この素晴らしい装者に祝福を! (クロウド、)
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プロローグ〜物理教師佐藤和真〜

佐藤和真 20歳(教師としての年齢は25歳。生徒になめられないため)
容姿 黒スーツに白衣と伊達メガネ 
髪が少し眺めで後ろで束ねている
身長は大分伸びて178cm
プロローグの通りツヴァイウィングのライブ会場に飛ばされノイズ共を撃退(奏生存)。その際、死にかけの響を回復魔法とドレインタッチによる生気の供給で助ける。そのまま二課に直行。元の世界に戻る方法を探すことを条件に所属。
助けた響のことが気になりその状況に絶句、ちょうどいじめられていた響と未来を見つけ助けることで接点を持つ。(奏と翼も和真経由で知り合う)
その後、源十郎の勧めで装者との連携のため教師になる(後に用務員で良かったのではないかと言ったら盛大に目をそらされた)。
ノイズには魔法系スキルが効くとわかっている。


「えぇ、であるからして慣性の法則というのは静止している物体は静止し続け、運動している物体はそのまま動き続ける。このときの運動を等速直線運動、または等速度運動という。ここテストに出すぞ」

 

 口に出した内容を黒板に書いていき、重要な部分に丸で囲んで生徒達に一言つける。

 

 ノートを板書できてるか確認するために振り返ると、視界の端に机に隠れてコソコソと動き回る影が目に映る。

 

 はぁ、またか。

 

「立花……そんなに先生をチョーク投げ名人にしたいのか?」

 

 俺は眼鏡のブリッジをクイッと上げて手に持ったチョークをこそこそと自分の席に座ろうとしている女子生徒に向ける。生徒は名前を呼ばれると、バツの悪い顔で立ち上がり俺を見る。

 

 生徒の名は立花響。うちのクラス一の問題児で個人的にも俺と付き合いのある少女だ。

 

「えっとぉ、和真sイタっ!」

 

「『佐藤先生』だ。休み時間、俺のとこに来い」

 

「……は〜い」

 

 結局、指の隙間から放たれたチョークは彼女の頭にヒットして真っ二つに折れて床に落ちて粉々になった。俺は予備のチョークを取り出しながら響に注意をして黒板に向き直った。

 

 しぶしぶ座る響の返事にクラスからクスクスという笑い声が聞こえてきた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「今度は人助けじゃなくて猫助け、か。ったく、猫の手も借りたいのはこっちだっつの」

 

「あっ、うまい!イタっ」

 

「お前、反省してんのか?」

 

 休み時間人気のない廊下に響を呼び、授業に遅れた理由を聞いているが、反省の色が全く見えない響の頭に出席簿でポンッと叩く。

 

 どうやら彼女、木の上から降りられなくなった猫を助けようとして授業に遅れたらしい。今までもよくあったことだが彼女は人助けが趣味と言われるほどのお人好しだ。こんなことも珍しくない。お陰で担任の俺は毎日毎日大変だ。

 

 俺は呆れのこもった溜息を吐く。

 

「立花、お前の人の良さは美点だ。それはよくわかってるが、限度ってもんがあるだろ?」

 

「でも、和真さん……。」

 

 ポンッ

 

「アテッ」

 

「『佐藤先生』だ」

 

 もう一度出席簿で軽く頭をたたき何度目かになる注意をする。校内で『愛称』で呼ぶなって言ってんのに……。

 

「そんなに頭叩いて私が馬鹿になったらどうするんですか?」

 

「既に馬鹿でアホの子だろうが、お前は」

 

「とても先生とは思えない発言っ!?」

 

 やかましい。こっちは、お前の説教にも疲れてんだ。未来と奏あたりもそう思ってるだろうし。

 

 もういい、さっさと終わらせてしまおう。

 

「自分を犠牲にしてまで誰かを助けるなんてただの自己満足だ……自分以外誰も望まない」

 

「……でも、かず……佐藤先生も同じことをしますよね」

 

「ーーーさぁな、話は終わりだ。あまり迷惑をかけないでくれよ」

 

 彼女に背を向け人気のない廊下をあるき出す。

 

「『自己犠牲は……自分以外誰も望まない』、か」

 

 響から見えなくなった曲がり角でさっき響に言った言葉を反芻する。

 

「ったく、どの口でいってんだか……。」

 

 懐から、ボロボロになったお守りを取り出す。

 

 嘗て、自分にとある少女達が送ってくれたお守り。戦いの果にボロボロになってしまったがなんとか形だけはもとに戻して縫い直した『紅魔族』に伝わるお守り。

 

「なぁ、お前らはどう思う?」

 

 ……アクア、めぐみん、ダクネス。

 

 お前らは……俺になんて言うんだろうな?

 

 ーーー俺の名は佐藤和真。かつて魔王を道連れに自爆した……最悪にかっこ悪い勇者。

 

 現在は私立リディアン音楽院の物理教師だ。




職業が『勇者』に変化。転生した世界のあらゆるスキルの使用可能になる。
和真さんは世界を渡ったことにより位相差障壁を無効にする力を備わっていた。因みに炭化は無効にされていないのでノイズに触れれば普通に死ぬ。

感想、評価お待ちしています。反応が良ければ連載しようかな〜って思ってます。


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この二人の歌姫と雑談を!

感想、評価お待ちしています。


 ーーーこの世界にはノイズという、特異災害に指定された存在がいる。それに触れた人間は炭化し、死亡する。さらには通常の兵器は効かない。それに唯一対抗できるのはシンフォギアという聖遺物を組み込んで作られた鎧が必要だ。それを起動させる鍵は『歌』。

 

 歌姫の歌のみがノイズを倒すことができる。

 

 しかし、そこに……本来存在するはずのない力が紛れ込んだとしたら?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 とある、地下施設のとある一室。俺はテーブルを挟んで二人の少女と向かい合って愚痴をこぼしていた。

 

「ったく、アイツと来たらいつまでも学校での俺の呼び方を間違えるんだぜ?変な噂が立ったらどうするんだって話だ」

 

「確かに生徒と教師でそういう関係になればまずいですが……。」

 

「それくらいいいんじゃん?名前で呼び合うくらい」

 

 俺のこぼした愚痴に二人の少女は渋い顔をする。

 

 この二人は俺と同じある組織に属している人物だ。蒼い髪の少女は風鳴翼。赤い髪の少女は天羽奏。『ツヴァイウィング』というツインボーカルユニットだ。所謂、トップアイドル様ってやつだ。

 

「馬鹿。噂だけでも大問題だ、教師と生徒。援交だぞ?」

 

「そんなに教師の名に傷がつくのが嫌なのか?」

 

「俺じゃない、響だ。ただでさえアイツは二年前に苦しんでるんだ。ああいうメディアの怖さはアイツが一番知ってる」

 

 響は二年前、俺とこの二人が出会うきっかけになったある事件が原因で世間から酷いバッシングを受けた。まぁ、それがきっかけで俺達は出会うことになったんだがな。

 

「相変わらず捻くれてんなぁ〜」

 

「うるさい、余計なことを言うな」

 

 ニヤニヤして俺を見る奏の言葉にあしらうのが面倒くさくなってそっぽを向く。全く、相変わらず口の減らない奴め。

 

 その様子を見ていた翼がクスクスと口元を抑えて笑みをこぼす。この娘がこんなふうに笑うことなんて普段は滅多にないんだがな。まぁ、それだけ心をひらいてくれたと思えば嬉しいことなんだが。最初にあった頃は本当に目線だけで殺されそうなくらい信頼されてなかったからな。

 

「でもなるほど、この間食堂で立花と相席したとき『最近和真さんが冷たい』と言っていたのはそういうことだったんですね」

 

「少し前まで本物の兄妹みたいに仲が良かったのにな……こっちが嫉妬するくらい」

 

「なんか言ったか?」

 

「別にぃ。なぁ翼?」

 

「えっ、えぇ……!」

 

 何故か、奏が口を尖らせた。話を振られた翼もなんかおかしいし。

 

「それにして、和真さんはここに入ってから随分イメージが変わりましたね」

 

「おやっさんみたいな化け物に二年間しごかれれば変わるだろ。おまけに今の俺は教師だ、心身ともに成長しないほうがおかしいだろう」

 

「アタシたち見て鼻の下伸ばしてた和真が懐かしいな」

 

「なっ!?」

 

 奏が思い出したように漏らした爆弾発言に翼が顔を赤くして反応する。

 

「ま、待て、それはいつの話だ?そんな記憶はないんだが!?」

 

 待て待て、確かに初めてあったときなかなか際どい格好しているなと思ったが、鼻の下伸ばしてなんていない筈だ……多分、きっと!!

 

「冗談、冗談。確かに目のやり場には困ってたっぽいけど鼻の下伸ばしたりしてなかったって」

 

「奏ぇ……。」

 

 こ、こいつッ……!

 

「奏、お前なぁ!久しぶりにドレインタッチの刑に処されたいのか?」

 

 俺の右手に敵の魔力お体力を奪うスキル『ドレインタッチ』を発動させるときの紫色の特有の光が灯る。それを見た奏が顔を青くして後ずさる。

 

「い、いや、悪かったよ……。だからアレは勘弁して。めちゃくちゃ辛いんだから」

 

 以前、それによって深いトラウマを受けた奏は必死だ。それはそうだろう、この世界に魔力はない。よって『魔力』の代わりに吸い取られるのは体力を含めた純粋な『生命力』。吸われ過ぎれば貧血にも似た強烈な不快感に襲われるのだから。

 

「ったく、話は戻すが、響だってもう高校生だ。俺のことなんて構わず友達と楽しくしてればいい……()()()()()()()に深入れして傷つく必要はない」

 

「「……………。」」

 

「俺は元々この世界にいるはずのなかった人間だ。……どうせいなくなる人間のくせにこの世界で余計なことをしすぎた」

 

 この世界で来たばかりで俺は何もわからなかった。だから、感情だけで動いてしまった。それがこの世界にどんな影響を与えるのか考えていなかった。

 

「……それは違います」

 

 俺が俯いていると翼が否定の言葉を漏らす。

 

「翼に同じく。和真がいなかったらあのまま絶唱歌って死んでたしな、アタシ。それに響のことだって和真が教えてくれなかったらずっと知らないままだった。」

 

「そう言ってもらえると少しは楽なんだがな……。」

 

「ーーー本当に帰る手段が見つかったらこの世界を去るんですか?」

 

「……はぁ、お前らもしつこいよな。まぁ、嬉しくもあるんだけどさ……そりゃ俺だって二年もいれば思い入れも出来る。この世界で骨を埋めるのも……悪くないと思い始めた」

 

「だったらっ!」

 

「それでもさ!……帰りたい、いや、会いたいんだよアイツらに……会って話がしたい、声が聞きたい……。」

 

 たとえあの世界がどんなに碌でもない世界でも、俺の仲間達がどんなに欠点だらけでも、それでもいい。いや、そんなアイツらにまた会いたい。

 

「お前らにとってこの世界が現実であるように、俺にとっての現実はあの世界なんだよ」

 

 そもそも俺がここに所属したのもそれが理由だからな。

 

「悪いな、今日はもう帰るよ。ノイズも出てこなかいしな」

 

 ーーー俺は二人の顔を見ないように顔を背けて立ち上がり、その場をあとにした。



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この錬金術師とともに朝食を!

