催眠モノと言うには微妙な能力でがんばってみる (アウグスティン)
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原作前
1話※(アンリエット)


どうも、R18は初投稿です。これでエロ小説ってあってんのかな?
一応連載で投稿してますが、続くかは未定。


 ────トイズ。

 それは選ばれし者の心に膨らむ奇跡のつぼみ。

 ある者は清浄の花を咲かせ、ある者は毒の花を咲かせる。

 大探偵時代、美しさを競いあう二つの花。その名を探偵と怪盗といった。

 

 なんて、事前知識がなければ意味不明なテンプレだろう。

 トイズとは簡単に言えば超能力だ。先天性であり、後天的な取得あるいは能力の変更は基本的に不可能。

 また有史以来ずっと存在するが、その原理は不明である。ただしトイズの有無を計測する装置は存在していたりする。

 その辺けっこう設定が曖昧だ。長寿作品あるあるだな。

 

 このトイズ。選ばれし者に宿るとされるが、別に善方面だけで選ばれるわけではない。悪人だって選ばれる。

 あるいは法に反しているというだけで、なにかしらの選定基準があるのかもしれないが、俺は知らない。

 

 そしてそのトイズを悪用する者が怪盗であり、彼らを追いかけるのが探偵だ。

 

 まだわからないなら、あれだ、ヒロアカをイメージしたらいい。

 個性を持ってるやつはあんまいないヒロアカだ。

 

 俺がこの『探偵オペラ ミルキィホームズ』の世界に転生してきてから、はや十五年。もう高校一年生だ。

 まさに苦節と呼ぶべき人生だった。ホームズ探偵学園の生徒会長、いやまだ生徒会長ではないんだけど、からも「えぇ……」と引かれるくらいの生活をしてきたからな。

 それもこれも俺の目的のためだ。そう、原作キャラでハーレムを作るという目的だ! 

 

 トイズ持ってるから警察には入れない。

 怪盗と探偵なら、たぶん怪盗のほうが向いてるけど、立場上他勢力のヒロインを口説きにくい。

 そんな適当な理由で探偵勢力に加わろうと考えたのだが、これがもうキツかった。

 

 正直俺のトイズはあまりおおっぴらに人に見せられるものではない。

 だから適当に能力の一部を切り取って、それだけ見せて俺のトイズということにして学生生活を過ごしてきた。

 その一部というのが、というかそもそも俺がこのトイズを善用しようとした場合、俺のできることなんてその辺の一般人とあまり変わらないのだ。

 つまり実質トイズ無しである。

 貧弱なサイコキネシスに悩んでいたメインヒロイン、シャーロック・シェリンフォードよりもひどい条件だ。

 

 トイズを使わず入学試験を受け、トイズを使わず授業を受けてきた。そしてこれからもトイズを使わず中間試験を受けたり、年度終わりの期末試験を受けるのだろう。

 気の遠くなる話だ。

 なんで俺は一人だけトイズ縛りで探偵やってるんだろうか。

 

 男の俺にとって性欲は強い原動力足り得る。

 というかやる気のでる理由さえあれば体が持つ限り頑張れる俺だが、成果ゼロとかやってられるか! 

 

 というのが数日前までの話だ。

「死ね!」と罵られながら寮の同室の男子に部屋を任せて、俺は外泊だ。

 ホテル備え付けのシャワーを先に浴びてきて、ベッドに腰かけて待っているところである。

 シャワーの音が止まるたびに、ついに来たか! と俺の心臓が早鐘を打ち、また水音が鳴り始めてかなり落ち込むという工程を二回くらいやっている。

 たぶん念入りに体を洗っているんだろう。俺も頭の天辺から爪先まで、しっかりかっちり磨きあげてきたからわかる。

 

 そしてまたシャワーの音がやみ、今度は戸を開けるガラガラという音も聞こえてきた。

 思わずベッドから立ち上がる。シャワールームから出てきた彼女を見て、歓声をあげるとこだった。

 

 しっとりと濡れた水色髪、上気した頬、バスタオルで前を隠しているがそれでもはっきりと浮き出る豊満な胸。俺の可愛い恋人、アンリエット・ミステールだ。

 ああ、なんかもう幸せすぎてハーレムとかどうでもよくなってきそうだ。

 

「綺麗だよアンリ。本当に綺麗だ」

 

 混じりっけなしの本音で讃える。ちらちらと覗く薄紅色に染まった肩や足が堪らなく情欲を誘う。ごくりと、唾を飲み込んだ。

 すこしだけ頬の朱色を濃くして、アンリは微笑んだ。

 

「うふふ、ありがとうございます」

 

 笑顔に見惚れて頭がぼうっとなる。なんだろうこれ、自分の感情はほとんど完璧にコントロールできるはずの俺が、抑えが利かなくなっている。

 はっ、これが乳催眠か。これは抗えない。

 IQ3の頭で馬鹿なことを考えながらアンリのなめらかな肌を視姦していると、もぞもぞとアンリが震え始める。

 

「その、恥ずかしいのであまりじろじろと見つめないでいただけませんか」

 

 ぎゅっとアンリがタオルを抱き締める。

 ゲームの優しい御嬢様でも、アニメの親のような生徒会長でも、悪の女ボス全開などこかのそっくりさんでもない、乙女のような恥じらいに、ふらふらーっと光に惹かれる羽虫のようにアンリの前に歩いていく。

 肩に手を置いて俺を見上げるアンリに口付けた。

 

「んっ……ふ、あんっ……くちゅ」

 

 これがアンリとの初めてのキスでもないのに、脳が溶けるような心地だった。

 間に挟まるタオルを抜き取って、左手を肩から外しおっきな乳房を揉む。くにゅんと五指が沈んでいった。ぐにゅぐにゅと俺の手のなかでアンリの胸が形を変えるのがわかる。

 揉むたびに少しずつ先端が固くなってきて、俺の胸板に当たる感触がはっきりとしてきた。

 

 そのままアンリを味わいながらベッドまで引っ張っていき押し倒す。

 お互いの口の間に唾液の糸が伝っていた。とろんとしたアンリの紫の瞳には、不安の色も浮かんでいる。

 

「あの……初めてなので、やさしくしてくださいね」

 

 カッと頭が熱くなった。心臓が爆発しそうだった。過剰に血液を送り出していて、体のなかで津波のように荒れ狂っていた。俺の意思とは関係なくハァハァと呼吸が激しくなって胸が苦しい。

 目を閉じる。見たことがないくらいに自分の感情が振り切っていた。

 暴力的な性欲を下げる。どうせすぐ戻るだろうけど、いったん頭を冷やさないとこのまま乱暴にシテしまいそうだった。

 

「うん、わかった。精一杯努力してみる」

「んっ……」

 

 もう一度アンリにキスを落とす。

 顔を離してアンリの身体を観察した。俺史上最速で下げた感情が戻ってくる。

 

 ああ、あのアンリが、アンリエット・ミステールが今、俺の下に全裸でいるんだ。

 

 そう思うと胸の奥から無限に色欲が湧いてくる。

 

 アンリの頬に手を添える。ほんとに同じ人間なんだろうか。それともアンリこそが人間で、俺はなんかそれっぽい別の生き物だったりしないのだろうか。

 それほどまでに違うモノだった。アンリの首に顔を埋めてキスをする。そこから下に向かって全身に口付けを降らしていった。

 

 唇にある感覚はどこも柔らかい。俺の硬い体なんて触れさせて、傷つけてしまわないだろうか。

 

 アンリの足にまで俺の侵攻が届いた。

 足に手を掛けて押し開き、太ももの内側に舌を這わす。

 

「ひゃうんっ」

「なにその声可愛い。もっと聞かせて」

「だ、だめ……っ」

 

 抵抗のつもりなのか太ももに頭を挟まれた。ご褒美かな。もちもちの太ももに包まれながら愛撫を続ける。

 

「ん、んむっ……あふ、ふっ、ふっ……んくっ」

 

 視界はアンリの太ももと秘部に埋められているから見えないけど、声を抑えているらしい。漏れ出た喘ぎ声が鼓膜を震わす。

 飽きることはないだろうけど、同じところを舐め続けるのもなんだかなぁ。

 ということで頭を奥に押し込んでいく。

 

「で……ですから、あんっ、だめですってぇ……そんなところ舐めて、は、んんーっ」

 

 秘部を舐る。えーっと突き出した舌を大陰唇に沿わせ、蜜が溢れてきたら舐めとる。

 

「ぴちょ、れろぉ、れろえろ……くちゅ」

 

 焦らすように陰核と中には触れないよう細心の注意を払いながら、クンニする。

 舌のいろいろな部分で舐めたり突っついたり。太ももの締め付けが強くなってきた。

 人差し指を膣内に差し込んで場所を変えながら擦るとアンリの声の強弱が変わって面白い。どこが感じるんだろう。いろいろ試しながら俺の征服欲を満たしていく。

 

「あんっ、あっあぁ……い、いい……んっ、気持ちいい、ですわ……」

「それはよかった」

 

 じゃあもっとよくしてあげないとな。

 少しずつ愛撫する場所を陰核に近づけ、指もアンリの声が大きくなったところを中心に擦るようにする。

 

「あっ、はっ、あっあっ、んっ、あひっ」

 

 五感の全部でアンリを感じながら、タイミングを見計らって陰核に吸い付いた。

 

「あ゛ぁぁ~~~~っ!」

 

 アンリが腰をガクガクと震わせる。とろりとした愛液が吹き出してきた。

 太ももロックが外れる。残念に感じながら顔をあげた。

 アンリはうつろな目をして、口の端からよだれを垂らしていた。

 もうしばらくやってやろうっと。

 陰核を甘噛みして、膣内を激しく擦る。もうなんて言っているのかわからない矯声が嬉しい。

 

 それからどれほど続けただろうか。ベッドのシーツには大きな染みができていた。

 アンリは汗だくで、力なく四肢を投げ出している。

 

「待ってる間に見とけばよかったな」

 

 適当に部屋にあった机の引き出しを開けて、コンドームを探す。すぐに見つかったのでそのまま装着した。

 ほんとはアンリに着けてほしかったんだけど、それはまた今度やってもらおうか。

 

 ベッドに戻るとすこしはアンリも回復したようで、おぼろげながらこっちを見ているようだった。

 髪を撫で付けてやると、嬉しそうに笑ってくれた。

 

「挿入れていい?」

 

 アンリは小さくうなずいた。

 

「ええ……きて」

 

 甘く蕩けるような声だった。今か今かと張り裂けんばかりに膨れた一物を、アンリの秘部にあてがった。

 

「ん、んん……っ」

 

 

 つぷ、と水音がしてゆっくり入っていく。ある程度まで侵入したところで、軽い抵抗感があった。

 アンリの手を取り、指、絡める。

 

「いくよ」

 

 一声かけて思い切り突き込んだ。処女膜を破って奥まで俺の一物が到達する。

 

「ぅ~~~~っ!」

「ごめん、痛かったよね」

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

 ぎゅうっと俺の手を痛いくらいに握りしめる。

 そのまま動かさずに待った。しばらくの間、アンリは痛みを堪えるように荒く息を吐いていたが、やがてそれも落ち着いてくる。

 

「もう……動いて、かまいません。光」

「本当に? 無理しないでいいよ、まだまだ時間はあるから」

「いえ、大丈夫……です。痛みは引いてきました……から。わたくしのこと……光の、好きにしてください」

「……なら遠慮なく」

 

 ゆっくりと腰を引いて突き出す。また引いて突き出す。

 

 

「あんっ……あっ……ああっ……」

 

 パチュン、パチュンと蜜壺をかき回す音が俺の興奮を煽る。

 思っていたよりもはるかに感情の上限ってやつは上にあるようで、再現なく高まっていく。

 アンリの膣は俺の一物をギチギチに締め付けてくる。もうすぐにでも射精してしまいそうだ。

 

「あ゛っ! あ゛っ! あ゛んっ! ひか、るっ……んあぁっ!」

 

 ケツに力を込めて抽挿する。性的興奮を抑えることはできるが、そうはせずに気力で堪える。

 高ぶりに合わせて腰の動きも速くなってきた。俺の体が理性の制御下にない。

 本能の赴くままに腰を叩きつける。

 

「ひか、るのがっ、あんっ! わたくしの、なかでっ、んんっ……暴れて、ぁっ! ん、あっ、はぁっ、もっと、もっと、わたくしをかき回してっ!」

 

 返答もせずに快楽をむさぼる。視線は乱れきったアンリの顔と、突くたびに弾む巨乳の間を行き来していた。

 

「んあっ、はっあっ、はっはっはっ、そこ……そこ、気持ち、いいっ!」

 

 ほとんど無意識に、そしてあまり制御もできていなかったが、アンリに言われたところに狙いを定める。

 

「好きっ、好きです、光っ! 大好きですっ!」

「あ、ああっ、俺もだ! アンリ、愛してるっ!」

「わたくし、もう、限界ですわっ! イクっ、イってしまいますっ!」

 

 俺ももう限界はすぐそこだった。むしろこの極上の身体を前によく耐えたほうだろう。

 アンリの両足が俺の後ろから絡み付く。

 

「光っ、ぁぁっ、はっ、あっ、わたくしと、ん、ああっんっ、一緒……にっ!」

「ああ! 膣内に射精すぞ!」

「イ……っク……ん、あぁぁぁああああっ!」

 

 どびゅっ、びゅるるるるるるるっ! 

 びゅるる、びゅくびゅくっ! 

 届く一番奥まで腰を押し付けて射精した。

 

「あ、ああっ! ああ゛あぁぁぁあっ! はっはっ、あっ、はっ……はぁっ、はぁっ……っ」

 

 とてつもない射精感だった。体の中身が全部チンコの先から飛び出たんじゃないかってくらいの放出の感覚だ。

 思わず力が抜けて、アンリの身体にのし掛かる。ギリギリなんとかあまり体重をかけすぎないよう腕を立てた。

 

「はっ……はぁっ……ん、ふぅ……ぁっ……」

 

 耳元でアンリの息づかいが響く。

 目を閉じ、自身の心情を回復させる。

 緩慢に俺の一物をアンリから引き抜いた。コンドームは俺の精液を溜め込んでたぷたぷに膨らんでいた。

 一物から取り外し、口を縛ってその辺に放り投げる。それからティッシュを何枚か取ってきて後始末を始めた。

 

 自分の愚息を拭い、ぐちょぐちょに汚れたアンリの花園を綺麗にしていく。

 アンリはまだ放心状態で、その間もピクピクと震えるばかりでなんの抵抗もなかった。

 

 みっともないとも言える弛緩しきったアンリの肢体を見ていると、満足感だか征服感だか優越感だか、確認するのも億劫なくらいの激情が心のなかで渦巻く。

 アンリの隣に横たわり、彼女の身体に手を回した。

 あー眠い、気だるい。アンリが抱き枕として最高すぎる。毎日抱いて寝たい。ダメか、相室だ……し。

 

 ■◆■

 

「ん、んー」

「あら、起こしてしまいましたか」

 

 アンリが俺の頭を撫でていた。心地いい。なんだか安心する。

 どうやら結局寝てしまっていたらしい。

 

「ごめんなさい、最後まで全部任せてしまって。わたくしもなにかしてさしあげたかったのですけど」

「いいよ、そんなこと。フェラとかパイズリとか、あとなんだろ、なんでもいいか、そういうのはまた今度やってもらうから」

「ふふ、わたくしは今からでもかまいませんよ」

「さすがに今日はもう無理っす……」

 

 一回に全力を注ぎすぎた。俺の意思じゃないけど。

 おのれ、俺の本能。もう少し手加減してくれれば、このままアンリにあんなことやこんなことをしてもらえたのに。

 

「そうですか? ではまた、わたくしに教えてください。いろいろと、ね」

「もちろん。俺の性癖全部仕込んでやる」

 

 覚悟しろよー。俺はだいたいどんなジャンルでもいける男だからな。

 くすくすと笑いあう。

 

「というか俺ノリで、膣内に射精すー、とか言ってたけどさ、ゴム着けてるじゃん。頭茹だりすぎでしょ」

「うふふ……次する時は無しでやってみますか?」

「そうしたいのは山々だけど……子育ては気持ちじゃなんともならない部分あるからなぁ」

「安全日になら」

「普通アンリって取り締まる側じゃない?」

 

 生徒会長ではないが生徒会役員だ。ゲームやアニメじゃ見なかったけどこの世界ではちゃんといる。

 今は庶務をやってるんだったっけ。

 

「ま、そういうのはプロになったらね」

 

 ベッドから下りる。アンリに聞かれた。

 

「どうかしましたか」

「水。アンリもいる?」

「ええ、お願いします」

 

 コップに注いで戻ってくる。アンリに一つ渡して口をつけた。

 息をつく。いろいろと放水した体に水分が染みた。

 

「あの……」

「ん」

 

 アンリがコップを握りしめて、瞳を揺らしながら上目遣いに問うてきた。

 

「わたくしの身体……その、よかったですか……?」

 

 言葉と行動を以て返事とした。

 人間は意外と、限界だと思っていてもまだまだヤれるらしいということがわかった。




ヌケたら評価ください。


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2話

日間ランキングに乗りました。いえーい、快挙!

書き始めてから二年ちょっとでしょうか。まさか自分の作品をランキングで見ることになるとは思いませんでした。それもR18で。
嬉しすぎて、ちょくちょく作品情報を見てお気に入り登録数を確認しています。そして初めての重い期待に震えています。

ミルキィの作品もっと増えろ!


ところで一人称で主人公の名前出すの難しいですよね。
最初に「俺は高校生探偵の~」とかやらせればよかったんですが。

主人公の名前は浅見光(あさみひかる)です。どこかに同じ名前のミルキィのオリ主がいたら変えます。


 がんばり屋さんのトイズ。

 通称、秀才のトイズ。

 史上最悪のトイズと恐れられた相手をダメ人間にするダメダメのトイズの対極に位置する、がんばり屋さんになる俺のトイズだ。

 

 とはいえこのトイズは、いきなり知識がついたり、いきなり運動性能が上がったりはしない。

 ただ努力することが苦痛ではなくなり、むしろ高いモチベーションを持って行えるようになるというだけの能力だ。

 学園の入学試験の時も『それただそういう気質なだけなんじゃないの?』と言われたりした。

 ちゃんとトイズ計測器を使って、俺のこれがトイズであることを証明したことで、なんとか探偵学園にいる。

 

 このトイズへの周りからの評価は極端に二つにわかれる。

 なにそれすごい、と、なにそれ意味あんの、だ。

 たぶん自力で努力できる人とできない人で分かれてるんだろう。

 

 ということにしている。

 

 しかしてその実態は、感情の強弱を調整するトイズだ。

 努力できるようになる、はこのトイズの一部でしかない。

 めんどくさいという気持ちを限界まで抑え、あーやらなくちゃなー、というショボいやる気を限界まで引き上げることができる。

 

 エロ方面に使うのだとすれば、一ミリでも俺を異性として認識しているだけでいい。

 なくはない、その程度の好意さえあれば、俺はそれを狂気的なまでに引き上げることができる。

 俺に対する警戒を下げればナンパだって格段にうまくいく。

 

 ああなんて素晴らしいんだ! この力があれば生理的に無理と思われていない限り、誰だって落とせる! 

 

 とはもちろんいかなかった。

 だってトイズだから。万能じゃあない。

 

 アンリとの初セックスの時、俺は俺の興奮をトイズによって下げたが、それはすぐに元通りになった。

 そう、俺のこのトイズ、強制力がないんだ。

 強制的にベタ惚れにさせることはできるが、なんかの拍子に戻ってしまう。

 なぜなら感情の理由がないから。

 

 感情にはその理由が必要なんだと思う。

 人を好きになる理由なんて様々だが、なにもない、なんてことはないだろう。なんとなく、だってきちんとした理由だ。意識していないだけで、細やかな理由の積み重ねである。一目惚れはまあ、顔かな。

 

 興奮が戻ったのもそうだ。

 女体があるから、とか、原作キャラとヤってるから、とかそういう根拠がまだ目の前、というか体の下にあったから、感情は戻った。

 俺のトイズではこの理由を作り出せないし、また消してしまうこともできない。

 恋愛感情を強化しても『なぜ好きなのか』という疑問を持たれてしまえば、すぐ元通りだ。

 

 で、おまけにこのトイズ、持ってない感情を作ることや、逆になくしてしまうことはできない。

 だから知らない誰かを俺に惚れさせることはできないし、一度嫌われたら悪感情を消すこともできない。

 やるならトイズなしでやらなくちゃいけない。

 

 このクソ仕様のせいで、一度俺が人を操ってるんじゃないかと疑われたらもうその疑心を解けないわけである。

 焦ってトイズで疑心を抑えたりなんかしたら目も当てられない。

 

 いやほんと、これらの仕様を人に使う前に気づけてよかったよ。

 俺がオムツのなかに漏らして、オムツを替えてもらうという作業に興奮する人間だったら危なかった。

 あの時、不快感を取り除こうとして失敗したから、人に使う前に検証しようと考えられたのだ。

 

 検証してなかったら今ごろ前科一犯だ。

 トイズで性犯罪なんて、ラスボス兼ヒロインの怪盗アルセーヌからすれば、無条件に軽蔑対象だろう。いや誰でもか。

 で、俺はそれを消せない、と。

 

 今のところ、このトイズに対しての俺の評価は微妙にプラスといったところだ。

 もちろん俺のトイズを使えばプラスにカンストさせることもできるが、絶対にやらない。意味が薄くてもやらない。

 

 まずトイズというだけでオッケーだ。おかげで探偵学園に来ることができた。

 怪盗側は警察に興味ないから、もし俺がトイズを持っていなくて、原作に関わるために警察になっていた場合、攻略難易度が鬼のように上がっていたことだろう。

 

 そして実のところ、感情を操っても必ずしも元通りになるわけではない。というところだ。

 

 その手段は大きく分けて二つ。一つは吊り上げた感情に見合う理由を作ることだ。

 俺に惚れさせたのなら、その感情に釣り合う理由を作ってやればいい。解ける前に理由になりうるだけの思い出を作れれば、自然に消えるまでは続くだろう。

 ちなみにナンパで何度か試したが、今のところ成功例はない。

 

 二つ目、主にこっちで使うのだが、少しずつ変えるというものだ。

 自身の感情そのものであると誤認するような小さい変化なら元通りになってしまわない。たぶん。

 つまり好感度の上がり幅を少しだけ引き上げているわけだ。

 塵も積もればというが、この少しずつずらしていくというのが案外有効だったりする。

 

 一つの感情そのものを動かすだけなら、大したことはない。

 だが人付き合いはそんな単純な感情でできていない。信頼や信用、警戒、好き、嫌い、興味関心、その他もろもろの俺に向けられた感情を、ちょっとずつ都合のいい方向に向けていけば、それで解けない洗脳の完成だ。

 

 怪盗Lは洗脳のトイズを持っていたが、あれは愛のパワーで解けてしまう。

 なぜなら自分の意思じゃないから。

 強制力の薄さがゆえに、俺のトイズによる変化は心に馴染む。

 

 そして最後の利点。

 トイズには副作用がある。一番わかりやすいのが譲崎ネロのダイレクトハックだろう。ハッキングのトイズを持つネロは、電気信号を介して生き物の心が読める。あとネロの近くだとバリ3立つ。

 このようにトイズに関連した力を発揮することができる。俺のトイズの副作用はもちろん、感情を読むことだ。

 心を読む、というほど正確ではないが、今どんな気分なのかくらいはトイズを発動させていなくても簡単にわかる。

 これがかなり女の子を口説くのに便利だったりする。それに探偵としても役に立つ能力だ。

 

 まあ全部引っくるめても、結論としては微妙にプラス程度なんだが。

 好感度の上方修正だってさ、俺がもっとイケメンだったり、すごいトイズ持ってたら勝手にそれくらい上がるでしょ。

 それに努力できる人間になるトイズ、ということにしているせいで俺は研鑽=トイズになっている。ゆえに、俺に妥協は許されない。通常科目の点が下がれば、同時にトイズの評価も下がってしまうから。

 そしてバレた時のリスクだ。なんやかんや言っても精神を操るトイズだ。悪用していなかったとしても、信用されなくなるだろう。

 いや悪用してるんだけれども。どこかのヒーローを目指している少年と違って。

 

 せめてさ、せめて感度も上げられるとかそういう仕様があればよかったのに。

 感度は感情じゃなくて感覚だから操れないんだよな。

 

 そんなこんなで二年目、俺にも後輩ができた。

 年齢的には高校二年生。同じ学校内で先輩も後輩もいる、なんとなく主人公はだいたいここってイメージのある美味しい学年だ。

 会ったことないけど、ミルキィホームズの一人、エルキュール・バートンも新入生として入学しているはずである。

 会いたいなぁ。一年のクラスに行く口実があればいいんだけど。

 いきなり図書館に通うようになるのも不自然だし。

 

 笑顔を作ってすれ違った人に挨拶しながら登校する。愛想は振り撒いておいて損はない。

 知り合ってさえいればトイズの対象に入るからな。

 はっはっはっ、もっと俺に好感を抱くがいい。

 

 門をくぐって学園の敷地に入る。

 さあて、今日も夢のためにがんばるぞー。たぶん生徒の中で一番不純な夢だけどね。

 

 ──ガコン

 

 なんか聞こえた。なんだろう、硬いなにかが壊れる音みたいな。

 探偵学園なんて場所でそんなあからさまにヤバいことやる生徒なんて、時系列がアニメになるまで出ないと思うけど。

 じゃあ侵入者とか。なくはないだろう。ゲームでも言ってたけど、探偵学園なんてところ悪党からすれば邪魔だし。

 

 音は遠かったからか聞き取れたのは周りで俺だけのようだった。日頃から集中力を引き上げてきたおかげだろう。

 とりあえず音のほうに向かってみることにした。

 なにもないならそれでよし。ほんとに侵入者だったら、一人で解決を試みてみよう。成功したらめっちゃかっこいい。

 

 校舎の裏に回り、音の発生源を探してみる。

 すると案外そこはすぐに見つかった。校舎の一部が壊れていて、その近くに女の子がうずくまっている。うっ、ぐすっ、と彼女がすすり泣いていることに気づいた。

 恐怖、苦しみ……自己嫌悪、か? 

 ぐちゃぐちゃとした自分でも整理できていない負の感情は、ひどく読みづらい。けれど、とても辛いことだけはわかった。

 

 だから放っておけなくて、思わず駆け寄り、彼女に呼び掛けた。

 

「君、大丈夫!?」

 

 彼女の近くで膝を折り、彼女と高さを合わせる。

 そして彼女の肩に手を置いた。別に下心があったわけじゃない。ただ彼女の中で渦巻く負の感情を少しでも抑えられれば、そのくらいの考えだった。

 でも今回ばかりは、それでも失敗だった。

 

「……あ……」

 

 彼女がのどの奥から声を漏らした。爆発するように彼女の感情が膨れるのが見てとれた。

 彼女に対してこれは悪手だった。それに気づいて手を離そうとしたのだが、彼女のほうが速かった。

 

「い……やぁ……っ」

 

 振り向き様に俺の手が彼女に振り払われる。

 とてつもない力だった。そのちょっとした挙動で俺の体ははね飛ばされ、宙を舞い、四、五メートルくらい後ろに落ちた。

 

「あっ……う、ああっ……そん、な……わ、たし……」

 

 嗚咽混じりの声だった。視界に入ってなければ俺は人の感情を読めないけれど、そんな必要がないくらいにわかりやすく、深い後悔と絶望の染み込んだ悲鳴だった。

 ダッと走り去る足音があった。耐えきれずに逃げたんだろうか、それとも人を呼びに。

 

 どちらにせよ俺は、最悪でも彼女がそうするまでに立ち上がらなければならなかった。

 そうして、自分は平気だと伝えなければならなかった。

 

 あー失敗したなぁ。なにやってんだか俺は。鍛えてる意味ないじゃん。

 陰鬱な気分になる。はぁ。

 忘れないために、これは抑えずおいておこう。そうするべきだ。

 

「ちょ、ちょっと光! 大丈夫なの!」

 

 まだ起き上がれないので顔だけ上げた。

 声から予想はついていたが、そこにいたのはコーデリアだった。あ、スカートの中見えそう。

 

 コーデリア・グラウカ。

 ミルキィホームズの最年長。透き通るような金髪にピンクの花飾りをふんだんにまぶし、ツインテールにしてたり、そのまま流したりしている俺のクラスメートだ。

 

「なんでこんなとこいんの?」

「それはこっちのセリフよ! いきなりふら~っと校舎裏に行ったかと思ったら、なんだか倒れてるし!」

「ストーキングしてたの?」

「……び、尾行よ……うん。探偵を目指しているのだもの……」

 

 目、そらすなおい。

 いいけどさ、ようするに俺は興味を持たれているってことなんだし。

 

「とりあえずコーデリア、肩貸してくれないか」

「ええ! はやく保健室に行かないと!」

「そうだね」

 

 一回見に行ったほうがよさそうだ。さっきの娘が人を呼びに行ったとしたら、行き先はまあ保健室だろうから。

 

「それにしてもなにがあったらそんなことになるのよ。一体誰にやられたの!?」

「たぶん一年の可愛い女の子。ちょっかいかけたら反撃された」

 

 コーデリアに投げ捨てられた。冷たい目で見下ろされる。

 ご褒美かな。

 

「バカじゃないの? アンリエットさんに言いつけるわよ、まったく」

「ははは、やめてください」

 

 まだ浮気を許してもらえる確信がないのに。

 

「はぁ……ふざけてないでいくわよ」

「はーい」

 

 この世界の女性は、ゲームやアニメのキャラみたいに可愛いし、美しい。あと野郎もだいたいイケメン。

 だがゲームやアニメそのものな顔をしているわけじゃない。

 アンリを例にするなら、水色髪の美少女という特徴を持った生徒は他にもいる。だから外見だけで見分けるのは難しいのだが、まあさっきの娘はエリーだろう。

 

 長い紫の髪、振り向いた時に見えた髪は赤と白の髪紐で十字にくくられていた。眉尻の下がった赤い目、座ってたから誤差はあるだろうが百六十ないくらいの身長。

 人一人を軽く吹っ飛ばす力、俺に触れた彼女の手の甲の異常な強度、おまけに彼女がいた地面がわずかにへこんでいたことから、ただの怪力のトイズではないことがわかる。

 

 というわけで推定エルキュール・バートンとの接触に成功したわけだ。

 会いたいとは思ったけど、もっとマシな……。

 

 コーデリアの支えを受けて保健室にたどり着いた。

 保険の先生は入ってきた俺の様子を見て、驚いているようだった。

 この様子じゃ、まず推定エリーはここに来ていないだろうけど、一応さっき見たエリーの特徴を伝えて聞いてみる。

 

「そうですか。ありがとうございました」

 

 知らないとの答えだったので、教室に行くために保健室を出ようとした。のだけど女医に呼び止められて、結局診察されることになった。

 軽い打撲と内出血。意識もはっきりしているから、今のところ問題なし、という結果だった。

 不調が出たらまた来るよう言い含められて、俺は解放された。

 

「コーデリアー、遅刻する前に教室戻るぞー」

「え、ああ、うん」

 

 コーデリアはなにか考え事でもしていたのか、遅れて返事をした。

 

「どした?」

「その……さっき光が言った人に心当たりがあって」

「へえ、そうなんだ」

 

 じゃあほぼ確定だな。

 この状況には覚えがある。これあれだ、原作前のコーデリアとエリーが仲良くなるストーリーのところだ。

 なんやかんやあって、俺みたいにエリーにぶっ飛ばされたコーデリアが、エリーを許して友達になる、みたいなストーリー。

 

 あれ、これ良くない状態なんじゃないか。

 短期間に二度もエリーが暴走するだろうか、というか二度も暴走してエリーの精神は無事なのか。

 

 ちゃんとミルキィホームズ揃うよな。

 不安になってきたぞ。

 

 ■◆■

 

 エリーを探し始めたのは昼休みからだ。十分休みでは時間が足りなかった。

 二人を引き合わせるためにコーデリアも連れていく。一応知り合いという名目があるので、簡単に巻き込めた。

 一年の教室を回って聞き込みをする。得られた情報はそう多くなかったが、重要なことはわかった。

 

 彼女はエルキュール・バートンであることと、授業が終わると即行でどこかへ行ったことだ。

 

 どこかはクラスの誰も知らなかったが、おそらく保健室だろう。

 当てをつけて向かえば、やはりそこに一人の女生徒がいた。保健室の戸の前で、取っ手に指を伸ばしてはひっこめ、また伸ばす。という行動を死にそうな顔で繰り返していた。

 

「エルキュール・バートンさん?」

 

 びくっ、と彼女は震えた。ぎこちない動きで俺のほうを向く。目を引く赤い瞳は、恐怖で濁っていた。

 

「ええと、俺のことわかりますか」

「は、い……今朝、わたしが……傷つけてしまった人、ですよね」

「じゃああなたが────」

 

 詰め寄ろうとするコーデリアを引き留める。

 

「ステイステイ。落ち着け暴走機関車」

「誰が暴走機関車よ誰が!」

「怖がってるから、ね」

 

 思い込んだら一直線、てのはコーデリアの良いところでもあり、悪いところでもある。

 俺のために怒ってくれてる、ということもあって悪い気はしないが。

 怯えるエリーに気づいたのかようやくコーデリアは気炎を抑えてくれる。

 

「さて、バートンさん」

「……っ」

 

 名前を呼ぶとエリーを拳をぎゅっと握ってうつむいた。

 

「今朝はごめんなさい。俺の配慮が足りませんでした。怖がらせてしまってごめんなさい」

「え?」

 

 腰を折り、深々と頭を下げる。

 

「でも……あれは、わたしが……その……ぅぅ」

 

 そこでエリーは言葉を詰まらせた。そのままの姿勢で続きを待つ。

 

「あの……その……ぁぅ」

「待ちますよ、いくらでも。昼休みが終わったら、また休み時間か放課後に聞きに行きます。だから、落ち着いて話してください」

 

 そう告げた。それから、何度かエリーが大きく呼吸をする音が聞こえて、いくぶん落ち着いた声で話し始めた。

 

「……頭を、上げて……ください」

「うん」

 

 姿勢を戻す。状況が掴めずコーデリアはうろたえていたが、もうしばらく黙っていてもらおう。悪いね。

 

「わたし、の……ほうこそ、ごめんなさい」

 

 ぺこりと今度はエリーが頭を下げた。

 

「かまいません。俺ならたいした怪我じゃないから。じゃあまあお互い様ってことで」

「はい……」

 

 緊張が解けて、ふぅ、と深く肺の中身を全部吐き出した。

 許されたぁー。はい勝訴ー。紙に書いて走り回りたいくらいだ。

 心の中ではしゃいでいると、横から服をくいくいと引っ張られた。

 

「ねえ光。そもそもなにがどうなってこうなってるの?」

「あれ? 最初に言わなかったっけ」

「あんな適当な内容、信じるわけないでしょう」

「信じてないのに俺投げ捨てられたの」

「光が変なこと言うからよ」

 

 ため息をついて、エリーのほうを見る。それから二人で今朝のことを話すことにした。

 

 ちなみに女医には、保健室の前で騒ぐなって後で怒られた。




エロ無し。はいいんですかね。

どういう部分に需要があるんでしょうか。感想か活動報告のどれかに書き込んでいただけるとありがたいです。

もともとこれ全年齢で書こうとしていたんですよね。今とは別の名前、別のトイズなんですが。
だからもっとヤれというのであれば随所に入れることはできる、はず。


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3話※(アンリエット)

アンリエット生徒会長の口調って難しいな。
ゲームとアニメとで口調というか雰囲気が違うし、そっくりさんな怪盗アルセーヌなんてのもいるし。どっちが素なのかな。どこかで明かされてましたっけ。

運動会とか学園祭とか、学校ぽいイベントもやろうかなって思いましたが、やっぱ全員集合してからのほうがいいですよね。

というわけで投稿です。特に決めてたわけじゃないんですが6000字を切りました。


 コーデリアとエリーは仲良くやっているように思える。

 始めこそ俺を介して交流していたものの、すぐに二人だけでも会うようになった。これでひとまず安心といったところか。

 原作通りのストーリーとはいかなかったけれど、エリーのトイズとその脅威を知って、それでもコーデリアはエリーと友達になっているのだから。

 

 もちろん俺もエリーとは仲良くしている。

 というかそっちが俺の主目的なんだから、当たり前だ。

 エリーからの好感度は初日の時点でかなり高かった。あのウィスパーボイスがベッドではどう活用されるのか、今から楽しみでならない。

 

 一年以上の付き合いがあるコーデリアに関しても、好感度は十分である。なのだが彼女はちょっと真面目すぎた。

 見る限り、俺に対する好感度があがるのと同時に、自分でそれを抑えようとしているようなのだ。

 浮気はダメ、とかそんな感じなんだろう。俺はバッチコイなのに。

 

 気質そのものを変えることはできないトイズが恨めしい、と同時に本質を変えるほどの力がないことにほっとする自分もいる。

 

 まあコーデリアはよく妄想全開で理性を宇宙の彼方に投げ捨てていることがあるので、なんかほっといても勝手にうまくいきそうではある。

 

 と、おおむね事は首尾よく運んでいる。が全部じゃない。問題もある。

 

「ずいぶんあの一年の娘と仲がよいのですね」

 

 なんてアンリに拗ねられた。むすっとして嫉妬するアンリはすごく愛らしかった。

 からかい半分で言っているのはわかったが、なるべく真剣に謝り、言葉の限りに誉めちぎった。

 そして償いとして生徒会の仕事の手伝いをやっている。

 

 ホームズ探偵学園では、よくある学園物よろしく生徒会が強い権力を持っている。

 お陰さまでその仕事は多岐に渡る。なんせ理事会よりも上だ。教育方針や学校の設備、運営なんかについての向こうの案に対して拒否権さえある。

 なんならこっちから提案して、そのまま通してしまえる。

 

 理事会の人たちも大変だな。

 IDO──国際探偵機関主導のもと創られた探偵学園だが、運営してる人たちまで全員が探偵、というかトイズを持ってるわけじゃない。ヒロアカと違ってトイズ持ちは希少だからな。

 嫌だろうなぁ。こっちのほうが権力持ってるの。

 そんなことを考えながら、普通の学校なら教師や理事会が対処するような内容の書類を捌く。

 

「にしても忙しくない?」

「忙しい時期ですし、それに頼れる先輩方もいなくなってしまいましたから」

「ああ、なるほど」

 

 仕事のやり方は教わってたんだろうが、やはり主要な部分を担っていた上級生がやめてすぐのころは、ごたつくところもあるんだろう。

 

「大変だねぇ」

「ええ。頼れる方が一人でも多く欲しいところです」

「ははは、呼ばれりゃ手伝いに来るよ」

 

 生徒会に属すのは遠慮したい。アンリと一緒にいられる時間が増える、というメリットはあるが、日々長時間拘束されるのは困る。

 原作キャラ攻略に使える時間がすり減るのはもちろんのこと、自己鍛練の時間が減るのも問題だ。

 

 暇さえあれば頭か体を酷使している俺だが、天才じゃない。

 だいたいどんなジャンルでも二流程度にはこなせる自信はあるが、俺が一番だと宣言できるものはない。

 好きこそ物の上手なれ、を意図的に起こせるおかげで楽しくやってはいるが、人並みはずれるとまではいかない悲しい現状である。

 

「来なくていいぞ。そっちも大変だろ」

 

 と、生徒会メンバーの男子が作り笑いを浮かべながら言った。

 

「そうだね。確かに大変かも」

「だろう! こっちのことはこっちでやれる、今日も好きな時に帰ってくれてかまわないぞ。部外者なんだからさ」

「次からはそうさせてもらうよ。今日のところはほら、アンリの頼みだから、最後まで付き合う」

 

 苦虫を噛み潰したような顔になった。

 ちゃんと取り繕えよ。読心持ちには意味ないとはいえ、演技は役に立つぞ。

 

 雑用としてあれこれ手伝うこと数時間。

 途中、自分の作業を終えて帰宅する人たちを見送りつつ仕事をこなしていった。

 ちんたらやって作業を遅らせていたなんとか君もとうとう残る理由がなくなって部屋を出た。

 

 俺に与えられた分ももうじき終わる。ラストスパートだと、ええと、気合いは入ったままだし、気を引き締める必要もないから……考えた、かな。

 どうでもいいことを頭の片隅で思考していると、すぐ近くにパサッと紙束が置かれた。

 

「追加?」

「いいえ」

 

 アンリは自分の席に戻って椅子を取り、俺の隣に置いた。椅子がぶつかりそうなくらい近くだ。

 

「こちらでやろうかと思いまして。よろしいですか?」

「もちろん。どうぞどうぞ」

「ふふ、ありがとうございます」

 

 きぃ、と小さな音をたててアンリがそこに座った。そして仕事を再開する。

 静かな時間だった。紙をめくる音、ペンを走らせる音、判子を押す音、それとアンリの呼吸の音。聞こえるものといったらそのくらいだった。

 少ししてアンリが仕事を終えた。俺より多かったはずなのに、うーん、我ながら要領の悪さを感じる。

 

「手伝いましょうか」

「いやいい」

「そうですか」

 

 残念そうにされた。でもこう、つまんないプライドだろうけど、与えられた分くらいは自分で最後までやっておきたい。

 判子を取って、枠からはみ出さないように押す。処理した書類は分けておいて、次の書類を取る。不備が無いか内容を確認し、無ければ承認、あれば書類の提出者に連絡を取って再提出させる。

 

 アンリが体を寄せて、俺の作業を覗き込んできた。二の腕に押し付けられたアンリの柔らかな胸に、おもわず股間が反応する。

 俺のナニが硬くなりつつあることに目敏く気づいたアンリはなまめかしく笑った。

 

「そういえば、これお仕置きでしたわね」

 

 そう耳元でつぶやくと、ゆっくり俺の股間をさすり始めた。

 

「お、おい、アンリ」

「うふふ」

 

 チチチとチャックを引いて、そこに真っ白で細い指を突っ込む。下着の上から数度しごいた後、前開きから一物を引き出した。

 

「射精してはダメ、ですわよ。生徒会室にあなたの性臭が残ってしまいます」

「じゃあ、後にして、くれないっ」

「だーめ」

 

 竿を緩く握って上下に手を動かす。じわぁっと我慢汁が先端が染みだしてきた。

 アンリは楽しそうに微笑んで、とうとう椅子を机から俺の体のほうに向け、もう片方の手を亀頭に伸ばしてきた。

 親指で俺の我慢汁を亀頭に塗りたくると、優しくなで回す。

 

 書類を見なくちゃいけないのに、チラチラと視線が下にいく。

 アンリのきめの細かい美しい指が、俺の汚汁にまみれている。先ほどまで整っていたアンリの呼吸が興奮で乱れ、熱い吐息が耳に吹き付けられる。

 

「興奮、しているんですの? いつもより硬くなってますわ」

 

 アンリが囁く。俺は快感をこらえながら文句を言った。

 

「あのなぁ」

「ほら、手が止まっていますわ。ちゃんとやらないといけませんよ」

「集中できるか! いや、できるけど!」

 

 やりたくない。こらえるのはいいけど、下げたくない。

 

「震えていますわ。もう我慢の限界ですの、しかたありませんわね」

 

 俺の足の間を、するりと潜り抜けて机の下に入り込む。

 蠱惑的な瞳で俺を見上げながら、ちゅっと亀頭に口付けた。

 

「部屋を汚してはいけませんから、わたくしが口で受け止めてさしあげます。出すときは言ってくださいね」

 

 チロチロと舐めながら、竿をすられる。「うっ……くっ」と声を漏らしてしまった。

 名目上、仕事は続けておこうと書類に目を向ける。

 

 ガチャ。といきなり扉が開いた。びっくりして腰が跳ねる。

 

「ど、どうした?」

 

 戻ってきたなんとか君に問いかける。

 

「忘れ物だよ、忘れ物」

 

 そう言って彼は自身の机からペンケースを取って、カバンに放り込む。それからこっちに目を向けた。

 

「まだ終わってなかったのか?」

「あーうん、もう少し」

「ふうん、手伝おうか」

「遠慮しま、っす」

 

 いきなりチンコが生暖かい感触に包まれた。気づかれないようそっと視線を落とすと、イタズラっぽく笑うアンリが俺の物を咥えていた。

 

「そうか」

 

 そう言うと出口のほうに向かって歩き始める。助かった、そう思って気が抜ける。

 

「アンリ、お前」

 

 小声で呼び掛けた。

 アンリは頭を動かし、俺の一物を深くまで咥えこんでは引き、またのどに突っ込む。右手はスカートの中に入っており、秘所を弄っているようだった。

 くちゅくちゅと口とマンコからたてられる水音は、いつ気づかれるかと冷や汗ものだ。

 

「なあ」

「──っ。な、なに」

「副会長ももういないみたいだが、鍵はちゃんと持ってるのか。ないなら置いてくぞ」

「だ、大丈夫」

 

 もうそういう心配いいから。心臓に悪いからはやく出ていってくれ。願いながら言葉をつむぐ。

 

「鍵なら、アンリにっ、借りてる……から」

「ならいい。ちゃんと閉めて帰れよ」

 

 部屋を出て、扉が完全に閉まるまで緊張は続いた。

 ガチャンと留め金がはまる音がすると、糸が切れたようにどっと汗が吹き出た。

 

「バレたらどうするんだ。困るのは俺よりアンリのほうだろ」

「らいひょうふへふわ」

 

 咥えたままアンリが答える。どこが大丈夫だというのか。

 しかし強い快楽に襲われ続けているとはいえ、焦りが薄れたことでアンリの瞳に光が灯っていることに気づいた。

 トイズを使っている証だ。

 アンリのトイズは謎ということになっているので、謎のままにしておく。

 

 光を消し、俺の射精を促すように激しく頭を動かす。

 ぐぽっぐぽっとわざと音をたてながらフェラをするその光景は、口の気持ちよさだけでなく、視覚から脳を直接愛撫されているかのような快感があった。

 緊張の切れた俺にはアンリの攻撃に長時間耐えきれるような力はない。

 

「ぐっ……射精すぞっ!」

 

 それに応えるようにアンリはぐいっと奥まで咥え込んだ。

 どぴゅっどびゅるびゅるるーびゅうー。

 

「んむ……んんっ」

 

 俺も腰を押し出して、貯まった精液を放出する。

 

「じゅぞ、じゅるるるっ……じゅぞぞぞぞ」

 

 射精管に残っている精液まで全部吸い上げられる。そのあまりにもな気持ちよさに声が出てしまった。

 

「はぁ……はぁ……あーティッシュ持ってたっけ」

 

 床に置いてあったカバンを持ち上げる。中身を漁ろうとするのだが、くいくいと服の裾を引っ張られて中断した。

 

「れえっ」

 

 とアンリは口を開けて舌を伸ばした。そこにはもちろんネバッとした精液がある。

 存分に俺に見せつけると、アンリは唇を閉ざしてのどを鳴らし、嚥下した。

 

「ふぅ……ごちそうさまでした」

 

 口の端から垂れた精液を舌で舐めとる。

 今射精したばかりの俺の一物は、もう硬さを取り戻していた。

 アンリは勝手に俺のカバンから財布を取り出して、そこからコンドームを持ち出す。それを咥えて亀頭に引っかけ、口で引っ張って装着した。

 

「よいしょっと」

 

 愛液の滴る下着を脱いで、アンリは俺にまたがった。

 俺の一物を探すように腰を揺らし、ずぷっと挿入する。

 

「はっ……あぁんっ」

 

 エロく喘いで俺にしなだれかかってきた。押し付けられた胸がぐにゅんと潰れて形を変える。

 そして俺の口に吸い付くと、肩に手を置いて腰を上下に振りはじめた。

 

「はっ、はっ、あんっ……いつもより、大きくて、あうんっ……すごいですわぁ」

 

 始めこそそれなりに軽快にアンリが腰を振っていたのだが、次第に快感でかアンリの動きが鈍ってくる。

 

「はうっ……あんっ……あうんっ……」

 

 焦れったい。作業も道具もほっぽりだして、アンリの桃尻をガシッと掴んで持ち上げ、勢いよく落とす。

 

「な、なにを────んああぁぁあああっ! ……ああっ、あっ、はっはっ!」

「アンリ軽いな」

「やっ、ん、まっ……待って」

 

 アンリの制止を無視してまたアンリの身体を掴んで動かし、上下運動に合わせて腰を突き上げた。

 

「あんっ! ひゃん! んにゃぁっ!」

「あんまり声出すと外に聞こえるぞ」

「だ、だってぇ……んむ、んんっ!」

 

 一旦手を止めてアンリの頭を引き寄せ、唇をふさぐ。

 アンリは肩に置いていた手を、俺の後ろに回してしがみついた。

 

「ん、れろっ……ちゅるちゅ、ん、あふ……んちゅ、むちゅ」

 

 合わせた口の隙間から喘ぎが漏れる。ゴム越しといえどアンリの膣は一級品だ。無数の襞が動かすたびにざわざわと擦り付けられる。

 

「アンリ、もう出そうだ」

「はいっ、わたくし、もっ……一緒に……っ!」

 

 一際大きくアンリの尻を持ち上げて、俺の股間に叩きつけた。

 

「ん、ン──────っっ!!」

 

 どくんどくんと、精液が勢いよく体から流れ出ていった。

 アンリは自分の手で口を覆って、声を抑えていた。びくびく身体をしばらく震わせて、完全に脱力して俺にもたれる。

 アンリが復活するまでの数分、俺はアンリの頭や背中を撫でながら待った。

 

 正気を取り戻したアンリは俺の上からどき、コンドームを外した。

 そしてコンドームに口を付け、二度目だというのにたっぷりと出した精液を啜る。

 あまりにも淫靡なアンリの様子に思わず顔を赤くして、目をそらしてしまった。

 

「美味しくないだろ」

「こうすると光は嬉しいのでしょう」

「嬉しい」

 

 即答した。当たり前だ。精飲を喜ばない男なんてそうはいないだろう。

 アンリは下着を履きなおす。下着が受け止めきれなかった愛液が足を伝っていた。

 

「替えの下着も持ち歩いたほうがよさそうですね」

 

 そう呟きながらハンカチで雫をぬぐった。俺もアンリのエロスで忘れていたが、ナニをズボンにしまう。

 

「光」

 

 名前を呼ばれた。アンリのほうを向くと、じっと俺を見つめていた。

 

「わたくしから離れていかないでくださいね」

 

 不安をこぼすアンリの姿に、すごく罪悪感が湧く。目を閉じ、トイズでそれを下げた。

 

「絶対離れないし、離さないよ。というか普通それ言うの俺じゃない? どう考えてもアンリのほうが魅力的だ」

「ふふ、その魅力的なわたくしが光を選んだのですよ。もっと自信を持ってください」

 

 また気恥ずかしさで視線をずらした。偶然目に入った資料を見つけて、それを出しに逃れる。

 

「さてと、仕事やらないとな」

「やっぱり手伝いましょうか?」

「急がないんなら、一人でゆっくりやりたいかな。そのほうが一緒にいられる時間が長くなるし、それに」

「それに?」

「俺のズボンも乾く」

 

 ベタベタになった股間周りを見て、アンリは顔を赤くした。

 

「俺はこのまま帰ってもいいんだけどねー」

「やめてください!」

 

 あわてたアンリがハンカチを俺の股間に押し当てる。いやぁ、染み込んでるから意味ないんじゃないかな。




これ書いてて思い付いたんですけど、アルセーヌとなら大通りで露出プレイできますよね。いえ、なんで思い付いたのかはわかんないんですけど。

あとはコーデリアとエリーといちゃついて、それからシャロ登場まで飛ばします。


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4話※(コーデリア)

もっと自由度の高いトイズにすりゃよかったと思う今日このごろ。エリー以降はどうしようか。




 ホームズ探偵学園の授業は、大学みたいに選択制だ。

 いくつかある必修科目を除けば、学園が提供する科目の中から好きに選んで受講することができる。

 

 例えば必修科目には一般の高校でも習うような国語や数学、トイズ学などがあり、選択科目には探偵としての技術──捜査や推理の手順などを習得するためのものがある。

 理由はもちろんトイズだ。

 トイズの効果は多岐にわたり、その内容如何によってはまったく意味を成さない科目もある。

 例えば感情を読める俺には、相手の細かな挙動や表情から嘘を見抜く技術を学ぶ心理学の授業は必要ない。

 もちろん必要なくとも受講はしているのだが。

 俺の読心はただの技術だよ、ほんとほんと、光嘘つかない。

 

 まあほんとの大学ほど科目は多くないので、基本的には必要ない科目を外すだけだったりする。

 

 というわけで今日も授業をなんとか乗り越えた。

 探偵を養成するための講義なだけあって緊張する。教える側は探偵だったり、そうでなかったりするが、全員その道のプロだ。

 捜査の役に立つ技を教えてくれる彼らに、俺の読心がバレるのではないかと毎日ひやひやしている。おかげさまで日に日に俺の演技力が上がっているような気がしなくもない。

 

 アンリからの頼まれ事もなく、遊びに出かける約束なんかもしていないので、今日はまっすぐ寮に帰った。

 PCを立ち上げて犯罪心理学の論文を検索する。集中力と興味を引き上げ直した。読み終わるまでは持つだろう。

 

 最近は机に向かってからトイズを発動している。

 完全に習慣化していた。嫌すぎる。なんだろうな、これ。もうただの勤勉すぎる学生じゃん。

 なんだか感情とは別のところに疲労が溜まっていくような感じがした。

 

「うぅ、つらいよ~」

「じゃあやめれば?」

 

 相部屋の人が至極真っ当な意見を述べた。

 

「でも面白いんだよぅ」

「情緒不安定か?」

 

 情緒はデフォルトで不安定だよ! 

