きっと君は気づかない (たばねっと)
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私の独白

だって、君って鈍感でしょ?


きっと君は気づかない。

 

私が一番近くに感じる存在で。

なにより大切だと思っていることなんて。

 

普段の君はそう。

まさしく根暗の不良生徒。

 

生徒会室では…いやそれ以外の場所でもゲームをしては風紀委員に注意されている。

 

発言だってそうだ。

好き勝手言って、もう。

 

君が座った後のソファで寝転がってみたりする。

 

君のぬくもりを少しでも感じるだけで安心してしまう。

 

 

不登校の原因を一番に許せなかったのは私で。

誰よりも重要に感じて。

 

ー君を想って行動したのは私だよ?ー

 

 

だけど、きっと君は気づかない。

 

馬鹿で、アホで。変なゲームを持ってきて。空気を壊してしまうような私なんて。

あなたはきっと振り向かない。

 

でもね。

かぐやさんと見守ってていつも思う。

 

良かったって。

 

 

君が会長と仲良くしていることや、意外とかぐやさんを信頼して良い関係を築けているこの生徒会室。

ここは君の居場所になれた。

それが一番嬉しい。

 

君を叩いたアレに、君の髪の毛が付いていて。

少し咥えてみたり。

 

君が口を付けたコップを大切に保管したり。

 

君が触ったPCを抱いてみたり。

 

君が机に置いたヘッドホンを付けてみたり。

 

 

 

でも、きっと君は気づけない。

 

 

 

焦らされて焦らされて。もう辛くなってきたんだ。

顔を覗き込んで、じっと見つめてみる。

 

ポーカーフェイスはできているだろうか。

 

優しい君の顔をもっと見ていたい。

 

好きな人のために頑張れる君の、その「好き」を私に向かせたい。

 

君の愛に抱かれたい。

せっかく顔が近くなったのに。。。

 

キス、したいなぁ。

 

 

「藤原さん?」

 

邪魔が入った。

 

はぁ。。。ため息が出そうになる。

でも、それは口の中から出ていくことを許されない。

 

彼女は親友なのだ。

 

だけど、このタイミングは無いよ。

涙が溜まっていく。

 

そっとその涙を拭われる。

 

彼だ。

彼が私の涙を拭った。

 

見てくれた。

優しさを向けられた。

 

瞬間。

熱さで倒れそうになりながら、親友のもとへと避難する。

 

 

ダメだ。

あれはダメ。

反則なんてものじゃない。

 

 

でも、そんな私の感情なんて、きっと君は気づかない。

 

 

 

できれば男の子の方から告白して欲しいって思うのは間違い?

私の場合は望み薄だと思う。

 

まだ、傷が塞がれない君にそんなことをさせたくない。

 

何度もアピールしてるのに。。。

 

 

自分の一部を彼のバックの中にこっそり入れたり。

何度も間接キスしてみたり。。。これは気持ち悪いかな。。。

 

君が私に直接言えない暗い過去だって、そんなものもう気にしなくていいのに。

 

私は受け入れている。

いや、私たちは受け入れている。

 

彼が優しい人で。

誰かのために一生懸命になれる人で。

私たちの大切な後輩だって。

 

少なくとも私たち3人はそう思っている。

 

 

 

気づいてる?

 

君はもう1人じゃないよ。

 

君を想ってくれる人は、まぁ少ないかもしれないけれど。

 

それでも、私たちにとって大切な存在なんだよ。

 

たまに垣間見る安心した顔を見ると、ほんわかするんだ。

 

 

 

ねぇ、石上優君。

私の、「ダイスキ」っていう気持ち。

 

気づいてくれますか?



