俺たちは正門前に慌てて駆けつけ、重装備だったダクネスだけは到着に遅れていた。そして門の前には案の定

 

「やっぱりか…」

 

あの魔王軍幹部のデュラハンがいた。更には後ろにモンスターを引き連れている。後ろのモンスターはボロボロの体に鎧、見るからにアンデッドだ。デュラハンは俺たちを見つけると、開口一番叫びを上げた。

 

「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがああああああっ!!」

 

アンデッドに言われたくねえよ。

 

「ええっと……。なぜ城に来ないって、なんで行かなきゃいけないんだよ?後、人でなしって何だ。もう爆裂魔法も撃ち込んでいないのに、何をそんなに怒ってるんだよ」

 

確かにもう爆裂魔法の日課はやめたし、怒る理由はないはずだけど…。カズマの言葉に怒ったデュラハンは思わず左手に抱えていた物を叩きつけ…ようとして、自分の頭だってことに気付いて、慌ててやめた。

 

「爆裂魔法を撃ち込んでいない?撃ち込んでもいないだと!?何をぬかすか白々しいっ!そこの頭のおかしい紅魔の娘が、あれから毎日欠かさず通っておるわ!」

 

「「えっ」」

 

俺とカズマはそれを聞き、隣のめぐみんを見る。めぐみんは、ふいっと目を逸らした。

 

「………お前、行ったのか。もう行くなって言ったのに、あれからまた行ったのか!」

 

「ひたたたたたた、いた、痛いです!違うのです、聞いてくださいカズマ!ハチマン!今までならば、何もない荒野に魔法を放つだけで我慢できていたのですが…!城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いものじゃ我慢できない体に…!」

 

「もじもじしながらそう言うことを言うなよ…。ていうかお前一人じゃ撃った後、倒れるだろ。てことは共犯者が…」

 

俺の言葉を聞いて、アクアがふいっと目をそらす。……………。

 

「お前かああああああ!」

 

「わあああああああーっ!だってだって、あのデュラハンにろくなクエスト受けられない腹いせがしたかったんだもの!私はあいつのせいで、毎日毎日店長に叱られるハメになったのよ!」

 

「要するにただの腹いせってことですよね…」

 

「だな…」

 

俺らが呆れているとデュラハンが言葉を続ける。

 

「この俺が真に頭にきているのは何も爆裂魔法の件だけではない!貴様らには仲間を助けようという気がないのか?不当な理由で処刑され、怨念によりこうしてモンスター化する前は、これでも真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせれば、仲間を庇って呪いを受けた、騎士の鏡のようなあのクルセイダーを見捨てるなど……!」

 

デュラハンがそこまで言いかけた時。重い鎧をガチャガチャいわせ、ようやくやって来たダクネスが、俺たちの隣にそっと立つ。そしてデュラハンと頬を染めたダクネスの目が合う。

 

「…や、やあ…」

 

ダクネスが、申し訳なさそうにデュラハンに片手をあげて…。

 

「……………………あ、あれえーーーーーーーーーーっ!?」

 

それを見たデュラハンは素っ頓狂な声をあげた。

 

「なになに?ダクネスに呪いをかけて一週間が経ったのに、ピンピンしてるから驚いてるの?このデュラハン、私たちが呪いを解くために城に来るはずだと思って、ずっと私たちを待ち続けてたの?帰った後、あっさり呪いを解かれちゃったとも知らずに?プークスクス!うけるんですけど!ちょーうけるんですけど!」

 

アクアが心底楽しそうに、デュラハンを指差し笑う。表情は見えないが震えてるのを見ると相当激怒してるのだろう。てか煽るなよ。

 

「…おい貴様。俺がその気になればこの街の冒険者を一人残らず切り捨てて、街の住人を皆殺しにする事だって出来るのだ。いつまでも見逃してもらえると思うなよ?疲れを知らぬこの俺の不死の体。お前たちひよっ子冒険者どもでは傷もつけられぬわ!」

 

アクアが煽ったことで限界が来た、デュラハンが不穏な空気を醸し出す。だがデュラハンが何かをする前にアクアが右手を突き出し叫んでいた。

 

「見逃してあげる理由がないのはこっちの方よ!今回は逃さないわよ。アンデッドのくせにこんなに注目集めて生意気よ!消えてなくなんなさい、『ターンアンデッド』!」

 

アクアが突き出した手の先から、白い光が放たれる。だがデュラハンはそれでも余裕そうにそれを避けようともしない。

 

「魔王の幹部が、プリースト対策も無しに戦場に立つとでも思っているのか?残念だったな。この俺を筆頭に、俺様率いる、このアンデッドナイトの集団は、魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗をぎゃああああああああーっ!!」

 

魔法を受けたデュラハンは、魔法を食らった部分から黒い煙を立ち上らせ、あちこちゴロゴロ転がっていた。それを見て、アクアが叫ぶ。

 

「ね、ねぇ!変よ、効いてないわ!」

 

いや結構効いてると思うんだけど…。だってぎゃーって言ってたし、転がってるし…。

 

「く、くくく…。説明は最後まで聞くものだ。この俺はベルディア。魔王軍幹部が一人、デュラハンのベルディアだ!魔王様からの特別な加護を受けたこの鎧と、そして俺の力により、そこらのプリーストのターンアンデッドなど全く効かぬわ!……効かぬのだが……。な、なあお前。お前は今何レベルなのだ?本当に駆け出しか?駆け出しが集まるところだろう、この街は?」

 

案外効いたのか。少しびびっている。よし。

 

「よしいけアクア。ターンアンデッド」

 

「任せて!『ターンアンデッド』っ!」

 

「え、いやちょ、いぎゃあああああああっ!!」

 

アクアの魔法を喰らったデュラハンは、また悲鳴を上げ転がる。

 

「…ハチマンお前案外容赦ないな」

 

ダメージから立ち直ったベルディアは、ふらふらと立ち上がりながら呟く。

 

「……くそ。本来は、この街周辺に強い光が落ちて来ただのと、うちの占い師が騒ぐから調査に来たのだが…。面倒だ、いっそこの街ごと無くしてしまえばいいか…」

 

どっかのガキ大将並みに理不尽なことを言い出すベルディアは、空いている右手を高く掲げた。

 

「フン、わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない。…さあ、お前達!この俺をコケにしたこの連中に、地獄という物を見せてやるがいい!」

 

「あっ!あいつ、アクアの魔法が意外に効いてビビったんだぜきっと!自分だけ安全な所に逃げて、部下を使って襲うつもりだ!」

 

「ちちち、違うわ!最初からそのつもりだったのだ!魔王の幹部がそんなヘタレな訳がなかろう!いきなりボスが戦ってどうする、まずは雑魚を片付けてからボスの前に立つ。これが昔からの伝統と…」

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』ー!」

 

「ひゃあああああああああー!」

 

何かを言いかけていたベルディアが、アクアに魔法をかけられ悲鳴を上げた。

 

「ど、どうしよう!やっぱりおかしいわ!あいつ、私の魔法がちっとも効かないの!」

 

いや、ひゃーって言ってたし、絶対さっきより効いてるぞ。だってさっきより激しく転げ回ってるし。

 

「こ、この……っ!セリフはちゃんと言わせるものだ!ええい、もういい!おい、お前ら…!」

 

ベルディアは、あちこちから黒い煙を吹きながらも、ゆらりと立って右手を掲げ…。

 

「街の連中を。……皆殺しにせよ!」

 

その右手を振り下ろしながら叫んだ。

 

「おわーっ!?プリーストを!プリーストを呼べー!」

 

「誰かエリス教の教会行って、聖水ありったけもらって来てくれえええ!」

 

あちこちで冒険者が切羽詰り叫ぶ中。

 

「「「どうしよう(どうするの)!ヒッキー(お兄ちゃん)(比企谷君)がいっぱいこっちに…!」」」

 

誰がアンデッドだお前ら覚えとけよ。でもまずいアンデッドナイトは、ゾンビの上位互換。くそっ……ん?

 

「くははは、さあ、お前達の絶望の叫びをこの俺に…。……俺……に……?」

 

何故かアンデッドナイトは俺の前で止まり、俺の肩に手をかけるとアクアの方を指差し、また走り出した。

 

「………。」

 

(((((笑ったらダメ(だ)…!怒られる…!)))))

 

周りのパーティーメンバーが震えている中

 

「プークスクス!ハチマンさんったらアンデッドにアンデッド認定されてるんですけど!それでアンデッドになんか誘われてるんですけど!うけるんですけど!ちょーうけるんですけど!………え?は、ハチマンさん?なんでそいつらと一緒に…わ、わああああーっ!なんで私のとこに来るの!?」

 

何故かアクアのとこに行こうとするアンデッドナイト達に便乗して俺も追いかける。お前だけは絶対許さない。 

 

「こっ、こらっお前達!そんなプリーストにかまけてないで、冒険者や街の住人を血祭りに…!それにその後ろの男は人間だ!おいっ!」

 

それを見たベルディアが、焦った声を上げている。アクアを追いかけ回していると、方向を変え…

 

「ごめんなさい!ハチマンねえ!?わああああ、カズマさーん!カズマさーん!!」

 

「このばかっ!おいやめろ、こっち来んな!向こうへ行ったら今日の晩飯奢ってやるから!」

 

「私が奢るから、アンデッドとハチマンをどうにかしてえ!怖いのハチマンが一番怖いの!」

 

「お前のせいだろ!くっそ!」

 

そう叫ぶと作戦を考えてあったのかカズマが叫ぶ。

 

「ハチマン!その辺にしとこう!後でこいつになんでもやらせるから!あとめぐみん!魔法の準備をしとけ!」

 

カズマにそう言われ俺は渋々離れ、カズマはアクアの誘導を始め、めぐみんは魔法の準備をする。カズマとアクアは出来るだけゾンビを集めているのか冒険者の近くを通り過ぎる。そしてカズマ達はスピードを上げ、アンデッドナイト達を引き剥がす。おそらく支援魔法をかけられているのだろう。ある程度離れ切ったその時

 

「めぐみん、やれーっ!」

 

カズマの合図に、めぐみんが杖を構え、紅い瞳を輝かせた。

 

「何という絶好のシチュエーション!感謝します、深く感謝しますよカズマ!ハチマン!…我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者!魔王の幹部、ベルディアよ!我が力、見るがいい!『エクスプロージョン』ーーーーーっっ!」

 

めぐみん会心の爆裂魔法が、アンデッドナイトの群れのど真ん中に炸裂し、轟音が響き渡り煙がたちのぼる。煙がなくなりそこには巨大なクレーターができており、アンデッドナイトを一匹残らず消しとばしていた。誰もがその魔法の威力にシンと静まり返る中

 

「クックックッ…。我が爆裂魔法の威力を目の当たりにし、誰一人として声も出せないようですね……。ふああ…。口上と言い、凄く…気持ちよかったです…」

 

そんな、勝ち誇っためぐみんに

 

「………おんぶはいるか?」

 

「あ、お願い致します」

 

そう言うとめぐみんをおんぶするカズマ。

 

「口の中が…、口の中がジャリジャリする…!」

 

一番アンデッドナイトの近くにいたアクアが半泣きでペッペッと口の中の砂を吐きながら、俺たちのほうに歩いてくる。爆裂魔法の余波で転がされたらしい。

 

「…ほら口開けて」

 

「…あー」

 

俺はアクアの口に『クリエイト・ウォーター』で水を出し、口をゆすがせ、吐き出させる。

 

「ありがとう…」

 

どうやら口の中の砂はきれいになくなったらしくお礼を言うアクア。

 

「ん気にすんな」

 

そんなアクアに俺も言葉を返す。周りは歓声で湧き上がっている。そんな中

 

「……ヒッキーってアクアんに甘いよね」

 

「まぁ…長男気質が強くて面倒みたくなるんでしょう…でもぐぬぬ悔しい…」

 

「ほんとに羨ましい限りね」

 

三人で仲良く話してるが歓声もあって何も聞こえない。それにカズマ達を見るとめぐみんがカズマの首を締めようとしていた。何やってんだあいつら。するとデュラハンが言葉を発する。

 

「くははは!面白い!面白いぞ!まさかこの駆け出しの街で、本当に配下を全滅させられるとは思わなかった!よし、では約束通り!」

 

(!?まずいっ!)

