転生者である俺が特典で好き勝手やってみたwwwww (胡椒こしょこしょ)
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早くも主人公を懐柔するとかつらいわーwww

神様転生系は初めて書くので、実質初投稿です。


突然だが俺は転生者だ。

一度死んだと思ったら白い空間で目を覚まし、神様っぽいおっさんに異世界転生させたるでと言われて魔法少女リリカルなのはの世界に転生することになったんだ。

 

しかし、転生と言えば切っても切れない関係であるのが転生特典。

特典が良ければ生前の現実の世界とは違って最初からイージーモード出来るっていうんだからたまんねぇな。

そりゃ万能スマホとか使って無双したくもなるわ。

 

ただ俺はそんなスマホとかしょうもない特典を選ぶつもりはない。

男なら欲しい物は全部手に入れるつもりでいかねぇとな。

だから.....

 

『俺にニコポと最強の魔力をクレぇぇぇえええぇぇ!!!!!!』

 

俺はそう神に向かって叫んだ。

せっかく異世界転生するなら戦闘面だけでなく、恋愛面でもチート盛ろうぜ。

なのはとかフェイトとか作品の女キャラをニコポで落として、目指せエロゲみたいなハーレム生活!!

ニコポさえあればどんな相手であろうと落とすことが出来るんだ。

やろうと思えば百合の間に入ることも可能!

これ以上に手に入れるべき特典があるだろうか、いやない!

 

しかもあの世界は魔力ランクが高ければ大体万事OKだから最強の魔力さえ手に入れられれば俺TUEEEEE!!だって出来る。

 

クックックッ....俺は異世界で最強系転生者になってやるぞ.......。

 

そうして俺は新しい世界で第二の人生を送りだしたのだ。

 

新しい世界では幸先良く主人公である高町なのはを手中に収めることが出来た。

コイツは将来管理局の白い悪魔と言われるくらいの原作において最強格になる。

だからこそ今のうちに手中に収められて幸運だ。

 

今はなのはの家に住まわせてもらっているが、大体なのはは言うことを聞いてくれるから助かる。

そして今や一緒に寝てるのだ。

いやーやっぱニコポすごいわwwwww

女の子と一緒に寝るなんて前の世界じゃ考えられなかったからな。

これからはここに後何人か女の子が入ってくると思うと流石に気分が高揚するぜ!

 

...しばらく寝ていると急に強烈な尿意を感じた。

トイレ行きたいな...。

だが電気を消してしまっているので暗い。

そこを通るのをなんか嫌だ。

 

「もじもじしてどうしたの?....トイレ行きたいの?」

 

一緒のベッドに眠っているなのはが俺の様子を見て聞いてくる。

そうだ、一人で暗いところを通るのはアレだが二人なら行ける気がする。

赤信号みんなで渡ればなんとやらという奴だ。

 

俺は頷く。

するとなのはは愉快そうに笑いやがった。

 

「やっぱり....今日見たテレビ怖かったんだ。」

 

...は?

いやおばけなんか怖くないんだが?

あんなのただの子供騙しだろ?

それにおばけが出ても俺の最強魔力でボッコボコに出来んだよ。

そんな俺がなんでおばけなんか怖がる必要があるんだよ。

 

「えっ、だから一緒に寝ようって言い出したんだと思ってたんだけど。」

 

違うからぁ!

おばけが怖いからとかじゃなくて将来に対する事前の練習!

この後何人もの女性と寝ることになるんだから身近な人で慣れておこうってつもりでやってるから!

いやー慣れる為に主人公使うとか贅沢すぎでワロタwwww

だからお化けなんか怖かねぇんだよっ!!断じてっ!!!

 

「うんうん、怖くないね。分かったから一緒に行こう。」

 

なのははまるで子供を見るかのような微笑ましそうな目で笑う。

この野郎、馬鹿にしやがって...。

確かに今は年下だけど俺の方が前世加算すると上なんだよ。

主人公だからって調子に乗りやがって...。

いずれ本編が始まったら最強魔力を見せつけてやるからな....。

 

そう思いながらもなのはと手を繋ぎながらトイレへと向かった。

 

 

▲▲▲▲

 

 

 

私には前から一緒に暮らしている子が居る。

名前は北形正和君。

彼の両親が私の両親とかなり仲が良くて、外国で長期間仕事しなければいけなくなり私の家で預かっている。

私より年下ではあるものの、男の子でありお兄ちゃん以外の男の子とあまり話したことがない私は少し困惑していた。

 

ただお父さんが入院することになって、お兄ちゃんもお姉ちゃんもお母さんも忙しそうにして私にあまり構ってくれなくなった。

でも正和君は私にずっと話しかけてくれる。

私をずっと見ていてくれた。

 

そこから段々仲良くなっていくと少しずつ正和君への私の思いは変わっていった。

ちゃんと向き合ってみれば彼はとても可愛げのある男の子で、まるで弟が出来た気分だった。

事実最近は彼の世話をしたり、彼に頼まれて菓子を作ってみるなどが日々の日課になっている。

...それにしてもこの子はかなり我が強いので将来が心配になるのだが。

でも話せばちゃんと分かってくれるので良い子には違いない。

 

前にお母さんに相手をしてあげられなくてごめんねと言われたが不思議ともう私は当初のような寂しさは覚えていなかった。

お母さんたちが話せなくても私には正和君が居る。

私はもう昔の私とは違ってお姉ちゃんなのだ。

めそめそしている所なんて見せられないもん!

だから私はお母さんに笑ってこう言った。

 

「大丈夫!私、お姉ちゃんだもん!」

 

そう言うとお母さんは嬉しそうな顔で微笑んだ。

 

 

今日は夜、心霊特番がやっていた。

私も正直怖いものは苦手だが、隣で怯えている正和君が見ていて面白くてあまり怖いとは思わなかった。

目を見開いてフリーズしていたのは、今でも思い出し笑いしてしまいそうになる。

その後、彼は必死に怖いとか思ってないからなと弁明していた。

 

そしてその日の夜にベッドで寝ているとドアが開く。

見ると正和君がそこには居た。

 

「どうしたの?」

 

私が聞くと正和君は仏頂面で口を開く。

 

「一緒に寝ろ。」

 

ぶっきらぼうに言う正和君。

その態度は強がっていることが丸わかりで、彼が心霊特番が怖くて一人じゃ眠れないことが手に取るように私には分かった。

 

「いいよ。...おいで。」

 

そう言って手を広げるとその中に入ってくる。

彼を抱きしめると安心できるように頭を撫でた。

正和君は私にしがみついている。

なんていうか他の家族ではなく、私を頼ってきてくれたことが嬉しかった。

 

しばらく撫でていると腕の中でもじもじとしだす。

どうしたのだろうか?

足を内股にしてもじもじとしだす。

もしかしてトイレに行きたいのだろうか?

 

「もじもじしてどうしたの?....トイレ行きたいの?」

 

私がそう言うと暫くしてゆっくりと頷く。

その様子があまりにも可愛いし、可笑しくて笑う。

 

「やっぱり....今日見たテレビ怖かったんだ。」

 

「は?怖くないしあんなの。

勝手に決めつけんのやめてくれない?」

 

私の言葉を不快そうにジト目を向ける。

だが事実、私と一緒に寝てるのは事実だし、今のこの状況が彼が怖いと思っていることへの証明だ。

 

「えっ、だから一緒に寝ようって言い出したんだと思ってたんだけど。」

 

すると彼は必死にかぶりを振るう。

 

「違うから!俺は怖いから寝てたんじゃなくて.....」

 

「うんうん、怖くないね。分かったから一緒に行こう。」

 

必死に否定する彼を見ているとこれ以上突っ込むのは可哀想に思えてくる。

だから私はベッドから出ると手を差し出す。

すると正和君は拗ねたのかむくれると私の手に手を伸ばし繋いだ。

そして二人で一緒にトイレへと向かう。

 

お姉ちゃんと私も昔はこんな感じだったのかなぁ?

そう思いながらもトイレで彼を待ち、出てきた彼にキチンと手を洗わせて一緒にベッドで寝るのだった。




長い事小説を書いていなかったのでリハビリのつもりで書きました。

そして以前に毎度読みにくいという指摘を頂いていたので行間を開けてみたのですが、どうでしょうか?

以前の方が良ければコメントで仰っていただけたら幸いです。

勘違いのタグはありますが、勘違いしているのは主人公です。
本当は特典なんか持っていないのに持っていると思っているし、なのはと仲良くなったのもニコポのおかげだと思ってます。
悲しい人ですね。


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分かる人には分かっちまったか、俺の才能wwww

高町恭也さん初登場回なので初投稿です。


なのはの父親が退院した。

このこと自体は喜ぶべきことだろう。

しかしそれによってある一つの問題が出てくる。

それは.....。

 

「面ッ!!!」

 

「ぬわあああああ!!!」

 

今までなのはの父親である高町士郎が入院してたことで慌ただしそうにしていた家族たちが平穏を取り戻したということだろう。

母である高町桃子は旦那が元気になって戻ってきたことが嬉しかったのか、俺や高町の兄である高町恭也を大量の甘味の味見役にするのだ。

最初はやっぱ翠屋のシュークリームってうまいんや!と喜んでいたが、それも束の間、段々と甘味に飽きてきてしまう。

隣の恭也氏は随分前から甘味にトラウマを持ってしまっており、あまり量を食べない。

よって居候である俺が食べざるを得なくなってしまうのだ。

しばらく甘い物は見たくない。

 

そしてなによりも.....

 

「胴ッ!!」

 

「いってぇぇぇぇ!!!」

 

高町恭也から剣道の手ほどきを受けることになったのだ。

なんでも彼は古武術の師範代であり、俺になんか教えてみたいと言われたのだ。

まぁ?俺は最強系転生者だからぁ?

やっぱ分かる人には分かるのかな?才能って奴をさぁ!!っと思っていたのだが、実際クッソキツイ。

まず意味分からん回数竹刀を振らされる。

回数は恭也氏がもういいと言うまでである。

明確に数が指定されていないので最早無限に振らされるんじゃないかと錯覚するほどだ。

 

そしてその後は実際に恭也と試合をするのだが、相手の竹刀が見えない。

勘で受けてるがボコボコにされる日々を送っている。

正直、こんなことやってられん!

なんで最強系転生者である俺がこんな泥臭いことしなきゃならんのか。

 

「どうした...?やめるか?」

 

あまりに彼の剣戟が苛烈で倒れ伏す俺。

それを見て感情の窺わせない顔でそう聞いてくる。

正直やめたいと思っている。

しかしそれとは別にある感情も俺の胸を占めていた。

 

俺はゆっくりと立ち上がると、恭也に剣を向ける。

 

「まだ.....いける.......。」

 

「....そうか。わかった、続けよう。」

 

恭也はこれまた無表情でそう言って剣を俺に振る。

 

振り下ろされた竹刀を受けきれずに頭をぶっ叩かれる。

俺はまた地面に倒されるがまた立ち上がる。

 

正直気力だけで立ち上がっている。

冗談じゃない。

目の前に立っているのは魔法を使わなければシグナムとほぼ互角で魔法を使われても勝ち筋が残るとかいう化け物だ。

....だけどそれがなんだってんだ。

俺は最強系転生者様だぞ。

特典を持っているんだから原作キャラなんかに負けるわけにはいかない。

今は確かに地面に転がっているが、俺は神に選ばれた男だ。

絶対にその御神流をモノにして、アンタにだって勝ってやる。

まだ原作は始まっちゃいない。

これは育成、今は育成期間なんだ。

だからこそここでやめるわけにはいかない。

 

「籠手ッ!!」

 

「腕がっ!腕がぁあああああ!!!!」

 

だからもうちょっと優しく打ってきてもらっていいですか?

最近この稽古終わった後、打たれた所青あざできてるから手加減してもいいんじゃないですかね。

腕を押さえてもだえ苦しむも恭也は取り合わずに竹刀を俺に向ける。

あぁ....まだやると。

 

俺は落ちた竹刀を拾う。

そして恭也に対して構えた。

クッソ....いつかボコボコにしてやる。

それまでは師範として良い気になってるんだなっ!!

 

 

稽古が終わり、道場の床に横になる。

滝のように全身から湧き出した汗が髪の先などから床にポタポタと落ちていると感じる。

正直体痛いわ間接痛いで立ち上がれない。

恭也は汗すら掻いちゃいない。

ていうか防具どうやって取ろうかな....。

 

「正和君、立てる?」

 

気づくと近くになのはが歩み寄ってくる。

立てるわけねぇだろ、見て分かんねぇのか。

しかしそんな風に言う元気もないので黙っていると、彼女は俺の武具の紐を解いて防具を取ってくれる。

 

「...あんがと。」

 

「あはは~、苦しそうだったし。歩ける?」

 

防具を取ってもらった後、なのはの肩を借りて立ち上がる。

正直、体汗まみれで気持ち悪いし、お風呂入りたい。

だが体中痛いし、暫く腕が上がらないので自分の体とか洗えないのだ。

ならもうしょうがないし、風呂に入れてもらうしかないだろう。

 

「風呂入りたい。」

 

「ならちょうど俺も汗を流したかったんだ。

男同士裸の付き合いと行こうか。」

 

俺がなのはに言ったにも関わらず横から恭也が入ってくる。

いや!俺が興味があるのは大人時代のナイスバデーななのはさんであって今のなのはには興味ないよ?

俺ロリコンじゃないし。

でもやっぱ野郎か女どっちと一緒に入りたいかって聞いたらそりゃ女が良いに決まってんだろ。

ただ目の前で恭也から申し出された時点でなのはと共に入る道は閉ざされた。

恭也はシスコンだし、男と一緒に妹が風呂に入るなど許してくれないだろう。

だからこそ、俺はゆっくりと首を縦に振った。

 

「そうか、ならば共に一風呂浴びようか。」

 

そう言って歩いていく恭也に追従する。

あれ...お風呂って癒されるために入るんだよね?

恭也にはニコポが効いている気がしないんだよな。

もしかして俺のニコポは女にしか通用しないとか?

とにかく野郎と一緒に風呂に入るのはすごい萎えるなぁ....。

そう思いながら風呂へと歩みを進めていくのだった。

 

 

 

▲▲▲

 

 

 

夜。

辺りが暗くなる中、恭也は道場に居た。

夜の修練。

いつもの日課である。

この時間帯は子供は寝る方が発育が良いので正和を付き合わせてはいない。

 

「恭ちゃん、今日も精が出るね。」

 

ふと見ると妹である美由希が居た。

どうやらずっと見ていたらしい。

竹刀を元あった場所へ仕舞うと、美由希に近づく。

 

「見るくらいだったら稽古すればよかっただろ。」

 

恭也が言うことに美由希は舌をちろっと出す。

どうやら今日は稽古をやる気はないらしい。

恭也はそんな美由希に対しても何も言うつもりはない。

自分の妹はこう見えてもしっかりしている。

なにか考えがあってのことだろう。

 

恭也は道場を出ると空を見上げる。

今日は...星がとても綺麗に見える。

 

「綺麗だね...。」

 

隣に立って美由希がぼそりと呟く。

 

「....そうだな。」

 

静かに恭也は返事する。

二人の間に沈黙が走る。

 

「前から思っていたが、俺になにか聞きたいことがあるのだろう?」

 

恭也の言葉を聞いて驚愕から目を見開く美由紀。

恭也は前から美由希の意図を様子から感じ取っていた。

具体的にいつからと言えば、正和に御神流の鍛錬をさせ始めてから。

 

「いや、聞きたいことっていうより意外に思ってさ、だってあの子には....」

 

「剣の才能がない。...そうだろ?」

 

恭也は美由希の言わんとしていることを先に言う。

北形正和には剣の才能が致命的にない。

剣術の達人であるが故に分かった、分かってしまった。

彼の腕はどれほど習熟しようが凡人であり、伸びしろは知れたものであると。

御神流を教えても、奥義はおろか技を覚えることすら絶望的である。

 

「ははっ...分かってたんだ。でもならどうして今も教えてるの?

