転生者は友が多い (北方守護)
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小説設定など。

村雨 武昭 (むらさめ たけあき)

身長 178cm 体重 65kg

髪 黒色のショートヘア

瞳 左眼黒色 右眼刃物で斬られた傷で見えなくなっている。

以前に喉を切られたので傷痕を隠す為に束が開発したチョーカーをしている。

そのせいで声が出ないので杖にあるボタンでモニターを出して意思疎通を図る。

村雨家に伝わる村雨流格闘術の中の体術の免許皆伝。

 

村雨 博嗣(むらさめ ひろつぐ)武昭の父親。

村雨 由香里(むらさめ ゆかり)武昭の母親。

 

一夏とは幼稚園、箒とは小学生、鈴は日本に来てからと、それぞれが幼馴染。

千冬、束は互いの弟妹を介しての付き合い。

実は篠ノ之柳韻と博嗣は学生時代の同級生だった。

 

武昭は小さい頃から宇宙に憧れており、それを聞いた束に興味を持たれた。

両親は宇宙開発関係の仕事をしていたが研究中の事故で命を落としている。

束がISを発表した時に武昭の両親達だけが受け入れたので束とは仲が良かった。

 

織斑姉弟とは中学生ほどの千冬が真冬の公園に赤ん坊の一夏と一緒にいた時に博嗣が保護をした。

その縁があって千冬から見て武昭はもう1人の弟の様になっている。

その後、武昭の両親が亡くなった時に千冬が保護者になっている。

 

2回目のモンドグロッソの時に一夏の代わりに攫われて、そこから束が見つけるまでは行方不明になっていた。

束が見つける迄に攫った組織によってあらゆる拷問を受けて体中に多量の傷跡がある。

 

 

人間関係。(IS学園に来る前)

 

武昭から見た場合。

一夏→女性関係で軽く酷い目にあっているが、それも受け入れて付き合いが良い。

千冬→義姉として見ていた。一夏と共に家事を教えたが最低限しか出来ない。

箒→一夏の事でよく相談に乗っていた。

束→純粋に宇宙に行きたい想いが伝わり、千冬とはベクトルの違う義姉みたいなもの。

鈴→イジメから助けてもらい好きになったが中国に戻る前に本当に好きなのか問われて考えた結果、本当に好きだと思う。

 

他の皆から見た場合。

一夏→よく勉強などを教えてもらっていた。時たま何も言わずに殴られる事があった。

千冬→最初は壁を作っていたが、過ごす内にもう1人の弟の様に思っている。

箒→一夏が好きな事を知られているがからかったりしないで真剣に相談に乗ってくれる。

束→出会った時は興味がなかったが武昭の夢と自分の夢が同じ物だと感じて認める事になった。

鈴→最初はイジメから助けてもらった憧れだったが、真剣に考えて本当に好きな事を自覚した。

 

 

 

村雨流格闘術。

体術、剣術、杖術(じょうじゅつ)、槍術、砲術(ほうじゅつ)索縄術(さくじょうじゅつ)、調合術、忍術の8つから構成される格闘術。

起源は戦国時代の合戦と大陸から渡って来た拳法が合わさったと伝えられている。

初段〜免許皆伝迄ある。

 

体術ー素手での格闘術で移動法や呼吸法なども分類されている。

剣術ー基本刀を使った格闘術でその中でも大刀や長剣、二刀流などに分かれている。

杖術ー現代で言う薙刀に近い格闘術。

槍術ー今で言うジャベリンやランスを使う格闘術。

砲術ー鉄砲や大砲などを使用する。

索縄術ー相手を捕縛したり鞭などを使う格闘術。

調合術ー薬や毒などを作り出す。

忍術ー忍者が使ったと言われている技術。

 

ちなみに今の時代では調合術と忍術が記された書物は失われたとされている。

一応、それぞれには2()()()()()()があるとされている。

 

武昭 体術免許皆伝。他のは五段迄しか習得していない。

博嗣 16代目当主。全て免許皆伝。

由香里 棒術・索縄術免許皆伝。他のは六〜八段迄習得。

 

機体設定。

 

名前 四聖獣(しせいじゅう)

待機状態☆が書かれたチャームが着いたペンダントで☆の中に赤、青、黄、緑が1つになった球型のコアが埋め込まれている。

(丸の中が十字に区切られて、それぞれのマスに色がある感じです)

 

このコアは束がISの開発途中に失敗した複数のコアを武昭の両親が合わせて作った物で束でも作成するのが難しい。

両親と束は、このコアの事をU・Fコアと呼んでいる。

 

U・Fコア(ユナイト・フォームコア)

それぞれのコアにそれぞれの武装が収納されており四聖獣の場合は4つの形態がある。

 

四聖獣の形態。

基本兼よく使用する形態。

白虎(びゃっこ)

機体イメージ=仮面ライダー龍騎のタイガ。

近・中距離攻撃タイプ。

武装は肘までの手甲で手を強く握ると拳の部分から4本の爪が出て、爪を飛ばす事も出来る。

(イメージとしてはベアークロー)

爪を出さずに普通に殴る事も可能。


9月25日追加。

朱雀(すざく)

機体イメージ=超者ライディーンのライディーンファルコン。

接近戦兼高速機動用。

武装は腰に下げた鞘に入った剣。

 

音速(ソニック)

背中にある翼型のブースターを使った高速移動。

 

村雨流剣術 鳥籠

相手の周囲を高速移動しながら斬撃を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実は転生者だが、その時の記憶は無くなっている?……


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過去話
過去話 心に響く鈴の音


鈴が日本に来た頃……

まだ日本語が話せない鈴はクラスメイト達にいじめられていた……

そんな中、1人の少年が鈴に話しかけた……


まだ武昭と鈴が小学生の頃……

 

小学校の武昭のクラスに1人の転校生が来た。

その子は小柄な女の子で背中までの長さの茶髪の左右をリボンで縛っていた。(俗にツインテールと呼ばれている髪型だった)

 

その子は何処かオドオドとしており、そしてある特徴があった。

 

「エット……チュウゴクカラキタ……ファン・リンインテイイマス……ヨロシクオネガイシマス」

 

「それじゃ凰さんの席は村雨君の隣ね」

担任が言うと武昭が手を上げたので鈴は、そこに座った。

 

「初めまして凰さん、俺は村雨武昭って言うんだ、宜しく」

 

「アッ、ソノ……ヨロシク……オネガイ、シマス……」

自己紹介をするが鈴はどこか怯えていた。

 

(どうやら彼女は日本に来て、まだまも無いみたいだな……)

休み時間になったので武昭が鈴を見てるとクラスの女子達が周りにいたが何処か余所余所しかった。

 

それから数日経ったある日……

 

「さてと掃除も終わったから帰って特訓をしないとな……」

 

「なぁ!お前中国から来たんだろ?だったらリンリンって呼んでやろうぜ!!」

 

「あぁ!パンダと同じだな!そうだ、この髪の毛を切ってやろうぜ」

 

「ほら、笹を食べるんだろ?」

 

「ヤ、ヤメテ……クダサイ……ワタシハ……パンダジャアリマセン……」

武昭が荷物を持って帰ろうとした時に校舎裏から声がしたので見るとクラスの男子達が鈴をいじめていた。

 

「これは見逃せないよな……()()()()()()()()()()()()()()

武昭は何かをするとその場に向かった。

 

「おい、お前らそんな事はやめろ」

 

「なんだよ村雨か、邪魔するなよ」

 

「そういや、コイツってこのパンダの隣の席だったよな?」

 

「もしかして、このパンダの事を好きになったんじゃねぇの!?」

男子達は武昭を見て笑っていた。

 

「まぁ、好きか嫌いかで言ったら()()としては好きだけどね……それ以上に多数で1人の、しかも女の子をいじめてるのは見過ごせないんでね!」

武昭は男子達に近づくと同時に1人を殴り飛ばした。

 

「なっ!?お前!確か武術を習ってるんだよな!?」

 

「あぁ!そんな奴が一般人に手を出して良いのかよ!!」

 

「それがどうかしたか?俺が武術を習ってるのはお前らみたいな奴から力が無い人を守る為だよ!!」

武昭は男子達に向かうとそのまま相手を始めた。

 

少しして……

 

「大丈夫?凰さん、ケガとかは無い?」

 

「アッ、ハイ……ダイジョウブデス……タスケテクレテ…アリガトウゴザイマス……」

鈴は武昭と一緒に下校していた。

 

「凰さんってまだ日本語が上手くないんだね……じゃあ〔コッチで話した方が良いかな?〕」

 

〔えっ!?村雨さんって中国語が話せるんですか!!〕

鈴は武昭が中国語を話した事に驚いていた。

 

〔あぁ、両親から海外に行く事があっても困らない様にって基本会話位は話せるんだ〕

 

〔そうだったんですか……私……日本に来て……少し心細かったんです……だから日本語を習おうにも……誰に頼めば良いか、分からなかったんです……〕

 

〔なるほど……じゃあ俺が日本語を教えようか?〕

 

〔えっ!?良いんですか!!そう言ってくれるのは嬉しいです……なら、これから宜しくお願いします!!村雨さん!!〕

 

〔宜しく、そうだ幼馴染からは武昭って呼ばれてるからそう呼んでよ〕

 

〔そうですか……なら、私の事も(リン)って呼んでください……家族からはそう呼ばれてますから〕

 

〔うん、分かったよ鈴……〕

その後、2人は仲良く下校した。

 

そして武昭から日本語を習ってたある日の事……

 

(そうか……私は……武昭の事が好きなんだ……)

鈴がクラスの女子達と仲良くなって恋バナをしていた時に自分の気持ちに気づいた。

 

それから鈴はずっと武昭の事を思い続けていた。

 

そして中学生になったある日……

 

鈴は親の都合で中国に帰る事になった。

 

鈴は告白しようと決意したが

武昭は一夏と一緒に千冬のモンドグロッソを観戦をしにドイツに行っていた。

 

それから戻ってきてから告白しようと心を落ち着かせていたが……

一夏は帰ってきたが武昭は、そこにいなかった。

 

 

それから時間が経って……

 

「それは本当なの!?」

中国にあるISの訓練施設で鈴はIS学園にいる中国の生徒からある話を聞いていた。

 

それは……

〈織斑一夏に続く2人目の男性操縦者が発見され、その人物の名前が【村雨 武昭】との事だった〉

 

それを聞いた鈴は……

 

「良かった……武昭……やっぱり生きてたんだ……」

膝から崩れながら感動して泣いていた。

 

そして学園へ向かう飛行機の中で……

 

(武昭……あの時言えなかった想い……必ず伝えるから……)

鈴は強く決意していた。

 

 

 




文章の途中にある〔〕は中国語と思ってください。


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過去話 金の貴公子が

シャルロットが武昭に正体がバレた日の夜……

シャルロットは過去の映像を見ていた……

それはまだシャルロットが小さな時の話……


武昭に正体を知られた日の夜……

 

シャルロットは夢を見ていた……

 

まだシャルロットが6〜7歳の頃……

 

「ふぇ〜……お母さん、どこ?〜」

母親と買い物に来たシャルロットは逸れて迷子になっていた。 

 

「どうしよう〜?……このままなら……」

 

「ねぇ、どうしたの?」

シャルロットが泣きながら母親を探してると1人の同い年の黒髪の男の子が声をかけた。

 

「えっと、あの、その……」

 

「大丈夫だよ……俺は君が困ってる様に見えたから何か出来るかなと思って声を掛けたから」

 

「そうだったんだ……実は……」

シャルロットは自分が迷子である事を男の子に説明した。

 

「そうなんだ、じゃあ俺が一緒に探してあげるよ」

 

「えっ!?そんないいよ!逸れた私が悪いんだし……それに君も誰かと一緒に来てるんじゃないの?」

 

「うん、父さんと来てるよ。 けど困ってる人を見過ごす方が怒られるんだ、だから……ね?」

 

「そうなんだ……なら怒られない様に一緒に探してもらうよ」

男の子が右手を差し出すとシャルロットは笑いながら、その手を取った。

 

「そうだ、まだ君の名前を聞いてなかったっけ?」

 

「ん?あぁ、忘れてたか……シャルロットの笑顔が可愛くて見惚れてたよ」

 

「フェッ!?な、何を言ってるの!?それよりも君の名前を教えてよ!!」

男の子の言葉を聞いてシャルロットは赤い顔をしながら聞きたい事を尋ねた。

 

「あぁ、俺の名前は村雨、村雨武昭って言うんだ。友達からは武昭って呼ばれてるから【ロッテ】もそう呼んでくれ」

 

「分かったよ武昭……それよりもロッテって……私の事?」

 

「あぁ、どうやら俺は友達を呼ぶ時に皆がつけるのとは違うあだ名をつけるみたいなんだ、これが嫌なら……」

 

「ううん、嫌じゃないよ、ただ初めて呼ばれたからちょっとビックリしただけだよ」

 

「そうか、じゃあロッテの親を探そうか……どの辺りで逸れたんだ?」

 

「うん、あのね……(凄く暖かい手だな……それに……)」

2人は手を繋ぎながらシャルロットの母親を探していたがシャルロットは武昭の優しさに触れて喜んでいた。


「ううん……あれ?……まだ、こんな時間なんだ……アッ……」

シャルロットが目を覚ますとIS学園の寮の部屋で隣のベットには武昭が眠っていた。

 

「武昭……僕がここに来た時に君に会えて、とても嬉しかったよ……けど……」

シャルロットは武昭のベッドに近づくと軽く崩れてた布団を直した。

 

「全く……武昭、いつかは昔の事を思い出して……そして“私の事をあの時みたくロッテって呼んで……おやすみ……」

シャルロットは微笑みながら武昭の頭を優しく撫でると自分のベットに戻って眠りについた。

 

その後シャルロットは再び夢を見たが、その中ではシャルロットは自分の正体が知られており武昭も記憶を思い出していた。

 

そして、周りの皆も笑顔になっていた。

 

 

 




束の研究室で……

「うーん……タッ君の記憶は少しずつ戻って来てるけど……まだ全てが思い出せてないのは……」

「束様、少し休憩をした方が良いアイデアが出ると思われます」
束が武昭の事を考えてるとクロエが休憩を促した。

「うん、クーちゃんの言う通りだね、一息いれようか、何か飲み物を淹れてくれる?」

「はい、分かりました、少しお待ちください」

(タッ君が記憶を思い出してる要因に、昔に会った彼女達が関係してるのは私も分かってる……けど……)
クロエがその場を離れてから束は何かを考えていた。


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過去話 昔のバレンタイン。

ちなみにこの話ではシャルロットの正体はバレていて、ラウラも仲良くなっています。


2月14日……

 

その日、世間では男女問わず、ある意味戦い(渡せるか?貰えるか?)と考えても良い日だった……

 

それはIS学園でも同じであった……

2月13日の放課後、料理部の部室で……

 

「よしっと、後はこれを冷蔵庫で冷やして固めるだけね」

 

「鈴、そっち終わったならこっちを手伝ってくれる?」

 

「えぇ、分かったわシャルロット」

鈴とシャルロットがチョコレートを作っていたり……

 

「うん……後は一晩置いて馴染ませるだけ……」

 

「カンちゃんは3種類のロールケーキを作ったんだぁ〜」

 

「本音は……クッキーなんだね……」

 

「お姉ちゃんからレシピを教えてもらったのぉ〜」

簪がロールケーキ、本音がクッキーを作っていたり……

 

「お嬢様、今回はそれを渡すのですか?」

 

「えぇ、本来なら何か手作りしたかったんだけど、ロシアに機体調整でいたから時間が無かったのよ」

虚と楯無が話していたり……

 

「おいセシリア、直火で溶かすと焦げるぞ?」

 

「そうですか、ありがとうございます箒さん」

 

「ラウラ、もう少し細かく刻むと後の作業がやりやすいんだ」

 

「なるほど、細かくとは言ったがこれよりもなのか……」

箒がセシリアとラウラに教えながらに作業したりと色々していた。

作業を終えた皆は虚が淹れた紅茶を飲んで休息していた。

 

「ありがとう虚ちゃん、お茶を淹れてくれて」

 

「いえ、私は手が空いてましたので」

 

「本当に虚さんの紅茶は美味しいですわ、私がよく行ってるお店の物と遜色ありません」

 

「お姉ちゃんは昔からお茶を淹れるのが上手なんだよぉ〜」

 

「あまり私は紅茶を飲まないが、これは美味しい」

 

「私もどちらかと言えば烏龍茶の方だけど、箒の言う通りね」

 

「そう言えば楯無さんは買ってきた物を渡すって言ってましたけど、どんなのですか?」

 

「私もお姉ちゃんが向こうで買って来たって事しか知らない……」

楯無はシャルロットと簪の言葉を聞いて軽く笑うと近くにあった紙袋から何かを取り出して机の上に置いた。

 

「仕方ないわねぇー 箱だけ見せてあげるわよ、私が買って来たのはコレよ!」

 

「コレって……海外でも有名な店の物ですわ、世界中で本店と支店を合わせても数店しか無い店の」

 

「ふむ、箱に書かれているが……これはアルコールが入っているのか?」

箱を見たセシリアが軽く驚き、ラウラが何が書いてあるか確認した。

 

「そうよ、コレは手に入れるのも難しい物でたまたまロシアに戻った時に支店で買って来たの」

 

「お姉ちゃん、それってウィスキーボンボンって事?」

 

「いえ、これは色んなフルーツで作ったリキュールが入ってる物よ」

 

「そうなんだ……あれ?箒、鈴、何か顔色が悪いけど……どうかしたの?」

シャルロットの言葉を聞いた2人は体をビクッとさせた。

 

「やっぱり……あんたも知ってたのね、箒、武昭の()()を」

 

「あぁ、鈴がそう言うという事は……()()を知っているのか?」

2人の話してる内容に他の皆は頭を捻ったが本音は気になった事を尋ねた。

 

「ねぇねぇ〜リーリーとしののんが言ってる()()って何なの〜?」

 

「まぁ……別に話しても問題は無いだろう……聞きたいんですが楯無さんは武昭に本命として、それを渡すのですよね?」

 

「えぇ、だから買って来たのよ武昭君の為に……もしかして武昭君てお酒に弱いのかしら?」

 

「はい、まだ武昭が小さい時にご両親と一緒に父に会いに来たのですが、その時に夕飯を食べたんです。

そこで奈良漬を出したんですが、切り分けた一切れを一口食べただけで次の日の朝まで眠ってしまったんです」

 

「そうなの?……」

 

「じゃあ武昭君には何か違う……あら?鈴ちゃん、何か顔が赤いけど……」

楯無が鈴を見るとさっきまでとは違い顔を真っ赤にしていた。

 

「えっ!?べ、別に何でも無いわよ!!そうだ!私、ちょっと用事を思い出したから!!」

 

「ちょっと待て……行ってしまったな……」

 

「急にどうしたのでしょうか?……」

鈴が慌ててその場を離れたのをラウラとセシリアは疑問に思っていた。

 

「……あっ、ごめんね僕もちょっと……」

シャルロットは何かを感じたのがその場を離れた。


鈴は寮の自室のベッドに寝っ転がりながら足をバタバタさせて枕に顔を埋めていた。

 

(もーう!箒と私が覚えてるのが違うじゃなーい!!)

 

トントン〔鈴ー?僕だけど居るー?〕

 

「フェッ!?シャ、シャルロット!?どうしたの!?」

鈴はシャルロットが部屋に来た事に驚いた。

 

〔うん、鈴の調子が変だったから様子を見に来たんだけど、大丈夫?〕

 

「え、えぇ!大丈夫よ!!」

 

〔そうなんだ……じゃあ入って良いかな?〕

 

「ちょっと待ってて……(アレ?何かしら、今何か変な感じが……)」

 

「良かった、特に調子が悪くなったとかじゃなくて……それで……鈴は何を隠してるのかな?

 

(あぁー やっぱり嫌な予感が当たったわ……これは言わないとダメね……)

鈴はシャルロットを部屋に入れる時に何かを感じたが今の様子を見て、それが当たっていた事にどこか観念していた。

 

その後、2人はベッドの端に向かい合わせに座っていた。

 

「それで鈴は何を隠してたの?」

 

「話すのは良いけど、コレは私達だけの秘密にしておきなさいよ」

 

「うん、分かったよ」

 

「あのね、さっきの武昭の話なんだけど……私が知ってるのは箒が話してたのとは、ちょっと違うのよ……」

鈴は頬を染めながら口を開いた。

 

「え?確か武昭が奈良漬って物を食べたら眠ったって話だけど……奈良漬ってどんな物なの?」

 

「私もよくは知らないけど……確か野菜を酒粕で漬けた漬物だった筈よ」

 

「へぇ、そうなんだ……それで鈴が知ってる武昭はどうなったの?」

 

「うん……私が知ってるのは中学1年生の時のバレンタインなんだけど……その時私はサヴァランってケーキを作ったの」

 

「僕も知ってるよ、確か作る時にお酒を使うケーキだった筈だけど……」

 

「そうよ、それで私は家に呼んで武昭に食べさせたのよ……そしたら……お酒が飛びきって無かったみたいで……一口食べたら赤い顔になって……私を抱き寄せてすっごい甘やかしてくれたの……

 

「えっ!?何それ!!すっごく羨ましいんだけど!!」

頬を染めた鈴が段々言葉が小さくなりながら言うとシャルロットは赤い顔になって羨んでいた。

 

「ズルいよ鈴だけ!!そんな事をしてるなんて!!」

 

「それを言うならシャルロットだって武昭と一緒にお風呂に入ってるじゃない!!」

 

「あっ!!あの時はまだ僕は男子だったからだよ!!」

2人はやいのやいの言い合っていた。

 

 

 




鈴の部屋で起きた事……
鈴に呼ばれた武昭が座って待ってると鈴が何かを持って戻ってきた。

「へぇ、鈴がサヴァランって言うケーキか」

「ま、前に武昭が食べたいって言ってたから作ってみたのよ、不味くても文句言うんじゃないわよ!!
「そんな事言わないよ、鈴の料理が上手なのは昔から知ってるからな、んじゃ頂きまーす……ん初めて食べたけど美味しいな、ありがとうなスズ」

これが私の腕前よ!って武昭、どうしたの?」

んー?何か気持ちよくなって来てなー
照れていた鈴が武昭を見ると顔を赤くして笑っていた。

「ね、ねぇ?大丈夫?」

んー?大丈夫だよー そうだー スズーちょっと来てー

「一体、何をフェッ!?
武昭に呼ばれた鈴が近くに寄ると、そのまま手を掴まれて優しく胸の中に抱き寄せられた。

「ちょちょちょ、ちょっと!武昭!!(何か息が……もしかして酔ってるの!?)」
鈴が赤い顔をして慌てていると様子が変な理由が分かった。

うーんありがとうなスズー 俺が食べたい物を作ってくれてー

「(こうしてると武昭の暖かさとかを感じられて……頭も撫でて……)って武昭!?寝ちゃってる!?」
武昭に抱き寄せられて頭を撫でられて鈴が照れていると撫でる手が止まったので見ると鈴を抱き枕の様に抱き締めて眠っていた。

「ちょ、ちょっと、放しなさいよ!もーうどうしたら良いのよー!!」
鈴が離れようとしたが武昭は離す事無く、そのまま眠っていた。

その後2人の様子を見に来た鈴の母親がそれを見て……

「これならうちの店の跡取りは心配ないわね」
笑っていた。



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本編
第1話 始まり


その世界には通常兵器とは違う()()()があった。

 

そのある物とはIS(インフィニット・ストラトス)と呼ばれるパワードスーツだった。

 

だが、それには一つ欠点があった……

 

それは()()()()()()()()言う事だった。

 

ISが発明された事により世間は女尊男卑の風潮になって行った。

 

だが、そんな世界にあるイレギュラーが起きた、それは……

 


 

日本のどこかにあるIS関連の勉強などを行う教育機関、IS学園……

 

その学園の正門前で1人の女性が待っていた。

 

彼女の名前は織斑 千冬(おりむら ちふゆ)と言い何年か前に行われたISを使用した大会【モンドグロッソ】の初回大会にて優勝した女性だった。

 

「全く……アイツは何時も突然に連絡してくるのだから……」

千冬は頭を抑えながら前日に電話をして来た相手の事を思い出していた。

 

そうしてる内に一台の車が止まり1人の銀髪の女性が出てきた。

 

「すみません、お待たせしました」

 

「いや、そんなに待ってはいない、それよりもお前が束の言っていた」

 

「はい、私の名前はクロエ・クロニクルと申します」

 

「それでアイツが見つけたと言う2()()()()()()()()()は中にいるのか?」

 

「えぇ、彼は中に乗っています……ですが、少し身体が不自由でして」

 

「そうなのか?だが彼は大丈夫なのか?」

 

「それは問題ありません、束様の発明により普通に生活出来る様にはなっています……これが彼に関する書類です」

 

「あぁ、受け取ろう……なっ!?お、おい……この書類に書かれている事は……」

クロエから渡された書類を見た千冬は記してあった名前に何とも言えない表情を浮かべていた。

 

「はい真実です……束様も()を見つけた時は千冬様と同じ様になっていました……」

 

「そうか……では、彼を連れて教室に行くとしよう おい出て来てくれ」

千冬が車のドアを開けると右目に眼帯をし首にチョーカーを巻いて白い杖を持った少年が降りて来た。

 

「それでは千冬様、私はこれで戻ります。後の事は任せてもよろしいですか?」

 

「あぁ、大丈夫だ……悪いが……そういえば書類に書いてあったが喋る事は出来ないのだったな」

 

〔はい、コレを使わないと意思疎通が出来ません〕

少年が杖に付いているボタンを押す目の前にスクリーンが投影され文章が映し出された。

 

「さすがアイツの発明品だな……私の名前は織斑千冬だ、君の担任だ」

 

〔そうですか()()()()()()()()()()()俺の名前は村雨 武昭と言います〕

 

「!……そうか、では教室に案内しよう……(書類に書かれていた通りか……)」

千冬はクロエから受け取った書類の内容を思い出していた。

 

 

それには、武昭のプロフィールが載っていて、その中に1つ気になる文章があった。

 

それは……

 

【彼から以前の記憶が失われている】と……

 



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第2話 再会

千冬が武昭を連れて教室に向かってた頃……

 

(くそっ………何で俺がこんな目に合わないと駄目なんだ……)

1年A組の教室で世界で最初の男性IS操縦者織斑 一夏(おりむら いちか)が机に突っ伏していた。

 

彼は何故、自分がこの場所にいるのかを思い出していた。

 

それは中学3年の冬だった……

 

彼が目指してた高校の名前は藍越(あいえつ)だった。

 

それで試験を受ける為に指示された会場に向かったが、そこは街にあるホールだった。

 

一夏はその中で迷子になり、次に見つけた部屋に入ろうと決めていた。

 

そして一夏が部屋に入ると台座に固定されてある日本製IS機体の打鉄(うちがね)があった。

 

そこには女性研究員らしき者がいたが一夏に気付かず、打鉄に触れてみろといった。

 

一夏も一夏で自身の姉が乗っていた事を思いながら男性では乗れないと触ってみた。

 

そうした時だった……

 

一夏が触れた打鉄が光り出し眩しさから目を閉じていると光が収まったので何が確認すると

 

一夏は打鉄に乗っていた。

 

その後、女性研究員が男性である一夏がISに乗っている事に慌てて関係各所に連絡を入れた。

 

それから一夏はIS学園に通う事になったのだった……

 

そう思い出していた時だった。

 

「……り斑君……織斑君!」

 

「うわっ!?は、はいっ!何ですか!?」

一夏がここにいる経緯を思い出していると近くに緑色の髪に眼鏡を掛けてある部分が大きい女性山田 麻耶(やまだ まや)が立っていた。

 

「今、自己紹介の最中なんですけど、あから始まって、次はお、織斑君なんですけど……」

 

「えっ!そうですか!分かりました!!今します!!」

一夏は慌てて立ち上がったが本来女子だけの教室にたった1人の男性としてクラスメイト達からの視線を感じていた。

 

(うわっ!こんな中でどうしたら?……ん?あれってもしかして……箒か?)

教室内を見回した一夏は自身の幼馴染である女生徒篠ノ之 箒(しののの ほうき)を見つけてどうにかしてほしいと視線を送るが、逸らされた。

 

「(おいっ!もうやけだ!)織斑一夏って言います!!……えっと……以上です!パァン!ゴフッ!?」

 

「全く……お前はもっとマトモな自己紹介が出来ないのか……」

一夏が誰かに頭を叩かれたので相手を確認すると自身の姉である千冬だった。

 

「なっ!?千冬姉!なんパァン!アグォ……」

 

「学園では()()()()だ……ハァ……毎年毎年なぜ、この様になるな……静かにしろ」

千冬が教室にいるのを見たクラスメイト達が騒いでいたが千冬の一声で静かになった。

 

「山田先生、すまなかったな自己紹介を任せてしまって」

 

「いえ、織斑先生は用事があったから仕方ないですよ」

 

「あぁ、私が1年A組の担任の織斑千冬だ、1年間だが君達の担当となった……まぁ話はここまでにはして皆に知らせておく事がある……

まだ世間では報道されていないが……()()1()()()()()()()()が見つかった」

千冬の言葉に皆が騒ぎそうになったが睨まれたので黙り込んだ。

 

「今から彼を紹介するが……少し身体が不自由だと言う事を言っておく。入ってこい」

千冬が言うと武昭が入ってきたが大多数の生徒が驚く中、一夏と()()()()()だけは違う表情を浮かべていた。

 

「悪いが自己紹介をしてくれ……」

 

〔はい、分かりました……俺の名前は村雨武昭と言います……昔に事故にあって、この様な身体になりました、よろしくお願いします〕

 

「見ての通り村雨は、この様な身体なので皆も困った時は手を貸してやってくれ、それで村雨の席だが……()()の隣だ」

千冬から言われた武昭が指示された席に座ると布仏と言われた女生徒が声を掛けた。

 

「えっと……〔()()()()()()()()()()こんな身体なので迷惑をかける事があるかもしれませんが宜しくお願いします……〕う、うん…宜しく……()()()()()()()()()()()()()()()()

布仏と言われた女生徒は武昭の横顔を見て悲しげな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 



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第3話 喪失

自己紹介がすみ最初の授業が始まった。

 

そして休み時間になって……

 

「おい!武昭!お前今までどこにいたんだよ!?」

一夏が武昭の席に来ていた。

 

〔えっと……何を言ってるか分からないんだけど……()()()()()()()()()()()()()?〕

 

「な……何言ってんだよ武昭?……俺だよ、お前の幼馴染だった……一夏だよ織斑一夏!!」

 

〔あぁ、お前が最初の男性操縦者だった織斑一夏か……まぁ学園に2人しかいない男子だ仲良くしようぜ〕

 

「そ、そうだな……よろしくな……なぁ武昭、本当に俺の事を覚えてないのか?……」

 

〔さっきも言ったけどお前なんか知らないぞ?〕

 

「そんな……そうだ!」

一夏は武昭の席から離れると教室内を見回して1人の女生徒を連れて戻って来た。

 

「お、おい!手を離せ!!一夏!!」

 

「あぁ、悪いな箒 けど、箒も覚えてるだろ?武昭の事を」

 

「確かに名前を聞いた時は驚いたがな……武昭、私の名前は篠ノ之箒だ……覚えているか?」

 

〔篠ノ之箒……いや()()()()()()()……よろしく篠ノ之さん〕

 

「そうか……私の事は名前で呼んでくれ……その代わり私も武昭と呼ばせてもらうぞ……(本当に私の事も覚えていないのだな……)」

2人は握手をしたが箒と一夏は何処か悲しそうな表情をしていた。

 

そうこうしてるとチャイムが鳴ったので皆は席に座った。

 

そして、授業中に……

 

「えっと、ここまで進んでますけど誰か分からない所がある人はいますか?」

 

(一体……何をしてるんだ?……)

 

「お、織斑君?何か分からない事があるなら私が教えてあげますよ?何たって先生なんですから」

麻耶が一夏を見ると青い顔をしていたので理由を聞いた。

 

そして、出た答えが……

「あの……全部わかりません……」

それを聞いた麻耶を含めたクラスの大半の人数が動きが止まった。

 

そんな中、教室の後ろにいた千冬が頭を抑えながら一夏にある事を尋ねた。

 

「おい織斑、入学前にお前に渡した参考書はどうした?」

 

「え?参考書って……」

 

「学園に入学が決まってから家に送られた筈だ、確か表紙に【必読】と書かれてあった物だ」

 

「必読って……あ……その……古い電話帳と間違ってゴミに出しパン!!うぐぉぉ!?」

一夏の答えを聞いた千冬は出席簿で頭を叩き、その痛みで一夏は悶えていた。

 

「ハァ……仕方ない再発行するから1週間で内容を覚える様に」

 

「なっ!?1週間って、そんなの、「やるんだ?分かったな?」は、はい……分かりました……」

反論しようとしたら一夏は千冬に睨まれ渋々了承しだが何処か納得してない感じだったので千冬が教壇に向かった。

 

「いいか、今皆が習っているのは一歩間違えれば人の命を奪う事が出来る事が可能な代物だ……

だからこそ、ちゃんと使える様にならなければならないんだ……」

千冬の言葉を聞いた生徒と山田先生は気を引き締めていた。

 

「それと今思い出したのだが、このクラスのクラス代表を決めねばならない、立候補でも他薦でも構わないが……」

 

「はいはーい!それなら私は織斑君にします!!」

 

「へぇ……織斑って……まさか俺か!?」

1人の女生徒の意見に他の生徒たちも一夏を推薦し始めた。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!俺はそんなの……だったら俺は!「あぁ言い忘れていたが村雨は身体が不自由だから代表にする事は無理だ」ぐっ!?(千冬姉に潰された!……けど考えたら、そうだよな……)」

 

「皆さん!お待ちになってください!!」

一夏が武昭の事を考えてると金髪をカールにした西欧系の少女が声を荒げて立ち上がった。

 

「クラス代表とは、その名前の通り皆さんの代表になる方です……物珍しい男性操縦者というだけで決めてよろしいのでですか?

ここは主席合格でイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットがするべきではないでしょうか?」

 

「なぁ、ちょっと良いか?聞きたい事があるんだけど」

 

「何ですか?私に答えられる事なら出来る限り答えてあげますが」

 

「代表候補生ってなんだ?」

一夏の答えを聞いた大半の生徒と山田先生はコケており千冬は頭を抑えていた。

 

「あ、あ、貴方……そんな事も知らないんですの?」

 

〔ハァ……一夏、代表候補生っていうのはその国の国家代表の候補生の事だ、字面からも分かるだろ?言わばエリートって奴だな〕

 

「そう!私はエリートなのですわ!!」

セシリアはそう言うと自信ありげに胸を張った。

 

 



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第4話 正論

セシリアは胸を張りながら話を続けた。

 

「そちらの方が先ほど言った通りわたくしはエリートなのです、だからこそ入試でも唯一人!わたくしだけが試験官の方を倒す事が出来たのです!」

 

「ん?試験官を倒したって言うのなら俺も倒したけどな」

一夏の言葉にセシリアが反応した。

 

「ま、まさか……貴方も倒したと言うのですか?……新入生では、わたくしだけと聞きましたが……」

 

「それって女子だけって事じゃないかなー?」

1人の生徒の言葉に皆は納得した様な表情をしていた。

 

〔なぁ一夏、本当に試験官の先生を倒したのか?〕

 

「あぁ……倒したって言うか、先生が勝手に壁に突っ込んで行ったんだけど……」

 

「そうですか……ならば、わたくしと決闘しなさい!」

セシリアがプルプルしながら一夏に人さし指を突き付けた。

 

「んな!?なんで、そんな事しなきゃダメなんだよ!」

 

「このわたくしに恥をかかせたのです!その責任を取ってもらいます!!」

 

〔んー恥をかいたも何もオルコットさんが勝手に自慢して自爆した結果だと思うけどな……〕

セシリアの話を聞いていた武昭は呆れた顔をしていた。

 

「何ですって?」

 

〔それに、その試験について聞きたい事があるんだけど……良いかな?〕

 

「えぇ、わたくしに答えられる事だけなら構いませんわ」

 

〔そうか、じゃあオルコットさんは受験のときには何を使って先生と戦ったんだ?〕

 

「それは、この専用機ですわ……わたくしは代表候補生ですので国から専用機を与えられているのです」

 

〔そうなんだ、じゃあ次に布仏さんに聞くけど試験の時は何の機体を使ったの?〕

 

「ふぇっ?うーんとね……私は学園で用意された打鉄(うちがね)だよ〜」

 

〔そっか……つまり普通の入学者は元々用意されている機体を使ってオルコットさんは専用機を使って試験を受けたんだ……それなら首席になるのは当然だと思うけどな〕

 

「はぁっ!?何でですか!!」

武昭の言葉を聞いたオルコットは軽く詰め寄った。

 

〔だって入学試験は皆が同じ問題を受験して合否を決めるもの そんな中で専用機が使えたら他の人達から数歩先行ってる様な物だと俺は思うけどね……〕

 

「そう考えると……オルコットさんの首席って……」

 

「けど代表候補生なら当然だと思うんだけど……」

武昭の言葉にクラスメイト達が各々に話し始めた。

 

〔それに……オルコットさんは代表候補生って言うけど……他にも候補生の人はいるんだよね?〕

 

「え、えぇ……2年生にサラ・ウェルキンと言うお方がおります」

 

〔その先輩はオルコットさんみたく自分の事を自慢したりしてるのかな?〕

 

「いえ、その様な事は……してませんわ……ですが、わたくしは……」

 

〔確かにオルコットさんは代表候補生で専用機も持ってるかもしれない……けど、この教室にいるって事は俺達と同じ1人の生徒なんだから……まぁ、これで俺の聞きたい事は終わったよ〕

武昭が席に座ると千冬が口を開いた。

 

「まぁ、村雨が話の中で言っていたが例え専用機を持っていようが私からすれば皆同じ様な物だ……だからこそ、私達教師達はお前たち生徒に、ちゃんとISの正しい使い方を教えなければならない、それを、ちゃんと覚えておけ、分かったか?」

 

『はいっ!』

 

「そうか、それならば良いだろう……だがクラス代表は決めなければならないから……よし織斑とオルコットで模擬戦を行い()()()()()()()()()()()()2人とも、それで構わないか?」

 

「あぁ!俺は構わないぜ!千冬姉!!ヘブッ!「織斑先生だ、いい加減覚えるんだ」分かりました……織斑先生……」

 

「はい、こちらも構いませんわ……まぁ、わたくしが勝つ事は決まっていますけど……」

2人が納得した事で授業は再開された。

 

 

 



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第5話 同室

一夏とセシリアとの模擬戦が決まった日の放課後、武昭は千冬と共にある所に向かっていた。

 

〔織斑先生、俺をどこに連れて行くんですか?〕

 

「あぁ、()()()()()()()()()()()()()()の所に案内してるんだ」

 

〔ん?俺が一緒に住むって……同じ男性の一夏じゃないんですか?〕

 

「それなんですけど……急に見つかった男性操縦者なので寮の部屋割りを変更出来る事が無理だったんです」

 

〔そうでしたか……なんかすみません、先生達に迷惑をかけて……〕

 

「いや村雨達が悪い訳ではない……うむ、ここだ」

武昭が連れてこられたのは生徒会室だった。

 

〔生徒会室って……この中に居るんですか?〕

 

「あぁ、おい入るぞ」

千冬達と共に生徒会室に入ると水色の髪に赤目の少女と薄い茶色の髪にヘアバンドをして眼鏡を掛けた少女がいた。

 

「あら織斑先生、山田先生、いらっしゃいませ そちらの生徒が」

 

「あぁ、男性操縦者の2人の内の1人村雨武昭だ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ん……()()()()()この学園で生徒会長をしてる更識 楯無です」

 

「初めまして、生徒会会計の布仏虚と言います」

 

〔布仏?……あの俺のクラスに布仏本音って子がいるんですけど……〕

 

ガラッ

 

「ハァハァハァ、ごめんなさ〜い来るのが遅れちゃったぁ〜」

武昭が何か聞こうとした時に生徒会室のドアが開いて走ってきたと思われる本音が入ってきた。

 

「ほう、布仏、私は放課後に来るから生徒会室にいる様に言っていた筈だが?」

 

「ふえっ!?お、織斑先生……あの、その〜……遅れてすみませんでした〜」

生徒会室に入った本音は千冬がいた事に気づくと震えながら謝罪した。

 

その後、武昭と千冬はソファに座っていた。

 

〔布仏先輩……この紅茶、美味しいですね〕

 

「褒めてくれてありがとうございます」

 

「虚ちゃんの紅茶は美味しいでしょ……それでここに来たのは村雨君のルームメイトの件ですね?」

 

「あぁ、学園の方から生徒会のメンバーを同室にする様に言われてな」

 

〔え?織斑先生、なんで生徒会のメンバーが俺と同室なんですか?〕

 

「詳しい話は機密に関係するから言えないんだ」

 

〔そうなんですか……けど、織斑先生……彼女達の誰が同室になるかわからないですけど……()()()()()()()()()()()()()()?〕

 

「あら?別に村雨君位なら誰が同室でも構わないわよ?体が不自由なのは理解してるから」

 

〔それもありますけど……()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふえっ!?あ、あきっち!?何を……え?……それって……」

武昭が制服を脱いで上半身を見せて本音が顔を赤くしたが、その体を見て言葉を失った。

 

その体には切り傷や火傷といった多数の傷跡があったからだった。

 

「ふぅ……村雨、もう制服を着るんだ……」

 

〔見て分かりましたか?俺はこんな体です……だから拒絶するなら今してください……〕

 

(なんて……暗い眼をしてるのかしら……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(話には聞いていましたが……これほどの物だったとは……)

 

(あきっち……だったら……なんで、そんなに悲しい顔をしてるの?……)

武昭を見て楯無は怒り、虚は理解を深め、本音は悲しい顔をしていた。

 

そんな中……

 

「お嬢様……私をあきっちと同室にしてください……」

 

「あら?本音ちゃんは構わないのかしら?村雨君を同室にするって事は同情ってだけじゃ出来ないのよ?」

 

「確かに同情してる所もあります……けど、それ以上にあきっちの力になってあげたいって私は考えたんです」

 

「本音……本当に良いのかしら?辛い事になるかもしれないわよ?」

 

「うんお姉ちゃん……私もそれはわかってるよ……けど、それを受け入れるって決めたの……」

 

「ふむ、布仏妹がそこまで言うのなら私は構わないが……村雨はどうする?」

 

〔織斑先生……俺は……布仏さん……本当にこんな俺が同室で良いの?色々迷惑かけるかもしれないよ?〕

 

「それは、そうだよ あきっちは体が不自由なんだから……だからってそれを受け入れない理由にはしたくないの……私が、ちゃんと決めたから……」

 

〔布仏さん……「本音だよ?お姉ちゃんもいるから……名前で呼んで?」……あぁ分かったよ本音……〕

 

「よし、ならば私は更識と話があるから村雨と布仏妹は先に寮の方に帰ってろ」

 

「そうね本音ちゃんは今日はもう良いわよ」

 

〔分かりました、織斑先生お先に失礼します〕

 

「それじゃ〜さようなら、お嬢様、お姉ちゃん じゃあ行こう、あきっち」

武昭が本音と一緒に生徒会室を出ると千冬と楯無に虚だけが残った。

 

「織斑先生は良かったんですか?本音ちゃんで」

 

「あぁ彼女が自分で決めて()()もそれを受け入れたのなら私は何も言わないよ……ただ、ちゃんと手はうっておくがな」

 

「そういえば……織斑先生は村雨君とは幼馴染と聞いたのですが」

 

「正確には一夏が武昭と幼馴染なんだ」

 

「そうだったんですか……()()()()()()()()()()()()()()()()()

楯無の言葉に千冬は何か気になった。

 

「おい更識、そういう言い方をするという事はお前達も昔の武昭を知っているのか」

 

「はい、織斑先生もご存知の通り村雨君の家では昔から格闘術が伝わっています」

 

「あぁ【村雨流格闘術】の事だな……なるほど、それの関係という事か」

 

「えぇ、まだ私が小さい時に()()()がご両親に連れてこられて家に来たんです」

 

「それで私達は武昭君と知り合ったんです」

 

「ではお前達も昔の武昭を知っているというのか」

 

「えぇ……私達も【ドイツ】の事を聞いた時には何を捨ててでも向かおうとしましたよ」

楯無は手に持ってる扇子を折るかもしれない程に怒っていた。

 

「それでこちらでも出来る限りの手を尽くしました……」

 

「そして織斑先生から武昭君が学園に来ると聞かされた時、本音は喜んでいました」

 

「けど……あんなに変わってたなんて思いませんでした……」

 

「そうか……では私からも学園の教員ではなく……武昭の……【あいつの親代わり】として……頼む、武昭のそばにいてやってくれ」

千冬が頭を下げた事に楯無と虚は驚いていた。

 

「織斑先生……私達に頭を下げないでください」

 

「そんな事は言われなくてもやろうとしてましたから……私達だって、あんな武昭君は見たくないですから」

そう言って生徒会室での話は終わった。

 

 



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第6話 部屋

千冬に言われて武昭は本音の部屋に来ていた。

 

〔ここが本音さんの部屋なんだ〕

 

「そうだけど今日からは違うよ、あきっち……私とあきっちの部屋だよ」

 

〔そうか、そうなるのか……えっと、片方のベッドにヌイグルミが沢山置いてあるけど……〕

 

「うん、そっちが私のベッドだから空いてる方をあきっちが使ってね〜」

 

〔分かったよ……ふぅ何か疲れたな……〕

 

「ん〜あきっち〜?……あっ」

ベッドに横になった武昭が静かになったので本音が見ると眠っていた。

 

「あきっち……こうして学園で再会するまで何があったかは私は知らないよ……けどね、私はずっとそばにいるから……だから……今は、こうさせてね……」

本音は武昭を起こさない様に膝枕をしたが、その表情は優しかった。

 

本音が武昭に膝枕をして30分程経った頃……

 

〔う……アァーッ!〕

 

「ふえっ!?あきっち!どうしたの!?」

寝ていた武昭が急に魘されたので、それを見た本音は驚いていた。

 

「どうしたら良いの……そうだ!」

本音は携帯を取り出すと千冬に連絡をした。

 

それから暫くして……

 

〔アッ……ふぅ……〕

 

「やれやれ……どうやら落ち着いた様だな……」

呼ばれた千冬が武昭に何かを注射して落ち着かせた。

 

「ありがとうございます、織斑先生……あの……それで、あきっちに注射した()()は?……」

 

「うむ……布仏には渡しておいた方が良いかもしれないな……」

千冬は本音に注射器と薬の入っているケースを渡した。

 

「コレは村雨を保護した者が作成した鎮静剤だ……生徒会室で見たと思うがあの傷は……()()()で付けられた物だ」

 

「そうだったんですか……多分、そうだとは思ってたんですけど……もしかしてあきっちが魘されてたのは……」

 

「あぁ、拷問の時の事を思い出しているのだろう……」ギュッ!

