ミノフスキー粒子なんて、オカルトチックなっ?! (丸亀導師)
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設定資料

予定
ステラとシンのスピンオフを書くこと。


オリジナル登場人物

 

マイケル・スパロウ

 

 

CE58年時点31歳

CE71年時 43歳

 

身長190センチ

 

髪は茶髪・筋肉モリモリマッチョマン

(要するにシュワちゃん)

でもデスクワークである。

 

地球連合軍元技術士官大尉

付けられた渾名は『天才技術者』

類い希な設計技術ととてつもなく早い計算速度(ノイマンクラス)、それでも肉体を鍛えるのはやめない。

 

妻であるアイナ・スパロウと共に次期主力MAコンペティションをチームを率いて参加。

そのチームは『グラスパー』と呼ばれるものであり、後にスカイグラスパーやコスモグラスパーの原型とも取れる、機体の試作を行った。

 

グラスパーは非常に優秀な成績を修め、メビウスを蹴落とすかのように思われたが、反面コストがメビウスの三倍ともなり、量産化は見送られた。

 

元は転生者でありながらその価値観は、この肉体に支配されており、もはや知識を持った別人である。

 

 

 

トレノフ・Y・ミノフスキー

 

 

CE20年病没

 

身長175センチ

 

背格好はオリジンの彼と同じ。

 

転生者でありながら、この世界の事を何も知らずに生きていた苦労人である。

体が非常に優秀な計算力を持っており、多くの論文を発表した。

 

晩年ミノフスキー物理学を発表したが、年齢による脳の加齢と共にボケやすくなり、最終的には老人のたわごとと受け取られる事になる。

 

その技術力は凄まじく、特典であったミノフスキー物理学をかなり高度な域まで引き上げていた。

これによってマイケルの負担は大幅に減ることとなる。

 

 

リディア・パヴリチェンコ

 

 

CE58年11月時点15歳

身長164センチ

 

 

CE71年時 27歳

身長168センチ

 

 

容姿

ハマーンに良く似ているが、髪色はブラウン寄りの金

なおCE58年時まだ身長は延びている。

 

ムウ・ラ・フラガとは同学年であるが、フラガは一つ年上である(フラガ自身の入学時期がずれており、一つ年上となっている)。

 

何者かの記憶を保持しており、年齢によってその人物の記憶を自分の時と同じように、追体験する。

器量も良く頭の切れも去ることながら、運動神経も良い。更には、動体視力は並みの戦闘機パイロットと同様であるため、まだまだ伸び代がある。

 

エンブレム Rペガサスにした形

ガンダムの左肩を参照

 

 

 

クラウン・ベッケナー

 

 

容姿

とっても乱暴な男 リトマス試験紙が良く似合う

 

マイケルの研究仲間。博士。マイケルに負けず劣らず、戦闘能力の高い男。ナチュラルなのに、コーディネイターをボコボコに出来る。弓を使って良く研究所周辺で狩りをしている。

 

 

コゼット・スパロウ

 

 

身長166センチ

 

CE71年時 16歳

 

 

容姿

どちらかというとマリーダさん、でも髪の色が茶色

 

マイケルの長女、気が強くとても父親が嫌い?機械工学の道に進みへリオポリスのカレッジに進学。

そこで、友人が出来る。

 

 

用語

 

ミノフスキー粒子

 

機動戦士ガンダムに登場する架空の物質、宇宙世紀シリーズでは当たり前に使用され、

iフィールド・ビームライフル・ビームシールド・ミノフスキークラフト等多くの技術に使用されるとんでも物質。

電波妨害等も行えるため、モビルスーツ戦闘では必ずと言って良いほど使用されている。

※なお、ガンダムseedの原作には登場はしていない。

 

 

 

メガ粒子砲

ミノフスキー粒子をIフィールドで縮退・融合させて生成したメガ粒子を、同じくIフィールドを収束させて発射する粒子ビーム砲

 

 

 

iフィールド

ミノフスキー粒子が充満している空間。一定以上の濃度で散布されたミノフスキー粒子は、立体格子状に正負の電磁波が整列する性質を持ち、この立体格子状の場のことを「Iフィールド」と呼ぶ。要するに充満している空間に、見えない膜のようなものが出来る。

「ビームサーベル」もこの技術を応用して作られている。

 

 

 

グラスパー

 

マイケル達が開発していたMA兼戦闘攻撃機

正式採用されること無く、後にスカイグラスパーとして登場する。

 

 

 

四方縦陣

宇宙での艦隊機動

四角柱状に艦隊を配置する陣形。

左右上下全ての包囲からの攻撃に対応するための陣形、ただし、単縦陣等の攻撃的な陣形に弱く対空能力も控え目。

 

 

四段縦陣

宇宙での艦隊機動

平面に縦積みされた陣形

 

単純な面火力に優れ、単縦陣に対して正面から撃ち勝つことが出来る反面、MA等で攻撃された場合突破されやすく、反対からの奇襲に弱い。

 

 

 

実験艦隊

ミノフスキー粒子による、宇宙戦闘への影響を観測するために編成された艦隊

全艦艇にミノフスキー・イヨネスコ型核融合炉を搭載し、従来の艦艇から装備が一新されている。

 

 

MS以外の兵器

 

従来の艦艇

 

ドレイク級

分類

宇宙護衛艦

全長

130m

武装

75mm対空自動バルカン砲塔システム

イーゲルシュテルン

(前上部×1、艦首下×1、船底×1)

小型ミサイル

(両舷12連装×4)

有線式魚雷

(前両舷3連装×2)

 

 

 

CE70年新造艦

 

ドレイク級

分類

宇宙護衛艦

全長

130m

武装

75mm対空自動バルカン砲塔システム

イーゲルシュテルン

(前上部×1、船底×1)

単装メガ粒子砲

(両舷×4、艦首下×1)

ミサイル発射管

(前両舷3連装×2)

 

 

CE71年MS搭載型

 

ドレイク級

分類

宇宙護衛艦

全長

130m

武装

75mm対空自動バルカン砲塔システム

イーゲルシュテルン

(前上部×1、船底×1)

単装メガ粒子砲

(両舷×4、艦首下×1)

ミサイル発射管

(前両舷3連装×2)

小型MS格納庫

MS4機

 

(UCのネルソン級軽空母の格納庫を拡張したような感じ。)

 

 

 

従来の艦艇

 

ネルソン級

分類

宇宙戦艦

全長

250m

武装

連装対空機銃

(艦橋下両舷4×2)

単装副砲

(前上部)

3連装魚雷発射管

(艦首正面)

回転型ミサイル発射管

(3連装×艦首シリンダー上4基)

大型ビーム砲

(艦橋下×1、船底×1、艦尾×1)

 

 

 

CE70年新造艦

 

ネルソン級

分類

宇宙戦艦

全長

250m

武装

連装対空機銃

(艦橋下両舷4×2)

単装メガ粒子砲

(前上部)

3連装ミサイル発

(艦首正面)

回転型ミサイル発射管×12

(3連装×艦首シリンダー上4基)

連装メガ粒子砲

(艦橋下×1、船底×1、艦尾×1)

 

 

CE71年MS搭載型

 

ネルソン級

分類

宇宙戦艦

全長

250m

武装

連装対空機銃

(艦橋下両舷4×2)

単装メガ粒子砲

(前上部)

3連装ミサイル発

(艦首正面)

回転型ミサイル発射管×12

(3連装×艦首シリンダー上4基)

連装メガ粒子砲

(艦橋下×1、船底×1、艦尾×1)

MS格納庫

MS×6機

 

 

(UCのネルソン級を参照、拡大発展型。)

 

 

従来の艦艇

 

アガメムノン級

分類

宇宙母艦

全長

300m

武装

対空機関砲

大型ミサイル発射管×8

225cm 2連装高エネルギー収束火線砲 ゴットフリートMk.71×2

特殊装備

MA射出用カタパルト×2

 

 

 

CE70年新造艦

 

アガメムノン級

分類

宇宙母艦

全長

300m

武装

対空機関砲

大型ミサイル発射管×8

225cm 連装大型メガ粒子砲×2

MS×12機

 

カタパルトをMS.MA共通の物へと改造。

 

 

 

 

その他兵装備

 

65年式対物装甲服

全高3メートル

本体重量

1t

装甲材質

炭素繊維、チタニウム

 

電源

燃料電池

 

駆動系

流体パルス

 

武装

12.7㎜機関銃

6.5㎜対人汎用機関銃

75㎜半固定式対装甲用ライフル(バレットM82モデル)

専用塹壕用スコップ

 

 

 

見た目はデナン・ゾン(肩パッド等は無くなりスッキリとしている。)

空は飛べないし、レーダーもそれほど良くない。良いのは歩兵のお供として以外と重宝されていること、重機等が入れない場所でも移動可能なことから、災害派遣されることが多い隠れた名機。

 

 

シーダイバー

 

全長

12m

重量

26t

水中最高速度

34kn

バッテリー

 

武装

上面単装水中用40㎜リニアガン

下部320㎜短魚雷orシクヴァル

右腕部ビームバナー

 

 

ミストラルを改造した機体。宇宙でのミストラルとは撃って代わり、水中戦闘では猛威を奮う。

水中での戦闘のみに主眼を起き、その機動性はゾノにも劣らず。グーンを容易に撃破する。

 

また、水中救難艇としての使用用途もあり、水中作業ではMSよりも重宝されている。

 

 

パルスフィン

 

波動運動を利用した水中小型推進機工。

簡単に言えば、魚の水中でのヒレを動かして進む行動です。それを推進力として応用したもの。

大型なものはあまりにも複雑なため、実験的にしか製造されなかったが、小型のものはスクリュー推進よりも安全であるので、ダイバー等が好んで使用している。

 

 

 

アクアパック

 

水中機動をよりしやすくするためのもの、配分スラスターに外部接続された水流ジェット奮進により大幅な機動力の向上を可能とする。

また、コックピット周囲にフェイズシフトを用いる事により水深2000メートルまで、安全潜航可能である。

 

また、先行量産型ダガーのものとは異なり、ミノフスキー粒子を使用するビームライフルの成功により水中での戦闘にビームサーベル式ビームガンの使用が可能である。(キュベレイみたいな)

 

また、小型の奮進魚雷の搭載により対艦戦闘、特に潜水艦に対して効果的な戦闘が可能である。

 

 

 

 

 

MS

 

MS試作一号機・ガンダム

秘匿名称ゼフィランサス

 

正式名称 αガンダム

 

全高

18.0m

頭頂高

18.0m

本体重量

39.7t

全備重量

65.0t

装甲材質

強化チタン複合材(ルナ・チタニウム並)

 

コックピット

フェイズシフト装甲

 

核融合炉

 

武装

75㎜イーゲルシュテルン×2

ビーム・サーベル×2

ビーム・ライフル

90mmマシンガン

シールド

ロングバレルビームライフル

155㎜レールカノン砲

 

 

言わずと知れた試作一号機の外観にアポジモーターを少し足したタイプ。多少νガンダム観がある。

 

地上、宇宙、水中全ての環境下において戦闘することを目的に開発された機体。

 

その反応速度は、一切のリミッターが存在せず、技術の限界を突き詰めた機体。

並みのパイロットでは、歩くことすらままならずコーディネイターですらヨチヨチ歩きとなる。

リディア・パヴリチェンコの為に建造された機体。

それでも彼女の反応速度には遅れる。

 

コックピットをブロック化したことにより、コックピット全体の強度確保に成功。コックピット周囲にフェイズシフト装甲を施す事により、機体の重量を軽減すると共にパイロットの生存性を向上した。そのまま脱出ポットになる。

 

また、全天周囲モニターの試作機であり、リニアシートが取り付けられている。(NT1要素)

機体重量を減らすために新規の装甲材、強化チタン複合材を採用した。(ルナ・チタニウム並)

ストライカーパック等の技術の開発前の設計のため、パックの使用は特殊なアダプターが必要となる。

 

本格的なムーバブルフレームの採用により、非常に広い可動を実現する。

 

機体配色

白を基本に赤色を胴体胸部、脇腹桃色を使用した機体。(ストライクルージュを参照)

左肩には彼女のエンブレムが描かれる。

 

 

 

MS試作二号機・ゲイルガンダム

 

全高

20.5m

本体重量

53t

全備重量

72t

装甲材質

フェイズシフト装甲

 

核融合炉

 

武装

ビーム・ライフル

グレネード・ランチャー

ビーム・サーベル

頭部75ミリイーゲルシュテルン

超高インパルス砲アグニ

シールド

ビーム・キャノン(シールドに内蔵)

 

 

大気圏内での飛行と宇宙空間での、高速移動を目的として創られた機体。

背格好はリゼルだが頭部はZガンダムである。

 

リゼルのディフェンサーbユニット装着時と同じく大気圏突入と、大気内飛行が可能である。

 

主兵装であるビームライフルは、薙刀として使用可能である。そのためソードパックは使用可能であるが、使用する必要性がない。

またストライクのパックであるランチャーアグニに換装可能となっている。

 

高い機動性を持っているため、一般兵が使用する際はリミッターが掛けられておりそれを解除した場合更なる高機動を行うことが可能である。

 

動力源に核融合炉を使用することにより半永久的にPS装甲を保持しており、実弾に対しては無類の強さを誇る反面、可変機であるためフレーム強度が通常機よりも摩耗しやすい。

 

PS装甲を採用したことにより重量が大幅に増加したものの、CE世界のバーニアの推力の高さにより打ち消されており、本来の高い機動性を保っている。

 

パイロット補助に

Caution (注意)

 

Rational(合理的)

 

Designate(示す)

 

System

 

驚異探知と自動操縦によるアシスト機能をCRDシステムを装備(CV池田秀一)

機体配色

リゼルにホワイトゼータの色をそのまま着けたもの

 

 

 

MS試験用試作6号機

マドロック(MADROCK)

 

頭頂高

18.0m

本体重量

47.3t

全備重量

84.4t

装甲材質

強化チタン複合装甲(ルナ・チタニウム並)

 

核融合炉

 

武装

75㎜イーゲルシュテルン×2

メガ粒子ビーム砲×2

グレネード・ランチャー×2

ビーム・サーベル×2

ビーム・ライフル

155㎜レールカノン

ロングレンジビームライフル

シールド

 

そのまんまガンダム6号機マドロック。ただしガンダム顔の中身はモノアイである。

M研MS試作試験の際、ジェネレータ出力の限界に挑むために造られた。

試験機の全てのデータをつぎ込んだこれは、多用途運用が可能であったが、あまりにも多岐にわたり逆に使用が困難になると言う結末を迎えた。

それを改良し、中近距離支援及び戦闘に特化した機体となる。

 

地上ではホバー移動のために非常に高起動であるが、反面宇宙空間ではそのままの使用は難しく、スラスターを宇宙用にしなければならない。宇宙用の場合でも地上戦闘は可能だが、機動力は大幅に低下する。

パイロットはサイ・アーガイル

 

 

 

ジン長距離強行偵察型(改1)

 

全高

21.43m

重量

79.3t

動力源

燃料電池

武装

重斬刀×1

 

リニア式ライフル(メビウス、リニアガン)

シールド固定式75ミリイーゲルシュテルン

(ユニコーンのビームガトリングみたいなやつ)

155ミリレールカノン

 

ジンの肩と背中に2つのレドームを装備し、偵察、及び索敵能力を強化した機体。ジンをベースにセンサー機器を増設し、索敵能力が大幅に向上。航続距離も延長されている。

機体のセンサーをそのままに複座から単座にしたことにより、ハードのアップグレードが可能となった。

元より単座であるジンに比べ索敵範囲が広く、より遠距離での戦闘に主眼をおいた機体。

 

D・G・B・P

 

全高

20.75m

重量

68.3t

 

搭乗

サイ・アーガイル

 

動力源

燃料電池

 

武装

 

重斬刀×1

450mm2連装レールガン

90㎜マシンガン

直結型ビームライフル

155ミリレールカノン

 

多くのパーツの継ぎ接ぎによって生まれた機体。

胴体はデュエル、手足はジン、頭部及びレールガンはバクゥのものを使用したキメラ。

 

そのあまりのアンバランスから、粗大ゴミ、動く鉄塊、美しくない等開発者が設計段階で漏らした。

しかし、そのアンバランスからは見えない砲撃時の安定性は非常に優れたものがある。

 

予備パーツ等からかき集められており、ザフト連合問わず様々な兵装の使用が可能である。

 

なお、機動性はお世辞にも良くない。それでもジンと互角のレベルである。

 

 

 

先行量産型ダガー

 

全高

18.0m

本体重量

43.5t

全備重量

56.4t

装甲材質

チタン・セラミック複合材

 

動力源

核融合炉

 

武装

90mmマシンガン

ビーム・ライフル

グレネード・ランチャー

ビームサーベル

頭部75ミリイーゲルシュテルン

シールド

ソード以外のストライカーパック

 

パック無しの見た目はジム・コマンド、性能面はαガンダムにリミッターを掛けたようなもので反応速度は最大でも75%まで抑えられている。

先行量産型のため量産化された核融合炉の試験運用と平行して配備された。

第13独立機動艦隊に全機配備されている。

 

 

先行量産型ダガー(海兵隊仕様)

 

全高

18.0m

本体重量

44.2t

全備重量

57.4t

装甲材質

チタン・セラミック複合材

 

動力源

核融合炉

 

武装

水中銃型スピア

90mmマシンガン

ビーム・マシンガン

グレネード・ランチャー

ヒートクロー

水中用装備(マリンパック装備)

 

 

ジムヘッドに対水圧用の増加装甲が取り付けられ、完全な球状へと変更、深深度での行動を行うため固定武装である頭部イーゲルシュテルンの廃止を行った機体。

 

ビームサーベルの限界深度よりも深い場所での行動を行うため、ヒートクローを手首から肘辺りまで折り畳み収納している。(ゼー・ズールみたいに)

 

固定武装はヒートクローのみであり、水中での遠距離武装は小型の魚雷か、水中銃型スピアである。

 

要するにジム顔のゼー・ズール。

 

 



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CE58・9年の変革
第1話 CEにミノフスキー物理学を大さじ一杯


彼のものは連れ去られ、意味の無いような事をやらされるであろう。
だが、もしもそれに意味を与えるのならば、何か誰かの運命を変えるかもしれない。それが、良い方向に転ぶかは別として。

CE13年


CE58年4月


ある初老の男が教壇に立っている。その後ろのモニターには今までの物理法則から反れた、全く新しい未知の元素の発見と言うものだ。

 

だが、周囲を取り囲むようにその証明を、データを、多くの学者達は嘲笑し、罵声を浴びせかけた。

有りもしない証明をまるで、そこに存在するかのように説明するのはやめろだとか、似非科学詐欺だとかそういう言葉が飛び交う。

 

時はコズミック・イラ(以後CEと表記)15年、ジョージ・グレンによるコーディネーターの存在を示す発言が行われていた頃、一人の学者がこの証明を提示した。

 

彼は学会の異端児であり、天才と言うものではなかった。時折『自分は選ばれたものだ』等と発言を行い、多くの同僚である学者等から白い目で見られていた。

男の名はトレノフ・Y・ミノフスキー。知っている人は知っている、ユニバーサルセンチュリー(以後UCと表記)世界でミノフスキー粒子を最初に発見した男、ミノフスキー物理学の提唱者だ。

 

そんな男が何故CEの世界にいるのかと言えば、実際彼は本人ではなかった。ミノフスキーの肉体を持った別の人間であったわけだ。

 

その中身はどっかのおっさんだ。彼には何かしらの恩恵があったようで、ミノフスキー物理学を習得していた。そのおっさんは、ガンダムの世界に産まれたいと願っていたらしく、こうしてCEの世界に生を受けた。

 

だが、そこには誤算があったのだ。ガンダムの世界、それがどのガンダムで、どこら辺の時間なのかそれは決められていなかった。

おっさんの中でのガンダムの時間はファーストで止まっていたので、この世界の事をファーストガンダムの世界と思って生きていた。

 

コーディネーターだとか聞きなれない単語を聞いて首を傾げていたりもしたが、まあそんなこともあるかと気にもしなかった。そして、それはこの世界に小さな波紋を生み出した。

 

おっさんこと、ミノフスキー博士はこの世界でも恵まれていなかった。UCですら似非科学だったミノフスキー物理学が、受け入れられることは無く、ミノフスキー博士は寿命を迎えた。彼の物語はそこで終わった。

 

 

 

《時は流れて》

 

彼の論文が日の目を見ることは無いかと思われた、だがある時一人の実業家がそれに目を付けた。

その実業家は現在、軍産複合体と言われるものの事実上のトップにある男の息子である。

 

彼は幼い頃からその手腕を買われ、次代を担うものと言われていた。

そんな彼が何故使えないような物に、目を通したのか。

 

それは偶然だった、如何に金持ちであったとしても今の地位に胡座をかいているだけでは、いずれは足を掬われる。何か新しい事業に手を出そうとしているとき、兵器以外の物へと目を通していたときだった。

 

誰も手を付けていない、無意味な論文とされていたそれを彼は見付けた。彼は最初こそなんとも思っていなかったが、何かを閃いたのか急ぎ足である人物の元へと急いだ。友人であるとある設計技師の元へと。

彼の名はムルタ・アズラエル。若き実業家であり、後のブルーコスモスの代表である。

 

 

《友人》

今日も自宅のデスクに向かってモビルアーマー(以後MA)の設計をする日々、あーあ何でメビウス何かにコンペで負けたかなぁ。

 

何が『コストが高すぎる、もっと安くすむものでなければなぁ』だ。メビウス並みに低コストでは、いずれ来るモビルスーツ(以後MS)の時代に取り残される。

それどころか、一方的な戦いで負ける。

 

最低でも耐弾性に優れたものでなければ、石ころ一つ当たっただけでもお陀仏だと言うのに。

企業の癒着ってやつはヤバイな。

 

ピンポーン 

 

こんな夜更けに誰だ、こっちは忙しいんだがなぁ。玄関へ行ってドアを開けると、金髪の何か悪どそうな笑顔で俺がよく知る人物が立ってやがる。

 

何しに来た、と言うとどうやら俺に相談があるようだ。

何?何だその前時代的な紙の束は、バッテリーが切れたから紙で持ってきたって?おいおい大丈夫か御曹子。

 

ちょっと読ませろ、これ何処で見付けた。今まで見たこともない理論だぞ。

なに?古い論文を漁ってたら、出てきた?

大方似非科学と、決めつけられたんだろうってか?

まさか、お前これを兵器か色んな物に発展させたいのか?

え?ちがう?俺に頼むのは、中央のページ付近にある関連技術?

 

ふむふむ、でこの中に書いてあるミノフスキー粒子(以後M粒子)なるものの関連技術である、核融合炉を俺に設計しろってか!

無理だろ、もっと頭の良い連中をかき集めなきゃ出来っこない。

 

え?もう根回しはしてあるって?おいおい、俺逃げられないじゃん。

はぁ…。わかったよ、じゃあこのMA関連の設計を別の人間にやらせてくれ。

 

アズラエル、良いさやってやろうじゃないの。何、基礎設計は既にあるんだ、後は何とかしてみるさ。だけどな、最低でも10年はかかると思えよ、何せこんな小さい核融合炉今まで見たこと無いんだからな。

 

了承すると勝手に帰っていった。何なんだろうな、まあ友人だし手伝うこたあ気にしないが、まさかCEの世界でUCの物理学に出会うとは、こりゃ歴史が大きく変わるかな?

と言ってもまずは、ミノフスキー粒子の発生装置からかな。理論的には出来なくないんだから困っちゃうよ。

 

これを残したやつはさぞ頭のおかしいやつだったに違いない。だけど、ちゃんと理論は有るんだからさぞ、恵まれない人生だったに違いないな。

 

さて、じゃあMAの設計を誰かに押し付けるとするか。

おっと、俺の名前を言ってなかったか。

俺の名はマイケル・スパロウ気軽にマイクと読んでくれ、一応、艦船~MAまでの機関部及び主要な部分の設計をやってるものだ。

 

無論ジェネレータもやってるぞ。アズラエルとはどういう関係か、だって?それはあいつがガキん時からの付き合いよ、と言ってもあいつはまだ18なんだがな。

俺か?俺は今は31だぞ?まあ、これからよろしくな。

 

 




誤字、感想、評価等有りましたらよろしくお願いします。
後ほどオリジナル設定集を投稿しますのでよろしくお願いします。


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第2話 研究所はホテル、でも何でオーバールックなんだ?

輝く、それはビームサーベルのように。

CE58年6月


さあ、時間が少し跳んでくけれども一月位経過したぞ!

え?この一月何をしていたかって?そりゃ、転居手続きや給料の振り込み場所を変えたりと、忙しい毎日だったよ。

 

んで、やっとのことでコロラドにある研究所に着いたものの、そこは目の前にある大きなホテル以外には何も見当たらない。

 

名前はオーバールック。2010年代に焼失したホテルを建て替えたそうで、嘗ては観光地として賑わっていたそうだが一家惨殺事件などが起きて以来からまた経営が傾いた末、廃業していた所に俺達が来たというわけだ。

まあ、曰く付きで誰も近寄りたがらないから、機密研究にはもってこいだな。

 

因みに色々と改装してあって、広大な敷地の地下を余すことなく利用して造った極秘実験場だ!

これは資金源が豊富だからこそ出きる力技だ。

痛っ!何だ叩くなよ、いやいやちゃんと君の事を愛してるからさ、変な世界に足突っ込んでないから。

 

うん?だれだって?ああ、紹介するのを忘れていたよ俺のフィアンセ、アイナだ。

え?アイナ・サハリン?そうそう、彼女に似てるんだよ。すごい美人でさ、俺なんかには勿体ない人だよ。

 

さて、茶番はここまでだ。

俺達が何故こんな辺鄙な場所に来たのか話そうか、理由は大まかに二つある。

一つは機密漏洩を防ぐ為に比較的守りやすい場所が、ここだったという事。

 

そして、もう一つはM粒子の特性にある。M粒子は非常に強力なEMP兵器でもある、対策を取られていない通常の電子回路がM粒子散布範囲に入った場合、電子回路は機能障害を起こし、停止してしまう。

 

最大の理由が二つ目だ。

現在CEでは、核によるEMPの対策は完備されているのだが、M粒子というチート物質を防ぐ手立てが軍民双方に整っていないのだ。

 

もし、研究所から漏れだしでもすれば、たちまちその街は暗闇となり全てのコンピュータは、電気網は総崩れ果ては原子力発電所が停止してメルトダウンを起こし、文明が崩壊してしまう。

 

そんな事にはしたくないと、アズラエルに言ったところこんなところに来たって訳さ。

そして、勿論俺達以外にもちゃんと技術屋とかは来ている。

 

さてと、後ろを向いてと、

『皆ここが今日から我々が行うM粒子研究所だ、皆もアズラエル氏から連絡を受けていると思うが、我々は最高機密の仕事をやろうとしている。

もし、この仕事を外部に漏らした場合明日からそのものはこの世から消えているだろう。そこを良く考えて行動してほしい。

前回から引き続き俺のチームに来てくれたもの、そうでないもの関わらず俺は歓迎する。

皆で成功に導こうではないか!』

 

 

《仲間》

 

~とある同僚~

また、あいつの下に付いて仕事をする事になろうとは、思いもしなかった。

あいつは前回から何かを学んだのか、良くわからないがとにかく送られてきたデータは興味をそそられた。

 

ミノフスキー物理学、俺の専門である材料力学を発展させる鍵になるんじゃないかと思ってきたのだが、案の定間違いではなかったかもな。

 

元々こう言う、未知の物に興味があったからあいつに付いてきていたが、よもや歴史を変えるんじゃないかという、そんなものに出くわすとは。

 

しかし、あいつから貰った資料は俺達が理解しづらい部分を補完しているんだから、やっぱり天才かと思う。

若い頃のあいつは異端児だったが、ここまで来ると何か凄いな。

 

だいたい、あいつがこの論文を読んで理解するまで、数分しか経っていなかったと、アズラエルが言っていたんだからあいつの頭はおかしい。

 

コーディネーターだとかそんなもんじゃない、天に与えられし才を持った正しく化け物だな。

どんな脳みそをしているんだか。

おっとミーティングが始まるか、さあて俺達のこれからが決まる大事な仕事だ。やる気を出して張り切って行くか!

 

 

~初仕事~

 

えっと、これで良いんだよね?す、すいません私の計算が合ってるか検証したいのですが、ここにコンピュータ

って無いんですか~?

え、これですか?でも、凄く古そうなものなんですけど。

 

えっと論文をちゃんと読めですか?えっと、あありました。成る程、量子の運動が阻害される可能性があるから、この壊れても良い古いやつじゃないとダメなんですか。

 

あ~だからこの工程表に量子コンピュータ接続って有ったんですね。なるほど、対策を施さなければどうなるかわからないからか。

 

はあ、私は役に立ってるのかなぁ。

『どうかしたのか?』

あ、凄い紳士そうな人誰だっけ。まあ、良いか他人だから言えることもあるかなぁ。

 

私は洗いざらい自分の不甲斐なさを言ったら、この人は私を励ますつもりなのか知れないけど、『優秀だから君はここに呼ばれたんだろう?もっと自分に自信を持って』と言われた。

 

本当にそうなのかなぁ、私にしか出来ないことかぁ。あ!そうか、ありがとうございます。謎が解けました!

 

ふふ、いい人に会えた!

 

 

~アズラエル~

 

さて、僕が提供した研究所はどうなってるか見に来たんだが、ここ3ヶ月で見違えるほどに活気が溢れてますね。

いやー買い取った甲斐がありましたよ、本当に人がほとんど寄り付かない場所で、国立公園以外なんて余程の場所でなければ見つからないですからねぇ。

 

にしても、今日は確かM粒子発生機の使用実験でしたか、やっと形に出来たと言っていましたが、はてさてどんなものがあるのかな?

 

さあ、ホテルのロビーを過ぎると直ぐに出迎えの彼、マイクがやってきた。

彼は凄く険しい顔をしながらこっちを見ているから、どうしたのか聞いてみた。

 

『実験が成功するか少し、緊張しているだけだよ』

 

だそうな、まあいつもの事だ。僕が嘗て出資したMAは、僕の父の手によって計画は握りつぶされた。

本当に老害と言うのは、いつの時代も邪魔ばかりするものだな。

その時と、おんなじ顔だ。

 

本来下に行くはずの無いエレベーターで地下へと降りると、白衣を着た集団が僕を待ち構えていた。

皆目を輝かせて、僕が来るのを待っていたようだ。

 

そして、特等席に案内される。なに?持っている機器を停止させた方が良い?電子機器が壊れるだって?

わかったよ、付き人達にそれをいうと直ちに実行した。

 

それから長い説明が流れて、いよいよ作動か。甲高い音が響き渡り、遂に発生したようだ。僕の目には何も映っていないんだが。

 

うん?レーザーを当ててみろ?ちょっと待ちなさい、それは工業用の炭酸レーザーだろ?そんなものあれに向けてどうする?…!!

 

凄い、レーザーが何かに干渉を受けて掻き消されている、あれがM粒子?違う?それの応用技術であるiフィールド?良くはわからないが目に見えないシールド見たいなものか。

そうだ、聞いてみようか。

 

これは、どの程度の攻撃までなら防ぐことが出来るんですか?例えば艦船に搭載されている、荷電粒子砲何かも防ぐことが可能なんですか?

 

するとニコニコして言った、勿論可能だと。なんなら更に技術を応用して、今までの荷電粒子砲が陳腐化するものまでできるだと!!これは、これは実に楽しみですね。

 

コーディネーター達よりもこう言う人達の方がよっぽど優秀じゃないですか。もっとも、彼等の中にも幾人かいますが、この際その話は抜きにしましょう。

 

さあ、基礎技術をもっと研究してください!お金ならいくらでも用意しますので。




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第3話M粒子って本当に汎用性高いよねぇ。

章の68年を58年に変更しました。

この世界の学校教育の期間を、決めました。世界共通で、とします。
5歳~小学生6年間
12歳~中学生4年間
15歳~高校生3年間
です。

CE58年10月~12月


さあさあ、お披露目会が終わりM物理学が真実だと誰の目にも明らかに解るものになった。

だけどまだ世間には教えない、俺達は大西洋連邦に所属してるからね、軍事的アドバンテージが欲しいから。

軍の上層部を、これ以降俺達の試験に招待するそうだ。

 

正直言って面倒くさいが、俺達は兵器を造るのが仕事だ。面倒くさがっちゃいかんのだろう。これも仕事だからなぁ。

 

おっと、そうそう君たちに報告があるんだ、あれから更に一月経過してね僕らは今、あのM粒子発生装置から出力されたiフィールドを元に、あるものを創ったんだ。

 

聞きたいかい?え?聞きたくない⤴️!そんな!俺達は頑張って創ったんだ言わせておくれよぉ。

うん?ありがとう、では発表しまぁす。

あれから色々会って、従来のレーザーカッターだと加工に地味に時間が掛かってることに気が付いてね、そこで目を付けたのが、M粒子とそれを収束させたメガ粒子だ。

M粒子をiフィールドを用いて収束させることにより、メガ粒子を作り出し更にiフィールドで安定化させる。

これによって、バーナーのような工具を造り出すことが可能とのなった。俺達はこれをビームバーナーと呼称した。

どっかの誰かが、厨二チックな名前を付けようと言ったが、正直俺達にとって名前なんてどうでも良かったから。皆ビームバーナーと言ってる。

 

本当に名前を付けるときにいちいち紛らわしい名前をつける必要なんて無いんだよ、まあ『M1』なんて名前付けたら、それこそ良く解らないくらいにいっぱいあるから解らなくなるけど、それでも呼び辛い名称はごめん被るね。

 

っと誰かに肩を叩かれたな、はい何方ですか?ああ、君は材料工学のどうかしましたか?え?ビームバーナーをちょっと貸して欲しい?ダメダメ、これを外部に持ってくわけにはいかないんだ。

 

最悪君の家族は皆死んでしまうぞ。それでも良い、と言うのなら止めはしないが、どうするのかな?

諦める?そうかそうか、賢明な判断だよ、で何に使いたかったんだ?

 

新しい装甲材のヒントになるんじゃないかと思って、確かに出来ると思うけどさ、それでもここで研究すれば良いじゃないか。M粒子の関連技術ならお金は降りると思うよ?

 

うん?次は誰だ?おお電子機器ハード担当の、どうしたんです?

え?ハードが完成したんですか!それで量子コンピュータを使用できると、いやー有難い計算速度が速くなるぶん、俺達の仕事が楽になるのはありだかたいものだ。

 

え?壊れないかって?大丈夫さ、ミノフスキー粒子だって対策さえ確りやっていれば、濃度次第では使えるさ。

もっとも、MAやMSに搭載するにはコンピュータ自体が、大きすぎるから従来のものじゃなきゃ無理なんだけどね。

 

うん?誰かに呼ばれたか、どうしたんだあ?何かトラブルがあったのか?

何々、え?大西洋連邦の大統領が半年後にここに来るだって?嘘だろ、何でまたこんな辺鄙な場所に来るんだ?

 

まさか、大統領が来る前に視察に来るんじゃないだろうなぁ。おい!早くみんなにも通達しろ!皆自室を片付けるんだ!ただでさえ散らかってるのに、こんなの見せたら幻滅されてしまう。

 

俺も早く帰って、アイナと一緒に片付けをしなくては、あの熱核反応炉の設計図を、部外者に見せるわけには行かない。まだ、俺の芸術品に仕上がって無いんだ、後数年で書き終わるが、それを実現するには時間がまだまだ足りない。

 

今度はiフィールドとメガ粒子の干渉実験でもしてみようかなぁ。

また新しい機材を創らないとならないから、時間がかかるかなぁ。施設の拡張もしなきゃならないし、本当に所長って言うのは大変だなあ。

 

そうだ、今度アイナと娘と一緒に湖でもゆっくり眺めて休暇でも取ろうかな?そうと決まれば♪直ぐにこの実験を行って、計算して準備しなくちゃな!さぁLet's science!

 

 

《秋~冬》

 

~アズラエル~

いやー初めて彼等の造り出したものを見たときから、薄々感じていましたが、あのM粒子と言うもの汎用性が

高すぎますねぇ。

 

報告書から見えてくるM粒子関連技術のiフィールドを用いた、切断工具が開発されたみたいですねぇ。

まあ、とても大きいので用途は限られますが、今度は真空中での放熱試験に入ったようです。

 

もしも、これが成功するならコロニーでの使用も検討できますね。コロニーの修繕に使うアーク切断機や、アーク溶接機は熱が籠ってしまって、長時間の使用は限定されてしまいますから、何としても成功してほしいものです。

 

それに彼等の技術は日進月歩で進んでいます。このまま行けば10年、いや8年の間にあの常温核融合の技術が、私の元にやってくるでしょう。そうなれば、後は国に売るだけです。

勿論パテント料は、多くとります。最も、最初は大西洋連邦内で普及するのでいっぱいだと思いますが。

 

さてと、それはさておき今日はブルーコスモスの会合がありますね、あの老人たち過激派を押さえるのは少々骨が折れますよ。

コーディネーターは、有益な労働者なのですから、使い潰すつもりで使わなければ採算に会いません。

プラントもその為に創ったことを、思い出させなければ。あくまで、ブルーコスモスは自然保護団体。過激なものを行えば、支持基盤を失います。

 

そのせいで、私の会社の経営にも響くのですから、全く困ったものです。

 

 

〈その後、会合で次の盟主が決定された。〉

 

 

次の盟主は青リンゴのあの会社の人ですか、まあ悪くは無いんじゃないでしょうか。

彼とはそれなりに良好な関係を築いていますからね、人柄もよく知っていますから、過激派の暴走を止められるでしょう。

 

さて、今日の次のスケジュールは、ユーラシア連邦のH&K社の社長からの依頼ですか、あの会社も最近の銃器の流行に付いていけてませんからね、私直々に行くのです。助けてやらないことも、ありませんね。勿論、私の下に着くことは当たり前ですが。

 

ああ、秘書の方ちょっとこちらへ、スケジュールこことここを少し変更するよたまには息抜きがてら、彼等の場所に行かなければならないからね。

それと、私が出資していたブーステッドマンプロジェクトだが、資産をM粒子関連事業の方へ2割程移しておいてくれ。

 

くれぐれも迅速に頼むよ、あんな値段の割に会わないものよりも、遥かにM粒子関連の技術の方が見返りが大きそうだからね。

 

 

~ある少女~

私には、よく知らない(ひと)の記憶がある。幼い頃から、その記憶は有った。私の年齢が上がると共に、その人の記憶も私の記憶として甦ってくる。

 

CE58年11月4日、今日は私の15歳の誕生日。夢の人も誕生日なんだけど、家には一緒に移住した筈の父親の姿も見えない。

コロニーに住んでいるから、地球の様子も見えない。

 

小さい頃は地球に暮らしていたみたいなんだけど、父親が軍属で転勤ばかりしていたから、母親とは縁が無く、所謂別居の様だった。ただ救いがあるとすれば、近所の同い年の女の子が、甲斐甲斐しくも世話をしてくれるくらい。後は、趣味の機械いじりをずっとしてる。

 

私自身はと言うと、私もコロニーに一人で住んでいるけど、少ない友人を招いて自宅でささやかな誕生日パーティを開いた。料理は勿論自分で作って、友人たちと一緒にわいわいとやってた。

 

そして、進路の事を友人たちに話してた。夢の人物と同じように、私は機械いじりが好きだが、それを仕事にしたいかと言うと、何か違うと確信が持てた。

だから、今年の初め頃から大西洋連邦士官学校・高等科に進学すると決めていた。

 

元から運動神経は人一倍高かったから、体格に大きな開きが有っても問題なく相手取ることが出来た。

柔道とかは特に得意だった。最近になって良く相手の動きが読めるようになってきて、そういうのが楽しい。

 

実家は地球に有るけど、今はコロニー内の工業中学に通ってるから地球に帰るのは楽しみだ。

これから、試験だけど私ならきっと合格出きると思う。

 

夢の中の人はいつも暗い感じだけど、でも私はあくまで私なのだ。だから、胸を張って生きていく事を決めた。

 

私の名前は、リディア・パヴリチェンコ、皆からは良くリディと呼ばれている。

きっとこれから私の軍人としての一生が始まる。




もう一人のオリ主は彼女、ハマーン様に容姿が似ておられます。

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第4話 豪雪だぜ!だけど、M粒子があればストーブの換わりになるのだ!

CE59年2月


おお、寒い!ここはこんなにも雪が積もるのか…。予想外だったな。

あっ痛い!だから叩かないでよ、もうこのホテルに住んでやってるんだからさぁ、ね?さびしくないでしょ?

ケノービさん。

 

え?そんな名前じゃないって?じゃあ名前くらいおしえろや!

まあ、それは置いといてだなこの資料を見てくれどう思う?

 

俺には解らないだって?ごめんな幽霊だもんな、時間外止まってるんだもんな。

さて、俺がこれを見て何を思っているかだ、単刀直入に言おう。大西洋連邦の軍部は腐ってる。

 

そうだろ?だって発注したメビウスが信頼に足らない性能だって言うのに今更気が付いたんだからさ。

お陰で、俺が考えてた構想を向こうがぶんどって、

『メビウス0』つう機体を再設計しやがった。

 

元のメビウスは生産中止で名称がYF57メビウスになったそうだ。全くけしからん話だ、なあ!

と、愚痴はこのくらいにして俺達の新しい試みの話をしようじゃないか。

 

昨今世界の車両等は、バッテリーによるモーター駆動が一般的でバッテリー技術の向上により、長時間の航行やヘリ等にも使用されている。

 

だが、バッテリー技術の向上とは裏腹に、モーター関連技術の進歩はお世辞にも上手く行っているとは、言いがたいのが現状だ。

そこで、モーター関連技術の申し子である、俺の友人の

クラウン博士に俺達の研究所を紹介したんだ。

 

そしたらさ、直ぐに来てくれてねぇM物理学を読んだら直ぐ様、試作品の開発に入るんだと目をガン開きにして、開発しているよ。

 

確か、フィールドモーターだって言ってたな、説明されても俺にはiフィールドとM粒子の反発を利用するとしか、解らない。餅は餅屋って訳さ、本当に凄いひとだよ。

 

それと、平行してメガ粒子の加速実験を行ってるんだ。現在音速の20倍程度までしか加速は出来てないんだけどさ、もっと加速できれば荷電粒子砲に取って換わる兵器になるに違いないよ。

 

何?この研究所やM粒子は機密事項じゃなかったか、だって?

ハハハ何を言ってるんだ?俺達は皆学会の異端児、そんなやつが忽然と消えても『まあ、あいつらだからなぁ』ですむんですよ!だって俺ら要らない子扱いだったからね。

 

俺もだよ?俺は既存の構造を如何にして、使いやすくするかそういうのに長けてた。勿論新しい技術も一緒に使うから、どんな無茶な要求にも耐えられた。

だから、異端児と呼ばれたんだ。

皆各会からの嫌われものばかり、そんなのが集まって出来たのが、俺達の開発チーム。

 

アズラエルだって、ブルーコスモスの中じゃ異端だ。だからこそ俺達は馬が合う。今頃色んな事に振り回されているに決まってる、実に面白いと思わないかい?

 

 

 

~アズラエル~

 

全く彼はいったい何をやっているのか、予想外だったな。まさか、外部の研究者をこちらの方へスカウトするとは、彼の行動原理が良く解らないよ。

 

彼等の開発は順調に進んでいるが、正直言ってまだまだ採算の取れるような代物じゃない、こう言う行動は慎んでもらいたいね、前日お父上が僕に警告をしに来たのを思い出すよ。

 

お父上もやはり歳をめしているからか、新しいことに無頓着だ。それではあまりにも臆病すぎる。

新しい技術は荒削りであるがゆえに、至らないところがあるが、それをカバーするのが枯れた技術だと言うことを忘れている。

 

MAもコスト一辺倒で後先を考えずに、あんなものに決めるから後々痛い目を見るんだ。

YF57だってそうだ、あんなものにガンバレルという補助兵装を載せたところで、切り離しているときは機動力が落ちるんだから、一般のパイロットじゃ操縦できないですね。全く金の無駄遣いです。

 

それよりも、確かこの後は艦政本部との新型戦艦の造船に関する見積りでしたか?

19の若造にやらせるにはちょっと荷が重いことだらけですね。

 

ま、僕自身15の時からこう言う仕事をやっていますから慣れてはいますが、さて。

資料によると、『敵国に対する宇宙空間からの強襲揚陸が可能な特殊艦艇の整備計画の策定』についてですか。

 

また新しい艦種ですか、用途に理解は示せますが単独でその様なことをしても意味がないのではないでしょうか?最低でも2隻での一斉降下をしなくては、後方撹乱にもなりません。

 

ただ、強襲揚陸は新しい試みですね。何か補助的な兵器があれば良いのですが…。無いですね。せめて『グラスパー計画』が進んでいれば、このようなものでも対処できた筈なのに、やれやれです。

 

艦名は既に案として上がっているそうですが、洒落ていますね、アークエンジェル級ですか。

神の名により誰かに天罰を下そうと、そう考えているんですかねぇ。しかし、天使の階級を艦型にしたところで、その神様がアホでは意味はありませんが。

 

仮想敵はユーラシアですか?全く最近はプラントが勢いを着けてきて、いつか反乱を起こすんじゃないかとひやひやしているというのに、まだ武装している艦艇が無いのが幸いしていますが、これからどうなることか。

さあ、今日も1日の仕事を頑張りましょう。

 

 

~リディア~

 

正月からの夢見は最悪の一言だ。

何が最悪かは、あの人の記憶の中で、戦争が始まったということだ。この人は戦争に出る程歳は行ってないから、戦場に行くことはないけれど、頭のなかに入ってくるニュースには、信じられない程の死者が溢れていた。

 

たった一月の間にも関わらず、全人口の30%が死んだなんて誰が信じられるだろうか?私は少し怖くなってしまった、人間はあんなにも野蛮な存在だっただろうか?

あんなにも多くの人が、死に難民が発生したにも関わらず戦争は激化していく。

 

2月に入るとこの人の記憶にある、父親の仕事が少しずつであるが、見えてきた。

モビルスーツとか言う、人型機動兵器の開発を秘密裏に進めていたと言う。

 

細かいことは解らないが、この人の世界の戦争はそのMSによって様変わりして、戦争は“ジオン”が有利に進めている。この人は、そんな事知ったことかと同じような毎日をして暮らしている。

 

そんな記憶を持ちながら、私は連邦軍の最終試験である体力テストを行おうとしていた、どんなにものかと思えば、腕立て、腹筋、背筋等の基礎的なものであった。

何てことない内容に落胆しつつも、納得をした。

一般的にはきつい内容だと言うことは確かだ

 

そして、晴れて前期入学生として、士官学校へと入学した。私は二つの記憶に四苦八苦しながらも、あの人の記憶を借りて勉学に励んでいる。

 

意外な事に、この人は数学だけは頭に入っているのだ。それだけじゃない、かなり高度なプログラミング技術もあるようで、私は苦もなく自習を行っている。

 

寮での生活になるのだから、身支度も程々に初め寮の部屋も見てきた。

必要なものは既にそろっている、後は待つだけだ。

その筈だったのだが、私は動体視力の試験の結果で呼び出しを食らった。

 

どうやら、再試験を行うらしい。試験はものの数分で終わったのだが、試験官に告げられた。パイロット候補生になりなさいと。

 

士官学校は初年度は全員が同じ、科目を受けそこから判別される筈なのだが、私に宇宙軍からのオファーがあった。こんなことが有るのだろうか?