感想、評価お待ちしています。


 この世界での俺の朝は早い。なにせ、教師なのだから。まぁ、今日はそれだけが理由ではないが

 

 俺は一年前に買った宝くじを元手に小さい一軒家を買った。え?何等があたったのかって?自分に『ブレッシング』かけたら、一等とニ等同時に出ました。

 

 なので、金には困っちゃいない。

 

 いつもどおり、朝食を作りテーブルに()()()のメニューを並べる。

 

 そして、俺の感知に反応が現れる。

 

「やっぱ来たか、キャロル」

 

 振り向くとそこには先程まではいなかった金髪少女、めぐみんのような三角帽子を被ったローブの少女がそこにはいた。

 

「何故、オレが来るとわかった?」

 

「俺の『直感』スキルが発動したんだよ」

 

「相変わらず、便利な力だ」

 

 男のような口調とクールな立ち振舞をする幼女。彼女の名はキャロル・マールス・ディーンハイム。彼女曰く、錬金術師らしい。そして、何故か俺の正体を知る人間だ。

 

「とっとと座ってとっとと食え、そして、とっとと帰れ」

 

「素っ気のないやつだ」

 

「いきなり殺しかけられた俺がどうやってお前と仲良くしろと?」

 

「……そんなこともあったな」

 

「何黄昏れてんだよ、つい一年前だよ。いきなり現れたと思ったら『オレと来い、これは決定事項だ』なんてわけのわからないこと言って襲ってきやがって」

 

 一年前、一人になったところを狙われ、コイツ本人とコイツが生み出した四体の自立式の人形、オートスコアラーに襲われた。

 

 危うく誘拐されかけたが、なんとか撃退して……それからこうして口頭でスカウトに来ている。

 

「何度も言っとくが俺はお前の……なんだっけ?『万象黙示録計画』とやらに加担する気はないぞ?よくは知らんが」

 

「……話の前に朝食だ、準備してあるんだろう?」

 

 なんつう、図太いやつ……。

 

「あのさ……俺、教師。しかもこのあと出勤なんだが?」

 

 なんでファミレス感覚でそんなちょくちょく来んの?マジでアクア印の結界張っといたほうがいいかもしれない。

 

「教師?ああ、あの乳臭い子供に世間の厳しさを教える仕事か」

 

「お前の中の教師像どんだけひん曲がってんだよ!?」

 

 いや、ある意味では間違ってないような気がしないでもないが……。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 俺達はお互い無言で食事を取る。

 

 俺達の食事は特に会話はない。ただ食器を合わせるカチャカチャという音だけがキッチンに響く。それはそうだろう、俺は彼女のことを名前と錬金術師であるということしか知らない。

 

 その彼女が何故俺なんかに関わり合いを持とうとするのか、それも不明だ。

 

 だが、一つ、たった一つだけ心当たりがある。

 

「……なぁ、お前は俺に会ったことがあるのか?」

 

 俺は一度食器をテーブルにおいてキャロルの顔を見てそう訪ねた。当の本人は面食らったような顔をしている。

 

「……どういう意味だ?」

 

「いやさ、少し前から夢を見るんだよ。……天真爛漫を絵に書いたような性格の……自分のことを『私』って言ってるお前と俺が一緒にいる夢を」

 

 すると、キャロルは、

 

「……それを見て、お前はどう思った」

 

 そう聞いてきたのでここはストレートに、

 

「いや、ぶっちゃけ……すげぇ気持ち悪かった」

 

「……………。」

 

「……今のお前があの喋り方をしたとしたら俺はドン引く自信がある。だって、唯でさえいいイメージ持ってないのに、あんな喋り方されたら……ちょっと。」

 

 いつものコイツならこの程度でキレるようなことなないだろう。めぐみんと違って爆裂魔法を擬人化したような人間じゃないはずだ。

 

 自分の分を食い終え顔を上げると……そこには鬼がいた。

 

「………………。」

 

 無言で俯き、椅子から立ち上がるキャロル。ゆらりゆらりと体を揺らす姿はとても不穏だ。

 

「ど、どうした、キャロル……?」

 

 おそるおそる尋ねるとキャロルは光の無い目で俺を見る。

 

「ふっ、ふふふふふふははははははは!!!」

 

「怖い怖い怖い!なに、どうしたお前!?」

 

 急に狂ったように笑い出すキャロルに俺は椅子を蹴って立ち上がって後退り、悲鳴にも似た声を出してしまう。そして、背後には壁。

 

 しまった、追い込まれた……!

 

 キャロルはゆっくりと指を俺に向ける、まずい!これは……!

 

「……………死ね」

 

「ッ!『ブレイクスペル!』」

 

 錬金術で生み出した炎の渦が放たれるが、『ブレイクスペル』を使い打ち消す。この力は魔法だけでなく自然ではない力を打ち消すことができるということは既に確認済みである。

 

「死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇえ!!!」

 

「おまっ!家が壊れるだろうが!!!?」

 

 いつもの冷静な姿はどこへやら……まるで癇癪を起こした子供のように次から次へと炎だけでなく、水、風、土を錬金術で生み出し飛ばしてくる。

 

 俺は必死にブレイクスペルを撃ちまくり、なんとか攻撃が外に漏れないように相殺した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ハァ……ハァ……」

 

「ハァ……ハァ……気は、済んだかよ?」

 

 ボロボロになったキッチンの中で俺達は互いに肩で息をする。ったく、なんで出勤前にこんなに疲弊しなきゃいけねぇんだよ……!

 

「相変わらず、出鱈目な力だ……お前の仲間の女神とやらの力は……!」

 

「アイツは力だけは一級品だったからな……!」

 

 ……お陰で俺は今日も生きていられるんだしな。

 

「チッ!……今日は帰る」

 

 不機嫌そうに俺に背を向けて懐から紫色の水晶を取りだす。アレは『テレポートジェム』という俺の『テレポート』と似たような力を持つ水晶らしい。

 

「そうか……また来いよ」

 

 最初こそああはいったが今となっては友人?いや、悪友程度には考えているのでそれほど悪い気はしない。それにとんがり帽子にローブ、それにどこか勝ち気な性格。どっか重ねてんだろうな、アイツに……。

 

「……悪いが、食事の誘いなら断る。次に来たときは必ずお前をいただく。例え四肢のニ、三本を折ってもな」

 

 そういった彼女の目は本気だった。

 

 なんでコイツは俺にそこまで執着するのか。

 

「忘れるな、お前を狙ってる輩はオレ以外にも大勢いることをな。なにせ、お前の存在は俺にも殺せない……紛れもない『奇跡』なんだからな」

 

「……おいっ!そういやまだ、さっきの質問の答えは……!」

 

 その答えを聞く前にキャロルは完全にその場をあとにした。

 

「ったく、どういう意味だよ……。」

 

 そういや、伝え忘れちまったな。確かに夢に出てきたアイツは今とのギャップがあって気味が悪い用に見えたが……とても幸せそうに笑っていた。俺と彼女と同じ髪色の眼鏡の男性とともに。

 

「一体、アレは何なんだ……。」

 

 俺の記憶?いや、そんなはずはない俺がこの世界に来たのは二年前のライブの事件が初のはずなのに。

 

 まぁ、とりあえずは……。

 

「出勤までに片付くか、コレ?」

 

 もはや、惨状という言葉が酷く似合うことになってしまったキッチンを見ながら呟いた。




カズマさんには他作品の名言をたくさん言ってもらいたいと思っています。


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番外編カズマの活躍上映会(シンフォギア編)ネタバレ注意

はい、今回はこのすば世界とシンフォギア世界の行き来が可能になってからの話です。


 シェム・ハからの戦いから3ヶ月。俺は向こうの世界とこちらの世界を行き来する力を与えられ本拠をS.O.N.Gのあるこちらの世界に構え教師としての仕事を全うしていた。

 

 今日はたまの休日、こちらに移り住んだアクア達も装者達とショッピングらしいので久々にゴロゴロするぞぉと思っていた。

 

 思っていたのだが……。

 

「なぁ、なんで俺縛られてんの?」

 

 俺は文字通り簀巻きにされ床に放り出されていた。ええっと、なんでこうなったんだっけ?

 

 そうだ……おやっさんに呼ばれてS.O.N.Gに来たら背後から当身を食らって……。つうか、俺を当身で気絶させられるってどう考えてもおやっさんだよな……。

 

 何故か、S.O.N.Gの映写室にアクア達異世界組と響達シンフォギア組が勢揃いしていた。おまけにS.O.N.Gのメンバーも勢揃してるし。

 

「お前ら今日はアクア達と一緒にショッピングじゃなかったのか?」

 

「アレはウソデス!」

 

「……本当は、今日はお互いの世界のカズマさんの活躍を見ようという話になって」

 

「え、マジで?」

 

 切歌と調の言葉に俺は言い知れぬ寒気を覚える。

 

 つまりはなにか?アクア達に俺のこの世界での戦い見られるってわけか……あの俺が無意識に口にしたどっかの漫画の主人公みたいな言葉の数々を聞かれると?

 

 そのことに気づくと俺の全身から恐ろしい量の汗が流れる。

 

「やめろっ、やめてくれえぇ!!!」

 

 俺は必死に体を動かしなんとか縄から抜け出そうとする。

 

「くっそ、何だこの縄ッ!?」

 

 なんで今の俺が全力で引きちぎろうとしているのに、斬れねぇんだよ!?

 

「まぁまぁ、落ち着きなよカズマくん」

 

 必死にジタバタする俺に、クリス(お頭)が身をかがめて話しかけてくる。そういえば、なんでいるんだここに?そんな俺の質問を他所に、俺の耳元に口を近づけて、

 

「すみません、カズマさん。私も少し気になるんです」

 

 え、エリス様……アンタの仕業か、この縄ッ!?

 

「それでは、まずはこちらの世界での和真さんの戦いの記録を上映します。」

 

「おっ、始まるわよ!」

 

 エルフナインがスクリーンを操作しアクア達がまるで映画を見るときのように手を叩く。

 

「まって、お願い待って!」

 

 俺の願いは虚しく昔の映画のような3.2.1のカウントの後映像が始まった。

 

『俺がこの世界に存在する理由……そんなモノは最初から必要なかった、何故ならッ!!俺はただ俺がやるべきだと思ったことをやればよかった、それが今ここに俺が立っている理由だった!!』

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

『人間ってのはやりたくないことやるときには理由が必要だ。だがな、やりたいことをやるのに理由なんて必要ないんだよ、ただ、『自分がそうしたい』。それだけで十分だ』

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

『俺はこの世界では勇者でも主人公でもない……だけど、それでも、俺がやらなきゃいけないんだ……他の誰にも任せるわけには行かないッ!……俺にしかできないことなんだッ!!』

 

「なんで心の声まで聞こえてんだよぉぉぉぉぉ!?」

 

『死に場所?死ぬのが償いなのか?違うだろ?生きてアイツらに死ぬ気で謝ってこその償いだろ……これでも、何度も『死』を経験してるからわかるがな……死で生まれるものなんてただの悲しみだけなんだよ。お前ら、またアイツラに十字架を背負わせる気か?