事情を話していた千冬は怒りから自身の服の袖を強く握り締めていた。

 

「それは一度注射をすれば1週間は保つ筈だ……もし薬が無くなった時は私に連絡してくれ、じゃあな……」

千冬はそう言うと部屋を出て行った。

 

「あきっち……いつになるか分からないけど……昔の事を思い出してね……」

本音は武昭の頭を撫でていたが、その表情はとても優しい物だった。

 

その頃……

 

「ふぅ……次は……「束様」ん?どうしたの?クゥちゃん」

束が自分の研究室で作業をしてると長い銀髪で両目を閉じてる少女【クロエ・クロニクル】が声をかけた。

 

「いえ、ここ数日束様が食事をお取りしていないので……」

 

「分かってるよ……けどね、どうしても許せないんだよ……たっ君にあんな事をした奴らが……」

 

「束様……確かに……武昭様を私達が見つけた時……()()()()()()()()()()()()()()()……」

束とクロエは武昭を見つけた時の事を思い出して怒りを浮かべていた。

 

「束様が武昭様の為に、そうしてる事は理解しました……ですが、束様が倒れられては……武昭様も……」

 

「クゥちゃん……うん、分かったよ少し休むよ……けど終わったら作業を再開するからクゥちゃんにも手伝ってもらうから」

 

「はい!分かりました!!」

束は作業を一旦終えるとクロエと一緒に部屋を出た。

 

自分が出来ることを完璧にする為に……

 



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第7話 再会と悲しみ

武昭が鎮静剤を打たれた次の日の朝……

 

〔ん……なんだ……もう朝か……そうか……〕

武昭は自分の腕を見て注射の跡があった事に気付いた。

 

「う〜ん……もう食べれな〜い〜」

 

〔本音さん?……あぁ、そう言えば、俺のルームメイトになってくれたんだっけ……ありがとう……また寝てるから……先にシャワーでも浴びるか……〕

武昭は本音が寝てる事を確認すると着替えを持ってシャワー室に向かった。

 

それから少しして……

 

「う〜ん……ふわぁ……よく寝たなぁ〜……あれ?あきっちは……ん?」

本音が起きたが武昭がいない事に気付いたがシャワーの音を聞いている事を確認した。

 

「そっか、私が起きる前にシャワーを浴びてたんだぁ〜……けど、大丈夫なのかなぁ〜?……ねぇ〜あきっち〜」

 

〔ん?本音さん起きたんだ、おはよう〕

 

「うん、おはよう……ねぇ、私が手伝わなくても大丈夫〜?」

本音がシャワー室に行くとシャワーを終えた武昭が着替えていた。

 

〔あぁ、これ位なら1人で出来るよ……それと最後に……()()を付けないとな……〕

 

「えっ!?あきっち……その目って……」

 

〔ん?そうか……ここは昨日見せてなかったか……〕

武昭が近くにある眼帯を取ろうとした時に本音はそこにあった傷跡を見た。

 

「あきっち……もしかして、その眼も……」

 

〔本音さんが考えてる通りだよ……まぁ、もう慣れたけどね……それよりも俺は食堂に朝飯を食べに行くけど……〕

 

「なら、私も一緒に行くよ 軽く用意するからちょっと待ってて……」

本音の言葉に武昭は少し待っていた。

 

その後、着替えを終えた本音と武昭は食堂に向かった。

 

〔えっと、ここは食券を買うのか〕

 

「そっか、あきっちは昨日夕食食べないで寝てたんだもんね」

 

〔あぁ、けど、そんなに食べれないからな……これにするか〕

 

「じゃあ、私はこれにしよっと」

武昭は鮭雑炊、本音は軽めの洋食モーニングを、それぞれ受け取って空いてる席に向かった。

 

〔うん、そんなに味が濃くなくて食べやすいな〕

 

「ねぇ、あきっちはそれだけで足りるの〜?」

 

〔俺からすると本音さんの方に聞きたいけど〕

 

「あはは、私はそのお菓子も食べたりするから……」

 

〔そうか……ごちそうさん、さてと……おっと、悪い〕

 

「いえ、こちらこそ……って……武……昭……?」

 

「あっ、カンちゃん……」

武昭が席を立とうとした時に誰かにぶつかったので謝ろうとすると、その人物は武昭の顔を見て動きが止まっていた。

 

その人物は更識 簪(さらしき かんざし)と言い楯無の妹で本音とは幼馴染だった。

 

「武……昭……良かった……また……会えた……」

簪は武昭を見て泣きそうになっていたが、武昭はどこか腑に落ちない表情だった。

 

「カンちゃん、あのね、あきっちは……」

 

〔えっと……悪いが……()()()()()()()()()()()

 

「え?武昭……私だよ……更識簪だよ……」

 

〔更識……あぁ、楯無さんの妹なのかな?〕

 

「なんで……そこでお姉ちゃんの名前が出てくるの?……」

 

「カンちゃん、詳しい事は後で話すから……今は、まだ……」

 

「本音……うん、分かった……」

 

〔じゃあ本音さん……俺は先に帰ってるから〕

武昭は空いた食器を戻すと寮に帰り簪は武昭のいた席に座った。

 

「それで本音……なんで、武昭は()()()()()()()()()()

 

「うん、それはね……「本音ちゃん、その事は私から話すわね」あっ、お嬢様……」

本音が武昭の事を話そうとした時に楯無が隣に座った。

 

「お姉ちゃん?……それで、なんで武昭がここにいて、あんな風になってるの?」

 

「えぇ、それはね……」

楯無は武昭の事情を簪に、話せる事を話した。

 

「そう……だったんだ……だから私の事も……」

 

「そうよ……私や本音ちゃん、虚ちゃんの事も覚えてなかったわ……今、こうして簪ちゃんと仲良く出来てるのも武昭君のお陰なのに……」

楯無は昔の事を思い出していた。

 




この小説では楯無と簪は仲が悪くなってません。

その理由は、いつか書きます。


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第8話 クラス代表決定戦。

日数が経ち、1組のクラス代表決定戦の日になった。

 

アリーナにはそれぞれの機体を纏った一夏とセシリアがいた。

 

一夏の機体は白い機体でセシリアの機体は青い機体だった。

 

一方、武昭は千冬と一緒にアリーナの制御室にいて麻耶が色々と作業をしていた。

 

〔織斑先生……ここって俺みたいな生徒が入っても良いんですか?〕

 

「あぁ、私が許可したから問題は無い 村雨の場合は体が不自由だから私の近くにいた方が何かあった時に直ぐ対処出来る為でもあるんだ」

 

〔そうでしたか……すみません織斑先生に迷惑をかけて……〕

 

「迷惑などでは無い、私がしたいからしてるだけだ……(それに……これ位しか私には出来ないからな……)」

 

「織斑先生の言う通りですよ村雨君」

2人が話してると作業をしてた麻耶が話に入ってきた。

 

「村雨君は体が不自由だから出来るだけ自分がやれる事をやろうとしてませんか?」

 

〔はい……山田先生の言う通りです……俺は出来るだけ皆に迷惑をかけたくないんです……だから……〕

 

「それですよ、村雨君がそう考えてるのは凄く良いですよ……けど、時には誰かを頼っても良いんです」

 

「山田先生の言う通りだ……何でも1人で背負おうとするな……」

 

〔山田先生……織斑先生……分かりました……じゃあ、ここにいさせて下さい……〕

 

「あぁ、ここに座って観戦しているんだ」

武昭は千冬の指示を受けて山田先生の隣に座った。

 

試合が進みセシリアの攻撃で一夏が爆煙に巻き込まれたが勝敗を示す放送が流れてこなかった。

 

「どうやら……わたくしの勝利ですわね……なっ!?」

セシリアが留まってると爆煙から機体の色が真っ白に変化した一夏が出てきた。

 

「ま、まさか……たった今一次移行(ファースト・シフト)をしたと言うのですか!?」

 

「そうみたいだな……どうやら俺は自慢の姉さんを持ったみたいだぜ!」

一夏は自身のモニターに武装名が写りそこには【雪片 二型(ゆきひら にがた)】と表示されていた。

 

一方……

 

〔ふぅ……まさか初期化(フィッティング)最適化(パーソナライズ)が終わってない機体で出るなんて……時間が無いから仕方ないんですかね……ん?……〕

 

「どうしたんだ?村雨、何か気になる事があるのか」

 

〔いえ……何でか分からないんですけど……一夏の左手が変に動いてて……〕

 

「!……そうか、アレはあいつの癖でな……調子に乗っている時によくやるんだ……(そう言えば、昔よく武昭が注意していたな……)」

千冬は武昭が一夏の癖を覚えていた事に軽く笑っていた。

 

その後、一夏が戦いを続けようとしたが一夏のエネルギー切れで終了し、千冬に注意されていた。



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第9話 寝静まった頃……

1組のクラス代表決定戦は一夏の負けで幕を閉じた。

 

その日の深夜……

 

昼間、代表戦があったアリーナのグラウンドに武昭と千冬がいた。

 

〔こんな夜にすみません織斑先生……〕

 

「気にするな……()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

〔そうですね……ん、そろそろ到着するみたいです……〕

 

「あぁ、私の方でも見えてきた……」

武昭の機体に誰かからの通信が来たのと同時に千冬は空に何かを見つけた。

 

その何かはアリーナに近づいて来ており、その見た目は人参型のロケットだった。

 

そして……

 

ドォォーン!!

2人の目の前に着陸?すると同時に一部が開いて何者かが出てくると……

 

「ヤッホー!久し振りー!!ちーちゃん!たっ君!」

 

「あぁ……久し振りだな……だが、こんな夜中に来るな!」

 

「ギニャー!!」

千冬に飛びつこうとしたが千冬は、その人物の顔面にアイアンクローをすると、そのまま力を込めていき武昭は我関せずといった表情をしていた。

 

暫くして……

 

「うーん……酷いよ、ちーちゃん……久し振りに会ったって言うのに……」

 

「確かに久し振りだな……()

ロケットから出て来たのは篠ノ之 束(しののの たばね)だった。

 

「それで、今日は何の用だ?わざわざ武昭の方に通信をしてまで来るとは」

 

「うん、今日はたっ君の体の治療が可能なナノマシンが出来たから来たんだ」

 

〔俺の……治療ですか?〕

 

「可能とは言ってもたっ君が話せる様になるくらいだけどね……」

 

〔いえ……()()()は俺を助けてくれました……それだけでも感謝してるのに……()()()()()()()()()()()

 

「そんな事は良いからさ、まずはたっ君の治療が先だよ ほら、この中に入ってよ」

束は2人の前に卵型の様なカプセルを置いた。

 

「これは私が作った治療ポッドなんだ、この中で治療をするから」

 

〔はい、分かりました……ん……何か眠く……〕

 

「そうそう、普通の傷とかなら無いけど、喉の治療はちょっとデリケートだから全身麻酔をしてから開始するから、たっ君は寝てて良いよ」

 

〔そうだったんですか……それじゃあ……〕

治療ポッドの中で武昭が眠りに着くとほぼ同時にポッドにあったモニターに10分と表示され1秒ずつカウントダウンしていった。

 

「これで治療が終わると同時にポッドが開放されるから……さてと、ちーちゃんに聞きたい事があるんだけど……()()()()()()は……どう?」

 

「なるほど……それも聞きたいから急に来たのか……それに関して言うならば……」

千冬は今日の決定戦の時に武昭が一夏の癖が気になった事を話した。

 

「そうなんだ……やっぱり……記憶を戻すには、たっ君の事を知っている人がいる場所が良いんだ……」

 

「その為に武昭をここに来させたのか……だが、私達以外に武昭の事を知っているのは一夏に箒と生徒会のメンバーだけだが……いや……」

千冬はある事を思い出した。

 

「うん……私の方で調べたんだけど……数日したら……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あぁ、私の方にも、その情報は入ってきてるよ……まさか……()()()だとは思わなかったがな……」

千冬は編入してくる人物を知っている様だった。

 

そんな中、治療ポッドからアラームが鳴ると同時にポッドが開いた。

 

「うん……あ れ?……も う、治療 が……」

 

「たっ君、治療は終わったけど長い間話してなかったから言葉がたどたどしいけど、少しずつ出していけば話せる様にはなるから」

 

「そう……ですか……あり……が……とう……ござい……ま……す…」

 

「村雨、お前は先に寮に戻っていろ、私は束に聞きたい事があるんだ あぁ杖はまだ所持するんだ」

 

「はい……分かり……ま した……」

武昭がアリーナから出たのを確認した千冬は束にある事を尋ねた。

 

「それで束、さっき武昭が言っていた()()()()()()とはなんだ?」

 

「うん……それはねーーーーー」

 

「そうか……そうだったのか……」ギリ……ポタポタ……

束から話を聞かされた千冬は堪えていたがその握り拳からは血が出ていた。

 



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第10話 クラス代表決定

クラス代表決定戦が終わった次の日の朝……

 

「それでは1組のクラス代表は織斑 一夏君に決まりましたー!あっ“1組”と“一夏”でいい感じですねー!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!山田先生!!なんで俺が代表なんですか!?」

一夏は山田の言葉に慌てて立ち上がった。

 

「俺は負けたんだからクラス代表はオルコットさんなんだろ!?」

 

「あのー……それなんですが……「はい、山田先生、私から理由をお話ししても構いませんか?」はい、どうぞ」

山田が説明しようとした時にセシリアが挙手をして許可を取ると立ち上がった。

 

「それでは……確かに代表決定戦では私が勝ちました……ですがそれは“一夏さん”がISに触れて、そんなに時間が経っていないからです。

それなのに、彼は私とあの様に戦う事が出来たのです なので私は一夏さんにクラス代表としての実力をつけていただく為に、こうしたのです」

 

「という事だ、さてと織斑、お前はこう聞かされてもクラス代表を断るのか?」

セシリアが意見を言い終わると千冬が一夏に聞いた。

 

「そこまで言われたのならクラス代表にならないとダメだな、分かったよ千冬姉!パァン!痛っ!?」

 

「何度も言わせるな、織斑先生だ……」

 

「そ、それでですね……一夏さんが立派なクラス代表になれる様に私がISの事をご教授いたしたいのですが……」

 

「待てっ!一夏には私がISの事を教えているんだ!」

セシリアが頬を染めながら提案すると箒が立ち上がって反対した。

 

「あら、篠ノ之さんはIS適性が【C】ではありませんか。ここは適性が【A】でもあり専用機を持っている私がお教えするのが良いのではないですか?」

 

「なんだ箒って適性がCなのか?」

 

「なっ!そ、そんな事は関係無いではないか!!」

 

「おい……小娘共……今がHR中だと知っているんだろうなぁ?」

 

「「ひっ!お、織斑……先生……は、はい……分かって……います……」」

箒とセシリアは言い合いをしていたが千冬に注意されて着席した。

 

「はぁ……大体お前ら2人に限らずこの学園の生徒達の適性などあって無い様な物だ。」

 

「皆さんに間違いが無い様に補足しておきますが 今の適性は今現在の適性であってこれから変動する事もあります」

 

「そうなんですか……ん?ちふ、織斑先生、武昭の適性ってどれだけなんですか?」

 

「あぁ……村雨の場合は……また特別でな……それに関しては機密扱いされているんだ……だからと言って本人に聞こうとしない事だ 分かったな?織斑」

 

「は、はい!分かりました!!」

千冬に気になった事を聞いた一夏は千冬に[余計な事は聞くな]という雰囲気を感じて震えながら座った。

 

「それでは授業を開始する、山田先生お願いします」

 

「はい、分かりました」

その後、授業が始まると千冬は自分の席に座りながら武昭を見てある事を思い出していた。

 

(武昭の適性を知られてはならないな……私も束も初めて見たからな……IS適性【EX】(エクストラ)など……)

 


その頃……

 

「まさか()()がISを動かすなんてね……」

中国の空港から離陸した飛行機の中で1人の少女が何かを考えていた。

 

「IS学園に着いたら()()()の事を聞かないと……」

少女は一枚の写真を見ていた。

 

その写真には数年前の姿の少女と1人の少年が写っていた。

 

 

 

 

 



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第11話 ISの授業。

クラス代表決定戦から少し経った、ある日のグラウンドで1組が実習を行っていた。

 

ISスーツを着た生徒達が整列してる前でジャージ姿の千冬と麻耶が立っていた。

 

「それでは実習を開始する。まずはISの基本とも言える飛行操縦の実践からだ。織斑、オルコット、村雨前に出て機体を展開するんだ」

千冬の指示を受けた3人は、それぞれ機体を展開したがセシリアと武昭が機体展開を終えているのに対して一夏だけは、まだ出来ていなかった。

 

「早くしろ織斑 熟練した操縦者ならば1秒と掛からず展開出来るぞ」

 

「そんな事言われても……アァーッ!白式展開!!」

一夏が声を上げながら機体を展開した。

 

「まだ慣れていないから時間が掛かるのは分かるが、出来る事なら声を上げない様に展開しろ。それでは飛べ。順番は誰からでも構わないが飛んだ者は後の者が来るまで待機しているんだ」

 

「それでは私から上がらせていただきますわ」

 

「ふぇ〜 やっぱり代表候補生だけはあるんだなぁ……」

 

〔じゃあ次は俺が行く……〕

 

「お、おいっ、待てよ……って武昭の機体も早いなぁ……」

 

「コラ 見てる暇があるなら早く上がるんだ」

セシリアと武昭を見てた一夏は千冬に言われて飛んだが速度が遅く何処かフラフラしていた。

 

「何をしているんだ。スペック上では白式が一番速いんだぞ」

 

「そんな事言われても……教科書に書いてあった【自分の前方に角錐を展開させるイメージ】って奴がどうもピンと来ないんだよな……」

一夏が悩んでるとセシリアが話しかけてきた。

 

「一夏さん、イメージはあくまでイメージですので自分がやりやすい様に考えた方が良いですわ」

 

「そう言うものなんだ……武昭はどうやってるんだ?」

 

〔うーん……俺の場合は……さぁ?頭の中で【飛ぶ】って考えてるだけだからなぁ……〕

 

「え?その様にして飛んでいるのですか?」

 

「セシリアの場合は違うのか?」

 

「えぇ、私は色々と計算して飛んでいますので……良かったらお教えしますが……」

 

[おいっ!一夏!!とっとと降りて来ないか!]バシンッ!

 

[篠ノ之、お前は何をしているんだ……]

誰かの声が聞こえたので地上を見ると麻耶からインカムを取り上げた箒が千冬に出席簿で頭を叩かれていた。

 

「こんな上にいるのに結構ハッキリと見える物なんだな……」

 

「えぇ、本来は宇宙活動用に作られた物ですから……」

 

〔けど、これでも機能に制限は掛けられてるんだ〕

 

[よし、今度は、そのまま急降下して緊急停止をしてみろ。地上10㎝の場所で停止する様に]

3人が話してると千冬からの指示が出たのでセシリアから降下して行った。

 

「それでは、私から行かせてもらいますわ」

 

「へぇ、ああやるのか……次はどっちにする?」

 

〔んじゃ俺が行くよ……〕

セシリアが指示通りに出来たのを見ると次は武昭が行った。

 

 

武昭は指示に地上10㎝の所で停止した。

 

「ふむ、よく出来たな」

 

〔ありがとうございます〕

 

「さてと最後は織斑だが……村雨……1つ聞きたいが……あの速度をどう思う?」

武昭の停止に意見を言っていた千冬が一夏を見ると物凄い速度が出ていた。

 

〔うーん……余程の操縦者なら先生の指示通りに出来ると思いますけど……今の一夏じゃ……ドゴォーン!やっぱり無理でしたね……〕

武昭が状況を見てると猛スピードで降りてきた一夏が停止出来なく、そのままグラウンドに突っ込んで大穴を開けていた。

 

それを見て箒が一夏を心配して駆け寄ったがセシリアがISを纏っていてケガをする事は無いと言ったので軽く言い合いをしていた。

 

「はぁ……アイツらは……おいっ!授業中に何をしてるんだ!!篠ノ之は列に戻り織斑とオルコットはこっちに来るんだ!!」

それを見ていた千冬の一声でそれぞれの位置についた。

 

「では次は武装展開訓練を行う。最初は織斑からだ」

 

「はいっ!……雪片弐型!展開!!」

 

「ふむ1秒強か……初心者にしては早い方だが……まだ遅いな0.5秒で出せる様にしろ」

 

「分かりました……」

 

「次はオルコットだ。武装を展開するんだ」

 

「はい、分かりました」

セシリアが自身の武装【スターライトmk-III】を展開したが銃口が横にいる武昭の方を向いていた。

 

「さすが代表候補生だな……だが、その体勢はやめるんだ……()()()にやられたく無ければな」

 

「え?それは、どういう……ヒッ!?」

セシリアが千冬の言葉を聞いて横を見ると武昭が自身の武装の斧の刃をセシリアの首元に当てていた。

 

「オルコット そんな体勢では何か手違いが起こるかもしれないから ちゃんと真正面に武装を出せる様にしろ」

 

「ですが、これは私のイメージを纏める為に必要でして……」

 

「直せ」

 

「はい、分かりました……」

千冬の迫力にセシリアは意見する事をやめた。

 

「それではオルコットには、そのまま近接武装を展開してもらおう」

 

「え?あ、はい、分かりました……あぁ!インターセプター!!」

セシリアは千冬の指示に従ったが展開が上手く行かず強い口調で武装の名を叫んで展開した。

 

「展開させるまでに時間が掛かり過ぎだな……そんな事では接近戦に持ち込まれた時にやられるぞ」

 

「そ、そんな風にさせな「だが、決定戦の時には間合いに入られていたみたいだが?」はい、分かりました……」

 

「次は村雨だが……もう展開はしていたな。それ以外の……例えば遠距離武装は無いのか?」

 

〔いえ、ありますと言うか……もう出してます こうすると……〕

武昭が自分の武装の持ち方を変えると持ち手の部分が砲身になり刃の部分がグリップ状に変化した。

(仮面ライダーオーズのメダガブリューの様な物です)

 

「なるほど、それは使う場面で変えれると言う事か ん?そろそろ時間だなそれでは、これで今日の実習を終える。織斑は次の授業までにあの穴を埋めておく様に」

千冬からの指示を受けた一夏は自分1人でやるのかと途方に暮れていた。



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第12話 代表決定パーティーと1個目の鍵

一夏side

一夏がISの授業でグラウンドにクレーターを作った日の放課後……

学園寮の食堂で[織斑一夏 クラス代表決定パーティー]が行われていた。

 

『織斑君!クラス代表選出!おめでとうー!!』

 

「あ、あぁ、皆ありがとう……」

 

「ふん、鼻の下を伸ばして嬉しそうだな」

 

「そんな事考えてないぞ」

一夏がクラスの女子にジュースを注がれたのを見ていた箒が機嫌悪そうになっていた。

 

「それよりも……うちのクラスに、こんなに居たっけ?」

 

「そうだな、私も見た事が無い生徒がいるから多分他のクラスからも来てるんだろう」

 

「えぇ、それは2人しかいない男性操縦者の1人がクラス代表になったとなれば様子を見に来るのも当然ですわ」

2人が話してるとセシリアが近くに来た。

 

「そんなもんか……そう言えば武昭は何処に居るんだ?箒かセシリア知らないか?」

 

「いや、私は見ていないな……」

 

「私も見ていませんわ」

 

「はーい!学園で噂の男性操縦者にインタビューをしに来ましたー!!」

一夏達が武昭を探してるとメガネをかけて左腕に[新聞部]と書かれた腕章を付けた女生徒が駆け寄って来た。

 

「え?イ、インタビューって……俺にですか?」

 

「そうだよ!あっ、自己紹介が遅れたね、私はこういう者だよ」

女生徒が出したのは名刺で、そこには[IS学園新聞部 副部長 黛 薫子(まゆずみ かおるこ)]と書かれていた。

 

「は、はぁ……ありがとうございます……(うわぁ、漢字の画数が多い名前だなぁ……)」

 

「まずはクラス代表としての意気込みを教えてもらおうかな?」

 

「え、えっと……成り行きで代表になりましたけど……頑張らせてもらいます!」

 

「おぉー熱いコメントだねぇ……次は対戦したオルコットちゃんで良いかしら?」

 

「えぇ、構いませんわ」

 

「私が調べた話だと決定戦で勝ったのはオルコットちゃんだったのに織斑君に譲ったってあるんだけど、どうしてかな?」

 

「えぇ、それはこの私がクラス代表を行うのは当然ですが……」

 

「あぁー 話が長くなりそうだから織斑君に惚れたって事にしておくね」

 

「なっ!?そ、そんな事はありませんわ!!」

 

「そうだな、そんな事は無いな」

一夏の言葉を聞いたセシリアは睨んでおり箒は苦笑いしていた。

 

「これで大体は終わった……次はもう1人の村雨武昭君に……あれ?何処に居るんだろ?」

 

「えぇ、俺も探してるんですけど見当たらないんですよ」

薫子が食堂を見回すが一夏が告げた。

 

「そうなんだ……そうだ村雨君と織斑君て幼馴染だって聞いたんだけど……どんな子だったの?」

 

「それだったら箒も同じですね」

 

「なっ!?お、おいっ!一夏!!何をする!!」

薫子の言葉を聞いた一夏に手を引かれて前に出された箒は頬を染めた。

 

「いや、学園の中で武昭の事を知ってるのは俺と千冬姉以外なら箒しかいなかったから……」

 

「そ、そういう事ならば仕方ないな……」

 

「そう、ありがとう篠ノ之さん、それじゃ聞くけど……」

 

(箒さんだけズルいですわ……けれども武昭さんの事ですから……でも本当に武昭さんは何処にいるのでしょうか……)

一夏と箒が薫子のインタビューを受けてる最中、セシリアは食堂を見回して武昭を探していた。

 

武昭side

「ごめんね武昭君、仕事を手伝わせちゃって……」

 

〔いえ、俺も生徒会役員なんだから気にしないでください……〕

武昭は生徒会室で楯無と一緒に書類仕事をしていた。

 

何故、武昭が生徒会役員なのかと言うと……

数日前に武昭の保護を兼ねて楯無から勧誘したのだった。

 

「けど、今日はクラス代表決定のパーティーをするって本音ちゃんが言ってたわよ」

 

〔そうですけど……こんな体ですし、それに……俺はあまり食べ物を食べないんですよ……〕

 

「そうなの?……だとしたら栄養が足りなくなったりしないのかしら?」

 

〔えぇ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「へぇ……なんでか理由はあるのかしら?」

 

〔それは、分からないです……俺の身体を検査した人が今も調べてるみたいですけど……〕

 

「ふーん……(そう言えば……一応、私の方でも調べてはみたけど……武昭君の事に関しては詳しい事が出てこないのよねぇ……)」

 

〔次は、この書類を……ん?こんな時期に転入生?……〕

 

「あっ、ごめんね武昭君 そっちに紛れ込んでたみたいね……どうしたのかしら?」

楯無は武昭が書類を見て何かを感じている事に気付いた。

 

〔どうぞ……いえ……その写真の子なんですけど……見てたら……何か……ん?誰だろう?〕

 

「ごめんなさい……こんな時間に来て……」

武昭が説明しようとした時に誰かがノックしたので確認すると簪だった。

 

「あら簪ちゃん、どうしたの?」

 

「うん……武昭が生徒会役員になったから……これ……作ってきたの……」

簪は紙袋の中からカップケーキをの入った箱を取り出した。

 

「ちょうど良いから休憩にしましょうか、虚ちゃんお茶をお願い」

 

「はい、分かりました」

 

〔あっ、虚さん……俺はぬるめで良いですか?ちょっと熱いのは苦手なんで〕

 

「えぇ、構いませんよ 武昭君は猫舌ですか?だったら冷たいお茶を淹れますが……」

 

〔ありがとうございます、じゃあそれで、お願いします〕

 

「頂きま〜す……あれ?カンちゃん、このカップケーキ、焦げてるよ〜」

本音の言葉を聞いた簪がカップケーキを見ると黒く焦げていた。

 

「間違って失敗したの持って来たんだ……ごめんね皆……」

 

〔俺は食べさせてもらうよ……簪が作ってくれたんだし、それにこの大きさ位の方が丁度いいからさ……」

 

「た、武昭……無理して食べなくても……どうしたの?」

 

〔ん?……いや……今、ケーキを食べたら……何かが頭の中によぎったんだ……何かが……ウッ!〕

武昭がケーキを食べると何かを感じたので、その心当たりを探してると倒れそうになったが近くにいた楯無が慌てて支えた。

 

「武昭君!?虚ちゃん!今すぐ保健室に!!」

 

〔いえ…大丈夫ですよ楯無さん……すみませんけど……今日はもう寮に戻らせてもらっても……〕

 

「えぇ、構わないわよ。本音ちゃん武昭君と一緒に帰っていいわよ」

 

「分かりました、お嬢さま……あきっち〜本当に大丈夫〜?」

 

〔うん、特に痛みがある訳じゃないから……それじゃ失礼します……〕

武昭は本音に肩を借りながら寮に戻った。

 

武昭と本音が出て行った生徒会室では楯無、簪、虚が話していた。

 

「うーん、武昭君が急に体調が悪くなったのは……簪ちゃんが作ったカップケーキを食べてからよね……もしかして……」

 

「お姉ちゃん!そんな事は無いよ!なんで私が武昭に……」

 

「2人とも、お待ちください……あの時武昭君は何かが頭の中をよぎったと言ってましたが……」

 

「あっ、もしかして……」

虚の言葉に簪が何かを思い出した。

 

「簪ちゃん?何か心当たりがあるの?」

 

「うん……昔、小さい時に武昭が家に来た事があったよね?」

 

「えぇ、ご両親がお父さんに会いに来た時に一緒にいたわ……私は、ちょっといなかったけど……」

 

「その時に私はお母さんに手伝ってもらって……カップケーキを作ったの……今回のよりも下手だったけど……」

 

「何となく分かりました……武昭君は、簪様が作ったカップケーキを食べて昔の事を思い出したのではないでしょうか?」

 

「似たような事を聞いた事があるわ。私が聞いたのはある匂いを嗅いで特定の記憶を思い出すって奴だけど……」

 

「プルースト効果と呼ばれてる心理現象ですね……」

 

「そっか……やっぱり武昭の中に私達の記憶が残ってるんだ……」

虚の説明を聞いた簪は感動して軽く泣いていた。

 

「けど、焦らないでじっくりやらないと……(そうよね……武昭君は私と簪ちゃんの仲を修復してくれた、なら今度は私達が……)」

楯無は外の景色を見ながら何かを決意していた。

 



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第13話 中国から来た少女

一夏がクラス代表の歓迎会を行った日の夜、武昭は本音に支えられながら部屋に戻っていた。

 

〔悪かったな本音……〕

 

「ううん気にしなくて良いんだよあきっち 困った時に助けるのは当然の事だから。それよりも体は大丈夫?」

 

〔あぁ、横になったら少し楽になったよ……なぁ本音……聞きたい事があるんだけど……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「!えっと……(どうしたら良いんだろう……あるって言って良いのかな……)」

 

〔悪かったな本音……変な事を聞いて……ただ、会った事があるなら昔の俺はどうだったのか……聞きたかっただけなんだ……〕

 

「あきっち……うん、私達は小さい頃に会った事があるよ……けど、今言えるのはそれだけ……」

武昭の表情を見た本音は背中から優しく抱きついた。

 

〔そっか……ありがとうな本音……そしてゴメンな……言いづらそうな事を聞いたりして……〕

 

「ううん、気にしなくて良いよ……いつかは話す事なんだから……ホラ、もう遅いから……」

武昭から離れた本音は自分のベッドに入った。

 

〔あぁ、そうだな……おやすみ本音……〕

 

「うん、おやすみあきっち……(気持ちを伝えるのは今じゃないよね……)」

2人は眠りに着いたが本音は何かを考えていた。

 

武昭が眠りに着く少し前、1人の少女がIS学園の門の前にいた。

 

「ふぅ、久し振りに日本に来たから来るのが遅れちゃったわ……」

その少女は茶髪のツインテールでボストンバッグ1つだけ持っていた。

 

「遅れちゃったから早く事務室に行かないと……それと()()()に聞きたい事もあるし……」

少女は胸ポケットから1枚の写真を出して見ていた。

 

その写真には今より少し若い少女と一夏、それと……

 

「ここにいる中国の子から聞いたけど……もう1人の男性操縦者がいるって……本当なら……武昭……」

今とは違い全身無事な武昭の姿が写っていた。

 

「えっと貰った地図を見ると……うん、向こうの方ね……」

少女は地図を見ながら目的地に到着した。

 

「来るのがこんな時間になってしまって、すみませんでした」

 

「いえ、事故もなく到着して良かったです。ではこちらの書類に必要事項を記入してください」

 

「分かりました。あっ、ちょっと聞きたい事があるんですけど……2人目の男性操縦者が見つかったって学園にいる中国の子から連絡が来たんですけど……本当ですか?」

 

「はい本当ですよ。その子は体が不自由なんです」

 

「え?……体が不自由って……どういう事ですか?……」

 

「うーん、私も詳しくは知らされていないのよ、知ってるのは担任の織斑千冬先生位じゃないかしら……」

 

「(まぁ千冬さんがいるのは当然って感じよね……)それでその2人目の男性操縦者の名前って……」

 

「彼の名前は村雨武昭って言って……()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「!(やっぱり武昭だったんだ……けど、なんで体が……)はい記入が終わりました……」

 

「はい、これで手続きが終わったわよ。これで貴女もIS学園の生徒になりました。宜しくね中国代表候補生凰・鈴音(ファン・リンイン)さん。じゃあコレが寮の部屋の鍵と地図になるわ」

 

「はい、ありがとうございました。(武昭……待っててね……)」

鈴音は事務員から必要な物を受け取ると学生寮に向かった。

 

 

 



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第14話 再会と消失

鈴音が学園に来た次の日の朝

 

「ねぇ、知ってる?隣の2組に転入生が来たんだって」

 

「知ってるわよ、しかもその子って中国の代表候補生なんでしょ?」

SHR前にクラスの女子達が話してる内容を聞いていた一夏はある事を考えていた。

 

(中国か……そういや、()()()は今、武昭があんな風になってるって知らないんだよな……)

 

「ん?どうしたんだ?一夏」

 

「いや、中国から来た子の事が気になってな……」

考え事をしていた一夏は箒の質問に返答した。

 

「ふん!そんな事を考えている暇が今のお前にあるのか!」

 

「所詮、このイギリスの代表候補生の私がいるから慌てて学園に来たのですわ」

 

「そんな事を考えてるよりもクラス代表対抗戦の事を気にした方がいいぞ」

 

「そうそう、専用機を持ってるのは1組と4組だけみたいだけど、4組の子は専用機で出場しないみたいだよ」

3人が話してると近くにいたクラスメイトが話しかけてきた。

 

「そうだよ、2組と3組の代表は専用機じゃないからウチのクラスの優勝は決まりだよっ!」

 

「それは、どうかしら?」

皆が話してると教室の入り口にもたれている茶髪のツインテールの少女がいたが一夏は見覚えがあった。

 

「お前……もしかして……鈴か?……」

 

「えぇ、そうよ中国の代表候補生 凰・鈴音 そして2組のクラス代表よ。久し振りね一夏」

 

「あぁ、久し振りだな鈴 まさかこんな所で会えるなんて……」

 

「それはコッチのセリフよ……それよりも2人目の男性操縦者が見つかって……それが……()()だって聞いたんだけど……何処にいるの?」

 

「あ、あぁ武昭なら……あっ……鈴、後ろ……」

 

「後ろって……武……昭……?」

 

〔はい……確かに武昭ですけど……()()()()()()()()()()

一夏に言われた鈴が後ろを向くと武昭と本音がいた。

 

「え?……ハ、ハハハ……武昭……何、変な事を言ってるのよ?……私よ……凰鈴音よ?」

 

〔凰……鈴音……?あぁ、貴女が中国の代表候補生の鳳鈴音さんでしたか……()()()()()村雨武昭って言います〕

 

「ねぇ……武昭……そんな冗談はやめて……昔みたく(スズ)って呼んでよ!!」

 

「ダメだよ、今のあきっちは体が不自由なんだから」

鈴が武昭に詰め寄ろうとしたが本音が間に入って止めた。

 

「誰よアンタ?私は今武昭と話してるのよ!邪魔しないで!!」

 

「あきっちの知り合いかもしれないけど、危害をくわえようとするなら私が相手をするよ」

2人が睨みあってる時だった。

 

「おい」

 

「誰よ?邪魔をしないで……って……ち、千冬……さん

鈴が声のした方を見ると千冬が立っていた。

 

「学園では織斑先生だ、それよりも鳳 SHRが始まるから自分のクラスに戻るんだ」

 

「は、はい……分かりました……そうだ!武昭!一夏!後で話を聞かせてもらうわよ!!」

鈴は2人にそういうと自分のクラスに戻った。

 

「ふぅ、2人も早く自分の席に着くんだ」

 

「はい、分かりました』

 

〔分かりました……織斑先生……座る前に1つだけ聞きたいんですけど……〕

 

「聞きたい事は分かる……凰も村雨の幼馴染だ……詳しい事は後で織斑にでも聞くんだ」

 

〔ありがとうございました〕

 

(凰……出来る事なら……武昭の事にはあまり触れないでやってくれ……)

千冬は武昭と鈴の事を考えながら授業を開始した。

 

 




この小説では鈴の性格は少し柔らかくしています。


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第15話 食堂にて

武昭、一夏が鈴と再会した日の授業中……

 

(ううん……あの鈴音とか言う少女は一夏とは、どんな関係なんだ?……)

箒は3人の関係について考えていた。

 

「(あの様子から彼女は武昭の事を想っているだろう……だが聞こうとしても武昭……)ハグッ!?」パァン!

 

「篠ノ之、授業中に考え事とは……まぁ、ちょうどいい、この問題を答えてみろ」

箒が考えていると頭に痛みが来たので千冬に出席簿で叩かれていた。

 

「えっと、その……分かりません……」

 

「授業中は授業に集中しろ」

 

「はい、わかりました……(くっ、私がこうなったのも一夏のせいだ!)」

箒は一夏に八つ当たりをしていた。

 

一方……

 

「あの方と一夏さんは仲が良いみたいですが……何かあったみたいですね……ならば、一夏さんをデートにでも誘って……」

 

「ほう……授業中に楽しそうな事を考えてるみたいだな……」

 

 「お、お、お、織斑……先生……あの、その……」 

 

「授業中に変な事を考えてるな!」パァン!

 

「うぐっ!?」

セシリアも箒と同じ様に千冬に出席簿で頭を殴られていた。

 

そして……

 

(うーん……あの子とあきっちが幼馴染って事は……私達の後に出会ってるんだよねぇ……)

本音も武昭と鈴の関係をついて考えていた。

 

(けど……今のあきっちに会わして良いのかなぁ……?やっぱりお嬢様達に聞いた方が……ん?)

