バカとライブメタルと召喚獣 (閻魔刀)
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プロローグ+設定
第1話


100%趣味と妄想で描かれた小説ですが、みなさんよろしくお願いします。


究極のライブメタルウロボロス。 その中では今、世界をかけた決戦が行われていた。

 

 

『エール、ここはもうキケンだ! グレイを助けに行かないと!』

 

「わかっているけど、さすがに4対1っていうのはちょっとまずかったかな。」

 

『先に行け、ここはオレが食い止める』

 

ダブルロックオンを強制解除し、分離するモデルZ。

 

「何言っているの。 無茶よ、モデルZ!」

 

『・・・心配するな、死ぬつもりはない。』

 

『・・・行こう、エール!』

 

「その言葉・・・信じているからね!」

 

信頼する友の言葉を信じ、モデルXと共にグレイの元へと猛ダッシュして向かうエール。 そして、その姿を見るのは4人のロックマン達であった。

 

「・・・・・美しき覚悟・・・ 友のために命を捨てる気か・・・」

 

命がけの覚悟を見て賞賛を送るのは、あのプライド高き賢者。 風のロックマンのヘリオス。

 

『死ぬつもりはないと言ったはずだ それに・・・』

 

もし、ライブメタルと言うものに表情と言うものがあったのなら微笑を浮かべていたであろう・・・ その言葉と共にいきなりモデルZが閃光を放ったのだ。

その閃光と同時にロックマン達の力が弱まり、ヘリオスに至っては飛ぶ力もないのか、上から見下すようにしていたときとはうってかわって地に墜ちてしまっている。

 

「くっ・・・! なんだ!? 体が重い・・・ どうした・・・?モデルL!」

急激に体が重くなったことに困惑しているのは、海の守り手と呼ばれた一族の末裔で近年の環境破壊に嘆く、氷のロックマンのテティス。

 

「ライブメタルどもめ、まだあたしたちに抵抗する力を持っているのか・・・!」

 

ライブメタルたちの抵抗に対し怒るこの女性は、かつては大国の軍人で若くして1部隊の副隊長となった経歴を持つ、炎のロックマンのアトラス。

 

「リカイフノウ! リカイフノウ!?」

テティスと同様に困惑しているこの男性は元は違法ハンターと呼ばれている集団のメンバーであったが、仲間に裏切られ、その際に逆に返り討ちにして、人間不信に陥った、影のロックマンのシャルナク。

 

4人はそれぞれの目的のために立ち上がろうとする・・・

 

『・・・エール! グレイの事は任せたぞ・・・』

 

そうはさせまいと、最後の力を振り絞り・・・強烈な光を放ったモデルZ・・・

この時にエールはグレイを連れて、ウロボロスを脱出。 ウロボロスはそのまま爆発とともに崩壊し、海の底に沈んでいった。

 

 

 

 

そして・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時に4人のロックマンとモデルZはこの世界から姿を消した・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20XX年、文月学園の通学路にて必死な形相で学園へと向かう生徒がいた。

 

「遅刻だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

彼の名は吉井明久。 学園一のバカとして、文月学園開園史上初の「観察処分者」となる人物でもある。彼は入学式がなのにもかかわらず、寝坊し、遅刻していたのであった。しかも女子用のセーラー服を女子と見間違えるぐらいに完璧に着こなしたうえで・・・

 

 

「え? ちょっと何! この光は!?」

 

曲がり角でいきなり前が光り、それと同時に4人の男女と5色の金属のようなものが飛び出してきた。

 

「やばっ!」

 

明久は横に回避し、光から出てきた4人は奇妙な金属と共に地面に転がり落ちた。 

 

 

「何なんだ、いったい・・・! ちょっと4人とも大丈夫!」

 

いきなりの事に驚く明久。 しかし4人を見て驚愕した。 それもそのはず、4人ともボロボロなのである。少なくとも、この現代日本でこれほどの大怪我をするなんて、ヤクザに絡まれてリンチを受けるか交通事故にでも合わない限りこんな大怪我なんてするはずがないほどの重症だったからである。

 

「くっ! 私たちのことなど放っておけ、弱者としての汚名を着せられたまま生きていくぐらいなら死んだ方が・・・」

 

 

意識はあったのだろうか? 一人の少女が苦しそうにしながらも明久の事を追い返そうとしたが・・・

 

「何言っているの! このまま死ぬかもしれない人たちを放っておくなんてできるわけないだろうが! 今救急車呼んでくるからそれまでここで待ってて!」

 

少女は「おい!」と叫びたかったが、肋骨の方も折れているのか、これ以上声を出すこともできず、そのまま4人とも救急車に乗せられ、そのまま病院へと運ばれていた。

 

結局、明久は入学式には遅刻し、その際にのちに親友として試召戦争でFクラスの仲間として共に戦う事となる坂本雄二と入学式会場までに鬼ごっことなり、史上最高の変態バカとして大恥をさらすこととなった上にその騒ぎのせいで坂本と共にその場にいた教師に顔を鷲掴みにされ、入学式を気絶したまま過ごすこととなってしまった。

 

 

入学式が終わり、放課後となった明久はいきなり、病院と警察からいきなり電話がかかり、救急車で運ばれた4人について話を聞きたいとのことで、明久は覆面パトカーと思われる、黒い車に乗せられて、事情聴取をさせられ、そのまま4人の入院しているという病院へと向かっていった。

 

 

一方病院では・・・

 

「くっ! 信じがたき事実! イレギュラー戦争以前の時代へと飛ばされそこで手当てを受けることになるなど・・・」

 

「僕も起きた時にびっくりしたよ。 何せ起きたとたんに見たものが白い服を着こなすお姉さんだもんねぇ。 なんでか僕を見るたびに顔を赤くするんだけど、仕事に慣れていなくて緊張しているとかかなぁ?」

 

「? リカイフノウ? リカイフノウ!?」

 

『ちょっと! 二人とも乙女心に気付きなさいよ! 本当に鈍すぎよ・・・』

 

看護婦の乙女心に気付かない鈍感な二人に呆れるモデルL

 

「おいこら! そこのバカ二人、話を戻すぞ!」

 

4人は同部屋の病院のベッドで入院させられていた。 そんな中救急車を呼んだ明久の事について話を続けたが、3人と5個のライブメタルたちは驚きを隠せなかった。

何故モデルZも驚いているのかと言うと本人も狙ってやったことではなかったからである。彼が本当に狙ったのは自らのライブメタルとしての機能を停止させる代わりにほかのライブメタルを封印しようとしただけであり、まさか異世界に飛び、しかもロックマン達も巻き添えにして、挙句の果てに現地の少年に保護されてロックマン達と共に病院へと連行されるなんて思ってもいなかったからである。

 

「あのー・・・? みなさん大丈夫ですか?」

 

そんな話をした後にやってきたのはロックマン達を119番通報をし、お見舞いに来た明久であった。

 

「愚かなる質問・・・ この程度のけがで大騒ぎするとはよほどの平和ボケをしている奴であると見える・・・」

 

『入院1か月と言われているのによくもそんなことが言えるものだ・・・』

 

「モデルH! 貴様!」

 

「シバラクココデニュウインスルコトニナッタガモンダイナイ イノチニベツジョウハナイ・・・」

 

「ところで、君はいったい誰なんだい? もしかして、さっきアトラスが話していた男の子かい?」

 

テティスの言葉をきっかけに、ここでお互い自己紹介することなった。そして、お互いの世界について情報を交換することとなったのだが、その結論だけ言って、ロックマン達の世界へ戻るのは現状では不可能という事に達したのであった。

・・・のだが

 

「・・・という訳で私たちはロックマンの王になるべくそこで・・・ってお前大丈夫か!!」

 

明久は話についていけずに、頭から煙を吹きだしていた。 ロックマンsは思った『こいつ絶対バカだ!』と。

しかし、見ず知らずの他人の為に助けようとしてくれるところを見ると悪い奴ではないのかもしれない。

 

「みんな、もしよかったらだけど、退院したら僕の家に来ない? 」

 

「「「「!?」」」」

 

4人はいきなりの発言に驚いていた。

 

『イマコイツナンテイッタ?』 

 

『拙者は彼が私たちを家に招待すると聞こえたのだが・・・』

 

 

「え? なに? 今頭の中に何か響いて・・・」

 

『『!?』』

 

ライブメタル達も正直驚いていた。 彼らの声が聞こえるという事はすなわちロックマンになりうる資格があるという事でもあったのだから。 しかしこの世界にいる人たちではそれはありえないことでもあった。 なぜなら、すべてのロックマン達には共通する法則があり、それはレギオンズと呼ばれる連合政府の三賢人の一人「アルバート」のDNA情報を持っていることが条件の一つだったのだから。

しかし、そんなことも知らない明久はいきなり響いた謎の言葉に困惑しているばかり。 4人はライブメタルについて説明することにした。できる限り簡単で理解しやすいように・・・

 

 

「つまり、このライブメタルっていうのは皆の世界の英雄の力が使える金属という事でいいのかな?」

 

 

「まあ、ただ力が使えるっていうだけじゃなくて、その英雄をモデルにした人格も封印されているんだけどね。 ボク達は気が合わなくて、押さえつけていたんだけどね・・・」

 

「恥ずかしい話だけどね・・・」と言いながら、テティスは頬をを掻いて苦笑いする。

 

「ツカイカタハワレワレガタイインシテカラオシエル ソレマデハマッテイロ」

 

『いや、オレがしばらく明久について行く。 そこで、ロックオンの仕方を教えておくから、詳しいことはその時に説明しておく。 退院した時に明久と迎えに行くから、その後で明久の家で今後の話をしよう。』

 

「問題多きせんた・・・」

 

「モデルZって言うんだ? よろしく、モデルZ! 悪いけど、明日も学校あるから、明日にまた来るから!」

 

 

 

 

なぜかヘリオスの発言が無視されたまま、明久は学校もあるからとさっさと帰ってしまった。 そして明久のお見舞いは毎日続き、医者に無理を言って(一応回復速度が速く、十分に治っていたからと言うのもあるのだが)1週間後に退院したみんなは事前に聞いておいた明久の家に向かう事となった。

 




しょっぱなから悩んでいるのですが、明久をロックマンにすることは確定で行くのですが、ロックオンは単一とダブルロックオンとどっちが面白いと思いますか?
アンケートを活動報告に設置するのでもしよろしければアンケートに書いてほしいです。
よろしくお願いします。


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設定紹介

一応、この4人を学園に入学させようと思っているのでその辺りの設定を紹介しておきたいと思います。


H26.8/31
木下優子の設定追加

H27.2/14
姫路瑞希・島田美波・木下秀吉を追加
ヘリオスの設定を更新
エール・ヴァン・グレイ・アッシュを追加


吉井明久

 

基本的に原作準拠だが、相違点があるとしたら

1・喧嘩がアトラスにスパルタ(言葉通りの意味で)式で鍛えられたので、かなり強い。 (軍隊格闘技ベースで鉄人が相手でも2分は対抗できるレベル)

2・ゲームは好きではあるのは相変わらずだが、4人も家で居候してしまっているため、バイトと多少増額された仕送りを合わせても金銭的に厳しく(きちんと3食食べられる範疇で)ゲームが家には無い。

3・ロックマン関連でたまに観察処分の仕事をサボる事がある。

 

ライブメタル『モデルZ』

 

 

・ヘリオス

 

文月学園に入学してからは「賢者」と呼ばれ、知恵を使った勝負においてはほぼ全てにおいてトップとなっている。

その実力は試召戦争において基本ルールでの参加を禁じられてしまうほど。

なのだが…… 明久の影響を2番目に受けており、若干壊れ気味である。

家主の明久を差し置いて、家計に関してだけは誰も口出しできず、無駄遣いをしよう物なら大変な事になるらしい。

彼が家計を管理している理由としてはいろんな意味で彼が一番きちんと金の管理ができるから。

 

例:明久が無駄遣い→「姉に報告して婿にいけなくなるキスをしてもらう」か「隠し持っていたエログッズ及び秀吉の写真を売って金に変えられる」らしい。

 

 

ライブメタル『モデルH』

 

 

 

総合点数

8700〜10000点

 

得意科目

 

古典以外全部(教師によってリミッターを設けられて1300点 無しだと3000を超えるとも・・・)

自らを賢者と語るだけあり、1年で日本語を検定1級レベルで覚えて、文月学園の図書館蔵書のほぼ全てを読破したが、古典は島田同様にしっかりと理解は出来てはおらず、他の教科を覚えることに時間を使ってしまった事もあり完全に克服することは出来なかった。

 

苦手科目

 

古典(70点)

現在、目下勉強中

 

 

 

・アトラス

 

明久の影響を受けて、多少丸くなり髪が伸びるなど女性らしさが出て来たが、「弱者が淘汰され強者のみが進化し生きのびる」などと言った根底にある思想だけは変わってない。(彼女の中にある強者の定義も変わって来ているが・・・)

格闘技が未熟だった頃の明久を黄金の卵と例えて守ろうとした際にFFF団を半殺しの追加でボコボコにして心を叩き折るという事件を起こし、3人目の観察処分者にされてしまうが、体がなまるよりいいと言ってそれほど気にしてはいない。

 

ライブメタル『モデルF』

 

 

得意科目

 

保健体育 (ムッツリーニと同レベル)

数学・理化学系(Aクラス下位レベル)

 

 

苦手科目

社会化系全部(90点前後)

 

その他は全部D〜Cクラス上位レベル

 

 

・テティス

 

 

良くも悪くも明久の影響を1番受けている人物で明久に次ぐ2人目の観察処分者である。

観察処分者になった理由は入学後に明久が観察処分者になった際の外部協力者であった事が発覚したからで世間体を考えるとこの不祥事を隠ぺいする為に観察処分の烙印を押し付ける代わりに入学が許可された為。

明久が観察処分者の仕事ができない時は大抵彼の担当となる。

ショタコンの女子からストーキングされるレベルでモテており、時々誘拐されそうになる。

 

ライブメタル『モデルL』

 

 

 

得意科目

語学関連、日本語・英語・ドイツ語・フランス語・韓国・中国・ロシア語の7ヶ国語を話せるレベル。

生物(500点前後)・保健体育(360前後)

 

苦手科目

 

他は平均点程度で、特に苦手と言った科目はない(130~170点の間で増減している)

 

 

・シャルナク

 

明久の影響で人間不信だけはなくなったが、それ以外の変化はない。

ガチギレすると暗殺が得意ということもあり危険度だけならアトラスよりもはるかに危険になってしまった。(FFF団が恐怖のあまり手が出せなくなるほどで、学園内において説得で止められるのは明久・鉄人・秀吉ぐらい)

モデルPと共に時代劇や歌舞伎、落語などにハマってしまい、異常な速度で古典の成績だけが極端に上がってしまった。

秀吉と一緒に演劇部に入り、演技の際、特に悪役を担当すると、妙に鬼気迫る演技をする。

なぜか秀吉にだけは甘いところがある。

 

ライブメタル『モデルP』

 

 

得意科目

 

古典(この科目だけなら主席以上)

 

 

苦手科目

 

それ以外全部(ムッツリーニの古典バージョンと思ってもらってもいい。)

 

 

・姫路瑞希

 

グレイ・アッシュからは姉のように慕われ、ヴァンとエールからは妹のように可愛がられている。

料理に関してはヴァン・アトラス・テティス・明久・坂本の犠牲とシャルナクとヘリオスによる説教によって禁止令が出された。

 明久に惚れているが、今はこの時代に慣れていないヴァン達の面倒を見ているだけで精一杯な事もあり、あまりアプローチは出来ていない。

 

得意科目:ほぼ全ての科目が得意

 

苦手科目:家庭科(壊滅的)・保健体育

 

 

・島田美波

 

ドイツにいた頃、プロメテのせいでトラウマ持ちとなってしまっており、プロメテを見ると当時のトラウマがフラッシュバックするようになってしまっている。

それ以外の性格は原作と全く変わらない。

明久への暴力も好意の裏返しだが、強くなってしまった明久には簡単に対処されてしまい、全く気付かれていない。

と言うか、本人も自覚していない。

日本に来た時にテティスと何かあった模様で、弟のようにテティスを可愛がっている。

 

得意科目:数学・若干だが英語

 

苦手科目:古典

 

 

 

・木下秀吉

 

シャルナクとまともに話ができる数少ない人物。

姉から何かがあると大抵シャルナクの後ろに隠れる。

姉からの理不尽なお仕置きだけはやめてほしいと思っているが、それ以外に関しては好意的に思っており、姉妹……「姉弟」仲はむしろ良い。

 

得意科目:古典

 

苦手科目:英語

 

 

 

・木下優子

 

とある理由からモデルAを保護したことをきっかけにロックマンとなった少女。

ロックマンとなった理由は、当初は『モデルAを無事にグレイに送り届ける為』である。

ロックマンとして適合できた理由は明久同様に不明であるが、モデルAの仕様がグレイとはかなり異なっている。

装備はグレイと同じく2丁拳銃だが、彼の物よりも非常に取り回しが軽く、回転式機関銃砲(ガトリングガン)並みの乱射速度で攻撃が可能となっているが、その文威力が下がっており、雑魚イレギュラーなら十分な威力なのだが、フォルスロイドクラスが相手では火力不足である感が否めない。

 

変身能力も一応あるにはあるのだが、「ある程度近しいサイズ」でなければ完全に変身が出来ない。

他に関しては能力の一部しかコピーできない上に、その効果も数分で切れてしまうという短所がある。

 

秀吉への折檻なども相変わらずではあるのだが、なんだかんだで仲良し姉妹……『姉弟』である。

日常生活でモデルAも苦労しており、下着姿でBL本を読んだまま眠りこけてしまった際に毛布を掛けてあげるのも彼?の仕事と化し始めている。

 

 

ライブメタル『モデルA』

 

得意科目

 

ほぼすべての科目(学年第4位)

 

苦手科目

 

家庭科(とは言っても他の教科に比べて50点程低いくらいで苦手と言うほどではない)

 

 

 

 

学園外組

 

 

・エール

 

青のロックマン『モデルX』の適合者

ヘリオス達の急な変わりように関してはそれなりに受け止めており、未来世界に帰った後でライブメタルはきちんと返してもらえるなら、しばらくはあずけてもいいと思っている。

姫路家に置いて頼れる姉御肌となっており、唯一まともな料理を作れる(それでも明久には及ばないが……)

 

ライブメタル 『モデルX』

 

・ヴァン

 

エールの元同僚で「ジルヴェ・エクスプレス」の主任

温厚で非常に優しい性格になっている。

その為か、部下からの信頼も厚い。

エールがロックマンの為、ライブメタルは持っていないが、ロックマン足り得る資格だけは持っている。

 

・グレイ

 

変身のロックマンにしてロックマン同士の戦いを仕組んだマスターアルバートのバックアップ『モデルA』の本来の適合者……

なのだが、しばらくの間は優子の元にモデルAが護衛を兼ねて出かけているためにロックマンにはなれないでいる。

住む部屋を用意し、面倒を見てくれている姫路にかなりなついており、姫路が明久と仲良くしていると嫉妬する。

 

 

 

 

 

 

 

・アッシュ

正規のトレジャーハンターチームの若きエース

マスターアルバートの直接の血縁であり、最後の子孫でもある為にヴァンと同様ロックマンとしての資格だけは持っているが、グレイがロックマンとして適合していることもあり、ライブメタルは持っていない。

 

 

意外と歌も上手いのだが、曲のセンスは最悪で、一部の人間を除いて「悪魔の叫び声」を聞かされたが如く発狂し出す。

一番好きなのはヘビメタ系らしい。

 

 




設定の書き込みミスがあった為訂正しておきました。

なお、今後登場するキャラクターを出した際、追加記入したいと思います。


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召喚獣 設定

召喚獣の設定です。

・10月12日 
吉井明久を更新
清水美春・佐藤美穂を追加

・12月29日
平賀源氏を追加


H27・2月3日
坂本雄二・木下秀吉・島田美波・霧島翔子・木下優子を追加


H27・2月24日
姫路瑞樹を追加
オリジナルアイテムの設定を追記

H27・4月5日
ヴァン・アッシュを追加

H27・5月27日
プロメテ・パンドラを追加


二年生

 

・吉井 明久

 

通常時は原作に近い設定だが、モデルZに封印されたゼロの歴代の剣技の大半が使用可能に。

(重破斬・葉断突・テンレツジンなど…… 落鳳破などエネルギー攻撃系は使えない)

 

腕輪の設定追加

 

腕輪『高速剣』

一振りに付き3点消費する事で(命中可否に関わらず)、目にも映らない速さで攻撃することが出来る。

その分攻撃力も少しだけ上がるが、元の消費が大したこと無い為、極端に力強いわけでもない。

しかし、その分反応速度は明久の操作技術も相まって、教師すら凌ぐほどの物となっており、明久がこの腕輪を持っている状態なら、誰も先手を取る事が出来ない。

 

 

・清水 美春

 

容姿・装備共に原作と同じ仕様。

グラディウスとロリカ・セグメンタタを装備。

 

腕輪 『腐食』

 

彼女の攻撃を受けた召喚獣の部位が腐らせていく能力。 腕輪発動中は常に何かを腐らせている為、フィールドですら腐っていってしまう。 その為、長期戦になると、その腐り墜ちたフィールドの悪影響で周りの召喚獣の体調を最悪なものにさせてしまうという事もある程。

ただし、腕輪の付いている方の腕を切り落としてしまう事で、回復試験を受けるまでの間、再使用が不可能になってしまうという致命的な弱点がある。

 

 

・ヘリオス

 

ZXAで着ていた服をを着用している。

武器は片刃の長刀(ヘリオスがZXAで持ち歩いていた物)、1撃ごとの攻撃力は点数の割に低いがとても速く、また元の点数がおかしい為に同点数でもない限りその攻撃力が異常に思えてしまう。

 

召喚獣の腕輪の特性は『風』

風を操り竜巻やかまいたちを起こすことができる。 その気になればモデルHの技を使う事もできる。

 

 

・アトラス

 

赤とオレンジを中心とした重装甲のアーマーを装備している。

武器は手甲で、力はFクラス最高。 その攻撃力は地面を6割程度の力で殴りつけるとひびの入った床なら崩壊。 最大出力で運動場に直径13メートル、深さ1メートルのクレーターができたらしい。

 

腕輪の特性は『爆発』

点数の消費量にもよるが、10点以下で炎球、30点以上の消費で爆弾を手甲から発射することができる。また、地面に殴りつけると対召喚獣地雷を設置したり、設置と同時に爆発させることで爆炎を地面から敵にぶつけるといった使い方も可能。

 

 

 

・テティス

 

深い青色を中心としたダイビングスーツを着用。 その上に軽装の鎧を着こんでいる。

武器はハルバートでロックマンとしての経験から、自由自在に動き回りながら変幻自在の攻撃を繰り出すことが可能。

 

腕輪の特性は『海』

召喚獣使用の腕輪にしては珍しく、180点消費で召喚フィールドを疑似的な海中に変える事ができる。(人数に比例して足場が増減する)

召喚獣の動きに水圧を掛けることで動きを阻害する特性もある。が、泳ぎがそれなりに自信がある人物の召喚獣には効き目が薄いという欠点がある。(水泳部員上位クラス相当が目安)

 

 

・シャルナク

 

黒と紫の忍者服を装備。 顔はマフラーでおおわれていてよく見えない。

 

武器は苦無と手裏剣。 大小さまざまな苦無と手裏剣を投げて戦う。  特に大型の十字手裏剣は非常に強力で攻撃型腕輪の次に威力が高く、ブーメランのように戻ってくる。

 

腕輪の特性は『闇』

フィールド全体を闇に包み込み、その闇にまぎれて、さまざまな手を駆使して攻撃してくる。

ただし、攻撃力などが上がるわけではない上に効果は約1秒につき5点と点数の燃費が悪い。

また、この闇は誰にも認識できなくさせるというだけであり、防御性がある訳でもないので、偶然でも攻撃が当たってしまった場合、強制解除となってしまう。

 

 

・姫路瑞希

装備は原作に近い仕様で、西洋鎧に身長の倍はある大剣を装備。 トレジャーハンティング大会の景品の一つ『召喚獣用荷電粒子コンバーター』を背中に装備することでさらに召喚獣が強化された。

 

腕輪の特性は『熱線』又は『荷電粒子砲』

熱線はシンプルな超高熱を帯びた光線で敵を焼き払う事が出来る。

荷電粒子コンバーターを装備してからは、更に発動時間が長くなってしまったが、より強力な荷電粒子を熱線にまとわせることで、貫いた敵を完全に消滅させることが出来る。 しかも収束と拡散の二種類に分けて使用することが可能で、弱い召喚獣なら束になっても一瞬で全滅させることが可能。

特にヘリオスと組んで空から荷電粒子砲を乱射するというコンボが非常に凶悪である。

 

 

 

・坂本 雄二

 

装備は特攻服とメリケンサック。

 

 

腕輪『肉体強化』

 

特性『段階的に肉体を強化することが出来る能力。

最終的には同点数者と比べて15倍以上の戦闘力を発揮するが、それまでには7段目まで強化しなければならず、そこまで強化する為にはそれなりの時間も必要となる。

また、フィールドが変わるとこれまでに上げたギアが強制的に3段も下がってしまうという欠点をも抱えてしまっている。』

 

ギア1・3割増し

ギア2・ギア1から7割増し

ギア3・ギア1の2倍

ギア4・ギア1の3.5倍

ギア5・ギア1の6倍

ギア6・ギア1の9倍

ギア7・ギア1の15倍、全力の拳を放った後は残り点数が1点になるという欠点がある。

 

 

 

 

・木下 秀吉

 

装備は上は白、下は紺の道着、武器は薙刀。

 

 

腕輪『設定改変』

 

特性『対象となる召還獣の設定を強制的に書き換えることができる能力。

他者の召還獣の個性を属性や過程を無視して書き換えてしまう。

学園長曰く『召還獣の腕輪の中で最も忌まわしい能力』

秀吉は『正喰者(リアルイーター)と名付けようとしている』』

 

由来:中の人ネタです

   それと、能力の設定を変更したい時に使えたらと思った。

 

 

・島田 美波

 

腕輪『絶対防御』

 

特性『20点の消費で敵の攻撃を100%防ぐことが出来る聖なる女神がデザインされた盾を3秒だけ形成することが出来る。

防御のタイミング次第では(誤差0.3秒以内が目安)、敵の攻撃力を倍にして跳ね返すことも可能

ただし、発動直後の身体防御力はヘリオス以下(霧島曰く、薄ガラス以下のさらに下)らしく、タイミングを誤ると一転してピンチになってしまうという短所がある』

 

・パンドラ

 

装備 文月学園の制服+木刀

腕輪『聖獣召喚』

 

特性『20点消費で、くだ狐と呼ばれている霊獣を呼び出す事が出来る。

100点消費すると、オシラサマと呼ばれる侍のような大鬼神を呼び出して敵を滅多斬りにしてしまう……』

 

由来:またしても中の人ネタ(結構多くてかなり困った)

 

・プロメテ

 

装備、武器は両腕に仕込まれた両刃刀。 黒ベースの軍服に赤黒のマントを装備。

 

腕輪『護符』

 

特性『腕輪が発動するのと同時に、大量の護符が追加装備される。

この護符を使い、防御・攻撃・支援をすることができるようになる。

ただし、この護符を1枚使うたびに40点は消費することになる』

 

由来:察してください……

 

 

 

 

 

Dクラス

 

 

・平賀 源氏

 

武器はバスターソード、軽装のプレートメイルにマントを纏っている。

が、実は格闘技にも精通している仕様(平賀本人は気付いていない)

膂力に長けていて、中国拳法の八卦掌の技を使えるらしい。

 

腕輪『石化』

 

特性『そのままの意味で対象となった召喚獣を石化させることができる。

石化しただけでは戦死扱いにはならないが、一撃でも攻撃を食らってしまうとどれだけの点数を有していても一瞬で戦死扱いになってしまう』

 

由来:中の人ネタです

 

 

 

 Aクラス

 

 

・霧島 翔子

 

装備は赤い武士鎧と日本刀、右手の小手が鬼の篭手のようになっている(それ自体には意味は無い)

 

腕輪『完成』

  

 

特性『一度でも見たり聞いたりした腕輪の力をより洗練された理想形の状態で体得して使いこなす事が出来る能力

例1:テティスの「海」の腕輪を体得した場合、海としての環境に書き換えるだけでなく、海の中の海流まで操って敵を完全に行動不能にさせてしまう

例2:秀吉の「支配権操作」の腕輪を体得させ、支配権を奪った召喚獣を命ずるまでもなく全自動で操るという設定まで操作できるようになる

ただし、清水の召還獣の「腐敗」のようなどれだけ努力しても決して「正しい」とは言えないような能力は会得してもむしろ負担にしかならないという弱点があり、また、優子の「武装変換」のような同系統のスキル様に、召喚獣本体が認識も解析も出来ない、あるいは理解し辛い能力の場合、会得も体得も出来ない。

また、発動時にしか会得・体得が出来ない上、極めた腕輪のスキルを発動させた時にはそれに応じた点数を消費する為、点数の燃費が極端に悪いという弱点もある意外と隙だらけの能力でもある。』

 

因みに高城の召喚獣も同じ能力を持っており、Aクラスの代表となった人物は必ずこの能力となる模様。

 

 

 

 

由来:学年主席にふさわしい能力を探していたらチートすぎると思いつつも……

   装備に関してはカプコンネタを出したかった

 

 

 

・木下 優子

 

腕輪 『武装変換』

 

特性 『消費した点数に応じて、いま装備している装備品を変更する事ができる。

ただ装備が変わるだけではなく、消費した点数に見合った強力な能力が付与される為、最も応用力の高い腕輪でもある。』

 

腕輪発動で使用された装備品についてはリストにしていきたいと思います。

 

 

由来:ロックマンエグゼと流星のロックマンを見ながら考えていたらなぜかこうなっていた。

   今となっては美波の召喚獣にこの能力を与えれば良かったと思っている。

 

 

 

・佐藤 美穂

 

鎖鎌とネイティブアメリカン風の衣装を装備。

実はメガネを飛ばされるとパニックになる。

 

腕輪『温度操作』

フィールド内の寒温を操ってしまう事が出来る。(物理干渉を起こしている訳では無い為、実際にはそう言う風に見えているだけ)

その威力は、氷の剣や広域殲滅用の爆炎、蜃気楼や猛吹雪まで一瞬で形成してしまうほどに強力だが、温度を変化させるために最低でも40点は消費してしまう為、乱用は禁物である

 

 

 

 

 

三年生

 

・常村 勇作

 

装備は、山賊を思わせる鎧に、武器は投擲円剣

シャルナクの十字手裏剣との決定的な違いは、シャルナクの手裏剣は投げることを前提に作られており近接戦闘は不向きだが、彼の投擲円剣は、近接戦闘でも充分に扱える遠近両用の武器となっている事。

 

腕輪の特性は『遠隔操作』

90点の点数を消費することで、投げた円剣の威力を保ったまま自由自在に操作することが出来る。

その操作性は非常に高く、逆に自身にぶつかりそうになっても、余裕で別の軌道に逸らすことが可能な程。

 

 

 

・夏川 俊平

 

装備は、僧侶を思わせる服に煙管型のハンマー

意外と取り回しが良く、小枝を振るかのごとき速さで攻撃できる。

 

腕輪の特性は『煙』

50点近くの点を消費して、黒色の煙幕を張ることが出来る。

その効果範囲は最大で運動場の半分を覆い尽くすほどで、しかもこの煙はチャフのような効果もある為、一度でも召喚獣がパニックに陥ったら、一切の命令も受け付けなくなってしまうほどに強力なものである。

因みに、廊下やCクラスレベルの教室程度なら普通に煙管を吹くだけだが、それ以上に広げる必要があるときは、必死になってスパスパと吹き続けないといけないらしい。

その姿は、まるでMHシリーズのアイルーの笛吹きを連想させるくらいに可愛い。

因みに本人は『スモーキングディスチャージャー』と呼びたいようで最初は抵抗があった模様。

 

 

 

・高城 雅春

 

腕輪『完成』

 

特性『霧島翔子と同じ能力。

ただし、体得した腕輪の能力にはかなり違いがある模様

その一つが腕輪複合のスキルを体得したことで3~5個の能力を融合させて超絶的な力を持った新たな能力を作り上げるスキル『プログラムアドバンス』』

 

 

 

 

 

 

 

 

外来参加者

 

 

・島田 葉月

 

装備は姉と色違いの服に、2本の高周波ブレード

そのブレードの切れ味は4・50点程度の点数差なら、同じ金属製の装備でも一瞬で切り裂いてしまうほどに強力。

 

腕輪の特性は『シールド展開』

60点の消費で一定時間の間、エネルギーシールド(以下Eシールド)を張る事が出来る。

その防御力は通常攻撃なら何の問題も無いのだが、攻撃性の高い腕輪の力が相手だと一瞬で破壊されてしまうほどに弱い。

だが、高周波ブレードと共振していることから、ロックマンズ(明久を除く)と姫路は『もっと別の使い方があるのではないか?』と読んでいる。

 

 

 

・グレイ

 

装備はモデルA使用時のような鎧と二丁拳銃。

ロックオンマーカーで敵に照準を当て、大量のホーミングレーザーを放つことも可能。

 

腕輪の特性は『変身』

腕輪の発動と同時にこれまでに見て来た召喚獣の能力と姿をそっくりそのままコピーできる。

ただし、変身時の点数消費は5点と非常に少ないが、変身した召喚獣の腕輪の能力を使うと2倍以上の点数を消費するなど、燃費の激しい能力でもある。

 

・アッシュ

 

装備  赤のライトアーマーに足にはローラーシューズを装備。 指の一本一本が鋭利な爪となっている右手にそれを伸縮しつつ支えることが出来る右腕となっている。

    右手は手の平からマイクロ波を放つ事ができ、掴んだ敵を爆発・膨張させる。

    また、サブ装備でナイフも持っているが、右手が破損すると戦闘力が著しく低下する。

 

腕輪『波動砲弾』 

 

特性『右手から強力な輻射波動砲弾を放つ事が出来る。 遠距離攻撃用のロングレンジ照射と、広域照射によって複数の敵を攻撃するワイドレンジ照射の2種類に分ける事が可能』 

   

由来:中の人ネタです

 

 

・ヴァン

 

装備 赤と銀の十字架がはめ込まれた鉤爪(かぎつめ)を左腕に装備。 白色のマントと黒色の服を着用しており、マントの中にはリボン状の帯が大量に入っている。

   その帯で攻撃することも可能。 左腕限定で敵の通常攻撃を防ぐことも出来る。

 

腕輪 『臨界点突破』

 

特性 20点の消費で左腕の鉤爪が消える代わりに右手に片手で振れる大剣を装備する事が出来る。

   この大剣は召喚獣の点数を削る事は出来ないが、召喚獣の能力を切ったり封印したりする事が可能。

   さらに点数を消費させれば、切り伏せた召喚獣を強引に送り返す事も出来る(点数は残る為戦死扱いにはならない)

 

 

 

 

・エール

 

装備はライトブルーのアーマーに光弾を発射するバスター砲

しかもチャージが可能で最大チャージでは姫路の召喚獣の『熱線』に匹敵する程。

ただし、防御力はヘリオスの次に低い。

スピードも遅いというほどでもないのだが、特別速いわけでもないため、どちらかと言うと、攻撃性能以外は『中の下』程度と言ったものである。

 

腕輪の特性は『合体変身(ダブル・ロックオン)

自分以外の他の召喚獣と合体して変身させることが出来る。

合体した召喚獣の点数も入ってくるが、発動時に80点以上消費してしまう上に、その状態で戦死してしまうと一緒に合体した召喚獣も戦死してしまう為、使うときには注意が必要である、

しかし、一度発動してしまえば、ありとあらゆる性能が向上し、同点数の召喚獣と比較しても数倍以上の戦闘力を発揮するため、相当強力な腕輪である事には間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイテム紹介

 

 

・解放の指輪

 

召喚獣を使ったトレジャーハンティング大会用に学園長が生産した物。

意外と多く出回っているらしい。

本来、召喚獣の腕輪の能力は400点を超えてからでなければ使用できないものだが、大会の参加者たちに楽しんでもらえるようにと、学園長がわざわざ作り上げた。

あくまで腕輪を『使える』様にするだけで、元の点数を向上させる訳では無いので、腕輪が使えるからと言って調子に乗っていると一瞬で点数を使いきってしまうという欠点がある。




召喚獣の設定はこちらの方に書かせていただきたいと思います。

更新するたびにチート召喚獣が増えてきたような……



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試召戦争編
第2話


ようやく次の話の文章化ができました。
話のイメージは大体はできているんですけど、いざ文章にするとなると大変なのなんの。

今回シャルナクのセリフはある程度細かくスペースで区切ることで読みやすくしようとしてみました。



『これが難しいとされる振り分け試験か・・・ 大丈夫か、明久?』

 

『心配ないよ、モデルZ。 この程度なら・・・』

 

『まさか!』

 

『5問につき1問は解ける!』

 

『やはり無理だったか・・・』

 

『仕方ないよ、アキヒサの頭だもん。』

 

『ちょっ! テティス、それどういう意味!?』

 

『そのまんまの意味よ。 このバカ!』

 

『モデルLもひどい!』

 

『シケンニ シュウチュウセヨ! タタカイハ スデニ ハジマッテ イルノダゾ!』

 

 

『『『シャルナクに説教された!』』』

 

ライブメタルを介して念話の要領で話をしながら試験を受けているこの状況。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は数か月前に遡る・・・

 

 

「明久の通う学校に入学? 何故私たちがそんなことをしなければならん? 今の私達の目的は元の世界に帰ることで、学校なんかに通ってお勉強をすることではないはずだが?」

 

「ふーん。 もしかしてアトラスは勉強が苦手だから学校とか行くのに抵抗があったりするのかい?」

 

「おい、テティス! こう見えて私は・・・」

 

「明らかなる動揺・・・ 訓練校時代の学力はともかく、今となっては見る影がないと思われても仕方のないぐらいの慌てぶりだぞ」

 

『まあ、勉強なんてテキトーに文字と簡単な計算が出来ればもんだいねーんじゃねーのか?』

 

『モデルF、この世界で生きる上で学力が重要なものとして求められていることは明久を見ていれば分かることのはずだぞ?』

 

 

そうモデルHは言うが、ヘリオスの狙いは別にあるようだった。

 

 

「惜しい着眼点・・・ 私の目的は文月学園のシステムにある。」

 

「マサカ・・・」

 

『ヘリオス殿の狙いはあの学園の召喚獣のシステムか!』

 

「その通り、試験召喚システムと呼ばれているらしいが、あれは科学と偶然とオカルトが重なった事でできたシステムだ。 あのシステムの力に干渉しもう一度この世界と来た時の現象を引き起こせたら・・・」

 

「元の世界に帰ることができる・・・」

 

元の世界に帰る事ができる可能性が見えてきたテティスは期待を胸に込めたような笑顔を浮かべていた。 だが、アトラスとシャルナクは疑惑の念を捨てきれないでいた。

 

「待て、ヘリオス。 そう言うが、それで本当に帰れるという確証があるのか?」

 

「タメシテミテ ダメデシタト イワレタラ マッタクノムダボネダゾ?」

 

その疑念に対してヘリオスは・・・

 

「それが大きな問題・・・ その確証を得るために、あそこの学生として潜入しさらなる調査をすべきと判断した」

 

更にヘリオスは続けて言う

 

「今日まで、この世界の情報誌や図書館、ネットワークへのハッキングを繰り返して調べてきたが、やはり確証までは得られなかった。 ならば文月学園に潜入し直接システムの解析を試みるしかない・・・」

 

「だがあそこに入り込むには問題がいくつもあるぞ? まず、私たちはこの世界の勉学をほとんどしていない。 明久から小学校とやらのレベル・・・しかも文字を読むための日本語の文字しか知らん。」

 

「それもそうだよねぇ~。 下級の学校レベルの文字しか知らない状態で上級の学校に入るなんて・・・ ましてやそこで本格的に勉強して、しかもその試験召喚システムの解析までするなんて無理があるんじゃないのかい?」

 

そう言った質問も想定済みだったのか、ため息をつきながらもヘリオスが質問に対して答えた。

 

「ささいなる問題・・・ ならば、私が貴様ら愚者を合格へと導いてやるためにこの世界の勉学を叩き込んでやる・・・」

 

「「「誰が愚者だ!(ダレガグシャダ!)」」」

 

この後、キレた全員が郊外の森でロックオン。(ライブメタル達も巻き添え)大乱闘に発展し、騒ぎを聞きつけた警察と機動隊から見つからないように逃走・・・ その乱闘の跡はまるで戦争のようだと注目を浴び、新聞の3面記事で特集として取り上げられていたという。

それもそのはず、強力な火炎放射機を使ったが如く木々が木炭と化していたり、一部の土が完全凍結していたり外部では巻き添えを食らった野生動物が傷ついたまま道路に飛び出してしまい、交通事故が多数発生・・・

挙句の果てに「空を飛んで、雷と竜巻を引き起こすお兄ちゃん」がいたといった目撃証言があり、むしろ騒ぎにならない方がおかしいくらいだった。

しかもその後に、ヘリオスが元の世界へと帰るための調査をしながらアメリカの一流大学主席レベルで勉強をしていたことも発覚し、背に腹は代えられないと3人は悔しそうにしながらヘリオスから勉強を教わる事になった。

更に詳しい事情を知らない明久を巻き添えにヘリオス先生(ロックオフ状態に指揮棒+伊達メガネ)による、地獄の勉強会が開催された。 ライブメタル達もヘリオスから勉強のデータをインストールしてもらい、ヘリオスの手伝いをしていた。これが受験5か月前の話。

 

受験日の2か月前。 ロックマンズは経歴をうまく誤魔化すために、戸籍を偽造し異世界の事情を隠したうえで口裏を合わせるための経歴書と共に文月学園への編入手続きを取った。

 

 

そして今に至る。 ヘリオスとアトラスは別の教室で同じ試験を受けている。 ちなみにそれぞれのテストの様子はと言うと。

 

明久「ヘリオスのおかげで5問に1問は解けている。 これならEクラスにならいけるかも・・・(実際の正解率は8問に1問の割合)」

 

テティス「あいつの教えが良かったからか、結構いい感じで進んでいくな。 この様子だとあと1枚くらいなら解けそうだ・・・」

 

シャルナク「コテンイガイノ カイトウリツガ カイメツテキ コレイジョウノ ニンムハ ゾッコウ フカノウ・・・(頭から煙が出てきていてシューと言う音が聞こえる)」

 

ヘリオス「簡単すぎる問題・・・ 上級クラスの学校といえどこの程度なのか・・・ (古典だけはケアレスミスと誤回答がが多くほかのテストの正解率が100%の為勝利を確信しきって油断してしまっていた・・・)」

 

アトラス「訓練校での勉強とは勝手が違うが慣れてしまえばどうという事はなさそうだ・・・」

 

各自、あの卑怯者のようにズルををすることなく真面目に試験を受けていた・・・ 結果はどうもバラバラみたいだったが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??side 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ・・はぁっ・・・・・」

 

完全に体調を崩しているにもかかわらず無茶をして振り分け試験を受けている一人の女子。

彼女の名は姫路瑞樹。 生まれつき体が弱く、だからこそ自分にできることを精一杯に頑張る健気で努力家な少女であった・・・ が、今回ばかりは無茶が過ぎていた。 体調を崩し、異常なまでに熱が高いのにもかかわらず、それを無視して試験を受け続けてきた結果、彼女の体は限界だった。

とうとう耐え切れず、倒れてしまった。 彼女の体からは大量の汗が吹き出し、呼吸も乱れている。

 

「途中退席は無得点扱いとなるが、それでもいいかね・・・」

 

この教師に気遣いと言うものはないのだろうか・・・ これだけ消耗しきっている女子を相手にただただ試験の結果の事を上から目線で話すこの教師の姿・・・

 

「はい・・・」

 

しかし、彼女は立つこともできない。 それだけの無茶をして試験を受け続けたその身としてはむしろ当然の結果であった。

 

「ちょっと先生! 具合が悪くなって途中退席するだけで無得点扱・・・」

 

『(あれ・・・ 誰かが庇ってくれているみたいですけど・・・ もう私にはわかりませ・・・)』

 

薄れゆく意識の中、彼女が最後に見た光景は倒れてしまった自分をかばう二人の少年の姿であった・・・

 

姫路side end

 

 

 

 

 

 

 

「途中退席は無得点扱いとなるが、それでもいいかね・・・」

 

『!? あの子は・・・』

 

『アキヒサ あのおっさんなんて言っているの? 聞き間違いじゃなければぶっ倒れた女の子に対して試験の事を話しているだけにしか見えないんだけど?』

 

『まずい、あの子は体が弱くてあそこまで消耗していたら一人で保健室に行くなんて無理なんだ・・・ それなのにいったい何考えているんだ・・・』

 

『オイ! アキヒサ!!』

 

シャルナクはテティスと明久を止めようとするがそれよりも早く、二人は動き出してしまう。

 

「ちょっと! 途中で具合が悪くなって退席しただけで無得点扱いは酷いじゃないですか!!」

 

「二人とも、席に戻りなさい。 彼女を保健室へと連れていくのなら二人も無得点扱いに・・・」

 

「テストの点数なんて気にするくらいなら僕は・・・」

 

その言葉は突然飛んできた拳によって遮られた・・・ 今の言葉を聞いたシャルナクが明久に対してジャブの要領で殴ってきたからである。

 

『ふざけるな!試験の点数がどうでもいいだと! ならお主に勉学を教えたヘリオス殿の苦労は無駄にしてもいいという事でござるか!』

 

モデルPも明久の言い様には反対であった。 今日の試験の為にこの世界に来てから数か月で元の世界に帰る為の調査をしながら大学主席レベルになるまで勉学を重ね、それを独り占めすることなくすでに追い越してしまった明久にも嫌な顔もせず(かといって笑顔という訳でもなかったが・・・)勉強を教えている苦労を知っているライブメタルたちだからこその言葉でもあった。

 

「アトラスモ コウイウダロウ 『身の程をわきまえない弱者など助けるな・・・』トナ!」

 

「だけどシャルナク・・・ この子とっくに気絶しているんだよ! あのおっさんも連れていく気ないみたいだし・・・ 誰かが連れて行かないと・・・」

 

テティスも明久を擁護しようとするが関係ないと言わんばかりにシャルナクは続ける。

 

「 ヘリオスモ シッカリト シケンヲ ウケラレルヨウニト サイゴノヒハ ヤスメルヨウニ カンタンナ サイシュウカクニン ノアトニ ヤスムヨウニイッテイタ ハズダ 」

 

「ダガ ソノオンナ・・・ アキラカニ ゼンジツマデ ムチャナベンキョウヲ シテキタヨウニミ・・・ 」

 

「3人ともいい加減にしなさい! これ以上騒ぐんだったら3人とも無得点扱いにして追い出さないといけなくなりますよ!」

 

 

この場を収めようとさっきの教師が脅し文句を吐いてくる・・・ それに対してアキヒサは・・・

 

 

 

 

 

「・・・シャルナク、テティス、ヘリオスには試験の後に謝る・・・ 二人はそのまま試験を受けて・・・」

 

もう、シャルナクは何も言わずに道を開ける。 どうやら先程の教師の発言もあり、結果はともかく行動は明久の方が正しいと悟ったからでもあった。

 

「アキヒサ、ごめん。 君の分も試験、頑張るから・・・」

 

テティスも腑に落ちないとで言うような表情をしながら、席に戻り試験を再開していた・・・

 

「結局人間はどこかを汚さないと生きていけないのか・・・ むしろアキヒサのような人間の方が珍しいくらいじゃないか・・・」

 

 




後半・・・話が重くなってしまった感があります。
が、あきらめずに今後はバカテス編ではギャグを中心に入れていきたいと思います。

せっかくなのでほかのロックマンやフォルスロイドも巻き添えにしていきたいと思います。
フォルスロイドはアンチの方向でですがwww


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第3話

みなさんお待たせしました。
バカライ本格始動開始です。

目指せ!一話一万文字(^O^)/


始業式当日、明久達は寝坊していた。

 

「明久ァァァァァァァ! 目覚ましぐらいはきちんとセットしろ!」

 

「しょうがないでしょう。 目覚ましは電池切れで鳴らない! モデルZ達はその時も眠ったままだし。」

 

「恥ずべき誤算・・・」

 

『と、いうか全員が爆睡していたというのも珍しいな』

 

『春休みには、明久とアトラスが試験の時の話で思いっきり喧嘩していたしな・・・』

 

『全員でその間に入ろうとして、巻き添え喰らって休みの大半を睡眠で使うなんて思わないわよ普通・・・』

 

『シャルナクから事情は聞いたが・・・ その話が本当なら人間としてみるなら明久殿の方が正しいと言えるな』

 

『テティスも何を思ったのか・・・ せっかく書いた回答の大半を消して点数調整していたみたいだし。 ま、私は別に何をしようと知ったことじゃないけど。』

 

『モデルFから聞いたでござるが、アトラス殿もあの試験の際に同じことをしているとのことでござったが・・・。』

 

「おい! モデルF 貴様!」

 

「ガッコウマデ アト7フン チコクノ カイヒ フカノウ・・・」

 

言い訳をしながら学校へと急ぐ5人。 そうして急いで行きようやく学園へと着くと・・・

 

「5人ともなにやっているんだ? もうお前たちで最後だぞ。」

 

ソリッ⚪︎・ス⚪︎ークやワム⚪︎を思わせる声に顔を上げるとスーツの上からでも分かるほどに鍛えられた男子教師の姿があった。

 

「鉄じ・・・ 西村先生おはようございます。」

 

「西村先生おはようございます。」

 

「西村宗一・・・ おはようございます・・・」

 

「おはよう! 鉄人!」

 

「テツジ・・・ 」

 

5人5様の挨拶をしたが

 

「おい吉井!、シャルナク!、今鉄人と言いかけなかったか?」

 

「「嫌だなぁ・・・気のせいですよ(キノセイデスヨ)」」

 

「ヘリオス、目上の人間に挨拶するならその上からものを見るような態度をやめたらどうだ。」

 

「愚かなる発言・・・ これほど礼儀正しく挨拶をする者もいないだろうに・・・」

 

本当に礼儀正しい者は普通の教師相手に愚かなんて言わないと思うが・・・ 

 

「テティス、遅刻しておきながら元気一杯な挨拶をするとはいい根性だ!」

 

「ほめてくれてありがとう! 鉄人!」

 

「褒めていない! アトラス・・・ まともに挨拶したのはお前だけか・・・」

 

「そんなことよりも私たちで最後と言っていたがわざわざ校門前で直接伝えているのか? 普通、学校でクラスを発表するときは掲示板で張り出されると聞いていたのだが?」

 

確かに普通の学園では大なり小なりの掲示板を使って、まとめて張り出しそこで自分の名前を探すのが普通なのだが・・・

 

「些細なる疑問?・・・ その様子だと確実に全員が来たという事がわかっているようだが、掲示板に張り出すやり方ではまず、クラスでの顔合わせの前に全員が来ているとわかることはまずないだろう・・・ わざわざ書類を渡しているとでもいうのか?」

 

ヘリオスも同じ疑問を抱いた様で同じような質問をしてしまう。

 

「ウチは世界でも注目されているシステムを導入した試験校だからな。 この変わったやり方もその試験の一環という訳だ・・・」

 

そう言いながら各自のクラスが記載された書類が入っている封筒を全員に渡す。

受け取った皆はその場で封を切って、自分のクラスを確認しようとしていた。

 

『まあ、明久はFクラス確定だが・・・』

 

『おいおいモデルZ、もしかしたら再試験という事もあるかもしれねえだろうが・・・ そんな悲観的なこと言うんじゃねぇよ・・・』

 

『お前は楽観的過ぎるぞ、モデルF。 無得点扱いと言う話は3人からすでに聞いているだろうが!』

 

『ま、テティスはFクラス確定よね。 世間体の関係か退学はないでしょうけど、あのテスト用紙じゃ、Fより上はいけないでしょうし。』

 

『拙者はむしろ楽しみでござるよ。 古典に至ってはとんでもない成績をたたき出していたでござるからな!』

 

 

ライブメタル達も自分の事のようにクラス発表を楽しみにしていた。

 

「今だからこそ、お前たちに言っておきたいことがある」

 

急に鉄人が思いふけった表情で語りだす。

そんな中でみんなは厳重に封がされているためか開けるのに苦労していた。

 

「2か月前・・・急に明久の紹介と共に転校してきたお前たちを見て『もしかしたらこいつらはバカなんじゃないか?』と思っていたんだ・・・」

 

「大いなる間違い・・・ 私が愚者? 笑えん話だ・・・」

 

「そうですよ? そんな誤解までしてしまったら、更に『節穴』なんて渾名を付けられちゃいますよ?」

 

「ああ、振り分け試験の結果を見て先生はいくつもの間違いに気が付いたよ」

 

「ソウイッテモラエルト ワルイキガシナイナ・・・」

 

中々破けないのでシャルナクから苦無風カッターを借りて封を切った。

 

そうするとみんなの封筒から1枚の紙が出てきていた。

 

「そう、その一つが・・・」

 

吉井明久  Fクラス

 

アトラス  Fクラス

 

テティス  Fクラス

 

シャルナク Fクラス

 

ヘリオス  Aクラス(ただし、古典のみ特別補習必須)

 

「お前たちは意外とバカだ!」

 

こうして、僕たちは最低クラスでの学園生活が幕を開けた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ヘリオス! このバカでかい教室はいったい何だ!!」

 

「リカイフノウ! ナゼコンナ イチキョウシツニ コレホドノセツビヲ トウニュウスルノダ?」

 

『ここまで来るとさすがに笑えないわね・・・』

 

『確かにそうだな・・・ システムデスクにリクライニングシート、更に最新鋭のノートパソコン(バカテス世界基準)、挙句の果てにドリンクサーバーとお菓子まで無料で支給されるとは・・・』

 

「僕らだけ最低クラスなのに、ヘリオスだけ羨ましいーよー」

 

「当然なる結果・・・ だが、裏を返すとAクラスはそれゆえに外敵もほかのクラスよりも多いという事となる。 気を引き締めんとどんな形で引き摺り下ろされるか分かったものではない・・・」

 

 

「貴方たち何をしているのですか? ホームルームは始まっているのですよ? 皆さん各自のクラスに移動してください」

 

みんなしてAクラスの教室を見て驚愕していると、後ろから、髪をお団子状にまとめ、メガネをかけスーツをきっちりと着こなした知的教師の代表みたいな女性がいた。

 

「あ、高橋先生すみません。 Aクラスの教室がどんなところか見てみたかったものですから みんな自分のクラスにいこう! ヘリオス、じゃあね!」

 

「あ、アキヒサ待ってよー!」

 

「シツレイシタ・・・」

 

ブォン・・・ ←(闇にまぎれて消えていく音・・・)

 

 

 

 

 

 

 

ヘリオスside

 

 

 

「騒がしい者達だ・・・ Aクラスがここまで贅沢だとFクラスがどれだけ酷いのか逆に気になるな・・・」

 

ヘリオスはついそんなことを呟いてしまう。 そんな声が聞こえたのか高橋先生が説明してくれたのだが・・・

 

「Fクラスはボロボロの教室に腐った畳、完全に割れている窓ガラス。 机はちゃぶ台で黒板のチョークすら支給されず、修理用の道具すら自分で調達しないといけないといった環境ですよ?」

 

『「・・・・・・・え?」』

 

驚きのあまりにヘリオスとモデルHのセリフがハモっていた・・・

 

ヘリオスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

一方明久達はあまりにもひどいFクラスの惨状にAクラスとは真逆の意味で驚愕していた。

 

「ねえ・・・アキヒサ・・・」

 

「・・・聞かないでくれるかな」

 

「なんか臭うんだけど・・・」

 

「うん、僕も感じるよ・・・ さすがにこれは・・・」

 

「これは本当に勉強する環境なのか? 訓練校の汚さも相当だったが、これはもはや勉強する環境ですらないぞ・・・」

 

「アンサツヲ オモナニンムトシテイタ オレデモ コノカンキョウデ マイニチトイウノハ ゴウモントシカ イイヨウガナイ・・・」

 

 

『オイオイ・・・ いくら何でもやりすぎじゃねえのか?』

 

『俺も同意だ、モデルF・・・ というかこれは逆にどうやってこの状態を維持しているのかが気になるな。 ここまで腐敗していたら建物そのものが持たないと思うんだが・・・ 』

 

『拙者がもっと古典以外にも力を注いでいたら・・・』

 

 

これとほぼ同じ時間に高橋先生がヘリオスに説明してくれていた内容と全く同じ内容に4人は思考が停止しかかっていたが、モデルLだけはどうも腑に落ちないような感じであった。

 

『ちょっとみんなへんじゃない?』

 

「どうしたの?モデルL? この教室が変だなんて見ればわか・・・」

 

明久に限らずみんなが「何言っているの?」みたいな反応をしているが、モデルLは呆れたように話を続ける。

 

『だって窓が割れているのよ? そんな劣悪な環境。 冬場なら人間、これだけで風邪を引くに決まっているじゃない! それにテティスと明久がなんか臭うって言っていたでしょう? それもう畳が完全に腐っているじゃない。 こんな状況でいたら並の機械なら数日でカビてしまって使い物にならなくなるレベルよ!』

 

「でも実際こんな環境だし・・・」

 

明久とテティスはまだ、何が言いたいのかわかっていないようだったが、アトラスとその他ライブメタル達は気が付いたようだった。

 

『こんな環境を放置するという事は学園の設備管理における怠慢という事になる。 世間からの風評被害に弱いこの学園がそんなことを意図的に命じてするわけがない。』

 

「ふん、最新システムを導入しそれをあそこまで大っぴらにアピールし続けているんだ。 ほかの学園からしてみれば気に食わんだろう。 この学園を潰しにかかっているスパイの工作かもしれないな・・・」

 

「スパイってそんな大げさな・・・」

 

あまりにも大きな話に明久は苦笑いしてるが・・・

 

「イヤ・・・ アリエナイハナシデハナイ。 ソモソモ スパイトイウモノハ ジョウホウヲナガスダケデナク ジョウキョウニ・・・」

 

「話を長くなりそうだから一旦この話はおしまい。 後でヘリオスと相談するぞ。 考えすぎかもしれんが、最悪私たちの世界の事件が絡んでいてもおかしくないんだからな・・・」

 

スパイについて語ろうとするシャルナクのセリフを無理やり打ち切り、この一件を保留にしようとするアトラス。

 

「え? でも何かの事件だっていうなら早いうちに動いた方が・・・」

 

『確証がないのにか? 拙者達が今騒いでも笑い話になるだけで、相手にもされん。 それにヘリオス殿の知恵と手腕に頼ることが出来るならば、事件が起こっているとしても対処しやすいからな』

 

「なんか納得いかないけど、そこまで言うならわかったよ。」

 

ひとまずこの話を保留にして、みんなと共に気が進まないFクラスに入ろうとする。

 

「すみません、遅くな・・・」

 

「さっさと入れ! この蛆虫・・・」

 

入っていきなり教卓の上に立っている雄二に罵倒されそうになった・・・ が、罵倒しようとした雄二はアトラスの顔を見たとたん急に後ずさってしまった。

 

「悪かった、アトラス! だからその拳を引っ込めてくれ!」

 

しかしアトラスは意にも介さず・・・

 

「世界の歴史は戦いの歴史・・・ 人々は戦いの中にあってここまで進化してこれた・・・」

 

「おおい! 何怖いこと言ってんだ! もうあんななめた真似しないからマジで勘弁してください!」

 

一体過去に何があったのだろうか? 罵倒されてブチ切れしていたアトラスに土下座し、明久達の仲裁もあってどうにか事態を落ち着かせることに成功した。

 

「ト イウカキサマハ イッタイナニヲ ヤッテイルノダ?」

 

シャルナクが雄二に立たせながら問いかける。

 

「一応、俺がクラスの代表なんだよ・・・」

 

「へぇー。 ユウジがこのクラスの代表なんだ・・・」

 

「これで、全員が・・・ ほぼ全員が俺の兵隊という訳だ!」

 

途中でアトラスを見ながら「ほぼ全員」と言い直したが、理由はさっきの喧嘩を見ればわかると思う。

 

「それにしても・・・ 流石はFクラスだね・・・」

 

とりあえず、皆で空いているスペースを探していると

 

「すみません、そこを通してもらえませんかね?」

 

不意に後ろからは気のない声が聞こえてきた。

後ろには寝癖の付いた髪によれよれのシャツを貧相な体に着た、とてもさえない風体の中年教師がいた。

 

『あんなんが担任って大丈夫か?』

 

『あんまりこんなこと言いたくはないが軽く吹いただけで飛びそうな感じがするな・・・』

 

ライブメタル達がそんなことを言っている間に明久達はそれぞれ返事をした後適当な席に着く。

因みに明久達はグループで集まりそれぞれの隣の席になるようにして席についていた。

 

「えー、おはようございます。 二年F組担任の『福原慎(ふくはらしん)』です。 よろしくお願いします。」

 

福原先生は名前を黒板に書こうとしてやめた・・・ どうやらチョークすらないようであった・・・

 

「皆さん全員にちゃぶ台と座布団は支給されていますか? 不備がありましたら申し出てください」

 

「『(不備どころか、大問題だらけなんですけど!!)』」

 

ロックマンズ+ライブメタル達は揃って同じことを思っていた・・・ しかし、みんな噂には聞いていたが実際に見てみるともう言葉が出てこなかった。

 

「せんせー、俺の座布団に綿が殆ど入っていないですー」

 

「あー、はい。 我慢してください」

 

「先生、俺のちゃぶ台の脚が折れています。」

 

「木工用ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください。」

 

「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど?」

 

「わかりました。 ビニール袋とセロハンテープが支給を申請しておきましょう」

 

あまりの冷遇っぷりにみんなは黙るしかなかった・・・ ひどすぎる。 ここって廃屋?

そんな事を考えながら明久達には良くも悪くもバカ騒ぎを起こす元気すら湧いてこなかった・・・

 

 




UAが既に1000を超えました。
見てくださってありがとうございます。

これからも一生懸命頑張って行きたいと思います!


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第4話

お待たせしました。
読んでくださった皆さんに楽しんでいただければと思います。
ではどうぞ!


ヘリオスside

 

「皆さん進級おめでとうございます。私はこの二年A組の担任、高橋洋子です。よろしくお願いします。」

 

Fクラスのあまりにもふざけた冷遇・・・いや、豚小屋にも等しい汚い環境に明久達がいるという事を高橋先生から聞いたヘリオスとモデルHはこのAクラスとの異常な格差と、Fクラスの環境の異常性の問題(詳しくは明久side モデルLとの会話を参照)に気が付いていた。

 

「(あまりにも愚かなる酷遇・・・ ここまで風評被害に弱いこの学園がこんなことを意図して行うとは思えない。 この学園を潰そうとする者がいる?)」

 

『(その教室を見てアトラスかモデルLあたりが気付くだろうし、放課後にでもみんなに問い質せばいいだろう?)』

 

今こうして会話している間にも、高橋先生は説明を続けている。

 

「まずは設備の確認をします。 ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシートその他の設備に不備がある人はいますか? 不備や不満があれば申告してください。」

 

「参考書や教科書などの学習資料はもとより、冷蔵庫の中身に関してもすべて学園が支給いたします。 他にも何か必要なものがあれば遠慮することなどなく何でも申し出てください」

 

(((これだけの環境があって不満がある人がいる方がおかしいよ!!)))

 

ヘリオスは早速紅茶を淹れて、完璧に淹れた紅茶を飲んでいたが、頭の中では明久達の様子が気になって仕方がなかった。

明久と出会ってヘリオスもいろいろと変わっていったと思うが、今のヘリオスには嘗てのように自分の意見を理解できないものを「愚者」として見下し、その愚者を抹殺することができるものが「賢者」だと思い込んでいたが、そんな傲慢さが明久のバカと称された行動を見て、それを正そうとしている内に「真の賢者とは何か?」という事に気が付いたのである。

最近、モデルHと話をしている内に「ヘリオスの語る賢者とは一体何か?」という話になったことがある。

その時のヘリオスの回答は「さまよえる愚者を正し、導く事ができるものが真の賢者である」とはっきり言い切って見せたのである。

その姿はまさしく自他ともに認める賢者であり、それと同時に偉大なる王の姿を思わせる(・・・・・)威厳と風格まで持ち合わせていた。

 

「では、初めにクラス代表を紹介します。・・・」

 

だからこそ・・・

 

「霧島翔子さん。前に出てきてください。」

 

「・・・はい」

 

彼は代表になる事を辞退した。 自分は元の世界に帰るつもりでいる。 最上級クラスの代表などといった大きな役割を務めるという事はこの世界に長く居続ける気があるという事でもある。 もし近いときにあっさりと帰る事ができる状況が作られてしまったならば、その代表としての役目を途中で放り棄てるという事でもあった。

そうした無責任なことをしたくない。 そのために古典の成績の低さを理由に代表になる事を辞退し、代わりの人材として、総合成績でヘリオスの次に高く、なおかつメンバーを纏めるだけのカリスマがあると思われた彼女を推薦したのであった。

それならばなぜ逆にヘリオスが古典を理由にクラスを落とされずにいるのかというと「1日1時間の古典の補習を受けることを条件にAクラス入りすることを提示されたが、更にAクラスで支給される学習資料を使って自主的にも勉強までする」とまで言われそのヤル気を評価され(実際にはAクラスの環境だと元の世界に帰るための調査がしやすいと考えたからだが・・・)3か月の間に古典の成績が改善されたなら、正式にAクラス入りすることとなったのである。

 

「・・・霧島翔子です。 よろしくお願いします」

 

全クラスメイトから視線が集中する中、彼女は顔色一つ変えず淡々と名前を告げた。

そして、あいさつが終わるとすぐに自分の席に戻っていった。

 

「Aクラスのみなさん。 これからの1年間霧島さんを代表にして協力し合い、研鑽を重ねてください。 これから始まる『戦争』でどこにも負けないように」

 

『戦争』・・・か  その時が来るとすれば意外と早いかもしれんな・・・

 

担任教師の結びの言葉が告げられ、ホームルームは終わりとなった。 Fクラスに行った皆はまだ終わらないよだったため、ヘリオスは先程入れた紅茶を飲もうとするが・・・

 

「うっ!・・・ なんという味・・・ 高級な茶葉も使っているようだが、質の悪い物も混ざっていて、味と香りがおかしくなっている・・・ これもまたFクラスの教室の異常性と共に改善を要求する必要があるな・・・」

 

Fクラスの教室の問題と紅茶の質の問題を同レベルの問題として考えるあたりヘリオスも十分酷い・・・

モデルHは内心そう思っていたが、どんな形で巻き添えを食うかなんてわかったものではないので、一応黙ってはいた。

 

 

ヘリオスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方明久達はFクラスで自己紹介を行っていた。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。」

 

木下秀吉。 通称第3の性別「秀吉」と呼ばれるくらいの美少女顔であるが、彼は立派な男である。

しかし、美少女並みの女顔、明久達相手にフォローに回れるほどの気遣いなどが原因で、双子の姉よりも男子からもてているという不憫な少年でもある。

 

「・・・という訳じゃ。今年1年よろしく頼むぞい」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・土屋康太」

 

 

今度も知り合いだ・・・ 相変わらず口数の少ないこの小柄の少年は土屋康太。 意外と引き締まった体で運動神経もいいのに、どうしておとなしいんだろう。 やっぱり目立つといろいろやりにくいのか?

そんな事を思いながら周りを見渡してみるがやっぱり男ばっかだ・・・ 学力最低クラスとなると女子はほとんどいないんだろうか。

 

「ーです。海外育ちで、日本語は会話はできるけど読み書きは苦手です。」と少し考え事をしているとまた次の人。

「あ、英語も苦手です。育ちはドイツだったので。今期の目標は・・・」

 

お、今度は女子の声だ。 よかった。アトラス以外に女子が・・・

 

「今期の目標は吉井明久をぶんなぐる事です☆」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおい!」

 

誰だ!?恐ろしくピンポイントかつ危険な趣味を持つ奴は!

 

「はろはろ!」

 

笑顔を向けてこちらに手を振るのは島田美波。 またしてもの知り合いで去年のクラスメイトの天敵である島田さんまで同じクラスだとは・・・ まさか「類は友を呼ぶ」とか?・・・

 

『おい、明久、どうやらお前の紹介待ちみたいだぞ?』

 

いつの間にか僕の番になっていたようだった。 モデルZに呼ばれたので自己紹介をしたいと思う。 

「(こういた物は出だしが肝心。 たくさんの仲間を作る為にも、僕が気さくで明るい好青年という事をアピールしないと・・・)」

 

『お、おい・・・明久・・・ まさか・・・』

 

「(アキヒサ! やめなって! さすがにそれはまずいって!)」

 

『そうでござる! 話を聞いたときに拙者もドン引きしたでござるよ!!』

 

「もう、遅い・・・」

 

テティス達は止めようとするが、アトラスは遅いと思ったのかあきらめモードになっている。

 

「・・・コホン。 吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んでくださいね♬」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『ダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超が付くほどの野太い声の大合唱・・・ これは思った以上に不愉快であった・・・ テティスに至ってはあまりの気持ち悪さに吐き気を催して、アトラス・シャルナク・モデルLと共に保健室へと連れていかれていった・・・

 

アトラスの口元が「あ・と・で・お・し・お・き・だ!」と動いていたのは気のせいだろうか?

 

「・・・失礼。忘れてください。 よろしくお願いします。」

 

テティスに対して申し訳なく思いながら、苦笑いで誤魔化しながら、席に着くものの、吐き気が止まらない。まさか本当にそんな呼び方をされるなんて思わなかった・・・ Fクラス恐るべし・・・

 

その後も自己紹介が続き、戻ってきたアトラス達の自己紹介を終えたのだが・・・

 

「あの、遅れてきて、すみま、せん・・・」

 

『えっ?』

 

誰からという訳でもなくFクラス全体から声が上がる。 それはそうだ。 事情を知らないものはびっくりするだろう。

 

「ちょうどよかった姫路。 お前で最後だぞ。」

 

「え?あ、はい! あの、姫路瑞樹と言います。よろしくお願いします・・・」

 

小柄な体をさらに千地込めるようにして声を上げる姫路さん。

 

「あ、あのーすみません? 何でここにいるんですか?」

 

聞きようによってはかなり失礼な質問だが、それも無理もない。 何故なら彼女は本来学年次席クラスの成績を誇る才女でもあるのだから・・・

 

「熱を出して倒れてしまって・・・」

 

その言葉に全員が納得するのと同時に

 

「そう言えば俺も熱が出てしまったせいで・・・」

「ああ。科学だったろ? あれは難しかったな」

「俺は弟が事故にあってしまったと聞いて心配で・・・」

「黙れ、ひとりっ子」

「前の晩彼女が寝かしてくれなくって」

「今年最高のウソをありがとう!」

 

これは想像以上のバカの集まりだ・・・

 

「で、ではよろしくお願いします。」

 

そして逃げるように、空いてる席に座ろうとする。 その際にテティスの座っていた席に座ろうとしていたのでそれを注意した後なぜか明久の隣の席に座ってしまった。

その時の姫路さんはなんていうか、とてもかわいらしい感じがした。 

正直、こんな設備のクラスに迎えるのが犯罪だと思える程であった。

 

机に突っ伏すや否や、安堵の息をついてちゃぶ台に突っ伏す姫路さん。 これはチャンスだと思い、話しかけようとする。

 

バンバン! 

 

「はいはい、みなさん静かにしてくださ・・・」

 

バキィッ! バラバラバラ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・今起こったことをわかりやすく言うぜ!  先生が警告を発するために机を叩いたが、教卓が軽くたたいただけでごみ屑と化しやがった・・・

 

 

 

 

「えー・・・・・替えの机を用意してきますので、少し待っていてください。」

 

気まずそうに告げると、先生は足早に教室から出て行った。

 

「タンニンニモ ヨウシャナシカ・・・」

 

『・・・これアトラスと俺が軽く小突いただけで教室が崩壊するんじゃねぇ?』

 

『本当にそうなりそうだから二人とも暴れないでよ?』

 

「おい、私を一体何だと思っているんだ!?」

 

「『戦闘狂!(バトルマニア)』」

 

 

ロックマンのみんながそんな会話をしている間明久はモデルLが気が付いた問題点、そしてそんな問題だらけの教室に疑問を持たない(さっきまでほかのみんな同様気が付かなかったが・・・)Fクラスのみんなの事について考えていた。

僕たちが最低クラスに割り振られたのは大半が実力だから仕方がないと思う。 けど中には体調不良や問題を起こしたというだけでいきなり最低クラスはあんまりだ。 もう少しくらいチャンスがあってもいいじゃないかと思っていた。

 

「・・・雄二、ちょっといい?」

 

あくびをしているクラス代表に声をかける。

 

「ん? なんだ明久?」

 

「ここじゃ離しにくいから廊下で・・・」

 

そう言って二人は揃って廊下に出ていく。

 

「で、話って何だ?」

 

「うん、この教室の事なんだけど。」

 

「想像以上に酷かったな。 さすがに驚いた。」

 

「やっぱり雄二もそう思ったんだ?」

 

「当たり前だ。 それ以前にこれに驚かない方がおかしい。」

 

「Aクラスの教室は見た?」

 

「ああ、あれは凄かったな。 あんな教室はほかに見たことがない」

 

一方はチョークすらナイひび割れた黒板に腐った畳、もう一方は値段すらわからなくなるほど立派なプラズマディスプレイにリクライニングシート。 これに不満のない人間はいないはず。

 

「そこで僕からの提案なんだけど、せっかく2年生になったんだし、『試召戦争』をやってみない?」

 

「試召戦争だと?」

 

「うん、それもAクラス相手に・・・」

 

「・・・何が目的だ、明久?」

 

急に雄二の目が細くなる。 警戒されているんだろうか?

正直に目的を言おうかと思ったが、いろいろ恥ずかしいので本当の目的は隠すことにした。

 

「いや、だってあまりにひどい設備だから・・・」

 

「ウソをつくな。まったく勉強に興味のないお前がいまさら勉強用の設備なんかの為に戦争を起こすなんて、そんなことはありえないだろうが・・・」

 

・・・があっさりとウソがばれてしまった。 相変わらず勘だけは妙にいいなと明久は思う。

 

「今回の戦争の目的は、Aクラスへの勝利を条件に学園長への交渉権を得るためだ!」

 

そういっていきなり出てきたのは、アトラス達であった。

 

「交渉権? いったいあのババァ長に何を頼むっていうんだ?」

 

いきなり出てきて、謎の目的を唱えだしたアトラス達に驚く雄二。 そんな中アトラスは続ける。

 

「ああ、いくら何でもこの教室の設備はひどすぎる。 ここに来る前に入隊していた軍関係の学校でもここまではひどくはなかった。」

 

「いや、それを言うなら別に交渉しなくても、Aクラスに勝って教室を奪えばそれで済む話じゃないのか?」

 

雄二はそう言うが・・・

 

「ソレデハ アノキョウシツヲ Aクラスニオシツケルダケニナル・・・」

 

「そんな事じゃぁまた奪ったところで試召戦争を延々と繰り返すだけだ。 それ以前にあの教室の問題点はそんな小さいレベルの話では聞かないからな。」

 

『それに気が付いたの私なんだけどね・・・』

 

『おいモデルL。 そこの男には聞こえないの忘れていないか?』

 

『わ・わかっているわよそんな事!』

 

モデルLが自慢気に話しているが、当の雄二は分かっていないようだった。

 

「何? いったいどういう事だ?」

 

「はぁ~っ・・・ お前もわかっていないのか?・・・」

 

アトラス達はあの教室を放置していることがどれだけ不味い事なのか、モデルLが言っていたことをそっくりそのまま説明していくと、さすがの雄二も驚きを隠せないようだった。

 

「おいおいマジかよ・・・ その話が本当だったらかなりマズイじゃねぇか! まあ、元々俺もAクラスに試召戦争は起こそうと思っていたけどな。」

 

「あれ? でも雄二だって全然勉強していなかったよね?」

 

だからこそ、僕と同様あそこまで酷い設備でなければ、そこまで設備に興味なんてないはずなんだけど・・・

 

「学力がすべてではないことを証明したくてな。 そのためにFクラスとして試召戦争を起こそうと思ってよ。」

 

明久は訝しげに雄二の顔を見た。 その表情はかつてのアトラス達の表情のそれに似ていた。

明久達はそれ以上追及はしなかった。

こいつはこいつで過去に何かあったんだろうと明久達は考えた為だ。

 

「まっ、Aクラスに勝つための策も思いついたしな。 おっと先生も戻ってきた。教室に入るぞ」

 

雄二に促されたままみんな教室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「坂本君、君が最後の一人ですよ」

 

「了解」

 

先生に呼ばれて雄二が席を立つ。

ゆっくりと教団に歩み寄るその姿にはいつものふざけた雰囲気は見られず、クラスの代表としてふさわしい貫禄を身にまとっているように思えた。

 

「代表の坂本雄二だ。 俺の事は坂本とでも代表とでも隙に呼んでくれ」

 

「さて、皆にひとつ聞きたい。 この教室をよく見てくれ。」

 

皆、周りの様子を確認する。そして雄二の視線は教室内の各所に移りだす。

 

 

古く汚れた座布団

 

薄汚れたちゃぶ台

 

完全に腐り、カビやキノコが生えた畳

 

 

 

「・・・不満はないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「大有りじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」

 

「だろう? 俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱えている」

 

「そうだそうだ!」

 

「学費がいくら安いからってこんな設備はあんまりだ! 改善を要求する!」

 

「そもそもAクラスだって同じ学費だろ? あまりに差が大きすぎる!」

 

堰を切ったように次々と不満の声が上がる・・・。

 

「みんなの意見はもっともだ。 そこでこれは代表としての提案だが・・・」

 

これから戦友となる仲間たちに野性味満点のえがおを見せ、

 

「FクラスはAクラスに「試召戦争」を仕掛けたいと思う」

 

 

 

Fクラス代表坂本雄二は戦争の引き金を引いた。

これがFクラスの試召戦争、そして異世界を越えてのロックマン達の戦いの始まりである。

 

 

 

一方、廊下で会話した後のライブメタル達は・・・

 

『Aクラスに勝つ策か・・・ どれほどの物か見ものだな・・・』

 

『モデルZはどうなると思うの?』

 

『拙者も気になるでござるな。』

 

『オレはFクラス勝利に賭けるぜ!』

 

『拙者もFクラスの勝利を信じるでござる!』

 

『あら?忘れていない? あそこにはモデルHとヘリオスがいるんだけど?』

 

『ならモデルLはAクラスが勝つと思っているのか?』

 

かく言うモデルZもAクラスが勝つと予想しているのだが・・・

 

『私はどっちかっていうと・・・』

 

モデルLの予想を聞いて皆は・・・・・

 

『モデルL・・・』

 

『何よ、みんな?』

 

『オマエ、本気でこうなると思ってんのか?』

 

『拙者もこんな結末は無いと思うでござるが・・・』

 

『少なくとも両クラス共にに丸く収まる展開ではあるな。 というか、遺恨を残さないようにするならこれ以上の結果はない・・・』

 




次の話で試召戦争を始めたいのですが・・・

まあ、行けるかどうか楽しみにしていてください!

因みにシャルナクのセリフについてですが、最初はカタカナのみにして、少しずつ漢字を入れて行きたいと思います。


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第5話

もしかしたら若干キャラが崩壊しているかもしれません。

それでも俺はただ、自分が書きたい作品のために書いてきた。俺は、悩まない。完成させた作品が現れたなら…投稿する…までだ!

・・・よろしくお願いします。


「勝てるわけがない」

「これ以上設備を落とされるなんて嫌だ」

「姫路さんがいたらもう何もいらない」

「姫路さん、結婚してくれ!」

 

 

Aクラスへの宣戦布告。

それはこのFクラスにとっては現実味の乏しい提案にしか思えなかった。

 

一部求愛の声があったような気がしたが多分気のせいだろうと思いたい。

 

この文月学園では4年前からテストの点数に上限が無い。その為、一時間の時間制限か、無制限の時間の中でひたすら問題を解いていくので個人の能力ではありえない点数を叩きだすことができるのである。

 そして一番重要なのは試験召喚システムと言うそのテストの点数に応じた強さの召喚獣と呼ばれるものを呼び出すシステムだ。なお、原理は科学とオカルトと偶然らしい。

 

「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせて見せる!」

 

そんな圧倒的な戦力差を知りながらも雄二は自信満々に宣言する。

 

「何をバカなことを」

 

「できるわけないだろう」

 

「何の根拠があってそんな事を・・・」

 

やはりと言っていいほどに否定的な意見が教室中に響き渡る。

それもそうである。 個人の能力でありえない点数を叩き出すことができるという事はAクラスとFクラスとの点数差は文字どうり桁が違うのである。

まともに戦ったとしたら、Aクラス生徒一人に対してFクラス3人掛りでも勝てるかどうか・・・ いや、相手によっては10人がかりでも厳しいかもしれないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まともに戦い合えばの話ではあるのだが・・・

 

「根拠ならある。 このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素がそろっている。 それを今から説明してやる」

 

不敵な笑みを浮かべ、壇上から皆を見下ろす悪友。

 

「おい、康太。 畳に顔を付けて姫路のスカートを除いてないで前に来い」

 

「・・・・・・・・!!(ブンブン!)」

 

「は、はわっ!」

 

必死に顔と手を振って否定のポーズをとる男子生徒。

 一方姫路は覗かれていたスカートの裾を抑える。

 そして呼ばれた男子生徒は頬の畳の後を押えながら前に立つ。

 

 

「土屋康太。こいつがあの有名な、華麗なる性識者(ムッツリーニ)だ」

 

 

「・・・・・・・・!!(ブンブン!)」

 

正直、土屋康太という人物はあまり有名じゃない。でもムッツリーニという名前は別だ。 その名は男子生徒には畏怖と畏敬を、女子生徒には軽蔑をもってあげられる。

 

 

「あのムッツリーニだと・・・・?」

 

「バカな、奴がそうだというのか・・・・?」

 

「だが、あそこまで明らかな覗きの証拠をいまだに隠そうとしているぞ・・・」

 

「ああ、ムッツリーニの名に恥じない姿だ・・・」

 

「いや、普通はとんでもない恥だろう・・・」

 

 

Fクラス男子のバカ発言を聞いてアトラスが突っ込む。

 

「そして、シャルナク!」

 

「コンドハ オレカ・・・」

 

次にシャルナクが立ち上がる。

 

「シャルナク。 FFF団のメンバーは分かっているかもしれないが、こいつの暗殺スキルは相当なものだ。 FFF団がかつてこいつに『裁きを』と言って襲おうとした時に睨んだだけで何もできなくなったって聞いているが・・・」

 

そう、彼は文月学園に入学してしばらくした後に演劇に興味を持ち、その時のつながりで秀吉と仲が良くなったのだが、嫉妬に狂ったFFF団が40人がかりでシャルナクに襲撃を仕掛けようとしたのだが、逆に殺気を叩き付けられ、全員が動けなくなってしまったのである。

中には恐怖のあまりに大半が気絶してしまい、殺気を向けられた訳でもない秀吉ですら驚くぐらいであるからその恐ろしさは想像に難くないであろう・・・

 

「ああ、思い出しただけで足が・・・」

 

思い出した際の恐怖だけで足が震えて動けなくなる者

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・」

 

その恐怖のあまりに泣きながら謝りだす者

 

「命だけはお助けをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・」

 

命乞いをする者など一瞬でFクラス教室は阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わった。

 

「ソコマデイウカ・・・」

 

『拙者はあの時にFFF団とやらの被害を確認していたが、財布を置いて逃げて言った者が7人、動くこともできずにへたり込んでしまう者が5人、後の者はそれだけの余裕もなく気絶していたでござる。』

 

 

『『『自然災害か!』』』

 

モデルPの発言にほかのライブメタル達はそうツッコミを入れていた。

 

 

「姫路の事は説明するまでもないだろう。 皆だって本来の力は知っているはずだ」

 

「え?私ですか?」

 

「ああ、うちの主戦力た。期待している。」

 

もし試召戦争に至るとするなら彼女程頼りになる戦力はいないだろう。

 

「そうだ、姫路さんもいるんだった!」

 

「彼女ならAクラスにも引けを取らない!」

 

「ああ。彼女がいるなら何もいらないさ!」

 

さっきから誰だ? 姫路さんにラブコールを送り続ける奴は・・・

 

「・・・(ドサッ・・・)」

 

 

「え?」

 

「(コンゴノカイギニ シショウヲ キタスタメ ウザイ ラブコール ヲ オクル ヤツニハ タイジョウ シテモラウ・・・)」

 

どうやらシャルナクがあまりの姫路ラブコールのウザさに耐えきれず、あの一瞬で誰にも認識されないまま気絶させたようだった。

 

「木下秀吉だっている」

 

木下秀吉、彼は学力では名前は聞かないが、ほかの事で有名だったりする。 演劇部のホープだとか、双子のお姉さんの事とか、シャルナクとまともに会話できる数少ない人物の一人とか・・・

 

「おお・・・」

 

「ああ、あいつ確か、木下優子の・・・」

 

「当然俺も全力を尽くす」

 

「確かになんだかやってくれそうなやつだ」

 

「坂本って昔は神童って呼ばれていなかったか?」

 

「じゃあ、振り分け試験の時は体調を崩したとかだったのか?」

 

「実力はAクラスが2人もいるってことだよな!」

 

気が付けばクラスの指揮は確実に上がっていたのだが・・・

 

「それに、吉井明久・アトラス・そして途中で保健室に行ってしまったがテティスだっている」

 

・・・・・・・シーン

 

そして一気に下がる。

 

「誰だ吉井って?」

 

「聞いたことないぞ?」

 

「ちょっと!どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ!今そんな必要ないよね!?まさかオチの代わりか!? どんどん士気が下がっていっているけどどうして僕の名前を出す必要性があるの!?」

 

なんでいきなりろくでもないことを話し出すのかと明久はツッコミを入れ続ける。

 

「知らない奴らに教えてやる。 こいつらの肩書は観察処分者だ・・・」

 

あ、言っちゃった・・・

 

「それって、バカの代名詞じゃなかったっけ?」

 

クラスの誰かがそんな致命的なセリフを口にする。

 

「ち、違うよっ!ちょっとおちゃめな高校生につけられる愛称で・・・」

 

「いや、正確にはバカの代名詞ではなく、問題児に与えられる処分だ」

 

「あの、それってどういうものなんですか?」

 

 よく分かってようで、姫路が質問してきた。

 

 「具体的には教師の雑用係だ。力仕事とかそう言ったものを類のを特別に物に触れるようになった召喚獣でこなすんだ」

 

本来、召喚獣は物に触れることはできない。 だが、明久・アトラス・テティスの3人の召喚獣は特殊仕様で者に触れることができるのである。

だがしかし、観察処分に関係なく召喚獣を呼び出すには教師の立ち合いが必要になる。つまり、自由には使えないという事なのである。 しかも、観察処分仕様の召喚獣は召喚獣がうけた負担の影響が召喚者にも影響する。 つまり、召喚獣がダメージや疲労の影響を受けると召喚者本人にも悪影響が出てくるのである。

例えば、「召喚獣が殴られると召喚者にもその痛覚が襲いかかってくる」と言った現象が主な負担である。

 

「おいおい。それじゃあ観察処分者ってことは試召戦争中に召喚獣がやられると本人も痛いってことだよな?」

「それじゃあおいそれと召喚できないヤツが3人いるってことだよな」

 

そんな否定的な言葉が出てくるが、

 

「気にするな。 どうせ、居てもいなくても同じような雑魚だ」

 

あーあ・・・ 本来のアトラスとテティスの点数を知ったら雄二驚くだろうなぁ・・・

アトラスなんてこめかみがピクピクと引き攣っているし・・・

テティスもこの話を聞いたら怒るだろうし、まあ、僕は黙って雄二がボコられる様を黙ってみているか・・・

 

『おい!ちょっとは助けてやれ・・・』

 

『酷いでござるよ・・・』

 

なんてことを考えていたらモデルZとモデルPに怒られた。

 

「とにかくだ、まずは俺たちの力を示すために『Dクラス』を征服しに行こうと思う。」

 

死のカウントダウンに気付かないまま雄二は話を進めていった。

 

「みんなこの境遇は大いに不満があるだろう?」

 

「「大有りじゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

「ならみんなペンを取れ! 出陣の準備だ!」

 

「「おおーーーーーっ!」」

 

更に雄二は皆を鼓舞し続ける。それに呼応するようにクラス中がヒートアップしていく。 

 

「俺たちに必要なのはこんな腐った畳なんかじゃねぇ! Aクラスのシステムデスクだ!」

 

「おおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 

「お、おーー」

 

クラスの雰囲気にのまれたらしい、姫路も小さく拳を作り掲げていた。 思わず守ってあげたくなる可愛さだった。 実際には僕が守られるんだろうけどね・・・

 

『何を言っている? 観察処分の仕事とアトラスとの戦・・・』

 

ネタバレ禁止と言わんがばかりにモデルZの言葉をほかのライブメタル達が塞ぎだした。

モデルZは『ムーッ!ムーッ!』と口が塞がれたかのごとく言語機能を封じられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロックマンズside

 

「誰が、居てもいなくても同じ雑魚だって・・・?」

 

「僕が保健室に行っている間にいったい何がどういうことか説明してほしいんだけどなぁ・・・?」

 

雄二の演説が終了して少し後、吐き気が抑えられ、保健室から戻ってきたテティスとアトラスが雄二に詰め寄っていた。 アトラスに至ってはガンを飛ばしながら胸倉をつかんでいて、不良のカツアゲのようだった。

 

「お、おい! マジモンの喧嘩の話じゃないだろ! 試召戦争の話であって・・・」

 

どうやら、雄二は先程の演説の際の雑魚発言を、ロックマン達が現実の弱さと勘違いしていると思い込んでいるようであった。

しかし実際はそんな些細なことではなかったのだが・・・

 

「そんなことは分かっている。 私たちがそんなに頭が悪いように見えているのかという事だ。 このゴリラが!」

 

「誰がゴリ・・・ って悪かった! だからその脚で蹴りかまそうとするんじゃねぇって!」

 

でも実際、問題児の称号である観察処分者とFクラス入りの事実を同時に印象付けられたら学力の問題も勘違 いしても普通はしょうがないだろう・・・

 

「ソンナコトヲ イウノナラ サクセンジニ ヒメジトイッショニ シケンヲ ウケサセタラ ドウダ?」

 

珍しくシャルナクが雄二を庇いつつ本来の学力を証明させる方法を提示してきた。

 

「ふう~・・・ 分かった。 だけどやるからにはみんながビビるくらいの点数をたたき出せ!」

 

シャルナクの提案を受け入れると同時にアトラスとテティスにその条件を与えることにした。

 

「ふん、お前に言われるまでもない。 私たちの本来の力を見せてやる。」

 

「見ててよーユウジ! 皆を驚かせてやるからねー!」

 

二人は試召戦争開始に備えて筆記用具の用意を始める。 

 

「そう言えば、お前ら明久を止めようとしただろ。 余計なことしようとしやがって・・・」

 

雄二はアトラス達に明久の事で話を始めた。 今現在明久は宣戦布告の使者としてDクラスに向かっているのであった。

 

「何言っているの、ユウジ?」

 

「あそこは明久以外にもあと一人ついて行かせるべきだったな。 あそこで止めようとした私たちは無事でいられるだろうが・・・」

 

「ソレイゼンニ オレタチハ フタリイジョウ イレバ カクジツニ シカエシハ カイヒ デキルガ・・・」

 

そしてシャルナクは不敵な笑みを浮かべながら続けて言う・・・

 

「オマエラハ ダイジョウブカナ・・・」

 

その一方で明久はというと・・・

 

ロックマンズside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久side

 

アトラス達が雄二と話をする少し前の事であった。

 

 

 

 

 

~ 回想中 ~

 

 

『明久。 お前にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!』

 

『確か、下位クラスの使者ってたいていひどい目に合うんだよね?』

 

明久はジト目で雄二にそう言い返す。

 

『大丈夫だ。 奴らがお前に危害を加えることはない。騙されたと思っていってみろ』

 

『本当に?』

 

わずかな逡巡すらすらなく、力強く言い張った雄二。

 

『大丈夫、俺を信じろ。 俺は友人を騙すような真似はしない』

 

平然とウソを言ってのける雄二。 実際にボコられても平然と「やはりそうきたか」と言い放つだろう。

そんな都合のいい事なんてさせないと思った明久は・・・

 

 

『わかったよ。それなら使者は僕がやるよ』

 

『ああ、頼んだぞ』

 

クラスメイトの歓声と握手に送り出され、明久は使者らしく、毅然とした態度でDクラスに向かって歩き始めた。

そして、教室を出る際に・・・

 

 

 

 

 

 

『雄二・・・ もし、襲われたらDクラス共々まとめて同じ仕返しするから・・・』

 

『『『え・・・?』』』

 

 

はっきりと聞こえなかったが、明久はもし嘘でも大丈夫とでも言うように一言つぶやいた後、そのままDクラスに向かっていった。

 

 

~ 回想終わり ~

 

 

 

そして現在、Dクラスの前に明久はいた。

 

『明久、大丈夫か? これから言う事は忘れていないよな?』

 

モデルZが何度も明久に確認を取る。 実はこれで5回目である。 明久のバカはライブメタル達にも周知の事実で特にパートナーのモデルZはそのバカの行動にいつも振り回されているのである。 あの姉思いの少女を助ける時と言ったら・・・

 

「大丈夫! 問題ないよ、モデルZ。 そっちこそ準備はいいか!?」

 

『ああ、戦いの始まりだ!』

 

「『行くぞ!』」

 

悠々と構え、目的を確認した後、自信に満ち溢れた表情で「モデルZと共にDクラスのドアを蹴破り、中へ突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 

「な、なんだぁー!」

 

「「キャァーーーーー!!」」

 

勢いよくドアが蹴破られた後悠々と入っていく明久。

 

 

「Dクラス! 我々FクラスはDクラスに試召戦争を申し込む!」

 

そして勢いよく明久は開戦宣言を続ける。

 

「時間は午後1時から開始! 受け付けない場合、設備が1ランク落とされるのを忘れるな! 以上だ!」

 

そう言ってそのまま教室から出ようとすると・・・

 

「「「ちょっと待てやぁーーーーー!!」」」

 

Dクラスの男子生徒に囲まれてしまった。 それもそうである。 ついさっきまで普通の教室で普通の友達と普通に友達と様々な話で盛り上がっていた平穏な光景がいきなり最下位クラスのバカによって教室のドアごとぶち壊しにされ、更にただの試召戦争の使者ですと言わんばかりに開戦宣言をしに来たのだから。

一部の女子は蹴破られたドアを見て震えているものもいる。 どれほどの衝撃だったかなんて言うまでもない。

 

「いきなり何してくれてんだ! このまま返すなんておもうなよ!」

 

「え? 普通に殴り込みするみたいに入って来ただけじゃん? なにかおかしいことでもあった?」

 

「「「ふざけんじゃねぇーーー!!」」」

 

『さすがにやりすぎだったか・・・』

 

「(モデルZが言い出したんじゃないか! それに悪ノリした僕もどうかと思うけど!)」

 

のんきに念話で会話している明久とモデルZ。

 

「進級早々舐めやがって!」

 

「このまま生かして帰すと思うなよ!」

 

「「「殺っちまえぇぇぇぇぇ!」」」

 

あまりにも滅茶苦茶な明久にDクラス男子達は明久に一斉に襲い掛かった。

そんな中、明久はまるで後ろにも目が付いているかのごとく冷静に攻撃を避けた。

 

「なっ!?」

 

当たる直前で最小限の動きで回避してのけた明久。

その空を切った拳の向かう先は仲間の顔前であった。

 

「おおい! あぶねぇだろう!」

 

「この野郎! ちょろちょろ避けやがって!」

 

「全員で殴りかかるんじゃねぇ! 一度に3人ずつで攻めろ!」

 

どうにか即興で連携を組み同士討ちを避けつつ、攻撃を続けようとするDクラスだったが・・・

 

「その程度で僕に当てるのは無理だよ・・・っと!」

 

これも簡単に回避し、逆に足のつま先で顎を蹴るようにしながら寸止めしていた。

それにはさすがの男子達も動けなかった。 さすがに数に物を言わせれば体力切れでリンチにしてボコボコにすることができるかもしれない。

だが、それを実行するために先陣を切れるものがいるだろうか? 

 

 

 

 

答えはNOである。

 

それも当然である。 軍人として死ぬ覚悟をしているわけでもないのに、ましてやつい先ほどまで平和的に過ごしていた学生がそんな真似は実行不可能に決まっている。

 

 

「もう終わり? なら僕は教室に戻るから、僕を倒したいなら召喚獣戦で決着をつけようよ? 僕は観察処分者だから痛みもフィールドバックするし、報復にはもってこいだよ? じゃぁね!」

 

そう言って余裕綽綽でDクラスを出ていこうとすると一人の男子生徒に呼び止められた。

 

「まて、君は吉井明久・・・だったか?」

 

「何?」

 

別に無視してそのまま雄二達に騙した罪の制裁を加えようとしてもよかったが、人当たりがよさそうな感じについ足を止めて向き直してしまった。

 

「僕は平賀源二。 今回の暴力に関しては代表としてお詫びする。」

 

どうやら、彼が代表だったようだ・・・ 代表が普通の人で本当によかったと思う。

 

「けど、今後はドアを蹴破って侵入するなんて真似はやめてくれ。 クラスの皆に対しても迷惑がかかるし、学校の備品を壊して問題になるのは君の方なんだから」

 

「うっ! ごめん・・・ 今度からは気をつけるよ・・・」

 

あまりにも正論過ぎて言葉に詰まってしまった明久。 わずかなお詫びとして、幸いにもガラスも割れていない意外と頑丈なドアの状態を確認した後、ドアを一人ではめ直し、おびえていた女子に土下座して謝り倒して、許してもらった後、教室を出ていった・・・

 

明久side end

 

 

その後、先ほどのウソに対して若干キレ気味であった明久は笑顔で送り出した雄二達に仕返し代わりに足払いを叩き込もうとしたが、一足先に回復試験を終えたテティスの仲裁もあって、大事には至らなかった。




ミーティングは軽く流して、Dクラス戦をさっさと開始したいと思います。


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第6話

ミーティングを軽くするつもりが意外と時間がかかってしまった。

この回でDクラス戦開催です。

因みにこちらの作品を読んでくださった方々に質問なんですが、これまでにプレイしたロックマンシリーズの中でどれが一番好きでしたか?



「そう言えば、なぜDクラスからなのじゃ? 段階を踏むならEクラス、勝負に出るならAクラスじゃろう?」

 

秀吉の言葉に全員がうなずく。

 

「Eクラスと戦わないのは勝負するまでもないからだ。 ここにいるメンツを見てみろ。」

 

そう言われたみんなは周りを確認して、「うん」と頷く。

 

「美少女が二人、戦闘バカが一人、カタコト野郎が一人、ショタが一人、馬鹿が二人にムッツリが一人だね」

「誰が美少女だと!?」

「ええっ!? 雄二が美少女に反応するの!?」

「・・・・・・・(ぽっ!)」

「ムッツリーニまで!? ああっどうしよう、僕だけでは突っ込み切れない!」

「とにかく落ち着きなよ、ユウジ、ムッツリーニ」

『いや、あんたも自分がショタ呼ばわりされた事にツッコミなさいよ・・・』

 

モデルLもツッコミを入れた後、話が再開する。

 

「そ、そうだな」

「いや、その前に美少女に反応したことについてツッコミたいのじゃが・・・」

「ま、要するにだな・・・」

 

秀吉の発言を無視して雄二が続ける。

 

「姫路に問題がない今、正面からやりあってもEクラスには勝てる。 だから、Eクラスと戦いあっても意味がないという訳だ」

「ホウ? ナラDクラスアイテデハキビシイトイウワケカ?」

「ああ。確実に勝てるとは言えないな。」

「だったら、なぜAクラスに最初から挑まないの?」

 

Fクラスの最終目標がAクラスならばなぜDクラスに挑むのか、最終目標がAクラスである以上、Dクラスに挑む意味が全く分からなかったのだが・・・

 

「今回の目的はクラスのメンバーに戦争を経験させることと、Dクラスに勝つことで軍の士気を上げることにある・・・ と思うのだがどうだ?」

 

アトラスは気が付いていたのか、雄二に問いかける。

 

「ああ、そうだ。 実際初陣だからな、景気づけもしたいだろ? それにさっき言いかけたAクラス打倒に必要なプロセスでもあるんだ。」

「ダガ、Dクラスニ カテナケレバ ナンノイミモナイガナ・・・」

「負けるわけがないさ」

 

皆の心配を笑い飛ばす雄二

 

「みんなが、協力してくれるなら、Aクラスにだって勝てる。 ・・・いや、俺たちは最強だ!」

 

それは不思議な感覚だった。

根拠のない言葉なのになぜかその気になってくる

雄二の言葉にはそんな力があった。

 

しばらく、明久達はぽかんとしていたが・・・

 

「いいわね、面白そうじゃない!」

「そうじゃな。Aクラスの連中を引きずり落としてやろうかの」

「・・・・・・(ぐっ)」

「が、頑張ります」

「私が本物の戦いというものを見せてやろう!」

『へっ!腕がなるってか、アトラス!? 楽しみにしているぜ!』

「やるからには勝つよ!」

『ええ、精々頑張りなさい!』

「ニンムノトキハヨンデクレ。 カクジツニシトメテミセヨウゾ!」

『拙者も協力するでござる!』

 

打倒Aクラス

荒唐無稽な夢かもしれない。実現不可能な空絵事かもしれない。

しかし、だからと言って何もしなければ始まらないし、何も変わらない。

皆と同じクラスになれたんだから、何かを成し遂げることも悪くない。

そんな思いと共にライブメタル達やロックマン達もやる気を出していた。

 

「そうか。 じゃあ、作戦を説明するそ」

 

涼しい風がそよぐ屋上の上で、皆は必死になって勝利のための作戦の説明を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方Aクラスのヘリオスはというと・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリオスside

 

ヘリオスは休み時間に入っていきなり、教卓を強烈にたたきクラス皆の注目を集めた。

 

「皆! 私の話を聞いてくれ!! お前たちが数か月前からいきなり入り込んできた私の事を信用するのは難しい事だとは思う。 だが、今は私の話に耳を傾けてくれ!!」

 

まるで、演説するかのように全体の注目を集め、話を続ける。

 

「今からFクラスに試召戦争を申し込みたい! そのために代表に話は通してある! 皆の力を貸してくれ!」

 

彼は、この学園に隠れた問題点に危惧し、そのためにまずはFクラスに試召戦争を申し込みたいという話を霧島に持ちかけていた。

彼女は何か思うところがあったのか、考えるようなしぐさをした後同意した。 ただし、「クラスの皆を同意させること」を条件にであったが・・・

 

「ちょっと待って。 状況が理解できないわ。 一体何をどうしてそんな話になったのか説明してくれないかしら?」

 

そう言って説明を求めた彼女の名前は木下優子。 Fクラスに秀吉という双子の弟がいるという事と、学業や運動など多方面で評価を得ている優等生としても有名な少女である。

 

「ああ、順を追って説明しよう。 まず事の経緯から説明すると・・・」

 

そしてヘリオスは順に説明していった。 Fクラスの教室の惨状。 この行き過ぎたスクールカーストの問題点などの説明していくが・・・

 

「話は分かったわ。でもそれってFクラスの自業自得なんじゃないの? FクラスはFクラスらしくバカとして大人しくしていればいいじゃないの! あなた、Fクラスにお友達がいるからって言ってそんな事されてもこっちとしては困るだけなんですけど?」

 

「おろかなる質問・・・ 中途半端な情報と偏見だけで、目の前の物事しか見えんとは・・・」

 

「なんですって!」

 

話の途中で優子は意義が感じられないらしく、今回の試召戦争には否定的な態度をとる。 それに対してヘリオスから愚か者呼ばわりされてしまった優子が怒りだした。

 

「木下さん、今は話の途中だよ? 最後まできちんと話を聞くべきだと僕は思うけど?」

 

「ボクも詳しく聞きたいなぁ? この格差が異常だって言いたいのまでは分かったけど、それを否定するために試召戦争をするというのなら、何で君は下のクラスに入ろうとしなかったの? その気になれば、点数の調整なんて楽勝だったんじゃない?」

 

久保と工藤の二人は優子を止めてヘリオスに説明の続きを求める。 

先程の問題を利用しようとして学園を潰そうとしている者がいる可能性。 それらを回避するために試召戦争を繰り返しながら学園への交渉権を得る必要がある事を説明した。すると先ほどまで、否定的だった優子まで一転して試召戦争の開戦に賛成しだした。

 

「それじゃあ、このままだと文月学園自体が無くなる危険まであるって事?」

「ああ、このままではAクラスとしても・・・いや、クラスどころか学園そのものが非常にまずい。 幸いアトラス達がFクラスにいるから、この事情を説明して・・・」

 

 

ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァン!

 

「「「はい!?」」」

 

クラスの同意が得られそうになったその時であった。いきなり、Dクラスから何かを思いっきり蹴り飛ばしたような騒音が聞こえてきた。

その騒ぎの原因は明久とモデルZだったのだが、そんな事を知る由もなかったヘリオス。

 

「おい、FクラスがDクラスに試召戦争を挑んだらしいぞ! ただ、Fクラスの使者が過激な手を使って暴れたらしい。さっきの騒ぎはそれが原因みたいだ!」

 

クラスメイトが確認しに行ったのだろう。 試召戦争を起こすためにそんな事をするとしたら明久かアトラスあたりだろうと、ヘリオスは思った。

 

「異常なる光景・・・ なぜ学生間の騒ぎでそんな事態になるのだ?・・・」

 

賢者と言われたヘリオスでも明久のバカな行動は全く理解できていなかった。

 

「ああ、大抵下位クラスからの使者ってひどい目に合うらしいからね。 それを回避しようとした結果じゃないのかい?」

『いったい何をどう回避しようとすればそんなことになるんだ・・・』

「ささやかなる問題・・・ この程度で戦争などと騒ぎ立てうろたえるようなものなど最初からたいしたことはない・・・」

『いや、お前は一応平和な国の一学生というものを考えた方がいいぞ・・・』

 

久保が説明してくれたのに対してヘリオスのズレた発言にモデルHはツッコミを入れた。

 

「でも、どうするのよ? このままじゃ、Fクラスに開戦宣言できないわよ?」

 

優子はどうやらFクラスが負けることを前提に考えているようであった。 それもそのはず、Fクラスは学力は最低のクラスであり、振り分け試験の影響がそっくりそのまま召喚獣の点数として反映されているこの状況では、点数において2ランクも上のDクラス相手にかなうはずがないと思うのは普通の反応であろう。

 

「無用な心配・・・ 今回の戦争は確実にFクラスが勝つ。」

「え?」

「どういう事かな? 試験の点数を見ている限りでは、Fクラスが不利にしか見えないんだけど?」

 

ある程度明久達から話を聞いていたヘリオスは3人にFクラスの戦力について説明した。

 

「点数だけに惑わされるな。 Fクラスにはまず、ムッツリーニなるものがいるそうだ。」

「ムッツリーニってあの『寡黙なる性職者』?」

「ああ、この者がいればシャルナクと共に諜報や暗殺活動がやりやすくなるからな。」

 

更にヘリオスが続けて説明する。

 

「そして姫路瑞樹と言う少女。 彼女は学力において本来次席クラスらしいそうだな?」

「「「姫路瑞樹!?」」」

「彼女なら戦闘において短時間しかいられないとはいえ、Fクラスにとって最大の切り札となるだろう。」

「確かに彼女がいるのなら回復試験の時間を稼ぐことができたなら逆転も可能だろうね。」

「姫路さん、途中欠席してしまったのね・・・」

そして・・・

 

「そして私の知る限りでは、先ほど言ったアトラスにテティス、明久がいる」

「「その人たち一体何者よ?聞いたことがないわ?」」

 

どうやら、明久たちはそれほど有名ではないらしい。 ヘリオスは明久達について説明をすることにした。

 

「どうやら知らないようだな・・・ シャルナクを含む4人はわが友であるのと同時にこの3人は観察処分者の称号を持っている」

「優子?観察処分者って何?」

 

どうやら工藤は知らなかったようだ。 優子が観察処分者について説明する。

 

「学園の問題児に与えられる不名誉な称号よ。 大きな問題を起こした生徒に対して簡単に退学にできない代わりに教師の雑用や仕事の手伝いなどをさせられるのがこの観察処分者って訳」

「ふーん」

「だがしかし、あの3人の召喚獣の操作練度は高いぞ。 明久に至っては今の我々では一切攻撃が当てられんくらいにはな」

「「「え・・・?」」」

「しかも観察処分仕様の召喚獣は物体に触れることができるから、下位レベルでも人間の数倍の力を持つと言われているから、それを利用した策も打てるかもしれんな。」

「でも、それでDクラスに勝てたとしても、私たちAクラスに勝てるとは思えないわ!」

「それでもヘリオス君はAクラスに挑んでくると?」

「ああ、何を大義名分にしてくるかはわからないが、それを理由に戦争を申し込んでくるだろうな。もし万が一こちらが負けてしまったら3か月間この環境からいきなり腐った畳とちゃぶ台という人間が生活できん環境に放り込まれることになるだろうからな・・・」

「「「うそ・・・」」」

 

信じられない話にAクラスの皆は驚きを隠せなくなってきた。

 

「・・・だから、Fクラスが戦争に慣れない内に叩くべき」

 

 

霧島が、話をまとめると・・・

 

 

「ふざけやがって! Fクラスの奴らぁ!」

「こちとらこのクラスに入るのにどんだけ苦労したと思っていやがる!」

「それをこんな戦争なんかで一方的に入れ替えられてたまるか!」

 

クラス中から試召戦争に賛同する声が上がった。 

 

 

「・・・みんな覚悟は決まった? AクラスはFクラスに試召戦争を申し込みます。」

「すまない、皆の協力感謝する!」

 

会議を終えると同時にめずらしくヘリオスの感謝の気持ちをみんなに伝えた・・・

 

 

 

 

ヘリオスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後1時・・・ 明久達FクラスはDクラスと交戦状態に入っていた。

 

現在シャルナクは秀吉と共に前線部隊として、明久はその少し後方の中堅部隊として、配置されていたのだが、前線ではお互いから戦死者が続出しているのか、次々と鉄人と共に補習室に連行されていく生徒が増えていた。

 

「戦死者は補習だ!」

「補習室送りは嫌だぁぁぁぁ・・・」

「嫌だ! あんな拷問に耐えられるわけがない・・・」

「これは拷問などではない、立派な教育だ! 補習が終わるころには趣味は勉強、尊敬する人物は二宮金次郎と言った立派な生徒へと仕立てあげてやろう!」

 

『それ、補習どころか洗脳じゃないのか?』

『なぜか拙者、震えが止まらんでござるよ・・・』

 

「お・鬼だ! だ・誰か! た・助け!・・・ 補習室は嫌だぁぁぁぁぁぁぁ・・・(バタン・ガチャッ!)」

 

モデルZとモデルPが鉄人の発言にツッコミを入れている間に次々と戦死者が補習室に連れていかれる・・・

 

 

「島田さん。 中堅部隊総員に通達」

「何よ?」

 

「勝負を挑まれる前に中堅部隊は後方に退避する!」

『明久殿! 貴様とういう者はぁぁぁぁぁぁ!』

「ニゲルナヨ・・・」

「この意気地なし! 目を覚ましなさいよ!」

 

シャルナクから暗殺者時代級の殺気を飛ばされ、島田さんからはチョキで顔を攻撃されそうになった。

 

「ちょっ! それじゃあ、覚ますべき目が潰れちゃうって!」

「ソンナクサッタメ ツブシタホウガ キサマノタメニ ナルトオモウガ・・・」

「ええ! 酷いよ、シャルナク!」

 

「いい、吉井? ウチたちの役割は前線部隊の掩護でしょう? アイツらが消耗して、点数の補給ができるように前線を維持する。 その重要な役割を担っているウチらが逃げちゃったらアイツらが補給できないじゃないのよ!」

 

島田さんがもっともらしいことを言う。

 

「さあ、前線部隊が戻ってくるみたいだし・・・ 総員退避よ!」

 

『おい、さっきと言っていることが全然違うぞ!』

『さっきと言っていることが全然違うでござる!』

 

「吉井! 総員退避で問題ないわね!」

 

色々と問題だらけだが、これでは仕方がないだろう・・・ 明久達はそう思い込むことにした・・・

 

「仕方がないよ! 僕たちには荷が重すぎた!」

「ええそうね、ウチらは精一杯努力したわ!」

『いや、明久! お前がその気になればこの程度の状況をひっくり返せるだろう!?』

 

モデルZが異議を申し立てようとするが、その声はこの場において明久とシャルナクにしか聞こえない。

モデルZを無視し、後方へ下がろうとする明久達に本陣から伝令がやってきた。

 

「隊長! 代表より伝令です。」

 

そう言って伝令の横田はメモを見ながらこう告げた。 それは前線のシャルナクの唇の動きと連動していたという・・・

 

「『逃げたらコロス(ニゲタラコロス)』」

 

「「全員突撃しろぉぉーーっ!(しなさい!) 全力で前線部隊の撤退を掩護するんだ(するのよ)!」」

『『手の平返しが速いな(でござるな)!』』

 

いつの間にか前線部隊の保護に回っていた! 気が付いたら全力で突撃していた! 最早反射としか言いようがない速度で中堅部隊はDクラスの部隊に立ち向かっていた。

と、そこで前方から走ってくる美少女(誤字に有らず)秀吉の姿がそこにはあった。

 

「明久! 援軍に来てくれたのじゃな!」

 

そう言った秀吉は、希望に満ち溢れたかのような可愛らしい表情で明久に話しかけてきた。

 

「秀吉、皆! 大丈夫!」

「皆、どうにか戦死だけは免れておるが、大分削られてしまっておる。 召喚獣ももうヘロヘロの状態じゃ・・・ 速く回復試験を受けてこないといかんな」

「そうか。 それなら一旦下がって回復試験を受けてきて! その間は僕たちに任せて!」

 

明久は前線部隊の皆を下がらせ、いつでも行けるように構える。

どうやらDクラスは科学担当の五十嵐先生と布施先生を連れて来たようだった。

今現在立ち会っている教師はは学年主任一人だけである為、科学教師を呼び出すことで一気にカタを付けようと考えたのだろう。

 

「皆、科学に自信は?」

「「全くない!」」

「ウチも大体60点台の常連よ」

「それなら、五十嵐先生と布施先生に近づかないように注意しながら、学年主任の所に行こう!」

「「応!」」

 

そう言って部隊を数班に分けて目立たないようにしながら、学年主任のフィールドに向かっていく明久達。

 

「あーっ! あそこにいるのはFクラスの美波お姉さま! おっ姉ぇっ様ぁぁぁ!」

「くっ、ぬかったわ!」

 

しかしDクラスの一人に見つかってしまい、五十嵐先生を伴ってこちらに向かってきていた。

 

「島田さん、彼女の事を任せたよ! 僕らは先に学年主任のフィールドに向かうから!」

「ちょっ!ここは『ここは僕に任せて先に行け!』とかじゃないの!?」

「そんなセリフは現実には通用しないよ!」

 

そう言って明久達は島田さんを見捨てて先に進もうとする・・・

 

「このお姉さまをたぶらかす豚野郎! 絶対に逃しませんわ!」

「ちょっ、美春! 吉井! 美春がそっちに向かっていったわよ!」

「ええええええええ!」

 

「「『天罰だ・・・』」」

 

一体何を思ったのか、美春と呼ばれた少女は明久に向かって勝負を挑んできた。

 

「豚野郎! 美春が科学のフィールドで勝負を申し込みますわ!」

 

「承認します」

 

 

そう言って五十嵐先生が、明久と美春の勝負を承認召喚フィールドを展開する。

 

「「試験召喚獣・・・ 召喚!(サモン)」」

 

二人は同時に召喚獣を召喚する。 すると召喚獣の頭上に点数が表示された。

 

 

 

 

 

Fクラス 吉井明久vsDクラス 清水美春

 

科学  52点vs97点

 

 

「貴方なんかにお姉さまは渡しません! さあ、大人しくやられなさい!」

 

どうやら、この子は明久が島田さんの事が好きだと勘違いしているようであった。

そこで明久は・・・

 

 

 

「重破斬(じゅうはざん)!」

「くっ!」

 

モデルZの中に封印されていた剣術の技の一つ『重破斬』で美春の召喚獣を斬り伏せた。 若干距離があったこともあり、正面から突っ込んでくる彼女の召喚獣を切り伏せるなら1撃がとても重い技の方が良かったと思ったからでもある。

その結果、彼女の召喚獣はギリギリで防いだもののその重たい一撃のせいで大ダメージを追ってしまった。

 

「清水さん、落ち着くんだ! 僕は別に島田さんの事は好きじゃない! 君がもし彼女との愛を育みたいというのならまず島田さんを倒して同じタイミングで僕が倒せば二人は同時に補習室に送られるんじゃないのかな?」

『明久! お前鬼か!』

「この豚野郎! いきなり何を・・・はっ!(キュピーン!)」

 

明久のいきなりの提案を一蹴しようとする美春であったが、何を思いついたのか召喚獣に立ち上がるよう命令した。

 

「清水美春は吉井との勝負から美波お姉さまと勝負へと変更いたします。」

「吉井ぃぃぃ~! 謀ったわね、吉井ぃぃぃぃ!」

 

そう言って明久に殴りかかろうとする島田さんだったが・・・

 

「承認します」

 

五十嵐先生はなぜかそのまま承認してしまった。 どうやら明久と美春の話を交渉と捉えてそのまま終了とし、そのまま、島田さんと美春の勝負を承認したのである。

 

「「『えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!』」」

 

明久と美春を除くその場の人間全員が驚いた。 まさかこんな滅茶苦茶な取引が成立するとは思わなかったからである。

 

「いきます、お姉さま! 召喚!(サモン)

「吉井ぃぃぃぃぃぃぃぃ! 後で覚えてなさいよぉ~ 召喚!(サモン)

 

いきなり勝負を承認されしかも一方的に美春が召喚してきたために、島田も半泣きの状態で召喚獣を召喚した。

 

Fクラス島田美波 vs Dクラス清水美春

 

科学 64点  vs 48点

 

「お姉さまに捨てられて以来、美春は一日千秋の思いでお姉さまを待っていました・・・」

「いい加減ウチの事は諦めてよぉ・・・」

 

明久に売られた悲しみか、口調が若干弱気になっている島田さん・・・ 島田さんの召喚獣も若干怯えているようであったが、どうにか美春召喚獣の剣をサーベルで捌いていた。

 

「来ないでぇ・・・ ウチは普通に男が好きなの!」

「嘘です! 本当は美春の事を愛してくださっているはずです!」

「この・・・ わからず屋ぁ!」

 

追い詰められた島田さんの召喚獣は覚悟を決めたように正面から特攻をかけた。 だが、防ごうとしている過程で点を削られてしまい、お互いの点数がほぼ互角となってしまっていた。

そんな中二人の召喚獣は真っ向から勝負を挑み、力比べになっていた。

見ている方まで力が入りそうな鍔迫り合いを繰り返しながら互角の戦いをしていた二人だったが、数合の斬り合いの中で均衡が崩れてしまった。

島田さんの召喚獣のサーベルが遠くに弾き飛ばされてしまい、美春の召喚獣の剣が島田さんの召喚獣の喉元を突き付けているからであった。

 

「さ、お姉さま♡ 勝負はつきましたね♡?」

「嫌ぁ! 補習室は嫌ァァァァっ!」

「補習室? ふふっ・・・」

 

いつも強気な島田さんが取り乱す。 それはそうである。 誰だって補習は嫌だろう・・・

だが、その言葉に対して、美春は島田さんの手を取りながらどこかへと行こうとする。 

 

『お、おい明久・・・ あの女・・・ 島田を連れていったいどこに行く気なんだ・・・』

 

美春が島田さんを連れて向かう先は『保健室』であった・・・

彼女を連れていく美春のその笑顔は戦争後に『慈愛に満ちた天使の表情にも似たすんだ瞳をしていて、それでいてとても危なっかしい狂気のようなものを感じ取った』言う証言が一部のFクラス男子から取れた為、かなり危ないことになるのは間違いなかった。

 

「み・・・美春?」

「さあお姉さま、美春と保健室で共に愛を育みましょう・・・」

 

そう、明久の発言を一蹴したかと思った後、何かを思いついたような表情をして立ち上がった理由にはこんなことを考えていたためであった。

美春が島田さんと行こうとしたのは補習室などではなく保健室なのであった。

流石にそれに気が付いた島田さんは抵抗したが、思いのほか美春の手は力強くそのまま保健室に連れてい行かれた・・・

 

「ふふっ。 お姉さま、今ならベッドが空いていますからね。」

 

そう言う美春の表情は異性ならばモデルZや明久のようなタイプ以外なら一発で恋に落ちるほどに愛に満ちた美しい微笑みであった・・・

 

「よ、吉井! 今すぐフォローを! このままじゃウチ、補習室送りよりもはるかに危険な気がするの!」

 

だが、今の状況は明らかに異常だ。 その微笑みを向けているのは自らがお姉さまと慕う同性で、しかも何をする気なのか、有利な立場に立ちそのまま保健室のベッドに連れて行こうと言うのだから。

明久もさすがに止めようとしたが・・・

 

「(殺します・・・・ お姉さまとの愛を邪魔する者は豚野郎でなくても全員殺します・・・)」

 

完全に男子全員に対して殺気を丸出しである・・・ 明久達にはもはや美春を止めるだけの勇気は無かった。

 

「島田さん! 僕たちは君の事を3時間くらいは忘れない!」

「吉井! 何でそんな別れみたいなセリフを! って3時間って何よ!?」

「さあ、お姉さま! もう少しで保健室ですの。」

「保健室は嫌ァァァァ・・・」

 

ガラガラガラ・・・ ピシャッ! そんなドアの開閉音と共に二人は保健室に消えていった・・・ 召喚獣を残したまま・・・

いつの間にかDクラスの増援とFクラスの回復試験を終えた前線部隊組が到着していたが、彼らもこの異様な光景に対して硬直していた・・・

その表情はもはや何がどうなっているのか理解できないと言わんがばかりの顔であった

 

 

「ちょっ! 美春~!」

「ああ・・・ お姉さまぁ・・・」

 

『ちょっと一体何がどうなっているのよ?』

『拙者達が戦っていた時はこんな状況になる要素は一切なかったでござるが・・・』

「リカイフノウ! リカイフノウ!!」

「ふん、あらかた百合の趣味がある女がいて、そいつに島田が連れていかれたといったところか・・・」

「ねえ、モデルL。 百合って何?」

『あんたは知らなくていいの・・・』

『オイオイ・・・ 色恋沙汰に疎いオレでもわかるぞ! 流石にこれ以上はマズいだろ! 早く助けてやれって!』

 

そう言ってやってきたのは姫路達よりもひとまず先に試験を終え、前線部隊と合流したアトラス達であった。

 

「それではひとまず、この二人の召喚獣はまとめて消してもよいかのう? そうすれば鉄人が補習室に連れて行ってくれるじゃろうし・・・」

「ヒデヨシドノ・・・ ソウシテクレ・・・」

 

試験召喚!(サモン)

 

そう言って呼ばれた秀吉の召喚獣が(科学59点)二人の召喚獣を横に薙ぎ払った・・・

 

 

 

 

島田美波 vs 清水美春

 

DEAD vs DEAD

 

 

これで戦死者となった二人は鉄人に連れられて補習室行きとなるだろう・・・ 清水さんは大説教を食らうだろうけど・・・

 

 

「戦死者は補習~!」

「結局補習室に連れていかれるのね・・・」

「美春はお姉さまと一緒ならどこでも天国ですわ!」

 

なんて声が聞こえ、島田さんの手首には鎖が引きちぎられた手錠がされている疲れ切った姿で連行されていたが、多分気のせいだと信じたい男子達の姿がそこにはあった・・・

 

 

「皆、今だ! 総員突げ・・・」

「待て!」

「「「!?」」」

 

あまりにも規格外すぎる出来事に唖然としているDクラスに対して不意打ちを決めようとした明久だったが、そこでいきなりアトラスが止めに入ったのである。

 

「ここは私たちに任せて、お前がDクラスの代表を打ち取りに行って来い!」

「アトラス!」

「ここはボクも参加させてもらおうかな?」

「テティス! 二人ともいきなり何言っているの! 僕らの作戦は・・・」 

「ユウジと話して作戦を変更することになったんだ。 ヒメジはしばらく切り札として隠しておいて、アキヒサがDクラス代表を討ち取るっていう作戦にね・・・」

 