 ちょっと興味あるなー、って頭では考えてるだけなのに、テンションのほうは爆上げなんだぞ。

 

 怪盗事件に関する論文は、幸いにも超能力を前提に話が進められるという、見ていて面白いものだから助かる。

 これがトイズなしなら途中で興味を失うようなつまらない内容だと本当に大変だ。

 なんだこのクソは、って頭のなかではなってるのに好奇心は据え置き。そんな気持ち悪さも抑えてはいるものの、やはり泥のように積もっていく。

 

 運の良いことにこの人の論文は素晴らしいものだったが。

 こういうのは助かる、感情と理性が一致するって心地いい。普通そうだとか、そういうことは病みそうだから考えるのやめよ。

 

「ふぅん、そんな面白いのか。なんてやつ」

「え、読むの? ええと『怪盗事件におけるトイズの系統と逃走経路の関連性』著者は……」

 

 著者・明智小衣。

 あ、これ小衣ちゃんが書いたんだ。小衣ちゃんすげぇ。

 

「明智小衣」

 

 相部屋君はポチポチとなんか調べたあと、論文を読むのをやめた。

 まあそんなもんか。画面に視線を戻す。

 からから~っとホイールを回して論文をスクロールする。

 

「あ」

「ん?」

「忘れ物した」

 

 逮捕術の講義のために体操服持ってってたんだった。

 どついたり、どつかれたり、わりと汚れてるからちゃんと洗っとかないといけないんだが。

 

「……あとでいいかな」

「いや、はよいけよ」

「あーい」

 

 ページを保存して、教室に逆戻りすることにした。

 放課後の校舎は場所によって全然雰囲気が違う。部室のある辺りはにぎやかだが、教室のほうは静かなものだった。

 空っぽの教室の前を通りすぎ、自分の教室へと向かう。

 ところがうちの組の部屋からは物音がした。まだ誰かが残っているらしい。

 

 珍しいこともあるもんだ。

 一応こっそり中を確認する。状況次第では出直そう。校内でヤッてるところとかに出会すのは気まずいし。

 ひょいと戸の硝子から教室内を覗いた。

 

「はぁぁ……ふぅぅ……」

 

 部屋に残っていたのは、金髪と花の髪飾りからしてたぶんコーデリアだろう。彼女は俺の席でなんかしてた。

 

「はぁ……すぅー……ふぅ、くぅ……」

 

 両手で俺の衣服を抱き締め、顔を埋めている。そしてふすふすと息を吸ったり吐いたりしていた。

 まあつまり俺が昼間着ていた体操服の匂いを嗅いでいるわけだ。

 えぇ、なにしてんのコーデリアさん。この状況どうしたらいいの。

 

 ……とりあえず警戒心とか自制心とか下げてみるか。

 

 理性と呼べるものに繋がりのある感情を削り、少しずつトイズで心をほぐしていく。どうなるかな。

 しばらく待っているとクンカクンカやっているだけだったコーデリアは、顔を赤くしてゆっくりと右手を下に伸ばしていった。

 

「……んっ」

 

 たがが外れるのが見えた。

 

「んっ……ふっ……ぁん……光ぅ」

 

 具体的にどこをどう弄っているのかはよく見えないが、うっすらと水音は聞こえる。それだけで十二分に興奮できた。

 

「あぁん……ダメよ光、そんなとこ……触っちゃぁ……んんっ」

 

 乱れるコーデリアの姿を眺めているうちに、痛いくらいに勃起してきた。

 これヤバい。俺の名前を呼びながら可愛い女の子がオナニーしてるって、すごく股間にくる。

 

「んっ、ふっ……はぁっ、あんっ、ぁぁっ……くっ、ふ、ふぅんっ」

 

 コーデリアが足を少しずつ開いていく。手の動きが激しくなり、水音が強くなった。

 

「んっ、んっ、あっ……ぁっ、はっ、はっ、光っ、好きぃ……は、ぁ、あん、んくっ!」

 

 もう耳を澄まさなくともぐちゅぐちゅといういやらしい音が聞こえてくる。

 荒く息と喘ぎを吐き出しながら、陶酔した様子で行われていたオナニーは、じき終わりを迎えそうだった。

 

「ぁっ、はっ、はっ……ぁぁんっ、イ──」

 

 コツンッ、と足をぶつけるみたいに戸を蹴った。

 コーデリアがバッと俺の体操服を背中に隠した。俺が出入口にいることに気がついたのか、コーデリアは顔を真っ赤にしてあたふたしながら言い訳を始める。

 

「いや、あの、これは違っ……その、そう! これが誰の持ち物なのか調べようと思って!」

「体操服に名前書いてるし、そもそもそこ俺の席って知ってるよね」

「それは……その、あの……」

 

 目をぐるぐるさせてテンパり始めるコーデリア。

 おずおずと俺に体操服の上を差し出してきた。

 

「ご、ごめんなさい」

「いやいいよ」

 

 受け取った服を適当に袋の中に詰め込む。

 

「女の子だって溜まるだろうし」

「ああぁぁぁぁぁあああっ!」

 

 両耳をふさいでしゃがみこむコーデリア。ぶんぶんと頭を振って言葉を否定しようとする。

 

「ごめんなさい、本当にごめんなさい。もう許して」

「怒ってないって」

 

 むしろいいもん見れたって感じだ。

 想定していた以上に痴態を晒してくれたコーデリアには、男として感謝しかない。ありがとうございます。ありがとうございます。

 

「あ、でも私物を勝手に使われるのは困るかも」

「うぅぅ、もうしませんから」

 

 どんどん落ち込むコーデリアの肩を叩いて顔を上げさせる。

 

「嫌なら嫌って言って」

「へ!?」

 

 そう言い腰をかがめ、顔を近づける。

 コーデリアは焦った様子でわちゃわちゃとしだした。

 

「え、ちょ、ちょっと待って!」

「嫌以外は否定と受け取らない」

「嫌……じゃないけど……んむっ」

 

 唇を合わせた。何度も触れあわせるようにむさぼる。

 もともと羞恥で赤くなっていたコーデリアの肌が、さらに赤くなる様が目前にあった。

 

「んっ……んちゅ……ふっ、くちゅ……あふっ、ふっ……」

 

 数分してコーデリアから顔を離した。口と口を繋いでいた唾液の糸がつぅっと落ちた。

 

「や、やっぱりダメよこんなこと……だって光にはアンリエット副会長が……」

「ただ手伝うだけだよ」

「手伝、う?」

「そ。要するにちゃんとコーデリアが発散できてたらいいんだ。だから俺がマスターベーションを手伝う。コーデリアはすっきりできるし、俺は私物を使われない。これでQ.E.D」

「でも……ひゃんっ!」

 

 右手をスカートの中に差し込み、パンツの上から秘裂を撫でた。水を被ったみたいに濡れている。

 

「コーデリアの妄想の中の俺はどうしてた? 優しく? それとも激しく?」

「や、優しく」

「りょーかい。してほしいことがあったら何でも言ってね」

 

 期待に応えるためキスを降らし、力を入れすぎないよう抱き締める。

 そして痛みを与えてしまわないようきわめて慎重になりながら愛撫した。

 もともと絶頂の直前に邪魔したこともあってしとどになっていた秘裂も、さらに擦って濡らす。

 

「指、入れるよ」

「うん……んっ」

 

 人差し指をつぷ、と差し込む。爪は頻繁に切り揃えているから多少は大丈夫だとは思うが、引っ掻いてしまわないよう注意しないと。

 

「んっ……あっ……ぁぁっ……ぁん……」

「声可愛い」

「んんっ! ……ふっ、んふっ、んむっ」

 

 俺の肩に口を押し付けてコーデリアは声を抑える。

 

「好きだよ、コーデリア」

 

 耳元で囁くと指がきつく締め付けられた。

 もともと小さかった膣内はもうギチギチに狭まっている。コーデリアは口を俺の肩から外して見上げてきた。

 

「あ……んっ……そんな、こと」

「本当に思ってるよ。勉強も運動も頑張ってるとこや、誰とでも仲良くしようとするところ、みんなに優しいところも、あとたまに行き過ぎちゃうところだって好きだ」

「や、だめ、そんなこと……そんな、こと……言わないでぇ」

 

 膣内に人差し指は入れたまま、親指でそっとクリトリスを撫でる。

 

「ふあっ!」

 

 コーデリアが一際甘い声を立てる。蕩けた目をして快楽を甘受するコーデリアはたまらなくエロかった。

 

「あっ! ぁあっ! あんっ! ……ふっ! ふん、んっ、んくっ!」

 

 声が大きくなってくると、またコーデリアは声を抑えるためにしがみついてきた。

 コーデリアに確認を取りながら少しずつ愛撫を強め、触れ方を調整していく。

 

「あっ、あっ、はっ、あんっ、んっ! ひ、光、好き! 好きなの!」

「俺も好きだよ、コーデリア」

「嬉、しいっ! はっ、あんっ! もう……イキ、そうっ」

「ああ、我慢せずにイけ!」

 

 わざと愛液が音を鳴らすようにかき回し、絶頂を迎えさせるべく指の動きをさらに速めた。

 

「あっ、あっ、あっ、イ、イくっ! ん、んあぁぁぁぁああっ! ……あ……あぁ……はぁ……はぁ」

 

 ぷしゅっと愛液を吹き出して身体を震わす。

 力の抜けたコーデリアをとりあえず俺の椅子に座らせた。

 

「はぁ……はぁ……」

「どう? 満足できた?」

「はぁ……ふぅ……ええ、すごく気持ちよかったわ」

 

 そう言ったコーデリアの視線が下に向かい、ある所で止まった。

 それは俺の股間だ。ビンビンに勃起した一物がズボンを押し上げてテントを作っており、また滲んだ我慢汁が染みになっていた。

 

「あ……その私ばっかり気持ちよくなっちゃってごめんなさい。ええと、ど、どうしたらいいの、これ」

「いやいいよ、俺は」

「ダメよ。ほら、光が誰かの物を使って……その、し、シたら大変じゃない。だから、ね」

 

 俺は自制できる、とは言い切れないのが怖いところだ。

 トイズを自分に対して使うときは強制力が欲しい。

 

「そうだな。コーデリアとかいい匂いするし」

「恥ずかしいから、やめてよ。もう」

「じゃあちょっと移動しようか。男の俺はコーデリアと違っていろいろ出るからね」

 

 ハンカチを取り出してコーデリアの足を拭く。自分でやるとコーデリアは主張したが、押し切った。

 触れられる機会にはどこだって触れたい。我ながら変態ちっくだ。

 

「このハンカチですればいいのでは?」

 

 ふと気づいて口にした。コーデリアの愛液が染み込んだハンカチ、これはもう素晴らしいネタなのではないだろうか。

 

「これは後で洗って返すわね」

「あー」

 

 残念なことにハンカチはコーデリアに没収されてしまった。

 それから取りに来た体操服を持って校舎裏に行った。人がいないことと、来そうにないことを確認してズボンを下ろす。

 パンツを脱ぐと、勃起しきったチンコが勢いよく俺の腹を叩いた。

 コーデリアは地面に膝をついて、俺の股間と高さを合わせる。

 

「わぁ……男性器ってこうなってるのね」

 

 ちょんちょん、と指先で俺の物を突っつく。触れられるたびにびくんとなった。

 

「えっと……それで私はどうすればいいの?」

「握って、こう上下に擦ってみて」

 

 手で輪を作ってみてオナニーの真似をしてみせる。

 ゆっくりとためらいがちにコーデリアは手を一物に伸ばして掴んだ。それから俺の真似をして擦り始める。

 

「コーデリア、もうちょっと強く。それと先っぽのとこも弄ってくれると嬉しい」

「う、うん」

 

 拙い手つきだけど、一生懸命コーデリアは俺の一物をしごいてくれる。

 

「あ、びくびくしてきた。気持ちいいのね」

 

 熱っぽい目で俺の物を見つめるコーデリア。

 我慢汁がだらだらと垂れ流され、コーデリアは嫌な顔一つせずにそれを指で広げる。

 引けそうになる腰をなんとか押し留め、腰を前に出す。

 

「うぁ……ぁっ、ぐぅ、コーデリア、もう出そう。汚れるから正面から退いて」

「え! いきなり言われても」

 

 尻に力を込めてコーデリアが退避するまで我慢する。

 コーデリアは俺の後ろに回った。俺に抱きつくようにして一物をしごく。

 

「あぁ、コーデリア、もっと速く」

 

 武道をやっている硬い手でありながらも、女性特有の柔らかさを兼ね備えた手の平が、しゅっしゅっ、と動く。

 コーデリアも手淫に興奮しているのか、背中に胸を押し付けてくる。

 

「はぁ……はぁ……光、私の手でいっぱい出して、気持ちよくなって」

「くっ、あっ、で、出る!」

 

 白濁液がびゅーっと飛び出した。教室での淫行から焦らされ続けた俺の精巣はかなりの量の精液を生成していたらしく、大量の汚液を吐き出していた。

 調子が落ち着いてから俺たちは後片付けをした。

 

「ふぅー……コーデリアの手、よかったよ」

「そ、そうかしら。そんなによかったのなら、その……またしてあげてもいいわよ」

 

 顔を赤くして目を合わせることをせず、コーデリアが言った。

 

「じゃあコーデリアもまた溜まってきたら言って。俺でよければだけど」

「う、うん」

 

 恥ずかしそうにコーデリアはうつむき、スカートを持ち上げた。先ほど拭いたばかりの股間からは愛液が溢れ、美脚を伝っている。

 

「その……今からでも、いい?」

 

 この日を境に俺はたびたびコーデリアに呼ばれ、彼女の性欲を満たすことになった。結構高頻度だった。




コーデリアこれでいいかな。
口調に関してはほんと難しい。二次創作って大変ですね。


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5話※(エルキュール)

 駄菓子屋で購入してきた陳腐なお化けの面をつける。

 正直一ミリも怖くない。真っ白な顔にぐわーっと開いた大きな唇がくっついている程度にデフォルメされたお化けの顔は、むしろマスコットのような愛らしさすらある。

 だがまあ目的としてはこいつで十分だ。

 周りの生徒からの奇妙なものを見る視線を努めて無視しながら、図書館に向かうエリーに忍び寄る。

 

 足音を潜めて背後から肩を叩く。振り向いたエリーに向かって、両手を大きく上げて言った。

 

「おー化ーけーだーぞー」

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

「ぎゃああああああ!」

 

 殺されかけた。

 

 ■◆■

 

 なんでまあこんな馬鹿なことをしたのかといえば、それはエリーに頼まれたからだ。

 もちろんお化けに扮してくれって内容じゃない。

 

 先日俺がエリーにぶっ飛ばされたことからもわかる通り、エリーはあまりトイズを制御できていないのだが、そのできてなさ具合がかなりのものなのだ。

 パニック状態になるとすぐ暴走させるうえに、性格上わりとすぐにパニクる。

 こういった事例は俺の時だけに限らず、実は過去にも同じような経験をしていて、それでもう暴走させないようなんとか治したい、と頼まれたわけだ。

 

 そのための手段としていくつかアイデアを出した。

 これもその一つで、とりあえずパニックになるような状況を引き起こして慣れさせよう、というものだ。

 

 結果としてはトイズを発動させて腕を振り回すエリーという異世界転生トラック並みの殺傷力を持った存在が誕生したわけだが。

 

 俺はすぐさまお面を外し、荒神様を抑えるべく土下座した。

 

「ごめんなさいごめんなさいまじでごめんなさいギャグパート以外でそんなの食らったらまじで死んじゃうから許してぇぇぇぇぇぇ!」

「……光、さん……?」

「はい光です!」

 

 エリーは振り上げていた腕を下ろす。

 あー助かった。

 

「あの……お怪我は、ない……ですか……」

「当たってないから大丈夫」

「……よかった」

 

 ほっと胸を撫で下ろすエリー。

 俺も土下座をやめて立ち上がり、ズボンについた砂を払う。

 

「光……さん」

「ん、なに?」

「どうして……こんな……こと、を?」

「え? ああ、ほら、エリーがトイズを制御したいって言うからさ、こうやって脅かしてみようかなって」

「そう……でしたか……」

 

 立ち止まったままというのもなんだし、図書館のほうに歩きながら話すよう促す。

 

「光……さん……やっぱり、あの、話は……なかったことに……して、ください」

「なんでまた?」

 

 他にもいくつか真っ当な手段を考えていたのに。

 真っ当じゃないのも考えてたけど。

 

「危ない……ですから……っ」

「そうかな? そうかも。でもどうせいつかはなんとかしなくちゃいけないだろ。長い付き合いになるだろうし、早めに解決したほうがよくない?」

「わたしが……怖く……ないんですか?」

「強力なトイズと相対することを恐れてちゃあ探偵なんて目指せないだろ」

 

 トイズは基本に変則的というか、あまり純粋に強いものはあまりないのだが、ゼロじゃない。

 具体的にはカラー・ザ・ファントムのモノクロコンビ……ええと、名前なんだっけあの二人。

 白天使……いや中二病風に考えれば白堕天使か? 

 と、黒色。こっちはカタカナだったはず。暗黒面(ダークサイド)なんとかみたいな奴。

 

 破壊力はともかく危険なトイズではあった。

 ん、やっぱ純粋に強いトイズって存在しないのか?

 

 まあいいか。

 ともあれこんな感じにエリーが自身のトイズを疎むことなくいられるよう、あれこれと試していくことになった。

 

 昼休みや放課後を利用して、思い付いた端から試していった。

 健全な精神のために早朝ランニングに誘ったり、トイズを発動したまま細かい作業をさせたり、的を指定通りに破壊させたり、なんなら特殊警棒を持って襲いかかってみたこともある。もちろん惨敗した。

 これらの活動それ自体に意味はなくてもかまわない、忌避感や苦手意識が減るように俺がトイズで調整すればいいだけだ。

 

 で、一月くらい経ったある日。

 前回同様に放課後、校内にある図書館へ向かう道の途中。

 エリーに忍び寄り、ウルト○マンのお面をつけて「デュワッ!」と叫んでみた。

 当然三分持たずに返り討ちにあった。

 近くにあったベンチに座って話す。

 

「うーん、まだ無理かぁ」

「……ごめん、なさい」

「いや、いいよ。そんなすぐ効果が出るとは思ってなかったし」

 

 そもそも一月程度で自分を変えられるんなら、世界はもっと素晴らしいものになっているだろう。

 

「というか、不審者に襲われたら反射的に反撃できるって別に治さなくていいな。ようは普通に人と接することができるようになればいいわけで」

 

 なんか方向性を大きく間違えてた気がするな。

 コミュニケーション能力を高めるとなると、隣人部とか奉仕部とか作って活動すればいいんだろうか。

 

「奉仕……」

 

 エリーが顔を赤らめた。

 

「ボランティア部のほうがわかりやすいかな」

「……ぅぅ」

 

 そのままうつむくエリー。なにを想像していたのかは想像できるが、これ以上の追及はやめておいてあげよう。

 

「それで、どう? 実際に作ったとして、できそう?」

「それは……その……自信、ないです」

「じゃあ今まで通りでいこう」

 

 そう言ってぐだあっと背もたれに体を倒す。

 実のところエリーを今すぐ矯正する必要はない。なにせ原作からしてシャロ入学の時点でもまだ暴走させている。

 だから成功しなくても問題ないのだが、可愛い後輩の頼みだしなんとかしたいところだ。

 

 なにが問題って性格が致命的にあってないんだよなぁ。

 

「光さん……ありがとう、ございます……」

 

 と言って小さくエリーが頭を下げた。

 

「どういたしまして。ま、気長にやろう」

 

 感情を操りながら生きてる俺でさえ、別人になってるわけじゃないんだ。

 内向的なエリーがそこから変わるのは難しいだろう。

 

「はい」

 

 花のように笑った。野菊のようにって言えばいいのかな。

 

 ■◆■

 

 とか真面目にやってたのは最初の頃くらいだ。

 お面をつけて叫ぶのが真面目かと聞かれれば、即答はできないが、今よりかは真面目にやっていた。

 

 放課後、俺はエリーに適当なことを言ってだまくらかし、ラブホに連れてきた。

 ちょっと違うか。

 エリーは俺が訓練に託つけてエロいことをしようとしていると、ちゃんと推理できていたようだったし、その上で抵抗もせずに着いてきていた。

 

 ベッドに腰掛け、エリーを呼んで膝に座らせる。制服じゃないのが少し残念だが、私服も悪くない。森ガールって感じだ。

 むにっとしたお尻が乗っかる。太ももで感じる他人の熱量に膨れた俺の一物がエリーの背に当たった。

 

「あの……光さん、背中に……硬い、ものが……」

「ベルトじゃないかな」

 

 エリーを抱き寄せ、さらに物を押し付ける。

 物で感じる感触といえば自分のズボンの裏地くらいのものだが、嘘に気づいているエリーの反応が楽しい。

 

「さて、じゃあ始めようか」

「は、はい……お願い、します」

 

 トイズは精神に根付くもの。人付き合いで暴走するなら、人付き合いに慣れればいいだろう。

 知らない人に話しかけてみるってのがダメなら、友達の俺と触れあって克服しよう。

 とか言ったはず。

 だいぶ適当だが、どうせ建前なので合理性はどうでもいい。

 重要なのは触れあうために来たという部分だけだ。

 というわけでエリーに触れていこう。

 

 薄い胸をわしづかみにした。ささやかだがしっかりと膨らみが両手に感じられる。

 

「ん……ぁん」

 

 乳房を揉みしだき、人差し指で乳首に当たりをつけてつついた。

 

「ふぁ……あっ……あんっ……んんっ……」

「エリー。ちょっと横向きになって」

「はっ……ん……はい」

 

 エリーに座る向きを変えてもらう。左手でエリーの背中を支え、右手で頭を引き寄せてキスをした。

 

「ん……はむ……むちゅ、ん、んちゅ……れろ、ちゅる、じゅる……えろっれろっ」

 

 唇を触れあわせていると、エリーのほうから舌を伸ばしてきた。

 俺の舌を探して、エリーの舌が俺の口内を動き回る。俺のほうからも伸ばしてやると、エリーが舌を絡めてきた。

 夢中になってエリーの唾液と舌を味わう。甘美だった。

 

「ちゅつ……んっ、くちゅ、れちゅ……んむっ、あふ……れりゅえろ……ん、ふぁっ……じゅる、じゅるる……ぷはっ……はぁ、はぁ」

 

 息継ぎのためにエリーが口を離す。

 

「いいぞ、エリー。その調子だ」

「……はい」

 

 そう言って頭を撫でると、エリーは嬉しそうに微笑んだ。

 そしてまた唇をつき出してキスをせがんでくる。今度は俺のほうからエリーを貪った。

 

 数分か数十分か、ひたすらにキスを続けていた。

 なんとなく唇がふやけてきたような感じがある。エリーはすごく幸せそうにしているが、俺はこれだけじゃ満足できない。

 先に進めるために舌をエリーから抜く。

 

「ん、ぷふぁ……」

 

 俺の胸板に手を置いて、エリーはまだまだ俺に顔を寄せる。俺は肩を押さえて阻害した。

 

「んー……光さん、もっとキス……してください」

「それはいいけど、こっちもなんとかしてくれ」

 

 エリーの手を俺の股間に導き、チンコにズボンの上から触らせる。

 顔を赤くしながらエリーはうなずき、膝から降りるとベルトに手をかけた。カチャカチャとベルトを外し始める。

 エリーに下を脱がされている間に上を脱いだ。

 初めて男の服を脱がすんだろう、不慣れな手つきでズボンまで引きずり下ろし終えて、パンツに手をかけた。

 

 ボロンと飛び出た俺の怒張をエリーが凝視する。クンクンと鼻を鳴らして呟いた。

 

「これが、光さん……の、匂い……」

 

 床に跪いて、うっとりと少しの間、俺のチンコを眺めた後、大きく口を開けて咥えた。

 

「くちゅ……ぐちゅ……じゅぷじゅぷ……ぐぷっ、んっ、んむっ……はむっあむ」

 

 舌で味わった時と同じ場所に触れているのに、まったく違う感覚だった。

 同じ粘膜同士ではなくなったからだろう。エリーの口と、唾液、舌の熱をよりはっきりと感じる。

 頭を動かすと同時に舌がべろんと、チンコの裏側を刺激していく。エリーは夢中になって俺の物を頬張っていた。

 

「出すぞっ!」

「んっ! んむーっ!」

 

 俺とのセックスに積極的なエリーの姿に、思わずエリーの頭を掴んで射精の瞬間、奥に捩じ込んでしまった。

 しかしその行為の是非を考えられるような状態ではなかった。

 エリーの顔を腰に押し付け、最後の一滴まで絞り出す。下半身が溶けてなくなるような快楽があった。理性もなにもなく性欲を満たすために女体を使う快感に支配されていた。

 

「けほっ、けほっ」

 

 咳き込んでエリーは両手で椀を作り、そこに精液を吐き出す。さぁっと血の気が引くような思いがした。

 

「あ、ご、ごめんエリー」

「いえ、大丈夫……です」

 

 そういうとエリーは手の平に溜めた汚液に口をつけ、ずぞぞっとすすり、へばりついた余りを舐めとった。

 

「精液、って……こんな味……なんですね。……嫌いじゃない……です」

「気に入った?」

 

 恥じらいながらエリーが小さくうなずいた。

 

「えと……綺麗に、します……ね」

「あ、ああ。頼む」

 

 誤魔化すように俺の物を握り、竿に舌をつける。下から上へ、ゆっくりとお掃除フェラを始めた。

 肉棒に付着した精液を丁寧に取り除いていき、亀頭を咥えて管の残りも吸い上げてくれる。

 エリーが俺のチンコを手放す、というか口放した時には完全に臨戦体勢だった。

 

 今度はエリーの服を俺が手ずから脱がす。

 ゴムをつけ、エリーをベッドに寝かした。期待するように見られていたが、なんとなくいじめてやりたくなった。

 

「エリー、自分で股を開いておねだりしてみて」

「うぅ……光さん、いじわる……です」

 

 足を大きく開いてM字開脚する。丸出しになったエリーの大事なところは綺麗なピンク色で、髪と同じ紫の毛がうっすらと生えていた。

 だらだらと愛液を垂れ流し続ける秘裂に指をかけ、くぱぁと開き膣内まで見せつけてくる。真っ赤に充血し、男を誘っていた。

 

「わ、わたしの……おまんこ、に……光さんの……お、おちんぽ……入れて、くだ、さい……っ!」

 

 誘われるがままに、エリーの穴にあてがい挿入する。

 熱く絡みついてくるエリーのとろとろの蜜壺は、とても気持ちがよくてすぐにでも暴発してしまいそうだった。

 我慢できるようゆっくりと肉をかき分けて奥にいれていく。

 

「あ、ぁぁ……光さんの、が……わたしの中……に、入って……」

 

 一番奥まで挿入したところで動きをとめた。理由の半分としては気持ちを落ち着けるためだ。

 

「え……な、なんで」

「入れて、それからどうしてほしいの?」

「あ……ぅ、うぅぅ……光さん、本当に……いじわるです」

「言葉にしなきゃちゃんと伝わらないものだよ」

 

 俺もキツかったがエリーの淫語を聞きたいがために我慢した。

 腰をぐりぐりと押し付けたり、お腹を撫でたり、胸や股間を弄ったりしながらエリーが言うのを待つ。

 

「……ひ、光さん……、……わたしのこと……めちゃくちゃにして……ください……っ!」

 

 その瞬間の俺はひどい顔をしていたと思う。エリーをいとおしく思うと同時に強い嗜虐心がわき出ていた。

 エリーの折れそうに細い腰を掴んで、乱暴に抽挿する。いつものような嫌われないための気遣いなんて忘れていた。

 エリーがどうかなんてまったく気にせず、自分勝手なセックスをした。

 

「ああっ! あんっ、ひゃあ、ンぁぁん! あっあ、んんっふぁあっ! 光、さんっ! もっと、ゆっくり、ぁあん! あっあっ、んぁあんっ!」

 

 エリーの喘ぎながらの懇願に、さらに興奮を引き出される。

 パンっパンっ! と腰を打ち付ける大きな音を連続で響かせながら、エリーの膣内を蹂躙した。

 日頃からオナニーで鍛えられていたのだろう、こんな相手のことを何も考えていない俺のためだけのセックスでも感じているようだった。

 

「あっ、はっ、はっはぁっ、あぁん! ンんっ! あっ、ああっ! だ、だめ、です。わたし、壊れてあんっ! んあぁっ、あんっ、あっあっあ゛あ゛っ!」

「めちゃくちゃにしてほしいんだろ、壊れるまでヤってやる!」

「あんっ! ひゃっ、やあぁっ、頭、おかひくなりゅ! うんんっ! ふっふぁあっ、あ゛っあっ! 気持ひいぃです! あ゛っあぁんっ、ンぁぁっ!」

 

 腰がガクガクと震えてきた。怒張ははち切れんばかりに膨らみ、金玉がさっさと吐き出させろと訴えていた。

 

「エリー、もうイキそうだ!」

「は、はいっ! あっ、あぁんっ、わたし、も、んっんうっ……一緒、にぃっ!」

 

 ガシッとエリーの両足が俺の後ろに回され、腰を最奥に突っ込んだまま固定される。

 

「ぐうぅっ、出る!」

「あっ! あっあぁぁぁっ! はっ、ぁあああああっっ!」

 

 かん高い嬌声をあげ、エリーが俺にしがみついてきた。

 俺もエリーを強く抱き締めて、どくんどくん、と大量の精液を吐精する。

 目の奥がチカチカするような感覚。痙攣した膣が俺の物を締め付け、搾り取ろうとしてくる。

 

「ぁ……ぁぁんっ」

 

 チンコを引き抜くと、エリーが艶やかな声を出した。

 ゴムを外して口を縛る。

 

「あの……光さん」

「どうした?」

「わたし、うまく……できて、ましたか……?」

「もちろん」

 

 射精後の虚脱感のままにエリーの隣に寝転がる。頬を撫でて微笑んだ。

 

「そう……ですか。よかった……」

 

 そう言いながらエリーは俺の一物を触る。刺激を受けたので当然、また勃起した。

 

「よいしょっと」

「あの、エリーさん?」

 

 エリーが俺の体によじ登り、腰にまたがる。秘裂を俺の物に擦り付けてきた。

 

「壊れるまで……して、ください」

「いやあのエリーさん、せめてゴムつけるまで待って」

 

 なくなるまでシた。というかされた。

 なくなってからもされた。




次はまた時間を飛ばして、シャロの入学。
ネロのストーリーは……原作通りエリー1人で解決したということで。


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6話

今回はちょい短いです。
シャロの話は、なんというか光が関われる部分が少なくて、どうしてももともとの話そのままに近くなるんですよね。
なのでだいぶ駆け足ぎみに終わらせました。
(まあ今手元に小説もマンガもなくて、詳しい部分がわからなかったってのもあるんですが)


 今年も無事に進級し、とうとう三年生になった。

 これまでの二年間も濃ゆい時間ではあったのだが、これからはそれ以上になるだろう。なぜならミルキィホームズが全員そろうからだ。

 今日の入学式で一年生組の二人、シャーロック・シェリンフォードと譲崎ネロがホームズ探偵学園の一員となった。

 

 ネロが探偵学園に入ったのはエリーがきっかけだ。二人で事件を解決したことで仲良くなって、ネロがエリーに着いてここに来た。

 と、まあだいたいそんな経緯だ。なんというかミルキィホームズが集まった要因って七割くらいエリーだと思う。

 ともかくネロとはエリーを介して、以前から知り合いだった。

 

 同じく限定的な読心能力を持つ彼女にたいしては、自身のおよそ悪意と呼べる感情を抑えることで接してきた。危うく光堕ちしかけたが、おかげで好印象を与えていると思う。

 

 で、シャーロックことシャロだが、彼女とは本日すでに二回関わっている。

 そして放課後、寮に帰ろうとしていた俺のもとに、シャロが駆け寄ってきた。これで三回だ。

 

「あの!」

「やあ、昼間ぶり。怪我はなかった?」

「はい、おかげさまで」

 

 彼女との接触、その一回目は入学式の直前だ。

 コーデリアとネロがいつものように喧嘩を始めて、それを仲裁しようとエリーが柱をへし折って構えた。

 そんなところに「喧嘩はやめてください!」とシャロが乱入してきたのだ。

 当然のようにエリーは暴走し、シャロめがけて柱を投げた。

 

 二回目は昼休みだ。

 食堂で昼食を摂っていたところ、またコーデリアとネロが喧嘩を開始。シャロがそれを諌めようと駆け寄り、机を巻き込んですっ転んだ。

 

「あたし、シャーロック・シェリンフォードって言います」

 

 シャロが自己紹介をした。俺もなるべく優しげな笑みを作って返す。

 

「俺は浅見光。よろしく」

「よろしくお願いします」

 

 今朝から思ってたけど、シャロすごい髪型だな。

 ピンク髪くらいならそこらにいるけど、どうなってるんだろう、あの∞。

 

「それであの、光さんに聞きたいことがあって来たんです」

「うん、どうぞ」

「ネロと、ええともう一人」

「喧嘩の相手ならコーデリアだよ」

「あ、はい。そのコーデリアさんはどうして喧嘩してたんですか?」

 

 と、シャロが真剣な様子で聞いてきた。俺は完全にアホなことを考えていたが。

 

「喧嘩の理由、ねぇ」

 

 シャロからの問いに俺が口ごもっていると、シャロが慌てた様子で言い訳を始める。

 

「あ、いえ! 冷やかしじゃないんです、ただあたし……ほっとけなくて」

「あーいや。ごめん、そういうつもりじゃないんだ。ただ、あいつらしょっちゅうやりあってるから、今日の理由がどれだったか、ごっちゃになってるだけで」

 

 なんだったかなぁ。原因。

 しばらく考えてみるものの、キャットファイトを可愛いなぁって見守っていた記憶しかない。

 

「んー、たぶん食べ物関連だと思うけど」

「食べ物、ですか?」

「うん。マナーがなってないとか、勝手に自分のを食われたとか、だいたい喧嘩の原因は食べ物の恨みだから」

 

 全員食い意地張ってるから仕方ない。

 

「そうだったんですね。だから食堂でも喧嘩を」

「なんか、迷惑かけてごめんね」

「いえ、お話ありがとうございます」

 

 ぺこんとシャロは頭を下げた。

 それから何言か言葉を交わして、シャロはまた走り去っていく。たぶん次の行き先はコーデリアのところだろう。それで確か、この後は。

 

「コーデリアに一晩中拘束されて愚痴を聞くんだよな」

 

 手を合わせて苦労人の後ろ姿に祈りを送った。

 がんばれ~、シャロ~。

 

 ■◆■

 

 次の日、俺の机の中に手紙が入っていた。ラブレターかな? 

 おそらく違うだろうと思いつつも、すこし期待しながら封を切る。当然中身は恋文ではなく、シャロからの招待状だった。

 

 招待状にあった通りに、放課後、食堂に向かった。

 それからすこしして、招待状を送られたであろう、全員が集まる。

 つまり、俺とコーデリアとエリーとネロ。喧嘩の場にいた俺たち全員だ。

 

「客側は全員集合かな?」

 

 手紙を取り出してひらひらとコーデリアたちに見せる。

 

「光も貰ってたのね」

「まあ、関係者だし。で、その招待した本人の姿が見えないんだけど、エリー知らない?」

 

 俺より先に来ていたエリーに聞く。

 というかさっさと話を進めないと。俺のせいでここで時間を食われるなんてことになっては、大惨事になりかねない。

 しかしエリーは首を横に振った。

 

「まったく、呼び出しておいて自分はいないなんて、それはないんじゃないの」

 

 ネロが文句を言った。気持ちはわからんでもないが。

 

「でも、あの子……真剣だった」

「それは、そうだったけど」

 

 エリーの指摘に、同じように不満そうにしていたコーデリアが困る。ならイタズラではない、と。

 そうこうしていると、食堂のおばちゃんが話しかけてきた。おばちゃんの話によると、シャロはここに来て、厨房を貸してもらえるよう頼み、それから材料を取りに行ったらしい。

 

 で、どこに取りに行ったのかと聞くと、海に行ったらしい。

 そして本日、めっちゃ天候悪い。俺たちは全力で港に向かった。

 

 ■◆■

 

 漁師さんからの聞き込み調査の結果、シャロらしき人物はここに来たとのこと。

 そして海が荒れているから船は出せないと、答えたらしい。ちなみに貸しボートが一隻帰って来ていなかった。

 

「うん、ヤバイなこれ。コーデリア、トイズで探して」

「え、ええ!」

 

 トイズで視覚を強化したコーデリアが、水平線を見渡す。

 俺には白く泡立つほどに暴れる海面くらいしか見えないが、コーデリアならやってくれるだろう。信じて任す。

 

「い、いたわ! あっちに……ああ、船が揺れて!」

「助け……ないと……!」

「そうだけど、でもどうやって」

 

 コーデリアとエリーが言い合っていると、ブルン! とエンジンのかかる音がした。

 近くにあった船からネロが顔を出す。

 

「あなた、勝手にトイズを使って!」

「緊急事態だよ、コーデリアは来ないの?」

「う……で、でもこんな太い綱があったら──」

 

 船は頑丈なもやい綱で岸に停められていた。素人にはほどけそうになさそうだった。漁師の人たちに言っても、この天候ではほどいてもらえないだろう。

 エリーが覚悟を決めるようにきゅっと歯を食い縛ると、その綱を引きちぎった。

 

「よーし、よくやったエリー!」

「はい……っ」

 

 エリーの手を引き、俺も船に乗る。それからコーデリアに呼び掛けた。

 

「コーデリアも早く来い! 俺たちじゃ見えないんだから!」

「ああもう!」

 

 乗船したコーデリアの先導をもとに、ネロが船を動かす。

 荒波を割って進む船は、そう経たないうちにシャロが目視できるところまでたどり着いた。小さなボートにはオールがない。どこかで流されたのだろう。

 大声をあげて呼び掛けると、縁にしがみついていたシャロが顔をあげ、こっちを向いた。

 

「皆さん!?」

「縄投げるから取れ!」

 

 船に積んであった救命用の縄を投げる。しかし投げた縄は風にさらわれ、あらぬ方向へと進路を変えた。

 そして縄は不自然な軌道を描いてシャロの元に届く。

 シャロが縄をしっかりつかんだのを確認すると、エリーがあっという間にこっちの船に引き上げた。

 その後、船は波風にさらわれながらも、なんとか浜辺に流れ着いた。

 

 ボロボロになったまま船から這い出て、砂浜に倒れこむ。

 あぁ、死ぬほど疲れた。肉体的にも精神的にも。

 俺がいることでストーリーが変わっているのは知っていたから、ひょっとあのままシャロを探しに行かなかったらなんて考えると、背筋が凍るようだ。

 なんにせようまく解決できたようで、何よりだ。

 

「最後のあれ、サイコキネシスだよね。あんなのあるんなら自分で飛んで帰ってこれたんじゃないの?」

 

 俺と同じように突っ伏すネロが、シャロに聞いた。

 

「あたしのトイズはあまり重い物を動かせないから」

「ああ、そうなんだ」

 

 ぐだーっと体力が回復するまでそのまま寝転がる。

 しばらくしてコーデリアが体を起こし、シャロを叱った。

 

「で、どうしてあんなことしたの」

「それは……皆さんに喧嘩をやめてほしくて」

「はい?」

「お腹が空いてると嫌な考えばっかり出て来て、イライラしちゃうんです。だからお腹いっぱいになったら仲良くしてくれるかなって」

 

 コーデリアはお腹が空くと、四足獣にフォームチェンジして、食べ物をかっさらっていくという性質があるので、あながち間違いではない。

 

「じゃあ海に出たのって」

「カマボコを作るためのお魚を獲るためです」

「なんでカマボコ?」

 

 ネロが聞いた。俺にとっては知っている内容だったが、それでも本人の口から直接聞くのとはまったく受ける印象が違うものだった。

 

 曰く、祖母がよく作ってくれたらしい。

 それでカマボコが大好きだったのだけど、カマボコが何でできているのか、どう作られているのかを知らなかったそうだ。だからカマボコについて調べた、それがシャロが初めて解いた謎なのだという。

 

 本編では最後の最後にギャグみたいに明かすまでまったく出てこなかった話なのだが、シャロは記憶喪失だ。

 覚えている数少ない記憶がそれなのだと思うと、なんだか切なくなる。

 

「そもそも私は喧嘩なんて」

「してなかったんですか!」

 

 言い訳しようとするコーデリアにシャロが詰め寄る。

 

「喧嘩、してなかったんですか!」

「えと」

「どーする、コーデリア。まだやる?」

「うう……はあ。してないわ、仲良しよ仲良し」

 

 その答えに、子供のようにシャロははしゃぎ出した。それを見てコーデリアが苦笑する。

 

「あ、じゃあ記念に写真撮りましょう!」

「なんの!?」

 

 ていうかどっからカメラ出した! 