恭ちゃんがここまで家族以外に入れ込むなんて珍しいなって。」

 

自分の兄はお世辞ではないが、基本的無表情で無愛想だ。

それにあまり御神流を家族以外に教えることを良しとしていない。

それなのに兄から積極的に教えているのだ。

しかも育つ見込みが薄い少年に。

何故か気になっても仕方ないだろう。

 

「彼には才能がない。

何度剣を振ろうが俺たちとは比べ物にならない程に習熟が遅い。

今ですらまともに剣が振れるようになった程度だ。」

 

恭也は彼の顔を思い浮かべる。

子供らしい表情を見せることが少なく、仏頂面か不機嫌な顔、それか愛想笑いを浮かべることが多い両親の友人の子供。

彼の振るう剣は風が吹けば飛ぶほどに軽く、構えはすぐに崩れるほどに脆い。

だが....。

 

「彼はいくら倒されても立ち上がった。

俺のような著しく力量差がある相手でも折れることなく立ち向かう。

...武術において心の面はとても重要だ。」

 

心技体。

彼の場合は技も体もまるでなっちゃいない。

だが....心の場合になると話が変わってくる。

 

「彼の心には折れない一本の芯がある。

見つめ合った目が力を、強さを求めていた。

何があっても勝ちたいと。

.....俺はもしかすればあの目に惚れたのかもしれない。」

 

決して折れない不屈の心。

彼がなぜ力を求めていたか、彼の中の芯とは一体なにかは分からない。

だがそれでも彼がけして折れないというのであれば、それはきっと彼の紛れもない強さだ。

心が折れなければもしかすればと。

恭也は彼に剣を握らせて試合をしてみて初めて心から自分で教えたいと思ったのだ。

自分の手で鍛え上げたいと。

あの目に応えてみたいと思ったのだ。

だから今までずっと教えてきたのだ。

 

「...ふふっ、恭ちゃんは正和君の事が大好きなんだね。」

 

「...大好きというわけじゃない。ただあの目に惹かれただけだ。」

 

急にそんなことを言ってきた美由希に目を向けて否定する。

しかし美由希はおかしそうに微笑んでいた。

 

「ふふっ、だって恭ちゃんあの子のこと話す時、なのはのことを話す時と目つきが同じだったよ。

優しい目をしてた!」

 

「....揶揄うのはやめろ。早く家に戻るぞ。」

 

恭也は美由希から視線を外して家に向かって歩き出す。

 

「あっ、待ってよ恭ちゃん!!」

 

美由希はそんな恭也の後を急いで追いかけるのだった。

 

 

 




主人公の中に折れない不屈の心を見出した恭也さん。

しかしそれは自分が特典をもらった転生者だから原作キャラには負けるわけにはいかないというようなある意味自尊心のようなものです。

自分が特典もなにももらっていないただリンカーコアがあるだけの子供でしかないと知ったらどうなっちゃうんでしょうね。



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原作始まったわwwwww

ユーノ君かわいいですよね。
食べちゃいたい。(栗山監督)


「栄えたる響き 、光となれ、

許されざるものを、封印の輪に。

ジュエルシード、封印!」

 

金髪の少年が一人、暗い森で不気味な影と相対している。

 

そして場面はいつの間にか変わって少年は一人倒れている。

 

「逃がし...ちゃった....。

追いかけ...なく、ちゃ…」

 

「誰か...、僕の声を聞いて....。

力を貸して...。魔法..の力を....。」

 

 

 

▲▲▲

 

 

....原作が始まらねぇ。

ずっと桃子さんのお菓子を夢に出てくるほど食べさせられたり、恭也さんと体中動けなくなるほど鍛錬させられたりの日々を送ってきてふと忘れていたが、ここはリリカルなのはの世界なのである。

よってそろそろ原作が始まっても良い頃だと思うのだが、始まる気配がまったくない。

 

あの淫獣フェレット何してんだよ、早く来いよ。

そう思いながらもボーッと今日もまた下校している。

 

「なにボーッとしてんのよ。」

 

金髪の少女が訝し気な顔で俺を見ている。

ボーッとしているのではなく、考え事をしているのだがまぁそんなこと言ってもガキには分からないか。

 

「うっせ、お前に言っても分かんねぇよ金髪。」

 

「はぁぁぁあああ?せっかく私が話しかけてやったってのになによその態度は。これだからガキの御守は嫌なのよねぇ。」

 

「ガキじゃねぇ、訂正しろ!」

 

激昂したかと思えば、俺を見て鼻で笑う金髪、またの名をアリサ・バニングス。

俺はそんなアリサを睨む。

そして前に居る黒髪の上品そうな少女、月村すずかはそんな俺たちをどこか微笑まし気に見ており、なのはは俺とアリサのやりとりを聞いて苦笑いを浮かべていた。

 

この二人となのはは小学1年生の時からの友人であり、なのはと住んでいる家が同じな俺は必然的にコイツ等とも一緒に帰るようになっていた。

まぁこの二人も一応主要なキャラの一人ではあるわけだからハーレムにぶち込む気だし、構わないんだけどね?

だがすずかにはニコポが効いている気がするのだが、アリサには効いている気がしない。

会った時からすごく突っかかってくるし、ガキ扱いして笑ってくるのだ。

前世の年齢を合わせてみれば俺は大人なんだからガキじゃない。

それなのにメスガキにガキと笑われてみろ、すごくイラッとするぞ。

コイツは俺が魔法を使えるようになったらチャームかなにかでハーレム構成員にして滅茶苦茶にしてやるからな....。

それまではガキガキ言って良い気になってろ!

 

「いや、今日私達の学年で夢を聞かれてね。正和君の夢がなにか気になって聞いたんだけど....」

 

すずかが控え目にそう言ってくる。

そしてその横でアリサが腕組みしていた。

 

「すずかが呼んだんだからボーッとしてないですぐに答えなさいよ。」

 

「黙ってろ金髪、....夢か。」

 

夢、この世界に来て...いや前の世界でも特に考えたことなかったことだ。

正直俺はもう最強系転生者としてミッドチルダでブイブイ言わせて女囲って豪華な暮らしをするのが特典によって決まってしまっているから考える必要もない。

だが、それで返事が出来ないなら出来ないで夢がない奴みたいで嫌だな....。

まぁアリサが言う通り、この3人は俺のことを年下の子供くらいにしか思っちゃいないだろう。

だからどんなに変な返答でも大して気にもしないはず。

なので下手に考える必要もないので適当に答えよう。

いやーこういう時子供の見た目は役に立つな。

 

「夢か....俺の夢は最強だ。誰にも負けない男になるっ!!」

 

ちょっとふざけたが正真正銘俺の夢だ。

はやく魔法使いとして特典で獲得した最強魔法を見せつけて、今まで俺を負かしてきた奴なんかをボコボコにしたい。

それをして初めて俺は最強系転生者としてこの世界で大手を振って生きていくことが出来る。

前の世界では味わうことのなかった並ぶ者のない頂点の感覚。

それを味わうことが出来るはずだ。

 

俺が夢を語るとアリサは目を見開いた後、鼻で笑った。

 

「最強ぅ?アンタそういうのは夢って言わないのよ。

ねっ?こんなバカなこと言う奴もいるんだから将来の夢がないことなんか気にする必要ないのよ。」

 

「そ、そうかな....?」

 

俺を見て心底愉快そうに笑うと、なのはに向き直り真面目な顔で言う。

それを聞いてなのはは俯く。

てかなんだ馬鹿な事って。

俺は特典がある時点で夢でもなんでもなくいずれ確定で最強になるんだよ。

今はまだ魔法に関わってないからアレかもしれないが、それは紛れもない事実だ。

そう考えていると今俺を見て笑っている金髪が滑稽に見えてしょうがない。

精々今の内にそうやって笑ってろやw

 

「なのはちゃんにしかできないこと、きっとあるよ。だからそこまで気に病まなくても良いんじゃない?」

 

すずかがなのはに笑顔を向ける。

するとなのはは暫く考え込むと顔を上げる。

 

「私にしかできないこと....正和君のお世話とかかな....?」

 

「い、いやそれはちょっと違うんじゃ.....」

 

すずかがなのはの言葉に苦笑いを浮かべる。

それは俺も違うと思う。

アリサもなのはに対して呆れ顔を向けている。

そんなことが自分に出来ることで一番最初に考え付くのは少しおかしいと思うぞ。

あっ、俺のニコポの影響かぁ!

いやーなんか悪いねぇwww

 

ん?夢の話....?

それにこの会話の流れ、なんか細部はちょっと違うけどどっかで聞いたような.....。

あっ!これ原作1話で傷ついたユーノ助けに行く前の流れじゃん。

マジかぁ~~!いよいよ始まっちまうか俺の時代が。

本編に入っちゃったら俺の最強魔力が火を噴いて俺の最強転生者生活の幕が開く。

待ちわびた瞬間の到来を予感してテンションが上がってしまう。

 

ほらっ!早くユーノの声を受信して!早く助けに行って!!

俺がなのはを注視する。

すると少し困ったような笑顔を浮かべて首を傾げるなのは。

そして俺たちは塾へ向かうためにアリサの言う近道を歩いていく。

正直小学生の時の勉強の内容なんて俺にとってみれば既に習った内容なんで塾なんか行く必要ない。

...でもまぁ親がなのはちゃんと同じ塾に行きたいだろ的な余計な世話を掛けてきたので行くことになったのだ。

 

...だがまぁ原作の流れを知っている身としては今日塾に行く必要がないと知っている。

塾に行く前にユーノの飛ばした通信魔法?を聞きつけてサボタージュするからだ。

さ、早く通信魔法飛ばしてくださいよ。

俺はなのはの欠席の理由でも考えといてやるか。

 

 

『誰か....僕の、声を...聞いて....』

 

あっ、ユーノ君だ。

頭の中で苦し気な少年の声が響いた。

てかなんで俺にも聞こえてるんだろう?

 

隣のなのはを見ると挙動不審な動作で周りを見回している。

どうやら聞こえたようだ。

目が合うとなのはが俺の手を突然握りしめる。

 

「...なんだよ。」

 

「大丈夫、なにも怖くないから....聞こえるだけだから。」

 

「...なに二人ともいきなり見つめ合ってんのよ。」

 

アリサが俺となのはに怪訝な目を向ける。

 

ん?

あれなんか口振りがおかしい。

別に怖くないんですけど。

てかむしろバッチコイなんですけど。

はやくユーノくんのところ行こうぜ!

 

 

『助けて....』

 

「声が...聞こえる....。」

 

「えっ?私にはなにも聞こえないけど。

すずかには聞こえる?」

 

なのはがぼそりと呟くのにアリサが首を傾げてすずかに聞こえるか尋ねる。

しかしすずかは首を振る。

 

「えっ、私にも聞こえないけど.....。」

 

まぁ当然だ。

彼の声が聞こえるのは魔法の素質がある人じゃないと聞こえないのだろう。

...多分。

俺も聞こえているしな。

てかマジでなんで俺も聞こえるんだろ。

なのはだけにしか聞こえないのかと思ってたけど。

 

『助けて....!!』

 

「こっちの方から聞こえる。行かないと....。」

 

なのはが森のある方向を見つめる。

そこまで分かんのか、すげぇな。

俺でも方向までは分からないのに。

まぁこの後なのははユーノ君の方に駆け出すだろう。

 

俺はどうしたら良いんだろう?

できれば俺もあのイベントに相まみえたいんだが、それじゃ展開が変わったりしかねない。

まぁ?なんたって俺は最強の魔力を特典に持つ最強系転生者だから?

もしかしたらユーノ君が俺に目を付けるかもしれない。

するとレイジングハートがなのはの手に渡らなくなってしまうのだ。

そうなったらリリカルなのはじゃなくなっちゃうからなぁ~。

いやー辛いわー、強すぎると気を遣わないといけないから辛いわ~。

というわけで俺はユーノ君の方へ向かう3人とは離脱して塾に行くか。

海外から月謝払ってくれている親に悪いしな。

 

するとなのはは駆け出した......強く俺の腕を握って。

えっ!?ちょっ、ちょっ、まずいって!

 

「な、なにいきなり走ってんだ!?放せって!」

 

俺がなのはに言うと、なのはは俺の目を見て口を開く。

 

「助けてって...聞こえたなら行かないと!!お願い!私だけじゃ不安だけど、....正和君が居るなら頑張れるから、だから一緒に来て!!」

 

なのはは走りながらも俺に頼み込む。

...ふ~ん、俺に頼み事か。

ま、まぁ俺は最強系転生者だからぁ?

その判断は間違いじゃないんじゃない?

良い判断してんじゃん、流石原作主人公。

ま、まぁそこまで頼まれちゃ一緒に行ってやらないこともない。

ここで行かなーいって言ったら可哀想だしな。

もしユーノ君に僕と契約して魔法少女になってよ的なこと言われてもなのはに直接押し付ければいいしね。

ニコポがあるから言うこときくやろwww

 

「...分かったよ。」

 

「ありがとう!」

 

俺が了承するとなのはは笑顔になる。

しょうがねぇなぁ....。

ま、とりあえず行った後のことは着いた時に考えよう。

 

「ちょっとなのは!?あのバカも一緒に行っちゃってるし!!!」

 

「待ってよなのはちゃん!正和君!」

 

後ろからアリサとすずかも後ろから追従してくる。

森の中を抜けて走っていく。

すると彼が見えてくる。

草むらで一人きりでぐったりとしている黄色いフェレット。

 

「あれは....あの子が呼んだの....?」

 

なのはがフェレットを見つめてそう呟く。

 

「ハァ...ハァ....まったくいきなり走り出してどうしたのよ二人とも!」

 

息を切らしながらもアリサが後から追いつく。

すると続いて追いついてきたすずかが傷ついたフェレットを目に収めて声を上げた。

 

「あ、見て、動物かな...?怪我してる....」

 

すずかの声を聞いてはっとしたような表情でフェレットの方へ駆け寄るなのは。

しかし駆け寄るも困った表情を浮かべる。

 

「け、怪我してる...けど、ど、どうしよう?」

 

するとそんななのはに歩み寄るアリサ。

 

「どうしようって…、とりあえず病院?」

 

彼女らしくないふわふわした返答。

彼女も傷ついた動物を目の前にして動揺しているんだろうか?

 

「病院じゃなくて獣医だよっ!」

 

そんなアリサに突っ込みを入れるすずか。

すずかはこんな状況でも冷静というかなんというか。

吸血鬼の家系だから血とか傷とかを見ても動揺しないのだろうか?

....いや、なんというかこの考えはあまりよろしくないな。

あまり家系とかそこらへんを理由にするのはなんというか気が進まない。

まぁ...下校の度に一緒に居るわけだし割とそこそこ付き合い長いからな、すずかとも。

取り敢えずこの状況で俺がするべきことは一つだけか。

 

「おまw普段偉そうにしてる癖に病院と動物病院の区別も付かないのかよwww

大丈夫?僕が違いを一から分かるように説明してあげまちょうかぁ~~?」

 

アリサを煽ることだ。

この野郎散々さっき馬鹿だのなんだの好きに言いやがって....。

コイツがこんなミスするなんて珍しい。

馬鹿にし返す絶好の機会と言えるだろう。

隙を見せた自分を恨むんだなっ!

 

「...へぇ、私に喧嘩売る気なのね。いいわ、明日覚悟しなさいよ。」

 

目を瞑り静かに俺に対して言い出すアリサ。

しかしここで引いては面白くない。

俺はなのはの背に隠れる。

 

「うわぁ...間違いを指摘しただけの下級生脅迫してる....。アリサ先輩こわぁ....。」

 

「....こぉのクソガキ、絶対泣かす.....。」

 

イラつきを抑えきれずに全面に出しながらも俺を睨み付けるアリサ。

いやー、さっきまで得意げな奴を虚仮にすると楽しいわ。

しばらくこのネタで弄ってやろう。

俺がアリサの弱みを一つ見つけた内心得意げになっている間もなのはとすずかはフェレットの保護について話していた。

 

「えーと、この辺りって動物病院あったっけ?」

 

「ちょっと待って、家に電話して手配できるか聞いてみるから。」

 

すずかは携帯を耳に当てて家の人と通話している。

彼女は広い屋敷を持っている程の名家のお嬢様であるから、メイドとかに電話しているんだろう。

....アレ、俺とアリサなにもしてなくね?

 

その後、すずかの手配によって動物病院の場所を把握した俺たちはユーノ君を傷口が開かないように包んで動物病院へと運んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

声が聞こえた。

助けを呼ぶ声が。

夢で見たような光景と共に聞こえてきた。

 

私は隣の正和君を見る。

すると彼も周りを同じように見つめていた。

もしかして....正和君も聞こえるの?

 

そう思うと、私は彼の手を握っていた。

この声の主が何かは分からない。

でも彼は意外と怖がりなのだ。

お姉ちゃんとして安心させないと。

私は年上なんだからしっかりしないと...。

 

「...なんだよ。」

 

いきなり手を握った私を怪訝そうな目で見つめてくる。

 

「大丈夫、なにも怖くないから....聞こえるだけだから。」

 

私がそう言うと釈然としない顔で前を向く正和君。

案外彼は平気だったのかもしれない。

そうだとすれば、ちょっと恥ずかしいな。

 

『助けて....』

 

聞こえて来た声は助けを呼んでいた。

夢でも聞いた助けを呼ぶ声。

その声はとてもか細く消え入りそう。

なぜだか行かなくちゃと思う。

....でも私が行ってどうするの?