本音が考え事をしてると机に一枚のメモが置かれたので見ると千冬からだった。

 

「あっ!お、織斑先生……あの、その……」

 

「授業中は授業に集中するんだ……」トントン

 

「はい、分かりません……(なんで怒られなかったんだろう……?コレって……)」

本音は千冬が離れたのを確認すると置かれたメモを見た。

 

それには……

 

【布仏、お前が武昭の事を考えてるのは分かっている。

その事に関しては後で更識達でどうするか決めろ。

もし、分からない時は私が相談に乗る。】

と書かれていた。

 

(織斑先生……うん、考えてる暇があるならお嬢様達に話した方が早いよね……お昼休みに生徒会室に行かないと……)

メモを読んだ本音はどこか決意した表情を浮かべていた。


お昼休みになって……

 

「待ってたわよ!一夏!武昭!……ってアレ?一夏、武昭は?」

食堂に行くと鈴がラーメンを載せたお盆を持って待っていたが武昭がいない事に気付いた。

 

「鈴、そこにいると他の人の迷惑になるし、ラーメンが伸びるぞ」

 

「わ、分かってるわよ……それよりも、武昭は……」

 

「武昭ならば布仏と一緒に生徒会室に向かったぞ」

 

「えぇ、武昭さんは生徒会役員ですからね」

鈴の疑問に箒とセシリアが答えた。

 

「えっ、そうなんだ……」

 

「それよりも、早く席を取らないと時間が無くなるぞ」

一夏に言われた鈴はどこか観念した様な表情で空いている席に向かった。

 

その後、注文したメニューを受け取った一夏は鈴が取った席に座り近くのテーブルに箒とセシリアが座っていた。

 

「ありがとうな鈴」

 

「別にこれぐらい構わないわよ……それよりも一夏……なんで……武昭はあんな風になったのよ?」

 

「それは俺にも分からないよ……()()()()()()()()()()()()()()()()()、ここで再会した時にはもう……」

 

「そうだったんだ……じゃあ、私の事も覚えてないのは……」

 

「俺の事も箒の事も覚えて無かったんだ、箒」

一夏に言われた箒は隣に座った。

 

「初めて会うな、私は篠ノ之箒。一夏と武昭の幼馴染だ」

 

「え?私は会った事無いけど……」

 

「箒が転校した後に鈴が転校してきたからだな……だから箒がファースト幼馴染で鈴がセカンド幼馴染なんだ」

 

「そう、宜しくね篠ノ之さん。私の事は鈴で良いわよ」

 

「そうか、なら私の事も箒と呼んでくれ」

 

「では私も自己紹介を……イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットですわ、セシリアと呼んでください」

 

「そう、宜しくねセシリア……それで、ちょっと女の子同士で話したい事があるんだけど……」

鈴は箒とセシリアを連れて一夏から少し離れた場所に向かった。

 

「聞きたいんだけど……2人は……一夏の事想ってるのよね?隠さなくて良いわよ、私は武昭の事を想ってるから大丈夫よ」

 

「そうか、なら私も正直に言おう。鈴の考えてる通り私は一夏の事を想っている」

 

「私もですわ。クラス代表決定戦の時に……」

鈴の言葉に箒は正直に話しセシリアは軽く頬を染めた。

 

話を終えた3人は一夏のいる所に戻った。

 

「それよりも鈴こそ、何してたんだ?おじさん達は元気か?また店をやるのか?」

 

「ち、ちょっと、そんな急に言われても答えられないわよ」

 

「それもそうか、悪かったな」

 

「別に良いわよ……私はね……」

その後、鈴は中国であった事を一夏に話しながらも昼食を終えた。

 

その帰り……

 

「武昭……アンタが私の事を忘れてても……私は覚えてるから……だから……()()()()()()()

鈴は何かを思い出しながら戻っていた。

 

 

 



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第16話 生徒会室にて

食堂で鈴が一夏と話してる頃と時を同じくして……

 

「ごめんね武昭君、急に呼び出したりして」

 

〔いえ、俺も生徒会役員なんですから構わないでください〕

武昭が楯無に呼ばれて生徒会室に来ていた。

 

「それで呼び出した理由なんだけど……武昭君は鈴ちゃんの事を覚えているのかしら?」

 

〔朝にも本人に聞かれたんですけど……覚えてないんです……〕

 

「そう……(確か虚ちゃんが調べた情報だと鈴ちゃんが武昭君達の幼馴染というのは間違いない筈……)」

 

〔あの……楯無さん?……〕

 

「ん?何かしら?武昭君」

 

〔前に簪のカップケーキを食べた時に頭の中に何かよぎって……部屋に戻った時、本音に聞いたら昔に会った事があるって聞いたんですけど……〕

 

「えぇ……私達は小さい頃に会ってるのよ……武昭君が……()()()()()()()()()()……」

 

〔父さんに連れられて……ですか?……〕

 

「そうよ。私の両親と武昭君のお父さんは、ちょっとした知り合いだったの……」

 

〔そうだったんですか……さてと、コッチの書類は終わりましたよ〕

 

「早いですね武昭君は……お嬢様もちゃんと仕事をしてもらえれば、こんなに書類がたまる事も無いのですが……」

武昭の速さを見た虚は楯無の遅さに呆れていた。

 

「しょ、しょうがないじゃない 私は国家代表としての仕事もあるんだから……」

 

〔さてと、仕事が終わったんで俺はお昼でも食べてきます」

 

「あっ、ちょっと待って武昭君。虚ちゃん()()を出してちょうだい」

 

「はい、分かりました……武昭君、コレをどうぞ」

楯無に言われて虚が取り出したのは小さなお弁当箱だった。

 

〔えっと……これは……〕

 

「それは私が武昭君の為に作った物なの。前に武昭君はあまり食べれないって言ってたから量は少ないけど沢山の栄養が取れる様にしたの」

 

〔そうなんですか……ありがとうございます。じゃあここで食べても良いですか?〕

 

「ええ、構わないわよ。私も味の感想を聞かせてほしいから」

 

〔そういう事なら……うわぁ……楯無さんて料理が上手いんですね〕

武昭がお弁当箱の蓋を開けると混ぜご飯のおにぎりと様々な野菜の和え物、何かを巻いた卵焼きに蒸した鶏肉が入っていた。

 

「一応少なめには作ったけど、量が多いなら残しても構わないから」

 

〔分かりました、じゃあ頂きます……まずはおにぎりから……ひじきに油揚げと細切りの人参を入れて甘辛くしたんですね〕

 

「そうよ、武昭君に少しでも体に良い物って考えたの……それで味はどうかしら?

 

〔えぇ、美味しいですよ……大きさもちょうど良いですし……次にオカズは……野菜の肉巻きですか〕

 

「うん、それは軽く照り焼きにしてタレにお酢を入れてサッパリとさせたの」

 

〔本当ですね……最後に汁物ですけど……何かトロミがありますけど……〕

 

「それは豆腐を裏漉しした擦り流し汁にしたわ……」

 

〔ふぅ……何か優しい味ですね……楯無さんて料理が上手いんですね……これなら旦那さんになる人が羨ましいですよ〕

 

「はにゃっ!?そ、そうかしら!?(もしかして……私と……そんな風に……)」

 

〔ご馳走様でした。ん?楯無さん何か顔が赤いですけど、大丈夫ですか?〕

 

「う、うん!大丈夫よ!」

 

〔フワァ……何かお昼を食べたら眠くなってたな……すみませんけど、そこのソファ貸してもらいます……〕…zzZZ

ソファに横になった武昭は直ぐに眠り、楯無と虚はそれを見ていた。

 

「もーう……お姉さんを揶揄ったりして、悪い子なんだから……」

 

「多分、あれは武昭君の正直な感想だと思いますよ。それにお嬢様も満更でも無い様子でしたし」

 

「う、虚ちゃ「静かにしないと武昭君が起きるかもしれませんよ?」もーう……」

楯無は虚に軽く揶揄われていた。

 

「あぁ、お嬢様、この仕事は後でも構いませんので今は武昭君に膝枕でもしてあげてください」

 

「えっと?……良いの……かしら?……」

 

「えぇ、今のお嬢様がする仕事は、それですよ……今のこの時間だけは、そうしてあげてください……」

 

「虚ちゃん……分かったわ……武昭君、貴方がどれだけ辛い目にあったかは私達には分からないわ……けど今のこの時だけは……」

楯無は武昭に膝枕をしながら優しく頭を撫でていた。

 

 

 




因みに、本音は武昭を連れて生徒会室に来た後に簪の手伝いに行ってます。


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第17話 簪と鈴音

鈴が武昭と再会した日の放課後……

 

「ごめんね武昭にも手伝ってもらって……」

 

〔気にするな簪……俺がやりたいからやってるだけだ〕

開発室の一室で武昭が簪の専用機の開発の手伝いをしていた。

 

〔けど……大まかに出来てはいるな……〕

 

「うん、私じゃ無理だったり分からない所はお姉ちゃんや虚さん達に教えてもらったから……」

 

〔そうか……なぁ、昼に楯無さんと虚さんにも聞いたんだけど……俺と簪は昔に会った事があるのか?〕

武昭の言葉にキーボードを叩いていた簪は手を止めて答えだした。

 

「うん、私と武昭は小さい時に会った事があるよ。武昭のお父さんに連れられて……」

 

〔父さんか……楯無さんも言ってたけど、よく俺は行ってたのか?〕

 

「よくは来てなかったけど、私のお父さんからは呼ばれてたみたいだよ?」

 

〔ふーん……簪のお父さんに呼ばれてか……おっと、もうこんな時間か、簪、そろそろ作業をやめて寮に帰った方が良いぞ……〕

 

「うん、じゃあココだけ終わったら一区切りつくから……(昔の事は覚えてなくても、優しいのは変わってないんだ……)」

簪が作業を終えるまで武昭は開発室に置いてあったイスに座って待っていた。

 

その後、簪が作業を終えたので2人で寮に帰ってた時だった……

 

「あっ!やっと見つけた!!」

鈴が2人の前に姿を見せた。

 

〔えっと……鈴、どうかしたのか?〕

 

「あの、その……久し振りに武昭と話したいと思って……あの、あんたは……」

 

「あっ、私は……更識 簪……お姉ちゃんがいるから名前で呼んで……凰・鈴音さん」

 

「へぇ、私の名前を知ってるんだ……それで、武昭とはどんな関係なの?」

鈴は武昭の横にいる簪に事情を尋ねた。

 

簪から事情を聞いた鈴は納得していた。

 

「そうなんだ……じゃあ私よりも先に武昭に会ってたんだ」

 

「うん……けど、私は武昭とは学区が違うから同じ学校には通ってなかったの……」

3人は学生寮の簪の部屋で話していた。

 

「そうだ、簪にちょっと聞きたい事があるんだけど……武昭はちょっと席を外しててくれる?」

 

〔あぁ、俺は構わないよ なら部屋に戻ってるよ〕

 

「うん、分かったよ武昭 それじゃ……」

武昭が部屋を出たのを確認すると鈴が簪が口を開いた。

 

「多分、鳳さんが聞きたいのって……武昭に恋愛感情があるか……だよね?……

 

「なっ!?そ、そ、そ、そ……そうよ……けど、簪がそういうって事は……」

 

「うん……私は……武昭の事が……好きだよ……」

 

「そうなんだ……ねぇ簪、仲良くしましょうよ。同じ相手が好き同士なんだから」

 

「分かったよ……よろしくね鳳さん」

 

「固いわね、友達なんだから鈴で良いわよ」

 

「うん、よろしくね鈴」

2人は笑顔になると握手をした。

 

「それで簪に聞きたいんだけど……小さい頃の武昭ってどんなだったの?」

 

「うーんとね……小さい時の武昭は……」

2人は寮の門限まで話していたが、とても笑顔だった。

 

そこには今までの悲しみが無かった……




今回は簪と鈴音が仲良くなる話でした。


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第18話 鈴音と本音

武昭が開発室から寮に戻ってしばらくして……

 

「お願い!武昭と同じ部屋にして!!」

 

「ダメ 私があきっちと同部屋なんだから……」

 

〔えっと……簪、コレって一体……〕

 

「アハハ……あのね……私が……」

鈴が部屋に来て本音に変わる様に詰め寄って武昭が ん? と頭を捻ってると後から来た簪が苦笑いしながら事情を説明した。


少し前に戻って……

 

鈴が簪の部屋で武昭の昔の話を聞いていた時の事だった。

 

「さてと、私も部屋に帰ろうかしら……そうだ、まだ時間があるから武昭の部屋にでもって……

そう言えば、私武昭の部屋が何処か知らなかったんだった、ねぇ、簪は知ってる?」

 

「うん、知ってるよ……○○○○号室だよ」

 

「そうなんだ……久し振りに()()()()()()3()()()()()()かしら?」

鈴の言葉を聞いた簪は頭を捻って気になった事を尋ねた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「え?なんでって……ここの寮に居る男子って武昭と一夏だけでしょ?だから部屋も一緒なんじゃ……」

 

「ううん……そうじゃ無いよ。()()()()()()()()()()() ()()()()()()と同じ部屋だよ」

 

「は?……ねぇ簪……その本音って子は女の子よね?」

簪の言葉を聞いた鈴は簪の両肩をガシッと掴んだ。

 

「う、うん……元々ここは女子寮だから……女の子だよ……」

 

「じゃあ武昭は女の子と一緒なんだ……アレ?ねぇ、その本音って子が簪の幼馴染って事は……本音も武昭の幼馴染になるのよね?」

 

「そう言う事……に……なるね……アハハ……(アレ?もしかして、私……言っちゃいけない事を言っちゃった?)」

簪は今、自分が何を言ったか気付いた。

 

「そっか……じゃあ……()()()()()()()()()()()()()()()()……じゃそう言う事だから!」

何かを思い付いた鈴は素早く行動に移した。

 

「はぁ……って落ち着いてる場合じゃ無いよ!!」

簪は鈴の行き先に心当たりがあったので慌てて追いかけた。

 


そして……

 

「武昭!私だけど入って良い?」

 

〔ん?鈴か、どうしたんだ何か慌ててるみたいだけど〕

 

「ちょっとね、アッ、あんたが簪が言ってた布仏本音ね」

鈴は部屋に来ると本音に話しかけた。

 

「うん、そうだよ〜 あぁ、あなたがあきっちの幼馴染の凰・鈴音さんなんだ〜」

 

「えぇ、私の事は鈴で良いわよ」

 

「分かったよ〜 よろしくね〜リンリン〜 なら私の事も本音で良いよ〜」

 

「あ、ありがとう本音……悪いんだけど、リンリンはやめてくれるかしら?

小学校の頃にパンダみたいだからって、そのあだ名でバカにされてたの……」

 

「そうなんだ〜 ごめんね〜知らなかったから〜……」

 

「別に良いわよ それで本音に1つ頼みたい事があるんだけど……私と部屋を変わってほしいの!」

 

「え?なんで……私が部屋を変えなきゃダメなの?……」

鈴の言葉を聞いた本音は軽く喋り方が変わっていた。

 

「だって、女子寮で男の子と一緒なんて落ち着かないでしょ?だから武昭の幼馴染の私が変わってあげようかなって考えたのよ!」

 

「別に私は落ち着かない事なんてないよ?あきっちはちゃんとマナーを弁えてくれてるし」

2人が話してると部屋に来た簪が気になった事を聞いた。

 

「鈴は何か焦ってるみたいだけど……何かあるの?」

 

「えっ!?えっと、あのー そのー ちょっとこっちに来て……昔に武昭と約束した事があって…………」

鈴は簪と本音を近くに呼ぶと耳打ちで事情を話した。

 

「そう言う事なら私も変わってあげたいけど……部屋をこう決めたのって……()()()()なんだよね〜」

 

「じゃあ、その寮長先生が変わって良いって言ったら良いのよね!?待ってなさい!今すぐに許可をもらってくるから!!」

 

「アッ、鈴、寮長先生って……行っちゃった……」

鈴は簪が止める前に部屋を出て行った。

 

〔うーん……なぁ2人とも……確か寮長先生って……〕

 

「うん、織斑先生だよ〜……」

 

「けど、鈴はそれを聞く前に出て行ったから……うん、私は部屋に帰るね」

3人は何が起こるか分かっていながらも何も考えない様にした。

 

 

 

 

 




その後の鈴……

武昭と本音の部屋を出た鈴は寮長室に来ていた。

「ここが寮長室ね、誰が出て来ても必ず武昭と同部屋にしてもらうんだから!
すみません!1年2組の凰・鈴音ですけど、話したい事があるんですけど!!」
鈴がドアをノックしながら言うと中から寮長が出てきたが…。

「ねぇ!私を武昭と……って……ち、千冬さん?な、なんで、ここに?……」

「あぁ、それは私がこの学生寮の寮長だからだ……それで凰、何か私に話したい事があるみたいだが……?」

「い、いえ!何でもありません!!それ“ガシッ”」

「まぁ良い、久し振りに会ったんだ……少し話し合おうじゃないか」
鈴はその場から去ろうとしたがそれよりも早く千冬に肩を掴まれた。

「ま、待ってください!そろそろ外出したらダメな時間に!!」

「それについては安心しろ、私の用事だと言えば問題は無い、だから……”

「アッ!そのっ……誰かー助け……」バタン
鈴は何とか抜け出そうとしたが千冬に引き摺られながら寮長室に連れ込まれた。

次の日の朝、鈴は自分のクラスメイトに昨夜の事を聞かれたが
思い出すだけで青い顔で震えていたので聞かない事にした。


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第19話  幼馴染3人

鈴が学園に来てから数日経ったある日のアリーナで、一夏が、箒、セシリア、武昭と訓練をしていた。

 

「ハァハァハァ……まだやるのか?……」

 

〔いや、少し休憩だ。SEの補給もしないとダメだからな……〕

アリーナのピットに一夏が戻ってくると武昭と箒が待機していて、少しするとセシリアも来た。

 

「ふぅー 結構キツイ物だな。SEが無くなるギリギリまで模擬戦をするなんて……」

 

〔まぁ、コレは一夏がISに慣れる為の訓練でもあるからな……セシリアから見てどうだ?〕

 

「そうですわね……専用機を手にして、コレだけの期間にしてはかなり上達してますわ」

 

〔そうか……そういや一夏は代表決定戦の時に機体を受け取ったみたいだけど、その機体が無い時は何をしてたんだ?〕

 

「あぁ、その時は私が剣道を放課後に教えていたんだ」

 

〔まぁ、ISを操縦するには装着者の身体能力もある程度は必要だからな……それで、それ以外は何をしてたんだ?〕

 

「あぁ……その……だな……」

 

「いや、剣道以外は何もしてなかったぞ」

箒がどこか言いづらそうにしていると一夏が、その時の事を話したが、それを聞いた武昭は、ん?とした表情になっていた。

 

〔えっと……そうかそうか、剣道は放課後だけで寮に帰ったら必要な知識を教えてもらってたんだな〕

 

「いや、本当に剣道だけだったぞ」

 

〔うーん一夏、箒、ちょっと待っててくれ。セシリア、こっちに来てくれるか?〕

武昭はセシリアを連れて一夏と箒から少し離れた場所に向かった。

 

〔なぁ、セシリア……あれって……本当だと思うか?〕

 

「信じたくはありませんが本当だと思います……そうでなければ初期化等が終わってない機体で出場したりはしませんわ……」

2人は小声で話していた。

 

その後、アリーナの使用時間が来たので皆は片付けをしていた。

その時……

 

「ヤッホー 武昭、一夏」

アリーナのドアが開いたと同時に鈴が入ってきた。

 

「おぉ鈴、どうしたんだ?」

 

「一夏が訓練をしてるって聞いたから来たのよ。はい温め(ぬるめ)のスポーツドリンク」

 

「おっ、サンキュー」

 

「ねぇ武昭、ちょっと一夏と話したい事があるから2人きりにしてくれない?」

 

〔あぁ、構わないけど……一夏、話が終わったらシャワー浴びて汗を流しておくんだぞ〕

 

「分かったよ、じゃあな」

武昭が出て行くと鈴と一夏が話し始めた。

 

「私は変に誤魔化すのが苦手だから単刀直入に聞くけど……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「鈴……あぁ、俺が原因だと言われればそうだよ……けど…「言わなくても……武昭が自分からしたんでしょ?」……鈴の言う通りだ……」

一夏の言葉を聞いた鈴は何処か納得した様な表情を見せた。

 

「ハァ……それで武昭の様子はどうなの?」

 

「全然だよ……千冬姉からは無理に思い出さそうとすると、どうなるか分からないって言われてるし……」

 

「そうなんだ……」

 

「おい!帰ってくるのが遅いと思ったら何で、違うクラスの生徒が居るんだ!」

2人が話してると箒が入ってきて鈴を見て怒っていた。

 

「箒、鈴は武昭の事で俺と話したかったから、ここに来たんだよ」

 

「何?そうだったのか……」

 

「ねぇ、箒も武昭の幼馴染なのよね?どうだったか覚えてる範囲で教えてくれない?」

 

「うむ……幼馴染と言うが私は……」

箒が鈴に武昭の事を話し出すと途中で一夏も話に入ってきた。

 

その頃……

 

「私は……入らない方が良いですわね……」

外にいたセシリアが状況を把握して空気を呼んでその場を離れた。



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第20話 身に染み付いた物……

今回の話は若干ですがアンチ・ヘイトがあります。


一夏達との特訓を終えた武昭は寮に向かっていた。

 

〔鈴……一夏……箒……本音……簪……楯無さんに虚さん……それに織斑先生か……俺が昔に会った事があるって言うけど……〕

 

「ねぇ!ちょっと待ちなさいよ!!」

武昭が何かを考えてると1人の女生徒が声をかけてきたが、彼女の周りには数人の女生徒がいた。

 

〔えっと……何か俺に用ですか?〕

 

「そうよ!あんたみたいな男が何でここにいるのよ!?」

 

「ISは私達みたいな選ばれた女だけの物なんだから!!」

 

〔そうですか……(束さんが言ってたっけな……女性至上主義の奴がいるから気をつけろって……)それじゃ〕

 

「ねぇ、折角だから私達が噂の男性操縦者を特訓してあげるわ」

 

〔いえ、皆さんの手を煩わせる訳には行かないので結構です……っと、何するんですか?〕

武昭がその場を離れようと横を通り抜けようとした時に1人の女生徒が杖を蹴り飛ばした。

 

「あんたが私達の言う事を聞かないからよ」

 

「大体、あんたみたいな奴が私達に逆らって良いと思ってるの?」

 

〔(あぁ……そうか……コイツらは自分達が選ばれた奴らだって勘違いしてるのか……)じゃあ……分かりましたよ……

そこまで言うのなら俺に特訓をお願いします……〕

武昭は杖を拾うと女生徒のリーダーらしき奴に冷たく言い放った。

 

「ふん、最初からそう言ってれば良いのよ。じゃあこちらにいらっしゃい」

女生徒達は武昭を連れて何処かへ向かった。


武昭が連れてこられたのは先程までいたアリーナとは違う場所で片方のピットにいた。

 

〔ふぅ……ここに来る前に束さんから()()()()()()()()様に言われたけど……〈ほら!早く出て来なさいよ!!〉〕

武昭は何かをピットの出入り口に置くとアリーナに出た。

 

「ふん!出て来るのが遅いのよ!!」

虎を模した機体を展開した武昭がアリーナに出ると学園にある機体を装着した()()()()()()()がいた。

 

〔あのー もしかしてアナタ達全員と俺が模擬戦をするんですか?〕

 

「はぁ?何を当たり前の事を言ってるのよ」

 

「そうそう、噂の男性操縦者だったらこれだけの相手でも大丈夫なんでしょ?」

1人の女生徒がそう言うと他の生徒達が笑い出した。

 

〔そうですか……分かりました……けど…… どうなっても……知りませんから 

 

(なっ!?何よ……雰囲気が変わった?……けど、これだけの人数がいるなら負ける訳ないじゃない!!)

 

〈ほら!早く始めなさいよ!!〉

アリーナに開始の合図が流れてくるのと同じタイミングで声がしてきたがその声には怒りが滲んでいた。

 

(なるほど……俺の事を気に食わないのは生徒だけじゃないって事か……じゃあ行きますか……フォームチェンジ朱雀……音速(ソニック))ヒュン

 

「えっ!?嘘!どこにガハッ!?」ドゴン!!

 

「なっ!いつの間に!!キャッ!!」べゴン!!

女生徒の中で前衛役と思われる2人が地面に叩き落とされた。

 

「嘘!?なんでハイパーセンサーに反応が無いの!?」バゴン!

 

「クソッ!どうして弾が当たらないのよ!?」ザシュン!

次に後衛役にいた女生徒達が壁に叩きつけられ武装を切断された。


一方、アリーナの制御室では担当の女教師が戸惑っていた。

 

「一体、何なのよ!?あの機体は!!」

モニターにはアリーナの様子が写し出されていたが、その光景が信じられない物だった。

 

「どういう事よ!千冬様の弟ならまだしも、あんなどこの誰かも分からない奴なんかに……」

 

「ほう……彼は私からすれば()()1()()()()()()()()()のだがな」

女教師が声のした方を向くと千冬と楯無がいた。

 

「なっ!?織斑先生!それに生徒会長も!!なんでここに?……」

 

「そんな事は後にしてもらおうか?それよりも……何故、あの様な事をしている?」

千冬に睨まれた女教師は恐怖で震えていた。

 

「あ、あの、それは……(ここはアイツらのせいにして、私は無実だと言えば……)」

 

「そうそう、彼女達に罪をなすりつけようとしても無駄ですので」パンッ【観念】

 

「なっ!?どういう事ですか!生徒会長!!」

 

「こちらでも少し調査してな、お前は()()()()()()()()なのだろう」

 

「チッ!そこまで知られてるなら隠す必要も無いわね……」

女教師は先程とは雰囲気が変わった。

 

「えぇ!そうよ!このIS学園に男がいるなんて汚らわしいのよ!!千冬様の弟なら百歩譲ったとしても、あんな奴なんていなくても良いじゃないです【ガツン!】ガフッ!!」

 

 「それ以上、貴女の話は聞きたくはありません!」 

女教師は話を続けようとしたが楯無に殴られて気絶した。

 

「すみません、織斑先生……武昭君の事を言われて、つい……」

 

「気にするな更識、お前がやらなければ私が同じ事をしていた……」

 

「そうですか……(ハハハ、織斑先生にやられるよりはマシだったかも……)」

楯無は女教師の心配をしていた。

 

「ん……それよりも向こうの方もそろそろ終わりそうだな……」

千冬がモニターに視線向けたので楯無も一緒に見ると武昭の相手が残り1人になっていた。

 

「凄いですね、あれだけの相手がいたのに、殆ど無傷だなんて……」

 

「まぁ、武昭の機体は()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうだったんですか?確か、武昭君の機体を作成した企業の名前は【V・R・P・R】って所でしたよね?」

 

「あぁ、その通りだ……だが調査しようとしない方が良いぞ……あそこに手を出して、どうなっても責任は取らないぞ」

 

「わ、分かりました……(織斑先生がこう言うって事は本当にヤバい所って事ね)」バサッ【触らぬ神に祟りなし】

楯無が扇子を出すとそう書かれていた。


制御室で騒動があったのと同じ頃、アリーナでは……

 

「な、なんでよ?……なんで、こうなってるのよっ!!」

多数いた女生徒達が気絶しており、残りはリーダーの生徒1人だけが浮遊していた。

 

「一体、何をしたのよっ!!」

 

〔何って……普通にアンタらの相手をしただけだ……〕

女生徒の前に武昭が現れたが機体が赤い鳥を模した物に変わっていた。

 

「なっ!?何よそれっ!!なんで機体が変わってるのよ!!」

 

〔そいつをアンタに言う理由は無い……さぁ、かかって来い〕

武昭は腰から下げていた鞘から剣を抜くと切先を女生徒に向けた。

 

「えぇ……分かったわよ……そんな剣で私に勝てると思ってるのかしら!!」

女生徒は武装の銃を両手に持って武昭を狙撃したが……

 

〔遅い……分かったか……上には上がいると言う事を……村雨流剣術……鳥籠(とりかご)

いつの間にか女生徒の後ろに武昭がいたと思ったら銃がバラバラに切断され機体にも複数の斬撃が入りSEが0になった。

 

その後、千冬と楯無に事情を話して、この件は終わった。

 

 

 




企業 V・R・P・R(ヴァプール)

由来
武昭の名字の村雨を
村の英語のヴィレッジ
雨の英語のレイン
宇宙の英語のプラネット
兎の英語のラビットのそれぞれの頭文字から。

経緯
束が武昭を守る為に作った企業。

設定集に少し追加します。






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第21話 代償と存在

模擬戦を終えた武昭は寮の部屋に戻っていたが……

 

〔ハァ……ハァ……ハァ……幾ら機体のアシストがあるとは言え……あれだけの軌道動作は……無理があったみたいだな……〕

 

〈そうだね……本当に武昭は無茶ばかりするんだから……〉

軽く息が上がってベッドに横になってたが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

〔許せなかったんだよ……アイツらが……()()()()()()()()()()()使()()()()……〕

 

〈その気持ちは私も分かるぜ!けど、それでアニキが傷付いてたら……〉

武昭が怒りに顔を歪めていると先程とは違う声がした。

 

〔良いんだよ……俺は傷付いて……それ以上の事をしたんだから……〕

 

〈待ってください!()()は武昭さんは悪くありません!!〉

 

〈あぁ、アレはマスターが生きる為にしたのだから……〉

また違う声が今度は2人分聞こえた。

 

〔ありがとうな、そう言ってくれて……けど、どんな理由があっても俺はやっちゃいけない事をしたんだよ……〕

 

〈武昭……〉〈アニキ……〉〈武昭さん……〉〈マスター……〉

 

〔皆、悪いけど……俺は休むから……〕

武昭がそのまま眠りにつくと同時に話していた声が聞こえなくなった。


一方……

 

「タッ君がした事で私は何も怒ってないよ……」

何処かにある研究所では束が武昭の様子を見ていた。

 

「私が怒るのは、タッ君が自分の事を大事に思ってない事にだよ……」

 

「束様……武昭様は、やはり()()()()()()……」

 

「うん、クーちゃんの言う通りだよ……タッ君は自分が傷つく事が贖罪になると考えてるんだ……

けどね……そんな事をされても私や周りの皆が悲しむだけなんだよ!」

束は声を荒げながら机を叩いた。

 

「ねぇ、クーちゃん……どうやったらタッ君は自分が許せるんだろう……」

 

「すみません束様……それは私には分かりません……ただ私の考えとしては、武昭様の傍にいてあげる事ではないかと思います……」

 

「そっか……クーちゃんはそう考えてるんだ……そうだね、私達に出来る事はタッ君の傍にいる事だよね……」

束は何処かスッキリした笑顔を浮かべていた。


その頃、寮の部屋では……

 

「あきっち、お嬢様から聞いたよ……ちょっとした騒ぎがあったって……」

帰ってきた本音が武昭に膝枕をして頭を撫でていた。

 

実は本音が帰ってきた時に武昭が魘されていたのだった。

 

「あきっち……いつになったら……私達に話してくれるの?

なんで……自分1人で背負おうとするの?

私達に何が出来るが分からないけど……

あきっちは1人じゃないから……」

本音の顔は優しい笑顔になっていた。

 



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第22話 明かされた秘密

武昭が部屋で眠っていると、楯無が入ってきた。

 

「あっ、ごめんね本音ちゃん……武昭君の様子はどう?」

 

「お嬢様、うん特に魘されたりとかは無いよ〜」

楯無は本音の横に座り本音は武昭の頭を撫でていた。

 

「それで……彼女達はどうなったの〜?」

 

「えぇ、彼女達は織斑先生からアリーナと機体の無断使用で1週間の謹慎と用紙50枚の反省文で教師の方は3ヶ月の減俸になったわ」

 

「そうですか……ねぇ……なんであきっちばかり、こんな目に遭わなきゃダメなの?……」

 

「やっぱり……なんの後ろ盾も無い男性操縦者……だからかしら……」

 

「そんなのおかしいよ……あきっちは……ISを動かせるからここにいるだけなのに……何もしてないんだよ?……」

本音の瞳からは一滴の涙が落ちていた。

 

「辛い事を言う様だけど……どんな所にも……何かを嫌いと感じる人は居るのよ……だからこそ、私達は武昭君の傍にいてあげないと……」

 

「お嬢様……うん、そうだね、お嬢様の言う通りだね……あきっち……あきっちは1人じゃないんだよ……だから……」

本音が優しく武昭の頭を撫でているのを楯無が優しい笑顔で見ていた。

 

その後、楯無が部屋を出てから少しして……

 

〔ん……あれ?……本音……いつの間に?……〕

武昭が目を覚ますと本音が膝枕をしていた事に気づいた。

 

「あきっち、体は大丈夫?〜」

 

〔ん……何とか大丈夫だな……クキュル〜もう、こんな時間なのか……〕

起きた武昭が時計を見ると、そろそろ食堂が閉まる時間だった。

 

〔ごめんな本音……俺が寝てたせいで……〕

 

「ううん、気にしなくて良いんだよ……私がやりたくてやってたんだから〜」

 

〔そうか……ありがとうな……本音……ん?こんな時間に誰だ?〕

武昭が体を起こすと誰かがドアをノックしてきたので本音が確認すると簪がいた。

 

「あれ〜?カンちゃん、どうしたの〜?」

 

「うん、虚さんから武昭が寝てて夕飯には来れないかもって聞いたから……これ作って来たの……」

簪は持っていたお弁当袋を本音に見せた。

 

「うわ〜ありがとう〜カンちゃん〜 あきっち〜カンちゃんが夕飯を作ってきてくれたよ〜」

 

〔そうか、これありがとうな簪……ん?……〕

武昭がベッドを降りようとした時に何か違和感を感じた。

 

「あきっち、どうかしたの?」

 

〔ん?あぁ、何でも無いよ……さてと……バキッ!うわっ!?〕ドシン!ムニュッ

 

「ふわっ!?あ、あきっち!?」

武昭が降りようとベッドに右手を置くと同時に右腕が外れて前にいた本音に覆い被さる体勢になり胸に顔を埋めていた。

 

〔なっ!わ、悪い!!本音!!〕

 

う、ううん……あきっちは悪くないよ……それよりも、その腕……」

 

「コレって……義手?……」

武昭が本音から離れると心配した簪が駆け寄って来たが武昭の体を見て驚いていた。

 

〔あぁ、()()()()()()()()があってな……以前右腕を失ったんだよ……〕

 

「それで……コレを着けてたんだ……武昭、ちょっと見せてもらっても良い?」

 

〔構わないぞ……(やっぱり、あの時に無理をしすぎたか……)

簪が右腕を見てる中、武昭はこうなった理由に心当たりがあった。

 

「それよりも、あきっち、右腕はどうするの〜?」

 

〔まぁ、ちょっと接続がズレただけだと思うから、ハメ直せば大丈夫だぞ、簪貸してくれ〕

 

「うん、良いけど……私達は何か手伝わなくて良いの?」

 

〔あぁ、問題ないから見てて良いぞ……ふぅ……ガァッ!?〕ガチン!

武昭は簪から右腕を受け取ると、そのまま接続部に無理やり繋いだ。

 

〔ハァハァハァ……さてと夕飯にするか……〕

 

「「いやいやいや、どう見ても辛そうなんだけど(だよ〜)!?」」

武昭が腕を付けて息が上がっていた。その結果……

 

「はい……アーン、あきっち、次は何にする〜?」

 

〔うーん、そっちの煮物にしようかな〕

 

「じゃあ……アーン……味……どうかな?……」

 

〔美味しいよ簪……簪って料理が上手いんだな〕

 

「そ、そんな事無いよ……(武昭の口にあって良かった……)」

武昭は本音と簪に夕飯を食べさせてもらい褒められた簪は頬を染めて心の中で喜んでいた。

 

 




とある島にある研究所で……

「全く……タッ君に手を出すなんて怖い物知らずな奴等だねー」

「そうですね……それよりも束様、武昭様の腕から警報が来てましたが」

「うーん、そろそろ新しい腕を作ってあげないとダメなんだよねー
今度ちーちゃんに連絡して行かないとー」
束どクロエが話していた。


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第23話 クラス対抗戦 前編

武昭が女生徒達と模擬戦をしてから数日後の生徒会室で……

 

〔ん?……クラス対抗戦……楯無さん、これって……〕

 

「あぁ、武昭君は知らなかったわね、毎年この時期になるとやるの。

対戦相手は抽選で決めるのよ」

 

〔そうなんですか……その時俺達生徒会は何かやるんですか?〕

 

「やる事は幾つかあるけど武昭君は何もしなくて大丈夫よ」

 

「正確には武昭君は客席での警備というか監視をお願いしたいのです、本音と一緒に」

 

〔はぁ、頼まれたならやりますけど……俺は、それだけで良いんですか?〕

 

「えぇ、実を言うと私達がやる事もそんなに無いのよ」

 

「だから武昭君には本音と共に客席での警備を頼むんです」

 

〔そういう事情なら分かりました〕

武昭は書類仕事を続けた。


クラス対抗戦当日……

 

〔うーん……本当に俺はここにいて良いんだろうか……〕

 

「良いんだよ〜あきっちはお嬢様に、そう言われたんだから〜」

武昭はアリーナの観客席で本音と一緒に座って対抗戦が始まるのを待っていた。

 

〔けど……簪も残念だったな、もう少し日にちがあれば専用機が完成したのに〕

武昭は本音とは逆に座っている簪に話しかけた。

 

「仕方ないよ……私が自分で作るって言っちゃったんだから……(けど武昭と一緒に観戦出来て良かったかも……)」

 

「あっ、対戦相手が出たよ〜……こうなったんだぁ〜」

皆がモニターを見ると1組vs2組 3組vs4組と出ていた。

 

〔簪は何も用意しなくて良いのか?〕

 

「うん、私は鈴の試合が終わってからだから、まだ時間があるの」

3人が話してると機体を纏った一夏と鈴がそれぞれのピットから出てきた。


一夏、鈴side

ピットから出た2人はアリーナの中央まで向かった。

 

「鈴、この試合は俺が勝たせてもらうぜ!」

 

「へぇ大口を叩くわね……知ってる一夏?ISのSEって一定以上のダメージを与えたら衝撃も突き抜ける事があるのよ」

鈴は手に持っていた薙刀状の武装双天牙月(そうてんがげつ)の先端を一夏に向けた。

 

「そうか……だからと言って俺は手加減しないぜ!」

 

「そう、そこまで言うなら私も手加減しないわよ!!」

2人が位置につくと開始のアラームが鳴った。

 

2人はアラームが鳴ると同時に接近すると互いの武装で鍔迫り合いをしていた。

 

「へぇ、それなりに力はつけてるみたいね!」

 

「これでも鍛えられてはいるからな!」

 

「そうみたいね……けど!」ガウン!

 

「グハッ!なんだ、今のは?……」

2人が鍔迫り合いをしている中、鈴の肩の武装が何か作動したと思ったら一夏が吹き飛ばされていた。


一方、観客席では……

 

〔鈴の今のは……あれの固有武装か?……〕

 

「そうみたいだね……機体名甲龍(シェンロン)第3世代武装龍咆(りゅうほう)だって」

武昭が鈴の武装を見てると簪がモニターを開いて確認していた。

 

「なるほど〜空間に圧力を掛けて、それで発生した衝撃を打ち出すんだぁ〜」

 

〔そうか、弾が見えない砲撃って事か……砲身も見えないからそれなりに角度が自由に出来るみたいだな……ん?〕

アリーナを見ていた武昭が急に上を見た事に本音が気になった。

 

「どうかしたの〜あきっち〜?」

 

〔あぁ、何か分からないけど……変な感じがしたんだ……(なんだ?この澱んでる気配は……)〕

武昭が何かを感じてた時と同時だった……

 

アリーナのバリアを破壊して2()()の黒い全身装甲(フルスキン)の機体が侵入してきた。

 



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第24話 クラス対抗戦 後編

アリーナに不明機が侵入してから少し経つとアリーナと観客席を隔てるシャッターが降りて来て

観客達が騒ぎだした。

 

「一体、何が起きたの〜!?」

 

「早く避難しないと!!」

 

〔待つんだ2人共、今はまだ動かない方が良い〕

本音と簪が動こうとしたのを武昭が止めた。

 

「どうしてなの〜?」

 

〔今は他の生徒達が我先に移動してるから巻き込まれたら危ない……〕

 

「だから、皆が一旦落ち着くまで待つって事?」

 

〔あぁ……とりあえずは楯無さん達に指示を聞く……〈楯無さん、武昭ですけど……〉〕

 

〈あっ!武昭君!無事だったの!?〉

 

〈えぇ、簪と本音も一緒にいて大丈夫です〉

 

〈そう、良かったわ……いい、軽く説明するわ……〉

楯無は武昭達に事情を説明した。

 

謎の機体が侵入し、何故か観客席のドアが開かなくなっている

今、虚達整備科の3年生達がドアを開けようとしている。

そんな中……

 

〈だから、武昭……く……〉プツッ

 

〔どうしたんだ?急にノイズが入ったと思ったら通信が……何っ!?〕ドゴン

楯無との通信が出来なくなったと同時に()()()()()()()()()()()()が武昭達の前に姿を見せた。

 

〔チッ、どうやら通信が効かないのはコイツらとアリーナの中の何かが関係してるみたいだな……簪、機体はあるか?〕

 

「う、うん、一応はここにあるけど……」

 

〔そうか……なら、本音と一緒に観客を避難させるんだ、コイツの相手は……俺がするっ!白虎!!〕ガチン!!

