歌の世界の【奏者】光の戦士 (シャイニングピッグEX)
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宙から落ちた日

はじめましての方ははじめまして!久しぶりの方はお久しぶりです!ぜのぎんと申します!

この間シンフォギアを一気見してめちゃくちゃハマったので書くことにしました!

まだまだ拙い文章だったり表現力不足だったりしますが、その辺は暖かい目で見守ってやって下さい。

では、よろしくお願いします!


遥か宇宙のその彼方…幾つもの次元を超えながら赤い光の球は紫の光の球を追いかけていた。

 

 「待て!次元犯罪者一万三千五百五十五号!」

 

 「待てと言われて待つやつがどこにいる!」

 

 「新しくお前の名前をそこに刻んでやるよ!」

 

 赤い球は加速し、紫の球の前へ先回りして光の巨人、ウルトラマンと呼ばれる存在へと姿を変えた。

 

 巨人の頭部には青い水晶が目の間から頭の頂点までのび、胸には肩から真ん中にあるカラータイマーまで禁と銀のプロテクターがついており、体は青と赤と銀の線が流線型で入っていた。

 

 『零くん、彼をこれ以上逃すのは危ない。ここで倒そう!』

 

 「了解!久しぶりだけど行けるよな?」

 

 『勿論だとも』

 

 「よし!頼むぜ!」

 

 「フッ…いいだろう、私を倒せるのならばやってみるがいい!」

 

 紫の光の球も黒い闇の巨人へと姿を変えた。

 

 ゼノダークネスも頭部に赤い水晶がつき、青、赤、黒の線と黒と金のプロテクターがゼノと同じように入っていた。

 

 「平行世界の俺が手に入れるはずだった力…ウルトラマンゼノだったもの…ゼノダークネス」

 

 「平行世界の柊零が手に入れるはずだった私…ウルトラマンゼノ…今ここで決着をつけるぞ!」

 

 「行くぞッ!セャァ!」

 

 ウルトラマンゼノとゼノダークネスは同時に飛び出し、お互いの拳がぶつかり合う。

 

 そしてそのままお互いの手を掴み、ゼノは体勢を変えてダークネスの腹部を蹴り飛ばした。

 

 「グゥッ!」

 

 「まだまだ!セャッ!」

 

 ゼノはダークネスの後ろへと回り込み、ダークネスが振り返ると同時に拳で殴り飛ばし、ダークネスも負けじとゼノに向かって飛び込んで胸にドロップキックを入れてゼノを吹き飛ばした。

 

 「くっ!逃がすものか!」

 

 「どうした?その程度か?」

 

 そう言うと、ダークネスは手元に闇のオーラを集め、黒い剣を作り出した。

 

 「あれは…ジェネレーションエクスカリバー!?そんな…」

 

 『あれはISのリュウセイと零、そして私の三人が完全に合体して初めて出来るものだ…まさか奴はリュウセイの力も手に入れているのか!?』

 

 「ご名答だ、ウルトラマンゼノ…ただし、これは私が独自に作り上げたジェネレーションダークカリバーだがね…」

 

 「面倒なもん作りやがって…だけど条件を同じにすりゃあなんてこたあねぇ!」

 

 ゼノに変身している青年、柊零はインフィニット・ストラトス、通称ISと呼ばれる機械を起動させた。

 

 『ずっと待っていたぜWait!』

 

 「おう!リュウセイ、お前も行けるよな!」

 

 『任せておけ!零!』

 

 「よし!行くぞ!!」

 

 『『「ゼノバース・ゼノ!!!」』』

 

 腕輪となっていたリュウセイが光りだし、ゼノの内部でリュウセイが零に装着され、ゼノの身体も光り輝き、ウルトラマンゼノは光の戦士から光の聖騎士へと姿を変えた。

 

 身体と頭部の水晶は金色に変わり、身体の線も金と銀に変わって金色のマントが装着された。

 

 「シュウアッ!」

 

 ゼノは光の聖剣、ジェネレーションエクスカリバーを手に持ってゆっくりと聖剣を構えた。

 

 「…行くぞ!」

 

 ゼノは聖剣を強く握り、マントをたなびかせてダークネスへと一瞬で間合いを詰め、ダークネスが怯む暇も与えずに強い斬撃を与えた。

 

 「ハァッ!」

 

 「グッ!」

 

 再び間合いを詰めて聖剣を構え、体を捻ってダークネスに強い斬撃を加えた。

 

 「くっ…バカな…貴様の剣の技量はそこまで強いものではなかったはず…!」

 

 「私も日々成長してたいたんだ。貴様のようにずっと檻の中で歩みを止めていた訳では無い!」

 

 「そういう事か…!」

 

 「力の差は歴然だ。この場で倒されるか大人しくするか…選ぶがいい」

 

 「…私もこのままやられると思っているのか!」

 

 「何!?」

 

 次の瞬間、ダークネスは邪剣に闇のエネルギーを貯め、ゼノに強力な一撃を与え、その威力に思わずゼノは元の姿に戻ってしまった。

 

 「がはっ…」

 

 「これで終わりではないぞ!はァァァァァ!!」

 

 「なっ…何を…!?」

 

 ダークネスは腕を十字に組み、ゼノに紫と赤の光線を放った。

 

 「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 「この世界でそのまま死ぬがいい!ウルトラマンゼノ!柊零!!」

 

 「うああああああ!!」

 

 ゼノは光の粒へ、光の粒は零へと変わり、周りを光のバリアが覆っていた。

 

 「フン…このまま倒してもいいが、助けを呼ばれても面倒だ…ハァッ!」

 

 ダークネスは上へ向けて光線を放ち、光線は瞬く間に広がって宇宙全体を闇が覆った。

 

 「ダークネス…何をしやがった…」

 

 零はボロボロの体を起こしながらダークネスに問いかけた。

 

 「まだ意識があったか…まあいいだろう。お前はこの世界から出る事は出来ない。永久に!」

 

 「なんだと…!?」

 

 「まあ、仮に出るとしても、出るよりもお前が死ぬのが先かもなぁ!」

 

 「くっ…!」

 

 ダークネスは高笑いをしてどこかに飛び去り、零はそのまま意識を失ってしまった。

 

 『…ゼノ、まだ意識はあるか?』

 

 『リュウセイ…君はまだ機能が生きているのか?』

 

 『ああ、だが次に起動すれば間違いなく完全に壊れる…だから、俺は零をこの宇宙にある地球に送る。ゼノ、お前は道案内を頼む』

 

 『だが…』

 

 『零が死んでしまえば俺達は二度と立ち上がれない。だが、零が生きている内は復活する時はいつか来る。それまでしばしの別れだ…』

 

 『…分かった。私も君と零君のバリアとなって地球まで送り届けよう』

 

 『…助かるぜThank you』

 

 『礼はいらないとも』

 

 そう言った瞬間リュウセイは零の身体に装着され、意識がない零の身体をゼノのナビゲートで地球に向かって飛び出した。

 

 そして、数時間としない内に太陽系が見え、地球へと辿り着き、夜の暗闇の中、零の身体が市街地の道路に横たわると同時にバリアが消え、リュウセイはひび割れた腕輪に変わり、人間の姿で倒れ込んだ。

 

 『また会おう…next time』

 

 その音声と共にリュウセイの腕輪にある水晶から光が消えた。

 

 

 

 「…」

 

 零はベッドの中で目を覚まし、身体を起こし、辺りを見渡した。

 

 「ここは…」

 

 周りは白い壁の中に難しそうな機械が並べられ、近くの台車には壊れたリュウセイの腕輪とゼノブラスター、携帯電話や財布など持ってきたものが置かれていた。

 

 「そうか…俺はあの時ゼノダークネスに負けて…」

 

 すると、扉が開き、一人の男性が部屋へと入ってきた。

 

 「お、目を覚ましたのか。身体の調子はどうだ?」

 

 「え、ええ。無事で…いてて…」

 

 零は腹部をおさえながら身体を起こそうとしたが、男性に優しくベッドに寝かされた。

 

 「まだ無理はするな。君は発見された時、傷だらけだったんだからな」

 

 そう言われて身体を確認すると腕や足に包帯が巻かれていた。

 

 「あ、ありがとうございます…」

 

 「気にするな。それで、君はどうして倒れていたんだ?君の周りにはノイズが暴れた後も何も無かった。なのに、傷だらけで倒れているのは何か訳があるんじゃないのか?」

 

 男性はしゃがみこんで零と目線の高さを合わせた。

 

 零は少し考え、全てを話すことにした。

 

 「…信じて貰えないかもしれないけど、俺は別の世界から来たんです」

 

 「別の世界?」

 

 「はい。この宇宙とは別の次元、別の宇宙で脱獄者を追いかけていたのですが、途中で戦闘になり、負けてしまって…そして気がついたらここに…」

 

 「ふむ…色々と気になるところはあるが、君の身体の傷や君の持っていた道具の未知のテクノロジーを見る限り、嘘だとも思えないな…」

 

 「…あの、こんな事を聞くのは変かもしれませんが、俺はどうやってこの地球に?」

 

 「どうやって来たか?ああ、それは君の腕輪の機械と光のバリアのようなものが君の身体を包んで街にゆっくり下ろしたんだ。この光景は我々も驚いたが…君が人間なら我々も保護しないといけないしな」

 

 「そうだったんですか…」

 

 そう言われて零はもう一度腕輪とゼノブラスターの方を見た。

 

 身体が、頭が覚えている。あの貫くような痛みを。

 

 「…」

 

 「…我々には理解も及ばない、壮大な戦いがあったのだろうな。身体の傷が癒えたらまた色々と聞かせて欲しい。我々で良ければ君の力になろう」

 

 「…ありがとう、ございます」

 

 「ところで、つかぬ事を聞くが…」

 

 「?」

 

 「君は…男性、でいいんだよな?」

 

 「え?あ、はい…」

 

 零は女性のような顔つきに腰まで伸びた水色の髪があるのだ。女性に間違われても仕方がないのである。

 

 「だよな。うむ、ありがとう。また立てるようになったら教えてくれ。名刺を渡しておくから、俺の居場所を知りたくなったら電話してくれ。まあ、ほとんどはここのどこかにいるが、外にいる時もあるのでな」

 

 そう言って男性はベッドの近くの台車に名詞を置き、部屋を出た。

 

 「…風鳴…弦十郎さんか」

 

 零は名刺を手に取って目で読んだ。

 

 「特異災害対策本部…司令官…」

 

 とりあえず零は身体を起こし、携帯電話を手に取って今の時間を見た。

 

 画面に表示された時間は朝の九時ちょうどを示していた。

 

 「…さっきの人を探して、色々聞いてみよう」

 

 零はベッドから地面に立ち、持ち物を回収して部屋を出る事にした。

 

 すると、飲み物を二つ持った先程の男性、風鳴弦十郎にばったり会った。

 

 「お、もう起きれるのか」

 

 「はい。えと…」

 

 「風鳴でも、弦十郎でもなんでも好きな風に呼べばいい」

 

 「じゃあ、弦十郎さん。こことこの世界について色々教えてください」

 

 「分かった。では、俺についてきてくれ」

 

 そう言って弦十郎は零に飲み物が入ったカップを一つ手渡し、零もそれを受け取って弦十郎についていった。

 

 「君はこの世界についてどこまで知っているんだ?」

 

 「ここが地球ってことくらいしか…」

 

 「そうか…なるほど。では一から説明しないといけないな。その前に、君の名前はなんだ?」

 

 「俺は柊零です。今は二十歳です」

 

 「零くんか、よろしくな」

 

 「こちらこそよろしくお願いします」

 

 そう言って弦十郎は零の方を向き、二人は握手を交わした。

 

 「それで、この世界のことだが、この世界にはノイズと呼ばれている怪物がいる。ノイズ達はとても厄介な性質を持っていて、人間に触れるとその人間を炭に変えてしまう」

 

 「人間を…炭に…」

 

 「ああ。だが、我々もノイズに対抗する武器があるんだ」

 

 「武器?」

 

 「シンフォギアと言って、聖遺物の欠片のエネルギーを使って戦う武装の事だ。名前にもある通り、歌で起動し、歌いながら戦うんだ」

 

 「歌で?」

 

 「うむ。戦いながら歌わなければならない故に、装着者にはかなりの負担をかけてしまう」

 

 「歌いながらですか…」

 

 「うむ。とは言え、これがノイズに対する唯一の武器でもあるのだ」

 

 「凄い武器なんですね」

 

 「ああ。とは言え、失ってしまった命も沢山ある。たとえシンフォギアがあっても、助けられない命や、届かなかった手もあるんだ」

 

 「…」

 

 「それで、ここ特異災害対策本部二課はそのシンフォギアの装着者をバックアップする組織という訳だ。大体わかったか?」

 

 「はい!」

 

 「よし。それじゃあ、零くんがいた世界はどんな世界か教えてくれないか?」

 

 「はい。俺は…」

 

 零はこれまでの生い立ちを話した。ゼノ細胞の実験体として生まれたこと、そして様々な世界で様々な悪を倒してきた事などを全て明かした。

 

 「生まれ変わり神の如き力を手に入れる事を運命付けられた細胞…そんなものが…」

 

 「普通、ゼノ細胞と言うのは転生した者が生まれ変わる時に力を使えるようにする為に転生した者の身体に何個か入るようになっているのですが、俺はそのゼノ細胞だけで構成されているんです。だけど、それ故に延々と悪と戦う苦しみは誰かに殺されるまで終わることは無いんです…」

 

 零の顔は少し寂しげだった。

 

 「どんな世界でも、どんな適合者にもなれる…けれど、負う苦しみや体への負荷は普通に人間と変わらない…」

 

 「…俺には零君の苦しみは分かってやることは出来ないかもしれんが…力になる事は出来るんだ。だから、いつでも頼って欲しい」

 

 「ありがとうございます…そう言って下さるだけでも助かります」

 

 「それは良かったよ。さあ、それじゃあお互いのことも分かったし、基地の中を案内するとしよう」

 

 そう言って弦十郎と零は基地の中の施設や部屋を一通り見て回った。

 

 「…とまあ、こんな所だ。ところで、これから、君はどうする?ここで傷を癒したら、また悪の親玉を探しに行くのか?」

 

 「いえ、恐らく無闇に探しても見つからないでしょうし…しばらくの間、ここで働かせていただいてもよろしいですか?」

 

 「ここで働くってことは…シンフォギアを纏ってノイズと戦いたいってことか?」

 

 「はい!」

 

 零の目は本気だった。

 

 「…よし、許可しよう。その言葉に偽りはなさそうだ」

 

 「…!ありがとうございます!」

 

 「ああ、改めて歓迎しよう!柊零くん!」

 

 「よろしくお願いします!司令官!」




今回はここまでです!

毎週出せるかは分かりませんが、なるべく土曜日の夜出していくのでその時はまた読んでくれると嬉しいです!

ではまたお会いしましょう!

感想、高評価などなどよろしくお願いします!


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新たなシンフォギア!

お久しぶりです!!!私だ!
待たせてごめん!
その分サプライズめちゃくちゃ込めたんで読んでください!!!


その場のノリと勢いで無事に特異災害対策本部二課に入った零は早速自分のシンフォギアを作ってもらう事にし、弦十郎と共に開発室へ入った。

 

 「シンフォギアを作っているのは彼女、櫻井了子君だ。君のことは全て話してある」

 

 「ただいま紹介に預かりました櫻井了子でーす!よろしくねー零ちゃん」

 

 そう言うと櫻井了子と呼ばれた女性は零に飛びつくなり強く抱きしめた。

 

 「あ、あの…俺男なんですけど…」

 

 「んー?そんなのいいじゃない。どっちだって」

 

 「いやあすまんな。了子くんも悪い人ではないんだ、許してやってくれないか」

 

 「まあ、それは良いですけど…」

 

 「で、零ちゃんのシンフォギアだったわね。ゼノブラスターちょっと貸してもらえる?」

 

 「はい」

 

 零はゼノブラスターを了子に渡し、了子は早速ゼノブラスターを解析装置の中へと入れた。

 

 「ふむふむ〜…なるほど、これはまた地球にはないテクノロジーが詰まってるね」

 

 「作れそうなのか?」

 

 「んー、そうねぇ、翼ちゃんや奏ちゃんの普通の適合者と同じものを作ると装着するだけで絶唱をした時の様になるんだけど…零ちゃん専用に作ればなんとか作れそうよ」

 

 「時間はどれくらいかかりそうなんですか?」

 

 「普通に作るにしても一時間はかかるけど…何か注文とかある?」

 

 「じゃあ、ゼノブラスターの原型はそのまま残せたりしないですか?」

 

 「ええ、大丈夫よ。私天才ですから!」

 

 そう言って了子は自信満々に胸を張った。

 

 「むしろこの子を改造したりしなくて済むから手間が省けたわ。三十分くらいはかかるから、それまで適当に時間を潰してて」

 

 「ああ。ではここは任せたぞ」

 

 「よろしくお願いします」

 

 「この天才櫻井了子にお任せあれ」

 

 そう言って了子はウインクをし、弦十郎と零は開発室を出た。

 

 「さて、三十分の間、何もしないのも退屈だろう」

 

 「まあ…あ、そうだ、住むところを探さなきゃ」

 

 「そう言うと思って、もう既に手配は済んである。時間もあるし、案内しよう」

 

 「えっもう用意してあるんですか!?」

 

 「ああ。ちょうど時間も出来たしな」

 

 弦十郎と零は基地を出て近くのマンションの一室に来た。

 

 「高級なマンションとはいかんが、二課で働く以上はここで住んでもらう。家賃は給料から引かれてるから安心しろ」

 

 部屋の中には生活に必要な家具が一式揃っており、居間や寝室、風呂場やトイレなどの部屋分けもされていた。

 

 「結構良い2LDKですね…」

 

 「ああ。人一人が住むには不便しないだろう」

 

 「ありがとうございます、弦十郎さん!」

 

 「気にするな。その分君にもたくさん活躍してもらわないとな」

 

 そう言って弦十郎と零は笑った。

 

 「さて、まだ少し時間があるな…どうだ、俺と手合わせでもどうだ?」

 

 「て、手合わせですか?」

 

 「ああ。零くんの力量がどんなものかも見てみたい」

 

 「…わっかりました!よろしくお願いします!」

 

 早速二人は基地に戻り、演習場へ入った。

 

 「さあ、遠慮はいらん。思いっ切り掛かってこい!」

 

 「では…遠慮なく!」

 

 零は静かに構え、コンクリートの地面を強く蹴って勢いよく弦十郎に向かって飛び出した。

 

 「でやあッ!」

 

 零は全力の右手の拳を玄十郎に繰り出すが、弦十郎はそれを平手でいとも受け止めた。

 

 「な…ッ!?」

 

 「どうした!こんなもんか!」

 

 「…ッ!まだまだァッ!」

 

 零は左手を地面について脚を開き、ブレイクダンスの要領で身体を回転させて弦十郎を怯ませ、その隙に両手をついて後ろに飛び、間合いを取って構え直した。

 

 「!!」

 

 しかし、弦十郎はそんな小さな隙も見逃さず、零が顔をあげた時には既に眼前に弦十郎の右拳が迫っていた。

 

 「ハァッ!」

 

 「くっ!」

 

 零はとっさに腕で拳を防いだが、その隙に弦十郎は左拳で零の腹部に強い一撃を入れ、零は思わず後ずさった。

 

 「がはッ…!」

 

 「ウルトラマンとして闘っていた者はここまで弱いのか?」

 

 弦十郎は零をあざ笑うように言い放った。

 

 「くそ…ッ!」

 

 零は身体を丸めて高速で回転し、弦十郎に向かって突撃した。

 

 「ハァァーッ!」

 

 弦十郎はそんな零を強烈な一撃で零を撃ち落とした。

 

 「ガハァッ…!」

 

 零は腹部を手で押さえながらその場にうずくまった。

 

 「ふむ…スピード、パワー共に素晴らしいが…戦い方が直線的すぎる。決して悪くはないが…まあ、追々直していけば良いだろう…すまなかったな、おちょくるような真似をしてしまって」

 

 そう言って弦十郎は零に手を差し出した。

 

 「いえ…俺も色々やるべき事が見つかりました。ありがとうございます」

 

 零もその手を取って立ち上がり、それと同時に演習室の空間が元に戻った。

 

 「一応、君もウルトラマンなんだろう?なら、この世界にいたウルトラマン達の事も教えておいた方が良いかもな」

 

「この世界にもウルトラマンが?」

 

 「ああ。ついてきてくれ」

 

 二人は演習室を出て資料室へと移動した。

 

 「遥か昔になるが、この世界…君に合わせて言えば、この宇宙にもウルトラマンがいたんだ」

 

 そう言って玄十郎は資料室のPCの画面を見せた。

 

 画面の中には歴代のウルトラマン達が、来た年代と一緒に映されていた。

 

 この地球に現れた最後のウルトラマンはロッソ、ブル、そしてウルトラウーマングリージョだった。

 

 「一年間、あるいは半年滞在していた者もいれば、一時的に地球に来た者もいる。もちろん彼らの活躍もドキュメンタリードラマとして残っている。共に闘っていた防衛隊は今は解体されたが、その技術はシンフォギアとなって継承されている。流石にウルトラマン達の力は継承出来なかったがな」

 

 苦笑いをしながら玄十郎は零に軽く説明をした。

 

 「ウルトラマン達は…」

 

 「皆、自分の役目が終わった事を悟ると、宇宙に帰ってしまったよ」 

 

 「そうでしたか…」

 

 「もちろん、我々もウルトラマン達や共に戦ってきた防衛隊の方々に恥じないよう精一杯人々を守る事をこの胸に刻み込んでいるんだ。それはウルトラマンである君も同じだろう?」

 

 「もちろんです!」

 

 それを見て玄十郎は納得したかのように頷いた。

 

 「うむ!その心意気や良し!」

 

 そう言うと玄十郎は一枚のDVDを零に渡した。

 

 「これは?」

 

 「歴代のウルトラマン達の活躍の映像で、三十分程度にまとめたものだ。これで戦い方を学ぶといい。俺は君のシンフォギアが出来たかどうかを見てくるから、ここに居てくれ」

 

 「はい!」

 

 玄十郎は資料室から出て、零はDVDを再生した。

 

 すると、零に鈍い頭痛が走り、思わず頭を押さえ、目を瞑った。

 

 「う……ん…?」

 

 頭痛が治まり、零が再び目を開けると、光に包まれた空間にいた。光はどこか温かく、居るだけでとても心が落ち着いていく。

 

 「ここは…?」

 

 すると、零の前に七つの赤い光が現れ、やがて光は人の形に姿を変えた。

 

 「あなた達は…」

 

 「初めまして、と言うべきかな?別の宇宙のウルトラマン」

 

 零の前に現れたのはゾフィー、ウルトラマン、セブン、ジャック、エース、タロウ、メビウスのウルトラ兄弟の七人であった。

 

 「ウルトラ兄弟の皆さん…何故俺のことを…」

 

 「君が変身するウルトラマン、ゼノからの緊急信号を受け、君の事を助けに来た」

 

 「タロウさん…」

 

 「だが、まだ君の変身は不可能だ。他の武装も使うことは出来ないだろう」

 

 「そんな…それでは…」

 

 「そこで、僕達の力と、戦い方を授けます。この世界の武装のシンフォギア用に出力は抑えられてしまいますが…貴方なら使いこなせるはずです」

 

 「メビウスさん…」

 

 「時間はあまり無い。すまないが二日で物にしてもらうぞ」

 

 「はい!…二日?」

 

 「この空間での一時間は外界での一分だ。つまり、残された時間は四十八時間しかない」

 

 そう言うと、セブンは零の身体にテクターギアをつけた。しかし、テクターギアとは言え、アイスラッガーや光線が撃てるような構造などになった特別なテクターギアだった。

 

 「これは…」

 

 「我々の星で使っているトレーニング機器だ。これでゼロやタイガも鍛えてきた」

 

 「タイガ?」

 

 「私の息子だ。今は並行宇宙の地球人を守っている」

 

 「タロウさんの息子?」

 

 「うむ。我が子ながらまだまだポテンシャルは秘めている」

 

 「君も、タイガやゼロにも負けない戦士に鍛え上げる」

 

 「さあ、特訓を始めるぞ!」

 

 「はい!」

 

 早速、零はウルトラ兄弟達と特訓を開始した。

 

 一日目はウルトラマン、ゾフィー、タロウ、メビウスから光線技と体術を教わり、二日目はセブン、ジャック、エースからは切断技と武器について教わった。

 

 実戦形式での習得が多く、傷だらけになりながらも、その戦い方の基礎と応用だけでも物にすることが出来た。

 

 「よし、ここまで出来れば十分だろう。後は実践で身につけるんだ」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「本当は僕達も一緒に戦いたいのですが…今はそれはかないません」

 

 「それは何故です?」

 

 「ゼノダークネスが放った結界の影響で我々は外界ではこの姿を維持する事が出来ない」

 

 「だが、君だけは唯一結界の干渉を受けずに変身することが出来る。君のウルトラマンとしての力がこの世界にとっては必要なのだ」

 

 「零さん。この世界を、この地球を貴方にお任せします」

 

そう言うと零のテクターギアが外れ、ウルトラ兄弟達は零の手元に光を送った。

 

 「これは…!」

 

 零の手元にはウルトラマン達が描かれた七枚のカードが握られていた。

 

 「これをシンフォギアにかざせば我々の力が使えるはずだ。だが、決して全員の力を一度に使ってはならない。使う時は、本当にどうしようもなくなった時だけだ」

 

 「はい!」

 

 「では、この地球を頼んだぞ。ウルトラマンゼノ…いや、柊零!」

 

 そして兄弟達は光に変わり、零の頭に鈍い痛みが走り、もう一度目を開けると元の世界に戻っており、特訓の中で負った傷や服の破れた跡も綺麗に治っていた。

 

 それと同時に資料室の扉が開き、弦十郎が入ってきた。

 

 「おっ、どうやらDVDは見終わったみたいだな。どうだ?良い勉強になっただろう?」 

 

 「はい!」

 

 「よし。では、これを渡そう」

 

 そう言って弦十郎は改造されたゼノブラスターを渡した。

 

 「これが君のシンフォギアのデバイスだ。君の注文通り原型も残すことが出来たが…中のウルトラマンのデータを元に作ったからかは分からないが、君には武器無しで戦う事になってしまう。その代わりと言ってはなんだが、光線技が使えるようになっているから、それでノイズを撃退してくれ」 

 

 「はい!」

 

 「とは言っても、最初に使うのが実践なのも大変だろう。演習室で練習をしておくといい。後は君に関する書類の処理だが、それは俺がやっておくから零君は今日は好きにしてくれ。練習をするもよし、帰って休むもよし、だ」

 

 「ありがとうございます。それでは」

 

 「ああ。お疲れ様」

 

 玄十郎と分かれて早速、零は演習室に向かい、ウルトラマン達の力を試すのと同時にノイズがどんな姿形をしているのかを見ることにした。

 

 「〜〜〜〜ーーッ!」

 

 早速、零の前に大量のノイズが現れた。ノイズとは言ってもシミュレーションなので殺傷能力はないが、戦闘力は本物とさほど変わらないのだろう。

 

 ノイズの姿形や大きさ、色もバラバラで、等身大のノイズもいれば高層ビルも追い越すくらいの大きさのノイズもいた。

 

 「それじゃ早速…シンフォギアッ!装着ッ!」

 

 零は叫びながらゼノブラスターを振り上げた。しかし、何も起こらず、ノイズ達も思わず首を傾げた。

 

 「…あれ?おーい、装着だって。おーい」

 

 零はゼノブラスターを叩いたり振ったりしたが、何も起こらず、うんともすんとも言わない。

 

 「おーい?ゼノブラスター?ゼノさーん?出番ですよー?あれー?」

 

 すると、頭上の上にはてなマークが浮かんでいる零の前にモニターが現れ、装着方法の映像が流れた。

 

 「これ…歌うのか!えっと、えっと…タットッバッ!タトバ!タットッバッ!」

 

 しかし、ゼノブラスターは何も反応しない。

 

 「…短い歌じゃダメなのか…よーし!ワナテイキューベイビー、ベイビーテイクミーハイヤー!」

 

 すると、ゼノブラスターのコアが眩い光を放ち、零の身体は真っ黒なインナースーツに包まれ、銀一色に包まれ、胸の真ん中に丸く青い水晶が埋め込まれたボディアーマーと上下半袖の洋服の様な衣装、そしてウルトラマンの足を思わせるシューズが現れ、衣装、ボディアーマー、シューズの順番で零に装着された。

 

 (これが…俺のシンフォギア!名付けて…シンフォ二ー・X!)

 

 新たなシンフォギア、シンフォニー・Xを纏った零は歌い続けながらノイズ達に向かっていく。

 

 「変わらぬ夜明けェェェッ!」

 

 零は水晶に両手をかざし、右手のギアを変形させて光線発射口を開き、ノイズ達に向けて青白く光る光線を放った。

 

 光線は一列にならんだノイズ達を一瞬にして灰に変えていく。零は全速力で駆け出して飛び上がり、ノイズだった灰を避けながら巨大なノイズの眼前にまで飛んだ。

 

 (凄い…!これがシンフォギアの力か!ウルトラマンさん、力をお借りします!)

 

 零は素早くウルトラマンのカードを胸の水晶にかざした。すると、シンフォニー・Xのボディのカラーリングがウルトラマンの様に変わり、赤いラインも刻まれた。

 

 『Be the TYPE・SPECIUM!』

 

 (ウルトラマンの力…これだ!)

 

 零の両手のギアが変形し、両腕の周りにプラズマの様なエネルギーが集まり始めた。

 

 「ーーーーーッ!」

 

 巨大なノイズは零に向けて光線を放ち、それと同時に零も右手を縦に、左手を横にしてクロスさせ、右手の外側からスペシウム光線を放ち、両者の光線が空中で激突した。

 

 「熱い鼓動をしんじーてぇーーッ!」

 

 零の気合いが加わり、スペシウム光線は更に威力を増し、ノイズに光線が直撃した。ノイズは灰となって崩れ去った。

 

 『Be the TYPE EMERIUM!』

 

 セブンのカードをかざし、ボディアーマーや洋服の色が真紅に変わり、セブンのカラーリングに変わり、さらに頭部にセブンの頭部を模したヘルメットが装着され、セブンのものと全く同じアイスラッガーが形成された。

 

 そして、零は空中から降りながらアイスラッガーを手に取り、地上にいるノイズ達に向けてアイスラッガーを投げつけ、アイスラッガーはノイズ達を一匹残らず切り裂いた後零の手元に戻り、零はアイスラッガーを頭上に戻した。

 

 そして、シミュレーションが終わり、元の演習室に戻り、零も元の姿に戻った。

 

 「これからまたよろしくな」

 

 そう言って零はゼノブラスターをネックレスの様に首にかけ、基地を後にして、マンションの自室に向かった。

 




てなわけで今回はここまでです。

一応最初はやれ剣を使わせようかとか槍を使わせようかなどなど色々主様と話しましたが、これに落ち着きました。(多分落ち着いてないw)

良ければ感想、高評価などなどよろしくお願いいたします!


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目覚めていく鼓動

やっていくぞい!

ちなみに話の時系列はニュージェネクライマックスから数ヶ月くらい経った後なので別に観てようが観てなかろうが関係ないです。なんならニュージェネクライマックスには触れてないです。

ではどうぞ!


零がウルトラ兄弟の力を授かった直後の事…別の宇宙から四人のウルトラマンが自分の住む宇宙へと戻るために次元の穴を潜っていた。

 

 「おーし、見えてきたぞ」

 

 「ここまでの送迎、感謝致します」

 

 「ありがとう、ゼロ。俺達のためにわざわざ…」

 

 「なーに、気にすんな。お前の親父からも頼まれていたからな」

 

 「…ん?ちょっと待て」

 

 「どうした?フーマ」

 

 「何か…嫌な気配がする」

 

 「まさか、トレギアか!?」 

 

 「そんなはずはない。我々がこの手で倒したんだ。それに…これはトレギアの気配ではないな」

 

 「旦那の言う通りだ。トレギアじゃあねえが…トレギア以上にヤバい気配がする」

 

 「…全員、身体にバリアーを張れ。何があるか分からないからな」

 

 「「「はいっ!」」」

 

 四人のウルトラマンは身体を覆うようにバリアを張って次元の穴を脱出し、それと同時に次元の穴は閉じられた。

 

 「これは…!」

 

 「なんと言う…闇の気配…!」

 

 「なんてこった…!」

 

 「フーマの言う通りだったな…宇宙中に闇の結界を張られて、俺達ウルトラマンの身体が維持出来ないようになっている…」

 

 「敵はそれほどまでに強大って事かよ!?」

 

 「あるいは…そこまで用意周到に準備をしてきたか…」

 

 「どちらにせよ、油断は出来ない相手ってこった」

 

 「この様子だと光の国も危ないかもしれないな…俺は一度親父達の様子を見に行って来る」

 

 「じゃあ、俺達は…」

 

 すると、四人の前に光の球が現れ、四人は思わず腕で顔を覆った。

 

 「…ここは…」

 

 「タイガ…タイタス、フーマ…」

 

 「ゼロ…無事で何よりだ」

 

 「父さん!」

 

 「親父!それにメビウスも…」

 

 「おいおいどうなってんだよ!」

 

 「栄光のウルトラ兄弟が揃い踏みとは…」

 

 白い空間に立っていた四人の前には、ウルトラ六兄弟とウルトラマンメビウスが立っていた。

 

 「四人とも、聞いてくれ。今この宇宙はこれまでにない危機に晒されている」

 

 「これまでにない危機?」

 

 「ゼノダークネスと言う別の世界から来た者が我々を無力化したのだ」

 

 「それを追った別の世界のウルトラマン、ウルトラマンゼノも来たのだが、戦いに敗れてしまい、我々よりも酷い状況に置かれている」

 

 「そんなことが…」

 

 「地球に向かったウルトラマンギンガ達も連絡が取れていない。おそらく、我々のように無力化されているのだろう」

 

 「タイガ、タイタス、フーマ、そしてゼロ。君達には悪いが、もう一度地球に向かってくれないだろうか」

 

 「ああ、任せてくれ」

 

 「任せてください!父さん!」

 

 「喜んで、任務に就かせていただきます」

 

 「断る理由が無いからな。もちろん行くぜ」

 

 「うむ。では、地球は任せたぞ。…ああ、そうだ。地球に向かったら、柊零と言う人物を探すことだ」

 

 「柊零?」

 

 「ああ。彼がウルトラマンゼノだ。タイガスパークやウルティメイトブレスを見せれば分かるはずだ」

 

 「分かった。行こうぜ!タイガ!タイタス!フーマ!」

 

 「ああ!」

 

 「うむ!」

 

 「よし!」

 

 ゼロ達は光の球体から出て地球に向かった。

 

 「頼んだぞ…」

 

 

 

 その頃、地球では、シンフォギアの奏者である風鳴翼と天羽奏の二人が組むアイドルユニット、ツヴァイウィングのライブが開催される日であった。

 

 だが、零はライブには行かず、街の散策をしていた。

 

 基地の中で何度か見かけたことはあるものの、顔合わせをした時の自己紹介以来、話す事は一度も無かった。ましてや、アイドルユニットを組んで活動している背景もあり、話す時間も満足に取れず、今日に至るのである。

 

 しかも、街を散策とは言ってもノイズが発生した時に対応が出来るようにとの事でライブ会場の周りしか動く事が出来ず、ライブが終わる夕方までの間、何もすることも無くただ街をブラついているだけであった。

 

 「お前が柊零か?」

 

 すると、目の前に四人の青年が現れた。

 

 「ああ。あんた達は?」

 

 「良かった。貴方を探していたんだ」 

 

 「ちょっとここで立ち話もなんだ、場所を変えようぜ。ゆっくり話したいことがあるんだ」

 

 「あ、ああ…」

 

 零も含めた五人は人があまりいない公園に来た。

 

 「じゃあ、改めて俺達の事を話すよ。俺はウルトラマンタイガ。この姿での名前は東大我だ。よろしくな」

 

 そう言って黒くて短い髪の好青年、大我はタイガスパークとタイガアクセサリーを零に見せた。

 

 「私はウルトラマンタイタス。この姿での名前はタイタスだ」

 

 ギリシャ神話の神々の様な服装をした体格の良い金髪の男性、タイタスもタイガスパークとタイタスアクサリーを見せた。

 

 「そんでもって俺はウルトラマンフーマ。この姿だと名前は碧風舞(アオイフーマ)ってんだ」

 

 ボロボロのマントと青いジャケットに身を包んだ青年、風舞もタイガスパークとフーマアクセサリーを見せた。

 

 「そして俺がウルトラマンゼロ。この姿での名前は諸星昴だ」

 

 子持ちで声優をやってそうな青年、昴はウルティメイトブレスを見せた。

 

 「タイガさん、タイタスさん、フーマさん、ゼロさん。こちらこそよろしくお願いします。改めて、俺は柊零、ウルトラマンゼノです」

 

 「ああ、よろしくな!」

 

 「私達も別の世界のウルトラマンと会えることを嬉しく思う。これからよろしく頼む」

 

 「おう!よろしく!まー、そう固くならなくて良いからよ!対等に話そうぜ」

 

 そう言って風舞は零の肩をバシバシ叩きながら言った。

 

 「まあ、こいつらも言ってるし、俺にも敬語は使わなくて良いぞ。何より、お前も多分そんなキャラじゃないだろ?」

 

 「ま、まあ…ね」

 

 「ヘッ、大丈夫そうだな」

 

 昴も少し笑って言い、大我とタイタスも自然に口元が緩んでいた。

 

 そして、四人は零と共に街を散策することにした。一人ならばともかく、誰かが一緒だと色々と話が出来たり、色んな店にも入りやすく感じる。

 

 「そう言えば、この地球って怪獣は出るのか?」

 

 「そう言えばそうだな…宇宙人もいたりするのか?」

 

 「いや、この地球には俺達以外宇宙人はいないよ。来るとしても侵略目的で来るかもね。怪獣もこの世界にはもういないんじゃないかな」

 

 「するってーと、ここの地球は平和なのか?」

 

 「いや、怪獣や宇宙人の代わりにノイズって言うのがいるんだ」

 

 「ノイズ?」

 

 「触れた人間を炭に変えてしまう正体不明の敵なんだ。もちろんそれに対抗する術もあるんだけどね」

 

 「それは一体…」

 

 「シンフォギアって言うんだ。歌を力に変える武器で、ノイズ達を倒せる唯一の対抗手段なんだ」

 

 「そうなのか…地球人は自分達で未来を切り拓く力を既に作ったんだな」

 

 「みてえだな…」

 

 「ま、怪獣が出れば俺達が行けばいいさ」

 

 「そうだな。零はノイズを倒すのに集中してくれ。怪獣は任せろ」

 

 そう言って大我はガッツポーズに右手を二の腕に添えた素振りをして、やる気を見せた。

 

 「頼もしい限りだよ、皆」

 

 すると、零のポケットからけたたましくアラームが鳴り響き、スマホを取り出した。

 

 『零くん、ノイズがライブ会場に現れた!至急現場へ急行してくれ!』

 

 「分かりました!すぐ行きます!」

 

 弦十郎からの連絡を受けた零はライブ会場の方を見た。

 

 既に大量のノイズが空を飛んでおり、会場からは煙も立ち込めていた。

 

 「我々はノイズと戦うことは出来ないが…市民の避難は任せてくれ!」

 

 「よし!頼んだ!」

 

 五人は頷き、ライブ会場へと走り出した。

 

 「Imutate, symphony tron…」

 

 詠唱と共にシンフォギアが起動し、零はシンフォニー・Xをその身に纏った。

 

 そして、タロウとゾフィーのカードをシンフォギアにかざし、装甲の色や模様もタロウとゾフィーのものを合わせたような模様へと変わった。

 

 『Be the type! Blester Strium!』

 

 零は走った勢いのままに飛び上がり、ライブ会場へと飛んだ。

 

 「あれがシンフォギアか…凄いな」

 

 「感心してる場合じゃないぜ!急がねえと!」

 

 「うむ!」

 

 四人も超人的な身体能力でライブ会場へと走って向かった。

 

 

 

 「助けて!死にたくない!死にたくなぁい…!」

 

 「…!」

 

 沢山のノイズ達が、目を覆いたくなるような惨劇を数え切れないほど繰り広げていた。

 

 (くっ…ストリウム光線!)

