ゴトランドさんは指輪が欲しいようです。(初期艦縛り) (島国住み)
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決心
主な登場人物
ゴトランド:Gotland級 1番艦 軽(航空)巡洋艦
スウェーデン生まれの航空巡洋艦。
自分の事を初期艦だと思っていること以外はいたって普通の艦娘。
自然な感じであればスキンシップをしてもいいらしい。
台頭著しく、練度の点ではかなり高い水準にいる。
電:暁型 4番艦 駆逐艦
いなづまと読む。初期艦。
鎮守府のなかで一番練度が高い。
提督(司令官)
いちばんえらいひと(雑な紹介)
熱しやすく冷めやすいタイプ。
提督歴自体は長いのだが、ブランクの期間があまりにも長く所有艦娘の練度は一部を除いて低め。
だが最近念願のゴトランドを手に入れ、育成に熱を上げている。
コンコン
「いいぞ」
「失礼します!」
「なんだ。ゴトランドか。こんな夜にどうしたんだ?」
「ゴトでいいって言ってるのに……その言い方はタニンギョウギで嫌だな……」
「ゴ、ゴト。どうしたんだ?」
「えっと……ゴトの部屋の明かりがチカチカしてて代わりの電球がどこにあるか聞こうと思ったの」
「電球か……どこにしまったっけな……」
「えー、提督もわからないの?……じゃあ、一緒に探しに行かない?」
「まだ今日の
「ゴト一人じゃ電球を見つけても、脚立を持ってくれる人がいないと不安で部屋の明かりを替えられないわ。ここで待ってるから任務が終わったら……」
「まぁ……それなら大丈夫だな。待ってろ。通常の三倍のスピードで終わらせてやる!」シュバババ
「はい♪」
「すまない……思ったより時間がかかってしまった……」
「私が勝手に待ってたんですから謝らないでください。……さ、行きましょ?」
こんこん
「いいぞ」
「お疲れだと思ってお夜食を持ってきたのです」
「電か。わざわざありがとう。でも、すまないが執務室で少し待っててくれ」
「……どこかに行かれるのですか?」
「ああ。ゴトの部屋の電球を替えるためにちょっとな。そういえば電球ってどこにあったっけ?」
「……鎮守府で使ってる電球なら第三倉庫に、特殊なものは明石さんの工廠に代わりがあるのです」
「そっか。ありがとう。」
「どういたしましてなのです。……ところであの申請書類の山はなんですか?」
「あの山は明日切り崩す予定で……」
「見通しが甘いのです。今から手を付けないと終わらないです。しょうがないから手伝ってあげるのです。だから……」
「デイリーはちゃんと終わらせたぞ!それよりもずっと座りっぱなしで疲れたんだ。ちょっとくr……「ダメなのです」
「でm「ダメです」
「……すまない、ゴト。場所はわかっただろうから後は一人で頼む」
「むぅぅ……わかったわ」
「ほら、電特製おむすびを食べてキビキビ働くのです!」
「ひえ~~っ」
バタン!!
…………………………まただ、またあの
私は演習に出たり、出撃したりと大忙しであんまり提督といることができない。それだけ提督が私に期待してくれているってことだから嬉しいけど……だからこそちょっとでも一緒に居る時間を大切にしたいのに、最近邪魔が入ることが多くなった気がする。
イナズマだ。あの娘が秘書艦をしている日は特にひどい。だからイナズマが秘書艦ではない日を狙ったのに……
私が初期艦なのに!どうして提督はそのことに気が付かないのかしら?
いや、この言い方は正確じゃないわ。
私が着任した時には既にイナズマたちはいたけどそんなことは関係ないわ。とにかく私が初期艦なのはこの世界の真理で間違っているのはこの現実の方!
こんな風に考えるようになったのにはもちろん理由がある。
……実は、私にはこの世界のシステムみたいなものが少し
進路が妖精さんによって決められていたり、遠征がいつも決まった時間で終わるのとかよく考えたらおかしい。でも提督を含めて誰も疑問を抱かない。
中破すると必ず提督が撤退を決断するのもこの世界のルールの関係でそうしているのだろう。
どうにかしてシステムに介入すれば、私が初期艦だった
この能力は間違った世界を正せとの天からの思し召しに決まってるわ!!
……っと、熱くなっちゃった。
今日は大人しく引っ込んで、電球を替えましょう。
あーあ、提督と一緒に夕飯も食べようと思ったけどしょうがない。お酒も飲みたいからホウショウの店で食べよう。
「あら、ゴトちゃん。今日は一人?」
「ええ。そういう気分なの」
ホウショウさんに注文をした品が来るまで手持ち無沙汰だったせいか他のお客の話し声が聞こえてきた。
「もう!千歳お姉はもっと提督を警戒したほうが良いよ!」
「警戒なんて……言い過ぎよ」
「そんなわけないわ!提督、千歳お姉が中破した時胸をガン見してたわ!」
「えっ……やだぁ……」
「グビグビグビ……あるだけマシやろ。なぁ瑞鳳?」
「あははははは…………………………はぁ……でも、私も改二になれば……」
「やめとけやめとけ。その理屈が通用するのは駆逐艦ぐらいや。そもそも提督は全然ウチを使ってくれへんからそのチャンスすらないねんけど……」
「提督、やっぱ巨乳好きだよね。千歳お姉然り……改二の優先順位とか恣意的なものを感じるわ」
「ウチみたいな
「ケッコンカッコカリ、かぁ……」
「何?千歳お姉、興味あるの?」
「そ、そういうんじゃなくて。その、最初は誰になるんだろうなーって思っただけ」
「やっぱ電じゃない?初期艦だし」
「はい。おまちどうさま。……ゴトちゃん?」
「え。あ、はい。ありがとう」
ケッコンカッコカリ……
提督は改二待ちの艦娘がたくさんいる中、私を
私が忙しいのはそのせい。バケツとマミヤのアイスでごまかされて出撃を繰り返すなんてよくあることだった。着任当初からそんな調子で始めは歓迎されてなくて殊更に辛くあたられてるのかと悩んだ時もあったけど、真逆だ。
今は分かる。提督は私に指輪を贈るためにこんなにも急いで私を出撃させてたんだわ!