 というみんなの疑問をよそに、シャロは楽しそうに笑っていた。

 しょうがないとばかりに立ち上がったコーデリアが、俺の肩を叩く。

 

「ほら、光もいつまでも寝てないでいくわよ」

「コーデリア」

「なに?」

「あんたはいいよなぁ」

「なにがよ」

 

 アニメやマンガの世界に行く転生者って、前から思ってたけどやっぱいらないんだよな。

 だっていなくても事件は解決するんだから。今回俺の仕事、縄投げただけよ。

 

「ふっ……笑えよ」

「いや、意味わからないんだけど」

 

 まあボケるのもこの辺にして写真撮るかぁ。

 のそのそと立ち上がり、シャロについて写真を撮るためのポジションに移動する。そして防波堤の前に並んだ。

 

「はーい、皆さん笑ってくださーい」

 

 カメラのタイマーを合わせたシャロが、走ってこっちに戻ってくる。

 

「ははっ」

 

 ま、意味はなくても、悪くはないか。

 誰かと一緒に臨んだ初めての事件は、無事に解決した。

 

「ところでシェリンフォードさん、カメラどっからだしたの?」

「え? ポケットですよ」

 

 便利だな制服のポケット。

 俺も今度から特殊警棒はポケットにしまおう。




ていうかよく見たら今、ゲームも手元にない。
まさかPSPの中身がアイルー村だったとは……。


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結成、ミルキィホームズ
7話


やっぱりどうしても原作通りに話が進んでしまう。最初の事件だからあまり変えようがないんですよね。あと一応謎解きですし。


「あぁ~嫌だぁ~」

 

 俺はベッドに入って布団の中に潜り込んだ。

 

「行きたくないぃ~」

「羨ま死ね」

「は、お前呼び出し先が生徒会長室でも同じこと言えんの?」

「ようし、さっさと行ってこい」

 

 熱い手のひら返しを食らった。おのれ、もう二年も同室なんだぞ。すこしくらい俺に優しくしようという気はないのか。

 

 本日、土曜日。俺には用事が入っていた。

 行き先は生徒会長室。

 日時は今日の昼頃。

 俺を含めたコーデリアたち五人が、生徒会長としてのアンリに無条件で呼び出されている。拒否権はない。

 

 用件は伝えられていないが、ぶっちゃけわかっている。探偵の組織化だ。

 ゲーム版のストーリーの最初の部分で、まあつまり、これからミルキィホームズが結成されるわけだ。なぜそこに俺も交ぜられているのか。

 枕をだき抱えて無駄な抵抗をする。

 

「はよいけよ」

「まだ時間はある。待ち合わせは十三時半、今は一時だ。まだまだ十二時間くらいある」

「ねえよ。三十分しかねえよ」

 

 ベッドから引きずり出されてしまった。仕方ないので身だしなみを整える。

 あとなにか持ってく物とかあるかな。ううん、変に準備していくのも不自然だし、いつも通りでいいか。

 

 ■◆■

 

 待ち合わせていたコーデリアたちと合流して、旧校舎にある生徒会長室を目指して歩く。

 ひょっとしたら呼び出された理由は別件で、例えば六人で乱交しよう、とかそういう内容かもしれない。そんな期待をしていたのだが、渡り廊下に差し掛かったところで望みは潰えた。

 

「わあ、いいお天気~。遠くまでよく見える! きれ~い」

 

 シャロが柵に駆け寄り、そこから身を乗り出して景色を観覧し始めた。

 

「危ないわよ、シャロ」

「まったく何をはしゃいでるんだか。景色なんか、いつでも見られるでしょ」

 

 コーデリアが注意し、ネロが冷めた意見を述べる。俺がへこんでいる間に、見知ったやり取りが始まっていた。

 

「そうじゃないの、今日は違うんだよ! お花さんがとーっても綺麗に見えるんだから」

「お花さん?」

 

 シャロの言葉にコーデリアが疑問を持つ。

 シャロの言う『お花さん』とは、遠く横浜の海に浮かぶ施設のことだ。中央の塔と、その周りには四枚のパネル。

 その名も次世代発電研究プラント・フォーチュンリーフ。

 横浜の再開発の象徴で、ゲーム一作目における重要施設だ。

 

「正直、僕はどうかと思うけどね……むぐ」

 

 シャロがフォーチュンリーフをそう呼んでいることを知っていたネロが、一通りの解説を終えた後、ポッ○ーぽいお菓子を咥えた。

 

「ちょっと、お菓子食べながら話さないの」

「いいじゃない。甘いもの摂らないと頭がぼーっとしちゃうんだよ」

 

 例によって例のごとく、食べ物を原因にコーデリアとネロが言い争いを始めた。

 放っておいて問題ないことは知っているので、シャロと同じように柵に体を預けて外の景色を眺めることにする。

 シャロの言うとおり、今日の空気はとても澄んでいるようだった。ここからでもフォーチュンリーフをかなりはっきりと見ることができる。

 

 俺たちの後ろではエリーの泣き落としによってコーデリアが引き下がり、いつものように喧嘩は解決していた。相変わらずエリーに弱い。

 

「あーん、本当に綺麗だよ~」

「って、まだ見てたの?」

 

 シャロの感嘆でこっちの様子に気づいたネロが、呆れた声で言った。

 

「だってだってー。あっ、回ったよ! お花さんが回り始めた! すごい、すごーい! ……え」

 

 フォーチュンリーフのパネルが回転を始め、それに気を取られたシャロはさらに身体を前に出し、転落しかける。

 反射的にシャロの襟を掴んでしまった。

 あっ、掴んじった。やべ、どうしよ。いやでも、ここから突き落とすとかダメだよな。

 致し方なくシャロを渡り廊下に引き戻す。

 

「けほっ、けほっ。うぅ……光さん、ありがとうございます」

 

 服で首がしまったのだろう、シャロが咳き込んだ。

 あー、どうしようこれ。シャロが落ちて、それからゲーム版主人公、小林オペラに助けられるってのがスタートだったんだけど。

 …………、…………、…………まあ……大丈夫か。

 シャロが落下すること前提でこの茶番が組まれているわけないだろうし、たぶん合流できるだろう。とりあえずシャロの頭に手刀を落とす。

 

「あんま危ないことはしないようにな」

「ごめんなさい」

 

 頭を下げたシャロにコーデリアが飛び付いて、抱き締める。

 

「シャロ、大丈夫! あなた大怪我、いえ死ぬかも知れなかったのよ!」

 

 俺の適当な注意と違って、コーデリアはしっかりとした説教をする。やっぱり俺はこういうの向いてないな。あとは任せてしまおう。

 

「あの……生徒会長、からの……呼び出し……」

 

 エリーが俺の服を引っ張って、そう言った。時計を見ればあれこれとやり取りしているうちに、それなりの時間が過ぎていたようだった。

 シャロを心配する言葉が止まらないコーデリアをなんとか止めて、生徒会長室へと再び移動を開始した。

 

 ■◆■

 

 旧校舎は新校舎と違い、木造建築だ。一歩ごとにキシと床が軋む音がするくらいには古い。

 だが清掃は行き届いており、オンボロではあるが、汚いという印象はなかった。まあ生徒会長室があるところだし。

 というかなんでここにあるんだろう。マジで。

 

「おや、皆さんお揃いで」

 

 と、呼び掛けられた。振り向くと二人、並んで歩く人影があった。

 一人はひげの老人で、もう一人は俺たちと同じくらいの年頃の男。声をかけてきたのは老人のほうだ。

 

「ああ、舘さん」

 

 舘さんはアンリの執事だ。アニメには登場しないが。

 見た目は、ザ・執事って感じの細身のお爺さんだ。

 

「と、誰?」

「ほっほ、こちらは小林様です。あなた方と同じくお嬢様に呼ばれた客人でございます」

 

 舘さんが答えた。俺たちの視線が彼に集まり、彼は居心地悪そうに身動ぎをする。それから舘さんの提案で、行動を共にすることになった。

 

「探偵学園に呼ばれる小林……ねぇ」

 

 ただ歩くばかりで、話が先に進みそうになかったので俺が言った。

 

「おや、浅見様。お気づきになられましたか?」

「なんとなく」

「知り合いなの?」

 

 コーデリアが聞いてきた。いや知り合いなのはコーデリアのほうだと思うんだが。昔あったことあるでしょ。

 

「いや、ただ探偵関連で小林って言ったらさ」

「ええ。こちらはかの名探偵、小林オペラ様にございます」

 

 フルネームを明かされたオペラがすごく嫌そうにした。それに気づいた舘さんはすごく楽しそうにした。

 

「小林オペラ……って! まさか、あの小林オペラ!?」

「どの小林オペラ?」

 

 驚愕を露にするコーデリアにネロが聞いた。

 

「どの、って決まってるでしょう! 探偵、小林オペラ!」

「誰?」

「あなたそれでも探偵学園の生徒なの!?」

 

 首をかしげるネロに向かって、コーデリアが吠えた。

 

「あたしも知りません」

 

 シャロが追い討ちをかけて、コーデリアが絶句する。

 言語機能を一時的に喪失したコーデリアに代わって、エリーが解説を始めた。

 

「この前の……黒船事件……。解決したの……小林さん」

「ええっ! 本当ですか!」

「そうなんだ。でも一つ事件を解決したくらいで名探偵?」

 

 正反対の反応を見せるシャロとネロに対して、復活したコーデリアが捲し立てる。

 曰く、堕探偵事件にキング・オブ・ラウンド事件、百華の夜叉事件、完全犯罪だと言われたR99事件などの有名処を解決してきた探偵である。

 

「わかったわかった。ちょっとボリュームさげて」

「コ、コーデリアさん?」

「そんなに……興奮しないで……」

「そろそろ落ち着かない?」

 

 俺たちの制止をよそに、息を荒げる小林オペラの熱狂的ファンは叫んだ。

 

「そ、それに! 伝説の怪盗、あの「怪盗L」を倒したのだって……この小林さんなのよっ!」

 

 今度は舘さんがすごく嫌そうにした。

 楽しいな、この立ち位置。そうか、これが転生者の楽しみかたか。

 

 ■◆■

 

 前を歩くオペラの背中を、コーデリアたちはじっと見つめていた。俺も乗っかって凝視する。

 

「もう少しでお嬢様が待っておられます生徒会長室ですので」

「ええ」

 

 そう相づちを打って、オペラは重いため息をついた。

 そんな彼の後ろで、探偵に憧れるシャロの質問を皮切りに、コーデリアとエリーが名探偵としてのオペラの凄さを語る。

 難事件を次々に解決する能力に加えて、オペラが探偵として活動していた時期。怪盗Lとの戦いは十四という若さで行われたものだ。

 高校生探偵どころか、中学生探偵だ。工藤新一だってもうちょい自重する。

 

『天才中学生探偵・小林オペラ……彼に解けない謎はあるのか……?』

 

 なんて本もある。読んだことはあるが、そんなに面白くはなかった。

 

「すごい、すごい! 本当にすご~い!! 有名な怪盗をやっつけたときまだ中学生だったなんて信じられません! そんなものすごい探偵さんに会えてとっても光栄です!」

「違うッ!!」

 

 うわ、びっくりした。

 称賛するシャロに対して、オペラが怒鳴る。それからすぐに申し訳なさそうにした。顔を伏せて呟く。

 

「僕は……探偵じゃない」

「小林様……」

 

 とても複雑な感情を抱いてオペラを見る舘さん。

 

「もう、トイズも使えないんだ」

 

 そしてオペラはそう言った。いきなりキレる前にそっちを……まあ気持ちはわからんでもないけど。

 

「小林オペラがトイズを失った。そんな噂を耳にしたことがありました」

「本当……だったんですね……」

 

 五年前、怪盗Lとの戦いでトイズを失ってしまった。

 オペラの話を聞いて、静かになるコーデリアたち。トイズの有無が、探偵や怪盗の前提条件になるほど重要な価値を持つ世界だ。

 それを失うということの意味は大きい。

 ヒロアカで言えば、プロヒーローがいきなりオール・フォー・ワンに個性を盗られたようなものだろうか。

 

 まあ、なんだかんだ言っても、この世界出身じゃない俺には本当の意味で理解はできない内容だ。利き手を失った、とでも考えておこう。

 

「……地雷、踏んじゃったな」

 

 ネロがポツンと言った。

 

「そんな!」

「あっと、ごめんごめん。ちょっとムキになった。そんなに気にしないでくれ、昔の話さ。忘れてくれ」

 

 ネロの言葉に狼狽するシャロを見て、オペラが謝る。とはいえ簡単に忘れられる内容ではないだろう。

 沈んだままだった空気をなんとかしようとしたのか、オペラが口を開いた。

 

「そ、それより、キミ。えっと……シャーロックさん?」

「はい……シャーロックでいいです」

「この学院の生徒ってことは探偵を目指しているんだよね?」

「え、ええ」

「なら、トイズを使えるわけだ。いったいどんなトイズなんだい?」

 

 オペラの質問は、シャロのコンプレックスを盛大に刺激する。というのが原作の流れだったのだが、シャロは平然とリボンを解いて、トイズで浮かした。

 

「PK……サイコキネシス?」

「はい。これがあたしのトイズです。といっても軽いものしか浮かせられませんし、見えてないとダメなんですけど」

 

 まあ、原作だと周りにいるのは有用なトイズを持つコーデリアたちくらいだったが、この世界には俺がいる。

 あってもなくても変わらないようなトイズ(ということになっている)を持つ俺の存在は、シャロに強い影響を与えたのだろう。

 

 自分より下がいると、気が楽になるしね。

 というのは冗談。

 もちろん、それもあるだろうが、それ以上にここで起きるはずだったことを俺が先取りで行ったからだろう。

 

 強いトイズ、弱いトイズ、そんなの人の勝手。

 みたいなことを言った。転生者の面目躍如だ。

 シャロからの好感度を稼ぎたいという理由の他に、シャロが自身のトイズを卑下するたびに、俺もダメージを食らうからさっさと前向きになってほしかったという理由もあるのだが。

 サイコキネシスとかいう便利な能力を卑下されると、俺は何? ってなるんだよ。

 

「ちょっと、舘さん」

「はい?」

「ポケットに手を入れたままなんて、執事としてまずいんじゃないの?」

「ほほほ、年のせいか手先が冷えるもので」

 

 ネロとおじいちゃんの心温まるやり取りを交わすのを眺めながら、生徒会長室に向けて歩き続ける。舘さんはポケットから手を抜くことはなかった。

 

「この先の突き当たりとなります」

「僕あそこきらーい」

「えへへ、あたしもすこし」

「しかられ……そう」

「俺はそうでもない……こともないか」

 

 やっぱりこう、なんか苦手なんだよな。

 生徒会長室には時たま訪れるし、特段あそこで怒られた経験があるわけでもないのだが、なんか一生徒として拒否感がある。

 

「それは後ろめたい気持ちがあるからでしょう?」

「コーデリアは平気なのか?」

「当たり前よ」

「そんな馬鹿な」

 

 コーデリアには恐怖がないのだろうか。知らなかった一面を見て戦慄する。コーデリアすげー。

 俺たちがふざけている間に、オペラが舘さんに、アンリから呼ばれた理由を聞いていた。しかし舘さんは聞かされていないと答える。それからこう続けた。

 

「ただ、とても大切な用件だと伺っております。探偵の未来に関わる話だと」

 

 まあ探偵も組織化しようぜって話なんだが。知ってると驚きがないな。

 

「詳しくはお嬢様より直接お聞きください」

 

 そう言った直後、ビーッビーッとかん高い音が鳴った。

 

「おや? メールが届いたようです」

 

 着信音うるさっ。舘さんが携帯電話をポケットから取り出す。

 

「ずいぶん大きな音ですね」

「すみません。この年になると、耳も弱りますもので」

 

 舘さんに届いたメールは緊急の用件だったらしく、俺たちに許可をとってから返信をする。これ許可しなかったらどうなってたのかな。

 電子機器にも弱いおじいちゃんは不馴れな手つきでメールを返す。

 

 ──ガシャンッ! 

 

 生徒会長室のほうから、ガラスの割れる音が聞こえてきた。




ゲームの一話、ミルキィホームズ結成が終わったらエロやります。なるはやで事件解決します。


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8話

キャラクターが、キャラクターが多い。

だいぶはしょってストーリーを進めました。詳しい部分が気になる人は原作ゲームを買ってください。


 破砕音が聞こえた瞬間、俺は駆け出す。

 そうするのが普段の俺から一番解離しない行動だと思うからだ。

 たちまち生徒会長室の前までたどり着き、そのままの勢いで飛び付くように扉を開こうとした。

 ガタン、と俺の体が豪華な木製の扉に止められる。鍵がかかっていた。

 

 合鍵をポケットから取り出して、鍵を開けて扉を押し開く。

 部屋は荒らされていた。

 コーデリアたちが追い付いてきて、部屋の様子を見て息を飲む。

 

「人を……呼んだほうがよさそうですね」

 

 比較的、冷静な振る舞いを見せていたオペラが言った。

 それから警察を呼ぶよう言われた舘さんが携帯を取り出すものの、電池が切れたといい、外の公衆電話にかけに行く。

 ひと悶着ありつつも、警察が来る前に俺たちで調査をすることになった。

 

 ミルキィホームズのゲーム版は、アニメと違ってちゃんと推理物だ。

 ノックスの十戒にべたべた触れまくってることは気にしないでおくとして。

 

 具体的にどういうシステムでゲームが進むのかというと、まずコーデリアたちミルキィホームズの四人が勘で不自然な箇所を見つけ出す。

 主人公であるオペラは行動回数の範囲内でキャラクターに話しかけ、証拠を集めていく。証拠が見つかったら加点。

 最終的に一定以上のポイントが貯まっていれば、謎は解明、第二段階に入る。

 

 つまり謎を解明するのに必要な証拠がある場所には、もう誰かがいるわけだ。

 各々気になるところを調べるために活動を始めると、やはりコーデリアたちはゲーム通りに証拠のある場所へと行った。

 

 コーデリアは出入口のところに転がっていたアンリの携帯を見つけ。

 エリーは傾いた本棚と、そこから落っこちた大量の本をかわいそうだと見に行き。

 ネロは倒れたいくつかの椅子と大きなソファーに違和感を覚え。

 シャロは犯人が侵入したとおぼしき割られた窓ガラスを調べに。

 

 ゲームに倣って俺もどこかしらを調べて、なにか証拠になるようなものを見つけておきたいのだが、難しい。

 どこを調べていればいいんだろうか。アンリに来るよう言われた日から、ずっと悩んでいた。のだが、結局思いつかなかったので、適当に行動することにする。

 まずシャロのいる窓ガラスのところに俺も向かった。

 

「光さん、どうかしましたか?」

「ちょっと犯人の行動をシミュレーションしようと思って」

 

 窓から顔を出し、バルコニーを覗く。そこには砕けたガラスの破片が、大量に散らばっていた。

 見ればわかる通り、ガラスは内側から割られたのだが、それはシャロ担当なので置いといて、犯人の侵入経路を模索する。

 

 ネロがアンリのPCから学園のデータベースをハックし、監視カメラの映像を見たのだが、犯人は写っていなかった。

 カメラに写らないよう部屋に窓側から入るとなると、木を登る、とかだろうか。

 

 そしてガラスを割って部屋に入り、部屋を全体的に荒らし回ってアンリを連れ去った、と。

 ガラスの音以外は静かなものだったので、おそらくはほとんど無音で。

 

 わー、なんてすごい怪盗なんだー。びっくりー。

 

 いやでも、これやったのがアルセーヌだって言われると納得できるな。つまり不可能ではないのか。

 部屋をうろちょろ、いかにも推理してます感を出しつつエロいことを考えて暇を潰していると、オペラが話しかけてきた。

 

「えと、光さん」

「ああ、オペラさんか。どうかした?」

「この事件で、なにか気になることはあったかい?」

 

 おっぱい。じゃなかった、ええと事件の証拠ね、証拠。

 

「犯人はたぶん怪盗だと思う」

「うん、僕もそう思うよ。日中堂々とこんなことをやるのはそれしかないだろうし」

「それに犯行もあっという間だしね」

「……確かに」

 

 ゲームでは破砕音の後に会話が入って、すこし時間を空けてから生徒会長室に向かっていた。

 でも今は、俺が即行で走ったから、犯行に使えた時間は数十秒程度。まともな手段で誘拐できる余裕はない。

 

「どんなトイズならこの短時間でアンリを拐えるのか……」

「いや、そうとは限らないよ」

「というと?」

「普通に犯行が行えるほどの時間はなかったなら、トイズ以外にも可能性はある」

「……ああ、なるほど。そういうのもアリか」

「そう、これは重要なファクターだ」

 

 うわぁ、まさか生でこんな近くで、それも俺が言われる日が来るなんて。

 これはまた聞きたいな。他の事件についてもちょっと考えておこうか。どうせ逃げられないだろうから。

 

 さて、まあそんなこんなで調査をやっていると、廊下からうめき声が聞こえてきた。

 部屋を出ると、舘さんが倒れていて、その側にはタキシードに黒いマントを羽織り、仮面をつけた不審者が立っていた。

 

 演技派だな。

 

 新米怪盗さんは、小林オペラから逃げ切れば箔がつくだろう、なんて理由で戻ってきたらしく、ちょっと会話したらまたすぐ逃げ出した。

 ここからが第二段階、怪盗との鬼ごっこだ。QTEが始まる。失敗したら怪盗に逃げられるか、死ぬ。

 爆弾魔や辻斬り侍がシリアスやってるんだ。死人の一人や二人、出るだろう。

 

 とはいえ今回の俺の出番はこれで終わりだった。

 謎の新米怪盗さんを追いかけている時も、俺はただ走っただけ。やったことと言えば、追い詰めた新米怪盗さんに、証拠を突きつける時に多少話したくらいだ。

 

 窓ガラスを内側から割り、音が響く旧校舎で音もなく椅子やソファーを倒し、本棚から全部畳んだ状態で本を落とした謎の怪盗。

 その正体は──なんとアンリだった! 

 知ってた。ゲームの時も窓ガラスで察した。

 

 え? 携帯? 

 ロックくらい人によってはかけるでしょ。

 

 ■◆■

 

 生徒会長室を片付けてから、アンリは俺たちに呼び出した理由として、一本の映像を見せた。

 怪盗アルセーヌからの犯行予告だ。

 アルセーヌはアンリと同じ水色の髪、同じ声帯、同じおっぱいを持ったよく似た別人だ。

 そんな怪盗から送られてきた映像は、怪盗を複数人集めた怪盗の組織、怪盗帝国を作るという内容だった。

 

 俺たちが呼び出された理由は、怪盗帝国に対抗するために探偵も組織を作るべきだと判断され、そのテストケースとして選ばれたからだ。

 俺たちである理由は、仲がいいから。

 個人主義な探偵をわざわざ目指そうとしているだけあって、基本ここの生徒たちはバチバチにやりあっている。

 

 互いにライバル視しており、とてもではないがチームとしてやれる状態ではない。

 つまり複数人で仲良くやれそうな人員が他にいなかったからだ。

 

「俺もやるの?」

「はい、光もやってください」

「なんで?」

「わたくしの希望です」

 

 笑顔で言われてしまった。そんなに俺と戦いたいのか、戦闘能力ないのに。

 いやアンリは味方だけど。

 

「しゃーないか。じゃあよろしくオペラさん」

 

 ぶつぶつと「また、やってしまった」なんて呟いていたオペラの肩を叩く。

 

「え?」

「いやいや、この状況で一人だけ無関係とかそんなわけないじゃん」

「ええ。小林さんには彼女たちの指導を行ってもらいたいのです」

「は!」

 

 と、アンリの提案に心底驚いたようにした。オペラは俺たちの気持ちは、とか、僕はもう探偵じゃない、とか言ってなんとか断ろうとする。

 しかし旧校舎の一角に作られた探偵チーム及び小林オペラ用の部屋に通され、コーデリアたちの熱心な頼みの前にあえなく陥落した。

 

「チョロいな」

「しっ、そういうのは言わないお約束ですよ」

 

 人差し指を口に当てるアンリ。

 

「ひょっとして光さんも計画した側だったり」

「いや別に。ああそれと、さんはつけなくていいよ。ほら、立場上そっちが上になったわけだし」

 

 敬語はどうしようか。指摘されない限り別にいいか。苦手だし、あんまり使いたくない。

 

「みんなで写真を撮りませんか! チームの結成記念!」

 

 写真大好きシャロが、いつものようにどこからともなく、もといポケットからカメラを取り出す。

 

「……え!」

「こんな時くらい恥ずかしがらないでくださいよ、エリーさん」

「う、うん……」

「コーデリアさん、光さんも並んで、並んでー!」

「仕方ないわねぇ……もう」

「はいはい」

「ほら、ネロもはやくー!」

「ちょっと待って。冷蔵庫にケーキを見つけたんだ」

「小林先生も!」

「ええ! 僕もかい!?」

「当たり前じゃないですか! これからはみんなの先生なんですから!」

 

 わちゃわちゃと賑やかに集まる。アンリが名乗り出て、シャロからカメラを受け取った。

 

「美味しいと思ったらこのケーキ、ヌハチのだ」

「ネロ、まさかそのままで?」

 

 ケーキ皿を持ったまま列に加わるネロに、アンリが聞いた。

 

「いいじゃん、別に」

 

 ネロは笑いながら答えると、ケーキを口に運んだ。

 美味しそうだな。俺も後で部屋を漁ろう。

 

「エルキュール、顔が真っ赤ですよ」

「ご、ごめんなさい……」

「うふふ、では撮ります」

 

 とアンリが言ったところでシャロが「あ!」と叫んだ。

 

「あたし、思いついちゃった! 耳を貸して、ネロ! エリーさんたちも!」

 

 シャロが俺たちに耳打ちする。

 

「どうかな?」

「どうかな、って」

「あたしたちの名前だよ。せっかくチームになったんだから!」

 

 ネロの疑問に勢いよく答えるシャロ。

 

「俺がいるのにそんなゆるふわな名前なのか」

「ダメ、ですか?」

「いや、いいよ」

 

 ただ所属する予定じゃなかったから、ちょっと困惑してるだけ。あと教導じゃなくてメンバーに男がいてもその名前なんだってビックリしただけ。

 

「じゃあ、大きな声で発表ー!」

「え……!」

「今ぁ!」

「ちょっとちょっと!」

「笑顔で叫べば素敵な写真になります! せーの!」

 

 有無を言わさず進めるシャロ。アンリも微笑みながらカメラを構えた。

 

「あたしたちの名前はぁ!」

『ミルキィホームズ!』

 

 まあそんなわけで、俺はミルキィホームズの一員になった。

 つまりこの先、楽しく愉快な謎解きに巻き込まれるわけだ。死人が出ないようがんばらないとな。

 

 それにしても俺はこれからこのチーム名を名乗るのか。せめてTSさせてほしい。

 

 ■◆■

 

 後日、俺たちが事務所にいると舘さんがやってきて、また生徒会長室に呼び出された。

 

「なんだろう?」

「怒られる?」

「ええ……!」

「だからなにかやましいことでもあるの!?」

 

 やましいことしかない俺は、緊張しながら舘さんについていった。

 部屋にはアンリの他に、五人、警察の服を着た人たちがいた。ああ、そういやそんなのもあったっけ。

 

「神津?」

「久しぶりだな、小林」

 

 長身の男が答えた。白髪に切れ長の目、あとメガネ。少女マンガに出てきそうな見た目だ。

 

「お知り合いですか?」

 

 シャロが聞いた。

 

「ああ、学生時代の友人だよ。でもお前がどうしてここに?」

「ご挨拶だそうです」

 

 アンリが静かな声で教えてくれた。

 

「この方たちは警察の対怪盗組織『GENIUS4』です」

「G4と呼んでいただきたい」

 

 あちらもミルキィホームズと同じく、変化しつつある怪盗事件に対抗するため、試験的に作られた警察側の組織だそうだ。

 

「小衣から順に挨拶しろ」

「はい」

「ココロちゃんっていうんですか! かわいい名前ですね!」

「ココロちゃんって言うな! 馴れ馴れしいわね!」

 

 いきなり喧嘩をしていた。そして怒鳴られたシャロはへこんでいるようだった。

 

「小衣は小衣、明智小衣。頭脳明晰知性抜群の天才美少女よ。そしてG4のリーダー。小衣がいるからにはもうあんたらの出番はないと思いなさい」

 

 金髪ドリルのちみっこだ。飛び級でハーバード大学を卒業したIQ1300の天才児。四桁とか、数字が頭悪い。

 

「あ、はじめまして。論文全部読みました。素晴らしかったです」

「え、ほんと? ふうん、探偵にもちょっとは見所のある奴がいるじゃない」

 

 得意げにない胸をはるココロちゃん。扱いやすいな。

 脱線した話を戻すため、神津が咳払いをした。ココロちゃんが縮こまって下がる。

 

「咲」

「ほ~い、遠山咲で~す。情報収集担当って感じ~。よろしく~」

 

 制服を適当に着崩した、気だるげな雰囲気の少女だ。長い桜色の髪を、ヘアバンドで留めている。

 飴のイメージが強いが、さすがに今は咥えていなかった。

 

「平乃」

「はい、長谷川平乃と申します。柔道、剣道、合気道などを嗜んでおりまして、主に現場での接近戦担当です」

 

 平乃は正統派の黒髪美少女。見た目からは想像できない武闘派で、もろもろ合わせて五十段もの段位を取得している。

 なお、一部はゴスロリ検定。

 なんだよゴスロリ検定って。そう思って調べたことがあるのだが、日本ゴスロリ協会なるものが存在した。

 

「次子」

「あいよ、あたいは銭形次子ってんだ。車はもちろん、ヘリから飛行機なんでもござれ。つまり、運転・操縦担当ってわけだ。よろしく」

 

 次子も制服の前を開けているが、これは咲とは違う理由だろう。前が留められないくらい巨乳だからだ。

 緑のショートカットに八重歯、江戸っ子気質と快活な人である。

 運転できる乗り物の幅はかなり広い。マリアさんくらい広い。

 

「そして俺が彼女たちの指導兼監督役の神津玲警視だ」

「警視だって!? 神津……お前、いつの間に?」

「どうでもいいと言ったはずだ」

 

 探偵引退してる間に、ずいぶんと関係に変化があったらしい。

 ちなみに警視職は警察内で上から五番目、普通に昇任されるならキャリア組(国家Ⅰ種採用者)で七年。それ以外なら十五年前後でなれる。

 G4の監督役として、一息に役職を引き上げられたんだろうか。

 

「我々は怪盗事件に積極的に関与する。今日はそれを断りにきた」

 

 律儀だなぁ。それとも俺が丸すぎるだけで、実は宣戦布告だったりしたのかな。それかオペラに会いに来たとか。

 

「アンリエット・ミステール。それでは我々はこれで失礼する」

「はい。わざわざのご足労、ありがとうございます」

 

 それだけ告げてG4たちは部屋を出ていった。扉が閉まりきったところで、アンリが言う。

 

「とまあ、そのようなわけです」

「楽できそうでいいよね」

「はい?」

「ごめんなさい」

 

 アンリ怖。背筋がゾッとしたわ。

 

「さて、それはそれとして、みなさんこちらへ。もう一つお伝えすること……いえ、お渡しするものがあります」

 

 机の裏に周り、下から取り出したものをアンリが並べた。

 五色五つの電子機器だ。見た目P○Pである。

 

「なんですか、これ?」

「パーソナル・デジタル・アシスタント。いわゆるPDAです。携帯電話としての機能はもちろんのこと、基地局に問題が発生した時でも直接連絡が可能です。どうぞ、お役立てになってください」

 

 つまりはどこでも、どんな時でも連絡が取れるスマホって感じだ。

 

「わぁ! 貰っていいんですか!」

「支給品ってやつ?」

「かわいい……」

「コンパクトみたい」

「俺は……カラーリング的に紫か?」

 

 それぞれ好きな色を取る。

 コーデリアは青、エリーは緑、ネロは黄色、シャロはピンクだ。

 

「はい、小林さんにも」

「ああ、どうも」

「これから皆さんには現場で活躍していただくわけですから、これくらいのフォローはお任せください」

 

 にっこりと笑って、アンリがこっちを見る。ピン、と指を立ててこう言った。

 

「そして、探偵の威信がかかっていることも……お忘れなく」

 

 だから怖いってば。

 

「わーい」

「ちょうど携帯変えようと思ってたところなんだよねー」

「すごく……便利そう……」

「色も私たちの好みに合わせてあるのね」

 

 これ、原作通りに進めようと手抜いてたら、アンリに殺されるかな。

 負けたら承知しねぇぞオラァ、というアンリからの隠れた脅迫に感づいた者同士、オペラと苦笑いした。



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9話※(アンリエット)

投稿開始から一ヶ月くらいですね。
最初のころに要望を頂いたのですが、ようやくそれっぽいものを投稿です。

会長の胸を弄りたおすストーリーを希望されたのですが、それオンリーで長々と書ける技量が無いので、こんな感じに。
幻惑のトイズを使った特殊プレイは、まあ現状会長は正体を隠していますし、おおっぴらにトイズを使う内容はストーリー的に不味いかな? と思って延期です。ごめんなさい。


 怪盗帝国樹立の宣言以来、横浜を中心に怪盗事件が多発していた。

 本物の新米怪盗があちこちから湧いて出て、多種多様な手段で犯行を行い始めたのだ。

 現在、怪盗帝国の人員とは一度も戦っていないにも関わらず、もうすでに四、五人は原作と関係ない怪盗を捕まえていた。

 

 たぶん怪盗帝国とやりあう前に経験積んどけ、というお達しなのだろう。誰からのかはさておき。

 

 ともあれオペラ主導のもと、何度か怪盗事件に取り組んできたわけだ。

 新米怪盗たちは経験が少ない。だからわりと力押しに頼る奴がいたりする。

 これはこの世界に来てから初めて知ったのだが、トイズを用いていれば、それがどういう類いの犯罪であれ怪盗事件に分類されるらしい。

 つまり銃器で武装した強盗とそんなに変わらない奴もいるのだ。

 

 美しさと知恵ではなく、力で勝負する彼らの相手は正直しんどい。なにせ、ミルキィホームズにまともな戦力ないから。

 純戦闘系のエリーは引っ込み思案だし、コーデリアは合気をやっているが、それでエリーみたいな戦闘系の強力なトイズに勝てるかと言われると、まあ無理だ。

 搦め手を使ってチマチマ追い詰める、なんてことをやっていると、どっちが怪盗だったか忘れそうになる。

 

 ゲーム版は危険だと思っていたが、原作関係ないとこで死にそうだ。

 昨日も電撃のトイズとかいう危険ジャラスな能力を持った怪盗の相手をした。

 ミルキィホームズに出てくるんじゃねぇよ、って感じの強敵だったが、エリーに箱形を崩さないようもぎ取ってもらった宝石格納用の防弾ガラスの角でぶん殴るという手段でなんとか確保した。

 

 ガラスは絶縁体という科学的な知識に基づいた、極めて探偵らしい解決法と言えるだろう。

 

「あれはほんと大変だった……」

「……お疲れ様でした」

 

 俺からの報告を受けたアンリが、すごく微妙な顔をしながら労ってくれる。

 ミルキィホームズは探偵チームのテストケースなので、当然その活動の一つ一つはIDOへと報告しなくてはならない。

 なので他の事件と同様、今回もオペラが報告書をアンリに提出していたのだが、今回に限ってはなぜか俺からの説明を求められたのだ。

 

「探偵らしいかどうかはさておき、本当にやったんですね」

「パッと思いつく他の手段がなかったんだ」

「ああ……そう、でしたか。まあ、何事も恐れず挑戦できる、というのが光のトイズの利点です、し?」

 

 それからいくつか事件の細かい状況を質問された。

 覚えている範囲でそれらに答えていく。オペラの報告書にアンリが注釈を加え、それで仕事は終わったらしい。

 

「これでIDOも納得することでしょう」

「そうかな?」

「してもらいます」

 

 してもらうのか。ちょっと無理のある行動だったかな。

 これからは解決法にも気を使うことにしよう。俺のせいで組織化は失敗、なんてことにならないように。

 トントンと書類の束を机を叩いて形を整える。報告書を脇に置くと、アンリは接客用のソファーに移動した。

 

「さて、光。連日のお仕事でお疲れでしょう」

「いやそんなでも」

「お疲れでしょう」

「すげーしんどいです」

 

 敬礼して答えた。アンリは微笑みながら、自分の太ももをポンと叩く。

 

「ふふ、ではここでお休みになってください」

「他にやり方なかったの?」

 

 いくけどさ。

 ごろんとソファーに横になって、アンリの太ももに顔を埋める。むっちりとした感触を顔全体で受け止めながら、鼻で息を目一杯吸い込んだ。

 

「いい匂いする」

「えと、ありがとうございます?」

 

 後頭部に手を置かれた。髪をすくようにアンリが俺の頭を撫でる。

 頭がとろけるような甘い香りだ。アンリに抱きつき、お腹と股間の間くらいに顔を持っていく。ムレた女の匂いがした。

 しばらくそれらを楽しんでいたのだが、さすがに息苦しい。最後に大きく吸い込んでから寝返りをうち、顔を上に向ける。

 

 アンリの顔は、豊満な胸に隠されて見えなかった。

 やっぱすごいな、これ。重量感のある男の夢の塊に手を添え、たぷたぷと揺らしてみる。

 

「んっ……あんっ……」

 

 と、俺の指揮に合わせて矯声が上がる。制服の上からでもなんとなく震えて波打つ様子を観覧できたのだが、やはりこの布数枚が煩わしい。

 

「アンリ、上脱いで」

「うふふ、はぁい」

 

 ネクタイを抜き取り、襟元のボタンを外す。それからやりづらそうに黒いブラウスを脱いだ。

 服に引っ掛かっていた胸が解放されてぼよんと弾む。肌着と水色のシンプルのブラジャーを取っ払うと、とうとうその威容が露になった。

 

 普段日の当たらない服の下は手足以上に真っ白だ。

 綺麗な円錐形の胸はみずみずしく、強いハリがある。すぅーっと重力に逆らって伸びた胸の先には、存在を主張するピンクの突起。

 乳房に手を伸ばして揉みしだく。しっかりと柔らかいのに、弾力があった。

 

「俺マシュマロ食べないけどこんな感触なのか?」

「普通疑問に思う順番、逆だと思うのですが」

「そっかー……揉んだら手ベタつかないかな」

「それはまあ、お菓子ですし」

 

 じゃあいいか。箸で食べよう。

 気が緩みすぎて、バカになってるな俺。まあいいか。

 おっきなおっぱいだーわーい。

 

 両手でゆさゆさと気の向くままに弄っていると、アンリが俺のズボンのチャックをおろした。

 

「休ませてくれるんじゃないの?」

「一度出されたほうがスッキリできるでしょう」

 

 窓から引き出した一物をゆっくりとしごきながら、アンリは腰を曲げておっぱいを俺の顔に押し付ける。

 赤ん坊のように片方の乳首に吸い付き、もう片方を指でつまんだ。吸ったってなにも出やしないが、なんとなく甘いような感じがする。

 

「ふふっ、可愛らしいですわね。もっとわたくしに甘えてもよいのですよ」

「んー」

 

 ちゅぷっ、ちゅぱ。と、息継ぎの度に水音が鳴る。

 口に含んだコリコリした先端を舌で転がし、時には触れさせる程度に歯をたてる。

 指で触っていたほうの乳首も口元まで持ってきて、両方まとめてしゃぶりつく。隙間ができたせいで音が大きくなった。

 

「気持ちいいですか?」

「気持ちいいよ」

 

 一物への刺激は弱い。握る力は弱く、動かす速度もそう速くない。

 じんわりとした快感が腰回りに広がっている。

 アンリの滑らかな肌をナニで感じ取っていたのだが、やがてヌメった感覚に変わってきた。我慢汁が溢れたのだろう。

 よりスムーズに手淫が進むようになり快感が強まっていく。

 それでもかなり長く耐えていたのだけど、射精感が訪れ腰が震えてきた。アンリが亀頭を指でこする。

 

「我慢などなさらず、わたくしの手に出してください。ほら、びゅーびゅーっと」

 

 そんなことを言われては我慢できるはずもなく、あっけなく射精した。

 どぷんどぷんと吹き出した精液は、ゼリーのような粘性でアンリの手のひらにとどまる。

 反対の手で俺を撫でながら、白濁した塊を飲み込んだ。

 

「いっぱい出せてえらいえらい」

「俺は子供か」

「子供はこんなことしないでしょう?」

 

 人によるんじゃないかな。俺は精通前から頭のなかはエロいことでいっぱいだったけど。

 

「それにしても光のおちんちん、まだ硬いままですね。これではちゃんとお休みにはなれないでしょう。どうして欲しいですか?」

「じゃあ胸でしてくれる?」

「ふふ、本当に光は胸がお好きなのですね」

 

 俺が頭をどかすとアンリはソファーから退く。体勢を変えて普通に座ると、アンリが俺の股の間に跪いた。

 

「存分に味わってくださいね」

 

 ふかふかのおっぱいに俺のチンコが包まれて隠れる。

 れえっ、とアンリが舌を突き出してそこに唾液を垂らした。グチョグチョと淫秘な音をたてながら、胸を揺すってアンリがチンコをしごく。

 

「光のおちんちん、熱くて、わたくしの胸がやけどしてしまいそうです」

 

 口内や舌のぬるっとした感触や、きつく締め付ける膣内ともまた違う。引っ付くようなモチモチの肌が触れる。

 アンリは両手で胸を押し付けるが、物理的な刺激はとても弱い。すごいのは視覚効果だ。

 巨乳が俺の物を挟んで動いている。パイズリはこれが素晴らしい。

 

「いいよ、アンリ。最高だよ」

「喜んでもらえているようで、何よりです。ではこういうのもいかがでしょう」

 

 胸を押し下げ、亀頭を露出させると、舌を伸ばしてチロチロと舐めはじめた。

 真っ赤な舌が充血した亀頭を這いずり回る。ぷくっと我慢汁が浮き出ると舌先で掬った。

 

 ズチュン、パチュンと柔らかく重い胸が俺の腰に打ち付けられる。

 緩やかな乳圧と舌、そしてエロい絵面の前には俺の理性なんて対した役にたたない。

 二度目でありながら大量の精液を放出し、アンリを盛大に汚す。

 

「きゃんっ」

 

 白濁液がアンリの顔に飛び散り、胸にまでどろぉっと垂れてくる。

 

「すごい量ですね。満足できましたか?」

「いいや」

 

 ガシッと胸を掴んで、今度は自分で振る。

 

「あんっ、強引ですわ。ふふ……でもわたくしも感じてしまっています」

 

 腰を動かし、オナホールのように乱暴に使う。

 精液が潤滑剤になって、よく滑った。射精直後の敏感なチンコへの更なる刺激によって、三回目の吐精へと導いていく。

 

「必死な表情がよく見える。こういうのも悪くないですわ。光がこんなにもわたくしを求めて」

 

 すぐにまた我慢の限界が訪れる。俺は胸の谷間の奥に物を突っ込んで射精した。

 気だるさをこらえて腰を抜く。アンリが両胸を開くと、ねばーっと精液が間で糸を引いた。

 

「すごくエッチな匂い……」

「はぁ……ふぅ」

「全部飲んだらお腹いっぱいになってしまいそうです」

 

 そう言い、アンリは胸を擦り合わせる。精液がこねられて泡立った。

 熱っぽい視線を胸の汚れから外し、アンリが俺に目を合わせる。

 

「出し切れましたか?」

「うん、ありがと」

「光はいつも人に気を使ってばかりですから、こうして激しくされるというのも新鮮でよかったです」

「そうかな?」

「ええ」

 

 アンリがティッシュを取りに行き、そのまま身体中に付着した精液を拭う。

 着衣を直して、それから俺の一物を舐めて掃除し、射精管に残った精液を吸い出す。亀頭に口づけてからアンリは顔をあげた。

 

「わたくしは身体を洗ってきます。来客は無いのでゆっくり休んでくださいね」

「はーい。いってらっさい」

 

 生徒会長室を出るアンリを見送り、俺は再びソファーに横たわった。

 三連射の疲労がどっと襲ってきて、意識がたちまち薄くなる。怪盗事件より疲れるな、これ。

 

「あー、窓開けないと」

 

 アンリは気にならないのかも知れないが、このまま臭いが残るのはまずいだろう。最後の力を振り絞って窓だけ開けにいった。

 

 ■◆■

 

 目を開くと、視界に星が映った。紫の透き通るような星だ。

 どうやら俺が寝ている間に戻ってきたアンリは、また俺を膝枕していたらしい。俺に顔を近づけてきていたアンリと目が合った。

 止まることなくそのままアンリがキスを落とす。

 アンリの頭を捕まえて、口内に舌を入れて貪った。

 

「んっ、ふっくふっ……あっ」

 

 舌を絡ませ、唾液を啜る。口を離すと橋が出来ていた。

 

「おはよう」

「おはようございます。よく眠れましたか?」

「うん。枕がよかったからかな」

 

 夢も見ないくらいに深い眠りだった。体のだるさもほとんど取れ、今からでも事件に臨めるくらいだ。

 

「こちらも元気になられたようで」

「生理現象でーす」

 

 睡眠を摂ることで勃起した俺の物をアンリがさする。

 

「思ったのですけど、わたくしが光からぜーんぶ搾り取ってしまえば、ずっとわたくしが光の一番でいられるのでは」

「あー……俺がミイラにならない程度に加減して」

 

 疲労度は最終的にはプラマイゼロ、むしろマイナスってぐらいになった。




トイズを使ってアレコレするならアルセーヌとかなぁ。
それか番外編でも作るか、ですね。


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中華街の黄金鏡
10話


課題が忙しくてしばらく更新できてませんでした。
多少こなし終えたので、これからまた更新を再開します。なんか変な部分あったら教えて下さい。

あと要望は活動報告で受け付けてます。一人で書いてると、ネタ切れになりそうなので。


 休日ということもあり、学内の食堂ではなく、外に朝ごはんを食べに行こうという話になった。

 学園からしばらく歩いたところにある中華街は、ミルキィホームズでなくとも有名な場所だろう。俺たちはここに肉まんを食べに来たのだ。

 

「餃子肉まんってないのかな?」

「なんで光はいつも私に餃子を食べさせようとするわけ?」

「だってコーデリアだし」

「どういう理由よ」

「というか中身一緒でしょ」

 

 と、ネロが突っ込んだ。コーデリアが文句を言うかと思ったのだが、特にそんなことはなかった。なぜだ。

 ともあれ食べ歩きするべく、適当な店で肉まんを購入する。

 さて、中華街に来て朝ご飯を買った。ということはたぶんそろそろ事件が起きると思うのだけれど。なんてぼんやり考えていると。

 

 ──ドォォォンッ! 

 

 うおっ、いきなり来た。ああ、びっくりした。

 音の発生源は俺たちから少し離れたところにあったビルだ。ガラガラと倒壊していく音が響いていた。

 非常事態であることは明らかであり、シャロが慌ててPDAを取り出してオペラに連絡をとる。

 

「大変です、先生!」

 

 それから状況を説明していくのだが、現場から避難しようとする人がシャロにぶつかった。

 

「きゃあっ!」

 

 その衝撃で肉まんとPDAを落として、シャロが悲鳴をあげる。

 落としたショックでか通話が切れていたので、かけ直そうとするのだが、通話は繋がらない。

 

「三秒ルール!三秒ルール!」

「やめなさい!」

 

 俺が急いで拾った肉まんは、コーデリアによって再び叩き落とされた。

 

「あ、もったいない」

「お腹壊すわよ!」

 

 俺たちが漫才を繰り広げていると、シャロが叫んだ。

 

「そんなことより、先生と連絡が取れません!」

「場所は伝えられたから大丈夫だと思うけど」

 

 焦りまくっているシャロに答える。オペラもシャロの悲鳴を聞いて慌てて部屋を出たせいで、PDAを置き忘れただけだし。

 

「あたしたち、どうしたらいいんでしょうか?」

「んー、とりあえず現場を見て回りながらオペラさんが来るのを待とうか。シャロは連絡を一応続けておいて」

「はい!」

 

 という訳で、ゲーム版ストーリー最初のちゃんとした事件が始まった。

 

 ■◆■

 

 現場近くにばらまかれていたトランプを拾い上げる。

 トランプはすべて四のカードだ。マークの位置は本来あるべき場所から微妙にずれており、またくりぬかれている。

 何枚か束ねてみると、それがすべて同じズレ方をしていることがわかった。

 

「だーかーらー! ここは小衣たちに任せて帰りなさーい!」

「いいえ、帰るわけにはいきません!」

 

 ココロちゃんが怒鳴って、コーデリアが反発する。

 俺たちが現場である六王ビルを調査しているところに、G4が到着したのだ。そして当然のように喧嘩になった。

 

「まあまあ、落ち着いて」

「次子は黙ってて!」

「コーデリアも冷静になりなよ」

「ネロは黙ってて!」

「おーこわ」

「だめだこりゃ」

 

 止まらない暴走車二人に、次子とネロが即行で匙をぶん投げる。

 

「どうしましょう?」

「……はい」

 

 平乃とエリーが困り顔で言っていた。

 

「コーデリアさーん! ココロちゃんをいじめちゃダメですよー!」

 

 遠くに見つけたオペラのところへ駆けていっていたシャロが、からかうような声色で注意した。

 そして恒例の言い合いを始める。怪盗帝国関係ない事件でもG4とは遭遇しているので、喧嘩にも慣れたものだ。

 まあ言い合いと言っても、ココロちゃんがこっちを一方的に敵視して、たまにコーデリアが反発する程度なのだが。

 

 すぐに神津警視──この人を名前で玲と呼ぶのはなんか違和感ある──も合流して、彼にオペラが問いかけた。

 

「率直に聞くが、このビルで起こった爆発は怪盗の仕業なのか?」

「なぜそう思う」

 

 オペラは三つの根拠をあげた。

 一つは、盛大な事件であるにも関わらず死傷者がいないこと。

 二つに、警察の怪盗対策組織G4が派遣されていること。

 三つに、奇妙な形をしたトランプがばらまかれていること。

 

 これらの事情から、これが怪盗事件であるとオペラは推測していた。

 G3はその推理力を称え、ココロちゃんは反発し、神津警視に黙れと怒られていた。ココロちゃん、あーかわいそ。

 

「ドンマイ」

「うっさいわ!」

 

 肩を叩いた手をココロちゃんに振り払われた。

 

「咲、例のファイルを聞かせてやれ」

「はいは~い」

 

 神津警視に言われて咲がパソコンみたいなPDAを開き、音声ファイルを再生する。

 

『オラオラオラオラァー! さっさとどっかいけよテメーら! バーンといくぜー! ドーンといくぜー! 三十分後にこのビルはバラバラだぁー! 退屈でつまんねーこの街だがなぁ、この怪盗帝国のラット様が派手に面白くしてやるぜー! はーっはっはっはっは!』

「はい、お~しまい」

 

 言って咲がファイルを終了した。

 

「……なに言ってんだこいつ?」

 

 そういやこんなんだったわ。この時のラット。

 リアルで聞くとただの危険人物だ、頭おかしいんじゃないか? 

 これは警察にかかってきた犯行予告の電話で、これを受けた警察は避難誘導を行ったそうだ。

 そういや飯の前にやたらと警察の姿を見たな。

 

 怪盗帝国を名乗っているのだし、当然これは怪盗事件だ。つまり探偵が強権を発揮できる場ということである。

 俺たちも正式に捜査に加わることになった。ラットがサイコすぎてちょっとやりたくないが。

 

 というわけで六王ビルを調べていたのだが、早速ネロが見つけてきた。なんだか、普通に優秀だよなネロって。

 

「これ、そこに落ちてたんだけど」

「これは……昔の鏡?」

 

 受け取ったオペラが鏡に付着していたホコリを吹き飛ばす。

 下から出てきたのは青緑色した銅の鏡だ。

 

「ちょっとぉー!」

「ん?」

「それこの現場で見つけたんでしょ!」

「あ、ああ」

「証拠物品として警察があずかるわ。寄越しなさい!」

 

 横から現れたココロちゃんがオペラから銅鏡をひったくる。

 アニメ版とはまた別の意味でヤベー奴しかいない世界観だ。

 

「ココロちゃんひどーい!」

「ココロちゃんって言うなー!」

 

 そしてココロちゃんは走り去っていった。その姿にコーデリアが怒りを露にする。

 

「なんて子なの!」

「それよりみんな、箱を探してくれないか?」

「箱……ですか?」

 

 エリーがオペラに聞き返した。目的の箱についてオペラは、さらに詳細な条件を付け加える。

 金属製、サイズは五十センチ四方くらい、厚さはそこまでない。

 

「あの……ひょっとしてそれじゃないですか?」

 

 コーデリアが言った。

 

「それ?」

「教官が踏んでます」

「え! わわ、本当だ!?」

 

 慌ててそこからどき、金属の箱を持ち上げるオペラ。見たところ損壊はしていなさそうだ。

 

「オペラってホントに名探偵だったんだよね?」

「このタイミングで聞くのはやめてくれ……」

「で、なんなのそれ?」

 

 ネロが話を本筋に戻す。オペラが言うにはその箱は定礎箱と言うらしい。

 建物を建てる際に、それがいつ建てられたのかを残す定礎板の裏側に埋め込むもので、記念になるものを入れておくとのことだ。

 

「へー、タイムカプセルみたいだね」

「爆発で掘り起こされるとは、不本意だったろうね」

 

 ネロの例えに茶化すように返す。

 そんなところに神津警視の焦った声が届いた。「来るな、と言ってもどうせついてくるんだろう」そう言ってから神津警視は王子ビルだ、と言葉を残し、G4とともに車で移動した。

 

 俺たちもオペラの車に乗って王子ビルに向かう。

 到着した時にはすでにビルは倒壊していた。調査を進めていると、シャロがビルの管理人から予告があったという情報を入手してくる。その内容は咲が見せてくれたものとほとんど同じだった。

 つまりここも怪盗ラットによって爆破解体されていたということだ。

 

「ちょっとあんたたち! また邪魔しに来たの!」

「あ。明智ちゃん」

「明智ちゃんもやめろぉ!」

 

 怒られた。これならオーケーだと思ったのに。冗談だけど。

 

「あんたらがチョロチョロしてたら、あたしたちの足を引っ張るのよ!」

「引っ張るにしても、そんな短い足じゃ……」

 

 ネロが悲しげに言った。俺は吹き出すのを我慢した。

 

「こっ! 小衣の足は短くないもん! すぐにスタイル抜群になっちゃうんだから!」

「よしっ! がんばれ小衣、ナイスバディ目指してな」

「うるさい! 次子に言われると腹が立つの!」

 

 ちょっと我慢するのは無理だった。顔を真っ赤にしたココロちゃんの将来性キックが、俺のすねに刺さった。そんなに痛くはないけど、痛がるふりをしておく。

 

 ココロちゃんで遊んでいると、平乃が先ほど俺たちが見つけたものと同じ金属の箱を見つけてきた。発見した場所を聞くと、それはビルの東南のほうだった。

 オペラの指示で銅鏡を探しに行く。そして今度はエリーが銅鏡を探り当てた。

 

 それはやはり前の一枚と同じように綺麗な状態で、定礎箱に入っていたことをうかがわせた。

 

 事件はまだまだ続く。銅鏡の検分をしている間に、三件目の爆発があった。

 咲が特定すると、それは科捜研、つまり警察署のそばだった。

 名は五王ビル。あっちこっちとたらい回しにされて、若干疲れぎみだったが、もうビルの爆破解体は終わりだと思うと少しだけ気が楽になった。

 

 今回はG4に遅れて到着したので、すでに彼女たちが銅鏡と定礎箱を見つけていた。神津警視が持ってきて、見せてくれる。

 

「うーん、狙いはこれかな?」

 

 車の中で調べていた画面を、オペラたちに見えるように差し出す。

 王偉という人物が保有しているとされる黄金鏡のイメージ画像だ。今朝のニュース番組で放送されたもののコピーである。

 それについてシャロが聞いてきた。

 

「なんですかこれ?」

「六王ビルと王子ビルってさ、オーナーは違うんだけど、元を正すと王偉さんって株主がいるんだよね。で、これはその人が持ってるらしい宝物」

 

 五王ビルのデータも検索し、その元締めが王偉であることを伝える。

 

「あちこち爆破してるのは、単純にどこにあるのかわかってないんじゃないかな」

 

 と、軽く原作知識をもとに情報を提供しておく。爆弾魔なんて危険人物を相手にするんだ、スムーズに解決できるに越したことはない。

 簡単な情報の共有を行って、俺たちは散開し、今までに爆破されたビルの調査をすることにした。

 

 で、ゲームなら今回の事件もミルキィの四人から話を聞きつつ重要なファクターを集めていくわけだ。

 

 シャロからは定礎に刻まれた年号がどれも古いものであることを。

 ネロからは爆破現場付近に保険金業者の男がいることを。

 エリーからは全部のビルに王という文字が入っていることを。

 コーデリアからはどのビルにもあまりテナントが入っていないことを。

 

 つまりこれは怪盗を利用した保険金詐欺というわけだ。

 古くて人気のないビルを怪盗の標的とすることで破壊させ、保険金を騙しとろうとしているわけである。

 問題は件の怪盗ラットがそれに気づいていることだ。

 

 ばらまかれていたトランプ、あれも実は予告状であり、4を方位記号に合わせて、店売りの横浜の地図に照らし合わせると、くりぬかれたマークがそれぞれ爆破現場と一致する。

 

 ラット、あのトランプ作るのめちゃ大変だったんじゃないかな。トゥエンティに手伝ってもらったのかな? 