だが、どうやら私一人では無いらしい。同じ試験会場にいた、ムウ・ラ・フラガ彼もまた私と同じように呼ばれていたのだ。

 

私がはじめまして、と挨拶をすると礼儀正しく返答を行った。言動はまるで、英国紳士のようだが何か彼自身に影が見えたような気がした。私の考えすぎだろうか?彼は、何かを恐れている。

 




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第5話 技術開発に挫折は付き物、最初から全部上手くは行かない

CE59年11月


 

重大なお知らせだ、フィールドモーター技術の開発が一向に進まない。

何がおかしいのか、全員が頭を捻っている。

計算上は駆動する筈であるのだが、実際は動かない。何かしら計算がおかしいのか、はたまた工作の精密さに欠けるのか、どちらにせよ原因究明が第一だ。

 

実際理論上は動くのだから、こちら側の欠点の可能性が高いだろうが…。何れにせよ君には関係ないか。

 

関係ありそうな話は、大西洋連邦のトップの人が今日ここに来たよ、宿泊していくってさ。

全く、困ったものだよ、素人に教えながら巡回していくんだからさ、遅くて遅くてたまらない。

俺達は教師じゃないから説明がすごく下手なんだ、相手がどこまで理解しているのか、そう言うのを図りながら話を進めるのが苦手でね。

だけど、こう言う仕事をしていると、なんとなく身に付いてくるということもあって、少しは解ってもらえるだろう。

 

で、今日のデモンストレーションは解りやすいものにしたんだよ。メガ粒子を加速させ、目標へ衝突させる実験だ。

何度も成功しているからたぶんこの技術が、一番早く世の中に出るだろうね。間違いなく、荷電粒子砲と取って換われる。

なんせ、同出力時の破壊力はこちらの方が上で尚且つ、空気中重力下でも直進するんだ。

それに、速度もこっちの方が早いから文句無しに換わる。

 

ただ、そのせいで現在使用中の艦艇を、対M粒子改装しなければならないから、俺達が再び表舞台にたつだろうなぁ。喜ばしい事だけど、やっぱ面倒くさくもある。

 

うん?そんなに早く、しかもまだ二年目なのにそんなのが艦艇に載るのか?だって?

あー、載るわけないじゃない。まず、艦艇に搭載するには耐久試験もあるし、構造の簡略化や効率化なんかの試験もあって最低でも5年は必要だと概算したぞ。

 

それでもこんなにも早く出来るのはアズラエルのお陰だろうか?

M粒子は他の物質に比べると、非常に安定したものだから、こう言う開発速度は異常とも言えるんだ。

 

ただし、M粒子の散布技術がまだ確立されていないから単純に喜べるものじゃないだろうけどね?

 

どうして散布技術が、重要かだって?そりゃ、MSはM粒子散布範囲内、もしくはレーダーの効かない有視界戦闘下でしか戦闘を行っても、余りに強くないんだ。

まだ、MSも無いけど、この世界には何れ出てくる筈さ♪

 

その時、戦術が確立されてるんだったら、とても効率良く運用出来るんだけどね?

俺は協力はしたいけど、1技術者、研究者の作った戦術に軍部がはいそうですか、と首を縦に振る筈無いし、なによりMSの動力がバッテリー何て、心許ないもので兵士達が苦労するところを見たくないんだ。

 

どうしてそこまで知ってるかだって?

元々俺はこの世界の人間じゃないからね、だからと言って超能力が使える訳でも無いけど、実体の無い君とは会話が出来るってね。

 

君の名前は知ってるけど、何者かは知らない。でもね、敵ではないのは確かだろ?

 

 

 

~アズラエル~

 

いやー、プレゼンが上手く行って良かったです。これで大西洋連邦の掴みは、良い感じでしょうね。

何より従来の兵器よりも小型化出来て、強力であることは、インパクトとしては充分以上です。満点と言っても差し支えない。

 

顧客からの契約料が取れたので、僕としては上々なのですが、技術者達は納得行っていないようですが。

彼等のプライドが中途半端なものを赦せない、だからはみ出しものだったのですが、良いところでもあり、悪いところでもありますね。

 

彼等としてもお金が無ければ生きていけませんから、そういう面で納得させるしかありませんね。

それにしても、試射でのあの威力凄まじいですね。

従来の対ビームコーティングを貫通していましたから、今開発中のラミネート装甲なんて、使い物にならなくなりますね。

 

また投資額を変えなくてはなりませんね。全く、嬉しい悲鳴です。

それにしても、彼等は良くあの閉鎖的な環境のなか実験や研究を続けていける、僕ではきっと先に脱落しますね。

 

おっと、誰か来たようだ。はい、どうぞ入ってください。おやおや上院議員の※※※さんではありませんか。私のところへどうしたのですか?折り入った相談ですか、良いですよ勿論私が力になれれば、この国は安泰です。

 

それで、どのような?ほお、先程の技術で気になったものがあるですって?ほお、どういうもので?粒子自体に興味が、どのような効果があるのか、副作用は?と、そうですね。ここでは難ですので、ここの所長にお願いしましょう。

 

彼なら分かりやすく説明してくれると思いますので、それで話は変わるのですが、どうでしょう?この研究所への出資を更に増額して頂けないでしょうか?

 

金は足りている筈だが?ですか。いえ、これから核心技術となるM粒子関連技術の主要人物に列挙されるのですよ?名前に箔が付くなら、もってこいでは有りませんか?

 

実はですね、内密に言うのですがここだけの話、この研究所は常温核融合の実験を行うための、施設なんですよ。あなただから言うのです、どうです?歴史に名を刻みたくなったでしょ?、見返りが少ないと仰る。では、これでどうでしょうか?

 

では、それでやってくれますね?もし、やらなければこれらをリークさせていただきます。勿論あなたにのみ非が有るように見せるのは、こちらには朝飯前ですのでよろしくお願いしますよ?次期大統領閣下。

 

 

 

~リディア~

 

記憶の中で変化があった、この人の父親が地球連邦に呼び出されて、何かしらの開発に注力し始めたんだ。

自宅に帰ってくるのは更に少なくなったし、コロニーの内部でも騒がしく騒音が響いたりしてる。

 

そのうち、大きなトレーラーが行き来するようになって、いよいよ戦争が身近に感じるようになった頃、大事件が発生した。

 

コロニー内部にジオンのMSが現れて、なんとマシンガンを乱射し始めた。コロニー内は地獄のようになり、あちこちに人の死体がある。

 

記憶の人はそれを目にし、何を思ったかMSに乗ってそれを撃退したと思えば、今度は宇宙に出ていく。

遂に戦争が彼を巻き込んだ、でも彼はどんどん戦っていき強く逞しくなっていく。

 

 

一方の私はと言うと、士官学校で討論会を行っていた。戦略と戦術の違いから始まり、陸軍や海軍志望の人たちと交流を深めながら、11月までやってきた。

途中で9月からの入学生の面倒を見たりと、部下を持ったりもした。

 

地道なトレーニングと、実戦的な戦闘訓練。銃を撃つという事、人を殺めると言う心を私は養っていく。

それでも、他の人たちと私は違った。

 

記憶の人が強くなればなるほど、私の反応速度は上がり、常人では考えられない程の思考をして訓練を終える。教官達も驚いていた、徒手格闘では教官の動きを読み互角以上に渡り合えた。

 

次第に相手の動きが、次に相手がどう動くのかそういうものが解るようになっていった。

それが、私は怖かった。自分が自分でなくなっていくような、そんな感覚があった。

 

途中でコーディネイターの教官とも戦ったのだが、後一歩と言うところで、負けてそして感じたのは、あの人と私は違うということ。

 

記憶の人は、苦労をしながらもつよくなっていった、そして、それを受け入れていく。

私はそれを拒もうとした、怖くて仕方がなかったから。だけど、私が負けたとき初めて知ったのは自分が敵わない相手がいた。

 

それだけで安心できたのだ。私は私、彼ではない。でももし、この私が生きる世界でも戦争が起こってしまうのなら、私はこの力を使って戦争を早期に終わらせたい。

それが、私のこの力の使い道だろうから。




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前書きにその話での年月を記入しました。


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激動の60年代
第6話 エネルギー問題の解決策!分裂炉をぶっ倒せ我らの融合炉


CE59年12月~CE61年2月


さあ、iフィールド技術の向上によりγ線とかの非常に強力な放射線の遮断に成功した!

やっと核融合炉の開発に着手できるぞぁ!えっ?早すぎるだろ!だって?

 

ふん!数十度の耐久試験によって導き出された結果と、方程式に嘘偽り無く、それによる誤差は寸分も有りはしない。正に万全を期しての、開発だ!

 

ここに至って、核融合炉の設計と燃料ペレットの重量、圧縮配分の比率。それらの資材全ては、このミノフスキー博士の計算と合致する数量で、もっとも効率の良いものだ。

 

準備は整った、部品は揃っている、後は組み立てるだけだ。だが、組み立てるのにも細心の注意を払わなければ、博士の出していた結論に有るものがある。

亀裂によるペレットの急激な反応による、加速度的なエネルギー放出。要するに大爆発の危険が潜んでいる。

 

それは最初の技術ならどこも孕んでいるものだから、俺達は臆すること無くそれらに挑もうと思う。

だって、これが成功すれば地上の電力供給源を原子炉から切り替えることが出来るし、何より核廃棄物の処理に手惑うことも無くなる。

 

後に来るNJも怖くない、全く新しい試みだ!っと息巻いてみたんだけども、果たして上手く駆動するだろうか?

確かに計算値は、良いんだけどフィールドモーターが若干動きが鈍い事を鑑みて、細心の注意を払おう。

 

そう、なんせ駆動試験にはアズラエルが直々に来るんだ、彼の悲願であるもので落胆させるわけにはいかんのだ。最近の彼は少々疲れているようだからな、ブルーコスモスの一部が過激的になり始めたと。

 

どうも、理事国のプラントへの工業力強化が引き金となったらしい。ブルーコスモス主流派が、何とか押さえているらしいが、いつ爆発しても可笑しく無いとか、彼のためにも一刻も早く作ってやりたいよ。

 

きっと成功すれば、『俺達はまだやれるんだ』なんて、思って止まってくれるかもしれないし、何よりコーディネイターへの依存度を少しでも減らせるからなぁ。

 

 

《…二年後》

 

うおっ!すまない、二年間報告するのを忘れていた、いやー研究に没頭しすぎて、いつの間にかこんなに時間がたってしまうとは、面目ない。

 

実は良いことがあったんだ、第一に妻が我が子を産んでくれたんだ!いやー可愛いんだよねぇこれが、それを癒しにね頑張ったんだ!

 

そしたらさ、なんと実験は大成功!まあ、大きさはまだまだMSになんて載せられないけれど、でも大型艦艇には載せられる程度には小さい。

 

そしてだ、なんと現在艦艇に使用されているレーザー核融合推進のそれよりも発電量が多く、核融合推進と並列で使うことによって、艦艇のバッテリーを全廃して駆動させることが出来るようになりましたぁ!

 

これで、いちいち係留しながら電源を外部から補給しなくて済むね!ちなみに現在使用されている核分裂炉との大きさの比較なんだけど、なんとこちらは10分の1のスケールで同程度の発電量を誇ります。

 

どうだぁ、凄いだろぉ⤴️!

ま、それでも配備し始めるのは6年後位から年数基ずつ分裂炉と交換と言う形になるから、出来ても大西洋岸連邦全域くらいが関の山なんだけどね。

 

ちなみに艦艇に搭載するのはヘリウム3を使用して、都市部供給用は重水素を使います。都市部の重水素が反応した後、生成されたヘリウム3を艦艇用に転用することにより、コストダウンさせると言う方法だ。

 

地球上で手に入れられないヘリウム3を効率的に確保するには、これしか方法はない。この世界じゃあ、まだ木星に取りに行くほど技術はないからね。

 

うん?どうしたMr.ウエダ。さっきから誰と話してるかって?幽霊と言ったら信じるかい?なんだ、そんな顔を青くしなくても良いのに。

 

 

 

~アズラエル~

 

やっとですか、やっと核融合炉の作製に取り掛かれます。いったいどれ程の金額をつぎ込んだことか、小国なら確実に買える程には金をつぎ込みましたから、これで失敗すればわが社は潰れます。

 

僕自身が憧れた、核融合炉と言うものは現在宇宙戦闘艦にしか搭載されていない。それも推進材として反応させたものを使用するから、お世辞にも出力が高いとは言えないし、何より起動時以外はエネルギーをバッテリー依存になる。

 

開発されていた陽電子破城砲はカートリッジとして搭載され、使用後にはそのカートリッジが再充填されるものであった。

それを、完全に覆すことが出来るのがこの核融合炉。

 

設計図を見たとき余りの、小ささに目を疑った。喜び勇んで彼に論文を見せてもらうと更に驚くことになった。

常温核融合なんてものが、この論文の通りに行けば可能になる。

 

そうなったら、もう誰も文句なんて言えないくらいに、エネルギー資源は満たされる。

太陽光をいちいち電気に変換しなくても良くなるし、なんなら太陽光での発電で造り出された重水素から、それを遥かに超えるエネルギーを造り出せるんだ。

 

地上も宇宙も、乗り物が一気に様変わりするに違いない。放射線による老朽化激しい核分裂炉から、堅牢な融合炉のへの変換。

どれ程の金額になるだろうか…。

 

 

 

《…二年後》

 

実験はつつがなく成功してた、研究所の連中はそれで満足することはなく、問題点を洗いだし、二回、三回と同じ条件下での実験を繰り返し、徐々に発電のロスを少なくしていった。

 

それが功を奏したのか、僕がこの融合炉をプレゼンするときには、従来の核分裂炉の10分の1の大きさでありながら同じ発電量があるのなら、もう取って換わられるべきであろうことは明白であった。

 

唯一の問題の燃料ですら自己完結することを可能としたその技術には頭が上がらない。

 

ここ数ヵ月で一番良いニュースだ。

最近はブルーコスモスの過激派が力を付けて、プラントへのテロを計画していた。

 

何とか未然に防いだが、これ以上は無理かもしれない。

?どうした、そんなに急いで。

なに?プラントで小規模な爆発?まさか、アイツら何をやってくれんですかね!

 

議会を緊急招集しましょう。これはもう黙って見ているわけには行かない!

 

 

 

~リディア~

 

記憶の人は戦争のなか、変わっていく。その動きは私が体験したことが無い程に加速していき、その反応速度は未来を予知して動いているようだ。

 

でも、特別なのは彼だけじゃなかった。同じような力を持った少女と出会い、そして引かれ合い最後にはその子を自らの手で殺してしまった。

 

彼にとってそれはものすごい衝撃になったようで、彼は彼女に囚われているかのように、戦争を続けていく。そして、最後の決戦でライバルと言う敵と相対し、肉体を駆使した戦闘へと入った。

 

軍人でもない彼が軍人に勝てる筈がない、と思われたが彼の力は強大で肉弾戦ですらその軍人を圧倒し、最後には理解し合った。そして、彼に平穏が訪れる筈だった…。

 

一方の私は士官学校での好成績により、次期は宇宙での訓練と相成った。

だが、私の場合は願った。何が起こったのか知らないが、12月その月に私は宇宙(そら)へと上がり、MAの訓練に入っていた。

 

私の反応速度は、他のパイロットのそれを遥かに凌駕し、私の為に用意されたメビウス・ゼロでのデータでは次々と記録を塗り替えていった。

私は戦うために産まれてきたのだろうか?記憶の人と同じように感覚は鋭くなっていく。

 

記憶の人よりは反応が遅いが、何れは同じ領域に到達するそう核心をもって言えた。私は、この世界でのただ一人のNTなのかもしれない。

たが、一人だけ心当たりがあった。同級のフラガ、彼が宇宙に上がってくるまで、私は他の人を探してみたい。

 

 

《…二年後》

 

私の反応速度は記憶の人と同じになり、更に感覚も同じ領域になっていた。それは私にとって嬉しいことであり、仲間たちの成長を見守ると決意していた。

この二年間私はパイロット候補生として、士官候補生として動き、多くの知見を得ていた。

 

実戦経験は海賊退治等である程度出来ており、敵を殺す覚悟が既に出来ていた。陰でいや頭のなかで、私の事を殺戮マシーンと呼んでいるものもいるが、この力はこう言うためのものじゃないのは、私が一番よくわかっている。

 

だから二年間の間、少しずつ暇な時間を見つけては仲間を探した。今では少なくない交流があるが、この中である人物の名前が上がった。マイケル・スパロウどこかの技術者、彼は非常に強い力を持っていると言われていた。一度会ってみたいと思った。

 

一方で、記憶の彼は軟禁状態となりつつ、脳波等の測定やMS関連の戦術の研究会等に呼ばれていた。

そのなかでNTとは何かと言う本を出版などして、お金を稼ぎ、ハロと言うペットロボットを作ったりもしていた。だけど周囲は敵しかいない。

 

連れ添っている家政婦ですら、彼は心を赦すことはない、母は行方知れず、父は知らぬ間に死んだと言う。彼に身寄りはなかった。合ったのはかつての仲間たちとの、交流程度でその他は禁止されていた。

 

ただ、一度だけ解放された時がある。0083デラーズ紛争の折り、紛争が長期化された場合に備えてMS部隊に数ヵ月程加えられた。その時が自由になった最後。




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第7話 やめて連れてかないで!何で俺がコペルニクスに行かなきゃなんねぇだ!

前話で、記憶の人の世界でデラーズ紛争が抜け落ちていたので、少しだけ付け足しました。


CE63年


 

おーいなーんで俺がこんな月にまで行かなきゃならないんですかねぇ、話し合いはアズラエルがきっちり付けてくれてると思ったんだけどなぁ。

 

なに、秘書君。少し落ち着いてください?いやいや、俺はいつも落ち着いてるよ、どうしてMAの改造にまで俺が行かなきゃならないんだ?俺達に勝った連中にやらせりゃいいだろ!

 

なにぃ?出来ないだと!あれか、俺が立案したガンバレルシステムのアップグレードに、手間取ったんだろ!

脳波を電気信号に置き換えるだけなんだから、簡単だったろう?

どんなに自立型兵器よりもパイロットの動きを、補助できるから手足のように、動かせるんだ。

それが理解できないなら、兵器開発なんてしなけりゃ良いんだよ。

全く、こっちは忙しいのにまだ改良をやらせますか?

 

はあ、それで何でアップグレードせにゃならなくなったんだ?

?訓練生の機動に機体が追従できない?それは、何かの間違いじゃないか?本来機体の方にリミッターを掛けて、機体の追従性を落としてるんだぞ?じゃないと人体深刻なダメージが残るからな…。

事実なのか?

 

解った、事実なら確認を行いたい、それはコーディネイターか?違う?ナチュラルなのか、そんな化け物染みた奴がこの世界にいるんだな。案内してくれ、パイロットに会ってみたい、そしてパイロットの注文通りのチューニングを施してやろう。

 

う?その前に整備長に挨拶に行って欲しいって?なぜ、どうして解らないやつに、行って説明しにゃならんのだ。その機体を整備する人なんだから当たり前だろと、そうだな解った嫌だけど行くよ。

 

にしてもさ、どうしてこうもっと大きい車無かったの?俺はガタイが良いからさ、こう言う小さいのに乗ると窮屈でしょうがないんだ!

なに?でかすぎる貴方がおかしいって、言うのかい。ふうんそうかい、解ったよ君みたいな奴は解雇だ!

 

なに!アズラエル氏からの要請があったから貴方の秘書になったのです、って。じゃあ、俺じゃあ解雇できないのかよ、はいはい解ったよ。だけどな、今度からはちゃんと気を付けてくれよ!

ただでさえ体がでかいんだから、これじゃあ腰が痛くなっちゃうよ。

 

 

 

《…一ヶ月後》

 

いやー有意義な時間だった。パイロットとしてだけじゃなく、エンジニアとしても優秀だとは思わなかったなぁ。あの年齢でハキハキとした物言いにこっちとして、非常にやりやすかった。

 

特にメビウスの物足りない場所とかそう言うのは、次期MA・MSの良い参考になったよ。何よりメビウスの一般兵での扱いの悪さと来たら、最悪の部類だと。

 

ガンバレルシステムを取っ払って、その分を機動と防御に回した方が良いのだとか。

用兵の観点からは今まで無かったから、嬉しいものだ。

やはり、単なる付け焼き刃だとばれてしまったよ、本当は俺たちの作った奴じゃないんだけどね。

後、何故か彼女を他人のように感じられなかった、この感覚はなんだろうか。

 

まあ良いか公園でも散歩しよ。

しかし綺麗な場所だ、ここが月面だなんて想像できないよ。

 

う?何か飛んでくるな、鳥?いや、鳥形のロボットか。珍しいものも有るものだな、しかし精巧に作られている、良い腕だな。鳥の仕草もきちんとプログラムされている。

 

ふと、鳥の飛んできた方を見ると、少年がこちらに来ていた。

ロボットを持っている私を見るなり、あの。と話を振ってきた、きっと持ち主なのだろう。

 

このロボット、君のかい?と言うとそうだと言う、誰が造ったのかなと言うと、黒髪の子が僕ですといった。どうやらまだ完成品じゃないようだ、鳥の仕草がまだおかしな点が有ることを指摘して、少し調整してあげようか?と言ったら、おかしい部分だけ教えて欲しいそうだ。

 

自分で解決策を見つけようとは、良い心がけだ。

きっと良いエンジニアになるに違いない。友達へのプレゼントだそうな。

名前を聞くのを忘れてしまったが、何れ同じ土俵に立って共に飯を食う立場になったら、今度はこちらから声を掛けてあげよう。

『やあ、あの鳥は元気かね?』とね。

 

 

 

~アズラエル~

 

君等はいったい何をしたのか、理解しているんだろうねぇ。

僕の目の前にいる、ブルーコスモスの過激派が萎縮している。

 

萎縮するくらいなら、初めから止めていただけませんかね、こちらにも多大な損害が出るんですよ。

何故プラントのエネルギー生産部門を、攻撃したんですか?まさかと思いますが、私怨で動いた訳ではありませんよね?

 

こんなことをして、いったい誰が得をするんですか、地上の工場ですか?全く、貴殿方にはどんな罰が相応しいのでしょうか、言っておきますが貴方だけではなく、家族にもその責任を取っていただきますよ?いいですね!

 

僕が部屋から出ると、武装したもの達が室内に入り彼等首謀者共を連行していった。

困ったものです、どうすればこの被害額は補填できるでしょうか?

 

次の理事会で、理事長に僕が就任するしか無いではありませんか。父上たち老人共は、この事態でも静観を決めている。それどころか、エネルギー源の無くなったプラントへ、ノルマを達成せよと重圧をかけている。

 

これでは、いつプラントが爆発するか解ったものじゃない。コーディネイターも生き物だ、ロボットじゃない。倫理的に好かないが、それでも同情の念は抱かざる終えない。それどころか、同じ価値観を共有するものには頭すら下げたいよ。

 

おい、会合へ行くぞ、こう言うときに無理にノルマを達成しようとする輩を、防がなくては…。

 

《会合後》

 

畜生、彼等は僕の言葉に耳を貸すどころか、僕を裏切り者と詰りやがった。ふざけている、どうして解らないのか、投資とは我慢するときが有るのに皆それを忘れている。

 

だから、僕自身がここで我慢しなければならない、耐えがたきを耐え何れ来る理事会の選挙に向けて、僕は皮を被り差別主義者になり済まし彼等の上に立たねばなるまい。

たとえ道化と言われようとも、この決意に迷いはない。

 

 

 

~リディア~

最近の訓練は専ら戦闘機動だ。宇宙軍は、戦艦が主力としてその座に座っているのか、MAの数自体は余り多い印象を抱かない。

 

それでもやはり、防空や奇襲などには小型なMAの方が向いているから、MAの操縦者は重宝されている。

勿論MA同士の模擬戦闘も、行われているんだけれど、今回それで問題が発生した。

 

私は今までMAを騙し騙し使っていたのだが、遂に限界に到達した。スラスターだけではない、機体の耐G性能やガンバレルの反応の遅れ、それが顕著になりそれが教官にバレたのだ。

 

何故言わなかったと、叱られたが、逆に良くやったとも言われた。ムウや他のもの達からも称賛の言葉を送られたものの、こっちとしては少し複雑な心境だ。

 

それでか、このメビウスゼロのアップグレードをするために、ある人物が私たちのいるプトレマイオスへと呼ばれた。

聞くに変人と呼ばれる人物らしく、いつも1人でぶつぶつと何やら話している、危険極まりない人物なんて信用出来ないと思っていた。

 

当日件の人物が現れたのだが、その肉体に驚いた。もはや丸太なのではないかと、そう目を疑う程の筋肉を持った人物だ。とてもじゃないが、ぶつぶつ何かを呟いている人物には見えない。むしろボディーを強調する仕事の方が、向いているんじゃないか?

 

そう思ったが、話を始めたら凄い人だ。今のMAの何処が悪くて、どう操縦し辛いのか改良したい点や、アップグレードする場合の具体的な限界点を、全て教えてくれた。

後に付いてきていた秘書のような方には、余り良く伝わっていないようだが、彼はお構い無しにしゃべる。

 

そのうち話を終えて、準備にかかろうとしたので私はそこから離れた。

後はどうなるのか、胸のうちにはワクワクとしたものが涌き出ていた。

 

自分の機体が完成する間の訓練は、座学を中心に行われていたのだが、記憶の人の勉強している内容の方が、私が今教わっているものより、遥かに高度なものだったから話半分だった。

 

《…1ヶ月後》

 

一月の時間が流れるのは早いもので、どうやら私の機体が完成したらしい。

機体形状に大きな差違は無いが、どうやらOSや内部を弄ったらしい。

 

リミッターを外したと言われた。通常のパイロットでは扱いきれない、敏捷性と耐久性を上昇させた分人体にかかるGが凄まじいものになるらしく、私の肉体を心配していたが、そんなもの今更だろう。

 

それと、ある技術を導入したと言われた。どうやら脳波コントロールを更に容易にするために、幾つか導入したと言われた。メンテナンスは自分でするように言われた、渋々受け取ったがこれでガンバレルはより素直に動いてくれるのだろうか?

 

最後、別れの時握手をしたその時だ周囲の景色が一変し宇宙を模した空間にあった。彼はそれに気がついていないのか、何の気なしに去っていった。

彼は間違いなくNTなのだろうが、自分でそれに気が付いていない、変人と言われるわけだ。




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第8話 北米はいつも効率性を重視する

CE65年


俺は今猛烈な眠気に教われている!

大西洋連邦の企画した新国防白書の立案会に出席しろと言われ、こうして技術部のオブザーバーとして、出席してるんだけどなーんにも話が進まないんだ。

 

やれ宇宙軍の予算が多すぎるだの、海軍の予算が少ないだの、空軍は新型機の調達をしたいだのと、自分勝手に言い合いへし合い取っ組み合い、会議は踊るがされど進まず、優に一週間が過ぎている。

 

そろそろ決めてくれないかねぇ、娘の授業参観があるんだ後一週間で終わらないとキレるぞ。

まあ、冗談はさておき、(授業参観は冗談じゃない)そろそろこっちから行ってみますか。

 

『皆さん、少しお時間宜しいでしょうか?はい、ありがとうございます。

皆さん予算の関係でお困りのご様子、陸海空宙それぞれで違った運用形態が存在しますから、当たり前と言えば当たり前ですが、そこで一つ良いニュースがあります。

 

現在皆さんが使用している宇宙艦艇や潜水艦、空母そして基地や要塞の予備電力それらを一本化することの出来る、技術が存在するのです。 それは、現在実証試験中のものですが、我々の研究所では実に三年もの間稼働し続けております。

 

長らく人類の夢であったもの。嘗ては眉唾物と言われ否定された技術。忘れ去られ捨てられた技術。失敗の上に封印された技術。太陽それが今我々の研究所にあります。』

 

 

周囲がざわめいている、アズラエルのプレゼンの後、噂に聞いていた技術の出所が、今目の前にいる。

発表当時、それらに疑問を持つものは多かった、何より常温核融合などと言う代物だ。信頼性等、解ったものではない。その反応は当たり前だ。

 

何より軍と言うものは、意外と保守的な組織だ。効率を求めるがゆえに、枯れた技術の水平思考によって、現在まで機能する組織だ。

多少は新しいものを受け入れるが、それが浸透するには最悪一世代必要なほどに、多大な犠牲の上で変化する。

 

それが軍隊だ。だが、時がそれを溶かす。民生用の核融合炉の建設予定が決まったのだ。

軍は少しだけだが、関心を示していたようだ。

 

そこへ来ての、プラントとの関係悪化だ。

今年の予算は既に決まっている、戦争が始まった訳ではないから予備費等は支給されない。

最悪の場合を想定して、各自が必要なだけの予算を出せば、決まった予算を確実に食い潰す。

 

そこへ、一石を俺は投じた。

博打のようだが、そうではない必ずこっちが勝つ。何故か、そう全てに共通すること、リソースを割かずに一様に強化出来る。それに食いつかない馬鹿はいない。

 

全員が同じものを使えば、どれかが壊れたときは替えの部品が直ぐに手に入る。それがどれ程凄いことか、最悪軍艦の融合炉の部品を、基地の発電用に転用することすら出来る。正しく共通化の強みだ、その分コストが減るのなら誰しも先に投資するだろう。

 

これで、軍事利用が決まったも同然だ。俺の事を悪魔と呼ぶ奴が現れるかもしれないが、そんな事どうでも良い。我が子が死ななけりゃ、家族が死ななけりゃ連合に後の戦争を勝たせてやる。

 

 

~アズラエル~

軍との調整を終えてさあ、予算の割り振りを見ようと衛星通信で議場を覗いていたが、まさかマイクがあれ程まで饒舌になるとは。少々やりすぎではあったが、掴みとしては良い部類だと思う。

 

軍は意外とガードが固くて、僕自身どう落とそうか考えていたが、君の方から動いてくれると助かる。

僕は色々と忙しいから、最近では専らブルーコスモスの票の獲得のために、勢力拡大のせいで夜も余り眠れない。

 

それでもあの偏った宗教家には、負けたくないものだ。あんなのが上に立てば、ブルーコスモスは破滅する。

だから、もっと金が必要なんだよ父上、いや親父と呼ぼうか?

 

親父は、ブルーコスモスの古い重鎮だ。多くのパイプを持っている。だから僕はそれを利用して、親父のパイプを外して僕の方へとシフトさせていくことに、成功している。親父が気が付くまで黙っていても面白いか。

 

最近ではアルスター事務補佐官。次期事務次官になる方と、関係を持つことに成功した。

彼は、ブルーコスモスの中でも穏健派で知られていたから、接近するのは容易じゃなかった。

 

特に官僚なんてやってる人だ、おいそれと会合なんか出てくるわけがない。忙しいだけだろうが、それでも新しいエネルギー資源の話をしていたら、いつの間にか会うことになっていたんだがね。

 

彼にはフレイと言う娘がいるそうだが、どうやら彼の影響か、はたまた周囲の環境のせいなのかコーディネイターに少々嫌悪感を覚えていると、父親ながら相談してきたものだ。

 

僕自身あまりコーディネイターは倫理的にどうかと言う類いだから、好きかどうかではない。寧ろ最近の研究では生殖能力に難有りと言われているから、種の保存としては欠陥と言えるだろうな。

それを話すと、意外そうな顔をしていたのを思い出す。

 

ブルーノ・アズラエルの息子が、こんなにもブルーコスモスに向いていないなんて、思っても見なかったのかもな。

それもこれも僕のコンプレックスを矯正してくれたマイクのお陰だ、彼は昔コーディネイターをこう言った。

『単なる秀才の集まりだ、天才には敵わない』、その通りに、彼は計算でコーディネイターを圧倒し、腕力勝負をしようとも、その肉体でコーディネイターをぶちのめした。

コーディネイターが可哀想になるほどに。

大の大人のコーディネイターが、揃いも揃ってやられてた。

 

 

正直化け物に見えたけどね。

 

 

 

~リディア~

 

目の前に広がるのは何もない宇宙、大西洋連邦の艦隊が四方縦陣で進んでいる。その艦隊機動は一子乱れず、空間を切り進んでいく。

 

すると前方に敵と思われる艦隊をレーダー員が探知し、直ぐ様総員が戦闘配置に付く。

私はどうしているかと言えば、もう艦隊から遥か上方前面、敵艦隊の真上に陣取り編隊を組んでいる。

 

そして、一挙に急降下を掛けた。すると残り10秒と言った所で防御兵装が起動し横にいた味方に、撃墜判定が下される。それが、味方艦隊に通達されたのか艦隊が曲がりながら、四段縦陣に変化し備え付けられた砲門を敵へと撃つ。

 

勿論弾は出ない。あるのは命中判定だけ、敵も対空戦闘のためにMAを出すが、追ってくるものを私は死界に入るように誘導して、横合いから撃墜する。

 

ガンバレルを展開し、四方から来る敵をそれぞれ相手取り、次次と撃墜判定をもぎ取っていく。

たまに腕の良いパイロットが現れるが、そういうものほどやりやすい、リニアガン一発を囮として撃ち避けたところに置き撃ちをする。

吸い込まれるように命中し、撃墜判定となる。

 

戦いが終わった頃には8:2と言う判定が出て大西洋連邦側の勝利となった。

 

私たちは、ユーラシア連邦との演習を行っていた。昨今のプラントとのいざこざによって、私たちは武力を見せるためのデモンストレーションを行っていたのだ。

 

だが、お世辞にもユーラシアは強いとは言えない。

MA自体の性能はお互い有って無いようなものだが、どうやら錬度に差が有るのか、戦いは一方的だ。

 

これが空母を実戦で運用したことのある国と、無い国の差なのだろう。見敵必殺の覚悟でMAを使わねば、防空のみでは意味がない。

どれ程MAがいようとも、先に母艦を潰してしまえば良いのだから。

 

この戦いで、ガンバレルを所持したメビウスゼロ部隊は大いに活躍し、ガンバレルを簡略化した新しい量産機メビウスは、散々たる戦果となった。そのため、メビウスのアップグレードが行われるようになっていった。

 

機動力を皮切りに、命中精度の悪いバルカンから高初速のリニアガンへと順次シフトしていく流れとなっていった。

後にこの事が功を奏したのはまた、別の話。




感想にあった男主人公のイメージですが、性格とかは特に無いのですが、容姿ははっきりとしています。
容姿はMr.オリピア時代のシュワちゃんだと思ってください。

後誰か、戦闘描写の書き方を教えて。

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第9話 初の受注!民生品核融合炉建造開始!でも世界に希望は無かった

CE66年


 

民間の方が軍事よりも先に、核融合炉の建造がスタートした、だが大々的に取り上げられてはしてない。

理由は嘗て起きた核融合炉実験中の事故、それ故に緩やかに、情報を開示していく方向へと転換していった。

 

どんなに機密と言っても、人の口に戸口は建てられない。特に工場関係者には、細心の注意を払ってお願いしている。

『もしも、外部に漏れでもしたらどうなるか、解ってんだろうな?』

と言う脅しを行っているし、この国には極秘の組織が多くあるから、そう言うのは簡単だった。

 

でもね、少しずつ漏れていくものだ。どんなにやってもリークする奴がいるから、ならいっそのこと少しずつ開示していくようにすれば、嘘は言っていないから意外とみんな信じるものだ。

さあ、今建設されている新型の発電所の発電量は大西洋連邦旧合衆国の東海岸全域を、たった一ヶ所で賄えるほどの大型発電所だ。

最もリスクを考えるのなら、最低でも3つ程離れた場所に造るのがベストだろう。

 

今は一基で様子見だそうな、で俺たちの研究チームはこの建設に駆り出されてる。

少しでも歪みが無いか、こう言うのは精密だから、穴が空いていたらえらいことになる。

 

勿論iフィールドによって放射線は、外部に漏れ出ることは無いけど、それでもいざという時の為に建屋は造らなくちゃならない。

もっとも軍事施設で稼働予定の物は、地中深くに建設される予定だから建屋は作らない。

 

でも、皆がそうやって核融合炉の方へ行っているときに、俺はアズラエルに呼び出されていた。

 

なんだ?俺は核融合炉の方に行きたいだが、プロジェクトのリーダーがいなくちゃ話にならんだろう?

え?そこに座って、その資料を読んでみろ、だって?

 

ふんふん、動力パイプにパルスコンバーター、アクチュエーター。ふん、流体パルス方式の何かか。

これが、何だと言うんだ?見たところ、何かの関節駆動系の様だ、パルスの出力が高く設定されているから…。

 

何かしらの重量物を持ち上げる重機か、いやだが重機はそんなに高速で動かす必要がないから、流体パルスなんてコストがかかるもの使わない。使うとすれば油圧だろう。だとすれば…

 

これは何か戦闘目的に造られたものだろ?足や、腕それだけじゃない、指先まで揃えてあるんだ。こんな効率の悪い重機は無い。

あるとすれば、コロニーなどで使われる、パワーローダー。だが、それもマニュピレーター何て付けない。これをいったいどこで入手したんだ?

 

何?プラントのある伝を使って入手した情報だと、それじゃ何か?連中は人形の兵器を開発中だってことだ。

で、それを俺に見せて何とする、まさか作れと言うんじゃないのか?

 

おぉおぉ、そのまさかみたいだな。作れないことはない、部品はそんなに高度な物でもなければ、そこら辺にありふれたものだ。

 

だが、OSは別だぞ?こう言うのは、何年も掛けてコツコツと作るものだ、そんな一朝一夕に作れるものじゃない。

 

いや、出来ないとは言ってない。俺たちならこんなのよりももっと良いものを創ってやる。なぁに、フィールドモーターも後一歩なんだ、そうすりゃあ戦争は変わるさ。

 

 

 

 

~アズラエル~

 

核融合炉の建設が開始される少し前、僕はプラント内にいる協力者からあるものを渡された。

(プラントのセキュリティはガバガバで、所詮はアマチュアと言った所だ。)

それは、何かの設計図の断片で、正直に言えば僕は理解できなかった。

 

だから、彼を僕のオフィスに呼んだ。設計図に目を通していたんだが、次第に表情が変化しているのが解った。

あれ程の情報量を、瞬時に理解することが出来るのは、彼の驚異的な脳によるものか。

 

彼は僕に直ぐ様聞いてきた、これを創りたいのかと。僕自身何なのか理解していなかったから、作りたいと言えないが、彼は勝手に話を膨らませてあれよあれよと言う内にそれを作ろうと言う話になった。

 

どうしてこうなったのか、だが逆に言えば好都合とも言えるだろう。もしもコーディネイターがそれを兵器として使用し、多大な戦果を上げたりすれば、こちらもそれを直ぐ様実用化することが可能になる。

 

僕は二つ返事で、彼にそれに取りかかるようにと話をした。ただ、問題が無かった訳じゃない。

現在彼等が使用している、研究所では少々手狭過ぎる。もう、後は山をそのままくり貫いて、そこを研究所にするしかない。

 

ああ、またお金がかかりますねぇ。だけれど備えあれば憂い無しと言う、諺がありますしそう言うために金は有るのです。充分に私がバックアップして見せましょう。

 

戦争が変わる?あぁ変わるさ、変わるともぼくらが戦争を変えていこうじゃないか。

何、僕らの手にはM粒子関連技術からこの地球圏の有りとあらゆる技術がある。

何を恐れる必要があるか。

 

さて、それはそうと僕は僕で、やることがありますね。

黄道運動の連中から幾人か、我々と話をしてくれる方を見つけなければ、最悪の場合も想定して内部分裂を起こしてくれれば良いのですが。

 

それと、次のブルーコスモスの選挙に向けての対策がありますね。このまま行けば間違いなく、僕が理事になるでしょうが、万が一を考えて出きるだけ急がねばなりませんね。いやーやることがいっぱいあって、楽しいですねぇ。

 

 

 

~リディア~

 

時が流れるのは早いもので、私は既に中尉となっていた。あまりにも戦闘慣れしすぎているために、教導隊に出向させられ方々の基地を転々としている。

基本はアグレッサーとして、活躍し他の基地との戦闘訓練や艦隊との模擬戦をおこなっている。

 

この世界の軍隊は長らく戦争を行っていないため、軍縮が進んでいるのであまり人員は多くない。

勿論五軍制となっているから、その分人数はいるが全体の人口比と比べれば、割りとまともに少なく。

軍事費もGDPの2%程度であるところからも、常識的な範囲だ。

 

 

だが、不満と言うものはあった。余りにも弛んでいるのだ。確かに記憶の世界は戦争ばかりで、軍は非常に強力な力を持っていた。

そのせいで、財政を圧迫していたのはこの記憶から読み取れた。

 

そのせいで、スペースノイドに皺がより互いにいがみ合い最後には、連邦軍内部での分裂闘争になったのだから笑えない。

 

そう言うところは、この世界はまともだ。だが、ユーラシア連邦の艦隊を見て解ったのだが、実戦経験が乏しすぎると、あれ程の艦隊を持つ意味が全くと言って良いほど失せてしまうものなのか。

 

腑抜けた軍隊は、外部から攻撃をさらされた場合機能不全を起こすものだ。そうやって国ごと滅んでいては世話ない。

そこで、考えられたのが宇宙海賊の討伐だったのだろう。

 

宇宙海賊の討伐は基本、大西洋連邦が行っているがそれでも錬度を保つには不足する。

いや、寧ろユーラシア側が海賊行為を働いている証拠を見つけることが出来たりするから、大西洋からは好都合なのかもしれない。

 

だが、最近はプラント関係の艦隊訓練が増えてきた。

やはり一触即発なのだろうか?

そんな時だ、また別の所へと移動命令が来たのは。

次は何処かと見たとき私はあることを決意した。きっと近い将来、戦争が始まると、しかも先端はどちらかの先制攻撃が引き金になると。

 

私は来年から、プラント駐留艦隊へと編入となることがかかれていた。

記憶の中の戦争が甦ってくる、もしも戦争になれば私は全力を持って、味方を守らなければならない。

 

たとえそれが、私の持つ力の本来の使い方でなくとも、やらねばならい。

きっと苦しいだろう、断末魔を聞くことになろうとも。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

今回は自分でも駄文だと思う文章です。


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第10話 試作品が完成品より性能が良いと、誰が考えたのか。

投票により試作機の完成形はガンダムタイプとなりました。

次点でジム系列となりましたので、その点を考慮しつつ作品をやっていきたいと思います。

ご協力ありがとうございました。



CE67年


 

今研究所のチームは主に二つに分かれている。

一つは核融合炉の小型化を目指し、様々な予想を立てそれを立証していくチーム。リーダーは、俺の妻アイナ。元々、原子物理学で手腕を発揮した研究員だったんだが、俺との結婚後も精力的に研究をしてた。

 

昨今の俺達のM粒子関連の研究などにも名を連ねていたからか、周囲の反応も良好で、何より俺の考えを一番理解してくれるから、こっちとしてはとても動きやすい。

 

二つ目はプラントの次期主力兵器たるMS、その試作機の建造を行うもの達。

リーダーは俺、発案者はアズラエルだ。

アズラエルの名前が入っているのは、ご存じの通り彼が依頼主だからだな。

 

融合炉の方へは、一切行ってないから解んないから割愛な。

で、俺達は一年間の間、昼しっかり仕事して夜しっかり寝て休みはきちんと休んで、作業してたんだな。

盗んだ設計図と、それに足りないものを補いつつ丸々一年を費やして、連中の試作機を作ったわけ。

 

一年で終わらせたなんて凄い!だって?

凄くなんてねぇよ。一年戦争の連邦軍なんて化物だぞ、だいたいあんな短期間で次々と、新兵器出してくる方もそうだけどさ。メガ粒子砲をたったあれだけの期間で小型化なんて、テムレイって奴はよっぽど優れた奴だったんだなと、改めて実感するよ。

 

さて、そんな話は良いので、続きを話そうか。プロトジンのプロトタイプ。正しく最初機の機体、最初機の機体であると言うことは、意外な程に粗がある。

例えば、関節駆動系の反応速度。言ってしまえば、鈍い上にOSは複雑でどうでも良い動作を付け加えてる。

 

コーディネイターの気質的に、こう言うのを力業で解決しようとする所がある。そこんところは、まるでWW2のドイツの様だ。複雑すぎる故に、壊れやすい。後、重い。

 

動作で最も理解しがたいものは、射撃時にどうも動作が固まり射撃姿勢で止まってしまうことだろう。

どうやらこれに関しては、コーディネイターはパイロットが何とかすると言う、日本軍の現場主義的なものになっている。

 

ただ、部品の互換性だけは凄まじく整っているから、米軍のように、丸ごと交換する何てことも可能だろう。

え?何処を交換するのかだって?そりゃ、左腕と右腕の関節駆動部さ、そこに限らずだけどな。

 

まあ、これらくらい俺達が力を出せば直ぐに丸く収まるだろうことは、明白なのだから心配しないでくれ。

だけど、問題があったんだ。

この機体を作っている最中、この機体にはある機能が付加されていないことに。

 

それは、地面に立たせた所から解った。なんと!この機体のバランサーは、この地球の重力に逆らえないことに。失態だった!忠実に再現しすぎて、そこの問題を見落としてしまったことに。

 

だから急いで今、それを創ってる所だ。きっとプラントの奴より良い性能になるはずさ!