 自分が死ぬ理由に他人を使うなっ!!』

 

「ノオォォォォォォォォ!!!」

 

『限界がなんだって?俺の生徒が命かけて戦ってんだ……今ここで限界の一つも超えられない奴がっ、これから先ッいくつもの苦難を乗り越えなきゃいけないアイツラに……何を教えられるってんだ!?』

 

『アイツラは俺にとってのヒーローだ……ヒーローの前を歩いて死ねるのなら……悪くないかもな』

 

 ルナアタック、フロンティア事変、魔法少女事変と次から次へと流れてくる無意識に発したかっこいいセリフの数々。やばい、両手を縛られているせいで顔を隠すこともできない。

 

「ねぇ、ひょっとしてキレてんの!?今生の別れみたいなことしといて次の日に何事もないように帰ってきたことに切れてんの!?」

 

「「「「「「「「「……………(フイッ)。」」」」」」」」」

 

「こっちを見ろおぉぉ!!」

 

 装者達は俺の質問から露骨に目をそらす。

 

 やがて、俺のカッコいい(死ぬほど恥ずかしい)セリフだけ選んで編集したような戦闘記録は終わりを告げた。俺のライフを限界まで削って。

 

「取り敢えず、一言だけ言わせてください」

 

 全てを見終わっためぐみんがふぅっと生きを漏らして呟くと、アクアとダクネスも交えて一言。

 

「「「「誰(ですか)(だ)、アレは?」」」」

 

「悪かったな、俺だよ……!」

 

「ウソです、カズマがあんなストレートにかっこいい訳ありません!」

 

「そうね、あそこまでストレートにかっこいい人がカズマさんのわけがないわ」

 

「あぁ、この男はもっとひねくれた感じのかっこよさの男だ」

 

「なんだ、ひねくれたカッコよさって?」

 

 しばき倒すぞ、お前ら……。

 

「私をジャイアントトードの生き餌にしていたカズマとは思えない、成長っぷりね」

 

「ええ、私のパンツを『スティール』した男とは思えない成長っぷりでした」

 

「ああ、私を馬車にくくりつけて引きずったとは思えない」

 

「おい、最後のに関してはお前が自発的にやれって言ったんだろうが」

 

 装者を除くS.O.N.Gのメンバーから冷ややかな目を送られる。お前そんなことしたのか、と?

 

 装者のメンバーにはキャロルの事件のときに距離をおこうと自分が以下に鬼畜であったかを伝えていたので今さらみたいな顔してるが……なんというか複雑だ。

 

「はいっ!そんなわけで上映会はおしまいっ!今すぐ俺を開放してくださいっ!帰ってベットに顔を埋めたい気分なので」

 

「?何言ってるんですか、和真さん」

 

「最初に調ちゃんが言ってたじゃないですか、今日は『お互いの世界』の和真さんの活躍を見るって」

 

「は?」

 

 響、未来の言葉に目が点になる。

 

「次はアクア達の世界での貴方の活躍を見る番よ」

 

 マリアの無慈悲な言葉で再び冷や汗が流れ始める。

 

 そんな中アクアが得意気に一つのUSBメモリを取り出す。

 

「ふっふっふ、そんなわけで向こうでの和真さんの活躍を記録を編集した記憶媒体がこちらになります。エルフナインちゃんお願いね」

 

「はい!」

 

 …………どうやら、俺の地獄はまだ終わらないらしい。




感想、評価お願いします。
大分適当です笑


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この少女に覚醒を!

感想、評価お待ちしています!


「HRは以上だ、気をつけて帰れよ」

 

 今日も教師としての仕事を終えて教室をあとにする。

 

 ったく、キャロルの奴が台所めちゃくちゃにしてくれたせいで遅刻ギリギリだったじゃねぇか……。しかも床にいくつか穴で来てたし、こりゃ休日にホームセンター行かなきゃなぁ……。

 

「はぁ、不幸だ……。」

 

 どっかの幻想殺しさんみたいなことを言いながら廊下を歩く。

 

 ……さて、そろそろあっちの方の仕事にも行かないとな、昨日ノイズが現れなかったからって今日も出ないとはかぎらないし。

 

「「先生」」

 

 俺が廊下を歩いていると、後ろからせわしない足跡が聞こえてきた。振り返ってみるとそこには響と彼女の幼馴染の黒髪の小日向未来が立っていた。

 

「そんなに急いでどうした?」

 

「今日はツヴァイウィングの新作CDの発売日なんです!」

 

「なのに、響ったら予約を忘れたらしくて……。」

 

「えへへ〜」

 

 未来の呆れたような言葉に困ったような笑みを漏らす響。この二人の中で俺はきっと、面倒見のいい兄的な存在なのだろう……こんなところ見られたら名前で呼び合わなくて大して意味がないじゃないか。

 

「だから売り切れるまでに急いで買いに行かないと、それじゃあ先生また明日ッ!」

 

「あっ、待ってよ響!」

 

 また走り出す響を未来が追いかけていく、本当にせわしなやつだな。まぁ、アイツのこういう元気なところも美点の一つと思えばいいか……。そう思っていたとき、俺の口が自然に動き二人を呼び止めた。

 

「響、未来」

 

「「え?」」

 

 俺に名前を呼ばれ呆けたように俺の方を向く。当然か、高校に入ってからほとんど下の名前で呼んだことないからな。二人の視線がむず痒くて背中を向けてわざとらしく後頭部をかく。

 

「……気をつけて帰れよ」

 

 そう言ってその場をあとにした。

 

 後ろから響と未来の「はいっ!」という元気の良い返事が聞こえてきた。

 

 ったく、翼と奏にあんなこと言っといて未練タラタラじゃねぇか。相変わらずカッコつかねぇ……。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 特異災害起動部2課。

 

 私立リディアン学院の地下に本拠を構えている現在の俺が所属している組織だ。その主な仕事はノイズへの対策。しかし、ノイズは普通の兵器では倒せない。しかし、この二課が保有する『シンフォギアシステム』のみがノイズを倒すことができる。世界各地の伝承に残る聖遺物の欠片を組み込んだ鎧。それでのみ、ノイズの位相差障壁を貫ける。

 

 ……まぁこの世界の手段では、って話だがな。

 

「おお来たか、カズマ」

 

「どうも、おやっさん」

 

 司令室に入ると赤いシャツを着た巨漢の男性、この人が二課の司令風鳴弦十郎さん、俺に戦い方を教えてくれたいわば師匠のような存在でもある。

 

 俺がおやっさんに挨拶するとオペレーターの皆も俺に気付き挨拶してくる。

 

「「「「お疲れ様です、()()()!」」」」

 

「やめろぉ!俺はそんなものになった覚えはない!」

 

 オペレーターの悪ふざけの言葉に俺は怒鳴り返す。

 

「いえいえ、和真さんは間違いなくここのNo.2ですよ」

 

 そこへ翼のマネージャー、緒川慎二さんまでもが茶化すように話に入ってくる。

 

「いや、慎二さんや了子さんいるでしょ!?冗談じゃないっすよ!?」

 

「私は技術者だからねぇ、現場においては和真くんがNo.2で間違いないでしょ?」

 

 シンフォギアの開発者にしてうちの技術面を担当している櫻井了子さんまでそんなことを言う……。

 

 なんなんだ……この2年で俺への信頼がとてつもなく厚いものになっている。

 

「確かに司令官としてここにいなきゃいけない俺ではなく、現場でノイズと戦っている和真のようなやつが副司令にはあっている」

 

 そう言って俺の背中を叩くおやっさん。

 

「俺に何かあったら頼むぞ!」

 

「アンタに何かあるようなこと俺にどうにかできるとでも!?」

 

 俺の絶叫にオペレーター達から笑いが飛ぶ。

 

 そしてその中には昨日会話をした奏と翼もいる。

 

 この二人こそが二課に所属するシンフォギア装者、『ガングニール』装者、天羽奏と『アメノハバキリ』の装者、風鳴翼。

 

 ここに俺を加えた三人で基本はノイズと戦っている。

 

「ん?……カズマ、なんかいいことあったか?」

 

「なにがだ?」

 

 俺の顔を覗き込んで不思議そうな顔をする奏。

 

「いや、昨日よりスッキリした顔してるから」

 

 スッキリした顔ねぇ……。十中八九、響と未来のことだろうけど。昨日、あんなこと言った手前今更言うのもかっこ悪いし……。

 

「別に、なんでもねぇよ」

 

 

 

 

 そう答えた瞬間、警報が鳴り響く。ノイズの発生を知らせる警報だ。

 

 

 

 

「来た、か」

 

「朔夜、発生場所は?」

 

「はい。湾岸地帯の工業区画付近のようです」

 

 おやっさんの指示でオペレーターの藤尭朔夜さんがノイズの発生場所を絞り込む。

 

「よし、装者二名及び佐藤和真は直ちに現場に急行しろ!」

 

「うっす」

 

「ああ」

 

「承知」

 

 おやっさんの指示を受けて俺達はそれぞれ返事をする。出撃の前にふと、街の地図が映るモニターに目が行く。

 

 そういや、このへんって響の行きつけのCDショップからそう遠くない距離だよな……。

 

『今日はツヴァイウィングの新作CDの発売日なんです!』

 

「ッ!やべぇ……!」

 

 アイツの不幸体質なら巻き込まれててもおかしくねぇじゃねぇか!!

 

 俺はその可能性に気付くとすぐさま支援魔法で身体能力を強化し、『テレポート』の詠唱を始める。テレポートの登録場所から発生地点までそれなりの距離があるから、全力で走るためだ。

 

「カズマさん……?」

 

「『テレポート』使うならアタシたちも……」

 

「『テレポート』」

 

「「あっ!」」

 

 二人が呼び止めるよりも早く『テレポート』の詠唱が終わり俺は現場へと瞬間移動した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

響サイド

 

 私はあの事件で受けた古傷から発せられた光で姿が変わり、ノイズから女の子を守るために戦っていた。このスーツのような姿がどんな力なのかはしらない。だけど、あのライブ会場で私を助けてくれた()()()()()()が纏っていたものと同じだった。

 

 この力ならノイズも倒せる。

 

 実際にノイズは私の拳に触れると吹き飛ばされる。

 

「おねぇちゃん、凄いっ!」

 

「下がってて、絶対守るよ!」

 

 後ろにいる女の子を守るために私は慣れない拳を振るう。

 

 だけど、ノイズは私の驚異に気付いたのか一気に迫ってくる。

 

 ーーーそういえば、あの人と出会ったのもこんな絶望的な状況だったな。

 

 その頃、私は毎日生きているのが辛かった。

 

 外を歩けば、人殺し、犯罪者、そんな言葉を送られ殴る蹴ると暴行を受けることが日常になっていた。

 

 何よりも辛かったのは、親友の未来が私を守ってを巻き込まれることが苦しかった。

 

 その日もたくさんの男の人に暴行を受けていた。そんなときだった、『その人』が私の前に現れたのは。

 

『この娘達がお前たちになにかしたのか?』

 

『あ?こいつは人殺しだぞ?そっちのは、その人殺しをかばった当然の報い……むぐっ!』

 

 その言葉を聞き終えるよりも早く男の人の顎を掴んで持ち上げて、鋭い視線を向ける。

 

『そんなことを聞いてるんじゃねぇんだよ……お前達みたいに無抵抗な女の子に一方的に手を上げたのかって聞いてんだよ、クソ野郎……!』

 

『なっ、何だコイツッ!』

 

『こいつもやっちまえっ!』

 

 そこからは一瞬だった、『その人』は向かってくる男の人の仲間達を次々となぎ倒していった。

 

 だけど、最初に顎を掴まれてた人が立ち上がり動転したのか懐から取り出したナイフをその人に向けた。

 

『糞がっ、死ねぇぇぇぇぇ!!』

 

『危ないっ!』

 

 ナイフを構えて突っ込んでくる男の人、だけど『その人』は避ける素振りも見せないでその場に立ち尽くしている。私は思わず目を閉じてしまった。

 

 ……目を開けると、そこには右手でナイフの刃を鷲掴みにしている『その人』の姿があった。

 