 

「この俺自ら、貴様らの相手をしてやろう!」

 

街の入り口にいたベルディアが、大剣を構えてこちらへと駆け出した。ベルディアの狙いは俺たちのようで、俺たちに向かって駆け出すが、多数の冒険者がベルディアを取り囲む。

 

「…ほーう?俺の一番の狙いはそこにいる連中なのだが…。…クク、万が一にもこの俺を打ち取ることができれば、さぞかし大層な報酬が貰えるだろうな。……さあ、一攫千金を夢見る駆け出し冒険者達よ。まとめてかかってくるがいい!」

 

ベルディアの言葉に冒険者達が色めき立つ。そして、一人の戦士風の男が

 

「おい、どんなに強くても後ろに目はついちゃいねえ!囲んで同時に襲いかかるぞ!」

 

ベルディアの横手から、周りの冒険者に向かって叫ぶ。

 

「おい、相手は魔王軍の幹部だぞ、そんな単純な手で簡単に倒せるわけねーだろ!」

 

噛ませ犬的セリフを吐くカズマ。でもこれ以外方法は…。

 

「時間稼ぎが出来れば十分だ!緊急の放送を聞いて、すぐにこの街の切り札がやって来るさ!あいつが来れば、魔王軍の幹部だろうがてめえは終いだ!おいお前ら、一度にかかれば死角ができる!四方向からやっちまえ!」

 

そんな叫びと共に飛びかかる冒険者達を前に、ベルディアは自分の首を空高く放り投げた。正直魔王軍の幹部くらいなら倒せると思った。でもそれをみた瞬間ぞくりとした。名も知らない冒険者が止めようと声を上げるが、ベルディアは背中に目があるかのように全ての攻撃をかわす。

 

「えっ?」

 

一体誰の声かはわからない。でもその声が発せられた後、ベルディアは大剣を両手で握り直し…、斬りかかってきた冒険者全員を、瞬く間に斬り伏せた。目の前で人が死ぬ。その理不尽さにこの世界の現実を思い知る。自分の考えが甘かったと考え直す。

 

(そうだ…ここは異世界…そんな甘いはずがない)

 

ベルディアは何事もなかったかのように

 

「次は誰だ?」

 

戦々恐々とする冒険者達。そんな中一人の女の子が叫びを上げた。

 

「あ、あんたなんか…!あんたなんか、今にミツルギさんがきたら一撃で斬られちゃうんだから!」

 

その一言に俺たちは固まる。

 

「おう、少しだけ持ち堪えるぞ!あの魔剣使いの兄ちゃんがくれば、きっと魔王の幹部だって…!」

 

「ベルディアとか言ったな?いるんだぜ、この街にも!高レベルで、凄腕の冒険者がよ!」

 

…まずい。確かミツルギの魔剣は売った。ってことは…切り札はないってことだ。その事にカズマ達も気付いたのか顔が青ざめていた。

 

「……ほう?次はお前が俺の相手をするのか?」

 

俺たちを庇う形で前に立ち塞がったダクネスへ面白そうに観察するベルディア。ベルディアはおそらくめぐみんやアクアの力を見て警戒しているのだろう。両者対峙したまま動かなくなった。俺はそんな二人を見ながら焦っていた。

 

(どうする…!?他の冒険者達も鎧はきていた、なのに斬られた。…耐えられるのか…)

 

そんな焦りが伝わったのか

 

「安心しろ。私は頑丈さではだれにもまけない。それにスキルは所持している武器や鎧にも効果があるんだ。ベルディアの剣は、たしかに良いものだろう。だが、それだけで金属鎧が、紙を裂くように斬れるわけがないだろう?先ほど切られた冒険者を見る限り、ベルディアは強力な攻撃スキル持ちだ。私の防御スキルとどちらが上か、勝負してやる!」

 

「やめとけよ。あいつ、攻撃だけじゃなくて回避も凄かっただろ?あれだけの冒険者が斬りかかっても当たらなかったものを、不器用なお前が当てられるわけがないだろ」

 

カズマの言葉にダクネスはじっと対峙したまま。

 

「…聖騎士として…。…守ることを生業とするものとして。どうしても譲れないものがある。やらせてほしい」

 

譲れない理由があるのか頑なにひかないダクネス。俺たちが何も言えないでいるとダクネスは大剣を構え、ベルディアに向かって駆け出した。

 

__________________________________________________________

「ほう!来るのか!首なし騎士として、相手が聖騎士とは是非もなし。よし、やろうかっ!」

 

ベルディアがダクネスを迎え撃つ。ダクネスが両手で握る大剣を見て、ベルディアは身を低くし、回避の構えを見せた。そのベルディアにダクネスは体ごと叩きつけるように大剣を………ベルディアの足先数センチほど前の地面に叩きつけた。

 

「………は?」

 

ベルディアが気の抜けた声を上げる。そのまま茫然とするダクネスを他の冒険者も眺める。当たらないとは言ってたけどまさか動いてない敵も外すって……。的を外したダクネスは、何事もなかったように次の手に移るが…ベルディアにひょいと避けられる。

 

「なんたる期待外れだ。もういい。…さて…」

 

ベルディアはつまらないと言うふうな口調で、袈裟懸けに、ダクネスを剣で一閃した。

 

「さて、次の…相手……。…は?」

 

確実に討ち取った自信があったのだろうが、結果はダクネスの鎧の表面を派手に引っ掻いただけだった。ダクネスが一旦ベルディアから距離を取り。

 

「ああっ!?わ、私の新調した鎧がっ!?」

 

鎧にできた大きい傷を悲しげに見つめた後ベルディアを睨みつける。

 

「な、何だ貴様は…?俺の剣を受けて、なぜ斬れない…?その鎧が相当な業物なのか?…いやそれにしても…。先ほどのプリーストと言い、爆裂魔法を放つアークウィザードと言い、ゾンビみたいなやつと言い、お前らは…」

 

その後はカズマや冒険者達がダクネスの援護をしようとするも、ベルディアが死の宣告をかけたりして怯みダクネスがタコ殴りにされていた。そんな中生暖かいものがカズマにかする。それを拭うと

 

「おいダクネス、お前で傷負わされてるのか!もういい下がれ!冒険者全員で、バラバラに走って逃げて、ひとまず対策を練り直すぞ」

 

見ればダクネスは所々出血している。

 

「クルセイダーは、背に誰かを庇っている状況では下がれない!こればっかりは絶対にそ、それにだっ!」

 

かっこいいことを言いながらダクネスは頬を赤くする。

 

「それにっ!こ、このデュラハンはやり手だぞっ!こやつ、先ほどから私の鎧を少しずつ削り取るのだ…!全裸に剥くのではなく中途半端に一部だけ鎧を残し、私をこの公衆の面前で、裸より扇情的な姿にして辱めようと……っ!」

 

「えっ!?」

 

いつでもブレないダクネスに、ベルディアはちょっと引き、手を止める。その時にカズマが手に魔力を込め 

 

「時と場合ぐらい考えろ、この筋金入りのど変態が!!」

 

カズマの罵声にダクネスがびくんと震え、

 

「くう……!か、カズマこそ時と場合を考えろっ!公衆の面前でデュラハンに痛めつけられているだけでも精一杯なのに、これでカズマまでもが罵倒したら…っ!お、お前達とデュラハンは、一体二人がかりでこの私をどうするつもりだっ!」

 

「ええっ!?」

 

「どうもしねーよど変態!『クリエイト・ウォーター』っ!」

 

カズマが叫ぶと共に二人の頭上に突然水が現れる。バケツをひっくり返したような勢いで、大量の水が二人にぶち撒けられる。ダクネスはもろにかぶり、ベルディアは慌てて飛び退いた。……?慌ててる…?……一方ダクネスは頬を赤らめ呟いた。

 

「……不意打ちで突然こんな仕打ちとは……。や、やってくれるなカズマ、こう言うのは嫌いじゃない。嫌いじゃないが、本当に時と場合を考えてほしい…」

 

「ち、違う、これは妙なプレイじゃない!これは、こうするんだよっ!『フリーズ』!」

 

続け様にカズマは唱える。その魔法は水を凍らせるだけの初級魔法だが…。

 

「!?ほう、足場を凍らせての足止めか…!なるほど、俺の強みが回避だけだと思っているな?だが…!」

 

足元を凍らされたベルディアが、何かを言うより早く、カズマが叫ぶ。

 

「回避し辛くなればそれ十分だ!お前の持つ武器をもらうぞ、喰らえ『スティール』ッッッ!」

 

「……悪くはない手だったな。それなりに自信があったのだろうが、俺は仮にも魔王の幹部。レベル差というやつだ。もう少しお前との力の差がなければ、危なかったのかもしれないが」

 

その策すら魔王軍の幹部には通じなかった。ベルディアはカズマに、呪いをかけようとカズマに手を伸ばすがそれよりはやく

 

「私の仲間に手を出すな!」

 

ダクネスが、珍しく感情を表に出して、叫ぶと同時に大剣を投げ捨て、ベルディアに向かって肩口から体当たりをした。だが足場が凍ってるにも関わらず、ベルディアは易々と身をかわし、余裕たっぷりに大剣を握りしめる。ダクネスは武器を投げ捨てている。つまり今無防備で身を守るものがない。そしてデュラハンが剣を振り下ろしダクネスに当たりそうになった時

 

ドンっ!!!!!

 

凄まじい轟音と共にものすごいスピードで人影が飛び出す。

 

「「!?」」

 

その人影はダクネスの鎧を掴むと後ろに投げ飛ばし、デュラハンを殴り付ける。ベルディアはギリギリで反応し、剣を横に構え、拳を受けるが……

 

「っ!?」

 

ガードしたはずのベルディアが後ろに吹き飛ばされる。そして投げ飛ばされたダクネスは、少し地面を転がり態勢を立て直すと

 

「なん…どういうつもりだ!!」

 

自らを投げ飛ばした人物に叫ぶ。

 

「…尋常じゃないスピードに、俺を吹き飛ばすほどのパワー…面白い!貴様も俺にかかってこようと言うのだな。いいだろうっやろうか!」

 

「…出来れば戦いたくないんですけどね…」

 

そこには、体に雷を纏わせた少し苦しそうな表情の八幡が立っていた。

 

 




後書き
読んでいただきありがとうございます。ヒロインはだれだ!ハーレムなのか!等の質問をいただきます。方向性としてはハーレムにするつもりではあります。メンバーはせっかくこのすばの世界に来たので、このすばメンバーも入れたいと思ってます。そして次回はとうとうハチマン出陣ということでやっていきたいと思います。では次回またお会いしましょう。


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#11 奥の手

ダクネスが大剣を握りしめ、ベルディアに突撃していくのをみて考えていた。

 

(恐らく今の現状でベルディアに勝つのは無理だ。もし勝つ可能性があるなら、弱点を見つけることが必須。だから…それが見つかるまで時間を稼ぐことが出来れば…)

 

俺はそこまで考え覚悟を決める。そしてカズマのもとに行こうとすると、誰かに袖をひかれ、立ち止まる。俺は振り返り、袖を引いた人物を見ると

 

「…お兄ちゃんなにする気なの」

 

真剣な表情で俺をみつめる小町だった。

 

「絶対何かしようとしてる。さっき一瞬だけお兄ちゃん覚悟決めたような顔してたし、小町にはわかるんだよ」

 

何も言えなくなっている俺に

 

「もし危ないこととかしようとしてるならやだよ、このままみんなで逃げればいいじゃん。お兄ちゃんが危ないことしなくてもいいじゃん」ポロポロ

 

俺がリスクのでかいことをしようとしているのを察したのか泣きながら俺を止める小町。

 

「…小町」

 

俺が呼びかけると小町は顔を上げる

 

「これは俺にしかできない事なんだ適材適所ってやつ。今これがこの場で一番最善の選択だと思う。それに死ぬ気なんて毛頭ない。だから頼む小町」

 

俺のその言葉を聞くと、顔を歪める。

 

「…何でそんなこういう時だけ真剣な表情でいうの…ずるいんだよ…ばか…」

 

そう言うと小町は俺の袖を離す。

 

「…ありがとな小町」

 

俺はそう言い小町の頭を撫でる。

 

「…//」

 

小町を撫で手を離すとベルディアとダクネスを見る。

 

(関わった以上知り合った以上、ダクネスもカズマもめぐみんもアクアも守るその為に…あれをやる)

 

俺はイメージする。

 

(普段は体に電気を這わすイメージだった。でも今回は筋繊維の一本一本に電気を這わせることをイメージする。…そしてその電気で筋肉を全力で刺激する…っ!)

 

すると空気が震え、周りが少しびりつく。そしてだんだんとハチマンの周りを守るかのように雷が現れ纏わり付いていく。

 

(…すごい)

 

「『雷帝』っ…!」

 

(前にも軽くやったがこれは使ってる間ですら反動がある。それを特典の『超回復』で誤魔化してるだけだ。だから長時間には向かない…その為に)

 

俺はカズマの方を向く。すると丁度ベルディアにスティールを喰らわせているところだった。しかし効いていない。そしてベルディアはカズマに呪いをかけようとするがダクネスが突撃し、それを防ぐ。

 

「カズマっ…」

 

「なんだハチマ…ン…」

 

カズマは俺を見ると硬直する。

 

「これは後で説明する…っ。俺が時間を稼ぐから弱点を探してくれそれじゃ」

 

「いやちょっ」

 

俺はカズマの返事を聞く前に、脚に力を込める。そして一気に地面を蹴る。

 

ドンっ!!!!!

