転生したらノイトラだった件 (依怙地)
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転生
Reincarnazione


小説投稿ってのが初めてなので駄文が続きます、どうか暖かい目で見守ってください。


 なんということもない普通の人生。

 少年漫画の主人公のように誰かを守りたいと戦うこともなければ、スポーツ漫画の主人公のようにチームメイトとともに汗を流しライバルたちと鎬を削る思いをしたこともない、過去に悲劇的な物語があるわけでも、自分自身に何か隠された力があるわけでもない。

 普通の家庭に生まれ、普通に学校生活を送っている普通の大学生。

 人が人生で経験する喜びや悲しみ嬉しさや虚しさそのすべてを理解できなかった大学生は自分が恐らく世界では異質な存在だと理解していた。

 

 「ハァ…早く死なねえかな俺…」

 

 故にその男は自らの死を願っていた。

 陰気な雰囲気をまとい死にたいと口にする男に話しかけられる人間はそう多くはない、特別親しい人間でなければかかわろうとすら思わないだろう。必然的に男はいわゆるボッチになっていた。

 

 もしも彼にすべてとも言わなくとも分かり合える友が一人でもいればそのゆがんだ性根も多少なりとも変化していたのだろうが前述のとおり彼はまごうことなきボッチである。

 

 そして彼の願いはそう時間をかけることなく叶うことになる。

 

 なんのことはない、制御を失ったトラックが運悪く彼に正面から衝突したのだ。その衝撃は彼の命と意識をほぼ一瞬で刈り取った。

 

 そのほぼ一瞬の中で彼は自らの幸運を賛歌していた。

 

 (ようやく死ねるな)

 

 まだ生きていたいと望む生命が多数のこの世界で彼はその死の瞬間を讃美し奇しくも彼が今までの人生で経験しえなかった喜びの感情を理解したのだ。

 

 だがしかし、この世の神は誰もが思うよりひどく残酷だった、死を望みようやくそれが叶った彼の魂を異なる世界の異なる種族に植え付けた。

 

 神が何を思ってそれを行ったのか、自らの愉悦とするためか、死を望む救いのない男を哀れんだのか。

 

 それはきっと矮小な個に理解できる事柄の範疇を超えているのだろう。

 

 閑話休題

 

 鬱蒼と茂る森、おおよそ人が触れていないであろうことが容易に想像できるほどの大木が立ち並ぶその森の中に少年が立っていた。

 

 少年の片目はえぐられ、その体には激しい戦闘があったことを証明するかのような深い傷が所々にできていた。

 

 「チッ…」

 

 少年の足元を見れば少年の体躯を容易に超える巨大な黒毛の狼が息絶えている、こちらにも激しい戦闘が確かにあったこと証拠づける深い傷が少年以上に出来ていた。

 

 美形といえないまでも整った顔立ちなのだが異常に悪い目つきがかき消している少年は人ではない、考えてもみて欲しいただの人間の少年が自らの体躯を超える狼と死闘を繰り広げることができるだろうか、断じて否である。その証明に彼の側頭部には三日月のように左右不ぞろいの白い角が生えていた。

 

 そう彼は大鬼族、オーガなのである。

 

 そしてそのオーガの肉体には冒頭の死を望んだ男の魂が宿っていたのである。

 

 『死にたい』という魂の願いと『手に汗握る戦い』を求める大鬼族の欲求が混ざり戦いの果ての死を望むオーガが生まれたのである。

 

 そのさまは、まるでBLEACHの登場人物であり、オサレ度では作中トップクラスである十刃の一人ノイトラ・ジルガそのものだ。

 

 この物語は、ノイトラ擬きである死にたがりが転生したらスライムだった件の世界で過ごしていく物語である。

 

 




続きもすぐ書けるように頑張りますのでお気に入り登録してくださればとっても嬉しいです。


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オーガの里
Infanzia


リムル様に会えるまで登場人物全員名無しなのがきつい。
いやほんと。



「貴様ァ!!何を考えておるのだ!!」

 

 赤い肌と髪に黒い角、武士の鎧のような防具を身に着けた大鬼族でも随一の強さを誇る戦士であり大鬼族の族長は過去類を見ぬほどの大激怒中であった。その理由はもちろんこの男。

 

 「…うるせぇな、勝ったんだからいいじゃねえか」

 

 自身の身の丈を超える牙狼族と死闘を演じたノイトラ擬きである。なお、勝利の代償は大きく、片目を失うという軽くはない傷を負ってしまい今は寝ながら族長のお説教を聞いている。

 

「そういう問題ではない!!それに!目を失っておるではないか!一歩間違えておればお前は死んでおったのだぞ!!」

「だァかァらァ!死んでねえんだからそれでいいだろうがクソジジイ!」

「誰がクソジジイだ!俺はまだまだ現役だ!!」

「いや知らねえよ…」

「だいたいお前が戦った牙狼族がはぐれだったからよかったものだ!奴らは基本群れで動く!己の運に感謝しておくんだな!!」

 

 暗にまだまだ未熟であると言われている。

 

「お前は暫く絶対安静だ!修行は勿論狩りも許さん!!」

「ふざっけんな!てめぇ…ッ!」

 

 激昂した勢いで起き上がろうとするが傷の痛みで顔を顰める。

 

「ふん!そのザマでは動くこともままならぬまい!しばらく頭を冷やすがよい!」

「チッ…」

 

 族長が席を外すと彼と入れ替わるように現れたのは大鬼族の里で最も剣を極め剣術においては族長よりも優れた腕をもつ老オーガだった。

 

「ふむ」

「なんだよ」

「あのいぬっころ如きにここまでの深手を負うとはいまだ未熟なり」

 

 自身が大怪我を負いながらも倒した相手をいぬっころと言われてはこちらも黙っていられぬと声を荒げようとする。

 

「以前より疑問だった事がある。お主、何故そこまで生き急ぐのだ」

「あ?」

「彼奴ははぐれだったことが幸いと言っておったがそんなことはない。如何にワシらがオーガといえど、幼子のうちからあれと戦える者などましてや勝てる者などそうは居るまい…」

 

 老オーガはそこで一度話を切る。

 

「もう一度聞くぞ、お主は何故死に急ぐ」

「…戦闘種族(オーガ)として戦いを誉としてっからだ」

「……話す気は無いか」

 

 席を立つ老オーガ。

 

 「まあよいか、先ずは傷を癒せ。いぬっころ相手に手こずるような戦いでは誉どころか自慢にもなるまい」

 

 オーガらしく決死の戦いを誉としたいのも事実だがノイトラ擬きの、この男の真なる望みは戦いの末に果てること。

 前世で死を望んだ男の魂と闘争を求めるオーガの本能が混ざりノイトラ本人に近くなったことなどだれが想像できようか。

 

 「…くそったれが」

 

 自身よりも強者である二人からの説教に自身の片目を代償にした戦いが稚拙なものであったかのように何とも言えない悔しさを覚えたノイトラ擬きは最強を目指すことを固く決心した。

 しかし、それが自身の望みとの矛盾を生んでいることには気づかなかった。

 

 

 

 




ノイトラ(仮)にチートなんてものはありません。
しいて言うならほかの子たちに比べてちょっと早熟なだけです。
はやくリムル様来てほしい。
名無しがきつすぎる。


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Crescita

 今更ながらこの小説は「転生したらスライムだった件」のWEB版及び漫画版が混ざったものになります。
 
 小説を書くことの難しさを改めて実感中です。暫くは駄文が続きますので、この小説は主人公の物語と作者の小説力の成長を見守るものとしてご覧ください。

 また作者は感想をもらえると歓喜のあまり踊りだすのでどうか拙作をお読みになられ少しでも何か感じたことがあれば感想として書いてくだされば嬉しいです。


 自らのの意識が覚醒したのは大鬼族の里に生まれてすぐ、赤子のころだった。

 彼は現代社会の建築技術では考えられぬような古風な悪く言えば古ぼけた屋敷に生を受ける。

 両親ともに人外であることが見てわかる肌の色と髪の色そして側頭部から生える白い角それに赤子は大いに混乱した。

 

 彼らはなんだ、自分は死んだのではないか、ココはどこだ。生まれて間もない赤子の脳は痛烈な疑問の波を処理できず気を失ってしまう。

 

 「お!おい!大丈夫なのかこ奴は!?」

 

 それに大いに慌てたのは恐らく父親であろう大柄なオーガである、先ほどまで産声をあげていたのに自らが抱いた瞬間気を失ったのだ心配するのも無理はない。

 

「眠ってしまったのでしょう。そう騒ぐことではありません、ややが起きてしまいます。」

「む!そうか。」

 

 大柄なオーガを諫めたのは母親であろうオーガだ。父親オーガから赤子を受け取ると眠りを害さぬよう優しく抱きしめる。

 

「どうかこの子が立派に育ちますように。」

「まったくだ!」

 

 死にたがりの魂が宿ったオーガの子に親二人はあふれんばかりの愛情をもって育てた。

 

 自らのの死を望んだ男の魂を宿した少年は、父からはオーガの戦士としての誇りを母からは強者として慈愛の心を教えられた少年は初めて誰かを心から尊敬するという感情を知った。

 

 そこから少年はすくすくと成長し彼がこの世界に生を受け十年は経ていようかという頃に両親二人は魔物との死闘によりこの世から去った。

 

 少年は絶望した。

 

 そして、せめてこの二人の望みをかなえねばと、オーガの戦士として戦い何かを守る、これを為したのち自らの死という欲求を果たすのだと、そう心に誓った。

 

 何故彼は自らの死を望むのか、前世では彼の精神は異端だった、故に彼はそれを抑え自らを終わらせる即ち死を望んだのだ。だがしかし、新しく生を受けたこの世界には日本という国すらなく異なる文化、異なるモラルなのだそして彼は新たな両親に多少なりともの感情を贈られたのだそんな彼が死を望む必要は果たしてあるのだろうか。魂が死を望むなど、それは、もはや呪いではないのだろうか。

 

 そこからまた十年が経ち少年は青年へと成長した。無論何もなかった訳ではない、牙狼族との戦いで自らの弱さを痛感しオーガの中でも最強クラスの自らより何十年も昔から戦いの場に身を置いている老オーガやその豪胆さや勇猛さで大鬼族全員に尊敬されている大鬼族族長などの修行により強さを格段と増していた。またオーガとしての生活の中で標榜は更にノイトラに近づき精神も変質しこちらもほぼほぼノイトラといった、ゆがんだ正確=>性格になってしまっていた。

 

「オークだ!オークの群れがこちらに向かってくるぞ!」

 

 狩りに出ていたのだろうか、森から出てきた若いオーガが息も絶え絶えに里にいるオーガ全員に聞こえるように大声でオークの襲来を告げる。

 

「あの豚どもが我らに戦いを挑むというのか!爺、よもやこれは…!」

「えぇ、少々拙いやもしれませぬ…」

 

 年を重ね経験豊富なオーガは豚頭帝(オークロード)の存在を予想し戦慄した。

 

「ふん!豚どもが何匹来ようと知れたこと!!」

「然り」

「お兄様…」

 

 オークが何人来ようと勝てる自信がある若く力有り余る者達は戦意を向上させた。

 

「油断しすぎて負けないようにね」

「なんでオレだけに言うんだクソムラサキ」

 

 油断を心配する紫色の肌と髪をした若い女のオーガと悪態で返すノイトラ擬き。

 

 たかがオークとほとんどのオーガは油断していたのだろう。

 

 よもやそのたかがオークたちに里を滅ぼされるとも知らずに。

 

 




次でようやくリムル様に会える(泣)
会えるよね(汗)
話全然進まなくてすいません。


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Incontrare

早く名前つけてリムル様…
個体識別が主人公の悪態と地の文の軽い説明だけなのはきっついですし。
サブタイトルは調べてもらえればわかるとは思うのですけどイタリア語です。
陳腐なこの小説にせめてもの特徴を持たせようと作者が頭をひねらせて出たものです。


「俺は上位魔人ゲルミュッド!!俺が貴様らオーガに名をつけてやろう!!」

 

 傲慢不遜にオーガたちを見下し、名をつけてやるとのたまうこの男は魔王クレイマンに仕える魔人の一人だ。

 

 当然戦士としての覇気も感じられぬ弱そうな男に名をつけてもらおうとするオーガなど一人もおらず。

 

 次期族長である若いオーガなどは胡散臭いと一蹴してしまう。

 

「貴様ァ!!」

 

 今まで自身が名をやろうと言い、それに拒んだ者はおらず、有頂天になっていたゲルミュッドは自身への侮辱に怒り激昂するが。

 

「なあ、テメエ上位魔人ってことはそれなりに強えんだろ」

 

 いつの間にか後ろに立ち自身に話しかけてきた者の存在に驚き、そちらに視線を向ける。

 

「当然だ!!俺は上位魔人だぞ!!」

 

 余程上位魔人であることに誇りがあるのだろう。上位魔人を強調させながらさけぶ。

 

「そうは見えねえが?」

「なんだと!!」

 

 ノイトラ(偽)は大鬼族族長、老オーガ、それこそそこにいる族長の息子にすら勝てるかどうか怪しいこの男の強さを測りかねていた。

 

「気に食わねえか?だったらかかって来いよ。オレに勝てると思うならな」

 

 明らかな挑発である。だがただの挑発にしては濃すぎる殺気をゲルミュッドに放つノイトラ擬き。

 

「なッ!バカな!ただのオーガがなぜここまで!」

 

 自身が仕える魔王ほどではないとはいえ相手はただのオーガ、ネームドですらないそのオーガを認めたくはないが恐れたその事実がゲルミュッドのプライドを深く傷つけた。

 

「この借りはいずれ返すぞオーガども!!」

 

 来た時よりいくらも早い俊敏さで里を後にする上位魔人ゲルミュッド。

 

「何だったんだアイツ」

「さあ」

 

 ことの顛末を見届けようとノイトラ擬きとゲルミュッドのやり取りを見ていたオーガ達もゲルミュッドが去ったことで終わりだと解散する。

 

「なんだよ、つまらねえ」

「意外だな」

「あァ?」

「お前のことだ、是が非でも戦いに事を運ぶと思っていたのだがな」

「うっせぇアオネクラ」

 

 上位魔人でありながら自身の殺気に身を震わせ、あろうことか逃げるように去っていったゲルミュッドに落胆しているノイトラ(偽)。それに話しかけたのはアオネクラと言われるように青い髪色をしたオーガだった。少年の時分から牙狼族に突っ込んでいくような様を見て、ほとんどのオーガ達は彼をオーガの中でもずば抜けた戦闘狂だと思っていた。故にゲルミュッドと戦わずあまつさえ逃走を許したノイトラ(偽)の行動に疑問を持ったのだ。

 

「アオネクラ…お前の悪態の癖はよくわからん」

「あのゲル…何とかって野郎は、クソほど弱ぇ。ただのひとにらみでブルっちまってやがった。クソジジイや老い耄れジジイなら睨み返してくるぐれぇなのによォ」

「だからなんだ」

「分かんねぇやつだな」 

「……」

雑魚を千匹殺したとして、いったい誰が俺の最強を認めるんだ?

「ッ!!」

 

 ゲルミュッドなど比にならぬほど傲慢さ、己が力を最強と微塵の疑いもないその言動に青髪のオーガは戦慄する。

 

 一方そのころ族長邸では、年を重ねた経験豊富なオーガ達が森の異変を察知し会合を行っていた。

 

「…それは確かなのだな?」

「はいお館様。周辺をすみかとする獣並びに下位の魔物どもがまるで何かから逃れるように動いております」

「それが何かは」

「…申し訳ございません。いまだ不明です」

「よい。ふむ」

「困りましたな」

「まったくだ」

「狩りの範囲を広げねばなるまい」

「しかし、周辺の獣が恐れるものとはいったいなんなのだ」

「探らねばなるまい。」

「ならば私が行きましょう。若い者たちもつれていきます、良い経験になる」

「そうか、ならば即出立せい。そして異変の正体の情報を持って帰ってまいれ!」

「は!」

「他の者達も狩りの範囲の確認、武具の点検を入念にしておけ。」

「「「「「は!!」」」」」

 

 全員の返事とともに会合はお開きになる。

 

「何やらきな臭いですな」

「ああ、こんな事は俺が族長となって一度もなかった」

 

 全てのオーガが席を外し、がらんどうになった大部屋に残る族長と最高齢の老オーガのふたりは森の異変について更なる意見を交換する。

 

「もしも何かあれば倅を最優先とせよ。あれが生きておれば我らオーガは滅びん」

「縁起でもない事をおっしゃいますな。しかし、お館様の命確かに受け賜わりました」

「頼むぞ」

 

 この二人の悪い予感は現実のものとなる。数十万を超える武装したオークが夜襲をかけてきたのだ。哨戒に出ていたオーガ数人は運悪くもオークの先頭集団と鉢あってしまい戦闘になる。あまりの多さに戦慄した最も経験豊富なオーガは、一番若い者だけでも逃そうと奮闘しオーク達を数秒押しとどめ、若いオーガを里に戻すことが出来た。

 

 しかし、報告したのが若いオーガだったことが、皮肉にも初の集団戦で恐れをなしてしまったのだろうと考えられてしまい、オーク如きがとさして警戒することは無かった。

 

 その結果が里を破壊され同胞を喰われるという見るも無残な結末だ。

 

 

 「クソ豚どもがァ!!!」

 

 老オーガは族長の命を果たすため最後まで戦おうとしたオーガの若君を当身で気絶させ担ぎオーガの姫、数人の従者たちを連れて脱出しようとすると、いまだ激しい戦闘を繰り広げている一帯を目にする。

 

 食えば食うほど強くなる性質。オーガの戦士を喰らい数倍は強化されているであろうそのオーク相手に大立ち回りを演じる男がいた。少年期から誰よりもオーガの戦士らしく戦いに身を投じ、同年代のオーガよりも頭一つ飛びぬけていた男だ。ここで無駄死にさせては憎き豚どもへ復讐するときの戦力が大幅に減少してしまうことになる。

 

「お主らは先に行け!!ワシはあ奴を連れて追い付く!!若と姫を頼むぞ!!」

「「「は!!!」」」

 

 そう考えた老オーガはオーガの若君を最もガタイの大きいオーガに任せ、自身は身を翻しノイトラ擬きの下へと走った。

 

「なんだァ!!老い耄れジジイ!」

 

 突如として乱入してきた事を咎めるように叫ぶノイトラ擬き。

 

「いったん引くぞ小僧!!」

「アァ?ふざけんじゃんねェ!!俺にこんな豚どもから逃げろってのか!?」

「然り。この場での無駄死には許さん!!」

「クソがァ!!!」

 

 何とか説得をし、逃げた二人はオークを撒き先に逃がした五人へ追い付く。その頃には夜は明け朝日がさしていた。一行には里を壊された怒りと里を失った悲しみが漂っていた。

 

「豚どもめ!!この報いは必ずや受けてもらうぞ!!」

 

 オーガの若君は特にそれが顕著だった。

 

「然り。しかし、その前に我らは疲れを取り、力をつけねばなりますまい若」

 

 唯一の年長者である老オーガが若を諫める。

 

「くッ!確かに!」

 

 そんな中ノイトラ擬きは死ぬ機会を逃したという落胆とあんな豚相手に?という怒りの感情が渦巻いていた。

 

「おい!お前たち!何者だ!」

 

 そんな一行に声をかけたのは牙狼族とゴブリンのツーマンセルで行動している特異な集団だった。

 

「なぜゴブリンと牙狼族が一緒になって行動しているのだ、爺」

「分かりませぬ。しかし彼奴らの統制の取れた行動、何者かが率いておるのでしょう。若が見たという魔人やもしれませぬ。油断召されるな」

「どのみち話を聞かねばなるまい。奴らを無力化する」

「「「「「は!」」」」」

 

 オーガ一行とゴブリン牙狼族の集団が戦闘になる。

 

 姫の眠りの魔術でほとんどを無力化させ、残った者も健闘はしているがそう長くは待たないことが見て取れるほどオーガとゴブリンたちの戦力差は大きかった。唯一いい勝負していた他の牙狼族よりも少々大きく額の星模様に角をはやした牙狼族には、己が子供のころに倒していたこともあってか全くそそられず、ノイトラ(偽)一人大きな岩の上で寝っ転がっていた。

 

「ランガ!」

「申し訳ありません。我がいながらこのような」

「戻れリグル!」

「リムル様!申し訳ありません」

 

 透き通るような青い髪に謎の仮面をつけた少女(?)に牙狼族とゴブリンは跪き己の非力を詫びていた。恐らくはこの人間がこいつらの主なのだろうとあたりをつけたオーガ達の敵意はさらに増す。

 

 だが、ノイトラ擬きは強さを測れぬその少女に興味を持ち、強ければ戦おうと決めるのだった。 




この小説で初めて出たネームドがゲルミュッドて…。
過去一番疲れました。
これで誰にも読んでもらえなったらかなりショックです。


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リムルとの出会い
Melma


三人称視点で書いてきましたが今回は一人称視点にチャレンジしてみます。
これまで以上に稚拙な駄文が続きますがどうかお付き合いください。

自分が書いているモノが人にはどう見えているのかが私には分かりません、この小説を開いた時間が読者の方々の時間を無駄にさせてしまったのかそれとも満足した時間になったのか、面白かった・つまらなかった、この一言だけでも感想欄に書いて下さると嬉しいです。

厚かましいのは理解しています。

この小説は読者の皆様が読んでくれることで成立するものです。読者の皆様が読んでいてつまらないと感じた時点でこの小説に価値はなくなります。

「この部分変えた方がいいよ」「この表現は適切じゃないよ」などの改善点を示してくださればそこを改善できるようできる限りの努力をするつもりです。

長々とすみませんでした。
私は、感想欄に一つの感想が増えるたびに喜んでいます。
どんな感想でも構いません。
読者の皆様の感想が私の励みになります。


~リムル・テンペストSide~

 

(リムル様!!)

 

《個体名ランガからの思念伝達、声音から救援要請と推測。》

 

 まじか!ランガに救援を呼ばせるほどのやつがまだこの近くにいたのか!

 

 俺は急いで洞窟から出て、ランガ達のもとへ向かう。

 

「切られたっす!超痛いっす!」

 

 白いおじいさんに切られたゴブタなのだが、こいつ切られたのによく喋るな。そこまで深手じゃないのか?

