乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったが追い出されてしまった… (蒼樹物書)
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【1】私のお人形

 支配率が変わった。

 

 そう表現するしかない。

 深い闇に浸り続け、あの野猿の記憶に強く影響されていた精神が揺り戻された。

 だが経験したことのないはずの『破滅』の記憶は、しっかりと残っている。

 

 「――お嬢様!」

 

 未だはっきりしない意識のままに、ベッドから半身を起こす。隣に控えていたメイドのアンが、それに気づき悲痛な声をあげる。

 私がシリウス・ディークに陥れられ、眠り続けてからずっと一人で付き添っていたのだろう。

 健気だ。

 父に甘やかされ、我儘放題だった幼い頃の私。

 前世の記憶が刻み込まれたことで変わっていったが……例え私がそのまま育っても彼女だけは、人形のように私に付き従っていたことだろう。

 

 「ああ、よかった……お嬢様、どこか痛むところはございますか? お医者様をすぐお呼びしますので」

 「お待ちなさい」

 

 隈が浮かんだ目元を濡らし、主人の快気を喜ぶ従者。

 まるで感情のない道具のように、幼い私に従っていた頃では考えられない姿だ。

 彼女は『私の』アンじゃない。

 

 ……それが、癪に障った。

 

 ベッドサイドから立ち上がろうとしたアンの腕を引き、ベッドの上に倒す。想像したよりも、今のこの身体は力が強くなっているようだ。

 乱暴に引き倒してしまい、ベッドが軋む。倒れた身体に覆いかぶさる主に混乱するアン。

 

 「お嬢様……?」

 

 メイドの自身を、害するような主ではないと信じている目。

 あの野猿が信じさせた。

 気に入らない。気に入らない気に入らない。

 これは、私のモノだったのに。

 

 「っ……おやめください、お嬢様!」

 

 馬乗りになったまま、乱暴にアンの衣服を剥いでいく。

 私を主としてより慕うようになっても、彼女は裸体を見られるのを嫌がった。

 あの野猿はそんなことは気にしない、と言っていたがそれでも本気で嫌がっているのを察して気を遣うようになったようだが。

 

 「ふふっ……」

 「どう、して」

 

 アンの衣服を剥ぎ、うつ伏せにして。

 その背に痛々しく残る火傷痕を晒させる。過去に遭った火事により、母を失いアンにも刻まれた痕。

 この痕が切欠となりそれまで暮らしていた男爵家を追い出され、我がクラエス家に仕えることになった。

 私とアンの、切欠になった痕。

 

 「ひぁ……おやめを……どうか……!」

 

 それが堪らなく愛おしくって。火傷痕に舌を這わせる。

 自身の醜い傷を見られるだけでなく、触れられることにアンは抵抗するが……それでも、私に本気で逆らうことはできない。ただ、懇願することしかできない。

 

 「お嬢様、戯れでもこのようなことは」

 「黙りなさい」

 

 うつ伏せにしたアンの太股の上に体重をかけ、冷たい言葉で命じる。それだけで、アンは声を押し殺した。

 

 ああ、なんて愛らしい私のお人形。

 命じる通りにする、可愛い私のアン。そう、それでいいの。あの野猿の為のアンではなく、私のアンなのだから。

 指先で愛しい痕をなぞるように撫でる。

 アンの背中を覆い、尻の辺りまで広がる火傷痕。範囲は広いがそれほど深くはない。何年も経ち、本人が思うほど醜いものではない。

 主従の出逢いの切欠となったそれを撫でるのに下着が邪魔になって、それも剥いでしまう。

 

 「っ……」

 

 ブラとショーツまで剥がれて、羞恥に耳まで赤くするアン。目尻に浮かぶ涙も、とっくに別の理由になってしまっているのに。

 黙れ、という命が解けていないから何も言わない。

 

 「可愛いわ。私の、お人形のアン」

 

 うっとりと痕を撫で、舌を這わす。思わず出た言葉に、アンの身体がびくん、と跳ねた。

 そう、私はあの野猿とは違う。言いなりで、お人形のアンを愛おしいと思う元のカタリナ・クラエスだ。

 

 奪い返した。

 否。まだだ。

 

 もっと、もっと刻み込まなければ。あの野猿からアンを奪い返すには、もっと深い痕をつけ直さなければならない。

 そう願うと。

 

 「――っ!?」

 

 ずぎんッ。

 自身の股間……秘豆に、衝撃的な疼きが昇ってきて。

 

 「嘘でしょう……?」

 

 柔らかな寝巻のズボン。その上からでもはっきりとわかる、歪なカタチ。

 指で感触を確かめる。硬い、触れたそこにも感触がある。間違いなく私の一部。

 ズボンとショーツをずり下ろす。天突くように反りあがったソレ。

 ソレは私の股間に生えた……男性器だった。

 他の誰かの、男性器を実際見たことはない。ただ知識としてのみ知っており、どう使うのかを知っているだけ。

 何故こんなものが、私に備わったのか理解できないが……ちょうど、いい。

 

 「……っ、ッ!!」

 

 突然の事態に固まっていた主に目をやったアンも、この異常に気付く。

 沈黙を守りながらも、より抵抗の度が増した。

 これから何をされるのか、気づいたように。

 

 「大人しくなさい」

 