武昭が機体を展開して向かうと謎の機体【X】が持っていた剣で攻撃してくるが武昭は斧で防いだ。

 

〔クッ!かなりのパワーだなっ!……村雨流体術!月影(げつえい)!〕バゴン

剣と斧で鍔迫り合いをしていたがXの力が強かったので武昭はその体勢から下からの蹴り上げを出して距離を取った。

 

〔このまま行かせてもらう!村雨流剣術斧技(ふぎ)盤刃(ばんじん)!〕

Xが体勢を直して向かってくるより先に武昭は手首で斧の持ち手部分を回しながら攻撃を加えた。

 

〔おい!お前の目的はなんだ!?なんでこんな事をするんだ!!〕

武昭がXに話しかけるが何も喋らず、そのまま攻撃をしてきた。

 

〔一体、何が目的なんだ?……〈おい()()()()()()()()()()()()()()()〉〕

 

〈いや、あっちからは何の返答も無いぜアニキ〉

攻撃をしながら武昭はアバルと言う存在と話していた。

 

〈アバル、返答が無いってどう言う事だ?〉

 

〈あぁ、コッチのコアネットワークとアイツらは繋がって無いみたいだな〉

 

〈ネットワークと繋がってない?……じゃあアリーナの奴らとコイツは束さんが作った訳じゃないのか〉

 

〈そうだぜ、それにアニキ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

〈生体反応がしない?まさか……無人機だって言うのか?そんな事がある訳が……おっと!〉

武昭が誰かと話してるとXが攻撃してきたので躱すとそのまま距離を取った。

 

〈生体反応が無いのなら……村雨流の()()()……死技(しわざ)を使っても平気って事だな……〉

 

〈アニキ、確かにそれを使えばアイツは倒せるけど……死技はアニキの体に負担が……〉

 

〈それがどうした?……ここでアイツを倒さないと周りの皆が危ないだろ……〉

 

〈アニキ……分かったよ……俺が出来るだけ負担は抑えるから、アニキがやりたい様にやってくれ!〉

 

〈ありがとうなアバル……迷惑を掛けて……〉〔形状変化……〕

武昭はアバルと通信を終えると右腕の形状を槍状に変化させると右腕を後ろに引いた体勢でXに向かった。

 

〔行くぞ!村雨流体術!死技!!ガッ!〕

武昭はXの攻撃を寸前で避けたが速度が速く左肩に攻撃を受け剣が食い込んだ。

 

〔ヘッ……いくらテメェでも……ここからの攻撃は防げねぇ!手槍貫(しゅそうかん)!〕

Xは武昭から距離を取ろうとしたが食い込んだ剣が抜けず、そのまま人間で言う心臓部を右腕で貫かれた。

 

〔ケッ……お前を作ったのは誰かが知らないけどな……人の命を奪う様な事はするんじゃねぇ……〕

武昭が右腕を抜くと同時にXが床に崩れ落ちた。

 

〔人の命を奪う奴はな……自分の命が奪われる事も覚悟してないとダメなんだよ……〕

 

「あきっち!」 「武昭!」

武昭が疲れから床に座り込むと本音と簪が駆け寄ってきた。

 

〔2人とも……避難は終わったのか?……〕

 

「うん、武昭の言う通りに機体を展開して扉を壊したから……」

 

「それよりも、あきっちは大丈夫なの〜?」

 

〔あぁ……ちょっとダメージを食らっただけで、特には……なっ!?〕20,19,18,17,16

Xはその機体を立たせると、何らかのカウントダウンを開始していた。

 

〔まさか?コイツ……自爆するのか?……本音!簪!ここから離れるんだ!!」15

武昭は何かを感じて2人に逃げる様に促すが2人は武昭が声を出した事に驚いていた。

 

「え?あきっち、声が……」14

 

「本音!それより早く逃げないと!!」13

 

「チッ!間に合わねぇ!仕方ねぇ!〈千冬さん!アリーナの天井を開ける事は出来ますか!?〉」12

 

〈あぁ!アリーナの機体を破壊したと同時にコントロールが回復した……お前、まさか?〉11

 

〈時間が無いんです!〉10

 

〈分かった……山田先生アリーナの天井を開けてください〉9

武昭の指示を受けた千冬がアリーナの天井を開けた。

 

「アバル!もう一踏ん張り頼むっ!!」8

 

〈あぁ!任せろ!!〉7

 

「村雨流体術!釣月(ちょうげつ)」6

武昭はXに飛び込んでアッパー気味の前蹴りを加えると足に引っ掛けてそのまま天井から出て行った。

 

「アバル!大丈夫か!!」5

 

〈ヘッ、これ位で俺がやられる訳無いぜ!!〉4

 

「そうか、けど、このまま一緒に行ってたまるかってんだよっ!!村雨流体術!双月(そうげつ)」3、2、1

武昭が引っ掛けていた足を引くとXが来たのでそのまま左右での蹴り上げで吹き飛ばして空中で爆発させた。

 

「ヘッ、これで終わったみたいだな……ガッ!しまった……」

Xは爆発したが武昭はその衝撃を受けて機体の展開が解除された。

 

「まぁ……(俺の手は血に染まってるからな)……このまま落ちた方が……」

 

「あら、ダメよ。そんな風に命を粗末にしちゃ」

武昭が落ちていると機体を展開させた楯無が受け止めた。

 

「楯無さん……一夏達の方は……」

 

「えぇ、問題ないわよ、多分一番の怪我人はあなたよ……だから、このまま医務室まで連れて行くわ」

 

「そうですか……あれ?何か眠くなって……」

武昭は楯無の腕の中で眠った。

 

「武昭君……ダメよ……あなたが傷付いたり命を落としたりすれば悲しむ人がいるんだから……」

楯無は武昭の顔を見て微笑んだ。

 

 

 

 



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第25話 クラス対抗戦 裏

アリーナに所属不明機が侵入した時……

 

「なっ!お前ら何者だ!!」

 

「一夏!危ない!!」

一夏が目的を聞くが何も答えず攻撃してきたので慌てて躱した。

 

「一夏、アイツらはどうやらこっちの事情なんてお構い無しみたいよ」

 

「あぁ、鈴の言う通りみたいだな」

2人は距離を取って不明機の確認をした。

一体は両手が刀状になっていて、もう一体は両手が銃状になっていた。

 

「一夏、あんたならどっちの相手をする?」

 

「俺は刀状の方なら相手が出来ると思う。鈴は大丈夫か?あっちの相手で」

 

「誰に言ってるのよ一夏、私は代表候補生なのよ……それに私は……(ううん、これは今は関係ないわね)それよりも早く始末するわよ!」

 

「あぁ、そうだな!……なら行くぜ!」

一夏が刀状、鈴が銃状と、それぞれの機体に向かった。


一方、管制室では……

 

「織斑君!凰さん!応答してください!!……やっぱり通じません……」

 

「そうか……」

麻耶がアリーナの2人に通信を入れるがノイズが入ってくるだけだった。

 

「どうやら、あの機体のどちらかが通信妨害を行い、もう一台が……」

千冬が何かを操作すると観客席の扉にロックが掛けられている表示された。

 

「一体、何が目的なんでしょう?……」

 

「さぁな、だが今はアリーナにいるアイツらに任せるしかないみたいだな……(それより、なんだ、この変な感じは?……)」

千冬はアリーナの状況を見ながら何かを感じていた。


時を前後して……

 

「虚ちゃん!何が起こったの!?」

 

「所属不明の機体がアリーナのバリアを破壊して侵入、そして幾つかの機能が操作不可となっています」

楯無と虚が状況を確認していた。

 

「その機能の中に観客席の扉が開かなくなっています」

 

「そうなの……とりあえずは落ち着かないとダメね……先生達と連絡は?」

 

「行ってますが通じません……〈楯無さん、武昭ですけど……〉今のは……」

 

「武昭君!無事だったの!?」

武昭からの通信を聞いた楯無は少しホッとした。

 

〈はい、今は本音と簪が近くにいます。何が起きてるんですか?〉

 

「そう、無事で良かったわ……それで今の状況だけど……私の指示に従ってくれるかしら?」

 

〈はい、分かりました〉

 

「虚ちゃんは他の整備科の皆と観客席の扉の解除に向かってちょうだい」

 

「はい、わかりました」

 

「それで武昭君には……あら?通信が……ガシャーン!今の音は何!?」

楯無が武昭と通信をしてると何らかの音がして通信が出来なくなった。

 

「一体、何が起きてるの?……何か嫌な予感がするわ……」

楯無は何かを感じていた。


アリーナside

 

「一夏!今の音聞こえた!?」

 

「あぁ、観客席の方からだけど……何か嫌な予感がする」

 

「私もよ……仕方ないわね……“アレ”を使わせてもらうわ……」

鈴は双天牙月を両手に持つと左手の方を横にして前に出し右手の方を上に翳したまま相手に向かった。

 

「行くわよ……村雨流剣術!双剣技!斬天裂地(ざんてんれっち)!!」

鈴は相手の銃弾を左手の薙刀で打ち払うとそのまま懐に入り込んで右手の薙刀で相手の武装を破壊した。

 

「これであんたは終わりよ!村雨流剣術!双剣奥義!仁龍交叉(にりゅうこうさ)!!」

相手は武装が無いまま鈴に向かってきたが鈴はその勢いを利用して双天牙月でバツの字斬りをして相手を破壊した。

 

一方……

 

「何で鈴が村雨流の技を?……おっと!」

一夏は鈴の様子を見て軽く驚いていた。

 

「今はコイツの相手が先だな!!(そう言えば……博嗣さんが言ってたな……)」

一夏は不明機の相手をしながら小さい時に武昭の父親から聞かされた事を思い出していた。

 

(博嗣さんから、俺は熱くなりやすいって注意を受けてたっけ……急ぐ時にこそ……心を落ち着かせろって……)

一夏は不明機と戦いながら冷静になっていった。

 

「悪いけど……お前の相手はここまでにしてやる!!村雨流剣術!焚衷(たきうち)!!」

一夏は不明機の攻撃を避けると同時に一刀両断した。

 

その後、アリーナのバリアが解除されたので一夏と鈴が状況を確認すると武昭が楯無に抱えられていた。

 

それから3日経つが武昭は目覚めなかった。

 

 

 

 

 

 

 




村雨流剣術
双剣技
斬天裂地(ざんてんれっち)
2本の刀を持ち片方の刀で相手の攻撃を打ち払って相手の懐に飛び込むともう片方の刀で攻撃を加える。

双剣奥義
仁龍交叉(にりゅうこうさ)
相手の勢いを利用してそのままXの字斬りをする。

剣技
焚衷(たきうち)
相手を正面から一刀両断する。


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閑話 その1

今回の話はアリーナでの騒動が終わった直後の時間軸です。


アリーナでの騒動が終わった後、ケガ人はいなかったが武昭だけが目覚めなかった。

 

「武昭……もっと早く私がアリーナの不明機を破壊していたら……」

医務室の武昭が寝てるベッドのそばで鈴が椅子に座りながら後悔していた。

 

「ううん鈴は悪くないよ……悪いのはIS学園に侵入してきた、あの機体達なんだから……」

鈴が後悔していると簪と本音が入ってきた。

 

「それに、あの時に私達の方でもちゃんと対応出来てたら、こうはならなかったかも……」

 

「うん、あきっちがいなかったら、あの付近にいた生徒達が危なかったって先生から聞いたよ……」

 

「そうなんだ……なんで武昭ばかりが、こんな目に合わなきゃダメなの?……」

 

「鈴……ダメだよ……1人で抱え込もうとしないで……」

 

「カンちゃんの言う通りだよ〜 ここにいる3人はあきっちの事が好きなんだから……辛い事は皆で背負おうよ〜」

 

「簪、本音……そうね、2人の言う通りね……」

 

「なんだ、皆ここにいたのか」

3人が話してると千冬が医務室に入ってきた。

 

「ち、織斑先生……何か用ですか?」

 

「お前たちに書いてもらう書類があってな……それで村雨はまだ目覚めないのか……」

 

「はい、医務室の先生が言うには体に何らかの負担が掛かって、目覚めないんじゃないかって……」

 

「そうか……(あの後、監視カメラの映像を見たが武昭が使ったあの技はISの補助があったとしても……)」

 

「織斑先生?どうかしたんですか?」

千冬が何かを考えていると簪が声をかけた。

 

「ん?いや、ちょっとな……それよりもそろそろ時間だから寮に帰るんだ」

 

「けど、武昭が……「それは分かっている、だから村雨が目を覚ましたなら私から連絡を入れる、それで納得しろ」……織斑先生……はい分かりました……」

 

「更識と布仏も帰るんだ」

 

「分かりました、それでは失礼します……」

千冬に言われて鈴、簪、本音が医務室を出て行った。

 

それから少し経って……

 

「おい、もう来てるんだろ?」

 

「にゃはは、さすがちーちゃんだね。よいしょっと」

千冬が声を掛けると窓から束が入ってきた。

 

「ごめんねちーちゃん、人払いなんかさせちゃって」

 

「気にするな、お前が他人に見つかる方が騒ぎになるからな……それで」

千冬が束に何かを尋ねようとすると雰囲気が変わった。

 

「うん、ちーちゃんに言われて調べたけど、あの機体は私が以前破棄した研究所に置いてあった奴だね」

 

「ならば、お前が原因なのか?」

 

「そうだね大本の原因は私だけど誰かが残ってた機体を再起動させたみたいなんだ」

 

「何?ちょっと待て、お前の事だから完璧に研究所を破棄したんだろうな」

 

「それはそうだよちーちゃん、この私がそんな失敗をすると思う?」

 

「いや、一応聞いてみただけだ……だとすれば何者かがその破棄した筈の機体を修理して再起動させたと言う事か……」

 

「ちーちゃんの言う通りだよ……この束さんには劣るみたいだけどね……」

 

「そうか……ならば、この話はここまでにして武昭の具合はどうなんだ?」

千冬が武昭に視線を向けると束もつられて武昭を見た。

 

「それなんだけど……幾つか原因があってまずは()()()()()()

束が毛布を捲ると武昭の右腕の表面が壊れて中身の配線が幾つか見えていた。

 

「この義手は私が作った奴なんだけど、これがここまで破損するなんて()()()()()()()()()()()()

 

「そうか……もしかして武昭は……()()()使()()()()()()……」

 

「うん、ちーちゃんの考えてる通りだね……村雨流に於いて2つある奥義の1つ……()()を……」

束の言葉に千冬は何かを考えていたが考え終えて口を開いた。

 

「束、さっき言っていた他の原因はなんだ?」

 

「死技を使った事による肉体の損傷と負担だね……まぁ()()を使えば明日には目覚めるけどね」

束はポケットから注射器を取り出すと武昭の体に注射した。

 

「これはたっくんが私の所にいた時に使ったナノマシンでね、あとは……ヨイショっと」ガコン

束は注射器をしまうと壊れていた右腕を外して量子変換をした。

 

「1~2日すれば新しい物を持ってくるってたっくんに伝えておいてね……あっ、そうだちーちゃん」

束が窓から出ようとした時だった…。

 

「誰がこんな事をしたのかは、まだ分からないけど……もし犯人が分かったら……私は容赦しないよ?

束はそう言うと窓から出て行った。

 

そして……

 

「束、安心しろ……私も同じ気持ちだ……

千冬からも束と同じ殺気が出ていた。

 

余談だが……

 

その日の放課後……

 

何故か、鳥たちが異常に騒いでいた。

 

 




IS学園で騒ぎが終わったのと前後して、とある国のとある研究所内で……

「ふーん、やっぱり機械制御じゃ、これが精一杯か……まぁ、データは取れたから構わないけどね……」
1人の女性と思われる人物がモニターに映し出されたデータを見ていた。


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閑話 その2

束がIS学園に来て武昭への治療?を行った次の日の朝……

 

「ねぇ、カンちゃん……あきっち……いつになったら目を覚ますのかなぁ……」

 

「本音……大丈夫だよ……必ず武昭は目を覚ますよ……」

医務室に本音と簪が見舞いに来ていた。

 

「あっ、なんだ見ないと思ったら先に2人が来てたんだ」

2人が武昭を見てると鈴が入ってきた。

 

「やっぱり武昭はまだ?……そう……全く武昭は本当に昔から無茶ばかりするんだから……」

鈴は2人の反応から状況を察すると近くにあった椅子に座った。

 

「前に聞いたけど……鈴が武昭の事を気にする様になったのって

イジメられてたのを助けてもらったからだよね?」

 

「えぇ、私は小学4年生の時に日本に転校してきてクラスの男の子達にイジメられてたの……

それを助けてくれたのが武昭だったわ……」

 

「ふーん……それからリーリーはあきっちの事が好きなんだ〜」

本音がそう言うと鈴は顔を赤くした。


医務室で3人が話してる時……

 

〈アニキ!二度とこんな真似をするんじゃねぇぞ!!〉

どこか周りが暗い空間で武昭が正座をしながら赤い短髪で鳥の羽を模した武闘着を纏った少女に怒られていた。

 

「あぁ、分かったよアバル……」

 

〈お待ちください、マスター……それを言うならばアバル、貴女も同じですよ〉

武昭が反省してるとアバルの横に肩までの長さの緑と黒が混ざった髪に蛇の髪飾りをつけている亀甲模様の着物を着た少女が立っていた。

 

〈ど、どう言う事だよ?……()()()()

 

〈どういう事かは貴方自身が一番知ってるのでは有りませんか?〉

セルテスと言われた少女はアバルに詰め寄ったが武昭が止めた。

 

「セルテス、確かにアバルは俺の考えに乗ったけどな、一番悪いのは俺だからアバルは許してやってくれ」

 

〈マスター……ですが……〈諦めた方が良いよセルテス〉〈そうそう武昭は昔っからそうなんだから〉貴女達……〉

セルテスの右側に白髪のポニーテールで虎柄のワンピースを着た少女(アブネル)、左側に蒼髪のツインテールで龍の鱗を模したパンツスーツを着た少女(マァガル)がそれぞれ立っていた。

 

「アブネムにマァガルか……お前達も俺に何かを言いに来たのか?」

 

〈ううん……私達が来たのはそうじゃないよ……〉

 

〈そっ、私とアブネルが来たのは違う理由……武昭に何でも1人で背負おうとしないでくださいって事を言いに来たの〉

マァガルは武昭の前に座ると真っ直ぐに見据えた。

 

〈武昭が無理をするのは私達が一番知ってるわ……だけどね、だからって何でも1人でやろうとしないで……〉

 

〈うん……武昭さんには……私達が居る……だから……〉

アブネルは武昭の右手を両手で優しく握ったが、その手からは強い思いを感じた。

 

「アブネル……ありがとうな……それにマァガル、セルテス、アバル……皆もありがとう……こんな俺に……」

 

〈マスター……自分を卑下してはダメです……私達はマスターの為にいるのですから……〉

 

〈そうだぜ、アニキ……私達はアニキの力になれる事が嬉しいんだから〉

武昭の周りにいた4人が笑顔を見せると武昭の体が少しずつ輝いていった。

 

「どうやら束さんが俺にナノマシンを使ったみたいだな……皆、俺はまた無茶をする事があるけど……力を貸してくれ……

それに……()()()()()()()()()()……」

武昭が姿を消す前に視線を向けた場所には頑丈に鍵が掛けられた扉があった。

 

そのまま武昭は姿を消した……

 

 

 

【ダメだよ……私が出たらお兄ちゃんは……】

扉の中では何者かが自己否定をしていた。




簡単なオリキャラ設定。
アバル
赤い短髪で所々に鳥の羽を模した武闘着を纏った少女。
ユナイトコア朱雀の人格。
武昭の事はアニキと呼ぶ。


セルテス
緑と黒が混ざった肩までの長さの髪で蛇の髪飾りを付けていて亀甲模様の着物を着た少女。
ユナイトコア玄武の人格。
武昭の事はマスターと呼ぶ。

アブネル
白髪のポニーテールで虎柄のワンピースを着た少女。
ユナイトコア白虎の人格。
武昭の事はさん付けで呼ぶ。

マァガル
蒼髪のツインテールで竜の鱗のパンツスーツを着た少女。
ユナイトコア青龍の人格。
武昭の事は呼び捨てで呼ぶ。


扉の中に籠っている謎の少女。
ユナイトコア?の人格。
その存在は他の4人は知っているがどんな容姿かは武昭しか知らない。






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閑話 その3

武昭がコア人格達との話を終えて目を覚ますと……

 

「ん?……あ、あれ?……ここ……は……」

 

「武昭君!?大丈夫!!」

 

「お嬢様、取り敢えずは落ち着いてください」

楯無と虚がベッドの横に立っていた。

 

「楯無……さん?……虚さ……ん?……俺は……」

 

「ここは学園の医務室よ、武昭君はクラス対抗戦の日から今日で5日間眠ってたのよ……」

 

「クラス……対抗……戦?……あぁ、あの不明機の自爆に……あれ?……右腕が……」

武昭が自分の状況を確認してる時だった……

 

「おぉタイミングが良かったみたいだな」

千冬が医務室に入ってきた。

 

「織……斑先……生……俺の右腕は……」

 

「それを説明する為に来たんだ、悪いがこれからの話は機密事項に引っかかるからお前達は出ていてくれ」

 

「はい、分かりました……行きましょう虚ちゃん」

 

「はい、それでは失礼します」

2人が医務室が出たのを確認すると千冬は置いてあった椅子に座った。

 

「全く……お前は本当に無理ばかりをして……周りの者達に迷惑をかけるな……」

 

「はい………すみま……せん……でした……あの、それで……」

 

「あぁ、右腕は()()()が修理の為に取りに来て、そのまま持って行った

だから、それまでは不自由だろうが、それで過ごしてくれ」

 

「分かり……ました……それと、この……声は……」

 

「以前お前に会いに来た事があっただろう……その時に治療としてナノマシンを注射していたからな……

だが、長い間言葉を発していなかったから喋るのに辿々しいから少しずつ話すんだ……」

 

「はい……分かりま……した……」

 

「あと、診察の結果、所々の筋肉が軽く断裂しているから暫くの間はここで入院している事だ……その間はゆっくりしていろ……

()()……」

千冬は医務室を出て行ったがその顔には微笑が浮かんでいた。


千冬が医務室を出てから少しして……

 

「武昭!目を覚ましたって本当!?」

鈴が医務室に入って来たが……

 

「鈴、静かに入ってこいよ」

 

「まぁ仕方ないだろう一夏」

 

「えぇ、()()()()()()()()()()()()()が目を覚ましたのですから」

一夏と優しい笑顔を浮かべた箒とセシリアがいた。

 

「えっと、あの、その……アァーッ!それよりも武昭!体はどうなの!?」

 

「あぁ……見ての……通りだ……」

 

「え?……その右腕って……それに……声が……」

鈴が武昭を見ると右腕が無く普通に声が出ている事に驚いていた。

 

「けどな、まだ俺達の事は思い出していないみたいなんだ……」

 

「うむ、私も一夏と共に昔の話をしてるんだがな……」

 

「そうなんだ……けど、武昭が目を覚まして良かったわ……」

 

「そろそろ私達は帰るとしましょう」

 

「そうだな、ここに長く居ても武昭の迷惑になるだろうからな」

 

「え?別に居ても良いんじゃ「ほら行くぞ一夏」痛たたた!」

セシリアが提案した事に箒が賛成したが一夏が空気を読まなかったので箒に耳を引っ張られて出ていった。

 

その結果医務室は鈴と武昭だけの2人になった。

 

「なぁ……鈴……昔の俺って……こうやって……無茶ばかり……してたのか?……」

 

「えぇ、そこは昔のままよ……よく一夏や弾と一緒に色々やってたわ……」

 

「弾?……あぁ、一夏から聞いた家が料理屋の中学の同級生か……」

 

「そうよ、よく彼の家でご飯を食べてたわ……それに私の家でもね……

 

「ん?……鈴……何か小さくて……聞こえなかった……けど……」

 

「な、何でも無いわよ!!」

 

「そうか……鈴が……そう言うなら……良いけど……ん?……もう…こんな時間なのか……」

武昭が窓から外を見ると夕焼けが出ていた。

 

「悪いな……こんな時間……まで……「ねぇ……たけ……わ……たし……が……」ガッ!?」

武昭が夕焼けを見ていると頭の中に何らかの映像が浮かんできたが頭痛もして来た。

 

「武昭!?どうしたの!!ねぇ!!」

 

「ガッ!あ、あ、あ……「ねぇ……武昭……その……私の料理の腕が上がったら……毎日酢豚を作ってあげる!」

武昭が痛みから左腕で頭を抑えているのを見て鈴は何をしたら良いか分からず戸惑っていた。

 

「一体どうしたら?……そうだ、千冬さんに……「いや……連絡……しなくて……いいぞ……()()

 

「え?武……昭……今、私の事……スズって……」

 

「ハァハァハァ……あぁまだ全部って訳じゃないけど……少し……思い出したぜ……スズ」

武昭が微笑むと鈴は武昭の胸に飛び込んで泣きながら文句を言っていた。

 

「バカっ!思い出すなら早く思い出しなさいよっ!!」

 

「あぁ……ごめんな……スズ……それで……聞きたいけど……()()()()()()()()()()()()()()()……」

武昭の言葉を聞いた鈴は最初意味が分からなかったが理解すると顔を赤くして武昭から慌てて離れた。

 

「いや!あのっ!そのっ!腕前は上がったけど!って……それも思い出したの?」

 

「中学の時……この位の時間に……教室で……スズが、そう言ったよな……」

 

「そ、そうなんだ……それで武昭……聞きたいけど……返事は……どうなの?」

鈴は赤い顔で上目遣いで武昭に尋ねた。

 

「それなんだけど……今は……まだ……返事が出来ないんだ……ただスズが嫌いとかじゃないんだ……」

 

「どういう事か教えてくれるわよね?」

 

「スズも知ってる通り……俺には昔の記憶が無いんだ……もしかしたらだけど……」

 

「私も分かったわ……武昭は私と同じ状況の子がいるかもしれないって事ね?」

武昭は鈴の言葉に黙ってうなづいた。

 

「そっか……(多分だけど武昭は昔に簪や本音に会ってるみたいだから……それが関係してるのかもね……)」

 

「だから……俺が記憶を全て思い出すまで……返事は待っててくれ……」

 

「良いわよ……何年も待ってたから……待つ事には慣れてるから」

鈴は太陽の様な笑顔を武昭に見せた。

 

「それじゃ武昭、また明日ね」

 

「あぁ、また……明日な……スズ……」

鈴は武昭に挨拶をすると医務室を出ていった。

 

「武昭……私は誰が相手でも……負けないから……」

鈴は寮の部屋で決意していた。

 

 




武昭が鈴との思い出を思い出したのと前後して……

「ふぅ……また面倒な事になったな……」

「織斑先生、コーヒーをどうぞ」
職員室で千冬が何らかの仕事をしていると麻耶がコーヒーを持ってきた。

「あぁ、すまないな麻耶……ふぅ、まさかこの方な物が出来るとはな……」

「けど、織斑君と村雨君の立場を考えたら当然だと思いますよ」

「そうだな……だが、これが決まるとあらゆる国が接触してくるだろうな……」
千冬は()()()()を見ながらコーヒーを飲んだ。

「まぁ織斑はどうか分からないが……村雨の場合は心配しなくて良いだろうな」

「そうなんですか?織斑先生」

「あぁ、それよりも麻耶の方の仕事は終わったのか?」

「えぇ、何とか……けど、なんでこんな時期に……2人の転入生が来るんでしょうか?……」
麻耶が見てる書類には短めの金髪で紫色の瞳の人物の写真と長い銀髪に赤い右目で左目に眼帯をした人物の写真がそれぞれ貼ってあった。

「さぁな……だが、まさか()()()がここに来るとはな……」

「織斑先生は彼女の事を知ってるんですか?」

「あぁ、私がドイツにいた時にちょっとな……」
千冬は銀髪の人物の書類を見ていた。

(だが、それよりも……私はコイツの方が気になるがな……)
千冬は金髪の人物の書類を見て何かを考えていた。


一方……

「ふーん……まさか、このフランスっ子もたっ君と小さい頃に会ってるなんてねー」
何処かにある研究所で束はモニターで何かを見ていた。

そこには、大体5〜6歳位の武昭と金髪に紫色の瞳の()()が、それぞれの親達と一緒に写っている写真が映し出されていた。

「多分この子もたっ君の事が……まぁ、誰が相手でも私やちーちゃんが居るから……」
束はモニターを見ながら何かの作業をしていた。



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閑話 その4

武昭が目覚めた翌日……

 

「はい、武昭君、どうぞ」

 

「ありがとう……ございます……楯……無さん……」

楯無に手伝われて武昭が朝食を食べていた。

 

「朝から……すみません……迷…惑かけて……」

 

「ううん、武昭君がケガをしたのは観客席の警備を任せた私の責任でもあるんだから気にしないで……それで次は何が良いかしら?」

 

「それじゃあ……そっちの…煮物を……お願いします……」

 

「えぇ分かったわ、はいどうぞ」

 

「やっほ〜見舞いに来たよ〜」

 

「大丈夫なの?武昭……」

楯無が武昭に食事を食べさせていると本音と簪が医務室に入ってきた。

 

「あっ……本音……に…簪……か…2人も……見舞いに…来てくれたのか?……」

 

「うん、私は休んでる間の授業のノートを持ってきたんだぁ〜」

 

「私は……コレを作ってきたの……」

武昭の問いかけに本音は数冊のノート、簪は小さめのカップケーキを袋から取り出した。

 

「ありがとう……2人……共……おっと……あっ……その……ごめん

 

「フェッ!?う、ううん、あきっちは片腕が無いから仕方ないよ〜」

武昭がノートを受け取ろうとした時にバランスを崩して本音の胸に顔が当たってしまい互いに顔を赤くしていた。

 

「ハイハイ、そんなハプニングは良いから(私が近くに居たら……って何を考えてるのよ!私は!?)」

 

「武昭、ノートこっちに置いておくね……(ムゥ……この中なら私が1番……)」

 

「皆さん、ここは医務室なんですから静かに……(全くお嬢様達は……けど、それだけ武昭君の事を想っているのですね……)」

武昭と本音を見て楯無は自分だったらと言う妄想、簪は自身のスタイルで落ち込んでいて、虚は3人の思いを知って微笑んでいた。

 

そうしてた時だった……

 

「武昭、見舞いに来たわよって皆も来てたんだ」

鈴が見舞いに来た。

 

「おぉ……ありがとうな……スズ……」

 

「そんなに感謝される事は無いわよ、私は当然の事をしてるだけなんだから……(バカ自分の事を心配しなさいよ)」

 

「鈴ちゃん、そんなに顔を赤くしても説得力が無いわよ」【ツンデレ】

楯無が扇子を開くと文字が書かれていた。

 

「なっ!ツンデレって……まぁ、ここは医務室だから静かにするわ……」

 

「そう言えば〜なんでリーリーは、あきっちからスズって呼ばれてるの〜?」

本音が気になった事を鈴に尋ねた。

 

「ん?……確か……仲良くなった皆は……鈴音の鈴から(りん)って呼んでたよな……なんで俺はスズって呼び始めたんだっけ?」

 

「んなっ!?そ、それは私だって知らないわよ!!」

 

「じー……鈴……何か隠してる……」

 

「そうみたいねー これは詳しい話を聞かないとダメねー」

 

「んなっ!?ちょっと、どこに連れて行くのよ!?」

 

「大丈夫だよリーリー〜何も痛い事はしないから〜」

本音に理由を聞かれた鈴が赤い顔で否定してると何かを感じた簪に真っ直ぐ見られ、楯無と本音に両腕を掴まれて医務室から出されていった。

 

「えっと……」

 

「それでは武昭君、私達はコレで失礼します……」

武昭がキョトンとしてると虚が頭を下げて楯無達の後を追いかけた。

 

「……うん……俺は何も見なかった事にしよう……フワァ〜 うん寝るか……」

武昭はアクビをして眠りについた。




鈴が連れられたのは生徒会室だった。

「さてと、それで何で鈴ちゃんは武昭君からスズって呼ばれてるのかしら?」

「えっと……言わないとダメですか?」
鈴は椅子に括り付けられており前には楯無、左右に簪、本音とそれぞれに囲まれていた。

「それはヤッパリ、同じ人を好きになったから聞きたいのよねぇ……」

「楯無さんも武昭の事が……(うわぁスタイル良いじゃない……)」

「話さないと、このままよー」

「分かりました、話します……」
観念した鈴は理由を話し始めた。

その理由とは……
日本に来た鈴がクラスの皆と仲良くなった時に鈴と呼ばれてる事が多く、
武昭が自分が最初の友達だから他の人と違う呼び方をすると言われたとの事だった。

その結果……

「それで、その時から武昭は私と2人きりの時にだけ【スズ】って呼ぶ様になったんです」
鈴は赤い顔で説明したが、その表情はとても良い笑顔だった。

「へぇーそうだったんだー……ねぇ皆、これはリーリーに罰を与えた方が良いよねー?」

「ね、ねぇ本音何か雰囲気がいつもと違うんだけど?」

「本音ちゃんの言う通りね……そんな羨ましい事をやってもらってるなんてねー」

「楯無さん!?メチャメチャ本心ダダ漏れなんですけど!?」

「大丈夫だよ鈴、痛くはないから……多分……

「ちょっと簪!今、小さな声で多分って言ってない!?」
鈴は3人の雰囲気が変わった事に軽く怯えていた。

「お嬢様方、外に声は聞こえない様にしてくださいね」

「ちょっと!?私は何をされるの!?」
鈴は虚の言葉を聞いて慌てていた。


その後、生徒会室の近くを通った生徒達からは何かが聞こえたとの話題が流れたとか……


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第26話 休日

クラス代表対抗戦が終了してから日にちが経って日曜日になっていた。

 

一夏は届けを出して中学の同級生の家に来ていた。

 

「おらっ!このまま俺が勝ってやる!!」

 

「そうは行かないぜ!!ヨッシャっ!俺の勝ち!!」

一夏は同級生である五反田 弾(ごたんだ だん)とゲームをしており一夏が買った。

 

「くそー!俺が勝つと思ったのにー!!」

 

「なら、もう一回やるか?」

 

「いや、少し休むぜ、それにしても、まさかお前がISを動かすなんて思わなかったぜ」

弾はコントローラーを置くと寝転んでニヤニヤしながらある事を聞いた。

 

「なぁ、やっぱり女子の中に1()()()()()()()だからハーレムなんだろ?」

 

「そうでも無いぞ、逆に言うと()()()2()()()()()()()からたまに変な視線を感じるんだぞ、それに男子トイレが数少ないし」

 

「そう言う物なんだな……ん?なぁ一夏、今、男子が2人しかいないって……もう1人見つかったって事なのか?」

 

「あぁ、見つかったんだよ……ある意味()()()1()()()()()()()()()がな……」

 

「俺達が1番会いたかった奴って……まさか!?」

弾が何かに気付いた時に誰かが部屋のドアを蹴り開けた。

 

「こらお兄!ご飯が出来たって言ってるでしょ!!」

蹴り開けたのは弾の妹で五反田 蘭(ごたんだ らん)と言い家にいるのでラフな格好をしていた。

 

「おい!蘭!そんな格好でウロウロするな!一夏が来てるんだぞ!!」

 

「えっ!?い、一夏さん!?来てたんですか!?」

 

「あぁ、家の掃除をしたかったし、ちょっとした荷物を取りに来てな」

 

「お兄!一夏さんが来てるなら来てるって言ってよ!!」

 

「悪いな蘭、俺が弾に会いたかったから急に連絡したんだ」

 

「そ、そうだったんですか……それじゃ、店で待ってます」

蘭が部屋を出たのを確認すると弾が一夏の方を見た。

 

「なぁ一夏、さっき言ってた奴って……武昭の事か?」

 

「そうだ……けど、千冬姉から【機密事項】に当たる話もあるから俺も詳しく話せないんだ……」

 

「そうか……まぁアイツが()()だっただけでも良かったぜ!ほら飯を食いに行くぞ!!」

 

「そうだな……(無事と言えば無事だけど……昔の事を覚えてないって言ったら……)」

一夏は弾の後ろをついていきながら武昭の事を考えていた。


一夏が弾の家に来ていた頃と時同じくして……

 

「ふぅ……久し振りに来たけど、そんなに汚れてないわね」

鈴が武昭の家の掃除に来ていた。

 

「織斑先生が言うには織斑君が暇さえあれば掃除とかしてたみたいよ」

鈴とは違う所を掃除していた楯無が鈴に教えた。

 

「お姉ちゃん、鈴、水回りの掃除は終わったよ」

 

「だから、私達もこっちを手伝うよ〜」

2人の所に簪と本音が来た。

 

「けど、ダメかと思って先生に聞いてみたけど許可してくれるなんて思わなかったわ」

 

「武昭がいなくなった時も中国に帰るまでは一夏と一緒にやってたんですよ」

 

「そっかぁ〜リーリーとイッチーはあきっちの幼馴染だったんだもんねぇ〜」

 

「私が中国に戻る事になった時も一夏が「俺に任せろ」って言ってたっけ」

鈴がその時の事を思い出して笑っていた。

 

その後、皆は掃除を終えると学園に戻った。

 

 

 



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第27話 休日 裏

一夏や鈴が外出してる頃、学園では……

 

「えっと……コレで……大丈夫ですか?……虚さん……」

 

「えぇ、大丈夫ですよ、武昭君」

生徒会室で武昭が虚から休んでいた間の勉強を教わっていた。

 

「けど……すみません…虚さん……に…こんな事……を頼んで……」

 

「気にしないでください。私も自分の復習になりますので。

それよりも武昭君も大分話せる様になってきましたね」

 

「そう……ですか…自分じゃ…… 分からないですけど……」

 

「えぇ、このまま続けていけば普通に言葉を発する事も出来る様になりますよ」

 

「ありがとう……ござい…ます……クキュ〜

2人が話してると武昭のお腹から音が聞こえた。

 

「ふふっ、そろそろお昼にしましょうか……お嬢様が武昭君の為に作っておいたんですよ」

虚は微笑みながらお弁当箱をテーブルに置いた。

 

「今回は()()()()()食べやすい様にサンドウィッチにした様です」

 

「ありがとう……ございます……それじゃ……いただき…ます……」

 

「はい、どうぞ……そうだ飲み物を用意しますが何かありますか?」

 

「でしたら……冷たいカフェオレで……お願いします……」

 

「そうですか、では少しお待ちください……」

虚は飲み物を淹れに行った。

 

その後……

 

「ふぅ……ご馳走さま……でした……」

 

「はい、お粗末様です……武昭君、味はどうでしたか?」

 

「とても…美味しかったです……特に、このBLTサンドが…良かったです……」

 

「なら、お嬢様には、そう伝えておきます……」

虚は微笑みながら楯無がお弁当を作ってる時の事を思い出していた。


寮の楯無の部屋のキッチンで……

 

「うーん……明日は何を武昭君に作ってあげたら良いかしら……」

 

「食堂などで見た事がありますけど武昭君は何でも食べてましたよ」

楯無と虚が話していた。

 

「そうなのー 前は五目ご飯とかの和食だったから何か洋食にしようかしら……」

 

「でしたらサンドウィッチが良いと思いますよ、それなら今の武昭君の体でも食べ易いですし」

 

「そうね、サンドウィッチにしましょ!だったら何を挟もうかしら……」

 

(お嬢様も変わりましたね……前は仕事をサボる事も多かったですけど、今は武昭君と一緒に居たいからと、ちょっと下心がありますけど……)

 

「ねぇ、虚ちゃん、やっぱり普通の物より、珍しい物を挟んだ方が良いかしら?」

 

「ここはやはり定番の方が良いと思います、なので……」

それは深夜深くまで行われていた。

 

「そして、お嬢様達は武昭君の家の掃除に行った事は秘密にって言われましたね……あら?」

虚が見ると昼食を終えた武昭が椅子に座ったまま眠っていた。

 

「お腹が一杯になったんですね……このまま眠ってて良いですよ……」

虚は武昭に置いてあった毛布を掛けた。

 

その後、日が暮れるまで武昭は眠っていた。


鈴達が武昭の家に行く前……

 

「ほう、それで外出をすると言うのか……」

鈴、本音、簪、楯無が千冬に外出の許可を貰いに職員室に来ていた。

 

「はい、本来なら武昭が一緒に来た方が良いと思うんですけど、今の武昭は余り外出させない方が良いと考えたんです」

 

「ふむ、確かに今の村雨が外出したら、少し危ないな……分かった許可しよう、所でお前達は家の鍵は持っているのか?」

 

「いえ、だから一夏に鍵を借りようと「アイツなら先程外出したぞ」え?そうですか……」

 

「仕方ない、ほら」

鈴たちが落ち込んでると千冬がポケットから何かを投げたので簪が慌てて受け取ると家の鍵だった。

 

「織斑先生、コレって……」

 

「そいつは村雨の家の合鍵だ。私もアイツの関係者だから持っていてもおかしくないだろう?」

 

「そうですね、それではお借りします、それでは」

鈴たちは千冬に頭を下げると職員室を出て行った。

 

「全く……アイツは一夏と違って女性に苦労しそうだな……」

千冬は苦笑いしながら何かを考えていた。



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第28話 新たな鍵。

医務室での治療は終えて寮の部屋での療養に切り替わった武昭が本音と一緒に戻ってきた。

 

「あきっち、荷物はここに置いておくね〜」

 

「あぁ……ありがとう……本音……」

 

「ううん、あきっちはまだ片腕が無いんだから、しょうがないよ〜」

本音は武昭の荷物を片付けていた。

 

そんな中……

 

「あの、セシリアですが、今、大丈夫ですか?」

ドアがノックされたので武昭が返事をすると何らかの紙袋を持ったセシリアが入ってきた。

 

「どうも……セシリアさん……今日はどうした……んですか?」

 

「えぇ、鈴さんから武昭さんが目を覚ましたと聞いたので遅くなりましたが、お見舞いを持ってきたのです」

 

「あぁ〜 その紙袋って有名なケーキ屋のお店の奴だぁ〜」

 

「えぇ先日の休日に外出をした時に、たまたまお客が少なかったので買えたのです。

それで武昭さんのお見舞いにどうかと」

 

「そうだった……んですか……すみません……何か……お手数をかけて……」

 

「いえ、わたくしがしたくてした事ですから、布仏さんお皿とかはどちらにありますか?」

 

「ううん、私が用意するから良いよ〜」

セシリアが用意をしようとしたが本音が動き出した。

 

その後、3人はケーキを食べながら話していた。

 

「それで武昭さん、その腕は……」

 

「あぁ……ちょっとね……だから授業でも、実習は見学だね……それにしても……このケーキは美味しいな……」

 

「えぇ、ここの店はその季節に応じてフルーツ等を使用する事で有名なんですわ……」

 

「ふぇ〜 そうなんだ〜 コレって何のケーキなんだろう〜?」

 

「うん…多分だけど、コレは……アプリコットのジャム?……だと思うな……」

 

「武昭さんの言う通りですわ……時期が少し早いですがアプリコットを使用してるんです」

 

「やっぱりか……「ねぇ……美味しい?……」ウワァ!?」

ケーキを食べていた武昭の脳裏に何らかの映像が浮かぶと軽く頭痛がすると体を崩してフォークを落とした。

 

「あきっち!?」 「武昭さん!?」

それを見た2人は慌てて駆け寄った。

 

「いや……大丈夫だ……少し頭痛が……しただけだから……(けど、今のは?……)セシリア?」

 

「え?どうしたんですか?私の名前など呼んだりして」

 

「あぁ……なぁ、セシリアって……小さい頃とかに……日本に来た事は…あるか?………」

 

「いえ、わたくしは小さい時はイギリスにいたので日本へ来たのはIS学園に通う事になってからです」

 

「そうか……そうだな……なぁ小さい頃に……瞳が紫色だったら……大きくなっても……変わる事は……無いよな?……」

 

「えぇ、コンタクトとか等を入れたりなどしなければ、そのままですが……何故、その様な事をお聞きに?」

 

「いや……何でもない……(確かに……今、浮かんだ子の瞳は紫色で金髪だった……誰なんだ?……)」

 

(あきっち?……また何かを思い出したの?……)

武昭の様子を見ながら本音は何かを感じていた。

 

とある日のフランスの空港を飛び立った飛行機の中で……

 

(僕のやる事は……IS学園に編入して【男性操縦者のデータを入手する事】……けど、2人の男性操縦者の1人が【彼】だなんて……)

乗客の1人がポケットにあった写真を見ていた。

 

その写真は以前、束が研究所で見ていた物と同じ小さい頃の武昭が写っている物と同じ物だった。

 

(出来る事なら……こんな事をしないで日本に行きたかったな……)

その人物の表情は何処か悲しげだった。



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第29話 金と銀

武昭が医務室から寮に戻ってから少し経ったある日の朝……

 

「はい!今日は2人の転入生を紹介します!!入ってきてください」

麻耶が言うと2人の生徒が入ってきた。

 

「2人とも代表候補生で専用機持ちなんです、自己紹介をしてください」

2人の生徒の内1人が前に出たが、その生徒は金髪を首の所で縛っており()()()()()()を着ていた。

 