 

「ああ!リムル様じゃないっすか!心配になったから来てくれたんすね!」

 

 やっぱこいつ元気だろ。

 

 ゴブタに回復薬をかけて青髪のオーガ(?オーガだよなあいつら)と黒いでかいオーガと戦っていたランガと紫色の髪をしたオーガに剣を砕かれたリグルを呼び戻す。

 

「ランガ!」

「申し訳ありません我がいながら。」

「もどれリグル!」

「リムル様!申し訳ありません!」

 

 ランガに怪我がないことを確認しリグルにも回復薬をぶっかっける。

 

 他にも倒れている奴らがいるけど息はあるよな。

 

「ランガ、この倒れている奴らはどうした?」

「は!魔法により眠らされております、あの桃色の髪の仕業です」

 

 桃色の髪…、あいつか。俺が桃色の髪に視線を向けるとかばうように立ちふさぐ五人のオーガ、そして来た時からずっと岩の上で寝っ転がっている奴。なんなんだあいつ?

 

「申し訳ありません。まさかオーガに出くわすとは…」

 

 リグルが心底申し訳なさそうに謝罪してくる。

 

 やっぱりオーガだったか前世の映画やゲームとは当たり前だけど随分違うんだな。なんか鎧までつけてるし。てゆーかどう見ても日本刀だよなあれ。

 

 七人のオーガか…。

 

 とりあえず話しかけてみるか。

 

「おい、お前ら。事情は知らんがうちのやつらが失礼したな。話し合いに応じる気はあるか?」

「……」

 

 うわあ、すっごい睨んでくる。岩の上のやつはなんかニヤニヤしてるし。

 

 実力差は明白なのにゴブタもリグルも致命傷ではなかったし、警備隊のほとんどは無力化されてる。何か訳アリか?

 

 まあここはこちらが大人の対応を…

 

「正体を現せ邪悪な魔人め!!」

 

 ん!?

 

「ちょっと待て!俺がなんだって!?」

 

 邪悪!?なんで!

 

「魔物を使役するなど普通の人間にできる芸当ではあるまい。」

 

 はァ?それで邪悪?

 

「見た目を偽りオーラを抑えているようだが、甘いわ!!」

 

 えぇ…。

 

「正体を現すがいい!」

 

 ええぇ……。

 

「黒幕から出向いてくれるとは好都合というもの。」

 

 ……ガァーーーーン。

 

 俺の正体なんてただの愛くるしいスライムなのに…。

 

 誤解だ。絶対誤解だ。

 

「あの…、あのなぁ…」 

「ふん!貴様の言葉になど聞く耳を持たん!すべてはその仮面が物語っている!!」

 

 仮面?これはシズさんの形見だ。は!?まさかシズさんは邪悪な魔人だった!?

 

 いやいやいやいや、そんなわけない!!

 

 「待ってくれ何か勘違いしてないか?これはある人の形見で…、」

 

 赤髪のオーガが刀の切っ先をこちらに向けてくる。

 

 一応両手を上げる。

 

「同胞の無念!億分の一でも貴様の首で贖ってもらおう!!邪悪なる豚どもの仲間め!!」

 

 ホントにどういうことだよ。

 

「どうしますか?」

 

 ランガが対応を聞いてくる。

 

「どうするたって…」

 

 絶対勘違いだしなぁ…。

 

「おまえはあの桃色の相手をしろ、絶対に殺すなよ」

「は!」

「どうも裏がありそうだ。邪魔だけしてくれればいいから。残りは俺が倒す」

「しかし、それではリムル様がオーガ六体を相手にすることに!」

 

 心配そうにこちらを伺うランガ。可愛いやつめ。

 

「問題ない、負ける気がしない。それに、一人は完全にやる気がなさそうだしな」

「おお!しかし、リムル様お気を付けください。あの寝っ転がっているオーガ、どこか嫌な気配がします!」

「お、おう、分かった」

「嘗められたものだな!真の勇気か唯の蛮勇か!その度胸に敬意を払い挑発に乗ってやろう!後悔するなよ!!ハァァァァ!!!」

 

 赤髪のオーガが切りかかってくる、強いし速い、けど遅い!

 

「おまえは眠っとけ。」

 

 まずは黒いでかいオーガを麻痺吐息によって眠らせる。

 

 後ろからの紫色の髪の女オーガの不意打ちも魔力感知で丸見えだ、頭を下げて難なくかわす。

 

「悪いな、丸見えだ。」

 

 でかい!

 

 あまり大きな胸に感嘆する。

 

「…ッ!!」

 

 あれ?こえでてた?

 

「いや、丸見えってのはそうゆう意味じゃないぞ!誤解だ!」

 

 粘鋼糸で体を縛り動きを封じる。

 

 いや、別に変なこと考えてないからね?

 

 身体装甲で顔面狙いの突きを防ぐ。こんにゃろ、どうすんだよ、仮面が傷ついたら。

 

 腹パンで吹き飛ばす。あ、やべ、ちょっと強すぎたかも。

 

「さて、あとは、どうする。」

「ふむ、エビルムカデの麻痺吐息、ブラックスパイダーの粘糸鋼糸、アーマーサウルスの身体装甲。ほかにも多数の魔物の業を体得しているやもしれませぬ。油断召されるな若!!」

 

 あの爺さん、俺が捕食した魔物と獲得したスキルを一目見ただけで言い当てやがった。手の内を見せすぎるのはまずいかもな。

 

 それに、さっきからずっとニヤニヤしてるアイツ、ランガは気をつけろって言ってたけど。

 

「ここらへんで終わりにしないか?そろそろ俺の言い分も聞いてほしいんだが?」

「黙れ!!邪悪な魔人め!」

 

 またそれか…。

 

「ええっと、だからなぁ。」

「確かに貴様は強い。だからこそ確信が深まった!!」

「確信??」

「やはり貴様は奴らの仲間だ!!」

「奴らって?」

「たかがオーク如きに我らオーガが敗れるなど考えられぬ!」

 

 オークってなんだよ、うちにはゴブリンと狼とスライムしかいないよ!

 

「さっきから、なにを!?」

「黙れ!!すべては貴様ら魔人の仕業なのだろうが!!」

「えぇ?魔人?」

「とぼけるな!!」

「待てよそれは誤解ッ!!」

 

 右腕持ってかれた!

 

 この爺さん完全に気配を消してやがった!!

 

「ぬぅ、わしも耄碌したものよ。頭をはねたと思ったのじゃが。」

 

 マジかよ…。

 

 リグルたちから心配の声が聞こえる。

 

 魔力感知を掻い潜り多重結界と身体装甲をあっさり破ったのか。

 

「次は外さんぞ!」

「どうやら蛮勇の方だったようだな!片腕を失い発狂しない胆力は誉めてやろう。一人で我らを相手取ろうとしたその傲慢さが貴様の敗因だ!!冥府で悔やみ続けるがいい。」

 

 うーん、腕を失ったくらいすぐ治せるんだけどな。

 

 超速再生で失った腕を元に戻す。

 

「なァ!?」「ぬぅ…」

「片手を切り落とした程度で俺に勝ったつもりだったのか?」

「化物め!!」

 

 まあ人ではないですけど。

 

「オーガフレイム!!」

「若…」

「やった…のか」

「残念だったな俺に炎は効かないんだ。だが確かに俺はお前たちを甘く見ていたようだ」

 

 片腕切り飛ばされたし。 

 

「少し本気を見せてやろう!」

「なんというオーラッ!」

「よくみておけ。」

 

 俺の全魔力を黒炎に変えて空へ放出する。

 

「あ、あれは!あの炎は周囲の魔素を利用した妖術ではありませぬ!あの炎を形作っているのは純粋にあの者の力のみ!炎の大きさがそのままあの者の力!!」

 

 解説ありがと、桃色美少女!

 

「もっと面白いものを見せてやろう!これが俺の真の力だ!」

 

 大きな岩に向かって雷を落とす。

 

「「「「あ」」」」

 

 無情にも雷は岩を砕いたあのにやけ面のオーガが寝転んでいた、あの岩に。

 

 やらかしたやらかしたやらかした!!!!

 

 あいつ大丈夫だよな!?生きてるよな!!?

 

 《解 岩の上で横になっていたオーガは現在あなたの後ろです。》

 

 良かった生きてくれてた!これでもし生きてなかったら誤解どころじゃなかったよ!!

 

 ってあれ?後ろ?

 

「なんだよテメエ結構強ぇんじゃねえかァ!!」

 

 そのオーガは俺の体を優に超える巨大な鎌を今まさに振り下ろそうとしていた。

 

「ッ!」

 

 爺さんの時のように気を抜いたわけでもない!油断していたわけでもない!大賢者によって最適化された防御を、こいつ!切り裂きやがった!!

 

「再生できんだろォ!!さっさとしやがれやァ!!」

 

 何こいつ怖い!!

 

「おい!ジジイ!若!こいつもらうぞ!!」

「あ、ああ」

「むぅ…」

 

 いや待ってお前さっきまで俺がぶったおす!!みたいな顔してたじゃん!?爺さんもそのまた始まったかみたいな顔やめて!なんなのこいつ!?

 

「ちょッ!ちょっと待った!」

「しゃらくせェ!!こちとらそこのジジイに中途半端に止められてイライラしてんだよ!!」

 

 いや知らねえよ!!お前ら観てないで助けろよ!!

 

「お待ちください!!」

 

 意外にも奴を止めようとしてくれたのは桃色の髪の美少女オーガだった。

 

「この方は敵ではないかもしれません!!」

「あァン?」

 

 あ、やった止まった!さすがのアイツでも美少女の意見は聞かざるを得ないみたいだな!

 

 「なぜ敵ではないと言える!里を襲ったやつと同じく仮面をつけた魔人ではないか。」

 

 「然り、左様な奇怪な技ばかり使うような輩ですぞ姫!」

 

 「敵かもしれねえんならぶっ殺しゃいいだけの話じゃねえか!」

 

 「冷静になって考えてください!あれだけの力がある魔人様が、姑息な手段を用いて豚どもに我らが里を襲撃させるのは不自然です!それこそおひとりで我らすべてを皆殺しにできましょうから!」

 

 うんうん!

 

「この方が異質なのは間違いありませんが、恐らくは里を襲った者とは無関係ではないかと!」

「むう…。」「ぬぅ…、一理ありますな。」

 

 赤髪のオーガと爺さんは多少なりとも納得してるっぽいけど…。

 

 あいつ、絶対納得してない。不完全燃焼が顔に出てるもん。

 

「小僧、殺気をおさめよ。姫様の意見には一考する価値がある。」

「ァァ!クソがァ!」

 

 ほらァ!?

 

「…しょうがねぇな」

 

 あれ!結構素直!?

 

「何者なんだ…、お前は。」

 

 何者って言われてもね。

 

「俺?俺は唯のスライムだよ!」

 

 こうしてオーガ達との初の会合は和解で終わるのだった。

 

 チャンチャン♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 




難しい。
ただただ難しいと感じました。
原作以外の部分なら自分で好きにかけたのですが、原作に入ってからはどこを削るのかどこを残すのかどこを変えるのか、たくさん考えることがあってとても大変でした。
今回初めて一人称視点にチャレンジしてとても新鮮な気分を味わえました。
面白いと感じられたなら感想と評価をお願い致します。
つまらないと感じられたなら申し訳ありません、改善していくつもりではありますのでご意見のほどをよろしくお願いします。


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Subordinazione

短くてすいません。



 「悪い話ではない。だが、決めるのはお前だ。我らはお前と姫様に従う。」

 

 「そういうこった。何なら今からでもあのスライムを潰して来いって命令でもいいんだぜぇ、若サマよぉ。」

 

 いまだはつらつたる宴の場から離れる赤髪オーガに声をかけたのは、青髪のオーガと目つきの悪いオーガだった。

 

 赤髪のオーガは、自分たちを圧倒的に超える格を見せつけたスライムのリムルに部下にならないかと誘われ、迷っていた。

 

 あれほどの力があれば復讐は容易になせるだろう、だがそれは自らの力不足の証明ではないかと。

 

 オーガの戦士としてのプライドとオーガの長としての責任感に、いまだ経験の浅い赤髪のオーガは揺れていた。

 

 「…。」

 

 二人から去るように立ち去る赤髪オーガ。

 

 それを心配するように見つめる青髪のオーガとは対照的につまらなさそうにため息をつく目つきの悪いオーガ。

 

 「お前、まだそんなことを。あのスライムに勝てると思っているのか。」

 

 「当然だ、俺は最強だ。」

 

 「その自信がどこから湧いてくるのか知りたいものだ。」

 

 「は、たかだか腹パン一発でのびちまう様な奴には分からねえだろうがなァ!」

 

 「なんだと?」

 

 「なんだァ?怒ってんのか?だったらかかって来いよォ!!アオネクァ!!」

 

 「上等だ。」

 

 両者が互いに武器を握った瞬間。

 

 「お二方、何をなさっているのですか!」

 

 桃髪のオーガが止めに入る。

 

 「姫様!?」「あァ!?」

 

 突然現れた彼女に驚く二人。

 

 「喧嘩はおやめください!最早数少ない同胞なのですよ!」

 

 両の瞳に涙を溜めて声を荒げる少女に両者の戦意は大きく削がれる。

 

 「申し訳ありません、姫様。」

 

 「わったよ、ヒメサマ。だから泣き止め。後でクソムラサキとジジイがうるせぇから。」

 

 「本当に分かっておられるのですか?」

 

 「ああ。」

 

 ゆがんだ性格でも恩義を感じた族長、その娘である桃髪のオーガには決して頭が上がらないのだ。

 

 翌日、リムルへの従属を決めたオーガ達は、全員リムルのもとへと集められていた。

 

 「俺の配下となった証にお前たちに名をやろう!」

 

 名付け。それは人間の名付けとは大きく異なる。名付けられた側は大きく力を上昇させ、あるものは特殊なスキルを獲得することもあるという、一見メリットしかないように見える行為だ。しかし、名付ける側は大量の魔力を失い、それが回復しないかもしれないという大きすぎるデメリットが存在する。故にネームドの魔物は異様に少ないのだ。

 

 そんな名付けをこのスライムは行うと言った。しかも自分たち全員に。

 

 驚くのも無理はあるまい。

 

 「名前ないと不便だろ?」

 

 そんな危険な行為を不便だからという理由で行おうとするのだ。

 

 己との格の違いを改めて感じさせるこの言動に赤髪のオーガは甘んじて受け入れる。

 

 「お前は今日から紅丸だ。」

 

 赤髪のオーガにはベニマルと。

 

 「お前は蒼影。」

 

 青髪のオーガにはソウエイと。

 

 「お前は朱菜。」

 

 桃髪のオーガにはシュナと。

 

 「お前は紫苑。」

 

 紫髪のオーガにはシオンと。

 

 「お前は黒兵衛。」

 

 黒髪のオーガにはクロベエと。

 

 「お前は白老。」

 

 白髪の老オーガにはハクロウと。

 

 「お、お前は。」

 

 ノイトラ(偽)は肌の色は白く、髪の色は黒。他のオーガ達と比べて明確にこれといった色がない、どうしようと焦るリムル。

 

 (白も黒も使っちゃったしな!どうしよう!てか怖い!なんでにらんできてんの!?)

 

 しかし、リムルはノイトラ(偽)額から目元にかける紋様に光明を見出す。

 

 「黄虎だ!」

 

 ノイトラ改めキトラ、この世界での彼の名はキトラになったのだった。

 

 

 




ノイトラの名前をどうしても使いたかったのですが断念しました。
リムル様の名付けの基準が色だったのでノイがリストラされました。
だめですかね。


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Combattimento

今までまともな戦闘シーンを書いてなかったことに気づき何とか書いてみました。


リムルの体が普段以上にドロドロとしたスライムになる。

 

 オーガ七人に名を付けた事で、自身の魔素を急激に失ったことで低位活動状態、本人曰くスリープモードのようなもの、になったのだ。

 

 「お、おい大丈夫なのかリムル様は?」

 

 「我らに名をつけた時と同じくお眠りになられたのだろう。その時と同じであれば数日もたたずお目覚めになるはずだ。」

 

 ベニマルの疑問に答えたのはオーガにも劣らぬむしろオーガよりも筋骨たくましき体躯を持ったホブゴブリンのリグルドだ。

 

 自分たちに名をつけたのちもリムルはこれと同じ状態になっていた。今回も恐らくそれと同じなのだろうと考えたからだ。

 

 「へぇ…つまりこいつを殺るなら今ってことだよなァ。」

 

 名を与えられたことにより以前よりも格段に力を増したキトラの殺気が部屋を包み込む。

 

 全員が即座に己の武具をキトラに向ける。

 

 キトラの一挙一動を見逃すまいと、少しでも言動を行動に移した瞬間に止められるように。

 

 「おいおい…冗談じゃねぇか。本気にすんなよ。」

 

 「キトラ、お前の言動は少々目に余る。調子に乗りすぎだ。」

 

 「ハッ!どこから目線だアオネクラァ!」

 

 「ソウエイだ。」

 

 ただでさえ緊張感が張り詰める空気の中キトラとソウエイが一触即発の空気を発したことでさらなる緊張がほとばしる。

 

 「二人とも!」

 

 「おっと、ヒメサマ止めんじゃねえぞこりゃ喧嘩じゃねえ。名づけで多少力が増した程度で粋がってるネクラ野郎をぶちのめすだけだからよォ!!」

 

 「然り、名をもらい受けておきながらその恩人を殺すなどとのたまった馬鹿に灸を据えるだけですので。」

 

 二人の喧嘩を止めようとするシュナの言葉を遮るキトラとソウエイ。

 

 そもそもこの二人は相性がだいぶ悪い。

 

 時期族長であったベニマルや姫であるシュナへの態度一つとってもそうだ、キトラがこの二人に従うのはあくまで二人の親が族長だったから、それだけなのだ。故にキトラは二人に表面上は敬語を使い敬うような態度をとってはいる、その実自身より弱いやつという認識しか持っておらずむしろ軽蔑すらしていたのだ、何故あの男の子でありながらそこまで弱いのかと。一方でソウエイは、ベニマルは友としても自らの主に相応しいと考えていたし、シュナもオーガには不釣り合いなほどの優しさをもち、どちらも敬うべき相手だと心からそう思いそう接している。

 

 

 「兄様!爺様!」

 

 「あ、ああ、二人とも落ち着け。」

 

 「ほっほっほ、二人の好きなようにさせておけばよかろう。」

 

 二人に自分の言葉をまるで聞く気がないことを察し、兄のベニマルと最年長のハクロウに助けを求めるが、ハクロウは二人に好きにさせてやれと言う。

 

 裏切られたのような顔をするシュナ。

 

 「お、おい爺。」

 

 「なんだァ?随分気前がいいじゃねぇかジジイ。」

 

 普段なら真っ先に自身を諫めようとしてくるハクロウからのゴーサインを疑問に思うキトラ。

 

 「ワシらはリムル様より名を賜った。それに付随して以前よりも大幅に力を増しておる。」

 

 「だからどうというのですか!」

 

 「分かりませぬか姫様。自らの力を把握しておらぬ者がどうしてリムル様のお役に立てましょうか。」

 

 「…。」

 

 「力を確認するのに、実力の近いものの戦闘ほどうってつけのものはございますまい。」

 

 リムルの名を出されなにも言えなくなるシュナ。

 

 「リグルド殿何処かうってつけの場所はありませぬかな?」

 

 「え、ええ、村のはずれにまだ切り拓いたばかりで何もない空き地があります。」

 

 「それは重畳。小僧、ソウエイ。」

 

 「なんで俺は小僧で、こいつは名前なんだァ!」

 

 「分かりました。」

 

 村のはずれに場所を移し向かい合う二人。

 

 「おい爺、いいのか?」

 

 「構いますまい若。」

 

 心配そうに見つめるベニマルとシュナ、座して見守るハクロウ、あきれたようにため息をつくシオン。

 

 「では!始めぃ!!」

 

 「死ねやァ!!」

 

 ハクロウの合図を待ち侘びたようにキトラは巨大な大鎌をふり下ろす。

 

 その速さはハクロウが目を見張るほどのものだった。

 

 されどソウエイはその速さを上回る、見てから回避したのだ。勿論この男のことだ様子見などとまどろっこしいことはするまいと予想はしていたが、攻撃への出だしを読むでもなく、振り下ろされる大鎌の攻撃が自身に届くその瞬間まで動くことをせず、あえてギリギリまでとどまったのである。

 

 そんなソウエイが胸中に抱くのは攻撃を避けたという達成感でもなく、ただ困惑だった。ここまで攻撃が遅く見えるものなのかと。性格はともかくとして単純な戦闘能力ならオーガで誰よりも信頼できるキトラの攻撃がここまで遅かったかと。

 

 二戟、三戟と避けるたび、ソウエイは気付く。キトラが遅いのではない、自身が速くなったのだと。

 

 「なんだよ!避けてばっかかアオネクラァ!!」

 

 「お前こそ、攻撃を当てることもできんのか?」

 

 自身の全力ではないとはいえ本気の攻撃をすべて避けられ、しかも余裕さを残すように。

 

 「クソがァァア!!」

 

 ただでさえ戦いを二度も遮られているのだ、不完全燃焼で怒りを募らせていた。

 

 己よりも遥か格下と侮っていたソウエイにここまで翻弄されてはキトラの堪忍袋の緒がもつはずがなかった。

 

 怒りに身をまかすよう大鎌で円を描くように薙ぎ払う。

 

 だがそれがソウエイにとってはあまりにも隙だらけだった。

 

 「隙だらけだ馬鹿め。」

 

 致命傷にはならぬよう寸止めするつもりです突きを放つ。

 

 「だと思ったかァ!バカはテメエだ!」

 

 攻撃を読まれていたことをその一言で察し瞬時に飛退こうとするも、動けない。

 

 なぜだと、疑問に思う。そして気づくキトラが自身の刀を握っていることに。

 

 「ッ!!?」

 

 刀の刃を握る、それはとても危険な行為であり、持ち手側が少しでも刀を引けばそれだけで指が切り落とされるほどだ。

 

 「しいて名を付けるとすりゃァ、魔力装甲ってとこだな。こいつは俺の魔力を鎧のように纏うっつースキルだ。」

 

 名を付けられたのはつい先ほどだというのに既にスキルを体得している。キトラのずば抜けた戦闘センスに改めて感嘆したソウエイは、即座に刀を離す。武器を失うことになるが動きを止められている今よりかはましだとという判断だ。

 

 「はァ!!」

 

 上段蹴りをキトラの顔面にめがけて振り抜く。

 

 「分からねぇ奴だなァ!鎧だっつってんだろうがァ!」

 

 「ぐッ…。」

 

 足を抑えるソウエイ。

 

 今の自分ならば鎧すら打ち砕く自信があった。だが、キトラのそれはベニマルが着ていた鎧をはるかにしのぐ硬度だった。

 

 「速さ自慢のテメエが足失ったらしめぇだろうが。」

 

 興が削がれたかのように、戦意を収めるキトラ。

 

 「ふむ。終わりじゃの。」

 

 「あぁ、クソほども楽しめなかったがな。」

 

 「ッ…!」

 

 「は!悔しがるなんざ一丁前にしやがって!所詮は速ぇだけのザコが!」

 

 「速さは認めておるのだな。」

 

 「あ?当然だ俺の攻撃を見てかわすなんざ今まで二人しか居なかった。」

 

 「キトラ…。」

 

 「調子乗んなやァ!アオネクラァ!」

 

 「ソウエイだ。」

 

 無事和解?したソウエイとキトラ。

 

 「ふむ。無事仲直り出来たようで何よりだ!」

 

 「ベニマル。」「若サマ。」

 

 二人の肩を叩くベニマル。

 

 「若サマも戦ろうぜぇ!多少は強くなってんだろォ!!」

 

 「い、いや、俺は…。」

 

 「そうですな若、そもそもこれは、名づけによってました力の確認。皆やらねばなりますまい。」

 

 「俺はまだまだ満足できてねぇんだからよォ!!」

 

 「くッ…俺は誇りあるオーガの族長が跡継ぎ!そしてリムル様に仕える者として逃げるわけにはいくまい!キトラよ!いざ参る!!」

 

 この後めちゃめちゃボコられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベニマルは幼少の頃ハクロウに修行と言われてキトラと何度も戦わされてすべて負けています。
ハクロウは試合後、良かった点・悪かった点を教えてくれて自身の成長を実感できる有意義なものと感じていましたが、キトラとの試合は容赦なくボコボコにされ試合後もさんざん罵られプライドをボキボキにへし折られるだけの時間でした。
ですのでベニマルにはわりときつめのキトラへのトラウマがあります。



ベニマルのトラウマランキング
1位シオンの料理
2位キトラとの試合
3位オークの襲来




次回はリムル様の一人称視点を予定しています。


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Risveglio

未だに小説を書くことに慣れません。
これからも依然として稚拙な文が続くと思いますが応援しただければ幸いです。




~リムルSide~

 

 「シオンそろそろ交代の時間です。」

 

 「いいえ姫様。リムル様のお世話は私がします。どうぞお休みなさってください。」

 

 「シオンったらもう…。」

 

 混濁とした意識の中、二つの女の声で目を覚ます。

 

 あれ、誰だろう。

 

 「「リムル様!!」」

 

 「ええっとどちら様でしょうか。」

 

 待ってなんか記憶があやふやなんだけど。確か、オーガたちに名付けをしようとして…。

 

 あれ…。

 

 「お目覚めになられたかリムル様。」

 

 おお!