いきなりの作戦変更に中堅部隊にいたメンバーは皆驚いていた・・・

だが、1番に動揺していたのは明久本人であった。

それもそのはず、本来学園次席の子が担当するはずだった役割を自分が果たすこととなったのだから・・・

 

「シャルナク!秀吉! お前たちも明久について行け! そこまでの道のりでの教科は古典の担当教師に待機してもらうよう、坂本側の本隊を借りてきて待機している!」

 

「アア、ワカッタ・・・」

「うむ、心得た!」

 

そう言って、二人は明久を連れ出し、前線のDクラスの部隊を強行突破。 一気にDクラスの教室へと向かう・・・

 

「「「試験召喚!(サモン)」」」

 

後ろからはアトラス達が戦いを始めたようだった。

3人に対してDクラスの生徒が数名ずつの班を組んで勝負を挑み続けてくる・・・

決着の時は近い・・・




美波アンチの予定でしたが、取り消します。

どうもアンチ方向でからめられなくなってきたためです。

どちらかと言うと隠れS共の手によるいじられキャラとして扱う事になりました。
時々滅茶苦茶やることになると思いますが、後悔はありません。


色々と訂正しておきました。 後になって気が付く誤字脱字www




重破斬(じゅうはざん)

「ロックマンx8」に出てきたゼロのラーニング技。
武器を両手に持ち、一気に振り下ろし攻撃を叩き込む。
敵のリフレクトを無視した攻撃ができる為、かなり便利な技である。(個人的にですが・・・)
ただし欠点として、発動時に多少の間がある為、使用時は注意が必要でもある。


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第7話

ようやく完成。

バトルシーンを書き上げるのって難しいですね。
書き直しを何度もして、原作や他作品を何度も読み直したりしてようやく投稿します。

この展開は・・・


アトラスside

 

 

「「「召喚(サモン)」」」

 

Fクラスアトラス+FFF団×3vsDクラス増援部隊×13

 

化学  197点+47点×3vs合計1354点(平均104点) 

 

 

 

アトラスは僅か数人の手勢だけでDクラスの増援部隊の相手をしていた。

アトラスの召喚獣は動きがかなり遅い。 実際全身に重装甲のアーマーを装備し、武器も防具を兼ねた手甲だというのだからそれも仕方ないのだが・・・

 

「おらぁぁぁぁ!」

「くらえぇぇぇぇぇ!」

 

果敢に攻撃を繰り出すDクラスであったが・・・

 

「(ドーン!←殴り飛ばされた音・・・)ぎゃぁぁっぁあぁぁぁぁ!」

「嘘だろ!何故こちらの攻撃が効かないんだぁぁぁ!」

「いくらそっちの点数が高いって言っても流石におかしいだろ!」

「むしろ平然としてそのまま百発百中のカウンター決めるとかありえねぇぇぇぇ!」

 

苦戦していたのはむしろDクラスの方であった。 動きが遅い代わりに、攻撃力と防御力がともに高く、それでいてアトラス本人の操作精度も相まってたった一発の攻撃で確実に敵の戦力を削っていた。

髪を掴まれたまま顔面に膝蹴りを決められた召喚獣・腹部に武器でもある手甲で殴りつけられ、悶絶している召喚獣・アッパーを決められ天井にめり込んでいる召喚獣・足払いで転ばされた後に顔面に蹴りを叩き込まれた召喚獣などその光景は強者による一方的な蹂躙と言ってもいい光景であった・・・

その結果

 

化学

FFF団×3vsDクラス×6

 

平均45点vs平均20点

 

 

 

万が一に初撃を生きのびたとしても、後続のFFF団のリンチに会ってしまい、即刻補習室送りと言うまさにアトラス無双と言ってもいい光景であった。

 

「くーやーしーいぃぃぃぃぃ!」

「俺の召喚獣なんて天井に突き刺さっていたままサンドバッグにされていたんですけど・・・」

「「容赦無く顔面に蹴りを叩き込まれて悶絶しているこっちよりはましだよ!!」」

「死神が・・・ 死神がぁぁぁぁ・・・」

「「「上には上がいたか・・・」」」

 

中にはトラウマを持ってしまった人がいたようであったが、アトラスはどうでもいいと言うようにため息をついた後そのままFFF団に代表の護衛の指示を出しDクラスの教室へと向かっていった。

 

 

Dクラス増援部隊 2分42秒DEAD

 

アトラスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テティスside

 

テティスは高橋先生のフィールドで教科を変更しDクラスの増援部隊+前衛部隊の生き残りと相手にしていた。

 

 

「「「召喚(サモン)!」」」

 

 

Fクラス テティス+FFF団×16vsDクラス混成部隊×20

 

生物

472点+平均37点vs合計1740点(平均87点)

 

「「「嘘だろ!Aクラス主席レベルだと! ありえねぇ!」」」

「酷いやみんな・・・ べつに皆僕と同じ勉強すれば同じ点を取れると思うけど・・・」

「「「(そんな事できるのはお前ぐらいだよ!)」」」

『あんた、自分の学力を自覚しなさいよ・・・』

「まあいいか・・・ いくよ! 腕輪発動!」

 

テティスは180点と言う膨大な点数を消費し腕輪を発動させる。するとこのフィールドの中が海の中へと変化していった。

 

「僕の腕輪は召喚フィールドを疑似的に海中にすることができるのさ。」

 

そう言うテティスだが、肝心な腕輪を発動させたテティスの召喚獣が見当たらなかった。

Dクラスはとっさに防御態勢を取った。

だが、なかなかテティスの召喚獣の姿が見えない。

 

 

わずか数秒の時間が数分にも感じられるほどの緊張感・・・

その緊張感が極限まで達したその時・・・

 

「・・・・・・・上よ!」

 

Dクラス女子の声に、上を見上げると、一気に下降して突撃をかけるテティスの召喚獣がいた。

お互いの距離はまだあるが、あの速度では一気に距離を詰められてしまう事は容易に想像できた。

 

「固まるな! 距離を取れぇ!」

 

隊長と思われる男子生徒の指示で一気に散開しようとする。

だが、未知数だったとはいえ水中である事を忘れていた中でその策は大失策であった。

 

「そらそらぁぁぁ!」

 

水の中で速度の出ない状態で固まってしまい、掃討を恐れて散開しようとしても陣形が崩れて部隊がバラバラになるだけだったのである。 体制を崩した生徒二人が一瞬で戦死してしまう。

 

「嘘・・・」

「一撃って・・・」

「マジかよ!」

 

あまりのテティスの強さと一瞬で殺される恐怖に動けずにいる召喚獣もいるようで、次々とテティスの餌食となっていた。

 

「遅いなぁ!」

 

更にバカにしたように3人戦死にしながら、その場を一瞬で離脱する。 もともとモデルLの適合者として水中戦が非常に得意なテティスにとって敵はただのゴミ同然でしかなかった。 観察処分者として召喚獣を操った経験が周りよりもはるかに多いこともあり、自分自身の動きを召喚獣にさせることぐらいは当たり前の事だったのだ。

 

 

 

 

 

2分後、どうにか逃げ延びたDクラス4人は疲弊しきっていた。 こんなコンディションではもうまともな攻撃は出来なかった。

 

「うん、もういいかな? 後は皆でよろしくね~」

 

そう言って腕輪の能力を解除するのと同時にFFF団の皆に残った4人の処理を命じたのであった。

命じられたFFF団は悪魔のような笑顔で了承していた・・・ いくらこの4人の点が高いといっても水中戦で疲れ切っている召喚獣でさすがに16人を相手取るのは無理と言う物である。

 

「「「いらっしゃ~い」」」

 

「やめっ・・・やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉ!」

「このことを急いで代表に伝え・・・ぎゃぁぁっぁあぁぁぁぁ!」

「うわぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

大鎌を構え、ゾンビのように群がって死に掛けのDクラスに攻め掛かっていくFFF団。 必死に抵抗するDクラスの抵抗により1人伝令に逃げられてしまったが、残りの3人はこの世の地獄を見るような顔で召喚獣がリンチにされる光景を見ていることしか出来なかった・・・

 

「さてと、アキヒサの方へと行くかな・・・」

 

Dクラス混成部隊 5分12秒DEAD

 

 

テティスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでひとまず小話を・・・

 

補習室では・・・

 

「はあっ・・・ 結局補習室の方がましだったわね・・・」

「美春はお姉さまと一緒なら・・・」

 

美波と美春の二人は今後の為の補習を受けていたのだが・・・

 

 

教科 数学

「ちょっと美春、そこ違うわよ? そこはね・・・」

 

元々世話好きの性格でもある美波・・・

その性格が災いし・・・

 

「ちょっと!聞いているの・・・」

 

「ああ・・・ お姉さま・・・(キュン! ドキドキ・・・)」

「?」

 

美春の恋心をより熱く、より加速させてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラス教室では・・・

 

「Dクラスの部隊が全滅だと! あいつ等あそこまで強かったのか!?」

アトラスとテティスの戦いの結果を聞いた坂本はあの二人の規格外っぷりに驚愕していた。

 

いくら得意教科だったとはいえ、ここまで一方的な展開になるとは予想もしていなかったからである。

 

「ええ! では私はもう出番はないのですか?」

 

アトラス達よりも後に回復試験を終え、坂本の元に戻ってきた姫路。 しかし、元々の計画が変更になった話を聞いていたとはいえこの展開は流石に予想できなかった。

 

「あの?・・・一応私はそのままDクラスの代表と戦って来ればいいんですか?」

「ああ、今明久達が先にDクラスの代表と戦っているらしい。 さすがに明久が、代表を倒すとは思えないが、相手の方はもう滅茶苦茶になっているだろう。 派手に景気付けでもしながらついでにとどめを刺しに行ってくれるか?」

「はい、わかりました!」

「せっかくだ、俺もDクラスに行ってきてみるかな・・・」

 

 

途中でアトラスから護衛を命ぜられた者とDクラス部隊にリンチを決めてすっきりした顔をしているみんなが合流し皆はそのままDクラスへと向かっていく・・・

 

小話はここまで・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dクラス教室では秀吉・シャルナクが古典で近衛部隊と、そして、明久と平賀は日本史で勝負をしていた。

 

 

 

Fクラス秀吉・シャルナクvsDクラス近衛部隊

 

古典

86点・470点(腕輪使用済み)vs平均107点

 

「うわああああああああ! 助けてくれぇぇぇぇ!」

「闇に隠れて暗殺なんて卑怯だぞ! 出てこいてめぇ!」

「オレハ アンサツシャダ。 ヒキョウテイドデ チュウチョスルコトナドナイ」

「なっ!・・・ ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「ニンムサイカイ・・・ コノエブタイヲマッサツスル・・・」

 

 

「こんな美少女にやられるなら僕も本望さ・・・」

「わしは男なのじゃが・・・」

 

二人はシャルナクの腕輪の力を駆使し、シャルナクが闇に紛れ、十字手裏剣で確実に敵を暗殺し、秀吉に向かっていく召喚獣に苦無を当て、フォローに回る事も怠らない。 秀吉も薙刀の特性を生かし、広い環境で戦うようにしつつ、シャルナクの召喚獣に攻撃が当たらないように芝居を打って近衛部隊をかく乱する。

二人はコンビネーションで翻弄し、近衛部隊を壊滅させていくことに成功していた。

 

 

 

 

Fクラス吉井明久vsDクラス代表平賀源治

 

日本史

103点vs125点

 

「ふう・・・ 君が清水さんを叩き伏せたという報告は聞いていたが、まさかここまで強いなんてね・・・」

「それはどうも!」

 

一気に間合いを詰め、それと同時に切り掛かる明久。 その速さに慌てて上に飛び回避する平賀だったが、その隙を逃す明久ではなかった。

 

 

『天裂刃(テンレツジン)!』

「なっ!」

 

すぐさま木刀で切り上げによる追撃をかけ、一気に決着を付けようと切り上げ後にも連続で平賀の召喚獣にダメージを与えていく。

 

「なめるなああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

しかし、それらの連撃を防ぐべく、強引に体制を建て直し数合の斬り合いののち、明久の召喚獣を空中に打ち上げた。

 

「なかなか良い攻撃だったけど、残念だったね!」

 

やられたことをやり返そうとしたのか、明久の召喚獣を追いかける平賀の召喚獣。

 

「この程度で終わりなわけないでしょ!」

 

天井にぶつかりそうになった明久の召喚獣は逆に天井を蹴り、その力を利用して突っ込んでいったのである。

 

『叩き落とす!! 旋墜斬(せんついざん)!』

「え?・・・」

 

ロックマンとしてアトラス達の修業を繰り返してきた明久にとって、この程度の状況は簡単に覆すことが出来る。 天井を蹴った際の力をうまく生かして、一気に突っ込んでいく。

 

「なっ! しまった!」

 

 

一気に突っ込んでくる明久の召喚獣は先程のダッシュ斬りよりも勢いがついていて、バランスを崩した平賀の召喚獣ではもう何もできなかった。

空中から一気に横なぎに切り倒した明久はそのまま倒れていく平賀の召喚獣に木刀を突き立てた。

 

「どうする? まだやるかい?」

 

降伏を促す明久。 そこに先程まで戦っていたシャルナクに秀吉。 そして、先ほどまでDクラス部隊と戦ってきたアトラスとテティスが合流してきた。

 

「・・・ニンムカンリョウ。 ノコルハ キサマダケダ」

「もう決着はついたぞい!」

 

いつの間にか近衛部隊を全滅させた二人が戻ってきていた。 シャルナクの召喚獣も苦無を構えていて、怪しい動きをしたら刺すつもりだと暗に示しているようでもあった。

 

「代表!大変です! 突入部隊が・・・・・・ってええええええええええええええええええ!」

 

どうにかして教室に戻ってきた伝令もこの光景に驚いていた。仲間に助けられ、どうにか伝令として報告に来ることに成功したと思ったら、既に代表が地に伏せているのだから・・・

 

「くっ! 分かった。もう降参するよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・えっ! あのっ! 私来た意味あったんですか!?」

「正直言って意味がないな」

 

「嘘だろ、おいっ! 明久が、もう倒してしまったのか?」

「アア、アキヒサガ ヒトリデ タタカッテイタゾ・・・」

 

「・・・ありえない」

「実際に起きているんだから認めなよ。」

 

 

「「「システムのバグに決まっている!!」」」

「ちょっ! 酷いよ、みんな!」 

 

 

 

 

 

戦後対談・・・

 

「おおおおおおおおおおおおおおお! すげぇ! すげぇよ!! あ本当にDクラスに勝てるなんて!」

 

「これで畳やちゃぶ台ともおさらばだな!」

「ああ、あれはDクラスの連中の物になるからな!」

「坂本雄二サマサマだな!」

「明久達もやるじゃねぇか!」

「坂本ばんざーい! 明久ばんざーい!」

 

代表と明久を褒め称える声が至る所から聞こえてくる。

 

 

 

「ごめんね平賀君。 2回も教室で大暴れしちゃって・・・」

「謝らなくていい。 油断した僕が悪かったんだ。 正直Fクラスを甘く見ていたよ。」

 

そして、戦後対談は続く・・・

 

「ルールに則ってこの教室を明け渡そう。 ・・・ただ、今日はこんな時間だし、もう少しだけこの教室に別れを告げたいんだ。 だから頼む! せめて作業は明日の午後からにしてくれ! 今皆はまだ補習室にいて、このままこの教室とお別れなんて嫌なはずなんだ! 僕にできることなら何でもする! だから・・・」

 

敗残の将か・・・ さすがに可哀想になってくるな。 でも再び試召戦争をするなら、あと3か月ほど待たないといけない。 その日までずっとあの地獄のような環境で過ごさないといけなくなる。 

こんな姿を見て今日中に済ませろなんて言えないので、僕は雄二に『明日からでいい』と言おうとしたのだが・・・

 

「いや、その必要はない」

 

雄二は予想しなかった返事をしてきた。

 

「え?何で?」

「Dクラスを奪う気はないからだ」

「「「はああああ!?」」」

 

予想外の返事に驚きを隠せないFFF団はキレて大鎌を持ち出してきていた。

 

「雄二、それどういう事? せっかく普通の設備を手に入れることが出来たのに?」

「「「そうだそうだ!」」」

「お前ら、忘れたのか? 俺たちの目標はAクラスなんだぜ?」

「確かにそうだけど・・・」

 

打倒Aクラス。 それが今回掲げた目標であり僕らのいたるべき到達点。

 

計画に関しては聞いていたが、正直、回りくどすぎると思う。 攻めるなら一気に攻めればいいと思うのに・・・

 

『とか思っていたんじゃないのか明久・・・』

 

近くに緑の金属が浮かびながら明久に近づいてくる。

その光景にほかのライブメタル達がツッコミを入れようとするが、モデルLとモデルFが面白そうだからと黙っていることにした。

 

「うん、さすがに面倒すぎるよ・・・ 設備を交換せずにあの環境のまま居続けるなんて言う理由がわからないね」

 

『ここでヘリオスならBクラスに挑み、挑むための策としてDクラスを利用するだろうな』

 

「ふーん、でも今度はなんでBクラスに挑むの? べつにDクラスで戦って充分操作法くらいは分かったと思うし、Fクラスの戦力も確認できた以上、もうAクラスに挑んでもいいような気が・・・」

 

『いや、普通の戦いなら高得点者組はヘリオスの総合科目で挑めば撃退できるし、後の雑魚は地力の差でAクラスが勝つ。 それにDクラスの戦力をどう使おうとAクラスが相手では最低限の交渉すらできないだろうさ・・・』

 

「いきなりの大きい策一つではいざというときに簡単に崩れてしまうものだ。 本当に勝つうえで必要な必勝法は自分が有利になる小さな条件を積み重ねていくことでもある」

『だから、今度はBクラスに勝ち、Bクラスを使って宣戦布告させてこちらの体力や気力を削ろうというわけだ・・・』

 

 

「なるほど・・・ ってモデルHにヘリオス!?」

 

「『『いや! すぐに気付けよ(気付きなさいよ)!』』」

 

あまりにも気が付くのが遅かったためツッコミを入れてきたロックマンズ。

 

いつの間にか、交渉が終わったようだった。

 

「みんなお疲れ! 今日はしっかり休んでくれ! 明日から・・・」

 

そう雄二が言いかけるといきなり教室のドアが開けられて入ってくる人がいた。

 

「決着はついた?」

 

いきなり入ってきた少女は秀吉に非常にそっくりであった。 ただなぜだろうか? 秀吉に比べてみるととげとげしい雰囲気を感じる。

 

「そんな恰好、どうしたの秀吉? そうか! ようやく本当の自分に目覚めたんだね?」

 

『『『おい!』』』

 

「秀吉ナラ オレノ後ロ二 イルンダガ」

 

そうシャルナクが返すとシャルナクの後ろで秀吉が呆れていた。

 

「え・え? 秀吉が二人?」

「それは私の姉上じゃよ」

「久シブリダナ 秀吉姉ヨ・・・」

 

シャルナクは面識があるのか木下姉に普通に挨拶した。

 

『シャルナク殿、セリフに漢字が付いたでござ・・・』

『『メタ表現をやめろモデルP!』』

 

いつの間にか付いていたシャルナクのセリフの漢字についてはともかく・・・

 

「ええ久しぶりね、シャルナク。 愚弟が世話になっているわ」

「姉上酷いのじゃ・・・」

 

そんな秀吉を無視して優子は話を続けた。

 

「貴方達に話があるの。」

「「話?」」

 

いきなりやってきた彼女からの急な話。 その場にいた全員の注目が優子に集中する。

 

「私はAクラスの使者としてきたの。 我々二年Aクラスは貴方達Fクラスに宣戦布告をします。」

「「『えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!』」」

 

最上級クラスから最低クラスへの宣戦布告。 その場にいた全員が驚愕する・・・

 

「最低クラスだからって手加減しないわよ。 全力で叩き潰すからそのつもりで!」

 

この言葉にこの場の空気が凍り付く。 せっかく勝ったと思ったDクラス戦。 しかし、その勝利の余韻はいきなりのAクラスからの宣戦布告によって完全に消されてしまったのだ・・・

明久が回りくどくて面倒と言っていたが、まさかいきなりAクラスの方から来てくれるなんて思いもしなかったのである。

先程ああ言っていた明久であったが、いざ相手にすると思うと震えが止まらなかった。

Fクラスのメンバーの皆もほとんど同じだったようである。 シャルナクに殺気を向けられた時ほどではないが、Fクラスの皆はとても混乱していた。

 

「・・・ふっ!」

 

いや、むしろロックマンの3人と雄二は都合がいいとでも言わんがばかりに不敵に笑っていた。

 

「少々予定が早まったが、問題ない。 ことは全て、俺のシナリオ通りに進んでいる」

 

 

 

 

 

 

そう言う雄二の姿はとても頼もしく、大将として頼りがいのある姿だった・・・

 

こうしてDクラスとの戦いは終わり、いきなりのAクラスとの戦いへと発展していった。

 

 

 




Dクラスが終わっていきなりAクラス戦。

実はアニメでは1度Aクラスから宣戦布告されているんですよね。(アニメの時はEクラス戦後でしたが・・・)
よく、二次創作の物ではBクラスに行ってからAクラスと言う展開が多かったんで、あえてこの展開にさせてもらいました。

対戦表はどうしようかなぁ?(笑)

5対5? 7対7も悪くないですね・・・

詳細を決めてから投稿するので、しばらく間が空くかもしれませんが、できる限り急ぎます。(無理をしない程度にですが・・・)


天裂刃

ロックマンゼロ3のEXスキル
空中の敵に攻撃が出来る。炎のチップを付けるとより高くジャンプする為、上部の敵を攻撃するのにとても便利なスキルである。


旋堕斬

ロックマンX6でゼロがラーニングする技の一つ。
空中から、斜め下に効果しながら斬りつける技だが、コマンド入力な関係でハシゴで暴発して被害を被るケースが多い困ったさんな技でもあった。


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第8話

今回の話でAクラス戦を開始したかったのですが・・・
アニメ版の優子ちゃんを自分が書こうとしても、かなりあれな感じに・・・

今回の彼らの出番はほんの少しだけです。



雄二たちは現在Aクラスに試召戦争に関する交渉のために乗り込んでいた。

 

「一騎打ち?」

「ああ。 Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に代表同士の一騎打ちを申し込む」

 

今回は代表である雄二を筆頭に、明久、姫路、秀吉にムッツリーニ、そして、護衛にシャルナク、アトラスと精進勢揃いでAクラスに来ていた。

因みにテティスはFクラスの教室の件で学園長と交渉するためにヘリオスと共に別行動をとっている。

 

「貴方バカじゃないの? FクラスがAクラスの代表と一騎打ちで勝てるわけないでしょ?」

 

この言葉にシャルナクはマフラーでよく見えなかったが、怒りに満ちた表情をしていた。

確かに秀吉とは仲のいいシャルナクだが、だからと言ってその姉とも仲がいいわけではなかった。

むしろ、この上から見下したような偏見に対しては、むしろ嫌いだったし、対立的でもあった。

他の皆もそうだったのかあまり気分のいい感じではない。

 

「怖いのか? まあ、終戦直後で弱っている弱小クラスニ攻め込む卑怯者だからなぁ」

「・・・今ここでやる?」

 

雄二はその言葉に対して飄々とした態度で皮肉と事実を込めた言葉で返す。 挑発したつもりが逆に返されてしまい、優子は怒り、勝手な戦争を始めようとする。

 

「・・・待って」

「貴様! ここで始め・・・」

 

優子のいきなりの攻撃的な態度に、護衛として前に出るアトラスが、代表として止める霧島さんが同時に出てきた。

 

「一騎打ち・・・受けてもいい」

「代表!」

「・・・ただし、条件がある!」

 

ここで真剣な顔をしながら姫路に近づく霧島さん。 うん、かなり怖いね・・・(by明久)

 

「負けた方は一つ何でも言う事を聞く!」

「それがFクラスに宣戦布告した理由か?」

二人に何があったのだろうか? 雄二は何か知っているようだったが、詳しくは言わなかった為、そのまま話は続いていた。

 

「勘違いしないでちょうだい! 私たちAクラスには学園の品格っていう者を守る義務があるのよ!」

「なんだと!」

 

優子の言葉に雄二の前に出ていたアトラスがキレかけていた。

それに意を介さず優子は話を続ける。

 

「事実でしょ? 一学期早々何の努力もせず戦争を仕掛けた最低クラスのバカ共に対しての制裁・・・」

 

もう充分であった・・・ この言葉に対して、とうとうアトラスがキレた。

この女は努力と言う物のあり方は勉強で結果を出すことしかないと。 それだけが才能でありその結果だけが努力であり、それによって名誉と権力を得るものが強者であり、それができないものは等しく価値のない弱者だと思い込んでいるかつてのヘリオスにも似た思想にアトラスはもう我慢がならなかった。(正確には自分の勉強の結果だけの基準を押し付けているところだが・・・)

 

「ほぉ、お前はアタシ達に個人的に喧嘩も売っているのか?」

「そうだとしたら?」

「上等だ。 買ってやろうじゃないか・・・」

 

いつの間にか、二人の顔がくっつきそうな程に急接近していた。

まさに一触即発の状態である・・・

 

「ひとつ、ゴリラのあんたに言っておくけど私が喧嘩できないなんて思わない方がいいわよ?」

「ほざいてろ。 それなりに知識があるとは言っても結局は一学生。 餓鬼みたいな猿知恵の小細工程度でアタシに勝てると思っているのか?」

「「・・・・・・・・・・・・・」」

 

どうもこの二人もとことん気が合わないようだった・・・

このまま放っておくと本当に喧嘩(下手したらアトラスからの一方的な拷問)になりかねない為、明久・工藤・久保が優子を、アトラスはシャルナク・秀吉・姫路がそれぞれを宥めることにした。 正確に言うと、明久・シャルナクがそれぞれを後ろから強引に羽交い絞めにして遠ざけてから説得するという形で。

 

「離せ、シャルナク! あの頭でっかちには常識と言う物について叩き込みで教えてやらないと気が済まん!」

「マズ オマエガ 常識ヲ覚エロ!」

「はわわわ! とりあえずアトラスさん落ち着いてください」

「あれでも一応わしの姉上なのじゃ。 許してやってくれんかのう?」

 

どうにかお互いの相手を宥めて話の席に戻っていった。(アトラスは単に仲間に拳を向けるのが弱者みたいでいやだっただけかもしれないが)

だが、どうも殺気だけは消えず、ピリピリした空気のまま話は進んでいった。

 

一方テティス達はと言うと・・・

 

 

 

 

 

テティス・ヘリオスside

 

 

「ヘリオスー、早く来いって!」

「急ぎすぎだテティス。 そう慌てんでもすぐに着くだろう」

『本当にテティスは子供なんだから』

『まあ、子供が元気なのはいいんじゃないか? まえの妙に落ち着いた性格よりは・・・』

「おーい、モデルH? 今僕のこと子供呼ばわりしなかった?」

『・・・? 何のことか分からんな。 そろそろ学園長室に着くみたいだぞ?』

 

ヘリオスとテティスは学園長にFクラスの教室の件と試験召喚システムの調査の交渉の為に学園長室に向かっていた。

 

「失礼しま~~す」

「失礼します」

 

ヘリオスがノックをしようとすると、なぜかテティスが勝手にドアを開け、ヘリオスの手がそのまま素通りしてしまった。

 

「本当に失礼なガキどもだね。 普通は・・・ってヘリオスかい。 後そこのチビジャリ! 走り回るんじゃないよ!」

 

そう帰してきたこの老婆は藤堂カヲル。 一応この学園の理事長でもある。(byヘリオス)

 

「失礼しました。改めてAクラスのヘリオスです」

「今日はうちのクラスの設備に関して話したいことが・・・」

「そうかい。 後そこのチビ! まずはヘリオスみたいに自己紹介からはいるもんだよ。このクソガキ」

 

ここで、学園長を氷漬けにしようとしたが、モデルLに止められて我慢するテティス。

 

「Fクラスのテティスです。 今回はうちのクラスの設備について話があって来ました。」

「Fクラス? 悪いが何も話すことはないね。 あれは何と言おうと学園の方針なんだ。 それを踏まえてこの学園に入学したんだろうに・・・」

 

回りくどいのは面倒だといわんばかりにストレートに要件を言うテティスだが、学園長はそれを一蹴しようとする。 出鼻をくじかれたテティスは諦めずに説得しようとする。

 

「だからっていくら何でもあれは学園にとってもマズいですよ? 腐った畳に割れっぱなしの窓ガラスって人を2・3人殺せるレベルですよ? 勉強どころじゃないって・・・」

「ふん! だから話すことは・・・ もう一度行ってみなチビ」

 

一蹴しようとした学園長ではあったが何かおかしいと思ったのか、テティスからもう一度話を聞こうとする学園長。

 

「いや、だから畳は腐っているわ、窓ガラスが割れて隙間風がひどいわで人が2・3人殺せるレベルの環境で・・・」

「何嘘言っているんだい・・・ 畳も窓ガラスも一応ギリギリまともなのを入れているはずさね?」

「じゃあ、実際に見に来てみなよ? あれでまともだっていうならこの学園潰すのいい材料くらいにはなると思うけど?」

「だが竹原は何の問題もないって・・・ あの男、嘘の報告をしたね・・・」

 

そう学園長が呟いた後、何かを考え込み・・・

 

「分かったさね。 ちょうどAクラスと試召戦争やらかすんだろう? その後にでも畳と窓ガラスを新調してやるよ。」

「ほんと! やったー!!」

 

話がうまく付きそうで大喜びのテティス

 

「ただし、いくつか条件があるからあんたとあと2・3人ここに連れてきな。 この書類の内容の実験に協力してくれたなら補修はしてやるさね。」

「『はい?』」

 

そう言うと学園長は書類と道具を取り出して、テティスに渡す。

 

「これ何?」

「5月にやる学園祭で試召戦争大会をやる予定でね。 これはその景品に出す予定の物さ。 こいつの実験に付き合ってもらうよ。」

「ふーん・・・ で? この書類に書いてある腕輪って何に使うの?」

 

書類を見ても理解できなかったのかテティスが景品に出すという腕輪について聞いてきた。

 

「全く、これだからガキは・・・」

「ガキって呼ばれるほど小さくないのに・・・」

「些細なる問題・・・ 話を続けて・・・」

「ちょっとヘリオス! これ些細なの!? この理屈だとヘリオスもガキ呼ばわりされることに・・・」

「? 実際に学園長からしてみればまだ子供だろう? 幕末の動乱から第3次オイルショックまでを生き延びたババア長ならこの程度の暴言くらいは出てくるものだ。」

「どうやらFクラスの補修の件はなしにした方がよさそうか・・・」

「ねえヘリオス。 このババアをコンクリに詰めて富士の樹海にでも捨ててこない?」

「やめておけ・・・ 富士の樹海が可哀想だ・・・」

「何恐ろしい事相談しているんさね!! そっちも何気に失礼だよ!!」

 

このままでは話が進まなくなりそうだった為、無理やり話を続ける学園長。

 

「この腕輪の効果は2種類、一つは教科はランダムでフィールドを発生させる『フィールド発生型』の腕輪、もう一つは点数を半分にしてもう一体召喚して二体の召喚獣を操って戦う『二重召喚型』。名前は白金の腕輪さね」

「なるほど、じゃあ後でアキヒサ達を連れてくるから! 失礼しましたー!」

 

説明を受けたテティスは、そのまま、学園長室を出てFクラスへと戻っていった。

 

「で? ヘリオスはいったい何の用だい?」

「その前に盗聴器が数機発見されましたので、壊しておきました。 実はAクラスに支給されている紅茶の件なんですが・・・」

 

どうやら、テティス一人でFクラスの件がまとまってしまったので、そのまま、紅茶の話をすることにしたようだった・・・

結果としてほとんど一蹴・・・ 支給される紅茶に納得がいかないなら、自分で持って来いと言われてしまったそうである・・・

 

「では、自分も教室に戻るとするか・・・ 木下は意外と短気だからな・・・ アトラスあたりとけんかになっていてもおかしくはない・・・」

『なぜ、そんなに頭がキレるのに紅茶の件にだけはこんなにも馬鹿・・・』

 

その後の事をモデルHは覚えていない・・・ どうやら馬鹿と言う言葉に対してヘリオスがキレてそのまま意識を封じたようだった・・・

 

テティス・ヘリオスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は戻って・・・

 

 

「一騎打ちじゃない。 5対5・・・」

「「「!?」」」

「一騎打ちの 5対5で戦い。 その内3回勝利した方の勝ち。 それなら受けてもいい・・・」

 

まだ話は続いているようだった。 先程の木下さんに代わって霧島さんが交渉をしているようだったが、どうやら個人戦ではなく団体戦での決着となるようだった。

 

「なるほど、こっちから姫路が出る可能性を警戒しているんだろう?」

「・・・ええ、あの子の1年のころの成績は聞いている。 Dクラス戦の間に回復試験を受けた後だとしても負ける気はしないけど絶対とは言えないから」

「分かった。 けど教科の選択権はこっちがもらう。 それくらいのハンデくらいあってもいいはずだ」

「・・・分かった、受けてもいい。 勝負は何時?」

「そうだな・・・ 10時からでいいか?」

「・・・分かった。」

「交渉成立だな。」

 

交渉を終了しAクラスをあとにする。

Fクラスの試召戦争の終結はすぐそこに迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木下優子side

 

 

 

「くっ! 完全にかき乱されたわ! 何なのあの女!?」

 

彼女は本来、学園内ではかなりの優等生である。 こういった交渉時にはかなり口がうまいし、相手の挑発に対してもそれなりにうまくかわすくらい簡単なことのはずだったのだ。

 

「それにしても、たまに頭に響くあの幻聴って一体何なのかしら? ヘリオスと話をしている時だけかと思ったけど、吉井君もたまになにかと話しているようだったし・・・」

 

時々聞こえる謎の声。 ただの幻聴にしては何かがおかしい。 アトラスの方からも2・3回ほど男の声が聞こえたこともあり、余計に不安になってしまう。

 

「ふう、考えても仕方がないわね。 明日の団体戦、1番手は私なんだからしっかりしないと・・・」

 

混乱しかけていた考えを切り、明日へと備えることとした優子。

鞄から、最新式の電子辞書を取り出し、その中にある参考書を読みながら歩いている優子

だから気が付かなかったのかもしれない。 信号が赤の中それに気が付かず、横断歩道を渡ろうとしてしまい、しかも右から大型トラックがクラクションを鳴らしながら急ブレーキを掛けようとしていることに・・・

 

「・・・・・・・え?」

 

もう間に合わない・・・ ここでひき殺される・・・ そう思うと昔の事を思い出す・・・・・

 

「(ああ・・・ これが走馬灯っていうんだ・・・ 死にたくないな・・・)」

 

完全にあきらめたその時であった・・・

 

「『オラァ!』」

 

ドン! と言う爆音と共にトラックが吹き飛ばされていた。 その目の前には・・・

 

「赤い・・・ 剣士?」

 

赤い服とバイザーを装着し、緑色の光の剣を片手に佇む茶髪の剣士の姿がそこにはあった・・・

 

「(ああ・・・ でも重なって聞こえた声、少しかっこよかったな・・・ 私のBLの声のイメージに当ててみたいかも・・・)」

 

こんな状況でも、隠れ腐女子全開な事を考え、そのまま気絶してしまった・・・

 

木下優子side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉井明久は観察処分の仕事とテティスが持ち込んできた実験を終え、夕食の買い物から帰宅するところだった。

結論だけを言うと「フィールド発生型」はかなり便利なものであったが、「二重召喚型」はあまりいい印象を受けなかった。

フィールド発生型は教科はランダムだが、教師の立ち合いなしで召喚ができるという利点が魅力的であったし、召喚フィールドの特性をもっと生かせば、もっと別の使い方もできると分かったのはよかったと思う。

しかし、二重召喚型は2体目を召喚すると1体ごとの召喚獣の点数が半分になるという欠点があった。

これだけならばいいのだが、問題はよほど召喚獣の操作技術に特化していないと使いこなせないことが分かったのである。

教師や観察処分者ならばそれなりの経験で2体同時でも使いこなす事は十分可能であっただろう。

だが、操作に慣れていない今の1・2年生や3年生でも戦争経験の少ない生徒ではむしろデメリットの方が大きく、景品として出すにはこの欠点は非常に大きな問題でもあったのである。

結局この実験について話し合った結果、学園祭で腕輪は別の使い方をして、景品は別のものにすることとなった。

細かい話はヘリオスとアトラスがするという事で、いったん先に帰り、その際に食事の材料を買いに出たのであった。

 

「それにしても、木下さん大丈夫かな? あの交渉の後元気がないってヘリオスから聞いたんだけど・・・」

『それで気落ちしているようならその程度の神経だったていう事でいいだろ?』

「いや、よくないよ!」

 

モデルZの容赦ない発言に明久は突っ込んでいた。 その途中で優子を見かけたが、どうも集中しているのか。明久に気が付かないまま横断歩道を渡っていってしまう。

 

『何だ? 気が付かないまま行ってしまったが?』

「って、信号が赤!?」

 

どうやら、本に集中していて気が付かないようだった。 しかもその前に大型のトラックが彼女の横に突っ込んできている・・・

 

「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

買い物袋を置いて、一気に走り出す明久。 それと同時にポケットの中からモデルZを取り出した。

 

「ロックオン!」

『適合者確認! ROCKシステム、起動開始!』

 

ロックオンで赤のロックマンに変身した明久はその一瞬の間でZセイバーエネルギーをチャージした。 いくらロックマンの力が強力でも通常の攻撃1発で大型トラックから少女を守るのは難しい。 一瞬で吹き飛ばすほどの力を出すために、猛ダッシュしながら、Zセイバーにエネルギーを込め続ける・・・

 

「『オラァ!』」

 

ドン! と言う音と共に吹き飛ばされていくトラック。 若干力が強すぎたようで、Zセイバーをたたきこまれたトラックは10メートル以上後方へと吹き飛び、そのまま転がっていった。

 

「ふう~ 間に合ったぁ・・・ って中の人大丈夫かな?」

 

そんな事は露知らず、明久はひとまず、優子の無事を確認する。 どうやら気絶しているようであったが、そのまま放置するわけにもいかず、背中でおんぶしながら買い物袋を回収し、その場から離れることにした。

 

 

 

????side

 

「あれはモデルZ!」

『間違いない! でもあの少年はいったい?』

「あの子の事については分からないけど、もし、モデルZの意識を奪って強引に力を引きずり出しているというのなら・・・」

「おい落ち着けって、あれがジルウェさんの形見だっていうのは分かるけど、そんな力の引き出し方をしているようなのが、人を助けるために力を使うかい?」

「う・・・ごめん、正直焦ってた・・・」

 

「へーあれもライブメタル? やっぱりすごいお宝ちゃんじゃない?」

「・・・どうするわけ?」

「決まっているでしょ! うまい事レギオンズに持って行って賞金を稼ごうっていうつもりだけど?」

『何考えてんだこのねーちゃん! 最初オイラ達に会ったときに違法ハンターと勘違いして襲い掛かってきたし』

「あれは悪かったって・・・ いくらワタシでもあんないい人そうなやつから強奪したりなんてしないって・・・」

『とにかく、オイラとグレイであたりを調べてみるから、エールはあの人の事調べてくれよ』

「何であんたが仕切ってんのよ! 私とヴァンであの少年を追跡するから、アッシュはグレイと辺りの探索、頼むわよ。」

 

いきなり時間を飛んで過去の世界に行くなんて思わないこの4人は一旦別れ、お互いの行動を開始する。

 

因みに、優子を引きそうになったトラックの運転手は無事ではあったものの事実をそのまま証言したにもかかわらず、「ありえない」「異常な状況に錯乱して幻覚を見た」などと言われ、会社中の人間から憐みの目で見られ続けた後、事故後の研修及び賠償に加え、脳内と精神の検査までさせられたらしい。

 

ZXAside end

 

 

 

ひとまず、適当なところで変身を解いた明久はアトラスに事情を説明して、買い物袋を渡した後、気絶した優子を秀吉の家に送り届けに行った。

 

「すまんの、明久。 姉上には気をつけるよう言っておくのじゃ」

「明日はお互い頑張ろうとも言っていたって伝えといてくれる?」

「わかったのじゃ。 ありがとう、明久。」

 

そして翌日・・・

Fクラス対Aクラスの戦いが切って落とされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではAクラス対Fクラスの団体戦を始めます。 両名共準備は良いですか?」

「ああ」

「・・・問題ない」

 

ついに最終決戦開始。

 

今回の戦争のルールを確認しておくと・・・

 

1.5対5の団体戦。

2.勝負は一騎打ちで決める。

3.勝負内容はAクラスが2回、Fクラスが3回決めることが出来る。

4.負けたクラスは一つだけ何でも言う事を聞く

 

となっていた。

 

 

 

Aクラスside

 

 

「木下さん、今のうちに謝ってきたらどうだい・・・」

「「うんうん!」」

 

 

久保を含めたAクラス全員が首を縦に振り優子から距離を取っている。 さすがに皆、言葉通り命は惜しいのである。

何故そんなことになっているのかと言うと、相手のFクラスからの強烈な殺意にAクラスの皆が気おされてしまっているため、その原因が先日の交渉の件ではないかと思った為であった。

 

「ええっ! 私そこまで悪いことした!!」

「些細なる問題・・・ 実際に襲い掛かってくるなら私が召喚獣の方を、生徒が直接襲い掛かってきたら高橋女史が抑えるだろうから心配いらないだろう・・・」

『まあ、正直あれは言い過ぎな気もするがな。 今後は挑発するときでも注意した方がいいな・・・』

「うん、ごめん。 今後は言葉を選ぶようにする・・・」

「『・・・え?』」

 

いきなりのありえないはずの事にヘリオスとモデルHは驚いていた・・・ 今、優子はモデルHの言葉に対して返事をしたのである。

これがヘリオスの勘違いであったならよかったのだが、それにしてはあまりにも自然すぎる返事であった。

もし、これが偶然ではなく元々聞こえていたとするのならうかつであったとしか言いようがない。

過去の大昔にロックマンとしての適性を持つ者が明久を含めて二人、下手をしたらもっとたくさんの適性者がいてもおかしくなかったからでもある。

今はライブメタルに空きがない為にこれ以上ロックマンが増えることはないだろうが、もしここでモデルVが出回ってしまったなら最低でも町一つは確実につぶれてしまうであろう。

そうでなかったとしても、これ以上この件で詮索されても困る為、こっそりと明久達にメールを送り、ライブメタル達に家に帰るまで静かにしてもらった。

 

「? ヘリオスどうしたの?」

「・・・いや、大丈夫だ。 気をつけて行って来い」

 

急に黙り込んでしまったヘリオスを不審に思ったのかヘリオスに問いかける優子だが、ヘリオスは何事もなかったかのようにそのまま気をつけるように返事を返した。

 

Aクラスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは一人目の方、どうぞ」

「アタシから行くよっ!」

 

どうやら、Aクラスからは先日アトラスと喧嘩しかけた秀吉の姉、木下優子が出てきた。

 

「なら、ここは私が行くわ!」

 

それに対してまずは島田さんが出ていこうとしているが・・・

 

「『いや、無理でしょ!』」

「何でよ!」

「だって・・・ ミナミの成績って良くてもBクラスでしょ? Aクラスのトップランカーが相手では流石に無理でしょ・・・」

 

以外にもまともな理由でテティスが間に入って止める。 確かにBクラスレベルでAクラスに挑むのは無理があると言う物であった。

 

「うぐっ!」

 

正論を言われ、仕方ないといわんがばかりに悔しそうな顔をして下がる島田さん。

 

「ではワシが・・・」

「秀吉ハ ラウンドガールトヤラデ忙シイダロ ココハ俺ガ・・・」

「いや、昨日喧嘩を売られた私が常識を体に叩き込むために私が・・・・」

「えー! アトラス達ずるいよ! ボクだって遊びたいのにー」

『いや・・・ 遊びじゃないでしょうに・・・』

 

昨日の件で恨みが募っているのか一回戦から誰が挑むかで大騒ぎである。 事前にメンバーを選びたかったのだが、どうも昨日からFクラスのアンチ優子意識が強くなりすぎてしまっているようで、さらに過激な人の中には「あの澄ましたような顔に『ピー』して○○に『ズキューン!!』してやらないと気が済まない」だの「秀吉には悪いがあの○○の血肉を啜り、食らいつくし不老不死になってやる」などという危険な人まで出てきたほどで、どうにか雄二が「Fクラスの高得点者のをぶつけて一生後悔させてやるから楽しみにしていろ」と言う話でひとまず落ち着かせたのだが・・・

 

 

 

 

 

 

 

アトラス達がどう伝えたのかもはやFクラスの観戦確定組は暗黒武術会よろしく「殺せ!・殺せ!・殺せ!・殺せ!・殺せ!」と木下優子の敗北確定と共に襲い掛かるC級妖怪同然となっていた・・・ 姫路・島田に至ってはそんなクラスメイトにドン引きしつつも釘バットなどをこっそりと用意しているあたりむしろ本気で怒っているのかもしれない・・・

 

 

「貴方達、あの交渉の後Fクラスでなんて言ってきたのよ!」

 

優子は流石に動揺を隠せず、アトラス達に問いかけてきた。

 

「おい、テティス!」

「え? べつに大したことは言ってないよ?」

『(いやあれはきついと思うわよ・・・)』

『(確かにあれはヒドイとしか言いようがねえな・・・)』

『(拙者もテティス殿のドSは知っていたでござるが、それに乗せられるFクラスもどうかと思うでござる・・・)』

 

そしてテティスはFクラスで何を言ったのかについて話を続ける・・・・・

 

 

 

 

 

「ます、BL本好きの腐女子で、ショタコンでノーパンで・・・ あ!あとショタ以外では可愛い女の子にしか興味がないっていう話をしたよ!」

 

この地点でうわさとして広がった場合、完全に学園内での優等生としての優子のイメージが崩壊しかねないものであったが、更にそれにはとどまらず・・・

 

「そうだ! 実は○○で「ピーーー!」で「バキューン!!」を「ドーン!」して「ポー!ポー!ポー!」なんてことまでしたという話をしたあたりから気が付いたらこんなことになっていたんだけど・・・」

「「「テティス、お前! そんな言葉をどこで覚えてきたんだ!!」」」

 

もう、これだけで優子への疑いの種は十分に蒔かれていた。 優子に至っては秀吉を睨み、秀吉の方は知らないといわんばかりに手を上げながら首を横に振って否定していた・・・

もはや、今のテティスに未来時代の面影はなりを伏せ、新たにドSとしての才覚が見出されていたという・・・

因みにテティスが規制音が連用されるぐらいにひどい言葉を覚えた理由はと言うと・・・

 

「スガワからかりたひもで縛られて気持ちよさそうにしているお姉さんが載っていた雑誌からだよ?」

 

このテティスによる発言の後、須川はF・Aクラス問わず総員からお仕置きを食らっていた・・・

明久に至っては弟分が変な方向に成長してしまった原因だったからか、須川をローキックで蹴り飛ばし、空中で5回転させながら転倒させてた上で更に追撃を掛けたあたりテティスへの悪影響に対する怒りはかなりのものとなっていたようだった。

 

「テティス、もうあんな汚い言葉をもう使うんじゃないぞ!」

「そうよ! いくら皆をあおる為でもあれはやりすぎだから気を付けなさい!」

 

アトラスと島田は須川へのお仕置き?に参加せずに、テティスにお姉さんのように注意していた。

 

「うん、分かっているよ。 話を聞いて僕もカチンときたから使っただけでもう使う気はないから・・・」

「ならいいんだが・・・」

 

本人もそれをわかっているのか、二人に約束していた。

この後、どうにか「テティスが勝手に言い出したことだし流石にありえないんじゃないか?」と言う方向でみんなを宥め、お仕置き?から解放されてきた須川もようやく出てきた。

 

「皆さん、時間が押してきましたので、Fクラスからも選手を出してきてください。」

 

流石に話が長すぎたか、高橋先生が選手を出してくるように促してきた・・・

 

「さて、で? 誰か行きたい奴テキトーに出てきていいぞ?」

 

だが、雄二はこの試合は誰でもいいと思っているのか、本当にこの試合は志願制にしてきた・・・

第1回戦は誰が出てくるのか・・・?




決して優子ちゃんをアンチにしたいわけじゃないんです。

あのキャラでからかおうとしたらあんな泥沼に嵌ってしまっただけなんですからねっ!
・・・違うんだからねっ!(ツンデレ)

優子「今度あんな滅茶苦茶してくれたら全身の骨を折りたたんでやるんだから・・・(グスングスン・・・)」

優子ちゃんがボキボキと指の音を鳴らしつつも半泣きしてしまっている・・・

閻魔刀「ヤンデレ!」

優子「じゃなくてごめんなさい! もうあんな暴言は言わないのでまともな扱いをしてください」

閻魔刀「素直クール!!」


たまに書いてて思うんですけど、こういう小説を書いたりするとき元のキャラが崩壊している状態で書いている人ってどういう思いで書いているのかが気になる事があります。

自分はどちらかと言うと優子ちゃんはむしろ好きなんですけど・・・
なぜか今回はその思いとは全く真逆の乖離してしまったキャラになってしまったんですけどみなさんはどうですか?
活動報告でまとめてかけるようにページを用意しておくのでもしよろしければご意見をお願いします。


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番外編

間違えて消してしまいました。
申し訳ありません。

因みに本編が止まりかけた際に思いついた番外編です。

そしたら今度はどう本編につなげるかで止まってしまいましたけど・・・


ガーディアン・・・

1年前まではライブメタルと呼ばれる金属の調査を行っていた非公式の組織であり、今現在はこれまでの功績をレギオンズに認められ、レギオンズ直属の特殊警備隊として、活動していた。

 

そんな中エールは数人の部下と一仕事を終え、ガーディアンベースで一休みを取ろうとしていた時だった。

総司令のプレリーから緊急連絡があった。

 

「はーい、こちらエール! エリアC、サンク・ヴィルのイベントの警備を終えてお土産と共に・・・」

「エール! 今はそれどころじゃないの! すぐこっちに戻ってきて!」

「分かった! すぐにそっちに向かうわ!」

「エール、何か事件か?」

 

エールが緊急連絡で慌てている中、話しかけてくるこの髪の長い男性。

彼はかつてのエールの同僚で、ガーディアンがひいきにしている運送会社「ジルウェ・エクスプレス」の社員である。 ジルウェ・エクスプレスは一度経営の危機に瀕していたことがあったが今現在では、レギオンズ関連の企業やハンターギルドからの配達依頼が増えたこともあり、経営を持ち直していた。

 

「ヴァン、ちょうどよかった。 あんたの所の会社でこれ3日後ぐらいにガーディアン宛で預かってて頂戴!」

「ああ、分かった! エールも気を付けろよ!」

 

そう言うとエールは急いで近場の転送装置へと向かう。

ガーディアンベースに戻ってきたエールはモデルXと共に指令室でプレリーから詳しい説明を受けていた。

 

「モデルVのかけら?」

『それが一体何の騒ぎを起こしているんだい?』

「ええ、先ほど、レギオンズから正式な依頼が来て、私たちがこれまでに倒してきたフォルスロイドが復活しているらしいの・・・」

「そんな・・・ あいつ等が復活してきたらそれだけで世界中が滅茶苦茶に・・・」

「それが確認できたのが1週間前・・・」

「『え?』」

 

確認できたのが1週間前・・・ という事はもうすでに何かしらの目的をもって動いているという事になる。 なぜ、そんな事態をガーディアンにこれまで一切の話がなかったのかエールとモデルXは驚きを隠せなかった・・・ 

 

「だけど」

 

一呼吸おいてプレリーは話を続けた。

 

「すぐに消えてしまったの・・・」

「・・・どういう事?」

「復活したと思ったフォルスロイドが、モデルVのかけらと共に消えてしまったの。 世界中から彼らの反応を探したらしいのだけれど・・・ まったく手がかりがないそうよ・・・」

 

ならばなぜ、ここでいきなり自分たちに依頼が来るのかが、わからなかった。 すぐに消えたのならもう問題はないはず・・・ 

 

「海底に沈んだウロボロスもね・・・」

「ウロボロスも・・・」

「今回の依頼は沈んだウロボロスの海域の調査をする調査隊の護衛任務です。 期間は3か月。 いま、グレイ君にも連絡が言ったそうだから彼とあと民間からの協力者の方々と合流して、そのままウロボロスの沈んだ海域へと向かいます。」

 

こうして彼女たちはかつての大決戦の跡地へと向かっていく。 この後起こる事件の事を知らずに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、お前一体何者なんだよ! いきなり攻撃して来やがって!』

「あんた、あの違法ハンターの仲間じゃ無いでしょうね?」

「ええっ! 全然違うよ!? 君こそいきなり襲い掛かってきて一体何者なんだ!」

 

一方、ウロボロスでの最終決戦の後、エールに助け出されたグレイはモデルAと世界中を旅をしていたのだが、謎の女の子に襲撃され銃を突きつけられていた。

いきなりの事態にグレイも最初のころに拾いそのままお気に入りになっていた銃で応戦。 戦いが泥沼化しさらに事態が悪化しだしたのである。

 

「とぼける気? 私たちに襲い掛かってきたあの違法ハンターどもを追撃していた私たちの邪魔をしようとしてきたのはあんたでしょうが!」

「はあ? ボクはあのハンターたちがいきなり襲われたんだけどお願いだから助けてくれって言ってきたから、一応前に出てきたっていうだけなんだけど?・・・」

『とりあえずさー、二人とも落ち着けって。 お互い勘違いしているみたいだしさ』

「仕方ないわね・・・ え、なに? なんか声が頭に響いてくるんだけど・・・」

 

モデルAがひとまず二人を落ち着かせようとするが、女の子の方はいきなり頭に響いてきた声に驚いていた。

 

『ん? おいお前、オイラの声が聞こえるのか?』

「何なのよ?さっきから! 誰がしゃべっているの! 大人しく出てきなさい!」

 

声が聞こえど姿が見えず・・・ ほかにも敵がいるのかとつい構えてしまう少女。 その銃口がグレイに向きそうになってしまった為に、アクセサリーのふりをして大人しくしていたモデルAが空中で動くことでどうにか落ち着かせることになった。 そこまではよかった・・・

 

「きゃぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ! 何これ! もしかしてあの有名なライブメタルっていうやつでしょ!? 一度狙ったことあるんだけど失敗したっきりだったのよね! ねえ!あんた名前ってあるの? 一体なんて名前? キャーキャー!」

 

 

完全にノリが女子中学生の悪ノリそのものであったが、その対象がいわくつきと言われているライブメタル相手である光景は流石にレアであった。

 

「あ・・・ うん、こいつはライブメタル「モデルA」っていうんだ。 僕の名前はグレイ。 よろしく」

「なんか名前は地味ねぇ。 私はアッシュ! 正規ハンターギルドのメンバーよ。 よろしくグレイ!」

 

さっきまで違法ハンター関係で争っていたことを忘れて、そのまま意気投合しな仲良くなる二人。

そこにグレイの元にレギオンズからの緊急通信が入ってきた。 どうやらアッシュも同じ通信が入って来たようで、違法ハンターの追跡は後に回し、ひとまずハンターキャンプに戻り、ギルドメンバーと共にガーディアンと合流することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グレイ! 久しぶりね! 相変わらず元気そうじゃない!」

「エールじゃん! 久しぶりだな!」

「相変わらず呼び捨てなのね・・・ まあいいけどさ」

 

久しぶりに会う二人はとてもうれしそうにしながら、まるで姉弟のように話が弾んでいった。

 

「ところで・・・」

「どーしたの、ヴァン?」

「何で俺まで呼ばれているわけ?」

 

なぜかヴァンも会社の同僚と共に呼ばれ、仕事を手伝わされていた。

 

「なんでって、ここで働いているハンターやガーディアンのまとめた資料や集めた物品を保護してもらいながらハンターキャンプかガーディアンベースに届けてもらう為じゃない」

 

先程プレリーが言っていた民間の協力者とはヴァンが働いている、「ジルヴェ・エクスプレス」の事であったのだ。 彼らにレギオンズが運搬関係の担当を依頼し、その担当の中にもヴァンがいたのである。

 

「おーい! こっちになんか黒い腕輪みたいなのがあるぞ! 誰か来てくれー!」

 

グレイが何かを発見したようでエールとヴァン、そして少し遅れてアッシュもグレイの元にやってきた。

 

「不思議な腕輪ね・・・ ウロボロスのパーツかしら・・・?」

『いや、そんな感じはしないな・・・ なぜかこの腕輪からは別の強い力を感じるけど・・・』

 

謎の黒い腕輪にみんなは珍しそうに腕輪を観察していた。

 

「これってもしかしたら何かのお宝かもしれないわよ! ひとまずレギオンズに発送してもらって・・・」

 

アッシュは何かのお宝だと思ったのか、ヴァンにこの腕輪を発送してもらおうとするが、いきなりモデルXとモデルAがこの腕輪と共鳴した。

少しずつだが腕輪が光だし、ライブメタルとの共鳴が止まらない・・・

 

『お・おい! なんかこれヤバいぞ!』

『みんな、僕たちから離れ・・・』

 

モデルXとモデルAがエールとグレイに離れるよう言い出すがすでに遅かった・・・

 

「え? ちょっ! 何で俺までぇぇぇぇぇっぇ!?」

「ちょっ!まって・・・・・ キャァァァァァァァァァ!」

 

腕輪の光が一瞬爆発し、近くにいたヴァンとアッシュを巻き添えに4人はモデルZ達と同じ、光に包まれてこの世界からあのロックマンがいる世界へと消えていった・・・




次にAクラス戦を投稿するつもりなのですが、その前にヒロインのアンケートを取りたいです。

詳細は活動報告にアンケート欄を作りましたのでそちらで確認、投票をお願いします。


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第9話

迷った末に5回戦で終わらせることにしました。

7回戦はオリキャラ出さないと全員書けないですし、かといってそこまで出す余裕もなければ出す気もないので・・・

しょっぱなから飛ばしていきます。


何人もの志願者が多く出てきた中最終的に選ばれたのはアトラスであった。

なんでも、前回のDクラス戦では腕輪を使う機会が無く、もし今回で参加できたなら優子をブッ飛ばしながらそのついでに腕輪の力も試してみたいのだそうだ。

 

「で、私はその当て馬っていう訳? いくら何でもふざけ過ぎなんじゃない?」

「ふざけているつもりはない。 学力が重要視されるこの試召戦争における貴様の学力は理解しているつもりだ。 お前がこの中でもかなりの戦闘力を持っていることもわかってはいる」

 

こう見えてアトラスは優子の事は嫌いではあるが、この団体戦においてAクラスの先鋒を任されているところを見てその学力そのものを認めるだけの器量くらいはありはするのだ。

そしてアトラスは言葉を続ける・・・

 

「だが、こうして試召戦争なんていうものを挑んでいく以上お前のような奴とも闘わないといかんと言うのも事実なんだ。 私たちはすでにお前のような実力者と戦っていくための覚悟と言う物はとっくにできているのさ」

「へぇ・・・ 言ってくれるじゃない。 そこまで言うなら私も容赦しないから」

 

ここで会話が途切れる・・・ 二人の間に闘気の火花が散る。 1回戦からこの調子で大丈夫なのだろうか・・・

 

「教科は何にしますか?」

 

「保健体育でたのむ」

 

アトラスの最強の教科が、選択された。

 

「それでは始めてください。 試合開始!」

 

「「試験召喚!(サモン)」」

 

Fクラス アトラス vs Aクラス 木下優子

保健体育 437点 vs 362点

 

「うそ・・・ 愛子並の点数じゃない!」

「フン・・・ Aクラスのレギュラー入りをしただけで最強気取りかい? 笑わせる・・・」

「何が言いたいの・・・」

「総合力で相手を上回ったからと言って、相手が得意とする分野でも上に立てるとは限らないという事さ・・・」

 

アトラスの召喚獣が腕輪の力を発動させ、その手には炎が灯る・・・

 

「試召戦争に挑み続けるのもまた、這いあがり己を高めるための力で手段だ・・・ 力無き者に進化などは無い」

「だったら、あんたの勝手な基準で決めつけられた力を持たない奴はFクラスの腐った畳のぼろ部屋に押し込んどけっていう訳!? ずいぶんと野蛮な進化よね!」

「それでも、間違っているというのならまずは私に勝って見せろ!」

 

先手と取ったのはアトラスの召喚獣であった。 両手に灯した炎の合計点数は140点分。 その両手からそれぞれ3点ずつ消費させて、炎球を発射。 その内1発が当たり、優子の召喚獣の点数が24点ほど削られていた。

 

「なっ!」

 

優子は炎を被弾した召喚獣の点数を見て驚いていた。

わずか3点の消費で、被弾した敵の点数が24点も削れているという事は、一見すると14発までなら当たっても大丈夫だという事のように思える・・・

しかし、彼女は観察処分者で優子は今回で初めて召喚獣を操る。

しかも、相手の方が動きは遅いとはいえ、点数は相手の方が格上なのである。

つまり、操作技術力と純粋な点数の差で簡単にやられてしまうのは当然のこと。

今は、どうにか回避させているが、このままでは点数を遠方からジワリと削られていくだけである。

 

「ふん!」

 

炎球を連射し続けるアトラスの召喚獣。 優子は決心し、どうにか炎球を回避しながらランスを構え突っ込んでいく。

 

「行けぇぇぇぇ!」

 

ランスの間合いに入られてしまう・・・ そう思ったアトラスは、両手に残っていた計70点を片手に集中させ、その力で思い切り、地面に叩き付け、火柱を上げさせた。

 

「うそっ!」

「くらえ! グランドブレイクW(ウォール)!」 

 

一気に串刺しにするつもりで突進していた優子の召喚獣は止まれずに、その火柱の中に飛び込んでしまっていた・・・

その結果・・・・・

 

 

Fクラス アトラス vs Aクラス 木下優子

 

保健体育 2点 vs 0点

 

「ごばっ・・・!」

「そんな・・・・・」

 

どうにかアトラスの召喚獣が纏っていた重装甲の鎧を貫通はさせたものの、優子の召喚獣は炎に焼かれ、点数が0になりそのまま消滅してしまった。

 

「勝者・Fクラス アトラス!」

 

Fクラス側からアトラスを称賛する歓声が上がり、Aクラスからは「むしろあの点差の中木下さんはよくやった」とか「何でFクラスのバカがこんな点数なんだよ・・・」といった陰鬱な空気が流れ始めていた・・・

 

「アトラス、スゲーじゃねぇか!」

「アトラスの姐さん! お疲れ様でした!」

 

その肝心なアトラスは観察処分者故に思いっきり腹を貫かれた召喚獣の苦痛のフィールドバックを受けて倒れ込んでしまっていた・・・

いくらフィールドバックのダメージ率が30%程度とはいえ、完全に腹を貫通させられる痛みが、ちょうど胃のある位置に来たのなら、普通の人間ならとっくに吐いてしまっている・・・

それほどのダメージが帰って来たのなら、いくらアトラスといえど、強烈な目眩と吐き気に襲われ崩れ落ちてしまった。

 

「え? アトラス!?」

 

様子がおかしいことに気が付いた明久がアトラスのもとに行こうとするが、自力で立ち上がろうとする彼女に肩を貸したのは、負けたはずの優子であった。

 

「悪いけど、昨日は私が間違っていたとは思わない。 ・・・でも、貴方みたいに一つの事に打ち込める努力家もいるっていう事くらいは認めてあげるわ」

 

そう言って優子は、立つのもつらそうなアトラスを抱え、適当なリクライニングシートを倒してその上で休ませた。

アトラスは要らないと言って、拒否しようとしていたが、足を軽くつついただけでまた倒れそうになる為、ほとんど強制的に連れて行ったのである。

 

「・・・礼は言わんぞ」

「そうですか・・・」

 

 

そんな会話の後、悔しそうにしている表情のまま優子はそのままAクラスの陣営の中に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、2回戦を始めます。 両選手前へ」

 

 

「2年Aクラス、佐藤美穂です・・・」

 

佐藤は礼儀正しくお辞儀するのと同時に召喚獣を呼び出していた・・・

のはいいのだが、どこか警戒したような顔をして怯えている・・・

優子があんな形で敗北した光景を見た後では警戒したくもなるものである。

 

 

「よし。頼んだぞ、明久」

 

指名された明久は自信たっぷりの雄二の言葉に対して

 

「え・・・僕? 別にいいけどさ」

 

そう言いながら明久は前に出ていく。

 

「おい、吉井ってそんなにすごいのか?」

「いや、そんな話は聞いたこともないが」

「でも、Dクラスの代表を一人で討ち取っただろ?」

「でも、今回はそいつよりも強いじゃねぇか!」

「いつものジョークだろ?」

 

味方であるはずのFクラスの皆の声。

仕方のない話ではあるが、明久の普段の姿を見ている者からしたら、そう思うであろう。

 

「吉井君、でしたか? あなた、まさか・・・」

 

対戦相手の佐藤さんが僕を居て何かに気付いていたかのように戦く(おののく)

 

「あれ、気づいた? ご名答。 今までの僕は全然本気なんて出しちゃあいない」

 

この言葉に一番に驚いていたのは秀吉であった。 彼はDクラスでシャルナクと共闘しながら明久の戦いぶりを見ていたが、あれで本気ではないとは思わなかったのである。

彼はむしろ人の演技や嘘を見抜くのは得意な方である。 その自分の観察眼を誤魔化すことが出来るほどの手加減となると、実際に本気を出されていたとしてもその本気は理解はできない次元にあるとみても過言ではなかった・・・

その一方で明久の方は不敵な笑顔を見せ、戦闘の為に袖をまくり手首を振って軽い準備運動をしていた。

 

「それじゃあ、あなたは・・・」

「そうさ、君の想像通りだよ。 今までこの学園では隠してきたけど、実は僕・・・」

 

シャルナク達も別の意味で驚く。 ロックマンとしての自分を喋ろうととしているのではないかと警戒してしまっているのだ。

明久は大きく息を吸い、決め顔でその場にいる皆に隠していた事実を告げる・・・

 

「左利きなんだ」

 

Fクラス 吉井明久 vs Aクラス 佐藤美穂

 

物理 98点 vs 398点

 

 

そう言った明久の召喚獣は左手に木刀を持ちかえた。

 

「「『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』」」

 

 

ライブメタルも含め、全員の空気が固まった・・・

本当にどうでもいい秘密である。

 

「このバカ! テストの点数に利き腕は関係ないでしょうが!」

 

美波が本気で怒り、明久に関節技を決めようとしていたが、テティスがプロレスラーのように美波を担いでそのまま陣営の中に戻っていった。

 

「・・・行きます」

 

口調は静かだが、その眼は完全にキレている・・・

大鎖鎌を一気に振り回し鉄球を明久の召喚獣に叩き込もうとする。 一方、明久の召喚獣は悠々と間合いを詰め、鉄球の軌道を読み、最小限の回避でかわして見せていた・・・

 

「「えっ!?」」

 

そしてそのまま明久の召喚獣は、一気に間合いに入り一気に突きを入れる。

 

「武雷突!」

 

電撃は込められていないが、とても強力で素早い突きが佐藤の召喚獣の喉元を突き上げる。

彼女の召喚獣は死ぬことはなかったが、それでもかなり堪えたのだろう。 とても苦しそうにしていて、しばらく動きが取れないようだった。

実際の点数も100点以上削れていた為に、このダメージが半端なものではないことがわかるくらいであったが、更に明久の召喚獣が連撃を叩き込む。

 

「えい!やっ!とうっ!」

 

3撃も叩き込めば十分なようであった。 彼女の召喚獣はもう苦しそうにしながらうずくまってしまっている。

それでも武器を離さないあたり、それでもがんばろうとしているのは主の為に戦いたいのだろうが・・・

 

「悪いけど、これも勝負だから・・・ 『重破・・・』」

 

重破斬でとどめを刺そうとした明久だったが、その攻撃をやめてしまった。

一瞬佐藤の泣いている顔を見てしまった(・・・・・・)のだ。

 

 

 

 

 

佐藤美穂side

 

一方で佐藤は後悔していた。 あそこで相手に乗せられて怒っていなかったら、もっと冷静になったら勝てた勝負だったのにもかかわらず、自分のせいでもう後がなくなってしまう。 そう思うと悔しかった。 悲しかった・・・

悔しさのあまりに涙は止まらない・・・ スカートの裾を握り、震えが止まらなかった・・・

 

 

「(もう・・・ とどめ刺されちゃったかな・・・ 皆、ごめんなさい・・・ 私のせいで・・・)」

 

自分が相手の挑発に乗せられなかったら、こんなことにはならなかった・・・

相手の数倍の点数の力でねじ伏せられたはずだったのに・・・

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

だが・・・ その最後のとどめがなかなか来ない・・・ 

「(よく見ていると吉井君が困っている・・・ とどめ刺さないのかな・・・)」

そんな風に思っていると・・・

 

 

「佐藤! あきらめるなぁぁぁ!」

「まだ決着はついていないんだぞ!」

「追い詰められたからなんだ! 負けても俺たちが何とかしてやる! だから気にするな!」

「戦え・・・ 最後まで・・・ 戦えぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「(え・・・ クラスの皆が応援してくれている。 皆は諦めていないのに・・・ 私だけ一人勝手にあきらめようとしていた・・・)」

 

Aクラスのクラスメイト達はまだあきらめていなかった。 むしろ負けても必ず何とかして見せるという強い覚悟さえ持っていた。 震えていた足ももう落ち着いている。 もう涙も止まっている。

 

「(私はまだ・・・ 戦える!)」 

 

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

クラスの声援を受け、佐藤は召喚獣に反撃させる! その動きはがむしゃらであったが、とても力強く、それでいてとてもキレのある1撃であった・・・

 

 

「(皆さん!ごめんなさい! 私はもう諦めない! 最後まで・・・ 最後の最後まで戦い抜いて見せるから・・・ 私が負けた後は皆さんお願いします!)」

 

と思っていたら・・・

 

佐藤美穂side end

 

 

 

 

明久side

 

 

「(佐藤さん・・・ 泣いていたな・・・ やっぱり負けたら悔しいだろうね・・・ でも、僕たちは姫路さんの為に負けられないんだ! Aクラスに勝って、姫路さんを本来いるべき場所に戻してあげるために!

そして、僕たちが馬鹿をやっていられるこの学園を守る為にも!)」

 

覚悟を決め、佐藤の召喚獣が復活する前にとどめを刺そうとした明久。

だが、あの数秒の迷いが佐藤を立ち直らせるには十分な時間であったことに明久は気が付いていなかった。

 

「佐藤! あきらめるなぁぁぁ!」

「まだ決着はついていないんだぞ!」

「追い詰められたからなんだ! 負けても俺たちが何とかしてやる! だから気にするな!」

「戦え・・・ 最後まで・・・ 戦えぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

Aクラスから佐藤に送られる声援。 それとほぼ同時に、彼女の召喚獣が大鎌を振るい、明久の召喚獣の頭を完全に切り落とし、切り落とした頭を引き寄せられた鉄球で叩き潰してしまった。

 

こんな攻撃を受けていては元の点数に関係なく死んでしまう。

案の定、明久はフィールドバックで頭が潰されるような、激痛に襲われたまま、のたうち回った後に気絶してしまった・・・

 

 

明久side end

 

 

 

「・・・はっ! 勝者Aクラス 佐藤美穂!」

 

 

・・・・・・・まったく別の意味で空気が重い。 Aクラスの方も勝ったこと自体はうれしいはずなのに、なぜだろうか? あまりにもあっけない決着であった・・・

 

「あの・・・?」

 

あまりの気まずさに佐藤さんは明久に話しかけようとするが、気絶しているとわかるとFクラスからテティスを呼んで運んでもらった後、一応の勝利に喜びながらも明久に起きたら謝ろうと思い一先ずクラスに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では3回戦を開始します。 両選手前へ」

 

 

明久とアトラスの二人を緊急で来てもらった保健委員の人たちに運んでもらった後、3回戦が開始された。

Fクラスとしてはムッツリーニに出てもらおうとしたのだが・・・

 

「僕が相手をしよう。」

 

Aクラスから歩み出てきたのは、久保利光だった。

「なっ、ここで学年次席かよ!」

 

元々の予定ではここで真っ先にムッツリーニに出てきてもらって、保健体育で確実に勝ちたかったのだが・・・

 

「仕方がない、姫路! 今ここで出てくれ!」

真っ先に彼に出られた以上は仕方がなかった。 4回戦で出てもらう予定だった姫路に出てもらうよう雄二が指示する。

 

「分かりました。 それじゃあ行ってきます。」

 

だが雄二はなぜ学年次席相当の久保を出してきたのかがわからなかった。 ヘリオスはどうも試召戦争に限らず、イベントには積極的に参加する様子がなかったし、それ以外の理由を考えてもみたが、全然思いつかなかった。

 

「ここが一番お心配どころだ」

「ドウイウコトダ?」

 

どういう事なのかわからずにシャルナクが雄二に問いかけてきた。

 

「相手の実力は姫路とほぼ互角でな。 不得意科目でうまく突かなければ姫路は連戦で疲れていることを考えると負ける可能性が否定できないんだ・・・」

「ソウカ・・・ マア、姫路ガ負ケルトハ思ワンガナ・・・」

 

シャルナクはそれだけ言った後、問題ないとでもいうように普通に観戦者の陣営に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「科目はどうしますか?」

 

高橋先生が二人に声をかける。

 

「総合科目でお願いします」

 

姫路さんが科目を言おうとしていたのだが、勝手に久保が答えていた。

 

「おい! ちょっと待て! 何を勝手に・・・」

「かまいません」

「姫路?」

 

クレームを付けようとする雄二を止める姫路だったが、Fクラスのメンバーは本当に大丈夫なのかさすがに不安になっていた。

 

「それでは・・・」

 

高橋先生がこれまでと同じように操作を行う。

それぞれの召喚獣が呼び出されて、一気に乱撃戦になる。

 

 

 

Fクラス 姫路瑞樹 vs Aクラス 久保利光

 

総合科目 4207点 vs 3997点

 

「マ・マジか!?」

「いつの間にこんな実力を!?」

「この点数、霧島翔子に匹敵するぞ・・・・!」

 

いたるところから驚きの声が上がる。

点数差が200点オーバーと言うのは流石に想定外だった雄二はガッツポーズを決める。

 

「ぐっ・・・! 姫路さん、どうやってそんなに強くなったんだ・・・・・!」

 

久保が悔しそうに姫路に尋ねた。つい最近まで拮抗していた実力がいつの間にかここまで離されたという事を考えれば気になるのは当然の事であった。

 

「・・・私、このクラスの皆が好きなんです。 人のために一生懸命なみんなのいるFクラスが」

「Fクラスが好き?」

 

この言葉にテティスとシャルナクは頭に??マークを浮かべ、ん?と首とかしげていた。

むしろ自分の欲望に忠実な連中だったと思うんだが・・・と思わずにはいられなかったのだが・・・

 

「はい。だから頑張れるんです。」

 

その一方でFクラスの観戦組はとても温かい気持ちになって喜んでいた。

真実はどうあれ、自分たちの事を認めてくれている人がいるとなればそんなに気分が悪くなることはない物だろう・・・

この会話をしている間にも姫路の召喚獣が久保の召喚獣の点数を削っていく。 そして・・・ 姫路の召喚獣が腕輪の力でとどめを刺そうとしたその時・・・

 

 

「そうか・・・ しかし、僕たちにも負けられない事情がある!」 

 

そう言った久保は腕輪から発せられる熱線を躱し、体勢を立て直す。両者の召喚獣はお互いの武器を構え全身全霊の最後の一撃に賭け正面から特攻していった。

 

 

Fクラス 姫路瑞樹 vs Aクラス 久保利光

 

総合科目   0点 vs 0点

 

 

 

 

「引き分けか・・・」

「どうやらそうみたいですね・・・」

 

 

 

「3回戦 勝者なしの引き分けとさせていただきます。」

 

これで両者共に1勝1敗1分

 

勝敗は4回戦以降の4人に託された。

4回戦に出るこの男は長刀を携え前に出ようとする・・・

 

「のがれえぬ運命・・・ 次の戦いは私が行く必要があるようだ・・・」

「その剣は没収させてもらいます。」

「『え!?』」




アンケートに投票してくださったありがとうございます。

因みに現在は

姫路1票

島田0票

優子0票

美春3票

友香2票

となっております。
あと2日程投票を受け付けて、次の話が完成した後に発表したいと思います。



武雷突(ブライトツ)

ロックマンゼロ4でゼロが会得するEXスキル。
本来ダッシュから電撃を込めたセイバーで前方の敵を貫く技なのだが、今回の試召戦争において明久の召喚獣は電撃が使えないため、電撃の込められていない速攻の突進突きの技となっている。


誤字脱字を幾つか訂正しました。


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第10話

ヒロインのアンケートの結果ですが、美春に決定しました。

今現在、その方向で、書いているところです。
ひとまずは4回戦、開始します。


ヘリオスside

 

「これで1対1、1分けですね。次の方は?」

「4回戦、私が相手をしよう・・・」

 

 高橋先生は淡々と作業を進める。自分のクラスが負けても気にならないのかと思うが、それは些細なる問題だと判断し前に出る。

 

「「ヘリオス!?」」

 

 Fクラスの奴らが、慌てだしているな・・・ 教科選択権は其方にあるだろうに・・・

 

「ちっ! ここであいつが出てくるとはな・・・ ヘリオスは試召戦争に無関心そうだったから油断していた・・・」

 

 いや・・・ 私も興味があったのだが点数が多すぎて、参加すると誰も勝てなくなるといわれてしまったから自粛していただけなんだが・・・

 今回は1勝すればそれで終わりだから4回戦で参加させてもらうが、試召戦争に出るのは今回限りの方がいいかもしれんな・・・

 

 

 しかし・・・ 誰も出てこないな。 確かに負けるとわかっている戦いには誰も参加したくはないだろうが、流石にそろそろ出てきてもらわんと困るな・・・

 

「おい! 貴様ら、誰が出るのかさっさと決めたらどうだ!!」

 

・・・・・・つい怒鳴ってしまったな。 誰も出さずに、あるいは適当な誰かを捨て駒として試合を流す気か? いや、それは出来んな。

 ここで私を勝者とするわけにはいかんだろう・・・ そんなことをしたならこの瞬間、Fクラスに勝利の目は無くなってしまうのだから。 それではあの男が出るまでもなくFクラスはちゃぶ台以下の環境になるのだからクラスではもう代表面は出来なくなってしまうであろう・・・

さあ、いったいどうする?・・・

 

 

ヘリオスside end

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ! あの野郎これを狙って居やがったな!」

 

 実際には最初からこの作戦を狙って居たわけではないのだが、これまでの戦いから即座にこの策を思いつき、工藤に頼み、試召戦争への参加に踏み切ったのである。

雄二にとっても誤算であった。 ヘリオスの事は明久達からある程度聞いていて、異常な程点数が高いが、それゆえに試召戦争への参加には消極的だったと聞いていたので、その情報を信じ、ヘリオスの方は計算に入れていなかった。

 しかし、このままでは終われない。 このまま4回戦でほとんど決着がついてしまえば、仮に最終戦で勝ったとしても引き分けの延長戦になるだろう。

そうなれば、残りのまともな戦力がテティスだけの状態では、確実に勝てるとはいいがたかった。

 

 

「・・・俺に任せろ!」

「「ムッツリーニ!!」」

 

 ここで、土屋がヘリオスに対して挑戦すると言い出した。 だが、相手は大図書館と言ってもいい学園の図書室の蔵書のほぼすべてを読破したというほどの天才である。 あまりにも絶望的過ぎるとしか言いようの無いこの勝負でなぜ、彼が出てきたのだろうか?

 

「・・・挑む教科は保健体育だ」

「ムッツリーニ、待・・・」

「・・・大丈夫だ。 死ぬつもりで行くわけじゃない」

 

 雄二がムッツリーニを止めようとするが、そのまま、ヘリオスの前に出て行ってしまったムッツリーニ。

 

「では科目は何にしますか?」

「・・・保健体育」

 

 アトラス同様ムッツリーニも自身の最強科目を選択する。

 だが、勝ち目があるかは誰もわからない・・・

 

「美しき覚悟・・・ 友の為に命を捨てるか・・・」

 

 ヘリオスがこの世界に来て初めて、純粋に人を称賛する言葉を送った。 まるで、その光景はウロボロスでの最終決戦のようでもあった。

 

「・・・死ぬつもりはないといったはずだ。 それに・・・」

 

この会話の間で召喚獣が召喚され、お互いの点数が表示されるが・・・

 

「保健体育の方は俺の方がよく知って・・・」

 

Fクラス 土屋康太 vs Aクラス ヘリオス

 

保健体育 697点 vs 1300点

 

「「・・・・・・・・・」」

 

 さっきまでのムッツリーニのカッコイイセリフはいったい何だったのだろうか? あまりにもひどすぎる点数差にヘリオスも含む全員が黙ってしまう・・・

 ムッツリーニの点数ですら次元が違う点数と言ってもいいのに、ヘリオスはいったいどんな回答の仕方をすればこんな点数が取れるのかと言う、天才と言う言葉すらが陳腐に思えるその点数そのものが、もはやチート同然でもあった。

 

「ふざけんなァァァァ! さすがにAクラスと言ってもあの点数はありえねえだろ!」

「どんなチートを使いやがったァァァァ!」

「そうじゃなかったらどんなウイルスを送り込みやがった! アアン!! それとも呪いでも掛けたかコラァァァ!?」

「いくら何でもその点数は無いでしょ!?」

「ヘリオス君、一体どういうことなのか説明してくれないか? 流石にこの点数はちょっと異常だよ・・・」

 

味方であるはずのAクラスからも声が上がる。 それもそのはず、本来Aクラス代表の霧島でも400点台、主任の高橋先生や鉄人ですら800点台後半が限界なのに、1000点越えなんてどう考えてもとれるはずがないと思うのが普通の反応である。

 

「些細なる問題・・・ お前たちのその疑問は別の人間に説明してもらった方がいいだろう・・・」

 

 ヘリオスがそう言って、見た先は高橋先生であった。

 

「私の口から言っても信じられないでしょうから、説明をお願いできますか?」

「ええ、彼の点数はシステムのバグやウイルス感染などの異常ではありません。 彼は自力で解答用紙14枚~20枚相当の問題を解き、一部のケアレスミスを除き、すべての問題が正解でした。」

 

 ここまで来たら、学力が云々のレベルではない、ここで重要になるのはヘリオスの筆記速度である。 彼は教師すら遥かに凌ぐ速度で一気に問題を読み、そして一瞬で解答を書き上げたことになる。

 

「それでも、まだおかしいって! それだけで1000点台を超えるなんて思わ・・・」

 

 それでもまだ認められない一部の生徒が抗議をまだ続けるが、それも想定の範囲内だったのか、ヘリオスはため息をつき、そのトリックについて説明する。

 

「おい貴様。 貴様はテストの時に書きあげた回答用紙の枚数は何枚だ?」

「?? いきなりなに言って・・・」

「いいから答えろ・・・」

「・・・3枚だよ! それが一体・・・ はっ!?」

 

 どうやら抗議していた生徒も気が付いたようだった。

 

「そうだ・・・ 私が書いた解答用紙の枚数は14枚から20枚。 それらすべての問題に解答を記入したと誰が言った?」

「でも、そんなことが出来るなら、Fクラス程度の学力でも、ちょっと勉強しただけで200点越えまでなら楽勝になるんじゃ・・・」

 

「おいおい、いったいどういう事だよ!? お前らだけで話を進めるんじゃねぇよ!」

 

 Aクラスの皆はヘリオスの言いたいことが理解できたようであったが、Fクラスの大半は理解が出来ていないようだった。

 

「つまり、数学でいうなら証明問題のような時間のかかる問題の回答を極力避け、単純な計算問題や速攻で読み解ける選択問題を早く解いていったんだ! ヘリオスの奴は元々の知識に加えて、筆記速度・解答の効率化の三つを同時にやってのけた結果、1000点越えなんて言う点数をたたき出したんだ!」

「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」」

 

 雄二の説明を受け、ようやく理解したFクラスであったが、あまりにも滅茶苦茶な理論に驚愕していた。

 

「・・・くっ! そんな方法で点を取ってお前は、それで勝ったって本気で誇れるのか!?」

 

 珍しくムッツリーニが狼狽している。 それもそうである。 一つの自信のあった分野に正面から挑み、それなりに高得点をたたき出したという自負があるなか、まさかそんな反則すれすれの攻略法を利用して異常な点数をたたきだし、Aクラスにいる男に勝てないことが認められないのだ。

だが・・・ ヘリオスは・・・

 

「貴様はムッツリーニと言ったか? 簡単に言って見せたが、この攻略法にも問題点がある。」

「・・・なに?」

 

その問題点をヘリオスが説明する。

 

1.元となる知識がないと、やはり簡単な問題すら解くことが不可能なこと。

2.確実に速攻で解くことが可能な問題を見つけ出す、速読力がある事。

3.その問題を速攻で解くだけの頭の回転がないと、むしろ遅くなってしまう事。

 

である。

 

「今では、その点数配分のバランスが修正されているからもう使えない方法でもあるがな」

 

 そして、高橋先生が捕捉を加える。

 

「ちなみにヘリオス君の点数ですが、こちらの方で調べたところ、最高で1900点ほどになっていましたが、こちらの方でリミッターを掛けさせてもらい、どうにかAクラスと教員全員で抑えられる点数にさせてもらっています。」

「「こいつそんなことしなくても普通に教師並みの点数がとれんじゃねぇか!!」」

 

 ヘリオスに総ツッコミが飛び交うが、ヘリオスは適当に聞き流す。

 お話はそれぐらいにして、試合を始めたいのである・・・

 

 

「そろそろ始めますよ。 試合開始!」

 

 

「はあああああああああ!」

 

まず、先手を取ったのはヘリオスの召喚獣であった。 一気に間合いを詰め、瞬時に決着を付ける気のようであった。

元々、スピードに特化したヘリオスの召喚獣ではあるが、その点数の高さも相まって目にも映らない速度で長刀を構え、突っ込んでくる。

 

「・・・加速!」

 

 あまりの速さにムッツリーニは召喚獣に腕輪を使わせた。 彼の召喚獣の腕輪の特性は「速度向上」。

 ヘリオスの召喚獣の攻撃が当たる前に発動が間に合った為、ヘリオスの攻撃を上回る速度でその一撃を回避し、反撃に移る。

 

「風よ!巻き上がれ!」

 

 ヘリオスも腕輪を発動。 膨大な点数を消費させ、自身を中心に大型の竜巻を巻き起こした。

 ムッツリーニの召喚獣は竜巻の範囲から離れ、ひとまず間合いを取り・・・

 

「・・・加速」

 

 もう1度加速を発動させ、一気に間合いを詰めるムッツリーニの召喚獣。

 ヘリオスが何をたくらんでいるかはわからない。 しかし、点数はヘリオスの方が圧倒的に上なのである。

 相手の狙いがわからない以上、ここは相手に何もさせることなく一気に決着を付けるために瞬時に切りかかる。

 

「おろかなる選択・・・ この風の障壁をそんな程度で敗れると思っているのか・・・」

 

 ヘリオスの言った通りだった。 ヘリオスと同じくスピードに特化しているムッツリーニの召喚獣の力では、ヘリオスが作った竜巻を突破することは不可能であった。

 ムッツリーニはどうにか、突破できないかと考えていたが、特に思いつくことのないまま1分が過ぎた後、いきなり竜巻を消したヘリオスの召喚獣。

 

「・・・どういうつもりだ?」

「些細なる問題・・・ このまま決着と言う訳にもいかんだろう? 点数も近くなったこともあるし、これでようやく公平な戦いができるだろう?」

 

 

Fクラス 土屋康太 vs Aクラス ヘリオス

 

保健体育 423点 vs 443点

 

 

 ヘリオスがあの竜巻を使ってその中に閉じこもっていたのは点数を一気に消費させ、ムッツリーニと点数上において互角に戻すためであった。

 あくまでヘリオスがあの異常な点数をたたき出したのは、文月学園特有のテスト形式の問題点を指摘し、改善を求める為であり、その目的も達成させられている今、もうこの点数で挑む意味がなくなったのだから、後は訂正する予定だったが、それに間に合わず、このままの点数で参加する事にしてしまった。

 もともとそれ抜きで学年主任レベルの点数が取れるのだが、流石に道徳的に汚い手を使って取った点数で勝っても意味がないと思ったヘリオスは、敢えて、ムッツリーニの点数に合わせたのである。

 これで点数はほぼ互角。 さっきの竜巻の中で、大まかな操作方法を確認し終えた為、操作技術の差もほとんどないと見たヘリオスはここで閉じこもっていた竜巻の中から出てきたのである。

 

「つまり・・・」

「・・・これからが本番」

 

 二人の間にこれ以上の会話は無かった。 両者の神速の域に達した召喚獣どうしをぶつけ合う。

 あまりにも速すぎる戦いを目で追えるものはほぼ皆無であった。 

 それもそのはず、2秒の間にお互いが17連撃以上の攻撃を放っていたのだから、一般人に目で見て追うなんて言うのは無理と言う物である。

 どうにかシャルナクとテティスの二人は見えていたが、周りにその場で解説するのは無理だった。

 

「プラズマサイクロンV!」

 

 一度間合いが離れた時にヘリオスがプラズマサイクロンVを放つ。 二つの竜巻がムッツリーニの召喚獣に襲い掛かるが・・・

 

「・・・加速!」

 

 ムッツリーニは加速を発動させ、竜巻の隙間を通り抜けるように回避し、一気に小太刀の攻撃を叩き込む。

 腕輪発動の硬直により、1秒だけ動けなくなるヘリオスの召喚獣であったが、スピード戦において、1秒と言うのはあまりにも長い硬直時間であった。 どうにか長刀を構えたヘリオスの召喚獣であったが、かなりいい連撃をもらってしまい、一気に点数を削られる。

 

 

Fクラス 土屋康太 vs Aクラス ヘリオス

 

保健体育 274点 vs 162点

 

 

「・・・何が起こったの?」

「分からないです。」

「一瞬、竜巻が飛んで、その一瞬の間にヘリオスの召喚獣が切られたところはどうにか分かったけど・・・」

「あとで、この試合の映像が取れていたら、DVDにでもコピーしてもらって見直してみるか?」

「「無理でしょ」」

 

 この激しい攻防の時間、わずか7秒! 映像の記録があったとしても超スロー再生にしてから見ない限り、その攻防の過程を見るなんて言うのは不可能である。

 

「プラズマサイクロンV!」

「・・・加速!」

 

 二人は腕輪を同時に発動。 プラズマサイクロンVを放ち、ムッツリーニは逆にそれを回避。

 後ろを取る事に成功したムッツリーニの召喚獣は、そのままとどめを刺す・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラズマサイクロンH!」

「なっ!」

 

 ・・・・・・はずだった。 腕輪を発動させ、技後硬直で動けないはずのヘリオスの召喚獣が、再び腕輪を発動させ、相手を吹き飛ばした。

 ゼロ距離で竜巻を叩き付けられ、吹き飛ばされたムッツリーニの召喚獣は、そのまますべての点を失い、消滅した。

 これには勝ちを確信したAクラスの面々。 だが、ヘリオスの顔もどこか悔しそうだ。

 

「恥ずべき誤算・・・ まさか、私の攻撃とほぼ同時にカウンターを当てていたとは・・・」

 

 ヘリオスの召喚獣をよく見ていると、胸部に大きく斬られた跡があり、上の点数表示が0点となっていた・・・

 

「4回戦、両クラス勝者なしとみなし、引き分けとします。 これで1対1・2分です」

 

 高橋先生の表情に若干の変化が見えた。 まさかFクラスがここまで戦うなんて思ってもいなかったのだろう。 

 

「元々はこの学園の問題点を徹底追及するための材料として戦っていただけだ・・・ だが、私は土屋康太と言う男に負けたのではない。 敵の小さな天命に、そして己の慢心に負けたのだ! 敵に負けたなど! 私は断じて認めない!」

 

 やはりと言うべきか・・・ 己の賢者と愚者の定義が変わったとは言っても、プライドは相変わらず高いヘリオスは「敵」に負けたとは認めなかった。

 明久に出会う前のころに比べ、自分の慢心を認めるだけましではあるが、プライドが高いのは相変わらずであった。

 

 

 

 

 

 

 

「では最終決戦を開始します。 最後の一人、どうぞ」

「・・・はい」

 

Aクラスからは、クラス代表の霧島翔子が、そしてFクラスからは当然、

 

「俺の出番だな」

 

坂本雄二が、代表として前に出る。

 

「教科はどうしますか?」

 

 ここまで、最初の2戦以降引き分けで来ているこの戦いは、代表同士の対決にすべてが託されていた。

 

「教科は日本史、内容は小学生レベルで方式は100点満点の上限ありだ!」

 

 これが、元々Aクラス戦で使う予定だった策の一つであった。 高校生が小学生レベルのテストで対決するというルール上、注意力と集中力の勝負になる為、これまでの戦いに比べて、最もFクラスに勝利の可能性が出てくる勝負であると言える。

 それが分かったからか、Aクラスの皆がざわつきだした。

 

「分かりました。そうなると問題を用意しなくてはいけませんね。 少しこのまま待っていてください」

 

 一度ノートパソコンを閉じ、高橋先生は教室を出ていく。

 その間に明久とアトラスが復活し、保健室から戻ってきた。

 

「おい坂本、今どうなっている?」

「後は俺と翔子の対決だけだ。」

「っていう事はもしかして、僕が負けた後も・・・」

「ちなみに今までの記録あるよ? アキヒサも見る?」

 

 そう言って、テティスがこれまでの試合の結果を記録していたノートを渡した。

 ちょうど、その記録を見終わったころに高橋先生が戻ってきた。

 

「雄二、後は任せたよ」

 

 ぐっっと雄二の手を握る明久。 この試合においてお互いやれることは全てやった。 後は雄二の勝負ですべてが決まる。

 

「ああ。任された」

 

 その明久の手を力強く握り返した雄二。 そして、後から借りたのであろう最終戦の試験会場へと向かっていった。

 これでいよいよ決着。 泣いても笑っても、試召戦争が終了する。

 

「皆さんはここでモニターを見ていてください」

 

 高橋先生が機械を操作すると、壁のディスプレイには視聴覚室の様子が映し出された。

 先に霧島が席に着き、続いて雄二がやってくる。

 画面の向こうで日本史担当の飯田先生が問題用紙を裏返しのまま、二人の机に置いた。

 

 『不正行為等は即失格になります。いいですね? ・・・・・・では、始めてください』

 

 二人の手によって問題視が表にされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果がわかるまでの間の小話です。

 

 

 

明久side

 

「吉井君、いよいよですね・・・・・・」

「そうだね。いよいよだね」

「これで、あの問題がなかったら坂本君は・・・・・・」

 

 Fクラス陣営の中で固唾を飲んで見守る。 そんな中僕の元に、2回戦で戦った佐藤さんが、申し訳なさそうな顔をしてやってきた。

 

「あの・・・ 2回戦の時は申し訳ありませんでした!」

 

 いきなり僕の前で頭を下げて誤ってくる佐藤さん。

 一体何を謝っているのだろうか・・・ ああ! 最後の召喚獣の頭叩き潰した事か!? 僕は別に気にしていないのに・・・

 

「僕は別に気にしていないから大丈夫だよ? 佐藤さん。 あんなあっけない形で負けちゃったけど、これも勝負だったんだし気にしないで、頭を上げて。 ねっ?」

 

 あの時の勝負は実際に気にする必要なんてなかった。 ほかの事に気を取られて、動けなかった自分が悪いのだから。 

 だけど、本当に優しい子なんだろう・・・ 本当に気にしているのだろうかなかなか頭を上げてくれないので、軽く頭を撫でてみた。

 

「ひゃん!?」

 

 急に頭をなでられて、驚いた佐藤さんは少し後ろに飛び退いてしまった。

 

「もう、吉井君! 勝手に頭をなでないでください!」

「あはは、ごめんごめん。 でも、さっきより元気になってくれてよかった。」

 

 佐藤さんがぽかんとしている・・・

 

「もし、どうしても気にするっていうなら、さっきのいたずらでチャラでいいよね? ほら、Aクラスの方に戻った方がいいんじゃない?」

「あ、あのちょっと・・・!」

 

 そして、そのままAクラス陣営まで、手を引いて連れて行った。 あんまり長くこちら側に居ることで不審がられないかが心配だっていうのもあるしね・・・

 でも、さっきまでAクラス側が騒がしかったな・・・ 一体何があったんだろう?

 

明久side end

 

 

 

 

 

ヘリオスside

 

 

「ヘリオス! いったいどういうつもりな訳!? 工藤さんが戦う予定だった相手と急に変わってくれって言うからわざわざ工藤さんがが変わってくれたのに、引き分け!? 説明しなさいよ!?」

「「そうだそうだ!!」」

 

 どうも、あの4回戦の引き分けに納得がいかないのかAクラス中から詰め寄られているヘリオス。

 しかし、当のヘリオスは涼しげな態度で聞いている。 それがさらにAクラスの皆の怒りをヒートアップさせているのだ。

 

「おろかなる問い・・・ あそこは別に負けさえしなければ、後は代表が勝てると踏んでいた。」

「どういう事だよ?」

 

納得がいかないのかヘリオスに聞いてくるAクラスの面々。

 

「分からんのならヒントをやる。 FクラスとAクラスの決定的な違いを考えてみろ。 それに気が付けば答えが出る」

「「はい?」」

 

全員分からないのか、ヘリオスの言葉にぽかんとしてしまう。 ヘリオスはそんなクラスメイト達をほ放っておき、Fクラス陣営にいる明久に謝りに行った佐藤を迎えに行くことにした。

 

 

ヘリオスside end

 

 

 

一方、ヘリオス達が学園で試召戦争をしていた時、エール達は・・・・・・

 

 

ZXAside

 

 あれから、まずエール達がしたことは、活動拠点の確保とこの世界について知る事であった。

 まず、仮の拠点として、どうにか雨風をしのげそうな場所を橋の下に見つけることに成功した。

 次にこの場所についてであるが、エール達のいた世界ですらないという事は、すぐに調べが付いた。 そこまでは良かった。 

 問題はどうやって元の世界に帰るのかという事と、元の世界に帰るまでの間、どうやって食っていくのかという事であった。

 まず、エール達をこの世界に飛ばしたこの腕輪は、ただのガラクタになっていた。 一応、モデルXとモデルAに解析できないか調べてもらったのだが、結局無駄に終わってしまった。

 次に食べ物の問題だ。 ヴァンとエールとアッシュは人間である。 と、なってくると食事を取らないといけないのだが、この世界でもやはりお金の概念があるらしく、ヴァンたちの世界のお金は予想通りに使えないものであった。

 今はどうにか、質屋なる中古品の転売を専門とする店をアッシュとグレイが調べてくれたおかげで、1・2週間くらいはどうにか食べていけるだけの資金はあるのだが、それだけでは限界がある。

 そうなってくるとどこかで収入を得ないといけないのである。

 今は、そういった今後の方針を決めるために、拠点の橋の下に集合している。

 

「やはり、あの少年から話を聞く必要があるんじゃ・・・」

 

 ヴァンは吉井と言う少年を探し出すことが一番重要なんじゃないかと思っていたが・・・・・

 

「でも、今はあの子の手掛かりも無い以上、探し回っても簡単に見つかるとは思えないけど?」

 

 手がかりもなく、一人の人間を探し出すなんてとても無理があった。 エールがヴァンの言葉を却下しようとした時。

 

「ちょっといいかしら? 朝、近くを散歩していた時に、あの人の変身を解いたときの服と似たような服を着た人たちが、同じ所に向かっていくのを見たわよ?」

 

 アッシュがヴァンのフォローに回りだした。

 アッシュが言うには「朝の7時~8時半位に、赤のロックマンに変身した人と同じ服をした人達が、一つの施設らしき場所に向かっていたのをグレイと一緒に見た」らしいのだが・・・

 

「それで、そこがどんな場所かわからなかった?」

『オイラが見てきたけど、確か放送で文月学園って言っていたぞ? あれってもしかして、学校ていうところなんじゃないのか?』

「ちょっと待って。 同じ服を着た人たちが全員その文月学園っていうところに行ったのよね?」

『ああ、オイラも隠れながら調べるのって本当に大変だったんだ・・・・ぞ?』

 

 ここで、全員気が付いたようだった。 あのモデルZといた少年は確実にこの街で生活をしている。 学校に通っているという事はほぼ毎日、あの場所にいることは間違いなかった。 それならば、エール達の取る次の行動が決まった。

 

「皆、いったん適当に何か食べた後、すぐにその学園に行くわよ! 出入口全部を見張って、あの少年が出てきたら、急いで確保! その後、モデルZと共にこの世界について聞き出すよ!」

「「『分かった!』」」

 

 ほかにもやるべきことはあるだろうが、ひとまずは赤のロックマンになった少年を見つけ出し、モデルZでロックマンになった経緯などを聞き出し、あわよくば元の世界に帰る手掛かりをつかめる可能性に賭け、エール達は文月学園に行くこととなった。

 




エール達がなんだか大変なことに・・・

話の展開からこの世界の人間との接点がまだない以上、むしろ自力で明久達への手掛かりをつかめただけでも奇跡だと思う事にしています。

ここから誰とどうつながるかは楽しみにしていてください。


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第11話

遅くなってしまいました。

ロックマン以外のゲームに少し浮気してしまい、話の流れは出来ても、文章化をしていないという状態で数日の間、小説活動を停止していました。

でも、気分転換にはちょうどよかったですね。

テストの結果は予想通りでしょうけど・・・・・・

この後から、完全オリジナルストーリーを入れていきます。


「では、限定テストの結果を発表します」

 

限定テストが終了し、採点を終えた高橋先生が戻ってきた。

この勝負の結果で今後の学園生活を変えると考えると、ヘリオスを除く全員が息を呑む・・・・・・

 

「Aクラス、霧島翔子 『97点』」

 

 Aクラス代表が満点を外した。 その言葉を聞いたFクラスは喜びの声を上げていた。

 中には勝利を確信し、「明日からAクラスの教室になるんだな!」と喜びながら肩を組み、ガッツポーズを決めている人たちまでいる始末だ。

 そんな中、アトラス達はAクラスの様子がおかしいことに気が付いていた。 あまりにも静かすぎた(・・・・・)のである。

 普通、負けが確定したと思ったなら、もっと悔しそうにしている物のはずである。 むしろ、大暴れしてもおかしくないぐらいだ。 だが、Aクラスにはそれが一切なかった。 それどころか、「あ~あ、やっぱりか・・・・・・」とでも言うように、あきれ顔になりながら頷いている者もいた。

 

「続いて、Fクラス 坂本雄二・・・・・・」

 

そして、『Fクラス代表』坂本雄二の点数は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・『49点』。 2対1、2分でAクラスの勝利です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高橋先生の締めの台詞・・・・・・ これにて、試召戦争が終了。

 

 Fクラスの卓袱台が『ミカン箱』になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・雄二、私の勝ち」

 

 床に膝をつく雄二に霧島が歩み寄る。

 

「・・・・・・殺せ」

「いい覚悟だ、坂本。 歯を食いしばれ!」

「あああああ、アトラスさん! 落ち着いてください!」

 

 アトラスがキレて拳を構えるところに、姫路が前に出てきた。

 

「大体なんだ、この49点って! 0点なら名前の書き忘れとかでわかるが、この点数だと・・・・・・」

「いかにも、俺の全力だ」

「貴様ァ! 私でさえ復習すれば100点取れるぞ!勝負科目決まってるならちゃんと復習位しろォォォォォォォ!」

「とにかく一度落ち着かんか、アトラス」

「そこをどけ姫路・ヘリオス! そこにいるA級戦犯には内臓から焼き払うという体罰が必要なんだよ!!」

「そこまでやったら体罰じゃなくて処刑です!」

「って、体内から炎で焼き払うってどうやってよ!」

「おろかなる選択・・・・・・ 焼き払う前に、異端審問にかけてから正式に刑罰を決めるのが現代日本における犯罪の裁き方と言う物だ・・・・・・」

「「ヘリオス(さん)!!」」

 

 ヘリオスも今は(・・)止めるために前に出てきたが、A級戦犯だという認識はアトラスと変わらないらしく、FFF団を利用してより重度の刑罰にするよう、アトラスに提案しだしてきた。

 

「・・・・・・でも、危なかった。 雄二が所詮小学生の問題だと油断していなければ負けてた」

「言い訳はしねぇ」

「ト言ウ事ハ図星ダッタナ!」

 

 シャルナクも我慢の限界だったのか、隠し持っていた苦無を取り出して、雄二に切り掛かろうとした所を明久・秀吉・テティスの3人に抑えられていた。

 いくらシャルナクでも、秀吉に涙目でやめるように頼まれたら、攻撃的な手には出られないようだった。

 

「・・・・・・ところで、約束」

 

 その台詞を聞いた途端、全員の注目が霧島達に集まる。 ムッツリーニに至っては流石と言うべきか、準備が速かった。 Fクラスの皆もその準備の手伝いをしている。

 

「分かっている。何でも言え」

 

 雄二の潔い返事。 自分の事とは限らないのに格好つけている姿に、Fクラスの大半が怨念を向けていた。

 

「・・・・・・それじゃあーー」

 

 霧島が姫路に一度視線を送り、再び雄二に戻す。

 そして、一度息を吸って、

 

「・・・・・・雄二、私と付き合って」

 

 言い放った。

 

「「・・・・・・はい?」」

 

 さすがにヘリオス達も予想できなかったのか、全員固まってしまった。

 霧島と言う女性はとてもモテるにも拘らず、どんな男子からの告白も断っていることで有名だった。

 中には「異性に興味が無く、女子にしか興味のないレズビアンである」なんて言う噂まで流れているほどで、ヘリオス達は流石に信じてはいなかったが、雄二の事が好きであるなんて、この二人のつながりがわからないこともありこの予想もできていなかったのである。

 

「拒否権は?」

「・・・・・・ない。 約束だから今からデートに行く」

「ぐあっ!放せ! やっぱこの約束はなかったことに・・・・・・」

 

 霧島は雄二の首根っこを掴み、そのまま教室を出て言った。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ねぇ、アトラス?」

「・・・・・・何だ、テティス?」

「キリシマって普通の女子だよね? 何でユウジを片手で運んでいけるの?」

「知らん! 見た限り、腕の力は普通のようだが、握力はかなりの物のようだったな。 しかし、それ以外が普通となると、長距離は運べないはずだから、途中で脅迫・・・・・・ ポケットに仕込んでいるやつを使ってOHANASIをして一緒にデートとやらにでも行くんじゃないのか?」

「What?」

「ナゼ、ソコデ英語ニナル?」

 

 そこで教室にしばしの沈黙が訪れる。

 あまりの出来事にこれ以上の言葉が出てこなかった。

 

「さて、Fクラスの皆。お遊びの時間は終わりだ」

 

 呆然としている明久達の耳に野太い声がかかる。

 音のした方を見やると、そこには生活指導の鉄人(西村先生)がたっていた。

 

「あれ?鉄じ・・・・・・ 西村先生。僕らに何か用ですか?」

「ああ、今から我がFクラスに補習(補修)についての説明をしようと思ってな。」

 

 我が(・・)、Fクラス?

 その言葉の意味をFクラスの全員が理解できなかった。

 

「おめでとう。 お前らは戦争に負けたおかげで、福原先生が副担任になって、担任は俺に変わるそうだ。 これから1年、死に物狂いで勉強ができるぞ」

「「なにいいいいいいいぃっ!」」

 

 クラスの男子生徒全員が悲鳴を上げる。

 生活指導の鉄人と言えば、言葉通り『鬼』の二つ名を持つほど厳しい教育をする先生だ。今回の戦争では、補習室の管理もしていたし。

 

「いいか。 確かにお前らはよくやった。 Fクラスがここまで来るとは正直思わなかった。」

 

 本当に予想外だったのか、西村先生も称賛の言葉を送ったが・・・・・・

 

「でもな、いくら『学力が全てではない』とは言っても、人生を渡っていくうえでは強力な武器の一つなんだ。 全てではないからと言って、ないがしろにしていいものではない」

 

 あまりの正論に全員ぐうの音も出なかった。

 

「あと、Fクラスの教室についてなんだが、一部の関係者から抗議の声が上がってな。 畳と窓ガラスを変えるための補修工事をすることとなったから・・・」

「「その間は休みですか!?」」

「馬鹿者! その間、授業は空き教室(Dクラス相当)を借りて補習を含めて授業だ!」

「「何ぃ!」」

 

 Fクラスの教室が一部改善されるとはいえ、その間Fクラスだけが休みなんてありえないことを勝手に妄想して喜んだFクラス男子は、当然の言葉に対して勝手にジェ〇ガのブロックのように崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

明久side

 

「では、今日はゆっくり帰って休むといい」

 

 そう言って、西村先生はそのまま教室を出て言ってしまった。

 でも、明久達は自分たちの要望が通ったことを内心喜んでもいた。

 これで、補修が完了すれば、姫路の体調の問題は解決する為、後は、ヘリオス達ロックマンの皆が元の世界へと帰る手段を探すための調査に専念できるからでもあった。

 

 そんな明久に島田さんがススッと歩み寄ってこう言った。

 

「さぁ~て、アキ。補習は明日からみたいだし、アキのおごりでクレープでも食べに行きましょうか?」

「え? 島田さん、そんな約束した覚えが・・・」

 

 まさか、Dクラス戦で清水さんに島田さんを売った恨みだろうか? その償いとしてクレープをおごらせようと言う気のだろうか?

 それはマズい! もしここでクレープなんて贅沢品を勝手におごろうものなら家計を握っているヘリオスに殺されてしまう。 仮に殺されなかったとしても、家の住人全員食事抜きで説教なんていう事にもなりかねない・・・・・・

 よく見るとヘリオスも明久達を警戒している。 その眼は「明久組にはそんな余剰資金は無い!」とでも言うような眼であった。

 

「だ、ダメです! 吉井君は私と映画を観に行くんです!」

「ええっ!? 姫路さん、それは話題にすら上がってないよ!?」

 

 一体何がどうなっているのかわからないけど、姫路さんまで!

 ああ、ヘリオスの視線が痛い・・・・・・ こめかみまでピクピク引き攣っているし、このままだといろんな意味でマズい!

 

「っていうか僕この後バイトがあるんだから無理だって!」

「そう? バイトなら仕方がないわね・・・・・・」

「そうですか。 残念です・・・・・・」

 

 どうにか、バイトのシフトが入っていることを思い出し、それを理由に断ることが出来た。

 だがその結果、二人とも、ものすごく残念そうにしゅんと落ち込んでしまった。

 

 

「と、言う事だからバイトに行ってくるね。 今日の晩御飯の材料はアトラスかテティスにお願いしてもいいかな?」

「ああ、買い物ならテティスあたりがやっておいてくれるだろうから、私は観察処分者の仕事に行ってくる。」

 

 アトラスが観察処分の仕事を、テティスが買い物という事に決まり、明久はそのままバイトに行こうとしたが、

 

「って、バイト? アキが!?」

「一体、どこでバイトをしているんですか? 教えてください!」

 

 さっきまで落ち込んでいた二人が、明久に詰め寄ってきた。

 

「いや、バイトはバイトだよ?」

「だから、バイトっていったいどこで働いているのよ!?」

「そうです! 場所くらいは聞いてもいいじゃないですか!?」

 

 何でそこまでやらなくちゃいけないのだろうと明久は考えるがすぐに切り替え、

 

「え? シャルナク、何!?」

 

「ハ?」

 

 二人の注意を適当に向けさせた後に、

 

「さいなら!」

 

 二人の横を全力で突っ切り、そのまま逃走した。

 その速度にロックマンズを除く全員が唖然としていた。

 

「あ、待ちなさいアキ!」

「待ってください、吉井君!」

 

 待てと言われてそう簡単に待つ人はいない。 明久は正門から一気に二人を撒いて、バイトに向かおうとした。 

 

 

明久side end

 

 

 

 

 

 

 

 

ZXAside

 

 文月学園前に付いたエール達は、下校する生徒たちから吉井について話を聞いていた。

 ヴァンとエールは正門の方から出てきた生徒たちから、グレイとアッシュは裏門の方から待ち伏せを兼ねて、門の方を警戒しながら吉井について調べていた。

 

『オイラ達の方では、学園一の問題児だっていう事しか分からなかったや・・・・・・ ごめん、エール』

「ううん、気にしないで? 元々、ダメもとで聞いているんだし、もしここで何もわからなかったら、別の場所を調べてみましょう?」

 

 どうにか、あの少年に会って、どうにか自分たちの世界に帰らないといけないことは百も承知だが、それで焦っていては出来ることも出来なくなってしまう。

 それでは元も子もない為、落ち込むモデルAを慰め、グレイとアッシュにも落ち込まないように伝えてもらおうとした時だった。

 

「エール! あの少年の名前と所属している組がわかった!」

『本当か! ヴァンはやっぱスゲーな!』

「ただ、あの二人大丈夫かな? 男の方がなぜか手錠されたまま二人で映画に行ってくるって言って、話を聞いた後、そのまま何事もなかったように行ってしまったんだが?」

「『それ、本当に大丈夫なんだよな!?』」

 

 別の生徒から話を聞いてきたヴァンが情報を持って帰って来た。

 それはいいのだが、情報源が怪しすぎる為、いまいち信用に欠けていた。

 

「いや、ここで嘘を付く理由がないだろ?」

「『それはそうだけど・・・・・・』」

 

 さっきからエールとモデルAの言葉が同調しているが、ヴァンは気にせずに続ける。 

 

「まず、名前は『吉井 明久』 学園一のバカで学校の問題児としての称号『観察処分者』を持っているそうだ」

「観察処分?」

『何だ、それ?』

 

 その称号がいったい何なのか、二人ともきちんとわかっていないようだったが、ヴァンは説明を続ける。

 

「その説明は後でする。 そして、この学園では勉学による学力でクラス分けされるそうだが、この子は最低ランク設備を与えられる『Fクラス』に所属しているそうだ。」

「設備を? クラスごとに違う訳?」

『学校ってそういうもんなのか?』

 

 学校と言う物を詳しくは知らないモデルAは、ついヴァンに質問をしてしまう。

 

「いや、この学園特有のシステムらしい。 勉学を頑張った優秀なエリートはAクラスと言う特別待遇のクラスに、それが出来ない奴ごとにクラスを分けて行って、最後にそれが出来ない落ちこぼれをFクラスと言う一番冷遇されたクラスに押し込むんだそうだ。 ちなみにこの学園の長の方針でこうなっているらしい」

『エール、グレイ達が速くモデルAをこっちに戻して欲しいって言っているんけど』

 

 ちょうど、グレイ達の所に行っていたモデルXが戻ってきていた。 

 

「ごめんごめん。 じゃ、ヴァンの話をまとめて、グレイに伝えてくれるかしら? お願いね、モデルA」

『おう! オイラに任せてくれ!』

 

 そう言って、モデルAはヴァンが聞いた情報をまとめ、グレイとアッシュに伝えるべく、大急ぎで戻っていった。

 

「あんなに慌てて、大丈夫かしら?」

「まあ、見つかるような失敗はしないだろう? とにかくもっと情報を集めながら、見張りを続けて・・・・・・」

 

 そんなことを話しながら、調査を続けようとしたその時・・・・・・

 

 

 

ZXAside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、しつこいなぁ!」

「待ちなさい、アキィィィ!」

「どうして、教えてくれないんですか。吉井君!?」

 

 明久は一度撒いたはずの二人に再び見つかり、第2の逃走劇を繰り広げていた。

 だけど、今は下校時間で、バイトにも急がないといけなかった。 彼は今バイトに関してはもう少しで皆勤賞をもらえる可能性がある為、ここで遅刻するわけにはいかなかったのである。

 これ以上の時間をかけている余裕はないと一気に人の多い、正門から一気に突っ切って二人を再び撒こうとしていた時だった。

 

「ヴァン、あの時の少年よ!」

「あれ? なんだか様子がおかしいぞ? 誰かに追いかけられているみたいだ・・・・・・」

『なら、あの子に協力する代わりに話を聞けないかい? もしかしたらモデルZだけじゃなくモデルH達の事も知っているかもしれない』

 

 先程から正門で見張りを続けていたヴァンとエールの二人に見つかってしまった。 

 

「そうね。確か、少し走ったところの路地裏を利用すれば、あの二人を撒いて話を聞きだせるかも? 一旦あの子を助け出して、それから話を聞きましょう!」

『なら、ヴァンはグレイ達と合流してあの少年を確保。 僕とエールであの二人を足止めしよう』

「分かった! エールとモデルXも気を付けろよ!」

 

 ヴァンは一旦エールと別れてグレイ達の元へ、エールは明久の元に向かっていった。

 

 

 

 

 

 一方、明久は何とか二人から距離を取って逃げ続けていたのだが、

 

 

「アキ! いい加減に捕まりなさい!」

 

 どうにか、姫路を体力切れに追い込んで、完全に蒔いたのだが、島田は諦めずに追いかけていた。

 その執念を無い胸の豊胸と古典の成績向上に向けることが出来ればなんて思ったりもするが、そんなかなわない願いは適当に捨てて、うまく逃げようとしたその時だった。

 そんな明久の前に一人の女性が立っていた。

 

「うわぁぁぁっと!」

 

 そのせいで逃げ切れなくなった明久はどうにか捕まえようとする島田を回避して、そのまま逆方向に逃げようとするが、今度はその女性が島田よりはるかに速い速度で追いかけてきた。

 

「ちょっ! お姉さん、いったい何者・・・・・・」

「驚いたわね。 私も最速で先回りしたつもりだったけど、こんなにすぐに来るなんて思ってもいなかったのよ? 一体どうやってきた訳?」

 

 この女性からは逃げ切れないと悟った明久はひとまず、島田を撒いた後、適当なところであきらめ、人気のない路地裏で、距離を取りながら適当な長さの鉄パイプを拾って構えた。

 

「あら? かなり乱暴な子ね? か弱い乙女にそんなもの向けるなんて・・・・・・」

『エール! お前、どうやってここに来た!?』

『モデルZ、それはこっちが聞きたいんだけど?』

「ライブメタル!?」

 

 明久はいきなり聞き覚えのない声に驚いていた。 この女性の懐から、見たことのない青いライブメタルが現れてきた。

 

「先回りして僕を待っていたとか、いきなり追いかけてきて、見たことのないライブメタルを持っているとか。 アンタ一体、何者なんだ!?」

「落着きなさい! 私はあんたと戦いに来たわけじゃない。 私の名前は」

 

 エールがそう言いかけた時、上から建物の間を一気に壁蹴りしながら明久側に近づいてくるガゼルのような姿をしたロボットと二人の少女と青年。

 まるでヘリオス達から聞いていた『フォルスロイド』のようだったなとか思っていたら、そのまま二人の間に割って入ってきた。

 

「え? ちょっ! 何!」

 

 いきなりのことだらけで軽くパニックになっている明久。

 その『フォルスロイド?』は急に光に包まれ、さっきのガゼルの姿から2丁拳銃を構える少年の姿になっていた。

 

 

「くっ! エールから離れろ!」

「えええええええ!! 僕まだ何もしてないよ!」

『おい、グレイひとまず落ち着・・・・・・』

『モデルZ! やっぱりこいつもロックマンか!!』

「モデルZを悪用しているというのなら、そんなことをさせるわけにはいかない。 モデルZは僕らが回収する!」

 

 

 モデルZもどうにかグレイを説得しようとしているが、どうも鉄パイプを持ってエールと戦っていると勘違いしているようで、一向に話が進まない。

 

 

「なるほど、これがアトラス達から聞いたロックマン同士の戦いって言うやつだね。 どうやら、話し合いは通じなさそうだし、いきなり2対1っていうのは流石に無理だろうけど、どうにか逃げ切るしかないな」

『オイラ達から逃げ切る? オイラ達から簡単に逃げ切れるなんて思うなよ!』

 

「ロックオン!!」

「トランスオン!!」

 

 二人の勝手な勘違いから再び、文月市を舞台にロックマン同士の戦いの幕を開けようとしていた。

 ロックマンとしての戦いの運命が、世界を変え、再び動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「『だから、話を聞けぇぇぇぇぇ!』」」

 

 エール達をそのまま置き去りにして。




今はここまでです。

この戦いの勝者はいったい誰に?

世界は違えと二人は共に主人公です。
二人の戦いを楽しみにしていてください!

今回はゼロの必殺技を出していないので解説は無しです。



因みに、浮気と称した気分転換にプレイしていたゲームはSAOのホロウフラグメントです。
本当に経験値が溜まらなくて、なかなかすすめられないですねwww


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第12話

なんだかんだで戦闘シーンは短めです。
もっとトランスオンを使ってみたかったが、この後のストーリーまで取っておきたかったですし……

今回は相当キャラが崩壊しますが、それもクロスssの醍醐味だと思って敢えて崩しています。
賛否両論でしょうが、否定的だと心が折れそうな豆腐メンタルな作者ですけど、今回も楽しんでくれたらありがたいです。

では、どうぞ!