「はい、フランスの代表候補生のシャルル・デュノアと言います。

こちらに僕と同じ境遇の生徒がいると聞いて編入してきました。

まだ慣れない事が多いですが、皆さんよろしくお願いします。」

 

『キャーッ!!』

 

「3人目の男子生徒!」 「しかもうちのクラス!」 「美形!守ってあげたい感じの!!」

 

「おい、騒ぐな静かにしろ」

女子達が騒いでいると千冬の一声で静かになった。

 

「織斑先生の言う通りですよ、まだもう1人いるんですから、それではどうぞ……えっと?」

 

「ラウラ、自己紹介をしろ」

 

「はい、分かりました教官」

もう1人の生徒に麻耶が促すが反応が無く千冬に言われて自己紹介をした。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「えっと……以上ですか?」

 

「以上だ……」

ラウラは自己紹介を終えると、そのまま一夏の前に立った。

 

「貴様が!何!?」

ラウラが一夏に平手打ちをしようとしたがその手を受け止めた。

 

「おい、何をするんだ?俺がお前に何かやったか?」

 

「貴様が教官の弟などと私は認めない!!」

 

「お前らいい加減にしろ!!早く席に着いて授業の準備をしろ!!」

 

「教官の命令ならば従います」

 

「ここでは織斑先生だ、そうだ村雨」

 

「はい?……」

 

「同じ男子生徒だからデュノアの面倒を見てやれ」

 

「ち、織斑先生、それだったら俺が面倒を見ます。今の武昭じゃ」

 

「悪いがこれは()()からの指示でもあるんだ」

千冬の説明を聞いた一夏は何とか納得した。

 

一方……

 

「君が村雨君?僕はシャルル・デュノアだよ、よろしくね」

 

「あぁ……俺は……村雨武昭だ……それよりも……最初の授業は実習だから……アリーナの更衣室に……行かないと……」

 

「うん、ありがとう……そうだ、僕の事はシャルルで良いよ」

 

「そうか……なら、俺の事も……武昭で良いぞ……」

 

「武昭!何か困った事があるなら俺も手伝うからな!じゃあな!!」

一夏は先に向かったが武昭とシャルルはゆっくりと歩いていた。

 

そんな中……

 

「あっ!新しい男性操縦者発見!!」

 

「これは早く取材しないと!!」

2人が歩いていると多数の女生徒達が迫ってきた。

 

「えっと?これって」……「俺達が男性操縦者だからな……悪いがシャルル、ちょっと()()()()()()()()?」

 

「ん?合わせるって……どういう……えっ!?」

シャルルが言葉の意味を考えてると武昭が胸を抑えて片膝をついた。

 

「えっ!?どうしたの!村雨君!!」

 

「ちょっと……体が……すみませんが……アリーナにいる織斑先生が……薬を持ってるので……早く行かないと……」

 

「え、えぇ、分かったわ!皆!道を開けてあげて!!」

 

「ありがとう……ございます……シャルル、悪いが……付き添い頼む……」

 

「う、うん、ほら早く行こう……(多分、演技なんだろうけど……本当に苦しんでる様に見える……)」

武昭はシャルルに付き添われて目的地に向かった。


アリーナの更衣室に到着するとISスーツに着替えた一夏がいた。

 

「あっ、2人とも来るのが……どうしたんだ!?武昭!!」

 

「いや……何でも無いよ……一夏、悪いけど俺は少し休んでから行くって……織斑先生に……伝えておいてくれ……」

 

「あぁ、分かった……シャルル悪いけど武昭の事を頼んで良いか?」

 

「うん、僕は構わないよ、だから一夏は先に先生達に伝えてくると良いよ」

シャルルに言われた一夏はアリーナに出て行った。

 

その後……

 

「武昭、本当に大丈夫なの?」

 

「あぁ……少し休んだら……楽になったよ……それよりも……それって……」

武昭はシャルルのISスーツが自分が知るのとは違う事に気づいた。

 

「あぁ、これはウチの会社で作ってる奴なんだよ」

 

「そうか……確かデュノアって……ISの企業があったっけ……」

 

「うん、そうだよ……僕の父の会社だよ……それよりも武昭は着替えないの?」

シャルルが自分の事を話した時に一瞬暗い顔をしたが直ぐに話題を変えた。

 

「あぁ……俺は今()()()()()実習には参加しなくて良いって言われてるんだ」

武昭が右腕を見せるとシャルルは納得した。

 

「ねぇ……武昭は……何で、そんな体になったの?」

 

「そいつは話したくないし……話せないんだよ……それよりも早くアリーナに行くぞ」

 

「あっ!待ってよ!!(武昭……いつかは話してくれるよね?)」

シャルルの表情はどこか決意した様に見えた。



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第30話 実習(前編)

一夏達がアリーナに出ると1、2組の生徒達が整列していたので一夏達は1組の最後尾に並び武昭は千冬の横に向かった。

 

「すみません……織斑先生……俺はここで良いんですか?……」

 

「あぁ、その様になっていては実習を行うのを無理だからな」

 

「分かりました……(ん?何か本音と鈴の機嫌が悪い様な感じがするけど……どうしたんだ?……)」

 

(ムゥ〜 今のあきっちはアレだから仕方ないけど……)

 

(何か納得がいかないんだけど……)

本音は頬をプクッとしており鈴は軽くイラついていた。

 

「それでは、これから格闘及び射撃を含む実戦訓練を行う、まずはセシリア・オルコット、凰・鈴音前へ出るんだ」

 

「何故、私と鈴さんを呼ばれたのですか?」

 

「私も呼んで何かするんですか?」

 

「専用機持ちなら直ぐに始められるからだ(あいつらに良い所を見せられるぞ)

 

「そういう事なら、このセシリア・オルコットが実力を見せて差し上げますわ」

 

「それは私のセリフよ、覚悟しなさいよセシリア」

 

「落ち着け2人とも、お前達の相手は「キャーッ!どいてくださーい!!」はぁ、全く……」

千冬が説明しようとした時に上空から声が聞こえてきたので見ると麻耶がこっちに向かって来ていた。

 

「織斑先生……あのままなら危ないんで……俺がどうにかしましょうか?……」

 

「それは構わないが……村雨は大丈夫なのか?」

 

「えぇ……部分展開位なら……問題は無いです……」

 

「そうか、なら頼む」

 

「分かりました……白虎、部分展開」

武昭はスラスターと両足だけ機体を展開すると上空で飛び上がった。

 

「フェッ!?む、村雨君!」

 

「山田先生……そのまま勢いを落とします……村雨流体術……杭搦(くいがらみ)

武昭は麻耶の片腕を掴むと、そのまま回転をしながら地面に降りた。

 

「ふぅ……山田先生、大丈夫ですか?……」

 

「はい〜……大丈夫です、ありがとうございます〜 キャッ!?」

麻耶が武昭にお礼を言ったが軽くふらついていたので武昭が距離を取ると、そのまま転倒した。

 

「すみません……目が回っちゃった……みたいですね……」

 

「い、いえ……村雨君は私を助けてくれたんですから気にしないでください」

 

「全く……それでは山田先生VSセシリア・オルコットと凰・鈴音の2対1での模擬戦を行ってもらう」

 

「え?あの2対1って……本当に、その様に行うのですか?」

 

「それは、ちょっと流石に私達をバカにしてると思うんですけど?」

 

「安心しろ、今のお前達ならば直ぐに負ける事になる。それでは開始しろ!」

千冬の号令を聞いて3人は上空へ飛び出した。

 

その後、模擬戦は麻耶の勝利で終わりセシリアと鈴は千冬からアドバイスを受けていた。

 

「これで皆も学園の教師の実力がわかった筈だ、それでは次は専用機持ちが班長となって実習を行う事とする」

 

「あ、織斑先生……俺は……どうしますか?」

 

「村雨も教える位ならば問題はないだろう、では出席番号順に各グループに分かれるんだ」

千冬の指示を聞いたクラスメイト達が、それぞれの班に分かれた。




村雨流体術 杭搦(くいがらみ)
本来は相手の勢いを使いながら、体や衣服の一部を掴んでそのまま体勢を崩す技。


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第31話 実習(後編)

それぞれの班に分かれた皆は、用意された機体を取りに向かった。

 

「それじゃウチの班は……ラファールだな……まずは……」

 

「はいはーい!出席番号1番!相川 清香(あいかわ きよか)!部活はソフトボール部だよ!!」

 

「そうか……なら、最初は……ゆっくり歩行してみようか……」

武昭が指示を出すと相川は、その通りに動作を開始した。

 

「じゃあ、次は……『キャーッ!!』ん?……なんだ?」

どこかから声がしたので発生源を探すと一夏が班長の所で箒にお姫様抱っこをして機体に乗せているのが見えた。

それを見て自分達の班を見ると相川が同じ様な事をしようとしていた。

 

「あぁ……悪いが……俺は向こうと……同じ事は出来ないからな……()()だから」

 

「そうか……なら仕方ないよね……」

武昭が右腕が無い事を示すと相川は最初時と同じ体勢に戻した。

 

その後班のメンバーが実習を続けていく中、最後は本音の番だった。

 

「最後は本音か……じゃあ……やるぞ……って何か機嫌が悪くないか?」

 

「ううん、別にあきっちは関係ないよ〜」

本音はそう言うが何処か頬をプクッと膨らませていた。

 

「それじゃ……歩行からだな……えっと……何かごめん……

 

「フェッ?どうしたの、あきっち?」

本音は小声で謝られて戸惑っていた。

 

「俺が何か知らない内に……変な事をしたから……本音の機嫌が……悪くなったんだろ?……だけど理由が分からないから……俺にはこれくらいしか出来ないから……」

 

「あっ……(あきっちは何も悪くないのに……悪いのは私なのに……)ううんあきっちは……」

 

「そろそろ時間だから機体を保管庫にしまうんだ」

 

「もう時間だったのか……ほら本音……機体をしまうから」

 

「うん、分かったよ……(謝れなかった……)」

本音が機体から降りたので班の皆で機体をしまいに行く中、本音だけは落ち込んでいた。


実習終了後……

 

「ふぅ……疲れたな……何で俺だけで運ばないとダメなんだ?」

 

「アハハハ、ご愁傷様一夏」

アリーナの更衣室で3人が話していた。

 

実習後、機体を保管庫にしまう時……

 

一夏の班……

 

「女の子に運ばせる訳にはいかないから俺がしまっておくよ」

一夏が自分から運ぶ。

 

シャルルの班……

 

「僕も手伝うよ」 「ううん!デュノア君なんかに運ばせる訳にはいかないわ」

シャルルがしまおうとするが女子達が率先して運ぶ。

 

武昭の班……

 

「じゃあ……皆で協力して……運ぼうか?」 「村雨君は()()だから私達がやるよ」

武昭の状況を見た女子達が運んだ。

 

「大体……一夏は……1人でやりすぎなんだよ……」

 

「当たり前だろ、女子にやらせる訳にはいかないだろ」

 

「そうか……じゃあ俺は先に戻ってるぞ……」

 

「そうだ、一緒に昼飯食べないか?()()()()()()()()()()シャルルもどうだ?」

 

(ねぇ……武昭、それってもしかして……)

 

(あぁ……箒は2()()()()()()()()()()()()()()……)

一夏の言葉に2人は視線で何となく通じ合った。

 

「悪い一夏……俺はちょっと先生に……頼まれてシャルルと一緒に……職員室に行かなきゃ……ならないんだ……」

 

「うん、そうなんだ、いつ終わるか分からないから僕達は遠慮するよ」

 

「ん?そうか、なら、じゃあな」

一夏が更衣室から出て行くと武昭とシャルルの2人だけになった。

 

「ありがとうな……俺の嘘に合わしてくれて……」

 

「アハハ、僕も人の恋路を邪魔するほど野暮じゃないから」

 

「そうか……じゃあ、俺達も戻るか……」

 

「そうだね……(武昭……いつかは僕の事を……)」

2人は更衣室を出て行ったがシャルルの視線は武昭の背中を見ていた。

 

 

 



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第32話 裏側

シャルルとラウラが編入してくる数日前……

 

「ふぅ、これで大体の書類は書き終えたな……」

千冬が職員室で1人で書類仕事をしていた。

 

「これであとは学生寮の部屋割りだが……〈プルプルプル〉こんな時間にだ……ふぅ、こんな時間に何の用だ?束」

千冬の携帯に着信が来たので誰からか確認すると束からだったので嫌な顔をしながら出た。

 

〔ヤッホー!ちーちゃん元気!?ー〕

 

「こんな時間まで仕事をしているんだ…。元気だと思うか?」

千冬の言葉から怒りを感じた束は慌てて用件を話した。

 

〔あっ、ご、ごめんねちーちゃん、それで束さんの用件なんだけど、今度フランスから来る子の事なんだ〕

 

「ほう、お前が他人に興味を持つとは珍しい事がある物だな」

 

〔ひどいなちーちゃん、これでも私だって他人に興味を持つ事位あるんだからー!〕

 

「分かった、分かった……それで用件の内容はなんだ?」

 

〔ブゥー 仕方ないなー 実は今度来るフランスの子を()()()と同じ部屋にしてほしいんだ)

 

「何?……なぜ武昭と同部屋にしなくてはならないんだ?今の同居者でも問題はないが」

 

〔うん……そうだね……けど、その子も……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

束の言葉に千冬は片眉をピクッと上げた。

 

〔多分だけど、たっ君の記憶喪失は記憶の中に何らかの鍵が掛かってる状態なんだよ〕

 

「その鍵の1つがフランスから来るこの生徒だと言うのか」

 

〔うん……それにこの子の会社は……まぁ、これはまだ今は必要無いか……じゃあそう言う事だから宜しくねー!バイビー!!〕

 

「おい、束……全く……あいつは面倒ごとばかり持ち込んで来るな……だが、この生徒も武昭と何か繋がりがあると言うのか……」

千冬が書類に目を通すと色々なデータが書いてあったが、あるデータで止まった。

 

そこには……【性別・男】と書かれていた。

 

「名のあるIS企業の御曹司か……こいつも一癖や二癖もある感じだな……なら寮の部屋を……」

千冬は束に言われた通りに作業を始めた。


シャルルが編入してきた日の朝の生徒会室で……

 

「武昭君と本音ちゃんの同室を解消したいんですか?」

 

「あぁ、こちらの都合で変える事になるがな」

千冬と楯無が話していた。

 

「私よりも本音ちゃん自身に聞いた方が……」

 

「なら、その本人に聞いて賛成すると思うか?」

千冬の言葉に楯無の頭の中には反対する本音が浮かんでいた。

 

「絶対、反対する事が目に見えてますね」

 

「ですが織斑先生、武昭君の体が不自由な事を知っているのですか?お茶をどうぞ」

虚が淹れたお茶を持って話に入ってきた。

 

「あぁすまないな、布仏……それなんだがどうやら、その人物も()()()()()()()()()()()()()みたいなんだ」

 

「そうなんですか!?けど、私は聞いた事が無いんですけど……」

 

「私も覚えてる範囲では心当たりが無いな」

 

「もしかして、その人物を武昭君と同室にする事で記憶喪失が解消されると考えてるんですか?織斑先生は」

虚の言葉に千冬がうなづいた。

 

「そうだ、皆も知ってはいるが武昭の記憶が戻りつつはあるとは言え、まだ全部思い出したとはいないんだ」

 

「そうですね……わかりました、私は織斑先生の意見に賛成します」

 

「そうか、では後で布仏に伝えておこう」

千冬は生徒会室を出て行った。



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第33話 部屋替え。

今回はちょっとしたキャラ崩壊があります。


シャルル達が編入してきた日の放課後……

 

「じゃあ、宜しくね武昭」

 

「あぁ……宜しくな……シャルル……」

武昭とシャルルが同部屋になっていた。


授業が終わって皆が帰ろうした時、武昭と本音が千冬に連れられて生徒指導室に来ていた。

 

「織斑先生……俺と本音に……何の用ですか?」

 

「あぁ、実は学園の方から村雨と布仏に伝える事があってな、今日をもって布仏は村雨との同室を解消してもらう」

 

「「えっ?」」

 

「あ、あの、織斑先生……それって、本当なんですか?」

 

「あぁ、そういう事だから荷物などの移動を「嫌です」ん?」

 

「嫌です!あきっちは体が不自由なんですよ!?私はお世話も兼ねてるんです!!なんで……」

 

「布仏の言い分もわかるが、これは学園長からの命なんだ……すまないが部屋を変わってくれ」

千冬が頭を下げて謝罪したのを見て本音は自分が我が儘を言っている事を感じた。

 

「織斑先生……わかりました、それで私は今度はどこの部屋に行くんですか?」

 

「次の部屋は更識簪と同室だ。昔馴染みだから特に問題は無いだろう」

 

「カンちゃんとですか……それじゃ部屋に戻って荷物を片付けます」

 

「本音……俺も手伝うよ……それに会いたいならいつでも来て良いから……」

 

「うん……分かったよ、ありがとう、あきっち……」

2人は指導室を出ると寮に向かった。


その後、シャルルが来て同部屋になった。

 

「そっちのベッドは俺が使ってるから……空いてる方を使ってくれ……」

 

「うん、分かったよ……ふぅ、そう言えば武昭って、どうしてここにいるの?」

 

「あぁ……それはちょっとな……フワァ……悪いけど俺は少し……眠らせてもらうよ……」

武昭が眠りに着いたのを確認したシャルルはポケットから生徒手帳を出すと中に挟んでいた写真を見ていた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

シャルルは武昭に近づくと頭を撫でた。

 

「武昭……なんで、こんな風になったかはいつかは話してね……その時には()()()()()()()()……」

シャルルは優しく微笑みながら武昭を見ていた。


一方……

 

「ムゥ〜……なんで私とあきっちが部屋を別にしないといけないの〜」

 

「それは仕方ないよ。学園から言われたんだから……」

簪の部屋に来た本音はベッドの上で文句を言っていた。

 

「そうだけど……あ〜あ……寝る前に()()()()()()()()()()のが楽しみだったんだけどなぁ〜ガシッふえ?」

本音がある事を言うと簪が肩を掴んできた。

 

「ねぇ、本音?……武昭の寝顔を見てから寝るって……そんな羨ましい事をしてたの?」

 

「え?いや、あの、その〜……」

 

「うん、これは鈴も呼んで詳しく聞かないとダメだねー〈あっ、鈴?私だけどすぐに私の部屋に来て?〉さてと本音」

 

 「は、はい?な、何かな?カンちゃん?」 

本音が見た簪の目にはハイライトが無く、それを見て青い顔で震えていた。

 

「どんな感じだったか……詳しく話してもらうよ?」

それから少しして鈴が部屋に来たが簪から事情を聞くと簪と同じ状態になった鈴は本音に詰め寄っていた。



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第34話 切欠

シャルルとラウラが学園に来て2〜3日経った頃……

アリーナでは一夏と箒、セシリア、シャルルと特訓をしていた。

 

「えっとね一夏が負けるのは射撃武器の特徴とかを理解してないからだよ」

 

「だって俺の装備はコレだけだからこそ必要ないだろ?」

一夏はシャルルに自分の武装を見せた。

 

一方……

 

「くそ、なんで私じゃダメなんだ?……」

 

「わたくしの方が詳しく教える事が出来ますのに……」

離れた場所から2人を見ていた箒とセシリアが歯軋りをしていた。

 

「あんたらの教え方じゃ、あの一夏にわかる訳無いでしょ」

 

「スズの言う通りだな……」

箒達の所に特訓を休憩した武昭と鈴が来た。

 

「だって、箒の教え方は【ズドン】や【ドバン】って擬音が多いし……」

 

「セシリアの教え方は細か過ぎるんだよ……大体、一夏は……学園に入るまでISの勉強自体してなかったみたいだからな……」

 

「確かには武昭さんの言う通りですわ……」

 

「ん?そういえば武昭はどこでISの知識を習ったんだ?一夏と同じならば勉強をしてないと思うのだが?」

 

「あぁ……(束さんからは箒に言うなって……)……まぁ、それはちょっとした秘密って事で……ん?何か騒がしいな……」

アリーナにいた他の生徒達が何かを見て騒いでいたのでアリーナを確認すると自身の機体を展開したラウラがピット入口にいた。

 

そんな中、ラウラが一夏に通信を入れた。

〔おい、お前も専用機持ちだな、ならば私と戦え〕

 

「断る、大体なんでそんな事をしなくちゃならないんだよ」

 

〔それは貴様さえいなければ教官が()()()()()()()()()()()を成し遂げる事が出来たからだ〕

 

「モンドグロッソの二連覇?……ふざけるな!!

 

「一夏!?急にどうしたの!!」

 

「確かに千冬姉が決勝戦を辞退したのは俺の責任だよ……けどな、そうする事になったのは……嫌、もう終わった事だから俺は何も言わない……」

 

〔ふん、ならば戦わざるを得ない様にしてやろう!!〕

ラウラが一夏に砲撃をしたが……

 

〔おい……ラウラとか言ったな……お前何をしてるんだ?〕

武装を変えた武昭が砲撃を防いでいた。

 

〔ほう、もう1人の男性操縦者か……貴様には関係の無い事だ……だが邪魔をする……なっ!?」

 

「俺は何をしてるか……聞いたんだが?」

ラウラは武昭が自身の横にいつのまにかいた事に驚いていた。

 

「くっ!面白い!邪魔をするなら貴様から!!」

 

〔おい!そこの生徒何をしている!!クラス名と名前を言え!!〕

 

「ふん、興が削がれた今日はここまでにしておいてやろう……」

ラウラが武昭に向かおうとした時にアリーナ管理担当の教員から放送が入ったのでラウラは機体を収納してその場を離れた。

 

「チッ……あの銀髪チビが……おい一夏大丈夫か?」

 

「あぁ、俺の方は大丈夫だけど……武昭の方は……」

 

「問題はねぇよ……それよりもアリーナの閉館時間だから練習はここまでにするぞ……」

 

「じゃあ、僕も一緒に戻るよ」

武昭は機体を収納すると更衣室に戻ったのでシャルルも一緒に向かった。

 

一方……

 

「ねぇ箒……なんで一夏があんなに声を荒げたりしたの?」

鈴が箒に話しかけていた。

 

「それは私も分からないが……モンドグロッソと言えば……第二回の決勝戦が何か関係してると思うのだが……」

 

「確か、それは織斑先生が決勝戦を辞退したのでしたね……」

 

「ねぇ、セシリア……その時のモンドグロッソってドイツで開催したのよね?」

鈴はある事をセシリアに尋ねた。

 

「えぇ、開催はドイツで行われましたが……それに一夏さんとラウラさんが関係してると……鈴さんは考えてるのですか?」

 

「そうよ…それともう1つ関係してる事があるのよ……ある意味私と箒も関係してると言えば関係してるのよ……」

 

「ん?私と鈴が関係している事とは……まさか!?」

鈴の言葉に箒がある事に気づいた。

 

「箒さん?何が関係してると言うんですの?」

 

「あぁ、それは……()()()()()

 

「武昭さんの事?どう言う事ですか?」

 

「セシリア、武昭がこの学園に来た時一夏がなんと言ったか覚えているか?」

 

「えぇ、確か、「何処に居たんだよ」と言って……もしかして……」

 

「えぇセシリアの考えてる通りよ……私が最後に武昭に会ったのは……第2回モンドグロッソの前なのよ……」

 

「では……その時に武昭さんが行方不明になったと言うのですか?」

セシリアの言葉に鈴は黙ってうなづいた。

 

「私がドイツから一夏が戻ってきた時に武昭の事を聞いたら「悪いが、その事は話したくないって」そう言われたの……」

 

「ふむ……ならば武昭はドイツで行方不明になり、その時に記憶喪失になったと言う事か……」

 

「一体、何がドイツであったのでしょうか?……」

 

「分からないわよ……」

3人は、そのまま話していた。

 

 

 



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第35話 バレた秘密

アリーナでの騒ぎが終わった後、武昭は生徒会室に来ていた。

 

「すみません楯無さん……来るのが送れました……」

 

「ううん、武昭君も自分の予定があるから構わないわよ」

 

「そうですか……「武昭君、何か飲みますか?」虚さん、それじゃアイスティーをお願い出来ますか?」

 

「はい、少し待っててください」

 

「それにしても武昭君も、だいぶ言葉が話せる様になってきたわね」

 

「えぇ……けど()()()()()はまだですけどね」

武昭は左手の親指で額をトントンした。

 

「そんなに慌てる事も無いわよ……私も気になって調べたんだけど記憶喪失って戻る時は急に来る時もあるんですって」

 

「そうですか……けど、本当に俺の記憶が戻っても……良いと思いますか?」

 

「武昭君、それは戻らない方が良いかも知れないって事ですか?はい、どうぞ」

武昭が話してると虚が飲み物を淹れて戻ってきた。

 

「ありがとうございます、虚さん……えぇ、楯無さんや虚さんに本音、簪、スズや一夏、箒、それに織斑先生が俺の関係者なのは良いんです……けど……なんで……俺が記憶を失ったのか……知るのが怖いんですよ……

武昭は恐怖から体が震えていた。

 

「武昭君……それでも……私達や他の人達は記憶を戻してほしいの……」

武昭が震えていると楯無が後ろから優しく抱きしめた。

 

「楯無さん……それでも、俺は……すみませんが、もう寮に帰っても良いですか?」

 

「えぇ、武昭君の仕事はもう終わってるみたいなので大丈夫ですよ」

 

「そうですか……それじゃ失礼します……あ、虚さん飲み物美味しかったです……」

武昭が生徒会室を出ると楯無と虚だけになった。

 

「ねぇ……虚ちゃん……武昭君が初めて生徒会室に来た時に……体にあった傷痕を見せてもらったわよね?」

 

「はい、多分ですが……武昭君が記憶を失ったのと何らかの関係があると思われます……

 

「そうよね……虚ちゃん……もしも武昭君をあんな風にした人が見つかったら……私は……何をしても良いわよね?

 

「お嬢様……私は何も聞いてなかった事にしますので、仕事を続けてください」

虚が言うと楯無は残っていた仕事を再開した。


一方、寮の部屋では……

 

「ふぅ……確か武昭は生徒会の仕事があるって言ってたっけ……」

シャルルが自分のベッドに座っていた。

 

「いつになったら……()()()()()()()()()()()()()()……

さてと武昭が戻ってくる前に汗を流そうかな?」

シャルルは()()()()()()()()()()()浴室に向かった。

それから暫くして武昭が帰ってきた。

 

「ただいま……ってシャルルはまだ帰って……あぁ、シャワーを浴びてるのか……ん?」

武昭が部屋に入ると浴室からシャルルが出てきたが……

 

「ふぅ、気持ち良かった……着替えを……フェッ!?た、武昭!?

見るからにシャワーを浴びた後で体にバスタオルを巻いており、その胸には男性とは思えない程の膨らみがあった。

 

「うーん……なぁ、俺はここで誰か知らない人がいると叫んだ方が良いのか……シャルルにどう言う事か聞いた方が良いのか……どっちだと思う?」

 

「え、えっと、あの……その……とりあえずは……着替えて良いかな?」

 

「あぁ……まずは、その方が良いな」

武昭の了解を取ったシャルルは着替えを持つと浴室に向かった。

 

 

 



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第36話 明かされた事

シャルルは持っていたジャージに着替えて来ると自分のベッドに座ったが、その見た目は、まごう事なき女子だった。

 

「えっと……まずは確認するけど……シャルルは女の子だった……って事で良いんだな?」

 

「うん、そうだよ……()の本当の名前はシャルロット・デュノアって言うんだ」

 

「シャルロット・デュノアか……それで男装までして、ここに来た理由は……俺と一夏の……身体と機体のデータ取り……って事かな?」

 

「アハハハ、そこまで分かってるんだ……そうだよ私がここに来たのは君達に関するデータを取る様に()()()()()()()()()()()()……」

力なく笑ったシャルルは、どこか諦めた様な表情をしながら、ここに来た経緯を話し出した。

 

それによると……

シャルロットは小さい頃から母親と一緒にフランスの田舎町で暮らしていた。

だが、今から数年前に母親が亡くなるとどこから聞きつけたのか今のデュノア社の社長の使いの者が来てシャルロットを連れて行った。

シャルロットが理由を聞くと社長が自分の父親だと言う事だった。

シャルロットが引き取られたのを知った社長の正妻から「泥棒猫の娘が!」と言われながらビンタをされた。

その後、IS適性が高い事を知った社長夫妻からデュノア社の開発が遅れているので手伝う様に言われた。

そうして月日が経ったある日の事武昭と一夏がISを動かしたと情報が出たので経営危機になった会社を建て直す為に学園に入学しろと指示を受けたので男装をして、新しい男性操縦者になって接触しろと言われた。

 

そして……

 

「なるほど……そう言う事だったのか……それで……これからシャルロットはどうするんだ?」

 

「うん……こんな事がバレたからには私は国に強制送還されるだろうね犯罪者として……」

 

「そうだろうな……今は俺だけしか知らないけど……逆に言えば俺だけが黙っていれば問題は無いか……」

 

「え?……武昭……けど「待った、それは俺が秘密にしてる事が前提だけど……1つ聞きたい事がある……」な、何かな?」

 

「シャルロットの気持ちだ……俺が今、黙ってる事は言わば()()()()()()()()()()()()……それ以上は……何も出来ない」

武昭の言葉を聞いたシャルロットはハッとした表情をすると少し黙って口を開いた。

 

「そうだよね……私は……もっと武昭や皆と居たい!……だから……私を助けてよ!フェッ!?

 

「辛かったな……俺にはこれ位しか出来ないけど……今は……好きなだけ泣くと良い……」

シャルロットが自分の思いを打ち明けると武昭がそのまま抱き締めたので、シャルロットは声を殺して泣いた。

 

(そうだ……私が小さい時に……迷子になった時も……)

シャルロットは昔の事を思い出していた。

 



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第37話 面影。

武昭がシャルロットの正体を知った次の日の朝……

 

「ん……もう朝か……シャルロットはまだ寝てるか……なら……」

武昭は軽く着替えると部屋を出てある所に向かった。

 

武昭が向かった所はアリーナの外周部だった。

 

「確か……あっ、織斑先生……」

 

「ん?誰かと思えば村雨か」

武昭が誰かを探してるとジャージ姿の千冬がいた。

 

「どうしたんだ?こんな朝早くに?」

 

「えぇ、少し体を動かそうと思って……」

 

「そうか、なら一緒に走るぞ」

千冬が走り出すと武昭もその後をついていった。

 

その後、2人は外周部を何周かしていたが……

 

「そうだ……織斑先生に……聞きたい事があるんですけど……」

 

「ん?なんだ?」

 

「まぁ、何となくわかってるとは……思うんですけど……()()()()()()()()

武昭の言葉を聞いた千冬は速度を落として並走する様にした。

 

「村雨がそう言うという事は……何かあったみたいだな」

 

「はい……実は……」

武昭は千冬にシャルロットの経緯を話した。

 

「なるほど……その様な事があったのか……」

 

「はい、それと……気になった事があるんですけど……俺とシャルル……シャルロットは……()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふぅ、そこまで気付くはな……あぁ、だが、それは()()()()()()()()()()()()

 

「え?織斑先生じゃないって事は……もしかして……〔ニャハハ!そう!私だよー!〕うわっ!?」

武昭が誰か心当たりがあったので考えてると束から通信が入ってきた。

 

「やっぱり束さんでしたか……それで束さん……俺とシャルロットが出会ったのは……小さい頃じゃないですか?」

 

〔ん?私が調べた結果、あの娘とタッ君は5〜6歳位に会ってるみたいだね……〕

 

「そんな小さな時に……だったら、あの時に一瞬浮かんだ映像は……」

 

「村雨、どういう事だ?」

千冬が武昭に言葉の意味を聞くと武昭は以前に合った事を説明した。

 

「なるほど……そうだったのか……だが、その様に食べ物を食べただけで記憶を思い出す事などあるのか?」

 

〔うん、有り得ない事じゃないよちーちゃん、人間の五感の中で唯一嗅覚の匂いだけが脳の中の海馬に刺激を直接与える事が出来るからね〕

束の説明を聞いた千冬と武昭はなるほどといった表情になった。

 

「それで村雨……お前はどうするつもりだ?」

 

「織斑先生……俺が出来る事は何か分かりません……けど……俺が何かをする事でシャルロットを助けられるなら……俺は……」

 

「そうか、村雨お前の覚悟は分かった……だから放課後にデュノアを連れて指導室に来い(全く……やっぱり武昭は()()()()()()()()()()()

 

「はい、分かりました……それでは失礼します……」

千冬に言われた武昭は、その場を離れた。

 

その後、千冬は束に携帯で連絡した。

 

「束……悪いがお前にも手伝ってもらうぞ」

 

〔うん、構わないよ。ねぇちーちゃん、タッくんは小さい頃から全然変わんないね……〕

 

「そうだな……それに私には武昭の中に()()()()()()()()()

 

〔あの人達か……そうだね私達が、ちゃんと……〕

千冬と束は武昭を見て誰かの事を思い出していた。

 

 

 



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第38話 切欠(裏側)

アリーナで騒ぎが起きた後……

 

「クソッ……ラウラのせいで嫌な事を思い出したぜ……」

一夏は学園内を歩いていた。

 

そんな中……

 

「何故!この様な所でこんな事をしているのですか!?」

ラウラの声がしたので木の影に隠れているとラウラが千冬と話していた。

 

「ふぅ、だから説明しただろ……ここには私が必要だから居るんだ」

 

「いえ!貴女の居るべき場所はこんな所ではありません!!」

 

「ほう……何故、そう思うんだ?」

 

「ここの者達はISをファッションやアクセサリーなどと勘違いしてるからです……なので貴女が居るべき場所は我らドイツ軍の……ハッ!?」

 

「ほう……たかだか数年しかISに乗っていないくせに選ばれし者気取りか……良い気になるなよ?」

千冬の気配に怯えたラウラはその場から慌てて逃げ出し千冬は木陰の一夏に声をかけた。

 

「それで……いつまで、そこで覗いてるんだ?」

 

「別に覗いてた訳じゃないよ、偶々通り掛かっただけだよ織斑「今は先生でなくて構わないぞ?」千冬姉、なんでラウラはあそこまで千冬姉に固執してるんだ?」

 

「お前も知ってはいるが私は()()()()にドイツ軍に手伝いを頼んだだろ?それで手伝う手間賃として1年間教官をしてくれと言われたんだ……」

 

「じゃあ、その時に教官したドイツ軍にラウラは居たのか?」

 

「あぁ……だが、その時に私の教え方が悪かったのか、あの様な考え方を持つ様になったのだ……」

千冬の顔はどこか落ち込んでいた。

 

「だが、アイツはそんなに悪い奴では無いんだ……ただ、軍隊と言う狭い世界の中にいて他の世界を知らないだけなんだ……」

 

「そうだったのか……なぁ千冬姉、1つだけ教えてほしい……話せないなら構わないけど……武昭があんな風になったのは……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「一夏……もしそうだと言ったらお前は何をする気だ?変に武昭に構えばどうなるか分からないのだぞ?」

 

「それは、分かってるよ……それでも俺は……「【自分の常識を他人に押し付けるな】だったな」っ!それって……」

一夏は千冬が言った言葉に聞き覚えがあった。

 

「そうだ一夏……私達からすれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あぁ、俺が小学生の頃に同級生と喧嘩をして呼ばれた時にな……」

 

「それにクラス代表決定戦の時も自分の意見を優先したせいで、あの様な事になったのを忘れたか?」

 

「いや、そうだな……俺はまた同じ事をしてるんだな……」

 

「確かに自分の考えを持つ事は正しいが、今のお前がしてる事とラウラの態度は私からすれば同じに見えるがな……さてと、そろそろ私は職員室へ戻る事にしよう……」

千冬が、その場から離れても一夏は何かを考えていた。

 

「俺とラウラが同じか……確かにな……他人から見たら同じなのかもな……」

一夏は夕暮れの空を見ながら何かを考えていた。




この小説での一夏は少し考える事をします。


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第39話 対処。

武昭がシャルロットの正体を知ってから2日程経った日の早朝……

 

「シャルル、大丈夫か?」

 

「う、うん……大丈夫だよ……怖いけど武昭が一緒にいてくれるから……」

2人は千冬に呼ばれて学園長室に呼ばれていた。

 

今はまだ状況が把握出来てないので武昭はシャルルと呼んでいた。

 

そんな中……

 

「悪いな2人とも、こんな時間に呼んでしまって」

千冬が部屋に入ってきたが楯無と白髪の男性が一緒に来た。

 

「いえ、俺はこの時間はトレーニングする為に起きてるから平気です」

 

「ぼ、僕は武昭に起こされましたが大丈夫です」

 

「そうか、それで2人を呼んだ理由だが……まずは説明をした方が良いか」

 

「武昭君は知ってるけど()()()()()()()()()は初めてだから自己紹介するわね、私はこの学園で生徒会長をしてる更識楯無よ」

 

「私の名前は轡木 十蔵(くつわぎ じゅうぞう)と言います。IS学園の()()()をしております」

 

「え?確か学園長って女性だった様な……」

 

「多分だけど……学園長が男性だと()()()()()()()()()()()()()()()()()()シャルロット」

男性の正体を知ったシャルロットは少し戸惑ったが武昭の説明を聞いて納得していた。

 

「それで織斑先生……俺達がここに呼ばれたって事は……」

 

「それに関しては更識の方から聞かせてもらおう」

 

「はい、分かりました織斑先生。それでは私の方で調査して判明した事を報告します」

楯無が武昭とシャルロットに報告をした。

 

その内容は……

・デュノア社長はワザとシャルロットを男性操縦者としてIS学園に編入させた。

・理由として社内にいる反乱分子達をどうにかする為。

・彼らは自分達の息が掛かった者を社長に据えようと考えている。

・その為シャルロットが狙われている可能性がある。

・どうにかしようと考えてた時、2人目の男性操縦者として武昭が見つかった事が学園内にいるフランス国籍の生徒から知らされる。

・それを聞いた社長は夫人と話して学園ならば……との事だった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください……じゃあ僕の男装がバレる事は……」

 

「そうか……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「村雨ならば、自分で対処出来ない事は他人に相談すると思ったからだ。

織斑ならデュノアの正体を知っても自分だけで何とか出来ると勘違いする所があるから、同部屋にはしなかったんだ」

シャルロットが落ち込み、武昭が何処か納得してると千冬がそうした理由を話した。

 

「そうだったんですか……それで、これからどうするんですか?」

 

「それに関してだが、デュノア少しの間はまだこのまま男装をしててくれ。

いずれ時期が来たら正体をバラす事にする。村雨も頼む」

 

「「分かりました」」

 

「うーん……私としては男女を一緒の部屋にしてる事が気になるけど、織斑先生が決めたのなら従います」

 

「迷惑を掛けるがすまないな、それと更識は一旦席を外してくれ」

千冬に言われた楯無は学園長室を出て行った。

 

 



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第40話 一角

楯無が学園長室が出たのを確認すると学園長が口を開いた。

 

「さて……これから話す事は、ここにいる者達だけの秘密とさせていただきます。

それでは織斑先生、お願いします」

 

「はい分かりました……それで、これから何を行うかは()()()()()()()()()

 

〔ヤッホーい!やっと束さんの出番だねぇー!!〕

千冬が何かを操作して空間ディスプレイを出すと、そこには束が映し出された。

 

「えっ!?束さんって……もしかして、篠ノ之博士ですか!?」

 

〔フッフーン、やっぱり束さんの名前は知られてるんだねぇ!!〕

 

「束、自画自賛はいいから、調査結果を教えろ〕

 

〔ブゥー!分かったよちーちゃん。それで私が詳しく調べたんだけど、どうやら反乱分子の中心人物はコイツだね〕

束が何かをするとディスプレイの一部に何者かの顔写真とデータが浮かんだ。

そこにはパーマのかかった緑色の髪以外の何処となく特徴の無い女性が写っていた。

 

〔コイツの名前はクレール・ヴェール。数年前にデュノア社に入社してから、今まで裏工作をしてたみたいだね〕

 

「なるほど……コイツを何とかすればシャルロットは安全に学園生活を過ごせるって訳ですか?」

 

〔うん、たっ君の言う通りだね……けどコイツは上手くやってるから私でも情報を得るのが難しいだよね〕

 

「お前がそんな風に言うとは……かなりの相手と言う事か」

 

〔そうだよ、けど向こうは今はまだ手を出す事は無いみたいだから暫くは普通に過ごしてて良いからねぇーバイビー〕

束が通信を切ると学園長が口を開いた。

 

「やれやれ、織斑先生から聞いてはいましたが自由な人ですね……この様な事情ですのでデュノアさんは今まで通りにしてください」

 

「は、はいっ!分かりました!!」

 

「それでは、話は終わったから教室に戻って授業を受けるんだ。山田先生には事情を話してるから問題は無い」

千冬からそう言われた2人は学園長室を出て教室に向かい、千冬も学園長室を出た。

 

学園長室を出た千冬は学生寮の寮長室で束と通信をしていた。

 

「それで束……お前が調べて分かった……()()()()()()

 

〔うん良いよ……どうやらそのデュノア社にいるのはモンドグロッソで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()まだ氷山の一角に過ぎないけどね〕

2人は話していたが、その表情は憤怒しており千冬が握った拳からは流血していた。

 

「それでも構わない……やっと奴らの尻尾が掴めたのだからな……」

 

〔ちーちゃん……悪いけどその時は私にも残しておいてくれるかな?

 

当たり前だ……そいつらは私達にとっての逆鱗に触れたのだからな

 

そいつらには死んだ方が楽だって思わせてあげないとね……

2人は話していたがその時間だけは何故か学園の生徒達の体が震えていた。

 




ちなみに、この小説では亡国企業とは違う組織がいます。


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第41話 噂。

武昭とシャルロットが学園長室で話していた時の朝……

 

「ねぇ!あの噂聞いた!?」

 

「うん!聞いた!聞いた!」

教室内にいた数人の女生徒が集まって何かを話していた。

 

その内容は……

【今度、行われるトーナメントで優勝すると3人の男性操縦者の誰かとお付き合いが出来る!】との事だった。

 

「私は織斑君かなぁ」 「いやいや、ここはデュノア君でしょ」 「皆、村雨君も居るんだよ?」

女生徒達が話してる所から離れた席で箒が気不味い表情をしていた。

 

(何故だ!?あれは私と一夏だけの約束の筈だ!!)