 

 「オーガの若様だよな?」

 

 「は。今は進化して鬼人となり、頂戴したベニマルを名乗っています。」

 

 あ!思い出した。名付けした途端スリープモードになったんだ。

 

 てかなんだって?鬼人?オーガじゃなくて?

 

 《解 鬼人とはオーガの中から稀に生まれる種族の名称です。》

 

 ほぇ~。

 

 ベニマルを改めてみてみる。体は一回り小さくなったか?けど、内に秘めた魔素量がびっくりするくらい増えてるんだけど!!

 

 進化すげえな!

 

 これはあれだなリグルドショックの再来だな!

 

 オーガから進化して鬼人になったってことだよな。

 

 「リムル様、シュナです。お目覚めになられて本当に良かった。」

 

 シュナ!オーガのお姫様か!もともと可愛いかったけど、更に美少女になったな!

 

 「シオンです。リムル様に付けていただいた名前、とても気に入っています。」

 

 このおっぱい美人がシオンか野性味が薄れて知的な雰囲気になったな。

 

 ベニマルの後ろに控えているのは…。

 

 「俺の腕を切り飛ばしてくれた爺さんだな!」

 

 「ほっほっほ、いじめてくださいますな。一瞬で再生され焦ったのはこちらでしたぞ。」

 

 随分若くなったみたいだな、これも鬼人への進化の影響か。

 

 ハクロウとは逆に控えているのは…。

 

 「お前は確か。」

 

 「ソウエイの名を賜わりました。ご回復お慶び申し上げます。リムル様。」

 

 「お、おう…。」

 

 イケメンかよ!

 

 《上位の魔物に名付けをした場合、それに見合う魔素を消費します。》

 

 つまりたった七人に俺の魔素のほとんどを持ってかれたってことか。

 

 先に言って欲しかったよね、そういうの。

 

 《…。》

 

 まあいいや。

 

 あれ?そーいえば。

 

 「あと二人はどうした。」

 

 「あ、ああ、クロベエはカイジン殿の工房に入り浸ってて…。」

 

 「リムル様が目覚めただべか!」

 

 「お、来たようですな。」

 

 無骨な黒髪のオーガだったよな…。

 

 どう変わったんだろ!

 

 「リムル様!」

 

 「お。」

 

 「元気になってよかっただべよ!」

 

 おお!

 

 「分かっかな、おらクロベエだ!」

 

 普通のおっさんになってる!!

 

 イケメン→美少女→美女→ロマンスグレー→イケメンときて、最後は普通のおっさん!!

 

 凄くホッとする!!

 

 「仲よくしような!クロベエ!」

 

 「んだ!」

 

 「クロベエよ小僧を見かけておらぬか?」

 

 もう一人いたんだっけ、あのヤンキーみたいなオーガ、正直ちょっと怖い。

 

 「いんや、見てねぇべ。」

 

 「小僧め、リムル様への挨拶もせぬとは。」

 

 ハクロウなんか怒ってる!別に挨拶なんていいのに!

 

 「なんだァ、起きてんじゃねえか、リムルサマ。」

 

 ヤンキー度が増してる!

 

 「遅いぞ小僧。」

 

 「うっせぇ老い耄れ。」

 

 「キトラ!リムル様の前です。身だしなみを整えなさい。」

 

 「テメエは俺の親かクソムラサキ。いいじゃねぇかリムルサマが怒ってるワケでもねえんだしよォ。」

 

 着流しに胸元をはだけさせたキトラ。こっわ。

 

 「ところでよォ。」

 

 こっちに歩いてくるキトラ。え、なに。

 

 俺の頭をつかんでくるキトラ。いや、いまスライム状態だから頭かどうかはわかんないけど。

 

 「なに?」

 

 「起きたんなら続きだァ!テメエ強ぇんだろ?」

 

 ホントやだこの子。

 

 「キトラ!」

 

 「チッ!わったよヒメサマ。」

 

 相変わらずシュナの言うことは聞くんだ。

 

 「オイ!ジジイ、アオネクラァ!付き合えや!テメエらでもストレス発散ぐらいにはなんだろ。」

 

 「よかろう小僧。貴様に年季の違いを実感させてやろう。」

 

 「ソウエイだ。リムル様少し席を外します。」

 

 鬼人ってバーサーカーか何かなのかよ!

 

 戦えればそれでいいのか。

 

 そういえば、

 

 「シュナはともかくとしてなんでベニマルやシオン、クロベエは誘わないんだ?」

 

 普通にみんな強かったのになんでハクロウとソウエイだけ誘うんだろう。

 

 「あ?」

 

 めっちゃ睨まれた!一応とはいえ部下だよなお前!!?

 

 「い、いや、何でもないよ。」

 

 「そりゃあ…。」

 

 あ、答えてくれるんだ。

 

 「若サマはヘボ、クソムラサキはすっかり腑抜けやがった、おっさんに関しちゃ戦士ですらねぇ。消去法だ。」

 

 ベニマルって一応オークの件が無かったら族長だったんだよな?

 

 ベニマルが思いっきり目をそらす、こいつ…。

 

 気持ちは分かるぞベニマル。

 

 「あんたが戦ってくれるんなら話はべつだぜぇ。」

 

 なんでさ!

 

 「さっきから聞いていればキトラ。リムル様に無礼が過ぎます!」

 

 「だからなんだァ、クソ腑抜けムラサキ。」

 

 「…、姫様、やはりリムル様をお任せします。」

 

 シオンめっちゃキレてる!!知的さどこ行った!!?

 

 俺をシュナに渡すと、キトラに向かうシオン。

 

 「上等じゃねぇかクソ腑抜けムラサキ!」

 

 めっちゃ嬉しそう!なんなのこいつ。

 

 「はァァ!!!」

 

 キトラを思いっきり殴り飛ばすシオン。

 

 あの…家…。

 

 「リムル様、すぐ戻ります!」

 

 キトラが突き破った穴から出ていくシオン。

 

 「ほっほっほ、ワシらも行くか。」

 

 「では、リムル様。」

 

 「え、あ、うん。」

 

 出ていくハクロウとソウエイと片付けを始めるリグルド。

 

 「………ベニマル。」

 

 「申し訳ありません…。」

 

 胃が痛い。

 

 こうして改めて、部下となった鬼人達との挨拶を無事終えるのだった。

 

 「俺の家がァ…。」

 

 「はっはっはっ。」

 

 なにわろてんねんクロベエ!!

 

 チャンチャン♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   




キトラがいるだけでバーサーカーになる鬼人勢。

キトラが素直に吹っ飛ばされたのは室内で戦闘になればシュナが巻き込まれるかもと考えたからです。




書いている途中でお気に入り登録が密かに目指していた100を超えていることに気づいてリアルで泣きそうになりました。

私のような初心者が書いた小説なんかを評価やコメント、お気に入り登録してくださって本当に嬉しいです。

これからも頑張っていきますので応援お願いします。


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Pace

更新が遅くてすみません。
授業とその課題が多くて手こずってました。
急ピッチで書き上げたので誤字脱字があるかもしれませんので事前にお詫び申し上げます。


 「なんだァ!!やっぱり腑抜けてんじゃねえかァ!!」

 

 「チッ!無駄に硬い。」

 

 「ほっほっほ、油断しすぎじゃ。」

 

 シオンとの睨み合いの最中のキトラの背後から木刀を振り下ろすハクロウ。

 

 最初は全員真剣で戦っていたのだが、リムルの鶴の一声もといスライムの一言で模擬戦は木刀でと決められてしまったのである。

 

 そんなハクロウの不意打ちは、キトラの肩で止められてしまう。木刀では如何にハクロウといえどキトラの魔力装甲を破ることはできなかったようだ。

 

 「なんだァこのふざけた斬り込みはァ!遂に腕まで老い耄れたかァ!!」

 

 「ぬかしおるわ。」

 

 「だいたいよォ、こんなおもちゃでやってもつまらねぇ。」

 

 「リムル様のお申しつけじゃ、仕方があるまい。」

 

 「そうだがよォ…、いいじゃねぇか別に。テメエらに俺は斬れねぇんだからよォ!」

 

 木刀で肩を叩きながら笑みを浮かべるキトラ。

 

 「ほぅ…。」

 

 老人とは思えぬほどの鋭い眼光を宿すハクロウ。

 

 「リムル様にいいところを見せなければ!」

 

 高台から自分たちの戦いを見下ろすリムルにアピールするシオン。

 

 ちなみにソウエイは村の周囲の斥候に出るため早々に切り上げていた。

 

 「なぁ、ベニマル。」

 

 「何でしょうかリムル様?」

 

 「ベニマルってハクロウより強いの?」

 

 「御冗談を、俺の技ではまだまだ爺には及びません。」

 

 「ふーん…、じゃああと二人は?」

 

 「シオンはどうにかなりそうですが、キトラは無理です、無理ですから。」

 

 何かの間違いで自分までアレに参加させられるのではと考えたベニマルは強く断言する。

 

 「お、おう、そうなのか…。」

 

 それでいいのか若様と考えたリムルだが確かに自分もキトラはちょっと怖いしと考えを振り払う。

 

 「そんなに強いの?キトラって。」

 

 「えぇ、あいつは昔から強かったですよ。俺も子供の時分にはよく泣かされました。」

 

 「そ、そうなのか。」

 

 「えぇ。十に届かぬ頃に一人で牙狼族と戦い、剰え勝ったと父から聞いています。」

 

 「じゅッ、十歳!?」

 

 十歳で魔物と戦うなど、キトラは子供の頃からバーサーカーか!と戦慄するリムル。

 

 「ええ。」

 

 「すごいなぁ。」

 

 「はい、あいつの強さは我らの誇りです。」

 

 「ふーん。すごいんだな…キトラって。」

 

 「強さは、です。」

 

 「そ、そうか。ところで、オークのことなんだけど。」

 

 これ以上、キトラについて話しても互いの胃にダメージが行くだけだと考えたリムルは露骨に話題をそらす。

 

 「そういえばリムル様。オークについてお耳に入れたいことが。」

 

 「え、なに?」

 

 「はい、爺やカイジン殿とも話したのですが。オークを率いているのはオークロードやもしれません。」

 

 「オークロード?なんだそりゃ?」

 

 「まあ…、簡単に言うと…、化物です。」

 

 「本当に簡単だな。」

 

 「数百年に一度、オークの中に生まれると言われているユニークモンスターです。」

 

 「ユニークか。」

 

 「何でも、味方の恐怖の感情すら食うため異常に高い統率能力を持つのだとか。」

 

 「うへぇ…。」

 

 そんな奴と戦わなければならないのかと憂鬱になるリムル。

 

 「里を襲ったオークどもは仲間の死にまるで怯むことはなかった、或いはと思いまして。」

 

 「なるほどぉ。」

 

 「オークロードねぇ、強ぇんなら俺がやる。」

 

 「うーん、ってうわァ!」

 

 「なんだよ、そんなに驚くことねぇじゃねぇかリムルサマよォ。」

 

 いつの間にか自分の後ろにいたキトラに驚くリムル。

 

 リムルをつかみ上げようとしてランガに嚙まれるキトラ。

 

 「キトラ!?お前さっきまでシオンとハクロウと戦ってたはずじゃ。」

 

 「あ?ああ、あいつらならまだやってるぜぇ。」

 

 先程までキトラも居た広場に目を向けるリムルとベニマル。そこには、木刀で打ち合うシオンとハクロウが居た。

 

 「なんでさ。」

 

 「もう満足したのか?今日はえらく早いんだな。」

 

 「飽きただけだ、満足なんかしちゃいねぇよ。」

 

 「そ、そうか。」

 

 「で、いいのかリムルサマよォ?」

 

 「え?何が?」

 

 「オークロードだよ、そいつ俺にくれよ。」

 

 「えぇ、でもまだいるかどうかも分からないらしいし、さっき話してたのもベニマルたちの推論だろ?」

 

 「はい、可能性で言えば非常に低い話です。」

 

 「なんだァ、つまらねぇなァ。」

 

 落胆するキトラ。ちなみに手は嚙まれたままだ。

 

 「ところでベニマル、他には?里が襲われた理由に心当たりとか?」

 

 「そうですね…。関係あるかは分かりませんが襲撃の少し前にある魔人がやって来て、名をやろう、と言ってきたんですがあまりに胡散臭かったので追い返しましたところ悪態をつきながら帰っていきましてね。」

 

 「魔人ね、そいつから恨みを買ってるかもしれないってことか。」

 

 「仕方ありませんよ、主に見合わなけりゃこっちだってごめんだ。名を付けてもらうのも誰でもいいってワケじゃありませんからね。」

 

 間接的に自分に見合った主と言われ気を良くするリムル。

 

 キトラの手を噛みながら頷くランガ。

 

 「なんて名前だったっけな…、そうだ、キトラ、お前も少し話してただろあの魔人と。名前、覚えてないか?」

 

 「あ?あんの雑魚の名前だァ。そんなもん覚えてるワケねぇだろうが。」

 

 「そうだよな、何だったかな、確か…。」

 

 「ゲルミュッドだ。」

 

 「そう!それだ。」

 

 「いたなそんなの。」

 

 陰から出てきたソウエイはゲルミュッドの名前を覚えていた。

 

 リムルはその名は今は亡きリグルの兄に名付けを行った魔人と同じ名だということに気づく。

 

 「報告がございます。リムル様。」

 

 「ああ。」

 

 「リザードマンの一行を目撃致しました。」

 

 「リザードマン?オークじゃなくて?」

 

 「はい、湿地帯を拠点とする彼らがこんなところにまで出向くのは以上ですので。取り急ぎご報告をと。」

 

 「ふーん。」

 

 「何やら近くのゴブリン村で交渉に及んでいるようでした、ここにもいずれ来るかもしれません。」

 

 「そうか、リザードマンが。」

 

 「へぇ…。あのトカゲどもとはまだ戦ったことがねぇ、楽しみじゃねぇか。」

 

 「話聞いてた!?戦争じゃなくて交渉だよ!?」

 

 と、ツッコミを入れるリムルはまだ見ぬリザードマン達を心配するのであった。

 




実は私はガビルが結構好きだったりします。
あのキャラいいですよね。


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Veleno

誤字報告が余りにも多くて、自分の国語力の低さを実感してとても凹みましたが、改めて読者の皆様の有難みが増しました。
「ここ漢字間違えてるな。」「この表現あってるのかな。」と感じられましたら、感想欄でも誤字報告でもどちらでもいいのでご報告ください。
勿論投稿する前には確認するようにします。


 「痛いっすー!もう無理っすよォー!」

 

 「ほっほっほ、せめて一太刀は入れねばな。」

 

 「そんなァー!」

 

 「ごちゃごちゃうるせえぞ!クソチビ!!」

 

 「ギャアァァァ!!」

 

 ハクロウに剣の教えを請い修行をつけてもらっていたゴブタは、キトラとの模擬戦を強いられていた。

 

 ゴブタのセンスはハクロウも感じたモノがあったのか、他の者達よりも厳しく教えられていた。

 

 「さすがに無理があったか。」

 

 「爺も酷い事をする…。」

 

 「ほっほっほ、そうでもありますまい若。」

 

 「確かに…キトラ相手によくもっている方ではあると思うが。」

 

 「若よりも、かもしれませぬぞ。」

 

 「爺…。」

 

 「ほっほっほ、冗談です。しかし、いつまで若はあの小僧めに怯えていらっしゃるので?修行で泣かされていたのはもう昔でありましょう。」

 

 「うぐッ。」

 

 痛い所をつかれたと顔をしかめるベニマル。

 

 「やったっす!!当てたっす!!」

 

 「一発掠っただけで調子にのんじゃねぇ!!!」

 

 「ギャアァァァァ!!なんでぇ!!!」

 

 「おや、あちらも終わったようですな。そろそろ戻りましょうか。」

 

 「あ、ああ。」

 

 ゴブタとキトラの鬼ごっこ(ガチ)を尻目に足早に去るベニマルとハクロウ。

 

 休憩所でお茶を飲み休憩しているとこちらもちょうど休憩しにきたソウエイと会う。

 

 「ベニマル、ゴブタとキトラはどうした?」

 

 「ん、ああ、あいつらならまだやってるよ。」

 

 「そうか。」

 

 新しく獲得したスキルや村のことで話を弾ませる三人の元に、昼食を取りに来たリムルとシオンが来る。

 

 「ああ、これはリムル様。」

 

 「お食事ですかな。」

 

 「ああ!シオンが手料理を作ってくれたっていうのでな!」

 

 「「「!!???」」」

 

 何のこともないようにシオンの手料理を食べると言うリムルに三人は驚く、オーガの里では一人を除いて全員がシオンの料理の強烈を知っており何とか作らせないようにしていたのだ。

 

 「お前たちも一緒にどうだ?」

 

 「いやッ、俺はまだ腹が減ってなくてッ…。」

 

 「えぇッ、お茶だけで…。」

 

 自ら毒を喰らうなど冗談じゃないと心で思いながらも、顔には一切出さず拒否する二人。

 

 「私は村の周囲の偵察に行ってまいります!!!」

 

 キトラとの戦いでもここまでの速度は出ていまい程のスピードでこの場を後にするソウエイに、しまった自分も修行だと言い逃げれば良かったと後悔した二人。

 

 ベニマルは全力で顔を背け、ハクロウはまるでここにいないのではないかというほど気配を殺す。

 

 「では、お持ちいたしますね。」

 

 「あ、ああ。」

 

 そんな二人を訝しむも料理が来ることを楽しみに人型になるリムル。

 

 「お待たせしました。さ、召し上がれ。」

 

 それは、この世全ての悪。

 

 食材に対する感謝も無ければ、敬意もない。

 

 おおよそこの世界に存在するどんな調理方法を用いたとて、此処までのものを作れるだろうか。

 

 否だ。

 

 断じて否である。

 

 どれ程不味い食材を使おうが、どれ程稚拙な技術で作ろうが、どれ程勝手の悪い道具を用いようとも。

 

 醜悪、怨念、邪悪、怨恨、それらの感情すべてを混合させその醜さだけを抽出したような物体がご丁寧にも皿にのせられ、目の前に置かれるリムル。

 

 そこでリムルは気づく、妙に様子がおかしかった三人はシオンがメシマズだと知っていたことに。

 

 「リムル様!さ、どうぞ。」

 

 皆の気も知らずにリムルに食事を取るように満面の笑みで促すシオン。

 

 ベニマルとハクロウに助けを求めるリムルだったが我関せずとお茶をすする二人。

 

 「い、いただきます…。」

 

 「はい!」

 

 こんなものを作ったとは思えないほど可憐に微笑むシオン。

 

 「腹減ったァ、ってありゃリムルサマじゃねぇか何してんだ?」

 

 ゴブタとの鬼ごっこを終えたキトラが返ってくる。因みにゴブタは気絶しているのかキトラに襟をつかまれされるがままな状態になっている。

 

 「キトラぁ!!」

 

 押し付けられる相手が来たことにより歓喜に沸くリムル。

 

 「なんだよ?リムルサマ。」

 

 「腹減ってるんだろ!一緒に食おうぜ!!」

 

 心の内で全て押し付けようとしている者の発言とは思えない。

 

 「あ?そりゃリムルサマのだろ?俺は別の取ってきますわ。」

 

 「遠慮するなよキトラ君!!!」

 

 スプーンで掬った一口をキトラの口へ押し込むリムル。

 

 勝った。これでキトラが不味いなどと言おうものなら間違いなくシオンと喧嘩になるその隙をついて逃げればなどと考えていたリムルに予想もつかないことが起きる。

 

 「なんだよ、俺はスライムに食わしてもらうような趣味はねぇぞ?」

 

 普通に食べたのである。

 

 そう。キトラは幼少の頃シオンの料理を食した結果、牙狼族との戦いよりも致命傷を受け瀕死の重体になりかけたのだ。それにキトラは感服し自身を殺し得るシオンの料理を食べ続けたのだ。

 

 誰からも料理を止めるよう言われてきたシオンにとっては自分の料理をねだってくるキトラは貴重な存在で、より腕を振るい()料理を作り続けたのである。

 

 因みにキトラがシオンのことを腑抜けというようになったのは、進化によって野性味が薄れたこともあるがそれ以上に料理の強烈さが失われたことが原因なのだ。

 

 更に補足になるが、シオンの料理は決してましになったのではない。ただキトラが進化したことでこれまで以上に耐性がついただけなのだ。 

 

 「キトラ!これは私がリムル様に食べてもらうため丹精込めて作った料理です!」

 

 「うるせぇなァ!俺から食ったわけじゃねぇだろうが!!」

 

 「いや~全然食べてくれていいんだけど…。」

 

 この料理を食べても普通にしているキトラを見てもしやと思うリムルだが、だがしかしそれはきっとキトラがおかしいのだと自分を律する。

 

 「キトラのはまた別にあります!」

 

 そう言ってリムルの皿より大きいサイズの皿に盛りつけた料理を持って来るシオン。

 

 キトラは担いでいたゴブタを床に置き、シオンの料理を食う。

 

 キトラに全部押し付けよう作戦が完全に失敗した瞬間である。

 

 だが、そんなリムルにも頼りになるサポーターがまだいるのである。そう、大賢者である。

 

 (助けて大賢者!!)