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あなたに狂わされる

貴女はきっと遊んでいるのだろう。

ーそんな風に騙されていれば良かったー


石上優が思うに、この生徒会室だけが学校での居場所であるというのは言い過ぎなんてことはなく、むしろ大当たりである。

 

まぁ、いつか裏切られるだろうけどね。

 

彼は結局のところ信用しきれていないのが現実である。

 

利用している自分を認識できているからこそ、申し訳なく思ってしまうことがある。

だがしかし、仕方ないの一言で済まされてしまう。

済ませてしまう。

 

そうでなければ辛いのだ。

 

自分に向けられた一生懸命な優しさ。

見てくれているという安心感。

所謂楽しいと思えてしまう。

 

それが何よりこの男。石上優にとっては辛いものなのである。

 

「嬉しいのに辛いとか、僕はなんて変な奴なんだろう。」

 

いつだって彼は後ろを見る。

下を見る。

耳をヘッドフォンでふさぎ。

目はPCに固定される。

 

そんな生活が当たり前で。

何よりこれからもこうなんだろうと、やれやれとため息をつきながら分かった気になる。

 

 

それがどうだ。

僕の視線は彼女に固定されてしまう。

僕はもう恋愛なんてしない。

確かにそう誓ったはずなのだ。

 

 

太陽を体現したような自由奔放な彼女により、石上優の青春は始まってしまう。

 

面倒な人だなぁ。

それが彼女に対する認識であることは間違いないのだ。

そう。それで間違いないはずなのだ。

 

良く分からないクソゲーを持ってくるし。

四宮先輩に殺されそうになってるし。

関わらないほうが良さそうだなと身勝手だが判断したはずだ。

 

こんな風に僕が思っていることなんて、彼女はきっと気づかない。

 

 

 

対人関係というのは、長くいるだけで意外と良好になっていくものがあったりする。

 

今回の場合、僕と生徒会の皆はそれだ。

 

いつもお世話になっている頼れる先輩の会長と、

面倒見がよくて、今では尊敬している四宮先輩。

 

そして。

 

「石上君?」

 

顔を近づけて聞いてくるこの人。

眩しくて、マイペースで。意味わからない人で。

おっぱい!・・・じゃなくて、温かい藤原先輩。

 

僕は、最初は3人とこんなにも仲良くなるなんて思わなかったし。

僕が信頼する人ができるなんて知らなかった。

 

僕の居場所はここで。

ここさえあれば他はどうでも良いって思えてしまった。

 

 

そして、貴女がいてくれれば僕はいつだって前を向ける。

 

そんな風に思っていると。貴女は気づかないだろうけれど。

 

 

最近、スキンシップをよくされる。

 

妙に顔が近かったり。

間接キスをしてはチラチラこちらを見てくる。

 

気づかないほうが可笑しいだろう。

 

僕はそんなに鈍感ではないはずだ。

 

でも。だからこそ思ってしまう。

 

そんな太陽に触れようとする日陰者。

良いのだろうか。

受け入れてしまって後悔させないだろうか。

いや、これは傲慢な考えだ。

 

僕はそんなに良い奴じゃないはずだ。

むしろ嫌われ者のはずなんだ。

 

なのに。

この暖かさを手放すのが怖い。

うずくまって考える。

 

僕なんか。

そんな言葉捨ててしまえ。

僕はどうしたいんだ。

 

どうすればこの気持ちを整理できるんだ。

 

どうすれば。

 

結局勘違いで済まそうとする。

でも、思考はそうは導かれることは無かった。

考えれば考えるほど

 

「僕は貴女が好きだ。」

 

こんな言葉が、彼女を前にすると口から出そうになる。

 

またキモイって言われてしまうだろうか。

いや、そういうやり取りも僕は好きだ。

 

四宮先輩に睨まれるのはいまだに慣れないけど。

 

 

僕がこんなにも悩んでいることを

 

貴女は気づかないだろう。

 



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きっと君は気づいてくれる

報われることなど無いと。
何度も涙を浮かべた夜を思い出す。


ー君はきっと気づいてくれるー


戦争をするのも良いだろう。

だけど。


心の壁を破る、愛の告白をしなさい。

カウントダウンは始まっている。

 

 

 

―覚悟をしなさいー

その分だけ好きがあふれるから。

 

 

―幸せを受け入れなさいー

その分だけ愛が育まれるから。

 

 

 

 

彼の事が好きで好きで抑えが効かなくなってきてしまった彼女。

 