行ったところで自分に何かが出来るとは思えない。

 

『助けて....!!』

 

声はまるで私を急き立てる様に続く。

助けを求め続けている。

....やっぱり行かないと、助けを呼ぶ声を無視したらきっと後悔する。

 

「こっちの方から聞こえる。行かないと....。」

 

それに隣の彼も聞いているんだ。

彼の前で助けを求める誰かを見捨てるようなそんな姿は見せたくなかった。

...でもやっぱり行くのは怖い。

だから今からすることは多分私の我儘だ。

 

私は強く正和君の手を握った。

彼はいきなり手を引かれたことに驚いている。

 

「な、なにいきなり走ってんだ!?放せって!」

 

そう言って手を振りまわして振り解こうとする正和君。

急に引っ張ってごめんね。

でも君も同じく声が聞こえたなら....私と同じように助けたいと思うはず。

君はそんな人だから。

 

「助けてって...聞こえたなら行かないと!!お願い!私だけじゃ不安だけど、....正和君が居るなら頑張れるから、だから一緒に来て!!」

 

私は、一人じゃ無理でも...君の前でなら頑張れる。

弟のような君の前では強がれるから。

だからお願い、私と一緒に来て。

私は正和君に初めて我儘を言った。

思えば彼の我儘を聞くことは何度かあっても私から我儘を言うことはなかっただろう。

 

すると正和君はどこか嬉しそうな顔をしながらそっぽ向く。

 

「..分かったよ。」

 

私はそんな彼を見て笑ってしまう。

やっぱり君は私の思った通りの良い子だ。

 

「ありがとう!」

 

私は彼にお礼を言うと声の元へと走っていくのだった。

 

そして.....

 

「あれは....あの子が呼んだの....?」

 

草むらの中で一人、ぐったりとしている黄色い小動物を見つけたのだった。

 

 




相も変わらず自分には特典があると勘違いしている主人公。
特典なんてないんだからユーノくんが主人公にレイジングハートを渡すことなんか決してないんだよなぁ....。
そういう意味では要らない心配ですね。

そしてすずかの家系を傷ついた動物を見ても冷静でいられる理由かと一瞬考えて否定したのは彼女が原作で家系について悩んでいることを知っていることもありますが、長くリリカルの世界で暮らしてきたことで周りの親しい人に情が湧いています。
なので単なる転生先のアニメキャラとして見れなくなってしまっています。
よく考えれば彼がいるのはリリカルなのはの世界なので周りに居る人達も彼にとっては現実の人々であると言えますから良い変化ではあります。
問題は本人がそのことに気づいていないことです。


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ヒロインの初変身シーン見逃したわwwwww

二日前の5月29日はフェイトちゃんの誕生日でしたね。
...ひで作者はまだフェイトちゃんを出せていません。
情けない進捗、恥ずかしくないの?


謎の声に惹かれて黄色のフェレットを見つけ、動物病院へ運び込んだ俺たち。

その出来事は明確に原作の開始を意味していた。

 

しかしそんな出来事も過去のこと。

心配していたユーノ君が俺に目を付けるかもしれないということも、意識を取り戻してすぐにアイツなのはの事を凝視していたし、多分なのはに渡す気なんやろうなぁ~って思った。

 

そして今現在は、塾を終えて家に帰宅しているところだ。

俺の隣で歩いている彼女はずっーと考え事をしている。

どうせフェレットを飼いたいとか家族に言いたいけどどうしようかとか考えているのだろう。

高町家は飲食業を営んでいるので普通ダメなんだが、まぁ彼ら、特に桃子さんなんかは可愛いに目がないので暫く預かるだけならOKと言うだろう。

原作でもそうだし。

なのでなのはの心配は所謂杞憂と言うものである。

 

ていうかあの野郎俺に目もくれないってどういうことなの?

俺は最強系転生者様だぞ。

なんか一目で見てコイツは凄い....みたいな感じになるのかなって思ったけど眼中にすらないじゃん。

...まぁでも気持ちも分からなくもない。

男か女かで言ったら女の子の方が見たいと思うのが自然だ。

俺だってそうだ。

ましてやうら若いユーノ君にとってはなのはの方が良いと思ってもしょうがない。

正直端からなのはにレイジングハートを渡すつもりならなのはに押し付ける手間が省けていい。

でもちょっと複雑な気分だ。

ここに最強の魔力を持つ転生者様が居ると言うのに目もくれないなんてあの淫獣の目は節穴なんだなぁと思わずにはいられなかった。

 

そうこうしている間にも家の前に着く。

なのはは扉の前で立ち往生している。

 

「...まぁそう不安そうな顔しなくても許してくれると思うよ?多分。」

 

俺が隣のなのはに言う。

正直許してくれるのは原作を見ているので俺は知っているが、彼女からしてみれば許してくれるか分からず不安に感じるだろう。

だから多分って言い方になってしまった。

するとなのはは隣の俺を見て力なく微笑む。

 

「そうなれば良いけど....」

 

そう笑ってドアに手を掛けて中に入っていった。

 

 

 

「というわけで、そのフェレットさんをしばらくウチで預かるわけにはいかないかなーって」

 

「なんていうか引き取り手が今はないらしいですし、飼いたいなーって思うんです。」

 

夕食前、なのはと俺は家族に今日あったことを話した後に、それとなくお願いしていた。

俺もばっちり笑顔を向けてニコポを決めている。

....まぁ原作の顛末を知っている側としては俺がニコポを使う必要があったのかも謎だが、まぁ念には念を入れてだ。

彼女がそれを口に出した時に士郎さんと桃子さんが顔を見合わせる。

そして士郎さんが口を開いた。

 

「フェレットかぁ....ところでフェレットってなんだい?」

 

士郎さんは聞きなれない単語に首を傾げる。

まぁ男親であればペットなどの方面に弱くても仕方ないだろう。

...まぁ俺はまともに父さんと話したことなんかこの世界に来てからしかないからよくわからないが。

 

そんな中、恭也さんが口を開く。

 

「イタチの仲間だよ、父さん。」

 

「大分前からペットとして人気なんだって!」

 

恭也さんの言葉を美由希さんが補足する。

 

「フェレットって、小っちゃいわよね?」

 

「知ってるのか?」

 

桃子さんがフェレットの事を口にすると士郎さんが驚いた声を出す。

すると桃子さんが当たり前じゃないと胸を張りながら答えて、それにだったら最初に教えてくれよ~と桃子さんにくっついて桃子さんも笑顔を浮かべてわちゃわちゃやりだす。

 

...あの、突然いちゃつくのやめてもらっていいですかね?

血縁家族じゃない男の子だってこの場にいるんですよ!

なんかちょっと気まずいんですけど。

この家に居ると度々こんなことが起きるので、その度にちょっと気まずい気分を俺は味わっているのだ。

 

「あ、あはは~、このくらいの大きさだったと思うよ。」

 

なのははフェレットそっちのけでいちゃつく両親を見て苦笑いを浮かべつつ、手でフェレットの大きさを表す。

するといちゃつきを一旦やめてなのはの示すサイズ感を見ると、桃子さんが口を開く。

 

「しばらく預かるだけなら、カゴに入れておけて、なのはと正和君がちゃんとお世話できるならいいかも。

恭也、みゆき、どう?」

 

「俺は特に異存はないよ。美由希はどうだ?」

 

「私も!」

 

恭也さんも美由希さんも了承する。

後は一家の大黒柱である士郎さんだ。

 

「俺も桃子が良いなら構わないよ。ちゃんと自分でお世話するんだよ?」

 

「だって、よかったわね!」

 

士郎さんが許したのを見て、なのはの頭を笑顔で撫でる。

なのはは笑顔になると、俺にも笑顔を向ける。

 

「ありがとう!一緒に頑張ろうね!正和君!」

 

「おう。」

 

俺は笑顔を浮かべてそう言ってくるなのはをまっすぐ見据えて頷いた。

そんな様子を桃子さんは微笑まし気に眺めると、食卓に料理を並べる。

今日はサラダやペペロンチーノなどイタリアンな感じの夕食らしい。

うまそうだ。

 

「さ、冷めないうちに食べちゃってね。」

 

「「はーい!」」

 

なのはと美由希さんが元気よく返事する。

 

「いただきます。」

 

俺も手を合わせた後に夕食に手を付ける。

 

「...正和君、育ち盛りなんだから一杯食べるといい。」

 

「あっ、ありがとうございます。」

 

恭也さんが俺の皿にサラダなどを盛ってくれる。

自分の位置からでは取りにくいのもあったので取ってくれるのは助かる。

....ただこれ結構多くないか?

山なんだけど。

 

「えっ、えっと多くないですか?」

 

「なにを言う。今日の昼もあれほど運動したんだ。

運動した分、バランスよく沢山食べて体を作らないとな。」

 

恭也さんは無表情で言ってくる。

バランスよく沢山食べるってなんだ...?

アスリートじゃないんだから.....もしや才能あふれる俺をアスリートにしようとしている!?

今日も昼、塾から帰って恭也さんと鍛錬をしていたのだ。

だから彼なりの思いやりという奴なのだろう。

彼自身、結構食べる方だしな。

 

.....頑張って全部食べよ。

俺は目の前の皿にモリモリ盛られた食事を口に運び出した。

 

 

 

 

最早食えなくなるほど沢山食べ終わり、俺の部屋に入る。

なんでも物置になっていた部屋を俺の為に空けていてくれたらしい。

そこで来客用に用意されている布団を敷いてその上に座る。

今日は疲れたが、正直まだ寝れない。

 

夜になのはがユーノ君の声を聞いて家を抜け出すからだ。

抜け出した先でレイジングハートでセットアップしてジュエルシードを巡る戦いへ身を投じていく。

そのきっかけとなる出来事が今宵起きるのだ。

ここは見逃すわけにはいかない。

 

部屋の電気を消すと窓から外を覗いてなのはが家から出るのを待つ。

 

 

すると暫くして、家のドアが開く。

そしてそこからなのはが出てくる。

来たか。

 

俺はそれを視認すると玄関へと向かう。

なのはの元へ向かうために。

扉からを顔を覗かせる。

....よしっ、誰もいないな。

部屋を出て玄関へと向かってドアを開けて外に出る。

 

どっちに行ったのか。

確か病院の方にジュエルシードの黒い何かがユーノ君を襲うのでそれを助けにいくはずだ。

なら昼に言った動物病院に行けばいい。

急がないと彼女が戦闘を始めてしまう。

俺は走りだす。

クッソ、剣道の練習で筋肉痛だってのに!

本編が始まるまでは早く始まれと思っていたが、始まったら始まったで結構大変だな。

 

走り続けるも、さっきまでの動物病院の道のりは頭の中ではあいまいだ。

確かコッチを右に曲がって.....。

 

角を右に曲がる。

すると、周囲の風景から色と音が消える。

これは....!?

そして目の前には黒い影と相対するなのは。

 

「なんて魔力だ...。落ち着いてイメージして!君の魔法を制御する、魔法の杖の姿を!

そして、君の身を守る、強い衣服の姿を!」

 

「そ、そんなこと急に言われても....と、とりあえずこれで!!」

 

フェレットの言葉を聞いて困惑しながらもレイジングハートを起動し、学校の制服によく似たデザインのバリアジャケットを纏うなのは。

すると黒い影が俺を認識したのだろうか、唸りを上げながら俺を見る。

あっ、ちょっとまずいかも。

 

「ッ!!まずい!人がっ!!」

 

フェレットがそんな黒い影の首の動きに合わせて視線を動かし、俺が居ることが分かると声を上げる。

するとなのはも俺の姿を目に収めるとまるで想定外と言わんばかりの表情を浮かべる。

 

「な、なんでこんな所に居るの、正和君!!」

 

その声と共に、黒い影は大きな唸り声を上げながら俺の方へ掛けてくる。

やばい。

今の俺では魔法も使えないので対抗する術がない。

逃げないと。

そう思うも、足が動かない。

初めて向けられた殺意。

それは体の動きを一時的に忘れさせる程の恐怖を感じさせた。

 

脳が死を明確にイメージしたのか、目の前の光景がゆっくりとスローに見える。

....は?こんなところで死ぬのか、俺?

思えばそもそもなんでこんなところに来たのだろうか。

最強の魔力を持っていようが、デバイスがなければ魔法が使えないのでなんの意味もない。

それなのにただなのはがセットアップする瞬間を見たかったから、黒い影となのはが交戦すると分かっているのにここに来たんじゃないか?

せっかくもらった特典を無駄にするような愚行。

浅はかとしか言いようがない。

やっぱり俺は転生してもまた.....

 

心の中を死に対する絶望が占めるといづれ来るであろう痛みに目を瞑る。

 

 

しかしその瞬間はいつまで経っても来なかった。

 

目を恐る恐る開くと、ピンク色のリングのような物に縛られて動けなくなっている黒い影が目の前で藻掻いていた。

 

「大丈夫っ!!怪我してない!!??」

 

俺の目の前に降りてきたなのはが尻もちをついている俺の顔を覗き込む。

俺は一瞬呆けたがすぐに返事する。

動けなくなるほど恐怖を感じたなんて悟られたなかった。

 

「あ、当たり前だろ!!へ、平気だからあんなのっ!!...うわっ!!」

 

咄嗟に意地を張って立ち上がろうとする。

しかし、よろけて立ち上がれない。

足を見ると恐怖からか小刻みに震えていた。

本当に情けない。

お前は最強系転生者なんだろ?

なんでそんなところを見せてるのか。

 

「大丈夫!?...掴まってて。」

 

なのはが俺に肩を貸す。

そして黒い影を見る。

どことなく目つきが鋭い気がする。

 

「....どうしたらいいの?」

 

なのはがフェレットに聞くとフェレットは答える。

 

「心を澄まして。心の中に、あなたの呪文が浮かぶはずです」

 

その言葉を聞いてなのはが目を瞑る。

そして口を開いた。

 

「....リリカルマジカル。」

 

「封印すべきは忌わしき器!ジュエルシード!」

 

なのはが詠唱しようとするのを聞いて、フェレットが言う。

詠唱を補佐しているのだろうか。

 

「ジュエルシード、封印!」

 

<Sealing Mode.Set up>

 

その言葉と共にレイジングハートが変形する。

 

<Stand by Ready>

 

変形したレイジングハートから放出されたピンク色の紐のようなものにグルグル巻きにされるジュエルシードの黒い影。

レイジングハートの言葉を聞き、なのはが目を見開いた。

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード、シリアル21、封印!」

 

<Sealing...>

 

その言葉と共にレイジングハートから発されたエネルギーに体を幾重にも撃ち抜かれて黒い影はキラキラと光のように消滅した....。

 

....すごい。

これが魔法を使うと言うこと。

アニメで腐るほど見ていたが、実際で見るのではまったく違う。

衝撃がこちらにも来たし、風も音も感じる。

それを見て気づいた。

俺はこの世界を甘く見ていたのだと。

 

 

 

 

 

 

「ふえー、これなにー!?」

 

フェレットの言う通りに杖を扱い自分が思い浮かべた衣装を纏う。

だが目の前の黒い影相手にどうしたら良いんだろう。

力を貸すと言ったものの、なにをしていいか分からない。

それに魔法の力を使うとはどうするのか...?

 

なのはが困惑した声を上げると、黒い影が目の前でどこかに視線を向けて唸る。

するとフェレットもそっちを見て声を上げた。

 

「ッ!!まずい!人がっ!!」

 

人...!?

その方向に目を向けると、そこには正和君が立っていた。

なんでこんなところに彼が....誰にも気づかれないように家を出たのにっ!!

しかもこんな危険な所で....。

 

「な、なんでこんな所に居るの、正和君!!」

 

私が声を上げた瞬間、黒い影が正和君目掛けて駆けていく。

唸り声を上げており、アレが正和君を殺そうとしているのはなんとなく分かった。

アレが正和君を押しつぶす、最悪の想像が脳裏をよぎる。

 

その瞬間、自分の立つ地盤が揺らいでなくなるかのような錯覚と共に鉄のように冷たい感覚が背筋を震えさせた。

このままじゃ、正和君が死んじゃう!

そう思うと杖を持つ手が細かく震えるほど恐怖を感じる。

嫌だ....嫌だ!!

あの子は....私にとって、大事な人なんだ!

誰でもいい!誰かっ!誰かっっ!!!

アレを止めて!!

正和君を....助けてっ!!!

 

<bind>

 

すると手元の杖が光り、ピンク色のリングで黒い影で封じる。

 

「レイジング、ハート.....」

 

私の思いに応えてくれた.....?