 

 《解 視覚を閉ざし右斜め後方にスプーンを差し出せば命は助かります。》

 

 天啓を得たと言わんばかりに目を閉じスプーンを言われた通りに後ろに差し出すリムル。

 

 「う、うーん。酷い目にあったっすー…。」

 

 ちょうどそのタイミングで起き上がるゴブタ。

 

 スプーンは彼の口へ差し込まれた。

 

 「ムグンファァァ!!!」

 

 肌は紫色に変色し、耳からは紫色の煙が吹き出している。

 

 暫くは苦しみもがいていたが、泡を吹き息絶えたかのように静かになるゴブタ。

 

 その様に戦慄するリムル。当然だと、寧ろ食えるキトラがおかしいのだという顔をするベニマルとハクロウ。

 

 「あれ?」

 

 まるで分からないと言わんばかりに首を傾げるシオンだが全く笑えない。

 

 「シオン…。」

 

 「はッはい!!」

 

 「今後飲食物を出すときはベニマルの許可を得てからするように!!」

 

 「えぇ!?」

 

 巻き込まれあんまりだと嘆くベニマル。

 

 そんなことを話している合間にキトラは料理を完食するのであった。

 

 やはり、彼は進化しても異常だったのだ。

 




ヒロインを誰にするか未だに悩んでます…。
仮に決めたとしてそれを小説で描けるのか、ただただ不安です。


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オークロード
Persona


web版を見返して懐かしい気持ちに浸ってました。
空き時間に読むぐらいですからまだ全然読めてないんですが。


 ガビル達リザードマン一行は近隣のゴブリンの村から順調に協力を取り付けていた。

 

 もっとも、それはガビルの求心力故ではなく。オークロードの進軍を恐れたゴブリンたちがこのまま自分たちだけで戦うよりはマシと判断し軍門に下っているだけなのだが。

 

 「これで総勢七千匹になりましたな。」

 

 「さすがはガビル様交渉もお上手!!」

 

 「いやいやぁ!精一杯やってたまたま!結果が出ているだけのこと!!!」

 

 「「「…。」」」

 

 「謙遜すんなよ!実力だよ!」

 

 「そうですよ!もっと自信を持ってくださいよ!」

 

 「然り!次期リザードマンの首領なのだからな!!」

 

 最も信頼する部下三人による褒め殺しで気を良くするガビル。

 

 「あ~!それで?次は何処へ向かうのだ!」

 

 何の事無いように次の目的地を尋ねるガビルだがその上擦った声のせいで嬉しさを隠し切れていない。

 

 「この辺りにほかに村はあるのか!」

 

 「もう一つ集落があるって話ですよぉ!」

 

 「しかし、先程の村の者がおかしな事を言っておった。」

 

 「おかしな事?」

 

 そんなこと記憶の片隅にも無かったガビルだがそれを悟られまいと無駄にイイ声で聞き返す。

 

 「何でも、牙狼族を操るゴブリンの集落だとか。」

 

 「ハアァ?ゴブリンが牙狼を?そんなヴァカナ!」

 

 「ごもっとも。」

 

 報告した本人も訝しんでいたのだろう、ガビルが真っ先に否定したことで我が意を得たりとそれに同調する。

 

 「さらに言えばそのゴブリンたちの親玉はスライムだとか。」

 

 「ハアァ??状況がよくわからんが…。」

 

 一度言葉を切るガビル。

 

 そして目を見開き、我天啓を得たと言わんばかりに。

 

 「ンならばァ!そのスライムを支配下におけば牙狼族をも支配できるということだっな!!」

 

 「おお!」

 

 「まさに一石二鳥!!」

 

 「なんて奥深い考えだ!!やっぱりアンタは最高だ!!」

 

 「フッ!!吾輩に任せておくがいい!!」

 

 「「「「ガッビルッ!ガッビルッ!ガッビルッ!」」」」

 

 「フフフ!フハハハハ!!フゥ~ハッハッハッハッハ!!!」

 

 高らかに笑うガビルにガビルコールを送る配下のリザードマン達。

 

 彼等はいったい何をしているのだろうか、森の獣達は小首をかしげるのだった。

 

 一方その頃リムルはクロベエとカイジンの専門的な会話から抜け出す機会を失い、よく分からないまま二人の会話を二時間も聞いていた。

 

 「リムル様はいらっしゃいますかな!」

 

 扉を開けたのは筋骨隆々、ゴブリンだったことが信じられぬほどの大男。リグルドだった。

 

 これ幸いと心の中でリグルドの来訪を喜ぶリムル。

 

 「なんだ?リグルド。」

 

 「リムル様!リザードマンの使者が訪ねて参りました!!」

 

 「そ、そうか。」

 

 まるで自身の筋肉を誇示するかのようにポーズを取りながら報告してくるリグルドにたじたじになりながら返事をするリムル。

 

 リグルドの肩に乗り外に出ると。ベニマル・ハクロウ・シオンそしてキトラが立っていた。

 

 「リムル様!俺たちも同席して構わないか?リザードマンの思惑が知りたい。」

 

 「勿論だ!」

 

 リザードマンが何を思い行動しているのか、それによっては対オーク戦での立ち回りが変わってくる。そこを見極めようと同席を申し出るベニマル。

 

 「強かったらぶった切る、弱くてもぶった切る。」

 

 「いやいやだめだからね!?」

 

 「チッ…冗談じゃねぇかリムルサマ。」

 

 「絶対冗談じゃなかったよね!!」

 

 「キトラ!」

 

 仮にも使者であるリザードマンをぶった切るというキトラを止めようとする、リムルの中でキトラは完全な戦闘狂それをやりかねないのだ。

 

 シオンがいつものようにキトラに怒る、現状キトラに正面切って注意できる者はそう多くない。

 

 シオンにも流石に使者を切るということは非常識だったのだろうと安堵したリムルだったが。

 

 「リムル様に舌打ちなど!無礼にもほどがあります!」

 

 「怒るとこそこ!?」

 

 「ああ?そんなことでいちいちうるっせぇな。」

 

 「そんなことことではありません!」 

 

 リムルのツッコミなど聞こえてないかのように喧嘩が白熱していく二人。

 

 「リムル様早くリザードマンのもとへ向かいましょう。こうなるとあの二人は長い。」

 

 「あ、ああ。そうだな。」

 

 コッソリ耳打ちするベニマルとそれに頷くリムル。結局リムル達がリザードマンのもとへ着くぎりぎりまで二人の喧嘩は続くのだった。

 

 向かい合うは総勢四十は超えようほどのリザードマンの兵士達とリムル達スライム・ホブゴブリン・鬼人の異色の六人。

 

 「で?どいつが使者なんだ?」

 

 リムルが尋ねると。

 

 リザードマン達は石突で地面を打つ、何度もだ。一糸乱れぬその動作に彼等が固い絆で結ばれていることが見て取れる。

 

 それが十を数えようとした時リザードマンが道を開く。まるで我らが王をご覧あれとでも言わんばかりの表情が彼らの顔には浮かんでいた。

 

 威風堂々と歩みを進めるガビル。リザードマン達はそれを誇らしげに見るのだったが、一方でリムル達は胡散臭い芝居がかった登場に妙に落胆してしまう。

 

 「吾輩はリザードマンのガビルである!お前たちも配下に加えてやろう!光栄に思うがよい!!」

 

 「よ!ガビル様!!」

 

 「最高!!」

 

 「カッコイイ!!いかしてる!!」

 

 問答無用で配下になれというガビルにそれを褒め称えるリザードマン達。リムル達の困惑はさらに大きくなる。

 

 「ご尊顔をよく覚えておくといいぞ!このお方こそ次期リザードマン首領となられる戦士!!頭が高い!!」

 

 困惑を通り越して怒りがわくリムル達一同。特にシオンは抱えていた自身の敬愛する主であるリムルを捻り潰そうかというほど怒りを露にしていた。これはまずいと飛退けるリムルだったが災いにもキトラに飛びついてしまう。

 

 「なんだよ、リムルサマ。別に止められなくても行きゃあしねえよ。」

 

 突っ込んでいかないように止められたと勘違いするキトラ。 

 

 「すみません。すみません。」

 

 力加減を誤ったとリムルに謝罪するシオン。

 

 「恐れながらガビル殿と申されましたかな?配下になれと突然言われましても…。」

 

 一人ガビルと会話を続けるリグルド。

 

 「やれやれぇ!!みなまで言わんとわからんか?貴様らも聞いておるだろう!」

 

 「何を?」

 

 「オークの豚どもがこのジュラの大森林を進行中だということを!然らば。吾輩の配下に加わるがいい、このガビルが貧弱なお前たちをオークの脅威より守ってやろうはないか!!」

 

 筋骨隆々、大柄なホブゴブリン。

 

 「貧弱な。」

 

 巨大な大鎌を手にする目つきの悪い鬼人。

 

 「貧弱な…。」

 

 覇気あふれる赤髪の鬼人。

 

 「貧弱な……。」

 

 高齢だがその目に宿す眼光は未だ老いていない白髪の鬼人。

 

 「貧弱な…………?」

 

 可憐且つ知的さを兼ね備えた美しい紫髪の鬼人。

 

 「ゴブリンがいないようだが?」

 

 「あれぇ?」

 

 「ここは確かにゴブリンの村の筈。」

 

 「てゆーか貧弱な奴が誰もいないよ?」

 

 今まで訪ねて回ったゴブリンの村たちは此処まで異色ではなかったのだろう困惑するリザードマン達。

 

 「あ~ゴホン!聞けばここには牙狼族を飼いならしたものがいるようだな!そいつは幹部に引き立ててやる!連れてくるがいいぞ?」

 

 どこまでも鼻につくガビルの物言いに普段は温厚なベニマルでさえ、イラつきを隠し切れないでいた。

 

 「こいつ、殺していいですか?」

 

 爽やかに許可をとるベニマル。

 

 「いいよ。」

 

 こちらも爽やかに許可を出すリムル。

 

 「ってNO!NO!!」

 

 一旦落ち着いて頭を冷やすリムル達。

 

 「ええっと、牙狼族を従えたというか…仲間にしたのは俺なんですけど。」

 

 「スゥライムがァ!?冗談を言うでない。」

 

 あくまでスライムであるリムルを見下すような態度をとるガビル。

 

 「ランガ!」

 

 「は!」

 

 「お前に話があるそうだ!聞いて差し上げろ!」

 

 「御意!!!」

 

 先ほどまでの話を陰から聞いていたのだろう、ガビル達の前に立つなり威圧のスキルリザードマン達を委縮させるランガ。

 

 ほとんどのリザードマンは委縮し声も出せなくなってしまっていたが、ガビルだけは何の事無いようにキザッたらしくランガのことを褒め称える。

 

 「しかし!主がスライムとは!いささか拍子抜けであるな!」

 

 ランガの睨みも聞かないようにリムルを貶すガビル。更にはリムルを倒すと宣うガビルにランガはキレかけていた。

 

 「ガビル様かっけえ!!」

 

 「やっつけてやってくださいよ!ガビル様!」

 

 「よ!ガビル無双」

 

 「「「「ガッビルッ!ガッビルッ!ガッビルッ!」」」」

 

 「でんでっでデーン♪あれ?何やってるんすか?」

 

 「ゴブタ!?」

 

 「お前生きてたのか!?」

 

 シオンの料理を食べ、死んだはずのゴブタが現れたことで驚くリムルとベニマル。

 

 これ幸いとランガはガビルにゴブタと一騎打ちでガビルが勝てたなら配下になってもいいと言うのだった。

 

 「ゴブタ!遠慮はいらんやったれ!」

 

 「えぇなんなんすか?」

 

 ゴブタに活を入れるリムル。

 

 「なんじゃあ奴では小僧の御眼鏡にはかなわなかったのか?」

 

 「あ?」

 

 普段ならこういう事には真っ先に首を突っ込むキトラだが今回はえらくおとなしい。それを訝しんだハクロウが声を掛ける。

 

 「どんな奴かと期待してりゃアレだ。クソ弱ぇワケでもねぇが強ぇワケでもねぇ。全くそそられねえ、アレならクソチビでも勝てるだろうよ。」

 

 「当然じゃ、アレに勝てぬようでは修行をつけた意味が無い。」

 

 「えらく厳しいじゃねぇか?」

 

 「お主を相手にしている時ほどではないさ。」

 

 「は、そうかよ。」

 

 二人他愛もない話をしていると。

 

 「ダァァァァァァァ!!!」

 

 「なんじゃもう終わったのか。」

 

 「瞬殺じゃねぇかやっぱそんなもんだったか。」

 

 たかがホブゴブリンと侮りもあったのだろう。しかし、ゴブタはハクロウの修行を、キトラとの鬼ごっこを、シオンの料理をすら耐え抜いた猛者であった。そんなゴブタに圧倒されたガビル。

 

 「流石はゴブタ!我が見込んだだけのことはある!」

 

 「よくぞ我らホブゴブリンの力を見せつけた!!

 

 「見直したぞ。」

 

 「俺たちと戦った時よりも強くなっているようだな。」

 

 「相変わらず鍛えがいがある。」

 

 「当然だァ、あの程度のトカゲに負けやがったら俺がぶっ殺す。」

 

 あたかも勝って当然だという部下たちに負けると考えていたのは自分だけかと驚くリムル。

 

 「やったなゴブタ!約束通りクロベエに武器を頼んでやろう。」

 

 自身の胸中に抱えた言葉をおくびにも出さず、辞の言葉を送っている。

 

 「やったっす!」

 

 そんな事はつゆ知らず純粋に喜ぶゴブタ。

 

 「お前ら!勝負はゴブタの勝ちだ!オークと戦うのに協力しろという話なら検討しておくが、配下になるのは断る!今日の所はそいつを連れて帰れ。」

 

 リザードマン達を一括するリムル。

 

 「い、いずれまた来るぜ!」

 

 「然り!これで終わりではないぞ!」

 

 「お、覚えてろ!!」

 

 どこぞの小悪党のような捨て台詞を残して去っていくリザードマン達。

 

 「さてと。今後の方針を立てないとな。」

 

 リザードマンともだが、他の種族と同盟を組むのか、それとも自分たちだけでオークと戦うのか、まだまだ課題は山積みなのだ。

 

 「時間を無駄にしたぜ。オイクソチビ!」

 

 「ハイィィ!?なんすか!!?」

 

 「ちょっと付き合えや。」

 

 「えええ!!?」

 

 「なんだァ?文句でもあんのか?」

 

 「な、ないっす!」

 

 「ならさっさと行くぞォ。」

 

 (ゴブタよ強く生きろ。)

 

 リムルはキトラに連れていかれるゴブタに静かに黙禱をささげるのだった。

 




キトラはなんだかんだゴブタの伸びしろを認めています。
「こいつ、鍛えりゃ強くなんじゃね?」的な感じで。

アンケートで一応上記以外のキャラクターって選択肢を入れたけど、逆に誰なのでしょうか(困惑)ラミリスとか?


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Incontro

オーク戦は次の次くらいになりそうです。
オークとの初戦をハクロウに止められ、リムルとの遭遇戦をシュナに止められイライラしていたキトラですが、名付けで自分自身が強くなったこと及び強くなったハクロウやシオン達と模擬戦とはいえ毎日戦えてますから割と落ち着いた方ではあります。


 偵察に出ていたソウエイが帰ったことで日が沈み暗くはなったがリムルは主だった者達で会議を開いていた。

 

 「二十万のオーク、その本隊が大河に沿って北上している。そして本隊と別動隊の動きから予想できる合流地点はここより東の湿地帯。」

 

 簡略化された地図上に置かれた豚を模した石を動かす。

 

 「つまりリザードマンの支配領域というわけですか。」

 

 「ええ。」

 

 「二十万か……実感が湧かないほど馬鹿げた数だな。」

 

 自身の予想より多かったオークの総数に辟易するリムルは今一度ここに集まった者たちの顔を見渡す。ほとんどの者は神妙な面持ちでリムルを見返す。

 

 「いいじゃねぇか誰が一番多く狩れるか競争ってことだろ?」

 

 あくまで二十万のオーク達を狩るものとして見ているキトラ。これを言ったのが他の者であれば何を言っているんだと冷たい半眼で見られることは避けられないであろうその言動だが、言ったのはキトラだ。鬼人に進化する以前からその力は頭一つ飛びぬけており進化してからはそれが更に顕著になった。戦いを生業としていなかった者達からすればリムル様よりも強いのでは?と勘違いするほどだった。だが、それは誤りでありあくまでリムルの戦いよりもキトラの戦いを多く見る機会があっただけなのだが。

 

 閑話休題、そんなキトラのいつも通りの発言に室内の緊張感が若干ではあるが軽いものになる。

 

 「う~ん。オークの目的って何なんだろうな。」

 

 「ふむ。オークはそもそもあまり知能が高い魔物じゃねぇ、この侵攻に本能以外の目的があるってんなら何かしらのバックの存在を疑うべきだろうな。」

 

 そもそもオークの侵攻の目的が分からないことをぼやくリムル。それにこたえるようにオークにどこかしらの後ろ盾があるのでは?と疑うカイジン。

 

 「例えば魔王……とかか?」

 

 魔王、それは文字通り魔物を統べる王。リムルにとっては殴らなければならない男であるレオンも魔王である。言ってしまえばリムルは魔王にあまりいい印象を持っていないのだ。そんなリムルの感情を読み取ってか、強大な魔王という存在に委縮したのか室内の空気が重いものになる。

 

 「お前たちの村に来てたとゲルミュッドとかいう魔族が絡んでたとしたら……。まあ今の所なんの根拠もないが。」

 

 「魔王が絡んでいるのか分かりません、だが、オークロードが出現した可能性は強まったとおもいます。」

 

 「オークロード…数百年毎に生まれるユニーク個体だっけ?」

 

 「はい、二十万のオークを普通のオークが統率できるとは思えませんから。」

 

 「ふむ。」

 

 「いないと楽観視するよりかはいると仮定し動くべきではありませんか?」

 

 「そうだな。」

 

「む!!」

 

 「どうした?」

 

 「偵察中の分身体に接触してきた者がいます。リムル様に取り次いでもらいたいとのこと、如何致しましょうか。」

 

 「誰だガビルでもうお腹いっぱいだし、変な奴だったら会いたくないんだけど。」

 

 妙に上から目線でどこか鼻につくリザードマンの顔を思い浮かべるリムル。

 

 「変ではありませんが、大変珍しい相手でして。その、ドライアドなのです。」

 

 「ドライアド!?」

 

 オークの総数を聞いた時以上に驚くリムル。それに及ばないまでも長年にわたり姿を見せなかったドライアドからの接触に驚く一同。ただその中でキトラだけは苦虫を嚙み潰したように顔を顰めるのだった。

 

 「か、構わん。お呼びして。」

 

 リムルの中ではドライアド≒エロい姉ちゃんなのだろう、動揺を隠しきれてない妙に上擦った声で返事をするのだった。

 

 「は。」

 

 リムルの眼前に一枚の青々とした木の葉が舞う。それと同時に机上に魔力の渦が出現し花開くようにドライアドが現れる。

 

 「魔物を統べる者。及びその従者たる皆様。突然の訪問相済みません。私はドライアドのトレイニーと申します。どうぞお見知りおきください。」

 

 トレイニーが自分の名を告げた瞬間キトラの顔は更に顰められた。

 

 「俺はリムル=テンペストです!ええっとトレイニーさん。いったい何のご用向きで?」

 

 「本日はお願いがあって罷り越しました。」

 

 「お願い?」

 

 「リムル=テンペスト、魔物を統べる者よ、貴方にオークロードの討伐を依頼したいのです。」

 

 「オークロードの討伐。ええっと俺がですか?」

 

 「ええ、そうです。」

 

 「いきなり現れて随分身勝手な物言いじゃないか。ドライアドのトレイニーとやら。何故この町へ来た。」

 

 突然現れたトレイニーに警戒心を露にするベニマル。

 

 「そうですね、オーガの里が健在でしたらそちらに出向いていたでしょう。まあ、たとえそうであったとしてもこの方の存在を無視することはできないのですけれど。」

 

 疑問符を浮かべるリムル。

 

 「我々の集落がオークロードに狙われればドライアドだけでは抵抗できませんの。ですからこうして強き者に助力を求めに来たのです。」

 

 そう言って室内を見渡すトレイニー。

 

 「オークロードの存在自体が俺たちの中では仮説だったんだけど。」

 

 「ドライアドはこの森で起きたことならばたいてい把握しておりますの。いますよオークロード。」

 

 オークロードの存在をドライアドであるトレイニーが確かに認めたことで動揺が広がる。

 