その気持ちにうっすらと気づいていながら、自信の無さにより葛藤をする彼。

 

そんな二人の会話は、やはり周りから見ても違和感を覚えてしまうものがある。

お互いを無視することができない二人は、相手の行動を監視する。

 

結局のところ、彼らは踏み出せない。

 

 

 

ことここにいたって彼は思う。

 

「気まずい」

 

なぜ気まずく感じてしまうのかと考えた瞬間に解が浮かぶのだから、もう重症の域に入っているのではないだろうか。

 

 

 

ことここにいたって彼女は思う。

 

「気まずい」

 

なぜ気まずく感じてしまうのかと考えた瞬間に解が浮かぶのだから、もう重症の域に入っているのではないだろうか。

 

「「はぁ」」

 

そんなため息1つシンクロをする二人をよそに、面倒くさい恋愛頭脳戦を行う二人がここにいるのだが、流石の二人もこの異常な空間に嫌気がさしてきた。

 

人を既に殺した人間がしているような目で、二人は彼らに問う。

 

「な、なぁ、お前ら。その、なんだ。どうかしたのか?」

 

「そ、そうよあなた達。石上君が挙動不審なのはいつもの事だけど、藤原さんあなたどうしてしまったの?」

 

自然にディスる事を常とする赤目の美女は、やはり当たり前のように石上優をいじる。

 

 

そう、これが当たり前の会話なのだ。

 

だがしかし、今日は違った。

今日からは違う。

 

 

頬を膨らませたピンク頭はこう言う。

 

「かぐやさん!たしかに石上君が変なのは分かりますけど、あまり言わないで上げてください!」

 

親友に怒鳴ってしまった。

 

その行為は、こと石上にとって、、、いや、生徒会の3人が唖然とするものだった。

(ディスっていることに変わりはないが)

 

「藤原さんあなたまさか!」

 

「ダメ!言わないでかぐやさん!」

 

涙を浮かべながら言う藤原に、流石の四宮も

 

「えぇ。そうね。野暮なことはしませんからね。」

 

と、ピンク頭を撫でながら優しく言う。

 

一方男性陣だが、

 

「おい石上。お前まさか藤原のこと」

 

「会長それマジで言っています?」

 

ドスを聞かせた声に、眼付怖すぎ会長はビクッとする。

 

「そうですよ会長。他人のそういったことに首を突っ込むなんて、あまり経験が無いのかしら。

 

   ふふ。お可愛いこと。」

 

 

白目となった眼付怖すぎ会長。

 

「藤原先輩。あの、ちょっと今日良ければ」

 

そんな誘い文句を言っている途中で、

 

「石上君!きょ、今日は一緒に帰りませんか!」

 

さぁ。この二人を見て気づかない人なんていないだろう。

 

 

 

ドア越しにこっそり聞いている早坂と柏木、伊井野の三人は唖然とする。

 

伊井野に至っては、

「え?え?なんで藤原先輩が石上を?は?石上もなんで?」

 

虚ろな目でぶつぶつ呟き続ける。

 

二人は、何かマズイと感じたのだろう。

伊井野を引っ張って帰ることにした。

 

まぁ、早坂は待機続行だが。

 



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一歩

手が触れる。
体がしびれる。

ふらつけば、支えられてしまう。


笑うしかない。

もう、どれだけ好きなのか分からない。


・藤原千花は、一歩近づく

 

 

思えば彼と二人っきりというこの状況。

 

彼が傍にいるって分かるだけで安心する。暖かくなる。

 

今日は少し寒い。

でも、彼がコートを貸してくれた。

 

その優しさが愛おしい。

 

 

彼がこちらを見ているのが分かる。

じっと見つめているのが分かる。

 

心が私に向いている。

下を向く目も。

ヘッドフォンで塞ぐ耳さえも、今は私に注意している。

 

彼に興味を持たれていることが嬉しい。

 

 

今にもスキップしそうなほどだ。

 

 

私がこんなにもドギマギしていることを、彼はきっと気づいている。

 

声を聴きたい。

聴かせて欲しい。

 

話題は自然と生徒会の皆の話になる。

 

普段は楽しくて嬉しいはずのまさに会話が弾む内容なのに。

 

 

生徒会の二人に嫉妬している自分に気が付く。

 

私と話しているのに、他の人の話をするの?