あの魔法は私が放っていない。

だというのにあの影の動きを止めてくれた。

私の思いを汲み取ってくれたのだろうか?

レイジングハートを見つめると、杖の先端の宝石が淡く光っていた。

ってこんなこと考える暇があるなら正和君の方に行かないと!!

 

飛び上がり、正和君の方へ降りる。

彼は尻もちを付いて呆気に取られている。

 

「大丈夫っ!!怪我してない!!??」

 

私がそう聞くと目の前の彼は呆気に取られていたがハッと表情を変えて自信満々に不敵な笑みを浮かべる。

 

「あ、当たり前だろ!!へ、平気だからあんなのっ!!...うわっ!!」

 

だが目の前でよろける。

見ると足がとても震えていて、自分の足を見る彼の目には怯えの色が認められる。

思えば当然だ。

こんな子供があんな殺意を向けられて平気で居るはずがない。

しかも殺されかけたのだ。

怖かったよね。

もう大丈夫、私が守るから。

多分、私にはその力が....あるから。

 

 

「大丈夫!?...掴まってて。」

 

私がそう言うと、逡巡した様子を見せるも大人しく私の肩を借りていた。

体を小刻みに震えさせている正和君を見ると沸々とあの影に対して怒りを感じる。

正和君を殺そうとしてこんなに震えるほど怖がらせた。

それが私には許せなかった。

 

「....どうしたらいいの?」

 

私が問うと、フェレットは答えた。

 

「心を澄まして。心の中に、あなたの呪文が浮かぶはずです」

 

心を澄ます。

私は目を閉じる。

今心にあること。

正和君を守りたいという気持ち。

そして目の前の影に対する怒り。

 

するとある言葉が浮かんできた。

 

「....リリカルマジカル。」

 

淡々と言葉を紡ぐ。

自分からこんなにも冷たい声が出るのかと驚く。

でもしょうがない。

それだけ失いたくない人だから....奪おうとした相手に対してこんな声が出ても普通だよね。

 

「封印すべきは忌わしき器!ジュエルシード!」

 

「ジュエルシード、封印!」

 

<Sealing Mode.Set up>

 

その言葉と言った瞬間、持っている杖が音を立てて変形する。

 

<Stand by Ready>

 

準備が出来たと告げるレイジングハート。

目の前の、私の大切な物を奪おうとした闇を....払うッ!!

私は目を見開いた。

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード、シリアル21、封印ッ!」

 

<Sealing...>

 

その言葉と共にレイジングハートから発されたエネルギーに体を幾重にも撃ち抜かれて黒い影はキラキラと光のように消滅する。

良かった....正和君を守れた。

私の中にはただ大切な人を守れたという安堵が広がっていた。

 

 




影に殺意を向けられて恐怖で動けなくなる主人公。
普通に考えて戦うということは相手から害意を向けられるということなので平和な日本で暮らしていた男がそれを受けて普通に動けるわけないんですよね。
まぁ転生前の彼にはそんなこと分かるはずもないんですけどね。

そして主人公を守るために戦うなのは。
その思いに応えるレイジングハート。
これじゃ主人公がヒロインみたいじゃないか。
たまげたなぁ.....。


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家にペット来るわwwww

コイツ授業の合間の休み時間にこんなもん書いてますよ。
やっぱ好きなんすねぇ。


俺が動けなくなっていた間に、なのはが影を消滅させていた。

これが魔法の力....。

 

「あっ.....」

 

俺がこの世界の力がどのようなものかを思い知っていると、なのはがさっきの影が居た地点に青色の綺麗な宝石のようなものが転がっているのを目に留める。

ジュエルシード、ロストロギアの一種で1期におけるキーアイテムである。

これを取り合ってなのはとフェイトは幾度となく激突することになる。

 

「これが、ジュエルシードです。

レイジングハートで触れて」

 

「う、うん。」

 

<Receipt number XXI>

 

ユーノ君に促されるまま、なのははレイジングハートでジュエルシードに触れる。

すると音声と共にジュエルシードはレイジングハートに取り込まれるように姿を消した。

 

「はい、あなたのおかげで...。ありがとう...」

 

「ちょっ、ちょっと大丈夫!?ねぇ!!」

 

フェレットはその様を見届けると力を使い果たしたか目を瞑り、気絶した。

なのははそんなフェレットに駆け寄り、揺らす。

原作でも見た光景。

 

だがそんなことは俺にとってはどうでもよかった。

そんなことよりも自分にとって看過できないこと。

....俺はさっき動けなかった?

散々本編始まる前から最強系転生者ってイキっておいてなんだこの体たらくは。

戦うということは相手から殺意を向けられるということは考えればわかったことだ。

最強系転生者になるということはそれを踏まえた上で頂点に立つこと。

こんな風に震えている奴が最強系転生者だなんて笑わせる。

自分で最強系転生者になると決めたんじゃないか。

こんなんじゃ....俺は.......。

 

「ぇ...!ねぇ...正和君!!」

 

「おわっ!な、なんだよ......。」

 

なのはが顔を近づけて俺を呼ぶ。

考え事していて分からなかった。

だがどうしたんだろうか?急に顔なんか近づけて。

 

「なんで無視するのっ!」

 

「い、いや無視したわけじゃないよ....考え事していただけで。」

 

「そっ、そっかぁ.....。」

 

俺が返事するとなのはが顔を伏せて納得する。

 

「本当に心配したんだから!どうやってここまで来たの?」

 

なのはが俺に詰め寄り肩を掴んで聞いてくる。

確かになのはからすれば人がいないか確認して出て行ってるし、そもそもなんで俺が原作知識を持っていたから動物病院になのはがいると分かったなんてことは知る由もない。

ならどうやって答えるか....いや、ここは無難に行こう。

 

「窓の外から夜なのに出て行くのが見えたから。

なんとなくなのはが行くであろう所を歩いていたら見つけちゃったみたいで。」

 

「そっかぁ....でも今度から一人で夜に家を出歩いちゃダメだよ!....って私も人の事言えないね。」

 

頬を掻いて苦笑いを浮かべるなのは。

俺もそれに同調して空笑いをした。

確かこの後ユーノ君が起きて、恭介さんが追いかけてくるんだっけ?

ならさっきみたいにボッーと考え事をしている暇はないな。

 

確かに今回は殺意を向けられて怖気づいた。

だが、それなら次の機会で立ち向かえば良い。

そうしなければ最強系転生者になんかなれるわけがない。

まずはどうにかしてデバイスを手に入れないとな。

まぁデバイスくらいアースラとかで受け取れるだろう。

なんたって俺魔力最強の俺TUEEE!!!系主人公だかんな!

 

「そ、そういえば....もしかして私達ここに居たら結構アレかな.....?」

 

周りを見渡してなのはは言う。

確かに周囲は黒い影の影響か電柱もへし折れていて、病院は外から見ても滅茶苦茶だ。

ここに居れば間違いなく警察が来て、事情聴収されるに決まっている。

そうなるとかなり面倒なことになるのは目に見えている。

 

「そうだな。....ずらかるか?」

 

「う、うんっ!そ....そのっ、ごめんなさいぃ~!!」

 

そう叫んで駆け出すなのはの後ろに追従する。

確かこの後にずらかった先でユーノ君が起きる。

ユーノとの初会話になる。

....というか女の子に抱きかかえられて移動とか良い身分ですね。

まぁ将来の俺はハーレムを作るって決まっているから文句は言わないけどなっ!

 

 

 

必死に走った路地の先、そこでなのはと俺は疲れて立ち止まる。

するとなのはの腕の中のフェレットがむくりと起き上がった。

 

「あっ、正和君この子起きたよ!!」

 

なのはが腕の中で動くユーノ君を見て俺を呼ぶ。

 

「こ、ここは....あっ、あなたはあの時のッ!大丈夫ですか!!」

 

ユーノが寝ぼけ眼な声を上げると俺の顔を目に収めた瞬間、飛び起きて俺に頭を下げる。

 

「あ、ああっ...なのはのおかげでなんともないけど。」

 

「そ、そんな私のおかげなんて....」

 

俺の言葉を聞いてなのはは照れたような表情で笑う。

 

「よかった....でも、あなたを巻き込んでしまった。本当にすみません....僕の落ち度です...。」

 

ユーノ君が安堵したような声を上げるも、声を落ち込ませて項垂れる。

フェレットが凹んでるとこなんか初めて見るな。

 

「そんな謝んなって。怪我、大丈夫かよ。」

 

正直、俺はユーノが回復魔法で傷を治していることは知っている。

だが視界の隅でなのはが心配そうにユーノを見つめているのでここで平気だと彼の口から言ってもらった方が話が早い。

俺が聞くと、フェレットは一瞬呆けた後に笑顔を見せる。

 

「はいっ!怪我は平気です、もうほとんど治っているので。」

 

「本当だー、怪我の痕がほとんど消えてる...。すごーい....、これも魔法?」

 

なのははユーノに付いていたはずの傷が治癒しているのを見て感嘆の声を上げて尋ねる。

するとフェレットは頷く。

 

「はい、助けてくれたおかげで、残った魔力を治療にまわせました。ありがとうございます。」

 

....俺は助けてないけどな。

何もしてないし、なんなら邪魔になっていたような.....。

...ま、まぁこれから?最強系転生者になったら何でもできるからな。

気が向いたら助けてやったりもできるだろう。

 

「ていうかそもそも魔法ってなんだよ。

というかあの黒い影が何かを教えてくれよ。」

 

「そ、それは.....。」

 

俺が聞くとユーノが口ごもる。

そんなユーノを見て首を傾げるなのは。

 

「ど、どうしたの?」

 

するとユーノはそんな彼女を一目見て口を開いた。

 

「いや....なのはさんを同意を得たとはいえ僕のやるべきことに巻き込んでしまった。

それに加えてあなたを巻き込むわけには.....。」

 

「俺はもう既に見たからな。

....なら、教えて欲しい。知る権利くらいは俺にもあると思うから。」

 

お前らとつるんでないとアースラ連中と繋がれないからな。

最低でも魔法を知っている一般人くらいの立ち位置は欲しい。

 

すると彼は暫く考え込んで口を開いた。

 

「....僕らの魔法は、発動体に組み込んだ、プログラムと呼ばれる方式です。

そして、その方式を発動させるために必要なのは、術者の精神エネルギー、そしてあの黒い影はジュエルシードの忌まわしき力で生み出された思念体。

彼女の持っている杖によって封印できます。」

 

ユーノ君が説明する。

基本的な魔法は祈るだけで良いが、強力な魔法は呪文が必要だとかそこらへんの詳しい事を省いているのはまだ俺を巻き込まないように必要最低限の情報しか教えないつもりだからだろう。

今回のジュエルシード騒動は彼の発掘したジュエルシードが散らばったことが発端であるし、責任を感じている。

だからこそ巻き込む人を少なくしようとしているのだろう。

まぁ余計なお世話なんですけどねっ!

俺は自分からガンガン関わっていく気満々だから。

目の前に最強の魔力を持つ男が居るのになのはにデバイス渡しちゃうような目が節穴なユーノ君では俺の考えていることなど分かるはずもないか。

 

「そうか。

教えてくれてありがとう。」

 

俺がお礼を言うとなのはが笑う。

 

「へー魔法ってそういうものなんだ。

なんとなく分かったよ!」

 

なのはが笑うと、ユーノはなのはに言う。

 

「君にはこれから魔法を使ってもらうことになるから後でもっと詳しく話すよ。」

 

えっ、俺は?

この淫獣、早くもなのは狙ってんのか?

...まっ、俺は既に原作で魔法については大体知ってるしぃ?

別に教えてもらわなくても良いしー?

ただ最強系転生者である俺をハブったことをいつか後悔させてやんよ。

 

「?よくわからないけど、分かったよ。

じゃあ取り敢えず私達お互いのこと知らないし、自己紹介してもいい?」

 

「あ、うん。」

 

自己紹介してもいいかと言うなのはの問いに了承するユーノ。

原作でも自己紹介してたなぁ....それまでの会話の内容は違うけど。

まぁ本来居ないはずの俺が居るからな。

かぁー!辛いわ~居るだけで影響与えるとか辛いわぁ~!

 

「私、高町なのは。小学校3年生。家族とか仲良しの友達は、なのはって呼ぶよ。」

 

なのはがそう言うと、ユーノも口を開いた。

 

「僕は、ユーノ・スクライア。スクライアは部族名だから、ユーノが名前です。」

 

「へぇユーノ君かぁ、かわいい名前だね。」

 

「そ、そうかな....えへへ。」

 

なのはが感想述べるとユーノが笑う。

ケッ、ラブコメしやがって。

こちとらそんなことしなくてもニコポあるし、なんならなのはニコポ効くからいつでも挽回出来る。

だから別になんとも思ってねぇよ、本当だよ?

 

するとユーノは俺の顔をじっと見つめる。

な、なんだよ.....

もしかして考えていたことがバレたのか?

いやそんなはずは......

 

「あの....名前を、教えてもらえませんか?」

 

ユーノが顔色を伺うかのように聞いてくる。

確かに自己紹介タイムだというのに俺だけ名前を言わないのもおかしいか。

 

「俺は北形正和。....普通に下の名前で呼んでくれたらいいよ。」

 

名前を教えるとユーノが笑う。

 

「マサカズさん...ですか。良い名前ですねっ!よろしくお願いします!」

 

....そんなに良い名前なのだろうか?

自分ではよくわからない。

俺の名前はそんな印象に残る類の物ではないと思っていたのだが。

もしくはニコポでも作用したか?

でも俺笑ってないけど。

....いやニコポの効果だろうな、じゃないと俺がこんなこと言われるわけないし。

 

そしてユーノはまた顔を曇らせた。

 

「なのはさんとマサカズさんを巻き込んでしまいました....。これは僕だけでやるべきことだったのに....本当にすみません。」

 

コイツまだ謝んの?

もう正直そこらへんは良いだろ。

 

「俺は別に気にしてないし、なんなら面白そうじゃん。なぁなのは?」

 

俺がなのはにそう言うとなのはは複雑な表情を見せる。

 

「面白そうって結構正和君危なかったんだけどなぁ......、でも正和君と同じで私も平気。だからそんな謝らなくていいよ!」

 

「皆さん....。」

 

俺となのはの言葉を聞いてウルウルと目を潤ませるユーノ。

そんなユーノは微笑ましそうになのはは眺めていると、突然声を出した。

 

「あっ、そうだ。ユーノ君怪我していたんだし、とりあえず家に連れて行こうよっ!

ここじゃ落ち着かないしさ。」

 

「え、えっ!い、家ですか!?良いんですか!!?」

 

ユーノが驚愕している。

早速家に連れ込むのか。

最近の子供は進んでんなぁ。

まぁでも家族会議の結果上、家で飼うのは決定しているし遅いか早いかの違いだろう。

 

「何を驚いてんだ。今日からお前は俺たちの家族になるんだよ。」

 

「か、家族ですかっ!?」

 

ユーノの頭に手を乗せてそう言うとユーノが驚いている。

...今日から家族だって確かバイオハザードのセリフであったよな?