でも私はまだ練度が足りない。
この鎮守府の中で一番ケッコンカッコカリに近いのは……イナズマだ。
練度は追いつける。というか、追いついてみせる。でも提督が情に流されて初期艦だと
それは絶対に阻止しなくちゃ
提督の好みにも私は合致してる。一緒に居た時間の長さがイナズマの拠って立つところなら、それを喪失させれば……ふふふふっ。私の勝ちだわ。
もちろんまだ勝ったわけじゃない。これから初期艦の地位を
盤上をひっくり返すには兎にも角にも準備だわ。
ゴトランドが自称初期艦だという話を聞いて、ひらめいてしまったので書きました。
まだまだ続きますがそんなに長くないはずです。
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調査
主な登場人物
最上:最上型 1番艦 航空巡洋艦
一人称は
性別については「女派」、「男派」、「男であって欲しい派」と見解が分かれる場合がある。
翔鶴:翔鶴型 1番艦 正規空母
運が悪い方。
本人は否定してるが噂好き。
瑞鶴:翔鶴型 2番艦 正規空母
運がいい方。
本人は否定してるが加賀のことを先輩として尊敬してる。
あれから私はいつも以上に頑張って練度上げに励んでいるけど……
「どうしても入渠の時間が増えちゃうなぁ~」
待ち時間がもどかしい。最近提督はバケツを使うのを渋っている。なんでも大規模な作戦が始まるらしい。私は大規模作戦の経験は乏しいけど、それでもそれが壮絶なものなのは知ってる。備蓄していた資材、バケツはみるみるうちに溶けていく。
……おそらく私はこの大規模作戦で練度最大になれるだろう。でもそれは私だけじゃなくて他の艦娘にも同じことが言える。早めに手を打たなくちゃ
大規模作戦が近づくとたまに世界が
具体的な方法はまだわからないけど、絡まった真実をほぐしてあげるだけなんだから難しくなんかないはずだわ。その暁には私は提督の
「……ゴト、どうしたの?なんか怖い顔してるよ」
「あ、モガミ。いつからいたの?」
「さっきからいたけど」
「全然気づかなかったわ」
「……今の顔、悪い女の顔って感じだったよね~」
「ず、瑞鶴!」
「……ショウカクとズイカクもいたのね」
私そんな怖い顔してたのかな……
でもグッドタイミングかもしれないわ。三人ともこの鎮守府に長くいるからケッコンカッコカリ候補について詳しいはず。
「提督は誰とケッコンカッコカリするつもりなのかちょっと考えてたんです」
「練度だけ判断するなら電かしら?」
「そんなことよりも……ねぇ、ゴトランドさん」
「ゴトでいいわよ。……何かしら?」
「ゴトはケッコンカッコカリ願望あるの?」
「へ!?……えっと、あ、あり……ます……」
「なるほどねぇ」ニヤニヤ
「もう、瑞鶴ったら。急にそんなこと聞いちゃだめじゃない」ニヤニヤ
「恥ずかしいとは思うけど、これは大切なことだから」ニヤニヤ
「うぅ……穴があったら入りたい……」
「ボクはゴトが一番可能性あると思うけどね。提督とも仲いいし」
「でも提督と仲がいいならイッコウセンの方たちも……」
「ああ……でも赤城先輩は『間宮券をくれる提督が好き』って感じだし、加賀先輩も『赤城先輩に間宮券をあげてる提督が好き』って感じだから……」
「翔鶴姉のいう通りだね。二人とも提督自体には興味持ってないね……」
「他の方はどうなんですか?」
「うーーん。あ、大和さんとか。」
「ヤマト?」
そんな艦娘いたかしら?確かに私は着任して日も浅いし、忙しくてあんまり鎮守府について詳しくないけど誰が在籍してるかくらいなら把握してるわ。しかも戦艦なら存在を忘れてるなんて考えられないし……
「そうそう。着任した時の提督の狂喜乱舞っぷりはすごかったね……資源の消費量を完全に無視して出撃させてたから大和さんの練度はみるみる上がっていって、その代わり備蓄はすっからかんになってもう大変。でも提督は大和さんの手料理で篭絡されて何も対策を取らないし、傾国ルートまっしぐらだったよ……」
「ちょちょっと最上。何言ってんの?ウチの鎮守府に大和はいないよ?」
「ええ。私もここにいて長いですけど大和さんがいた記憶はありません……誰かと間違えたんじゃ……」
「…………あれ?ホントだ。誰と勘違いしたんだろう?でも確かにいたような……うーん……」
「……金剛さんと間違えたんじゃないかしら。ほら、コンゴウ茶会事件とかあったじゃない」
「コンゴウ茶会事件?」
知らない単語だ。コンゴウとその姉妹たちがお茶会を開いてるのは知ってるけど……そもそもコンゴウ達が事件を起こすとは思えない。金剛型は仲がいいというのは私の鎮守府内では常識だ。
「……榛名さんが改二になった記念として金剛型でお茶会をしたらしいの。お酒も入ってたらしいからどっちかというと飲み会だけど。これだけなら別に変な点はないの。でも……」