 

轟音と共に飛び出した俺はまずダクネスを掴み、後ろへ投げ飛ばす。そしてその飛び出した勢いのままベルディアに突っ込み殴り付ける。しかしさすがは魔王軍幹部ギリギリで反応し、剣でガードをする。でも

 

(関係っ…ない!) 

 

「!?」

 

そのまま剣に拳を当て、ベルディアを吹き飛ばす。吹き飛ばされたベルディアはすぐに立ち直り、こちらに向き直る。そして後ろでは俺に投げ飛ばされたダクネスが叫ぶ。

 

「なん…どういうつもりだ!!」

 

そしてベルディアは可笑しそうに

 

「…尋常じゃないスピードに、俺を吹き飛ばすほどのパワー…面白い!貴様も俺にかかってこようと言うのだな。いいだろうっやろうか!」

 

「…できれば戦いたくないんですけどね…」

 

(やっぱり長期戦は無理だ。既に体が悲鳴をあげてるし、めちゃめちゃ痛い…早く見つけろよカズマ)

 

「行くぞ…!」

 

俺がそう言うとベルディアは真上に頭を投げ、構える。

 

(武道も何もやったことないだから今はある手札だけで勝負する…!)

 

俺はさっきと同じ要領で脚に力を込め、地面を蹴りベルディアの真横に躍り出る。そのまま全力でベルディアに向かい蹴りを放つが剣でガードをされ、ベルディアは俺に剣を振りかざそうとする。俺はそれを避け距離を取る。そのまま同じことを繰り返し攻撃をする。しかしことごとく剣でガードをされ、時には避けられ反撃される。

 

(…流石だな…今の俺結構速いと思うんですけどねぇ…)

 

最初から倒す気などない八幡はその戦法を続けあることを狙っていた。

__________________________________________________________

 

「何だよあれ…」

 

あまりの光景にパーティーメンバーである俺たちも含め周りの冒険者達は唖然とし、一人の冒険者が呟く。目の前では、人外な動きをする体中に電気を纏った腐り目の男と、ベルディアが死闘を繰り広げていた。ハチマンが攻撃しては距離を取り、また攻撃をする。それをすごいスピードで繰り返していた。

 

「あれ…比企谷君なのよね…」

 

「うん…多分…」

 

「……多分だいぶまずいですよあれ」

 

後ろからハチマンの妹が声をかける。泣いていたのか目元が赤い。

 

「お兄ちゃんずっと苦しそうな顔してます。多分あの技すごいリスクがあると思うんです。そりゃそうですあんな動きしてるんですもん。だから早く何とかしないと…」

 

それを聞き雪ノ下さんと由比ヶ浜さんは血相を変えハチマンを見る。俺はそれを聞き、焦っていた。やばいやばいやばい!こんな時どうすればいい!?俺には特殊な能力も才能もない。でもハチマンが頼ってくれた。だから今こそゲームで培った知識を絞れ!相手はデュラハンだ、ロールプレイングゲームでは何が弱点だった?俺の取り柄と言ったら、ネットゲームで相手が嫌がる攻撃方法を即座に見抜くことぐらいだ。あいつを観察しろ。…………何であいつは、俺の出した水を大袈裟に避けた?…………。

 

………流れる水。それは、メジャーアンデッドモンスター、ヴァンパイアも苦手とするもの。ならあのデュラハンは?………試す価値はある。

 

「雪ノ下さん!」

 

__________________________________________________________

 

(…まずい)

 

俺はひたすら攻撃を繰り返していたが、そろそろ痛みで気を失いそうになっていた。ものの数分しかたってないはずなのに体感数十分たった感覚に陥ることでさらに精神が圧迫される。

 

(多分…多分後少しだ…後少しのはずなんだ…)

 

ずっと続いている攻防。ハチマンも限界が近い。でもそれと別に限界なものがあった。ずっとハチマンの強化された化け物みたいな力で殴られ蹴られ続け、悲鳴をあげているものが。そして繰り返した攻撃の中で八幡は確信する。

 

(…!この感触…次で行ける…!)

 

さっきカズマが雪ノ下に何かを言っていたのは確認していた。だから恐らく弱点は見つかったのだろう。俺はその可能性にかけ、最後の力を振り絞り、全力で地面を踏み蹴り出す。

 

「!?」

 

いきなりスピードが上がった俺に驚いたデュラハンは少し体勢を崩しながら剣を構える。そこに全力で殴り込む。すると

 

バキンッ!!!

 

「なっ!?」

 

ベルディアの剣は折れ、そのまま俺の拳はベルディアの胸当てに吸い込まれ、あたり吹き飛ぶ。そして俺も限界を超え、そのまま空中で『雷帝』は解け、ぶっ倒れる。

 

「ぐっ…あっ…!」

 

(まっず…体が死ぬほど痛いこれ以上動かねえ)

 

俺がぶっ倒れるのと同時にカズマが声を張る。

 

「小町っ!!!」

 

名前を呼ばれた小町は、すぐに俺のとこに駆け寄り俺を抱きかかえ飛び退きカズマの元に戻る。吹き飛ばされたベルディアは、体勢を整えこちらを向く。その時

 

「雪ノ下さん!ハチマンは離脱した!お願いします!」

 

「ええ!『クリエイト・ウォーター』っ!」

 

「!?」

 

自分の頭上に出てきた大量の水に驚き、まだダメージが残っているのかよろけながらも必死に避けるベルディア。それを見たカズマの顔は、確信に満ちた顔になり、大声で叫ぶ。

 

「水だああああああああーっ!」

 

それを聞いた周りの冒険者達は、

 

「『クリエイト・ウォーター』!『クリエイト・ウォーター』!『クリエイト・ウォーター』ッッッッッ!」

 

「くぬっ!おおっ?っとっ!」

 

雪ノ下とカズマを筆頭に、そこかしこの魔法使い達が魔法を唱える。俺も唱えようとすると

 

「「休めばか!!」」

 

小町と由比ヶ浜に肩を貸してもらっている状態だったのだが頭を叩かれる。痛い…俺怪我人…自業自得だけど。ベルディアの方を見るとベルディアは、頭上からかけられる水を、これでもかと躱している。弱点らしいのを見つけても、そもそも攻撃が当たらない。と、そこに。

 

「ねえ、一体何の騒ぎなの?何で魔王軍の幹部と水遊びなんてやってるの?この私が珍しく働いてる間に、カズマったら何を遊んでいるの?バカなの?」

 

こいつもこいつでブレないよなほんとに。

 

「水だよ水!あいつは水が弱点なんだよ!お前、仮にも一応はかろうじてとは言え、水の女神なんだろうが!それともやっぱり、お前はなんちゃって女神なの?水の一つも出せないのかよ!?」

 

ばかっ!そんなこと言うと…!

 

「!?あんた、そろそろバチの一つも当てるわよ無礼者!一応でもかろうじてでもなんちゃってでもなく、正真正銘の水の女神ですから!水?水ですって?あんたの出す貧弱なものじゃなく、洪水クラスの水だって出せますから!謝って!水の女神様をなんちゃって女神って言ったこと、ちゃんと謝って!」

 

「後でいくらでも謝ってやるから、出せるんならとっとと出せよこの駄女神が!」

 

やめて!仲良くして!お願いだから!

 

「わああああーっ!今、駄女神って言った!あんた見てなさいよ、女神の本気を見せてやるから!」

 

カズマの言葉にアクアは一歩前に出る。そのアクアの周りに、霧のようなものが漂い…ほら言ったじゃん!やばいって絶対まじで!ほんとに!

 

「この雑魚どもめ、腐り目以外張り合いのない……?」

 

流石は魔王軍幹部もう不穏な気配を感じ取ったのだろう。というか、全員が不安げにアクアを見ていた。当の本人はそんなこと微塵も気にせずにボソボソと呟く。

 

「この世にいる我が眷属よ…」

 

アクアの周りに現れていた霧が、小さな水の玉となって辺りを漂う。その水玉一つ一つに魔力が凝縮されているのが感じ取れる。

 

「水の女神、アクアが命ず………」

 

……もう諦めよう。あたりの空気がビリビリと震えるこの感じ、めぐみんの爆裂魔法を放つときと酷似している。つまりそんくらいやばいのがくる。ベルディアは、躊躇する事も無く潔くアクアに背を向けて、素早く逃げようと……したところに、ダクネスがその前に立ち塞がった。アクアは両手を広げると。

 

「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!」

 

水を生み出す魔法を唱えた。

 

__________________________________________________________

 

確かに洪水クラスの水だって出すことができるって言ってたけど…言ってたけど!ほんとに洪水起こす事ないだろばか!

 

「ちょっ……!待っ………!」

 

「た…たす……たすけて…」

 

「めぐみん、めぐみーん!掴まってろ、流されるなよ!」

 

「ヒッキー!

 

「ユイさんもお兄ちゃんも小町の手離さないでね!」

 

『雷帝』の反動で激痛があり動けない俺と魔力枯渇により動けないめぐみんは溺れていた。そのほかにもその場にいた冒険者全員が押し流されている。膨大な量の水は、町の正門前に盛大な飛沫を上げ、そして、街の中心部へと流れていく。水が引いた時、ベルディアが苦しそうになっているその様子を眺め、激痛に苛まれながら瞼を閉じた。

 

 




後書き
読んでいただきありがとうございます。前回ハーレムにすると言うとコメント欄で他の総武勢をいれるなどの意見がありました。正直そこまで考えてなかったんですが、ちょっと悩みました。そこで聞きたいんですけど、どう思うかコメント欄で意見を下さるとありがたいです。今回の技『雷帝』ですが次回デメリットと密かなメリットのあたりが詳しく出てきます。ではまた次回お会いしましょう


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#12 自意識の化け物の変化

「知らない天井だ…」

 

俺は目が覚め人生で言ってみたいセリフを一応言ってみる。そして周りをよく見回すと

 

(…いや知ってるわ宿屋だわ)

 

ここがどこかわかり、周りを見ても誰もいないためもう一回寝ようとすると手に変な感触が伝わる。その感触が気になり手元を確認するため体を起こす。

 

(…?痛くない…?)

 

一応雷帝の反動を覚悟していたが、特に痛みも感じられない。それどころか体が軽い。

 

(もう治ったのか?まぁそれはおいおい確認しよう…)

 

取り敢えず手に伝わる感触が気になり手を見ると、ヌメヌメとした青いやつがいた。

 

(…?スライム?…由比ヶ浜のか?)

 

そこには前見た時よりも二回りぐらい小さいスライムが俺の手に巻きついていた。それを暫く眺め、不意にスライムを軽く撫でてみると、気持ちよさそうに身を捩り、俺に擦り寄る。

 

(何だこいつ可愛いな)

 

俺は夢中になり、スライムを撫で回し続けていると部屋の扉が勢いよく開かれる。

 

「「「「「「ヒッキー(お兄ちゃん)(比企谷君)(ハチマン)っ!」」」」」」

 

扉からは由比ヶ浜、雪ノ下、小町が勢いよく入ってきて、後ろからカズマ、めぐみん、ダクネス、アクアが入ってくる。みんな何かを言っていたが正直バラバラで何言ってるかわかんない。そしてびっくりした俺は少しきょどる。

 

「お、おおどうした」

 

勢いよく入ってきた先頭の三人は俺と目が合うと少し固まり、だんだんと目に涙を溜め、無言で俺に飛びつき抱きついてくる。

 

「え、いやちょっ」

 

一応抵抗しようとしたが

 

「「「黙って」」」

 

「はい……」

 

速攻で黙れと言われ俺はされるがままにされる。だって怖いんだよ。そして暫く時間が経つ。その間俺はずっと抱きしめられているわけで

 

(…やばい雪ノ下達の胸がすごく当たってる。めっちゃ押しつけられてて正直やばい。まじでやばい。何とは言わんけど、やっはろーしちゃう。社会的に殺されちゃう。まずい無心だ無心、無心になろう。もしくは別のことを…そうだ。あたってるのは材木座材木座材木座…………おえっ…)

 

俺は意識を逸らすためにとんでもないことを考え少し吐き気を催していると

 

「…て」

 

「…ん?」

 

「…撫でて」

 

「え、いや…」

 

急に言われ少し困るが

 

「だめ…?」

 

「まかせろ」

 

小町に上目遣いで頼まれ即答し、頭を撫でる。小町に上目遣いで頼まれて断れるはずがない。断る奴がいるならそいつは人間じゃないそして俺がこ…ちょっとあの世に行かす。俺が撫でると小町は気持ちよさそうに目を細め、尻尾をみると真上にピンと立てている。すると

 

「…」

 

その様子を見てた由比ヶ浜は俺の空いてる手を取り、そのまま俺の手を自分の頭に置き、無言で撫でろアピールをする。

 

(…撫でろってこと?え?後でセクハラとかで訴えないよね?え?)