 

 それはさておき、数字が四であることからもわかるように、もう一ヶ所ラットは爆破する気だ。

 それは王偉が経営する会社の本社だ。もちろん止められなければ大惨事である。

 

 しっかりばっちり止めないとな。

 ミルキィホームズで人死にとかね、あんまりよくない。

 

 ■◆■

 

 俺はオペラと違って車を持ってないので、全ビルを回りながら調査、ということができない。厳密にはできるが時間がない。

 なのでどこか一ヶ所にとどまって、そこだけを調査するのが妥当だろう。

 となるとどこを選ぶのか、だが……ここ五王ビルでいいか。原作的にも一番重要なのはこのビルだ。

 

 というわけで現場に踏みいる。

 ここを調査しているのは、コーデリアと平乃だ。まずはコーデリアのところに赴いた。

 

「コーデリア~、なんか見つけた?」

「見つけた、というほどじゃないけど……あれがなんだか気になって」

 

 コーデリアが示す場所は瓦礫の山だ。そこには看板が転がっている。

 

「ビルのテナント一覧表だよな」

「ええ。結構空欄が多いけど」

「人気なかったんだな、このビル。不謹慎かもだけど、被害は最小限にすんだって感じかな」

「本当に不謹慎ね。でも確かにその通りね。不幸中の幸いといったところかしら」

 

 自主的に他二つのビルのことも調べてくんないかな、無理かな、無理だよな。

 原作関係ない事件で頼られたくないんだけど、これくらいなら大丈夫か。とりあえずネットで調べるのは俺の常套手段だからな。

 

「他二つってどうだったんだろ?」

「え? うーん、ちょっと調べてみるわね」

 

 PDAを開いてコーデリアが六王ビルと王子ビルを検索する。調べを進めていくごとに、コーデリアは真剣な様子になっていった。

 結果はもちろん、ここと同じくガラガラ。奇妙な共通点だった。

 

「全部が全部、経営不振。これは重要なファクター枠に入れとかないとな」

「ええ、教官に報告しないと!」

 

 オペラに連絡を取って、発見を伝える。

 それからコーデリアと別れて、隣接する警察署のほうに行った。

 俺に見つけられるようなものはなにもないと思うが、一応調べておいて損はないだろう。

 

「光さん、どうかしましたか?」

「ん? ああ、長谷川さん」

 

 振り向くと平乃が立っていた。警察官な彼女としては、俺が警察署を調べているのが気になったのだろう。

 

「偶然かもですが、警察署のすぐそばで爆発があったじゃないですか。なので何かあるかもしれないと思いまして?」

「警察もそれを考慮して検査をしましたが、被害は壁面がすすけたくらいのものだったそうです」

「そうなんですか?」

「はい。署内部は現在調査中だそうですけど、今のところは機器やデータの破損もないそうです」

「そうですか、ありがとうございます長谷川さん」

 

 まあそんな簡単にボロださないよなぁ。いや出されても困るけど。

 ラスボスに思いを馳せながら、署の壁をコンコンと叩いてみる。硬質なコンクリートの感触が返ってきた。爆発それ自体の被害は確かになさそうな、どっしりとした強度を感じさせる。

 

「じゃ、これは警察に任すとして」

「ええ、お任せください」

「こっちが得た情報なんだけど……」

 

 ここに来るまでに気づいた事実や、俺が言ってもおかしくない範囲の情報を教える。

 

「って感じですね」

「あの……光さん?」

「なんですか?」

「それ私たちに言ってもよかったのですか?」

 

 そう平乃が問うてきた。

 探偵と警察はなんやかや対立、というかライバル視し合っている。ココロちゃんがその筆頭だろう。

 それがいきなりこうして情報の共有なんて始めたら、不審に思われても仕方ない。

 

「手早く事件を解決して、市民の不安を取り除く。それ以外ってあんまり重要なことじゃないでしょう? なんて明智ちゃんに怒られそうですが」

「いえ、素晴らしい考えだと思います」

「ですかね?」

「はい」

 

 平乃は微笑みながら首肯した。和風美人な彼女の微笑は、お堅い警察服を着ていることを差し引いてもかなりの破壊力があった。

 

「それでは私は調査に戻りますので」

「あっ、ちょっと待って長谷川さん!」

「なんでしょうか?」

「三つばかし、頼みがあるんですが」

 

 平乃はうなずき、俺に先を促す。

 

「一つはかなり個人的なことなんですが、敬語やめていいですか?」

「ええ。構いませんよ」

「ありがと。で二つ目なんだけど、連絡先交換しよう。PDA持ってる?」

「持っていますよ」

 

 平乃がPDAを取り出す。俺もPDAをポケットから出して、互いに連絡先を登録した。

 

「よしよし、じゃあ何かあったらこれで伝えるから」

「こちらからも情報の提供をいたします。それで三つ目はなんですか?」

「ああうん、この辺の全部だけど、知られたら怒られそうだから明智ちゃんには内緒にしててくれない?」

 

 ふふっ、と小さく平乃が吹き出した。それから平乃は人差し指を立てて口に持っていく。

 

「わかりました。小衣さんには内緒、ですね」

「よろしく。じゃあ調査がんばって」

「ええ、そちらも」

 

 立ち去る平乃に手を振って見送った。



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11話

遅れてすみません。
長期休暇が終わったので、前より投稿頻度はかなり下がると思いますが、投稿を再開します。


 いい感じに座れそうな瓦礫を探して、そこに腰かける。

 さてと、オペラに何を話すか考えないとだな。

 今のところ俺主体でやったことが、警察署に被害が出たか聞いただけで、結果は問題なしだったわけだし、ほんと何を話そうか。

 

 というか今回、ここに至るまでに結構喋ってるからなぁ。

 今から重要なファクターを一個追加するのはかなり大変な気がする。じゃあ今あるもので、なになら話題にできるのか、なんだけど。

 そこでふと、トランプを何枚か回収していたことを思い出した。

 

「どのポケットに入れたっけ? ……ええと……あぁ、あったあった」

 

 これ単品だと話題性が薄めだから、地図を探さないとな。本屋はどこだったっけ。

 

「やぁ、光さん」

「え?」

 

 誰の声かと考えるまでもなく、俺に話しかけてきたのはオペラなわけだけど。

 

「なにか見つかったかな」

 

 早い、早いってオペラ。こう、重要なファクターをメンバーが見つけたけど気づいてない、ってタイミングで現れるんじゃないの。俺まだ地図を持ってないんだけど。

 

「あぁ、ええと。署の隣で爆破なんて、なにかあるかも? と思ってG4の平乃に聞いてみたんだけど、見ての通り損壊なし。内部は調査中らしいけど、外部に被害はなかったってこと、とかかな?」

 

 仕方ない。思い付いたことを、思い付いた端から話すしかないな。

 

「あとはこのトランプ」

「最初の事件現場、六王ビルの周辺に散らばっていたトランプだね。僕も持っているよ」

「見るからに怪しいしね」

 

 裏面が見えるようにひっくり返して、オペラに見せる。

 

「こんな風に穴がマークの形に空いてちゃ、ひっくり返してたって意味がない。それに」

 

 適当に拾い集めたカードを全部束ねる。きれいに角を合わせれば、ずらして開けられた穴が整って、そこから地面を見ることができた。

 

「マークが違っても穴の場所は一緒だ。だからなんか意味があるんじゃないかって持ってきたんだ」

「意味……意味か。トランプの数字はすべて四だ。それにマークの位置も微妙にずれている。確かになにか意味が込められていそうだね」

「で、怪盗がこんなものをばらまく意味なんだけど、これ材質は普通のトランプなんだよね。だからトリックじゃない。トリックじゃないなら、まあ、予告状かなって」

 

 このトランプ、地味にプラスチック製なんだよな。やっぱりその方が加工しやすいのかな。

 熟考モードになったオペラに任せて、俺はトランプで遊ぶことにする。何度も折り曲げてみたり、千切れないか試してみたり、あとはトゥエンティ製である可能性にかけて、投げてみたり。

 トランプ投げには失敗したが、オペラは推理に成功したようで「なんで四なんだ……まさか!」と言って、自前のPDAでなにか作業を始めた。

 

「この近辺の地図は……あぁ、あったあった。縮尺を合わせて」

 

 画面を覗いてみると、それは横浜中華街を中心とした観光マップだった。

 今まで起きた三つの事件の現場が入るようにサイズを合わせたマップと、トランプとを横に並べてオペラは比較しているようだった。

 

「六王ビルはここで……王子ビルはここ。五王ビルはここだから、あと一つはこの辺か。四つ目はだいたい……この辺り。それでここには…………っ!」

 

 画面を拡大してその場所の名前を映し出す。

 オペラはガバッと顔をあげて、俺に言った。

 

「光さん! みんなに連絡を、至急王偉ビルに集まるように言ってくれ!」

「オーケー、任された」

 

 よしよしっと。これで事件は解決したも同然だな。

 俺もオペラと一緒に王偉ビルに向かって走りつつ、コーデリアたちに電話して呼び集めた。

 

 ■◆■

 

「おーい!」

 

 位置的に離れぎみだったネロが遅れてやってくる。

 

「あ、ネロがきました」

 

 ココロちゃんとじゃれあっていたシャロが伝えた。そう、ココロちゃんだ。

 なんというか、ついさっき協力しようと言った手前、王偉ビル集合の話を平乃にしないわけにもいかなかったのだ。

 神津警視含むG4も集合で、王偉ビル前は大渋滞である。

 

「はぁ、はぁ、はぁ。なんだよ、大至急集合って。てか、G4もいるし」

 

 走ってきたネロが息を乱して聞く。

 いつも通り喧嘩腰なネロの言葉には当然、ココロちゃんが過剰反応を返した。

 

「いちゃ悪い! ふん、こっちも平乃がなにかに気づいたらしいのよ」

「あはは」

 

 そうココロちゃんが言って、平乃が困っていた。

 俺もオペラから推理の内容は聞いていないので、平乃にも集まれとオペラが命じたことしか伝えていない。

 つまりはこっちの推理担当がなんかに気づいた、ってことしか俺は話していないわけで。話を振られても困る平乃は、ちらちらと助けを求めるように俺のほうを見てきた。

 

「ま、ここに集められたってことは、ここが次の爆破現場ってことだろうよ」

「あぁ、恐らくは。それでコーデリア。今調べてもらったことに、間違いはないんだね」

「はい。オーナーのオフィスはこのビルの一階にあります」

「よし」

 

 と、オペラがうなずいた。

 話をそらすことには成功、平乃に片目を瞑って合図を送る。ちょこんと頭を下げて、平乃が礼を返してきた。

 

「あの、どういうことなんですか?」

「詳しく聞かせてください……」

 

 シャロとエリーがオペラに尋ねた。しかしオペラはその疑問を解消することはなく、オーナーに聞いた方が早いと、ビル内へ歩を進めた。

 

「ゴーゴー、ほら行け行け」

「ちょ、ちょっと危なくないの? 次はここが爆破されるんでしょ?」

「大丈夫大丈夫。まだやられないはずだから」

 

 俺もビルに入る。オペラの姿を探して、その後ろを追いかけた。

 コーデリアたちも後から続いてくる。まだラットはここに直接予告状は出していないので、ビルにはいくらか人が残っていた。

 オーナー部屋に直行するオペラたちから少し離れて、ビルの受付を訪ねる。

 

「受付さん。ちょっと頼みがあるんですけど」

「はい。ええと、なんでしょうか?」

 

 俺と一緒にいた目立つ格好の人たちのことが気になるようで、受付さんの視線は時々オペラたちのほうに向いていた。

 

「何時間か前からビルが立て続けに爆破されてますよね。実はこちらに予告状が届きまして、次はここが標的らしいんです」

「ええっ!? そ、それは本当ですか」

 

 驚いた声をあげてはいたが、まだ若干疑いを持っているようだった。

 まあ俺は高校生なんだから、仕方ないと言えば仕方ない。なので神津警視を手招きして呼び寄せ、続きを任せることにする。

 警視は警察手帳を取り出して、さらっと俺の嘘に乗っかって避難指示を出すよう命じていた。

 

「やるじゃ~ん」

「お褒めにあずかり光栄です、遠山さん」

 

 やー、やっぱ褒められるっていいね。特に美少女が相手だと。

 避難のアナウンスが流れて、ビル内もあわただしくなり始めた。あとはもしものためにビル近辺も退避させないとだから。咲にも覇気のない声で褒められたことだし。

 

「俺はこっちで避難誘導したほうがいいかな」

「お仲間のとこにはいかないのかい?」

 

 次子が訊ねてくる。

 

「あー、オーナーに話を聞きにいったみたいですし、そんな大人数はいらないでしょう。こっちが落ち着いたらで」

 

 ココロちゃんにぶつくさ言われながら、呼びかけを行うこと数分。応援に駆けつけた警察官も増えて、民間人の姿も消えていく。

 

「さーてと。そろそろ戻るかな」

 

 避難誘導のほうはもう任せてしまおう。特に面白くないしな。あとちゃんと探偵らしい行動しなくちゃいけないし。

 こっそりとビルに戻り、探索する。突入前にコーデリアの調べてくれたオーナー・王偉の部屋にはもう誰もいなかった。

 

 確かこの後は、屋上に行くんだったっけ。

 ラットが爆弾に火をつけて、コーデリアがそれを見つけて、ネロが快速エレベーターで屋上まで運んで、エリーが空に投げる。そんな流れだったはず。

 

 このまま屋上に直で行って大丈夫かな。一階にいなかったから、屋上探すって飛ばしすぎな気が。

 軽く見て回りながら階段で上がるか。

 

 ■◆■

 

 事件は解決した。というかしていた。

 結局俺はラットに出会うことなく、屋上までたどり着いた時にはミルキィのみんなと、ラットが残した大型爆弾しかなかった。

 

 アニメ版とは違って、ゲームのラットの爆弾は高性能で、空気に触れることでも起爆する火薬を、ガラスで覆い、中にはぐるっと一周する導火線がある。

 トイズで火をつけることで、起爆までの時間を調整できるとかなんとか。

 そんな危険なものを処理するような器具も技術も──オペラがどうかは知らないが──なく、後処理は警察に頼むことになった。

 

 経緯としてはゲーム通り、オーナーの部屋でいろいろとオペラやネロに推理されて暴露されたラットは逃走。屋上に追い詰められたラットは爆弾を盾にする。

 そこに現れた怪盗帝国の首魁・アルセーヌが謎のトイズでラットの姿を消し、彼を連れて逃げ去った。

 

「みんなお疲れ様~」

 

 屋上で事情を聞き終えた俺は、ミルキィのみんなに向かってそう言った。

 

「お疲れ様~、じゃないってまったく。ずっと見なかったけど、光はどこにいたのさ」

「外で避難誘導だけど……やー、ごめんね? 参加できなくて」

 

 片手を顔の前まで持ち上げて軽く謝る。そうしたらコーデリアがちょっとビックリしたような顔をした。

 

「あら、一応活動してたのね」

「当たり前じゃん。さすがに怪盗事件の最中にサボったりしないって」

「ふふ、それはそうよね」

 

 事件の感想というか愚痴というか、グダグダと駄弁っていると爆弾処理班がやってきて、俺たちは追い出された。

 カードの穴の数から無いだろうとオペラは予想し、原作知識からないことを知っているのだが、念のため中華街の各所に爆弾がないか調査も行われるらしい。

 

「あ」

「どうかしましたか?」

 

 思わず漏れてしまった声に、シャロが反応した。頬をかきながら、目を反らして答える。

 

「いやぁ、その……朝飯食いそびれたなって」

「そう……いえば……」

「あたしもお腹空きました」

「もうお昼だものね」

「じゃあどっかで食べてく?」

「はーい、賛成でーす!」

 

 元気よくシャロが手をあげる。コーデリアがくすくすと穏やかに笑った。

 

「じゃあどこか入りましょうか」

「開いてるとこあるかな?」

 

 ラットが暴れたせいで、現場付近の店は閉まっている。追加の爆弾の捜査をやるってことは、中華街全域に一時閉鎖の波は広がるってことだろう。

 

「この辺には無さそうね」

「じゃ、開いてるとこ探して買い食いだね。お代は解決祝いに小林持ちってことで」

「え!?」

 

 そんなこんなでラットの事件は終わりを迎えた。

 今回はまじでなんもしてないな俺。

 

 ■◆■

 

 後日聞いたところによると、やっぱり予告された場所以外には爆弾はなかったようで、中華街には人が戻った。肉まんも買いにいき放題だ。

 王偉はラットを騙して、要らないビルを爆破させ、保険金詐欺を働こうとした件で法廷に立ったらしいが、なんか執行猶予がついたらしい。

 彼の所有していた黄金鏡は警察に預けられ、しっかりと保管されているとのこと。

 

 そして本日。やることもないので事務所の大掃除をしていた。

 マスクをつけて、はたきで上からホコリを落としていく。シャロは時々失敗しながら小物の整理、エリーは雑巾がけ。コーデリアはあくびをしているネロを叱っていた。

 

「なんで掃除なんかやらなきゃならないのさ~?」

「ここは私たちの事務所なのよ? 掃除ぐらいあたりまえのことでしょう!?」

「はいはい……」

 

 ネロも掃除に加わるため、器具を手にする。

 

「う……お、重い……。う~ん」

 

 見るとシャロがソファーの端を持って、動かそうとしていた。

 

「エリーさ~ん……このソファーを運んでほしいんですけど~?」

「え……?」

「あ、やっぱり恥ずかしいですか?」

「う……うん」

「ですよね。ごめんなさい」

「俺が手伝うよ」

「あ……! やっぱり私が……!」

 

 俺が立候補するとエリーがそう言った。

 

「わ、本当ですか?」

「みんなの前でくらい……平気にならないと……」

「エリーさん! 前向きです! 素敵です!」

「どこまで……運べばいいの?」

「あ、少しの間持ち上げててください。下を掃除したかっただけですから」

「うん……わかった……」

 

 トイズを発動したエリーが、重たそうなソファーをひょいっと持ち上げる。シャロがその下に入って床の掃除を始めた。

 

「お~さすが~」

「ほらほら、さっさと掃除して」

「いちいちうるさいな~。シワが増えるよ?」

「な、なんですって!?」

 

 コーデリアとネロはまたイチャイチャしているが、なんにせようまくいったようでよかった。

 力仕事なのに男手が頼られないのは気になるが、まあ仕方ない。ひっそりと落ち込んでおこう。

 

 と、そんなところに扉がノックされてアンリが入室した。

 

「なにをゴソゴソやっているのかしら?」

 

 そう言ってアンリは部屋を見渡す。エリーは真っ赤になる。

 

「ああ、お掃除中だったの」

「きゃぁぁぁぁぁぁ~っ!! 見ないでぇぇぇぇぇぇ~っ!!」

 

 おっと、懐かしい悲鳴。

 いつかのように暴走したエリーがソファーをぶん投げ、事務所の棚を粉砕して壁に刺さった。

 

「ありゃま」

「ごめんなさい! ごめんなさい!!」

「え……えと、私が……悪かったのかしら?」

 

 どっちの味方をしていいのかわからなかった俺は、とりあえず黙っておくことにした。




オペラ「さあ、聞かせてくれ! ……(がやがや)……光さん! ……あれ、光さん?」
光「爆弾ですよ、爆弾~」(旗をフリフリ)


ラット「アルセーヌ様の言ってた浅見光がいねぇ」
光「みなさん、避難してくださいね~」(旗をヒラヒラ)

とか、ビルの中はたぶんこんな感じですね。
そして平乃経由で王偉ビルにやってきた神津視点。

神津「(俺は謎を解けていない。王偉への尋問は小林に任せるとしよう。人が大勢いるということは、まだ直接ここへ予告状は送られていないはず)」

それで光の始めた避難誘導に付き合って、全員出遅れました。


■◆■

「うぉぉぉぉぉ! 目覚めたまえ、俺の秘めたるパワーっ!!」

 グッと拳を強く握りしめ、上に突き出しながら叫んだ。

「ふぉぉぉぉぉぉ!!」

 トイズ。それは選ばれし者の心に膨らむ奇跡のつぼみ。
 爆発や雷によって喪失したり、友情パワーで強化復活したりする不可思議パワーである。
 原作においてミルキィホームズの四人や怪盗アルセーヌのトイズなんかは、こう、精神的なあれこれによって本来以上の力を発揮することに成功していた。

 ならば俺にもできるのではないだろうか。
 意思の力一つで、自らのトイズを更なる高みへと強制的に引っ張りあげることができるのではないだろうか。
 思い付いたのならば試すべきだ。

「俺はエロいことがしたいんだ────っ!!」

 グッとチンコを硬くして、上におっ勃てながら叫んだ。
 俺は中学生という多感な時期に長期の禁欲を行い、膨大なエロ妄想でトイズの拡張を試みた。
 かくして俺のトイズはより強力なものへと変化したのだった。やったぜ。

■◆■

見返すとこんなの書いて放置してたのがあったんですよね。
どうも私、普通にMC書くの苦手みたいで。
誰か書いてくれないかな?


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12話※(エルキュール)

 壁に突き刺さったソファーは、みんなに部屋から出ていってもらって、その間にエリーに引き抜いてもらった。

 あとはプロのお仕事ということで、業者を呼んで補修工事が行われることになった。と、まあ、なかなか大変な大掃除になったわけだ。

 

「というわけで第二回、エリーの強化月間~」

 

 俺が拍手すると、みんなからまばらに拍手が返ってきた。

 それから俺によって空き教室に呼び集められたうちの一人、ネロが手をあげる。

 

「強化月間……ってなに?」

「エリーがちゃんとトイズを使えるようになりたいって言うからさ。今日はちょいと特訓をしようと思います」

「月間じゃないじゃん。しかも第二回なんだ」

「前にもやったからねー。その時は俺一人でやったんだけど……あれは失敗だったから」

 

 仮面つけて驚かすというアホな策は、薄々思っていたとおりに失敗した。

 それはそれとして、再び頼られたのだから、やらなくてはならない。というわけで掃除中に失敗した『みんなの前でトイズを使う』ことができるようにする練習をすることになった。

 

 とりあえず人のこなさそうな教室を借りて、ミルキィのみんなをそこに集め、エリーにトイズを使ってもらう。

 前回みたいに頭の悪いやり方よりも、こういったシンプルな手段のほうがずっといいだろう。

 

「というわけでエリー」

「は、はい!」

 

 緊張で声が上擦っているエリーに、鉄パイプを投げ渡す。

 

「それトイズで曲げて。みんなで見てるから」

「え、えぇ……っ!」

 

 教室の窓を開けて、それから端のほうに片付けられていた椅子を持ってきて座る。各々好きなように場所を確保して、エリーを囲んだ。

 

「ささ、どぞどぞ」

「がんばってください、エリーさん!」

「がんばれ~エリー」

「大丈夫よ。あなたならできるわ!」

 

 声援を受けてエリーは、しばしの間うろたえていたものの、最終的には覚悟を決めて、一息にパイプをねじ曲げた。

 

「や、やった。やれ、ました……光さん……!」

 

 ミルキィのみんなから口々に称賛が送られ、エリーが顔を赤らめる。俺もエリーに笑みを向けた。

 

「じゃあはい、まだまだあるから続けていこうか」

 

 部屋の隅にまとめて置いておいたパイプを、ガラガラガラーっと転がす。エリーがそれらを見下ろした。

 

「慣れるには数をこなさいと、ね」

「……っ」

 

 エリーが勢いよく首を横に振る。鉄パイプを一本拾ってエリーに詰め寄った。

 

「いやいやじゃない。やろっか」

「……っ!」

 

 涙目になるエリーに鉄パイプを手渡す。

 

「光さんの……鬼……っ」

「ははは、なんとでも言うがいいわ」

 

 そんなこんなでエリーの特訓は続いた。用意した鉄パイプを全部ねじ曲げ終えたら、次はそれをなるべくまっすぐになるよう引き伸ばしてもらい、また曲げる。

 エリーが俺たちだけの前でトイズを使うことに慣れるまで、トイズを使い倒してもらった。

 

 パイプが何本か金属疲労でへし折れる頃にはエリーもこの作業に慣れてきて、特に気負うことなくトイズを発動させられるようになった。

 

「それでね、そこのパンケーキが美味しかったの。今度みんなで行きましょう」

「へー、いいじゃん。いつにするー?」

「あたしはいつでも大丈夫ですよ」

「光さん、は……どうですか?」

「んー、特に用はないな」

「じゃあ次の土曜はどうかしら。みんな予定は開いてるかしら?」

 

 ギギギギと金属を手の内で粘土細工みたいにこね回しながらおしゃべりする風景は、なにかが間違っているような気もするが、つまるところ今回は成功したということだろう。

 そんなわけでいつぞや舘さんがやっていたように、ポケットに手を突っ込んで、あらかじめ用意していたメールを送る。

 

 なに食わぬ顔をして、そのまま会話に付き合っていると、急に扉が開いて人が入ってきた。

 

「おーい、浅見。なんの──」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「あ、やっぱダメかぁ」

 

 今日はアンリも生徒会長としての仕事で忙しく、他に連絡先を知っていて今日暇している奴で、実験台にしても大丈夫な奴を他に知らなかったので相部屋の彼を呼び出してみたのだが、案の定エリーは鉄パイプをぶん投げた。

 最悪また壁に穴を開けることになるかと思っていたが、開けておいた窓を運よく、くぐっていってくれたみたいだ。

 

「ご足労ありがと。もう帰っていいよ」

「殺すぞテメェ! ていうか殺されるとこだったぞテメェ!」

「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

「状況がカオスすぎるわ! 説明しろ!!」

「はっはっはっ」

 

 やっぱりまだ他人に見られるのはダメそうだ。あるいは突発的な事態がダメなのか。

 まあその辺はまたエリーと話しながら考えるとしよう。

 

 ■◆■

 

 教室の片付けと、外に飛んでったパイプの捜索をして解散する。

 コーデリアたちを先に返して、教室を借りてきた責任者として軽く教室を見渡して壊したものがないか確認していた。

 怪力だけでなく重量も増加するエリーのトイズ・トライアセンドだ。床やら椅子やらにダメージがいっている可能性を考慮し、点検したのだがそちらは問題なかった。

 

「なんというか、怪力以外の二つはうまく扱えてるんだよな」

 

 やっぱり性格が原因なんだろうなぁ。

 トイズは精神に依存した能力なのに、なぜか性格に合わせてはくれない。

 俺ももっとこう、純粋に破壊力高いトイズが欲しかったなー。

 

 ぼくのかんがえたさいきょうのトイズを妄想しながら鍵を指に引っ掻けて回していると、エリーが戻ってきた。

 

「どした? 忘れ物?」

 

 俺がそう聞くと、エリーはプクリと頬を膨らませた。

 

「光さん……ひどいです……」

「んー? あー、特訓の内容か。ごめんごめん。でも言ったら意味のなくなることだからなぁ」

「……それは、わかるん……ですけど」

 

 むすっとした顔のエリーは、その表情のまま俺の胸にすり寄ってくる。

 エリーの腰を抱き寄せ、差し出された頭をなで回す。それからエリーをぎゅっと抱き締めて。

 

「ごめんね」

「……まだ……ダメ、です」

「じゃあ許してもらえるようがんばらないとな」

 

 エリーの頬に手を添えて上を向かせると、唇を奪った。

 

「んっ……ふ、ふぁっ……んちゅ、んむ」

 

 目を閉じて、エリーは柔らかい唇で俺に何度も吸い付いてくる。俺もそれに応えてむさぼった。

 口づけの位置を下にずらしながら、エリーの服をはだけて上半身を露出させ、首、鎖骨、それから胸と、ゆっくり俺の口でエリーを愛撫する。

 エリーの肩に手をあて机に押し倒し、顔を離した。

 

「はぁ……はぁ……」

「ほんと、きれいな身体してるよな、エリーは」

 

 白い柔肌は熱を帯びて、うっすらと赤く染まっていた。そっと乳房をひとなでして、存在を主張してくる乳首を摘まむ。

 

「ひゃん!」

「かわいいよ、エリー」

 

 コリコリと固くなった豆を指先でこねくり回して、エリーにかん高い嬌声をあげさせる。

 

「ふっ、あっはんっ……んんっ……光、さん……っ。下も……触って?」

「もちろん。いっぱい気持ちよくなってくれ」

 

 スカートをめくると、ショーツには小さく液体がにじんだ跡があった。

 布の上から指を這わせて刺激していると、後から後から液が漏れ出てくる。ぷくっとショーツが吸いきれなかった水気が浮かんだ。

 

「ちょっと腰あげて」

「……」

 

 こくんと小さくエリーがうなずいて腰をあげてくれる。その間に俺はショーツを脱がせた。

 とりあえず隣の机に置くと、そこから愛液が染み出して床に垂れてくる。それを見たエリーが恥ずかしそうに顔を赤くした。

 

「エリーって感じやすいよな」

「うぅ……光さんが……いじめる。……ひゃぁ!」

 

 エリーの割れ目を人差し指と中指で擦りあげる。

 滴るくらいに濡れているのだから、もう必要はないと思うけど、指を突っ込む前にその周りを愛撫する。

 蜜を指に塗りたくって優しく肉を圧しながら、つーっと谷に沿わせた。

 

「あっ──あんっ、ふぁっ、あっ……くぅん、あんっ……はっはっ、ふぅ、んっ……光……さん、あんっ……もう大丈夫……ですから」

 

 溢れる蜜を掬って中指にしっかりと塗り、エリーの中に入れた。

 ぬるっとした温かいエリーの膣内が俺の指をきゅっきゅっと締め付ける。中で指を曲げて、お腹側を探索し、少し感触の違うところを探す。

 

「ふぁぁっ……あん、あっあっ……はっふっ……光さん……、そっちじゃ、なっ──ぁあっ!」

「おーし、見つけた見つけた」

 

 エリーの膣内にあった、わずかに固く、ポツっとしたところを指の腹で強く刺激した。

 

「ンっ、あんっぁっあっ……そこ、ダメ……です!」

「そんな顔はしてないけどねぇ」

 

 慌ててエリーは両手で顔を覆い隠す。残念。

 蕩けさせた目や、弛んだ口元は、俺の手でそうなっていると思うと、とっても愛らしくてずっと見ていたかったのだが。

 まあ今日はいいや。あまりいじめるのもよくない。

 手遅れな措置を取ろうとするエリーをこっそり可愛がるくらいですませておこう。

 

 左手はそのままエリーの内側を擦り、右手で外側を責める。エリーの反応が大きくなってきて、俺の指から逃れようと机の上でもがく。

 うねるエリーの腰がエロくて、早く挿入させろと俺の股間がはち切れんばかりに膨らんでいた。まだだ、まだ我慢、と、その情動を抑えて、愛撫の責めを強める。

 

「あっ、あっ、あっ……ん、あぁんっ、ふっ……あっ、ぁぁああああっっ!」

 

 ガクガクと腰を震わせ、膣壁に俺の指が圧迫される。どっとさらに溢れてきた愛液の匂いが漂ってきた。

 そのまま震えるエリーへの愛撫を続ける。

 

「ふぁっ──アっあぁっ! ……ん、くっあぁんっ! ひっ、光……さん! イって──イってます……からっ、あぁっ! て、手……とめ……ふぁぁぁっっ!!」

 

 長く続いた絶頂の波が終わるまで、エリーの制止を無視して愛撫は続行した。

 しばらく逝き続けたエリーの痙攣が止まるのを確認してから指をとめ、引き留めようと掴んでくるエリーの中から抜く。

 とろとろの液にまみれた指を咥えると、エリーの味がした。

 

「はっ……はっ……はっ……んっ、はぁ、ぁぁ」

 

 一物をエリーの膣にあてがう。「いれるよ」と声をかけたが、エリーからは荒い息の音しか返ってくることはない。

 仕方がないのでエリーの細い腰を掴み、俺の物をゆっくりと挿入していった。

 

「……っ! んん、あぁんっ!」

 

 熱い液体と肉を掻き分けて、肉棒を突き立てる。回数をこなすごとに俺の形に合わさっていっているのか、前回よりもしっかりと絡み付いてくる。

 ゆっくりと腰を引いて、ズン、と勢いよくつきこんだ。腰と腰とが打ち合って大きな音を立てた。

 

 もう幾度と重ねた体だ。遠慮なく深くまで抽送する。

 俺の物に突かれ慣れたエリーの身体は、腰を振るたびにビクンと跳ねて、より一層きつく棒を締め上げる。

 

「んん~っ……あっ、はふっ、あっ……あぁぁんっ! 光さん……そこっ、気持ち……いいっ!」

 

 エリーが求める箇所に狙いを定めて、重点的に攻撃する。

 結合部は泡立ち、激しいピストンによってしぶきが飛び散っていた。腰が燃え尽きそうなほどの快感が俺を襲う。

 ケツに力を入れて、射精感をこらえ、限界までピストン運動を続行する。

 

「あっ、あっ、あんっ……はっ、ふぅんっ! 私のなかで、あんっ……膨ら、んでっ────あっ、ぁあああ、んあぁぁぁぁっっ!! ……あっ、はっ、はっ」

 

 ひときわ強く突き、一物を抜いてエリーの胸に向けた。

 どくんどくん。

 と俺から排出された汚れた白色が、エリーのきれいな白色を汚染する。

 射精後の疲労感で荒れた息を整えつつ、淫靡な姿になったエリーを眺める。いつみてもやはり、こうして乱れた女体は、なんというか征服感を満たされる。

 

 エリーはゼリー状の精液を指で掬って、口に運ぶ。それで咀嚼してから飲み込んでいた。

 

「ほら、拭くよ」

「はい」

 

 されるがままのエリーからティッシュで精液を取って、ウェットティッシュで拭く。で、ゴミはビニール袋に入れて持ち帰る。机や床も拭いて、と。

 なんか、手慣れてきたな。この後片付け。

 

「っと。そういや許してもらうのが目的だっけ。どう、エリー?満足した」

「……えっと……もう、ちょっと……シテください」

「ははは、欲しがりさんめー。じゃ、場所変えて、だな。いい加減ここを借りていられる期限が来そうだしさ」

 

 再度部屋を軽く見渡して、俺たちは連れだって教室を出た。

 

「なにしてんの?」

 

 廊下を歩いていると、なんかエリーが制服の襟を引っ張って、そこに顔を埋めていた。

 

「光さんの……匂いがします……」

「汚物は消毒だー」

「きゃー」

 

 言いながらパタパターっと手で扇いでやる。

 このまま鍵を返しにいって大丈夫かな。エリーも俺も。



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アダムの涙
13話


1.5を一通りプレイし終えた、と思ったらG4モードなんてのがあった件。
これはこれでなかなか面白いですね。

せっかくなので1.5のストーリー準拠にしました。
プレイ前に書いた黄金鏡も気が向いたら加筆します。あっちはそこまで変化ないのですが。


 いつものようにアンリに怒られる可能性に怯えながら会長室に向かい、そのままダッシュで事務所に駆け戻った。

 

「大変です、先生!」

 

 と、先頭で乗り込んだシャロが叫んだ。

 

「シャーロック? それにみんなも……大変って?」

「事件だよ、小林」

「事件……!?」

 

 呼び出す時に用件を伝えない、というアンリのお家芸により、今回もまた事前知識無しでいきなり知らされた事件だ。

 

「今日、学院に手紙がきて! それが、すごい手紙で!! だからもう大変なんです!!」

「ダメよシャロ! ちゃんと説明しないと!」

「あ、そうですね! ちゃんと説明ですね!」

「そう! まずは落ち着いて!」

「はい! あたし、落ちつきます!」

「深呼吸よ! 深呼吸がいいわ!」

「わかりました! 深呼吸ですね!」

 

 落ち着きのない奴らである。絶賛テンパり中のコーデリアとシャロが本当に深呼吸を始めてしまったので、その隙に俺が話すことにした。

 

「怪盗からの予告状が届いたんだよ」

「予告状!?」

「ええ、そうですわ」

 

 どうやら歩いてついてきていたらしいアンリが部屋に入ってくる。

 

「ごきげんよう、小林さん。今朝、これが学院に届けられました」

 

 そう言ってアンリが差し出したのは、白地に赤で模様の入った封筒だ。紙が入っているにしては厚く、かくばっている。

 

「これは……ボイスメッセージカード」

 

 予告状を受け取ったオペラが起動すると、電子音が鳴って、記録されたメッセージが流れ始めた。

 

『未熟なるあどけなきレディたちにこの予告状を届けよう……』

 

 どうやらこいつには俺とオペラは見えていないらしい。

 

『僕は怪盗帝国のナイト……エレガンツにしてパーフェクツたる……怪盗トゥエンティ! 今宵零時! イン・ザ・ミッドナイト! 奇跡をお見せしよう! ステージはランドマークタワー最上階! 

 主演、怪盗トゥエンティ! 助演、怪盗トゥエンティ! 友情出演、怪盗トゥエンティ!』

 

 ちょっと笑いそうになった。

 オペラやコーデリアたちが、深刻な表情でこんなのを聞いているのがなおさら笑えてくる。

 

『そして僕に奪われる宝……その名前は……そう! かつて幾度も怪盗と探偵が奪い合ったという魔性の宝石……アダムの涙!』

 

 アダムの涙。

 その名前を聞いたオペラが顔をこわばらせる。俺も腿をつねって、顔をこわばらせる。

 

「アダムの涙。小林さんにとっては無視できない名前と思いますが」

「え? え?」

「……! アダムの涙って……あのアダムの涙じゃ」

「あ……!」

 

 探偵として活動していた頃のオペラを知るコーデリアとエリーが、それの正体に気付き声をあげた。

 

「どういうこと? アダムの涙って一体なに?」

 

 ネロが聞いた。神妙にアンリが解説をする。

 

 アダムの涙はレアメタルの一種、だと推測されている宝石だ。

 というのも代々の持ち主がその美しさがわずかでも損なわれることを恐れ、今日まで詳しい鑑定が行われることがなかったからである。

 しかし美しい。とにかく美しい宝石だ。

 多くの者がこの宝石を求めた。

 

 例えば五年前の怪盗Lのように。

 

「アダムの涙を守るのと引き換えに僕は……探偵としての力をなくした」

 

 つまるところ、怪盗Lが最後にオペラと奪い合った宝石である。

 しぃん、と重たい沈黙がおりた。トイズを失うという一大事、直接の原因は爆発でも、間接的に、爆発が起きたのはアダムの涙を巡ってのことだ。

 

「守りましょう!」

 

 シャロが言った。胸に手をあて、ぐいと体を前に出す。やる気とかなんとかに目が燃えていた。

 

「先生が守った宝石をあたしたちで守りたいです!」

 

 コーデリアたちもシャロと同じように意思をみなぎらせる。強く決意を言葉にした。

 

「小林さん。予告状が学院に届いた以上、無視するわけにはいきません。彼女たちと一緒に事件を阻止してください」

 

 オペラは黙りこむ。この一件について、思いを巡らせているようだった。

 俺たちは静かにオペラを見守る。数秒して、ゆっくりとオペラが口を開いた。

 

「わかりました。僕たちにできることがあるなら」

「よろしくお願いします、小林さん」

 

 軽く頭を下げて、アンリが部屋を出ていく。

 

「がんばりましょう、先生!」

「それじゃとりあえず、ランドマークタワーに行く?」

「そうね、現場の視察をしなきゃ」

「はい……」

 

 意気揚々と事務所をたつ彼女らを、オペラは心配そうに見つめていた。

 

 ほんと、この事件がトゥエンティ担当でよかったよ。

 これがもっとシリアスな奴だったら、雰囲気に耐えられないところだった。シリアスな奴って誰だか思い当たらないけど。

 

 ■◆■

 

 偵都ヨコハマが誇る超高層ビル、ランドマークタワー。

 その周りには大勢の人が集まっていた。彼らの中には大きなカメラを構えている人もいて、マスコミ関係であることがうかがえる。

 

「なんつーかさ、ザ・自己主張! って感じだよね」

「え? なにがだい」

「いや、あれよあれ」

 

 タワー屋上を指差す。そこからはアドバルーンが飛ばされていて、電子掲示板のように光る文字でこう記されていた。

 

『今宵零時、怪盗トゥエンティ参上!』

 

 俺が探偵じゃなくて怪盗になってたら、あんなのもやってたのかな。いや、やらねぇだろうな。

 

「ここにも怪盗からの予告が……」

「どうりで賑やかなわけだ」

 

 それを見たシャロとネロが、やはり真面目な顔で言う。

 こっちは一人で笑ってはいけないをやっているというのに。

 タワーの正面入り口は完全に人で埋まっていたので、オペラの提案で裏口に回ることにする。その最中にどこからか猫の鳴き声が聞こえた。

 

「あそこにいる! ちょっと待ってて!」

 

 たちまちネロが猫の居場所を突き止め、駆け寄った。

 その子猫はネロが近寄っても逃げることはなく、ネロに撫でられていた。少ししてネロが戻ってくる。

 

「小林、あの子どうもはぐれたみたいなんだ」

「え? そんなことがわかるのかい?」

「うん、動物も微弱な電気を出すからね。トイズでなんとなく読み取れる」

「それじゃキミは動物と会話できるってこと?」

「そこまでは無理無理。でも波長がそういうパターンっぽい」

 

 動物の感情を読み取るのは、人間に対してそうするよりも簡単だ。シンプルでわかりやすい。

 なので不安がっているのが、俺にもわかった。それが迷子かどうかを判断できているのは、ネロの経験の賜物だろう。

 

「お母さんが近くにいるかもしれないから、ちょっと探してくるよ」

「え?」

「みんな先に行ってて、すぐ追い付くから」

「手伝おうかー」

「大丈夫ー」

 

 ターっと子猫を抱えてネロが走っていく。

 マスコミや野次馬は時間とともにどんどん増えていっていた。混雑を避けるため、ひとまずネロを置いて裏口に向かう。

 エレベーターを使って上階へと登り、一般展示室に入った。

 

「動物がたくさん」

「剥製……?」

「うん、そうみたいだ」

 

 シャロとエリーが言うように、そこは多くの剥製が飾られていた。

 入って正面に大きな虎、左右には鷹や鹿やらが置いてある。そういやこんな場所だった。

 

「あ~っ! あんたたち!」

 

 恒例行事とばかりにココロちゃんが金切り声をあげながら迫ってきた。

 

「何しに来たのよ!?」

「ココロちゃん!」

「ココロちゃんって言うな!」

 

 このやり取りをみると、ここが怪盗事件の現場なんだなぁ、って感じられるよ。

 後から続いてG4の残りのメンバーが合流する。

 

 あれ、平乃がいない。俺の記憶違いかな、この場面にはちゃんといたと思うんだけど。

 影が薄くて見落としてるってわけじゃなさそうだし。動向は……聞かなくていいか。女性が席外してる理由なんだし、そのほうがいいだろう。

 

 俺が平乃を探している間にオペラと神津警視が軽く情報を交換していた。

 それから先に来ていた警察組案内のもと奥の特別展示室に入る。

 

「わぁ、すごい……」

 

 シャロが感嘆の声をあげた。実際、実物のアダムの涙はそれくらいに美しい物だった。

 パーティションで区切られた台座の上に、ガラスケースを被せられた宝石が備えられている。それは燦々と赤く輝いていた。

 題名不要の美しさだ。俺も欲しいな、これ。

 

「へ~、これがアダムの涙なんだ」

「ネロ!」

「ただいま、小林」

 

 ニュッと背後からネロが現れた。

 

「猫ちゃんのお母さん、見つかった?」

「うん、すぐそばにいたよ」

「よかった」

 

 シャロが子猫の安否を聞いて、ネロが答える。

 

「それよりすごいよね、この宝石。これを小林が守ったわけでしょ?」

「あ……あぁ」

「いったい、いくらぐらいするんだろ?」

「何十億つまれても売る気にはならないわ」

「んへ?」

 

 変な声が出た。ちょっと、もといとんでもなく予想外の声とセリフだった。

 いやセリフは合っているんだけど。

 

「また人が増えたの?」

「あなたは?」

「名前をたずねるときは、まず名乗るのが礼儀でしょう?」

 

 よく聞くけど、実際教わったことはないことを言いながら現れたのは、長い金髪にカチューシャをつけた、化粧の厚い女性。

 

「あ、すみません。僕は小林オペラ。そしてこの子たちはホームズ探偵学院の生徒です」

「あら、探偵さんなの? ずいぶんかわいらしいのね。私は宝田エリカ。このアダムの涙の所有者よ」

 

 の変装をした平乃だった。

 なるほど見ないと思ったら奥で変装してたのかぁ~。なるほどねぇ~。ゴスロリ趣味の中にコスプレも入ってたのかな? 

 じゃなくて。

 え、なにしてんのこいつ。

 

 ミルキィのみんなが予告状のことを話して、警備に参加させてもらえるよう交渉していたのだが、そっちに加われないくらいに衝撃だった。

 後で平乃に話聞こう。今回は相手的に、まだツッコまないほうがよさそうだ。

 

「やった~っ! 一緒にがんばろうね!」

 

 サクッと許可を得ることに成功し、シャロが喜びを全面に押し出しながらココロちゃんに飛び付き、そして避けられていた。

 

「誰があんたなんかと! 指でもくわえて見てればいいのよ!」

「え~くわえるならカニカマがいいなぁ」

「なんでもいいわ!」

「ココロちゃんも食べる?」

「いらな~い!! それにココロちゃんって言うなぁ~っ!!」

 

 シャロ、お前カマボコだけじゃなくて、カニカマも持ち歩いてんのか。

 

「小衣……押されてない?」

「そう? 楽しそうじゃん」

「はぁ……元気のいい子たちね」

 

 いつも以上にツッコミ所だらけな状況。俺はもう放置することにした。

 

「どちらが怪盗を捕まえるか……このゲーム、楽しくなりそうだな」

 

 とか神津警視がオペラに言っていた。

 こっちはちゃんと正常なのな。

 

 ■◆■

 

 いろいろありつつも警備を始めることになる。

 のだが、俺の集中力は途切れ途切れだった。勉強中に他事が頭をよぎるように、宝田平乃が脳内で荒れ狂っていた。

 

 平乃のことが頭から離れない、つまりこれは、恋。

 でもその理屈だと、トゥエンティの予告状が頭の中でリフレインしている間、俺はトゥエンティに恋していることになってしまうので、これは勘違いだろう。

 

「それにしてもすごい数の剥製ね」

「んー、そうだな」

 

 博物館と言っても遜色ないくらいの数だ。本物の宝田さんの相当なこだわりが見える。

 

「本物みたい……動き出しそう」

「シャロ、やめて……怖い……」

「あ、ごめんなさい、えへへ」

 

 思い思いに剥製を見ているなか、ネロは厳しい視線でそれらを見つめていた。

 

「でも、あんまり感心しないな。こういう趣味は」

「そう思う!?」

 

 オペラのセリフにネロが食い付く。

 

「小林もそう思うの!? ねぇ!?」

「あ、ああ、思うけど……どうしたんだい、急に?」

「酷いでしょ!? こんなの残酷だよね!?」

「うん……そうだね」

「でしょ!? 人のやることじゃない!」

 

 人しかやらないことなら、むしろ人間らしいのでは。

 キレられそうな屁理屈を口には出さずにこねる。

 

 人嫌いで動物と暮らしてきたネロにとっては、見るに堪えないものだったのだろう。

 俺も人の剥製で作られた博物館なんてものがあったら、直視することはできない。

 激情に駆られているネロの心に、目が焼かれるような気分だった。

 

 そして金属のヘラを取り出したネロが、近くにあったコンソールに駆けよって、それにヘラを突き刺す。

 

「は?」

「おいおい、トイズなんて使っていったい」

 

 ──ピー

 コンソールから、警報のような音が発された。

 あの、ネロさん? 