 抵抗を力で押さえ付け、更に耳元でそう囁く。それだけで、アンは怯えながらも何もできなくなった。

 

 「ああ……私のアン……」

 

 なんて愛らしい。

 無抵抗で、思うがままで。

 うつ伏せになったアンに馬乗りになったまま、熟れて豊満に育った尻肉を押し広げる。

 むっちりとした感触を愉しみながら開いた奥。

 まだ未開通の、ぴったりと閉じたそこに……男性器の先端を押し付ける。

 

 「っ、ゃ……!」

 「黙りなさいと、言ったはずよアン?」

 

 その感触に悲鳴を上げそうになったアンの耳元で囁く。

 愛撫もしていないアンの秘所は固く閉ざされているが、だらだらと噴き出している先走りを頼りに押し込む。

 ぎり、ぐち、ぬぶ……。

 先端が差し込まれる。口を、目を閉ざして必死に耐えるアンが愛おしい。もっと傷つけたい。私のモノだという印を、この身体へ刻み込みたい。

 体重をかけ無理矢理に捻じ込む。

 

 「あ、はぁ……!」

 

 挿入った。

 

 「~~~~……ッ!!」

 

 深くまで指が沈む尻肉を、痕が残る程強く掴みながら後背位での挿入。馬乗りになり、言葉で沈黙を守らせて。

 圧倒的な支配感に、心が満たされる。

 初めての挿入した男性器によってもたらされる快楽より、アンへの支配欲がより私を昂らせた。

 

 「良い、良いわよ……っ!」

 「ッ、ふ、ぅッ――!」

 

 アンは自身の両手で口元で抑え、必死に私の責めを享受している。そんな健気な仕草が、堪らない。

 湧き出る感情が、私が知っているはずのない雄の腰使いをさせる。

 

 初めての性交で乱暴。一方的な愛情による強姦。準備もできていない処女の姦通。

 アンにとっては苦痛でしかないはずなのに。

 

 愛おしい私のお人形は、ただ受け入れる。

 私の傍こそが、自身の居場所だと望んだから。

 あの野猿の為に臨機応変に、時には主に逆らってまで仕える人間のアンはもう必要ない。

 今の私……カタリナ・クラエスに必要なのは、お人形のアンなのだから。

 

 「私の……私の、アン……!」

 

 はっ、はっと犬のように息を荒げ、背中の火傷痕を舐めしゃぶりながら。

 軋むベッドの跳ね上がりに合わせてアンの尻に、強く腰を何度も叩きつける。

 いつしか濡れてきた秘所に、深く、深く男性器が捻じ込まれていく。もっと、もっと深く。決して消えない傷痕をアンに残す為に。

 

 「っ、あっ、あっ……」

 

 限界はすぐに来た。

 一番深くまで突き刺し、背筋を反らせ。

 びゅぐ、びゅる、びゅるるるるる……!!

 男性器の芯を熱く太い何かが焼きながら昇り、先端から噴き出る。

 あまりの快楽に脳が灼き切れそうになりながらも、本能のまま腰をアンの尻により強く押し付ける。

 

 「っ……ふーッ……ふーッ……」

 

 枕に顔を押し付け、ぶるり、と震えて吐息を荒くするアンを見下ろしながら。

 支配欲、達成感、愛情……どろどろとした感情が渦巻く。

 これが、射精。種付け。交尾。

 なんて浅ましく、下種な感情。これは、男達が夢中になるわけだ。

 びゅぐ、びく……っと長い射精がゆっくりと収まっていく。だが、まだまだ足りなかった。

 

 「っひ……!」

 

 アンの膣内で、未だ硬いままの男性器を今度はゆっくりと前後させる。

 まだ、もっと。

 色々なことを知りたい。試したい。

 覚えたてで、我儘な私は欲求を我慢なんてしない。 

 相手はお人形のアンだ。私の遊び相手は、練習台に相応しいのは彼女しかいない。

 

 時間をかけゆっくり愉しんだり。女体のあらゆる所は柔らかく、男性器を悦ばせる。

 膣で、口で、手で、胸で、尻穴で。髪や足、脇でさえも。

 そうして朝まで、お人形遊びを愉しんだ。

 

 

 「んっ……れろぉ……」

 

 私が、カタリナ・クラエスに戻り何回目かの朝。アンと二人きりで、何度も迎えた朝。

 学園のベッドで目を覚ますと、股間に熱い感触があった。

 昨夜命じていた通り、私の可愛いお人形は朝の奉仕に励んでいるようだ。

 

 「おはよう、アン」

 「ちゅる……ふぁ、っ……おはよう、ございます……お嬢様」

 「続けなさい」

 

 シリウスによる眠りから目覚め、未だ体調が優れないという名目の下ずっと二人で性に溺れていた。

 アンに試せる全てを試し、今はこうしてアンにも淫らな手腕をしっかり覚えさせた。

 

 「はい……んっ、んっ……!」

 

 反り立った肉棒を深く、根本まで咥えるアン。喉奥に突き刺さるそれを苦もなく迎え入れ、舌が裏筋を揉み解すように波打つ。

 柔らかな唇が根本を搾り、温かな頬肉の裏側に包み込まれる。

 

 「んぐっ、ふぅ、ッ……!!」

 