 「ふむ。返事はちょっと待ってくれ。鬼人達の助けはするが率先して藪をつつくつもりはないんだ。情報を整理してから答えさせてくれ。こう見えても俺はここの主なんでな!」

 

 「ええ。構いませんよ。」

 

 トレイニーの頼みを引き受けるかどうかはもう少し考えさせてくれと頼むリムルにそれを了承するトレイニー。そうして会議の続きを始めようとする面々だったが何故かトレイニーはそのまま居座りキトラの隣に座るのだった。

 

 「なんで俺の隣なんだ。てか帰れや。」

 

 他の者達が心の中で抱いた疑問を全て口にするキトラ。

 

 「あらあら、久し振りの再会ですのに、酷いこと。」

 

 「あれ?二人はあったことあるのか?」

 

 リグルドの話では数十年は姿を見せなかったというドライアドがキトラとまるで面識があるかのように話すところを見て疑問に思うリムル。

 

 「チッ、知るかこんな花オンナ。」

 

 「えぇ、この子がまだ子どもの頃にたまたま偶然。」

 

 「オイテメエ!」

 

 「これでも小さい頃はとてもかわいかったのですよ?小さな手と舌足らずな口調。それなのに私に戦いを挑んでくるのです。とても愛らしくなってしまってこの子が一人でいる時に会いに行ったりしてたんです。」

 

 あの暴虐無人なキトラにも子供の時分はあったんだなぁとほんわかする一同。ただベニマルだけは子供の頃からキトラはキトラだったぞと一人ツッコミを入れるのだった。

 

 恥というわけでもないが自身がまだまだ弱かったころの話をされ一気に不機嫌になるキトラ。これ以上トレイニー余計なことを言われぬように会議をさっさと再開しろと言わんばかりにリムルを睨む。

 

 「か、会議を続けるぞ~。何か他にオーク達の目的について意見がある奴はいるか?」

 

 「思い当たることが一つあります。」

 

 シュナが意見を口にする。

 

 「うんうん。」

 

 「ソウエイ…わたくし達の里は調査してきましたか?」

 

 「はい……。」 

 

 悲痛な顔つきで頷くソウエイ。

 

 「その様子ではやはり無かったのですね……。」

 

 「はい…同胞のものもオークのものも。ただの一つも。」

 

 「チッ、見境ねえ豚だぜ。」

 

 「ふむ……。」

 

 あからさまにイラつくキトラ、目を閉じ沈痛な面持ちをするハクロウ。

 

 「何が?」

 

 未だつかみきれてないリムルはソウエイに尋ねる。

 

 「…死体です。」

 

 「え!?」

 

 「二十万もの大群が食えるだけの食料をどうやって賄っているのか疑問だったが。」

 

 「それってまさか……。」

 

 ベニマルが言わんとすることを察したのだろう。

 

 「ユニークスキル【飢餓者】。この世界の災厄オークロードが生まれながらに持つスキルで支配下におく全てのオークに影響を及ぼし蝗のように全てを喰らい尽くす。喰らったものの力や能力までもを取り込み己の糧とするのですわ。」

 

 解説するトレイニー。オークロードの目的は上位種族を滅ぼすことではなく、上位種族を喰らいその力を我が物とすることだったのだ。現在オーク達はオーガを喰らった事で従来のオークでは考えられないほどの剛力と戦闘能力を有しているのである。

 

 二十万の大群とはいえその実それを構成するのはただの飢えたオーク達、という侮りが全員の脳裏から去った瞬間である。

 

 「それにオークロード誕生のきっかけとして魔人の存在を確認しております。」

 

 「魔人か……。」

 

 「いずれかの魔王の手の者ですからね、貴方様は放ってはおけないのでは。」

 

 リムルの因縁を指摘するトレイニー。

 

 信頼できるかを自身のユニークスキルの大賢者と検討する。

 

 「リムル=テンペスト様、改めてオークロードの討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護する貴方様ならオークロードに後れを取ることはないでしょう。」

 

 「当然です!!リムル様ならオークロードなど敵ではありません!!」

 

 リムルが悩んでいる中シオンが勝手にその依頼を受けてしまう 。

 

 「まあ!やはりそうですよね!」

 

 「ええ、当然です!」

 

 そんなシオンに呆れていたがそもそもシオンの性格分かってて言ってたんじゃね?と疑うリムルだった。

 

 「分かったよ。オークロードの件は俺が引き受ける。みんなもそのつもりでいてくれ!」

 

 若干の無理矢理感があったのは否めないがリムルはオークロード討伐の依頼を了承するのだった。

 

 「はい!勿論ですリムル様!」

 

 「どのみち最初からそのつもりでしたよ。」

 

 「御意!」

 

 「ハッ上等じゃねぇか。」

 

 「俺たちゃ旦那を信じて付いてくだけさ。」

 

 「その通り!!我らの力見せつけてやりましょう!!」

 

 「「「「おお!」」」」

 

 各々が意気込みを見せる中美しく微笑むトレイニー。そんな彼女をジト目で睨むキトラ。

 

 「あら?何ですか坊や?」

 

 「その呼び方いい加減やめろや。」

 

 「あらあらごめんなさい。今はキトラという名をつけてもらっていましたね。」

 

 「チッ、コレでテメエの思惑通りってワケだな花オンナ。」

 

 「あら一体何のことでしょうか?」

 

 「読めねえ奴だ、昔っから。」

 

 これ以上何も話す気はないのだろう、キトラは諦める。

 

 「オーク二十万の軍勢を相手取るとなるとリザードマンとの同盟を前向きに検討したいところではあるが、使者があれなんだよな~。」

 

 またもやガビルを思い浮かべ辟易するリムル。

 

 「リムル様。リザードマンの首領に直接話をつけてきてよろしいですか。」

 

 「ソウエイ、出来るのか?」

 

 「はい。」

 

 何の事なしに頷くソウエイに、やはりイケメンかと改めて感嘆するリムル。

 

 「よし!ではリザードマンと合流し、オークを叩く!!」

 

 「「「「は!」」」」

 

 「決戦はリザードマンの支配領域である湿地帯になるだろう、リザードマンとの共同戦線が前提条件だ。頼んだぞソウエイ。」

 

 「御意。」

 

 そう言い残しこの場から消えるソウエイ。

 

 リザードマンの首領がガビルのようにアホではない事を祈るリムルだった。

 

 「てかいつまで居るんだよ花オンナ。」

 

 「いいではありませんか。」

 

 「よくねえ帰れ。」

 

 「あらまあ。ではリムル=テンペスト様わたくしはこれでお暇致します。オークロードの件お願いしますね。」

 

 「あ、ああ、またなトレイニーさん。」

 

 こうしてリムル達の対オーク戦の作戦会議は終わるのだった。

 




上記以外のキャラクターにはトレイニーさんも含まれてたのだろうと考え今回トレイニーさんと絡ましてみました。溢れ出る親戚のお姉さん感。


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Principessa

くっそ短くてすいません。
次回オーク戦です。


 皆に新たな装いを作るため全員の採寸を図っていたシュナ達裁縫班。最後に残ったキトラの採寸を終えた頃にはもうすっかり日が落ちて虫の音がなっていた。

 

 先日の作戦会議トレイニーがもたらした情報により想定していたオークの脅威を上回った事をシュナは不安に感じていた。

 

 「気を付けるんですよキトラ。」

 

 「気を付ける。そう言わねえと満足しねえんだろアンタは。なァヒメサマ。」

 

 「はい。」

 

 「俺が豚どもに負けると思ってんのか?」

 

 「そう侮った同胞達は皆喰われました。父様もです。」

 

 「チッ。」

 

 皆から慕われオーガとして最高の戦士だった父を思い出し顔を伏せるシュナ。悪態しかついてこなかったが両親が死んだあと自分の面倒をみ我が子のように扱ってくれた族長に最後まで勝てなかったまま別れた事をキトラは悔やんでいた。

 

 「私はもう嫌です、仲間を失うのは。」

 

 「……。」

 

 「リムル様に名前を貰って、村のみんなもとてもよくしてもらっています。」

 

箱入り娘であり里にいた時は皆から一歩引かれた態度で接せられていたシュナにとってリムルが治めるこの村はとても居心地の良いものだった。

 

 「俺は負けねぇ。俺は最強だ。」

 

 「キトラ……。」

 

 あくまで侮りを捨てないように愉悦の笑みを浮かべるキトラに涙目になるシュナ。

 

 「文句があんなら俺に命令しろ。誰も死なせるな死ぬなと、ヒメサマ。」

 

 「……キトラ。」

 

 「おう。」

 

 「兄様やリムル様達をお願いします。どうか誰も死なせないで。」

 

 本質は気弱なただの少女なのだろう、だが、声を震わせながらも真っ直ぐにキトラを見つめる目にキトラはオーガの誇りを見た。

 

 「ハ!了解だぜヒメサマ。」

 

 「はい、お願いしますねキトラ!」

 

 「任せとけ。」

 

 そう言って二人で笑うキトラと微笑むシュナ。それは鬼人の戦士や姫の面持ちは無くただの年頃の男女のようであった。

 

 「なぁ、なんかイイ感じじゃね?あの二人。」

 

 「そ、そうですね。」

 

 そんな二人を陰から見ていたのはリムルとベニマルである。まったくもって偶然なのだがたまたま通りかかった二人は先程のやり取りを聞いてしまい出るに出れなくなってしまっていたのだ。

 

 「お兄ちゃんとしてどういう気持ちなの、こういうの?」

 

 「どうといわれましても…。」

 

 妹に恋人が出来るのは決して嫌なことでは無い寧ろ祝福すべきなのだろう。だが相手はあのキトラだ、強い戦士であるとはいえキトラに義兄と呼ばれる事を目を閉じ想像して何故か胃が痛くなるベニマル。

 

 「ぐぅ…。」

 

 「なんだよ、アニキとでも呼んで欲しいのかァ若サマ。」

 

 「いやいやそういうワケではないんだがな……。」

 

 そこまで言って気づく、先程まで話していたリムルの声ではないと。その事実に嫌な予感を抱きながら目を開ける。そこに死神が立っていた。

 

 「盗み聞たァヘボいことしてんじゃねぇか。若サマ。」

 

 既にリムルは頭をつかまれ確保されている。

 

 「ま、待てキトラ!!誤解だ!偶然通りかかっただけだ!!」

 

 「言い訳なんてらしくねぇなァ!」 

 

 「ま、まて落ち着けキトォッ!!」

 

 ベニマルの顔面にリムルを投げつけるキトラ。

 

 「ぎゃあああああああ!!」

 

 「ヘブッ!!」

 

 顔にリムルをへばりつけたまま走って逃げるベニマルにそれを追いかけるキトラ。

 

 「待てやこらァ!!」

 

 そんな様子を少し呆気に取られるも笑ってしまうシュナ。

 

 戦い前の束の間の平穏をリムル達は過ごすのだった。 

 




お気に入り登録数が二百を超えました!!
本当にありがとうございます!!
大手の方々に比べればまだまだ未熟ではあるのですが日々精進し、拙作を読んで楽しんでもらえるように努力するつもりです。
皆様にお気に入り登録・コメント・評価を頂ければ励みになります。
これからも応援よろしくお願いいたします。


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Orgoglio

オーク戦が前中後に分けます。



 リザードマンと同盟を結びオークの軍勢と戦うためにリムルはベニマル達鬼人及びゴブリンライダーを引き連れ湿地帯に向かっていた。非戦闘職の者達は自分たちが敗北した際直ぐに逃げられるように準備をさせ村に残していた。

 

 日も暮れかけ闇が広がる。それはまるでこれから始まる戦いを暗示するかのようである。

 

 嵐牙狼族に跨る者達には同胞の無念を晴らさんと燃える者、不安に駆られ各々顔を見合わせる者、敬愛する主の初いくさを華々しく飾ってやろうと息巻く者、強者との戦いを想い血沸き肉踊らせる者。それぞれがそれぞれの思いを胸中に抱くのだった。

 

 「リムルサマ。」

 

 「なんだキトラ?」

 

 「オークロードは俺がやる。アンタは手を出すな。」

 

 「えぇ!?」

 

 内容も内容だがそれ以上に普段の様に笑いながら言うでも無く至って真面目に語るキトラに驚くリムル。

 

 「ヒメサマはアンタを気に入ってる、そんなアンタが死ぬ可能性を作っちゃならねぇ。」

 

 「キトラ……。」

 

 「こん中でアンタを除きゃ俺より強ぇ奴はいねぇ。その俺が相手すんだ。文句ねえよな?」

 

 「いや…「大有りじゃ小僧。」ぉぅ。」

 

 リムルの言葉を遮るハクロウ。

 

 「あ?」

 

 「小僧それは真に姫様を思ってのことか?それともお主自身の悪癖の為か?」

 

 「それが何だってんだァ?」

 

 「答えよ、返答によってはお主を村へ突き返さねばならん。」

 

 「テメエがそんな事決める権限でもあんのか?」

 

 「二度は言わんぞ小僧。」

 

 殺気を膨らませたハクロウに反応し行軍していた嵐牙狼族の足が止まる。

 

 「ハァ…ヒメサマに頼まれたから。それだけだ。」

 

 「……。」

 

 「サッサと行かなきゃ拙いんじゃァねえのかリムルサマよォ?」

 

 「あ、ああ。皆!リザードマンの領域、湿地帯はもうすぐだ!急ぐぞ!」

 

 行軍を再開する一行。

 

 「悪いが俺はあんな豚どもに負ける殺されるつもりはねぇよ。」

 

 「当然じゃ。あんな豚に負けるようであればワシが切っておるわ。」

 

 「アンタの剣じゃ切れねぇよ、老い耄れジジイ。」

 

 先程までの殺伐とした雰囲気は霧散し談笑し始める二人、ほっと安心するリムル達。

 

 そんな時リムルへ偵察に出るため先行するソウエイから連絡が入る。曰く、オークの一団とリザードマンの首領側近の一人が戦闘を行っていると。

 

 戦かっているリザードマンの保護を優先したリムルはソウエイに可能かどうかを問う。

 

 それを可能だと、即答するソウエイにやはりイケメンかと戦慄するリムルだった。

 

 「戦闘態勢をとれ、ソウエイのもとへ向かうぞ!」

 

 「「「「おう!」」」」

 

 「ランガ!」

 

 「仰せのままに!!」

 

 急速に速度を上げるランガに追随する他の嵐牙狼族。勿論それに振り落とされる者など一人もいない。

 

 初戦に気を昂らせる面々。

 

 だが、一行が到着したころには既にソウエイがオークを殲滅させ戦闘は終了していた。それをぼやく者達を背にリムルはソウエイのもとへ向かうのだった。

 

 「深手を負っています。」

 

 ソウエイの腕には苦悶の色を浮かべているリザードマン。

 

 「……ああ。」

 

 リムルが体内に蓄えている回復薬を与える。

 

 「ハ!傷が!致命傷だと思ったのに?貴方は?」

 

 傷が治り困惑するリザードマン。

 

 「俺はリムル=テンペスト。」

 

 その名は我らがリザードマンが同盟を結ぼうとしていた者の名ではないかと気付き跪く。

 

 「お願いがございます!我らがリザードマンの首領、兄であるガビルをどうかお救い下さい!」

 

 リザードマンからガビルが首領の座を簒奪し、自身を新たなるリザードマンの首領としオークの軍勢に対し一転し攻勢を仕掛けたことを聞かされるリムル。

 

 やはりアホだったかと呆れるリムル、リムルの慈悲を乞うそのリザードマンの言葉に感じるものがあったのかシオンが。

 

 「よくぞ申しました!リムル様の偉大さに気づくとはあなたは見所があります!」

 

 あ、これトレイニーさんの時と同じだと呆れるリムル。

 

 「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

 リムルは何も話していないにも拘わらず勝手に進んで行く話。

 

 「仕方ない…どうせオークロードとは戦うんだ。ええっと首領の娘さんだっけ?」

 

 「は、はい!仰せの通りでございます。」

 

 「では、君を首領の代理として正式に同盟を結ぶことに何か異論はあるか?」

 

 「いえ!異論など!」

 

 「じゃあ決まりだ。これをもってリザードマンとの同盟は締結された!ソウエイ!リザードマン首領の救出を命じる!」

 

 「御意!」

 

 「感謝致します。」

 

 オークの包囲網から必死に逃げ一人で戦っていたそのリザードマンは安堵の涙を流すのだった。

 

 「俺たちは進軍を続ける!行くぞ!!」

 

 「「「「おう!!」」」」

 

 場面は変わり湿地帯に移る。

 

 「渦槍水流戟!!ハァァァ!!」

 

 ガビルの渾身の一撃を斧の一振りで難なくいなすオークジェネラル。

 

 「これほどとはッ…。」

 

 「混沌喰ァァ!!」

 

 オークジェネラルの背後から混沌としたオーラが現れガビルを喰らわんとする。

 

 「吾輩を喰らうつもりかァッ!!」

 

 「いつまで逃げ切れるかな?」

 

 一戟、二戟、何とか躱すガビルだが疲れが見え隠れする。

 

 「ガビル様!!」

 

 「いま助太刀を!!」

 

 自分たちの敬愛する主が負けそうになる中腰を抜かし見ているだけの者など一人もいない、己では及ばないとしてもせめてガビルの助けになればと槍を握り直し踏み込もうとするリザードマン達。

 

 「ならん!!これは吾輩が始めた一騎打ちである!!邪魔することはたとえお前たちとて許さん!なに、そこで待って居ろ我らがリザードマンの誇り今一度お前たちに見せてやろう!!!」

 

 「漢だぜぇ!!」

 

 「ガビル様!あんたやっぱり最高だよ!!」

 

 「ガビル様ァ!!」

 

 「「「「「ガッビルッ!ガッビルッ!ガッビルッ!」」」」」

 

 

 少なくはない傷を負いながらもリザードマンの誇りに殉じるその背中に、体を震わせ涙をも浮かべる者までいる。そうだ!これが我らが誇りだと言わんばかりにガビルコールを始めるリザードマン達。

 

 「ハァァァ!!!」

 

 奔るガビル、これが誇りであると言わんばかりに槍を振るうもオークジェネラルの力は一歩上を行く。混沌喰の一撃をついに受ける。

 

 「まだまだァ!!!」

 

 「なにッ!!?」

 

 一撃入れたことで気を抜いたオークジェネラルの隙を突いたガビルは空中へ跳び上がり渾身の力を込めて槍を振り下ろす。

 

 「ハァ!」

 

 奇しくもその一撃を防がれる。もう訪れないであろう好機。これを逃してたまるかと、もう一戟と槍を振るう。

 

 「ガハァァ!」

 

 逆にカウンターをくらい深手を負ってしまう。

 

 「「「ガビル様!!!」」」

 

 「グゥ……。」

 

 息も絶え絶えに槍を杖に立ち上がろうとするガビル。

 

 「トカゲはトカゲらしく地面を這いつくばっていればいいものを。死ねィ!!!」

 

 「ここまでか……。」

 

 「「「ガビル様ァ!!!!」」」

 

 斧を振りかぶるオークジェネラルに、己が死を悟るガビル、涙を流しガビルの名を叫ぶリザードマン達。

 

 オークジェネラルの斧と何者かの槍がぶつかり、激しく火花を散らした。

 

 ガビルはその突然の乱入者が何者かと思案する。自身の部下のリザードマン達では無い、自身が連れて来たゴブリンな筈はあろう訳が無い。ならこの者は一体。

 

 そんな時ガビルは思い出すスライムが治めるとかいう胡散臭い村の真の主である一人のホブゴブリンのことを。

 

 窮地のガビルを救ったのはゴブタだった。

 

 リムル達の増援が到着した事でオークは地獄を見ることになる。

 

 

 




ガビル好き。


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Disastro

黒炎のドームがオークの軍勢を包み込み焼き殺す。

 

 「だからどけと言ったろう。」

 

 「キ、キサマら何者だァ!!」

 

 同胞を焼き殺されたオークの戦士の一人がそれを為した赤髪の男とその後ろに控える四人に激昂する。

 

 「覚えてないのか?ひどいな里を食い散らかしてくれたじゃないか。」

 

 「その角!まさかオーガか!!」

 

 額に生える角から数日前に蹂躙したオーガだと推測する。

 

 「どうかな?今は少し違うかもしれんぞ。」

 

 「いよいよですな!」

 

 「この機会を与えて下さったリムル様に感謝します。」

 

 「テメエら全員ぶった斬ってやるよォ!!」

 

 「もう一度言う。道を開けろ豚ども灰すら残さず消えたくなければなァ!」

 

 手から黒炎を放つベニマル。

 

 「これが俺たちの新たなる門出。」

 

 その炎はオーク達を蹂躙する。

 

 「リムル様の華々しい勝ち戦の…。」

 

 一刀にて数十のオークの首を跳ねるハクロウ。

 

 「先ずは最初の一戦目!ですね。」

 

 その剛力でオークの集団を纏めて蹴散らすシオン。

 

 「テメエらのボスはどこだァ!?」

 

 オークを切りながら一人前進するキトラ。無論オークもただで通らせるつもりはない、だが止まらないオークの剣、槍、拳はそのどれもがキトラの魔力装甲を突破するに至らずその前進を遮る事すら出来ない。キトラの前に立ちはだかった者達は皆その三日月のような大鎌で命を刈り取られていた。

 

 「チッ、相変わらず斬ったそばから湧いてきやがる。」

 

 斬ったオークが数千を超えるころキトラは気付く。オーク全体の動きが変わったことに。それは、まるで何かを守るかのような陣形の動きに。

 

 「そこかァ!」

 

 ある方向を見つめて叫ぶキトラ。

 

 「どけ豚どもがァ!」

 

 オークの防御陣形など意にも介さず、フルプレートの鉄の鎧、強固な盾がなんのその。その一切を切り伏せるキトラ。

 

 そうするうちに辿り着く。

 

 明らかに他のオーク達とは違う鎧を付けキトラに劣らぬぬ程の覇気を纏うオーク、黒い外套を身に纏いこちらも負けず劣らずの力を感じさせるオーク。

 

 そしてそれら二人のオークを従わせる巨大なオークロード。

 

 「テメエがオークロードだよなァ!」

 

 数えることすら容易ではないほどオークを斬った大鎌を振りかぶりオークロードに振り下ろす。ここに来るまでの疲れを感じさせぬほどである。

 

 「させんわ!」

 

 「なんだ三下ァ!!」

 