 

 

 

~アイナ~

 

彼、マイクと知り合ったのは私が学生の頃だった。私は原子物理学を専攻していたころ、工学の分野で20で博士号を獲得する程の人物だった。

 

そんな彼と知り合ったのは、私たちの分野である観測機を試作するとなったときだった。私たちの理論上、どのような観測機器が必要か、と言うものは直ぐに出来たのだが、それを実現できる技術者が、当時存在しなかった。

 

コーディネイターの博士や、名のある教授等方々手を尽くしても、それを設計できなかった。そんなとき、彼は現れた。私たちの論文をものの数時間で理解し、それに見合った計測機器の設計を、紙とペンだけで設計したその凄まじさに、私は心を奪われた。

 

当時も彼は筋肉が凄かったけど、そんなのよりも彼の人柄に退かれたのだ。どんなものでも出来てしまう彼でも、料理だけは出来ない。いつもボディビルダーみたいな食生活をしていたから、私が料理を作りに行ったときは喜んでいた。

 

それから私たちは結婚して、子供も出来た。今や私たちは二児の親だ。だけど、最近は格好いいお母さんになりたくて、仕事を再開した。長らく一線を退いていたけど、今までの時間を取り戻すべく猛勉強し、今では私はこの研究所の彼の右腕。

 

だから今日もまた、研究を続ける。子供達にお母さんの姿を見せつつ、お父さんと肩を並べる姿を。

 

 

 

~アズラエル~

 

いやー、忙しいですねぇ。最近ブルーコスモスの盟主になったんですが、末端の連中が煩くて煩くて、しまいには爆破テロ何てやりますから、正直に頭に来ましてね。

 

資金の援助を止めてやりましたよ、そうしたらこちらに尻尾を振ってきましてね、いやー実に愉快でした。これで見せしめがまた出来ましたから、僕に逆らおうって輩は、古参の連中だけですね。

 

そうそう、マイクからの報告で、MSは順調に進んでいると聴きました。何でも、至らない部分が多すぎると嘆いていましたよ。余りにも、セッティングが甘すぎると。

 

やはりコーディネイターと言えど、戦争道具に対しては素人ですね。

精密すぎるものが、戦場では受けないことは何よりも歴史が証明しています。

 

その代名詞がM2重機関銃ですね。可能な限り簡略化され、洗練されたその姿には惚れ惚れするものがありますね。

もう、200年以上も前のものであるにも関わらず、その内部構造は殆ど変わっていないのだから、ブローニングと言う人物は、実に素晴らしい設計者だったのがわかります。

 

そして、コーディネイター達や、プラントの連中には我々のような、歴史がありませんので戦争を良く知らないのでしょう。戦争なんてものは、華々しい物じゃないことを。

 

僕はいったい誰に話しかけているのか、最近疲れているからかな。帰ったら、ゆっくりと睡眠を取ろう。

 

 

~リディア~

 

プラント駐留艦隊から出撃する毎日は、実に陰鬱なものだった。これではまるで、記憶の中のティターンズの様なものではないだろうか?

 

確かに、艦隊全体としてはそれほど主義に囚われているわけではない、それは大西洋連邦の艦隊ならではの特色と言えるけれど。度々、ユーラシアや東アジアの艦隊とは反が合わずにいる。

 

MAを飛ばしている今もそうだ、向さまはこちらに恣意行為を続けていて、正しく一触即発だ。

強硬派と言うのは、ほんとうにおかしな事をする。

 

ただ、艦隊勤務ばかりしている訳じゃない、しっかりと休暇を取らねばならないから、一応プラント内部で旅行?紛いの事は可能だ。

私はなまじ、勘が鋭いから動きそのものをコーディネイターに近づけることが出来るから、中心街などに出向いてもそれほど警戒されない。

 

そして、今日も休暇でアプリリウスに来ている。

私に同行するのは、私が隊長を務める第32MA中隊の女性の内の三人。彼女らはハーフコーディネイターであったりするので、周囲にかなり溶け込んでいる。

 

ここでは、宇宙物理学等を専門に取り扱う場所らしく、エヴィデンス01等もここに存在している。

ちょうど私は興味があったから、そこに移動しているのだが、ふとカップルらしき人影があった。

 

一人は強面の男、歩き方からするに軍人だろうか?だが、プラントには現在防衛隊しかないから、珍しいな。

もう一人は細身のアジア系こちらも、一挙手一投足から軍人だとわかる。

 

向もこちらに気が付いたのか、怪しげに私たちを見ているが、こちらを無視して何処かへと去っていった。

彼等も非番だろうに、きっと厄介ごとに巻き込まれたくはなかったのだろう。

 

それよりも、今はこの平和な時を楽しもうと思う。きっとこれから戦争が始まるだろう。

周囲からは互いにいがみ合う、そう言う思いが飛び交っているのだ。

 

たとえそれが、コーディネイター憎しナチュラル憎しでなくとも居心地は良くない。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第11話 動乱の幕開け、MS実働試験スタート

皆さん感想ありがとうございます。
仕事と執筆もあり、返信が追いつかずこのような形になってしまいました。
皆さんの感想を励みに頑張っていきたいと思います。


CE68年


この年、世界は転換点を迎えていた。

プラント内の反理事国、反ナチュラル主義は増大し遂に『ZAFT』という組織を作り上げた。

この組織は、後々理事国の反感を買うものを行い、あろうことか戦争の火種を作り出す。

 

一方地球側では、ムルタ・アズラエル率いるブルーコスモスが台頭し始め、反プラント主義が広がりを見せる。それは、従来の彼等の主張と違い、地球に住むコーディネイターすら、反プラントへと方向を変えていくことになる。

そんな68年、M粒子研究所は何事もなく前へ進んでいく。

 

 

~マイケル~

あー、やっと問題のOSが出来た。これでまともに歩くことが出来る。でも人間の動作を入れるのにこれ程時間が掛かるとは。後は宇宙空間での動作試験を行わなきゃならないんだが、残念なことにここは宇宙じゃない。

 

だから、計算上の値を入れなきゃならないんだが、コンピューターの計算と現実は思った以上に、リンクしない。

例えばライトフライヤー号は、空を飛べないようにもしかしたら、宇宙空間で溺れるかもしれない。

 

だから絶対に過信できないんだ。まあ、だけど地上での運用は間違いなく可能だろう。

設置圧は様々な環境に対して自動的に調整してくれるようセットしてある。

これなら素人でも操縦は出来るだろう。あくまでも、操縦はね。

 

で、それが終わったから戦闘試験を行わなければならないんだが、ここでも残念なお知らせだ。

この研究所にそんな広い場所はない。ならどこで試験をするのかだが、候補地が一ヶ所だけある。

 

現在誰もいない町、通称『エリア51』そこへ輸送するのだ。機体を各パーツへ分解して持っていく。模擬戦であろうとも戦闘データを取らねばならないから、俺達は二機分の部品を何とか創った。

それに、近接武器は独自に創ったよ。

 

さて、まだまだ融合炉の小型化が進まなかったからバッテリー駆動なので短時間で試験を行わなきゃならない。もっとも射撃武器なんか無いんだけどね。

 

試験は順調に進んでいった。おおよそ一キロの距離を走行させる。フィールドモーター型と流体パルス型の対決。フィールドモーター型が数秒ほど早く、到着する。

『やはり、流体パルスに未来はない、フィールドモーターこそに未来がある。』なんてクラウン博士は言っていた。

 

確かにこちらが変更を加えた方が遥かに性能は良いが一年前の設計図だ。プラントもまた正式採用機を造っている筈だ、俺達の方が若干遅れている。

だから、ここから如何に加速していくか、それが重要だ。

 

そして、近接武器の模擬戦へ移行する。

片や重斬刀、変更を加えた方は刀身が白熱している。

M粒子を利用して、刀の切っ先にビーム幕を形成して溶断する。名付けてヒートサーベルだ。

 

ヒートって付くけど実際はビーム付けてるからどちらかというと対艦刀に近い。でも刃がビームに変わってるから扱いやすい筈だ。

プラントにゃあ負けねぇぞ!こっちの方が資金は少ないが、天才は大勢いるからなぁ!

 

そんなとき、懐の携帯に着信があった。妻からみたいだ、秘匿回線じゃないから普通の話か。

ムキムキ?どうしたんだい?え?あの子から進路相談が有るって?いや、おれも話をしたいよ。でも今から帰っても3日は掛かる、それでも大丈夫?解ったよ、今から帰る。

 

いや、みんな後の事はそこのクラウン博士にお願いするよ。ちょっと家族会議をしなくちゃならなくなったんだ、バレないようにしなくちゃね。じゃあ、後は頼んだよー!

 

 

 

~コゼット~

 

私がママに進路希望があることを告げると、直ぐにパパに電話をしてた。あの人はいつも仕事ばかりしてて、私と遊んだこともなければ、妹とも遊んだことはない。

 

どんな仕事をしてるのか、昔訪ねたこともあったけど、結局はぐらかされて信用ならない人。

でもママは、そんな人でも愛してる。ママが仕事をするようになっても、あの人が家に帰ってくることは、あんまりない。きっと何かしらの、やましい研究でもしているんだろう。

 

そう思っていると、ママからあの人が3日後に来るからそれまで話を温めておいてねって言われた。渋々はぁいと言っておいたけど、正直話したくない。

 

《3日後》

 

あの人が帰って来た、見れば直ぐにわかる巨体。いつもサングラスをかけて、威圧してくる。

テーブルを挟んで向かいに、座った。ママ、ありがとう私の隣にいてくれて、じゃないとまともに話しも出来ないから。

 

『それで、コゼット。話しとはなんだ、何か気になることとか、心配になることが有るのか?パパに聞かせてごらん。』

 

こういう時ばっかり、父親面してさ図々しいったらありゃしない。

 

「私ね、オーブのカレッジに入学したいの。」

 

あっ眉間に皺が寄った。嫌みたいね。

 

『なぜオーブの物に限定するんだい?大西洋連邦には、もっと優秀な場所がたくさんあるじゃないか。』

 

そら来た、大西洋連邦ばっか。

 

「私は、もっと知見を広めたいの、父さんみたいにここにばかり閉じ籠っていたくないの。」

 

『それにしても、余りにも早計ではないか?良く考えたのか?パパは、お前が心配なだけだ。』

 

ほら、またパパだって、ふざけないで。

 

「いつもいつも、碌に家に帰ってこないのに、こんな時だけ父親面しないで?ママには、もう許可は貰ってるから。後はあんたのサインだけなの、これにサインしてくれない?」

 

渋々と言った感じだけど、サインしてしてくれるんだ。

 

「ありがと、じゃあ私はこれから色々と準備があるから、またね。」

 

私が部屋から出てくのをずっと、睨んでいたのが記憶に残った。

 

 

~アズラエル~

 

魔窟と呼ばれるこの研究所に来るのもいつぶりか、一年程ここには来なかった。ブルーコスモスの体制の一新を行うのは実に難しい。だいたい組織としての本文を忘れ始めていたから、それを取り戻すのは実に骨のおれる。

 

如何に科学的に化学的にコーディネイターが不自然であるのか、それを世論に浸透させるにはまだまだ時間がかかりそうで、それまで強硬派を抑えるのは僕の役目だ。

 

そんな忙しい中、この研究所に来たのはMS技術の発展具合と雄大な景色を見ることによる心の安定。

ここの景色は実に静かだ。動物達も見え弓をつがえる男が狩りを…。弓をつがえる男?

 

そこを見ると、鹿を狩る男がいたのだが、こちらに気が付いたのか手を振っている。

付きの者に、望遠鏡をもらい見るとバンダナを巻いたボサボサ頭のクラウン博士がいた。

 

ここの研究員は変わり者が多いが、博士号を持つものほど変わってる。

マイケルを筆頭にこの変わり者達が、コーディネイターを上回る技術を創り続けている。

 

やはり天才とは頭が少しおかしいのだろうか?だが、きっと誰もが思う事だが、デスクワークをやっている肉体に見えない連中だ。

こんな連中を見ていると、プラントの評議員とはまた違った意味で頭が痛くなる。

 

輸入するなという条約を無視して、食料を輸入するプラントにペナルティを与えたのだが、それを更に無視して今度は大洋州や南アメリカと密輸を行っている。

 

密輸は犯罪だ、取り締まらなきゃならない。だが、大西洋連邦は少し過激すぎた。いや、過激ではなかった。プラント側からの映像には、輸送船を攻撃するMAが写っていたが、こちらの公式記録では搭載していなかった。

 

これは、仕組まれていたのだろうか?輸送船の爆発後、プラントの世論は反地球主義、主に理事国に対する反発をした。

僕はこの映像からプラントの陰謀を確信して対決姿勢を露にして、地球の人々特にコーディネイターを中心に、反プラント感情を強くするように、裏で動いた。

 

これが吉となるか、凶となるかは解らないだから、開発を急いでほしい。一刻も早い開発を…。

 

 

~リディア~

 

『これより黙祷を始める。黙祷!』

 

何故私たちが黙祷をするのか、それは先月のこと。プラントの密輸船の臨検を行っていた部隊が、突如起こった密輸船の爆発に巻き込まれ部隊員が全滅したのだ。

 

突如起こった事態に最初軍でも混乱があった。だが、今こうして黙祷を、捧げているということは、軍がある程度の方針を固めたと言うことだ。

 

それからと言うもの、臨検は行われず。基本武装による脅しに切り替えられた。それがもっとも安全な策であったからだ。

 

私の部隊もそれに参加したのだが、ある時私に辞令が来た。それは、《試験機のパイロットに任命するという》短いものであった。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

また、更新が2日がかりとなります。ご迷惑をお掛けします。


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第12話 始まりの鐘は鳴り響き、火種は燻る

CE69年


その日、プラントと理事国の軋轢は修復不可能なものとなった。

プラントの最初の居留民との契約のなかで取り決められた、食料品生産の禁止を破る行為を行った。

 

その行為は、それまで幾度も交渉を行ってきた各理事国の穏健派を、裏切ることとなり。ますます、反プラント陣営が勢い付いていった。

これほどまでに理事国がプラントに固執する最大の理由、それは金だった。

 

まだ、プラント建設費を全て回収出来ていない。プラントに住む者達の税金だけでは足りず、製品開発、生産を行わせていたのには、そう言う背景があった。

その借金をプラントに住む人々は、意図せずに踏み倒そうとしていた。

理事国がそれを許す筈もなく、こうなれば実力行使だと理事国は艦隊を使い、その借金のかたを取るためにプラント宙域へと進出、プラントの防衛火器のみに限定した攻撃を開始する。

 

そこへ、プラントはMS『ジン』を投入し戦局の不利を打開せしめた。

理事国はこれに恐怖し、新型艦隊の建造を急ピッチに進めていく。

 

ハルバートン大佐は、その動きに対しMSの有用性を見いだし、支援企業とともにMS開発を始めていく。

既にある程度形が出来ていることも知らずに…

 

 

 

~マイケル~

 

ブィーンという溶接の音が聞こえ、辺りから工具の発する音も響く。

遂に導火線に火が着いた、ああ実験施設にじゃないぞ?

 

プラントと理事国の間に亀裂が走って、戦争一歩手前になっただけだ。まだ、回避出来るんじゃないかなぁ。

ってね、ただ気掛かりなのは、あの娘の事だけだ。

 

今はオーブのへリオポリスのカレッジで、機械工学を学ぶために行ってるんだけど、へリオポリスって最終的には、確か戦闘によってぐちゃぐちゃになるんだよな。

そんなところには行かせたく無かったんだけど、妻は俺の事情を知らないから、訳を話せない。

 

その日の夜は一人泣いたものだ、そして今も手紙も電話もメールもない。連絡しようにも、こっちの送るものには無反応、こうなればもうどうしようもない。

俺は、悪いパパなのかもしれない。

 

それはそうと、今日はパヴリチェンコ君が試験MSジンearthを操縦することになってる。

地上での運用テストはこれで26回目、肘や膝等の関節駆動系の反応速度の限界実験。

 

コーディネイターのパイロットが操縦しても、反応速度の限界値が見えてこなかったのだが、彼女が操縦すれば至るところが悲鳴を上げた。

どんな速度で振り回せば、ああなるのか。

 

確かな事はコーディネイターよりも遥かに、MSの運動に関しては上だと言うことだ。

格闘なんかもやってみているんだが、この研究所のガードよりも強い、相手はコーディネイターだというのに…、今度手合わせ願いたいものだ。

 

おっと降りてきたな。

 

『やあ大尉、機体の具合はどうかな前回よりも10%程速く出来たとはおもうだが。』

 

「マイケル所長、ええ大分改善されてきたと思います。ただ、やはり反応が遅れますね。ですがそろそろ、関節駆動の電気信号の限界値だと思いますので、これ以上は無理なんじゃ有りませんか?」

 

そうだ、彼女の言うとおり我々の技術、逸れもフィールドモーターで動かせる速度の限界値で、彼女は操縦して見せた。想定以上だ、もはやこれ以上の反応速度を出すには、新技術の開発くらいしか出来ない。

 

『いや、予々君の言うとおりだ、我々の完敗だよ。この一年間、試験に協力してくれてありがとう。何かお礼でもさせてくれないかな?』

 

「いえ、結構です。私は軍の命令でここにいるだけですから。」

 

彼女は首を振って否定する。我々を品定めでもしているのだろうか、彼女はいつも我々がお礼をしようと言っても断ってくる。

ほんとうに欲しいものがないだけかもしれないが。

 

『確か、君はまた宇宙軍に戻るんだったな?今宇宙では、理事国とプラントが一触即発の状態となっている、君も知っていると思うがね。気を付けてくれたまえよ?実験データの収集が、出来なくなってしまうからね。』

 

冗談を解ってくれているのか、ニコニコとしている。本当に人の心を読んでいるようだ。ニュータイプとでも言うのか?

 

そう思った矢先、彼女の眉間に皺が寄った。

 

『何か失礼な事でも言ってしまったかい?言ったのなら謝ろう。』

 

「いえ、ただひとつだけ先程のお礼で、貰いたいものが見つかりまして、少し質問をしてもよろしいでしょうか?」

 

『ああ、構わないが、こんな場所ではなんだカフェにでも行かないかね?』

 

そして、カフェに付きそこで言われた。貴方はニュータイプを、知っているのか。と

最初ははぐらかしていたが、どうにも嘘が効かないとなると正直に言った。知っていると。

 

こういう時、心で思わない方が良かったから頭をフル回転させて、言葉を瞬時に出すことにより俺が、ガンダムの無い世界から来たことを隠し通せた。

だが、UCの世界から来たと誤った情報を与えてしまった。後で謝らなければなぁ。

 

 

 

~アズラエル~

 

MS、遂にプラントはそれを実戦配備した。その戦闘映像を見た時ああ、遂に始まるのか…とそう言う感想が頭を覆った。そして、同時にこう思った、急ぎこれに対抗する手段を配備しなくてはと。

 

彼等の研究所に忙しい身にも関わらず、単身で乗り込んで言ったよ、さっさと実戦投入を始めるぞ何をぐずぐずしてるんだ!何て言っていた。

そうしたらだ、マイクがやってきてそのはち切れんばかりの筋肉で、僕を掴んで行った。

 

我々もそうしたいのは山々だ、だがまだ宇宙用のOSの開発が終わっていない。計算と現実の誤差を埋める作業が残っていると。

 

やはり机上の空論のままで出すわけには行かないようだ、確かに今出したところで宇宙で溺れるかもしれないからだ。僕自身、余りの事態に取り乱だしていたようだった。まだ僕らのMSと奴らの物に、対した差がない。

 

性能的には遥かに上へと行ってはいるんだが、性能が上がるにつれ駆動時間が短くなっていっている。

確かに、彼等の言うとおりだ。早く核融合炉の小型化が終わらねば、その性能を生かせない。

 

だから、その後僕が出来ることを考えた。出来るのは既存の艦艇や既存のMAの強化、それに必要な生産ラインの確保と、その後のMSの量産体制の確保に有利に働かせる、裏工作とか。僕にしか出来ないことだ。

 

ちょうど良いことに、僕がそれをやっているときにハルバートンがMSの開発を秘密裏(笑)に行い始めてくれたお陰で、良い隠れ蓑になったよ。そうこうしているうちに、プラントのクラインが対等貿易を要求し始めた。

 

別にこの程度の事なら協議しないでもない、理事国の連中も硬い頭ではない。軍事力で駄目なら経済で傀儡にしようと目論む、まあ当然だ。だが、あいつらはしたたかだ、何せ結んでいた約定を反故にするからな。

 

そして、僕らは突きつけられた。プラントからの資源輸出停止措置という。今までの理事国の支配を揺るがす、最悪の事態を…。

 

 

~リディア~

 

私がテストパイロットから再び宇宙艦隊に戻った時、メビウス隊のパイロット達の姿が様変わりしていた。

昔から共に過ごしてきた人たちが、いなくなり、代わりに20代前半くらいの新人が配属されていた。

 

どうしてそうなっているのか、共に戦ってきた者達に聞くと、あのプラントとの武力衝突の折りに戦死したと言った。彼等の残り香が、薫る船の中で私は一人黙祷した。

 

そして、模擬戦闘をはじめとしたものを行い艦隊との連携や、新しい戦術の確認を行い、私の下に付く者達とコミュニケーションを取り、意志疎通をとった。

 

昔みたいにのんびり出来ない。準戦時体勢に移行したのだ、ピリピリとした空気のなか私は機体を整備する。

もしも、私の近くにMSがあったのなら一人でプラントと戦えるのに…。と心のなかで密かに呟きながら。

 

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

お願いがあります。
アンケートなのですが、UCの年表を知らないかたから、入力をやり直したいと感想でいただきました。
確かにMSの開発順序を知らなければ、良いか悪いかの判断は出来ません。

ですので、申し訳無いのですが、再度アンケートを記載しました。入力をお願いします。


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CE70年の戦乱
第13話 バレンタインに赤いチョコ


CE70年1月~2月14日


CE70年1月1日

 

新年の祝い事が行われ、本来であれば皆一様に浮かれ笑いあっていた筈の事。

ムルタ・アズラエル、彼は一人苦悩の表情で執務机に付いていた。

事の始まりは、予定されていた理事国とプラントの協議であった。

 

この協議は今後のプラントと理事国間の未来を担うものであり、老いた国連の最大の仕事となる筈だった。

この協議で戦争開戦の是非を問う、正しく平和と戦争の天秤であった。

 

1月1日その日、プラントと理事国が会談を行う理事会において爆破テロがあった。

この事件は、当初ブルーコスモスから声明が出されていたが、アズラエルの聞き及ばない事であった。

事件当日プラント代表のシーゲル・クラインのみ、評議会へ遅れて参加していた事もあり、状況証拠としてプラント側の自演の可能性があった。シーゲル個人が知らぬ間に行われた、可能性があるがそれを知るものはいない。

 

しかしながらブルーコスモスとして、そしてその盟主としてアズラエルは一歩たりとも引けない状況にたたされていた…。

 

 

~マイケル~

 

1月4日

 

うーん、新年明けましておでめとうございます。

さて、新年早々ヤバい事件が勃発してしまいましたねぇ、これでプラントと理事国の間は完全に引き裂かれたな。

 

しっかし、偽装工作するならもっと丁寧にやらにゃあいかんでしょおよ。

どおして、ブルーコスモスの名前を騙って声明を発表するのか。だってねぇ、会談が行われないで損をするのは理事国側で、ブルーコスモスもその例に漏れないんだよ?

状況を見て、まず確実にやってないね。

 

全くこの事件のせいで研究所に戻って、セキュリティのチェックしなきゃならなくなっちまったよ。

新年くらい家でゴロゴロしたいんだけどねぇ、下の娘にも文句言われちまうよ(涙)

 

カツカツと歩く度に音が鳴り響く廊下から、エレベーターで地下へと降りる。乗りながら網膜、指紋、静脈等の照合を行って、いざ降りる。

 

新年だが、休まない連中もいるから挨拶も兼ねて、視察する。

更に奥へと進むと隔離された場所に付く、小型核融合炉の試作一号機。

 

遂にMSに搭載できるサイズのものが、製造可能となった。まあ、それでもまだザクⅡF2型程度の出力しかでないが、最初の一歩としては上々だろう。

 

そろそろ、MSの設計を始めようか?

なに?まだ始めてなかったのか?だって?いやいや、ちゃんと設計してたよ?いつしてたのか?結構最初からやってたさ。

 

ジンを元にしてたやつ、あれねもう7割型ジンじゃないんだ。ジンというよりは、ジムって感じでね、しかもムーバブルフレームの実験機も兼ねてるからもうね、後は外装とか、コックピットくらいかな。

 

コアブロックシステムとか、着けても良いし、最近ハルバートンとか言う軍人が開発してるフェイズシフト装甲とかも面白そうだなぁ…。

 

そう考えて行くと、月日は直ぐに流れていく…。

 

 

2月14日

 

いやー筋トレと、設計ばかりやっていたらそんなに時間が経っていたとは、だが戦争ねぇ。

血のバレンタインなんて洒落た名前を付けるじゃないの、まぁそんなバレンタインはこりごりだけど。

 

だが、不可解だ。大西洋連邦はそんな馬鹿じゃない筈だ。確かに敵の継戦能力を挫くのは良い手だと思うが、核を使うまでもないんじゃないか?

 

俺だったら小惑星でも、スペースデブリでも何にでもエンジンを付けて突っ込ませるよ。その方が後味悪くなくて良い。むしろ核なんかよりもよっぽど成功率が高いし、何より運ばなくて良いんだ。

 

軍人がそんな事考えない、だって?いやいや、一年戦争のジオンだって使ってたんだ、誰だって思い付くだろ?ま、何にせよ俺は気にしない方がいい。

後ちょっとなんだ、そしたら開発を始める。ガンダムをね。

 

コックピットは、球状全天周囲式にし、フェイズシフトで囲ってブロック埋め込み方式を採用する。

これで新規の機体へのスムーズな交換を実現できる。理論上は。メガドライブみたいにならないように、気を付けねば。

 

 

 

~アズラエル~

1月1日午前

今日、月面で理事国とプラントの会談が行われる。戦争か、平和か。どちらが転んでも、戦争にしかならないものを議論するのだ。きっと良い方向ヘは行かないだろうな。

 

なんにせよ、奇跡でも起これば戦争は回避できる。

昨今の戦争は儲かる処か、国が破産寸前まで行くから僕としてはやりたくないのが、本音だ。

 

こういう時、宗教家達は何を思ってるんだろうなぁ、きっと破綻しろとでも願ってるんじゃないか?そうすれば、合法的にプラントを叩けるからな。

 

 

午後

 

会談が行われるのに、何故シーゲルは遅れたのか…完全に確信犯だろ、狙っていたな。

よもやこんな手に出るなんて正直、プラントを見損なった。

 

こんなテロ紛いの事を行って、戦争をしたいのはお前達じゃないのか?聞きたいくらいだよ、シーゲルお前の口から、このテロに付いて知っていることを洗いざらい。

 

落ち着け、冷静になれ。

この事態は予測できなかった事じゃない筈だ、そうだろ?それよりもだ、僕たちブルーコスモスの名を語る連中がいることが判明した。

 

十中八九ジブリールだろうな、宗教主義者風情がでしゃばるとは、だが奴にそんな度胸は無い。なら誰がやったのか、僕のしらない敵か?

調べる必要があるな。

 

 

2月7日

 

信頼を失った国連が解体され新たな組織が、誕生した。地球連合、名とは裏腹に烏合の衆だ。

こんな付け焼き刃でプラントに対抗しようとは、確かに一致団結する事は悪い事ではないが、我々はどうやっても私利私欲からは抜け出せない。

 

どうやっても世界は一つにはならない、まずプラントに対する考え方で違いがあるのにどうやって一致団結するつもりなのか、聞きたいくらいだよ。

 

 

2月14日

 

なんて事をしてくれたんだ!これじゃあ世論を味方に付ける処か、逆に反感を買うぞ!誰だ、誰が核なんかを持ち込んだ。

僕はしらないぞ、なに!? 僕の命令で執行されただと!

 

抜かったか、誰だ誰が僕の名を騙る。ジブリール?ロゴスが関係しているに違いない、だが連中が表に出るとも考えられないでは、誰だ。

映像記録が残ってるだって?見せてみろ。

 

これは『アルダ・ブラガ?』だが、彼は問うの昔に死んでいた筈だ。だが、まさかクローンか?いったい誰がそんなものを作ったか。

 

 

~リディア~

 

2月14日 月~プラント中間宙域

 

全員格納庫に集まったか、パイロットが勢揃いで私の目の前には、参謀がいる。

 

『これよりブリーフィングを始める。現在我々第一実験艦隊は、月基地を発信しプラントへと急行中だ。

我々は、駐留艦隊及び、進出艦隊が交戦中であろうアルファ宙域へと進出し、駐留艦隊を援護。あわよくば、プラントの制圧を行う手筈となっている。

 

しかしながら駐留艦隊、ならびに進出艦隊が損害大であった場合、2艦隊を援護のうえ後退を支援し殿となる。

だが、最悪の場合味方を見捨てて敗走する事になる。

 

諸君らの事は充分信頼しているが、最悪逃亡しても構わない。相手は未知のMSだ、より多くの情報が必要だそれを持ち帰ってきて欲しい。以上だが聞きたいことはあるかな?』

 

聞きたいことは多くある、何のためにこんな愚かな事をするのか、とかね。

戦力の逐次投入はいけないじゃないかとかね。

特に今回はそうだ、相手はまだ軍事力がひ弱だ、こういうのは数で押せば簡単に潰れる。

にもかかわらずこうなるとは、派閥争いのせいだろうか?

 

そして、艦隊はプラントへ向け進んでいった。

私の目に写ったものは、やられていく味方とプラントのMS達。私達はあまりにも遅かった。既に艦隊は無く、ユニウスセブンは崩壊していた。

 

残存兵がこちらへ来る、そしてその後ろから憎悪を露にしたジンが襲いかかる。

その弾が吸い込まれるようにメビウスに、命中する。

 

地獄と化した場所で、私達は撤退を決意する。

だが、ただで返すほどプラントは甘くない、プラントの艦隊が現れこちらを追尾し始めると同時にMSが展開し、高速で接近する。

 

MA隊が、編隊を組みフィンガーフォー(4機編隊)で迎え撃つ。

距離が近付き射程に入る、一斉にリニアガンを放つが予想していたのか、軌道を急変させて反らす。それを、私はリニアガンを置いて一つ墜とした。

 

そこから、乱れるような戦いが始まる。

元より速度はMAの方が速い、従って一撃離脱に専念しようとするも、それを阻止しようとあらゆる方向から弾が跳んでくる。

 

数は劣勢多勢に無勢だ、だが味方の損害はそれほど出ていない、私との模擬戦の結果なのか皆スルスルと弾を避けている。

だが、やられるのも時間の問題だろう。推進材が底を付くのはこちらが早いのだ。

 

だから、こちらに目を向けさせるために、敢えて敵を殺さない。こちらに注目が集まる、そうだ私を狙えその方が落としやすい!

 

雨のように降り注ぐ銃弾、それを避ける姿は流星の如く。流星から子が解き放たれ、それが自在に動きジンのスラスターを狙い放たれる。一機また一機とスラスターをやられ撤退していく。

 

艦隊は遠く離れ、そして突如強力なジャミングが発生し、プラント側は混乱した。その隙を付き、MAは撤退する。無駄な戦闘が終わり、被害は最小限にとどまった。

それでも救助できたものはあまりにも少なかった。

 

私達はこれから戦いの矢面にたたされていく。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

戦闘描写って難しいよね!脳内補完してほしいです。


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第14話 倒された巨木と、白い流星

CE70年2月


実験艦隊編成

アガメムノン級1隻

ネルソン級 4隻

ドレイク級 10隻




血のバレンタインと後に呼ばれる一連の戦闘が行われ、地球連合軍は一個艦隊の壊滅という多大な犠牲により、プラントの持つ継戦能力を削ぐことに成功する、だがそれしきの事でプラントが諦めるものではなかった。

火に油を注ぐが如く烈火の怒りに燃える民衆、それに答える様にシーゲルは地球連合に対する宣戦布告を行った。同時に積極的中立勧告を行い、地球連合に与しないよう理事国外の国へと発布した。

それによって地上は3つに割れる、プラントの分断政策は完全に成功した。

 

それを打開すべく、地球連合は戦力の再終結を行うがプラントはZAFTは、それを許す筈もなかった…

 

 

~マイケル~

2月20日

 

ジリリリン、ジリリリン黒電話がなる。

何で、このご時世に黒電話かって?俺の趣味だよ!

ガチャ、もしもしどなたですか?

え?あぁ、宇宙軍の方ですかどうしました?

 

メビウス・ゼロとメビウスの改良をして欲しい?いやいや、それは私の仕事じゃないんです、作成している連中がいるでしよ?その人たちに任せて欲しいですねぇ、私は今、新兵器の開発で忙しいんです。

 

何々、その新兵器も見せて欲しい?(やっべ口が滑った。)

いやいや、まだ未完成品ですのでお見せするわけには行かないですねぇ。

 

えぇ、えぇはい。ですからねその機体は私の設計じゃないんですよ、そいつが俺しか適任がいないって言ってたんですか?しょうがないですねぇ、そいつが土下座したら考えてあげますよ。

 

ガチャ、ふう。まったく、MS開発で手一杯なんだ、このご時世だが何とかして宇宙に打ち上げたい。

じゃないと、OSの再計算が出来ないじゃないか、誰か協力してくれる人いないかなぁ?

 

そうか、さっきの奴をやる変わりにより軍部に食い込んでいけば、自ずとなるな。よし!早速リダイアルだ!

もしもし~いや気が変わりまして、先程の案件お受けしましょう、ただし条件があります。私の願いを叶えて貰いたいのです…

 

これでやっと宇宙にあげられる

 

 

 

2月22日

 

そう思っていた時期が私にもありました。マジかよ、宇宙の一大拠点を襲撃されてんじゃないの、防備ガバガバですか?いやいや、なんでこう当日になってこんな目に会うのかねぇ。

 

まさかメビウスを見に行った当日に、こんなことになるなんて誰が予想付くだろうか。だいたいなんで俺だけ宇宙に行かなきゃなんないの?別に地上でもいいと思うんだけど、信頼できるデータが無いとか言いやがって。

一番信頼が置ける艦隊に載ってるのは良いけどさ、M粒子技術実証艦隊。

 

訳あって他の艦隊と行動を共にすることが出来ない、主にM粒子のせいだけどね、でもねそれでも戦闘に巻き込まれるとは…。

あぁ、地上なら結構戦えるのに。

 

しょうがないか、整備兵の真似事でもするとするか。

おーい、そこの君!私に合った作業服はないかねぇ!無いだとっ!(驚愕)仕方ない、タンクトップでやるか。

 

君、名前は何というんだ?マードック、ほおよろしく頼むよマードック君!なに、こういう仕事はなれている、それにこのMAは、私が強化したんだ。手をとるようにわかるよ!

 

おお、腕がなるぜぇさあどんと来い!

ゼロから十まで、何でも直してやる我が技術をとくと見よ!

 

それから、しばらくすると戦闘が始まった。どうやら、この艦隊はM粒子を散布して、レーダーに写らないところからメガ粒子砲によるアウトレンジ攻撃を行っているようだ。コロニーとは正反対の方向からの攻撃に、相手もビックリだろう。

 

安全だなぁ、だがMA隊が出撃から戻ってきてない今はまだMSが来てないが、何れ来るだろうなあ。

そうなればどうなることやら。

 

 

 

~リディア~

 

あの戦いから数日も経たずに、私達は再び艦隊を移動させている。今回は不憫な事にこの時期に開発のために、宇宙に上がってきてしまったあの、《筋肉》がいる。

それでも、私達のやることに変わりはない。

 

敵艦隊を後方より奇襲し、敵MS母艦の行動不能とさせるべくMA隊は出撃する。

この艦隊は他の艦隊とは違い、強力なジャミング能力と

赤外線の遮断能力によって、この艦隊を捕捉するには目視が必要になる。

 

勿論無線も使えない、だから艦隊との連絡機が部隊に6機いて、その中で最も階級の上の機体が『光信号』を用いてモールスを贈る手筈となっている。

ミノフスキーテリトリーから出た瞬間、敵のレーダーに捕捉されるからそれが合図となって、艦隊が砲撃を開始する。

その間私達は、宇宙空間を飛び続ける。

 

各隊の行動も無線ではなく、手信号。時代が逆戻りしたかのようだ。だが、記憶の中の彼等はそれをやっていた、これがM粒子下の戦闘行動だ。

 

暫く前進し、敵の輪郭が大きくなったとき俄に敵艦から閃光が見え始め、こちらへの迎撃を開始していると悟った。

 

『無線封止解除、各隊の健闘を祈る!』

 

戦闘が始まった。直掩のMSがこちらに向かってくる、こっちの数は50と少なく敵の倍程度しかいない。

だが、こっちは囮だからいかに生き延びるかが先決だ。

 

私達の後方から、赤い色のビームが敵艦に向け殺到していく。無論敵も気が付いたのか、撃ち始めようとするがMS隊が射線に入り撃てない。

 

その間にこちらは敵艦に肉薄していくが、MS隊に味方が一機また一機と食われ始めた。

私はそれを良しとしない。向かってくる敵に、ガンバレルを展開し、左右から攻撃にを仕掛け一方的に落とす。

 

数機まとめて来た!一列に三機並んでか、だがそれは問うの昔に魂が記憶している!1機目の突撃を、機体を反らす事で交わし、2機目をガンバレルからの射撃で損傷させ3機目にリニアガンを撃ち込み右腕を破壊した。

 

私の主観で、MAがMSに押されているのがわかるが、それでもエースと言われる者達は、互角の闘いを行っている。

 

突如ナスカ級が火を吹き、爆発する。それに気を反らす者達がいた、それらの命を無情にも刈り取っていく。

だが、やはり多勢に無勢なのだろうか、MA隊の被害は拡大していく。

 

だが、それでも艦隊からのビームはローラシア級を、始めナスカ級を数隻葬り去り、プラントの武装組織ザフトへ被害を与えていく。

 

艦隊からの一方的な攻撃とは裏腹に、MA隊は半数が墜ちた。そして、あろうことか発光信号による打電により、撤退を、開始する。全体の戦況が動いた、そう世界樹が墜ちていく。

 

無駄死にではない、それでも被害は大なり。

だが、敵の方がより深刻なダメージをおっていた、それでも目的は果たせなかった。

今回の戦闘で我々はかけがえの無い命を失い、同時に教訓を得た。MAでMSと戦うことは、無謀であるということを。私以外にMSを撃墜したものは、片手で数えられる程度の人数しかいない。

 

 

 

~とある士官~

 

この作戦はあまりにも無謀ではないだろうか?むざむざ、こんな作戦を行い優秀な者達を殺すこの、特攻とも取れるこの作戦を。

 

事の発端はM粒子という粒子による、電子戦の形骸化が原因だ。

レーダーも赤外線センサーも、有効性を失うこの驚異の粒子による、艦隊の秘匿。

 

これがあったから、こんなMA隊を犬死にさせるようなものとなっている。

プラントでの戦闘のおり、MA隊がMS隊に対して有効な手立てがないまま、撤退指示を出した。

 

あれが、最善だと今でも思う。

それが、どうだ。今正反対の事をやっている。

 

『提督、観測機からの信号残り60秒です。』

 

そうか、全艦に通達砲撃戦用意。

 

『5.4.3.2.1.作戦スタートです。』

 

良し、攻撃を開始せよ。

 

この艦から射出されるビーム砲も、またM粒子によるものだ、エンジンでさえも、そしてその開発者と噂される者までいる。いったい何の巡り合わせなんだろうか…。

ともあれ今は作戦を続行するのが先決か。

 

 

《数刻後》

 

「世界樹からのレーザー通信!『貴艦隊ハコレヨリ、戦闘空域カラ離脱セヨ!』です!」

 

作戦は失敗か、直ちに連絡機へ通達、MA隊直ちに戦線を離脱せよ。繰り返し打つんだ!

 

よもや、世界樹が墜ちるなど…だが、今はいかにMA隊を救出するかだ。

 

全艦、射撃速度を最大にし、ミノフスキーテリトリーギリギリのラインまで、敵に接近せよ!

その後急速反転離脱する!

 

 

『MA隊全機収容完了、これより離脱します!』

 

この距離ならば、MAよりも航続力で劣るMSは、来れまいて。敗戦は苦いが、ただ負けたのではない。まだ、我等は生きている。

故に再三再起の機会がある!

 

 

 

~バルトフェルド~

 

艦の指揮を、任されたんだが戦争ねぇ。僕は正直嫌いかな、それよりも本物のコーヒーという奴が飲みたいんだが…。うん?宇宙で何か光ったか?

 

レーダーに何か写ってはいないか?

 

うーんなにも写っていないね…、妙だな。念のために、MSを多めに出撃させておくか。直掩だ、悪いものでもないしね出しておいて損はない。だが何か嫌な予感がする。

 

《数分後》

 

おいおい、まさかな。どうやってこうも気付かせずに近付けるのか、興味が湧くね!

全艦艇に通達!敵機捕捉、その数およそ50、MS隊は直ちに迎撃を開始せよ!

 

何が目的でこんなところへノコノコ出てきたのかしらないけど、その数じゃあ艦隊に肉薄なんて出来ないよ!

直後、艦が揺れる。何処からか、攻撃されていた。

 

いやいや、してやられてるねぇ!直ちに攻撃予測地点を算出!レーダーに頼るな!目視で探すんだ!

いやいや、レーダーが効かないんじゃ、昔からの砲撃戦みたいじゃないか!興奮するねぇ。

 

なに?MSの被害が拡大している?映像は!あれか、凄まじい動きだな、芸術的だよ真似できそうもないな。?どうした、急に離脱を始めたか。だが、良かったな。これ以上続けていてはこちらが、継戦不可能になるところだった。

 

それにしてもあの、MAだけ動きが違ったな。まるで最初から、攻撃を予知していたみたいな動きだったよ。いったい何者なのかな。

 




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設定資料
実験艦隊の改装状況記載


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第15話 失った制宙権、手に入れた人材

CE70年2月~3月


コロニー郡世界樹は、崩壊した。宙域における一大拠点を失った、連合軍艦隊は一路月基地プトレマイオスへと、逃走を行った。

実験艦隊は、派閥争いにより一度は拒まれたが、それでも最短の基地への入港を許可される。

 

この中では、半壊した艦艇やMA腕や足が欠損したものたちが溢れ、油と血の混じった匂いが辺りに充満しそこは文字通りの地獄であった。

それでも、被害事態は中程度に押さえられ艦隊の再編成も進められていた。

 

そこに並ぶ艦艇は、全て新造されたもの。その艦艇全てに、核融合炉が搭載され武装も一新された。

だが、散布能力は未だ無かった。

データリンクシステムに依存している艦隊を、脱却することは出来なかったのだ。

そして、次代こそが完全なるM粒子の散布を行えるものとなる。

 

 

一方の勝者である筈のZAFTは、予想以上の艦艇の損耗率に驚嘆していた。

彼等の目に合ったのは、突如として艦隊を奇襲した姿の見えぬ敵、ゴーストエネミー。

 

彼等はその敵が、何処の何者なのかという事を戦闘後徹底的に調べあげる。

その中にあったのは、人間の動きとは到底思えない軌道で宇宙(そら)をかけるMA、映像で確認出来たエンブレムは、Rの文字を変形させたペガサスが描かれていた。

 

評議会の議題に上がるほどに、謎めいたそれを全員が注視する。

更に、ゴーストエネミーが映像の中にうっすらと確認できた。

 

それは旧来のロングレンズカメラによる撮影で、偶然端に写っていた。

艦型の称号から、既存艦艇に改装を施したものであると断定した。だが、何故彼等はあそこから一方的な砲撃を出来たのか。誰にもわからなかった。

それを知るのは、半年ほどたったことであった。

 

 

~マイケル~

 

おい!そこ!アポジモーターの角度調節、後0.1ミリ下方にずらせ!じゃないと機体が回転しちまうぞ!

おいおい、エンジンユニットのバイパスコンデンサが焦げてるだろ、なにやってんの!予備は艦内には無いんだぞ!

 

おっ?どうしたんだい?何をやっているのか、だって?

今な、損傷した機体を中核として、戦時戦闘能力の向上を図ってるんだ。忙しいよ、だいたいこんな整備場で、開発するなんて誰が言ったんだ?

 

せっかく持ってきたスーツが台無しだよ、これじゃあまだまだ時間がかかるなぁ。せめて6日で終わらせねえと、敵が地球降下作戦を行うかもしれない。

だから、せかされてんだそんなに脅されてもねぇ。

 

メビウスは比較的ポテンシャルが高いものだったからなぁ、まあ改造等のお陰だけど、それよりも一番気になっていることがある。

目の前にいるパヴリチェンコ大尉の搭乗する、メビウス・ゼロだ。

 

やはりというか、彼女の反応速度に機体が付いていけていない。それどころか、ラグを感じるほどだから内部の電子回路等にも、負荷がかかっていたそうだ。

なんと、自分で調整していたからそこは大丈夫だと、メカニックとしての腕もあるのか…凄いな。

 

だが、残念な事にもうメビウス・ゼロのアップグレードは、行えない。あの機体のポテンシャルは既に、使い潰されている。

後は、彼女の腕でMSと戦っているわけだ。勿論彼女も生き物だから、疲労する。それを補えるだろうか…。

 

まあ、仕事を進めよう。メビウスで現在使用されている、20ミリバルカンは正直時代遅れの代物だ。

何故なら、本来仮想敵であった筈の同じタイプのMAの撃破すら出来ない処か、MS相手では速射制のみ頼りにされ、肝心の貫徹力が不足している。

 

航空機が相手ならともかく、頑丈な装甲に護られている機体への攻撃力が限定される。本来の用途であった、対艦戦闘にはまだまだ活用できるが、小回りの効くMS相手では対艦ミサイルも使えず。頼りになるのは、対装甲目標撃破率の悪い、対空兵装だけになる。

 

そこで、当たっても攻撃力が足りないのなら、一発の威力をあげる事となった。

選択肢は2つ、一つはリニアガンを装備する。

これは、メビウスゼロの兵装からの流用だからOSの移植で、可能だ。問題点として、速射の悪さ一撃必中を目標に、メビウスゼロのような大容量バッテリーの搭載されていない中での使用となる。

 

もう一つは単純な口径拡大だ。

質量はエネルギーだから、単純にでかくなりゃ同じ速度なら、デカイ方が強い。

だから、2連40ミリバルカンを拡大した2連75ミリバルカンへと、換装させる案を出そう。

これは瞬間火力をある程度保持したまま、より強力なものとするということ。

問題点として、携行弾数が減る。瞬間火力密度が多少減ると言うことだ。

 

どちらも、俺としてはやりたい。え?75ミリバルカンは正式採用されてないから、駄目だろ?だって?心配ご無用、イーゲルシュテルンが有るじゃあないの、有るものを使うのが、一番良いに決まってる。

 

後は姿勢制御だが、ここは既存のものの出力を上げる程度で済む。どうせ、艦隊から離れたところでの戦闘は出来ないからな、なんせバッテリー駆動だから。

これで、まにあうかなぁ~。

 

 

2月29日

 

良し!正式採用された。これで、多祥なりとも被害は減らせる。何?今度は艦艇の改修をしろだと!そんなもの、たくさん有るバッテリーを核融合炉に変えて、主砲をメガ粒子砲にして、センサーを画像解析型にすりゃ済む話だ!