 

 零は歌いながら身体を虹色に光らせ、腕をT字に組んで光線を撃ち、ノイズ達を薙ぎ払って奏と翼の前に立った。

 

 二人も歌いながらも頷き、零も頷いた。

 

 (まだ来る!)

 

 零は右手に生成されたタロウブレスレットを変形させ、タロウランサーを投げて一列に並んだノイズ達を倒した。

 

 (アロー光線!)

 

 そして、手からくさび型の光線を連射し、迫ってくるノイズ達を蹴散らしていた。

 

 「!」

 

 一際大きなノイズが客席を破壊し、その中にまだ女の子が居ることに気がついた奏は客席だった場所へ走ってノイズ達を蹴散らしていた。

 

 「奏さん!」

 

 零は客席にいた女の子を守るように奏の横に立った。

 

 「ぐうううっ!」

 

 奏のギアは既にボロボロになっており、もはや武器を維持するので精一杯に見えた。

 

 「奏!」

 

 「奏さん!くっ!」

 

 零も大量にいるノイズ達を倒すので精一杯で、奏の元にいくのもままならない。

 

 二体の巨大な芋虫のようなノイズが奏に液体を吹き掛け、奏はそれを槍を回して防ぐので手一杯だった。

 

 そして、その時、欠けたギアが客席にいた女の子の胸部に直撃し、その衝撃で吹っ飛ばされ、壁に当たって倒れ込んだ。

 

 それを見た奏は目を見開きながらその女の子の元へと駆け寄った。

 

 「おい!!死ぬな!!目を開けてくれ!!生きるのを諦めるな!!」

 

 「う…」

 

 彼女の足元には女の子の血の池が出来上がっていたが、女の子の目が虚ろながらも目を開いたことに安堵したのか、笑顔を見せた。

 

 そして、覚悟を決めたかのように目を閉じたあと、ゆっくりと目を開けて微笑んで槍を手に取って立ち上がった。

 

 「奏さん…?」

 

 奏はゆっくりとノイズ達の前に歩いていき、崩れかけている槍を天にかざし、笑顔のまま涙を一粒流し、歌を歌い始めた。

 

 「いけない奏!!歌ってはダメェェーーッ!!」

 

 翼は泣きじゃくりながら叫び、女の子も意識が無くなりそうな中歌を聴いていた。

 

 「歌が…聴こえる…」

 

 命を燃やす、最後の歌。

 

 それは、命を燃やし尽くし、灰同然に散ることを意味していた。

 

 歌い終わった彼女は笑顔で口元から血を垂らし、とてつもない威力の衝撃波を放った。

 

 ノイズ達はたちまち炭に変わり、次々にその形を失くしていった。

 

 そして、彼女は力なく後ろに倒れ、翼と零は奏に駆け寄った。

 

 奏は翼の腕の中で炭に変わり、風と共に散った。

 

 後から駆けつけた昴達も、状況を察し、呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 「遅かったか…」

 

 「翼…さん…」

 

 「…一人に…して」

 

 「…」

 

 零の目も虚ろになりながら、その場を去り、会場の出口へ、昴達の元へと歩いた。

 

 「お、おい…」

 

 「今はそっとしておいてやれ、大我」

 

 「風舞の言う通りだ。こんな状況ではな…」

 

 「…分かった」

 

 昴達は女の子を病院へと送り届け、零の元へ向かった。

 

 

 

 それから、数週間ほど経っただろうか、風鳴翼はソロ活動でアイドル活動を再開し、新しいCDも出すことになった。昴達も零と同じく特異災害対策機動部二課に入った。シンフォギアは纏わないものの、奏者達のサポートを務めることになった。肝心の零も数日は立ち直れなかったものの、昴達のおかげでなんとか立ち直ることが出来た。

 

 そして、ある日の夜、またもノイズが発生し、翼はヘリコプターで、零は自慢の音速の足で現場へと向かっていた。

 

 「Imutate…symphony tron…!」

 

 零は戦車を踏み台にして飛び上がり、翼の横に着地した。

 

 『翼、零くんと共に連携を取って…』

 

 「いいえ…これくらい私一人で大丈夫です。このような足手まといなどいなくても」

 

 「足手まとい…」

 

 その時、あの時の光景が一瞬脳裏に蘇った。けれど、その回想を必死に振り払い、ノイズへ向かっていった。

 

 翼が小さいノイズ達を倒す間に零はウルトラブレスレットをウルトラスパークに変形させ、それを投げつけて三枚おろしにして巨大なノイズを倒した。

 

 「…礼は言わない」

 

 「まだまだ…お堅いですね」

 

 「…防人として当然だ」

 

 そう言って翼はヘリに乗って帰っていった。

 

 「…」

 

 

 

 次の日の夕方、ノイズ発生の報告を受け、零達はバラバラになってノイズを探し回って走っていた。

 

 「一体どこにいるんだ…!」

 

 『こちら大我、何か見つかったか?』

 

 『こちら風舞。全然ダメだ』

 

 『こちらタイタス。やはり我々のウルトラ念力では察知出来ないのだろうか…』

 

 『クソっ…どうしたら…』

 

 すると、工場地帯から光の柱が勢いよく出現し、五人はその方向を向いた。

 

 『なんだ!?この高出力エネルギーは!?』

 

 『情報は…来た!…なに!?』

 

 『何だ!?』 

 

 『ガングニール…だと!?』

 

 『ガングニール!?それって…!』

 

 『ああ!間違いねぇ!奏の嬢ちゃんが使ってたあのシンフォギアだ!』

 

 「でもどうして…!?あの時奏さんは…!」

 

 『そこら辺は見に行った方が速い!急ぐぞ!』

 

 「あ、ああ!」

 

 風舞に言われ、五人はそれぞれの場所から工場地帯へと向かった。

 




今回はここまでです!

トライスクワッドとゼロ達が戦う時は来るのだろうか!?

そしてゼノダークネスは動きを見せるのか!?

次回に乞うご期待!


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悲しみと不協和音

お待たせしました!
ウルトラマンZ終わっちゃったよ!!!
ちなみに今回から挿入歌システムを組み込んでみました。
歌の名前などなどは載せておくのでそれを参考に流しながら読んでくれると嬉しいです!!


零、昴、大我、タイタス、風舞の五人は連絡を弦十郎から連絡を受け、工場地帯へと向かって走り出した。

 

 『ガングニール…だと!?』

 

 「ガングニール?なんだよそれ?」

 

 四人は零と合流し、風舞は零に聞いた。

 

 「ガングニールは奏さんが使っていたシンフォギア…聖遺物の名前だ。でもどうして…」

 

 「まだそれは分からないが…とにかく行ってみるしかないだろう!」

 

 「ああ!」

 

 「Imutate Symphony tron…」

 

 零はシンフォギアを纏い、ショートカットをするため海の上を走って光の柱の元へと向かう事にし、歌い始めた。

 

 [Absolute nine Vo.塩見周子、高垣楓、渋谷凛、前川みく、一ノ瀬志希、島村卯月、相葉夕美、城ヶ崎美嘉、向井拓海

 出典: アイドルマスターシンデレラガールズ]

 

 「おまっ…それどうやって声出してんだよ!?」

 

 「ちょっとした能力の応用だぜ」

 

 「よくわかんないけど…ノイズは任せた!」

 

 零は歌いながら頷き、ノイズ達の元へ向かい、大我達はウルトラ念力を使って逃げ遅れてる人達を探しながら避難させることにした。

 

 零はメビウスとタロウのカードを取り出し、胸にかざした。

 

 『Be the Type! Strium Brave!』

 

 零のシンフォギアは炎のように赤く染まり、金のラインが胸元に入り、ウルトラホーンとビームランプが着いたヘルメットが装着され、左腕にメビウスブレスが生成、装着された。

 

 零に気付いた大量のノイズは零に向かって飛びかかり、零もメビウスブレスからメビュームブレードを生成し、大きく構えてスケーターの様に一回転をし、光刃でノイズ達を切り裂いた。

 

 (今はお前らの相手をしてる場合じゃないんだ、悪いな)

 

 零は炭になったノイズ達がいる場所から大きく飛び上がり、メビュームバーストで残りのノイズ達を一掃し、高エネルギーの元へと向かった。

 

 工場地帯へと駆けつけた零は二人の女の子がノイズに囲まれているのを見つけ、その内の一人がシンフォギアを纏っている事に気がついた。

 

 すぐさまセブンのカードをスキャンし、アイスラッガーで後ろ半分のノイズ達を切り裂き、全て炭に変えて二人に近付いた。

 

 「貴方は…」

 

 「お前…」

 

 「「あの時の…」」

 

 零とシンフォギアを纏った少女の声が重なり、二人は思わず吹き出した。

 

 「そうか、無事だったんだな」

 

 「はい。今はなんでこんな事になってるか分かりませんが…」

 

 すると、一匹のノイズが少女に向かって飛び出し、少女は拳を突き出して強烈な一撃をノイズに喰らわせ、ノイズを炭に変えた。

 

 (お前も手にしたんだな。いや、手にしてしまったと言うべきか…)

 

 少女が驚いた様な顔をしていると、後方から翼が乗ったバイクがこちらに急接近し、翼はバイクから飛び上がってバイクを巨大なノイズにぶつけ、翼は三人の元へ着地した。

 

 「お前達はその子を守りなさい!」

 

 そう言って翼もシンフォギア、天羽々斬を纏い、巨大なノイズの上空に飛び上がり、自分よりも遥かに巨大な剣をノイズに突き刺し、大量の炭に変えた。

 

 少女は剣の上に立つ翼に憧れの眼差しを向け、見上げていた。

 

 

 

 しばらくして昴達四人も合流し、他にも清掃班らしき人達がノイズだった炭を片付けていた。

 

 「ほらよ。お疲れさん」

 

 零も変身を解き、ふう、と一息ついて昴からコーヒーを受け取った。

 

 「ありがとう」

 

 そう言って零はコーヒーを飲み干した。

 

 「…暖けぇ…」

 

 そう言って空になった紙コップを見ながら微笑んでいると、シンフォギアを纏っていた少女が立ち去ろうとする翼と零達に礼を言った。

 

 「ありがとうございます!実は…翼さん達に助けられたのはこれで二回目なんです!」

 

 それを聞いた翼は思わず立ち止まり、少女の方を向いた。

 

 「二回目…」

 

 困惑する翼とは対照的に少女は笑顔で立っていた。

 

 すると、もう一人の女の子の母親が来たのだろう。小さな女の子と母親は事務員の人から何やら書類の説明を受けていた。

 

 「ま、こればっかりはね…」

 

 そう言って零は苦笑いをした。

 

 「じゃあ、そろそろ私も…」

 

 少女がそう言って立ち去ろうとした時だった。

 

 大我達四人は少女の行く手を塞いだ。

 

 「すまないが、君をこのまま帰す訳にはいかんのでな」

 

 「な、なんでですか!?」

 

 「特異災害機動部二課まで、同行していただきます」

 

 翼が淡々と告げると、一人の優しそうな青年が少女に手錠をかけた。

 

 「えっ?あ、ああ…」

 

 「すみません、貴方の身柄を拘束させていただきます」

 

 そう言って逃げる間もなく少女は車に乗せられ、基地の方まで連れていかれ、零達も車で同行した。

 

 「な、なんで学園に…?」

 

 「…」

 

 「あ、あの、ここ先生達がいる中央棟ですよね…」

 

 「…」

 

 誰も何も言わず、一つのエレベーターに乗り込んだ。

 

 (ちょ、旦那…もうちょいそっちいってくれよ…)

 

 (だ、ダメだ…私のウルトラマッスルは大きくすることは出来ても小さくすることは出来ない…)

 

 (頑張れウルトラマッスル!)

 

 一同はさらに地下に通じるエレベーターに乗り、少女の悲鳴を聴きながら凄まじい勢いで降下して行った。

 

「あ、あはは…」

 

 「愛想は無用よ」

 

 翼の言葉がエレベーターの中に響く。

 

 エレベーターの外は巨大な筒状の建物になっており、まるで儀式にでも使われるかのような模様が一面に刻まれていた。

 

 「これから向かうところも微笑みなど必要無いから」

 

 「ようこそ!特異災害対策機動部二課へ!」

 

 翼の言葉はどこへやら、基地の中は笑顔で溢れた歓迎ムードに包まれており、響と零達は呆気に取られ、その横では翼がやれやれと言わんばかりに呆れていた。

 

 「うおお!見ろよタイタス!フーマ!凄く豪華だぞ!」

 

 「久しぶりに見たぜこんなん!旦那も早く食べようぜ!」

 

 「うむ。食べない訳にはいかないな!」

 

 「俺も久しぶりに食うか!食おうぜ!零!」

 

 「おう!」

 

 そう言って五人はポテトやジュースが並んでるところに一直線に突っ込んで行った。

 

 「あはは…」

 

 小川も愛想笑いをするのが精一杯だった。

 

 「さあさあ笑って!お近付きの印にツーショット写真♪」

 

 了子は戸惑いが隠せない響に近付き、スマホを構えた。

 

 「嫌ですよ!手錠したままの写真なんてぇ〜!きっと悲しい思い出として残っちゃいます!それにどうして初めて会う皆さんが私の名前を知ってるんですか?」

 

 「我が二課の前身は大戦時に設立された特務機関なのでね。調査もお手の物なのさ」

 

 そう言いながら弦十郎は杖を花に変えるマジックを見せ、その横に了子も響の鞄を持ってきて見せた。

 

 「あーっ!私のカバン!なーにが調査はお手の物ですか!カバンの中身勝手に調べたりなんかしてー!」

 

 「…はあ、小川さん、お願いします」

 

 翼は小さくため息をつき、小川も響の手錠を外した。

 

 「ありがとうございます」

 

 「いえ、こちらこそ失礼しました」

 

 「改めて自己紹介だ。俺は風鳴弦十郎。ここの責任者をしている」

 

 「そして私はぁ〜、デキる女と噂の櫻井了子。宜しくね」

 

 そう言って了子は響にウインクをした。

 

 「俺は南大我。よろしくな!」

 

 「オレは碧風舞。これから一緒に頑張ろうな、嬢ちゃん」

 

 「私はタイタス。一緒に皆を守っていこう」

 

 「んで、俺は諸星昴だ。よろしく頼むぜ」

 

 「俺は柊零。よろしく頼む」

 

 「あ、はあ、こちらこそ…よろしくお願いします」

 

 響も深々とお辞儀をした。

 

 「君をここに呼んだのは他でもない。協力を要請したいことがあるのだ」

 

 「協力って…あ!」

 

 響は先程のことを思い出した。

 

 「教えてください!あれは一体何々ですか?」

 

 弦十郎は了子の方を向き、了子も頷いた。

 

 「あなたの質問に答えるためにも二つばかりお願いがあるの。最初の一つは今日のことを誰にも内緒。そしてもう一つはぁ…♡」

 

 そう言って了子は響の身体を引き寄せた。

 

 「…とりあえず脱いでもらいましょうか」

 

 「えっ…だからぁ〜…!なぁんでぇ〜!!」

 

 少女の悲しい叫びが基地の中に響き渡った。

 

 

 

 夜遅くにようやく響は解放され、力なく歩きながら自分の部屋へと帰って行った。

 

 「あいつちゃんと帰れるかな…」

 

 五歩くらい歩いた所で響は転び、零は咄嗟に支えてやった。

 

 「あ、ありがとう…」

 

 「見てられないぜ…ほら、送ってってやるよ」

 

 そう言って零は響をおぶり、部屋の場所を聞いてそこまで歩いて行った。

 

 「ほら、着いたぞ」

 

 「すみません…」

 

 「…まあ、ゆっくり休めよ。おやすみ」

 

 「おやすみなさい…」

 

 そう言って零は響を部屋の前で下ろし、零は自分の部屋に戻って行った。

 

 そして、零はシンフォギアに変わったゼノブラスターを手に取って見つめた。

 

 (ノイズ…あれは地球上のどの生物の進化にも当てはまらない。…もしもこいつらが同じ地球の人間が生み出しているものだとしたら?もしも地球人が呼び出していたら?俺が介入する余地はあるのだろうか?…いや、そんな事はまだ考える時じゃない。俺には俺の出来ることをするだけだ)

 

 零はゼノブラスターをしまい、自分の部屋へと戻って行った。

 

 

 

 シャワーを浴びながら、翼は奏を失ったことを忘れられずにいた。

 

 (あのギア…奏のものだ…)

 

 あの時の悲しみは彼女の心の傷として永遠に残ってしまうのだろう…決して治らぬ傷として。

 

 

 

 「それじゃ、先日のメディカルチェックの結果発表〜!」

 

 基地局員や了子、翼はもちろん、零達も集まっていた。

 

 基地のモニターには響の体の状態が映し出されていた。

 

 「初体験の負荷は若干残ってるものの、体に異常はほぼ見られませんでした〜!」

 

 「ほぼ、ですか…」

 

 手首を抑えながら響はモニターを見た。

 

 「…そうね。あなたが聴きたいのはこんな事じゃないわよね」

 

 「教えてください。あの力のことを」

 

 一同は翼の方を見つめ、翼もそれに応えるように自分のシンフォギアを見せた。

 

 「天羽々斬。翼の持つ第一の聖遺物だ。零君のものもあるにはあるが、まあこれは別物と言っていいだろう」

 

 「聖遺物?」

 

 「聖遺物とは、世界各地の伝承に登場する、現代では製造不可能な異端技術の結晶のこと。多くは遺跡から発掘されるんだけど、経年による破損が著しくって、かつての力をそのまま秘めたものは本当に希少なの」

 

 「一説では、太古のウルトラマンの力とも言われていたが、真偽は不明だ。この天羽々斬も、刃の欠片ごく一部に過ぎない」

 

 「欠片にほんの少し残った力を増幅して解き放つ唯一の鍵が、特定振幅の波動なの」

 

 「特定振幅の波動…」

 

 「つまりは歌。歌う力によって聖遺物は起動するのだ。これに関しては零くんの物も例外ではない」

 

 「歌…?…そうだ、あの時も胸の奥から歌が浮かんできたんです」

 

 (なあ、零。お前はどうだったんだ?)

 

 (俺も似たような感じだったよ。どっちかって言えばその場の雰囲気に合った歌詞が出てきたような感覚だったけど)

 

 (ふむ…誰かを守りたいと思えばそのフレーズが歌詞となって歌になる訳か)

 

 (歌う力か…地球人ってのは相変わらずすげえもん作れるよな)

 

 (俺たちでも思いつかないな…)

 

 弦十郎は響の言葉に頷いた。

 

 「歌の力で活性化した聖遺物を一度エネルギーに還元し、鎧の形で再構成したものが翼ちゃんや響ちゃんの身に纏うアンチノイズプロテクター、シンフォギアなの。零くんのは召喚、って形に近いけどね」

 

 「だからとて、どんな歌、誰の歌にも聖遺物を起動させる力など備わっている訳では無い!」

 

 そう言って翼は冷たく言い放った。

 

 「…」

 

 響の側には沢山人がいるのに対し、翼には寄り添うものが一人もいなかった。

 

 「聖遺物を起動させ、シンフォギアを纏う歌を歌える僅かな人間を我々は適合者と呼んでいる」

 

 静かに笑った弦十郎は立ち上がって言った。

 

 「それが翼や零くんであり、君であるのだ」

 

 「どう?貴方に目覚めた力について少しは理解して貰えたかしら?質問はどしどし受け付けるわよ」

 

 了子も笑顔で響に言った。

 

 「あの…」

 

 「どうぞー!響ちゃん」

 

 「全然分かりません」

 

 「俺も…」

 

 「俺もダメだ…」

 

 「わりいがオレも…」

 

 「ぼくもぜんぜんわかりましぇん…」

 

 「だろうね」

 

 「だろうとも」

 

 「分かりきっていましたな」

 

 「いきなりは難しすぎちゃいましたねぇ。だとしたら聖遺物からシンフォギアを作り出す唯一の技術、櫻井理論の提唱者がこの私であることだけは、覚えてくださいね♡」

 

 「はぁ…私はその聖遺物と言うものを持ってません。なのに何故…」

 

 すると、モニターに一枚の画像が映し出され、響と零達はその方を見た。

 

 「これが何なのか、君には分かるはずだ」

 

 「はい!結構前の怪我です!あそこに私もいたんです!」

 

 「…!」

 

 「心臓付近に複雑にくい込んでいるため、手術でも摘出不可能な無数の破片。調査の結果、この破片はかつて奏ちゃんが身に纏っていた第三号聖遺物、ガングニールの砕けた破片である事が判明しました」

 

 翼は目を丸くして了子の説明を聞いていた。

 

 「奏ちゃんの置き土産ね」

 

 翼は握っていた拳を力なく開き、壁に手を付きながら顔を手で抑え、ゆっくりと部屋を出た。

 

 「翼…」 

 

 「あの…」

 

 「どうした?」

 

 「この力のこと、やっぱり誰かに話しちゃいけないのでしょうか…」

 

 「…君が、シンフォギアの力を持っているのを何者かに知られた場合、君の家族や友人、周りの人間に危害が及びかねない。命に関わる危険性だ」

 

 「命に…関わる…」

 

 「俺達が守りたいのは、機密などではない。人の命だ。その為には、この力のことは隠し通して貰えないだろうか」

 

 「貴方に秘められた力は、それだけ大きなものだと言うことを分かって欲しいの」

 

 「人類ではノイズに打ち勝てない。人の身でノイズに触れる時、炭となって崩れることを意味する。そしてまた、ダメージを与えることも不可能だ。たった一つの例外があるとしたら、それはシンフォギアを身に纏った戦姫だけ。日本政府、特異災害対策機動部二課として、改めて協力を要請したい。立花響くん、君が宿したシンフォギアの力、対ノイズ戦のために役立ててはくれないだろうか」

 

 「…私の力で、誰かを助けられるんですよね?」

 

 弦十郎と了子は笑顔で頷いた。

 

 「分かりました!」

 

 そう言って響は部屋を出た。

 

 「…なんだか、昔の俺やタイガに似てるよな」

 

 「そうか?」

 

 「だいぶそっくりだぞ、お前と響って嬢ちゃんは」

 

 「ゼロさんもあんな時期があったんですね」

 

 「ああ、なんて言うか…危なっかしいと言うか…」

 

 すると、基地内で警報が鳴った。

 

 「!!」

 

 司令部では既にノイズの出現位置を特定していた。

 

 「ノイズの出現を確認!」

 

 「本件は我々二課で預かることを一課に通達!」

 

 「出現位置特定!座標出ます!…!C地帯より距離二百!」

 

 「近い…!」

 

 「迎え撃ちます!」

 

 そう言って翼は先に走っていった。

 

 それを見て響も外に出ようとした。

 

 「待つんだ!君はまだ…!」

 

 「私の力が誰かの助けになるんですよね!?シンフォギアの力でないと、ノイズと戦うことは出来ないんですよね!?だったら行きます!」

 

 そう言って響は外に走っていってしまった。

 

 「危険を承知で誰かのためになんて、あの子、良い子ですね」

 

 「…果たしてそうなのだろうか?」

 

 「?」

 

 「翼のように、幼い頃から戦士としての鍛錬を積んできた訳では無い。ついこないだまで日常の中に身を置いていた少女が、誰かの助けになると言うだけで、命をかけた戦いに赴けると言うのは…歪なことではないだろうか?」

 

 「つまり、あの子もまた私達と同じように、こっち側という訳ね」

 

 「…あーもう!よく分かんねーけど、俺達も一緒に行くぞ!零、お前は響のサポートしてやれよ!」

 

 「ああ!」

 

 零は大我に頷き、五人も外に出た。

 

 

 

 外では、既に大量の人間が炭と化し、翼は道路の一箇所にノイズ達を集めていた。

 

 そして、ノイズ達は合体し、巨大なノイズへと変わり、雄叫びをあげた。

 

 翼もシンフォギアを装着し、大きく飛び上がってノイズの攻撃をよけてノイズに斬撃をくらわせた。

 

 ノイズが怯んだところに間髪入れず響が飛び蹴りを喰らわせ、ノイズが飛ばした光弾はセブンとエースの力を身に纏った零が光弾を放って相殺させ、落ちていく響を零はキャッチした。

 

 そして、翼は青い斬撃波を放つ[蒼ノ一閃 ]をノイズにくらわせ、ノイズは綺麗に真っ二つになり、爆発を起こした。

 

 零も響をおろし、響は翼に駆け寄っていった。

 

 「翼さーん!私、今は足でまといかもしれないけど、一生懸命頑張ります!だから、私と一緒に戦ってください!」

 

 「…そうね」

 

 「!」

 

 ゆっくりと翼は振り向いた。

 

 「あなたと私、戦いましょうか。零さんも」

 

 「え…」

 

 そう言って翼は響に刃を向けた。

 

 「え…?」




今回はここまでです!
曲名だけなんでJASRACにはひっかからないはずです!(旧パラガス)
次回もよろしくお願いします!!


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すれ違う想い

お待たせしました!
本当にごめんなさい!!!
はい!!!システムは前と一緒です!!



翼が響に矛先を向けたあの日から一ヶ月、淡々とノイズを処理する翼とは対照的に響はノイズを倒すのにも精一杯と言った様子で、二人が噛み合う事は出来ず、弦十郎も二人に呆れていた。

 

 「一ヶ月経っても、まだまだ噛み合わねえなあ。あらよっと」

 

 現場にいる零も響をサポートしながらノイズを殴り飛ばして炭に変えながら苦笑いをして言った。

 

 「あの時…」

 

 零は翼が響に矛を向けた時の事を思い出していた。

 

 

 

 「私と一緒に戦ってください!」

 

 「そうね…貴方と私、戦いましょうか」

 

 翼は響とは違う種類の笑みを浮かべ、困惑する響に矛先を向けた。

 

 「そういう意味じゃありません、私は翼さんと力を合わせ…」

 

 「分かっているわ、そんなこと」

 

 翼は響の言葉を遮り、淡々と言葉を続けた。

 

 「だったらどうして…」

 

 「私が貴方と闘いたいから」

 

 「えっ…」

 

 「零さん、ちょうどいい機会です。貴方とも一度戦ってみたかった。私は貴方達を受け入れられない。力を合わせ、共に戦うことなど風鳴翼が許せるはずが無い。二人ともアームドギアを構えなさい。それが常在戦場の意志の体現。貴方が何者をも貫き通す武槍の一振、ガングニールのシンフォギアを纏うのであれば、そして例え例外とは言えど同じシンフォギアを纏うのであれば、胸の覚悟を構えてごらんなさい」

 

 「か、覚悟とかそんな…私、アームドギアなんて分かりません。分かってないのに構えろなんて、そんなこと全然分かりません!」

 

 「響ちゃん、こいつは何言っても通じない石頭みてえだ。俺も相手だってんならやるしかねえ…覚悟を決めるしかないぞ…!」

 

 「で、でも…!」

 

 呆れたように、翼は刀を下ろし、踵を返した。

 

 「覚悟を持たずに、のこのこと戦場に遊び半分に立つ貴方が奏の…奏の何を受け継いでいると言うの!」

 

 そう言って翼は響を睨みつけ、大きく飛び上がって手元の刀を投げ、巨大な刃に変形させて足に装着して放つ【天ノ逆鱗】を響に向かって放った。

 

 「くっ!」

 

 零もメビウスのカードをスキャンして右腕のメビウスブレスからメビュームブレードを展開して翼の刃を受け止めた。

 

 受け止めた衝撃で道路が割れ、水道管から噴水のように勢いよく水が吹き出した。

 

 「ぐっ!?零さん…そこをどいて…!どけえええ!!!」

 

 「そいつは無理な相談だっ!」

 

 零は腕の剣で翼の刀を弾き飛ばし、翼の剣は光に戻った。

 

 「…うぐっ…」

 

 翼の身体が地面に叩きつけられると同時に零の腕に鈍い痛みが走り、腕が真っ赤に染まるほどの多量の出血をしていた。

 

 「大丈夫ですか!?」

 

 「ちょっとトレーニングをサボってたからかな…これくらいなんて事ないさ…」

 

 三人ともいつの間にか変身が解除されており、零は服の袖を破って腕を縛って止血をしながら、座り込んでいる翼にゆっくりと歩み寄った。

 

 「…翼さん…あんた…泣いて…」

 

 「泣いてない!泣いてなんかいません!涙なんて、流していません…!」

 

 翼の顔からは、水とも涙とも分からないものが目元を伝って零れていた。

 

 「風鳴翼は、その身を剣と鍛えた戦士です。だから…」

 

 「…」

 

 「翼さん…」

 

 零は何も言わず、ゆっくりと翼を抱えあげた。

 

 「翼さん、私、自分が全然ダメダメなのは分かっています!だから、これから一生懸命頑張って、奏さんの代わりになって見せます!」

 

 その言葉に反応した翼は零の腕の中から出て怒りの感情を顕にしながら響の頬を力任せに手の平で叩いた。

 

 その時の翼の怒りと悲しみが入り交じった表情は今も忘れられない。

 

 

 

 やはり、翼の中には奏という存在を失った穴のようなものがあるのだろう。それは後悔なのか、それとも…。

 

 「…今の俺には、分からないのかもな…」

 

 力ではない、心のつよさ。

 

 今の零には、分からない、分かれない苦しみなのかもしれない。友達もいて、一緒に戦える仲間もいる自分と翼は真逆で何もかもが違っていて…。

 

 「…ああーもう!わかんねえ!」

 

 そのモヤモヤは基地に戻ってきても晴れることはなかった。

 

 

 その日の夕方五時半、二課のメンバーは基地でミーティングをするため、司令室に集まっていた。昴や大我達も一緒だ。

 

 「よう。」

 

 「おう。」

 

 「時間ぴったし、だな」

 

 そして、最後に響が入り、ミーティングが始まった。

 

 「では、全員揃ったところで、仲良しミーティングを始めましょ」

 

 響と翼の関係は今も気まずそうだ。

 

 モニターに街全域の地図が映し出され、その中には黄色い丸が一つとそれより大きい赤い丸がいくつも点々と付いていた。

 

 「…どう思う?」

 

 「一杯ですね」

 

 「ハハッ。全くその通りだ」

 

 弦十郎は響の言葉に笑いながら話を続けた。

 

 「これは、ここ一ヶ月に渡るノイズの発生地点だ。ノイズについて、響くん達が知ってることは?」

 

 「テレビのニュースや学校で教えてもらった程度ですが…まず無感情で機械的に人間だけを襲うこと」

 

 「それで、襲われた人間も炭化しちまう、だったよな?」

 

 「時や場所も選ばず突然現れ、周囲に被害を及ぼす特異災害として認定されている、という事もあった…かな?」

 

 「バッチリ合ってますよ、タイタスさん、風舞さん」

 

 「凄く詳しいな、響!」

 

 「今纏めてるレポートの題材なんだよ〜」

 

 頭を書きながら響は照れ笑いで言った。

 

 「そうね、ノイズの発生が国連でも議題に上がったのは十三年前の事。観測そのものはもーっと前からあったわ。それこそ世界中に、太古の昔から」

 

 「世界の各地に残る、神話や伝承に登場する数々の異能は、ノイズ由来のものが多いだろうな。文献によっては同時期に宇宙人や怪獣がいた、なんて話もあるが、ノイズの登場により絶滅、あるいはそれを恐れてずっと眠ったままと言うように記されてるものがほとんどだ」

 

 「ノイズの発生率は決して高くないの。この発生係数は誰の目から見ても異常事態。だとすると…そこに何らかの作為が働いてると考えるべきでしょうね」

 

 「作為…ってことは誰かの手によるものだというんですか?」

 

 「中心源はここ、私立リディアン音楽院高等課。我々の真上です。サクリストD、デュランダルを狙って何らかの意思が、この地に向けられている証左となります」

 

 翼は淡々と説明をした。

 

 「あの、デュランダルって一体…」

 

 「ここよりも更に下層、アビスと呼ばれる最深部に保管され、日本政府の管理下によって我々が研究しているほぼ完全状態の聖遺物、それがデュランダルよ」

 

 「翼さんの天羽々斬や、響ちゃんの胸のガングニールの様な欠片は、奏者が歌ってシンフォギアとして再構築させないとその力を発揮出来ないけど、完全状態の聖遺物は一度起動した後は100%常時力を発揮し、更には奏者以外の人間も使用出来るだろうと研究の結果が出ているんだ」

 

 「それが、私の提唱した櫻井理論。だけど完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲイン値が必要なのよね」

 

 「????」

 

 零や大我達も首を傾げ、風舞に至っては半分くらい寝ていた。

 

 「あれから二年…今の翼の歌であれば、あるいは…」

 

 「…」

 

 「そもそも、起動実験に必要な日本政府からの許可って降りるんですか?」

 

 「いや、それ以前の話だよ。安保を盾に、アメリカが引渡しを命じているそうじゃないですか。起動実験どころか、扱いには慎重にならざるを得まい。下手を打てば国際問題だ」

 

 「まさかこの件、米国政府が糸を引いてるなんてことは…」

 

 「…調査部からの報告によると、ここ数ヶ月の事件、数万回に及ぶコンピューターへのハッキングを試みる痕跡が見つかったと言われているそうだ…」

 

 翼は紙コップをぐしゃぐしゃになるまで握り締め、苛立ちを隠せないでいた。

 

 「流石にアクセスの出処は不明。それらは断片的に米国政府の仕業とは言えないな。もちろん痕跡は辿らせている。本来こういうのこそ、俺たちの本領なんだがな…」

 

 「風鳴司令…」

 

 「おっそうか、そろそろか…」

 

 翼のマネージャーが声をかけ、弦十郎も時間に気付いた。

 

 「今晩は、これからアルバムの打ち合わせが入っています」

 

 「へ?」

 

 「表向きの顔は風鳴翼のマネージャーをやっています」

 

 マネージャーは緒川慎次と書かれた名刺を響に渡し、零や大我達にも渡した。

 

 「すげー!なあなあ、俺達もあるよな!」

 

 「うむ。あれは社員証だが、いいものだ」

 

 「また行く時があったら取りに行こうぜ!」

 

 「悪ぃな、こいつらいつもこんな調子なんだ」

 

 「賑やかな方々ですね、見ていて楽しいです」

 

 緒川さんの顔も笑っていた。

 

 「それにしても…俺達を取り囲む脅威はノイズだけじゃないんだな…」

 

 「うむ…」

 

 「どこかの誰かがここを狙っているなんて、あんまり考えたくはないな」

 

 「大丈夫よ。なんてったってここはテレビや雑誌で有名な天才考古学者櫻井了子が設計した人類守護の砦よ?先端にして異端のテクノロジーが、悪い奴らなんか寄せ付けないんだから」

 

 「よろしくお願いします」

 

 そう言って響はぺこりと頭を下げた。

 

 翼が出たあと、一同は飲み物を飲みながらしばしのリラックスをしていた。

 

 「どうして私達は…」

 

 「?」

 

 「ノイズだけでなく、人間同士でも争っちゃうんだろう…」

 

 「…」

 

 「どうして、世界から争いが無くならないんでしょうねー…」

 

 「それはきっと…人類は呪われているからじゃないかしら」

 

 そう言って了子は響の耳元で囁き、耳を優しく口でくわえた。

 

 「いやあ〜っ!!」

 

 響は顔を赤くしながら反射で席を立った。

 

 「あ〜ら?おぼこいわね。誰かのものになる前に私のものにしちゃいたいかも♡」

 

 スタッフの二人と零とタイタスは苦笑いをし、昴と大我、風舞は「?」を浮かべていた。

 

 

 

 響や翼が学園に行っている間、零は大我と特訓をしていた。

 

 その様子を昴、タイタス、風舞は見ていた。

 

 「…ふむ…」

 

 「?どうされたんですか?」

 

 「ここ最近、気になることが多くてな…」

 

 「気になること、ですか?」

 

 「零のやつの動きが悪い。何か引っかかってるもんでもあるんだろうが…本人も上手く言葉に出来ないんだろうな」

 

 「…翼さんや響さんの事でしょうか」

 

 「それで間違いないだろうな。だけど、これはアイツらだけで解決しないといけない問題だろうな。俺達が変にしゃしゃり出ても意味は無いだろうしな」

 

 「我々に出来ることは、彼らを見守るだけしかないのでしょうか」

 

 「まあ、これは見守ってる方が最善かもな。お前達の時もそうだっただろ?」

 

 「ええ。タイガと共に闘い、一緒に絆を深め合いました。だけど、彼らが私達と同じようになるかは―」

 

 「まあ、あいつらを信じてみるのも良いんじゃねえか?なあ、旦那」

 

 「…フッ、そうだな。フーマの言う通りだ。我々が信じなければ意味が無いな」

 

 「そういうこった」

 

 そう言って風舞はいたずらっ子みたいに白い歯を見せて笑い、タイタスもフッと微笑んだ。

 

 夕方になり、五人が談笑していると警報がなり、五人は頷きあってノイズがいる場所へと向かった。

 

 「Imutate Symphony tron…」

 

 零は音速で街を駆け抜けながらシンフォギアを纏い、メビウスとウルトラマンのカードをスキャンし、その力をギアと身体に宿した。

 

 『Be the type! Spacium Brave!』

 

 【His World Vo.Zebrahead 出典:Sonic The Hedgehog(2006)】

 

 零が着地した場所には既にノイズ達が取り囲んでいた。

 

 (多い!けど…!)