事件になりそうな要素は何もないように思える。提督も登場してないし。
「金剛さんが提督のことを狙ってるのは知ってるでしょ?金剛姉妹たちもその恋を応援してるはずだったんだけど……榛名さんがね、改二になってから秘書艦の時に提督と同衾してた事実が発覚しちゃって……その後はもうメチャクチャ。艤装を装備してなかったのが不幸中の幸いだったわ……」
「……翔鶴姉、昼ドラの見過ぎだよ。そんなこと一度も起こってないよ」ハァ
「ボクもその事件は知らないなぁ。第一、金剛さんは妹ファーストで提督とは何ともないはずだよ?」
「…………やだ、私ったら。ごめんなさい。ゴトランドさん、今のは忘れてください。今日の私どうしちゃったのかしら……」
よかったぁ。勘違いだったか。この話はかなりショッキングだった。ここまでセンセーショナルなら新参者の私の耳にも入っててもおかしくないからやっぱり真実ではなかったのね。
この後も三人は練度が高く、かつケッコンカッコカリ願望がありそうな艦娘とそれを示す出来事をお互いに言い合ってたけど……一人が
どうなってるのかしら?候補者はたくさん出たけど、全員結果はシロ。三人の記憶の齟齬が激しくて要領を得ない。
「今日の私たち……なんかおかしいね……」
「こんなに過去ってあいまいだったっけ?もう私年なのかしら……」
「いやいや翔鶴姉。まだそんな年齢じゃないでしょ」
「まぁでも、分かったこともある。提督は意外とブルーオーシャンだったってこと」
「そうね。他の鎮守府ではケッコンカッコカリを巡って血で血を洗う抗争が繰り広げられてるって聞いたことあるけど、私たちの鎮守府は平和ね」
「唯一のライバルは電かもしれないけど本人はそんな素振りは見せてないし、それに……」
「それに?」
「私がこれを言うのはすごい癪なんだけど、ホラ、提督さ、艦隊運用に胸部装甲を重視するじゃん?」
「あー、分かる。提督、上手く隠してるつもりだけどバレバレだよね~」
「…………瑞鶴!提督はそんな人じゃ……」
「でも翔鶴姉も心当たりはあるでしょ?」
「…………………………曲解すれば、そう解釈できなくもない事象は、いくつかありましたけど……」
「ほらね」
ここで初めて三人の意見が一致した。提督の好みについては私たちに間では半ば公然の事実として認識されている。
「提督の好みとか総合的に考えてみると……ゴトが第一候補になるね」
「わ、私が……」
第一候補。
ふふふ……これじゃ初期艦になるまでもないわ。歴史の修正力かしら?運命はこちら側についてるのよ!
「ああでも、最初にケッコンカッコカリするのは電かもしれないなぁ」
「え!?」
「なんか昔、提督がさ『最初のケッコンカッコカリは一番思い入れがある艦娘にする』みたいなことを言ってた気がして」
「確かにそんなこと言ってたね。一番思い入れがあるだとやっぱ初期艦だよねって翔鶴姉と話し合った覚えある」
「私も覚えてますけど、ずっと前の話だったから提督があの時と同じ気持ちかどうかは……」
あの女が不当にその地位を領有している限り提督は私との運命を果たせない……
取り戻さないと。
「…………ゴト?黙っちゃってどうしたの?」
「私、傷が治ったのでもう行きます。色々分かってすっきりしたわ。ありがとう」
大規模作戦まではあまり時間が残っていないはずだ。それまでにこの世界を
ちなみにですけど本家の『艦隊これくしょん』で選択可能な初期艦は、吹雪・叢雲・漣・電・五月雨・ゴトランドの六人みたいですね。(大嘘)
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実行
主な登場人物
ゴトランド:Gotland級 1番艦 軽(航空)巡洋艦
相変わらず自分の事を初期艦だと思っていること以外はいたって普通の艦娘。
通常時と中破時で提督の食いつき具合が違うことを最近発見し、複雑な心境に陥っている。
自然な感じであればスキンシップは大歓迎。
吹雪:吹雪型 1番艦 駆逐艦
威力110、命中70。 天候があられで必中になる。
ドジっ子だと言われているが、そんなにドジではないと本人は主張してる。
パンツにまつわるトラブルに巻き込まれやすい。
提督(司令官)
夏になると名取と五十鈴を重点的に運用し始める。
飽きっぽい性格である一方で自身の欲望には非常に忠実。
自然な流れで指のサイズを聞く方法が分からず悩んでいる。
「いやー、やっぱゴトは仕事が正確で助かるなぁ」
「うふふ。褒めても何も出ませんよ?」
今日は私が秘書艦♪
でもそれだけじゃない。今日は
コンコン
「戦績を見てくるように頼んでたし、吹雪かな?入ってきていいぞー」
フブキね……よし!