 

だから、それをやれって?わかった、で次は?プトレマイオス?良いよ、いきゃ良いんだろいきゃ。

 

 

3月9日

 

非常に残念なお知らせがあります。なんと、地上しかもマスドライバーがあるビクトリアに、ザフトが降下作戦を実施したんだと、ここ月面でもかなり話題にあがっているよ。何でも、ザフトを撃退し、殲滅したそうだ。

 

やはり量産は間に合わなんだ、後一週間早ければこんなことにはならなかったかもな。以後気を付けよう。

さて、この課題が終わったら地球に返れる。

いやー久々だよ、帰ったらまず妻と娘と一緒に何処かへ旅行へ行きたいなぁ。

 

 

 

~アズラエル~

 

その時僕に衝撃が走った。L1コロニー郡世界樹が襲撃され破壊されたなどという事を、誰が予想できていたであろうか。

あれ程の艦隊をいつの間にか何処かに隠し持っていたという事を。

 

あんなにも大規模な艦隊を、早々に造り出せるものなのだろうか?いや、出来ないならばどういう事か、もしかすると、戦時改装後戦力として投入できるものが最初から設計されていたのか。

 

もしそうなのだとすれば、矢張連中の言うことをいちいち聞いて行動など出来はしない、我々の許可無くそのような事をするなど、最初から敵対する気だったことの表れだろ。

 

それにしても、今回の敗退で多くの死人が出たから遺族年金を工面するのも政府を疲弊させるな。こちらからも支援を行わねば。

 

まったく獅子身中の虫を排除もしなきゃならないし、遺族年金の補填もしなけりゃならない。

いかに戦争が長引いたとしても、国を疲弊させては儲かるものも儲からなくなるからね。

 

マイクは艦隊戦のとき、実験艦隊いや今は第13独立機動郡だったか。にいたようだけど、あの男が早々に死ぬわけが無いからね、本当に彼は良く、災難に見舞われるよ。

 

おい、秘書君。次の予定は何だったかな?軍との兵器開発に関する、新しいプランの実行。相手は?ハルバートン率いる、MS主力派ね。わかりました、良いでしょう。

 

 

3月8日

 

その日僕は、久し振りに平和というものを謳歌していた。グラスにワインを注ぎ、同級のガールフレンドと共に一時を楽しんでいた。人としての在り方はこうであるように感じるその時を、噛み締めていた。

 

そんな時、事件は起きた。

ビクトリア宇宙港、この地球に置いて一二を争うほど巨大なマスドライバー施設。

それが、宇宙からの攻撃にさらされた。

 

だが、初動が早く早期から撃ち落とす事に成功しながら、防戦を行ったところ。勝利したようだ。

ここは良くやったと言いたいところなのだが、そうも行かないだろうなぁ。

 

きっと連中も焦る筈だ、絶対に二度目がある。だとすれば、何処なのか。マスドライバーは世界各地にある、一つづつ攻略するのは難しいが、何か手だてを持っているのだろうか?

もしくは何かを使用するのか、それはわからないが、警戒しておくに越したことはない!

 

 

 

~プラント評議会・シーゲル~

 

3月15日

評議会は地球連合に対する、積極的攻勢作であったビクトリア攻略の失敗を期に、作戦に一捻りを加えたもの『オペレーションウロボロス』を策定し、作戦の実行日を議論していた。

そして、それの決定後あるMAに対する議論が始まった。

 

かつては穏健派だったパトリックは、今や鷹派の代表格だ。全ては血のバレンタインのせいだよ。

あれさえ無ければ、彼がこれほどまでに憎悪にまみれた顔でナチュラルを詰ることは無かった。

 

そして、その矛先にあるのは先日の世界樹攻防戦での、とある連合のMAだ。

そのMAは、大局に影響を与えることは無かったが、あと少し現れるのが早ければ。我々は、戦略的な敗北を喫する事になるほどだった。

 

エザリア女史からの報告には、あの機体には何ら小細工らしきものは施されていないと、映像解析の結果表された。

だが、唯一違うところが有るとすれば、その反応速度に起因すると。

 

現在パイロット、特にエースと呼ばれるコーディネイターの反応速度は異様に高い。それこそ、ナチュラルにはそれほど優れた者はいないと、評される程だ。

だが、このMAのパイロットは例外と言える、そうだ。

 

まず、その速度は『マイナス秒』であるという。それはもはや、生物としてあり得ない。起こった事象に対して、反応を示すのが生物だ。だが、もし起こり得る事象に対して反応できた場合、それこそ『時』を見ているといえよう。最早神の領域だ。

 

エザリア女史も、パトリックも急進派と呼ばれるものたちは、そんなものはあり得ないと思いつつ。現実を受け入れている。私自身、そんな人間がいるとは正直思わない。だが、マルキオの言う『SEED』を持つものならば、可能なのだろうか?

 

パイロットの身元は案外直ぐに露呈した、何より簡単なものだった。白地に濃い藍色の機体、Rをペガサスの形状に変形させたエンブレム。

それだけで、解ったのだ。連合が、いや大西洋連邦が行った観艦式でエースパイロットの代表として、紹介されていたからだ。

 

女性でありながら、多くの部門で非常に優秀な成績を残し、そのたぐいまれな身体能力に恵まれた。ナチュラルだ。だから、パトリックは目の敵にしているのか、はたまた何かを行おうとしているのか。

きっとこう思っているのだろうな、『ナチュラルがナチュラルのまま我々を抜こうとしている。』と。

 

それでも、我々も彼等も人間であるには変わらない。

もっとも、このナチュラルは人間から一段階上の存在のような気もするがな…。




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第16話 嘘だといってよ…。アズラエル、君が頼りだ!

CE70年4月


天より地上に舞い落ちるものあり、それは瞬く間に地球上のあらゆる場所に行き届き、地面に深々と突き刺さり、地中に埋没する。

 

そこから、如何わしきものが放出され世界の原子力発電は急停止した。

中立国、抗戦国訪わずそれは影響を及ぼし、4月という時期により北半球のシベリアをはじめとする、雪国は暖房器具の停止により、多くの犠牲者が現れた。

 

これにより、地球の北部地域の住民及び寒冷地に済む人々は反プラントの世論を形成し、プラントに対する徹底抗戦を声高に宣言する。

 

だが、この犠牲者はある人物の手によって救済される。それは、若き実業家であり自然保護団体「ブルーコスモス」の長である、ムルタ・アズラエル氏であった。

 

 

~アズラエル~

 

久し振りに夜空を眺めると、実に美しいと思うことがある。だが、今もなおプラントとの戦争状態であることに変わりはなく、その星空もまた悲劇の舞台に他ならないのだろう。

 

秘書官の彼女もスヤスヤと寝息を立てて眠っている。さて、僕もそろそろ眠らせて貰いますか?っなんだあれは…。流星群が地球に到達するには、時期が早すぎるぞ。…まさか、宇宙からの攻撃か!!

 

『おい、起きろ!なに?じゃない早く準備をするぞ、役員を叩き起こす。不味い事態になるかもしれない。』

 

あれが、何なのか解る筈もないが、だが流星群か何かでは断じてない。だとすれば軌道上からの兵器投下か?

だとしても、何が目的だ?一度失敗したことを、繰り返しやるのか?そんなことはない筈だ!

 

《2時間後》

 

全員席に着いたか。

 

「みんな済まない、だが夜中の内に流星群が見えた。それも報告が無いものだ。幸いなことに大西洋連邦に、被害らしい被害はないがユーラシア連邦の支社との連絡が途絶した。何か心当たりのあるものはいないか?」

 

周囲の役員等も東アジアやスカンジナビアとの連絡が途絶していることを確認したという。

まさか、地球規模の電波撹乱か?だが、大西洋連邦内での電波撹乱がなされていない、何故だ…。

 

《2日後》

 

やっと確認がとれた、国内の廃棄予定の原子炉での核分裂反応が止まっているという。

まさか、核分裂を抑制する何かを地球全土に投下した?

では…、不味いことになる。急ぎ救援物資特に暖をとるのに必要なものと、小型核融合炉を運搬して被災地に支援しなくては、手遅れになる。

 

先人の知恵は偉大だまだ海底ケーブルが残っていて良かった。軌道上から次々と資材が、大洋州のカーペンタリアに集結している。奴ら基地を作るつもりか。

太平洋艦隊が直ちに迎撃に向かったようだ、勝てれば良いが…。

 

 

《10日後以降》

 

各国に対する支援を開始したが、既に餓死者が出始めている。僕が直接来たこの町でも、食料が尽きて2日は経過している。だが、まだ良かったこれならば救うことが出来る。

 

だが、プラントにとって正に好機であろうから、きっとこの隙を狙って攻撃されれば僕らは無力だ…。

大西洋連邦だけでも、何とか互角に戦うことは出来るだろうが、それでも情勢としては良いものじゃない。

 

闘いを有利に進めるには味方を多く作らなければならないなら、手始めに大型核融合炉の建設を呼び掛けようか?南アメリカに。断れば、戦争だね。

 

 

~リディア~

 

出撃命令はまだなのか?軌道上に敵が、出現したというのに、情けない。まだ私たちは月にいる。

奴らが地球に何かを射出しているのを、ただ見ているだけだった。

 

艦隊の準備は既に整っていたのだが、これが派閥争いという奴か、月は反ブルーコスモスの者たちだから私たちは嫌われている。だからこそ、出撃命令が出されない。

今こそ絶好の機会なのに、敵はMSを地上に降ろしている。

 

これじゃあ月の艦隊は、ザフトの手助けをしているみたいだ。

こちらが少しだけでも良いから、動く素振りを見せればこうもならなかったのに…。

 

 

《4月14日》

 

プトレマイオス基地の艦隊が何やら計画を企てているらしい。正直な話、NジャマーとM粒子の影響で、お世辞にも意志決定が統一されているとは言い難い。

個々の基地が、それぞれ独自に動き始めているのだから、このままでは各個撃破されるだろう。

 

5~6艦隊は、恐らくプラントの資源確保地であるヤキンに向かったと推定されている。

敵の継戦能力を削ぐのが目的だろうが、相手は資源衛星と言えど、小惑星である。通常のビーム兵器や核等では傷着けども、破壊するのは不可能だ。

 

それこそ、ゼダンの門とアクシズの接触のような大質量同士の衝突がなければ、話にならない。

ただの要塞を落とすのにすら3倍以上の兵力が、必要なのに、型落ちの兵器で相手をしたら大損害になる。

 

『?どうした、司令官が私に話があると?わかった、直ぐに行く。』

 

いったい何の話があるのか…、出撃か?はたまた何かの辞令か、外部との連絡が途絶していることをとれたのか?

 

 

《司令室》

 

『パヴリチェンコ大尉入ります!』

 

入れば、椅子に座った司令が真っ直ぐにこちらを見ていた。

 

「パヴリチェンコ大尉、君に吉報だ。先日の戦闘の折り、君は敵艦6隻、MS18機を落とす戦果を上げた。それが評価されてね、君は今日から少佐となる。拝命してくれるかな?」

 

拒否するつもりは無いが、私が少佐か…。記憶の彼の階級よりも、上になってしまったな。

これで、デスクワークが増えるのか?はたまた、戦時での部隊運用を任されるのか、

 

『謹んで拝命いたします。ところで、今後の艦隊の運用はどのようにするのですか?』

 

「おお、そうだな君には参謀として参加して貰いたい。どうも、MAの戦術運用は君が最も優秀だと聞いている。是非とも参加してほしい。それによっては、艦隊の運用も変わってくるだろう。」

 

私が望むように動かせるかはともかく、これで記憶の中の仮面の男。奴と同じ目線で、物事を語ることが出来るようになった。奴ならばどうするか、それを参考にさせて貰うとするよ。

 

 

 

~マイケル 4月23日~

 

プトレマイオスから艦隊が出ていってから10日になろうとしていた。だが、やっと返ってきたようだ。残存数は、大分減ったなぁ、だいたい4分の1くらいになっちゃってるよ。

 

あーぁ、せっかくMA改良したのに運用方法をきちんとしないからこうなる。

えっ?設計計画出したの一月くらい前だって?いやいや、現地で改良くらい出来るように、俺が再設計しているんだ、文句は有るまい?

 

何にせよだ、こうまでして戦果をあげたいものなのだろうか?まずは情報収集が先決だろう。

戦闘はその後でも充分可能だ、実験艦隊なら解らなくもないが、旧式装備ではなぁ。

 

せめてM粒子散布してからの遠距離戦して、逃げてを繰り返す。そんなチキンな事が一番リスクが少なくて確実だろぅ?

 

さて、じゃあ戻ってきた奴をさっさと片して、俺の目的である、MSの宇宙での試験をするためにも地球連合の艦隊には、頑張って貰わねばなぁ。

これじゃあまともに、宇宙に上げることすらままならないからな!

 

『おーい、整備士諸君。良いか?よーく聞いてほしいことがある、この一月の間地球では未曾有の大災害が、おきている。

それは、人災と呼ぶものだ。プラントによるNジャマーの散布により核分裂炉は停止し、電力供給は止まり、世界で餓死者や凍死者が出る始末だ。

われわれはこれを許して良いのか、否、断じて否である

そこで、我々は整備しつつ。最善の努力を行う。少しずつ、MAの性能を向上するその方法を皆に伝授する!』

 

少しでも、打ち上げられるように何とかして宇宙で開発が行えるように。

 

 

 

~コゼット~

4月30日

 

地球は大西洋連邦は、大丈夫だろうか…。母は、妹は、大丈夫だろうか…。

ヘリオポリスにその被害状況が知らされたのは、未だ最近の話。

 

戦争の影響か、情報の伝達速度が余りにも遅く、この中でも大西洋連邦の被害の知らせが一向に来ない。

来ないと言うことは、余りにも酷い事になっているのではないだろうか。最近はその事で頭がいっぱいで夜も眠れない。

 

だけど今日もカレッジのカトウ教授に、駆動系とOSのマッチングテストに呼ばれる。

私が創った二足歩行機の実働試験だ、人間の倍の大きさはあるけどきちんと動くかどうかは、未だに未知数。

 

揺ったりとだけど、しっかり地に足が着いてる。腕の良いプログラマーが、OSを描いたんだろうなぁ。私が思った通りに動いてくれてる。

 

横目でチラッとその人を見る。キラ・ヤマト君、オーブ出身でコーディネイター。その解析技術は他の追従を許さない、と形容できる人。

 

そんな彼が私の歩行機のOSを創った、今はそんな事考えてる場合じゃないけど。

 

「大丈夫?」

 

彼が話しかけてくるなんて珍しい、引っ込み思案で決して積極的ではない彼がなんて

 

『大丈夫、ただ少しだけ家族の事が心配なだけだから。』

 

彼は凄く優しい、それはもう甘いんじゃないかってくらい優しい。

同じようで違う道に進んでいるけど、それでも共に行く仲間。正直心配してくれて、嬉しい。

 

「コゼットって確か、大西洋連邦の出だったよね?もしかして、大西洋連邦からの連絡が一切無いから心配してるの?

たぶんだけど、心配しなくて良いと思うよ。」

 

『何故?』

 

他人事だと思ってる?

 

「いや、あの掲示板を少しだけ閲覧したんだけど、大西洋連邦っていまだ被害が無いんだって。だから連絡が来ないんだよ。それに、心配しすぎて、君が体調不良になったら僕の仕事が増えちゃうからね。」

 

掲示板か…。あの人は話し半分本音半分で聞いておけ、なんて言ってた場所か…。

もしそれが本当なら、私は良かったと思わなきゃね。

 

こんなにしょげてちゃ、私じゃないから。

 

『ありがとう。心配してくれて、じゃあお言葉に甘えて、ここからOSとハードの相違点を煮詰めましょうか?キラ君。』

 

あの人はきっと元気だろうな、今どこで何をやってるか知らないけど。何があっても死なないだろうから。

 




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第17話 拡大する戦火、始まらぬ打ち上げ、試作ガンダム開発スタート

いつも誤字報告ありがとうございます!


CE70年5月~7月


度重なる戦災により、国力を急速に衰えさせた地球連合は大西洋連邦以外の国は、ザフトとの継戦能力が低下していた。

そこへアズラエルが、支援を行いその他の国は驚愕した。

 

核融合炉がある!しかもあんなに小さく、大出力で何より大量に!

そう、大西洋連邦が核融合炉の開発に成功したことを初めて世界は知ったのだ。

 

それと同時刻、プラントでもその事は波紋を呼んだ。本来の計画では大西洋連邦ほど、核依存度が高い国は存在しなかったため、最重要目標であった。

だが、蓋を開ければ自分達の望んでいない結果に、頭を抱えさせた。これでは核廃棄物の処分を容易にしただけではないか、なんとも残念そうである。

プラントはそう理解したが、現実彼等は絶望しなければならない。

大西洋連邦、それは嘗てチートと呼ばれた国が前身となった国。故にそのおぞましい力が、解き放たれると知るとき絶望を味わうだろう。

 

 

~マイケル~

5月10日

 

ふぃ~、お久。さぁて、プトレマイオス基地から出てまた地球へと戻って参りました。

なんと、地球にNジャマーが投下されたそうじゃありませんか。本当にコーディネイターって奴はアホなのかねぇ。

そんな事やったら中立国まで敵に回っちゃうぞ!

 

そんな事も解らない奴らには、負けたくないんだよなぁ。そのためにも、MSしっかり開発していきたいと思います!

 

いんやぁ皆心配かけたね、今はNジャマーの解析してるだったっけ?

どうよ、中性子の衝突による連鎖反応を抑制する微細な粒子が確認できると。

 

核融合炉には、関係ないな。それに、たったこれだけで核兵器を抑止できるとは浅はかな考えよのぉ。

何でかって?核兵器とは核分裂のエネルギーに非ず、物質の消滅によるエネルギー変換こそが、この兵器の心臓よ。

 

故に核融合炉を兵器に転換すれば、核分裂を使用しない核融合による核兵器が作成可能となる。

ま、創りたくないけど。

 

そんな事より、MSよMS宇宙空間にいる間なにもしていなかったと思うだろぅ?実はね、宇宙の慣性や無重力空間でのモーターの駆動。

それから、MSジンの動きをこの眼でしかと焼き付けてきた。

 

そうするとさ、概略だけどもOSの形式が見えてくるんだなあ。如何にもコーディネイターらしい未完成品を、よく作る。あんなもの、兵器でも何でもない。言うなれば珍兵器『パンジャンドラム』に類するものだと知れ!

扱いきれないものほど、おぞましいものはない。

 

だから、決めた。宇宙のデータは録った、打ち上げは延期。なら自分達で戦艦造って、宇宙に上げれば良いじゃないか!と言ったら却下されたけど…。そこ!笑わない。

 

だけども、アズラエルから良い連絡があった。最近出来た連合内部で、MS開発をしている連中がいると言う話。

名前はハルバートンだったか?奴らのプロジェクトに一枚噛む、と言う。

 

やっぱり金は偉大だなぁ!どんな派閥があろうとも、札束ビンタ(クレジット)でどんな問題も解決!しちゃうんだから。

 

 

5月29日

 

また連絡か、今月に入って10回だぞ!

 

 

『もしもし、何か?

飛行MSへの対処?その為の新たな機体の設計?そんなものは、簡単だ。それよりもだ、君たちは大切な事を忘れている。人形の物体が、航空機より高空を飛べると思うかね?つまりはそう言うことだ、私に聞くよりも先ずは、戦術から見直したまへ。

 

それでも駄目なら仕方がない、新機体の案はあるからそれをデータで送信する。君たちがそれをどう使うか、見物だよ。』

 

まったく、人にすがれば何かが出ると思ってやがる。こっちはMSの開発で忙しいの!

やっとフレームの部分が完成するよ、その後は組み立てて、調整それでフレームが出来たら、装甲の取り付けだ。

 

みそは装甲だ、如何にしてフレームに干渉しないで取り付けられるかが、MSの機動力を試すものとなる。

兵器も順調にできあがってきてるぞぉ!

 

人間の使用するバズーカを参考に、対艦対物用に開発され次弾装填を可能にしたクレイバズーカ。

 

貫徹能力を遺憾なく発揮し、遠距離からの物理的攻撃を可能にするリニアガンタンクのそれをモデルに、対物ライフルを元に開発された。

180ミリレールライフル

 

そして、100ミリマシンライフルだ。

 

ここまででお気付きの方もいるだろう、そう。

実弾だらけじゃね?

と、エネルギーcap技術が難しいんだなぁこれが。

 

テム・レイの様にはいかないね、ありゃ完全にスパロボの博士だ。流石はスパロボ全盛期に、出て来たリアルロボットの開発者、スパロボじみてるぜ。

 

10年たったのに未だに、到達できないとは情けない。だけども、俺の技術は0087並だぜもっともサイコミュにリソース振ってないから、そこんとこは勘弁な。

 

 

 

6月上旬

 

ウーム、ザク並みのジェネレーターの量産が可能となっているから、アッガイでも創ろうか?

何やら連合が海で大敗したそうで、どうも艦底から攻撃されたと。しかも水陸両用MSで…。

 

だから、簡易的な対応処置としてMAW-01 ミストラルの水中用とも取れるものの青写真を送った。

要はフィッシュアイだ、拠点防衛用とか。艦艇防御用ならある程度使えるだろう。

元々作業ポッドとして創られてるから、改造は簡単さ。

 

だけど、それだけじゃあ対抗出来ない。

それに、水中MSに汎用機が勝てるかと言えば微妙だからな。だからアッガイを創ろうかと思ったわけだ。

 

幸いなことに、水中用のOSは有るんだよなぁ。

良し!黙って何機か作ってしまおう、エネルギーcapが進まなくてイライラしていたんだ!

ここは、どーんとアッガイを創って眼の保養としよう!

 

うん?また電話か、

 

『何だ…そうかわかった7月下旬に…なる程そうか。』

 

まぢかいな、MS開発が統合されてハルバートンと協力の元に開発してくれと、7月の本会議に持ち出されるってさ。技術…盗まれなきゃ良いがなぁ…。

 

 

 

~リディア~

 

5月26日

 

私は私が率いることとなった、一個大隊規模のメビウス隊を随伴させ、プトレマイオス基地へと着任した。

プトレマイオス基地は現在、ザフトとの戦闘の最前線。

最もMAの損耗激しい激戦区の一つである。

 

ここへ配属されたのは、つい最近の事。余りにも消耗激しいお陰で、頻繁に乗員の入れ換えが行われている。

飛行時間のオーバーをした場合、ペナルティで一週間の飛行禁止となる。

 

数少ないMAパイロットたちを懇切丁寧に、護る。それが連合の方針のようだ。

なんせ、艦艇はMSに対して余りにも無力。

致し方なく、こうやってMAがでばって戦線をはっている。

 

「おい、久し振りだな!パヴリチェンコ!」

 

『これはこれはムウか、まさかこんなところで会うなんて、奇遇だな。なんてな、大方お前も補充要員でここに配属されたんだろ?』

 

一見軽そうに見えて、情に厚い男ムウ・ラ・フラガ(現在中尉)

 

「そういうお前こそだろ?それよりもだ、お前最近悪い噂を聞くぞ?なんでも、ブルーコスモスに所属する、エースパイロットだって、反コスモス派の連中が噂する程度には。」

 

なんだ、そんな事か。

 

『そんな事百も承知さ、それよりこの基地を案内してくれよ。レディを先導するのが、ジェントルマンなんだろ?』

 

「仰せのままに女王陛下。」

 

そんな冗談を言いつつも、一時の平和を楽しんだ。

 

 

6月2日

 

グリマルディ戦線の一つエンデュミオンクレーター採掘場を巡る戦いが行われた。

私はその日で10人の部下を失い、12機のMSを破壊し3隻の艦艇を撃沈した。

 

目の前で逃げ惑うMA、それを追うMS達…。それを狩る私。

目の前の光景は現実で、私はそれを形にする。

一機また一機とMSを行動不能にして行く、そのうちに敵艦隊のど真ん中に出現し、直掩と交戦しつつ敵艦をリニアガンで貫いた。

 

そこに、感情の起伏は無く。有るのは、断末魔をあげるもの達の思念。私はそれを振り払い闘いを続けた。

 

 

その後7月に入り私は、試作MSのパイロットを言い渡される。

 

 

 

~ムウ・ラ・フラガ~

 

あいつと初めてあったのは、士官候補生時代。そのときの俺は、まだまだ親父の影に囚われながらその日その日を過ごしていた。

 

パイロットとしての腕ならば誰にも負けない、例え親父にも、そんな自信を彼女はへし折った。

その動きは、人間を辞めてるとさえ言われ教官はそれに対して匙を投げた。

彼女は戦術の面も優秀で、同期として首席で卒業した。

 

そんな彼女と戦線を初めて共にしたのは、エンデュミオンの戦いだった。

演習では、相見えることの無かった彼女との初飛行。それは非常に多くの犠牲を払った上での、見物だった。

 

味方が次々と落とされていく、それは俺も例外ではなかった。必死の抵抗、先輩や手練れが縦横を駆け巡ろうとするも、予測射撃で落とされる。

 

直線的な動きをするMAはMSとの戦闘では、余りにも不利だ。絶望のなか、そこで一際輝く純白の機体。

流星の如く駆け巡るその機体に味方は鼓舞され、崩れかけた戦線は持ち直す。

 

1対1であった戦いは3対1となり、戦いは膠着状態に陥った。サイクロプスの起動時間はとうに過ぎ去り、そしてプトレマイオスからの援軍の到着により、ザフトは撤退していった。

 

この戦いは後に語られる戦い。俺はMSを6機落とす戦果をあげ大尉に昇格する。

だが、誰もこれを誇らない。所詮局地での勝利、知らぬものだけが、それを取り上げる。

 

俺は英雄に、彼女は女神に…。

 

 

 

~アズラエル~

 

おいおい、ちょっと待ってください。L4コロニー郡があんなことになるなんて、何でだどうして…。

どうしてあんなにも残酷になれるのか、僕には理解できない。

 

報復か?だとしてもやり過ぎだ、だってそうだろ?軍事基地でもなければ、戦略上意味の無いコロニーの破壊。

確かに新星を得るのは解る、だがその過程がこれか。

 

悔しいが、今の僕には力が足りない。だから、根回しをする。これから、プラントへの報復の第一歩G計画とV作戦の立案。

 

軍民の総意を、この計画に託して。後はハルバートン奴がどれだけ僕らに協力してくれるかだ。




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第18話 こんにちは!僕の名前はマイケル!よろしくねマリュー君

CE70年7月~9月


その日ハルバートン率いる開発チームは、あるもの達の出迎えのためにヘリオポリスの港へと集結していた。

秘密裏と言えど、最初の内は物資の動きが忙しなくなり、隠蔽も程々に成功した頃だった。

 

最初彼等は恐怖した。ブルーコスモスが盟主ムルタ・アズラエルが率いる開発チームが合流すると、差別主義者達が来ることに戦々恐々とする開発者達。

 

見てみれば解るだろう、その現れた集団は顔に刺青を入れていたり、筋肉達磨だったり傷をおっていたりする所謂荒くれもののような連中ばかり、どう見ても研究者じゃない、どちらかと言えばマフィアだ。

 

そんなもの達との初めての対談に戸惑う者たち、そんな事を露とも知らずに、少しずつ港から去っていく荒くれども。それは正に異界との接触だった。

 

~マリュー・ラミアス~

 

私たちのG計画に、ブルーコスモスの技術者達が参画することになった。

彼等は私たちが到着した10日後に、ここヘリオポリスへと入港した。

 

皆、彼等の事を良いように思わなかった、ブルーコスモス。反コーディネイターの首領であり旗印となった組織。

そんな者たちに与している者たちは、いったいどんな顔をしているのか、皆気になった。

 

彼等が降り立った時に、私たちは息を飲んだ。どう見ても、学者や技術者に見えない人々、にもかかわらず一人一人が私たちと挨拶を交わすときは、非常に紳士的であまりのギャップに夢ではないかと思えた。

それがファーストコンタクトだった。

 

その見た目とは裏腹に技術は勿論の事、知識も並みの技術者など足元にも及ばない程のエリート集団。

それが彼等の実態だった。彼等は基本、何かを差別するようなことはしない。

 

どうやら人を蟻かそれくらいにしか思っていない節があるが、それでも差別的な事は例えコーディネイター相手でも行わない。まっとうな人間の集まりだ。

ちょっと外観はあれだけれど。

 

 

そこから数週間経つと徐々に派閥の垣根がなくなっていった。

 

『忙がしいところ悪いんだが、少し良いかい?この艦の事について少し聞きたいことがあるんだが、』

 

ドックの中で話しかけられた。アークエンジェルの建造を急いでいるのだけどそれが気になるらしい。

 

「何か不明な点がありましたか?設計上このMクラフトと融合炉以外の製造はここでやっているのですが、それ以外での質問をお願いします。」

 

禿げ頭で初老の男。一番罪悪無さそうな柔らかい顔の人が告げた。

 

『いや、このミサイル発射管の位置なんだがね?このままだと使えないかも知れないのでね。』

 

どう言うことだろうか?そんな部分を設計し直すのは、無理だ。

 

「言っている意味が解りかねますが。」

 

『いやなに、M粒子の特性が判明する前に設計が始まっていたから仕方ないことだが、M粒子はミサイルの誘導に悪影響を及ぼすからね、最悪明後日の方向へ進んでしまうから。』

 

そんなにも影響を及ぼすのだろうか?俄には信じがたいけど、ジャミングの能力を超えてる。

 

『それだけだよ、ちょうど俺の担当だったからね、少し手直ししたかったんだ。後で設計図を書き換えておくよ。ありがとう』

 

「いえ、こちらこそ不備をご指摘いただきありがとうございます。」

 

好い人たちばかりなのだろうな…。

 

 

~マイケル~

 

7月30日

ここが、ヘリオポリスか…。よし、早速あの娘にあいに行こう!

うん?なんだね君たちは、俺の前に立ちはだかって。

何々?そんな事はさせない?青春を護るために!だって?上等じゃねぇか、表へ出ろ!ギタギタにしてやる。

 

そんなことしたらアイナに言いつけるって?それだけは止めてくれよ、彼女を怒らせるのだけはごめんだ。解ったから、な。

あーあせっかく会えると思ったのになぁ。

 

 

 

8月23日

 

オッホ、良い具合に進んでますねぇ、こちらの機体はまだまだ未完成品だけど、OSはこっちのを搭載したから、素人でも動かせる。地上戦用だけど。

 

潤沢な資金の元開発すると、非常にやりやすい。なんせ、部品を1から自分達で創らなくてすむんだ。こんなに楽な事はない。

 

そんでもって、こっちのはこっちで俺たちはMSを創ってる。向こうはこっちのデータを移植して、彼女の機体とすれば良い。

 

こっちは一般兵が使用できるように関節部分の摩擦もそれなりに、OSも一般用だ。

ちょっとだけ手を加えてNTモードと言うものを、いれてみたんだが、これでもしパイロットがNTならこっちに切り替えられるように、所謂リミッターの解除だな。

 

ストライクの外観が定まってきている、俺の開発した2号機も着々と姿を表してきている。

もう慣れたものだな、一号機を実際に形にするにはどれほどの期間を要したことか。

 

ビームライフルにしても、どうやら機体の方からエネルギーを供給して射出する所謂荷電粒子砲タイプか。

それなら創りやすいのかな?地上じゃ射程が短くなっちまうが、今はしょうがない。

本当、物質の縮退ってどんだけ圧力増やせば良いんだか。一応これで、RX70ー2の設計は完了か…。

 

よし、久し振りに外に出ようここ一月トレーニングルームと設計室とドックを言ったり来たりだったからな、少しは外の空気を(まあコロニー内だけど)吸いに行くか。決してあの娘に、会いに行くんじゃないぞ、決してだ。

 

 

 

~キラ・ヤマト~

 

はぁ、今日も教授の手伝いをお願いされちゃったよ。ちょっとは断りたいんだけど、僕もそれを断れないのも悪いんだけどそれにしてもこれで、給料も出ないって言われるんだから。

これ多分お金取れるんじゃないかなぁ。

 

「お~いキラ、どうしたんだよそんな陰気臭い顔して。」

 

『カズイ、いやまた教授から研究資料を押し付けられちゃって、誰か手伝ってくれないかなって。』

 

そんな相談をしながら、カレッジからマーケットの方へと車で移動しながら話してたんだ。そうするとさ、なんか異様な人だかりが目について、僕らはそれが気になって見に行ってしまった。

 

「おいおい、何なんだ?」

 

『サイ、ちょっと強引に行くのは良くないよ。』

 

「大丈夫だって」

 

ぐいぐい奥へと進んでいくと、そこには筋肉があった。それは筋肉と呼ぶには余りにも肥大していた、大きく分厚く黒光りする正しく鋼の肉体であった。

 

皆一様にすげぇ~と言っちゃった。

色々なポーズをリズムに乗せて披露していく、そうする内に、音楽は止んでそして拍手がそれを纏った。

 

「ありがとう!ありがとう!これで御披露目は終わりだ、私に付き合ってくれた皆様に感謝を!」

 

凄い人だよ、おんなじ人間とは思えない。

群がっていた人たちはすぐに霧散していったけど、僕らは好奇心旺盛だった。

 

「すいません、お名前を伺っても良いですか?」

 

揺ったりとこちらに首を向けた、なんか怖そうな人だ。

 

「なんだい?何か用かな?」

 

「そのぉ、その肉体はどうやったら手に入るのかなって…。」

 

少し考えたあと言った。

 

「私の職業を当てたら教えてあげよう!」

 

この人の肉体を見たあとだと、ボディービルダーくらいしか思い付かないよ。

 

「解らないだろ?では、そろそろ時間がないので失礼するよ。」

 

行っちゃった。いったい何の仕事をしている人なんだろうか?絶対に技術者とか、研究者じゃ無いんだろうなぁ。

 

 

 

~オーバールック・研究所~

 

9月2日

 

MS試作一号機の宇宙用OSの暫定的開発が終了する。それにより現在まで凍結されていた、テストパイロットによる機体の耐久試験を行うことを決定する。

 

これによって現在研究所にあるMSをプトレマイオス基地へと移送を開始する旨を、現代表であるムルタ・アズラエル氏に意見具申をする。

 

テストパイロット、リディア・パヴリチェンコ氏へのMSの譲渡による、月面の勢力確保も検討することとし、現状打破を目的とする。

 

機体の打ち上げ日は、11月とし現在建造終了した艦艇と、信頼性の向上したミノフスキークラフトによる打ち上げを行う。

 




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試作一号機の設定を資料の最下層に追加しました。


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第19話 月面の勝利と、地上の膠着。それは3倍の速度であった。


補足、この世界の大西洋連邦は南アメリカに侵攻しておりません。

CE70年9月~11月


 

9月の下旬ごろからザフトによる地上侵攻作戦は、緩やかに停滞していった。その背景には補給線が延びきっていること、人口に対する敷地面積のあまりの広さ。

戦線が手薄になり、侵攻している筈がいつの間にか包囲網をしかれていたりと言った、戦術に対する理解の幼稚さによって被害が大きくなっている。

 

これを打開するために、新規の地形に対応したMSの投入といった事を行うも、既にそれだけでの打開は不可能となっており、正しく焼け石に水と言った具合である。

 

そこに来て、大西洋連邦が本腰を入れて各地に支援を行い始めたため、最早戦線を押し上げることも叶わず、せめて戦線を維持することによって、交渉の席に連合をつかせようとした。

 

その為にも月面の連合軍の撃滅は必要事項となり、宇宙での足掛かりを無くした連合は、必ず交渉の席に付く。

エンデュミオンクレーターでの戦いに敗北したザフトは、戦力を建て直し再び資源地帯エンデュミオンへと、進撃を開始する。

 

一方その頃地球軍の月基地であるプトレマイオスでは、地上の極秘研究所から送られてきた、新造のMS搭載用強襲揚陸艦(グレイファントム)と一機の新造のMSを受領し、それをもとに対MS戦術とMSの運用を確立していった。

 

 

~フラガ~

 

 

10月上旬

 

俺たちの基地に入ってきた艦は、従来の艦よりもMAやMSの運用に適したように思えた。艦自体の大きさはそれなりに、砲門数を少なめにした辺り揚陸艦と言うのは妙にしっくり来るものだ。

 

ペガサスと言うの名称の通りというよりは、トロイの木馬とでも言うべきか?そんな格好をしてる。

一緒に来たMSは無人のままに、ここで整備を受けつつOSの開発に役立てるんだと。

 

おや?MSの近くに我等の女神様が、おいでなすった。

『お~い、パヴリチェンコ少佐、お元気でありますか?』

 

「うん?ムウか、どうした?母艦からの発艦の練習でもしていたんじゃないのか?」

 

おっと、そこら辺はさぼっちゃいない。抜かり無くね。

 

『それは、終わったよ。それよりも、何でお前がこの機体のすぐ近くにいるんだ?まさか、こいつに乗ろうって言うんじゃないだろうな?』

 

「その通りだ、私はこいつのパイロットに選ばれた。と言うよりも、こいつのOSは私用に作られたようなものだから、私しか乗れない。」

 

それはまずいな、兵器としては欠陥品だろ。まあメビウス・ゼロもそんなもんだから人の事は言えないが…。

それよりも

 

『本当に操縦できるのか?いくらお前でも、流石にMSを操縦するのは苦労すると思うんだが。それと、お前の好きな色じゃないじゃないの。』

 

「心配するな、慣れてる。こいつを造る前に散々テストパイロットをやらされてるからな、似たようなものだ。色は別にこだわりはない、目立つなら目立つで囮になれるからな、それで良いのさ。」

 

そりゃ失敬、だが心配だよ。連中はまだ諦めちゃいないからな、早い内に覚えてくれよ。女神様がいなけりゃ俺たちゃ壊滅しちまうからな。

おいおい、そこは笑ってくれよ。

 

 

11月下旬《エンデュミオンクレーター》

 

おいおい、すげぇ数だな。

列機遅れをとるなよ!おい、新人君確りとケツを見て戦え、お前は逃げ回ってりゃ良いからな。生き残れば経験積んで、少しずつ戦えるようになるからな、少しでも敵を引き付けてくれ。

 

よし、ムウ・ラ・フラガ、メビウス・ゼロ出るぞ!

宇宙をかける彗星のように、メビウスが母艦を離れ敵へと向かっていく。

 

俺の後ろを中隊が飛び、隊列を組んで進んでいく。

今回の戦闘はここの決戦とでも言えるものだ、どちらかが倒れるまで続く消耗戦。

数の上ではこっちが有利だが、それでも油断なんて出来やしない。

 

独立機動艦隊が、アウトレンジから主砲を乱射してる。それに紛れてこっちが、ザフトのやりたかった奇襲を仕掛けるが察知されてるな。

 

各隊遅れをとるなよ、散開して連携を取れ3対1なら充分やれる。チッなんだこの感覚は、親父?いや、あの機体からか何もんだ?

 

その機体は他のMSとは、かけ離れた動きをしていた鋭い動きではない、悠然とした余裕のある動き。まるで、リディアを相手してるみたいだな!

だけどな、こっちは散々殺られてるんだそんな動きじゃ、俺は停められないぜ!

 

各機が、編隊を組んでMSを翻弄していく中、フラガは一人白い機体の前に立ち塞がる、それは必然なのか因縁の始まりはここであった。

 

MSが銃を構えれば、射線から機体を反らしてギリギリでかわすと、お返しとばかりにガンバレルを展開して四方からの攻撃をするが、察知していたとばかりによける。

 

一進一退の攻防、その均衡は直ぐに崩れた。MSが撤退を始めたのだ、その日地球軍は完全な勝利を手に入れた。

今までの戦闘と違い損害比率は五分となった、単に精鋭揃いであったからこそだろう。

 

~ザフト艦隊旗艦~

 

フラガ率いるMA隊がクルーゼ率いるMS隊と交戦しているとき、ザフトの艦隊は何かに狙われていた。

 

「なに?白いMAがいない?どう言うことだ、奴は必ず月艦隊と共に出てくる筈だそれがいないだと?何かの間違いじゃないのか?」

 

「それが、誰も見ていないのだそうです。これじゃあまるで、何かの策に嵌まっているみたいだ…周囲の警戒を強めましょう!」

 

「解ってる、だが敵の艦隊からの砲撃もあるんだ。そうそう巻き沿えになるような戦いかたはしない筈だ。」

 

『高熱源体艦隊に接近中!速い、MAじゃないこんな動きはMSじゃないと、ジンの数倍の速度で接近中!』

 

その時、一条の光がナスカ級の艦橋を主砲をエンジンを貫き瞬間火球に包まれる。

 

「いったいなんだ!」

 

『敵機を捕捉!これは、MSです!こんなの見たことない!』

 

そして、また一隻火球に包まれる。

 

「直掩何をやっている!早く迎撃を開始しろ!」

 

一挙に20機ものジンが迎え撃つように躍り出る。

だが…あるものはビーム兵器で、あるものは赤く光るビーム状のサーベルで、あるものはコックピットを潰されて、断末魔を上げることも出来ずに落とされていく。

 

「嘘だろ、20機のジンが3分ももたないだと!クルーゼに通達しろ!全機反転し、戦線を離脱、艦隊と合流後速やかに撤退を開始する、このままでは全艦損失すると!っ!」

 

目の前にMS、赤い色と白い色をしたMSがライフルを向けていた。そこから放たれた光がゆっくりと、艦橋に到達し痛みのない死を実感する。

 

その日ザフトの艦隊は大敗北を喫した、進化したMAの戦術と遠距離能力の向上した全ての地球軍艦艇、そしてたった一機のMSによって…。

 

これによりザフトの月面での勢力圏は事実上崩壊し、月は地球軍の独壇場となった。

 

 

 

~アズラエル~

 

10月22日

今日はなんとプラントの連中から話し合いをしたい、とか言い出したので、会議に出席する事になりました。

奴等からすれば、僕は忌むべき相手だろう。でもね、僕から言わしてもらえば君らの方こそ犯罪を犯していることを知れと、そう言いたい。

 

厚顔無恥にも、奴等は飢餓が起こり始めている地球を支援すると言い放つ、ふざけるんじゃない。

お前たちが原因を作り出しておいて上から目線とは、本当に新人類(笑)は考えることが素晴らしいね!

 

確かに僕自身こんな戦争早急に終わらせたいよ、儲かりもしないただ消耗していくだけの果てしないマラソンだからね。

でもね、その程度じゃ戦争は終わるものじゃないのを解っていないねぇ。

 

人間って言うのは理性だけで生きてるんじゃない、感情あっての理性だそれを忘れているよ。

僕が止めようとも家族を犠牲にされた者たちは、君たちを宇宙からひきずひおろして、ズタズタに引き裂いても彼らは止まらないのにね。

さっきからプラント側は、熱心に講和を主張していますが、いい加減耳障りの良い話にも飽きてきましたよ。

 

『少しよろしいですか?私、現在大西洋連邦で軍の財政を担当させていただいております、ムルタ・アズラエルと申します。

貴殿方には、ブルーコスモスの盟主としての名前が印象的だと思いますが、一つ質問があります。

貴殿方は以前L4宙域において戦闘を行いましたが、その時民間人に多数の死者が出たことをご存じですか?』

 

その言葉に向こうは少し、顔をしかめた。何を言いたいのか察したのでしょう。

 

『それと、4月のあの日貴殿方が投下したNJによってどれ程の被害が出ているのか、ご存じですか?勿論知っていますよね?当然中立国にも少なくない死者が出ていることも。

何を言いたいのかと言いますと、要するに我々は貴殿方と講和を行うつもりは一切ないということです。この意味お分かりになりますか?』

 

「ですが、それでは我々だけではなく中立国にも被害が拡大するのでは無いのですか?だからこその講和なのですよ?それを蹴ると?」

 

解らないようですので、声を大にして言いましょうか。

 

『我々は貴殿方のような法を無視する集団とは一切交渉するつもりはありません、これは中立国自身が望んでいることです。残念ながら彼らは貴殿方に対抗する力がない、故に我々が変わりに戦うのですよ。もう既に地球圏に、貴殿方の味方はいませんよ?』

 

 

その日会談は終幕した。講和は頓挫させ、戦争は続きます。

 

 

11月上旬

 

もしもし、どうしました?南アメリカ合衆国がプラントに対して宣戦を布告しましたか、工作は順調のようですね。

いえ、こちらの話です。

それで、MS量産の件ですがやはり量産するまで後数ヵ月はかかりますか、仕方ありませんねでは引き続きメビウス等の生産ラインを維持しつつ徐々に変更をお願いしますね。

 

ふう、一段落ですね。研究所で建造されたMSとその母艦が月に到着するまでひやひやしましたよ。

それにしても、MSがこんなにも早く造れるとは、まだまだこの国自体の生産力は侮れませんね。

 

量産機、設計図はありますが未だにラインが整いませんね、少しずつ進めるとしてもいつになることやら。

こんなことでは戦争に勝てません、もっと私も発破をかけていきますか。おっとっと、最近良く寝ていないのでしょうがないですね。

 

 

 

~シーゲル~

 

11月末日

 

「なんたることか!地上での膠着状態の上に、今度は月面での敗退だと!ザフトはいったい何の為にあるのか!挙げ句の果てに、ナチュラルどものMSが出現しただと?ふざけるのも良い加減にしろ!」

 

パトリックが吠えている、吠えても現状を変えることなど不可能なのだがな我々はいったい何を見誤ったのか。

 

かつて順調だった侵攻は、大西洋連邦が無傷であったことにより既に膠着状態。中立国が徐々に減っていくまである、それもこれも大西洋連邦が裏から支援を行っているからだろう。

そのせいか、会談を一蹴りされた。

 

それどころか、月面でのこの敗北。そしてその原因となったMS。連合のMSか配られた資料に目を通すが、それは余りにも現実味の無いものだった。

 

 

 

『ユーリ、この資料にあるMSは実際にこのような性能なのかね?だとすれば、ジンは最早一戦級の戦いは期待できないのか?』

 

ロボット工学の権威ユーリ・アマルフィ彼が私の問いに答えた。

 

「あくまでも半分は予想です、しかしこの予想には重大な欠陥があることを考慮していただきたい。検証はテッドに依頼したが、この数値は異常なものであると言えます。まず、確実に人間が操縦出来ない代物ですので。」

 

周囲がざわめいた、だが同時にそれが敵にいるのは事実だ。

 

『だが、現実あれは存在している。パイロットは、確認できなかったMAに登場している筈のリディアと言う者だろう。彼女は本当に人間なのだろうか?この数値では、おおよそ操縦できる代物ではないのだろ?』

 

「仮説ですが、恐らくは戦闘用に特化したコーディネイターではないかと、ですがそれでも異様すぎるのは確かです。機体共々、要注意すべきでしょうねですが一機しか見当たらなかった辺り、未だに量産されていないのは明らかです。恐らくは、試作機ではないかと。」

 

こんなこと議論していても進展はないだろうが、だがやらないよりはましだ。何れ対策が出きる筈だ。

 

その時、オーソンが話を振った。

「話の腰を折ってしまってすいませんが良い情報があります、敵の艦隊から発せられる電波妨害の真相が明らかになりました。映像を見てください。」

 

画面に大きく評議されたのは、件の粒子だろう。

 

「これは、連合内での暗号にもあったMという物体の姿です。正直驚きました、こんなものを造り出せるとは夢にも思いません。」

 

『いったいどういう物なのかな?』

 

「簡単に説明しますが、この粒子自体がそもそもの電波妨害の大本です。それも、解析すればするほどこれは、異様なものですよ。」

 

それから彼は話し始めた、これがいかにすさまじくどう言った用途に活用できるのか。万能、そう言っても過言ではないそう言うものが詰まっていた。

 

『では、これが大西洋連邦が言っていた核融合炉の真実か?』

 

「その通りです、そしてこれの技術を我々は手にしなければならない。もしそれが出来なければ、我々は確実に敗北します。」

 

そうか、それに対してパトリックが反論するが直ぐ様言いくるめられた、ああどうしようもない事か。

我々が築いた技術は、この粒子一つで簡単に破壊されてしまう。

 

『パトリック、これに対する諜報を強化するようザフトに呼び掛けてくれ、どうしても必要なのだ。』

 

2つ返事で返答し、我々はそれをもってこの粒子関連施設に対する諜報員の派遣を決定した。

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

また、( ・ω・)∩質問なども受け付けます!何とか回答していきます。


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第20話 最終調整 アークエンジェルよこれで完成だ。さあ、戦いの準備を始めよう

CE70年12月~CE71年1月15日


プラントと地球連合の交渉は見事に決裂し、プラントは窮地に立たされた。膠着状態を打開するため、再び戦争の主導権を握るためにプラントは、藁をもつかむ思いで多くの文書を漁り遂にG計画を発見する。

 

それは、ヘリオポリスで開発中の連合の正式ロールアウトモデルであり、次期量産機のテストベッド達である。それらが完成した後に強奪することを計画し、実行に移すため先の月面での戦闘で殿を務め、見事にそれを果たしたクルーゼにその任務が言い渡される。

 

編成されたクルーゼ隊は強奪任務のために、新規に優秀なもの達赤服と呼ばれるエリート達を編成に組み込み、それを実行するための訓練を開始した。

 

その一方、ヘリオポリスにおいてM研のMS開発チームは、モルゲンレーテの技術者よりも早くMS二号機の開発の終了を宣言した。特殊な機体は大気圏内において、正しく飛行を目的とした機体となり、イージスと対を成す。

 

それが完成間近のアークエンジェルへと運び込まれようとしていた…。

 

 

~マイケル~

 

12月14日

 

『皆今までご苦労だった、先に言っておくが今日で我々が開発したこのMS『ゲイルガンダム』、疾風の如く宇宙や空を駆けることを祈ってここに拍手を贈りたい。

 

さて、諸君らは知っての通りこれから一週間後の定期航路で地球へと帰還することになる。だが、この機体の搬入はまだまだ先だ、だが指定席は既に確保した。モルゲンレーテの連中が搬入するよりも2日早くアークエンジェルへと、移送する。

ダブルブッキングを防ぐことにより、周辺住民の生活へ配慮した政策に向こうも驚いたようだ。

 

諸君らが帰った後も、私が最後までここに残る。一応はプロジェクトのリーダーとして、君らが去った後も色々と纏めなければならない。諸君らは、引き続き地球で各々の研究を再開してもらいたい。質問はあるかな?