 明久はロックオンの後、すぐに路地裏から脱出し、人気の無い場所へと向かおうとしていた。

 その後ろから、先ほどのガゼル型フォルスロイド、『ディアバーン』に変身したグレイが、一気に追いかけてきていた。

因みにモデルZはもう何を言っても無駄だと思い、沈黙している。

 

「どこに行く気だ!」

「街中で戦ったら、滅茶苦茶になるだろ! しばらく走ったところにいい場所ががあるから、そこでなら思う存分に戦り合ってやるよ!」

 

 

 グレイはそんな明久の行動に疑問を持ちながらも、追いかけ続ける。 ただ追いかけるだけなら、長距離のホバリングができるコンドル型の『コンドロック』やハチ型の『カイザミーネ』、で追跡してもよかったのだが、この2体では移動が比較的楽でも速度が遅く、2段ジャンプや空中ダッシュなどを用いて高速移動している今の明久が相手では速攻で取り逃がしてしまう危険があった為である。

 一方の明久も最初から戦うつもりはなく、一気に逃げ切るつもりだったのだが、ディアバーンに変身したグレイのスピードが予想以上に速く、FFF団との死の鬼ごっこのおかげで逃げ慣れているはずの明久でも振り切れなかった。

 

『おい! いったいどこに向かっているんだ? いい加減場所を教えろよ!』

 

 明久を追いかけて、3分が経過。車なんかよりも早い速度で走っているにもかかわらず、なかなか止まらない明久に焦れたのか、モデルAもなかなか止まらない明久にイライラが募っている。

 

「ああ、もういいだろう。 文月学園近くの森の中だ。 この中ならあまり人がいないから、周りへの被害も気にしなくていいぞ」

『学園の森って…… 確かにあそこなら周りへの被害は気にしなくても大丈夫そうだ』

 

 明久は逃げきるのを諦め、学園近くの森に逃げ込んだ。

 今いる場所は通学用の道路からも離れているため、これなら周りの人間を巻き込むこともない。

 

「だったら、いまからお前を蹴り砕いてエールの前で土下座させてやる!」

 

 それがわかったグレイは一気に上にジャンプする。 そして、その勢いに乗って明久にチャージした力を込めながら蹴り掛かる。

 

「メテオキック!」

「うそっ!」

 

 とっさのダッシュで回避する明久だが、それをチャンスと思ったのか、腕から大量の火矢を放ってきた。

 

「バーニングアロー! 乱れ打ち!」

「ちょっと! いきなり火矢って山火事になったらどうする気なのさ!」

『だったら! 大人しくやられるか、モデルZを返せよ!』

「いやいやいや! 別に奪ったわけじゃないからね?」

「だったら、なんで話し合いをしようとしたエールに襲い掛かっていたんだよ!」

「だから違うって言っているだろうが! 『天空覇!』」

 

 誤解がなかなか解けず、このままでは本当に火事になる危険があった為に、明久はモデルZにあった技の一つ『天空覇』を使った。 この技は敵の放った弾丸などを切り裂くことで弾の攻撃を防ぐことが出来る技であるのだが、その技を応用し、バーニングアローの発火部分を的確に切り裂きながら叩き落とす作戦に切り替えていた。

 高速移動を繰り返しながらバーニングアローを打ち続けるグレイ。 今は山火事に発展しないように、火矢を切り続けながら回避しているが、このままでは本当に限界が来てしまう。

 

『こいつ矢を全部撃ち落としやがった。 グレイ!』

「ああ、トランスオン『ローズパーク』!」

 

 ディアバーンでは対抗できないと思ったのか、森の中である事に気が付き、ローズパークに変身する。 両手の蔓を生かし、森の中を高速で動き回る。

 

「今度は花型か!」

 

 さらなる変身に苛立ちと焦りを覚えた明久は一気に叩き落として行動不能にしようと間合いを詰める。

 

「くらえ! ローズスティンガー!」

「させるか!空円斬!」

 

 明久は天空覇と空円斬と言う空中回転切りを同時に使いローズスティンガーを全て撃ち落とす。

 このチャンスを生かし、蔦や枝にうまくぶら下がっているグレイをチャージセイバーで地面まで叩き落とす。

 

「うわあああああああ!」

『グレイ!』

 

 地面に激突したダメージも相まって、一瞬でロックオンごと解けてしまうグレイ。

 それと同時に明久は一瞬でモデルAに詰め寄り……

 

「ホームラン!」

 

 セイバーをバットのように振り抜き、モデルAを遥か彼方へ打ち飛ばした。

 

『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・』

「このっ! ……あれ? モデルA!」

 

 どうにか体制を建て直したグレイだったが、すぐにモデルAが居なくなってしまっていることに気が付く。

 しかし、その前にモデルAが弾き飛ばされ、どこかに行ってしまった。

 このままロックオンが出来ない状態では、勝ち目などなかった。

 

「くっ! だけど、このまま諦めるわけには・・・・・・」

 

 それでも、あきらめずに立ち向かおうとするグレイだったが、もう明久はとっくにこの場から逃げ切っていた。

 付近を探し回るが、モデルAも明久も見つからず、途方に暮れるグレイ……

 

 

 

 

 

 

エールside

 

「グレイ! どこに行ったの!?」

『皆、あそこでグレイを見つけたよ!』

「本当か、モデルX? でもモデルAはどこだ?」

 

 二人に遅れて、エール達がようやく合流したのだが、二人の戦いを見ていない彼女たちはモデルAがいないことに気が付き、ヴァンがグレイに問いかける。

 

 

「どうしようみんな……」

「グレイ? いったいどうしたっていうのよ? ってまさか!」

 

 アッシュはグレイの様子がおかしいことから、気が付いたようだった。

 

「モデルAがどこかに飛ばされた……」

「「『……はい!?』」」

 

 

 

エールside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません! 遅くなりました!」

「この豚野郎! 珍しくこちらの方では早く来るのが当たり前みたいになっていたくせに今日に限ってギリギリですか!」

「美春さん、本当にごめん! 試召戦争の後始末で少し遅く・・・・・・」

「では、後始末で何でお姉さまから追いかけられたまま、学園の外に逃走するのかについてお聞きしたいのですが?」

「あれは勝手に今日、島田さんにクレープをおごらされそうになっていただけで、島田さんとはなにもないってば!」

 

 

 グレイとの戦いの後、誰にも見られないように3分で自宅に戻ってバイトに行く準備をし、先に家で買い物の準備をしていたテティスに買いに行く物についてのメモを2分で書き上げて渡した後、そのまま大急ぎでバイトに向かっていった。

 しかし、そこで明久を待っていたのは、遅刻寸前の明久に両腕を組んでお怒りの清水美春であった。

 明久がさっきから言っていたバイト先とは彼女の父が経営する喫茶店「ラ・ペディス」の事だったのだ。

 

「もういいですわ、さっさと準備してきなさい!」

「了解!」

 

 

 

 

 

優子side

 

「ふう…… 今日は散々だったわね。 結局最終的には勝ったけど」

 

 学校が終わって放課後、代表がデートに向かってすぐに優子も家に帰る事にしていた。

 先日の事故の件もあり、今回は何かを読んだりしながら歩くなんて言う真似はしていなかったが、家に帰ってからBL本を読み漁るなど、やりたいことがいっぱいであった。

 

「今日は何を読もうかしら。 ああ…… この本のネタのようにあの赤い剣士に○○とCPさせて、『ピー』で『バキューン!』させるなんて言うのでも……」

 

 とんでもない妄想を膨らませながら、嬉しそうな笑顔で帰宅していたが

 

『……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!』

「え!? きゃぁぁぁ!」

 

 いきなり飛んできたソフトボール位の金属が優子に目掛けて、飛んできていた。

 奇跡的に優子の手にすっぽり入るようにその金属をキャッチした優子だったが、流石に手がしびれたのだろう。 手のしびれに耐えきれずその金属を地面に落としてしまう。

 

『いてて… 死ぬかと思ったぜ』

「それはこっちの台詞よ…… ってあれ? 何よ?この声」

 

 いきなり頭に響いてくる声が聞こえた。 私はこの感覚には覚えがあった。

 そう、明久達とヘリオスが会話していた時。

 彼らは、たまにその場にいないはずの人物と喋っているようなところがあった。 モデルFとかモデルHなど、明らかに人の名前とは思えない単語も出ていたはず……

 

「まさか、このおもちゃみたいなのがしゃべっている訳?」

 

 このおもちゃみたいな金属がしゃべったことではっきりした。

 ヘリオス達はこの金属の声とも話していたのだ! その証拠に

 

『え? おいオマエ! オイラの声が聞こえるのか!?』

 

 私の言葉に反応してきた。 ってオイラ? しかもなんか宙に浮いているし!

 ……驚いている場合じゃないわね。 こいつについて聞きたいことがあるのよ!

 

「ええ、聞こえるわよ? さっきから頭に声が響いてきている感じなんだけど、貴方がさっきから喋っているの?」

『ああ、オイラはライブメタル『モデルA』。 さっきは拾ってくれてサンキューな! いきなり、剣で打ち飛ばされるなんて思ってもなかったよ』

「剣で飛ばされるって一体何があったのよ……? 私の名前は木下優子。 すぐ近くにある文月学園っていう学校に通っている学生よ」

 

 お互いに自己紹介を済ませた後、話を続ける。

 

「で? 貴方からいろいろ聞きたいこともあるんだけど、ここじゃあいろいろ目立つから私の家で話を聞かせてくれないかしら?」

 

 優子はモデルAを家に招待しようとするのだが、

 

『ごめん…… オイラ、この世界に一緒に来たグレイを探さないといけないんだ……』

 

 モデルAは離れ離れになってしまったグレイを探しに行きたいと言って断ってしまう。

 

「そう。 …ならその子の特徴を私に教えてくれないかしら? 貴方と一緒に探してあげるわ?」

『え? ほんとにいいのか?』

「ええ。 と言うより、貴方がそのまま浮いたまま街中を飛んでいたら大変なことになるわよ? 私が一緒にいれば、『その辺のアクセサリーのふりをする』とか『私の髪の中に隠れながら周りを見渡して探す』と言った感じで隠れながら探せるでしょう?」

『うう…… ありがとう優子。 そうと決まれば早速グレイを探しに行くぞー!』

 

 すっかり元気を取り戻したモデルAと共に、グレイを探し出すためひとまず学園に向かっていった優子であった。

 

 

 

優子side end

 

 

 

 

 一方の明久は忙しすぎず、暇過ぎずの状況で学校のバカっぷりからは想像もできないくらいにうまく仕事をしていた。

モデルZは明久が仕事の間は、カバンと共にロッカーの中に入れられている為、おとなしくしているしかなかった。

 

「吉井先輩、ちょっといいですか? 此方の家族連れ、お兄さんの方がアレルギーを持っているみたいなんです」

「アレルギー? うん、いいよ。何にアレルギーが出るのか教えてくれる?」

 

 事情を説明しているのは明久の後に入ってきたウェイトレスだが、それを明久は彼女を介してのお客様の声だと察し、彼女に的確な指導をする。

 

「果物にアレルギー反応が出てくるそうで…」

「分かった。 なら、こっちのチーズケーキかロールケーキとチョコレートケーキがいいんじゃないかな? 三つとも果物を使っていないし、甘さも控えめでしつこくないから男の子でも食べやすいと思うよ」

「はい、ありがとうございます」

「あ、あと、レアチーズケーキとは逆に避けておいてもらった方がいいよ! レモン汁を少し使っているからアレルギー反応が出る可能性があるから!」

「えっと、逆にレアチーズケーキはだめですね…… 吉井先輩! ありがとうございました」

 

 

 彼女は尊敬のまなざしを向けながら、客の元に戻っていった。 とてもうれしそうにしているところを見てみる限り、逆にお客様からありがとうと言ってもらえたようだ。

 自身もクレープや特製アイスクリームなどを席で食べるお客様の元に運んでいき、新しく入ってきたお客様に席を案内し注文を取ると言った仕事をすることを忘れない。

 

 

 

 忙しい時間が終わり、落ち着いてきたころ、美春が明久に話しかけてきた。

 

 

「普段の豚野郎とは思えないすごさですわね? アレルギーの品目リストを全部覚えているなんて、学校の勉強の方は手を抜いていらしたんですの?」

 

 彼女がそう言うのも無理はない。 学園における明久の評価は「学園史上最低なバカ」であり、少なくとも彼女の店で働いている姿からはそんな雰囲気は全然感じなかったのである。

 

「そうかな? それくらいならお店の事務所にあるマニュアルに全部載っているし…」

「Fクラス内でもバカにされているくらい学力が無い人間に言われても説得力がありません」

「うぐっ! で、でも実際ここで働いたばかりの時はお客さまから接客の時の言葉を噛んで『頑張ってね』とか『よくできたね』なんて言われていたし、やっぱり僕が馬鹿だっていう事実は変わらないと思うよ?」

 

 明久は謙虚に何でもなさそうに言うが、その話を聞いていた周りの人たちも興奮が止まらない。

 

「でも、そんな風に学校で言われているのに職場では逆に頼れる先輩っていうのは、学校で優遇されている天才に負けないくらいかっこいいと思いますよ?」

「うんうん、」

「ははは、まあバイトだけどね…」

 

 今にも背景がバラに染まりそうな尊敬のまなざしが明久に集中する中、清水さんのお母さんがやってきて

 

「はいはい、今は私語厳禁が鉄則の仕事中だよ。 今が落ち着いているからって油断しない!」

「「はーい、すみません!」」

 

 ひとまずみんな仕事モードに切り替わり、それぞれの持ち場に戻っていく。

 

「アキ君も、とても働いてくれて助かるけど、少し周りを甘やかしすぎるんじゃないかな?」

「ようやくシフトに安定して入ってくれそうな子達だからあんまり厳しくしすぎるなっていったの清水さんじゃないですか?」

 

 清水母も眉を寄せているが、別に本気で怒っているわけではない。 基本的に従業員にはあだ名で呼び、逆に自分の事を主任と呼ばせない鷹揚な女傑なのだ。

 彼女目当てに来る男性客まで出てくるほどで、(家族loveの暴走店長のせいで大半の男性客が離れてしまう為、実際のファンはその10倍にもなる)店の名物主任でもあるのだ。

 

「それはそうなんだけど、最近、近くにできたアイスクリーム屋、セルパンアイスだったかしら? そこの奴らが偵察に来ているみたいでね。 しばらく付け入るスキを与えたくないのよ。 あんまり私語が多いとさぼりの多い不真面目な店員しかいないとか悪評を建てられた時、言い訳がしにくいからね」

「そんな程度で損害が出るほどヤワな店じゃないと思いますけどね」

「それよりも美春、ディナータイムのレジチェックはしたの?」

「今、終わりますの」

 

 ちょうどディナータイムの客入りの伝票を美春が出し終わり、清水母が美春から伝票を受け取った。 その伝票をざっと眺めた清水母は満足そうにうなずいた。

 

「うん、今日も余裕で目標達成! よくやったよ皆。 このデザートは私からのおごりだ。 新作として出す予定の試作品なんだが、よかったら皆で食べて行きなさい。 あ、アキ君のアイデアが採用されたものもあるから期待してもいいよ」

「「おおおおおおおおお! 清水さん、ありがとうございます!!」」

 

 清水母のパティシエとしての能力は非常に高く、部下や同僚の突拍子の無いアイデアでもうまく実現させるほどの実力があるのだ。 明久が料理がうまいことを一瞬で見抜き、店長が不採用にしようとした中、彼は店の商品に関して口出しできるだけの腕があると言って採用した位で、実際に明久が新商品開発のアイデアを出した事で、ラ・ペディスは市内で有名な程度の店から、県内有数の名店となったほどである。

 ここまで来たら何で、彼女が店長じゃないのかが不思議になってくるほどである。 身長と体重はそれ以上のトップシークレットらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優子side

 

 

『グレィ~…』

「全然、見つからないわね」

 

 優子とモデルAは一度、文月学園に戻り、一度離れ離れにされたという森の近くを探し回っていたのだが、彼らも別の場所に探し回っていたのか、もうこの森にはいなかった。

 そのため、今度は商店街を探し回り、駅前まで来ていたのだが、全然見つからない。 やはり、お互いが街中を探し回っていたと仮定すると、逆に見つけるのは困難になると言う優子の予想が当たってしまい、結局無駄に体力を使ってしまっただけであった。

 後は最終手段として、元々拠点としていたという橋の下に戻ってそこで合流しようという話になり、一度駅前のアイスクリーム屋で休憩していたのだった。

 

「でも、ここのアイス意外とおいしいわね。 椅子も座り心地がいいし、接客や掃除もしっかりと行き届いているし。 最近できたんだけどこれだけいいとあの喫茶店もうかうかしれられないわね」

『まさか、つぶれるなんて縁起でもないこと…』

「流石にそんな事ありえないわよ。 しばらく傾くという事はあるかもしれないけどね」

 

 そんな事を会話しながら優子がたまたま出入口の方を見ていたら、子供が、転んでアイスを落としてしまっていた。

 

「うぇぇぇぇぇぇぇん!」

 

 やっぱりと言うべきか、子供が泣き始める。 ろくに食べてもいないのだろう。 ほぼ一玉分のアイスが床に落ちて、ぐちゃぐちゃであった。

 

「お客さま、大丈夫ですか?」

 

 子供をどうにかなだめようとしている母親の元にス⚪︎夫のような奇妙な髪形をした男の人がやってきて、事情を聞いている。

 どうやら、この店の店長のようだ。 さっきまで泣いていた子がすぐに泣くのをやめ、適当な席に座っているが、楽しみにしていたアイスが台無しになってしまったショックからかまだ落ち込んでいるようだった。

 その一方で緑色のメカメカしい制服を着た騎士風の店員とライオンのように荒々しい風貌の炎のような店員がせっせと掃除している。

 

「おっと、もう落としたりしたらだめだよ? お姉ちゃんと約束」

 

 どうやら、代わりのアイスなのだろう。 どこから出てきたのかがわからないが、天井から宙づりになりながらアイスを渡す提灯のような小さい女の子がさっきまで落ち込んでいた子供にアイスを渡していた。

 

「ありがとうお姉ちゃん! バイバーイ!」

 

 代わりのアイスを受け取った子供は喜びながら母親に手を引かれてそのまま店を出て行った。

 

「店長、ガキが相手だからって少し甘すぎやしませんかねぇ?」

 

 なんだか両腕の太いガラの悪そうな店員が、店長と何か話していたが、距離がある為になかなか聞き取れない。

 いつの間にか、かなり時間がたっていて、そろそろ食べないと自分のアイスまで溶けてしまいそうだったので、急いでアイスを食べてそのまま出て行くことにした。

 

「変な店員たちだったわね、モデルA」

『・・・・・・』

「モデルA?」

 

 どうも、店員たちが出てきてからモデルAは黙り込んでいる。

 話しかけても何の反応も示さない。

 

「…モデルA!!」

『うわわ! 何!? 何優子?』

「いったいどうしたの? さっきから黙りこんで?」

『いや、何でもないよ。 行こう優子。 速くグレイを見つけないとな!』

 

 どこか無理をしてるようだったが、優子はモデルAの様子がおかしいことに気が付かず、そのままグレイ探しを再開した。

 

優子side end

 




今回は全部オリジナルですが、後2・3話程書いたら清涼祭に突入させたいと思います。

今回のゼロ必殺技解説シリーズ!

天空覇
習得するとZセイバーの刃が紫色になり、敵のエネルギー弾を斬ることで防げるようになる。 のちのシリーズでは「ショットイレイザー」と言うパーツが同じ効果を発揮する。
遠距離攻撃に乏しいゼロにとってはありがたいスキルなのだが、実際に使いこなすにはそれなりの操作技術が要求された。(ちなみに作者は使いこなしきれませんでしたwww)

空円舞・空円斬
空円舞はいわゆる『2段ジャンプ』で、空中でもう1度ジャンプすることが出来る技。
空円斬はその2段ジャンプを習得と同時にできる空中回転斬りである。 これにより空中において360度の敵に攻撃ができるようになった。




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第13話

最近、本当に忙しいです。

仕事をやめることにして職業訓練を受けるための願書を取りに行ったり、ダンガンロンパに興味が出てきたり、ホロウフラグメントのOSSスキルの熟練度が上がらないってやきもきしていたり、話をつなげきれず苦労して新ネタ探しをしていたり・・・

はい、半分は忙しいのに関係なかったですねwww



エールside

 

「モデルA、見つからないわね……」

「そうだね、アッシュ……」

「いったいどこまで飛ばされたんだ?」

『それがわかればこんな苦労はしていないと思うけどね』

 

 エール達はどこかに飛ばされたモデルAを探し回っていたがまったく見つからず途方に暮れていた。

 気が付けばもう夜中で、この様子だとモデルAも探し回って動いている可能性が高かった。

 

「仕方がないわね。 もしかしたら、既に橋の下に戻ってきているかもしれないし、一旦戻りましょう」

「うん…」

 

 最後の可能性『もうすでに拠点の橋の下に戻ってきてる』に賭けて戻る事を提案したエール。

 皆もそれしかないと思ったのか、それに賛同してそのまま橋の下に戻る。

 

 

「結局いないじゃないの」

『そんな、既に戻っている可能性に賭けてきてみたのに、本当にどこに行ったんだ?』

「誰かに拾われている可能性もあるな。 だが、そうなると……」

 

 実際ヴァンが言った通り、モデルAは木下優子と行動しているのだが、彼女たちは彼女たちでまったく見当違いな場所を探しているため、お互いがお互いを探し合っているこの現状でモデルAとは会えそうにもない。

 グレイ達の体力ももう限界で、もう今日はモデルAを探し出すのは不可能だろうとひとまず、川の水で冷やした飲み物を適当に出そうとした時だった。

 

「あの? いったいどうしたんですか?」

 

 

エールside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫路side

 

「あの、いったいどうしたんですか?」

 

 体力が切れて明久君に逃げられてしまったあの後、私が目を覚ましたのは保健室でした。 何でも、あの後倒れてしまったという事でした。

 もう外も暗くなってしまって、明久君の事は諦めて仕方なく家に帰ろうとしていた時でした。

 

「いや、何でもないよ。 ここの川で冷やしていたジュースを飲もうとしていただけだから、気にしないで?」

 

 髪が長いですけど、男の人でしょうか? 川で飲み物を冷やすって、もしかして?

 

「あの、天気予報で夜は雨風がとても強くなるそうなので橋の下ではしのぎ切れませんよ?」

 

 この人たちは橋の下で住んでいるんでしょうか? 一応テントは張っていましたけど、この天気だとあれだけではしのぎ切れないでしょうし、雨が降るなんて思ってもいなかったのかほとんど片付けらしい片付けをしていないようでした。

 

「くっそー! いったいどこに行ったんだよ、モデルA!?」

 

 モデルA? そういえば明久君達もモデルZとかFとか、モデルLってテティス君も言っていましたね。

 何か関係があるんでしょうか? もしかしたらこの方たちなら何か知っているかもしれません。

 

「あの… 貴方のお名前を教えてくれませんか?」

「……グレイ」

「グレイ君、今日はもう遅いですし、皆さんと一緒に私の家に泊まっていきませんか?」

 

 どうにかその、モデルAと言う物について話を聞きたいですし、もしかしたら明久君達がこそこそとなにをやっているのかもわかるかもしれませんし。

 

「僕らはそういうことをしている場合じゃ!……」

「…それぐらいにしておけ。 お前ももう限界だろう? せっかくモデルAが見つかってもお前が倒れてしまっていたら意味が無いだろう? 大丈夫。 明日にはきっと見つかるよ。」

「何よ、急に先輩風ふかしちゃって…… 実際私ももう限界だし、今日の所は休みたいわね。」

「…わかってるよアッシュ、ヴァン。 ……あ、ありがとうお姉さん」

 

 体が弱い私だからこそわかるのかもしれません。 本当にあの子は体力の限界なんだと思います。

 私が倒れそうになっている時と全く同じ、息の仕方をしていますから、この様子だと本当に倒れてしまいます。 一度どこかで休ませてあげないといけないですし、私の家に泊めてあげたらそのままお話を聞くことが出来るかもしれません。

 お父さんとお母さんも事情を説明したらわかってくれると思います。

 

「ふふっ、素直なんですね」

「うるさいな、馬鹿にするなよ」

 

 本当に子供なんですね。 顔を赤くしちゃって可愛いですけど、それよりも今はこの人たちをきちんと休ませないといけません。

 急いで家に行きましょう。

 

「私の家はここからすぐですので急いでいきましょう。 えーっとお名前は?」

「私? 私の名前はエールよ 貴方は?」

「私ですか? 私は姫路瑞樹って言います。」

「じゃあ、姫路さんでいいわね。 本当にありがたいんだけど、一つ聞かせていいかしら? なんで私達を助けてくれるのかしら?」

 

 やっぱり、初対面の人が助けるなんて言ってもこうなりますよね。 明久君ならきっとこういうんでしょう。

 

「困っている人を助けるのに理由なんていりませんよ。 って私の好きな人の受け売りなんですけどね。 その人の事を見ている内にいつの間にか、私も同じようなことをしていました。 さあ、話はこのぐらいにして行きましょう?」

 

 

姫路side end

 

 

 

 

 

 

 Aクラス戦から翌日

 

「改築が終わったらFクラスの机は段ボールか……」

 

 皆と学校に行く準備をしている明久はそうつぶやくとはぁ~とため息をついた。

 昨日のAクラス戦で代表の雄二が負けてしまったせいで、Fクラスの机がミカン箱になってしまったのだ。

 

『それでどうやってノートを取るんだ?』

「モデルZ? ノートなんて取れるわけがないだろ」

『つーか、ちゃぶ台でもありえねーって言うのにさらに下があるとは思わなかったな』

『だが、今回の戦争のおかげで畳や窓ガラスなどが新調されることになったんだろう? モデルFが言うほどそう悪い事ばかりでもないだろう』

「些細なる問題…… 別に今日からと言う訳ではないだろう? それに、家畜以下の冷遇を受けるわけでもあるまい。 貴様ら一度水でも飲んで気を落ち着かせておけ」

 

 アトラス達が気落ちしている中、ヘリオスが何気なく冷蔵庫で冷やしていた水を全員分用意してくれいていた。

 

「ヘリオスってこの世界で言うツンデレだったの?」

『あらあら、ならそのツンデレのデレはいったい誰に向けた物なのかしらね?』

「ほう? テティスはどうやらいらない様だな!」

「わー! うそうそ! ごめんヘリオス、ボクにもお水を下さい!」

「何ヲヤッテイルノダ、オマエラ。 ヘリオス、俺モ水ヲ貰ウゾ?」

 

 テティスとモデルLがヘリオスを冷やかすが、ヘリオスがせっかく用意した水をそのまま戻そうとしたために、テティスも慌てながら水を持って行った。

 シャルナクはすでに準備が出来ているのか、今もっとも苦手としている(全部だめだが、特に勉強すらしていなかった)英語の参考書を読みながら、ヘリオスが用意してくれた水を持って行った。

 

『おい、もう8時半を過ぎているぞ?』

『皆、そろそろ出ないと遅刻になるでござるよ?』

 

 モデルHとモデルPが時間が無いことを告げ、残りの準備をした後、明久がカギを掛けて家を出た。

 

「しっかし、昨日は大変だったよ……」

「明久も散々だったな…… しかし、勝手な贅沢をして家計に響いてしまってはせっかくの節約生活も台無しになってしまうからな」

「ヘリオス、あまり明久を困らせるな。 一応私たちを住まわせてくれるだけでも……」

「アトラス、弟子が可愛いのも分かるのだが、貴様らに家計を任せたらどうあがいても赤字だった状況下でどうにかやっていくのがどれだけ大変か、分かっているのか? 確かに明久のそういう所は感謝しているが、それで飢えるのとでは話は別なのだ。」

「1週間くらいなら塩と水で生活しても大丈……」

「ソレデ生キテイケルノハ明久ダケダ!」

「ってそう言う事じゃなくて!」

 

 昨日、試召戦争後に起こった事を明久はヘリオス達に説明する。

 

「昨日、島田さんから逃げていた時にライブメタルを持った人たちに会ったんだよ」

 

 この言葉に4人に緊張が走った。

 しかし明久は4人の様子に気が付かないまま話を続ける。

 

「そのうちの男の子と戦闘になっちゃって、相手にしていられないから逃げようとしたんだけど、物凄い勢いで追いかけて来るもんだから逃げきれずに…… ってみんなどうしたの?」

 

 様子のおかしいヘリオス達に気が付いた明久。 

 明久の言葉にヘリオスが明久に質問をしてきた。

 

「明久、そのライブメタルと持った人とは、プロメテとパンドラと言う二人組じゃなかったか?」

「いや、4人組だよ? そのうちライブメタルを持っていたのは二人で、たしか、青い方のライブメタルを持っていた女の人がエールでいろんなロボットに変身した子がグレイって言っていたけど?」

「明久、お前あの二人と戦ったのか!?」

 

 明久の返答にアトラスが驚く。 アトラスに限らず、ヘリオス達は全員、グレイとエールに敗北を喫しているのである。 

 プロメテとパンドラではなかっただけましではあるのだが、それでも今の彼らにとって十分危険な相手と言えるだろう。

 

「とは言っても、あの子はまったく冷静じゃなかったし、うまく森の中に誘導してそのまま逃げてきたからたぶん大丈夫だと思うよ?」

「まあ、アキヒサが、殺しをせずに済んだならそれでもいいじゃない?」

「ダガ、アノ二人ガコノ世界ニイルノナラ暫ク厄介ナ事ニナルナ」

「そう言う事なら、今後は二人以上で動くように努めて、青のロックマン達が3人以上でいたなら即座に逃げて戦わないようにしていくしかないな。」

「ああ、正直あの二人はかなり強い。 今の明久でもまともにやり合うのは危険だ」

 

 ヘリオスは皆に団体行動を心がけるようにし、警戒するように呼びかけた。

 ひとまず、学校に行きFクラスの仮教室の場所を聞きに行こうとした時だった。

 

「おはよう秀吉! 秀吉は今日も可愛いね!!」

「お…おはようなのじゃ、明久」

 

 たまたま、一緒になった秀吉と……

 

「あら? 吉井君、おはよう。」

 

 優子も一緒だったようだ。 明久に挨拶を返すが、一緒にいたアトラス達を見て警戒しだしていた。

 アトラスも昨日の試召戦争の件で折り合いが付かないのかと思っていたのだが、何かがおかしかった。

 まるで、悪党を相手に信用が出来ないかのような視線が一瞬だが垣間見たのだ。

 その一方で、明久は秀吉と先程のあいさつの話をしている。

 

「明久よ…… ワシじゃからいいとしても、女子相手に同じようなことばかりをしておると要らぬ誤解を招くぞい!」

「何でさ?」

「イヤ、秀吉モソレデ良イノカ?」

 

 シャルナクも秀吉の奇妙な迷言にツッコミを入れてしまう。

 

「あっ、姫路さんだ! 『おはよー! 姫路さん』」

「おはようございます、明久君」

「アキ! おはよー」

「おはよう、島田さん」

 

「オイ!」

「ワシだけ可愛い付きじゃと!!」

 

 まさか、秀吉だけ可愛い付きだとは思わなかったのか、シャルナクと秀吉はツッコミを入れてしまう。

 

「一体、Fクラスの仮教室ってどういう所なのか楽しみですね」

「Dクラスレベルの教室っていていたわよ?」

「おーい! シャルナク、秀吉、皆もはやく行こうよー?」

「すまぬのじゃ、姉上たちはまだ、話が続いているようじゃから先に行っておかぬか?」

 

 

 どうも優子とアトラス達は話が長くなりそうだったため、テティスに先に行っておくと伝えたシャルナクと秀吉は明久、姫路、島田と共に先に学園へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アトラスside

 

 

 明久達が少し離れたところで話していた頃、優子とアトラス達は優子から一方的に警戒されたまま話を続けていた。

 

 

「そういえば、昨日の試召戦争を覚えているかしら? 私が1回戦で出た際にヘリオスと話をしていた時なんだけど?」

「意味深なる質問…… いきなり何を言っている?」

「確かにユウコとヘリオスが何か話していたね。 僕のいた場所では何を話していたのかはよく聞こえなかったけど」

 

 いきなりの話に対してヘリオスとテティスは何とか誤魔化そうと適当に話を合わせようとしているが、それに対しての優子の様子がおかしかった。

 どういうことか、先日までの優子の視線は一クラスメイトに向ける猫を被ったような優等生と言う物であったが、今の彼女は明らかにこちらを睨みつけている。

 これまでの表情が、うまく周りに合わせるような笑顔で接してきている感じなら、今の彼女の表情は太陽すら凍り付かせるような大氷河期と言ってもいい程だ。

 

「貴方の声とは明らかに別人の男の声が頭に響くように聞こえてきたの? あの声がいったい何なのか知らないかしら?」

 

 今の優子の発言で混乱しだした3人。 ライブメタルの皆はどうにか悟られないようにと沈黙を貫いている。

 

「さあな? アタシにはお前の言うような男の声は聞こえなかったぞ?」

「そうだよ。 きっと気のせいだって!」

 

 アトラスとテティスがどうにか誤魔化そうとしているが、優子の疑いの目は晴れない。

 

「些細なる問題…… あらかた緊張感で私の声が高めか低めに聞こえただけであろう? 変に考え込むのも体に悪いと思うが?」

「ふーん? 本当にそうならいいんだけど……」

 

 納得したのか、優子は一度話を切る。

 その隙にうまい事アトラスとテティスの二人は明久達を追いかけようとするが……

 

「後、貴方達の口からたまに出て来るモデルHとかモデルLって一体何? その変なおもちゃみたいなやつを持ちながら何かと話をしていたわよね?」

「「『!?』」」

 

 その行動は失敗に終わる。 今の優子の質問で確信した。

 この女は確実にアトラス達の正体に気が付いていると。

 そして、かつてアトラス達が何らかの大事件に深くかかわっていることも。

 

「そして、私もた・ま・た・ま出会っちゃったのよね? このライブメタルっていう喋る彫り物みたいな金属に……」

 

 そう言って、鞄から取り出したのは明久が吹き飛ばしたはずのライブメタル『モデルA』であった。

 一体、どういう過程で出会ったのかは今はどうでもよかった。

 

『おい! オイラ達の世界で世界を滅ぼそうとしていたお前らがいったいどうやって普通に学生をやっていられるんだよ!!』

「ま、まさか…… モデルA!」

「過大なる疑問! 貴様はグレイのライブメタルではなかったのか?」

「って、アキヒサに吹き飛ばされた後でグレイと合流できなかったの!?」

『お互いに探し合っているみたいで、見つけられなかったんだよ!』

 

 ヘリオス・アトラス・テティスの3人は優子がまさか、ライブメタルを持ってしまうとは思わなかった。

 そんな中、モデルAと優子の二人が会話を続ける。

 

「あんた達がなんで、学園にいるのか何てどうでもいいの。」

『ええっ! 優子、こいつらがどんだけ危険なのか昨日の夜に説明したじゃないか! こうして出会ってしまった以上』

「モデルA、そんな事わかっているのよ。 でも、身元があいまいなのに普通に学生を続けていられるというのならそれなりに根回しがしてあるはず…… もしそうなら、今こいつらと戦おうとしたところで社会的にも私たちが不利になるだけ! 少しは頭を使いなさい!」

 

 何やら、こっちと会話していたはずなのに、モデルAと口げんかになり始めるモデルAと優子。

 

「もしかしてチャンス?」

『あんた達、もしかして……』

「ああ、こいつらに構っていられる時間もない。」

『逃げるってのか!?』

「些細なる問題、ここで3方向に散らばって逃げれば的を絞るのは困難」

『ヘリオス、お前最近逃げに一切抵抗が無くなっていないか?』

「ふん、明久と一緒に居続けていれば戦略的撤退程度なら躊躇なくできるさ」

「カウント、3…2…1……」

 

 優子たちの様子を見ながらテティスが逃げるタイミングを合わせるためにカウントダウンをはじめ

「ゼロ!」

「『ダッシュ!!』」

 

 テティスのカウントがゼロになるのと同時に、恥も外聞もなく一瞬で逃げ出そうとした3人であったが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら? 3人共どこに行く気なのかしら?」 

 

 

 コンマ3秒の間に『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドン!』と言う音と共に3人の逃げようとする先の足場が撃ち抜かれていた。

 

「「「っ!?」」」

 

 これにはヘリオス達も驚きが隠せなかった。

 この一瞬の間に打ち込まれたと思われる銃弾の数は弾痕から察する限り、軽く50発はあるだろう。

 そんな超高速連射はグレイでも出来ない……

 だが、当の優子本人は……

 

「ふふっ」

 

 

 にこやかにいつもの優等生じみた笑顔を見せていた。

 いつの間にかモデルAも優子の鞄の中に戻ろうとして、もぞもぞと鞄のポケットの中に入ろうとしている。

 

「木下優子、貴様いったい何が目的だ。 どういうつもりで私達にこのことを話した? 私達の事をどの時期まで聞いている?」

 

 ヘリオスはどうにか落ち着きを取り戻し、優子に問いかける。

 

「ええそうね。 あんた達にもっと詳しいことを聞きたいし昼休みにほかのロックマンと一緒に図書館に来なさい。」

「逃げる気か?」

「勘違いしないでちょうだい。 別に負けるつもりはないけれど、こんな所でドンパチやるわけにもいかないでしょ?」

「昼に図書室だな…… 分かった」

 

 アトラスの返事の後、そのまま学園に向かっていった優子の後ろで

 

「よし、昼はアキヒサと屋上で食べようか!」

『いや、さっきの話聞いていなかったの!』

「いや、確かに分かったとは言ったが必ず行くとは言っていないぞ」

『確かに言ってなかったが、お前ら鬼か!』

「些細なる問題…… もし約束を破ったからと言って怒り出したら、その時には5人で私刑にしてやればいいだけの事だ」

『おおおおおおい! ヘリオス、おまえあの女と同じクラスだろ! どうやって抜け出す気だ!』

「? 別にほかのロックマンに声をかけてから行くと言って適当にごまかせばいいだけの事だろう?」

『『『お前ら本当に最低だな!』』』 

 

 完全に約束を破る気満々な3人の姿がそこにはあった。

 

アトラスside end

 

 

 

 

 

 

Fクラス(仮)では……

 

 

「「吉井! 貴様、大人しく異端審問会の裁きを受けよ!!」」

「イ・ヤ・だ・ねぇぇぇぇぇ! 力ずくで捕まえてみろ!」

 

 美少女3人と(誤字に有らず)登校していた罪で須川が会長を務める『異端審問会・FFF団』に追いかけまわされていた。

 シャルナクは別に明久なら問題ないと判断し、先ほどから勉強を続けている英語について、姫路から教えてもらっていた。

 

『しかし、こいつら本当に体力が無尽蔵だな。 前に見た映画のゾンビみたいだな』

「本当に腐った根性しているから…ね! っと」

 

「しかし、シャルナクよ。 おぬしは明久を助けにいかんで良いのか?」

「アア、明久ナラ大丈夫ダ。 アノ程度ナラ別ニ庇ワナクテモ一人デドウニデモスルダロウ」

「ああ、シャルナクさん。そこは違います。 そこは……」

 

 そんな会話から5分後にFFF団を同士討ちだけで全滅させてきた明久と途中で合流してきたアトラスとテティスが教室に戻ってきた。

 

「あ、あの。みなさん……」

「うん? あ、姫路さんどうしたの?」

「もしよければなんですけど、よろしければ今日のお昼は皆で屋上で食べませんか?」

 

 姫路が、屋上で食べないかと提案してきた。

 

「屋上って、アタシ達が良く弁当を食べている所だな」

「え? あ……じゃあ、私なんかが行っても迷惑にならないでしょうか?」

「そんなことないよ。 ねえアキヒサ」

「うん、そうだね。 後でヘリオスにも……」

「ヘリオスには僕が伝えておくよ! アキヒサとシャルナクは場所取りの方をお願い」

 

 テティスが優子との一件を誤魔化そうとするために明久とシャルナクに場所取りを頼み、それと同時にヘリオスのパソコンにアトラスが今日の昼の予定をメールで告げていた。

 

「むーっ…… 瑞樹って意外と積極的……」

 

 島田が、親の仇のように睨んでいる中……

 

「お姉さま~ 」

 

 美春が、島田の胸に思いっきり飛び込んできていた。

 

「お姉さま、いったい何をお考えですの? こんな汚らわしい豚どもとのお茶会を羨望するだなんて……」

「美春、離して! 寄らないで!」

「あれ? 清水さん、どうしたの?」

 

 いきなりの美春の登場につい声をかけてしまう明久だったのだが

 

「吉井明久! 仕事場でもないのにわたくしに声を掛けないでください!?」

「ひどっ!」

『いや、別にバイトの関係で話があるのかと思っても不思議でもないだろう!』

『本当に清水殿は男と言う物が嫌いなのでござるな』

 

 見事に一蹴。 そして、そのまま島田と話を続ける美春。

 

「ああん  お姉さまは本当は美春の事を愛してくださっているはずなのに、照れ屋なんですね」

「ウチにその趣味は無いから! アキ、アキも何か言ってやって!」

「清水さん、もしよかったらお昼を屋上で食べるんだけど、島田さんと一緒に来ない? そこでならうまい事島田さんといちゃつけると思うよ?」

『『『うわぁぁぁ…… 明久も酷いな……』』』

 

 明久の一言にライブメタルもドン引きである。 いくら、島田が暴力的ツンデレであまり好きではないからと言って、彼女を好いている『女性』とくっつけようとしているという光景は流石に酷いとしか言いようかなかった。

 

「アキ!?」

「おおおおおおお!! 豚野郎にしてはとてもいいアイデアですわ! 昼に屋上ですね。 楽しみにしています、お姉さまぁ~」

「アキィィィ! また私を売ったわね!? 何でそんなことをするわけぇぇぇぇ!!」

 

 キレかけている島田は明久の胸倉をつかみながら明久に問いかける。

 

「何でってそんなの決まっているじゃないか?」

「え?」

「二人の恋が育まれる事で二人が幸せになれると信じているから(暴力的な島田さんを幸せと称して縛る事が出来るから)さ!」

「ウチにその趣味は無いから!」

 

 明久の本音と建前が同時に聞こえ、ライブメタルの本日2回目のドン引きであった。

 

「……いま、建前と本音が同時に聞こえたのは気のせいなのかのう?」

「気ノセイダロウ……」

『あー…… オレは応援しているぜ』

「モデルF、お願いだから冗談でもそんなこと言わないでよ……」

 

 そんな中、明久は別の話題に切り替えようとする。

 

「所で、皆は雄二を見なかった? 昨日霧島さんとデートに行ったきりだったで、今日はまだ会っていなかったよね?」

「ユウジ? ユウジならあそこに……」

 

 テティスが雄二の場所に指をさすが、その光景に映った者は……

 

「・・・・・・・・・・」

「「「『『アウトォォォォォォォォォォォォ!!』』」」」

 

 

 猿轡をされ、縛られている無表情な雄二の姿であった。

 その光景には島田と姫路を除く全員がツッコミを入れていた。

 テティスに至ってはむせるまで大爆笑していたほどだ。

 一体何があったのか? 雄二の耳には最新型の無線式のヘッドホンまで取り付けられていた。

 

「おい坂本、お前一体何の趣味に目覚めたんだ?」

 

 勇気を持ってアトラスが猿轡をほどき雄二に問いかけるが

 

「あんたは俺が趣味でこんな目にあっていると思っているのか!?」

「いや、でもユウジはキリシマと付き合っている訳だし、彼女さんのお願い位聞いてくれそうな感じが……」

「いくら、俺でもこんなお願いなんて聞く訳ねえだろ!?」

 

 テティスは雄二がマゾとして開花したと勘違いして、とんでもないことを言い出そうとしている。

 

「トコロデ、コノヘッドホンハ、一体何ダ?」

 

 シャルナクがヘッドホンを取り出しその内容を聞こうとしていたが、5秒で投げ飛ばしてしまう。 

 

「アウトォォォォォォォォォォォォ!!」

「「いったい何があった!?」」

 

 シャルナクの反応に驚愕した皆はどうにか無事なヘッドホンを拾い、その中身を確認しだす。

 

『……雄二、愛してる』

『……雄二、結婚して』

『……雄二、愛してる』

『……雄二、結婚して』

「「『アウトォォォォォォォォォォォォ!!』」」

 

 アトラスが窓を開け、ヘッドホンを遥か彼方に星になる勢いで投げ飛ばした。

 

「アハハハハハハ!(涙) ユウジ、こんな曲聞いていたんだ!!」

「曲!? どっちかと言うと洗脳だろ!?」

「アタシもこんなものを聞かされたとしたも耐えられる気がしない……」

「ごめん、聞いちゃいけないものだったね……」

「明久…… そう思うなら、助けてくれ……」

 

 そう言われ、皆でどうにか縄をほどいた事で自由になった雄二。

 

「そう言えば、今日のお昼だけど……」

 

 明久が、雄二に昼の話をしようとした時だった。

 

シャルナクが数秒消えたかと思ったら、教室の数か所が板で打ち付けられ、その手にはいくつかの小型機械があった。

 

「盗聴器ト、隠シ扉ダ。 全部封鎖シテ置イタカラ安心シテ話セ」

「え、盗聴器!? 何でこんなものが?」

「あらかた浮気防止とか言って翔子が仕込んだんだろう? そんなことよりもいったい昼になんだ?」

「あ、どうでもいいんだ……」

「うん、今日の昼になんだけど、姫路さんと島田さんと、清水さんの3人も一緒に食べようって話になっていたんだけど」

「まあ、いいんじゃないか? 俺もべつにかまわないぞ」

 

 雄二に伝言を終え、皆はシャルナク指示の元、敢えて潰さずにおいた盗聴器をいつの間にか『何が聞こえても浮気がないように聞こえる』よう改造した後、元の場所に戻しておいた。

 アフターケアもばっちり忘れないシャルナクに感謝した雄二はそのまま、席に戻り適当にだらけ出し、いつの間にか眠ってしまっていた。

 

 

「そう言えば、明久よ」

「うん? どうしたの、秀吉? (はっ! まさか秀吉から告白してきてくれるなんて!)」

 

 秀吉に呼ばれ、明久はなぜか秀吉から告白されると勘違いしているが

 

「うむ、昨日の夜、姉上が明久達が持っておる金属みたいなものと同じような物を持っておったのじゃ」

「え? それって一体どういう事!?」

「詳しい事までは分からんのじゃが、急に飛んで来たものを拾ったと言っておったな。 明久達なら何か心当たりがないかと思ったのじゃが?」

 

 ライブメタルの話が秀吉の口から出てきたことに明久は驚いていた。

 

「あの、その金属なんですが、もしかして優子ちゃんが『モデルA』なんて言っていなかったですか?」

「姫路さん!?」

 

 いきなりの姫路の乱入に更に驚く明久。

 

「あの、昨日たまたま出会った男の子が秀吉君の言ったおもちゃを探し回っていたので、多分それの事ではないかと思ったのですが……」

「(これはマズい……)」

 

 焦る明久は、話を聞いていたアトラス達に目の動きとわずかな指の動きだけでサインを送る続ける。

 非常事態時に備えてアトラス達と作ったサインであるのだが、どうもアトラス達も策が浮かばないのか手が出せなかった。

 

「もし、よければ秀吉君、お姉さんに事情を話をしてその金属と言う物を借りることはできませんか?」

「ううむ、姉上が話を聞いてくれるかは分からぬが承知した。」

 

 いつの間にか、姫路と秀吉の間でライブメタルが渡る可能性が高い。

 そう判断した明久は二人の間に入って説得しようとする。

 

「ち、ちょっと待って!」

「どうしたんですか、吉井君?」

「その秀吉のお姉さんが見つけたっていう金属? とても危険なものだってアトラス達から聞いた事があって、かつてアトラスの国の軍が独自に開発していた物が流出したものだって聞いたことがあるんだ」

「なんじゃと!?」

「吉井君、それ本当なんですか?」

 

 真虚を織り交ぜてうまいこと説明しようとする明久。

 

「それはむやみに人に渡したりしないようにしてもらってもいいかな。 それで、もしよかった僕たちに渡してもらってもいいかな?」

「む、言っていることが矛盾しておらんか? むやみに渡すなと言っておきながら、なぜお主たちに渡さねばならんのじゃ?」

「あ、正確に言うとアトラスを介して、向こうの国の人にどうにか厳重に封印してもらいたいから、それまで誰にも渡してほしくないっていうだけなんだけど」

「ううむ、いささが納得いかんところもあるが、承知した。 念の為姉上には変に弄ったりせん様にも伝えておこう」

「ありがとう、好きだァァァー秀吉!!」

「ワシは男じゃ!」

 

 

 

 




正直、明久の行動は失敗だったと自分でも思っています。

でも、これも戦いの為の伏線のつもりで書いています。

この行動がどう出て来るか楽しみにしていただけたらと思います。


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第14話

アンケートを出す前は明久のヒロインを葉月ちゃんにしたいと考えていた時期もありましたが、そう言うのは明久をロリコンにするのを前提にしたssを別で出した方がいいと思って、採用しませんでした。

例えば、バカテス×ロウきゅーぶでssを書いてみたくなった時ですね。

しかし、今はこのバカライに力を注ぎたいので書く予定はありません。


そんなロリコンの気がある作者ですが、今後もよろしくお願いします!


優子side

 

「……来ないわね」

『ああ……オイラは何となく読めていたけどさ』

 

 今は昼休み。

 優子はモデルAと共に『ほかのロックマンも呼んでくるから先に行って待っていろ』と言うヘリオスの言葉を信じて、先に予約して借りておいた図書室の席で本を読んで待っていたはいいのだが、肝心なヘリオス達が来ない現状にいらだっていた。

 この様子だと完全にすっぽかしている。

 

『……ちきしょー! こんな事ならあの時にでもアイツらをやっつけておくべきだったよ!』

「話し合いで大人しくケリを付けられたら良かったんだけど、やっぱり戦ってほかのライブメタルを奪った方が速そうね」

 

 優子はモデルAから聞いた話から、ヘリオス達がかなりの危険人物だという事は分かっていた。

 しかし、この学園における彼らの良い行動も知っているために、どうにか話し合いでライブメタルを譲ってもらい、この世界で平穏に過ごしてもらいたいと思ってもいた。

 だが、この約束を無視をしているという事は、話を聞く気などこれっぽちもないという意思表示だろう。

 ならば……

 

「ヘリオス達がそうくるのなら私も容赦しないわよ!」

『……優子?』

「放課後にあいつ等の誰かに襲撃をかけるわよ! モデル……」

 

 優子が決心して図書室から出ようとした時であった。

 いきなり、優子のケータイにメールが届く。

 

「何よ、いきなりメールなんて!」

『なんか着信音が変じゃなかったか?』

 

 ちなみに着信音は、バカテスBGM『試獣召喚!』であった。

 どうやらヘリオスからのメールのようだったが

 

「はあ、あいついったい何言ってんのよ!?」

『一体何をどうやったらこういうことになるんだよ?』

 

優子side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリオスside

 

「何だ、これは?」

『いったいどうなっている?』

 

 ヘリオスとモデルHはしつこく迫ってくる優子を相手にほかのロックマンを呼びに行ってくるから先に行って待っていろといい、そのまま彼女との約束などなかった事にして、メールの通りに屋上に来ていたのだが……

 

「コレヨリ、任務ヲ開始! 『姫路 瑞樹』ヲ抹殺スル!」

「ごめんなさい! わざとじゃないんです!」

 

 そこで見た光景は

 

 

 

1.痙攣している明久・アトラス・テティス・坂本

2.泡を吹いて気絶している秀吉・土屋

3.姫路を暗殺しようと苦無を片手に詰め寄るシャルナク

5.そのシャルナクのもう片方の手には可愛らしく盛り付けられた変なにおいのする弁当

6.行方不明の島田と清水

 

 

「おぞましき悪臭…… まさか、あの弁当はあの女の仕業か!」

 

 とりあえず、事情を聞くために一度シャルナクを宥め(しばらくシャルナクが話を聞かず、危うくヘリオスごと巻き込もうとしていたが)姫路から話を聞くことに。

 

「些細なる質問…… これは一体何があった?」

「実は、お弁当を作ってきて皆さんに食べてもらおうとしたんですけど……」

「弁当? シャルナクが今持っている物の事か?」

「はい」

「コノ弁当ヲ確カメテミロ」

 

 どうせ調味料の選択を間違えたとか、作り方を間違えて食感がおかしくなってしまったぐらいの物だろうと思っていたヘリオスだったが、調べてみた結果は賢者と呼ばれたヘリオスの理解すら遥かに超えている物だった。

 

 

「……薬品か? かなり臭うな。 所々箱が溶けているのが原因のようだが……」

「ヘリオスさん酷いです! 私、変な薬品なんて入れていませんよ!!」

「これは…… 若干だが硫黄のにおいがするな」

「ちょっと隠し味に『硫酸』を入れただけで…… 痛い!痛い!」

 

 ヘリオスは気が付いたら姫路の頭をアームロックの要領でつかんでいた。 モデルHも何時でもロックオンできるように承認状態にしているぐらいでもあるから、この非常識さにはどれほど怒っているかは容易に想像が付くだろう。

 

「思いっきり危険な薬品が入っているではないか!? 姫路、貴様! 私をバカにしているのか!!」

「そ、そんなバカになんて、って痛い!痛い!痛い! 痛いです!!」

「ヘリオス、ソノママ抑エテイロ。 俺ガトドメヲ刺シテヤル! ………ヒヒッ…ヒハハハハハハッ!」

「……シャルナク、一度落ち着け」

 

 どうにか暗殺モードのシャルナクを落ち着かせ、その間にも姫路へのアームロックの握力を上げることを忘れないヘリオス。

 その後、行方のわからなかった島田と清水の二人が袋いっぱいの飲み物を持って帰ってきた。

 ヘリオス同様最初は何が起こったのかがわからなかった二人だったが、その事情を聞いた二人は表情を青くしながらカタカタと震えていた。

 

「姫路瑞樹…… 何か言う事があるんじゃないのか?」

「硫酸って調味料じゃないんですか?」

「ヘリオス、紐ヲ持ッテ来タゾ?」

 

 姫路のずれた発言に対してシャルナクが長い紐を用意してきていた。

 彼女の全身を縛り上げ、屋上から逆さ吊りにするには十分な長さだろう。

 

 

「的確なる判断…… そのまま全身を縛り上げるぞ。 私は彼女を抑える。 シャルナクは外れないように念入りに縛り上げろ。 この愚かなる認識を後悔させてやる」

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい! 本当に硫酸が調味料じゃないだなんて知らなかったんです」

「ソノ入力ハ ミトメラレナイ! 回答ノ入力ヲ?」

「ひいいいいいいいいいいい!」

 

 あまりにもハチャメチャな光景に島田と清水はもう言葉も出なかった。 清水に至っては「ありえませんわ」と呟いているほどだ。

 

「む? これはもしや、優子の方を断る理由になるかもしれんな」

 

 ヘリオスは優子のケータイにここでの事情をそっくりそのまま書き上げ、そのままメールを飛ばす。

 その間もしっかりと姫路を押さえつけるのも忘れない。

 

「これでいいか。 向こうでどんな反応をしているかは分からんが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 10分後……

 

 

 

 本当に逆さ吊りにされながら、本気でキレていたシャルナクとヘリオスに説教されていた姫路は体力の大半を使い果たしすっかり憔悴しきっていた

 

 

 

「はうううう…… 酷い目に合いました……」

「もう一回逆さまに吊るされたいか?」

「ですから、薬品を調味料に使ったことに関しては謝ります! 一応、とある男の子にも味見してもらって大丈夫って言ってもらったから……」

「それ絶対にその男の子の方がおかしいからね!」

「そう言えば、一緒に食べたヴァンさんは何故か運ばれてしまいましたけど」

「『ヴァンって誰だよ!』とか、『ボクら以外にも食べさせたのかい!?』とかいろいろツッコミたいところはあるけれど、まずその人が運ばれたというあたりから気が付こうよ!」

「下がピリピリするけど普通に食べられるって言っていたのに……」

「「「その男の子は化け物か!?」」」

 

 明久達にも被害者がいたのか、一緒に食べたという二人にはいろんな意味で同情する。

 その後、ヘリオスは姫路に半ば脅迫に近い形で、料理をすることを禁じた。

 明久が「流石にやり過ぎじゃぁ…」と姫路を庇おうとしたが、「なら、明久は毎日あの化学兵器を腹いっぱいに食すことは出来るのか?」と返したら何も言えなくなってしまった。

 万が一、約束を破った場合の対応はシャルナクに全権を預けると言った後、毒弁当以外の食べ物を持ってきていなかった姫路の為に、皆から少しずづおかずを分けてあげることになった。

 ヘリオスも購買からおにぎりを買い与えるあたり、一応心配はしている様だったが、姫路はショックから立ち直れないのか、落ち込んでいるままだった。

 

 

 

 

ヘリオスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の授業が終わった後の各自の日常は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久side

 

 

 

 

 

 明久はテティスと二人で一緒に家に帰るところであった。

 

 

「さて、今日はバイトも休みだし、夕ご飯は僕が作ろうかなっと」

「おおおおおおお!! アキヒサが作ってくれるのかい!? やったー!」」

 

 そんな会話をしながら家に帰宅しようとしている途中だった。

 

「あれ? アキヒサ、何か落ちているよ?」

 

 テティスが横断歩道の真ん中で何かを見つけたようだ。

 明久がそれを拾うが、その正体は『キツネのフィー』のストラップ。

 ちなみにフィーと言うのは、如月グランドパークのマスコットキャラクターで、子供に大人気である。

 

「落とした子が探しているかもしれないし、元の場所に置いておこうかな」

『おい明久、その位置だと……』

 そんなことをいい、そのまま拾ったストラップを元に戻す。

 そして、横断歩道を渡り家に帰ろうとした時、一心不乱になって探し物をしている女の子がいた。

 

「あうう… ない! 無いよぉ~……」

「あれ? 葉月ちゃんどうしたの? こんなところで何を……」

「あ、バカのお兄ちゃん! 氷のお兄ちゃんもこんにちはです。」

 

 今、明久の事を『バカのお兄ちゃん』と呼び、テティスの事を『氷のお兄ちゃん』と呼んだこの少女の名前は「島田 葉月」。

 島田美波の妹である。

 

「実は、落し物を探しているです」

「落し物? 一体何なの?」

「フィーのストラップをなくしてしまったです。 限定版でもう売っていないのに……」

『モデルL、もしかしてそれって』

『ええ、さっき明久が拾っていたわよね?』

『いや、探している子の為とか言って元に戻してしまっただろう?』

「何だ。 それだったらあそこに……」

 

 そう言って明久が先程の横断歩道に指をさし、そこにみんなの視線が向くが……

 

 

 ヴォン! ヴォンヴォン!! ヴォヴォヴォヴォン!! 

 

 という轟音を鳴らしながら、大量の車が行き交わしていた。

 このままでは横断歩道の真ん中には行けそうにもなかった。

 

 

「あうううううううううう!!」

「うわぁぁぁ! どうしよう!?」

『やっぱりこうなったじゃないか、明久!!』

『ちょっと、これどうするのよ!? このままだと木端微塵になるわよ!?』

「ちょっ! それヤバイじゃん!」

「フィーちゃん!」

 

 明久達がうろたえている中、突然後ろから中年男性が声をかけてきた。

 

「皆さん、どうしましたか?」

「「福原先生!!」」

「ちょうどよかった、福原先生! 召喚許可をください!!」

 

 明久が福原先生に召喚許可を懇願するが……

 

「おや? 一体どうしてですか?」

 

 事情を知らない福原先生は明久に理由を尋ねて来る。

 

「早くしてください! 急いでるんです!!」

「ハヅキちゃんのストラップがピンチなんです!」

「……今回だけ特別ですよ」

 

 明久とテティスの頼みが届いたのか、特別に召喚許可がもらえた。

 

「「ありがとうございます! 試獣召喚!(サモン)」」

 

 

 明久とテティスが召喚獣を召喚。 連続して襲い掛かってくる車を巧みな操作技術で回避させる。

 このままいけばフィーのストラップが助かるかもしれない。

 葉月ちゃんもフィーのストラップが助かるかもしれないと、喜びの表情を浮かべている。

 

 「フィーちゃんを助けるんだー!!」

 「行け! ボクの召喚獣よ!」

 

 召喚してから6秒。 もう少しでフィーのストラップを拾えるかもしれないというその時だった。

 

『『二人とも、危ない!!』』

 

 モデルZとモデルLが叫ぶがもう遅かった。

 二人の召喚獣はストラップを拾う前に謎の車に思いっきり轢かれてしまう。

 テティスの召喚獣に至っては、タイヤに巻き込まれ、フィールドバック率が40%を超えていたならショック死していたであろう痛みが急激に襲い掛かってくる。

 

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぱばおあなあぼおあjlsふぁおえjflえ!!」」

「お兄ちゃん達、大丈夫ですか!? ……バカなお兄ちゃん!!」

「いたたたた……」

「フィールドバックが……」

『よく無事だったな』

『っていうかテティスの方は下手したら本当に死んでもおかしくなかったわよ? むしろ何で生きているの?』

「全く、一体何をバカやっているんだい!」

 

 明久とテティスの召喚獣を轢いた車の中から運転手が顔を出すが、その顔はまさしく学園長そのものであった。

 

「おはようございます。 学園長」

「いきなり驚いたじゃないかい!! 召喚獣で悪さなんてするんじゃないよ!」

「悪さなんてしてないですよ! 僕はただ落し物を拾おうと……」

 

 学園長の嫌味に明久が事情を説明しようと指先をフィーのストラップに向けるが、そのストラップは大型トラックのタイヤに轢かれてしまった。

 もうフィーのストラップは粉々に砕け、それと同時に葉月ちゃんの希望も砕け散った。

 

「フン、おもちゃなんかにうつつを抜かすなっていう事だ……」

「ううううううううう……」

 

 学園長が心無い暴言を吐きかけてしまう。

 その言葉のせいで葉月ちゃんはショックのあまりに泣き出した。

 学園長の暴言に明久は拳を震えさせ、テティスはどこからか『モデルL仕様のハルバート』と『角砂糖4個』を取り出してきた。

 

「『そんな言い方、しなくてもいいじゃないですか!(は無いだろ!)』」

 

 明久とモデルZは召喚獣で攻撃しようとし……

 

「学園長も、なにか一つだけブチ壊してみようか?」

 

 テティスとモデルLは学園長の車をいろんな意味で壊しにかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、それがかなう事は無く、明久の召喚獣はフィールドごと消え去り、それに気が付いたテティスは攻撃をやめてしまう。

 

「召喚許可を取り消しました。 召喚獣で暴力を振るってはいけません」

 

 どうやら福原先生が召喚許可を取り消してしまった事が原因のようだった。

 明久とテティスは納得がいかないのか、福村先生に抗議しだす。

 

「召喚獣はバカのおもちゃじゃないよ!!」

 

 しかし、その抗議も学園長の一喝で止められてしまう。

 その学園長の視線の先には完全にバラバラに破壊されてしまったフィーのストラップ

 そして何を思ったのか、学園長が車から降り、明久とテティスに何かのチラシが2枚、申込書が3枚を渡した。

 

「悔しかったら、バカでないところも見せてみな。 そしたらお前達の欲しい物が手に入るかもしれないよ?」

 

「「『え?』」」

「一体どういうことですか!?」

 

 明久とテティスはいきなりの発言に驚くばかりで、葉月ちゃんも学園長に質問しようとするが……

 

「そこのおチビちゃんも、兄貴分にばかり依存しないで少しは自分で考えな」

 

 そのまま車の窓を閉め、どこかに行ってしまった。

 

 

 

 

 

明久side end

 

 

 

 

 

 

 

姫路side

 

 

 

 

 

 一方の姫路はすでに家に帰ってきていたのだが、学園の話をエール達にしたのは非常にまずかった。

 

「だから言ったでしょ!? ヴァンが気絶した地点で気が付きなさいよ!!」

『まあまあエール、瑞樹さんもこってり絞られたようだし、それぐらいにしてあげなよ』

「モデルXも甘すぎると思うけど? っていうか瑞ねぇも良くそんな甘い罰で済んだよね?」

「アッシュ、全身を念入りにと縛って屋上から地面に向けて逆さ吊りと言うのは、甘い罰だと思わないんだけど!!」

 

 アッシュの容赦ない発言にグレイもツッコミを入れてしまう。

 しかし、忘れてはいけない。 グレイは姫路の化学兵器料理を食べても平気な顔が出来る異常な味覚と胃袋?をしていることを……

 

 

「しかも、今後は料理を作る事を禁止されてしまいました」

「いや、普通に考えてそんなバカ料理しか作れないなら禁止するに決まっているでしょ!」

 

 料理を禁止された話をしたが、アッシュに一刀両断にされてしまう。

 この話はツッコミと説教しか飛ばすことしかないため、話題を変えようとするモデルX

 

『そう言えば、モデルAはどこに行ったのかな? 今日は全く捜索できていないけ……』

 

 ここでモデルXは言葉に詰まってしまう。 モデルAが居なくなって一番悲しんでいるのはグレイなのである。

 そんなグレイの前でそんな話をしてしまおうものならグレイは我を忘れ、一気に外に飛び刺そうとしてしまうだろう。

 だが、今回はそうはならなかった。 姫路がある手がかりを皆に教えた為である。

 

「そう言えば、私のクラスメイトの木下君と言う人がいるのですが……」

「その木下さんがいったいどうしたんだい?」

「「『ヴァン!』」」

 

 どこから聞いていたのだろうか? さっきまで気絶していたヴァンがどうにか頭を抱えながら部屋から出てきた。

 

「はい、その木下君のお姉さんがみなさんの言っていたライブメタルと言う物を見つけたそうです」

「「『それは本当か(かい)!?』」」

 

 グレイ達が驚く中、アッシュだけはやっぱりかと呟いていた。

 

「でも、吉井君と言う人がアトラスさん達にそのライブメタルを渡してもらえないか? って言ってきて……」

「「『アトラスだって!?』」」

 

 姫路からいきなりアトラスの名前が出た事にエール・グレイ・モデルXの3人は驚いていた。

 

「ひゃぁぁぁぁ!! い、一体二人ともどうしたんですか?」

「ちょっとエール。 いきなり驚いて、知り合いなのか?」

「グレイ、知っているなら全部私たちに説明しなさいよ」

 

 

 

 

 

・・・・・・説明中、しばらくお待ちください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな、アトラスさん達がそんな事をしていたなんて……」

「なるほど、そのモデルF達はエールが所属するガーディアンの研究所から盗まれて……」

「ああ、記憶がなかったボクとモデルAの前にロックマンとして現れて、モデルVを回収しながら世界各地で大暴れしていたんだ!」

「ふーん、それでそのモデルVの要塞の中で決戦をエール姉さんが4対1で挑んで、今は明久っていうやつの元に渡っているモデルZが行方不明になって、そいつらが先にこの世界に来てしまったという訳ね」

 

 姫路はあまりにもショックだったのかアトラス達の話をエール達から聞いた後、完全に青ざめてしまっていた。

 ヴァンとアッシュも事情が分かったのか、話を続けようとする。

 

「どうやら、次の方針が決まったみたいだな。 瑞樹さん、木下という子と連絡を取って、アトラス達にモデルAを渡さないように伝えてもらえないかな?」

「はい、いまからすぐに連絡してきます」

「それなら、今日は一旦休んで、ヴァンの体調が完全に治るまでは3人で行動しましょう。 多分アトラス達は最低でも二人以上で行動しているはずだからこのまま動いても危険なだけよ」

「それでしたらエールさん、商店街で買い物に行きませんか? 夕食の材料を買いにいかないといけませんし……」

「まさか瑞樹さんが作るなんて言わないわよね?」

「っていうか、ここでまた作ろうものなら今度こそヴァンが死んじゃうかもしれないけどね?」

「もう! そんな事はしませんよ、アッシュちゃん! でも実際今日の夕食は誰が……」

 

 

 ヴァンは一応料理は出来るのだが、姫路料理でまだ体調を崩したままであり。

 アッシュはギルドメンバーにまかせっきりで包丁を握ったりはしない。

 グレイはそもそもレプリロイドで、料理の必要性は無い。(つまり、料理自体が出来ない)

 姫路に至っては論外!

 と、来たら

 

「「エールさん! お願いします!!」」

「……しょうがないわね」

 

 はあ~っとため息をつきながら姫路と一緒に買い物に向かう事としたエール。

 ひとまず、帰って来た姫路の両親に事情を説明した後、ある程度多めに食費を出してもらった。

 

 「……はい、では木下君、お願いしますね」

 

 

 秀吉に連絡が付いたのだろう。 そのまま電話を切り、準備が終わった姫路と共に買い物に向かう事となったエール。

 ついでにグレイにもついてきてもらい、そのまま荷物持ちにして、大量の食材を購入。 その間に何故か姫路が「食材を買う為に」ホームセンターに行こうとしていた為、グレイが肩に担いで、エールのお説教+尻叩きのお仕置き迄受けていた。

 姫路曰く、「一生の恥ってこういうのを言うんでしょうね……」とのことだった。

 

「あれ? 二人とも、このチラシを見てください。 もしよろしければ、皆で出場しませんか? 私達の召喚獣の操作も体験できるそうですよ?」

「瑞樹姉ちゃん、一体何言って……」

 

 そこで見たチラシの内容とは……

 

「あら、面白そうじゃない? せっかくだし、皆で参加してみましょうか?」

 

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 第一回! 文月市主催・トレジャーハンティング大会! 

 豪華賞品が盛りだくさん!

 あの、文月学園が誇る『試験召喚獣』の召喚も体験できます!

 

 

 

 スポンサー「文月高等学園」

      「如月グランドパーク」

      「文月商店街」

 

               皆の参加を待っています!

 

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姫路side end

 

 

 

 

優子side

 

「そ・れ・で? 昼間のメールは一体どういうことなのか説明してもらおうかしら?」

 

 一方優子は秀吉と一緒に行動していたヘリオス・アトラス・シャルナクの二人を監視と称して、昼間のメールの件を問い質していた。

 

「大いなる誤算…… あの女の弁当があそこまで危険だとは思わなかったな」

「アタシも毒物に対する耐性はあると思っていたが、あれは流石に規格外だったよ」

「如何ナル訓練ヲ受ケテイテモ、アノ化学兵器ニ耐エル事ナド、出来ル気ガシナイガナ……」

 

 まさか、ただ優子との約束を破ろうとしただけで、あんな伏兵がいるなんて誰が思うだろうか?

 まるで、「人との約束はきちんと守りなさい」とでも言わんばかりにロックマン達が食べ物で地獄を見るとは思わなかった。

 

「あんた達、本当にいい加減にしなさいよ。 嘘を付くならもっとましな……」

 

 しかし、いい加減なことを言ってごまかそうとしていると優子は思い込んでいるようで、なかなか納得してくれない。

 

「ナラ……コレヲ食シテ見ルガイイ!!」

 

 そう言って、シャルナクは姫路から証拠にと没収した姫路製弁当を優子の前に差し出した。

 あまりにもおぞましい物と化していた弁当だった物を前に、優子もドン引きしていた。

 その弁当だった物は化学物質の悪影響で、半分以上が溶けだしていて、姫路のウサギさんマークが弁当だった物の名残となっている。

 もう、そのまま普通の袋に入れていても溶けてしまう為、シャルナク特製の対溶解性物質仕様の封印箱に封じられている。

 

「……悪かったわ」

『本当に食べ物なのか、これ?』

 

 モデルAが唖然としている中、急に秀吉のケータイの電話が鳴りだした。(着信音:ゆかいなFクラス)

 

「もしもし? 姫路よ、いったいどうしたのじゃ?」

 

 どうやら、先ほどまでヘリオス達と話していた弁当の元凶である姫路のようだ。

 シャルナク達が、どうにか周りへ悪影響を及ぼさないように弁当だった物を厳重に封印している。

 その間に電話が終わり、すぐに秀吉が戻ってくる。

 

「待たせてしまってすまぬ。今電話が終わったのじゃ」

「コレデ封印ハバッチリダ。 後ハ、専門ノ業者ニ頼ンデ、処分シテ貰エバ大丈夫ダ」

「アタシ思うんだけど、これって捨て弁当を処分する会話じゃないな」

『今更、何言っていやがる?』

『これはもはや弁当じゃない。 ただの汚染物質だろ?』

『これは生物である限り絶対に耐えられんでござろうからな。 急いで処分してもらうに限るでござる』

『うへぇ…… オイラ達は無理矢理に押しかけなくて正解だったな』

 

 

 ライブメタル達も散々な言い様だが、もう優子の誤解は解けたこともあり、ヘリオス達から話す事も無い為に今日はお互いに家に帰ろうという話になり、そのままヘリオス達は木下姉弟と別れ、帰路へと向かっていった。

 

 

 

 

 

優子side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま、木下姉弟と別れた3人はたまたま立ち寄った本屋の近くでとあるチラシと参加申込書を手にしていた。

 

「ヘリオス、何だ? そのチラシは?」

「……」

「ヘリオス?」

 

 アトラスがチラシを見てから様子のおかしいヘリオスに問いかけるが、珍しくヘリオスがチラシ1枚相手に念入りに眼を通している。

 しばらくして、ヘリオスがこんなことを言い出した。

 

 

「大いなる可能性…… あと1枚申込書を貰ってくる。 このチラシを見た後、明久達に連絡しろ。 この大会に参加するぞ!」

「オイ、ヘリオス何ヲ言ッテ…… モウ行ッテシマッタカ」

「シャルナク、ヘリオスが何か書いていたようだが、一体何を見ていたんだ?」

 

 アトラスとシャルナクはヘリオスがマークしていた箇所を特に念入りに見ていたが、そこには景品の欄だった。

 

 

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豪華景品・一例

 

・文月商店街一年間特別割引券

・如月グランドパークプレミアムチケット

・mp3プレイヤー

・新作ゲーム2点

・フィー・ノイン・アインの限定ストラップ

 

              他にも豪華景品が多数!

               希望次第では副賞ももらえますよ!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「なるほど、ヘリオスはこれに眩んだか……」

「イヤ、アレハ勝算ガアッテ参加スル様ダッタゾ?」

 

 ヘリオスの行動の速さはまるで欲に眩んだかのような速さだったが、シャルナクはヘリオスからそう言った気質は感じられず、むしろはっきりとした勝算まであるようだったと言ってアトラスの言葉を否定する。

 ひとまず、明久とテティスに連絡してトレジャーハンティング大会に参加するという旨を伝えることにした。

 

「連絡はしたか? それならあとは何人か仲間を集めるぞ! これだけの商品ならば必要な人数はすぐに集まるだろう……」

 

 そう言って、ヘリオスはすぐに何人か心当たりがあるのか、すぐに電話をし始める。

 

「そう言えば、明久が島田の妹を参加させたいとか言っていたぞ?」

「些細なる問題…… 元より彼女にも声を掛けてもらうつもりだったから、明久・テティスの班に入ってもらうように伝えろ! 明日の昼までが申込み期間だから急いで準備するぞ!」

 

 こうして、明後日に控えたトレジャーハンティング大会に向けて戦いの準備を整えていくヘリオス。

 明久達はフィーのストラップを手に入れる為に

 ヘリオスは商店街の特別割引券を入手するために

 姫路はグレイ達にこの世界を楽しんでもらうために

 それぞれの思いを持って前へと進みだす。

 




今回はアニメ5話のエピソードを元ネタに葉月ちゃんを出してみました。

次話はトレジャーハンティング大会の詳しいルール説明とトレジャーハンティングと称した大バトルを描いていきたいと思います。

次回もお楽しみに!!


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第15話

職業訓練の結果ですが、ものの見事に落ちました…

暫くの間は元の職場を辞めることなく、続けることになりそうです……

なんだかんだで遅れましたが、3週間ぶりに投稿したいと思います。





 文月トレジャーハンティング大会当日。

 明久達は開会式の会場である、学園の体育館でヘリオス指揮の下で構成されたチーム別に集まっていた。

 体育館に入ると、かなりの人数が集まっており、その中には優子や霧島、姫路やグレイの姿もあった。

 

 

 ちなみに明久達のチーム分けはと言うと

 

・チーム明久「吉井明久・島田葉月・テティス」

・チームヘリオス「ヘリオス・佐藤美穂・清水美春」

・チームアトラス「アトラス・島田美波・土屋康太」

・チームシャルナク「シャルナク・木下秀吉・坂本雄二」

 

 となっていた。

 美春の方は明久を介して交渉しようとしたのだが、最初は「汚らわしい豚どもとチームを組む気などないですわ!」と言って頑なに拒否していたのだが、美波が明久達と同じチームに参加すると言ったら手の平を返して参加すると言い出していた(当然ヘリオスの嘘だがwww)

 佐藤は「学力が高く、それでいて大会の日に予定がなかった人物」と言う条件でヘリオスが探した際に運よく見つけることが出来た。

 せっかく参加するのなら景品の一つ「図書カード2万円分」が手に入ったら譲ってもらおうとも思ったらしいが……

 秀吉・雄二・土屋・美波は明久・テティス・アトラス・シャルナクの4人で大会前日にどうにか頼み込んで参加してもらえた。

 

 

「皆さんおはようございます。 本日はお日柄もよく……」

 

 開会式が始まり、主宰の文月市の市長が挨拶を始めた……

 

 

 

『オイオイ、いつまで話し込んでんだ、あのジジイ!』

『モデルF、まだ1分も経っていないじゃないの。 もう少し我慢しなさいよ!』

 

 モデルFは長ったらしい市長の言葉を聞いていられないとでも言わんばかりに聞き流し……

 

 

「お姉さまと同じチームになれなかったのは残念ですが、美春も……」

「ちょっと美春! 分かったから、……」

 

 美波は頬ずりしながら抱き付いてくる美春をどうにかして抑え……

 土屋はそんな二人を見て、妄想の後、大量の鼻血を出して気絶。 秀吉と雄二が輸血パックを持って一時、開会式から離脱して輸血をする羽目に陥っていた。

 葉月と佐藤はそんなカオスな光景を見て唖然、残った明久達はいつもの光景と適当に無視して、あいさつを聞いていたり、眠ったりしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とても長い開会式のあいさつがようやく終わり、今回の大会のルールが学園長から説明される。

 

「さて、広告でも告知した通りだが、トレジャーハンティングでは文月市全域を使って、お宝探しをやってもらうよ」

 

 学園長が説明したルールは

 

1.説明の後に渡す地図に従って、市内各地に散らばるお宝を探し出してもらう

2.地図と共に隠し場所を知る事が出来る問題集が各チームに配布される為、その問題を解いてから行くことになる

3.問題を解くヒントが学園の教室中にちりばめられているので、それを見つけながら最終的にお宝を発見しても良い

4.万が一、ヒントがあっても解けない場合は闇雲に探すのも良しとする。

5.今回のトレジャーハンティング大会において試験召喚獣によるバトルを疑似体験できるように設定された腕輪もチームメンバー全員に配布される為、その召喚獣を使ってのバトルでお宝を奪う事もありとする。

6.又、両チームの合意があれば、お宝を交換するのもありとする。(脅迫や暴力等で無理矢理合意させるのは禁止とし、そのようなことがあった場合、腕輪から電流が流れて加害者チームは即失格となる)

7.文月学園生の召喚獣の点数は、最近受けたテストの点数に準拠するが、外来の参加者の召喚獣には200点の持ち点が与えられる。

8.副賞は希望制となっており、『シークレットアイテム』と呼ばれている物を発見したチームに与えられるものとする。

9.主立った景品は各景品ごとに3枠分あるが、ゲットできるのは1チーム1枠のみとする。

 

 

 ……となっていた。

 

 

 

 

 ルール説明の後、各チームの元に文月市の地図と、今回の景品であるお宝が隠された場所のヒントである問題集や暗号が記載された紙、試験召喚獣を呼び出せる腕輪の3つが配られた。 

 

 

「じゃあ、堅っ苦しい挨拶は終わりにしてそろそろ始めようじゃないか? 『文月市トレジャーハンティング大会』開始!」

 

 

 

 そして、学園長は高らかに開始宣言をした後、そのまま壇上から降りて行った。

 

 

 

 

 

 

「さて、見せてもらおうかね。 バカの一念を……」

 

 ルール説明を終え、自室に戻った学園長は不敵な笑みを見せながら学園中の監視カメラの映像を確認していた。

 

「学園長、お待たせして申し訳ありません」

「高橋先生が遅れるとは珍しいさね?」

 

 そこにやってきたのは、学園長の補佐の為に準備をしていた高橋先生であった。

 

「そう言えば、問題集の殆どが暗号解読の問題でしたが、大丈夫なんですか?」

「これが、学園内だけの話なら入れたりはしないんだが、今回は一般の方々や子供までいるんだからね。 こうじゃないとこっちの生徒に有利過ぎてつまらなくなってしまうから、ある程度公平性を保つためにはこれが一番なんだよ」

 

 

 話をしながらモニターを見ていると、他校を含めた学生チームの殆どは暗号が解けずに頭を抱えていた。

 そう、問題集なんて言うから学生たちの殆どは授業で習うような問題の方だと勘違いしてしまったようだが、実際の問題集は「なぞなぞ」や「暗号解読」のような「知恵」や「頭の回転の速さ」が重要視される問題だとは思ってもいなかったようである。

 

「でも学園長、パッと見でしたが、本当に難儀な暗号だと……」

 

 高橋先生は学園長の判断に思う所があるのか、反対するかのような意見ばかりを述べるが……

 

「ヨシ、ヘリオス、コレデ良イゾ」

『お? とても速い…… 見事な手際だったな』

「ボクもあと2問で終わるよ」

『こっちも順調ね。』

 

 

「え?」

 

 

 テティスとシャルナクの二人が、大量の問題集を解き明かしていた映像を見て、驚きを隠せなかった。

 

 

「いくら何でも速すぎじゃないですか? 実質7分もかかっていなかったですよ?」

「まあ、暗号は暗号だからね。 解ける奴には解けるんさね…… だから問題は解いた後にどうするかという事だよ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

「どういう事ですか?」

 

 問題が暗号解読以外にもあるのか? そんな疑問を持ちながら高橋先生は首をかしげて考え込んでしまう。

 

その一方で優子チームと姫路チームは

 

「「(まだ大丈夫! トレジャーハンティングはまだ始まったばかり…… シャルナクとテティス君のチームに先行されるくらいならどうという事は無いわ!)」」

「(いくら何でも速すぎます! 私も急いで解いていますが、それでもおかしいです! それにヘリオスさんとアトラスさんの方は全然動いていません…… まさか!?)」

 

 優子チームはヘリオス達の戦術に気が付かないのか油断していた。

 だが、姫路はヘリオスの策に気が付いたようだった。

 

 

「ああ、明久とアトラスは皆に集合するように伝えろ。 二人の解答から場所を割り出し次第、4チームで虱潰しに景品を手に入れに行くぞ!」

「「応!」」

 

 明久とアトラスが、開会式の後にトイレに行ったり、飲み物を買いに行ったり、出血多量で離脱したりと一時的にいなくなっていた仲間を呼びに行こうとしたのだが……

 

「ちょっと待てよ!」

『おい! あの問題集を解いたのはシャルナクとテティスだけだろ!?』

「何で、問題を解いていないチームの人も一緒に行こうとしているのか説明してもらえるかしら?」

 

 ヘリオスの指示と明久・アトラスの行動に納得がいかない、グレイ・優子・モデルAが二人の足を止め、3人の行動に反論してくる。

 

「木下さん、何を言っているんですか? この大会の主な目的は問題を解く事ではなくお宝探しですよ?」

「それに木下とそこの坊主、ババァは別にチーム同士で組むことを禁止していないぞ」

 

「「『はああああああ!?』」」

 

 3人の反論に対し、佐藤と先に戻ってきて話を聞いていた雄二の二人で論破しようとしているのだが、なかなか納得してくれない。

 そうこうしている間に、飲み物を買いに行ってきていた美波・美春と、出血多量から復活してきた土屋と秀吉が明久・アトラスと共に戻ってきた。

 

 

 

 

 その一方で学園長室では……

 

 

 

「うむ、正解さね」

 

 学園長が頷き、続けて説明しだす。

 

「ハンティングでは協力できる奴が強いんだよ。 景品の数が絞られるとはいえ、これ以降のイベントをクリアするためには1チームだけではちと厳しいからねぇ」

 

 世の中そんなに甘くないとでも言わんばかりに、学園長が悪どい笑みを見せる。

 一体、どんな罠を仕込んでいるのかがとても気になってくる。

 

「最近没収されたゲームを見てみるとグループ内で同じゲームが何本も没収されていてね。 調べてみたら協力プレイが前提のゲームばかりだったんだよ」

「学園長、没収したものとはいえ、生徒の持ち物を勝手に漁らないでください」

「まあ、固い事言うもんじゃないさね。 ……どうやら、いまどきのゲームは協力プレイが基本らしいからねぇ。 そう言った要素を大会に取り入れられないかと思って、こんな内容にしてみるよう打診したら……」

「だとしたら、今回の大会は明久君たちに非常に向いていますね。 一芸に特化した個性派が集まって連合を組んでいるのですから大抵のイベントはクリアしてしまうでしょう。」

 

 そこまで狙ってやったわけではないだろうが、今回で連合を組むことに成功した明久達は非常に有利な立場にあるという事になる。

 画面の向こうでは、優子とグレイが折れて、悔しそうな顔をしながらしぶしぶ下がっていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所を戻して体育館……

 明久達が一度体育館から出ようとした時だった。

 

 

「あれ? きれいなお姉さんたちはついて来ないですか?」

「ユウコたちも早く来なよ。 そのまま置いていくよ?」

 

テティスと葉月の二人が急に足を止め、優子のチームと姫路のチームメンバーと手を組もうと誘いをかけている。

 

「おいテティス! さすがに敵と手を組むのはやり過ぎだ!」

「そうよ! 葉月も変な事言わないで早く行くわよ!」

 

 もちろん、あまりにも常識外れな行動にアトラスと美波が止めに入ったのだが、テティスと葉月は話を全然聞いていない。

 

「些細なる問題…… 大方、テティスの事だ。 地雷プレイヤーとわざと組むことによる混沌こそが協力プレイの醍醐味だなんて思っているのかもしれん」

「地雷プレイヤーは、はた迷惑なだけだからね! 味方を爆弾で爆殺したりとか!」

『剣使いを募集しているのに銃使いの装備でチームに入り込もうとして「これでも倒せますよwww」とか言って部屋を荒らすなんて言うのもあったな』

「味方を巻き込む攻撃を多用し、注意されたにも関わらずその攻撃を使って味方に迷惑をかけると言う行為もありますね」

「いや、佐藤さんも何でオンラインゲームの事情に詳しいの!? (モデルFも話に乗らないで!)」

 

 

 そんな二人の後ろで明久がヘリオスと佐藤にツッコミを入れているが、そんな中でテティスと葉月の勧誘は続いている。

 どうもそれぞれのチーム内で揉めているようだったが、1分程経った後、ようやく両チームの答えが出た。

 

「……ありがとうテティス、恩に着る。 でも代わりにプレミアムチケットが出たら譲ってほしい。」

「まあ、代表がそこまで言うならもういいけど…… (モデルAはどうする?)」

『グレイと話し合って、今回は優子と一緒にいることにしたよ。 向こうにはモデルXの適合者もいるんだし、だったら今オイラの護衛が必要なのって優子の方だろ?』

「ボクもみんなと一緒がいいと思うよ? もしかしたらプレミアムチケットの場所も分かるかもしれないし」

 

 テティスの話を聞いて霧島が行くからと言う理由で優子たちのチームは勧誘に乗ったのに対して……

 

「はっ! 誰が敵の誘いなんかに乗るかよ!」

「葉月ちゃん、こういう問題は自力で解いてこそですよ?」

「健気に誘ってきてくれたのはありがたいけど、二人がこんな調子だし今回はパスさせてもらうわ」

 

 姫路達のチームは葉月の勧誘をきっぱりと断っていた。

 

 

 

 

 

 

「これは性格の差が出てきたさね。」

「それに姫路さんのチーム内でも差が出てきていますよ。」

「あの坊主は見るからに意地だけで反発しているようだが、姫路の方は自力で解ける問題だと(・・・・・・・・・・)判断して借りを作らないようにするためにここは誘いを拒んだみたいだね」

「あの青い服をきた女性は一緒に行きたがっていたようですが……」

「どうやら、あの女は二人に合わせて行動する気かい? 見たところこの街に来たのは最近のようだし、何か世話になっているのか、姫路にあまり強く言えないのもあるのかもしれないさね」

「何と言いますか、今回の大会はお互いの性格が出てきますね。」

「表向きには協力プレイで和気あいあいと出来るようにって言っているけど。 本当はそれが狙いさね」

「(あ、暇だからって生徒たちが悶えている姿を見て楽しもうとしていますね)」

 

 完全に下種な笑顔を見せている学園長に軽く引いている高橋先生は、そんな学園長にあきれつつもその目線をモニター画面に戻して観戦することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 その一方でヘリオス連合は

 

 

「げっ! 翔子が付いてくんのかよ…… っていてててててててて! おい、腕の関節を極めるんじゃねぇ!」

「……雄二、照れてる?」

「間接極められて照れる男がいるか!」

「……でも恋人同士は腕を組む」

「この体制が恋人同士に見えるのか!?」

 

 夫婦? 同士で痴話喧嘩をしている霧島と雄二を放っておいて、最初の目的地を目指す。

 

 

「ねえヘリオス。 一体どこに向かっているのかしら?」

「文月学園の図書館だ。 そこで高額景品の一つ「図書カード2万円分」を獲得しに行く」

 

 ここで明久達は首をかしげる。 ヘリオスが1番に欲しがっていたのは商店街の特別割引券だったはずである。

 なぜここで、図書カードを取りに行くのかが分からなかった 

 

「あれ? でもヘリオスさんが欲しがっていたのは割引券の方じゃ……」

「些細なる問題…… 割引券の方も確かに欲しいものだが、場所がいかんせん遠すぎる。 先にこちらから終わらせながら全景品の在処を各チームに教えねばならん」

「まだ、教えていなかったんですの! ヘリオスは鈍牛か何かですか!」

「清水! 私でもあのわずかな時間で予定にないチームに情報を与えるのは無理だ!」

『あの女、豚野郎以外にも暴言が出てきたな!』

 

 モデルHが美春の暴言が増えていることにツッコミを入れている間に皆は図書館前の扉についていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 姫路チームside

 

 

 

 

「なるほど、こういう事でしたか! やっと解けました!」

『あの頭のいい姫路さんでも解けるのに時間がかかる問題って一体どれだけ難解な暗号まで用意されていたんだろう?』

「本当に頭が痛いわね…… もう当分暗号とか勉強なんてする気がしないわ……」

「でも、まだ大して時間は経っていません。 ヘリオスさん達に多少の遅れは取りましたが、今ならすぐに追いつけます!」

 

 エールが頭を抱え、瑞樹がすくっと立ち上がりヘリオス達を追いかけようとしている中……

 

「瑞樹姉ちゃん、もう無理ー!」

 

 グレイはもうほとんど問題が解けていなかった。

 それもそのはず、グレイはマスターアルバートのバックアップとして作られたため、彼の知識の一部はあるものの、イレギュラーが起こした騒ぎのせいで強制的に目覚めさせられて、しかも活動してから1年と少ししか動いていないのである。

 その知識を知恵として生かすだけの経験が全く足りていないのも仕方ない事であった。

 

「グレイ君、今は一緒にヘリオスさん達を追いかけてみましょう?」

「午後からはヴァンとアッシュの二人と合流して町を回るっていう予定だし、その時にでもゆっくり教えてもらいましょう?」

「分かったよ。 モデルAの様子も気になるし……」

 

 仲間の言う事だと素直に聞いてくれるグレイの手を瑞樹が取り、一緒に図書室を目指す。

 

 その一方で先に図書室に到着したヘリオス達は……

 

 

 

 

 

 

 

 姫路チームside out

 

 

 

 

 

 一方でヘリオス達の様子はカオスと言ってもよかった。

 扉を開けて入っていた先で待っていた物は学園の図書委員達。

 何でも高額な景品の場合、一気に狙われてすぐになくなってしまう可能性があった為、それを未然に防ぐためにそれ相応の試練が用意されているとのことだったのだが……

 

「それで…… 今やっているのが図書委員の全員に本の内容に関係するテーマの問題を出して、図書委員全員が答えられなければ突破なんていう試練なんだけど……」

「姉上、頼むからわしらから目を背けんでくれ…… 正直、悲しくなってくるのじゃ……」

「何で? 何かを賭けに出してからじゃないと挑むことが出来ないからって、そこで合格できなかったら合格できるまで賭けに出したものは大会が終わるまで没収になる訳! そして何でヘリオスと葉月ちゃんと私を除いた全員が衣服を掛けている訳!?」

「そう言うルールなんだから仕方がないだろう! 文句を言うな」

 

 まさか、暗号を解いた先にまた試練があるなんて思ってもいなかった皆は(ヘリオスと雄二は気が付いていたが)この試練にかなり苦戦していた。

 今大会に向けて必死になって覚えたのだろう。 図書委員長を含めた7人はこれまでに出したチーム全員の問題に見事に答え切って見せたのである……

 

「それにしても、健全にお金は賭けないルールなっていたはずなのに何でこんなにも不健全な絵面が出来上がるのかが分からないですね。」

 

 そう言った佐藤さんが見た先では、財布と下着(女子には急遽用意したバスタオルが渡された)だけのチームメンバーたちの姿だった。

 

「ソレ以前ニ服マデ賭ケル意味ガアッタノカ?」

「やっぱり、美春ちゃんと吉井君が自信満々に自分の衣服まで賭けに出したのがきっかけじゃないかな?」

 

 シャルナクと工藤が見た先には、物凄い邪気を放ちながら膝を抱えて向こうを向いている明久と美春の姿があった。

 

「……だが、明久の問題には驚いた。 『流〇に剣〇』の主人公の名前は? そんな問題、作品さえ知っていれば誰にでもわかる」

「バカなお兄ちゃんは正真正銘のバカです……」

 

 葉月ちゃんにまで言われ、周りの言葉がチクチクと明久のハートに突き刺さる。

 

「そこへ行くと、清水殿は貫禄があったのじゃ」

「原作版『とあ〇魔〇の禁〇〇録』全巻の本文の文字数の合計は? だからね!」

「あの問題のせいで、さっきまで自信満々にしていた図書委員の奴らが、しばらく唖然としながら黙り込んでいたからな」

 

 アトラスの発言に全員が「うんうん」とつい頷いてしまう。

 

「けっきょくは美春も正解を知らなくて反則負けになったんだけどね」

 

 しかし、これ以上は本当にまずいとチームメンバーの殆どが頭を抱えて悩み始める。

 

「……もう賭けに出せるものは殆どない」

「だったら最終手段としてパンツまで賭けるか?」

「あの変態が欲情するからやめて!」

「えっ! お姉さまがとうとうストリップを……」

「しないから!!」

「……雄二、浮気は許さない」

「おい翔子、やめっ…… ギャァァァァァァァ!」

 

 雄二のとんでもないアイデアに先程まで落ち込んでいた美春が神速の速さで反応し、美波が両腕の関節を極めながら押さえつける。

 そして霧島の目つぶしによって雄二はもだえ苦しみ地面でのたうち回っている。

 

「って言うかアトラス、あんた衣服を賭ける前にその彫り物みたいなやつから賭けに出してもよかったんじゃないの?」

「ふざけるな! これが無くなったら私のキャラが薄れるだろう!」

「「元軍人っていう社会のニーズから大きく離れているだけで十分キャラが濃いよ!」」

「そうは言うが、お前らだってまだ賭けに出せるものはあったはずだろ!」

 

 そう言ってアトラスが指差した先には……

 

「貴様ら、本当にそれが人としての尊厳以上に大切か!」

 

 婚姻届をタオルの裏に隠そうとしている霧島に、隠密(盗撮)道具を適当な場所に隠そうとしている土屋、演劇用のメイクセットを抱えたままバスタオルを巻いている秀吉に加え、大量の苦無と手裏剣を特製のホルダーの中に持ち込んでいるシャルナクの姿があった。

 

「まあ、代表たちが持っている者を賭けに出せばまだチャンスはあるのですが……」

「そうじゃのう…… 現実問題7人以上の大量の本を読み漁った図書委員会達お裏をかく方法などあるのじゃろうか?」

「ヒデヨシの言う通り、1・2回のまぐれならあるかもしれないけど……」

 

 

 佐藤達がどうにか突破できないかと悩んでいる中、こっそりと皆から離れて行こうとしている人物の影があった。

 

「島田さん? 一体そんな恰好でどこに行く気なのかしら?」

「それよりもボクも島田さんが手に持っている物を見ちゃったなー。 何を隠したのか教えてくれないかな?」

 

 優子と愛子の二人は何かの本を持ってどこかに隠れようとしていた美波を捕まえて、彼女が持っていた本の内容を確認しだす。

 

「ちょっ! それだけはだめだってば! 読みかけなんだから本当にこの本だけ賭けにだせないのよ!!」

「(読みかけの本? ……そうか! この手があったわ!)」

「どうしたの優子? 島田さんが持っている漫画に何かあった?」

 

 愛子の言葉が聞こえていないのか、美波がまだ賭けに出していなかった借本を見て何か考え出した後、その本をひったくるように一瞬で図書委員の前に持っていってしまう。

 

「ちょっといいかしら? 好きな本から出題するようにルールには明記していたけど、その本は此方で用意した物でもいいのかしら?」

「ちょっと木下! あんた何する気……」

「島田さん大丈夫よ。 もし出せないならすぐに返すし、そうでなくても100%勝つ自信があるから」

 

 何を考えているのか最初は分からなかった美波と愛子だったが、それを無視したまま優子は図書委員の人たちと話を続ける。

 

「はい、大丈夫ですよ。 相手の用意したカードでゲームをしようとしないのはギャンブルの基本ですしね」

「しかし姉上よ? 今から本屋に行ってもほかの景品には間に合わん気がするぞ?」

「それに関しては全然問題ないわよ。 だってたまたま島田さんが持っていた(・・・・・・・・・・)本がありますから」

「ちょっと木下!」

「そして、次のチャレンジにアタシの身に着けている物を含め(・・・・・・・・・・・・・・・)持ち物を全部(・・)賭けます!」

「「「ええええええええええええええええええ!!」」」

 

 この言葉にヘリオスを除く全員が驚いた。 土屋に至っては、例のごとく出血多量で気絶し、ヘリオスに連れられて外に追い出されていたほどだ。

 

「1回勝負?」

 

 優子の突然の提案に図書委員の皆も判断に困り始めている。

 

「後…… 皆の服も返して!」

「元からそのつもりですから!!」

 

 むしろ、図書カードよりもそっちの方が重要な気がするが…… そんな優子の提案を図書委員は飲んだようである。 そのまま許可を出した後、優子から問題を聞き出してきた。

 

 

 

「アタシが出すテーマはこの一冊…… 『UQホ〇ダー!』の第1巻よ!!」

「そうですか…… それで?」

「『赤〇健の漫画作品。『週刊少年マガジン』2013年39号から現在まで連載中で、1・2巻地点で約50万部を突破している』その作品からですね?」

「「すげぇ嫌味な言い方だなおい!」」

 

 もう自信を取り戻しているのか、言い方がかなり嫌味なものになっていることにヤジが飛んでくるが、優子は動じずに話を聞き続ける。

 

「もうあきらめた方がいいんじゃないですか?」

「83ページ目で主人公が目指した場所の名前かしら? 104ページで主人公の友達になった少女の名前かしら? ひょっとして、雪姫のお風呂を覗き?……をしようとした主人公が反撃を受けた際に彼女が放った氷の槍の数かしら?」

 

 本当に読んだことがあるのか、得意げになってしたり顔になる図書委員の面々。

 そんな彼らを前に優子が出した問題とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この本は何刷(・・)?」

 

 

「「!?」」

 

 

「あの? (ずり)って一体何ですか?」

 

 予想外の問題を出した優子の言葉の意味がよくわからないのか、葉月が佐藤に問いかけてきた。

 

(ずり)と言うのは、本が売れれば売れるほど印刷されるものですよね?」

「はい、やっぱり面白い本は読みたい人が多いですし、それに合わせて作らないといけないです」

「刷数と言う物はその本が何回目に作られたものなのかを表す数字なの」

「ふぇぇぇぇ……」

「本の奥付に書いているもの(・・・・・・・)なんだが、当然その数字はその本の印刷された時期によって異なるんだよ」

「坂本さん、勝手に私のセリフを取らないでください!」

 

 雄二に勝手にセリフを取られた佐藤は憤慨して、半泣き状態でポカポカと雄二の胸板を叩いてきた。

 

「本によって異なる……? 書かれている数字が……? ってことはつまり……」

「島田さん、そう言う事よ。 彼らがこの本のストーリーを知っていようと関係無いの。」

「この人たちがこの図書館の本の奥付まで全部覚えていたとしても、他人の本の奥付まで覚えるなんて不可能と言う訳だね?」

 

 優子が策を説明している中、図書委員達は必死になって考えていた。

 

「(島田さんは読みかけって言っていたわよね?)」

「(なら最近買った本じゃないのか?)」

「(でも少し色あせていたわよ?)」

「(一巻目の発売日は去年の12月だったはずだ)」

「(でも、帯がないよ? 発売してから結構立っているんじゃ?)」

「(じゃあ……)」

 

「……3刷かしら?」

 

 

 無茶な問題に捨て鉢にならず、必死になって推理して回答した図書委員たちだった。

 

「こんな引っ掛け問題に捨て鉢にならないで、解答した貴方達には敬意すら覚えるけど…… で、島田さんの答えは?」

 

 優子が美波に正解を問い質す。

 先程急に取られた本を取り返し、その本の刷数を笑顔で応える。

 

「すみません、この本初版なんです。 ウチが4日前からアキから借りてきたものですし!」

 

 ちなみに、明久はヘリオスに「ロックマンとしての戦いの参考になるかもしれないから」と言ってうまい事本代を手にした後、発売日当日に買った物だった。

 

 

「『尽く書を信ずれば則ち書無きに如かず』……という事ですね」

 

 負けたにも関わらず、なぜか彼らの表情は笑顔であった。

 そして、机の中から封筒のようなものを1枚と今まで賭けに出されたみんなの服が優子に渡された。

 

「チーム霧島、合格です!」

「「やったぁー!!」」

 

 合格した優子チームの3人は仮設の更衣室(明久と美春のせいで設置する羽目になった)で着替えた後、ヘリオス達の間を悠々と歩き、そのまま図書室を出て行った。

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優子side

 

 堂々と図書室から出てきた3人は少し離れた所でヘリオス達を待っていたのだが、そこには彼女たちが予想もしていない客が来ていた。

 

「あら? 木下さんはもう景品を見つけたのですか?」

「……姫路?」

「見つけたというか、何と言ったら良いのかな……」

 

 愛子が、姫路チームの3人に図書室で起こったことを説明した。

 

「エール、何か本を持っていないか?」

「そんなの都合よく持っている訳ないでしょ?」

『もしかしら、そう言う運に頼ったような攻略法以外にも何かあるんじゃないかな?』

「それもそうだよねー? ならキミ達はどうする気かな? 今からでも本屋に行って本でも買いに行く?」

 

 今から本を買ってから図書室の試練に挑もうとしたとしても、他の人たちに取られている可能性が高いことを考えると良い手ではない。

 グレイとエールもこの図書室での試練を諦めて、適当な場所にでも行かないかと瑞樹に提案しようとした時だった。

 

「二人とも、心配ありません」

「「『え?』」」

「だって、そんな本を持っていなくてもこの試練にはちゃんとした突破口が事前に用意されていますから」

 

 グレイとエールはともかく、優子たちまで気付いていないようで、例外的に翔子だけは彼女の考えていることに気が付いたようだった。

 それと同時に今度はヘリオスが皆と共に、図書室から出て来た。

 そして、佐藤の手には優子たちがもらったものと同じ、図書カードが入った封筒が握られている。

 

「どうやら、私の予想は正解だったようですね…… 木下さん、ありがとうございます」

 

 そう言う姫路はそのまま図書室に向かう。

 それに少し遅れて、エールとグレイは姫路について行く形でそのまま図書室に入って行った。

 

 

 

優子side end

 

 

 

 




今の職場に残る事になった為に、あと1・2話ほど投稿した後くらいに繁忙期が来て仕事が忙しくなる為に投稿が難しくなります。


それでも、話だけはポンポンと思いつくので、仕事が落ち着いたら投稿を再開したいと思います。


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第16話

初めてのバカテストです。

第1問 

料理の為に火にかける鍋を制作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、料理を始めると問題が発生した。 この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いるべき金属の例を一つ上げなさい。

姫路瑞樹・霧島翔子・グレイの答え

問題点……マグネシウムは炎にかけると激しく酵素と反応する為危険であるという点。
合金の例……ジュラルミン

教師のコメント
正解です。合金なので『鉄』ではダメと言う引っ掛け問題なのですが、姫路さん達は引っかからなかったようですね。


アトラスの答え
合金の例……鉄

教師のコメント
物の見事に引っかかってしまいましたね。
『合金』でないといけませんので今回は不正解です。
次は気を付けるようにしてください。



土屋康太の答え
問題点……ガス代を払っていなかった事

教師のコメント
そこは問題ではありません。

吉井明久・島田葉月・テティス・シャルナクの答え
合金の例……未来合金!(←すごく強いです!!)

教師のコメント
すごく強いと言われましても……


シャルナクの答え2
問題点……嘗テ、マグネシウムノ鍋ヲ使ッテシマッタ事ガ原因デ、目ヲ潰シタ仲間ガイタ事

教師のコメント
冗談……ですよね?
そんな悲しい目をしないでください…… 


ヘリオスの答え
合金の例+説教「愚かなる間違い!合金ならば『ジュラルミン』ではなく『ステンレス』が最適なのだ!
そもそもジュラルミンでは塩分に弱いが故に料理には全く向かん!
それ以前に、マグネシウムなんて物を鍋に使ったら間違い無く家が消える程の大火災に発展するぞ!
そういった一般的観点からも見た形で問題を出さんか!」

教師のコメント
ウワァァァァァ、ゴメンなさい!
今後は気を付けますので、学園長にだけは言わないでください…


「ちょっとヘリオス、あんた一体どうやってクリアしてきた訳!?」

「些細なる問題…… あの試練は別に外から本を持ってこなくても攻略できたというだけの事だ」

 

 さも当然のようにいうヘリオスだが、肝心な攻略法については全然教えようとしない。

 

「あれ~? まるで本当はこの試練の攻略法を知っていたかのような口ぶりだけど?」

「……それより、一つだけしか持っていないようにも見えるけど、二つは取ってこなかった?」

「俺タチデ独占シテモ良カッタノダガ、流石ニ不公平スギルト思ッテソノママ出テ来タノダ」

『あれ? 優子、グレイ達がもう出て来たみたいだぜ?』

 

 図書室に入ってから三分しか経っていないのにもかかわらず、姫路達3人は図書カードの入った封筒を持って出て来た。

 

「あれ? 皆さんなんでまだこんなところで止まっているんですか?」

「姫路さん!」

「図書室の試練を速攻で解いたのか!?」

「瑞樹、本当にすごいわね!」

「きれいなお姉ちゃんも本当に速かったです! 風のお兄ちゃんみたいでした!!」

 

 あまりの速さに雄二と美波の二人も驚いている。

 

「あら? 姫路さんも早かったわね。 実は何か隠し玉でもあったのかしら?」

「隠し玉? 私はそんなものは持っていませんけど……」

「「え?」」

「……瑞樹、もしかしてこういう事?」

 

 翔子は出た後に気が付いた攻略法で当たっているかを、瑞樹にだけ聞こえるように耳元で呟く。

 

「ええ、それで間違いありません。 霧島さんは気が付いていたんですか?」

「外に出た後に気が付いた。 でもその時はもう優子が引っ掛け問題でクリアしていたから……」

「代表、一体どういう事ですか! あれ以外にも攻略法があったの!?」

「代表が気付いたのが外に出てからだから…… それまで思いつかなかったっていう事だよね?」

 

 優子が気が付かなかった攻略法がいったいどういう物なのか、翔子と瑞樹の口から語られる。

 

「……『セリヌンティウスを身代りにして妹の結婚式に出席するメロスの心情を答えよ』みたいな、どちらがより深くその小説を読み込んでいるかの深読み対決」

「流石に7人掛りと言うのは非常に厳しかったですね。 通してもらうのに三問もかかってしまいました」

「三問? たったそれだけで!?」

「はい、むしろ問題だったのは賭けに出す物の方で……」

「私達、余計な物は持ってこなかったから、どれを出すべきか迷ってしまってね」

『瑞樹さんが自分の衣服を賭けに出そうとした時は本当にびっくりしたよ』

「瑞樹姉ちゃんが自分の服を賭けに出そうとしたもんだから、慌ててボクと試験管の皆で止めに入ったんだよ」

「本当に驚いたわ…… 試験管の中には気絶させてでも止めようとしていたぐらいだからね……」

 

 この話だけだと少々やり過ぎにも聞こえるかもしれないが、明久と言う前例があったことを考えると試験管の気持ちも分かるかもしれない……

 

「姫路さん、貴方Fクラスにいる内に思考回路まで本当にFクラスのバカ共と同じになったの!?」

「Fクラスの皆さんの事を悪く言わないでください! 確かにFクラスの皆は成績は悪いですけど、決して屑なんかじゃありません!!」

『おい、このねーちゃん逆ギレしやがったぞ!!』

 

 Fクラスをバカにされて本気で怒り出した瑞樹。

 まさかここにもとんでもない事をしでかす娘がいるとは思わなかった優子は口喧嘩の末に「もういいわ……」と言って諦め、モデルAと共に向こうで落ち込んでしまった。

 

『しかし、あれは本当に頭のいい出題だったな』

「あ、モデルHもそう思った?」

『オレはまだチンプンカンプンなんだけどな』

「いや、モデルF! 明久でも説明されて理解できた攻略法を何でライブメタルのお前が理解できないんだ!?」

『モデルFのおバカっぷりは時々明久を超えるから不思議なのよね……』

『オイ、それじゃあオレが明久以下のバカみたいじゃねぇか!?』

「実際、アキヒサよりも低レベルだって言われても仕方のないことを言っていると思うよ?」

『拙者もそれを否定できん』

『そんなバカなぁぁっァァァァ……』

「ふん、そしてわたしと姫路がした出題こそが想定されている模範解答なのだ」 

 

 姫路チームと優子チームの会話に明久達が入ってくる。

 それと同時に優子の落ち込む姿が見えたのだが……

 

「あれ? 木下さんは何で試練を突破した後なのになんで、床を向いているんですか?」

「恐らくは明らかな正攻法があったのにも関わらず、あんな引っ掛け問題を出した自分を恥じてしまっておるのじゃろう。 別に気にせんでもよいのではないか?」

 

 酷い言い様だが、いつまでも落ち込んでいる人の事は気にしていられないので、皆はそのまま話を続ける。

 

 

 その一方で、いきなり明久のケータイに電話が鳴りだす。

 因みに着信音はバカテスBGM『たのしい学園生活』に設定されている。

 

(~~~~~~~~~ ~~~~ ~~~~~……)

 

「おい明久、電話鳴ってるぞ!」

「あ、本当だ。 ごめんちょっと電話に出て来る」

「ボクも付いて行くよ。 アキヒサだけじゃ不安だからね」

「あ、なら私も付いてますね。 召喚獣戦になったらどうなるか分かりませんし」

 

 

 どうやら明久に電話のようだった。

 だが、何かの罠の可能性も警戒してテティスと佐藤も付いて行くことに。

 

 

「ちょうどいいや。 ヘリオスから幾つか教えてもらった場所についてなんだけど、支給された地図の中にアルファベットが書かれている所と重なる場所があるんだよ。 ヘリオスはこれについて、どう思っているの?」

 

 愛子が地図を出してそのアルファベットが書かれている部分について聞き出そうとしている。

 その場所と言うのは

 

1.中央発電所 (H)

2.文月駅前商店街 (F)

3.文月市総合体育館 (L)

4.如月グランドパーク (P)

 

 となっていた。

 

 

 ちなみに、学園の図書室には(B)と書かれていた。

 

 

「些細なる問題…… これについては特に考える必要性は無い」

「一体どういうことですの?」

 

 ヘリオスの言いたいことが分からない美春はヘリオスに疑問を投げかける。

 

 

「これについては情報が少なすぎて解釈のしようが無い。 図書室の(B)も単に難易度Bと言うだけかもしれんし(Book)とか言って本に関係する試練の場所ですと言いたいだけかもしれん」

「ただ、はっきりと言えるのは暗号が解けない連中を一つの目安として誘導させたり、なまじ問題文の暗号が解けた者を混乱させるためだけが目的だとわたしは踏んでいる」

「なら、変に考え込むのが一番危ないですね。 なら、みなさんは適当に指運で決めた後、先に進むべきだと思います」

「あの、一度断られているのにごめんなさいです…… やっぱりきれいなお姉ちゃん達も一緒に来てくれないですか? 葉月、なにか嫌な予感がするです」

 

 ヘリオスと瑞樹の話を聞いて、何を思ったのか葉月ちゃんは一度断られた話をもう一度切り出してきた。

 

「それに、こうやって合流できたのも何かの縁だと思うですし」

「でも、葉月だっけ? ボクらが入ってもメンバーは6チームだぞ? 他のチームはどうするんだよ?」

 

 葉月ちゃんの言う嫌な予感を信じて、一緒に連合を組みたい気持ちはグレイ達にもある。

 しかし、姫路チームが入ったとしても、計6チームにもなってしまうこの連合では確実にチーム配分のバランスが崩れてしまうのである。

 そして図書室と同様、特別なアルファベットが書かれている場所となると、確実に何かしらの試練がある可能性が高く、もしその試練の合格に手間取った場合、他のチームとの合流が出来なくなるのは明らかだった。

 

「仮にヘリオス達の連合に入るとしても、後2か所が1チームのみで挑んでしまう事になるから……」

「ソノ場所ニ向カッタ方ハ確実ニ不利ニナルナ」

 

 仮に姫路チームが入った場合の戦力バランスがどうするかが決まらない。

 このままではいたずらに時間を浪費してしまう事になる。

 無駄に時間が過ぎていく中……

 

 

 

 

 ???side

 

 一足遅れで、図書室に向かう3人の男子のチームがいた。

 一人は美形かつ高身長なさわやかな感じのイケメンなのだが、一緒に連れている男子二人はソフトモヒカンと坊主頭、しかも不良のような粗暴な言動が目立つような二人組と言うアンバランスなチームである。

 

「おい、いったいどうしたんだよ?」

「いえ先程、姫路瑞樹嬢の声が聞こえたもので」

「姫路瑞樹? ああ、お前が入れ込んでる女か?」

「入れ込んでいるとは失礼な! 私は彼女を純粋に……」

「はいはい、分かったから早く図書室に行こうぜ。 早くしねえと景品盗られちまうぞ?」

 

 もう図書室の景品が一連合に独占されているなんて思ってもいない、坊主頭の男子は無駄話をしていられないと、先に急ごうとする。

 

「でも、本当に感謝していますよ。 受験の時間を割いてくれて、このようなイベントに参加してくださるのですから」

「あ? お前が受験に役立つ資料をタダでくれるっていう上に昼飯もおごるっていうから参加してんだよ」

「別にお前とはクラスメイトでお前が代表だから参加しているだけで、そうじゃなかったらほっといて家で受験対策をしているところだったんだからな」

「それでもですよ。 そうやってツンデレな態度で助けてくれている二人のおかげでこうして参加できたのですから」

「「俺たちはツンデレじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

 顔を赤くして否定している二人。 彼ら二人はとてもガラが悪く、とても学力があるようには見えないが3年の中ではトップクラスの成績を誇る秀才なのである。

 3人が図書室前に到着したはいいのだが、その図書室前に謎の集団が集まっている光景を見てすぐに少し離れた柱に隠れることになってしまう。

 

「……おい、図書室の前に妙な集団がいるぞ! 完全に出遅れているじゃねぇか!」

「やれやれ、せめて一つだけでも残っている事を祈りたいですね」

 

 もう手遅れなのだが、そんなことを知らない3人はわずかな可能性に賭けて図書室を調べるために、その集団を横切って中に入ろうと動こうとした時だった。

 

「……他のチームはどうするんだよ?」

 

 図書室前の集団の中にいた少年の一人が、それよりも小さい女の子の前で質問攻めにしていた。

 様子を確認したい3人はひとまず少し離れた曲がり角に隠れて様子を見ることにした。

 

『おいおいあいつら、もしかして連合を組んだはいいけど、配分で揉めてんのか?』

『どーだろうな? もし奪い合いになったら最後に横槍入れて強奪と言うのもありじゃねぇ?』

『二人ともやめて下さい。 瑞樹嬢の前でそんなことをする訳にはいきません!』

『『その女が居なかったらどうする気だったんだよ?』』

『図書室中を探し回ったふりをして、最後に残った方に横槍を入れて景品をゲットしようとします』

『『こいつ、鬼だ!!』』

 

 姫路が居なければ躊躇なく実行するのか……

 こんな下種な会話をしている時だった。

 

「仮にヘリオス達の連合に入るとしても、後2か所が1チームのみで挑んでしまう事になるから……」

「ソノ場所ニ向カッタ方ハ確実ニ不利ニナルナ」

 

 少年二人の会話から察して、配分で揉めているわけではないようだった。

 仲間割れをしていればよかったものをと思い、落胆するボーズとモヒカンの二人。

 

『どうやら作戦の為のチームが足りなくて、揉めているようだな』

『……もしかしたら、瑞樹嬢に恩を売るチャンスかもしれませんね。』

『もしかして…… あいつ等と組む気か!? って待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 ???side end

 

 

 

 

 

 

 FFF団side

 

 その一方で……

 

「うがぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「こんなもの解けるかァァァァ!!」

「あきらめるな、同志達よ! ここの景品を大量に手にすることが出来れば、『女子達にモテモテになりた~い』計画を実行できるのやもしれんのだぞ!」

 

 須川はFFF団の同士を募り、総員43人で連合を組んで参加していたのだが……

 

「だけど……」

「須川会長、この問題難しすぎて全然解けません……」

「ヤバイ、もうダメだ…… 知恵熱出し過ぎて何故か吐きそう」

「近藤! そんな気持ち悪いもん見せつけんじゃねぇよ!」

「マジで汚ねぇから吐くならさっさとトイレに行けや!」

「つーか知恵熱とか難しい単語使って『頭使っています』風な態度取ってんじゃねぇよ!!」

 

 彼らの最大の失敗は数だけを頼りに、問題そのものを解ける人間を一人も入れていなかったのである。

 それ以前にチームワークも最悪であった。

 

「須川会長。 やはり、我々のようなバカにはこのような大会に参加するなど無理があ……」

「何を言っているんだ福村ぁぁぁぁ! まだ何か方法があるはずだ! 最後の最後まで絶対にあきらめるんじゃない!!」

 

 須川は諦めずに仲間と共に問題を解こうとするが、やはり問題は解けない。

 せめて、誰かこの問題を解けそうな頭脳を持っている人物を引き入れればよかっただろうかと思い始めてきていたが、仮にそれだけの頭脳を持った人物を無理に引き入れたとしても、FFF団総員(自分を含む)の嫉妬を食らい、感謝もされないまま相手を激怒させてしまう光景しか目に浮かばない。

 

「そうだ!テティスだよ! 皆、テティスに相談してみようよ!」

「何? どういう事だ、芝崎?」

 

 それだけ絶望的な状況でも諦めようとしない(往生際の悪い)須川の元に団員の一人が、テティスに相談することを提案してきた。

 

「もしかしたら、テティスならこんな状況でどうするか一緒に相談に乗ってくれそうだし!」

「なぜテティスなんだ? 相談なら吉井を間に入れてヘリオスに相談してもいいんじゃないのか?」

「確かにヘリオスならスゲー頭キレるけどさ、あいつ間違っても俺らの相談なんて乗らないだろ?」

「「「あぁ…… 適当に変な場所に行くように言ってそこには何もなかったとかありそう!」」」

 

 実際には、ヘリオスに嵌められた場合その程度では済まないのだが……

 

「なら、だれか吉井の電話番号を知っているやつがいたら教えてくれ。 テティス達はケータイを持っていないからな」

 

 Fクラス内にてヘリオスが一切信用されていないことが発覚した。

 が、須川にとってそんなことはどうでもいいので、すぐに明久のケータイの番号を確認して、事情を説明した後にテティスに変わってもらうように伝える。

 

 

 

 

 

「……もしもし、スガワ?」

 

 電話に出て来たテティスに代表として相談する須川。 その周りでは彼にケータイを渡した後すぐに大鎌と鞭と日本刀(床に落ちた時に切り傷が出来ていたが、模造刀だと思いたい)を用意し、白黒の死神風の衣装に着替えて、息を荒くしながら結果を待ち望んでいる団員が須川を囲んでいた。

 

「ねぇスガワ、なんか雑音が妙に怖いんだけど…… 話を聞く限りだと、そっちは人数はたくさんいるんだよね?」

「ああ、軽く2桁にはなるな」

 

 正確な人数を伝えないのは、一応敵であるテティスに情報を漏らしにくい状況にするためである。

 大した意味もない気がするが……

 

「学園中にはヒントがあるって言っていたでしょ? まずは全員でそれを確認してそれで解けるだけ解いた後……」

「それはもうやったのだが、それでもようやく4問解けたくらいだった……」

「皆、よくそれでこんな大会に参加しようと思ったね……」

「正直、同士達がバカばかりだったのは失敗だったと思っている」

「「「須川を殺せぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」

「うわぁぁァァァァァァァぁ!!」

 

 周りが囲まれている状況で言わなければよかったものを……

 須川に鎖付きの首輪を一瞬で取り付けて、それを外そうと必死になっている彼を躊躇な団員5名が引きずってFクラスの教室に全力疾走連行していってしまった。

 なお、彼が連行される際に周りを囲っていたFFF団の皆がプラカードを掲げていたのだが、その内容はなぜか

 

『GAMEOVER』

 

『スガワくんがクロにきまりました。』

 

『おしおきをかいしします。』

 

 某推理アクションゲームの犯人制裁シーンを連想させるものとなっていた。

 

 

 

「ちょっと、スガワ? ……スガワ!?」

「テティスすまない、今どうにか団員の皆から逃げて来たところダ」

「あれ? 本当にスガワ?」

「オイオイ、俺の声を忘れてしまったのカ? さっきまで話していただロ?」

 

 声に違和感を感じるテティスだったが、『一応スガワだし死んではいないだろう』と思ったテティスはそのまま話を続けることにする。

 

「まあ、いいや。 一応人数だけは揃っているっていうなら、ボクならケータイで連絡を取り合いながら各自で散らばって広域探索作戦を実行するかな」

「広域探索作戦?」

「うん、だって問題解けないんじゃ無理して解こうとする意味なんてないし」

「だが、問題を解かんことには場所も……」

「だから数を頼りに、しらみつぶしに探すんだって。 むしろそこで立ち止まって何もできない方が不味いと思うよ? せっかくの人手なんだから、使わないと損だって……」

「「「おおおおおおお! なるほど、そう言う手があったか!!」」」

 

 テティスからアイデアを貰えた事で、すっかり喜んでいるFFF団だったが、偽須川は疑問に思ったことがあったようで

 

「だが、問題も解かないで出るというのはルール上大丈夫なのカ?」

「うん、そもそもルールで明言しているよ。 もし問題が解けないならしらみつぶしに探してもいいって。 むしろこの問題はどうしても問題が解けない人用の『救済ルール』みたいなものじゃないかな?」

 

 テティスについ質問してしまうが、よくよくルール表を見てみると、本当に書いてあった。

 適当に礼を言って、通話を切る偽須川は団員に集合を掛けて今後の指示を出していく。

 

「我らFFF団は、各チームに分かれてここを出た後に、広範囲に散らばった後にしらみつぶしにありとあらゆる施設や店などを探しに行くぞ!」

「「「分かりました! 新FFF団会長殿!!」」」

 

 さっきまで須川が会長ではなかったのだろうか? 