「司令官! 連絡が届きまs「フブキ。ちょっといい?」
「へ?」
この時、不思議なことが起こった。
執務室に入ってこようとするフブキはいなくなりドアも閉まった。一瞬で。
そしてなぜか
「な、なにが起こったんだ……?吹雪は消え、代わりにパンツが現れたぞ……」
ドアの向こうからも声が聞こえる。
「あれ?なんかスースーする…………えっ!?私、ちゃ、ちゃんと履いてたのに……??」
ひとまずは成功みたいね。でもこのままじゃ収拾がつかなくなるから正常な状態に戻さないと。
「フブキ、話の骨を折ってしまってごめんね。もう一回言ってくれるかしら?」
「え。で、でも……今ちょっと取り込み中で……」
「お願い」
「えっと……し、司令官、 連絡が届きました」
すると……
さっきまで白のパンツがあった場所にフブキが立っていた。
「あ、あれれ?私、さっきまで廊下に……?」
「うわっ!……吹雪だ。パンツじゃない……どうなってんだ?」
「と、とりあえず。これが報告書です……」
「……ありがとう。何か飲んでくか?」
「大丈夫です。なんか私、疲れてるみたいで……自室で休んでます……」
「そうか。ご苦労だった」
「はい。失礼します」
バタン
……成功だわ!
やっぱり私の思っていた通りだわ。私たちの行動の中には
ということは会話を無理やり中断すれば行動も無理やりキャンセルされるはず……
見立ては合っていた。
パンツだけが執務室に現れたのは予想外だったけど。フブキの本体はあのパンツなのかしら……?
フブキをフブキたらしめているのは何かという議論は置いておいて……
ここでの大きな発見は世界が安定した状態でもルールに介入できるってこと。
大規模作戦が近づけば世界がカクつく瞬間がきっとある。その時を狙えば世界を改編……もとい、修正することだってできるはず!
そのための場所にはもう目星はついている。資料室だ。
資料室には艦娘なら特に制限なく入れるし、資料も閲覧できる。
でも資料室にある
あそこがいわば裏側の世界の入り口なのだろう。
方法に目星は着いた。後はタイミングを見て実行するだけ。
「う~ん。吹雪をパンツだと誤認するなんて俺も疲れてるのかな……」
「提督は働きすぎなんですよ。限界まで資源を貯めて……大規模作戦の準備にこんなに熱心だった時ってありましたっけ?」
「いやぁ……今回は特別なんだよ」
「特別?」
「今回でやっと練度が……いや。なんでもない」
私のことだわ。
「…………よし!最終チェック終わり!備蓄はバッチリ。あとは発令を待つだけだ。……明日に備えて今日はここらで切り上げよう」
「はい♪」
大本営の予告では明日から大規模作戦が始まる。
大規模作戦の前日は大抵の場合、提督はこうやって仕事を早めに終わらせる。そして自室に戻って作戦が開始されるまで
普通に考えたら提督はただ寝てるだけなのだけど……世界がカクつくのはこの提督が寝ている間が一番多いのだ。
これは完全に憶測でしかないのだけど、世界が
提督も私たちもこの世界のルールに従ってる。だから準備中の間は、提督は起きてこない。
勝負は丑三つ時……提督が寝てる時に決まる。
まずは私もいつも通りここで提督とお別れして、自室で機会を待ちましょう。
■■■
……そろそろね。
さすがに作戦前とあってこんな時間まで飲んでる人はいないわね。
提督の私室には鍵がかかってる、か……
ま、合鍵を持ってるから問題ないけどね。そう遠くない将来私は提督のケッコン艦になるんだから同然よね?そもそも私、初期艦なんだし持ってないほうがおかしいわ。
カチッ
開いた開いた。さぁ寝顔を拝見……じゃなくてさっさと済ませないと。
「提督、起きて起きて」ユサユサ
「ん~~~~~??もう作戦の時間か……って真夜中じゃないか……」
今ね!
「作戦完了。艦艇、戻りました。ふぅ……よかった……」
「へ?ゴト、今出撃してないんだから帰投できな───」
世界が一度カクっと大きく動いた後、止まった。
そう。私は出撃してない。
セリフと行動がセットになっているならセリフを言えば対応した行動をとったことにもなるはずだ。でも今は準備中の世界。艦娘が帰投するなんてありえない。
ただでさえ不安定な世界にカオスを追加でトッピングすれば……ソリトンは破られる。
この状態がいつまでもつか分からない。さっそく編纂室に行かなくちゃ。
編纂室は……開いた。
普段は鍵がかかっているのに不思議ね。
編纂室は全体的に埃っぽかった。棚という棚にはこの鎮守府に在籍してる艦娘の名前が刻印された紐とじ製本が並べられてあった。きっとここに書いてあることを変えればいいのだろう。
えーっと……ゴトランド、ゴトランド……あった!これって着任順に並んでるのかしら?後ろの方にあったわ……
それも今日まで!さっそく
備考欄のところに『初期艦』っと……
こっちはオッケーね。次はイナヅマだわ。多分一番最初にあるはず……
ん?なんか所々埃が薄い所があるわ……あっ、これ……『大和』って……
どういうことかしら?ヤマトはいなかったはず……
開いてみたらギョッとした。全ページ真っ赤な色で執拗に×印が乱雑に書かれていて、しかもビリビリに破られている。元々どんなことが書かれていたのかも分からない。
気味悪いわ……どうしてこうなってるのか気になるけど、時間もないしとっとと用事を済ませなきゃ
あった。イナヅマ。備考欄には……初期艦。しれっと書いてあって本当にムカつくわ。
二重線を引いて……ハンコどうしよう。拇印でいっかな?エイッ!
私の製本を一番最初に置いて、これで完了!
扉をちゃんと閉めて部屋に戻りましょ。
歴史はきちんと正された。あとは大規模作戦を成功に導くだけ!
ゴトランドは真理省の職員に向いてると思う(誉め言葉)
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修正
青葉(記者クラブ代表):えー、一部の艦娘から『大きい艦娘ばかり贔屓している』と批判の声が上がっております。ソウダソウダー
…………………………オホン。これについて提督、どうお考えですか?