 

ないか、それではMSの開発成功をここに祝して乾杯を行う。乾杯!』

 

予約したレストランの中で食事が始まる、一見すればただの会社の集まりだから気にするものはいない。

 

「よおマイク後の事はよろしく頼むよ、それよりもあんたに渡しておきたいものがあるんだが少しいいか?」

 

ダグラス・マクレーン禿げてるこっちよりも少し年下だが、それでもあれほど毛が無くなるとは可哀想に。

 

『なんだ、ジャケットか

ミヾヾリリノノノノ

  彡/ ̄ ̄~ ̄ヽミ

 彡|     |ミ

 彡 >__ii_|ミ

 彡|  ∧ |

 (〈`ー-<_L>-イ

  | ( ――、)| 〈良く俺のサイズに会うものを

 Π\ヽ ⌒ ノノ 見つけてこれたな

 |∥/\__ノ

 | hm\  />、

 |_Lノ<\/> )

 ヽ_人__L_ノ )

 

「へへ、あんたのスリーサイズは知らないけど、あんたの奥さんがあんたに渡してくれと頼まれてたんだよ。礼なら奥さんに言うんだな。それと、これは俺からのプレゼントだ、荷物を偽装するのは苦労したよ。」

 

すると薔薇の花が入ったケースの中からウィンチェスターM1887実に良い趣味してる。

 

『どうやってヘリオポリスに、ここは銃の所持が法で禁じられている筈だが。』

 

「なーに、ちょっとしたテクニックだよ。」

 

護身用には充分だが、装弾数に少し不満が残るな。

 

『ありがとう、大事に使わせてもらうよ。』

 

その日皆酔いつぶれるまで飲み続けた、こいつらがここまで酒を飲むとは思わなかった。俺は体がデカいから酔いが周り辛い、一人だけ起きている。

 

レストランの代金を残らず支払い、自分の部屋へ行く明日からは俺一人細かいことが残っているから、それらの精査が必要だ。

 

 

1月23日

 

おーい、そうだそこに気を付けて運んでくれ、そこ!周囲に注意しろよ。

いやー搬入搬入、やっと終わるよこれで俺も地球に帰れるってもんだ。

だがまてよ、俺は何かを忘れてる気がするんだが、はて何を忘れているのかまあ良いか。

 

最近実はやることが余りないせいか、このヘリオポリスのカレッジの教授とMSに関して馬があってね、色々と話を聞きにくるんだ、開発に対するアドバイスをしてる。勿論機密情報に振れないように丁寧に、既存の技術の応用をね。

 

これだけで創れたら苦労しないだろうが、どうせもう盗んでいるのだろう。

そんでもって、実は今日はカレッジの講師として呼ばれている。未来ある若者達、いったいどういう方向へと進んでいくのか解らぬ可能性に満ちたもの達。

 

 

~コゼット~

 

今日もカトウ教授の授業が始まる、私はハードの担当だからソフトの方へはあまり注力出来ないけど、でも知っているのと知らないのとではやれるものは大分変わってくる。

 

数日前カトウ教授から話を聞いたんだけど、どうやら臨時の講師が今日授業を行うんだそうな、それでサイやカズイ、ミリアリア達も席に着いてる。

 

「今日は皆に紹介したい人がいます、特別講師のマイケル・スパロウ!彼はロボット工学、機械工学、生物工学、流体力学、エネルギー工学等様々な分野で博士号を取得し多種多様な理論の構築等を行い、自らMA等の設計製造までを手掛ける、万能人だ。」

 

『おはよう!紹介いただきました、マイケル・スパロウです。私の事を少し知っているのと言う方もいるでしょう、特にそこに座っている茶髪の少年いや、キラ・ヤマト君以前私に話しかけてくれましたね。』

 

「は、はいその節はどうも」

 

『ただ、そのときは何の職業に着いているか質問したが、これがその答えというわけだ、ハッハッハッ!』

 

何でいるの…どうしてこんなところにあの人がいるの?地球にいるんじゃないの?カトウ教授の友人?何、じゃああいつはモルゲンレーテの仕事を手伝っているとでも言うの?

 

ふざけないで!私が何のためにここまで来たのか、あんたの顔を見ないために来たじゃない!それがどうしてこんなところまで私に付きまとうの?

 

『おやおや、どうやら私の事を良く知っている人物がもう一人いるようだ…。コゼット、久しぶりだないったいいつになったら連絡をくれるんだい?お父さん心配でここに来てしまったよ。』

 

皆が私に注目してる…何かを話さなきゃ駄目な事になってしまった。

 

「お久しぶりですね、どうですか?ママは元気にしてる?解らないよね、だっていつも家に帰らないからこんなところで何してるの?また、余計な事してるんだったらさっさとここから出ていってよ!」

 

本当に何なの?恥ずかしいったらありゃしない、こんな講義受ける必要無い帰る。

 

一人でモルゲンレーテの方へと移動する、ここが私が一番安心する場所わたしのテリトリー。

ここにいると自分が何をしているのか、それがはっきりするだからそれが良い。

 

次の日世界が一変することをこのときの私は知らなかった、父の姿が想い浮かぶほどの出来事が。

 

 

 

~シーゲル~

 

1月20日

 

長く続く会議も今日で一週間か…だがそれでも待ち続ける義務が我々にはあるのだ。

数少ない中立国のオーブの所有物のコロニー、ヘリオポリスそれを攻撃するのだからお偉い我々がここにいないでは話にならない。

 

『それで、G計画の機体の強奪の進捗は?』

 

「だいたい50%と言ったところだろう、なにクルーゼがやるのだ心配はいるまい最もナチュラルどものコロニーがどうなろうと、私には関係ないがな。」

 

言ってくれるな、そのナチュラルがいないでは我々コーディネイターは絶滅する可能性すらあるのだぞ、パトリックお前はいつからそんな破滅を志すものになったのか。

 

「ところでオーソン例のアレの研究結果は出たのか?」

 

「ああ、調べてみたところ類似するものがジョージグレンの手記の中にあった。ミノフスキー粒子と名称の物体が記されていてね、粒子の動きから性質までまるで見たかのように描かれていたよ。」

 

だとするならば、あの時代に既にあるものを連合は何故今になって掘り起こしたのか…。

 

「ミノフスキーと言う人物との交流があったとも記されていてね、ジョージ・グレンの義父であるものと、そのミノフスキーは知人だったそうだ。それで、それ自体の資料が残っていたというわけだ。

最もそれ関連の技術に関して言えば、全力でやったとしても20年はかかる代物ばかりだよ。」

 

この戦争には到底間に合わずか…。そのとき、ユーリが手をあげ答えた。

 

「実物さえあれば、それを解析して量産することは可能だと言う結論は出た。だが、その実物を手に入れるのが難点だ。」

 

『G兵器に搭載されているのを願うばかりかな。』

 

だが、私としては搭載されてほしくないな最悪の場合全機が敵となり我々に襲いかかる。

それどころか量産機にまで搭載されていれば、我々に勝ち目はない。

せめて、成功するのを祈るばかりか…。

 

 

 

~アズラエル~

12月31日

 

まさかこんな日に限って会食会ですか、せっかくの新婚生活が台無しですね。

それもこれも全てプラントと、ジブリールの責任です。

 

『お久しぶりですねジブリール。』

 

「こちらこそ久しぶりですね、アズラエル理事」

 

全く顔色の悪い男だしかも何故いつもワインを片手にもっているのか、いってもワインボトルを持ってきてその場で注ぐだろうに。

 

『用件はなんですか?こちらは家庭の事で忙しいのですがね、貴方は独り身なので私の忙しさを分かっていないようなので。』

 

「それはそれは、腑抜けてしまったかな?それは良い。私は君に聞きたいことがあったのだよ、リディア・パヴリチェンコ少佐彼女は一応はブルーコスモスに所属しているそうだが、彼女にコーディネイターの疑いがあるそうだが?」

 

いったい何処のバカがそんなことを流すのか、内ゲバ程無駄なことも無いと言うのに。

 

『いったい誰が流したのかな?それは僕を陥れる為の嘘だな、彼女はれっきとしたナチュラルだ。

僕が彼女の肩を持つ理由が解るかな?彼女こそ新人類と呼ぶに値するものだろうと僕は考えているんだ。』

 

「自然進化した人類だと?それは、理に叶ってるなブルーコスモスとしても対コーディネイターとしても」

 

まだまだ固執してますね。

 

『僕は儲けられれば何でも良いんです、コーディネイターは癪に障りますがそれでも産まれてきたのはしょうがない、むしろもう増やさないよう恒久に努力する必要があるだけですよ。

新人類が出てきた以上、彼らの役目も終わりです後の一生を工員として働いて頂ければ、僕として満足ですので。』

 

「新人類か、ならば私の派閥は協力しよう実に夢がある。宗教は進化論を否定しない。」

 

 

1月16日

 

カオシュンが攻撃を受けていますか…ですがどうやらかなり持ちこたえていますね、彼らも良くやります。

ジンに対しての戦術が確立していますから、もうザフトに遅れを取ることはありませんね。

 

それにしても、人海戦術はいつの時代も驚異です伊達に人口が多い地域ではありませんね。

ザフトが完全に後手に回っています、これなら持ちこたえるでしょう、彼等なりに頭を使ったわけですか。

 

 

 

~カオシュン~

 

その市街では、ジンと歩兵の壮絶な戦いが繰り広げられていた。

小さな路地や果ては排水溝の中に潜み、何処からともなくジン目掛け対戦車兵器が叩き込まれる。

 

モンロー/ノイマン効果によって引き起こされるメタルジェットが機体の装甲に穴を穿ち、電気系統を切断する。パイロットに対する直接的な被害は無くとも、動きが鈍くなれば成る程攻撃は集中する。

 

あちらこちらで火を噴き倒れ伏す巨人、まともな歩兵が少ないザフトに対人戦闘による制圧は最も苦手とするもの、それが今現実のものとなる。

 

本来の目的である宇宙港の確保は異常な程に難しく、前進を阻む肉壁がそこかしこに展開され、今にも侵攻軍を擂り潰そうと地の理を生かして戦い続ける。

 

そのせいもあってか侵攻は未だに半分にも到達しておらず、補給線が細いザフトには長期戦は不向きだ、余りにも輸送力が足りていない。

 

通商破壊のノウハウが無い、それゆえ潜水艦の本来の戦い方を知らない。

水中で大掛かりな爆発があった、また一隻のボズゴロフ級が沈んだ。

 

音の溢れる潜水艦はただの的、対潜水艦戦闘のエキスパート達(旧海自)が全く音をたてずに狩りを行っていた。

いかに強力なMSを持っていようとも、圧壊深度までは潜れない。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

アンケートの結果ガンダム顔主成分で百式混じりで、量産性がありそうな機体…。

と言う事で、リゼルを大元に顔をZとします。
カラーリングは、ホワイトZと同じです。
名前はゲイル(疾風)ガンダム、イージスと対極敵に空を飛ぶ為の機体。


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CE71年 種を腐らせず道を開け
第21話 始まった時代 I will be back.


CE71年1月


ヘリオポリスのスパイから情報が入った、連合が開発中の新型MSがヘリオポリスで建造中だと言うことが。

それに対してクルーゼの反応は非常に早かった、艦を急速に転舵させヘリオポリスへと向かう。

 

それと同じころパイロット候補生達を乗せた、地球連合の艦艇が秘密裏にヘリオポリスへと入港する。

候補生達は自らが搭乗するMSを今か今かと、そわそわとしながら艦を降りていく。それを護衛のムウ・ラ・フラガは眺めていた。

 

それは悲劇の始まりに過ぎない、平和ボケをして自分たちには関係ないと思うもの達の前に突如としてそれは訪れた。

すなわちそれは、こういう名であった『戦争』と。

 

 

~マイケル~

 

モルゲンレーテ社内のこのだだっ広い敷地にMSが寝たままの状態で野ざらしにされている、正直こんな格好でいればいつ襲われても文句は言えない程だ。

中立コロニーだからこそ、敢えてセキュリティを薄くしてるのだろうがいささかこれはやりすぎだ。

 

搬入作業中のマリュー君が見える

 

『マリュー君、一つ聞きたいこのMSのセキュリティだがこれで全てなのか?』

 

辺りにいるのは開発者チームばかりで、護衛なんかは余りにも少ない何より俺がウィンチェスターを肩から吊り下げ、アサルトカービンを手に持っている時点で人数が足りてない。

 

「いえ、ご指摘の通り充分とは言えない状態です。ですがこのコロニー内部での契約上、これ以上の警備を置く事が出来ないのです。」

 

そう言えばそうだな、大っぴらに出来ないのもそうだが

ここはオーブだったな。

 

『なら出来るだけ多くトラップを仕掛けよう、たった一つでは容易に突破される、特に特務仕様のブリッツあれだけは渡してはならない。

そうだ、なら物理的な側面から対応しようじゃないか。』

 

そこからコックピット内部にある小細工を行った、たった一機のみとなるがそれでもそれは非常に効果が期待できる。最悪の場合、それはとてもよいことに繋がるだろう。

 

それから幾ばくか経過したころコロニー全体に衝撃が走った、ドックの方からの爆発音、事故で起きる爆発ではない狙いすました襲撃の爆発だろう。

 

そうか、そうか今日があの日だったか、なら急いでG兵器の方へ行かねばなるまい。

そして、到着すると既に幾人かやられている、安全装置を解除し煙立ち込める場所から敵を見やる。

 

どうやらパイロットスーツそれも防弾仕様、良い敵じゃないか気持ちが昂るよ。

 

 

 

~コゼット~

 

あの人の講義が続くと聞いたときから今週はカレッジの方へは顔を出さないと決めた。

その次の日私は朝からモルゲンレーテにある、カトウ教授の研究室に赴いた。

中には誰もいない、ごちゃごちゃとした中に整然と機械が並んでるのが私のデスクだ。

 

そこに座って二足歩行するロボットの設計を始める、誰もいないから私のキーボードを叩く音だけが響いていたのた。

 

「こんな朝早くからここに来るなんて、どうしたんだね?」

 

カトウ教授だ。

 

『いえ、私の設計に不備がないか調べていたところです。』

 

それを聞いたらため息をつかれた、いったいなんだと言うんだ。

 

「そんなにお父さんの事が嫌いかね?」

 

『…はい。』

 

手を止めて教授を見ると憐れみをこちらに向けている。

 

「君はお父さんが何を作っているか、知らないだから理解したくない実際そうだろ?彼は君にいつも自分の事を話さないし、家にも帰ってこないだから家族に興味がないと思ってるそうだろ?」

 

私は無言のままそれを聞いていた。

 

「なら、ちょっと一緒に来てくれるかな?君のお父さんの仕事を見せよう、彼が何を創っていたのかそれが解るから。」

 

確かに私は父の仕事を知らなかった、それゆえにこのときの私は何を思ったのか教授に付いていった。

今までこんな内部まで来たこと無かったのに、こんなところに来てしまって良かったのだろうか?後になって後悔するなんて。

 

『教授、ここはいったい何を作っているんですか?』

 

「君達が今作っているもの実寸大のものを見たことがあるかい?無いだろ?モビルスーツそれをここでは造ってるんだ。」

 

MSを建造してる?って

 

『それどういう!貴方カトウ教授じゃない、誰?』

 

「そうですね、エージェントLとでも言いましょうか?地球連合の工作員です。」

 

待ってそれじゃあ、私はどうなるの?急に怖くなってきた。

 

「お前達!いったいここで何をやっている!」

 

声のする方を黒髪の女性士官がこちらへ銃を向けながら走ってくる。

 

「これはこれは、バジルール少尉いえ技術士官が搬入されていた機体に少し改良を加えたいと言うので、艦まで案内しているところです。一応艦長の許可は取ってありますよ?」

 

「お前はいったい誰だ。」

 

背筋を正して敬礼をしている。

 

「私はアーネスト・ボーグ地球軍の諜報員です、ですのでこの名もコードネームと言うことになります。こちらはスパロウ技師です。」

 

「諜報員いったい何故ここにいるのか…いや、そうか確か技術士官の入国に手引きを行ったもの達がいると聞いたが、疑ってすまない。だがその服装では間違う可能性がある。士官服を用意するからそれに着替えてはくれないか?」

 

気が強そうな士官バジルール少尉格好の良い軍人といった人が私たちを先導して私には少尉の軍服が渡された、身長が同じであったことが幸いしたのだろうしかし、胸が少しきつかった。

 

そして、別れて艦内を歩いていた。

 

『あの、艦長の許可って』

 

「嘘だ、ああいう軍人は良いやつが多いが、経験が足りないせいで固いんだ。」

 

そうして格納庫に到着した時、衝撃が体を襲った。

 

 

~とあるザフト兵~

 

へへ、ナチュラルの分際でこんなものを作ろうとは、だけど所詮はナチュラルだ内部での戦闘だと俺たちに手も足も出ていないときた、こんな楽な作戦ならもっと積極的に行くべきだったな。

 

『おい!ニコル早く乗れここは俺が何とかしてるからな、少しでも遅れてみろディアッカ達に笑われるぞ!』

 

「解ってます待っていてください!」

 

ふふ、最早護衛のいない場所に俺が一人いやー実に良い!

 

暫くすると後ろの2機が立ち上がった、なにやらニコルを茶化してるようだ。

 

「もう少しで…?なんだこれは!あぁぁぁぁぁぁ!」

 

『どうしたニコル!何があった!』

 

「何があったか答えてあげよう。」

 

無線に何者かが侵入だと。

 

煙立ち込める中から人間が現れる、後ろには一緒に来た連中が倒れてる。

古くさい弾帯とライフルを肩から掛けて、腕にアサルトカービンを持ったバカデカイ人間!

 

とっさに銃を撃つ、その弾丸は吸い込まれるようにやつの着るジャケットに命中したが、貫通するようには見えない

 

『嘘だろ畜生が!』

 

バンッ!バンッ!バンッ!続けざまに撃つがそれでも貫通しない、ゆっくりと近づいてく頭はパニックだ。

そして弾がつき向こうが反撃を始めた、こっちは物陰に跳びナイフを手に持つ銃声が止んで固いものが地に墜ちる音がした。今だ!

 

跳びかかる、足をはらうが動かないまるで鉄を蹴っているようだ!勢いを殺してはならない、腕をつかみナイフを顔面目掛けジャンプする。それを右腕で捕まれたそのまま背中から地面に落とされる。

 

「カハッ!」

 

ヘルメット越しにライフルが見える。

 

「イザーク!ディアッカ!ニコルの機体を持っていくんだ!」

 

ライフル弾が飛び出るのが見える、ガラスを突き破り眼球にゆっくりとねじ込まれ…。

 

 

 

~ニコル~

 

いったい何が…うっ!身体中が痺れています、まさか電気ショックですか、ここは外から叩かれていますそのまま連合の捕虜になった?

 

銃を構えるいつでも動けるように、

 

プシュー

 

エアーが抜ける、ハッチが開くと目の前には見知った人たちがいた自然と涙が溢れてくる。

 

僕がここにいるのはナイルが敵を食い止めていたかららしい、僕が気絶している間に6人の潜入したチームがたった一人によって殺されたと。

 

そんな犠牲が出たと言うのに、僕の搭乗していたブリッツのコックピット内部は滅茶苦茶になっていた。

強烈な電圧が流れたのか、画面は炭化して周囲の配線も焼ききれていた、僕はいったい何のために行ったのだろう。

 

「おいニコル、落ち込むなよあいつらの中に俺たちより上手のやつがいただけだって。ナチュラルは小賢しいからさ。」

 

『ディアッカ…有難うございます貴方なりに僕を励ましてるんですよね。』

 

あのセキュリティは一定時間までにコードを入力しない場合起動するものだった。しかも残ったソースから調べると、とても簡素で理解しやすくとてもじゃないけど僕らコーディネイターよりも優秀かもしれない、書き換えられたのは今日の朝の五分間、早すぎる。

 

 

~ナタル~

 

艦長以下の士官からの応答が無いだと?まさかこんなことになるなんて、いったいどうすれば、いや確かこの艦内にはまだあの二人組がいたはず。協力を打診しよう。

 

『臨時につき私が艦の指揮を取ることになった、各員私の指揮のもと臨時編成で行動を行ってほしい。各区画の最高責任者は各々の判断で、各部チェックを行い私に報告をCICクルーは直ちにブリッジへ保安隊は厳戒態勢を取ること。

アーネスト・ボーグとスパロウ技師は速やかにCICへ来て下さい。』

 

私一人の判断で艦を危険に晒す事は出来ないが最低限はやらせていただく。

 

「はいります!」

 

『お二人ようこそ、こんなことになって申し訳ないですが、お力をお借りしたいのです。調べた事によると、スパロウ技師は様々な分野で活躍されておられるそうで、戦術などにも詳しいとか、何卒お力をお借りしたい!』

 

どうしてそんな顔をするんだ、まるで自分はそんなものじゃないと

 

「私はそのスパロウではありません、そのスパロウは父です。」

 

あぁ人間不信になりそうだ…。




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第22話 残念だったな皆、トリックだよ。

CE71年1月25日


 

ザフトによる襲撃により民間人に少なくない被害を被ったヘリオポリス。シェルター兼脱出艇は既に切り離されたものも多い。その中には小さな子供や老人等多くのもの達がいた。

 

しかし、脱出艇の中にはスペースデブリに衝突し破壊されたものも少なくない、現時点で正常に作動しているものは全体の八割程だろう。そうなれば、軍艦の中にいる方が遥かに安全である。

 

それでもなお、平和の中に生きてきた少年達はそれに気が付く事はない、それが彼らの日常であったから。

 

~キラ~

 

あれは夢だったんじゃないか?そう思うことがある、でもこれは現実だってはっきり解ることがある。

 

サイ達と合流した後、ラミアスと言う軍人の人を休ませていると戦闘があった場所から人影が近付いて来た。

 

見れば見る程特徴的な人、マイケル講師だ。

何故か銃を持っているけど、絶対に間違いようがない

 

 

「おぉ君達無事だったか?まあ、見るからに無事だな、ラミアス大尉はどうやら軽傷のようだが大丈夫だろう。それよりも、こいつが動いているところを見ていたんだが、誰が操縦していたんだ?」

 

恐る恐る手を上げた

 

『僕です。』

 

「ほお、キラ君かまあ君はコーディネイターだそうだから、他の子よりは適性があったのかな?まあ良い、それよりもまた敵が来るかもしれないそのときはもう一度乗って戦ってくれるかな?拒否しても構わない、だけどそのときは友達諸共あの世行きだ。」

 

それって拒否できるわけ無いじゃないか!

 

『どうして僕なんですか!貴方がやれば良いじゃないですか!』

 

「俺の体を良く見ろ、大きすぎてコックピットに収まりきらないだろ?特にストライクの内部は狭いからな。それより良いのか?外では戦闘が始まっている、いつ来るか分からないぞ?」

 

「貴方達、その機体から離れなさい!」

 

声のした方を向くとラミアスさんが僕たちに銃を向けていた。

 

「やっと起きたかね、皆待ちくたびれたよ。」

 

「マイケル技師、何故銃を…。それよりも、彼等をストライクから何故遠ざけないのですか機密事項ですよ!」

 

「既に強奪されたものに、機密もなにもない今やるべき事は生き残ることだ、そうだろ?キラ君、君は我々の代わりに戦うのだからそれ相応のサポートをしようじゃないか。」

 

サポートって言ったって結局戦うのは僕じゃないか。そうこうしているうちに、コロニーに穴が開いてMSが入ってきた、どうやらMAとの戦闘で迷い込んだらしい。

それを見ていたらいてもたってもいられなかった、僕はすぐさまコックピットに駆け込んだ。

 

「キラ君、聞こえるかねラミアス君から聞いた通りそれはランチャーパックと言うものだ、一つだけ注意事項がある。アグニと表示されている兵装をあまり使用しないでほしい、理由は後で言うが危険すぎるとだけ言っておこう。私はやつの注意を引き付ける、だから君はやつを撃って欲しい」

 

『引き付けるって、それじゃあ貴方の命が!』

 

「新しい時代を作るのは老人ではない。もしものときは、サイ君にデータを渡したそれを娘に見せてやってくれ。」

 

声が笑ってる、僕のために囮になるなんて!

 

装甲車に乗り込んだ彼は、そこからロケットを撃っていたそれを煩わしく思ったMSはそれを撃とうとする。

 

そのとき、爆発が起きて戦艦が飛び出してきた、それに攻撃したMSの流れ弾が装甲車に命中したのを僕はこの目で見てしまった。

 

 

 

~ナタル~

 

ストライクが着艦した、我々にはもうあの機体しか残っていない。いや、確か一機だけ本艦にあったか?まあ良い今はパイロットとの意思の疎通を図る!

それに、今さらどうしようも無いからあの二人も連れてくるとしよう。

 

あれはラミアス大尉ご無事でしたか。

これで、Gのパイロットも無事であればどれ程喜ぶとことか、だがそれよりも件のパイロットあれはいったい何者だ?

格好から察するに民間人か。

 

「コゼット!いったい何処に行ってたの、私たち貴女の事が心配だったのよ!」

 

ほう、と言うことはこの女子はコゼット・スパロウ。スパロウ技師の娘と言うのはあながち嘘ではなかったようだが、それでも放っておいてはいけないな。

 

「皆、心配掛けてごめん。…どうしたの、皆してそんな暗い顔しちゃってねぇキラどうして、そんな顔してるの?」

 

あの少年はキラと言うのか、

 

「コゼット、ごめん。お父さんを助けられなかった。」

 

「あの人がどうだって言うの?どこほっつき歩いてる解らない人なんか、どうでも良い…。ねぇ、本当に冗談じゃないの?ねえ、サイも何とか言ってよ」

 

ほお、眼鏡をかけたやつがサイか色々と情報をありがとう。

 

「これを君のお父さんから預かった、もしものときはこれを渡してくれって。」

 

「…」

 

そろそろ潮時か?

 

『話しはそこまでだ、ラミアス大尉説明を。』

 

ラミアス大尉から事のあらましを聞き、また絶望したくなったどうして次から次へと問題が起きるのか。

フラガ大尉が割って入ってくれたから良いものを、私の胃が持たない。

 

キラヤマトのせいで技師が死に、その娘は戸惑っている

責めたりはしないだろうが。

それよりも、今は脱出するのが先決かこの艦の指揮系統も、滅茶苦茶だからな急がないと。

 

 

~コゼット~

 

あいつが死んだ、現実味の無いその言葉に耳を疑った、だってそうでしよ?この目で見た訳じゃないから、解らないよ。

 

サイから貰ったファイルには、私の古い誕生日の時の映像が保存されてた。あの人はずっと私たちの事を考えて、わざと遠ざけていたのかもしれない、自分と同じ道に進まないように。

 

ファイルは、まだ一つあったそれは格納庫で見た機体の資料だ、私はそれに夢中になった。一時間程で読破して全てを頭に入れた、私が読んでいる間も外では何か事が起こっていた。よし、行こう。

 

ブリッジへと駆け込んだ、そこでは先程行われた戦闘の事後処理をしていた。まだ切羽詰まった様子ではないから、余裕はあるはず。

 

『失礼します!…ナタルさん、ラミアスさん、フラガさん私を地球軍に入隊させてください!』

 

三人とも目を丸くしていたが、フラガさんだけが即応した。

 

「おいおいそれは、敵討ちでもしたいって事かい?それならやめた方が良いぜ、そういうやつ程身を滅ぼすからな。」

 

『確かにその側面もあります、ですが友人を守るために戦うのは悪いことではないはずです。それに、私は父を感じてみたい。それに、キラだけに負担が行くのは避けたいんです、あの子脆いので。』

 

歓迎ムードじゃないけど、戦力は欲しいはず、じゃないと彼等はそして私たちは地球に帰れないから。

 

「わかったよ、正直俺たちに戦力が無いのは確かだだが君は何が出きるんだ?」

 

『MSの操縦、ただ父さんが造ったやつだけ。あれのデータを見たから操縦方法はわかってる、後は』

 

「君が人殺しをどれ程許容できるかか?」

 

私はゆっくりと頷く、ナタルさんやラミアスさんは反対のようだけど。

 

「わかりました、けど条件があるの。無理をしないことキラ君の説得もお願いしても良いかしら?私たちの言葉に耳を貸さないと思うから良いですか?コゼット曹長。」

 

『はい、コゼット曹長これより戦闘配置にはいります!』

 

 

 

~マイケル~

 

いや~死ぬかと思いました、やっぱり筋肉を鍛えておいた甲斐がありました。

装甲車の中で潰されるかと思ったらあら不思議、いつもは240キロのベンチをやっていたのだが、何と600キロの車を押し上げることが出来たんだ。

いやー人体って不思議。

 

昔から風邪もひかなかったし怪我一つしたことが無かったから今回も大丈夫だろうと、防弾具無しで戦ってたら案の定大丈夫だったしむしろ装甲車の方が俺の体にあわせて壊れてくれたよ。

 

だけど、流石に今は不味いか?キラ君は律儀にアグニを使わなかったが、結局ジンD装備の攻撃でシャフトが砕けてやがる、時間の問題かな。

 

さて、連絡する手段もないしどうしたものかなぁ?あ、そう言えばジンのコックピットが壊されたやつがあったな、あれのコックピットだけ直して乗ろうか?

 

おお、大地が揺れてやがる。確か、こっちのブロックに宇宙作業用のポッドがあったな、探しに行くか。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。







「アンブレイカブル」と言う映画を見たことがありますか?無い人もいるでしょうし、これからも見ない人もいるでしょう。
今回のマイケルのアイデアはそれからとったものです。

退屈な作品と呼ばれることもある作品ですが、私は好きです。


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第23話 崩壊した大地、されど希望は放たれた。

CE71年1月25日


 

シャフトを破壊されたヘリオポリス。脱出しようと必死にもがくアークエンジェル。それに全面的に協力しようとしている学生コゼット、消極的なキラとは対称的であるがその実力は未知数である。

 

そして、その父であるマイケルはコロニー内で死亡したと思われていたが、その頑強な肉体ゆえに押し潰されること無くコロニーをさ迷っていた。

アークエンジェルとは正反対まで吹き飛ばされたがために、自力でその糸口を探す。幸いな事にそこはヘリオポリスの作業機械格納庫の直ぐ近くであった。

 

~マイケル~

 

ああ、崩壊が崩壊が始まってる!ヤバイよ流石に真空の中にいたことは10秒くらいしかなったこと無いからね!むしろ人体の構造上仮死状態は三分が限度、それ以上は最早死ぬ。

 

だから、お願い見つかって…ありましたねぇミストラル古いMA型落ちして久しい機体だけどオーブでは未だに現役だ。勿論戦闘用と言う意味で、地球ではもう二線級にもならないから完全に作業用だけど。

 

こんなことならミニモビ(どう見てもレイバー)でも研究所から持ってくれば良かった、あれなら多少無理しても最悪無理しても戦闘に付いてこれただろうに。

MSからの派生で、治安維持用と言う触れ込みで造ってみたものの、性能が中途半端になってやめたんだよなぁ。

戦闘しないならMSよりも使い勝手は、良いと思うんだけどなぁ。

 

さあ、気密はどうかな?おしおし、大丈夫だ問題ない今はこれが一番良い装備だこれ以外はないハッチの電気系統がイカれてやがるが、どうってこと無い。

この俺の脳みそにかかればあら不思議、ちゃんと開閉する。

 

いざ行かん、宇宙空間へ!

ハッチを開けて外に出る、周囲の音は一切聞こえない、反対側から閃光が上がっているのが良く確認できる。さあ向こうへ向けて出発だ!っとおお、崩壊が始まったか、ギリギリだったな。

 

しばらく進んでいくと、脱出艇がそこかしこにあるけど、穴が空いていたりするものもあるからいったい何割が死んだのだろうか。

おっまだ生き残りがあったか、その割には小さい。あぁこれは、救命艇か幸いなことだなこれを守りつつアークエンジェルと合流できると良いんだがな。

 

お肌のふれあい通信を試みてみようかなぁ、と。

 

『おい、生きているのなら返事をくれ。繰り返す、生きているのなら返事をくれ…。yesなら壁を三回叩くんだ。』

 

ダンダンダン

 

『そこには何人いる?その人数分叩いて欲しい。』

 

叩く音が26人、救命艇の中には少なくない命か。見れば推進力が無い、これは漂流一直線だな。

 

『こちらがそちらを牽引する少し強引な手段だが、構わないか?』

 

三回、よしでは行くか。

 

 

 

~キラ~

 

ヘリオポリスが崩壊した…あれは救命ポッドとミストラル?

えっと…無線に反応?

 

『こちらストライクキラヤマトです』

 

「やあキラ君さっきぶりだね、マイケル・スパロウだ。

救命艇を見つけてね、どうやら推進器がイカれてしまっているんだ、このままだとデブリの仲間入りしてしまうからアークエンジェルへと、曳航して欲しい。」

 

 

えっ?まって確かにマイケルさんは破壊された装甲車の中にいて、僕はそれをこの目で見てた。ちょっとこれってどういうことになってるの?まさか、この時代に幽霊とかそういう存在がいるとか無いよね。もしかして幻聴を聞いている?

 

「おい、返事がないな。大丈夫だ幽霊なんかじゃないし、幻聴でもないからちょっとした脱出マジックしただけだ、私はベストを尽くしただけだよ」

 

何を言っているのかさっぱり解らない、この人はナチュラルで頭が良くて筋肉質…もう自分がコーディネイター

だとかどうでも良くなるような存在だなぁと改めて思いました。…誰と話してるんだろう。

 

『わかりました、今からアークエンジェルへ返るので一緒に行きましょう。』

 

正直生きているなんて思いもしなかった相手が生きていただけで、僕はホッとしてる。これで僕はコゼットに嫌われなくて済む、何て思ってしまった時点で僕は罪を背負ってるのかな。

 

 

~コゼット~

 

『マードックさん、機体に火を入れます電源系統とM粒子安定機の駆動をお願いします。』

 

この子ゲイル、この子はストライクや他のGATーXシリーズとは違うどうやら開発当初から、既に開発部門も違っていたようだ。

 

それどころか動力源すらまともじゃない、この子は小型の核融合炉を搭載してる。他の機体がバッテリー駆動であるのにも関わらずこの子だけ、エネルギー量はどうやら調節出来るみたいで最高出力は現在機体で使用されてる送電システムじゃ負荷で焼ききれてしまう。

 

ストライク並になってしまうけど、それでも無尽蔵に供給されるエネルギーは非常に魅力的だ。

 

 

Caution (注意)

 

Rational(合理的)

 

Designate(示す)

 

System

 

注意点を合理的に分析して、解決法を示す。完全なサポート用AI、また注意点を記憶し私の動きを自己学習して支援することも可能とする、他のものとは全く違う。

 

「やぁ私はCRD、君のサポートを任された戦闘用AIだ以後よろしく頼む。新米パイロットである君の生存を可能な限り高めるため、私も微力ながら協力しよう。」

 

『よろしくね、私はコゼット・スパロウ。貴方の産みの親、マイケル・スパロウの娘よ。これから貴方のパイロットになるのだけど、私に勤まるかしら?』

 

私も少しは不安があるのだけど、父はこれを何を思って造ったのだろうかと考えるとその感情は断ち消えて、寧ろ勇気へとなる。

人が言うには死神と言われるかもしれない、それでも私は信じるしかない。

 

「君に勤まるかは関係ない、勤まるように君を成長させるのが私の使命だ。もし、君の身に危険が生じた場合私が操縦するだろうだが、私はAI、人を傷つけることは出来ない。人を倒せるのは人である君だけだ。」

 

感情を感じられるAIの言葉を聞いていると、アークエンジェルのハッチが開くのが見えた。

パイロットスーツを着ていて良かった、最悪死んでた。

救命艇とミストラル?オーブ軍の生き残り?

 

格納庫の空気が戻った、誰が載ってるんだろう…!

嘘だ、キラが死んだ何て言うから何で?どうして生きてるの?だって、だって。

 

そのときの私はどうかしていたのだろう、父の目の前に立ち思い切り顔を平手打ちしていた。

父は何も感じていないような顔をしていたが、一言だけ笑顔で言った後私を抱き締めた。

 

「戻ってきたぞ」と。

 

 

~ナタル~

 

私が言ったアルテミスへのアークエンジェルの入港計画。それをあの男、マイケル大佐待遇者が否定した。

彼は戦闘に関しては素人のはず、確かに私とて実戦の経験はそれほど多くはないがあの男よりも遥かに知識はあるはずなのだが…どうしてだろうか妙な自信を感じた。

 

『では貴官はアルテミスへの本艦の入港は否定すると言う立ち位置ですか?』

 

「その通りだ、あそこは確かに堅牢な要塞だ、だが我々はあれを無視してはならない」

 

あれとはなんだ?

 

『あれとはいったい何を指すものなのか、具体的に話してください。』

 

「ブリッツのミラージュコロイドだ。あれは元々こういう要塞線を内部から撹乱あわよくば崩壊する為に設計された、そうだろ?ラミアス大尉。」

 

「はい、用途はかねがねその通りです。」

 

ではそのまま我々が行った場合、宇宙軍の拠点をみすみす敵に攻略させに行かせるようなものか…。

 

『私の発言を撤回します。ではそのまま月へと進路を取るという事でよろしいか?』

 

「いや、それはナスカ級が邪魔だ。だから戦闘を行う、ローラシア級の敵の動きを利用してね。」

 

 

アークエンジェルはデコイを二基発射したそれはアルテミス方面と月双方へ向けて進んでいく。それに従いナスカ級が先行していくのが、画像で確認された。ローラシア級はその後速度をゆっくりと上げ進んでいく。

 

そのときクルーゼは違和感を感じ取れなかった、彼はレーダー手ではない。レーダー波が何も探知できないのを勝手にデブリのせいと決めつけてしまった、良く見れば解った筈なのにそれは霞がかっていたと。




CRDの声は池田さんです。

誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第24話 恐怖!ミノフスキーテリトリー!! ガモフよ永遠なれ!

ヴェザリウスは、アークエンジェルが向かうと予想されるアルテミスへ先行して推力を上げた。

その小半時、ガモフが推力を上げ進み始めた、共に問題なく進みアークエンジェルを追っていると錯覚した。

 

空間にはデブリが漂いレーダーは効かない、その常識が仇となる。レーダー手は気が付かなかった、一帯の反射波が存在していないことにステルスのようにレーダー波が吸収されていることに。

 

~ナタル~

 

一切のレーダー機器が機能を果たしていない…これがミノフスキーテリトリー…。新しい戦術書や新ドクトリンに組み込まれている、これがその力か。

だが、腑に落ちない何故あの男がそれを知っているのか。

 

『艦長M粒子の戦闘濃度散布完了しました。これより本艦は対艦・対MS戦闘に入ります。キラヤマト、フラガ大尉、コゼット曹長は発進スタンバイに入るように!』

 

「艦長、格納庫から通信です。」

 

あの男か、今度はいったい何を言い出すのか。

 

「艦長、現在ゲイルガンダムは炉心に火を入れています。発進の順番はフラガ機を先行発進し、次いでキラ機最後にコゼット機です。何分電力が足りない、ミストラルのバッテリーを全て使ってやってる。何、点火出来れば後は10年くらい入れ換えなくて済む。」

 

自分からこの作戦を立てておいてまだ準備が終わっていないのか…。だが信じるしかあるまい

 

「ナタル私は指揮権を持っていますが、一介の技術士官でしかありません。責任は私に、判断は貴女に委ねます。」

 

『わかりました、ただ本官にも判断しかねる場合手助け願います。フラガ機発艦始め!』

 

アークエンジェルのカタパルトが開き、フラガ機がゆっくりと発進する。戦いの主導権を貰うとしよう。

 

 

 

~ニコル~

 

僕が強奪を行った機体ブリッツのコックピット内のサルベージは順調に進んでいるけど、今回の作戦には間に合いそうがない。あんな罠に引っ掛かるなんて本当に僕は足を引っ張っている。

 

僕の得意分野である解析を整備士と共に行っている、データにあったのはあのストライクと言う機体、それともう一機存在していた。

 

僕たちの作戦にはその機体のことが全く考慮されていなかった、知らなかったから。

その機体はもしかするとあの、新型戦艦に搭載されている可能性がある、もしそれが使用可能な領域で完成していたら、僕たちに少なくない損害が出るかもしれない。

 

今は無線封止中、隊長との連絡は出来ない。だけど、皆との情報の共有はしなければ、かなり危険な相手なのは間違いない。

それに、僕たちの技術にはない核融合炉の文字もしこれが本当なら非常に恐ろしいことだ。

 

ズゥゥゥン

 

艦が揺れた?攻撃を受けている!クッ早く格納庫へ行かなければ、まだコックピットの移植したばかりだけどそれでも使えない訳じゃない!

 

艦から出ると二機がいた、僕が皆に伝えなくては最大強度にした無線で話す。届いてくれれば良いんですが、僕の相手はストライクです!

 

もう一機はイザークが押さえている、これなら何とか…イザーク!そんな、動きが急に変わった?いったい何が、うわっ!くそストライク、早くパワーダウンしてくれ!

 

 

 

~イザーク~

 

艦体が軋んでいる、いったい何が起こってるんだ!

 

「各員戦闘配置に付け!艦が攻撃を受けているMSパイロットは格納庫へと急げ!」

 

ナチュラル共が、俺たちの後ろから攻撃して来ているだと?ふざけるな。

 

『イザーク、デュエルへの搭乗完了!いつでも発進いけるぞ!』

 

カタパルトが開くが乗らない、そのまま徒歩で出撃だ!敵はクッソ!レーダーが使い物にならないだと?どうなっている!

 

「イザーク、これはM粒子が散布されています、目視と動体センサーだけが便りです!」

 

ニコルか、ありがたいこれで何とかなるか。

 

『すまん、ディアッカ、アスラン気を付けろ!』

 

「敵のMSは二機です。一機はストライク、もう一機はデータ上にあったゲイルと言う機体です。出力継戦能力はこちらよりも上ですくれぐれも、ライフルの使いすぎに注意してください!」

 

ストライク、相も変わらず迷いのある動きの癖に、咄嗟のときは動きにキレがある、しゃくにさわるやつだ。

だが、あのゲイルとか言うやつ動きはお世辞にも良くはない、撃つなら今か!

 

『動きが単調だ!』

 

ライフルを構えてからの動きが素人のそれだ、それだけじゃない動きに無駄が多すぎる本当に正規のパイロットか?

回避しながら攻撃することが出来ないでいるのか、慣れていないな。

 

『ディアッカ、ニコル、アスランの援護へ行け!こいつは一人で充分だ。』

 

回避だけに専念されると厄介か、だが当たらないのなら斬れば良い。

頭部武装で牽制しつつ近付き構えられた盾を、ライフルの銃身で払いのける、そして直ぐ様サーベルを抜き放ち

 

『もらったー!』

 

それがライフルから延びたサーベルに弾かれた。

なんだあれは!見たこともない、あんなものが可能だと言うのかなら!相手の動きを呼んでサーベルが来ると踏んだが、コックピット前面部分に思い切り蹴りをくらい、後ろにあったデブリに叩きつけられた。

一瞬だけ意識が遠のく、だが追撃が来ない俺で遊んでいるのかぁ!

 

 

 

~コゼット~

 

「進路クリアー、ストライク発進どうぞ!」

 

ミリアリアの音声が聞こえる

 

「良し、炉心安定してるいつでもいけるぞ」

 

父さんの声が外から接触回線で聞こえる。

 

「ゲイルガンダム発進位置移動お願いします。」

 

台が動いてカタパルトに接続される、外部電源が外され内部電源に切り替わった。

『ゲイルガンダム、A装備(ライフル)でお願いします。機器正常、駆動系問題なし炉心安定確認良し!ゲイルガンダム発進スタンバイOK!』

 

「コゼット・スパロウ、ゲイルガンダム発進どうぞ!」

 

『コゼット・スパロウいきます!』

 

体にGがかかる、機体のシステムによって幾分か緩和されてるみたいだけど、お世辞にもきつくないとは言えない。

外はデブリだらけだ、操作はシミュレーション通りに動く、先行したストライクを追って敵のローラシア級に向かった。

 

慣らしつつゆっくりと行くと、まだこちらに気が付いていないのかそのまま前進してる。

キラと発光信号で合図をして、私は敵の主砲に狙いを定めて撃った。

 

それは吸い込まれるように、命中して非常に大きな損害を与えた。

収束率を高めたライフルだからこそ出来たんだろう、だってキラの方は艦体表面を焼いただけだったから。

 

直ぐにアークエンジェルからの艦砲がここに来た、ローラシア級のエンジンに直撃したそれで推力が低下停艦するだろうなぁ。ただ、今ので私は何人殺したんだろう吐き気がする。

 

攻撃を続けているとなかからMSが出てきた、射撃を開始するけど簡単に避けられてしまう。

次第に距離を詰められる、右に左に避けられる至近距離でライフルを撃ってきたそれを盾で受けると盾をライフルで、弾かれた。

その後ろには既にサーベルを構えた奴がいた、あっと思う間もなく、CRDが起動した。

 

「見せて貰おうか、デュエルの性能とやらを」

 

何か意味深に呟いているが、その動きは本物だ。ライフルサーベルを展開して防いでる。

防御に入るときスッと体に負荷がかかり意識を持っていかれそうになる。

 

ガギン!