箒は本来なら自分と一夏だけの約束だった物が学園内で流れている事に心中、驚いていた。

 

一方……

 

「ねぇ本音、簪……今、学園内で流れてる噂の事なんだけど……何か知ってる?」

鈴が整備室にいた2人の所に来ていた。

 

「う〜ん……私も聞いてるけど……何か違う感じなんだよねぇ〜」

 

「本音、違うって……どういう事?」

簪が気になった事を本音に尋ねた。

 

「うん、私が聞いたのはしののんがトーナメントで優勝したらいっち〜と付き合って欲しいって事なんだよねぇ〜」

 

「じゃあ、それを聞いた誰かが武昭達の誰かと付き合える内容になった事ね……後で詳しく箒に聞いた方が良いわね……」

 

「所で……かんちゃんとリーリーが優勝したら……やっぱりあきっちにと付き合うのぉ〜?」

本音が2人に聞くと2人は顔を赤くしながら口を開いた。

 

「ま、まぁ、それは、その……私は小さい頃から……思ってたから……」

 

「そ、それを言うなら……わ、私だって……同じだよ……」

 

「そっかぁ〜……じゃあ……私と……同じ願いなんだぁ〜……

本音が赤い顔を袖で隠しながら今の思いを言った。

その後、チャイムが鳴ったので3人はそれぞれの教室に向かった。

 

その日の昼休み……

 

「それで束さん、どうなりましたか?」

武昭はデュノア社の事を聞く為に千冬と共に特別室に来ていた。

 

〔うん、私が考えた対処法としてはまずは新しい企業を日本に作って、シャルロットちゃんをそこに所属させる事だね〕

 

「ふむ、それが最も簡単な方法だな……だが新企業を作ろうにも日本では無理だな……」

 

〔いや、無理じゃないよちーちゃん、忘れたの?()()()()()()()の事を?〕

 

「武昭の?……なるほど、そういう事か……」

 

「織斑先生、束さん、俺の両親ってどういう事ですか?」

 

〔!(そうか、今のたっ君にご両親の記憶が……)実はたっ君のご両親は()()()()()()()()()()()()

 

「だったんだって……俺の両親は、もう……」

 

「あぁ、研究中の事故でな……それからは私が武昭を引き取ったんだ」

 

「そうだったんですか……千冬さん、ありがとうございます……」

 

「気にするな……それに……(礼を言うのは私の方だからな)……」

 

「ん?千冬さん?……」

武昭にお礼を言われた千冬は優しい笑顔で頭を撫でたが武昭は何故されたか軽く分からなかった。

 

「んっ、それで束、企業を作るのにはどれ位掛かるんだ?」

 

〔うーん、真っ当なやり方なら時間は掛かるけど()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ちなみに聞くが真っ当なやり方なら、どれだけ掛かるんだ?」

 

〔真っ当な方だったら……今度、そっちで何かイベントがあるよねー?それが終わった時位に出来てるよー〕

 

「織斑先生、今度あるイベントって……」

 

「今でも明日でも構わないだろう……今度学年別トーナメントを行うんだ」

 

「学年別トーナメントですか?」

 

「あぁ、だがちょっとした変更があるが、これは内密な事だから今はまだ言えないがな」

千冬が話してるとチャイムが鳴った。

 

「もうこんな時間か、話はここまでにして早く教室に行くんだ」

 

「分かりました、それじゃ失礼します」

武昭は2人に頭を下げて特別室を出て行った。

 

「ふぅ……束、真っ当な方で新企業を頼む」

 

〔ん、分かったよちーちゃん……それよりもさっき言ってた変更って()()()()()()()()()()()()

 

「あぁ……何が起きても良い様にな……束、出来ればお前の方でも……」

 

〔良いよ、ちーちゃん……今度こそ手掛かりを見つけてみせるよ……じゃあねー〕

束は通信を切ったが、切る時の表情はとても冷たい物だった。




どこかの研究所で……

「ふんふんふーん、今度のイベントも遊びに行こうかなぁー」
1人の女性がモニターに映し出されたデータを見ていた。

「さぁて、今度はどうなるかなぁ?」
女性の視線の先には以前IS学園に侵入してきた不明機が数台あった。


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第42話 闇…… (前編)

束が新企業を作ると決定してから数日経った放課後のアリーナの1つで……

 

「あら?セシリアじゃないの、あんたも訓練しに来たの?」

 

「えぇ、鈴さんと同じですわ」

他の生徒達が訓練している所から離れた場所で互いに機体を展開したセシリアと鈴がいた。

 

「セシリア、あんたがここに来たって事は()()()が関係してるわね?」

 

「い、いえ、私はトーナメントで不甲斐ない結果を出さない為ですわ!それよりも鈴さんが居るのも同じ理由ではありませんか!?」

セシリアは鈴の話を聞いて頬を染めながら反論した。

 

2人が話してる噂とは今度のトーナメントで優勝した人物は()()()()()()()()()()()()()()との内容だった。

 

「いいえ、私は違うわよ?勿論、その噂は聞いてるけど何か変な感じがするのよ」

 

「変な感じですか?」

 

「そうよ、男性操縦者の誰かと付き合えるって話だけど……()()()()()()()()()()()3()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「その時は、誰も付き合えなくなるのでは無いですか?」

 

「それならそれで良いけど……大体、()()()()()()()()()()()()()()

 

「それは……あら?そう言えば私もクラスメイトの方から聞いただけですわ……」

セシリアの言葉を聞いた鈴は呆れた表情をしながらため息をついた。

 

「セシリアは知らないだろうけど、私が中学生の時に今回と似た様な事があったのよ……」

 

「その時はどうなったんですか?」

 

「ん?私の同級生に、それとなく聞いてみたらちょっとした行き違いだったみたいよ」

鈴は肩をすくめてやれやれと言った表情を見せた。

 

「では鈴さんは、何の為に特訓をするんですの?」

 

「それは中国の代表候補生として恥ずかしい姿を見せない様によ それに……事情はどうあれ優勝すれば……武昭と……

 

「結局鈴さんも私と同じ様な考えではありませんか!!」

 

「なっ!私は昔からの思いを伝える良い機会と思っただけよ!!……まぁこんな事をしてる暇があるなら私の訓練に付き合ってくれない?」

 

「えぇ、構いませんわ、訓練とは言え私の勝ちは決まってますから」

 

「それはやってみないと分からないわよ?ならやりましょ?」

鈴の言葉にセシリアが構えた時だった……

 

 ドゴォーン 

2人の近くに何者からか砲撃が来たので相手を確認すると自分の専用機を展開したラウラがピットの入口に立っていた。

 

「セシリア、アイツって1組に来た転入生?」

 

「えぇ、ドイツから来たラウラ・ボーデウィッヒさんですわ」

 

「そう……で、何でそのドイツさんは私達にこんな事をしたのかしら?」

 

「フン、中国とイギリスの候補生か……来る前にドイツで様々な情報を見てきたがそれ以下の実力みたいだな」

2人はラウラの言葉の真意に気づいた。

 

「セシリア、コレって私達に喧嘩を売ってるって事よね?」

 

「えぇ、同じ欧州諸国の一員として恥ずかしい事ですが、そうみたいです」

 

「それでアンタは私と模擬戦をしたいって事で良いのかしら?」

 

「鈴さん、お待ちくださいな、彼女はこの私に相手を頼んできてるんですのよ?」

 

「ハハハ、お前らは何を言っているんだ?大体()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()私が勝つ事は決まっている」

ラウラの言葉を聞いた2人は何かのスイッチが入ったみたいだった。

 

「ねぇ、セシリア……私、今さぁコイツの口から凄くムカつく事を聞いたんだけど……」

 

「安心してください、鈴さん……聞き間違いなどではありませんわ……私も聞きましたから……」

鈴は双天牙月をセシリアはスターライトをそれぞれラウラに向けた。

 

「ほう、面白い……お前達に見せてやろう私の実力を!!」

ラウラが2人向かうと同時に模擬戦が始まった。


アリーナで模擬戦が始まったのと時間は前後して……

 

「うーんと今日使えるアリーナは……第3アリーナだったか」

 

「あきっち〜どこに行くのぉ〜?」

武昭がアリーナに向かってると本音が声をかけた。

 

「ん?本音か、あぁ、ちょっとトレーニングしようと思ってな」

 

「そうなんだぁ〜……あれ?何か慌ててる人がいるけど、どうしたのかなぁ?ねぇ何かあったの?」

2人が話してると生徒達が慌てていたので本音が事情を聞くと1人の生徒が足を止めて説明した。

 

「第3アリーナでイギリスと中国の候補生の子がドイツの候補生の子と訓練してるんだけどドイツの子が2人を圧倒してるの!!……ひっ!?」

 

「どうしたの……あきっち!?」

説明をした子が何かに怯えたので本音が武昭を見ると雰囲気が変わっていた。

 

「ふーん……そう言う奴がいるから()()()()()()()()()()()()

 

「あ、あきっち?……アッ!待って!!」

本音が武昭に声をかけると同時に武昭は第3アリーナに向かって走り出したので追いかけようとした。

 




2人がいなくなった後……

「ハァハァハァ、あの子ってもう1人の男性操縦者の子だよね……」
事情を話した子は武昭の雰囲気を思い出して震えていた。

その結果……

「アッ……寮に行って着替えないと……」
その生徒は()()()()()()()()()()()()()()


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第43話 闇…… (後編)

慌てる生徒から話を聞いた武昭は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので本音は慌てて聞いた。

 

「あきっち!?第3アリーナはこっち側だよ!!」

 

「そっちからじゃアリーナの観客席に出る事になるからグラウンドの入り口に行くんだ!!」

武昭の理由を聞いた本音は“アッ”とした表情を浮かべると武昭の後を追いかけた。


武昭と本音が第3アリーナのグラウンド出入口から中に入るとグラウンドに落下してるセシリアとラウラからのワイヤーで首を絞められてる鈴の姿が目に入った。

 

「スズ?……セシリア?……本音……セシリアを連れてアリーナから出てくれるか?俺はスズを助けに行くから……」

 

「あきっち!?ダメだよ!1人で「大丈夫だ……俺だけの方がやりやすいから……な?」ッ!?う、うん、分かったよ!」

 

「お前は……絶対許さないよ……村雨流剣術舞隼(まいはや)

本音は武昭を止めようとしたが雰囲気が変わった事に戸惑いながらもセシリアの所に向かい武昭は朱雀を展開させると武装の刀から斬撃を飛ばしてワイヤーを切って落下している鈴を受け止めてグラウンドのフェンスに寄り掛からせた。

 

「武……昭?……あんたに……見苦しい所を……見せちゃったわね……」

 

「もういいスズ、これ以上話すな……体に触るから……」

 

「あんた?……本当に……武昭……なの?(何?……今の……武昭は……何か違う……感じが……)」

 

「おい……ラウラとか言ったな……何でこんな事をしたんだ?」

 

「ふん、そいつらが下らない事を話していたからな……それで今度はお前が私の「黙れ」何?」

 

「黙れと言ったんだ……話はここまでだ……そこまでして戦いたいのなら俺が相手をしてやる……」

 

(くっ!?な、何だ?この殺気は!?こんな事をあんな者が!!)

武昭の言葉を聞いたラウラは武昭から発せられている殺気を感じて戸惑っていた。

 

「何だ?さっきまであんなに喋ってたのに……まぁ良いや……すぐに……終わらせてやるから

 

「ガハッ!?(な!?何だ!この衝撃は!!)」

ラウラは気付いたら壁際まで吹き飛ばされており何が起きたか確認すると自分が先程までいた場所には武昭が蹴りを放った後の体勢でいて機体が黒い烏を模した物に変わっていたのが見えた。

 

「フッ、面白い!貴様はさっきの女「ねぇ?聞こえなかったの? ()()()()()()()()()()()()() 」グッ!!」

ラウラは飛び上がり武昭に向かおうとしたが、それよりも速く殴り飛ばされた。

 

「お前らみたいなのがいるから…… ()()()()()()()()()()()()()

 

ガキィン!!

「やれやれ……アリーナで騒ぎが起きてると聞いたから来てみれば、こんな事になっていたとはな……」

武昭がラウラに再び向かおうとしたのを誰かが止めたので見るとISの武装の剣を生身で持った千冬が受け止めていた。

 

「教官!」  ()()()()()()()()

 

「私をそう呼ぶなと言った筈だぞラウラ……それに……お前は……村雨なのか?……まぁ良い、これ以上はアリーナでは無くトーナメントで決着を着けろ、お前らもそれで良いな」

 

「分かりました、貴女がそう言うのならば……」

 

「はぁ?何で、そんな事をしないとダメ……うん、分かったよ ()()()()()()() くっ、分かりました織斑先生……」

千冬に言われたラウラは渋々従い、武昭は雰囲気が変わると同時に機体の色が赤色に変わり解除すると片膝をついたのでシャルルが駆け寄ってきた。

 

「大丈夫!?武昭!!」

 

「あぁ、大丈夫だ……おっと、悪いけど肩を貸してくれるか?」

 

「う、うん、構わないよ……(武昭、僕が女の子だって忘れてるんじゃないの!?)」

 

「そうだ、村雨、1つ聞いておきたいんだが……()()()()()()()()()()

武昭は倒れそうだったのでシャルルに肩を借りながらアリーナを離れようとした時に千冬に声をかけられた。

 

「……始まりであり……終わりでもあります……今はこれしか言えません……」

 

「なるほど、分かった……話は終わりだから、部屋で休むと良い……」

武昭が千冬の問いに言い辛そうにしていると察した千冬はそのまま帰した。

 

 

 

 

 

 




アリーナで騒ぎがあった日の放課後……

「おい、束……お前は知っていたのか?武昭の機体の事を?」

〔うん、知ってたよ〕
千冬は束に電話を入れていた。

〔こっちでもモニタリングはしてたからね〕

「それで……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

〔あの子はたっくんの機体のコアの中でも特別なんだ……分かりやすく言うとたっくんの罪の証だよ……〕

「武昭の罪の証とは……まさか……」
束の言葉に千冬は心当たりがあった。

〔ごめんね、ちーちゃん、ちょっと今やりたい事があるから、もう切るね、それじゃ〕

「武昭……お前はいつまで苦しむんだ?……お前は1人では無い事を早く気付くんだ……」
束が携帯を切ると千冬は空を見ていた。


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第44話 相手。

シャルロットに肩を借りながらアリーナを出た武昭は生徒会室に来ていた。

 

「すみません楯無さん……用事も無いのに来たりして……」

 

「別に私は構わないわよ、シャルロットちゃんの事を知ってる人がいる所の方が良いだろうし」

 

「あ、ありがとうございます更識さん。それよりも武昭、大丈夫?」

シャルロットはソファで横になってる武昭に声をかけた。

 

「あぁ……大丈夫だ……()()()()()()()()()()()()()()()()」 

 

「ふーん、骨にヒビが入ってるだけなんだ……」

 

「それ位なら、少し休んでいれば良いわね……」

 

 

「ハアッ!?」「ええっ!?」

武昭の言葉を聞いたシャルロットと楯無は普通に受け入れたが少し考えて変な事に気付くと大声を上げた。

 

「武昭!骨にヒビが入ってるって大丈夫じゃ無いよ!!」

 

「こんな所よりも医務室に行った方が良いわよ!!」

 

「いやー……なんとなくですけど、今は()()()()()()()()()()()()()()

武昭の言葉に2人が頭を捻っていると何処からともなく音が聞こえた。

 

「何の音?……」

 

「もしかしたら……()()()()()()()()()()()

楯無がシャルロットに見せたのは今回のトーナメントの参加条件が書かれた物であり、そこには……

 

「えっと、今回のトーナメントはタッグ戦とする……えぇっ!?

 

「楯無さん、コレ俺も聞いてないんですけど……」

 

「それはそうよ、コレが決まったのは今さっきなんだから、それで武昭君は誰と組むのかしら?」

 

「俺ですか?そうですね……同じ男性操縦者って事で一夏とでも「ねぇ!僕と組もうよ!!」え?」

武昭が楯無の問いに答えようとした時、シャルロットが話に入ってきた。

 

「だって、僕の事を知ってるのはここにいる武昭と楯無さん以外なら織斑先生、学園長だよね?だったら正体がバレない為にも武昭と組んだ方が都合が良いでしょ?」

 

「まぁ、それはそうだけど……「楯無さん、ここに名前を書いたら良いんですか?」 「そうそう、そこに書いて誰か先生に渡せばOKよ」って、もう書いてるし……」

武昭がシャルロットの事情を考えてると楯無に分からない所を聞いているシャルロットの姿を見て何となく納得した。

暫くして麻耶が生徒会室に用事を頼みに来たついでにシャルルが書類を書いたのでタッグが決まった。

 

その後、2人が組んだ事を聞いた皆の反応……

 

一夏の場合……

「ズルいぞ!だったら俺は誰と組んだら良いんだよ!!」

 

箒の場合……

「このまま武昭達のコンビが優勝してくれたら、あの噂も無くなるか……だったらその方が良いかもしれないな……」

 

鈴の場合……

「武昭!今回は先生に止められたから無理だけど、次にこんな事があったら私と組みなさいよ!!」

 

セシリアの場合……

「一夏さんと組んでたら私が優勝してましたのに……」

 

簪の場合……

「デュノアさん、ズルい……分かった、私が優勝して……そして……

 

本音の場合……

「あきっちとデュッチーが組んだんだぁ〜 だったら私はカンちゃんと組んで、あきっちと〜

色々と言われた。

 

ちなみに、

シャルロットの場合……

(うん!武昭と組んで優勝して、そのまま……うん!絶対に優勝しないと!!

 

武昭の場合……

(ん?何だ、今変な感じかした様な……まぁ気のせいか……)

武昭が寮の部屋で予習してると何かを感じたが構わず予習を進めた。

 

 

 




アリーナで騒ぎがあった後の医務室にて……

鈴とセシリアが治療を受けて休んでると一夏と箒が来た。

「大丈夫か!?セシリア!鈴!!」

「えぇ、何とか大丈夫ですわ……」

「私も武昭が助けてくれたから……そう言えば武昭ってどこにいるの?」
鈴が室内を見回してると座ってた本音が話し出した。

「うん……あきっちならラウラウとの騒ぎが終わった後にデュッチーと何処かに行ったみたいだよ〜……」

「そうなんだ……(あの時の武昭は一体?……)ん?ねぇ、何か音がしない?」
本音の言葉を聞いた鈴が何かを考えてると何かが聞こえた気がしたので皆が耳をすませると段々音が大きくなっていった。

「お、おい一夏、何か音がこっちに迫ってきてるぞ」

「あぁ箒の言う通りだな……ってドゴォン!!な、何だぁ!?」
箒が何かを感じて一夏に尋ねると医務室の扉が外から押し倒されて室内に多数の女生徒達が入ってきて何かを見せた。

それには今回はタッグトーナメントなので2人組での参加が必須との旨が書かれていた。

『織斑君!!私と組んでください!!』

「えっと、その……あっ!俺は武昭と組むからそれじゃ!!」
一夏は女子達からコンビを組む様に言われたが逃げる様に医務室を出て行き女生徒達も、それを見て出て行った。

残された皆がポカンとしてると簪が医務室に来た。

「えっと……アレ?武昭は……いないの?」

「あっ、カンちゃん、うんあきっちはいないよ〜……ってもしかしてコンビのお願い?」
本音は簪の手にある物を見て来た理由を聞くと簪は顔を赤くして無言でうなづいた。

「ダメだよ〜あきっちと組むのは私なんだからぁ〜」

「ちょっと待ちなさいよ!私が武昭と組むのが良いんだから!!」

「では私は一夏さんと組んで出る事にしますわ」

「待て、幼馴染である私が一夏と組むのが良いんだ」

「それはダメですよ、2人の機体には多大なダメージがあるのでトーナメントへの出場は先生としても学園としても許可は出来ません」
本音と簪、鈴、セシリアと箒のそれぞれが言い合いをしていると麻耶が医務室に入ってきた。

「これ位なら問題ありません!!」

「凰さんが出場したいのは私も分かりますが、今の状況で出場しても色々と悪くなるだけです、ですから今回は諦めてください」

「はい……わかりました……」

「それと布仏さんと更識さんは言い辛いんですけど……村雨君はデュノア君とタッグを組むみたいですよ」
麻耶の言葉を聞いた本音と簪は「え?」と言った表情を見せた。

「医務室に来る前に生徒会室に寄ったら村雨君とデュノア君がいて、その場で参加プリントを貰いましたから」
麻耶がそこにいた皆にプリントを見せると武昭とシャルルの名前が書いてあった。

「そっか、武昭はデュノア君と組んだんだ……ねぇ、本音……」

「うん、私も同じ事を考えていたよ〜カンちゃん…山田先生、コレを受け取ってください」
本音と簪はその場でプリントを書くと麻耶に渡しそれを受け取った麻耶は医務室を出て行った。

「ちょっと待て……今、ここにいるメンバーでまた決まっていないのは私だけでは無いか!こうしてはおれん!!」
箒は自分の状況を確認すると慌てて医務室を出て行った。


ちなみに……

「廊下を走るな!篠ノ之!!」

「ハグッ!?」
千冬に見つかった箒は出席簿で頭をたたかれていた。


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第45話 タッグトーナメント(開始前)

アリーナでの騒ぎがあった日から日にちが経って、タッグトーナメント当日になりアリーナのピットの控室の一室に武昭とシャルロットが待機しながら室内にあったモニターで沢山の人がいる観客席を見ていた。

 

「それにしても……観覧者が多いな……まぁ、大体は俺と一夏なんだろうけどな……」

 

「そうだね、3年生からすれば卒業後の進路関係、2年生は1年間の結果を見せる為だけど、今年はそれが1番の目的だね……

それよりも武昭……体の方は……大丈夫なの?……」

 

「ん?あぁ、骨もヒビが治ったみたいだから大丈夫だぞ?」

 

「そうなんだ、良かった……(あの時……武昭の感じが変わった事は聞かない方が良いよね……今はトーナメントだ)」

シャルロットは気を引き締めるとモニターに視線を移した。

 

「そういや……今回のトーナメントって相手が期日迄に決まらなかったら残った生徒達同士で抽選をするんだったな」

 

「うん、僕は武昭と組んでるから関係ないけどね……そろそろ一回戦が始まるよ……って、まさか……」

シャルロットかモニターを見てると1回戦の対戦カードが映し出されたが、そこにあったのは……

 

村雨武昭:シャルル・デュノアvs篠ノ之箒:ラウラボーデウィッヒ

と映されていた。

 

「どうやら、箒は相手が見つからなかったみたいだね……一夏と組めなかったのかな?」

 

「あぁ、トーナメントが始まる前に楯無さんから言われたんだけど、一夏は生徒達が詰め寄りすぎたから千冬さんが止めたみたいだぞ」

 

「へぇ、そうなんだって確か武昭って一夏や箒と幼馴染なんだっけ?」

 

「そうらしいけど、俺はちょっと覚えてないからな……それよりも俺達の試合が始まるみたいだぞ」

2人が話してると時間が来たのでピットのハンガーに向かった。


武昭達が控室で話をしてた頃、もう片方のピットでは……

 

(くっ……武昭がデュノアと組んだと聞いたから一夏の所に向かったら織斑先生から混乱が起きるから抽選にすると言われて私は一夏が引いてくれる事を期待したが……)

箒が視線を向けた方ではラウラが機体を展開して具合を確認していた。

 

(まさか、彼女と組む事になるとは……だが、逆に考えればこのまま私が勝てば一夏に……いやいやいや!私は何を考えているんだ!今はトーナメントの方に集中するんだ!!)

 

(ほう……篠ノ之博士の妹と言う名前に胡座を掻いているだけかと思っていたが……これは考え方を変えないとイケないか?……)

ラウラは箒の様子を見てちょっとズレた考え方をしていると箒に声をかけた。

 

「おい、篠ノ之箒、お前はデュノアの相手をしていろ、あの村雨と言う奴は私が始末する」

 

「分かった……だが一つだけ言っておくが……武昭の事を甘く見ない方が良いぞ」

 

「ふん、何を言うかと思えば……私があの様な者に負ける事は……絶対に無い!!」

2人が話してると時間が来たのでアリーナに向かった。

 



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第46話 タッグトーナメント 1回戦(前編)

武昭達がアリーナに出ると向かい側のピットからラウラと箒が出て来た。

 

「ふん、織斑一夏の前にお前を始末してやろう」

 

「……ハァ、まだ始まってもいないのに、それは早過ぎるんじゃないのか?」

 

「早過ぎるだと?いや遅い位だ!これで教官に私の強さを見せられるのだからな!!」

 

「強さを見せるか……ラウラに聞きたいんだけど……ラウラはISを何だと考えてる?」

武昭はどこか悲しそうな表情をしながらラウラにある事を尋ねた。

 

「そんなの決まっているだろう、ISとは【力】だ!力を見せつける為の()()()()()()()()()()()()

 

「力……道具……か……違うよISは……()()()()()()()()()()()()()()()()()……(けど、俺にそんな事を言う資格は無いんだよな)……

 

(武昭?……なんで、そんな顔になってるの?……)

武昭が空を見ながら小声で何かを言っていたが、その表情にはどこか後悔が浮かんでいて隣にいたシャルルはそれが気になった。

 

(そう言えば……姉さんは私達以外だと武昭の事が気に入っていたな……それと()()()()()()()……)

箒も武昭の言葉を聞いて束の事を思い出していた。

 

そんな中……

 

「良いか、お前と組んだのはコレに出る為だけだから試合が始まったら壁際にでも離れていろ」

 

「なっ!……まぁ、私達の中で私だけが専用機持ちじゃないからな……だが私にも目的があるから好きにやらせてもらおう」

 

「別に私の邪魔をしなければ問題ない」

開始の合図が鳴る前に開始位置に着いたラウラと箒が話していた。

 

「そうだ、一つ言っておくが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「確かお前はあの男と幼馴染だったと聞いてはいるが……ふん、この私が負ける訳がない!」

箒から聞かされた事を聞き流しながら開始の合図が鳴ると同時にラウラは相手に向かった。

 

(ふう……ラウラはお前は織斑先生……千冬さんに憧れているが……武昭は小さい頃から千冬さんと戦っていて……()()()()()()()()()()()話をよく聞かないラウラがどうなるだろうかな)

箒はラウラの後ろを見ながらシャルルに向かった。

 

開始の合図が始まると同時にラウラは武昭の方に向かってきた。

 

「シャルル……こいつは俺が相手をするから箒の相手を頼んで良いか?」

 

「う、うん、僕は良いけど……武昭は……大丈夫だよね?」

 

「あぁ……大丈夫だ……ラウラに間違ってる事を教えないとな……織斑先生……千冬さんが教えた事は、そんな事じゃないって……」

 

「武昭……分かったよ、箒は僕に任せて!」

シャルロットは自分に気合を入れると箒の方に向かった。


武昭vsラウラ

 

ラウラがプラズマ手刀で攻撃してくるが武昭はそれを難なくかわしていた。

 

「ほう、これ位は出来る様だな……だが、避けているだけではどうにもなるまい!!」

 

「そうだな……勿体無いけどお前に見せてやるよ……フォームチェンジ玄武(げんぶ)来な」

武昭が言うと機体が朱雀から黒と緑を主体としてカラーリングで全体的に亀と蛇を模した模様が書かれた上半身が大きめの機体でその手には棒が持たれていた。

 

「ふん、以前とは違う機体に変わった所で私に勝てると思っているのか?それに、その様な武装が役に立つと思うのか!!」

 

「こいつを只の棒だと思ってるなら大間違いだよ!!」

 

「なっ!?くっ!!まさか、その様な動きをするとはな……」

ラウラが向かって来た所を武昭が棒の上下を持って其々逆に捻ると鎖で繋がれた棍に変化しラウラの突進を止めた。

 

「村雨流杖術止流川(しりゅうせん)からの星天突塵(せいてんとつじん)!!」

 

「くっ!この程度で私を止めたつもりか!?コレを喰らえ!!」

 

「悪いな!俺も同じ様な物があるんだよ!!村雨流索縄術!蛇頭乱舞(じゃとうらんぶ)!!」

武昭の攻撃を交わしたラウラが自身の武装のワイヤーブレードで攻撃して来たが武昭も三節棍の両端の棍を外して鎖だけにするとそれでワイヤーブレードでの攻撃を防いでいた。


観客席ではセシリアが試合を見て感心していると鈴が説明した。

 

「武昭さんは色々な武装を使えるんですね……」

 

「えぇ、武昭の家は古くからある家で昔から色々と鍛えられてたのよ」

 

「そうなのですか……」

セシリアは鈴との話を終えるとアリーナの方に視線を戻した。

 




玄武(げんぶ)
機体イメージ=鉄人28号FX
中・遠距離戦闘タイプ。
主武装は手に持つ三節棍。

村雨流杖術
止流川 杖の先端を相手の目前に向けて動きを止める又は、わざと場所を変えさせる。
星天突塵 杖での突きを色々な所に繰り出す。
蛇頭乱舞 本来は複数の鞭で様々な動きをして相手を攻撃する技。


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第47話 タッグトーナメント 1回戦(中編)

武昭とラウラがいる場所から離れた所ではシャルルと箒が戦っていた。

 

「くっ!やはり私とデュノアでは相性が悪いな!!」

 

「そうは言うけど、訓練機でここまで堪えてる箒もすごいよ!!」

シャルルが自身の武装のマシンガンで攻撃するが箒は武装の刀で弾丸を時には払い時には避けていた。

 

「私には目的があるからこんな所で負ける訳にはいかないのだ!!」

 

「その目的って男性操縦者の誰かと付き合えるって噂かな!?」

シャルルは武装を刀に変えると箒に接近して鍔迫り合いをすると箒だけに聞こえる声で理由を聞いた。

 

「なっ!?そ、それはその……」

 

「箒がそんな反応するって事は当たりみたいだね……それで箒は()()()()()()()()()

 

「!?そ、それは……それの何が悪いっ!!」

 

「別に悪くないよ!只、僕は手伝える事があるなら手伝いたいだけだよ!!」

シャルルに理由を当てられた箒は照れながら向かって来るがシャルルはちゃんと対応していた。

 

「だから、武昭の方に行きたいから早めに終わらせてもらうよ!!」

シャルルは箒から距離を取ると両手に武装のマシンガンを出して箒を攻撃して箒の機体のSEをすると箒を脱落させた。

 

 

「ふう、やはり訓練機ではここが精一杯という所か……それにしても……」

 

 

 

「ふぅ……それで俺に勝とうなんて、よく言えたもんだな……」

 

「チッ!黙れぇ!!」

箒は地面に降りると武昭とラウラに視線を向けるがラウラが武昭に攻撃をしていたが武昭は特に問題なく避けたり受けたりしていた。

 

「私が知っている武昭は、まだ小さい頃だったが……成長を加味しても腕が上がっている……」

箒は武昭の動きを見て昔を思い出しながらも感心していた。

 

そんな中……

 

「ハァハァハァ……何故だ……何故、この私が貴様如きに……」

 

「確かにラウラは今年の一年生の中でも実力は上の方だろうし、さすがにドイツの代表候補生だけはあるよ……けど、世界は広いんだからラウラよりも強い奴もいるんだ……」

武昭はラウラを見たが、その表情はどこか悲しそうだった。

 

「貴様……ならば、貴様は私よりも強いと言うのかぁ!!」

 

「俺が強い?……それは無い、俺は強くない……俺は弱いよ……」

 

「何だとっ!?自分を弱いと言ってる奴が何故こんな事が出来ているんだ!!」

ラウラは武昭に色々と攻め込むが自身の攻撃が通らない事に苛立っていた。

 

「簡単だ……それは俺が【弱さ】を知ってるからだ……」

 

「ハァ?何を訳の分からない事を言っているっ!!弱さなど私には必要無い!!だからこそ私はこれ程の力を手にしたんだ!!」

 

「そうか……ラウラはそう考えてるのか……どう思おうが俺は構わない……けど、少し言わせてもらうなら、人は弱さを知るからこそ強くなる事が出来る……それに力を手にしても使い方を違えれば自分も人も傷付く事になるんだ……」

 

「そうか、では!私のこの使い方は正しい使い方だ!お前を倒すためなのだからな!!」

ラウラは武昭に接近すると右手を前に出して武昭の動きを止めた。

 

「っ!コレは……なるほどラウラの機体の第三世代兵器って事か……」

 

「そうだ!コレが私の第三世代兵器AIC(慣性停止結界)だ!このままお前を始末してくれる!!」

ラウラは肩部にあった武装のレールカノンを武昭に向けた。

 

「ふん、所詮は私の方が上だった訳だな……さぁ!喰らえ!!」

 

「そうだ、言い忘れた事があったな」

 

「ほう、負け犬の遠吠えという物か、いいだろう話すが良い!!」

 

「ラウラ……この試合は……()()()()()()()()()だって事……忘れてないか?」

 

「それが最後の……「僕がいる事を忘れてないかな?)何っ!?」

ラウラが武昭に攻撃しようとした時に武昭が口を開いたので話を聞いているとラウラの背後にシャルルがいた。

 

「くっ!だが第二世代機の装備でこの私の防御を抜く事など出来る訳が……!!」

 

「うん、普通じゃ無理だよね……けど僕の()()()ならどうかな?」

ラウラはシャルルの右腕を見て、それが何か気づいた。

 

「そうだよ、この灰色の鱗殻(グレースケール)なら君のSEを一気に削る事が可能だよ!!」

 

「それを使わせると思うのかっ!!何っ!?」

ラウラがシャルルにAICを使おうとするがその瞬間両手足を何かで縛られた。

 

「村雨流索縄術蛇絡縛(じゃらくばく)コレを抜けるのとシャルルの攻撃を喰らうのはどっちが早いかな?」

 

「くっ!貴様!この様な事をして勝っても良いと思ってるのか!?」

 

「は?何を言ってるんだ?コレは()()()()()()()()()だぞ。初めから箒を無視して1人で戦おうとしたラウラとシャルルと一緒に戦う事を選んだ俺とは、そこが違うんだよ!シャルル!一発良いのをぶちかましてやれ!!」

 

「分かったよ!武昭!!行くよ!ボーデヴィッヒさん!!」

シャルルは武昭の言葉を聞くと同時にラウラの腹部に灰色の鱗殻を打ち込んだ。

 

「グワァ!?(くっ!このまま私が負けるのか!?……また、私は役立たずと呼ばれるのか?……)」

ラウラはシャルルの攻撃を喰らいながら過去の事を思い出していた。

 

 

 

 




村雨流索縄術 蛇絡縛 鞭や縄などを使い相手の両手足を束縛して動けなくさせる。


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第48話 タッグトーナメント 1回戦(後編)

ラウラがシャルルの攻撃を喰らいながらこれからの事を考えていた時だった……

 

(くっ!このまま私は負けるのか!?いや!私は負けない!負けてなるものかっ!!)

 

〔力が欲しいか?……〕

何処かから誰かの声が聞こえていた。

 

(何者だ!?いや、何者かは知らぬが力をくれると言うのなら受け入れてやろう!さぁ!私に力をくれっ!!)

 

〔そうか……ならば受け入れるが良い!我が力を!!〕

 

ウワァァァ!!

ラウラが何者かの言葉を受け入れると同時に機体から紫電が発生し泥の様に変化してラウラを飲み込んだ。

 

「何!?一体、何が起こってるの!?」

 

「分からない……けど何が起きても良い様に用意しておいてくれ……それと……箒、なるべく俺達の近くに来てくれ」

 

「あ、あぁ、分かった……(そう言えば、私が虐められていた時も一夏と一緒に、こうしてくれていたか……)」

シャルルがラウラを見て戸惑ってる中、武昭は真っ直ぐに見据えていて箒はそばに来ると昔の事を思い出していた。

 

そうしてラウラを見ていると機体が全体を覆っていき人型に変化していったが、その姿が……

 

「織斑……先生?……」

 

「まさか……V・T(ヴァルキリー・トレース)システムみたいだな……」

 

「嘘っ!?それって条約で開発が禁止されている物だよね!?」

 

「さあな……それよりも!シャルル!!箒を頼む!!朱雀!!」

千冬と似た姿になっており箒が信じられない、武昭が何か理解して、シャルルが何でと、それぞれの感情を浮かべているとラウラが向かってきたので武昭が機体の形態を変化させて攻撃を防いだ。

 

「チッ!コイツ!!力に飲まれやがったか!!力だけに縋るって事はそれ以上の力を持つ者に負ける事になるんだよ!!」

武昭は刀を振るってラウラを吹き飛ばした。

 

「シャルル!!今の内に箒を連れてピットに戻ってるんだ!!」

 

「え!?けど武昭1人じゃ危ないよ!!」

 

「安心しろ、俺もずっと相手をする訳じゃない……先生達が来る迄、持ち堪えるだけだ!!」

 

「武昭……うん!分かったよ!箒をピットに戻したら直ぐに来るから!!箒!!」

 

「あぁ、分かった、すまない……迷惑を掛けて」

 

「ううん、箒は悪く無いよ、悪いのはラウラの機体にあんな事をした奴等だから……」

箒はシャルルに連れられて行く途中謝罪したがシャルルは気にするなと言っていた。

 

一方、管制室では、千冬と麻耶が避難指示などを出しながらモニターを見ていた。

 

「織斑先生!あれは、まさか……」

 

「あぁ……V・Tシステムだ……ドイツの奴等か……だが村雨ならば……()()()()()()()()()()……」

慌てていた麻耶が千冬に話しかけたが千冬は特に気にしてなかった。

 

「え?それって、どういう事ですか?ボーデヴィッヒさんの機体がトレースしているのは織斑先生の動きなんですよね?」

 

「確かにそうだが……私がモンドグロッソに参加するまでの間、誰が私の相手をしていたが知っているか?麻耶」

 

「いえ、私は聞いた事がありませんけど、何で今、そんな話を……まさか……」

千冬の話を聞いた麻耶はある事実に思い当たった。

 

「あぁ、麻耶の考えてる通りだ……私の相手をしていたのは……今よりも年齢の若い……()()()()()()()

千冬の言葉を聞いて麻耶は口をパクパクさせながら驚いていた。

 

一方、観客席では……

 

「何よあれ?……あのドイツ娘の機体に、あんな物が仕掛けられてたって言うの?」

 

「どうやら、アレはV・Tシステムみたいですわ……けど、武昭さんは、あれ程の実力だったのですか?」

鈴とセシリアは試合を見ていたが鈴はラウラを、セシリアは武昭を見てそれぞれ驚いていた。

 

「ん?当たり前じゃない、武昭の家って昔から武術が伝わってきてるのよ、確か私が聞いたのは分かってるだけで500年程前だった筈よ」

 

「え!?500年程前って、そんなに古くから伝わってるんですの!?」

 

「そうよ、それで私も日本にいた時は武昭の両親に自分に合った奴を教えてもらってたのよ……(まだ武昭が今みたくなる前に……)」

鈴はセシリアに話しながら昔の事を思い出しながらアリーナを見ていた。

 

その頃……

 

「くっ!急いで行かないと!!あの時だって武昭は……」

控え室のモニターを見ていた一夏は慌ててアリーナに向かったが何かを思い出していた。

 

アリーナでは武昭とラウラが戦っていたが……

 

「チッ!無人機なら死技を使えるが、あれじゃ無理か……」

 

〈兄貴!例え死技を使えたとしても今の体じゃ危ないよ!!〉

 

〈アバルの言う通りです、マスター……その体で死技を放つのは命を削る事になります〉

 

〈私も……セルテスの言葉に同意する……〉

 

〈武昭がやりたい事なら私は反対したくないけど……今回だけは反対するよ……〉

ラウラへの一手を考えていたがコア人格達に反対されていた。

 

「皆……分かったよ、けどあのままならラウラは命を落とす事になる……」

 

「武昭!それってどういう事!?」

武昭が攻めあぐねていると戻ってきたシャルルが呟きを聞いて驚いた。

 

「アレは言わば他人の力を自分の物にする物だ……だけどその者の体格とかを無視して力を使うからどれだけ操縦者が傷を負おうとも関係ないんだよ」

 

「じゃあ!早くラウラを救出しないと!!」

 

「分かってるよ……だからどうすれば良いか考えてるんだよ……」

 

「武昭!シャルル!大丈夫か!?」

武昭が方法を考えてるとピットから一夏が来たのでシャルルは驚いた。

 

「一夏!?なんで来たの!?」

 

「アレは千冬姉の物なんだよ!だからあんな風にやられてるのが気に食わないんだよ!!それに……武昭だけに戦わせる訳にはいかないんだ……

 

「全く……一夏、俺は生徒会役員として対処してるんだけどお前は先生に怒られる可能性があるけど良いのか?」

 

「うっ……か、関係ねぇ!コレは俺がやらなきゃ駄目なんだよ!」

 

「そうか……なら俺と一緒にアイツをどうにかするぞ 一夏」

 

「あぁ!分かってるよ!武昭!!」

一夏は武昭に頼まれると横に並び立った。

 

それを見て

 

ピットでは箒が……

「久し振りに、あの様な姿を見たな……」

 

観客席では鈴が……

「昔、よく見たわ……2人のああいう所……」

 

管制室では千冬が……

「ほう……懐かしいな……あの頃の様だ……」

何人かは昔の事を思い出していた。

 




ちなみに一夏は箒がいるピットからアリーナに出てきてます。


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第49話 タッグトーナメント 終局と……

一夏は武昭の横に立つとどうするか聞いた。

 

「それで武昭、俺達はどうするんだ?」

 

「あぁ、このままならラウラは命を落とす事になる……一夏がいるならやり方はある」

 

「俺がいるならって……何をすれば良いんだ?」

 

「まずは俺がラウラと戦って動きを止める、その隙をついて一夏の零落白夜でとどめをさすんだ」

 

「そうか、分かった「けど、ちゃんと威力を制御しないと中にいるラウラごと傷つけるからな」なっ!?……あぁ、ちゃんとやってやるよ……」

一夏は武昭の言葉を聞いて一瞬戸惑ったが表情をすぐに引き締めた。

 

「ラウラがああなってからそれなりの時間が経っている……もって数分と言った所だな……だったら……」

コォォォー

 

「そいつは……久し振りだな、村雨流格闘術の基本技“息吹”か……だったら俺も」ハァァァー

 

「一夏……お前がコレを出来るって事は……」

 

「あぁ、まだお前が俺達の事を覚えてる時に習ったんだよ……(あの人達にな………)」

 

「そうか……なら()()()も知ってるんだな……村雨流体術免許皆伝!村雨武昭!参る!!」

 

「名乗りだな……自身の身を賭してやるべき事を成す為の決意の証だな……(あの時も武昭は……)」ギリッ

一夏は武昭の名乗りを聞いて何かを思い出していた。

 

「モード!白虎!!さぁ!やり合おうぜぇ!!」

ラウラは剣を振るうが武昭は両手や両足と言った体術で相手をしていた。

 

観客席では……

 

「鈴さん……武昭さんは……あれほどの強さだったんですか?」

 

「さっきも言ったけど武昭の家は歴史が長いの……昔、武昭から聞いた事があるんだけど……格闘術は全部で8種類あって体術だけは免許皆伝なんだけど他の奴は、そこまで習得してないみたいなのよ……」

 

「なるほど……それで武昭さんは体術を使ってるですね……」

セシリアが鈴の説明を聞いて武昭がラウラの相手を出来ている事に納得していた。

 

一方、アリーナでは……

 

「村雨流体術!引波(ひきなみ)!!」

ラウラは殴りかかって来た武昭の右腕を剣で払おうとしたが、寸前に武昭は右腕を引き戻すと、その反動で左腕で殴り掛かった。

 

それを見ながら一夏とシャルルは話していた。

 

「フゥ……落ち着くんだ……武昭なら必ずやってくれる……」

 

「一夏って武昭の事を信頼してるんだね……」

 

「あぁ……昔から俺は頭に血が上りやすいんだけど、武昭はそんな俺を上手く嗜めてくれたんだ……だから……」

 

「そうなんだ……(これが男の子同士の友情って奴かな……ちょっと羨ましいな……)」

シャルルは一夏と武昭の関係を聞いて少し羨ましく思っていた。

 

一方……

 

「そろそろ、決着をつけないとダメか!〈アブネル!〉〈うん、分かったよ武昭さん……武装変形……〉」

武昭がコア人格のアブネルに声を掛けると何をして欲しいのか理解しており装備の形態が変わっていった。

両手の手甲がそのまま消えて全体的にスマートになった。

 

「行くぜ!村雨流体術!!三天鐘(さんてんしょう)!!」

武昭はラウラに近付くと懐に入り込んで両手打ちと右膝打ちでラウラの両腕と腹部に攻撃を加えた。

 

「コレで俺の役目は終わりだ!最後のとどめは頼んだぜ!!一夏!!」

 

「あぁ!分かってるよ!武昭!!発動!!零落白夜!!ハァーッ!!」ザシュ!!