 キトラの大鎌と鎧のオークの斧がぶつかり合い激しく火花を散らす。

 

 「フンッ!!」

 

 「は!ザコがァ!!」

 

 振るわれたキトラの大鎌を鎧のオークが防ぎ、外套のオークがキトラに拳戟を放つ。

 

 「なんだよ?それが全力かァ?」

 

 無防備に自身の拳を受けた筈のキトラが平然としている事に驚愕する外套のオーク。

 

 「ハアッ!!!」

 

 「テメエらじゃあ俺は斬れねえよ!」 

 

 「バカな!!」

 

 渾身の一撃ですら何の事無いように受けるキトラ。

 

 「オラァ!!」

 

 「「ガハッ!!」」

 

キトラの一撃で吹き飛ばされる二人のオーク。

 

 「ハ!次はテメエだオークロード!!」

 

 オークロードの側近二人を退けたキトラはオークロードへ大鎌を向ける。

 

 「ハラがヘッタ……。」

 

 「ああ?テメエ舐めてんのか?」

 

 戦場で、ましてや敵が眼前にいるにも拘わらず腹が減ったなどと抜かすオークロードに困惑するキトラ。

 

 「ナンデもイイ……食わせロ!!」

 

 「なッ!!?」

 

 一瞬で間合いを詰め剣を振り下ろすオークロード。オークロードによって容易く放たれたその一撃は今まで誰も破れなかったキトラの魔力装甲を打ち破るほどだった。

 

 「……。」

 

 「ハァ…ハァ…テメエッ!!」

 

 肩から斜めに斬られ大量の血を流すキトラ。

 

 「「キトラ!!」」

 

 上空から皆の戦いを見ていたリムルと数多のオークを斬り倒しオークロードに辿り着いたシオンが斬られたキトラを目撃し駆け寄る。

 

 丁度その時こちらへ高魔力のナニカがこちらへ向かって来る事にキトラは気付く。

 

 「馬鹿野郎!!来てんじゃねぇ!!!!」

 

 リムルとシオンを抱え、二人を庇い衝撃と瓦礫を背中で受けるキトラ。

 

 「「キトラ!」」

 

 「どいつもこいつもうるっせえ、リムルサマ新手だぜ。」

 

 飛来した者に視線を向けるキトラ。それに追随するように同じ方向に視線を向けるリムルとシオン。

 

 「あれは…魔人か?」

 

 「どういうことだ!!このゲルミュッド様の計画を台無しにしやがって!!!!」

 

 杖をリムル達に向けるゲルミュッド。

 

 「もう少しで俺の手足となって動く新しい魔王が誕生したというのに!!!!!」

 

 「「新しい魔王……。」」

 

 「そうだ!だから名付けをしまくった!!種をまきまくったんだ!!最強の駒を生み出す為になァ!!!!」

 

 「その為に……。」

 

 「我らの里にも……。」

 

 「来たということか……。」

 

 ゲルミュッドの言葉に怒りを露にする鬼人達。

 

 「おお!これはゲルミュッド様!!」

 

 空気を読まず歓声を上げるガビル。

 

 「どうしてここに!!よもや吾輩達の加勢に!?」

 

 「黙れこのノロマが!!」

 

 「「「「へ?」」」」

 

 呆気に取られるガビルとその部下たち。

 

 「貴様がサッサと喰われていればいいものを!!役立たずの無能の分際でいつまでも目障りなんだよ!!オークロードに喰われその力となれ!!」

 

 自身に名をつけてもらった感謝と尊敬を裏切られたガビルは体を震わせる。

 

 「この俺の役に立って死ねるのだ!!光栄に思うがいい!!!」

 

 「ゲッ、ゲルミュッド様!!?」

 

 「やれ!!オークロード!!」

 

 「……。」

 

 沈黙するオークロードに困惑するゲルミュッド。

 

 「どうした?」

 

 「マオウにシンカとはどういうコとカ?」

 

 「チッ!ほんっとうに愚鈍な奴だ!!いいか!貴様が魔王オークディザスターとなり、このジュラの森を支配するのだ!!」

 

 「……。」

 

 「何をボケっとしている!この豚が!!チッ、もう時間がない手出しは厳禁だが俺がやるしかあるまい!」

 

 魔力の塊をガビルに向かって放つゲルミュッド。

 

 「ガビル様!!」

 

 「お逃げ下さい!!」

 

 未だ茫然と震えているガビルを庇おうと前に立つガビルの部下たち。

 

 「ハァ…やっぱりカスじゃねえかテメエ。」

 

 リザードマン達の更に前に立つキトラは片手を前に突き出し魔弾を受け止め握りつぶすキトラ。

 

 「な!?俺の攻撃を受け止めただと!!ふざけるな!!!」

 

 オークロードの一撃を受け傷を負った高々鬼人如きに己が攻撃を防がれる筈がないと更に大量の魔弾を放つゲルミュッド。その一切を弾き飛ばしながらゲルミュッドのもとへ歩を進めるキトラ。

 

 「テメエの攻撃を受けて一つ分かった事と分からねぇ事が一つある。」

 

 遂にゲルミュッドの眼前に立つキトラ。

 

 「貴様一体何なんだァ!!」

 

 「テメエ如きにあのクソジジイが!あいつらが負ける筈がねぇ!!テメエのバックについてんのは一体誰だッ!!!」

 

 「ゲブッ!!!!」

 

 ゲルミュッドを蹴り飛ばすキトラ。

 

 「キトラ……。」

 

 表層に纏う戦闘狂の一面で隠してきたキトラだが、その実誰よりも怒っていた。可視できるほどの重厚な殺気をゲルミュッドに向ける。

 

 「や、やめろ!!くるな!!俺を助けろ!!オークロード!!」

 

 歩み始めるオークロード。

 

 「ようやく動いたか!!フハハハハ!!こいつの強さを思い知るがいい!!」

 

 自身が勝利したかのように笑い始めるゲルミュッド。

 

 「殺れ!!ゲルド!この俺に歯向かった奴らに後悔させt……。」

 

 オークロードに首を斬り飛ばされるゲルミュッド。

 

 そのままゲルミュッドの遺体を喰らい進化しオークディザスターとなる。

 

 「オークディザスター、魔王ゲルド。放置するワケにはいかないよな。」

 

 以前とは大幅に上回る溢れ出る魔力に戦慄するリムル達。

 

 「俺はオークディザスター!!!この世の全てを喰らう者也!!!名をゲルド!!魔王ゲルドである!!!」

 

 ゲルドが進化した事で新たな脅威が生まれる。

 

 オークとの戦いは未だ終わる兆しを見せない。

 

 

 



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Mantide

日に日に下がっていく平均評価を見て凹み。
たびたび少なくなっていくお気に入り登録数を見て凹み。
同じ時期に投稿し始めた作者さんがランキング上位入りしているのを見て凹み。
自分の小説を一から読み直して改めて文章力が低いことを実感し凹む。
悲しいなぁ……。
改めて小説を書くということの難しさを実感しモチベーションを保てなくなってすみません。


 「大層な名乗りじゃねぇか豚野郎。」

 

 傷口を抑えながらゲルドに向かって歩くキトラ。

 

 「教えてやるよ豚野郎!テメエのその大層な称号が何の意味も持たねぇってことをなァ!!」

 

 三日月のような大鎌を振り抜きゲルドに斬りかかる。それを心配そうに見るリムル達。

 

 「オラオラオラァ!!」

 

 一撃一撃が空気を裂くような音を立てるキトラの剣戟をいとも容易く防ぐゲルド。

 

 「なんだァ防いでばっかか豚野郎!!」

 

 「喰わせロォ!!」

 

 一瞬の隙を見せたキトラの腕に嚙みつくゲルド。

 

 「クソがァ!!」

 

 「キトラッ!!」

 

 キトラが喰われるかもと心配を抱いたリムル達が一斉にゲルドへ攻撃を仕掛けようとする。

 

 「なんてな。」

 

 張り詰めた空気の中飄々と放ったキトラの言葉はその場によく響いた。

 

 「分からねぇか豚野郎?」

 

 「……喰えヌッ。」

 

 「俺の魔力装甲は普段は体全体に纏ってんだ。だがよォそれじゃあテメエに破られる。だったらどうするか?簡単な話だ一箇所に魔力を集めてもっと固くする、そんでもってまんまとテメエはそこに嚙みついたワケだ。」

 

 「ッ!!?」

 

 自身の腕に嚙みついているゲルドを冷徹な視線で見つめるキトラ。大鎌をゲルドのうなじに掛け。

 

 「あばよ豚野郎。」

 

 「ッ!!」

 

 首を切り落とされ、崩れ落ちるゲルドの体躯。

 

 唐突な幕引きに呆気に取られる一行。

 

 「終わったぜリムルサマ。」

 

 「あ、ああ。」

 

 完全にゲルドに背を向けリムル達の方へに歩み寄るキトラ。

 

 それは明確な油断であり、明らかな隙だった。

 

 キトラに落ち度は無い。首を切り落としたのだ絶命しているだろうと皆がそう考えていたのだから。

 

 ましてや切り落としたのは自分自身。殺したことは疑いようの無い事柄だった。

 

 だが、オークディザスター、魔王ゲルドは生きていた。首を切り落とされてなお生きていたのだ。首を抱え立ち上がりキトラに切りかかる。

 

 普段であれば後ろからの不意打ちなど容易に防げていたはずだった。これまでの戦闘の疲れや、負った手傷が無ければ。

 

 反応が遅れ体を斬られるキトラ。先の負傷は魔力装甲を体全体に纏っていたが為破られ負った。だが、それ故に致命傷にはならなかった。

 

 魔力装甲を纏っていないキトラの体躯をゲルドの刃は容易く切り裂いた。

 

 「キトラ!!」

 

 崩れ落ちるキトラ抱えるシオンを横目にゲルドに切りかかるハクロウ。

 

 鋭い眼光をその目に宿し目にも止まらぬ剣戟でゲルドを切り裂く。その姿は正に剣鬼。

 

 腕を斬り落とし、脚を斬り飛ばすもゲルドはそのすべてを再生させる。

 

 「ここまで切っても駄目か……。」

 

 「交代だ。操糸妖縛陣!やれ!!ベニマル!!」

 

 「ハァ!!」

 

 糸でゲルドの動きをソウエイが封じ、ベニマルの黒炎がゲルドを焼き、ダメ押しと言わんばかりにランガの雷が炸裂する。 

 

 だが、ゲルドは立ち上がる。

 

 普通のオークでは数十回と命を落としているであろうその攻撃を受けてなおゲルドは立ち上がった。

 

 「コレが…痛ミカ……。」

 

 「おいおいマジか。」

 

 「嘘だろ?」

 

 攻撃を放ったベニマル達やキトラの傷を治していたリムルでさえもその生命力の高さに戦慄する。

 

 「王よ。この身を御身と共に。」

 

 「ウム。」

 

 ゲルドに跪いた鎧のオークを貪り傷と魔力を回復させるゲルド。

 

 「足りヌ!モっとダ!!モっと喰われロォ!!」

 

 魔力の塊を雨のようにリムル達の頭上から降らせるゲルド。

 

 だが、リムルはその一切を逆に喰らいつくした。

 

 「シオン、キトラを頼んだ。後は俺がやる。」

 

 「はい!」

 

 シオンに回復薬が入った小瓶を手渡しゲルドと対峙しようと、立ち上がろうとしたリムルの襟を掴むキトラ。

 

 「ヘブッ。」

 

 急な事に驚くリムル。

 

 「キトラ?」

 

 「ハァ…ハァ…俺は……負けてねぇ…俺は……最強だ……ッ。」

 

 「キトラ…お前は寝てろ!!」

 

 「ゲフッ。テ……メエ。」

 

  重症を負ってもなお戦おうとするキトラに呆れ当身をくらわせ気絶させる。

 

 「よし!後は俺に任せてお前たちは下がってろ。」

 

 リムルと魔王ゲルドの戦いの火蓋が切られた。

 

 体を大賢者に委ねたリムルは魔王ゲルドを圧倒する。

 

 四方八方から延ばされる混沌喰、そのすべてを躱しゲルドの片腕を斬り飛ばす。

 

 即座に再生させようとするゲルドだったが出来ない。何故?そう思い斬り飛ばされた腕を見れば今もなお黒炎が燃えており再生させたそばから燃え尽きていくのだ。

 

 敵を前にしているにも拘わらず、その敵以外の事に意識を向けてしまったゲルド。その隙を大賢者は見逃さない。

 

 渾身の一撃をゲルドに叩き込む。

 

 だが、そう易々と攻撃を受けるほどゲルドも愚鈍ではなかった。

 

 リムルの刀を斧で防ぎきるゲルド。このまま吹き飛ばしてやると力むゲルドだったがリムルは刀に黒炎を纏わせ斧を溶かし斬った。

 

 「バカな!!?グヌウ!!」

 

 一先ず腕を再生させなければならない。肩から腕を引きちぎり無理矢理再生させる。

 

 「今こそオ前を喰っテやろウ!!!」

 

 リムルの小柄な体躯を鷲掴みにするゲルド。

 

 即座にゲルドごと炎の渦を出現させる。リムルには変熱耐性がありダメージになりえない。ゲルドだけが一方的にダメージをおうのだ。

 

 これで終わりだと任務完了の報告をする大賢者だが、リムルはゲルドから目を離さない。

 

 「グゥ……ハッハッハッハッハァ!!俺には炎は効かんようだゾ!!」

 

 さすがの大賢者もこの短時間の間に耐性を獲得することは完全に想定外だった。謝罪し別の方法を思考する大賢者に窘め、交代するリムル。

 

 「そうかよ!炎で焼け死んだ方が幸せだったかもしれないぜ?俺はお前を敵として認めた。今から本気でお前の相手をしてやるよ!」

 

 「グハハハハハハ!!笑止!!今までは本気でなかったとでも?もはやキサマには何も出来はせん!!このまま俺に喰われるがいい!!」

 

 リムルを掴む手にさらに力を籠めるゲルド。

 

 「お前に喰われる前に俺がお前を食ってやるよ。」

 

 リムルは人間からスライムの体に戻りゲルドの体に纏わりつく。

 

 「キ!キサマァ!!」

 

 「食うことはお前の専売特許じゃねぇんだよ!お前が俺を喰うのが先か、それとも俺がお前を食うのが先か……相手を喰いつくした方が勝だ!」

 

 スライムがオークを喰らい、オークがスライムを食らう。

 

 両者の隔たりが曖昧になりゲルドの記憶と意識がリムルに流れ込む。

 

 飢饉の中産まれたばかりの子供たちは死んでいき己は生き続ける。そんな魔王…いやオークの王ゲルドの絶望に触れるリムル。

 

 同胞の罪を己が背に背負った王は明らかな敗北を認めない。己が死ねば、オークの罪は同胞たちが背負う事になる。そんなことは認めない、認められない。

 

 そんなゲルドにお前の罪もオークの罪も自分が食うと豪語するリムル。

 

 矮小な筈のスライムが見せたその強欲さに涙を浮かべるゲルド。

 

 リムルへの感謝を最後に抱きオークの王ゲルドは死んだ。

 

 その最後はゲルドの飢えを満たし、満足したモノだった。

 

 こうしてリムル達とオークの戦いは朝日を迎えると共に終わりを告げるのだった。

 

 「ケッ。くそったれが。」

 

 目を覚ましたキトラもゲルドの最後を見届けるのだった。その強さは己を上回る程の強者だったと記憶に刻みみながら。もう一度戦いたいという願望と共に。 

 

 「キトラ!!」

 

 「いってぇ!!触んじゃねえ!クソムラサキ!」

 

 「なんじゃ無事だったのか小僧。」

 

 「うっせぇ老い耄れが。当然だ。」

 

 「油断して切られるなど無様だなキトラ?」

 

 「いい度胸じゃねえかアオネクラ!」

 

 「なんにしても無事でy「うっせえヘボ。」……なんでさ。」

 

 口ではいろいろ言いつつキトラが目を覚ました事に安堵するベニマル達。

 

 「テメエら帰ったら付き合えや。」  

 

 「己が未熟さを実感したか?小僧。」

 

 「抜かしてろ。俺は最強だ。」

 

 オークロードが斃れた事により飢餓者の効果は消滅、オークの侵攻は終了した。

 

 ゴブリン達やリザードマン達からはあげ勝鬨を上げ、真逆にオーク達は王を失った事により悲観のこえをあげ膝を折る者ばかりだった。

 

 「終わったな。」

 

 「は。」

 

 リムルとベニマル達は少し離れた場所に移動していた。

 

 「オークロードを打ち滅ぼしたら自由にしてもらってもいいという約束だ。今までご苦労だった。」

 

 「……リムル様お願いがございます。」

 

 「なんだ?」

 

 「何卒我らの忠誠をお受け取りください。我らはこれからもリムル様にお仕えいたします。」

 

 「いいのか?」

 

 これからも自分に仕えてくれるというベニマル。嬉しくないわけがない。

 

 「異論はござらん。」

 

 ハクロウは穏やかな笑みを浮かべながら。

 

 「貴方様に出会えて我らは幸運です。」

 

 ソウエイはリムルを真っ直ぐに見つめながら。

 

 「私は、リムル様の秘書兼護衛ですよ?絶対に離れません!」

 

 シオンはリムルに抱き着きながら。

 

 「……ハァ。」

 

 何も言わないキトラへの視線を皆が向けると、めんどくさそうにリムルに歩み寄り。シオンの頭に腕を乗せ。

 

 「アンタの事をヒメサマは気に入ってんだ。ここにいるクソムラサキやヘボ共もな。そしてアンタには借りがあるそれを返すまで俺はアンタに付いてくぜ。」

 

 「キトラ……。」

 

 あまり見たことがない穏やかなキトラに感激するリムルだったが。

 

 「ところでリムルサマさっきはよくもやってくれたじゃねえか?お陰でよくも眠れたぜ?」

 

 頭を掴むキトラに大汗を流すリムル。

 

 「そ、それは…。」

 

 「言い訳無用!やられたら百倍でやり返すのが俺なんでなァ!!」

 

 「ぎゃあああああああ!!」

 

 「ヘブシッ!!?」

 

 リムルを思いっ切りベニマルに投げつけるキトラ。 

 

 鬼人達はこれからもリムルに仕えることを決めた。

 

 オークの侵攻を止め、これで終わりだと考えているリムルにある意味これ以上の労働が待ち構えていることをリムルはまだ知らない。




前書きであーだこーだ言ってしまいましたが、一番の理由は多過ぎる課題に手こずっていただけです。
すいません。


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Alleanza

更新遅れてすいません。



 リムル達とオークの戦いの翌日、各種族の代表が集まっていた。

 

 リムル一行からはリムル・ベニマル・ソウエイ・キトラ・シオン・ハクロウが、リザードマンからはリザードマンの首領とその娘が、オークからは部族ごとの代表が数人、その中にはキトラと一戦交えた外套のオークもいた。

 

 古今東西敗者は惨めな最期を迎える。それを理解してかオーク達は皆俯きせめて自分たちの命だけでと覚悟を決めるのだった。

 

 会議を始めようとした頃にトレイニーが現れる。これ幸いとリムルは会議の進行役をトレイニーに押し付けようとするのだったがにべもなく断られてしまう。

 

 絶えず笑みを浮かべているトレイニーを訝しげに見詰めるキトラ。

 

 「おっほん!これから会議を行う。けど最初に言っておく。俺はオークに罪を問うことはしない。」

 

 目を見開くオーク達。

 

 「被害が大きいリザードマンからすれば不服だろうが聞いてくれ。」

 

 オークの侵攻のそもそもの原因は大規模な飢饉であり、別の者がオークロードの立場であっても同じことをしただろうことを語り。オーク達には情状酌量の余地があることをオークロードの記憶をもとに皆に話して聞かせるリムル。

 

 「オークの罪は俺が全部引き受けた!文句があるなら俺に言え!」

 

 「お待ちください!!それは…。」

 

 敵であったはずの自分たちを庇うかのように豪語するリムルにざわめくオーク達。

 

 「それが。魔王ゲルドとの最後の約束だ。」

 

 王は最後まで我らのことを思ってくださったのかと感激し涙ぐむ者さえいた。

 

 「ふむ。それは少々ずるいお答えですな。」

 

 「……。」

 

 「我らリザードマンは此度の戦で決して少なくはない数の戦士を失った。リムル殿、オークを許すと貴殿は申されましたが一体どうさせるおつもりで?生き残った彼らを全て受け入れるおつもりですかな?」

 

 「確かにオークは数が減ったとはいえその数は十五万は下らない。……それでだ!夢物語に聞こえるかもだが皆で協力出来ればと考えている。」

 

 「といいますと?」

 

 「ゴブリンやオークリザードマンに鬼人達それぞれの部族間で協力関係を結び同盟関係をつくる、他種族共生国家なんて出来たらいいなって。」

 

 「そのような同盟に我らオークも加えてくださるのですか!!」

 

 「帰る場所も行く当てもないんだろ?居場所を用意するからしっかりと働けよ?」

 

 「……ッ!勿論に御座います!!」

 

 命を助けられたばかりか居場所までをも自分たちにくれるというリムルに感謝しむせび泣くオーク達。

 

 「ふむふむ。」

 

 「リザードマンは不服か?」

 

 「いえまさか。そもそも我らはリムル殿が来て下さらねば既に滅んでいたでしょう。異論を挟む権利など我らには無いのです。是非とも貴殿に協力いたしましょう。」

 

 「そうか!」

 

 「しかしリムル様。」

 

 「なんだベニマル。」

 

 「食糧はどういたしましょう、何しろ途方もない数ですし。」

 

 「ぐぬ……。」

 

 十五万のオークを満足させる程の食糧はリムル達は持ち合わせていない無論リザードマンもだ。

 

 「その分の食糧であればわたくし達がご用意いたしましょう。」

 

 「ホントに?トレイニーさん。」

 

 「えぇ。その代わりその同盟に我らドライアドも参加させて下さい。」

 

 「それはこちらも願ってもない話だけどいいの?」

 

 「えぇ。同盟に参加すればわたくしたちも守ってくださるんですよね。」

 

 「勿論だけど。」

 

 「守る必要があるとは思えねぇがな。」

 

 「森の調停者としてわたくしトレイニーが宣言します。リムル=テンペストをジュラの大森林の新たなる盟主として認め、その名のもとにジュラの森大同盟は成立致しました!!」

 