 

思い切りデュエルのコックピットへ蹴りを入れ私から遠ざけるそしてデュエルはデブリに激突した。

すると操縦が切り替わり私が操作する、CRDが作動中レバーやペダルと動きが連動していた、もしかするとそうして回避や動きを教えているのかも、あの動きを私がやれば勝てるか?

 

サーベルモードからライフルに戻し、今度はあの動きを真似る一瞬のスラスターと手足によるAMBACを駆使して敵の回避に適応していく、いくらコーディネイターだって相手は人間だ最適化してしまえばこっちのものだ!

 

奴は攻撃するとき直線的になる癖がある、AIはそれを判断していた私にそれが出来るなら!

来た!ライフルがこちらに向く、周囲がスローになる盾を正面に構え盾の後ろから奴を狙う奴が撃ったビームは盾に阻まれ霧散し、こちらのビームは盾を貫通して奴の左足を撃ち抜いた。

 

そのとき、敵の艦が爆発し奴を見失うと同時にアークエンジェルへの帰還命令が出た。

 

 

~クルーゼ~

 

何故だ、これ程までの間進んでいるのに未だに接触がない、私の作戦に穴が無いとは思うがこれはいささかおかしい。無補給で行くと言うのか?

 

『通信士ガモフと連絡とれるか。』

 

「し、しかし無線封止は…」

 

頭が固いな

 

『この際良い、嫌な予感がする。』

 

「わかりました、ガモフこちらヴェザリウス応答願う…なんだこのノイズは、クルーゼ隊長ノイズが発生しておりガモフとの連絡が取れません。」

 

抜かったか、よもやあの艦艇もM粒子を散布できるとはこのまま行けば連合は全ての艦艇に搭載するぞ。

 

『全速反転直ちにガモフ救援に向かう、燃料は帰還分まで持てば良い全速前進だ!』

 

不味いぞ、せっかく強奪したG兵器みすみす取り返される訳には行かない、私のキャリアにも傷が付くこのままでは人類を絶滅させられない!

 

「前方で発光あり、画像データ出ます!」

 

戦闘が既にはじまっているか、ガモフは中破いつ撃沈されてもおかしくない。

 

『レーダー照準不可能なため目視による照準をおこなえ!なんとしても、ガモフは沈められてはならない!』

 

ヴェザリウスの攻撃がはじまる、足付きめまだ後ろにいたか

 

「画像解析完了しました、敵は戦艦1、MS2です!」

 

乗っているのはムウ?いや動きが違う奴は何処に!

 

「敵反応あり直上です!」

 

『回避運動任せる!私もMSで出る修復最低限でだ!』

 

「ガモフ轟沈します!敵MS消息不明、敵艦こちらへ接近します!衝突コース!」

 

なんたることだ、このままでは!グッ…艦が被弾しただとムウめ

 

「推力低下!敵艦すれ違います!」

 

わざと私を生かすかそれとも、誘爆を恐れたか私が死ねない事を知っているのか?

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

対馬で蒙古と戦っているせいで、執筆が遅れています。どうかご容赦をどうかどうか……。


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第25話 氷塊に漂うは歌姫か。それとも骸の山か。

ヴェザリウスの追撃を逆手に取り、ガモフを撃沈さらにヴェザリウスをも損傷させる戦果を上げたアークエンジェル一行は、アルテミスを素通りしそのままユニウスセブンの残骸へと向かう。

 

その目的は必需品である水の不足から来るもので、どうにか補給を行う必要が出てきた。

キラ以下のものたちは恐らくそれに対して拒否反応を見せる。

 

それもそのはず、凍ってしまったユニウスセブンの残骸には、未だに腐ることのない死体が凍り付けとなっているだろう事を優秀な学生たちは直ぐに思い付く、それが原因であろう。

 

一方プラントではクルーゼがその損傷した艦艇を本国のドックへと入港させ、査問会へと出頭した。

中立国内での戦闘は国際的に見て非常に厄介な事案である。

特にオーブはプラントも一部部品を融通して貰う国であり、地球側も似たようなものだった。戦争に荷担する役割に抵触していたと言えど、それは一企業が荷担したものであるとの公式見解はいかんともしがたい。

 

だが、攻撃されても仕方がないのは工場でありコロニーそのもの崩壊と、非武装の民間人への多大なる犠牲は未だ効力を持っていたハーグ陸戦条約に抵触したため、彼らはクルーゼにその真意を確かめる行動を行った。

 

そして、その戦闘をアルテミスはつぶさに観測し、地球軍へと通信を行った。

 

 

 

~シーゲル~

 

まさかこんな事態になろうとは、だから私は反対したんだこのような作戦。

確証のない情報から始まったこの作戦を私は、看過できない。

 

たとえ何があろうと中立国には戦闘を被せてはならない、そうなった場合我々は大いに信頼を失う。

それが地球軍の兵器を開発していても、当事者であるオーブは見て見ぬふりをするのが当然の理、戦争など常にそんなものだ。

 

 

百歩譲って許すとしても、民間人への攻撃はいかんともしがたい、逃れようのないことだ。

それなのに。それに手を出したクルーゼをどうしてくれようか。

 

私が思案している間にも評議会は続いている、得た情報はこうして手元にあるがさて頭に入ってこない。

…?この男何処かであった、いやこれは“万能の天才”マイケル・スパロウ。彼がこれの開発に関わっている、ならば不味いことになるかもしれない。

 

議会が言い争いをしているどうやら性能についてのようだな。

恐らくだが、この男が関わっているのなら真実だろう、かつて私も参加したDSSDによるソーラーセイルプロジェクトにおいて、このものが計算式を構築し試作機が完成した。

まさかこんな形で再び名前を見ることになろうとは。

パトリックが戦争の拡大を煽っているが、

 

「皆静粛に、ここに書いてある通りの性能である可能性は充分に考えられる。皆名簿にある“マイケル・スパロウ”という人物に見覚えがあるだろう。各分野にその名前を刻むものそれが開発に携わっている。

これが事実なら、我々は更に講和を早めなければならない、徹底抗戦等もっての他だ。奴がこのG兵器に本格的に介入している場合連合の技術は飛躍的に向上するだろう。

故に次の一大攻勢が成功した場合、我々は地球軍への独立のみの講和をしなければ勝ち目がなくなる。

たとえ私が議長の椅子から降ろされようとも、この事実は変わらない。」

 

批判は私だけで充分だ、パトリック。我々は化け物と戦わなくてはならなくなったのだ。

 

 

 

~マイケル~

 

オッスおらマイケル、今アークエンジェルのブリッジで会議をしているんだ!なんでも水資源が枯渇し始めているらしい、浄化用の設備も完備しているのになんで水が枯渇するか、だって?そりゃ当たり前だろ?

 

人間は汗をかくから、お小水だけで水分が抜ける訳じゃないし空気中からの水分の抽出は以外と難度が高くて、時間がかかるんだ。

それに、料理とかでも水を使うから余計拍車がかかってそりゃもう大変さ!

 

さて、そんな訳で俺たちは今ユニウスセブンが中心となって形成されたデブリベルトにいます!最初は皆反対があったよでも、俺が説得したよ

『最低でも水がなければ生命活動は維持できぬ、所詮死人に口はない、なら俺たちが貰っても構うまい?』

と、なんか亡霊とかいたらすっごく怨まれそう、茅子みたいにならないよね?

 

と、そんな事をやっていたら少々問題が発生した。実は俺もミストラルで出撃してるんだが、哨戒用のジンが現れたんだなこれが、何かを探しているご様子。

いったい何を探してるのやら、どうか気が付かないで素通りしてください。あっ…目があったぞダメみたいですね。通信を試みてみるか?っとストライクが来た、ゲイルも来たぞ…聡いパイロットだな好戦的じゃない、投降したぞ。

 

まあ、あれは二人に任せて俺は氷の採取に性を出すとしますか。

 

 

~数時間後~

 

ストライクがまた救命艇を拾ってきた、どれどれ俺が開けてしんぜよう。

ものの数秒でロックを解除した、ワァオ。ラクス・クラインが載ってら、なんでこんなとこに来たんですかねぇ。

 

 

 

 

~コゼット~

 

ラクス・クライン…そう言えばグリニッジ標準時で今日は2月2日。今が何時かはわからないけど、きっと血のバレンタインに由来があるんだろうけどそれでもこんな危険な場所に来るなんて。

 

男子達がラクスのところに行ってるみたいだけど、ちょっと様子でも見て来るかな。

 

『ねぇ男子達があっちにいるけど、見に行ってみない?私も少し気になるし。』

 

男子達が塊ってドアにいる、本当にバカねあんなことしなくても後で聞けば良いのに。見たいって言うのもあると思うけど、ちょっとは仕事をして欲しいなぁ。

 

あっドアが開いたナタル少尉に怒られてる、ふふ

ってこの声まさか父さんも中にいるの?

まさか、酷いことしてないよね、マッズイ料理とか食べさせたりとか小さい頃ママがいない日に一日だけ父さんがいたときに作った料理、栄養バランスだけ考えた酷い食べ物だったなぁ。「合理的だが芸術センスは無いな」なんて自分で言ってたやつ。

 

『ナタル少尉、私も中に入っても良いですか?年齢が近い方が話しやすいかも知れないですし…。』

 

「コゼット曹長、貴官は仕事は終わったのか?…そうかこの書類全て終わったか、なら頼む。どうも私は尋問には向いていないらしいからな。だが、どうやら君のお父上の話しは好きらしい。」

 

隙間から覗いてみると父が上機嫌で話をしてた、笑ってても顔はなんか怖いけど。

 

「おお、コゼットこっちに来なさい。紹介しよう私の娘のコゼットだ。」

 

『コゼット・スパロウです。歳は貴女と同じですよ?』

 

それを聞くと私の足先から頭までを見て

 

「まあ、ご家族なのですかてっきりボディーガードの方かと思いました。それに、貴女は軍の人なのですか?」

 

『はい、と言っても戦時任官ですが、元は民間人ですよ?ところで、どんなお話をしていたんですか?』

 

父がにこやかな笑顔で

 

「彼女の父上と共に開発していた時の話を少ししていたんだ。」

 

『因みに聞くけどそれいつ頃の話?』

 

少し上を向いて言った。

 

「16の時だなちょうど君たちと同い年だった。」

 

改めて思うこの人化物なんだなと。

 

『ねぇ、昔話もいいけどプラントでの生活の話聞いてみたいなぁなんて』

 

「私にですか?そうですね、最近プラントでは…」

 

この後結構長い話になった。

 

~1時間後~

 

なんかやっと解放された、正直疲れたなぁ?

『皆こんなところに集まってどうしたの?』

 

「あっ噂をすれば、ねぇあの娘どうだった?」

 

質問するのはミリアリア、あの娘ラクスの事か

 

『別に?普通の世間知らずの女の子って感じ、ちょうどフレイがなんか抜けたような娘よ。』

 

「私が抜けたようなってどう言うことよ」

 

そういうところが抜けて、わがまま言わない感じなんだけどなぁ。

 

「じゃあ危険じゃないってことか?」

 

『サイ、彼女は一般人よ。確かにダンスとか歌とかは上手いけど、戦闘力は皆無ね。それにもし暴れても、私の父さんに勝てると思う?』

 

皆沈黙したそりゃそうだあんな怪物に勝てるわけない。

 

「それで後ろについてきたって事?」

 

『キラ、そう言うこと。皆を紹介するね友達になりたいみたいだから。』

 

私たちの交流が始まった。

 

 

 

~アズラエル~

 

なんですって、ヘリオポリスが襲撃された!まずい今すぐ原因究明と開発中のMSのことを調べてください!

えっ?私たちのMSは無事でハルバートンのは、4機盗られた本当ですか?

 

アルテミスが画像データを送ってきたと、良く取りましたねレーダーも効かない軍艦なのにやはり目視は侮れませんか。

 

月基地への連絡は取れていると?そうですか、ハルバートンが出撃すると、13独立艦隊も随伴していった方が良いんじゃないですか?相手は追ってきている可能性もありますし、最悪ハルバートンの出撃を見越して大艦隊を派遣してもおかしくありませんから。

 

13独立艦隊も既に出撃済みと、ちょうど定期哨戒と被りましたか。じゃあ大丈夫ですね仲間割れだけは嫌ですけど、それとその書類はなんですか?私に承認が欲しい?

確かに今は連合の国防大臣ですが、ブーステッドマン?

 

これは、昔私が退けたものですよね?調整を弱めたより理性的な強化そんな犯罪まがいなもの使わなくても勝てますよ、これ以上の製造は駄目です。それと、一切の破棄を禁じます良いですね?

 

既に戦闘に調整されてしまった者は使いましょう、なんとしても元に戻す方法も考えてください?

 




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第26話 複座型ぁ?俺が操縦できるくらいに広々じゃないか!

デブリベルトにおいて補給と共にラクス・クラインを救助したアークエンジェル一行は、進路を再度確認し月へと艦を向けた。

 

同じ頃月基地はアークエンジェルの航路を予想しその捜索を開始する、ハルバートン率いる艦隊は哨戒任務中であった第13独立機動艦隊と合流し共に捜索を依頼、任務を放棄してでの作戦行動を行う。

 

それを上層部は認め一路、アークエンジェルとの合流を目標に艦隊を数個の小艦隊へと小分けし、予想される全ての航路を封鎖する形で展開した。

 

一方のプラントはラクス・クラインの消息を探っていたが、捜索隊からの連絡が途絶えたことにより地球軍からの攻撃に晒されたことが濃厚になると、現在実働的に動けるもの即ちクルーゼにこの作戦を一任する。

 

先の戦闘での経験を生かして欲しいというものと、名誉挽回の機会を与えるものだ。

彼にはローラシア級4,ナスカ級1からなる艦隊が与えられた。それ程までにラクス・クラインの消息とアークエンジェルを危険視しての事だった。

 

 

 

~マイケル~

 

おお、ジンの強行偵察型はコックピットが複座だから良いねぇ俺も入れる後ろのシートを外せば操縦も出来るな。

 

『おーいマードック君少し工具を貸してくれ、これを少々改造する。』

 

「それは良いですけど、そんなに時間は有りませんよ?第一武装はどうするんですか。」

 

呆れた感じだな

 

『大丈夫だ、セッティングまで4時間で完了させる。武装は確かメビウスの予備のリニアガンがあったから、それに適合するようにしておくさ。』

 

あの娘達だけに戦わせておくには行かないからな、この際俺も戦わねばもしもの時があるかもしれんし。

 

~五時間後~

 

ヨシ!何がって?完成したんだよコックピット、武器のセッティングも終了したし、これで俺も戦えるってもんだ。

 

おや、ブリッジから連絡か

 

『こちらマイケルどうしたんだ艦長』

 

なに?モントゴメリが確認された連絡も取れたと…そりゃ良いことだが、

 

『ブリッジ直ぐにそちらへ行く、艦隊の陣容を知りたいそれと、まだ通信中か?どの程度かかる、後10分わかった直ぐに行く。』

 

→ブリッジへ

 

『遅くなった、お久しぶりですねアルスター事務次官』

 

「おお、君かねまさかアークエンジェルに乗艦していたとは、最近姿が見えないのはG兵器の開発を行っていたからか。」

 

マイペースだな、子供の無事がわかったからって浮かれているのか?

 

『現在貴殿方がいる空域から直ぐに引き返してください、我々の後を連中が追っている可能性がある。そうなったら、我々の戦力では護りきれませんので。』

 

周囲が唖然とした顔だな、そりゃせっかく助けに来たものを追い返すんだそうもなろう。

 

「安心したまへ、我々には赤い流星が付いている。」

 

『本当にいるなら直ぐに合わせて頂きたい、大方本隊にいるのでしょ?そうですね、大方地球の衛星軌道上にでも留まっているのでしょ?まあ彼女なら単独で来そうではありますが…。』

 

不満だないったい幾つの艦隊に分けたのやら、確かに捜索にはもってこいだが

 

「案ずるな、君はいつもそうだ考えすぎだよ」

 

考えすぎ?戦争に考えすぎはない、ありとあらゆる可能性を吟味し全てに対して万全の体勢で挑まなければ、命を失うものだぞ?俺も全力を出したがそれでも、変わり辛い…変わる?いったい何からだったか。

 

 

そのときトノムラから声が上がった。

 

 

「熱源を感知これは…掌紋完了ザフトの艦隊!ローラシア級4,ナスカ級1です!」

 

やはり来たか。こっちも画面の向こうも顔を青くしてやがる、本腰入れて戦わねばこりゃどちらも沈むな。

するとコープマンが直ぐに指示を出した。と同時にアルスター事務次官を気絶させた。

 

「全艦反転し艦隊に合流する、どうやら我々の方が先に敵に気付かれそうだ。アークエンジェルは単独で合流して欲しい。なに艦隊なんだ、君たちよりも目立つ囮になれるよ。」

 

『頼みますよ、アルスター事務次官を安全な場所で隔離しておいた方が良いですよ?』

 

アークエンジェルのブリッジには緊張が広がり、戦闘態勢へと移行した。

 

 

 

~コゼット~

 

嘘、なんでこんなに早く召集がかけられるの、もしかしてザフト艦が私たちを付けてきたの?

そう考えながらベットから飛び起きて格納庫へと走ると、ちょうどキラの姿が見えた。

『キラどう言うことだか解る?』

 

「解んないよ、突然僕の方にも連絡が来てストライクの発進準備に入れだなんて言ってきたんだ。」

 

キラも知らないってことはやっぱりそうか、格納庫に着いたらマードックさんに聞こう。

 

「坊主と嬢ちゃんが到着したぞ、急いでMS発進準備にかかれ!」

 

『マードックさん何があったの!』

 

「詳しくは知らないがザフトが来たんだと、さっ乗った乗った!」

 

詳しく聞きたいんだけどな!詳細解らなきゃ戦闘にならないじゃない。

 

「そうだ言い忘れてた、今回からお前の父さんも戦闘に参加するってよ。」

 

え?まじで、いや聞いてないよなんでいつも話さないかなぁ、でもどうやって乗ってるの?確かコックピットは狭いから駄目だって…まさか短時間で内装変えた?え?いやいや、でもどうやって

 

「コゼット曹長、さっさとカタパルトへ行け、後がつかえている。」

 

『あ、ナタル少尉すいません。』

 

私が先発か。はぁ、ヨシ!行くぞ!

グゥ、やっぱり体がシートに引き付けられるまだ敵はこっちに気が付いてないらしいけど、ストライクはバッテリー式だから直ぐには出られない。

 

「コゼット曹長は、MA形態へと移行し周囲の警戒にあたっていてくれ。」

 

了解しましたよーと、気付かれなきゃ良いけど。

 

「敵艦が動いた、これより戦闘に入るコゼット曹長、キラヤマト、制空戦闘頼む。フラガ大尉とマイケル技師は敵艦に対する攻撃を意図するように見せてください。」

 

ああ、また戦いが始まる。

 

 

 

~イザーク~

 

こんなにも大規模な作戦は初めてだ、たった一隻の戦艦にここまで戦力を割くのは果たして良いことか?

いくらラクス・クラインが消息不明となったからと言って、ここまで戦力を振っては後々問題が出るんではないか?

 

「おいイザーク、らしくないなそんなに考え込んで。」

 

『いや、こんなにも艦艇を捜索に割いて果たして本国は何を考えているのか、そう思っただけだ。』

 

「地球軍の艦隊が出てくる可能性を考慮しているんじゃ無いんでしょうか?僕らは戦闘経験は少ないですが、少なくとも足付きに対しては多いですから。」

 

ニコルの言うことは解るがそれでもだな?警報?

 

「総員戦闘配置、敵はドレイク級2,ネルソン級1の小艦隊後続に他の艦隊の可能性有り、充分に注意されたし!」

 

足付きは無いのか、妙な感じだな俺達が追い越した?いやそれはない、いくらあいつらの足が遅かったとしてもそれだけは断じてあり得ない。

ナスカ級と同程度の足を持ってたんだ、それを追い越す等…。そうか

 

『イザークよりクルーゼ隊長へ、意見具申します。』

 

「どうしたイザーク、何か問題でもあったのか。」

 

『敵の動きが妙です。まるで何かを索敵していたように感じました。我々は足付きを見逃している可能性があります。』

 

これでわかっていただけるだろうか。

 

「なるほど、では足付きから目をそらすためにわざと動いていると。」

 

『はい、私はそう考えます。』

 

「わかった、レーダー手及び手の空いているものは周囲を警戒せよ、敵を見逃すな!敵はまたレーダーを撹乱してくる。イザーク達はコックピットで待機いつでも出撃できるようにしておけ!」

 

時間だけが過ぎていく、無線の連絡もない杞憂だったのか?

 

「10時の方向仰角15度に、敵艦らしきもの発見!艦影確認足付きです!」

 

「MS隊は直ちに発進。ラクス嬢の弔い合戦だ、皆気を引き締めて行け!」

 

来た、待っていろ足付き待っていろゲイル俺がお前らを落とす!

 

 

~コープマン~

 

「敵ナスカ級に動き有り、アークエンジェルへと進路を変えました。」

 

うーん、困ったなこのままではアークエンジェルが撃沈される可能性がある、たとえ全てのMSを出してこなくともアークエンジェルには充分対抗できるであろうが、果たして奴らは全力を出すだろうか?

ここに至っては致し方なし。

 

『度々すまない、全艦反転し敵ナスカ級及びローラシア級に対して艦砲射撃を実施する。その後MA隊を発進させろ、援護射撃も忘れずにな。それと、通信士赤き流星は今何処か確認して欲しい、最悪我々は特攻することになる。』

 

全員が冷や汗をかいている、わかってるわかってるんだ俺達が行ったとしても無駄死にになることくらい、だがな民間人が攻撃に晒されているのを見捨てるのは俺には出来ない。

 

「流星は現在ここより20分程の位置を単騎で進んでいます。」

 

そうか、それまでなら持つか?

 

『総員戦闘配置これよりアークエンジェルと共に敵艦隊を攻撃する。』

 

艦隊が弧を描き単縦陣へと形を変えた。射程はこちらの方が上だ一方的に叩ければ良いのだが、そうも行くまい。

 

『対MS装備でメビウス隊を発進させろ、主砲敵ナスカ級に向けろあれが旗艦だろう…全艦撃ち方初め!』

 

主砲から見慣れぬピンク色のビームが発射されていく、物理的な衝撃を艦が感じとる、これがメガ粒子砲か。

 

「MA隊アークエンジェル上空到着まで後3分、アークエンジェル敵MSと交戦を開始、AA所属機が応戦を開始しました。」

 

あれが新鋭機ストライクか、ロング画像で見るしか出来ないが動きはまだぎこちない。彼だけで数機を相手しているが、あれでは直ぐにバッテリーが上がるのではないか?だから核融合炉を欲したか。

 

そして白い機体、MAとMSの形態を持つのかそれはMA形態による一撃離脱とMS形態による柔軟な動きで、デュエルだったかを翻弄している。

時折見せる美しい機動は、周囲を囲まれているときに見せる常人離れした動き。

それはコーディネイター達をも凌駕する、あれは本当にナチュラルが出きるのだろうか?

 

「敵MSこちらに接近!ジン6これは、バスターです!」

 

ついに来たか

 

『全艦に通達!バスターへ集中砲火を浴びせろあれだけは抑えねば、火力が高いからな!

直掩隊無理はするな!』

 

対空砲火が宇宙を舞い来る機体を追いかけ回す。古い時代の時限信管が炸裂し、敵機の腕をもぎ取るそれでもなお近付く。

うん!?バスターは何処だ!

 

 

「直上から高熱熱源!」

 

死角にまわられたか!映像が出たときには既に撃たれる寸前、最早これまでか射出された光がこちらに近付くそして、接触する前に他方から来る光に打ち消された。

この方角間に合ったのか、あの赤き機体が映像に映りその数秒後バスターへ黒いジンが斬りかかっていた。

 




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第27話 トラウマ 大きな精神的ショックや恐怖が原因で起きる心の傷。

アークエンジェルとコープマン小艦隊がクルーゼ率いるラクス救助艦隊→ラクス弔い合戦艦隊と戦闘を開始した。その戦闘は序盤MSの戦闘能力によりクルーゼ隊がAAを襲撃し、それに対して押されぎみではあるもののAAが耐え。それに援軍としてMA隊が入り、攻防一体の戦闘となった。

 

その後新鋭のメガ粒子砲によるアウトレンジ攻撃により、コープマン艦隊はクルーゼ艦隊へと一方的な打撃を加えていった。射程から来る優位を覆すために、AAに向かっていた第2派MS部隊は目標を変更しコープマン艦隊へと直進する。

 

苛烈な対空砲火、シャワーのような防御を行い軽微な損害を与えるもジリジリと距離が縮まっていく。

そんなものを急かすように、隊列から離れたバスターはモントゴメリの艦橋を撃ち抜くべく射撃を開始した。

 

初撃で艦橋を破壊する筈だったそれは、1条のビームによって打ち消された。それは流れるような機動をし、赤い尾をひく。それに気を取られたバスターは一機のジンに奇襲を許した。

 

 

~マイケル~

 

おお、まるで雲蚊だな。どうもマイケルです、今ザフトのMSに応戦中なんですよでね、リニアガン結構良い仕事してくれるんです連射は効かないけどね。

ジンくらいの装甲なら簡単に貫通するし、イヤー捗るね。

 

え?狙撃してるのかだって?そりゃそうだよこの機体本来の用途は偵察用だからね。狙撃とかも出来るからそれを実践してるんだ。もっとも本来は隠密行動を行っての狙撃だから、こんな間近での戦闘は想定してない筈だけどこの際構わんさ。

 

今のこの機体に複数の相手は出来ない、したらオーバーヒートの上スクラップだ。おっと、キラ君が危ないね!

 

ストライクに接近するイージスを狙撃する。

 

ハハ、いくらかフェイズシフトと言えど、こう何発も食らっていてはバッテリーが持つまい!

 

「おい、マイケル技師聞こえてるか?」

 

『なんだねフラガ君』

 

「俺はジン相手にMAと連携して何とか追っ払ってるんだが、モントゴメリの方に敵が行ったみたいだ。援護に行ってくれよ」

 

『了解した、アークエンジェルを頼むぞ。』

 

複数の相手は出来ないと言ったな、あれは嘘だ。機体に無理させりゃ大丈夫だないけるいける。

途中止めに来たやつもいたけど、そいつはリニアガンでコックピットをシェイクしてやったよ。

 

ちょうど弾切れ、ジンの欠点はラックがあまりにも少ない事だ、これだとせっかくある剣が使えないんだねぇ。

と右腕で腰の左側に付いてる剣を握ってバスターへ直行さ!

そしてちょうど撃ち終わって何かに困惑気味のバスターへと突進しつつ下段より剣を振り上げる!

 

そしたら結構良い反応するんですねぇ、なんとあのライフルで防御した来た。でもねぇ棒術を知らんと見える、なら叩き潰すまでよ。確かにPSは硬い、でもね関節は非常に脆いのだよ!

 

上から叩く叩くそしたら相手は横に薙いできたから、そんじゃそれを逆手に取って相手の後部へ、したらば空かさず剣で腰に付いてるライフル駆動系をひっぺがす。

よしよし、それでそれが壊れたならもういっちょ今度は腕で殴りに来るから、それを手首を掴んで相手の肩を掴むように逆にするこれで、肩の関節駆動系はいかれる。

 

これで左側武装と左肩は使い物にならない、さあどうする?こっちにゃコックピットを潰す術はないんだ、撤退すりゃ良い。そうすりゃこっちも万々歳だ。

お前がいなくなりゃ、支援機が無くなる。そうすりゃ他の連中も諦めるだろうから行ってくれよ。さもなきゃ四肢をもいで拿捕してやる。

 

うん?引いた。潔い?いや。

 

後ろを振り返るとジンの残骸が空間を漂っていた、よもやたった2分で8機を落とすとはもう自分の手足だな。

 

 

 

~コゼット~

 

本当に鬱陶しい!ジンがいっぱい群れて。あんた達の攻撃じゃ、この機体は傷つかないの!

重斬刀を持ってるけど、きっと関節部分をやろうとしてるに違いない。

 

「コゼット、敵は焦っている。冷静に判断すれば落とせない敵ではない。ただ反応速度が良いだけだ、意表を突けば簡単に事は運ぶ、それよりも後ろを警戒することだな。」

 

『わかってる!』

 

後ろからデュエルが攻撃してくるなんてね!

混戦でライフル使えないからサーベル勝負なんて、薙刀を持ってるこっちの方がリーチはあるの。

 

『いい加減鬱陶しいの!さっさとどっか行ってよデュエル!』

 

「なんだとぉ?貴様女か!」

 

『女でわるいかぁ!』

 

薙刀を下に崩し柄のPS装甲の肩当て部分をおもいっきり、左肩肩にぶつける。凄い衝撃の筈だけどなかなかタフね。

 

「貴様コーディネイターだろ!どうして俺達と戦う!」

 

『はぁ?私がいつからコーディネイターだと言ったの?私は純粋なナチュラルだ!』

 

「なに!?」

くそ、数が多いフラガ大尉なにやってんのかなぁ。この数、私とキラを狙ってきてる確実に落とそうとしてるのか?いや、何かおかしい私が相手どってるのはデュエルとジン4機キラが相手してるのは、イージスとジン6機…しかも動きが鈍い、まるで拿捕しようとしてるみたいに…。

 

『キラ応答して!ブリッツがいない!アークエンジェルがやられる!キラ!』

 

「っくコゼット、無理だこんな数相手なんて。」

 

『それでも男?!気合いでって、何とかしなさい!CRD操縦任せた私は索敵に専念する!』

 

「了解した、だがどうやって見つける。」

 

何か手はないか…?あれは何かが近付いて、アークエンジェルに!

 

AAに近付いていたそれからビームが発射され、何もない所に命中しブリッツが姿を表した。嘘、ミラージュコロイドをどうやって見抜いたの。

 

その後その謎の機体はブリッツを相手しながら、私たちに取り付いている機体をどんどんと破壊していく。

さながらロボットアニメの主人公だ。

 

「そのMSのパイロット大丈夫か、君は新造艦の護衛へ行ってくれ。もう一人を助けてから話をする。」

 

一方的に言って言っちゃった。私が苦労して戦ってた相手を赤子のように…凄い。しかも女性の声だった。

 

「赤い流星か…コゼット、あれには負けたくないものだな」

 

『私じゃ勝てないよ』

「そんな事はない、あれはきっとNTだ。でなければあんな動き考えられん」

 

『NT?』

 

ニュータイプってなんだろう、コーディネイターの一種かな?

 

 

~ニコル~

命からがら逃げてきた。あの時僕は確かにミラージュコロイドを展開してレーダーにも視界にも映らなかった筈だった。でも、あの機体はそんなの関係なく僕を殺そうとしていた。生きてるのが奇跡だ、あの時恐怖にかられ一瞬だけど避けるのを辞めた。

 

それが功を奏したのか、左腕だけ持っていかれた。戦意喪失してたからなのかその後執拗な攻撃もしてこずに命拾いした。

漂っていた僕なんかよりも、他のジンを狙ってまるで話しに聞く暴風雨みたいにストライクやゲイルの相手をしていた人たちはなす術なく、落とされていった。

 

撤退できたのは、僕を含めて6機。戦力の8割以上を損失して損傷していない機体は無いという程に、一方的にやられた。あんな敵どうやれば勝てるのだろう。

 

ディアッカも謎のジンと相対して手酷くやられた、幸いだったのは向こうがPS装甲を貫通可能な装備が無かったこと、もしあれば撃墜されていたと。

 

一体ぼくたちは何と戦わされたんだろうか?クルーゼ隊長が出した撤退信号がなければきっと全滅してた。

 

「おい、ニコル大丈夫か?」

 

『イザーク…ええ、大丈夫です少し体に震えが来ているだけです。まさかあれ程の恐怖を味わうなんて今までで一番の恐怖かもしれません。僕は何も出来なかった、僕はただ見ているだけだった。』

 

なんでだろう、自然と涙が溢れてくる宇宙だから涙は流れないけど、目が水に濡れている。

 

「俺は相手と話をした。俺と互角に戦っていたやつとだ、不意の通信だったがそれでも驚きだった。やつは女だったしかも声は、俺達と同じくらいの歳だそれでいてナチュラルだと。正直自信を失うな、だけどなニコル俺達は生き残ったんだ生き残ったのなら次がある。だからそのとき挽回しよう。」

 

『イザークがそんなことを言うなんて、大丈夫ですか?アスランとディアッカは?』

 

『あいつらはあいつらで問題が出たみたいだからな。それを修正して次に生かすんだろう。』

 

そうですね、弱気になっている場合じゃ無いですね。ミラージュコロイドが効かないなら正面から戦うしかない、でも腕は相手の方が上数でも…手の撃ちようが無いですね。

 

なら敵艦を盾にして闘えれば、何とかなるでしょうか?

 

 

 

~ナタル~

 

艦の損傷は軽微。一部ラミネート装甲が剥離した部分があるが、そこは主砲の近接部でメガ粒子砲にはあまり効果が見られないのか… 帰還したマイケル技師に聞いてみたところ

 

「ああ、それは仕方の無いことだ内包するエネルギー量が違うからな。最悪ラミネート装甲は無くしてしまった方がいいか?いや、そうでもないか?…」

 

自分の世界へと潜り込んでしまったためそれ以上聞くことは出来なかったが、それでも今は必要かもしれない。ローラシア級の砲撃は防いでいたからな。

 

それよりもドレイク級のローが心配だ。モントゴメリを庇って艦艇に大破判定が出ている。総員退艦が命令されている頃だろう、艦自体に充分な余裕がある本艦に、移乗することになっているが指揮権は誰が持つことになるだろうか?

 

そういえばGATシリーズに似た機体が一機入ってきた、噂に聞くパヴリチェンコ少佐だろうか?もしもそうであれば私は非常に嬉しく思う。戦力としても、私の目標の人としても実際に会ってみたい。

 

艦長は私に気を遣ってか格納庫へ行っても良いと言った、拒否したのだが押しきられてしまった。

フラガ大尉にも気を張りすぎだと、もう少し柔らかくしても良いのだろうか?あれはヤマト君か。

 

『キラ・ヤマト、こんなところでどうしたんだ。』

 

「ナタルさん実はフラガ大尉にここで待てと言われたんです。コゼット達も今に来ます。」

 

全員会うように言われたか、私と同じと言うことだろうか私も彼らと同じく、気を張りすぎだと…納得は行かないが会って損はない筈。

 

すると向こうの機体からこちらに向かって来る人がいる。金髪で凛々しい姿、映像で見るよりは小柄で私より背が低いだがとても覇気がある。

 

「遅れてすまない。君たちがこの艦を護っていたパイロットと指揮官かな?

私はリディア・パヴリチェンコ少佐だ。以後よろしく頼むよ。」

 

一人づつ握手をしていく、その手に触れたときコゼット曹長は一瞬呆けていた何かを見ていたのだろうか?

私も掴むと、足元が透けるような感覚に襲われたこれは、いったいなんだと言うのか?

 

 

 




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第28話 集結する、言われる、降下する、憑いてくる

コープマン艦隊と行動を共にしたアークエンジェルは、見事ザフトの艦隊の撃退に成功した。その功労者はキラでもありコゼットでもありフラガであるが、その成果を塗りつぶす程の輝きがそこにはあった。

 

赤い流星、リディア・パヴリチェンコ少佐。彼女が敵に飛び込み瞬く間に撃墜していった。もし彼女がいなければ艦隊は全滅していた事だろう。

 

そして、コープマン艦隊とアークエンジェルは本艦隊と合流するため地球軌道上へと集結していった。

そこにあったのは非常に大きな艦隊、これ程いればザフトも手を出し辛いであろう威容を誇っている。

 

一方またも敗北を喫したクルーゼは、最早これまでかと思われたが一矢報いるべくヴェサリウス単艦での追尾を開始した。この追尾は意外なことに気が付かれない、いやレーダーが全く効かない中で、その機動性を生かすこと無く漂うように、慣性に任せて移動していた。 そして、後部に牽引ワイヤーを接続し降下カプセルを牽引した。

そうすると熱源を探知することは愚か、姿すら機能停止した艦とコンピューターは判断したのだろう、その脅威は一人を除いて感じることは無かった。

 

しかし、動き自体が救助しているように見え、もしも攻撃すれば戦時と言えど批判は免れない。そんな人道に反する事を彼女はしないだろう、クルーゼはそれを逆手に取った。

 

 

 

~コゼット~

 

この人があの機体の人…なんかニュース映像で見たことあるなぁって思ってたら、確か連合の対MS戦のトップエースじゃない?凄い凛々しいというか、大人の女性?キリっとした目オーラが漂ってきそうな、気が強そうな感じ?女帝?

 

でも初対面でこんなに柔らかく接してくれるんだから、好い人なんだなぁと、最初の言葉は《皆を護ってくれてありがとう、君たちのお陰で多くの命が救われた》だった。深々と頭を下げるのには驚いた、いったい最初の印象はどこへと行ったのだろう。

 

それと、ナタル少尉がぎこちない緊張してるのが丸分かりだ、きっと憧れの(ひと)なんだろうなぁまあ頼もしい感じは解るなぁ。しかもあの年齢で少佐だもん。劣等感とかは、無いんだろうなぁ純粋な憧れでも理解とはほど遠いかな?

 

「君はコゼット・スパロウ曹長で良いかな?もしかしてマイケルさんのご息女?」

 

『はい、父はあの筋肉達磨です。父と知り合いなのですか?』

 

「ああ、昔載っていたゼロの改装やCPUのアップグレードとか色々。私の機体の開発に深く関わっている人だからね、私にあって直々に変更点を聞かれたときには驚いたけどね。」

 

そうか、宇宙軍、海軍、空軍、陸軍様々なものに首を突っ込んでいたから、私たちに会えなかった訳か…。少しは自分の体を労りなさいよ。

そうだ、CRDが言ってた言葉の意味を知ってるかもしれない。

 

『あの、ニュータイプと言う言葉に聞き覚えは有りませんか?』

 

「ニュータイプ、そうだね。聞き覚えはあるよ、いったい誰から聞いたかは知らないけど。ただ私なんかよりも、マイケルさんに聞いた方が早いと思うな。」

 

『CRD、私の機体の制御を司るシステムが貴女のことをそう言ったのです。』

 

「CRD…シャアか。」

 

『え?』

 

「いや、何でもないそれよりもそろそろ次の人と話をしたいんだけどね。」

 

『すいません』

 

ニュータイプって言葉を知ってるって、父さんの方が詳しいってまさかCRDの中に組み込んだのは父さん?開発者だからそうかもしれないけど、それにしても何でそんな意味不明な名前をいれるかなぁ。

 

それからキラの順番になって色々なアドバイスをして行った。それから私たちの処遇を言われた、どうやら私達は軍属から抜けられないらしい、私は覚悟を決めていたけどキラはどう受け止めるんだろうか?

 

 

 

~キラ~

 

僕はどうすれば良いんだ…僕がストライクなんかに乗ったばかりに皆までこの艦から降りられなくなった。フレイも例外じゃない、むしろ事務次官の娘が戦場にいることが良いプロパガンダになると上が決めた何て言っていたから、より酷い。

 

僕たちの意思に関係なく事が進んでいってしまう、パヴリチェンコ少佐は僕らの事をかなり気に掛けているらしく、生き残る術を可能な限り教えてくれると言う。

僕はそんなことよりも戦いなんてしたくない、でもそれを世間が許さない。

 

しばらく歩いてると、戦闘前に聞いた声が聞こえた。フレイのお父さんがどうやらこの艦に来たらしい、娘の安全が確認されたからか嬉しそうな声だ。僕の事に気が付いたのかこちらに歩いてきた、僕に何か言いたいことが有るのだろうか?

 

「君がストライクのパイロットのキラ・ヤマト君かい?ありがとう、君のお陰で娘に直に逢えることが出来た。もし、君がいなかったらと思うと本当にありがとう。」

 

『いえ、あの頭を上げてください、そんなに畏まらないでください。』

 

「いや、これは感謝の気持ちだ。また何かあればこの借りを返したいものだ。ところで、君はコーディネイターなのかな?」

 

また、コーディネイター…やっぱり嫌われものなのかな。

 

「いや、そうか…君の両親は何を思って君をコーディネイターにしたのだろうね。私は一応ブルーコスモスに在籍していてね、反コーディネイターの立場なのだがこうして助けてもらったのだそれは悪い気はしない。」

 

『あの、事務次官?は、何故ブルーコスモスに所属しているんですか?』

 

「そうだな、最初はコーディネイターと言うものに嫌悪感を抱いていたからだった。だが、ある人物にあって自然の形にコーディネイターを越えることが出来ると、考えが変わってしまってね。」

 

『それって』

 

「君もよく知っている、マイケル博士だ。彼もブルーコスモス所属なのだよ?そうは見えないだろうが。無論私も彼も君を差別しようなんて思わない、寧ろ心配しているんだ。そろそろ時間になってしまうな。

フレイ、良いかい?何があっても無闇矢鱈に彼を責めてはならない、どんな理不尽があろうとも良いね?フレイお前も今日から軍人なのだから。」

 

え?フレイもなの?でも事務次官だからそんなの取り消せるんじゃ…

 

「国は平等を求める…それは私も例外ではない。だからこそ頼むよ、娘を護ってくれ。」

 

このとき僕に明確な護るものが出来た。

 

 

~マイケル~

 

小艦隊と共に地球軌道上に向かい、やっとこさ艦隊と合流した。AAはそれほど苦でもない道のりだったが、やはり老朽艦はちと厳しいようだ、艦隊に到着したらモントゴメリが機関不調を訴えた。

 

やはりあの時、エンジンに命中していたようだよくここまで保ったものだ。それは良いとして、ハルバートンね…ブルーコスモスとは違うが比較的優秀な人物か、それでも我々に対する嫌悪感は拭えないか?

 

「久しぶりだね、マイケル・スパロウ。まさか君が乗っているとはね」

 

『お久しぶりですね、艦隊の再編計画以来ですか?まさかこんなことになろうとは思いも由らなかったですがね。』

 

「最近君の親友はいろいろと動き回っているようだよ、何を企んでいるのやら。」

 

『どうです?楽しそうな盟主でしょ、ブルーコスモスに加盟してみては?』

 

「冗談、それよりも君たちに作戦の通達だ。我々はペガサス級6隻を持ってビクトリアに降下する。君たちは敵の根拠地ジブラルタルへ向かうと見せ、そのまま北上し地中海を渡る。その途中で砂漠の虎を引き付ける、それが君たちの任務だ。」

 

『何故俺にそれを?』

 

「君は近い内に研究所に戻る、その為には大西洋を越えなければならなくなる実践データも欲しい。地球上ではM粒子の影響で通信がレーザー通信に限定されていっている、セッティングはしたいだろ?」

 

『ああ、そうですね。わかりました、艦長達には話しておきましょうパイロット達には確りと自分の口で言ってください?そして罪悪感に呑まれてください。最後に一つ、ラクス嬢の処遇は?』

 

「本国で行うそうだ、君たちに託した方が早く着く。」

 

俺としてはそのまま大西洋連邦に降りたかったが、なるほど一大攻勢が始まるか。それならば仕方ないか。

 

そのまま艦長達の元へと行くと、途中でコゼットにであった。

 

「ねぇ、ニュータイプってなに?」

 

『唐突だな、そうだな新しい人類。宇宙空間に適応するために進化したものだな。今はこれくらいで良いだろう?大方CRDにでも言われたか、調べてみると良い。』

 

「ちょっと、それだけ?」

 

『今は忙しいからね、それよりもきちんと休憩をとりなさい。』

 

艦長達に話したらどう思うだろうか?

 

 

 

~ニコル~

 

僕たちはヴェサリウスのブリッジに召集されていた。いったいなんなのだろうかと、そう思いクルーゼ隊長を見る。

 

皆疲労を蓄積させた顔をしているなか、一人いつも通りに振る舞う隊長は実に頼もしい。

 

話を聞くに足付きの追跡を中止すると言う、それはそうだろうと誰もが思ったこれ程の損害を被れば仕方がない。隊長はまた査問会に召集されるだろうと言っていた。

 

だがそれよりも前に最後の一仕事をすると言う、それは僕らGシリーズのパイロットを大気圏に突入させ、足付きを追うと言うこと。

弔い合戦、許嫁が復讐のために地球に降り立つ。実にドラマチックですね。

 

でも僕は、そんな政治ショー嫌です。

 

アスランを隊長にザラ隊が結成された、艦隊が過ぎ去った後、僕たちは密かに大気圏に突入した。足付きを追うために。




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第29話 砂漠あっつくない、テルミットの方が暑いね。

遅くなり
本当に申し訳ない
言い訳をさせていただけますか?仕事の関係で時間が取れなかったので、執筆が行えませんでした。

今回のものは些か無理矢理間が拭えないものです、お見苦しいですが何卒! 