 

 零はウルトラスラッシュを二つ手に持って前に投げ、ノイズ達を切り裂いた。

 

 そして、道を開いてそこを突っ切って行き、ノイズ達もそれについていった。

 

 それを狙い、一箇所に集まったノイズを狙って腕を十字に組んでスペシウム光線を放ち、ノイズを一層させた。

 

 「こっちは終わった!響は…!?」

 

 響の異常な気配に気付き、零は駅にいる響の元へ向かった。

 

 「響…か!?」

 

 直後に響はノイズの爆撃を受け、正気に戻り、ノイズを追いかけて行き、零もその後を追った。

 

 そして、その逃がしたノイズは翼が天高くから斬撃を放ち、ノイズは爆発四散し、それと同時に翼も着地した。

 

 「…私だって守りたいものがあるんです!だから…ッ!」

 

 翼は響の言葉には耳を貸さず、刀を静かに持っているだけだった。 

 

 「だから、失うんだよ…!」

 

 「…!?」

 

 「ネフシュタンの…鎧…!」

 

 声がした方を向くとそこには、ミュフスタンの鎧を纏った一人の少女が立っていた。

 




今回はここまでです!
面白かったら感想や高評価よろしくお願いします!!!


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悲しみの落涙

連投でええええす!!!


「ネフシュタンの…鎧…!」

 

 「へぇー?てことはアンタ、この鎧の出自を知ってんだ」

 

 「二ヶ月前…私の不始末で奪われたものを忘れるものか!…私の不手際で奪われた命を忘れるものか!」

 

 「…!」

 

 あの時の光景がフラッシュバックする。

 

 立ち直ったつもりでいても、どうやら許しては貰えないようだ。

 

 「忘れるもんか、絶対に」

 

 そう言って零と翼は武器を構え、少女も鎖のような武器を構えた。

 

 「翼さん、零さん、辞めてください!相手は人です!同じ人間です」

 

 「「戦場で何をバカなことを!お??」」

 

 「むしろ、貴方と気が合いそうね」

 

 「だったら仲良くじゃれ合うかいィ?」

 

 そう言って少女は鎖を飛ばし、零は響を抱き抱えて翼と同時に飛び上がった。

 

 翼はその勢いのまま【蒼ノ一閃】を放ち、少女も鎖で受け止め、それをはじき飛ばした。

 

 「なんてやつだ…あれを弾き飛ばすなんて…」

 

 翼も同様が隠しきれないまま巨大な剣を握って少女に向かって奮うも剣先が当たらず、その剣を受け止められて動きが止められ、腹部に強い一撃をくらい吹っ飛んだ。

 

 「ネフシュタンの鎧のポテンシャルだなんて思わないでくれよなァ?アタシのテッペンはまだまだこんなもんじゃねえぞォ?」

 

 そう言って少女は後ろに飛び上がり、鎖をムチのようにしならせて翼目掛けて叩きつけた。

 

 その威力は翼が立っていたすぐ後ろの木が一瞬でへし折れる程だった。

 

 「翼さん!」

 

 「お呼びじゃないんだよォ。コイツらの相手でもしてな」

 

 そう言って少女は八体のノイズを呼び出し、零と響の前に召喚した。

 

 「ああ…!ノイズが操られている…!」

 

 「そんなんありかよ…!」

 

 気が付くと、零の胸のカラータイマーも鳴っており、エネルギーが少ないことを知らせていた。

 

 「だ、大丈夫ですか!?なんか鳴ってますけど!?」

 

 「元々こいつはそういう仕様なんだ…それにしても肝心なところで…ッ!」

 

零は身動きが取れないまま、響と一緒にノイズに捕まってしまった。

 

 翼はよそ見をしていた少女に向かって剣を奮い、少女もとっさに鎖で受け止めた。

 

 「その子にかまけて、私を忘れるなぁ!」

 

 「!?」

 

 翼の機転で少女はバランスを崩しかけるもすぐに持ち直し、翼の回し蹴りを腕で受け止めた。

 

 「お高く止まるなァ!」

 

 少女は受け止めていた翼の足を掴んで地面に叩きつけ、一瞬で翼の前に回り込み顔を踏みつけた。

 

 「くっ…」

 

 「のぼせ上がるな人気者!誰も彼もが構ってくれるなと思うんじゃねぇ!」

 

 「うっ…」

 

 「この場の主役と勘違いしているんなら教えてやる。狙いはハナっからこいつをかっさらうことだ。余計なやつも一人ついてきたけどまあいい」

 

 そう言って少女は親指で響達の方を指した。

 

 「鎧も仲間も、あんたには過ぎてんじゃないのか?」

 

 「繰り返すものか…!私は誓った!」

 

 そう言うと翼は天空から無数の小さな剣を飛ばす【千ノ落涙】を放ち、自分から少女を引き離して体制を立て直し、二人とも街の方へ飛んで戦闘を再開した。

 

 「…そうだ!アームドギア!奏さんの代わりになるには私にもアームドギアが必要なんだ!あれさえあれば…!出ろ!出てこい!アームドギアァ!」

 

 しかし、いくら暴れても響の腕から武器は出ず、何も起きることは無かった。

 

 「…なんでだよ…どうすればいいのか分かんないよ…」

 

 零のカラータイマーの点滅も早くなり、意識も朦朧としていた。

 

 その頃、翼と少女は戦いを繰り広げていた。

 

 「やはり鎧に振り回されてる訳では無い!この強さは本物…!」

 

 「ここで何考え事だァ?ちょせぇ!」

 

 翼は少女の回し蹴りを避けて間合いを取り、刀を構え、それと同時に少女も周囲にノイズの群れを召喚した。

 

 翼は一瞬戸惑うもノイズの攻撃を受け止め、弾き返してノイズを切り裂き、残りのノイズの群れもあっという間に倒した。

 

 そして、斬撃を少女に放ち、再び翼と少女の一騎討ちになり、少女は翼が投げた短剣を弾いて鎖の先端から黒と白の光弾を放つ【NIRVANA GEDON】を放ち、翼はそれを剣で受け止めた。

 

 「翼さん!」

 

 響の叫びもむなしく、大きな爆発が起き、その中から翼が飛び出して地面に膝をついた。

 

 「フッ、まるで出来損ない」

 

 「…確かに、私は出来損ないだ。」

 

 「はァ?」

 

 「この一振の剣と鍛えてきた筈なのに…なのに、無様に生き残ってしまった…出来損ないの剣として恥を晒してきてしまった…!」

 

 翼は剣を杖のようにしながらよろよろと立ち上がった。

 

 「だが、それも今日までのこと。奪われたネフシュタンを取り戻すことで、この身の汚名を注がせてもらう!」

 

 「そうかい。脱がせるものなら脱が…なにィ!?」

 

 見ると、少女の影には剣が刺さっており、身動きが取れなくなっていた。これも翼の技の【影縫い】だった。

 

 「くっ…こんなもんでアタシの動きを!…まさか、お前…」

 

 「月が覗いている内に決着をつけましょう」

 

 そう言う翼は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 「う、歌うのか…絶唱を…!」

 

 「翼さん!」

 

 「防人の生き様!覚悟を見せてあげる!」

 

 そう言って翼は響に矛先を向けた。

 

 「貴方達の胸に焼き付けなさい!」

 

 二人の視線は揺れながら交差していた。

 

 「ええい!やらせるかよ!好きにッ!勝手にィッ!はっ!」

 

 翼はゆっくりと刀を天に掲げ、ピンク色の結界を張りながら少女へと向かって踏み出した。

 

 そして、歌いながらゆっくりと少女に向かって歩み寄り、己の全てを賭けて命を燃やしつくそうとしていた。

 

 そして、詠唱が終わると同時に口から血を流し、一瞬の間のあと凄まじい衝撃波が放たれ、ノイズが消え去るのと同時にネフシュタンの鎧にもヒビが入った。

 

 そして、少女は大きく吹き飛ばされ、響と零も解放された。

 

 少女はなんとか立ち上がり、どこかへと去ってしまった。

 

 響は零を肩で支えながら引っ張って翼の元へと駆け寄った。

 

 「翼さーん!!」

 

 その横に弦十郎と了子は車で現れ、避難を済ませた大我達も零達の元へ駆け寄った。

 

 「無事か!翼!」

 

 「…私とて、人類守護の務めを果たす、防人」

 

 そう言って振り返った翼の目は虚ろで、口から滝のように大粒の血が垂れ、足元には赤い水たまりが出来ていた。

 

 「こんなところで、折れる剣じゃ…ありません」

 

 そう言って翼は倒れ、それを見た弦十郎は翼に駆け寄った。

 

「翼さああああん!!!」

 

 響は悲鳴とも叫びとも分からぬ声をあげていた。

 

 

 

 翼と零は救急車で搬送され、基地に戻っていた。

 

 「零くんの方は体力の限界だったので、休めば大丈夫です。翼さんの方も、一命は取り留めましたが、容態が安定するまでは絶対安静、油断を許されない状況です」

 

 「宜しくお願いします」

 

 そう言って弦十郎と大我達は医師に頭を下げた。

 

 「俺達は鎧の行方を追跡する!どんな手がかりも見落とすな!」

 

 そう言って弦十郎と大我達は外へ出た。

 

 手術室の横の待合室には響が一人座っていた。

 

 「お前が気に病む必要はねえよ。翼自ら戦い、歌ったんだからな…」

 

 「昴さん…」

 

 そう言って昴は飲み物を買い、自販機のすぐ前のソファに座った。

 

 「お前も知っての通り、以前の翼はアーティストユニットを組んで活動をしてた…」

 

 「ツヴァイウィング…ですよね」

 

 「ほらよ」

 

 そう言って昴は響に暖かい飲み物を渡した。

 

 「その時から翼のパートナーが天羽奏…響の前のガングニールの奏者だったんだ」

 

 「二ヶ月前のあの日、ノイズに襲撃されたライブの被害を最小限に抑える為に奏は絶唱を解き放ったんだ…」

 

 「絶唱…翼さんも言っていた…」

 

 「奏者の負荷を厭わずにシンフォギアの限界以上の力を解き放つ絶唱はノイズの大群を一瞬で消滅させられたが、同時に奏の命も燃やし尽くしたんだ」

 

 「それは…私を救うためでしたか…」

 

 「…」

 

 昴は一口コーヒーを飲み、言葉を続ける。

 

 「奏の殉職、それでツヴァイウィングも解散…一人になった翼は奏の穴を埋めるべく、がむしゃらに戦ってきた。同世代の女の子が知る恋愛や遊びも覚えないで自分を殺し、一振の剣として生きてきた。そして今日、剣としての使命を果たすために死ぬことすら覚悟して歌を唄った…。傍から見てても不器用なんだよ。でもそれが、風鳴翼と言う人間の生き方なんだ…」

 

 響は唇を震わせながら涙を流し、口を開いた。

 

 「そんなの…酷すぎます…!それなのに私は翼さんのこと…なんにも知らずに…一緒に戦いたいだなんて…奏さんの代わりになるだなんて…」

 

 そう言って響は嗚咽を漏らし始めた。

 

 「…俺やマネージャーの緒川や零、大我達も奏の代わりになって欲しいだなんて思っちゃいねえよ。そんなこと、誰も望んじゃいない。…なあ響、俺から一つお願いしていいか?」

 

 「…?」

 

 「俺は翼のマネージャーでもなんでもないけど…アイツのこと、嫌いにならないでやってくれよ。世界で独りぼっちになんて、させないでやってくれ」

 

 「…はい」

 

 

 零は意識の世界のなかで、白い百合の花畑に立っていた。

 

 過去の事が思い出される。

 

 ルシフェルやファイエル…それらは決して一人で倒すことが出来なかった…。

 

 今もう一度現れたら俺は勝てるのか?

 

 もしも…もしも仲間を失ったりしたら…?

 

 いやだ。怖い。

 

 こんなにも戦うことに恐怖を覚えたことはなかった。

 

 何時でも命を落とせるこの環境にあっては、いつしか生きるという選択を捨てるのではないか…そんな恐怖が焼き付いてしまっていた。

 

 ユリ…レイジ…皆…!

 

 幻影に手を伸ばそうとした途端、そこで意識が戻った。

 

 「…」

 

 軋む身体をベッドから起こしながら拳を握ってじっと見つめる。

 

 「…翼は…ずっと一人で戦ってきたんだ…俺も、戦うしかないんだ…」

 

 すると、部屋に大我達が入り、起きた零に気が付いた。

 

 「おお、目が覚めたのか!良かったー!」

 

 「もう起きても大丈夫なのか?」

 

 「なんか食いてえ物とかあるか?」

 

 「…いや、大丈夫だよ。ありがとう、皆」

 

 「…そっ、か。…なあ、零。その、なんて言うかさ」

 

 「…?」

 

 零は不思議そうに大我の方を見た。

 

 「俺はお前みたいにシンフォギアを纏って戦える訳じゃないし、いつも守ってもらう立場だから言うことじゃないかもしれないけどさ。お前はお前のまま、強くなれよ」

 

 「俺のまま…?」

 

 「おう!例えば、俺にだって怖いものはある!父さんの説教とか、それも数え切れないくらい!だけど、それも含めて俺なんだって、思うんだ。だからさ、お前を、柊零をブレさせないまま、強くなれよ」

 

 そう言って大我は零の胸を軽く小突いた。

 

 「…そうだね。そうだよね。ありがとう、大我」

 

 「へへへ。前に俺達と一緒に戦ったヒロユキも同じこと言うかなって思ったんだ」

 

 「ヒロユキ?」

 

 「ああ。俺達がいた地球で体を借りてた地球人なんだ」

 

 「彼と戦った日々は今も私達と共に根付いている。君にもいるだろう?今は一緒にいなくても、共に戦ってきた仲間達が。彼らは、あるいは彼女達は君を信じてここまで進めてくれたんだ。君が仲間を信じてきたように、仲間達もまた君を信じていたんだ」

 

 「確かに…皆、俺を引き止めないで送り出してくれたんだ…俺もその期待に応えなきゃな」

 

 「よっし!決まりだな!それじゃあさ…」

 

 

 

 

 零と響、そして昴と大我達は弦十郎の家へと来ていた。

 

 「考えることは同じみたいだな、お前達」

 

 「えへへー」

 

 「さ、行こうぜ」

 

 早速、零と響は弦十郎、昴、大我、タイタス、風舞の指導の元、特訓を開始したのである!!

 




今回はここまでです!!!
うーん!!疲れが滲み出てるかも!!!
次回も宜しくお願いします!!


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深き深淵を

毎週投稿しててえらいぞ私ィ


[Buddy,steady,go! Vo.寺島拓篤 出典:ウルトラマンタイガ]

 

 早朝、響と零は弦十郎の指導の元、大我達と共に特訓を開始した。

 

 「よおし!来いっ!」

 

 大我と昴はミットを持ち、二人はボクシンググローブをつけて拳を打ち込んでいた。

 

 「そうじゃない!稲妻を喰らい、雷を握り潰すように打つべし!」

 

 「言ってること、全然分かりません!でもやってみます!」

 

 響は力を込め、大きく振りかぶって大我に向かって全力で拳を打ち出した。

 

 「うおっ!?」

 

 その衝撃で大我の体も後ろに下がり、両足で踏ん張っても二メートル程の長さの足を引きずった後が出来てしまった。

 

 「…!!」

 

 「良いパンチだぜ!響」

 

 それを聞いて響も嬉しそうに笑った。

 

 「大我、変わってくれ。どうやら私でなければこの子の相手は務まらなさそうだ」

 

 「そうみたいだな。響、次はタイタスが相手だ。全力で行けよ!」

 

 そう言って大我はタイタスにミットを渡し、タイタスもミットを構えた。

 

 「よろしくお願いします!」

 

 

 

 「どうした?そんなもんか?」

 

 零も響と同じように昴にスパーリングを続けていた。

 

 「はあああっ!」

 

 零は拳に力を込めて打つも、昴の身体は微動だにしなかった。

 

 「何を迷ってるのか分かんねーが…迷いを捨てろ!お前は皆を守るために戦うんだろ!」

 

 「…!だァっ!」

 

 零は全力の力を入れ、拳を打ち出した。

 

 「!!…ヘヘッ、やれば出来んじゃねえか」

 

 「はぁっ…はぁっ…」

 

 「おそらく、これまではお前の能力でなんとかなっただろうが…今回の件は俺達も含めて能力が失われている。つまり、俺達自身の力が重要になってくるって事だ。ましてや、ウルトラマンの力を失ったお前は尚更だ」

 

 「ちゃんと鍛えたつもりだったけど…足りなかったのか…」

 

 「まあそう言うなよ。俺達がもう一度鍛え直せば済む話だ。そうだろ?」

 

 「…ああ!頼む!」

 

 そう言って零はスパーリングの続きを開始した。

 

 

 

 とある森の奥深く…大きな屋敷の中で一人の女性が椅子に座りながら外国人の誰かと話していた。

 

 『(ソロモンの杖…我々が讓渡した聖遺物の起動実験はどうなっている?)』

 

 「(報告の通り、完全聖遺物の軌道には相応レベルのシンフォニックゲインが必要になってくるの。簡単にはいかないわ)」

 

 そう言いながら女性は手に持った杖でノイズを出し、杖を一振してノイズを消した。

 

 『(ブラックアート…、失われた先史文明の技術を解明し、ぜひともあの方に捧げたい)』

 

 「(そうね。あなたの祖国からもそうだけど、あの方からの支援には感謝しているわ。今日の鴨撃ちも首尾よく頼むわね)」

 

 『(あくまでも便利に使うハラか。ならば、見合った働きを見せてもらいたいものだ)』

 

 「(もちろん理解しているつもりよ。従順な犬ほど長生きするというしね。それに、あの方に逆らえば消されてしまうことも)」

 

 そう言って女性は電話を切り、座っていた椅子から立ち、磔にされているネフシュタンの鎧を身にまとっていた銀髪の少女に歩み寄った。

 

 「野卑で下劣…生まれた国の品格さので辟易する…そんな男に既にソロモンの杖が起動している事を教える道理はないわね…クリス」

 

 「…」

 

 クリスと呼ばれた少女の顔に女性は手を当て、クリスは目を開いた。

 

 「苦しい?可哀想なクリス。貴女がぐずぐず戸惑うからよ」

 

 そう言われてクリスは女性の顔を見た。その顔は決して笑っておらず、怯えるしかなかった。

 

 「誘い出されたあの子をここに連れてくれば良いだけだったのに…手間取ったどころか、空手で戻ってくるなんて…」

 

 「…これで…いいんだよな…?」

 

 絞り出すようにクリスは声を出した。

 

 「なに?」

 

 「アタシの望みを叶えるには、お前に従ってればいいんだよな…?」

 

 「そうよ…だから私の全てを受け入れなさい…でないと嫌いになっちゃうわよ」

 

 そう言って女性は装置のレバーを引いた。

 

 クリスの身体に電流が流れ、悲鳴をあげた。

 

 もがいても決して脱出することは出来ず、ただ耐えるしかなかった。

 

 「可愛いわよクリス。私だけが貴方を愛してあげられる…」

 

 そして電流が止まり、女性は再びクリスに歩み寄って顔を触り、クリスの目は彼女に向けられていた。

 

 「覚えておいてねクリス…痛みだけが人の心を繋いで絆と結ぶ、世界の真実と言うことを…さあ、一緒に食事にしましょうね」

 

 それを聞いてクリスは安堵の表情を見せ、それを見た女性はもう一度クリスに電流を流し、館中にクリスの悲鳴が流れた。

 

 

 

 

 早朝のトレーニングが終わり、零と響は基地の中に入るやいなやソファに倒れ込んだ。

 

 「朝からハードすぎます…」

 

 「腕が…背中が…痛…い…」

 

 「頼んだぞ、明日のチャンピオン」

 

 そう言って弦十郎は飲み物を持って響と零の向かいのソファに腰掛けた。

 

 「まあ、及第点ってとこだな」

 

 「そう言えばゼロにも弟子がいるんだろ?アイツは今はどうしてるんだ?」

 

 「ジードがここの宇宙にくる以前にアイツがいる宇宙に行ったのは聞いてるんだが…今も地球を守ってるのかもな」

 

 「アイツ?」

 

 零は飲み物を受け取りながら昴の話を聞いた。

 

 「ああ、お前は知らないんだったな。俺に弟子入りを志願してきたやつがいるんだよ。ウルトラマンゼットって言うんだけどな、今は別の宇宙の地球に滞在してるんだ。ま、俺は認めたつもりはないけどな」

 

 「ゼロに弟子が…」

 

 「前に見た時には少しくらいは逞しくなっていたな。アイツが地球での戦いを通して学んでくれればいいんだけどな…まあ、シンフォギアで戦えない以上、俺も何も出来ないけどな」

 

 そう言って昴達もソファに座った。

 

 「ゼロ…」

 

 「…あの、自分でやると決めたくせに申し訳ないんですけど、何もうら若き女子高生に頼まなくても、ノイズと戦える武器って他に無いんですか?大我さんや昴さんに任せる訳じゃありませんけど…例えば外国とか」

 

 響は弦十郎や昴達の方を向いて言った。

 

 「公式には無いな…日本だって、シンフォギアは最重要機密事項として、完全非公開だ」

 

 「えええ…私、結構派手にやらかしてるかも…」

 

 「情報封鎖も二課の仕事だから」

 

 「…だけど、時々無理を通すから、今や我々のことをよく思ってない閣僚や省庁だらけだ」

 

 男性スタッフが自分の席から響達の方を向いて言った。

 

 「特異災害対策機動部二課を縮め、突起部って揶揄されてる」

 

 「情報の秘匿は、政府の指示だってのにね…やり切れない…」

 

 「いずれシンフォギアを、有利な外交カードにしようと目論んでるんだろう」

 

 「EUや米国がいつだって改定の機会を狙っているはず…シンフォギアの開発は、既知の系統とは全く異なるところから突然発生した理論と技術に成り立っているわ。日本以外の国では到底真似出来ないから、尚更欲しいのでしょうね。以前にも日本は独自に人工ウルトラマンを作り上げていたけど、それらもシンフォギアと同様の理由で開発は断念されているし」

 

 「人工ウルトラマン…だと…!?」

 

 「…結局やっぱり色々とややこしいって事ですよね…」

 

 気だるげに響は言った。

 

 「…そう言えば了子さんはどうしたんだ?」

 

 タイタスが辺りを見回しながら言った。

 

 「永田町さ」

 

 「永田町?」

 

 「政府のお偉いさんに呼び出されてね」

 

 「はぁ」

 

 「本部の安全性、及び防衛システムに関係閣僚に対し、説明義務を果たしに行っている。仕方の無いことさ」

 

 「…本当は何もかもがややこしいんですね」

 

 「ルールをややこしくするのはいつも責任を取らずに立ち回りたい連中なんだよ。その点、広木防衛大臣は…」

 

 弦十郎は一度時計を確認した。

 

 「…了子くんが遅れているようだな」

 

 「…フーマのやつ、どこいったんだ?」

 

 「トイレかなんかじゃないのか?」

 

 

 

 「あなたは…確か…」

 

 手術室を出た翼の前に風舞が立っていた。

 

 「風舞だ。悪いが、あんたが眠っている間の夢をちょいとばかし覗かせてもらったぜ」

 

 「…」

 

 「…あんたは大切な人を亡くして、意味を求めず、ただ戦ってきたんだな」

 

 「…それがなんだと言うんだ」

 

 「オレもあんたと同じように大切なたった一人の相棒を目の前で亡くした事がある。だからあんたの気持ちは痛いほどわかる」

 

 「目の前で…?誰かに殺されたのか…」

 

 「いいや、違う。…手にかけたのは誰でも無い俺自身だ」

 

 「…!!仲間を殺したのか!?」

 

 「…」

 

 「言え!何故貴様はそんな事が出来た!」

 

 そう言って翼は風舞の胸ぐらを掴んだ。

 

 「…その相棒は、怪物になっていた。過酷な環境の中で一人彷徨い、力を手に入れてもなお、最後まで抗ったがついには自我が無くなった。その寸前、オレはヤツに言われたんだ。トドメを刺してくれ、と」

 

 「…!!」

 

 「オレも断ったさ…だがそれがヤツの最後の言葉だった…。だから、俺はアイツの願いを聞き入れた。だが、アイツは俺に生きる術を、戦う術を教えてくれた…。お前にとっての奏と同じだ」

 

 「同じなもんか…!化け物となった貴様の相棒と奏が同じなもんか!」

 

 「…アイツも、奏も、やり方は違う。だけど、オレもあんたも、相棒が命をかけて助けてくれた命で今を生きてる。俺はアイツがくれた命を投げ捨てようとは思わない。例えそれがあんたの言う生き恥を晒す事だとしてもだ」

 

 「…」

 

 風舞の胸ぐらを掴む翼の手が緩んだ。

 

 「確かに、あんたからしたら仲間もいるお前が何を言ってるんだ、って感じだろうけどな。だけど、オレはアイツらがいるから、死ぬ訳にも仲間を失う訳にもいかないって、誓ったんだ。それは零も響の嬢ちゃんも同じなはずだ。お前と同じ経験はしてなくてもな」

 

 「あの二人が…?」

 

 「あの二人、あんたに鼓舞されて訓練を始めたんだ。あんたの言葉はしっかり響いてるみたいだぜ」

 

 「…私は…」

 

 「…嬢ちゃんの好きにしな。アイツらと共に戦うか、それとも刃を交えるか。あんたが防人としてすべき事が何なのかを自分の中でハッキリさせるこったな」

 

 そう言いながら風舞は翼の元を去った。

 

 「…」

 

 

 

 司令室に了子が戻り、全員は入口の方を見た。

 

 「大変長らくお待たせしましたぁ〜!」

 

 「!!」

 

 「了子くんッ!」

 

 「何よ?そんなに寂しくさせちゃった?」

 

 「広木防衛大臣が…殺害されたんだ」

 

 「ええっ!?本当!?」

 

 「複数の革命グループから犯行声明が出ている。いずれも、詳しいことは把握出来ていない。国家全力で捜査中だ」

 

 「皆了子に連絡が取れないから心配してたんです」

 

 「?」

 

 そう言って了子は端末をポケットから取り出し、画面を操作した。

 

 「…壊れてるみたいね」

 

 それを聞いて響は安堵の表情を浮かべた。

 

 「でも心配してくれてありがとう。そして、政府から受領した秘密司令も無事よ。任務遂行こそ、広木防衛大臣への弔いだわ」

 

 「…」

 

 昴は、了子が取り出したアタッシュケースに血が付いているのを見逃さなかった。

 

 そして、二課の全員が集められ、司令内容を了子から聞くことになった。

 

 「私立リディアン音楽院高等科。つまり、特異災害対策機動部二課の本部を中心に頻発しているノイズ発生の事例から、その狙いは本部最奥区画、アビスに厳重保管されているサクリストD、デュランダルの強奪目的と政府は結論付けました」

 

 「デュランダル…」

 

 「EU連合が経済破綻した際、不良債権の一部肩代わりを条件に日本政府が管理、保管することになった、数少ない完全聖遺物の一つ」

 

 「輸送するって言ったって、どこに持っていくんですか?ここ以上の防衛システムがどこに…」

 

 「永田町最深部の特別電算室、通称[ 記憶の遺跡]…そこならば、と言うことだ。どの道、俺達が国家役員である以上、お上の意向には逆らえないさ」

 

 「デュランダルの輸送予定日時は明朝、マルゴーマルマル。詳細はこのメモリーチップに記載されています」

 

 「あそこがアビスですか…」

 

 響はモニターに映し出されたアビスの図を見ながら言った。

 

 「東京スカイタワー三本分。地下千八百メートルにあるのよ」

 

 「はぁ」

 

 「はい。それじゃあ、予定開始時間まで休んでいなさい。あなたのお仕事はそれからよ」

 

 そう言って了子は響にウインクした。

 

 「はいっ!」

 

 

 

 昴は廊下の途中で響と緒川が話してるのを横目に通り過ぎた。

 

 (櫻井了子…奴だけが何かおかしい。俺の気のせいだといいんだが…) 

 

 すると、大我と出会った。

 

 「よう、昴。…昴?」

 

 「…ん?あ、ああ大我か、わりい」

 

 「?よくわかんねーけど、任務の準備に行こうぜ」

 

 「そうだな…」

 

 昴は大我と共に任務の準備に行った。

 

 

 

 そして時間になり、零達は基地の前に集まっていた。 零達の後ろには車が六台とヘリコプターが一台配備されていた。

 

 「防衛大臣殺害犯を検挙する名目で検問を配備。記憶の遺跡まで一気に駆け抜ける」

 

 「名付けてぇ〜!天下の桜雷一人占め作戦♡」

 

 早速一同は車に乗り込み、輸送機地までかっ飛ばした。

 

 零と響は了子が運転する車に乗り、昴達四人も車に乗った。

 

 「ぜ、ゼロ!もっと安全運転してくれよ!」

 

 「うるせえ!これでもめいっぱい安全にやってんだよ!」

 

 「車の勉強をしていれば…」

 

 「U40にもM78にも車の勉強は必要なかったからだろ。飛べるんだし」

 

 「あークソっ!変身出来ればよぉぉぉー!!!!」

 

 昴達の車だけ初心者マークが貼られていた。

 

 すると、高速道路の一部が崩れ、一台の車が爆発した。

 

 「車が!」

 

 「しっかり掴まっててね…」

 

 「ふえ?」

 

 「私のドラテクは凶暴よ…!」

 

 『敵襲だ!まだ追いついてきていないがノイズだろう!』

 

 「この展開、想定していたより早いかも!」

 

 そしてまたもう一台、マンホールから吹き上がった水圧で吹き飛び、後方で爆発を起こした。

 

 『下水道だ!ノイズは下水道を使って攻撃してきている!』

 

 「んなのアリかよぉぉぉ〜!?」

 

 昴達の乗る車もなんとか攻撃をかわしながら道を走っていた。

 

 「弦十郎く〜ん?ちょっとヤバいんじゃない〜?この先の薬品工場で爆発でも起きたら、デュランダルは…!」

 

 『分かっている!さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしてるのはノイズがデュランダルを輸送させないよう制御されていると見える!』

 

 了子は悔しそうに歯ぎしりした。

 

 『狙いがデュランダルの確保なら、かえって危険な地域に滑り込み、攻め手を封じるって算段だ!』

 

 「勝算は!?」

 

 『思いつきの数字で重ねるものだよ!』

 

 その途端、前方に残っていた車にノイズが飛びつき、乗っていた二人は脱出して車は工場にぶつかって爆発した。

 

 「狙い通りです!」

 

 「案外そうでも無い…かも?」

 

 零がそう言った途端、車は反転し、駒のように回りながら地面を滑った。

 

 「あたた…はっ!」

 

 気がつくと周りはノイズに包囲され、よく見ると徐々に数が増えていた。

 

 「重い…」

 

 響は車の中からデュランダルが入ったアタッシュケースを出した。

 

 「だったら、いっそここに置いて私達は逃げましょうか」

 

 「そんなのダメです!」

 

 「そりゃそうよね」

 

 次の瞬間、ノイズが三人に突撃を始めた。

 

 「危ないっ!」

 

 零は素早く二人を抱えて車を離れ、その直後に車は爆発した。

 

 「大丈夫か?二人とも」

 

 そう言いながら零は二人を下ろした。

 

 「ありがとう零さん」

 

 しかし、他のノイズが零に突進し、思わず零は腕で顔を伏せた。

 

 すると、了子が手のひらから謎のバリアを発動し、ノイズを防いだ。

 

 その衝撃で了子のメガネと髪留めが飛び、了子の見たことの無い一面が見えた。

 

 「了子…さん…?」

 

 「しょうがないわね。あなたはあなたがやりたいことをやりなさい!」

 

 響は零の方を向き、零もそれを見て頷き、二人はノイズの方を向いて睨みつけた。

 

 「Balwisyall Nescell gungnir tron…」

 

 「Symphony X tron…」

 

 二人の身体は光に包まれ、シンフォギアを纏った。

 

 零はメビウスとエースのカードをスキャンし、その姿と力を身にまとった。

 

 『Be the type! Metalium Brave!』

 

 [撃槍・ガングニール Vo.立花響]

 

 零はメビウスブレスからメビュームブレードを展開し、エースブレードも持って二刀流を構え、響も拳を構えた。

 

 二人はノイズの突進をかわし、響は足元をすくわれ、二人は途端にノイズに囲まれてしまった。

 

 (ヒールが邪魔だ!)

 

 そう言って響は踵の装置を破壊し、足元をランニングシューズのようにし、呼吸を整えてノイズに向けて拳を構えた。

 

 「響ちゃん、合わせよう!」

 

 響もそれを聞いて頷き、零は身を屈めて響の背中の方を向き、響も零の体の上で拳を振りかぶり、突進してきたノイズを二人は切り裂くのと打ち砕くのを同時に行った。

 

 それを見て零と響は再び見合わせて頷き、今度は響が馬のようになって零がその上を転がり、飛んでくるノイズ三体を切り裂いた。

 

 そして、零は一瞬刃をしまい、お互いに手を握って零が響を振り回して飛んでくるノイズを薙ぎ払った。

 

 下から潜り込んでくるノイズを同時に飛び上がって避け、空中で零は響を掴んで縦に体を高速回転させ、地面に向かって響を投げ、響もそれに合わせてノイズに向かって両足蹴りを喰らわせ、ノイズの身体を貫通して着地した。

 

 ノイズ達も一斉に突進して響を取り囲むも、零が空中からウルトラギロチンをノイズ達に投げつけて一掃し、ノイズが炭化すると同時に響の横に着地した。

 

 そして二人は軽く拳を突き合わせて笑いあい、再び戦いに戻った。

 

 「こいつら…戦えるようになっているのか…!?」

 

 

 

 上で見ていたクリスが驚きながら二人を見ていた。

 

 了子も二人を呆然と見ていると、後ろからデュランダルの入ったアタッシュケースが光り出した。

 

 「…!?これは…!」

 

 

 

 二人が連携して戦っているとクリスの鎖が飛び、二人は同時に飛び上がって避けた。

 

 「今日こそは物にしてやる!」

 

 クリスは二人に向かって飛び蹴りを放ち、了子の前に叩きつけられた。

 

 (まだアームドギアを使いこなせていない…!どうすれば…!)