 

俺が困惑していると上目遣いで俺を見て

 

「してくれないの…?」

 

そう言われ、ぎこちないながらも手を動かす。…断れるわけないだろ。すると由比ヶ浜も気持ちよさそうに目を細め、少し身を捩る。心なしか顔も赤い気がする。

 

(顔赤くねこいつ…まぁでも多分俺の方が赤いんですけどね!くそ!)

 

二人を暫く撫でていると雪ノ下がこちらに近づき由比ヶ浜を撫でてる手に頭を擦り付ける。

 

(え?雪ノ下さん?嘘でしょ?)

 

上目遣いで俺のことを見てずっと手に頭を擦り付けている。見れば由比ヶ浜と小町も俺のことを見ている。

 

(やれってこと?やれってことなの?)

 

少し迷い雪ノ下の頭にも手を置き撫で始めると少し目を細めていた。何だこいつ可愛いかよなどと考えていると俺に見られるのが嫌なのかそれに気付き少し顔を俯かせる。やっぱ嫌だったか?と思い、よくみると耳まで真っ赤になっている。気持ちよさそうな顔を見られるのが嫌だったのだろう。

 

(何なのこいつらほんとに…多分俺も顔やばいことになってるし…)

 

そんな光景をダクネスとアクアとめぐみんはずっとニヤニヤしながら眺めてくる。覚えとけよこいつら…後カズマその手に持っているナイフはおさめようか今すぐ。そして俺は三人が満足いくまで頭を撫で続けた。

__________________________________________________________

 

「…満足か?」

 

「「「うん…///」」」

 

満足した三人は俺から離れ頬を染めている。俺はと言うと撫で疲れてゲンナリしていた。何なで疲れるって。

 

「いやぁいいものを見せてもらったな」ニヤニヤ

 

「ええそうですねデレるハチマンも見れたことですし」ニヤニヤ

 

「ハチマンさん撫でてるとき超真っ赤だったんですけど!あれでも私撫でてた時顔赤くなかったような…」ムスッ

 

「「「「///」」」」

 

その指摘に俺を含め四人とも顔を赤くし、俺はそっぽを向く。純粋に恥ずかしさがこみ上げてきたからだ。

 

(何やってんだろ俺…黒歴史確定じゃん…)

 

「て言うかよく俺が起きたってわかったな」

 

俺がそう言うと由比ヶ浜が答える

 

「それならこの子のおかげだよ」

 

そう言い魔法陣からスライムを出す。

 

「…?二体目をテイムしたのか?」

 

今この場には俺の手元のスライムと今由比ヶ浜が召喚した二体のスライムがいた。

 

「いや?違うよ?ほらスーちゃん元に戻って」

 

由比ヶ浜がそう言うと二体のスライムは近寄り、混ざり合うと一つのスライムになった。

 

(なるほど一体のスライムが分裂してたのか。)

 

「それで二体のスーちゃんは、分かれてるけど繋がってる?えっと……まぁそんな感じでヒッキーが起きたら私たちのところにいるスーちゃんに振動するようにお願いしたの。それでさっきみんなで集まってたらスライムが振動して…急いでここにきたらヒッキーが起きてて…嬉しいのといろんなのが混ざって…あぅ…」

 

俺に抱きついたことを思い出したのかまた顔を赤くする。みると他の二人もまた赤くしている。そんな反応されるとこっちまで心にくるんですけど…そんな空気を暫く続きおさまったときに

 

「ヴヴン…ところでハチマン、お前がやってたあれはなんなんだ?」

 

カズマが咳払いをし、話題を変える。その話題が出た直後空気が一気に凍る。俺は冷や汗を流しながらゆっくりと女性陣の方を見ると目の色が変わっている。さっきまで顔を赤くしていた三人も表情を変え、こちらを向く。怖いめっちゃ怖い。

 

「そういえば忘れていたわね……比企谷君、説明…してくれるわよね?」

 

「はい…」

 

俺は『雷帝』に関して説明を始めた。筋繊維一本一本に意識して電撃の力で刺激し、機動性と力を強制的に引き上げる技だと。痛みが生じることは伏せて説明をした。だけど

 

「お兄ちゃん…それだけじゃないよね?」

 

小町の一言に俺は更に冷や汗を流す。

 

「…これだけだぞ?」

 

なんとかごまかそうとするが

 

「「「「「「…」」」」」」

 

「…小町にお兄ちゃんの嘘がわからないとでも?」

 

そう言い俺の目をじっと見つめる。他のみんなもそれだけじゃないだろと言わんばかりに俺をじっと見ている。俺は打つ手がなくなり無言になっているとずっと顎に手を当て何かを考えていたであろう雪ノ下が口を開く。

 

「…そのあなたの『雷帝』という技は、筋繊維にそのまま刺激を送っているのよね?」

 

「あ、ああ」

 

「……あなたあれを使うと激痛がはしるのではないのかしら」

 

「っ!?」

 

俺は図星を突かれ、驚き思わず表情に出す。

 

「図星…ね」

 

「…ユキノどう言うことなんだ?」

 

ダクネスがそう聞くと雪ノ下は説明を始めた。

 

「全部推測なのだけれど…その『雷帝』を使った直後の動き、あれはどう見ても人間の域を超えてるわ。確かに電撃で刺激すれば身体能力は上がるとは思うけれど、それにしてもあの動きは人並み外れすぎているわ。それにあんな動きをして体がついていけるはずがないはずよ。動いた瞬間に骨は折れて、筋肉はボロボロに傷付き裂けるはずよ」

 

それを聞くと由比ヶ浜とアクアを除き、確かにという風に頷く。

 

「だから普通はあんな芸当出来ないのだけれど、もし肉が千切れようと骨が折れようともその怪我の速度を上回る回復力があったら…」

 

「…!まさか…」

 

「ええ比企谷君にはその上回る回復力があるのよ。だからあんな動きをして、体に無茶を強いて骨が折れても、筋肉がボロボロになろうとも、その回復力で全てを無かったことにする。恐らくその繰り返しで成り立つ技なのよ。でもそんなことをすれば治るとはいえ一瞬痛みがはしるわ。しかもあんな動きをするくらいだから身体中に。そしてその技を使う限り永続的に」

 

それを聞いた全員が身を震わせる。恐らくその痛みを想像したのだろう。なんか別の意味で震えたやついる気がするけど気のせいだ。そして身を震わせた後、全員が俺をみる。

 

「ここまでがあなたの技のデメリットの推測なのだけれど、どうかしら?」

 

そういい俺の方を向く。流石としか言いようがない程完璧に見破られている。俺は図星で押し黙るしか無かった。

 

「……ユキノ、デメリットってことはメリットもあるんですか?その…超パワーとか以外に特に見当たらないと思うのですが…」

 

「ええ…推測が正しければあるわ。この効率最優先の男がこれだけなはずがないもの。……それでメリットに関してなのだけれど、比企谷君をよく見たらわかるのだけど少しゴツくなってないかしら?」

 

雪ノ下がそう言うと全員が俺の方を見る。

 

「…確かに言われてみれば筋肉がついてるような…?」

 

「ええ確かに言われてみれば少しゴツくなった気もします」

 

俺をじっくりと眺めた後、全員が納得したように声を上げる。

 

「ところで貴方たちは筋肉の超回復ってものを知ってるかしら」

 

「…筋肉の…?…………なるほど」

 

「…めちゃくちゃ強引なことするなお前」

 

カズマとダクネスは分かったのか呆れた顔でこちらをみる。その他の奴らは、ずっと頭に?を浮かべている。それを見兼ねて雪ノ下は説明を始める。

 

「筋肉の超回復は、筋トレによって破壊された筋繊維を休息によって回復し、筋トレ前よりも筋肉が肥大化する現象のことよ。そして比企谷君のあの技は、筋繊維が千切れて回復千切れて回復を繰り返し、筋肉の超回復を無理やり引き起こしているのよ。それに使えば使うほど筋肉は補強されて力と強度は増し筋繊維は千切れにくくなり、デメリットである痛みも少なくなる。しかもその『雷帝』を使った時の能力もあの時よりも上がるはずよ。徹底的に自分への被害を無視した効率重視の技ね。魔王と言う存在を倒す事を目標とするのなら、恐らく最善の選択なのでしょう。それでも………」

 

そこで沈黙が発生した事で俺は顔を上げ雪ノ下の顔を見ると、雪ノ下は目に涙を溜めこちらを睨んでいた。

 

「それでも…私は使うことに反対よあんな技。貴方は知らないでしょうけど、気絶した後ずっと吐血して鼻血も出して止まらなかったのよ。アクアさんが回復魔法をかけても無反応だしほんとにどれだけ私達があの時心配したと思ってるの」

 

状況を聞けば、どうやら俺は気絶した後口からも鼻からも血が出て止まらなかったらしい。そのあとアクアが泣きながら俺に回復魔法をかけるが、血も止まらず反応もないため、小町と由比ヶ浜と雪ノ下は泣きながら俺を呼び、めぐみんとダクネスは悔しそうに顔を歪め、カズマは俺の血を輸血するためいろんなところを走り回ったらしい。そしてその雪ノ下の言葉に、他のみんなも次々と反応を示す。

 

「私も反対だよ。今の説明を聞いても難しくてよくわかんなかったけどヒッキーが危ない事をしてるのは伝わった。…私はヒッキーに危ないこともして欲しくないし傷ついても欲しくないの。なのに人の心配を無視して危ないことするんだからもうやめてよぉ…」

 

「小町も絶対反対です。あの時止めなかった事をどんだけ後悔したと思ってるの…心配したと思ってるの…」

 

二人も目に涙を溜めらがら俺を見つめ、小町は俺の服の裾を掴み、由比ヶ浜は目をぬぐっている。

 

「私も反対だ。聖騎士として仲間が傷付くのは見過ごせないからやめてほしい」

 

「私も反対です。確かにすごい技でしたけどデメリットがデカすぎますし仲間が傷付くのは見たくないですし、心配するのでやめてください。あとダクネスは騎士としてみたいなこと言ってますけど、ここ数日常にそわそわして落ち着きがなかったんですよ」

 

「なっ!?めぐみん!それは…。それを言うならめぐみんだっていつもの日課の爆裂魔法に行かずにスライムをじっと見ていただろう!」

 

「なっ!?言ってくれましたね!?心配だったの一言くらい言えばいいのにツンデレみたいなことしてるからでしょう!」

 

反対の意思を伝え勝手に取っ組み合いを始める二人。

 

「ハチマンさんが傷つくのはなんか嫌。だから私も反対よ」

 

真面目な表情で言う。

 

「俺も反対だな。めぐみんが言ったようにデメリットが大きすぎる。それにそんなことしなくても、うちのパーティーには雪の下さんと由比ヶ浜さんに小町もいるんだ。今のままでも十分強いし、無理して使う必要もないだろ」

 

一人一人の発言を聞くたびに何故か心がざわつく。そして取っ組み合いをしていた二人は、いったん休戦し、アクアも交えて抗議する。

 

「「「何故そこに私達の名前がないんだ(ないのよ)(ないんですか)」」」

 

そう三人がハモって言うとカズマは眉間をピクピクさせ、顔が引きつっていた。そして

 

「今の所活躍が不安定すぎるんだよ!そんなん頭数に入れられるか!何自分たちは戦力ですけどみたいな顔してんだ!この爆裂バカと筋肉バカとバカ女神!」

 

「な…!バカって言った!カズマさんがバカって言ったー!…ハチマンさんハチマンさんカズマったら恥ずかしくて言わないけどダクネスみたいにここ数日ずっとそわそわしてたのよ」

 

「待てカズマ別にそんな筋肉マッチョというわけでは…というかアクアそれはあんまり言わないでほしいんだが…」

 

「ほう!私をバカにするとはいい度胸ですね!受けて立ちましょう!…黒より黒く…」

 

「うるせぇよ!てかめぐみん詠唱始めんな!お前の場合シャレに何ないんだよ!あとそわそわしてねえし!」

 

ぎゃーぎゃーとやかましくなる。いつも通りの光景に雪ノ下達も笑みが溢れている。そんな中俺は怒られることを覚悟して喋り始める。

 

「善処は…する。でもいざと言うときは使うこれだけは譲れない」

 

俺の言葉に全員が一瞬呆気に取られため息をつく。あれ怒られない?