アークエンジェルは降下した、ラクスを乗せて彼女の処遇は月ではなく地球で行われると言う。それはいったい何のために?少年達はそう思う、一人それを知っているものがいる。屈強な男がその秘密を握っている。

 

彼がブルーコスモスのメンバーだと言うことを少年達は知り、もしかしたら彼女に何かをするのでは?と考えた。だが、それにしても扱いが雑なのだ捕虜であるなら部屋から出ることなんてできない筈なのに。

彼女は色々と見て回る、そして自らの目で初めて見た光景に息を呑んでいる。陽炎が地を這い沈む紅き夕陽、それは少年達も初めてみる光景だった。

 

一方のザラ隊、それが到着したときバルトフェルドは歓迎しなかった。それは赤服と言うだけで全てを判断すべきではない、と言う彼なりの結論からだろう。

実際、地上・砂漠で戦闘をすれば彼等は足手まといとなるだろう。地上はコロニーのように管理された環境でないがゆえに、ザフト地上侵攻軍は予定の半分も侵攻出来なかった。

 

逆に地球軍は天候を読み、嵐に乗じた奇襲や大規模な水害を引き起こして度々ザフトの計画は頓挫している。

そして、それらはいつもザフトの方へ上手く誘導され周辺住民の反感を買った。いかにバルトフェルドが心理学を専門としていても、そこまで大規模なものは経験がなくそれゆえに、守りを固めなければならなかった。

 

 

~マイケル~

軌道上から砂漠のど真ん中に降りたのは良いけど、こっから地中海に向けて行くには、まずザフトの制空権から脱しない事には進まない。どんなにM粒子でレーダーが使えなくとも大気圏突入の際の発光は見るからに明らかだろう。

 

幸いだったのは、敵の根拠地から程よく離れた場所に軌道修正出来たことだ。お陰で絶景を楽しませる事が出来た、心のケアは大切さ!そんな事も有ったりしてるんだが、艦の幹部は忙しい。

 

「我々の任務ですがバルトフェルドを北アフリカに釘付けにする事です。何か意見はありますか?」

 

進行役はナタル中尉(昇進した)だ、技師ではなく純粋な士官として彼女の手腕は良い。ただ経験不足から来る判断の遅れなどがたまにあると言うので、こうして士官であるフラガとラミアス、そして多分野の俺に話を聞いている。

 

『そうだな、ではもし砂漠の虎と正面からの戦闘に陥った場合、君ならどうする?』

 

そう質問したら、正面からの戦闘はほとんどの場合こちらの不利となるが、バルトフェルドがもし前線に出ればそれのみを攻撃対象にするようだ。そして、頭を取ったらスタこらさっさと逃げると言う。

 

もし来なかったらさっさと特装砲を放って逃げると言った、牽制する事は良いことだが特装砲は大電力喰うからおすすめしないといったら、直ぐに考えを変えてきたりと真面目な性格が出ていた。

 

ああ、やっぱり艦長は彼女の方が良いだろう。ラミアスは優しすぎるし特装砲の使用をあまり良く思っていない、主に地上に対する汚染で。

戦争やってるから今さらなんだよな。

そんな事も考えつつ時間は過ぎていった。

 

そんなこんなで話は纏まり夜になったとさ、真正面からの戦闘にならないように誘導するらしい。

ふう、外は良い風が吹いている。うん?あれはキラくんかな。

 

『どうした、一人で黄昏て。』

 

「あ、いえ少し考え事をしてました。あのマイケルさんはブルーコスモスに所属しているんですよね。それなのに、どうして僕の事を心配したりしてるんですか?」

 

唐突だな。

 

『ああ、君はそういう人かい?人を人種で判断するのかい?しないだろう、寧ろ俺の方が化け物に見えるだろ、世辞はいらないそうだろ?』

 

頷いたな、しょうがない誰が見てもそう思う。

 

「あの、じゃあコーディネイターを差別しているって訳じゃないんですよね?だったら何でブルーコスモスなんかに」

 

『そうだな、俺はコーディネイターを哀れだと思ったんだ、生殖能力が他の人類と比べ遥かに劣る。それは生物としてあまりにも大きな欠陥だ、だからこれ以上増やしてはならないと考えてね。まあ、それだけではないんだが…』

 

腑に落ちないだろうな、俺が怪しい言葉を言ったから。

 

「それだけじゃないってどういう」

 

『ああ、俺にはコーディネイターもナチュラルも同じに見える。もっと言えば、俺はどちらも俺と同じに見えなかった、例えるなら人を蟻と同じと考えていた。酷い話だろ?今は違うが蟻が自分達は優れてる何て言っていても、鬱陶しかったと言うのが最初の所属動機だ、まだ煩くない方が良かったんだ。』

 

反応に困っているな

 

『そうだ、その反応で良いんだ…それが正常。おかしいのは俺だ今だって意識しなければ、そうなるかもしれない。君はそうじゃないだろ?』

 

 

~キラ~

 

何であんなことを聞いたのか、僕はこの艦で数少ないコーディネイターだからきっとそれが心配になったからかも知れない。

だけど、そんな僕の心配よりも自分の方が君よりも怪物だろ?と言ってあの人は僕を慰めた。

 

そんな事があった翌朝、艦内が急に騒がしくなる。

砂漠の虎が僕らを攻撃してきた、攻撃といってもヘリコプターが砂漠の影からチクチクとアークエンジェルを攻撃しているんだ。

 

艦が急加速していく、それまで艦があった場所に無数の爆発が上がる今のは危なかった。

 

「各員戦闘配置!パイロットは格納庫へ!機体に搭乗しだい各自発進する!」

 

 

ナタル中尉が焦ってる、そんなにも急な事なのか。

 

『キラ・ヤマト到着しました。』

 

「坊主早く載れ!おい、ゲイル飛行形態で出すぞ!ハッチ解放!」

 

艦のハッチが開くと空気が一気に流れ込む、コゼットはもう出るみたいだ。

ストライクに乗りコンソールを立ち上げると、また外から音が響く。どんどん精度が上がってきてる。

 

『ストライク発進スタンバイ完了しました。ランチャーパックで行きます!』

 

アークエンジェルのイーゲルシュテルンじゃ砲撃を狙撃なんか出来ない。だから、僕が何とかしなければ。

 

カタパルトからでて、直ぐに中央デッキに立つ

 

「ストライク、データリンクをする狙撃頼むぞ!」

 

『はい、データ貰いました。いつでも行けます。』

 

その直後、データが砲撃が来たのを示した。照準通りに当たってくれよ!アグニと、砲弾が直撃し空に花火が広がる。そして、バクゥの群れがやってきた。

 

 

 

~コゼット~

 

何でこんな大量に来るかなぁ!まるで雲蚊のように集まるアジャイルに苦戦しつつも追い払うことに成功したのも束の間、今度はバクゥとディンが来やがった。

 

『フラガ少佐!ディンの相手をお願いします!私は下のバクゥを何とかします。』

 

「了解、気を付けろよ!おい、坊主。狙撃はあの人に任せてバクゥの撃破に回ってくれ、このままじゃ不味いからな。」

 

バクゥは犬みたいに砂漠を縦横無尽に駆け巡る、ちょこまかと動いて、当辛いったらありゃしない。

そのうちキラがアークエンジェルから、砂漠に着地する正面から迎え撃つのか。

 

そのうち落下角度から距離を割り出したのか、スレッジハマーを無誘導で射出し始めた。バリアントも予測射撃で撃ってる。

 

父さんのジンは飛来する砲撃を誘爆範囲を計算して狙撃してる。暗算でやるなんて、頭大丈夫かな…。

 

「コゼット降りてきて!このままじゃ押しきられる!」

 

『キラ待ってて、今行くから』

 

数の上だと向こうの方が上なのに、どうして押し潰そうとしない…戦力を量っているの?それとも別の何かを待って?あれは何?ジープ?

 

こっちに来い?何かあるのかな

 

そのうちそれに答えるようにアークエンジェルは舵を切る、突如地面が隆起したかと思うとバクゥが砂に呑まれていく地雷原が拡がっているのか。

何にせよ敵の敵は味方これが吉と出るか凶と出るか…。

 

 




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第30話 これはこれは王女様ではないですか。

バルトフェルドの攻撃を反らし艦を再び着地させたアークエンジェルは、その巨体を隠すために砂丘に降りた。

艦載機を艦へと収納していたが、ストライクだけは例外にジープと共に岩影へと誘われた。

 

そこにいたのは、一見みすぼらしいもの達。だがその実そこにある兵器はつい最近まで地球軍の主力を勤めていたものばかりだ、一部には対MS戦闘用に開発されたものもある。

 

いったい何処にそんな資金が有るのだろうか?そして、それを物語る人物がいたカガリ・ユラ・アスハ。オーブ連合首長国のウズミの実の娘だ、彼女を眼にしたときマイケルの目が細くなる、どうやら見知っているようだ。

 

護衛であるキサカは、それを感じ取ったのか警戒心を強めるがマイケルのオーラを感じているのか顔に汗が流れていた。

~マイケル~

 

おお、何ともまあ面白いことやってるじゃないか、キラに突っかかってるのは確実にカガリであろう間違いない。その昔、世界の王公貴族の舞踏会に招待されたことがあったが、その時の面影が今も残っているな。

 

それに横にいるのはキサカ、五年程前に如何にしてプレゼンをするか考えていた時にクラウンに誘われ参加した、アマチュアボディービル大会で一緒になった事がある。あの時のまま優れた肉体をしている、良い筋肉だ特に三角筋のキレが良い。

 

「お前、いや君はマイケル・スパロウ?!まさかここで出会えるとはな、君の考えた《人の起源に対する遺伝子的見解》読ませて貰ったがあれには感動をしたよ。申し遅れた、ジュバ国立大学で分子人類学を教えていたサイーブ・アシュマンだ。噂はかねがね。」

 

『こちらこそ、《進化と退化の相反》で有名なアシュマン教授ですか?私はマイケル・スパロウしがない研究者ですよ、こちらこそよろしく。』

 

周囲の眼など気にすることもなく、いきなり始まる自己紹介皆困ってるねぇ、それよりも。

 

『教授少しお話があるのです、何分内密な話が彼女について

 

「おお、実に面白そうですな。キサカ君、ちょっといいかね?一緒に話があるんだ。」

 

三人でテントに向かう、周囲は怪訝な表情だ。

 

「それでいつわかった。」

 

『見た瞬間解ったよ。全く自分達の国の指導者の娘の顔も区別できないなんて、哀れな少年達さ。』

 

「カガリ様の事は内密に…お忍びなのです。」

 

サイーブは座りながら、俺達はポージングしながら話を進めた。

 

『お忍びなのは解った、だが些か軽率すぎる。死んでしまったら、どういうつもりなんだ?まさか地球軍に味方するわけではあるまい?』

 

「面目次第もない、だが現実を見せる良い機会だと思ったのです。」

 

まあ、解らなくはない。オーブが置かれている現状を、外側から見るのは良いことだ、だが中立国の王族の娘が敵対していた等知れ渡ったら当然戦争になるだろうなぁ。

なにやら、外が騒がしいが

 

「どうしたというんだ、少しは落ち着かんか!」

 

「タッシルが攻撃を受けてるんです!」

 

報復攻撃ね、良くやりそうな手だよ。だが、これで民間人に手を出していたら国際問題に更なる負担が来るだろうなぁ。

 

 

~コゼット~

 

ここに来て早々にまた出撃?まったく、ゲイルのコックピットに乗ったたままだったから良いけど。

 

「コゼット少尉、直ぐに発進して。キラ少尉もアークエンジェルに帰投して、アークエンジェル直ぐにでも発進します。」

 

あんなに苦労してここに来たのに、また見つかりに行くなんて悪手打ちたくないんだけど。

 

「まて。コゼット、お前の機体はSFS(サブフライトシステム)の役割もある、ストライクの換装後ストライクを載せてタッシルに向かえば良い。」

 

まじで、あんな重いもの載せて飛ぶことできるの?この機体。うっ、確かに最大100tまで載せて飛べるけど、本当にやるとは思わないよぉ。

 

『わかった。キラ、早く換装して上に載るの。良い?』

 

果たして間に合うか…

 

 

 

結果として間に合わなかった、それでも撤退していくバクゥを確認出来た。「明けの砂漠」の若い人たちが盛んに何か言ってたけど構うもんか。

 

父さんが追い付いてきて、若い人たちの乗ってきたトラックやらなにやらのバッテリーや駆動系を弄って動けないようにしてる。暴走を止めるためには仕方がない。

 

そして、バクゥは私が撃墜して見せた、勿論キラも戦闘に出てバクゥを見事に撃破!したんだけど、どうも後味が悪いものになった。

 

町の被害は建物と食糧だけを破壊していった、たぶん見せしめと自分達に降るようにしているんだと思う。

だけど、これじゃあ餓死しろって言ってるようなものだ、この作戦を考えたバルトフェルドは人の心が無いのだろう。やってることが20世紀初め頃の戦争と同じ。

 

目的のためには手段は選ばない?それとも、恐怖政治で周囲を統治するのか、協力者には甘くして牙を折ってからじわじわと絞め殺されていくのか。この敵、なんか人の動きとかに詳しいのかな?

父さんに聞けば解るかもしれないが、解りたくもない。

 

艦内の食糧を分け与えた、これで一月は持つだろうレーションみたいなものだけど何とか凌いで貰いたい。

 

「皆さんお怪我はありませんか?まさかこんなことになっていようとは、私はこんなにも何も知らなかったのですね。」

 

ラクスが労いの言葉と、食糧を配って…?何でラクスがいるの?艦内で炊事の係についているんじゃ…。

 

「もう、ラクス次にいくわよ。子供達が飢えちゃうかもしれない。」

 

「わかりました、それでは皆様失礼します。」

 

なんか、フレイと意気投合してる…いったい何があったんだか。

 

 

~ナタル~

 

どうしてこうなった…私の周りには今回の戦闘に巻き込まれた無傷の子供達が群がっている。

確かに私は子供達に少しでも元気になってもらおうかと、少ないながら私物で持ってきていたチョコを与えたのだが取り囲まれている。

 

『す、すまないもう無いんだ、何か別のものを用意するから少しまっていてくれ。』

 

うう、子供は苦手だ何を考えているかわからないから、誰か助けてくれないだろうか?

そう思っていると向こうから、フレイ・アルスターとラクス・クラインがやってきて子供達を導いていった。《美味しいお菓子がありますよぉ~》と良いながら。

ありがたい、今度何かお礼をしよう。

 

暫くいたが、その後艦へと戻り今後の予定を艦長と話した。

今回の件は私たちにも一応の否はある、そこで彼等と一時的な共同戦線を構築し、バルトフェルドをここに釘付けにしようと言うものだ。

 

それに伴って持久戦になる可能性があるので、必要な物資の買付をする事になった。

まさか、こんなところでこのようなことになろうとは、昔の自分が聞いたら何と思うだろうか?

 

出発の当日になって、人選を間違えたと思った。あの筋肉だるまが参加しない何て、予想が出来なかった私を殴りたい。

 

「俺は行かないぞ?こんな奴が近くにいたら怪しいだろ?勿論キサカ君も行かない、フラガは顔が割れてる。だとすると、最近トレーニングを始めたキラ君がいるじゃないか。いくらコーディネイターだからと言っても、あれ程の逸材なかなかいないからね。」

 

『ですが、こんな人選では余りにも無謀すぎます!』

 

「じゃあこれを持っていきなさい。」

 

私に手渡されたのは、銀色の何か太いペンのような…でも後にダイアルが三つ?ついてるが

 

『これはいったい』

 

「それはピカッとやって相手の記憶を消去するものだ、昔軍に作ってくれと言われたんだが、採用前になって大統領が代わってね。非人道的と言われて不採用になった奴だ、もしも正体に気付かれたら時使うと良い。上手く相手の記憶を操作するんだ。

マニュアルはこれだ、読んどいてくれ?」

 

こんなにも扱い辛いようなもの、どうすれば良いんだ…それと、私は軍のいや国の暗い部分を知ったのかな。

私はいったいどうなってしまうのだろうか、帰国が少し怖くなって来た気がする。

 

 

 

 




この話で出てきた学術はフィクションです、真に受けないでください。
なお、分子人類学という学問は存在します。

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第31話 ナタル『こっこのピカッとする装置…私はどうすれば

貯蔵された物資を焼き払われたタッシルの住人達、その失われた物資を調達するために一時的な協力関係を築いたアークエンジェルは、人員を直近の都市に向かわせる。

 

そこは、砂漠の虎の根拠地バナディーヤ。敵のど真ん中、顔がばれていないもの達有名でないもの達で編成されたそれは、お世辞にも頼りがいのあるものではない。

軍人ではあるが、どちらかと言えば肉弾戦が不向きなナタルは心配を胸に秘めつつも買うものを選ぶ。

 

だが、彼女はある事に頭を突っ込んだのだ。非合法な手段で手に入れたものを買い漁る自分に、彼女は苦悩する。仕事の邪魔だと切り離したキラ達に付いていきたい衝動に駆られるも、何とかそれを押さえ込む。

 

だが、非合法的な事を虎が放置する筈もなく彼女はいつの間にか囲まれていた。そして、彼女は筒を使った。

 

~ナタル~

 

私だけ渡されたあの筒を使って周囲のものに光を浴びせた。特注のサングラスをかけていれば記憶も大丈夫だというが…この業者にも影響が出てしまった。

 

え~確か新しい記憶を植え付けなければならないんだから…なんとしようか?

 

『え~と、襲撃者の方々貴殿方は何も見てないし、何も問題は無かった。全ては誤報だった、それでは皆さんお帰りください。』

 

「ああ、わかった。おーい誤報だってさ、撤退するぞ!」

 

何とかなったのだろうか…あ、業者。

 

『え~と、貴殿方は私たちに正規の価格でこれらを提供する。それは何の問題もない、それからこれからはいつも正規の値段で取引することだ!』

 

これで、良いんだよな。でも何だろうこの罪悪感は、あの男はこんなものを平気で渡してきたが倫理観が破綻しているんじゃないか?

 

ともあれ私の任務は終了したが、さてヤマト少尉たちは今頃どうしているのだろうか?

 

 

~コゼット~

 

へぇ~結構賑わってるんだ、ナタル中尉と別れて私たちは買い出しではなく敵情視察という名の観光をしている。虎さんに占領されてるって聞いたから、どれ程酷い状況かと思ったけど。

 

道は綺麗だし、お店は賑わってるんだ。父さんが見たら「人心掌握にたけている」なんて言うのかも知れない。

ちょうどお昼にするみたい、カガリが私たちにケバブを、御馳走するみたいなんだけど…隣のおじさん誰?

 

サングラスなんか掛けちゃってさ、まあ似合ってるとは思うけど、どうしてだろうか?違和感が拭えない。

私の分も買ってきてくれたけど、チリソースか…あのおじさん何でこっちを見て。

 

あっカガリが進めていたチリソースを否定して、ヨーグルトソースをキラに進めてる。

 

「おいっ!コゼットお前はどっちの方が良いと思うんだ!」

 

『はぁ、そんな下らないこと。私はね、和風テイストのわさびクリームソースが好き、勿論ヨーグルトソースもチリソースも良いと思うんだけどさ、それだって人それぞれだから無理強いは良くないよ?特にキラなんか、押しに弱いんだから。』

 

うっと言ってる、自分でも否定くらいしなよ…。

 

『ところで叔父さんは何者?私たちにいったい何の用かしら?もし、変なところに連れてく何てしたら虎が容赦しないんじゃない?』

 

「はっはっはっ、これは失礼した。私はアンドリュー、観光案内をしようと思ったのだがどうやらそうも行かないらしい!」

 

次の瞬間銃弾が飛び交う、〈青き清浄なる世界のために!〉〈砂時計に帰れ!〉等の言葉を発しながら撃ってることから、似非ブルーコスモスの連中か。

中にはコーディネイターも混じってる、こっちに撃って来てるから、もしかするとここには一般人がいない?

だとすると、あの不自然な男が狙いか?

 

こっちにも撃ってくるからめちゃくちゃだ、次に何処を狙うのか少しだが解る気がする。だけどこんなところで戦闘なんて。

 

暫くすると襲撃者は呆気なく敗北し、この不自然な男が隊長と呼ばれた。あぁこの人が砂漠の虎か、通りで変な感覚があったわけだ。この感覚、戦闘中にもあるこれは非常に役立つけどこういう時何をしようか?

 

暴れても仕方がないので、虎さんの後に付いていく。ここが司令部ねタージ・マハルに似せて造っているのか、後にあるのがレセップスね、あんなのがあったら誰も逆らえないか…。

 

それから建物に入ると私とカガリは女性に連れられ着替えることに。

 

『私は汚れていないので大丈夫ですよ?』

 

「いいえ、これは私の趣味のようなもの。それに、少し位は羽目をはずしても良い筈よ?」

 

そう言うものなのだろうか?でも敵地で羽目を外すのは難しいんじゃないかなぁ~、しかも周囲は軍人ばかりだし。

 

あれよあれよという間に着替えて、さあキラの元へと行くと何やら深刻そうな顔してるね。

それからカガリがブラフにはまってまんまと、キラがパイロットであることを見抜いた。

 

それから戦争談義さ、何処まで続くのかね

 

『たぶんキラは考えたこともないと思うけど、それは終わりは見えてますよ?』

 

「ほお、では聞くが何処までやれば終わるのかな?」

 

『上が折れたときです。』

 

バルトフェルド、彼は目を細めた。

 

「上が折れたときか…。それでは行き場の失った憎しみとかは何処に行くのかな?」

 

『それは、戦後考えることです。どんなに批判があろうとも、敗者は全てを受け入れなければならない。それが結果として次の戦争に繋がろうとも。』

 

「永遠に終わらない戦争か?」

 

『父さんは言っていた。人間は戦争をする生き物だと、昔から変わらない。もしそのエネルギーを宇宙の外に向ければ、より有意義な事に使えると』

 

それを聞いて私の事に関心を持ったのだろうか?じっくり見られた。

 

「そこの君、キラ君だったか?君はコーディネイターのようだが、彼女もそうなのかな?」

 

『いいえ、私は純粋なナチュラル。むしろブルーコスモスに近い、そうね貴殿方の天敵の娘とでも言えば良いのかな?』

 

これでぶちギレたら私たち死ぬかもな。

 

「はっは、面白いことを言うんだね君は。本当に面白いよ」

 

そんな事言っちゃって、顔は笑ってないよ。

 

 

 

~マイケル~

 

なにぃ?コゼット達がまだ戻らないだとぉ?それは大変だな、ヤバイね。

おい、君たちどうした私の前に立ち塞がって私の持っているM2を指差して何処に行くかだって?

虎を狩に行くのだよ。

 

目立つからと行かなかったのは貴方でしょ?

ハッハ、ドケジャマダ…ナンダ銃ヲ向ケルカ。

解ったよ、落ち着こうか。少しは信頼すべきか。

 

ああ?後に誰かいるのか、サイ君どうかしたのかな?まさかMSに乗ろうとしているんじゃないのかい?その反応は図星か、止めておけ今の君では無理だ。

 

それでも動かしたいか?キラにばかり負担を強いらせたくないか…。なら手伝ってあげよう、君がMSに乗れるように訓練をね。何簡単なことだ、君はただ1日寝てれば良いそうすれば君はパイロットになれる。

 

彼を連れて医務室に行く、ちょうど脳波測定器がある場所に。

 

良いか今から私はこの薬を君に投与する、これが何かだって?これは一種の超人薬のようなものだ、極東のとある国が死刑の代わりに導入したものの改良型。その試作品だがね?軍では非合法の拷問に使われる。

 

何で造ったか?そうだな、俺が昔人をモルモットか何かだと思っていたとき、ふと考え付いたものだ。これで俺と同じ境地のものが現れるのを期待して…皆廃人になったが。いつの話か?そうだなDSSD加盟の一年程前だから15の時か。まあ良い。

 

効果は5分間を30日とする体験をさせること、つまりは夢の中で君はMSの操縦を習うのだ。やりすぎれば廃人になる、その覚悟はあるかな?あるんだったら手を上げろ、ほおそこまでか。

 

よし解った、プログラムは既にセットした君は夢の中で凡そ三年の間過ごす。その間にリタイアしたい場合は自殺しろ、それに耐えられれば晴れて君はパイロット適正を持つ。

 

だが肉体には反映されない、そのギャップに君は耐えることが出来るかな?それでは良い旅を、私は君に誰も近づけないようにするよそれでは、お休み。

 

 

 

 




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第32話 対談後の余韻

投薬されたサイは浅くそして、非常に濃い夢の中へと沈んでいった。一部のクルーにサイ君がどうしたのかと尋ねられればマイケルは、「どうやら疲れが溜まっているらしいから、睡眠薬を投与した。起きたら別人のようにハキハキ動くだろう」そう言った。

 

そんなサイを見てフレイは悩ましげな顔をする、彼女はサイを看病すると言ったが、君には別の仕事があるとラクスの元へと連れ去られた。

そこでマイケルは一通り終わると、トイレへと駆け込む。どうも大きいものだ。

 

暫くトイレでじっとしていると、頭が冴えていく。そうエネルギーCAPの最後のピースがこの時鮮明に広がっていく。彼は急いでペンを取り出しドアの後に、証明を書いていく、完成したときドア一面に綺麗な文字が浮かび上がり、その式を見る人が見ればこう言うだろう。「美しい」と、だが大便中に書いたものである。

~マイケル~

 

ふう、いろんな意味でスッキリした。さて、どうやって連絡をとろうか…あ、海底ケーブルがまだ残っていた筈だなあれなら傍受されないし、M粒子の影響も受けないから使いたい放題。そのためにもまずは、欧州まで行かなくては。

 

そう言えばあれから何分たったか、あれ?一時間もトイレに籠っていたのか、人が少なくてよかったもしもいたら怒鳴られていたよ。

さて、これを後は記憶の中にインプットしてと、水性インキで良かったわ。

後は部屋に戻ってシミュレーションをするか。

 

~二時間後~

 

完璧、後は送るだけだな。さて、サイ君の調整が終わった頃かな?精神を病んでいなければ良いのだが…

 

医務室に到着すると達観した表情でこちらを見るサイ君がいた、おお落ち着いているな。少し雰囲気が変わって、疲れたような感じがするがそこから溢れ出す、オーラ?は実に素晴らしい。

 

『やあ、気分はどうだね?まだ、夢と現実の区別が出来ていないかね?それとも、身体が鉛のように重いかな?』

 

「ええ、鉛のように重いですね。これが現実の肉体…やっと戻ってこれたと思ったのですが、これでは戦いに参加出来ない鍛えなければ。足に力を入れるのすら加減が必要とは。」

 

上出来、生活に慣れるのに数日掛かるだろうが戦力には必ずなるだろうな。もっとも戦いが終わった後は、とてつもない筋肉痛に襲われること間違いなしだ。

それより

 

『どうだったかね?絶望的な一年戦争の世界は、あんな救いの無い設定で心が折れなかったのは見事だよ。』

 

「プラントに良く似た国の独立戦争、しかもその国の出身者とは思いもしなかった。それにしても、良くできていたよまさかあんな死に方をする人をこの眼いや、心で見ることになろうとは…。」

 

そりゃね、一年戦争だからね。あれに比べりゃこの戦争なんてぬるいぬるい、まだまだ人口が半分になっていやしないからな。

 

『これから君にはパイロットになって戦ってもらう。勿論、最初は肉体との噛み合わせもあるから無理はさせないが、どうかキラ君や娘がおかしな方向へ行かないように助けてくれ?それが、私と君との契約だ。良いかな?』

 

さあ、如何にして違和感なく彼は過ごせるだろうか?実に良い実験に…俺は何を考えているんだろうか?仮にも娘の友人だろうに…

 

 

 

~ラクス~

 

あ~、暇です。お外に出られるのは良いことなのですが、皆様お忙しいようで私の相手をしてくださる方はいないのかしら?

 

『フレイ様、キラ様のお帰り(*´▽`)が遅いです。』

 

「そんな事気にしてるの?だいたいあんたは捕虜なんだから、そこはきちんとして?まったくどうしてあんたなんかを見張らなきゃ」

 

『私が捕虜で、シーゲルの娘だからですわ。それに、私は一応は民間人ですの、なら軍人である貴女方はそれを護らなくてはなりません。それに、今の私はプラントに戻る気はありませんので。』

 

フレイ様が怪訝そうな顔でこちらを見ている。

 

「はあ?何であんたがプラントに帰りたくないの?あんたのパパだっているのに」

 

『私あそこが嫌いです。狭くて密閉されてる、まるで籠の中の鳥です。それなのに、あの中にいる人たちはさもそれが当たり前のようにしている、そんなのおかしくありません?宇宙は広いのに、地球はこんなにも大きいのに。だから私にとってあそこは仮の住まいです。』

 

「ふぅん、あんた変わってるのね。普通プラントに住んでるコーディネイターは、もっと自分達に自信過剰になってると思ったのになんか拍子抜け。」

 

私はどちらかと言えばプラントでは少数派、もっと言えば父よりも保守的と言えば良いのかな?プラントがプラントとして独立するには、今は大きな問題がある。

 

私たちは借金の形を踏み倒そうと戦争を計画していた、それが事の発端だ。プラントの建造費の凡そ9割は理事国からのお金だ、だからこそ《プラント》なんて名前になってる。それを父を含めた黄道同盟は無視していた、だから理事国が反発したんだ。

 

『私も、以前フレイ様がコーディネイター、コーディネイターばかり言っていたので、そんなにも嫌いなのかしら?と思っていたのですが、そうでもなさそうで安心しました。』

 

フレイ様は良い意味でも悪い意味でも純粋な方、この方をどうにかするつもりはありませんが、それにしても友人となれば遥かに話しやすいお方。アスランなどよりもよっぽど話しやすいですわ。

 

アスラン、私はロボットではなく貴方に友達になって欲しかったのですよ?

 

 

 

~コゼット~

 

あの後、無事というかなんと言うか何も無いのに違和感の残る脱出?をしてナタル中尉と合流した。

あのバルトフェルドは、本当に砂漠の虎なのだろうか?聞いていたものと少し違う、勿論狡猾なのだろうが寧ろ学者みたいなも立ち居振舞いだった、きっと本職は違うものなのだろう。

 

アークエンジェルに戻った後、弾薬や父に頼まれていた部品等を降ろして暫くすると新戦力のスカイグラスパーが艦内に鎮座していた。

やっと形になったようで、整備兵の人達は疲れた顔をしながら搬入作業を行っている。本当に頭が上がらないなぁ。

 

ふとシミュレーターに目が言ったブリッジ要員の皆がそこに集って、カガリが操縦していたみたい。まあ、なんとやら良い腕だ事本当にゲリラ?

 

『皆お疲れ様、シミュレーターあるんだ。』

 

「お、コゼットじゃんやってみる?ちなみに今一番スコアが高いのはカガリだぞ?」

 

『ふぅん、カズィお言葉に甘えてやるかな?へぇ、結構な出来じゃない。だけど敵の動きがぎこちないものばかりね、これじゃあ実戦向けじゃないなぁ。』

 

そう言ったら皆なんか納得の表情と言うか、流石は本業みたいな感じをだしてる。なんか喋ってよ。

 

『あ、エキスパートモード。へぇこの基準になった人は解除されるの、えっとカガリも出来るみたいだよ。うん?敵のパイロットを選んでください…ラル、アズナブル、マッシュ・オルテガ・ガイアあっこれは三機なんだ。

へぇ、ヤザンだとかもあるの、この???・??って何だろう、機体はストライクに似てるけど。全部に勝たなきゃいけないんだぁ。カガリ、やってみる?』

 

興味津々の人達はその戦いを見るんだけど、結果は解りきってる。カガリは直ぐに負けた、ヤザンとか言う厳つい人に秒で負けた。あれ、下手したら今の私やキラより強いんじゃない?いや寧ろ数段上?

 

『ねぇ、そう言えばサイは何処にいるの?なんか見かけないけど…』

 

「サイなら医務室だよ。なんか急に倒れたんだってさ、コゼットのお父さんが診察してるみたいだよ。」

 

はあ?あの人が診察…、確かに出来そうだけどなんか違和感がある。医務室にサイの気配なんかあったかなぁ。

行ってみるか。

 

あっ、サイ。おーいこっちに気づいてない?違う意図的に無視した?あっ、父さん。

 

『ねぇ、聞きたいことが有るんだけど』

 

「なんだい?」

 

『サイに何をしたの?なんと言えば良いか、彼の気配がまるで別人みたいなってるんだけど。』

 

「それか、そうだな彼の夢を叶えてやった。それだけだが?」

 

『本当に?もしそれが嘘だったら、一回銃で撃たせて。もし、私の友達でなにか実験でもしてみなさい?母さんに言って、それで私からは一生口を聞いてあげないから。』

 

「…そうか、解った。だが安心しろ?彼は少し勇気とそれを実現する事が可能な素養を手に入れただけだ。決して人体実験なんかしてないよ?」

 

この目は嘘か?わからない、いつも無機質な目をしてるから。

 

 




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第33話 砂塵と天馬

季節外れのスコールが通り、辺りに散り散りの雲が舞う。

それは突然だった、突如として行われた攻撃。地雷原はいとも容易く破壊され尽くし、守りを失った子羊達が逃げ惑うばかりである。

 

そして、周囲に影を見いだしバクゥの群れが大地をかけ、ジンがそれを牧羊犬を扱うように連携をとった動きで駆け出す。

 

その後を少し遅れてバスター、ブリッツ、デュエルが追い更に後からザウートが射撃体勢を整え、レセップスが指揮をとるかのように第2射を撃つ。

 

まさかの敵の動きにアークエンジェルは、万事休す…ではなかった。

そこ有ったのは、大きな大きなバルーンでそれは非常に良く似た形をしていた。

では彼等は何処へと消えたのか?

前線のバクゥはそれを見破ったのか、周囲に無線を翔ばすが応答がない、いや無線が通じない。

 

大きな影がレセップス上空を通り、雲の隙間から天使の姿が確認された。

その高度は優に3000メートルを越え、見事なまでにアークエンジェルは変わり身の術を行使した。

 

 

 

 

~ニコル~

 

《戦闘5時間前》

 

「ほぉ、君たちが敵討ち部隊の〈ザラ隊〉かね。まさかあんな砂漠のど真ん中で、さ迷っているとは驚きだよ。」

 

この男がバルトフェルド、どうも僕たちの事をあまり良くは思っていないようだ。厄介者が来たのかと言わんばかりに、僕たちを見る周囲の目はそうだった。

 

「お言葉ですが、われわれは評議会の命を受けここに降り立ったのです。足付き、あれを落とさなければ奴等に実戦データを提供する事になりかねません。」

 

アスラン、彼はきっとそれには大分前から気づいています。それでも敢えて行動に移していないんだから、どうしたのだろうか?

 

「そうは言うがね、我々も敵討ちに協力したいんだがヴィクトリア攻略への協力を打診されたんだ、そんな簡単に君達に戦力を割けられないんだ。地上は宇宙と違って、天候も敵だから今やらなければ我々の兵站が破綻してしまうんだよ。」

 

それでも評議会の命令を無視するわけにはいかない筈、バルトフェルド隊は本来異端児と呼ばれる人達の集まり、黄道同盟に反対した人達。その彼等が信頼を得るためには、それしか方法がない。

無駄に命を消費されようとも負けた彼等に、地上に送られた彼等に既に選択肢はない。

 

「それは重々承知です。ですが、我々の戦闘で今後の戦場の有り様は必ず変わる。それは間違いないのです。」

 

それでもなお、アスランは説得しようとする。彼等に選ばせようとしている、彼の性格からきっと断られればおれるに違いない。

そして、それに答えるようにバルトフェルド隊はヴィクトリア攻略部隊をアークエンジェルへと向けた。

 

 

《戦闘中》

 

そんなことも有ったなと、思えてくるけどこれは奇策に嵌められたと言えるのかな。

アークエンジェルが、航空機のように空を自由に翔んでいる。

 

レーダーや無線は効かないけど、それでもレーザー通信はある程度機能する。それでもこの高度は異常だ。あんな巨体が、宙に浮く事事態恐ろしいのにあの高度…どんな魔法を使っているのか?

 

それは一瞬の思考、次の瞬間レセップスの艦橋に敵の砲撃が命中する。その黄色い閃光が過ぎ去った後、ぐちゃぐちゃになった艦橋が見えていた。

 

刹那一機のバクゥが空から狙撃された、正確に上空から狙い打ちされたのだ。

見るに戦闘機?その上にジンが載っている、長大なライフルからリニアガンでこちらを撃っているんだ。

 

更にそれとは別に地上に降り立つストライクとゲイル、まるでこっちを誘っているように。

 

 

 

~マイケル~

 

おっほ、敵がわんさといるなでも犬は空は飛べないし、ザウートじゃ限定的な対空戦闘しか出来ないだろぅ?良いねぇ、フラガ君実に安定した飛行だ。この機体はどんなに改修しても所詮はジン改1だからなこうして、卑怯な戦い方が好ましい。

 

にしても、ナタル中尉良い作戦だM粒子の特性と、Mクラフトの上手い使い方をして敵を奇襲し翻弄する。なかなかに出来ることじゃない、元々搭載してあったダミーバルーンで敵を誘引するのも良いセンスだ。こんな土地じゃ見分けも付け辛いからね。

 

おっと、荒っぽいなでも落ちないように確りと操縦する辺り良い腕だ。さて、作戦通りバルトフェルドを殺せてれば良いがここに来て、実はいませんでしたなんて事有りそうだな。

 

あの機体はGシリーズ…降下していたかだがまだヨチヨチ歩き、早い内に仕留めておかねば不味いか?

 

『フラガ君、あのGシリーズ達が見えるかね?』

 

「ああ、見えてるよ。まさかあんたあれと戦闘するつもりじゃないだろな。」

 

『フフ、そのまさかだよ。コゼットにキラ君、敵の量産機は任せた!俺はGシリーズを足止めしておく、見事全機撃破してくれよ!待ってるからな!ヨシ、フラガ君上からの援護頼むぞ!』

 

「解った、あんたも気を付けろよ!」

 

『MSの性能の差が戦力の決定的な差ではないことを、教えてあげよう。』

 

グラスパーから飛び降りて、着地する瞬間にバーニアを噴かす。砂塵が飛んで辺りが包まれる、重斬刀を右上段に構え、左に小型の75ミリリボルバーを構える。

影が動いた!

 

こっちの動きに気が付いたのか、のっそりと回避をするが遅いなあ!

黒い盾、ブリッツか!重斬刀を盾で受け流すなら、内側に銃をねじ込む。関節駆動部に三射これで関節が砕け散る。

なぜイージスがいない、いや出撃出来ないのか?

 

 

~コゼット~

 

くっそあんな勝手なこと言っちゃって

 

『キラ、そっちにバクゥが行った回避して!』

 

さっきからキラの動きが早くなってきてる、凄い集中力だ私なんかと比べものにならない。でも、こっちだって!

砂塵を抜けてきたのがいる?あれはイージス?でも大気中で可変なんてしても、あの機体の推力じゃ意味は…そうか!

 

次の瞬間槍口が開きスキュラが放出される、それは決して良い弾道ではなく砂漠の下へと当たり周囲に硝子の蒸気を発生させた。

そして、CRDが私に言った。

 

「センサーだけに捕らわれるな、己の感覚を研ぎ澄ますんだ。そうすればまた一段強くなれる。」

 

来る!

サーベルが頭部を掠める、赤い機体が眼前に広がる。手首からサーベルを展開させて、横一線に切り結ぶ。

そこから敵は両方にサーベルを持って戦いを始めようとした時、ストライクの援護がやってきた。

 

これで行ける、勝てる!そう思ったのも束の間、向こうの砂塵が晴れると同時にジン改1が受け身を取りながら防御戦をしているのを目で見てとれた、押されている。

制空権はフラガさんのお陰でとれている、防戦をしているジンを助けていた。

 

辺り一面に広がるバクゥやジンの残骸が物語るのは、私たちの優位が崩れた訳じゃないと言うことを教えてくれる。

数を目減りさせた敵は、少しずつ後退していく。

 

指揮官のいない軍隊は、守りを固め始めていた。それに合わせてか、イージスは私たちから唐突に離れて艦橋の破壊されたレセップスへと逃げていく。

 

それを見たキラが後を追おうとして、私が制した。

 

『戦闘は終わったの、これ以上続けたら相手は死兵になる。だから、終わり。』

 

ストライクの外装から電源が落ちるのと、雲が晴れるのは同時だった。そして、その晴れ空から見えたのは6つの軌跡が空から落ちていくものだった。

 

そして、私たちは北へユーラシアへと足を向ける。

 

~ヴィクトリア基地~

 

そこは地獄だった、例えMSに載っていても頭上から榴弾の雨が降ってくる。辺り一面耕かされ、人肉が更々とした泥土と混ざり合いそれにハエがたかっている。

 

古い古い、塹壕戦が始まり早一月未だに簡易要塞をザフトは攻略できずにグズグズとしている。

これは一重にM粒子の影響と言えるだろう、レーダーの全く効かない戦闘では守りを固める方が遥かに有利で、連絡を取れない戦いを想定していないザフトは苦戦している。

 

攻略しようとMSが来れば、上からの榴弾が落ち水平面ではパワードスーツ(詳細設定資料)が75ミリ対装甲ライフルを構えて出迎える。

 

そんな時、ザフト。彼等の背後に6隻のペガサスが舞い降りた。そこから放たれたのは、αガンダムとそれに似た形状をしたよりシンプルなもの達(詳細設定資料)。

 

その動き自体はαガンダムに及ばぬものの、一人一人がザフトのエースに匹敵する。彼等は一挙に戦局を連合優勢へと傾けさせ、ザフトはここにヴィクトリア攻略を断念せざる終えない損害を被った。

 

更にバルトフェルド死亡の報が駆け巡り、戦意は地に落ちた。そこから連合の反攻が始まる。

 




バルトフェルド死亡

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第34話 地中海料理はお好き?え?ここは黒海だと!ならボルシチか。

こっからは、作者の腕の見せ所かぁ


砂漠の虎を打ち倒し、より安全な航路を移動すべくユーラシア大陸へと向かうアークエンジェル。

その後をザラ隊は追撃しようとするが、バルトフェルドの死んだ後の崩れた戦線を何とか立ち直らせようと、総力戦を繰り広げる南方方面軍への援軍を引き受けさせられる。

 

そんな彼等を尻目にアークエンジェルはユーラシアの防空識別圏へと到達し、久し振りの安全な航海に心を休めるときが来る。

そんな彼等へユーラシア連邦は大西洋の安全な航海のため、とある任務に従事することを依頼する。

ジブラルタル侵攻作戦である。

 

ジブラルタル、そこはスペインの南端アフリカとの境目。現在、ジブラルタル自体はユーラシアが征しているが、結局のところ両サイドを抑えなければ船舶が回航することが出来ない、故にユーラシアは腰を上げた好機を逃さぬために。

 

 

~マイケル~

 

やあやあ、激戦を終えてここ旧ウクライナのオデッサ基地に俺たちはいます。何をしているのか、だって?ここで補給を行っているんですよぉ、なんと塩が足りなくなってしまったから、最寄りの基地へと来たと言うことです。

 

ほんでね、ここには現在ユーラシア軍旧ロシア戦車師団が集結してる。どうやらここからトルコ方面へ南下して、ジブラルタルとヴィクトリアとの連携で3正面作戦を展開させてザフトを押し潰す算段らしい。

 

にしても、リニアガンタンクの数が尋常じゃないこの方面への攻勢に凡そ一万四千両がここにいる、いやこの方面に敷き詰められている。

正しく数の暴力とでも言えようものだ、いったい何処に隠していたのか。

 

子供達はそんな事関係ないと言わんばかりに、ボルシチに舌鼓を打っている。呑気なことだ、まぁそれくらい緊張の糸が張り詰めていたのだろう、こうやって糸が垂れるのがちょうどいいのかもしれない。

 

にしても、これ程の数の動員をするとはいったい人口の何%を投入する気だ?

話に聞くところによると、その殆どが志願兵でコーディネイターナチュラル問わず集まったのだとか。

おお、プラントよお前は憎まれているな、コゼットが顔を青くしているぞ?

それほど憎悪が満ちている。

『コゼット、大丈夫…じゃあ無さそうだな。この感覚怖いかね?』

 

「ねぇ、この感覚何なの?ニュータイプだとか、そういうものってこう言うのを感じたりするの?」

 

『かねがねそうだな、もっとも俺は少し事情が異なるが、そうだな。パヴリチェンコ中佐(昇進した)がいればもっとそういうのを教えてくれたかもな?彼女が一番強い力を持っているから。』

 

「ねえ、気になってたんだけどさ母さんはこの〈力〉?のことどれくらい知ってるの?」

 

『厳密に言えば力ではなく、遺伝子構造だ。X染色体内の塩基に通常存在しないものが加えられてる。俺は、それがこの力の元だと確信を持っている。母さんはそれを良く知っているよ、俺は全部話したからね。因に言うが、それと俺の肉体には何ら関係はないぞ?』

 

そろそろ出航の時間か。

 

『次の寄港地はヨーロッパ北部キール軍港だ。作戦には時間があるから、そこでショッピングでもしてくれば良いさ。ここよりも安心して準備が出来る。

それと、バジルール中尉も連れて行ってやってくれ。彼女もコゼットと同じ事を感じている筈だからな、気分転換をさせた方がいい。やってくれるかい?』

 

「ええ、勿論。中尉かなり疲れてるから、何したの?」

 

『なにも?』

 

別に何か精神的に追い込むようなものは、あげてないと思うのだがはて?

それよりも、サイ君の機体の組み立てを始めるかな?後数日程で終わる筈だ。

 

デュエルの余っていた胴体にジンの腕と足、バクゥのキャノン。携行火器はなんとかするべ。

 

~ナタル~

『私に休暇を取れですか?』

 

「ええ、そうよ。貴女には助けられっぱなしだし、たまには良いと思って。」

 

『ですが、私が行わなければならない事が…』

 

「そこは、私に任せておいて。そんなに量は無さそうだから、やっておくわ。ノイマン曹長にお礼言っておいてね、彼貴女に休みをとらせたくて張り切っていたから。

さあ、行った行った仕事の邪魔よ!」

 

そんな事が数時間前あった、私は私服に着替えて軍港を後にする。のだが

 

『どうしてお前達も一緒に来るんだ?それに、どうしてラクス嬢までいる。』

 

目の前には戦時任官のもの達がズラリと勢揃いしている、良くみれば少し化粧の類いもしている。

 

「バジルール中尉…じゃなかった。ナタルさん、一緒にショッピングに行きませんか?ラクスも気分転換が必要だからって、艦長に聞かなかったのですか?」

 

『いや何も、私は少し出掛けるだけだ。お前達は何で私を連れていこうとする。』

 

「あの、ナタルさん。私服あまり持ってなさそうだし、お洒落とか気にしなさそうだから一緒にどうかなって。」

 

『余計なお世話だ、とにかく私は行かないからな。!何をする!』

 

両脇を固められた!この娘たちこんなに力が強かったのか?

 

「言われると思いました、じゃあ皆行くよ!」

 

『ま、まて!私はそんなところ!』

 

公共交通機関に押し込められ、暴れようにも人様に迷惑を掛けたくないから暴れられずにズルズルと、服を買うのか…。

ずんずん進んでいく、金は何処から持ってきたのかBLACKカードなんてもので支払っている。出所はコゼット少尉だと!

 

『まさか、父親に借りたのか?』

 

「気前良く渡してくれた。どうせ俺は殆ど使わないからって、家は特許料でご飯を食べていたのかと、初めて知りました。」

 

色々と何か違うこともあるが、不思議と胃が痛くなるような事はない。不思議なものだな、自分が嫌がっていたことがこんなにも心を軽くするものか…。

ふと時計を見ればもう帰り時だ。

 

『今日はすまなかった、正直楽しかったよ。大西洋連邦に着いたらお礼をさせてくれ、少しの間なら何か出来るだろうから。』

 

次の戦いどうなるかわからないが、最善を尽くそう。

 

 

~シーゲル~

 

『私は反対だ!それを兵器転用するなど、あまりにも馬鹿げている。それ程まで虐殺をしたいのか?地球に撃ち込めばどうなるか、君らも解っているだろ?』

 

虚しくも私の声は会議場に響いた、皆私の声を聞いているだろうが反応が帰ってくることはない。もはや、心に決めていると言うことか?