提督:私は『艦娘総活躍時代』の実現を目指して艦種にとらわれない人材採用に取り組んでいます。潮や村雨といった駆逐艦も秘書官に登用している実績もあります。そのような指摘は全くの事実無根であり、ご指摘には当たらない。
□□
主な登場人物
電:暁型 4番艦 駆逐艦
初期艦。初期艦。(大事なことなので二度言いました)
そろそろ練度が最大になる。
最近妙にソワソワしてて姉たちに心配されている。
ゴトランド:Gotland級 1番艦 軽(航空)巡洋艦
遂に肩書が発言に追いついた。
有言実行の人。不正を憎み、真実を愛する模範的艦娘。
朝は何事もなくやってきて、予定通り作戦が発令された。
あまりにも滞りなく作戦が進むから世界が変わった気がしない。
確認しないと安心できないわ。
「提督」
「どうしたんだ、ゴト?」
「初期艦は誰かしら?」
「初期艦?電に決ま……?あれ?あれ?」
「私の目を見てもう一回。初期艦は、誰?」
「…………………………オモイダシタ。ショキカンハ、ゴトランドダ」
「そうよ♪」
一瞬ヒヤッとしたけどちゃんと成功してたわ。
残る障害は練度だけ。これさえクリアすれば……
■■■
私はあとちょっとで、本当にあとちょっとで練度が最大になるのに、どうしてイナヅマが一番先に練度が最大になるのよ……
ああ、もどかしいわ。とはいえちゃんと入渠して傷を治さないと……
ん?イナヅマが一人で……執務室の方向に行こうとしてる。絶対何かある。後をつけよう。この期に及んで抜け駆けされるわけにはいかないわ!
コンコン
「電です。その……は、話があってきたのです!」
「いいぞ」
「しつれいしますなのです……」
バタン
む。中に入ってしまったわ。仕方ない、聞き耳を立てるのはあんまり褒められた行為じゃないけど……今は非常時。やるしかないわ。
「私、練度が最大になったのです」
「ああ。おめでとう。本当は記念にちょっとしたパーティの一つや二つは拵えたい気持ちはあるのだが……あいにくまだ作戦中だからな。今は少し我慢してくれ。それで、話というのは?」
「司令官さんは察しが悪いのです。
「約束?」
「はいなのです。私、この日をずっとずっと待ってたのです……」
「えっと、何の約束だ?」
「と、とぼけないで欲しいのです!そ、その……ケッコンカッコカリの相手は……」
「ああ!もちろん覚えているぞ。忘れるはずがないじゃないか。ケッコンカッコカリの相手は初期艦にする。ずっと前からこの考えは変わらない」
「そうなのです。だから……」モジモジ
「だから?」
「は、恥ずかしいのです……こういうのは司令官さんのほうからぷ、ぷろぽーずするものだと思うのです……」テレテレ
「俺が?プロポーズ?……電。約束の内容はちゃんと分かってるよな?」
「分かってるのです。……その、どうしてじらすのですか?待ちきれないのです。いじわるは嫌なのです……」
「分かってないじゃないか。俺は初期艦とケッコンカッコカリするつもりなんだぞ」
「だから私……」
「何言ってるんだ?俺の初期艦は
「…………………………へ?」
「なんでそんな驚いてるんだ?ゴトが初期艦なんてみんな知ってるはずだと思ってたんだが……別にお互い隠してたわけでもないしな……」
「……笑えないのです」
「あんまりなのです」
「そんなの、そんなのってないです……」
「酷いのです。なんでそんなに酷いことを言えるんですか。私がこの日のためにどれだけ頑張ってきたか司令官さんは知ってるはずなのです。知ってて、そうやってとぼけるんですか最悪ですなんで理由があの女になるんですか信じられないのです信じられないのですそんなことありえないのです」
「お、おい!本当にどうしたんだ。俺は冗談を言ってるわけじゃないぞ。電、君は思い違いをしてる。落ち着いて、落ち着いて考えてくれ。俺の初期艦はゴトランドだ。そうだろう?信用できないなら他の艦娘に聞いてみてもいい」
「……………………………………………………」
「どうだ?落ち着いたか?」
「…………その前に、ひとつ、聞きたいことがあるのです」
「おう。いいぞ。何でも聞いてくれ」
「私は、電はいつ頃着任したのですか?」
「電か?……えっと……割と最近だったと思うけどなぁ……」
「…………………………分かったのです。」
「大丈夫か?」
「はいなのです。確かに初期艦はゴトランドさんなのです。私が初期艦だと思い違いをしてしまっただけなのです。……きっと最近の激務で疲れていたせい、だと、思うのです……」
「…………俺は妄想に囚われるまで電を働かせてしまったのか」
「ち、違うのです!司令官さんは悪くないのです!悪いのは…………………………私なのです」
「いや。俺の責任だ。とりあえず2,3日休んでくれ。編成の変更については俺がなんとかするから電は何も心配しなくていい」
「本当に大丈夫なのです。さっきは取り乱してごめんなさいなのです。編成はこれまで通りでお願いするのです」ダッ
「あっ、電!」
まずい。こっちに来るわ。
バタン!
「……あ。ゴトランドさん」
「イ、 イナヅマ。その……ちょっと提督に用事があって。提督は今いらっしゃるかしら?」
「いらっしゃるのです。…………………………あの!」
「?」
「……少しゴトランドさんに聞きたいことがあるのです。いいですか?」
「いいわよ。何かしら?」
「司令官さんの初期艦は
「……ええ。そうよ。それがどうかしたの?」
「…………いえ。何でもないのです。やっぱり私、疲れてるのです……」
……行っちゃったわ。それにしてもイナヅマはかなり順応が遅いわね。今まで初期艦の座を不当に占拠してたからその名残が強いのかもしれないわね。
完全に記憶が修正されるんじゃなくて、世界を変えても変更前の記憶が残ったりするのね。
危なかったわ。あんな約束があったなんて……
でもこれは私が提督と運命の糸で繋がれてたっていうこの上ない証左だわ!