『痛ぇなぁ……。』

 

『その人』は口ではそう言っていたけど顔色一つ変えていなかった。男の人はその人の手のひらから流れる血を見て自分が何をしたのかわかったようで顔色を青くする。そして、その人は力の抜けた男の人の手からナイフを奪うと、

 

『確かに痛い、だけどこの娘達が受けた痛みはこんなもんじゃなかったんだろうなぁ……なんなら試してみるか?』

 

『その人』はナイフの柄と鋒を掴むとペキッと、まるで木の枝のようにへし折った。

 

『ヒィッ!』

 

 それを見て完全に腰を抜かし男の人に向けて、ナイフの刃を指に挟んで向けると。

 

『この娘達の痛みの千分の一でも』

 

『ヒッ、ヒィィィィィィィ!!』

 

 男の人は悲鳴を上げながら仲間を置いて走り去っていってしまった。

 

『……君たち大丈夫かッ!?』

 

 それを見届けると、『その人』は心底心配した様子で私達に駆け寄ってきた。

 

『はい、大丈夫です。でも、あの……。』

 

『私達よりも、貴方のほうが……。』

 

『ん?あっ……。』

 

 私達の視線でその人は自分の右手を見る。男の人のナイフを()()で掴んだせいでポタポタと血の流れる自分の右手。

 

『っ!いってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!超いてぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

 

 自覚したことで痛みが戻ってきたのか手首を掴みながらその場でゴロゴロと転がって悶絶する人。さっき私達を救ってくれた人と同一人物とはとても思えない姿だった。

 

『あ、あの……。』

 

『大丈夫ですか?』

 

『だ、大丈夫、大丈夫……俺こう見えても肩に穴あけられたこともあるし、それに比べたら。っ痛ぅ!』

 

 そう言ってどう見てもやせ我慢な引きつった笑みを浮かべる『その人』に、思わずおかしさがこみ上げてきた。

 

『ふ、ふふ……。』

 

『響?』

 

『……やっと、笑ってくれたな』

 

 服の端を破いてそれを腕にきつく巻いてい止血すると傷がない方の左手をその人は私に差し出した。

 

『俺の名前は佐藤和真、君の名前を教えてくれるか?』

 

 それが私とその人、佐藤和真さんとの出会いだった。

 

 あれから私が困っているといつも助けてくれたあの人。私の憧れ。

 

 ……でも本当は私はその人をもっと前に知っていた。あの日、あのライブ会場で私は確かにあの人に救われた。私はの人に二度も救われたのだ。

 

 だったら私も……あの人みたいにッ!!

 

 襲いかかってくるノイズに拳を向けようとした瞬間、

 

「え?」

 

 光の鞭のようなものがノイズの前を走ったかと思うと、ノイズたちは爆発して粉々に砕け散った。

 

「ったく、お前は騒ぎの中心にいなきゃ気が済まないのか?」

 

 その声が聞こえると私の前に白いシルエットともに一人の男性がおりてきた。白い白衣をたなびかせて眼鏡の奥から憤怒の感情がこもった瞳でノイズ達を見る私の憧れの『その人』が立っていた。

 

『その人』はメガネを外すと、ノイズ達に視線を向けた。

 

「で?ウチの生徒に何してんだ雑音共?」

 

 カズマさんの怒りに呼応するようにあの人の手のひらでバチバチと黒い雷が帯電していた。




弦十郎が映画をもととした高い方なら和真さんはアニメをもとにした戦い方じゃあ!


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『勇者猛る』

和真さん、無双!!


「って、響お前……それ……。」

 

「和真さん、なんでここに……。」

 

 俺は響が纏っている、それ。『ガングニール』のシンフォギアを見て目を見開く。奏が纏うそれとは色が違うが間違いなくガングニールのシンフォギア。

 

「和真さん、後ろっ!」

 

「……『フリーズガスト』」

 

 背後から近づいてきたノイズに氷結系の魔法を放ち氷漬けにする。ノイズは氷ごと粉々に砕け炭に変わる。

 

 ……どういうことだ、何故響がシンフォギアを纏っている。しかもガングニールだと……アレは奏が持っているはず。

 

『生きるのを諦めるなッ!』

 

「ッ!」

 

 俺の脳裏に胸から血を流す今より幼い響に必死に呼びかける奏の姿が蘇る。

 

「あのときかぁ、クソッタレェ……!」

 

 脳みその血管が千切れそうなほどの怒りが俺の中に沸き立つ。俺が地団駄を踏みたい気分でいると、インカムに通信が入る。

 

『カズマッ!いきなり飛び出して何をしている……いや、いまはそれよりお前の近くで新しいエネルギー反応だ!しかもこのアウヴァッヘン波形は……』

 

「……ガングニール、だよな?」

 

『ッ!!何故それをッ!?』

 

 いや、何故も何も……その原因が俺の生徒で目の前で奏と同じガングニールを纏っているから……って言っても混乱するだけだよな。

 

「和真さん、またっ!」

 

「『ブレードオブウィンド』」

 

 再び背後から近づいてきたノイズは俺が放った刃の嵐によって切り刻まれる。

 

「あぁっ!うっとおしいっ!!おやっさん取り敢えずこの雑魚どもを片付ける!話はあとだッ!」

 

『了解した、翼と奏もまもなく合流する。それまで持ちこたえてくれ』

 

「ああ、アイツラが間に合えばだけどなっ!」

 

 俺は苛立ちを隠せない口調でインカムの通信を切る。

 

『暗器』スキルで懐に忍ばせていた愛刀『ちゅんちゅん丸』、いや、この世界で生まれ変わった、魔法の触媒としても使えるよう最終決戦のときめぐみんに渡した『マナタイト』の一つを刀身に打ち込まれた謂わば『ちゅんちゅん丸・真打』を鞘から抜く。

 

「まずは『デコイ』、『千里眼』、そして、『魔眼』」

 

 刀を構えながらクルセイダーのスキル『デコイ』を使いノイズ達のヘイトを俺に集中させる。さらに『千里眼』で遠距離を見られるようにし、デュラハンの固有スキルである『魔眼』で死角をなくす。

 

「響、お前も聞きたいことがあるだろうが……今はその子を守っとけ」

 

「わ、わかりました!」

 

「それじゃ、始めようか……害獣共よ」

 

 呼吸を整え、刀身に魔力を込める。

 

 ーーー全集中、ヒノカミ神楽。灼骨炎陽。

 

 剣閃が炎のような闘気を纏い、広範囲にノイズを薙ぎ払う。

 

 この世界にはなく俺の世界にあった『鬼滅の刃』という漫画。その技の一つ、鬼と戦うために会得する特殊な呼吸法『全集中の呼吸』。おやっさんとの地獄のような特訓と魔王を倒したことによって得た職業『勇者』としての身体能力があって初めて再現できた。

 

 ーーーおやっさんは『男の鍛錬は食事と映画鑑賞と睡眠だけで十分だッ!』とかわけのわからない理屈でとんでもない強さになった人だが、あながち其れは間違いではないかも知れない。だが、その特訓に付き合う中で俺は映画ではなく元の世界のアニメ、漫画を元にした戦い方のほうが割りに合っていた。

 

 で、魔法を組み合わせたらできたしまった……あれ、俺人間やめてない?

 

 そう思った瞬間、背後のノイズが手を伸ばして俺に迫る。

 

 ーーーヒノカミ神楽、幻日虹。

 

 『回避』スキルを組み合わせ、高速のひねりと回転による回避の呼吸で其れを回避する。

 

「『ライトニング』」

 

 脇の下に指先を通し指先から放たれた雷が背後のノイズに穴をあける。全集中の常中でも魔法が使えないわけじゃない。

 

 ーーーノイズ達の体は本来通じない刀でも魔力を通していれば貫けることがわかった。マナタイトを組み込んだ刀身、魔力を込めれば当然斬れるノイズを斬れる。対ノイズ用の日輪刀ってわけだ。

 

 まっ、俺自身はシンフォギアと違ってノイズに触れれば即死だがな。

 

 少し前の俺なら常に死と隣合わせの状況なら気が狂ってただろう、だが『多重思考』スキルのお陰で常に冷静でいられる。

 

 ーーーヒノカミ神楽、烈日紅鏡。

 

 左右対称の鋭い斬撃がのノイズ達を切り裂く。更に空中を蹴って走る。

 

「刀だからって近接戦しかできないわけじゃないんだぜ?」

 

『暗器』スキルで取り出した、ミスリルのワイヤーをちゅんちゅうん丸の尻についたフックに縛り付け俺を中心に嵐のように刃を振り回す。

 

 ーーー手数の多さだけが俺の武器だ。故に練度ではなく、用途を増やす。無論練度は必要だ。だが、それは支援魔法である程度は補える。この二年で感覚は自分で言うのもアレだが超人並。

 

「『クリエイト・アース』」

 

 前の世界でよく目潰しに使っていた土を生み出す初級魔法。しかし、魔力を込める量を調節するとそれは砂上の土ではなく小石状の石として作ることができる。更に調節すれば硬度も自由自在、それを空中に放り右足を高く上げる。

 

「シィィィ……ハァッ!」

 

 高速で蹴り飛ばされた小石は弾丸となってノイズの体を貫いた。風穴を開けられたノイズたちは体が炭化してボロボロと崩れ落ちる。

 

「さぁ、終いと行こうか」

 

 柄を強く握りしめ、刀身に魔力を送り込む。

 

 ーーーあの世界で俺を兄と呼んで慕ってくれた少女、勇者の血を引く六花の姫君。『ちゅんちゅん丸』に彼女が使った最強の剣技スキル。本来なら勇者の血を引くものにのみ代々受け継がれる奥義、しかし、俺とて魔王を倒して勇者になったもの。使えても何ら不思議はない。

 

 アイリス、力を貸してくれ……!

 

 刀身が光を帯び、まばゆい輝きがあたりを包む。

 

 ーーー其は竜すら滅ぼす一撃。

 

「『エクステリオン』ーーーッ!!」

 

 光の斬撃がノイズ達を飲み込んだ。

 

「ふぅぅぅぅぅぅぅ……。怪我はないか響?」

 

「は、はい……問題ない、です……」

 

 呆けた様子で響は答えた。政府公認で倒せないと言われていた存在を担任の教師が生身で倒したんだ。呆けないほうがおかしいか。

 

 刀を肩に担いで一応『千里眼』と『敵感知』で周りにノイズがいないことを確認する。だが、代わりに聞き慣れたエンジン音が近づいてくる。バイクに乗った二人、翼と奏は拍子抜けしたような顔をしている。

 

「あ〜あ、一人で全部やっちまいやがって……。って、響!?」

 

「立花っ、その姿は……!」

 

「え?奏さんと、翼さん……?」

 

 二人はシンフォギアを纏った響の姿を見て目を見開く、響も同様だ。……だが、奏の体が震えているのが感覚が強化された俺にはわかった。

 

 ーーー俺は今日ほど、自分の感覚を恨んだことはないだろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ママ!!」

 

「無事だったのね!」

 

 俺たちは現場の後処理のためにやってきた二課の人間が連れてきた、響が守っていた女の子の母親に引き渡していた。現在はオペレーターの友里さんが情報漏洩についての同意書にサインを書いてもらっている。

 

「じゃあね、かっこいいお姉ちゃん、それとおじさん!」

 

「元気でねっ!」

 

「お、おじさん……!?」

 

 さり際に少女が口にした無邪気な言葉が俺の心を抉る。

 

 おじさん……まだ二十歳なのに俺、おじさん……。

 

「和真さん、そろそろ……。」

 

「おじさん……俺、おじさん……。」

 

「和真さん?」

 

「あっ、慎二さん……なんすか?」

 

「彼女のことです」

 

 そういって、対処班と一緒に現場に来た慎二さんは奏や翼と話している響の方を見る。おそらくは二年前のことを話しているのだろう。……国家機密のシンフォギアを纏ったんだ、なにもしないではい、さよならとは行かないよな。

 

「あっ、和真さん!和真さんにも聞きたいことがあったんです!二年前、私の傷を直してくれたのって和真さんなんですよね!?あの不思議な力で」

 

「あ〜、響。取り敢えず、落ち着こう。……そして、悪いな」

 

「え?」

 

 前のめりに話を聞いて来る響。ガシャンという音とともに俺は『暗器』スキルで取り出した手錠を響の両手にはめた。

 

「すまんな、お前を特異災害2課に連行する」

 

「なっ、なんでぇぇぇぇぇぇぇえ!!」

 

 響の絶叫があたり一面に響いた。




感想、評価お待ちしています。


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この少女に歓迎を!