 もう須川なんて居なかったとでもいうように、彼を無き者として忘れようとした彼らは各自で登録してあったチーム同士で班を組み、外へ出る準備を始めた。

 

 

 FFF団side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリオスside

 

 

 

 

「さて…… どうしたものか?」

 

 

 ヘリオスは計算外な2チームの存在に頭を悩ませていた。

 利害が一致している優子チームなら適当なチームと予定の景品の収集を速攻で終わらせてもらい、落ち着いた頃に取引をして景品の交換をすればいいと思ったのだが、最初に一度断っている姫路チームもあとになって加えるとなると、裏切りによってチームバランスが崩壊してしまう可能性が高かった。

 ましてや、彼女とチームを組んでいるのはあのグレイとエールの二人である。

 両者共にヘリオス達がロックマンとして辛酸をなめさせられた相手である。

 特にグレイの方に至ってはロックマンとしては失敗作だと言われていたにも関わらず、ヘリオス達に一度勝って見せたのだ。

 試召戦争でも、その戦闘センスが発揮されないとは言い切れないのである。

 葉月ちゃんの言葉を信じて姫路チームと組むべきか、自分の策を信じて葉月ちゃんの行動を諌めるべきか……

 それぞれの選択の利点と欠点を踏まえたうえで考え込んでいるヘリオス……

 

 

「お忙しいところを失礼します。 もしかして、ヘリオス君ではありませんか?」

「誰だ貴様は? 2年では見かけない顔だな?」

 

 いきなり乱入してきた男に対して、警戒している皆。

 

「た、高城先輩! どうしてこんなところにいるんですか!?」

 

 姫路の驚き様から察して、瑞樹の知り合いのようであった。

 

「ご機嫌麗しゅう、姫路瑞樹嬢。 今回の大会で欲しい物がありまして、それを手に入れる為にこのお宝探しにクラスメイトの二人と参加しているのです」

 

 瑞樹の質問に答える高城。

 その後ろから、そのクラスメイトと見える二人組が、必死な形相で追いかけてきていた。

 

「おい、高城! いきなりおいていくんじゃねぇよ!」

「あの速さ、人間じゃねぇよ…… おれ、これでも100メートル11秒なんだぞ……」

 

 彼らも物凄い速さで来たはずなのに、それ以上の速さで息も切らさずに涼しげな顔をしている高城の速さは確かに異常だろう。

 モヒカン頭の先輩に至っては思いっきり肩で荒く呼吸しながら手を膝についているあたり、どれだけ走らされているのかが容易に想像できた。

 

「成程ナ、サッキカラ隠レ回ッテイタ気配ハ貴様ラダッタカ」

 

 シャルナクはすぐに気が付いていた様で全く驚いていなかった。

 

「ええ、問題を解いてここまで来てみれば、貴方達がすでにいらっしゃったので、様子を見て判断しようと」

「ああ、私達はここの景品は手にしたのはいいのだが、次の行き場所について方針が決まらなくて困っていたところなんだ。」

 

 ヘリオスはここで嘘を付く意味が無いと判断したのか、簡単に事情を説明する。

 

「なるほど、大勢で動いているが故の欠点ですね」

「おいおい、いくら戦力が多くても動きが遅いんじゃ大した意味ないんじゃねぇか?」

 

 とは言ってもあのヘリオスの言い様だと『常に』全員一緒に行動しようとしていると勘違いしてしまうのだが。

 ヘリオスはむしろこれを狙っていて好都合だったので、問題なく(ヘリオスにとって)進んでいった。

 

「なら、もうここは貴方達が独占しているという事ですか?」

「いや、俺たちで二つしか手に入らなかったから、あと一つだけ残っていたはずだぞ?」

「ああ、確かゲットするためには試練があってのう、それを突破できんと景品は貰えんから気を付けるのじゃぞ?」

「本当ですか? それなら急いで取りに行った方が良さそうですね」

「わりーな、感謝するぜツンツン頭!」

「つんつんいうな坊主頭!」

「ありがとよー!」

 

 3人は雄二達の情報に感謝して、そのまま図書室に入っていってしまう。

 

「おい、貴様ら坂本の言葉は全部嘘だ……」

 

 アトラスが一応止めようとしたのだが、間に合わずに中に入ってしまう。

 そして、それから30秒後

 

「「「……」」」

 

 沈痛な顔をして出て来た3人が居た。

 まあ、初対面の後輩に完全に騙されて、いざ試練に挑もうとしたらすでに景品は全て取られていた跡だったのだから当然と言ったら当然なのだが。

 

「……試獣召(サモ)

「夏川落ち着け!」

「常村離せぇぇぇぇ! こいつら一度ぶっ殺して……」

 

 騙された事に激怒した夏川は勢い余って召喚獣で攻撃しようとするが、戦うのは得策ではないと思った常村に止められてしまう。

 

 

「まあまあ、いつもの事ですし」

「「それはお前だけだぁっァァァァぁ!!」」

「いつもの事ですの!?」

 

 明久を下回るバカがいる事自体が驚きの美春はついツッコミを入れてしまう。

 

「バカなお兄ちゃんがもう一人いるです?」

「葉月、あれはアキじゃないわよ?」

「バカで残念なお兄ちゃんですね!」

「ボクはあの人が本当に年上なのか疑いたくなってきた……」

 

 葉月ちゃんとグレイの中で高城は『バカで残念なお兄ちゃん(な人)』に決定されてしまった。

 

 

『いつも騙されてんのかあのイケメン野郎?』

『よかったな、モデルFよりも酷いバカがいて……』

『おいモデルH、てめぇ!』

『下には下がいてよかったでござるな』

『いやモデルP、うれしくもなんともねぇからな!!』

 

 

 モデルFを弄って楽しんでいるライブメタルたちはともかく……

 一方の明久達は

 

 

 明久・テティスside

 

 

「バイバーイ!」

 

 その一方で須川からの電話で一時だけヘリオス達の集団から離れていた明久とテティスは電源を切ってみんなの所に戻ろうとしていた。

 

「へぇ、FFF団の皆も参加していたのか~」

『って奴らはこの問題を解けるつもりで参加していたのか? 普通に考えて無理があるだろ?』

『それが分からないアホだから参加してるのよ。 でも、本当にルールに明記されていたの?』

「うん4番目のルールを見てよ。 闇雲に走って探し回るのも良いことにするって」

「それにしてもさっきの悲鳴って一体何でしょうか?」

 

 佐藤がそんな事を言い出した時だった。

 

「「異端者は死刑~!!」」

「ギャァァァ! 誰か助けてくれぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「……えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」」」

 

 さっきまで電話で話していたはずの須川が右半分が白い天使の装飾が、左半分が黒い悪魔の装飾が施された死神風の衣装を着こんでいる覆面集団に連行されている光景であった。

 

 

「何なんですか、あれ!?」

「まさか……FFF団じゃないよね?」

「確か、FFF団で新ユニフォームを考えているってヨコミゾから聞いたけど……」

 

『なんか…… どんどん武装が強化されていっていないか?』

『「されていないか」じゃなくて実際されているわよ! 本物の日本刀に大鎌まであるのよ? 前の装備は精々鞭と蝋燭ぐらいの物だったじゃない!?』

『……警察に通報するだけで逮捕できるのは間違いないな』

 

 ライブメタル達も真っ青な光景に明久達はドン引きであった。

 

「ってヤバイヤバイ! 速くスガワを助けようよ!!」

「うん。 佐藤さんは危険だからそこに隠れてて。」

「ボクがあいつ等の腕を確認するから、もし大会参加者だったら合図を送るからその時にサトウが召喚獣を呼び出して相手を瞬殺してくれるかな?」

「わ、分かりました!!」

 

 ひとまず、いろんな意味で戦闘慣れしていない佐藤さんに安全な場所で待機してもらい、ダッシュで突っ込んでいく明久とテティス。

 あまりの速さに、目で追いきれなかった佐藤さんは目が点になったままポケー…とした顔になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先に結論だけ言うと、佐藤に不意打ちをして貰う必要は無かった。

 ダッシュで須川の救出に向かった明久とテティスだったが、白黒の死神の正体はFFF団の団員だったのである。

 彼らの腕輪を確認した二人は、その瞬間にフィールドの展開をしながら召喚獣を召喚。

 強制的に呼び出されたFFF団員の召喚獣の点数を見て、あまりにも低すぎる点数に彼女の出る幕でもないと判断した二人が彼らの召喚獣を瞬殺。

 しかも、反射的につい、直接手を出そうとしてしまった彼らは制裁用の電流と二人の格闘術のダブルインパクトで失神してしまい、どこからか現れた鉄人に連行されてしまった。

 二人が須川を救出するのにかかった時間は作戦を立てた時間を合わせても53秒と言う常識外な結果であった。(突入時間は2秒、腕輪確認+召喚獣戦は8秒、格闘+電流=0.5秒)

 

「……え?」

 

 開いた口が塞がらないとはこの事だろう。

 単に運動が得意どころか格闘技の大会で全国連覇したとかそのレベルの運動能力を持っている人物でもあり得ない行動をしていた二人を目の前にした佐藤は、塞がらない口を手で隠しながら微妙にプルプルと震えている。

 

『まあ、普通はそんな反応するわよね』

『逆にFクラスがどれだけ常識外れなのかが分かる気もするがな』

「おわったよー」

「あれ? 佐藤さん、震えているけど大丈夫?」

「あ…… はい、だ・大丈夫です」

 

 全然大丈夫じゃないと思うが、本人が大丈夫だと言い張るので気にするのをやめた二人はそのまま須川を叩き起こす。

 

「川を渡るのには6文だと! 3文あれば……」

『今こいつ三途の川と言うやつを渡ろうとしていなかったか?』

「大丈夫、スガワ?」

「ここに戻ってくるとき思いっきり鎖を引っ張ったからね」

「あれのせいで俺はなぁぁぁぁぁ!!」

 

 助けられたことに感謝したい須川だったが、その際に思いっきり首輪の鎖を引っ張られて、死に掛けていた事を考えると素直に礼を言えないのである。

 

「まあまあ、何があったのかは分からないですけど、死刑にされる前に助かってよかったって思えばいいじゃないですか」

「う、まあ助けてもらえたことには二人に感謝するぞ」

「それで、スガワはどうするの?」

「ああ、取り敢えず酷い目に合ったふりをして皆の所に……」

「「また処刑されるね(ますね)!」」

 

 須川は一旦FFF団の元に会長として元に戻ろうとしていたが、そんなことをしてもまた処刑されるのは目に見えている。

 

「しかし、他に行く当てもある訳ではないし……」

「召喚獣で襲われて生き残れる訳でもない……」

「「「どうしたものか……?」」」

 

 

 明久・テティスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なら、このポイントを探索するまでの間だけでも頼めますか?」

「はい、瑞樹嬢の頼みとあれば必ずやり遂げて見せますよ」

 

 明久達がFFF団?と戦って須川を救出していた頃、ヘリオス達は姫路チームと高城チームに助っ人を頼むことにした。

 姫路チームと高城チームを一時的にとは言え、連合内に引き入れて組ませたチームに動向を監視しさせようと考えたのである。

 

「おい、ヘリオス」

「何だ、坂本雄二?」

「……雄二、もしかして気が付いた?」

「ああ、これはいけるって思ったんだが……」

「正確なる認識…… 思っていることは同じのようだな」

 

 こうして戦力は明久チームを入れても7チームまでそろった事になり、これをきっかけにヘリオスと坂本夫妻はある策を思いついた。

 

「ヘリオス、ただいまー!」

「ごめんヘリオス。 FFF団に連行される須川を助けていたら遅くなってしまったよ」

「些細なる問だ…… おい!」

 

 それと同時に明久達が帰って来たのだが、一人増えていることに気が付いたヘリオスはついツッコんでしまう。

 

 

「それで、結局姫路さんのチームと3年生の方と同盟を組むという事になったのですね?」

「……明久達が戻ってきたら各チームのリーダー同士でチーム分けを決める予定だった」

 

 増えすぎた連合のメンバーをどう割り振るか、各班の班長同士で話し合っている。

 一方で、リーダー以外の皆は適当に休憩を取っている。

 話し合いは意外と早く終わり、ひとまず須川個人をちょっとした方法で買収した後、ある物(・・・)をエコバック二袋分ほど持たせ、FFF団にとある指示をさせて、須川を先にFFF団の元に向かわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 ヘリオスside

 

 

「しかし、本当にいいのか? こんなに貰ってしまっても?」

 

 いきなりの『奇妙なグッズ』や『謎の本の山』を譲ってもらった須川は

 

「些細なる問題…… 明久がこっそりと隠していた物が殆どだから気にする必要は無い」

「ヘリオス! 何で僕の秘蔵のコレクションの隠し場所を知っているの!?」

「些細なる問題…… 私はお前がj〇シリーズなどと言ういろいろと危ない物を無〇正バージョンで持っていたとしても、私達を救ってもらった恩義だけは忘れたりはしない……」

「大問題だからね!? 居候までしている仲間に隠してまで愛用しているコレクションの隠し場所がばれてて、しかも勝手に知り合いを買収する材料にされているなんて!!」

「アァァァァキィィィィー!! 女子まで居候させておきながらこんなにものエ〇本を隠し持っているのよ!?」

「女子ってアトラスの事? 『アトラスには一度バレて』ってやばっ!!」

 

 少し距離を取ってこっそりと話していた男子組だったが、何故か美波には聞こえていた様で、明久が回避し続けているせいで、無駄に精度とキレが増してきている蹴りで攻撃してくる。

 

「つーか今、アトラスにはバレているって言っていなかったか?」

「うん、家の掃除担当がアトラスだったのが災いしてさ、一度ベッドのマットとフレームの間に隠していたんだけど、大掃除した時にバレちゃって……」

「それで? 焚火とか言って思いっきり燃やされたとか?」

「いや、全部探し出された後、二人っきりの時にガチギレしたアトラスに半日ぐらい説教させられたよ」

「あいつはお前の母ちゃんか!?」

「ううん、『普通の漫画とかならまだしもこんな下らないものにうつつを抜かしていたいならもう少し漢として強くなってからにしろ!!』だってさ」

「あー、その…何だ? ある意味目の前で燃やされた方が現実味が無くてマシかもしれねーな……」

「最後のとどめに『最後に貴様を丸焼きにしてやるか(お互いロックマン状態で)』『エログッズを全部目の前で燃やされるか』の二択を迫られたけど?」

「殺す気か!! そんな二択なら目の前でエログッズを全部燃やされた方がマシじゃねぇか!」

「二人とも何をしているのです! そんなどうでもいいことはともかく、話を先に進めますよ」

「「どうでもよくねぇぇぇぇぇ!!」」

 

 明久組のとんでもなく恥ずかしい話をさらしてしまった事を無視して、高城はすぐに話を進めようとする。

 

「で?、チーム分けについてだけど、『2・2・2・1』と言った感じでバランスを取って行くのかしら?」

「愚かなる選択…… それでは確実に1チームだけが不利になることくらいは分からんのか?」

 

 正確には『そのあぶれたチームはせっかく連合に入ったのに結局ハブられたと思い込んで疎外感を覚えてしまう』可能性を考えていたのだが、そんなことを言ってもこの女は理解しないだろうと思ったヘリオスは別の方向から説得しようとしてみた。

 

「う、それもそうだけど……」

「なら『3・2・1・1』と言った感じでで分けて、一つの試練をすぐに終わらせるようにして、すぐに他のグループの応援に行けるようにするんですか?」

「優秀なる選択…… まずは如月グランドパークに3チームほど送り、速攻で試練を終わらせ、他チームの増援として来てもらう」

「……雄二、グランドパークに一緒に」

「行かない!!」

 

 ヘリオスの発言の後、何故か霧島は雄二と行きたがって腕を組もうとしていたが、速攻で拒否されてしまい、泣きそうな顔をしながら落ち込んでしまった。

 

「いろいろと申し訳ないんだが、最初から雄二は体育館の方に回ってもらおうと思ってい……」

「……ヘリオス、覚悟」

「おおおおおおおおおお! 恥ずべき誤算…… このわたしが狙われるとは…… って違う! ちゃんとした意味があるからちゃんと話を聞け!!」

 

 ヘリオスが申し訳なさそうに詫びを入れようとしたが、霧島からの不意を突いたスタンガン攻撃に驚き、後ろに飛び退いて回避する。

 

「……下らない理由だったら、覚悟をして貰う」

 

 半端な答えは許さない。 それだけの風格と殺気をスタンガンと同時に出す霧島。

 その殺気は戦闘モードのロックマン達のそれと何ら遜色がない程だ。

 しかし、彼なりに彼女の事を考えての理由がある以上簡単には引き下がらない。

 

「霧島が前に話してくれた『坂本夫婦』の愛の絆と言う物を信じていたいからだ! その二人の抜群のコンビネーションに余計な要素は極力取り除きたく……」

「ヘリオスてめぇ! 誰が夫婦……」

「……雄二は少し静かにして」

「翔子、何をする? やめ…… ギャァッァァァァァァァァァァ!!」

 

 坂本(妻)との関係を否定しようとした雄二は愛の電撃を受けて天国に上るように昇天していった。

(要はスタンガンによる攻撃で気絶)

 

「そして、あの性格の悪い学園長の事だ。 如月グランドパークにあるように見せかけてプレミアムチケットを別の場所に隠しているかもしれん!」

 

 

 

 学園長side

 

「失礼なガキだね! 私はそんなことはしないさね!」

「では、どこに隠したというのですか?」

 

 ヘリオスの言葉に少々お怒り気味の学園長に高橋先生がプレミアムチケットについて質問する。

 

「あれは、あの4か所にあるヒントの場所にある最終試練をクリアしないと貰えないさね」

「ヘリオス君、近かったですけど正解には到達していないようですね……」

 

 

 学園長side end

 

「……分かった。 雄二と一緒ならどこでもいい。 でも、約束は忘れないで。 ……ううん、絶対守って」

「ああ、約束しよう。 プレミアムチケットは坂本(妻)に譲ると」

「あの、ヘリオス君。 すみませんがそろそろ私達のチーム分けも決めないと時間が無くなってしまいます」

「高城3年生、済まなかった。 では、各自このチーム分けで行動してくれ。 忘れないでいてほしいが、グランドパークに向かった3チームは試練が終わり次第、他のチームの増援に向かう事も忘れるな!」

「おい待て! ヘリオス、俺と翔子が夫婦である事が当たり前みたいに言うんじゃ……」

 

 雄二が霧島から腕を組まれて(関節を極められて)いる間に、ヘリオスは全員にチーム分けを書き込んだメモを渡す。

 皆はヘリオスの指示に従い(雄二はまた気絶)、決められたチーム同士で行動する為に解散。

 移動するための準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、佐藤と清水。 わたし達は発電所に向かい、こちらに隠されていると思われる景品の確保に向かう」

「ちょっ! ヘリオス、お姉さまは一緒ではないのですか!? って話を聞きなさい! ヘリオス…ヘリオース!!」

 

 

 チームヘリオス・美波が一緒でないことでごねている美春を無理矢理に連れて、発電所へ

 

 ヘリオスside end

 

 

 商店街組side

 

「ヘリオスも考えたわね。 こうやって別チームに分断しておくことでウチから美春を遠ざけてくれるなんて」

 

 美波もべつに美春の事は『友達』としては嫌いではないのだが、あの度を越した愛情表現だけはどうにも受け入れがたいものがあったのだ。

 

「島田(フン!)、思っていた(フン!)よりも(フン!)早かった(フン!)な。(フン!フン!) 明久と雄二あたりが(フン!)何かバカ騒ぎを起こして(フン!)会議が長引くと思ったんだがなっと!」

「……カメラの整備が終わっていない」

 

 アトラスと土屋はマイペースにも、アトラスは筋トレ、土屋は盗撮用カメラの整備を行っている。

 

「土屋のカメラの整備が終わったらウチたちも行くわよ!」

「……場所は?」

「ウチらは商店街よ」

「ウチら? 他のチームは一体どうなっている?」

 

 アトラスは事情を知らないため、美波につい質問してしまう。

 

「ヘリオスは時間がかかりそうでなおかつクリアした後でみんなの増援に行きやすい如月グランドパークに戦力を集中させるんだって アキと瑞樹と先輩のチームがそこに行くって言っていたわよ」

「なるほど、悪いが正直、私はヘリオスの策には賛同できんな」

「え?なんでよ?」

「……あの3年が裏切る可能性」

 

 美波の疑問にアトラスに変わって答える土屋。

 

「ヘリオスの事だ、葉月の頼みを断れなかっただけだろうがな」

 

 そしてアトラスは言葉を続ける。

 

「それに裏切る可能性といえば姫路の方もそうだ。 あの女は時々本当に明久に惚れているのかが怪しくなってくる行動を取ることがあるからな。 万が一あの三年と手を組む様なことがあったら、明久達といえど、止めることは出来ないかもしれん」

「姫路に限ってそれは無いと思うわよ?」

 

 アトラスはあの毒弁当事件を引き合いに出して説明して行くが、その言葉を美波が否定する。

 

「確かにあんな失敗をする様な所はある娘だけど、あの様子だと瑞樹の恋は本物よ?」

「本気で言っているのか?」

「ええ、間違い無いわ。 なんだかんだ言ってアキの事を本気で愛しているから、絶〜対に裏切らないわ。 むしろ三年の奴らが裏切ったとしてもアキに協力して率先して抑えてくれると言ってもいいくらいだからね。」

 

 そう言って、にこりと笑う美波。

 

「それよりもウチたちも急ぐわよ! 商店街って言ったら相当広いじゃないの!」

 

 急いで土屋のカメラの準備を終え、商店街に向かう島田達。

 

 商店街組side end

 

 

 総合体育館組side?

 

「……雄二と一緒。 私とてもうれしい」

 

 顔を赤らめながら言った霧島の右手にはまだ気絶している雄二。

 あの会議からずっと気絶していた雄二を引きずったまま離さないで捕まえていた霧島を見てシャルナクと秀吉は後ずさってしまった。

 シャルナクに至っては、せめて雄二の命がある事をガラにもなく神に祈ってしまうほどである。

 

「ソレデ?、俺達ハ総合体育館ト言ウ場所ニ行クンダナ?」

「……うん、雄二と私との夫婦の絆を信じるって言ってくれたの」

「「そ・そうなんだ……」」

 

 霧島の言葉を聞いてつい苦笑いを浮かべながら軽く引いてしまう皆だった……

 

「取り敢えず、みんな体育館に行こうよ。 体育館ってここからだと割と時間かかるよ?」

 

 愛子のその言葉に賛成し、彼女たちは体育館に……

 

 総合体育館組side end

 

 

 

 グランドパーク組side

 

 他のチームがそれぞれの場所に向かう中グランドパーク組の方は人数が多いこともあり、とても騒がしい事になっていた。

 

 

「それじゃあ、グレイ君もよろしくね」

「……(プイッ!)」

「はぁ……」

 

 明久はせっかく同盟を組んだもの同士、仲良くしようと何度も話しかけているが、当のグレイからは完全に嫌われていた。

 それもそのはず、グレイにとって明久はモデルAを空の彼方へ打ち飛ばした張本人なのである。

 そのモデルAは運よく優子の元で保護されているからよかったものの、最悪モデルAだけが友達と言う悲しい少年であるグレイはモデルAと会えなくなってもおかしくなかったのだから。

 

「明久君、きっと大丈夫ですよ。 グレイ君もきっとわかってくれますよ」

「だと良いんだけど…… 僕が姫路さんと話している時に至ってはそっぽ向いてどこかに行っちゃうし……」

『おい! それってまさか……』

「モデルZ、どうしたの?」

『いや、何でもない』

 

 モデルZは何かに気が付いたようだが、肝心な二人が気が付いていなかったために何も言わない方向で決めたようだ。

 

 

 

 

「へぇーじゃあ、二人は常夏コンビでいいとして……」

「「全然よくねぇ!! 覚える気がねぇからって一纏めにするんじゃねぇ!!」」

「えーっと、じゃあモヒカンが『夏川』君で髪の毛が無い君が『常村』君でいいかしら?」

「「エールさんも違いますって!!」」

「ボーズ頭のオレが『夏川』で!」

「モヒカン頭の俺が『常村』ですからね!?」

「じゃあ「川村」コンビでいいでしょ? あ、まるで二人が兄弟みたいだね?」

「分かりましたです! 「川村」のお兄ちゃん達と覚えておくです!」

「テティス! てめぇいい加減にしろおおおおおおお!」

 

 

 

 一方でテティス達は自己紹介していた常夏コンビの名前を覚えようとしているのだが、主にテティスのせいで常夏コンビの名前が覚えられずにいた。

 そんな中に途中で明久との件ですねたままのグレイをテティスが呼び出してきた。

 

 

「あ、グレイ君! さっき君も彼らの名前を聞いていたよね? 君は覚えているかい?」

 

 どうやら、グレイがふたりの名前について覚えているかどうかの確認だったようだが……

 

「ああ、確か『夏村』コンビだっけ?」

「「お前もかァァァァァァァ!!」」

『ボクはちゃんとボーズ?の子は「夏川俊平」、モヒカン?の子は「常村勇作」ってちゃんと覚えているんだけど……』

『モデルX様? 恐らくですが、テティスとグレイ君はわざと間違えて二人を混乱させていると思いますので、後でエールと葉月ちゃんにきちんと正しい名前を憶えてもらったほうがよろしいかと思われます』

 

 グレイにも覚えられていない事実にショックを覚えた常夏コンビ。

 ライブメタルの二人はそんな彼らの漫才のような会話に、あきれながら話を続けていた。

 

「(少し、離れて歩きましょう……)」

 

 そんな中高城は彼らと同じ側の変人に見られたくないからと言って、少し距離を取りながら明久達を追いかけるような形で走っていた。

 

 

「あ、見えてきたです!」

「遊園地か……」

 

 建設途中の遊園地を見て、エールの顔が少し暗い物になる。

 

「青のお姉ちゃん、一体どうしたですか?」

「ううん、大丈夫よ葉月ちゃん。 心配しないで?」

「うん、分かったです。」

 

 しかし、すぐに笑顔になり、葉月ちゃんに優しい笑顔を見せる。

 

「(大丈夫よね。 ここにはイレギュラーなんて居ないんだから。 あんな事件なんて起こるわけがない)」

 

 グランドパーク組side end

 




初めてのバカテストです。
もしよろしければ感想お願いします。





11月22日 問題点を発見の為、追記。


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第17話

バカテスト

第2問

以下の意味を持つことわざを答えなさい。

『(1)得意なことでも失敗してしまう事』
『(2)悪い事の上にさらに悪いことが起きる喩え』



姫路瑞樹・霧島翔子・ヴァン・エールの解答
『(1)弘法も筆の誤り』
『(2)泣きっ面に蜂』

高城雅春・夏川俊平・常村勇作・佐藤美穂の解答
『(1)猿も木から落ちる』
『(2)踏んだり蹴ったり』

教師のコメント
皆さん正解ですね。 他にも(1)なら『河童の川流れ』、(2)なら『弱り目に祟り目』などがありますね。




土屋康太・アッシュ・木下秀吉の解答
(1)『弘法の川流れ』

教師のコメント
シュールな光景ですね。

吉井明久・坂本雄二・ヘリオス・アトラス・テティスの解答
(2)『泣きっ面蹴ったり』

教師のコメント
キミ達は鬼か悪魔ですか!?

島田美波・清水美春・シャルナクの解答
(1)『猿を木から落とす』
(2)『弱り目にトドメ』

鉄人のコメント
よし、三人には倫理と道徳の補習授業も追加してやろう。
後で生徒指導室に来い!!(10分以上の遅刻で強制連行)


 グランドパークside

 

 景品を手に入れ次第、すぐに他のチームの増援に向かう予定になっていた明久達は、ひとまず先に姫路チームと3年チームと共に如月グランドパーク(建設中)に向かっていた。

 

「それで、景品の場所がここだっていうのは間違いねぇんだよな?」

「ヘリオスが言うんだから間違いないでしょ」

『あのねぇ…ヘリオスは天才ではあっても神様じゃないのよ……』

「まあ、中に入ってみればわかる事です、早く行きますよ」

「ちょっ! おい、待てって!!」

「置いて行くなよ!」

 

 そう言って高城は早々と中に入って行った。

 それを常夏コンビと明久・テティスが追いかけていく

 

「あの? エールさんいったいどうしたんですか?」

「あわわ…… 青のお姉ちゃん、お顔真っ青です……」

「え?」

 

 そんな中、エールの様子がおかしい事に気が付いた瑞樹と葉月ちゃんが心配して話しかけて来る。

 

「あ、うん! 大丈夫よ。 さ、急いで皆を追いかけましょう?」

「エール?」

 

 さっきまで、青い顔をしていたのが嘘のように優しい笑顔に戻ったエールの事が気になりながらも、ひとまず先に中に入った皆を追いかけるために中に入って行った。

 

(……まさか…また、こんな場所に来ることになるなんてね…)

 

 

 グランドパークside end

 

 

 

 体育館side

 

 一方で体育館の方は、イベントの開始時間までしばらくかかるという事で、その開始時間まで適当な雑談をしていたのだが……

 

「はなせ! 俺はこんな組み合わせは……」

「雄二よ、もうあきらめるのじゃ。 わしなんぞあの姉上となのじゃぞ?」

 

 とても嫌な顔をしながらつい、優子を見てしまった秀吉。

 

「ひーでーよーしー? お姉ちゃん、ちょっとお話があるんだけどな~?」

『おおおおおおおおい! 優子!なんかその笑顔がマジで怖いんだけど!!』

「は、離すのじゃ姉上! 一体どこに連れ…… ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「オ・オイ、木下! 一体何処ニ秀吉ヲ連レテ行ク気ダ!!」

「シャルナク、アンタにも話があるのよ!!」

「何ダト? ……ッテ離セ! アアアアアアアアァァァァァァァ!!」

 

 一体何を言おうとしていたのか? 優子は秀吉とシャルナクを連れてどこかに行ってしまった。

 少し離れた所で謎の爆発と共に「貴様!一体ドウイウツモリダ!」「ちょっ姉上! 関節はそっちには曲がらぬのじゃぁぁぁ!!」「ロックオン!!」などという声が聞こえたが、他の皆は助けに行けずにそのまま話を続ける。

 

「……ヘリオスが夫婦の絆を信じているって言ってくれていたから、私もそのヘリオスの信頼に応え…」

「絶対嘘だろ! ヘリオスの事だから、俺たちで楽しんでいるに決まってる!!」

「そう言えばだけど、あの試召戦争の次の日にヘリオスと何か相談していなかったかな?」

「……愛子? もしかして、聞いていた?」

「ボクも代表がヘリオス君に相談しているところを偶然聞いちゃったんだ?」

「おい、工藤! 翔子がいったいどんな相談していたか分かるのか!?」

 

 翔子がヘリオスにどんな相談をしたのかが気になってしょうがない雄二はどうにかして聞き出そうとしている。

 

「うん、ボクが聞いた話だと……」

「……愛子、いい、自分で言う」

「なあ、何か嫌な予感がするのは俺だけなのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……『雄二とより濃厚な時間を過ごすにはどうしたらいいか』と『雄二との子供の名前について』ちょっとだけ」

 

 この言葉と同時に雄二はシャルナクの次にすごいと思える程の反応速度で逃げようとした。

 が、それすらも許される事も無く、霧島に一瞬で縛られてしまった。

 

「あはは、坂本君も往生際が悪いねぇ。 いい加減に諦めたほうがいいと思うよ?」

「……ヘリオスも適当に拾った長刀を曲げようとしたら、真摯になって考えてくれた」

「それ、完全に脅迫しているだろ?」

 

 愛用の長刀を人質に取られて、恥も外聞もなく慌てふためくヘリオスの姿が想像できる話であった。

 そして、翔子は言葉を続ける。

 

「……ヘリオスはこう言ってくれた。 『いっその事子供を産んで結婚してしまったらどうだ?』って」

「最近の過激なアプローチはあいつのせいか!!」

「しかも、子供の名前の話ってその話からつながっていますよね?」

「……うん、しかもその名前についてもしっかりと考えてくれて、とても嬉しかった」

「そんなに顔を赤くするな! しかもヘリオスの野郎、途中からノリノリじゃねぇか!! 絶対にここから楽しくなって来ただろ!?」

「……多分、そうだと思う。 因みに、これが『子供の名前候補のリスト』……お勧めは私が考えた、私と雄二の名前を組み合わせた方」

「どれどれ~?『しょうゆ』に『こしょう』って調味料じゃないんですから…」

 

 苦笑いしながらついツッコミを入れてしまう愛子。

 

「ちなみに男の子が『こしょう』……」

「『しょうゆ』ガ女ノ子カ!? ット一体何ノ話ヲシテイル?」

『途中で戻ってきてみたはいいが、何をどうすればこんな話になるんだ?』

「姉上のせいで酷い目にあったのじゃ」

「仕方ないわよ。 あれは事故の様なものだしね」

『オイラからしてみれば、あれは立派な事件だと思うけどね』

 

 あの3人の間でいったい何があったのだろうか? ボロボロになった3人がいつの間にか戻ってきていた。

 

「それにしても雄二も災難じゃったな」

「ヘリオスノ奴、トンデモナイ事ヲシヤガッテ。」

「坂本君も大変ね。 そう言えば代表、他にはいったいどんな名前があるんですか?」

 

 ヘリオスも考えたというだけあって、子供の名前も豊富である。

 霧島から子供の名前リストを借りて、二人が考えた名前を一部だが読み上げていく。

 

「ええっと…… まずは『左馬之助』に『秀光』?」

「すごいのかすごくないのかよくわからない名前じゃな!!」

「『鬼〇者』っていうゲームで有名になったとは思うけど、実際の歴史的には微妙な所だな」

「他には…… 『義政』に『清盛』、『正宗』なんて普通にいいですね。 この辺あたりからヘリオスも本気になっていると思うんですけど?」

「……『名前を出すだけなら容易。 むしろ、そのつけようとした名前に納得する方が難しい』って言っていた」

「俺だって、『しょうゆ』とか『こしょう』なんていう名前は……」

「因みにリストの中には『周瑜』『孔明』『荀彧』なんて言う名前も…」

「今度は偉くなりすぎだろ!」

「今度三国志から取ったのじゃな! これは適当に……」

「……ヘリオスが思いついてくれた名前は全部、私が『しょうゆ』と言う名前を出した後」

「霧島ノ出ス名前ガ不安ダラケダカラ仕方無ク、アドバイスヲ出シテイルンジャナイカ!!」

 

 シャルナクの言葉も尤もだろう。

 そんな雑談をしている間に、体育館のカギが開く。

 どうやら準備が整ったようである。

 

「それよりも中に入るぞ。 景品が他に取られたらたまったもんじゃないからな。」

「本音ハ?」

「早くこのイベントを終わらせて、ヘリオスの奴に余計なことをしやがった分の仕返しをしてやろうと思った」

 

 そんなことを言って、皆で体育館の中に入って行く。

 そこで目にしたものは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ハ~ズレ!! (バーカ!バーカ!)』

 『んとほうばのしょとはなりぷのーる』

 

 と書かれた、看板であった。

 

 

 

「「「ふざけるなぁぁぁ(フザケルナァァァ)ぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!」」」

 

 そして、体育館の中では雄二達を含め、問題を自力で解いてきた人たちは全員怒りの叫びを上げていた。

 

 体育館side end

 

 

 

 

 商店街side

 

「うう……」

「……一体どうした? 何があった!?」

 

 商店街に到着したアトラス達はすぐにでも景品探しをしようとしていたのだが、入口の前にある点数補給所で疲れ切って倒れかけている人物の介抱をしていた。

 

「この入口から入ったらすぐに、試練の様なものが始まったんだが、突破条件が厳しすぎて、帰ってこれない奴らがいるんだ」

「この大会って市が主催だったわよね!!」

「帰ってこれないって、ほとんど戦場だな……」

 

 演出なのだろうか? 大火事になっている建物が多数あった。

 

「たのむ…この救難信号送信用PDAを使って、みんなを助けてやってくれ! 。 そこに脱落者を救援してくれる人たちが来てくれるはずだ……」

 

 そう言って、懐からPDAを出してくる男性。

 

「……どうする?」

「どうもこうも、要は中で迷子になっていて出られない人たちを見つけたらこれで連絡してほしいって言ってるんでしょ?」

「アタシは別に構わないぞ? こう見えても救援活動とかは軍にいたころに経験しているし、こういった任務はむしろ得意な方だ」

「……意外」

「そうよね。 普段から強者がどうこう言って、人の事をぶんなぐっている印象しかなかったから、正直驚いたわ…」

「おい貴様ら、一体アタシを何だと思っていたんだ!?」

戦闘狂(バトルマニア)!!」

「……女版ミニ鉄人」

「文月の重戦車!」

「「対鉄人用最終兵器!」」

「祈りは済ませたか、キサマラァァァァァァァ!!」

 

 二人の言葉にとうとうキレて超高速の回し蹴りを振るうアトラス。

 

「キャー! ちょっ!アトラス、危ないでしょ!!」

「……撤退」

「貴様ら、待てぇぇぇぇぇぇぇぇ…… っとそのPDAを貰うぞ。」

 

 優子の時のそれとは違ったものではあったのだったが、それでも十分怖い。

 反射的に美波とムッツリーニは商店街の中に逃げ込んでしまった……

 追いかける前にアトラスがPDAを受け取った。

 二人からより詳しく話を聞くためにアトラスはキレかけた状態で鬼のような顔をしながら、追いかけていく。

 

 

 

 商店街side end

 

 

 発電所side

 

「些細なる疑問…… なぜ、こんな場所に景品を隠したのだろうか? 万が一何かあったらどうするつもりなんだ?」

 

 ヘリオスはかなり規模の大きい発電所を見て、こんなことを呟いてしまう。

 発電所と言ったら、別の場所だったとはいえ、ヘリオス達が来る前に放射線の問題で大事故を起こしたこともある、とても危険性の高い場所でもある。

 そんな中で誰とも争わずに、被害を出す事も無く、景品を探すというのは流石のヘリオスと言えども無理があると言う物だ。

 

「なんですか? 今更怖じ気付いたんですか?」

「愚かなる間違い…… 本当にここに景品があると言うのなら、確実に探し出して見せる自信がある」

 

 ヘリオスが自身に満ちた顔で言う。

 そして、警戒しながら発電所の扉を開け、中に入っていく。

 

「でも、あの豚野郎に任せて本当に大丈夫でしたの?」

「何が言いたい?」

「いくらあの豚野郎が強いとは言っても、Aクラスレベルの人が相手では流石に無理だったのでしょう?」

「ええ、あの時の対戦相手は私でしたから、苦戦はしましたけど、強引に力でねじ伏せる形で勝つことは出来ましたから……」

 

 明久から試召戦争の結果を聞いていた美春は、ヘリオスと佐藤に問いかける。

 実際に明久の召喚獣の操作技術は観察処分者の中でも第1位と言っても良い程のものになっていたが、少しでも操作を間違えると、佐藤との戦いのように一発でやられてしまう事もあるのだ。

 もし、あの2チームの内どちらか一方でも裏切る事があったなら、一部の教科を除き、比較的点数が高い程度しかないテティスと、点数が事前に高めに設定されていても召喚獣そのものを扱った経験が無い小学生では戦いにすらならないだろう。

 

「些細なる問題…… あの組み合わせなら絶対に裏切りや殺し合いは起きないという確信があったから、あの組み合わせにしたのだ。」

「ですから、なぜそうならないと言い切れるのかの説明を……」

 

 なかなか理由を言おうとしないヘリオスの態度に美春がキレかける。

 そんな彼女を見て、ヘリオスはため息をつきながら、理由を説明し始める。

 

「まず姫路の方だが、一つ目はあの女はアプローチの仕方はどうあれ、明らかに明久に好意を抱いている。 あの毒弁当事件の後の様子がいい証拠だ」

 

 この話を聞いて佐藤は『毒弁当事件って一体何だろう?』とつい首を傾げてしまう。

 まあ、好きになった男性を相手に毒入りの弁当を持って行ってしまうなんて言う話の地点で意味不明なのだが……

 

「ああ、最後にヘリオスとシャルナクの二人があの女にトラウマを植え付けたあの時ですか。 私でしたら、あんなことをされた後なら、暗器を準備をして仕返しをするところですけど」

「愚かなる選択…… 実行前に4倍返しにしてやるから安心していろ… 話がそれてしまったな。

 あの後にシャルナクから聞いたのだが、5時限目の授業が終わった後に改めてあの弁当を食べた者達全員に謝りに来ていたそうだ。 何故か虚ろで赤い目をしていた上に体が震えていたそうだが……」

「それってかなり危ないじゃないですか!!」

 

 完全に自分で自分を追い詰めている危険な状態である。

 返答次第では錯乱状態に陥ってどんな行動に出るか分からなくなるだろう。

 

「些細なる問題…… その時、アトラスが説教をしてしまってかなり危なかったそうだが、明久が庇ったそうだ。

 最終的には全員許したという事もあり、明久にはかなりの恩義があるという訳だ」

「でも、姫路さんと一緒にいた男の子は吉井君に敵意むき出しでしたけど?」

「それ以前に、一人で裏切っても大したことは出来んし、敵意云々はともかく、姫路にはなついているようだったからな」

「そうですか、姫路さんが吉井君を庇って、攻撃しないように言う可能性に賭けたという訳で……」

「しっ!(トンッ!)」

  

 しばらく雑談をしながら発電所の中を散策していた3人だったが、いきなり話を止めさせる。

 

「一体どうしたんですの?」

「警戒すべき事態…… そこの扉の先に何かがいる」

 

 そう言って、ヘリオスが指を指した先にはローラー付きの廊下があり、その先に職員と思われる男性と、大型のローラーを付けた、戦車のような戦闘機械がそこにはあった。

 

「な! なんていうデカさですの!?」

「それ以前に、どうやってあんなものを発電所の中に持ち込んだのかが気になるんですけど!?」

 

 あまりのありえなさについ二人は驚愕してしまう。

 

「些細なる問題…… あれが何にせよ倒さねば先へと勧められぬというのなら吹き飛ばすまでだ」

 

 ヘリオスがかっこいいセリフを吐いて二人を庇うようにしながら前に出て行くが、内心ではかなり驚いていた。

 それもそのはず、廊下の先にある戦闘機械には見覚えがあったからである。

 

『な…なんで〈クラッシュインパクト〉がいるんだ!』

 

 クラッシュインパクト

 ヘリオス達ロックマン達の時代に存在するイレギュラーと呼ばれる殺戮マシーンの中で、非常に高い耐久力とローラーを生かした突進攻撃、そして、大型の波動砲による砲撃を行う広域殲滅型のイレギュラーである。

 もし、何かしらの事故で未来からのイレギュラーが、この世界にやってきたというのなら、二人を危険な目に合わせるわけにはいかなかった。

 先程までの探索で、イレギュラーのような危険因子が確認できなかった以上、他のイレギュラーがいる可能性はほぼないと言っていいだろう。

 念の為に、シャルナク特製のスタンロッド(出力最大1億ボルト、並のイレギュラーなら一瞬でショートする仕様)を美春に預け、少し離れた場所に隠れてもらう。

 スタンロッドを受け取った美春は『何を警戒しているのかは分かりませんが、相手を殺す気ですか!!』と言って、受け取った手が震えていたが……

 

 

「……モデルH」

『何だ?』

「こんなイベントで大きな危険はないと思うが、あれがもしイレギュラーだったなら……」

『ああ…… 俺の力を使うんだな』

「……頼めるか?」

『構わないさ。 せっかく秘密にしてきたというのに、最悪、これで水の泡か』

「そうならないことを祈ろう……」

 

 そう言ったヘリオスは左手は懐に隠しているモデルHに、右手に愛用の長刀を構えながら、職員と思われる男性の前に出る……

 

 ヘリオスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は戻って

 

 

 

 

 グランドパークside

 

「うおおおおおおおお! 何なんだよこいつら無限湧きしてんじゃねぇか!!」

「マジでキリがねぇな」

「おっと危ない、『波断撃』!」

 

 一方で明久達グランドパーク組は無限に湧いてくる、マスコット達に襲われていた。

 

 文月学園『吉井明久・テティス・夏川俊平・常村勇作』 vs マスコット軍団『フィー×3・ノイン×2・アイン×4』

 

 教科 世界史

 

 点数 「107点&149点&163点&176点」 vs 「70点×9」

 

 まあ、一体ごとの点数はとても低いのだが、無駄に数が多い。

 先程まで一緒だった瑞樹たちとはぐれてしまい、どうにか4人でマスコット軍団を迎撃していた。

 この場を脱出して、全員の無事を(特に葉月ちゃんの方は重要!)確かめるためにも、こんな所で足止めを食らっている訳にはいかないのである。

 

「もう! 本当にしつこいなぁ!!」

 

 普段は温厚なテティスも流石に苛立ちを覚えていた。

 半端な攻撃では倒しても倒しても敵は無限に湧いて出てきてしまう為先には進めない。

 その上、先へと進む道を6体以上の大楯持ちのマスコットがふさぐように陣取っている為、今この場にいる戦力では、強行突破して先に進むという事も出来なかったのである。

 

 

「皆さん、伏せてください!!」

 

 姫路チーム『姫路瑞樹・エール』 vs マスコット軍団『フィー×3・ノイン×2・アイン×4』

 

 

 4人はとっさに召喚獣を地面に伏せさせる。

 すると、大型のバスターショットと熱線がマスコット達が召喚した召喚獣を一気に殲滅する。

 

 教科 世界史

 

 点数『402点・200点』 vs 『ALL・DEAD!』

 

「バカなお兄ちゃんと氷のお兄ちゃん、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよ」

「ありがとう、葉月ちゃん」

 

 葉月ちゃんが心配そうに駆け寄ってくる。

 明久とテティスは葉月ちゃんを安心させるために、軽く頭をなでる。

 

 

「でも、景品を持っているのはこいつらじゃなかったわね。 一体何処にいるのかしら?」

 

 そう言って、あたりを見回すのは先程、右手の大砲からバスターショットを発射したエールの召喚獣。

 テティスとは対照的な明るい青を基本としたシンプルなアーマーを装備し、右手は可変式なのだろうか?

 今は普通の右手だが、攻撃する時には先程のバスターショットで攻撃するための大砲に変化するようだった。

 

「まだ探していない場所はどこですか?」

「まだ工事中のお化け屋敷と、そこの先にある遊具エリアだな」

「しっかしよぉ! さっきからマスコット連中が召喚獣呼びまくっていてマジでしつこいんだけど? 点数低いから楽勝だけど、無限に湧いて出て来るからマジでイラついてくるんだよ」

「だったら、僕の方も手伝ってくれよ! さっきから一人で抑えているの僕なんだけど!!」

 

 姫路チーム 『グレイ』 vs マスコット軍団『フィー×2・ノイン×6・アイン×1』

 

 教科 世界史

 

 点数『200点』 vs 『45~27点』

 

 高城は常夏コンビに探した場所を確認しているが、今はそんなことをしている場合ではない。

 まるでゾンビのように復活を繰り返してくるマスコット軍団を相手にグレイが、2丁拳銃を装備した召喚獣を使いこなして、敵の進行を抑えている。

 ロックオンマーカーのようなものが大量に表示され、そのポイントを目掛けて、追尾型のレーザーを同時発射しているようだ。

 

「あわわ! グレイ君、今手伝います。 試獣召喚(サモン)!」

「ボクも行くよ! 試獣召喚(サモン)!」

 

 さすがに一人で何体もの召喚獣を相手にさせるわけにもいかない為、瑞樹とテティスが助けに入る。

 グレイが射撃で支援し、瑞樹とテティスが前衛で薙ぎ払う事で再び敵を殲滅するが、このままではすぐに復活してきてしまう。

 

「おい! さすがにここは下がった方が良いんじゃねぇか?」

「ああ、ここに来るまでに全員点数削られてしまっているだろう? だったら一度、体勢を建て直し……」

「常夏さん、ここは先に進みましょう」

「「高城まで省略するんじゃねぇ! 収集が付かなくなるだろ!!」」

「少し先に進んだところに安全エリアがあったです。 そこでお休みしながら作戦を立てることが出来ると思ったですけど…?」

「たまたま葉月が見つけたのよ」

「えへへ…… 青のお姉ちゃん、くすぐったいです」

 

 お手柄の葉月ちゃんの頭をエールがなでると、葉月ちゃんが恥ずかしそうにしながら笑う。

 もうしばらくその光景を見て和みたいと思うが、もう少しで謎のマスコット軍団が戻ってきて、探索を邪魔してくるだろう。

 

「ひとまずみなさん急ぎましょう。 先程倒しておきましたが、すぐにノインちゃん達が戻ってきてしまいます」

「ねぇ? それなんてホラー?」

「銀髪のお兄ちゃん、怖くなってきたですか?」

「おいこらチビッ子共! いちゃつくなら後にしろ!!」

 

 遊園地のマスコットが何度吹き飛ばされても復活して襲い掛かってくるというのは、最初の数回ならほほえましい物だが、こう何十回も繰り返されると流石に不気味である。

 テティス以下年少組も飽きが出てきて、うんざりと言うような顔になり始めていたので、一度休ませるためにも先にあるという安全エリアに向かう。

 

「お前ら全員先に行け!」 

「常夏先輩一号さん、大丈夫ですか?」

「おい、じゃあ常村が二号かよ!? って『腕輪発動』!」

 

 とうとう、省略されたコンビ名に号数までつける明久の暴言に文句を言いながら召喚獣の腕輪の力を発動させた夏川。

 召喚獣の腕輪が光るのと同時に、召喚獣が思いっきり煙管のようなハンマーからあたりを覆い尽くすような煙幕を噴出させた。

 葉月ちゃんが、「ボーズのお兄ちゃんの召喚獣が、煙を吹いていてかわいいです!」とか言って足を止めてしまいそうになるが、近くにいた明久が彼女をお姫様抱っこで連れて行った事で、他のマスコット軍団に襲われることなく、無事に安全エリアにつくことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう~っ…… ようやく一休みできるぜ」

「夏川先輩、あれは本気でヤバかったですよね?」

「主にお前らのせいでな!」

「攻撃が当たりそうになるたびに近くにいる俺らを盾にしやがって!!」

「まあまあ、常夏コンビ1号さんも落ち着いて……」

「1号言うな! 俺の名前は……」

「常川先輩と、夏村先輩ですよね? 流石にもう覚えて……」

「「吉井!テティス! お前ら覚えていろよ! いつかお前らのクラスを巻き込む形で仕返ししてやるからな!」」

 

 仲がいいのか悪いのか分からくなってくる会話である。

 

「いつの間にか仲良しになっている4人は置いておきまして……」

 

 4人を適当に放置し、今後の話を始める高城。

 

「僕にアイデアがあるんだけど?」

「グレイ君、何かアイデアがあるんですか?」

「全員で中央を強行突破する!」

「「気は確かか? 中央の方が一番敵が多いんだぞ!?」」

 

 いきなりの無茶苦茶な作戦に猛反対する常夏コンビ。

 

「だけど、一番広い。 別ルートで時間を食う方が危険なんだ!」

「グレイの言う通りよ。 敵の脚は速くないし、私達の戦力もそれなりに高い。 大丈夫、強行突破できるわ」

「エールさん、年長者相手にこんな事言いたくないですけど、突破できるかどうかの話じゃないんですよ! 突破は出来るかもしれないけど、点数が極端に削られるという話なんですよ! 分かっているんですか!?」

「分かっていないのは常村さんの方です!」

 

 グレイの作戦にエールは賛同するが、どうも納得のいかない人もいるようである。

 そんな賛否両論で意見が飛び交う状態で、流れを変えたのは瑞樹の言葉であった。

 

「エールさんは確かに、召喚獣を操るのは初めてです!」

「けど、エールは対集団戦を想定した戦闘術と射撃の達人なんだよね」

「何でテティス君が知っているのかが、気になるところですけど、そう言う事です。

 エールさんはこの手の修羅場についてよく知っているんですよ。 

 この場にいる誰よりもです!」

「エールさん、普段は一体何をしているんですか!?」

 

 高城はつい、ツッコミを入れてしまう。

 ロックマンと言う物を全く知らない3年生の3人からしてみれば、エールの事はあまり余計な口出しをしない普通の女性くらいにしか見えないだろう。

 そんな女性が戦闘のプロだなんて言われてもピンとこないものである。

 

 因みに葉月ちゃんは過去に一度、ロックマンとなった明久達を見ている為か、瑞樹の言葉に特に思う事は無かった。

 

「皆さんも十分休んだでしょうし、そろそろ行きましょうか」

「それもそうね。 なら、ここは私たちのチームが前に出ようかしら?」

「すみません、エールさん。 お願いできますか?」

 

 前衛は攻防のバランスが取れており、瑞樹の熱線やエールのバスターで一気に敵を殲滅することのできる姫路チーム

 

「そう言えば、葉月ちゃんの召喚獣ってどういう感じなの?」

「お姉ちゃんの召喚獣と似ていたです。 違うとしたら、服の色と武器が黄色い剣が2本あるという事くらいです」

「二刀流かぁ。 葉月ちゃんの召喚獣もカッコイイね」

 

 中衛は、近接武器が中心で撃ち漏らした敵にとどめを刺すことを前提とした明久チーム

 

「悪いけど、今回俺らは後ろに下がらせてもらうわ」

「主に明久とテティスから盾にされまくったのが原因で、中央も同じ教科の中、今召喚しても大してできそうな事ってないんだよ」

「そうですか、仕方がないですね」

 

 後衛は、後ろから追撃されないように敵を抑える役の3年生チームが担当することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ! 明久君達に渡しておきたいものがあったのよ!」

「渡したいものですか?」 

「そう、この袋の中にあるんだけど……」

 

 そう言ってエールは袋の中から小さな箱のようなものを出してきた。

 その中には何やら、黒色の小さな指輪が入っていた。

 

「エールさん! いきなり婚約指輪なんて渡されても反応に困る…… 『ごぶぁっ!?』」

 

 勝手な勘違いをした明久の腹にグレイの全力の拳が叩き込まれる。

 いくらアトラスに鍛えられたとは言っても、レプリロイドの拳をモロに喰らってしまったら耐えられるものではない。

 

 

「くたばれぇぇぇ!!」

「ちょっ! グレイ君落ち着いてください!」

「いや、なんかトリップしていたからつい……」

「一体何をどうしたら…そんな答えになるのかなぁ」

 

 本当に明久とグレイの相性は最悪なようである。

 ひとまず、後ろから抱きしめるように瑞樹がグレイを止めに入った。

 エールは明久の意味不明な発言に頭を抱えている。

 

「あのねぇ、いくら何でもいきなり婚約指輪なんて渡すわけないでしょ!」

「そうですよ明久君!」

「これは僕たちがこの先にあるっていうのとは別のイベントで手に入れた『解放の指輪』っていうんだよ。」

「解放の指輪? 何なのそれ?」

「明久君達と合流する前にたまたま見つけたイベントで手に入れた景品なんです。 これを付けた人の召喚獣は元の点数に関係なく『本来、召喚獣が持つ腕輪の力を使うことが出来る』と言う優れものなんです」

「へぇ、それは便利だね。 でもミズキ? 本気で貰っちゃってもいいの?」

「はい、私と高城先輩は殆どの教科で腕輪を使えますし、他のみなさんはすでに貰って、先程の戦闘でも使っていましたから」

「え? じゃあ、エールさんの召喚獣の腕輪ってあのバカでかいバスターだったの?」

 

 皆が持っていると聞いた地点で、普通はそう思うだろう。

 

「いえ、あれはエールさんが少し時間をかけてチャージしたものだそうですから、本来の腕輪の力ではないと思います」

「「嘘っ!?」」

「まあ、いずれ本当の腕輪の力を見る時が来るんじゃないの? 明久達の腕輪の力がどんなものになるかはぶっつけ本番になると思うけど?」

「何それ! 滅茶苦茶怖いんだけど!! ってちょっと待って、置いてかないでぇ~~!!」

 

 どんな効果があるかが分からないなんて怖いにもほどがあると思うのだが、びくつきつつも明久は指輪をはめて先に行く皆を追いかけた。

 

 

 

 

 グランドパークside end

 




何でだろう?
最初は2・3話くらいで終わらせようと思っていたのに、気が付いたらもう4話以上続いてしまっている……

しかし、今回は葉月ちゃんの召喚獣の仕様について悩んでしまった。
むしろ今回一番悩んだのって葉月ちゃんの召喚獣何ですよね。
夏川はアニメ版の仕様でなら意外と簡単に腕輪の力思いついたので、それはそれでよかったのですが、葉月ちゃんだけは相当悩みましたね。
詳細は設定の方に追記して、完全に反映されるのは次になりそうですが、そこまで決めておかないとかなり書きづらかったです。


今回のバカテストはどうでしたか?
感想も楽しみにしています。


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第18話

今現在台風で休みが続く中、絶対絶望少女とモンハン4Gをプレイしてる自分がいます。
絶望少女の言子ちゃんが可愛くて萌え死にしそうになったり、クロクマを火炎弾で滅多撃ちにした後、ジェノサイダー翔で切り刻んだりしたりしていました。


とか言っているけど、仕事になった時の荷物量が恐ろしい量になるんですよね……




バカテスト 第3問!


家計の消費支出の中で、食費が占める割合を何と呼ぶでしょう?







ヘリオス・姫路瑞樹の答え
『エンゲル係数』
ヘリオスの追加解答
『おそらく明久辺りが「木下秀吉」と答えると思います』


教師のコメント
正解です。 ちょっと簡単すぎる問題だったでしょうか。
しかし、ヘリオスさん。 いくら何でも、そんな解答をする訳はないと思いますが……


テティスの答え
『エンジェル係数』

教師のコメント
惜しいです。似たような単語ですが、間違わないようにしっかりと覚えましょう。


吉井明久の答え。
『木下秀吉』

教師のコメント
ヘリオス君の言うとおりでしたね……
貴方にとってのエンジェルを聞いている訳ではありません。


清水美春の答え
『島田美波お姉さま!』
貴方もですか……







バカテスト 第4問

2対2で行う試合をダブルスと言います。 では1対1は何というでしょう?


ヴァン・エール・佐藤美穂の答え
『シングルス』

教師のコメント
正解です。 特に言う事はありません。


グレイ・アッシュの答え
『タイマン』

教師のコメント
不正解ですが、先生は男らしくてかっこいいと思います。
『アタシは女なんだけど?』
ごめんなさい、堂々としてかっこいいと思いますよ?


シャルナクの解答
『デスマッチ』

アトラス・謎の大鎌使いの解答
『バトルロワイアル』

教師のコメント
そんな物騒なゲームはしないでください。
それ以前にバトルロワイアルは最後に生き残るのが一人なだけで実際には多対一の戦いになります。


 グランドパークside

 

「死、死ぬかと思った……」

「脱出できてよかった……」

「でも、60体もいたのによく全員無事でいられたと思うよ?」

「テティス……お前が投げ飛ばしてきたおかげで無駄に体力を消費させられたんだけど?」

「「何かいう事があるんじゃないのか?」」

「はい適当に買ってきたジュースをあげる」

「「おお、ありが…… そう言う事を言ってんじゃねぇよ……」」

 

 結論だけを先に言うと、彼らは中央の突破には成功していた。

 だが、犠牲者こそ出なかったものの、体の弱い瑞樹や、例のごとく敵を投げ飛ばされて押し付けられてしまった常夏コンビは体力の限界なのか、

 常夏コンビはもう怒る気力も無いのか、完全に疲れ切っている。

 

「明久君、ありがとうございます。 途中で倒れそうになってしまって……」

「大丈夫だよ、姫路さん。 それより、グレイ君も姫路さんの召喚獣を守ってくれてありがとう」

「なっ! 勘違いするなよ! 瑞樹姉ちゃんが倒れそうだったから助けただけで、お前なんかの為に助けたんじゃ…… って頭なでんじゃねええええぇぇぇぇぇぇ!!」

「グレイが完全に手玉に取られているわね……」

『あそこまで反発し合う関係も珍しいと思うけどね……』

 

 素直に感謝出来ないでいるグレイの頭をなでる明久。

 しかし、敵だとしか思っていないグレイにとってこの行いは逆効果でしかなく、むしろ彼を怒らせる要因でしかない。

 だが、ペースは完全に明久の物になっており、『明久が可愛がる→グレイがツッコミ(キレる)』という流れが繰り返されている。

 

「(ぷーっ!)」

「あれ、どうしたの葉月ちゃん?」

「別に、バカなお兄ちゃんなんて知らないです!!」

 

 今度は葉月ちゃんまで拗ねてしまう。

 葉月ちゃんも腕輪の力でみんなを守りながら戦っていたのである。

 なのに、ほめてももらえないというのは葉月ちゃんとしてもいい気分ではないだろう。

 

「ごめん葉月ちゃん。 葉月ちゃんが途中で前に出て頑張っていたことは皆分かってくれてるから」

「みゅう~(ゴロゴロ)」

 

 優しく頭をなでられて子猫の様にすり寄って甘えてくる葉月ちゃん。

 

「やっと解放された……」

 

 その一方で明久から解放されたグレイも疲れ切った様子でエールの元に向かう。

 

「さてと、強行突破した先にあるものがこんな厳重な扉だとはね……」

 

 そう言って高城が見た先には他の場所とは明らかに違う、いかにも「何かありますよ」とでも言いたげな不自然なまでに厳重な扉だった。

 

「で?どうする……(ガン!ガン!ガン!)おい吉井、お前の召喚獣でぶっ叩いても壊れねーと思うぞ?」

「100万回くらい繰り返せば十分壊せますよ」

「日が暮れちゃいますよ!!」

「アキヒサ、そんなに待っていられるわけないって!」

「さっきからガンガンうるせぇぇぇぇぇぇぇ!! こちとら部下への指示で忙し……」

 

 扉の中には誰かいたようである。

 明久の召喚獣による嫌がらせ同然の行いにキレた謎の大男が扉の中から出て来た。

 

「……パープリル?」

「ハテ? ナンノコトダヨ?」

「……いえ、何でもないわ」

『何でここで知らないふりをするんだい!?』

 

 エールと彼は知り合いなのだろうか?

 お互い何も知らないふりをしているが、エールからは殺気がビンビンに出ているのに明久とテティスが気が付かないはずがない。

 

「この扉は、こちらから開ける仕様にしてあるんだよ。 だから2・3回ノックしてくれれば普通に開けるっての!!」

「そうとは知らずに無理矢理開けようとしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

 

 そう言って高城が謝るが、あまりにも事務的過ぎる対応に男は逆に苛立ちを覚えてしまう。

 とにかく、中に入っていいと言われた皆はひとまず中に入る。

 ジャングルジムや滑り台などがある、子供向けの遊び場のような場所であった。

 

 

 

「で、なんだぁ! もうオレ様が隠し持っている景品をかっさらいに来たっていうのか?

ヒャハッ! なんだよ、参加者連中も空気読まねぇよなぁ!」

「別に空気もへったくれもないと思うけど……」

「ゴリラのオジちゃんが景品を持っているんですね! ならその景品全部貰っていくです!!」

「なんだ、オレの部下じゃねぇなら邪魔するんじゃねぇよ!」

「こんな下らないシチュエーションの隠し場所を作るなんて……」

「ヒャハ! セルパン・アイス主任のオレとやろうってのか?」

「いや、職場の階級って関係ないですよね?」

「「『…………』」」

 

 

 高城のツッコミに全員が黙ってしまう。

 男の方に至っては恥ずかさのあまり、その太い両腕で顔を隠してしまっている程だ。

 

「……おもしれえ!

魔改造しまくって究極的に間違えた強さになった『パープ……ザ・マンダロイド』様の召喚獣の力を見せてやるぜぇ!!」

「『召喚獣戦ってもはや試練でもなんでもねぇ!!』」

『いや、むしろ間違えた強さの方に突っ込みなさいよ!!』

「「……待ちな!」」

「何?」

 

 いざ召喚獣でバトルをしようと思って前に出ようとした明久達に対して待ったをかけたのは、さっきまで体力が尽きたとでもいう様に疲れ切っていたはずの常夏コンビであった。 

 

「「お前ら、俺らの事、忘れてたろ?」」

「「『いや、ちゃんと覚えてるよ?』」」

「なら、聞くぞ? 俺らの名前を言ってみろ!!」

 

 彼らは一体何処の殺人拳法家なのだろうか?

 二人は激怒寸前の状態で本当に覚えているのかを確認しようとする。

 

「坊主頭の先輩が『奈津佳和(なつかわ)先輩』で、ソフトモヒカンの方が『偸煉無羅(つねむら)先輩』ですよね? さすがに覚えていますよ」

「「おう! ようやく…… 今度は誤字! 読んでいるやつにしか分からないような間違いはやめろよ!!」」

「バカなお兄ちゃんもわざと間違えるのはやめた方が良いです。 もう少しで喧嘩になると思うですよ?」

「とにかく、まずは俺らが出る。

なんだかんだで、お前らに期待しているって事だよ」

 

「ま、お前らはそこで大人しく見ていろよ」

 

 明久達を後ろに下がらせ、前に出る常夏コンビ。

 なぜだろうか、さっきまでのようなアホ丸出しな空気が消え、本当に頼もしい先輩にしか出せないような年長者特有のオーラのようなものを感じ…… いや、よく見ると悪意全開の嫌らしい笑顔をしていた。

 セリフだけを聞けば、完全に後輩の身を案じて前に出る先輩らしいが、いつか大事件を起こしそうな危険な笑顔で言われても、皆反応に困るだけだ。

 

「まずはてめぇらか、後輩の前で恥晒す覚悟して置けヤァァァァ!!」

「「その言葉そっくり帰してやるぜ! 明日から職場でバカにされるような無様晒す覚悟しとけよ。 このマンドリル野郎がァァァァ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 WARNING!  WARNING!   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「試獣召喚(サモン)!!」」」

 

 3人の呼び声に応えて、魔法陣のようなものが展開され、召喚獣が呼び出される。

 夏川の召喚獣は、何処か僧侶のような服を着こなし、キセルのような形をしたハンマーを装備している。

 常村の召喚獣は、山賊のような風貌の鎧に、円形の大型剣を装備して、偉そうに構えていた。

 

 それに対して、マンドリル風の男の召喚獣は完全に自身と同じ姿をしており、武器が全く見当たらない。

 雄二やアトラスのように、手甲やメリケンサックのような装備になっているのだろうか?

 

 

「行くぜぇ、オラァ!!」

 

「「……ちょっと待て!!」」

 

 

 試合開始かと思った瞬間に常夏コンビからストップがかかってしまう。

 それもそのはず、召喚後には、必ず自分の召喚獣の点数が表示されるのだが、その時表示された敵の点数に違和感を覚えてしまったのである。

 

 

 

 

夏川俊平・常村勇作 vs パープリル・ザ・マンドロイド

 

物理 412点+408点 vs 500点

 

 

 

 

 

 

「おいおい、一体何だってんだ?」

「お前、学園の試験受けてこの点数なのか?」

「あ? 景品を守る為に大会用の特別な仕様にしてあるんだよ。

運営としては当然だろ?」

 

 確かに、高額な景品を守る為の召喚獣が貧弱な仕様だったなら、一瞬で景品なんて持っていかれてしまうだろう。

 そのようなことを未然に防ぐためには多少の特別扱いをしてでも景品を守れる仕様にするのも仕方ないことだろう。

 

 

 

「オーホゥ!」

 

 先手を取ったのはパープリルの方であった。

 完全に召喚者と同じ姿をした召喚獣で攻撃を仕掛ける為に、召喚獣と共に遊具の棒にぶら下がる。

 

「『バウンドボム!』」

「「やべぇ! 避けろ!!」」

 

 上から降り注ぐ爆弾を避ける二人。

 だが、タイヤ上になっているからなのか、部屋の中でスーパーボールの様に乱反射を繰り返している。

 しかもボムと言うだけあり、途中で爆発までする為、すべてを避け切る事が出来ずに点数を削られてしまう。

 棒にぶら下がっていたパープリルの召喚獣も数発程当たっていたが……

 

 

夏川俊平・常村勇作 vs パープリル・ザ・マンドロイド

 

物理 357点+352点 vs 489点

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおお、マジでめんどくせぇ! 夏川、少し距離を取るぞ!!」

「ああ! あの作戦で行くぞ!」

 

 バインドボムによる攻撃を耐えきった二人は、何か策があるのかパープリルの召喚獣から距離を取る為に後ろに下がりだす。

 

「逃がす訳がねーだろ、腕輪発動! 『スピニングダーク!』」

 

 そして、そうはさせまいとパープリルの召喚獣が腕輪を発動させる。

 すると、彼の召喚獣は手裏剣に変化し、二人に目掛けて突撃をかける。

 

「バァーカ! 今度はこっちから行くぜ!!」

「腕輪発動!『スモークディスチャージャー!!』」

「「『かっこいい言い方しているけど、結局ただの煙幕だ!』」」

 

 手裏剣化した召喚獣の攻撃が当たるかと思ったその時、夏川の召喚獣から膨大な量の煙幕が、まき散らされる。

 それに驚いたパープリルは召喚獣の攻撃を中断して止り込んでしまう。

 煙幕の中から微かにだが、二人の召喚獣らしき何かが見える。

 しかし、遠距離を攻撃する方法に乏しいパープリルの召喚獣では反撃に出るのは厳しいだろう。

 一応、『ブラストボム』と呼ばれる小型爆弾を幾つか投げつけて、煙幕を爆風で吹き飛ばそうとして見るがまったく効果が無く、煙幕の中に隠れてしまった二人に当てることも敵わない。

 

「汚ねぇぞ! 姿を見せろ、オイ!」

「そうかよ…… 腕輪発動!『遠隔操作』」

 

 常村の声を警戒し、召喚獣に防御態勢を取らせてしまうパープリル。

 後ろに回っていた、大型の円剣に気が付かないまま……

 その結果、二つの円剣の攻撃をモロに喰らい、せっかく高めに設定されていたはずの召喚獣の点数がゴリゴリと削られてしまう。

 

 

 

 

夏川俊平・常村勇作 vs パープリル・ザ・マンドロイド

 

物理 267点+302点 vs 270点

 

 

 

 

 

 

 

「ウソォォォォォン!!」

 

 

 いきなりの奇襲に慌てて召喚獣と共に逃げ出してしまうパープリル。

 しかし、その先にいたのは……

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい。 これも勝負ですのでっ」

「逃がさないわよ!!」

「いただき!!」

 

 

 

 バスター砲をフルチャージさせたエールとサーチ用のレーダーを構えてディフュージョンレーザーを発射しようとしているグレイ、そして腕輪をいつでも発動できるように構えている瑞樹の召喚獣の姿だった。

 

「何ぃっ!?」

 

 とっさに腕輪を再発動させようとしたが、もう間に合わない。

 グレイの召喚獣のサーチエリアに入ってしまい、計8発のレーザーに加え、超大型のバスター砲・貫通性の高い熱線まで放たれ、パープリルの召喚獣は上に飛ばされてしまう。

 

 

姫路・グレイ・エール vs パープリル・ザ・マンダロイド

 

物理 342点・200点×2 vs 25点

 

 

 

「ウソォ!?」

 

 そして飛ばされた先には、葉月・テティス・明久の3人の姿。

 残り点数が少ない召喚獣相手では、いささかオーバーキルのような気がするが、そんなことをお構いなしに攻撃を繰り出す。

 詳細を説明するなら、葉月の高周波ブレードで半分に両断して、テティスが下半身を地面に激突させて粉砕し、明久が上半身を腕輪の力で滅多打ちにするという流石に可愛そうになってくる内容で……

 

「ブレードアタックです!!」

「無駄だよ!そぉれっ!」

「腕輪発動『高速剣』!」

 

 

 

島田葉月・テティス・吉井明久 vs パープリル・ザ・マンダロイド

 

物理 200点・156点・25点(腕輪使用済) vs DEAD!

 

 

 

「ち…ちきしょお!… オレは… カンブなんだぞ…! 強いんだぞ…!」

 

 まるで、エリアHの遊園地でやられた時のようなセリフを吐き捨てるパープリル。

 

「強い…… はずだろ……!? ヒャ…(バキュン!) ハアアアアアアアアア!」

 

「「『エール(さん)!』」」

 

 爆発するふりをして逃げ出そうとするパープリルに対してとうとうキレてしまったエールが勝手にグレイの銃を借りて(奪って)、一発だけ撃つ。

 わざと外したのか、その弾丸はこめかみをかすめただけだったが、小声で「次は当てる」とパープリルだけに聞こえるように言い、パープリルが恐怖で震えるのを確認した後、何事も無かった様にそのままグレイに銃を返した。

 

「お嬢ちゃん達落ち着けって…… おら、引換券になっているから、大会が終わった後に担当にでも渡せっての『……仕事終わったし、部屋に帰って絶対絶〇少女でもやるか……』」

 

 

 もうこれ以上関わり合いになりたくないとでも言うような態度で、3チーム分の景品の引換券を渡す。

そうして、奥にある扉を開けて、この後の仕事をサボる気満々で帰って行った。

 

 

『文月商店街一年間特別割引券』

『グランドパークお菓子詰め合わせセット』

『召喚獣用荷電粒子コンバーター』を3組分手に入れた

 

 

 

 

「……仕事ヤル気なさそうな人だったね」

「部下に仕事を押し付けて自分は楽してやり過ごすタイプなんじゃね? 妨害してきたの全部あの着ぐるみ集団だったし?」

「そんな酷い人間いるんですか!?」

 

 瑞樹が驚いているが、パープリルは人間ではなくレプリロイドである。

 

 

「姫路さん、今の世の中もっと酷い人間だっているんだよ……」

「うん、前にアキヒサから聞いた話だけど、前のバイト先で……『後輩を人権なんて無い奴隷としか思ってなくて』『陰で暴力で振るって客の注文品までダメにして』しかもそれに対して反抗したら『その自分の失敗まで他人のせいにして自殺するまで追い詰めて』挙句の果てに『これは全てあの子の為だから仕方がないんだ!!』とか言って自分を正当化までする最低な奴に会った事もあるって言っていたよね?」

 

 因みに明久は今の『ラ・ペディス』で働く前にも別の場所でバイトをしていたのだが、それについて語るつもりは無いようだ。

 

「あー…… 吉井、お前も苦労しているんだな……」

 

 ドンマイとでも言いたそうに肩に手を置いて励ます夏川。

 基本常夏コンビはFクラスと言うだけで見下してバカにするところがあるのだが、流石に今回の話を聞いて、更に相手を貶めようなんて気にはならない。

 

「なんかすごい話を聞いてしまったような気がするんだけど?」

「「『それに賛成だ(です)!!』」」 

 

 テティスから、明久の苦労話を聞いて全員が賛同してしまう。

 

「とりあえず、こんな雑談は終わりにしましょう」

「エールさんの言う通りですね。 確か、この扉の先は……」

 

 高城が地図を取り出して、グランドパークから最も近そうな場所を探し出す。

 

「ありました。 ここからですと、5分ほどで『発電所』に着きます」

「高城先輩、ありがとうございます。 先輩たちはどうしますか? 確か、手伝うのはここだけって言っていましたよね?」

「ああ、そうだな。 俺たちにも探しているもんはあるし……」

「そうでなくても点数の消費がやべぇから補給所で回復試験を受けないといけねーんだよ」

 

 確かに、大半は明久達のせいだが、事実点数を一番消費しているのは常夏コンビなのである。

 なんだかんだで仲良くなれたと思う先輩達だったが、他にやりたいことがあるのなら、無理を言う訳にもいかないだろう。

 

「そうですか…… でも助かりました。 今回は本当にありがとうございます」

「礼はいいから… おら、さっさと行け」

 

 そう言って常夏コンビと高城は、自チーム分の景品の引換券を持って近場の点数補給所を探しに来た道を戻って行った。

 

「あの… 吉井君、私達は付いてきてもいいでしょうか?」

「姫路さん?」

 

 最初、協力するのはグランドパークだけと言う話だったはずなのに、なぜ協力しようというのかが分からない明久。

 

「あの…… 吉井君がなんでグレイ君から嫌われているのかは分からないけど、一度きちんと話し合った方が良いと思うんです」

 

 確かに一方的に嫌われているのにしても理由があるのは分かるが、グレイからしてみれば、友達であるモデルAをセイバーで打ち飛ばされて離れ離れにされたという地点で話し合いなんてやりようが無いだろう。

 だが、明久も前回の戦いに関しては特に恨んでおらず、むしろモデルAを打ち飛ばした事に関しては謝りたいとも思っていたのだ。

 

「うん、分かった。 僕とグレイ君と二人で話し合おうと思うから4人で先に……」

「いえ、あそこまで嫌われていると吉井君の言葉だけでは聞いてすらもらえないでしょうし、ですけど私も一緒なら話を聞いてくれるかもしれません」

「ええ!?」

 

 一体瑞樹とグレイの間に何があったのかは分からないが、グレイが瑞樹を信頼しているというのは間違いないだろう。

 その内、エールとモデルXも話を聞きつけて、間に入る事になり、夕方に話し合いの場が持たれることになった。

 

 

 グランドパークside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 発電所 side

 

 結局、あのクラッシュインパクトの正体は試召システムで作り出した召喚獣で、このクラッシュインパクトを倒すことで自身の召喚獣が強化させることが出来る指輪が手に入るというイベントの為に作られたものでしかなかったようだ。

 そして、今景品を持っているという人物を見つけ、景品を手にする為に戦っている所だったのだが……

 

「アハハハハハハ!! 私の腕輪の力で腐り墜ちて逝きなさい!」

「ぐっ…くうッ…! 死など おそろしくもない…! 俺のタマシ…… と言うより、オレの召喚獣の装備金属性だったはずだが、なんでドロドロに溶けてるんだよ!?」

「愚かなる問い、ゲームの設定を相手にいちいち細かい事でケチをつけていてはキリがないぞ?」

「くっ…… 旋回性能ではオレの方が上…… ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

ヘリオス・佐藤美穂・清水美春 vs ハイボルト・ザ・ラプタロイド

 

物理 1029点(元は1300点)・345点・57点(腕輪使用済み) vs 18点(元は600点)

 

 あまりにも一方的で残虐な拷問となっていた。

 最初600点もあったはずのハイボルトの召喚獣だったが、ヘリオスの召喚獣とドッグファイトの末に翼をもがれて撃墜され、せっかくの後方支援用のビットも佐藤の召喚獣の手で完全凍結。

 どうにか飛ぼうとしている召喚獣を美春召喚獣の腕輪の力で腐らされていっている光景はもう一方的な虐殺と言ってもいい物であった。

 

 

「あれ?ヘリオスもう終わったの?」

「愚かなる質問…… 小癪にも私と同様に空を飛んで来たので、まずは翼を切り落とし、3人掛かりでリン…… とどめを刺している……」

「おい! ヘリオスの奴途中で言い換えなかったか? 今、リンチっていおうとしていたような…… ってオイ、話を聞けよ!!」

 

 グレイのツッコミに無視を決め込み、ハイボルトの召喚獣の点数が残り一ケタになった時、ヘリオスが腕輪を発動。

 プラズマサイクロンを再現した竜巻で完全にハイボルトの召喚獣を粉々に砕いてしまった。

 

「「『ヘリオス、ボク達よりやっている事が酷くない!?』」」

 

 パープリルよりも酷い仕打ちを受けてやられてしまった、ハイボルトの召喚獣に同情を禁じ得ない明久達。

 そんな中なぜかヘリオスチームの3人だけは「ザマア見ろ!」とでも言いたそうな顔で見下ろしていたが……

 

「オレの翼が我らの理想に届かなかっただけの事だ。 本当に悔しいが、負けは負けだ……」

「我ら?」

 

 

 ハイボルトの言葉にエールは疑問に思った事がある様だったが、一般人もいる手前疑問を解くことよりも、この大会を終わらせる事に集中する様だ。

 

 

 一方、素直に負けを認めたハイボルトは、隣の部屋に行くためのドアを開け、事務室のような部屋の机から何かを取り出してきた。

 何故か、コインを入れて回すガシャガシャのカプセルのような物の中に引換券が入っていたが、どうやらハイボルトが勝手に入れ替えたようだった。

 

「オレに勝ったことによる景品だ。 引換券になっているからそのまま持って行け」

 

 

 

『召喚獣用アタックブースター』

『動くこけし・怪しい小型バイブレーション・妙にぬるぬるする液体の詰め合わせセット』

『ルイ◯ノ製 xc cas◯er マウンテンバイク』

の引換券が入っていた。

 

「さて…… これは一体どうしたものか……」

「ヘリオス! この景品は美春の物です!」

 

 そう言って美春は、「動くこけしetcセット」の方を持ち去ってしまう。

 その笑顔は子供のように無邪気で明るくて、だけどそれでいながら気持ち悪い生粋の変態としての危うさを孕んでおり、非常に危険な雰囲気を醸し出している。

 

 

「過大なる疑問…… 清水はなぜ、あんなものを選んだのだ?」

「…………」

「佐藤?」

 

 ヘリオスが珍しく疑問に思った事を佐藤に問いかけてしまうが、肝心な佐藤は顔を真っ赤にしながらヘリオスと距離を取ってしまう。

 

「本当に何なんだ? ……皆はなぜ私の顔を見てため息をつく?」

「ヘリオス…… 保健体育で1300点以上取っていたのに本当に知らないの?」

「全く分からん」

 

 普通なら明久レベルのバカですらがとぼけているとしか思わないような発言だろう。

 しかし、ヘリオスの表情は年長者組が、一体何が言いたいのかが全く分かっていない疑問に満ちたものである事を悟り、説明を諦めた。

 

 

 発電所side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、これは想定外だったな。 商店街の割引券がこんなにも簡単に手に入ってしまうとは……」

 

 そう言うヘリオスの顔は、とてもうれしそうだ。

 まるで、家計の赤字に苦しんでいる中、バーゲンで安売りしている良品を運よく大量入手できたおばさんのようだった。

 

 

「ヘリオス…… なんか嬉しそうだね?」

「当然なる帰結! 毎日毎日、明久のバイト代をもってしても微妙に赤字が出て、塾や予備校で臨時講師のバイトをして補っておるのだぞ!」

「あの~ヘリオスさん? 居候をしているのならある程度のお手伝いは……」

「単純極まる換言…… そのバイト代の大半は明久達が起こした騒ぎのせいでほとんど意味の無い物になっているとしてもか?

 自分と同い年の高校生や年上の大学生を相手に偉そうに教える為に塾の教室に入る時、生徒から睨まれる時が地味に痛いのだぞ!」

「「『ヘリオスの学力ってどんだけ凄いの!? ってすごい年上の人から嫌われてるね(いますね)!?』」」

 

 

 一体ヘリオスの知識量はどうなっているのだろうか?

 もう、学校には生徒として通うより教師として働いた方が良いのではと皆は思い始める。

 因みに、ヘリオスは「年齢と資格の壁が邪魔をする」とか言っていたため、一時考えてはいたようだ。

 

 

 

 

 

 

 今明久達は商店街前の点数補給所で聞き込みをしながらアトラス達の行方を追っていた。

 シャルナク達からは一度終わったと連絡があり、そのまま商店街に向かうという連絡を最後に一切の反応が無いのである。

 今、テティスと美春は教師立会いの下で回復試験を受けており、葉月・グレイは一般枠の為、召喚獣の点数の補給の手続きの為に列に並んでいる。

 ついでに葉月は、ヘリオス達が先程手に入れた召喚獣専用装備の設定も入力している。

 エールと佐藤はその二人の付き添い中である。

 

 

「もう少しかかるようだな。 今のうちに集まった情報を整理する」

「そうですね。 では、アトラスさん達が商店街に付いたのは『私達がグランドパークにつく10分前』」

「確か、大会関係者の話だとアトラス達がここのイベントをやって時間かけてクリアしたって言っていたよ?」

「その後、私達が景品持ちという事で召喚獣バトルを申し込んで来た人たちから聞いた話ですと、アトラスさん達は街中を色々と探し回っていたそうです」

「ヘリオスと姫路さんの連携が凶悪だったよね。 最初地上で熱線を使って、発動中は動けないと思わせておいて、ヘリオスと空を飛んで空中から熱線砲を放射だなんてさ」

「運よく避けた相手を高速剣で瞬殺する明久君も十分酷いですけど……

最後の目撃情報は『映画館』で坂本君達と合流している所が目撃されています!」

「過大なる疑問? 映画館などと言う人が多い場所で何で情報が途絶える?」

「あ、その時入り口で死神みたいな人たちが集結していて、怖すぎて中に入れなかったって……」

「FFF団! 須川の奴、あれを最後に連絡が途絶えたと思ったら、あやつは映画館なんかで何をやっているのだ?」

「なんて指示したの?」

「数の暴力で、我が連合外の大会参加者を補給所送りにしてやれと言って来たのだが……」

「異様に補給所が混んでるのはお前の仕業かよ!?」

 

 

 

 

 

 どうやらヘリオスの作戦自体は上手く行っていたらしい。

 そのせいで手続きに時間がかかったと愚痴っていたグレイが、佐藤と一緒に戻って来た。

 

「あの? それでヘリオスさん達の方は何か分かりましたか?」

「ああ、映画館の方に向かうぞ。 そこを最後に情報が途絶えている」

「あ、ちょうどテティス達も戻って来たよ?」

「うむ、ならテティス達にも事情を説明して、すぐに映画館に行くぞ」

 

 戻って来たテティス達に事情を説明して、映画館に向かう。

 

『モデルX様…… 私は何か嫌な予感がします』

『モデルH? いったいどういう事だい?』

『ああ、オレ達はアトラス達と明久の家で世話になって?いるが、意外とアトラスとシャルナクの二人はこういった時に連絡は欠かさないんだ。 少なくとも失敗したらしたできちんと報告するように配慮しているんだよ』

『ええ、でも今回はそれが無いんです。 しかも、明らかに怪しい場所に入っておきながら…… まるで、遊びの範疇では考えられないような危険にあっているかのような』

『しかし、この日本でそんな危険な状況ってあるのか?』

『不良や暴力団に絡まれた時も、私達ライブメタルの力を使わなくても撃退できていた事を考えると、そう簡単に負けるとは思えませんが?』

『あいつ等が馬鹿をやって全員の携帯が破壊されただけの可能性もあるだろう?』

『『その可能性も否定できないが(わね)・・・』』 

『キミ達は一体どんな生活をしていたんだい!?』

 

 あまりの非日常的な日常を普通であるかのように語りだしたモデルZ達に対して驚愕の表情を隠せないモデルX。

 未来世界のエールやアッシュのように危険な場所に何度も足を運んでいる状況ならまだ分かるのだが(それでも全員の通信端末が破壊されるというのは余程の事である……)

 

 

 

 体力の無い瑞樹のペースに合わせて移動していた皆はようやく映画館に付いた。

 そこで見た光景は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『壊滅しているFFF団』

『ロックマンとして謎の二人組と戦っているアトラスとシャルナクと優子』

『何がどうなっているのかが分からず混乱している中、ガチガチと震え、泣き叫ぶ美波を落ち着かせようとしている工藤・土屋・霧島の三人』

『気絶している雄二』

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Fliegen, die Penner wieder ... Was oder erhöht ...

Kleine Fische ... die Jama Fuck off(訳:なんだ? またたかるハエが増えたか…… ジャマだ… 雑魚は失せろ)」

「Wut zitternden... ...? Oder ... Angst ...?(ふるえてる… いかり…? それとも…おそれ…?)」

 

 

 ウロボロスの生贄にされたはずの『死神』と『魔女』の姿がそこにはあった。




解放の指輪なんていうオリジナルアイテムを作ってしまった為に、設定の描写が無い人物の召喚獣の腕輪に付いてかなり考え込んでしまいました。

詳細は設定の方で更新します。

因みに最後の方は一体何語か分かりましたか?
話の中に答えは書いたつもりですが、一応ヒントを残しておきたいと思います。

ヒント『島田美波』

感想待っていまーす!

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第19話

日本語をドイツ語に翻訳するのってかなり大変ですねwww
美波の苦労が少しだけ分かったような気がします。

そんなこんなで、今回はバカテストはお休みしたいと思います。





 明久達がたどり着く前に一体何があったのだろうか?

 事は、体育館に向かった6人があのイライラとする看板に隠された暗号を解き、景品を手にして商店街に向かった時の事だった……

 

 

 

 

 

「しかし、シャルナクが看板の暗号文に気が付いてくれて良かったのじゃ」

「ソノ後ノ妙ニ深イプールノ中デ召喚獣戦ト言ウノハ予想外ダッタガナ……」

 

 彼らは隠された暗号を解き、本当の隠し場所であるシンクロ用の特別プールがある場所に向かったのだ。

 そこで、『ルアール・ジ・アビスロイド』と言うアンコウチョウチンのような少女と戦ったのである。

 

 

「……でも頑張ったのにプレミアムチケットが無かった。

……残念」

 

 プレミアムチケットが無かったことに落胆しかけている霧島。

 因みに体育館で手に入れた景品は……

 

1.「扇風機・エアコン(暖房機能無し)・電気ストーブ3点セット」

2.「プール1年間使い放題券」

3.「蟹・牡蠣・アワビ・その他豪華海鮮食品セット(4万相当)」

 

 の3点であった。

 

「でも、あの召喚獣で戦ったあの小さい子がプレミアムチケットについて教えてくれただけでもよかったじゃないですか」

「良くねぇよ! むしろあのチビのせいで俺の人生が……」

 

 優子の言葉に雄二が反論しようとするが、皆彼の言葉を無視し、そのまま商店街に向かっていく。

 そして、商店街の救援イベントを終え、狙いの高額景品を探しているアトラス達と合流した。

 

 

 

 

商店街side 

 

 商店街でパニックになっている人々の救助活動はアトラスのおかげで簡単に終わらせることが出来た。

 どうやら、ただのイベントだったようで、燃え盛る商店街の方はただの演出、避難が出来ないで困っていたという人たちはただのエキストラというオチだった。

 しかし、そのおかげで3人は「解放の指輪」をゲットすることに成功。

 商店街の何処かにいるという、ライオンのような風貌をした男の召喚獣を倒しに行く事となっていた。

 

「でも、アトラスのおかげで助かったわよね」

「……楽勝」

「と、言うよりアタシが殆どの人救出したんだが!」

「……アトラスに皆感謝していた」

「そしてラスボスの魔王を倒してファンファーレと共にエンディングに突入……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

するわけないだろ、このバカ共!!」

 

 ノリツッコミで、ローキックを土屋に叩き込むアトラス。

 一応手加減しているとはいえ、元軍人の蹴りを食らってしまってはかなりの痛さだろう……

 そんな土屋を無視し途中でシャルナク達の姿を見つけたアトラスは、一度彼らと合流することに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ! 大丈夫、ムッツリーニ君?」 

「……これくらい平気」

 

 一応手加減はされていたとは言え、元軍人の蹴りを食らって明らかに悶絶している土屋。

 そんな彼を心配し、介抱する工藤。

 

 

「こっちはもう終わったんだが、アトラス達はどうなっているんだ?」

「アタシ達は避難民救助とか言う変なイベントをクリアして『解放の指輪』とか言うアイテムを……」 

 

 アトラスと雄二と霧島の三人はお互いの状況と成果を確認することにしていた。

 そこで、雄二はアトラスの『解放の指輪』と言うアイテムに付いて疑問を持った様で……

 

 

「解放の指輪っていうのは一体どんなアイテムなんだ? 名前から察して、召喚獣の強化アイテムのようだが?」

「ああ、アタシ達もまだ話しか聞いていないんだが、聞く限りでは点数の上限に関係なく召喚獣の能力を使えるようにするものらしい」

「召喚獣の能力…… って、ああ腕輪の能力の事か?」

「口で説明するより、見せた方が速いかもしれんな」

「アトラスの言う通りね。 せっかくだし、ウチらで使ってみましょう?」

 

 ひとまず指輪について説明する為に、召喚獣の能力が判明していない(それでいて、点数の低い)雄二・秀吉・美波に指輪を貸してから召喚獣による模擬戦をすることにした。

 

 

「「「試獣召喚!サモン」」」

 

 

アトラス・島田美波・土屋康太 vs 坂本雄二・木下秀吉・木下優子

 

教科 

数学 260点・197点・46点 vs 152点・73点・384点

 

 

「あら? 指輪を付けている人の召喚獣も腕輪が付いていること以外には変化はないのね?」

「じゃが、点数の上限に関係なく腕輪の力が使えるというのは非常に良いのではないか? 強力な腕輪の力さえあれば、点数差に関係なく逆転だって狙えるやも知れんのじゃからな」

「裏を返せば点数を無駄に消費した挙句にボロクソにやられるっていうのもありえるけどな?

まずは俺から使ってみるぜ? 腕輪発動!」

 

 試しにまずは雄二から腕輪を使ってみる。

 すると、雄二の召喚獣がうっすらとだが、赤い闘気のようなオーラが鎧のように覆われていた。

 

「お? これってもしかして俺の召喚獣が強化されているのか?」

 

 軽くシャドーボクシングの様に素振りをさせてみるが、少し力強くなったぐらいで大した変化はない。

 さすがに疑問に思った皆だったが、雄二の腕輪にメールが届く。

 

「なんだ? ……どうやら、肉体強化っていうのは当たっているようだったが、かなり制約が厳しいみたいだな」

「どういう事じゃ?」

「これも見せた方が速いな…… 『セカンドギア・シフトアップ!』」

 

 雄二が何かを詠唱した途端、召喚獣が纏っているオーラが強くなった。

 

「成程、一段目カラ徐々ニ上ゲテイカナイトダメトイウ訳カ?」

「どうやらそうらしいな。 しかも一定時間がたってからじゃねぇとギアを上げられねぇみたいだ。

結局元の点数が高くないと使いこなせないらしいな」

 

 そう言って雄二は召喚獣を取り消し、指輪を美波に渡してしまう。

 

「なら、今度はワシが使ってみようかのう…… 腕輪発動じゃ!」

 

 次に腕輪を使ったのは秀吉であった。

 召還獣の腕輪が光り出すが、今の所は変化が見られない。

 暫く待っていると、腕輪の効果について教えてくれるメールが、秀吉の元に届く。

 

「なんと! これは些かやり過ぎではないかのう……」

「ひ~で~よ~し~!いったいどんな能力なのか教えなさいよ? まさか、渋る気じゃあ無いわよね?」

「そんなつもりは無いのじゃ!? メールの内容を見て驚いただけだぞい!」

 

 そう言って秀吉は召喚獣のカードを姉の召喚獣に刺し込んだ。

 カードの半分以上がめり込んでいるが、多分そこまでしなくても大丈夫だろうと思ったのは皆一緒の様で、工藤も苦笑いで反応に困っていた。

 

「ちょっと秀吉何するの…… ってあれ? 召喚獣が動かない!?」

「「『……はい?』」」

 

 優子が召喚獣を動かそうとするが、全く反応が無い。

 秀吉の召喚獣が彼女の召喚獣の顔に両手を当てたとたん武装が外されてしまったのだ。

 

「どうやらワシの召還獣の腕輪は『設定改変』のようなのじゃ! 今は姉上の召還獣の装備を外して、ダンボールの鎧を…… 姉上すまんのじゃ! あっ… 関節はそこには曲がらなァァァァァァ……」 

 

 勝手に召還獣の設定を書き換えようとする秀吉を相手にとうとう優子がキレた。

 いきなり変な装備に変えられる前に関節を変な方向に曲げながら押さえつける。

 無理やり元の装備に戻させて、トドメとでも言うようにプロレス技を一つだけ決め、ようやく秀吉が開放された。

 

 

「本当に酷い目にあったわね……」

「関節技を極められたワシのセリフだと思うのじゃが…… って姉上!その拳銃はどこから出したのじゃ! 玩具(おもちゃ)でも冗談じゃ…… (バンバン…バン!!)ノアアアアアアアアアァァァァァァァァァ……」

『オイ! オイラの力が勝手に引き出されているんだけど!』

『モデルA! おぬし、ROCKシステムを切っていないのか!?』

『切ってるよ! だけど、なんでか知らないけど銃だけが何でか取り出されてしまってるんだって!』

『あのアマ、無茶苦茶やりやがるな!?』

 

 ライブメタル達も驚きの光景……

 優子も当てるつもりは無いようだが、何十発もの銃弾を乱射したせいで、秀吉の周りは弾痕だらけになってしまっていた。

 

 

「そう言えばさっき島田も腕輪を使っていたな」

「あれ?島田さん、いつの間に使ったの?(クルクル…… ふっ!)」

 

 秀吉への折檻?を終え、西部劇のガンマンの様に銃を回しながらモデルAに戻す優子。

 その的にされかかっていた秀吉は、シャルナクの後ろに隠れており、その秀吉の怯えている顔をいつの間にか復活した土屋が、徹底的に写真に収めている。

 どういう需要を狙ったものなのか、子犬のように震えている秀吉の頭を撫でているシャルナクも普通に映っている写真まで大量にある為、それから察して新たなカップリングの写真を売りさばこうとしているのだろう……

 需要があるとは思えないが……

 

「ああ、島田の奴の腕輪は盾を作る能力らしい」

「盾? あれだけ攻撃的な島田さんの性格なら、3連続で『集束荷電粒子砲』とか撃ったり、『剣の重さを数百倍に操って敵を切った際バラバラにしてしまう』みたいな能力かと思ったわ……」

「ちょっ! 木下さん、ウチだって普通のか弱い女子なんだから、もっと可愛い能力が出たって不思議でもなんでもないでしょ?」

「……か弱い女子は防具である盾を武器にしない」

 

 そう言ってリスのように頬を膨らませて怒る美波だが、彼女の性格を知っている人物なら実験に付き合った霧島の言葉の方がはっきり言って共感できるだろう。

 

「兎ニ角、島田ノ召喚獣ノ腕輪ハ『防御』ト言ウ事デ……」

「……それはちがう」

 

 シャルナクが美波の召喚獣の能力の話を終わらせようとした時、霧島から反論の言葉が飛んでくる。

 

「何ダト?」

「……正確には『反射防御』。 私の腕輪の力を跳ね返してきた」

「翔子の腕輪? そう言えば、いろんな能力が出てきやがったが、一体どうなってんだ?」

「……まずは、美波の腕輪の話から。 美波の腕輪は3秒しか持たない」

「3秒? ずいぶんと短いな? 正直、数秒で意味をなくす防御など大した価値は……」

「……アトラス、話は最後まで聞く!(ぺちっ……)」

 

 話をちゃんと聞こうとしなかったアトラスの額に軽く手刀で叩く霧島。

 そんなにいうほど痛い物ではないのだが、アトラスは軽く額をさすっている。

 

「……だけど、その防御力と反射力は非常に強力で私の腕輪で再現した瑞樹の熱線を完全に跳ね返した」

「いろいろとツッコミどころが満載だが、姫路の熱線レベルの攻撃を跳ね返しただと!?」

「……結構点数を使った攻撃だったはずだけど、美波の召喚獣は無傷だった」

 

 霧島の説明を受けてアトラスも流石に理解したようだった。

 霧島の説明通りなら集団戦では継続時間の問題で大した力は発揮しないが、個人戦においては絶対的な防御力を誇るという事になるのである。

 その防御力は『最堅の楯』と言うに相応しい能力だろう。

 

 

「ま、島田の召喚獣がチートだって言う事が分かった所で……」

「ちょっと、坂本! 人の召喚獣を化け物みたいに言わないでよ!?」

「あと二人、木下(姉)と翔子(特に重要)の召喚獣の腕輪って一体どんな能力なんだ?」

 

 一度はぐらかされそうになったが、雄二にとって今後重要になるかもしれない事を聞き逃がすはずがない。

 点数が足りないと言い訳しないように、解放の指輪もしっかりと準備している。

 

「じゃあ、代表の前にアタシが使って見るわ…… 腕輪発動!」

 

 優子の召喚獣が腕輪を発動させるが、背中が少し青白く光るだけで何も起こらない……

 一体どんな能力なのだろうかと、思っていたら優子の元にメールが届く。

 

「……『武装変換』? 何それ?

え~っと?『点数を消費する事で、今装備している武装をランダムで変更してしまう…』って」

「……ただ装備が変わるだけ?」

「その点数を消費した分に見合った効果を発揮してくれるみたい、今装備しているのは『グラビティー・ホイール』って……」

 

 メールの説明を見ても詳しい事が分からないと思った優子は詳細を見ながら説明していく。

 

「そう言えば、明久とテティスがテレビで見ていたアニメに同じようなものが出ていたな」

「アア、確カZOI〇S 〇ューザー……」

『よせ二人共! それ以上はいかん!』

 

 アトラスとシャルナクがいろんな意味で問題になりそうな事を言いそうになってしまい、モデルPが止めに入った。

 

「ゴホン…… まあ、そう言う事だ。 明久とテティスが見ていたテレビアニメで同じ名前の装備が出ていた」

「速イ話ガ、瞬間移動ノ様ナ事ガ出来ル装備ダソウダ。 ……ッテ、モウ別ノニ変エテイヤガル」

「これ、面白い能力ね? もう一回使って見たんだけど、今度は17連装の大砲になったのよ!

しかも、これ単発でも威力が結構高い!」

「姉上ぇぇぇぇ! 頼むから先ほどの仕返しとでも言うようにわしの召喚獣を攻撃しないでほしいのじゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 姉弟同士でじゃれ合って? ……いる様子を、存分に堪能した所で、彼らは映画館に集まるFFF団達を見つける。

 

「「うおおおおおおおお!! 全ては神具(エログッズ)の為にぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」」

「何訳の分からんことを…… ここでワシの拳にくだかれるがいい!」

 

 どうやら誰かを襲っているようである。

 が、FFF団員の人数が多すぎて、相手が誰なのかが確認出来なかった。

 あらかた、ヘリオスからの作戦を実行していて、相手にAクラス級の強敵が混ざっていただけだと思い、助けに入ってやろうかと考えた雄二が最後方にいた近藤に声をかけた。

 ……が、近藤の話を聞く限り、そろそろ決着が付くようである。

 ライオンのような風貌をした大男の召喚獣が、如意棒のような武器を持つ須川の召喚獣の攻撃をかわし、炎の拳で反撃しようとした時だった。 

 

「腕輪発動!」

 

 腕輪が光るのと同時に、FFF団の活動時のような装備をした横溝と福村の召喚獣が、大きく背伸びをした後で大男の召喚獣に突っ込んでいく。

 

 

「「え? 何… 何これ?」」

「儂の召喚獣が、爆発したぁぁぁぁ!?」

 

 …そして、抱きついたかと思ったら点数の全てを消費して、自爆する。

 とんでもない自爆行為の結果、男の召喚獣の点数が恐ろしく、削れていた。

 

 

 

須川亮・横溝浩二・福村幸平 vs 謎の大男

 

教科 物理

 

点数 DEAD!・DEAD!・DEAD! vs 43点

 

 

 

 

 結局須川達が負けていたが……

 

 

 

 

「って、貴様達が負けているじゃないか!」

「「チクショウ!! ここで鉄人がいたら、『戦死者は補習ぅ~!』とか言って連行されるところ……」」

「いいからお前ら全員、回復試験を受けて来い!」

 

 悔しそうにしながら、FFF団の皆が回復試験を受ける為に補給所へと行こうとした時だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ギャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ!!」」

 

 急にFFF団全員が宙を舞い、一瞬でゴミクズのように積み立てられてしまう。

 中には気絶すら許されず、のたうち回る者までいた程だ……

 FFF団の皆が向かっていた先には、団員から奪った物だろうか? 大鎌を片手に携えて笑顔で構える水色の髪をした少年。

 その少年の後ろでキョトンとした顔で首を傾げている少女の二人の姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

「Was ist…(訳:何だ…)」

 

 少年の方が何かを言おうとした瞬間だった。

 苦無を構えたシャルナクが少年の方を瞬殺しようと奇襲を仕掛けようとした……

 

「Obwohl gute versucht haben die Zeichen der Live-Metall fühlte, Was ist das die Hölle? (ライブメタルの気配を感じてきてみたはいいが、一体何だこれは?)」

「「!?」」

 

 だが、その攻撃は当たるどころか、すり抜けるかのように回避されてしまい、勢い余ったシャルナクはそのまま何処かへゴロゴロと転がってしまう。

 

 

「Kontaktieren Sie? Wenn Sie denken, Sie flog Enthärtung haben, nicht wahr? Siarnaq?

(お? なんか飛んできたと思ったら、シャルナクじゃねぇか?)」

「... Atlas Einige?(…アトラスもいる?)」

 

「あいつらなんて言っているんですか? アタシ、英語はともかくそれ以外の外国語なんて全く……」

 

 Aクラスの中でも特に優等生である優子でも、ドイツ語は全くわからないようである。

 誰かに訳してもらい、一体どうなっているのか誰かに事情を説明してもらおうかと思ったのだが……

 

「Puromete… Pandora…(プロメテ… パンドラ…)

 Warum hier…(なんでここに…)」

 

 

 彼女の隣には、「プロメテ」「パンドラ」の単語をブツブツとドイツ語でつぶやき、あのふたりに怯えている美波。

 

 

 

「イヤァァァァァァァ!

Danke!!

Nehmen off're gut!!

Und dann hast du auch imitieren Meeresschildkröte Eiablage, und schon kann es Gegenstand Darts geworden bist!!

Bitte jeder es verpasst, weil Sie nichts!!」

 

 

 そして、彼女は恐怖のあまりだろうか? 錯乱し、取り乱した末にガチガチに震え、へたりこんでしまう。

 そんな彼女を落ち着かせようとしている霧島達『4人(・・)』の姿……

 

 

 

「霊央拳『百鬼夜行!』」

「喰らえ『ナックルバスター(エディット!)』」

 

 

 そう、アトラスとフィストレオの二人は即興の連携攻撃をプロメテに叩き込むために、正面から特攻をかけたのである。

 

・まずはティストレオの突進技『百鬼夜行』で正面から突撃し、いつの間にかロックマンになったアトラスによる弾道操作のスキルが付与された炎弾で支援する。

・行動が制限され、炎弾に対応しきれなくなって来た瞬間にフィストレオが掴みかかって、彼の豪腕を持って投げ飛ばす。

 というのが二人がとった選択であった。

 

 元々、パワー特化型で小細工を嫌う者同士という事もあり、この二人からしてみれば正面から強引にねじ伏せる以外の選択肢はなかったのだろう。

 

 

「なっ! 躱しただと!」

「Vermeiden Sie die!(躱せた!)」

 

 

 ……だが、数百年と戦い続けたプロメテ程の強敵を相手にそんな単純な作戦が通用しない事など冷静に考えれば容易に想像できるはずだった。

 

 

「Hier ist es!(こっちだ!)『イビル・ワルツ!』」

 

 プロメテは上に回避し、フィストレオの横から鎌を構えて突進してくる。

 アトラスもバスターを数発程飛ばして動きを止めようとしているが鎌で防がれ、無駄に終わってしまう。

 

「霊央拳・奥義!『阿鼻叫…』」

 

 フィストレオも迎撃するために、自身の奥義技『阿鼻叫喚』を使おうと空中で突進しようとした……

 

「・・・?」

 

 気が付いた時には既にフィストレオの体は半分に両断され、衝撃波によって粉々になってしまっていた…

 そして、そのフィストレオを粉々にしたプロメテは上から美波たちに詰め寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 after・story 坂本side

 

 

 

「おいアンタ……」

「Was ist das?(何だ?)」

 

 さっきから一体どうなってやがる!? いきなり変な二人組がやってきたと思ったら須川達がぶっ飛ばされたり、その二人組を見た途端に島田が発狂しやがったり、ライオンみたいなオッサンが炎吹き出すロボットだったり、挙句にアトラスが訳分かんねぇ変身ヒーローみたいな格好であのガキと乱闘し始めやがった!

 

 …普段からふざけて馬鹿な友人同士で殴り合ったり、仲間同士で裏切り行為を繰り返したり、キレた鉄人からの逃走劇やら 校舎の器物破損まで平気でやらかしたりしている俺たちだが、こんな変な奴らにぶっ殺されるような事まではした事はないだろ…

 

「いや、大した用じゃないんだが……」

 

 あーあ、どちらにせよあそこで見物に回っている女も含めて、二人にはあいつらの礼をきちんとしておかないとな……

 

「ちょっとそこまでツラ……」

 

 そこでまずは男の方の胸倉を掴んでぶん殴ろうとした。

 ちょっと大人しくさせる為に軽く4・50発くらいぶん殴ればいいだろうと思っていた……

 俺が覚えているのはそこまでだ…

 最後に俺が感じたのは腹を貫かれた様な痛みだけだった……

 

 

 after・story 坂本side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 after・story 秀吉side

 

 

「いきなり襲いかかって来おって、あ奴らは一体何者じゃ!

シャルナクのお陰で指示通りに一瞬の隙を突いて映画館から出ることが出来た物の、シャルナクの考えている事が全く分からんぞ?

 『ココカラ出タラ急イデ『明久』カ『ヘリオス』二、緊急事態ト伝エロ!』と言っておったが… すまぬシャルナクよ、わしは昨日ケータイを姉上からの折檻の過程で壊されてしまっておるのじゃ……」

 

 姉の凶行に愚痴をこぼしながら、どうにか公衆電話がないかとあたりを探し回る秀吉。

 だが、一向に見つからず、それでも諦めずに探し回っていた時だった……

 

 

「うわっ! 一体何だね君は? 危ないじゃないか!!」

「すまぬのじゃ! じゃが緊急事態なのじゃ!」

 

 道の曲がり角で、ス○夫のような山形ヘアーの男性とぶつかってしまう。

 

「何と? 君に一体何があったのだ?」

 

 秀吉は映画館であったことを拙いながらも説明していく。

 

「わかった、もし良かったらその事件を解決できるかもしれないと言う子と連絡をするのに使いたまえ。

 私は他の大会運営者に連絡をして被害が及ばないように避難指示を……」

 

 そう言って男性は秀吉に適当な携帯電話を渡した。

 

「かたじけない……」

 

 とにかく今は急いで明久かヘリオスに連絡を取るために電話をかける……

 

 

「もしもし、明久か? 今大変な…… なんと! もう付いているじゃと……?」

 

 

 

 

 

 after・story  秀吉side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は戻って映画館、明久達は全員困惑していた。

 さっきまで学園のシステムを使った大会で楽しんでいたはずなのに、その楽しみが一瞬で吹き飛ぶようなことになっているのだから…

 そこからヘリオスが取った判断は……

 

 

 

 

「お前達、一旦離れるぞ!! 『ロックオン!』」

『エターナル・サイクロン!』

 

 コンマ01秒でロックマンに変身。

 そして、ほぼ同時に強力な竜巻の中に二人を閉じ込める。

 

「Oder eingeklemmt! (閉じ込められたか!)」

「……Sie können nicht beantworten (……出られない)」

 

 

 

 いくらあの二人といえど、荒れ狂う竜巻の中に完璧に閉じ込められてしまっては簡単には動けないようである。

 

 

 

「葉月ちゃん!清水さん、ごめん!」

「ちょっ!いきなり何を……」

「バカなお兄ちゃんの変身、久しぶりです!」

 

 

「代表と愛子も急いで!」

「……分かった」

「もうさっきから、訳分かんないよ~!」

 

 

「瑞希姉ちゃん、いきなりゴメン!」

「ひゃああぁぁぁっ! 一体グレイくんどうしたんです……ってなんでお姫様だっこなんですか!?」

「そんなことはいいから、いまはとにかくグレイと外に出なさい! (あのライブメタルに、この圧倒的な負の存在感…… なんであいつらがここにいるのよ!)」

 

 

「テティスは美波と土屋を、アタシがそこでノびている坂本とFクラスのバカ数名を連れてすぐに避難するぞ!」

「シャルナクは?」

「あのオカッパメガネ(佐藤)と別のFFF団数名を連れて(引きずって)とっくに逃げているよ!」

 

 

 その隙にロックマン総出で、強制的にけが人を含めた全員を連れて映画館の外にある噴水前の広場に移動させる。

 なぜか美波だけはテティスの手で近くの噴水の中に投げ飛ばされていたが……

 そして数秒遅れで瑞希を連れて来たグレイと全滅していたFFF団の残り全員を引っ張ってきたヘリオス・エールが合流してきた。

 ヘリオスの言葉への反応に一瞬でも遅れていたら、全員無事ではすまなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 after・story 学園長side

 

 

 

 一方、大会の運営者の方もパニック状態に陥っていた。

 先程まで、普通に大会が進行していたはずの状況から謎の乱入者のせいで一転して大事件へと発展してしまったのだから……

 

 

「学園長! 今商店街の方から、連絡が……」

「わかっているさね! 一体どうなっているさね…」

 

 学園長は何か端末を操作している。

 どうやら、大会用に調整した試召戦争システムの設定画面のようだが……

 

 

 

 after・story 学園長side end

 

 

 

 

 

 

「貴様らここを動くなよ、マジでな」

 

 アトラスの真剣な言葉にみんなが頷いたあと、ヘリオス・テティス・シャルナクと共に、先行して二人がいた場所に戻る。

 

 

「あ、あの明久君? その格好は一体……?」

「……ゴメン姫路さん、詳しいことは後で話すよ」

「おいバカの兄貴!」

「『バカの兄貴!?』」

「あの二人はマジでヤバイからな、6人掛りだからって油断するなよ」

「グレイ君、ありがとうね!」

 

 それから少し遅れて、明久とエールが4人の後を追うように中に入っていく。

 

「ロッ…ク……オオオオオオオオオオオオオオオオオン!」

『適合者確認、ROCKシステム・起動開始!』

 

 その一方で優子は人目が気になるのか、顔を真っ赤にしながら叫ぶようにロックマンに変身していた。

 額には大きな青い水晶のような飾りをつけたヘルメット、胸部にも同じ水晶が付いた赤と青を中心としたライトアーマー装着し、その両手にはこれまでに何度か出した事のある二丁拳銃を構えている。

 

「ね、ねえ優子……」

「……一体どうなっているの?」

 

 友人がいきなりヘリオスや明久の様に変身している姿を見て、二人共心底驚いていた。

 

「代表…愛子…ごめん、アタシもまだ詳しいことは分かっていないの……」

「……優子?」

「とにかく、代表と愛子は今はここで待ってて」

『ちょっと待てよ! ここで皆を守る為に残るんじゃないのかよ!』

 

 まるで、グレイと初めて会った時のような事を言い出すモデルA。

 言い方は変えているが、プロメテ・パンドラのコンビとは何だかんだ言って戦いたくないのだろう。

 

「嫌なら今すぐ変身を解きなさい。

アタシ一人でも行くから」

『分かった、分かった! オイラも付いていくよ!

優子に何かあってみんなから怒られるのはゴメンだからな』

「よし、行くわよ!」

 

 映画館の中に入りたがらないモデルAを強引に説得してから、明久とエールから少し遅れて優子が中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Allerdings ist kleiner Fisch, es ist für Nanno ausgerichtet Schwanenhals?(しかし、雑魚が雁首揃えてなんの用だ?)」

「Was ist falsch an der separat zu helfen ...... Freunde?(別に…… 友達を助けて何が悪いの?)」

 

 ロックマンの中で唯一ドイツ語が喋る事ができるテティス(ヘリオスはフランス語なら大丈夫だったらしい……)がどうにかプロメテと会話を始める。

 そんな中、さすがのプロメテも6人のロックマンを相手に不意打ちは出来ないようである

 

「ハーッハッハ!

No way, der Mann aus dir etwas von Mund war nicht einmal gedacht Nante kommen Worte zu Nante Freunde sagen

(まさか、お前なんかの口から人間が友達だなんていう言葉が出てくるなんて思ってもいなかったぜ)」

「Socci wie gewohnt Ich bin nicht daran interessiert sind nur in der Schwester?

(そっちは相変わらず妹にしか興味がないシスコンなんだね?)」

「Wer ist nicht nur daran interessiert, Schwester!(誰がシスコンだ!)

Die Buttobasu haben Hozai dass schlampig, nur weil nicht durch die anderen Wörter in 'em!(他の奴らに言葉が通じないからっていい加減な事をほざいてるとぶっ殺すぞ!)」

 

 テティスの挑発に乗せられ顔を赤くしているプロメテだが、この場に置いてその会話は3人以外にはわからないので恥ずかしくはないはずである……

 そう! 特別恥ずかしいことではないはずだ!!

 

「Gibt es tut? So ist es geworden anorganischen, wirklich liebe meine Schwester ......(あれあれぇ? そんなにムキになっているって事は、本当にシスコン……)」

「……Ich töte (……殺す)」

 

 謎の単語と共に大鎌を構えるプロメテ。

 流石に6対1では分が悪いと思ったのか急に変身してプロメテの隣に立つパンドラ。

 その顔は少しだけだが、兄の発言に呆れているようである。

 

 

「ねぇ、ヘリオス……」

「何だ、明久?」

「あのふたりの言葉は分からないけど、だいたい言いたいことが分かるのって僕だけかな?」

「いや…… 私も明久と同じだ……」

「「あの女の子(パンドラ)といちゃついているとか言って激怒させたな!」」

 

 プロメテとテティスの舌戦の末、構えを取るロックマン達。

 プロメテの方は顔は笑顔だが、こめかみに青筋を立てて口元はヒクついている。

 

「Buttobashi'll!(ぶっ殺してやる!)

デストロォォォォォォォイ!!」

「「「うわあああああああああ! プロメテの奴、錯乱してやがる! 離れろおおおおおお!」」」

「あの炎に触れたら一瞬で溶けるぞ! 気を付け……『グランドブレイクW!』」

「あの炎は邪魔だな…… 出て来い!『フリージングドラゴン!』」

 

 顔を赤くしてプロメテは大量の衝撃波や火柱で襲いかかってくる。

 アトラスとテティスの二人が皆を守るようにしながら当たりうる攻撃を迎撃しているが、プロメテが冷静ではないからか、意外と簡単に対処できている。

 だが、そのせいで映画館の中は原型を留めておらず、その中はただのゴミ部屋と化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっ! 何よこれぇ!!」

 

 少し遅れて優子とモデルAが到着したのだが……

 カオスと化した中の状況を見た優子とモデルAが真っ先に思った事、それは……

 

「『一体なにがどうなったら…… こういう状況になるのよ(なるんだよ)……』」

だった…… 




最初のバカテストで模範解答に間違いがあったので、追記しておきました。
ヘリオスさんが激怒しています。


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第20話

バカテスト!



第5問

生涯に1300もの発明を行ない、白熱電球・活動写真・蓄音機など人々の生活を激変させた発明家は誰か答えなさい。


姫路瑞希・木下優子の答え
『トーマス・エジソン』

教師のコメント
はい正解です。
彼は「非常な努力家」「不屈の人」として有名で、様々な苦難にも負けずに努力の末に成功を収めたことでも有名です。


吉井明久・テティスの答え
『ジェ○ソン』

教師のコメント
全く違います。
最後のソンしか合っていませんよ!


グレイ・アッシュの答え
『トーマス・A・アンダーソン』

教師のコメント
彼が主人公の映画は『映像革命』として話題になりましたが違います。
彼はプログラマーであり発明家ではありません。

アトラスの答え
『トーマス・ライト』

聞いたこともない名前ですね。
詳しくお聞きしたいので職員室まで来て貰っても宜しいでしょうか?


 プロメテがテティスの挑発に乗ってしまってから数分後。

 なかなか冷静にならない彼にパンドラがとうとうキレて大量の電撃弾を彼に叩きつけることで落ち着かせた。

 『まるで霧島さんのようだな』と明久は思っていたが、プロメテがすぐに起きたことを考えると意外と手加減はしていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 仕切り直して、プロメテを相手に最初に間合いを詰めたのはアトラスだった。

 間合いが互いの一撃が致命傷になる距離になる。

 そして、お互いが理解していた。 そのぶつかり合う数秒後の未来が……

 

 

「Erste oder von Atlas(まずはアトラスからか)」

「勝負するって解釈でいいのか?

どちらにせよ叩き潰してやるがな!」

 

 先手を取ったのはアトラスだった。

 

『メガトンナックル!』

 

 モデルFの叫びと共に、最も攻撃力に優れたアトラスの純粋打撃技『メガトンナックル』の強烈なストレートに……

 

「ハアッ!」

「くっ!?」

 

 プロメテは見事なタイミングでカウンターを決めようとしていた。

 アトラスはとっさの判断で後ろに避けていたが……

 

「Führung über Arzt mit auf eine Reise in den Himmel(空への旅にごあんなーい!)」

『ギャアアアアアアアアアアア! 滅茶苦茶高エェェェェ!!』

 

 

 

 

 

 大鎌からの衝撃波は回避しきれずに、そのままアトラスは星となった。

 彼女が犯した最大の失敗。

 それは大鎌から衝撃波が出る事を知りながら、後ろへと回避してしまったことである……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…え? え? え? ……えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」」

「アトラスを遥か彼方に吹き飛ばした!?」

「アトラスの事だから、無事なんだろうけど…… 本当になんなのよあいつは!」

 

 実際の所アトラスは無事ではあるが、星となった彼女が墜落した場所は、商店街からしばらく離れた海水浴場だった。

 ロックマンとしての力をフル活用して戻ってくるにしても、おそらく1時間半はかかるだろう。

 

 

 

 

 学園長side

 

 

「あの学園長? 一体何をなさっているのですか?」

「大会参加者全ての召喚獣に、物理干渉設定をかけているのさ!」

 

 なぜこんなことをするのだろうか?

 理解に苦しむ高橋主任は頭を傾げてしまう。 

 

「それと、商店街の放送機材にハッキングをちょいとね」

 

 いやらしい笑顔で学園長が返す。

 この顔を見て高橋主任はこう思った『大会をぶち壊しにしようとしたあの二人組に仕返しをする気だ』……と

 

 

 学園長side end

 

 

 

 

 

「Kot! Was ist das? Atlas der Kerl, ich war scheint Chima ~ tsu viel Dummkopf.」

「(ふん! 何だ? アトラスの野郎、だいぶ腑抜けちまったみたいだな。)だって」

 

 どうやら、しばらくの間テティスはプロメテの言葉を通訳する側にシフトする事にしたようだった。

 

「Anscheinend hier scheint er Rockman besetzt, nicht vielleicht eine gute Gelegenheit, um sich niederzulassen auf, ist, dass man verdammt Spiel, das erfunden ......」

「(どうやら、ここにはロックマンが勢ぞろいしているみたいだし、あの男が仕組んだクソゲームに決着をつけるのにはいい機会かもしれねえな……)って冗談じゃないよ!」

『そうよ!そうよ! せっかく4人とも平和に学園生活を送っているのに余計なことに巻き込まないでよ!』

 

 テティスの通訳を聞いて、モデルLが保護者気取りの言葉を返す。

 

「Ob, Barker kennen!」

「(知るかバー…)ってうわあああああああ!」

 

 モデルLの言葉を通訳しながらプロメテを激怒させようとしたテティスは何かを言う前に一瞬で腕を掴まれ、宙へと放り投げられていた。

 

「全く、いきなり投げ飛ばすとかやめてよ……」

 

 天井にぶつかる前にハルバードでどうにか直撃を避けたテティスは氷の力を使って仮の足場を作り、どうにか退場せずには済んだ。

 どうやらしばらくはこの安全地帯で適当な飲み物を飲みながら通訳する気の様だ。

 

「「ってテティス! のんびりしすぎよ!」」

『『モデルL、サボらないで!(ってんじゃねーよ!)』』

 

 どうやら射撃専門のエールと優子のふたりにはテティスの様子が見えていたようで、こっそりと通訳のみに回ろうとしているテティスを見逃さなかったようだ。

 

「Oder hören! Diese schlechte zwei Kinder!(聞こえるか! そこのクソジャリ二人!)」

 

 いきなり映画館の音響機材から学園長の声が聞こえてきた。

 

「あれ? 学園長?」

「なんで学園長の声が?」

 

 

 いきなりの学園長の声に動揺している間にもプロメテと学園長の会話は続いているようだった。

 

「Ich weiß nicht, ob es jemand ist, können Sie auch hier nicht vergebt Wenn Sie sagen mir weiterhin toben! (何者だか知らないけど、暴れ続けるって言うならこっちだって容赦しないよ!)」

「Ha ha! I was Kerl versucht, wie ein integraler Bestandteil des Friedens Unschärfe war dieses Land?(はっ! 平和ボケしたこの国の奴が一体どうしようってんだ?)」

「Ich bin nicht bereit, auf jeden Fall aufhören?(どうしてもやめる気は無いんだね?)」

「Ne Ja Sie tun Reiten Ton, nur weil nicht an diesem Ort!

(この場にいないからって調子乗ってんじゃねーぞ!)

Jetzt Wenn Sie fertig sind der Kampf gegen diese Jungs gehen zu Butyrat Tötung der Teme!

(こいつらとの戦いが終わったら今度はテメーをブチ殺しに行ってやるぜ!)」

「... Wenn absorbieren, Du bist wie wahrscheinlich sogar dazu führen, sprechen.

Auch ich Ist das wahrscheinlich Notwendigkeit, Hanappashira falten.

(…こりゃ、話も通じなさそうだね。

鼻っ柱も折る必要がありそうさね。)」

「緊急イベント開催さね! 映画館でとある二人組と召喚獣を使って『鬼ごっこ』をしてもらう、至ってシンプルなものだよ!」

 

 鬼ごっこと言っているが、召喚獣を使うという地点で鬼ごっこで済まないだろう……

 

「いま大会参加者全員に顔写真を送るよ! その二人組を捕まえた者には私の私財から褒美が思いのままさね!」

 

 この地点で完全にプロメテとパンドラが賞金首になったのは間違いないだろう。

 

 

 

 

 学園side

 

 

 

「あと、この辺の腕利きにも連絡を回しておきな。

誰であっても、あのバカ二人を捕まえたやつには報酬を取らせるってね」

「しかし、良いのですかこんなにも騒ぎを大きくしてしまって……」

「『あの男』が勝手に学園に引き入れたとはいえ、ウチの生徒になるジャリが騒ぎを起こしたんだ。

その責任には腹をくくるよ」

 

 そう言い放った学園長は、全召還獣に物理干渉の設定を起動させる。

 Fクラスレベルの召喚獣でも並みの人間の数倍の力を発揮してくれると言われているその力を用いれば、簡単に確保できると踏んでいるだろう。

 

 

「確かに、召喚獣の力を完全に発揮できるなら、それも可能かもしれませんが……」

「やはり、竹原だけは入れるべきじゃなかったさね。

野心のような物を抱いているのは最初から知ってはいたんだが、正直に言って操れると思っていたからねぇ」

「ですから学園長、あの男を教頭にするのだけはやめておいた方がいいと言ったでしょう……」

「全く、大した器を持っている訳じゃないくせにどうしてこうも過激な手に出たがるかねぇ」

「はた迷惑にも程があります。 まさかドイツの『死神』と『魔女』を引き入れるなんてどういうつもりなんでしょうか?」

「あらかた、私に嫌がらせでもしたいんだろうさ。

とは言っても、ここまで直接的な手を使うとは思わなかったけどね」 

 

 一体どれだけ仲が悪ければこんな大事件に発展するような嫌がらせをされるのだろうか? なんて思ってしまうのは高橋先生だけではないだろう……

 

「いいかい、今は教師を動かすんじゃないよ。

トラブルが映画館の外に出てきたら、教師陣の出番さね」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西村先生、生徒たちへの避難告知はしておいたのですが……」

「どうしましたか、福村先生?」

「ほとんどの生徒が聞く耳を持たずに飛び出していまして……

もうここには片手で数えられる程度の人数しか……」

 

 その一方、スタート地点となっていた文月学園の体育館では、『鉄人』西村宗一が学園長の放送に頭を抱えていた。

 その顔は怒っていると言うより、最早呆れていると言ってもいいだろう。

 

「仕方ありませんね、私が行って生徒達を回収してきます」

「念の為にもう一度、警察と連携して避難勧告を出しておきましょう。

今度は『学園に避難した後は、避難所である教室から絶対に出ない事!』

『どうしてもあの二人に近づくなら自己責任で』とでも言っておきましょうか?」

「それでもいいと思いますが、多分大半は無視してしまうでしょうね……」

「勝手に賞金まで付けられているとなると、多少危険でも突っ込んでいく奴らばかりですからな……」

 

 あまりにも安直な思考な人間ばかりで溜息をついてしまう、福村先生と鉄人。

 

 

 

 事態はどんどん慌ただしくなってしまう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園side end

 

 

 

 

 

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「Verstreut! Tun Sie es nicht sagen, Mut und setzen Sie den Preis an uns!

(ちっ! 俺達に賞金をかけるとはいい根性じゃねぇか!)」

「Wie Puromete ......?

(プロメテ…… どうする?)」

「Um guy're auch zwei Menschen, die nicht wissen, irgendwie scheinen?

(何だか、知らない奴が二人もいるようだし?)

Sie es nicht ich werde versuchen oder Qualifizierung ist es, in diesem Schicksal am Spiel teilnehmen!

(この運命のゲームの参加する資格があるか試してやろうじゃねぇか!)」

 

 

 学園長の放送の翻訳をテティスから聞いた皆は、あの二人がこちらの戦力を分断してくると判断し、明久か優子に付いて協力できるように体制を建てようとするが……

 

 

 

 

「Langsam tun Sie es!