ま、やったことないからよく知らないんだけど。

 

「よーし!それじゃ善は急げ!今から家に一緒に帰ろう!!」

 

「おー」

 

「お、おー?」

 

なのはがユーノを抱きかかえると元気よく手を挙げる。

俺もそれになんとなく同調して、ユーノ君は困惑気味に同調していた。

 

 

 

 

 

「おかえり、二人とも。」

 

家の前に到着すると恭也さんが立っていた。

ちょっと機嫌が悪そうだ。

というか俺たちがまだ小学生の癖に真夜中に家を出て行ったからなんだろうが。

 

「お、お兄ちゃん....」

 

なのははそんな恭也さんの気迫に気圧されている。

ここは俺が何とかしないといけないだろうか。

 

「い、いや恭也さんこれにはわけが...「こんな時間に、どこにお出かけだ?」....」

 

俺が弁解をしようとすると恭也さんが被せてきた。

なるほど、言い訳を聞くつもりはないということか。

 

「あの、その、えーと、えと...」

 

なのははどう伝えたものか困って目を泳がせている。

当然だ。

今の今まで魔法少女になって黒い影と戦っていましたなんて言っても信じてもらえないだろう。

頭おかしくなったのかと心配されるか、くだらない嘘を吐いているのかと思われるに違いない。

これどうしたらいいんだろう.....。

 

「あら可愛い~」

 

俺たちが恭也さんに対してどう伝えた者か迷っていると恭也さんの後ろから美由希さんがひょこっと顔を出してなのはに歩み寄り、ユーノ君を見て言った。

 

「あ、お、お姉ちゃん…?」

 

なのはも急に姉が出てきて驚いたのだろう。

俺もびっくりしている。

 

美由希さんはユーノを長時間見続けると、なのはに笑いかける。

 

「あら?この子何か元気ないね。なのはと正和君はこの子の事が心配で様子を見に行ったのね」

 

なんか勝手に良いように解釈してくれた。

よしっ!ここは彼女の解釈に全力で乗っかろう。

 

「えーと、あと、その...「そうなんですっ!だよな、なのは?」う、うん!そうなの!」

 

なのはがオドオドしているので無理くり彼女にもそうであると認めてもらう。

ここでオドオドしていると却って怪しいからな。

すると恭也さんは俺たちの言葉を聞いて難しい顔で考え込む。

 

「気持ちはわからんでもないが、だからといって内緒でというのはいただけない」

 

「まぁまぁ、いいじゃない。こうして無事に戻ってきてるんだし。

それになのはも正和君も良い子だから、もうこんなことしないもんね?」

 

渋る兄を宥めると俺たちに視線を向ける美由希さん。

 

「うん、その、お兄ちゃん?内緒で出かけて、心配かけてごめんなさい」

 

「すみませんでした。」

 

俺となのはは頭を下げる。

恭也さんはそんな俺たちを見て、表情を和らげた。

 

「うん。夜に子供だけで出歩くのは危ない。以後こんなことはしないでくれ。心配だ。」

 

恭也さんはそう言うと俺たちに背を向ける。

まぁ兄の立場からすれば妹が夜外に出て行くなんて心配で仕方ないだろう。

そして美由希さんは恭也さんの後に続きながら舌をチロッと悪戯好きな子供のような表情を見せる。

どうやら彼女は俺たちの心情を察して助け船を出してくれたのだろう。

すごく良い人だ。

もし力を手に入れたらハーレムにぶちこんでやるぜ!!

冗談だが。

....なんというか高町家の面々は段々そういう対象として見れなくなってきたんだよなぁ。

一緒の家で暮らしているともうそういう対象じゃないっていうか。

俺も丸くなったもんだぜ。

 

そうして家に帰って、なのはがユーノ君を見せたことで桃子さんがユーノの可愛さに心奪われたらしく家族総出でフェレットの食事やペットとして飼うときの注意点など調べた。

なんかちやほやされやがって.....。

ま、まぁ?来たばっかりだしぃ?家族のみんなは動物って思ってるからああいう対応しているってわかってるから?

俺はユーノ君が同い年くらいのショタってことを知ってるからそういう目で見てしまうだけだし。

断じて嫉妬じゃないよ?本当だよ?

 

そして.....

 

「おやすみ、ユーノ。」

 

「おやすみなさい、マサカズさん。」

 

ケージをまだ買っていないので、暫くは俺となのはの部屋で交代交代で寝てもらうことになった。

取り敢えず毛布かなんか床に敷いておけば一時的ではあるがユーノの寝床になるだろう。

俺はベッドに入る。

とにかくこれからはユーノとなのはの封印作業に付いて行って、アースラ連中とつながりが出来れば御の字だ。

俺は早くデバイスを手に入れないと。

そうじゃなきゃもらった特典すら活かせない。

最強系転生者なんて夢のまた夢だ。

それになれなきゃ特典をもらったことも、転生したことも、今ここにいることも全て意味がなくなってしまうから。

 

 

 

 

マサカズさんが隣のベッドで眠っている。

僕がやるべきことであるジュエルシードの回収に巻き込んでしまったのみならず家に住まわせてくれるなんてなのはやマサカズさん、それにこの家の人たちもとても優しい人だと思った。

マサカズさんだって初めて会った時から割と優しかったし、家に来た時も毛布を敷いて寝床を作ってくれたりと色々世話をしてくれている。

彼は僕の事を喋れるフェレットと思っているのだろう。

家族の方たちもそうだ。

なんか騙しているみたいで胸が罪悪感で痛む。

だからこそ気になったのだ。

寝る前に彼が見せていた表情。

 

それはまるで何かに追われて追い詰められているような表情だった。

だがそれもむべなるかな、あの影に襲われたのだ。

恐怖を感じていたに違いない。

そう思うと申し訳なさで胸がいっぱいになる。

僕があの段階で全て封印できていれば......。

 

目の前の少年には通信魔法が届いていたこともあり、なのはさんと同じくリンカーコアがある。

だがなのはさん程の魔力は感じない。

きっと彼には魔力が少なく、ジュエルシードとの戦闘も難しいはずだ。

彼だけはなんとしてでも戦いから遠ざけないと。

ユーノがそう決めると部屋のドアが開く。

 

誰だろう?

見るとそこにはなのはさんが立っていた。

なのははゆっくりと音を立てないように彼の元に近寄ると頭を撫でる。

そして安堵したかのように笑っていた。

 

そして僕の方を向く。

 

「ユーノ君、起きてるんでしょ?」

 

「う、うん....。」

 

ボクが答えるとなのはさんは僕の目を真っ直ぐ見て口を開いた。

 

「....私、戦うよ。

あんなのが居たら正和君やみんな、平和に暮らせないもん。

だから私、戦う。」

 

「なのはさん....。」

 

「だから...魔法とかあの石とか知らないこと、いろいろ教えて。

それとなのはでいいよ。なんかその話し方だと距離を感じちゃうし。」

 

なのははそう言って笑う。

彼女の覚悟は本物だ。

誰かの為に戦うというその行為はとても高潔な物で....。

だからこそ僕は....。

 

「わかった。明日、全部話すよ。よろしくね、なのは。」

 

彼女の頼みを了承した。

 

「ありがとう。それと....できれば今回みたいなことが起きないように正和君を巻き込みたくないの。

もうあんな思い二度としたくないから。」

 

彼女は彼を苦し気な表情で見つめる。

なんでも彼の両親が海外に長期勤務に行ってから長い期間一緒に暮らしているらしい。

彼女にとって彼は大切な人なのだろう。

だからこそ巻き込みたくないのだ。

....奇しくも自分と同じことを考えていた目の前の少女に笑いかける。

 

「うん、わかってる。僕もそれは思ってたから。」

 

僕の返事を聞いてなのはは安心したように肩の力を抜いた。

 

「そっかぁ....なら安心した。これから二人で頑張ろうね。」

 

「うん!」

 

そう言ってなのはは部屋を出る。

そして僕も眠りについたのだった。

 




主人公は前回恐怖で動けなくなったことからしっかりしろと自分を鼓舞してデバイスを求めてユーノとなのはの封印作業に付いていこうと思っています。
一方二人は巻き込みたくないので主人公を封印作業からハブる気満々です。

というよりデバイスを持っていても最強の魔力を持っているわけではないので、主人公が思っているような活躍なんか出来るわけないんですけどね。

....いつフェイトちゃん出せるようになるんだろう。
早く出したいです。


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夜天の主とも知り合いとか俺パネェwwww

フェイトちゃん出したいとかtwitterで言ってた癖にはやてを先に出している-114514
はやてを出している+810
はやてはかわいい。+1919


ユーノが家に来て数日経った。

彼ももう立派な高町家の一員という感じで、桃子さんや美由希さん、なのは等主に女性陣から可愛がられていた。

正直見ていて面白くないが、もっと面白くないことが別にある。

なのはとユーノが俺をハブるのだ。

気づけば二人でどこかへ行き、ジュエルシードを封印してくる。

直接一緒に行かせろと頼み込んでも危ないからと断られるし、後ろから付いていこうにも飛んで行かれる。

不愉快なことこの上ない。

俺は少しでもお前らと行動して管理局に会える可能性を高めようと思っているのに。

コッチの都合も考えて欲しいものである。

 

そして俺は今は....。

 

「本当に良いの?」

 

玄関で桃子さんは首を傾げる。

そして高町家一行も同じく俺を見つめていた。

 

「はい、親戚がこの町の近くに来るらしいのでサッカーの試合は見に行けないんですよ。すいません士郎さん。」

 

今日は士郎さんがオーナー兼コーチを勤めるサッカーチーム「翠屋JFC」の試合の日であり、アリサとすずかを含めた一行で試合の応援に行くらしい。

サッカーチーム持ってるとか翠屋って繁盛してるんだなぁと実感しつつも、彼らからの誘いを断ったのだ。

それは親戚に用がある....なんてことではなく、ただ俺自身サッカーには嫌な思い出があるのだ。

なので今日の試合のキーパーがジュエルシードを起動させてしまうことは知っているが、行かないと決めたのだった。

 

「残念だね。....まぁでもまた次の試合があったら来てくれたら嬉しい。」

 

士郎さんは笑いながらそう言ってくれる。

しかしなのははどこか浮かない顔をしている。

 

「本当に良いの?....アリサちゃんとすずかちゃんも来るんだけど。」

 

「ああ。俺も行きたいのは山々なんだけど顔を見せないといけないからさ。楽しんで来いよ。ユーノもな。」

 

俺はなのはが抱えているユーノの頭を撫でる。

この野郎てめぇ俺が居ない間に5個もジュエルシード封印しやがってこの野郎と恨みを込めながらも丁寧に撫でる。

行きたいのも山々なんてよくもまぁ口が回るだと自分に対して呆れのような感情が湧く。

まだ転生者としてなにもしていない癖に口だけは達者だ。

 

「じゃあなにかお土産でも買ってきてあげよっか?」

 

美由希さんが俺にそう聞いてくる。

用事で来れない俺に気を利かせてくれたのだろう。

本当は嘘であるのでちょっと罪悪感を感じる。

 

「じゃあお願いしてもらってもいいですか?」

 

「任せて。おいしい物買ってくるから!」

 

桃子さんがサムズアップする。

それに愛想笑いで返しつつ、家を出る彼らを見送った。

 

さて彼らが帰って来るまでの間、何をしようか。

....適当に歩くか。

 

俺は暫く経つと靴を履いて一人で家を出ていた。

 

 

 

路上を一人で歩く。

今まではなのはが居たが、なのはがユーノのジュエルシード集めに協力しだしてから一人で歩くことも増えてきた。

一人は嫌だ。

余計な事を考えてしまう。

 

サッカーか。

サッカーといえば思い出すのは前の世界での唯一の親友。

代表候補になるくらい上手かったからなぁ...アイツ。

そして....

 

『....れじゃなくて....んたが、...ねばよかっ.....!!』

 

泣きながら俺に激昂する女......って何を思い出しているのか。

俺は北形正和。

最強系転生者だ。

最強の魔力をもらってニコポも持っている。

この世界の頂点に立ってハーレムを築き、みんなにチヤホヤしてもらう俺TUEEE系転生者なんだ。

この世界では二度とあんな思いをすることはない。

だから前の世界のことなんか思い出す必要なんかないんだ。

 

「おーい!なにシけた面しとるん正和、こっち来ぃやー!」

 

急に誰かに大声で呼ばれて周りを挙動不審な様子で見渡す。

すると自身の横の公園に車椅子に乗った少女がこちらに向かって笑顔で手を振っていた。

俺はその子に対して歩み寄る。

 

「....今日はひっくり返ってないんだな。」

 

「ひっくり返ってたのは初めて会った時だけや!!」

 

冗談交じりに言った言葉に少女が噛み付く。

そして少女はこんどは意趣返しとばかりにニヤリと笑みを浮かべた。

 

「そういうキミは毎回私に会うときは浮かない顔しとるやん。どうしたん、また剣術が上手くならへんーとかそんなん悩んどるん?」

 

「毎回ではないだろ、毎回では。」

 

俺は目を逸らしつつそう返答する。

すると少女はベンチの方まで車椅子を移動させて俺に手招きした。

 

「辛気臭いなぁー!またはやてお姉さんが悩みくらい聞いたるわ。ほらこっちおいで。」

 

「....おう。」

 

俺が隣に座ると目の前の少女、八神はやては微笑む。

 

俺が彼女に会ったのはちょっと前からだ。

ユーノとなのはが二人だけでジュエルシードを封印しに行って、手持ち無沙汰になり公園まで散歩しに行った時のこと。

公園で車椅子が転倒したのかなんとか立ち上がろうとしている彼女を見かけて助けたのだ。

彼女は後の闇の書事件の当事者であり、夜天の主である為、当初俺は早めにニコポしとくかぁ~と邪な理由で助けたのだが、笑顔を見せたのだが.....

 

『なに笑っとるんや!馬鹿にしとるんかっ!!!』

 

ブチギレられてしまった。

よく考えてみれば彼女は足について本気で悩んでたんだから笑ったら馬鹿にされたと勘違いされてキレられるのは当たり前だった。

なのでずっと謝罪して弁解していたらいつの間にか俺の悩み相談のようになってしまった。

それから偶になのはとユーノが居ない間に公園に出向いているのだ。

 

「それで?今日はどうしたんや?」

 

「いや別に、前に話した居候先の家族がサッカーに行っててな。その暇つぶしに来ただけだ。別に悩みなんてねぇよ。」

 

俺がそう言うとはやてはまた笑みを浮かべた。

 

「アレ?じゃあ正和はなんでおるん?...あっ、馴染めてないのかぁ.....。」

 

「はぁ~~~~!?馴染めてますし!めっちゃ仲良しですしっ!!」

 

はやての言葉を必死に否定する。

しかしはやては俺の否定の言葉を取り合わない。

俺に生優しい目を向ける。

 

「必死になるところとかさらに怪しいなぁ。別に居候先の家族に誘われてなくて寂しくてここに来ていても私は笑ったりせんよ?....ぷふっ可哀想やなぁwww」

 

「笑ってんじゃねぇか!!」

 

俺を見て小馬鹿にしたかのように笑うはやてに噛み付く。

コイツは毎回会うたびにこんな風に弄ってくるのでちょっと苦手だ。

俺はいじられるよりも弄る方が良いのだ。

 

「でもならなんで浮かない表情してるのか分からへんやん。それ以外考えつかんで、私。」

 

はやては首を傾げながら俺に言う。

確かに話の内容的にそれ以外ないと思うのも当然だ。

それに本当の理由を話すわけにはいかないだろう。

少なくともサッカーから前の世界の事を想起していたなんて彼女に言っても前の世界?と疑問符が浮くに決まっている。

 

「....お前の言ってることが正解でいいよ。もう....。」

 

俺は諦めて彼女が予想が正しいと彼女に伝えた。

すると彼女はまるで虎の子を取ったかのようにしたり顔を見せる。

 

「なんや強がらずに早く言いやぁ~可愛いなぁ~!」

 

「やめろ、頭を掻き撫でるな!」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべて俺の頭を掻き撫でるはやて。

その手を払う俺。

子供扱いされてるようで嫌だった。

俺は確かに今の姿は子供であるが、転生前まで加算したらお前より年上なんだと声に出して言いたかった。

....お前、さっきは転生前の世界のこと考えなくていいとか思ってた癖にすぐ言葉を翻すんだな。

自分の都合のよさに驚愕した。

 

すると彼女は思い立ったのか今までとは違って真摯な目で俺を見つめた。

 

「そ、それやったら私の家で遊ばへん?」

 

「家....?」

 

家か....正直八神宅にはあまり近づきたくない。

あそこには闇の書があるからなぁ。

まだ闇の書事件が始まっていないにも関わらず厄ネタに接触するのは気が進まない。

 

俺が渋るとさっきまでの元気の良さはどこへやらオドオドと俺の顔色を窺うような目線を向ける。

 

「い、嫌ならええんよ?そのっ...どうしてもってわけやないし.....。」

 

所在なさげな様子のはやて。

その様子を見て決断した。

 

「いいよ。どうせ暇だし。」

 

俺が彼女の申し出を了承すると彼女が目を輝かせる。

 

「本当!?」

 

「うん、こんなしょうもない所で嘘なんか吐かねぇよ。」

 

「絶対やで!?もう取り消しとか効かんからな!!」

 

「良いって言ってんじゃん。早く行くぞ。」

 

彼女は俺が彼女の家に行くことになり、とても喜んでいる。

彼女は足が使えないにも関わらず、一人で暮らしている。

だからこそ一人は寂しいのだろう。

目の前の寂しがっている少女を見過ごすほどクズであるつもりはない。

それに一人でいるとさっきみたいに余計な事を考えてしまう。

好都合だ。

闇の書はまだ白紙で起動もしていないはずだしな。

 

「じゃあ車椅子引いてやるよ。手で回すのは結構疲れるだろ?」

 

「ええの?いやー男手が近くに居ると楽でええなぁ~。」

 

「お前車椅子ひっくり返すぞ。」

 

そうやって下らないことを話しながら彼女の家に向かう。

八神の家に行くのは初めてだったりする。

ちょっとだけ楽しみだ....ちょっとだけだけど。

 

 

「おじゃましまーす。」

 

彼女の家に入る俺。

家の内装はスロープが付いていたりとバリアフリーが徹底されており、はやてに対する配慮を感じられる。

靴を脱いではやての車椅子を引こうとする。

 

「あっ、もうええよ。家の中だし自分でやるわ。」

 

「そうか。」

 

彼女が言うなら自分が態々引く必要もないだろう。

彼女の車椅子の後に付いて行く。

 

「正和はなに飲む?」

 

「なんでも良いよ。」

 

リビングに入るとはやては冷蔵庫にまで移動してお茶を淹れてくれる。

そしてテーブルに座るとテレビのすぐそばに何かが置いてあるのを見つける。

 

「あ、あれって最近出たゲーム機だろ?」

 

「ん?ああそれ?やる?」

 

はやてが俺がゲーム機に興味を惹かれたと分かり、やるか聞いてくる。

俺は頷いた。

 

「おっ、いいね。へぇ格闘ゲームか。これ二人で出来るな。」

 

「え、二人?」

 

はやてが首を傾げる。

...なにかおかしなことを俺は言ったか?