 そのまま、喉を蠢かせ鼻からの呼吸と共に吸い上げられる。下品にじゅぽじゅぽと吸引の音を鳴らせながら、熟練の娼婦のような奉仕。

 きっちりとメイド服に身を包んだ彼女が、上目遣いにこちらを見上げる。

 

 「いい子よアン……」

 

 愛おしくその髪を撫でると、くすぐったそうに悦ぶアン。

 そんなにも尽くしてくれると……壊れるくらい滅茶苦茶にしたくなってしまうじゃない。

 

 「『使う』わよ」

 

 どうぞ、と肉棒を咥えたまま目線でアンが頷く。

 被虐の悦びに目覚めた彼女は、奉仕することと同じくらい『使われる』ことに性感を昂らせる。

 力を抜き、私に身を委ねたアンの頭を掴み。

 

 「っ、んぅッ」

 

 まるで淫具を扱うように、その口を『使う』。

 腰を突き出し、両手で頭を振らせて。

 アンの口端から泡立った涎が噴き出そうが、喉奥を強く突いて嘔吐こうが無視する。

 お人形に相応しい扱い。

 私も、彼女も悦んでいる。

 

 「ふッ……ふっ、ぅ……!」

 

 乱暴に扱われながらも、決して歯を当てないように受け入れるアン。ロングスカートに包まれた両足を捩らせながら、股間の疼きを我慢している。

 以前の奉仕中、勝手に自慰を始めたことを叱ったから。それを忘れず守っているのだろう。

 全てを以って奉仕させる。彼女が得るモノは、与えられるモノは主人たる私からでしかあり得ない。

 

 「――ッ、ぁ、はぁ……っ」

 

 アンの目が酸欠で虚ろになってきた所で限界を迎え、断りもなく喉奥で射精を始める。

 幾度もそうしてきたように、突然喉に叩きつけられた精液を必死に飲み下していくアン。

 射精の途中で肉棒を引き抜いて、アンの顔にも精液を塗りたくって汚す。

 

 「んぅっ……」

 

 ねっとりと顔にこびり付く精液を、蕩けた顔で受け入れるアン。髪もメイド服の胸元も汚して、一しきり満足すると再び口元へ。

 

 「はむっ……ん、今、お綺麗にいたします……」

 

 少し硬さを失った肉棒に再び奉仕させる。

 アンは精液や自身の涎を丁寧に、丁寧に舌で舐めとっていく。すっかり板についたとしか言いようがない。

 

 「ふぅ……」

 

 アンに奉仕をさせながら、ベッド脇のテーブルに用意させてあった水を口にする。

 何日も獣のように交わり眠り、食べてまた交わり……ようやく少し落ち着いた。

 

 私は野猿からカタリナ・クラエスに戻り、しかも男性器を備えているという異常事態。

 こんな身体では、恋しいジオルド様に抱いてもらえない。

 状況も私を陥れたシリウスは行方不明、マリアもずっと行方が知れないまま。

 

 そう、マリア。マリア・キャンベル。

 あの平民の娘だ。

 

 前世の記憶……げーむのふぉーちゅん・らばーとか言ったかしら。絵物語での主人公。

 私が野猿となった影響か、随分と状況は変わってしまったが。

 

 あの女が私を破滅に導くのだ。

 義弟のキースを誑かし、ジオルド様までも。

 許せない、そんなこと。

 偶然光の魔法に目覚めただけの平民が、公爵家の娘である私に盾突くなんて。

 

 必ず見つけて、傷モノにしてやろう。

 

 婚約者とはいえ、こんなモノを股間に下げている私はもうジオルド様と結ばれることはできない。

 恋する王子様と添い遂げる未来は閉ざされ、破滅と言っていい状況だ。

 だが、だからといってマリア・キャンベルが王子や義弟と添い遂げるなど許せるはずがない。

 私が手に入らないモノを、あの娘が手に入れる。そんな結末は許さない。

 

 無理矢理にでも手籠めにして、堕とす。

 

 アンに奉仕を中止させ、身支度を命じる。

 待っていなさい、マリア・キャンベル。

 貴女にも、破滅をくれてあげるわ。



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【2】狂い渦巻く部屋

 「カタリナ様……んぅ」

 「あっ、あぅ、そんな、いけません……っ」

 

 分厚いカーテンに閉ざされ、昼間にもかかわらず薄暗い部屋。

 寮の一室を、公爵家の権力を振りかざして『専用』にしたそこ。生活感のある家具は少なく、数人は同時に入れる巨大な浴槽やカウンターバーまで設置されている。

 大きな鏡や『それ』用の道具が、乱雑に床の上に置いてあるが。

 部屋の役割をよりはっきりと示すのは中央に置かれた、大きな円形のベッドだ。

 その上で、私達三人は全裸で絡み合うように、貪り合っていた。

 

 「何がいけないのかしら、ソフィア?」

 「こんなこと、あッ……!」

 

 口答えするソフィアの乳首を強めに捻り上げて黙らせる。白磁のように色素の薄い肌、ささやかな膨らみの上にある薄桃色が赤く充血する。

 すっかり固くなったそこを虐めておいてから、今度は優しくあやすように撫でて指先で転がす。

 

 ソフィアの言うことは真っ当だ。

 学生の身分でありながら、授業もろくに受けずこうして淫蕩の限りを尽くしている。

 相手も私が気に入った者ならば誰これ構わず。この二人以外にも、何人もの女生徒がここを訪れたり連れ込まれたりしている。

 最近この部屋に通い始めた彼女には、まだ罪悪感が残っているのだろう。

 