連載しにしました。
感想、評価待っています。


「あの……どこに向かっているんですか?」

 

 二課の車の中で両手にわっぱをかけられた響が裁判所に向かう被告人の如き面持ちで隣に座る俺に尋ねる。

 

「言ったろ、特異災害二課……俺のもう一つの職場だ。いや、職場って意味なら変わらないんだけどな」

 

「それって、どういう……。」

 

「ほら、外を見てみろ」

 

「え、学院?」

 

 腕を組みながら窓の外を顎で示すとそこは響にとっても俺にとってもよく見知った場所、リディアン音楽院だった。

 

「さっ、行くぞ。暗いから足元きぃつけろよ」

 

 二課の黒服メンバー、そして、翼と奏とともに学院の中に入る。時間的にはもう誰も残っちゃいない時間だ。手錠をつけられているので誤って転んだりしないようにできるだけ響の近くを歩く。

 

「さっ、ここから降りるぞ」

 

 金属製の横扉ーーー巨大なエレベーターに俺たちは乗り込む。慎二さんが持っていた端末をセンサーに翳すとピーンという認証音とともに扉が閉まりさらにシャッターが上下から扉を閉ざす。そして、エレベーターの壁から手すりがせり出してくる。

 

「響、しっかり捕まってたほうがいいぞ」

 

「え?」

 

 呆けた様子の響の手を掴み手すりを掴ませる。

 

「響、お前絶叫マシンは好きか?」

 

「それって、どうーーーきゃああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 いきなりエレベーターが急速で降下し響が絶叫を上げる。やがて、ガラス越しに凄まじいスピードでおりていくそれに驚きよりも珍しさを感じ始める。更に景色がかわりその景色が古代文明のような不可思議な文様が描かれたものへと変わっていく。懐かしいな、昔の俺もそんな反応だった。

 

「ゴメンな、響。こんなところに無理矢理連れてきて」

 

「いえっ、そんなことはないです!」

 

 今まで口を開かなかった奏が謝罪を口にすると響は首をブンブンと横にふる。響にとっては奏は姉みたいな存在だからな。そんな響の反応で奏は笑みを浮かべるが、それが僅かな虚勢にしか見えなかったのは俺の気のせいではないのだろう。

 

「そろそろつくな、無理矢理連れてきて言えたセリフじゃないが意識をしっかりもてよ」

 

「えぇ、気を引き締めなさい。ーーーここから先、微笑みなど許されないのだから」

 

 翼が俺の忠告に続くが、彼女が想像している『気を引き締める』は俺が思っているようなものではないだろう。

 

 やがて、エレベーターが目的の場所にたどり着きその扉が開く。その光の先から見えたのは、

 

「ーーーようこそ、人類最後の砦、特異災害起動部二課へ!」

 

 見えたのは、白いシルクハットをかぶったおやっさんとパーティグッズのドンドンパフパフとなる増えやら太古やらクラッカーやら、おまけに豪勢な食事やら。おまけに『熱烈歓迎!立花響様☆』と書かれた垂れ幕まである。……有り体に言って気を抜きまくってるパーティ会場とかしていた。

 

 翼は疲れたように頭を抑え、奏は爆笑し、響は呆けている。

 

「だから、言ったろ気をしっかり持たないと気が抜けて意識が飛ぶ」

 

「あれ、そういう意味だったんですか!?」

 

 うん、だって俺も初めてここに来たとき全く同じことされたからな。

 

「それにしても翼、カッコつけてたな……。なんだっけ?微笑みなど必要ないのだから、だっけ?」

 

「違うって和真、微笑みなど必要ないのだから(キリッ)だよ」

 

「おおっ、そうだった!お前似てるな、よし、今度は『ヴァーサタイル・エンターテイナー』!どう?声そっくりでしょう?」

 

「凄いなっ!翼の声まんまじゃん、魔法ってそんなこともできるんだ。」

 

「よし、それじゃ改めましてーーー『ここから先、微笑みなど必要ないのだから』(キリッ!)」

 

「もうやめてくださいっ!」

 

 芸達者になる魔法まで使って完コピして真似ると翼が顔を真っ赤にして涙目で止めにはいった。

 

 そんなことをしていると響に白衣を纏った了子さんが歩み寄って俺が作ってあげた先にスマホをつけた自撮り棒を持って、響の肩を叩く。

 

「さあさ、笑って笑って。お近づきの印にツーショットをーーー」

 

「い、イヤですよ!手錠をしたままの写真だなんてきっと悲しい思い出として残っちゃいます!」

 

「テンパってるなぁ……。」

 

「和真、そろそろ手錠外してやれよ」

 

「ん?ああ、そうか……手錠かけたの俺だったな」

 

 奏の言葉に俺は懐を弄る。

 

「ええっと、どこだったかなぁ……。」

 

「あの、和真さん?」

 

「あった!ってコレ違う」

 

 俺が取り出したのはちゅんちゅん丸だった。それをポーイと投げ捨てる。

 

「よっと、ありゃコレも違うな。ええっと、あれでもない、これでもない……あれ〜どこやったかなぁ?」

 

「ちょっと、和真さん!?」

 

「毎回思いますが、その白衣の中はどうなっているんですか?」

 

 ダガー、爆発ポーション、ワイヤー、冒険者カード、予備の手錠、拳銃、扇子、お守り、家の鍵、一向に手錠の鍵が出てこない。その様子に響が俺の方を揺らして抗議し、翼は疑問を漏らす。

 

「悪い、無くしたわ」

 

「ええぇえぇぇぇぇぇぇえぇ!!!?」

 

「なっ!」

 

 未だに俺の性格をよく理解していない響と翼が声を漏らす。

 

「ど、どうするんですかこの手錠!」

 

「そんなにあせんなって、ほら外れたから」

 

「え?」

 

 俺の手にはさっきまで響の手を拘束していた手錠が握られていた。

 

「俺の特技忘れたか?」

 

「あっ、手品……。」

 

「ハハハ、相変わらず引っかかりやすいな響と翼は!まぁ、そのへんが可愛いんだけどな」

 

「わっ!」

 

「ちょっと、奏……!」

 

 奏が驚いた様子の二人に後ろから抱きつく。ホント、似てない姉妹みたいだよな。

 

「あっ、あの……それでここは一体、それになんで皆さんは私の名前を」

 

「我々二課の全身は大戦時に設立された特務機関なのでね。調査もお手の物でね。それに君のことは和真や奏達からよく聞いてるからね」

 

 そういって、おやっさんが持っていたステッキから花を咲かせる。ふっ、まだまだ青いな。今度俺がマスターした『花鳥風月』を見せてやるか。

 

「てか、おやっさん。調べたってアレ回収しただけでしょうよ?」

 

「アレ?」

 

「あぁ、了子くんあれを」

 

 そう言って了子さんが取り出しのは、

 

「って私のカバンじゃないですか!」

 

 そう、響が逃げてる最中に落とした私物を回収しその中身から己を特定されたのだと悟ると、ひったくるように奪い返す。

 

 そして、おやっさんはハットを脱ぐと真剣な顔つきで響に向き直る。

 

「改めて、俺の名前は風鳴弦十郎。ここの責任者をしている」

 

「そして、私はできる女と評判の櫻井了子よ」

 

「ああ、こちらこそよろしくおねがいします」

 

 二人からの丁寧な挨拶を受けると、響は丁寧に腰を折って挨拶をする。緊張が抜けないせいか、どこかぎこちないが。

 

「あっ、因みに和真はここの副司令だぞ」

 

「おい、ば奏」

 

「副司令って……ここで二番目に偉いってことですか!?」

 

「んなわけねぇだろ……ここの人が勝手に言ってるだけだ。」

 

 奏のふざけた紹介で響が本気にしないようにすぐに否定した。だいたい、この人が司令で俺なんかが副司令……プレッシャーで胃に穴が空くわ。それにみんなが本気ってわけじゃないことくらいわかる。なにせ、おやっさんから正式に副司令になるかなんて、聞かれたことがないからな。所詮、俺はよそ者ってわけだ。

 

「コホン、さておやっさん響に話があるんだろ」

 

「あぁ、そのとおりだ。君をここに呼んだのは他でもない協力を要請したことがあったからだ」

 

「協力って……あっ!?」

 

 響はおやっさんの言葉で先程の戦いで己が纏ったスーツと装甲、シンフォギアについての疑問が蘇る。

 

「ーーー教えて下さい、あの力は何なんですか?」

 

 響の問いかけにおやっさんと了子さんは頷くと、一歩、二歩と歩み寄る。

 

「貴方の質問に答えるためにも二つばかりお願いがるの。一つは今日のことは誰にも内緒」

 

 コレの意味は簡単だろう。国の特務機関が動いてる時点で守秘義務が発生するのは目に見えている。それ以前にこいつの頭で誰かに説明できるとは思えない。

 

「もう一つは……とりあえず脱いでもらいましょうか」

 

「え……?」

 

 妙に艶っぽい声色で耳打ちする了子さん、そういったことに免疫のない響の頬がだんだんと染まっていく。

 

「了子さ〜ん、うちの生徒をあんまからかわんでください」

 

「あら?」

 

「えっと……。」

 

「ただの身体検査だよ、お前がどうしてあの力を使えたのか原因が体のどこかにあるはずだからな。友里さん、案内よろしく」

 

「わかりました。さっ、こっちですよ」

 

 そういった友里さんに連れられて響は検査室に連れて行かれる。

 

「じゃあ、検査が終わったら呼んでくれ流石に教師の仕事の後で疲れてーーー」

 

「その前にお前には俺から話がある」

 

 背後からおやっさんに後頭部を鷲掴みにされる。

 

「ワー、ナンダロウナ〜」

 

 棒読みでこのあとの展開をなんとなく察した俺は視線で奏と翼に『助けてくれ』というアイサインを送る。しかし、二人はふてくされたようにそっぽを向くと。

 

「「自業自得(だろ)(です)」」

 

 その言葉に絶望しながら俺はおやっさんに引きずられてその場をトレーニングルームへと連行された。

 

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

「独断専行はするなとアレ程言っただろうッ!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、ゴツンという凄まじい音と俺の絶叫、おやっさんの怒声が二課の本部に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回和真さんの持ち物の中で冒険者時代に使っていたあるものがなくなっています。一章のもう一人のヒロインとなにか関係が?