いや、言ってねぇな。

 

「えっ、普通友達呼んでやるゲームつったら一緒に出来る奴やるだろ?」

 

俺がそれを言うとはやてはハッとした表情を一瞬見せた後に笑いだす。

 

「せ、せやな!いや~私家に友達呼んだことあんまりないから忘れとったわ!あははっ、はは!」

 

なるほどはやてはお一人様に慣れてしまっているらしい。

まぁ確かにそんなに頻繁に友達を家に呼ばないなら一人用の奴ばかりになるのは当たり前か。

棚に並んでるのも一人用ばかりだし。

俺も家でなのはと偶にやるぐらいだし。

 

「じゃあやるか。」

 

「うん!」

 

俺がゲーム機を起動するとはやてがこちらに手を広げる。

ん?なんだ?

 

「なに首傾げとるん。私だってソファに座りたいんよ。

手伝ってくれへん?」

 

「...ずっと車椅子に座ってちゃダメなの?」

 

尋ねるとはやてはジト目で見てくる。

 

「なんや自分はソファで寛いどいて私には車椅子に座ってろってこと言いたいんか?

ここの家主私なんやけどな~。」

 

「わかったよ。ほら...あまりうまくできないかもしれないぞ。」

 

手を広げる彼女の腋の下あたりに腕を通して抱きあげる形で持ち上げる。

剣術しててよかったな。

そこそこ余裕をもって持ち上げられた。

しかし抱き上げる以上体が密着してしまう。

....別に意識なんかしてないしぃ?

俺はロリコンじゃないからね。

ボンキュボン相手ならドキドキするが小学生相手だしなぁ。

それに密着するくらいこれからハーレムを作るなら幾らでもそんな場面あるからね。

その程度で動じてちゃやってられないからな。

 

はやてをソファに座らせる。

すると彼女は俺を見てにやつきだした。

 

「なんやくっついた時心臓バクバクしとったな、お姉さんとくっついてドキドキしたん?」

 

「は、は、はぁ!?してねぇし!!思い上がんな!!」

 

彼女の言葉を聞いてつい大声を出してしまった。

これではまるで図星を突かれたみたいじゃないか。

少し落ち着かなくては....。

彼女は依然変わらずむかつくニヤケ面でこちらを見つめている。

この野郎.....。

 

これ以上弁解しては奴の思うつぼだ。

ここはゲームでボコボコにして黙らせよう。

 

ゲームを起動してスタートをボタンを押した。

 

はやてはなんか羽の生えた妖精みたいなキャラを選択している。

正直このゲームはなのはと結構やっている。

だからこそ自信があるのだ。

いつも使うこの露出度の高い女キャラにしたろww

 

おっしゃボコボコにしてやんよっ!!

 

「は?なにその動き、ちょっ....なにもできないんだけど。」

 

「無限ループって知っとる?」

 

負けた

 

「え、そ、そんな動きあるかよ、なんだその動き!気持ち悪いわ!!」

 

「ん~?これが上級者の動きってもんや。覚えとくんやな。」

 

また負けた

 

「ハンデなんか付けやがって....その油断が命取り.....おいちょっと待て。

八神はやて...貴様、このゲーム極めてるな!!」

 

「そりゃ私の持ってるゲームソフトやしなぁ。」

 

またまた負けた。

 

「おい、やめろその動き!なんだその屈伸は!煽ってんのか!!」

 

「え~、でも正和弱すぎて手持ち無沙汰やしなぁ~。」

 

「てめぇぇぇぇえぇぇぇええええ!!!!!」

 

またまたまた負けた。

 

俺は最終的に一度も勝つことが出来ずにはやてに蹂躙される。

なんだこれは....ここまで負けたことなんかないぞ。

逆に清々しいくらいの負けだ。

 

時計を見るともう6時30分。

もう日も暮れ始めた。

 

「正和、今日はホントに楽しかったわ!!」

 

まぁあんだけ勝ってたら愉快でしょうねぇ。

だが、確かにはやてと居たおかげで久しぶりに何も考えずに楽しむことが出来た。

なので楽しかったと言ってもいいだろう。

 

「...まぁ俺も楽しかったよ。」

 

目線をはやてから逸らしつつも、返答する。

するとはやてはまたまたニヤリと笑う。

 

「せや!結局正和一度も勝てんかったし、一つ私の言うこと聞いてや!」

 

「はぁ?そんなの最初から言えよ。ノーカンだわ。」

 

突然とんでもない事言い出したはやて。

そんな彼女にジト目を向けるも彼女は俺に対して手を合わせる。

 

「お願いや!聞くだけ聞いてくれへん?なっ!?この通り!」

 

「....言うだけ言ってみろ。」

 

そう言うとはやては笑う。

その笑みはまるで端から今から言うことが聞き入れられることがないと分かっているような諦観を窺わせるような笑みだった。

 

「明日も.....私に会いに来てくれへん?私、こんなに楽しい事久しぶりなんよ。だから......。」

 

....彼女は今まで一人だった。

だからこそ家に誰か居て遊んだり話したりすることがあまりない。

だからこそ人恋しいのだろう。

表向きは明るくても、裏では彼女は寂しがり屋な女の子だということを原作を知っている俺は端から知っている。

だからこそ....。

 

「....行けるかどうかは断言できない。」

 

「そっか....そりゃ当たり前やな、忘れて....。」

 

そう言うとはやては肩を竦めて俯く。

 

「だから....ほらっ。」

 

「え?」

 

俺は携帯を渡す。

はやては携帯を受け取ったはやては呆けた声を出す。

 

「....番号とメアド教える。

これで会えない時にも話せるだろ?」

 

なんというか恥ずかしい。

まるで女の子に連絡先を渡す軟派男のようだ。

だけど多分これが一番彼女が寂しくなくて済む一番の方法だと思うから。

 

「...ふふっ、ありがとう。

ちょっと待ってな。」

 

彼女はポケットから携帯を出して俺と自分の携帯を交互に操作する。

そして携帯を俺に返す。

 

「私の登録したから。

....なんか私初めてや。友達と連絡先交換するの。」

 

「そうか。

....それじゃまた今度な。」

 

「うんっ!またね正和!」

 

俺が後ろの少女に手を振ると、彼女も手を振り返して見送ってくれる。

俺は目の前の子がどんな子か、どれほど一人で苦しんでいるか知っているから。

だから....彼女の痛みを和らげたいと思っても、罰は当たらないよな?

 

原作を知っているからこそ、彼女は放っておいても救われる。

それは知っている。

でもだからと言って目の前で苦しむ人をいづれ楽になるからと見逃したくない。

ただの自己満足、醜いエゴに過ぎない。

でも....俺がやりたいと思ったのだ。

 

 

家に帰るとどうやら美由希さんがお土産にいかめしを買ってきてくれた。

なんでも結構有名な店舗の物らしくとてもおいしい。

食卓を囲み終えると寝る用意を始める。

今日はなのはの日らしく、ユーノはなのはの部屋で眠っている。

ベッドの中に入るとドアを誰かに叩かれる。

 

「どうぞ。」

 

すると扉が開き恭也さんが入ってくる。

その顔は真剣だ。

真っ直ぐな目で俺を見ている。

 

「どうしたんですか?」

 

俺が聞くと恭也さんが口を開いた。

 

「....お前は何を怖がっている。」

 

なにを?怖がっている?

どういうことだろう。

イマイチ質問の意味が分からない。

 

「えーと、どういうことを聞いてるのか要領を得ないんですが....」

 

俺が愛想笑いで返答するも、恭也さんは表情を変えることはない。

 

「....俺達が試合の応援に行く時、お前はなにかに怯え、逃げようとした。」

 

「なんのことを、」

 

「サッカー。」

 

恭也さんの言葉にピクリと体が反応する。

否応なくあの時のことを思い出してしまう。

 

「....やはりか。お前はサッカーになにかしらのトラウマを抱いている。いや、もしくはそれすら数あるトラウマの中の一つに過ぎない...と言ったところか。」

 

....なんでこの人はこんなに鋭いのだろうか。

 

「なんで.....」

 

「どのくらい長く一緒に暮らし、お前の剣を見たと思っている。

お前のことは割と分かっているつもりだ。」

 

恭也さんがさらっとトンデモナイ事を言い出す。

いや普通それだけじゃそこまで言い当てられたりしないから。

しかし困った。

これに関してはこの世界の人にはとても話しにくい。

というより話したくもなければ考えたくもない見なかったことにしときたい所だ。

だというのにここでそこを突かれるなんて....!

 

俺が黙っていると恭也さんが溜息を吐く。

 

「俺は別に話せと言うつもりはない。

人の心には1つや2つ秘めておきたいことがある。

....だがな。」

 

恭也さんは一歩踏み出し、俺の肩に手を置く。

それはまるで生徒を励まし、諭す先生のようだった。

 

「自分の弱さといつかは向き合わないといけない。

....逃げてばかりでは、いつか自分のことも見失って、嫌いになってしまう。

....それだけは忘れるな。」

 

そう言い残すと肩から手を離しておやすみと一言言って部屋を出た。

後には部屋で一人立ち尽くす俺だけが残っていた。

 

 

分かってんだよそんなことは、俺が一番。

でもだからって苦しいんだ。

見たくないんだ。

だから俺はここにいるのに.....。

 

「....寝るか。」

 

俺は不意に向き合わされた自分の弱さから目を背けるように、ベッドに入ると目を閉じて眠りについた。

 

 

 

 

少女はベッドで横になると、携帯を取り出し眺める。

友人との初めての連絡先交換。

それは少女にとってはかなり大きな出来事だ。

 

「ふふっ....」

 

これがあれば直接会わなくても喋れる。

前よりも辛くはなくなる。

しかし....

 

「でも、どうせならもっと一緒に、近くに居りたいなぁ。」

 

少女は初めて出来た友人ともっと一緒に近くに居たいという純粋な願望を口から漏らす。

それは今まで両親だけでなく友人もいない一人の少女にとっての一番の願望であろう。

しかし少女は苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ、そんなの無理やろうけど。」

 

彼には彼の生活がある。

確かに彼との時間は楽しいが、彼にとっては自分との時間なんて日々過ごしている時間の一部に過ぎない。

だから偶にでいいから会いに来てくれればそれでいいと自分で納得する。

 

そして部屋の電気を消して眠りについた。

 

はやてが眠りについてしばらくして、机の上の古ぼけた本が一瞬淡く光ったことには当然彼女は気づかない。




今回は全体的に主人公の背景を少し小出しにしつつ、はやてを出しました。
これが昨今話題になった匂わせですか....?

はやくフェイトちゃん出したいです。


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運命とも出会えたわwwww

投稿日がはやての誕生日にも関わらずはやてが出てこない-20200604
フェイトちゃんを出すのが遅い-114514



週末。

俺となのは、恭也さんの3人は玄関で靴を履いて外出しようといていた。

なんでもすずかが今度お茶会しようよとなのはに言ったらしく俺も一緒に月村家に行くことになったのだ。

お茶会にはアリサも居るらしくなぜか俺も一緒に行くことになった。

ちなみに恭也さんは恋人であり、すずかの姉である月村忍に会いに行くつもりらしい。

....あの人にもそういう一面あるんだな。

正直はやての家に行ったあの日から少し恭也さんは苦手だ。

...剣術の稽古をつけてくれるので悪いのだが。

 

ちなみになのははユーノを手に抱えている。

最近はもうその光景にも慣れて来たものだ。

 

「あのさぁ....お茶会って行く必要ある?

女子会だろ?俺いらなくない?」

 

俺が言うとなのはは首を振る。

 

「そんなことないよ!すずかちゃんもアリサちゃんも正和君が来るの楽しみにしてたよ!

それに最近私もほら、大変で正和君と休日遊ぶことが少なくなってきたし.....」

 

そう言うなのはにジト目を向ける。

 

「そりゃどっかの誰かさんが俺の事連れて行ってくれねぇもんな。俺が居ない間に集めて楽しい?」

 

「あ、あはは.....」

 

なのはにそう言うと彼女は気まずそうに笑うだけだった。

休日なのはと最近一緒に居ないのは認めるが、それはなのはが俺をハブってユーノとジュエルシードを集めに行っているからである。

正直、拗ねてもいいと思うんだが。

....まぁその間ははやてと遊んだり、電話で話したりしているからもうあんまり気にしていないんだが。

 

『しょうがないよ...ジュエルシードを集めることは危険を伴う。魔法を使えないマサカズを連れていくわけにはいかないから....』

 

ユーノが俺を通信魔法で宥める。

もう一度言うが最近はあんまり気にしていない。

確かに彼らの言うことは分からなくもない。

俺は最強の魔力を持っているとはいえ、今はデバイスを持っていない。

行けば死ぬかもしれないということは分かっているのである。

 

「...冗談だよ。もう気にしてない。」

 

「正和君....ごめんね。」

 

俺を不安そうな目で見つめてくるなのは。

いや本当に気にしてないって。

....これからはあんまりハブられた云々言うのはやめようかな。

ここまで相手が気にしているとは思わなかった。

 

「....心が躍るな。」

 

恭也さんは良い顔でボソリと呟く。

隣であなたの妹、浮かない顔してるんですけど。

さっきから恭也さんはこの調子なのだ。

どんだけ恋人の家に行くのが楽しみなんだよ。

もうそのことしか考えてないじゃないか。

この人がこんなになるなんて意外だ。

この人にもこんな一面があったんだなぁ....。

人には色々顔があると改めて分かった瞬間である。

 

そうして俺たちは家を出て、バスに乗って月村家へと向かうのだった。

 

 

所変わって月村家。

なんかメイドさんに出迎えられて恭也さんは部屋に、そして俺達はテラスに通される。

 

今日はポカポカと暖かい日であるからか、柔らかな日差しが差し込むテラスには猫たちが寛いでいる。

そしてテラスの一角、西洋風の複雑な意匠の椅子に腰掛けているアリサとすずかが俺達に気づくと手を振ってきた。

 

俺たちが歩み寄るとすずかは笑顔を向ける。

 

「ふふっ、休日でも二人に会えるなんて私嬉しい。」

 

笑うすずかの隣で俺に対して視線を向けるアリサ。

 

「へぇ~アンタ来たのね、てっきりアンタのことだから変な気でも使って来ないかもと思ってたんだけど。」

 

「なんだお前、俺に来てほしくなかったのか。

話が違うぞなのは。俺もう帰っていい?」

 

俺はなのはをジト目で見る。

俺は出る前になのはに二人とも会いたがってたよ的なことを聞いていたから来たのだが、アリサがそう言うのなら帰るのもやぶさかではない。

するとなのはが慌てた様子で俺を止める。

 

「ま、待って!私が聞いた時は本当に二人ともそう言ってたもん!帰っちゃダメだよ!」

 

するとすずかはおかしそうに笑う。

 

「本気にしないで、正和君。ほら、アリサちゃん素直じゃないから。

ずっとちゃんと二人で来るか落ち着かない様子で待ってたよ!」

 

「ちょっ、ちょっとすずかぁ!わ、私は別に待ってたわけじゃ.....」

 

ほー、なんだこれがツンデレという奴か。

なんだ結構見ていて面白いじゃないか。

 

「なにアンタニヤニヤしてんのよ、潰すわよっ!」

 

「あっ、そういう照れ隠しいいから。いや~来て欲しかったならちゃんと口にすればいいのに~。」

 

俺は顔からニヤつかせながらアリサの肩を叩く。

正直、ちょっと傷ついていたので安心した。

ま、まぁ?よく一緒に居るし、俺的には友人くらいには思っていたのでちょっと不安になったのだ。

 

「うざったいわ!さわんなっ!」

 

「ハッハッハ、愛い奴め。」

 

アリサが俺の手を払い、激昂するも笑って流す。

いや~揶揄うの楽しいぃ~。

 

「それじゃ、みんな席について。お茶会始めちゃおっか。」

 

すずかはそんな俺たちを微笑まし気に眺めながら、席に座る。

 

「そうだね!でもユーノ君どうしよう...。」

 

なのはが抱いているユーノを見る。

確かにお茶会となればお菓子などの食品も出るはずだ。

であれば動物が一緒に居ることが気になる人も居るかもしれない。

 

しかしすずかは笑顔で首を振る。

 

「膝に座らせるんだからあんまり気にしなくてもいいと思うよ。

私達は別に平気だし、ねぇ?」

 

「そうね、この子には前会ったし。」

 

そう言いながらユーノの頭を撫でるアリサ。

ユーノは目を細めて気持ちよさそうにする。

この野郎....媚びるのが随分とうまくなったじゃないか。

でも俺はお前が俺らと同年代くらいのショタだってこと知ってるからな。

いつか正体をばらした時にネタにして弄ってやる....。

 

そして俺たちは茶会の席に着く。

 

目の前に置かれるお茶。

なんかこれアレだよね?