 

「まぁ、お兄ちゃんだし、はなから止められると思ってないし…」

 

「ええそうね…全くこの男は」

 

「まぁヒッキーだしね…」

 

違うなこれ呆れられてるだけだな。

 

「ハチマンは優しいですからね。どうせ止めても無駄だろうなとは薄々思ってましたよ」

 

「やめてほしいのは変わらないがな」

 

「ほんとお人好しだなお前」

 

「そうよそれに少しは私たちの意見に耳を傾けなさいよ」

 

(アクアにだけは言われたくないんだけど)

 

「お兄ちゃんこれだけは言わせてもらうけど、みんなほんとにずっと心配してたんだよ。それだけは覚えておいて」

 

年を押し俺にそう伝える小町。俺はそれを聞き、また心がざわつく。

 

「取り敢えずハチマンも起きてみたところ大丈夫そうだし、準備してギルドに行こうぜ」

 

「あ、あぁ」

 

他の全員も賛同し、部屋を出ようとするとまた心のざわめきが増す。そこで気付く。

 

(あぁ、あんなに認められて、求められて、心配されて、嬉しかったんだ。だからずっと心がざわついていた。勘違いだと馴れ合いだと切り捨てればそれまでなのかもしれない。でも俺はもう疑えない疑いたくない。これが俺の嫌っていた馴れ合いだとしても嬉しかったんだ。)

 

自分の思っていることに気付いたと同時に俺は、全員を呼び止めていた。

 

「ま…まってくれ」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

急に俺に呼び止められた七人は俺の方を振り返り、首を傾げる。俺はいきなり呼び止めたが何を言えばいいか分からず少し逡巡する。俺は覚悟を決め、もう言いたいことを言えばいいと開き直り、全員の名前を呼ぶ。

 

「雪ノ下、由比ヶ浜、小町、めぐみん、カズマ、ダクネス、アクア」

 

改めて名前を呼ばれ七人はさらに怪訝な顔をする。いざ言うとなると身構えてしまう。それでもなんとか言葉を紡ぐ。

 

「その…心配をかけた。心配してくれて嬉しかった。だから…」

 

ただ簡単なことを言うだけなのに心臓がうるさい。これ以上ないほどに血圧が上がってる気がする。でもその反対に表情は自然と変わっていく。

 

「だからその…ありがとう」ニコ

 

この時自分の表情は見えなかったけど俺は人生で初めて自然に笑えた気がした。

 

「「「「「「!?///」」」」」」

 

(…誰だこいつ)

__________________________________________________________

 

ハチマンの準備が終わるのをまっている間宿屋の前で女性陣がさっきのことで話をしていた。ちなみにカズマはハチマンの部屋に残っていた。

 

「さっきのなんなのかしらほんとに」

 

「ええほんとにその…色々破壊力が凄かったです」

 

「普段笑ってもふひひみたいな感じなのにあんな感じで笑えるんだ…」

 

「私は笑った顔すら見たことなかったんだが、普段とのギャップが凄かった。それに…」

 

「何より目が…」

 

「ええ…本人が自負している通り腐ってないとイケメンなのね…」

 

「あぁ…私は面食いではないんだが、少し…いやなんでもない」

 

そんなダクネスに奉仕部三人はまさかと言う視線を送る。

 

「い、いやほんとになんでもないんだ。ほんとだぞ?」

 

さらに疑いの視線を送る三人。その視線に居た堪れなくなりそっぽを向くダクネス。

 

「まぁあれは正直ただのたらしですよ。私も面食いではありませんが、あのハチマンは…」

 

「俺がどうかしたか?」

 

「ひゃあああ!」

 

ハチマンにタイミング悪く話しかけられて素っ頓狂な声を出すめぐみん。

 

「あなたは毎度毎度なんなんですか!タイミングというものがあるでしょう!」

 

「お、おうすまん」

 

謎に怒られ疑問符を浮かべるハチマン。

 

「はちまんさんはちまんさん実はめぐみんとダクネスが…はぐぅ」

 

話の内容を話そうとするとダクネスとめぐみんはアクアの口を塞ぎ

 

「な、なんでもないなんでもないよなめぐみん!」

 

「ええ!なんでもないですよ!気にしないでください!」

 

「そ、そうか元気だな」

 

若干引き距離を取る。

 

「お兄ちゃんほんとに体大丈夫?」

 

「おう今のところ異常はない大丈夫だぞ」

 

「そっかよかった」

 

小町と雪乃と結衣は一安心と言うふうに息を吐く。

 

「それじゃ行くか…」

 

__________________________________________________________

 

冒険者ギルドにつきドアを開けるとむせ返るような匂いが鼻をつく。思わず顔をしかめ、日本人組もカズマ以外同様に顔をしかめる。人の熱気と酒の匂いが、俺が開けた入り口に向かって流れ出してくる。魔王軍幹部を討ち取った記念に連日連夜冒険者達が宴会を開いているらしい。

 

「あ!カズマ達だ!…おいハチマンもいるぞ!」

 

ギルドに足を踏み入れた俺たちに気付いた一人の冒険者が周りに聞こえるように声を張る。それに呼応するかのように喧騒は倍以上に膨れ上がる。

 

「おー!英雄の登場だ!」

 

「ハチマンデュラハンとの一対一あれは男として燃えたぜ!すげえなお前!」

 

至る所から称賛の声が、飛び交う。正直目立ちたくない俺は、すごい肩身の狭い思いをしていた。すると後ろから背中を叩かれる。

 

「今日くらい胸をはれ、お前はそれだけすごいことをしたんだ。それと…」

 

俺を叩いたダクネスはそう言うと、俺の耳元まで顔を近づけ吐息が俺の耳にかかる。

 

(近いいい匂い近い近い)

 

吐息がかかるだけでくすぐったいがそれに耐えていると

 

「あの時助けてくれてありがとう」

 

ボソボソと俺の耳元で喋る。俺はすぐ飛び退きダクネスと距離を取る。くすぐったいし恥ずかしいしいい匂いだしやめてほしい。あとそれ耳元じゃないとダメ?俺は耳が弱点なんだよ。そんな思いを込めて恨めしく見ていると悪戯が成功した子供のような表情を浮かべる。

 

「仕返しだ」

 

(俺なんかしましたかね…てか何で耳弱点なの知ってんの?小町か?小町だな?)

 

「何やってんだお前ら…早く報奨金をもらいに行くぞ」

 

呆れたように俺たちを見ながら声をかけ、全員でカウンターに向かう。カウンターに着くと俺たちを見て受付のお姉さんが微妙な表情を浮かべた。

 

「ああ、その…。サトウカズマさんにヒキガヤハチマンさん一行、ですね?お待ちしておりました。」

 

何となく違和感を覚え嫌な予感がする。

 

「あの……。まずはそちらの方々に報酬です。」

 

お姉さんは、そう言って小さな袋を俺とカズマ以外に手渡した。あれ、俺たちのは?疑問に思っているとお姉さんが。

 

「……あの……。ですね。実は、お二方のパーティーには特別報酬が出ています」

 

「え、何で俺たちだけが?」

 

カズマがそう呟くとどこからともなく答えが聞こえてくる。

 

「今回のMVPがいなきゃデュラハンなんて倒せなかったんだからな!」

 

その声にそうだそうだと騒ぎ出す酔っぱらい達。取り敢えず俺とカズマは前に出て代表として、特別報酬を受け取ることに。受付のお姉さんがこほんと一つ咳払いをして

 

「えー。サトウカズマさん及びヒキガヤハチマンさんのパーティーには、魔王軍幹部ベルディアを見事討ち取った成績を称えて……。ここに、三億エリスを与えます」

 

「「「「「「「「さっ!?」」」」」」」」

 

俺たちは思わず絶句し、周りの冒険者もシンと静まり返る。そして

 

「おいおい三億ってなんだ、奢れよ!」

 

「うひょー!カズマ様ハチマン様おごっておごってー!」

 

冒険者の奢れコールが始まる。するとカズマが

 

「おい聞け!お前らに一つ言っておくことがある!俺は今後、冒険の回数が減ると思う!大金が手に入った以上、のんびりと安全に暮らしていきたいからな!」

 

「おい待てっ!強敵と戦えなくなるのはとても困るぞっ!?というか、魔王退治の話はどうなったのだ!?」

 

「私も困りますよ、私はカズマについていき、魔王を倒して最強の魔法使いの称号を得るのです!」

 

騒ぎ抗議の声を上げる二人の声をかき消すほど盛り上がっていくギルド内。まぁ俺も正直働かなくていいなら働きたくないしカズマに賛成ではある。そんな中、申し訳なさそうに受付のお姉さんが一枚の紙を手渡してくる。それはゼロがたくさん並んだ紙。少しどころかとてつもなく嫌な予感がする。

 

「ええと、ですね。今回、カズマさん一行の……、その、アクアさんの召喚したたいりょうのちずにより、まちのいりぐち付近の家々が一部流され、損壊し洪水被害がでておりまして……。」

 

俺はここまで聞き嫌な予感は確信に変わり、回れ右し去ろうとするとダクネスに肩を掴まれる。やめろ聞きたくないんだ俺は。

 

「……まぁ、魔王軍幹部を倒した功績もあるし、全額弁償とは言わないから、一部だけでも払ってくれ……と……」

 

受付のお姉さんはそう告げると、目を逸らしそそくさと奥に引っ込んでいく。カズマの手に握られている紙を見て、まずめぐみんが逃げ出した。次いでアクアが逃げ出そうとするがカズマがアクアの襟首を素早く掴む。俺も逃すまいとめぐみんのマントを掴む。俺たちの雰囲気で請求の額を察したのか、周りの冒険者達も目を逸らす。請求を見ていたダクネスは俺と俺が掴んでいるめぐみんを引きずりながらカズマの方に手をおき

 

「報酬三億。……そして、弁償金額が三億四千万か。……カズマ。明日は、金になる強敵相手のクエストに行こう。」

 

ダクネスはそんなことを言いながら、心底嬉しそうないい笑顔で笑いやがった。こうして俺たちの借金生活が始まるのであった。……ふざけんな!!

 

 




後書き
投稿遅れてすいません。今回は雷帝のデメリットメリット長々と書いてありますがまた設定で簡単にまとめようかなと思っています。総武勢の参加については方法次第では概ね賛成という意見が多かったです。もしこの先参加させてほしい!という意見が増えるようでしたら、少し考えます。それといつもいいねやコメントをくださる皆さんありがとうございます。とても励みになっています。これからもどうかよろしくおねがいします。ではまた次回お会いしましょう


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これまでのまとめ

これまでのまとめ

 

比企谷八幡

 

ステータス

 

筋力と幸運値 普・知力と敏捷性 高・器用度 超高・魔力と生命力 規格外

 

職業

 

黒魔道士

アークウィザードの魔法全般使えるが威力は若干劣る。それでも十分威力はある。そしてモンスターの技を使える。条件はあるがまだ不明。

 

死ぬ間際の雪ノ下たちとの会話、雪ノ下たちと会えないと思ったことからの再会で多少素直になる。自己犠牲の精神は変わらない。そして今のパーティーメンバーも少なからず信じている。

 

特典

 

【雷帝】

 

雷を自由に操ることができ出力も操作も本人の自由自在。

 

【超回復】

 

文字通り超回復する。その回復力はアクアの回復魔法と同等かそれ以上。ただ使いすぎると体がだるくなる。

 

 

『雷帝』

 

筋肉の繊維一本一本に、必要以上の電撃で負荷をかけ、爆発的な力と俊敏性を生む。雷帝を使っている間は、骨が折れ、筋繊維は破れるが超回復でなかったことにする。しかし一瞬は痛みを感じる為、常時尋常じゃない痛みが襲う。理性で何とか意識を持ち堪えることが可能。メリットとして、使えば使うほど筋肉、技の威力が増え、体がより強固になり、反動も多少減る。

 

雪ノ下雪乃

 

ステータス

 

生命力 低・筋力と幸運 普・知能と器用度と敏捷性 高・魔力 八幡より規格外

 

職業

 

アークウィザード

 

原作通り。もしかしたらオリジナル魔法を出すかも。

 

八幡同様+由比ヶ浜との会話で素直になり八幡への好意を自覚する。

 

特典

 

【魔力無限】

 

文字通り魔力が無限になる。ただ使いすぎると、体の動きが鈍くなる。

 

由比ヶ浜結衣

 

ステータス

 

知能と器用度 低・敏捷性と魔力と筋力と幸運 普・生命力 規格外

 

職業

 

召喚士

 

モンスターを召喚使役したたかう職業。ある程度の魔法も使える。

 

現在の使役モンスター

 

【スライム】

 

元から八幡に好意を持っていたが、雪ノ下が素直になったこと+八幡と雪ノ下同様のことで隠さなくなった。

 

特典

 

【調教師】

 

100%モンスターをテイムすることができる。ただし自分が召喚したモンスターに限る。

 

比企谷小町

 

種族

 

猫人:ネコの特性を引き継いでおり頭には猫耳腰には尻尾が生えている。小町の気分で尻尾の動きが変わる。

 

ステータス

 

筋力と敏捷性 規格外 その他平均値

 

職業

 

拳闘士

 

拳で戦う職業。拳で殴る際に属性を付与することができ、魔力を込めることもできる。最初はどっちかしかできないがレベルがある程度上がれば同時展開が可能になる。魔力を込めた場合威力の上昇、込める量に比例し威力は上昇する。