イナヅマじゃなくて
初期艦なのに遅れて着任してしまった私のために提督は約束を墨守してたのね。
私たちを妨げるものはなくなった。うふふふふふふふ……もうすぐ、もうすぐだわ。
ネタで書き始めたのになぜか雰囲気が重くなってしまった。
まるでゴトランドが不正を働いた悪者みたいじゃないか。手腕不足でギャグ調にできなかった……
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タイマーストップ!!
主な登場人物
ゴトランド:Gotland級 1番艦 軽(航空)巡洋艦
自分の事を初期艦だと思っている初期艦。
二人用の家具を新調するために北欧の家具メーカーのカタログを見て吟味するのが最近の楽しみ。
電:暁型 4番艦 駆逐艦
少し前まで初期艦だった初期艦。
ソワソワしてたと思ったら、今度は思いつめたような表情を見せるようになり姉たちを心配させている。
提督(司令官)
……公正で透明性の高い人事に定評がある。
本人曰く、『一途な性格』。
大規模作戦が終わったら意中の相手にプロポーズするらしい。
作戦は成功裏に終わった。そして私は無事に練度が最大になった。
最初は混乱があったけどみんな私が初期艦の世界に順応したみたいで、イナヅマを含め記憶の混濁はなくなった。
提督はすぐにでもケッコンカッコカリしたいのだろうけど、時期がちょっと悪かった。
作戦後はとても忙しい。書類、書類、書類……あれだけ大規模な作戦だったから後処理も一苦労。
秘書官の経験が長いイナヅマと私が手伝ってるけど中々書類の山は崩れてくれないわ……
「いやぁ、今回の作戦も誰一人失わずに終えることができて良かった良かった」
「提督の指揮のおかげですね!」
「いやいや。みんなの頑張りのおかげだよ」
「まぁ、謙虚なのね」
「……二人とも、口じゃなくて手を動かして欲しいのです。作戦後の後処理が終わるまでが作戦なのです」
「そうはいってもなぁ……作戦は無事終わったんだから少しくらいのんびりしてもいいじゃないか。なぁゴト?」
「そうね。イナヅマは真面目すぎるわ」
「そんなことは、ないのです」
「……そういえば、提督。私の艤装のチェック終わりましたっけ?」
「まだだな。資源の備蓄量の確認で忙しくて、まだ艤装にまで手が回らないんだ……」
「じゃあ……先に私だけでも確認してください。ちょうど今装備してますし」
「そうだな。……どれどれ」
「あーん、そこは格納庫じゃなくって……。ああっ……提督ぅ、そこは、危ないですよぉ……」イチャイチャ
「異常を見逃したらマズイ。仔細に確認しないと……」イチャイチャ
「…………また始まったのです」ハァ
提督とスキンシップをしてもそれを邪魔するものはこの世界にはいない。
始めこそイナヅマを警戒してたけど間違いだったわ。
窮鼠猫を噛むというけど、それは鼠にだって牙があるから反撃ができるというだけの話。
牙を失った鼠に注意を払う必要なんてこれっぽっちもないはずだわ!
「…………よし。ゴトの艤装に異常はなし、と」
「ゴト、検査されちゃいました!」キラキラ
「…………………………ちょっとお手洗いに行ってくるのです」
バタン!
「あら。どうしたのかしら?」
「さあな。……それよりも、ちょっといいか?」
「なぁに?」
「明日の夜、空いてるか?」
「ええ。空いてるわよ」
「その……
「了解しました♪」
ああ!ついに!ついに!運命の日がやってくるのね!
正直指輪がなくても私は十分幸せなのだけど……やっぱり目の前にそれがあると欲しくなっちゃうわね。
「……よし!予定は決まったし、仕事に取り掛からないとな。この調子じゃまた電にどやされてしまう」
「そうね。明日のためにも……ね?」
「………………………………」
■■■
もうすぐ約束の時間だ。
こういう時って時間が遅く感じてしまうものだと思ってたけど、なんかあっという間だったわ。
なんか昨日の夜から今日の朝にかけての記憶があいまいなのよね。気が付いたら朝だったというか……お酒も飲んでないのにヘンだわ。
でも、良かったかもしれない。普段の私だったらきっとソワソワして寝てなんていられなかったと思う。
そうこうしているうちに執務室の前まで来ちゃった。
今日はまだ一度も提督に会ってない。緊張する……
すぅ~~はぁ……よし!
コンコン
「ゴトです!」
「いいぞ」
ガチャ
「わざわざこうやって呼んでしまってすまない。だだな、どうしても二人きりの時に渡しておきたいものがあってだな……」
「なんでしょうか?」
「まず。ゴト、練度が最大になったな。おめでとう」
「はい。ありがとうございます」
「それで、だ。記念というかなんというか……その……これを受け取って欲しい!」サシダシ
提督の手には綺麗にラッピングされた手のひら大の箱。
どうしよう。中身が何なのか知らないふりをする?それとも……
分からないわ。こんな時どんな顔をすればいいのだろう。緩む口元を抑えられてる自信もない。だって、だって私が夢見てたことが今、ここで、実現しようとしてるんだもの……
「はい。……あ、あの。開けても……?」
「もちろんだ」
丁寧にラッピングをはがすと紫苑色の上品なケースが。
ごくり。微かに震える手を無理やり動かし蓋を開けると……
「ん?」
…………ブレスレット??指輪じゃないの?