ラウラの動きが一瞬止まったのを確認した武昭が声を掛けると同時に一夏が刀でラウラの機体を切り裂くとISスーツを着たラウラが出てきたので一夏が慌てて受け止めるとその目には眼帯が無く金色の瞳が見えていた。

 

「全く……何か文句を言おうと思ったけど、こんなんじゃ何も言えないな……」

 

「一夏、よくやったな」

 

「いや、ほとんど武昭がやったから俺は何もやってないに近いよ」

 

「武昭!一夏!大丈夫!?」

2人が話してるとシャルルが傍に来た。

 

「あぁ、大丈夫だ。後はラウラを早く診察室に連れて行かないと……」

 

「じゃあ、俺がこのまま運んでいくよ」

3人がそこから離れると教員達がアリーナに入って来た。

 

その後、この騒動は終了した。

 

だが……

 

(あぁーあ、やっぱりあんなんじゃダメだったか……じゃあ()()()を使っちゃおうかな?)

IS学園から離れた場所にいた何者かがモニターでアリーナを見て何かを考えていた。

 

 



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第50話 終了して……

タッグトーナメントが終わった後、武昭達は千冬達から様々な書類などを書かされると時間も時間だったので食堂で夕食を食べていた。

 

「はぁーっ……色々と書かされて疲れたなぁ……」

 

「まぁ、シャルルはただ居ただけだったけど一夏は……」

 

「あぁ、俺は後日ちょっとした罰則があるみたいだな」

3人が話しながら食事をしていると学食のTVに何かが放送されていた。

 

その内容は……

『トーナメントは事情により中止となりました。ただし、個人のデータ指標を計測する為全ての1回戦は行います。場所、日時等は個人の端末で確認……』

との事だった。

 

「あんな事があってもやる事はやるって事か……ん?なんだ、あの子達」

誰かがTVを切って一夏が食堂を見ると彼らから離れたテーブルに居た女子達が落ち込んでいるのが見えた。

 

「優勝……無くなった……」 「チャンスが……」 「神はいない……」

 

「何を言ってるんだ?」

 

「さぁ?何かを決めたんじゃないのか?(なぁシャル、彼女が言ってるのって……)」

 

「彼女達にも何か事情があったんじゃない?(うん、あの噂が無効になったからだね……)」

一夏が頭を捻ってる中、武昭とシャルルはアイコンタクトをしながら話していた。

 

そんな中、箒が食堂に来たが、その表情は落ち込んでいた。

 

「ん、箒も今から夕食だったのか」

 

「あぁ、武昭か……そうだ、私も今さっき調書を書き終えたんだ……」

箒が空いている席に座ろうとした時に一夏が声を掛けた。

 

「あぁ、そうだ箒、前にした約束だけど……付き合っても良いぞ」

 

「えっ!?そ、それは本当か!?」

箒はトレイをテーブルに置くと一夏に笑顔で詰め寄った。

 

「そりゃ、幼馴染の頼みだから付き合うぞ……()()()()()()

 

「はっ?」 「えっ?」「まさか()()()()()()()()()()()……」

一夏の言葉を聞いた箒とシャルルはキョトンとして武昭はどこか遠くを見ていた。

 

「……だろうと思った……

 

「ん?どうしたんだ、箒?」

箒が何か小声で呟いていたので一夏が近付いた時だった……

 

「そんな事だろうと思ったわ!!」バキッ!ドゴッ!ゴスッ!!

 

「ガハッ!?グヘッ!!ドフッ!!オォーッ!?」

箒にアッパー、腹部へのパンチ、倒れてこめかみへのつま先蹴りと3連発を食らった一夏は痛みから床でゴロゴロした。

 

「ふん!しばらくそのままで居ろ!!」

 

「まぁまぁ箒、あの鈍い一夏と一緒に買い物に行けるだけでも良いと考えた方が良いんじゃないか?」

 

「はぁ……確かに武昭の言う通りだな……では私はこれで……」

箒は武昭に言われると何処か納得して部屋に戻った。

 

箒が食堂を出る入れ違いに山田先生が入ってきて武昭達の所に来た。

 

「あっ、皆さん、ここに居ましたか、さっきはお疲れ様でした」

 

「いえ、私はどちらかと言うと書類仕事の方が得意なので、そんなに疲れてません。

それよりも皆さんに朗報を持ってきましたよ!」ブルン

山田先生がガッツポーズをすると同時に、その大きな胸が揺れたので武昭は慌てて視線を逸らした。

 

「えっと、それで山田先生、俺たちに朗報って何ですか?」

 

「はいっ!それは今日から男子の大浴場の使用が解禁されました!!」

山田先生から話を聞いた武昭達は3人で大浴場に向かっていたが……

 

「いやー!やっと浴槽に入れるんだぁー!!」

 

「そうだなぁ……(おい、どうするんだ?シャルロット)

 

 (う、うん……どうしよう?……) 

一夏は喜んでいたが武昭とシャルルは耳打ちで話していた。

 

そうこうしてる内に3人は大浴場に近付いていたが……

 

「あっ、そうだ!悪い一夏、俺とシャルルは生徒会室に用事があったのを忘れてたから先に入っててくれ」

 

「え?そうなのか?だったら2人が来るまで待ってるぞ?」

 

「いや、ちょっと時間が掛かるから先に入っててくれ、という訳で行くぞシャルル」

 

「えっ、あっ、う、うん、じゃあね一夏」

武昭はシャルルを連れて、その場を離れた。

 

一夏と別れた2人は生徒会室に向かいながら話していた。

 

「武昭……僕の事を助けてくれてありがとう」

 

「ん、別にそういうんじゃないよ、一夏はシャルロットの正体を知らないからだよ、すみませーん武昭ですけどー」トントン

 

「入って良いわよー」

武昭かドアをノックすると返答があったので入ると書類仕事をしてる楯無だけがいた。

 

「あれ?楯無さんだけなんですか?虚さんとかは……」

 

「虚ちゃんは、用事があってちょっといないのよ、それでどうしたの?確か武昭君達は大浴場が使える筈だけど……」

 

「そうですけど、シャルロットがいたからですよ」

 

「あぁ、そういう事ね」

理由を尋ねた楯無はシャルロットを見て理解した。

 

その後、書類仕事を手伝っていると時間が経ったので……

 

「じゃあシャルロット、俺が上がったら連絡するから」

 

「うん、分かったよ、それじゃあ」

武昭はシャルロットを置いて大浴場に向かった。

 

「ふぅ、武昭君とシャルロットちゃんのおかげで仕事が早く終わったわ、ありがとうね」

 

「いえ、僕はそんなに手伝ってませんよ」

 

「けど……武昭君が上がってくるまで時間があるわね……あっ、そうだ、シャルロットちゃん良い事を思い付いたんだけど」

 

「え?何ですか?……フェッ!?

楯無はシャルロットにある事を提案すると、それを聞いたシャルロットは顔を赤くした。

 

 

 



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第51話 大浴場と大騒動

武昭が大浴場に行くと入り口に千冬が立っていた。

 

「あれ?織斑先生、どうしてここにいるんですか?」

 

「あぁ、お前に伝えたい事があってな、束から新しい企業を作ってお前とデュノアをそこの所属にしたとの事だ」

 

「そうだったんですか……じゃあ後でシャルロットにも伝えておきます」

 

「いや、それは明日の朝にで私から伝えよう、それよりも早くお風呂に入った方が良いぞ、今日は疲れただろうからな」

 

「分かりました、そういえば一夏はもう出たんですか?」

 

「あぁ、私が来る前に山田先生が居たんだが、その時に出たそうだ、だからゆっくりと入って体を休めると良い」

千冬から言われた武昭は大浴場の更衣室に向かった。

 

大浴場に入った武昭は頭と体を洗うとサウナに入っていた。

 

「ふぅ……一夏の事だから()()()()()()()()()()()()()()()……」

武昭は自分の体の傷や右腕を見て何かを考えていた。

 

「おっと、そろそろ出ないと……水風呂に入って冷やしてから大浴場に入るか……」

サウナから出た武昭は汗を流すと水風呂に入り暫くすると湯船に入った。

 

「ハァ……そういえば最近、コレの整備もしてなかったな……後で束さんに連絡しないと……」

大浴場に入っていた武昭が右腕を外しながら何かを考えていた時だった……

 

カラカラカラ

 

誰かが大浴場の扉を開ける音がしたが武昭は確認しないで声を掛けたが……

 

「織斑先生ですか?すみません、そろそろ上がりますので外に「た、武昭、先生じゃなくて僕だよ?」へ?その声って、まさか……シャ、シャルロット!?」

声の人物を確認するとバスタオルだけのシャルロットが顔だけでなく全身赤くして立っていた。

 

「シャ、シャルロット!?なんで入って来たんだ!?」

 

「だ、だって、今日は男子が大浴場を使って良いんだよね?だ、だから僕も入りに来たんだよ?今の僕はまだ男子なんだから……」

 

「いやいやいや!それはそうかもしれないけどシャルロットは女子だろ!!」

 

「そ、それよりも……あまりコッチを見ないでくれるかな?」

 

「あ、あぁ悪かった……」

武昭が視線を逸らすとシャルロットが湯船に入って来たが何故か隣に来た。

 

「え、えーっと、シャルロットさん?なんでこんなに空いてる場所があるのに隣に来たんですか?」

 

「武昭に話した事があるから……ちょっと、後ろ向いてくれるかな?……」

 

「あぁ、良いけど……なっ!?シャ、シャルロット!?な、何を!?

武昭が言われた通りにするとシャルロットが背中に抱き付いてきたので武昭は慌てていた。

 

少しの間2人は黙りながら、そのままでいたが……

 

「ありがとう………武昭……」

 

「シャルロット?なんでお礼なんか……」

 

「入る時に織斑先生から教えてもらったんだ……もう大丈夫だって……」

 

「あぁ……そう言えば、そんな事言ってたな……」

武昭は急にお礼を言われたので理由を尋ねようとしたが心当たりがあると理解した。

 

「これから先、僕は武昭がいたから本当の自分で生きる事が出来るんだ……だから早くお礼を言いたかったの……」

 

「いや……俺は何もしちゃいないよ……頑張ったのは束さんや織斑先生……そしてシャルロットが自分の気持ちをちゃんと伝えたからだよ……」

 

「そうかも……けど僕が気持ちを伝える事が出来たのは武昭がいたからだよ……だから、ありがとう武昭……そして……大好きだよ……」

 

「違うよ……俺はお礼を言われる様な事はしてないよ……俺はただ……いや、これは……それに俺は、そんな事を言われる資格は……あれも俺の自己満足でしか無いんだな……

 

「武昭?今、何か言った?」

 

「いや、何も言ってないよ……それよりも俺はそろそろ上がるからシャルロットはゆっくり入っていると良い……それと返事はまだ……考えさせてくれ……」

武昭はシャルロットにそう言うと大浴場を出て行った。

 

「武昭……あの体の傷は?……ねぇ、何を抱えているの?……」

 

「はぁ、シャルロットちゃんでも武昭君から聞き出す事は無理だったみたいね」

 

「うわっ!?た、楯無さん!?」

考え事をしていたシャルロットは楯無がいた事に驚いていた。

 

「楯無さんは、もしかしてそれを狙って僕を武昭の所に……」

 

「それもあるけど一番は武昭君に弱音を吐いて欲しかったからなの……」

 

「武昭に弱音を吐いてもらうって……」

 

「シャルロットちゃんも何となく気付いてるかもしれないけど、武昭君は何でも1人で抱え込むみたいな所があるのよ……

だから誰でも良いから、武昭君のそばにいて欲しいの…」

 

「楯無さん……そうだったんですか……だからこんな事を……」

 

「さてとシャルロットちゃん、私達もそろそろ上がりましょうか……」

楯無に言われてシャルロットは一緒に大浴場を出て行った。

 


次の日の朝のHR……

 

「おはよう武昭……あれ?今日はシャルルが一緒じゃないのか?」

一夏と箒が教室に入って武昭に会うといつも一緒に登校してるシャルルがいない事に気づいた。

 

「あぁ、朝起きたら先に起きてたみたいでな……おっと山田先生が来たから席に座った方が良いぞ」

話してると麻耶が来たので一夏と箒は、それぞれの席に座ったが麻耶の顔には何処か疲れが浮かんでいた。

 

「えぇーっと、今朝は転校生を紹介します……けど、転校生と言って良いんでしょうか?……入ってきてください」

麻耶が言うと1人の女生徒が教室に入ってきたが何処か見覚えがあった。

 

「それでは、自己紹介をお願いします……」

 

「はい、僕の名前は()()()()()()()()()()()と言います、皆さんよろしくお願いします!!」

シャルロットが笑顔で自己紹介をするとクラス中が騒ぎ出した。

 

「えっ!?もしかしてデュノア君はデュノアさんだったって事!?」

 

「何よ!あの可愛さ!?」

 

「これじゃ夏の村雨×デュノア!織斑×デュノア!村雨×織斑の本が!!」

 

「ねぇ!皆、ちょっと待って!昨日って男子が大浴場を使って良かったわよね!?」

女生徒達が騒いでる中、1人の女生徒が発した言葉で視線が武昭と一夏に向けられた。

 

「一夏!貴様女子と一緒に入浴するとは!!」 「一夏さん!?まさか、そんな事をなさるなんて!!」

 

「ま、待て!2人とも!!確かに昨日大浴場に入ったけど俺は1人で入ったぞ!!」

箒がどこかから日本刀、セシリアがISのビットをそれぞれ向かってきたので一夏は逃げ出した。

 

「なっ!バ、バカ野郎!俺も1人で入ってたけどシャルロットが自分から入って来たんだよ!!」

 

「ふーん……あきっちって女の子と一緒にお風呂入ったんだぁ〜」

武昭が状況説明をしてると声がしたので見ると笑顔の本音がいたがその目は笑ってなかった。

 

「いや、だから……今、説明したけどドゴォーン!!「武昭!!どういう事よ!!」なっ!?スズ!!」

武昭が説明しようとした時、教室の壁が破壊されて機体を展開した鈴が入ってきたがその顔には怒りが浮かんでいた。

 

「おいおいおい(汗)ちょっと待てって……「ねぇ……武昭……女の子と一緒にお風呂に入ったって……事情を話してくれるよね?」簪!?なんで!!」

 

「私がカンちゃんに連絡したんだよ〜」

 

「なっ!?くそっ!このままじゃ……」

武昭が鈴に説明しようとした時にいつの間にか来ていた簪が機体を展開しており後ろに鈴、前に簪と2人に挟まれる体勢になっていた。

 

「さてと……武昭、観念しな……さい!!」

 

「そうだよ……痛くしない様にしてあげるから!!

 

「いやー……そんな風に武器を向けられて安心出来ないなぁ……ガキン!!シャルロット?……」

武昭が観念した表情になっていると鈴と簪がそれぞれの武装で斬り掛かって来たがシャルロットが機体展開をして武装の盾で防いでいた。

 

「危なかったね武昭……ねぇ、2人に聞きたいけど……なんで僕と武昭が一緒にお風呂に入っただけで、そんなに怒るの?」

シャルロットの言葉に鈴と簪はウッとした表情を浮かべた。

 

「それに僕は武昭に気持ちを伝えたよ……まだ返事は貰ってないけどね」

 

「嘘……武昭、シャルロットの言った事って……本当?……」

 

「あぁ、本当だ……まぁ、まだ考えてる最中だけどな……(こんな俺には……)

 

そんな……だったら……武昭!!あんたシャルロットの告白に返事してないって言ってたわよね!?」

簪が武昭に確認を取っていると何かヲ考えていた鈴が武昭に迫っていた。

 

「あ、あぁ……そうだけど……それがどうかしたのか?」

 

「えぇ、今ここで私も言わせてもらうわ!私も武昭の事が好きよ!だから誰にも渡さないから!!」

鈴は武昭に告白するとシャルロットを指差した。

 

「そうなんだ……そういう事なら僕も受けて立つよ……」

 

「ふーん、上等じゃない、これからよろしく」

 

「そうなんだぁ〜……じゃあ私も参加しようかなぁ〜……」

シャルロットと鈴が睨んでいると本音がそばに来ていた。

 

「あのね、あきっち……私もあきっちの事が好きだよ……だから……出来たら私を選んで欲しいな……」

 

「本音……ありがとうな、気持ちを伝えてくれて……さっきも言ったけど……俺は……」

本音はいつもの様な間が伸びる話し方では無く普通に話しており、それを聞いた武昭も本音の思いが本物である事を感じていた。

 

「待って、武昭……私も武昭の事が好き……私は武昭が居たからお姉ちゃんと……ううん、そんな事は関係ない……そんな事は無くても私は武昭の事を思ってたの……」

 

「簪まで俺の事を……けど……俺に……こんな俺なんかをなんで……」

 

「簡単よ、それは私達が武昭君の力になりたいからなの」

武昭が悩んでると楯無が教室に入ってきた。

 

「楯無さん……なんで、ここに居るんですか?」

 

「えぇ、ちょっと話したい事があってね……武昭君……私も貴方の事が好きよ……それを言いたくて来たの……

 

「楯無さんも……なんですか?……(なんで……皆、俺の事を……この手は…… 汚れてるのに…… )クッ!」

 

「あっ!武昭君!?」

 

「おいっ!何処へ……ん?どうやらお前達が何か関係してるみたいだな……まぁ村雨は後で罰を与えるとして……まずは更識姉妹と凰は自分達の教室に戻るんだ……」

武昭が何かを考えていると両手が真っ赤になる幻が見えたので、そのまま教室を出て行ったのを向かっていた千冬が止めようとしたが教室内を見て事情を理解していた。

 

(武昭……早く気付くんだ……お前には、こうしてそばに立ってくれている者達が居る事を……)

千冬に言われた者達はそれぞれの教室に行き、千冬は武昭の事を考えていた。

 

 

 

 

 

 




ちなみに武昭が攻められている頃……

「「一夏(さん)!!観念しろ(してください)!!」

「ちょ、ちょっと、待った!!」
箒とセシリアが一夏に攻撃を加えようとした時だった……

「あれ?何で……「大丈夫か?」ラウラ?」
機体を展開したラウラが自身の武装であるAICを発動させて2人の攻撃を防いでいた。

「あぁ、ありがとうな【チュッ】え!?」
一夏がラウラにお礼を言おうとした時、ラウラが近づいてきて、そのままキスをした。

「な、な、な、な、な」 「ラ、ラ、ラ、ラ、ラ」

「その……織斑一夏!お前を私の嫁にする!!」

「は、はあっ!?」
ラウラにキスをされた一夏と、それを見ていた箒とセシリアは何が起きたか理解出来なかったが少し経つと一夏に詰め寄っていた。


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第52話 自分の想いと消えない傷……

教室から逃げ出した武昭は屋上に来ていた。

 

「はぁ……絶対、後で織斑先生に怒られるだろうなぁ……まぁ、ある意味それを覚悟してここに来たからな……」

 

〈なぁ、アニキ……アニキは彼女達の事をどう思ってるんだ?……〉

武昭が柵に寄りかかってるとアバルが話しかけて来た。

 

「どう思ってるって……こんな俺に好意を持ってくれてるのは嬉しいと言えば嬉しいよ……けど……」

 

〈やはり……マスターは()()()()()()……〉

 

「そうだ、セルテスの考えてる通りだ……俺はあいつらとは違うんだ……俺の手は……」

セルテスと話してた武昭は自分の右手を空に翳した。

 

「だからこそ……俺に彼女達の思いを受ける訳には行かないんだよ……」

 

〈それでも!なんで武昭さんが1人で苦しまないとダメなんですか!?〉

 

〈けど、武昭も気付いてる筈です……どこかで自分を受け入れてくれる人を探している事に……〉

武昭が自分の意見を言うがアブネルとマァガルが反論して来た。

 

「皆の言う通りだな……けど、それは皆が俺の罪を知らないからだ……それを知ると皆は俺から離れていくよ……」

 

「……だったら……私達に、その罪を教えてよ……武昭……」

武昭が独り言を言ってると声がしたので見ると屋上の入り口に鈴達といった武昭に告白をした者達が立っていた。

 

「皆……何でここに……それよりも……まさか俺の言葉を聞いていたのか?……」

 

「うん……武昭が“私達と違う”って言った所から聞いてたよ……」

 

「ねぇ、あきっち……その罪とあきっちがたまに魘される事は関係があるの?」

 

「それに……昨日、大浴場で見たあの傷痕も何か……武昭?」

 

「や、やめろ……俺は……何も俺は……アァーッ!!」

簪、本音、シャルロットが理由を尋ねていると武昭の顔が青くなり体が震えて怯えていた。

 

「武昭君!?どうしたの!!」

 

「違う!俺は、俺は!!」

楯無が近寄って抑えようとするが武昭の動きは止まらなかった。

 

「武昭!落ち着いて!!」

 

「ねぇ!そんなに苦しまなくて良いんだよ!!」

 

「皆!そのまま抑えてて!!」

武昭の動きが止まらなかったので鈴とシャルロットが抑えていると本音が以前千冬から渡された鎮静剤を注射して武昭を眠らせた。

 

「本音、それって……」

 

「前に織斑先生にあきっちが魘された時に注射しろって渡された奴なんだ……けど、もう数が……」

 

「それならば、問題は無い……それを作った奴を呼んでいるからな、ほら出てくるんだ」

本音が簪に説明していると千冬が誰かを連れて屋上に来た。

 

「織斑先生……それと……その人は……まさか!?」

楯無は千冬の横に居たのが誰か心当たりがあった。

 

「ヤッホー、私が篠ノ之束だよー」

束の自己紹介を聞いた皆は驚きから声が出なかった。

 

しばらくして……

 

「あの、織斑先生……何で篠ノ之博士がここに居るんですか?」

皆が復活すると最初に簪が事情を聞いた。

 

「あぁ、それは……行方不明になった()()を発見したのが束だったからだ」

 

「あれ?織斑先生……今武昭の事を名前で……」

鈴は気になった事を千冬に尋ねた。

 

「今は先生ではなく……武昭の義姉として接しようと思ってな……凰なら知っている筈だ」

 

「そう言えば……一夏と織斑先生は武昭のご両親の世話になってましたね……」

 

「それに束さんもたっくんのご両親には凄く世話になってたんだよー」

 

「そうだったんですか……それで武昭がこうなったのは……」

 

「うーん……それを話しても良いけど……興味本位だけで聞きたいなら私とちーちゃんは話さないよ?」

束が説明してるとシャルロットが事情を聞こうとしたが束の雰囲気が変わった。

 

「それに関しては束の言う通りだな……ここで武昭の事を話すのは簡単だが……本人が話したくないと思っている事を私達から話す事も何か違うと思わないか?」

皆に視線を向けられた千冬が自分の意見を言うと彼女達は黙り込んだ。

 

「だから、私から言える事は……武昭を信じてやれ……そして何があっても……傍にいてやれ……」

 

「うん、私もちーちゃんと同じ意見だね……けど、私から言える事があるとすれば……たっくんが失った記憶を取り戻すって事は……とても辛い事になるかもしれない……それじゃ私は帰るよ……あぁ、ちーちゃん、これ、そろそろ無くなる頃だよね?」

 

「そうだったな、お前らもそろそろ教室に戻るんだ、楯無、悪いが武昭を生徒会室で休ませておくぞ」

 

「はい、私は構いません」

束は千冬に鎮静剤を渡すとその場から離れ千冬は武昭を抱えると生徒会室に向かった。

 

 

残された皆は何かを考えるとどこか決意した様な表情になっていた。

 

 



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第53話 闇の中での決意……

千冬に運ばれて生徒会室に来た武昭は室内のソファーに寝かされていた。

 

「悪いな布仏、急に武昭を連れて来て」

 

「いえ織斑先生気にしないでください、武昭君も生徒会役員ですから……紅茶をどうぞ」

 

「あぁ、悪いな……ふぅ……」

千冬は虚に説明をすると近くにあった椅子に座り紅茶を飲んで一息ついた。

 

「それで織斑先生……武昭君の過去について1つ聞きたいのですが……それほど辛い物なんですか?」

 

「………そうだな……布仏も以前に見た武昭の体を知っているだろう……」

 

「はい……それ以上に私が知っている武昭君と表情が何か違ってました……」

 

「そうか、お前も昔の武昭を知っているんだったな……だが、そうだとしても私から話す事はしたくないんだ……」

 

「分かっています……ただ、私やお嬢様達の事を覚えている武昭君にいつ会えるのかと思っただけです……」

虚が武昭を見る表情は優しい物だった。

 

「だからこそ、武昭が自分から過去の事を話すまで待っているんだ……さてと私はそろそろ職員室に戻るとするか……悪いが武昭を頼む」

千冬は虚に頼むと生徒会室を出て行った。

 

武昭が生徒会室に運ばれた頃……

 

「ふぅ……やっぱり、あいつらには話せないよな……」

 

〈アニキ……〉 〈マスター……〉 〈武昭さん……〉 〈武昭……〉

武昭はコア空間で佇んでいた。

 

「なぁ、皆……あいつらは俺の……()()()を知ったら俺を蔑むだろうな……」

 

〈アニキ……そうかもしれないよ……けど!彼女達は本当にアニキの事を!!〉

 

〈マスター……マスターがあの事を知られる事に恐怖を抱いているのは分かります……〉

 

〈だけど、武昭さんも分かってる筈……このままじゃいけない事に……〉

 

〈武昭は自分の事を知られるのが辛いのかもしれないよ……だけど、私達だって辛いんだよ……苦しんでる武昭を見るのが……〉

武昭が自己嫌悪に陥ってるとコア人格達が自分の意見を言ったが、その瞳からは涙が流れていた。

 

「皆……そうだな……いつかは話さないといけないのかもしれないけど……そろそろ潮時なのかもな……

俺は……自分が覚えている()()()()()を話す……それでどう思われても俺は受け入れる……」

武昭はコア人格達に近づくと頭を撫でた。

 

「それが終わったら……()()()()()()()()……」

武昭は空間内にある扉を見て優しく微笑むとその場から姿を消した。


武昭がコア空間から戻ってくると時間は夕方になっていた。

 

「朝にあんな事があったから、結構長く眠ってたって事か……」

 

「「「「「武昭(君)あきっち!!体は大丈夫なの!?」」」」」

武昭が目を覚ますと同時に生徒会室に楯無、本音、鈴、シャルロット、簪が入って来ていた。

 

「ほう……心配だから様子を見に来たが、その感じなら問題は無さそうだな」

その後ろからは千冬が立っていて、その手にはたくさんのプリントがあり、それを武昭に渡した。

 

「あの……織斑先生()()は?……」

 

「簡単に言うと今日の授業の課題のプリントだ、村雨は授業をボイコットしたのだからこれ位はしてもらう。良いな?」

 

「は、はい、分かりました……(まぁ、自分が悪いからしょうがないか……そうだ)ちょっと皆に言いたい事があるんだけど、織斑先生だけは残って一旦出てくれないかな?」

 

「え?まぁ、武昭君がそう言うなら私達は構わないわ、それじゃ皆少しの間武昭君と織斑先生だけにしてあげましょう」

武昭がある事を希望すると楯無が代表して皆を連れて生徒会室を出て行き武昭と千冬だけの2人だけになった。

 

「ふぅ、それで村雨……なんで私だけを残したのか聞かせてもらおうか?」

 

「はい、その前に織斑先生に確認したいんですけど……織斑先生は俺が学園に来る前の事……正確に言うと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「っ!……あぁ、知っている……束から渡された書類と本人から聞かされたからな……()()……まさかお前が話そうとするのは……」

千冬は武昭が何か話そうとした事に思い当たるとプライベートの呼び方になっていた。

 

「はい……俺が束さんに保護された状況……正しく言うと()()()()()()についてです……()()()()

 

「(まだ私や束の呼び方がさん付けと言う事は……)武昭に聞くがお前はまだ昔の事を思い出していないのだろう?それなのにあいつらに、その事を話すと言うのか?」

 

「はい……俺があの事を話す事で皆からどう思われても仕方ありません……俺はそれだけの事をして来たんですから……」

 

「(武昭がそう決めたのなら私が反対する理由は無い、だが……)武昭、私からも良いか?それについてなんだが……」

千冬は何かを決めると武昭にある事を提案した。

 

その後……

 

「皆、さっきの話したい事なんだけど……今はまだ話せなくなったんだ」

 

「はぁ!?どういう事よ武昭!!」

千冬との話を終えて皆が入って来たの武昭が言うと鈴が詰め寄った。

 

「いやー織斑先生に「その事を話すならもっと安全な場所を用意する」って言われたんだ……だから」

 

「織斑先生が、そう言うのなら私達は何も言えないね」

武昭が理由を言うとシャルロットの言葉に皆が納得した表情を浮かべていた。

 

「それで武昭君、体の方はどうなんですか?」

 

「えぇ、特に問題は無いです、織斑先生からも大丈夫なら部屋に戻って良いって許可は貰いました」

 

「そう、じゃあ今日はここまでにしましょう」

虚に体調を聞かれた武昭の返答を聞いて楯無が皆に退室を促した。




その日の夜、千冬は学園の屋上で束と通信していた。

「……と言うわけで束には何者にも盗聴など出来なくなる様な物を作ってほしいんだ」

〔うん、束さんは構わないよ。そうだなー……今度、学園の方で海に行く行事があったよね?〕

「あぁ、臨海学校の事だな、その時に来るのか?」

〔そうだよ、ちょうど箒ちゃんの誕生日とかぶってるからね〕

「そうだったな……なぁ束、私達は武昭に何をしてやれば良いんだろうか?……」

〔簡単だよ、ちーちゃん私達が出来る事は何があってもたっくんのそばにいてあげる事だよ……〕

「そうか……そんな簡単な事で良いんだな……」

〔それじゃ、束さんはやる事があるからバイビー〕
束は千冬との通信を終えた。

「私も部屋へ戻るか……」
千冬は何かを思いながら寮に戻った。


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第54話 始まりに呼ばれて……

武昭が学園に来る事になった要件を話す事を決めてから数日経ったある日の放課後の廊下で……

 

「ごめんね武昭、荷物を運ぶの手伝ってもらって」

 

「気にするな、こんな量を1人で運ぶより2人の方が早いだろ?」

武昭とシャルロットが先生に頼まれたプリントを運んでいた。

 

「けど、今日は鈴達と約束があったんじゃ無いの?」

 

「あぁ、そうだったな、けど俺はロッテと一緒じゃないと……な?」

 

「フェッ!?そ、それって!それに今、僕の名前を……」

 

「なんとなくだけど……俺は小さい時にロッテと会ってるんだよな?そして、ある事を約束したんだろ?」

 

「う、うん……そうだけど……えっ!?」ドサッ

シャルロットが戸惑ってると武昭が抱き締めてきたので持っていたプリントが廊下に散らばった。

 

「今はまだ思い出してない、こんな俺だけど……ずっとそばにいてくれるか?」

 

「武昭……うん、僕はずっと武昭のそばにいるよ、思い出してもこれからも……」

 

「そっか、ありがとうなロッテ……」

 

「ううん僕の方こそ、ありがとう……武昭……」

2人の顔が迫って、距離が0になるのと同時だった……

 

ピピピ、ピピピ、ピピピ……

 

「うーん……あれ?武昭……って今のは……夢だったんだ……もーう!もう少しだったのにー!

シャルロットが自分の状況を確認すると今までの事は夢であり周りを見ると学園寮の部屋だった。

 

「ラウラはもう起きてるんだ……って今は……え?」

シャルロットが隣のベッドを見ると同部屋の筈のラウラがいなかった。

 

シャルロットが女性と分かってから武昭との同室は解消されラウラとの同室になった。

そして武昭は以前のルームメイトである本音との同室に戻っていた。

 

更にシャルロットが時計を見ると……

 

「た、大変だぁー!!」

遅刻ギリギリの時間になっており慌てて着替えて部屋を出た。


シャルロットがそうなる数十分前……

 

「うん……もう朝か……ん?なんだ?……(何か頭に鈍い痛みが……まぁ大丈夫だろ……)本音、そろそろ起きた方が良いぞ?」

目を覚ました武昭が何か違和感を感じていたが構わず本音を起こした。

 

「うーん……あと3時間〜むにゃ〜」

 

「3時間って……確か今日の1時間目の授業は織斑先生だった様な……「うん!早く起きないとダメだよね!!」じゃあ俺はシャワー室で着替えてくるから」

本音を起こした武昭は着替える為にシャワー室に向かった。


武昭と本音が食堂に行くといつも一夏、箒、セシリア、鈴、ラウラ、簪が先に来て食事をしていた。

 

「おっ、皆おはよう……って一夏、()()どうしたんだ?」

武昭が席に座ると一夏の頬に真っ赤になった誰かの手形がついていた。

 

「いや、あの、これは……それよりも武昭にしては今朝は遅くないか?」

 

「そうか?まぁ俺だって偶にはそんな時もあるよ、んじゃいただきます」

 

「武昭?あんた今日は、おにぎり一個だけなの?なんだったら私のオカズを少し分けてあげるわよ?」

 

「鈴、それだったら私があげるから大丈夫……」

鈴が武昭のメニューを見て自分のオカズを分けようとしたが簪が参加した。

 

「いや、今朝はこれだけで良いよ……」

 

「武昭さん、どこかお体が悪いのではありませんか?」

 

「それだったら保健室に行った方が良いぞ?」

 

「心配してくれてありがとうな、箒、セシリア……」

 

「うわぁ!急がないと!!」

武昭が箒とセシリアにお礼を言っているとシャルロットが慌てて食堂に入ってきた。

 

「ん?シャルロットにしては珍しいな遅刻するなんて、どこか体が悪いのか?」

 

「フェッ!?な、なんでもないよ!その、ちょっと二度寝をしちゃったから」

 

「ふーん、そうか……それにしてもシャルロットって女性用の制服も持ってたんだな」

 

「う、うん、一応正体がバレた時の為に用意してたんだ(もーう、あんな夢を見たから武昭の顔が見れないよー)」

 

「おいっ!早く食事を済ませろ!時間は限られているんだぞ!!」

武昭とシャルロットが話してると寮長でもある千冬が来て、そう言うと食堂から出て行った。

 

それを聞いて一夏、箒、セシリア、鈴、ラウラ、簪が食事を終えてその場から飛び出す様に出て行った。

 

「アワワワ!急いで行かないと!!」

 

「シャルロット、そんなに慌てて食べると喉に詰まるぞ?」

 

「大丈夫だよ!ご馳走様!!」

 

「他人に構ってる暇は無いか!本音もまだだったのか?」

 

「そうだけど、あきっちは先に行って良いよ〜」

シャルロットが慌てて食事を終えて食堂を出たので武昭がその後に続こうとしたが本音がまだ食べていた。

 

「悪いな、本音、じゃあお言葉に甘えて……〈ガクッ!〉あれ?なんだ?急に頭が……うっ!?」ガタン

武昭が本音の言葉を受け入れて立とうとした時に急に足に力が入らなくなり頭痛がしたと同時にそのまま倒れて気絶した。

 

「フェッ!?あきっち!?どうしたの!あきっち!目を開けてよ!!

 

「本音!?早く教室に行かないと……って武昭!?どうしたの!?」

武昭が倒れたので本音が駆け寄ると様子を見に来たシャルロットも驚いた。

 

「私も分かんないよ!急に倒れたんだもん!!」

 

「とりあえず医務室に運ばないと!本音はそっちの方をお願い!!」

 

「うん!分かったよ!!あっ、チャイムが鳴ったけど……今はこっちだよ!!」

2人はチャイムが鳴っているのにも構わず武昭を医務室に連れて行った。


一方、1年1組では……

 

「さてと、今日の授業を始める……その前に村雨とデュノア、布仏はいないのか?誰か何か聞いていないか?」

 

「確か朝は俺達と一緒に朝食を食べてました……そうだよな?箒、セシリア、ラウラ」

 

「はい、一夏の言う通りです」

 

「確かシャルロットさんは遅れて来ました」

 

「だが私達が食事を終えた時にはまだ食べていました」

千冬が何があったか聞くと一夏の問いに箒、セシリア、ラウラが答えた。

 

「そうか、では後で何らかの課題を「「すみません!遅れました」」全く、お前達は放課後に教室の……村雨はどうしたんだ?」

千冬が何か言おうとした時にシャルロットと本音が一緒に入って来たが武昭がいない事が気になった。

 

「それが……朝食を食べて教室に向かおうとした時に急に倒れて気を失ったんです……」

 

「何?……それで村雨は今?……」

 

「私達で医務室に運びました〜 医務室の先生が言うには暫く寝かせておいた方が良いって……」

 

「そうか……ならば早く席に座るんだ、授業を始めるから」

シャルロットと本音は千冬にそう言われてそれぞれ自分の席に座った。

 

(武昭……お前に何が起きているんだ?……後で束に連絡してみるか……)

千冬は授業をしながら武昭の事を考えていた。

 

その頃、世界の何処かにある束の研究所で……

 

「束様、武昭様に何が起きたんですか?」

クロエが武昭の右腕と機体から来た情報を見て束に理由を尋ねた。

 

「うーん……多分だけど、たっくんの機体のコアの中にある……()()()が関係してると思うよ?」

 

「あの子とは……まさか武昭様が保護された時に展開されていた()()()()ですか?」

 

「そうだよクーちゃん……あの子も私の子供達の中の1人だけど、あの子の大本は()()()()()()()()が作ったんだ」

 

「武昭様のご両親が……」

 

「だから、あの子はたっくんのご両親の()()になるんだよ……」

束が壁に飾っていた写真に目を移すと今よりも若い武昭、一夏、箒に千冬と束、そして2人の男女が写っておりどこか武昭の顔の面影があった。

 

 

 

 

 



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第55話 始まりから……

食堂で気絶をした武昭が目を覚ますと周りは暗い空間だった。

 

「ん……ここは……いつもの場所と違う?……」

 

〈ここは私の居場所……貴方と2人きりで話したいから……私が呼んだ……〉

武昭が声のした方を見ると足元まで届く程の黒い長髪に胸元に鏡と勾玉で作られた首飾りを下げ頭に3本角が象られた冠を載せたどこかの巫女の様な服装をした少女が立っていた。

 

「君はもしかして……扉の奥に居た子かな?」

 

〈そう……私は……四聖獣の始まりであり……()()()()()()()()()()()()()()……〉

そう言った少女は悲しそうな表情をしていた。

 

「辛い想いって奴は……あの時の……()()()()()()()()()()()()()()

 

〈はい……あの時、貴方があの様な事をしたのは()()()()()()()()……〉

 

「確かに……あの時の事で俺が覚えてる事の最後は研究者達が俺に()()()()()()()で……気がついた時には束さんに保護されてたからな。 その間に何かをしたのが君だったのか?」

 

〈そうです……私は貴方が気絶をした後、貴方を助ける為に私自身の考えであの様な事を起こしたのです……〉

 

「そうか……それで君は、なんで俺を呼んだんだ?」

 

〈貴方はあの事を他の者達に話そうと決めました……ならば私も思ったのです……()()()()()()()()()()()()()()

 

「俺の失われた記憶か……それは今直ぐに戻るのか?」

 

〈いえ、それには時間が掛かるので今直ぐと言う訳には行きません……なので、今は元の世界へ戻ってください……〉

少女が翳した手を武昭に向けると武昭の姿が足元から消えて行った。

 

「そういや……君の名前を聞いてなかったな……」

 

〈はい……私の名前はーーーと言います……言い忘れてましたが、こうして私と出会った事は起きたら覚えていません……私が再び呼ぶ時に今日の事は思い出すでしょう……それでは……()()()()()()()()……〉

武昭の姿が全て消える前に最後に見たのは少女の優しい笑顔だった。


少女と話した武昭が再び目を覚ますと生徒会室だった。

 

「ん……あれ?ここは……「目を覚ましましたね、体は大丈夫ですか?」虚さん?……」

武昭が状況確認する為に体を起こすと虚が声をかけてきた。

 

「本音から聞きましたが朝食を食べて教室に行こうとした時に倒れたそうです……何か飲みますか?」

 

「はい、冷たいお茶をお願いします「「武昭!大丈夫!?」」おっ!鈴にシャルロットか」

武昭が虚にお茶を頼んでると生徒会室に鈴とシャルロットが飛び込んできた。

 

「朝に急に倒れたから心配したよ!!」

 

「私もシャルロットから聞いて驚いたわよ!それで体は大丈夫なの?」

 

「あぁ、特に問題は無いぞ……(なんだ?何かを忘れてる様な気がするけど……)」

 

「あっ、あきっち、目を覚ましたんだ……良かった……」

 

「武昭……お腹空いてない?……」

武昭が鈴とシャルロットに説明をしてると本音と簪が入ってきた。

 

「本音と簪にも心配かけたのか……「私も心配してたわよ武昭君」楯無さんにも……すみません、皆に迷惑をかけて……」

 

「別に迷惑なんかじゃ無いわよ、私達は織斑先生から事情を聞いて知ってるから……けど、今日の罰として明日の放課後、教室の掃除をする様に先生が言ってたわ」

 

「まぁ、俺が悪いんだし仕方ないですね……あっ、虚さんありがとうございます」

武昭が楯無の話を聞いて納得していると虚がお茶を差し出したのでお礼を言った。

 

その後、お茶を飲んで一息ついたので……

 

「それじゃ俺は寮に帰ります」

 

「武昭、無理しない様に私が付いて行くわ」

 

「鈴、それは僕がするよ、朝もやったんだし」

 

「違う……今は私がする……」

 

「むぅ〜……あきっちと一緒に帰るのは同室の私なの〜」

武昭が帰ろうとした時に鈴、シャルロット、簪、本音が一緒に帰ろうとしてきた。

 

「ダメよ皆、武昭君は目を覚ましたばかりなんだから……と言う訳で私が「お嬢様はまだ仕事が残ってます」う、虚ちゃん?」

楯無が出し抜こうとしたが虚に肩を抑えられて諦めた。

 

結局4人はジャンケンをして、その結果……

 

「武昭、大丈夫?」

 

「あぁ、大丈夫だよ()()()()()()

シャルロットが同行する権利を得ていた。

 

「そうだ、武昭は授業に出てないから聞いてなかったけど来週に臨海学校があるんだって」

 

「臨海学校?ふーん、そんなのがあるのか……」

 