 

八幡の死後由比ヶ浜に召喚されるまでの間ずっと部屋に篭り泣いていたため色々な気持ちが募る。そして限界ギリギリのところで由比ヶ浜に召喚され八幡に会うことができ、気持ちが爆発し好意に似た何かを持つ。

 

ハーレムの予定。奉仕部確定。このすばメンバーは未定。

 

 

 




これまでをまとめてみました。最近は忙しく投稿頻度が下がってしまいすいません。合間を縫って出来るだけ投稿しようとは思ってます。もし質問等があればコメントの方をお願いします。ではまた次回お会いしましょう


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#13 化け物VS化け物たち

前書き

今回は色々オリジナル設定が出てきます。違和感などがあればコメントにて教えてくださるとうれしいです


 

 

 

「……金が欲しいっ!」

 

ある日の冒険者ギルドの酒場で、カズマが血を吐くように切実に嘆き、テーブルに顔を伏せる。

 

「そんなの誰だって欲しいに決まってるじゃないの。もちろん私だって欲しいわよ。……というか、甲斐性がなさすぎでしょう?仮にも女神であるこの私を、毎日毎日馬小屋なんかに泊めてくれちゃって、恥ずかしいとは思わないんですか?わかったら、もっと私を贅沢させて、もっと私を甘やかして!」

 

頭を抱えるカズマに、そんなことを言い出したのは水色の髪と瞳の美少女。そんなアクアを見て、げんなりとした表情でボソリと呟く。

 

「……お前は、俺がどうして金を欲しがっているのかがわからないのか?」

 

「元引きこもりの汚れた頭の中なんて、清く正しくも麗しい私にわかるわけないでしょ?引きこもれるだけのお金が欲しいとか、そんなところじゃないの?」

 

「借金だよ」

 

カズマの放った一言に、アクアがびくりと震えて目を逸らす。

 

「借金だよ!お前が作った借金のせいで、毎回、受けたクエストの報酬から大半が、借金返済のために天引きされていくんだぞ!?そろそろ冬だ!今朝なんて、馬小屋の藁の中で目が覚めたらまつ毛が凍ってたんだぞ!他の冒険者は既に宿屋で部屋を借りて寝泊りしてんだぞ!本格的な冬にでもなったらどうするんだよ、馬小屋の寝床じゃ凍え死ぬわ!はっきりいって、魔王を倒して帰るどころの話じゃないんだよ!」

 

テーブルをたたきながら食ってかかったカズマに対してアクアは耳を塞ぎ目を瞑りそっぽを向く。これ以上カズマが言うとアクアが泣きそうなので割って入る。

 

「落ち着けカズマこれ以上言うと泣いちゃうからアクア泣いちゃうから」

 

実際アクアは少し目に涙を溜めている。そして俺が加勢したことにより調子に乗り始める。

 

「大体しょうがないじゃないの!あの時の私の超活躍がなかった、この街は滅ぼされていたかも知れないのよ!?感謝こそされ、借金背負わされる謂れはないんじゃないかしら!不当よ不当!私、ちょっとここの受付に抗議してくる!行くわよハチマン!」

 

そう言い俺の服の袖を掴み受付まで連れて行こうとする。

 

「お前も落ち着け。てか行くわよじゃねえよいかねえよ」

 

俺がそういうとバッと俺の方を見て心外という風な顔をする。

 

「なんでよ!もういいわよ私だけでも行ってくるから!」

 

俺の服の袖から手を放し、受付の方に歩いていくアクアに俺はアクアの手を取りとめる。

 

「やめてさしあげろ。受付の人が困っちゃうから」

 

「そうだぜアクア。…そもそもちゃんと高額な賞金だってもらってるだろ。…差し引きでマイナスになっただけで。町を守るために、街の一部を壊しましたじゃ、さすがにお咎めなしって訳にもいかないんだろ」

 

以前このアクセルの街にベルディアと名乗る魔王軍の幹部が攻めてきたことがあった。その際に、アクアがそのベルディアの弱点である水を大量に召喚して俺はそこで気絶したが聞いたところによると…

 

「なによ!ハチマンはともかくカズマなんて、さんざん敵から逃げ回った挙句に私とハチマンが弱らせて無力化させたデュラハンから、スティールで首もぎ取っただけじゃないの!もっと私をたたえてよ!敬ってよ!褒めて褒めて、甘やかしてよ!ギルドのみんなで、流石ですね女神様って言って尊敬してよ!」

 

水を召喚して弱らせたところにスティールを食らわせて、生首を奪った後その生首でサッカーをしたらしい…。なにそのバイオレンス。

 

「このかまってちゃんのくそ馬鹿が!黙ってりゃ調子に乗りやがって!ああ、お前の活躍で何とかなったって認めてやるよ!じゃあ、あの時の報酬も手柄も借金も、全部お前ひとりのものな!その調子で借金も一人で返してこい!」

 

「わあああああああああ待って!ごめんなさい、調子に乗ったのは謝るから見捨てないで!」

 

アクアを捨てようとするカズマに、アクアは泣きながらすがる。そんな中俺たちに声がかかる。

 

「まったく、朝から何を騒いでるのだ。みんな見て……いないか。既にギルドの連中も、お前たちに慣れてきたのか…」

 

「みんな早いですね。何か、いい仕事はありましたか?」

 

ダクネスにそう言われ周りを見渡すと確かに誰も気にかけていない。それどころか、パーティーメンバーである雪ノ下と由比ヶ浜こっちに来たばかりの小町ですらスルーしている。

 

「よう、お前らも用意できたか。仕事はまだ探していないよ。というか、この状況じゃ急いで探さなくても、お前らが来てから依頼を受けても大丈夫だと思ってさ」

 

カズマはそう言いながらあたりを見渡し、俺もカズマにならい周りを見る。そこには朝だというのに、飲んだくれている冒険者たちの姿があった。それも仕方ないといえば仕方ない。先日の魔王軍の幹部を撃退した報酬が、戦いに参加したすべての冒険者にも支払われた。それにより、多少なりとも懐が潤った冒険者たちが、わざわざ危険な冬のモンスターを狩りに行く理由がない。

 

「こんな朝から働かずに飲んだくれて…まるで比企谷君みたいね」

 

「あほか俺は酒は飲まないしそもそも家から出ねえよ」

 

「「否定するとこそこなんだ(そこなんですか)…」」

 

「まったくごみいちゃんは…」

 

「お前は働き者に見えてなんとういか…時々カズマみたいだな」

 

「おい俺に文句があるなら聞こうじゃないかドMクルセイダー!」

 

身を震わせている変態はほっておいて、掲示板に近付き、いい仕事がないか目を通す。

 

「…報酬はいいけどどれもモンスターの名前が物騒だな…」

 

牧場を襲う白狼の群れ、冬眠から目覚めた一撃熊etc…。オオカミの群れなんて無理だな。数にもよるが前衛職が少ないこのパーティーじゃ対処しきれない。それに俺たち日本人組、特に小町はこっちに来たばかりで戦闘の経験は浅い。一応俺はベルディアと一対一でやったがごり押しもいいところだ。『雷帝』を使うにしても反動でかいからあまり使えない。まあ対策はもうあるけど。というわけで危険そうなのには関わりたくない。一撃熊は論外だ。

 

「…起動要塞デストロイヤー接近中につき、進路予測の為の偵察募集?……なんだよこれ。デストロイヤーってなんなんだよ」

 

同じく掲示板を眺めていたカズマが呟く。

 

「デストロイヤーはデストロイヤーだ。大きくて、高速機動する要塞だ」

 

「ワシャワシャ動いて全てを蹂躙する、子供たちに妙に人気にのあるやつです」

 

なるほど全くわからん。まあ名前聞くとかっこいいもんなわかるぞ少年たち。そんなことを考えながら、再び掲示板を見る。

 

「…なあ、この雪精討伐ってなんだ?名前からして危険度低そうだけど」

 

雪精を一匹討伐するごとに十万エリス。報酬も高額で、名前からしてもそんな危険そうには思えない。

 

「雪精はとても弱いモンスターです。雪深い雪原に多くいると言われ、剣できれば簡単に四散させることができます。ですが…」

 

めぐみんの言葉に、カズマはその張り紙を剥がしとる。

 

「雪精の討伐?雪精は、特に人に危害を与えるモンスターってわけじゃないけれども、一匹倒すたびに春が半日早く来るって言われるモンスターよ。その仕事を請けるなら、私も準備してくるわね」

 

アクアはちょっと待っててと言い残しどこかに向かった。早く冬を越せるからこんだけ高額なのか…?それにめぐみんがなんか言いかけた気がするんだけど。

 

「雪精か…」

 

少しうれしそうにダクネスが呟く。

 

「なあ、少し胡散臭くないか」

 

俺は小声で雪ノ下に話しかける。

 

「モンスターに関してはわからないけれど、確かにおかしい気はするわね」

 

雪ノ下も同意見らしく、訝しげにしている。しかし俺ら以外全員賛成し色々なことに違和感を覚えながらも雪精討伐に出発した。

 

_____________________________________________________

 

街から離れたところにある平原地帯。街にはまだ雪は降っていないが、ここら一帯は雪で真っ白に染められていた。そしてそこかしこに、白くてふわふわした、手のひらサイズの丸い塊が漂っていた。おそらくこれが雪精なのだろう。見たところ危険性はなさそうだ。そのことにさらに違和感を抱く。

 

(こんな害のなさそうなモンスター?が一匹十万…?)

 

少し思考に没頭していると、カズマがあえてふれなかったことのに触れる。

 

「お前その恰好どうにかならんのか」

 

カズマは、捕虫網といくつかの瓶を抱えた、蝉取り少年冬verのようなアクアに呆れながら言う。そんなカズマに馬鹿を見るような表情で見る。

 

「これで雪精を捕まえて、この小瓶の中に入れておくの!で、そのまま飲み物と一緒に箱にでも入れておけば、いつでもキンキンのネロイドが飲めるって考えよ!つまり、冷蔵庫を作ろうって訳!どう?頭いいでしょ!」

 

なんとなくオチが読める気がするけど、黙っておこう。

 

「で、ダクネス鎧は?」

 

「修理中だ」

 

ダクネスは現在鎧もつけずに黒タイトスカートと黒シャツのみの思春期キラーな服装をしている。そして寒さに興奮しハアハア言ってる。ほんとに揺るがないこの変態。あと俺睨むのやめてね後ろの三人。ボッチは視線に敏感だからわかるんだよ。睨むならカズマ睨め。ちなみに俺の服装は、いつもの服に高校の上着を着ている状態で雪ノ下が青色の由比ヶ浜が桃色、小町が黄色のコートを着ている。俺は服を全くと言っていいほど持っておらず制服を羽織るしかなかったが、三人はいつの間にか服を買っていたらしくそれを着ている。

 

「とりあえずやりますか…」

 

俺たちは気を取り直して、雪精討伐を始めた。

 

________________________

 

「めぐみん、ダクネス!そっちに逃げたの頼む!くそっ、チョロチョロと!」

 

近づかなければふわふわと漂っているだけだが、攻撃を仕掛けると突然素早い動きで逃げる。そのことにダクネスはもちろんカズマも雪ノ下も苦戦していた。雪ノ下は物理攻撃の方法として杖をふるっているが素早いためなかなか当たらない。由比ヶ浜は召喚したスライムが雪精に劣らぬスピードで体当たりを行い倒す。そんなみんなが少なからず苦戦する中、俺と小町は雪精相手に無双していた。

 

「ふん!!!」

 

小町は持ち前の敏捷性を生かし、雪精より速いスピードで色んなところを飛び回り普段よりも鋭く長い爪を使いすれ違いざまに雪精を攻撃している。最近わかったのだが猫の特性を引き継いでいる小町は意識すれば猫のように爪を鋭く長くできるらしい。そして俺はというと

 

「『放雷』」

 

キャベツの時のように電撃を周りに纏わせ放ち、遠くにいようが関係なく倒し、あまりに距離が離れている奴に対してはそいつに向かって指をさし

 

「『雷閃』」

 

その指先に電撃を集中させ、それを雪精に向かって飛ばすことで倒していた。ちなみに技名は、恥ずかしいからものすごく小さな声で言っている。そんな俺たちを見てカズマたちは軽く引いていた。

 

「コマチの動き何あれ速すぎだろ…。」

 

「コマチもすごいがハチマンもだろう。近距離中距離にいる敵は範囲攻撃で倒し遠距離の敵は指から何かを飛ばしそれで確実に射抜いている。あれはすごいとしか言いようがない」

 

「はあはあ…なんだか杖をふるってるのが馬鹿らしく思えてきたのだけれど」

 

「ヒッキーと小町ちゃんすごい…」

 

それぞれが感嘆の声を漏らす中

 

「四匹目の雪精とったー!カズマ、見てみて!大漁よ!」

 