 声高らかに宣言しリムルに跪くトレイニー。それに続くオークやリザードマン。

 

 これにはリムルも驚愕した。代表たる盟主は森の調停者たるドライアドの仕事じゃないのかと。ベニマル達の顔を見渡すも、当然だなと言わんばかりに頷くばかりである。矢面に立たず尚且つ森を平和に保つ、コレが目的だったかと納得するキトラだった。

 

 「ぇぇ…。」

 

 斯くして永らく様々な種族が入り乱れていたジュラの大森林にてリムル=テンペストを盟主として大同盟が締結された。

 

 もっとも盟主たるリムルは釈然としないままだったが。

 

 「……じゃあそういうことみたいなんでみんなよろしく頼む!!」

 

 同盟が締結され解散し移動しているベニマル達に外套のオークが話しかける。

 

 「何か用か?」

 

 「……弱肉強食とはいえ……ッ憎しみはそう簡単に割り切れるモノでは無い。」

 

 ベニマル達に跪いて頭を下げる。

 

 「……。」

 

 「虫のいい話であることは重々承知している。だがッこの首一つでご容赦願えないだろうか。」

 

 リムルが自分達の罪を食らったなど所詮は方便。ベニマル達は己が生まれ育った里を蹂躙されたことは忘れているわけがあるまい。せめても自分の命だけでその怒りを鎮めて欲しいと地に頭を擦るのだった。

 

 「戦いの後、今後もリムル様のもとに在り続けたいと伝えたら俺たちに役職を下さった。」

 

 「私は、武士!リムル様の護衛役ですよ!秘書も兼ねてます!」

 

 聞いてもいないのに胸を張って答えるシオン。

 

 「このクソムラサキと一緒ってのは気に食わねぇが俺もその武士ってヤツだ。」

 

 「ハクロウは指南役、ソウエイは隠密。村に残っているシュナとクロベエにもだ。で、俺は侍大将の座を賜った。軍事を預かる役どころだ。そんなとこについちまった以上有能な人材を勝手に始末するわけにはいかないだろう。」

 

 「ッ!!?」

 

 「リムル様に仇なす存在ならば容赦はしないが、同盟に参加し盟主と仰ぐのなら敵では無い。」

 

 「仇なすなど滅相もないあの方は我らを救ってくださった!従いこそすれ仇なすなどありえん!!」

 

 「なら、俺たちは同じ主を仰ぐ仲間だ。せいぜいリムル様の役に立て。それを詫びとして受け取っておこう。」

 

 「それに、テメエらとの戦いは悪くなかったまたやろうぜ。」

 

 言外に許すと言われ目頭を熱くする外套のオーク。

 

 「お前はオークロードに負けただろうキトラ。」

 

 「そうです。リムル様に無駄に心配をおかけするなんて情けない。」

 

 「まだまだ修行が足らんな小僧。」

 

 それぞれの言葉がキトラのプライドを抉る。

 

 「テメエらいい度胸だァ!今ここでぶっ殺す!!」

 

 「おい!キトラ!!」

 

 今にも戦闘を始めようとするキトラを諫めようとするベニマル。

 

 「テメエは黙ってろ…大将。」

 

 「キトラ…!」

 

 馬鹿にしたようなヘボでも無く一切敬意のこもっていないような若サマでも無い。初めて認められたような気がして少しにやけてしまうベニマル。

 

 「何笑ってんだ?気持ちワリい。」

 

 「いや…何でもない。」

 

 「そうかよ、クソムラサキ共ォテメエらはぶっ殺す!」

 

 斯くして外套のオークはゲルドの意思を継ぐものとしてゲルドの名をリムルに賜った。

 

 オーク達一人一人にも名が付けられ、住む場所や食糧を与えられた。

 

 重い罰を科せられると考えていたオーク達はその慈悲に歓喜しむせび泣くのだった。

 

 これにてオーク達との戦いは完全に終結し、森には平和が戻り、新たなる秩序がうまれたのだった。 

 




キトラ……ほとんど喋ってなくね…。


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幕間の物語 
Nuotare


本当に申し訳ありません。

続きをどう書けばいいか分からなかったことと、私生活がただただ忙しく(ゲームのイベント)更新が大幅に遅れてしまいました。

言い訳にはなるのですが一つ言わせて下さい。



「簿記論の課題が難しすぎる!!」



本当に申し訳ありませんでした。

次回なるべく早く更新できるよう頑張ります。


 これは魔物の国の些細な一幕。

 

 「リムル様建設現場視察のお時間です。」

 

 「わたくしがお連れします。」

 

 紫色の髪を括り黒色の角を額に持ち知的な雰囲気を漂わせる鬼人と桃色の髪に白色の角を持ち利発さ且つおしとやかさを併せ持つ鬼人。シオンとシュナの主を巡った熾烈?な争いは今日も今日とて日差しあたたかな縁側にて行なわれていた。

 

 自らを巡った諍いに疲れ気味のリムル。止めようにも二人に悪意があってしていることではない故に二人から引っ張られる状況を甘んじて受け止めていた。

 

 それどころか自身のスライムボディの抱き心地の良さを知っているためか二人の気持ちが分かるなどと解釈していた。

 

 とは言え何とかしなければと、リムルは二人がどちらも満足する解決策を考え出す。

 

 そういえばと、前世にてありとあらゆる生物を堕落させたというクッションのことを思い浮かべる。これをどうにかして作り二人に配れば万事解決なのではと

 

 思い立ったが即実行、クッションを作成するために必要な素材が無いか国の職人たちに聞いて回る。

 

 「なにやってんだァ?リムルサマは。」

 

 「さあ?」

 

 国中を駆け回るリムルに疑問を浮かべているのは、長い黒髪を持ち着流しに着物を着る目つきの悪い鬼人と赤髪を持ち若いながらも威厳を感じさせる鬼人、キトラとベニマルだ。二人は

 

 「なんでも生物を堕落させうる道具を造ろうなさっているらしい。」

 

 「なんだよ帰ってきてたのかアオネクラ。」

 

 「ソウエイだ。ああ、リムル様より預けられたあの者達は随分と腕を上げている俺が出るまでもないのからな。最も油断はしていない。」

 

 「そこまで聞いちゃいねえよ。」

 

 「おい、それよりも今なんて言った?堕落させる?」

 

 「ああ。なんでもそれを姫様とシオンにお与えになるらしい。」

 

 「なんでだよ!」

 

 「分からん。」

 

 クッションを作成するための素材の情報をカイジンより得たリムルは早速主要な者達を集める。

 

 「湖にサラサを取りに行く!ついでにみんなでピクニックに行こう!」

 

 「「「「「「おお~」」」」」」

 

 「いいっすねぇピクニック。」

 

 「水辺の探索なら吾輩たちにお任せあれ!!」

 

 「然り!」

 

 「流石はガビル様!」

 

 「カッコイイ!!」

 

 「「「ガッビルッ!ガッビル!ガッビル!!」」」

 

 「うむ!!!」

 

 「五月蠅い……。」

 

 「リムル様とお出掛けできるなんて嬉しいです!」

 

 「主となれば例え地の果てにでも参りましょう!!」

 

 「湖だって言ってんだろう。」

 

 「サラサで何をお作りになるんですか?」

 

 「そ、それはできてからのお楽しみだ!」

 

 クッションには興味を示さないであろう男衆には事の仔細を説明しようと、ベニマル・キトラ・ソウエイ・ゴブタを路地裏に集めるリムル。

 

 「是非とも協力させてくれ!!」

 

 書いて字の如く鬼気迫る勢いで賛成するベニマル。

 

 「お、おう!妙に乗り気だなベニマル!!」

 

 「当然です!リムル様を模したクッション、それを手にしたシオンはきっと大事にする。片時も肌身離さず持ち歩き尚且つ汚すまいとするでしょう。つまり!シオンが調理場に近づかなくなる!!」

 

 「「「!!」」」

 

 「くっだらねえ。」

 

 「お前は味覚が死んでいるからいいのだ!だがついでと食わされる俺たちを慮れ!キトラ!」

 

 「お、おう。」

 

 あまりの勢いに流石のキトラもたじろいでしまう。

 

 「儂もお供致しますぞリムル様!」

 

 「「!!」」

 

 「ハクロウまで……。」

 

 斯くしてそれぞれが思惑を抱きピクニックに向かったのである。

 

 湖に着いた頃にはすっかり太陽が昇りお昼の頃合いになっていた。

 

 「よし!サラサを取りに行く前に腹ごしらえだ!お昼にしよう!」

 

 湖の奥底から浮き上がる気泡と水面を眺める怪しげな眼光にはこの時はまだ、誰も気がついていなかった。

 

 さて、シオンのおにぎりが湖に落ちたりマブダチ()であるミリムの襲来などハプニングは色々あったが無事に全員が水着に着替え泳ぎ始めようとすると。

 

 「あれ?そういえばキトラは着替えないのか?」

 

 「あ?俺はそもそも泳ぐ必要がねぇからな。」

 

 「?」

 

 そう言って湖に向かって歩き始めるキトラ。その足が水に浸かろうかという時キトラは水面をも歩き始めたのだ。

 

 「マジか!」

 

 「そういうこった、先行ってるぜ。」 

 

 足早に中州まで歩いて行くキトラ。

 

 「フフッ。」

 

 おかしそうに笑うシュナを不思議そうに一向は眺め泳ぎ始めるのだった。

 

 泳ぐ一向を黄金の触手が襲う。湖に落ちたシオンのおにぎりをかじった事で暴走した巨大な貝をリムルが落ち着かせたことで全員事なきを得た。

 

 中州にてサラサを入手したリムルは巨大な貝と再会を約束しピクニックを終えるのだった。

 

 その帰り道。

 

 「リムル様。」

 

 「なんだ?シュナ。」

 

 リムル耳元で小声で囁くシュナ。

 

 「実はですね、強がってはいましたがキトラは泳げないだけなのです。」

 

 「ええッ!!?マジ!?」

 

 「はい、まじです。」

 

 キトラのちょっとした弱点を知るリムルなのであった。

 

 因みに完成したクッションはというと二人とも喜びはしたが、結局のところクッションよりリムル本人だったのでベニマルたちの思惑を完全に外すことになったのだった。



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魔物の国
束の間の平穏


前回の投稿が6月25日だったので4日ぶりの投稿ですね(白目

憶えてくれている方いますかね。


 オークロード討伐から三ヶ月、名付けによって進化したオーク達はハイオークへと進化に至りカイジン達の指導の下、たゆまぬ努力によって瞬く間に技術を習得し村の頼れる労力として元居た住民たちからの信頼を勝ち取った。

 

 「鍛えればワシらドワーフにも劣らぬ技術を持てるかもしれん!」とオークを指導しているカイジンを唸らせるほどの成長を遂げ、また大幅な労働力を確保したことによって更なる発展を遂げた村、もとい魔物の町がここに誕生したのである。

 

 リムル=テンペストを長とし数多の異なる種族の魔物が住む町、リザードマン達が暮らす湿地帯をつなぐ道が建造されたことよってジュラの森同盟の存在が改めてジュラの森全土に流布されたのである。

 

 「リムル様の一大事に本来真っ先に駆けつけるべき、いえ、常日頃からリムル様の傍に使え我が身をとしてでもリムル様を守る役職について居ながら寝ていたとはどういう事なのキトラ!」

 

 「うるせえなクソムラサキ。そう怒鳴るなよ」

 

 キトラとシオンがいつものような口喧嘩に自室の縁側でくつろいでいたリムルに悪い予感が走るのだった。今回の喧嘩の原因はやはりリムルの護衛についての二人の価値観の違いから起こった喧嘩だった。

 

 数日前リムルが襲われた折、もっとも襲われたと言ってもリムルやシオン、リムルが乗っていたランガの実力も推し量れないような下級の魔獣が遅いかかっただけなのだが。それもリムルに近づく前にシオンによって切り殺されている。

 

 シオンの意見は上記の通り常日頃からリムルを護衛すべきという考えだが、キトラはまた別の持論を持っていた。そもそもリムルに護衛必要か?という身も蓋もない考えであった。リムルの脅威になるような敵がこの町に近づけばそれだけで自分はその敵を感知出来る。そもそもリムルであれば並大抵の相手とやりあえる強さと厄介さを有していると評価しているキトラにとって付きっきりで護衛する必要性を感じていなかった。

 

 それを口に出して言えばいいもの何も言わなかった結果、シオンの目からはただただキトラがさぼっているようにしか見えない。故に喧嘩が起こるのはある意味必然だった。

 

 「相ッ変わらずウゼぇ女だなァ。俺に言う事を聞かせてェなら一度でも俺に勝ってから言えよ。まあもっとも、お前程度じゃ一生かけても俺に勝つのは無理だがな」

 

 「いいでしょう。どこぞのオークロードに負ける一歩手前まで追い詰められた軟弱者には私が稽古をつけましょう」

 

 ただの口喧嘩とは思えないほどの怒気と殺気が入り混じったオーラがリムルの自室へあふれ出した。

 

 「なんでさ…」

 

 日向ぼっこに興じていたリムルの平穏な休日は不穏な空気によって霧散した。

 

 「「殺す!!」」

 

 (リムル様、緊急事態です)

 

 「俺の目の前も緊急事態だよ!?」

 

 二人の喧嘩が自室で繰り広げられるのではという心配とソウエイから念話によってもたらされた新たな緊急事態の発生に思わずツッコミを入れてしまうリムルであった。

 




お久しぶりです。
ホントになんかごめんなさい。

こっから先はただの言い訳タイムです。

・モチベーションの低下
・授業がオンラインでは無くなり通常通り学校に通わなければならなくなった事
・バイトがホントにしんどかった事
・リアルの方が充実し過ぎた事

この四つが主な理由です。恥ずかしながらリアルが楽しすぎてあんまり書く元気がなくなってしまいました。本当に申し訳ないと思ってます。

最近は生活環境にも慣れてきたので毎日は無理ですが、毎週・毎月くらいには書いていきたいと思っています。暇つぶし程度に読んでいただければ嬉しいです。

ではおやすみなさい。
(あと三時間後に家でなきゃいけないのに何やってんだろうか…


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ドワーフと鬼人

日間の下の方とは言えランキングに載っててびっくりしました。
それだけに一年も放置して遊んでいたことが本当に申し訳なく思います。

ところでランキングの基準ってどうなってるんですかね?



各キャラクター達がキトラへ向ける感情とキトラが各キャラクターへ向ける感情。

ベニマル→キトラ…オーガとして、鬼人として、強い所には好感が持てるが人格面では苦手。幼少期からのトラウマだったが最近は克服しつつあるのでキトラとの修行にもたまに付き合うようにしている。
ソウエイ→キトラ…オーガとして、鬼人として、強い所には好感が持てるが人格面では大嫌い。一度本気で闇討ちしてやろうかと考えている。
シオン→キトラ…オーガとして、鬼人として、強い所には好感が持てるが人格面では難あり。自分の料理を何も言わず食べてくれる稀有な存在として味見係に重宝している。
シュナ→キトラ…強くて優しい所には好感が持てる。でも周りと喧嘩ばかりなのはやめたほうがいいと思っている。
ハクロウ→キトラ…オーガとして、鬼人として、強い所には好感が持てるが人格面では難あり。最近新たなスキルをいくつか習得したらしく、負けぬまでも勝つのも難しくなった。
クロベエ→キトラ…オーガとして、鬼人として、強い所には好感が持てるが人格面では難あり。特殊な武器ばかりを頼んでくる、だが鍛冶職人として存分に腕を振るえるので次の依頼が楽しみ。
リムル→キトラ…怖い。シュナとのやり取りを見る限り悪いやつではないだろうと思っている。
リグルド→キトラ…怖い。でも戦いになれば心強い。
ゴブタ→キトラ…絶賛トラウマ中。ベニマルとよくお互いを慰めあっている。
ガビル→キトラ…自分を助けてくれたので感謝している。


キトラ→ベニマル…昔は弱かったので見下していた。
キトラ→ソウエイ…口うるさい。
キトラ→シオン…まあまあ強いのでちょうどいい喧嘩相手。
キトラ→シュナ…
キトラ→ハクロウ…そこそこ強いのでちょうどいい喧嘩相手。
キトラ→クロベエ…武器作ってくれるいいヤツ。
キトラ→リムル…名付けに感謝している。だがいつも逃げられるのでいつか本気で殺し合いをしたい。
キトラ→リグルド…誰だ?
キトラ→ゴブタ…物足りない喧嘩相手。
キトラ→ガビル…どいつだ?


 「シオン!リグルドに避難命令を出すように伝えてくれ!キトラ、ランガは俺とソウエイの所へ行くぞ!」

 

 「はい!」「おう」「承りました!」

 

 ソウエイの念話よって伝えられた緊急事態に即座に命令を下すリムル。その命令を迅速にこなすべく、シオンはリグルドのもとへ、ランガはリムルを背に乗せて走り出す。

 

 「リムルサマ先に行くぜ」

 

 キトラはそう言い残し、一瞬で姿をくらませた。

 

 (消えた!?どやったの!?)

 

 魔力感知に一切の反応もなく高速で移動して見せたキトラのスキルに驚くリムル。

 

 「なんだよアイツら吞気に空をおサンポかよ、どこが緊急事態だ」

 

 「!?…キトラか!?」

 

 キトラが移動した先には、空中に陣取る集団を監視するソウエイとソーカのもとだった。いくら空中を注視していたとはいえ周りへの警戒は一切怠ってはいなかったはず。そんな自分の背後にキトラは突然現れた。

 

 驚かないはずがない、むしろ背後に現れたのがキトラではなく敵であったならばそれは明確な隙になったはずだ。隠密として敵から身を潜め情報をリムルのもとへと届けるはずの自分がそんな隙を見せてしまったことで自責の念に駆られるソウエイ。

 

 「そう驚くなよアオネクラ」

 

 「チッ…ソウエイだ。奴らが敵か味方か分からん以上リムル様へ指示を仰ぐのは当然のこと。ましてや全員がそれぞれ武装した手練れだ。それも理解できんのか」

 

 だがそれはそれ、これはこれ。相手がキトラだったために、いつも以上に切れ味のある正論を纏った毒舌をキトラへ浴びせた。

 

 「ア?ナワバリに入って来た時点でそれは敵だろ。手練れェ?なんだよビビッてんのかァ?」

 

 「なんだと?」

 

 いつものこととは言えこの非常事態に町の主要戦力であるキトラとソウエイが喧嘩を始めようとするが丁度良くリムル達が到着したことでどちらも矛を収める。

 

 「リムル様、如何致しますか?」

 

 「出来れば争うのは避けたいんだが…」

 

 空に陣取る集団を見据え指示を求めるベニマルと見知った顔があることから敵ではないであろうことは予想できるがそれも確定ではなく。そもそも来訪の意図がつかめないことから悩むリムル。

 

 「問題ありません。蹴散らせば良いのです!」

 

 「クソムラサキに同意」

 

 そんな物騒な二人はスルーしてリムルは頭上から降りてくる集団の中に一際目を引く、強者であることが容易に想像できるであろう破棄を纏った武装国家ドワルゴンの王ガゼル・ドワルゴを注視する。

 

 「久しいなカイジン。なに、そこのスライムの本性を見極めてやろうと思ってな、今日は王としてではなく私人としてきたのだ。物々しいのはまあ許せ。」

 

 かつて武装国家ドワルゴンで職人をしていたカイジンはガゼル王にいち早く膝を附き頭を下げる。その様はまるで王に傅く家臣と言ったところか。

 

 そんなカイジンが突然の来訪の意図を問うと帰って来たが先ほどの発言である。それだけで怒気を露にするベニマル達にリムルは背を震わせる。

 

 「あー、今は裁判中ってわけでもないし、こっちから話しかけてもいいんだよな?」

 

 「当然だな」

 

 リムルの何の敬意も込めていない話し方に眉をひそめるのドワルゴンの面々。彼らからすれば自分たちの偉大な王へたかだかスライム如きがタメ口を使っている、これは最大の侮辱であろう!と。

 

 中には剣を抜こうとした者もいた。

 

 なれどそれは両陣営誰しもが、いや数人は予想出来ていたかもしれない。だがしないだろうと思われた行動をある人物が取った行動で阻止された。

 

 「グゥッ!これは明確な敵対行為に相違ないぞ!!」

 

 「ア?知るかよ。そこのバカが抜こうとした時点で始まりの合図だろうが?随分甘ったれた根性がしみついてんだなァドワーフさんよォ!」

 

 剣を抜こうとしたドワーフは天翅騎士団団長ドルフによって元立って居た場所から横に殴り飛ばされた。

 

 何故か?

 

 そうでもしなければ斬られていたからである。

 

 誰にか?

 

 キトラにである。

 

 ドルフは振り下ろされるキトラの大鎌を、キトラが元々有していた桁外れの膂力とそれを更に魔力で強化した一撃に押され肩に傷を負いながらも受け止める。

 

 「止めたか…やっぱテメエが一番強ェだろ。だが拍子抜けだイチバン強ェ奴でこのザマだ。全員やるのに時間はかからねえなァ!!」

 

 暗に王ガゼルをも手にかけようとしている目の前のキトラへドルフは普段の冷静な面持ちを崩した。つまり、ブチギレたのである。

 

 「ハァッ!!」

 

 受け止めていたキトラの大鎌を吹き飛ばし、返す一撃でキトラの首元へ斬り込んだ。

 

 その一撃は正しくドワルゴン最強部隊を率いるに値する、怪我を負ったことも加味して尚先ほどのキトラに一撃に匹敵或いはそれすらも凌駕するであろう一撃だった。

 

 ドルフのキレて沸騰した頭を冷静にしたのはある違和感である。

 

 凡人では気付きすら、知覚すらできないであろうその違和感は目の前の相手キトラの行動によって生まれたことに気が付けたのは剣がキトラへ触れるほんのコンマ一秒ほど前である。

 

 では、キトラは何をしたのか。

 

 何もしなかったのである。

 

 反応できていないだけなのか?否!あれ程の一撃をその身にくらわせた男に限ってそんなことがある筈がない。では、何故!?