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佐藤和真の軌跡

HAPPYBIRTHDAY!カズマ!
今日は和真さんのスキルや、如何にして呼吸にたどり着いたのかについての話です。


「そういえばさぁ」

 

 ある日の休日。学生組+エルフナインが俺とクリスの家で勉強会をしようと言い出し、そこへついてくるように社会人組がやってきたとある日のこと、唐突に奏が口を開いた。各々、ノートに走らせたペンを止め、くつろいでた社会人組もそっちに視線を向ける。

 

「和真のスキルって一体いくつあるんだ?」

 

「あっ、それ私も気になってました!」

 

「いいから、お前はまず課題を終わらせろ」

 

「えぇ〜……。」

 

 響が真っ先に食いついてきたがこいつは手を止めると課題が全く終わらない。

 

「でも、それは私も気になっていました」

 

「えぇ、私もよ」

 

「私もです」

 

 上から翼、マリア、セレナが口にする。

 

「確か、職業が『勇者』になったことで向こうのスキルが全部習得されてるんでしたっけ?」

 

「未来、課題は?」

 

「終わりました」

 

 渡された課題のページを見ると、確かに課題は終わっている。答えも問題ない。

 

「流石だな、良く出来てる」

 

「兄貴、あたしも終わったぞ」

 

 ふむ、クリスも範囲は終わってるな。教えたところはちゃんと復習しているらしい。

 

 二人の顔を見ると、どっちも私も気になりますって顔をしている。

 

「はぁ、わかったわかった。響達の課題も終わったら答えてやるよ」

 

「よしっ、やるぞ響!」

 

「切歌と調は私とセレナが見るわ」

 

「がんばります!」

 

「……早く終わらせる」

 

「デス!」

 

 何故かやる気なる社会人組と学生組。なに?そんなに気になるの俺のスキル?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「はっきりいって、全部を全部把握してるわけじゃないんだ」

 

「どういうことですか?」

 

 響、切歌、調の課題が終わると淹れてきたコーヒーを飲みながら約束のスキルの説明をする。

 

「俺のスキルは言う慣れば向こうの世界の全ての技能だ。軽く1万は超える。だけど、使い方だけは脳にインストールされてるらしくてな、多分、俺がクリスやキャロルのこと忘れてたのはこれが原因だろう。『テレポート』の衝撃と脳が処理に追いつかなくて処理落ちしたってわけだ」

 

「今は大丈夫なんですか……?」

 

「ああ、『多重思考』スキルのお陰でな。あのライブ会場に辿り着くまでにいくつかのスキルを脳が理解したんだろう。その中にあった『多重思考』はその名の通り、一度にいくつもの記憶、思考を処理できる。これのお陰でこっちに来てからは記憶が飛ぶなんて、滅多なことじゃ起きてないよ」

 

「それなら良かったです」

 

 俺の返答に調とエルフナインはホッとしたようだ。マリアやセレナ、キャロルのことを思い出したのは良かったがまた忘れてしまうのは俺も勘弁だ。

 

「それで、他にはどんなスキルがあるの?」

 

「そうだなぁ……戦闘系はお前らも知ってるだろうが、『潜伏』、『千里眼』、『魔眼』、『デコイ』、『暗器』、『狙撃』、『高速思考』、支援魔法、攻撃魔法。他に料理や掃除なんかの家事系スキル。ちゅんちゅん丸の手入れのための『鍛冶』スキル。あとはLINKERとかポーションを作るときに使った『調薬』スキルに魔道具を作るときに使った『エンチャント』とかだろうな」

 

「これだけで大した量だな」

 

「あとは、『手品』スキルとかありましたよね」

 

「そうだったな、まぁ正確には『宴会芸』スキルなんだけど」

 

 アクアがよく使っていたからそっちの言い方のほうが馴染み深い。

 

「クリスさんは他に何か知らないんですか?一緒に住んでるんだから」

 

「……そうだな、『釣り』スキルとか『騎乗』スキルとかあったな」

 

 あぁ、そういえばそんなのもあったな。

 

「『釣り』はわかるが『騎乗』とはなんですか?」

 

「乗馬でもするのかしら?」

 

「似たようなもんだ、人間が乗るものであれば馬からジャンボジェットまで操作可能ってスキルだ」

 

「乗り物の範囲が規格外デス!」

 

 切歌のツッコミにまぁここまで範囲が広いとなと心のなかで同意する。

 

「そうだな、久しぶりに使えそうなスキルでも探してみるか」

 

 俺は冒険者カードを取り出し、それに触れる。こうすることで記載しきれなくなったスキルの羅列が頭の中に流れ込んでくる。気分は仮面ライダーWのフィリップの地球の本棚に近いな。

 

「……あぁ、これも使えるようになったのか」

 

「なんか面白そうなの見つけたのか?」

 

「あぁ、切歌ちょっと手伝ってくれ」

 

「わかったデス」

 

 そういって、他の皆をリビングに残し切歌を連れて隣の部屋に移った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「「お待たせしたデース!」」

 

『えぇぇぇぇぇぇえぇ!?』

 

「き、切ちゃんが二人……。」

 

 現れた俺達に皆は面食らってる、勿論片方は俺だ。ドッペルゲンガーのスキル『変身』を使い、姿を完璧に真似たのである。

 

「「どっちが本物でしょうッ!?」」

 

 さぁて、どっちが本物なのかわかるかな?

 

「う〜ん、どちらでしょう」

 

「姿形はそっくり」

 

「私達でもわからないわね……。」

 

「そうですね、姉さん。わかるとしたら……。」

 

 俺達二人を皆が見比べる。だが皆姿が同じ俺達を見分けることができない。だけど、一人だけ本物の切歌を指差す。

 

「こっちが本物の切ちゃん……。」

 

「大正解デースッ!さすが、調!」

 

 切歌は調に抱きつく。やっぱり、調の目だけはごまかせないか。

 

「ふっ、まぁ、バレるよな」

 

「男言葉の切歌というのは珍しいですね」

 

 俺は変身を解除せずに、切歌の姿と声で話す。

 

「それにしてもまた随分と便利なスキルですね」

 

「ドッペルゲンガーって言うモンスターのスキルでな、俺も一度騙された」

 

 エルロードでダクネスに化けた、えっと……なんつったっけ?ラヴクラフトとかいう奴が使ったスキルだ。

 

「で?いつまでその姿でいんだよ?」

 

「あぁ、それもそうだな」

 

 クリスに言われてスキルを解除すると、ぐにゃりと輪郭が歪んでもとの姿へと戻る。

 

「いきなり当たり引いたんじゃないか?」

 

「これなら他にも使えそうなスキルもあるかも知れませんね!」

 

 まぁ確かに、まだ半分くらいしか見れてないからな。もう一度、冒険者カードに触れてスキルを探す。

 

「おっ、これも良さそうだな。『テレパシー』スキル。念話ができるようになるスキルか、うん?でも条件付きだな」

 

「確かに先生は戦ってるとき呼吸してるからあんまり喋らない……。」

 

「それを補うには丁度いいスキルね」

 

「それで、条件って何さ?」

 

 俺は記憶を探り、その条件を探す。そして、

 

「ッ!」

 

 俺はパンッと音がなるほど力を入れて冒険者カードを床に叩きつけるとゲシゲシと踏みつける。

 

「ちょっ、何してるんですか和真さん!」

 

「使えるかこんなふざけたスキル!!」

 

「そんなに取り乱すなんて、条件ってそんなに厳しいんですか……?」

 

 皆が気になったように俺を見る。俺は顔が紅潮するのを感じながら絞り出すように言葉を出す。

 

「接吻……。」

 

『え?』

 

「だ〜か〜ら〜……接吻だよ、接吻!キスって言った方がいいか?」

 

「き、キス……。」

 

「しかもディープの方じゃなきゃだめらしい……もうやだあの世界のスキル……。」

 

 通りでこんなスキル、向こうでは聞いたはずがないわけだ。恋人くらいだろ、こんなスキル使えんの……!

 

「封印だな、このスキルは……。」

 

『異議なし』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 あのあといくつかのスキルを見直したが結局、『変身』以外特に使えそうなのはなかった。

 

「まだなんかわかんないこととかあるか?俺が分かる範囲なら答えるが」

 

「はいデス、先生!」

 

「はい、なんでしょう、暁切歌さん?」

 

「先生はこんなに沢山のスキルを持ってるのにどうして呼吸を習得したんのデスか?」

 

 切歌の問いかけはある意味自然だと思う。ノイズと戦うだけなら魔法とスキルで事足りるし、フィーネやネフィリムと戦った後ならともかく何故それよりも早く呼吸を習得したのか。

 

 まぁ、一言で言うなら。

 

「どっかの誰かさんたちに『覚悟のないやつがでしゃばるな』っていわれたからかな〜?なぁ、お二人さん?」

 

 俺がニコニコしながら翼と奏に問いかけると二人は思いっきり目をそらす。そりゃそうだよなぁ、俺にその言葉をかけたのは何を隠そうこの二人なんだから。

 

「え?そんなこと言ったの、二人共?」

 

「「…………。」」

 

 マリアの問いかけに二人は顔をうつむかせて無言だ。無言は何よりも雄弁にその答を物語っていた。心なしか二人を見つめる皆の視線が冷たい。

 

「まぁ、落ち着けよ。マリアたちだって響に似たようなこと言ったことがあるはずだぜ?」

 

「「「「「ウッ!」」」」」

 

 クリスはフィーネのもとにいたとき、マリアたちはF.I.Sにいたときに色々言ってたからな。

 

「まああの頃の俺は二課に入って二ヶ月、精神的にも若かったからな。ブチギレて言っちまったんだよ、俺。『覚悟はあるさ、必ずあの世界に帰るって覚悟がな。この世界の人間なんて知ったこっちゃねぇ。お前ら知ってるか?あのライブ事件で生き残った女の子、今とんでもないバッシングを受けてるらしいぜ。なんで一人だけ生き残ったんだ、人殺し!ってな。そんな奴らのために命かけるお前らの気が知れねぇ、誰かのために戦うなんて聞いてるだけで馬鹿らしい』ってな……。」

 

「それって……。」

 

「私のことですよね」

 

「それでどうなったの?」

 

「もう、喧嘩も喧嘩、大喧嘩!」

 

「最終的におやっさんに拳骨食らって喧嘩両成敗。お互いギスギスした空気が続いてな、俺だって命かけた仕事してんだ、このままじゃいけないと、二人にある提案をしたんだ」

 

「提案、ですか?」

 

 その時のことを思い出し、俺と奏、翼は苦笑いを浮かべる。そして、三人同時に口を開き、あのとき俺が口にした言葉を真似る。

 

「「「おやっさん(旦那)(叔父様)に勝てたら覚悟を認めてくれ」」」

 

『な、なんて命知らずな……。』

 

 八人同時に同じ言葉を口にした。まぁ、相手があのおやっさんだからな……。

 

「といっても、スキルと魔法だけじゃ勝てるわけ無いと山で一ヶ月こもって修行した結果身につけたのが全集中の呼吸ってわけだ」

 

 あの山での修行は原作の柱稽古をそのまま再現した。

 

「半月、山をフルマラソン、飯も走りながら。体力がついたら剣速を上げる特訓、これには緒川さんに協力してもらった。筋肉の緊張や弛緩を利用して長時間その動きが保てるようにな。続いて柔軟、これはおやっさんに力技でほぐしてもらった、マジで股さけるかと思った。次に太刀筋矯正、木が特に多い密林で木を避けながら的を切る訓練、途中いくつもの振り子が不規則に狙ってくるからな、しかも全部鉄製喰らえば勿論やばい。次におやっさんとの無限打ち込み、最後に筋力強化。丸太を背負って走ったあと、滝に打たれる、最後に自分より二周りほど大きい岩を一町まですすめる。これで修行完了。あとはただひたすらに剣を振り回していた」