 

「なんだ、けっこうカタいな」

「カタいって、なにをしてるんだキミは!?」

「見ればわかるでしょ。セキュリティにハッキングしてるんだ。剥製なんて、ずぶ濡れにしてやる」

 

 脇から腕を差し込みネロの身体を持ち上げて、コンソールから引き剥がした。

 

「なにするんだよ!?」

「落ち着けって、ネロ。それは悪いことだろ」

「動物の剥製を、あんなものを作るのは悪いことじゃないって言うの!」

「それはそれ、これはこれだ。相手が悪いからって、自分も悪いことをしていい理由にはならない。いいかネロ」

 

 諭すように、ゆっくりと、はっきりとネロに語った。

 

「悪いことは人目につかないようやるもんだろ。剥製をダメにしたいんなら、後でこっそりやろう」

「……うん、わかった」

「わからないでくれ! というかキミも! こっそりならやっていいってことにはならないからね!!」

「あーもう、オペラさんうるさい」

「ええっ!?」

 

 ネロをおろして、こっちを向かせる。それから彼女の肩に手を置いた。

 

「いいか、ネロ。とりあえず事実だけあげるから怒らず聞けよ」

「うん。なに?」

「剥製を濡らしてダメにしたら、何罪かは詳しくないけど、たぶん器物損壊とかだ。剥製はけっこう高いから、賠償するならかなりの金額になる」

 

 器物損壊に分類される、って部分が気にくわないようだが、おとなしく聞いてくれるようだ。

 

「で、バレなきゃこれがチャラになる」

「チャラにはならないから」

「それは冗談にしても、だ。復讐……それとも、敵討ちと呼ぶのが正しいかな。なんでもいいけど……たぶん後で買い直されるだけで、一時的な嫌がらせにしかならないこれを、トイズで悪事を働いた人ってレッテル貼られて、これから先を台無しにしてもやりたいっていうなら────まあ、手伝うよ」

「光……」

「どうしても許せないんなら、一緒に手を汚してやるよ」

「…………いや、もう大丈夫だよ」

「そう?」

「うん。気にくわないけど、我慢する」

「そっか。あ、警備の場所、剥製が見えないとこのほうがいいかな?」

「気使いすぎだってば。もう大丈夫って言ってるでしょ」

 

 スパンとネロに背中を叩かれる。

 

「ありがと」

「どういたしまして」

 

 足早に離れていくネロ。小さく手を振って見送る。

 

「一時はどうなることかと思ったよ。特に犯罪を助長するようなことを、光さんが言い出した辺りは」

「ははは、本気でやるとでも思った?」

 

 咎めるような様子のオペラに、笑って返す。

 

「俺は自己中だからね。あいつらのためにしてやれることなんて、一緒に地獄に落ちてやるくらいのものだよ」

「……やっぱり、わりと本気だっただろう、キミ?」

「さぁ、どうだろ。ネロはやらなかったわけだし、わかんないや」

 

 たぶん手伝ったと思う。

 それだけだ。実際起こらなかったことなんだから、想像するしかない。

 

「でも止めはしないってのは確信してる」

 

 拳をぐっと握りしめてかざし、オペラに宣言した。するとオペラはげんなりする。

 

「止めてくれよ」

「俺が納得できないことならね」

 

 これはオペラとは絶対に相容れない部分だろうから、会話を切り上げて警備に戻ることにした。

 原作どこいったんだ、てくらいの状況だけど、きちんと解決されるのかな。




皆さんも剥製って嫌いだったり、怖かったりしますか?
私は平気でしたね。むしろ動物園や水族館の生きているやつらのほうが怖かったです。


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14話

|ωΦ*)コソーリ・・・
... ヘ(;・_・)へ オトヲタテナイヨウニ


 ネロとのじゃれあいは警察の人たちには聞かれていなかったようである。

 内容が内容なだけに、あまり聞かせたいものではなかったし、俺自身、自分の発言を撤回するつもりもないので、面倒なことにならずにすんだと喜んでおこう。

 

 持ち場に戻ったネロは落ち着いているように見える。剥製への嫌悪がなくなることはないだろうが、しっかりと抑えられているようだった。

 コーデリアたちもネロを気にかけていて、チラチラとそちらに目を向けている。俺もネロのことは気になるが、大丈夫だと判断して事件に集中することにする。

 

 薄れつつある原作知識によると、宝田エリカはちゃんと本人がここに来ていて、なおかつ途中でトゥエンティに入れ替わられる、というキャラクターだったはずだ。

 名前も容姿もロクに覚えていなかったが、事件の大まかな流れのなかでの活躍と、あといくらかの発言は記憶にあった。

 確か『正式な探偵でもない奴らはあんま信用できないから、特別展示室に入るな』みたいなことを言って、ミルキィホームズを外に追い出したはず。

 なので今のうちに特別展示室を調べておかなければならない。

 

「つっても何調べりゃいいんだ」

 

 侵入経路、はそもそもすでに中にいるし、逃走経路もこの部屋からは普通に出入口を通って出ていく。

 あとはなんだろうか、アダムの涙を入れてるケースの強度とか、これ自体の警報やらはどうなってるのか、とかかな。

 いや、でもそれは聞けばいいことか。

 

 なんだろう。じきに追い出されるのに、追い出されても問題がない。

 助けて、ご先祖様。探偵らしい行動って、どういうものなんだ。

 

 仕方ないのでぶらぶらと、授業で習った気を付けるべきところを見て回る。そうこうしているうちに偉そうにココロちゃんがやってきた。

 

「ほら! あんたもさっさと出ていきなさいよ!」

「んー? なんの話?」

「あんたらのことが信用できないんだってさ。わかったらほら、早く特別展示室から出なさいよ!」

 

 シッシッと追い払うような仕草をするココロちゃん。

 

「教えてくれてありがと」

「むぐぐぅ」

 

 ナリは高校生でも、実際はその二倍くらい生きているのだ。小生意気なクソガキに煽られたくらいで過剰な反応をすることはない。

 心穏やかに特別展示室を出る。

 

「それじゃあたしたちはアダムの涙でも見に行こうかしら~? 誰かさんたちは入れない特別展示室に~」

 

 ムカつくなこのガキンチョ。また神津警視に怒られてしまえ。

 平乃以外のみんなが特別展示室に入っていく。平乃はまだ宝田エリカをやっているのだろうか。

 

 剥製ルームでの活動を余儀なくされたので、こちらでの調査と警備を始める。

 今回の事件においてゲーム内で集めた重要なファクターは、トゥエンティの正体に迫るものばかりだ。

 しかしトゥエンティはこの現場の中でまた別人に変装し直す、ということをしていない。そのため原作通りの調べ方をしても、証拠なんて見つからない。だってやってないから。

 あーもう、どうすりゃいいんだか。

 

 なんて考えていると突然──ガァーン! と大きな音が特別展示室のほうから響いてきた。

 

「今度は何だよっ!?」

 

 また、またなにかよくわからない事態が起きやがった。思わず叫んでしまう。

 しかし、何が起きたかはわからないが、どこで起きたかは明白だ。

 うろたえる神津警視たちを見て、今なら止められずに入れるだろうと判断した俺は、特別展示室を開き、踏みいる。

 

「アダムの涙がたくさん……」

 

 あとから来たシャロが呟いた。シャロの言うとおり、そこには大量の宝石もどきが転がっていた。

 

「でも色が違う……緑と黄色だけ……」

「怪盗の仕業?」

 

 エリーとコーデリアが言う。

 トゥエンティがこれらをばら蒔いたはずはない。トゥエンティさっきそこにいたし。それにこの状況に驚いていた。それが演技でないのは、俺のトイズからわかる。

 つまりこれは怪盗帝国の仕業ではないのだろう。しかし。

 

「こぉーらぁー!!」

 

 ココロちゃんの怒鳴り声で思考が中断される。

 おっとまずい。ココロちゃんお怒りの理由はわかっている。追い出される前にこっそりと偽物のアダムの涙をいくつかポケットに忍ばせておく。

 

「言われたばかりでしょ!? あんたたちはこの部屋には入れないの!」

「そんなぁ」

「そんなもこんなもな~い! さっさと出ていきなさいよっ!」

 

 そう言ってココロちゃんは俺たちをまたまた部屋から締め出す。

 ようやく戻ってきた平乃を特別展示室に押し込むと、ココロちゃんはべーっと舌をつき出して、部屋の扉を閉めた。

 

「どうしましょう……」

「どうしようもない。宝田さんが入るなって言う限りは」

 

 エリーの問にオペラが答える。

 

「目の前でこんなことが起きたのに? 特時捜査権限は?」

「今の時点ではあの偽物をばらまいたのが怪盗だと断定できないから無理かな」

「ちょっとちょっと! どう考えたって怪盗の仕業でしょ!」

「まあまあ落ち着いて、ネロ」

 

 トゥエンティの仕業じゃないのはわかっているし、その場にいなかったことからもおそらく平乃がやったんだと思う。

 思うが、だとしたらどういった理由があるのだろうか。

 

「さっきも言った通り、僕達は僕達にできることをしよう。なぜアダムの涙の偽物がばらまかれたのか、予告時間に怪盗はどう行動するつもりなのか。調べることはいくらでもあるはず」

 

 経験値が少なく、怪盗事件で探偵がないがしろにされる事態へ戸惑っているコーデリアたちをオペラが諭す。

 

 調べること、か。現状、事前知識が邪魔をしている。俺の知らない進み方をしているというのに、未だ当てになりそうもない記憶にすがる自分がいる。

 どうしたものか。

 みんなが散らばってあちらこちらで調査を始めるなか、ベンチに腰掛ける。

 

 本来の予定であれば、宝田さんを探して、彼女がいなくなっていることを指摘し、重要なファクターとする予定だった。

 しかし、宝田さんに変装しているのは平乃。これを指摘したときに、二人が同時に現れることがない、という事実のせいで、ないとは思うが推理を違え、トゥエンティに負けてしまうなんてことになりかねない。

 

「うぅむ」

 

 はてさてどうしたものか。

 偽の宝石を取り出して眺めてみる。チープなものだ。

 とはいえ数はそれなりに用意されていた。平乃の奴、こんなものいつ用意したんだ。今気づいて、今用意したって感じじゃないが。

 

「それは……特別展示室にばらまかれた偽物かい?」

「ん? あぁ、オペラさん。そうそう、さっきこっそりね」

「毎度なにかしら持っていくね、君は……」

「明智ちゃんが邪魔してくるからさ。きちんと調べようとするならこうしないと」

「それもそう……なのかな?」

 

 微妙に納得いっていないような返答だったが、少し考えてこの理由を飲み込んでくれる。

 それから一言前置きをして、オペラは宝石を取り出した。赤いもので、大量に散らばっていたのとは別物のようである。

 とはいえ大した輝きはない。これも偽物だ。

 

「本物と同じ色をした偽物があったんだ。特別展示室内は確認していないけれど、たぶんこれ一つだ」

「てことは外にあったのか」

「あぁ。扉の外に、他いくつかの偽物と一緒に散らばっていた」

 

 急いでいて気づかなかった。

 ん、いやでも扉閉まってたよな。なんで外に落ちてるんだ。

 室内に赤い偽物はおそらくない、というのには同意見だ。俺もエリーも見なかった。意図してこいつだけ色違いで、部屋の外に置いたんだろう。

 

「それとこいつにはFAKEと彫ってある」

「フェイク?」

 

 俺が持ってきた偽物を確認してみるものの、これらにはそんな彫り込みはない。

 

「偽物にフェイクと彫る理由なんてない。見分けも簡単につくしね。君はこれをどう考える」

「…………典型的なセリフになるけど……」

「聞かせてほしい」

「犯人はこの中にいる、ってありきたりすぎか」

「なるほど……根拠を聞かせてくれるかい?」

「俺らが特別展示室についたとき、扉は閉まっていた。つまりそれはわざと外に置かれたもの。でもそうする理由がない。全部室内にばらまけばいいだけなんだから」

 

 色も本物と違う色を用意する理由なんて、目くらましとして怪盗が使うなら存在しない。

 つまり一つだけある赤い偽物を目立たせるためのもの。そしてそこに文字が刻まれていたのであれば、こいつ自体に意味があると捉えるのが自然だ。

 

「だからまあ、探偵チームが特別展示室に入れないことを知っている誰かが、特別展示室の外にメッセージボトルとして置いた……ま、オペラさんが言うようにこれをやったのが怪盗だとは断定できないけど」

「いや参考になったよ。となると問題はこの文字にどんなメッセージが込められているか、だが……」

 

 言葉として口に出してみると、意外と考えはまとまるもので。

 なんとなくこの変化した事態のキモを掴んできた感覚がある。

 

「ありがとう。助かったよ」

「いやいや、協力しないとなんのためのチームなんだか」

「確かに、その通りだ。君も行き詰まったら迷わず相談してくれ」

「頼りにしてますよ〜っと」

 

 いつもの聞き込みに戻るオペラを見送る。

 んー、しかしもうオペラと話したことだし、これ俺の仕事終わったのでは。

 オペラも俺の推理に驚いた様子とかないし、うーむ。

 ぶっちゃけ俺達ミルキィホームズは怪盗追っかけるとき以外、休んでても問題出ない気がするなぁ。

 

 まあいいや。ポーズも兼ねて、好奇心を満たすために平乃に話を聞きに行こう。

 彼女の姿を探すと、平乃は展示室中央付近で調査をしているようだった。近寄って声をかける。

 

「ちょっといいか、平乃」

「はい? どうしたんですか光さん」

「えーと」

 

 一応潜入というかひっそりやってること、だよな。トゥエンティが見えないのを確認し、ついでに声を潜めて言う。

 

「宝田さんに変装してたことなんだけど」

「……その話はあちらで」

 

 平乃について展示室の外に移動する。平乃は少し警戒した様子でPDAを取り出した。

 

「どうかした?」

「ちょっと待っててくださいね。……え〜と」

 

 なにか調べ物をしているようで操作しているかと思えば、唐突に。

 

「平家伝説事件における犯人の名前は?」

「ごめん、普通に知らない」

「……っ! まさか偽物!」

「いや本物の知識不足。二重の意味で」

 

 どうも俺が変装であると疑っているようだった。

 

「あー、じゃあ俺らが連絡先を交換したのは○月☓日のラットの事件の時だ。時刻は十四時半くらい。仲の悪い奴らを置いて、情報交換をするため。あと敬語をやめたり、明智ちゃんに隠すようにも言った」

「怪盗ミストの事件は」

「○月▲日。近隣の交通状況を教えてもらった。あとで割り出した逃走ルートを教えた」

「では怪盗スニークの件は」

「それはG4到着前に終わったから絡んでないだろ」

 

 それからいくつか事件の話をした。それでようやく俺が変装ではなく、本物の浅見光であると信じてくれたらしく、疑ったことを謝られる。

 

「すみません、状況が状況なものでして」

「いいって。まああそこにトゥエンティいるんだから確認いらないとは思ったけど」

「変装しているのが一人とは限らないので」

「ああ、確かにね」

 

 俺はトゥエンティのトイズに他人の見た目を変える力はないと知っているが、そもそもトイズのことすら知らなければそうなるか。

 これは盲点だった。またバカを晒してしまったわ。恥ずかし。

 

「こほん。さておきいくつか確認したいんだけど」

「えぇ」

「まずあの警視は偽物。本物は入れ替わられてることに気づいて、平乃に協力を求めた。って予想なんだけど、あってる?」

「はい。建物の前で呼び止められて。先程の確認手段も警視のものです」

「そっかー」

 

 てことは同じように専門分野で質問された時に、平乃はちゃんと答えられたんだな。俺と違って。

 

「ところで光さんはどのように変装に気づかれたのですか。トゥエンティの変装は完璧です。私も警視本人に合うまでまったく疑っていませんでした。なにか見分けるコツがあるのでしたら、教えてくれませんか?」

「あー、それね。簡単だよ。ほら、本人より目が大きいじゃん」

「はい?」

「いや、あれ伊達メガネか、警視本人より度が低いメガネでしょ。だから本人より目が大きく見える」

「……はい?」

「平乃の変装は声かな。体格もあるけど、声かけられた時にはなんか察した」

「はぁ〜……なんというか、今後の変装の参考にはならなさそうな意見ですね」

「ははは、伊達や酔狂とはいえ探偵志望だからね」

 

 集中力を高めるのはお手の物。間違い探しの記録保持者だ。

 ミルキィのみんなとテレビでやってる間違い探しやる時、一番早く見つけられるってだけだけど。

 

「さて。今すぐ二人であいつに殴りかかる、ってのが最短で事件を解決できる方法だと思うが……」

「紛れ込んでいるのが一人とは限りませんからね」

「そうねぇ」

 

 原作知識は当てにならないが、トイズによる読心で他は本物だと確信できる。

 もちろんこんなのは話せない根拠であるし、ゴリ押しするほどこだわりもない。

 

 平乃が言うには神津警視も裏で動いているらしく、いいタイミングが来るまで待機したほうがいいとのことだった。

 それらの策はオペラが謎を解き明かすこと前提だった。つまり何も問題はないということだ。

 

 意味があるのか知らんが、一応別々に展示室に戻ることに決め、先に平乃に行ってもらった。

 壁にもたれて、一、二分待機する。

 変わった案件だったけれど、なんとか無事に終わりそうだ。と、ため息をつく。

 

「あら、光。一人でどうしたの?」

「ん? あれ、アンリ?」

 

 なんかアンリがいた。

 いつものにこやかな笑顔で、いつの間にかいた。

 

「ごきげんよう」

「おー、ごきげんよう。どうしたんだ?」

「少し近くまで立ち寄ったので挨拶を、と」

「そっか。謎はだいたい解けて、あと一歩ってとこだよ」

「そうですか。それは大したものです」

 

 しぃん、とアンリは押し黙る。

 真っ直ぐにこちらを見つめたまま静止して、それから言った。

 

「長谷川さんの変装を簡単に見破ったとか」

「あぁ、聞いてたんだ。そうだけど」

「例えば……私が変装をしたとして、光はそれを見破れますか?」

「言ったほうがいい?」

 

 ほとんど答えたようなものだ。

 アンリはうつむく。

 

「ふぅ……ままならないものですね」

「そう?」

「どうしますか?」「俺がどうするかってこと?」「はい」「特になにも」「私を見逃すというのですか」「最初に犯行予告見てからどんだけ経ってると思ってんの? なんかやるならもうやってるって」「……」

 

 正直、アンリと会うより前から知ってた原作の話だし、当たり前として受け入れていた。

 些細なことだと思っていたし、まあ気づいてない振りをずっと続けていれば問題ないだろう、ぐらいに考えていた。

 

「逆にどうして欲しいんだ?」

「私は……どうして欲しいのでしょう」

「罵倒しようか?」

「悲しくなるので嫌です」

「うん。俺もやりたくないわ。もう今まで通り、知らない振りするでいいんじゃない? 指摘したって誰も得しやしないだろ」

「いえ、探偵学院の生徒としてそれでよいのですか?」

「逆に聞くけど俺が正義とか善とかこだわる人間に見えんの?」

 

 自分で言うのもなんだが、俺はかなり社会正義とかその辺りには適当な人間じゃないか。

 

「ふふっ、確かに……私が好きになったのはそういう人でしたね」

「まったくだ。お互い面倒な相手に惚れたもんだよ」

 

 どちらからともなく軽く笑い合う。

 問題を後回しにしているだけとも言えるが、まあいいだろう。

 なんかあったら、えー、そうだったんだー、知らなかったー、びっくりー、とかやればいいかな。

 なんともならなくなるまで、だらだらと仲良くしていたいものだ。

 

 なんにも解決してないが、笑えばなんとなく状況が改善したような気がするもので、気分はちょっとすっきりした。

 

「ありがとう。少し楽になりました」

「こっちこそ。そうだ、声かけに来たんだろ。いってやってくれ、いろいろあって大変だろうから」

「そうですね。では……あっ」

 

 扉に手をかけたところで、アンリがこちらを振り返る。

 

「どした?」

 

 と、アンリに聞いてみると、彼女は不満げな顔をして、俺の頬を軽くつねった。

 

「また他の女の子と話してました」

「聞いてたんだろ、事件の話してたじゃん」

「む〜」

 

 なんかいつもより甘えてくるな。わざとらしく頬を膨らませて、これみよがしに私怒ってます、みたいにするアンリ。

 かわいい、脳が溶ける。はぁ〜、もうかわいい。これは正義だね。やっぱ正義にこだわる人間だったわ俺。

 頭を撫でていると、俺の頬から手が離れる。アンリを抱き寄せて軽くキスをする。

 

「俺の大変さは消えましたわ」

「くす、それはよかった。……んー……はい、私の大変さも消えました」

 

 ぎゅむーと俺の胸に顔を押し付けていたアンリが離れる。名残惜しい。

 

「んじゃま、引き続きがんばりますよっと」

「えぇ。私もこのあと用があるので、皆さんと話したらすぐに戻りますね」

「そっか。ファイト」

「そちらもがんばってくださいね」

 

 応援するのね、とかいうツッコミは今まで通りに心にしまって展示室に戻った。




またゆっくりと更新していきます。
もう人いないかな?


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15話※(ネロ)

久々のエロ回。
書き方結構忘れてました。なんとか形にはなったはず。


 時刻は零時に近づいてきた。

 特別展示室には神津警視、一般展示室にG4、俺たちはエレベーターホールと、警視の指示で警備の配置が決められる。

 もうここまで来たら、あとは野となれ山となれだ。

 

「怪盗はどこからくるんでしょう?」

「そんなの上から降りてくるか、下から昇ってくるかのどっちかでしょ」

「それ以外かも……」

「みんな、そろそろ時間よ」

「さてはて、どうなるかな」

 

 張り詰めた空気に、コーデリアたちの緊張した呼吸が伝わってくる。

 カチ、カチと秒針が刻まれてゆき、ちょうど零時のところで警報が鳴らされた。

 

「教官!? ひょっとしてアダムの涙が!?」

「ああ!」

 

 オペラを先頭に、俺たちは特別展示室を確認しに走る。

 途中の一般展示室にも異常はなし。G4を拾ってそのまま奥を目指した。

 

 特別展示室の窓は割れていて、展示台にはすでにアダムの涙はなく、警視は倒れていた。

 警視が言うには窓を破って侵入した怪盗にやられたらしい。怪盗は窓から外へ、下に逃げた、とも。

 警視の救護は後回しに怪盗を追いかける。

 

 どう動くべきか、どう動いても解決しそうだな。素直にオペラについていこう。

 一足遅れた俺の耳に、後ろの方からたぶん本物のほうの警視と平乃の会話が聞こえてきた。

 

「さぁ、最後の仕上げだ。もう一度変装しろ」

「え! もう一度!? このままじゃダメなんですか!?」

「そうだ、やはり暴露には華がないとな」

 

 警視に変装しているのは実は二人いて、片方が偽物役、もう片方が本物役なんじゃないだろうな。

 と思いつつも一方で、あぁ、これはオペラの友人だわ。とも感じた。根っこのとこが似た者同士だ、こいつら。

 

 ■◆■

 

 さて、オペラの指示で怪盗を下に追うのを途中でやめ、待ち構える。

 そしてゆうゆうとやってきた偽物の神津を呼び止めた。オペラはそいつに対して疑問点を提示する。

 

 事件をゲームに例えて、楽しくなりそうだと言ったこと。

 偽物のアダムの涙がばらまかれた時に激しく動揺していたこと。

 咲に命じてエレベーターを緊急時でも使えるよう再設定させたこと。

 予告直前に出張命令が出て、予告直後にそれが取り消されたこと。

 

 オペラが知る神津という男なら取らないであろう行動と、違和感のある事態を突きつける。

 概ね俺の知る通りの疑問点だ。

 

「僕が気づいたいくつかの疑問、その疑問を確信へと近づけるみんなが発見した重要なファクターがある! さぁ、聞かせてくれ! キミたちが見つけ出したものを!」

 

 普段落ち着いてるのにイベント事の時だけハイテンションになる系探偵のオペラさんである。

 テンションの落差に風邪ひきそう。さっきまで淡々と疑問点を並べてたくせに。たまについていけないこともあるが、今回は別だ。知ってる事件を、知ってる手順で解決するわけじゃないからな。

 

 シャロが挙げる重要なファクター。

 展示室にある双眼鏡の一つが固定されていることだった。覗くとNOTEの看板があり、Eの文字にはテープでバツ印。

 さらには双眼鏡が接着剤で、それも調査のほんの少し前、偽物騒ぎの前後辺りに固定されていた。

 

 ネロが挙げる重要なファクター。

 ばらまかれた偽物のアダムの涙には、一個だけ本物と同じ色の物があり、FAKEとわざわざ書かれていた。これには俺が特別展示室の外にそいつがあったことを付け加える。

 

 エリーが挙げる重要なファクター。

 ビル宛にEメールで届けられた予告状が、学園に届けられたものと内容が異なっていた。

 文末に『警備など無駄だ。諸君には手を引く事をおすすめする』とあった。怪盗らしさのないこのメールは、偽物騒ぎの直後に届いていた。

 

 コーデリアが挙げる重要なファクター。

 偽物騒ぎの直前、各所の監視カメラに人影が映っていた。全く映らないか、堂々と映るのがあるべき怪盗の姿。

 

 これらのことが偽物をばらまいたのが怪盗ではないことを示唆している。

 

「そしてメッセージを発信したのがいったい誰なのか……これが最も重要なポイントになる」

「お前ともあろう者が何を言っている? アダムの涙の偽物をばらまいたのが怪盗ではないだと? ならいったい誰の仕業だと言うんだ!? 実にくだらないぞ、小林!」

「そうかな?」

 

 オペラが呼びかけると、宝田さんに変装した平乃が出てきた。

 

「宝田さん……?」

「そう、オーナーである彼女なら偽物をばらまくことも、それが怪盗の仕業でないことを僕達に伝えるのもたやすい」

「あ〜なるほどね〜」

 

 と、ネロが納得の声をあげる。

 そのまま宝田さんのモノマネを続ける彼女の正体が平乃であることを、オペラがさらっと暴露した。ちなみに気づいた根拠は香水が同じだったから、らしい。

 そして平乃が内側からメッセージを発信するとともに、看板やEメールなど外側からメッセージを送った人物の存在を明かす。つまりは本物の神津警視のことだ。

 

「お前なら受け取ってくれると思ったぞ。俺からのメッセージ」

「あぁ、しっかりと受け取ったよ」

 

 ほーら、またそういうこと言うー。

 ココロちゃんに聞かれてたらまた面倒なことになってたぞ、絶対。

 

 しかしいつにも増してよくわからない事件だったな。トイズなんてものが絡んでくる以上、多分に憶測で話さなくちゃいけないところがあるのは仕方ないことではあるのだが。

 

 えぇと、つまりだ。

 

 アダムの涙の偽物をばらまくのを起点に、それが怪盗の仕業ではないということを遠回しに伝える細工を弄す。これは複数犯の可能性を考えた上での行いだろう。言葉に出して伝えるには、相手が悪い。こういったやり方でもオペラなら気づく、という信頼の上でのものだ。

 それで怪盗以外の何者かが、事件に絡んでいることをオペラに気づかせ、それが何者かを推理させる。おそらく先に宝田エリカが偽物であることに気がついて、そこから神津警視のことに感づいたってところか。

 

 オペラと神津警視の間で推理が完結してるせいで、コーデリアたちがワケワカメって顔をしている。

 仲良いのはわかったけど、二人の共通認識を省略するなよ。

 

「もう逃げられないぞ、観念しろ」

「ふふふふふ……エクセレント……。その通り、僕が怪盗トゥエンティさ」

「やけにあっさり認めるな」

「まぁ、君たちはよく頑張ったからね。褒めてあげるにやぶさかではないよ。しかし、それ以上に素晴らしいのは……そう! この僕!! どうしようもなくあふれるオーラを抑えきれないこの……僕の罪!!」

 

 一瞬で神津警視の姿から、いつものザ・怪盗と言わんばかりの白いタキシードにシルクハット、片眼鏡の格好になる。

 それはそれとして自分の腿をつねる。笑うな、笑うな。一応はアダムの涙。オペラのトイズが無くなる原因となった宝石を巡る事件だ。

 

「はじめましてというべきかな。そう! この僕が! 怪盗! トゥぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅエンティさ! OHhhhhh!! スぅぅリリぃぃぃングっ!!」

 

 笑いをこらえるのに必死でめっちゃ長い名乗りの間に殴りかかるの忘れてた。

 

「ああぁぁ──っ!!」

「わぁっ!」

「時間だ……ではレディたち。ステキな夜を……。グッド・ナイト!」

 

 走り去っていくトゥエンティ。呆気にとられるミルキィホームズ。

 オペラ談通りの冷静沈着な神津警視が、真剣な声音で怪盗を追えと叫ぶ。

 俺は腹を抱えて笑う。

 

「ヒィー、ハハハハハ!」

「みんな! 追うぞ!! って光さんも笑ってないで!!」

『はい!』

「くくく……はーい!」

 

 というわけでいつもの鬼ごっこが始まった。

 負けてもいい分気が楽だ。どうせアダムの涙はここで取り返しても、アルセーヌに盗み直されるだけだし。

 

 逃げるトゥエンティを追い回し、ネロの機転でなんとかアダムの涙を取り返す。

 原作ゲーム通りとはいえ、アダムの涙が高所から落とされるのは本気でヒヤッとする。特筆事項無し。今回もみんな頑張ってくれました。

 

 ■◆■

 

 寝起きざまにあくびをかます。窓の外を見やると真っ暗になっていた。

 あまりよくないとは知りつつ目をこする。トゥエンティの事件を解決した翌日、俺は細々とした後処理をこなしたあと、中断していた読書を再開した。

 みんな帰ってからも読み進めていたんだが、いくらか読んだところで疲れから寝てしまった。

 

「どこまで読んだんだこれ」

 

 閉じてしまっていた本をペラペラめくって、見覚えのないページを探す。そこに栞を挟んで本を抱えた。

 自分で思っているよりかは疲労が溜まっていたらしい。さっさと寮に戻って寝よう。重い頭を上げる。

 ふと、鈍い意識のところへ、ぱふぁと冷蔵庫を開ける音が流れてきた。トイズドーピングをかけ直しつつ確認しにゆくと、寝間着姿のネロがケーキを漁っていた。

 

「あ、おはよ」

「おはよ。あんま夜中に食べるもんじゃないぞ」

「まま、い〜じゃん。昨日の分と合わせて、二日分の糖分補給だよ」

「それもそうだな。じゃ俺もいただくかね」

 

 昼もさんざん食ってたじゃん、というツッコミは放棄した。

 事務所にはアンリセレクトの飲食物が大量に用意されていて、ほとんどはネロが食べている高級店のお菓子なんだけど、一部それ以外のものも混じっている。

 アンリが知る範囲の好みに合わせた品、つまりはコーデリアの紅茶だったり、オペラのコーヒーだったり、俺が好んで食べる甘味だったりだ。

 というわけで備品の一つ、ガリガ○君(ソーダ味)を冷凍室から取り出してかじる。

 

 人の金で食う飯はうまい、と思ったけど、学費か税金かで費用は賄われているから、わりと身銭だった。

 

「いやぁ、光は話がわかるね」

「だろ〜。みんなで空気読みも満点間違いなしだ」

「なにそれ?」

「ゲーム」

「へー、光もゲームやるんだ」

「たまにね」

 

 ソファに向かいながら、大きくかぶりつくと、中のかき氷が頭にキーンとくる。

 ネロも隣にきて、お高めのケーキをパクパクと食べ始める。

 

「ね、ちょっといい」

「なに?」

「ちょっとね。聞きたいことがあって」

 

 半分くらいケーキを消費したところでネロが訊いてくる。

 

「どうぞどうぞ」

「なんで探偵になろうと思ったの」

「……あー? んー?」

 

 そういえばこういう話はしたことなかったっけ。

 別に大した理由はない。コーデリアたちと違って、前世がどうとかを除けば、話すような事柄がないだけだ。

 

「強いて言うなら……モテたかったから、か?」

「うわ、不純!」

「失敬な。中坊だぞ、めっちゃ健全だろ」

「あはは、そうかもね。めちゃくちゃ叶ってよかったじゃん」

 

 からかうようにネロが俺の顔を覗き込んでくる。

 

「嬉しい限りだ」

「むぅ。つまんないの」

「ま、慣れたもんよ」

「何人にも手出してるくせに」

「……おぉう。そういうアレでしたか」

「いやいや〜、僕に隠し事はできないよ」

 

 ネロが手をグーパーとやる。触れれば心がわかる、そんなネロのトイズだ。

 俺もコーデリアもエリーもネロと、割と気にせず触れ合うもんだから、バレてるらしい。いやチームで行動してるんだから、トイズ無しでも必然と言えることだろうけど。

 

「バレテーラ」

「よくまあ会長にバレないね。あんだけいつもべったりで」

「んにゃ、もうそのへんのことは喧嘩しきった」

「なんでまだ続いてるんだか」

「ははは。知らん」

 

 あれこれ条件をつけられちゃあいるが、それを差し引いてもほんとなんで許されているのやら。

 

「よくないってのはわかってるんだけどね」

「じゃあやめればいいじゃん」

「んー。俺はさ、別に誰でもいいなんて思ってるわけでもないし、惚れっぽいわけでもないんだけど……ネロならわからない? 俺らの周りって魅力的な人多いんだよ」

「……確かに、ね。エリーもシャロも、あとコーデリアもすっごくいい人」

「ネロも十二分に魅力的だよ」

「う……あ、ありがと」

 

 赤くなるネロを見て、思わず笑いそうになった。

 よく人をからかってくるが、逆に攻められると弱い。ネロのかわいいところだ。

 

「笑うなよ」

「あはは、ネロかわいい」

「ぐぬぬぅ」

 

 うつむきがちに唸るネロ。顔を見られたくないんだろう。本当、どこを向いても魅力に溢れていて目が焼け付くような環境だ。

 フォークを握るネロの手に、俺の手を重ねる。びっくりした様子でネロが跳ね上がった。

 

「な、こういう電気信号は読んだことあるか」

「ちょ、光」

 

 顔を近づける。ネロは少しだけもがいたが、明確に逃げようとはしなかった。

 

「ん……」

 

 口と口との距離がなくなり、重なる。

 唇をくっつけ合わせるだけの軽いキス。なにか頭を支えるようなものもないので当てているだけだが、しっかりと柔らかいのがわかる。

 

「ん、ちゅっ……ふぅ、ん、んん~、ちゅ、ちゅぷ」

 

 はむはむと唇を貪るたびに、隙間から淫靡な音が漏れ出る。ネロは甘いケーキの味がした。

 舌を伸ばしてみると、それが触れたのを感じたのか、ネロが口を小さく開いて、俺を迎え入れる。そして探るように差し出されたネロの舌と触れた。

 

 ネロとのキスはアンリやコーデリア、エリーとはまた違った背徳感のような気持ちよさがあった。

 手前勝手な感想だが、ほんの少し前まで中学生だったからだろうか、どうにもずいぶんな年下を相手にしているような感覚がある。

 それがゆえの快感だろう。年下がいい、ってわけではないが、これはすごい。すごく熱い快楽だ。

 

「……んっ、ちゅぱっ……ふっふっ……ふぅ〜、はぁ〜」

 

 息継ぎが難しかったのか、唇を離したネロが荒く息を吸う。呼吸が整うのを待ちつつ頭を撫でていると、落ち着いたネロが言った。

 

「発情期の動物とか、こんな感じだよ」

「電気信号が?」

「そ」

「反応に困るなぁ。否定しづらいし」

「その……光は、エッチなこと、したいの?」

「したい。ネロだからしたいんだ。ネロと同じ顔して、同じように俺を拒まない他の誰かなんて願い下げだ。誰でもいいんだろとか思われたら困る」

 

 ケーキの皿を取り上げて、俺のアイスバーと一緒に机のほうにやる。これで邪魔なものはすべてなくなった。

 空いた両手をネロの頭と腰に回し、しっかりと抱き寄せて再びキスをする。一度目よりもネロは積極的に口を押し当て、舌を絡ませにくる。

 ネロも俺の後ろに手を回してしなだれかかる。そして俺の体で自慰をするように、押し付けた胸をゆっくりとすりつけてくる。

 

 薄い、というよりかは小さいおっぱい。

 身体の大きさに合わせた犯罪チックなボディだ。股間に血液が勢いよく流れ込んでいるのがわかる。

 俺の上に乗るようにしてひっついてきたネロの足に、ガッチガチになった俺の肉棒が当たった。

 ピクリと震えたネロが右手を俺の背から外して、俺の股間に添える。ズボンの上からその形を探り、優しく握って上下にこすってくれる。

 

「あぁ……気持ちいいよネロ」

 

 キスをやめてネロに囁く。

 ネロは俺の唇の端から垂れたよだれを口づけするようにすくい取った。

 

「ふふ〜ん、でしょ。それより」

「どうした?」

 

 服とズボンの中に手を突っ込んで、直にネロの背中と腰を触る。なめらかで、指先が引っかかるところがない。

 

「それ、いつもやってるの?」

「ん、どれのことだ」

「光のトイズでしょ。ところどころ歪んでる。あんま心に良くないし、やめたほうがいいんじゃないの?」

「あー、まぁこれが俺唯一の特技だしな」

「それはそうなんだけど。せっかくエッチなことしてるってのに、トイズで興奮抑えるのはないんじゃない」

「……自分で言うのもなんだけど、俺こんなんだからなぁ。トイズで理性確保しないとなにするかわからん」

 

 エリー相手の時なんかがいい例だ。

 みんな違ってみんないいけど、とりわけエリーは俺の股間を挑発するようなことをよくやるから、理性がよく切れる。

 できればお互いに楽しんでセックスがしたいし、あまり自分本位になりたくはない。

 

「だいじょーぶ。僕、動物好きだからさ。動物みたいに犯して?」

 

 すべて受け入れます、と言わんばかりに両手を広げて求愛するネロ。ゴクリと大きくつばを飲み込む。

 

「本当にいいのか、不慣れだろ」

「そう言われるとちょっと自信が……いやいや。光にもめいっぱい楽しんでもらわないとだしね」

「そ、そういうことなら──」

「ただ、僕初めてだから、僕も気持ちよくなれるくらいには手加減してくれると嬉しいかなーって」

「後ろ向きに検討する」

「きゃっ」

 

 ネロをソファに押し倒し、服をめくって胸を露出させる。

 成長過程のかすかな膨らみを両手で掴むと、簡単に全部手の中に隠れてしまった。もにゅもにゅと乳房を揉みしだき、その行為に満足したところで、もとい我慢できなくなって左の乳首に吸い付く。

 丹念に乳輪を舌で円を描くように何周もなぞり、ぽつんと突き出た突起を甘く食み、吸った。

 

「んっ……あんっ、もう。僕の胸なんて吸って……く、うぅん……楽しい、の?」

「もちろん」

 

 俺は大きく何度もうなずいた。

 風呂に入ったあとだからだろう、密着した鼻には石鹸の香りが漂ってくる。

 汗も落とされてしまっているし、実際人肌のなんとも言えない無味しかしない。それでも気分だけは花の蜜でも啜っているような心地だ。

 

 トイズを解いたことで普段の集中力はなく、いつものセックスに比べて五感が鈍い。

 しかしそれくらいのことなど軽く補ってしまえるありのままの興奮があった。

 

 右乳首を指でつまみ、痛みを与えないくらいにこねる。

 なにせ勝手の違う愛撫だ、やりすぎないかという不安が頭の片隅によぎった。

 ネロが俺の頭を抱きしめ、髪を梳く。

 

「あっ、あん……光ぅ、気持ち、いいっよぉ……だから、もっとしてぇ」

 

 ネロのイメージからかけ離れた甘い懇願に、真っピンクどころかどす黒い獣欲に脳が満たされる。

 乳への愛撫は止めないままに右手をネロのズボンに差し込んだ。興奮で定まらない手で探り、パンツの中に潜り込ませて神聖なワレメに指を突き入れる。

 

 指一本がギリギリ入る程度に小さい膣。

 理屈では子供を産めるにしても、まだ性交渉をやるには幼い肢体。

 しかし溢れるトロトロの愛液と、指を捕らえて離さない膣襞が俺に続きを促す。

 ネロの内側と、弄ってほしいとばかりに主張するクリトリスを指の腹でしつこく刺激する。

 

「ん、んっ、んん〜っっ……ふぁっ、く、くふぅっ、ん、んむ、……っ、ふっ、ふぁ、あぁんっっ!」

 

 くぐもった喘ぎ声が降ってくる。口を覆っているんだろう。時々抑えきれずに放たれる嬌声が耳をくすぐる。

 穴から指を引き抜けば、ネロがビクンと震える。俺の手はテラテラと粘性のある液体にまみれていた。

 

「こんだけ濡れてりゃ大丈夫だろ」

 

 俺はズボンを脱ぎ捨て、屹立する肉棒を晒す。血液が溜まって張り詰め、太く血管が浮き出ている。

 

「うわぁ……直に見るとすっごい。こんなのほんとに入るの?」

 

 言いながらネロが俺の竿を撫でる。先端からは我慢汁が流れ出ていて、ネロはそれを親指と人差し指の間ですり合わせる。

 

「へー、男の人も濡れるんだ」

「ここまでじゃないけどな」

「うっ……そ、そういうのいいって」

 

 愛液まみれの手を見せつけると、ネロは顔を赤らめて目をそらす。からかうように笑うと、ますます顔が赤くなる。

 

「そうだな。本題はこっち」

 

 ネロのズボンに指を引っ掛けて、クイクイと引っ張る。見え隠れする下腹部が輝かしい。

 俺の催促を受けてネロは自ら、一枚ずつ衣服を取り去り、裸体を見せつける。

 ほどよく日に焼けた健康的な身体の放つエロスには、ネロらしさがよく現れていると言えるだろう。お腹の辺りから腰にかけて手を這わしてみる。

 

「はぁ……綺麗だよ、ネロ」

「あはは、ありがと。光もカッコいいよ」

 

 言いながら腹筋をなぞるネロ。指も言葉もなんだかくすぐったい。

 

「はいネロ立って」

「?」

 

 言って手を引く。不思議そうにしながらもネロは立ち上がる。

 

「じゃあソファに手突いて、お尻こっち向けて」

「後ろからのほうが好きなの?」

「動物みたいだろ〜」

 

 手荷物にいつも準備しているコンドームを装着する。なんだかネロが呆れているようだが、おいておこう。

 ネロは指示通りの体勢をとり、一物をねだるように尻を上げる。充血した陰唇が男を誘うようにうごめき、潤滑液を垂れ流す。

 

「それじゃいくぞ」

「……う、ん」

 

 突いた手にギュッと力が入っているのが見えた。

 ネロの腰をしっかりと掴み、棒を穴にあてがう。亀頭が熱くぬめったものに包まれる。

 ぐいっと肉をかき分けチンコを捩じ込む。侵入した先端はネロの膣に万力のように、痛いくらいに締め上げられる。

 

「んんぅ〜っ! あぁっ!」

 

 少し進んだだけでネロが悲鳴のような声を出す。

 

「大丈夫か?」

「ふっ、ふっ、はぁ……どう? 挿入った?」

「先っぽは」

「嘘?!」

「まぁゆっくり慣らしていこう」

 

 今日のところは挿入まではせずに素股だけして終わりにしたほうがよさそうだ。

 と、考えていたのだが、ネロが腰を押しつけてくる。

 

「ネロ、無理すんなって。痛いだろ」

「だ、大丈夫だって……僕がちゃんと最後までやりたいの」

「時間ある?」

「たぶん」

「じゃ時間かけてほぐそう」

 

 ネロにこっちを向かせてキスをする。

 腰を引いて一物を抜き、ネロのびらびらにすりつける。これはこれで気持ちいい。

 

「はぁあ……ふぅ〜、ふぅ〜……」

「力抜いて」

「うん……これ気持ちいいね」

「あ、太ももで挟んでくれない?」

「へんた〜い」

 

 引き締まった太ももが両側から俺の肉棒を包み込む。ヘコヘコと腰を前後させるたびにスラッとした両足を一番敏感な部分で感じられる。

 ただゴムが邪魔だった。どうせまだ挿入はしないんだし外す。

 薄いゴム一枚分の差は結構なもので、数秒前と比較しても格段の快楽に襲われる。射精してしまわないようピストンの速度を落とす。

 

 荒い息を吐きながら抽挿していると、ネロがにんまりと笑った。

 そして太ももに収まりきらなかった亀頭をさする。

 

「ちょっ、出ちゃうって」

「一回出したら小さくなって入るんじゃないかなーなんて」

「このぅ」

 

 ネロへの愛撫を続けながら定期的に肉棒で秘裂への挿入を試みた。

 回数を重ねるたびにほぐれていくネロのあそこも、とうとう俺の棒を咥え込めそうなところまでになる。逸る心を抑え、ゴムをつけ直す。

 入れやすいようにネロには足を開かせ、腰を掴み、狙いを付ける。

 

「お待ちかねの本番だ、準備はいい?」

「もちろん……きて」

 

 腰を押し進めると、やはり小さな膣はまだまだ狭く、万全ではない。

 

「あっ、あぁっっ! んあっ! んっ、く、うぅ〜っ、あんっ! ──っ、ぅ〜」

 

 もがくネロを押さえつけ、強引に挿入を行う。

 前戯の中で溢れた愛液でも足りないほどの圧力がかかり、なかなか最奥まではたどり着けない。

 俺はネロを抱きしめ、一度肉棒を膣のギリギリまで抜き、勢いをつけてズドンと突きこんだ。

 

「〜〜〜っっ!! くっ、うっあぁぁああああっ! あっ、かふっ、あっ、はっ、はっ、はっ……はっ……。ぜ、全部……はいっ、た?」

「入ったよ。よくがんばったな」

「へへへ、僕のあそこ、気持ちいい?」

「熱くてキツくて、溶けそうなくらい最高だ」

「でしょ〜。あ、でも動くのはもうちょっと待っててくれる?」

「もちろん。苦しくなくなったら教えて」

 

 ネロの頭を撫で、うなじに口づける。

 深呼吸に合わせて膣が蠕動し、一物にきゅっきゅっといじらしくまとわりつく。

 ふとネロのお腹を触ってみると、ぽっこりと俺の肉棒の形が浮き上がっていた。

 

「光……もういけそう、かも」

「すげぇ曖昧だなぁ。始めたら止まれないぞ、俺は」

 

 ネロが軽くキスをする。

 

「これでもう平気」

「あぁもう、ほんとかわいいなぁ」

 

 許可も降りたことだし、さっそく腰を振ることにする。待ち望んだ瞬間だ。どれくらい焦らされたことだろうか。今か今かと睾丸で発射の時を待つ精液がぐつぐつと煮立っているのがわかる。

 パンッ! パンッ! と勢いづいた腰がネロの桃尻で打ち鳴らされる。

 

「ふぁっ! あっ、あっ、あっ、あっあぁんっ! ひ、光っ、激し、すぎぃ、あ゛あ゛っっ」

 

 肘を折り、ソファに突っ伏すネロ。上体が下がったことで比例して秘裂が少し上を向き、ピストンがさらにしやすくなる。

 もはや相手を気遣う余裕もない。突くたびに震えるネロの膣に、自分の快楽以外のことが考えられなくなる。

 

「んぐ、くふ、あっ……はぁんっ! 光のがっ、僕のお腹の中、ぐちゃぐちゃにかき回してるっ。気持ち、いいのが! いっぱい、来て、るぅ!」

 

 コツコツと亀頭に当たる硬いものは子宮口だろうか。

 奥も奥、最奥にまで俺の汚い欲棒は届いている。そこには新雪を踏み荒らす悪意のような愉しさがあった。

 

「あ゛ーっあ゛ーっ! あっ、あんっ! や、やぁっ! ンあぁあああっっ!! 壊れりゅ、僕のあそこ壊れっ、ちゃうぅ!」

 

 ネロの身体は俺の男根を膣内に留めおこうとするように締まり、抜こうとすると掴み、押し込むとさらに奥へと誘う。

 うごめく襞は子胤を搾り取らんとばかりに男根をもてなし、俺の射精感を煽る。

 視界の端ではずっと光が弾けていた。

 

「こんにゃのっ、馬鹿に、なるぅ!」

「一緒に馬鹿になろう! 射精すぞ!」

「イクっ、イクっ! 僕もイっちゃう、あっ、あぁァァァあああっっ〜〜!! あぁっっ、ァああァァアアアッッ!!」

 

 ドクッ、ドクッ、ドクン! 