嬉々とした声を上げるアクアの方を全員が見ると、小瓶に雪精がギュッと詰まっていた。全員が捕虫網の方がよかったのかなと思っているとまた声がかかる。

 

「カズマカズマ全然当てられないんで、爆裂魔法で辺り一面ぶっ飛ばしてもいいですか?ていうかなんですかあれ」

 

雪ノ下と同じく杖で攻撃しようやく一匹仕留めためぐみんが、荒い息を吐きながら言う。

 

「あれは気にするな。爆裂魔法か…モンスターが寄ってくかもしれないけど…あの二人いるなら関係なさそうだな。おし、頼むめぐみん。ハチマンたちとは反対のところをまとめて一掃してくれ。」

 

その言葉にめぐみんは嬉々として呪文を唱え…

 

「『エクスプロージョン』っっっ!」

 

日に一度しか使えない、めぐみんの爆裂魔法が雪原に放たれる。冷たく乾いた空気はびりびりと震え、轟音と共に、白い雪原のど真ん中に茶色いクレーターが出来上がる。魔力を使い果たしためぐみんが、雪の中にうつぶせに倒れたまま、自分の冒険者カードを自慢げに見せる。

 

「八匹!八匹やりましたよ。レベルも一つ上がりました!」

 

「爆裂魔法使ったのか。しかし…さすがだな」

 

「やっぱりすごいですねその魔法」

 

爆発音が聞こえ、休憩もかねてカズマたちのとこに戻る。

 

「ふふ~んそうでしょうそうでしょう」

 

めぐみんはうつぶせになりながらどや顔をする。うつ伏せじゃなかったらもうちょっと決まってたけどな…。しかしほんとになんでこんな楽なのにあんな高額なんだ…?俺がそう考えているとその答え合わせをするかのようにいきなりそれは俺たちの目の前に現れた。

 

「…ん、出たな!」

 

ダクネスは突然現れたそいつを見て、嬉しそうにほくそ笑みながら大剣を構える。隣でうつ伏せになっていためぐみんは既に死んだふりにシフトチェンジしている。はやいなおい。かくいう俺もそいつが現れてから冷や汗が止まらない。本能が全力で警鐘を鳴らしている。

 

「………なぜ冬になると、冒険者たちがクエストを受けなくなるのか。その理由を教えてあげるわ」

 

俺たちの前に仁王立ちしているそれは、ズシャリと一歩、前に出た。

 

「あなた達も日本に住んでいたんだし、昔から、この時期になると天気予報やニュースで名前くらいは聞いたことがあるでしょう」

 

全身を白い重厚な鎧でつつんでいるそれは、俺達に途方もない殺気をぶつける。殺気をぶつけられ後ろにいる小町達ですら少し震えている。

 

「雪精たちの主にして、冬の風物詩ともいわれている……」

 

日本式の白く重厚な鎧兜に、同じく真っ白で、素晴らしくきめ細かな陣羽織。そして、白い総面をつけた鎧武者が、白い冷気を漂わせる刀を握り立っていた。その姿にアクアの答えを聞くまでもないが一応続きの言葉を待った。

 

「そう。冬将軍の到来よ」

 

「ばかっ!!このくそったれな世界の連中は、みんな揃って大馬鹿だ!!」

 

声には出さなかったが、カズマに心底同感だ。ほんとバカだろこの世界。すると恐ろしく斬れそうな抜身の刀を煌めかせ、冬将軍が襲ってくる。襲われたのは一番近くにいたダクネス。

 

「くっ!?」

 

ダクネスが、それを大剣で受けようとするがキンっと澄んだ音を立て、ベルディアの猛攻にすら耐えた大剣が、あっさりと真ん中で叩きおられた。

 

「ああっ!?わ、私の大剣がっ……!?」

 

アクアが冬将軍とそれと戦うダクネスから距離を取り…

 

「冬将軍。国から高額賞金を懸けられている特別指定モンスターの一体よ。冬将軍は冬の精霊……。精霊は、元々決まった実体を持たないわ。出会った人達の無意識に思い描く思念をうけ、その姿へと実体化するの。火の精霊は、すべてを飲み込み焼き尽くす炎の貪欲さから、凶暴そうな火トカゲに。水の精霊といえば、清らかで格好良くて知的で美しい水の女神を連想して、美しい乙女の姿に。…でも冬の精霊の場合はちょっと特殊でね?危険なモンスターが蔓延る冬に街の人間どころか、冒険者たちですら出歩かないから、冬の精霊に出会う事自体が稀だったのよ。……そう、日本からきたチート持ち連中以外はね」

 

雪精を詰めた小瓶を抱きかかえたまま、冬将軍について教えてくれた。目の前の冬将軍はまるで息吹のように、口からコオオッと白い冷気を放っている。俺たちは剣を折られたダクネスの隣に立ち、目の前の冬将軍に油断なく構える。

 

(精霊はイメージを読み取りそれを再現するつまり)

 

「……つまりこいつは、日本から来たどっかのあほが、冬といえば冬将軍みたいなノリで連想して生まれたのか?なんて迷惑な話なんだよ、どうすんだこれ。冬の精霊なんてどうやって戦えばいいんだよ!?」

 

正直目の前のこいつに勝てる未来が見えない。頼りのめぐみんも今日は爆裂魔法を使えない。後ろの三人も一応構えをとっているが震えている。あんだけ殺気をぶつけられたら無理もない、何なら俺も今すぐこの場から全力で走って逃げたいくらいだ。どうするか思考をめぐらせていると、アクアが手にしていた小瓶を開け、雪精たちを解放し始めた。

 

「みんな、聞きなさい!冬将軍は寛大よ!きちんと礼を尽くして謝れば、見逃してくれるわ!」

 

アクアはそう言って白い雪が積もる雪原に、そのまま素早くひれ伏した。

 

「DOGEZAよ!DOGEZAをするの!ほら、皆も武器を捨てて早くして!謝って!皆も早く、謝って!!」

 

ぺたりと頭を雪につけ、俺がエリス様に行ったものよりも、見事なDOGEZAを行った。いいのかそれでいいのか、女神なんだろお前。何の迷いもなく土下座をしたアクアにひきつつも冬将軍の方を見ると確かに土下座したアクアには目もくれなくなる。その分俺たちの方に視線を向ける。その視線を受け俺達もあわてて土下座をする。しかしカズマの隣にいるダクネスは、未だに突っ立ったままでいた。

 

「おい何やってんだ、早くお前も頭を下げろ!」

 

ダクネスはそんなカズマの声も聞かず、恨めしそうに冬将軍を睨み付けていた。

 

「くっ……!私にだって、聖騎士であるプライドがある!誰も見てないとはいえ、騎士たる私が、怖いからと言ってモンスターに頭を下げる訳には…!」

 

そんなことを言うダクネスをカズマは問答無用という風に左手で頭をつかみそのまま無理やり下げさせた。

 

「いつもはモンスターにホイホイついていこうとするお前が、どうしてこんな時だけくだらないプライドを見せるんだ!」

 

「や、やめろお!くっ、下げたくもない頭を無理やり下げさせられ、地に顔を付けられろとかどんなご褒美だ!ハアハア……。ああ、雪が冷たい…!」

 

頬を赤くしながら形だけの抵抗を見せる変態と一緒にカズマも頭を下げる。ちらりと冬将軍を見ると既に刀を収めていた。しかし纏う殺気と視線は何一つ変わっていないそのことに冷や汗をかきながらあることに気づきすぐに叫ぶ。

 

「「カズマ!武器を捨てろ(捨てて)!!」」

 

同じく気づいたであろうアクアが同時に叫ぶ。カズマは武器を持っていることに気づいたのか慌てて剣を投げ捨て焦りからか頭を上げる。

 

(バカっ!?まずい!?)

 

冬将軍は鞘におさめた刀のつばに左手を添え、親指がツバをそっと押し白刃を覗かせる。俗にいう居合の構えをする。それに気づいた俺が飛び込もうとすると一瞬冬将軍の右手がぶれる。そして聞こえる、チンをいう澄んだ小さな音。それと同時にカズマの頭が本来ある場所から離れ、そのまま重力に従ってカズマの頭は鈍い音を立て地面に落ちる。その光景に誰もが静まり返る中怒号が響き渡る。

 

「て、てめええええええええええええ!!!!!!!」

 

俺はそう声を上げると体に電撃を這わせ刺激すると同時に手に電撃を集中させジャイアントトードの時と同様に槍もどきを作り出す。

 

(『雷人』ッ!)

 

『雷帝』の下位互換である『雷人』を展開する。『雷人』は全てにおいて『雷帝』の下位互換の技である。その分反動も少ない。そして『雷人』を展開させた後作り出した槍を握りしめ、冬将軍に狙いを定めおもっきりぶん投げる。

 

「『雷貫』ッッッ!」

 

ハチマンの手から放たれた槍は、ジャイアントトードの時とは比べ物にならないほどのスピードで冬将軍のもとに飛んでいく。そして冬将軍は刀を抜き振り払うようにして槍をはじく。が予想外の威力に刀が大きくはじかれ体ものけぞらす。八幡はこの隙を逃さず一瞬にして冬将軍の懐に入り

 

(雪の精霊に魔法はおそらくそんなに効かない。だから有効なのは物理攻撃。そして…)

 

その白い重厚な鎧の前で手をかざし、魔力をありったけこめ魔法を唱える。

 

「『インフェルノ』ッッッ!!!!!!」

 

至近距離で魔法が直撃した冬将軍は体勢を崩していたこともあり後ろに吹き飛ぶ。俺も少し後ろに飛ばされるが何とか体勢を崩さず立て直す。そして怒りに染まっていた思考も少し冷め考える。

 

(雪の精霊だから炎が効くと思ったけどどうだ…?)

 

吹き飛ばされた冬将軍の方を見るとすでに立ち上がっており抜刀し目の前まで迫っていた。

 

(っ!?あぶな!!)

 

ギリギリのところで剣を避けるが剣が髪にかすり、きられた髪が宙を舞う。

 

(効いてない…!?…いや鎧が崩れてるし所々燃えてる。やっぱり有効打は炎系統の魔法と物理攻撃。有効打はわかった後は方法だ。そしてこいつだけは絶対に倒す)

 

俺はちらっと雪ノ下たちの方を確認する。雪ノ下、由比ヶ浜、小町は俺を心配そうに見つめ、アクアとダクネスはカズマのそばによりアクアがカズマをぺちぺちと触り、ダクネスはアクアの近くでカズマの手を握り祈るように目を閉じている。そしてめぐみんは死んだふりをやめ、こっちをちらちら確認するように見ている。よく見ると目が少し潤んでいるように見える。

 

(ああっくそ…!許さねえ絶対)

 

明確な敵意を瞳にこめ冬将軍を睨む。しかしすぐに驚愕で目を見開く。冬将軍は胸を押さえ片膝をつき心なしか苦しそうにしている。それを見て好機とばかりに魔法を唱える。

 

「『ボトムレス・スワンプ』!」

 

この魔法は足元に巨大な沼を発生させ、足止めをする魔法。直接的な殺傷能力はない。けど今は時間が稼げれば十分。

 

(今の俺一人じゃあいつには勝てない単純に火力不足だ。だから…)

 

俺は冬将軍が沼ではまってあがいているのを確認すると雪ノ下たちのもとへと行く。

 

「頼む力を…貸してほしい」

 

「「「!」」」

 

「あいつだけは…倒したいどうしても。これは俺のわがままだからきかなくてもいい…でもできれば力を貸してほしい」

 

はっきりと力を貸してほしいと素直に頼めない自分に辟易しながらも言葉をつなぐ。俺の発言を聞いた三人はそれぞれ反応を示しおれは

 

「ヒッキーが…ヒッキーが私たちを頼った!え!え!?」

 

「おお落ち着いてください結衣さん!あれですきっと頭を打って…」

 

「比企谷君どこを打ったのかしら隠さなくていいのよ手遅れになるわ…いやもう手遅れなのかしら…?」

 

三人の言葉でフルボッコだドン!泣くぞマジで

 

「お、おまえら…」

 

普通ならここで了承が出て使うはずのセリフが別の形となって出てくる。そんな俺に三人は

 

「少しというか結構驚いたけど任せてヒッキー!」

 

「兄を助けるのが妹の仕事ですから!今の小町的にポイント高い!」

 

「ええ少し怖いけれど私たちに任せなさい」

 

頼もしいことを言う。

 

「それよりどうすればいいのかしら後あなたのその状態って…」

 

おそらくベルディア戦で見た姿と同じことに不安を抱いているのだろう。

 

「時間がないから説明は省くけど大丈夫だ。後作戦だけど…」

 

俺は大丈夫な旨だけ伝え、作戦を話した。

 

__________________________________

 

「くるぞ」

 

俺が出した沼にはまっていた冬将軍がはい出てくる。

 

「じゃあ作戦通りに」

 