 

 そこで『直感』スキルが導き出し、たどり着いた『無我の境地』。気づけば俺はヒノカミ神楽を完成させていた。そこから派生させいくつかの呼吸をモノにした。

 

「なんというか、思ったよりも漠然とした修行ですね」

 

「仕方ないだろ、元は漫画の剣術だ。寧ろ、よく再現できたと思うよ」

 

「で、司令との戦いの結果はどうだったんですか?」

 

「………俺の自爆負けだよ」

 

『えっ?』

 

 俺が苦い顔で伝えた言葉に全員呆ける。まぁ、当然といえば当然なんだがな。

 

 まだペースが掴めていなかった俺は攻撃の呼吸に集中しすぎて息を吸うことを忘れて最後の一撃を叩き込む瞬間に酸欠で死にかけたんだからな。

 

「痣まで出して戦ったのにアレだったが……覚悟はくんでくれたらしくてな、今の関係になれたってわけだ」

 

「ん〜……。」

 

 俺の話が終わると一同の視線がさっきからうんうん唸っている響の方へと映る。

 

「どうしたの、響?」

 

「未来。私達が和真さんと会ったのって……ライブから二週間も経ってないときだったよね?」

 

「そういえば」

 

「おい、ちょっと待てよ。確か、兄貴が先輩達と喧嘩したのって……二課に入って二月くらいって話だったよな?さっきのがそのときの兄貴の本音なら行動と言動があってねぇぞ」

 

「どういうコトデス?」

 

「つまり、口ではあんなこと言っていても誰よりも先に響さんのことを心配して動いていたということですか?」

 

 今度は俺に視線が向く。

 

 やべ、バレた……。

 

 若干、顔が熱くなっているのがわかると今度は奏と翼がクスリと笑う。

 

「あとから聞いた話だったんだが、響のことは旦那にしか教えてなかったんだってよ」

 

「ああ。さらにはこの世界の人間のことなんて知らんと言っていたのに、実際にはその逆。怪我を追ってまで立花達を守っていた」

 

「それでようやく気付いたんだよ、和真は……ただ自分の気持ちを素直に話せないひねくれ者だって、ね。翼?」

 

「えぇ、だから私達はこの人を認めたの」

 

 二人の話を聞くと、他の奴らがなんか妙な目で俺を見る。まるで、手のかかる子供を見るような慈愛のこもった目だ。

 

「……なんだよ?」

 

 その視線がこそばゆくて視線をそらしてしまう。というか、なんだこの構図は俺はS.O.N.Gの副司令で教師、ここにいるのは部下と生徒だぞ。立場がどう考えても逆だろう。

 

「ふふっ、いいえ。なんでもないわ。ただ、貴方は今も昔も変わらないんだなって思っただけよ」

 

「確かに……兄貴のひねくれ方は今も昔も変わんねぇよな」

 

「ひょっとしてクリスの性格も和真さんの影響を受けてるんじゃない?」

 

「はぁっ!?」

 

「確かにデス!」

 

「……似たもの義兄妹」

 

「クリスちゃん、和真さんのこと大好きだもんね!」

 

「余計なこと言うんじゃねぇ!」

 

「いひゃい!いひゃいよ!」

 

 途中からクリスに矛先は変わり、顔を赤くして響のほっぺたを引っ張るクリス。

 

 ふぅ、やれやれ……。

 

「お前ら、飯食ってくだろ。少し待ってろ」

 

「あっ、私も手伝います」

 

「サンキュー、未来」

 

 俺はそう言って、キッチンに入っていく。ホント、コイツラといると……昔を思い出す。

 

『カズマさ〜ん、ご飯まだ〜?』

 

『カズマ、今日のご飯はなんですか?』

 

『カズマ、なにか手伝おうか?』

 

 帰りたい、だけど、帰りたくないと思う俺もいる。この矛盾と俺は向き合っていかなければいけない。だけど、いまは、な。

 

 どうせ、後悔することになるのなら今は楽ちんな方を選びなさい……まさか俺があの教団の教義を実演することになるとは、今思えばアイツと俺の相性は思ってた以上に悪くなかったのかも知れないな。




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番外編 S.O.N.G職員『これが修羅場かぁ』前編

なんか、見てみたいって感想が入ったので取り敢えず急ごしらえですが投稿します。


 S.O.N.G本部のとある一室。そこには、俺を含む殆どのS.O.N.Gメンバーとアクア達異世界組が揃っていた。

 

『……………。』

 

『……………。』

 

 俺はこの状況に全身から流れる汗を止められずにいた。その原因は机に座って対面する装者達とアクア達向こうの世界のパーティメンバー達。

 

 ただし、発するオーラが凄まじく重い。お互いニッコリ笑ってるのに空気だけは恐ろしく重たい……因みに俺は(俺が座っていい)椅子がないので床に正座させられている。是非もないよネ!

 

 俺がこっちで、せめて響達が卒業するまでの間教師を続けたいと頼むとめぐみん達は猛反対。すぐにでも俺を向こうの世界に連れ戻そうという感じになったので今この場を借りて話し合いを設けることとなった。

 

 そういや、装者とアクア達がこうやって面会するのって初めてじゃないか?

 

「……さて、取り敢えず自己紹介から始めましょうかっ!」

 

 その重い空気を振り払うようにアクアができる限り明るい声で提案する。

 

 お前、まさか……この重い空気を振り払うために……。アクアは俺の方を向くとウィンクをする。お前、俺がいない間に成長してくれたのか、いかん涙腺がもろく。

 

「なんか、二人の間で謎のアイサインが行き交っているのですが……。」

 

「あぁ、仲が良くて何よりだ」

 

 しかし、その様子を見ていためぐみんとダクネスがこめかみに青筋を作った。いかん、逆効果だ!

 

「と、取り敢えず自己紹介しましょう。まずは私から、えっと、立花響といいます。和真さんの部下で、生徒です。次クリスちゃん!」

 

「なんでだよっ!まぁいいか、アタシは雪音クリス。『佐藤和真』の『妹』だ」

 

 クリスの『妹』という発言を聞いた瞬間、めぐみんの方から何かが切れる音がしたのは俺の気の所為ではないと思う。

 

「カズマ……」

 

「……はい」

 

「なんですか、貴方は!?そんなに妹属性が好きですか!!アイリスといい、そんなに自分に懐いてくれる女の子が可愛いですか!!」

 

「ちょ、首がカクカクするからやめて……やめっ、やめろォ!」

 

 めぐみんに胸ぐらをつかまれ盛大に揺さぶられる。なんなんだ、この馬鹿力は……!

 

「おい、めぐみん。そのへんにしておけ……。」

 

「そうよ、カズマさん白目になりかけてるわよ?」

 

「ゲホッ、ゲホッ……!し、死ぬかと思った……!!」

 

 アクアとダクネスが止めてくれたお陰でなんとかめぐみんから開放される。アダムのやろうと戦ったとき以上に死の恐怖を感じたぞ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 それから、S.O.N.G側の自己紹介が終わると、先に自己紹介を終えていたアクア以外の二人の自己紹介。性癖以外は至って常識人のダクネスの自己紹介が終えると、めぐみんが紅魔族特有のマントをバサッしたあとの自己紹介を始める。

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法使いであり、その男と将来を誓いあったもの!」

 

『は?』

 

 装者達の一部からがドスの聞いた声が上がり、俺への視線が険しくなる。

 

「待て待て待て、めぐみん。話をでっち上げるなよ!」

 

 俺は告白された覚えはあっても、まだOKした覚えはないぞ!

 

「あ?」

 

「…………すみませんでした」

 

 これまたドスの聞いためぐみんの声に俺は押し黙った。何コイツ、元から危ないやつだったけど向こうで俺がいなかった二週間で何があった……?

 

「それで『自称』未来の妻のめぐみんちゃんはカズマさんを元の世界に連れ戻したいんだね?」

 

「えぇ、そういうことですよ。それと、『自称』ってなんですか?爆裂魔法で吹き飛ばしてあげましょうか?」

 

「ふふふ、ごめんね?私の神獣鏡に魔法は効かないの」

 

 な、なんだ……未来とめぐみんの二人から黒いもの出てるような気がする。というか、そろそろ、俺キレて良くない?俺別にまだ誰とも付き合ってねぇし、行動を制限されるいわれ自体ないだろう。

 

 そう思い至った俺は、立ち上がって未来とめぐみんに文句を言おうとする。

 

「お前ら、いい加減に……」

 

「和真さん」

 

「カズマ」

 

「「誰が立っていいと、いいましたか?」」

 

「……………はい、すみませんでした」

 

 めぐみんと未来の気迫に気圧されて、俺は再び床に正座する。

 

「あの副司令がまるで借りてきた猫みたいに………。」

 

「これがリアル修羅場か……。」

 

 朔也さん達オペレーターがなんか言っているが今の俺の耳には届いていない。恐怖なんてちゃちなもんじゃねぇ、これはネズミが猫から逃げるのと同じくらい当たり前のことだ。そう体が言っている。

 

「な、なぁ、めぐみん。もう少し穏便にやってもいいんじゃないか?」

 

「そ、そうだよ、未来。アクアさんたちだってようやく再会できたんだから。」

 

「駄目です、この男は下手に出ると調子に乗るので」

 

「そのとおりだよ響、和真さんとは一度ここでしっかり話をつけるべきだと思うの」

 

 なんで、こいつらこんなときだけ息ピッタリなんだよ……!

 

「貴方達はカズマのいいところしか知らないのでしょう、私達はこの人のいいところも悪いところもいつも隣で見てきました。彼のことをよく知っているのは私達の方です。よって、カズマは私達の世界に連れ帰ります」

 

「それは違うよ、めぐみんちゃん。私達もこの人の悪いところをちゃんと理解してるよ」

 

 この言葉にはさすがの響も少し高圧的に答える。

 

「ほう、ならば聞きましょうか?」

 

 めぐみんの質問に、響は座っている装者たちに目を向けて、合図を送る。

 

「まず、性格がありえないほどにねじ曲がってる」

 

「うぐっ!」

 

「たまに私達が挑発して誘惑すると、『俺にハニトラ』はきかんとかカッコつけてるけど、その実そんな根性がないだけのこと」

 

「ガハッ!」

 

「そのくせ時々私達のギアを見て顔を赤くしてそっぽを向く、ちょっと可愛い……。」

 

「あぐぅ……。」

 

 奏、マリア、調の容赦のない言葉の三段突きに俺は心に風穴が飽きそうな気分だった。

 

「くっ、なかなかやりますね。カズマの捻くれたヘタレ性格をよく理解している……!」

 

「お前らなぁ!俺のことをなんだと……!」

 

「「黙って、座りなさい」」

 

「………………サーセンした」

 

 俺、教師だよね?副司令だよね?勇者だよね?何この不当な扱い、泣いて良くない?泣いて良くない!?