 「いけないことなんてありませんわ……ねぇ?」

 

 先ほどまで私の男性器に奉仕していたメアリが責めに参加する。後ろに回り込んで下半身に手を伸ばし、既に濡れ始めた秘所を搔き乱す。

 

 「あっ、ひっ……んぅッ……!」

 

 胸を私に、下半身をメアリに一斉に責められたソフィアはあっという間に全身を震わせ達してしまった。ぐったりともたれかかる彼女を抱き留め、美しい白い髪を撫でる。

 そんな仕草に嫉妬を覚えたのか、メアリも自身の髪を撫でて欲しいと強請ってくる。まったく愛らしい子。

 

 「カタリナ様……次は、私にも……」

 

 おねだりするメアリを抱き寄せて、腰の上に袴らせる。

 

 「ほら、挿入れさせてあげる。できるわよね?」

 「は、はいっ……」

 

 嬉しそうに、私の男性器に秘所を押し付けるメアリ。随分と調教が進んだ。

 

 私が男性器という余計なモノごと、カタリナ・クラエスを取り戻してから。

 王子様との結婚という、輝かしい将来が消え去った絶望から目を背けるようにこんな日々を続けている。

 アンで味を知り、それだけでは飽き足らずこの友人達にも手を付けた。メアリは元々私が野猿だった頃から、こういう関係を望んでいたから簡単だった。処女を奪った時は泣いて喜んだ程だ。

 

 「っ、うぅ……あ、はぁ……っ」

 

 赤褐色の髪を揺らしながら、メアリが男性器を咥え込む。

 胸と同様肉付きの良い尻と太股が私の腰にのしかかり、柔らかな肌が密着する。膣は既にどろどろに蕩けていて、男性器が溶けてしまいそうな錯覚をするほど熱い。

 

 「いい子よメアリ……ほら、私を喜ばせなさい?」

 「はい、カタリナ様っ」

 

 ぬぢ、ぬぢ、と鈍く重い粘液の音を鳴らしながらメアリが私の上で腰を振り始める。

 その度に毬のように巨大な胸が揺れ、淫靡に踊っている。

 

 「ふっ、あ、はぁっ、カタリナ様っ、カタリナ様ぁ……!」

 

 必死になって覚えたばかりの腰使いで私を喜ばせようとするメアリ。その甲斐甲斐しさに、愛おしさが溢れそうになる。

 男性器はメアリの豊満な肉体にますます硬さを増して、自身も下から突き上げるように腰を浮かしそうになるが……やめた。

 

 「ソフィア……んぅ」

 「あ、ん……っ」

 「――ッ!!」

 

 隣でまだ絶頂の余韻に浸っていたソフィアの顔を引き寄せて、口づけする。小柄な彼女の唇は小さく、その中にある薄い舌も簡単に絡みとれた。

 舌と舌とが絡み合い、蕩けた瞳同士も絡ませる。愛し合う二人の姿。

 

 「カタリナ様……いやです、いまお相手しているのはっ」

 「ぷぁ……なら、飽きられないよう努力なさいな」

 

 突き飛ばすような私の冷たい言葉。我ながら下種の所業だが、こうすればメアリはより燃え上がるのを知っていた。だからこうして、ソフィアや他の女の子を交えて交わることが多い。

 嫉妬心が強く、努力家。その在り方は野猿によって開花し、立派な貴族令嬢として彼女を強くしたが。

 今はこうして、私に悪用されている。

 

 「が、がんばりますっ、私、がんばりますからぁ……!」

 

 他の女の子との行為を見せつけられ、より必死に腰を激しく振るメアリ。締め付けが増し、愛液の量も増して接合部が白く泡立つほどに。

 

 「可愛いわ、メアリ」

 

 そんな姿が愛おしくて、片腕にソフィアを抱きながらもう片方で揺れる乳房を掴み乱暴に揉みしだく。

 大きめの乳首を指で挟み玩具のように弄ぶ。

 

 「ひぎっ、あっ」

 「ほら、頑張りなさいメアリ……」

 

 メアリの奉仕を邪魔するように愛撫しておきながら、更に煽る。昂っている性感をより刺激されながらも私を気持ちよくする為に、私に愛される為に尽くすその姿。

 男性器が限界まで膨らむ。

 堪らなくなって、下ろされてくる腰を迎え撃つように自身の腰を突き上げた。

 

 「っ……っ、っ!!」

 

 声にならない悲鳴を上げるメアリ。最奥に先端が叩きつけられ、思わず腰が止まってしまったようだ。痙攣するように震える尻肉から、既に達したことが分かった。

 だが。

 

 「もう、ダメな子ねメアリ」

 「いっ……あッ、いま、だめですカタリナさまっ、あッ!?」

 

 力が抜けたメアリをベッドに押し倒し、今度は正面から私が思うさまに腰を振り始める。

 絶頂の波が収まりきらない内から責められるメアリは、息も絶え絶えに制止しようとするがやめない。

 