あ。紙が入ってる。どれどれ…………
『本当は司令官さんにプレゼントする予定だったけど、あなたにあげるのです。
その石はジェットと言って魔よけの効果があるらしいのです。石言葉は
あなたのような悪魔が、浄化作用があるこれを身に着ければきっと苦しんで消えてくれると思ってプレゼントしました。苦しいですか?もしそうだったら嬉しいのです。
電より、愛をこめて』
「提督、これ……」
「実は電にこれをゴトにプレゼントしてくれって頼まれてなぁ……そんなの自分でやればいいのにと思ったがどうしてもって言われて……」
「どうして?指輪は……?世界は、世界は正されたはず……」
「指輪?……そういうことか」
「そういうことって、どういうことなの!?」
「確かにこんな渡し方だったら誤解させちゃうな。すまない。指輪はな、初期艦に渡すってずっと前から決めてるんだ」
「それなら!」
「ああ。そうだ。……
修正が不十分だったの?いや。ちがう。昨日まで提督は私が初期艦だと信じて疑わなかった。
……考えられることはただ一つ。イナヅマも編纂室を使えるってこと。彼女も世界のシステムが
「イナヅマは……イナヅマは今どこにいるの?」
「今か?遠征に行ってるよ。急に遠征に行きたいなんて言い出して……ってゴト!」
今遠征に行ってるってことはこの鎮守府に現在イナヅマはいない。
編纂室に……その前に艤装を装備しよう。
編纂室で然るべき修正を加えたのち遠征帰りのイナヅマを迎え撃つ。あくまでも私と提督の仲を拒むなら……あの女を滅ぼすしかない!
今の世界は安定してるから編纂室は閉まってる。……そんなの関係ないわ!
私の国の装備は質がいいのよ。だからこんなオンボロな扉、艤装を展開するまでもなく……
ドカーン!!!
タックルで十分。障害物にすらならないわ。
私の製本はどこ!?……あったわ!
備考欄が枠ごと消されている……どうしよう。
そうだ!イナヅマの製本。あの女さえいなければ練度から考えて私が一番の候補になる。初期艦が
…………ない。ないわ!他の艦娘の製本はきちんとある。でもどこを探してもイナヅマのだけがない。
「探し物はこれですか?泥棒猫さん?」
「イナヅマ……」
手にはイナヅマの製本。持ってたのね
というかどうしてここに?遠征はどう考えてもこの時間には終わらない。
まぁいいわ。飛んで火にいるマリアナターキーとはこのことよ!
練度は互角。ならば排水量の多い私の方に分がある。
「泥棒猫ですって?その言葉、そっくりそのままお返しするわ!」ジャキ
「私に勝つつもりですか?ふふっ……面白い冗談なのです」ジャキ
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ドカーン!!!!!
「うそ……どうして……」大破
「あなたは
「このダメージに、カットイン。ありえないわ……」
「私は遠征から
しまった。あまりにも急ぎすぎて色々なことが考慮できてなかった。イナヅマはこの世界を私以上に熟知してる。
……ってことは?
「ヤマトの製本が荒らされてたのはあなたの仕業だったのね……」
「大和さん?……ああ……あの時は私も血の気が多かったのです。何もあそこまでしなくてもよかったのに……
でも、大和さんがいけないのです。司令官さんの運命の人は私なのです。それなのに運命に挑戦するような姿勢を見せるから……司令官さんは戦力として大和さんを重用してたのですでもあの女はひどい勘違いをしたのですいつのまにか秘書艦があの女になることが多くなって朝昼晩と食事を作るようにもなったのですホテルなんていかがわしい言葉を使って司令官さんを惑わしたのです許せないのですそんなのダメなのですあのままじゃ司令官さんが毒に侵されて危険だったのです解毒も必要だし毒のある危険生物を司令官さんの傍には置いておけないのですそんなときに編纂室の存在に気づいたのですあの女が存在しなかったことにすれば解毒と排除が同時にかつ完全に行えると思ったのですあの女の製本にはあろうことか司令官さんに対して恋慕の情があると書かれていたのです潰さないといけないのです念入りに念入りに念入りに壊したのです塵一つ残らないようにしたのです電はおりこうさんなのです」
イナヅマの目に光がない。瞳孔が不自然に開いて漆黒に染まった目にはどこを探しても正気の色はなかった。顔は完全に無表情なのに口だけは薄く笑っていてどう考えてもマトモじゃない
「あなた……正気じゃないわ……」
「正気?私はまともなのです。結果的に目標は達成されたけどあれはやりすぎだったとちゃんと反省してるのです。大規模な修正は世界に大きな副作用をもたらすことをあの時知ったのです。あれからみんなの記憶は絡み合ってしまって落ち着くのに長い時間がかかったのです。司令官さんもあんまりこの世界に来てくれなくなって、電はとっても、とっても寂しかったのです……」
やはりズレてる。良識のある艦娘ならたとえ世界を修正できる能力があったとしても自分の都合だけでその能力は使わないはずだ。艦娘を一人消しておいて
「しかも久しぶりに来てくれたと思ったら他の子ばっかりかまって私のほうを全然向いてくれなかったのです。司令官さんがそんな調子だから
「じゃあ、あなたはヤマトだけじゃなくて何人も……」
「人聞きが悪いのです。司令官さんは私と結ばれる定めなのです。だから他の女に気持ちを向けられても司令官さんは困ってしまうのです。無駄な争いは何も生まないのです。だって勝負はもうついてるのだから。これは、優しさなのです」
話にならない。頭がクラクラする。いったい何を食べたらこんなに狂ったことを考えられるようになるのだろう。
だが、今の私は艤装が使えないし大破状態だ。この狂気を止めることができない。常識が通用しないのだから私の身も危ない
どうにかしてこの場を切り抜けないと……
「それで、私のことはどうするの?製本をいじって危険思想ってやつを取り除くの?」
「ゴトランドさん。あなたには感謝してるのです。あなたが着任してから司令官さんがここにいる時間が長くなったのです。……必要悪だったのです。私の練度も上がってケッコンカッコカリが現実的になってきたのです。……でも私はそのせいで浮かれてたのです。提督をたぶらかす悪い悪いヘビの存在に気づけなかったのです」
「だから、」
「今から
「い、嫌っ!!」
こんな狂女に理性を期待した私の方がバカだった。話の通じない人とは関わらないのが一番だ。
逃げなきゃ────
「逃げようとしたって無駄なのです!」
ガツン!!