(遅いんだよ!)」

 

 プロメテの放った衝撃波に阻まれてしまう。

 そのせいで、「ヘリオス・テティス・エール」「明久・優子」のチームに分断されてしまった。

 

 

 

「くっ! 急いで明久の援護に……」

「…Der Weg(…邪魔)」

 

 ヘリオスはどうにか助けに向かおうとしていたのだが、パンドラが両チームを分断する為に氷の壁を作り上げ、ヘリオス達を完全に隔離する。

 どうやら相当な厚さの様で、エールのフルチャージでも簡単に破る事はできないだろう。

 

「恥ずべき誤算…… この私が、簡単に手玉に取られるなど……」

「Der schlaue … Puromete ……(…プロメテ……ずるい)」

 

 間に合わなかった事を悔やんでいたヘリオスを無視して、パンドラは氷の壁の向こうを向いて呟く。

 

「私とテティスの二人でパンドラの足止めをする。 エールは急いで氷の壁を破壊しろ!」

「分かったわ!」

 

 なんでヘリオスの命令に従っているみたいになっているんだろうと思いつつ、エールはどうにか氷の壁を破るために右手にエネルギーをチャージし続ける。

 

「... Abfall(…無駄)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Gefaltet, Kommen Sie hängen!

(おら、かかってこいよ!)

Wenn Katere mir scheint es bleibt Gedanken Belohnung!

(俺に勝てれば賞金が出るらしいぜ!)」

 

 

 二人を煽るように軽く挑発的な態度を取るプロメテ。

 

「別に賞金なんていらないけどさ、流石に仲間があれだけ酷い目に合わされていたら腹も立つんだよ!」

「その増長しきった態度…… 許せないわ!!」

 

 

 明久と優子にはなんて言っているのかが分かる訳ではなかったが、何を言いたいのかは態度で分かったらしく、まずは明久が前に出ようとする。

 

「待って、吉井君は一度後ろに下がって! まずはアタシがあいつとやるから、可能な限りあいつの技と戦闘スタイルをあなたが割り出しなさい」

 

 だが優子は、強引に明久を後ろに下がらせ、一人で前に出て両手の拳銃を構える。

 

「Tsukuse gebacken!『カルテット・バースト』」

「来たわね…… モデルA、リロード!」

『アクセルバレット! シュート!』

 

 まるでアクション映画の銃撃戦のように二丁拳銃を連射する優子。

 最も、その連射力はその比では無いが……

 プロメテによるドクロのビットは、吐き出された火炎弾ごとまとめて撃ち落とされた。

 

「Gibt es leisten, alle zu zerstören?

(全部壊している余裕があるのか?)」

「くっ!」

 

 だがプロメテも負けてはいない。

 自身に当たりうる弾丸を全て弾き飛ばし、それと同時に上から優子に奇襲をかけたのだ。

 炎を全身に巻きつつ、突進してきたプロメテの攻撃が優子に襲いかかる。

 プロメテの攻撃をどうにかローリングで飛び退いて躱し、ダッシュして銃の間合いに戻して立て直そうとするが……

 

「なっ、速い!」

 

 優子最速のダッシュ移動に、一瞬で追いついてきてしまうプロメテ。

 あまりの速さに優子は驚きを隠せない。

 どうにかプロメテの鎌や蹴りを躱し続ける優子だが、やはり戦い慣れていない為か一気に追い詰められていく。

 

 

「Ist dieses Maß…(この程度か…)

Ich glaube nicht, werden Verbraucher, um Schmutz talk'm(使い手がクズじゃ話にならねえな)」

 

 明らかに優子の事を見下した顔で、大鎌を振り下ろすプロメテ。

 その一閃は、人を殺すという感覚すらない、容赦なき一撃だった……

 

 

 

 

 

 

「『獄門剣』!」

「なっ!吉井君……」

 

 

 

 そこに間に割って入って来たのはセイバーで大鎌を防ぐ明久であった。

 

「Kontakt Mann!(おっと!)」

 

 モデルZのスキル『獄門剣』は、セイバーを盾にして防ぐ防御の技である。

 明久はこのスキルで攻撃を弾き、同時にセイバーを振り下ろして反撃する。

 

「Law, wie so ziemlich Na Modell Z Verbraucher ......

(ほう、モデルZ使い手は結構やるみたいだな……)

Versuchen Sie es sicher, oder ......(念の為に確かめてみるか……)」

 

 

 何を思ったのか一度距離を取り、「カルテット・バースト」を再度使用するプロメテ。

 

「Nun, was werden Sie tun?(さあ、どうする?)

Wie kommt es, das Geschäft ?(どう対処してくる?)」

 

 

 四つのドクロのビットから炎が吐き出されてくる。

 

「うわああああ! 今度は僕かよ!?」

 

 向かってくる大量の炎をどうにか回避していく明久。

 全ての炎を躱しきった明久だが、ただ避けるだけの明久の動きを見たプロメテはあまりにもつまらないと思ったのか溜息をついてしまう。

 

「Auch Missverständnis oder ......(やはり思い違いか……)

Na es ist genug, um enttäuschend ......(期待はずれにも程があるな……)」

 

 この二人にはロックマンの戦いのゲームに参加する資格なんてものは無かったと判断したプロメテは二人を始末してライブメタルを奪おうと『カルテット・バースト』による大量の炎弾、そして鎌から放たれた衝撃波による波状攻撃で一気に止めを刺そうとする。

 

「木下さん、ごめん!」

「え? ちょっ、どこ触って…… きゃああああああ!?」

 

 …が、明久は優子を抱え、全ての炎弾と衝撃波を躱しきる。(どこに触れられていたのか、優子の顔は真っ赤になっていた様だ)

 

「Ich! ? Wenn ich es vermeiden! ? 'S Fähigkeit, hoch zu vermeiden, zu nicht, ob dieser Kerl!

(な!?あれを避けるだと!?回避能力高過ぎじゃねえかこいつ!)」

 

 あまりにも高すぎる回避スキルにはさすがのプロメテも驚愕する。

 

「ああもうっ、キリがない!『波断撃』!!」

「もう一回アクセルショット! 撃っち抜ぅぅぅぅけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 嵐のような攻撃を躱すのに嫌気が差した二人は、咄嗟のコンビネーションを組み、全ての攻撃を打ち落とす。

 特に優子のホバリングによる浮遊状態からの高速射撃はカルテット・バーストの攻撃を全て打ち落とすだけではなく、明久に攻撃が当たらないように衝撃波の軌道を逸らしていたのだ。

 流石のプロメテでも想定外だったのか体制を崩してしまい、それが致命的な隙となってしまう。

 そして……

 

 

「よし、間合いに入った!『天裂刃!』」

 

 そうして隙が出来た一瞬を付き、一気に間合いを詰めるのと同時に上に跳びながらプロメテに斬りかかる。

 この見事な反撃にプロメテは攻撃が当たる直前で瞬間移動で距離を取った。

 

 

「Hey good Ich hoffe,(いいねぇ 見事な一撃だったぜ)」

 

(なるほどな…… 新しい赤のロックマンはジルヴェっていう奴だった時よりも適合率が高いようだな。 パワー・スピード・タフネスは奴よりマシっていう程度だが、回避能力は目を見張るものがある。

まるで戦いが日常になっているかのような戦闘センスは見事としか言い様がない)

(もうひとりのモデルAを勝手に使ってやがる女の方は攻撃力に欠けるが、機動力がずば抜けて高いみたいだな。

俺のカルテット・バーストを全て撃ち落とした高速精密射撃も見過ごせねぇ。

一発は正直豆鉄砲だが雑魚では束になってもかなわねえだろうよ)

 

 

「Ich sehe prognostiziert Das ist mehr als die Macht der(なるほど、予想以上の力だな……)

Zugeben ...... euch ist mein unser Kerl!(認めよう…… お前達は俺達の仲間だ!)

Ich habe in diesem Spiel teilnehmen Sind berech……(このゲームに参加する資格が……)」

 

 プロメテが賞賛の言葉を贈り、ロックマンとして認めようとしたその時だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ダブルチャージショット!』」

 

 それと同時に、急に氷の壁から亀裂が入り、一気に粉砕される。

 そして、氷壁の先から先程隔離されてしまったエール・テティス・ヘリオスの3人が乱入してくる。

 

「二人共大丈夫?」

「アキヒサとユウコが無事で良かったぁ~…」

「無用な心配…… 木下程度ならともかく明久なら逃げ切るくらいなら大丈夫だと思っていたさ」

 

 二人が無事であることに安心する3人

 そして……

 

 

 

「『十字手裏剣!』」

 

 プロメテの横から不意打ちで十字手裏剣を投げつけるのは、分断された際に行方が分からなくなっていたシャルナクだった。

 それだけでなく…

 

 

 

 

 

 

 

 

「Oh, nicht geworden etwas interessante Sache(おお、何だか面白いことになってきたな)」

 

 そう言ってプロメテが見た先にはたくさんの人々が各自の召喚獣と共に集結していた。

 

「あの死神風のバカと魔法少女風のコスプレをした女の子を捕獲すれば!」

「特別に賞金が出るって聞いて!」

 

 なんと言うべきだろうか…… 優子に限らず、文月学園の女子は本当に血気盛んなようだ……

 でも、よく見てみるとDクラスの平賀など男子も一緒に混ざっている。

 

 

「みんな気をつけて! 相手はあのアトラスを召喚獣ごとまとめて遥か彼方に吹き飛ばした相手だぞ!」

 

 あくまでロックマンとしての事実を隠した上で強敵だということを説明する明久だが……

 

「勝った訳じゃないでしょ?

それに、『女版ミニ鉄人』なんて呼ばれているアトラスの事だもの、どうせすぐに戻ってくるに決まっているわ」

「だったらその前に俺達の誰かが止めてやるぜ!」

「誰が賞金を手にしても、恨みっこなしよ!」

「よーし、かかれぇ~!!」

 

 緑色の髪をした少女の号令と共に、全員がプロメテとパンドラに突撃していく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? え? なんか外からたくさん人が来てるんだけど!?」

 

 その一方でグレイが指差す方向からは大会に参加していた人達だろう。

 ボーナスイベントに踊らされ、即席の賞金稼ぎと化した人々達がどんどん映画館の中に入ろうとしていく。

 

「……さっきの学園長の放送」

「あの放送を聞いてやってきたんだと思いますけど、大丈夫なんでしょうか?」

「……多分戦えるようになっていると思う。 ……学園長が召喚獣を使ってと言っていたから、物理干渉ができるようにしてあるはず」

 

 試しに霧島が召喚獣を呼び出し、適当な物で試し切りをしてみる。

 その結果、彼女の召喚獣に切られた物が、一瞬で切断されてしまう。

 

「……学園長も本気」

「って言うかやりすぎじゃないですか!?」

「こんなとんでもない力を人間相手に使うなんて、下手したらあの二人が地面と区別がつかなくなるような光景になって……」

 

 佐藤の言葉に瑞希が同意しようとする。

 

「いや、多分逆だと思う」

 

 

 

 

 

 

 

プロメテ vs 文月学園 B~Dクラス級の皆さん×50

 

総合科目 (無し) vs 190~130点

 

 

 

 

「Wo kleine Fische zur gleichen Zeit wurde nahm Dutzende(雑魚が何十人同時にかかってきたところで)

Führen Sie - denken Sie, dass heißt, es! ! !(意味があると思ってんのか!!!)」

 

 

 

 

「……逆? どういう意味だ?」

「どういうも何も、召還獣の方がやられちゃうんじゃないかって意味だよ」

 

 が、グレイが二人の言葉に反論する。

 

 

 

 

 

「ウボァァッァァァーーー!!!」

「キャアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!」

「…な、な、なんだよこいつ、 危険だ! 一時撤退!」

 

 

 

 

プロメテ vs 文月学園 B~Dクラス級の皆さん×50

 

総合科目

(無し) vs all dead!!

 

 

 

 

 

「だって、召還獣の力って人間の数倍程度でしょ?

ボク、あいつらと前に戦った事があるから言えるんだけど、あのふたりを同時に相手するならその程度じゃ全然戦力が足りてないよ」

「で・でもそれは最低での話で、中にはさらに数倍強い召喚獣を持っている人も」

「瑞希姉ちゃん、だから奴らはそんな程度(・・・・・)じゃないんだって!

この大会で召喚獣を使って見て分かった。

もし、あのふたりを相手に挑むなら瑞希姉ちゃんレベルの召喚獣ぐらいの強さじゃないとまともに太刀打ちできないのは間違いないよ」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

「よ、よし隙あり!」

 

 今度は平賀が召還獣のバスターソードで攻撃を仕掛けていく。

 

「悪いけど、しばらく動かないでいてもらうよ! 腕輪発動『石化』!」

 

 平賀の召喚獣が腕輪を発動させるのと同時にプロメテとパンドラが足元から石化していく。

 このまま行けば擬似的にとは言え石像に変えられてしまい身動きを封じられるだろう。

 だが、二人は慌てるどころか全く動じておらず、プロメテに至ってはあくびまでしている始末だ。

 

「Bad, es war fast eingeschlafen und gelangweilt zu Unerwartet

(悪い、予想外にも退屈すぎて眠ってしまいそうになったわ)」

「…Behinderung(…邪魔)」

 

 結局、攻撃を当てたにも関わらず、全く効いていなかったプロメテとパンドラに平賀の召還獣は頭をわし掴掴にされてしまい、そのままポイと上に投げ捨てられ、そのまま天井に激突。

 点数がゼロになり召喚獣が消え去ってしまった。

 

 

 

 

「戦死者は補習ぅぅぅぅぅぅぅ~!」

「「ギャアアアアアアアアアアア!! 補習は嫌だああああああああああああああ!!」」

 

 それと同時にどこからか現れた鉄人によってその場にいた生徒全員がが一度に学園の補習室に連行されてしまった……

 

 

 

「…………ねぇテティス、あのおじさん誰?」

「……生活指導の鉄人」

「『一気に50人以上の人を一気に運んでいったんですけど!?』」

「鉄人ダカラナ……」

「『あの人普通の人間なの!? 完全に人外生命体の領域よ(だよ)!』」

 

モデルXとエールのツッコミが映画館の中に響き渡る…

 

「……Vor einiger Zeit von Kerl, wirklich nur ein Mensch?

(……さっきの人、ただの人間?)」

「Alles, was Sie Macht der falschen Lloyd par definitiv nicht……

(フォルスロイド級のパワーなのは間違いねえ……)」

 

 

 どうやら鉄人に対しての認識は最強級のロックマンにも通用するようだ。

 エールどころかプロメテとパンドラですらが唖然としていた。 

 

 

 

「…Wie, Puromete?(どうする、プロメテ)」

「Oh, ich habe es schlecht, aber ich immer noch weinen oder Amoklauf(ああ、悪いが俺はまだ暴れたりなくてな)

Und weil mehr Leute toben, kann ich wieder auf, wenn Sie zurück zuerst gehen wollte?(もうひと暴れするから、帰りたかったら先に帰っていいぞ?)」

「……Und weil die Dinge Puromete, dachte ich, wie

(……プロメテの事だから、そういうと思った)

Aber für den Fall, sollte es nicht gehen, um Hallo zu sagen, um das nächste Schul……(でも、次の学校に挨拶に行かないといけないから……)」

「Mit oder so, Komm gehen Pandora nur vor und ich waren.

Holen Sie zurück in der Nacht.

(そうかよ、だったらパンドラだけ先に行ってろ)

(夜には帰ろよな)」

「OK」

 

 プロメテとパンドラが会話を終えて映画館から出ていこうとした時だった……

 

 

「逃がさないよ!『アイススティッカー!!』」

「待ちなさい!『アクセルバレット!』」

 

 二人に逃げられるわけには行かないと判断したテティスと優子が拡散攻撃で動きを止めようとした。

 

 

『……くそっ、逃げられたか!』

 

 だが、あの二人は瞬間移動で映画館から出ていた為に全く意味を成していなかった。

 結局二人には逃げられてしまい、学園長の策も失敗に終わってしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんという屈辱…… あのまま逃してしまうとは……」

「ヘリオス、あのふたりの強さが規格外だったんだからこうなってしまうのも仕方がないわよ」

 

 悔しさ故にか壁に拳を叩きつけて怒るヘリオス。

 そして…………

 

 

「あのふたりを捕らえて賞金を手にする事ができれば、今後の生活において金銭面で困ることがなくなるというのに!!」

「「『ヘリオスも賞金狙っていたのかよ!?』」」

 

 さっきからヘリオスが焦り気味なのは賞金狙いだったということだろう。

 『貧すれば鈍する』今のヘリオスに適したことわざだろう……

 

(ドン・ドン・ドドン!!)

 

「あら~? 3人ともどこに行く気なのかしら~?」

 

 いきなり銃が乱射されたが、その先にいたのは逃げようとしたテティス・シャルナク・明久の3人だった。

 ヘリオスが激昂していたのは自分に注意を向けさせ、3人を適当に逃した後、騒ぎになるのと同時に自身も逃げるという作戦を企てていたのだ。

 

「貴方達からは聞きたいことが山ほどあるの」

「ここで逃げても学園でじっくり問い詰めてあげるからもう諦めなさい」

 

 

 

優子とエールが4人をに銃口を突きつける。

最終的にモデルZ達の説得で明久達はおとなしく逃げる事を諦め、明久の家で話し合いの場が持たれることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後に合流する約束のはずだったヴァンとアッシュが忘れ去られそうになりながら……




タイミングが微妙ですが多分この話が今年最後の投稿になると思います。

メリークリスマス!
次はハッピーニューイヤーとか言っちゃっているんでしょうねwww

感想お待ちしていまーす!



獄門剣

ロックマンX7でゼロがラーニングする防御技。
セイバーを盾にして敵の攻撃を防ぐ技。
敵の攻撃を切り落としたり、跳ね返すこともできます。
が、防御中は動くことが出来ないため、私はあまり使っていませんでしたwww







12月29日 バカテスの回答を追加修正。

平賀源氏の召還獣の設定を追加


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第21話

バカテスト!

第6問

トランプの数字を全て足すといくつになるか答えなさい。



姫路瑞希の答え
『364』

教師のコメント
正解です、簡単な足し算ですね。


ヘリオスの答え
『364、因みにジョーカーを加えると365になり、1年の暦と同じになる』

教師のコメント
面白い雑学もあって楽しかったです。
因みにエキストラジョーカーは暦でいううるう年を指すとも言われています。


吉井明久・島田葉月・グレイ・アッシュ・テティスの答え
『1+2+3+4+……』

教師のコメント
頑張ってください。


シャルナクの回答
『366枚オールジョーカー!』

教師のコメント
トランプというゲームが成立しなくなるので止めてください。




 プロメテは工事中であった道路にて新たなる賞金稼ぎ集団に襲われていた。

 しかもその中には、あの常夏コンビと高城の3人まで混ざっていたのである。

 とは言っても、この3人以外は既に戦闘不能で鉄人に連行されてしまっていたが……

 

 

「いいですね、なんとしても私達で捕まえてみせますよ」

「応! こいつを捕まえるだけで褒美が思いのままってサイコーだぜ!」

「捕縛の褒美で理事長直々の推薦書でも書いてもらえば大して勉強しなくても簡単に合格できるしな、つー訳で覚悟!」

 

 

 高城雅春・夏川俊平・常村優作 vs プロメテ

 

 教科 総合科目

 

 点数 4219点・3265点・3301点 vs ロックマンモデルV(良好)

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずはこれを喰らいなさい! 腕輪発動『完成(ジ・エンド)バルカン!』」

 

 高城雅春の召還獣の腕輪・『完成(ジ・エンド)』は本来ならこれまでに見てきた敵の腕輪の能力を模倣してそれを一瞬で完璧に磨き上げた状態で体現させる能力である。

 その腕輪で体得した能力の一つで40点の点数を消費させ、高城の召還獣は片手をバルカン砲に変化させ、大量の弾丸をバラまく。

 

「Oder Geschenkartikel von mir? Auch es nicht jucken auch weh, aber ich?(それは俺への贈呈品か? 痛くも痒くもないんだがな?)」

「足止めすら出来ませんか……」

「ったく、好きなだけの褒美なんて景品を出しやがるだけのことはあるぜ!」

「つーかよ、こいつ召喚獣使っていねえじゃねえか、だったらこっちも召喚獣以外の物を使ってもいいってことだよな?」

「常村くん、何か策があるのですか?」

「まずは動きを止めようぜ、夏川!」

「腕輪発動!『スモーキング・ディスチャージャー!』」

 

 まずは夏川の召還獣の腕輪、『煙幕』のスキルを使って目くらましを図る。

 

「Hm, das war, was Nebelwand oder ...... es ist!(ふん、煙幕か…… それがどうした!)」

 

 だが、プロメテに対してはあまり効果が無く、大鎌を振り回すことによる衝撃波によって十秒で吹き飛ばされてしまう。

 

「十秒もあれば十分なんだよ! ここは工事現場! だったらこんなのがあっても不思議じゃねえよな?」

 

 いやらしい笑顔をして、何かを投げつける夏川の召喚獣。

 その一方で常村は、先程からいじ繰り返している機械を動かそうとしている。

 

「なるほど、発電機ですか。 それに伝導率の高いワイヤーとコードを改造して無理矢理に取り付けたのですね」

 

 

 一体いつの間にそれだけの作業を済ませたのだろうか?

 夏川はその改造電撃装置のワイヤーをプロメテに一瞬で巻きつけた!

 

「一気に電撃を流してやる! 死ねやコラァァァ!!」

「ちょっ! 目的が完全に変わっていますよ!?」

 

 無理な改造によってショートした高圧電流がワイヤーを介してプロメテに襲いかかる。

 

「~ Was? Ist das ein Kerl sagen Toka statische Elektrizität? Coli und lose Es könnte gut sein,(ん~? これは静電気とか言う奴か? コリがほぐれていいかもしれねえな)」

「ちょっ! 全然楽そうにしてんだけど!?」

「無理やりショートさせた電流を流してんだぞ、少しは痺れろよ!?」

「なら今度はこれでも使います、腕輪発動!『完成(ジ・エンド)キャノン!』」

 

 余裕綽々な態度のプロメテに対して、高城の召喚獣が今度使った能力はキャノン砲を作り出す能力のようだ。

 50点程消費させ、強力な砲弾をプロメテに放った。

 

「okay?」

 

 軽く大鎌の柄の部分で砲弾を打ち返したプロメテ

 

「はああああああああああああああああああ………… せいりゃあああああああああああああ!!」

 

 その砲弾をさらに煙管型ハンマーで打ち返す夏川の召喚獣。

 そして、その砲弾はプロメテに目掛けて飛んでいき、そのまま大爆発を起こす!

 

「「「よっ……しゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」

「やりましたね夏川くん!」

「ホントだぜ、やるじゃねえか夏川!」

「俺は野球部だぜ? しかも3番バッター! あの程度の単純な砲弾を打ち返すぐらいなら簡単だっての!」

 

 なら4番は誰なんだろうかとか思ったりする常村と高城だが、キャノン砲の大爆発ならモロに食らって無事なわけが無いと思った3人はハイタッチで手を叩き合ったり、ガッツポーズを決めたりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Hübsch oder nicht es sich leisten?(随分と余裕じゃねえか?)」

 

 実際にはプロメテは爆発の寸前でテレポートを発動させて、遥か後方に退避していたのだが……

 

「なっ! 遥か後方に逃げているじゃねえか……」

「嘘だろォ!?」

 

 仕返しとばかりにプロメテは強力な衝撃波の嵐を3人に目掛けて叩きつける。

 ぬか喜びしていて油断していた3人はギリギリで召喚獣に命令させ、ある程度は防いだものの、常夏コンビの召喚獣は衝撃波の力に耐え切れずに戦死、高城も急激に点数を削られてしまった。

 

 

 高城雅春・夏川俊平・常村優作 vs プロメテ

 

 教科 総合科目

 

 点数 1123点・DEAD・DEAD vs ロックマンモデルV(良好)

 

 

「うわあああああああ!」

「チキショーォォォ!!」

「戦死者は補習ぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 召喚獣が戦死してしまった常夏コンビはそのまま鉄人によって学園に連行されてしまった。

 『今度こそは仕留める』と思って「イビル・ワルツ」で鉄人に追撃をかけようとするが、その場にいたはずの鉄人は残像で、既にそこにはいなかった。

 

「Können, ob von diesem alten Mann im Moment unterwegs verwendet werden…(瞬間移動でも使えるのかよあのおっさん…)」

「本当に……滅茶苦茶やってくれますね。 ならこちらも容赦しません!!」

 

 高城は常夏コンビの仇討ちとでも言わんがばかりに果敢に攻めかかる。

 

「腕輪発動!『完成(ジ・エンド) 煙幕・ フミコミザン !』

 そして、『ソード・ワイドソード・ロングソード』トリプルプレデーション!

 プログラムアドバンス、『ドリームソード!』」

 

 腕輪の能力も出し惜しみせずに乱用し、自らの腕輪の力を乱用して強引にねじ伏せようとする……

 その能力の多様さはまさしく技のデパートと例えられるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Ich schien ziemlich groß Trick, ~ Na durch die Chibi es gibt keinen Sinn Sie nicht ramponiert, dass?(技は結構多いようだったけど、そのチビがボロボロなんじゃ意味無いよな~?)」

「くっ…… 悔しいですが、どうやらもう腕輪が使える程点数が残っていないようですね……」

「Aan, was ich sagen Ya suchen? Richtig Worten Shabereyo Barker!(ああん、何を言ってやがる? ちゃんと言葉喋れよバーカ!)」

「何を言っているかは分かりませんが、言いたい事は分かりました。 でも、これだけやれば第2目標くらいはできたと思いますよ? ……ほかの人達が来るまでの時間稼ぎ位なら……ね」

 

 言いたいことを言い切った高城はさすがに体力の限界だったのか、そのままガクリと気絶してしまった……

 

「Hmm? Oder Newcomer?(んー? 新手か?)」

 

 そんな気絶した高城をギリギリで避けながら、謎のボロボロになった車で何人かの人間が降りてきた。

 

「Underdog, die auf einen Schlag mit mir gemacht wurde, wird gesucht Ya kam durch Senkung blind und wie Wetzlar?(オレに一発でやられた負け犬がのこのことどのツラ下げて帰ってきやがった?)」

「お主を捕らえれば!」

「……褒美が思いのまま(街の警邏用と偽って小型衛星を要求する)」

「文月学園二年オールスターズ~、しゅつじ~ん」

「……雄二を殴りつけたその報いを受けてもらう」

「さっきはよくもやってくれたな、ガチで仕返しをさせてもらうぜコラ!」

 

 その車から降りてきたのは秀吉・土屋・工藤・霧島、そして目を覚ました雄二であった。

 そもそもどうやって車なんて入手してきたのかが気になるのだが、プロメテの前に来るまでの間にこんなことがあったのである。

 

 

 

 

 another story 坂本side

 

 文月学園の教頭、竹原は大急ぎで自分の車を止めていた場所に向かっていた。

 きっかけは商店街でプロメテが暴れだした時の事である。

 彼は、商店街のとある喫茶店で優雅にティータイムを楽しんでいたのだが、いきなり商店街の放送からとんでもない事が放送されだしたのだ。

 その内容が「ロックマンと呼称する謎の暴走集団が竹原教頭のレク○スを狙っています。 被害に遭う前に急いで車を避難させて下さい」と怪しい感じがプンプンする物だったのだが、彼はこれまでにも学園内で謎の集団に車を二台も破壊されており、保険会社から何度もイヤミを言われるまで信用を無くしている身なのである。

 ここで車が盗難なんてされようものならもう3度目はないだろうことを考えると、多少怪しくてもその放送を信じて愛する車を避難させるしかないだろう。

 

「レク○スは、私の愛しいレク○スは必ず守って…… 何だ、貴様ら?」

 

 車まで到着していざ移動させようと鍵を取り出した瞬間だった。

 謎の暴走族風の特攻服を着込んでいる5人の男女に囲まれ、内心焦っている竹原。

 顔はサングラスとマスクをしていて、服には意味不明な漢文が大量に書かれており、詳しくは分からないが、危険な奴らだという事は分からない方がおかしいだろう。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ…………!!」

 

 そして、首筋に高圧電流のスタンガンを当てられた竹原は、無念にも愛車を守れずに気絶してしまった……

 

 

「ちょっ! 雄二、やりすぎじゃぞ!」

「教頭先生が泡吹いてるよ!?」

 

先程から暴走族の振りをしていた(させられていた)秀吉達はあまりにも非道な行いに流石にドン引きしていた。

 車を確保(強奪)する為に、持ち主であった竹原教頭を襲撃した上に、その高級車泥棒の罪をロックマン(誰とは言っていない為)に押し付けたのだから、ロックマンみんなの怒りを買ったことだけは間違いないだろう。

 

「仕方ねえだろ! 長距離移動するのにわざわざ歩きって言う訳にはいかねえし、それに有事の際には多少の悪事は歴史上でも実質的に黙認されているし、それに……」

「「……それに?」」

「これで犯人はどこかの暴走族か明久達ってことになるだろ? 5人のロックマンだったらあいつらがちょうどいいし」

「「ワシ(私)達が言いたいのはそういうことじゃなーい!!」」

 

 さらりと言ってのけた坂本。

 そして、エンジンのボタンを押して、何事もなかったかのように発進しようよする。 

 

「……坂本、車の運転は出来るのか?」

 

 そう、一番肝心な事である。

 土屋の言う通り、車の運転が出来ないのであれば、この車両強奪にはなんの意味もないのである。

 

「大丈夫だろ? 頭○字D・湾○ミッド○イト・グラ○ツーリ○モ・スリ○ド○イブ・○ッジ○ーサーとかで明久相手に余裕勝ちできるぐらいに鍛えているし……」

「ねぇ、ムッツリーニ君! ボクらはやっぱりタクシーでも拾って……」

「あ、踏み込みすぎた……」

「「ギャアアアアア(きゃああああああああああぁぁぁぁ)! 誰か助けてええええええ!」」

 

 本物の車をゲーム感覚で扱おうとする雄二の無茶な運転に心臓が止まりそうになる秀吉・工藤・土屋。

 どうやら霧島だけは平気なようで、的外れな知識だけのアドバイスまでしている。

 彼らは彼らで、プロメテとパンドラを捕獲する気のようだった。

 はっきり言ってよく生きてプロメテのいるところまでたどり着けたと思う……

 

 

 坂本side end

 

 

「……みんな、一気に勝負をつける」

「全員で一気に腕輪の能力を叩き込むぞ!」

「「応!!」」

 

 

 

 坂本雄二・土屋康太・木下秀吉・工藤愛子・霧島翔子 vs プロメテ

 

 教科・総合科目

 

 点数 1350点・962点・849点・3527点・4631点 vs ロックマンモデルV(良好↓)

 

 

 

 

 

 

 

「……腕輪発動、完成(ジ・エンド)・風力操作『ダブル・サイクロン』」

「みな、霧島の能力に合わせていくぞい!」

 

 霧島の召還獣の腕輪の能力も高城と同じ物の様だ。

 彼女の召喚獣が放った球状の竜巻『ダブルサイクロン』に合わせて、全員で総攻撃を仕掛ける。

 

「急所をえぐってやるのじゃ! 喰らえ!」

 

 プロメテの上空からは秀吉の召還獣の薙刀が……

 

「腕輪発動、『電撃』! 全力スイングを叩き込むよ!」

 

 プロメテの間合いの中に潜り込んだ工藤の召還獣の全力の一撃……

 

「……『加速』」

 

 加速の能力で背後に回り込んだ土屋の召喚獣。

 その3体の召還獣の渾身の一撃を……

 

「Ob dieser mon!(ちょこざいな!)

 Hast du gedacht, ich werde in so etwas fallen!!(こんなもので俺が倒れると思ったか!!)」

 

 簡単に大鎌を振り回しただけでなぎ払った。

 

「うわああああああああああああああああ!」

「ワシらは今日はこんなのばっかりか~!?」

「……だけど、本命が間合いに入った」

 

 振り回したあとの隙を狙って、雄二と彼の召喚獣が間合いの中に詰め寄る。

 いまの彼の召喚獣はそれなりに温まっており、サードギアまでシフトアップされている。

 

 坂本雄二・土屋康太・木下秀吉・工藤愛子・霧島翔子 vs プロメテ

 

 教科・総合科目

 

 点数 1030点・DEAD・DEAD・DEAD・4097点 vs ロックマンモデルV(良好↓)

 

 

 

 

 

 

 そして、体を掴み、頭から地面に叩きつけようとするのだが……

 

「くっ…… ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「Was, was Sie wollen, um mich zu werfen?(なんだ、お前は俺を投げ飛ばしたいのか?)」

 

 

「くうぅぅぅぅ!!」

「Durch tun es lauwarm, das ist etwas, dass die Macht!(ぬるいんだよ! これが力っていうやつだ!)」

 

 プロメテは武器をわざと手放す。

 先程まで掴まえていたはずの雄二の腕は逆に引き剥がされ、召喚獣ごと地面に叩きつけられた!

 

「うああああああああ!」

「Sie lassen Sie jemand Merikoma sogar auf dem Boden bleiben diese(お前はこのまま地面にでもめり込ませてやるよ)」

「フォルスギア、シフトアップ!」

 

 とっさの判断で腕輪の力を増大させ、その力を持って一瞬で回避する。

 

「……よくも雄二を、許さない!!」

 

 度重なる雄二に対する暴力に対して、とうとう霧島の我慢が限界を超えた。

 そんな彼女の召還獣の攻撃は苛烈を極めた。

 

「……腕輪発動!『完成(ジ・エンド)・肉体強化!・加速・電撃!』」

「Oh! Schwer zu keinen guten Angriff zu tun, nicht ganz tun(おお! なかなかいい攻撃だよ、なかなかやるな)

Oder Sie sind kein schöner genießen es!(お前は、なかなか楽しめそうじゃねえか!)」

 

 しかし、その痛烈な連撃を浴びながらもプロメテは笑みを崩さない。

 実際、彼女の召喚獣は強いと言う事は間違いない。 だが、プロメテはその強さをも上回るのだ。

 

「……喰らえ、腕輪発動!『完成(ジ・エンド)・熱線!」

 

 彼女の召喚獣が体得した腕輪の中でも最強の攻撃力を持つ能力『熱線』で一気にトドメを刺しにかかる。

 

「Es war gut ...... ziemlich gut Angriff!(んんっ…… なかなかいい攻撃だったぞ!)」

「……そんな、」

「Aber also'm Sie damit fertig!(だが、お前もこれで終わりだ!)」

 

 一度手放していた大鎌を拾い、そのまま彼女を召喚獣ごと衝撃波で薙ぎ払う。

 霧島本人は召喚獣が盾になったおかげでほとんど怪我はなかったが、衝撃波の余波を受けてそのまま気絶してしまう。

 

「Kormorane ~ N Ob genossen Well Well, wischte anderen aus ...... in diesem(う~ん、まあまあ楽しめたかな、これでもう全滅……)」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「Guy, noch was bewegen!(こいつ、まだ動けるのか!)」

 

 まさか、まだ雄二が動けるとは思っていなかったプロメテはさすがに面を喰らい、それが致命的な隙となってしまう。

 

「Und werden ... und er Einsatzkräfte aus vor einer Weile sprang!(なっ…さっきより力が跳ね上がっているだと!)

Außerdem, wenn er welche diesen Chibi bemüht sich seither um mich!(しかも、このチビの方が俺を押してきている!)」

 

 徐々に押され始め、焦り気味になりだすプロメテ。

 

「...... Es ist nicht tun Sie reiten den Ton an!(……調子に乗ってんじゃねえぞ!)」

 

 流石のプロメテも渾身の力を込めて、一気に雄二を召喚獣ごと投げ飛ばす。

 

「In der Tat wäre es nicht mehr Handfläche, alles zu tun ......(さすがにもうこれ以上は何も出来やしねえだろ……)」

 

 そう言って、あと味の悪い勝利の余韻に浸っているプロメテの横顔を……

 

「でやああああぁぁぁぁ!!!」

 

 さらに雄二の召喚獣が容赦なく殴り飛ばす!

 

「Wahl ...... Jetzt werde ich angreifen, bis die Bewegung stoppt, um zu gewährleisten!(上等…… 今度は動きが確実に止まるまで攻撃してやらぁ!)」

「おらああああああ!」

 

 プロメテの言葉も虚しく、今度は雄二の方が押し始めていた。

 召還獣の方もギアの6段目にまで突入しており、単純な馬力だけなら全召喚獣の中でも頂点に立つだろう。

 そんな、召喚獣の連撃を喰らい、一気に体力が減衰していくのをプロメテは感じ取った。

 どうにかその状況を打破すべく、プロメテは渾身の一撃でもう一度雄二の召喚獣を本人ごと蹴り飛ばす。

 

 

 

「Mit diesem Sprung Kick, können Sie als zuverlässiger Stop!(この飛び蹴りで、確実なトドメとしてくれる!)」

 

 プロメテは一気に跳躍し、己の力を足の一点に集中させる。

 ここで一気に勝負に出るようだ。

 その跳躍したプロメテを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 姫路チームside

 

 

 

「完璧に捉えたわ!」

 

 遥か遠方にいた瑞希の召還獣と「合体変身」を遂げたエールの召喚獣が、プロメテを完璧にロックオンしていた。

 合体変身によって、数倍にも膨れ上がった瑞希の召喚獣は新武装の荷電粒子コンバーターをフル稼働させ、それから生み出されたエネルギーを惜しみなく腕輪に込める!

 

「狙撃ィィィィ!!」

「喰らいなさい、最大級の荷電粒子砲です!!」

「つーか、これ死ぬんじゃね!?」

『それよりも学園長さん、どれだけ広大なフィールドを貼ったんだろう…… 下手したら街全体を覆っているんじゃ……』

 

 彼女らの狙撃のサポートを忘れないようにしながらもツッコミを入れるグレイとモデルXだったが、そんな彼らの言葉にもお構いなしで腕輪の荷電粒子砲を放つ二人。

 二人の合体した召喚獣から、たまたま射線上にあった電柱が一瞬で蒸発するような禍々しき光線が放たれ、それは確実にプロメテへと向かっていく。

 プロメテもまさか荷電粒子砲なんていうものまで飛んでくるとは思っていなかったようで、驚愕の表情が浮かんでいた。

 「何か対処をしないと」と思ったときには既に遅く、プロメテは完全に荷電粒子砲に飲み込まれる。

 そして、瑞希とエールの合体召還獣が放った一筋の光はプロメテを飲み込み、それでなおどんどん伸びていき街の境目まで伸びていた召喚フィールドの端まで伸びていった。

 

「うわ~ぉ…… あれを喰らって立てる奴っているの?」

『どうだろう、元々強力な召喚獣にしかもその力を数倍に引き上げるように合体変身したエールの召還獣が、全力で放った事実上最強の攻撃のはずだから、それでダメだったら……』

 

 グレイとモデルXの懸念も最もだろう。

 これだけの事をやっておいて全く効き目がなかったなら、事実上大会参加者の召喚獣では全く歯が立たないことになってしまうのだから。

 

「直撃させたわね、手応えはあったけどどうかな?」

「もしこれでダメなら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...... Verdammt(……くっ)」

 

 そこには苦悶の顔を浮かべながらもどうにか立っているプロメテの姿があった。

 

 

 

 

 

 

坂本雄二・土屋康太・木下秀吉・工藤愛子・霧島翔子 vs プロメテ

 

 教科・総合科目

 

 点数 87点・DEAD・DEAD・DEAD・156点 vs ロックマンモデルV(不調・ヘルメット半壊・左手が軽度のやけどあり)

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ! 倒しきれてないし!!」

「やっぱり秀吉くんの召喚獣はこっちに回ってもらって、出力上昇の設定でも入れてもらえば良かったでしょうか?」

『君たちはそういう事を言っている場合かい!? このままじゃマズイよ!!』

 

 グレイとエールもさすがに予想外だったようで、モデルXの言葉と共にグレイが姫路の手を引いて大急ぎでその場から逃げようとする。

 大急ぎで映画館の屋上から階段で降りて、もう少しで映画館から出られると思っていったその時だった。

 いきなり瑞希の持っていたケータイに誰かから電話がかかってきたようだった……

 

「あ、はいもしもし。 ……ごめんなさい、ふたりのことをすっかり忘れていました……」

 

 

 

 

 姫路チームside end

 

 

 

 

 

 

 

「Nun ist die war wirklich Yabaka ~ tsu .......(今のは…… 本当にやばかったぞ。)

Das habe ich, im Ort, um für einen Augenblick den Tod vorbereitet sein!(この俺が、一瞬死を覚悟する位にはよ!)」

 

 プロメテはこの世界に来てから始めて敵に対して殺意を覚えていた。

 ここまでの怒りを超えるとするなら、それはマスター・アルバートへの復讐心ぐらいのものだろう。

 

「Wenn Sie sagen, der Kerl, den Weg hier zu stehen, wäre es zu Fett oder Meganebusu aus Flachs oder rosa Doppelbohrer mon wie.(ここで邪魔立てする奴と言ったら、ツインドリルのアマか桃色のデブかメガネブスあたりか!?)

Es ist dir vergeben, wenn Sie dieses Mal traf. Ich werde mit Sicherheit entdeckt zu töten! !(今度会ったら許さん。 確実にぶち殺してやる!!)」

 

 プロメテは激昂した状態のまま、まだ点数の残っている雄二と霧島のふたりを放置して、そのまま工事現場を後にした。

 彼が瞬間移動をして、雄二たち5人と先程から気絶しっぱなしの高城だけとなった工事現場。

 そこに、発電所で高額景品を守る試験管を勤めていたはずのハイボルトが現れる。

 

 

 

「ここでまだ戦っている子達がいるから救援に向かってくれと店長から言われてきたのだが、一体どうなっているんだ? 全く、慌ただしいことだ……」

 

 とりあえず気絶している全員を避難所に指定された文月学園へと連れて行こうとしたその時だった。

 

「まずは病院だろーがあああああああああ!!」

「うおっ、なんという闘争心! この者、途中で放置されたのか!?」

 

 肉体が精神を凌駕し始めている代わりに、周りが全く見えていない状態の雄二がツッコミのような言葉を入れながらハイボルトに襲いかかる。

 

「おい、もう敵はいなくなったぞ。 だからもう静まれ!

分かるか? もう?・敵?・いない?」

「……Zzzzzzzzzz…Zzzzzzzzzzz」

「あ、あれ? ……寝ているな、なんだこいつは?」

 

 ハイボルトの説得のおかげで落ち着いてきた雄二だったが、体力の限界を超えて肉体を行使し続けた結果、そのまま眠り込んでしまった。 

 実際、避難場所の学園よりも病院で診てもらった方がいいと判断したハイボルトの手に寄って、少し離れたところにある病院に全員を連れて行き、病院の警護も兼ねてハイボルトはこのまま病院に残ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一度倒されかけて怒り心頭のプロメテは、姫路たちが残っている可能性のあった映画館前まで戻って来た。

 そこにはロックマンとして待機している明久達やモデルXでロックマンとなっているエール、完全に高額景品が全部捌けた事で暇になったルアールとパープリル(エールの影に怯え始めている)、そして鉄人・高橋女史、計10人が戦闘態勢で待ち構えていた。

 

「Oder Kerl, dass viele der noch störend?(まだ邪魔をする奴が多いのか?)

Doke, Leute!(どけ、お前ら!)

Zunächst einmal, es ist früher töten von rosa molligen gesichtet! !(まずは桃色のデブからぶち殺すのが先だ!!)」

「Nein, es geht nicht in, aber Sie, es zu tun eigenen Weg als diese.(いえ、これ以上貴方に好き勝手やらせるわけには行きません)」

「Schließlich die Sicherheit aller gewährleistet ist.(ようやく皆の安全が確保された。)

Diese uns auch bei voller Leistung zu kämpfen?(これで俺たちも全力で戦えるぞ?)」

 

 

 瑞希に対して物凄い言い様だが、それに意を介さず止めにかかる高橋女史と鉄人。

 その後ろで瑞希はテティスから通訳してもらった言葉を聞いて「普段の私はそんなに太っていません! 最近エールさんから料理を習っていて食べ残しが無い様に自分で食べているだけで…… いつもはもっとスリムなんですからね!!」などと言って太ったことに対して言い訳をしている。

 グレイやテティスからしてみれば対して変わっていないように見えるのだが、そのへんに関しては年頃の女の子特有の物があるのだろうと思い、考えるのをやめてしまった。

 

「もう降伏しろプロメテ、お前に勝ち目なんてないぞ!」

「Es ist die lästigen Jungs(うっとおしいヤツらだ)

Wäre schön, ...(いいだろう…)」

 

 明久の言葉をテティスが通訳することで、プロメテに降伏する様に呼びかけるのだが、全く話を聞く気がないプロメテは静かに大鎌を構え、思いっきり振り回しながら突撃してきた。

 

「ヒャハ! コレでも喰らいな!『ブラストボム』」

「やーん! ルアールちゃんこわいよー(ぶりっ子モード全開)『アイスアロー!』」

「Verstreut!(ちっ!)」

 

 だが、合体召還獣の『荷電粒子砲』を喰らってダメージを負った体では、応戦してきた2人の攻撃にさしものプロメテも後退せざるを得なくなる。

 

「愚かなる選択、諦めて捕まるがいい」

「公平トハ言イ難イガ相手ヲシテヤル」

 

 ヘリオスとシャルナクもパープリル・ルアールの増援に入る。

 それに対して、プロメテはさらに闘気を膨らませ、前に出ようとした。

 その時だった!

 

 

 

 

「ハッハッハ! 私の名前はセルパン! 全てを支配するライブメタル『モデルV』のロックマン!

そして…… この大会が順当に進んでいけば、シークレットアイテムを賭けた戦いの最後の敵になる予定だった男だああああああああああああああああああああ!!」

「「(げ! あのおっさんロックマンがどうこうとか勝手にほざきやがった!?)」」

 

 タイツマン或いはスレードゲルミルと言ってもいいような格好で体操選手のようなド派手な登場の仕方をするセルパン。

 本当なら、ラスボスとしてのイベントの前にやってきた大会参加者を驚かしたかったのだろう。

 なぜか股間に白鳥の顔が付いたパンツまで装着しており、それを見た女性陣が顔を赤くして「キャアアアアアアアアアアアアア!!」と悲鳴を上げ始めている。

 いや、木下優子だけは腐女子全開の瞳で見つめ、したたかに今後のネタにしようと顔を隠すふりをして凝視している。

 そして、別の意味で大暴れしたセルパンは、プロメテの前に立ちはだかり、先程までつけていた白鳥パンツを脱いでプロメテの顔面に投げつけた。

 

「相変わらずだな、プロメテ。 本当なら私が直々に相手をしてやりたい。 だが、お前だいぶダメージを受けているな」

「Was ist damit?(それがどうした?)」

 

 先程投げつけられた白鳥パンツを適当に投げ付け、再び大鎌を構えるプロメテ。

 テティスに挑発された時並にこめかみがヒクついているが、おっさんの履いていた汚いパンツを投げ飛ばされてキレない方がおかしいだろう。

 

「せっかくなんだし、ロックマンとしての決着は明日以降にしないか? 」

「Unterschätzen! Die ...... nur sagen, dass es Schäden an Sie Gotoki Jungs…(舐めるな! ダメージがあるとは言ってもお前らごときに……)」

 

「喰らえ!『チャージセイバー!!』」

「『十字手裏剣!!』」

「プラズマサイクロンH!」

「『アクセルバレット!!』シュート!!」

「ジルヴェの仇!!『ダブル・チャージショット』」 

 

 懲りないプロメテにロックマン5人の全力攻撃が集中し、そして……

 

「この街から出て行くがいい!『ストライクアッパー!!』」

 

 最期にセルパンからの蹴り上げがプロメテに直撃。

 ロックマンsの攻撃で今度はプロメテが星となっていった。

 

「ふっ、今度元気になってから戦おう」

「何やってるんですか、逃してどうするんです!?」

 

 プロメテを何処かに蹴り飛ばしたセルパンに鉄人が詰め寄って説教を始めてしまう。

 これではもうプロメテを追うことは不可能だろう。

 

「とりあえず、先程飛ばされた方角から追い込むように付近を封鎖してもらえるよう警察に連絡をしてもらいます」

「それでいきましょう高橋先生。

しかし、今日中に決着が付けばいいんですが……」

「この様子でしたら心配いらないですよ西村さん、いざとなったらこの私が宇宙まで蹴り飛ばし……」

「「セルパンさん、目標を忘れないで下さい!!」」

 

 

 

 結局、セルパンと文月学園の教師陣が警察と連携して総出でプロメテが飛ばされたと思われる山に包囲網をかけて完全封鎖。

 大会を中止にしてまで山狩りをしてでもプロメテを捕まえようとしたが、テレポートを使って逃走したプロメテは見つかることなく、完全に逃げられてしまった。

 明久達は映画館内で隠れてもらっていた残りの仲間達と共に鉄人達が騒いでいる間にこっそりとその場から逃走。

 プロメテを追いかけて返り討ちにされた雄二たちがいると連絡があった病院に向かい、これまでに得た景品のチケットを希望制で再分配をする事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに本日の街の被害に関しては、半分は学園長のポケットマネーから(誰も捕まえていないため賞金の話も無しになった)、残り半分はセルパンの方で対応することになったようだ……

 

 

 

 

 

 

 




あけましておめでとう!

明久・テティス「もう2月だよ! 遅いにも程があるわ!!」
「メンゴメンゴ、一度書き上げたはいいんだけど納得いかなくて色々と展開を変えていました」
常夏コンビ「例えばどんな」
「竹原教頭の車泥棒の犯人が常夏コンビと高城さんだったとか」
「プロメテが一度ここで捕まる予定だったりとか」
プロメテ「ある意味その方がマシなんだがな……」
「当初の予定では町の人達全員が本物の鉄砲や牛肉解体用の肉切包丁で武装してて、プロメテには休まる暇も与えないなんていうものもありましたね」
ヘリオス「愚かなる選択…… 幾ら何でもやり過ぎだ。 町が無法地帯と化してしまう」
「うん、個人的にそれはないと思ってボツにして編集し直したらかなり時間がかかってしまいました。
楽しみにしていた皆さんには申し訳なく思います」
明久「作者も反省してよ! 次の投稿はいつ?」
「未定です…… ですが、次で第1章は終わり、次から新たなステージへと進む予定です」
パンドラ「…………本当?」
「……………………………………………………………………………本当さ!」
「「なんだよ、今の長い間は!!」」
「……さいなら!」
坂本「追え、絶対に逃すな!」
「「応!!」」


こうしてしばらく不毛な鬼ごっこを楽しんだ。
まあ、たまにはこういうのも悪くないだろう……





感想を楽しみにしています!

因みに本当に次で第1章は終わりです。



2月3日 召喚獣設定を更新


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第22話

バカテスト

第7問


明治時代の日本に西洋の文明が入ってきて、制度や習慣が大きく変化した現象のことを指す言葉は何か答えなさい。


木下優子の答え

『文明開化』

教師のコメント

当時はさらに、「西洋のものなら何でもよい」という、考えが出ていました。
近代化=西欧化そのものは明治時代に於いて一貫した課題でありましたが、文明開化という言葉は、一般に明治初期に、世相風俗がこれまでの封建社会から大きく変わった時期を指して使われる。


吉井明久の答え

『御一新(ごいっしん)』

教師のコメント
……吉井君の解答だと思っただけで×をつけそうになった先生を許してください。
今回の吉井君の回答は『文明開化』の別称ですので特別に正解にしたいと思います。


シャルナクの答え

『御乱心』

教師のコメント
それは今のあなたの心境ですか?


霧島翔子の答え

『文明退化』

教師のコメント
学年主席の貴方がこんな間違いをなさるなんて珍しいですね。
残念ですが不正解とさせて……


坂本雄二の答え

『俺が悪かった、翔子~!!!』

教師のコメント
深くは問いません。


 大会が終わり、もう少しで夕日が沈む頃だろうか……

 明久達は途中から合流したヴァンとアッシュを含めた全員で霧島の屋敷に案内されていた。

 当初は明久の家に押し込んで彼らを魔女裁判にかける予定だったのだが、合流時にヴァンとアッシュの二人が『明久君の家はそんなに人数が入るほどの余裕があるのか?』 ……と言い出してきたのだ。

 それも当然だろう。 いくら明久の住むマンションが一人暮らしをするには広すぎるぐらいだとは言っても、流石に20人以上の人間が入れるような広さがあるはずがなかった。

 仮に無理やり詰めたとしても長時間の質疑応答なんて出来るはずもなく、どうしようかとみんなに相談したら『……なら私の家に案内する、みんなが入れるだけの大広間がある』と霧島が言ってくれたのだ。

 

 

 

 そして今はちょうど広間のような場所に案内され、メイドや執事と思われる人物たちが大型スクリーンや来客用の紅茶などを用意してくれているところだ。

 因みに美波はまだプロメテの影に怯え続けており、気分転換も兼ねて美春と一緒にお風呂を借りる事になった。

 彼女の貞操が無事であることを祈りたい……

 

 

 

 

 

 

「それで、三人とも何か言うことは?」

 

 アッシュが若干怒り気味で言い放つ。

 

「「『すみませんでした!』」」

 

 事情があったとは言え、合流が遅れたのも事実の為、エール達3人とモデルXはすぐにヴァンとアッシュに謝った。

 ヴァンの方は笑って許してくれていたが、その分アッシュが今後は気をつけるようにとキツく説教をしてどうにか事なきを得ることが出来た。

 

 

『でも、二人がすぐに電話を入れてくれて助かったよ。 今、ようやくモデルHの適合者たちを捕まえて詳しい話を聞くところだったから』

「ええ、なかなか集合場所に来ないものだから何かあったのかと思って電話をしてみたらまさかプロメテのやつと戦っていたなんて思いもしなかったわ」

 

 なぜアッシュがプロメテの事を知っているのだろうかと疑問に思うだろうが、未来世界でアッシュは正規ハンターの仲間と共にプロメテとライブメタルの取り合いになり、一度戦った事があったのだ。

 しかし、結果は惨敗。 ギルドのメンバーの全員が半殺しにされ(リーダーの撤退指示がなかったら全滅もありえたらしい)、ライブメタルも別ギルドの手柄として横取りされてしまったのである。(正確には、横取りしたギルドでライセンスを登録したグレイが、持っていた為)

「でも本当に良かったよ、集合場所だった学校の中で瑞樹さんを待っていても全然こなかった時にはどうしようかと……」

 

 ヴァンも安心しきっていたからか、アッシュと二人で学園の中で待っていた時の事を語りだす……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァン・アッシュside

 

「……来ないわね」

「一体何をやっているんだろ、エールとグレイ君もいるから忘れているっていうことはないだろうけど……」

 

 体調が完治したヴァンと付き添いのアッシュは全く来ない瑞希達を学園で待ち続けていたのだが、学園の教師からの避難勧告に従って学園の教室に避難させられていた。

 アッシュが不服そうにしていたが、その場で騒いても仕方がないとヴァンが説得したこともあって大人しく避難していたのだが……

 

 

 

 

「それ以前に全然人が来ないわね、いくらなんでも少な過ぎるわよ」

「避難勧告が行き渡っていないのかも知れない、さっき鬼ごっこがどうとか私財から賞金が出るとか放送していたけど……」

 

 

 

「「…………ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」

 

 プロメテとパンドラが賞金首になった放送のことを思い出した二人は適当な武器と薬箱を5秒で用意して神速の速さで外に出ようとする。

 校門前にたどり着いた時だった……

 

 

 

「せ…戦死…者は……ほ~しゅ~う~~!!」

「「・・・・・・・・・・・・」」

「何あれ?」

「オレに聞かれても答えられると思うか?」

 

 

 50人以上の人間を一人で運んでいく鉄人とすれ違ってしまった。

 人間離れしているんじゃないかと思いたくなる光景に、開いた口がふさがらなくなってしまう二人。

 

 

「「……って、唖然としている場合じゃない!!」」

 

 気を取り直して、急いで外に出る二人。

 出る寸前、学園の教師が止めようとしていたようだが、それに意を介さずに二人は走り出す。

 そして近くのコンビニに立ち寄り、公衆電話で瑞希から事前に聞いていた携帯の電話番号にコールし続ける。

 

 

 

 

 ヴァン・アッシュside end

 

 

 

「まさかプロメテとパンドラまでこの時代に飛んでいるなんて思ってもいなかったわ、グレイからは海底火山で助けられなかったって聞いていたから、てっきり死んでしまっていると思っていたわ」

「エール…… 君は……」

「ヴァン、そんなんじゃないわよ。 わたしは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでして自分でトドメを刺したかったのかい!」

「『それは違うわよ(からね)!?』」

 

 

 ヴァンの頭が少し壊れ気味な気がするエールだった。

 ……が、ちょうどそのタイミングで説明の準備が出来たようで明久達がスクリーンの前に出て、前口上を述べようとする。

 

 

「カンペも無しに大丈夫か?」

「大丈夫、ちゃんと頭に入ってるよ」

「「『『……不安が拭えないんだがな……』』」」

「モデルZ達もひどいよ、僕だってやるときにはやるんだからね!」

 

 

 無用な心配をするヘリオス達をよそに、明久は自信満々な態度でテティスに持たせておいたマイクを受け取った。

 そして、全ての視線が明久に注がれる中、大きく息を吸って……

 

 

 

 

 

「えー、本日はお日柄もよく(ゴスッ)痛い!!」

 

 

 開始早々でヘリオスのゲンコツで遮られてしまった。

 

 

「何するんだよヘリオス!?」

「愚かなる前口上!! 貴様は結婚式の友人代表スピーチでもする気か!?」

「え、何かまずかった?」

『むしろ違和感だらけだったぞ!』

『まずい部分しかなかったし、明久の事だからこのまま続けさせてもグダグダになるだけに決まっているでしょう!?』

「というかこんな早いタイミングで私の手を煩わせるな! 例えば、これまでに見た演説などを参考にするなりしてその出だしを何とかしろ!」

「あ、うん、分かった。 今度こそうまくやって見せるよ」

 

 

 どうにかヘリオスのアドバイスを参考にした明久は最初から前口上をやり直そうとする……

 

 

 

 

 

 

「えー……失敬。 本日……進行を……つと…務めさせて頂きます、モデルZの適合者にしてヘリオス達の……ヘリオス達で……その……ヘリオス達を束ねる者! 剣術の…あのアレ?…僕はその……何でもな(ゴスッ)痛あっ!! 今度はシャルナク!?」

 

「何デモ無イト言ウ事ハ無イダロウガ! 最早何ヲ言ッテイイノカガ分カラナクナッテイルダロ!」

「こんなことなら事前に内容を紙か何かに書かせてチェックするべきだったんじゃない?」

「うう…… テティスもひどいよ……」

「吉井君、プレリー…… 私の上司から聞いたんだけど『こういう時はガチガチにならないで肩の力を抜いて、頭に浮かんだフレーズを、そのまま言う感じでやってみるといい』ってアドバイスをもらったことがあるわ。

 やっぱり最初は慣れないものよ、多少ぎこちなくても言いたいことが纏まっていればきちんと伝わるものだから諦めずに頑張りなさい」

「あ、はい、分かりました。 エールさんありがとう」

 

 エールが緊張をほぐすように肩を軽く叩き、優しくアドバイスをしてくれる。

 その優しさに感動までした明久は、どうにか頭に浮かんだフレーズを整理し、再度進行役を挑戦しようとする。

 

「えー、本日はお日柄もよく(ガン・ガン・ガン!)イテテテッ!!」

 

 

 今度はシャルナクとヘリオスだけでなくテティスまで混ざって合計3発ものゲンコツが叩き込まれた。

 

 

「過大なる疑問!? なぜ同じことを繰り返すのだ!?」

「だって最初に浮かんだフレーズがこれだったから……」

『本当にどんな頭をしているんだお前は!?』

「モデルZの言う通りだぞ、それ以前にスピーチの出だしから離れろ! とりあえずそれで始めればなんでも一応は上手くと行くと思っているのか!?」

「…………………………」

「ソウナノカ!? オイ、ソウナノカ明久!?」

「いや……だって、最近読んだ本にそう書いてあったし……」

『どんな本だ!? 明久殿の読む本などせいぜい漫画か保健体育の参考書ぐらいなものでござろう!?』

「失礼だなモデルP! 最近は教科書も少しと……あとは新メニュー考案用の料理のレシピ本や、緊急時の心肺蘇生の手引き法なんかも読んでいるよ!」

「さっきからやめろ生々しい! つーかそんなデタラメな内容が書いてある本は捨てろ! なんの役にも立っていないだろ!」

 

 

 あまりにも話が進まないために、雄二達が明久達の話に入ってくる。

 

 

「……雄二、言い過ぎ。 吉井、その本は捨てなくていい」

「やめろ翔子、別にこいつを庇わんでも…………待てよ? なんでお前がこのタイミングで口を出す?」

「……私があげた本だから」

 

 一体、どこで接点を持ったのだろうか? どんな本をあげたのか気になるが、今は彼女を尋問する時だろうと頭を切り替える。

 

「あ、霧島さん。 あの本はきちんと読んでいるからね。 あと2日もあれば全部覚えられると思う」

「……ありがとう。 そのときは吉井、よろしく」

「おい明久! お前が翔子にもらった本ってのは何なんだ!?」

「えっと確か…… 『結婚式におけるスピーチの基本』っていう……」

「なんでそんな本の内容を説明会の前口上に使うのかとか言いたい事はたくさんあるが、まずはその本のタイトルに違和感を覚えろ!」

「またまたぁ、そんなに照れる必要なんてないと思うんだけどねぇ?」

「照れてねえよテティス! むしろ怖いんだよこのガキ!」

「事情は分かったから安心するがいい坂本…… 私が責任を持って完璧なスピーチをできるように……」

「しなくていい! 確実に俺の人生が破滅する!!」

「……それにテティスにも頼んでいるから、吉井と一緒にやってくれるように」

「余計なことをしてんじゃねえ! なんでテティスにまで……」

 

 

 

 天然漫才に拍車が掛かっていくその時だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ドン!!!)

 

 

 

 話を中断させるためにテーブルを叩く音が聞こえた場所に全員が振り向く。

 

 

「いつになったら話が始まるかな? いい加減、そろそろ始めない?」

 

 

 その席に座っていた人物は工藤であった。

 表情は笑顔だが、明らかに激怒している。

 

 

 

 

「……すまん。 ……では明久が進行役では話が進まない為、今度は私が進行役を担当させてもらう」

 

((普段おおらかな女が激怒したら滅茶苦茶怖ぇぇぇぇ~……))

 

 あまりにも怖すぎる工藤の怒気にみんなビビりまくりである。

 いや、シャルナクだけは涼しげな態度で軽く流している……

 結局、大まかな進行役はヘリオスが担当することになり、明久は雄二たちのグループの所に戻っていった。

 

 

「実際、木下姉には何本も取られているからな、どんな質問でも一人一問ずつだけだが質問に答えよう」

「一人一問? いくらなんでも少なすぎるんじゃないかしら?」

 

 ヘリオスの言葉に納得がいかないのか、優子は抗議しようとモデルAを構えるが……

 

「これでもかなり多めにしたつもりだ、こうでもしなければ貴様らはどうでも良さそうなことまで聞き出してきて収集が付かなくなる可能性があるからな」

 

 そう言ってヘリオスが目を向けた先には土屋・工藤・葉月の三人。

 自覚があるのか、3人は口笛を吹きながら目を逸らしてごまかそうとしている。

 

「……ヘリオス、ごめんなさい」

 

 言いたいことが分かった優子は普通にヘリオスに謝りすぐに座り直した。

 実質、十回以上も質問が許されるのだから、無駄なく質問をすればむしろ余るくらいだろう。

 

「それじゃあ、聞きたいことを問うがいい。 私が知る限りでならどんな質問でも誠意を持って答えて見せよう」

「その前に質問!」

「なんだ明久?」

「なんで不利な立場なのにそんな上から目線でいられるんですか?」

「「いきなりの爆弾発言!?」」

「おい明久!いきなり質問権を無駄遣いするんじゃねえ!?」

「………………明久、家に帰ったら私の部屋に来い」

「「ヘリオスが怒った!?」」

 

 完全に担任の教師に呼び出しを喰らって怒られる生徒みたいな感じになっている。

 

「では、貴様らは何が聞きたい? 私達の正体についてか? 明久と優子がロックマンになった経緯か? ロックマンという存在についてか? 貴様らの足りない知恵を限界まで使って問うがいい。 私は決して誤魔化したりはしない」

 

 今のヘリオスの言葉に質問をしようとした皆がキレそうになるが、どうにか落ち着きを取り戻し、ヘリオスから情報を聞き出そうとする。

 

 

「まずはあまり関係のなさそうな俺から質問をするぞ、『お前らは一体何者だ? お前らの正体は一体何なんだ?』」

 

 最初に質問をしたのは雄二だった。

 

「二回問いだしたが同じ意味だと思って一つにまとめる事にする」

「私達の正体は『ライブメタル』と言う特別な力を持つ金属の力を引き出す『ロックマン』と呼ばれている存在で、未来世界からやってきた『未来人』と言った程度の……」

「「ツッコミどころが今の地点で3箇所あったんだけど!?」」

「なるほど、ツッコミ所が足りなかったか…… 今後はツッコミ所を増やせる様に精進を……」

「こんなくだらない事に精進なんてしなくていい! つーか俺が聞いているのはそんな冗談じゃなくて、お前らが何者かってことなんだよ!?」

「何を言っている? 私は誠意を持って本当の事を答えたつもりだぞ?」

 

 実際にヘリオスは嘘を言っていない。

 だが、内容が突拍子すぎてなかなか信じられないのだ。

 

「ヘリオスが言っていることは本当だよ、雄二」

「「……は?」」

「うん、実際証拠もあるでしょ? 今、僕と木下さんも持っているものだよ?」

 

 珍しく明久がまともな事を言っていることに全員が驚いてしまう。

 

「……明久、何を言っている?」

「いいから答えて見てよ。」

「……それって、エロ本(カチャ……)あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「あら、土屋君はアタシがそんな人にみえるんだ~?」

 

 それは心外だとばかりにモデルAから作り出した二丁拳銃を土屋の頭に押し付ける優子。

 土屋は恐怖のあまりについ叫び声を上げてしまう。

 

「ライブメタル……ですね?」

「佐藤さん、正解だよ。 因みに今僕が持っているライブメタルはモデルZって言って、様々な剣術が使える赤のロックマンに変身することができるんだ」

「おいおいマジかよ、ならなんで……」

「……雄二、その質問は私がする」

「ちょっと待て翔子! いきなりスタンガンなんて向け……ギャアアアアアアアアアアア!!」

 

 一度質問権を使ってしまった雄二がまた質問をしようとした為、霧島が無理やり気絶させて雄二が言おうとしたことを代弁するように質問する。

 

「……その未来人でロックマンなんて事をしている貴方達がなんでタイムスリップしてこの時代に来たの?」

「そもそも私達はこの時代に来たくて来たわけではないのだ」

「どういうことじゃ?」

「俺達ハ、未来ノトアル場所デ最後ノ戦イニナルハズダッタ場所デ最終決戦二望ンデイタノダガ、ソノ時二起キタ事故デ光二包マレ、気ガ付イタラ4人デコノ時代二飛ンデ来タト言ウ訳ダ」

 

 シャルナクの説明に納得した皆は、ヘリオス達に関しての質問を切り、また別の質問をすることとなった。

 

「……俺からの質問だ、『プロメテとパンドラはなぜお前たちを攻撃した?』」

「ボクも気になるね『あの二人も同じロックマンじゃないの?』」

 

 次に疑問を投げかけたのはムッツリーニこと土屋康太と工藤愛子の二人だ。

 

「フッ… ここ最近は明久の影響で仲が良くなってしまっていたからな、勘違いするのも無理はない」

「「えっ?」」

 

 これまでのロックマン達の関係とヘリオスの説明では勘違いしても仕方ないのだが、本来のロックマンとはどんな存在なのかを説明する必要があるとヘリオスは判断した。

 

「むしろ同じロックマンだからこそ攻撃してきたんだぞ? 全てのロックマンに勝利し、モデルVを回収して未来世界の王となるためにな」

「「世界の王だって!?」」

 

 

 さらにとんでもない話が出てきて、全員が慌てふためく。

 

「ヘリオス君、いくら冗談でもそこまで来たら笑えないよ?」

「ほう? 先程といい貴様らは私の誠意を持って答えた私の言葉が冗談にしか聞こえんようだな」

「「普通はそうとしか思わないからね!?」」

 

 ヘリオスからしてみれば、日常的に誰かをリンチにかけようとしたり、召喚獣なんていうオカルトまがいなものを使って小さな戦争をしていたりする学校があるなんて言う事が冗談にしか聞こえない。

 実際に文月学園に入るまで、ヘリオスは全く信じていなかった事を思い出した。

 ならば…と、実際にライブメタルの力がどれほど凄まじいものなのかを証明するためだけに、とんでもないことを思いつく。

 

「どうやら貴様らにはライブメタルの力を証明する必要があるようだな、少し待っていろ……」

 

 そう言って、ヘリオスはテティスに何かを指示している。

 かと思えばいきなりケータイを取り出して、何処かに電話をかけ出す。

 

 

「どこに電話をかけているんでしょうか?」

「もしかしてこの街に来た者以外にロックマンがいるって言うのかのう?」

「秀吉、それはないわよ」

「どういうことじゃ姉上?」

「モデルAから聞いていた限りでは、もうこの時代にライブメタルは来ていない」

「……つまり、もう新しいロックマンは現れない?」

 

 

 雄二と土屋と木下姉弟が話をしている間に、ヘリオスは電話が終わったようだった。

 

 

「ヘリオス君…だったかい? どこに電話していたのかな?」

 

 どうやら、ヴァンがヘリオスに電話先を確認しているようだった。

 

「なぜ、貴様に教えねばならん?」

「なぜって、あんな話の後でいきなり電話ってどういうつもりか気になるのが普通でしょ?」

「電話の内容によっては……」

「あなたたちを全力で止めさせてもらうわよ?」

 

 ヴァンの加勢に入る為に、アッシュ・グレイ・エールの3人がヘリオスを囲むように詰め寄る。

 流石に意味もなくクラスメイトの家で暴れたいとは思っていないヘリオスは素直に電話の内容を話す事にした。

 

「私が電話をかけた場所は『官邸』にいる『内閣総理大臣』だ」

「へ? 誰それ?」

 

 だが、エール達はヘリオスがどれだけとんでもないことをしているのかが分からず、つい瑞希に質問してしまう。

 

「この日本の政治面における事実上のトップです。 一体どんな電話をしたのかがわからないですけど、直接話ができるというだけでとんでもない……」

「因みに電話の内容は今から1時間後に総理をぶちのめしに行くという脅迫電話だが?」

「「ギャアアアアアアアアアアア!!」」 

 

 いきなり日本の執務拠点に脅迫電話をかけたと言う事実にほぼ全員が顔を青くして悲鳴をあげてしまう。

 感情をあまり表に出さず寡黙を貫いている土屋や霧島ですらが悲鳴を上げるのだからどれだけ危険な事をしているのかが分かるだろう。

 

 

「工藤・土屋・木下弟の3人は私について来い、ロックマンの力がどれほど強大な物かを見せてやろう」

「ちょっ! 分かった、お願いだから離『ロックオン!』してぇぇぇぇぇぇ!!」

「………俺は絶対行かな ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「なんでワシまで巻き込まれているのじゃ!? 頼む、ワシは別に殴り込みなんて行きたくないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……………」

 

 

 ロックマンの力を見せる為、日本の最重要施設の一つに殺害宣言の脅迫電話をかけてから奇襲をかけたという事実の証明の為だけに、3人を巻き添えにして連れ去ってしまった。

 

「で? 進行役のヘリオスが出て行ってしまったけど?」

「あ、ヘリオスから伝言なんだけど『本気で殺す気はないけど、適当に2.3発ほどぶん殴ってから帰ってくる』ってさ」

「「その前に射殺されてしまえ!」」

 

 

 本当に賢者らしからぬ方法で証明しようとするあたり、ヘリオスも壊れ気味になってきている。

 明久いわく「最初会った時は当時の思想も相まって余計ひどかった」らしいが……

 

 

 

 

「あの、ヘリオス君が戻ってくるまでの間に聞いておきたいことがあるんですけど……」

 

 おずおずと小動物のように手を挙げるのは姫路だった。

 

「なに? 僕達にわかる範疇だったら正直に答えるから遠慮しないで聞いてよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 瑞希はテティスの言葉に満面の笑みを浮かべる。

 

「吉井君はどんな女の子が好きだと言っていたかわかりませんか? アトラスさんみたいなタイプですか? それとも美波ちゃ…(モゴモゴ!!)」

「ちょっ! 瑞希ちゃん、貴方いきなり何を聞いているの!?」

「エールさん! 金と女に関係する話はありとあらゆる事件において常に重要な要素なんですよ? 学園の噂ではアトラスさんと吉井君が付き合っているなんて噂も出ていて私も気になっているんです」

「……姫路さん」

「吉井君?」

「ちょうど僕の家に戻ってきていたアトラスに連絡を入れておいたから、『隣の部屋でボクシングでもしようか? ラウンド制限無しで』だって、『そっちはコンビでグレイが一緒でもいいって言っていたけど?』」

 

 明久の言葉に顔面蒼白になる瑞希。

 なぜかグレイまで巻き添えを喰らっており、アトラスに連れられる前に早く優子からモデルAを返してもらわないといけないと思い始めたグレイだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは勘違いだよミズキ、あのふたりの関係は『ロックマン』としての師弟関係っていうだけで、恋みたいなうわついた話は全くなかったよ。 明久の格闘技もアトラス仕込みで最初の頃は何十回と気絶させられてたよ」

 

 

 ヘリオスが工藤と土屋の質問の解答として外に出かけてしまっている間はテティスが代わりに質問に応じる様だ。

 

「まあアトラスはともかく、バイト先の女の子達にはモテモテみたいだよ? それでもその中に本気で恋をしている女の子がいるのかどうかなんて分からないし、ボク達からしてみれば別に興味も沸かない話なんだよね」

 

 戦いばかりの日々に明け暮れていた彼らからしてみれば、一個人の恋愛事情など最早どうでもいいのだろう。

 テティスとシャルナクはつまらなさそうにしながら、質問に答えた。

 

「アタシも貴方達に聞きたいことがあったのよ。 なりたてのロックマンだからって答えないって事は無いわよね?」

「うん、むしろ君からの質問は早めに答えたいと思っていた所なんだ。 君も『一応』ロックマンだから、きちんとボクらの戦いのルールを説明しておきたい位だとと思っていたからね」

「そう、なら『どうしても貴方達の時代に戻らないといけないのかしら? そうしないといけないくらいの理由があって急いで元の時代に戻らないと一生叶わないような、それにはタイムリミットのある切迫した問題なの?』」

 

 優子の質問は元の時代に戻る理由のようである。

 どうやら、せっかく大人しく話し合いで済ませようとした約束を平気で反故にされたり、滅茶苦茶な理由で誤魔化されている身である優子にとってはどうしても聞いておきたいことのようだった。

 

「さすがユウコ、なるほどいい質問だよ。 悪いけど僕らはお互いの理由の為にどうしても元の時代に戻りたいと思ってはいるよ。 それだけは否定しない」

「ダガ、タイムリミットガアル訳デハ無イ、学校二通ッテ馬鹿ナ事ヲヤッテイルノガイイ証拠ダ」

「なら、その世界の王を決める戦いなんて馬鹿げた事をこの場でする必要もないし、少なくともあなたたち4人がこの街の皆を巻き込む気はないって事をちゃんと認められる?」

「……ソウナルナ」

 

 シャルナクの言葉に安堵する優子、これでクラスメイトが敵になるという事がなくなったのは優等生として猫を被っている彼女に取っては非常にありがたい話だろう。

 クラスメイトを相手に銃で撃つという事もなくなるのだから、極端に周りからの心象が悪くなることも無い。

 

 

 

 

「どうしたの佐藤さん、今までの説明で信じられないものでもあったの?」

「いえ、そうではないんですけど気になる事がありまして……」

「気二ナル事……ダト」

「はい、ならなぜプロメテさんとパンドラさんは私たちを襲ったのでしょう? 『未来』の世界の王になるというのならここでヘリオスさんたちと戦っても全く意味がないはずなのに……」

「それに関してはボクたちにもよくわからないかも。 あらかた、ロックマンという存在自体が気に入らないから攻撃したっていうだけかもしれないし?」

 

 

 テティスの発言にまだ疑問が残るようだったが、分からないのなら仕方が無いと判断した佐藤は素直に引く事にしたその時だった。 

 部屋のドアがいきなり、(ドン!)と強引にこじ開けられたのだ。

 そして、そのドアの向こうにはワカメやら貝類やらを全身にくっつけたまま仁王立ちしている女性の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

「き~さ~ま~らァァァァ!!」

「「『ギャアアアアアアアアアアア、お化けェェェェ!!』」」

「『誰がお化けだ! アタシ(オレ)だ!』」

 

 

 激怒した女性は頭に乗っかっていた大きな海藻を床に思いっきり叩きつける。

 同時にその正体が見えてきたが、その正体はモデルFでロックマンとなったアトラスであった。

 

「プロメテに吹き飛ばされた後、2時間もの時間をかけて急いで戻ってきてみれば今度はプロメテが星にされている!、大会は中止になってしまってこれまでに手に入れた景品が後日配送になっているとかどうでもいい説明を延々と話されて足止め喰らうなどと散々な目にあったというのに、キサマら等言う奴らは……」

「ア・アトラス? 落ち着いてよ。 そ・そうだ! ここは一度美波達と一緒にお風呂にでも入って……」

 

 

「ア・タ・シはちゃんと落ち着いているぞ?」

 

 明久の胸ぐらをつかみ、ゼロ距離で睨みつけている光景を見て、アトラスの言葉に同意することなどできはしないだろう。

 

「……アトラス、とりあえずどうやって中に入ってきたとかは置いといてあげる。

……だから浴場でその汚れを落として、服はこっちで用意する」

 

 そう言われたアトラスは、霧島に背中を押されて風呂場まで強制的に連れて行かれた。

 それから入れ替わるように美春・美波の二人が戻ってくる。

 

 

「ねぇアキ、何人かいなくなっているみたいだけど、どこにいるのよ?」

 

 どうやら、美春があらん限りの手を尽くしたのだろう、美波が元に戻っていた。

 

「ヘリオスは工藤さんとムッツリーニと秀吉を連れて、総理大臣に喧嘩を売りに行っている所だよ?」

「一体何をどうやったらそんな状況を作れるんですの?」

 

 明久は二人に今までの状況を説明することにした。

 美春は「ヘリオスって実は馬鹿なんですか!?」などと膨大な量のツッコミを入れていたが、ヘリオスから急にテレビ電話が繋がった事で、質問会どころでは無くなってしまった。

 

 

 

 

 

 another story ヘリオスside

 

 

「……繋がった、これでいいかヘリオス?」

「鮮やかな手際、見事だ土屋康太」

「本気でやる気かヘリオスよ? 相手は完全に殺る気になっておるぞ? 今ならまだ引き返せる……」

「って、もう正門に向かっているし、ねぇ~待ってよ~!!」

 

 そう、今彼らは本当に官邸の正門近くにいるのである。

 3人には適当なフードを被せ、ヘリオス自身はロックマンに変身して、目元にはバイザーを装着する事で顔がわからないようにしているようだ。

 

「A班はこのまま正面からの警備を固め、B班は内部の警備を担当してもらう。

 まもなく、男の襲撃予告の時間に差し掛かる、第一目標に『敵の制圧』第二に……」

「た・隊長! アレ……」

 

 部下の言葉に疑問を持った隊長らしき人物が、部下が指を指した方向に目を向ける。

 そこにいたのは、フードをかぶった(その内ひとりはムッツリーニでケータイで録画を続けている)3人組と風のロックマンに変身していたヘリオスだった。

 

 

 

 

「おい貴様、内閣総理大臣はいるのか?」

「あの、どんなご要件でしょうか?」

「とぼけるな、総理を抹殺すると言っただろうが?」

「君達、ちょっとこっちに来て ……うおっ!」

 

 ヘリオスのむちゃくちゃな発言に驚いた隊長は、ヘリオスの肩を掴んで事情聴取の為に適当な場所に連れて行こうとするが、そのタイミングに合わせたヘリオスがいきなり足払いをかけて隊長を転倒させる。

 

「ほう、いきなり転ぶなど貴様にはドジっ子属性あたりでもあるというのか?」

「「か、かかれぇぇぇぇ!!」」

 

 いきなりの不意打ちに驚いた隊員たちは一斉にヘリオス達を抑えにかかる。

 それに対し、ヘリオスはまるで予想していたかのように両手のセイバーを一瞬で構え、風の力を持って襲いかかる敵を薙ぎ払う。

 

「退避だ、退避しろ!!」

 

 だが、わざと力を抑えているのか、吹き飛んでいく人数が少なく、各所に散らばって警備をしていた人達が集中し、徐々にヘリオス達を囲んでいく。

 

「無駄な抵抗はやめなさい、君たちは完全に包囲されている!!」

 

「ちょっ! これは流石にマズイぞい!!」

「……終わったな」

「うえ~ん! こんなことならもっとシュークリームでも味わっておけばよかった~!!」

 

 強制的に連れてこられた3人も最早諦めモードである。

 そんな中、ヘリオスは……

 

 

 

 

 

 

「もっとだ、もっと集めろ…… 我が持つ力の証明の為に!」

 

 余裕綽々で待ち構えていた。

 どうやら、ダブルセイバーに力をチャージしているようだったが……

 

 

「十分な力を込めることができた ……いい頃合だな」

 

 

 

 そう言って、ヘリオスが使った技は「プラズマビット」と呼ばれる3本のプラズマを発するビットを二つ同時に射出する技だった。

 

「この攻撃を躱せるか!」

 

 いきなりの新兵器に驚いた隊員たちはどうにか退避しようととするのだが、人が密集してしまったばっかりに逆にヘリオスの技の餌食となってしまったのである。

 

 

「嘘だろ…… 100人はいるんだぞ……?」

 

 大型のビットから大量のプラズマが放射され続けた事で完全にパニックに陥っている隊員達。

 そのスキに、ヘリオスは3人を掴んで空を飛び、そのまま正門を突破。

 強引に扉を突き破り、中で待機していたSPを素手で蹴散らしながら奥深くに侵入していく。

 そして、謎の大きな扉の先には……

 

「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 

 ターゲットである総理であった。

 彼がおびえている中、ヘリオスは悠々と正面から中に入っていく。

 そして、ヘリオスは彼の髪の毛を鷲掴みにして、こう言い放った。

 

 

「浅薄なる危機意識…… 警備体制が全くなっておらんな」

 

 完全チートなライブメタルの力を使っておきながら、よくもまあそこまで偉そうにできた物だとモデルHは思ったが、彼に言いくるめられて力を貸している地点で彼はもう何も言え無くなってしまっていた。

 その一方でヘリオスは何を思ったのか、剣を一度しまい、握手を求めるように手を差し出した。

 

「ご、ご忠告ありが……」

 

 ヘリオスの言葉と行動を見て、その場を取り繕うように握手をする総理であった。

 

 

 

「(チェストーォォォォ!!)ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 いきなり襲いかかる衝撃波が机を木っ端微塵にしたヘリオスの行動に恐怖を抱き、尻餅を突いてへたり混んでしまう総理。

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 どこぞのオーガのような叫び声をあげながら強引に窓を蹴破り、飛び降りて脱出するヘリオス。

 脱出と呼ぶにはあまりにも堂々としすぎていたが……

 それから少し遅れて3人がついていくように出ていくことも忘れない。

 愛子は流石に申し訳なく思っていたのか、困ったような笑顔で総理に「ゴメンねー!」と謝りながら出て行った。

 

 

 

 そして、官邸襲撃開始から脱出まで6分37秒という驚異的記録を叩き出した(その内の大半は警備部隊の人間数百人が集中するまでの時間)

 

 

 ヘリオスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」」

 

 ヘリオスが本当に襲撃に成功した映像を見せつけられた文月学園組は、驚きのあまり叫び声を上げる。

 

 

 

「どうだ! これでロックマンという存在が世界の王となりうる力を持っているということが証明できただろう!」

「「そんな事の為に、いちいち国を相手に喧嘩を売るような真似をするな、この馬鹿!!」」

 

 ヘリオスの滅茶苦茶なやり方に、全員からツッコミが飛んでくる。

 

 

「それよりも、ウチもアンタたちに聞きたいことがあったのよ。 ちょうどヘリオスも戻って来たところだしウチもいいかしら?」

「構わんぞ、私の返答にケチを付けるような事が無いならばな!」

「一体何があったのよ…… ウチからはひとつだけ『そもそも一人1問ずつしか認めておらん』うるさいわね……

ウチから聞きたいことは……」

「どうすれば胸が大きく(バチン!) おぶっ!?」

「ほう、貴様はどうやら一度デリカシーというものについて一度教育する必要があるようだな」

 

 風呂から戻ってきたアトラスが、デリカシーのない明久の発言に対して制裁を兼ねて腕を関節を極めにかかる。

 彼女の怪力で関節を極められたら常人では一瞬でちぎれてしまうレベルである。

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアア! アトラス、ごめんなさい! お願いだから腕の関節だけは……」

「問答無用!」

「明久君も反省して下さい!」

 

 そんな怪力に耐え切るだけでも十分すごいが、それでも十分ボロボロな状態でダウンしてしまう明久。

 

「ムッツリーニ君、アトラスのスカートを覗こうとするなんて勇気あるね~」

「(スリスリ)……なんのことやらさっぱり分からない」

 

 土屋と工藤の言葉を聞いていれば分かるだろうが、実はアトラスは霧島から服を借りているのだ。

 因みに服装は白い薄手のカーディガンとその下に桃色のカットソー、下は薄手の膝上までのスカートに中に下着が見えないようにだろうか? インナーらしきものが中から見えた。

 

「……めざせ、ワールドカップ!」

「なで○こジャパン!?」

 

 普段はあまり土屋の奇行については気にも止めていないアトラスだが、今回はさすがにウザかったのだろうか、思いっきり足元にあった土屋の顔をカメラごと蹴り飛ばそうとする。

 今回も本気ではなかったのだろうが、それでも十分危険な蹴りが襲いかかってきて驚いた土屋は一瞬で飛び退いて回避する。

 

「しかし霧島、本当によかったのか? これほど良い服だとかなりのお気に入りではないのか?」

「いい、似たような服がまだ何着もあるから……」

 

 霧島の寛大な言葉に感謝するアトラス。

 男性陣は全員、あまりの変わりように声も出ないようだ。

 正直な話、アトラスは黙っていればかなりの美人である。

 お姫様の影武者か演技でもやらせ、ドレスを着せて愛嬌振り撒けば、ほぼ全員がお姫様だと言われても信じられる程だ。

 これほど綺麗な服をもらったあとでは姫路・グレイとのボクシングなど出来はしないだろう。

 せっかく譲ってくれた服を暴力で汚したくないのは当然だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うみゅ~……」

 

 何だかんだで騒ぎも多かった質問会だったが、どうやら葉月ちゃんの方が限界のようで、時間も見てみると既に夜になっており、そろそろ帰らないと明日の学校に支障をきたすだろう。

 

「それじゃあ、今日はこの辺にしとこうか? 明日だって学校があるんだし、みんなの事も家に送らないといけないしさ」

 

 そう言ったテティスの言葉をきっかけに皆を家まで護衛しながら送る事となった。

 

「霧島さん、今日はありがとうございました」

「今日はありがとうです、綺麗なお姉ちゃん」

 

 ヘリオスは佐藤、アトラスは土屋と工藤、テティスは島田姉妹の、シャルナクは1度モデルAをグレイに返した優子と秀吉を、明久が美春の護衛をする事となった。 美春が「なぜ美春がこの豚野郎なんかに守られないといけないんですか!?」と不満げだったが……

 なお、雄二は霧島から「今夜は帰らせない……」と言って一瞬で縛り上げて動きを完璧に封じ込めてしまう。

 

 

 

「おーい、グレイ君!」

「えーっと、そこの……グレイ君だったかしら?」

「あ、お姉さんが優子さん?」

 

 どうも敬語になっているグレイだったが、どうやら姫路の影響を受けて年上のお姉さんには敬語を使うことを覚えたようだ。

 とは言っても、年上のお姉さん限定(エールは例外)だけのようだが……

 

 

「ええ、あなたのライブメタルを一応返しておこうと思ってね」

『グレイィィィィィィー! ようやく帰って来れたよ~!!』

 

 モデルAが飼い主に再開した子犬のように優子の手から離れ、グレイの元に帰って行く。

 

「おかえり、モデルA!」

『グレイ~!』

 

 生き別れになった兄弟が再開したかのような感動的な光景に姫路は目に涙を浮かべて感動している。

 それから、姫路の仲裁で明久とグレイが話し合いを始めようと思ったのだが、どうやらモデルAが戻ってきてくれたこともあり、グレイは特に明久に対して恨んでいないとのことだった。

 

 

「本当にごめんね、グレイ君」

「もういいって、バカの兄貴」

「ははは…… バカの兄貴……か」

「キャアアアアアアアアアアアアア、吉井君、そんなに落ち込まないでください!」

「おーい、そろそろ帰らないと、お父さんに怒られちゃうぞ~!」

「あ、はーい。 グレイ君、そろそろ行きますよ」

「じゃーねー、バカの兄貴」

「はーい、また今度遊ぼうね~」

 

 姫路家で居候と化しているグレイ達は、ヴァンの呼びかけに応えるように家にそのまま帰る。

 それに続くように『佐藤とヘリオス』・『アトラスと土屋と工藤』・『テティスと島田姉妹』の順に各自の家に向かっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……雄二」

「あれ、翔子? 一体どうした?」

「……お父様に事情を説明して、プロメテとパンドラについて調べてもらった」

「お前ん家は普段何やってんだ?」

「……お父様の人脈の中に探偵がいるだけ。 それよりもとんでもないことが分かった」

「アイツ等の事か? もう何が分かっても……」

「……あの二人と同じ名前の二人組がドイツの学校の名簿にあった」

「それで?」

「……その学校はその州では屈指の名門校で、近い将来には新たに試召戦争を導入する予定だった」

「だったって…… おい、まさか!」

「……日本時間で私たちが振り分け試験を受けた前日に、全生徒600人と教師陣が行方不明になったまま廃校にされた」

「されたって…… おい、嘘だろ!?」

「……私もこの調査結果を見た時には信じられなかった、でも事実」

「あれ~? 雄二、霧島さんと何を話してるの?」

 

 

 先程から縛られっぱなしの雄二と霧島のふたりがプロメテとパンドラの調査資料を持って話しているところに明久は気が付き、途中からだが話を聞こうとする。

 

「……プロメテとパンドラの事を調べてもらっていた。 ……ちょうどヘリオス達にも渡しておきたかったから、吉井がヘリオスに渡しておいて」

 

 そう言って霧島が渡すのはかなり厚みのあるA4サイズの封筒。

 

「え? あ、うん分かったよ。 こんなに丁寧に調べてもらってありがとう。 これから三日間だけ雄二を自由にしていいから。 もし照れ隠しが過ぎるようだったら僕を呼んでね。 こう見えても得意なんだ、雄二ハント!」

「ふざけんな明久! 三日間もやられたらガチで洗脳されちまう!!」

「……洗脳じゃない、これは教育、素直に私への愛を囁いてくれるようにするための……」

「おい、ならなんで鉄格子の扉で作られた部屋があるんだ?」

「……(ポッ!)」

「顔を赤らめて誤魔化すんじゃねぇ!! 一体どう言う意味だよおい!!!」

 

 

 自身の自由が勝手に取引されて激怒する雄二。

 

「じゃあ、この封筒はヘリオスに渡しておくから! 霧島さん、また明日」

 

 それを無視して明久は先程から待たせっぱなしの美春の所に戻り、そのまま彼女を家に送って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、未来世界だのライブメタルだのロックマンだとか完全に特撮ヒーローの世界じゃないですの。 しかもその力を悪用する馬鹿二人だなんて、一体どう言うつもりなんですのあの二人は?」

 

 何も話さないほうが空気が悪くなるからだろうか、美春から話しかけてくる。

 

「美春さん、その件でアトラスが言っていたけど、『なんでこの街に来たのか』よりも『なんでわざわざ騒ぎを起こしに来たのか』っていうことらしいよ?」

「何言っているんですの? そんなの豚野郎であるお前みたいなロックマンがいるからでは……」

「でも、それならFFF団や学園長が送り込んだ賞金稼ぎまで攻撃したりする意味なんてないんだよ。 

 べつに事件を起こしたいだけなら、わざわざあんな目立つようにしなくても影で色々とやればいいだけだから、ここで僕達に襲いかかって大騒ぎする意味なんて無いって事」

「確かに、言われてみればその通りですね」

「それでもこうやって暴れまわった以上、何かしらの意味があるはずなんだ。

 その理由如何によっては文月学園どころじゃない、この国の危機に匹敵する何かが起こる! ……って理由如何とか難しい言葉使っちゃったよ!」

「バカが難しい言葉を使おうとしてもなんだか滑稽なだけですわね」

「美春さん、言葉の刃でメッタ刺しだね!!」

 

 明久がツッコミを入れている風で喜んでいると、美春の家が見えてきた。

 

「それじゃあ豚野郎、明日もお姉様といられる時間を作って下さいね?」

「うん、明日は改修工事が終わって新しいFクラスの教室に移る日だから、それを利用すれば行けると思う」

「ええ、ならそのタイミングで読んで下さいね。 期待していますわよ、吉井君」

「こういう時だけ都合よく…… 分かったよ、期待して待っていてね美春さん。 今日はありがとう! また明日ね」

 

 

 明久は大会のイベント攻略を手伝ってもらった事へのお礼を言った後、そのまま大急ぎで家に帰っていった。

 家に帰ったら、まずはヘリオスの部屋に行って霧島から預かった封筒を渡しに行くことになるだろう……

 そしてその封筒の中身を見て、明久とヘリオスは驚きの情報を知ることとなる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 another story ???side

 

 

「藤堂カヲル、貴方にはなんの恨みもありませんが、私個人の都合の為だけに踏み台になってもらいますよ」

 

 不敵に笑う中年の男性。 彼が今見ているのはプロメテとパンドラのプロフィールファイルである。

 

「Rockm○n ...... Ma○saker ......」

 

 そんな彼の隣にいるのは先に撤退していたパンドラと、セルパンと鉄人の召喚獣によって星にされたはずのプロメテであった。

 

「Ich plötzlich, was Sie sagen, Puromete!(っていきなり何を言っているのかね、プロメテ君!)」

 

 いきなり何が聞こえたのだろうか、謎の中年男性は聞こえた内容に驚き、先程言ったことを聞き返してしまう。

 

「Haha ~ tsu! Zwar würde nicht sagen, wie eine schwierige Sache. Ja Onkel und der nicht mehr senile?(ははっ! そんな難しいことは言っていねえだろうがよ。 もう耄碌してんのかよ、おっさん?)」

 

 そして、このあとにプロメテが続けた言葉はとんでもない事だった。

 

「Die obere gefärbt die Jungs von jeder in der Schule in Angst und Verzweiflung Ich werde mit Cyber elf Te ändern.(学園にいる奴らの全員を恐怖と絶望に染め上がてサイバーエルフに変えてやる)

Weil schlechte Gefühle Nante werden normalerweise nicht in dieser verrückten Welt verbracht.(だってこんな狂った世界で普通に過ごしていられるやつらなんて気持ち悪いからよ。)」

 

 another story ???side end




はい、ここ数ヶ月でアニメ版のロックマンエグゼを見ていた閻魔刀です。
そのことを何度も話そうと思いつつもいざ新しい話を投稿するときに忘れてしまっていました。

今回で第1章の本編は終わりになります。
次で番外編を一つはさんでから、今度は清涼祭編へと突入します。

因みに、もしここで姫路・島田・木下優子の内誰かと恋仲になる設定でしたら、この第1章の地点で恋愛要素が深く絡んでいましたが、彼女達は落選してしまったこともあり、このストーリーは明久達の日常と、ロックマン達との出会い位しか書くことがなかったですね。
実際、バトルのほうがはるかに多いですしwww

一応、もし彼女達の内の誰かがヒロイン化したらどうなっていたかを簡単に書いておきたいと思います。





1.姫路瑞樹

ヴァン達を保護して助けた人物が木下姉妹(間違えた・姉弟だwww)になっていた。
モデルAの調子がおかしくなり、グレイがしばらくロックマンになれなくなってしまう設定が追加された(合宿編以降で治る予定だった)


2.島田美波

プロメテのせいで植えつけられたトラウマの影響で明久のロックマン化を見た瞬間に発狂しかける。
そのトラウマと向き合いながら恋仲になっていく話になる。 BADENDの展開分差路を書いたらもっとも多くなるかもしれない。
今とは逆に清水美春とは完全に対立し、バイト先がセルパンの店になる。
展開次第によっては姉妹で付き合っていく事もあり得た。


3.木下優子

ロックマンX7のゼロとアクセルのような関係がしばらく続く。
変な正義感と猫を被った性格のせいで、ロックマン関連の事件が起こる度に明久の後ろをついていくような展開になる。
きちんとコンビを組めば相性は抜群だが、最初はお互いの考え方が合わないために迂闊な連携を組むより別々で動く事が多くなる。

例:明久は学園で良い方向に変わっていくヘリオス達なら未来世界に帰ってもきっと「正しい世界の王になれると信じている」のに対して、優子は未来世界に帰る事で悪人として嫌われ続けるより今の世界でロックマンとしての人生を捨てて平穏に過ごしてほしいと言って「王としての器が無い」と思っている。



……と、言った感じの設定で作っていく予定でした。
なので、ただでさえ長くてカオスなストーリーがさらにとんでもないことになってツッコミきれなくなったと思います。

さて、次回で番外編を投稿して、それから清涼再編を始めたいと思います。

感想を楽しみにして待っていま~す!!


2月3日・召喚獣設定を更新しました。
そちらの方もよかったら見て下さい!!


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番外編:spinout! それがボクらの日常!?

鉄人の強さを明確にしたいと思って番外編を作りました。

ついでにこの話を投稿したあとにタグを編集・追加しておきます。




「……で、俺に反感を抱いた貴様らは、補習室までクラス総員で押し掛けて来たという訳か?」

「はい、生徒と教師としてではなく、漢として正々堂々と真剣勝負をしにきました」

 

 鉄人は半分呆れつつも怒っていた。

 今現在、Fクラスの皆は鉄人のいる補習室に押し寄せている。

 事件はFクラスの担任が鉄人に変わった事を不満に思った明久達のせいで起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 another story Fクラスside 

 

 

 

「俺は、お前らFクラスを見ていて、もしかしてお前らは『馬鹿なんじゃないか?』と思っていた」

 

 そう言って鉄人はクラスを見回す……

 

「鉄人、アタシらがクラス発表の紙を受け取った時にも同じような事を言っていたよな?」

「ああ、あのAクラスを相手に善戦した時の話を聞いて思うところがあってな……」

 

 Aクラスの戦いの結果は既に情報が出回っており、学園内で知らない人物はいないとまで言われている。

 

「今更何を言っているのテツジン? そんなの言われなくても分かっていた事じゃないかな?」

「ああ、俺はこのクラスの現状を見て自分の間違いに気がついたよ……」

「ソウカ、ナラモウ何モ迷ウ事ナド無イナ?」

 

 鉄人の見ている先には各委員を決める為の投票結果が書かれていた……

 

「ああ、喜べシャルナク…… もう迷う必要などなくなった、俺ははっきりとこう言える」

 

 そして、明久達Fクラスを見てはっきりと言いたいことを告げる。

 

「お前らは正真正銘の大馬鹿野郎共だ!!!」

 

 そう言われても仕方がないだろう。

・猫耳を付けられている事になんの違和感を感じていない秀吉。

・犬耳フードに短パンを付けさせられたまま謎のショタコン女子の集団に誘拐されそうになっているテティス

・言葉巧みにうさぎ耳の着ぐるみを着せられている明久を撮影している土屋。

・なぜか乱入している霧島と美春

 

 

 ……正真正銘のバカと言い切るにはこれで十分だ。

 呆れた鉄人はため息をついてもう一度黒板を見てみる。

 そこには美化委員や図書委員などの普通の委員も混ざっているのだが……

 

「なんだ、このマスコットキャラクターというのは?」

 

 明らかに異色な物が混ざっていた。

 明久曰く、「クラス全体で決めた委員です!」らしい。

 

「何なんだ、このクラスは! クラス代表の坂本はどこだ? あいつならまだ話は分かる……」

 

 だが、その雄二も乱入している生徒の一人であるAクラス代表の霧島翔子に、浮気の容疑で縛られていた。

 瑞希と美波が「毎日ラブラブで羨ましい」とか「まるで本当の夫婦みたいで素敵です!」などと言い出している。

 結局「そんな訳無いだろ!?」と言い出した鉄人の手に寄って坂本は解放され、ブレない鉄人によって霧島はAクラスに送り返された。 

 それだけではなく、訳の分からないマスコットキャラクター(主に秀吉・明久・テティス担当)の強制廃止や、他クラスが入っている委員の決め直し、土屋の盗撮用カメラなどの不用品の没収、生徒間での金のやり取りの禁止、姫路・アトラス・テティスの3人を除いて全員赤点だらけなのを理由に全員が補習授業など、Fクラスの正常化が異様なほどに進んでいった。

 

「鉄人をFクラスから追い出すんだ!」

「「おおーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」

「じゃが、鉄人は強いぞい? 一体どうやって追い出すつもりじゃ?」

「こんな時は司令塔の雄二と、戦闘術のプロフェッショナルであるアトラスの出番だよね?」

 

 明久はアトラスと雄二に期待しているようだったが……

 

「ああ、まーいいんじゃないか? 鉄人が担任で……」

 

 雄二の方は霧島から解放された事で鉄人支持派になってしまっている。

 

「ふん、これは貴様らの問題だろ、戦いとなったからといって簡単にアタシに頼るんじゃない!」

 

 アトラスの方は平気で自分に頼ってくるFクラスの皆を手伝う気が全く無いようだ。

 少なくとも、本当に危ない時以外は助ける事はないだろう。

 

「坂本君は好きな人と離れ離れでもいいんですか?」

 

 瑞希はどうにか雄二にも協力してもらえないか話をしてみる。

 

「好きな人かどうかはともかく…… どうにか頑張れば個々の要望は受け入れてもらえるんじゃねえのか? ムッツリーニのカメラを返してもらうとかな……  ……そうだな」

 

 なんだかんだ言って雄二も手伝う気の様だ。

 明久達がツンデレなどと言って茶化したら、「お前ら、手伝うのを辞めるぞ!?」と言ってキレそうになってしまったが。

 

「おーい、瑞希姉ちゃん! 忘れ物があったから届けに…… って何の話をしてるの?」

 

 いざ鉄人に挑もうと教室を出ていこうとした時、瑞希の忘れ物を届けに来たグレイとヴァンがFクラスに入ってくる。

 

「ああ、今から勝手に担任になった鉄人を追っ払って行こうと思ってんだが、二人も参加するか? たしかヴァンって言ったか? エールさんから結構強いって聞いているぜ?」

 

 完全に部外者であるグレイとヴァンを巻き添えにしようと雄二が誘い出してきた。

 実際、グレイは体が機械のレプリロイドで、ヴァンは純粋な人間だが未来世界での仕事の都合上、殺戮マシーンであるイレギュラーを相手にある程度は戦えるくらいの戦闘力はあるのだ。

 

「悪いけど、オレは遠慮させてもらうよ。 さすがに理由もなく人を殴りたくはないし、召喚獣っていうのも持ってはないから全く力になれないと思う」

「そうか、まあべつに召喚獣の方は学園長に言えば体験版用に作ってもらえるらしいけど、無理矢理参加させるわけにもいかねえか…… ボウズはどうするんだ?」

「ボクもやめておくよ。 瑞希姉ちゃんの力にはなりたいと思うけど、鉄人ってあのガチムチ筋肉博覧会とかしていそうなゴツイおっさんだろ? あんなの正面から相手にしていたら体がバラバラにされるに決まっているって……」

 

 ヴァンはどうやらアトラス同様静観を決め込む気の様だ。

 レプリロイドであるグレイでもさすがにモデルAの力を使わないと鉄人には対抗できないようである。

 

「あ、でも皆がどうやって戦うのかが気になるから、ボクも一緒に見学には行ってもいいか?」

「うん、僕らの勇士をしっかりと見ておくといいよ。 なんて言ったって侵略者『鉄人』を追い出して、Fクラスに平穏が戻ってくる瞬間なんだからね」

 

 その明久の笑顔はまさしく戦地に向かう将のようであった。

 とても自信に満ちていて、それでありながら余裕も持ち合わせていた……

 

 

 

 

 another story Fクラスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが事件発端の顛末である。 

 それから補習室に向かう途中でなぜか高橋女史と話をしていたヘリオスと(召喚フィールドを貼るために高橋女史にも事情を説明した)美波に引っ付いて来た美春までそのままついてきた。

 

 

「しかし、これで正々堂々というには人数が多すぎやしないか?」

「……まさか、鉄人ともあろう者がこの程度のハンデで断りはしないでしょうね?」

 

 完全に人のプライドを刺激しつつも脅迫している雄二。

 この瞬間に鉄人はこの計画の指揮者が雄二である事に気が付く。

 

「断りはしないが、一体何で勝負するつもりなんだ?」

 

 一応、正々堂々と真剣勝負をするのだから、ある程度のルールくらいは設けておきたいだろう。

 

「ここはもちろん試召戦争で……」

「あいにく俺はこの担任騒動のおかげで試験を受けそびれていてな、試験の点数が無いんだ。

その代わりと言ってはなんだが、試合としての殴り合いならば喜んで受けてやるぞ?」

 

 スーツを脱いで構える鉄人。

 その威圧感は体格も相まって鬼を連想させるにふさわしいものがあった。

 

「どうする? いきなり作戦と違うぞ?」

「どうするったって……」

 

 動揺するFFF団の皆。

 雄二もこれが想定外だったのか、一度前に出る事で他の皆が無茶な勝負をしないようにしているが、新たな作戦を組み直せるほど冷静にはなれてはいなかった。

 

「坂本雄二、ここは一度下がった方がいい。

鉄人は試合形式での喧嘩なら受け付けると言った、ならば昼休みか放課後あたりに総員で囲んだ上で襲いかかれば……」

 

 ヘリオスはここで雄二に一度撤退するように進言する。

 

「ちっ、ヘリオスの言う事を聞くのはシャクだが、この際は仕方ねぇ! 明久、ほかのみんなを連れて一度Fクラスに戻って……」

 

 雄二はヘリオスの言葉を信じ、一度みんなを教室に帰して試合形式での戦いにできるように交渉するつもりだった……

 だが、そんな考えが理解出来る程Fクラスの人間の頭が良いはずが無く……

 

「……相手は一人、……数で押せば勝てるッ」

 

 忍者服を装備したムッツリーニを先頭にFFF団員が総出で突撃する。

 だが、今彼らがいるのは補習室。

 つまり、机などの道具が大量に置かれた狭い一室なのだ。 もし、彼らが戦っていた場所が体育館や運動場などの広い場所なら、この集団戦法は非常に有効であった。

 しかし、今回の補修室は人数が多過ぎるが故に非常に狭く感じる。

 その結果、一度に攻撃できる人数が自然と絞られてしまうのだ。

 結局目にも止まらぬ速さで特攻した土屋は装備していたスタンガンを逆に一瞬で奪い取られた末に電撃の海に沈められ、FFF団のみんなも巴投げや足払い、腕ひしぎなどの柔道技で徹底的に、それでいながら怪我すらすること無く一方的に叩き潰されていた。

 

「こうなったら多少卑怯だけど…… タカハシセンセー、召喚許可を!」

 

 クラスメイトがどんどんやられていく中、今度はテティスが召喚獣を呼び出す。

 あくまでロックマンとしてでは無く、この学園の一生徒として勝負をするつもりらしい。

 それでも充分卑怯だが、それを気にしていられないと判断したテティスは自身の召喚獣と共に鉄人に立ち向かう。

 

 

 

テティス vs 鉄人

 

教科 数学

 

点数 150点

 

 

 

 

「『試獣召喚(サモン)!!』 召喚獣のちからは凄いんだ! 物に触れる事が出来るボクの召喚獣で攻撃されればいくらテツジンでも……」

 

 そう、テティスの判断は正しかっただろう……

 それが普通の人間の範疇だったならば……

 文月学園特有の異常思考で考えなければ……

 

「殴れればな!?」

「召還獣が殴られればボクも痛い!?」

 

 上からハルバードを振り下ろし、一気にねじ伏せようとしたテティスの召喚獣は鉄人の左拳を叩きつけられてしまい、逆に地面に叩き落とされる。

 しかも、地面でバウンドした召喚獣はそのままちょうど鉄人に取って殴りやすい場所まで浮き上がっており、そこに怒涛のラッシュが召喚獣の顔面に的確に叩き込まれる。

 拳のラッシュの最後にアッパーを顎に叩き込まれ、天井に叩きつけられて下に落ちそうになったところを、さらに蹴り上げ・空中での踵落としの順で再度地面に叩き付けられ、反動で浮き上がったところに超高速の突撃(右ストレート)で殴り飛ばされた。

 観察処分者の召還獣の痛覚フィールドバック率が3割程度であった為に、その分鉄人の攻撃も容赦がなかった。

 

 

 

 

 

「チキショー、こんなん相手に勝てるかよ!!」

「どうして、たった一人で44人の男子高校生を相手に勝つんだよ…… しかもひとりは召喚獣有りなんだぜ!?」

「……テティスの召喚獣を殺ったあの動き、もはや人間兵器レベル」

 

 須川・横溝・土屋の3人も今の鉄人の動きを見て、もはや愚痴をぼやくしかできずにいた。

 そして、最期に攻撃を仕掛けた雄二もどうにか諦めずに指揮官として皆に指示を出して戦っていたが、テティスの召還獣の敗北と同時に鉄人に首元の襟を掴まれ、一瞬で地面に投げ飛ばされていた。

 

 

「アンタらって、こういう時だけは(・・・・・・・・)強い結束力を発揮するわよね……」

「ある意味凄いとは思いますが……」

「その努力を少しでも勉強に向ければ、Dクラス位にはなれるでしょうに…… 所詮豚野郎共は醜い豚ですわね……」

 

 呆れ果てた顔で倒されたみんなを見ているのはFクラスの数少ない女子の島田美波と姫路瑞希、そして彼女に付いてきた清水美春であった。

 彼女達まで巻き込む訳にはいかなかったので、どうにかグレイと明久が後ろに下がらせていたのだ。

 その甲斐もあって、彼女達は無傷である。

 

「皆下ガッテイロ! 俺ガ殺ル!!」

『(やる)の文字が今(殺る)になっていなかったか!?』

 

 そう言って倒れていたクラスメイトを退けたのはシャルナクだ。

 それと同時に、暇になっていたヴァンとヘリオスが隣の部屋に適当なマットを勝手に体育館から持ち出してその上に敗者を運んで休ませている。

 

「セントウ・カイシ……」

 

 まず今回シャルナクが取った戦法、それは己の暗殺スタイルを貫いた物だった。

 左手に土屋から借りたスタンロッド、右手には愛用の苦無を装備。

 土屋の時と違って彼が取った行動は、体のブレ足音をを完全に消し去る特殊な歩行法を用いて、鉄人の間合いまでゆっくりと詰めていく作戦だった。

 

「ほう? シャルナク、お前そんな事が出来たのか?」

「…………」

 

 鉄人の質問を無視して徐々に間合いを詰めていくシャルナク。

 彼は今、注意を両手の武器に向けさせていて、基本的には警戒が薄い方の武器で攻撃を仕掛け、もし両武器共に警戒を緩めることがなかったなら、ロックマンとしてでは無い、暗殺者としての奥の手を使おうとしていたのである。

 

「(モシ両手共二警戒シテイルナラ、ワザト武器ヲ手放シ、強烈ナ爆音ヲ両掌デ放ツ『クラップ・スタナー』ヲクレテヤル!!)」

 

 シャルナクの暗殺者としての最後の切り札、一度暗殺に失敗し、しかも逃げることすらが厳しい状況でのみ使う正真正銘の切り札「クラップスタナー」。

 猫騙しのように両手を敵の眼前で叩きつけるのだが、この技の一番恐ろしい特徴は敵の意識の波長に合わせて叩く事で、一時的に敵を気絶させることすら可能なのである。

 

 

 左手のスタンロッドに電流を流して、動揺を誘おうとするシャルナク。

 

「(クッ! ヤハリ誘イ二ハ乗ラナイカ!!)」

 

 武器には頼れないと判断したシャルナクは、タイミングを見て落とすように武器を手放した。

 そして、作戦通りにクラップスタナーを使おうとしたその時だった……

 

「猫騙しとは意外と地味な手に頼ったな、シャ・ル・ナ・ク?」

 

 クラップスタナーが発動する寸前でシャルナクは両手首を掴まれていた。

 「コレハモウ駄目ダ……」と判断したシャルナクは素直に降参しようとしたが、それすらも間に合わずにそのまま一本背負いで地面に叩きつけられてしまった。

 動けない事が確認されたシャルナクは、そのままヴァンの手で運ばれていきそのまま強制的に休憩を取らされた。

 

 

「吉井君? シャルナクさんって意外とお茶目なところがあるんですね。 猫騙しで西村先生に勝つ気だったんですか?」

「あ…… うん、そうみたいだったね、あんな一面があったなんて僕も知らなかったよ(言えない、実はシャルナクがガチで殺る気で挑んだって……)」

「でもどうするんだ? テティスのバカは召喚獣と一緒に叩きのめされたし、シャルナクもギャグに走って自爆したし、そもそもボクは挑もうなんて気は全く無いよ?」

「どうするのよアキ? まさかアキが戦うなんて言うつもり?」

「うん!」

「そう、せいぜい頑張りなさ……え?」

 

 冗談のつもりで美波が明久をけしかけるが、まさか本気だとは思わなかった為に止めに入ろうとする。

 しかし、その明久は既に革製の手袋をはめ、拳を上げて構えている。

 その構えはまるでボクシングのようで、敵を殴ることを前提にしている様だ。

 

 

「ほう? 吉井、今度はお前か……」

 

 それに応じる様に鉄人は全身をリラックスさせて、右手を後ろに構えて半身を取る。 左手を若干前に出して体を揺らしてリズムを取る。

 

 

「ふんっ!!」

 

 先手を取ったのは明久だった。

 一瞬で鉄人の懐に入って顔面に右肘打ちを当てに来たが、読まれていたように防がれてしまう。

 

「はあっ!!」

 

 しかし、実際には肘打ちはフェイントであり、肘に気を取られているスキに左掌打を顎に叩きつける。

 しかも、その攻撃で体制を崩した瞬間を狙い、『ボディーブロー・左右からの顔面ストレート・左アッパー・右掌打から肘打ち』のラッシュを叩き込む事による衝撃で、鉄人を若干だが後退させる事に成功する。

 

「ちょっ!! アキって、こんなにも喧嘩が強かったの!?」

「吉井君、頑張ってください!!」

 

 

 それだけでは終わらない、その後退した鉄人に詰め寄り、遠心力を付けた回転蹴りを顔面に打ち込む事に成功する。

 だが、それでも大して堪えていないのか、明久が放った渾身の蹴りの技後硬直時を狙い、明久の腹に寸勁(すんけい)で殴り返す。

 完全に当たる前に体を引くことで衝撃をある程度受け流した明久だが、それでも鉄人の拳は強烈で明久が立とうとした時に若干だが腕が痺れていた。

 もし鉄人の拳をモロに受けようとしていたなら、その衝撃で後ろにいた女子にそのまま激突し、大変な事になっていただろう……

 

「ヤッ!」 

 

 次に明久が取った攻撃は上からの飛び蹴りに見せかけたスライディングであった。

 当然、上に飛んで躱す事で対処する鉄人だったが、明久が「姫路さん、美波もどいて!!」という言葉とほぼ同時にドアごとぶち破るほどに強力な掌打を叩きつけ、鉄人を廊下の方まで打ち飛ばした。

 

「うわっ、なんだ!?」

「吉井だ! 吉井と鉄人が戦っているぞ!!」

 

 いきなり鉄人がドアを破って飛んできた事に驚いたほかの生徒達が驚いてその場から離れ始める。

 そして、ドアの向こうから明久が壁蹴りを繰り返しながら鉄人に対して飛び蹴りの追撃を叩き込む。

 衝撃を受け流しながら体制を立て直すために、バック転をしながら後ろに下がる鉄人。

 それを追うように明久は全力疾走、体制を立て直す前に蹴り上げから空中踵落とし、そしてサマーソルトキックの3連擊を繰り出す。

 その全てが命中した後も手を緩めず、肘打ちで決着を付けようとする明久だったが、一歩間に合わずに鉄人に受け着られてしまう。

 

「ほう? 1年の時が嘘のように強くなったな明久?」

「それはどう…もっ!!」

 

 腕を押さえつけている鉄人を無理矢理引き剥がし、距離を取ろうとした明久だったが、その行動は失敗に終わり、鉄人から容赦の無い蹴りが繰り出される。

 後ろに吹き飛ばされ、膝を付いた明久に左フックを繰り出した鉄人。

 それを躱した明久だが、その拳は廊下の窓ガラスを突き破り、粉々になって砕け散ってしまう。

 鉄人の拳を弾くのと同時に思いっきり鉄人を補習室の中に突き飛ばした明久は、彼の服をつかみながら跳躍し、彼の胸板を踏みつけ、鉄人を床に叩き落とす。

 

「なんだか物凄い騒ぎになってきましたわね、お姉さ……まああああああああああああああああああああ!!」

 

 廊下での様子を見ていた美春が、鉄人とぶつかりそうになってしまい、大慌てで飛び退いてよける。

 その後ろでは、明久が鉄人を踏み台に跳躍し、距離を取ろうとしていた。

 

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 その明久の脚を掴んた鉄人は、補習室内の机を巻き添えに思いっきりに明久を何周も振り回し、ハンマー投げのように明久を投げ飛ばした!!

 

「「吉井君(アキ)!!」」

 

 既にグレイによって廊下に避難させられていた瑞希と美波は振り回されている明久を心配しているようだが、その心配は杞憂に終わる。

 投げ飛ばされた明久は壁に激突することなく、逆に壁を蹴り返して鉄人に超高速で突進して見せていたからである。

 

「やあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 鉄人はそれを拳で迎撃しようとしたが、その拳が当たる前に明久の掌打が鉄人の顎を打ち抜き、しかも突進している時のスピードまで乗っているために、鉄人は床に擦りつけられるように吹き飛ばされる。

 明久は、さらに一度拳を押し込む事による反動で鉄人を無理矢理上に飛ばした。

 そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!」

 

 空中で鉄人の服の襟を掴み、掛け声と共に補習室の椅子に投げ飛ばす!

 

 

 

「アキ!」

「吉井君、大丈夫ですか!?」

「うん、僕は大丈夫だけど…… いくら鉄人が相手だからってさすがにやりすぎたかな…………」

 

 苦笑いしながら、心配して駆け寄ってきた瑞樹と美波と話をしようとする明久。

 

「……おい! バカの兄貴、まだ鉄人は倒れていないぞ!!」

 

 グレイの言葉に驚いた明久は先程鉄人を投げた場所を振り返る。

 そこには、チャイムと同時に机や椅子の残骸を蹴り飛ばして起き上がってくる鉄人の姿があった。

 

「どうする、吉井? 続きをやるか?」

 

 どうやら次の授業の準備をしたいのだろう。

 わざわざ聞き返すあたり一応教師である。

 あれだけフルボッコにされたにも関わらず、普通に立ち上がっている所を見ているとさすがに人間かどうか疑問に思い始めるが……

 だが、まだお互いが普通に立っている以上決着を付けなければ示しが付かないだろう。

 明久も二人に避難してもらい、そしてすぐに構えようとしたその時だった。

 

「はっ!」

 

 鉄人が蹴り飛ばした椅子が明久に目掛けて襲いかかって来たのだ。

 飛んできた椅子を旋回裏拳で弾き飛ばす。

 だが、その行動が結果として重大な選択ミスとなってしまう。

 

 

「吉井君!!」

「アキ!?」

 

 裏拳を放った事によって一瞬だが腹部が完全に空いてしまっていたのである。

 明久が気がついた時には既に鉄人の拳が触れており、明久の体は吹き飛ばされてしまっている。

 しかも、本当にすごいのはここからである。 吹き飛ばされた明久が壁に激突してそのまま倒れそうになる前に距離を詰めた鉄人が拳を壁と挟む様に、そのまま明久の腹部に叩きつけたのだ!!

 

「まだやるか?」

 

 鉄人も教師である以上鬼では無い。 ここで決着もついている以上、素直に降参したならば特別に保健室で大人しく休めるようにする為の準備をしてもいいと思っていたのだ。

 

「まだまだ元気いっぱいですよ、鉄人!」

 

 だが、明久は諦めるつもりは無いようで、はっきりと戦う意志を示していた。

 

 

 

「そうか、残念だったな吉井!!」

 

 その明久の闘志を評価した鉄人は、あえて情けをかけずに一本背負いで床へと叩きつけた。

 明久は諦めずに立ち上がろうとするが、体がついていかないのか、立ち上がることもできずにそのまま鉄人が手配した保健室に連れて行かれてしまった。

 

 

「どうやら万策尽きたっていう感じだな」

「ほう、アトラスか……? なんだ、お前も俺が担任では不満なのか?」

 

 瑞希達とは別の場所でFクラスと鉄人の戦いを見物していたアトラスが鉄人に話しかけてきた。

 

「いや、アタシとしてはべつにアンタが担任でも問題は無い」

「ふう、それを聞いて少しは安心したよ、いくらなんでもお前とまで戦っていたらどっちが勝つかはともかく、最悪この日の授業を全て中断して生徒総出で後処理をしないといけなくなるからな……」

 

 一体、鉄人とアトラスが戦ったらその余波だけでどれほどの被害になるのだろう?