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S.O.N.G職員『これが修羅場かぁ』後編

眠気覚ましに一筆。


「それでね、カズマさんったら家出した私を追って魔王城まで来てくれたのよ!」

 

「うわぁ!まるでどこかの物語みたいな展開ですね!」

 

「ふふん!そうでしょう、そうでしょう!」

 

 アクアがいつかのエピソードを誇らしげに響たちに語る。

 

 なんか、向こうでの俺の話を聞いてくうちに打ち解けてきた装者とアクア達、いやまぁ昔の俺の話をされてる俺としてはなかなかいたたまれないんですけど……。

 

 まぁ、未だに未来とめぐみんだけは打ち解けてないんだが。

 

「向こうにいた頃の和真ってかなり情けない性格だって聞いてたけどアクアやダクネスの話を聞いてるとそうでもないように思えるね」

 

「いやいや、それは違うわよカナデ。カズマさんは私生活はホントダメダメだったのよ、好きあらば引きこもろうとするし、ヘタレだし、最弱職だから当然弱いしだけど、ねぇ?」

 

「どんなに文句を言っても、最後の最後で『しょうがねぇなぁ』といって状況をひっくり返してくれる」

 

「私達がこの男に惹かれたのはそんなところなのだろうな」

 

「「「「「ヒューヒュー!!」」」」」

 

 周りにいるS.O.N.G職員がなんか冷やかし来る。後で覚えとけよ、アイツラ……!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「で、その時いじめられてた私を助けてくれたのが和真さんだったんです」

 

「へぇ、カズマさんったら男前じゃない」

 

 話はシフトチェンジして、今度は響達の話になった。

 

 もうこれ、完全に女子会だわ。でもいい加減、俺を正座から開放してくんない?

 

「カズマ、正座崩さないでくださいね?」

 

「………ウス」

 

 怖えぇぇぇぇぇえぇぇ!!アイツ、俺の頭の中読めるのかよ……。

 

「でもッ!あのときは本気で心配したんですよ!ルナアタックのとき……了子さんの攻撃から私達を守るためだけに剣を振ってボロボロになって……失血でホントに死んじゃうかと……」

 

 フィーネとの戦い、戦ってる四人を守るために凪や幻日虹といった防御、回避系の型のみで戦ったときのことだな。

 

 ―――コイツラは希望だ……俺なんかよりもよっぽど明るくこの世界を照らしてくれる光だ。俺の命をコイツラを守るこの一瞬のためにある……!

 

「オマケにあんな今際の際みたいなこと言いやがって……あたしらがどんだけ心配したかわかってんのか!?」

 

「すみませんっ、すみませんっ……!もう二度とあんなことしないので、許してお願い!」

 

 クリスに首をガクガクされ謝ることしかできない、俺。もはや、兄の威厳の欠片もねぇぞ!

 

 ―――ゴメンな……クリス、結局兄貴らしいことなんにもしてやれなかったなぁ。奏と翼にも…随分、迷惑かけたな。それに、響。

 

 ―――お前には本当に酷いことをしてきた……お前の気持ちをわかっていながら、ずっと引き離そうとしてきた。だけど、ホントはさ……ずっと褒めてやりたかったんだ。お前が誰かを助けたとき、よくやったって。でも、俺がいなくなるときお前が悲しむ顔を見たくなくて……いや、逆だな。ホントは俺が寂しかっただけなんだ……馬鹿だよなぁ。

 

「今思うと、響への言葉はあたし達より随分多かったじゃないか?」

 

「そういえば、そうだったわね。私と奏なんてほぼ一文だったし」

 

「あたしもだ、8年ぶりだぞ?8年ぶりに再会した義妹に言うことがアレだけって、それこそ兄貴としてどうなんだよ?え?」

 

 三人からの追求にどんどん小さくならざるを得ない俺。はっきり言ってあのときのことはよく覚えてないんだよ……!こっちだって、一歩遅れてたら死んでたんだから。

 

 それにクリスとの記憶だってまだ完全には戻ってなかったから、あれくらいしか言えることがなかったんだ。

 

「じゃあ、次。マリア達がカズマに惚れた理由を聞きたいわ」

 

「そうね……私とセレナは五年前にネフィリムっていう怪物に助けられたときから、再会を夢見てたの。敵として再会することになったときは辛かったけど、また助けられて……今は今で幸せよ」

 

 流石はここで一番年上のマリアだな。というか、サラッと俺に惚れてるって公言しなかった?

 

 だが、彼女の妹であるセレナは少々暗い面持ちで苦笑いを浮かべながら、口を開く。

 

「でも、あのときは効きました。再会したときに『私達のこと覚えてますか?』って聞いたとき、『誰だ?』と言われたのは……」

 

「えぇ、珍しく泣きそうになった……いえ、セレナは泣いてたものね」

 

「うわぁ……さすがのカズマさんね、敵として現れたのにそんなこと言ったら絶対に何かあるに決まってるじゃない。なのに、『誰だ』はないでしょ」

 

 アクアたちの視線が痛い、たしかに言い得てからあれはなかったって思ったけど、思い出す前だったんだから仕方なくね?

 

「でも、その後ちゃんと思い出してくれて……いってくれた言葉は私の宝物です」

 

 フロンティア事変が終わり、マリアたちの身柄を俺たちが預かることになったとき俺がマリアとセレナに行った言葉、か。

 

 ―――俺なんかに会おうとしてくれてありがとう。俺が、この世界にいていい理由でいてくれて……ありがとう。

 

 あんな言葉が宝物って……あれは寧ろ俺からの礼の言葉だったのに。

 

 そう思っていると、今度は切歌と調からなんとも年に似合わない重いため息が聞こえてきた。

 

「セレナたちはいいデスよね〜……アタシと調なんて先生と初めてあったとき、ものの数秒で気絶させられたのに」

 

「あのときの手刀、本当に痛かった……。」

 

「悪かったって……。」

 

 対人戦なんてフィーネ以来、おやっさんや響たちとの訓練以外でしたことなかったから手加減ができなかったんだよ……。おまけにシンフォギア纏って捕らえに来る奴らにどう手加減しろと。

 

「流石、カズマだ。こんないたいけな少女にも容赦がない。それでこそ、私の見込んだ男だ。鬼畜っぷりは鳴りを潜めたが容赦の無さは変わらないらしい」

 

「黙ってろ変態」

 

「んんっ!久しぶりの罵倒、ありがとうございますっ!」

 

「本当に変態さんなんですね……。」

 

「見た目キレイなのに、もったいない……。」

 

 まったくもって、同感だ。

 

「コホン。それで?どうせカズマさんのことだから二人にもなんかそれらしいセリフ言ったんでしょう」

 

 おい、アクア。お前俺をなんだと思ってんだ……。くさいセリフ製造機か、この野郎!

 

「そうデスね、色々あった気がするデス……。」

 

「切ちゃん、やっぱりあれじゃないかな?ほら、編入前の」

 

 ―――間違えなかった人間なんていやしないさ、大事なのはその後何をするのか。まぁ、こんなのはどんな人間にも言えることだろう。最後に重要なのはテメェが明日のテメェに胸を張れるやり方を見つけることだな。まぁ、それを教えてやるのが俺の仕事ってわけだ。

 

「「「「「ヒュー!ヒュー!」」」」」

 

「おい、今冷やかしたやつ顔覚えたからな!後で覚えとけよ貴様らッ!特に藤堯咲也ァァァァァァァ!!」

 

「なんで俺ッ!?」

 

 うるせぇ!こっちは女子にいじられてイライラしてんだよ!

 

「さて、あとは貴方ですよ。ミク、私にあれだけの大見得を切ったんですよっぽどのエピソードがあるんでしょうね?」

 

「めぐみん、だからもう少し好意的にしろと……いや、だが確かに気になるな。」

 

「もとから、好意はありましたけど……やっぱり落とし文句というと……響と一緒に神獣鏡に飲まれてた私を命がけで正気に戻してくれたときとか、ですかね……。」

 

「その落とし文句ってやめてくんない?」

 

「だったら、あのときのセリフを復唱してください」

 

「あの時のセリフって、いいけどさ」

 

 ―――なにもできてない?そんなことはない。響がよく言ってた、『未来は自分にとってひだまりだって』。それは俺にも当て嵌まるんだ。昔の俺なら自爆技だろうと容赦なく使ったと思う、だけど、お前が俺や響を信じて待ってくれてるから、俺は生きて帰ろうと思えるんだ。

 

「うん、改めて復唱したら明らかにただの落とし文句ですね。」

 

「だな」

 

「えぇ」

 

「だよね」

 

「あぁ」

 

「デス」

 

「うん」

 

「はい」

 

「そうね」

 

 装者達の容赦のない同意の言葉。でも仕方ない、俺もそう思ってしまったから。

 

 そうこうしていると、アクアの奴がなんか思案顔から顔を上げる。

 

「よしっ!決めたわ!」

 

「何をだよ?」

 

「私、こっちに住むわ!」

 

「ブッ!!」

 

 アクアの爆弾発言に俺は吹き出し、俺以外は装者、S.O.N.Gメンバー問わず絶句する。めぐみんとダクネスまでもだ。

 

「何いってんのお前!何いってんのお前!!女神だろお前、立場考えろよ!!?」

 

「なによ!天界から私を引きずり下ろした人が今更何言ってんのよ!安心しなさいな、ギャラルホルンを通じればいつでも向こうの世界に帰れるし、魔王がいないことで女神の仕事が殆どないのよ、これが」

 

「えぇー……。」

 

「ならば、私も残りましょう」

 

「では私も」

 

「待て待て待て、一旦落ち着こうか!」

 

 めぐみん、ダクネスまでトチ狂ったことを言い出す。

 

「住むっていったってどこに住む気だ?」

 

「カズマの家に決まっているでしょう。元々、同じ屋敷に住んでいたのです。今更でしょう」

 

「OK、百歩譲ってめぐみんはいいとしよう。だけど、ダクネスお前貴族の仕事とかあるだろう?」

 

「安心しろ、向こうにいる間に引き継ぎは終わらせてきた」

 

「引継ぎって誰に?」

 

「バルターだ」

 

 ああ、あのクソ領主の息子のくせに真面目なあの人か。

 

「というか、書類にでも向き合っていなければしていなければ二週間も耐えられなかったからな」

 

「「…………。」」

 

 珍しく、ガチ悲痛な顔になるパーティメンバー。確かにこっちでは結構な時間を生きてる俺だけど、向こうではたった二週間、だけど、こいつらにとっては二週間もの間つらい思いをさせたんだよな。

 

「和真さん……?」

 

 響までなんかすがるような目を向けてくる。

 

「あたしは構わないぜ、元々部屋は腐るほどあるしな」

 

「クリス……はぁ、わぁったわぁった!もう好きにしてくれよ」

 

「いやったー!こっちのお酒飲みまくるわよ―!」

 

「おい、それが目的じゃないよな!?」

 

 だとしたら、俺の感動返してくんない?

 

「これからよろしくね、めぐみんちゃん」

 

「よろしくデス!」

 

「えぇ、よろしくおねがいしますよ。特にミク」

 

「うふふ、負けないよめぐみんちゃん」

 

 や、やっぱ、この二人超怖え……。

 

「大変なことになったな、和真」

 

「おやっさん……アイツラの戸籍頼めます?俺はやることあるので」

 

「やること?」

 

 俺はさっき人の話を肴にしてたS.O.N.G職員たちの前に行く。

 

「取り敢えず、校舎裏行こうか?」

 

「いや、ここ校舎裏とかないんだけど……。」

 

「関係あるかぁあぁあぁぁぁあ!!!」

 

「「「「「副司令がキレたぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 

 ストレス発散させてもらうぞ、コラァァァァァァァ!!

 

 ―――その後、おやっさんに止められるまで一時間に渡ってリアル鬼ごっこが続いた。




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