 大きく腰が震え、汚濁の塊をネロの中で吐き出す。白濁液の排泄は一度ではとまらず、行為の最中で生産され続けたものすべて出し尽くそうと何度も痙攣しては、どっぷりと放出した。

 体の中の膿を全部掻き出したみたいな解放感。

 絶頂したネロの膣痙攣は、その絞りカスまでもまとめて扱き出していく。

 

「あっ……あんっ」

 

 チンコを抜くと、支えを失ったネロが床にへたり込んだ。

 ゴムには水風船のように白濁が溜まり、重たい。俺も座り、ネロを抱き寄せる。

 ネロはぐったりと体重を俺に預け、疲れた笑顔を向ける。

 

「セックスってすごい。光がハマるのもわかるよ」

「だろ〜。またやろうな。開発が進めばそれだけ気持ちよくなれる」

「僕は今からでも構わないよ」

「疲労マックスだし、また今度ね」

「むぅ……他の娘にかまけて僕との約束忘れないでよね」

「忘れねーよ」

 

 ネロの頬にキスをする。ネロは身体をこっちに回転させ、向かい合わせになって抱きついてきた。

 

「これ、好き」

「ハグが?」

「ん」

「ならいくらでも抱きしめるよ」

「んぅ〜……そだ、セックスってこれで終わり? 光はなにかまだしてほしいことある?」

「あるある。お掃除フェラしてほしい」

「なにそれ?」

「舐めて綺麗にしてってこと」

「えー、これを? なんか変な臭いする」

「だめ?」

「んーん。いいよ……ちゅっ、ちゅぷ。んむ、んっ、れろれろ……ちゅぱっちゅぽんっ……わっ、こうやっておっきくなるんだ。……もっかい」

「回数控えないと、俺死んじゃう」




ネロ「あー!ガリ○リ君が溶けて僕のケーキが!」

 当初はここでネロが光のトイズが人にも使えることに気づく、みたいなことをやりたかったんですけど
 それをやるとなるときっかけは光がネロの心を読めていることしかなく、似たような境遇のネロなら気づいても言わないんじゃないかな、という妄想。


 過去最長なのに動物愛護とか、正義感とか、その辺の雑談は削った後なんて状態。まさか私が一話でこれだけ書く日がくるとは。


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呪われし魔剣
16話


お久しぶりです

無限に時間がかかりそうだったので短いけれど投稿しておきます


「それでこの子が電話で話したリクくん……なのだけど」

 

 そう言って困り顔をするコーデリアの隣には、今にも泣き出しそうな男の子がいた。

 小学校低学年くらいかな。コーデリアから聞いた話によると、どうも兄とはぐれてしまったらしいのだが。

 

 他ならぬコーデリアの頼みだ、人探しくらいいくらでも手伝うつもりはあるものの、状況がほとんどわかっていない。

 俺はしゃがみこんでリクと目線を合わせ、柔和な笑みを作って問いかける。

 

「ええとリクくんだっけ?」

「────」

「お兄ちゃんとはぐれたって聞いたんだけど、どこでいなくなったとかわかるかな」

「…………」

「お兄ちゃんの服装ってどんなのだった?」

「────」

 

 ヤバい、あったばっかの頃のエリーよりも会話にならない。

 

「ずっとこんな感じで……どうしましょう?」

「どうって」

 

 丸投げするなよ。

 とはいえ俺も読心能力者の端くれ。子供の情緒は不安定で分かりづらいが、どうもただ怖がっているわけではないようだ。

 なにかを後悔していて、それがあるから人には話しづらい、といったところだろう。

 

 なにをやったのかは知らないが迷子というのはコーデリアが聞き出している。なら件の兄だって困っているだろうし、年が近いならそっちもこうやって泣きそうになっているかもだ。

 少々この子にはかわいそうであるが、さっさと話を進めてしまおう。

 

「はぐれたのはあの屋敷だろうし探しに行こうか」

「え! なんで!?」

「お、やっと話してくれたね。そのついでにお兄ちゃんの特徴も教えてくれると探しやすいんだけど」

「…………」

「別にいいけどさ。それで、なんで、だったね。ほら君、チラチラとあっちを見てたでしょう。だからだよ。ま、これでも一応は探偵見習いだからさ、安心して待ってな」

「う……」

 

 目的地もわかったことだし、さっそく捜索しようと立ち上がる。するとリクに服の裾を掴まれた。

 どうしたんだろう、と思ってリクを見ると両目いっぱいに涙を貯めていた。

 

「うわぁぁぁぁぁん!!」

 

 あー、とうとう泣いたか。

 

 ■◆■

 

「こ、これがウワサのおばけ屋敷……!?」

 

 と、顔を引きつらせながらシャロが怯える。

 

 リクをそのままにして置いておくこともできず、学院へ預けに行くついでにミルキィホームズの面々を連れてきたのだった。

 

「怖いんならついてこなくていいって言ったのに」

「いいい、いえ! 大丈夫です! 怖くない、怖くないんだから!」

「無理しなくていいのに」

「うぅぅ……」

「エリーさん……がんばりましょうね」

「う、うん……」

 

 震えているエリーとシャロ、なるほどこれがいとあはれの境地か。

 抱きしめたくなるくらいあはれだ。

 運良くバサッと飛び立ったカラスに悲鳴をあげる二人に目を細める。

 

「はたしてこの二人は役に立つのだろうか」

 

 めちゃくちゃ辛辣なネロであった。

 ともあれ人探しである。幸いリクからは学院への道中にある程度詳しい話を聞くことができた。

 それによると肝試しだかなんだかで、目の前にあるこのオンボロ屋敷に遊びに行ったらしい。

 シャロの言っていたおばけ屋敷の噂もそれ関係の話題だ。なんでも黒髪で黄色い目をしたおばけが出るのだと言う。ちなみに情報源はネロである。

 

 さて、そうしてやってきたリクだったが、怖くて一人で逃げ出してしまい、戻ろうとしたもののその直後に屋敷から悲鳴が聞こえたんだとか。

 

 リクという名前はまったく覚えていなかったが、確かゲームにもこんな感じのエピソードがあったはずだ。

 屋敷の二階の窓を、すべてベニヤ板で塞ぎ、光を遮っていることからも、これは怪盗帝国スリーカードの三人目、中華系サムライ・ストーンリバーのエピソードだろう。

 

「とりあえず入ろうか」

 

 と、俺は促す。

 

「そうだね。それじゃチョコっと開けちゃいますか」

 

 ネロが金属のヘラを取り出して電子錠に近づく。

 

「開いてんじゃないの?」

「あれ、ほんとだ。無用心だなぁ」

「そうかな。俺としてはこんな廃墟の電子錠が電源入ってるだけでも違和感なんだけど」

「ふ〜ん……ちょっと気をつけないとかもね」

 

 ヘラを弄びながらネロがつぶやく。ふざけた様子はかき消え、鋭い目で扉を見つめていた。

 前の世界基準での怪盗事件ではない普通の事件を解決する探偵のような真剣な表情である。

 オンオフの切り替えをトイズで行う俺を除けば、こういった切り替えが最も速いのはネロだ。普段はああもおちゃらけているというのに、こうして危険に直面すると素晴らしく頼りになる。

 

「で、コーデリア。入ってもいい?」

「えぇ……ってなんでそんなこと聞くのよ」

「だっていつものコーデリアだったら『ダメよ! 危険が潜んでるかもしれないわ! だいたい不法侵入じゃないのよ!』とか言いそうなのに」

 

 いきなりオフになるな。

 

「仕方がないでしょう。リクくんのお兄さんを探すにはこの家に入るしかないわ。なにかがあってからじゃ遅いのよ」

「そうだな、じゃあ」

 

 さっそく。と言おうとしたところでコーデリアが続けた。

 

「それに、ウワサになってる幽霊の容姿にも気になるところがあるし」

 

 幽霊の容姿? なんの話だ。ストーンリバーと知り合いだったりするのか。コーデリアの内心は、どういう感情なんだ、これは。

 わからないがあまりいい精神状態とは言えないだろう。

 ホラーが苦手だとか暗いのが怖いとか、そういう理由でもなさそうだ。エリーやシャロがそっち方面でヤバげだけど、コーデリアの感情はそれとは異なる。

 

 勘になるが怖がりな二人よりも危険な状態に見える。注意しておいたほうがよさそうだ。

 

 平然を装うコーデリアを後目に、取手を握り、立て付けの悪い扉を引く。ギギギ、ときしむ。

 

「怖くない、怖くない!」

「怖くない……怖くない……」

 

 俺の勘は間違っているかもしれない。

 

「ふたりとも無理することはないんだよ。外で待ってるかい?」

 

 見かねたオペラがエリーとシャロに声をかける。

 

「い、いえっ! 無理なんかしてません! ですよね、エリーさん!」

「え……!?」

 

 絶対同意していない驚愕の声を上げるエリー。

 正直なところ、このままビクビクする彼女を見ていたい気持ちはあるが、本当に駄目なタイプの人だろうし、助け舟を出すことにする。

 

「待ってるだけってのがアレなら学院に戻ってリクくんの相手する、っていう仕事があるけどどう?」

「あ……うぅ、ぇぇと……が、がんばり……ます」

「そう、じゃあほら」

 

 エリーに手を差し伸べる。地獄で蜘蛛の糸でも見たようなすがる目をして、エリーはひしっと腕にしがみついた。

 薄くても女の子、薄くてもおっぱい。むにむにと柔らかいものが肘のあたりに押し付けられる。

 今はいっぱいいっぱいでそんな余裕ないだろうから、あとでからかうことにしよう。

 

「あ、あたしも手……握ってもらっていいですか?」

「いいよ、はい」

 

 そこまでダメなら帰ればいいのに。

 とはいえ探偵であることにこだわっているシャロだ、言っても無駄だろう。

 震えるシャロの手を取る。うわぁ、手ちっちゃ。肌もちもち。子供かな? 

 

 両手の花はさておき、事件へ目を向けなければ。

 入ってすぐ、廊下が三方向に分岐していた。珍しい構造だな、と記憶を辿り、屋敷は田の字のような構造をしていたことを思い出す。

 中は薄暗く、埃っぽい。そのうち清掃員になるストーンリバーが潜んでいるとは思えない有様だ。廃墟としては正しいんだろうけども。

 カビの臭いに顔をしかめながら耳を澄ませてみる。耳鳴りがしそうなほどに静かで、人がいる気配は感じない。

 

「ねぇ小林」

「なんだい?」

「ここけっこう広いし、とりあえず一階を手分けして回ってみようよ」

「えぇぇ〜〜!!」

 

 ネロの提案にシャロが大声で抗議する。

 

「いやネロ。そこまでわかれないほうがいいと思う。三手……にわかれるのが一番いいんだろうけど」

 

 左右で密着するエリーとシャロに目を向けると、そろって勢いよく首を横に振った。

 

「二手でいこうか」

「そうしましょうそうしましょう! それがいいです!」

「うん……うん……っ!」

 

 引っ剥がすのもあれなので、そう提案する。そもそも引っ付くことを許可したのは俺だしな。

 するとじとーっとネロがこっちを見てくる。

 

「そっちそれで大丈夫なの?」

「心配はいらない。ビビっててもエリーは最強だ」

「えぇっ!?」

「まあそれもそっか。じゃあ僕たちは右で」

「ならこっちは左だな。っとネロ、ちょっと」

「ん? なになに」

 

 声を潜めて、頼みがある、というと察したネロが耳を近づけてくれる。

 

「コーデリアのこと気にかけててくれないか。すこし雰囲気が危うくってね。また暴走するかも」

「えぇ〜、めんどくさいなぁ。自分でやりなよ。そこ代わるからさ」

「それはポリシーに反するから」

「なんのポリシーだよ、それ」

 

 困ってて助けを求めてる人よりも、困ってるけど助けを求めてない人を優先しないことかな。

 

「はぁ〜あ。わかった、ちょっと見とくよ。その代わり貸し一つだからね。後で請求するから覚悟しといてよ」

 

 もちろんだ、と頷く。ひとまずはこれでいいか。

 ネロならうまくやってくれるだろう。と信頼しているのだ。

 俺は彼女らが右に進むのを見送って、左から屋敷の探索を開始した。




没になった主人公の初期案

名前が工藤新ニで、トイズが脚力強化
メアリーだかケイトだかと被ったので没に

怪我でも病気でも治せるトイズで、原作知識はアニメだけ
ちょっとこいつのいる世界観のコーデリアを描写したくなくて没に

警察と怪盗ポジにも追加してオリキャラ三人
しんどいから没に


思いつきでエロにした今の光が一番扱いやすい謎


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17話

なーんだってー!
ミルキィホームズのアニメがYou Tubeで見られるだってー!
これは見るしかないね!(宣伝)

この前知りました。どうもミルキィホームズ知らないけれど読んでくださっている方もいるようなのでぜひぜひ。無料ですし。
検索すれば普通にでると思います。

本作やゲームしか知らない方も、きっと困惑できると思います。


 黄ばんだ壁を眺めると、あちこちに御札が貼られていた。

 向きもバラバラ、配置もまばらなそれらは、まるで危険な呪いを封じるためのものに見える。

 これ誰だっけ。G4のほうの誰かが見つけていたと思うんだけど。そこまで記憶にない。記憶にないってことは大した意味はなかったんだろう。

 だが見ていてあまり気持ちのいいものではない。

 

 ここまでの通路にはずっとあったし、先にも同じようにある。あまりにも数が多いものだから、ずっと視界に入ってくる。

 めっちゃ気が散るなぁ、この御札。

 

 

「うぅ〜」

「はぅ〜」

 

 ……これ以上怯えられると、本当に探索にならなさそうだから、二人には気づかせないようにしようか。

 今の状態でも十分すぎるほど楽しめている。

 俺は善良な探偵なのであまりいじめすぎるのはやめておこう。

 

 くすぶる嗜虐心は一旦置いておき、部屋があったのでその前で止まる。エリーがビクンと震えて、躓いた。

 見ると彼女が強く目を瞑っていることに気づく。せめて目は開けていろと言いたい。

 が、まあ困りはしないので、よしとしよう。それに委ねられるのも悪い気はしない。

 

「あーシャロ。ちょっといい?」

「は、はい! なんでしょうか」

「両手塞がってるから扉開けてくれない」

 

 と、頼んだ。これは決していじめているわけではない。俺は右手をシャロに握られて、左腕にはエリーがいる。

 そのエリーはコアラみたいに全身でしがみついているし、実際手が空いているのはシャロだけなのだ。

 

 促すと彼女は顔を青くしておっかなびっくりドアノブに手を伸ばす。

 そうして触れる直前でしばらく止まって、俺から離れ、エリーのほうへと逃れる。状況がつかめていないエリーが可愛く悲鳴をあげた。

 

「ひゃっ……!」

「ひ、光さん! お願いします!」

「はいはい」

 

 扉を開けて中を覗く。部屋は長方形、俺の感覚が正しいのであれば歪んではいないように思える。

 ゲームにおけるギミックを考えれば、ここに大したものはないだろう。QTEでポイント微増とかその程度だ。

 

「光さん……中になにかいますか?」

 

 シャロが聞いてくる。

 

「いや。お兄ちゃんもお化けもいないな」

 

 あるのはせいぜい家具くらいなもの。

 なぜかその中に壊れているのではなく、作りかけのものがあることは変わった点と呼べるだろう。

 一通り人間が入れそうな家具を開いてみてから、俺たちは次の部屋へと向かった。

 

 ■◆■

 

 あらかた一階を調べ終え、俺たちは入口前に戻った。

 どうやらコーデリアらのほうが先に戻ってきていたらしい。

 

「みんな!」

「あ、コーデリアさん! どうでした?」

「どの部屋も誰もいないわ。そっちも?」

「はい。ですよね、光さん」

「そうだな」

 

 見てなかったもんな、お前ら。

 一列に手繋いで並んでいる俺たちを見て察したのか、コーデリアが苦笑する。

 

「一階は異常なしか」

 

 と、オペラが言った。となるともちろん、ここからは二階の捜索になるわけだが。

 

「あ、あの……二階といいますと……」

「外から見たとき……窓が塞がれてて……」

 

 ここまででもわりとギリギリだったシャロとエリーが、この先に待ち構えている状況に気づく。

 

「そ、多分真っ暗だろうね」

『光さん!』

「はいはい。好きにしな。じゃあ行こうか」

「待って光」

 

 歩きだそうとしたところで、コーデリアに呼び止められる。

 振り返るといつになく緊迫した雰囲気を漂わせていた。

 

「私のトイズなら真っ暗でも見通せるわ。だからここは私に任せてちょうだい」

「? なにをそんなに焦ってるんだ、コーデリア」

「っ、焦ってなんか」

「……確かに少し違うかもだが、冷静じゃないのは事実だろ。どうしたんだ?」

 

 コーデリアは拳を握って唇を噛む。

 目を伏せて、数回深呼吸を繰り返す。そうして再び目が合った時にはいつものコーデリアになっていた。

 少なくとも表面上は。

 

「ごめんなさい。ちょっと……ね。もう大丈夫よ」

「そう。ならまあ、いいんだけど」

「それでもやっぱり私が先頭に立つべきよ。状況を把握できるのは私だけでしょう」

「……そうだな。頼めるか」

 

 それでコーデリアの気が済むんならやらせてもいいか。

 彼女を先頭に据え、二階に上がる。案の定真っ暗であり、階段のすぐそばでさえなにも見えない。

 

「どうだいコーデリア、なにかあったかい?」

 

 オペラが聞いた。さすがのハイパーセンシティブはこんなところでも問題なく視界を確保できるらしく、コーデリアは答えを返す。

 

「いえ、廊下にはなにも」

「とにかく灯りを、スイッチを探してくれないか」

「はい、いま入れます」

 

 オペラの指示が飛ぶ。するとコーデリアが動く音がして、カチッと鳴った。俺には見えないがスイッチを押したようである。

 しかし二階は真っ暗なままなにも変わらない。

 

「ダメです、つきません」

 

 やはり二階には電気が来ていないらしい。

 さてはて、どうしたものか。

 

 現状、事件は俺の知識と変わりなく進んでいる。トゥエンティの時のように俺の知らない出来事は起きていない。コーデリアを除けば。

 

 そもそもコーデリアはなんでこうなっているんだ。なににそんな心を揺さぶられているんだ。

 ゲームとなにが違うんだ。事件の前提条件はなにも変わっちゃいない。なら俺のせいか。俺に向けられた感情ではないが、俺のせいで変わったなにかが原因?

 

 わからない。わからないけれど、この事件がきっかけであることに違いはない。ならばさっさと事件を解決することがコーデリアにとってもいいことなのではないだろうか。

 

「とりあえず、みんなPDAを開くんだ。ディスプレイの灯りでも無いよりマシだろう」

「あ、待ってください。今私の視覚は敏感になっています。PDAの灯りでも目に入ったら」

「そうか、まぶしすぎるのか」

 

 オペラの提案をコーデリアが却下する。

 加減が効かないわけでないのは、日中に使っていることからも明らかだが、その時の出力ではこの暗闇を見通せないんだろう。

 

「コーデリア。トイズを切ってくれるか」

 

 と、俺が言った。

 

「PDAの灯りくらいなら私のハイパーセンシティブのほうが遠くまで見えるわ」

「もうちょいマシな灯りがあるんだ。ごめん、エリー。左手離して」

「えっ! そ、そんな……どうして」

「いや灯りつけるから」

 

 コーデリアがトイズを止めたのを確認し、ライトをつける。

 

「お〜、ライト付きの腕時計?」

「俺の探偵七つ道具の一つだ」

 

 そうネロに返す。するとオペラが訊ねてきた。

 

「キャンプ用品かい?」

「ええ、そうです」

「なにが探偵七つ道具だよ」

 

 呆れるネロの声は無視しよう。

 ライトでぐるりと辺りを照らしてみる。コーデリアの言うとおり廊下に奇妙なものはなかった。

 扉がいくつか見えるから、端から回ろうか。

 

「なんでこれさっき使ってくれなかったんですか!」

「ひどいです……またいじわるですか……!」

「またって言うな、またって。二階で電池切れのほうが困るだろ」

 

 二人の文句は封殺して歩き出した。

 

 ■◆■

 

「おっと大部屋」

 

 道中いくつかあった小部屋には、これといって見るものはなかった。なので手分けしなかったにしてはサクサクと進むことができていた。

 人数が多いからか、エリーとシャロの恐怖心が薄まっていることも要因の一つだろう。

 

 そうして奥までやってきたのだが、観音開きの扉があったのだ。

 屋敷の間取りからしてもかなりのスペースがあるだろう。

 となるとここが例の部屋かな、と思いつつ扉を開けた。

 

『ひゃあああぁぁ!!』

「なに……これ……?」

「マネキン……?」

 

 そう、マネキンだ。それも大部屋いっぱいのマネキンである。

 

「硬い。やっぱり人形だ」

 

 コツンとマネキンを叩いて確認してきたネロが言った。オペラもそれに続いてマネキンに触る。

 

「本当だ。これは、人形」

「よくできてるなぁ〜」

 

 と、感心するネロ。相変わらず肝の座った奴だ。この絵面でこんな台詞が出てくるあたり、本当に大したものである。

 オペラだって引き気味だというのに。

 

「き……気味が悪いです……!」

「ででで! 出ましょう! すぐ!!」

 

 真実を知っている俺だって不気味に感じているんだ。

 エリーとシャロに至っては言うまでもない。とうとう本当に限界といった様子ですがりついてくる。

 さすがにこのまま探索を強行するわけにもいかず、オペラが灯りを取りに戻ろうと提案した。

 

 俺は一度、右から左へと大部屋の中をライトで照らし、動くもののないことを簡単に確認してから部屋を出た。

 廊下の先に灯りをやる。ちらっと暗闇の中に、黒髪の女が照らし出された。

 

「うおっ、びっくりし──」

「っ」

「コーデリア?」

 

 突然走るコーデリア。

 なんだ、どうしたんだ。

 全速で角に消えていった黒髪の方へと駆け寄る彼女から感じるのは、膨れ上がった例の感情だ。

 

 俺の知らない感情は読み取っても意味がないなんて、まさかこんな弱点があるとは思わなかった。

 それもわりと真っ当に真っ直ぐなコーデリアに突きつけられるとは。ああ、もどかしい。もっとはっきりと心が読めればこんなこと悩む必要はないのに。

 

 なにを考えているんだろう。

 アニメ版のように暗闇が怖いって、そんなわけはないだろうし。いや、もしかしてありえるのか? 恐怖症は感じ方が違うとかあったりして。

 エリーもやたらスケベだし、暗いのが苦手な可能性、十分ある。作り物のお化け屋敷はわりと平気そうではあったから、天然物だけ駄目だとか。

 

「きゃっ」

 

 ともあれG4の登場だ。

 予告状もないのにかち合わせる辺りに運命を感じるね。




昔の私、めっさ頑張ってるな。
五千〜六千字を二話でストーリーやってたとか……


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18話

とりあえずこれからは次の投稿内容について言及するのやめときましょうか。
結局この話で事件解決までいけませんでした。


「どうしてキミたちがここに?」

 

 オペラが尋ねる。

 案の定、さっき見えた人影は長谷川平乃だった。こちらに気づいた彼女たちも灯りをつけ、お互いの様子がはっきり見えるようになる。

 いたのは平乃だけでなく、神津を含めたG4の面々だった。

 しっかりと制服を着込んだ彼女らの姿から、肝試しではなく警察としてここに来ていることがわかる。

 

「それはこちらが聞きたいな」

「神津」

「とにかく下へ降りよう。話はそれからだ」

 

 ■◆■

 

 神津の話によると、どうもここ最近行方不明者が増えているとのことだった。

 付け加えて妙な噂──黄色い瞳と黒髪の亡者が屋敷を訪れたものをあの世へさらう、なんてものも流れ始めた。

 まあ、そんなわけで調査に来たのだとか。

 

「そのリクという少年の兄もこの屋敷に入ったきり出てこないのだろう? となるとますます放ってはおけんな」

「そうよ、そうよ! これは立派な事件だわ! でも怪盗とは無関係! だからあんたたちの出番はないの! 邪魔だから帰ってちょうだい!」

 

 煽りカスなココロちゃん。最近ではこの生意気な態度にも慣れてきて、これを見ないと始まらないという気分にすらなる。

 もちろん嘘だ。あー、ムカつくなぁこのメスガキ。

 

「え〜そんなこと言わないでよ〜ココロちゃ〜ん」

「だからココロちゃんって言うな〜っ!」

 

 ココロちゃんを見た途端に元気になるシャロ。

 満点の笑顔ですり寄っていって、無碍にあしらわれている。

 

「小衣」

「はい!?」

「少し静かにしていろ」

 

 そしてココロちゃんは神津にあしらわれる。

 謎の上下関係ができていた。見ててとても楽しい。

 でも好きな人にあしらわれているココロちゃんを見ていると胸が痛くなる。筋肉痛かな。

 

 その後はというと「怪盗事件ではないから探偵の出番はない」と主張する神津に対し、オペラが「令状ないでしょ、ならいてもいいよね」と立ち位置を確保して、俺たちは合同調査をすることとなった。

 

 まずは協力するにあたってここに至るまでの経緯をお互いに話すことになった。

 先に屋敷を調べていた側としてこちらは屋敷内の状況について教え、G4からは行方不明事件について聞いた。

 

 まあ事件とは言ったもののオペラが突っ込んだ通り立件されてはいないのだが。

 それでG4がここに気づいた理由なのだが、どうも最近になってここ、ヤマテの辺りで行方不明の届け出が増えていることに次子が気づいたのだとか。

 それでココロちゃんがデータを分析して、この屋敷を中心に発生していることを突き止め、ひとまず調査を始めた、という流れだった。

 

「うわぁ、明智ちゃんが有能だ」

「ふふん! 小衣は天才なのよ! って明智ちゃんもやめろー!」

「ところで捜査なんだけど、どうします? 一緒に回ります? それとも」

「はぁ! あんたらと一緒になんてやるわけないでしょ! 当然わかれるわよ」

「ま、ですよね〜」

 

 で、話し合いの結果一階と二階でわかれて捜査をすることになった。

 そしてジャンケンの結果、俺たちは二階、G4が一階を調べることになった。

 

「じゃあやります?」

 

 と、呼びかける。

 

「いや。一度事務所に戻ろう。さすがにそのライト一つじゃ心もとないしね」

 

 オペラが俺の腕時計を指して言った。

 俺も頷く。持ってきたはいいものの、きちんと調べるとなればこいつは力不足だ。

 

「光さん!」

 

 名前を呼ばれて振り返る。平乃がランプを持って、こちらに歩いてきていた。

 

「はい。これ使ってください」

 

 そう言って微笑みながらランプを手渡してくれる平乃。 

 

「ありがと平乃。助かるよ」

「いえいえ。小衣さんにはナイショですよ。怒られちゃいますからね」

「オーケ、こっそり返しにいくわ」

 

 と、ペコリと会釈して調査に戻ろうとする平乃に手を振って、彼女を見送る。

 スイッチを入れてみれば、なかなかに遠くまでその光は届くようだった。そういやゲームでも平乃からランプ借りるんだったけ。

 

「どういう目だそれは」

 

 灯りも手に入って、事務所に帰る必要もなくなったことだし、このまま二階に上がろうかと階段の方に向き直ると、じとーっとした目でコーデリアたちに見られていた。

 

「いつの間にそんな仲良くなってたのよ」

 

 いつの間にって。

 ああそういや、ココロちゃんに見られないよう人目を避けてたっけ。

 

「何回現場で一緒になったと思ってんだ。ほら、問題は解決したんだし調査するぞ」

 

 不服そうにするコーデリアの背を押し階段を登った。

 

 ■◆■

 

 手近にあった机を大部屋の真ん中まで引きずってきて、そこにランプを置く。

 さすがに端まで届きはしないが、これでマネキン部屋も薄暗くはあるが視界が通るようになった。おまけに手も空いた。

 

 さて。

 この事件はストーンリバーによるものだ。

 俺の記憶では、確か今回の重要なファクターは鞄の中に飲みかけの飲み物、ちゃんと身につけられた下着、すり減ったハイヒール、仮ピアス。

 

 今までに比べて楽そうだな。俺のぶんの重要なファクターは、なにかしら適当な所持品を挙げ連ねればいいだろう。

 そんなわけで俺はコーデリアに付いていくことにした。

 調査のためにバラけて、近くに誰もいなくなったところで呼びかける。

 

「なあコーデリア」

「どうしたの? なにか気になるものでも見つけた?」

「そうそう。すごく気になってる。なにがあったんだ、ってね」

「……」

 

 コーデリアが目をそらす。

 困った。すごく、辛そうだ。

 苦しめたい、とかそんなつもりはないのに。

 このまま聞いたほうがいいのか。話したら楽になるような話題なんだろうか。

 

「言い辛いなら──」

「いえ大丈夫。大丈夫よ。それに、もう何度か話したことある話題だもの」

「? なにかあったっけ?」

「私の、妹のことよ」

「……ああ」

 

 確かにそれは聞いたことのある内容だった。

 詳しくは知らないけれど、病死した、と。そう聞いている。

 そして数秒、話し出す覚悟を決めるように間を開けて、悲痛な声でコーデリアが続けた。

 

「マリー……マリアも、あの子も、黒髪に……黄色い目をしていて……っ」

 

 うつむきがちにコーデリアが、自分を抱きしめる。自らを掴むその手はかすかに震えていた。

 ああ、なるほど。そういうことだったか。

 心中に去来した最初のそれは、納得だった。

 コーデリアの事情や過去に対するものではない。

 

「あの子のお墓近くの屋敷で、こんな噂が流れて。そんなのっ! 冷静でいられるわけないじゃないの!」

 

 コーデリアが思い詰めていた理由を俺がわからなかったことに対する納得だ。

 

 俺は一度、本当に死んでいる。

 ある意味、この世界でもっとも死に対して造詣が深いと言えよう。

 だがそれは、あくまでも自分が死ぬことへの知識だ。

 身近な誰かが死んでしまう、そういった経験を俺はしたことがない。

 

 前世の俺はまだ若いうちにさっさと死んでしまった人間であるし、今もそうだ。学生をやっている。

 二つ分の人生を合わせればまぁまぁ長い時間にはなるものの、結局のところ学生時代を二周しただけなのだ。

 長いだけで、大した経験は積んでいない。

 かける言葉がなかった。

 

「お前アホか」

 

 自分の精神状態を整えてから言った。

 コーデリアは一瞬呆けて、みるみる真っ赤になっていく。

 引っ叩かれそうになったから腕を掴んで止めた。

 

「っ、離して!」

「あのなぁ、会ったことない俺が言うのもなんだけど、マリアちゃんってコーデリアがそれだけお姉ちゃんやるような子だったんだろ。じゃあ別人……別霊? でしょ」

 

 実体の伴わない聞きかじりの慰めくらいは思いつく。オタクだから。

 だが、どうでもいい相手ならともかく、コーデリアを相手にその類の言葉はかけたくなかった。

 仕方がないので人生経験の浅い俺にもわかる分野で話を進めよう。

 

「それともなにか。噂の幽霊みたいなことする子だったのか」

「そんなわけ、ないでしょう。マリーはとても優しい、自慢の妹だったんだから」

「しっかりしてくれよな。髪と目の色が同じってだけで疑われてちゃ世話ないよ、ホント」

 

 クク、と笑う。それから帽子越しにコーデリアの頭を強めに撫でた。

 

「もう大丈夫か?」

「えぇ。おかげさまで気分も晴れたわ」

「それはよかった。俺もスッキリしたよ。じゃあ調査に戻るな」

「そうね。私も──あぁ、ちょっと待って」

「ん」

 

 後回しにしていた問題も解決されたことだし、マネキンを調べに戻ろうとしたところ、肩に手を置かれる。

 振り向くとコーデリアが顔を近づけてきて、ちゅ、と一瞬唇が合わさった。

 

「ありがとう、ね。また助けられたわ。それと叩こうとしてごめんなさい。光がそんな人じゃないってわかってるはずなのに」

 

 俺の胸に手を添え、熱っぽい瞳で見上げる。

 

「あなたでよかった。友人として、仲間として……こ、恋人……として。ここにいてくれたのがあなたでよかった」

 

 それだけ言ってコーデリアは走り去っていく。

 しばらく固まった後、俺はようやく再起動して悶えた。

 

「うわぁ、ずる」

 

 もう少しだけ、トイズは使わないでおこう。



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19話

 あ〜、まだ顔が熱い。

 パタパタと手で扇いでみるがぜんぜんマシにならない。これは長続きしそうだ。

 まさか今更俺がこんなことになるなんて。もっとすごい姿も、言葉も見たことがあるはずなのに。どうしてこうも揺さぶられるのか。

 

 相変わらずチョロすぎるなぁ俺。

 ニヤけ続けている自分の頬をパチンと張る。さあて、真面目にやろうか。

 他二人と違ってこの事件は、普通に民間人にも被害が出ているからな。ラットでさえ避難させてから爆破していたというのに。

 や、最後はとんでもないことやろうとしてたけども、未遂に終わったんだからノーカンだろう。

 

 トゥエンティの時と違って、今回は事件自体に予想外の出来事は起きていない。

 コーデリアの不調だけは確かに知らない事ではあったものの、理由を聞いてみれば納得できる部分もある。

 恐らくは直前まで墓参りに行っていたことが要因だろう。

 昔から定期的にマリアの墓参りに通っていたコーデリアだが、俺がいたからか、ゲームの時とタイミングがズレてちょうど重なってしまったのだろう。

 なんて間の悪い。

 だが障害ではない。

 神津が異変に気づいて戻ってくる、みたいな事件の根底がひっくり返るような変化ではないのだ。

 

 手近にあったマネキンを複数、ざっと眺める。

 うん。問題はない。

 これは知識通りにストーンリバーが起こした事件であるし、謎の答えもまた同じだ。

 さて。引っかかるところはいくらかあるが、強いて取り上げるならどれになるだろうか。

 

「大丈夫かい?」

 

 自分的重要なファクターを模索していると、巡回のオペラが話しかけてきた。

 

「もしかして見られてた?」

「聞こえてた、かな。コーデリアが大きな声を出していたから。ネロはいつものことって言ってたけれど気になってね」

「ネ〜ロ〜!」

 

 いつもってほど俺たち喧嘩してるかな。

 まさか俺が言われる側に回る日が来るとは。

 

「はぁ。……ほら今日のコーデリア、ちょっとおかしかったじゃん。だから理由を聞いてたんだ」

「そうか……確かに今日の彼女は少し変だったね。それでコーデリアの悩みは解決されたのかい」

「たぶん?」

「たぶんって。おいおい」

「あはは。なかなか完璧に飲み込むのは難しそうなことだったから」

 

 俺とのやり取りの中で、マリアがこの幽霊騒ぎに関わっているかも、という疑念は消えたようだけれど、そもそもの問題である家族を失った傷はそのままだ。

 悩みが解決されたとは言い難いし、解決されることはないのかもしれないな。

 ……アニメ……いや、あれは置いとくか。うん。

 好きだったけど、シリアスやってる時に思い出す内容じゃない。

 

「まあコーデリアなら大丈夫でしょ」

「信頼してるんだね」

「なんだかんだ長い付き合いなんで」

「そういえば君たち二人はクラスメイトなんだったっけ?」

「そうそう、一年の頃から同じクラスだったんだ。一緒にクラス委員やったりして、ってこれは長くなるからやめとこう。じゃあ調査に戻りますかね」

「興味のある話だったけど、また今度にしようか。それで光さんはこの辺りになにか気になるものでも?」

 

 と、オペラが聞いてきた。

 おしゃべりは一旦終わりだ。真面目にやろうとマネキンを見つめる。

 ふむ。気になるところというと、もう見た目からのっぺら坊じゃないところがすでに違和感なのだが。服屋のアレとあまりに違いすぎる。

 でもそうだな。

 

「これポケット」

 

 膨らんでいたマネキンの腰ポケットを漁る

 取り出してみればPDAだった。電源ボタンを押してみると、どうやらスリープじゃなくてシャットダウンされていたらしい。

 しかし画面はついたものの、パスワードが設定されていて中を見ることは叶わなかった。

 

「ちょい前のPDAかな。パスがどこかに書いてたりは……さすがにないか」

「おかしいとは思わないかい?」

「パスを忘れないよう、付箋に書いて貼っつけてないことが?」

「いや、そうじゃなくてね。電源が入ったことだよ。君がマネキンの製作者だったとして、キャラ付けのためだけに本物のPDAを持たせたりするかい?」

「おまけに充電も、か。一応他の何体かも調べてみようか」

 

 見つけたPDAをマネキンに返し、他のマネキンの懐も漁ってみる。

 はたして。

 

「まあまあいたね」

「そう。これは重要なファクターだ」

 

 重要なファクターいただきました。

 ようし、仕事終わり。今日もいい仕事したわ。

 巡回に戻るオペラを見送り、見た目だけ取り繕ってぼんやりするとしよう。

 

 マネキン時の記憶ってあるのかな。

 ないならイタズラしてみたいな。

 

 ■◆■

 

 結局セクハラはやらずに時間は過ぎていき、オペラによって俺たちは一階に集められた。

 それから同様に呼ばれたG4たちもやってきて、ココロちゃんが怒鳴った。

 

「ちょっと! 集まれってどういうつもり!?」

「ひょっとして『謎はすべて解けた〜』とかってやつ?」

 

 のんびりとした口調で咲が訊ねる。

 そしてオペラが自らの推理を語り始めた。

 

 シャロが見つけたのは半分しか中身のないミネラルウォーターのビン。

 ネロが見つけたのは下着だ。マネキンがブラウスの下に身に着けていた。

 エリーが見つけたのは靴底のすり減ったハイヒールを履いたマネキン。

 コーデリアが見つけたのはクリアスタッド。ピアスホールを開けた時に使う仮ピアスだ。

 

 俺の見つけた本物のPDAを含め、どれもマネキンが持っているにしては不自然。

 つまるところあれらは本物の人間であり、こんな異常事態が発生している以上、今回のこれは怪盗事件である。

 

 と、まとめればこんな主張だった。

 

 それでは、怪盗がここでなにを目的に拉致監禁なんてやっているのか。

 噂にある屋敷に隠されたモノとはなにか。

 オペラは続ける。

 

 最初に一階を調べる際、オペラは右に進んだわけだが、そこで偽物の柱を見つけていたのだと。

 田の字に配置された部屋の形状が、正方形ではないことを指摘し、隠し部屋の存在を暴く。

 

「いやぁぁぁぁ!!」

 

 途端、裂帛の気合をあげ平乃が壁を粉砕した。

 え? なに?! 

 

「お見事。ありがとう平乃クン」

「押忍!!」

 

 なんで俺より冷静なんだこの名探偵は。

 しかし古い建物の、偽物の壁とはいえ正拳突き一発で粉々にするとは。

 試しに破片を蹴ってみると、それなりにある重量が伝わってきた。ほんとにパワータイプだったんだな、平乃って。

 絶対怒らせないようにしよ。

 ゆるく決心し、渋るエリーとシャロを押して階段を降った。

 

 地下は迷路になっていた。

 カビの臭いが充満し、コーデリアのトイズでも探れない有様だったが、オペラの類稀な探偵力による超知的総当たり法、もとい右手法によって突破することに成功する。

 

「う〜む……なにやら禍々しいモノを感じるぞえ」

「ええ〜!!」

「やだ……!」

 

 はたして隠されていたのは一振りの刀であった。

 

「ネロ。やめなさい」

「は〜い」

 

 コーデリアがネロを叱る。その裏でオペラと神津が刀の処遇を話し合っていた。

 厳重に秘匿されていた代物なので、慎重に扱ったほうがいい、という主張を受け、確保に向かっていた神津が下がる。

 そんなところへ、どこからともなく笑い声が響いた。

 

「え! え!? 今のって!?」

「よくぞ宝を見つけてくれた。やはり『見つけ出す』のは探偵の仕事だな。例を言おう……小林オペラ」

 

 ふっ、といつの間にか刀の側に中華服の男が立っていた。

 

「おまえは」

「ストーンリバー。怪盗帝国の首領……アルセーヌ様に支える者」

 

 アニメの印象とは異なり、かなり落ち着いた口調である。

 

「どこに隠れてたのよ!」

 

 ココロちゃんが問い詰めた。

 

「どこにでも……闇は我が支配下……すべてを静寂に包む褥」

 

 …………? 

 ……あー、ゲームのストーンリバーってこんなんだったっけ。背筋がゾワッときたわ。

 なんて恐ろしい怪盗なんだ。これほどの破壊力を持っているだなんて。

 

「刀を床に置き、壁に両手をつけ!」

「観念しなさい!」

「御用だ御用だぁ!」

 

 神津とG4が銃をストーンリバーに突きつける。

 囲まれたストーンリバーは、手にした秘宝から手を離すことなく不敵に笑い、瞼を閉ざす。

 

「我が力……」

「みんな! 目を閉じろ!!」

「全員目ぇ伏せろ!!」

「食らえ!!」

 

 カッ! とトイズの輝きを放ち、G4一同がマネキンにされ。

 

「っ! なにが!?」

 

 てないな。平乃だけ。

 

「我がトイズが目に潜むこと。見破ったか」

「あのタイミングで目を閉じればピンとくるさ」

「さすが……さすがだ小林オペラ。さて」

「なんでこっち見る」

 

 神妙な面持ちで頷いたストーンリバーが、なぜか続いてこちらを見つめてくる。

 なんだろ、発言求められてるのかな。

 

「まあ、お前ら演出過多でわかりやすいし」

「なるほど……参考にさせていただこう」

「そのまま素直でいてくれ。楽だから」

 

 ノーモーションで飛んでくる人形化のトイズとか恐ろしすぎるわ。

 

「さて小林オペラ、浅見光。我が剣技にてその力……測らせてもらおう」

 

 鋭い眼光を向けたまま刀を握る。

 

「この魔剣でな────むあっ!!??」

 

 抜刀と同時に、鞘の中から煙が吹き出した。

 もろに白煙を浴びたストーンリバーは不気味に笑い声をあげ始める。

 

「くく……へへへへ……」

「ちょっと?」

「様子が……変じゃないですか!?」

「ふふふふふへは」

「まさか……妖刀の……」

「呪い!?」

「ひっはははははぁぁぁぁー!!」

 

 哄笑しながら刀を振りかぶった。

 

「逃げろぉぉぉぉー!!」

『はいぃぃぃーっ!!』

 

 オペラが叫び、俺たちは迷路を逆走する。 

 来るときは手探りだったものの、先頭を行くオペラは道がわかっているように迷いなく進んでいる。

 

 俺の記憶でもこちらで正しいがしかし、ゲームでもそうだったが今回は相手がおかしくなっているので失敗したらマジで殺される状況。

 であればゲーム的な都合は無視して安全にぶちのめしてやろう。

 

「コーデリア、平乃。次の分かれ道に隠れてくれ、挟み撃ちする!」

「なっ、危険よ!」

 

 分岐の先で立ち止まり、背後に向き直る。

 有無は言わさない。広い上にいくよりも、狭い地下のほうが長物相手ならやりやすい。

 

「早く! アイツが来る前に!」

「〜〜〜っ! あーもう! 怪我したら後で引っ叩くから!」

「お気をつけてっ」

 

 コーデリアと平乃が指示通りに身を隠す。

 ようし、今まで怪盗帝国相手にまともに俺が戦うことなかったからな。

 お望み通り、真正面からぶつかってやろう。俺は。

 

「何をやっているんだ君たち!」

「避けるスペースなくなるから下がってて!」

 

 オペラたちを押しのけて場所を確保する。曲り道から追ってきたストーンリバーが姿を見せた。

 

「イヒヒヒヒヒ」

 

 狂ったかけ声とともに疾走し、迫りくる。

 ストーンリバーが刀を縦に振り抜く。斬撃は鋭く、確かな技量があるのだと確信できるものではあったが、なにぶん予備動作が大きくわかりやすい。

 体を横にずらし、剣閃から外れる。

 素早く刀を翻すと、ストーンリバーは刃を横薙ぎに振るった。力を抜き、重力に引かれるようにして屈む。頭上を銀が通り過ぎていった。

 

「おら」

 

 トン。と、左に振り切られたストーンリバーの腕を、加速させるように打った。

 勢いそのままに止めそこねた刃は、壁に深く食い込む。

 よし終了っと。

 動きが止まったストーンリバーは鬼の形相で飛びかかってきたコーデリアと平乃にボコボコにされた。

 

 これが結束の力(数の暴力)か。

 怪盗のチームってんのに、一人ずつやってきてる奴らにはない強みだ。

 

「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」

「おつかれコーデリア。平乃も手伝ってくれてありがとう」

「いえ。お互い様ですから。怪我は……ないようですね」

「ふ〜、ふ〜」

「そんな息荒れる勢いで殴ったの?」

 

 ほんとにストーンリバー生きてる? 