 少なくとも、校舎が破壊されないだけマシなのかも知れない……

 

 

「まあ、『アタシ』はべつにいいんだ、『アタシ』はな……」

「どうした? 補習室に何かあるの……『待ってください!?』」

 

 アトラスが指をさした場所に目を向けた鉄人が見た光景。

 それは……

 

「私だって…… 西村先生に勝負を申し込みます!!」

 

 明久の構えを真似て無謀にも程がある勝負を挑もうとする瑞希の姿だった。

 

「おいおい…… いくら俺でも普通の女生徒を相手に喧嘩はできないぞ?」

 

 流石の鉄人でも人望が全くないのかという不安で顔が青くなってしまう。

 

 

「瑞希姉ちゃん、いくらなんでも無茶だって! 滅茶苦茶足震えてるじゃないか!?」

「ふふふっ…… 若干涙目な上に、明久の構えを真似たつもりだろうが…… はっきり言って隙だらけにも程がある」

「これじゃあ、小動物の威嚇行為っていう感じだよね? 頭の上にうさみみでも付けてやったほうがいいかな?」

「姫路までどうしたんだ? 俺が担任では不満なのか?」

 

 グレイがどうにか瑞希を止めようとしているが、なかなか話を聞いてくれない。

 ヘリオスは何がおかしいのか、両腕を組みながら顔を背けつつ笑っていた。

 

「いいえっ…… 明久君のコスプレを見る為だけに勝負を挑みます!?」

「「『そんな理由で!?』」」

 

 モデルH・ヘリオス・ヴァンの3人がついツッコミの声を上げてしまう。

 

「なるほど…… 姫路、お前もFクラスなんだな……」

 

 姫路までもが鉄人相手に挑もうとする事が決定的となり、一部の要望(生徒間自治の範疇で)だけは受け入れられる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、職員室では……

 

 

 

「全く、バカの相手も疲れるものですよ。 そういう意味ではAクラスが羨ましいですな?」

「ウチの様に全く手がかからないというのもある意味問題ですよ!」

 

 鉄人と高橋先生が雑談をしていた。

 

「まあ、確かにやりがいはありますがね!! ハッハッハ!!!」

「そう言えば……」

「高橋先生、どうかしましたか?」

 

 高橋先生がなにを思ったのか、鉄人にとある質問をしてきた。

 

「西村先生とアトラスさんと話をしていた時ですが、あの時ふたりがぶつかったら大惨事になるとのことでしたが……」

「ええ、そうですね。 一度対峙した事がありましてね…… その時は二分位だったでしょうか? 最期に竹原教頭の車を完全に破壊してしまいまして……」

「確か…… 『私のレク○スがあああああああああああ!!』と叫んでいましたね……」

「あの時は申し訳ないことをしてしまいました……」

 

 ふたりの顔が若干沈痛なものとなってしまう。

 その時の竹原教頭の顔があまりにも悲愴感に溢れていて、さすがに可哀想になってくるものがあったのだ。

 

 

 

 another story 鉄人side 

 

 

「貴様…… 一体何をやっている?」

 

 ある日の放課後、鉄人は学園内にて見回りの仕事をしていた。

 当時、まだ学園の生徒として入学していなかったアトラスが、とある事情で不法侵入をしていた所だった。

 

「それは貴様の想像に任せてやる」

「どうせなら素直に喋った方がお互い損は無いと思うんだがな?」

 

 素直に降伏するように呼びかける鉄人だが、アトラスは不敵に笑うだけで素直に従う気は無いようだ……

 

「ふっ、冗談は休み休み言えよ…… (ドンッ!!)なっ!」

 

 いきなりアトラスはそのへんにあった廃材を鉄人に向けて蹴り飛ばす。

 それと同時に距離を取ろうとした鉄人に詰め寄り、彼が生徒から没収していたエアガンを奪い取り、それを向けようとした。

 その先には鉄人はおらず、逆にエアガンを腕ごとしっかりと抑えて撃てないように固定されてしまっている。

 

 エアガンに頼れないと判断したアトラスはワザと鉄人にエアガンを奪わせて彼の手ごとまとめて蹴り飛ばす。

 激しい攻防の末に、一度距離を取った鉄人は、近くにあったジョウロをアトラスに向けて蹴り飛ばす。

 当然アトラスは回避するのだが、その隙を付いた鉄人が全身全霊の拳をアトラスの顔面に叩き込む。

 

「なっ!?」

 

 だが、その拳は逆にアトラスの手に収まるように止められていた。

 鉄人が動揺しているのも束の間、彼は一瞬で腕を極められ、それと同時に首まで絞められて動きを封じられてしまう。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 どうにか鉄人は強引にアトラスの絞めを振り切り、距離を取る。

 なにを思っているのか、アトラスは不敵な笑みを浮かべている。

 

 

 

「ほう? 貴様、その身のこなしは元傭兵か軍人か? なかなかに鍛えられているな……」

「元? アタシは今でも戦技教導官を現役で務めて見せるぞ?」

 

 彼女の言葉が誇張でも誇大表現でもないのが本気で怖い。

 現に、彼女は数ヶ月で当時の明久を鉄人相手に抵抗できるレベルに鍛え上げて見せていたのだから……

 

 

『おいアトラス! もうヘリオス達は学校から逃げ出せたっぽいぜ、シャルナクからはへんな双子と話をするって言い出してからは連絡が来ねぇけど? お前もそろそろ急いだほうがいいんじゃねえのか?』

 

 モデルFとの会話の後にアトラスも逃げるための準備をする。

 だが、そんな行動を鉄人が見逃すはずもなく、彼女を捕まえようと手首を捕まえてから動きを封じようとする。

 

「ふん、捕まえられると思うな!」

 

 その鉄人の手を振り払い、逆にラリアットで反撃するアトラス。

 ラリアットを躱した鉄人が引き際に放った回し蹴りを、アトラスは屈んで躱す。

 そして顔面に打ち込まれそうになった肘打ちを鉄人は防御するが、アトラスはその密着状態から金的狙いで膝蹴りを何度も叩きつける。

 膝蹴りを防いだ鉄人はアトラスを振りほどき、裏拳を叩き込もうとする。

 それを躱したアトラスは自身よりも体格で上回る鉄人を相手にタックルで押し倒そうとする。

 当然失敗に終わり、逆に倒れそうになったところを後ろに回り込まれて捕まりそうになったアトラス。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 どうにか振りほどく為に、後ろに回り込んだ鉄人の腕を掴み一本背負いで投げ飛ばす。

 それと同時に一度取り返されてしまったエアガンを再び強奪し、今度は乱射して、鉄人の動きを封じようとする。

 だが、鉄人の動きは止まることはなく、徐々に後ろに下がらざるを得なくなってしまう。

 その後ろには竹原教頭が愛用している高級車が……

 

「これで終わりだ! 大人しく捕まれェェェェ!!」

 

 これでトドメだと言わんばかりに、アトラスに目掛けて全身全霊の拳をフルスイングで殴りつける。

 だが、この立ち位置では非常に最悪であった。

 アトラスの後ろには高級車。

 そして、これを避けようとするためには当然横に逃げざるを得なくなる。

 その結果……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 金属がグシャグシャになる轟音と共にボンネットが完全に破壊されてしまっていた。

 しかもその衝撃で、内部のエンジンまでひび割れてしまっており、完全に故障してしまっていた。

 さらに、その衝撃はフロントガラスをも粉砕し、車を支えていたタイヤもパンクしてしまっている。

 これではもう廃車として処分するしか無くなってしまうだろう。

 

「ふっ! さらばだ、筋肉ゴリラめ! ハーっハッハッハ!!!」

 

 鉄人が唖然としている間に、アトラスは既に遠方に離れており、ワザと馬鹿にするような言葉を残して学園から脱出して行った。

 鉄人もどうにかアトラスを捕縛しようとするが、さすがに何十メートルも先に逃げられてしまってはもう捕まえようもなく、二人が戦った後には生々しい戦闘後と廃車確定となった竹原教頭の高級車だけであった……

 

 

 

 鉄人side end……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西村先生…… 貴方は一体なにをやっているんですか……」

「後で学園長から話を聞いてみれば吉井の関係者で、学園の見学に来ていたって聞かされましたよ……

まったく、こういう話はきちんとして欲しいものですよ……」

 

 こんな事件があった後で、アトラス達はよく学園に編入しようと思った物だと高橋先生は思っていた……

 この後、お互いクラスの授業の準備がある為、それぞれの持ち場に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、Fクラスの面々は、なぜかナース服に着替えている秀吉と美波から介護を受けていた。

 

「やっぱり、へそぐらいは出していこうよ~?」

 

 工藤が秀吉にセクハラをしている……

 秀吉の反応がいちいち女子みたいだからか、工藤も楽しそうである。

 

「でもさ、マスコットキャラクターなんて女の子がやったほうがいいんじゃないかな? 吉井君も『戸籍上』では木下くんも男の子でしょ?」

 

 「あれ?男の子…… だよね?」と困り顔になった工藤が疑問に思った事を投げかける。

 

「……Fクラス(ウチ)の女性陣のひとりはテティスとグレイを着替えさせるのに夢中」

 

 土屋の指を指す方向には、笑顔でベビー服のようなものを着せようとしている瑞希。

 グレイは若干嫌がっているが、瑞希に怪我をさせたくないからかたいした抵抗ができないでいる……

 そして、あと二人の女子は……

 

「ふん、なぜアタシがこいつらの面倒を見なければならん?」

「どうせウチはサブヒロインだし、補欠だし……」

「まあまあ、ミナミも怒らないで元気出しなって!」

 

 アトラスは着替えを拒否して勝手に須川が持ち込んだバトル漫画を読んでおり、島田はテティス以外の男子から診てもらうのを拒否されてしまってやさぐれていた。

 

「おーい、だれか助けてくれ! 瑞希姉ちゃんがボクによだれかけなんて付け始めてきたんだけど!? ……ってお願いだから、おしゃぶりだけはやめてぇ~!!!」

「グレイ君、キミももう諦めなよ」

「おいテティス! なんでお前はこの状況を受け入れてんだよ!?」

「グレイ君…… ここでは、この程度で動揺していたら心がいくつあっても足りないんだよ?」

「だからって、この混沌とした状況を受け入れるのか!?」

 

 結局、おしゃぶりという最後の一線を超えずに済んだグレイとテティスだったが、グレイの中で姫路瑞希という人物像が若干屈折してしまいそうになっていた。

 

 

 

 

 




自分がお気に入り登録している作品が盗作されたって問題になっていた為に、自覚なきパクリをしていないかが心配になってきた私がいます……
芸術作品って大抵は何かしらの影響を受けているものなんですけど、それを言い訳に限度を弁えずに平気で他人の作品を盗作をしている人間もいるから困ったものですね……

そんなことを言いつつ若干ビビリ気味になりながら、自分の作ったストーリーを信じて投稿する決心をつけました。


次の話からは清涼祭編に突入します。
この辺りから明久×美春のストーリーも進めていきます。
楽しみにしていてくださいね!!






























因みに召還獣無しの条件で各自の強さを纏めてみました。

ロックマン>>(召還獣無しでは超えられない壁)>>鉄人・アトラス>明久(ただし、アトラス・パンドラは例外だが女子を相手には殴れない)・シャルナク・ヘリオス(剣術あり、なしだと1ランク下がる)>坂本雄二・テティス(明久同様女子は殴れない)>土屋康太>FFF団(ただし全員集結するとさらに馬鹿になる代わりに戦闘力が2ランク上がる)

>内における順番にも意味がありますが、大雑把にまとめると強さの設定はこんな感じになります。

感想を楽しみにしています!


H27.2/14 人物紹介欄を更新


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清涼祭編
第1話


今回で清涼祭編を開始です!

プロローグを兼ねていますので今回は短めです。

今回はテストではなくアンケートです。
皆さんも感想で答えてもらえたら幸いです……


清涼祭アンケート 第1問

学園祭の出し物を決める為のアンケートに御協力下さい。
『あなたが今欲しいものは何ですか?』


姫路瑞希・テティスの解答
『皆との楽しい思い出!』

教師のコメント
なるほど、お客様との思い出になるような、そう言った出し物もよいかもしれませんね。 写真館なども候補に成り得ると覚えておきましょう。


土屋康太の答え
『エッチな…… 成人指定の写真集』

教師のコメント
言い方を変えてもだめです!
そんなものを求めるには早すぎます!!


吉井明久・シャルナクの答え
『カロリー』

教師のコメント
この回答にあなたたちの生命の危機が感じられます……


プロメテ・パンドラの答え
『混沌(カオス)』

教師のコメント
どれだけ刺激に飢えているんですか!?
世の中平穏が一番ですよ!!


アトラスの答え
『殴られ屋』

教師のコメント
あなたは一体どれだけのストレスをため込んでいるんですか!?
暴力的な方法以外でストレスを発散させてみてはどうでしょうか?
歌を歌ったり、ゆっくりとお風呂に浸かったりするのもいいかもしれません……


 桜色の花びらが徐々に姿を消していき、代わりに新緑が芽吹き始めるこの季節。

 文月学園では『清涼祭』という新学期最初の行事の為の準備が始まっていた。

 ヘリオスや優子が所属するAクラスでは『メイド・執事喫茶』を開くという話が改築が終わったFクラスに流れ込んだが、今の彼らには全く関係のない話であった。

 なぜなら、今Fクラスのメンバーは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今より、Fクラス凶化訓練を開始する!!」

 

 運動場にて集結し、アトラスによる軍隊式の訓練が行われていた。 いつもだらけているはずのFクラスのメンバーがキチンと整列している光景は普通ならあり得ない光景だろう……

 

「アタシが運悪くキサマら総監督をする事となったアトラスだ! 今のキサマらに期待など何もしていない、今のキサマらは、ほかのクラスからバカ以下のかませ犬…… いや、汚い飯食わせとけば十分だと口汚く罵られても文句が言えない家畜、いや食用の価値も無い分家畜以下の存在だ!!」

 

 鬼教官と化したアトラスからの容赦ない罵倒に流石のFクラスの皆に動揺が走る。

 すでに十分鍛えられているシャルナク・テティス・明久、大将として雄二が改築が完了したFクラスにいたが、彼らでさえ多少なりとも驚いている位だ。

 アトラスも実際本気で言っているわけではない。 だが、その他クラスの人間からしてみればそこまで言おうとする気がないだけで内心では、そう思われていてもおかしくはないことなのでもある。

 

「そんな糞の役にもたたんキサマらをアタシ達が次の開戦期間の3ヶ月かけて鍛え上げてやる、ほかのクラスの奴らと戦う術を叩き込んでやる!! キサマらが3ヶ月後に敵の前に立ったとき、粗大ゴミのままか、栄誉ある大将を守る壁となるか、または最前戦で敵を駆逐する勇猛なる精鋭となるか、キサマらが決めろ!」

 

 アトラスからの挨拶が終わった瞬間に皆はなりたい自分というものについて考え始める。

 これまでのFクラスのみんなにはなかったことだったかもしれない。

 

「貴様に問う! 貴様はいったいどんな自分になりたいか!?」

 

 まずアトラスが質問をしたのは秀吉だった。

 

「ワシは、この演劇の力を生かし、みんなの支えになる立派な仲間になりたいのじゃ!!」

「そうか、バカみたいな目標だな! それが貴様の夢か!!」

「そうじゃ!! 皆にバカにされ、罵られようとも決してそれだけは曲げたくないのじゃ!!」

「それは素晴らしいな!! 貴様には最前線での捨て駒になってもらおう、そのまま後ろを向け!!」

 

 アトラスは強引に頭を掴み、後ろに向けさせる。

 

「今度は貴様だ! 貴様の目標は何だ!!」

 

 一人、また一人とアトラスの恫喝の餌食となっていく……

 

 

 

「フゥ…… 茶ノ湯ガ美味イナ……」

 

 勝手にポットをAクラスから持ち出し、コンセントにつないでお茶をんでいるシャルナク

 

「うわ~ぉ…… アトラスもやるねぇ~……」

 

 明久のスマホを勝手に使ってモンストを始めるテティス。

 ちなみに挑んでいるのは、ルイ十三世で、デッキは神化頂角と劉備とケットシー、フレンドにユグドラシルという人から借りているものとは思えないレベルでやりこんでいる……

 

「あいつ、現役で軍の教官を務められるって言っていたけどあれ見てるとマジかもしれねえな……」

「僕も最初はあんな感じだったんだよね、今となっては懐かしいよ……」

 

 明久が遠い目をして空を見上げている。

 アトラスのせいで命がけの経験を何度もさせられた頃を思い出しているのだろう……

 

 

 

「おいテティス、ほかの連中は……」

「さあ? みんなでツレションでも行ってるんじゃないかな?」

 

 ほとんどが男子のみで構成されているFクラスでそれはないだろうが、「知らない」といいたいだけだと判断した鉄人はそのまま校舎内を探しに出て行ってしまった。

 

 

 

「でもよ、明久? あの恫喝にはいったい何の意味があるんだ? よく映画とかでも見るけど、てっきり俺はただの演出かなんかだと思っていたんだよ?」

 

 雄二でもわからないことがあるとは思っていなかった明久は一度説明することにした。

 

「たしか、あの恫喝は一種の通過儀礼で、それまでのだらけた自分を否定してまっさらな状態に戻す事で兵士に育て上げるのに必要なことだってアトラスが言っているのを聞いたよ」

「あれ? だけど姫路だけは何も言われていないぜ?」

「たぶん、ほかの人と違って必要が無いからじゃないかな? 整列を命じられたとき、一番早く前に出て並んでいたし、向上心に満ち溢れた表情をしていたから、覚悟が違うって判断したんだと思うよ?」

 

 瑞希の顔をよく見ようとする雄二。

 言われた通り、その眼は闘志に満ちていて、言葉通りほかの人たちとは全く違う覚悟ができている人間特有の顔だった。

 もっとも当の瑞希は(ふぇぇぇぇ…… アトラスさんがとても怖いですぅ……)と思っていて油断したら泣きそうになっているが……

 

 

「おいキサマ、キサマの目標は何だ!!」

「俺の目標は成績を伸ばし、Aクラスの贅沢な教室で勉強できる素晴らしい生徒になることです!!」

「下らん嘘をつくな!! もう一度聞く、貴様の目標は何だ!?」

 

 今度は須川の番である。

 が、明らかな大嘘を平気で吐いた須川に、本当の目標が何なのかを強引に吐かせようとする。

 その眼は「また嘘をつく気なら張り手をたたきつける」とでも言わんばかりの殺気に満ちたものだった…

 

「俺の…… 俺の本当の目標は、 ……Aクラスに勝った後、うまいことハーレムを作れるぐらいに女子にモテモテになることです……」

 

 観念して素直に本当の目標を告白した須川。 だが、あまりにもひどすぎる目標に瑞希と美波はドン引きであった。

 

「そうか! キサマはありとあらゆる女を虜にできる男になりたい! そうだな、須川亮!!」

「はい!」

 

 内心では頭を痛めているアトラスだが、そんな態度は一切取らずに再度確認をとる。

 本気だと思ったアトラスは、須川に一度拳で腹を殴りつける。

 あまりの激痛に座りこんでしまう須川。

 

「おいキサマ、何勝手に座り込んでいる!! そんなことで女を虜にできる男になれると思うな!!」

 

 さらにアトラスは「立て! 貴様の目標に近づきたければ立つんだ!!!」と須川をあおる。

 どうにか立ち上がる事が出来た須川は秀吉同様、頭を強引に掴まれて後ろ向きにされてしまった。

 

「ほう、次はお前か……」

 

 次のターゲットは美波のようである。

 だが、何かがおかしい……

 

「おい美波…… 何を詰めている……」

 

 アトラスは見てしまったのだ、胸に何かを詰めているところを……

 

「なんだって? 何をボソボソとつぶやいている……」

 

 何か呟いているが、なかなか聞こえずに聞き返すアトラス。

 しかし近づいてから美波から話を聞いたアトラスは、鼻で笑いながらデコピンを叩き付け、そのままほかのクラスメイト達に通過儀礼の恫喝を行った……

 ちょうど全員終わり、鉄人がやってくる前にFクラスに戻ることとなった。

 

 

 

「やった! ルイ十三世の運極が出来た!!」

「「『テティス、一体どんだけやりこんでんだ!?』」」

 

 

 

 

 

 another story ヘリオスside

 

 Aクラスではメイド・執事喫茶『ご主人様とお呼び!』の為の準備作業中だったのだが、イメージ用に持ち込んできた執事服を見たヘリオスはいきなりこう言いだした……

 

 「興味深き衣装、私も着たい!!」

 

 実際に着せてみた結果……

 

 

 

 

 

 

 

「「『全く似合わねええぇ(ない)!!』」」

 

 Aクラスにいた者は全員反応に困っていた。

 その視線の先には執事服でとても偉そうにしているヘリオスだ。

 

(何であんな偉そうなのよ……)

『執事っていう感じが全く感じられないな……』

「モデルHもそう思うのね……」

(絶対敬語とか使いそうにないですね……)

(……正直見ていて痛々しい)

(さすがの僕でもドン引きせざるをえないカナ……)

(((だけど、今の気持ちをどう言葉で伝えたものか……)))

 

「……ふむ」

 

 みんなが反応に困っている中、ヘリオスは何を思ったのか……

 

「これは無いな!」

「「『自分で気が付いた!?』」」

 

 そのまま更衣室で着替えに出て行ってしまった。

 優子曰く、「それ以前にあの偉そうな態度がダメだったのよ」との事だった……

 

 ヘリオスside end

 




今回は新章突入という事もあって短めです。

次の投稿は翌月になると思います。


実は半年以上前から自分の周りでモンストが流行りだしていまして、自分もそこそこプレイしています。
因みに自分が使っているデッキは「神化ケットシー」「進化アラジン」「神化頂角」ですね。
「ウンディーネ」も進化させたいのですが、なかなか獣神玉が手に入らなくて……

先輩の中にはクシナダ・イザナミ・阿修羅を手に入れたっていう人もいるんですけど……
流石に難しすぎです……


まあ、このssを書くのをやめるわけではないのでその辺は安心してください!


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第2話

バカテスト

第8問



マザーグースの歌の中で、『スパイスと素敵なもので出来ている』と表現されている物は何でしょう?


姫路瑞希の解答

『女の子』

教師のコメント
正解です。さすがですね、姫路さん。
女の子の材料は『砂糖とスパイスと素敵なもの』で、男の子の材料は『カエルとカタツムリと子犬のしっぽ』と歌われています。


吉井明久・テティス・アッシュの解答
『『カレーライス!』』

教師のコメント
女の子は食べ物ではありません。


シャルナクの解答
『M属性のお姫様』

教師のコメント
……私にはあなたと言う人物が分からなくなりました。


「おい、貴様ら学園祭の準備をさぼってどこに行っていた!?」

 

 鉄人がどたどたと教室に入ってくる。

 学園中を探し回っても見つからなかったアトラス達がいつの間にか教室に戻っていると聞いて慌てて戻ってきたのである。

 そんな鉄人を見たFクラスの皆は新しい畳の香りを堪能するべくゴロゴロと寝そべっていたり、

 

「ああ、クラスメイトを全員鍛え上げるための修行を……」

「アトラス、お前だけはFクラスでは常識人だと思っていたんだがな…… まったく、お前たちは学園祭で稼いだお金を設備を買うための予算にしようとは思わんのか?」

「利益を?」

「設備ノ予算ニダト?」

 

 言いたいことがわからないからか、テティスとシャルナクが鉄人に質問する。

 

「お前らがいくらバカだとは言っても、いたずらに設備を下げるとは思わなかった。 だが、試召戦争を理由に逆に勉強ができなくなるようでは本末転倒! 今回だけ特別に学園長に掛け合ってやろう」

 

 鉄人の言葉に狂喜するクラスメイト達。

 

「それなら、お父さんたちの鼻も明かせそうです」

「え? お父さんって……」

「な、なんでもないのよアキ! 気にしないでちょうだい」

 

 瑞希の言葉が気になった明久が彼女に質問をしようとするが、美波のフォローもあって誤魔化されてしまう。 

 

「よーし、ならまずはやりたい内容を考えるぞ! …っとその前に、実行委員を決めておかないとな。

とりあえず議事進行並びに実行委員として誰かを任命する。そいつに全権をゆだねるので後は任せた」

 

 鉄人の言葉を聞いていたのだろうか? 心のそこからやる気のなさそうな態度で雄二は実行委員の任命を宣言した。

 

『おい、坂本の奴、今回は全くやる気ねぇな!?』

「あいつは興味のないことには全くやる気を示さんからな。 まあ、アタシもべつに画板と茣蓙とかにならない限りはどうだっていいんだが……」

 

 アトラスもやる気が無いようで、そのままFクラスの凶化訓練(誤字にあらず)のスケジュールを組み直し始めていた。

 

「そうなんですか・・・・・・寂しいです」

 

 そう瑞希は言うがそこはどうしようもないだろう。

 これは彼ら自身の問題であり、明久達がどうこういったところで変わるものでもない。

 

「吉井君も興味ないいんですか?」

「ん?僕?まあ、やる気はあるよ、設備の質を上げることが出来るって言うなら今後の学園生活が楽になるしね」

 

 とは言っても、一番に楽しみにしているのは遊びに回る方だが……

 今年はグレイ達、年少組も清涼祭に遊びに来るのだ。

 なぜかその面倒を見るのも明久がすることになっているのである。

 

「そうですか。よかったです。私・・・・・・吉井君と学園祭で思い出を作りたいです」

「ん?」

「知っていますか吉井君。うちの学園祭ではとても幸せなカップルが出来やすいって言う噂が……ケホケホッ」

「姫路さん、大丈夫!?」

 

 突然咳をし始めてしまう。 若干だが、顔が赤いのは気のせいだろうか?

 本人は大丈夫だと言っているが、数日前までは腐った畳に割れた窓が当たり前という環境にいたのである。

 しかも、痛んだござとダンボール箱では机と椅子に比べて格段に疲れやすい。

 体の弱い彼女が、体調を崩していてもおかしくはないだろう。 むしろ当然とも言える。

 

「んじゃ、実行委員は島田と言う事でいいか?」

「え?ウチがやるの?う~~~~ん、ウチは召喚大会に出るからちょっと困るかな」

「え?島田さんって召喚大会に出るの?」

「ええ、瑞希に誘われてね」

「はい、美波ちゃんと組んで出場するつもりなんです」

 

 そういった瑞希は胸の前で手を握りしめる。

 

 

「うん。家でいろいろ言われたんだって。『Fクラスのことをバカにされたんです!許せません!』って怒ってるの」

「ほう? 姫路が怒るとは珍しいこともあるものだ」

「だって、みんなの事を何もわかっていないくせにFクラスってだけでバカにするんですよ?許せません」

『『いや、Fクラスの連中は皆馬鹿だろ!!』』

『それに賛成ね』

 

 いつから話を聞いていたのか美波とアトラスが話に入ってくるが、はっきり言ってお父さんは間違っていないとライブメタル達は断言する。

 もしバカじゃないなら外で凶化訓練と称して学園祭の準備をサボったりなんてしないだろ……

 

「明久とモデルF、なんでアタシの方を見るんだ?」

「別に、何でもないよ」

「だが、まいったな。 今回の修行は清涼祭の準備時間と強化合宿の時間をフルに使えるだけ使う予定だったからな…… 本気で清涼祭の準備をするとなると、どうあがいたって最低限度の護身術すら叩き込む余裕が無くなってしまう」

 

 アトラスは一体彼らになにをさせるつもりだったのだろうか……

 さらに訓練スケジュール表を見直すために自分の席に戻っていってしまう。

 

「だからFクラスのウチと組んで、召喚大会で優勝してお父さんの鼻をあかそうってワケ」

「でもさーミナミ、それじゃあ効果が薄くないかな?」

 

 今度はテティスが乱入して来て、女子二人の考えを否定してきてしまう。

 

「テティス君、なんでそんなことを言うんですか!?」

「だって、ミズキのお父さんの言いたい事って、Fクラスの『環境』の話でしょ? だったらミズキが大会に出て優勝したところで意味ないんじゃないかな?」

「「うっ!」」

 

 二人はそれは盲点だったとでも言わんばかりに後ずさる。

 明久もそれに気がつかなかった様で、顔を背けて落ち込んでいる。

 

「おーいお前ら、こっちの話も続けていいか?」

「ごめん雄二、たしか実行委員長はミナミでいいかっていう話だったよね?」

「だからテティス! ウチは試験召喚大会で忙しいから無理だって……」

「……俺ガヤルカ?」

 

 そんな中候補してきたのはシャルナクだ。

 どうやら彼なりに考えがあるようだったが……

 

「勘弁してくれ、お前のことだから9割が『修羅場』のドロドロな演劇でもやりたいとか言い出すんだろ?」

「失礼ナ奴ダナ! 精々7割だけ『流血シーン』ガアルダケノ……」

「「『充分アウトだよ! ヤクザ映画だってそこまで血の演出はねえよ!?』」」

 

 却下されてしまったシャルナクはそのまま落ち込んで秀吉のところに行ってしまった。

 そしてシャルナクは正座をさせられて秀吉から説教を受けている。

 

「……分かった、ならこの候補の中から選んでくれ」 

 

①吉井

②明久

 

「ちょっと雄二! それどっちも僕じゃないか!?」

「うーんどっちがいいだろうか?」

「どっちもクズだし……ウボァァァァァ!!」

 

 クラスメイトの暴言にキレた明久は、クズ呼ばわりしたクラスメイトを相手に遠慮無く叩き込む。

 鉄人を相手に連打とはいえ後退させる事の出来る拳を食らった彼は数メートル程飛ばされる。

 

「もうしょうがないなぁ…… アキヒサ、ボクが副委員長やるからアキヒサも委員長やってよ!」

「え~、僕はそんな面倒なことはやりたくないんだけどなぁ」

「でも、既に決まっているっぽいよ?」

「ゆうううううううううううううううううじいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

 勝手に実行委員に任命され、若干キレ気味な明久だったが、周りからの期待の眼差しのような眼力に押され、結局やる羽目になってしまった。

 

「じゃあ、ボクが議事進行をやるからアキヒサが書いてよ」

「ん。了解」 

 

 黒板の前に立った明久はかなり短くなったチョークを手に取る。

 「本当に畳と窓ガラス以外は変えていないんだなぁ……」と改めて思う明久だった。

 

「はい、ムッツリーニ」

「……最近テティスに本名で呼ばれない。 ……俺は写真館」

「土屋ガ言ウ写真館ハ嫌ナ予感シカシナイガ……」

「……気のせい、確かにシャルナクが暗殺系の依頼を受けてくれるおかげでより充実した写真やビデオが手に入ったのも大きいが、それと写真館とは無関係」

「「絶対関係あるだろ!?」」

「……神秘的な世界を覗き見る、素晴らしい写真を大量に飾る」

「はい、アキヒサも書いておいて」

「「『何事もなかったようにそのまま進めやがった!?』」」

 

 一応意見の為、そのまま黒板に書き込んでいく明久。

 

 

 

「次は…… はい、ヨコミゾ!」

「メイド喫茶なんていうのは使い回されているだろうから……ウエディング喫茶っていうのはどうだ?」

「ウエディング喫茶?」

「ああ、メイド喫茶の要領で女性陣がウエディングドレスを着るんだ。 出すのは普通の食べ物だが……」

「アイデアはなかなか斬新だとは思うんだけどね……」

「憧れる女子も多いと思うし」

『とても面白そうなアイデアが出てきたな』

『ああ、こいつ意外とやるじゃねえか!』

『拙者も少し見直した方がいい気がしてきたな』

『はあ…… 男連中はなんにも分かっていないのね……』

「(どうしたの、モデルL?)」

 

 明久とモデルZ・F・Pも面白そうだと思い、そのまま明久は黒板に書こうとするのだが、逆にモデルLは面白くなさそうだった。

 

『あのねぇ、そのドレスって確か男女の結婚の時に着る特別なものよね? だったらそういうのはそれなりに特別な時に着たいというのが女心じゃないの! 意外と受けないと思うわよ……』

 

 モデルLの言葉に納得したZ・F・Pはそのまま頷いて納得した。

 

 

「ドレスはどうやって調達するんだ?」

「それに動きにくいし……」

「それに結婚は人生の墓場だって言うしな……」

『失礼ね! それは相手が悪すぎた時だけよ!!』

「一応候補だし、書いて」

 

 テティスと明久はそのまま黒板に候補として書き上げてしまう。

 

「次は…… はい、スガワ」

「俺は中華喫茶を提案する」

「なに? ミナミとミズキのチャイナドレスでも妄想して欲情でもした?」

「それも否定はしないが、俺が提案するのは烏龍茶と簡単な飲茶(ヤムチャ)を出す本格的な奴だ。 そもそも美食の起源は中国にあるという言葉からもわかるように……」

 

 「形だけでも否定しろよ」と思う明久だったが、そんなことを思っている間に須川がどんどん熱弁をふるい始めてきて止まらなくなってしまった為、無理やり話を切ってそのまま候補に書き上げた。

 

「ねえアキヒサ、もうこの辺で……(プッ!)」

 

 ある程度候補が上がってきた事もあり、一度採決を取ろうと明久の方向に向いて、いきなり向こうを向いて吹き出すテティス。

 今候補に上がっているのはこの三つである

 

 

①写真館『秘密の覗き穴』

 

②ウエディング喫茶『人生の墓場』

 

③中華喫茶『ヨーロピアン』

 

 

 ずっと議事進行をして前を向いていたテティスからしてみれば驚きである。

 先程から鉄人が呆れていたのはそういう事だったのかと今更ながら気が付いたテティス。

 

 

「……お前ら、補習の時間を3倍にしたほうがいいかもしれんな」

「アタシもそのほうがいい気がしてきたよ……」

「あ、先生! それは違うんです!」

「そうです! それは吉井が勝手に書いたんです!」

「僕らがバカな訳じゃありません!」

 

 バカ共が補習を免れたいが為だけに言い訳を繰り返している。

 何気に明久一人を馬鹿にして自分だけ見逃してもらおうとしている辺りがむしろバカらしいだろう。

 

「はいはい、とにかくこの3つから決めるよ! 店の名前なんて後から訂正すればいいだけなんだしさ」

 

 なんとか無理矢理に採決を取り始めるテティス。

 霧島の家での司会役の経験が生きているのか、思いのほかうまく事が運び出している。

 とは言ってもクラス内は充分騒がしく、結局集計を取るのにだけは予想以上に手間がかかっている。

 

「ボクらFクラスは中華喫茶『ヨーロピアン(仮)』に決定です! 皆さん、設備向上の為にも頑張っていきましょう!!」

 

 結果は僅差で中華喫茶に決まった。

 

 

「で、誰がホールと厨房をやるのかを決めるぞ」

 

 出し物が決まった今度は、人員の配置を決めないといけないだろう。

 疲れきったテティスに代わり、アトラスが議事進行を進めることになった。

 テティス曰く「本当にこのクラスの皆は好き勝手言い出してくるから困るよ……」との事だった。

 そのテティスは鉄人から意外と優秀だと褒められてはいたが……

 

「なら飲み物関係は俺がやるよ」

「…………」

 

 そう言った須川はそのまま立ち上がる。

 それに続くようにムッツリーニも立ち上がる。

 彼曰く「……紳士の嗜み」らしい。

 

「なら僕はホールに回るよ」

「「お前がホールとかクレームの嵐が起こるだろ!!」」

 

 クラスメイトの大半が明久のホール入りに反対し出す。

 実際には明久はバイトの経験でホールも厨房も完璧にこなせるのである。

 それを知っているのはヘリオス達、四天王組と美春だけなのだが……

 

「なら僕は厨房に入る? 料理も十分できるけど?」

「「絶対うそだ!?」」

「皆、アキヒサは本当に両方できるよ? 前にアキヒサのバイト先で食べたクレープが美味しかった ……あ!」

 

 テティスが口を滑らせて、アキヒサのバイトの職種がバレてしまった。

 

「なるほど…… 明久はクレープを売っている店でバイトをしているのか……」

「ならクレープ屋か喫茶店だな!」

「だったらあそこじゃないか? ここ数ヶ月で超有名になったあの喫茶店!」

「「あの(ラ・ペディス)か!」」

「なんでみんなこういう時だけへんな推理力を発揮するの!?」

 

 Fクラスのとんでもない推理力でバイト先までバレてしまった明久。

 テティスはアトラスに両頬を後ろから引っ張られて暴れてしまっている。

 

「よーし、ならホールには吉井でも問題ないな」

「ああ、『バイト』で経験しているっていうなら安心だ」

「『今度』明久のバイト先に行って来ようぜ?」

「ああ、なんて言ったって『接客してくれる女の子達が可愛い』って言うことでも有名らしいしな!!」

 

 はっきり言って「じゃあ…… 僕はこのお姉さんをもらっちゃおうかな」などと言いながら女の子達に絡んで迷惑行為を繰り返す姿しか想像できないから内緒にしていたのだが、バレてしまった以上店の方にも注意を呼びかけておいた方がいいと思った明久だった。

 

「ねえ、ところで美波、なんで包丁を持っているの!?」

「土屋! とりあえず包丁を追加で持ってきて!! 5本もあれば足りる…… キャア!!」

 

 なにを思っていたのかトチ狂った美波を取り押さえたアトラスとシャルナク。

 

「落ち着け島田姉! 包丁は1本でも刺さったら致命傷なんだぞ!?」

「ソノ包丁ハ没収サセテモラウ。 島田ト姫路、オマエラハ『ホール』ニ入レ」

 

 そして美波の首にFFF団仕様のチェーンで繋がれた首輪をはめて、そのまま超高速で引っ張っていくシャルナク。

 その先にあったものは人間が二人ほど入りそうな大きなボウルに大量の小麦粉と溶き卵とパン粉が個別で入っており、そして、大型の鍋の中には大量の揚げ油らしき何かが煙を上げるほどに熱されている。。

 

「ちょっ! シャルナク、あいつあんなのをどこから持ってきたんだよ!?」

「あーあ、あれってFFF団のお仕置き集48選のひとつ『チキンカツの○○←(中にはお仕置き対象の苗字)』だね」

「おいおいおい、それって洒落にならねえだろ!! 早く止めろー!!」

 

 結局このお仕置きの対象となった美波は大量の小麦粉と卵・最終的にパン粉をまぶされる。

 どうにか首輪を外そうともがいているが、全く外せずに抵抗すら許されず一方的に大量のパン粉がどんどんまぶされていく。

 そして、運が良いのか、大鍋の上まで迫り落とされるかという寸前の所で明久と秀吉によって止められた。

 シャルナクは「罪ヲ犯セバ罰ヲ受ケル、ソレガ当然ノ事ダロウ…… ヒヒッ…… ヒャーッハッハッハァ!!」などと言っていたが、秀吉によって簡単に正座させられて説教を受けている。

 過去に一体何があったのか、シャルナクは秀吉にはとても弱いようだ……

 因みに、ロープで吊るされていた美波はテティスによって蹴り飛ばされて、そのまま溶き卵が入った大型ボウルの中に再び落とされた。

 美波は卵の中で暴れているが、それだけの元気があるなら大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキ、さっきはゴメン。 ちょっと話があるんだけどいい?」

「うん? いいけど?」

 

 タマゴまみれなのに真面目な顔をした美波が話しかけてくる。 

 

「うん、ありがとう。多分アキが言うのが一番いいんだと思うけど、その、やっぱり坂本を学園祭に引っ張り出せないかしら?」

「う~~~~~ん、それは難しいな。雄二は興味のない事には本当に無関心だからね」

「ううん、そんなことは無いきっと吉井の頼みなら引き受けてくれるはず。だって……」

「そりゃあ、よくつるんではいるけどだからって」

「だってアンタたち、愛し合ってるんでしょ?」

「誰が雄二なんかと! だったら断然秀吉の方がいいよ!!」

「……あ、明久?」

 

 さっきの説明でなにをどう解釈したらこんな結論が出るのか、明久はついとんでもない事を言ってしまう。

 しかもその近くに秀吉が来たことで収集がつかなくなってくる。

 

「お、お主の気持ちは嬉しいのじゃが、ワシにも思い人がおるのじゃ…… 彼を思うとこの胸の高鳴りが止まらんのだ…… だからお主の気持ちには……」

「秀吉、違うんだ! それはものすごい誤解だよ! それ以前に彼を思うとって完全に相手男だよね!?」

 

 秀吉が顔を赤くして俯いてしまう。 この姿だけを見れば完全に美少女だと言われても仕方がないだろう。

 

「それじゃあ、坂本は動いてくれないって事?」

「うんやっぱりそうなっちゃうかな」

 

 目を伏せて沈痛な面持ちになる美波。

 実際、明久も雄二を引っ張り出したいとは思っていたが、それと同時にどうしてもうまくいくとは思わなかったのだ。

 

「ところで、お主たちは一体何の話をしておるのじゃ?」

「うん、実は中華喫茶の経営と設備の話で……」

「アキ、そうじゃないの。 本当に深刻な話なのよ……」

「え? どういうこと?」

 

 明らかに様子がおかしい美波。 彼女もそこまでクラスの設備にはこだわっていないタイプのはずなのに随分と熱心である。

 

「本人には「誰にも言わないで」って言われてたけど、事情が事情だし ……けど一応秘密の話だからね?」

 

 とても真剣な美波に若干気圧されてしまう明久。

 

「実は瑞希なんだけど」

「姫路さん? 姫路さんがどうかしたの?」

「あの子、転校しちゃうかも知れないの……」

「ほぇ? 転校するかもしれないってどういうこと?」

「その口ぶりじゃと転校の可能性があるということかのう?」

 

 普通、転校は本来ほとんど決定事項となっていることを前提に話が進むものである。

 だが、その転校の話が可能性で止まっているのはおかしいことなのだ。

 

「ええ、そういうことよ。 このままだと瑞希は転校しちゃうかも知れないの」

「このままだと…?」

「えー!! ミズキ転校しちゃうの!?」 

「テティス、あんたいつの間にいたのよ!?」

「そんなことより、ミズキが転校ってどういうことなの!?」

 

 あとから事情を聞いたテティスが美波に詰め寄ってくる。

 とにかく急いで事情を説明するために抱きついてきたテティスを引き剥がす。

 

「どうもこうもそのままの意味よ」

「島田よ、その姫路の転校と喫茶店の話が全然繋がらんのじゃが……」

「そうでもないのよ瑞希の転校の理由が『Fクラスの環境』そのものなのよ……」

 

 この言葉に皆は納得してしまう。

 本来、学年2位の学力を有する彼女なら、Aクラス級の安全な教室で勉強が出来るはずだったのである。

 だが、今の彼女がいるクラスは理不尽にも問題児が勢ぞろいするFクラス。

 親がもし、何らかの方法でこの話を聞いたなら別の学校に編入させようとするのはむしろ当然の行動だろう……

 

「それに、瑞希は体も弱いから……」

「「『それが一番まずいよね!!』」」

 

 美波の話を聞いた全員(全ライブメタル含む)が同調する。

 いくら畳と窓ガラスを治したとは言ってもまだ問題点は多く、みかん箱とござなんていう設備も改善しないと彼女の体力ではついていけないだろう。

 

 

 

「へぇ~、だから喫茶店を成功させて、設備を向上させたいんだね!」

「瑞希も召喚大会で優勝して両親にFクラスを見直して貰おうとしているけど、やっぱり設備をなんとかしないと……」

「だからミズキが出てたら意味が無いって言っているのに……」

「・・・・・・吉井は、その・・・・・・瑞希が転校したらイヤだよね・・・・・・?」

「もちろん嫌に決まってるよ!! それが美波や秀吉、アトラスやテティスやシャルナクだったとしても!」

「そっか…… うんアキはそうだよね!」

 

 美波が嬉しそうに頷いているが、はっきり言って雄二なら躊躇なくどうでもいいとスルーするのは秘密だ。

 

「よーし! そうと決まったら早速雄二の元に……」

「アキヒサ、こういう状況で雄二より確実で頼れる人がいるじゃないか。 しかも明久限定なら無償で」

 

 雄二を捕まえようと、電話で居場所を聞き出そうとする明久だったが、その行動はテティスによって遮られてしまう。

 

「へ? 頭使う事でFクラスで雄二以外に頼れるやつなんて……」

「だ・か・ら、Fクラス以外(・・・・・・)でいるじゃないかって言ってるんだよ。 ボクらの偉大なる『賢者』様がね?」

「…………ああ、なるほど、 そういう事か!」

「え? ちょっとアキ、どこに行くのよ? 坂本を捕まえるんじゃなかったの!?」

「ごめん美波! 美波は一旦、お風呂に入ってきなよ! 雄二よりもずっと頼もしい助っ人を思いついたから!!」

 

 そうやって言う明久とテティスはそのまま何処かに行ってしまった。

 そして、美波は自分の状態をようやく思い出し、テティスが事前に用意しておいたバスタオルとジャージを片手にシャワールームへと猛ダッシュで向かって行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




DSの流星のロックマンをプレイしていました。
今回プレイしていたのは『レオ』の方で、ストーリーは楽しかったです。
ゲームシステムだけはXから始めた自分としてはあまり受け付けなかったですが……
戦闘スタイルはソード系を大量に装備して敵を滅多切りにするスタイルで戦っていました。
本当に被ダメージ率の高い事で、これが原因で何度ゲームオーバーになった事かwww


ミソラちゃんがアニメとキャラが違いすぎてテラワロタwww
どっちも可愛いからいいですけどね!

今回でまた召喚獣の設定を更新します。
其方もどうか見て行って下さい!


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第3話

なんだかんだで流星のロックマン2をクリアしていないのですが、キリのいい所までかいたので投稿します。

バカテスト

第9問




以下の問いに答えなさい。
『バルト三国と呼ばれる国を全て挙げなさい』


姫路瑞希・ヘリオスの解答

『リトアニア・エストニア・ラトビア』

教師のコメント
その通りです。


土屋康太・アトラスの解答

『アジア・ヨーロッパ・浦安』

教師のコメント
あなたたちにとっての国の定義が気になります。


吉井明久・テティスの解答

『香川・徳島・愛媛・高知』

教師のコメント
正解かどうか以前に数が合わないことに違和感を覚えましょう。


島田葉月・グレイ・アッシュの答え

『クリームランド・アメロッパ・シャーロ』

教師のコメント
分からないからと言って、ゲームから適当に名前を出すのはやめましょう。


「くっ、なんたる屈辱…… 一体どう言うつもりだ、貴様ら!!」

 

 そう言いながらも、学園内で柱に縛られているヘリオスとモデルH。

 どうにか抜け出そうと必死であるが、しっかりと縛られている為に脱出できずに両者共に芋虫のようにもがくことしかできていない……

 

 

 

 

「ふっふっふっ、ボクもそんなにワルじゃない。 条件を飲めば逃してやろうっ」

 

 そんなヘリオスの前であくどい笑みをうかべて悪ノリ全開で構えているテティス。

 

「単刀直入に言おう! ボク達に力を貸せ!!」

「『断る』」

「「何で!?」」

 

 

 間髪を容れずに速攻で断るヘリオス。

 普通に考えて、いきなり拉致された上に、木に縛られている状態で何かを要求されても素直に答えるわけが無い。

 彼らが柱に縛られる前、このような事が起こっていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

another story ヘリオスside……

 

 

 

 

 

「あれ? 今ヘリオス、設営で忙しそうだったね?」

「アア、ドウセ暇ダロウト考エテ、イタンダガ……」

 

 今、明久・テティス・シャルナクがいるのはAクラス前の教室である。

 どうにかして、ヘリオスを呼び出したい所だったのだが、当の本人は業者の人達への指示などで意外と忙しそうにしていた

 

「まあ、どうにかなるでしょ?」

 

 そう言ってテティスが取り出したのは……

 

「確保ォォ~~!!!」

 

 西部劇で見かけるようなとても長い縄だ。

 「一体何なんだ!?」とAクラスの面々は驚いていたが、その一瞬の間にヘリオスは縄で縛られてしまい、あとから乱入してきた明久・シャルナクによって、そのまま外に連行されてしまった。

 「おい明久、テティス! なんの冗談だ、さっさと離せ…… うわああああああああああああああああああああ!!」というヘリオスの叫びが聞こえたが、もうFクラスには関わり合いになりたくないからか、ヘリオスの無事を祈りながら、そのまま各自の準備に取り掛かって行ってしまった……

 

 

 

 

 

another story ヘリオスside end……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Fクラスの事情などもう知るか! 教室も充分綺麗な物になっているだろう!

清涼祭の準備に関してうまくいっていないと言うのなら、それは貴様らの自業自得と言うだけの事だろうが!!」

「「いや、それも違うよ。 とにかく話を聞いてよ」」

 

 ヘリオスの怒りもごもっともだが、明久とテティスは一度ヘリオスを落ち着かせようとする。

 

「はぁっ…… 愚かなる選択…… 話くらいなら聞いてやるから今すぐにこの縄を解け…… この状況は恥ずかしすぎる」

『すれ違った女子全員がこっちを見て「クスクス」と笑って何処かに行ってしまったしな……』

「も~仕方が無いなぁ。 ヘリオスもモデルHもワガママなんだから」

「『どっちが!!!』」

 

 さすがに縄を解いてあげようと、縄の結び目に手を付けるテティスだったが……

 

「……ん? あれれ? …………ごめん、解き方忘れた」

「『本気で怒るぞ…………』」

 

 「テヘッ!」とかいいながら謝るテティス対して、かなりドスの効いた声でキレかけるヘリオス。

 テティスにだけは甘いヘリオスでもさすがにここまでやられたら激怒するのも当然の事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひとまずどうにかヘリオスを開放した3人は美波から聞いた事情をそっくりそのままヘリオスに説明していくことにした。

 

 

「なるほどな、姫路が貴様らのクラスの環境を理由に転校させるかどうかの話に発展しているというわけか……」

 

 因みに3人の頭には髪の毛が吹き飛び、『シュゥゥ……』といいながら大きく膨れ上がったコブがギャグとかではなく言葉通りの意味で出来上がっている。

 

「うん、それでどうしようかと思ってヘリオスのところに来たってこと」

「ふん、いちいち他クラスの私の所に来ないでも、別に坂本を探せばよかっただろ?」

「……ソノ坂本ト連絡ガ取レン」

「…………ああ、そう言えば霧島とも連絡が取れないな。 多分あいつに追い掛け回されているんだろう。 確か「家族に紹介して本格的に家も用意する」などと言っていたな」

『確か、結婚出来る年齢って……』

『ええ、男は18からだったはずよ?』

 

 行動が早過ぎる霧島の事で皆は苦笑いしてしまう。

 

「そういうことなら話は分かった。 しかし、姫路の転校か…… そうなると喫茶店の成功だけでは全く意味を成さんな」

「なんで?」

『姫路父が転校を勧めた要因は主に二つ、《貧相すぎる設備》《レベルの低すぎるクラスメイト》に絞られるんだ』

「教室自体は改築された事でマシにはなっているからな。 前の教室だったらもはや話し合うまでも無かっただろうが……」

「そして、学力の方は姫路・島田(姉)が対策を練っているところだったな?」

「ま、はっきり言って効果は無いとボクは思っているけどね~」

 

 テティスは先程二人に行った時のように言うが、どうもヘリオスの考えは違うようだった。

 

「暗愚なる認識…… 確かにあの二人の選択肢は最適だとは言い難いが、姫路の交渉力次第では充分良い手ではあるぞ?」

「……ホウ、意外ダナ? オ前モ、テティスト同ジ意見ダト思ッテイタ……」

 

 

『別に、姫路さんが出たからといっても別に大した影響は無い。

パートナーの学力が最低クラスであったとしても、トーナメントの順位が上がっていけば充分学力のある強敵に会える事になる。

 そこでパートナーがうまく彼女をサポートくらいの事が出来る人物だったなら、少なくともクラスメイトのレベルが低いと言う言葉を否定する事が出来るんだ』

 

 モデルHが説明するが、彼が言う事に正直納得できないのだろう……

 ヘリオス以外の全員がその場で考え込んでしまう。

 

『ちょっといいか?』

「なに、モデルZ?」

『恐らくだが…… 明久達Fクラス組とヘリオスとでは姫路に対するイメージが全く違うんじゃないのか?』

「「『どういう事(なの)(だ)(よ)?』」」

 

 モデルZは何かに気がついた様で、その事に付いて指摘していく。

 

『ヘリオス、お前は姫路という少女についてどう思っている?』

「……《学年次席相当の学力を有する才女》だが、《体が弱く》《それが災いし、テストで体調を崩すという悲劇によって最底辺のクラスに落とされた女》。性格は《基本的に温厚で大人しい》が《実はかなりの激情家》で《下の男の子に変なコスプレをさせる趣味を持った変態でもある》と言った所だな…… 感情を爆発させて激怒しながらだったら親をうまく説得する事ができると思ったんだが……」

『意外とよく見ているな…… あれ? あの女がグレイによだれかけやおしゃぶりをつけさせようとしたのはFクラスでの出来事だったはずだが……?

 明久達はどう思っている?』

 

 意外としっかりと観察していることに驚きのモデルZだった。

 モデルZは次に明久達に全く同じ質問をする。

 

「「「大半はヘリオスと同じだけど、追加するなら実は議論による駆け引きが苦手!!」」」

『毒殺料理人でござる!』

『全国の巨乳嫌いの貧乳少女を敵に回す腐れおっぱいかしら?』

「「『モデルL、お前に一体何があったんだ!?』」」

 

 いきなりのモデルLの発言にはさすがに驚くみんな。

 

『と…とにかくだ、明久達とヘリオスとでは元から持っている情報量が違うというわけだ! だから、あの女に対しての結論が全く違ってくるという事! もうこれでいいか!!』

 

 まくし立てるように言葉を畳み掛けていく事でモデルZが話を戻そうとする。

 

「……別に私を拉致する必要性がなかったんじゃないか? 私はクラスメイトに対しての認識を変えるだけなら彼女たちを信じてやればいいだけだが、もし不安ならば明久達でバックアップメンバーを集めればいいだろう?

 そこまでやってダメだったらそのときはその時は素直に諦めろ……」

 

 クラスメイトの問題は瑞希・美波コンビの支援をするチームを作る事で話を進めるようにアドバイスをするヘリオス。

 

「それと、設備の問題だが、今回に限り特例で利益をあげれば設備の質を上げて良いと言われたのだったな?」

「うん、テツジンが呆れ顔で言ってきたよ……」

『なにをするのかは決めているのか?』

「うん、本格中華喫茶で店名は《ヨーロピアン》にする予定だよ?」

「なぜそんな店の名前になったんだ……?」

 

 相変わらずのFクラスの奇行に関しては全く理解が出来ていないヘリオスは頭を抱え、呆れ果ててしまう。

 

「どちらにせよ、設備の向上に関しては、こっちでも学園長に相談したほうがいいかもしれんな。 学園長室に乗り込んでみよう」

 

 そう言ったヘリオスと共に、明久達4人は学園長室に向かう事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「『(ドゴーン!!)←扉を蹴り飛ばす音 学園長、失礼しまーす』」」

「なんだ…… ギャアアアアアアアアアア!!」

 

 

 返事を待たずに4人は思いっきりドアを蹴破って学園長室に突入する。

 その際にドアの一つが飛ばされて、中にいた竹原を押しつぶす。

 当然、竹原はその衝撃に耐え切れずにそのまま気絶してしまう。

 

「な… 何やってんだい、あんたら!? 普通は返事を待ってから入るもんだよ」

「「すみません、学園長(棒読み)」」

 

 棒読みで頭を下げて謝る明久達。

 とは言っても棒読みで謝られても全く説得力がないのだが……

 

「んで、ガキどもは一体何の用だい?」

 

 とは言っても、竹原と言う邪魔が気絶しているからか、彼の存在を全く気にすることなく話を続ける。

 

「とりあえず、話だけは聞いてやってもいいが、まずは名前を名乗ってから入ってきな。 それが社会の礼儀ってものだよ、このクソガキども」

「それは失礼しました、2年Aクラスのヘリオスです。 そしてこちらがFクラスの吉井明久とその奴隷のシャル……」

「オイ、ヘリオス! ドウ言ウツモリダ!!」

「すまんシャルナク、奴隷じゃなくて捨て駒だったな」

「殺スゾ……」

「面白い、出来るものならやってみろ」

 

 ヘリオスの暴言にキレたシャルナクが苦無を構え、逃げるヘリオスを追い掛け回す。 投げた苦無のうちの1本が観葉植物に刺さり、《バキン!!》と何かの機械を破壊する音がした。

 それと同時にヘリオスが学園長室から逃走し、それをそのままシャルナクが追いかけていった……

 

「……アンタ達から話を聞こうじゃないか、さっさと話しなこのウスノロ」

「うん分かったよ。 Fクラスの設備について要求があるんだけど」

「そうかい、それはヒマそうで羨ましいことだね」

「ボク達は今年の清涼祭で喫茶店をやろうとしているんだけど、今のFクラスの設備だと衛生面と機能面で問題だらけなんだよ。 学園長みたいな幕末の動乱から生き延びた様な老いぼれならともかくほかの一般客のみんなには迷惑がかかっちゃうんだよね」

 

 テティスが話を進めていくが、交渉事には全く向いていないテティスでは全く話になっていない……

 

「要するにこのまま喫茶店をやるとバイオハザードが起こるかも知れないから設備をどうにかしろこのババア、と言う訳なんだよ」

「そうかい。 話は分かった」

「それじゃあ……」

「却下だね」

「テティス、コンクリとドラム缶は体育館裏にあったよね?」

「アキヒサ、もうちょっとくらい粘ろうよ……」

 

 とりあえず、明久をテティスがなだめる。

 

「全くこのちびっこが失礼しました。 どうか理由を聞かせてもらえますかババア!」

「まったくだよ、いいから教えてよこのババア」

『アンタたち、本当に理由を聞きたいと思っているの!?』

 

 

 笑顔でババア呼ばわりを繰り返す二人にツッコミを入れて止めにかかるモデルL。

 だが、その程度でふたりが止まるはずもなく、二人はどんどん暴言を吐き続けようとする。

 

「理由も何も設備にさをつけるのはこの学園の基本方針だからね。 あの時の改修工事だって例外中の例外だったんだから、これ以上ガタガタ抜かすんじゃないよ。 なまっちょろいガキども」

 

 忘れいてはいけないが、あくまでこの学園は設備に差を付ける事で学力の向上を促している学園なのだ。

 このことを忘れてはいけない事を明久達は思い出す。

 

「……といつもなら言ってるんだけどね、これまでに何度か手伝ってもらった生徒の頼みだ。 今度の頼みを聞くなら相談に乗ってやろうじゃないか」

「本当ですか?」

「ただし、学園祭中だけだよ。 それ以外は、畳とかは新調したから、もしものことを考慮して、学園祭の利益でなんとかしようってんなら、条件付きで許可するよ」

 

 学園長はため息混じりでそう言った。

 

「「『条件?』」」

 

 その言葉の意味を確認するべく明久とテティスは聞き返す。

 

「ああ、うちの学園の方針に則って、試験召喚大会でFクラスの人間が優勝したら設備の改修を許可するよ」

「な~んだ、だったら『ただし、姫路瑞希・テティス・アトラスの3人は除外だよ』なんで!?」

 

 さすがに納得いかないのか、テティスは目を剥いて抗議する。

 

「普通に考えてみるさね。 あんたたち3人はクラスはFクラスでも実際の成績はAかBに相当する成績を持っているだろ? 総合でFクラスの成績の奴が優勝しないと認める気はないさね」

「アキヒサ、たしか体育館の裏に……」

「テティス、気持ちは分かるけど、今はまだ(・・・・)だめだよ」

「『後でもやったらダメ(さね)(だろ)(よ)!?』」

 

 立場が逆になった状態で全く同じ会話をしている二人に対する学園長とライブメタルのツッコミが、同調して部屋中に響く……

 

「まったく、とにかくさっき指定した3人以外なら問題ないから大丈夫さね『じゃあヘリオスに援軍』もちろんほかのクラスを巻き込むのもダメさね」

 

 悔しそうな顔をしたテティスが、起きそうになっている竹原を再度気絶させるために彼の上に被さっているドアにケリを入れ続ける。

 竹原は悲鳴を上げる余裕も無いまま、再び気絶した。

 

「アンタ達も結構酷いさね……」

 

 あまりにも容赦のないテティスの攻撃に、思わず学園長も軽く後ろに引いてしまう……

 

「とにかく、この件はFクラスの人間だけでやっておくれ。 アンタたちの話がもうないならとっとと出ていきなこのクソガキ共」

「「は~い、失礼しました~」」

 

   

 そう言って、明久とテティスは蹴り飛ばした扉を回収した後、簡単にはめ直して出ていった。

 因みに竹原は適当なところにポイ捨てされていたが、それを見つけた女子生徒の通報のおかげで大事には至らなかった……

 折角ならきちんとドアを修理してから出て行って欲しかったが、それを期待するのも無理だと思った学園長は大急ぎで修理屋を呼んで扉を直してもらうことにした。

 




はい、今回は短いですね……
キリのいい所で終わらせようとしたら予想より短くなってしまいました……

あ、一応言っておきますけど、もう一つ連載したからといいて手を抜いたわけではありませんよ? 本当ですよ!
バカテスと絶対絶望少女のssを連載し始めてはいますけど、本当にそれは関係ありませんです。

もし、絶対絶望少女も知っているならこちらの方も見て行って下さい。
私の小説投稿リストから入ることができますので……


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第4話

バカテスト

第10問

以下の文章の(    )に入る正しい物質を答えなさい。

『ハーバー法と呼ばれる方法にてアンモニアを生成する場合、用いられる材料は塩化アンモニウムと(    )である』



姫路瑞希の答え


『水酸化カルシウム』


教師のコメント
『正解です。 アンモニアを形成するハーバー法は工業的にも重要な内容なので、確実に覚えておいてください』


土屋康太の答え


『塩化吸収剤』


教師のコメント
『勝手に便利なものを作らないでください』


吉井明久・テティスの答え


『アンモニア』


教師のコメント
『それは反則です』


アッシュの答え


『硝酸ナトリウム』


教師のコメント
『非常に危険な組み合わせので絶対に用いたりしないで下さい』



「いつもはただのバカに見えるけど、坂本の統率力は凄いわね」

「たった数日であのFクラスをここまで仕上げるとは…… あいつはただの仮面代表だと思っていたんだが、その認識を改めないといけないな」

「ま、ユウジには『協力しなかったらキリシマにデート用の映画チケットをあげる』って言っておいたから」

「「『それってただの脅迫だよね!?』」」

 

 清涼祭初日の朝。

 Fクラスの教室は適当に強奪してきたテーブルなどを整理し、中華風の喫茶店に様変わりしていた。

 テティスの脅迫のせいで一生懸命な雄二の目を見ていると、かわいそうになってくる……

 

「だけど、本当に大丈夫なのかしら? 勝手にテーブルを応接室から持ち出してきて」

「心配いらねえよ、一旦喫茶店に使ってしまえばコッチのモンだからな。 一般客が使用する為のテーブルを当日になって回収なんて教師でも出来やしねえよ」

 

 今まで本当に扱いが酷かったが、本来坂本は、非常に悪知恵を働かせる事が得意な人物である。

 そんな彼が本気になればこの程度の悪行は簡単にやってのけるのだ。

 

「室内もきれいに装飾しているし、これならうまくいくんじゃないかしら?」

「……飲茶もカンペキ」

 

 いつの間にか土屋も戻ってきていた。

 普段からそんなに気配を消さなくてもいいと全員が思った瞬間だった……

 

「ムッツリーニ、厨房の準備もOK?」

「……味見用」

 

 そう言って、土屋が差し出したのは木のお盆。 その上には美味しそうなゴマ団子が3個だけ載っていた。

 

「オ? カナリ美味ソウナ胡麻団子ダナ」

「土屋、これウチ達が食べちゃっていいの?」

「・・・・・・(コクリ)」

「では遠慮なくいただこうかのう」

 

 シャルナク・美波・秀吉の3人が美味しそうにゴマ団子を頬張る。

 

「トテモ美味イナ」

「本当! 表面はカリカリ、中はモチモチで食感も良いし!」

「甘すぎないところもいいのう」

 

 その3人はとても美味しそうに食べており、惜しみない賛辞の言葉を贈り続けた。

 美波に至ってはトリップしてしまっている。 このあとの話し合いに支障をきたす為に、テティスは彼女の鼻の穴に飲茶を軽く流し込む。

 その結果美波は、鼻に水が入りそうになることで生じた痛みによって意識を現実に引き戻されてしまっていた。

 鬼の形相で追いかけてくる美波を笑い飛ばしながら逃走したテティスは、教室中をネズミの様に逃げ回って彼女をからかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、姫路・島田のバックアップで大会に出る奴らを決めておかないとな」

「一人はアキで確定よね。 この中で召喚獣の操作が一番上手いのって言ったらアキぐらいでしょ?」

 

 島田の意見で真っ先に明久の出場が決まる。

 だが、この大会にはペアで参戦しないといけない。 どうしても相棒となる人物を選出しないといけなくなってしまうが、彼に匹敵するほどの操作能力を有するはずのアトラスとテティスは学園長との取引の条件で参加が出来ない事になっている。

 

「オレガ出ルカ?」

「アタシなら土屋をパートナーとして出てもらうが?」

「なんだったらユウジが出てみたらどう?」

「ワシが出てみてもよいかのう? Dクラス戦では前線でそれなりに戦い抜いた経験もあるぞい」

「いや、シャルナクと土屋と秀吉には別の任務を頼みたい。 俺は、はっきり言って明久とは出たくない」

「だったらスガワは…… ああ、FFF団じゃ足手纏いか(プッ!)」

 

 テティスの言葉に割と本気で落ち込んでしまうFFF団員……

 

「他のクラスに増援を頼めないのか?」

「お前、他のクラスに無償で協力してくれるほどの友達がいるのかよ?」

「「ああ無理だ、かつて友だった奴らは我ら『異端審問会』の掟を破った罪で葬り去ってやったのだからな……」」

 

 結局の所、《彼女が出来た友達に嫉妬して嫌がらせ行為を繰り返した結果、他クラスの友達がみんな離れて行ってしまった》だけなのだが……

 

「う~ん…… 本当に誰をパートナーにするの? なんだったらアキが決めても」

「お姉さま、美春がお姉さまの中華喫茶のお料理を食べに来ました!」

 

 Fクラス試召戦争大会対策会議に乱入してきた美春。

 いきなり抱きついてきた美春をどうにか引き剥がそうとしている美波だが、全く剥がれてくれる様子が無かった為、アトラスが強引に引き剥がした。

 

「ああん、もう少しお姉様と戯れていたかったですのに……」

「ウチにその趣味は無いから!」

「(美春さん、今度も作戦失敗だったね)」

「(私はまだ諦めませんわ! 次のプランはもう練ってあります。 次にも協力してもらいますわよ)」

 

 二人して怪しい会話をしている…… どうやら美春にはまだ美波篭絡作戦は存在するようだ……

 

「それで、一体何の話をしているんですの?」

「僕も試験召喚大会に出場するんだけど、そのためのパートナーが決まらなくてさ……」

「なら別に出場しなければよろしい事ではありませんの?」

「そういう訳には行かないんだよ。 色々と事情があってさ、姫路さんと美波のバックアップの為のチームが必要なんだよね。 でも、雄二は参加したくないって駄々をこねるし、秀吉・ムッツリーニ・シャルナクの3人は別の任務があるし、FFF団は弱すぎてアテにならないし……」

「全く、よくもまあそれで試験召喚大会に出場しようと思えましたわね……」

 

 明久の話を聞いて、若干美春も呆れ気味である……

 

「ならどうするんですの? 話を聞く限りですとアトラスとテティスなら問題なさそうに思えますが……」

「「ボク(アタシ)はこの大会に出場するのを断られてしまったんだよ」」 

「なんですのそれ? 既に状況が詰んでいますね。 他のクラスから増援を呼べるなら話は別でしょうけど、どうせ『ほかのクラスの生徒にも頼れない』なんて事態にもなっているんでしょう?」

 

 「なら美春に出来ることはあまりなさそうですね」と彼女がいいながらそのまま出入り口で待機してしまう。

 どうやら、席を一番に確保して美波に接客してもらいたい様である……

 

「あれ、瑞希さん? 皆で揃って一体何の話をしているんだい?」

「ヤッホー瑞ねぇ! 遊びに来たよ~!!」

 

 今度はアッシュとヴァンの二人である……

 ヴァンが苦笑いしながら入ってきた辺り、アッシュに散々振り回された様だ。

 

「なに皆で集まって話をしている訳? ちょうどいいからアタシも混ぜなさいよ」

「別にかまわんが、ここには暑っ苦しくてむさい男連中しか……」

「あれ? 姫路さんの妹さんか?」

「可愛いなぁ~ ねぇ、3年後にお兄さんと付き合わない?」

「俺はむしろ今だからこそ付き合いた……(ウボァァァ!!)」

「『この変態野郎!!』」

 

 あっという間にFクラスの男子に囲まれてしまうアッシュとヴァン。

 そんな中、とんでもないロリコン発言をした男子を相手に殴りかかったヴァンと体当たりを仕掛けたモデルAの行動は絶対に間違っていないはずである……

 

「アッシュちゃんとヴァンさん、かなり早いですね? エールさんとグレイ君も来ているんですか?」

「あー…… えっと…… その……」

「前にここに来た時の事を覚えているか? 瑞希さんの両親にその時の話をした事をまだ気にしているみたいで、エールはグレイを部屋から引きずり出そうと必死になって、説得中だね」

「グレイって、実は結構バカなのかな? この学校の事をそっくりそのまま話したら、普通の親は転校を進めるに決まっているじゃないか?」

「テティスだったかしら? アタシも今、この目で直接見るまではただの冗談かなんかだと思っていたわよ。 でも愛娘が本来の実力が評価されずにバカ集団の中に放り込まれているって話を聞かされたら普通はキレるわよ?」

「「『姫路の親が転校を勧めたきっかけはそれか!!』」」

 

 アッシュの言う事も尤もである……

 先ほどの行動をヴァンに見られてしまった事もあり、つい何も言い返せなくなってしまうクラスメイト達……

 

「えっと? それで話を戻すけど、坂本くん達は一体何の話をしているのかな? もしよかったら……」

「いや、協力してくれるのはありがたいが、この問題はFクラス内だけで解決しないといけない問題なんで、申し訳ないけど断らせてください」

 

 ヴァンからの協力を泣く泣く断る雄二。

 仕方が無いと思ったヴァンは「今は普通に学園祭を楽しもうと思うけど、何かあったら力になるから呼んでくれ」と伝え、そのままアッシュと一緒に外に出て行ってしまった。

 

「結局どうするの雄二!? アトラスとテティスは学園長からの依頼の件で参加できないし、シャルナク・ムッツリーニ・秀吉は別の役割があるし、ほかのクラスメイトはアテにできない、雄二に至ってはワガママ言って参加したがらないじゃないか!」

「おう、邪魔するぞ。 Fクラスってここか?」

 

 大会の申し込み受付が終了する時間まであと少ししか無い。

 最初のんびりとしていた明久も流石に焦り始めている中、教室の扉を開けて入ってくる人物がいた……

 その瞬間にその場の空気が凍り付く……

 『死神』のような死の匂いを纏わせたドス黒い殺気を放つ少年。 島田美波最大のトラウマの原因となったと思われ、なおかつ前回のトレジャーハンティング大会でFクラスに襲撃を仕掛けた彼らにとって第1級の危険人物。

 

 

「なんだ、いきなり大量殺人鬼を見かけたようなアホ面見せやがって?」

「プロメテ…… それよりも全員始末するつもりで潰したのにたった数日で復活している回復力の方が驚き……」

 

 プロメテとパンドラの二人だった……

 文月学園の制服で来ていることにも驚きだが、プロメテの方の制服が若干ブカブカでサイズが合っていなかったりと明らかに制服の注文ミスである。

 美波が発狂しそうになった為に、とっさの判断でテティスが美波を気絶させ、それと同時に明久達がライブメタルを掲げてロックマンに変身して前に出る。

 

「おい、一体なんの用があって来た? 事と次第によっては……」

「事と次第だぁ? ……別に無ぇよ、この赤ゴリラ?」

「敢えて言うなら、『本当なら数日前から転校生として入学するはずだった』だけ……」

「「『はあぁ!?』」」

「あ? もしかして勘違いしてやがったか? わざわざお前らみたいなクズを相手にわざわざ潰しに来たとか思っていたりしていたのかよ?」

「ふふふっ、本当に面白い……」

「「『面白い!?』」」

 

 パンドラの発言にプロメテを含めた全員が驚いていた。

 とは言っても、FFF団は初めて「自分を認めてもらえた」と思っている様な驚き方だったが……

 

「……嘘」

「「そんな馬鹿なァァァ……」」

 

 パンドラの言葉が嘘であった事に絶望したFFF団は全員膝をついて落ち込んでしまった。

 中には壊れたかのような虚ろな目になってしまっている人もいて、こんな精神状態だと午前中の間は、中華喫茶の仕事はできないだろう……

 

「ほう? ならなぜここに来ている? 学祭の準備をしていないキサマらが急にこの学校に転校してきたなどと言われてもアタシ達が歓迎するとでも思っているのか?」

「そんなの期待してねえから安心しろよ」

「……さっきも言った。 本当なら一週間くらい前から転校してくる予定だった。 プロメテが大暴れしたせいで、入学のタイミングが遅れた」

「本当だったらもっと後になるはずだったんだぜ? なぜかババア長からFクラスに編入することが決まったつー手紙が届いて今日から来いって話になったから来ただけなんだからよ」

 

 

 プロメテとパンドラの急な転校はババア長(学園長)の指示だったようである。

 だが、なぜこのタイミングで彼らを入学させてきたのかが分からずに、プロメテ・パンドラを含む全員が頭を傾げて考え込んでしまう……

 

「とにかく、こっちは今後の事で会議中なんだから邪魔しないでよ……」

「あ? 『このあとにある試験召喚大会で誰が出るか?』って話をしてんだろ?」

「さっき外で待っている女の子から話を……(ガシッ!!)」

「「明久(吉井君)!?」」

 

 パンドラの言葉を聞いて二人の胸ぐらをつかむ明久。

 もし、万が一彼女に何かしたというのならば、勝敗を度外視してでも二人を始末しようとする気だ……

 

「全く、疑り深いにも程があるぜ? 別に何もしてねえよ。 今のお前みたいに警戒していたけどな」

「……とりあえず、スタンロッドを没収して力尽くで取り押さえて、強引に話を聞き出しただけ。 ……あなたと違っていきなり襲いかかってきたけど、怪我はさせていないし、スタンロッドも返しておいた」

 

 彼らにしては珍しく大人しい対処法だったが、彼らの本来の危険度を考えるとそれだけでは信用するには全く値しないだろう……

 

「取り敢えず暫くは騒ぎは起こさねぇ、いや『起こせねぇ』からおとなしくしているつもりなんだよ」

「……よかったら、その娘の転校を阻止するのを手伝ってもいい」

 

 あまりにも意外なパンドラからの提案に、むしろ全員の警戒心が強まる。

 彼らがうかつな行動をすればそれだけで乱闘に発展してしまうだろう……

 

「お主らの悪行は島田やエールさん達から聞いておる。 そんなお主らの協力的な態度など誰が信用などできるか!!」

「おいクソアマ、さっきの俺の一言を聞いていなかったのかよ? 騒ぎを起こさないじゃなく『起こせねぇ』んだよ。 俺たちにも目的があってこの学園に転校してきたんだけど、あのババア長から騒ぎを起こしたら『放学処分』にするって念を押されてんだ。 今はここを出たくない理由が俺らにはあるから、少なくとも『暫くは平和的』にしていてやる安心しろよ」

 

 Fクラスの女神である秀吉を相手に『クソアマ』呼ばわりしたプロメテを相手に殺気立つFFF団だが、ここで乱闘に発展させてしまったら、瑞希の転校を阻止させることが不可能になってしまうために、おとなしく『プロメテ罪状リスト』をまとめ上げる。

 清涼祭が終わった後にツケとして精算させる気の様だ……

 

「ババア長ニ確認ヲ取ッテ来タ。 ソノ二人ハ、間違イナクコノFクラスニ編入シテイル」

「後、その二人も大会に参加する権利があるっぽいよ? 点数がFクラスで考えられる範疇だったら依頼を果たせた事にしてもいいっても言っていたし……」

「愚かなる選択…… 硬直状態であるからと重要戦力でもある貴様らふたりが無断で戦線から離脱するなど、あまりにもあり得んぞ?」

「まっ、そのありえない行動のおかげでアタシ達もここに来る事ができたんだからいいじゃないの。

 とは言ってもモデルAがこっちに遊びに来ていなかったらアタシは来る事が出来なかったけどね?

 これで6対2、アンタ達に勝ち目なんて無いわよ?」

 

 

 しばらく声がしないと思ったら、テティスとシャルナクはしばらく学園長室に行っていたようだ。

 それ後、Aクラスに立ち寄り、ヘリオスと優子に事情を説明。 ヴァン達と離れ、優子の元に遊びに行っていたモデルAにも手伝ってもらい、大急ぎでFクラスに戻って来たのだ……

 

『へっへ~! オイラ達も来たからにはもう大丈夫だ! このまま一気に……』

「おいそこのゴミクズ! 騒ぎは『起こせねぇ』って言ってんだろ!!」

「……どうしても信用できないなら、これを貴方達に預ける」

 

 そう言ってパンドラは明久の手にライブメタル《モデルV》を預ける。

 ロックマンに変身するためには必要不可欠なライブメタルを敵である明久に預けると言う行いには流石に明久といえどたじろいでしまう。

 それに続くようにプロメテもライブメタルを明久に渡す。

 だが、プロメテは嫌々ながらと言った感じで渡しており、その鋭い視線を明久に向け続けている。

 

「ちっ…… あそこまでされてしまたら仕方ないが信用せざるを得ねぇ…… ここでこのふたりを追い出してしまったら逆にFクラスは『臆病者(チキン)』の集まりだとその他クラスに噂されちまう……」

「おい坂本、取り敢えずあのふたりのライブメタルはこっちで預かっているし、アタシらでも監視しておくから今はこのふたりを入れておいてやったらどうだ?」

 

 堂々とした態度でぬけぬけと言い放たれても信用するのは難しいのだが、ここで追い出すわけにも行かなくなってしまった雄二は、アトラスの提案もあり仕方なくこのふたりを入れる事にした。

 これで戦いになる心配がなくなった為ヘリオスと優子は変身を解いた後、そのままAクラスに戻っていった。

 

 

 

「ったく……で? どう言う風にチームを組むんだ?」

「……赤のロックマンとゴリラ代表?がチームになる?」

「いや『ゴリラ代表』って…… それだと戦力バランスが偏ってしまう。 俺達、バックアップチームの目的はあくまでFクラスの事を姫路の親に認めさせる事が目的だからな。 だから、ここは《明久・パンドラ》《プロメテと俺》で編成しようと思っている。 そして姫路のチームを含めた各チームにはマネージャー替わりにアトラス・テティス・シャルナクの内誰か一人は必ず付いてもらう」

 

 マネージャー替わりなどと言っているが、実質的な監視役だろう…… 

 もし、何かしでかしたなら即座に取り押さえて追い出す為にこのふたりをマネージャー替わりにチームにつけたに違いない。

 

「……坂本、もう少しで大会の受付を締め切られる」

「やっべ! おい明久、急いで申し込むぞ!」

「了解!」

 

 大急ぎで試験召喚大会に申し込んできた明久達に受付の人も軽く引いていたが、どうにか申し込みには間に合った。

 そして、そのままプロメテとパンドラは召喚獣を呼び出す為の点数を補給する為に鉄人がいる補習室に向かう。

 受付の人が配慮してくれたのか、トーナメントではかなり後ろになる様なので、一度Fクラスに戻る事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばさっきから気になっていることがあるんだけど……」

「……何、赤のロックマン?」

 

 補習室の場所が分からないと言う事で、ふたりを案内することになった明久。

 念の為、テティスも明久の元に来ており、警戒だけはしていたが……

 そんな中、明久は比較的話が通じるパンドラに質問があるようで、雑談感覚で質問し出した。

 

「前会った時は外国語だったのに、なんで今は日本語で普通に喋ってるの?」

「「今更かよ!?」」

 

 プロメテとテティスも今更感がすごくて驚きの様である。

 先程まで緊迫した空気の中だったために聞くことが出来なかったが、流石にここで聞いておく必要があるだろう。

 

「……実はあの商店街での騒ぎの翌日にこんな事があった」

 

 そして、パンドラは大会後に二人に何が会ったのかを話し出す……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 another story プロメテ・パンドラside

 

「Hey du nicht, Jungs! Ich bin Deutscher war sagen Klasse in Japan!!(おいどういう事だ! 日本でもドイツ語が通用するって言ったよな!!)」

 

 プロメテは電話越しに激怒している。

 どうやら誰かに騙されたようだったが……

 

「Beruhigen Tamae Puromete Sie.(落ち着き給えプロメテ君。)

Ich, wie sauber sind, die Kalzium?(きちんとカルシウムを摂っているのかね?)」

「Der erste Ort, der Repuriroido Dattsu!!(そもそもレプリロイドだっつーの!!)

Sie strecken Statur, was Sitz sogar menschliche Nahrung zu essen, frustrierend auch ruhig Nettsu von ~!!(人間の飯を食っても身長なんざ伸びねえし、イライラも落ち着かねぇよ!!)」

 

 電話先の相手に完全におもちゃにされているプロメテ。

 この光景だけ見ていると文月の街で大暴れした人物とは思えない……

 

「...... Wie auch immer, ich möchte Sie zu unserer Spracheinstellung nun geändert werden.(……とにかく、今は私達の頭の中にある設定言語を変更して欲しい)

...... Dieser bleibt Nun Gespräch selbst ist nicht erfüllt.(……このままじゃあ会話自体が成立しない)」

 

 まともに話が出来なくなったプロメテから一瞬でケータイを奪い取ったパンドラは電話先の人物に自身の頭脳にインストールされている言語の設定の変更を要請する。

 相手もパンドラが相手では遊びにならないと判断し、とある指定された場所に移動するように事務的に伝えた後で電話をそのまま切ってしまった。

 プロメテが喧嘩腰でロックマン化してその場所にいるであろう電話相手を仕留めようとしていたが、パンドラによる電撃で悲鳴をあげる余裕を与えないままで気絶させ、引きずったまま指定の場所に向かい、そこに置かれていた学習装置のような機械を着用。

 その日の間で日本語を頭の中にインストール。 これで日本における会話も問題なく実行出来る様になったのである。

 

 

 

 another story プロメテ・パンドラside end

 

 

 

 

 

 

 

「……そんなのあり?」

「ありだから、こうやって俺らが普通に日本語を喋ってんだろ?」

「……本当に凄い技術と言うのは表には出てこない物。

 ……とは言ってもその機械でできたのは私達の中にある言語の設定を書き換える事だけ。

 ……流石に知識の全てをインストールする事はこの時代では出来なかった」

 

 それでも十分滅茶苦茶な技術を使われたこと自体に明久は素直に驚いてしまう。

 そんな話をしている間に補習室の前に到着する。

 

「取り敢えず補習室はここだから、Fクラスに所属するならほぼ毎日世話になる部屋だと覚えておくといいよ」

 

 そう言って明久は扉を開けて、鉄人に事情を説明したあとでそのままFクラスに戻っていった。

 「え~?」と嫌そうな顔をしていた二人だったが、試召戦争とやらで召喚獣が殺られなければ大丈夫だろうと考え、そのまま補習室の中に入っていく。

 その中でふたりの悲鳴が聞こえたが、明久とテティスは聞かなかった事にしてそのままFクラスに走っていく……

 

 

 

 

 

 

「よう、遅かったじゃねぇか? 待ちくたびれたぞ」

「やっほーユウジ! 取り敢えずあのふたりを補習室に押し込んで来たよ!」

「なるほどな、あらかたあの二人が鉄人相手に抵抗したとかそんなところだろ? 取り敢えずお前らにもルールは説明しておくからきちんと覚えておけよ」

 

 封筒を取り出した雄二が、明久とテティスに今回の大会のルールの説明をしていく。

 まとめるとこうである。

 

 

 

 

 

1.出場するチームは二人一組である

2.トーナメント式で最期に勝ったチームが優勝である。

3.使用される科目はランダムで、各試合毎に変更される。

4.前回の大会で使用された新武装やアイテムは使用可能、その為に前回の大会で勝ち抜いた人物はある程度有利になる

5.一般客からの参加も受け付けており、一般枠からの参加者には自動的に一回戦で100点、勝ち進む事に+70点追加されていく。

6.この大会に限りある程度の逃走行為が認められるが、長時間続けた場合有無言わさずに失格とする。

7.また、召喚フィールド内にはリングが設置されており、そのリングの外に召喚獣が出された場合も失格とする。

 

 

 

 

「以上だ。 何か質問はあるか?」

「「まだ全部覚えていないからその紙頂戴!」」

 

 明久とテティスの言葉に呆れた雄二はルールが描かれた紙をバカ二人に渡す。

 

「取り敢えず、事前に申し込んでいた姫路と島田はそろそろ時間だろ? 先に試合に行って来るといい。

 俺らは後半のブロックに分かれているから、あの二人が戻ってきたらすぐに向かう」

 

 雄二の指示に合わせて、美波を背負ってから出て行くテティス。

 「貧乳な分結構軽いや」と言いながら、瑞希と一緒に試合場に向かっていく。

 

 

 

「一体何なんだあのおっさん! 本当に人間か!?」

「……イレギュラー程度では一個中隊を組まないと勝てない」

 

 明らかにテストとは別件で疲れ切った表情でFクラスに戻って来たプロメテとパンドラ。

 パンドラの言った言葉は何かの冗談だと思いたい……

 

「おう、戻って来たか? ならすぐにオレ達も試合場に行くぞ」

「そう言えば坂本って言ったか? この大会で貰える賞品に付いて聞いたか?」

「賞品? ああ、たしか優勝者には特別な賞品が出るって聞いたぜ?」

「……『黒金の腕輪』試召戦争で役に立つとても便利な物らしい」

 

 土屋が厨房でゴマ団子を作りながら会話に入ってくる。

 どうやら彼も優勝賞品に付いて情報を入手しているようだった。

 

「いや、そっちじゃなくて如月グランドパークのプレミアムペアチケットの方なんだがな」

「それがどうしたんだよ? 普通の優待券じゃないのか?」

「ここに戻ってくるまでの間に女子共がキンキンうるさい声で騒いでいたんだけどよ、なんでもカップル同士で行くと『ウェディング体験』とか言って結婚までコーディネートする気らしいぜ? あの広まりようだと多少強引な手を使うのは間違いないだろうよ」

「なっ、何だとッ!?」

 

 いやらしい笑顔で言うプロメテ。

 そんな話を聞かされた雄二は大声を上げてプロメテに詰め寄る。

 

「どうしたのさそんなに慌てて?」

「慌てるに決まってるだろ!! プロメテの言った通りなら必ず翔子が必ず優勝を狙って参加してくる……

行けば結婚…… 行かなくても『約束を破ったから』と結婚…… お、俺の将来は……」

「……ゴリラの目が虚ろ?」

「一体何ガアッタ?」

 

 あらかた『チケットが手に入ったら一緒に行ってやる』とか言って安請け合いしたんだろうと思った明久は、生唾を飲みつつ後ずさる。

 もう少しで試合場がある運動場に付くという時だった……

 いきなり試合場で歓声が沸き起こる!

 どういう事だと大急ぎで試合場に入る4人。

 そして、試合場では異様な展開が起こっていた……

 

 

「一体この二人は何者なんでしょうか!? 初めて召喚獣を操るはずなのに、いとも簡単に30点差もあるDクラスコンビを相手に一方的に攻め立てたまま勝ち上がってしまいました!!」

 

 

 

 2-D 香川希・山田美香 vs ヴァンvsアッシュ

 

 教科 数学

 

 点数 132点(DEAD)・128点(残り12点) vs 100点(残り85点)・100点

 

 

 

 

「おい、試召戦争ではテストの点数と操作技術がモノを言うんだったよな?」

「うん、少なくとも初参加であんな結果になるなんて事はありえないはずなんだけど……」

 

 そう、一般枠で試験召喚大会に参加していたヴァンとアッシュが点数上では格上のDクラスコンビを瞬殺して見せたのである……

 今、その試合のVTRが流れているが、その展開は誇張無しで一方的だった。

 ヴァンの召喚獣は白色のマントと黒色の服を着用している。 武器は左腕の鉤爪の様だ。

 一方、アッシュの召喚獣も右手に鉤爪のような物を装備し、赤のライトアーマーに加え、足にはローラーシューズを装備している。 

 

「希!」

「一般の参加者だろうと容赦しない、一瞬で終わらせてあげるわ!」

 

 希と呼ばれた少女の召喚獣が、武器である剣を構えて切り掛かろうとした瞬間だった……

 

「きゃああああああああああああああああ!!」

 

 つっこんできた彼女の召喚獣はアッシュの召喚獣の右手に捕まり、膨大な熱エネルギーを照射され、膨張したまま爆発しまった。

 描写の規制でその光景ははっきりと映る事が無いよう、光のようなもので隠されてしまったが正直な話光の向こうで何が起こっているのかは容易に想像できてしまう……

 

「あのねぇ、こっちの武器は可動式の鉤爪なのよ? 速攻で掴みかかるに決まっているじゃない。 あまりにもバカ正直だったから何か裏があるんじゃないかと疑ったくらいよ?」

「くっ、だったら仕方ないわね! 本当はもっと先で使いたかったけど…… 解放の指輪装着、腕輪発動『ラッシングバーナー・フルチャージ』!」

 

 

 パートナーが瞬殺されたところを見せつけられてしまったからか、山田美香という少女は解放の指輪を装着して召喚獣の腕輪を解放する。

 それと同時に、彼女の召喚獣が全身に炎を纏う。

 とは言っても、愚直に突っ込んで行く事はせずに慎重になって二人の周りをまわるように様子を見つつ、高速移動しながらも徐々に間合いを詰めていく。

 

『速い速い、とても速いぞ! 流石に一度試召戦争を経験しているからか、これまでの試合で出て来た召喚獣とは全く違った動きをしている!』

「あんな攻撃、連続使用は出来ないはず! ならば……」

 

 彼女の予想自体は正しかった。 アッシュの召喚獣はすぐに攻撃できないのか、ナイフのようなものを左手で構えているが、なかなか攻めて来ることは無かった。

 

「今ね! 食らいなさい、私の召喚獣の全身全霊の突進を!」

『おっと! ここで仕掛けて来た山田選手! 敵は超高速の突進攻撃を前に動かない? いや、両者の召喚獣は動けないぃぃぃ!!』

「そうはさせないよ! 『スラッシュクロー』!!」

「なっ…… きゃああああああああああああああああ!!」

 

 チャンスとばかりに飛び込んだ彼女の召喚獣を今度はヴァンの召喚獣が迎撃する。

 突撃してきた彼女の召喚獣を交差法気味に切り掛かって行った結果、若干のダメージは受けたが敵の召喚獣は上に弾き飛ばされてしまった。

 同時にクーリングタイムが終わったアッシュの召喚獣が接近。 再び召喚獣の腕を掴み、高周波の熱エネルギーによる追撃を打ち込む。

 どうにか腕を引きちぎり、強引に距離を離した山田美香の召喚獣だったが……

 

「ギブ……アップよ…………」

 

 このムチャによる点数へのダメージが大きく、点数が殆ど残っていなかった。

 結局、戦意を喪失してしまった彼女は悔しげな顔をしながらギブアップを宣言した。

 これが、明久達が試合場にやってくる前に起こっていた出来事の全容であった……

 

 

 

 

 

 

「今大会の台風の目となるのか! 一般参加枠の『ヴァン』・『アッシュ』選手2回戦に進出です!!」

「「ナイスファイト!!」」

 

 お互いに手を叩きながら試合場を出て行く二人。

 その様子はまるで仲の良い兄妹の様でもあった。

 

 

 

 




今回はモブキャラの能力として使った必殺技に付いてです。

・ラッシングバーナー

ロックマンx2の8大ボス「フレイム・スタッガー」から入手する特殊武器。
エックスが使用する時は前方に炎を纏ったロケットを2発、1セットで発射。 地上で発射すると地面に残り火が発生し、さらにダメージを与えられる。

フルチャージしてから使用すると全身に炎を纏って突進するタイプの武器に変化する。



召喚獣の設定も更新しました。
次の話を出した時にはプロメテ・パンドラの召喚獣の設定も更新したいと思います。


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第5話

バカテスト!

第11問

次の(   )に当てはまる薬品名を答えなさい

アルミニウムに(   )をかけると塩化アルミニウムと水素が発生する


姫路瑞希・ヘリオスの答え
アルミニウムに(塩酸)をかけると塩化アルミニウムと水素が発生する



教師のコメント
『正解です。 ただし実際にやってみると反応しにくい場合があります。 これはアルミニウムが表面に酸化アルミニウムの膜を作る為です。 実験を行う場合はやすりなどで表面を削ってから行うと良いでしょう』


土屋康太の答え
アルミニウムに(魔法の言葉)をかけると塩化アルミニウムと水素が発生する

プロメテの答え
アルミニウムに(波紋)をかけると塩化アルミニウムと水素が発生する


教師のコメント
『かける言葉もありません』




吉井明久の答え
アルミニウムに(情け)をかけると塩化アルミニウムと水素が発生する

教師のコメント
『この答えは情けないと思います』


パンドラの答え。
アルミニウムに(塩)をかけると塩化アルミニウムと水素が発生する

教師のコメント
『料理してるのではありません!』


「えー、これよりCブロック第1回戦第5試合を行いたいと思います」

 

 特設ステージへと向きながら歩いて行く明久とパンドラ。

 ステージへの扉へと入るまではテティスが付いて行っており、パンドラへの警戒度は相変わらず高い状態である……

 

「3回戦までは一般公開もありませんので、リラックスして全力を出してください」

「頑張ろうね、律子」

「ええ真由美!」

 

 どうやら、明久とパンドラの対戦相手は仲良し女子コンビのようだ。 本当に微笑ましい光景である。

 

「では、召喚してください」

 

 

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 

 相手の二人が呼び声を上げると、毎度おなじみの魔法陣の様な物が展開され、召喚者をデフォルメしたような姿の召喚獣が呼び出される……

 

 

 Bクラス 岩下律子 & Bクラス 菊入真由美

 

 教科 数学

 

 点数 179点 & 163点

 

 相手の召喚獣は両者ともに似たような西洋鎧と一般的な鋼の剣だった。 瑞希の召喚獣の下位互換のような感じの印象を受ける……

 

「さてと、僕らも召喚しようか?」

「……うん、分かった」

 

 あくまでも機械的に答えるパンドラ…… あくまで距離は置いておきたいようだ。

 

 

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 

今度は明久とパンドラの召喚獣が呼び出される。 明久の召喚獣は相変わらずで改造学ランに木刀という粗末な装備だ。

 一方、災厄のロックマンとまで称された”魔女”パンドラの召喚獣は……

 

 

 

 

 

「ほとんど僕と変わらないじゃないか!?」

「……失礼、貴方と違って身なりはきれいな方」

 

 きれいな制服を装備していることを除けば明久の召喚獣とほとんど差は見られなかった。

 一応、流石に召喚システムの方も女子を相手に突っ張ったヤンキースタイルにすることは出来なかった様で、身なりが普通の学生である事以外は明久と全く変わっていない……

「行くわよ! 修学旅行のお土産コンビ!」

「律子、違うわよ。 チンピラコンビよ!!」

 

 パンドラの召喚獣は一応普通の学生と言う感じなので、チンピラとは違うと思うのだが……

 

 

 Fクラス 吉井明久 & パンドラ

 

 教科 数学

 

 点数 79点 & 152点

 

 

「!? パ、パンドラ!」

「……何?」

「Fクラスに編入されたくせになんでそんな点数になってるの!?」

 

 明久はパンドラの点数に驚いている。

 強制的にFクラスに編入させられた生徒のはずなのに、その割には点数がかなり高い事が信じられないのだ。

 

「……一応、ドイツでも勉強はしていたからある程度は出来る」

 

 パンドラの話を聞いて納得する明久。

 美波も総合でFクラスに所属させられているが、一応”数学”だけはBクラストップレベルの成績を誇っているのだ。

 それを考えると、パンドラの数学の学力の高さにも納得がいくのである。

 

 

「律子!」

「真由美!」

「「ええ、行くわよ!!」」

 

 パンドラと話をしている間に対戦相手が名前を呼び合ってから突っ込んでくる。

 明久とパンドラを挟み込むように移動してきて、徐々に間合いを詰めていく。

 

 

「なるほど、仲良しごっこをしている女子同士にしては意外とやるね?」

「女子二人だからって舐めないで!」

「ええ、私と律子のチームワークは無敵なのよ!!」

 

 先程律子と呼ばれた女子が明久の召喚獣に攻撃を仕掛けて来る。

 

「って、危なっ!」

「……吉井、作戦がある」

「作戦?」

 

 果敢に攻撃を仕掛けて来る召喚獣の相手をしながら、パンドラの話を聞くことにする明久。

 

「……まずは貴方がおとりになる」

「うんうん、それで?」

「……もう一方が攻めて来た隙に貴方が倒す」

「『それって明久が二人とも相手をするって事だよな!?』」

 

 

 パンドラが楽をする為の提案に驚いた明久とモデルZ。

 

「……仕方が無い、スペアプランがある」

「絶対碌な作戦じゃないと思うけど、一応聞いて置くよ」

「……点数の高い私が攻撃を担当する。 ……貴方は盾を担当して」

「『結局僕(明久)だけが一方的にやられるじゃないか! 明久の召喚獣が観察処分仕様だと知ってていているのか!?』」

「……貴方は本当にワガママ」

「『あんた(オマエ)の作戦が無茶すぎるんだよ!!』」

 

 呆れ切ったと言う態度を取り、溜息を付くパンドラ。

 

「……だったら仕方が無い。 ……正面から真っ向勝負」

 

 結局作戦も何も無いまま真っ向勝負という事で話が付いてしまう。

 二人はそれぞれの相手の召喚獣に目掛けて突っ込んで行き攻撃を開始する。

 

「律子、どうしよう?」

「こんなバカ達を相手に構っている暇なんて無いわ! さっさと終わらせて次の試合に備えましょう」

「うん!」

 

 結果、二対二と言う構図ではなく一対一が二つと言う構図になった。

 明久の対戦相手は律子と呼ばれていた髪の長い方の女の子だ。

 

「やあっ!」

 

 敵が手にしている剣を上から振り下ろしてくる。

 一方の明久は、それに合わせるように一歩だけ横に動かす。

 

「このぉっ!!」

 

 簡単に避けられた事で、今度は大きく剣を横振りで攻撃してくる。

 それに合わせるように今度は一歩後退。

 相手はしびれを切らして何度も攻撃を繰り出してくるが、たった1~2歩動いただけで避けられ続けている事にだんだん焦りを覚えて来る。

 

「この、このぉっ! いい加減にやられなさい!!!」

「う~ん…… なんだかこれじゃあ弱い物いじめになっちゃうな。 とは言っても、これ以上避け続けても埒が明かないし…… 喰らえ”円水斬”」

 

 敵の攻撃のタイミングに合わせて、明久の召喚獣は超高速回転切り”円水斬”の連撃を叩き込む。

 カウンター気味に放たれた円水斬に対応出来なかった相手は一方的に上からの乱れ切りをモロに喰らい、地面に叩き伏せられてしまう。

 

「所で、パンドラの調子はどうなんだろう……」

 

 しばらく相手が動けないと判断した明久はパンドラの様子が気になって視線を向けてみる。

 そこでは……

 

「……”天裂刃”・”落鋼刃”・”雷神撃”・”疾風牙”・”重破斬”」

「僕のロックマンとしての剣術を真似されてるよ…… いや、あの人?もロックマンだっけ? しかも僕らの大先輩……」

 

 明久の持つ剣術を模倣して一方的に相手を叩きのめすパンドラの姿があった。

 その攻撃の流れの美しさは格闘ゲームの連続コンボのそれだった。

 パンドラの最後の攻撃を食らった相手の召喚獣は、明久がダウンさせた相手の召喚獣の方に飛んで来た。

 

「……今だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「……追い打ち」

 

 最早戦意を喪失して手を取り合いながら怯えてしまっている相手二人の召喚獣。

 それでもなお追撃を掛けるべく挟み撃ちにして一方的に召喚獣にリンチをさせる明久とパンドラ。

 

『あまり望ましい光景ではありませんね』

『教育者としては何かしらの逆転劇によって明久・パンドラペアにはぜひとも負けてもらいたいと……

 別の試合場ではもっと酷いチームがいるようですね……』

 

 ”チンピラと素行不良少女がか弱い女子二人を一方的に痛めつけている”光景はたまたま見ていた人間全員の反感を買ってしまう。

 ……が、もっと酷いチームがいると速報が入って来たようで、そのもう一方の試合場の観客席では怒号が飛び交い、禍々しい殺気が飛んでいる。

 

「あ!」

「……あれ?」

 

 元の威力が低いとはいえ、何十回も攻撃を重ねられてすでにボロボロな召喚獣にいつの間にかとどめを刺してしまっていた明久とパンドラ……

 

「うう、悔しい……」

「あんな二人に負けるだなんて……」

 

 本気で泣きながら退場してしまった相手ペア。

 さすがに可哀想になって来てしまう。

 

「……勝者”吉井・パンドラ”ペア」

「「信じられない! やり直しなさいよ!!!」」

「「くたばりなさい! 薄汚い卑怯者!!」」

 

 周りから罵詈雑言の限りを尽くした暴言が飛び交う。

 その勢いは先程隣の試合場から飛んで来た怒号と何ら遜色がない程に強烈な物で、パンドラは無表情を貫いているが、明久は申し訳なさそうな顔をしながら退場していった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、お前らの所もすごかったじゃねえか……」

「雄二も浮かない顔しているけど、もしかしてさっき隣の試合場から聞こえた怒号って……」

「ああ、オレらの仕業だぜ? 全く、甘っちょろい事ばかり吐くガキどもだったぜ」

 

 何の悪びれも無くプロメテが答える。

 彼曰く、こんな展開になっていたそうである。

 

 

 

 

 another story 坂本・プロメテside

 

 

 

「ここまで来たら小細工は無用! 正面から真っ向勝負だ!」

「ああそうかよ! さっきから坂本! お前だけが楽しようとする策ばっか弄しようとしやがって!」

 

 どうやら、途中までは明久・パンドラペアと同じような話をしていた様で、プロメテは勝手に捨て駒にされて激怒している。

 因みに、プロメテの召喚獣は黒一色で固められたスーツ、片目には九つの頭を持つ龍の眼帯を着用し、両手には短剣を装備している。

 その風貌は完全にヤクザ同然のものだ……

 

 

 

 Fクラス 坂本雄二 vs Eクラス 野々村啓太

 

 教科 数学

 

 点数 179点 vs 82点

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

「ちっ! Fクラスのくせになんでそんな点数なんだよ! あまりにも点数が違いすぎる!!」

「点数に頼り過ぎなんだよ、このザコが!!」

 

 ”次こそはAクラスに勝つ”…… そんな思いで勉強を再開した彼はFクラスの人間とは思えない点数を持って、一方的に相手の召喚獣を殴り倒している。

 その内相手の召喚獣が倒れ、なかなか立ち上がれなさそうにしている時だった……

 

「よっしゃぁ、今がチャンス!!」

「くっ、急いで体制を……」

「ふはははは、無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァ!!

WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYッ!!

無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァ!!!」

 

 必死になって脱出を試みている敵の召喚獣を相手に一方的に殴り続けていた。

 あまりにも殴り過ぎた為か、殴られていた召喚獣が殴られた衝撃で浮き上がってしまう。

 だが、そんな中さらに雄二の召喚獣は敵にボディーブローを叩き込み、全身を余すところなく怒涛のラッシュを叩き込み続け、最後の一撃で敵の召喚獣をフィールドの外まで殴り飛ばしてしまう……

 その時間は約”27秒”、その間に叩き込んだ拳の計数は雄二曰く”たったの”421発程度らしかった……

 

 

 

 その一方でプロメテの方も……

 

 Fクラス プロメテ vs Eクラス 飯野涼

 

 点数 114点 vs 76点

 

 

「くそっ! なんで、Fクラスの奴がこんな点数を持ってんだよ!?」

「おいおい、拍子抜けだな。 後始末はどうするか……」

 

 どう相手を壊すかだけを考えながら、適当に相手の召喚獣の腕を折ったり、捻じ曲げたりしている。 何で召喚獣の点数がゼロにならないのかが不思議な程である……

 あまりの容赦のなさに、流石に相手の方も泣きそうになっており、たまたま見ていた観客も『この外道』『社会のクズ』『やり過ぎだ!!』とプロメテを相手に怒声を浴びせ続けている。

 最終的にはあまりにも変形しすぎた相手の召喚獣にモザイクの規制がかかってしまい、強制的に0点扱いにされて召喚獣だった何かが消滅していった……

 

 

「し……勝者、”坂本・プロメテ”ペア!!」

 

 

「ふざけんな! やり過ぎだろ!」

「そうよそうよ!!」

「プロメテ、くたばれ!!」

 

 周りの客席から大ブーイングが飛び交う……

 中にはパイプ椅子を持って襲い掛かろうとしている人物もいるほどだ……

 そんな中、周りのブーイングを無視するように笑顔で手を振りながら悠々と歩いて退場していくプロメテ。

 その態度はまさしく調子に乗っている外道のそれだった……

 

 

 

 

 another story 坂本・プロメテside end……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人ともやり過ぎだよ……」

 

 あまりの容赦のなさに明久も苦笑いしか出来ずにいた……

 

「ま、お互い第一回戦は勝ったんだ。 さっさと中華喫茶の方を手伝って来ようぜ」

「それもそうだね。 美波の方も忙しくしているだろうし(主に暴走気味の美春さんの事で……)」

 

 

 Fクラスの様子が心配になって来た明久と雄二は、その場を後にして教室に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいー…… 『いい加減にしなさい! この豚ども!!』まああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!?」

 

 教室近くに付いた明久がドアを開けようとした瞬間だった。

 教室内では大変な騒ぎになっていた。

 

「お帰りじゃ明久。雄二。 ちょうど良かったのじゃ。 ちと厄介な客が来ておってのう。まあ、見事に暴れだしおって……」

「営業妨害か?」

「そんな所じゃ……」

 

 その言葉に4人が教室を除き込んでみると、

 

「”まだお冷持ってきてくれねぇの?”っつー話なんですけど?」

「って言うかさ、なんなのこの女? こんなうるせぇ客放置してるとかあり得ねぇんすけど?」

「「しかも、美味いマズい以前に注文すら取りに来ないお店ってどうよ? 客の事舐めてんの?」」

 

 そこには、坊主頭でガラの悪い服を着ている男とソフトモヒカンで無駄に露出の多い(よく学園に入ってこれたと思う程に凄い)男が教室のウェイトレスである瑞希・美波に絡んでいる。

 しかもそこに彼らの行動に我慢できない客として美春が間に割って入ってきていることで、教室の中は完全にパニック状態になっているのである。

 

「けっ、あんなクズになに手間取ってんだあのデブとガリ」

「プロメテ、その言葉は僕に対して喧嘩売ってるの?」

『明久、取り敢えず落ち着け』

 

 プロメテの言葉に怒り心頭の明久はロックマンに変身しようとしているが、どうにかモデルZに宥められて大事にはならずにすんだ。

 

「プロメテは基本的に異性に興味は無い……」

「パンドラ!! オレをホモみたいに言うんじゃねぇェェェェ!!」

 

 プロメテの大声でのツッコミが中の不良に聞かれていないか心配になった明久だが、どうやら聞こえていないらしく、不良二人は女子3人に絡み続けている……

 因みにプロメテは多少は異性と言う存在についての配慮くらいはしています。

 

「ねぇ秀吉、確かシャルナクとアトラスがバウンサー(用心棒)代わりに教室に残っていたはずじゃあ……」

「すまぬ、シャルナクとアトラスは島田妹とエール・グレイが学園に来ているという事で彼女らを迎えに行って出て行ったのじゃ。 後、テティスは少々用を足しに行くと言って出て行ってしまったきり帰ってこないぞい……」

 

 明らかにFクラス最強のバウンサーの不在を狙ってのクレームである。

 いや、店としては直接的な関係の無い客まで巻き込んでいる地点でクレーマーのそれを遥かに超えた悪質な嫌がらせ行為だ。

 

「おい、さっきからいい加減にしろよこのアマ!!」

 

 間に入っている美春を相手にとうとうキレた不良二人。

 相手が女である事もお構いなしに顔面を狙って殴りかかる!

 

「おいおい、ああいう場合は相手を殺してもいいんだっけか?」

「……後始末はまかせて」

「清水殿が殴られそうな中何を言っておるのじゃ!?」

 

 そんな中でも平常運転のプロメテとパンドラ。

 いきなりの事に動けずにいた秀吉がプロメテとパンドラの二人へ怒りをぶつける。

 

「あ? なに言ってんだこのアマ?」

「ワシは男……ってそんなことは後ででいいのじゃ! おぬしらなぜそんなに落ち着いていられるのだ!!」

「……よく見てみる」

 

 いきなりパンドラが教室の中を指し出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美春さん、大丈夫?」

 

 自身の体を盾にして美春を庇う明久の姿だった。

 美春は何が起こったのかが分かっていないようで、明久の顔をポカンとしたまま見ているだけでなにも答える事ができずにいた。

 

「ボクぅ~? いきなり乱入してきてナイト様気取りですかぁ~?」

「だったら憂さ晴らしにてめぇからぶっ殺し…… って、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」「遅れてしまって大変申し訳ありませんでした。 私が代表の坂本雄二と申します。 なにか不満な点でもございましたか?」

「不満も何もツレが思いっきり殴り飛ばされてるんだが……」

 

 ホテルのウェイターの様に恭しく頭を下げる雄二。 だが、その言葉の前に相手を殴り飛ばしている所を見ていると模範的な責任者には全く見えない。

 

「それは私の”拳から始まる交渉術”に対しての不満という事でよろしいでしょうか?」

 

 『平和ボケした国の学校でまさかこんな凄い交渉術を使う奴がいるとはなぁ』と言いながら笑い転げているプロメテ。

 

「な、何が拳から始まる交渉術、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「そして次に”元軍人の蹴りでつなげる交渉術”です。 そして最後に”元天才暗殺者のトドメで締める交渉術”がまっていますので……」

 

 いつの間にかエールとグレイ、島田葉月(エールによって耳栓・目隠しをされている)を連れて戻ってきていたアトラスとシャルナクの二人が攻撃を開始する。

 

 シャルナクに至っては本気で殺しにかかっており、倒れている彼らの首元にはシャルナクお手製の苦無が見事に刺さっており、後一センチで喉を捌いて見せただろう……

 流石にマズイと思った秀吉によって裏の厨房に大人しく連行されてしまった。

 恐らく正座させられたまま秀吉からの説教を食らってしまっているのだろう……

 

「わ、分かった。 こっちからはこいつを交渉にやるよ。 俺はもう何もしないから交渉は不要だぞ!」

「おい、ふざけるな。 オレを売って自分だけ助かろうってのか!?」

 

 完全に仲間割れである。 所詮なれ合いでの繋がりなど簡単に切れるといういい証明である。

 

「それで? まだこちらからの交渉術は必要か?」

 

 長々と居続ける不良二人への苛立ちでついに雄二の仮面が剥がれてしまった。 彼の勤勉な態度はあまり持続しないのである。

 

「いや、もう十分だ。 大急ぎで退散させてもらうよ……」

 

 モヒカン頭で無駄に露出の多い不良が坊主頭の不良を置いてそのまま逃げて行ってしまった。

 外からは女子達の悲鳴が木霊している。 このままいけば逃げ出した不良は鉄人によって捕まり、そのまま警察に捕まってくれるだろう……

 

「お、おい! オレはもう何もしてないよな!? 一体その苦無2本を拾って何を…… うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 取り残された不良は、アトラスと雄二によってそのまま壁に括り付けられてしまい、そのまま眼前に目掛けて苦無を投げ飛ばされた。

 本気で殺されるかもしれない恐怖に耐えきれなかった坊主頭の不良は泡を吹いて気絶。

 アトラスによって学園のプールにそのまま投げ飛ばされてしまった……

 

「元天才暗殺者のトドメで終わらせる交渉術の代わりに”元軍事教導官の遠投による交渉術”にて交渉は終了しました」

 

 とんでもない交渉術である。

 プロメテは爆笑しながら雄二のこの行いを称賛していたが、はっきり言ってこの交渉術は門外不出であってほしいものだ……

 

「失礼いたしました。 こちらでの対応が遅れてしまったせいで不愉快にさせてしまった事を深くお詫び申し上げます」

「ま、まあ…… あんな変態がいる席に関わり合いにはなりたくないしな……」

「見ていて不愉快だったし」

「むしろブッ飛ばしてくれてスカッとしたわよ!!」

 

 どうやらあの二人は他のお客様にも悪影響を与えていた様で、中には感謝すらしている人物もいる。

 とは言っても、Fクラスの対応が遅れた事が原因で周りの気分を害していた側面があるのも事実なので……

 

「お詫びと言っては何ですが、今いるお客様皆さんの代金を2割引きにさせていただきます」

「あ、後もしよろしければおすすめのゴマ団子もどうぞ! 表面はカリカリ、中はモチモチで最高の食感となっておりますよ」

 

 頭を下げて、改めて謝罪する雄二。

 美波が持って来たゴマ団子の事もあり、機嫌を良くしたお客様も皆満足して出て行った。

 

 

 

 

 

 こうして謎の営業妨害は事なきを得た。

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 




この辺りで明久×美春のストーリーも進めたいと思います。
営業妨害をした人間に関してはどんな人物なのかは想像に任せますwww


しかし、最近オープンした大型ショッピングモールを見回って楽しんでいました。
ああいう人が集まっている所を見ているとゾンビゲーの『デッドライジング』をイメージしてしまいます。
せっかくなら純粋に楽しみたかったですが、夜勤明けで途中で眠くなってしまうんですよね……

因みに12.5巻はそのオープンしたショッピングモールの本屋で見つけて購入しました。 今、購読中ですwww


感想を待っています!!


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第6話

暫く喉を傷めて体調を崩していました。
喉全体がやられていた様で完治するのに2週間以上はかかってしまった……
今はもう大丈夫ですけど。




バカテスト!

第12問

以下の英文を訳しなさい

「This is the bookshelf that my grandmother had used regularly.」


・姫路瑞希・グレイの答え
「これは祖母が使用していた本棚です」
教師のコメント
『はい、正解です。 よく勉強していますね』


・パンドラ・ヘリオス・テティスの答え
「これは今は無き祖母が使用していた本棚です」
・パンドラの追加コメント
この英文は現在進行形と過去完了形の単語が一つの文に同居しています。 なので状況をある程度想像で補完して最も考えられそうな状況の下で答えを導き出す必要性が出てしまいました。
教師のコメント
『え…… ちょ、ちょっと待ってください……
…………確かに混在させてしまっていました。
なので今回は私が用意した本解に近い解答は全て正解にしたいと……』


・プロメテの答え
「これはオレが始末したババアが後生大事にしてやがったボロっちい本棚だ」
・坂本雄二の答え
「こいつはババアから強奪して売り飛ばした薄汚い本棚だ」
教師のコメント
『思ったのですがこの二人だけは例外として不正解にしたいと思います』


・土屋康太の答え
「これは………………」
教師のコメント
『訳せたのはThisだけですか……』


・吉井明久・シャルナクの答え
「dsl;あうといあえ;jglhごjgれ;ぅあdghんfd;おgじょい;sghfsづいl;ghsdf;gjsぢ;おつgjflk…………」
教師のコメント
『せめて地球上の言語で訳してください……』


・島田葉月の答え
「えっと……『これは……』……はう、滅茶苦茶でわかんないですっ(英単語帳を片手に……)」
教師のコメント
『ご、ごめんなさい! この英文はおかしい事はパンドラさんに言及されていますので無理して解かなくても大丈夫です!!』


 営業妨害から少し経った後の時間、一緒に遊びたがる葉月を説得しながら明久とパンドラは次の試合に備えていた。

 今、次の対戦相手の確認を行っている。

 

「吉井、次の対戦相手……」

「うん、雄二に対戦表を見せたらこの人達が上がりそうだってくれたけど…… 本当に言った通りになったよ……」

 

 試合場にて対戦表を再度確認したら坂本の予想通りになっていた。

 

 

「Bクラス代表の”根本恭二”とCクラス代表の”小山友香”さんか……」

「強いの……?」

 

 文月学園に来て間もないパンドラはこの二人の事を知らないのか、明久に質問する。

 

「強い弱いというより”面倒くさい”かな?」

「どういう意味?」

「小山さんの方はあまり知らないけど、根本君の方は有名だよ。 ある意味僕らロックマン組やプロメテよりもね。 正直相手にしたくない……」

 

 明久相手にそこまで相手にしたくないと言われる根本と言う人物がどんな人物なのかが無性に気になって仕方が無いパンドラ。

 

「テストではカンニングの常連とか、喧嘩では必要以上にナイフで滅多刺しにするなんて当たり前だとか。 それで相手もなぜか死なないらしいし…… 後はその辺の何処にでもいる他人を脅迫して無理矢理自分の奴隷のように使い潰すとか目的の為なら手段は選ばないらしいんだ。 使い潰された人の中には今だ病院から出られない人物もいるらしいし」

「それだけ聞いていればただの小物にしか聞こえない……」

 

 パンドラの言う通り、それだけでは『稀代のクズ野郎”根本君”』程度で終わっていただろう……

 

「しかもかなり粘着質で、ヘリオス達が勝手に学園に編入したばっかりの頃に、根本君がヘリオスに物凄い絡んできたらしいんだよね」

「それで……?」

「最初はヘリオスもライターと噴射型殺虫剤を組み合わせた”簡易火炎放射器”で頭をキノコ風に焼くとか、屋上からプールに目掛けて投げ捨てるとか、消火栓に入ってるホースで血の流れが止まる様に縛り付けて置く程度の軽い罰で済ましていたらしいんだけど……」

「ふーん……」

 

 明久の話を聞いて、周りの皆は軽く引いていた。

 中には『何かの冗談だろう』などと言って苦笑いをしている人物までいる。

 

「あんまりにもしぶとくて、ついに根本君がさっき言ったみたいに他人を脅迫して僕達の住んでるマンションを爆破させようなんてたくらんじゃったんだよね。

今の僕の家を襲うなら最低でも軍の一個大隊くらいは連れてこないとまともにダメージを与えられないというのに……」

 

 あまりにも現実離れした話に周りで話を聞いていた人達は全く信じておらず、99%の人間が笑いをこらえていた。

 因みに残り1%は反応に困っているか聞かなかった事にしようとしている。

 

「結局根本君の計画がヘリオスにバレて、オシオキと称してこれまでに脅迫してきた人間の情報を全部探し出して抹消した後、ロックマンとしての姿で地獄の空中遊泳を体験させてあげたらしいよ? 戻ってきた時の根本君、完全に老け込んでいたよ。 元からジジイだって言われた方が信用できるくらいに」

 

 ヘリオス曰く、『高度6000メートルから落として、地面にぶつかる直前で回収する』というのを数回繰り返しただけらしい……

 

「意外…… そのまま突き落としても誰も文句は言わないと思う……」

「今のヘリオスの思想を考えたらそんなことはしないよ。 だって今のヘリオスは『愚者に死を』から『愚者に正しき導きを』に変わっているんだし」

「今のヘリオスのやり口のどこに『正しさ』があったの……?」

「始末しないででギリギリで生かしておいてあげる優しさ?」

「死んだ方がマシと思える拷問だってある……」

 

 パンドラの言う事も物騒で十分恐怖するに値する物だが、明久の基準も大概である。

 話をしている間に試合場に着いたようだ。

 どうやら相手の方が先に到着していた様で、既に明久とパンドラの前には恨めしそうな目でにらんでくる根本とそのパートナーの小山の姿がそこにはあった。

 

「吉井ィィィィ、ヘリオスの前にお前から始末してやる!!」

 

 怒りのあまり、不快な歯ぎしりを立てながら睨んでいる根本。

 その眼には普通の人間なら恐れおののくほどの殺気が込められている。

 

「き、恭二…… 別に今回は試召戦争なんだからFクラスのバカ共が相手なんだからこの勝負は貰ったようなものじゃない。 だから一度落ち着きなさいよ……」

 

 どうやらパートナーの小山も十分性格が悪い部類の人間のようである。

 根本の殺気に若干ビビりながらも、どうにか根元を宥めて落ち着かせようとしている。

 

「では試験召喚大会第2回戦を始めて下さい」

 

 今回の立会人は英語の遠藤先生だ。

 

「「「「試獣召喚(サモン)」」」」

 

 この場にいる4人の召喚獣が呼び出される。

 

 

 吉井明久・パンドラ vs 根本恭二・小山友香

 

 教科 英語

 

 点数 49点・599点 vs 199点・165点

 

 

 

 

 

 

「「「『………………はい?』」」」

 

 

 パンドラの点数にこの場の3人が目を見開き……

 

「「「『はああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???』」」」

 

 一斉に絶叫をあげた。

 いくら帰国子女同然とは言え、同じ帰国子女の美波もドイツ出身という事で英語も苦手だと言っていたのに、同じドイツ出身のパンドラが純粋な英語でここまで点が取れているという事実に驚きを隠せない明久とモデルZ。

 小山と根本はどちらかと言えばFクラスの生徒がこんな点数をたたき出したという事実自体が信じられないと言った様子だったが……

 

「ね、ねぇパンドラ?」

「何、吉井……?」

「なんでこんなにも点数が取れてるの!?」

 

 まくしたてるように明久がパンドラに問い質した。

 

「わたしはプロメテや島田と違って学校できちんと勉強にも励んでいた……

イギリスに行く事もあったから英語は必須だった……」

 

 パンドラの言葉が事実ならプロメテはあまりきちんと勉強をしてこなかった様である。

 雄二チームの安否が心配になって来た明久だった……

 

「試合開始!」

 

 遠藤先生が強制的に試合開始の宣言を上げた。

 先程鉄人が来ていたので、時間が押しているなどと言われたのだろう。

 

「吉井…… 15秒時間を稼いで……」

「え~…… また僕をおとりにする気?」

 

 第一回戦でのパンドラの所業を忘れたわけではない明久はパンドラの言葉を疑心暗鬼レベルで疑い始めている。

 

「今回は本当に意味がある…… わたしの腕輪は強力な力を出そうとすると下準備に15秒はかかる……」

 

 そう言うパンドラの目はあくまでも嘘を付いている様には見えなかった。

 その話が本当なら、発動までに時間がかかってしまうのだろう……

 

「よし、15秒だね? 任せて!!」

「腕輪発動…… ”聖獣召喚”」

 

 

 パンドラの言葉を信じた明久は、敵二人の召喚獣を同時に相手取る為に先手を取って攻撃する。

 格下に攻撃を当てられたという事実に動揺した根本と小山は先に明久の召喚獣を始末しようと挟み撃ちにするように追い込んでいく。

 

「オシラサマ・オシラサマ・ありがたや…… 感謝の念にてお願い奉る……」

 

 その一方で明久の隣ではパンドラが何かの呪文を唱え、その瞬間に召喚獣の前で出来た木彫りの人形が宙に浮き始めた……

 

「出でて遊べや、遊びて舞えや…… オシラ遊ばせ!」

 

 呪文を唱えたのとほぼ同時であった。

 先程までただ浮いていただけの木人形がどんどん大きくなっていき、その姿をくたびれた人形から鎧武者のような巨大な鬼神へと変貌させていく。

 

「「「聖獣を呼び出すんじゃなかったのかよ(なかったの)!?」」」

 

 いきなり現れた鬼神を見た根本と小山は驚きのあまり、空いた口が全く塞がらないでいた。 

 

「す、すごいよパンドラ! よし、後は僕が離脱して巻き込まれないように……」

 

 おとりを務めていた明久は頼もしい鬼神を呼び出したパンドラを褒め称え、それと同時に距離を取って離脱しようとする。

 

「何を言ってるの……? そんなの気にしていたら二人に当てる事は出来ない……」

 

 ……が、その前にパンドラが呼び寄せた鬼神が腰に差していた日本刀を構えている。

 その目標は根本・小山チームと明久の召喚獣に向けられている!

 

「は、謀ったなパンドラァァァァァ!!」

「今更気が付いても遅い…… オシラサマ・”怒髪衝天疾風連打”……」

 

 パンドラが”オシラサマ”と呼んだ鬼神は、明久の召喚獣ですら対応が出来ない程の怒涛の斬撃を持って襲い掛かる。

 その攻撃は敵味方の識別を一切せず、召喚獣と地面の区別が一切付かなくなるまで切り刻もうとしているかのようだった。

 それほどに強烈な攻撃…… 明久の召喚獣にとって、言葉通り”全身を粉微塵に細かく裂かれる”かのような激痛となって召喚者に襲い掛かってくるだろう……

 

「ギャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ……………」

 

 

 

 

 

「し、勝者"パンドラ"!」

 

味方を平気で切り捨てて勝利を収めたパンドラはまだ全身の痛みで悶えることすら出来ずにいた明久に追い打ちをかけながら退場していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロメテてめぇよくも俺の人生危険に晒しやがって!!」

「作戦を簡単に見破られたお前が悪いんだろ!!!」

 

 明久とパンドラが教室に戻ってきた瞬間だった。

 扉を開けた先で見た光景は雄二とプロメテが殴り合いをしている光景だった。

 

「どうなってるの……?」

 

 事態が全く読めないでいるパンドラはすぐ近くにいたエールに事情を聞くことにした。

 

「詳しい事は私にも分からないわ。 どうやら今度はプロメテが雄二君を罠に嵌めてその挙句に負けてきたらしいけど……」

「俺が事情を説明する」

 

 そう言って土屋はノートパソコンを開いてあるビデオ動画を開く。

 そのビデオは雄二達のチームのこれまでの行動をまとめ上げた物だったのだが……

 

 

 

 

 

 another story  坂本side

 

 

「今回はオレ達だけじゃなくて秀吉とムッツリーニとシャルナクにも協力してもらう。 プロメテはそれに合わせてもらうだけでいい」

「そう言えばあいつ等何の仕事もしねぇでどこほっつき歩いてるのかと思ったらそう言う事か……」

「ああ、あの二人に弱点はねぇが付け入る隙はあるからな。 今回の狙いは秀吉の姉、木下優子だ。奴を利用して形勢を一気に傾ける」

「あん? おい、あの女も”一応”ロックマンなんだぜ? しかもこんな大会に出るあたりよほど召喚獣にも自信があるって事だろ? そんな女相手に何をしでかそうってつもりなんだ?」

 

 大体の予想は付いているプロメテだが、一応雄二に確認は取っておきたいようだ……

 

「まっ、狙いが双子の姉だって地点で想像つくだろ? お楽しみは後に取っておこうぜ」

 

 そう言ってあくどい笑みを浮かべた雄二を見て、つまらなさそうにしているプロメテ。

 係の人に呼ばれた二人は一度その悪意に満ちた闘気を完全に隠して次のステージへと歩み始める。

 

 

 

「……雄二、邪魔しないで」

「そうはいくか。 俺にはまだやりたい事がたくさんあるんだ!!」

 

 本当に行きたくないのか霧島の頼みを躊躇なく断る雄二。

 

「つーかよ、そこのクールぶった女とデートに行きたくねぇなら素直に『行く気なんてさらさらねぇよ、このブス』ぐらい言えばいいのによ」

「ちょっとプロメテ、アンタ何気に代表の事を侮辱している訳? それにさっきからその態度、アタシ達の方から手を出させようってつもりで挑発してるつもりなの?」

 

 その一方でプロメテの何気に混ざっている暴言に気が付いた優子?がプロメテに突っかかっている。

 この険悪な空気だと喧嘩に発展する可能性が高い……

 

「……雄二、そんなに私と一緒に行くのが嫌?」

「ほう、上目遣いで媚びを売る位は出来るんだな。 あれやられたら並みの神経じゃ断り切れねぇだろ」

「これで断れたらそいつはどっちかって言ったらプロメテ寄りの腐った神経してるんじゃ……」

「嫌だね」

「「プロメテ(オレ)寄りの腐った神経してやがった!!」」

 

 あまりにも冷酷非情すぎる雄二の発言に優子?はドン引きしながら、プロメテは爆笑しながらツッコミを入れている。

 

「……やっぱり、一度お互いに同棲して分かり合う必要がある」

 

 プロメテも霧島のタフな心には敬意を払いたくなって来たようで、少しは真剣になっていた。

 それを感じ取ったのか優子?も一度距離を取り、右手をポケットに入れながらもすぐに召喚獣を呼べるように構えている。

 

「はっ、残念だったな! そんな寝言は俺達に勝ってから言うことだ!!」

「……分かった、そうする」

 

 二人の言い合いがようやく終わり、ようやく試合開始である。

 

「おい赤ゴリラ、作戦ってぇのは上手く行ってんのか?」

「その辺に関してはぬかりはねぇよ。 頼むぞ、秀吉っ!!」

 

 『やっぱりそう言う作戦かよ』と考えながら優子?のほうを見るプロメテ。

 

「だからシャルナクの奴が付いて行ったのかよ。 それならうまく行ってるだろ……」

「……ふふっ」

 

 プロメテの言葉を遮るように口元に手を当てながら笑う秀吉?