 

 すると、デュランダルがアタッシュケースから飛び出し、眩く輝き出した。

 

 「覚醒!?急に…」

 

 「こいつがデュランダル…!」

 

 クリスはデュランダルに向かって飛び出し、あと一歩と言うところで響のタックルを食らった。

 

 「詰めが甘いぜ、お嬢ちゃんよ。響!」

 

 「はいっ!あたしの…ものだー!」

 

 響はデュランダルを強く握り、それに呼応するようにデュランダルは輝きを強くした。

 

 そして、着地した響から強い光が放たれ、響は黒く暴走した姿になり、獣の様な雄叫びをあげてデュランダルを振り上げていた。

 

 「こいつ…何をしやがったッ…!?」

 

 「響ちゃん!…響!?」

 

 そう言ってクリスは了子の方を見た。

 

 大我達もノイズの攻撃で大破した車のそばで響の様子を見ていた。

 

 了子は恍惚な表情を浮かべ、それを見たクリスはソロモンの杖を振りあげた。

 

 「そんな力…見せびらかすなァァー!」

 

 そう言ってノイズを出すも、響はゆっくりクリスの方を振り向き、その眼光に思わずクリスは後ずさった。

 

 響はノイズが出た方にデュランダルを振り下ろし、クリスはその場を離れ、零も大我達を見つけてすぐに連れ出した。

 

 直後に零のすぐ後ろで爆発が起き、五人とも吹っ飛ばされ、そこで気を失った。

 

 

 

 次に気がつくと、辺りは瓦礫の山になっていた。

 

 「どうなってんだ一体…」

 

 「どうやら、響ちゃんの歌声でデュランダルが覚醒したらしいな」

 

 「それに響の嬢ちゃんの様子もおかしかったし…シンフォギアについては分からない事だらけだな…」

 

 「…やはり、櫻井了子…アイツは何かを隠してる…」

 

 「え?」

 

 「地球人が…普通の人間が手からバリアなんて出るわけないだろ!」

 

 昴の了子への疑惑は確信へと変わった。




今回はここまでです。

時間的にはジードがゼット本編でグリーザを倒した後くらいになります。

シンフォギア本編ではかなりの時間が経ちますけど異なる宇宙なので関係ありませんね。

それではまた次回!


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兆し

よっしゃ行くぞーッ!


昨日の戦いから夜が明け、零は一人屋上で明けゆく夜空の中、持っているカードを見つめていた。

 

 持っているカードは全部で七枚。弱い訳ではなく、使いこなせていない自分自身に苛立ちと遅れの様なものを感じていた。

 

 焦りなのか、あるいは…。

 

 「…」

 

 強く、ならなくては。

 

 甘さを捨てなければ。

 

 何者にも負けぬ、力と精神を…!

 

 そう思う彼の瞳は一瞬黒く濁った。

 

 

 

 同時刻、クリスは館の近くの湖で朝日を見ながら響がデュランダルの力を解き放った時のことを思い返していた。

 

 (完全聖遺物を起動するには相応のシンフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた。アタシがソロモンの杖に半年もかかつらったことをアイツはあっという間に成し遂げた。そればかりか、無理矢理力をぶっぱなして見せやがった。)

 

 暴走し、黒く染まりながらもデュランダルを振り上げ、圧倒的な力で工場を瓦礫の山に変えたのは一晩明けた今でも鮮明に思い出せる。

 

 「バケモノめ…!」

 

 そう言ってクリスは歯を食いしばる。その顔には怒りがあらわになっていた。

 

 「このアタシに身柄の確保を任せるくらい、フィーネはアイツに御執心ってワケかよ…」

 

 手に持ったソロモンの杖を強く握り、幼い頃の記憶を思い出す。親も住まいも失い、どこの誰とも分からぬ子供達と一緒に連れられ、奴隷の様に扱われ…。

 

 夜風が彼女の髪を静かになびかせていた。

 

 「…そしてまた、ワタシはひとりぼっちになるワケだ…」

 

 すると、後ろに気配を感じ、振り返るとあの女性…フィーネが黒い服と帽子を着用して立っていた。

 

 「分かっている。自分に課せられた事くらいは。こんな物に頼らなくても、アンタの言うことくらい、やってやらァ!」

 

 そう言って、クリスは持っていたソロモンの杖をフィーネに投げ渡した。

 

 「アイツよりも、私の方が優秀だって事を見せてやる!アタシ以外に力を持つ奴は、全部この手でブチのめしてくれる!」

 

 そう言いながらクリスは拳を強く握った。

 

 「それがアタシの目的だからな!」

 

 そういうクリスをフィーネは静かに笑った。

 

 

 

 そしてまた同じ頃、杖をつきながら翼は病院の廊下を歩き、リハビリに励んでいた。

 

 すると、窓の外から響が走っているのが見えた。

 

 「…」

 

 「アイツら、頑張ってるだろ?」

 

 「大我…さん」

 

 翼の前から大我が歩み寄り、一緒に窓の外を見た。

 

 「立花…」

 

 「翼が思ってる以上に、響は頑張ってるさ。…まあ、とにかく、翼もリハビリ頑張れよな!」

 

 そう言って大我は部屋へと戻って行った。

 

 翼はその背中をただじっと見つめていた。

 

 

 

 零は一人、昴と実戦形式の特訓をしていた。

 

 「どうした!闘い方が直線的に戻ってるぞォォ!」

 

 「!!」

 

 そう言われた途端、一瞬零の動きが止まり、昴の回し蹴りをモロに喰らった。

 

 「がっ…ぐっ…」

 

 「わ、悪ぃ。立てるか?」

 

 昴が差し出した手を払い除け、零はすぐに立ち上がった。

 

 「大丈夫…俺はやれる…」

 

 「…まあいい。何か分かんねえが、続けるぞ」

 

 「ああ。続けてくれ!」

 

 またも一瞬零の瞳が黒く濁る。

 

 「…?行くぞ!」

 

 昴と零は同時に飛び出し、拳を交えた。

 

 以前とは違い、零の拳からは本気の殺気が感じ取れるほどに鋭く、一撃が重くなっていた。

 

 一体何を焦っているんだ、零。お前らしくもないじゃないか。

 

 そう言えるほどの隙もない程に零の攻撃は早く、何よりも零の顔は険しい物になっていた。

 

 「はぁっ!」

 

 「ぐっ!」

 

 零の一撃を昴は両手で受け止め、その衝撃で地面の一部が抉れるように吹き飛んだ。

 

 「ぐっ…ぐぐ…!」

 

 「く…!はっ!」

 

 昴はなんとかして零の体を放し、零も三段跳びの要領で間合いを取った。

 

 零の一撃で昴の腕が痺れ、昴は腕を強く振った。

 

 「…お前、今どんな顔してると思う?」

 

 「…え?」

 

 「獣のように俺を睨み、恨みでもあるのかって思うくらいの怒りの顔をしてるぜ」

 

 「怒…り…」

 

 「お前の…柊零としての闘う理由は何だ!言ってみろ!」

 

 「俺の闘う…理由…それは…それは…!…!?」

 

 言葉が詰まって出てこない。

 

 俺は何がしたいんだ?

 

 ノイズを倒すこと?違う。

 

 地球を平和にすること?違う!…違う?

 

 それじゃあ…今の俺は何がしたいんだ…!?

 

 分からない。分からない。分からない分からない。分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分から―――

 

 「ああああああああっっっ!!!」

 

 一瞬、零の瞳と髪の一部が黒く染まる。

 

 黒い電流の様なものを身体中に迸らせたと思うと、零は目を見開いたまま倒れ込んだ。

 

 「…こいつは…!?」

 

 昴は零の両目を見て驚愕した。

 

 彼の片目はいつも通りの緑色の瞳だったが、もう片方の瞳は紅い瞳だった。無論、充血しているなんてものではない。

 

 「零の中にもう一つの人格が誕生しようとしている…!?」

 

 よく見ると、零の口の中の歯も、何本か牙の様に変形していた。

 

 「…零…お前、本当に何を焦っているんだ…」

 

 そう言って昴は零の目と口を閉じ、医務室のベッドへ運び、寝かせてやった。

 

 「…大馬鹿野郎だ、お前は」

 

 

 

 その頃、響は翼のお見舞いに行き、乱雑にされていた部屋を見て多少驚きながらも部屋を片付けた。

 

 そして、翼からも認められていた事や、己の闘う理由など、色々なことを話し、その流れでいつもルームメイトでありクラスメイトである未来と一緒によく行くお好み焼き屋の「ふらわぁ」へ向かう道中の事だった。

 

 クリスが響と未来に襲いかかり、未来に車が飛んできたのを見て響はやむなくシンフォギアを身にまとった。

 

 「響…!」

 

 「…ごめん」

 

 響は未来の方を振り向けぬまま、クリスを追った。

 

 [私ト云ウ 音響キ ソノ先二 Vo.立花響]

 

 「ドンくせえのがいっちょ前に挑発するつもりかよ!」

 

 そう言って響は市街地を離れ、森の方へと移動し、クリスもそれを追った、

 

 そして、場所を決め、クリスの方を振り向くと同時にクリスの鎖が飛び出し、響は咄嗟に腕で防いだ。

 

 「ドンくせえのがやってくれる!」

 

 「ドンくさいなんて名前じゃない!」

 

 「は?」

 

 「私は立花響!十五歳!誕生日は九月の十三日で、血液型はO型!身長は、こないだの測定では百五十七センチ!体重は、もう少し仲良くなったら教えてあげる!趣味は人助けで好きな物はご飯&ご飯!後は、彼氏いない歴は年齢と同じィ!あとついでに前に一緒に戦ったのは柊零さん二十歳!誕生日とか身長とかは何にも聞けてないけど凄く強くて頼りになる人だッ!」

 

 「な、何をとち狂ってやがるんだお前…」

 

 「私達は、ノイズと違って言葉が通じるんだから、ちゃんと話し合いたい!」

 

 「なんて悠長!この期に及んでぇッ!」

 

 そう言ってクリスは鎖を飛ばし、響は飛び上がってそれを避けた。

 

 クリスの攻撃は当たらず、いや、響が前よりも避けれるようになっており、表情も以前とは違い、迷いが無くなっていた。

 

 (こいつ…何が変わった…?覚悟かッ!?)

 

 「話し合おうよ!私達は闘っちゃいけないんだ!」

 

 それを聞いてクリスは歯ぎしりした。

 

 「だって言葉が通じれば人間は――」

 

 「うるせえ!」

 

 言葉を遮って叫ぶクリスに響は驚いた。

 

 「分かり合えるものかよ人間が!そんな風に出来ているものか!気に入らねえ気に入らねえ気に入らねえ!!分かっちゃいねえ事をべらべら口にするお前がァァァー!!!」

 

 「…!」

 

 肩で息をしながらクリスは言葉を続ける。

 

 「お前を引きずってこいという命令だったがもうそんなことはどうでもいい!お前をこの手で叩き潰す!お前の全てを踏みにじってやる!」

 

 「私だってやられる訳には!」

 

 そう言ってクリスは鎖の先端に黒と白の光球を作り出し、相手に放つ[NIRVANA GEDON]を放った。

 

 響はそれを受け止め、放すことも出来ないまま後ずさった。

 

 間髪入れずにクリスはもう一発放ち、響ががいた場所は大きな爆発を起こした。

 

 「お前なんかがいるから、私が…はっ!」

 

 煙が晴れた場所には傷ひとつ無い響が立っており、手のひらの間にエネルギーを集中させるも上手くいかず、手元で爆発して響の体が吹っ飛んだ。

 

 (これじゃダメだ!翼さんの様に固定出来ない…!)

 

 「この短期間に、アームドギアまで手にしようってのか!?」

 

 クリスが驚いている隙にもう一度響は手のひらにエネルギーを貯め始めた。

 

 (エネルギーはあるんだ…アームドギアに形成されないのなら…!)

 

 響はエネルギーの球を握り、腕のギアが動いて煙が吹き出た。

 

 (そのエネルギーをぶつければ良いだけッ!)

 

 「させるかよッ!」

 

 クリスは咄嗟に二本鎖を飛ばすも響はそれらを片手で止めて見せた。

 

 「なんだと!?」

 

 (雷を握り潰す様にいいいッ!)

 

 響はその鎖を持ってクリスの体を引っ張った。

 

 (最速で!最短で!真っ直ぐに!一直線に!胸の響を!この思いを!伝える為にいいいっ!)

 

 その思いに応えるように、響のギアは変形して腰と腕からジェット噴射し、とてつもない一撃をクリスにぶつけた。

 

 「うおおおおおおーっ!」

 

 その一撃の痛みは鎧をも貫き、クリスの背中の一部が盛り上がっていた。

 

 (そんな…ネフシュタンの鎧が…!)

 

 そして、森の中で大きな爆発を起こした。

 

 

 

 




今回はここまでです!

「ん?私達の出番は…!?」

「おい兄ちゃん。次回はあるんだろうな?」

きっと、多分、あると思います!

また次回っ!短くなってすまぬ!


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ただ残酷という名の運命に

連続じゃいオラァっ!


響とクリスは森の中で交戦し、やがて響はクリスに鋭く、重い一撃を当てた。

 

 [私ト云ウ 音響キ ソノ先二 Vo.立花響]

 

 クリスが吹っ飛んだ道を描くかのように道がえぐれており、石垣も砕け煙をあげていた。

 

 (なんて無理筋な力をしやがる…!この力、あの女の絶唱に匹敵しかねない…!)

 

 響を睨みながらクリスは体を起こし、ネフシュタンの鎧も徐々に再生していった。

 

 (食い破られる前にカタをつけなければ…!)

 

 ふと響の方を見ると、響は何もしてこずにただ立って歌っていた。

 

 「お前、バカにしてんのか!?アタシを!雪音クリスを!」

 

 「…そっか。クリスちゃんって言うんだ」

 

 響の顔には敵意は無かった。

 

 「…」

 

 「ねえクリスちゃん。こんな戦い、もう止めようよ。ノイズと違って、私達は言葉を交わすことが出来る。ちゃんと話をすれば分かり合えるはず!だって私達、同じ人間だよ!?」

 

 「…ウソくせえんだよ…ウソくせえ…!」

 

 クリスは有無を言わさず響に蹴りかかり、連続で回し蹴りを響に食らわせた。

 

 少し時間も経っており、鎧の再生も完全になろうとしていた。

 

 「クリスちゃん…」

 

 「吹っ飛べよ!アーマーパージだ!」

 

 クリスが叫ぶと鎧は粉々に砕け、周囲に飛び散って行った。

 

 鎧ということもあり、森の中の木はいとも容易く折れた。

 

 響が腕で防いでいると、歌が聴こえた。

 

 「Killiter Ichaival tron…」

 

 「この歌…」

 

 見ると、クリスは響や翼、零と同じような光を纏っていた。

 

 「見せてやる。イチイバルの力だ!」

 

 

 

 「イチイバルだとッ!?」

 

 司令室で様子を見ていた弦十郎は驚きを隠せないでいた。

 

 「イチイバルって確か…!」

 

 「ああ、失われた第二の聖遺物だ!」

 

 「それが敵の手に渡っていたとは…!」

 

 大我達三人も驚きながらモニターを見ていた。

 

 

 

 「クリスちゃん…私達と同じ…!」

 

 

 響の前には真紅のシンフォギアを纏ったクリスが立っていた。

 

 「歌わせたな…アタシに歌を歌わせたなッ!教えてやる!アタシは歌が大っ嫌いだ!」

 

 「歌が嫌い…?」

 

 [魔弓・イチイバル Vo.雪音クリス]

 

 すかさずクリスはボウガンを取り出し、赤い光の矢を響に向けて放った。

 

 響はなんとか逃げ回るも逃げた先にクリスが先回りされ、強い一撃を貰って大きく吹き飛んだ。

 

 クリスはボウガンを両手に持って変形させ、巨大なガトリングガンへと変えて連射する【BILLION MAIDEN】を放った。

 

 倒れている響はなんとか素早く立ち上がり、避けようとするも、更にクリスは腰部からギアを展開し、無数のミサイルを発射する【MEGA DEATH PARTY】を放ち、追尾型のミサイルが響を追っていった。

 

 大きな爆発が起きてもなおクリスは銃撃を辞めず、一通り撃ち終わった所で肩で息をしながら事の成り行きを見守っていた。

 

 煙が晴れると、そこには巨大な盾のようなものが立っていた。

 

 「盾…?」

 

 「剣だッ!」

 

 そこに立っていたのは盾ではなく、更に巨大な剣が刺さっており、その上にシンフォギアを纏った翼が立っていた。

 

 「ハッ、死に体でおねんねと聞いていたが、足でまといをかばいに来たか」

 

 「もう何も、失うものかと決めたのだ」

 

 

 

 「おお!翼!」

 

 「間一髪間に合ったぜ!」

 

 翼の復活に喜ぶ大我達とは裏腹に、弦十郎は険しい顔でモニターを見ていた。

 

 

 

 『翼、無理はするな』

 

 「はい…」

 

 「翼さん…」

 

 響は剣の後ろに倒れながら顔をあげ、剣の上の翼を見上げた。

 

 「気付いたか、立花。だが私も十全ではない。力を貸して欲しい」

 

 響を見る翼のその瞳は以前とは違い、真っ直ぐに響に向けられていた。

 

 「は、はいッ!」

 

 そう言って響も立ち上がった。

 

 [絶刀・天羽々斬 Vo.風鳴翼]

 

 「ぬおおりゃああアーッ!」

 

 クリスは再びガトリングガンを翼に向かって連射し、翼はそれらをしなやかに避けてクリスとの間合いを詰め、クリスに斬りかかった。

 

 クリスもその斬撃を避けて翼に銃弾を撃ち込むも当たる様子はなく、クリスの後ろに飛んだかと思うとすぐに斬撃を放ち、後ずさったクリスの後ろにいつの間にか回り込んでいた。

 

 (この女…以前とも動きが…!)

 

 「翼さん、その子は…」

 

 「分かっている」

 

 クリスは後ろに向かってギアを纏った肘打ちを喰らわせようとしたが翼もそれを読んでおり、刀で受けてお互いに間合いを取った。

 

 (刃を交える敵じゃないと信じたい…それに、八年前に失われた第二号の聖遺物の事も質さなければ…!)

 

 そして、クリスが武器を構えた瞬間、上空から二匹のノイズが突進し、両腕の武器を破壊した。

 

 「何ッ!?」

 

 そして、もう二体のノイズがクリスに突進し、一体は響が、もう一体はなんとか間に合った零が体当たりで突き飛ばし、響はクリスが、零は翼が受け止めた。

 

 見ると、零の額には沢山の汗が吹き出ており、胸のカラータイマーも早くも赤く点滅していた。

 

 「お前ッ!何やってんだよ!」

 

 「ありがとう…翼さん」

 

 「礼には及ばない。立てるか?」

 

 「すみません…きついです…」

 

 「分かった。お互い無理はするな」

 

 そう言って翼は零を近くの木に座らせ、剣を構えて周囲を警戒し、クリスは受け止めた響を座らせた。

 

 「ごめん…クリスちゃんに当たりそうだったからつい…」

 

 「バカにしてっ!余計なお節介だッ!」

 

 そういうクリスの頬は赤く染っていた。

 

 「命じた事も出来ないなんて、どこまで私を失望させるのかしら」

 

 上空に四体のノイズが飛び、その下の高台には金髪の女性が杖のような物を持って立っていた。

 

 「フィーネ!」

 

 (フィーネ?終わりの名を持つ者…)

 

 「こんなやつがいなくたって、戦争の火種くらいアタシ一人で消してやる!」

 

 そう言ってクリスは響を突き飛ばし、それを翼は受け止め、その後ろに零も立った。

 

 「そうすれば、アンタの言う様に人は呪いから解放されてバラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」

 

 フィーネは静かにため息をついた。

 

 「もう貴方に用はないわ」

 

 「…!…なんだよそれッ!」

 

 フィーネは辺りのガレキを光の粒に変えて手に集め、渦巻き状にして下方に放った。

 

 そして、先程のノイズが翼達に襲いかかり、翼は剣で、零は腕をX字に組んで青い光線を放つクロスショットを放ってノイズを一掃させた。

 

 その間にフィーネは高台から飛び降りた。

 

 「待てよ!フィーネェェー!」

 

 そして、最後のノイズを倒している間にクリスはフィーネを追ってどこかへ行ってしまった。

 

 零も追おうとしたが昴とのダメージが抜けきれていなかったのだろう、腹部に痛みを感じてその場に膝をついた。

 

 「くっ…!大丈夫か?柊」

 

 「…なんとか」

 

 零は翼の手を借りて立ち上がり、シンフォギアを解除して基地に向かった。

 

 

 「反応、ロスト!」

 

 「こっちはビンゴです」

 

 そう言ってスタッフの一人が一枚の新聞記事を司令室のモニターに映した。

 

 そこには、幼い頃の雪音クリスが映っており、その写真の横には【ギア装着候補 雪音クリス】と書かれていた。

 

 「なっ…どういう事だよ!?」

 

 「あの嬢ちゃんも翼の嬢ちゃんと同じように適合者だってのか!?」

 

 「ふむ…」

 

 「あの少女だったのか…」

 

 「雪音クリス。現在十六歳。数ヶ月前に行方知れずとなった、過去に選抜されたギア装着候補の一人だ」

 

 司令室の扉を開け、資料を持って言いながら昴が入ってきた。

 

 「昴…」

 

 「調べるのに骨が折れたぜ」

 

 そう言って昴は片手で資料を閉じた。

 

 

 

 (奏が何のために戦ってきたのか、今なら少し分かる気がする…。だけど、それを理解するのは正直怖い。人の身ならざる私に受け入れられるのだろうか…)

 

 翼はエレベーターの中で静かに虚空を見つめていた。

 

 「自分で人間に戻ればいい。それだけの話じゃないか。いつも言ってるだろう?あんまりバチバチだと、ポッキリだ、って」

 

 そう言って翼は静かに笑う。

 

 「…なんてまた、意地悪を言われそうだ」

 

 その翼の顔には安堵の表情が浮かんでいた。

 

 (だが今更、戻ったところで何が出来ると言うのだ。いや、何をしていいのか分からないではないか)

 

 エレベーターを降りる翼の脳裏に奏の声がこだまする。

 

 (好きなことをすれば良いんじゃねえの?簡単だろ?)

 

 声が聞こえたような気がして、後ろを振り返る。

 

 そこには、ただ誰もいないエレベーターが閉まっていくだけだった。

 

 (好きなこと…もうずっとそんなことを考えていない気がする。遠い昔、私にも夢中になれるものがあったはずなのだが…)

 

 

 

 その頃、響と零は了子の元でメディカルチェックを受けていた。

 

 「響ちゃんの方は外傷は多かったけど、深刻なものが無くて助かったわ。零くんの方は外傷は無いけど、疲労が溜まりに溜まってるし、ノイズが少ない時くらいなら響ちゃんと翼ちゃんに任せれば大丈夫そうね」

 

 「良かった…零さん、来てくれた時も辛そうにしてたから…本当に良かった。次は任せてください!」

 

 「…ありがとう、響ちゃん。でも、大丈夫。俺、まだやれる…ッ!」

 

 起き上がろうとした零の身体に鈍い痛みが走り、再び身体を寝かせた。

 

 「ここ最近、無茶なトレーニングのし過ぎね。一週間は出撃は出来ないわね」

 

 「…そうですか…」

 

 「響ちゃんの方は、常軌を逸したエネルギー消費に寄る…いわゆる過労ね。少し休めばまたいつも通り回復するわよ」

 

 了子は二人に近付き、響もベッドから降りた。

 

 「じゃあ、私…」

 

 響が立ち去ろうとした瞬間、響は足から崩れ落ち、それを了子は受け止めた。

 

 「だから休息が必要なの」

 

 「私、呪われてるかも…」

 

 それを聞いて了子はため息をついた。

 

 「気になるの?お友達のこと」

 

 「あっ、はい…」

 

 「心配しないで大丈夫よ。緒川くん達から事情の説明を聞いているはずだから」

 

 「そう…ですか」

 

 「機密保護の説明を受けたら、すぐに解放されるわよ」

 

 「はい…分かりました」

 

 

 

 

 大我達四人は零の元にお見舞いに来ていた。

 

 「よっ、調子はどうだ?」

 

 見ると、髪の色も目の色も嘘のように元に戻っていた。

 

 「調子は…どうかな…そんなに良くないかも…ちゃんと…役に立てなくて…足を引っ張るんじゃないかって…」

 

 そう言って顔を両手で覆う零の声は震えていた。

 

 「…イチイバルも敵の手に渡っちまっていたのは仕方ねえが、翼の嬢ちゃんは、ちゃんとお前を認めていたぞ」

 

 「ああ。仲間のために伏せっている訳にはいかない、まして自分の代わりに共に響と戦ってくれていた事や、サポートしていてくれていた事にもちゃんと礼を言っていた」

 

 「お前も響も、まだまだ半人前だけど、戦士には相違ない、ってな。完璧には遠いが、お前ら二人の援護なら戦場に立てるかも、って。嬉しいこと言われてるじゃねえか」

 

 そう言われる零の身体がピクリと反応する。

 

 「俺…ちゃんと役に立ててたかな…」

 

 それを聞いて四人は頷いた。

 

 「…ありがとう…そしてごめん…」

 

 「何、今更気にすんな。もう切り替えていこうぜ」

 

 昴の言葉に零はとめどなく溢れる涙を拭って強く頷いた。

 

 (しかし、こいつの中のもう一つ人格が出来上がって来ているのもまた事実…どうしたもんか…)

 

 「?どうした?ゼロ」

 

 「ん?ああ、何でもねえよ」

 

 「ふーん。まあ、それなら良いけど…」

 

 「ああ…」

 

 ただ、今の状態が円満であるとも言いきれなかった。

 

 響は未来にシンフォギアの奏者である事もバレ、クリスも行き場を失ってしまったのである。

 

 夜の街の中、クリスは一人歩いていた。

 

 「何でだよ…ッ!フィーネ…」

 

 響との戦いが思い返される。

 

 話せば分かり合える。その言葉がクリスの琴線に触れていた。

 

 「アイツ…クソッ!」

 

 (アタシの目的は戦いの意思と力を持つ人間を叩き潰し、戦争の火種を無くす事なんだ…だけど…)

 

 すると、どこからか子供の泣き声が聞こえた。

 

 そこには、二人の男女の子供がいた。

 

 「泣くなよ!泣いたってどうしようもないんだぞ!」

 

 「だって…だってぇー!」

 

 「おいコラ!弱い者をいじめるな!」

 

 クリスは子供達に歩み寄りながら男の子に言った。

 

 「いじめてなんかいないよ。妹が…」

 

 男の子がそう言うと女の子がまた泣き出した。

 

 「いじめるなって言ってるだろうが!」

 

 「うわっ!」

 

 クリスが拳を振り上げ、男の子に振り下ろそうとした時だった。

 

 「お兄ちゃんをいじめるな!」

 

 女の子が男の子の前に立ち、それを見てクリスも拳を下ろした。

 

 「お前が兄ちゃんからいじめられてたんだろ?」

 

 「ちがう!」

 

 「?」

 

 「父ちゃんがいなくなったんだ。一緒に探してたんだけど、妹がもう歩けないって言ってたから、それで…」

 

 「迷子かよ。ハナっからそう言えよな」

 

 「だって…だぁってぇー…」

 

 「おいコラ泣くなって!」

 

 「妹を泣かしたな!」

 

 クリスが女の子に顔を近付けて言うと、今度は男の子がクリスの前に割って入った。

 

 「あぁーもうめんどくせえ!一緒に探してやるから大人しくしやがれ!」

 

 夜の繁華街の中、クリスは二人を連れて鼻歌を歌いながら子供達の父親を探して歩いていた。

 

 「…?」

 

 鼻歌に気付いた女の子はクリスの顔を見上げた。

 

 「な、なんだよ…」

 

 「お姉ちゃん、歌すきなの?」

 

 「…歌なんて、ダイキライだ。特に、壊すことしか出来ないアタシの歌はな…」

 

 そう言うクリスの声はどこか哀しそうだった、

 

 すると、交番の前で男の子が父親らしき男性を見つけた。

 

 「父ちゃん!」

 

 男の子の声につられ、女の子もクリスの手を離れて男性の元へ駆け寄った。

 

 「お前達、どこに行ってたんだ」

 

 「お姉ちゃんがいっしょに迷子になってくれたー!」

 

 「ちがうだろ。一緒に父ちゃんを探してくれたんだ」

 

 それを聞いて、男性はクリスに頭を下げた。

 

 「すみません。ご迷惑をおかけしました」

 

 「いや、成り行きだから、その…」

 

 「ほら、お姉ちゃんにお礼は言ったのか?」

 

 「「ありがとう」」

 

 父親に言われ、二人の子供は声を揃えて礼を言った。

 

 「仲良いんだな…。そうだ、そんな風に仲良くするには、どうすれば良いのか教えてくれよ」

 

 そう言われて二人は顔を見合わせ、女の子は笑って男の子の腕に抱きついた。

 

 「そんなの分からないよ。いつもケンカしちゃうし」

 

 「ケンカしちゃうけど、なかなおりするからなかよしー!」

 

 そう言われてクリスはハッとした。

 

 

 

 「零の身体にもう一つ人格が生まれている?」

 

 昴達四人は部屋の中で零のことについて話していた。

 

 「ああ。タイガ、お前も以前似たような事があっただろ?怪獣リングを使いすぎて闇に堕ちてしまった事が…」

 

 「…アレは今でも思い出したくないが、零も今その状態になりかけてる、ってことか?」

 

 「ああ。今はまだ出来上がってる訳じゃないから心配する事じゃないが…俺の推測通りなら、零のやつが今持っている全てのカード、メビウスインフィニティーの力をシンフォギアに宿した時の反動で急速に人格が成長し、零の身体から剥離するんじゃないかと考えている」

 

 「お言葉ですが、今の零君ならしっかり休ませて万全に動けるようになれば七枚全てを使わなくても戦えるのでは?」

 

 「それが出来りゃあ、苦労はしねえ。何より、響や翼の事もあるし、アイツのシンフォギアはあの二人のものと違って、カードを使ってようやくあの二人と並べるか並べないか程度のものだ。それを自分自身の運動能力で補っているから、いつも以上に体も頭も酷使してるんだろうよ」

 

 「…」

 

 「…それじゃあ、仮に零が二人に別れたとしてよ。もう一人はどんな力を持つんだ?」

 

 「分からない…俺達や零と同じように光の力を持つか、あるいは闇の力を持つのか…皆目見当もつかない」

 

 「…そんな事態にならない事を祈るしかないなんてな…」

 

 

 

 




我ながら響と未来に興味無さすぎ問題


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君の陽だまりへ

遅れちまったー!ごめーん!!!

ではどうぞッ!


明け方の空から雨が降る朝、未来は商店街を歩いていた。

 

 ふと細い路地の方を見ると、クリスが傘もささず座り込んでいた。

 

 

 

 ノイズの痕跡やイチイバルの反応があったと言う事もあり、朝から零達機動部二課も現場にいる野次馬達を通り抜けて辺りを調べていた。

 

 「人的被害はとりあえず無し。残ってるのはノイズがやられた跡だけ。あのイチイバルの嬢ちゃんが知らぬ間に解決してたってこった」

 

 風舞はしゃがんでノイズの炭を指で摘んで見ていた。

 

 「けど、そのクリスはどこに行ったんだ?」

 

 「さあな。誰か親切な人に助けられてるといいんだが…」

 

 「零君、君のシンフォギアで通信なんて出来ないだろうか?」

 

 「うーん…シンフォギアは起動してないと反応を示さないし…展開していないこのネックレスの時でも探知機代わりにはならないし…ダメだ」

 

 「そうか…何か手がかりでも掴めればいいんだがな…」

 

 

 

 その頃、未来はお好み焼き屋の「ふらわあ」に部屋を借りてクリスを手当てしていた。

 

 「…ッ!はっ!」

 

 クリスは目と口をかっと開くと上体を起こし、肩で息をして、少し落ち着くと未来の方を向き、そして周りを見渡して今の状況を把握した。

 

 「良かった。目が覚めたのね。びしょ濡れだったから、着替えさせてもらったわ」

 

 そう言われてクリスは自分の体を見ると、服はあの赤い服ではなく、小日向と書かれた体操服を着ていた。

 

 「勝手なことを!」

 

 荒々しくクリスが立ち上がると、響は眼前に現れたものを見て顔を赤くした。

 

 「な、なんでだッ!」

 

 「さ、流石に下着の変えは持ってなかったから…」

 

 それを聞いてクリスも気付き、顔を赤くしてダルマのように布団を被った。

 

 「未来ちゃ〜ん。どう?お友達の具合は」

 

 声の方を向くと、ふらわあの店主が洗濯物のカゴを持って二人の様子を見に来ていた。

 

 「目が覚めたところです!ありがとうおばちゃん、布団まで貸してもらっちゃって」

 

 「気にしないでいいんだよ。あ、お洋服洗濯しておいたから」

 

 「…!」

 

 「私、手伝います」

 

 「まあ、ありがと」

 

 そう言って二人は庭の方に行ってしまった。

 

 洗濯物を干し終わった未来はクリスの身体をタオルで拭いていた。

 

 「…あ、ありがと…」

 

 「うん」

 

 未来は優しくクリスに頷いた。

 

 「…何も、聞かないんだな」

 

 「…うん。私は…そういうの苦手みたい…今までの関係を壊したくなくて…なのに、一番大切なものを壊してしまった…」

 

 それを聞いてクリスは未来の方を向いた。

 

 「それって、誰かと喧嘩したってことなのか?」

 

 「…うん」

 

 奏者と一般人。守る者と守られる者。その壁を乗り越える事は簡単では無いのだろう。

 

 

 晴れ渡る空とは対照的に、響は曇らせた顔で屋上から景色を眺めていた。

 

 「未来、無断欠席するなんて一度も無かったのに…」

 

 ふと横を見ると、杖をつきながら歩いてくる翼の姿が見えた。

 

 「…!翼さん…」

 

 響と翼は近くのベンチに座った。

 

 「…私、自分なりに覚悟を決めたつもりでした。守りたいものを守るため、シンフォギアの戦士になるんだって。…でも駄目ですね…小さなことに気持ちが乱されて、何も手に付きません。私、もっと強くならなきゃいけないのに…変わりたいのに…」

 

 「…その小さなものが、立花の本当に守りたいものだとしたら、今のままでもいいんじゃないかな」

 

 響は翼の方を向いて、話を聞いていた。

 

 「立花は、立花のまま強くなれる」

 

 褒めるのに慣れていないのか、少し顔を赤くしながら翼は言った。

 

 「翼さん…」

 

 「奏の様に人を元気づけるのは難しいな…」

 

 「いえ、そんな事ありません!前にも同じような言葉で親友に励まされたんです。それでも私はまた落ち込んじゃいました。駄目ですよね〜」

 

 笑顔になった響を見て安心したのか、翼の顔も自然と緩んでいた。

 

 「翼さん、まだ痛むんですか?」

 

 「大事を取っているだけ。気にするほどではない」

 

 「そっか、良かったです」

 

 「絶唱による肉体への負荷は極大。正に、他者も自分も全てを破壊し尽くす滅びの歌…代償と思えばこれくらい安いもの」

 

 「絶唱…滅びの歌…で、でもですね翼さん!」

 

 翼はいきなり立ち上がった響の方を見た。

 

 「数ヶ月前、私が辛いリハビリを乗り越えられたのは翼さんの歌に励まされたからです!翼さんの歌が滅びの歌だけじゃないってことを、聴く人に元気をくれる歌だってことを、私は知っています!」

 

 「立花…」

 

 「だから早く元気になってください!私、翼さんの歌が大好きです!」

 

 「…私が励まされてるみたいだな」

 

 翼は小さく笑って言った。

 

 「え?」

 

 

 

 「喧嘩か…私にはよく分からない事だな…」

 

 そう言いながらクリスは元の服に着替えていた。

 

 「友達と喧嘩したことないの?」

 

 「…友達いないんだ」

 

 「…」

 

 「地球の裏側でパパとママを殺されたアタシは、ずっと独りで生きてきたからな…友達どころじゃなかった」

 

 「そんな…」

 

 「たった一人理解してくれると思っていた人も、アタシを道具のように扱うばかりだった…誰もまともに相手してくれなかったのさ…」

 

 クリスの脳裏には自分自身の過去が過ぎり、その顔には怒りが浮かんでいた。

 

 過去に怪獣が現れていた頃、人は為す術もないまま蹂躙され、ウルトラマンが来ても大人達は自分を置いて逃げていたのだ。

 

 「大人はどいつもこいつもクズ揃いだ…自分の身に危険が迫れば私達の自由も解かないまま逃げ出し、私達の叫びも聞いてくれなかった…」

 

 それを聞いて未来は何も言えなかった。

 

 「…ごめんなさい」

 

 「…なあ、お前その喧嘩の相手ぶっ飛ばしちまいな」

 

 「え?」

 

 「どっちが強えのかハッキリしたらそこで終了。とっとと仲直り。そうだろ?」

 

 「…出来ないよ、そんな事…」

 

 「…わっかんねえよなぁ」

 

 「…でも、ありがとう」

 

 「ああん?私は何もしてないぞ」

 

 礼を言われたことに驚き、クリスは未来の方を向いた。

 

 「ううん、本当に、ありがとう。気遣ってくれて。えっと…」

 

 「…クリス。雪音クリスだ」

 

 「優しいんだね。クリスは」

 

 少し驚いた後、クリスは顔を赤くして背中を向け、小さく「そうか」と呟いた。

 

 「私は小日向未来。もしもクリスが良いのなら―――」

 

 そう言って未来はクリスの手を取り、クリスも未来の方を向いた。

 

 「私は、クリスの友達になりたい」

 

 驚いた表情のままクリスは何も返せず、手を振り払って部屋を出ようとしたが、踏みとどまった。

 

 「…私は、お前達に酷いことをしたんだぞ…」

 

 「?」

 

 すると、街中にアラームが鳴り響いた。

 

 外では、大我が商店街の避難誘導をしていた。

 

 「こっちです!早く!」

 

 そして、ふらわあから出てきたクリスは外の光景を不思議そうに眺めていた。

 

 「おい、一体何の騒ぎだ?」

 

 「何って、ノイズが現れたのよ!」

 

 「…!?」

 

 「警戒警報知らないの?」

 

 「…!」

 

 クリスは悔しそうに歯軋りさせた。

 

 「おばちゃん逃げよう!」

 

 そして、二人が逃げ出そうとした途端、クリスは人々とは逆の方向へ走っていった。

 

 「クリス!」

 

 (バカだ…!アタシってば何やらかしてんだ…!)