 ん、あれ。

 

「コーデリア! 怪盗ストーンリバーは!?」

「え? たったいまとどめを」

 

 オペラが訊ねるとコーデリアが物騒な答えを返す。

 いつの間にか倒れていたはずのストーンリバーの姿がない。

 これは……。

 

「骨も残らなかったか」

「そんなわけないでしょう! いったいどこに!?」

「不覚をとったよ……私としたことが」

 

 よかった、生きてたか。

 どこからかはわからないがストーンリバーの声がする。

 

「まさか刀にあんな仕掛けがあるとはな」

「出てこい!」

「そのようなわけにはいかないが今回は負けを認めよう」

 

 ネロが虚空に向けて啖呵を切るも、返ってきたのは言葉だけだ。

 

「そんなの認めなくていいです! ココロちゃんたちをもとに戻してください!」

「案ずるな……我が力は日の光にて解除される」

「運ぶの面倒だし、パパっと解いてくれない? 負けたでしょ」

「…………。ではまたいずれ会おう。その時こそは負けぬ……決して」

「あ、おい!」

 

 できないのかな。それともやらなかっただけか。

 まあどちらでも構わないか。事件は解決したのだ。急ぐ理由もなし、普通に救助するとしよう。

 

 ■◆■

 

 リクのお兄ちゃんも無事にマネキンから戻り、再会することができた。

 キーアイテムとなる石ころも、コーデリアがリクからもらっていたし、平乃がストーンリバー撃破に関わったことでココロちゃんが調子づいてウザかったが、まあなんてことはない。

 事件から数日、俺に残った未解決の問題はあと一つとなった。

 

「ごめん、ごめんて、エリー。今度はまっさきにお前に頼るからさ。そろそろ拗ねるのやめてくれよ」

 

 問題というのはそう、エリーが機嫌を損ねていることだ。

 

「大丈夫……です。……コーデリアさんや、長谷川さんのほうが……頼りになりますから」

「エ〜リィ〜」

 

 ツンと顔を背けるエリーを抱きしめる。

 刀を持ったストーンリバー相手に、危険をまったく冒す必要なく完封できるトイズを持ったエリーは、自分が呼ばれなかったことをめちゃくちゃ根に持っていた。

 

「そういえば光さん」

 

 空気を変えるようにオペラが話しかけてきた。

 

「?」

「前から聞こうと思ってたんだけど」

「あぁ、俺たちの昔話」

「それも気になるけれど、君、怪盗帝国の三人から敵視されていたけれど、ひょっとしてアルセーヌと会ったことがあるのかい?」

 

 とうとう突っ込まれたか。

 アルセーヌが俺のことをどういう風に話したのかは知らないが、ラットが俺の名を出した辺りで余計なことでも言ったんだろうなと予測がつく。

 なので予め考えておいた言い訳を話すとしよう。

 

「あ。それ僕も気になってたな」

「あーちょっと話しづらい内容なんだけど……まあいいか。なんてことはないよ、ただ前に戦ったことがあるってだけ」

 

 嘘は混じってない。マジで真実オンリーだ。

 

「……? あぁそっか。僕たちにライセンスが発行されたの最近だもんね」

「って光! あなたライセンス無しで活動してたの!?」

「オペラさんも言ってたでしょ。巻き込まれただけだからノーカン」

「いや確かに言ったけれども、こんな引用の仕方はしてほしくないなぁ!」




この前、おもちゃ屋でミルキィホームズTDのデッキを買ったんですよね。
ヴァイスシュバルツのトライアルデッキなんですけど、カズミちゃんのサイン入りカードが入ってました!
いやぁ、めちゃくちゃ嬉しかったですね〜

……これ7年前の商品なんですが……
需要ないって言うのはやめてぇ


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20話※(コーデリア)

黄色いマリーゴールドの花言葉は『健康』


「コーデリア、外国人だったんだ」

「逆になんだと思ってたのよ。どう見たって日本人じゃないでしょう?」

 

 いや、そりゃそうなんだが。

 コーデリア・グラウカなんて名前の純日本人なんて普通いない、と言われりゃそうなんだけれども。普通の学園モノなら海外からの留学生ポジみたいな顔と名前だけども。

 納得いかねぇ。なんで外国人墓地なんだ……。

 

 鉄道に揺られて数十分、俺とコーデリアは再びヤマテを訪れていた。マリアの墓参りのためだ。

 仲が良かろうと踏み込みづらい部分は当然あるもので、身内の死なんて最たるものだろう。知らないが。

 俺も踏み込まなかったし、コーデリアも進んで話そうとはしなかった。だけどストーンリバーの事件を経て、知らず知らず俺は触れてしまった。

 

 それでこうしてコーデリアと共に、花を抱えて墓参りに来たのだ。

 道中、嫌に静かなコーデリアと鉄道で揺られていた時はもうどんな気分でいればいいのかわからなくて困っていたというのに、今はもう謎の困惑でいっぱいだった。

 

「もしかしてエリーもネロもシャロも日本人じゃないのか?」

「ネロは日本人なんじゃない」

「名字で判断してる?」

 

 釈然としないままコーデリアについて墓地を進む。

 そして一つの墓石の前で止まった。マリア・グラウカ、と英語で刻まれた墓だ。

 映画で見るあの、上に十字架がくっついた聖書圏の墓。

 

「ここに眠ってるのか」

「えぇ。マリー、今日は私の大切な人を連れてきたわ」

「家族に挨拶にくるのは初めてだな。緊張する」

「からかわないの」

「先に始めたのコーデリアだろ」

 

 墓の前でしゃがみ、祈る。

 俺は前世の自分が埋まっているはずの墓前でなにが起こっているのか、そんなもの一度も感知したことはない。

 だから、これはきっと自己満足なんだろう。それでも、届けばいいなと思って、語りかける。

 

「はじめましてマリア。俺は浅見光、あー、なんだ。お前のお姉ちゃんの恋人だ」

 

 コーデリアがもう話しているのかもしれないが、経緯を一つ一つ話すことにする。

 探偵学院に入学し、同じ教室で過ごしてきた日々を。

 エリーやネロ、シャロ。次第に増えていった仲間たちのことを。

 ミルキィホームズとして、小林オペラの元で戦ってきた経験を。

 

「悲しませない、なんてそんなことは言えない。でもこれは、誓うよ。一緒に幸せになる。俺たちはすべてを乗り越える」

 

 目を伏せ、最後に心を込めて手を合わせる。

 十数秒、そのまま静かに安らかに眠れることを願う。

 

 初めての経験だ。この感情をなんと表せばいいんだろう。

 少なくともろくに記憶にない祖父母の墓参りの時はこんな気持ちにはならなかった。

 穏やかでありながら、力に満ちている、力をもらっている、そんな感じ。祈るってのは、こういうものなのか。

 ゆっくりと目を開けた。

 

「…………」

 

 なんか、いる。

 いや、なんにも見えないんだけど、なんか見えてる。

 空っぽの空間に、俺のトイズが感情だけ見通している。

 

 そっか。俺のトイズの効果範囲ってシャロと同じだと思ってたけれど、違ったのか。

 視界に入れてさえすれば見えてなくてもいいんだ。これは大発見。違う違う、そうじゃない。

 

「光……それって、プロポーズ?」

 

 首筋まで真っ赤に染めたコーデリアが潤んだ目でこちらを見つめてくる。

 

「え? あー」

「もう、なんでそこまで言って及び腰なのよ。はぁ〜、光はカッコつけてそういうこと平気で言うんだから」

「相手は選んでるって」

 

 ムスッとするコーデリアはさておき、持ってきたマリーゴールドの花束を墓前に備える。

 マリアの名の由来、聖母の花。

 あれやこれやのマナーを無視して、故人の好きな花をこうして用意した。

 

 したのだが、そんなこと以上に変な現象が……まあいいか。

 コーデリアが祈るのを待って、俺たちは墓を立ち去った。

 

 ■◆■

 

 いつまでついてくるんだろう、こいつ。

 買い物の途中も、飯食ってる時も、ずっとふわふわ俺の周囲を浮かんでいた。

 

「コーデリア、学院帰る前にちょっと休んでかない」

「えぇ〜。いいけど、どこにいくの?」

「あっちに公園があるから」

「え! 公園でするの!? そんなまだダメよ! ほらまだ夕方で明るいし、せめて夜になってからじゃないと人に見られちゃうわ!」

「じゃあ普通にホテル行こう」

 

 妄想に浸るコーデリアの腰を抱いて、事前に調べておいたホテルに向かう。

 まったくこいつ、昔は妄想の俺は優しい王子様みたいなのだったらしいのに、なんでそうなってるんだ。

 通せんぼするみたいに、俺の前に出てくる空飛ぶ感情をすり抜けて建物に入った。

 

 店員に指定された部屋に入って扉が閉まったところで、コーデリアを抱きしめてキスをする。

 

「あっ……ちゅ、ん、んちゅ……ぁふ……待って光……ん、ちゅっ……待ってって。先にシャワー、浴びたいの」

「いい匂いだよ、それにもうあんまり待てない」

「や、恥ずかしいから嗅がないで」

 

 白い首筋に口づけを落としながら、少しずつ下がってゆく。唇にうっすらと汗の浮かんだ肌が感じられた。

 もがくコーデリアを優しく押さえつけながら、甘い花のような空気を吸い込む。

 

「コーデリアは俺の服嗅ぐくせに」

「あれは、安心するのよ」

「じゃあ俺も幸せになりますぅ〜」

 

 コーデリアの胸に飛び込むと、ぐいっと剥がされて脱衣所に引きずられた。

 ぶつぶつ言いながらコーデリアは髪留めと花飾りを外して、水色のTシャツを脱ぐ。ふわりと金髪が柔らかく広がり、シャンプーの匂いなのだろう、嗅ぎ慣れた落ち着く匂いが舞った。

 目を引く金髪から視線を下ろすと、彼女らしい真っ白なインナーがある。薄手の生地には下着の線が浮かんでいた。

 脱いだTシャツをきれいに畳んでからインナーに手をかける。裾が持ち上がっていくにつれて引き締まったお腹が覗く。

 女子スポーツが一定の人気を誇るのがよくわかる。鍛えられた女体はたまらなくエロティックだ。思わず生唾を飲み込む。

 それからインナーを畳んだコーデリアはこちらに背中を向けた。

 

「ね、外して」

「……ああ……」

 

 ホックを外して肩紐を手に取り、コーデリアの腕から抜きとる。

 

「ありがとう」

「どういたしまして」

 

 無防備に背中を晒すコーデリアにふと悪戯心が働いた。

 ニンマリと笑い、彼女のシミ一つない背中にツツーっと指を這わす。

 

「ひゃっ」

「あはは、綺麗だったもんで」

「もう。いたずらもいいけど、光も早く脱ぎなさいよ」

「えぇー、最後までストリップ見せてよ」

 

 コーデリアはちょいと躊躇ってから、こちらに向き直り、前にかかっていた髪を背後に梳くと、後ろ手に組んで胸を突き出すように張った。

 最初の頃に比べて主張を強めた膨らみがさらけ出される。じぃーっと見惚れていると、ピンク色した突起が可愛らしく勃起した。

 

「おっぱい大きくなった?」

「誰かさんがいっぱい揉むからよ」

「なに、誰が俺のコーデリアに触ってるんだ」

「あなたよ」

 

 ジトっとこちらを見つめながら、コーデリアはするするとショーツを下ろす。整えられた陰毛に隠れた割れ目に視線が吸い寄せられる。

 片足ずつショーツから足を抜くたびにコーデリアのオマンコが歪む。見られて興奮しているのか、粘液が分泌されて陰毛がテカっていた。

 

「ほんと綺麗になったよね、コーデリア。いや、最初っからとても綺麗だったけど、よりね、より」

「喜んでもらおうってがんばってるもの。ふふ、嬉しいでしょ」

「そりゃあもう! 無限に惚れ直しちゃうね」

 

 全身を見せつけるようにゆっくりと一回転するコーデリア。

 引き締まった肢体が艶めかしい。決して肉付きがいいとはいえないものの、それはコーデリアが重ねてきた努力の成果である。

 

 女のコらしい形を保ちながらも、よく見れば肌の下には確かな筋肉があるのがわかる。合気道によって形作られた健康的なエロス。

 たまらなく情欲を誘うと同時に、裸婦像のような素直に感心してしまう美しさだった。

 俺も衣服を脱ぎ捨てて、待ちきれずコーデリアの尻を撫で回しながら風呂場に連れ立つ。

 

「光、座って座って。洗ってあげる」

「ん〜、なんだ? 積極的だな」

「今日は甘やかしてあげたい気分なの。だから光もいっぱい甘えていいわよ」

「ママ〜、おちんちん腫れちゃって痛いよ〜。ナデナデして〜」

 

 しばかれた。

 

「次は強めにいくわよ」

「マゾじゃないから勘弁。ちょい待ち、今トイズを解除する」

「トイズ? なにかしてたの?」

「落ち着こうとか、余裕を見せようとか、そうするために使ってたんだ」

「なんでわざわざそんなことを」

「コーデリアが俺のために綺麗になってくれたのと同じだよ。好きな人には良いとこ見せたいんだ」

「もう、ほんとにカッコつけなんだから」

「つめた!」

 

 コーデリアがシャワーを俺の頭から浴びせる。出始めの冷たいやつだ。

 

「じゃあ今日は光が隠してた一面が見られるのね。すごく楽しみ」

「あぁ期待してな」

 

 そう答えて、我がことながら驚愕する。

 素を見せるのに抵抗がなくなりつつあった。

 いつかしれっと俺のトイズのことすら話してしまいそうで怖いな。まったく、どれだけ心酔してしまっているのやら。

 そんな考えを遮るように、柔らかい感触が背中いっぱいに広がった。

 

「……んっ……」

 

 コーデリアは俺を後ろから抱きしめると身体を擦りつけ始めた。

 驚いたが、あえて後ろは見ずに背中に感覚を集中することにする。ぬるぬる滑るボディソープによって摩擦もなく、コーデリアの前面が俺の背中に押しつけられていた。

 無駄な肉のないお腹、それとは正反対のふわふわなおっぱい、どんどん硬くなっていく乳首。余すことなく密着する女のコは、トイズによる制御を外した俺の男を昂ぶらせていく。

 

「んっ、んっ……ぁ、これ気持ちいい……」

 

 切なげな吐息が耳元に吹きかけられる。

 極楽か、俺はまた死んだのか。脳を侵す吐息と、ぬちゃぬちゃとしなだれ掛かる女体に身も心も蕩かされる。

 考えるための頭には血がいかず、代わりに下半身へと落ちていく。

 瞬間、背中にあった幸せが離れていった。

 

「あ」

「そんな残念そうな声出さないの。次は前洗ってあげる」

 

 コーデリアは俺の肩を撫でながら正面に回り込むと、足の上に座った。

 挿入はされていない。座る際にコーデリアが押さえつけたからだ。

 ぎゅうっと俺に抱きつくとコーデリアは動き始める。

 胸を優しく押し付けて上下に揺れる。継続する甘い快楽にコーデリアの表情も蕩けていた。

 恐らくは同じことがさっきまで背中で行われていたのだろう。

 

「背中もよかったけれど、こうして向き合うほうが好き。光の気持ちよさそうな顔がよく見える……ふふっ、私だって喘がされてるばかりじゃないのよ」

 

 しかし行為は同じでも俺が受ける結果は違う。なにせ今、コーデリアは俺の一物の上に乗っているのだ。

 彼女が身を捩るたびに、ぷにっとした淫唇が愚息の上部を掠めていき、桃尻が両側から挟み込んでくる。

 

「こ、コーデリア。それやばい、出ちゃうって」

「我慢できそう?」

 

 俺は首を横に振る。

 

「まだ射精されると困るし」

 

 そう言ってコーデリアは俺の股間から退く。

 ほっとしたのも束の間、コーデリアが俺の物を撫でた。ビクンと腰が跳ねる。

 

「くすくす……ほら腕、伸ばして」

 

 翻弄される俺の腕を楽しそうに引いて、そこにまたがる。自慰をするようにコーデリアが腰を振り、自らの性器をこすりつける。

 次第に泡立っていたソープが、とろりとした透明な愛液に洗い流されていく。

 もはや洗うも何もない。快感を貪るための行為と化している。

 

 直接刺激が加えられていた先の行為と違い、射精を促されることはない。今にも決壊しそうだった精は引っ込んでいる。

 引っ込んで、睾丸でさっさと外に出させろと荒れていた。血液が流れ込んで痛いくらいパンパンに膨れ上がっている。

 熱い。股間が煮えたぎっている。

 もう我慢なんてできない、俺の上で淫靡に踊る雌を早く犯したい。

 

 だけれどコーデリアは俺にそのままでいるよう言い、洗体を続行する。

 

 反対の腕も同じように、もはやボディソープなんてほとんど全部流れ落ちたというのに、追加することなくそのまま、愛液を全体に塗るようにして余さず女性器を触れさせる。

 

 指を一本ずつ膣へと招き入れ、ぎゅうぎゅうと締め付けながら抽挿する。その間、洗っているんだからと、俺が指を動かすことは禁じられた。

 

 跪き、縋り付くように俺の下腿を抱き寄せる。男根には触れないギリギリの際どい部分から、足の指の一本一本までを慈しむように丁寧に手のひらで愛撫する。

 

 全身を残さずコーデリアが触れるまで待たされ、俺の剛直は熱り立っていた。

 

「お前覚悟しろよ、一人で好き放題イキやがって。焦らされた分めちゃくちゃにしてやるからな」

 

 ベタつく分泌液と泡を流して、体を拭くのもそこそこにコーデリアをベッドに連れ込む。

 ゴムを付けようと箱を手にするとコーデリアに呼び止められた。

 

「あ、待って光」

「なんだよ。これ以上待てないぞ」

 

 ゴソゴソと手荷物をあさり始めるコーデリア。

 なにをしようとしているのかは知らないが、どうも焦らそうとしているわけではないらしいし、十数秒くらいは待ってあげよう。

 背を向けるコーデリアのお尻をこっからどうしてやろうかと眺めていると、なにか薬のシートを見せつけてきた。

 

「私ね、最近こういうの飲み始めたんだけど」

「……ピル?」

「うん。だからね、ゴムは無しで中に欲しいなって……だめ?」

 

 シートで顔を隠すように持ち上げ、顔を赤らめながらコーデリアがおねだりする。

 迷いはなかった。

 勢いよくコーデリアを押し倒す。薬が転がっていった。

 

「んっ! んむ……れろれろ、ちゅ、ちゅぱ……」

 

 唇を貪り、舌を伸ばして絡めあう。

 優しく微笑みながらコーデリアは俺の頭を撫で、口内をまさぐる俺の舌を迎え入れる。

 必然上にいる俺の口からは、唾液が垂れてゆき、コーデリアの口腔へと滴る。

 

「もう前戯はいらないだろう、入れるぞ」

「うん……きて」

 

 キスを続けたまま記憶を頼りにチンコで穴の位置を探る。もどかしい。割れ目の上を何度も通り過ぎていく。

 突き立てようと腰を動かすたび濡れそぼった陰毛がぬちゃりと亀頭を撫でる。

 細やかな刺激に、それでもなんとか堪えて、とうとう入り口を捉えた。

 待ちわびたコーデリアの膣に先端が包まれ、そこから力を込めてグッとめり込ませる。

 

「あっ……ふぁ……光のが、はいって……くる。熱くて、硬いのが……直接私の中をっ、ごりごりって……拡げてるっ」

 

 生でシているという興奮もあるのだろう、締りのいいコーデリアの膣は普段以上に激しく搾り取ろうと締めつける。

 ふわふわで甘々なお姉ちゃんオマンコは、俺を全力でもてなそうと蠕動していた。

 勇んだはいいものの、気を抜けばすぐにでも吐精してしまいかねない。奥へと引きずり込むようにうねる襞に抗い、ゆっくりと慎重に潜っていく。

 

「お……奥まで、入って……きたぁ」

 

 中のツブツブがぞわりと棒をなで上げ、最奥にたどり着くとぢゅうっと子宮口が亀頭に吸い付いた。

 長くは保ちそうにない。こみ上げる射精感を抑えるため荒く息を吐く。こんな入れただけで出してしまうなんてみっともない。

 そんな考えを見透かすようにコーデリアは両足で俺を捕えて言った。

 

「光ぅ、我慢なんて……しなくていいから。はやく私の中……精子でいっぱいにして」

 

 その言葉で吹っ切れた。またしてもトイズに頼ろうとしていたが、もう必要ない。

 コーデリア自身言っていた。甘やかす、と。

 ならとことん甘えてしまおう。

 コーデリアの御御足がガシッと俺の腰をホールドしているので、小刻みに腰を振る。

 

「あっあっあっ、────光! これっ、すご……っ、あんっっ!」

 

 グチュグチュと結合部が水音を立てる。

 限界間近なのは俺だけではなかった。開発されて馴染んだコーデリアの身体は、間隔の狭いピストン運動に敏感な反応を返す。

 肉棒を咥える雌穴も、頭を抱える腕も、腰に回した足も、堪えるように力いっぱい抱きついてくる。

 

「いっ、いぃっ……あっんっあぁぁ……だめ、ぁあっ……奥そんな、めちゃくちゃにしちゃ……っ、だめぇ……」

「コーデリアも我慢するんじゃねぇよ! せっかく連続でイケる身体なんだ、遠慮するな」

「あっあっあっ、んぁあっ、ふっ……ふぅぅぅん」

 

 コツコツと子宮口を小突くたびに、軽くアクメしたコーデリアの膣肉はビクビクと震え、さらなる快楽が与えられる。

 

「うっ、ふぁああっ……わたし、また……ぅぅあっ、くぅぅ……喘が、されてるぅ」

「イけ、イけ! 膣内に射精されてイってしまえ!」

「イクっ! イっちゃ……んぁっっ、はぁああああっ! ああぁぁ────っっ!」

 

 ──ドビュッ! ビュルルッッ、ビュクッビュクッッ! 

 いつものように腰を限界まで押し付けて射精する。

 いつもと違うのは、放たれた精液を受け止める袋が無機物ではなく、亀頭に吸い付く子宮であるということだ。

 

「〜〜〜ぁぁああっ! ぁぁっ、ぁ……は、はっ、はっ、……ぁ、熱……熱いのが、私の深く……びゅーびゅーって、叩いて、るぅ……っ!」

 

 溜まりに溜まった白濁液を注ぎ込む。

 コーデリアの媚壺は淫らに肉棒へと絡みつき、中に残った一滴までもを搾り取ろうと締め上げる。

 背筋がゾクゾクするような快感に身を任せ、密着した体を捩り、膣襞に擦り付けるようにしてコーデリアの女が望むように、余さずそこへ吐き出していく。

 

「はぁぁああっ! んぁっ、んぁあぁぁンっ! あっ……はぁああ……あっあっ、あっ、ぁぁあ!」

 

 ぬぷぷ、と物をコーデリアから引き抜く。

 どろどろの白濁は始め、注ぎ込まれた子宮の中に留まっていたが、射精の余韻に浸っているうちに粘性が落ちて流れ出てきた。

 トロっと秘裂から精が垂れてくると、コーデリアは名残惜しそうにそれを指で掬う。

 

「あ、だめ……光の精子が、でちゃう」

 

 白液を押し戻すためか、指で掬ったそばから自らの淫唇へと塗りたくる。

 わざとなのか、そうでないのか。マスターベーションのような形になったあまりにも卑しい行為に、またムクムクっと俺の剛直に血が流れ込む。

 

「ゃん」

 

 コーデリアをひっくり返し、仰向けに寝っ転がらせると、愛液と精液が混じり合う媚肉へと一物をあてがった。

 

 ■◆■

 

 結局休憩時間が終わるまで、体勢を変えながらただ何度も交わった。

 いろいろ小道具があるらしかったのにもったいない。

 付き合いも三年目というのに、いまだ飽きもせず普通に互いを貪り合っている。

 

「『えらいえらい。お姉ちゃんのオマンコにいっぱい出せたね』みたいなことをしたかったのに」

「無理無理。それやるには弱すぎるよ」

「むぅ~」

 

 それにしてもずっと覗き見てやがったなぁ、こいつ。

 あれから一時も離れなかった幽霊に視線をやる。恥ずかしがりながらずうっと近くをふわふわ飛んでいやがった。

 害はなさそうなんだがなぁ。

 まあいいか。見られながらというのも、存外悪くない。

 

 右腕に抱きつくコーデリアの頭を撫でる。

 嬉しそうに自分のお腹をさすっては、股をすり合わせる彼女の耳に顔を寄せ、提案した。

 

「コーデリア、帰る前にさ、公園寄ってかない?」

 

 すでに日は落ちていた。




寮での一幕

「ただまー」
「何時に戻ってんだ」
「いやぁ、ミルキィホームズやってる利点よね。門限が実質なしなの」
「事件関係ないだろ」
「それよりさ、憑かれたんだけどどうしよう?」
「寝れば?」
「寝たらなくなるかな」
「取れるんじゃね」
「じゃ、おやすぅ〜」

■◆■

「ダメじゃん」


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21話※(ネロ)

ミルキィのゲームって、好感度でエンディングが変わるんですけど
1を初プレイ時のヒロインがネロだったんですよね〜

さておき、前回のネロ回で省略した話題をここで


 どっさりと皿にケーキを積み上げてネロが戻ってくる。

 すごく幸せそうに席につくと、にへらと頬を緩ませた。

 

「はぁ〜幸せぇ」

「ちゃんと食えるのか、それ」

「大丈夫、大丈夫。甘いものは別腹だから。わぁ〜、どれから食べようこれ」

 

 目を輝かせるネロ。楽しそうでなによりだ。

 先日の事件でできた借りを返すべく、俺はネロをケーキバイキングにつれてきていた。

 注文したコーヒーに口をつけながら、口いっぱいに甘味を詰め込むネロを眺める。

 

 元が野生児なネロはあまりお行儀がいいとはいえない。

 だがあばたもえくぼというくらいだ。

 もっもっ、とリスみたいに頬を膨らませる様子は、借りを返すどころか、増えるんじゃないかってくらいに可愛らしい。

 

「むぐむぐ……そうだ光、いろんなの食べたいしはんぶんこしない?」

「その提案するの遅くない?」

「いや〜とまらなくって。じゃはい、あ〜ん」

 

 半分かじったタルトをこちらに差し出してきた。口を開けて顔を寄せると、タルトを突っ込まれる。

 

「んぐ、これ美味しいな」

「ふぉふぉふぉ、光は素直じゃのぉ」

「なにキャラだよ」

 

 俺が取ってきたのとネロのとを比較して、ネロが取ってきていないものを探す。見繕ったそいつをだいたい半分スプーンに取り分ける。

 適当に選んだんだが、これなんていう菓子なんだろうか。まあいいか。

 

「はい」

「あー……むぐ」

「これどう? 美味しい?」

「ん〜、すっごく幸せ」

「そりゃあよかった。他に食べたいのあるか」

「じゃあ……それっ! あ〜」

 

 そのまま制限時間いっぱいまでベタベタ食べさせ合いっこしながらバイキングを楽しんだ俺たち。

 カフェを出て、大きく伸びをする。

 

「あ〜、よく食べた」

「美味しかったね、また来ようよ」

「事件解決後のご褒美とかかな。頻繁に来るには重いわ」

「僕は毎日でもいいんだけど」

「アンリが用意してくれてるでしょ。あれで我慢しなさい」

 

 事務所にある菓子類をほぼほぼ胃袋に納め続けるネロを嗜める。

 

「それで次はどこに行くんだ?」

 

 今日は一日ネロに付き合うことになっているが、なにをやるのかはネロが決めていた。

 

「ん……ちょっとね。着いてきて」

 

 言われるがままネロに手を引かれていく。聞いてみても目的地は内緒と返された。

 しばらく歩いて、足も疲れてきた頃。たどり着いたのは再開発の裏側、寂れた廃墟だ。

 マンションかなにか、そこそこ大きめの建造物だ。壁には蔦が這っていて、正面から中に入ると床には草が生えていた。

 

「ここは?」

 

 ひょいと手を離したネロは、懐かしそうにゆったりと見て回る。

 

「なんだと思う」

「うーん。そうだなぁ、昔ここで秘密基地でも作ってたとか」

「あはは、半分くらいは正解かもね」

 

 ネロが振り向く。いつもと同じ、気負いのない姿。

 

「ここ、学院に来るまで拠点にしてたんだ」

「野生児やってた時のこと?」

「そーそー。まあ、ここだけじゃないけどね」

 

 人を嫌って、人間社会から離れるみたいなことをやっていたらしいネロだが、マジでこんな生活環境にいたのか。

 

「てことは女のコの家に遊びに来たってことか」

「そうなる……のかな? なんかちょっと微妙じゃない」

「こういうのいつぶり……いつ、……あれ、もしかして初になるのか?」

「えぇ〜絶対嘘でしょそれ」

「活動範囲が学院に寄ってるからなぁ」

 

 アンリたちの実家とか行ったことないんだよな。一回行ってみたくはあるんだけど。

 どっかで見たことある美術品がいっぱい飾ってありそうだし。

 

「へぇ。じゃ僕が一番乗りってわけだ」

「ははは、そうなるね。我ながらビックリだわ」

「なーんか、いろいろ基本的なことすっ飛ばしてそうだよね、光」

「家庭環境に踏み込みづらい面々なんだよ」

「あぁ……、……うん、まあ、とりあえず置いておこうか。じゃあ案内するよ」

 

 そう言ってネロは歩き出す。

 ここで寝ていたとか、あそこで動物たちと触れ合っていたとか、そこは危ないから近寄らないようにとか。

 昔話を添えながら解説をしてくれる。

 

「にしてもネロはすごいな」

「? なにが」

「普通人嫌いだからってここまではできないでしょ。俺には無理だな」

「……無理だったの?」

「いやいや、やろうと思ったことなんてないけど」

「ふぅん」

 

 ネロが壁にもたれ掛かり、物思いに耽るように黙った。

 

「ねぇ」

「どうした?」

 

 数秒静かにしていたかと思うと、ネロが問いかけてくる。

 はて、なんだろうか。俺のなにかが気になっているような感じであるが、これといって心当たりはない。

 ネロに問い詰められるような話題には事欠かないが、わざわざこんなところまで来てから聞くようなことでもなし。

 

「なんで光は人を嫌いじゃないの?」

 

 一瞬、なにを聞かれたのかわからなかった。

 衝撃で頭が真っ白になり、それからじわじわと言葉が染み込んでくる。

 

「どういう意味だ」

 

 と、問いかけてみることにした。実際、唐突にすぎる部分はある。早とちりで変なことを言うわけにはいかない。

 

「光も僕とおんなじで人の心が読めるんでしょ。でも僕と違って、わりと誰とでも仲良くやれてる。だから気になってたんだ。そんな感じの意味だけど」

 

 つまるところ、俺の正体を知っているということだった。

 

「いつから気づいてたんだ、ていうかどこまで……いや、俺のトイズをどういうものだと思ってる」

「気づいたのは出会ってからすぐの頃かな。みんな何も怖がらずに僕に触れるんだもん。光が心を読めてるのはすぐわかった。それで自己暗示みたいに言ってるのに人の心がよめるんだったらさ、たぶんその感情操作は人にも使えるんじゃないかなーって、思った」

「そうか……」

 

 だいたいバレているということか。

 こういう事態を考えることはあった。だが事前に想像していたような恐ろしさはなかった。

 本気で好きになっていたからだろうか、こんな隠し事が暴かれて、むしろ清々しい気分ですらある。

 

「さて……どこから話そうか」

「人が嫌いじゃない理由」

「こっちは埋めてた爆弾掘り起こされたとこなんだぞ! もっと興味を持て! 洗脳云々の部分に」

「その辺はもう一人でやったんだ。僕はほんとに光のことが好きなのか、操られてないかってね。でも冷静になって考えてみてもなにも変わらなかった。僕は光が好き」

「それ込みで操られてるとか考えねぇの」

「光のトイズがそこまで強力なら、モテる努力とか必要ないし、そもそもこんな風に疑えないでしょ」

「ごもっともで」

 

 全部ぶっちゃけてしまいたいところだが、それは俺の都合であってネロの求めているものじゃないみたいだ。

 許してくれそうな相手に懺悔まがいのことをするのはやめにしよう。

 個人的にはあまり話したくはない部類のことではあるのだが、仕方ない。

 

「じゃあ話そうか……実を言うと俺も、昔はネロみたいに人が嫌いだったんだ」

「へぇ〜、なんか意外……そうでもないか」

「まあね、ネロは触れた相手だけど、俺は視界内の全部が勝手に読めるから、むしろネロより酷かったかも。昔話をあんまりしないのもそれが理由で、どうでもいいと思ってたから正直ほとんど覚えちゃいないんだ」

 

 人によっては、そんなに変わっていないと思われるかもしれない。

 今と同じように、人に好かれるような言動を意図して取っていた。ただ、今とは違ってずっと作り笑いだっただけで。

 学校行事だってちゃんと参加して、クラスメイトと一緒になにかをやっていたはずだ。でも何一つ記憶にない。昔の俺は、それらの全てに価値を見出していなかった。

 

「で、その、なんていうか……すげぇささやかな台詞一つでアイデンティティクライシスして人嫌いが治ったんだけど」

「なにそれ、誰に言われたの? コーデリア? それとも会長さん?」

「学院に入る前の話だよ。そうでなきゃ探偵学院になんて来てない」

「僕にとってのエリーみたいな人が光にもいたんだ。それでなんて言われたの?」

「…………、…………たぶんネロもどっかで聞いたことあると思うし、別に言わなくてよくない?」

「いや言ってよ、なんでここまできて隠すのさ」

「……じゃあ言うけど……『まあ人間、良いとこより悪いとこのほうが目につくものだから』って、言われたんだよね」

 

 こんな、どっかの安っぽい自己啓発本にさえ書いてるような言葉に負けるくらい、俺はつまらない人間だった。

 

「……うわぁ」

 

 ネロが苦虫を噛み潰したような表情でうめき声をあげる。

 

「ようするに『お前の性格が悪いから人が嫌いなんでしょ』って言われたわけなんだけど」

「意訳するのヤメてよ!」

「そんなわけで人嫌いを克服したんだ」

 

 思い返すだけで心が苦しくなるような黒歴史だ。

 ほんと俺はなにをやっていたのだろうか。

 特別な力を手に入れたというだけで、特別な人間になったわけでもないのに。

 

「もうちょっとこう、優しい考え方みたいなのを期待してたんだけど。思ったより荒療治だった」

「そんなもんでしょ」

 

 なんだか妙な期待をしていたネロには悪いと思うが、俺は本当にこんな程度の出来事で変わったのだ。もうアホかと。

 

「で、憧れとかなんとか込めて学院にやってきて、みんなに一目惚れしたんだ」

「気が多すぎない」

「エリーに一瞬で絆されたやつには言われたくないなぁ」

「うぐ……そこ突かれると弱いなぁ」

「チョロいよねぇ、俺たち」

 

 心が読める分、表面的な言動や外見以上に内面的な部分に大きく影響を受ける。

 人は見た目が八割なんて言うけれども、俺たちに限っては内面が八割、あるいはそれ以上だ。長々と付き合ってようやく本当に優しい人だとわかる、とかそうはならない。見れば、あるいは触れればそこまでわかるのだから。

 人嫌いをやってた頃の俺だってコーデリアたちと逢えば、恐らくは改心とまではいかずとも、人間悪いのばっかじゃないんだな、くらいには考えられるようになっていただろう。

 

「どう? 参考になった?」

「心が痛かった」

「そりゃよかった。で、聞きたいことはこれだけか?」

「うん。ありがとう……ちょっと行動を改めようって思ったよ」

 

 黒歴史を引っ張り出してきたかいはあったか。

 

「これで借りは返せたかな」

「なーに言ってるんだか。それはもう昼のデートで返してもらったでしょ。ほら、どうやって返してほしい?」

 

 言いつつネロはシャツの裾をたくし上げ、ショートパンツをずり下げる。胸のあたりから下腹までが大きくさらけ出された。

 ごくんと唾を呑む。

 きれいなお腹に手を伸ばそうとして、躊躇ってしまう。いいのだろうか、このまま流されて。甘えて。

 

 ネロは気にしないと言っているが、ネロだけの話じゃないんだ。

 悪いことをやってきたという自覚はある。咎められなかったからといって全部なかったことになるわけじゃない。

 

「もー、僕がこんなに誘ってるんだから早くきてよ」

 

 まあいいか。気にせずいこう。

 剥き出しになった乳首に吸い付く。口に含んだ突起物を念入りに舐っていくと、次第に硬くなってきた。

 

「ふぁぁ……ん、んぅっ、これ気持ちぃぃ」

 

 反対の胸には手をやって、薄く膨らんだ乳房の柔らかさを楽しむ。ふにふにと掌中で歪ませて焦らしながら、唐突にキュッと桜色の乳先を摘むとビクン、とネロが震えた。

 

「ふひゃぁっ! いきなり摘んじゃだめぇ」

 

 指でコリコリっと、敏感なネロの乳首を責め立てる。

 与える刺激を段々と強めていく。心地のいい喘ぎが耳に入ってきた。

 

「ひぅ、おっぱいに……跡が、ついちゃう」

「いっぱいつけてやる」

 

 ちぅ〜、と乳房に強く吸い付く。くっきりとキスマークが残るように、同じ場所に何度も口づける。

 唇の形に赤く跡が残ったのを確認して、その上にそっとキスを落とす。

 

「よしよし。綺麗にできたな」

「僕の身体に光のモノって証、つけられちゃった」

 

 甘い声で媚びるようにネロが囁いた。背筋がゾクゾクとする。

 

「じゃあ今度は僕がつけるね。どこがいいかなぁ、やっぱり首? よく見えるようこの辺につける?」

 

 俺の首をそうっと撫でて、顔を近づける。

 

「服で隠れるとこに頼むよ。探偵活動に影響が出そうだ」

「うーん、残念。なら僕も胸につけちゃおーっと」

 

 俺の言葉に一瞬不満そうにするものの、すぐにいたずらっぽく笑うと俺の胸にしなだれかかってきた。

 唇を舐めて湿らせると、シャツをめくって先程の俺のように吸い付いてくる。微かな痛みと、口づけの多幸感が俺を満たす。息継ぎをしながら跡をつけようとするネロが愛おしくて髪を撫でる。

 

 アンリたちと比べて、そんな美容に気を使ってるってわけでもないだろうに、こうも髪が柔らかいとは素晴らしいな。

 なんて考えていると、ネロがガリっと噛み付いてきた。

 

「いたっ」

「他の女のこと考えないでよ」

「ごめんごめんて」

 

 ムスっとするネロの額にキスした。もう一回、今度は甘噛みしてくると、マーキングを再開する。

 頭を撫でる手を動かし、形のいい耳を縁取るように触り、頬に触れた。どこを触ってももちもちで弾力があり、なによりも柔らかい。

 感触を確かめていると、マークをつけ終えたのかネロが口を離す。

 

「満足した?」

「なかなか難しいね、これ」

「ちょっとずつ慣れてけばいいさ。どうせこれから何度でも機会はあるんだから」

 

 ネロの小さな身体を抱きしめる。改めてすごい体格差だ。

 こうして立って並べば、ネロの背丈は俺の肩くらいまでしかない。

 背徳的な興奮が奥底から湧き出てくる。

 

「そろそろ我慢できない、ネロに挿れたい」

「うん……いいよ」

「壁に手ついて」

 

 指示を出すと、ネロがその通りに壁によりかかり、こちらに尻を付き出す。

 腰に手を回して、ショートパンツの留め具を外すと、そのまま脱がせた。レモン色のショーツはぐっしょりと濡れていて変色している。

 

「服は汚さないでね。せっかくデートのために買ってきたんだから」

「自分で汚してるじゃないか。ほらこんなに」

 

 ショーツの上から秘裂をなぞり、ねちゃつく愛液をすくい取ってネロに見せた。

 

「見せなくていいよ、そんなの! うぅ〜恥ずかしい」

「くっくっ」

 

 顔を赤くするネロの姿に思わず笑ってしまった。睨むようにネロが顔だけこちらに振り向く。

 

「もお、ふざけてないで早く挿れてよ。わかるでしょ、僕だってもう我慢できない」

 

 誘うようにネロが腰を振る。排泄用のすぼまりがヒクヒクと蠢いていた。

 急いでチャックをおろしてパンパンに勃起した一物を取り出してゴムをつけ、割れ目に宛がう。

 先端が熱い肉に触れた。ネロの性的興奮が伝わってくるようだ。じんわり温かい人肌の熱を受けながら、腰を掴んでゆっくりと押し進める。小さい穴に亀頭が包み込まれた。

 

「んんぅっ……入ってきたぁ……」

 

 亀頭だけを擦るように浅くピストンして馴染ませていく。

 次から次へと溢れてくる潤滑剤によって、一突きごとに奥まで入るようになる。

 

「あっ、く、ぅぅ……奥ぅ、奥まできたぁ……ふぅふぅ……お腹の中に、光がいるのがわかる」

 

 何度か小休止を挟みながら、俺の愚息はとうとう根本まで入り切った。

 いまだ狭く、過剰なくらいに締め付けてくる未発達な性器ではあるが、始めの頃に比べてそれだけではなくなっていた。

 精を搾るようにネロの細かい膣襞が蠕動する。こみ上げてくる射精感に耐えながら、ゆっくりと前後運動を開始した。

 

「〜〜っぅ、ン、ぁあッ、あ、あっ!」

 

 ヂュッポヂュッポ……と蜜がかき回すたびに空気を孕んで泡立つ。

 

「んんっ! ぁあああっ! そこぉ、もっと突いてぇ! あっあっ……気持ち、いいっよぉ! 頭の中っ、ビリビリして、るぅ……!」

 

 突くたびに軽い絶頂に達しているのか、小刻みにネロの膣内が痙攣しては襞が肉棒をズリズリと擦り上げる。キツキツのおまんこは絶頂によって更に締め付けを増し、まるで肉を削っているような気分だ。

 すでに十分に快楽を得られるようになっているみたいなので、俺も遠慮なく腰を振っていく。

 パンッパンッ! と小気味よく肉のぶつかる音が立つ。

 

 血が下半身に流れ込んで頭に回す分が足りなくなっているのか、目がチカチカする。

 ハァハァと息を荒げながら快楽を求めてスピードアップした。

 

「ネロ、好きだよネロ!」

「ぼくもっ……すき、ぃいっ! っあ、あ゛っあ゛っ……ひかるの、おちんちんがふくらんでっ、射精()して! ぼくのおまんこできもちよくなってぇっ!」

 

 蕩けた声でネロが射精を懇願する。こちらを振り向いたネロの目は潤んでいて、開けっ放しで喘いでいた口からは唾液が垂れていた。

 世界で俺だけが見ることを許された、クールなネロの快楽に溶けた表情。唇を重ねて舌を絡める。

 上も下も、そして互いのトイズで心までも繋がったまま、俺たちは快楽を貪り、とうとう限界を迎えた。 

 

「──ぁっ! ふぁぁあぁぁっ! ぁぁあんっ!」

 

 ドビュルルル! 

 腰が抜けるような射精、ドクンドクンと肉棒が脈打ち、それに合わせて何度も白濁を排泄してゆく。

 一滴も余さず吐き出させようと肉壺がうねる。深く絶頂したらしいネロは力を振り絞りきったのか、ぐったりと力が抜けたが、それとは反対に膣内はキツイままだ。

 ネロを支えながら、愚息を引き抜こうとする。

 甘えん坊なところを見せる年下おまんこは、まだここに居てと言わんばかりにしがみついてきた。

 

 ゴムが取れそうになりながらもネロから竿を抜き、ずっしりと重たい精液が溜まったそいつを取り外して口を縛る。

 

「……光の舐めたげる」

「汚い……いや、ありがと。死ぬほど嬉しい」

「んっ、チュ、チュプ…………んグ……レロレロ、ぐぽっぢゅぽっ」

 

 躊躇なく汚れた肉棒を咥えて、愛撫するように舐め取っていく。

 いっつも飴を舐めてるからだろうか、ネロのフェラチオはとても気持ちいい。俺がどこで感じているのかがわかる、というのもあるだろうが、単純に舌使いがうまい。

 まんべんなく棒に舌を這わせたネロは、最後にじゅるるっと亀頭を吸って、精道に残った白液を飲み下す。

 

「あは、光のまた固くなった。ね、もう一回しよ? ゴムはまだあるでしょ」

「時間もね」

 

 とりあえずその前に。

 せっかくだからこのままフェラで一発抜いてもらうとしよう。

 

 ■◆■

 

「光のトイズでこう、気分を盛り上げるとかできないの?」

「あー、そういうのは無理だな」

「なんで? 確かに僕がよく見るのは感情抑えてるとこだけどさ、普段はやる気を引き出す使い方してるんでしょ?」

「感情を大きく動かすと副作用があってね」

「ふーん。ちょっと僕に使ってみてよ」

「いいけど。えぇと、この辺までが違和感なく発動できる限界で」

「う〜む、なんだかちょっと光を好きになった気がする」

「ここを超えるとこうなる」

「うぇ、なにこれ。きもちわるい」

「まあこういう感じ」

「うぅ〜光に騙されたぁ」

「それまぁずっと隠してはいたけど、やってって言ったのネロだかんな」

「これ洗脳じゃなくって精神汚染の類いじゃん。ずっと暗示とかなんとか言ってたから……ほんと騙されたよもー」

「……え」

「なに? 順当に考えてそうでしょ。正の感情弄ってこれなんだから、負の感情弄って攻撃するのがメインでしょ」

「その発想はなかった」

「マジで言ってる?」

「いや考えたことはあるけど。……。それやると反動ダメ入るから」

「……マジで言ってる?」

「うん」

「……うわぁ……」




「幽霊!お前変な嫌がらせ覚えやがって!俺の顔に張りつくのやめろ!なにが気に食わないんだよ、邪魔だっての!」


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女王の誘い
22話


一章ごとに力尽きる系作者です


 視線を少し落とせば、制服の前をどーんと押し上げる霊峰富士がそびえていた。

 その山を下から支えるように手に伸ばせば、手のひらいっぱいにズシッと重たい感触がある。なんとも心地のいい重さだ。

 この世で最も価値のある脂肪分だろう。たぶんアダムの涙よりもグラム単価が高い。

 

 俺の膝に対面して乗っているアンリの豊満な乳房をぐにんぐにんと力を込めて揉む。次第に興奮してきたのかアンリの股間部がジトっと湿り始めた。

 

「……っん、あんっ……ふふ、光は本当に胸が好きね。んんっ、そんなにいいものなのかしら?」

「問答無用に最高でしょ。今更どうしたんだ」

 

 むにゅ、ぐにゅっと指を沈み込ませると、優しく押し返してくる。まるで崩れない特大プリンを持っているよう。

 夢と希望が詰まって膨らんだ巨乳は、触れたところから溜め込んだものが流れ込んできているかのように、指先から幸せを感じている。

 

 わたくしをモデルにヴィーナス作り直せ、と言わんばかりの自信に満ちた露出過多な怪盗衣装を身に着けているくらいにはこの極上の肉体美を自慢に思っている奴だ。

 いきなりどうしたんだろうか。

 

「なのに最近ずーっとあの子達に付きっ切りで、わたくしに構ってくれませんでしたのね」

 

 ああ、うん。そういう不満か。

 むっすーとするアンリは可愛いが、忙しい理由の一端はお前なんだから若干の理不尽を感じる。

 いやまあ、浮気してなきゃなんの問題もなく時間を作れるのだが。……うん。

 

「ごめんごめん。埋め合わせはするさ、必ずね」

「あら、デートにでも誘ってくれるのかしら」

「いやぁ〜」

 

 おっぱいに顔を埋める。ボヨヨンだボヨヨ〜ン、谷間に挟まれて顔の両側から温かくてむにゅうっと包み込まれる。ぱふぱふなんて軽い擬音じゃ足りない重量感だ。

 すぅーはぁー、と鼻で呼吸をする。この鼻孔をくすぐる甘い香りと、蒸れた汗の匂いが俺の脳を蕩かす。

 いろんな味わい方をしてきたけれど、個人的にはこれが一番幸福になれる。

 

「今度打ち負かしてやるよ」

 

 と。

 言った。

 

「……へぇ」

 

 圧のあるカッコいい声だった。顔を上げる。鋭く目を細め、ニィと唇を釣り上げたアンリがこちらを見つめている。

 おぉ、やっぱり顔がいいな。こんな悪どい顔も似合うとは。アンリが最強だったか。

 

「わたくしに勝てる、とおっしゃって?」

「難聴系か? ならもう一回言うけど」

「────」

 

 うつむきがちに黙りこくるアンリ。髪で目元は隠れてしまったが、口は見える。

 俺の煽りを聞いてピタリと閉じてしまっていた口は、先程以上に激しく釣り上がる。

 

「クッ──フフフフ。えぇ、えぇ、必要ありませんわ。一度で十分」

「あんま凄むなよ。怖いだろう」

 

 アンリが立ち上がる。熱が離れたのは至極残念ではあるが、それ以上にいいものが見れたことだ。良しとしよう。

 

「待ち焦がれたわたくしの出番。成長したあなた方と相見えること、楽しみにしていますわ」

「期待してるぜ」

「近いうちに予告状を送ります、腕を磨いて待っていなさい」

「首を洗えじゃないのか?」

「あら? 負けるおつもりで?」

「上等」

 

 ■◆■

 

 ということがあった数日後。

 俺たちはシャロの提案で聞き込み調査をやっていた。

 こんなことに意味があるのかと疑問に思いはするが、みんな楽しそうに聞き込みをやっているので価値はある。

 ぶっちゃけ散歩のついでに捜査をやっているぐらいの気分だ。

 

「どうも〜、今探偵学院の課題で聞き込み調査やってるんですけど、近頃なにか変わったことってありませんでした?」

 

 そうやって暇そうにしている奴を見つけては話しかけて回る。

 ミルキィホームズの知名度はまだそこまで高くない。最初は知られているのかも、とか思いながら声をかけていたが、実際全然だった。

 なのでこうして探偵学院の生徒として聞き込みをやっている。

 冷静に考えれば、普段外を出歩いている時にミルキィホームズとして注目を集めたことがないのだから当たり前ではあるのだが。

 

 朝から始めたこの捜査は「特にないなぁ」とか「ネイルめっちゃキレイに塗れた」とか「ガチャで神引きした」とか、マジでどうでもいい情報が集まっただけで、俺の一日は虚無と消えた。

 お前ら顔覚えたかんな。助けねぇぞ、ヨコハマ壊滅の危機とかに。

 

 ■◆■

 

「ちょっと足が……疲れました」

 

 と、くたびれた様子のエリーが言った。

 すでに日も暮れて、空はオレンジに染まっている。俺たちは聞き込みを切り上げて、学院へと戻ってきていた。

 最初は賑やかにやっていた彼女らも疲れを見せている。

 

「そうね。収穫も無かったわけだし」

「まあなんかやってるにしても秘密裏にだろうしな」

 

 どうせなんも出てこないだろうな、とお気楽にやっていた俺はともかくとして、真面目にやっていたコーデリアは肩を落としていた。

 

「街で聞き込みしようなんて言い出したの誰だっけ〜?」

「だってだって! たまには怪盗帝国に先手を打ちたいよ〜!」

「まぁまぁ、シャーロック。こういうこともあるさ」

 

 疲れていないのはシャロとオペラくらいなものである。

 プロの探偵をやっていたオペラが元気なのはともかくとして、シャロはなんだろうか、あれかな、子供が疲れ知らずに走り回るあれ。

 

「探偵あるあるなんだ」

 

 と、俺は訊いた。

 

「そうだね、成果がないこともままあるかな」

「うわぁお。探偵辞めて怪盗やろっと」

「えぇっ!? 光さん怪盗になるんですか!」

「真に受けんなって……冗談だよ冗談」

 

 鍵を取り出して、事務所の扉に差し込む。

 あれ、開いてる? 