 

 

彼の声を聴けて嬉しいはずなのに、なんだか寒い。

体が冷たくなるのを感じる。

 

どこまでも、もう依存しているのだろう。

 

彼が、話題を変えた。

 

 

内容は、私の事だった。

 

 

ピアノをやっていたことを知っているからか、好きな曲はなんだとか。

休日は何しているのかとか。

 

お互いに、少しずつ。

少しずつ雪を解かすように。

 

暗闇に光を差すように。

 

共有して心を通わせる。

 

壁を薄くして、知ろうとする。

 

 

なんて幸せなのだろうか。

 

私は、なんて幸せなのだろう。

 

こんなにも、なんで私は幸せなのだろう。

 

どうして、私はこんなにも幸せなのだろうか。

 

 

好きだからか。

 

きっと、もうそれ以上なのだろう。

 

何度も夢見た。

 

何度も想像した。

 

何度だって。

 

それが、今現実に。

ただ、目の前に存在する。

 

その事に困惑するけれど。

手を伸ばして、実感しても良いですか?

 

貴方を求める私は、間違っていないだろうか。

嫌がられていないだろうか。

 

ふと立ち止まり、背伸びをして彼の前髪を上げてみる。

 

 

ー目が合ったー

 

 

瞬間、取り返しのつかない。

取り返せない。

1からやり直すことなんてできない程の心のありさま。

 

目が離せない。

 

絶対君は気づいている。

 

自分の気持ちも、私の気持ちも。

 

 

ねぇ。私はもう、この関係を壊そうと思う。

先輩後輩。生徒会メンバー。

そんな関係から1つ進む勇気が湧いた。

 

私は彼の横に立ちたい。

正面で見つめたい。

後ろで応援したい。

前に立って道しるべに。

 

許してくれるかな。

踏み込む私は、きっと邪魔だろう。

でも、お邪魔します。

一緒に、居させてください。

 

私は彼に、ゆっくり一歩近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・石上優は、一歩踏み出す

 

 

藤原先輩の横顔は、愛くるしいうえに綺麗だった。

こんなことを正直に言えば、またキモイと言われるだろう。

 

思えば、何度もお世話になっていたことに気がづく。

きっと、彼女がいたから生徒会はうまく回っていたのだろう。

 

片付けの時、

極秘ファイルを見てしまった。

あの筆記体。

 

分からない訳がない。

 

 

 

ため息が出そうになる。

彼女は僕の事を知ってなお近づいてきた。

 

こんなにも変な奴なのを分かっていて歩み寄ってくれた。

それは、生徒会のメンバーもそうだ。

かけがえのない時間を貰えていることに、今更ながらに感謝をする。

居場所を与えてくれた、何よりも嬉しかった。

 

これ以上求めるものなんて無いはずなのに。

 

 

 

それにしても、これまで僕は貴女に好かれるようなことをしてきましたかねぇ。

分からない。

 

そう、全く分からない。

 

こちらを見る貴女の表情は、自惚れでないなら。

 

だから、なんでそこまで。

 

気づけば恋をしていたのだろう。

もう彼女から目を離せない。

 

横に立っているという事実でさえ疑わしい事なのに。

自然といてくれた。

離れなかった貴女を僕は、嫌でも認識する。

認識してしまってからは早かった。

 

見つめる目に気が付いて。

いつもは目をそらす僕は、自分の気持ちに逃げないために

 

ー勇気をもって目を合わせてみたー

 

きっと何かが繋がった。

切れない何かが繋がった。

 

理解できないのに、感じる安心感。

勇気を持つと、今誓った。

逃げないで進むと、今決めた。

 

だから、貴女に一歩踏み出した。




近づくと、踏み出す。


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幸せ

視界に広がるのはピンク色の綺麗な髪だ。

優しい匂いにつられて思わず顔を近づけてしまった。

 