 

 クリスは商店街を抜けて、人気のないところに出た。

 

 足ももつれ、咳が出るほどに体力を消費し、膝に手を当てて立ち止まった。

 

 「アタシのせいで関係の無いヤツらまで…!」

 

 クリスは怒りと悲しみが入り交じった叫びをあげた。その目からはいつしか涙が流れていた。

 

 「アタシがしたかったのはこんな事じゃない…!いつだってアタシのやることは…!いつもいつもいつもォッ!」

 

 座り込んで泣いているクリスの元にノイズが接近していた。

 

 それに気付いたクリスは立ち上がり、ノイズを睨みつけながら振り返った。

 

 「アタシはここだ…だから関係ないヤツらのとこになんて行くんじゃねぇ!」

 

 クリスはノイズの攻撃をかわしながらイチイバルを展開しようとしたが咳が出てしまい詠唱が失敗し、襲われそうになった時だった。

 

 「ウルトラァァー!スラァーッシュ!!」

 

 青白い光輪がノイズを切り裂き、クリスの前に零が着地した。

 

 「お前…!」

 

 「…とにかく今は関係ねぇ!」

 

 エースとタロウの力を読み込ませたシンフォギアを纏った零はクリスを腕で自身の後ろにしながら迫り来るノイズに向かってファイティングポーズを取っていた。

 

 そして、襲ってきたノイズに向かってバリアを発動し、その隙をついてクリスを抱え、近くの建物の屋上にまで飛び上がった。

 

 「大丈夫か?」

 

 「…!」

 

 クリスは何も言わずに立ち上がり、逃げようとした途端、目の前に飛行可能なノイズ達が現れた。

 

 クリスもイチイバルを装着し、向かってくるノイズ達を全て撃ち落とした。

 

 「奏者はここに二人も要らねぇ!他のとこに救助に行きな!」

 

 「だ、だけど…」

 

 「こいつらは纏めてアタシが相手してやるって言ってんだよ!」

 

 そう言ってクリスは巨大なガトリングガンを構えて飛び上がった。

 

 そして、瞬く間に地上のノイズ達を一掃し、空中にいたノイズ達も一掃した。

 

 [ 魔弓・イチイバル Vo.雪音クリス]

 

 「な、なんて野郎だ…」

 

 零はクリスの戦いっぷりを見ながら辺りを見ていた。

 

 クリスは次々と向かってくるノイズを淡々と処理し、懐に入られた時でもお構い無しにノイズを掴んで背負い投げをし、銃を押し付けて連射し、ノイズを撃破した。

 

 クリスの派手な銃撃戦に気がついた他のノイズ達もそこへ向かって飛ぼうとした時だった。

 

 「おっと。お前らをここで通す訳にはいかねえなぁ」

 

 そう言いながら零は左手を腰に当てた右手に重ね、大きく横に振り、無数の光弾を放って近くのノイズを一掃した。

 

 「お前達の相手は俺だ!ついてきな!」

 

 そう言って零はノイズを先導し、クリスから離れさせるようにして走り出し、ノイズもそれに釣られて零を追いかけ始めた。

 

 

 

 その頃、響がノイズを探して街を走っているとどこかからか悲鳴が聞こえ、響はその声がした建物の中へ入っていった。

 

 「誰かー!誰か今…!」

 

 すると、雄叫びが聞こえると同時にノイズの触手が響に襲いかかり、響は手すりを使って大きく飛び上がり、下の足場に飛び映った。

 

 ノイズは手応えがないのを感じて触手を引っ込めた。

 

 その大きさを見て響は叫び声をあげようとした途端、口元を誰かに手で覆われた。

 

 そこにいたのは、欠席したはずの未来だった。

 

 未来は響に向かって人差し指を立てて口元に当て、響の口から手を離すと携帯を取り出して文書で意思を伝えた。

 

 [ 静かに。あれは大きな音に反応するみたい]

 

 もう一度未来は携帯を操作し、再び画面を見せた。

 

 [あれに追いかけられて、ふらわあのおばちゃんとここに逃げ込んだの ]

 

 未来は顔を動かし、響もつられてその方を見ると、そこにはふらわあの店主が横たわっていた。

 

 この状況下では、シンフォギアの詠唱をした途端にノイズが襲いかかってくるだろう。シンフォギアを纏うよりもノイズが二人を炭にする方が早いのは火を見るより明らかだ。

 

 迷う響に未来は三度携帯を見せた。

 

 それを見て響も未来に文書で伝え、響もそれに返し、未来はまたそれを返し、響が返そうとすると未来は何も言わずに笑って携帯を押さえ、響は操作を止めた。

 

 店主の唸り声に反応したノイズがゆっくりと触手を伸ばし始め、二人もそれに気がついて店主の方を見た。

 

 「私…響に酷いことした。今更許してもらおうなんて思ってない。それでも、一緒にいたい。私だって戦いたいんだ…!」

 

 未来はノイズに気付かれないように響の耳元で言った。

 

 「ダメだよ…未来…」

 

 「どう思われようと関係ない。響一人に背負わせたくないんだ…」

 

 それは、未来の揺るがない意思の表れだった。普段物静かな未来からは考えられない程に、闘志が感じられた。

 

 「私、もう迷わない!」

 

 ノイズは未来に気が付き、未来はノイズを引きつけるように走り出し、追撃をかわしながら外に飛び出した。

 

 そして、ノイズが未来に注意が行った所を見計らって店主に近付き、響はシンフォギアを纏った。

 

 響は店主を抱き抱えて建物から飛び上がって脱出し、丁度走ってきた昴も響を見つけた。

 

 「響!」

 

 「昴さん!」

 

 響は昴の元に着地し、昴も響の元に駆け寄った。

 

 「昴さん、おばちゃんをお願いします」

 

 「お前は…」

 

 響は昴に店主を引き渡すや否やすぐに先程のノイズの元に駆け出していった。

 

 [ 私ト云ウ 音響キ ソノ先二 Vo.立花響]

 

 未来が囮になり、その隙に響が店主を助けるという至ってシンプルは作戦だったが、無事成功したようだ。

 

 後はその未来を救い出すだけである!

 

 戦っているのは決して響一人だけではない。助けられる者も必死に戦っている。人助けは一人だけでは出来ない。だからこそ、あの日奏は響に「生きることを諦めるな!」と叫んだのだ。今ならその理由が少しだけ響は分かった気がしていた。

 

 響は悲鳴を聞き付けてその方に向かって走り出し、腰のブースターで加速し、更に飛び上がった。

 

 響の生きる理由は、あの惨劇を生き延びた負い目からでは無い。奏から託され、受け取った命だからである!

 

 

 

 

 未来のすぐ後ろにはノイズが迫っていた。

 

 もう足を動かすのも精一杯で、立ち止まってしまった。

 

 ノイズも未来が観念したと判断し、トドメを刺しにかかり、大きく飛び上がった。

 

 しかし、未来には響との約束があった。

 

 まだ響と流れ星を見ていない!その約束が彼女の足を少しだけ動かし、ノイズの攻撃を免れた。

 

 しかし、ノイズの攻撃で地面が崩れ、未来とノイズは山道から落下した。

 

 「未来!でもこの距離じゃ…!」

 

 未来を見つけて困っている響の元に、零が近くに走り込んできていた。

 

 響は零の方を向き、零も響の方を向いてお互いに頷き、零は響に向かって飛び出し、響の足を掴んで超音速で振り回し、凄まじい勢いを付けて響を未来の方に投げつけ、響もその勢いのままジェット噴射で未来とノイズに向かって飛び、壁を蹴ってノイズに一撃を食らわせ、ノイズを拳で貫いて木っ端微塵にし、空中でジェット噴射をして未来に向かって飛び、未来の身体を抱き抱えた。

 

 着地は成功したものの、傾斜に着地してしまったため、二人仲良く池の近くまで転げ落ちてしまった。

 

 戦いが終わって響も変身を解除し、お互いに背中を押さえているのがなんだか可笑しくて、お互いに笑っていた。

 

 「カッコよく着地するって難しいんだなぁ」

 

 「あちこち痛くて…でも生きてるって気がする」

 

 二人は立って服の泥や土を払いながら言った。

 

 「…ありがとう。響なら絶対助けに来てくれると信じてた」

 

 「ありがとう。未来なら絶対諦めないって信じてた。だって私の友達だもん」

 

 そう言って笑う響を見て未来は泣き出し、響に抱きついて押し倒した。

 

 「怖かった…怖かったよ…」

 

 「私も…凄い怖かった…」

 

 二人の目からはいつしか涙が溢れていた。

 

 「私、響が黙っていたことに腹を立てていたんじゃないの…誰かの役に立ちたいと思っているのはいつもの響だから…でも最近は辛いこと、苦しいこと全部背負い込もうとしていたじゃない…私はたまらなくそれがいやだった。また響が大きな怪我をするんじゃないかって心配してた…だけど、それは響を失いたくない私のわがままだ…そんな気持ちに気付いたのに…今までと同じようには出来なかった…」

 

 「未来…それでも未来は私の…」

 

 響は未来の顔を見て話そうとした途端、吹き出してしまった。

 

 「髪もボサボサ、顔も涙でグチャグチャ、なのにシリアスなこと言ってるし!」

 

 「もう!響だって似たようなものじゃない!」

 

 未来は顔を膨らませて腕を組んでそっぽを向いた。

 

 「えっ!?ウソ!鏡貸して!」

 

 響も焦りながら髪を弄っていた。

 

 「鏡はないけどこれなら…」

 

 そう言って未来は携帯を取り出し、二人が入るようにインカメラで撮影を始めた。

 

 出来た写真は、想像以上だった。

 

 「おぉぉ〜!すごいことになってる〜!これは呪われかけてるな!」

 

 「私も想像以上だった…」

 

 それがやっぱり可笑しくて、二人はまた笑っていた。

 

 

 

 そして、街の人達も元の生活に戻り、響と未来は商店街で機動部二課と会っていた。

 

 「ほらよ、ふらわあのとこから回収しておいたぜ」

 

 そう言って昴は未来に鞄を渡した。

 

 「ありがとうございます」

 

 「おう」

 

 「零さんも、ありがとう。まだちょっとくらくらするけど…」

 

 「わ、悪かった。急いでるって聞いてたもんだからつい…」

 

 そう言って一同は笑った。

 

 「あ、あの、師匠…この子に戦っている所をじっくりバッチリ見られてしまって…」

 

 「ち、違うんです!私が首を突っ込んでをしまったから…」

 

 「詳細は報告書の形でしっかり聞く」

 

 「まー、不可抗力ってやつだよな」

 

 「それに、人命救助をしてくれたんだろう?それなら何も言う事はあるまい」

 

 大我とタイタスも二人に笑って言い、それを聞いた二人は仲良くハイタッチをした。

 

 すると、ピンクの車がドリフトをしながら現場に駆けつけ、中から了子が降りてきた。

 

 「主役は遅れて登場よ。さ〜て、どこから片付けましょうかね」

 

 その様子を見て響達は呆気に取られていた。

 

 「さ、後は俺達の仕事だ」

 

 「お前達は帰って休むんだぞ。零、送って行ってやってくれ」

 

 「ああ」

 

 「あ、あの、避難の途中で友達とはぐれてしまって…雪音クリスと言うんですけど…」

 

 「雪音クリスって言うと、あの子だよな。被害者が出たっていう知らせは出てないから、連絡が取れるようになるだろう。心配はない」

 

 「良かった…」

 

 未来は安心した様に笑い、零と響と共に学校まで戻って行った。

 

 

 

 「で、二人は仲直り出来たの?翼さんから困ってたって聞いたけど…」

 

 「はい!未来は私の大親友です!」

 

 「ちょ、ちょっと響…」

 

 そう言って未来は少しだけ顔を赤くしていた。

 

 「えっと、零さん…でしたよね?私は小日向未来です。まだちゃんと自己紹介してませんでしたよね」

 

 「そう言えばそうだったね。俺は柊零。こんなナリだけど、一応男」

 

 「えっ零さん男性だったんですか!?」

 

 「これは誰だって間違えるよね…私も最初間違えたもん」

 

 「ま、これのお陰でたまーに助かる時もあるんだよな。レディースデーとかで映画とか安く見れるし、悪いことばっかじゃないぜ」

 

 「でもね、零さん奥さんにたまに着せ替え人形にされてるらしいんだよ〜」

 

 「そうなんですか?」

 

 「あんまりやらないで欲しいんだけどなぁ…」

 

 「それでも奥さんの事は愛されてるんですね」

 

 「まあな。服選びには困らなかったりするし、良いと言えばいいんだけど…それがあるから止めさせられないのもなあ〜…」

 

 「ふふ。零さんの奥さんは今どこにいらっしゃるんですか?」

 

 「…ずっと遠く。今は会えない」

 

 そう言って零は夜の星空を見上げていた。

 

 「でも、向こうできっと頑張ってる。響が未来の知らないとこで頑張ってた様に、俺の嫁も…百合も頑張ってるよ」

 

 「素敵ですね、零さん」

 

 「ありがとよ。っと、学校に着いたぜ。それじゃあな!」

 

 「ありがとう!零さん!」

 

 「ありがとうございました」

 

 「おう。風邪ひくなよ」

 

 「はーい!」

 

 そう言って二人は学校の寮に帰って行った。




今回はここまでです!

結局ひびみくも書くことにしましたよ

ここ書かないと後々響きそうだしね。

響だけにね!

ね!

あっちょっ響さんギアで殴るのをやめなさい、痛っ、ごめん!ごめんて!悪かったから!


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共に奏でる防人の歌

今回割と場面が目まぐるしく変わっております


とある日…この日、翼は倉庫で自分の乗るバイクを弄っていた。鼻歌も混じえてご機嫌である。

 

 いつしか鼻歌が二重奏になり、後ろを振り向くと同時に翼のすぐ後ろで奏がバイクを見ていた。

 

 「奏っ!」

 

 少し顔を赤くしながら翼は奏を見た。

 

 「ご機嫌ですな」

 

 いつものすまし顔で奏は言う。

 

 「今日は非番だから、バイクで少し遠出に…」

 

 「特別に免許貰ったばかりだもんな。それにしても、任務以外で翼が歌っているなんて初めてだ」

 

 「奏…」

 

 さらに顔を赤くして翼は目線を斜め下に下げる。

 

 「そういうの、なんか良いよな」

 

 奏は軽く翼の額を指で弾いて、翼はハッとした様に顔を上げた。

 

 「また鼻歌聞かせてくれよな〜」

 

 そう言いながら奏は倉庫の出口に歩いて行った。

 

 「あっ奏…!鼻歌は誰かに聴かせるものじゃないから…!」

 

 「分かってるって。じゃ、行ってきな」

 

 奏は後ろ手を振りながら白い光の中に消え、それを翼は困った顔をしながら笑って見送った。

 

 ―――とある、翼の奏との記憶。

 

 それを思い出しながら翼はメディカルチェックを受けていた。

 

 「お疲れ様。ダメージは完全に回復です」

 

 男性職員が言うのを聞き、翼は手を握ったり開いたりを繰り返し、力が戻ったのを実感していた。

 

 「ただいま、奏」

 

 翼は笑顔で小さく呟いた。

 

 

 

 その頃、響は未来を連れて基地の中を案内していた。

 

 「学校の地下にこんなシェルターや地下基地が…」

 

 「あっ!翼さーん!」

 

 響は翼を見つけ、翼のいる方に向かって走り、翼も響に気付いて響の方を見た。

 

 「立花か。そちらは確か協力者の…」

 

 「こんにちは、小日向未来です」

 

 そう言って未来は丁寧にお辞儀をした。

 

 「えへん。私の一番の親友です」

 

 そう言って響は両手を腰に当てて仰け反った。

 

 「立花はこう言う性格ゆえ、色々面倒をかけると思うが、支えて欲しい」

 

 「いえ、響は残念な子なのでご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

 

 「えっ何!?どういうこと?」

 

 響は困惑しながら翼と未来を交互に見た。

 

 「二人とも響を通して意気投合してるって事だな」

 

 横にいた昴が笑って言った。

 

 「はぐらかされた気がする…」

 

 そう言って響は頬を膨らませた。

 

 そんな響を見て翼と未来は静かに笑った。

 

 (変わったのか…あるいは変えられたのか…)

 

 仲睦まじい様子を見る翼を見て、昴も安心した様に微笑んだ。

 

 「でも未来とここに居るのは、なんかこそばゆいですよ」

 

 「小日向を外部協力者として二課に異色登録させたのは、司令が手を回してくれたおかげだ。それでも不都合し得るかもしれないが」

 

 「説明は聞きました。自分でも理解しているつもりです。不都合だなんてそんな」

 

 「ああ、そう言えば師匠や大我さん達は?」

 

 「ああ、私達も探しているのだが…昴さんは何か知りませんか?」

 

 「いや、俺も何も聞いてねえな」

 

 風鳴弦十郎のデスクのモニターには、「TATSUYAに緊急返却」と言う文字が並んでいた。

 

 「あら、良いわね。ガールズトーク?」

 

 「どっからツッコんで良いか分かんねえが、俺を無視しないでくれるか」

 

 どこからともなく了子が現れ、昴も呆れたように言った。

 

 「了子さんもそういうの興味あるんですか?」

 

 「モチのロン!私の恋バナ百物語聞いたら、夜眠れなくなるわよ?」

 

 「まるで怪談みたいですね…」

 

 「了子さんの恋バナ!?聞くとうっとり夢オシャレな銀座の恋物語!?」

 

 翼は呆れたように額に指を当て、未来も困ったように苦笑いをしているのとは対照的に、響は了子の恋バナに胸を昂らせていた。

 

 「そうね…遠い昔の話になるわね…こう見えて呆れちゃうくらい一途なんだから…」

 

 「「おおー!」」

 

 それを聞いて未来も響同様に食いついた。

 

 「意外でした。櫻井女史は恋と言うより、研究一筋であると…」

 

 「命短し恋せよ乙女と言うじゃない。それに女の子の恋するパワーなんて凄いんだから」

 

 「お、女の子か…」

 

 それを聞いた了子に昴は顔面に裏拳を喰らってしまった。

 

 「私が聖遺物の研究を始めたのもそもそも…」

 

 ふと了子は我に返り、一瞬動きが止まった。

 

 「「うんうん!それで?」」

 

 「ま、まあ?私も忙しいから?ここで油売ってられないわ」

 

 そう言って了子は顔を赤くして頭をかいた。

 

 「お前が割り込んだんだろォ!?」

 

 またも昴は了子の逆鱗に触れ、蹴りを顔面に喰らった。

 

 「とにもかくにも、デキる女の条件はどれだけいい恋してるかに尽きる訳なのよ〜。ガールズ達も、いつかどこかでいい恋なさいね。それじゃ、ばっはは〜い」

 

 そう言って了子は歩いて去ってしまった。

 

 「聞きそびれちゃったね〜」

 

 「うーん、ガードは堅いか…でもいつか、了子さんのロマンスを聞き出して見せる!」

 

 そんな響を見て未来は微笑み、翼は困った顔をしていた。

 

 

 

 「司令、まだ戻って来ないな…」

 

 昴達四人は基地の廊下の一角にある休憩所で弦十郎を待っていた。

 

 「ええ。メディカルチェックの結果を報告しなきゃいけないのに…」

 

 「次のスケジュールもあるんだろ?早いとこ小川さんにも合流しなきゃだな」

 

 そう言って昴は腕時計を確認した。

 

 「もうお仕事入れてるんですか!」

 

 「少しずつよ。今はまだ慣らし運転のつもり」

 

 「じゃあ、以前のような過密スケジュールじゃないんですよね!?」

 

 「…」

 

 YESとも取れる様に翼は口をもごもごとさせて声を出した。

 

 「それじゃ翼さん、デートしましょ!」

 

 「デート?」

 

 

 

 

 その頃、零と大我は食料と花を持ってクリスのいるマンションに来ていた。

 

 「ほらよ」

 

 零と大我はクリスのいる部屋に入り、警戒態勢を取っているクリスの方を見た。

 

 「応援は連れてきていない。シンフォギアだって置いてきた。俺達二人だけだ」

 

 「…!」

 

 「もう、お前の保護を任されたのは俺だけだ」

 

 そう言いながら二人はクリスの前で腰を下ろした。

 

 「…どうしてここが…」

 

 「ちょっとしたツテってやつだ。差し入れと、俺が育てた花だ!可愛いだろ?」

 

 大我が抱いている鉢植にはマリーゴールドの花が咲いていた。

 

 「…そこ、置いときな」

 

 すると、クリスの腹が鳴り、零もそれを聞いてパンをビニール袋から取り出し、一口食べて見せた。

 

 「何も盛ってなんかないよ」

 

 それをクリスに見せるや否やそれをひったくり、それを食べ始めた。

 

 「…バイオリン奏者、雪音雅律と、その妻声楽家のソレッド・M・雪音が、難民救済のNGO活動中に戦火に巻き込まれて死亡したのが六年前。残った一人娘も行方不明。その後、国連軍のバルデルデの介入によって事態は急転。組織に囚われていた娘は発見され、保護」

 

 大我も牛乳を開けて一口飲み、クリスに渡した。

 

 「日本に引き渡されたんだ」

 

 「よく調べてるじゃねえか。風鳴のオッサンでもねえのに」

 

 そう言ってクリスは牛乳を飲んだ。

 

 「そう言う詮索、反吐が出る」

 

 「俺も詳しく知ってる訳じゃないけど…当時の司令達は適合者を探すために音楽界のサラブレッドに注目していて、天涯孤独となった少女の引き取り先として、立候補した、との事だ」

 

 「フッ…こっちでもか…」

 

 「?こっちでも?」

 

 「なんでもない…続けな」

 

 そう言ってクリスは牛乳を再び飲んだ。

 

 「ところが、帰国直後に消息を絶った。相当慌てたんだろうな…二課からも相当人が駆り出されたが、事件に関わった者の多くが行方不明か死亡…」

 

 「何がしたい貴様ッ!」

 

 「俺達がやりたいのは、クリス、お前を助け出す事だ」

 

 「…!」

 

 「引き受けた仕事をやり遂げるのは、大人の務めだ」

 

 「へっ、大人の務めと来たか。余計なこと以外は何もしてくれないくせに!」

 

 そう言ってクリスは空の紙パックを投げ捨て、ガラスを突き破って外に飛び出した。

 

 「ガラスを破りやがった!」

 

 クリスはイチイバルを纏い、雨の中どこかに行ってしまった。

 

 「ダメだったか…」

 

 クリスが飛び出した直後に弦十郎が入ってきた。

 

 「はい…」

 

 「外から話を聞いていたが、やはりダメだったか…仕方ないさ。きっと俺も同じことを言い、同じようになっていただろう」

 

 「そうだぜ。とにかく次はどうするかを考えよう」

 

 「そうだな…」

 

 零は部屋を出ながらクリスが突き破って粉々になったガラスを見ていた。

 

 

 

 次の日、翼は公園で腕時計を確認しながら二人を待っていた。

 

 「あの子達は、何をやってるのよ…」

 

 「すみません翼さん…」

 

 すると、未来と響の二人が翼の元へ走ってきた。

 

 「遅いわよ!」

 

 「申し訳ありません。お察しの事だとは思いますが、響のいつもの寝坊が原因でして…」

 

 二人は一息ついてふと翼を見ると、彼女の服装は普段からは考えられないカジュアルな服装で来ていた。

 

 「時間がもったいないわ。急ぎましょ」

 

 そう言って翼は踵を返し、歩き出した。

 

 「すっごい楽しみにしてた人みたいだ…」

 

 「誰かが遅刻した分を取り戻したいだけだ!」

 

 翼は照れ隠ししながら二人に言った。

 

 「翼イヤーはなんとやら…」

 

 早速三人は街へ繰り出し、様々な場所へ出かけることにした。

 

 雑貨屋でマグカップを見たり、映画館で感動して涙したり、屋台の店で買い食いしたり、服屋で色々な服を買って着替えたり、翼が来ていることがバレそうになって隠れたり…。

 

 「翼さんご所望のぬいぐるみは、この立花響が手に入れて見せます!」

 

 響はゲームセンターのUFOキャッチャーの前で意気込んでいた。

 

 「期待はしているが、遊戯に少しつぎ込みすぎじゃないか?」

 

 スマホをかざしてボタンを叩くように押し、気合を入れるように叫んだ。

 

 「変な声出さないで!」

 

 もはやとてつもない額をつぎ込んだのだろう、怒りで叫び出した響を宥め、三人はカラオケの店へ入った。

 

 「うおおおおー!!凄いッ!私達ってばすごーぃッ!トップアーティストと一緒にカラオケに来るなんて!」

 

 すると、演歌が流れ出し、響と未来はお互いかと思って指を指すと、翼がマイクを取り、二人に一礼をした。

 

 「一度こういうの、やってみたいのよね」

 

 「渋い…」

 

 [恋の桶狭間 歌:風鳴翼 作詞・作曲:上松範康]

 

 「おおお〜…!」

 

 「カッコイイ〜!」

 

 

 

 

 やがて陽が落ち、辺りはすっかり夕暮れになっていた。

 

 「二人とも…どうしてそんなに元気なんだ?」

 

 翼は息を切らしながら階段を登り、響と未来はその上で翼を待っていた。

 

 「翼さんがへばり過ぎなんですよ〜!」

 

 「今日は慣れないことばかりだったから…」

 

 「防人であるこの身は、常に戦場にあったからな…」

 

 翼は響と未来を見て、風に吹かれる木を見た。

 

 「本当に今日は、知らない世界を見てきた気分だ」

 

 「そんなことありません!」

 

 そう言って響は翼の手を引いた。

 

 「お、おい!立花何を…」

 

 響は翼を連れて公園の柵に捕まりながら街を見下ろした。

 

 あまりの絶景に翼も言葉を失った。

 

 「あそこが待ち合わせした公園です。皆で一緒に遊んだところも、遊んでないところも、ぜーんぶ翼さんの知ってる世界です!昨日に翼さんが戦ってくれたから、今日日みーんなが暮らせてる世界です。だから、知らないなんて言わないでください!」

 

 「…!」

 

 翼はもう一度街の方を向いた。

 

 『戦いの裏側とか、その向こう側にはもっと違ったものがあるんじゃないかな。アタシはそう考えてるし、そいつを見てきた』

 

 ふと、奏の言葉が蘇る。

 

 「…そうか、これが奏の見てきた世界なんだな…」

 

 

 

 「えっ!?復帰ステージ!?」

 

 また次の日、響と未来は翼と学校の屋上で話していた。

 

 「アーティストフェスが十日後に開催されるんだが、そこに急遽ねじ込んで貰ったんだ」

 

 「なるほど〜!」

 

 二人の手にはそのライブのチケットが握られていた。

 

 「倒れて中止になったライブの代わりと言う訳だな」

 

 響はチケットの裏の一部分、会場の名前を見て、あの時の記憶が蘇った。

 

 「翼さん、ここって…」

 

 奏が亡くなり、響の身体にシンフォギアが入ったあの場所である。

 

 「立花にとっても、辛い思い出がある会場だな」

 

 「ありがとうございます、翼さん!」

 

 「響…」

 

 「いくら辛くても、過去は絶対乗り越えて行きます!そうですよね!翼さん!」

 

 そう言う響の目には一切の曇りもなかった。

 

 「…」

 

 翼は屋上に止まっている二羽の鳥を見て、もう一度前を向いた。

 

 「私もそうありたいと、思っている」

 

 そう言う翼の目にも、光が宿っていた。

 

 

 そして十日後、翼のライブの日、響も当然会場に向かっていた。

 

 すると、携帯が鳴り、電話に出た。

 

 「はい、響です」

 

 『ノイズの出現パターンを検知した!零くんと翼にもこれから連絡を…』

 

 「師匠!」

 

 『?どうした』

 

 「現場には、私と零さんだけでお願いします。今日の翼さんには、自分の戦いに望んで欲しいんです。あの会場で、最後まで歌い切って欲しいんです!お願いします!」

 

 弦十郎は少し驚いた様な顔をしたあと、ゆっくりと微笑み、再び顔を引き締めた。

 

 『やれるのか?』

 

 「はい!」

 

 『だそうだ。零くん。サポートを頼む』

 

 『合点承知!』

 

 翼は会場で、零、響、そしてクリスはノイズと各々の戦いに望んでいた。

 

 [FLIGHT FEATHERS Vo.風鳴翼]

 

 会場のペンライトが全て青に染まる頃、クリスもノイズの群れの中で戦場を煙の白に染めていた。

 

 しかし、巨大なノイズには傷一つ付かず、ノイズの大砲に寄ってクリスは吹っ飛ばされてしまった。

 

 二発目の大砲が撃たれ、あわや命中するかと思われた次の瞬間、シンフォギアを纏った零と響が間一髪で割り込み、ノイズの攻撃を相殺した。

 

 響はブーストして雷のようにノイズの間を通り抜け、次の瞬間地上にいた大量の小型ノイズは炭に変わった。

 

 「ウルトラランスッ!」

 

 零もウルトラブレスレットを変形させて一本の槍に変え、空中のノイズ達を一掃した。

 

 巨大なノイズが二人を襲おうとした途端、今度はクリスが二人への攻撃を相殺した。

 

 「貸し借りはナシだ!」

 

 そう言ってクリスはノイズから距離を取った。

 

 それを聞いて響は安心した様に笑った。

 

 「さあ!行きましょう零さん!」

 

 「ああ!」

 

 零と響は再び構え、二手に分かれてノイズを倒し始めた。

 

 「はっ!でやぁ!」「えりゃっ!」

 

 響は拳と脚でノイズを次々と砕いていき、零もアイスラッガーを手に持ち、メビュームブレードを展開して迫ってくるノイズ達を切り裂いて行った。

 

 そして、残された巨大なノイズ目掛けて地面を殴り、その振動派をノイズの真下へ送ってノイズを転ばせた。

 

 響がアームドギアを展開している間に零とクリスは近くにいた小型ノイズ達を一掃し、響は巨大なノイズに強烈な拳の一撃を叩き込んだ。

 

 そして、翼が歌い終わると同時にノイズも炭へ変わり、風に吹かれてその形を崩していき、零と響も安心した様に笑顔を見せた。

 

 

 

 「ありがとう皆!今日は思い切り歌を歌って気持ちよかった!」

 

 その声を聞いて、会場にいたファンも大歓声を翼に浴びせた。

 

 「こんな想いは久しぶり。忘れていた。でも思い出した!こんなにも歌が好きだったんだ!聞いてくれる皆の前で歌うのが、大好きなんだ!…もう知ってるかもしれないけど、海の向こうで歌ってみないかってオファーが来てる。自分が何の為に歌うのか、迷っていたけど、今の私はもっと沢山の人に歌を聴いてもらいたいと思っている。言葉は通じなくても、歌で伝えられる事があるなら、世界中の人に歌を聴いてもらいたい」

 

 それを聞いてファンは再び大歓声をあげた。

 

 「私の歌が助けになると信じて、皆に向けて歌い続けていた。だけどこれからは皆の中に自分も加えて行きたい!だって私は、こんなにも歌が好きなのだから!たった一つのわがままだから、聞いて欲しい。許して欲しい。」

 

 ――許すさ。当たり前だろ?

 

 どこかからか奏の声が聞こえたような気がした。

 

 翼は知らない内に涙を流していた。

 

 「…ありがとう!」

 

 

 

 

 「アイツは敵だぞ!なのにどうして助けちまった…!ちくしょう…ちくしょうッ…!」

 

 悔し涙を流しながらクリスは膝から崩れ落ちた。




今回はここまでです!

一期はそろそろ佳境にはいりますなぁ

次回もよろしくお願い致します!


