オリ炎を持って転生するのが夢だった (猫七瀬猫八)
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月の炎

能力名とか展開がN番煎じだと思いますが、広い心で見ていただけると幸いです。



私こと椎名蜜月は一般的な生活を送る会社員だった。前世では。

ふと目の前を見れば、いるのは、沢田綱吉。

 

 

「し、椎名さんどうしたの?大丈夫?」

 

 

どこかで見たことがある展開だと思いつつ、この世界がリボーンの世界なのだとやんわり理解する私。

瞬間的な理解力の速さは、転生トリップ憑依諸々を嗜んでいたためである。伊達に夢女子と腐女子を続けてきたわけではない。

まさか本当に自分が転生する側になるとは思わなかった。やはり転生小説は必須科目にしたほうがいいと思う。

 

 

「き、聞こえてるかな?体調悪い?」

 

「そんなことないよ。ちょっと眩暈がしただけ。沢田君ありがとう」

 

 

放課後、たまたま沢田綱吉ことボンゴレ十代目と当番として教室の掃除を行っていた私は、唐突に前世の記憶を取り戻した。

現在の記憶と過去の記憶により脳が混乱して、少し倒れこんでしまったのである。

 

 

「本当に大丈夫?」

 

「うん。ちょっと夜更かしし過ぎたみたい」

 

 

優しさの極みみたいな沢田君を何とか説得して、掃除を終えて家へと一目散に帰った。

 

玄関の鍵を閉めて状況を整理する。

 

まず自分の存在、名前、見た目、私が学生時代に書いたリボーン転生小説のキャラそのまんまだ。

 

家族構成、設定と同じく、両親は海外へと仕事に行っており、ひと月に一回しか帰ってこない。

 

 

そして

 

 

「たしかムカツキ、だったよね」

 

 

心を燃やすように、手のひらへ意識を集中させる。しばらくして、そこには鮮やかな白銀の炎がたなびいていた。

 

能力 月の炎

効果 変質

 

成長速度はSランク、雲雀恭弥と互角に戦える戦闘センスを持つ。

そんな設定を思い出す。

 

複雑すぎる。転生するならもっとなんかこうイチャラブ系でも良かった。

なぜ最初に書いたバトル系まっしぐらのやつなんだ。

歳を重ねる事に恋愛に片寄っていくタイプだったので、やはり今となっては女学生として雲雀さんに好かれるとかそういうのも憧れる。このままだと戦うライバルになってしまうぞ。

 

武器もあったはず。たしか家の倉庫の一番奥だったかな。

探してみればそれはすぐに見つかった。

木箱の中にバットほどの大きさの金属製の卒塔婆がしまってある。明らかに不審だ。

黒執事の葬儀屋が卒塔婆で戦ってるのが心から好きで、死ぬ気で戦うという所に死への共通点を見いだし、武器にした訳だ。

Xグローブと同じ素材でできていて、死ぬ気の炎を灯すことができるとかなんとか。

確か起源は、家の先祖がゴーストバスターズよろしく、高名な霊媒師だったとか。

 

全部私が書いたんだけどね?この状況どうすんだ。

 

何が原因でこうなった?まあ嬉しくないと言ったら嘘になるけど。

原作キャラは大好きだし、この能力なら間違いなく原作介入もできる。

ずっと前からジャンプ系漫画が大好きだったし、能力を得て戦うことも夢見ていた。昔の話だったけど。

まさに夢のようで、実感が持てない。

 

とりあえず頭を冷やそうと夜の街へと散歩に出るか、と思ってトコトコ歩けば風が気持ちいい。並盛はこうして見ると案外栄えているのだなと思う。雲雀さんにこんなこと言ったら咬み殺されそうだ。漫画だとそこまで細かく描写されないからわからなかったけど。

そんな風に色んなことを考えつつそろそろ帰ろうと帰路についたところ。

 

時代遅れのテンプレヤンキーに絡まれるのであった。

 



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戦闘

まさか記憶が戻った初日から不良に絡まれるなんてどんな確率なんだろうと思ったが、能力が分かってから不良に絡まれるのは、むしろテンプレなのだった。

いままでこんな物騒なことはなかったはずなのだが、やはり戦闘力を身につけた瞬間に戦う機会が訪れるのはバトル漫画の宿命なのかもしれない。

 

 

「お嬢ちゃん俺らといいことしね?」

 

「こんな夜に出歩いたら危ないぜ?」

 

 

台詞もテンプレすぎるけれど、中学生女子にとって危機的状況なのには変わりがない。

なのに私は落ち着いていた。何故なら戦い方が手に取るようにわかったからだ。

体は自分のものじゃないように力に満ちている。

自覚をすれば能力は既に自分の中にあった。

 

 

今の私には──死ぬ気の炎と戦闘センスがある。

 

 

勢いよく踏み出し、そのままの速度で飛び蹴りを食らわせる。一人目はそのまま吹き飛んで気絶。

体制を変え二人目の腹へ掌底。白目をむいて倒れる。

 

危なげなく危機を排除出来てしまった。どうやら不良を問題なく撃退する程度の実力はあるらしい。

微妙に自分の力が分かってきたところで、今度こそ家に帰ろうと踵を返すと、

 

 

──────後ろに雲雀恭弥がいた。

 

 

ひひひひひひ雲雀さんだ。

おいおい死んだわコレ。

 

 

「これ、君がやったのかい?」

 

「た、たまたまです。絡まれてしまって」

 

 

探るようにギラギラした目で見てくる雲雀さん。

やめてくれ!本当に好きになってしまうからやめて欲しい。

綺麗な顔だななんて思って見ていれば、

 

 

トンファーが飛んできた。

直撃しかけて避ける。

 

 

「なっ!?何するんですか!」

 

「君、結構戦えるでしょ。隠さなくてもいい」

 

「戦えないです!戦ったことないです!」

 

「今日は飢えてるんだ。話は聞かない」

 

 

トンファーの乱打、その一つ一つのスピードは人間が放つものと思えないほど早かった。

避けに回るしかなく、ジリジリと追い詰められる。

 

 

「やっぱり、君は獣の目をしてる」

 

「してないです!人間の目です!」

 

 

話を聞かないまま暴走する雲雀さん。

このままだとジリ貧だ。咬み殺される。見切るしかない。

思いつきでハンタの技の応用、思いつきで技を開発するというのも様式美だ。目に生命エネルギーである死ぬ気の炎を集め、反応速度を高める。

段々と追いついていき、攻撃を逸らし、掌底を当てる

防がれ、またトンファーの乱打。気分はドラゴンボールの戦闘だ。つまり人間レベルじゃないという意味です。

 

 

「ワオ、君いいね、面白い」

 

「こっちは全然面白くないです!」

 

 

何度目かの殴り合いの後、隙を見て壁へとジャンプ。

そのまま民家の屋根を走って逃げる事にした。

 

とんでもない状況第1位。

1番危惧していた雲雀さんにひたすら攻撃されるフラグが立ちました。




やっぱ月といえば雲との相性は抜群なんですよね。
そして霧ともめちゃくちゃ親和性が高い。
晴とも日の光を反射しているので仲良いし
大空は言わずもがな


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