俺はそれだけ呟くと冬将軍の方駆け出す。もちろん冬将軍がそんな俺を見逃すはずもなく向かってくる俺に対して刀を縦に振るう。

 

(『瞬覚』)

 

目から発せられる電気信号を【雷帝】により直接脳内に送り爆発的に瞬発力を高める。目への負担が大きくそんな長時間使えないが今の一瞬にかけ使う。そして高まった瞬発力により冬将軍の攻撃を体をねじることで避け、がら空きの右肩を蹴ろうとする。本来ならダメージは少ない。だが。

 

「『エンチャント・ブレイズ』ッッ!!」

 

小町がそう叫ぶと俺の足に炎が纏わりつき、俺は冬将軍の右肩目掛けてそのまま蹴りぬく。右肩を狙った理由は、冬将軍の刀は左側の腰についており右肩を破壊することで抜刀しにくくするためである。正直あの居合は見切れる気がしない。そして炎が纏わりついたのは小町の職業拳闘士のスキル『エンチャント』を使ったからである。『エンチャント』は任意の場所に属性を付与する技。勿論付与するのは冬将軍に有効打となる炎。『雷人』により強化された力と苦手属性で殴られ鎧にひびが入り、冬将軍は右腕をだらんとぶら下げる。その様子を確認すると作戦を次の段階に移す。

 

「雪ノ下!由比ヶ浜!やれ!」

 

俺がそう叫ぶとともに、冬将軍の周りをスライムが囲う。スライムの魔法『分裂』である。分裂した数は二十。分裂した分スライムは小さくなっているが問題ない。スライムが分裂したのを確認すると雪ノ下と由比ヶ浜は

手を繋ぎ雪ノ下と由比ヶ浜が叫ぶ。

 

「『インフェルノ』ッ!」

 

「『魔法転送』!」

 

すると分裂したスライム達の前に魔法陣が出来上がり無数の炎が冬将軍を襲う。召喚士のスキル『魔法転送』はその名の通り魔法の威力を損なわず転送する。今回はその召喚士である由比ヶ浜が『魔法転送』を使い由比ヶ浜を媒介として雪ノ下の魔法を飛ばす。魔法を飛ばし続けるが

「…っはあはあ、ごめんなさい…限界だわ」

 

雪ノ下が【魔力無限】の副作用である身体の低下による限界を迎え、冬将軍を襲っていた炎の嵐が止む。魔法が止んだのを確認すると俺と小町は煙に向かって駆け出す。

 

(これでやられてねえかな…)

 

そんなフラグを立てるようなことを考えていると速攻でフラグを回収するように煙が冬将軍の手によって晴らされる。煙が晴れた先にいた冬将軍は刀を地面に落とし体を守っていたはずの鎧がボロボロになっていた。攻撃手段がなくなった冬将軍は左手を握り、向かってくる俺たちを表情のわからない兜の奥でとらえると殴り掛かる。向かってくる俺たちよりもでかい拳にビビりながらもあらかじめ『エンチャント』をしておいた右手を小町は左手を握りしめ拳を作り出し突き出す。

 

(前の使用でたぶん少しくらいの使用なら…!)

 

俺は前回より体が強固になっている事で少しの使用なら大丈夫だと思いあれを使う。

 

(『雷帝』…!)

 

心でそう唱えると俺を纏う電撃の量が増す。そして俺達と冬将軍の拳が交わり拮抗するがすぐに均衡は崩れ俺たちが冬将軍を押し出す。このまま続ければ確実に勝てるが『雷帝』の反動の関係で時間を気にし、小町に『雷人』をかける。

 

(!)

 

元々筋力のステータスが規格外なこともあり力が跳ね上がり冬将軍の拳を砕く。冬将軍の拳を砕き行き場を失った強大な力は冬将軍の胸に吸い込まれていき吹き飛ばす。冬将軍を吹き飛ばした俺たちはすぐに距離を取り警戒する。しかし冬将軍は微動だにしない。

 

「俺が確認してくる」

 

三人には待機してもらい冬将軍の生死を確認するため警戒度MAXでゆっくりと近づき覗き込むと…

 

(とんでもない馬鹿力…)

 

冬将軍の胸からは雪が見える状態だった。つまり胸を吹き飛ばしぽっかりと穴をあけてしまったのである。テヘペロ。すると冬将軍の体から白い煙が上がる。俺はすぐに後ろに飛び、雪ノ下たちのところまで戻る。実は『雷帝』の発動で筋肉痛がひどいが鞭を打って構える。しかし

 

「消えてってる…」

 

冬将軍は、煙を上げ始めると同時に少しづつ体が透けていき最終的に消えていった。完璧に消えたことを確認した俺たちは構えを解き、めぐみんを担いでカズマのもとへと向かう。

 

(っ…)

 

そこにはアクアにより完璧に首をつなげられ目をつぶりアクアに膝枕をされているカズマの姿があった。そのことに我慢していたが思わず涙が頬を伝う。そんな俺を置いてアクアはいきなりカズマの遺体に向かって叫びだす。

 

「さあ帰ってきなさいカズマ!こんな所で何をあっさり殺されてんの!死ぬにはまだ早いわよ!」

 

「ちょっとカズマ聞こえる?あんたの体に『リザレクション』って魔法をかけたから、もうこっちに帰ってこれるわよ。今、あんたの目の前に女神がいるでしょう?その子にこちらへの門を出してもらいなさい」

 

何もない虚空に向かって話しかけるアクア。そして更に会話?は続きその会話の情報をまとめると今はなしている相手は死んだカズマでエリス様はパッド入りってことだがわかった。そして会話?が終わり

 

「これで生き返るわ」

 

アクアのその言葉に、目を見開く。

 

(いきか…える…?)

 

俺が呆然としているとめぐみんがカズマにすがり泣きながら叫ぶ。

 

「カズマ…!カズマっ!カズマ、起きてくださいっ!カズマっ!」

 

それと同時にカズマは目を開ける。

 

「はっ…はは…」

 

本当にカズマが目を覚まし生き返っている事に変な笑いが出る。喜びやら色々と押し寄せる。

 

「…あ、やっと起きた?ったくあの子は、頭が固いんだからまったく」

 

カズマが起きたことに気づいたダクネスとめぐみんは無言でカズマを抱きしめる。それが照れ臭いのか少し頬染める。そんなカズマを見てアクアはにやにやと笑みを浮かべ

 

「ちょっとカズマ、照れてないで何とか言いなさいよ。私たちに何か言うことがあるでしょう?」

 

そんなアクアにカズマはぽつりと呟く。

 

「チェンジ」

 

「上等よこのくそニート!そんなにあの子に会いたいなら、今すぐ合わせてあげようじゃないの!」

 

そんないつも通り騒がしくなる二人をみるのをやめ雪ノ下たちの方を向く。

 

「お前らもしかして知ってた?」

 

「まあ前ベルディアって人との戦いのときに死んでた人生き返らしてたし…」

 

(そんな話聞いてないんですけど…。そんなん知らなくてめちゃめちゃ切れてたんですけど…何なら泣いてたんですけど…黒歴史じゃん黒歴史確定じゃん…。だからこいつらあんな動揺せずに落ち着いてたのか…)

 

俺が軽く死にたくなっていると俺の心境を知ってか知らずか追い打ちをかける。

 

「いや~お兄ちゃんかっこよかったよ?」

 

「そうね、『て、てめええええええええええええ』って叫んで怒ってたものね」

 

「普段感情を出さないヒッキーがカズマンのために怒っててかっこよかったよ!」

 

約二名がアクア同様ににやにやと笑みを浮かべそんなことを言ってくる。由比ヶ浜の場合100%悪意なしで言ってくるからたちが悪い。そんな3人からあらぬダメージを受けているとカズマが俺に近付く。

 

「その…ありがとなハチマン聞いたよ俺が死んだあと怒って冬将軍を追い払ったって」

 

「……別に気にするなてか追い払ったんじゃなくてむぐっ!」

 

俺がそこまで言いかけるとダクネスとめぐみんに口を塞がれる。

 

(ハチマン冬将軍を討伐したことは黙っててくれ。じゃないとカズマがまただらけてしまう。)

 

(そうですよ冬将軍みたいなのはごめんですけど強敵と戦えなくなるのは嫌です)

 

戦えなくなることが嫌な旨を俺に伝える。けど耳元でしゃべるのやめて!!

 

「…?」

 

そんな俺たちにカズマは訝しげな顔を浮かべる。

 

「ぷはっ…なんでもない気にするな」

 

二人の手を口から離し嘘を吐く。基本的に働きたくないが二人が怖いから言うとおりにした。

 

「?そうか」

 

カズマは大して気にした様子も見せず俺たちは帰路につこうとすると視界が揺れる。

 

「あ、れ」

 

そしてそのまま片膝をつく。

 

「「「「「「「ハチマン(比企谷君)(ヒッキー)(お兄ちゃん)っ!」」」」」」」

 

そのことに気づいたみんなが俺に駆け寄る。

 

「お兄ちゃん目から血が!」

 

「ど、どうすれば!?」

 

「お、落ち着けユイま、まずは人工呼吸を…」

 

「お前が落ち着けポンコツ明らかに間違えてるだろうが」

 

「大丈夫だ…多分疲れただけだ」

 

「疲れたからって普通目から血は出ないですよ…」

 

全員からジト目を向けられ目をそらす。そんな俺に全員がため息をつく。ため息をつくと幸せが逃げるぞと言おうとしたがそんなことを言えば多分殺されるのでやめた。俺は立ち上がろうとするとダクネスが俺の前で屈む。

 

「あの…ダクネスさん?何を…」

 

「む…?いやおんぶを」

 

「結構です大丈夫なんでほんとに」

 

男が女の子におんぶされるのは絵面的にも男としてもまずい。なので断固拒否し立ち上がるが少しふらつく。

 

「「…」」

 

そんな俺を見て無言で近寄ると俺の膝裏と首に手を回すとそのまま持ち上げる。そう俗にいうお姫様抱っこをされる。ふらついていた俺は抵抗できず顔を覆い

 

「おんぶでお願いします…」

 

もう何言っても駄目だと悟り、ダメージの少ない方を選びおんぶをされたまま街へと帰った。

 

______________________________

 

「ハチマンとコマチのおかげでだいぶ稼げたけどそれでも借金完済まではまだまだだな…」

 

ギルドへ報告を終えた俺たちはギルドの中でくつろいでいた。ちなみに雪精を俺が54匹小町が30匹倒していた。今回だけでも一千万近く稼いでいるがそれでもまだほど遠い。すると忙しなくギルド職員がこちらに小走りでやってくる。

 

「あの…ハチマンサンちょっと…」

 

俺はギルド職員に呼ばれ大体理由は予想できるのですぐに席を立ちギルド職員についていく。

 

「冬将軍の件についてなんですけど…」

 

予想通り冬将軍の事について話を始める。実は換金時にギルド職員にあまり驚かないでほしいことと後でその話をしたいと頼みこんでいた。カードを見せて冬将軍が討伐されたことを確認すると流石はギルド職員、頼んだ通りに驚きは抑えこむ。がすごい顔を引きつらせていた。

 

「冬将軍の賞金は二億です。本来は大々的にやるものなんですが…穏便に済ませますか?」

 

「それでお願いします」

 

内心二億という額に驚きつつも平静を装い返す。

 

「分かりましたではまた後日受け取りに来てください」

 

それだけ伝えるとギルド職員はカウンターへと戻っていく。俺も戻ろうとカズマたちの方を向く。するとやっぱりカズマを中心に騒がしくなっておりそんな光景を見て思わず笑みがこぼれる。そして俺は呆れた顔をしながら小走りで戻った。

 

 

 




後書き

遅れて申し訳ございません。さて今回はオリジナル設定や色んな技が出てきました。これを考えるのとなれない戦闘シーンをかくのに時間がかかってしまいました。なれないことなので変なとこがあるかもしれません。あとは来たコメントに答える時間になります

Qこのすばメンバーは、ヒロインにするならこのキャラみたいな候補はいます?
個人的にはアクアとエリスの女神コンビと妹属性のアイリスを希望。特にアイリスは小町との仁義なき妹争いが見たい。

Aまだ決まってはないです。めぐみんは原作通りカズマのヒロイン枠で行こうと思ってます。一応ダクネス、アクア、エリス(クリス)、アイリス、ゆんゆん、ウィズ辺りは考えてます。

Q帰れるのか小町……物の持ち込みができるかどうかでものすごく価値が変わるなあ。スマホ持っていければ動画でやり取りできるし。マッカンも……

A原則持ち込みはできません。

Qこのすばだとトドメを刺した人しか経験値をもらえないはずだけどガハマさんは召喚獣やテイムモンスターがトドメさしても経験値もらえるんだろうか?

Aスライムにも由比ヶ浜にも経験値が入ります。

どんな些細な事でも質問でもしてくださるとうれしいです。ではまた次回お会いしましょう。


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