 もう既に私も絶頂が近づいている。正常位で組付き、見下ろすメアリの女性らしい肉体。豊かな胸にくびれた腰、肉感のある尻。

 雌として優れた肉体。種付けし、子を産ませたいと思わせる淫らな肉体。

 それしか目に映らず、ただひたすらに夢中になって男性器を打ち込み続ける。

 射精したい、射精したい射精したい。

 浅はかな、それこそ猿のように。

 

 「いぐっ、イっで、くだひゃいっ、あッあ!」

 

 拷問のような責めを受けて涙と涎、そして汗でぐちゃぐちゃになったメアリが懇願する。

 立派な貴族令嬢たる彼女を堕とした満足感に心が満たされ、一番深くまで突き込んで……我慢を手放す。

 

 「ッ……あッ――!!」

 

 両手両脚を、私に絡みつかせるようにしがみ付くメアリ。巨乳が押し潰されるのも構わず全身を密着させあいながらの絶頂。

 征服欲が満たされるままにする射精は太く長い。

 射精により怒張が増した男性器で、メアリの秘所を押し広げながら行う種付けは脳を焼くほどの快楽だ。

 いつまでもこの快楽に浸っていたいが……今日は、次もある。

 

 「カタリナ様……」

 「貴女もすぐ愛してあげるわ、ソフィア」

 

 本能のままの交わりを、じっと見ていたソフィア。

 未だ臍の辺りまで反り返ったままの男性器が、収まりきらない精液をまき散らしながらメアリの膣から引き抜かれる。栓が抜かれたことで、膣から精液と愛液のミックスが噴き出すように溢れ出た。

 その様子に、ソフィアはルビーのように美しい赤い瞳を恐怖と期待に染める。

 

 「ほら、おいでなさい」

 

 おずおずと、差し出した私の手を取るソフィアの細腕。

 今度は互いに座ったまま後ろから。アンでありとあらゆる体位を試し、どれも良いモノだったが小柄なソフィアの場合こちらの方が具合が良かった。

 

 「は、恥ずかしいです……こんな、格好……っ」

 

 膝の上に座らせたソフィアの膝裏に手を伸ばし、両脚を開かせる。

 ちょうど、大きな鏡の正面で。

 

 「いやです、カタリナ様、見ないでぇ……」

 

 羞恥から、両手で顔を覆うソフィア。色素の薄い肌がはっきりと紅潮している。

 ソフィアは呪われた子と忌み嫌われ野猿と出逢うまで、ほとんど屋敷から出ることなく人目を厭っていた。

 強い羞恥心を持つ彼女にこの仕打ちは酷だろうが、だからこそ私の欲望を駆り立てる。

 

 「だめよソフィア……隠しちゃだめ」

 「あっ、やめっ」

 

 抵抗するソフィアを、手近にあった『それ』用の道具で拘束する。黒革の手錠を後ろ手に嵌められたソフィアは、必死に鏡の方を見ないようにしている。

 だが、理性ある彼女を堕とす準備はしてあった。

 枕元に置いてあった、小さな香り袋。それをソフィアの口元に押し付ける。

 

 「――っ……ッ」

 

 突然押し付けられた袋に、目を白黒させていたが。

 

 「ふぁ……あ……」

 

 ソフィアの赤い瞳が、どろりと溶けたように濁る。

 香り袋の中身は、メアリに調合させた薬草だ。緑の手を持つ彼女に用意させた、交わりの際に用いるモノ。要は媚薬の一種なのだが、メアリが改良を続けた結果ずいぶんと強力なモノに仕上がっていた。

 

 「っ、あっ、だめっ、だめなのに」

 「可愛いわ、ソフィア」

 

 まだ触れてもいないソフィアの秘所から、ぷしっ、と潮が吹き出す。

 私の膝の上に乗せられ、両脚を開かれた痴態は大きな姿見にあますことなく晒されているがもうソフィアは目を離せなくなっていた。

 むしろ食い入るように自身の恥ずかしい姿に見入っている。

 そんな可愛らしいソフィアに我慢出来ようはずもなく、垂れ落ちた愛液に濡れた男性器を小柄に見合った膣口に押し当て。

 

 「んぅうぅうううううッッッ!!」

 

 躊躇なく、捻じ込んだ。

 オーバーサイズの男性器に、ソフィアの小柄が跳ねるが拘束され両脚も掴まれ成すすべがない。

 みぢッ、と膣口が悲鳴を上げるように押し広げられて鏡に映る。

 壊れてしまいそうなほどに痛々しい様子だが。

 

 「ぁっ……カタリナ、さまぁ……っ、あッ、ぁッ」

 

 ソフィアは挿入れられただけ、ただそれだけでまた絶頂に浸っていた。香り袋により理性を飛ばされ、痛みすら快楽となって。

 鏡に晒される己の痴態が、さらにそれを加速させ連続の絶頂がソフィアを襲っていた。

 まだ数えるほどしか私の男性器を迎え入れていない膣は、硬さを残しているがそれ故に締め付けは強く穿ち甲斐がある。

 

 「ッ、動くわよ……!」

 「ひ、ひぁ、あッ……」

 

 同意を待つことなく腰を振り始める。軽い体重のソフィアを抱えるのに十分な力を持つ私は、それこそ玩具のようにソフィアを扱えた。

 同世代というのに未発達で、慎ましい肉付きの彼女を抱いていると幼い子供を相手にしているような錯覚に陥る。

 なのにそんな倒錯がより私を昂らせ、腰使いを激しくさせた。

 