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繋いだ手だけが紡ぐもの

名作回ですね。

多分これサブタイを変えるのは違う気がするのでこのままいきます。




森の奥…一つの部隊がフィーネの館を狙っていた。

 

 そしてその頃、了子はそのフィーネの館で響のガングニールについて調べていた。

 

 先程の部隊が入口と窓を突き破って突入し、了子に向けて発砲を始めた。

 

 その銃弾が直撃し、了子は血を流してその場に倒れ、部隊のリーダーらしき男が了子へと近付いた。

 

 「(手前勝手が過ぎたな。聖遺物、そして異聖遺物に関する研究データは我々が活用させてもらおう)」

 

 「(掠める準備が出来たら、あとは用無しってわけね。徹底しているわ…)」

 

 男は了子の身体を蹴って回して脇腹に銃弾が当たっているのを確認し、ニヤリと笑った。

 

 了子は手から光を発し、苦しみながらも弾痕を治して身体を起こした。

 

 「(それも、わざと痕跡を残して立ち回る辺りが、品性下劣な米国政府らしい)」

 

 リーダーの男が銃を構えるも、了子はお構い無しに立ち上がった。

 

 「(ブラックアートの深淵を、覗いてすらもいない青二才のアンクルサムが―――)」

 

 「(―――撃てッ!)」

 

 部隊は了子に向けて銃弾を浴びせるように発砲した。

 

 

 

 「失礼しました〜」

 

 響と未来は職員室から出て、響は合唱部の歌を聴いていた。

 

 「〜♪」

 

 「なに?合唱部に触発されちゃった?」

 

 「んー、リディアンの校歌を聴いてると、まったりするって言うか、凄く落ち着くって言うか…皆がいるところって思うと安心する。自分の場所って気がするんだ。入学してまだ二ヶ月ちょっとなのにね〜」

 

 「でも、色々あった二ヶ月だよ」

 

 「うん。そだね〜」

 

 二人は廊下の窓から学園の日常風景を眺めていた。

 

 

 

 クリスがフィーネの館に駆けつけると、米国の部隊の男達が大広間に血まみれで倒れていた。

 

 「何が…どうなってやがんだ…」

 

 とてつもない出血量だ。これでは助かる見込みもないだろう。

 

 すると、後ろから物音が聞こえ、振り返ると昴が立っていた。

 

 「違う!アタシじゃない!」

 

 すると、昴と一緒に来ていたであろう調査部隊がクリスを通り過ぎて館の調査を始めた。

 

 そして、昴もクリスの前に立ち、頭に手を置いた。

 

 「誰もお前を疑っちゃいねえ。ずっと俺達のそばに居た、アイツの仕業だ」

 

 「え…?」

 

 昴の目はいつもに増して鋭く光っていた。

 

 「昴さん」

 

 調査部隊の一人が手紙を見つけ、昴に報告しようと手紙を引っ張った途端、館の一部が爆発し、昴は咄嗟にクリスを片手で引き寄せ、ウルトラ念力で瓦礫を浮かせ、何も無いところに置いた。

 

 調査部隊もなんとか怪我は無かったようである。

 

 「どうなってんだよこいつは…!」

 

 「念力が使えて助かったぜ…」

 

 「そういう事じゃねえよ!」

 

 クリスは昴の腕から脱出し、一歩後退った。

 

 「なんでギアを纏えないやつがアタシを守ってんだよ!」

 

 「ギアとか関係なしに、お前がちょっとばかり大人だからだよ」

 

 「大人…?…アタシは大人が嫌いだ!死んだパパとママも大嫌いだ!とんだ夢想家で臆病者!アタシはアイツらと違う!被災地で難民救済?歌で世界を救う?良い大人が夢なんか見てるんじゃねーよ!」

 

 「大人が夢を…か」

 

 「本当に戦争を無くしたいのなら、戦う意思と力を持つやつを片っ端からぶっ潰していけばいい!それが一番合理的で現実的だ!」

 

 「そいつがお前の流儀ってやつか?じゃあ聞くが、お前はそれで戦いを無くしたのか?」

 

 「…ッ!それは…」

 

 「良い大人は夢を見ない、って言ったよな。違うぜ。大人だから、夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし、自分の力も強くなっていく。手持ちのお金だって、ちったあ増える。子供の頃に見るだけだった夢が、大人になれば叶えるものに変わるんだ。夢を見る意味が大きくなっていくんだ。お前の親だって、ただ夢を見に行ったんじゃない。歌で世界を救うって夢を叶えるために戦場へ向かったんだ」

 

 「なんで…そんなこと…」

 

 「きっとお前に見せたかったんだ。夢は叶えられると言う現実をな」

 

 「…!」

 

 「お前は嫌いだって言ったが、お前の親父もおふくろも、お前のことを大切に思ってたぜ」

 

 そう言いながら昴はクリスに歩み寄った。

 

 「…!くっ…」

 

 いつしか、クリスの目には涙が溜まっていた。

 

 昴は何も言わず、クリスを抱きしめてやった。

 

 クリスは子供のように、声を上げて泣いた。

 

 

 そしてその後、昴達は乗ってきた車に乗って引き上げようとしていた。

 

 「やっぱりアタシは…」

 

 「一緒には来られないか…」

 

 クリスは黙って頷いた。

 

 「…クリス、お前はお前が思ってるほど一人なんかじゃない。例え進む道が一人で進む道だとしても、近いうちに俺達と一緒に進むだろう」

 

 「今まで戦ってきた者達が、一緒になれるというのか?世慣れた大人だ。そんな綺麗事言えるのかよ」

 

 「俺はこの目でそういう奴らを何度も見てきたし、俺もその一人だ。だから、断言出来る」

 

 そう言って昴はクリスに一つの端末を渡した。

 

 「通信機?」

 

 「ああ。確か…限度額以内だったら公共交通機関は使えて、自販機でも使える便利なものだぜ」

 

 そう言って昴は車のエンジンを吹かせた。

 

 「カ・ディンギル」

 

 「?」

 

 「フィーネが言ってたんだ。カ・ディンギルって。それが何なのかは分からないけど、それはもう完成してるって」

 

 「カ・ディンギル…?」

 

 「…」

 

 「これ以上後手には回らねぇ。先手を打たせてもらうぜ」

 

 そう言って昴達は基地に戻った。

 

 

 

 「昴君、どうだったかな?」

 

 基地には弦十郎と零達機動部二課の面々がおり、モニターには翼と響に通信が繋がっていた。

 

 「ああ。バッチリ収穫があったぜ。カ・ディンギルがあって、既に完成してるとかなんとか…了子さんは?」

 

 「カ・ディンギル…そうか…。了子くんの方は今日は出勤していない。連絡もつかないんだ」

 

 「そうか…」

 

 『了子さんならきっと大丈夫です!何が来たって、私を守ってくれたようにどかーんとやってくれます!』

 

 画面上の響が得意げな顔で言う。

 

 『いや、戦闘訓練もろくに受講していない櫻井女史に、その様な事…』

 

 『え?師匠とか了子さんとか、人間離れした特技を持ってるんじゃないんですか?昴さんや大我さんも出来るんだし』

 

 「普通の人間にはどうしたってあんな技は出来ねえよ!」

 

 風舞の真っ当なツッコミが飛ぶと同時に、新たに通信が入った。

 

 『やぁ〜っと繋がった〜。ごめんね、寝坊してたんだけど…通信機の調子が良くなくて…』

 

 弦十郎や零達、特に昴は強い疑惑の目を向けていた。

 

 「無事か、了子くん。そっちに何も問題は」

 

 『寝坊して、ゴミを出せなかったけど、何かあったの?』

 

 『良かった〜』

 

 「ならばいい。それより聞きたい事がある」

 

 『せっかちねぇ。何かしら?』

 

 「カ・ディンギル。この言葉が意味することは…」

 

 『カ・ディンギルとは、古代シュメールの言葉で高みの存在。転じて、天を仰ぐ塔のことを意味しているわね』

 

 「何者かがそんな塔を建造していたとして、なぜ俺達は見過ごして来たのか?」

 

 『確かに、そう言われちゃうと…』

 

 「だが、ようやく掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば勝利も同然。相手の隙にこちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるからには仕損じるな」

 

 『了解です!』

 

 そう言って二名の奏者の通信は切れた。

 

 『ちょっと野暮用を済ませてからそちらに向かうわ』

 

 そう言って了子からの通信も切れた。

 

 「カ・ディンギル…クリスは確かにそう言ったのか?」

 

 「ああ。しかし、そんなに巨大な建造物があれば俺達の目につくはずだ」

 

 「言われて見れば確かに不思議だよな。俺達の目でも見つけられねえってのは、一体どういう事だ?」

 

 「私達にも見えないように結果か何かを張っているのだろうか?」

 

 「結界?」

 

 「推測ではあるが、もしも敵が櫻井女史や風鳴司令の様に人間離れした力や技を持っているとしたら、結果を張ることも不可能ではないのかもしれない、と思ってな」

 

 「なるほど…タイタスの言うことにも一理ある。現に、何度も外に出ているにも関わらず、俺達はおろか零の目でさえも視認は出来ていない。何らかの細工は施してあると考えるのが妥当だろうぜ」

 

 「カ・ディンギル…了子さんの言葉についてもう一度深く考えてみよう」

 

 「ああ」

 

 機動部二課でもカ・ディンギルについて調べていると、突如アラートが鳴り、街に巨大な飛行タイプのノイズが五体も現れた。

 

 「今は後回しだ!先に人々を助けるぞ!」

 

 「ああ!」

 

 零達五人は外に向かって走り出した。

 

 「ウルトラ念力はなんとか使えた。だから、俺達でも役に立てるかもしれない」

 

 「…!分かった!」

 

 零はセブンとタロウのカードを持って外に飛び出し、シンフォギアを纏ってノイズの元に飛んで行った。

 

 

 

 

 「今は人を襲うと言うよりも、ただ移動していると。…はい、はい!」

 

 そう言って響は通信を切った。

 

 「響?」

 

 未来は心配そうな目で響を見つめた。

 

 「平気平気。私と翼さんと零さんで何とかするから。だから未来は学校に戻って」

 

 「リディアンに?」

 

 「いざとなったら、地下のシェルターを解放してこの辺の人達を避難させないといけない。未来にはそれを手伝って貰いたいんだ」

 

 「…うん…分かった」

 

 「ごめん、未来を巻き込んじゃって」

 

 「ううん、巻き込まれたなんて思っていないよ。私がリディアンに戻るのは、響がどんなに遠くに行ったとしてもちゃんと戻ってこられる様に、響の居場所、帰る場所を守ってあげる事でもあるんだから」

 

 「…私の、帰る場所」

 

 「そう。だから行って。私も響みたいに大切なものを守れるくらいに強くなるから」

 

 未来は笑いながらそう言った。

 

 響は未来に歩み寄って未来の手を取った。

 

 「小日向未来は、私にとっての陽だまりなの。未来のそばが一番暖かい所で、私が絶対に帰ってくるところ!これまでもそうだし、これからもそう!だから私は絶対に帰ってくる!」

 

 「…響…!」

 

 「一緒に流れ星見る約束、まだだしね!」

 

 「うん」

 

 「じゃあ行ってくる!」

 

 そう言って響は踵を返して走り出した。

 

 「あ…」

 

 その後ろ姿を未来は心配そうに見送った。

 

 

 

 

 零はシンフォギアを纏って空中を、翼はバイクで道路を、響は走ってノイズに向かって走っていた。

 

 すると、基地にいる弦十郎から通信が入った。

 

 『ノイズ侵攻経路に関する最新情報だ。第四十一区域で発生したノイズは、第三十三区域を経由しつつ、第二十八区域へ侵攻中。同様に第十八区域、第十七区域、第十六区域で発生したノイズも同様に――』

 

 『司令!』

 

 『各ノイズの侵攻先に、東京スカイタワーがあります!』

 

 「東京スカイタワー…!?」

 

 『カ・ディンギルが塔を意味するのであれば、スカイタワーはまさにその物じゃないでしょうか!』

 

 『…スカイタワーには、俺達二課が活動時に使用している映像か交信と言った電波情報を統括する機能が備わっている。東京スカイタワーに急行だ!』

 

 「スカイタワー…でも、ここからじゃ…」

 

 響が途方に暮れていると、上空から迎えのヘリがやってきた。

 

 『なんともならない事でも何とかするのが俺達の仕事だ!』

 

 響もヘリに乗って現地へ急いだ。

 

 スカイタワーの周辺には既に五体のノイズが塔を囲むように集結していた。

 

 そして、巨大なノイズはハッチの様な部分を開き、小型のノイズを大量にばら撒き始めた。

 

 地上にはもちろん、空中にもノイズ達が飛び回っていた。

 

 そして、響も空中で零と合流し、シンフォギアを纏った。

 

 [私ト云ウ 歌響キ ソノ先ニ Vo.立花響]

 

 響は落ちていく勢いそのままに拳で一体の巨大なノイズを貫通し、ノイズを砕いた。

 

 零も腕をX字に組んでネオ・ストリウム光線を撃ち、別の巨大なノイズを破壊した。

 

 翼も現場に駆けつけ、バイクから飛んでシンフォギアを纏いながら〔蒼ノ一閃〕を放って空中にいた小型のノイズ達を一掃した。

 

 「相手に頭上を取られる事が、こうも立ち回りにくいとは…!」

 

 「空中には零さんがいます!私達は地上で戦いましょう!」

 

 「分かった!零、聞こえているな!」

 

 『もちろん!ただ、こっちもいつまでエネルギーが持つか分からない』

 

 「承知した。地上は任せろ!」

 

 そして、零は更にエースのカードを翳し、エースの力を身に纏った。

 

 「これが限界か…ッ!」

 

 零は後ろについてきていたノイズ達をかわし、自分を後ろに下げたところで数枚のウルトラギロチンを投げ、近くにいたノイズ達を全て切り裂いた。

 

 すると、取り逃したノイズ達が響達に向かって飛んでいくのが見えた。

 

 「!しまった!」

 

 すると、響達の後方から無数の銃弾が飛び、ノイズ達が一掃された。

 

 飛び出してきた先を見ると、そこにはシンフォギアを纏ったクリスが立っていた。

 

 「チッ、こいつがピーチクパーチクやかましいから、ちょっと出張ってみただけ。それに勘違いするなよ。お前達の助っ人になったつもりはねえ!」

 

 『助っ人だ!少し遅くなっちまったがな』

 

 クリスの通信機から昴の声が聞こえ、それを聞いてクリスは顔を赤くし、響も満面の笑みを見せた。

 

 「助っ人…?」

 

 『第二の聖遺物、イチイバルのシンフォギアを纏う奏者、雪音クリスだ!』

 

 「クリスちゃーん!ありがとう!分かり合えるって信じてた!」

 

 言うが早いか、響はクリスに抱きついた。

 

 「このバカ!人の話を聞いてなかったのかよ!」

 

 「とにかく今は、連携してノイズを…」

 

 「勝手にやらせてもらう!邪魔はすんなよ!」

 

 そう言ってクリスはボウガンで多数のノイズ達を倒した。

 

 「空中のノイズは零とあの子に任せて、私達は地上のノイズを!」

 

 「は、はい!」

 

 〔魔弓・イチイバル Vo.雪音クリス〕

 

 零とクリスは空中のノイズを、響と翼は地上のノイズの相手をすることにした。

 

 零は三人のサポートに徹し、残りの三人がそれぞれの持ち場に全力を賭ける。シンプルな作戦だがノイズ相手には割と有効らしく、瞬く間にノイズの数は減って行った。

 

 クリスと翼は同時に後ずさり、お互いの背中をぶつけてしまった。

 

 「何しやがる!すっこんでな!」

 

 「あなたこそ、いい加減にして。一人で戦ってるつもり?」

 

 「私はいつだって一人だ。こちとら仲間と馴れ合ってるつもりはこれっぽっちもねぇ!」

 

 「!」

 

 「確かにアタシ達は争う理由なんてないのかもな。だからって、争わない理由もあるものかよ!こないだまでやり合ってたんだぞ…そんなに簡単に、人と人が…」

 

 すると、響がクリスの振り上げた拳をそっと包み込むように両手で握った。

 

 「出来るよ。誰とだって仲良くなれる」

 

 そう言って、響は左手で翼の手も取った。

 

 「あ…」

 

 「どうして私にはアームドギアがないんだろうってずっと考えてた。いつまでも半人前はやだなぁって。でも、今は思わない。何もこの手に握ってないから、二人とこうして手を握りあえる。仲良くなれるからね」

 

 そう言って響は優しく笑った。

 

 「立花…」

 

 そう言って翼も刀を置き、クリスに手を伸ばした。

 

 クリスも顔を赤くしてそっぽを向いた。

 

 そして、もう一度、翼の方を向いて手を出し、その手を翼が握った。

 

 それを見てクリスは慌てて手を離した。

 

 「このバカにあてられたのか!?」

 

 「そうだと思う。そして、貴方もきっと」

 

 「…冗談だろ」

 

 そういうクリスの顔も満更では無さそうだ。

 

 「…つ、繋ぐならあいつも一緒に繋いでやれよな…一人だけ仲間はずれってのは無いだろ…」

 

 クリスがそう言うと同時に近くに零が着地した。

 

 「ありがとう、クリス」

 

 「…」

 

 照れくさいのだろうか、クリスはそっぽを向きながら手を差し出し、翼も手を出して、零も二人もお互いに手を握った。

 

 すると、四人がいる場所に影が差し込み、手を離して上空を見ると、更に巨大なノイズが飛行していた。

 

 「親玉をやらないと、キリがない」

 

 「だったら、アタシに考えがある。アタシでなきゃ出来ない事だ。イチイバルの特性は、長射程高位置攻撃。光線やらなんやら出せるやつでも距離が長いと威力が落ちるらしいが、アタシのはそんなの関係ない。派手にぶっぱなしてやる!」

 

 「まさか、絶唱を…!」

 

 「バーカ。アタシの命は安物じゃねえ」

 

 「ならば、どうやって」

 

 「ギアの出力を引き上げつつも放出を抑える。行き場の無くなったエネルギーを臨界まで溜め込み、一気に解き放ってやる」

 

 「だがチャージ中は丸裸も同然。これだけの数を相手にする状況では、危険すぎる」

 

 「そうですね。だけど、私達がクリスちゃんを守れば良いだけの事!」

 

 「…!」

 

 そう言われてクリスはハッとした。アタシは一人なんかじゃなかった。

 

 〔繋いだ手だけが紡ぐもの Vo.雪音クリス〕

 

 そして、零、響、翼の三人は周りのノイズの処理に回った。

 

 (頼まれてもいない事を…アタシも引き下がれねえじゃねえか)

 

 クリスはニヤリと笑い、エネルギーチャージを始めた。

 

 (誰も、繋ぎ繋がる手を持っている。私の戦いは、誰かと手を繋ぐこと!)

 

 響はノイズを拳や脚で砕いていく。

 

 砕いて壊すも、束ねて使うも力。立花らしいアームドギアだ!)

 

 翼も剣でノイズを切り裂いていく。

 

 (この世界に来てよかった。この子達と関われてよかった。この子達は本当に優しい…!)

 

 零もパンチレーザーとエメリウム光線の合わせ技でノイズ達を倒していく。

 

 「「「今だ!」」」

 

 そして、エネルギーが溜まったクリスはそのエネルギーを巨大なミサイルとガトリングに変えて発射する〔MEGA DETH QUARTET〕を放ち、発射されたミサイルからさらに無数のミサイルが飛び立ち、辺りのノイズと全ての大型のノイズを仕留めた。

 

 「やった…のか?」

 

 「あったりめーだ!」

 

 ノイズだった炭はまるで紙吹雪の様に上空を舞い、戦いが終わったことを報せているかのようだった。

 

 「やったやったー!」

 

 そう言って響はクリスに抱きつき、翼と零も二人に合流した。

 

 「やめろバカ!何しやがるんだ!」

 

 そう言いながらクリスは響を無理やり引き剥がし、四人とも一斉に元の姿に戻った。

 

 「勝てたのはクリスちゃんのお陰だよー!」

 

 そう言って響はもう一度クリスに抱きついた。

 

 「だからやめろと言ってるだろうが!」

 

 そう言ってクリスももう一度響を引き剥がした。

 

 「いいか?お前達の仲間になった覚えはない!アタシはただ、フィーネと決着をつけて、やっと見つけた本当の夢を果たしたいだけだ!」

 

 「夢?クリスちゃんの?どんな夢ー!?聞かせて聞かせてー!」

 

 もう一度響はクリスに抱きつき、クリスももう一度響を引き剥がした。

 

 「うるさいバカ!お前本当のバカ!」

 

 すると、響の携帯が鳴り、電話に出た。

 

 「あ。はい」

 

 「響!?学校が…!リディアンがノイズに襲わ」

 

 それを最後に未来からの電話は途絶えた。

 

 「…!」

 

 響の携帯からは、虚しく通話終了のツーツーと言う音だけが鳴り響いていた。




今回はここまでです!

ぜひぜひ今回も面白かったら高評価と感想をよろしくお願いします!

私事ではありますが、こじっぷ!チャンネルにてYouTubeデビューしましたので、よければそちらも見ていただければと思います。

あとタイガくん達ウルトラ念力使うとこなかったね


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天まで届け

初っ端から絶望なのよね

でもそれが案外好きになってる自分がいる


奏者達がノイズと戦っていた頃、別の巨大なノイズ達がリディアン学園を襲っていた。

 

 戦車も銃も通用することはなく、己が無力な事を知らされるように次々と命が奪われていく。

 

 そしてその頃、学校に一人残った未来は生徒達の避難を手伝っていた。

 

 「落ち着いて!シェルターに避難してください!」

 

 何十人もの生徒達が未来の指示に従い、身体をこわばらせながらもゆっくりと進んでいった。

 

 「ヒナ!」

 

 「皆!」

 

 未来を呼んだのは、いつも一緒にいる三人だった。無事に逃げてこれたらしく、傷はなかった。

 

 「どうなってるの?学校壊されるなんてアニメじゃないんだからさ〜」

 

 「皆も早く避難を」

 

 「小日向さんも一緒に…」

 

 「先に行ってて。私、他に人がいないか見てくる!」

 

 「ヒナ!」

 

 「君達!」

 

 未来が駆け出して言ったのと同時に、一人の自衛隊員が三人の元に駆けつけた。

 

 「急いでシェルターに向かってください!校舎内にもノイズが―――」

 

 その瞬間、天井からノイズの触手が天井を突き破り、自衛隊員の背中を突き刺そうとした。

 

 「はぁっ!」

 

 自衛隊員の後ろから昴達四人がウルトラ念力を使い、ノイズの動きを止め、大我は自衛隊員を間一髪で助け出した。

 

 「早く逃げるぞ!」

 

 「ありがとうございます!さあ、急ぎましょう!」

 

 「は、はい!」

 

 四人も念力を維持しながら距離を取り、十分離れたところで念力を解除して一斉に駆け出し、それと同時に廊下の天井が崩れてノイズが降り立った。

 

  

 「誰かー!残ってる人はいませんかー?」

 

 未来は残ってる生徒がいないか、走りながら探し回っていた。

 

 すると、地響きが鳴り、外の方を見るとノイズ達が校舎の破壊活動を続けていた。

 

 きっとまだ人を探してるに違いない。まるで子供が玩具箱を漁るように、校舎に引っ付いて隅々まで探しているのだろう。

 

 「学校が…響の帰ってくるところが…」

 

 すると、三体の小型ノイズが窓を突き破り、壁に張り付くや否や未来の方を向いた。

 

 「ひっ…!」

 

 「はぁっ!!」

 

 ノイズが飛び出してきた瞬間、大我達が割って入り、四人の力を合わせたバリアを張ってノイズを押しのけた。

 

 「危なかったな嬢ちゃん」

 

 「えっ!?風舞さん達!」

 

 「とにかく説明は後だ。今は走るぞ!」

 

そう言ってタイタスは未来を抱き抱え、四人は人智を超えた速さでエレベーターに駆け込み、急いで下の階へ下がった。

 

 少しだけノイズの腕が入り込んで来たが、エレベーターが下がるにつれて引っ込んでいき、完全に見えなくなったところで五人は安堵の息を漏らした。

 

 「…ふぅ〜、助かった…」

 

 大我は力が抜けたように窓際にもたれかかった。

 

 「正直今までで一番怖かったぜ…旦那が嬢ちゃんを抱き抱えてくれなかったら今頃どうなってたか…」

 

 「とにかく、全員無事で何よりだったぜ…」

 

 ふう、と一息ついて昴は落ち着きを取り戻し、弦十郎に電話を入れた。

 

 

 

 「リディアンの破壊は依然として拡大中。だけど、未来達のおかげで被害は最小限に抑えられてるぜ。それで、これから未来もシェルターに送り届ける」

 

 『分かった、気をつけろよ』

 

 「それよりも…」

 

 昴はもう一度胸を撫で下ろし、自分を落ち着かせるようにして口を開いた。

 

 「カ・ディンギルの正体が分かったぜ」

 

 『何だと!?』

 

 傍にいた大我達も目を丸くしながら昴の方を向いた。

 

 「物証はないが…カ・ディンギルってのはつまり…!」

 

 すると、エレベーターのガラスにヒビが入り、弦十郎の通信機からは未来の悲鳴とエレベーターが壊れる音だけが聞こえていた。

 

 「どうした!」

 

 そして、通信機から砂嵐の様な音がなって通話が切れた。

 

 

 

 「ぐっ…!」

 

 「こうも早く悟られるとは…何がきっかけだ?」

 

 エレベーターの中には以前クリスが纏っていた鎧に似たものを纏った金髪の了子――いや、フィーネが昴の首を締めながら壁に押し付けていた。

 

 「やめろ!昴を離せ!」

 

 「フン…はぁっ!」

 

 フィーネは手をかざし、大我達三人も念力のようなもので壁に押し付けた。

 

 「ぐうう…!」

 

 「さて、聞かせてもらおうか」

 

 フィーネはもう一度昴の方を向き直った。

 

 「塔なんて目立つものを誰にも見られないように建造するには地下に伸ばすしかないからな…そんなもんが行われてるとしたらここ特異災害対策機動部二課…今俺たちが乗ってるこのエレベーターのシャフト…全くと言っていいほど盲点だったぜ…そしてそれが出来たのが…」

 

 「漏洩した情報を逆手に、上手くいなせたと思っていたのだが…」

 

 エレベーターが地下に到着し、四人は解放され、昴はいち早くエレベーターから脱出し、念力を放つもフィーネの動きは止められなかった。

 

 「ネフシュタンの鎧か…!」

 

 「いくらパワーダウンしてるからって言ってもこんなに強いもんなのかよ!?」

 

 フィーネは昴に触手を伸ばし、昴二巻き付けて締め上げ始めた。

 

 「がああああああっ!」

 

 「昴さん!」

 

 「未来…!早く逃げろ…!大我…未来を…」

 

 「未来、今の俺たちじゃどうにも―――」

 

 大我達も倒れ込んでいながらも未来に逃げるように言った。

 

 しかし、未来はフィーネの後ろから渾身のタックルを仕掛けた。

 

 しかし、フィーネの身体は少し動いただけでダメージを受けた様子はなく、フィーネは未来の方に振り向き、昴の身体を放り投げ、未来の顎を人差し指と親指で掴んだ。

 

 「麗しいなぁ、お前達を利用してきた者を守ろうと言うのか?」

 

 「利用…?」

 

 怯えながら未来は聞いた。

 

 「何故二課本部がリディアンの地下にあるのか…聖遺物に関する歌や音楽のデータをお前達被験者から集めていたのだ。その点、風鳴翼と言う偶像は生徒を集めるのによく役立ったよ」

 

 そう言ってフィーネは高笑いしながら司令室に向かおうとした。

 

 「…嘘をついても、本当のことが言えなくても、誰かの命を守るために、自分の命を危険に晒している人がいます!私は…そんな人を…そんな人達を信じてる!」

 

 フィーネはその言葉に苛立ち、舌打ちして未来の頬を平手で打ち、胸ぐらを掴んでもう一度未来の頬を打って胸ぐらから手を離し、未来は力なく倒れ込んだ。

 

 「未来!」

 

 「まるで興が冷める!」

 

 そう言ってフィーネは扉の方に向かい、通信機を取り出した時だった。

 

 その通信機が念力によって破壊され、後ろを向くと大我が一人、平手をかざして立っていた。

 

 「デュランダルの元に行かせるか!」

 

 「やめろ大我!今の俺達がかなう相手じゃねえ!」

 

 「俺は昴みたいに何も気付けなかった…!だから…だから!俺はやれることをやるんだ!」

 

 そう言って大我は父であるタロウと同じように構えた。

 

 「…」

 

 フィーネがため息を静かに吐きながら触手を構えた時だった。

 

 「待ちな。了子」

 

 「?」

 

 すると、天井が割れ、その土砂崩れと一緒に弦十郎が降り立った。

 

 「私をまだその名で呼ぶか…」

 

 「女に手をあげるのは気が引けるが…部下に手を出すなら、お前をぶっ倒す!」

 

 そう言いながら弦十郎は立ち上がり、ファイティングポーズを取った。

 

 「司令…!」

 

 タイタスと風舞の二人もなんとか立ち上がり、昴の身体を肩で支えて大我に近寄りながら弦十郎の方を見た。

 

 「調査部だって無能じゃあない。米国政府の丁寧な道案内でお前の行動にはとっくに気がついていた。後はいぶり出すため、あえてお前の策に乗り、シンフォギア奏者を全員動かして見せたのさ」

 

 「淀に淀をぶつけたか…食えない男だ…だが、この私を止められるとでも――」

 

 「おうとも!一汗かいた後で、話を聞かせてもらおうか!」

 

 そう言って弦十郎は地面を蹴って飛び出し、フィーネはそれに触手を伸ばすも弦十郎はそれをかわし、天井のダクトを掴んでフィーネの方に飛び込んだ。

 

 「はぁぁっ!」

 

 地面にも穴が開くようなパンチをフィーネは避けようとしたが、鎧の一部に当たり、ヒビが入った。

 

 「何!?」

 

 フィーネは距離を取って弦十郎の方を向きながら鎧のヒビを直し、触手を握る手をわなわなと震わせた。

 

 「肉を裂いてくれる!」

 

 フィーネは二本の触手をムチの様に伸ばし、弦十郎はそれを両手で受け止め、フィーネの身体を引っ張った。

 

 「!!」

 

 そして、とてつもない一撃をフィーネの腹部に喰らわせた。

 

 その衝撃でフィーネの身体は吹っ飛び、やがて地面に叩きつけられ、弦十郎は後ろに飛んだフィーネの方を向いた。

 

 「完全聖遺物を退ける…どういう事だ!」

 

 「知らないでか!飯食って映画見て寝る!男の鍛錬はそいつで充分よ!」

 

 「なれば人の身である限りは!」

 

 そう言ってフィーネはノイズを呼び出そうとした。

 

 「そうはさせるか!」

 

 弦十郎は地面を強く踏んで瓦礫を舞い上がらせ、床の欠片を蹴ってフィーネの杖を弾いた。

 

 杖は天井に刺さり、悔しそうな顔をしているフィーネに弦十郎は間合いを詰めるように飛び込んだ。

 

 「ノイズさえ出てこないのなら!」

 

 弦十郎が次の一撃を喰らわそうとした時だった。

 

 「弦十郎くん!」

 

 了子の声に一瞬弦十郎の動きが止まり、フィーネはその隙をついて弦十郎の身体に触手を突き刺し、そこから鮮血が飛び出した。 

 

 「司令!」

 

 「…!」

 

 未来の悲鳴と共に、地面に横たわった弦十郎の口と背中から大量の血が溢れ出した。

 

 「抗うも、覆せないのが運命なのだ…」

 

 フィーネは弦十郎の服から血の付いた通信機を抜き取り、触手で杖を回収した。

 

 「殺しはしない。お前達にその様な救済など施すものか」

 

 そしてついに、フィーネに最深部への侵入を許してしまった。

 

 「司令!司令!」

 

 大我達は弦十郎に駆け寄った。

 

 

 

 フィーネはデュランダルがある部屋でキーボードを操作し始めた。

 

 「目覚めよ、天を突く魔塔。彼方から此方へ現れ出よ」

 

 その言葉に呼応するかのようにデュランダルもオーラを放ち始めた。

 

 

 

 

 司令室では、響達四人がノイズを殲滅している映像がそれぞれのモニターに映っていた。

 

 司令室のドアが開き、大我と未来が弦十郎を支えながら入って来た。

 

 「…司令!」

 

 「応急処置を頼む!」

 

 女性職員は司令をベンチに寝かせ、腹部に包帯を巻いた。

 

 そして、大我は司令室のPCを操作し始めた。

 

 「本部内に侵入者だ!狙いはデュランダル、敵の正体は櫻井了子…!」

 

 「…!」

 

 「そんな…!」

 

 「未来、響達に回線を繋いだ。早く知らせてあげてくれ」

 

 未来は頷き、口を開いた。

 

 「響!学校が…リディアンがノイズに襲われてるの!」

 

 そういった途端照明が切れた。

 

 「何だ!?」

 

 「本部内からのハッキングです!」

 

 「こちらからの操作を受け付けません!」

 

 やがて、そのモニターは砂嵐に染まった。

 

 「こんなこと、了子さんしか…」

 

 中央の巨大なモニターにも何も見えなくなってしまった。

 

 「響…」

 

 

 しばらくして、弦十郎が目を覚ました。

 

 「司令!」

 

 「…状況は…」

 

 「…本部機能のほとんどが制御を受け付けません…地上及び地下施設内も様子不明です」

 

 「…そうか…」

 

 

 

 月が赤く染まる夜の中、奏者達四人はほぼ壊れかけの校舎の前にたどり着いた。

 

 「…」

 

 「未来…」

 

 「昴さん…皆…」

 

 「未来ー!皆ー!」

 

 響は学校に向かって呼びかけてみたが返事は無く、膝から倒れ込んだ。

 

 「…!」

 

 「リディアンが…!櫻井女史!」

 

 校舎の上には、血が付いたシャツを着た了子が立っていた。

 

 「フィーネ!お前の仕業か!」

 

 それを聞くと了子は、いや、フィーネは高笑いし始めた。

 

 「そうなのか…!その笑いが答えなのか櫻井女史!」

 

 「アイツこそ、アタシが決着をつけなきゃいけないクソッタレ!フィーネだ!」

 

 「あの野郎が…!」

 

 了子はメガネを取り、髪を縛っていたリボンを解いて青いオーラを放ち、フィーネへと変わった。

 

 「嘘…」

 

 「この野郎よくも…!よくも皆を!」

 

 

 

 「防衛大臣の殺害手引きと、デュランダルの強権の強奪…そして、本部にカモフラージュされて建造されたカ・ディンギル…俺達は全て櫻井了子の手のひらの上で踊らされていたのか…」

 

 昴達と未来、弦十郎、職員二人の計八人は懐中電灯をつけて暗い廊下の中を歩いていた。

 

 「イチイバルの紛失も入れて、疑わしい暗躍は山ほどありそうだな…」

 

 「それでも、同じし時間を過ごしてきたんだ…その全てが嘘だったとは俺には…」

 

 それを聞いて大我はなんとも言えない笑みを零した。

 

 「甘いのは分かっている…性分だ…」

 

 

 

 「嘘ですよね…そんなの嘘ですよね!だって了子さん、私を守ってくれました!」

 

 響が不安そうな笑みを浮かべながらフィーネに語りかける。

 

 「あれはデュランダルを守っただけの事…希少な完全状態の聖遺物だからね」

 

 「嘘ですよ〜。了子さんがフィーネと言うのなら、じゃあ、本当の了子さんは?」

 

 「櫻井了子の肉体は、先立って食い尽くされた…いや、意識は九年ほど前に死んだと言っていい。超先史文明期の巫女、フィーネは己が意識を刻印し、自身の血を引くものがアウフバヘン覇権に接触した際、その身にフィーネとしての記憶、能力が再起動する仕組みを施していた。九年前、風鳴翼が偶然引き起こした天羽々斬の覚醒は、同時に実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る意識を目覚めさせた。その目覚めし意識こそが、私なのだ」

 

 「あなたが、了子さんを塗りつぶして…」

 

 「まるで、過去から蘇る亡霊…!」

 

 「フッフッフ、フィーネとして覚醒したのは私一人ではない。歴史に記される偉人、英雄、世界中に散った私達は、パラダイムシフトと呼ばれる技術の大きな転換期にいつも立ち会ってきた」

 

 「…そうか、シンフォギアシステムも…!」

 

 「その様な玩具、為政者からコストを噴出する必需品にすぎない」

 

 「…お前の小さな戯れに、奏は命を散らせたのか!」

 

 「アタシを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたのも!そいつが理由かよ!」

 

 「そう!全てはカ・ディンギルのため!」

 

 すると、地震が起こり始めた。

 

 「なんだ!?」

 

 

 

 シェルター内でも当然その被害は出ており、響と未来の友達も机の下に身を潜めていた。

 

 「このままじゃあたし達も死んじゃうよ…もうやだよぉ…!」

 

 極限の恐怖の中では誰も耐えられるはずがなく、弱音だって吐いてしまう。

 

 やがて、二課の建物はカ・ディンギルへと姿を変え始めた。

 

 「あ…ああ…」

 

 地下からとてつもない高さの塔、カ・ディンギルがせり上がり、文字通り天を突く様に立っていた。

 

 「これこそが、地より出立し、天にも届く一撃を放つ、荷電粒子砲…カ・ディンギル!」

 

 フィーネは恍惚な表情を浮かべて言った。

 

 「カ・ディンギル…!こいつでバラバラになった世界が一つになると!?」

 

 「ああ。今宵の月を穿つ事によってな」

 

 「月を!?」

 

 「穿つと言ったのか!?」

 

 「何でさ!」

 

 「…私はただ、あのお方と並びたかった…その為に、あのお方へ届く塔、シーアルの野に建てようとした…だがあのお方は、人の身が神に至る事を赦しはしなかった…あのお方の怒りを買い、雷霆に塔が砕かれたばかりか、人類は交わす言葉まで砕かれる…果てしなき罰…バラルの呪詛を掛けられてしまったのだ…!月が何故古来より永遠の象徴と伝えられてきたか…それは!月こそがバラルの呪詛の源だからだ!人類の相互理解を妨げるこの呪いを!月を破壊することで取ってくれる!そして再び、世界を一つに束ねる!」

 

 そう言ってフィーネが拳を握ると、塔にエネルギーが充填され始めた。

 

 「呪いを解く…?それは、お前が世界を支配するって事なのか!?安い!安さが爆発し過ぎてる!」

 

 

 「永世を生きる私が余人に歩みを止められる事などありえない」

 

 四人はフィーネとカ・ディンギルを止めるため、シンフォギアを纏い、零はゾフィー、タロウ、メビウスの力を纏った。

 

[魔弓・イチイバル Vo.雪音クリス]

 

 「最大火力じゃオラァァァ!!!」

 

 クリスがボウガンで矢を放ち、フィーネがかわして着地したところに零はバーチカルギロチンを放ち、それも避けた先に響達が飛び込んでいた。

 

 

 

 そして、未来達も友達と無事に合流した。

 

 「小日向さん!」

 

 「良かった!皆良かった…!」

 

 大我はノートパソコンをコンセントに繋ぎ、パソコンは無事に起動出来た。

 

 「良かった!まだこっちの電力は生きてる!」

 

 「俺と旦那は他を調べてくる!」

 

 「任せたぜ!」

 

 「ヒナ、この人達は…?」

 

 「あのね…」

 

 「我らは特異災害対策機動部…一連の事態の収束に当たっている」

 

 椅子に座った弦十郎が簡単に説明した。

 

 「それって、政府の…」

 

 「モニター再接続完了!こっちから操作出来そうだ!」

 

 そのモニターには、響達が映っていた。

 

 「…!響!」

 

 「え?」

 

 友達は未来の方を見て目を丸くした。

 

 「それに、あの時のクリスも…」

 

 「…これが…」

 

 「了子さん…?」

 

 「どうなってんの…?こんなのまるで、アニメじゃない…!」

 

 「ヒナは、ビッキーの事知ってたの?」

 

 「…」

 

 「前に、ヒナとビッキーが喧嘩したのって…そっか、これに関係する事なのね」

 

 「ごめん…」

 

 

 クリスは[ MEGA DEATH PARTY]を使用してミサイルを放つも全て触手で薙ぎ払われ、クリスは三人の方を向いて頷き、三人もそれに頷いて、煙の中から響と翼が飛び出し、響がフィーネに接近戦を仕掛けた。

 

 響の攻撃は避けられてしまうが、響は翼にバトンを渡すように飛び上がり、そして翼はフィーネに急接近して斬りかかり、フィーネもそれに応戦するようにムチで受け止めた。

 

 翼の剣がムチに絡め取られて宙に投げ出されてしまったもののすぐさま身体の上下を入れ替えてコマの様に回りながらフィーネの攻撃を捌き、フィーネが翼に気を取られている隙に響が強烈な一撃を喰らわせて吹き飛ばした。

 

 「!!」

 

 「おめぇはこっちだ!」

 

 クリスは巨大な二本のミサイルを発射し、フィーネはそれを避けるように飛び上がるも、一本のミサイルは追尾を始め、やがてフィーネはそれを斬り裂き、空中で爆発させた。

 

 「もう一発は!」

 

 「よそ見するんじゃねえ!受けてみろ!全身全霊!フルチャージストリウム!光ゥゥゥ線ッ!!!!」

 

 零はカラータイマーを高速で点滅させ、シンフォギアから煙を上げながらも両腕にエネルギーを限界まで貯め、腕をT字に組んでストリウム光線を放った。

 

 「ぐうううう…!」

 

 「はああああああ…!!!」

 

 フィーネはその光線を受け止め、零とフィーネの根性比べになるかと思われたが、フィーネはその光線を横に受け流し、塔に当てたものの、塔はビクともしなかった。

 

 「ここ…まで…か」

 

 零のシンフォギアのカラータイマーはついに光を失い、無色のシンフォギアに戻り、やがて零は力尽きてその場に倒れた。

 

 「零さん!」

 

 「おのれ!!」

 

 もう一発のミサイルにはクリスが乗り込んでいた。

 

 「クリスちゃん!?」

 

 「何のつもりだ!」

 

 「足掻いたところで所詮は玩具!カ・ディンギルの発射を止めることなど…!」

 

 すると、クリスは歌を歌い始めた。命を掛けて全てを終わらすために。

 

 「あの歌…まさか!」

 

 「絶唱…!?」

 

 クリスはカ・ディンギルの行く手を阻むように宇宙へと飛び立ち、自分の全てのエネルギーを集め、荷電粒子砲が撃たれるのと同時にクリスも同様にエネルギーを集めてカ・ディンギルの光線と自分の光線をぶつけた。

 

 「一点収束!押しとどめているだとォッ!?」

 

 しかし、ついにクリスにも限界が訪れた。

 

 クリスのギアにもヒビが入り、クリス自身の身体もほぼ崩壊し、クリスは荷電粒子砲に飲み込まれた。

 

 三人はその行方をただ見守っていた。

 

 「…し損ねた!?わずかに逸らされたと言うのか!?」

 

 クリスの身体は光の跡を紡ぎながら、流星のように儚く堕ちた。

 

 その命は美しく、そして儚く―――

 

 響の声にならない悲鳴が辺りに響き渡った。




今回はここまでです!