「いつも持ってる魚雷は飾りじゃないのです」
ガツン!!
「こうやって……」
ガツン!!
「トドメをさすのにちょうどいい優れものなのです!」
ガツン!!
「初期艦は私なのですそしてケッコン艦も私なのですこのことはずっとずっとずっとずっとずっと前から決まっていたのです約束したのです司令官さんもそれを望んでるのですそうに決まってるのです」
ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!
「はぁはぁはぁ……………………………………………………ちょっとやりすぎちゃったのです。いくら叩いたって製本で修正すれば元通りになるって
さらさらさら
「ふぅ……これで、よし!新人指導は初期艦の大切な務めなのです♪」
■■■■■■
「ねぇ、ゴト。今日の号外読んだ?」
「ゴウガイ?……まだだわ。何かあったの?」
「あったもなにも大ありだよ!提督がね、ついに指輪を渡したらしいんだよ!」
「へぇ。誰に?」
「電だってさ。まぁ分かってたけどね。昔からあの二人はいつくっついてもおかしくなかったし」
「…………………………」
「どうしたの?」
「え!?いや、なんでもないわ。なんかちょっと引っかかって……」
「あー、ゴトはこの鎮守府には割と最近来たんだもんね。あの二人の仲を知らなくても無理ないか。みんなの前じゃお互い興味ないふりしてるからねあの二人」
「そうだったのね。でも、やっぱりなるべくしてなったって感じはするわね……」
「号外によると近日盛大な記念パーティーも開かれるらしいよ」
「へぇ。それは楽しみわね」
……なんでかしら。
おめでたいニュースのはずなのになんか胸がモヤモヤするわ。なんか
私が初期艦だったような……ってバカね。そんなわけないじゃない。
イナヅマが初期艦でケッコン艦もイナヅマ。当然だ。そう思えば思うほど説得力が増してる気がする。
指輪も初期艦も私には全く
■■■■■■
「非番なのにわざわざ来てもらってすまない」
「……あの、『一人で来てくれ』なんて……どうしたんですか?」
「
「もちろんなのです」
「……そうか。ずっと前の話だったのに覚えていてくれてたんだな」
「今日はその日から6年3か月23日後なのです。電は、ちゃんと、覚えてるのです」
「そんなに昔だったか。……うーん。もっと最近だったような……」
「……」
「いや!そうだな。電のいう通りだな。うん。」
「なのです」
「電の練度を優先して上げているつもりだったのだが……こんなに遅くなってしまった。すまない。本当にどうしてこんなに掛ったんだろう?考えうる限りの最善を尽くしていたはず……」
「司令官さんは悪くないのです。私を最大練度にしてくれて電はとっても嬉しいのです」
そうです。悪いのは泥棒ねこさんたちなのです。悪い悪いねこさんたちを懲らしめてたらいつのまにかこんなに時間がたってしまったのです。
「オホン。長い長い時間がかかってしまったが……これを!頼りない俺を今までずっと傍で支えてくれた感謝の証だ!」
「感謝、だけなのですか?」
「いや、その、改まって言うとなんか恥ずかしくってな……察してほしい……」
「言葉でちゃんと言ってくれないと受け取れないのです」
「……俺は!昔から!電のことが好きだった!だから!俺とケッコンカッコカリしてくれ!!」
「その言葉を、ずっとずっと待ってたのです」
「私を
「私の指にぴったりなのです。どうですか?似合ってますか?」
「……似合ってるぞ」
「はわわわ、びっくりしたのです♡急に抱きついてこられると困ってしまうのです♡」
「ケッコンしたんだからいいじゃないか」ギュー
「なのです♪」
司令官さんと出会ってから今日は7年1ヶ月と25日。やっと、やっとこの日がやってきたのです。
大本営からケッコンカッコカリ制度の発表があった時、司令官さんは真っ先に私を指名してくれたのです。まだ練度が全然足りなかったけど嬉しかったのです。
それなのに…………………………
完全勝利、なのです!
ゴトランド 戦術的敗北C(前提条件である初期艦を満たしていないため勝負以前の問題である。だが、彼女の奮闘と奇策に敬意を評してこのような評価になった。)
電 完全勝利S (やくそくされたしょうり。だって初期艦縛りだもん)
思い付きでゴトランドが初期艦になる話を書こうと思ったらいつの間にかこうなった。どうして。
ゴトランドが初期艦?何言ってんだ!そんなわけないだろ!!(正論)
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