レモンの風味するお茶葉の奴。

昔結構飲んでたんだよなぁ。

 

俺はカップに手をつけて口を付ける。

 

口の中に広がるレモンのような風味と茶特有のえぐみ....って。

 

「ぶっごほっごほっ....え、なに...なんで.....?」

 

お茶を少し吐き出して唖然とする。

前の世界ではかなり好きだったお茶。

それが飲めなくなっていることに。

あれ、この茶ってこんなに受け付けない程に味が濃かったか?

ていうか俺こんなにえぐみと酸味が苦手だったか...?

 

突如吹き出した俺を見て周りは驚くものの、すずかは笑顔を見せた。

 

「あっ...ごめんね。正和君苦手だったか。

確かに結構独特な味してるもんね。」

 

そう言って俺の茶を別の茶葉に変えるすずか。

出されたものを吐き出してしまったのだ。

そして気を遣われてしまっている。

申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

「アンタこの程度のお茶を飲めないなんてとんだ子供舌ねwww」

 

アリサは小馬鹿にしたような半笑いを浮かべる。

 

そんなアリサに対して頬を膨らませるなのは。

 

「正和君は年下なんだから子供舌でも当然なのっ!そんな言い方しちゃダメだよ!!」

 

いやそのフォローも中々心に来るぞ。

本人はよかれと思って言ってるんだろうけど。

それにしても前の世界で飲めていた物が飲めなくなっている。

....アリサの言う通り子供の舌になっているのだろう。

まぁ今は子供だしな。

でも前おいしく飲めてたものが飲めなくなっているのは結構来るものがある。

割とショックだった。

 

俺が唖然としているとアリサが溜息を吐いた。

 

「な、なんだよ.....?」

 

俺が問うとアリサは手を振る。

 

「いや、アンタの事じゃないわ.....。

ただこのままグダグダするのもじれったいって思っただけよ。」

 

じれったい?

どういうことだろう。

俺が首を傾げているとアリサはなのはの目を真っ直ぐ見つめる。

 

「なのは....アンタ、最近なにかあった?」

 

「えっ、なにもないよ?」

 

なのはは首を傾げる。

しかしアリサは納得しない。

 

「それにしては最近暗いじゃない。なに?そこの子供舌となにかあったの?」

 

アリサは俺を見つつ、なのはに聞く。

ていうか俺を子供舌と呼ぶな。

俺には北形正和というちゃんとした名前があるんだ。

 

なのはは慌てて首を振る。

 

「正和君と?ないない!なにもないよ!.....急にどうしたの?そんなこと聞いて。」

 

なのはが問うとすずかも心配そうな表情をする。

 

「私達がお茶会を今日開いたのは、最近なのはちゃんの元気がないって話になったからなんだよ?」

 

すずかの言葉に難しい顔をするなのは。

 

「私の元気が...ない?.....あ、あははは、そんなこと...ないと思うけど。」

 

ぎこちない笑みで答えるなのは。

しかしアリサはそんななのはに訝し気な目で見る。

 

「アンタねぇ...なにかあるなら私達に言いなさいよ!!私達ッ!....友達でしょ。」

 

アリサはなのはに言い放った後、照れくさそうに顔を横に逸らした。

そんなアリサを見て一瞬微笑むも、すずかはなのはに真剣な表情で向き直る。

 

「悩みや心配があるなら話してほしい....。力になりたいから。」

 

「私は....。」

 

なのはは逡巡する。

逡巡するのも無理はない。

彼女が思い悩んでいるのは魔法少女としての自分について。

彼女たちに言えるわけがない。

 

すると,,,,

 

『うわぁぁ!!!!ちょっ、誰かたすけ...!!』

 

頭の中で今の雰囲気に似つかわしくない素っ頓狂な声をユーノが通信魔法越しに上げる。

見るとユーノが庭に居る猫の内の一匹にちょっかいを掛けられてなのはの膝から飛び降りる。

そしてそのまま猫と追いかけっこを始めた。

 

「...!?ユーノ君!?」

 

なのはが驚きの声を上げる。

しかし追いかけられているユーノは止まることなく走り続け、そして.....

 

「アフタヌーンティーを持ってまいりまし...キャッ!?」

 

『うわぁあ!?』

 

アフタヌーンティーのケーキなどの菓子を持って来たすずかのメイドであるファリンさんに飛び込む形になってしまう。

ファリンさんは鈴を転がしたかのような声を発して、尻もちを付く形になる。

菓子は地面に落ちて滅茶苦茶だ。

しかしそんなことよりも....。

 

『あ、あれ!?なんか真っ暗だ!な、なのは!マサカズ!い、今僕はどうなってるの!?』

 

どうなってるかって?

コイツマジで聞いてきてんのか?

テメェ、ファリンさんのスカートの中に突っ込んだんだよ。

なんだコイツ、どこのラッキースケベなんだよ。

確かに原作でもお茶会でユーノ君、猫に追いかけられてファリンさん巻き込んだよ?

でもてめぇどこぞのとらぶる感じの主人公みたいなムーブしてなかっただろ。

どうなってんだ。

 

『ユーノ君....』

 

なのはが何とも言えない顔でユーノを見つめていた。

 

「大丈夫?ファリン?」

 

すずかがファリンさんに聞く。

するとファリンさんが笑顔を向ける。

 

「だ、大丈夫です。すみませんテラスを汚してしまって。すぐ清掃致します。」

 

そう言ってファリンが立ち上がる。

 

「ご、ごめんなさい、ユーノ君のせいでこんなことになって.....」

 

なのはが慌てて立ち上がり、ファリンさんに頭を下げて謝罪する。

 

「ふふっ、大丈夫です。すごく元気なペットなんですね。フェレットですか?珍しいです。」

 

ファリンさんは寛容にも笑顔を浮かべるとユーノを撫でる。

どうやらファリンさんは許すようだ。

確かに普通なら所詮ペットがやらかしたこと。

そこまで責めはしない。

.....だが、俺はユーノが動物ではなくショタであると知っている。

ていうかなにあのラッキースケベ。

めっちゃ羨ましんだけど。

最強系転生者である俺でもそんなイベントなかったぞ。

ぜってぇ許さねぇ!!

 

「おし、ユーノ!外の空気吸いに行こうぜ!!」

 

急に立ち上がり、ユーノをファリンさんから引っ手繰るようにして抱えて外へと走る。

 

「!正和君どこにいくのっ!?」

 

なのははそんな俺に行先を聞く。

 

「外に空気吸いに行ってくる!!」

 

有無を言わさぬ様子で扉を開けてテラスから出た。

 

『えっ!えっ!きゅ、急にどうしたのマサカズ!!??』

 

うるせぇ!!尋問の時間だコラぁあ!!

 

 

 

「お前さ、なにしてんの?」

 

玄関から外に出て、抱きかかえたユーノ君と向き合う形になると口を開く。

 

『え、えっと....もしかして猫に追いかけられて、ファリンさんに迷惑を掛けてしまったことを....怒ってる?』

 

ユーノは俺の顔を窺うかのように見つめる。

まったく....このフェレットは何を言ってるのか。

俺がそんなことで怒るとでも思っているか。

そもそも俺が迷惑を掛けられた張本人というわけでもないのだから怒る筋合いないだろ。

俺が怒っているのはただ一つ。

 

「お前、ラッキースケベしやがったな。」

 

『えっ、ラッキー..なに?』

 

この野郎....とぼけやがって。

またなにかやっちゃいましたとでも言うつもりか。

そういうのは本来最強系転生者である俺の役目なんだよ!!

 

「てめぇファリンさんの...お姉さんの、しかもメイドさんのスカートに頭を突っ込みやがったな!!!

くそ羨ましいんじゃ!!!」

 

俺が思いの丈を思わずユーノにぶつけてしまう。

するとユーノは一瞬ぽかんとした後、口を開く。

 

『えっ...も、もしかして君はそんな理由でそんなに怒っているのかい?僕が迷惑を掛けたことではなく、....スカートに頭を突っ込んだことを?』

 

彼はどうやら困惑しているようだ。

だがそんな理由と目の前の獣は言ったのだ。

そんな理由!?

コイツは自分のやったことの重大さを理解していないのか....。

 

「そんな理由だと?お前はパンツを見た、理由なんてそれで充分だろ。メッタメタにしてやるからな。」

 

俺がユーノにそう言い放つ。

 

『充分じゃないよっ!ていうか僕暗くて見えなかったよ!!』

 

「え、見えなかったの?」

 

俺が聞くとユーノは頷く。

....見えなかったのか。

いや、しかし女性のスカートに首を突っ込んだのは許されないような....

いやでも見えないなら見ていないのと同義なような....。

 

俺が思案しているとユーノの毛並みが逆立つ。

 

「どうした?」

 

『魔力の増幅を感じる....これは、ジュエルシードだ!!』

 

ユーノが俺の手から藻掻き降りて、走り出す。

 

「ちょっ、いきなり走んな!待てよっ!!」

 

俺もそんなユーノの背中を追いかける。

思い返せば今回はお茶会。

となればなのはとあの少女の初邂逅の日じゃないか。

 

現場に付くと、暢気に欠伸をつく巨大な猫となのはが庭先に居た。

 

『なのは!ごめん、遅れて!結界貼るから!』

 

「ユーノ君!...!ってなんで正和君も連れてきてるの!?」

 

ユーノを中心に結界が広がっていく。

そしてなのはは俺を見やると声を上げた。

 

「は、ハハ...わりぃ、付いてきちゃった。」

 

「付いてきちゃったじゃないよっ!ジュエルシードの封印作業は危険と隣り合わせなんだよ!それなのに....」

 

誤魔化し笑いを浮かべる俺に詰め寄るなのは。

確かに彼女の言ってることは正しい。

だが....。

 

「確かに俺が悪かったよ。でもほら見てみ?...多分あの猫大丈夫だぞ。」

 

巨大化した猫を指差す。

猫は俺に指さされたことなどお構いなしに毛づくろいしている。

 

『本当だ.....敵意を感じない。』

 

ユーノも俺の主張に同調する。

しかしなのはの顔は浮かないままだった。

 

「でも、万が一ってこともあるし.....」

 

不安そうな表情のなのは。

心配してくれるのは素直に嬉しい。

前ではそんなことあんまりなかったからな。

 

『ま、まぁまぁ!相手が大人しいんだから早く封印しちゃおう!そうすれば万が一が起きることもないでしょ?』

 

ユーノがそんななのはを宥める。

 

「....まぁそうだね。

なにか起きてもいいように正和君は私の側を離れないで。

行くよ....リリカルマジカル!」

 

そう言って彼女はレイジング・ハートを稼働状態にしてバリアジャケットを纏う。

その瞬間、空の一部がキラリと光った気がした。

 

『.....魔法の光!?』

 

ユーノが声を上げる。

 

そして金色の槍のような形状をした魔力弾は巨大な猫に当たると炸裂する。

 

「ンニャァァアアア!!!」

 

猫が苦しげに大声を上げる。

 

槍が飛んできた方向を目を凝らして注視する。

そこには......

 

「私と同じ、魔法少女.....!?」

 

「......」

 

隣のなのはは呆然と言葉を漏らした。

怜悧な印象を受ける大人びた金髪少女。

黒いちょっと際どいデザインのバリアジャケットを身にまとい、片手には斧のような形状のデバイスを持っている。

 

運命の名を持ち、幾度となくなのはと対立しながらも最終的には彼女の唯一無二の親友となる少女。

 

フェイト・テスタロッサがそこに居た。

 




心配してくれるのは素直に嬉しいと思う主人公。
理由は前ではそんなことあんまりなかったから。
前というのは転生前のことです。
またちょこっと主人公の背景を小出しにしてみました。


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俺、運命と対峙したわwwww

最近、こちらの小説では控えてる分、淫夢語録をどこかで猛烈に書きたくなっている-1145141919810893


「......」

 

フェイト・テスタロッサは感情を感じさせないような仏頂面で俺たちを見下ろしている。

そして静寂を切り裂くように彼女は口を開く。

 

「バルディッシュ、フォトンランサー....連撃」

 

<Photon lancer full auto fire.>

 

巨大な猫に杖を向けて槍状の魔法弾を猫に放つ。

 

「ニャアアアアア!!!!...ニャ.....。」

 

続けて魔法弾が直撃、炸裂して悲鳴を上げて気絶する猫。

 

「やめて!!」

 

<Flier fin>

 

なのははそんな猫の様子を見ていられず、飛翔して巨大猫とフェイトの間に立つ。

 

<Wide area Protection>

 

レイジング・ハートの言葉と共に防御魔法が展開されて降り注ぐ魔法弾から猫を守った。

 

「....同型の魔導師。.....ロストロギアの探索者か。」

 

少女がなのはを視界に収めて、ぼそりと呟く。

 

「あの杖は.....私のと同じ....。」

 

なのははフェイトのデバイスを見つめる。

 

フェイト・テスタロッサ。

なのはと同じくジュエルシードを集めている少女だ。

だが集めている動機がなのはとは違う。

違いすぎる。

言うなら彼女は今回の騒動の元凶側の人間だ。

彼女にジュエルシードを渡してはいけない。

 

「....バルディッシュ。」

 

<Scythe form Set up .>

 

「ロストロギア、ジュエルシード...申し訳ないけど、頂いていきます。」

 

するといきなりフェイトは杖を鎌のような武器形態に変形させてなのはへと迫る。

 

「.....ッ!!」

 

突然の行動に目を見開くも、なのははなんとか彼女の攻撃を避けた。

 

....が。

 

「...!まだっ、ぐぅううう!!!!」

 

<Protection>

 

フェイトの返す刀で繰り出された連撃を避けきることが出来ず、防御魔法を張る。

しかし傍から見てもなのはが押されており、状況はフェイトが優勢だと誰の目から見ても明らかであった。

 

「なんで...なんでっ!急にこんなっ!!」

 

フェイトに問うなのは。

しかしフェイトは表情を冷たく変えることはない。

 

「答えても、.....多分意味がない。」

 

フェイトは突き放すようにそう言い放つ。

彼女がジュエルシードを集める理由。

それは彼女自身の母親にある。

彼女の母親であるプレシア・テスタロッサ。

彼女は大好きな母親の為にジュエルシードを集めている。

しかし.....母親は彼女を娘として見てはいない。

彼女は娘のクローンに過ぎないのだから。

寧ろ....彼女は母親であるプレシア・テスタロッサからアリシアとは細部が違うことから嫌われ、忌避されている。

それを彼女は後に知ることになる。

 

俺は彼女が好きじゃない。

生みの親に愛されず、最後には生き別れる。

どこかのどうしようもない奴と境遇が少し似ている。

 

『お前に生まれた意味なんてないんだよ。』

 

父親である存在に言われた言葉。

そして.....。

 

『生まなきゃよかった。』

 

蒸発する前の母親が言っていた言葉。

それがありありと頭に蘇る。

 

彼女を見ていると昔を思い出して気持ちが悪くなる。

彼女と俺は違う。

彼女は強い。

母親に虐待同然の仕打ちを受けて、ジュエルシードを集めさせられても最後まで母親を愛していた。

だからこそ、この嫌悪感は自分勝手なエゴに過ぎない。

 

....今の俺は北形正和だ。

昔の俺ではない。

ちゃんと親も居て、ニコポのおかげでもあるけど友達も居て、.....昔の俺とは違って孤独じゃない。

だから....今考えていることは思考の無駄でしかないんだ。

考えるな。

 

俺が下らないことに気を取られていると、鍔迫り合いをしていたなのはとフェイトが両者とも距離を開いた。

フェイトは木の上に。

なのはは猫の近くの低空を漂う。

 

<Device form.>

 

バルディッシュのビーム状の刃が消失して、鎌のような形態から杖状の形態に変形する。

 

<Shooting mode.>

 

バルディッシュに呼応するかのようにレイジングハートの先端が音叉のような形状に変形する。

 

<Divine buster Stand by.>

 

<Photon lancer Get set.>

 

睨み合い、対峙する二人。

緊迫した空気が流れて息が詰まりそうだ。

 

すると猫が目を覚まし、起き上がる。

これは....!?