次回、果たしてどうなるのやら…

乞うご期待!


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命の歌

無印シンフォギア最終回まで一気にいきます!!!

次回からは番外編というか、Gまでの間の話になります


クリスの絶唱により、なんとか月を破壊することは阻止したものの、奏者の内半分が満身創痍だった。

 

 「クリス…!ちくしょうッ!」

 

 大我は悔しさと怒りを込めながら机を殴った。

 

 響の嗚咽を漏らしながら膝をついた。

 

 「そんな…せっかく仲良くなれたのに…こんなのないよ…ウソだよ…」

 

 「…」

 

 「もっと、沢山話したかった…でないと、もっと喧嘩することももっと仲良くすることも出来ないんだよ…ッ!」

 

 響の目から溢れた涙が地面に流れ落ちていく。

 

 「クリスちゃん…夢があるっていったもん…あたしクリスちゃんの夢を聞けてないまま…」

 

 「自分を殺して月への直撃を阻止したか…ハッ、無駄なことを…見た夢も叶えられないとは、とんだ愚図だな」

 

 怒りと悲しさ、そして悔しさの感情がぐちゃぐちゃに混ざるように響の身体は黒く染っていく。

 

 「…笑ったか…命を燃やして、大切なものを守り抜く事を…!お前は無駄とせせら笑ったか!」

 

 翼はその怒りのままに矛先をフィーネに向けた。

 

 「それガ…!」

 

 「!」

 

 「夢ヲ持ッタ奴ノ命ヲ握リツブした奴ノ言ウ事カぁァぁァ!!」

 

 響はの体は黒く染まり、目も赤く光って口からは牙が生えていた。

 

 それを見てフィーネは侮辱するように鼻で笑った。

 

 

 

 「響…」

 

 「あれ、本当にビッキーなの…?」

 

 地下のシェルター内では大我達や未来がその状況を見守っていた。

 

 

 

 響は獣の様な唸り声をあげながらフィーネを睨んでいた。その周りは炎が燃えている様に空間が揺れていた。

 

 「立花…!立花ァ!」

 

 「融合したガングニールの欠片が暴走しているのだ…制御出来ない力にやがて意識が塗り固められていく」

 

 翼は響の身体に起こっている事の説明を思い出していた。響の驚異的なエネルギーや回復力は体組織と融合しかけているガングニールのせいにあると言った事である。

 

 「…!まさかお前、立花を使って実験を…!?」

 

 「実験を行っていたのは立花だけではない。見てみたいとは思わんか?ガングニールに翻弄されて、人としての威厳が損なわれていく様を…」

 

 「…!!お前はそのつもりで立花を!」

 

 響は地面を蹴り出し、獲物を狩るライオンの様にフィーネに攻撃を繰り出した。

 

 「立花!」

 

 フィーネはそれを触手で受け止め、追撃を喰らわせようとする響を触手で薙ぎ払った。

 

 「立花ァ!」

 

 「もはや、人に在らず…もはや人の形をした破壊衝動…」

 

 フィーネの言う通り、響は二本足で立つことも忘れ、四本足で地面に立っていた。

 

 響はもう一度フィーネに襲いかかるも、フィーネは触手を無数にクロスさせて障壁を作る[ASSARD]を使用して響の攻撃を防いだ。

 

 響の身体に電流が走り、苦しみながらもその怒りが勝ったのか、その拳はフィーネの障壁を破壊した。

 

 とてつもない破壊音と共に煙が巻き上がり、煙が晴れると、そこには腹部から上が裂かれたフィーネが立っていた。しかし、フィーネはまだ何ともないようで、見下すように笑った。

 

 「…!」

 

 「はァ…ハぁ…!」

 

 着地した響は肩で息をしながらフィーネの方だけを見ていた。

 

 「もうよせ立花!これ以上は聖遺物との融合を促進させるばかりだ!」

 

 その声に気付いた響が狙いを変えるように翼の方をゆっくりと向いた。

 

 敵味方の区別も出来なくなっているのだろう、ついに響は翼に襲いかかった。

 

 襲ってきた響を翼は剣で弾き返すも、響は間髪入れずに翼に襲いかかる。

 

 「立花ァァ!」

 

 

 

 「どうしちゃったの響!元に戻って!」

 

 未来の叫びは響には届かない…。

 

 「もう終わりだよ…アタシ達…学院がめちゃめちゃになって、響もおかしくなって…」

 

 「終わりじゃない!響だって、私達を守るために――」

 

 「あれが私達を守る姿なの!?」

 

 その目には涙が浮かび、モニターには真っ黒な響が映っていた。

 

 モニター内の響は獣のように唸り声をあげる。

 

 「…」

 

 「私は響を信じる」

 

 そう言う未来の目にはまだ諦めの文字は出ていなかった。

 

 「…私だって響を信じたいよ…この状況をなんとかなるって信じたい…でも…でも…!」

 

 恐怖の限界でついに膝が着く。

 

 「板場さん…」

 

 「もう嫌だよ…誰か何とかしてよぉっ!やだよ…死にたくないよぉっ!助けてよぉぉ!響ぃ!」

 

 その悲しみの叫びも響には届いていないのだろう、響は翼への攻撃を続けており、翼の天羽々斬も段々損傷が激しくなっていた。

 

 「…ハッハッハっ、どうだ?立花響と刃を交えた感想は?お前の望みであったなぁ」

 

 そういいながらフィーネは身体を再生していく。

 

 「くッ…!人の在り方すら捨て去ったか…!」

 

 「私と一つになったネフシュタンの再生能力だ。面白かろう?」

 

 そして、カ・ディンギルは二度目のチャージを始めた。

 

 「まさか…!」

 

 「そう驚くな。カ・ディンギルが如何に最強最大の兵器だとしても、ただの一撃で終わってしまうのであれば兵器としては欠陥品。必要がある限り何発でも撃ち放てる。その為にエネルギー炉に不滅の刃、デュランダルを取り付けてある…!これは尽きることの無い無限の心臓なのだ…」

 

 「…だが、お前を倒せばカ・ディンギルを動かすものはいなくなる」

 

 そう言って翼はもう一度矛先をフィーネに向けた。

 

 しかし、その前には響が立ちはだかる。

 

 「立花…」

 

 翼は数秒目を瞑り、もう一度響の方を優しく見つめた。

 

 「立花…。立花、私はカ・ディンギルを止める。だから…」

 

 響は何かを感じたのだろうか、翼に襲いかかった。

 

 翼は剣を地面に刺し、響の爪が翼の腹部を貫いた。

 

 辺りに鮮血と欠片が飛び散りながらも、翼はその身体を抱き寄せた。

 

 「これは、束ねて繋げるはずの力だろう?」

 

 翼は響の血に濡れた手を繋ぎながら[影縫い]を発動し、響の動きを止めた。

 

 「立花、奏から受け継いだ力をそんな風に使わないでくれ…」

 

 その翼の声は誰よりも優しかった。

 

 響の目からは、人間らしい、綺麗な涙が流れた。

 

 口と胸から血が流れながらも翼は単身フィーネに向かっていった。

 

 「待たせたな」

 

 「どこまでも剣と往くのか…」

 

 「今日、折れて死んでも、明日に人として歌うために!風鳴翼が歌うのは、戦場ばかりでないと知れ!」

 

 「人の世界が剣を受け入れることなど、在りはしない!」

 

 [絶刀・天羽々斬 Vo.風鳴翼]

 

 フィーネの攻撃をかわし、上空から[蒼ノ一閃]を放つ。しかし触手に砕かれてしまい、着地したところを狙われるもその攻撃を掻い潜り、フィーネの懐に入って巨大な剣で斬撃を浴びせ、フィーネの身体をカ・ディンギルに叩きつけた。

 

 そして、剣を投げつけて空中で変形させ、空中で蹴りつける[天ノ逆鱗]を放った。

 

 フィーネは三重もの障壁を作り、翼の攻撃を受け止めようとした。

 

 翼は足元の巨大な剣を逸らして地面に刺すようにして立たせ、二つの剣に炎を纏わせて斬りつける[炎鳥極羽斬]を発動し、カ・ディンギルに向かった。

 

 「初めから狙いはカ・ディンギルか!」

 

 なんとか逃げようとしたものの、触手に追いつかれてしまい、その攻撃を食らって炎も消えてしまった。

 

 (やはり私では…!)

 

 「何弱気なこと言ってんだ」

 

 すると、どこからか奏の声が聞こえた。

 

 (奏…!?)

 

 気がつくと、目の前には奏がいた。

 

 「翼、わたしとアンタ、ツヴァイウィングならどこへでも遠くへ飛んで行ける」

 

 そう言って奏は翼を引っ張った。

 

 (そう、両翼揃ったツヴァイウィングなら…!)

 

 翼は落ちる寸前にもう一度剣に炎を纏わせ、カ・ディンギルに向かって飛んだ。

 

 (どんなものでも超えてみせる!)

 

 フィーネの触手の攻撃をものともせず、翼は青い不死鳥のオーラを纏いながら飛び出した。

 

 「立花ァァァ!」

 

 その決死の特攻がついに決まったのだろう、カ・ディンギルは光を放ちながらついに砕かれた。二つ目の羽が犠牲になりながら。

 

 「私の想いはまたも…!」

 

 響の影を縫っていた刀は風に晒されて風化して粉微塵へと変わった。

 

 響の変身は解かれ、普通の人間へと戻った。

 

 「翼さん…」

 

 絶望のあまり、響は力なく膝をついた。

 

 「…天羽々斬…!反応途絶…」

 

 そう言う大我の目からは涙が溢れていた。

 

 「身命を賭してカ・ディンギルを破壊したか翼…!お前の歌、世界に届いたぞ…!世界を守りきったぞ…!」

 

 そう言う弦十郎の拳はわなわなと震えていた。

 

 「わかんないよ…!どうして皆戦うの!?痛い思いして!どうして!?死ぬために戦ってるの!?」

 

 「分からないの!?」

 

 「え!?」

 

 未来の目からも涙が静かに流れていた。

 

 未来は板場の肩を掴んでじっと板場を見つめた。

 

 「分からないの…?」

 

 「…!?…!」

 

 板場の叫びがこだました。

 

 

 

 「ええい!どこまでも忌々しい!月の破壊は、バラルの呪詛を解くと同時に、重力崩壊を引き起こす!惑星規模の天変地異に人類は恐怖し、狼狽え、そして聖遺物の力を持つ私の元に帰順するはずであった!」

 

 そう言いながらフィーネは響の元へ駆け寄った。

 

 「痛みだけが!人の心を繋ぐ絆!たった一つの真実なのに!それを…!それをお前は!お前らは!」

 

 そう言いながら戦意喪失の響を蹴りあげ、響の頭を掴んだ。

 

 「まあ、それでもお前は役に立ったよ。生体と聖遺物の初の融合症例。お前と言う生命が居たからこそ、私は己が身をネフシュタンと融合させる事が出来たのだからな。あの零とか言うガキでも良かったが…アイツは如何せん人類の常識範疇に収まっていないが故に確証が持てなかった」

 

 そう言ってフィーネは響の身体を投げつけた。

 

 「翼さん…クリスちゃん…零さん…三人とももういない…学校も壊れて…皆いなくなって…私…私は何のために…何のために戦ったの…皆…」

 

 

 様子を見守っている大我達の元にタイタスと風舞達が生存者達を連れて帰ってきた。

 

 「司令、周辺区画のシェルターにて、生存者達を発見しました」

 

 「そうか!良かった!」

 

 その中には以前響が助けた女の子もいた。

 

 「あっ!お母さん、あの時のお姉ちゃんだ!」

 

 「あっ!ちょっと!待ちなさい!」

 

 女の子はモニターの元に駆け寄って覗き込んだ。

 

 「すいません…」

 

 「ビッキーの事、知ってるんですか?」

 

 「え?…詳しくは言えませんが、ウチの子はあの子に助けて貰ったんです」

 

 「え…」

 

 「自分の危険を顧みず、助けてくれたんです。他にもそう言う人達が…」

 

 「響の…人助け…」

 

 「ねえ、かっこいいお姉ちゃん助けれないの?」

 

 心配そうな顔をして女の子が未来達の方を見る。

 

 「…助けようと思っても、どうしようも無いんです。私達には何も出来ないですし…」

 

 「じゃあ一緒に応援しよう!ねえ、ここから話しかけられないの?」

 

 女の子は大我の方を見て言った。

 

 「…それが、出来ないんだ…」

 

 「…!応援…!ここから響に、私達の声を、無事を知らせるにはどうしたらいいんですか?響を助けたいんです!」

 

 「助ける?」

 

 「学校の施設がまだ生きてるなら…リンクして声を送れるかもしれない!」

 

 それを聞いて未来は安心したように笑い、意を決した。

 

 

 「もうずっと遠い昔、あのお方に仕える巫女であった私は、いつしかあの方を…創造主を愛するようになっていた…」

 

 辺りが明るくなり始め、山の方からは白い光が見えていた。

 

 「だが、この胸の内を告げることは出来なかった…その前に私から…人類から言葉が奪われた…!バラルの呪詛によって、唯一創造主と語り合える統一言語が奪われたのだ!私は数千年に渡り、たった一人、バラルの呪詛を解き放つため、抗ってきた…」

 

 響は光のない目をフィーネに向けた。

 

 「いつの日か、統一言語にて胸の内を届けるために…」

 

 「胸の…想い…?だからって…」

 

 「正義を問うだと!?恋心を知らぬお前が!」

 

 そう叫んでフィーネはもう一度響の頭部を掴んで地面に叩きつけた。

 

 

 

 「この向こうに切り替えレバーが?」

 

 「こっから動力を送れれば、再起動が出来るかもしれねぇ」

 

 未来達四人と風舞、タイタスの六人は電源がある場所に来ていた。

 

 「でも、タイタスさんや風舞さんでは…」

 

 「…!」

 

 「…」

 

 「アタシが行くよ!」

 

 「弓美!」

 

 声を上げたのは板場弓美だった。

 

 「大人じゃ無理でも、アタシならそこから入っていける!アニメだったらさ、身体のちっこいキャラの役割だしね。それで響を助けられるなら!」

 

 「でもそれはアニメの話じゃない!」

 

 「アニメを真に受けて何が悪い!ここでやらなきゃ、アタシアニメ以下だよ!実在性証明にもなりやしない!この先、響の友達と胸を張って答えれないじゃない!」

 

 「…!」

 

 それを聞いて未来は驚きながらも嬉しそうな表情を浮かべた。

 

 「ナイス決断です。私もお手伝いしますわ」

 

 「だね。ビッキーが頑張ってるのに、その友達が頑張らない理由はないよね」

 

 「みんな…!」

 

 「あの嬢ちゃんも、いい友達を持ったな」

 

 「うむ。美しい友情だ」

 

 そう言って二人も微笑んだ。

 

 そして、四人は中へと入り、未来達三人に由美が乗り、レバーに手を伸ばしていた。

 

 「せぇーのッ!」

 

 由美がジャンプしてレバーを上げ、それと同時に電力が回復した。

 

 「来ました!動力学校施設に接続!」

 

 「学校のスピーカーも行けるぜ!」

 

 「やったー!」

 

 皆の顔にだんだん笑顔が戻って行った。

 

 「…後は応援だけだな…!」

 

 「ゼ…昴!目を覚ましたか!」

 

 「ああ、心配かけた」

 

 

 

 「シンフォギアシステム最大の問題は、絶唱使用時のバックファイア。融合体であるお前が絶唱を放った場合、どこまで負荷を抑えられるのか…研究者として興味深いところではあるが…もはやお前で実験してみようとは思わぬ。この身も同じ融合体だからな…新霊長は私一人が居れば良い。私に並ぶ物は全て絶やしてくれる」

 

 そう言ってフィーネが触手を伸ばした時だった。

 

 校庭のスピーカーから歌が聞こえ始めた。

 

 「耳障りな!何が聞こえている?」

 

 「…!」

 

 (響、私達は無事だよ。帰ってくるのを待っている。だから、負けないで!)

 

 すると、辺りから光が生まれ、浮かんでいた。

 

 「どこから聞こえてくる…不快な、歌!…歌、だと!?」

 

 「聴こえる…皆の声が…」

 

 壊れたカ・ディンギルの間から太陽の光が差し込み、零のシンフォギアのカラータイマーにも青い光が灯り始めていた。

 

 「良かった…私を支えてくれている皆がいつだって側に…!皆が歌ってるんだ…!だから、まだ歌える…!頑張れる!戦える!」

 

 響の身体に光が灯り、シンフォギアを装着し始めた。

 

 「なっ!?」

 

 響は身体を起こし、フィーネの方を見た。

 

 「まだ戦えるだと!?何を支えに立ち上がる!何を握って力と変える!鳴り渡る不快な歌の仕業か…?嘘だ、お前が纏っている物はなんだ…?心は確かに折砕いたはず…!なのに…何を纏っている!?それは私が作ったものか!?お前が纏うそれは一体なんだ!?なんなのだ…!?」

 

 [君だけを守りたい 歌唱:つるの剛士 出典:ウルトラマンサーガ]

 

 カ・ディンギルの中から青い光の柱が一つ、森の中から赤い光の柱が一つ、そして瓦礫の山の上から赤い光の柱と青い光の柱が一つずつ立ち、明るく青い空の中に四人の奏者が飛び立った。

 

 「シンフォギアァァァァァー!!!」

 

 響達の背中から光の翼が生まれた。

 

 「お姉ちゃん達かっこいい!」

 

 「やっぱアタシらがついてないとダメだな!」

 

 「助け助けられてこそ、ナイスです!」

 

 「アタシら、一緒に戦ってるんだ!」

 

 「うん…!」

 

 

 

 「皆の歌声がくれたギアが、私に負けない力をくれる。クリスちゃんや翼さん、零さんに、もう一度立ち上がる力をくれる。歌は、戦う力だけじゃない。命なんだ!」

 

 青い翼を生やした翼と赤い翼を生やしたクリス、そして白い翼を生やした零は上空でフィーネを見ていた。

 

 「高レベルのフォニックゲイン…こいつは二年前に――」

 

 「んなこたどうでもいいんだよ!」

 

 「迷惑までも…限定解除されたギアを纏ってすっかリ回復か!」

 

 そう言ってフィーネは杖でノイズを召喚した。

 

 「いい加減芸が乏しいんだよ!」

 

 「世界に尽きるノイズの災禍は、全てお前の仕業なのか!」

 

 「ノイズとは、バラルの呪詛にて相互理解を失った人類が、同じ人類を殺戮するために作りあげた自立兵器…」

 

 「人が、人を殺すために…!?」

 

 「バビロニアの宝物庫は扉は開け放たれたままでな。そこからまろび出ずる十年一度の偶然を私は必然と変え、純粋に力へと使役しているだけの事」

 

 「またワケわかんねぇ事を!」

 

 そしてノイズが飛び出そうとした途端、零はアイスラッガーで全て切り裂きながら他の奏者とフィーネに迫った。

 

 フィーネの号令で今までにない量のノイズが召喚され、街も空も覆い尽くしていた。

 

 「あっちこっちから…!」

 

 「おっしゃあ!どいつもこいつもまとめてぶちのめしてくれる!」

 

 「一匹足りとも逃がさねぇ!」

 

 そう言ってクリスと零は飛び立ち、ノイズを倒しに行った。

 

 「翼さん、私、翼さんに…」

 

 響は先程の事を思い出していた。

 

 「どうでもいい事だ」

 

 「え…」

 

 「立花は私の呼び掛けに応えてくれた。自分から戻ってくれた。自分の強さに胸を張れ」

 

 「翼さん…!」

 

 「一緒に戦うぞ。立花…!」

 

 「…!はいッ!」

 

 四人の奏者が光の弧を描きながらノイズに向かっていく。

 

 [First Love Song Vo.立花響×風鳴翼×雪音クリス]

 

 そして、奏者達は四手に別れた。

 

 響の一撃は巨大なノイズ二匹を一瞬で打ち砕き、クリスの強化された[MEGA DETH PARTY]で空中のノイズは一匹残らず殲滅された。

 

 「すごい!全弾命中!」

 

 「全部狙い撃ってんだ!」

 

 「だったら私も!乱れ打ちだぁぁ!」

 

 響の連打により、地上のノイズ達は大小問わず次々と殲滅していった。

 

 翼の放つ[蒼ノ一閃]も空中のノイズを貫通して二体撃破した。

 

 『うーん…はっ!れ、零!』

 

 「ウソ!?お前意識あるのか!?」

 

 『何故かは分からないが意識を取り戻したらしい』

 

 「ったく…遅いんだよ!とにかくいくぜ!」

 

 『ああ!』

 

 零は両腕にエネルギーを貯め、腕を十字に組んで光線を発射した。

 

 「『ゼノクロスショット!!』」

 

 光線で一払いすると、それに巻き込まれたノイズ達は次々に爆発して殲滅されていった。

 

 エクスドライブ状態の四人の奏者の攻撃により、あんなにいたノイズ達の姿はほとんど無くなっていた。

 

 「どんだけ出ようが、今更ノイズか」

 

 「…!」

 

 ふとフィーネの方を見ると、フィーネはその杖を自分の体に突き刺そうとしていた。

 

 すると、残っていたノイズがフィーネの身体にまとわりつき始めた。

 

 「なんだ…?」

 

 そしてまた緑の光が放たれたと思うと、そのノイズはフィーネの元に集まって行った。

 

 「ノイズに取り込まれて…」

 

 「そうじゃねぇ…!アイツがノイズを取り込んでんだ!」

 

 すると、巨大なノイズの槍が四人目掛けて伸びて行き、それを四人は咄嗟に避けた。

 

 「来たれ!デュランダル!」

 

 やがてフィーネはデュランダルとも合体し、一体のノイズへと変わり、手始めに街に光線を撃った。

 

 その光線が過ぎ去ったかと思った次の瞬間、街で巨大な爆発が起きた。

 

 「街が!」

 

 「逆さ鱗に触れたのだ…相応の覚悟は出来ておろうな…!」

 

 見ると、ノイズの中心にフィーネがおり、そのネフシュタンの鎧は黒く染っていた。

 

 ノイズから巨大な光線が発射され、何とか避けたものの、その威力は絶大で、周りにいるだけで吹き飛ばされるほどだった。

 

 「こんのォォー!!」

 

 クリスが無数の光線を放つもノイズはシャッターを閉じるように障壁を作り出し、全ての攻撃を無効化して、クリスに撃ち返した。

 

 「ぐはぁっ!」

 

 翼の[蒼ノ一閃]で傷を付けることは出来たものの、すぐに再生されてしまった。

 

 「これならどうだァァ!」

 

 零もM87光線を撃つも身体を貫いただけで、効果は無いようだった。

 

 響も一撃を食らわせるも、やはり再生能力には意味が無いようで、致命的な一撃を与えることが出来なかった。

 

 「いくら限定解除されたギアであっても、所詮は聖遺物の欠片から作られた玩具!完全聖遺物に対抗出来るなどと思うてくれるな!」

 

 「聞いたか!?」

 

 「チャンネルをオフにしろ」

 

 「ああ」

 

 「しかし、その為には…」

 

 三人は響の方を見ていた。

 

 

 地下では凄まじい揺れが起きていた。

 

 「クソっ!奴が純粋な怪獣なら俺達も出ていけるってのに…!」

 

 「響…!」

 

 「ビッキー達、きっと大丈夫だよね」

 

 「…うん!」

 

 未来の目には依然強い光が灯っていた。

 

 

 

 「あ…えっと…やってみます!」

 

 その言葉に三人は頷き、後ろから撃たれた光線をかわして零、翼、クリスの三人はフィーネに向かった。

 

 「私達三人で杖を払う!」

 

 「手加減無しだぜ!」

 

 「分かっている!」

 

 クリスと零はフィーネに突っ込んでいき、翼は巨大な剣に巨大なエネルギーを纏わせ、斬撃を放つ「蒼ノ一閃・滅破」を使用してノイズにダメージを与えた。

 

 そして、段々小さくなって行く穴の中に二人が突入し、零はメタリウム光線で、クリスは大量の光線を放ちノイズの障壁を開けさせた。

 

 その中に翼が先程の攻撃をもう一度打ち込み、フィーネの手からデュランダルを離させた。

 

 「そいつが切り札だ!」

 

 [Synchrogazer 歌唱:水樹奈々]

 

 「!」

 

 「勝機を零すな!掴み取れ!」

 

 落ちそうになるデュランダルに零が大急ぎで向かい、渾身の一蹴りを入れて響に向かって飛ばし、響はそれを掴み取った。

 

 「デュランダルを!!」

 

 デュランダルの影響か、響が再び黒く染まりそうになる。

 

 

 

 それを見ていた未来は出口に向かった。

 

 「これだとまた響が…!」

 

 「未来!どこへ!?」

 

 「地上に出ます!」

 

 「無茶だ!危険すぎるぜ!」

 

 「響は、響のままでいてくれるって、変わらずにいてくれるって…!だから私は、響が闇に飲まれないよう、応援したいんです!」

 

 「…!」

 

 「助けられるだけじゃなく、響の力になるって誓ったんです!」

 

 

 

 響の翼まで黒く染まっていく中、黒く染まらないように響は持ちこたえていた。

 

 すると、地下シェルターから大我達や未来が飛び出した。

 

 「正念場だ!踏ん張りどころだろうが!」

 

 「!…!」

 

 響は堪えながら弦十郎の方を見た。

 

 「強く自分を持つんだ!響!」

 

 「昨日までの自分を!」

 

 「これからなりたい自分を!」

 

 大我、タイタス、風舞が叫ぶ。

 

 「み…んな…!」

 

 「臆するな立花。お前が抱えた胸の覚悟、私に見せてくれ」

 

 「お前に信じ、お前に全部賭けてんだ!お前が自分を信じなくてどうするんだよ!」

 

 「大丈夫!響なら出来る!」

 

 響の側に翼、クリス、零も立っていた。

 

 「あなたのお節介を!」

 

 「あんたの人助けを!」

 

 「今日はあたし達が!」

 

 「やかましィ!黙らせてやる!」

 

 そう言ってフィーネは触手を伸ばした。

 

 零は響の前に出てバリアを張った。

 

 「邪魔はさせん!」

 

 響がついに黒く染まり、デュランダルを振り上げた時だった。

 

 「響ぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 その声はついに響に届いた。

 

 「…!そうだ、今の私は、私だけの力じゃない…!」

 

 「ビッキー!」

 

 「響ー!」

 

 「立花さーん!」

 

 「そうだ…!この衝動に…!塗り潰されてなるものか!」

 

 ついに響に光が戻り、元の響へと戻り、より一層大きな羽根が響の背中から生まれた。

 

 「やった!」

 

 零はバリアを消して光線で牽制し、後ろから響を支え、デュランダルを支えた。

 

 デュランダルの剣は空高く伸び出した。

 

 「その力!何をたまげた!」

 

 「響き合う皆の歌声が!シンフォギアだぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 四人は皆の歌声を力に変えてデュランダルに込めて振り下ろす一撃、[Synchrogazer]を放った。

 

 その一撃はノイズの巨体を切り裂き、フィーネの怒りの断末魔と共にノイズは爆散した。

 

 

 

 日も暮れ、瓦礫の中からフィーネを助け出した響が皆の元に帰ってきた。

 

 「お前…何を馬鹿な事を…」

 

 「このスクリューガールが」

 

 そういうクリスの顔は苦笑いしていた。

 

 「よく言われます。皆からも変わった子だーって」

 

 フィーネは意気消沈しながら岩に腰掛けた。

 

 「もう終わりにしましょう。了子さん」

 

 「…私はフィーネだ…」

 

 「でも、了子さんは了子さんですから」

 

 「…」

 

 「きっと私達、分かり合えます」

 

 「…ノイズを作り出したのは、先史文明期の人間。統一言語を失った我々は、手を繋ぐことよりも相手を殺すことを選んだ。そんな人間が分かり合えるものか…」

 

 フィーネのその声からは怒りよりも悲しさの方が強く見えた。

 

 「人が…ノイズを…」

 

 「だから私は、この道しか選べなかったのだ…!」

 

 「おい!…」

 

 飛び出そうとするクリスを翼が手で制した。

 

 「…人が言葉よりも強く繋がれること、分からない私達じゃありません」

 

 「…はぁっ!」

 

 フィーネは振り向きざまに触手を伸ばすも響はフィーネに拳を打ち込む直前で止めた。が、フィーネの触手は止まらない。

 

 「私の勝ちだ!」

 

 最初からフィーネの触手は響など狙っておらず、その触手は月を目指して伸びていた。

 

 触手は割れた月の一部に刺さり、地球に投げるようにフィーネは懇親の力で背負い投げた。

 

 「月の欠片を堕とす!」

 

 「!!」

 

 「私の悲願を邪魔する禍根はここでまとめて叩いて砕く!この身がここで果てようと、魂までは絶えやしないのだからな!」

 

 そう言うフィーネのネフシュタンの鎧や身体はボロボロと崩れ始めた。

 

 「聖遺物の発するアウトバック波形がある限り私は何度だって世界に蘇る!どこかの場所!いつかの時代!今度こそ世界を束ねる為にィィ!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女!フィーネなのだァァァ!」

 

 響はフィーネに軽い一撃を与えた。

 

 「…」

 

 そして、その身体は段々風化を始めていく。

 

 「うん、そうですよね。どこかの場所、いつかの時代、蘇る度に何度でも、私の代わりに皆に伝えてください。世界を一つにするのに、力なんて必要ないってことを。言葉を超えて、私達は一つになれるって事。私達は未来にきっと手を繋げるということ。私には伝えられないから。了子さんにしか、出来ないから」

 

 そう言う響は希望に満ちた顔をしていた。

 

 「お前…まさか…」

 

 「了子さんに未来を託すためにも、私が今を守って見せますね!」

 

 「…フッ、本当にもう、放っておけない子なんだから」

 

 そう言うフィーネの声は了子の様に優しかった。

 

 「胸の歌を、信じなさい」

 

 そう言ってフィーネは灰に代わり、風にさらわれていった。

 

 「…」

 

 一同は涙を浮かべ、特にクリスは涙を溢れさせながらフィーネの最期を見届けた。

 

 (アンタの恋心ってやつは、今まで生きてきた中でも、一番重くて、誰よりも一途な恋心だったぜ…)

 

 昴も静かにフィーネを見届けた。

 

 「起動計算出たぜ。やっぱり地球に直撃は免れないみたいだ」

 

 「あんなものがここに落ちたら…!」

 

 「アタシ達、もう…!」

 

 奏者達はその砕けた月を見ていた。

 

 「響…」

 

 「何とかする」

 

 そう言って振り向いた響の目は覚悟を決めていた。

 

 「ちょーっと行ってくるから、生きるのを諦めないで」

 

 そう言って響は走って飛び出して行った。

 

 「響…」

 

 未来の目から大量の涙が流れ落ちた。

 

 命を賭して、皆を守るために歌う最期の歌。

 

 響は単身月に向かっていた。

 

 「…あいつ一人死なせるわけにゃ行かねえんだよ!」

 

 零も急いで飛び出し、響を追いかけた。

 

 「零さん!」

 

 

 

 

 絶唱を終えた響は、月を見つめていた。

 

 「そんなにヒーローになりたいのか?」

 

 後ろから声が聞こえ、響は声のした方を振り向いた。

 

 [First Love Song Vo.立花響×風鳴翼×雪音クリス]

 

 「こんな大舞台で挽歌を歌うことになるとはな。立花には驚かされっぱなしだ」

 

 「最後まで付き合うぜ、響」

 

 「翼さん、クリスちゃん、零さん」

 

 「まあ、一生分の歌を歌うには丁度いいんじゃねえのか?」

 

 そして、四人は月へと向かって行った。

 

 「それでも、私はもっと立花と歌を歌いたかった」

 

 「ごめんなさい…」

 

 「ばーか。こういう時はそうじゃねえだろ」

 

 「そうそう。皆で帰ろう」

 

 「ありがとう、三人とも。解放全開!」

 

 「全力全開ーッ!」

 

 四人は一つの光になり、月へと向かっていく。

 

 (皆が同じ夢を叶えられないのは分かってる。夢を叶えるための未来は、皆に等しく無きゃいけないんだ!)

 

 (命は、尽きても終わりじゃない。尽きた命が、遺したものを受け止めて託して行くことが人の営み。だからこそ、剣が守る意味がある)

 

 (生きることを諦めない。皆未来に向かって戦っている。だから、俺達もその未来を守るために戦うんだ…!)

 

 (例え声が枯れたって、この胸の歌だけは絶やさない!夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れ!)

 

 (これが!私達の!絶唱だぁぁぁぁぁぁ!!!)

 

 やがて四人は月の欠片へ到着し、翼は自分の何倍もの大きさの剣を構え、クリスも膨大な数のミサイルを装填し、響もこれまでに無いほどの出力を出せるようにブーストをかけ、零も持っている七枚全てのカードを読み込ませ、メビウスインフィニティーの力を纏わせ、突撃準備に入った。

 

 「「「「うおおおおおおおお!!」」」」

 

 四人は一斉に月の欠片に向かって己の剣を、ミサイルを、拳を、そしてその身を飛ばした。

 

 やがて、眩い光と共にその月の欠片は粉々に砕かれ、欠片は無数の流星群となって空を流れて行った。

 

 「流れ星…」

 

 未来は膝をつき、大声をあげて、子供のように泣いた。泣きじゃくった。

 

 

 

 

 ある日未来は、大雨の中傘もささずにバスを待っていた。

 

 あの日から三週間、響達四人の捜索は打ち切られてしまった。

 

 弦十郎や大我達からは、作戦行動中での行方不明は死亡扱いになると聞かされていた。

 

 郊外に墓が立てられたものの、そこに響はなく、秘密の関係上名前が彫られることも無い。

 

 外国政府からの追求を躱すためだとの事らしいが、未来にはまだよく分からない事だった。

 

 未来が弦十郎に渡された写真が飾ってあれば、それが響の墓標だと言う。

 

 それが寂しい墓であっても、未来は響が通った終着に通いつめている。

 

 何度も大我やタイタスの元を訪ねても「悲しいことだが…」と言われて悲しい顔をされ、それ以上は何も聞けなかった。

 

 未来は響の墓標の前に花を添えた。

 

 「会いたいよ…もう会えないなんて…私は嫌だよ…!響…!私が見たかったのは響と一緒に見る流れ星なんだよ…!」

 

 未来が泣いていると、どこからか悲鳴が聞こえた。

 

 「誰か助けてー!」

 

 未来は悲鳴が聞こえた方に行き、女性の手を掴み、階段を登って逃げた。

 

 「こっち!」

 

 そして、道を走ってノイズから逃げていた。

 

 (諦めない!絶対に!)