 「ソフィアっ、あッ、んッ」

 「カタリナさま、カタリナさまぁ……っ」

 

 互いの名を呼び合い、交わる。

 鏡に映された獣のような交尾が互いの目に入ることで、より興奮を高めていく。

 もっと。もっと。

 狂うほどに快楽に浸りたい。

 

 もう、破滅してしまった今。絶望しかない将来なんて、考えられない程に。

 

 「もっと……もっと……ッ!」

 

 狂いたい。

 ソフィアを押し倒し、後ろ手に拘束された彼女を犯しながら。

 媚香が詰まった袋を引き裂くように開け、中身を撒き散らす。

 大きなベッドの上に色鮮やかな花弁や香木が広げられ、部屋中にあっという間に香りが広がっていく。

 鼻孔に濃厚な、薬品のような香りが刺さり。

 

 「アっ、ああああぁぁあぁああぁあああああああッッッ」

 「……ッ、っ……」

 

 絶叫と共に、達した。

 ソフィアの掌に収まってしまいそうな小さな白い尻肉を鷲掴みにして、深くまで捻じ込んでまた射精する。

 拘束され、頭をベッドに押し付けられる形になったソフィアは壊れてしまったかのように声すら上げずそれを受け止めた。

 容量の低いソフィアの膣はすぐに溢れ、接合部から固形のように粘度の高い精液を零しているが構わず細かく膣を突き上げながら射精を続けていく。

 

 「あ、はぁ……っ」

 

 絶頂に、欲望に浸り狂う。

 そのまま使い捨てのように、気絶してしまったソフィアをベッドに転がしておいて。

 

 「かたりなさま……わたしも、もっと、くだ、ひゃい……」

 

 先ほど流し込まれた精液と愛液を、ぐちょぐちょと搔き乱すように自慰に浸っていたメアリ。

 彼女もまた、撒き散らされた自作の媚香に狂っている。

 ソフィアが終わり、またメアリと交わう。それが済んだら、また。

 二人揃って終わってしまったのなら、部屋の前に待機させているアンにお気に入りの女生徒を呼ばせて。

 まとめて、また。

 

 「ええ。もっと、狂いましょう……」

 

 狂った宴は終わらない。

 終わってしまえば、絶望がまた顔を出す。だから、終わらせない。



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【END】闇と光は溶け合う

 夜の闇が深まって。

 今宵も、私はそこを訪れる。

 

 学園の外れにある、倉庫の中。隠し扉の先。

 そこに。

 

 「……」

 

 私――カタリナ・クラエスの姿を見ても、何一つ言葉を発することはない。

 片足を鎖で繋がれたまま、ただ私を睨んでいる。

 

 半月近く経っても、まだ心は折れていないようだ。

 

 「可愛そうなマリア。どうすれば貴女は、屈してくれるのかしら?」

 

 そのいじらしい姿に、嗜虐心が煽られる。

 

 マリア・キャンベルは、ずっとここに囚われている。

 ……私が私を取り戻して、アンでお人形遊びに耽った後。居場所はすぐに分かった。

 夢のお告げとも言うべきか。誰かが教えてくれたような気もするが、記憶は朧げ。ただ、薄れてしまった野猿の為に教えてくれたようだ。

 それを今は、こうして私が悪用している。否、カタリナ・クラエスは『私』なのだから利用することに何の罪があるというのか。

 

 殺風景なレンガ敷の部屋には、ベッドと椅子、机が運び込まれている。だが長期の収監の為明り取りの窓には鉄格子が嵌められ、ベッドと机は床に固定。

 トイレにあった仕切りも取り払い、まさしく罪人の為の牢獄となっていた。

 食事などの面倒はアンに見させている。この部屋のことと、マリアのことを知っているのは私とアンだけだ。

 ここにマリアを閉じ込めていた元々の主は……消えてもらった。公爵家ともなれば、そういった汚れ仕事を喜んでする人間を何人も影で飼っている。

 お父様にも内密に処理し、今この部屋の主は私だ。

 

 「返して、ください」

 「はぁ……また、それなの? 私がカタリナ・クラエスだと――」

 「違います!! あの、方は……っ」

 

 平手で、打つ。

 狭い室内に鋭い音が反響し、マリアの白い頬が朱に染まる。

 

 「っ、返して……」

 

 翻る手の甲で打つ。

 側頭部に刺さるように骨同士が鈍い音を立て、長い監禁で消耗したマリアは硬い床に倒れた。

 

 「……返してください、カタリナ様、を……」

 「いい加減、認めて欲しいのだけれどね」

 

 気に入らない。

 マリア・キャンベルはこうしてずっと、私を私と認めていない。

 ふぉーちゅん・らばーとか言う、絵物語の主人公。野猿を深く慕っていたマリアは、野猿こそがカタリナ・クラエスであると信じている。

 全くもって気に入らない。

 私を破滅に導くこの女を破滅させようと。

 囚われのままにしたというのに、心折れずにずっと野猿の帰還を望んでいる。

 

 最初は、痛みで認めさせようとした。

 考え得る全ての痛みを与えた。

 拘束し、突き刺し剥がし搔き乱した。私が私であることを認めるまで、死なせる訳にはいかなかったので加減はしたが。

 