「それで武昭に、ちょっと頼みたい事があるんだけど……」

 

「俺に頼みたい事?まぁ出来る範囲内で凄い無茶な事じゃなきゃ大丈夫だぞ」

 

「そうなんだ!じゃあ……」

シャルロットは武昭に何かを頼んでいた。

 

 

 

 

「ねぇ……今の聞いた?」

 

「うん……一言一句、聞き逃してないよ?」

 

「デュッチーだけに良い思いはさせないよぉ〜」

3人が隠れて、その話を聞いている事に気付かずに……

 

 

 

 

 

 



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第56話 臨海学校の準備

武昭が謎の少女との(覚えてないが)話を終えた数日後の日曜日……

駅前にある噴水の前で私服の武昭が立っていた。

 

「うーん、ちょっと来るのが早かったかな?……」

 

「あれ?武昭?なんで約束の時間より早く来てるの?」

武昭が待っていると私服姿のシャルロットが来た。

 

「いや、ここに来る前に()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ちょっとした用事って?……あっ、右腕が……」

シャルロットが武昭を見ると右腕が無く服の袖が靡いていた。

 

「それって……」

 

「あぁ、ちょっと調子が悪くなってたから()()()()()調()()()()()()()()()()()()

武昭はここに来る前に会った兎の事を思い出して苦笑いしていた。

 

「それじゃ、今日は買い物に付き合ってくれなくても……」

 

「気にするな、俺も買い物をしたかったし、それに」

 

「あっ……えっと、その……」

 

()()()()()()がそうしてくれた方が俺も歩きやすいんだよ」

 

「そ、そうなんだ……じゃあ、このままで行こうか……(武昭の手って暖かいな……)」

シャルロットが気まずそうな表情をしてると武昭が左手で右手を握ってきたので照れて慌てていると理由を聞いて納得したが頬は赤かった。

 

その後、2人が手を繋いだまま目的地を向かっている後ろの方で……

 

「むぅ〜……シャルルん羨ましいなぁ〜」

 

「今度は私から誘って、あれ以上の……////

 

「この辺で買い物をするとなったら2人は必ず……」

物陰に隠れながら本音、簪、鈴が武昭とシャルロットを追跡していた。

 

更に、その後ろの方では……

 

「全く……あれじゃあの子達は直ぐにバレるじゃない」

楯無が前に居る皆を見なが尾行していた。


その後、皆は学園から1番近い所にあるショッピングモール【レゾナンス】に来ていた。

 

「さてと、それでシャルロットは何を買いに来たんだ?」

 

「えっとね、その……臨海学校で着る水着を買いに来たんだ」

 

「水着か……案内板だと……向こうだな行くぞ」

2人は案内板を見て水着売り場に到着した。

 

「うん、それでちょっと聞きたい事があるんだけど……武昭はどんな水着が良いのかな?(ウワァ!僕はなんて事を聞いてるんだろ!?」

 

「水着の好みか?うーん……あまり露出が無くて定番の奴……かな?」

 

「そ、そうなんだ……定番の奴って言うとビキニとかワンピースって事?」

 

「あぁ、シャルロットなら可愛いから定番の奴でも似合うと思ったんだ……それは()()()()()()()()()()()()()()

 

「フェッ!?なんで皆が居るの!?それに武昭は気づいてたの!?」

武昭が物陰に声を掛けると後をつけてた皆が姿を見せてシャルロットは驚いた。

 

「ん?あぁ、学園からついてきてたぞ。まぁ特に危険を感じなかったし何処となく覚えがあった気配だったから、そのままにしてたんだ」

 

「そうだったんだ……(せっかく、武昭と2人きりだったのに……)」

 

「武昭も気づいてたんだったら声を掛けてくれれば良かったのに(そう簡単に2人きりにはさせないから)」

武昭が事情を説明してる中、シャルロットと鈴が話していたが2人は心の中でも会話をしていた。

 

「ん?どうかしたのか?2人とも」

 

「あきっち〜 2人は何か話したい事があるみたいだから私とカンちゃんの水着を選んでくれる〜?」

 

「俺は構わないけど、簪はそれでいいのか?」

 

「うん……私も、武昭が選んだ奴なら……構わないよ……」

 

「そっか、じゃあ水着を探しに行くか」

 

「「ちょっと!抜け駆けしないでよ(するんじゃないわよ)!!」」

鈴とシャルロットが睨み合ってると本音と簪が武昭を連れて行こうとしたので鈴とシャルロットもその後を追いかけた。

 

それから離れた所で……

 

「皆、羨ましいなぁ……武昭君と買い物が出来て……今度、お願いしてみようかしら……」

楯無が武昭たちの様子を見て羨ましがっていた。

 

「けど……一応、簪ちゃんや本音ちゃんも暗部の関係者なんだけど……さすが村雨流の後継者といった所かしらね……」

楯無が扇子を開くと【驚愕】と面に書かれていた。


水着売り場で……

 

「それにしても女性用は沢山あるけど、男性用は少ないんだな」

 

「それはそうよ、今のこのご時世だったら、あっ、コレにしようかしら」

 

「確か、それってタンキニって奴だったか?色もオレンジで鈴の活発なイメージに合ってるな」

 

「そ、そうなんだ……じゃあ試着してくるから少し待っててね(エヘヘ、武昭に合ってるって言われちゃった)」

鈴は自分が選んだ水着を持って試着室に入るがその顔は喜んでいた。

 

「あっ、そうだ。鈴、少し時間が掛かる様ならトイレに行って来ても良いか?」

 

[えぇ、良いわよ、私は終わったら……で待ってるから]

 

「うん、分かったよ、それじゃ」

武昭は鈴と合流場所を話すと、その場を離れた。

 

トイレを終えた武昭が鈴の所に戻る途中水着を選んでるシャルロットに会った。

 

「なんだ、シャルロットはここで選んでたのか?」

 

「うん、そうだよ、ねぇ武昭はどっちが良いと思う?」

シャルロットは2着の水着を武昭に見せた。 (1着は原作の物でもう1着は皆さんの自由に考えてください)

 

「うーん……シャルロットなら右手の方だな。何処と無く専用機のカラーリングと似てるから似合うと思うぞ」

 

「そうなんだ……じゃあコッチにするね(武昭って正直に褒めてくれるから嬉しいな)」

シャルロットは武昭が選んだ水着を持って更衣室に向かった。

 

少しすると水着を着たシャルロットが試着室のカーテンを開けて武昭に見せた。

 

「ど、どうかな?武昭」

 

「うん、シャルロットのイメージに合ってて似合ってるぞ」

 

「そうなんだ、じゃあ僕はコレにするから」

シャルロットはカーテンを閉めると水着を脱いでレジに向かった。

 

その後武昭が鈴の所に戻ると試着室にいた鈴に呼ばれた。

 

「武昭、どう?似合ってるかしら?」

 

「あぁ、やっぱり鈴の活発なイメージと合ってるな」

 

「そう、ありがとう、じゃあコレにするわ」

鈴もシャルロットと同じ様に水着を脱いでレジに向かった。

 

武昭は2人がレジから戻ってくるまで近くのベンチに座っていた。

 

「女性の買い物は時間が掛かるって言うけど、もうそろそろかな?……」

 

「ちょっと、そこの“コレ“を片付けておきなさいよ」

声がしたので近くにいた女性が自分の手にした水着を武昭にしまわせようとしていた。

 

「断ります、俺はあんたの知り合いじゃないし、そんな事をする理由はありません」

 

「はぁ!?あんた分かってるの!?あんたら男なんか私達女の言う事を聞いてうるせぇよえ?」

 

「テメェは何を勘違いしてやがるんだ?ISが女性にしか動かせないからって、テメェが偉くなった訳じゃねぇだろ?」

 

 「は?な、何を言ってるのよ、アンタなんかが……」 

 

「それに、テメェはISを持ってねえだろうが ゴチャゴチャ抜かしてんじゃねぇ!!」 

武昭の怒号を聞いた女性は青い顔をして体を震わせながらその場から走り去って行った。

 

「チッ、ムカつく奴だぜ」

 

「武昭、何かあったの?」

武昭がイラついていると買い物を終えた鈴とシャルロットが来ていた。

 

「ん?2人とも買い物を終えたのか、あぁ、ちょっとムカつく奴がいてな」

 

「あぁ、さっき武昭の声がしたと思ったら、そう言う事だったのね」

 

「けど大丈夫だったの?」

 

「特に問題は無いよ……()()()()()()()()()()()()()()()()そうですよね?」

武昭が誰かに声を掛けると柱の影から千冬と麻耶が姿を見せた。

 

「織斑先生に山田先生!?」

 

「お2人も来てたんですか?」

 

「えぇ、私達も臨海学校の買い物に来たんですよ。」

 

「それよりも私達が居た事に気づいていたみたいだな()()は」

 

「織斑先生「今は昔の呼び方で構わないぞ、プライベートだからな」わかりました()()()()

 

「あぁ、それでこれからお前達はどうするんだ?」

 

「あとは本音と簪が一緒に来たんで2人の買い物が「お待たせ皆」「待たせてごめんねぇ〜」いやそんなに待ってないよ」

武昭が千冬とこれからの予定を話してると簪と本音が買い物を終えて戻ってきた。

 

その後、武昭達は千冬達と別れて学園に帰り千冬達は買い物をしていた。

 

そんな中……

 

「それで……武昭の本心はどうだった?()

 

「うん……やっぱりたっくんは昔のままだよ……私達が知っているあの時の……」

千冬が柱にもたれて独り言の様に話してると何処からとも無く束が姿を見せて喜んでいた。



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第57話 臨海学校の始まり。

IS学園から離れたとある海の近くの道路を数台のバスが走っていた。

 

「早く着かないかなぁ〜」

 

「あぁ、そうだな……(確か束さんは臨海学校の間の何処かに来るって言ってたな……)」

そのバスはIS学園が用意した物で今年入学した1年生達が臨海学校に向かっている途中だった。

 

「あきっち、何処か気分でも悪いのぉ〜?」

本音と武昭が隣同士の席で座っており外を見てた本音が声を掛けてきた。

 

「いや、そうじゃない、ちょっと考え事をしてただけだから、心配してくれてありがとうな本音」

 

「ううん、お礼を言われる事じゃないよぉ〜(エヘヘあきっちに褒めらちゃった)」

 

「武昭、何か気になる事があるなら、いつでも僕達に話してね」

本音が武昭に褒められてると後ろの席にいたシャルロットが話に入ってきた。

 

「あぁ、分かったよシャルロット……ん、おぉ何か潮の香りがしてきたぞ」

武昭の言葉に本音とシャルロットが外を見ると海が見えた。


その後バスは臨海学校の間、宿泊する施設の近くに泊まり生徒達は旅館の前に来ていた。

 

「全員クラス毎に整列!織斑と村雨はこっちに来るんだ。ここが臨海学校の間お世話になる【花月荘】だ」

 

「織斑先生、去年ぶりですね」

千冬が説明をしてると旅館から女将さんが出てきた。

 

「今年もお世話になります」

 

「えぇ分かりました、それで……こちらの方々が……」

女将は千冬の横にいる一夏と武昭に気づいた。

 

「はい、この2人がいる為に余計な手間をかけさせてすみません」

 

「いえ、お客様のご希望に答えるのか私達のお仕事です。初めまして私はこの花月荘で女将をしている清州 景子(きよす けいこ)です」

 

「あっ、お、織斑一夏って言います」

 

「村雨武昭って言います」

 

「あら、2人とも礼儀正しい男の子じゃないですか。しっかりそうな感じがして」

 

「しっかりしてるのは村雨だけで織斑の方は手のかかる問題児ですよ」

 

「そうですか、それではお話はここまでにしてお部屋に案内いたします」

千冬との話を終えた女将は生徒達を旅館へ案内した。


生徒達がそれぞれ自分達の部屋を見つける中……

 

「ねぇねぇ、あんたらの部屋は何処なのよ?」

荷物を置いた鈴が一夏と武昭の所に来た。

 

「そういや……ん?なぁ武昭……俺たちの部屋って何処か聞いてるか?」

 

「いや、俺は聞いてないけど……先生に聞いた方が良いかもな」

 

「おぉ、ちょうど良かったお前達男子の部屋はこっちだ」

一夏と武昭が先生達の誰かに聞こうとした時に千冬が来て2人を連れて行った。

 

男子2人と鈴が千冬の案内である部屋の前に着いた。

 

「ここがお前達の宿泊する部屋だ……」

 

「えっと……織斑先生、俺達の見間違いじゃないければ……【教員室】って紙が貼ってあるんですけど……」

 

「そうだ、お前達男子は、それぞれ教員室に泊まる」

千冬の説明に一夏は本当にここかと確認するが間違いではなかった。

 

「なるほど、俺と一夏が同部屋だったら女子達が遅くまで遊びに来るからって事なのか……」

 

「あぁ、村雨の言う通りだ、それで織斑は私と村雨は隣で山田先生と一緒だ」

 

「え?武昭は一緒じゃないんだ」

 

「最初は私が2人と一緒に居る事を提案したんだが、山田先生からこんな時くらいは家族水入らずで過ごしてほしいと言われたんだ」

 

「そう言う訳でしたか、それじゃ俺はこっちの部屋なんですね……あれ?山田先生がいないな……」

武昭が部屋の扉を開けるが中には誰もいなかった。

 

「あぁ、村雨に言い忘れていたが山田先生はちょっとした用事を終えてから来るから先に部屋に入っていろ」

 

「分かりました……(家族水入らずか……)」

千冬の言葉を聞いた武昭は何処か寂しそうな表情を浮かべながら部屋に入った。


部屋に入った武昭は荷物を置くと窓の近くに座って外を見ていた。

 

「さてと……どうするかな……」

 

「あっ、村雨君まだ居たんですか?」

武昭が何かを考えてると麻耶が部屋に入ってきて声をかけた。

 

「山田先生、えぇ……()()()()()()()()であまり体を見せたくないんですよね……」

 

「村雨君……私も織斑先生から詳しい事は聞いていませんのでそんなに言えないですけど……泳がなくても海に行くだけでも良い思い出になると思いますよ。今日のこの時は今しか無いんですから……」

 

「山田先生……そうですね浜辺にいるだけでも良いですよね……それじゃ俺は行きますけど……先生が居るなら鍵は大丈夫ですか?」

 

「えぇ、私は少しやる事があるので構わないで行ってください」

麻耶の優しい言葉を聞いた武昭は頭を下げると部屋を出て行った。

 

「行きましたか……それにしても村雨君も入学当時と変わって来てますね……それとも、あれが本当の彼なんですかね……」

麻耶は武昭の事を考えながら仕事を始めた。

 

 

 




ちなみにこの作品で山田先生は武昭の詳しい事情は知らされていません。
(記憶喪失という事だけ)


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第58話 海で

部屋を出た武昭が海辺へ行こうと移動してると一夏がいた。

 

「おっ武昭も海に行くのか?」

 

「あぁ……本当なら部屋で休んでようと思ったけど山田先生に思い出でも作ったらどうかって促されてな……」

 

「っ!……そうか、ん?おぉ、箒もこれから行くのか?」

武昭の言葉に一瞬顔を顰めた一夏だったが前にいた箒に気づくと表情を直して声をかけた。

 

「ん、一夏に武昭か、あぁそうだ」

 

「そうか、ん?なぁ2人とも……これって……」

合流した3人が廊下を歩いていると一夏が中庭にあったある物に気づいた。

 

それは機械で出来たウサミミで近くに[引っ張ってください]と看板があった。

 

「知らん、私には関係ない」

 

「えーと……抜くぞ?」

 

「いや一夏、抜いても意味がないと思うぞ?」

それを見た箒は我関せずと言った態度を見せ一夏が抜こうとしたが武昭がそれを止めた。

 

「どういう事だ?武昭」

 

「だって、束さんなら()()()だから」

一夏が止めた理由を尋ねると武昭が上を指さしたので空を見ると何かが落ちてくるのが見えて少しずつ大きくなっていき何か分かる程まで近づくと機械で作られたニンジンが中庭に落ちてきた。

 

「うわっ!?」 「やはりか……」

 

「ふふふ、久し振りだね!いっくん!箒ちゃん!」

ニンジンが開くと中から束が出て来た。

 

「それとたっくんも元気そうだね!」

 

「まぁ、元気と言えば元気ですけどね()()()()()()()

武昭が右腕を見せると束は表情を暗くした。

 

「あっ……そうだったね……たっくん、明日にでも()()()()()()()()()()()からそれでも良い?」

 

「えぇ、束さんにも都合があるから俺は良いですよ」

 

「おいっ!武昭!お前のその腕って束さんが関係してたのか!?」

 

「まぁ、束さんと俺の立場の関係上話す事は出来なかったんだよ」

 

「そういう事情があったのか……」

 

「じゃあ私はちーちゃんに会ってくるから皆は楽しんできてね」

そう言った束はその場から離れた。

 

「それじゃ海にでも行くか」

 

「ん?武昭、お前は水着に着替えないのか?」

 

「そうだな、俺はあまり()()()()()()()()()()()

 

「そうなのか?じゃあ俺は着替えてくるよ、じゃあな」

一夏は更衣室に向かったが箒は軽く何か悩んでいるように見えたので武昭が声をかけた。

 

「ん?箒……何を考えてるか分からないけど……取り戻せる間違いと取り戻せない間違いがあるって事を忘れるなよ……」

 

「なっ!?それはどういう意味だ!!武昭!!」

 

「俺はもう父さんと母さんに会う事が出来ないけど、箒はその気になれば束さんに会う事が出来るんだ……まぁ俺もなんでこんな事を言ったかわからないけどな……とにかく後悔する事はするな……」

 

「武昭……あぁ……私も着替えに行くよ……」

箒も武昭と別れて更衣室に向かったがその表情は何処か思い詰めている様に見えた。


武昭が浜辺に着くと何人かの生徒が水着に着替え終えていた。

 

「さてと、俺はどうするかな……」

 

「武昭!みーつけた!!」

 

「おっと、誰かと思えばスズだったのか」

 

「もーう鈴、行くのが早すぎるよー」

武昭がどうするか考えてると誰かが背中にぶつかって来たので見ると水着に着替えた鈴で、それから少し遅れてシャルロットも来た。

 

「その水着って一緒に行った時に買った奴か。やっぱりこういう場所で見るとまた違った魅力があるんだな」

 

「そうかな?褒めてくれてありがとう(んーん!やっぱり武昭って真っ正直に感想を言うから嬉しい!!)」

 

「えへへ、これにして良かったよ(武昭は自分の気持ちをはっきり言ってくれるから気持ち良いな)」

鈴とシャルロットは武昭に褒められてそれぞれ顔を赤くして喜んでいた。

 

「それよりも武昭は水着に着替えてないの?」

 

「あぁ、俺は泳がないからコレで良いんだよ」

 

「じゃあ、そこで休んでましょうよ」

シャルロットが武昭の格好について疑問に思うが意見を聞くと鈴が用意されていた休憩スペースをさしたのでそこに向かった。

 

休憩スペースで休んでると簪と本音が来た。

 

「武昭達はここに居たんだ……」

 

「やっほ〜 ()()どうかなぁ〜?」

簪が声をかけて本音が水着の感想を聞いたが、それを見た3人は同じ気持ちだった。

 

「「「それって水着なのか?なの?だったの?」」」

本音の格好はパッと見ると狐の着ぐるみだった。

 

「うん、ちゃんと水着売り場にあったし、この中は水着なんだよぉ〜」

 

「ダイビングのウェットスーツみたいな物なんだな」

 

「そう思った方が良いよ、それよりも……」

 

「簪、武昭は泳がないからその格好なのよ」

簪が武昭の姿を見て何か言おうとする前に鈴が理由を答えた。

 

武昭の姿は上下濃紺のラッシュガードで薄い黄色のパーカーを羽織った格好だった。

 

「それに()()()()()()()()()()

女子達は武昭が右腕を上げるとどういう事か理解した。

 

その後……

 

「ふぅ……こうしてるだけでも結構気持ち良いな……」

武昭が用意された休憩スペースでいると周りには鈴、シャル、簪、本音が一緒に休憩していた。

 

「うん、武昭の言う通りだね……海風が良いね……」

 

「鈴は泳ぎに行かないの?」

 

「そうねー……今はこうしてる方が良いわ……(また武昭がいなくなったら、嫌だから……)」

 

「なぁ……こんな時になんだけど……皆は昔の俺を知ってるんだよな?どんな奴だったんだ?」

簪、シャル、鈴が話してると武昭が話を切り出してきた。

 

「うーん……私が知ってるんだよなあきっちは強くて優しいって事かなぁ〜」

 

「うん、本音の言う通り……」

 

「僕が覚えてるのは子供の頃だけど優しかったって事は変わりないかな?」

 

「私が1番印象に残ってるのは……それよりも、そろそろお昼の時間じゃない?」

皆が話してる中、鈴が時間に気付いたのでお昼を食べに行く事にした。

 


1年生達が臨海学校に来てる頃、学園では……

 

「うーん……虚ちゃん、次の書類を貰えるかしら?」

 

「お嬢様、キリがいいので先にお昼にしましょう」

楯無と虚が生徒会の仕事をしていた。

 

「はぁ……今頃、簪ちゃん達も遊んでる頃かしら?」

 

「そうですね、毎年1日目は自由行動2日目から兵装訓練などですからね。お嬢様、何か飲み物を淹れますか?」

 

「そうねー……だったら、()()にアイスティーを淹れてくれるかしら?」

楯無はある事を思い出すと虚にそれを頼んだ。

 

少しして……

 

「どうぞ、お嬢様……武昭君が買ってきてくれたカップに淹れましたよ」

 

「うん、ありがとう虚ちゃん」

楯無は虚が持ってきたティーカップを見てニコニコしていた。

 

「それは武昭君がお嬢様の為に買ってきてくれたんですよね?」

 

「えぇ!自分達だけ海に行って申し訳ないからって」

 

「昔の事を覚えてなくても武昭君は武昭君ですね」

 

「そうね……優しくて強くて……それでいて何処弱い所がある……昔のままだわ……」

 

「織斑先生から事情が聞かされてますが、いつになれば武昭君は私達が知る彼になるんでしょうか……」

 

「先生も言っていたじゃない、焦っちゃダメよ……必ず武昭君の記憶は戻る筈だから……」

楯無は優しく微笑んだ。

 

「お嬢様の言う通りですね、それでは仕事を再開しましょう」

 

「その前にもう一杯貰えるかしら?」

 

「はい、構いません……キャッ!?」

楯無がお代わりを虚に頼んでカップを受け取ろうとした時、何故か真っ二つに割れて床に落ちた。

 

「虚ちゃん!大丈夫!?」

 

「は、はいっ、大丈夫です……けどなんで急にカップが……」

 

「何かしら……何か嫌な予感がするわ……虚ちゃん、急いで織斑先生達に連絡をしてちょうだい」

 

「分かりました!!」

楯無の雰囲気から何かを感じた虚は言われた通りに花月荘に連絡を入れた。

 

 



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第59話 夕食と温泉と……

IS学園の生徒達が海に来て時間が経ち日が暮れて、旅館の大宴会場に浴衣に着替えた生徒達がいた。

 

「それにしても……結構豪華なメニューだな……」

 

「武昭の言う通りだよね。やっぱり国が運営してるからじゃないの?」

武昭が夕食のメニューに感心してると左側に座っていたシャルが話し掛けてきた。

 

「それよりもロッテは正座は平気なのか?」

 

「う、うん何とか大丈夫だよ?」

 

「とは言ってるけど結構我慢してるんじゃないの?」

武昭の右側に座ってる鈴が揶揄う様に笑っていた。

 

 

夕食を食べていると……

 

「おっ!これって本わさびじゃないか!」

一夏が刺身の皿にあった本わさびを見て喜んでいた。

 

「ねぇ本わさびって言ってたけど偽物のわさびってあるの?」

一夏の言葉を聞いたシャルが武昭に疑問に思った事を尋ねた。

 

「あぁ、本わさびって奴はその名の通りわさびを使った奴で本わさびじゃない奴は粉わさびを使った奴が多いんだ」

 

「ふーん、そうなんだ。じゃあ「ちょっと待て」え?」

武昭の説明を聞いたシャルがわさびをそのまま食べようとしたが武昭が寸前で止めた。

 

「ロッテ、わさびをそのまま食べたら強い辛味で口がヒリヒリするぞ」

 

「え!?そうなの!!」

 

「ほら、だから()()を見てみなさいよ」

シャルが鈴の指した方を見るとわさびをそのまま食べたラウラが悶えていた。

 

「アハハ、武昭が止めてくれなかったら僕があぁなってたんだね」

 

「そうだぞ、わさびはそのままじゃなくてこうやって刺身に少し乗せて醤油をつけて食べるんだ」

 

「へぇ、じゃあ僕も……うん!最初辛味が来るけど刺身の味と合って美味しい!」

 

「ロッテに分かりやすく説明するとソーセージに付けるマスタードみたいな物なんだ」

 

「あぁ、そう言われるとわかりやすいよ……それよりも武昭はあんまり食べてないけど……」

シャルが武昭の料理を見るとそんなに減ってなかった。

 

「あぁ、俺はそんなに多くは食べれないんだ、けどゆっくりなら問題はないよ……うん、この煮物は味が染みてて旨いな……ほらロッテもどうだ?」

 

「ふえっ!?た、武昭がそう言うなら……う、うん美味しいよ……」

 

「スズ、これを食べるか?残しそうだから食べて欲しいんだ」

 

「しょ、しょうがないわねー残したら勿体から食べてあげるわよ……」

シャルと鈴は武昭から料理を食べさせてもらって照れて頬を染めていたが心中では喜んでいた。

 

「本当ならもっと食べさせたいけど、これ以上やったら()()()()()()()()()()()

武昭が指した方を見ると一夏がセシリアにアーンをしていて、それを見た他の生徒達が自分もやってほしいと希望したが千冬に叱られたので皆は黙った。


その後、皆は夕食を終えてそれぞれの部屋で自由に過ごしていたが……

 

「ふぅ……一夏はまだ入らないみたいだな……まぁ()()を見たら何か言うだろうからなぁ」

武昭は温泉に入りながら自分の体にある傷を見ていた。

 

「さてと一夏が来る前に上がるか……」

 

「おっ、なんだ。武昭は先に入ってたのか」

武昭が更衣室で着替えてると一夏が入ってきた。

 

「あぁ、山田先生が仕事をしてるから邪魔にならない様と思ってな」

 

「なぁ武昭……その腕って……()()()()……」

 

「さあ?俺もいつのまにかこうなってたからな……一夏、もしお前が()()に関係してるなら自分が悪いと思うな」

 

「なっ!?何でそんな事を言うんだよ!!俺があんな事に遭わなかったら!!」

 

「じゃあ……一夏、お前は俺がやった事を無駄にするのか?」

 

「っ!俺は……じゃあどうしたら良いんだよ!!」

 

「俺にも分からない。言える事は過去に囚われすぎるな……」

一夏は武昭が出て行くのを黙って見ていた。


一夏が温泉に来る前、一夏の部屋には千冬の他に箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、簪、本音がいた。

 

「あの、織斑先生……何故、私達を呼んだのですか?」

 

「何、お前たちに話があったからだ。篠ノ之冷蔵庫から適当に飲み物を出してコイツらに渡せ」

 

「は、はいっ、分かりました……悪いが皆、好きな物を取ってくれ」

千冬に言われた箒が色々と飲み物を出して周りの皆に渡すと受け取った皆は飲み始めた。

 

「さてと……では私はコレを貰おう」

箒達が飲み物を口にしたのを確認した千冬が冷蔵庫から缶ビールを出して飲んだのを見た皆は驚いたが箒がすぐに正気に戻った。

 

「お、織斑先生、今は仕事中なのでは?……」

 

「硬い事を言うな。それに()()()()()()()()()?」

千冬がニヤッと笑ったのを見た皆は手元の飲み物を見てアッとした表情になった。

 

少しの間、沈黙が続いたが千冬が2本目の缶ビールを開けたと同時に口を開いた。

 

「それでお前達は()()()()の何処が気に入ったんだ?篠ノ之、オルコット、ボーデヴィッヒは一夏で凰にデュノア、布仏に更識妹は武昭の方だな」

 

「わ、私は以前よりも腕前が落ちているのが気に入らないだけです……」

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりほしいからです……」

 

「私は強い所です……」

 

「そうか……ではあいつには、そう言っておこう」

 

「「「言わなくて良いです!!!」」」

千冬の言葉を聞いた3人は千冬に詰め寄った。

 

「まぁ、お前らがどう思っているかは別にしてあいつはそれなりに便利だからな。料理から始まって掃除に洗濯、マッサージも出来る……確かに付き合える女は得だな……どうだ欲しいか?」

 

「「「くれるんですか!?」」」

 

「馬鹿かお前達は?欲しいなら奪う位の気持ちで行くんだな……女を磨けガキども……それで次はお前達にだが……」

千冬は一旦話を終えると武昭の事を思ってる者達の方を見た。

 

「もう少し待ってくれ。アイツがそろそろ「申し訳ありません、遅れました」ちょうどよく来たか……」

千冬が理由を話そうとした時に部屋の襖が開いたので皆が見ると1人の黒髪の女性が入ってきた。

 

「織斑先生、()()()()()()()()()()()()()ですので呼んでくる様に頼まれたのですが?」

 

「そうか、では凰にデュノア、布仏と更識は彼女の指示に従うんだ」

千冬から言われた鈴達は彼女の後についていった。

 

 



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第60話 聞かされた過去……

鈴達が女性に連れられて来たのは旅館の敷地内にある離れだった。

 

「あのーもしかして私達をここに呼び出したのって……」

 

「はい、あなた達が考えてる方です。私はコレで失礼します」

 

「鈴、とりあえず入ろうよ。詳しい事は()()()が教えてくれる筈だから」

鈴が何かに心当たりがあると案内して来た女性がその場を離れたので簪が言うと皆は離れに入った。

 

「ヤッホーごめんね、こんな所に呼び出したりして」

 

「やっぱり束さんだったんですね」

 

「そうだよ、ほらほらまずは座ってよ」

皆が離れに入ると束が真ん中に座っていたので皆は言われた通りに周りに座った。

 

「それで束さんがここにいるって事は……武昭の事で良いんですよね?」

 

「うん、そうだよリッちゃん……ねぇ君達に聞くけど……本当に聞くの?

鈴が束に理由を尋ねると笑顔だった表情が真剣な物に変わり声からは殺気が感じられた。

 

「っ!……はい……ちゃんと考えて決めました。私は武昭が何をしてきてもずっと傍にいる事を決めました……」

 

「私も鈴と同じです……武昭がいなかったら今もここにいる事に出来なかったんです……だから……」

 

「私はあきっちが学園に来て同じ部屋になってから何回も魘されてるのを見ました……何が出来るかわからないですけど……私には私が出来る事をしてあげたいんです……」

 

「私は……武昭が何を隠しているのか知りません……けど、それを知る事で私が何かあったとしても構いません……」

鈴、シャル、本音、簪の言葉を聞いた束は殺気を鎮めると優しく微笑んだ。

 

「そっか……そこまでたっくんの事を思ってくれてるんだね……私からしたらある意味羨ましいよ……それじゃ束さんがたっくんを保護した時の事を話すけど……私も詳しくは知らないんだよね」

 

「え?それってどういう事ですか?」

 

「うん、束さんがたっくんを見つけた時は……()()()()()()()()()()()だったからね」

束の言葉に鈴が尋ねると理由を話した。

 

「全て終わった後って……」

 

「まぁ、束さんが話すよりも()()を見た方が早いよ」

束はシャルの言葉を遮るとポケットから何らかの機械を取り出した。

 

「コレは束さんが()()()()()()()()()()()のコンピューターのデータを色々した物を映し出せる物なんだ」

 

「え?あきっちを保護って……」

 

「皆……本当に聞くけど……今ならまた引き返せるよ?」

 

「束さん……私も、そして皆は何があっても受け入れるからここに来たんです」

 

「うん、簪の言う通りです」

 

「はい、私も引き返すなんて選択肢はありません」

 

「束さん……私達は武昭が好きでここにいるんです……もしそれで命を落としても後悔はしません」

束が皆に止める様に促したが簪、シャル、本音、鈴はやめようとはしなかった。

 

「そっか……束さんが間違ってたんだね。じゃあ皆に教えてあげるよ……たっくんが行方不明になってか私に保護されるまで何があったのかを……」

束は納得した表情を見せると機械を起動させた。

 

それを見た鈴達は……


次の日の朝、浜辺に生徒達が集まっていたが専用機持ちの生徒と一般生徒の組に分かれていた。

 

専用機持ちの方は千冬が担当し、一般生徒達の方は麻耶を始めとした他の先生達が教える事になっていた。

 

「さて、それでは専用機持ちは私が訓練を担当するが……」

 

「織斑先生、なんで専用機持ちじゃない箒がいるんですか?」

千冬が訓練を開始しようとした時に鈴が手を挙げて質問した。

 

「あぁ、それはだな……」

 

「それは私が専用機を作ったからだよ」

皆が声のした方を見るといつもの格好をした束が立っていた。

 

「た、束さん!?何でこんな所にいるんですか!!」

 

「ん?それは箒ちゃんに、ちょっと頼まれたからね……久し振りだね、箒ちゃん」

 

「え、は、はい久し振りですね……あの、本当に私の知る姉さんなんですか?」

 

「そうだよー 酷いなぁー久し振りに会った束さんの事を忘れるなんて」

 

「束、忘れてるとかではなく昔と雰囲気が変わったからだと思うぞ。それよりも知らない奴がいるから自己紹介をしろ」

 

「それも、そうだね私はISの開発者、篠ノ之束だよ」

束が自己紹介をすると顔見知り以外の人員は驚いていた。

 

「あの、それで姉さん……私が頼んだ件なんですが……」

 

「うん!それは大丈夫だよ!危ないから少し下がってて」パチン

束が指を鳴らすと上空から八角形の物体が落下してきて着地と同時に展開された。

 

「これが私が箒ちゃんの為に作った専用機赤椿(あかつばき)だよ」

物体が展開されると赤色を主体とした機体が鎮座されていた。

 

「これが私の専用機の赤椿……」

 

「ねぇ、あれって篠ノ之さんだけが貰えるの?」

 

「何かズルくない?」

 

「うーん……私はズルいと思わないなぁ〜」

一般生徒達が箒を見て色々な意見を言っていたが本音は違う事を言っていた。

 

「本音、それってどういう事?」

 

「うん、しののんって篠ノ之博士の妹なんでしょう〜?だったら()()()()()()()と思うんだよねぇ〜」

 

「そうだね、その子の言う通りだよ」

本音の言葉が聞こえた束は真剣な表情で箒を見た。

 

「箒ちゃん、私がこれを作ったのは頼まれた事もあったけど1番は箒ちゃんが少しでも危ない目に遭わない為なんだよ……」

 

「そうだろうな……俺や一夏も男性操縦者として狙われる事はあるけど一応専用機はあるから、それなりの自衛手段は持ってるんだ」

 

「たっくんの言う通りだよ……私がコレを箒ちゃんに渡すのは何か危ない事があっても大丈夫な様にって束さんのワガママが大きいんだよ……けど、箒ちゃんに1つだけ約束して欲しいんだ……専用機を手にしても力はあくまで力だって事を……」

 

「姉さん……はい、わかりました……」

 

「うん、ありがとう、それじゃ箒ちゃんに合わせてフィッティングとフォーマットを開始するね」

束は箒に赤椿を纏わせると作業を開始した。

 

「あっ、たっくん、コッチに来てくれるかな?新しい右腕を作ってきたから私がコッチの作業をしてる間に向こうでつけてもらってね」

 

「はい、わかりました……おっ来てたのかクー」

 

「えぇ束様に頼まれましたので」

武昭が束に呼ばれていくと物陰にクロエがいた。

 

少しして……

 

「これが私の専用機赤椿……」

 

「うん、俺の方も大丈夫です」

設定が終わった赤椿を纏った箒と新しい右腕をつけた武昭が皆の所に戻った。

 

「さて、それでは「た、大変です!織斑先生!!」どうしたんだ?山田先生」

 

「こ、これを見てください!!」

千冬が新しく指示を出そうとした時に麻耶が慌てて来たので理由を聞くと小型の端末を見せてきたので見ると千冬の表情が変わった。

 

「これは……山田先生、急いで他の先生達と協力して生徒達を……」

 

「は、はいっ!わかりました!!」

 

「現時点をもって今日の訓練を全て中止する!専用機持ちは私の所に集合するんだ!悪いが束、お前の力を借りる事になるかもしれん」

 

「うん、分かったよ。ちーちゃん」

千冬の指示を受けた皆は指示に従った。


千冬達が通信を受ける少し前……

 

ハワイ沖に停泊してる空母で軍用IS 銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の運用試験が行われようとしていた。

 

そんな中……

 

「ふーん……コイツが有れば楽しくなりそうね」

1人の女性が福音のあるハンガーにいて何らかので設定をしていた。

 

「さてと、コレで良いわね……さぁ、遊びましょうよ……2人目の男性操縦者さん?」

女性はハンガーから出る時に写真を見ていたがそれにはIS学園で学校生活をしている武昭が写っていた。

 

 

 

 

 

 



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第61話 前兆。

専用機持ち達が千冬に連れてこられたのは旅館内に用意された臨時の指令室だった。

 

「それでは事態を説明する。今から数時間前にハワイ沖で試験稼働をしていたアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代軍用IS 銀の福音(シルヴァリオ・ゴスペル)が突如暴走した。稼働許可区域を離脱し、ここから数キロ先の空域を移動する事が判明した」

 

「もしかして……俺達がここに集められたのって……それに関係してますか?」

 

「そうだ、それを止めろと学園から連絡が来た」

武昭が何かに気づくと千冬がそれに続く様に答えた。

 

「それではこれから作戦会議を行う。意見がある者は挙手をしてくれ」

 

「では、その対象機体のスペックを要求します」

千冬の言葉にセシリアが言うと、それぞれの専用機の表示枠に色々とスペックデータが表示されていった。

 

「うわぁ……かなりの威力がありそうな武装だわ……」

 

「それに速度もかなり出せるみたいだよ」

 

「それと生半可な攻撃では反撃される恐れがある」

 

「この移動速度だったら一撃必殺で撃墜するしかないかも……武昭、どうかしたの?」

鈴、シャル、ラウラ、簪がそれぞれ意見を言ってる中、簪が武昭の様子が変な事に気づいた。

 

「あぁ、原因は何かわからないけど……暴走してるって言うなら束さんが何とか出来るんじゃないかなって思ったんだ」

 

「うん、たっくんの言う通りだよ?一応何があっても良い様に()()()()を作ったから」

武昭の意見を聞いた束は胸の谷間から赤いスイッチが付いた箱の様な物を取り出した。

 

「束、それは何だ?」

 

「うん、これはIS緊急停止ボタンで、コレを押したらその子を止める事は出来るよ。けど……」

 

「束さん、もしかしてかなり近くまで行かないとダメって奴ですか?」

 

「そうだね、緊急停止させるのはISにとっても操縦者にとってもかなりキツい物だから10m付近じゃないとダメなんだ」

 

「じゃあ()()は俺が使った方が良いですね……ちなみに何か他に案はあったんですか?」

 

「もう1つの案としては箒ちゃんとといっくんの2人で行く案があったんだよ」

 

「では、そっちの案で行けば良いじゃないですか」

 

「けどね、それは「箒、お前……何を思ってるんだ?」たっくん……」

箒が束の案に賛成したが束が意見しようとした時に武昭が口を開いた。

 

「お前は今、専用機を手にして浮かれてる様にしか見えないんだよ」

 

「何だとっ!?そんな事は……「だったら何で束さんの案に賛成したんだ?」っ!そ、それは……」

箒は武昭の意見に反論しようとしたが軽く睨まれて言葉に詰まった。

 

「確かに箒は専用機を手にしたよ……けどなお前はそれを使いこなせるだけの腕前はあるのか?」

 

「だ、だが、私と一夏ならば……」

 

「そうだな、確かにお前達なら行けるかもしれない……けど1つだけお前は分かってない事があるよ……」

 

「なんだ、その私達が分かっていない事とは?」

 

「それは……俺達がこれからやる事は訓練じゃなくて1つ間違えたら命を落とす事もある……()()なんだって事だ」

武昭が言うとそこにいた全員が黙り込んだ。

 

「いいか?ここは学園のアリーナでいつもやってる様な訓練や練習なんかじゃないんだ……そんな所で今さっき専用機を手にした奴がいても足手纏いしかないんだよ」

 

「おいっ!そこまで言う事無いだろ!?グッ!?」

話を聞いていた一夏が武昭に掴み掛かろうとしたが寸前で腕を取られて畳に投げ固められた。

 

「お前もだ一夏。専用機を手にしてたかだか数ヶ月しか経っていない癖に強くなったと勘違いしてるんじゃねぇ!!」

 

「それ以上はやめろ、村雨」

千冬に言われた武昭は一夏から手を離した。

 

「束……お前が考えてた案では本当に織斑と篠ノ之の2人で大丈夫なのか?」

 

「うん……大丈夫な筈だよ……けど、たっくんの意見を聞いたら凄く危ないって事に気づいたんだ」

 

「そうか……では村雨に行ってもらうが何かあった時の後詰として織斑と篠ノ之の2人に行ってもらう、それで良いか?」

 

「えぇ、俺は構いませんよ。2人もそれで良いか?」

 

「あぁ……分かったよ武昭。箒もそれで良いな?」

 

「うむ、仕方あるまい……」

千冬が提案した作戦に3人は賛成したが箒だけは何処か機嫌か悪かった。


少しして浜辺に機体展開した3人が立っていた。

 

「では、村雨がスイッチの通用範囲まで近付いて機能停止を行い、織斑と篠ノ之で何かあった時の為の対応をするんだ」

 

「分かりました……じゃあ行くぞ、一夏、箒」

武昭が機体を起動させると2人も起動させて金の福音の居場所に向かった。

 

「ふぅ……では私達は旅館に戻るぞ」

 

「そうですね、皆さんも少し休んでください」

 

「分かりましたカシャンえ?……なんで急に?」

千冬と麻耶に言われた皆が旅館に戻ろうとした時にシャルロットが着けていたブレスレットが何の前触れも無く急にとれて砂浜に落ちた。

 

「シャルロット……やっぱり()()()()()……」

 

「私と鈴の()()も……」

シャルロットがブレスレットを手に取ると鈴と簪も来たがその手にはネックレスと、バレッタがそれぞれ乗っていた。

 

「これって私達が水着を買いに行った時に武昭が記念だって言って買ってくれた物だよね?……」

 

「もしかして武昭に何か………」

 

「そんな事ある訳無いわよっ!武昭は私達よりも強いのよ!すぐに終わらせて戻ってくるわよ……(きっと、そうよ……)」

シャルと簪が心配してる中、鈴が大声を出すがその心中は何処か信じれなかった。

 

一方、旅館の生徒達がいる部屋で……

 

パキン「ふえっ?……コレって……あきっちが買ってくれた髪飾り……一体何が起きてるの?……」

本音がつけていた髪飾りが何もしていないのに勝手に壊れて落ちた。

 



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