 

「なのは!前を見ろ!!」

 

「...ッ!?分かった!」

 

この後に何が起きるのか分かっていた。

起き上がる猫に注意が逸れたなのははフェイトの攻撃を受けて気絶してしまう。

別に気絶したところでなのははその後問題なく起きる。

俺が何を言う必要もない。

だけどなぜか声が出てしまった。

 

なのはは俺の声に驚いたのかこちらに視線を一瞬やるものの、フェイトに視線を移す。

その瞬間、フェイトの杖からフォトンランサーが放たれる。

 

「っッ!!」

 

なのはも少し遅れてディバインバスターを放った。

 

拮抗する金と桃色の二つの光。

しかし発射するのが少し遅れたからだろうか?

なのはのディバインバスターがどんどん押されて行き....

 

「はっ....」

 

その声を最後になのはにフォトンランサーが直撃する。

体全体で感じる風と衝撃。

なのはは空中を力なく吹き飛んでいく。

 

『なのはぁ!!!』

 

ユーノは林から駆けていき、結界で落下するなのはを受け止めた。

 

『大丈夫!?なのは!』

 

「う..ん...だいじょう...ぶ......。」

 

なのはは傍らに駆け寄るユーノにかすれ声ながらも力なく笑みを見せた。

俺の記憶、原作とは違う。

彼女は本来、気絶しているはずだ。

原作とは違い、魔法の拮抗の末の直撃である為、威力が減衰したのだろうか?

しかしなんにせよ原作とは展開が変わったのだ。

俺の感情任せの行動によって。

 

なのはは気絶していないにしても、動けないほどのダメージを負っているらしい。

 

フェイトはゆっくりと地面に降りると、猫を見やる。

そして猫にバルディッシュを向けた。

 

杖からバリバリと電流が走るかのような音が鳴り響く。

 

<Sealing form Set up.>

 

バルディッシュの先端が槍のような形状に変形する。

 

この後、フェイトが猫に魔法を行使してジュエルシードを手に入れる。

俺はなにもすることはない....。

そう思っていた。

 

「やめ...て.......」

 

倒れているなのはがフェイトを見て呟く。

彼女はあんなになるまで猫を守っていた。

精一杯頑張って。

そんな彼女の姿を見たのに、展開を知っているからとそんな理由で俺は看過しようとしたのか?

 

目の前の少女の頑張りを、知っているのに展開を知っているから見過ごす。

....それって前の世界に縛られていることと何が違う。

今を、北形正和として生きるんだろ。

このままじゃ......昔と変わらない、何も出来ないままじゃないか。

本当に、それで....良いのか?

 

「うっ、うぅぅぅぅ....うあああああああ!!!!!!」

 

駆け出してフェイトと猫の間に躍り出る。

 

「!な...なにやって...るの!!」

 

『無茶だ!!早く逃げて!!おかしくなっちゃったの!!??』

 

なのはとユーノが信じられないものを見るような目で俺に逃げるように言う。

本当に頭でもおかしくなってしまったのだろうか。

でも、逃げたくない。

なのはが気絶していればともかく、彼女の目の前で彼女の守ろうとしたものを見捨てて逃げたくなかった。

ああ、そうか....。

俺は、いつの間にかなのは達を転生先のアニメキャラでなく、自分と同じ生きた人間であると捉えていたんだ。

当然と言えば当然だ。

みんな一日一日を一生懸命生きている。

確かにアニメで起きたことも細部の会話は違うにしろ、起きてはいる。

....でも、そんなのは彼らの過ごす日々の一部に過ぎなくて。

日ごとに一緒に過ごして行けば嫌でも分かる。

彼らもちゃんと意思がある自分と変わらない人間であると......。

 

「や、やらせない.....。」

 

「....どいてください。」

 

冷たい目つきのままフェイトは俺に杖を向ける。

感情のない目が俺を見つめている。

怖い。

ジュエルシードの影と相対した時とは違う、脊椎に氷でも挿し込まれたかのような感覚。

これが蛇に睨まれた蛙というものだろうか。

 

でも、ここで折れるわけにはいかない。

もう後に引けない。

今の俺には魔法も使えない。

だからこそニコポに賭けるしか.....。

 

俺はひくつく頬を必死に上げて笑う。

そしてフェイトの目を見て口を開いた。

 

「ど、どいてほしいなら退かせてみろよ!お、お、俺はっ!すげぇ魔力も持っている!ひ、一筋縄で行くと思うなゃ.....」

 

唇が恐怖でうまく回らずに噛んでしまう。

膝も生まれたての子鹿のように震えて立っているのがやっと。

目からは涙が浮かんできた。

正直漏らしてないのが奇跡なくらいだ。

 

余りにも情けない姿。

こんなのが最強系転生者なんて笑い種だ。

目の前の少女の目には粋がってるのが余計に滑稽に見えるだろう。

 

「.....そう。」

 

そう言うとフェイトはデバイスを下ろす。

おっ!もしかして退いてくれるのか!?

やっぱニコポってすごい。

 

<bind>

 

ニコポの有能さに思いを馳せた瞬間、バルディッシュの水晶に文字が浮かぶ。

そして俺の体を黄色いリング状の物が拘束する。

 

そして縛られた俺を一瞥するとフェイトは猫に視線を戻す。

俺の横を通り過ぎていこうとする。

 

「ちょっ、待てっ!!」

 

制止するもフェイトは無視して猫へと歩み寄ってくる。

そして杖を猫に突きつけた。

 

「捕獲。」

 

その声と共に杖先に球状の魔力を地面に打ち込む。

地面を抉りながらも魔法は猫目掛けて飛んでいく。

そして猫に当たると電流が走る。

 

「ニャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

猫はつんざくような悲鳴を上げる。

電流によって猫は毛を逆立てて、苦し気な呻き声を上げている。

そして猫からジュエルシードが排出された。

 

<Order.>

 

「ロストロギア、ジュエルシードシリアルⅩⅣ、封印。」

 

<Yes,Sir.>

 

バルディッシュの返答を聞くと、魔力を上空に撃ち上げる。

すると今まで広がっていた青空に穴を開けるかの如く、雲が円状に消え去り、そこから数多ものフォトンランサーらしきものが猫目掛けて降り注ぐ。

 

<Sealing.>

 

そして上空に魔法陣が展開し、金色の光柱が倒れている猫を包み込んだ。

そして光が晴れるとそこには横たわる小さな子猫。

巨大な状態じゃ分からなかったがあの猫は子猫だったようだ。

そしてその猫の真上で宙に浮くジュエルシード。

それにデバイスでジュエルシードに触れる。

 

<Captured.>

 

そしてバルディッシュの中にジュエルシードが吸収されていく。

そしてまるで排気ガスを排出するように上記のような物をデバイスが噴出する。

 

「ごめんね。」

 

フェイトは横たわる猫を眺めるとそう呟いた。

そしてなのはに視線を移す。

 

「....ッ。」

 

なのはは起き上がれないながらも視線を鋭くする。

しかしフェイトはなのはを眺めると目を細めるだけだ。

そよ風が俺たちの間を吹きぬいていく。

 

フェイトはそのままなのはに背を向けて歩み出し、空に飛び上がった。

そして彼女の姿が見えなくなった辺りでバインドが消える。

 

なのはは大丈夫だろうか?

なのはに歩み寄る。

 

「おい、なのは...大丈夫....ッ!?」

 

彼女に歩み寄り、顔を近づけたらビンタされた。

....え?どういうこと?

頬を押さえつつ、彼女の顔を見たらなのはは涙目になっている。

 

「自分がっ!何をしたのか分かってるのっ!?あの子がその気になれば本当に危なかったんだよ!?

....私、見ていて本当に...心配で....ッ!!」

 

そう言って彼女が胸に顔を埋める。

心配を懸けてしまった。

前に出るだけ出て、何も出来なかった。

展開も大きくは変わっていない。

結局フェイトにジュエルシードを取られてしまった。

横たわる猫を見てもなのはの守りたいものすら守れたとは言えない。

これじゃ転生者なんて言えない。

転生者なら自分がしたいように世界を変えてみせろよ。

それが出来ないなんて俺は一体何なんだ?

 

自身の思索を押し殺しながら、なのはに一言。

 

「ごめん....。」

 

それだけしか言えなかった。

そよ風はただ俺の頬を掠めていく。

 

 

 

夕暮れ時になのはが動けるようになったので、みんなと合流する。

すると砂ぼこり塗れの状態を俺となのはが怪しまれたので、傾斜で二人とも転んで砂まみれになってしまったと嘘を吐いた。

 

そして月村家から高町家に変える。

隣ではなのはが浮かない顔をしている。

さっきの戦闘で思う所があったのだろう。

 

家の扉に手を掛ける。

中に入ると、心なし部屋から笑い声などが聞こえて少し騒がしい。

 

「お客さんでも居るのかな?」

 

恭也さんがそう呟きながら居間に入っていく。

するとテーブルに桃子さんと士郎さん、そして......。

 

「母さん!父さん!なんでここにいるのっ!?」

 

自分の父親と母親が桃子さんや士郎さんの向かいの席に座って談笑していた。

 

「お、ただいま。いやー何をそんなに驚いてんだよ息子よ!メールしただろ?母さんが。」

 

父は妙に高いテンションで俺に詰め寄り、抱き上げる。

みんなが見ている前で子供扱いされているようで恥ずかしくて少し嫌だった。

 

「ちょっ、やめろよ。それにそんなメール誰からも来てないんだけど!!」

 

そういうと父の動きがピタリと止まる。

そして母に首を向ける。

 

「えっ....メールしてって言ったよね?」

 

すると母は静かに携帯を開いて、メール欄をチェックすると舌を出す。

 

「いやー....忘れてた!」

 

おい、息子にメールすること忘れるなよ。

すると父は溜息を吐く。

 

「はぁ...しょうがないなぁ母さんは。取り敢えずただいま。一人にしてごめんな。」

 

そう言って俺の頭を撫でる。

そして父と母は桃子さんと士郎さんに向き直る。

 

「それにしても本当にごめんなさいねぇ。うちの子を預かっててももらっちゃって。

ちゃんとまた埋め合わせはするから!」

 

母が桃子さんに言うと、桃子さんは笑う。

 

「別に構わないわ。正和君とてもいい子だったし。

それに昔からの友達なのにそんなこと気にしなくてもいいのよっ!!」

 

「今度一杯どうですか?お礼に奢りますから....」

 

「お、良いですね。」

 

桃子さんと母はまるで女学生に戻ったかのようなテンションで話していて、父と士郎さんは飲みの算段をしていた。

するとなのはは呟く。

 

「そっかぁ....もう、正和君とは暮らせないんだ。」

 

さっきまで浮かない顔をしていただけあって、さらに顔を伏せてしみじみと呟くなのは。

何言ってるんだろう?

 

「えっ?....いや、家はす向かいだしいつでも会いに来ればいいじゃん。」

 

そう言うと、なのはは溜息を吐いた。

 

「...そういうことを言いたいんじゃないの。」

 

ジト目で俺を見つめる。

えっ、俺なんか間違ったこと言った?

 

『あはは....。』

 

ユーノはただ愛想笑いを浮かべている。

なに笑ってんだコイツ。

 

「じゃあ家に帰るか。正和。」

 

父に言われて頷く。

そして恭也さんやなのは、桃子さんや士郎さんに向き直り、頭を下げる。

今までこの家で暮らしていて、色んな事に気づけた。

この家は自分にとって第二の故郷と言っても差し支えがないだろう。

 

「今まで....本当に、お世話になりました。有難うございました!!美由希さんにもお伝えしていただけたら嬉しいです。」

 

桃子さんと士郎さんは笑う。

 

「またいつでも遊びに来なさい。」

 

「美由希にも伝えとくから。歓迎するわ。

今度来た時は新作用意して待っているわ。」

 

へ~、俺高町家の居候やめても甘味地獄からは逃れられないんですね。

でもこれも一つの自分にとっての思い出にである。

なければないで寂しくなるものだ。

 

「家に帰っても道場に来い。

稽古をつけてやる。」

 

恭也さんは笑ってそう言う。

あそこまで鍛錬をし続けたんだ。

だからこそ家に戻っても道場に行く気満々ではある。

恭也さんにボコボコにされっぱなしも癪だからな!

絶対に修得して仕返ししてやんよっ!

 

「本当に...遊びに来ても、いいよねっ?」

 

なのはは聞いてくる。

なに当たり前のこと聞いてるんだろう。

 

「当たり前じゃん。ていうか絶対来いよ。

ユーノも連れて。」

 

そう言ってユーノの頭を撫でる。

するとなのはもさっきとは打って変わって笑みを浮かべた。

 

「うんっ!絶対に行くよ!!約束!!!」

 

そう言ってなのはと指切りをした後に、俺は家族に連れられて高町家から離れて北形家に戻っていったのだ。

 

 

 

夜、寝る前。

ベッドで寝る用意をしているとドアが開く。

振り返ると父さんだった。

 

「なに?」

 

聞くと父は照れ笑いを浮かべる。

 

「いやなに、お土産っていうか渡したいものがあってさ。」

 

そう言って勝手にベッドで俺の隣に座る。

 

「お土産?」

 

「おう、まぁ正和の好みじゃないかもしれないけど。」

 

そう言って指輪のような物を渡される。

なにか複雑な意匠が施されたリング。

どことなく古臭い感じがする。

 

「えっ、これなに?」

 

俺が聞くと父は鼻を指で擦る。

 

「いやー父さんが現地で買った指輪だ。なんでも遺跡で出土した古代の貴族が着けていた指輪らしいぞ。」

 

へー、そんなんあるのか。

まぁ父は海外に出向く仕事をしているし、今回はそういう所に行ったのだろう。

 

「それでこれ何円だったの?」

 

俺が問うと父は胸を張る。

 

「ふふん!聞いて驚け!ざっと日本円で5万円だ!!」

 

「いやそれ絶対嘘だろ。」

 

遺跡で出土した貴族の指輪がそんな値段で買えるわけ無いだろ。

多分金にもならないガラクタを押し付けてぼったくったのだろう。

本当にこの人は海外で商売できてんのかよ。

心配になってくるわ。

 

「お、お前も母さんと同じでそう思うのか....。で、でもデザインかっこいいだろ?だったら買う価値は俺の中ではあるよ。お前に似合いそうだと思ってな!」

 

ぼったくりの商品を似合いそうと言われても複雑な気分になる。

すると俺のそんな表情を見て、父は笑った。

 

「まぁ....いらないなら無理に受け取らなくていいよ。

....はぁ、部屋に飾るかなぁ。」

 

父は肩を落として部屋を出ようとする。

そんな父の袖を掴んで止める。

 

「別に....いらないとは言ってないだろ。」

 

俺の言葉を聞くと父は満面の笑みを浮かべて俺の手の中に指輪を握らせた。

 

「じゃあ、おやすみ。」

 

「おやすみ、父さん。」

 

父は部屋を出る。

部屋に残されたのは俺唯一人。

手の中には父のプレゼントである指輪が金属光沢が鈍い燦きを見せていた。

父はいつもは食べ物をお土産に持って帰ってくるが、今回のように身に着けるものを買ってくるのは珍しい。

父親からお土産で装飾品をもらうのは今回で初めてだ。

色んな意味で。

 

食べ物は形には残らないが、これは形に残る。

父親から形に残るものを貰うなんて前じゃ考えられなかった。

確かにぼったくりの商品で意匠は複雑だが、どこか古臭い。

でも紛れもない父のプレゼントだ。

大事にしよう。

 

そう決めて指輪を引き出しの中に大事に仕舞い込むと、ベッドの中で目を閉じるのだった.....。

 

『...д..hel...vis.o....』

 

なんだ、囁き声みたいなのが聞こえたような....。

耳を澄ませる。

聞こえるのは外の風の音や車の通行音のみ。

.....気のせいか。

 

そう決めこんで今度こそ目を閉じて眠りにつくのだった。

 

 

 




主人公はフェイトちゃんのこと好きじゃなくても、僕は大好きです。

フェイトちゃんは主人公と似たような境遇であると主人公が思っていることから、これからかなり重要なポジションになると思います。

コイツ毎回主人公の過去を小出しにしてんなぁ....やっぱ好きなんすねぇ。


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