 ――いくら痛みを与えてもマリアは屈しなかった。

 苦しめて、アンに応急手当をさせ、自身の光魔法で自身を治療させる。それを何度繰り返しても、結果は変わらなかった。

 

 メアリやソフィアの調教を進めて、利用すべきかしら。

 お優しい聖女のマリア・キャンベル様なら、親しい友人が共に墜ちようと囁くか……いや、目の前で痛めつけでもすれば墜ちるだろうか。

 だが、それでは心から私を私と認めたことにはならないだろう。

 

 「そうね。こういうのは、どうかしら」

 「……何を」

 

 言葉の、彩を変える。

 

 「マリアっ」

 

 ……ああ。これが、正解だったのね。

 

 「やめて」

 「マリア、大好きよ!」

 「やめて……! おねがい……!!」

 「マリア、愛しているわ!」

 「やめ、やッ、あッあッ――ッ!!!!」

 

 マリアが酷く狼狽し、叫び声を上げる。

 見てはいけないモノを見てしまったように。聴いてはいけない声を聴いてしまったように。

 この私が、野猿の真似をすることは不快極まりないが。

 野猿のしていたように彼女を純真そうに見つめる。野猿のしていたように朗らかな声で名を呼ぶ。

 

 そして、愛を囁く。

 

 望んでいたからこそ、この囁きは心を壊す。野猿の愛を欲していた、マリアだから。

 目の前にいるのは間違いなくカタリナ・クラエスである。マリア・キャンベルが慕い、ずっと一緒にいたかった存在。

 今までただの友人で。

 王家に嫁ぐカタリナとは、いずれ遠ざかってしまう運命にあった平民の彼女には。

 

 「マリア……愛してあげるわ」

 「かたりな、さま」

 

 あまりにも惨い、欲望の毒だった。

 カタリナに愛されたい。例え、それが偽りであったとしても。

 疲弊した精神と肉体はその毒に縋ってしまいたかった。

 

 「結ばれましょう。ずっと、一緒にいましょう」

 「は、い……カタリナ様……」

 

 認めた。

 マリアは、私をカタリナ・クラエスであると認めた。

 心が澄み切ったように、晴れやかになる。

 マリアと堕としたことで、ようやく私は野猿から全てを取り戻したと確信できた。

 

 「ああ、大好き。大好きよマリア」

 

 その途端、マリアのことが心から愛おしく思えた。

 ああ、なんて愛らしいの。

 私を見つめ、虚ろな目で微笑むマリア。私を私と認めてくれた、彼女が愛らしい。

 その頬を優しく撫でる。先ほど私が打った、赤い痕が痛々しい。

 もっと、もっと私を刻み込みたい。

 

 「んぅ……」

 「あっ、んっ」

 

 口付け、舌をすぐさま捻じ込む。マリアの甘い唾液の味。

 蕩ける甘露を掬い取って、喉に落とす。甘美な香りが鼻孔を満たす。

 初めての口付け、それも深いそれに怯えるマリアの舌を舌で襲い絡みつける。

 

 「ぢゅ、じゅるっ、んぁ……」

 「ひぁ……ぁ、カタリナ、さまぁっ」

 

 マリアが恍惚として、私に奪われるに任せている。夢にまで見た私の愛を、全身で受け取るように強く抱き付く。

 不慣れながらも、舌の絡み合いに応じ始めたマリアがより愛おしくなって私も抱き締める。

 

 もっと、強く。

 より強く繋がりたくなって、邪魔な衣服を互いに剥いでいく。舌と舌が舞踏のように踊っている内に、気づけば互いに全裸だった。

 ベッドに押し倒し、その裸体を見下ろす。

 拷問の最中、羞恥を煽ってみようと前にもその裸体は晒させたが。

 

 「綺麗よ、マリア……ほんとうに、綺麗……」

 

 今は、こんなにも美しい。

 前は私を睨みながら羞恥に耐えていたマリアは、今こうして私の言葉に恥ずかしそうに。嬉しそうに、俯いて目を逸らした。

 メアリや私ほど大きくはないが、椀型に整った形の乳房に優しく触れる。ふるり、と怯えるように震えた仕草も可愛くて。

 

 「っ、あっ、ひぅ!?」

 

 ぷっくりと慎ましそうに膨らんだ、薄桃色の頂に吸い付いた。

 小指の先ほどの小さな乳首は舌先ではっきりわかるほどに隆起していて、劣情を煽り立てる。

 性的な刺激に慣れていないマリアを安心させるように、ふわりとした金髪を撫でる。

 それだけでマリアは落ち着き、貪るような愛撫で与えられる快楽を受け入れようとしている。

 

 「あっ、ん……ぁっ」

 

 マリアの反応を見ながら、愛撫を続けていく。

 これまで何人もの処女を奪ってきた。時には乱雑に、時には優しく。

 経験を積んだことで、初めての娘の扱いには慣れていた。その全てをマリアにぶつけ、彼女の身体を解いてく。

 メアリの香り袋を使えばもっと簡単だが、マリアとの初めてにそんな無粋なモノは使いたくなかった。

 

 「いっ、あっ……これ、あっ、こわいですっ、カタリナ、さまっ」

 「大丈夫よマリア。すべて、ゆだねて……んぅっ」

 

 秘所に口付け、秘核を羽で撫でるように刺激する。

 自慰すらしたことがないのでは、と思うほど綺麗に閉じたマリアの秘所はじっくりと時間をかけ薄っすらと開き始めている。

 おそらく、そろそろだろう。

 