 事務所を出る時に締め忘れてたか。と思い返しつつ扉を引いた。

 

「おかえりなさいませ」

「あれ? 舘さん?」

 

 待ち構えるようにして舘さんが立っていた。

 勢いよくシャロが頭を下げる。

 

「わわ、ごめんなさい! 部屋を間違えました!」

「はい、ストップストップ。僕たち全員で部屋を間違えるわけないでしょ」

 

 と、ネロが言った。まあそりゃそうだ。六人もいて、わりと離れたところにある生徒会長室と間違えるとか間抜けがすぎる。

 

「ほっほっほ、大変に申し訳ございません。鍵が開いていたので中で待たせて頂きました」

「シャ〜ロォ〜?」

「えー! あたしじゃないよ!」

 

 からかうようなネロに対して、シャロは本気で抗議する。

 

「大切なことは絶対に忘れちゃダメっていつも思ってるもん! 絶対に!! 絶対だよ!!」

 

 心の中地雷原か。

 ……全員そうだったわ。

 よく友達やってるなぁ、俺。

 

「落ち着きなって。大丈夫、なんにも忘れちゃいないさ。部屋最後に出たのネロだしな」

 

 ポンポンとシャロの頭を撫でる。事務所の合鍵は全員持っているので、部屋に誰も居なくなる時は最後の一人が戸締まりをするようルールとして決めていた。

 

「あれ? そうだっけ?」

「もう、人のせいにしないでよ〜!」

「へっへ〜ごめん、ごめん」

「ぷ〜」

 

 冗談めかして怒ったように頬を膨らませるシャロ。

 シャロも疲れていたんだろうか。普段ならこのくらいのことを気にしたりはしないし。

 

「それで舘さん、何かご用件でも?」

「ええ、みなさまにお渡ししたい物がございます」

 

 そう言って舘さんが手渡してきたのは装飾された白い封筒だ。オペラが開けると、中身はどうやら招待状だったようである。

 ああ、とうとうここまで来たか。

 最終章一歩手前、アルセーヌ戦の狼煙となる探偵と警察の交流会への招待状だ。

 

 探偵と警察がいつまでもいがみ合ってはいられない、という上層部の思惑に反し、現場は、まあココロちゃんを筆頭にあんな感じなわけで。

 そんな中で俺たちとG4が協力して怪盗事件解決にあたっていることをだしにして、交流を図ろうということだ。

 

「協力……? してたかなぁ……?」

 

 ネロが不思議そうにするが、してたぞ。俺は。

 ともあれG4の面々も、探偵に隔意があるのはココロちゃんくらいなものである。

 他の三人と神津さんはどうでもいいと思ってそうだし、あれが一般的な警察の形になれば事件解決がスムーズになることは間違いないだろう。

 

「明日だって!?」

 

 招待状を読んでいたオペラが驚愕の声をあげる。

 

「な、何? どうしたの?」

「いや、この招待状に……開催は明日の夜って書いてある」

 

 いやぁ原作でもそうだったけど、急だな。

 明日パーティーです、参加してください。なんていきなり言われても普通困る。

 

「ほっほっほ。善は急げと申しますから」

「思いつきが吉日ってスケジュールだ」

 

 詳細はゲームでも出てこなかったが、アンリが絡んでいたりするのだろうか。

 

「でもすばらしいです! あたしたちとココロちゃんたちがもっと仲良くなれちゃう! これってすごいよね! ねっ!?」

「はいはい」

「シャロったら」

「パーティー……なんて」

 

 シャロをけしかけるか。俺たちが仲いいこと前提の懇親だからな。向こうも無下にはできないだろう。

 

「ではみなさま、ご参加ということで。もちろん、小林様も……ですよね?」

「え!? あ、いや! 僕は……!」

 

 途端に狼狽えるオペラ。

 

「ダメなんですか?」

「ダメというか……その」

「え〜、つきあい悪くな〜い?」

「そんなこと言われても」

「寂しいです……」

 

 口々にコーデリアたちが出席するように促す。

 確か探偵としての自分を知っている人が大勢いる場に出たくないとかだったか。

 無理強いするようなことでもないし、助け船を出すとしよう。どうせ最後には参加することになるんだし。

 

「オペラさんは、やっぱこういうの苦手?」

「あぁ〜……うん、正直あまり顔を出したくはない、かな。僕は留守番してるからみんなで行っておいでよ」

 

 ここで俺も行かないっていったら、この後どうなるんだろう。

 

「残念なことですね。会場にはIDOの方々もいらっしゃいますのに」

「IDO? ……それは、どの程度のクラスの?」

「詳細は存じ上げておりませんが、幹部の方々が何人かと聞いております」

「幹部クラスが……?」

 

 最後に謎とチケットを残して、舘さんが部屋を立ち去った。

 

 ■◆■

 

「せっかくのパーティーなのに小林が来ないなんて、つまんな〜い」

 

 頭の後ろで腕を組みながら、ネロが愚痴る。

 

「ごめん」

「まあまあ、そう言うなって。俺もあんま行きたくはないしな」

「え〜」

「お偉いさんが出てくるような場だぞ。面倒すぎるって」

「あー……それは確かに。やなこと言うなぁ」

 

 うへぇ、って顔をするネロ。

 想像するだに気疲れしそうだ。とりわけネロはこういうお堅いの苦手っぽい。

 

「うえぇ、始まる前だってのに気分落ちちゃったよ」

「許せネロ助」

「許してもいいけど、じゃあ代わりに気分を盛り上げてよね」

「どういう『じゃあ』なんだ、それは?んで、俺は何しろって?」

「パーティー用のドレス選んでよ」

「ドレス?」

 

 そんな格好で参戦してたっけか。制服か探偵服で行ってなかったっけ。

 

「そうだな。せっかくだし綺麗におめかしして行こうか。もうちょい休んだら見に行く?明日のほうがいいかな」

「ゆっくり見て回りたいし、明日がいいなぁ」

「おー」

 

 なんだっていいか。いいもん見れそうだ。

 って、事件あるんだったわ。あんましゴチャゴチャした動きづらい格好すると後が大変なのか。

 

「光さん……私のもお願い、します」

「あ。じゃああたしのも!」

 

 そう言ってエリーとシャロも立候補してくる。

 

「いいけど、俺のセンスにはあんま期待すんなよ」

「普段着とか結構センスあると思うのだけど」

「ああ。雑誌のコピペコーデだからな」

 

 擁護してくれるコーデリアにそう返した。

 ラード君みたいな壊滅的な生活をしない限り、最低限の外見レベルが保証された素晴らしき二次元世界の賜物である。

 おかげさまでこんな雑なファッションでも様になる。

 

 と、呑気におしゃべりしていると電話がかかってきた。

 一言断りを入れて、コーデリアたちから離れながらPDAを開く。非通知設定の相手からだった。

 出るかどうか悩みながらも、とりあえず画面をタップして通話を繋ぐ。

 

「もしもし」

『テレビをご覧になってください』

「おっと」

 

 これは出て正解だった。アルセーヌの声である。

 危ない危ない、切らなくてよかったよ。

 それだけ言われて通話は終了した。言われた通りにテレビをつけると、いつぞや怪盗帝国が名乗りを上げた動画と同じ場所に立つアルセーヌが映った。

 

「怪盗帝国!!」

『ごきげんよう。突然ですが本日はこの場をお借りして……ミルキィホームズのみなさまへ「謎」をプレゼントいたします。これはあなた方がわたくしたちから守り抜いた三つの至宝』

 

 そう言ってアルセーヌが取り出したのは鏡と宝石と刀。

 俺たちが怪盗帝国のスリーカードを撃退し、守り抜いた宝物たちである。

 

『わたくしの名誉にかけて誓いますがすべて本物です。ミルキィホームズのみなさまへわたくしからお贈りする今回の「謎」』

『それはこの三つの至宝がある場所……すなわち怪盗帝国の本拠地。これを見事見つけ出し、至宝を取り返して下さい』

『できればみなさまの勝ち』

『できなければわたくしたちの勝ち』

『シンプルな勝負ゆえに謎そのものも引き立つというもの。うふふふふふ……では、ごきげんよう』

 

 画面が一瞬、砂嵐へと変わり、それから通常の映像が流れ始めた。

 

「先生、本当なんでしょうか……。本当に宝は怪盗帝国に?」

「あ、いや、わからない」

 

 シャロの疑問に対して、オペラが曖昧な答えを返す。

 

「だったら早く確かめようよ。ここで考えてるよりさ」

「あの三つの至宝は……警察が直接警備していたはず……」

「なら市警本部に行きましょう!」

 

 ノータイムでG4のところへ突貫することを決定した俺たちは、部室を飛び出した。



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ヤルだけ編
無知なシャロと記念撮影しながらエッチ(嘘)


本編ストーリーを進める気力みたいなものが失われて久しいのでR18部分だけ書きました。
これでやっとミルキィホームズ全員が竿姉妹。コーデリアも気兼ねなくお姉ちゃん振ることができますねw


 空も赤くなってきた頃合い。学院の喧騒も収まり、人気のなくなった校舎の裏で、俺とエリーはこれ幸いと睦み合っていた。

 

「ちゅっ、はむ、ん……んちゅ、ちゅ、ちゅる、ふっふ、ぁあ……だ、だめひか……んん、ちゅぷっ、ぢゅるる……こんなとこで、誰かに見られたら」

 

 何度も何度も口づけを繰り返す。舌先を絡めているうちに喉の奥から唾液が溢れてきた。

 だめと言いつつ貪るように舌を伸ばして俺の口内を擦り上げてくる。それに応えるようにエリーの上体を反らし、奥から溢れる唾液を流し込む。

 

 こくこくと喉を震わせて唾液を飲み込むエリー。もっとちょうだい、とおねだりするように舌を絡め続ける。俺はエリーの喉をそっと撫でた。幾度となく俺の体液が通っていった管だ。

 エリーの身体のいくらかは俺で出来ていると言っても過言ではないだろう。

 

「ちゅぷ……じゅるじゅるる、むぐ……んっんっ……こくん。っぷはぁ……はぁ、はぁ……光さん。だめ、です……ここがくいん……ですよ? えっちなことしてるなんてばれたら……おこられちゃいます」

「いいじゃん。一緒に怒られようよ」

 

 制服の裾を捲り、下から手を差し込む。滑らかなお腹に手のひらを押し付けながらゆっくりと上へと進めていく。

 その度に服がずり上がっていき真っ白な肌がチラ見えしていた。

 指先が少し固い布に触れる。モゾモゾとブラの裏へと潜り込ませて、探り当てた乳首をコリコリっと引っ掻いた。

 

「ひゃんっ! ぁっ、ゃ、ゃぁ、ちくび……そんなに強くしちゃだめぇぇ。……ひぐっ、んぁぁ、あんっ、だめっていってるのにぃ、くにくにしない──」

「なにやってるんですか!?」

「きゃああああ!?」

「うぉわあああ!?」

 

 びくんと心臓が跳ねる。何、誰と声のした方向を向くと見慣れたピンクの輪っかが突撃してきた。

 

「シャ、シャロ!? こっ、これは違うの。ええと……その……これは」

「やめてください光さん! エリーさん嫌がってるじゃないですか!」

「え? シャ、シャロ?」

「だめって言ってることをやるなんて、光さんひどいです! 見損ないました!」

「え、あ、あぅぅ」

 

 助けを求めるように俺を上目遣いで見上げてくるエリー。涙目になっている彼女はかわいいので、なんでも言うことを聞いてあげたいところ。

 だがしかし、ヒートアップしたシャロに俺が弁明したところで意味はないだろう。ちゃんと説明すればわかってくれるだろうが、意味はないということにしておく。

 

「エリー、ごめんね。ほんとに嫌だった?」

「ぇ……えと……ぃ、ぃゃ」

「エリーさん?」

「ぁぅ……い、嫌じゃ……ぅぅ……嫌じゃ……ない、です」

「嫌じゃなかったんですか?」

 

 顔を真っ赤にして頷くエリー。ぷるぷる震えながら涙目をこちらを睨んできたので、親指をグッと立てて返す。

 ペチペチと抗議の目を向けながら叩かれたので俺も説明することとした。

 

「シャロ。俺たちは好きな人同士でヤるコトをヤッてたんだ。でもエリーは恥ずかしがり屋だから、素直にもっとしてって言えないだけなんだよ」

 

 それにほんとに嫌ならぶっ飛ばせばいいだけだしな、と冗談混じりに付け加える。

 

「なるほど! そういうことだったんですね。じゃあじゃあ、それあたしも混ざっていいですか?」

「え……!?」

「いいよ」

「光さん……!?」

「あ、ごめん、つい」

「えっとね……シャロ。好きは好きでも……特別な好き、だから……」

「あたしエリーさんのことも光さんのことも、とってもとっても大好きですよ? それでもダメですか?」

 

 悲しそうな表情を浮かべるシャロ。内心ちっとも悲しそうにしていないのは気になるが。

 

「少しでも嫌だったら言うんだよ。すぐにやめるから」

「やってくれるんですね! わーい、ありがとうございます!」

「うぅ……今日はわたしが……」

「ごめんねエリー。後でたっぷり可愛がってあげるから」

「……はい」

 

 むくれるエリーの頬を撫でてやる。しっかり埋め合わせないとな。本心でやめてって言うくらいシテあげないと。

 エリーが言うかな? 言わないかも。

 

「とりあえずキスしようか」

「あ、待ってください」

 

 これを嫌がられるんなら、この続きはするべきではないと思っていたのだが、どうも違うみたいで。

 シャロはピンクのPDAを取り出すと、それをエリーに預けた。

 

「それで写真を撮ってもらってもいいですか? 自分で撮りたかったんですけど難しそうなので」

 

 ピシリとフリーズするエリー。

 

「お願いしますねー」

 

 そう言い残してシャロはエリーがしていたように俺に抱きついてきた。背丈が足りないので屈んでやると、吐息が感じられるところまでシャロが顔を近づけてくる。

 

「キス、しちゃいましょうか。……んっ。ちゅっ、ちゅ、ん、光さん……キス、気持ちいいです。なんだか胸がほわほわします」

「それはよかった。嫌がられたらどうしようかと」

「えへへ。嫌がったりしないですよぅ。そうだエリーさん。あたしの初めてのキス、ちゃんと撮ってくれましたか?」

「あっ……ごめん」

「もー。もう一回しますから、今度は撮ってくださいね」

 

 ちゅっちゅっ、と今度は先程よりも長く、啄むような口づけを繰り返す。小さくて柔らかいシャロの唇が何度も何度も俺に触れる。

 右手ではシャロの手を取り指を絡め、左手を腰に回して抱き寄せる。マジでちっさいなシャロ。身長体重が小学生並みな彼女、ネロより犯罪臭がすごい。

 俺が抱き締めるとシャロの全身を包み込むようなサイズ感。

 

 そんな防犯ブザー案件をパシャパシャとエリーが隣で撮影する。

 

「ちゅっ、ちゅぷ、ん、ふ、ふぁ……あむ、んちゅ、くちゅ……えへ、唇がベタベタになっちゃいましたね」

 

 顔を赤らめてにへらと笑うシャロ。

 

「光さん。あたし身体、光さんといっぱいチューってしてたらおかしくなっちゃいました。お腹のこの辺りがムズムズするんです。触ってくれませんか?」

 

 俺の手を掴んで自身の下腹部まで持っていかれる。ウエストほっそ。

 制服の中に手を入れ、子宮の辺りを肌の上から撫でたり、負担にならない程度に優しくグッと押してやる。

 

「あうっ、んく、ぐえぇ。あはは、変な声出ちゃいました」

「大丈夫?」

「大丈夫ですよ。エリーさんの服の中を触ってたのはマッサージしてたんですね」

 

 いや、子宮をマッサージなんてしてないが。

 

「でも全然お腹のムズムズが取れません。むしろ触られてどんどんムズムズが強くなっちゃって……エリーさんも光さんとキスしたらムズムズするんですか? いつもしてるんですよね? どうやったら治りますか?」

「い、いつもしてるわけじゃ……えと、おち……おちん……を……んこに、……ぁう、シャロにはまだ早い、かな」

「えー、エリーさんとあたし、一個しか違わないのに。じゃあ光さん! 教えてください!」

 

 ……。

 無知シチュって創作ならよくある展開だけれども、これ以上は犯罪臭とかじゃなくて後で罪悪感にやられそうだ。

 

「シャロ。ここまでは流されてやっちゃったけど、これ以上は。エリーの言う通り早いし、シャロが思ってるより大事なことだから」

「光さんが思ってるよりあたし、光さんのこと好きですよ」

「俺の言ってることがわかるようになって、それでもしたかったらまたおいで。ね」

「むう……光さん、お耳貸してください」

「ん? なに」

 

 耳を向けると、シャロがないしょ話をするように手で覆って、ひっそりと囁いた。

 

「(あたし、記憶喪失ですけど、記憶喪失って知識は消えないんですよ?)」

「(お二人はセックスしようとしてたんですよね)」

「(偶然見ちゃって、あたし嫉妬して)」

「(知らないフリしてたら光さん、あたしのこと抱いてくれないかなって声かけちゃいました)」

「(ダメ、ですか?)」

「あたし、魅力ないですか?」

 

 お前、なんか妙に興奮してるなと思ったら。

 

「後で一緒にエリーに謝ろうな」

「にへへ、あたふたしてるエリーさんがかわいくって」

「超わかる」

 

 このスケベロリっ娘に配慮は不要とわかったところで、じゃあもう障害はない。最後までヤッてしまおう。

 無知シチュは、うん、問題ないとわかれば楽しいからシャロには付き合ってもーらおっと。

 

「そこまで言うならわかった。俺がムズムズを取ってあげよう」

「……、やったー! それでどうするんですか?」

「お腹の中から直接ここをマッサージしてあげる」

「光さん。いつの間にそんなトイズを」

「トイズじゃないよ」

 

 スカートを捲り、下着の上から股間を触る。

 お子様ボディには似つかわしくない、しっとりと濡れた下着。

 

「ここに穴があるでしょ。そこからお腹をほぐすんだ」

「おしっこするところ触られると変な感じします」

「おまんこって言うんだよ、ほら言ってみて」

 

 こいつ調子に乗り始めたな、という目で見てくるシャロ。これはお前が始めた物語だろう。

 ほーら、言って言って。知らないのにつけ込んで、淫語を言わせるなんてあるあるでしょ。

 

「お、オマン……コ」

「声どうしたの?」

「光さんが触るからですー!」

「(後で覚えておいてくださいね)」

 

 あはは、楽し。

 

「え、あの光さん……?」

「ごめんごめん。もうちょっといい子で待っててねエリー」

「いえ……そういうことでは……」

「あ、写真お願いしますね。エリーさん!」

「えぇっ……!? こ、こっちも撮るの?」

 

 起伏の乏しい陰唇を布の上から何度もなぞった。性感を得ているのかくすぐったいだけなのか、モゾモゾとシャロが股を擦り合わせる。

 

「脱がすよ」

「はい」

 

 ショーツに指をかけてずり下ろす。シュルシュルシュル〜。

 シャロが薄桃色のショーツから自分で足を抜く。

 

「お外でパンツ脱いじゃいました……なんだかお股がスースーします」

「へ〜」

 

 スカートを捲って中に頭を突っ込む。ピッタリと閉じたシャロの秘裂からはとろりと蜜が垂れている。

 毛の一本も生えていない、鮮やかなパイパン。そこへふぅ〜っと息を吹きかけてみた。

 

「ひゃぁっ、もう光さん! 変ないたずらはやめてください!」

「はは、スースーした?」

「漏れるかと思いました」

 

 風呂場とかでならともかく、校舎裏でそれは困る。

 お詫びも兼ねて奉仕してあげるとしよう。

 

「シャロ。今から舐めるからビックリしないでね」

「舐め? なにをですって──ひゃあっ! んにゃ、っあん、あん、や、ひか……るさん?! なにしてっ、はぁん」

 

 ベロをいっぱいに出して、下から上までべろんと舐めあげる。まんべんなくシャロの股間部が俺の唾液に塗れるよう、丹念に丹念に舐め回す。

 エリーが撮影しやすいようにスカートを持ち上げて視野を確保。横目に見えたエリーは顔を真っ赤にしながら、PDAを近づけ、クンニしている俺を撮影する。

 

 舌先を割れ目に差し込み、グリグリとねじ込んでみた。指や一物より、ずっと柔らかいんだから多少力を入れても構わないだろう。

 受け入れるための愛蜜を分泌しながらも、まだ挿入に適した状態まで成長しておりません、とばかりに俺の舌を締め出そうとするシャロマンコ。

 舌がスムーズに出し入れ出来るようになるまで愛撫を続行していく。

 

「あっ、あっあっ……んんっ、光さんっ……おまんこ舐めちゃ、汚いです、あんっ、あっ、はぁんっ」

「ほぐれてきたし、今度は指を入れてあげるね。さっきより深くまでいくよ」

 

 一番細い小指から試してみる。つぷ、とどろどろになった秘所に指が入っていく。

 体温の高いシャロの膣内は温かく、散々行った愛撫によって愛液と唾とでどろどろに蕩けているにも関わらず、未だに指の一本ですら窮屈な雌穴。

 ネロの時でさえ苦労したというのに、これはもう挿入らないのでは。

 そう思いつつ、薬指も追加してみる。

 

「あひっ、あっ、あ゛っ……ゆびっ、ゆびふとくって……あんっ、あんっ! あっ、たぁしの……お、おぉまんこっ゛の……なかっ! いっぱいになってて──はぁんっ」

「シャロの身体すごいね。前から色んなとこで才能あるなって思ってたけど」

 

 さらに指を追加して三本目。無理じゃないかなと思わせた膣の締付けはそのままに、シャロの蜜壺は俺の指を咥え込む。

 

「セックスの才能まであるとは」

 

 指がこれだけ入るんだから問題なんてないな。ジジジとチャックを下ろし、陰茎を露出させる。

 

「シャロ」

「ふぁい」

「本番いくよ」

「ほんばん?」

「そうそう。俺の股間にあるこれ、おちんぽを今からシャロのおまんこに挿入れるんだ」

「いれて、ください……あたしのおまんこに、おちんぽいれてきもちよ〜くしてください」

「ちなみに、流石にないと思うんだけど……シャロって生理来てる?」

「せーり?」

「定期的に股から血が出たりする?」

「ないですよぅ。あったら大惨事じゃないですか」

 

 普通あるんだよ。トイズの神秘ってやつなのかなぁ。

 生理が来てないってことは妊娠しないってことで。妊娠しないってことは腟内射精し放題ってこと。

 ……生で腟内に射精し放題のロリボディ……。

 

「あ、あの光さん? 目が怖いですよ?」

「大丈夫だよ〜。怖くな〜い怖くな〜い。それじゃあイイコトしようか」

 

 シャロを校舎の壁にもたれかからせ、一物を宛がう。

 長時間の愛撫の間に俺の愚息ももう限界だ。

 

「(光さんの勃起おちんぽさん、ガチガチですね。そんなにあたしで射精したかったんですか? まだ生理来てないのは嘘じゃないですから腟内にびゅー、びゅーってしちゃってオーケーですよ)」

 

 耳打ちしてくるシャロ、こいつはほんとにもう。

 亀頭を淫裂に擦り付ける。指を抜いた途端に元通り閉じたシャロの秘所に肉棒をゆっくりと押し進めていく。

 

「んっ! ──くふっ、ふぅー……はぁー」

 

 どう考えたって性行為なんてできる体格差ではないのに、指と同様シャロの穴は俺の物を受け入れていく。

 肉棒を半ばくらいまで突き入れると亀頭に触れる物があった。グッと腰に力を入れて、ぷつんと処女膜を破る。

 

「あっく、ぅぅ〜……」

「大丈夫? 痛かった」

「いえ。覚悟してたんですけど、全然痛くなくって。むしろお腹の奥がきゅう〜って気持ちよくなって」

「そっか。まだ全部入ってないから進めるよ」

「はい……あたしも光さんのおちんぽ、全部なかで感じたいです」

 

 挿入を続けていく。ひだひだの少ないシャロの膣は、その分密着感が強く、竿全体を包み込む。強い締付けを受けながら奥に進み「あんっ、あんっ」とシャロが喘ぐ度、膣道がひくつき肉棒を愛してくる。

 もう射精してしまいそうなところをグッと堪えてシャロの中を開拓していっていると、コツンと妙に硬いものに触れた。

 

「あぁッ!? やぁっ、そこぉ……!」

 

 ビクンッと身体を跳ねさせるシャロ。

 

「ここ、弱いの?」

「やっ、だっ、そこは──あ゛っ! だめぇ、だめなところだからぁ! 突いちゃらめれすぅ!」

「それは『もっとして』ってことかな」

「ちがっ……あっあぁ゛っ!」

 

 コツコツと子宮口を小刻みに何度も小突く。

 ピストンする度、大きく喘いで身体を痙攣させる。膣が浅くてすぐ子宮に届いちゃうのに、ポルチオが大弱点とは余りにも弱すぎる。

 なんて余裕ぶりつつ、膣圧が強すぎてこんな些細な動きの中でさえ射精を促される。

 

「イクっ! イクイクイクッッ! イッちゃいますからぁ! これ以上されたらおかしくなるぅ!」

 

 イクとか知らないはずの設定を忘れて髪を振り乱すシャロ。容赦なく一物を絞り上げる彼女の穴はもはや凶器と言って差し支えないだろう。

 相応に慣れたはずの俺でさえ、これ以上我慢は出来そうもない。早く、一刻も早く射精させろと金玉が訴えかけてくる。

 

「シャロ! 射精すよっ!」

 

 大きくストロークを取り、腰を打ち付けるように強く陰茎を奥深くまで捩じ込む。

 ──ばちゅゅんっっっ!! 

 亀頭に当たっていた口を超えて、子宮の中まで届かせる。

 

「~~~~~~っ!!!」

 

 声にならない悲鳴を上げて、シャロが絶頂を迎える。それと同時に俺も限界を迎え、熱く滾る精液をシャロの子宮へと解き放った。

 

 ──どぴゅっ! びゅるる──ーっ!! ぶっぴゅう〜〜〜ッッ! 

 

 頭の中がチカチカと殴られたかのように瞬く。凄まじい排泄感とともに大量の白濁液が俺の中から溢れる。

 長い、長い射精だった。

 ぷしゃあぁぁ、っとシャロが潮を吹いて、力なくしなだれかかってくる。

 

「はぁ、はぁ……シャロ。目茶苦茶気持ちよかったよ、シャロは満足できた? ……シャロ?」

「すぅー……すぅー」

「飛んじゃうほどだったかー」

 

 服を汚されてしまったが、そこまで深くイッてもらえたのであればすべて許すとも。

 ん? あら、ちんぽ抜けない。意識を失ったのに締め付けが。

 

「光さん」

「あぁ、エリー。変なことに付き合わせてごめんね」

「お話があります」

「どうした……って、あ」

 

 ヤバ。

 

「シャロ? シャロ起きて! 説明してもらわないと困る!」

「何も知らないシャロになんてことを!!」

 

 この後、一物を抜こうとしてもう一発抜いてしまったり、起きたシャロがよくわからないまま知らないフリを続けたりして大変だったが事なきを得た。

 

 

 ■◆■

 

 

 オマケ1

 

「エリーさんの撮ってくれた写真。どうしてこんなアングルばっかりなんですか」

「だ……だって、ハメ撮りって……そんなのじゃ」

「あたしがほんとに何も知らなかったらこの写真どうするつもりだったんですか……」

 

 

 オマケ2

 

 後日、シャロから貰ったハメ撮り写真を眺めていると。

 

「ん? エリーから連絡。なんだろう? 画像……?」

 

『たくし上げた服を咥えて胸を露出した写真』

『M字開脚してくぱぁしている写真』

『マッサージ器具を使っている写真』

『恥ずかしいけど撮りました! 使ってください♡』のメッセージ

 

「今度ハメ撮りしようね、と。送信」

 

 

 オマケ3

 

「光さん。あたしは復讐に来ました」

「なんだ唐突に」

「エッチなことを言わされた復讐に来ました!」

「なんか言ってたね、そんなこと。俺も言おうか? 平気だけど」

「おちんぽ出してください」

「いいけど何する気だ?」

(トイズを発動する音)

「お? おおお? な、ナニ! ナニコレナニコレ!?」

「視線を遮っちゃダメですよー。ふふふ、どうですか? あたしの念力オナホコキは。実物では不可能な動きもできるんですよ〜。これで限界まで絞っちゃいますからね」



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咲の初体験のお手伝い

スタリラにミルキィホームズコラボが来ましたね!もう終わってますが。
シャロが写真を撮ろうとしたり、ネロが喧嘩腰だったり、コーデリアがオペラったり、アニメもゲームもどっちも想起させる楽しいストーリーでした。
エリー?エリーはどこでもあんま変わらないので。

ところでミルキィホームズの社内コラボって、異世界からミルキィが!って展開じゃなくて同じ世界観という体で話が進んでいくのですが……スタリラも同じ世界の話だったんですね。
ヴァンガードが同じ世界の話なのは知ってましたが。ミルキィの最終回に普通にヴァンガードのキャラが出てきましたし。

カオスすぎないか、この世界


 数合打ち合ったところで、既に実力の差には勘づいていた。

 手を抜かれている。だがそれでも勝てそうにない。自分が敗北しない範囲で勝負を成立させようとしているみたいだ。

 精一杯抵抗を続けるものの、やはり地力の差は大きく、ジワリジワリと俺が不利になっていく。そして。

 

「くぁー、負けたー!」

 

 画面に表情されるKOの文字。順当に敗北を喫してしまったが、久しぶりにやると楽しいな。

 

「や〜、思ったより強かったね〜」

「昔とった杵柄ってやつですよ。もう一回、もう一回やりましょう!」

「い〜よ〜」

 

 アンリたちは仲良く五人で女子会。オペラは仕事で忙しそう。やることなくなった俺はG4にちょっかいをかけに行き、現在咲と一緒にゲームをしているのである。

 俺がゲーム機持ってなかったから咲の家で……。

 う、うぅん。そんな気楽に男を部屋にあげるもんなのか? というかひょっとしなくともホームズ探偵学院に来て以来、初めて女の子の家に行ったのがこれになるのだが。寮生活だったし。

 大量の機材とモニターが所狭しと並べられた色気もなんにもない部屋がハジメテ。

 まあいいか。楽しいし。

 

 最初は格ゲー、シューティング、レースとちょこちょこゲームを変えながら遊んでいると時間はあっという間に進んでいく。

 昼過ぎに来てから夕方までずっとゲームをやっていた。だらけた一日最高。

 

「いや〜、遊んだね〜」

「遊びましたねぇ。くー、楽しかった。俺も携帯ゲーム機くらい買おうかな」

「い〜ね〜。そしたらまたやろうね〜。次は手加減しないよ〜?」

「お、お手柔らかに」

 

 立ち上がってグゥっと背中を伸ばす。座りっぱなしでゲームしてたから体が固まってるな。

 ぐるぐると肩を回してから、持ってきていた荷物を手に取る。

 

「ん〜」

「どうかしました?」

「なんだっけ? ゲームしてて忘れちゃった〜」

「あはは。思い出すまで待ってましょうか」

「ん〜」

 

 咲が小首をかしげる。

 表情の乏しい彼女が魅せた小動物的な愛らしさに、思わず胸がドキリとする。

 ラフな部屋着でありながらもオシャレ好きな咲らしく可愛らしいピンクの衣服、相変わらず痴女かなと疑うほどに短いスカート。

 桜色の長髪を鮮やかに揺らしながら咲はしばらく考え込み。

 

「あっ、思い出した〜。頼みたいことがあったんだ〜」

「まだ帰らなくてよかったですね。なんですか? 今日は負けまくったんでだいたいのことなら聞きますけど」

「マジ? じゃあエッチしよ〜」

 

 痴女だったか。

 

「それは構わないんですけど、どうしたんです? そんないきなり」

「あれ? 心読めるんじゃなかったっけ〜」

「そこまで便利じゃないですよ」

 

 ゲーム一作目のストーリー終了後、つまりは怪盗Lをぶちのめした後で俺は自身のトイズについて公開した。

 まあ色々と反響はあったが、文句つけに来た奴らをトイズで撃退し、まったく同じ精神汚染を受けて俺も気絶するという笑い話を経て収拾がつきつつある。

 それはさておき、嬉しい提案ではあるものの意図がわからない。元々よくわからない娘ではあるが。

 

「で、結局どういう理由でそんなことを?」

 

 俺のことが好きだから身体で籠絡してやろう、ってことでもないだろうし。

 

「別に大した理由はないんだけど〜」

「はい」

「ただ経験してみたかったから声かけただけ〜」

「なるほどそういう」

「ちょっといいな〜、とは思ってたし、他に異性の知り合いもいないし〜。警視とか小林とかこんなこと言っても絶対首を縦に振らないっしょ」

「確かに。なんなら目茶苦茶怒られそうですね」

「ね〜」

 

 俺と違ってまともな大人だからな、あの二人は。

 まともじゃない俺は遠慮なく貪らせて貰おう。今更誠実さなんて誰も俺に期待してないだろう。

 

「駄目なら別にいいけど」

「駄目じゃないですよ。しましょっか」

「お〜け〜」

 

 立ち上がろうとしていた咲の頬に手をあて、そっと口づける。

 うわ、まつげ長。ずっと漂ってたけどいい匂いする。口が甘いのは飴舐めてるせいか。

 

「んっ……ちゅっ、ちゅっ」

 

 咲の柔らかい唇を感じながら数度触れ合っていると、彼女に嫌そうな顔をされながらそっと押しのけられた。

 

「そ〜ゆ〜めんどくさいのいいからさ〜、さっさと挿入れちゃってよ」

「あ、あぁそういう。よかった……キスは駄目だったのかと」

「駄目じゃないけどさ〜」

「じゃあ続けていいですか? 挿入れるにしたって、濡らさないと辛いですよ」

「ローションとかない?」

「ゴムは持ち歩いてますが、それは流石にないですね」

「ちぇ〜」

 

 咲を抱きしめ、口づけを再開する。

 流石に邪魔なので咲が咥えていたチュッパチャプスを取ってお菓子を置いていた皿にどけた。その直後はなうなうとうめいいたものの、舌を挿入してやるとちゅぱちゅぱと吸い付いてくる。

 

「んむ……ぢゅ〜……ちゅぷ、れろれろ」

 

 飴代わりに俺の舌を舐る咲。ネチネチと口内から水音が響いている。

 

「ぢゅるっ……んっ、ちゅ、くぷ……れりょ、こくん……っぷは」

 

 数分続けて、口を離す。とろんと銀色の唾液が橋のように繋がっていた。だらしなく開いたままの真っ赤な口内は性器のように淫靡だ。

 

「チューするのって結構気持ちいいね〜」

「それはよかった」

「じゃもうすこししよ。はむっ……ちゅぷ、ちゅ、ん、んぅ……れりゅ」

 

 求められるがままに彼女へ舌を差し出す。飴にそうするようにペロペロと口内を舐め回す咲。

 目を細めて気持ちよさそうにする彼女の胸へ手を伸ばした。

 ふにょんと慎ましやかな膨らみに指が沈んでいく。

 

「ぁん……ん、もうする?」

「そうですね」

 

 反対の手を短いスカートの中へ潜り込ませると秘裂へと指を這わせる。

 じんわりと指先に伝わってくるのは温かく湿った布の感触だ。手探りでそのまま肌着を捲って直に蜜壺へと触れる。

 

「いい感じになってきてますし」

「言い方キモ〜い」

「あはは。じゃあ拒否られる前に、もうベッドに行きましょうか」

「うん。あ、ちょい待ち〜。服シワになったら困るから先脱いじゃうね」

 

 そう言って咲はブラウスを脱いで椅子にかける。

 

「脱ぐとこ、見たいなら見てていいよ」

 

 咲はスルスルと上着を全部脱いでしまい、薄桃色のブラのホックをパチンと外す。

 モニターの明かりを反射する真っ白な肌が眩しい。

 部屋の雰囲気はいかにも不健康そうなインドア趣味って装いだというのに、咲の身体には余分な肉がついておらずスラッとしている。

 警察としての職務とは関係なく日頃から気遣ってるんだろうな。

 

「おー、めちゃくちゃ綺麗ですね」

「ふふ、知ってる〜」

 

 いたずらっぽく微笑みながらスカートを下ろしていく。

 ブラとお揃いのショーツを足から抜き、彼女はベッドに腰掛けた。

 

「ストリップはおしま〜い。ほらさっさと脱ぎなよ」

 

 言われるがままに衣服を脱ぎ捨てる。

 

「じゃ、後お任せしま〜す」

「なになに?」

 

 ごろんと寝転がった咲。ふぁさっと髪の毛が寝所に広がる。

 

「ん〜? ほら、あたし慣れてないから〜。それともこういう言い方のほうがいい? あたしのこと好きにしていいよ〜、みたいな」

「なら遠慮なく」

 

 咲の両足を掴んで押し開き、その間へと潜り込む。

 太ももを揉みながら、少しずつ付け根に近づけていく。

 そしてそのまま人差し指でつぅっと陰唇をなぞった。普段自分でよく弄ってるんだろう、咲のそこは小さく口を開け、中身を覗かせていた。

 

 焦らすように円を描き、指を咥えて唾液で濡らしてから挿入する。まずは一本だけだ。

 ぬるんと咥え込まれた指を前後に動かし、膣内をゆっくり刺激していく。

 咲の表情を伺い、彼女の感じる部分を探しながら蜜穴を丹念に擦る。

 

「んっ、ふっ、あん……」

「こう……ここかな」

「あっ……うん、そこ……そこいい……」

 

 このまま一度イかせてしまおうと、見つけた弱点を執拗に指先でグリグリと捏ねる。

 次第に水音も大きくなり、指に来る圧迫感も強くなってきた。

 陰核を親指で弾いてやる。

 すると咲は身体を震わせて、きゅううと膣で締め付けた。

 

「はっ、ふぁっ……っ、うくっ、はぁ〜」

 

 目を閉じて深呼吸する咲。はぁはぁと呼吸の度に胸が上下する。

 ちゅぽっと蜜穴から指を引き抜く。いい感じに解れてきたようだ。美味しそうにひくひくと震える女陰に、思わず生唾を呑み込む。

 

「すっごい興奮してるね」

「そりゃもちろん。いつまで経っても大興奮ですよ。さて、じゃあそろそろ挿入れますね」

 

 自分の荷物からコンドームを取ってきて開封する。

 

「へ〜、ゴムってそんな感じなんだ〜」

「そうですね。で、これをナニに装着するんですけれども……穴が空いてないか見とかないと」

「あ、結構破けやすかったり?」

「いや、穴開けてく奴がいるので」

 

 誰がやってんのかは知らないけれども。

 

「あはは〜、やっぱ付き合ってる人いたんだ〜。誰だれ? やっぱミルキィホームズの人たちの誰か? それともあのおっかない会長さん? ていうかこんなことシテていいの? 駄目なら別にいいって言ったのに」

「ま、誰かって言うと全員と肉体関係がありまして」

「うわ〜、クズ〜い」

「惚れっぽいもので……ははは。もちろん遠山さんにも一目惚れしてます」

「へ〜そう」

 

 本当なのに。

 アニメや漫画の読心能力者なら、ヒーローやヒロイン一人の心の綺麗さに惹かれるものなんだろうけども、いっぱいいるんだよねぇ。清い人が。もう大体身体は清くないけど。

 それはさておき、期待でパンパンに膨れた物にゴムを装着して準備万端。

 

「じゃあ、挿入れますね。力抜いててください」

「は〜い」

 

 咲が自らおまんこを指で広げる。赤く充血した膣内が露わとなり、尿道口まではっきりと見えるようになった。

 獣欲を誘うようないやらしいポーズを披露する彼女に、思わずぶち込みそうになるのをグッと堪えて、亀頭をあてがいゆっくりと押し進めてゆく。

 

「っ、ん、はいって……きて、る」

 

 挿入を始めるとくぱぁをしていた咲の手が股間を離れる。その手を握って指を絡めた。緊張しているのだろう、咲も強く握り返してくる。

 表情と手の動きを見ながらじわじわ剛直を咲の膣内に埋めていく。強い反応が返ってくるたびに動きを止め、たっぷりと時間をかけながら奥まで挿入した。

 頬や唇に何度もキスし、優しく髪を撫でつけながら咲の身体が異物に慣れるのを待つ。

 

「んぅっ、ちゅ、ちゅぷ……、光って変なところで優しいよね〜。手握ってくれたりさ」

「そうかな? 今も後悔してるくらいですよ。ゴム付けなきゃよかったなぁって」

「生は追加料金〜」

「お金取るんですか!?」

「冗談冗談、仮にも警察官だってば〜」

 

 仮にも警察官が処女捨てたいからで男を誘うのはどうかと思うが、俺にとっては最高なのでツッコまない。

 

「そろそろ動きますね」

 

 ゆったりと腰を引いていく。ずりずりと雁首が膣襞を擦りながら抜けていき、再び奥まで押し込んだ。

 スローペースでの抽挿を何度も繰り返す。

 咲も色っぽい吐息を零し始める。

 

「やばい、遠山さん可愛すぎてゆっくりしてるのにすぐ射精しそう」

「あはは〜、んっ、ぅぅん、ちゃんとあたしがイクまで我慢して〜」

 

 ニンマリと口元を釣り上げながら咲が繋いでいるのとは反対の手で俺の腹を撫でてくる。

 緊張も少しずつ解けてきたようなのでピストンを速めていく。

 熱を帯びた吐息は段々と荒々しくなっていき、俺の精巣も呼応するようにグツグツと煮え滾る。

 薄いゴム越しに柔らかな媚肉が締め付けてくるのを感じながら、負けじと俺も突き入れる。

 

「あっ、ふぁっ、んぁっ、あ、……っ」

 

 頭が蕩けるような快感の中、夢中になって咲の身体を貪る。そして。

 

「んっ、ぁっ……〜〜〜っぅ」

 

 ぎゅうぅぅっと爪を立てるほどに強く手を握られる。

 いきなり収縮した膣に肉棒が圧迫されてゴムの中で暴発させてしまう。

 どくどくと大量の精液が放たれていく。

 腰が抜けてしまいそうな射精感を存分に味わいながら、意味はないけれどもグリグリと奥に押しつける。

 

「あっ、ぅぁ……ぅ、イッ、ちゃっ……たぁ」

「気持ちよかったですか?」

「うん。依存症になる人がいるのも、わかったかも」

「すっごく楽しんでもらえたようで何よりです」

 

 咲の膣内から一物を引き抜く。精液でタプタプになったコンドームを外して口を縛る。

 そうして後始末しようとしていると、体勢を変えた咲が這い寄ってきた。

 

「気持ちよくしてくれたお礼に〜、おちんちん舐めたげる……はむっ、ちゅ、れりゅ、れろれろ」

 

 亀頭に口づけた咲は、そのまま精液塗れの肉竿を舐め回す。

 裏筋をれえっと突き出した舌で舐め取り、亀頭を咥えて雁首の溝に沿ってお掃除する。

 くぽくぽ、ちゅぱちゅぱと不格好な音を立ててひとしきり白濁を取り除いて咲は顔を離した。

 

「精液まず」

「あはは、そりゃそうでしょう」

「フェラは好きかもだけど、この味はちょっと……味わってみる?」

「いいですよ。じゃあキスしましょうキス」

「少しは嫌がれ〜」

 

 ごっくんした後でも特に気にせず舌を絡めてキスできる俺だ。そういう趣味があるわけではないけれど、自分の精液の味は知ってしまっている。

 それにまあ、飲んでって人には言うのに、自分は拒否るってのもあれだし。

 ともあれ持ったままだったコンドームを捨ててしまおう。

 

「さて、遠山さん」

「もう帰る? おつかれ〜」

「いえいえそうではなく。このままもうしばらく居てもいいですか?」

「うん? いいけどなんで? ヤり足りないとかなら、疲れたから他の子に頼みなよ」

「セックスしたかったんでしょう。ピロートークまでやりましょうよ」

 

 彼女の隣に寝転がり、肩を抱く。

 

「何もしなくていいですから、後ちょっとだけでもイチャつきましょう?」

 

 結局そのまま一晩、咲と過ごすことになった。

 疲れたから本番は無しって言うくせにチンポ触ってくるものだから大変だった。



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生徒会長に呼び出されました(前)

ちょっとこれを一話にするのは大変そうだし、時間がかかりまくるのでこの辺で切っておきます


 キングサイズのベッドに寝転んだ俺の眼前には、アンリとコーデリアたちが揃い踏み。全員服を脱いで、今にも襲いかかってきそうな雰囲気だ。

 どうしてこうなっているのかというと、アンリに呼ばれて部屋まで来たら五人に押し倒された。

 はい、回想終了。

 

「まったく。シャーロックにまで手を出すなんて、本当に節操無しですわね。このおちんぽは」

 

 ツンツンとアンリが俺の一物を突つく。

 思わず声が出て、触れられた肉棒が震える。

 

「うぁっ、ごめんって」

「怒っているわけでは……いえ、わたくしを蔑ろにしないのであれば許しますわ。英雄色を好むと言いますしね」

 

 亀頭を指で撫で回される。アンリが指先でぷにぷにと亀頭を押すと、ぷくりと我慢汁が浮かび始めた。

 

「でもこの間女子会した時にね、誰が一番かって話になってね」

「みんなで……光さんと、シて……選んでもらおうって……話を、したんです」

 

 コーデリアとエリーがそれぞれ俺の手を取って、自らの胸へ導く。むにむにと乳房を揉んでやると気持ちよさそうに頬を緩ませた。

 

「あ、ズル。シャロ、僕たちも始めよっか」

「はい! えっと、じゃあ頭の方失礼しますね」

 

 ネロとシャロが左右からやってきて、両側から俺の顔に何度も口づけてくる。

 どちらかに顔を向けることも出来ないし、されるがまま彼女らの口吻を受けた。

 

「さあ、光。たぁーっぷり気持ちよくして差し上げますわ。だからわたくしを選んでくださいね」

「ごめん、アンリ。そういうことなら、俺はお前を一番と言ってやれない」

 

 静かになってしまったのでおっぱいを揉んでいた手をどかしてアンリの頭を撫でる。

 

「答えが決まってるのに先に言わないのはズルいと思うからさ。誰が一番か、なんて俺には決められない。でもその代わり幸せにするから。我慢させてしまう分、たくさん幸せにするから! ……ってところでどうでしょう」

 

 そう言ってアンリの顔色を伺うと、彼女はにんまりと笑った。

 

「ふ。わたくしの勝ちですわね」

「むぅ、絶対勝てると思ってたのに」

 

 対象的にすね始めるコーデリア。え、なに。どこに勝敗を決める要素があったんだ。

 

「なになに。どういうあれ」

「簡単ですわ。誰も選ばない、で満場一致したのです」

「あ、うん」

「だから勝負の内容はどのタイミングでそれを言い出すか、だったのですわ。わたくしはもちろん光なら早々に言うと信じていました」

 

 ああそういう。

 どっちが良いかセックスして決めようって官能作品だとありがちな展開だが、奉仕されたのに結局答えを出さないのは不誠実かなというだけの話だったんだけども。

 

「ということはコーデリアは俺がセックスの後で『みんな大好き〜』って言うと思ってたんだ」

「……、絶対流されると思って」

 

 信頼が地に落ちてるって。

 めちゃくちゃ性にだらしない人間みたいじゃん。

 

「日頃の……行い、が……」

「エリー?!」

 

 そんな馬鹿な。エリーにまで言われるとは。

 ぐさっと来るけど、冷静に考えたらなんにも否定できる要素がなかったので仕方ない。

 

「ではわたくしが最初と言うことで、宣言通り幸せにしてくださいね」

「もちろんだ。とりあえずゴムを」

「幸せに、してくださいね」

「……。わかったよ。ほらおいで」

 

 そう言って促すと、アンリはとろとろになった秘裂を自ら指で開いて俺に跨る。蜜穴に硬く膨れ上がった一物を宛てがうと、ずぷりと腰を落とした。

 何度味わってもちっとも飽きることのない、ねっとりと絡みついてくる膣襞が、薄いゴムすら介さず直接俺の物を優しく愛撫してくる。

 

「んっ、はぁ、ああ……っ。光との生えっち、うふふ、今とっても幸せですわ」

 

 アンリがゆっくりと腰を上下させる。その度に彼女のたわわな果実がボヨヨンと揺れる。

 上下に揺れるピンク色の乳首に気を取られた束の間、横から頭を抱きかかえられて、ネロが激しく口づけてきた。

 唾液を流し込むかのように、ピッタリとくっつけた口を離すことなく彼女の舌に口内を蹂躙される。

 

「んっ……ちゅるっ、んむっ……はぁ」

「あぁっ! ネロばっかりズールーいー。あたしも、あたしも〜!」

 

 ネロがベロチューを中断してシャロのためにスペースを開けてやり、するっと入り込んだシャロは先程までのネロ同様に激しく口を貪る。

 二人に共有される俺の頭部。頬を上気させた幼い顔立ちの後輩二名と交互に激しくキスを繰り返す。

 

 愛らしい蕩け顔に視界が塞がれてしまい見えないが、コーデリアが居た方の腕に温かく湿った感触が伸し掛かってきた。

 ずりずりと腕の上を柔らかいものが這い回る。感触からしてコーデリアが俺の腕で自慰をしているのだろう。

 

 しかしエリーが居た反対側にはそんな感覚がない。

 エロエロな彼女だが、引っ込み思案だし、乱交には付いてこられなかったのだろうかと心配していると、足の指が生暖かい粘液に包まれた。

 順番に親指からぬめぬめしたものが包みこんでいく。

 見えない。見えないけれど、足を舐められてるのだろう。

 

 俺が幸せにする、と言ったばかりだというのに、一方的に幸せにされている。

 全身を柔らかな女体に包まれて、俺は指一つ動かしていないのに彼女達が気持ちよくしてくれる。

 いいなぁ、これ。王様気分だ。

 すべてを俺の可愛い恋人に任せて、俺は性奉仕を享受する。トイズを介して流れ込んでくる彼女らの慕情も相まって頭がおかしくなりそうだ。

 

「あんっ、あ、はぁぁ……ふふ、おちんちん膨らんで、だして、射精してぇ。わたくしの子宮、あなたの精液で満たしてぇ!」

 

 射精の予兆を感じ取ったのだろうアンリの腰が一層激しく上下する。

 きゅううと力を込めてキツく締められた膣に扱かれ、コーデリアたちもそれを聞いてか俺の心地よい射精のため甘やかに全身を刺激してくる。

 そうして導かれるがまま、俺は本日一発目の特濃精子をアンリの肚へと容赦なく吐き出した。

 

 ──びゅるるるる〜! びゅくっ、びゅく〜! 

 

 精液の奔流を受けてビクビクと身体を痙攣させるアンリ。それでも貪欲に貪ろうと腰を動かし続けてくる。

 俺も応えるように精を吐き出した。

 

「あっ……あはっ。……んふふっ。幸せですわ」

「ごめん。ネロ、シャロ。ちょっと」

『は〜い』

 

 口元に集っていた彼女らに退いてもらい、俺は上体を起こしてアンリを抱き締めてキスをする。

 

「んっ、ちゅ……ふふ、膣内にいっぱい射精、しちゃいましたわね。ちっとも抜こうともせず、ザーメンをわたくしのおまんこに」

「俺もずっとこうしたかったんだ。愛してるよ、アンリ」

 

 アンリの柔らかい身体を抱き締めて何度もキスをする。

 彼女も嬉しそうに抱きつき返してきた。

 射精直後だと言うのにまだまだ元気な物をおっ勃てて、腰をモゾモゾと動かす。

 

「ならもっとわたくしの中にくださいな」

「もうアンリエットさん。一回出してもらったでしょ、交代ですよ交代」

「あら。ごめんなさいね、コーデリア。今どきますわ」

 

 チュッともう一度口づけ、名残惜しそうに膣をぎゅうっと締めながらゆっくり引き抜くと、ごろんと俺の隣に寝転がった。

 それから身体を丸めるようにして、俺の腕を胸と脚に挟んでしがみつく。

 

「すんすん……、すっごく濃い匂い。出しすぎよ光、私達の分はちゃんと残ってる?」

「大丈夫。十回くらいは連発できるから」

 

 鍛えれば鍛えるほどアホみたいに身体能力が伸びていくこの世界。

 一年の頃は一、二回が限界だったのに成長した今は絶倫になったものである。

 

「それで足りるかしら」

「何周させる気ですか!?」

 

 クスクスと笑いながらコーデリアは俺の股間から顔を離す。

 そして精液と愛液でドロドロになった肉棒に指を添えて真っ直ぐ立たせると、コーデリアはそれを自ら受け入れる。

 ゆっくりと腰を落としていくコーデリア。彼女の中もアンリに負けず劣らず具合がいい。

 オナってる間に濡れそぼった膣が俺のものを柔らかく包み込み、肉襞が絡みついて扱き上げる。

 

「ね、光。私にも愛してるって言って」

「もちろん。愛してるよコーデリア」

「もっと言って、もっと」

「好きだよコーデリア」

「えへへ」

 

 照れているのか身体もおまんこもクネクネさせるコーデリア。俺が愛されているからこそと思えば、コーデリアのトリップもただの魅力だ。

 一人で妄想に浸ってぶつぶつと呟く姿も可愛いもの。

 

 空いた左手をコーデリアのお尻に回して撫でていると、アンリが顔を俺の胸に乗せた。真っ赤な舌を突き出して乳首を舐め始める。

 擽ったくて声をあげようとすると、再び吸い付いてきたシャロに口を塞がれる。

 そして先程まではこの時間、ただ相方がキスするのを待っていたネロが、突如として俺の耳をかぷりと甘咬みし始めた。

 そのまま水音を立てながら耳穴へと舌をねじ込んでいく。

 

 なんでそうちょっとずつマニアックになっていくんだと思ったが、即行足舐めに行った奴がいるのでなんとも。

 

 腰に力を込めて我慢しようとしていたが、やはり昂ぶりを抑えきれずに射精してしまう。どくどくと震えながら吐き出される大量の白濁液。

 一回目と遜色ないレベルで子種をコーデリアへと注いでいく。

 精液を受けたコーデリアの膣は悦ぶように痙攣した。

 

「あっ、ぁぁんっ! ……はっ、ぁぁ。ふふ。すごい量……お腹重たいくらい。ねぇ光。二人目は女の子が欲しいわね」

「一人目の男の子がいないんだけど、うん。いつか作ろう」

 

 俺がそう言うとニマニマと表情を崩す。

 これで孕んでくれてないかな。ミルキィホームズとしての活動で結構入ってきてるし、なんなら原作準拠で実家がお金もちだからそっちに頼ってもいいし。

 

「コーデリア〜。早く代わりなよ。いつまで腰振ってるのさ」

「ふにゃ……あぁ、ごめんなさい。すぐ代わるわ」

 

 コーデリアが腰を上げる。

 ぽっかりと俺の形に開いた媚肉からはとろりと白い物が垂れていた。




放置しているストーリー部分を進めないと訳分からないキャラが存在するんですよねぇ、特にゲーム版二作目

例えばそう、イメージカラーが青色で、お嬢様感のあるあのキャラクター────ジョセフィーヌですね

はい、読者の大半が誰だそいつ。姫ちゃんじゃないのかってなったことでしょう
アンリエット生徒会長のお姉さんです。ミルキィホームズ2にだけ出てきます

誰が知ってるんだ


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