 

「秀吉? 秀吉って、”誰かに”全身を銃で撃ち抜かれたシャルナクを半泣きで保健室に運んでいったバカの事かしら?」

「「何だと!?」」

 

 そこでいきなり全身を光に包ませたのと同時に正体を現した木下”優子”。

 先程までズボンを履いて”一応”男装しているかのような感じだった物が、いきなり女子らしい服に戻った光景に観客たちも手品として驚いているようである。

 

「本当に便利ねこのモデルA。 能力的な個性が全く違うとは言っても一応”双子”なんだし、流石にデータ上ではほとんど同じである秀吉からコピーしたデータで”トランスオン”を使うなんて真似は出来っこ無いと思っていたけど……

意外と簡単に出来たわね。 代表の読み通りに」

「「何だと!!」」

「……雄二の考えていること位はお見通し」

 

 子供みたいな無邪気な笑顔でガッツポーズを決める霧島。

 

「だが、そこの女ははロックマンじゃねぇハズだ! だったら、モデルAの声なんて聞こえねぇはず!

それが何でモデルAの特性を十二分に把握していやがるんだよ!?」

 

 雄二の作戦に対してこの対処法を思いついたのが霧島であるという事にも驚いているプロメテ。

 だが、一番の気がかりな所はロックマンではない霧島がモデルAの特性を完全に理解している点であった。

 

「プロメテ、アンタそんな事も分からないのかしら? この程度小学生でも簡単に気がつくわよ?」

「何だと!!」

 

 先程とは逆に優子の方がプロメテを挑発する形になっている。

 

「だって、代表がモデルAの言葉が聞こえなくても、アタシが聞いた説明をそのまま代表に伝えればいいだけなんだから、声が聞こえないくらいなら大した問題じゃないわよ」

 

 こんな単純すぎる事にも気が付かなかったプロメテはショックのあまりに膝を付いて落ち込んでしまう。

 先程から大きすぎてダボダボの制服が裾周りからどんどん汚れ始めている。

 

「ちっ、ムッツリーニから連絡が入った…… 今秀吉はシャルナクと一緒に保健室で休んでるそうだ。

……聞き間違いじゃなければ、保健室内で”ギシギシ”と何かが軋む音とシャルナクの悲鳴が聞こえたらしい」

「マジかよ……」

 

 いろんな意味でツッコミ所が満載だが、後半の雄二の言葉に関しては聞かなかった事にしておきたい……

 

「大人しく降参してくれると嬉しいな。 弱い者いじめは好きじゃないし」

 

 優子の降参勧告に顔を歪めてしまう雄二。

 このまま直接戦っていては敗北は必至だろう。

 

「ちっ、結局こうなっちまったじゃねぇか。 おい赤ゴリラ、俺に作戦がある。 俺の指示通りにセリフを言え」

「おいプロメテ、いきなり何を言って……」

「迷ってる時間はねぇ。 とにかくやれ」

「お前に命令されるのは癪だが仕方ねぇ。 今回はお前に任せよう」

 

 雄二が小さくうなずいた。 その瞬間プロメテの口元が思いっきり歪んでいる所を優子は見逃さなかった……

 

<翔子、俺の話を聞いてくれ!>

「翔子、俺の話を聞いてくれ!」

<どうしても俺は優勝したい!>

「どうしても俺は優勝したい!」

<俺はそうやって自分の手で如月グランドパークのプレミアムチケットを手に入れて、そうすることで翔子の前で堂々と胸を張れる漢になって一緒に幸せになる為の道を歩んでいきたいんだ!! 自分でも矛盾した……>

「俺はそうやって自分の手で如月グランドパークのプレミアムチケットを手に入れて、そうすることで翔子の前で堂々と胸を張れる漢になって一緒に幸せになる為の道を歩んでいきたいんだ!! 自分でも……ってちょっと待て!!」

 

 途中でおかしい事に気が付いた雄二が驚いてプロメテの方を向いてしまう。

 その顔は真っ赤になっており、彼にとってどれだけ恥ずかしいのかがよく分かる程だった。

 

「…………雄二」

 

 霧島も雄二からいきなりの告白めいたセリフにうっとりとした表情で雄二とプロメテの方を見ている。

 プロメテの作戦はなかなか上手く行っているようだ。

 

<(続きだ……)自分でも矛盾した事を言ってるのは分かってるつもりだ! だがお願いだ、翔子! ここは俺達に勝利を……>

「誰が言うかボケ……」

 

 強引に続けようとしたプロメテだったが、雄二は激しく抵抗してきた。

 だがプロメテも想定していた様で、反論して抵抗しようとする雄二を間髪入れずにそれでいながら誰にも見られないような角度で拳を叩き込んで一瞬で気絶させてしまった。

 

「ワリィな。 この赤ゴリラ、緊張のあまりに気絶してしまったみたいだぜ?」

「……雄二、大丈夫!」

 

 あまりにも心配だった様で雄二の元に大慌てで駆けつける霧島。

 優しく雄二を膝枕で介抱する姿は女神の様に美しく、その光景にはほとんどの観客が彼女に見惚れてしまっていた。

 

「取り敢えずそいつの言葉の続きだがよ、『自分でも矛盾した事を言ってるのは分かってるつもりだ! だがお願いだ、翔子! ここは俺達に勝利を譲ってくれ。

今すぐにはお前の思いには応えられないが、この学校を卒業したら一緒に結婚しよう。

愛してる、翔子!!』って言いたかったみたいだぜ?」

 

 このセリフだけを聞けば素直じゃない雄二の思いをプロメテが代弁したようにしか聞こえない。

 実際には『プロメテが雄二を霧島に告白させて』しかも『逆らった雄二を気絶させてありもしない事を色々と脚色させて霧島を揺さぶって行動不能にしようとしただけ』である事を忘れてはいけない……

 

「さあどうするモデルAのロックマン! 降参するなら今の内だぜ!!」

「この卑怯者っ……」

 

 事実敵の最強戦力を使い物にならなくさせた事で調子に乗り出すプロメテ。

 彼の隣では雄二の亡骸を介抱している霧島の姿。 手足がダランとぶら下がているのは気のせいだろう。

 

「ヒャァーーッ、ハハハハハハハハ!! これで終わりだぜ! ”試獣召喚!”」

「くっ…… ”試獣召喚!”」

 

 両者の呼び声に答えて呼び出された召喚獣。

 それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Fクラス プロメテ  vs  Aクラス 木下優子

 

 教科 英語

 

 点数  56点  vs  321点

 

 

 

 

 

 ……Fクラスのプロメテ程度では太刀打ちできない強さを誇った、木下優子のAクラストップランカーと呼ぶにふさわしい召喚獣だった。

 

 

 

「…………一応聞いて置くけどアンタ、ドイツの方では」

「んなかったるい事してられっかよ。 元の時代に帰る方法探すのに忙しい……」

 

 実力差は歴然。 プロメテは観察処分者達と比べて操作能力にも優れてはいない。

 一方的に攻撃されたまま瞬殺されるのも当然の結果であった……

 

 

 

 another story 坂本side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局負けてる…… プロメテのバカ……」

 

 超が三つは付くほどに情けない兄を見下す妹。

 そのバカ兄は何も言えないのか正座させられたにも関わらず、”オレが悪くない”とでも言わんばかりに妹から視線を逸らしたまま顔を膨らませている。

 

「結局最後に俺が気絶させられた意味って何だったんだよ!?」

「無能リーダーへの制裁」

「うぐっ……」

 

 あまりにも躊躇ない物言いに雄二も若干後ずさってしまった。

 

「だけど坂本のチームが先にリタイアしてしまうなんて思って無かったわね」

「あ、ミナミとヒメジのチームは勝ったのかな?」

「ええ、ウチのチームも余裕勝ちよ。 今瑞希は葉月とグレイ君も一緒に学園内を見て回ってるわ」

 

 どうやら今は客の入りが少ない為、一度休憩も兼ねて瑞希には葉月ちゃんとグレイを連れて学園祭を見て回っているようである。

 

「しかし外はあれだけの来客者がいるというのに、こっちには一人も入って来なくなってしまったな……」

 

 あまりにも暇で仕方が無いのか、机に両足を置きながら須川に命令して作らせた飲茶を飲んでいるチャイナドレスのアトラスの姿。

 

「アトラス…… 女子がそんな態度をとるのは色々とマズいと思う……」

 

 明久がどうにかやめさせようとするが、その言葉が続くことは無かった……

 

「はい、店の店員がそんな態度取らない!」

 

 かなり怒り気味のエールが椅子に蹴りを叩き込んだ事で、アトラスがそのまま転んでしまったからだ……

 

「お前、一体何をするんだ!!」

 

 いきなり椅子が倒れたことに驚いたアトラスがエールに食ってかかる。

 

「それはこっちのセリフよ。 アンタもこの店の店員なんでしょ? だったら客が居ない状況でも店員らしい態度でいてほしいわね」

 

 エールの正論に何も言い返せなくなったアトラスは素直に負けを認めてテーブルを拭いていた。

 

「それにしてもいったい何なのかしら、いくら何でもおかしいわね」

 

 改めてこの異様なまでに客がやってこない理由について考え始める皆。

 

「さっきのアトラスの態度はどうかと思うけど、その前から客足が途絶えていたし……」

「中の様子が外からは見えなかったはずだからそれが原因だとは思えないわね……」

「それ以前に接客中はバウンサー組は表に出ていない」

「ウチが取ったアンケートでも特に不満もないし、お客さんの口から直接”美味しかった”とか”ありがとう”って感謝されることまであったのに……」

 

 アトラスのだらけた行動も客足が途絶えてしまってからの話だ。

 それ以前の客たちに不満がある様には全く見えない。

 

「ふむ…… 恐らくさっきの営業妨害が関係してるかもしれねぇな…… あの二人以外に仲間がいたとか」

 

 口元に手を当てながら、推理を続ける雄二。

 

 

 

「皆さん、大変です!! 先程の営業妨害の人達とは別の人が悪い噂を流しているみたいなんです!!」

 

 葉月ちゃんとグレイを連れて大慌てで帰って来た瑞希。

 その推理を裏付けるような情報に皆が驚いてしまう。

 

「姫路、その悪い噂って一体どんな内容だったんだ?」

「本当に酷いんですよ! 『2年Fクラスの中華喫茶は汚いから行かない方がいい』って」

 

 瑞希の言葉と同時にアトラス・テティス・明久の3人が『そいつら全員ぶっ殺す』と各々のライブメタルを手に外に出て行こうとする。

 

「おい、3人共待て!」

「火災現場での死に様はとてもエグイ物だ…… 水分が失われ、肉体が乾いていく。 そして最後には……」

「あまりにも冷たすぎる冷気ってむしろ熱くて痛いんだよね」

「僕は決めた、もう迷わない。 立ちはだかる敵がいるというのなら……  そのまま叩き斬るだけだ!!!」

 

 

 雄二の制止も聞かずに前へと進んでいく3人。

 

 

「明久、まずはこの俺”近藤勇”に行かせろ。 シャルナクやムッツリーニ程じゃねぇが暗殺には十分自信がある」

「待て近藤、ここは『安心確実自爆王』の異名を持つこの俺、”武藤啓太”の出番だろう」

「いやいや、『正義の殺戮王、推参します』がキャッチコピーの”原田信孝”に任せてくれ。 連中全員をあぶりだして確実に始末してやる」

 

 その3人に便乗するようにFFF団の皆がどこから手にしたのか拳銃と大鎌を構えて鉄砲玉として志願してくる。

 アトラス達も”都合のいい捨て駒”が増えたと内心では歓喜程だ。

 

「だからお前ら落ち着けって言ってるだろ」

 

 雄二は呆れたように肩を竦める。

 

『全く、コイツら短気にも程があるだろ』

『そうか? オレはこういう行動派は好きだぜ』

『そうかしら? わたしにはバカ集団が血迷っているようにしか見えないけど』

『モデルZ達も大変なんだね。 でもリーダーの坂本君のおかげでみんな落ち着いてくれたようだし、これで落ち着いて対策を……』

『モデルX様。 申し訳ありませんが、あのバカ共は暴れるのをやめる為に大人しくしているのではありませんよ……』

 

 雄二の指示で落ち着いた事で安心しかけたモデルX。

 だが、モデルLから放たれた言葉に疑問が残るようだ。

 

『どういう事だい? リーダーがやめるように命令したから落ち着いたようにしか見えないけど……』

『ふっ、モデルXも甘いな』

『モデルX様は何もわかってねーですぜ』

 

 モデルZとモデルFの言葉にさらに動揺し、両者を交互に見てしまうモデルX。

 

『まあこの後の坂本の発言をよーく聞いて置いてください。 このFクラスの規格外っぷりがよく分かると思いますよ』

 

 モデルLがモデルXを一度落ち着かせたのとほぼ同時に雄二の方も準備を終えていたようだ。

 

「そう言う事は、クラス全員で役割分担を決めてしっかりとやるべきだ」

『『『『・・・・・・・・・・・・・・・』』』』

 

 ライブメタルと学園外組もFクラスの妙な連帯感にはドン引きしていた。

 

『モデルX様、ご理解いただけましたか? これがFクラスの絆なので……』

『絶対何かが間違ってる! 少なくとも蔓延る悪事が見過ごせないから行動している側では無い事だけは確かだよね!?』

「モデルX、あきらめなさい…… モデルZ達は変わってしまったのよ…… かつてのモデルZ達はもういないのよ……」

『エール! ”嘗ての旧友が不幸な目にあってしまったばっかりに狂ってしまった”みたいに言わないで! それ以前に僕はなんで一学校のクラスが総出で率先して事件を起こそうとしているのかについてツッコミを入れていたんだよ!!』

 

 Fクラスの異常性に対して反応に困った末に考える事をやめそうになってしまっているエールにとうとうツッコミきれなくなってしまったモデルX。

 プンスカと頭部?から煙を出して机の上で暴れているあたり、一人でツッコミを入れる事にまでなって心労が溜まり始めているようだ……

 

「今は情報が欲しい、チビッ子×2に聞くぞ。 その噂はどこで聞いたんだ?」

「チビッ子じゃないです。 葉月ですっ!」

「ボクにはグレイっていう名前があるんだ! ちゃんと名前で呼べよな!!」

 

 二人とも膨れ顔ですっかりご機嫌ななめである。

 

「ま、このクラスでそんな常識ある奴なんて居ないか」

「え~…… 葉月、バカなお兄ちゃんとも一緒に遊びたかったです」

 

 ギュッと葉月ちゃんから手を握られた明久。

 明久も普通に学園祭を楽しむ為だったら噂がいくら流れても全く気にしなかっただろうが、今回ばかりは大成功をおさめないといけないことを考えると遊びに行けないのが地味につらかった……

 

「ごめんね葉月ちゃん。 僕達はどうしてもこの模擬店を成功させないといけないから、あんまり一緒に遊びに行けないんだ」

 

 葉月ちゃんの頭をなでながら説得するが、葉月ちゃんの頬は相変わらず膨れたままだ。

 

「その程度なら問題ない。 正確な場所を知ってるのはそこのチビッ子二人と姫路だけなんだからな。 せっかくだし、飲食店やってる他のクラスの偵察も兼ねて一緒に遊んで来ればいいだろ」

「なるほど、葉月ちゃんがそれでもいいなら一緒にご飯食べに行く?」

「うんっ、行くですっ!!」

 

 雄二のフォローもあってか、先程まで膨れていた顔を満面の笑みにする葉月ちゃん。

 天真爛漫と呼ぶに相応しいくらいに表情豊かに変わる葉月ちゃんの事を見て皆も笑顔になって行った。

 ……中には怪しい雰囲気を醸し出しながら葉月ちゃんを見ている人物もいてかなり危険な状態だったのだが。

 

「じゃあ葉月。 お姉ちゃんも一緒に行くね」

「だったら、瑞希ちゃんと坂本君も一緒に行って来たらどうかしら? あなた達も召喚大会があるんだし、速めに食事は済ませておいた方がいいとおもうわよ」

「それもそうですね。 だけどエールさん、あんたはどうするんですか? 他にも見て回りたい所だってあるでしょうし……」

「私の事は気にしなくていいよ。 このバカ共(プロメテ・パンドラ・アトラス・テティス)の見張りも兼ねてこの教室にいるんだし」

「そうっすか。 ありがとうございます、エールさん」

「いいんですか? ではもう少しだけ楽しんで来ます」

 

 アトラスとテティスは問答無用でエール(とクラス代表として雄二)によって出動禁止令が出てしまった為、全員で6人。 混雑する学園祭の中を歩き回るには結構な人数だろう。

 

「さっきは悪かったなチビッ子。 話を再開するが、その悪い噂ってどの辺で聞いたのか教えてくれるか?」

「ぷぅ~っ! ……短いスカートを穿いたお姉さん達がいっぱいいるお店でした」

「確か、ヘリオスの奴と優姉ちゃんがそこにい……」

「なんだって!? 雄二、それはすぐに向かわないと!!」

「そうだな明久! 我がクラスの成功の為に、(低いアングルから)綿密に調査しないとな!!」

 

 聞いた瞬間に全力ダッシュをする雄二(・・)

 

「あ……あれ? アキはさっきまで坂本と最低な事を言っていたような気が……」

 

 だが、途中で明久はブレーキを掛け、そのまま女子の元に戻って来てしまった。

 

「あ、うん。 最初はそのまま突っ込んで行こうかと思ったけど、流石に女子と子供だけじゃ不安だから戻って来たんだよ」

「吉井君、十分酷いです……」

「それに、移動中にですら邪魔してきそうだし、雄二にはその辺の露払いでもしてもらおうかと思うんだ」

「やっぱバカのアニキは最低だな…… で、本音は?」

「きれいなスカートを穿いているお姉さんはバイト先で日常的に見ているから別にそこまで反応することじゃないし……」

「お兄ちゃんのバカっ! 少しは反応してほしいですっ!!」

「ええっ!!」

 

 なぜか女子供から罵倒されている明久。 なんで罵倒されているのかが全く理解できない明久はその場で立ち止まって考え込んでしまいそうになっていたので、意外と力があるグレイによって引き摺られて目的の場所まで移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、ここでいきなりプロメテ・坂本チームがリタイアです。
教科が英語だとカバーできる人物が殆ど居ないんですよねFクラスって……
唯一英語でも問題ない姫路さんは試合に出てるし、当然の結果ですねwww

シャルナクと秀吉の保健室での様子は想像に任せます。



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第7話

バカテスト!

第13問

イタリア発祥のデザートで、ジェラートやアイスクリームを主な材料として使って作り上げる半解凍状のお菓子は何なのかを答えなさい。




・島田美波、清水美春の答え
「セミフレッド」

教師のコメント
『正解です。 でも確か島田さんはドイツに留学してイタリアではなかったはずでは……』


・テティスの答え。
「セミフリオ」

教師のコメント
『確かにスペインでは似たようなお菓子が存在しますが、今回はイタリアのお菓子としていますので、大変惜しいのですが不正解です。』


・木下優子、久保利光、佐藤美穂の答え
「・・・・・・パンケーキ」

教師のコメント
『パンケーキの隣に添えてみてもおいしそうな気はしますが、全く違います』


・吉井明久の答え
「セミフレッド(これを用いた同じくイタリア製のお菓子で”ズコット”と呼ばれるドーム型のケーキがあります。 これからもラ・ペディスを御贔屓にお願いします)」

教師のコメント
『あなたの名前を見ただけで×を付けようとした先生を許して下さい。 確かにセミフレッドを応用したデザート料理にズコットと呼ばれているお菓子があります。 機会があれば私の授業の調理実習で一緒に作り方の指導を手伝ってもらえませんか?
 後、なんで私みたいなおばさんが一人で悲しくラ・ペディスに通い詰めていることを知っているのか教えてもらえませんか?』


・プロメテ、姫路瑞希の解答
「エンジンオイル」

教師のコメント
『…………え?』


「あれ? 雄二のヤツどこに行ったんだろ?」

「道を間違えたとは思えませんが……」

 

 明久達が葉月に案内された場所はAクラスの『メイド・執事喫茶、ご主人様とお呼び!』だった。

 今現在、明久に乗せられて先行していたはずの雄二の姿が見えず、近くを探し回っている所である。

 

「改めて思ったんだけどさ、これってどっちの方が立場が上なのかな?」

「どっちにも合わせてくれるんだと思うですっ! ニンニンのお兄ちゃんが持っていた本にもあったですっ!」

「シャルナクのバカは一体どんな趣味してんのよ!?」

 

 妹の発言に美波のツッコミが炸裂する。

 

「迷惑極まる行動…… 貴様らいったい何の用だ?」

 

 外の大声が耳障りだったのか、教室からヘリオスが様子を見に来たようだ。

 

「あ、そうだヘリオス。 雄二を見なかった? 一回ここに来てると思うんだけど?」

「坂本? ああ、奴なら一度ここに来ていたが、すぐに何処かに行ってしまったぞ」

 

 進んでいった先がAクラスだった為に大慌てで逃げ出したのだろう……

 坂本が霧島に遭遇したならばその後の行動が容易に想像できてしまう……

 

「とにかく、そこで立ちっぱなしなのは迷惑極まりないのだから早く入るがいい。 先程から何度もこの店に出入りを繰り返し大声で騒ぎ立てる愚か者よりはマシだがな……」

「ちょっ! ヘリオス、その辺の話を聞かせてくれ!」

「分かったから一度中に入れ! 後ろが詰まっているだろ!」

 

 明久達の後ろには「いつになったら動くんだ!」と苛立っている一般客達である。

 大慌てで明久達は中に入って行く。

 

「……お帰りなさいませご主人様、お嬢様」

「うわぁ…… 瑞希姉ちゃん並みに綺麗だ……」

「気分が沈んだ顔じゃなかったらですけどね……」

 

 中に入ったのと同時に出迎えてくれたのは霧島翔子だった。

 

「な、なんだか大切な彼氏が浮気していたって言うくらいの絶望感に染まった顔になってるわよ?」

「……雄二に逃げられた。 ……楽しみにしていたのに」

「もしもし、エールさん? そっちにシャルナクと秀吉の二人は戻ってきていますか? 来ていたらシャルナクに女の子を泣かせた雄二の始末をお願いするように伝言をお願いします」

『一体何があったのかは分からないけど、ちょうど戻って来たからすぐに伝えておくわね』

 

 どうやら雄二に逃げられた事がよほどショックだったようだ。

 そんな彼女の意を汲んだ明久はFクラスの誰かに電話を架けてエールと雄二を始末する為の話を進めている。

 

「所で、霧島さんは雄二になんて言って出迎えたの?」

「…………お帰りなさいませ。 今夜は帰らせません、ダーリン♡」

「霧島さんも大胆です……」

「ウチも見習わないとね……」

「あのお姉ちゃん、夜も寝ないで一緒に遊ぶ気だったですか?」

 

 三者三様のリアクション。 美波がどう見習うのかが不安である……

 

「お席に案内いたします」

 

 霧島がそのまま歩いて行く為、その後ろを付いて行く皆。

 とても客が多く、特に女子の客も多い事が意外であった事に全員が驚いていた。

 

「あら、吉井君達じゃない? もしかしてさっきから何度もやって来てFクラスの噂を大声で垂れ流しにしているバカ共の事で来たのかしら?」

「ま、まあそんな所かな。 本当は雄二も入れて6人の予定だったんだけど……」

「そっ、まあそいつらが来るまではゆっくりしてると良いわ。 アンタ達が何しでかすかはこっちに迷惑がかからなければどうでもいいし、ヘリオスはヘリオスで何かやらかそうとしてるっぽいから心配しなくてもいいと思うけど……」

 

 そっけない態度で適当な雑談をしながらメニューを渡す優子。

 

「そう言えば木下さん、試験召喚大会で雄二とプロメテに試合で勝ったんだよね?」

「ええ、あいつ等滅茶苦茶やって引っ掻き回してくれるから一時期は本当にどうなるかと思ったわよ」

『いきなりシャルナクがロックマンとして襲撃してきた時は驚いたよな。 あいつ優子の事を確実に暗殺する気だったからこっちも倒す気で応戦しないといつやられるか分かったもんじゃなくてさ』

「モデルAも大変だったな……」

『気にすんなってグレイ。 それに優子のヤツ、オイラを完璧に使いこなしてくれるし、シャルナクの奇襲を躱してからは秀吉を一方的に狙ってあいつの戦い方を全くさせなかったから意外と楽勝だったぜ?』

 

 さらりととんでもない事を言ってくれるモデルA。

 明久も『もし木下さんと戦う事があったら仲間の安全は念入りに確保しておこう……』と思ったほどである。

 

「ウチは『ふわふわシフォンケーキ』で」

「じゃあボクは『なめらかイチゴのミルクセーキ』お願い!」

「葉月もそれでお願いするですっ!」

「私は美波ちゃんと同じ物をいただきます」

「僕は水…… じゃなくてやっぱりバナナミルクで」

 

 陰に居たヘリオスの殺気に恐れをなした明久はメニューにある中で一番安い物を注文した。

 

「じゃ、注文の確認をするわよ。 『ふわふわシフォンケーキ』と『なめらかイチゴのミルクセーキ』が2つ、『バナナミルク』が一つ。 以上でいいかしら?」

「はい、それでお願いします」

 

 注文を受け取った優子は食器類を用意した後、優雅にお辞儀をしてそのままキッチンと思しき方向へと歩いて行った。

 

「さてと、ヘリオス達と葉月ちゃん達の言う通りならこの場所にまた現れるはずなんだけど」

「葉月どう? さっき言っていた人達は来ているのかしら?」

「今はまだ来てないようです。 でも嫌な感じのお兄さん達が来て大声でお話ししてたの!!」

 

 葉月が元気よく頷く。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「おう、二人だ。 席は空いてるか?」

 

 話をしている途中で新規の客が入って来た。

 聞き覚えのある下品な声が聞こえたのと同時になぜかその声の先で殴り飛ばされる音が聞こえてしまう。

 

「はっ! アンタらは…… 行方不明になったはずの常夏コンビじゃないですか!?」

「「思いっきり殴り飛ばしてから言うんじゃねぇ! つーか行方不明になってねーし! 出番が無かっただけで普通に俺らの教室で学園祭の準備してたし!!」」

 

 その声の正体は常夏コンビだった。

 明久からいきなり殴り掛かられた事もあり、かなりお怒りのようだ……

 

「つーか何やってんだお前ら?」

「邪魔者の始末です」

「ああ、なんか学園祭荒らしの不良がお前らのクラスで暴れたって聞いてるぜ」

 

 Fクラスで謎の不良が暴れ回っていたという噂はすでに広まってしまっているようだ。

 明久と話をしていたらいつの間にか明久の席の隣に座っている。

 

「ええ、それで偶然ですがこの喫茶店で私達の悪評を流している人たちが居たのを見かけまして」

「それでそいつらを捕まえてやろうって訳か」

 

 事情を察した常夏コンビが納得して頷く。

 

「お待たせしました、『ふわふわシフォンケーキ』と『なめらかイチゴのミルクセーキ』『バナナミルク』をお持ちしました」

 

 注文した品を優子が送ってくれた。

 テキパキと各自が注文したものを的確に置いてくれている。

 

「あら、アンタ達は確かトレジャーハンティング大会で世話になった……」

「ああ、3年の……」

「……”常夏島”コンビ?」

「「一文字多い! 俺らは”常夏”コンビだ!!」」

「あれ? 勝手にまとめるなって前に言っていませんでしたっけ?」

「「あれも愛嬌あるかと思って諦めたんだよ! 余計な揚げ足取ってんじゃねぇ! 文句あっかコラァ!!」

 

 後輩とは言え、同じAクラス級の人間からすら覚えて貰えてない事にいろいろとショックを覚えてしまう常村と夏川。

 

「オ前等、何ヲヤッテイル?」

 

 常夏コンビとの他愛のない雑談を楽しんでいる間にシャルナクと秀吉がAクラス内に戻ってきていた。

 シャルナクの片手には謎の大きなキャリーバッグが握られている……

 

「あ、シャルナク? もう捕まえて来てくれたの?」

「アア、坂本ノ奴ハコノ中ニイル」

 

 そう言うのと同時に謎のキャリーバッグを乱暴に置き、そのバッグの鍵を開けて中身を見せる。

 

 

 

 

 

「ムー! ムムムムムムーッ!!」

「「うわあああああああああああああああああ!!」」

 

 中にいたのは叩きのめされた末にガムテープで縛られて連行されてきた雄二であった。

 流石の皆も可哀想になって来て、落ち着いてもらった後にガムテープを切り取って解放してあげる事にした。

 

「シャルナクてめぇ何しやがる!!」

「女カラ逃ゲル為ト言イ訳ヲシテ女子更衣室ニ隠レル変態ニ、容赦ナドスル必要性ハ無イ」

 

 シャルナクの言葉に女性陣は軽く引いている……

 男子禁制の女子更衣室に隠れ場所に選ぶ雄二の事もそうだが、そこに躊躇なく突っ込んで行く事の出来るシャルナクに対してもどう反応すればいいのかが分からなくなってしまったのである……

 

「そこでいきなり背中から地面に叩き付けてガムテープで縛って鞄に詰めるとかどこの過激派集団だよ!?」

「この学園にやってくる前にたまたま出会った”殴り屋”と呼ばれている奴らが同じことをしていたが?」

「「『入学前のアンタらは一体何をやっていたんだよ!?』」」

 

 ”後デFクラスニ戻ッタラ教エテヤル”と言ってシャルナクは追加とでも言わんばかりに『3層のセミフレッドケーキ』と『ほのかな甘さのホットアップルティー』を注文して席に着く。

 

『お帰りなさいませ御主人様』

『おう、二人だ。 ”中央”の席は空いてるか?』

 

 またしても謎の下品な声が聞こえて来る。

 今度は常夏コンビではないようである。 明らかに外部の人間である事がうかがえるような服装であるが、ガラの悪い雰囲気と横柄な態度から明らかにFクラスで営業妨害を働いた不良の関係者であるのがまるわかりであった。

 

「あ、あの人達だよ。 さっきから大きな声で”中華喫茶は汚い”って言ってたの」

「ナラ確定ダナ。 秀吉、暗殺ノ許可ヲクレ。 完全犯罪デ消シ去ッテヤル」

「駄目じゃ」

 

 暗殺禁止を言い渡されて”ショボーン”とした態度で落ち込んでしまうシャルナク。

 メイド佐藤が持って来てくれたセミフレッドケーキとアップルティーを「ウマイ……」と一言だけ発した後は黙々と食べている……

 

「オイオイ、シャルナクがポンコツ化しちまったぞ……」

「犠牲者を出すよりかは遥かにマシじゃ」

「シャルナクはこう言う事になるとエグイからねぇ…… でもこのSSでのR-15はあくまで保健だからエグイと知りながら描写されることは無いけど」

「明久、お前何を言ってるんだ……」

 

 秀吉に頼ってもらえずにポンコツと化したシャルナクの事で話をしている間にも中央を陣取っている不良二人はFクラスの中華喫茶の事をわざわざ大声で叫んで悪評を振りまいている。

 

「兎に角、これ以上指をくわえてみている訳にもいかねぇ…… おーい翔子ぉー!」

 

 何を考えているのか、霧島を呼び出そうとする雄二。

 だが、呼ばれた彼女はまだ出てこない……

 

「愚かなる発言…… 先程貴様に逃げられたショックで奥で閉じこもってしまっている…… 冗談で済ませられると思うな」

「ちょっ! 悪かった翔子ォォォォ!! もう逃げたりしねぇから出て来てくれ!!」

 

 代わりに出て来たのはいつの間にか風のロックマンとして変身しているヘリオス。

 雄二の後ろに立っており、首元にダブルセイバーを突きつけている。

 

「……雄二、その言葉は本当?」

 

 不安気に涙を溜めながらその瞳を向けて雄二に問い質そうとする霧島。

 いつの間に現れたのかが分からないが、実際に雄二の近くにいたと言われても十分信じてしまえるだろう……

 その一瞬でヘリオスはどこかに消えて変身を解いた後、何食わぬ顔で平然とした態度で戻ってきていた。

 

「ああ、本当だ。 俺はもうお前からは逃げたりはしねぇ」

「試合の時に言ってくれた告白も本当?」

「…………」

「……グズッ」

「あ、ああ本当だ! だからもう泣くなって!!」

 

 雄二の必死な説得もあってどうにか落ち着いてくれた霧島。

 とても空気が重いが、どうにか話を再開する事に……

 

「今はあいつ等の対処が先だ。 翔子、取り敢えずメイド服を貸してくれ」

 

 臆面も無く簡単に問題発言をする雄二。 「こいつに躊躇いや恥と言う言葉は無いのか」とあきれている者もいる。

 

「……分かった」

 

 ここで躊躇なく自分のメイド服を脱ぎ出そうとする霧島。

 

「愚かなる選択!! 霧島は一体何を考えている!?(ドボドボ……)」

「そうですよ代表! ここにはけだものがたくさんいるんですよ!!」

「わぁ~。 お姉さん、胸おっきいです~」

「ちょっ!! 霧島のねーちゃ……gるdgfjvhんrぢjewarhglkd……」

「キャー!グレイ君の熱が凄い事になってます!!」

「それ以前に途中から言葉になっておらん事に突っ込まんのか!?」

 

 大慌てで皆して止めにかかる。

 ここで意外だったのはヘリオスが大量の鼻血を出し、グレイがオーバーヒート寸前の熱を発して言語機能までおかしくなっていたことである。

 意外とこの二人は初心なのかもしれない……

 

「……雄二が欲しいって言ったから」

「誰がお前が着ているメイド服が欲しいと言ったんだ! 替えがあるなら貸してくれって意味だ!!」

「…………今持って来る」

 

 ずれたメイド服を着直して去っていく霧島。

 雄二の言う事ならばどんな願いですら叶えそうな危うさを感じてしまう。

 

「で? どうする気なの?」

「落ち着け明久、取り敢えず姫路と島田も身だしなみの奴があったら全部秀吉に貸してくれ」

 

 逸る明久を制し、瑞希と美波からポーチを借りる雄二。

 流石は年頃の女の子だと思いたい。

 

「……雄二、これ」

「おう、悪いな」

 

 今度は霧島がメイド服を抱えて持って来てくれる。

 これで雄二の元にはメイド服と化粧用品が入ったポーチがそろった。

 

「……貸し一つ」

「だそうだ明久」

「ありがとう霧島さん。 お礼に雄二を一週間くらいは自由にしても良いよ」

「……こちらこそありがとう。 吉井はとても良い人」

「ちょっと待て! 一週間でお前ら何をしやがる気だ!?」

 

 雄二の抗議も虚しく、嬉しそうに霧島はその場を離れて行ってしまった。

 

「もういいでしょ? これ、どうするの?」

「……着るんだ」

「だってさ美波。 あ、でもこのままだと胸が余る……っと」

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!」

 

 それなりに速い拳打やつま先蹴りを叩き込もうとする美波だが、明久には簡単に避けられてしまっている。

 

「何言ってやがる? 島田じゃ面が割れてしまうだろうが。 あのサバットの腕だったらあんな雑魚の二人くらいなら楽勝だろうがな……」

 

 どうやら美波ではなかった様である。 瑞希では性格的に攻撃は出来ないだろうし(それ以前にオーバーヒートを起こしかけているグレイの事で手一杯だが……)シャルナクはポンコツ化してしまい殆ど使い物にならない。

 雄二は最早論外である事を考えると自然と答えは絞りこめて来る。

 

「テティスを呼んで来てくれ。 ついでに明久、お前も着ろ」

「なんで僕まで!? テティスだけでいいじゃないか!!」

「念のために保健だ」

 

 納得のいかない明久は猛抗議をするが、抵抗虚しくシャルナクと秀吉によってそのまま男子トイレへと連行されてしまう。

 途中で駄々をこねるテティスがアトラスによって首根っこを掴まれて運ばれて行く光景が見えたが、皆はどうにか笑いをこらえるのに必死になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ……何でFクラスで待機する事になっていたボクが巻き添えを食らってこんな目に合わなきゃいかないのさ?」

「はぅぅぅ~! テティス君も吉井君もとても可愛らしくて似合っていますよ!?」

「うむ、ワシも頑張ったかいがあったのじゃ」

「「全然嬉しくないからね!!」」

 

 明久とテティスの女装姿を見せられた瑞希が軽く変になり始めている。

 その一方で返送の為だけに服だけでなく、カツラや下着まで女性用にされてしまった明久とそれに巻き込まれたテティスは相当不機嫌になってしまっている。

 その一方でテティスを連れて来たアトラスは、Fクラスでプロメテ達を見張る為にと言ってすぐに戻って行ってしまった。

 どうやらこれ以上Aクラスに残る気は無いようである。

 

「アンタ達、本当に何をやる気なのよ……」

『オイラとグレイも変な奴には何度も会っているけど、流石にこの手の変態は見た事はねーぜ』

 

 そんな事を言っている優子だが、彼女もどこからか女性用下着を勝手に持ち出して瑞希に提供している為、ほとんど同罪であることを忘れてはいけない。

 

「……明久、テティス。 そもそもなぜこんなことになった」

「「完全に雄二(ユウジ)のせいじゃないか!!」」

 

 雄二からいきなりの質問に息バッチリの答えを出す二人。

 

「違う。 本当の原因はあそこで騒ぎ立てる不良共のせいだ。 そう、あの不良共がFクラスに嫌がらせをしたからお前らがこんな目に会っているんだ」

「ゆ、雄二……?」

「なら、あいつ等を八つ裂きにすればお前らはこんな苦しい目に会わずに済む。 そうだ、そうだろう! そうに違いない!!」

 

 二人をあおるように説得する雄二。

 その鬼気迫る目に二人は若干押され気味で、どう反応すればいいのかが分からなくなっている。

 

「なぁモデルA…… いま、あの坂本って奴を楽にしてあげた方がいいのかな……?」

『グレイ……あの霧島って姉ちゃんがコエーからやめとこうぜ?』

 

 オーバーヒート寸前の状況から復活したグレイも今の状況に追いつけずに困り果てている。

 

「兎に角だ明久、テティス。 お前らのその怒りはあの不良二人に対して向けて来い。 よろしく頼むぞ」

「了解……」

「も~分かったよ…… じゃあ行ってくる……」

 

 

 完全に諦めた明久とテティスは相も変わらず騒ぎ立てる不良たちの方に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お客様、先程ご注文になられました”メイドポテト愛の山盛り”を用意いたしました」

 

 そう言った明久とテティスは馬鹿デカい皿に山盛り(言葉通り)になる程に積まれたポテトを”ドスン!!”と言わせながらテーブルに置いて行った。

 

「おっ、結構可愛いじゃん」

「こっちの小さい娘もすっげー可愛い! 良かったら学祭サボって俺とデートしない?」

 

 不良二人のなめまわすような視線が明久とテティスにまとわりついてくる。

 あまりの気持ち悪さに二人とも身震いし始めて来る。

 

「お客様、今からこのポテトに”美味しくなる愛の魔法”をかけさせていただきます」

『テティス、アンタ実はノリノリなんじゃないの』

『明久も自棄になっているな。 一応笑顔だが目が死んでしまってる……』

 

 身震いを抑えてどうにか笑顔を保った二人はどこからかケチャップを取り出して、ポテトにメッセージとデカデカとしたハートマークを書き込んでいく。

 モデルZとモデルLもかわいそうになって来たが、今はどうすることも出来ない為、時が来るまで見守る事しかない。

 

「おっ、結構本格的じゃねぇか」

「メイドとは言っても秋葉のメイドカフェみたいだがよ……」

 

 どうにか気もち悪さを我慢して明久とテティスが書いたメッセージにくぎ付けになっている不良。

 二人が行動を起こそうと決めていたのはこの瞬間だった!!

 

 

「「ロックオン!!」」

 

 コンマ01秒でロックマンに変身した明久とテティスは、メッセージにくぎ付けになった不良を相手にジャベリンとセイバーを思いっきり振り回した。

 

「「危ねぇ!!」」

 

 奇跡的に二人の攻撃をかわした不良だったが、その頃にはすでに明久とテティスは普通の人間に戻っていた。

 流石の雄二も予想外だったらしく口を開いたまま唖然としてしまっている。

 

「「キャー! この人達痴漢ですー!!」」

「なっ、何を言ってやがる! いきなりお前らが切り掛かって来たから避けただけ……」

「絶対に許さん!!」

「こんな公衆の面前で痴漢行為とは、このクズ野郎どもが!!」

「「誰だお前ら!?」」

 

 しかも痴漢の冤罪まで押し付けた結果、痴漢退治と言う大義名分を得た雄二となぜか久保が乱入して不良を相手に鉄拳制裁を叩き込む。

 

「てめーらまさかFクラスとやらの連中か! 痴漢なんて誰が信じるかよ!」

「本当なのじゃー! そこの二人はワシの尻と股間を撫でたのじゃー!?」

 

 どうにか否定しようとする不良二人だが、いつの間にかメイド服に着替えていた秀吉のフォローによって状況的に詰んでしまった。

 

「何しやがんだ、テメー!!」

「抹殺スル!!」

「何で常村がキレてんだ!?」

『シャルナク! さっきまでポンコツだったお前までなんでキレてるんだ!? っておい、苦無はやめろ。 本当に死ぬぞ!?』

 

 秀吉の言葉と同時になぜか常村とシャルナクが同時にもう一人の不良に襲い掛かる。

 どういう訳か二人のコンビネーションは完璧で、常村のストレートによって地に伏せた不良をシャルナクがトドメとでも言わんばかりに数本の苦無を投げつける。

 モデルPの制止もあり本当に死ぬことは無かったが、首元を掠める様に苦無は飛ばされて、いつ死んでもおかしくはない状況である……

 

「何見てたんだお前ら! 被害者は明からにこっち側だろうが!?」

「黙れ! 今しがたお前らはこのメイド3人の尻を撫でていただろうが! 俺の目は節穴じゃねぇぞ!」

 

 節穴かどうか以前にイレギュラーやモデルV以上の濁り切った闇を抱えているだろう。

 

「何だ、一体どうした?」

 

 ここでいきなり騒ぎを聞きつけた鉄人がやって来た。

 

「ああ、鉄人。 悪いがこいつらがここのウェイトレスに痴漢行為をしていたからな。 さっさと連れ出して警察にでもぶち込んでおいてくれ」

「全く、お前らは一体何をどうしたらこんな状況を作れるんだ…… お前らこっちに来い! 生徒指導室でみっちりと補習をしてやるからな!」

「「おいちょっと待て! 明らかに被害者は俺ら…… ってああああぁぁぁ……」」

 

 痴漢容疑の取り調べの為に鉄人によって生徒指導室まで強制連行されてしまう不良二人。

 どうにか必死になって抵抗しているが、最終的に二人とも絞め落とされてそのまま連行されてしまった。

 

『おい明久、そろそろ3回戦の時間じゃなかったか?』

「ヤバイ! 急いで準備しないと!」

『テティス、アンタもそろそろ戻りなさいよ。 店の見張りとプロメテ達の見張りもあるんでしょ?』

「アトラスが強引に連れて来たんじゃないか!!」

 

 明久とテティスは一度着替えに行く為に男子トイレに大急ぎで走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

 another story  秀吉side

 

 

 

「ひーでーよーしー?」

「あ…姉上よ、一体どうしたというのじゃ?」

 

 メイド服から元のチャイナドレスに着替えようとした秀吉はなぜか姉の優子に呼び止められ、首根っこを掴まれてしまっていた。

 

「誰が、誰に痴漢されたのかしっかりと聞かせてもらおうかしら?」

「こっ、これはこのクラスの為にどうしても必要な……ああああああああああ!!」

 

 怒り心頭の姉をどうにか説得しようとした秀吉であったが、その言葉も虚しく別室までそのまま強制連行されてしまった。

 しばらくの間、秀吉は戻っては来ないだろう……

 

 

 another story 秀吉side end

 




投稿が遅れてしまったZE!
繁包期だから本当に忙しいですね。

などと言い訳をしているが、理由はそれだけではなくモンハンクロスの発売に備えて4Gを再プレイして勘を戻そうとしたり、幻想入り系の作品を見るようになってきて爆笑していたりしていました。

しかも本編完成させておきながらバカテストをほとんど考えていない上に凝った物にしようと試行錯誤……

本当に私は何をやっているんでしょう……

今度の3回戦、対戦相手はいったい誰なのか?
そして暴れ回る不良共の目的とはいった…… ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


ヴァン・アッシュ「「次回もお楽しみに!!」」


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第8話

バカテスト


第14問

PKOとは何の略か答えなさい

・姫路瑞希の解答
「Peace-keeping Operations(国連平和維持活動)の略。
国連の勧告の元に、加盟各国によって行われる平和維持活動の事」

・ヘリオスの解答
「United Nations Peacekeeping Operations(国連平和維持活動)の略」


教師のコメント
『たしかにそうですね、ヘリオス君が書いたようにUnited Nations Peacekeeping Operationsとも呼ばれていますので、余裕があれば覚えておくと良いでしょう』


・土屋康太の解答
「Pants Koshi-tsuki Oppaiの略。
世界中のスリーサイズを規定する下着メーカー団体のこと」


教師のコメント
『君は世界の平和をなんだと思っているのですか』


・吉井明久、テティスの解答
「パウエル・金本・岡田 の略」


教師のコメント
『それはセ界の平和を守る人達です』


・プロメテ、清水美春の解答
「パシリ・金は渡さない・お前行け の略
世界中のチンピラに言えること」


教師のコメント
『先程鉄人に連絡しておきましたので道徳の授業で大切なことを学んできてください』


・アトラス、シャルナクの解答
「Perfect knock out (パーフェクトノックアウト)」

教師のコメント
『…………』


「で、3回戦は不戦勝じゃったと?」

「うん、相手が食中毒で病院に運ばれて試合どころじゃないって」

 

 のんびりしていたパンドラを大慌てで引っ張って向かった第三回戦は相手が食中毒で不戦勝と言う拍子抜けにもほどがある結果だった。

 不戦勝宣言された明久とパンドラはそのまま教室に戻ってきており、相変わらず客の居ない教室で秀吉と雑談をしていた。

 その一方で明久と少し離れた所で話をしていた姫路とエールの顔が少し青ざめた物になっている……

 

 

「所で、さっきからヴァンとアッシュを探していたけど見つからなかったのよ。 まさかあの二人がそのまま病院に運ばれた訳じゃぁないわよね?」

「……エールさん、そんな事は無いと信じたいですね」

 

 

 彼女らの予想はかなり的を射ていた。

 明久達が学際荒らしの不良と戦っている間、彼らは彼らで酷い目にあっていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァン・アッシュside

 

 

 

「あ、この品と後この品ももらうわよ。 それと……」

「アッシュ…… まだ買う気なのか……?」

「当然でしょ? こんないいお宝ちゃんが安値で売られてんのよ? ここで買わなきゃ女が廃る!」

「君は一体どこのプリキュア何だい?」

「”爪弾き荒ぶ〇調べ”のプリキュア?」

 

 何故か疑問形で返されて反応に困るヴァン。

 その一方で一体何処から金を持って来たのか、トレジャーハンターとしての鑑定眼を頼りに様々な模擬店で売られている商品を買い漁っていく。 もちろんその荷物の殆どを持たされているのはヴァンである。

 

「そう言えばあと少しで3回戦だったわよね?」

「ああ、対戦相手は前の市内の大会の時に会った吉井君のチームだ。 何があったのかパンドラまで一緒にいるみたいだけど……」

「なんであいつ等と一緒にいるのか?とか気になる事はいくつもあるけど、それは後で聞き出せばいいわ。 それよりも一度お昼にしましょう。 腹が減っては戦は出来ぬってね」

 

 大量の積荷と悪戦苦闘しているヴァンをよそにそのままアッシュは適当な食事系の模擬店を探しどこかに行ってしまう。

 それを追いかけるべく、ヴァンは運よく出会えたシャルナクと秀吉に事情を説明して荷物を預かってもらい、大急ぎでアッシュを追いかけて行った。

 その時彼らの手に謎のキャリーバッグがあった事に関しては追及しない方が良さそうだと判断して無視する事に……

 

 

 

「よし、せっかくだし瑞ねぇの為に敵情視察も兼ねてここで食べるわよ」

 

 そう言って仁王立ちで構えているアッシュの目の先には二年Bクラスの模擬店「”和心”永琳」(おすすめは刺身定食らしい)であった。

 

「アッシュ…… ここだけはやめないかい? 嫌な予感がするんだけど……」

「何言ってんのよ? 危険だと分かってて変なゲテモノを出す店なんて許可が出る訳ないでしょう? メシマズかもしれない程度で怖気づいてんじゃないわよ」

「いや、それ以前に確か刺身って生ものだったよね? 鮮度管理とかどうなって……」

『いらっしゃいませー』

『2名で席開いてるかしら?』

『2名様ですね。 席にご案内いたします』

「アッシュー!! いつの間に入ってるんだ!?」

 

 その後、アッシュが本気で刺身定食を頼み(2人前)で頼み、ヴァンも続くように仕方なく食べた結果……

 急にアッシュとヴァンが腹痛を訴え、大急ぎで保健室へと運ばれて行き、そのまま病院へと搬送されてしまった……

 最終的にBクラスはこの一件を受けて営業停止、その上Bクラスの生徒全員が一週間の”停学処分”を受ける事となってしまった。

 

 ヴァン・アッシュside end

 

 

 

 

 

 

 

「ならば、こちら側の立て直しに協力してくれんか? このままでは客足が止まる一方じゃ」

「うん、それもそうだよね。 何かインパクトがある事をやる必要がありそうだし」

「男子全員がギリギリな水着とお酒で接客……?」

「パンドラよ、それで喜ぶのは一部の女子だけだからやめてもらえんかのう。 それ以前にそんなものを持ち出されてしまっては店どころかFクラスの存続自体が危ぶまれるのじゃ」

 

 パンドラの奇抜すぎる発想に度肝を抜かれそうになりながら秀吉がツッコミを入れる。

 

「まあ、その辺に関しては雄二とも相談してみようよ。 ってそろそろ戻ってきたかな?」

 

 雄二が戻って来たと思い、適当なナイフでも投げて歓迎してあげようと思っていた明久だった。

 ……が、扉を開けた人物が彼で無かった事に驚き、大慌てでナイフをテーブル奥に隠してしまう。

 

 

「おおテティスか。 ただ着替えて来るだけにしては遅かった……」

 

 扉を開けて入って来た人物は少し前までメイド服を着せられてご機嫌ななめだったテティスであった。

 一体何があったのか、今の彼の服装は女子向けのチャイナドレスに猫耳、そしてなぜか猫の尻尾まで付いているコスプレである。

 だが、秀吉が言葉に詰まってしまったのにはそれとは全く別の理由があった。

 

「ごめんごめん。 ちょっとユキノちゃんと話し込んじゃって!」

 

 彼と一緒にやって来た、恐らく女子大生位の女性を見て驚きを隠せなかったのである。

 とても物腰が柔らかく、非常に穏やかな雰囲気の女性である。

 

「ありがとうテティス君。 所で雄二は何処に言ったのかしら? このくらいの時間に食べに行くって伝えてあるのに……」

「すぐに戻って来ると思うよ? 良かったらヤムチャでも飲みながら待ってる?」

「ありがとう。 テティス君、本当にいい子よね~」

 

 そう言ってユキノちゃんと呼ばれた女性がテティスの頭を「よしよし」と言いながら撫でている。

 

「プーッ! ボクはそこまで年下じゃないってば! 取り敢えずユウジが来るまでその席で待っててね! 急いで持って来るから!」

 

 微笑ましい会話をした後、テティスは一度厨房の中に入って行き、須川と一緒になってヤムチャの用意を始める。

 

「すみません雪乃さん! うちの弟分が失礼な事を!」

 

 珍しく明久がまともにテティスのなれなれしい態度に謝罪をしている。

 FFF団もあまりの急展開に付いて行けず、動きあぐねているようだ。

 

「いいのよ。 むしろテティス君といると若返った気分で凄く楽しいから♡」

 

 本当に気にしていないようで、むしろ彼の事をかなり可愛がっているようである。

 今は雄二の事で楽しそうに雑談をしており、ヤムチャを飲みながらテティスの頭をいじくりまわしている。

 

「それでね、雄二ったら酷いのよ。 翔子ちゃんを家に上げてお膳立てしてあげただけなのに私の顔を鷲掴みにして……」

「全くユウジも酷いね。 お姉さん相手に意地悪な事をするなんて」

「それだけならまだしも、少し前にそうめんを昼ごはんに出してあげたのに『これは麺つゆじゃねぇ!”ブラックコーヒー”だ!』と言って怒鳴って来たのよ? あの時も宥めるのが大変で」

「いや、それはユキノちゃんが悪い!」

 

 かなり天然ボケが入ってはいたが…… その光景は年の差があるだけの仲よしコンビと言うより姉弟のような感じの会話である。

 こんな話をしている間にもテティスの髪はいじくりまわされ、髪型がより女の子らしく、猫耳も別バージョンの物へと組み替えられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいお前ら何を騒いでるんだ? 今からどうにか客を取り戻そうと…………」

「ヤッホーユウジ! 今ユウジのお姉さんが来てたからヤムチャ渡して待っててもらってる所だよ」

 

 戻って来た雄二が完全に硬直している…… かなりの冷や汗を掻いており、顔も青ざめている。

 

「ほ~う? 坂本、貴様もなかなか隅に置けんようだな。 こんなきれいなお姉さんがいたとはな?」

「そう言うならなんで横溝はポケットの中に入れているナイフを手に取ろうとしてんだ?」

「雪乃ちゃんって言うんだって? テティスにいじられてると思ったら姉弟揃って仲がいいようだな、どうりで!」

「それにしては姉弟と言う割に似てないわよね? 今の葉月、ウチが小学生だったころにかなり似ているのに……」

「父親似ナノカモ知レナイ」

 

 Fクラス総出で雄二の事をニタニタとした笑顔でからかいだす。

 

「……お前ら、確かにそこにいる女は俺の家族だが、それ以前に俺は”一人っ子”だぞ?」

「「は? じゃあこのお姉さんは一体誰なんだ?」」

 

 Fクラスのクラスメイトのほぼ全員から詰め寄られた雄二は、目を背けながら弱弱しく答えた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「”おふくろ”」

「「『おふくろおおおおおおおおおおおお!?』」」

「おふくろです♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「『えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?』」」

 

 

 Fクラス内の人間のみならず、ライブメタル達も驚いておりしばらく沈黙を貫くはずだった彼らも明久達同様の悲鳴を上げてしまっている。

 

 

 

 

「「!?」」

 

 Fクラスからの悲鳴のような大声に驚いた通行人の大半が、つい足を止めてしまう。

 

「な、なんだ今の悲鳴?」

「さあ? まるで可愛らしい巨乳の女の子が来たと思ったら実は40代のオバハンだったみたいな感じの悲鳴だったけど……?」

「「いや、流石にそれは無いだろ!」」

 

 

 Fクラス内での混乱は外にまで影響を及ぼしているようである……

 

 

 

 

 

 

 

「それでは改めて自己紹介をさせていただきます。 そこで顔を背けながら椅子に座って疲れ切っている雄二の”母”の『坂本雪乃』です」

「お、お若いですね? かなり失礼ですが、年齢が気になってしまって仕方が無いんですけど……?」

「今年で40になります♡」

「「……嘘だ(です)!!」」

 

 見た目からは全く予想が出来ない年齢に驚いた姫路と島田がまたしても悲鳴を上げてしまう。

 

「信じらんねーだろうけど事実なんだよ…… 俺が中学の時に実年齢知らねーでナンパしようとしたバカとストーカーを撃退するってどんだけ苦労した事か…… 中には実年齢知っても『愛人でもいいので一緒に付き合ってほしい』だの『人妻をN〇Rするのも悪くは……』とかほざく奴がタチ悪くて半年くらい前までガチでヤバかったんだよ……」

 

 

 驚愕的な過去話をしてさらに背もたれに垂れてだらけてしまう雄二。

 

「つーか、つーかつーかつーかよぉ~お! 一体何がどうやってテティスとなれなれしく名前で呼び合える位に仲良くなってんの!? それ以前に俺がチビだった時並みか下手したらそれ以上に可愛がってんじゃねぇか!!

 近所の子供と仲良しですってレベルじゃねーぞ!?」

「ちょっと、お母さんにそんな口の利き方は感心しないよユウジ?」

「さっきまで人の母親を姉と勘違いしていたテティスにだけは言われたくねぇから黙ってろ!! 大体母親なんて……」

 

 先程まで怒鳴り散らしていた雄二が急に言葉に詰まってしまう。

 その時視線の先にいたのは……

 

1.先程からさみしそうな視線で雄二を見ているエール(昔を思い出している模様)

2.親と呼べるものを知らず、”なんで怒鳴り散らしているのかが分からない”という目で見ているグレイ

3.いつの間にか『お母様をいじめちゃダメ』とでも言わんばかりにスタンガンを構えている霧島翔子

 

「ねっ、悪い事は言わないからここは大人しくしておいた方がいいでしょ?」

「そうだぜ坂本ォ、ここはテティスの言う通りだぜ。 おふくろは大切にしねぇとな」

「本気でそう思ってんならそのにやけ面をやめろプロメテ」

 

 今度は絡んできたプロメテ相手にキレそうになっている雄二。

 取り敢えず一度落ち着いているようではあるが、プロメテがいじりたおせば再び噴火するかのごとき勢いで激怒するのは間違いないだろう。

 

「それにしても雄二、もう髪跳ねちゃってるじゃない。 ネクタイも歪んでるし、身嗜みを整えられない内から反抗期なんて……」

 

 マイペースにも雄二の身嗜みが気になったのか、手際よく髪や服装を整えようとする坂本母。

 

「もう反抗期でもねぇし、こういう着こなしでこういう髪型なんだよ!

 昔っからおふくろは変に過保護過ぎんだよ! 俺もう高校生だぞ? 少しは息子を信用して独り立ちさせてくれよ!!」

「何言ってるの、いきなり久々に全身痣だらけにして帰って来て、構うなって言うのが無茶な話でしょ?」

「う……」

 

 母親に痛い所を付かれ、頭が上がらなくなってしまう雄二。

 

「なるほど、雄二って何処か面倒見がいいところがあると思っていたけど、そういうところは母親譲りなんだね……ってみんなどうしたの?」

「美人で面倒見がいいおふくろって……」

「美人で天然でそれでいながら面倒見がいいおふくろって……」

「美人で天然で可愛らしさもあってそれでいながら面倒見がいいおふくろって……」

 

 FFF団のようすがおかしい事に気が付いた明久。

 これまでにない彼らからの殺気のせいでつい距離を取りながら身構えてしまう。

 

 

「「「羨まし過ぎんだろ坂本ォォオオオオオオオ!!」」」

 

 坂本の母親に対する反抗的な態度に耐えかねたFFF団が珍しくまともな理由で攻撃を仕掛けて来た。

 手に持っている装備が刃が落とされているとは言え十分本物と呼べる日本刀や、鎖分銅、矢じりを落とした弓矢など戦国時代みたいな武器を持ちだしていなければ本当にまともなのだが……

 

「あんな美人で優しい母親とかマジでいいだろ! どこが不満なんだよ!!」

「嫌いっつーわけじゃねぇけどよ! ブラックコーヒーと麺つゆを間違えたりする天然ボケが日常茶飯事のツッコミ所が満載なおふくろとかどんだけキツイと思ってんだ!?」

 

 先程から状況について行けず、一言もしゃべれずにいた葉月が「あ、きれいなおばさまの事は大好きなんですね」とツッコミを入れていたが、それをよそに彼らはヒートアップし続けて行く。

 

「はっ、そのくらいなら寧ろ愛嬌だろ!! 俺の家のおふくろとか傲慢なだけの汚い白豚だぞ! 見られた時に『巨乳で羨ましいね(笑)』とか言われてバカにされてんだぞ! どんだけ恥ずかしいと思ってやがる!!」

「俺んちのおふくろとか白髪を墨汁で染め上げているうえにゴキブリを手掴みでキャッチとか全く抵抗ないんだぞ!?」

「は? そんなのまだマシに決まってんだろ!! オレのとこのババアに至ってはアルコールとギャンブルが大好き過ぎてオレの事なんてどうでもいいクズみたいに見下してやがったんだぞ!

 結局オヤジが離婚した時にそのままオヤジについて行ったからもうどうでもいいけどよ、あれは最悪だったと思うぜ?」

「それ言ってしまったら俺の家のクソババアなんてもっと凄いぞ。 オヤジの保険金目当てで薬盛って消しにかかりやがってさ、その後処理を弟とさせられてマジで狂っちまいそうだったぜ! 結局バレてポリ公に連れていかれたけどよ。 あんときはマジでヤバかったわ」

「「ちょっと待て! 後半二つシャレになってねぇぞ!?」」

 

 

 いきなり不幸自慢みたいになり始めているFFF団の話のせいで反応に困り始めている雄二。

 珍しく「すまんおふくろ。 さっきまでの俺の言葉は全部忘れてくれ……」と素直に謝りだすあたり色々と思う所があるのだろう……

 

 

「……御待たせしました、こちらがご注文の……  ……明久、一体何があった?」

 

 坂本母が注文した食べ物を届けようとした土屋は料理に集中して聞いていなかったのか、わけの分からない状況に若干困惑気味のようだ……

 

「うん、なんだかんだでアトラス達の居候を認めてくれた上に仕送りまで増やしてくれた僕の母さんも優しい方の母さんだなって再認識したところだよ」

「……会話がつながってない。 ……大体予想は付いたが。 麻婆豆腐”辛口”、ゴマ団子セットでお持ちしました」

「あら~ありがとう、ムッツリーニ君」

「……雄二、一体オレの事をどう説明した?」

「よーし本題に入るぞ! 取り合えず本題に入るぞ!」

 

 荒れに荒れた坂本母の一件がどうにか落ち着いた所で、強引に本題に入る雄二。

 本当に大切な事なんだと言わんばかりに2回も言うあたりどうしてもこの話題には触れたくないようである。

 

「雄二、どんなアイデアなの?」

「中華とテティスが着ている”これ”では安直過ぎるが、効果は絶大なはずだ」

 

 そう言って取り出したのは複数のチャイナドレス。 若干裾が短い気もするが刺繍も見事なものでとても可愛らしいデザインとなっている。

 

「で? コレをどうするの?」

「ああ、コレを…… 明久と秀吉とプロメテが着る」

 

 それは流石にインパクトがあり過ぎるだろうと明久とプロメテは思い始めていた。

 

「冗談だ明久。 明久だけならまだしもプロメテまで来ていたら逆に客足は遠のくだろ?」

「待って雄二! それは僕だけなら大丈夫みたいに聞こえるんだけど!? メイド服だけでも危ないのにチャイナドレスまで着ちゃったら、きっと僕はホンモノだって皆に認識されちゃうよ!!」

「だから着せないって言ってんだろ。 この服はパンドラ・秀吉・姫路・島田に着てもらう」

「なあんだ、良かったぁ~」

 

 雄二の言葉で冗談だと分かった明久は良かったが、その一方で秀吉の方は冗談では無い事に溜息を付きながら諦めた様に更衣室に入って行く。

 

「吉井、もう少しで4回戦が始まる……」

「うそっ、もうこんなに時間が経ってたの?」

「私も着替えてからすぐに行く。 吉井は先に行って待機してて……」

「そんな事をアタシがさせると思っているのか? 貴様はまだ警戒されている身であるという事を忘れていないだろうな?」

「私は別にそんな下らない手を使ったりはしない……」

「それをアタシらが信じると本気で思っているのか?」

 

 そう言ってアトラスが指した先にはモデルXを構えていつでもロックマンに変身できるようにしているエール。

 忘れそうになってしまうが、プロメテとパンドラはあくまでも敵なのである。 

 

「分かった、吉井と一緒に行く…… 更衣室で着替えて来るから吉井は待ってて……」

 

 しょんぼりとした顔でそのまま更衣室に着替えて行くパンドラ。

 明久は若干罪悪感を覚えているようだが……

 

「流石にパンドラが可愛そうになってきたね……」

「なっ! 何でアキがそう言う事を言うのよ! 一体ウチがドイツでどれだけあいつ等にひどい目にあわされたか……」

「そうですっ! 葉月もあの二人のせいでどんどん弱っていくお姉ちゃんを何度見せつけられたか分かったものじゃないですっ!」

「実際、プロメテとパンドラは市内大会を滅茶苦茶にした挙句にFFF団相手に”消してもかまわない”と言うつもりで攻撃しやがったからな」

「……少なくとも善人じゃないのは事実」

 

 やはりと言うべきかFクラス内での彼らの信用はマイナスと言っても良いくらいに酷い物となっている。

 

「でもやっぱり……」

「吉井、待たせた…… すぐに会場に行く……」

「え? ちょっ、引っ張らないで! って、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 

 エメラルドグリーンを基調としたデザインのチャイナドレスに着替えたパンドラは問答無用で明久の腕を掴み、そのまま引っ張って行ってしまう。

 とっさの判断でシャルナクが二人を尾行するように付いて行ったが、Fクラス内での空気は重いままだ……

 

「オイ! お前らこれから客寄せでも始めんだろ? テティスのバカが茶葉をテメーのおふくろの為に結構使ってやがったからそろそろ補給しねえと客が来た時に対応出来ねーぞ!」

「お前が指揮ってんじゃねぇよ! 誰のせいで苦労してやがると思って……」

「喧嘩している場合ではなかろう。 ならすまんがプロメテよ、その少なくなっている茶葉をすぐ近くにある空き教室から持って来てもらえんか?」

 

 喧嘩しそうになっている雄二を宥めてプロメテにお使いを頼む秀吉。

 他の皆もそれぞれの持ち場に戻り、姫路と美波の二人も更衣室に向かってチャイナドレスに着替える為に移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「4回戦の相手は誰……?」

「えっと、ちょっと待って…… 嘘っ! ここで木下さんと霧島さんのコンビ!?」

 

 次の対戦相手を確認していた明久とパンドラだったが、流石の4回戦なだけあって相当強いチームとの対戦を組まれたようである。

 雄二が居ないこの現状を考えると今の明久に彼女らに対する攻略法が思いつかないのである。

 

「確か一人は貴方と同じロックマンの……?」

「うん、それは木下優子さんだね。 あの時は秀吉のお姉さんがロックマンになるなんて思ってもいなかったけど……

って、木下さんも学年第4位の総合点保有者で相手すると考えただけでも絶望モノだけど、この場合一番厄介なのは霧島さんの方だよ!」

「あの長い黒髪の……?」

「うん、あの人が学力最優秀者が所属するAクラスの中でも最も総合点が高いAクラスの代表なんだ!

いくら僕自身の操作技術が高くて召喚獣自身も素早いタイプでも、流石に勝てるかどうか……」

 

 さすがにこれまでの快進撃ももう終わりかと思った明久は頭を抱え、それでもどうにかする方法は無いかと考えだす。

 

「吉井、ワタシに作戦がある………」

「パンドラ?」

「詳しい事は試合場で…… もうそろそろ試合が始まる」

「え? なんで僕の足首を掴んで…… ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 パンドラに何かの策があるのか、先程から元から無い頭でさらに悩み抜こうとしている明久を足から引き摺って試合場に進んでいく。

 その引きずられていく明久も顔面を打ち付けたからか鼻を抑えながら悶絶しており、パンドラに文句を言いたげである(そもそも鼻の痛みで文句を言える状況でもないのだが……)

 

 

 

 

「……吉井、邪魔しないで」

「って、吉井君は何鼻をさすっているのよ? それになんでさっきからパンドラの方をにらみつけているのよ?」

「木下さん、勝ち負けに関係なく後でパンドラとプロメテを倒すの手伝って。 さっきからFクラスに迷惑しか掛けてこないから軽くオシオキしたいんだ……」

「え…ええ、分かったわ」

 

 先程まで罪悪感を抱いていた自分がバカらしくなって来た明久は、こめかみを引き攣らせながら解放の指輪を装備する。

 

『な……なあモデルZ? 一体お前のパートナーに何があったんだよ?』

『鼻を擦っているあたりで想像が出来るだろ?』

『あー…… 何となく理不尽な目にあわされたってところだけは分かったぜ……』

 

 ライブメタルの方でも状況を察したのか、明久の事が可愛そうになって来たようである。

 

 

「それで? パンドラの作戦って何?」

「さっきの話からよくもワタシに振る事が出来たの……? 今回は貴方は合わせるだけで良い……」

 

 そう言って明久よりも少し前に出てくるパンドラ。

 

「霧島翔子…… 貴方に話がある……」

「……何?」

 

 何をする気なのかと明久を含めた3人で警戒していたが、肝心なパンドラは特に余計なことをせずに何かを話そうとする。

 

「霧島翔子…… 貴方の男がFクラスの教室でストリップショーを始める……」

「……夫を更生させるのは妻の務め」

「「霧島さあああああああああん!?(代表おおおおおおおおおおお!?)」」

 

 

 まさか滅茶苦茶すぎるパンドラの発言を真に受けて高速で試合場から抜け出して試合放棄する霧島。

 驚きのあまりに悲鳴のようなツッコミを上げてしまうが、よくよく考えれば前回の試合でも雄二の頼みでは断り切れていなかった彼女の行動を考えるとあり得る話だった為に優子は悟った様に諦めた。

 

「霧島さん、足も速かったんだね~」

「くっ…… ならここはアタシだけでも……」

 

 一人になっても諦めないとでも言わんばかりに明久達に対して身構えて召喚獣を呼び出す優子。

 

「木下優子…… そのストリップショーでは秀吉も参加予定だって……」

「ヒイイイイイイデエエエエエエヨオオオオオオシイイイイイイイイ!!」

『ちょっ! 優子、何トチ狂って…… って、オイラを握りつぶさんばかりの握力で捕まえるのはやめろおおおお!!』

 

 目が死んだ笑顔のままモデルAを構えながら試合場から出て行ってしまう優子。

 この様子だと完全に明久との約束の事も忘れているだろう……

 

「あ、あの…… 西村先生、試合の方はどうしましょうか…………?」

 

 審判兼フィールド作成を担当するはずだった教師が鉄人に相談している。

 だが、いきなり敵が試合を放棄して行方不明になってしまった以上……

 

 

「こんな状況で試合が出来ると思うのか?」

「そうですか、分かりました………… た…ただいまの勝負、吉井・パンドラペアの勝利です」」

 

 

明久・パンドラチームの勝利が確定した。

 場内が物凄く静かである。 よく見てみると、観客の全員が冷ややかな目で見ている……

 

「……僕、結局何もしてないよね?」

「ここまで大きい釣り針にむしろ食らいついてくるなんて思ってなかった……」

 

 

 それも仕方のない話である。 まさか一番注目されている召喚獣同士の戦いが全く起きる事の無いまま決着が付いてしまっては興ざめもいいところである。

 

「それじゃ! 僕たちはこれでっ!」

 

 ブーイングの嵐が吹き起きる前に2人は逃げるように試合場から出て行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近、井上堅二さんが原作を務める「ぐらんぶる」と言う漫画にハマっています。
イメージとしては「バカテスのノリで大学生として生活していたら?」と言う感じのストーリーとなっています。
井上堅二さんの作品って何度繰り返し見ても必ず爆笑してしまうから不思議ですよね……
他のギャグ系の漫画やラノベは1・2年後には飽きてしまっているというのに……
とは言っても今回の話では全くネタにしていませんがwww


そして今回、理不尽にもヴァンとアッシュが病院送りとなってしまいましたwww
彼らの今後の戦いぶりを楽しみにしていた方には謝っておきます。


代わりと言っては何ですが、次のストーリーでおまけの番外編を出しますのでそちらの方もお楽しみいただけたらと思います。




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番外編

ここしばらく時間の感覚がおかしくなっている………
いつの間にか一ヶ月経っていて、もう一方の作品も途中で止まってた………

今回は後書きでお伝えした番外編です。


 テティス達が明久の家に居候して数ヶ月程たった頃の事である。

 

 

 

「全く、なんで僕が買い物になんか出かけないといけないのさ。 居候の上にお金の殆どがアキヒサから来ているから文句は言えないんだけど、だからって……」

 

 今、テティスがいるのは文月にある大規模ショッピングモール。 そこの食材コーナーにて所々赤ペンで〇印を入れられたチラシと買い物用のメモと財布を持って買い物をしていたのだが、向かった先の光景を見て流石に不満を漏らしていた。

 

『今から夕方市特売サービスの時間だよ~! 今日はシイタケと春キャベツ、リンゴとミカンが通常の3分の1ですよぉ~!!』

「「「貰ったああああああああああああああああああああ!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんでこんな怖い鬼と化したオバサン集団が大暴れしているような所にあるものまで取ってこないといけないのさ!?」

 

 

 

 

 特売商品目当ての奥様方(通称・鬼、明久曰く”死の超越者(オーバーロード)”)が密集し、獲物を刈り取る猛獣の様に特売品の奪い合いを起こしている光景だった……

 

『あら~、これはすごいわねぇ~…… あの明久がある意味ロックマンになったテティス達よりも相手したくないって言った理由が分かる気がするわね……』

「こんな荒事はむしろアトラスの専門じゃないか! なんでボクがあんな地獄に一人で突撃しなくちゃいけないんだ!?」

『前回はアトラスとシャルナクが行ったらしいんだけど、全然ダメだったらしいわ。

 帰って来た時にめずらしく明久の方が立場強くなって説教していたわよ?「あの化け物の集団を相手に舐めてかかるからこうなるんだ!」って……』

「そんな死地に一人で挑めって言っているの! アキヒサはアキヒサで何考えてるんだ!?」

『そんな事、私に聞かないでよ』

 

 テティスがモデルLと会話している間にも鬼(オバサン)が増えて行き、何メートルもの山と化していた特売品がごっそりと消えていく……

 

「くっ、だけどボクらにもまだやらなきゃいけないことがあるんだ。 かなりずるいけどここはやるしかないかな?」

『全く…… 今回だけよ……』

 

 呆れたとでも言わんばかりの声で応えるモデルL。

 

「『ロックオン!!』」

 

 人目に付かない場所に離れた二人は”一般人”には振るわないと決めていたはずの力を起動させ、ロックマンに変身する……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マダマダイグワアアアアア!!」

「ソノハルキャベツハワタシノモノヨ!」

「クッテヤル! ソノニクヲヒトキレモノコサズニ!! ケキャキャキャキャ!!!!」

 

 最早魑魅魍魎と化していたオバサン集団の戦いも後半戦に突入するかと思ったその時だった!!

 

「『アイスクラッカー&フリージングドラゴン!!!』」

「「「!?」」」

 

 いきなり天井から大量の氷塊と氷でできた龍が降り注ぐ。

 しかもその氷塊は謎の氷の龍によって噛み砕かれ、大小様々な氷の弾幕に変化しつららや雹の様に降り注いでくる。

 

「オバサンとお店には悪いけどお家で食材を求める恩人の為なんだ。 ここでしばらく踏み台になっていてもらうね?」

 

 特売セールに群がる奥様方を床に磔にし、テティスはお目当ての特売品に向かって突き進む。

 だが、その程度の事では、アトラスの手でパワーアップした明久でさえ”超越者”と称する程の”鬼”達は止まらない。

 

「この程度の危機に屈する様では!」

「我が家の台所に!!」

「立てる筈がないだろ!!!!」

 

 奥様(鬼)方は服に縫い付けるように張り付いた氷塊や氷の龍に構わず強引に破壊する。 中には床ごと引き抜いてまで出て来るものまで現れる始末だ……

 

「嘘ッ!? あの氷の弾幕利用して拘束してもまだ動けるの?」

「所詮はお子様よ! あんな小細工で家族の胃袋を預かる主婦の猛攻を止められると思ったか!!」

「貴様は前にやって来た二人組よりも良い匂いを放つが、所詮リトルリーグはリトルリーグ!」

「まだ、お前は特売がなんたるか分かっていない。 野菜の詰め合わせや特売通路の最速への行き方位で満足しているようでは話にならん!」

「苦無や手裏剣の雨?、あらゆる物を焼き払う獄炎の波動がどうした? それで怯える程文月の女は甘くない事を知れ!!」

「『いや、そもそもボク(私)ら特売に参加するの初めてだから!!』」

 

 次元が違った。 テティスとモデルLはそう思った。はっきり言って敵う敵ではなかった。

 アトラスとシャルナクでさえこの”特売品の争奪”と言う分野では赤子にも等しいというのにも納得である。

 例えるならレベル1の竹やりしか持たされていない子供が90クラスのボス部屋に挑むような愚行にも等しい、最悪な選択肢だろう。

 

 

「……なるほど。 戦闘バカやなまじ器用貧乏なだけの奴じゃ勝てないわけだ…… なんて調子の良い事言ってるけど今のボクでも流石に部が悪いや……」

 

 とは言っているが、それでも恩人である明久の頼みに応える為、エネルギーをフルチャージしたフロストジャベリンを構えている。

 

「「「「その闘気、覚悟だけは本物のようだな! いいだろう、なら相手になってやろう。 全力で来るがいい!!!!」」」」

「『オオオオオオオオオオオオオオ!!』」

 

 こうして未来の英雄の力をもつ氷のロックマン(御使い少年)と鬼(特売品争奪専門家のオバサン)との戦いが始まった……

 

 

 

 

 

 

「…………もう転職しようかなぁ」

 

 その一方で店員達は現実逃避し、思考を放棄していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局特売で手に入れたのは冷凍肉二つとキャベツだけか……」

 

 今、テティスは店の近くにあるベンチの近くで憔悴しきっていた。

 そんな彼の手には、溶けかけの冷凍肉と少し質の悪いキャベツが買い物袋に鎮座している……

 

『ま、何一つゲット出来なかったアトラスとシャルナクに比べればマシでしょ? 素直に謝れば明久とヘリオスも許してくれるわよきっと……』

 

 結局、目当ての特売品は殆ど手に入らずじまいだった。

 いや、初めてであるにも関わらず三つも手に入れただけ僥倖と言うべきだろう。

 理不尽な戦力差がありながらも立派に戦い抜いたのだ。 それをほめこそすれど攻めることなど誰にも出来はしない……

 …………そう、あの特売の”鬼”達に完全勝利するなど最早不可能にも等しいのである。

 

「だけど最後の方は本当に死ぬかと思ったよね。 店の中が滅茶苦茶になってて、最終的にピッチフォークだのバーナーや包丁なんかで武装したカートを持ち込んだ店長が大暴れしちゃったんだもん」

『そもそもあそこでロックマンの力を使ったこと自体が間違いだったのよ。「私の店だぞ! お前ら、私の店を荒らしに来たのか!?」とか言い出していたじゃない』

「まっ、ボクだけ素顔見られていないなら大丈夫だろ? ふざけて「ケガ人がいるんだ。 薬を……」とか言っちゃったのは悪かったとは思うけどさ……」

『アンタがケガ人が出そうな状況を作った張本人でしょうが!! 店長さん、思いっきり「盗難行為は許さない!!」とか言って絶叫しながら突っ込んできたじゃないの!』

「あの時の顔は面白かったなぁ…… カメラがあれば撮影して保存して置こうと思ったのに」

『取り敢えず、今回の件は明久とヘリオスにきっちりと報告して置くわよ。 こってり絞られてきなさい』

 

 テティスが納得いかないとでも言わんばかりにブー垂れているが、実際モデルLも力を貸している地点で同罪である。

 流石に一般人相手には使う事は無いと思っていたロックマンの力をフルに使ったにもかかわらず(氷塊を直接当てる様な事はしなかったが……)まともな成果を上げられずに落ち込んでしまう。

 

 

 

 

 

「あらあら……こんな所に買い物袋を片手にうなだれている子供がいるなんて……

ボク~?こんな所で一体どうしたのかしら?」

 

 いろんな意味で落ち込んでいるテティスに声を掛けて来る女性。

 

「ま、アキヒサがあれだけ警告する位だから甘く見てたつもりは無かったけど、予想は超えてたよ…… って、お姉さん誰?」

「通りすがりのお姉さんです♡ もしかして、お使いを頼まれたのに手に入らなくて落ち込んでいたのかしら?」

「うん、大体そんな所…… あの特売狙いのオバサン達、規格外にもほどがあるよ……」

 

 乾いた笑いをしながらガックリとうなだれるテティス。 だからこそ明久とヘリオスが家に帰る度に家計の事で論争を始めてしまう気持ちと明久組の家計の現状を理解してしまう。

 

「そうなの? そう言えば君、確かあの奥様方と特売品コーナーの方を見ていた子よね? いきなり大量の氷が降り注いで来ていたけどケガはないかしら?」

「うん、大丈夫だよ? 運よく全部避けたし」

『こいつ、堂々と大嘘付いてくれたわね!?』

 

 

 先程の特売コーナーでの出来事を見ていたのか、心配して色々と診てくれる女性。

 今の世の中、ここまで他人の子に親切にしてくれる人間も珍しいだろう。

 

「うん、よし! この調子だと大丈夫!!」

「うわっ! 頭撫でないでよ~!」

「あらあら、本当に可愛い反応するわね。 えいえいっ♡」

「あたまなでるなー! 頬をつつくなー!」

「キャー! 柔らかーい♡」

 

 完全にチビッ子扱いである。

 しかも相手に一切の悪気が無い為に余計タチが悪い。

 

「そろそろ暗くなるし、テティス君も気を付けてね?」

「うんお姉さんありがとう!」

 

 数分ほどいじられた末にようやく解放されたテティスはショッピングストアから少し離れた所で女性と別れ、そのまま家に向かう事にした。

 

 

 

『あれ? テティス、ちょっと向こうを見て』

「なんで?」

『いいから?』

 

 が、いきなりモデルLに止められて女性の向かった方へと視線を戻す。

 

「おっ、あのネーチャン可愛くね?」

「いいねぇ…… こっそり拉致ってヤッちゃう?」

「ならいつもの手で行こうぜ? 取り敢えず梱包用のガムテープと、近くにレ〇サスがあったからそれでも強奪して……」

 

 するとその先には怪しい動きをしている男が4人程おり、明らかにゲスな話をしながら先程別れた女性を尾行している。

 

『なんか危ない気がするけど、どうするの?』

「ほっとく、一度話しただけでしかないただの人間だし」

『そう…… ならさっさと帰るわよ。 ”明久が”心配している訳だし』

 

 何気なしにしか話を聞いていなかったテティスだった…… が、モデルLの言葉から明久の名前が出た瞬間、少し前に明久とロックマンとして戦った時の事を思い出し、幻視してしまう。

 

 

 

 ………誰かが困っていたら、助けるのは当たり前。

 ………テティスももう少し人間を見て生きてほしいな。 もしかしたら、少しくらい考え方が変わるかもしれないよ?

 

 

 恩人であったはずの明久との衝突。 きっかけは些細な事だったと思う。

 意味も無く理不尽に海を汚す工場に川に大量のごみを捨てるトラック。

 それらの動機が”それが仕事だから”と一切悪びれない最低な人間達。

 海を……水の世界の命を愛するテティスにはとても我慢がならなかった。

 今のロックマンとしての力をフルに使えばこの国の海くらいは守る事が出来る筈。

 そう思ってこの国の経済基盤となっている工場の全てを破壊する位のつもりで暴れようとした時に明久が命がけで言ってくれた温かい言葉。

 その言葉が無ければ、きっと今頃のテティスはただの指名手配犯として荒み切った人生を送る事になっていただろう……

 

「モデルL、やっぱりあの4人を尾行しよう。 念の為、買った食べ物は氷の倉庫のような物を作っておいて近くに隠しておこう。 あと、相手の戦力が万が一ロックマンとしてのボクよりも上である可能性を考えて、明久にも連絡を入れて置いてくれるかな?」

『そこまでしなくても…… 別に私がいるんだしあの程度なら、明久達を頼らなくてもどうにでもなるんじゃないかしら?』

「念の為にだよ」

 

 そう言って、テティスはモデルLと肉を再冷凍させて保存した後、明久の元に向かわせようとする。

 ……が、モデルLと話をしている間に、男たちは女性を車の中に強引に押し込んでいた。

 

「まてっ!」

 

 とっさにテティスは止めに入ろうとするが間に合わず、逃げられてしまう……

 

「くそっ! 逃げられた!!」

『ちょっ! 私が助けを呼びに行こうとした意味無くなるじゃない!?』

 

 テティスが悔しがっている間にも車は確実に遠ざかっている。

 このままいけば後数秒で見失ってしまうだろう……

 

「ああもうっ!! 万が一の事を考えると若干不安だけど……」

「『ロックオン!!』」

 

 とっさにロックマンに変身したテティスは全速力で追いかける。

 流石にまだ車が低速時であったなら一瞬で追いつき、車を氷漬けにして人質を助け出すなど造作も無かっただろう……

 だが、今の車の速度は確実に上がり続けており、間に合うかどうかはギリギリと言った所である……

 

「間に合ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」

 

 もう少しでジャベリンを叩き付けて強引に車を止められる……

 そう思った時だった……

 

 

「『え……?』」

 

 ジャベリンを振るおうと力を入れた瞬間、急に車が減速し……

 そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 顔面から車の後方に衝突し、勢い余って空中で何重にも高速回転。

 その勢いのまま電柱や壁に何度もぶつけた末に何処かに飛んで行ってしまった……

 

 

 

 

 

 another story ????side

 

 

「おい、なんか後ろから変なのが付いてきてんだけど?」

「はあ? 変なのって一体なんだよ?」

「全身青い服と槍みたいなの持って追いかけて来てるやつだよ」

 

 男の一人に言われて後ろを見てみるリーダー格だと思われる人物が後ろを見てみる。

 その先には言われた事そっくりそのままの事態となっていた。

 

「ま、短距離なら車よりも人間の方が速いって話だしな……っと」

 

 そう言った男が急にサイドブレーキを掛けて急停車させた。

 その時、女が何か言っていたが何を言っていたかは全く聞いていない……

 

「いきなり止めてんじゃねーよ!!」

「「「イエ~イッ!」」」

「話聞けって! こっちは舌噛みそうになってんだよ!!」

 

 槍のような物を構えた青服の少年が車の後部に衝突したのを確認した後、すぐにサイドブレーキを解いて再発進する。

 先程の少年が何処に飛んでいったのかを確認もせずに……

 

 

 another story end……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男達は数分移動した先にある廃棄工場に到着していた。

 

「むーっ、むーっ!!」

 

 今彼女は運送業者などでよく使われている梱包用の強力なテープを用いて足以外を縛られており、ほとんど身動きが全く取れずにいた。

 

「あ? 逃げたければ好きにどうぞ? 寧ろ楽しみが増えるからよ」

「「「ギャハハハハハハハ!!!」」」

 

 足だけ縛られていないという事はどうにか逃げる事が出来る事の様に思えるが、それは絶望的なまでにありえない事だった。

 一人の女がまともな状況でも逃げ出すのが難しい状況なのにわざと足だけを縛らずにいるという事は、寧ろ逃げ惑う女性を相手に下種で意地汚い行為を惜しげも無く実行しようとする気が満々であるという意思表示でもあるのだ……

 

 

「お? よく見たらこの女坂本のところのじゃね? よく面白そうなことをほざいてツッコミ入れられてるのを見た事があるぜ?」

「マジか? だったらこの女ズタボロにしてやって、その写真でも送りつけてやるか?」

 

 拉致されるまでのんびりとしていた彼女だったが、流石に今の言葉の意味が分かったのかへたり込んだのと同時に後ろに後ずさる。

 そんな彼女を見て男は楽しくなって来たのか、腰のベルトに手を掛けながらゆっくりと追い込むように近寄って来る。

 

「オイオイ…… ここはまず女の方から引ん剝くもんだろ……」

「仕方ねーだろ。 あいつオレらが居ねー時にも街中で下を脱いで、女の子に見せびらかしてるっつー話だしな」

「「すっげー嫌な趣味してんな!!!」」

 

 彼女に近づいていく男、この4人組のリーダー格なのだが……

 典型的な下種で自らの欲望の為に少女に下半身を露出させてから襲い掛かり、たまたま間に入って来た大人と揉め事を起こしては仲間に強引に引き剥がさせ、八つ当たりで殴る蹴るの暴行は当たり前と言う男なのである。

 だが、この街ではかなりの金持ちでもあり、警察の上層部にも顔が利く為か、このレベルの無茶が問題にされないのである。

 実際このグループの仲間もその金と今回の様に拉致した女が目当てで付き従っているに過ぎない。

 そんな下種の手が彼女に向かって伸ばされた瞬間であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 男の側頭部に6キロ砲丸サイズの氷塊が目にも止らぬ速さでぶつけられた。

 ”グチャッ”と言う嫌な音と共に横に飛ばされた男は地面を転がりながら壁に叩き付けられた。

 よほど効いたのか、頭を抑えながらジタバタと暴れ回り悶絶している……

 

「ちょっと手加減しすぎたかな? 普通あの一発でノックアウトしてもおかしくなかったのに……」

「「「誰だ!?」」」

 

 

 いきなりの声に驚いた3人は声の聞こえた方に振り向き、自身が隠し持っていた武器(メリケンサックやナイフ等)を構える。

 

「誰だって? ははっ、面白い事をいうね? ついさっきボクの事を吹っ飛ばしてくれたのにもう忘れちゃったのかい?」

 

 振り向いた先の薄暗いところからゆっくりと歩いてくる人物には見覚えがあった。

 

「けどね、今の変身したボクにはあの程度の衝撃ではダメージにはならないんだ。 キミ達、ただの人間よりも進化した存在であるボクを倒した気になるならあそこからさらに何度も轢きまくる程度の事はしないといけないんじゃないかな?

 おかげで運よく車の上に張り付くことが出来て、こうしてキミ達に付いて行く事ができたのさ」

 

 この工場に着く前に一度車の後部に突っ込んで行って自爆したはずの青服の少年である……

 先程の言葉が本当ならば、しばらくの間廃工場に着くまで車にしがみつき、到着と同時に男たちの視界に入る事無く別の場所に隠れ、一度やり過ごした事になるのだ……

 

「何訳の分からねえ事を言ってやがる!」

「構う事はねぇ、ただのバカだ! くたばりやがれ、このコスプレ小僧!」

 

 テティスの話を無視した男達は各自散らばって囲う様に突っ込んで行く。

 前方から左右寄りに二人の男がナイフを持って襲い掛かってくる。

 

「遅いなぁ!」

 

 ひとまずテティスは左右から突っ込んできた二人のナイフを避ける。

 それと同時に両者の頭を掴み、今度は一切の手加減をせずに交差方気味に掴んだ頭同士を叩き付ける。

 

「……おいおい、嘘だろ?」

 

 今度は少し力を強くしたのか、先程よりも鈍くそれでいながら痛々しい音が工場内に響く。

 それほどの力に耐えきれるはずも無く、男二人は悶絶する余裕すら無くしたまま気絶してしまった……

 

「ふーん、乙女をいじめるのは得意なくせに毛色が変わっただけの存在を相手取るのは無理なんだ?」

 

 背後に回ったはいいが、結局最後の一人となってしまった男はテティスに見られたとたん、一歩後ずさってしまった。

 

「ま、せっかくちょうど良さそうな相手を見つけられたんだ。 無理矢理にでも実験に付き合ってもらうよ」

 

 テティスの言葉を一瞬で理解できてしまった男はパニックになり、自分だけでも助かろうと背を向けて逃げ出す。

 

「『フリージング・ドラゴン』」

 

 ジャベリンを振るうのと同時に龍のごとくたうつ氷が形成され、逃げ出した男を徐々に追い詰めて行く。

 追尾性が高い為に一般人である男には回避・迎撃は不可能。 防御に至っては論外の為に、氷の龍に噛みつかれた男は一瞬で凍らされてしまった。

 皮肉なことに逃げ惑っていた男の醜悪さに反して、男を閉じ込めている氷は薄暗い廃棄工場の中でも微かに、それでいながらわずかな光の中で美しく輝いていた……

 

「弱いなぁ、こんな簡単にやられるなんて…… やっぱりあのオバサン(特売の鬼)達や店長さんが異常なだけか……」

『あの人間?……達が異常だって言うのは認めるけど、あの男共はまだ死んでないからね!!』

 

 勝手に男達を死んだ事にしようとしているテティスだが、実際に死者は一人も出してはいない。

 モデルLの絶妙な力加減のおかげでギリギリの所で死なずに済んでいるのである。

 因みに最後の氷漬けにされた男の方は精神だけは生きている状態であり、肉体の感覚が無いというだけで今の現状だけは把握できている。

 最初に氷球を叩き付けられた男も若干痛みが引いて来たようで、壁伝いに立ち上がってこようとしている位だ。

 

「ほいっと」

「あべしっ!!」

 

 だが、男を逃すつもりもないテティスは先程ぶつけた物よりも小さい氷球を形成し、男に蹴り飛ばす。

 先程とほとんど変わらない速さで腰に当てられた男は”グキッ”という嫌な音と共に悲鳴を上げながら倒れ、腰を抑えながら悶絶していた。

 この様子だと腰の骨をやられており、数年の間は入院生活を送る羽目になるだろう……

 

「全ク、オ前ノチカラヲ感ジタカラ来テミタガ、一体コイツハドウイウ事ダ?」

「やべっ、モデルP……」

 

 なまじ派手に暴れてしまった事でシャルナクに気付かれた様で、とっさに名前を出さないようにしながらも大慌てで逃げようとするテティス。シャルナクもロックマンに変身している事を忘れたまま……

 

「逃ガス訳ナイダロ」

 

 しかし、先に回り込まれてしまった!

 シャルナクが同じようにロックマンに変身している以上、スピードは圧倒的にあちらの方が上だという事をテティスは今になって思い出す。

 

「あ、あの……」

「ナンダ?」

 

 シャルナクが視線を向けた先には先程から放置されている女性。 梱包用の強力なガムテープで縛られていることに気が付いたシャルナクは現状を把握し、右手に作りだした苦無を持って一瞬でテープを切断した。

 その間にテティスは男たちの服を全部強奪しながら中身をチェックし、その中から適当なスマホを取り出して女性に渡す。

 

「取り敢えずコレで”ケイサツ”とやらに電話しなよ。 あらかたの事は対処してくれるんでしょ?

 ボクらはこの服をその辺で燃やしてから逃げるから、適当に誤魔化しといて」

 

 氷漬けにまでしておきながらどう誤魔化せと言うのは無茶としか言いようがないが、女性は素直に従う事にしたようで、頭をコクンとうなづき、パスワード画面を無視して緊急コールで警察に電話を始めた。

 

「ソレデ? コノ男ドモハドウスル? 放置デイイノカ? 俺トシテハ”ヤリタイ”トコロダガ」

「どういう意味で言ってるのかは分からないけどどっちにしてもやめてくれないかな。 殺さないように力加減するのが寧ろ大変だったんだ」

『力加減したのは”私”なんだけど?』

「チッ……」

 

 舌打ちしながら先程テティスが強奪した衣服から財布など(身分証明になるものを除く)を取り出して、男たちの衣服をドラム缶に詰めるシャルナク。

 近くで見つけた燃料を適当に入れ、ライターに火をつけてそのまま投げ入れた。

 

「あ、あの……」

「……ナンダ?」

「お名前を聞かせて貰ってもいいかしら?」

 

 名前を聞こうとする理由が分からずに若干困惑している二人。

 どうやら他意はないようだが……

 

「ボクは…… ”ロックマン・モデルL”」

「……”ロックマン・モデルP”」

「あ、あの……それ絶対に本名じゃな…… ま、待ってー!!」

 

 結局適当な偽名を名乗った二人は瞬間移動さながらの速さでその場から逃げ出した。

 余計な問答で警察に見つかるという事態を避けたかったのである。

 

「……取り敢えず、どう説明するか考えましょう」

「お姉さん、大丈夫?」

 

 ぴょんと跳んで現れて来たのは少し離れた場所で変身を解いた後に様子を見に来たテティスである。

 シャルナクは「取リ敢エズチカラヲ悪用シタ訳デハ無イ様だ。 ……メンドウゴトハ嫌イダカラ先ニ帰ル」と言って逃げ帰ってしまった。

 

「ええ、少し前にコスプレをしてた青服の男の子に助けて貰ったから……」

「そっ、なら良かった。 所でその青い服の奴って何処に行ったのかな?」

『それテティスの事でしょうが! 堂々とウソつくんじゃないわよ!!』

「なにか慌ててどこかに行っちゃったわ。 警察が怖かったのかしら?」

「さあ? 面倒臭そうな質問攻めが嫌だっただけじゃないの? なんかサイレンが聞こえて来たし、警察が来たんじゃないかな?」

 

 

 倉庫内に突入してきた警官達は中の惨状に驚いていた。 少なくとも通報にあった情報と違って加害者であるはずの男4人は何者かによって痛めつけられ、中には何をどうやったらこうなるのか、氷の中に閉じ込められている人物までいる光景など一瞬で理解など出来る筈もない……

 最終的に男達をフルボッコにした少年の事を誤魔化しながら説明する事は出来た女性だったが、あれだけの事があったからか、かなり疲れ切っている。

 

 

「取り敢えず、ここで何が起こったのかは分かりました。 お二人とも正式な調書を取った後でこちらの方で家に送らせてもらいます」

 

 二人はそのままパトカーに乗せられて、うんざりするほどした同じ説明をもう一度だけした後、パトカーに乗せられたまま各自宅へと送迎された。

 

「ユキノちゃんも気を付けてね!」

「テティス君も風邪ひかないようにしてね」

「そこまで子供じゃないやーい!」

 

 明久達と暮らしているマンションで降ろしてもらい、刑事の護衛(テティスは要らないと言ったが聞き入れてもらえなかった……)が付いてきて自室の玄関にて待ち構えている明久に捕まって家の中へと引き摺られて行った……

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

 

「わ……私のレク〇スがあああああああ!!」

 

 先程までテティス達がいた廃工場。 そこで強奪された車の持ち主である人物が絶叫の叫び声をあげていた。

 

「あ、こちらの車は貴方のものでしたか。 いやー災難でしたね。 いきなり車を強奪された上に壊されるなんて思ってもいなかったでしょう」

 

 現場に残って調査をしていた刑事が言った通り、彼の眼前には大穴を開けられて破壊された車があった。

 車体は完全にへこんでおり、廃車にされることだけは間違いないだろう……

 

「あそこまで壊されてしまったら廃車にするしかないでしょう。 後は保険会社にでも連絡して対応してもらって下さい」

 

 「保険には入ってるんでしょ?」と刑事が言いながら、車の破損状況の詳細が書かれた紙と記念にとでも言わんばかりに車のハンドルを渡す。 その一方で眼前でトレーラーに回収されて運ばれていく車。

 

「…………そんな」

 

 男はポカンとした顔で力なく膝をついて崩れ去る事しか出来ずにいた……

 

 

 ???side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………って事があったのさ」

「お前はどこのヒーロー気取りだよ…… って、実際に未来世界の英雄の力を持ってたか」

 

 そう言って頭を抱えた雄二がツッコミを入れている。

 同時にテティスが霧島の事で協力的な理由も分かってしまった。 あらかた、天然ボケである母親が適当な事を言いだしたのだろう……

 また、悩みの種が増えた雄二であった……

 

「でもテティス君とスーパーで会う様になってからはきちんと買い物が出来る様になったのよ?」

「それ以前にケーキを作る為と言ってホームセンターに行くのは違うと思うよ? あれから数日後にユキノちゃん塩化アンモニウムと硝酸ナトリウム買って来ようとしていたよね」

「「『なんでケーキを作るのに化学薬品をいくつも購入しようとしたんですか(んだよ)!?』」」

 

 あまりにも危険な組み合わせに皆悲鳴のような叫び声でツッコミを入れてしまう。

 

「雄二達のお仕事の邪魔をしたらまずいし、そろそろ他の所も見物に行こうかしら?」

「おう、おふくろも学園祭楽しんでってくれ」

「ユキノちゃん、ボクも付いて行こうか? 案内できる人がいた方が迷わずにいろんなところに行けるでしょ?」「あら、頼もしいガイドさんね。 せっかくだしお願いしてもいいかしら?」

 

 そして二人はそのままFクラスを出て、何処かに行ってしまう。

 一応、テティスは雄二に「いろんな所に案内しながらさっきまで流れてた噂がどうなっているか確認してくる」と言ってから出て行っている為、雄二も特に何も言わずに了承している。

 

 

 

 

 

 

「さて、おふくろも出て行ったことだし…… ってプロメテの奴まだ帰って来ねぇのか?」

「アトラスが様子を見に行っておるのじゃが……」

「……雄二、ストリップショーなんてダメ」

 

 いきなり狂ったような眼でFクラスに突入してきた霧島。

 その手には謎のバッグとスタンガンを持ち込んでおり、雄二に目掛けて躊躇なくスタンガンを叩き込む。

 

「ちょっ、翔子何トチ狂っ…アバババババ!!!」

 

 いきなりの電撃になす術も無く気絶してしまう雄二。

 「……夫の間違いを正すのは妻の務め」と言った霧島は彼を連れてどこかへと行ってしまう。

 

「ヒイイイイイイデエエエエエエヨオオオオオオシイイイイイイイイ!!」

「あ、姉上!?」

『秀吉、今は逃げろ! 今の優子はイレギュラー並みに狂って……』

 

 続いて突入してきたのは二丁拳銃を構えている優子である。

 モデルAが秀吉に逃げるように促そうとしているが、残念な事に秀吉の方に声は全く届いていない。

 

「アンタ、その裾の短いチャイナドレスは一体どういうつもり? アンタが余計なことをすると私もそういう目で見られるからやめろって」 

「はっはっは、何を言っておるのじゃ。 姉上は家じゃと殆ど下着姿で生活しておるではないか」

『数日前まで護衛兼ねて一緒にいたけど、その時にだらしないからやめろって言っても聞いてくれな……』

「モデルA? バラバラに解体されたくはないわよね?」

『オイ! 怖い事さらりと言うなって! オイラに取ってそれシャレにならないんだぞ!?』

「モデルAが何か言っておったのか姉上? っと、今更体裁をとりつくろわんでも……」

 

 秀吉の言葉に何を思ったのか、いきなり彼の手首を掴み、裏の厨房となっているエリアまで引っ張って行ってしまう。

 

「あ、姉上っ! ちがっ!その関節はそっちは曲がらなっ…………!!」

『ちょっ! 何弾倉にフルリロードしてるんだよ! こんな所でぶっぱなしたら警察沙汰じゃ済まな……』

「あら? せっかくだし、秀吉のコピーデータをもっと念入りに収集しておきたかったところなのよね~? コピーショットをあと何発か打ち込んでおきましょうかしら?」

『いくら殆ど威力の無いコピーショットでも短期間に何十発も撃ったら秀吉のメンタルが持たな……ちょっ!ほんとにあぶなっ……』

 

 厨房から聞こえる話から察して体の関節の一部を抑えた上で秀吉のデータを収集しているようである。

 モデルAの声から察するにかなり危険な方法のようだ。

 

「あ、あの娘一体何やってるのよ!」

「エール、流石にあれは止めないと秀吉が危ないんじゃないのか!?」

『行こうエール。 今すぐに彼女を止めないと!』

「ボクも協力する。 ボクも相手ならモデルAの方があまり本気は出さないと思うし……」

 

 エールとグレイはそれぞれモデルXと愛銃を片手に先程優子が入って行った厨房に突入していく。

 中では「愚弟への教育」がどうこうなどと大喧嘩に発展しているようだ。

 それから一分後に話し合いは決裂したようで、ロックマンとなった両者と数秒遅れでグレイが出て来た。

 扉などを破壊しなかっただけましの様にも思えたが、少し離れた所で銃撃戦に発展している為か、大慌てで逃げ出している人物が続出している。

 

「この状況、大丈夫かのう……」

「……非常にマズイ。 ……護衛になる人間が一人も居ない」

 

 1.明久はパンドラと試合中。 シャルナクが念のために見張り

 2.雄二は霧島に捕まって行方不明。

 3.アトラスはプロメテが返ってこない為に捜索中

 4.テティスは坂本母の案内

 5.エールとグレイはキレた木下優子と銃撃戦

 

 このタイミングで何かしらの事件を起こされたらなす術がない。

 

「どうするのかしら? 坂本までいなくなっちゃたし」

「とにかく私達だけでもお客を取り戻さないといけないですね」

「葉月もいっぱいお手伝いするですっ」

 

 女子達はひとまず自分達だけでも動いて少しずつ客を取り戻すつもりのようである。

 この調子で大丈夫なのだろうかと秀吉が頭を抱えたその時だった。

 

「「「ふん!」」」

 

 いきなり謎のチンピラ集団がFクラスに突撃してきた。

 その数は約40人と言った所で、明久達の内戦闘に長けた人物が誰か一人でもいればどうにか撃退できたかもしれなかった……

 だが、その場に残っている戦力ではなかなか事が上手く運ばず、ある程度対抗することで15人位は倒せたが、いかんせん多勢に無勢。

 

「お、お姉ちゃん……」

「アンタ達何するのよ! 葉月を離しなさい!!」

 

 葉月を人質に取られ、全員動けなくなってしまう。

 

「お姉ちゃん~だってさ! かっわいぃーッ!」

 

 吐き気すら覚える下種な発言に怒りを覚えるが、彼らでは人質がいる現状では全く手が出せない。

 FFF団の皆も倒せなかった残りのチンピラに人質をちらつかされながら一方的にリンチに会ってしまっている。

 

「ムッツリーニ、お前だけでも窓から出て、明久達にこの危機を伝えろ」

「……須川、何言って」

「ムッツリーニなら明久達が何処にいるかすぐに分かるだろ? さっさと助けを呼ぶんだ!」

 

 須川のとっさの判断で窓から飛ばされる土屋。 普通なら死んでてもおかしくはないが、うまく着地してその場から逃げ出せた彼は、大急ぎで明久を探しに向かう……

 

 

「取り敢えず女共は全員こっちで人質になっていてもらうぜ」

「お前ら全員に動けなくなっていてもらえれば結構いい金になるんでな」

 

 結局、人質に取られてしまった女子の事で動けずにリンチに会ったFFF団のメンバーは全滅。

 秀吉と女子達はそのままどこかに連れていかれてしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




しばらく前からニコニコでの東方projectの幻想入りシリーズにハマっていました。
ロックマンシリーズのキャラが幻想入りした作品とバカテスの幻想入り作品が特に面白くて爆笑していた記憶があります。
キャラの崩壊っぷりがひどい作品も多かったですけど…………

最近はモンハンクロスの体験版もやっていました。
スラッシュアックスのストライカースタイルが爽快感があって楽しかったですね。
ナルガ7分討伐で終われたのはかなり気分が良いです。
上には上がいましたけどwww

次回から本編を再開したいと思います。
感想待ってまーす!!


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第9話

クリスマスも正月も大忙し。

おかげでバカテストも思いつかなかったのぜ……
しばらくバカテストはお休みしたいと思います。




「なんとか勝てたけど、なんだかすっきりしないなぁ~」

「吉井のようなまともな神経ならそれでいいと思う…… むしろそれで喜んだり何も感じなくなったりして来たらそれこそまさしく異常……」

「ナラ俺ハ異常カ? 卑怯ナ手デ勝ッテモスカットスルンダガ?」

「うん、少なくとも周りは異常だって言って聞かないだろうね」

「そう言えば姫路さん達はもう教室にいるのかな?」

「まだ確認していないけど、あの子達も勝ち進んでいるからすぐに戻っているはず……」

 

 

 

 普通に会話しているように聞こえるが、実はこの会話、「明久とシャルナクがコンビを組んでパンドラと戦いながら」しているのである。

 恐ろしく器用な事をしながら教室に戻ろうとしている時だった……

 

 

「……明久、大変だ」

 

 先程から探していたのだろうか? 汗だくになっている土屋が明久の元に駆け寄って来た。

 

「どうしたの、ムッツリーニ?」

「何かあった……?」

「…………ウエイトレスが誘拐された!!」

 

 碌に戦う事が無いまま3回戦の突破や異常なまでのクレーマー達からの営業妨害、挙句の果てには誘拐事件など、予想外すぎる展開が続いていた明久はついに事態の把握が仕切れなくなってしまい、とうとう頭が沸騰しかけてしまう。

 

「とにかく、一度教室に連れてって……」

 

 パンドラの指示で一度教室まで戻る事にした4人。

 教室内に入ると、そこは酷いありさまだった……

 

「・・・・・・・・・・・・」

「別にアタシは悪くないもん……」

『いい加減認めろよな~。 騒ぎを起こさずに大人しくしていればこんなことにはならなかったかもしれねーんだから』

 

「まあ、あそこで銃撃戦やって気が付かなかったわたしも悪いから罰事態は大人しく受けるけど……」

『今、この緊急事態の中で罰を受けている時間は無いんじゃないかな……』

 

「なぁ、なんでオレまで正座させられてんだ? そりゃあ、食材を取りに行くだけでもたついたのは悪かったけどよ……」

「うるさい、貴様はなぜ食材を持って来るだけであそこまで手間取るんだ?」

「つーかオレ、今日編入したばっかだぜ?」

「知るか!」

 

1.荒れ果てた教室

2.それぞれ、ござの上に正座させられた上に首に各自の罪状をまとめ上げられた紙を下げさせられて説教を食らわされている霧島・優子・プロメテ・エール・グレイ

3.すでにボロボロでテティスによって離れの保健所に運ばれて(引きずられて)いるFFF団

 

「そんな事より姫路さん達は大丈夫なの!? どこに連れていかれたの!? 相手はどんな連中!?」

「落ち着け明久。 これは予想の範疇だ」

「え? そうなの?」

「ああ。 もう一度俺達に直接何かを仕掛けて来るか、あるいはまた喫茶店の方にちょっかいを出してくるか。 どちらかの方で妨害工作を仕掛けて来ることは予想できたからな」

「予想出来テイタノカ?」

「引っ掛かる事が随所にあったからな」

 

 テティス曰く、喫茶店での仕事をしている一方でなにか考え事をしていたとの事だったが、この違和感について考えていたのだろう。

 

「…………行き先は分かる」

「何それ? 普段使っているスマホと違うみたいだけど?」

「…………GPS追跡と盗聴器の受信アプリが入っている方。 通話は出来ないようにしてある」

「OK、敢えて何で持っているのかは聞かないよ」

 

 友人が犯罪者なんてシャレにならないと思った明久は何も見なかったことにして話を続ける。

 

「さて、居場所が分かるなら簡単だ。 かる~くお姫様たちを助けに行くとしましょうか、王子様」

「? 何が言いたいのかは分からないけど、今回は雄二とムッツリーニに感謝しておくよ。 姫路さん達に何かあったら正直、大会どころじゃなくなっちゃうからね」

「寧ろそれが狙い…… アナタ達みたいな正義バカが相手ならわたしも同じような手を打つ……」

「まっ、オレらだったらそれに加えてその人質もモデルVに取り込んで相手絶望させてやるけど……ぶべらっ!?」

「お前のゲストークに付き合っていられるほど暇じゃない!」

 

 あまりにも最低な事を言いだしたプロメテにアトラスが鉄拳制裁を加える。

 ただの人間だったらすでに病院送りの威力である。

 

「兎に角、まずはあいつ等を助け出そう。 ムッツリーニ、シャルナクとタイミングを見て二人で姫路達を助けてくれ」

「…………分かった」

「リョウカイ…… 誘拐シタ奴ラハ?」

「助け出した後は好きにしろ。 ……好きにな」

 

 最低な笑顔で話を進めて行く二人。 誘拐犯達が流石に可愛そうになって来た明久だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、明久達は誘拐犯達が来たと思われる複合型エンターテインメント施設に付いていた。

 そこから少し離れた所で今後の行動を話し合っている所である。

 

「それで、なんでキサマ等はともかくアタシも一緒に来なくちゃいけないんだ?」

「あんたも一応クラスメイトなんでしょう? それに坂本君がそれなりに考えて連れてきているんだから文句言わないの」

『『絶対に全員病院送りにしたくてこれだけの過剰戦力を集めたな……』』

 

 因みに今この場に入るメンバーは、明久・雄二・土屋・アトラス・テティス・シャルナク・エール・パンドラの8名である。

 人数が多いとはいえ、烏合の衆でしかないヤンキー軍団に大国一つを簡単に制圧できる戦力を惜しみなく使う雄二もなかなかに外道であると、ライブメタル達もこれから潰されるヤンキー軍団の方に同情してしまう。

 

「それで、今中の方はどうなってる?」

「……今、この施設にある隠しカメラを総動員している。 ……見つけた、姫路達”5人”はカラオケルームにいる」

「は? 5人?」

「確カ人質ハ姫路・島田・島田妹・秀吉ノ”4人”ト言ウ話ダッタダロ?」

「……一人増えてる」

「ねぇ、それって誰!? 一体誰が巻き添えになったんだ!?」

「落ち着け明久! で、誰が巻き添えになってんだ?」

 

 明久に揺さぶられてせき込んでいた土屋は、一度息を整えてから気まずそうに答える。

 

 

 

 

 

「…………2年Dクラスの、”清水美春”だ」

 

「「「…………いやいやいやいやいや!! なんであいつ(あの娘)が巻き添え喰らってるの!?」」」

「……待て、音声が拾えた。 ……今流す」

 

 土屋が言うには複数の部屋に監禁されているそうである。

 それぞれの盗聴器を個別のスピーカーに土屋が接続させ、その音声を二組に分かれながら確認する……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 another story 清水side

 

 

 私、清水美春は正直困惑しています。

 クラスの店の都合で仕方なく戻っていた時の事でした……

 

 

 

「なっ、お姉さま!?」

 

 仕事をサボって抜け出してきたその先で見た光景。 それは何十と言う汚い豚どもがお姉さま達を人質に一方的にFクラスの家畜共をリンチにしている光景でした。

 

 

「ちょっ! この豚ども! お姉さまを離しなさい!!」

 

 すぐさま美春はお姉さま達を助け出すためにヘリオスの鈍牛に返すのを忘れていたスタンロッドで攻撃を仕掛けました。

 5・6人程叩きのめして(電流で大火傷させて)後もう少しでお姉さま達を助け出せる……

 そう思い込んでいた美春がバカでした……

 

「このガキ! よくもヒデを!!」

 

 なっ! この家畜、美春の前髪を掴んで!?

 

「美春っ!?」

 

 い、一体何が…… この吐き気……まさか胃に当たるように膝蹴りを……

 ま、マズいですわね…… 何だ……か、目の前がチラついて……

 

「美春!!」

「清水さん!?」

 

 ああ……お姉さま、申し訳ありません…… どうやら美春はこれまでの様ですね……

 あれ? あの豚はすがわ……だったでしょうか? ……”ムッツリーニはまだ来ないのか”……と言っているのでしょうか?

 ああ、あの影の薄い…… この状況で誰かを呼んで来てくれるというのであればそれはきっとあの赤髪ゴリラかでなければ吉井の豚野郎でしょう……

 悔しいですが、今はあの男共に期待するしかありませんね。

 お願いします…… 美春は最悪どうなってもかまいません…… でも一生分のお願いが今ここで使えるのならお姉さま達だけでも助け……

 

 another story 清水side end

 

 

 1室目……

 ここの音声は明久・土屋・テティス・パンドラの4人が確認している。

 

『離しなさい!! この豚野郎ども! ぶっ殺してやりますわ!!』

『ダメです! 怖いお姉ちゃん!』

『妹様! 後ろに隠れていなさいとあれほど……』

 

『うるせぇんだよこのチビ共! おい、確か口ふさぐギャグボールあったろ? ソレ持って来い!!』

『ごめーんそれこの仕事の前に別の女に使ったっきり回収してねー(笑)』

『おいなんだよ(笑)って! 自分の頭小突きながら”ペ〇ちゃん”みてーな顔しても誤魔化されねーぞ!!』

『ちゃんとこういうのは備えとけって言ってんだろ。 この前もおんなじこと繰り返しやがって。 いい加減にしねーとぶち殺すぞ!!』

『『い~やぁぁぁぁん♡』』

『むしろ喜んでんじゃねぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!』

 

 

 なぜだろうか? ここだけ聞けば今の所は大丈夫なようにも思える……

 

 

「アキヒサ…………」

「取り敢えず、ここには美春さんと葉月ちゃんが監禁されてるって事だけは分かったよ……」

「監禁しているチームの部下が変態だって事も…… わたしも久しぶりに背筋が凍った……」

 

 あの歴戦も猛者の一人と言っても過言ではないパンドラでさえ背筋が凍る程の変態性に戦慄を覚える明久達……

 

『ココは気持ち悪い変態しかいないって事と多少の時間の余裕がありそうだって事だけは分かったんだから坂本君達の様子を見に行きましょう』

「それもそうだね……ねぇムッツリーニ……この音声、どの部屋から出てるのか調べられないの?」

「……そこまでの事は内部の情報が無いからムリ」

「そうか…… ねぇ雄二どうしよ…… って、どうしたの?」

 

 

 隣では雄二・アトラス・シャルナク・エールの4人がもう一つの部屋の音声をチェックしていただが、4人の表情は恐ろしい程に暗い……

 いや、シャルナクだけはとてつもない激情と殺気を強引に抑えているかのようなちょっと気が強い程度の人間では即座に気絶しそうな目をしている。

 

「アレハ気持チ悪スギル……」

「アタシも流石にアレは吐き気を催すほどに気持ち悪いと思ったよ」

「これ、盗聴に気が付いていて演技しているっていう訳じゃないわよね?」

「少なくとも秀吉のあの悲鳴を察すると演技だとは思えねえぞ? あいつはこういう下手な演技なんて一瞬で見破っちまうからな……」

 

 吐き気すら催すほどの気持ち悪い話とは一体何だったのだろうか……

 雄二がどうにか倒れてもいいと言う覚悟とささやかな勇気を絞り出して彼らが聞いた情報を明久達に伝える。

 

 

 

 2室目……

 

 

 

『さてどうする? 確か、吉井って奴とパンドラって言ったか? そいつら、この人質を盾にして呼び出すか?』

『まて、パンドラって女は知らねえが、吉井って奴は最近ヤバイらしいぞ? 日本刀やら大鎌やらで武装してこの市内を徘徊している奴らを相手に素手で一方的に叩きのめしているって話らしいぞ?』

『おいおい、そんな事できる奴だなんて聞いてねぇぞ…… 良く知ってたなお前?』

『おれあの悪鬼羅刹って奴の弱点を探ってたんだが、その時にたまたま聞いたんだよ。 『吉井の野郎、滅茶苦茶やりやがるな』って呟いていたのを……』

『マジかよ…… そんなヤベエ奴と正面立って向き合える自信ねえぞ?』

『気持ちも分かるがそうもいかねぇだろ? 前金で何十万も貰っている以上は”その二人を動けなくする”って言う依頼を遂行しないといけねーんだから』

 

 

 

「……ここまでは考えられる範疇だったんだ。 ……ここまでは」

「……この後何があった?」

 

 土屋の言葉の後、一度深呼吸をしてから雄二はその続きの録音されていた音声を再生させる。

 

 

『おい、そう言えばトキの奴はどこに行ったんだ?』

『ああ、あいつはあの爺や言葉の女の所にいるぜ? さっきから何をやって……』

 

 ここで一度全員の声が途切れる。

 恐らくそこで振り向いた先の光景を見て絶句していたのだろうが……

 

『なぁ、どうだ?(ハァ…) いいだろ?(ハァ…ハァ…) かわい娘ちゃんの声が聞きたいなぁ~(ハァ…ハァ…ハァ…)』

『『『『kjれいおhj;ぁksdj;fkljぎおらえ;sdjふぉklghらい;おsfじゃsdlる;いdslgdfk;あ(声にならない悲鳴)』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」

 

 その汚い音声は明らかに秀吉が嬲られているとしか思えない無いようだった。

 先程から姫路・島田姉の声が聞こえないのはそんな気持ち悪い光景を直接見せられて精神的に逝ってしまっているからなのだろう……

 あまりの気持ち悪さに隠密行動中である事を忘れて明久・テティス・パンドラは悲鳴を上げてしまう。

 土屋はどうにか悲鳴そのものをあげずには済んだものの、かなり気分が悪くなっているようで、ポリ袋の中にこれまでに食べた物をすべてぶちまけてしまっている。

 

「どうするのさ雄二! これ、一刻も早く助けないと秀吉の貞操が……」

「ああ、分かってる! だから今アトラスとシャルナクが先に突入して内部を混乱させる手はずに変更している! その隙にムッツリーニと明久で救助に向かえ!」

「僕とムッツリーニで!? 他の皆は!?」

「残りの俺らは全員で出入口の封鎖に掛かる。 ネズミ一匹たりとも逃さねえから思いっきり大暴れして来い!」

「分かった。 …ってムッツリーニはどうするのさ? 一人で大丈夫なの?」

「……大丈夫。 ……オレにはこれがある」

 

 そう言って彼が懐から取り出したのはシャルナクが日常で常備している物と全く同じ仕様の苦無と多数の手裏剣手裏剣にスタンガン。

 さらには叩き付ける事で使用可能になる煙玉が数個程。

 隠密としてこれほど頼もしい武器はなかなかないだろう。

 

「そう言う訳だ明久。 遠慮なくやって来い!」

「「応!!」」

 

 雄二の檄と共に明久はロックマンに変身して、土屋は忍び装束の様な物に早着替えして一瞬で施設内に突入していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 another story アトラス・シャルナクside

 

 

 はっきり言って、彼らはコソコソと動いたりはしない。

 今シャルナクとアトラスはロックマンに変身して堂々と中に入り、エスカレーターを上る。

 そして、その先にあるホテルのフロントに似た受付カウンターに向かう。

 

「オイ、人ヲ探シテイル。 名前ハ姫路・島田・清水・木下ダ。 コノ施設ニ居ル事ハ分カッテル。 具体的ニドノエリアノドノ部屋ヲ使ッテイルノカヲ知リタイ」

「お客様、大変申し訳ございませんが、当店にはお客様の個人情報を守る守秘義務があります。 お部屋の利用状況をお教えするわけにはいかないのです」

 

 アルバイトと思われる青年はあくまでもマニュアル通りに淡々と対応する。

 接客業である事を考えるとこの対応は当然であり、外部に出せと言われたからと言っていちいち個人情報を出すはずもない。 そうでなくてもいきなりコスプレ同然の変な格好をした人物が胸倉を掴みながら聞き出そうという無茶な行いをしているのだからこの対応はむしろ穏便な方ともとれる。

 が、見えない顔の裏でシャルナクとアトラスは小さく笑った。

 

「いや、いいんだ。 どうせ偽名で借りてるかもしれんしな。 念の為に聞いて置きたかっただけだ」

「は、はあ……?」

 

 よく分からない客の態度に肯定すべきか否定すべきか迷いながらもアルバイトはどうにか返答する。

 そこでシャルナクは続けるようにつぶやく。

 

「ソレニ、答エ様ガ答エマイガヤル事ハ変ワラナイカラナ」

「え?」

 

 青年はシャルナクの言葉が理解できずに言葉を発することは出来なかった。

 いや、もしかしたら言葉にする意味すら無かったのかもしれない。

 

 直後。

 

 彼の頬を掠める様に何かが高速で投げ飛ばされていた。

 それは青年の数秒ほど頬元で回転を続けており、そしてシャルナクの手に引き戻されていった。

 それでも青年は理解してしまった。 今投げられたものが何だったのか。 もしこれが自身の顔面に直撃していたらどうなっていたのかを……

 

「ひっ!」

 

 青年は混乱したが、それでも恐怖が限度を超したからか悲鳴を上げる事が出来なかった。

 他の客達も騒がない……いや、”騒げなかった”。 あまりにも異質過ぎる彼らの存在感とこの”異常事態”が行動する事すらも許さなかったのである。

 そして、シャルナクは先程投げた物を今度は複数青年の近くに投げ飛ばす。

 それは彼の周りで回転を続けその周りにたまたまあった電話を一瞬で粉々に砕いてしまう。

 それは彼が先程イメージした事と全く同じであり、これがただの映画などのアクションの撮影シーンとかだったならどれだけよかっただろうかと思い始める。

 

「”まだ”殺すなよ」

「ワカッテイル。 ダガ、モウ少シダケ理解サセタ方ガ良イダロ?」

 

 アトラスの言葉にそう返事したシャルナクは青年に向けていた物の内の一つを簡単に動かす。

 それは別の所に飛んでいき、今度はたまたまフロントに来ていた別の青年が持っていた金属バットを細かく裁断してしまう。

 

「ひっ、ヒイイイイイイイ!!」 

 

 アルバイトの口から情けない悲鳴が上がってしまうが先程の凶悪な切断ディスクのような何かはぴたりと動かない。

 なにか特別な制御機能が備わっているのか、悪魔的な安定感があったのだ。

 先程切断された金属バットの先端を調整するように切断していき切っ先が完全にとがったような状態になるように調整し、その手槍のような物をアルバイトの眉間に突きつける。

 

「おい、勘違いしないように言ってやる。 これは映画やドラマに出て来るような空想の拷問シーンなんかじゃない。 何が何でもキサマから強引にでも情報を聞き出さなくてはならない、なんて言う状況ではない」

 

 ほんの数秒だけ離れていた女の方が戻ってきていた。

 少し離れた所で謎の悲鳴が上がっている。

 ここ以外でも騒ぎはすでに起こっている。 彼らの仲間と思われる人物たちが別ルートで内部に突入し、一方的に蹂躙している可能性が高いのである。

 

「キサマがしゃべってもしゃべらなくてもどっち道答え事態は分かるんだ……」

 

 そして、アトラスはゆっくりと呟くような小声でこう言い放った。

 

「どっちでもいいのに職務に準じてシぬか?」

 

 結局アルバイトの青年は二人から聞いた特徴を元に部屋番号を割り出し、その上、彼女らが監禁されているエリアのマスターキーまで貸してしまった。

 これで見逃してもらえる…… そう思った青年だが、シャルナクが取った行動は彼の予想に反して彼の両手を後ろで縛り上げ、猿轡までしてしまったのである。

 それと同時に青年に数発ほど暴行を加えた後、近くにあった男子トイレの便座室の中に青年を叩き込んだ。

 

 

「「ヨシ(良し)!」」

「良くないよ! 二人共何やってんの!?」

「……騒ぎを大きくし過ぎ」

 

 部屋のマスターキーまで入手する事が出来てお互いの手を叩く二人だが、青年をトイレに監禁する光景をたまたま見ていた明久とムッツリーニが詰め寄って来たのである。

 

「コレデイインダ」

「いや、流石にやり過ぎだって!?」

「……これじゃあ、ただの犯罪者」

 

 絶対に”ただの”犯罪者では済まないと思うが、それを全く意にも介さずアトラスが言葉を続ける。

 

「いや、これだけやっておけば実際に殴り殺されそうになったと言っていい訳が出来るからな。 さすがに表の人間が意味も無く死ねなんて言えるとは思えん……」

「いや、そう言う意図があったとしても理解できないって……」

「それに、ある懸念材料があったからな。 それを含めて考えたらこうした方がいいんだよ」

「なにさ? その懸念材料って?」

「アノ店員ガグルノ可能性ダ」

 

 シャルナクとアトラス曰く、姫路・美波・秀吉はともかく、清水は人によっては中学生にも見えるし、葉月ちゃんに至っては完全に小学生である。

 そんな女の子たちがいかにも不良ですと言わんばかりの男達と共にこんな大規模な遊び場に普通に遊びにやってくるだろうか?