 「さあ、マリア……繋がりましょう」

 「あ、あぁ……っ、カタリナ様……嬉しいです……っ」

 

 このまま絶頂に導くことも出来たが、愛撫を切り上げる。最初の絶頂は、繋がって迎えたい。

 マリアは私の男性器に、狼狽えはしたが。

 

 「愛しているわ、マリア。私の子供を、産んで欲しいの……」

 「あか、ちゃん……私と、カタリナ様の……」

 

 男性器をマリアの秘所に押し当て、望む。

 彼女を、孕ませたい。

 マリアの子宮を私の精液で満たしたい。中出し。種付け。子作り。

 

 「私も、カタリナ様のあかちゃんほしい、です……カタリナ様」

 

 愛しております。

 その言葉を受け止めて、男性器をゆっくりマリアの膣に埋めていく。

 充分に愛撫したとはいえ初物。痛みは消しようがないが、気遣いながら慣らしていく。

 マリアの処女を奪う。

 それはあまりにも甘美な行為で、少しでも長くこの瞬間を感じていたかった。

 じっくり、じっくりとマリアの膣に男性器を進めてゆき。

 最奥に、辿り着いた。

 

 「これで、マリアは私のモノよ」

 「っ、ぅ……は、いっ……ああ、なんて、幸せ……かたりな、さまぁ……っ」

 

 目尻に雫を浮かばせながらも、マリアが花咲くように笑う。

 私も、多幸感に胸が満たされる。

 

 「ゆっくり、動くから。無理をしてはだめよ」

 「はい……っ」

 

 もどかしい程、男性器を緩く動かす。マリアの膣肉は固く、締め付けは強すぎる程だ。

 具合の良いだけの娘は、これまで何人もいた。具合の好みだけで言えばメアリの方が良い。

 だが。

 

 「ちゅっ、んっ……」

 「ふぁ、あ、っ」

 

 啄むようなキス。髪、耳、頬。首、腕、おなか。尻、太股。両の手でマリアの至る所に触れる。

 触れれば触れる程に愛おしさが増していく。

 ほとんど男性器を動かしていないにも関わらず、快楽は天井知らずに高まっていった。

 

 愛おしい。

 たったそれだけで、こんなにも気持ちよくなれるだなんて。

 

 「マリア……っ、好きよ……っ」

 「私もっ、愛して、おりますっ……!」

 

 正面から抱き合い、愛の言葉を交換する。

 長い時間をかけている性交で、互いの身体は体液塗れ。それでも気遣いから緩い動きを続ける姿は、ナメクジの交尾のようだった。

 

 いつまでもこうしていたい。

 

 互いに互いが、そう思っていた。だが、終わりはくる。

 

 「ふっ、ぁ、マリア、まりあっ」

 「かたりなさまっ、かたりなさまぁ……!!」

 

 限界を互いに迎え始める。

 蕩け切ったマリアの膣、その僅かな緩みを頼りに腰を小刻みに。震わせるように、捻じ込む。

 射精を我慢し続け膨らんだ男性器、それを大きく動かすことはできない。

 

 「まりあ、でちゃう、でちゃうよっ」

 「ください、かたりなさまっ」

 

 だが、愛という麻薬に沈み切った私達は全てが劇物のような快楽になっていた。

 愛おしい。マリアと、子供を作りたい。

 その一心で最奥に。最後に、全力で深く貫いて。

 

 ――どぷ。どぷっ、どぐんッ、びゅりゅ、びゅっ……びゅッ……!!

 

 しがみ付き合いながら、吐精する。

 勢いの強い射精ではない。漏れた、と言う表現が相応しい。

 だからこそ吐き出た精液は濃く、多い。

 

 永遠に思える程の射精。

 

 これまで何人とも交わった。

 だが、これほど濃厚で大量の精液を一度に射精したのは初めてだった。

 自身の中にある全ての精を、出し切った。性欲が全て吐き出され、それをマリアが受け止めてくれているという幸せ。

 マリアの膣も小刻みに震えていて。絶頂を共有できたことを感じられた。

 

 「あっあっ、あっ……っ」

 「ふあ、あ、ああ、ぁ……っ」

 

 溶け合って。

 全てを出し切り。

 最後には、愛おしさだけが残った。

 

 「マリア……」

 

 まだ繋がったまま、視線と視線を絡ませ合う。

 激しさとは無縁だったが、長時間の交わりで体力を互いに使い切った。

 心地よい疲労感。マリアの温もりが、肌に馴染んでいる。マリアも、私の温もりをそう感じてくれているだろうか。

 

 「カタリナ様……お慕い、しております……」

 

 杞憂だったようだ。

 世界一美しい顔で微笑むマリアと抱き合ったまま、眠る。

 私は、私になれた。

 

 野猿のように、純真で誰にでも優しいカタリナ・クラエスではない。

 だからジオルド王子や、他の殿方に愛されることはできない。

 けれど、一番欲しいモノを手に入れた。

 私は、私のままで。

 

 ――私は、カタリナ・クラエスだ。




これにて乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったが追い出されてしまった…完結となります。
短い連載となりましたがお気に入り、ご感想、ご評価、UAとありがとうございました。
あとがきは例によって活動報告にて。


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