 

 女性は手を離し、その場で力なく膝をついた。

 

 「私…もう…」

 

 「お願い!諦めないで!」

 

 しかし、そう言う未来の目と鼻の先にはノイズがおり、二人を壁際に追い詰めて取り囲んでいた。

 

 未来はどれだけノイズが近寄ってきても、女性から離れることはせず、ノイズを阻むように立った。

 

 そして、覚悟を決めた瞬間、ノイズ達が一瞬にして炭へと変わった。

 

 攻撃が飛んできた方を見ると、そこには――

 

 「ごめん、色々機密を守らなきゃいけなくて…未来にはまた本当のことが言えなかったんだ」

 

 そこには、いつもの調子で笑う響、そして翼、クリス、零が立っていた。

 

 未来は響の方に走って抱きつき、響もそれを受け止めた。

 

 ノイズの脅威は去ることがなく、人々もまた闘争で溢れている。未だに危機は溢れ、悲しみの連鎖は留まることを知らない。だけど、俯かない。諦めない。だってこの世界には歌があるのだから。

 

 ED[逆光のフリューゲル Vo.天羽奏×風鳴翼]

 

 




今回はここまでです!

次からはやっとウルトラマンが出ます!!

また感想や高評価もよろしくお願いいたします!


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番外編 燃やせ闘魂

今日は休みなので書いちゃう


フィーネが月の欠片を地球に投げ、それを阻止してから数週間が経った。

 

 この事件は後にルナアタック事件と呼ばれ、テレビで数日報道された後は皆元の日常に戻って行った。

 

 そして、機動部二課のルナアタック事件の処理の仕事も落ち着きが見えた頃、大我達四人は、これまでちゃんと顔合わせをしていなかったということもあって何度も世話になった職員二人と食事に来ていた。

 

 「俺は藤尭朔也。改めてよろしく」

 

 「友里あおいです。今後ともよろしくお願いします」

 

 「俺は東大我。こちらこそ、よろしくな」

 

 「私はタイタス。改めて、よろしくお願いします」

 

 「俺は碧風舞。よろしく頼むぜ」

 

 「俺は諸星昴。よろしくな」

 

 「そう言えば、四人はどうして二課に?」

 

 「正直、二課より良い職場は沢山あると思うけどな」

 

 「確かに、他の職場の方がずっと安全で、ノイズと戦うこともないのでしょうが、私達は人を守ることにやりがいを感じるのです」

 

 「ああ。直接ノイズとは戦えないけど、ノイズと戦う響や零を精一杯サポートするのが、一緒に戦ってる、って思うんだ」

 

 「へぇー…」

 

 「でも、確かに二人の言う通りね。私達も一緒に戦ってる、って思うわ」

 

 「そういう事。だから、俺達もこの仕事気に入ってるのさ」

 

 

 

 その頃、零は響と一緒に弦十郎の元で修行を行っていた。

 

 「ふっ!はっ!てやぁ!」

 

 「はっ!だだだっ!でやっ!」

 

 「まだまだ二人とも動きに隙が大きいな。ふんっ!」

 

 弦十郎は二人の攻撃の一瞬の隙をついて地面を殴り、衝撃波を二人に喰らわせた。

 

 「わあああ!」

 

 「ぐあっ!」

 

 その衝撃波で二人は吹き飛ばされ、地面に尻もちをついた。

 

 「あたたた…やっぱ師匠にはまだまだ敵わないなぁ」

 

 「あともう少しなんだけど…」

 

 「とは言え、二人の腕も着実に上がってきている。この調子ならば近いうちに俺に一撃を喰らわせるのも近いだろうよ」

 

 「よーし!師匠!もう一本!お願いします!」

 

 「よし!来いッ!」

 

 再び零と響は立ち上がり、弦十郎と組手を始めた。

 

 その様子を和服を着た一人の修行僧の様な老齢の男が見ており、フッと笑うとどこかに立ち去って行った。

 

 

 

 

 ある程度お互いの話も終わり、大我達は店を出た。

 

 「ありがとうございましたー」

 

 「さてと、これからどうする?」

 

 「せっかくのオフなんだし、どこか身体を動かせるような場所がいいな」

 

 「おっ、良いなそれ。どこに行く?」

 

 すると、大我達の前にフードを被った男が現れた。

 

 「探したぞ…」

 

 「…誰だ!」

 

 大我は朔也とあおいを手で自分の後ろに下げた。

 

 「悪いが、私達には君のような知り合いはいない」

 

 「これでもかな?」

 

 そう言うと、男は青と黒の機械を取り出し、トリガーを押して、謎の空間に消えていった。

 

 「…ゼットライザー!?何でこんな所に!?」

 

 「い、いや、それよりも何でそれをアイツが持ってるんだ!?」

 

 男は、インナースペースの中でゼットライザーに怪獣の姿が描かれたメダルを三枚装填した。

 

 「宇宙怪獣…透明怪獣…再生怪獣…」

 

 『Bemlar!Neronga!Gieron monster!』

 

 「超融合…!」

 

 『Try Devil!』

 

 辺りにバチバチという雷が破裂する様な音を立てて、上空にワームホールが出現し、そこから五十メートルの怪獣がビルをなぎ倒しながら降り立った。

 

 超融魔獣トライデビル。身体はベムラーがベースになっているが、その背中と頭にはネロンガの青い角が三本生え、その背中にはギエロン星獣の翼が生え、その目は白く染まり、黒目がなく、腕にもギエロン星獣の翼を思わせるヒレの様なものがつき、腹部も同様にギエロン星獣の物が使われていた。

 

 「グガルルル…!グギャァァー!」

 

 「なんだよあの怪獣!?」

 

 「どうやら、我々や昴の父が倒した怪獣がそのパーツに使われているようだ」

 

 「相手は三体合体だけど、こっちは三手に分かれて戦うしかないようだな…大我、トライストリウムはまだ取っておこうぜ。この状況では何回変身できるか分かんねえからな」

 

 「分かった!行くぞ!二人共!」

 

 「ああ!」

 

 「うむ!」

 

 『カモン!』

 

 「「「光の勇者!タイガ!/力の賢者!タイタス!/風の覇者!フーマ!」」」

 

 三人はそれぞれのウルトラアクセサリーを翳し、タイガスパークを持つ手にアクセサリーを握った。

 

 「「「バディー!ゴー!」」」

 

 『ウルトラマンタイガ!/ウルトラマンタイタス!/ウルトラマンフーマ!』

 

 「シュアッ!」「ムン!」「シェアッ!」

 

 三人のウルトラマンが土を巻き上げながら地響きを起こして着地し、ゆっくりと立ち上がった。

 

 「あ…あ…!」

 

 「う…ウルトラマン!?」

 

 「昴、二人を頼む」

 

 タイガは昴の方を見下ろして言い、昴もそれに頷いて二人を安全なところに避難させた。

 

 「ここじゃ人が多い。場所を変えさせて貰うぞ!」

 

 タイガ達三人はその場から飛び上がり、トライデビルの身体にタックルするように持ち上げ、あまり人がいない山の方に降ろした。

 

 「シュアッ!」

 

 「フンッ!」

 

 「シェアッ!」

 

 タイガ、タイタス、フーマはそれぞれ構えを取った。

 

 [Buddy,Steady,Go! Vo.寺島拓篤 出典:ウルトラマンタイガ]

 

 「ハァッ!」

 

 タイガは構えを取りながらトライデビルに向かって走り出し、トライデビルの尻尾のなぎ払いをかわして上空に飛び上がり、その隙にタイタスがトライデビルの尻尾を掴んで動きを止め、フーマはタイガと同時に交差するようにトライデビルの頭部にキックを放った。

 

 トライデビルは角から電撃を放ち、タイガとフーマを襲うもタイタスがその間に割って入り、プラニウムバスターで相殺させ、その後ろからタイガとフーマがトライデビルに手から光線を出して攻撃した。

 

 「グガルルル…!!」

 

 「どうした!もっと来いよ!」

 

 フーマはトライデビルを煽るように指を二回曲げ、トライデビルは口から雷が混ざった青白い熱線をフーマに放った。

 

 それに直撃したフーマの身体はポンッと言う音と同時に煙に代わり、トライデビルは驚いた顔をすると同時にフーマが後ろから姿を現し、クロスチョップをトライデビルに喰らわせた。

 

 「私の事を忘れてもらっては困るな!ハァッ!」

 

 タイタスはトライデビルの頭をぐっと掴むと強力なヘッドバットを喰らわせ、トライデビルはネロンガの透明化の能力を使って姿を消した。

 

 「私のウルトラマッスルにはその程度では通用せんぞ!」

 

 タイタスは意識を集中させる様に上腕二頭筋を見せつけるポーズを取り、トライデビルが姿を現すよりも先に前方に拳を突き出して攻撃を喰らわせ、トライデビルも姿を現した。

 

 「なんて奴らだ…だがこれならどうかな?磁力怪獣!戦車怪獣!」

 

 『Antrar! Dinosaur tank!Five Devil!』

 

 トライデビルの両腕にアントラーの頭部と恐竜戦車の頭部と戦車部分が生成され、ファイブデビルへと進化した。

 

 「な、何!?」

 

 ファイブデビルはアントラーの頭部から磁力光線を放ち、タイガ達の身体を自身に引き寄せた。

 

 「させるか!」

 

 フーマは手裏剣状の光線、光波手裏剣を放つもファイブデビルには通用しなかった。いや、アントラーや恐竜戦車の力も取り込んだことでちょっとやそっとの光線技では通用しなくなっているのだ。

 

 「グガルルルル…!!」

 

 そして、三人を至近距離に引き寄せたところで電撃、ペイル熱線、三連戦車砲の全ての光線をタイガ達に喰らわせた。

 

 「ぐああああ!!」

 

 「がああああ!」

 

 「これほどとは…!」

 

 三人のカラータイマーが鳴り、その場で膝をついた。

 

 「くっ…!」

 

 ファイブデビルは耳元まで裂けた口を更に歪ませるように笑い、その場で透明化するとどこからともなく三人に無数の光弾を浴びせた。

 

 「交代だ!タイガ!」

 

 「昴…!分かった!」

 

 三人は変身を解いて人間態に戻り、昴はウルトラゼロアイを目元にかざした。

 

 「デヤッ!」

 

 タイガ達に代わり、赤と青の身体と二本のスラッガーを持つ若き戦士、ウルトラマンゼロがファイブデビルの前に立った。

 

 「さあ、やろうぜ!デヤッ!」

 

 「昴さんも…ウルトラマン…」

 

 「ああ。しかもゼロは強いぜ。なんたってゼロは…」

 

 「なんだ貴様は…!」

 

 「ウルトラマンゼロ!セブンの息子だ!」

 

 そう言ってゼロは構えを取った。

 

 「ウルトラマンゼロ…」

 

 ファイブデビルはゼロに向かって走り出し、ゼロもそれに向かって行った。

 

 ゼロは頭部のゼロスラッガーを飛ばし、ファイブデビルの腹部を蹴飛ばしてからゼロスラッガーでファイブデビルの両腕を切り落とした。

 

 「どうした?大したことねえな!」

 

 「そいつはどうかな?」

 

 すると、ファイブデビルの両腕が元通り再生され、何事も無かったかの様に元の姿に戻った。

 

 「何っ!?」

 

 「どうだ!ウルトラマンゼロォォッ!?」

 

 ゼロは額のビームランプからエメリウムスラッシュを放った。

 

 「今更それくらいでビビらねえぜ。ハッ!」

 

 ゼロは更に脚に炎を纏わせてファイブデビルに回し蹴りを喰らわせ、更に拳にも炎を纏わせて腹部に強烈な連撃を叩き込んだ。

 

 「まだまだッ!」

 

 ファイブデビルは三連戦車砲と磁力光線を同時に放ち、ゼロは青いルナミラクルゼロへと変身して五つのゼロスラッガーを飛ばして攻撃を相殺させた。

 

 「まだまだ。ストロングコロナゼロッ!」

 

 赤いストロングコロナゼロへと変身し、更に巨大な炎を拳に纏わせて強烈な一撃を喰らわせた。

 

 ファイブデビルの放つ電撃をものともせず、拳で弾き返して行った。

 

 しかし、それこそがファイブデビルの狙いだったのだろう。

 

 五体の怪獣の力を合わせた合体光線、サンダーリングテイル砲をゼロに放った。

 

 「ぐああああッ!」

 

 「ゼローッ!」

 

 ゼロの変身も解け、元のウルトラマンゼロに戻ってしまい、カラータイマーが点滅を始めた。

 

 「終わりだな…ウルトラマンゼロ!」

 

 そう言ってファイブデビルはゼロの首を掴んだ。

 

 「くっ…!」

 

 「こいつを殺したら…タイガ…次は貴様らの番だ…!」

 

 「やめろー!」

 

 しかし、タイガ達のタイガスパークには光が灯っておらず、起動すらも出来なかった。

 

 「どうすりゃいいんだ…!」

 

 ゼロにもう一度サンダーリングテイル砲が撃たれようとしたその時だった。

 

 赤い光球がファイブデビルの腕に直撃し、ゼロは命からがら脱出した。

 

 「最後まで諦めるな!ゼロ!」

 

 空から赤い光の球がゆっくりと降り立ち、やがてその光は人の形に姿を変えた。

 

 真紅の身体と真っ赤に燃える熱き闘魂を持つ戦士、そしてゼロの師匠であるウルトラマンレオが現れた。

 

 「レオ!」

 

 「レオ!?」

 

 「ウルトラマンレオだ!」

 

 「ゼロ、立てるか?」

 

 「勿論だぜ、師匠」

 

 そう言ってゼロは立ち上がった。

 

 [ウルトラマンレオ Vo.真夏竜・少年少女合唱団みずうみ 出典︰ウルトラマンレオ]

 

 「タァーッ!」

 

 「デヤッ!」

 

 レオはアントラーの腕を、ゼロは恐竜戦車の腕を掴んでファイブデビルの動きを止め、二人で腹部にキックを打ち込み、ファイブデビルが二人を振り払ったところにすかさずパンチを打ち込み、間合いを取って構えた。

 

 「どの宇宙、どんな地球であろうとこの星は俺の故郷!決して失う訳にはいかん!イヤーッ!」

 

 「レオ…ああ!」

 

 レオとゼロはファイブデビルが放つ電撃をバック転で回避し、大きく上空に飛び上がった。

 

 「タァーッ!!」

 

 「デヤァーッ!」

 

 レオとゼロは片足にエネルギーを集め、レオキックとウルトラゼロキックをファイブデビルに放った。

 

 ファイブデビルは足をよろつかせながらも再生を始めた。

 

 「これで終わりだ…!ウルトラ戦士…!」

 

 そう言ってファイブデビルはサンダーリングペイル砲の為のエネルギーを貯め始めた。

 

 「ゼロ、相手が合体光線ならば俺達も合体光線で行くぞ!」

 

 「ああ!」

 

 二人は胸の前で腕を交差して両手にエネルギーを集中させ、ゼロがしゃがんで二人は一列に並び、腕を真横に伸ばした後にゼロが頭上で両手を合わせたのを挟むようにレオも両手を前に突き出して合わせ、エネルギーをスパークさせ、レオゼロダブルフラッシャーを放った。

 

 ファイブデビルもサンダーリングペイル砲を放ち、二つの光線がぶつかり合う。

 

 「オリャーッ!」

 

 「エリャーー!!」

 

 光線に二人の闘志が込められ、サンダーリングペイル砲を押し返し、光線がファイブデビルに直撃した。

 

 ファイブデビルの身体が一瞬膨らんだかと思うと、身体のヒビから光が漏れ、轟音と共にファイブデビルの身体は爆発した。

 

 

 

 レオとゼロは変身を解き、人間態のおおとりゲンと諸星昴に変わった。

 

 そこに大我達、そして通報を受けた弦十郎や奏者達も集まってきた。

 

 「師匠、来ていたのか」

 

 「ああ。数ヶ月前から不穏な雰囲気を感じ取り、単身地球に来ていた。もしかすれば、私以外にも各地に仲間達がいるかもしれん。お前達の役に立てば良いが…」

 

 そう言ってゲンは獅子の瞳を出し、そこから出てきた二つの光はレオレットとウルトラマンレオのカードとなり、その光は零と大我の手に飛んだ。

 

 「俺は俺で調べることがある。地球は任せたぞ」

 

 「ああ!」

 

 「はい!」

 

 「それと…」

 

ゲンは弦十郎の方を見て笑った。

 

 「大きくなったな。弦十郎」

 

 そう言ってゲンは弦十郎の肩に手を置いた。

 

 「…師匠!お久しぶりです!」

 

 「えっ!?師匠の…師匠!?」

 

 「てことは…」

 

 「お前らにとっちゃ大師匠じゃねえか!挨拶しとけ!」

 

 「は、初めまして!立花響です!弦十郎さんの元で日々鍛錬しています!」

 

 そう言って響は頭を下げた。

 

 「柊零です!響ちゃんと一緒に修行を受けています!」

 

 「弦十郎にも弟子が出来たのか。頼もしい限りだな。お前さんは…そうか、セブンが言っていた…頼んだぞ。この地球をな」

 

 「はい!」

 

 「響ちゃんと言ったね。弦十郎の修行はどうだ?」

 

 「凄く厳しいけど…優しい人です」

 

 「そうかそうか。弦十郎は良い師匠になったようだな」

 

 「はい!」

 

 ゲンは響の頭を撫で、笠を被った。

 

 「それでは、俺は行く」

 

 「師匠も気をつけろよ」

 

 「ああ」

 

 そう言ってゲンは夕焼けの中歩いていった。

 

 「それにしても、お前らがウルトラマンだったなんて、何で早く言わないんだよ?」

 

 「ほら、俺達も一応宇宙人だからさ。あんまり存在を民間人にもバラせないんだ」

 

 「それでも、何故指令はレオの事を知っていたんだ?」

 

 「子供の頃に一度助けて貰った事があってな…当時はウルトラマンレオだと知って驚いたが、絶対に周りに言わない代わりに弟子にしてもらっていたんだ」

 

 「師匠の命の恩人だったんですね」

 

 「うむ。さあ、帰ろう」

 

 「結局戦うこともなかったな」

 

 「ノイズじゃなかっただけ良いが…昴さん?」

 

 「ああ、悪い。少ししてから戻るぜ」

 

 そう言って、昴は街の方に向かった。

 

 「…俺も行ってきます!」

 

 「あ、お、おう…」

 

 零も昴を追って街の方へ走った。

 

 

 

 すっかり辺りも暗くなり、会社帰りのサラリーマンや学校帰りの学生がいる街の中を零と昴の二人は歩いていた。

 

 (奴は一体どこにいやがる…)

 

 そして、人気のないところに来た時だった。

 

 「やあ…昼間はやってくれたね」

 

 「てめえは…!」

 

 「…!」

 

 二人は身構え、フードの男は警戒する二人に歩み寄った。

 

 「君達も気になってるだろうからね…見せてあげるよ、俺の姿を」

 

 そう言ってフードの男はフードを取り、後ろに投げ捨てた。

 

 「!!」

 

 「お前は!!」

 

 そこには、零と全く瓜二つの男が立っていた。顔だけではない。身長も、もしかしたら体重や利き腕も…零とほぼ同じ姿をした男がそこに立っていた。

 

 違うところは、零とは対照的に赤い瞳と赤い髪だけが違っていた。

 

 「俺はお前であり、お前は俺である。違うのは俺とお前の本質のみ…」

 

 「何が違うって言うんだ…!」

 

 「お前が光の存在ならば、俺は闇の存在なのだよ。そして俺はお前から生まれたのだ」

 

 「俺からだと…?」

 

 「お前はウルトラ兄弟の持てる力全てを使ったな。その反動で俺はお前から分離したのだよ。ゼロ、お前の予測通りのことが起こった訳だ」

 

 「そこまで知っていたとはな…」

 

 「零、お前とは必ず決着をつけねばならない。然るべき時になれば、この決闘受けてもらうぞ」

 

 「…!」

 

 「お前がお前であるならば、俺は俺であるためにお前を倒さねばならん。柊零はどの世界に置いても一人で良い…!」

 

 「…分かった。必ず受けよう」

 

 「ではな…せいぜい残り少ない時間を楽しむといい」

 

 そう言って闇の零はどこかに消えた。

 

 「闇の俺か…」

 

 「厄介な奴が現れたな…とんでもなく…」

 

 零と昴は闇の零がいた場所を見つめるしか無かった。

 

 




割と書いてたなワシ…

面白ければ感想や高評価よろしくお願いします!


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たった一人でも

かなり遅くなってすまな〜い!
しかも結構読み辛いかもしれない…許して…


人々に危害を加えたり、時に利益をもたらす第三番目の生命、細菌。

 それは何も地球だけにある訳では無い。宇宙からもある細菌が地球に向かっていたのだった。

 

 

 とある休みの日、未来は買い物に来ていた。そして、店を出た時だった。黄色い粉状の物が未来の身体に入り込んだ。

 

 「うっ…!?ごほっ!!」

 

 その場に咳をしながら荷物を落とし倒れ込んだ。

 

 「おい!おい!大丈夫か!?」

 

 「大丈夫!?」

 

 「おい!誰か救急車を呼べ!」

 

 近くにいた店員が急いで病院に電話をし、未来は病院に搬送された。

 

 

 

 「未来!」

 

 「小日向!」

 

 響や翼、クリスと弦十郎、零達も病室に駆けつけた。病室の中では、未来が顔をしかめながらベッドに寝かされていた。

 

 病院の医師に気付いた響は未来の事について聞いた。

 

 「先生!未来は…未来はどうなったんですか!?」

 

 「小日向さんの病状ですが、どの症例とも一致するものがなく、現状ではウイルス性の病気と言う事しか分かっておりません。小日向さんが感染者第一号です」

 

 「ウイルス性の病気?」

 

 「ええ。いわゆるインフルエンザや、食中毒など一般に知られるウイルス性の病気は、必ず発熱と言う病状が出ます。これは人体にある免疫がウイルスを攻撃して病状を抑えているからなのですが、小日向さんは発熱もなく、周りの方の証言も突然咳き込んで倒れた、と言う声が多かったのです。中には黄色い粉状の物が入っていくのを見たという方もいらっしゃいました」

 

 「じゃあ、そいつらが未来の身体に悪さをしてるってのか?」

 

 「まだ断定は出来ませんが、恐らくそれが原因かと」

 

 「未来…」

 

 響は未来の方をゆっくりと振り返った。

 

 「…私がついてるからね。未来」

 

 そう言って響は未来のベッドの横に行き、未来の手を掴んで握った。

 

 それで安心したのか、少しだけ未来の表情が緩んだ。

 

 「俺は基地に戻って人々にマスクの着用を呼びかける。何も知らないんじゃ皆も安心出来ないだろうからな」

 

 「わかりました。私達も街のみんなにマスクを配ってきます!」

 

 そう言って奏者達三人は病室を出た。

 

 「ああ。五人も出来ることがあるだろう。小日向くんを頼んだぞ」

 

 そう言って弦十郎も病室を出ていった。

 

 「さて、俺達もやる事をやらなきゃな」

 

 そう言って零達は医師が出ていったのを見て、五人は未来の体内を透視光線で覗き始めた。

 

 「これは…!?」

 

 「ゼロ、知ってるのか?」

 

 「俺も実物は見たことないんだが、もしかしたらこいつなのかもな」

 

 「つまり、中々出会うことはない、と」

 

 「ああ。俺の親父が以前戦った宇宙細菌ダリーは聞いたことあるよな?そいつと同じで、人間に取り付くんだ」

 

 「じゃあ操られちまうんじゃねえか!?」

 

 「いや、この宇宙細菌、コレラスは違う。人の生命力を吸い取り、やがてはその星の人間全てを滅ぼした後は何千年、あるいは何万年眠りについたらまた別の星へ…という風に行動するのがこいつらの習性だ」

 

 「細菌なのに私達と同じか、それ以上生きるのですか。珍しい生物ですね」

 

 「まあ、こいつらも同じ生物だ。歳を重ねるにつれて動ける奴と動けなくなる奴が出てくるんだろう」

 

 「それで、動けるヤツらだけになれば別の星に行く、と」

 

 「それにしても変わった奴らだよな。何のために他の星に行くんだろうな?」

 

 「おそらく、その星がこいつらに生きていける環境ではなくなった時には世代が完全に変わるんだろう。そう言う意味では、こいつらは進化し続ける生物なのかもな」

 

 「進化し続ける生物、ですか。それならかなり厄介なのでは?」

 

 「ああ。その為にはさっさとこいつを何とかしないとな」

 

 そう言って昴はウルトラゼロアイを取り出し、人間大の大きさのままウルトラマンゼロに変身し、カーテンで閉じられた未来のベッドの場所から青い光が漏れていた。

 

 「よし、まずはやつらの様子を見てくる。デヤッ!」

 

 ゼロは身体をミクロ化しながら未来の体内へ入っていった。

 

 「ゼロさん、何かあったらすぐ戻ってきてくださいね」

 

 零の言葉を背中に受けながら、未来の食堂、胃袋を通り、彼らのアジトへと辿り着いた。

 

 「…これは…!?」

 

 そこには、無数の虫のような卵が未来の身体の壁に埋め込まれていた。

 

 「これが…こいつらの卵か…」

 

 ゼロは未来の身体に刺激をなるべく与えないよう、少し浮遊しながら辺りを見て回った。

 

 「どこを見ても卵ばかりだな…ん?」

 

 すると、奥の方に一際巨大な卵を見つけた。

 

 「このデカいやつがリーダー格なのか…?」

 

 ゼロが巨大な卵に手を触れようとしたその瞬間、その足元が光ったかと思うと次の瞬間パパパパと言う弾けた音と共に何者かに狙撃された。

 

 「何だ!?」

 

 ゼロが後ろを振り向いた途端、全ての卵に一斉にヒビが入り、ダリーによく似た小さく黄色い虫のような怪獣が卵の中から無数に飛び出して来た。

 

 「こいつらがコレラスか!デヤッ!」

 

 ゼロはコレラス達の一斉攻撃を飛び上がって回避し、左腕の拳を腰に当て、右腕を胸の前にかざして放つエメリウムスラッシュを放ち、小さな虫達を薙ぎ払った。

 

 「あまり未来の身体に負担はかけられねえからな。悪いがすぐに終わらさせてもらうぜ!ルナミラクルゼロ!ハァッ!」

 

 ゼロの身体が青に変わった次の瞬は頭部の青いゼロスラッガーを分身させて飛ばすルナミラクルゼロスラッガーを飛ばし、残ったコレラス達を殲滅した。

 

 「さて、こんなもんか。そろそろ総大将と一騎打ちだな」

 

 そう言ってゼロは元の姿に戻り、巨大な卵に向けて腕をL時に組んでワイドゼロショットを放った。

 

 光線は巨大な卵に命中し、やがて卵にヒビが入り始めた。

 

 そのヒビの間から、鋭い眼光が見え隠れする。今までのコレラスとは違い、身体が一回りも二回りも大きいようだ。

 

 「いよいよお出ましか…!」

 

 そう言ってゼロは構えをとった。

 

 そして、卵にさらにヒビが入ったと思うと突如未来の体内が揺れだし、未来の身体にあった卵の殼が巨大な卵から伸びた無数の触手に掴み取られ、卵から肉壁に伸びていた根のような物も一緒に抜け、全て巨大な卵の中に入り、やがて卵の殻が砕ける音と共に咀嚼音が辺りに響いていた。

 

 

 

 その頃、病室には響が帰ってきていた。

 

 「響ちゃん。帰ってきたんだな」

 

 「はい。昴さんは?」

 

 「ぜ…昴は昴で今やれることをやってるよ」

 

 零はゼロと言いかけた口をつぐみ、なんとか昴に言い換えた。

 

 「?」

 

 零の様子に首を傾げながらも響は未来に視線を移した。

 

 未来は依然として苦しそうで、何かを求める様に手を伸ばしていた。

 

 「…響…」

 

 息も絶え絶えになりながらも未来は響の名前を呼んだ。

 

 力が抜けて、落ちそうになった未来の手を響が駆け寄って掴み取った。

 

 「大丈夫だよ、私はここにいるから…心配しないで、未来」

 

 

 

 やがて、未来の体内で卵が割れ、その卵の殻も中の怪獣、ファザーコレラスに吸収され、その鎧殻を強化させてゼロの前に立ちはだかった。

 

 「…行くぜ!シャッ!」

 

 「キリキリキリィィィィッ!」

 

 ファザーコレラスはゼロより一回りも二回りも大きい腕を振り回しゼロに襲いかかった。

 

 コレラスは背中から触手を生やし、その触手を腕に巻き付けて形を変え、地面を抉りながらゼロを切りつけ、ゼロは両腕でガードし、その力のまま壁に叩きつけられた。

 

 「ぐぁっ!?クッ…なんてやつだ…!」

 

 間髪入れずにコレラスは腕の触手をドリル状に変形させ、ゼロ目掛けて触手を突き出した。

 

 「!!」

 

 ゼロは間一髪身体を地面に滑らせて回避し、ゼロスラッガーを投げつけ、触手の根元を切り落とした。

 

 「へへっ、お前も触手さえなくなれば…!?」

 

 コレラスはニタリと笑いながら先程よりも触手を背中から生やし、今度は片腕ではなく両腕を触手に纏わせた。

 

 「…随分嫌な性格してやがるぜ…」

 

 ゼロは唇を親指で拭いながら立ち上がって構え直した。 

 

 コレラスも背中から触手を更に増やし、両腕に巻き付け、両腕を巨大な刃に変えた。

 

 「どこまでも嫌な野郎だ…」

 

 そう言ってゼロは頭部のゼロスラッガーを両手に持ち、コレラスが振り下ろした二本の刃をゼロスラッガーを交差させて受け止め、コレラスの刃の力で膝をつかされながらも咄嗟にゼロスラッガーの交差を解いてわざとコレラスの腕の刃を地面に突き刺し、その一瞬

にゼロはコレラスの懐に潜り込みながらゼロスラッガーを胸に装着し、ゼロツインシュートを至近距離で放った。

 

 コレラスの身体は光線で大きく吹っ飛ばされるも倒すまでには至らず、身体の鎧のような皮膚にヒビが入る程度にしかダメージが入らなかった。

 

 「クッ…!」

 

 ゼロもなんとか立ち上がって構え直したのだが、その時無情にもエネルギーの残量が少ない事を知らせる様にカラータイマーが赤く点滅を始めた。

 

 (あともう一発…奴に何を打ち込めば奴を倒せる…?)

 

 残り少ない時間の中、ゼロは思考を巡らせながらコレラスの攻撃をかわしていた。

 

 (ウルトラゼロスパーク…ダメだ、ゼロスラッガーで触手は切れたが身体を切り裂けるかは確証がない。ワイドゼロショットも範囲が広すぎてダメだ。エメリウムスラッシュも決め手に欠ける…ゼロランスもあのヒビに通せば行けるかもしれねえがあの小さなヒビにたった一発で通せるとは思えねぇ。コントロールがあるとは言っても勢いを無くさないままあの場所に通すなんてジャックでも到底無理な芸当だ。第一飛び道具は奪われる可能性すらある。クッ…!ゼロビヨンドにもなれないこの状況で一体どうしたら勝てる…!?)

 

 

 

 ゼロがピンチに陥っている中、響は未来の両手を掴んで未来を励ましていた。

 

 「未来…!私は信じてるから…もう一度未来と一緒に笑える時を!」

 

 その時、外から水色と白の光球が響の体内に飛び込み、響の身体が淡く水色に光った。

 

 「響!?」

 

 「何…これ…?凄い力だけど…とても温かい…凄く安心する…!…未来の手を…?うん、分かった」

 

 「響、誰と話してるんだ?」

 

 「分からない…けどこの光が私にそう言ってるんだ。未来を助けられるなら私はこの光を信じる!」

 

 そう言って響は再度未来の手を握った。

 

 そしてその光は響の手を伝って未来の体内に入り、ゼロのカラータイマーへと入ってゼロのエネルギーを回復させた。

 

 「うおっ!?こいつは…誰か分からねーが…助かるぜ!ストロングコロナゼロッ!」

 

 ゼロは赤い身体のストロングコロナゼロに姿を変え、拳や脚に炎を纏わせて、コレラスに猛攻をしかけた。

 

 コレラスは腕の触手を作り替えて巨大な盾を作るもゼロはそれを拳を連打して打ち破り、勢いのままにコレラスの身体を蹴りあげて宙に上げた。

 

 「ウルトラハリケーンッ!」

 

 ゼロは拳を上げて巨大な竜巻を起こし、コレラスの身体を竜巻の中に巻き込ませて身動きを取れないようにして、腕に熱き炎の力を纏わせてコレラスに向かって飛び上がった。

 

 「ガルネイトッ!バスタァァー!」

 

 ゼロはコレラスの身体のヒビ目掛けてガルネイトバスターをゼロ距離で撃ち込み、コレラスの体内はエネルギーで充満し、やがて爆発四散した。

 

 そして、ゼロは未来の身体に少しでも刺激を与えないようにしながらゆっくり着地し、元の姿に戻って未来の身体を元に戻した。

 

 「さて、これで終わりか…ん?」

 

 ふと目をやると、これまでの卵とは違い管が何も伸びていない普通の卵が一つぽつんと置かれていた。

 

 「…ま、お前に罪はないな。シャッ!」

 

 ゼロは卵を抱き抱えて未来の体内を脱出し、徐々に大きくなって病院の窓から外に、宇宙に飛び出し、卵を宇宙へと投げ、簡易なバリアを施して宇宙の彼方へと飛ばした。

 

 「これでよし、と」

 

 ゼロは病院へ戻り、昴の姿に変わった。

 

 「昴、何してたんだ?」

 

 大我が不思議そうに窓の外を見ながらゼロに聞いた。

 

 「コレラスの卵をバリアで包んで宇宙へ飛ばしたんだ。やつら、兵士とは別で卵を産んでいたらしい」

 

 「卵は一個だけだったのですか?」

 

 「ああ、とは言ってもあの中に小さいコレラスが大量にいるんだろうぜ。あの中に結構な量の生命反応も感じたしな。あれで子供達の身を守っていたんだろう」

 

 「ふーむ、しかし中々変わったヤツだったな」

 

 「俺が見た限りだと、奴らは何度も卵に戻ってはその殻の中で成長や適応した姿に代わり、進化する必要がなくなればその殻をも身体に取り込んで身体強化に使っていたな」

 

 「ザラガスって怪獣とは逆だな」

 

 「確か聞いたことがある。攻撃を受ける度に強くなる怪獣だ」

 

 「でもこいつとザラガスは真逆だな。ザラガスはあくまで身体の一部をパージしたりして強くなるが、こいつらは逆に殻に籠ったりして強くなるんだからな」

 

 「ま、何にせよ解決してよかったな。な、昴」

 

 「そうだな…しかし…」

 

 昴はちらりと響の方に目をやった。響の身体は何事も無かったかの様に元に戻っていた。

 

 (何故響からウルトラマンの光が…?奇跡、にしては偶然にも程があるが…)

 

 その響は元気になった未来に抱きついていてそんな事は微塵も考えていないようだった。

 

 (ま、今考えても答えは出ないか)

 

 

 

 

 そして夕方、未来は無事退院した。しかし、またいつ発症するか分からない為一応定期的に通院するよう病院側から言われていたが、昴達は笑いながら必要ないと未来に伝えた。未来は不思議そうな顔をしていたが、響の笑顔が見れたので良しとする事にした。

 

 「ま、何にしても退院出来てよかったな、未来」

 

 「小日向、また何かあればいつでも言うんだぞ」

 

 「はい。ありがとうございました。響もありがとうね」

 

 「私も未来が元気になって良かったよ〜!晩御飯何にする?」

 

 「もう、すぐそれなんだから〜!」

 

 すると、翼とクリスの腹から同時にくぅと間の抜けた音が鳴った。

 

 「…ふっ、今から何か食べに行くか」

 

 「クリスちゃん可愛い〜!」

 

 「うっ、うるせー!お前だって鳴る時は鳴るだろ!」

 

 それに応える様に響の腹からも犬の唸り声のような音が鳴った。

 

 「…ぷっ」

 

 二人は思わず吹き出した。

 

 「アハハハハハハ!ほらな〜!?お前だって鳴るだろ〜!?」

 

 「そっ、そうだねクリスちゃん!鳴るね!ふふふふ…くっ…」

 

 「ふらわぁのお好み焼き食べに行こうよ。ね、良いでしょ?」

 

 「お、良いね!」

 

 「お好み焼き…興味深い」

 

 「俺も楽しみだな〜お好み焼き!」

 

 「さあさあ行こうぜ!」

 

 夕焼けの中、九人は談笑しながら商店街を歩いて行った。

 

 

 

 

 コレラスの卵はどこか遠い小惑星に着陸し、ゼロのバリアも消え、卵は小惑星と共に漂流して行った。

 

 




という訳で今回はここまでです!
ただただ書きたいものを書いてるんだなと再認識
よければ感想や高評価よろしくお願いいたします!


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