 普通に対応するなら準備に手間取っている振りをして警察を呼ぶか、そこまでいかなくても身分証明が必要になってくるだろう……

 だが、そんな疑問を一切持たずにそのまま普通に中に通している。

 その場合、考えられるのは店員がグルである。 あるいはただの職務怠慢としか言いようがないのである。

 それならば、どちらにせよキツくお灸をすえる意味を込めて、あれほどの脅迫行為を平気でやらかしたのである。

 

「理由は分かったけどさ…… もう少し穏便にできなかったの?」

「なら明久ならどうする気だったんだ?」

「一瞬で殴り飛ばしてカラオケルームのマスターキーを強奪する。 短期決戦で皆を助け出した後で施設を壊しながら脱出する」

「警察ガ来ル方ガ速イ上ニドッチ二転ンデモ犯罪者ジャナイカ!?」

 

 明久のバカな発想に3人は呆れかえってしまう。

 

「…………この施設の地図通りならここがカラオケルーム」

 

 話をしながら向かっている内にいつの間にかカラオケルームに到着したようである。

 

「おい、テメェらなんの用だ?」

「悪いがココは俺らの貸し切りになってんだわ? ガキはお家に帰ってママのおっぱ……」

 

 見張り番らしき二人を瞬殺する明久とアトラス。近くに誰もいない事を確認すると彼らを全裸にし、その服をアトラスの炎で焼き払い、男二人から財布を奪って現金だけを引っこ抜く。

 

「……どさくさに紛れて何をやってる」

「「経験値2を手に入れた! 3万円を手に入れた! 衣服は汚かったので焼きました!!」」

「……」

 

 この滅茶苦茶な発言にもうなにも言うまいと思って考えるのをやめた土屋。

 そうでなくても、彼自身も盗撮写真を使って利益を上げている身なので何も言えないはずなのだが……

 

「最後の確認だ。 今からアタシ等で人質を救出するわけだが、まずは土屋とシャルナクが店員に変装して各部屋に入り込め。 理由は二人に任せる。 それから数秒したらアタシが姫路達のいる部屋に……」

「僕が美春さんと葉月ちゃんがいる部屋に突入だね?」

「ああ、流石に馬鹿な頭でもきちんと入っているようだな」

「いくら何でもきちんと覚えてるよっ!!」

「……どうにかここの警備システムをクラッキングした。 ……これで、暴行事件があっても、物が壊されても、殺人が起こっても”異常は無かった”」

 

 土屋がいつの間にか施設の警備システムに適当なクラッキングを掛けていたようである。

 かなり悪役色に染まっているが、どうやらやるからには腹をくくったようである。

 

『おい、元々坂本の指示では明久と土屋が入る手はずになっていなかったか?』

『アトラスがその辺は調整してやがったぜ? あの赤髪ゴリラ、敵の気持ち悪さのせいで結構冷静さ欠いていたってアトラスが小声で愚痴ってやがったからな』

『『ああ、そう言う事……』』

 

 アトラスの手によって勝手に編成が変わっている事でライブメタル達が雑談感覚で話している。

 雄二の指示と若干違っている編成になっている理由も説明が付く。

 

「それじゃあ行くぞ?」

『『『任務(ミッション)、監禁された人質を無傷で救い出せ!! ミッション……』』』

「「「スタート!!」」」

 

 円陣を組み、各自散開する。

 シャルナクと土屋は潜入の為の準備に。

 明久とアトラスは突撃のチャンスをうかがう為の行動に…… 

 

 

 ここからが本番である……

 

 

 

 

 

 

 一方、雄二達の方はと言うと……

 

「で? ここまでやる必要ってあったのかしら?」

 

 

 雄二・テティスはエールからゲンコツを、パンドラはダブルチャージショット直撃のお仕置きを食らっていた。

 彼らの後方には窓が全て氷漬けにされたり、出入口が大型の廃棄物などで封鎖された施設であった。

 その向こう側では、パニックになったような声が上がっており、明らかに巻き添えを食らった一般客が閉じ込められている。

 

「正直、やり過ぎたと思ってます……」

「全く、ユウジもバカだなぁ。 さっきまで普通に入っていた出入口が全て氷漬けとか普通の人間は驚くに決まってるじゃないか?」

「そう言うテティスも張り切ってた……」

 

 パンドラがテティスを攻めているが、そのパンドラも瞬間移動を使いながら大量の鉄骨や土嚢などを持ち込んで出入口を封鎖していった為、完全に同罪である。

 

「一般人の言う事だから精々出入口を張って逃げ出してきた不良を叩くだけかと思ったら……」

「「「こいつが悪いんです!!(悪い……)」」」

 

 エールが呆れている中、3人はお互いに責任を押し付け合っている。

 雄二はテティスが悪いと指差し、テティスはパンドラが悪いとジャベリンでチクチクと突き、パンドラは雄二の頬に杖をグリグリと押し付けている。

 

「なるほど、良ーく分かったわ……」

「「エールも分かったでしょ!? 本当に悪いのがどっちなのか!!!」」

「分かってもらえたらそろそろ学園に戻る…… そろそろプロメテがワガママを言い出す……」

 

 適当に言い訳をしてその場から逃げ出そうとする3人。

 だが、エールは手を震わせながら右手のバスターにエネルギーをチャージし続ける。

 

「アンタ達が正真正銘のバカ共だって事がねええええええええ!!」

『エール! その威力は雄二君にはシャレにならな……』

 

 ロックマンモデルXとして溜めに溜め、練りに練った最強のダブルチャージショットを放つエール。

 モデルXの制止も虚しく、チャージショットの照準になった3人は(雄二だけは余波だけでだが……)一度空の彼方へと吹き飛ばされて行ってしまった。

 

「全く、あの子たちは……」

 

 先程放ったダブルチャージショット。 それによってえぐれた地面の下に何か光り輝くものが……

 

「何かしら? その辺の金属の破片だとは思えないけど……」

『これは…… 一体?』

 

 謎の金属片に近づいて回収してみるエール。

 その金属片からは何か禍々しい怨念のようなエネルギーが感じ取れる……

 

「なんだか嫌な感じね…… 取り敢えず、回収しておきましょう。 こんな禍々しい物、置きっぱなしにしておくのも危険そうだしね」

 

 そう言ってエールはその金属片を適当なポーチの中に入れて置く。

 そして雄二達が言葉通りに封鎖した出入口をエール自身のバスターで破壊。

 閉じ込められていた一般客を救出しておくことにした。

 

『フゥ…… 元モデルZXのロックマン…… ずいぶんと弱体化してしまったようだね』

「え? モデルX、何か聞こえなかったかしら?」

『…………エール、すまない。 ボクには何のことか分からない』

「そう、ならいいわ……」

 

 その中に一人だけとてつもない危険人物が混ざっていた事にも気が付かずに……

 

 

 

 

 

 




クリスマスも正月も忙しすぎてまともに書けなかったのぜ……

あけおめもメリクリもサビ残続きで俺はもう……

とか言いつつMHXでは特殊ナルガの防具を完成させている男がここに一人www
はい、友人と一緒にやっているモンハンに最低でもついて行ける程度の装備が欲しくてずっとモンハンばかりやっていました。
繁忙期で忙しかったのも事実ですが、それ以外のわずかな休みの時間もモンハンと他作品の感想書きと睡眠に時間を取られてこの話の作成にほとんど時間をさけなかったのぜ……

しかも教えてもらったブロリーの幻想入りらしきものが見つけきれず、代わりに別の幻想入りにハマる始末……
せっかく教えてもらったのに申し訳ありません。

次の話を投稿するまでに見つけたいですね……




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第10話

流石にホワイトデーまで跨ぐことは無かったのぜ!
今回、どちらが悪役なのかが分からなくなる描写が加速気味ですのでご注意下さい。

バカテスト!

第15問

「少年探偵団」や「怪人二十面相」を世に送り出した日本の小説家の名前を答えなさい。

姫路瑞希の解答
「江戸川乱歩」

教師のコメント
「正解です。さすがですね、姫路さん。 江戸川乱歩は大正から昭和にかけて活躍した推理小説を得意とした小説家で、アメリカの文豪”エドガー・アラン・ボー”の名にちなんだペンネームです。 日本推理作家協会初代理事長としても有名です」


シャルナクの解答
「江戸川乱歩」

教師のコメント
「貴方の名前を見ただけで×を付けようとした先生を許して下さい」


吉井明久・テティスの解答
「犯人はこの中にいる!」

教師のコメント
「先生ではありません」


プロメテの解答
「それはオレだ!」

教師のコメント
「なにをしたのかはしりませんが、もし大きな事件を起こしてしまったのなら一度警察へと足を向けて素直に自首をすると良いですよ?」



「お茶をお持ちしました……」

 

 ムッツリーニが中に入って行く。 どうにかうまい事制服を手にしたみたいだけど……

 

「あーっ、もう! このロールチビ、さっきからいい加減にしろ!?」

 

 なっ、一体何が起こったんだ!

 

「(明久、オレだ)」

「ムッツリーニ!!」

「(早く来た方がいい、清水が何度も"反撃"する為に暴れ出して……相手も我慢が限界を超えて清水が突き飛ばされた。 このままだと本当に大変な事になる)」

 

 ムッツリーニからの進言には申し訳ないけど、既に突入の準備は完了しているんだよね。

美春さんの男嫌いは筋金入りだしね…… 前にナンパ野郎が美春さんに声をかけた時に20秒で地面とナンパ野郎の血の区別が付かなくなるような惨劇が其処では繰り広げられていたからね……

 だから既にロックマンに変身してはいるし、セイバーまで振ったら流石に誘拐犯と美春さんの命の保証は出来ないからさっきの不良が持っていた木刀を拾っておいたし。

 

「『ちょっと失礼しまーす!』」

「「ぶべらっ!!」」

 

 取り敢えず、扉に飛び蹴りをして突入! この時飛んでいった扉に挟まれた二人が圧殺させられたみたい。(死んでないよね?)

 

「おいてめぇ! 一体何者だ!?」

「敵に決まっているだろうが…ってええ!?」

 

 ちょっ! なんで拳銃なんて持ってるの!? 今の僕には全然効かないけど、僕以外の人間に撃ったら流石に危ないって!!

 

「危ない!」 

 

 とにかく、ここは一人殴り飛ばしておこう。 さっき盗聴した時には2・3人ぐらいだと思っていたけど、何があったのか意外と人がいるな……

 

「ムッツリーニ! 葉月ちゃんと美春さんを連れて部屋から出て!」

 

 さっき壊した扉を盾に一度、三人を匿っておこう。

 さっきの銃器の弾が防げたらいいんだけど……

 

「くそっ、こいつまさか、ウチのボスと同じ……」

 

 ボス? どういう事だ?

 それに僕がこいつらのボスと同じって一体・・・?

 

「おい、誰か一人ここを出てボスを呼んで来い! 他はこいつを囲って一斉射撃で仕留めるぞ!!」

「「応っ!」」

 

 行かせるか! ココはまず逃げようとするやつを……

 

「撃てぇぇぇー!」

 

 しまった! 僕が動くよりもこいつらの一斉射撃の方が速い!!

 

 

 って、痛い! イタイイタイイタイ!! ロックマンに変身しても痛い物は痛いんだから!

 RPGっぽく言うなら何千ポイントあるHPの内の数ポイントだけが削れた程度だけど、ダメージを負う事には変わらないんだからね!!

 ……こうなったら!!

 

 

「……流石にウチのボスとは違うよな? あんな規格外がポンポンと出て来るなんてあるはずねぇもんな?」

「そうっすよ…… ビビり過ぎですって……」

「だけど、念には念を入れて置け。 更に追撃を畳みかけて確実にヤれ。 それぐらいやっておかねえと安心できねぇ」

「「押忍っ!」」

「全員装填は終わった…… あ、あれ?って、プギャ!!」 

 

 ふーっ…… 死んだふりも楽じゃないよ……

 ま、そのおかげで油断してくれたから助かったけど。

 油断していた所を全員、木刀が折れるまで滅多切りにしておいたからもう当分立てないだろうね。

 

「キミ達は一体何やっているんですか……」

 

 あれ? なんか、こいつらとは違う感じの奴が来たけど…… もしかしてこいつらが言ってた”ボス”がこの男なのか?

 へぇ…… なんか意外と優男な感じだね。 何気取っているのか、紫っぽい変な色のスーツなんて来ているし。

 凄く長い金髪とかも特徴的だけど、殺気とかも隠しているのか雰囲気もなんだか戦いに特化した人間には見えないや……

 どっちかって言ったらインテリ系の印象が強いかも?

 

「ふふふっ…… なるほど、貴方が”あの男”が言っていた僕のライバル足り得る存在と言う訳ですね」

「ライバル?」

「分かりませんか? つまりこう言う事なんですよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男が手品の様に取り出したのは今まで見た事の無いデザインとカラーリングのライブメタル。

 男は微笑し、そっと前にライブメタルを掲げながら優しい声音で口を開いた……

 

 

 

 ”ロックオン”……と

 

 

 ロックマンに変身したその姿は中世の騎士を彷彿させる姿であった。

 メタリックカラーの鎧に赤紫色の帽子、その帽子と同じ色の禍々しいエネルギーを放つレイピア。

 そのエネルギーから感じる力はまさしく、ロックマンのそれと全く同じ物であった。

 

 

「なっ!アトラス達から聞いていた話と全然違うぞ!? もうライブメタルに空きは無かったはずじゃないのか!?」

「あの男は新しく作った物だとおっしゃっていましたね。 この力を使いこなせばもうつらい思いなんてしなくてもいい。 王となり、誰かに虐げられる事無く幸せに暮らす事が出来ると!!」

 

 あの男? この男は一体誰の事を言っているんだ?

 なるほど、だけどこれなら納得できるよ。 ただ不良なんかじゃ絶対に手に入れられないような拳銃を大量に持っているのも、”烏合の衆”…って言っていたっけ? 何十人もの不良が集まっているのも、この誘拐犯共に皆が誘拐されたのも、主にコイツのせいだ!!

 

「なるほど、結局はアンタをぶちのめせばこの事件も終わるって事なんだよね?」

「さあ? それはどうでしょう?」

 

 なっ、こいつ僕の事をバカにして……『がんばれ! バカなお兄ちゃーん!!』はい、実際にバカだったね……

 

「ふふっ、とても微笑ましい声援ですね?」

「それはどうも!! コンチクショウ!!」

 

 ああもうっ! さっきからこいつ僕の事をバカにして……

 いや、実際バカなんだけどさぁ…… それでもな~んか釈然としないんだよ!?

 

 

 

「ああ、それと……」

「何?」

「こちら側のロックマンは私だけではありませんよ?」

 

 え、もう一人いるの? みんなからの情報が全くアテに出来なくなって来たんだけど?

 

「そ、そんな…… そんな事って」

「どうやら流石に其方にとって厳しい展開の様ですね。 当然の結果でしょう…… 絶大な力を持ったロックマンがこちらには二人もいるのですから。 いくら貴方が私達と同格のロックマンであったとしてもこれは……」

 

 確かに厳しいかもしれないね…… だって……

 

「ですから今回は大人しく諦めて貰いましょうか? 正直、あなたをこちら側に引き入れたい気持ちがあるのですが、今回の依頼の関係上それが出来ないのが残念で仕方が無いのです。 申し訳ありませんが無駄な抵抗はやめて大人しく横になりなさい。 せめてもの情けに一瞬であの世に送って差し上げましょ……」

 

 いや、むしろ厳しいのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……下らない」

「え?」

「僕のレベルがあんたと同程度だってのは否定しないけどさ、僕らの大将がロックマン一人で突入なんてさせると本気で思っているの?」

「……はったりですね。 他のロックマン達は独りよがりな理想を掲げ続けており、その結果全く利害が一致しておらず、協力的な関係になる事などありえないという情報もこちらでは掴んでいるのですよ?」

 

 そう思うなら思い込んでいるといいさ……

 多分そろそろ来るはずなんだけど?

 

「おい、いつまでかかっているんだ? さっさとケリを付けたらどうだ?」

「「……はい?」」

 

 おっ、ちょうどアトラス達が来たね。

 あそこの方が戦力が大きいから自然と速くなると思ったけど、まさかここまで一方的だとは思わなかったね……

 あのロックマンどころか陰で隠れていた皆も唖然としているよ……

 だって仕方がないよね。 アトラスが片手で引き摺っている男も完全にロックマンだし。

 恐らくそれなりに良いマントだったんだろう…… 焼き焦げて完全にボロボロだし、それ以上に額に巻いてある鉢金のような巻物も粉砕されて額からは出血がひどいし、手足もへんな方向にひん曲がったままでピクリとも動かないし……

 あそこまでやったならもう全身余さずにフルボッコだろうね……

 

「ふん、このバカは明久以上の妄言ばかりを吐いたからな。 徹底的に制裁を加えてやっただけさ」

 

 そう言うアトラスの後ろには若干怯え気味の姫路さん達。

 アトラス曰く、こんな事をやったらしい……

 

 

 

 

 

 another story アトラスside

 

  

「シャルナク、一体どうした?」

 

 明久よりも一足先に、アタシはシャルナクが入った部屋へと突入を掛けた……

 だが、そこでは予想外な事態が起こっていた。

 

「ほう? なるほど、貴様らがあの男が言っていたロックマンと言う存在か?」

 

 この男がロックマンと言う言葉を知っていたのに関しても予想外だったが、アタシが一番驚いたのはここからだ……

 

「悪いが、この変態はこっちで叩きのめしておいた。 流石に尻どころか股にまで手を掛けようとしていたからな…… そう言う手の撮影ではないから、指示に逆らう裏切り者として粛清した」

 

 そう言った男が投げたのは先程まで秀吉に言い寄って嬲りたおしていた男である。

 ふん、あらかた人質に対しての過剰な暴力及び凌辱を禁止していたのだろうが……

 

「と、いう訳だ。 オレを自由にしてくれないか?」

「「ハァ?」」

 

 あの時はコイツの言っている事が分からなかったな。

 なぜわざわざ目の前の敵を見逃さないといけないのか?と言う話だろ?

 

「この力をあの男から受け取っていろんなところを見て回ったが、そうしたら糞の様に扱われながらも真面目に働くという事が惨めったらしくなってきてな…… 人間社会から抜けようと思ったんだよ」

 

 この言葉を聞いてアタシは、「ああ、こいつはただの社会の負け犬か……」と思ったね。

 

「この力を使えばまともに生きて行く事が出来ると知ったオレは、まず下らないプライドを押し付けるコイツの人格を封じたよ。 その後はいままでオレの心を壊そうとした下種共への復讐だ。 オレを奴隷扱いした下種共を叩きのめして病院送りにした」

「アタシからしてみればあんたの事情なんてどうでも良いね。 それと今回の誘拐とどう関係するんだ?」

「そして、今度は貧乏への復讐だよ。 あの下種共を束ねていた連中から俺が死ぬまで借りる程度のつもりで全てを持ちだして金に換えてやった。 そして、今回の”仕事”きちんとこなせば数百万もの金を貰えると約束してくれてな……」

 

 コイツのあまりにも低俗な力の使い方にアタシはとことん失望したよ。

 姫路と島田姉も最低だと罵っていたから余程ありえないことを言っているのは間違いないな。

 

「まともな人間として生きたいからと言って人間には過ぎた力を使っておきながら、求めたのは平素凡庸な幸せだけ? アタシからしてみればそこまで弱くて不幸で情けない人間は見た事がないね。 過去の人間と言うのはどうしてこうも回りくどい真似をするんだ?」

「俺は普通に生きたかっただけだ。 だが、他の連中はオレを嵌めて堕落させようとするクズだったのがそもそもの間違いだった。 それだけの事だ」

 

 下らない言い訳と共に男が踵を返してどこかに行こうとしている。

 ランチャーのような物を構えて壁に穴を開けようとしているようだが……

 

「オイ、何処へ行ク気ダ?」

 

 よし、シャルナクがどうにか引き留めたぞ!

 だが、本当にどういうつもりなんだ?

 

「もうオレは人間社会から離れて暮らす。 お前らみたいな奴らと戦ってせっかくの力を失うのはごめんだ」

「尻尾ヲ巻イテ逃ゲルノカ?」

「お前らの情報はある筋から仕入れている。 今のお前らなら無益な殺生はしないそうだな? 秀吉とやらもあの変態から解放された事で緊張が解けてしまって気を失っているだけだ。 オレは特に何もしてはいない」

 

 ふん、誘拐の片棒を担いておきながら偉そうな事を。

 結局の所こいつは自分の嫌な事からそのまま逃げる気だろ?

 

「オレは関係ない奴を傷付けるつもりは無い。 だから正義の味方(ロックマン)と戦おうとする理由も無い」

 

 もういい……大体言いたいことは分かったよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メガトンナックル!」

「十字手裏剣!!」

 

 ようするに、ロックマンとして選ばれておきながら戦いには一切参加せずに逃げ回る気だろ?

 叩き潰す理由としては十分だ……

 

「なっ、オレの話を聞いていたのか!? むやみに争う気は無いって!?」

「ふん、お前のような弱者にこの力は過ぎた物だ。 このライブメタルはアタシらが没収するよ」

「残念ダッタナ。 俺達ハ無益ナ殺生ダッテスルゾ? 無論、正義ノ味方デモナイ」

 

 さっきの不意打ちが効いたみたいだな。

 もう立てずにいるとは予想通りの雑魚だったな。

 

 

 

「「敵ならば躊躇なく叩き潰す只の”世界に対する反逆者(ロックマン)”だよ!」」

 

 ここでさらにアタシはグランドブレイクの連撃を叩き込んでおく。

 ロックマン相手ならこの程度は当然だろ?

 

「ば、バカな! そう言うお前らは普通にチームを組んでるじゃないか! それなのになぜ……」

「勉強不足ダッタナ。 ロックマン同士ノ戦イデハ、チカラヲ持ッタママ逃ゲ回ル事ガ一番ノ大罪ナンダヨ」

「当然だ。 一切戦わずに漁夫の利を下賤な策を取ろうなど認められるはずがないからな」

 

 けっきょくこの男はアトラスのグランドブレイクの連撃で装備はボロボロ。 しかも全身大やけどのおまけ付き。

 これだけの重症だとこいつがこれまでに奪い取った金を全て使いきっても完全には治しきれないだろう。

 取り敢えずコイツのライブメタルは回収して、明久と合流する事にしよう……

 

another story アトラスside end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いう訳だ」

「ありえません…… アナタ達、本当に同格のロックマンなんですか!?」

「それが残念、これが現実だ。 いい加減受け入れろ」

 

 アトラスの気迫に押されてしまったボスと呼ばれた男は尻もちをついて転びながらも後ずさっていく。

 なまじ半端に賢いが故にここ来てようやく気が付いたのだろう……

 中途半端な力を手にしてしまった結果、逆に相手を怒らせて自分の死期を早めてしまったのだろうという事に………

 

「ま、ままま待ってください! 私達……いえ、私だけでも構いません! 彼らが誘拐した少女たちはこれ以上は傷付けずに即この場でお返しします! 慰謝料代わりに依頼主から受け取った前金が数十万程残っています! このライブメタルも合わせてこの場でお渡しします! ですから命だけはお助け下さい!!」

 

 周りの不良連中からの怨嗟の暴言が飛び交うが、この男にとっては最早どうでも良かったのだろう。

 このままでは3対1のリンチが確定してしまう今の彼にとって、大事なのは自分の命だけ…… そんな彼の哀願に対して口を開いたのはアトラスであった。

 

「お前、間違っているぞ?」

「え?」

「このロックマン同士の戦いにおいてライブメタルの適合者として選ばれた以上力を持ったまま逃げる事だけは許されない。 ただの誘拐事件でしかなかったらこれに殴り飛ばすのを追加する程度で許してやれたんだが……

この事情にロックマン同士の戦いの都合も巻き込んでしまったこの瞬間、お前は完全に決着を付けるまで…… つまり負けて消えるまで戦い続けないといけないんだよ」

 

 アトラスの非情にもほどがある発言に完全に傍観者と化してしまっていた人質組も唖然としてしまっている。

 男の方も一縷の望みを抱きながら明久に視線を送る。 明久の方も最終的に自分の決定を待っていると悟って少し考える。

 

「確か、こうだったよね? 『無駄なあがきをやめてそこで大人しく横になれ。 せめてもの情けに苦痛なくあの世に送ってやる』……だっけ?」

 

 

 たどたどしく先程男が言い放った言葉を再確認する明久。

 つまり何が言いたいかと言うと、この瞬間に誘拐犯達全員の完全制裁が決定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無駄な抵抗を続けた誘拐犯達を、二度と喋ったり歩いたり出来ない程度(ギリギリ息は出来ている)に叩きのめした明久達は大急ぎで彼らのライブメタルを回収した。

 

 

「よし、脱出するぞ! ここに居ても仕方が無い」

「明久君達、容赦なさすぎですよ!?」

 

 アトラスの指示の元、大急ぎで部屋から出て行く皆。

 姫路さんの言いたいことも分かるけど、このぐらいはやっておかないと、こういう輩は何をしでかすかが分からないんだ……

 

「こっち、行けそうですわ! はやく行きましょう!!」

 

 美春さんが裏口のような道を見つけ、急いで出て行こうと先走ってしまった……

 って、何先走ってるの!? 全く、シャルナク達も皆の事で大変そうにしているし僕がカバーに入っておかないといけないかな?

 

「お……俺のダチの仇イイイイイ!!」

「なっ!」

 

 しまった! たまたま離れていた残党がいたのか!?

 このままじゃ美春さんが危ない!!

 

「間に合ええええええええ!!」

 

 今アトラス達は10メートル以上も離れている。 このままでは間に合わない。

 誘拐犯の振るったバットが彼女の頭に向かっていく。

 この中で最も速いシャルナクと土屋は清水を除く人質だった皆の介抱に回ってしまって動けない…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明久!(豚野郎!?)」

 

 痛っ!! 背中にすっごい違和感が!? ロックオン(変身)を解いていたら骨折れてたかもしれないじゃないか!!

 

「邪魔すンじゃネェ!! 消エロォォォ!!」

 

 

 誘拐犯の残党が今度は明久を狙って金属バットを再び振り下ろす。

 本気で明久を消そうとする狂気によって完全に狂ってしまっている。

 

「「お前がな(オ前ガナ)!!」」

 

 シャルナクが両足の腱を苦無で切り、体勢をくずした瞬間にアトラスが床に頭を叩き付けて連続で踏みつける。

 シンプルだが、凶悪で見事な連携である。

 

「明久君!!」

「アキ!!」

「バカなお兄ちゃん!!」

 

 事態に気が付いて部屋から出て来た3人が明久に詰め寄る。

 

「全く、ロックマンじゃなかったらアウトだったよ!?」

「「「そりゃあ、何十発も拳銃で撃たれたにも関わらずピンピンしている位だからね!!」」」

「取り敢えず、じゃれ合ってないでだれか手伝え。 正直アタシも姫路と島田姉を運ぶのでようやくなんだが……」

 

 

 今、アトラスはロックマンとしての変身を解いてから、腰が抜けて動けなくなっている姫路と島田を運んでいる。

 ロックマン・モデルFの装備では両手が完全に塞がってしまう為、人を守りながら移動するのは出来ないのだ。

 

 

 

 

「吉井明久、今回ばかりは礼を言わせてもらいますわ。 ”ありがとう……”」

 

 嘘!! あの超男嫌いの美春さんが、寄りにもよって僕にお礼を言うなんて……

 しかも顔を真っ赤にしながら!! これは明日、学校で大事件が起こるかもしれないぞ!?

 

「この豚野郎! 今失礼な事を考えていたでしょう!? お前は美春の家でバイトをしている、美春にとってはいわば”部下”でもあるんですの。 それを相手にあれだけの恩がありながらどうでも良いゴミの様に扱うなんて事をして、それがお母様にばれたらどんな目にあわされるか分かった物ではありませんもの……」

 

 うん…… 美春さんのお母さんって本気で起こったらシャレにならないからね……

 僕も詳しくは分からなかったけど、何日か前に美春さんが清水主任と口げんかをしている様な声が聞こえたと思ったら、「お母様! 美春になにをする気ですか!? お尻にお灸は色々とマズ……イヤアアアアア!!」……とか言ってたもんね。

 あの時の美春さんの悲鳴は今でも思い出すだけでも……

 

「明久君! アトラスさんがさっきから”急げ”って怒っていますよ~?」

 

「ごめん姫路さん! 今行くから~!!」

 

 取り敢えず、さっきからブツブツと何か呟いている美春さんの手を取って皆を追いかけよう。

 これだけの騒ぎを起こしたんだから、もう警察が来てもおかしくない。

 傍から見たらこっちが悪い様に見えるから、これ以上の面倒事には巻き込まれたくない。

 早くここから大急ぎで逃げよう……

 

 




人質以外に善人らしい役回りの奴がいない……
悪のロックマンの根底にあるものは変わっていない的な感じで納めるつもりだったのに……

最近ヤンデレモノにハマっていたのですが、美春ちゃんの愛情をどういう風に書き上げてみようか少し迷っています。
依存型ヤンデレにしてみるか、常識系の普通のカップルにしてしまうか……


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第11話

こんなにも長く待たせてしまいました……

色々とやっていましたが、一番の問題はもうひとつのSSに集中していたというのが大きいですね。
バカと幻想と舌禍の女神もよろしくお願いします!


 どうにか誘拐騒ぎも解決して1日目が終わったFクラスの教室。

 今、ここにいるのは大会に出場している僕とパンドラ、試合には負けてるけど一応プロメテと雄二、プロメテとパンドラの見張りの為にエールさんとグレイ君とテティスを合わせた計7人による貸し切り状態になっている。

 念の為、ヘリオスと木下さんに事情を説明して、人質に取られていた皆を護衛してもらいながら皆の家に送り届けて貰ってる。

 シャルナクとアトラスはどうにかあの誘拐犯達のリーダー格の二人から没収したライブメタルを解析できないかとPCルームのパソコンを勝手に改造して色々と調べて来るそうだ……

 

 

 

「ねぇ雄二?」

「なんだ明久?」

「また霧島さんに叩きのめされたの?」

「翔子はついてきていねぇだろうが……」

 

 だってそう言いたくなるのも仕方がないじゃないか。 頭と右手には包帯が巻かれてて、制服もボロボロ……

 こんな事になるとしたら霧島さんと雄二がいちゃついていたくらいしか思い浮かばないじゃないか……

 

「取り敢えずお前は黙って待ってろ。 そろそろババアが来るはずだからな」

「何でババアがわざわざここに来るの?」

「俺が呼びつけたからだ。 この誘拐の件と言い、一連の妨害は明らかにババアが原因があるはずだからな。 事情を説明させねぇと気が済まん」

『この子達、よくお偉いさんを相手にババア呼ばわりに出来るんだい?』

「全く、この子達には礼儀ってモノが無いのかしら?」

「少なくとも、話すべきことを全く話さないって言うのは十分すぎる位な裏切りだからな。 ババア呼ばわりされても文句は言えねぇだろ?」

 

 え? 話すべき事? 一体何を隠しているって言うのさ?

 

「……やれやれ、せっかくこっちから出向いてやったって言うのに、随分とご挨拶だねぇ、このガキどもが」

 

 雄二の声と同時にババアが教室に入って来た。

 今のババアの目は完全に面倒なクソガキを上から目線で見る人間のそれだった。

 

「……全く、賢い奴だとは思っていたけど、まさかアタシの考えに気が付くとは思わなかったよ」

「初めからおかしいとは思ってたんだ。 あの話だったら何も俺達に頼む必要は無い。 もっと高得点をたたき出せる優勝候補を使えばいいからな」

「あ、そう言えばそうだよね。 優勝者に事情を説明してどうにか譲ってもらえばいいだけだし」

「お前今更そんな事に気が付いたのか? いくら何でもバカ過ぎだろ?」

「黙れ、プロメテ」

 

 ココは我慢だ。 キレて殴りかかっても意味が無い……

 仕返しはロックマンとして戦った時に数十倍にして返してやればいい。

 

「明久の言う通りだ。 わざわざ俺たちや学力が未知数の編入生を擁立するなんて効率が悪すぎる」

「話を受けて来た共闘の手前、おおっぴらにできないとは考えなかったのかい?」

「話を聞いた限りだとボクはそう思ったんだけど?」

「ボウズ、お前は分からなくても仕方ねぇが、このババアは報酬としてテティスが要求した設備の増強を渋りやがったんだ。 教育方針なんてものの前にまず生徒の健康状態や学習意欲の向上が重要なはずだからな。 教育者側、ましてや学園の長が反対するなんてありえない」

「なるほどね。 つまり学園長は吉井君達を大会に出場させるためにわざと設備増強を渋ったという訳か。 なかなかに最低ね」

 

 エールさんが物凄い呆れてるよ。 もし、姫路さんがこの学園に残りたいって言ってなかったらエールが文月学園を潰しているんじゃないかな?

 エールさんって結構正義感が強いみたいだし……

 

「そして決定的なのは明久とパンドラの試合だ。 4回戦で木下姉と翔子のペアと戦うはずだったんだろ?」

「うん、出まかせ言いたい放題言ったらそれに乗って出て行っちゃったけど……」

 

 でも普段の様子から考えたら、木下さんは秀吉が可愛い服を着ているのが気に入らないみたいだし、霧島さんだって雄二の浮気に関しては敏感じゃないか?

 

「いや、翔子は一度やるって決めたことは簡単には投げださないんだ。 もし翔子にもこの話が来ていたら絶対に放りだしたりはしねぇ。 今のこの急造コンビなんかどんな能力があろうが関係なく10秒後にミンチにしてお終いになってるだろ」

 

 いちいち雄二の発言が辛辣なのは僕とパンドラのコンビが勝ち進んでいるのが気に入らないからだろう……

 そうだ! そうだよ! そうに違いない!!

 

「なるほどね。 実際に話はアンタ等にしか持ちだしていないからね」

「他にも学園祭の喫茶店ごときで営業妨害が出たりするなんてありえないし、何より姫路達を誘拐してFFF団をリンチにして病院送りにしやがったのが決定的だった」

「確かに、ただの嫌がらせでここまでするのは正直やり過ぎよね」

 

 エールさんも怒り心頭といった感じだよ……

 正直、モデルXを握力だけでギリギリ言わせているあたりが余計に怖いんだけど……

 

「そうかい、向こうはそこまで手段を選ばなかったか……」

 

 「すまなかったね」 そう言って学園長が急に頭を下げて来た。

 正直、他の連中ならいくら頭を下げられようが簡単に罵倒できるんだけど、このババア、学園長って言うだけならまだしも相当性格が悪いのか基本的に僕ら子供にはかなりキツイ事ばかり言ってくるし……

 でも、立場に胡坐をかかずに年下のボクらに土下座までして頭を下げられるなんて、少なくても学園に関することでは責任感の強い人なのかもしれない。

 

「アンタらの点数と編入生としてのプロフィールを見て問題ないと最初は踏んでいたんだろうけど、順調に勝ち進んで行く所を見て焦ったんだろうね」

「で? ババアの敵かもしれねぇオレらをこのバカ共と組ませてまでやらせようとした事について。 きっちりと説明してもらうぜ?」

「……おかげで色々と計画が狂った」

 

 え?計画? プロメテとパンドラが何を言っているのかが全く分からないんだけど?

 

「ハァ…アタシの無能をさらすような話だからできれば伏せておきたかったんだけどね……」

 

 「だから誰にも公言しないでほしい」 そう念を押した学園長は少しずつ真相を明かしてくれた。

 全く、最初からそうしてくれていたらアトラス達の対処も違っていただろうけどね……

 

「アタシの本当の目的はアンタらがアタシの無理難題相手にどう対処していくかなんてものじゃないのさ。 アタシにはアンタらの設備がどうこうなんてどうでも良いんだよ。 目的は今回の大会で出された賞品の内の一つ」

「それってプロメテとパンドラが噂で聞いていた腕輪ってやつ?」

 

 だって、直接学園のシステムに関係しそうなのってあれだけなんだよね。

 ”解放の指輪”は前のトレジャーハンティング大会以降でも自由に使えるようになってるし。

 

「そうさ。 その腕輪をアンタらに勝ち取ってもらいたかったのさ」

「僕らが”勝ち取る”? 回収してほしいわけじゃなくて?」

「……ただ回収するだけなら私達にまで依頼する必要性は無い」

「そもそも回収なんて極力避けたいだろうしな」

 

 雄二が学園長を揶揄するように話を振る。

 

「本当にアンタは頭が回るねぇ。 そうさね。 できれば回収なんて真似だけはしたくない。 新技術は使ってナンボだからねぇ。 デモンストレーションも無しに回収なんて真似したら新技術の存在自体を疑われることになる」

「その言葉は裏を返せば、最悪なケースとしてソレも考えていると白状しているような物だよね?」

「チビは黙りな。 上に立つと色々とあるんさね」

 

「それで、”白金の腕輪”はアキヒサが手に入れないとダメなの?」

「……欠陥があったのさ」

「…………作品の欠陥は技術屋にとって大恥。 ……それを不当にさらされるのは耐えがたい程の苦痛」

 

 

 パンドラの言葉に苦々しい顔で応える学園長。

 それをさらさないといけないのだから無理もないんだけど……

 

「その欠陥は吉井や坂本みたいなバカなら全く問題ないのか?」

「正確には吉井や坂本のような低得点者でありながら”操作技術が高い”人間であれば暴走は怒らずに済む。 不具合は一定以下のシンクロ率まで下がった場合だからねぇ。 だから他の生徒には頼めなかったのさ」

「なるほどな。 その”シンクロ率”ってのがなんなのか分からないが、とにかくそれは点数と操作技術力の二つが関係しているらしいな」

 

 今度は雄二が苦笑い…… いや、エールさんも反応に困ってるし、グレイ君とテティスに至っては訳が分からずに?マークを頭に浮かべている始末だ……

 

「ようは吉井や坂本、オレやパンドラみたいなアベレージの点数が低くてかつ”優勝する確率が高い”バカを使う方が都合が良かったって事だろ? くだらね……」

「今、何気に僕の事をバカにしなかった?」

「安心しろ、お前ら全員をバカにしてる」

「なんだとプロメテ!!」

「落ち着け明久。 変身して剣ぶん回してる地点で否定できねぇだろ……」

 

 くっ、どうやらほかの全員は大人しくしているみたいだし、これじゃあまるで僕だけがバカみたいじゃないか……

 

「取り敢えず、フィールドを作る段階ならある程度の点数なら耐えられるんだけどねぇ……。 問題はその後の特典を使おうとした時なのさ……」

「「その後の特典?」」

「その内容については後で説明するさね。 身内の恥をさらすみたいだけど、隠してると思われる訳にもいかないからね。 恐らく一連の手引きは教頭の竹原によるものだね。 近接の私立校や、怪しい倉庫やクラブのようなところにも出入りしていたなんて話も聞いたからまず間違いないさね」

「それじゃあこれまでの営業妨害や誘拐事件は……」

「全部竹原っていう悪党の仕業って訳なんだね。 ……ちょっと待ってて、優子姉ちゃんからモデルAを借りて来てそいつを懲らしめに……」

「やめろ、いま襲い掛かった所でボウズがただの強盗犯になるだけだ」

 

 まあ、グレイ君が怒る気持ちも分かるけどさ……

 僕もモデルZと一緒になって計画をやめさせようと思ってたぐらいだし……

 

「あ、でもいざとなったら優勝者に事情を話して回収すれば……」

「それが出来る相手だったら良かったんだけどな…… 決勝戦、だれとぶつかるか見てみろ」

 

 雄二がトーナメント表を取り出して僕に渡した。

 書き込まれたトーナメント表を追っていくと、ある一つのチームにたどり着く。

 

「……常夏コンビだ」

 

 だけど、あの人達はAクラスで協力してくれた二人なんだよ?

 事情を話せば素直に渡してくれそうな気もするんだけど……

 

「どうせ明久の事だから事情を話せば素直に渡してくれるなんて思ってるんだろうが……」

 

 悪かったね! どうせ僕の思考は単純ですよーっだ!!

 

「あいつ等は基本的に自分本位な奴らだぞ? 報酬次第では教頭に付く可能性も十分あり得るんだよ」

「例えばどんな?」

「面倒な受験をしないで済むように推薦状を一筆してやるなんて言われたら確実に教頭に付くだろうな」

 

 もし雄二の言う事が本当ならあの二人は喜々として腕輪の暴走を引き起こす。

 これじゃあ回収なんて成立するはずもない。

 

「悪いが、なにがなんでもアンタらに優勝してもらうしかないんだよ」

 

 学園長の顔もとても堅い。 事態は深刻な所まで来ているようだ……

 

「学園長さん、質問があるのですが……」

「アンタは、前のトレジャーハンティング大会に出てた……」

「ええ、今回の誘拐事件の被害者になった女の子の一人に世話になっているエールと言います。 その腕輪の暴走と言うのは点数が高くなければ暴走する事は無いんですか?」

「フィールドを展開するだけで良いなら暴走の危険はないんだけどねぇ…… その後の特典は召喚獣の操作技術につながる”シンクロ率”ってのが高くないと点数に関わらずに暴走する危険があるんさね。 まあ、点数が低ければ大した被害にならないから万が一そいつらが使えなくても不調って事でその場をごまかせると踏んでいるんだけど……」

「なによそれ、結局暴走の危険がある代物なんじゃないの……」

「そうなんだけど、一度優勝賞品として出されてしまった以上は無かった事には出来ないからねぇ。 アタシも学園長としてできるのは暴走のリスクを極力下げる事しか出来ないのさ」

 

 そんな危険なものに僕らを巻き込まないでよ……

 まあ、幸い?にも僕とパンドラはロックマンだから、暴走してもけがはしないだろうし、学園長が言う暴走も力が制御できないだけだったら僕らで押さえつける事が出来る。

 そういう意味では僕とパンドラが残ったのは僥倖ともいえる展開だろうね。

 まあ、チームワークが最悪だから今後の展開が不安なんだけど……

 

「皆、もう聞きたいことは全部聞けたはずだし、今日はそろそろ帰ろらない?」

「そうだな、家に帰ってやる事もあるし、明日も早いからな」

「ボクはシャルナクとアトラスの二人を迎えに行ってくるよ。 あのライブメタルの事も何かわかったかもしれないし」

「それじゃあ、ボクはエールと一緒に帰る事にする。 瑞希姉ちゃんの事も心配だし、ヴァンとアッシュの二人も病院から出て来て家に戻ってるらしいし」

「「『あの二人の回復力凄いな!?』」」

 

 どうやら姫路さんの料理は毒物などに対する耐性を異常なまでに底上げする効能があるらしい……

 アッシュちゃんはなんで帰ってこれたのかは分からないが……

 

「じゃあオレとパンドラはアジトに戻って……」

「「認めると思ってるの!!」」

 

 どさくさに紛れて兄妹仲良く帰ろうとしている所を僕とエールさんがロックマンに変身して足止めする。

 プロメテはともかくなぜかパンドラはあのアミューズメント施設にいった時ロックマンに変身していたらしいし……

 この二人がまだ何かを隠している以上、自由に行動させる訳には行かない。

 

「あー……、悪いけどお前ら、オレらが解放されたからなにかたくらんでると思ってるんだろうけど……」

「……それはムリ。 ……わたし達はアジトに置いてある調整装置で定期的にメンテナンスを受けないと機能停止してそのまましんでしまう」

「いくらなんでもそんな都合のいいことを言われて信じるバカだとでも思ってんのか?」

 

 そうだそうだ! なんだかんだでロックマンがらみのアクシデントも起こっている以上、この二人が無関係だとは思えない。 そんな中であっさりと信じられるはずがないだろう!!

 って、思っていたんだけど…… 思わぬところから助け船が出て来る。

 

「その二人が言っている事は本当だよ…… ボクがこいつらの未来世界のアジトに突入した時に見たんだ。 プロメテとパンドラの調整をする為の特殊な機械を…… そこの機械には数日ごとにメンテナンスをしないと機能停止に追いやられるようになっていて、数日単位でのカウントダウンも刻まれてた」

 

 これが他人から言われた事だったならすぐにプロメテ達の共犯者とみなして追い出すんだけど……

 ほかならぬ味方のグレイが言い切るならそれを信用するしかない。

 もしそのカウントダウンとやらが今日が末日でメンテナンスを受けないといけない日だったのなら、それをさせずに死に追いやったその瞬間、その責任は僕らに降りかかる事になる。

 

「ちっ、だがこいつらの言う事が本当だったとしてもそのまま解放するわけにもいかねぇ」

「だが、流石にオレらのアジトに関してまでは教えるつもりもねぇぜ?」

 

 悔しいがココで二人を解放するしかない。

 ライブメタルを返す訳にもいかないが、そのメンテナンスの為にココで大人しく返す事にした。

 

「……先に失礼」

「じゃあまたなー!」

 

 堂々と教室から出て行く二人。

 念の為にライブメタルが手元にあるのか確認するがライブメタルは二つともそろっており、彼ら二人がロックマンとして変身する要素は全くない事を考えたら解放しても大丈夫なように思える。

 

「それじゃ、アタシは学園長室に戻るとするかね。 それじゃ、明日は頼んだよ」

「はい」

 

 こうして学園祭初日は幕を閉じた。

 シャルナクとアトラスはパソコンルームを占拠して解析を続ける気のようだ……

 

 

 

 

 

 

 

 another story プロメテ・パンドラside

 

 文月市内の何処かに隠れた廃ビル内。 そこでプロメテとパンドラは特殊な装置の中に入ってメンテナンスを受けていた。

 

「ったく、さっさと終わってくれねぇかなぁ……」

「……あと3分、終わったら仕込みに行く。 ……わたし達が未来に帰る為に」

 

 そう言う二人の眼には激しい憎悪の念。

 まるで未来世界での因縁が全く切れていないかのように小さくも激しく燃え盛っている。

 

「取り敢えず、オレの方でも仕込みはあらかた終わったぜ? パンドラはどうだ?」

「……あと2割、あのチンピラの余計な騒ぎのせいで予定が狂った」

「ま、それならあいつ等の眼が届いてない内にさっさと終わらせようぜ? 明日に備えてよぉ?」

「……うん、分かってる。 ……絶対に未来に帰る。 ……そしてあんな狂った世界は全部壊して見せる」

 

 

 

 プロメテ・パンドラside end

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回、ロックマンエグゼの要素を少しだけですが入れてみました。
これからもその要素を入れて行こうと思っています。

次回の投稿がいつになるかは分かりませんが、可能な限り早く投稿していこうと思いますので、よろしくお願いします。


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第12話

ここ数ヶ月色んな事に手を出し過ぎて収集が付かなくなってしまった……
MMDの方は辞めようかなあ……(´;ω;`)



「それでは、準決勝第1試合を始めます。 両選手前へどうぞ」

 

 

 

 学園長との話から翌日、先日の誘拐事件の件から反省した僕らはムッツリーニと雄二の二人で近辺の見回り、姫路さんと美波への護衛としてアトラスと依頼をしたら素直に引き受けてくれたヘリオスの二人に来てもらうなどの徹底した警戒の元で準決勝の試合に臨んでいる。

 ちなみにテティスはプロメテが余計なことをしないようにロックマンとして教室で監視+秀吉と一緒にチャイナドレスでの接客を担当してもらっている。

 ……女装したテティスって一部の女子から襲われるくらいに可愛いから接客に支障をきたさないかが心配だよ。

 

「それなりに人が集まってきた…… 宣伝効果バッチリ……」

 

 この準決勝からは外部の人たちの出入りも自由になっていることもあり、召喚獣という存在に興味が尽きない外来の客達で大賑わいだ。

 監視としてついてきていたシャルナクは入場前にパンドラと何か話をしていたがすぐにどこかに行っている。

 出場者ではないシャルナクはこの試合場の中には入れないし、まあそのまま教室に帰るんだと思うけど……

 

 パンドラもこういった声援には慣れていないのか? 顔は相変わらずの無表情だが、周りの観客席を見回すばかりになっている。

 

「しかも今回の対戦カードは全員がFクラスだからね。 後は雄二の指示通りにすればもう文句のつけようがないくらいの完璧な宣伝になるらしいよ?」

『明久…… なぜそこだけ疑問形なんだ?』

「僕にこの手の話を完璧に理解できると思っていたの?」

『仮に本当にそうだとしてもそう自慢げに語る理由にはならん!!』

 

 明久の堂々とした思考放棄にモデルZもお怒りの説教ばかりである。

 

「そんなわけだから二人ともしっかりと宣伝よろしくね?」

 

 この会場に来ている男子の視線を集めている3人に声をかけてみる。

 案の定、姫路さんと美波…… 特に姫路さんは相当恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしながら服の裾を掴んで俯きっぱなしである。

 

「アキもチャイナ服かメイド服でも来なさいよ! 不公平じゃないのよ!!」

「いやいやいや! 僕なんかがメイド服なんて着たらむしろ宣伝効果下がっちゃうよ!」

「そんなことはないです! 明久君がメイド服やチャイナ服を着てくれたら絶対にかわいいに決まっています!」

 

 たぶん姫路さんの声がマイクに届いていたんだと思う。 客席の一部から……『キャアアアアア!』『アキちゃんサイコー!』『私が作ったボディコンも着てみて欲しいのー!』などと言った声が聞こえる……

 ……僕、泣いていいかな?

 

「よ、四人とも試合を始めてもよろしいですか?」

 

 先生もマイクを片手に苦笑いしてる……

 

「あ、忘れるところだった…… 先生、試合の前にちょっとマイクをお借りします」

 

 先生が何をする気なのかを聞こうとしてきたけど、その前にマイクを奪い取る。

 

「『清涼祭にご来場の皆様こんにちは』」

 

 ここで宣伝を開始。 モデルZのサポートもあるし、どうにか上手く行くだろう。

 

「『僕ら4人は二年Fクラスで本格中華を提供する中華喫茶のお店で働いています。 このようにかわいらしい女子も一生懸命に働いておりますのでよろしければお立ち寄りください』」

 

 僕はここでお辞儀をする。 それに合わせて姫路さん達と僕らの召喚獣もお辞儀をしてくれたこともあり、僕らのクラスの印象も十分に残せたと思う。

 

「それでは先生にマイクをお返しします」

 

 先生にマイクを返したらここでお互いに向き合う。

 ここで先生も苦笑いしつつ僕らの宣伝に協力してくれたこともあり、お客のみんなにも余興として受け入れてもらえたようだ。

 

「アキにパンドラ、二人ともよくここまで勝ち上がれてこれたわね。 それでもウチらには勝てるなんて思っていないでしょう?」

 

 強気な態度で僕らにタンカを切る美波だけど、視線が時々パンドラに向いているのを僕は見逃してはいない。

 なんだかんだ言ってパンドラが何かしでかさないかが怖いのだと思う。

 

「いや…… まあ確かに姫路さんたちは優勝候補の一角なんだけど……

 ”だからこそ”雄二は二人がここまで勝ち上がってくることは容易に想像できてたみたいだよ?」

 

 そう言って僕は大型ディスプレイに指を向ける。

 ほぼすべての科目に対して万能な姫路さんと違って美波には致命的な弱点があるんだから。

 

 

 

Fクラス 姫路瑞希 & 島田美波

 

教科 ”古典”

 

点数 399点 & 6点

 

 

 

「こ、古典!? 噓でしょ! 準決勝は数学じゃなかったの!?」

「美波…… 実はあの対戦表なんだけど……」

「な、なによ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄二の手作りなんだって……」

「だ、騙してたのね!! もう坂本は負けてるんだから別にネタバレしてくれたってよかったじゃないのよ!!」

「いや…… だって、僕らが戦う可能性だってあるんだし? そうそう都合がいいことは言うものでもないじゃないか」

 

 あの対戦表は雄二が対戦科目の指定権をもらった際に仕込んだ時の罠。

 確実に優勝しようとコツコツと積み重ねてきた作戦の一部なんだ。

 皮肉なことにそれを横からかすめ取るように利用しているのが僕とパンドラなんだけど……

 友達の不幸を利用して確実に勝ち上がる僕らはすでに善人とは対極の位置にいることだけはもう覆しようのない事実だろう。

 

「フフッ…… これで勝負は2対1…… これなら勝ったも同然……」

「その通り! 6点しか取れていない美波の召喚獣なんていないも同然! この勝負、貰ったああぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Fクラス 吉井明久 & パンドラ

 

 点数 ”9点” & ”3点”

 

 

 

 

 

 

 

「パ…… パンドラ?」

「………………………なに?」

「この点数はいったい何?」

「ドイツで日本の古典は習わない…… 多少の勉強はしててもさすがに無理…… あなたはなぜそんなに自慢げにしていたの?」

「正直、パンドラの点数をあてにしていました」

 

 ものすごくいたたまれない雰囲気である。

 観客もこの空気では黙る事しかできないでいる。

 

「二人ともこの点数でどうするのさ!?」

 

 両者共に一桁の点数…… とてもじゃないが、よくこの大会で勝ち上がってこれたと言いたくなるレベルである。

 

「…………姫路、島田」

「何よ?」

「何ですか?」

 

 急にパンドラは姫路さんと美波に話しかけてくる。

 

「吉井が昨日こんな話をしていた。 優勝賞品の中にあるプレミアムチケット…… あれを……」

「「…………あれを?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「島田、アナタの……」

「え? もしかしてウチと一緒にアキが……」

「妹に送ろうとしている……」

「殺すわ」

 

 な、なんだ! この尋常じゃないプレッシャーは!? 美波の背中に怒れる龍をほうふつとさせるような真っ赤なオーラを放っている!

 それこそまさに某伝説の龍と呼ばれた元極道のように、関東最大の極道連合に単身で乗り込んで簡単に叩き潰せるほどの……

 それくらいの命の危機を僕は感じ取っている!!

 

「妙に仲がいいとは思っていたけれど、まさかこういうことだったなんて……」

 

 目が据わっていて鬼教官モードのアトラスとは全く別の怖さを感じる! これまで僕はアトラスの元で強くなった時を境に美波の足技なんて簡単にいなせるようにはなってきたけれど、それを差し引いてもおなお今の美波は僕にとって優しい姉の皮をかぶった殺人鬼にしか見えなくなっている。

 その隣での姫路さんも……

 

「吉井君が葉月ちゃんのような少女と結婚したがるようなロリコンだったなんて…… 私がどうにかしてあげないと…… アトラスさん達みたいな元悪党なんかにたぶらかされてへんな道に行っちゃったんですね? 私が助けてあげないと…… 私が正しい道へと導いてあげないと……」

 

 などと死んだ目で言いながらどこからか肉厚な中華膨張を取り出し、カボチャやアヒルの丸焼きのようなもの、豚の丸焼きのようなものを取り出して試し切りなんてしてきた……

 力のこもっているようには見えない軽い一振りで大根やカボチャは両断されていく……

 ……姫路さんの細腕のどこにあんな力があったんだろう?

 

「瑞希! そっちでまずはアキの召喚獣をボコボコにして! ウチがアキ本人をやるわ!!」

「ちょっ、美波! それ、反則!!」

 

 どうにか召喚獣を操作しながら逃げ続ける僕だが、はっきり言ってこの状況は絶望的だ。

 片方の気が一瞬でも切れたならその瞬間に僕の召喚獣はすり身にされ、僕自身もフィールドバックによる痛みで動きが鈍ってその隙に美波の足技と姫路さんの中華包丁でさっくりと逝くだろう……

 

「こんな目に合うなら蓬莱人にでもなって不死身になりたかったよ!」

「わけのわからないことを言ってないでさっさとやられなさい!」

「一瞬であの世に送ってあげますから……」

 

 本気だ…… この二人…… 本気で僕の命を取りにかかってる……

 どうする……防御の型”獄門剣”で攻撃をさばいてからカウンターを狙ってみる?

 無理だ! さすがに40倍以上の点差がある上に本体である僕の命も狙われている以上、カウンターを狙うだけの能力が今の召喚獣にはない!

 疾風牙や破断撃で距離を取りながらヒット&アウェイで戦う?

 美波の召喚獣が相手ならいざ知らず、姫路さんの召喚獣相手だと一点も削れない!

 

「吉井……」

「何、パンドラ?」 

「……お疲れ様」

 

 そう言ったパンドラは僕の召喚獣を蹴り飛ばして二人の前に差し出し……

 

「え? ちょっ! このままだと僕が殺され……ギャアアアア!!」

 

 い、痛い痛い!! 僕の召喚獣が粉砕された事で、僕の全身を粉砕機で砕かれたかのような激痛があああああ!!

 姫路さんの召喚獣によって瞬殺された僕は悶え苦しみ続け、痛みに耐えきれなくなった僕はそのまま気絶してしまう。

 

 

 

 another story パンドラSide

 

 

「もう残っているのはパンドラ、アンタだけね!」

「吉井君の召喚獣同様、一撃であの世に送ってあげますから」

「アナタ達……」

 

 全く…… 吉井に期待せず、念入りに策を敷いておいてよかった……

 

「……本当にバカ?」

「何ですって? ウチはたまたま古典が苦手ってだけで別にバカでもなんでもないわよ! アンタだって似たようなものじゃないのよ!!」

「美波ちゃんパンドラちゃんの言葉に構うことはありません。 そのまま決着をつけましょう」

「ふふっ、結局アナタ達って正真正銘のバカ…… 見せてあげる。 この古典だからこそできる究極の召還を……」

 

 それと同時に手筈通りに隠れていた”シャルナク”と目を合わせる。

 試合前に事前に話し合った作戦…… それはもし吉井も古典の点数が少なかったら帰ったふりをしたシャルナクに目を合わせることで合図を送る。

 そして……

 

 

「……サーモン『サモン!』」

 

 私の呼び声に被せるようにシャルナクが召喚獣を呼び出す。

 それと同時にシャルナクの召喚獣が能力を発動。 フィールド内を3秒だけ暗闇に染め上げ、その瞬間に島田の召喚獣を瞬殺した。

 

「きゃっ!」

 

 その間に私は音だけで周りの状況を把握しながら姫路の後ろを取る。

 ある交渉をする為に首をいつでも締め上げられるようにする。

 

「ああっ! ウチの召喚獣が!!」

「えっ? ちょっ! 何が起こったんです…… きゅっ!!」

「瑞希!」

「スキあり……」 

 

 姫路が驚いているスキに召喚獣の方も背後に回って首筋に木刀の柄頭を当てる。

 

「おとなしく降参する事を勧める…… そうじゃないと……」

「そう言われて誰が素直にすると思っているんですか! それにこの能力、シャルナクさんの……」

 

 余計なことを言う前に柄頭を姫路の召喚獣の顔面に叩き付ける。

 当たり所が悪かったのか、こちらにとって都合よく大量の点数が削られた。

 

「今度は両目に当てて召喚獣の戦力を潰す……」

「なっ!?」

 

「ちょっ! あのねーちゃんえげつなさすぎだろ!?」

「本当に女子同士の会話なのかこれ!?」

「会話っていうか……脅迫?」

 

 観客が何か言っているけどどうでもいい……

 どうせ嫌われるのには慣れているし、いざとなったら少し涙目を見せて吉井に責任のすべてを押し付けてもいい。

 とにかく今は目先の勝利を掴むことを優先したい……

 

「わ、分かりました! すぐに降参します! ですからこの子を傷つけるのはやめてください!!」

「……審判?」

 

 一応審判に確認は取っておく…… いくら姫路が降参だと言っても審判が認めなかった場合、最悪姫路から手痛い反撃を受ける可能性がある。

 もし審判が認めない、あるいは迷う素振りを数秒見せたなら躊躇なくつぶせばいいだけだが……

 

「……分かりました。 トラブルを利用した姦計を巡らせ、味方もろとも始末した上に女子とは思えない最低な脅迫で屈服させたパンドラの勝利です。

 パンドラさん、この試合場から出たら西村先生からお話があるそうです。 すぐに生徒指導室に向かって下さい」

 

 余計な一言と最後の話とやらが気になるが、とにかくこの戦いの勝利を手にした私は気絶した吉井の足を掴んで引き摺りながら試合場を後にした。

 姫路の元では召喚獣が泣いているところで姫路が頭を撫でているが……

 今はこの勝利を喜ぶべき…… 後は決勝…… これに勝利して優勝すれば”計画”を進められる……

 

 another story パンドラSide end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パンドラの奴…… 教室に戻ってきた時があの女の最後だからな!!」

「パンドラちゃん…… 次にあった時には容赦しません!」

「瑞希、その時はウチも呼んで! ドイツでの仇と今回騙してくれた一件、絶対に許さないんだから!!」

「お、おい…… お前ら一体どうしたんだ? とにかく島田妹がガチでおびえてるからそこでドスとか包丁を研ぐのはやめとけ……」

「「「雄二(坂本君)は黙ってろ(下さい)」」」

「うおっ!!」

 

 今僕ら3人は忙しいんだ! 僕はパンドラを斬りたい気持ちを抑えながら繁盛している店の料理を延々と作り続け、美波は少し離れたところで包丁やドス、FFF団がよく使っている大鎌の刃を研ぎ、姫路さんに至っては本気でパンドラに復讐したいのか、勝手に食材をいくつか持ち出して禁止されたはずの毒殺料理を作り始めている。

 本当だったらシャルナクが止めに入るはずなんだけど、後で聞いたらこの作戦にシャルナクも少なからず関わっていて、一歩間違えたら自身も包丁でブスリと逝ってもおかしくはないほどに激怒した姫路の殺気とパンドラに協力した後ろめたさ…… そして秀吉からの”大嫌い宣言”とそれを盾にした脅しを受けたのをトドメに殺人料理の政策の許可を出したのだった。

 

「ど、どうしたですか? バカなお兄ちゃんたちが般若や閻魔大王とか不動明王みたいな怖い顔をしているです……」

「ごめんね葉月ちゃん 少ししたら落ち着くと思うから……」

 

 葉月ちゃんには居心地が悪いかもしれないけどここは我慢してもらおう……

 今回ばかりは本気でパンドラを潰す!

 

「酷い目にあった…… 西村は化け物……? 全力で抵抗したのに簡単に押さえつけられた……」

 

 どうやらパンドラは鉄人の元にいたようだ……

 まあ、鉄人はアトラスでさえ力押しでは敵わずに軍隊仕込みの格闘技をフルで使い込んでようやく互角らしいから……

 パンドラがどれだけ老獪なんだとしてもロックマンに変身できないならあの鉄人を相手取るのは無理だろうね。

 アトラス曰く、「鉄人相手に挑むなら未来世界のイレギュラーの部隊を一個中隊相当(最低60体)を集めてから挑まないと……」って言っていたくらいだし。

 殺戮マシーンでも本格的に大部隊を組んでからじゃないと勝てないとか正真正銘の化け物ですかアンタ……

 

「パンドラお姉ちゃん、お疲れ様ですっ!」

「ただいま……」

 

 そう言った葉月ちゃんの手には姫路さんが先ほど作っていた中華のお菓子。

 なんでも中に塩漬けした卵を入れて作るお菓子らしいけど……

 

「お疲れのパンドラお姉ちゃんの為にお菓子があるですっ! よかったらどうぞ!」

 

 よし! 今の僕らが近づけば絶対に警戒されるけど、葉月ちゃんは純粋で裏が無い上に隙だらけだからこそ、なんの問題もなくパンドラ相手でも容易に近づける。

 

「ありがと……」

 

 そのまま口に含んだぞ! よし、姫路さんがどんな極悪料理を作ったのかは知らないが、そのまま飲み込んでしまえ!

 

「……あまりおいしくなかった。 苦い……」

「あう…… ごめんなさいです」

「気にしないでいい…… 失敗は誰にでもある……」

 

 あれ? あのお菓子って確かとんでもない猛毒が入っているって姫路さんが言っていたような?

 もしかして姫路さんの毒料理ってレプリロイドには効きにくいのかな?

 まあ、行動と思考レベルが人間と全く同じだとは言っても機械なんだし、仕方ないのかもしれないけど……

 でも、普通にごはんとかは食べたりするみたいなんだよね? その辺も人間に似せているというだけだって言われたらそれでおしまいなんだけど……

 なんだかんだ言って葉月ちゃんが出した姫路さんお手製のお茶もマズいって言いながらも普通に飲んでるし……

 

 

「フフフ…… ウフフフフフ…… ちゃんと味わって飲んでくださいね? それがあなたの最後の食事になるかもしれないんですから」

 

 姫路さんの目が死んでる…… 詳しいことはわからないけど、シャルナクから聞いた話だと相当酷い手を使ったらしいからそれであそこまで恨んでるんだと思う。

 だけど、姫路さんの仕込んだのが全く効いていないというのになんであそこまで笑っていられるんだろう?

 

「大丈夫ですかお姉さま! 美春はお姉さまがまたひどい目にあわされたと聞いていてもたってもいられずにいまだ繁盛しているお店を勝手に抜け出してまで様子を見に来ましたわ!」

 

 いきなりとんでもないことを言いながら厨房に入ってきた美春さん…… って、何とんでもないことを言ってるんだ!?

 ……雄二に事情を説明してからDクラスに謝っておかないと。

 

「雄二…… 申し訳ないんだけど……」

「仕方ねぇ。 俺からDクラスには謝っておくから、厨房に戻ってくれ」

 

 とりあえず厨房に戻って、作り置きが聞く料理を用意してから決勝戦に行こう……

 




うーん……
感想欄で面白い作品について教えてくれるのはありがたいのですが……
出来ればこう言った作品に直接関係しなさそうな事はメッセージで伝えてくれた方がありがたいカモです(~_~;)
いえ、教えてくれる事自体はとても嬉しいんですが……
なんて言ったらいいんだろう……

今回も楽しんでくれたならありがたいです!
感想お待ちしております!


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番外編 バカとクリスマスとお正月

あけましておめでとうございます!!

明久「もう正月なんてとっくにすぎてるんだけど?」
アトラス「いったい何をやっていた?」

 職場の上司について労働局に相談するべく証拠を集めようとしていたり、ゲームをパソコンにつないでからプレイできるようになったからそれで大喜びしていたり、中古ゲームの特売でPS3が手に入って龍が如くシリーズをプレイしようとしていたり……
 あと、東方の二次創作ゲームで「東方紅輝心」って言うゲームを快適にプレイできるように設定をいじるのに苦労していたりもしましたね……

雄二「おいコラ! 最初でさらっと流しやがったけど、結構メンドクサイことになってんじゃねぇか?」

 実際に証拠になりそうなのをメモってるのがバレてるのか、しっぽを掴ませないようにしつつさらに脅迫してくるようになった……

 気分を変えていきましょう! 遅くなってしまいましたが、番外編をお楽しみください!!




 番外編:メリークリスマス!!

 

 

 あれは…… クリスマス前日だった……

 

 

 坂本Side

 

「おーい明久! 遊びに来たぞー…… って、うおっ!!」

 

 今日はクリスマス。 明久のバカ面をからかってゲームで賭けでも吹っかけてから色々と巻き上げてやろうと思って遊びに行った時の事だった……

 

「あ、雄二。 メリークリスマス!!」

「”メリークリスマス!!”……じゃねぇよ! 何だよこのありさまは? 誰かに襲われたんか!? アトラスのやつが大暴れした後みたいになってんじゃねぇか!?」

 

 一部の仕事をしている人間を除けば遊びほうけている日であるはずのクリスマスに、明久を含めた謎の居候が総出で散乱したガラスや家具類を動かしながら大掃除をしているところを見せられてそう思わない人間はいねぇだろう?

 

「愚かなる質問…… 明久から今日はクリスマスという未成年の私達にとっては喜ばしいイベントが数多く行われている日であるという話を聞いていないと思っているのか?」

「ヘリオスだったか? 頭巾とマスクを装備してはたきでほこりを落としながら言っても説得力がねぇよ」

 

 ダメ人間を見下すような目で見るんじゃねぇよ! クリスマスに大慌てで大掃除しているお前らの方がダメ人間だろ!?

 

「私達にもそれなりの理由があってこんな大掃除を始めているんだ」

「どうせクリスマスパーティーをやろうと思っていたけど、できないくらいに汚れていたから仕方なく慌てて大掃除してるとか…… そうじゃなければパーティーで何やりたいかでもめて戦争レベルの喧嘩をやらかして部屋をまたぶっ壊したとか、そんな容易に想像が着く理由で掃除してんだろ?」

 

 アトラスも言い訳してんじゃねぇよ。 お前らがいろいろと普通じゃねぇってのは今更なんだからそんなテンプレじみた理由で変な事をしていても気にする読者なんていな……

 

「このクリスマスってイベントが終わったら大晦日には年越しそばを食べてそのままお正月っていうイベントがあるんでしょ?」

「イベントとは違う気がするんだが…… まあ、クリスマスが過ぎればそうなるな……」

「ソノ間、学校ハ冬休ミニ入ッテ自由ニ遊ベルト聞ク」

「正確には宿題とかもあるから、それさえ終わらせれば自由ではあるが……」

 

 なんでクリスマスの話からいきなり大晦日とか正月の話になってんだよ? 話を明後日の方向に持って行ってごまかそうってか?

 

「そう! そんな宿題とかただでさえ邪魔なものが多いのに、この大晦日にはどこもかしこも慌てて大掃除を始めるだなんて馬鹿らしい事をするなんてやってられないじゃないか!!」

「こう見えて私達は、年を越す前になって慌てふためいて大掃除と称したバカなことをやっていられるほど暇を持て余してなどいない……」

 

 いや…… まあ、確かにヘリオスやテティスの言う通りで日本人は末期になってからようやく慌てふためいてから仕事をし始める”ラストスパート思考”の奴らが多いが……

 

「そこで明久が私達にこう言ったんだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「せめて一週間前にはこんな大掃除を終わらせて余裕を持って年を越そうとするべきなんじゃないか? ……と」」」

 

「正真正銘のアホ軍団かお前らあああああああ!! 大晦日の一週間前って言ったら完全にクリスマスじゃねぇか!! せめて大晦日の三日前とかにしとけよ!!」

「愚かなる発言! その日までには文月学園から出てくる宿題を終わらせねばならんだろうが!! 安心して年を越すためにはその三日前までに宿題も大掃除も終わらせ、その後の時間はゆっくりとそばをすすったり、のんびりと本を読んだり、家計簿をまとめたりせねばならんのだぞ!!」

「誰が愚か者だ!! メリハリのつけ方を間違えてるお前らの方が一番の愚か者じゃねぇかあああああ!!」

「「「……?」」」

「”訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇよ?”みたいな顔をしながら首を傾げてんじゃねぇぇ!! マジでぶっ殺すぞお前ら!?」

 

 何だよ! 俺がおかしいのか? こいつら全員が異常者に見える俺の方がおかしいのか!?

 墨汁とコーヒーを間違える俺のお袋でさえ、クリスマス用に親父と食べるための料理を作ろうとしてるってのに……(それでもお袋のレシピが滅茶苦茶だったからオーブンで焼きあがるだけでできるようにある程度の下準備はしてきたが……)

 

「せっかく来てくれて悪いけど、今日は一緒に遊べそうにはないからおとなしく帰ってもらって……」

「普通に友人が遊びに来たけど急用ができて遊べなくなった的な感覚で追い返そうとしてんじゃねぇよ明久!! ……ったく、どうせお前らだけだとまとまりが無くてまともに掃除も進めきれてねぇんだろ? せっかくだし、俺も手伝ってやるよ」

「なんだかんだでユウジも手伝ってくれるんだ。 ユウジのツンデレ~」

「それ以上言ったら本気でぶっ飛ばすぞ?」

「ごっめんなさぁ~い~」

 

 本気で謝る気のないテティスの返事を軽く流してタンスなどの大きな家具をアトラスと運んでから拭き掃除を始めることにした……

 

 

 

 

 

 

 それから30分後……

 

「明久よ。 遊びに来たぞ……い?」

「……明久。 ……ムッツリ商会のクリスマス限定作を持ってきた…… ……なにをやっている?」

 

 後から来ると言っていた秀吉とムッツリーニが明久の部屋を見てあっけにとられている……

 やっぱり明久達の言っていることの方がおかしいよなぁ……?

 普通クリスマスって言ったら思いっきり遊んで楽しむ日だって言うのが普通だよなぁ……

 

「あ、秀吉にムッツリーニ。 見ての通り大掃除だよ?」

「いやいやいや! ワシらが言いたいのはそういうことではなく……」

「……なぜ今になって大掃除?」

 

 やっぱり当然の疑問だよなぁ…… 

 しかもこいつら放って置いたらまた愚者呼ばわりして今度こそ大喧嘩になりそうだしなぁ……

 

「この家の連中曰く”年末になって慌てるようなバカな真似はしたくないから”って理由で一週間前終わらせて気持ちよく年を越したいんだそうだ」

「雄二まで何をやっておるのじゃ……」

「……理解不能」

 

 仕方ねぇだろ…… こいつらの事だから、放置していたら絶対にクリスマス中ずっと掃除ばっかで終わらせるに決まってるし……

 

「アキ! メリークリスマ……ス?」

 

 こいつは確か……? 明久とテティスの二人がいろいろと面倒?を見てた島田だったか?

 

「アキ……テティス? ナニヤッテルノ?」

「「大掃除!」」

「……エ?」

 

 島田の奴も斜め上の回答にポカンと口を開ける事しか出来てないな……

 しかもその手にある手紙付きの袋…… たぶん感謝のプレゼントとして今日の為に用意したんだろうが…… まさかイベントを楽しむでもなく、イベントを開く側でもなくただ年末に備えての大掃除だなんて思ってもいなかったんだろう……

 

「ニホンジン、トテモキンベンネ! アキトテティス、キホンテキニアホダトオモッテイマシタ! ヨカッタラ、ワタシモテツダウ! イマハドコヲハジメテルノ?」

 

 待てええええええい!! 今の光景をみていったいどうやったらそんな解釈になるんだよ!? ドイツじゃクリスマスの日には掃除をするのが当たり前なのか!? 

 プレゼントらしき袋を置いてエプロンとか装備してんじゃねぇ!! まともな女子である島田までそんなことを言い出したら……

 

「のう、ムッツリーニよ…… ワシら、何かおかしなことを言ったかのう?」

「……妹と兄貴達に確認。 ……なにもおかしなことは言ってない」

 

 やっぱりな…… 秀吉とムッツリーニまで自分の正気を疑い始めたじゃねぇか!?

 島田からしてみれば明久とテティスへの感謝のつもりだろうから余計に文句も言えねぇし……

 つーかこの状況で何かと突っ込んだら俺と秀吉とムッツリーニが変人扱いされるにきまってるし……

 

「ワシもクリスマスだからと言って浮かれておったのかもしれぬ…… 今日ばかりは明久達を見習って部屋の掃除くらいはきちんとせねば……」

「? 秀吉、お前も結構部屋とか汚している方なのか?」

「多少は自分で掃除もしてはおるのだが…… 時々演劇用で使っているメイク道具がなくなっておることがあるから、もしかしたらきちんと整頓できてはおらんのではないかと思って……」

「……お前、確か双子の姉貴がいるって言ってなかったか?」

「確かに容姿だけならワシと瓜二つ姉がおるが…… もしや姉上ええええええ!!!」

 

 うおっ! 秀吉が血相を変えて走っていきやがった……

 あいつのポーカーフェイスがあそこまで崩れるってどんだけ思い入れのある道具を盗られてんだよ?

 

 

「……明久。 ……ムッツリ商会、クリスマス限定版写真集があるんだが?」

「一冊だけもらおう!!」

「……毎度あり」

「それでも買うんかああああああああ!! ……っと、ムッツリーニ、俺も一冊」

「……毎度あり」

 

 あ、ヘリオスとアトラスが頭を抱えてやがる……

 「一応、小遣いの範囲内でやっているようだが……」とか「あのようなものにうつつを抜かせるほど強くはなっていない分際で」とか…… いや、まあしょうがねぇだろ? 俺らみたいな思春期の男にとってはああいうのは結構希少なんだからよ……

 

 

「とにかく、さっさとこんなくだらない掃除なんて終わらせるぞ! クリスマスの本当の楽しみ方ってやつも教えてやらないといけねえしな!!」

「フフッ、ホントウニサカモトハツンデレ」

「おい、島田…… 一応聞いておくが、誰がそんなことを言っていた?」

「テティス」

「テティスてめぇ! どんだけ俺の風評被害を広げてやがんだこの野郎!!」

 

 結局小さい体を生かしてあちこちへと逃げ回るテティスを捕まえきれずに島田から”照れ隠しの為だけに掃除中に勝手に暴れまわる変人”と覚えられそうになりながらも夕方になる前には掃除を終わらせた。

 一応、手伝ってくれたお礼と言う事で”純和風のクリスマス”とかほざいた明久がサンタの顔が書かれた巻き寿司やトナカイ風になっているチキンの照り焼き、抹茶味のクリスマスツリー型パンケーキなんてものを持たせてくれた。

 ……明久の料理の腕が凄いって事はわかってはいたが、このケーキはいったいどうやって作ったんだ?

 

 

 

 

 

 坂本side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 番外編その2:お年玉とは?

 

 

「「「happy new Ear!!」」」

 

 

 大晦日の夜。 僕らは文月で一番有名な神社でお参りをするために行列の中を……

 

 

「よし! 1番手から5番手までの独占成功!!」

「「「イエーイ!!」」」

 

 ……ヘリオスのアイデアのおかげもあって並ぶこと事もなく真っ先にお参りをすることができている。

 因みにそのために僕らは前日に野宿をしようとしていたが、神社の神主さんに一度追い出されたのは秘密である……

 

「そういえば、日本のお正月には”お年玉”って言うのがもらえるんだったよね?」

「テティス…… なんでそんな事を知ってるの?」

「雪乃ちゃんから聞いた」

「その雪乃ちゃんって人が誰なのかは分からないけど、実はウチでお年玉って言うのはもらうものじゃ……」

「さすがにそれはわかるけどさ……」

「愚かなる問い…… 明久の親は異国の地にいるのだろう? ならばあまり期待しない方が……」

 

 ヘリオス…… まだ言ってなかったんだけど実は……

 

「む? 明久、おまえ…… まだ言ってなかったのか?」

「へ?」

 

 え? アトラスにもまだ言ってなかったはずなのに…… なんでそんな知ったような口ぶりを……?

 

「ドウイウコトダ?」

「お前の母親から大晦日の日に電話があったんだが……」

 

 え? 電話? そんな話聞いてないんだけど?

 

「なぜかお年玉として日本に送付しようとしたら、運送の会社からストップがかけられてしまったから口座に直接振り込むって言っていたぞ?」

「へ?」

 

 どゆこと? 僕が聞かされていた話と全然違うんだけど……

 

「ナゼ明久ハ、訳ガワカラナイミタイナ顏ヲシテイルンダ?」

「いや…… おかしいんだけど……? 昔、母さんから聞かされていた話とは全然違うから……」

「大いなる矛盾…… お年玉についてお前はなんと聞かされていた?」

「いや…… 母さんからは、『お年玉と言うのは新年の無病息災を祈るために”歳神様(としがみさま)”へのお供えとしてお餅を用意してからみんなで分け合ってから食べるものなのよ?』って聞かされて……」

「「『それ、絶対にお母さんに騙されてるって!?』」」

 

 そ、そんな! な、なぜ母さんは僕にそんなウソをついたというんだ……

 

 

 

 another story 吉井玲 Side

 

 

「これでよし、あの子がヘリオス君達の為にきちんと使ってくれるといいんだけど……」

 

 私としては正直に言うと不安なのよねぇ…… あの子は本当にバカだけどお父さんに似て実直で行動的で困っている人を助けてあげられるいい子に育ってくれたけれど、それでも金銭面と勉学に関してだけは全くと言っていいほど期待できない子になってしまったから心配だわ……

 

「あら、お母さん。 いったいどうしたのですか?」

 

 そういえば、玲にはこっそりと普通のお年玉をあげていたわね。

 明久がせめてもう少しまともにお金を使ってくれる子だったら普通にお年玉をあげていたというのに……

 

「いやねぇ…… 日本はもう新年でしょう? 今年に限っては”あの子が助けた人達の援助のために”って事でアトラスさんへの伝言の電話と一緒に20と数万程あの子の口座に送っておいたんだけど……」

「そういえば、アキ君が小学校の高学年になってからお年玉をあげなくなってましたね…… まあ、事情が事情だから仕方が無いですけど……」

 

 玲も覚えてくれていたのね…… あの子、いくら困っている子がいるからと言ってせっかく”明久の為に”あげたお年玉を他所の子相手にいろいろと奢る為に使ってしまって……

 あんな幼い内から施しなんて覚えさせるべきではない…… だからと言って、人の言う事を善悪に関係なく素直に信じてしまうあの子に非情な事を突きつけさせるような全く真逆の事を教えてしまったらどうなるかが分からなかった……

 そのために方便で教えたのが、今や完全に廃れた風習の…… 中世の頃に無病息災を祈る為の神様への供物としてお餅を用意する方を徹底して教え込んだ。 その過程で半ば洗脳に近い方法をとってしまったし、それがばれたときに最低な行いとしてとがめられる覚悟はできているけれど、私はそれが一番の方法だと信じている。

 一応、その日に限ってあの子が望むものは何でも買ってあげたけど…… ほとんどが遊び道具だったけど……

 

「でも、今回の件でさすがにばれそうね……」

「アキ君も流石に怒りそうですね」

「母親として覚悟はしているわ。 今日はもう仕事を休んでいつでも電話に出られるようにしてるわ。 玲も覚悟は決めておきなさい」

 

 

 another story 吉井玲Side end

 

 

 

 

 

 

 

 アトラスの話を聞いてから僕らはすぐに営業中のATMへと向かう。

 そして口座を確認すると、そこには通常の仕送り金とは別の20万以上の大金が記載されていた……

 

 

「どういう事なんだ? ……あ、そうか!!」

「何かわかったのアキヒサ?」

 

 そうだよね! いくらなんでも僕が金銭面で間違った使い方をしていない以上(ヘリオス達が来てからの話であって、その前は食費をゼロにしてまでゲームを買い込んでました)こういう事なら納得がいく!!

 と、言うよりこれ以外にはありえない!!

 

 

「きっと、これまでの節約が認められたから『正月くらいはみんなで贅沢してもいいよ』って言う母さんからの配慮なんだよきっと!!」

「なるほど! さすがはアキヒサ!!」

「愚かなる解答!? これまでの節約は私の努力であって、明久はむしろ家計を圧迫しそうになった方……」

「それ以前にそれだけで20万以上も入れるか? いくら学生5人分とはいっても、さすがに多すぎやしないか?」

 

 ヘリオスとアトラスが何か言っているけど、この際はどうでもいい!!

 これだけの大金。 これだけの大金を母さんがくれた以上、このお金の使い道と言えば……

 

「今日の午後でみんなが学校に通うために必要な制服とか鞄とかを買いに行くよ! あ、でもお金足りるかなぁ……」

「些細なる問題…… 幸か不幸か、明久と私、そしてシャルナクの服のサイズに対して違いは無い。 制服に関して買うとしたら、せいぜいテティスとアトラスの分だろう……」

 

 あ、確かに制服に関しては何着も父さんが買い込んでくれていたけど…… 5着は流石に要らないって……

 

 

 

 

 結局、送られてきた大金はヘリオス達の為に使われていた。

 吉井母の心配は無用だったと言う事になる……

 

 

 

 another story 吉井母Side

 

 

「あの子、結局怒ってないのかしら?」

「都合よく解釈して全く気が付いていない可能性もありますよ?」

「さすがにないと思うけど……?」

 

 

 吉井母Side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




番外編お楽しみいただけたでしょうか?

お年玉云々に関してはネットで調べた知識ですので、もしかしたら語弊などがあるかもしれませんが、そう言った情報もお教えしてくださったらありがたいです!

感想お待ちしております!!


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第13話

明久「いったい、どんだけ待たせてるの?」
閻魔刀「……一週間くらい?」
「「「二か月以上だ! どんだけ待たせてるんだ!!」」」

閻魔刀「え? あ・・・ちょっ・・・ 関節はそっちには曲がらなぁああああ・・・・・・」



「……パンドラの奴、遅いな」

「スコシマエニ気分ガワルイト言ッテ教室カラ出テ行ッタガ?」

「それ見てアトラスが見張りもかねて保健室についていったけど、あれから連絡がないんだよねぇ」

 

 僕らは試験召還大会の決勝戦に備えて試合場の待機室でパンドラを待っていたのだが……

 

「あ、戻ってきた。 どうしたのパンドラ?」

「人間で言う胃にあたる部分が壊されてた…… 変な物は食べていなかったのに……」

 

 あー…… たぶん、姫路さんが作っていた怪しいお菓子とお茶が原因だと思います。

 一体何を混ぜたんだろう?

 

「そんなどうでもいい事よりも…… もう決勝戦だけど大丈夫?」

「テティスはコレで平気に見える?」

「うん」

『ええ』

「即答カ……」

 

 モデルLもテティスも酷いな……

 腹抱えながら壁にもたれ掛かって移動している女子を相手にそんなことが言えるとは……

 テティス、恐ろしい子っ!!

 

「しかし、決勝戦を前に何かしらの妨害があると思っていたんだけど、全く何も起こらないね」

「そうだよねぇ…… 嫌がらせで教室に鉄砲玉を送ってくるくらいはすると思っていたんだけどなぁ。 武装ヘリ飛ばしてガトリング乱射とか?」

「後ろ盾がいない一チンピラ程度ではそんなおもちゃすら用意はできんだろう。 だとしたら嫌がらせ自体をあきらめたか…… それとも明久達の居場所が分からなかったか?」

「ソレハナイダロウ。 タカガアノ程度ノ報復デ諦メルトモ思エン」

 

 いや…… たぶん前の誘拐事件での戦力が全力だったんだと思う……

 ロックマン二人以上に厄介な戦力なんてこの現代日本にあるとは思えないし……

 つーかテティスとアトラス! ガトリング砲をおもちゃ扱いしない!!

 ロックマン化した僕らと違って、一般人はそのおもちゃで簡単に死ぬんだよ!!

 

「ま、僕らが離れたのと同時に奇襲をかけていたんだとしても簡単に撃退できると思うけどね」

「あ…… うん、確かに今のFクラスにはリーダーである雄二と完全武装のムッツリーニ、それにグレイとロックマンになれるエールさん、一応プロメテもいるから……」

 

 前に誘拐事件を起こした側の人間からしたら、絶対に関わり合いにすらなりたくない戦力が残っているんだ。

 そんなところに奇襲を仕掛ける気の触れた奴らがいるとはどうしても思えない……

 

「大変お待たせしました。 ただいまより決勝戦を行います」

「ありがとう。 パンドラ、本当にキツイなら棄権しても……」

「大丈夫…… どうにか大会には出られそう」

 

 人間だったら変な汗でびっしょりになってもおかしくないくらいにつらそうな顔なのに……

 一体何が彼女をそこまでさせるんだろう?

 

「……すぐに行く」

 

 特に会話も無い中で黙々と先に進んでいく僕とパンドラ。

 

『大変長らくお待たせいたしました。 これから、試験召還システムを用いた召還大会の決勝戦を行います!!』

 

 会場に着いたとたんに少しだけ脈が速くなるのを感じた。

 アナウンサーの声とともにまだすこし気分の悪そうなパンドラをエスコートするように支えながら会場に入ろうとしたが……

 

「いらない…… 一人で立てる……」

 

 その手を払い除けられ、パンドラは一人で先に上がっていってしまう。

 

『二年Fクラスの吉井明久選手と同じくFクラスの編入生のパンドラ選手の入場です! 盛大に拍手でお出迎え下さい!!』

 

 盛大な拍手が雨のように降ってくる。 準決勝の時も相当な人が集まっていたが、この決勝戦に至っては明らかに倍以上に席が増やされているにも関わらず、ほぼ満席である。

 

「バカなお兄ちゃん! 頑張るです~!!」

 

 葉月ちゃんも応援に来てくれているみたいだ。

 って、葉月ちゃんも狙われているのに護衛になる人とかがいなくて大丈夫なのかな?

 

「明久! 相手をボコり過ぎてガチ泣きとかさせんなよ!!」

「吉井君、頑張ってください!!」

「アキ! 決勝戦応援に来たわよ!」

 

 どうやら雄二と姫路さん、美波もついてきてくれているみたい……

 って、エールさんとグレイ君もついてきているみたいだけど大丈夫かなぁ?

 ムッツリーニと秀吉の姿が見えないからお店の方は大丈夫なんだろうけど……

 

『なんと、最高成績保有者が揃うAクラスを抑えて決勝戦に進んだのは最低クラスとされているFクラスのコンビです! ……今後のFクラスへの認識を改める必要性がありそうですね』

「わざとらしい演出……」

「パンドラはなんでそんなに不機嫌なの? いや、さっきから気分悪そうだし仕方ないって言ったらそれまでなんだけどさ……」

 

 でも、これはFクラスにとってもありがたい。 これでFクラスに対する認識が改められるかもしれないんだから、ここで優勝まで持っていければ姫路さんのお父さんにも認めてもらえるだろう。

 

『そして、対するチームは3年生からのチームです。 3年生からの出場者自体が少なかったのですが、それでも決勝戦に食らいついてきてくれました!』

 

 3年生? ……僕の知る限り、3年生で決勝戦に残れそうな人たちって言われたら一組しかいないんだけど?

 

 

「よくここまで勝ち残ってきたな……」

「だが、ここでお前らも終わりだぜ! なまじここまで生き残ってきたことを後悔させてやるぜ!!」

 

 僕らが入ってきた時と同じような拍手を浴びながら堂々と…… いや、”堂々”と言う枠に収まらない無駄にハイテンションな度肝を抜かれる入場パフォーマンスを晒しながら試合場に入り込んでくる。

 入ってきてから「イエエエェェェアアアァァァァ!! ジャアアアアアアスティス!!」とか「フォアアアアアア!!」なんて奇声を上げたり、空中バク転で3回転決めたり、試合場に入った途端に咆哮をあげたりとやりたい放題。

 わざわざ花火のようなものまで上げながら、悪ノリ全開で入場してくる彼らの奇行には僕らには理解しがたいものがある……

 

「わざわざ練習してきたのかな……?」

「……どうでもいい」

 

 一部の客は引いていたが、大半の客には好評だったようで、僕らの入場時とは比にならないほどの大歓声が巻き起こる。

 ……まさか、ここで派手なパフォーマンスを決めて周りを盛り上げることで僕らを委縮させようとしているのだろうか?

 あのチンピラみたいな顔をしていても一応3年でAクラスを張る秀才なんだ。 十分考えられる事だけど……

 

「……後悔? ……それって点数の高さだけが取り柄でしかない召喚獣が技によって叩きのめされるあなたたちがするもの?」

「技なんて物は基本人間相手にしか想定されていないものなんだぜ? FクラスとAクラスとでは文字通り龍と小動物並みの差があるんだ。 お前らがやってきた汚い小細工を力でねじ伏せるところを見せてやるよ!」

 

 うわーぉ…… お互い負けるなんて微塵も思っていないよ……

 すごい神経してるなぁ…… 特にパンドラは完全に体調を崩しているのに……

 

 僕が反応に困っている間にも彼らとパンドラの間での挑発合戦が続いている。

 テレビで見た世界規模の格闘技大会での試合前みたいにお互いで罵り合いながら挑発しあっているみたいだ……

 現にハゲの方の先輩がにらみを利かせながら顔面近づけてなにかと言ってきてるし?

 

「おい吉井、少しは何か言い返したらどうだよ? ブルってなにも言えねぇのか、ゴルァ!?」

 

 いや、あんまりやり過ぎたら周りの気分も害するし、さすがにやめた方が……

 

「(少しは何か言い返せよ。 後輩を一方的にいじめているみたいで全然盛り上がらねぇだろ……)」

 

 あ、小声で答えを返せって言ってきてる…… そんな場末のヒールレスラーじゃないんだから……

 

「前に格闘技を叩き込んでくれた師匠が言ってくれたんです」

「あん? 挑発は無視しろってか? だとしたらなっさけねぇにもほどがねぇだろ」

 

 ギャハハと笑うハゲ先輩。 演出のつもりかもしれないけど、これ以上は付き合いきれないから強引に切る口実でも作っておくかな……

 

「お喋りが過ぎる奴は実戦では信用ならないってのが相場だって。 だから僕からは何かを言うつもりはありません。 だって、戦いなら勝てばいいんですから」

 

 アトラス曰く、軍の隊長格だったら軽い会話で部下の緊張をほぐしてあげたりすると言うけど、それでも無駄話を重ねたりはしないんだって……

 

 一度別のイベントでお世話になったとは言え、今回は敵なんだし、変な演出に付き合う意思はないって意味も込めて笑顔で返してあげよ……

 

「言ってくれるじゃねぇか……」

「その言葉も含めて後悔させてやるから覚悟しとけよ!!」

 

 そう言って常夏コンビは離れて行った。

 その際に一言だけ、「ここからはガチだ」と言って離れて行った。

 一応、引き際だけは心得ているようで助かったけど……

 

 

 

 

another story 観客席side

 

「バカのお兄ちゃん、すごいですっ! たった一言であの意地悪な先輩達を追い返したですっ!!」

 

「うーん……」

「どうしたですか、とっても強いお姉ちゃん?」

「なんていうんだろうか…… どこかあのハゲとソフトモヒカンの二人が本気で怒っているようには見えなくてな」

 

「おいアトラス、今のお前の顏が異世界転生したばかりで困惑している主人公みたいな顔をしてるぞ?」

「よくわからん例え方をするな! どんなツラだそれは!!」

 

「あの挑発が演技だって可能性はないかしら?」

「堅実なる解答…… 頼まれたのかアドリブなのかは分からんが、注目を集めて盛り上げる演出をしたいと思ってやっているのは間違いないだろう」

 

「でもなんでそんな事を? 確かに大会は盛り上がるかもしれないけど、それ以外の面では全然意味ないでしょう?」

「愚かなる発言…… 木下、お前のその頭は飾りなのか?」

『おい、それ優子に喧嘩売ってんのか?』

「……そうだとしたらどうするんだ、モデルA?」

「やらないわよ。 前にも一回そんなこと言われて喧嘩になって痛い目を見てきてるんだから、今回はおとなしくしてるわ」

「大いなる成長…… それが少しでも知恵に回せればよりよかったのだが……」

「それで結局は何が狙いなの?」

「先ほどのナレーターの発言もあって、明久チームに対する注目と期待の声援や喝采などと言った好奇の視線が集中していた。 きっと明久達もそれなりの高揚感とともに試合場に立っているはずだ」

「そうですね。 葉月もあのハゲたお兄ちゃんたちが出てくるまで興奮していたですっ!」

「そんな中、ただ普通に出て行ったのではつまらない噛ませ役もいいところ。 そんな流れを変える為には先程までの空気を崩壊させるくらいに派手に注目を集めつつ、それでいながら気分を害さない斬新なパフォーマンスが必要だった」

「それで、あんな滅茶苦茶やったって言う訳? 確かに暫くの間は盛り上がったけど、吉井君だけ全然付いていけずに盛り下がりそうだったじゃない?」

「恐らく奴等にとってはそれが計算外な事態だっただろうな。 一度ペースを掴んで盛り上げて、キリのいいタイミングまで舌戦を繰り広げた後で最高のボルテージの中で試合開始!……と言うのがあの二人の計画だったんだろうが」

「それを理解できない程に馬鹿だった豚野郎の頭では事態への対応についていけずに考えが止まり、最後の一言も相手のパフォーマンスを全否定する様な一言のみで終わらせてしまい、そのまま試合開始という訳です」

「わざわざヒール役になってまで盛り上げようとした先輩の演出も無駄に……って、美春!? なんでアンタがここにいるのよ!!」

「私だってあんな豚野郎が残っている下らない試合なんて見ようとは思っていませんでしたわ。でも……」

 

「「「吉井先輩! 頑張ってええぇぇぇ!!」」」

 

 清水が視線を向けた先にはラ・ペディスでバイトとして働く女子達の姿。

 

「彼女達を此処まで案内しないといけないですし、此処で彼を評価する材料を増やして置かないと今後あの豚野郎を罵倒出来ないじゃないですか?」

 

「なんなのよあの女の子達は!?」

「私の家の店でバイトとして働いている女の子達です。 あの豚野郎は意外と仕事は優秀でしかも面倒見も良いから、相当女の子達から慕われてるんです」

 

「「吉井君(明久)(アキ)本当にお店の仕事は出来るのかよ!?」」

 

「私も最初は信じられませんでしたわ。 来てすぐの時は本当にミスも多くて指導が面倒だったのですが……」

「アンタ、アキにパワハラとかして無いでしょうね?」

「ご安心下さい…… お母様から言葉通りお灸を尻に据えられてからは適切な指導を…… お姉様! ちょっ、そっちに関節は曲がらな…… 痛い痛い、痛いですわ!!」

 

「だけど意外ね。 まさかアキを褒める言葉が美春の口から出てくるなんて……」

「お姉様…… もし本当にそう思っているのならその手を離して美春の関節を解放してほしいです。 美春だって単にお灸を据えられる位でしたら、もっとバレない方法を模索しようと思うに決まってます。 でもまさか、あの豚野郎に庇われて頭まで下げられて許されるなんて、自分が恥ずかしくなってきまして……」

「予想がついた。 あらかた明久を貶めてクビにでも追い込もうとして指導のふりをして近づいたのはいいが、逆に明久の人徳に惚れ込んでしまっ…… 取り敢えずそのスタンロッドは危険だからしまっておけ。 赤い顔をしながら取り出しても否定できるだけの説得力は無いぞ?」

「み、美春の事はいいんですの!! 今はあの先輩達の演出について話していたのでは?」

「もう少しで決着がつくから今となってはどうでもいい。 島田妹も夢中になっている以上、余計な事を言って盛り下げたくは無い」

「説明が面倒だからって投げないで下さい! ちょっ、この野郎! 話を聞きなさ……」

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、瑞希。 さっきパンドラが苦しそうにしてお店離れちゃったけど、何をしたの?」

「どうやら成功のようですね。 あのお菓子の中に仕込んだ毒が効いたようです」

「瑞希姉ちゃん、機械に毒物は効かないんじゃ……」

「ええ、確かに"人間用の毒"は効かないでしょう。 しかし、機械にすら有効な……例えば、王水などはどうでしょうか?」

「王水って言ったら……」

「濃硝酸3に対して濃塩酸1の割合で混合させることで出来上がる液体。 この理論を塩酸アンモニウムと硝酸アンモニウムで行うと”固体王水”として金属酸化物のほとんどが熱によって塩化してしまいます。

 それを人間で言う胃袋にあたるパーツで化学反応を起こしてしまえば……」

「なにそれ…… なんか瑞希姉ちゃんが怖くなってきたんだけど……」

「まあ、それでもこれは机上の空論に過ぎず、失敗してしまったらなんの効果も無いまま終わってしまっていたでしょうから、そこまで怖がることも……」

「「そんなあやふやな作戦を躊躇なく実行できるところが怖いんだって(怖いのよ)!!」」

 

 

another story end

 

 

 

 

 

「今度はそっち!!」

「くそっ! なんでこっちの召喚獣の位置もわかるんだよ!? 行動パターンも変えて、しかも即興でのコンビネーションのパターンまで構築してから攻め立てているってのに……」

「居場所が分からなくなるようにかく乱するための作戦の内容も確かに見事だけど、その作戦の手の内を見せすぎでしたね!!」

「……楽勝」

 

 常夏コンビの二人が使ってきたのは試験召還大会中に何度も見せてくれた煙幕と大型の投擲武器によるかく乱戦法。

 実際にこれが初見だったりしたら絶対に破れなかったと思う。

 けど、この二人はこの戦法を過信し過ぎていたのか、腕輪が使える試合ではほぼこれで相手を完封し、特に時間もかけることなく勝ち進んでいくスタイルだった。

 そんな事実を知ってしまったら、もう後は僕のバカな頭でも簡単に答えは出せる。

 攻撃のタイミング時にわずかに動く煙の変化。 これを見極めて回避に専念。 相手がいら立ってきたら絶対にボロを出すからそこを狙って勝負を決めてしまえばいい。

 煙の変化から召喚獣の場所を特定して急接近。 そこから解放の指輪の力を使って召喚獣の腕輪の力を発動。

 僕の召喚獣の高速剣で滅多切りにしてしまえば……

 

『吉井・パンドラペアの勝利です!!』

 

 いかに点数の高い先輩方の召喚獣と言えど耐えられない。 例えるなら暴走し過ぎてタイヤの熱垂れを起こしたスポーツカーを相手にタイヤの余裕を残した車がドリフトで追い抜くのと一緒だろう。

 ……一緒だよね?

 

『表彰式を行いますので、お二人は前へとお越しください』

 

 後は表彰台にいるババア長から腕輪とチケットを受け取って……

 

「……吉井、あなたは結局気が付かなかった?」

「パンドラ、急にどうしたの?」

 

 変な汗のようなものをかいて、しかもおなかを抑えながら何を言ってるの?

 体調不良の振りには見えないけど……

 

「……一応この体調不良は本当」

「なにが言いたいの?」

「例えば…… なんで竹原は出てこなかった?」

 

 竹原が出てこなかった理由? うーん…… 僕らが一度騒ぎを起こした際にドアで潰しちゃったからだとおもっていたけど……

 

「……なんで、私達はおとなしくしていた? 途中で理由をつけてライブメタルを返してもらっていたにも関わらず」

 

 なんでって…… 一応おとなしくしているって約束していたじゃないか?

 

「優勝おめでとうさね。 これが景品の白金の腕輪だよ」

 

 ババア長から白金の腕輪を受け取る。

 後はこれを起動させて腕輪の機能を実演させれば……

 

「なぜ、学園長”が”わざわざ危険人物扱いしていた私たちを予定を切り詰めてまで学園に編入させた?」

 

 ……まって、そろそろなにが言いたいのかすらが分からなくなってきた。

 

「なんで…… ”大会終了のタイミングでこんな質問をしたのか考えられなかったの?”」

 

 さっきから要領の得ない質問ばかり…… いったい何を……

 

 

「そう……」

 

 ここからのパンドラの言葉に関してはほとんど覚えていない。 だけど、確かに聞こえたんだ……

 ババア長の方からだったけど、明らかにババア長の声とは思えない男特有の低めの声が……

 

「「ここからが本番だ!!」」

 

 

 

 

 ……さっきまでババア長だと思っていた奴がいきなり僕の腕輪をはめた方の手を斬り落とそうとしてきた。




実際にレプリロイドに王水飲ませたらどうなるんだろう……
意外と対策されてて大丈夫だったりして……

今度こそは早めに投稿したいけど……
仕事が意味もなく忙しいからなぁ……


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第14話

どんどん投稿間隔が空いていく……
申し訳なさがある一方で、納得のいかない出来で投稿したくないと思っている自分もいるのです……

ロックマン30周年にふさわしいかどうかは分かりませんが、自分の思う限り楽しめそうなストーリーを描いたつもりです。
久しぶりのバカテストと共にお楽しみいただけたらと思います!


第15問

日本国憲法は、人間が生まれながらにしてもっている、人間らしく生きる権利を定めているが、この権利を何と言うか答えなさい。



ヘリオス・霧島翔子の答え
「基本的人権」

教師のコメント
「正解です。これは決して侵してはならない人権ですね。」


吉井明久・坂本雄二の答え
「僕(俺)には無い物」

教師のコメント
「お二人には同情します」


テティス・プロメテ・パンドラの答え
「ボク(オレ)(私)以外の存在が持ってはいけないもの」

教師のコメント
「3人とも西村先生から道徳の補習を受けて来て下さい。 逃げたら確保したうえで『尊敬する人物は”二宮金次郎”』と言う生徒になるまで教育するそうです」












……翌日、死んだ目で「二宮金次郎バンザイ」とつぶやき続けているテティスの姿が発見された。




「いけない!」

「どうしたんだよエール……」

「いいからどいて!」

 

 学園長らしき人物から殺気を感じ取ったエールは大急ぎで客席から飛び出してロックマンに変身する。

 いきなりの事態にただ困惑している客を無視して全力のダッシュで走り抜ける。

 

「サセルカ!」

 

 同じタイミングでシャルナクがロックマンに変身していたようで、エールよりも早いタイミングで苦無を投げつけている。

 

「この世界の歴史を極力壊さないように腕輪を手に入れたかったのだが、ウラ目に出てしまったようだね」

 

 エールとシャルナクの攻撃を軽々とよけて見せた学園長?が意味深な事を言い出してきた。

 その声は明らかに女特有の声ではなく、どちらかと言えば中年のおっさんのような声に近い。

 

「コノ声ハ……」

「やはり貴様だったか。 レギオンズの最高権力者”三賢人”の一角にして究極の進化を夢見たロックマンの創造主……」

 

 いつの間にかロックマンに変身していたヘリオスは、凶行に走った学園長?の正体に気が付いているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まさか、この声は!』

「モデルA、何か知っているの?」

『説明は後でする! とにかく急いでロックマンに変身してくれ!!』

「ちょっと待って。 私はヘリオスや吉井なんかと違って、人前で堂々と変身ヒーローになれる度胸なんて無いわよ……」

 

 客席を離れ、人目を避けることが出来る場所に移動してからロックマンに変身する優子。

 

『もういいか?』

「ええ、まさか学園長がプロメテとパンドラの二人と内通していたなんて思わなかったわ。 それだったらあれだけ騒ぎを起こしている二人を学園祭前に編入させるなんて無茶な真似ができ……」

『そんなんじゃないんだって! あのババア長は”ババア長じゃない”んだよ!!』

「なに訳分からない事言ってるのよ?」

 

 モデルAの要領を得ない説明に困りながらも、両手の拳銃にエネルギーを装填する優子。

 

『この頭でっかちのバカ! あのババア長は偽物。 いつからかは分からないけど入れ替わっていたんだ!』

「入れ替わって…… って、誰がいつ入れ替わったって言う訳?」

『オイラには分かった。 ついさっきまで気が付かなかったオイラもドジだけど、あの禍々しいライブメタルの力が漏れたのと同時に分かってしまった……』

 

 モデルAの弱弱しい声から不安を感じ取る優子。

 それだけ、学園長と入れ替わっていたと言う存在が強敵である事が伺えた。

 

『未来世界の最高権力者の一人で、オイラのオリジナル……』

 

 

 

 

 

 召還大会会場に戻った優子は先ほどまで表彰台があった場所に目を移した。

 そこには学園長の姿は無く、全く別の大男の姿がそこにはあった……

 

 

 

「『マスター・アルバート!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしはマスター・アルバートと言うものだ。 はじめまして吉井明久くん」

 

 エールとシャルナクの二人に助けられた明久はすでにロックマンに変身しており、Zセイバーを構えている。

 

『マスター・アルバートォォォォォォ!!』

 

 モデルAの咆哮と同時に銃を乱射しながら現れる木下優子。

 だが撃ち込まれた弾丸の全てがバリアのようなもので弾かれてしまう。

 

「やあ、君はグレイ君のライブメタルを勝手に使ってロックマンに変身している木下優子くんだね? プロメテから聞いているよ……」

 

 またしてもアルバートの顔面に何発もの銃弾が撃ち込まれる。

 言うまでもなくこれは木下優子の先制攻撃だ。

 

「随分と一方的ね。 権力者だか創造主様だか知らないけど、お偉いさんなら何しても許されるって思っている訳?」

『もうオイラは何も突っ込まないぞ……』

「まあ、確かにいきなりシツレイな事をしたのはこちらのほうだ。 だが、こちらにも事情があってこのようなおこないをしていると言うコトだけはリカイしてほしい……」

 

 またしてもアルバートの言葉がさえぎられる。

 騒ぎを起こしてくれた上に言い訳ばかりのアルバートの言葉に付き合っていられなくなった優子がさらに銃弾を浴びせ続けたのだ。

 しかも先ほどのような数発なんて優しいものではなく何十発もの弾丸を……

 

「なるほど、リカイする気もないと言う訳か…… まあいいだろう。 私がここに来たこの瞬間に私の計画は終わっているのだからな」

『どういうことだ!』

「こういう事だよ、モデルA」

 

 アルバートが後方に手を掲げたとたん、空中に禍々しい気配を放つ裂け目が現れた。

 その先に移っている光景は未来世界でしか見られない完全に機械によって管理された人工的な森丘だ。

 

「モデルA、私が君に敗れた時に残した言葉を覚えているかね?」

『ああ、グレイがみんなと共に生きていく運命を選んだ時に「ゆるやかな平和の世界でゆっくりと朽ちていくがいい」って……』

「あの時、私は死んでもいいと思っていた。 もう一人の私であるキミとグレイ君が私を超え、長年研究していた進化の可能性を見せてくれた。 そのことに私は満足していた」

 

 そう言ったアルバートの笑みはとても柔らかく優しいものであった。

 この笑顔だけを見ていれば、世界を滅ぼそうとした悪人にだけは見えないだろう。

 

『ならとっとと消えてしまえよ。 みっともなく復活して過去の時代にまで迷惑をかけるな!!』

「私が生きていられたこと自体が全くの偶然なの…… 木下君、いい加減私の頭部に集中攻撃をするのをやめてもらえないだろうか? さっきから防御壁を張って守っているから会話が出来ているが、そろそろやめてもらえないと話しに集中できないのだよ」

「くっ…… アニメとか見ててペチャクチャと喋っている間になんでみんな仕留めようとしないのかと思ったら、こういう事なのね」

「いやいやいや! 確かにバトルアニメを見てて一度は思う事だけど!?」

 

 そんなお約束やぶりを狙って本気で実行に移すその行いにシャルナク以外の皆は呆れ顔しか出来ずにいる。

 

「とにかく、私にこれ以上の攻撃はやめてもらいたい。 防ぐのは容易だが、話を続けられないのだ」

「いやよ。 グレイ君以外の人間がモデルAを使ってロックマンになると一日百発は撃たないと気が済まない体質になるみたいなの」

 

「絶対嘘だ! 普段からそんな素振りは見せてないじゃないか!」

『実際に普段から銃の乱射とかやってないしな!』

 

 そもそも一日に百発も銃を乱射する女子高生がいるとなったらいくら文月の街でもニュースになるだろう。

 陰でコソコソと行動して誤魔化せるような、程度の低い問題ではない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、とにかく話を戻すぞ!」

「別に話さなくていいわよ。 どうせ竹原教頭に協力して学園長の立場を貶める為に計画に協力していたとかそんなところでしょ?」

「木下君、あのような小物など本来の時の流れに身をまかせていればロックマンの力を得ていない吉井君程度でも容易に対処出来る。 だから、この清涼祭の件に関しては私が介入する意味などないのだよ」

 

 竹原の言われようも散々だが、先ほどから何度も猫かぶりをやめて会話を潰したがっている優子の発言に徐々に苛立ちを覚え始めているアルバート。

 

「確かにわたし達ロックマンの介入が無くとも吉井君ならばこの大会に優勝し、この腕輪を手にすることが出来ただろう」

 

 そう言ったアルバートの手には明久が貰うはずだった腕輪である。

 

「ならなんでこんなよけいなことをしたのよ? 一度腕輪を渡した後で吉井君を誘拐して暗殺なり誘拐辺りでもして強奪した後で、解析して返すとかもっとうまくやれる方法がアンタなら出来たんじゃないかしら?」

 

 エールの言った通りである。 確かに今の明久宅の総力は世界の軍隊を総動員してようやく傷を与えられるかと言ってもいい、まさしく世界一安全なマンションだと言っても過言ではないだろう。

だが、裏を返せば”それ以上の戦力を持つ化け物”ならばヘリオス達を蹴散らして上で誘拐すると言う選択肢だって取れるだろう。

 

「……全部プロメテとパンドラのせいだ」

「「「……は?」」」

 

 ライブメタルを含めた全員がアルバートの言葉を理解できていなかった。

 プロメテとパンドラが文月に来てからの事を思い出そうとしているが皆目見当がつかずにいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロメテとパンドラの二人には本来3年生として編入させた上で決勝戦で”負けてもらう”予定だったんだ!!

それならば、あの3年生に何かトラブルがあったとしても負けた人物が変わるだけで多少のズレが生じても歴史そのものに変化を与えるような事にはならなかったんだ!!

それなのに、編入前にあんな大乱闘……いや、あれはもはや戦争だ…… と、とにかく時の流れを修復できるかどうか怪しくなるほどの大事件を起こしてくれたせいで事態に収拾をつけるのに苦労させられていたのだ!!」

 

 半泣きで怒鳴り散らしながら語るアルバートが若干かわいそうになってきた。

 その一方でプロメテとパンドラが笑顔でお互いの手の平を叩く、いわゆる”ハイタッチ”をしていた。

 未来世界にいた時に比べ、二人を縛り付ける力が今のアルバートにはないのだろう。 プロメテとパンドラの二人からは完全に舐められている。

 

「そのために仕方なく学園長になりすまし、二人を二年Fクラスに押し込んで余計な行動を慎ませておくことで、ようやく私の計画が進められると思ったのだ」

「だったらあの営業妨害や新しいロックマンによる誘拐もアンタの仕業なのかしら? 時の流れの為とか言ってアタシ達ロックマンを分断して……」

「それはあの竹原とか言う小物の仕業だ。

もっとも、新しいライブメタルと言うものに心当たりが無い…… いや、まさかあの試作品だったライブメタルが流出したのか? しかし、モデルKとモデルEはボツにした上で封印して…… 私が過去の時代に転生した瞬間に流れ着いた?」

 

 どうやらモデルKとモデルEのライブメタルを作ったのはマスター・アルバートで間違いないようだが、持ってきた覚えはないようだ。

 

「ああ、それなら編入前にお前がコソコソと隠していた奴を適当な相手に小銭で売ってきたライブメタルだぞ?」

「ちょっと力に困っている奴に売ったらそこそこの小遣いになった……」

「「『お前らの仕業かァァァァ!!』」」

 

 どうやらプロメテとパンドラはアルバートがFクラスに押しこむ前からすでに行動済みだったようである。

 よく見てみたら二人が財布の中身を見ていたが、その場で見た限りだと軽く20万は入っているようだ。

 

「プロメテ!パンドラ!! またキミたちの仕業かね!? 制服代と小遣いは事前に用意しただろう!! なぜそのような事を……」

「マスター・アルバート、お前な……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「制服代はたったの1万円ぽっちじゃ全然足りねぇんだよ!!」

「女子なら雑貨品にもこだわりたい…… 鞄とか……」

 

 

 どうやらアルバートは日本における物の値段の相場が全く分からなかったようだ。

 だからと言って使いこなせたならば非常に危険な物を躊躇なく売りさばいて金に換えると言うのはやりすぎだ。

 

「なら遠慮なく私に言ってぼったくると言う手もあっただろう! まあ、金だけならどうにでもなるのだが…… なぜわざわざ封印したライブメタルを勝手に流出させたんだ!?」

 

「「その方がアルバートへの嫌がらせになるから」」

 

 未来世界で奴隷のように散々こき使ってきた分の報復がまさか過去の世界で行われていたとは全く思っていなかったアルバート。

 この後の展開は容易に想像が着いた。

 プロメテとパンドラのせいでロックマンの力を身につけたチンピラがルートは分からないが銃器などを強奪。

 たまたま別の目的で動いていた竹原が彼らに接触。 大金と交渉力活かして彼らを買収し、営業妨害や誘拐行為などを行ってきた。

 

「まさかオレがこの町で暴れた事がきっかけでこんな事態を招いてしまうとはな……」

「愚かなる行動…… 今更そのような所に焦点を当てても意味が無いぞ」

「確かにそれがきっかけだったみたいだけど……」

『オイラはもうこいつらの話に付いていけないぜ……』

 

 様々な存在の思惑が複雑に絡んでしまったことが原因でこのような異常事態が起こってしまったのだろう。

 もしアルバートの思惑通りに事が進んでいたならエールの言った通りに明久の腕輪を手にした上で後ろにある裂け目を生み出して見せただろう。

 時の流れとやらを乱す事も無く、このように衆目に姿をさらすことなく計画を達成できた。

 

「今気が付いたんだけど……」

「どうしたの木下さん?」

 

「その時の流れっていうのに逆らわずに事を成し遂げたかったのでしょう?

だったら別にいま変な行動には出ないでおとなしく吉井君にその腕輪を渡して欠陥を治すと言う名目で回収してそのままこの時間を飛んでいけそうなその穴を作る計画を進めても良かったんじゃ……」

「「・・・・・・・・・・・・あ!!」」

 

 優子の言った通り、もしアルバートが作った大穴を準備するのに腕輪が必要だったのなら回収するタイミングはもっと後でもよかったのである。

 修理を名目に腕輪を回収し、その腕輪を使えばより楽に計画を進められたのだ。

 

 

「いや、確かにこの欠陥のある黒金の腕輪が必須ではあるが、必要なのは腕輪だけではないのだよ」

 

 

 

 裂けた空間に手を掲げたアルバート。

 その瞬間、未来世界組の面々には見覚えのある存在が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「クロノフォス・ザ・トリデンロイド」

 

 カブトガニのような姿をした青色のフォルスロイド。

 ロックマンの事情を何一つ知らなかったころのグレイを流氷の世界で苦しめたマスター・アルバート製フォルスロイドの内の一体である。

 

「シャーッシャッシャッシャッ! この時を待っていたぞ 復習の時を…… って、あれ? 動けねぇんだけど……?」

 

 人選を間違えたのではないか? クロノフォスは地面の上に伏せたまま全く動けずにもがいているだけだ。

 

「クロノフォス君、今すぐにタイムボムを発動してくれないかね? 発動させてくれたら空中に浮けるようにしてやってもいいのだ……」

 

 このままアルバートは向こうに見える未来世界らしき場所へと逃げる気なのだろう。

 

「処刑の時間だ」

 

 クロノフォスの尾びれのようなものが時計のように回転したとたん、すべての物の動きが遅くなっていく。

 恐らく、これがアルバートが使わせたクロノフォスの技「タイムボム」の特性なのだろう。

 

「逃さないって言ってんでしょ!!」

『これ以上好き勝手にはさせない』

 

「待ちなさい!!」

『マスター・アルバートォォォォォォ!!』

 

「逃ガスカ!!」

『十字手裏剣!!』

 

 空間の先に逃げようとするアルバートを止めようとエールはダブルチャージショット、優子はアルバートへの集中射撃、シャルナクが十字手裏剣で攻撃を仕掛けるが、それらすべてが容易に弾かれてしまう。

 明久も疾風牙で追撃を掛けようとしたが、意味を成さずに弾かれてしまう。

 

 更に何を思われたのか、アルバートは明久の頭を捕まえて地面へと叩きつけてもいる。

 その上に追撃とでも言わんばかりにその顔面を徹底的に地面へと執拗にこすり付けて投げ飛ばす。

 その激痛に耐えきれなかった明久は顔面を抑え、シャルナクの肩を借りながら退場せざるを得なくなってしまった。

 

 

「木下君、そのモデルAは大事にしてくれたまえ。 このライブメタルは私の”影”なのだから」

 

 急に浮き上がったアルバートの動きが速すぎる。

 アルバートはタイムボムの影響を全く受けていないようだ。

 

「待てやコラ!」

「私達も置いてけぼり……?」

 

 

 どうやらプロメテとパンドラの動きも遅くなっている。

 完全にマスター・アルバートからは見捨てられているようだ。

 

 完全無視を決め込んだアルバートはそのまま世界の境界となっている裂け目の中に入ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あれ? オレ…… 置いてけぼり……」

 

 召還されたクロノフォスを置き去りにして……

 

 

 

 

 




明久「でも実際になんでこんなに長引いたのさ?」
テティス「こんなに投稿時間が長いのに文句を言いつつも待っててくれている人だっているんだよ?」

閻魔刀「うん…… 言い訳がましいけど…… まずはその人への謝罪も兼ねた返信で書いた通りに自分でも全く納得がいかない出来で作り直していたのが理由の一つ」

アトラス「ほかにも理由があるのか?」
シャルナク「ドウセエロゲーニハマッテ忘レテイタトカダロ。 コノムッツリスケベガ……」

閻魔刀「……復讐心に狂った男が女の子を痛めつける系がそこまでキツイものだとは思わなかった」

ヘリオス「愚かなる選択。 興味本位で変な所に突っ込むからそのような目に遭うのだ」

閻魔刀「あと、もう一つの東方とバカテスのクロスの方もうまくいかなくて参考になりそうな他作品を読みながら色々と調整中だった。 ヤンデレについて勉強中なんだけど、その辺が生きそうなのがあと最低でも5・6話は先になりそうなんだよね……」

グレイ「おっと…… ゲーム実況やりたいとか言っていろいろやっておきながらくじけかけて時間を無駄にしているところをボクは見逃したりなんてしないよ!」


閻魔刀「諦めるものか! ゲーム実況とクロスSSを思う心がある限り俺はまだ戦える! 人は戦う事を辞めた時、初めて敗北する! 戦い続ける限りはまだ敗北では無い……」




















アルバート「もう食っていいですよ?」
FFF団「いらっしゃ~いwww」

閻魔刀「やめてぇぇぇぇぇ! いやだああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


楽しみにしてくださった皆様には大変申し訳なく思っています。
こんなギャグに走らないと死んじゃう病な作者ですが、失踪だけはしないように頑張っていきたいです。


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