 

 そんな思考が停滞するドルフの思考を埋め尽くした。

 

 「やっぱり拍子抜けだな、こんなもんかよ」

 

 そんな思考も無意味であったことを結果が語っている。

 

 避ける・防ぐ動作を取らない。何故か?避けるに、防ぐに値する攻撃ですらないから。

 

 「なん…だと…!?」

 

 キトラの首元で止まった、己の剣を見て愕然とするドルフ。ドルフの渾身の一撃ではキトラの魔力装甲を破ることは出来なかったのである。それも仕方ないことでもある今までキトラの魔力装甲を破ったのはオークロード只一人なのだから。

 

 最もキトラ自身が戦ったことのある中ではだが。

 

 「双方!!そこまでだ!!」

 

 「キトラ!!もうやめろ!!てゆーか止めてェ!!」

 

 多少の威厳の差はあれど双方の主からの制止により武器を収めるドルフとキトラ。

 

 「ふむ、少し手違いがあったようだな。とはいえ発端はそこの鬼人が言った通り我々の中に武具を使おうとしたものがいたことであろう。だが、俺の臣下に怪我を負わせたのもまた事実。故に此度の事は水に流し本来の目的に戻ろうではないか」

 

 「お、おう!!ん?本来の目的?」

 

 「其方を見極める事だ。スライムよ」

 

 「あ、そっか。ところで」

 

 「む、なんだ?」

 

 「そのスライムって呼び方はやめてもらえるか?これでもジュラの森大同盟の盟主なんでな!俺の名前はリムル=テンペスト!改めて平和的な話し合いを希望するぜ!」

 

 「うむ」

 

 こうして、物騒な出来事から始まった武装国家ドワルゴンとの会合は始まったのである。

 

 もっとも、その見極める方法も随分物騒である事をリムルはまだ知らない。

 

 「なんでさ…」

 




ドルフさんのファンに怒られないかなこれ。
まあミリムさんの一撃を目の前で見て尚実力を察せないレベルですし、固さだけなら現状でも作中上位(上の下の下ですが)キトラと戦ったらこうなりますよねって。

鋼皮・響転・探査回路っぽい要素は出せたんで、あとは虚閃ですかね。




7月中には次の話を投稿しますので気を長くしてお待ちください。

 

 最後にはなりますが、文章能力がとても低い僕の小説が一時とはいえ日間ランキングに載ったのは一年もの間見放さず待ってて下さった読者の方と、投稿されてるし読んでみようかなと興味を持って下さった読者の皆様方のおかげです。また、原作である転生したらスライムだった件の作者様と要素をお借りしたBLEACHの作者様には感謝してもしきれません。

 これからもみるに堪えない駄文が続いていくとは思いますが、皆様方のコメント・評価を励みにして成長していくつもりではありますのでどうか応援いただけると幸いです。

 本当にありがとうございました。




なんか最終回みたいになってしまった…。
これからも続きますからね!?


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魔物の国

ワクチンの副作用がしんどすぎて寝込んでました。


 魔物達のリーダーリムルと武装国家ドワルゴンの王ガゼル。

 

 両者で行われた決闘をリムルが制した?事で両陣営を交えた宴会が開かれる運びとなった。

 

 「リムルよ、俺と盟約を結ぶつもりはあるか?」

 

 皆が楽しむ宴会の中での唐突なガゼル王からの問いに驚くリムル。魔物の集団でしかない自分たちを国として認め剰え盟約を結ぼうとしてくるのだ、元サラリーマンとしての前世があるリムルにはどうしても歓喜よりも困惑の方が勝ってしまう。

 

 本来であるならば自分達魔物の集団が人間・亜人に受け入れられるには、ましてや国として認められるには数十年の時間を要すると思っていた。それが何の因果か人間・亜人の国の中でも最も大きな影響力を持つであろう国、武装国家ドワルゴンからの同盟の申し入れ。断る理由がある筈もなく受け入れることにしたリムルだったのだが、国の名前や首都の名前を明日まで考えなくてはならなくなった事、国の代表がしれっと自分になっていたことに頭を悩ませることになったのだった。

 

 互いの主が友好的な意を示したことで配下の者達にも伝播し極めて平穏な宴会になってはいたが一方で周りの者達が目を背けたくなるほどに残酷な光景を生み出している者達が居た。

 

 無論キトラである。

 

 「ハッ、随分と情けねぇ限りじゃねえかドワーフさんよォ?」

 

 酒を片手に煽りに煽っていたのである。煽られているのは武装国家ドワルゴン軍部の最高司令官のバーンと天翅騎士団団長ドルフの二人だ。

 

 友好的な宴の場で騒動を起こすのは拙い、ましてや自分達の王ガゼルは彼ら魔物の長リムルを認めているそのリムルの部下が相手なのだ王への不敬にすらなりかねない。まず、目の前のキトラに勝てる気すらしない。戦えと言われれば最善を尽くす努力はするが出来れば二度と戦いたくない。

 

 そんな考えが胸中を占める二人はキトラからの煽りを耐えるのだった。

 

 「まったくだ、軍部の長と最高戦力の長が揃いも揃って情けない限りだ」

 

 「ほっほっほ。大方平和な時間が長すぎて腕が鈍ったんじゃろうて」

 

 本来なら味方である筈の二人、武装国家ドワルゴン暗部の長アンリエッタと宮廷魔導師のジェーンからも苦言を呈されたことで益々立場が失われていくバーンとドルフ。周りの者からは同情と憐みの目を向けられるのだった。

 

 「それでも俺を古くから支え続けてくれた者達だそう虐めてくれるな」

 

 流石に見ていられなくなったガゼル王が諫めに入る。

 

 「ドワーフの王サマか、リムルサマとの話は終わったのかよ」

 

 「ああ、正式に同盟を結ぶのは明日になるがな」

 

 「そうかよ、くっだらねえな」

 

 嘲るように鼻で笑うキトラを訝しむガゼル王。

 

 「くだらない…か、何故だ?国として我が国が認めれば各国は少なくとも話が通じる魔物の集団と考え積極的な敵対行動はとらぬだろう。それは其方にとっても利がある事だと思うが?」

 

 「それがくだらねぇって言ってんだ」

 

 「?」

 

 「国だとかそういう事は雑魚どもがやる事だ、気に食わねえなら潰せばいい。それが出来ねえ連中がいくら集まろうが俺の敵じゃねぇ」

 

 どこまでも傲慢な、しかし、ドワーフ最高戦力天翅騎士団団長ドルフの相手をしてもなおその実力の一端すら見せなかった程だ。もし仮に本気を出せばどれ程の力を持っているのか想像もつかない。ふとガゼル王に一つの疑問が浮かぶ。

 

 「フム。聞いていた通りの傲慢さだな、剣鬼殿が手を焼くのも頷ける。ならば何故其方はリムルに仕えている?」

 

 何故、これほどまでに傲慢な男がリムルに仕えているのか?これまでの問答からこの目の前の男は誰かに仕えるような性格をしているわけでも無いのは明白。むしろ魔物にしては、魔物である事を抜きにしても甘いリムルと率先して敵対していそうな性格であるにも関わらずドルフとキトラの戦闘時、リムルが命令しなければ恐らく戦闘を止めなかったであろうキトラの在り方についてガゼル王は考えを巡らせる。

 

 「リムルサマにはムカつくが借りがあるからだ。それだけだ」

 

 「忠誠心は無いと」

 

 「ハッ!あるワケねえな、言ったろ借りがあるだけdッ」

 

 「キトラ!!不敬にも程があります!!リムル様をもっと崇めなさい!!」

 

 ガゼル王とキトラの問答は酔っぱらったシオンの一撃によって中断される。

 

 「どうゆうつもりだクソムラサキ?上等だァ酔ってるからって殺されねえと思うなよ」

 

 「落ち着け!!キトラ!!グエッ!!」

 

 「待て待て待て!!グハッ!!」

 

 この宴会の場でキトラとシオン二人の喧嘩が起こるのは流石拙すぎるにも程がある。そう考えたリムルとベニマルの行動は迅速だった。

 

 まず酔っ払いであるシオンに話が通じる筈がないので取り敢えず放置。キトラは酒を飲んでいるとはいえそこまで酔っているわけではなさそうなので止めるべきはキトラ。

 

 スライム状態のリムルが飛びついて止めようととしたがあえなくキトラによってキャッチされる。振りかぶるキトラを見たベニマルはこれからキトラが何をしようとしているかを察して止めようとするもリムルを顔面に投げつけられるのだった。

 

 




こんにちは作者のあんでぃーです。
今更ながら主人公キトラの設定で迷っていることがありまして、現状キトラは前世ノイトラっぽい死生観の人がノイトラっぽい体に転生して限りなくノイトラっぽいキャラクターになってます。
主人公の前世をただの一般人にして、思考は一般的な日本人なんだけど言動は体に引っ張られてノイトラみたいになっている。みたいな感じでも面白そうだな~と。

どっちがいいですかね…。

アンケート取ります(他力本願


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力の一端

こういうのは小説の中で明言していけばいいんだろうけど作者に文才がなくて

主人公キトラのざっくりプロフィール

性格
・原作通り(ちょっときれいなノイトラ
・女性だろうが強けりゃ認めるし、弱くても何らかの一芸があれば認める(シオン・クロベエ

体格
・原作通り(魔力で自身を強化しだしたのはリムルと会ってからだからちょっとムキムキ

髪型
・サラサラなロン毛(原作でもだけど何もいじってなさそうなのに何でなん?

服装
・襟にスプーンがついてない(なん・・・だと・・・!?
・ブレソルノイトラ番傘って調べてもろて(他力本願
・眼帯は白(謎の拘り

武器
・8の字のよくわからんやつ(原作で普段から持ってたやつ
・三日月っぽいよくわからんやつ(原作でネリエルがまだ居た頃に持ってたやつ
・大鎌(シンプルにデカい鎌
・なんかオサレな鎌(原作で帰刃した時に持ってたやつ

エクストラスキル
・魔力装甲(なんちゃって鋼皮イエロ
・魔力検知(原作でノイトラが指を地面に付けてテスラ逃げろ!ってやったやつ
・魔力感知(なんちゃって審査回路ペスキス
・魔力吸収(なんちゃって魂吸ゴンスイ、ヤミーしか使ってないけど
・魔力閃光(なんちゃって虚閃セロ
・瞬間移動(なんちゃって響転ソニード、ぶっちゃけ瞬歩と飛廉脚との差が分からん




 ジュラ=テンペスト連邦国と武装国家ドワルゴンで結ばれた盟約は魔法によって保障され世界に公開された。力のある魔物達が長年何人の支配も許さなかった無法の地に国を創ったのである、それも後ろ盾に大国を据えて。この事実は盟約を流布された周辺各国首脳陣の頭を大いに悩ませた。長年の頭痛の種だったヴェルドラが消えたかと思えば次は魔物の国が出来たと、それを注視する者達、笑い飛ばす者達、敵視する者達。皆反応は様々であった。

 

 テンペストの首都リムルには毎日多くの客で賑わいを見せた。自らの種族の庇護を願う者、交易を行い利益を得ようという者、町作りの技術を見学に来た者、国の主への挨拶に来た者、訪れた理由は千差万別であった。

 

 リムルや街を害そうという愚か者も中には居たが、シオンやソウエイ、キトラによって返り討ちに遇った。

 

「…よォ。オメーらが一番乗りか?」

「なんだコイツ!?」

「関係ねえ!!やっちまえ!!」

 

 今もまた街を襲おうとしたゴブリンの集団の前に突如として現れるキトラ。自身が知覚できぬ間に現れたキトラへ動揺した者も居たが所詮は一人集団でかかれば勝てるだろう、そんなゴブリンたちの浅慮をキトラは易々と踏み潰す。

 

「なんだよ、それが全力かァ?」

「バッ…バカな!?」

「噓だろ!?」

 

 己が攻撃を無造作に受けて尚飄々としているキトラに初めてゴブリンたちは恐怖した。そして、その恐怖心に体が支配され硬直した時死神の鎌は振り下ろされた。

 

「チッ…見ろ、やっぱり雑魚じゃねぇか」

 

 死に体のゴブリンたちを見下ろしながら誰に伝えるでもなくキトラは一人そう呟いた。

 

「止めを刺すのではないかと思ったが、案外冷静なようだな」

「アオネクラか」

「ソウエイだ。だがやり過ぎだな。殺してしまえばリムル様の言いつけを破ることになるぞ」

「だからどうした?」

「なに?」

「言いつけを破ればリムルサマが出てくんのか?そいつは好都合ってヤツだぜ!」

「キトラ、貴様ッ」

「なんだよアオネクラァ!」

 

 ここで驚愕するのはソウエイの後ろについていたソーカだ。いつものようなソウエイとキトラのじゃれ合い?だと思っていたのだがキトラの様子がいつもよりも荒々しい。

 

「こんなゴミ共相手じゃ、ましてや殺すなっつークソみてェな命令までついてんだストレスでしかねえよ!」

「リムル様の命令を何と言った?」

「クソだと言ったんだアオネクラァ」

「殺すッ」

 

 ソウエイは自らの繰り出せる攻撃の中でも最速、そして、キトラの魔力装甲を破り得るであろう一撃を繰り出した。

 

 だがしかし。

 

「馬鹿な!?」「そんな!?」

 

 易々とソウエイの剣を手で止めるキトラ。わざわざ手で受け止めたこと、それはソウエイの最速の一撃を見切ったことに他ならなかった。そんな事実にソウエイとソーカは驚愕する。特にソウエイのソレは顕著だった。スピードだけならば誰よりも、キトラよりも速い自負がソウエイにはあった。

 

「あの名付けからどれだけ経ったと思ってやがる?今のオレの実力がテメエの知っているオレと同じだと思うなよアオネクラ!!教えてやるよ、テメエのオレへの見通しが今じゃあ何の意味も持たねえってことをなァ!」

 

「…ッ!!!」

 

 張り詰める殺気に可視化出来る程外に漏れだしたオーラ。確実に普段のキトラでは無い。

 

 だが自分にキトラを止める手立ては持ち合わせていない。一瞬のうちにそう判断したソーカは唯一キトラを止めることが出来るであろう人物の下へと駆け出した。

 

「…それで?どういう事だキトラ」

「チッ…あの腰巾着がテメエに付いて来てやがった事は想定外だが、まあいい。あと数分もすりゃあここにとんでもねぇ魔力のバケモンが来やがる」

「なんだと?」

 

 先程までの殺伐とした空気は霧散し話し始めたキトラとソウエイ。ソーカがこの光景を見れば先程以上に混乱することは間違いない。

 

「ソイツはオレがやる。テメエはリムルサマとヒメサマ連れてさっさとこの街を離れろ」

「一人で戦うつもりか?」

「問題ねェ」

 

 ソウエイにとってキトラの言が噓である事をはなから想定していない。キトラがバケモノと呼ぶほどの者がここに向かっている事は事実なのだろう。だが、それほどの者をキトラ一人で相手取る事を看過できる程ソウエイは冷徹では無い。しかし、ソーカが先程の茶番を見てリムルをもしくはシュナを連れてきてしまえば状況は更に悪化する。

 

 数秒悩んだ後にソウエイは街へ視線を向けた。

 

「死ぬなよ。お前のような奴でも死ねば姫様は悲しむ」

「さっさと行けアオネクラ」

「ソウエイだ。それとあの一撃は本気では無いからな」

「知るか」

 

 一瞬で姿を消すソウエイを見送ったキトラは大鎌を振り周辺一帯の樹木を切り倒す。

 

 蟷螂は己が持つ全魔力の数十倍の魔力を持つであろう者を待ちわびていた。

 

 




キトラは一人で戦いたかったのでもし戦闘になった際真っ先に向かってくるであろうソウエイを遠ざけようとした。
来たのがソウエイ一人なら普通に事情を話せば遠ざけれる。しかし、ソーカまでついてきていたので無駄なお芝居をしてまずソーカから離れるように促した。
ソーカが居た状態で事情を話せばリムルへの報告はソーカが行いソウエイ自身は残るかもしれなかったから。

キトラの挑発は本音だったし、殺気も出していたが武器を一切構えていないしこれは何かあるなとソウエイは秒で察した。但し本気でムカついた。



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魔王と喧嘩

試験週間が迫って来てる…
単位とれるかな…


「来やがったか…」

 

 キトラがそう呟いた瞬間、途轍もない程の魔力を纏った高速の物体が地面にぶつかった。

 

「初めまして。ワタシは只一人の竜魔人(ドラゴノイド)にして、破壊の暴君(デストロイ)の二つ名を持つ。魔王ミリム・ナーヴァだぞ」

「……ハァ?」

 

 魔力の塊の正体は人間・亜人・魔人様々な、凡そ知性を持つ数多の種族の生物から最古の魔王として恐れられている魔王ミリムであった。

 一国を難無く滅ぼしたと伝えられる彼女の力は相対しただけで、いや今も尚ミリムから放たれる魔力の奔流を察知しただけでも理解できるだろうし実際にそのレベルであろう敵であると判断したキトラはソウエイにリムルを遠ざけよう伝えた。しかし、目の前に降り立ったのは確かに強者ではある。ではあるのだが見た目はただの少女。この事実がキトラを大いに困惑させた。

 

「むッ、このワタシがせっかく来てやったのになんだその反応は。お前が呼んだから此処に来てやったのだぞ?」

 

 その言い回しから、ミリムにも自身の魔力感知(なんちゃって審査回路)のようなスキルを持っているであろうことを推測する。自身を軽く超える魔力に不明瞭なスキル、実力はあるのだろうがミリムの立ち振る舞いがそれを打ち消しているように思えたキトラ。

 

「魔王のワリには随分とお優しいじゃねえか?確かに魔力はえげつねえが、中身はガキかよ」

…なんだと?それはまさかワタシの事か?

「ハッ!なんだよ、ちゃんと魔王じゃねえか!!」

 

 ガキという発言に怒ったミリムの怒気がキトラへ向けられる。先程までの元気そうな少女のから一変して魔王である事を納得させる程のオーラがキトラを包み込む。キトラは震えた。それは恐怖からくるモノではない、その相貌から見て取れる程の歓喜からだ。自分を完膚なきまでに負かすことが出来るであろう存在、ミリムと戦える。目の前のミリムの実力があれば自分の心奥底にある()()()()()()()()()という願望を叶え得るだろう。これほどの歓喜は前世で実際に死ねた時ぐらいにしかなかっただろう。

 

 相手が相手なら真っ二つに両断できるであろうキトラの大鎌がミリムに振り下ろされる。だが、ミリムはそれを難無く掴んだ。しかも片手でだ。キトラの本気の一撃を余裕で見切り、ましてや片手で掴むなどと。

 

 キトラは止められたことにイラつきはしたが驚きはなかった。誰しも自分の本気の攻撃を容易く受け止められれば狼狽するだろう事をキトラは冷静に受け止めて次に来るであろうミリムの攻撃を防ぐために自身のエクストラスキル魔力装甲(なんちゃって鋼皮)へ回す魔力を上昇させた。嘗て魔王ゲルドと戦った際の一点強化型魔力装甲ではそこ以外へ攻撃を受けた際ダメージをそのままくらってしまう為、今回はそうではなく何処に攻撃を受けても軽傷ですむようにと。 

 

「ワタシの一撃を受け止めるとは結構やるな?お前!」

 

 常人が受けたなら数百メートルは吹っ飛ぶであろう自身の一撃を多少のけぞる程度で済ませたキトラにミリムは純粋に驚いた。魔王である自分とその他の者には大きな開きがある。だからこそ自分が攻撃すればそれだけで相手は死ぬか気を失う、それほどの力がミリムにはある。実際()()戦った者の中で避けようとするばかりで受け止めようとする者は居なかったし本当に受け止めると想像すらしていなかった。

 

「冗談はそのツラだけにしろよクソガキ。この程度じゃねぇだろ、魔王ってのはよォ!!」

 

 ミリムの腕を掴み魔力閃光(なんちゃって虚閃)を放つキトラ。黄色の閃光がミリム、辺り一帯を包み込み吹き飛ばした。

 

「ワハハ!すっごいのだ!!ゲルミュッドの奴を圧倒していたからただモノでは無いと思っていたが。豚頭帝(オークロード)を倒したのはお前だな!!」

 

 多少髪の毛が乱れただけで無傷のミリム。煙が晴れたかと思えばキトラを指差しどこぞの探偵のように推理をして見せる。

 

「あの豚野郎をやったのはオレじゃねえよ。リムルサマだ」

「リムル…サマ?お前が一番ではないのか!?」

「その様子じゃ、観てたのはゲル………何とかが死ぬまでって事か。つまり、あの雑魚の裏に居たのはテメエってワケか」

「むッ!ワタシはそんなまどろっこしいことはしないのだ!!そもそもはクレイマンが……」

 

 つまりはクレイマンという人物がゲルミュッド延いては豚頭帝を動かし大鬼族(オーガ)の里を滅ぼした。ミリムの発言(うっかり)からそう判断したキトラは会ったこともないクレイマンへの殺意を募らせるのだった。

 

「チッ…止めだ。あのクソアオネクラ、おつかいもまともにこなせねぇのか」

「???」

 

 突如として武器を下したキトラに困惑するミリム。どちらも目立ったダメージを負っているわけでも無いのに何故なのか。

 

「キトラ無事か!!」

「リムル様!!お下がりください!!」「そうですリムル様!!」

 

 空からスライム形態になってキトラの頭に着陸するリムル。リムルを追ってベニマル・シオン・ソウエイの三人も合流した。

 

「よォ随分なご登場じゃねぇかリムルサマァ?」

「いや!わざとじゃないからね!?急いでたから!!ぐえッ」

 

 頭から引きはがされ振りまわれるリムル。そんなリムルを見定めるような目で見つめるミリム。リムルという名前からしてキトラの主なのだろうが見た目はただのスライムだ、ただのスライムがキトラ達の主となり豚頭帝を倒すことが出来るのか疑問に思ったミリムは自身のユニークスキル竜眼(ミリムアイ)を使った。

 

「リムルサマに客だぜ」

「うむ!ワタシは魔王ミリムなのだ!今日は挨拶に来たのだ!」

 

 魔王って!?何で魔王が自分を?!てか自分のお客となんで戦ってんの?挨拶って何さ!宣戦布告?最初に来るのは四天王(ヤツは四天王の中でも最弱)とかじゃないの!?リムルの頭の中を多くの疑問と困惑が埋め尽くした。

 

「ええッ……」

 

 状況を未だに整理しきれないリムルは解説をキトラに視線で求めるがガン無視をされるのだった。

 

 ここからまたミリムとひと悶着あるのだがリムルはまだ知る由もなかった。




次の話を投稿するのと今までの話を改稿するのどっちを優先すべきでしょうか。
アンケート取ります(他力本願


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