もう一度と匂いをかぐと、彼女は少しだけ呻く。

その声が、僕の心をざわつかせる。

 

彼女が顔を赤らめているのを知った時思わず抱きしめてしまった僕の行動は、

そこらのケダモノと大差ないのだろうなと自覚する。

 

可愛いからというのもあるが、もしこの顔を他の誰かに見られたらと思うと、

変に意識してしまい独占欲が湧いて出る。

 

最低のクズ野郎だが、そこら辺はやはり男なのだろうか。

 

 

さて、こんな感じで石上優と藤原千花は甘酸っぱい学生生活を謳歌していた。

 

リア充へのステップを彼らは順調以上で駆け上がり、そろそろ頃合いなのではないかと会長は四宮かぐやと話し合う。

 

最近付き合い始めた2人は、石上と藤原関係の会話が主な内容だった。

 

「会長。あの子たちはもうつっ付き合っているのでは?」

 

若干上ずった声で、自分と彼の恋愛事情を思い出し頬を染めながら言う彼女を美しいと思いながら

 

「さぁな、だがお互いが好き合っていると分かってはいるんじゃないのか?」

 

少しばかり男女交際について慣れてきた彼は冷静を装いながら言うのだった。

 

 

 

目の前で、お弁当を食べさせ合う2人を見ながら、灰になる会長副会長がそこにいたのだった。

 

 

 

 

 

「千花先輩、このゲーム面白そうですよね」

 

ん・・・

 

「優君、それ怖いゲームですよ!」

 

ん・・

 

「今度家で遊びません?絶対楽しいですって」

 

ん・

 

「えぇぇぇ!?嫌ですよ!明るくてハッピーなゲームが良いです!」

 

んんんん!?

 

「ちょ、ちょっと待てお前ら、いつから名前で呼び合ってるんだ?」

 

そうよ、と2人してあたふたしながら問いかけた。

 

 

ーだって、私(僕)たちの仲ですからー

 

 

そうハモる2人を見て

 

「「えぇぇぇ!?」」

 

と、叫びながら生徒会室を飛び出し、お互いに名前で呼ぶことになんとか成功した会長と副会長は、手を繋ぎながら帰ったそうな。

 

 

 

藤原千花は、隣に座る彼の横顔をじっと見つめる。

若干赤らんでいる横顔を見れば、私が見つめていることに気づいているんだろうなとイタズラ心が出てきてしまう。

 

耳に唇をあてて、キスを1つ。

そのまま口に含み、食べる。

 

こうも自分が女だと意識したのは人生で初めてなのではないだろうか。

 

匂いから始まり、髪の毛や体温、彼を感じるものが愛おしく思える。

好きなのだと体が自覚する。

 

思えば今この瞬間に、自分が彼を好いていると自覚した。

なんとなく好意を抱いているようなフワフワとした思いから、

好きだと明確になった今。

 

 

体を彼から離し、彼の目に私だけが写るように移動する。

 

目標はロックオンされ、彼女から逃れることはできないのだろう。

 

優しく目を細めながら石上優は目の前に立つ少女を一切目から逸らすことなく見つめ返す。

 

頬を赤らめ目元が潤んでいる、いつからか好意を抱いていた対象である彼女が、今からきっと、と若干期待を持ってしまった。

 

 

 

この想いに私は何も後悔なんて無くて、この感情が今は一番愛おしい。

彼とそれを共有したい。

優しく見つめる彼を見て、改めて好きだと自覚する。

 

傷つきやすく優しい彼に、私は随分前から好意を抱いていたのだろう。

 

心がいっぱいに。想いが溢れたその瞬間。

 

「好きです。」

 

そんなシンプルな一言が、彼の心を打ち抜いた。

 

「僕も好きですよ。」

 

それは、条件反射のように。

しかしながらその言葉には心がこもっていた。

 

殆どタイムラグが発生しない会話の応答。

 

見つめ合うこと数分、気恥ずかしくなりながらも生徒会室を後にし、

放課後デートに向かう2人はとても幸せそうだ。



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