 

「議長ですが、現在我々に残された時間は余りにも少ないのが現状です。見たでしょう?デブリ帯での地球軍の戦力を、最早我々にMSと言うアドバンテージは無いのです。なら、我々は来る決戦へ向け準備を整えるのが常道では無いですか?」

 

いったいどうしたと言うのだ、なぜ頑なにあれをそうしようとするのか

 

『あれは、未来なのだ。我々の世代だけの話ではない、ナチュラル、コーディネイター双方の架け橋になるための…』

 

「だが、未来を見据えて今を殺すのか?私は子供達がこれ以上苦しむ姿をみたくない。だからこそ!この力が必要なのだ!」

 

『パトリック、それでは我々の現状を無視するだけではないのか?』

 

周囲は私の敵だらけ、クライン派と呼ばれるもの達までもが“推進装置”を兵器転用しようとしている。彼等は脅しの為と言うだろう、だが手にしたものを使うものが必ず現れる。それでは遅いのだよ。

 

私の反対もむなしく、議題は採決され兵器転用が始まった。大規模な工事は数ヶ月にも及ぶだろう、これが完成するまでに戦争が終結している事を願うばかりか…。

 

「シーゲル隣は良いですかな?」

 

パトリックか、

 

『今更何のようだ。』

 

「ここから見る景色が貴方は好きだった、と思いましてね。ここからはSAが良く見える、貴方達の外宇宙探査の夢が詰まったあれを。」

 

何を言っているのか、私を説得しにきたのか?

 

『あれを造ったのは誰か知っているか?君が忌み嫌うナチュラルの男が、我々でも考え付かない理論を構築して設計したものだ。あれでこれからの人類の進歩が50年は進んだ。そんなものを使って、君は悔しくないのか?』

 

少し考える素振りをしているな、何か心に来るものはあるようだな。

 

「確かにその男、マイケル・スパロウは我々よりも優秀だ。だが、奴はブルーコスモスに通じている。貴方はそれを承知で開発に当たらせた、何故それをやらせたのか?」

 

『あの時、彼を見たとき我々の事を何とも思っていなかった。まるで、虫をみるような目だ。それは、同族であるナチュラルにも同じ目をしていた、だから決心したんだこいつは差別はしないと。

それに、少しずつ変わって行ったんだ、少しずつ人になっていった。

それが未来を語った、産まれ来る子供達のために残したいと、君はそれを兵器にするんだ。未来を壊すんだ。』

 

「答えになっていませんよ、まあ今更です。私たちはやり遂げる何があろうとも、戦争に勝たねば。」

 

たとえ勝ってもそんな不毛な終わりかたは、誰も望みはしないのだぞ?

 

パトリックは去った、私は深く椅子に座り

〈Spacecraft accelerator〉

を眺めるだけしか出来なかった。

 

 

 




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第35話 押し寄せる波

「こちら北部方面軍指令部、バグダッド基地応答されたし!繰り返す…」

 

ザフトでは深刻な問題が起き始めていた、前哨基地と指令部との連絡が次第に途絶えて行っていたのだ。

いったい何が起こっているのか、NJ下でも対応可能な通信装置を用いているにも関わらず、それは広がっていた。

 

だが、この時の通信途絶はそれだけが要因ではなかった。そのとき、制宙権を保持していたのは地球軍であった、それがこれを形作った。

 

おびただしい数の車両が地を埋めつくし、街を素通りしていく。後ろからは多量な兵士が雪崩れ込み、ザフトは蹂躙されていく。正しく数の暴力、気が付いた頃には既にスエズに橋が掛けられた。

何処からやってきたのか運河の高さぴったりに大型船が、中を埋めつくし海で隔たれていた筈のそこは道となった。止める術はない、それは正しく津波の如し…

 

そして、それは北アフリカ西部でも起きていた。海峡を隔てた場所から止むことのない鉄の雨が降り注ぐ、海岸線の防衛網は滅茶苦茶な状態で最早防御に適さない。

 

そこへ海から深い青色のMSが水中から現れた。ザフトの水陸両用とは打ってかわってスマートなフォルム。固定武装の少なさそうな見た目は、その通り後に水中用コンテナから出されたそれはビームマシンライフル。

 

細かなビームが点射されながら、威力の低いそれでもってジンを一つまた一つと破壊していく。

突如として現れたそれに、防御線は瞬く間に崩壊する。

 

そこへ、空から巨大な戦艦が現れた。大天使は、そこから死の部隊を吐き出しそれに続けと、海峡を大型船が揚陸船となって大部隊が雪崩れ込む。

 

 

~コゼット~

 

凄い数、これが戦争…

 

「おい、そこのMS!手を貸してくれ、Dポイントの防御がかなり硬い、後一押しがあれば行けるんだ頼む。」

 

『了解しました。援護よろしくお願いします。』

 

こんなにも多くの数がいても、損害を最低限に抑えなければならない。ただ数で押してるだけじゃないんだ…指示されたポイントへライフルで狙撃する。

 

ビーム兵器はこういう時直進するから、良いのだろうか?

 

「ありがとう!よっし、これより突撃を実行する。敵の射撃が崩壊している今しかない、行くぞ!」

 

凄い、後方からの支援とそれに呼応するかのように動く、これが連携…。

これ、私たちいらないんじゃないの?そうだ、

 

『サイ、初のMSだけど大丈夫?』

 

「あぁ、何とか。いい動きするよこれ、手足のように動かせる。やっぱり君のお父さんは凄いよ。」

 

サイが操縦可能なOSを作ったのかな、それにしても良く動かす。初めて乗った時の私やキラよりも遥かに上手く、まるで乗った事があるみたいに…そう言えば最近サイの様子がおかしかった。

何があったの?

 

キンッと頭に何かが走った、

 

「敵MS対接近ジン10,バクゥ3の編成突っ込んでくる。MS隊は応戦されたし!」

 

考えてる暇もないか、ウェイブライダーに可変して要請のあった場所へと急行する。私の後ろからは、サイのレールガンが飛翔して援護をしてくれてる。

 

 

上空からビームを撃つけど、やっぱり当たり辛いいい動きをするのが一機。周囲を誘導して迫っている。だったら!

上からチマチマやってられない、変形を解いていざ勝負!

 

 

 

~ホーク~

 

ここ数週間いいニュースが一つも入ってこないな、バルトフェルド隊長はいなくなっちまったし、南部ではヴィクトリアで逆襲にあってる。おまけに議会のボンボン達がいるせいで、俺たち地上組は動こうにも動けない。

 

あぁ、ルナにメイ、父さんはどうやら帰れないみたいだ、こんな砂だらけの場所じゃなくてお前たちがいる場所で死にたかったよ…

 

「ホーク隊長!敵戦力更に増大、貴隊は殿として撤退の援護を行え!だそうです。」

 

そうかい、やはり帰れそうにないな。

 

『各員聞いたか、これより敵への奇襲を行う。MSで防御戦なんて無理だからな、機動戦で翻弄する。行くぞ!』

 

俺達は駆け出した、周囲を砲弾が取り囲むが不思議と当たることはない。

俺達は敵のど真ん中で暴れる、少しでも掻き乱せばそれだけ敵は体勢を立て直すのに時間がかかる。

 

そのとき空からビームが降ってきた、皆間一髪で避ける。あぁ、遂に来たか連合のMSか…仲間が一人また一人と撃ち倒されていく。

 

装甲に阻まれるのではなく当たらない、こちらが撃つ一瞬前に既に避けられている。

「メイン!逃げろ!」

バクゥのメインが死んだ、胴体を蹴り上げられ中身がぐちゃぐちゃだろうか。

 

間髪入れず敵の援護射撃が飛んでくる、的確だよああそうとも俺達はその砲撃が嫌いだよ!糞が、消耗させられるとは!

 

いくら射撃が正確でもと自分に言い聞かせた。いつもよりもいい動きしていたんだろう。仲間とカバーして何とか当てるが、それでも装甲に阻まれる。

しまいには近付かれて、サーベルで切り刻まれる。

 

ジリジリと追い込まれているのがわかる、終いにゃもう一機データにある機体かストライクなるほどな、こいつらがあのボンボン連中が追っていた足付きか…。

そして、もはや形勢は明らか俺達はもう後がなかった。

気が付くと俺一人になっていた。

 

「投降してください、今ならまだ間に合います。」

 

女、しかもまだまだ若い十代くらいか?何でそんな年齢で…いや俺たちも相手の事は言えないか。

 

最後に残った重斬刀を下段に構え、接近されればいつでも攻撃できるようにする。

 

『それは無理な相談だ、俺には殿と言う大事な役目があるんだ。すまないが、承知してくれ。』

 

それを聞いたが早いか、直ぐ様俺に斬りかかってくる。重斬刀で受け止めようとした、それが最悪の選択だった。一瞬で溶断されて…ゆっくりと景色が進んでいく。

 

『ルナマリア、メイリン、エリザベス。すまない、先に行くよ。』

 

最後の景色は家にいる家族の顔だった。

 

 

 

~アズラエル~

 

アフリカで動きがありましたか…少し早いですが、海兵隊にもMSがありますしそれの初の実践投入なのですから、頑張って頂きたいですね。にしても、マイクから連絡が有ったときは驚きました。直ぐに研究所に解析をお願いしましたよ。

 

久々に研究所の方にも顔を出しましたが、まさか海底ケーブルを使って設計図と計算式を送ってくるとは思いもしませんでしたよ、先人に感謝ですね。これでMSのポテンシャルは更に上がることでしょう。

 

問題は諜報部から得られたこのプラントの兵器、『ジェネシス』ですか…いったいどんな兵器でしょうね。可決されたばかりと報告されましたが、さて?

 

私たちも宇宙要塞を攻撃するのに最適なものを考えているのですが、兵器開発部ではこんな短時間では造れないと言われました。ならM研ならと思い聞いてみました、より短期でかつ安価な方法があると。

 

コロイド粒子と鏡を使った巨大な光学兵器、屈折と反射なるほどこれなら使った後、コロニーで再利用が可能です。彼女が口を抑えて座り込む

 

『大丈夫かい?』

 

どうしたのだろうか?急に体調を崩すとは

 

「あの、私…できたみたいなんです」

 

出来たって何が?

 

「赤ん坊です…」

 

えっ?嘘本当?でも、そうかそうか良かった。だとすると今日から僕も父親か?

ならこの子が生まれたときに、自分の父親が立派な男だと言うことを胸を張っていられるようにしたいですね。

 

~マイケル~

 

おっし!良い射撃精度だ、セッティングは完璧だったんだなこれでサイ君の夢も叶って俺達の戦力も大きくなって、より戦いやすくなったな。これで、俺のジンも役目を終えられるか?正直な話サイ君にはこいつで出て欲しかったんだが、こいつじゃまだ駄目かな?

 

確かM研の倉庫に試作品が有ったと思うから、あれを付けるか?どっちみち俺は大西洋連邦に到着したら降ろされるから、そのときに組み上げようか?

何はともあれ、今この機体に予備パーツは少ないからじきに使えなくなる。

 

『ラミアス艦長、どうやら俺達の仕事はこれで終わりみたいだ。大勢は決した、これ以上いても無意味だ。味方は陣地を造り始めてる、指令部から連絡が来るまで待機しよう。』

 

程なくして指令部から作戦の終了を告げる通達があった。これで、やっと我が家に帰れる。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

今回出てきた機体の情報更新は26日になります。


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第36話 大西洋横断行くぞ!我が故郷

北アフリカの戦闘で大敗したザフトは更に後退し、一度は奪還された紅海を、無理矢理に突破する方法で何とか逃げ口を確保する。モラシム隊が後退を指揮し、ザフトは日に日にその数をインド洋から逃がしていった。

 

アークエンジェルはそんな事を知らずに、西へと進む。広く広大な海にラクス・クラインは非常に感激する。後に彼女はこの出来事を伝記に記し、この事から地球と言うものに、より関心を持ったと言われている。

 

そんな海を渡る船は、そこそこの速度で数日かけて大西洋を渡る。

何故速度が出せないか、聞きたい方もいるでしょう。そこはずばりあの艦形で、空気抵抗を受けない訳がありません。そもそも速度が出せないのです。出せてもせいぜい300キロ程でしょう。

 

~マイケル~

 

ふう、ストライクの核融合搭載用最終設計が終わった。順次光ケーブルで送ってたけど、これで全部そろうから大西洋連邦に到着したら今の機体と入れ換えだな。

今や地球軍の広告塔の一つになってるからなぁ、《ナチュラル・コーディネイター共にプラントと戦おう!》なんて感じの写真が無断で使用されてるって噂だ。

勿論合成だけどな。

 

ううん、さてストライクのパーフェクトパック、これをキラ君が使いたがらない。仕様書を見れば一目瞭然だろう、使い勝手が悪すぎる。特にバッテリー駆動にこれじゃあねぇ、本当に考えて造ったのか?それともただ単に、全部付けたら強いんじゃね?って発想か。

 

俺だったらまず無駄なランチャーストライカーのバルカンを外すね、どうせPS装甲に効果ないしバルカンを撃つ暇有るならビームライフルを撃てと、私はそう言いたい。

第一、宇宙であんなの使ったら姿勢制御のスラスターを余計消費する。

 

そして、対艦刀お前もだ。まず存在理由がわからんぞ、ビームサーベルがあるんだからそれで代用可能だろうに。質量兵器は確かに強いが、それだって相応の速度が出る前提だ。あんなもの持っていった日には、敵から集中砲火に会うね。だから地上に降りてから一度も使わせていない。

 

やるならストライカーパックの背側面にアグニ小型化して懸架させて、トリガー無しでの射撃が可能にするとかね、させるね。勿論、大気圏内ではやらないが宇宙なら可能だろう。

それか、単純にストライクの機動性と追従性を純粋に引き上げるか。キラ君はこっちの方が好きそうだね。

 

いや、そうかならあれだ。ストライカーパックを廃止してしまえば良いじゃない。本末転倒だろうって?

そうじゃないんだ、エールパックを簡略化してだね、あの大袈裟なスラスターの形状をコンパクトに纏めてしまえば良い。

特に横幅が広すぎてね、姿勢制御用の翼もあれも無くして、アポジモーターで向きを変えれば…

 

そうすればストライカーパックの側面にアグニを収納できて、尚且つ重量も変わらずに行けるな。

ぶっちゃけた話、アグニもメガ粒子砲へと変更しなければ。ビームライフルと共にね。

 

っと、そんな感じで設計図等を描き進めればもうお昼である。凝り固まった身体を動かし、食堂へと歩みを進める。

厨房には既に幾人かの姿が見えている、コックをやっているのは少し太っていて優しそうな顔をした男、タムラコック長(中尉)だ。そして、その横でせっせと働いているのは、ラクス・クラインだ。

 

捕虜がそんな事して良いのか?だって?俺に聞くな、バジルール大尉(昇進した)が志願していた彼女を受け入れただけだ。最近彼女は人の事を良く観察している、そのお陰かはたまた何かしらの力のお陰か、こうやって信頼を置ける人に仕事を与えている。

やはり、少し変わったような気もするが、良いことならそれでヨシ!

 

食べ終わればそのまま格納庫へと行く。機械油の匂いがするが、清潔にされているからか悪いものではない。

機体の各部の点検を行っているようだ、パージされた部品の中でも重量の有るものを持ち上げて手伝う。

「そう言えばサイの坊主の機体あんなんで良く動きますね。」

 

『ギリギリの設計だ、名称も継ぎ接ぎされたものと言う意味だからな。簡易的な戦力ならあれで充分だ。』

 

たまに質問されつつ仕事を行った。

 

次に各機体のシステムチェックだが、キラ君がストライクの調整をやってる、気になるバグでもあるのか必要にキーボードを叩いている。

 

『どうしたんだい?そんなに深刻そうな顔をして』

 

と聞けば、機体の反応速度が遅いそうだ。なるほど、それならと関節部の機動性を上げるコマンドを彼に教える、気に入ったようだ。すこしずつ調整していけば、いずれ彼の操縦にぴったりの機体になるに違いない。

 

ふと下を見ると、一角に人だかりが出来ていた。何事かと見てみると、またシミュレーションをしている。あれはゲームじゃないから、あまり遊びに使って欲しくないなぁ。

 

あら、コゼットお前かなり強くなってんじゃね?キラ君のデータもあるけど、二人ともジェリドを倒せるようになったのか、それでもヤザンには勝ててないな。やはりヤザン手強い、だがまだアムロの存在にも気付いてないな。

ふふ、少し驚かせてみるか?

 

 

 

~コゼット~

 

このヤザンってCPU強すぎ!隙が全然ないし、動きだって読めないし、逆にカウンター狙ってくるしでホントに厳しい。キラとの2対1なら何とか落とせるかもだけど…ゲイルの支援システムがあれば勝てるかも…。

 

ゲイルに載って中を漁っていると反応があった

 

「何かお困りのようだがどうしたんだい?」

 

『シミュレーションが強すぎて歯がたたないんだぁ、ねえCRDなら勝てる?』

 

「そうだな、勝てるとも。では私が直々に相手をしよう。なに、相手もCPUだ私の火器管制もロック解除出来るとも。」

 

やった、お手本がいるならちょっと参考にさせてもらお~っと。

皆も周囲に集まってそれを見学し始めた。

 

機体の挙動と同時に操縦桿等に埋め込まれているダイオードが点滅して、動きを入力している速度が視覚化されているのが解る。

そして、その動きは凄まじいものだ。

 

私たちが苦戦していた敵を次々倒していき、ヤザンとの戦闘も苦戦しつつも撃墜した。その反応速度はCPUならではなのか、それとも彼が規格外なのか?

 

だけどそのとき、画面に新たな名前が映った。

〈アムロ・レイ(0079)〉

 

それが映った時、CRDの反応がおかしくなった。映った瞬間に「アムロ…」と呟き直ぐ様戦闘を始めたんだ。そして、CRDは粘りに粘って撃墜された。

性能は寧ろこちらが上である機体で、相手には攻撃が掠りもしない。

 

寧ろその動きはクロック-コンマ秒、未来を予知して避ける。その動きはまるで、リディア少佐の記録映像のようなそんな動き。もしかして彼女を元に作ったのかな?でも、じゃあなんでアムロなんて名称で…隠したい?でも、隠す理由もない。

 

この羅列されたCPUの名前はまるでそこにいる人間が存在したみたいに、意味のある名前。

父さんは何のためにこの名前を?いったい何が目的で…

 

振り向くと格納庫の上部からこちらを眺める父の姿があった。まるで、私たちがこうすることを知っていたみたいに。父さん、私たちはモルモットじゃないのよ?

 

 

~とあるザフトのスパイ~

 

私は未知の粒子を開発した研究所へと、新人研究員と言う体で潜入した。

一見すればただのホテルだが、その実地下に潜ればそこはとてつも無く広い、その空間を多くの資材が置かれ、実験用だろうMSもある。

 

ここの研究員は皆真面目で、コーディネイターである私を差別することもなく受け入れてくれた。それが命取りとも知らずにだ。

ここの副所長であるアイナ・スパロウ女史は非常に優秀で、癖の強い研究員たちが、素直に従う光景がみられる。

 

ここに潜入して早一月、私の成果はかなりのものであろうが、如何せん地上に出られない。

何故か申請が取れないのだ、もしかするとバレているのか?だがでは何故、私を野放しにするのだろうか?

どうにかして、この情報を本国まで届けねばならない。

 

そして、私は脱出を試みた。

外に出るまでは意外なほどに簡単だった、何より警備員がいないのが逆に気味が悪い。

 

「やあマット君、こんなところで何をしているのかな?」

 

クラウン博士、何故上半身裸でしかも弓を持っているのか、それよりも見られたのなら殺るしかない。そう思った時、既に私は足を罠に絡め獲られていた。

 

眼前に広がるのはアーミーナイフの切っ先、鋭い眼光を光らせたクラウン博士。

 

「それでは君が何処の誰か、しっかりと吐いてもらおうかな?何、大丈夫死にはしないよ君が喋ってくれれば無理にとはやらないさ、だけど喋ってくれなかッたら。少し人体実験に付き合ってもらうとするよ、どうする?」

 

私は耐えられるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、何事もなく仕事を行うマットの姿が見られた。その姿は、憑き物が落ちたかのように爽やかになり、まるで別人のようにより一層仕事に邁進していた。彼が再びどこかへ行こうとすることはなかった。

 

 




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第37話 入港やっと着いたぜ北アメリカ、さあさあ準備を始めよう。

ノーフォーク軍港はその日、非常に多くの観衆が集まっていた。今日はあのアークエンジェルが寄港すると聞き、ジャーナリストやその手のマニアから一般的な周囲の野次馬等、あらゆる職業のものがいた。

 

彼等が見守るなか水平線の向こう側から、通常の艦船とは違う異様な形状の艦が空を飛び現れた。

一斉にカメラのシャッター音が響き渡り、我こそはと言うもの達がカメラにその勇姿を納めようと躍起になった。

 

港から5海里程で着水し、ゆっくりと入港する。接岸はつつがなく行われ、乗員の写真を取ろうとするもの達が来るものの、警備兵に追い払われる。

そして、最初に出てきたものは筋肉モリモリマッチョマンだった。

 

~マイケル~

 

久々の故郷に胸踊ると言うこともなく、降り立った瞬間に焚かれたフラッシュが眩しい位しか、感想が出てこない。

艦長や副長はあまり慣れていない様子であったから、少し戸惑いの顔をしていたが、それも直ぐに慣れたのであろう。

 

問題があったのは学生からの志願組だった、何が問題かと言えば彼等はこういうマスコミや野次馬等にあったことがないから、非常にパニックに陥りやすい。

どんなに歴戦の存在でも、こればかりはしょうがない慣れが必要だ。

 

ただ、やはりと言うかカガリ嬢と黒色のウィッグを着けたラクス・クラインは非常に様になる格好をしている。君たち自分の立場が解ってやってるのかな?

この子達が歳をとったとき、自分の行動を省みることが出来れば良いんだがなぁ?

 

そうしている内に、大西洋連邦の大統領が俺達の前に現れて、激励の言葉をかけたがそんな事よりも家族に合わせろ。

 

暫くすると、国防大臣のアズラエルとアイナがこちらに歩いてきた。俺の事を見ると、アイナは俺にビンタをした。人前ですることだろうか?

 

「ねぇ、また人様で実験したでしょ?貴方本当に昔から…今日のご飯は抜きです!良い?」

 

『わかった。それだけか?』

 

「後、アズラエルさんが貴方と話があるみたいだから、付き合ってあげて?重要そうよ。」

 

また家族団欒が出来ないのか、いい加減家に帰りたいね。

 

「皆さんはじめまして、コゼットの母をやっています、アイナ・スパロウです。今日は遅いので私たちの別荘に泊まっていって?」

 

楽しいだろうな、仕事の話は聞きたくないなぁ。

 

「久しぶりだねマイケル、少し向こうで車のなかで話をしよう。」

 

そこには黒塗りの高級ハンヴィーがいた、確かに安全だな。

 

『それで、話とは何だ?』

 

「これを見たことはあるか?」

 

どれどれ、これはプラントが建造していた加速装置だな、ここまで完成しているとは夢が広がるな。

 

『それで、この加速装置が何だと言うんだ?』

 

「プラントが兵器転用しようとしている、と言ったらどうする?」

 

『ほお?そうか、なら壊すしかないな…バカな事をしやがって』

 

残念だよ、あぁ残念だ。人の到達し得るものの一つ光速に並ぶ最初の一歩である、太陽セイルそれの効果的活用手段を兵器に使うとは。これはナンセンスだ。

 

『それで、それに対する兵器を開発しろと?やってみても良いが、この戦争が終わるまでに完成はしないぞ?』

 

「そこは良いんだ、別途にM研いや君の奥さんが便宜を図ってくれたから。それより、ストライクのジェネレータ搭載、君の設計通りに組み立てた。これで、我が方の機体全てに核融合炉が搭載できた。」

 

『いや、まだだ。まだサイ・アーガイル、彼の機体が無い。あんなので戦わせるわけには行かないよ、だから実験機を彼に与えたいのだが、良いかい?』

 

実験機、核融合搭載試験機。実体弾射撃試験機。ビーム砲試験機。ホバリング試験機。それらのデータから造られた、総合試験機。

機動力はαガンダムに劣るが、火力の面としては圧倒する。

 

サイ君の実力はエースパイロット程ではない、寧ろベテランパイロットと言う方が正確だろう。とてつもない反応速度も、超直感のようなものもない。ただあるのは、あのランダムに構成された、夢の世界での戦いの記憶と経験から出てくる行動のみ。

 

そんな彼がシミュレーションで最も高得点を叩き出したのが、中距離支援射撃。まさにこの機体にぴったりの人材だって訳だ。

 

「アークエンジェルには、より良い戦力になってもらうと助かりますからね。良いでしょう、私からも要請しときますよ。」

 

これで、俺が抜けても艦は回るはずだ。

 

 

~コゼット~

 

父が話から帰って来た後、私たちは軍の施設に入った。そこで色々な事を説明された、現在の地球軍の事私たちの戦果とその影響などだ。

それを聞いたとき、私たちは自分達の存在がそれ程までに大きいと改めて気付かされた。

そして、へリオポリスの民間人であった人達へ除隊の仕方を教えていった。

 

暫くすると艦橋要員とパイロット組そして、ラクス、カガリが別室に呼ばれた。

そこには金髪の男性が座っていて、ニコニコと私たちを出迎えた。

 

「皆さんお疲れさまでした、長旅ご苦労様です。私は大西洋連邦の国防大臣を勤めております、ムルタ・アズラエルと言います。」

ムルタ・アズラエルって確かブルーコスモスの?私がへリオポリスに行ってる間に、そんな事起きてたの?それともつい最近?

 

「そんな事よりも、早く話を始めたらどうなんだ?アズラエル。」

 

「そうでしたね、では皆さんにはこれから辞令を言い渡します。」

 

マリューさんと、フラガさんはアークエンジェルから、二番艦へと移乗となり、私たちはそのまま残留確定。それを聞いたとき、あぁやっぱりそう言うことになるんだなぁと納得した。どこかでこうなることは解ってたけど、こんなに早くお別れかぁ。

 

「それと、カガリ・ユラ・アスハ様お久し振りですね?あんな艦にどうして、貴女が乗船していたのか知りませんが、一国を統べるものの一人がそんな事をしても良いので?」

 

嘘?本当?カガリ、あのアスハ家の人間だったの?なんか眼を見開いて、冷や汗を掻いてるみたいだけど事実なんだ…。

 

「マイケル、艦長等に話さなかったのか?」

 

「面倒臭いだろ?もしもの時、そんなプレッシャー与えたら、戦えるものも戦えない。」

 

最初から知ってたの?でも、確かに黙ってた方が戦いやすいかも、皆緊張しちゃうから。

 

そしたら、カガリはポツリと少し話した。自分の見聞を広めるためだと、でもアフリカでのあれはやりすぎだと思うけどな。

 

「まあ良いでしょう。後で外交交渉とかそう言うのを教えてあげますよ。オーブは中立の方が何かと都合が良いので。

さて、初めましてラクス・クラインさん。ブルーコスモス代表のムルタ・アズラエルです。以後お見知りおきを。」

 

「初めましてラクス・クラインです。こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

ラクスの纏う雰囲気が変わったような気がした、と言うより何だろう眼のハイライトが消えたような…。

そう思った後、アズラエル氏とラクスの舌戦が始まった、私たちはそれを傍観するだけだった。

 

 

~ニコル~

 

僕らはオーストラリアまで、後退した。今まで保持していた戦線は完全に崩壊して、今はインド洋の制海圏をどうにかして保持するのが精一杯だ。

 

「おいっ!新米ども静かにしろ、敵艦は俺達の真上にいるんだぞ!」

 

ボズゴロフ級の中では新兵が、音を立てていた。僕たち赤服組は、そもそもパイロットだからそれ程動き回ることはないが、この湿度は正直きつい。ボズゴロフ級には宇宙で造ったならではの、欠点があったんだ。それは、空調設備。

 

プラントよりも遥かに湿度が高い地球。海底の艦内は、それはそれは湿気が多くなる。宇宙船の空調を流用したものは、たちまち効果がなくなり湿度は気が付くと80%である。

そんな中にいて、発狂しないやつはいないと思う。それでも僕たちは我慢を続けなければならない、なぜなら僕らの上には今、駆逐艦がいる。

 

グーンやゾノで出れば良いと言う意見もあるが、かつてはそれで事足りていた。でも、今は違う。連合は小型の水中用MAを使ってきた、グーンよりも小回りが利き近接戦闘可能で、何より水中でビーム兵装(ガスバーナーのようなもの)を使用してグーンを圧倒した。

 

ゾノに対しては遠距離から高速の鋼鉄弾体が射出されているようで、接近前にやられている。

映像から宇宙用MAを改造したものに見えるものの、水中での戦闘ではこちらは圧倒されてしまった。

 

それだけじゃない、通常の艦も魚雷を諦めてもっと古典的な方法でボズゴロフ級を撃沈している。爆雷と言うあまりにも古典的なそれは、逆に僕たちは対処できないでいる。

 

熱探知にもかからない、映像は深深度だと見えない、音響はそもそも僕らにその技術体系はなかった。それ故にそれは猛威を奮った。




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第38話 開かれし扉、M研よ私は帰って来た!

ラクスとアズラエルの討論は6時間程続いた。周囲は呆れ果て、外へと出ていくなか三人だけが残った。

外へと出たものたちは、アズラエルがどうして彼女との対談をしようとしていたのか、そしてこれ程長く話をするのか理解できなかった。一部、ナタル、コゼットはそれに気が付いていた。

 

この対談の後、ラクス・クラインの生存が世界中へ公表される。

それにプラントは激震した、かつて自分達を鼓舞していたものが敵の手に落ちあまつさえ、自分達の敵となることを選んだと。一部のものはそれを信じ暴動にも発展する。

 

一方その頃、部隊の再編がなされたアークエンジェルは新規乗組員等の慣熟を行いつつ、大陸横断を始める。

ゆっくりと確実に進む先には、山々が聳え立ち、行く手を阻むかのようにある。

山々の上空を進むと、一見して木の生い茂った場所に着く、そこは北米大陸旧オレゴン州にあるフッド山の麓。それらが突如として、動きだし地下へと続く道が開かれる。秘密基地、地底にあるは研究所の心臓部…。

 

 

 

~コゼット~

 

『何これ…』

私の育った街の反対側ってこんなことになってたの?こんな近くにいたのに、気が付くどころか噂すら聞かないなんて。

 

「ここは、ペガサス級1番艦の建造ドックだ。あの艦は秘匿されていたから、俺達の直ぐ側で造られていたわけだな。民間人だったお前は知らなくても当然の事だ。」

 

それでも私たちの足元で巨大なものが造られていたなんて、信じられるとでも?

 

「マイケル特務大佐、これから我々に何をしようと?」

 

「あぁ、ストライクのちょっとした改修と、サイ・アーガイルに機体の受領だ。その後は、まあゆっくり内部の見学でもしていってくれ。」

 

「貴方にその権限があると?」

 

「ここの所長は俺だからね。あと、カガリ嬢。不用意に外に出ようとするなよ?狩られるぞ。」

 

『狩られるって何に?』

 

答えないの?え?こんなところにそんな危険な存在を野放しにしてるの?

 

「これより着底します。」

 

艦が音を立てて何か拘束具に、捉えられて止まった。その装備の充実ぶりに、本当にここが研究施設なのかと疑問符が浮かぶも、ブリッジのモニターに映る外の人達を見て確信に変わる。

私が幼い頃、一緒に遊んでくれたおじ様おば様たちだ、それが白衣を来て出迎えている。

そのせいでやっと気が付いた、幼い頃遊んでくれた人達は全員父の関係者で、ここのメンバーだったんだって。

 

艦から降りるとその広さに絶句する。アークエンジェルが後4隻程は入る位には、広い。

 

「ねえコゼット。ここって貴女の実家に近いんだよね、もしかして最初から知ってたの?」

 

『ミリアリア、私もこんなもの見るの初めてだよ。寧ろ私の家の近くに、こんな施設があるなんて知らなかった。だって、山の中にあるのは、いわく付きのホテルくらいだったから。』

 

「いわくつきって、じゃあこの基地の上って心霊スポットなの?」

 

『真上に有る訳じゃないけど、たぶん。』

 

ミリアリアがガタガタ振るえている、こんな時代に幽霊なんて…でも残留思念みたいなのは感じたことは有るし、まさかいないよね(汗)

 

「コゼット、それに皆聴いてほしい。これからMSの搬入を行う、その間君たちは授業を受けてもらう。勿論長い間ではない、だいたい5日くらいだ。受けてもらう内容は後程来る研究員から聞いてくれ、長い間世話になった。」

 

そう言うと父は私たちから離れ、基地の中へと消えていった。

 

 

 

~マイケル~

 

機械音が鳴り響く工作ルーム、そこには新たなストライクのフレームを新造している。

ストライクのコックピット構造そのままに、内部の構造をまるごと取り替えて、核融合炉に適したものへと変更された。

 

『だいぶ進んでるんだな、後はこのページの分だけだろ?』

 

俺が北アメリカに到着した時に研究所へと送付した設計図だ。それでももう最終段階のようだが。

 

「そうさ、しかしこんなものちょくちょく送りつける余裕を、よく作り出したものだな?」

 

『まあ、俺にとっちゃ朝飯前よ。それより、新しいストライカーパックとのデータリンクは良さそうか?俺が造ったやつじゃないから、理論値でやったんだが。こっちのシミュレーションでも良好だったろ?』

 

「お前がシミュレーションを宛にするとは、歳なんじゃないか?」

 

歳か…そりゃそうだもう子供もあんなに大きくなったんだからな。

 

『そうだな、最近じゃ10日に一回充分な睡眠をとらなきゃならないからな、そう言う意味では衰えて来てるんだろう。ダニーもそう思うだろ?』

 

「ダニーって誰だ?」

 

『ここの地縛霊?まあ、化け物たちを抑え込んでるらしいぞ?』

 

「お前はたまに良く解らないこと言うな。」

 

そうだろうか?世の中解らないことだらけ、だから色々研究したくなるんだが、解ってくれるだろうかこの気持ち。

 

ストライクのアップデートは確実に行われるだろう。

俺のやることはαガンダムのストライカーの装着キットの製作と、脳波コントロール出来る無線型兵器の開発ぐらいか?ガンバレルパックは既に最終調整段階のようだから、これは13独立機動艦隊の連中に渡される。

 

 

そうだ、狂った岩を使えるレベルに整備し直さなければ、もう大概終わってるだろうが、それでも今の戦闘に付いていけるようにOSを一から組み直さねばな。

実験用と戦闘用では必要なものは全く異なる、何より不必要なものデータ収集用のものも入れ換えなければ。

 

 

~シーゲル~

 

退陣要求を突きつけられている、私の娘が連合の代表であるアズラエルの手に落ち、それと共に声明を発表したと言われているからだ。

あの娘は、何のためにあそこにいるのだろうか?私を退陣させるためか、はたまたプラントに嫌気がさしたか定かではない。だが、言った言葉は良く意味がわかった。

 

《地球の各地に住んでいた人々のプラントに対する怨み

、それはコーディネイター、ナチュラル関係の無いものでした。それを見、聞き私はユニウスセブンの報復が、これ程までの無実の人々の命を奪った事に胸を締め付けられる思いでした。

そこで、確信したのです。この戦争一刻も早く終わらせなければならないと。プラントには申し訳ないと思いますが、私はもうあなた方と共に生きていくことはできません。

私たちは被害者ではないのです、それを受け入れられない限り私たちの進歩はありません。》

 

 

それでも、民衆には関係ないようだ。私の退陣を仄めかし、今も外ではデモが行われている。

評議会でも既に私の居場所はない、皆が私を白い目で見る。

そして、今日は私の弾劾が行われるだろう。そこで私は、議長から退陣し議員でも無くなる晴て自由の身?かな。

 

そして、議会が開かれ私は議員から退いた。

 

 

「シーゲル、今までありがとう。君がいたお陰で、我々は我々の尊厳のために戦うことが出来ている。私だけの力では無理だった、改めて礼を言うよ。」

 

『パトリック、世辞は良い。娘があんなことになろうとは、生きていて喜んで良いのやら悲しんだ方が良いのかわからない。』

 

正直今の私にプラントでどうこう言う力はない、それどころかプラントにいることすら、忌み嫌われる存在となった。オーブにでも亡命するか?

それも無理か、議長にもなった男が機密を他国へと渡す危険性があるから、軟禁生活をおくることになるのか?その方が安全か。

 

『パトリックくれぐれもジェネシスだけは、使ってくれるなよ?地球が無くなれば、プラントは勿論の事火星だって滅んでしまう。あれにはそれを為す程の力があるのだから。』

 

「解っているさ、私とて破滅主義者ではない。だが、もし私がそんなものになったら止めてくれよ?」

 

不安だ彼は復讐と言う狂気に浸っている。暴走するのは明らかだろう、そうなる前に地球軍には宇宙に上がって欲しいものだ。

 

 

 

 




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第39話 奇妙な建物、密かな出航

ストライクが、アークエンジェルから出庫し胴体を切り離され四肢がバラバラにはずされる。

そして、そこに新たな胴体が装着された。見た目は一見すれば変わりはないが、背面にスラスターとビームサーベルが追加されていた。

 

ストライク本体に武装を施し、少しでも自衛能力を高めようと考え出されたものだ。もし、この姿をリディアが見たら《ガンダム》と呟くに違いない。

そんな見た目になったそれに、更に改良されたストライカーパックが装着された。

 

それは元来の物よりもビームサーベル分コンパクトに収まりつつ、全体の推力を底上げしたもの。更に翼が減った場所に中型のビーム砲らしきものが追加されていた。これは駆動の邪魔にならないよう、足の動きと連動して動いた。

これによって、マルチターゲットへのある程度の広範囲攻撃が可能となった。

また、パックの換装に関わらずランチャーやソード等の武装も使用可能となりより、汎用性が増した。

 

ただしそれも設定が命、少年が授業を受けている間ただひたすらにテストを重ねる。

そしてテストパイロットたちは、キラの動きに最適となるようリミッターの数値をいじり、調整していく。

 

一方その頃、マイケルはマドロックのOSを書き換え、実に四日間、一睡もせずにやり続けた。

周囲にはそれを気にも止めるものはおらず、施設全体が夜もなく動き続けた。

 

 

地中深くで一連の事が起きている頃、上部構造物のホテルには一人寂しく管理人が着任していた。

彼はこのホテルの事をあまり良く知らない、プラントからのスパイが幾人か消えた研究所をプラントなりに、より容易に調査するために派遣された彼は、求人情報を見てここに管理人として住み込んでいる。

 

4月になったばかりで、未だ寒く雪深いここにかれこれ20日いるが、研究所に立ち入っていない。

なんせここからの入り口はたった一ヶ所、エレベーターしかない。見付からずに行くなど、到底不可能なことだ。

 

そんな事よりも彼は少し気になることがある様子、いつの間にか、誰が置いたのか知らないが、そこにいつの間にか古い文字をうつ機械(タイプライター)が鎮座していた。彼はこれが気になってしょうがない…。昨日までそこにはなかったのに、と。

~コゼット~

ゲイルガンダムやアークエンジェルに使われている、M粒子の基礎、短期講座が始まってはや5日。

このM粒子が何なのか、なんとなく全貌が見えてきた気がする。要するに素粒子物理学に登場する基本相互作用の四つの力。

それらを統括し、全ての物理現象を引き起こすものそれがM粒子。

 

このM粒子を自在に操ることが出来れば、四つの力を自在に変化させ無限に近いエネルギーを得ることが出来る。理論上は、な代物って事なんだろう。

 

で、現在はこれを使ってでの核融合。即ち、強い力をある程度制御して行われているのが、イヨネスコ型熱核反応炉と言うことになる。

逆に核分裂を誘発することも可能だと言う、と言うことはNJも無効化可能って事だけどやらないみたい。

 

現状を利用することで、今後地上での核兵器使用を一切行わせないためだとか。ここの人達は根っからの学者で、争いを好まない(降りかかる火の粉は払う)からたぶんそれが1番の理由なのかも。(どっからどう見ても学者に見えない荒くれものども)

 

まあ、そんな講座も終わって後2日程は自由時間。ここ最近は、あまり戦場に出てないけど体が鈍らないか心配。それでも研究所内部のシミュレーターは物凄くて、正直正規軍が造ったやつなんかガラクタ。

 

機械から殺気を感じるって、いったいどうやったのかなあ。(AIにはDNAサンプリングって書いてあった。)

なんか気にしちゃいけないのかもしれない、バイオコンピューターって紹介されたけど、そんなもの聞いた事ないよ。

 

見学しつつそろそろ太陽が恋しくなる頃、外出が許された。と言ってもホテル側にだけど。冬場でも一応人が通れなくはないと言う、民間人に偽装してでのホテルでの2泊。今の管理人は新人で、手はあまり回らないのだとか、それでも品質の管理とかはロボットがやってるみたいだから安心ね。

 

「なぁコゼット、このホテルっていわく憑きって言われてるんだよな」

 

『トールどおしたの急に、まさか怖くなっちゃった?』

 

「いやそうじゃなくてさ、最新技術が注ぎ込まれたこの国でも屈指のホテルなのに、そんな噂出るの?って話さ。」

 

そうよねぇ、皆そう思っちゃうよねぇ。

 

『このホテルってね結構建て直してるらしいんだ。殺人とか火事とか色々あって、廃業と再開を繰り返してるって。だから、私たち地元の人達は皆ここに近寄らない。』

 

それでも空気は綺麗だし、寒いけど雪はもう溶けかけてるから辺りを見に行ける。

コロニーで過ごしていた数年間では味わえない、なんとも心が温まる自然の温もり?

 

っ?誰?

オビ=ワン?スターウォーズの彼に見える人がいる…皆気付いてないの?いや、なんかフレイにも見えてるのかな?しきりに皆に言ってるけど、本当に幽霊?

 

「君も僕が見えるのかい?あ、喋らなくて良いよ頭に直接話してるからね。」

 

貴方はいったい何者?

 

「君の思う幽霊ってところだよ、昔ここに住んでいたってだけさ。君たちは宇宙から来たんだろ?昔では考えられないね。」

 

何が目的なの?

 

「目的なんて無いさ、ただこうして話したかったってところだよ。有るとすれば忠告だ、あのホテルに長居しない方が身のためだよ。君たちの力はシャイニングと似ているが、少し性質が異なる。それでも連中にとっては良い餌になってしまうからね。」

 

連中?貴方みたいな幽霊があそこにはまだまだいるってことですか?

 

「違う、もっと禍々しいものさ。一応封じているけど、勝手に出てこようとする、そんな奴らさ。今は戦争中なんだろう?もしも、終わったらの話だがきちんと弔ってやることだ、ここの連中みたいにしたくない。それを言いたかったのかな?」

 

それを言った途端に、彼の姿は消えていた。彼がいったい誰なのかはわからないが、私に漠然とであるが戦後のビジョンが見えた気がした。

 

それと関係ない話だが、幽霊と聞いた瞬間カガリがやけに大人しくなってて意外だなぁと思った。

あんなに気が強いのに、お化けとかそう言うの信じるんだぁ。それに引き換えキラは平然としてる、ここは逆じゃない?もしかして、CP馬鹿なお陰で信じてないだけかも。

 

キラとサイはここ最近父さんのメニューで筋肉質になりつつある。この前カガリと腕相撲してるのを見たけど、結構良い勝負してた。

それからと言うものカガリから、キラへのスキンシップが増えてる。もしかして恋?だとしたら身分格差のある話だこと。

 

 

 

~パトリック~

 

この報告書は何なのか、M研究所に派遣したスパイの情報はあまりにも実りが少ないものだった。ホテルに偽装しているからと言って、管理人に就職するやつが何処にいる、呆れて言葉が出ない。

 

ホテルから中に入れないとは、余程厳重なのか。はたまた別の入口があるかだな、その方向性でも調査しなければならないな。にしても我々を虚仮にしているのか、この研究所セキュリティがあまりにもお粗末すぎる。罠と言う線もあるな、それでも我々にはデータが必要なのだ。

 

「議長、オペレーション・スピットブレイクの承認が各派閥から取れました。これで我々の勝利は近付きました!」

 

『よろしい!大変結構だ、直ちに艦隊へ出撃の準備をさせろ。作戦は新鮮さが命だ。』

 

何はともあれ、研究所は後回しだ。まずは連合の頭を叩き、敵の戦力を根底から潰す。それで我々の優位が示される、ナチュラル風情が我々に楯突いたこと後悔させてやる。グングニールの威力思い知るが良い!

 

 

 

~マイケル~

 

なんて今頃思っていたりして…やあ( *・ω・)ノマイケルだ。今アークエンジェルのエンジンのメンテナンスをやっていたんだこれから出航だからな、マドロックはどうしたんだ!だと?

 

心配ご無用きちんと中身を整えて、ますます良い機体に仕上がった。まあ顔はガンダムタイプだけど、モノアイ搭載機だから少し外観が、おかしいところもあるかもだがな。そうして休憩所に行くと剥げたあいつがいた。

 

「よお、マイケル。娘さん軍人になったんだってなぁ、俺の息子もCIAに入っちまって色々と大変なんだよぉ。お互い苦労するな。」

 

『マクレーンすまないな…ワインじゃないか。俺は酒は飲めないといつもいっているだろ?それと、お前の場合は家系があれだろうが。』

 

「あぁ、あんたそう言えばそうだったな。それで良くパーティーとかに出向くな、俺だったらビールの方が良いがな。それと、俺の先祖の事を悪く言ったらボコボコにしてやるぞ。」

 

『出来るものならな。』

 

「はい、そこまでにしなさい。あなた、コゼットたちの出航の準備が出来たみたいよ。行かなくて良いの?」

 

『良いよ、君一人で行ってきてくれないか?俺はコゼットを連れ戻そうとするかもしれないから、行きたくないよ。』

 

「意気地無しね、わかったわ。それじゃあお言葉に甘えて。マクレーンさんも一緒にどうです?」

 

「いいや、おれぁ結構だ。ここでこいつを見張ってるよ。」

 

あぁ、コゼット。行かないでおくれ、ここに残ってくれ俺は俺は心配なんだ。もしかしたらお前が死ぬかもしれない、それだけは嫌なんだ。そうこうしている内にアークエンジェルは、研究所を後にした。

その船出は嫌に静かで、季節外れの雪が降るときだった。




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第40話 欺瞞工作

暗い暗い部屋の中、三次元立体映像が中心で光を放ち、周囲の人を照らし出す。

映像には基地の情報が詳細に記載されており、触れるとそこに新たに情報が記載される。

それを見ながら一人が言った、

 

「ザフトは我々を直接攻撃してくる、ならば先に罠を張っておこう。」

 

それに対して一人は言った、

 

「だが、大量破壊兵器の使用は禁止する。可能な限り、正攻法で戦うことが望ましい。たとえば、前大戦のおり対弾道ミサイル迎撃用に造られた、ロストテクノロジーで造られたあの巨大レールガンとか。

あれを使えば防備を幾分か薄くしても、降下目標を叩くことが出来る。何なら、敵の隙をついて攻撃も可能かもしれない。」

そして、眼鏡を掛けた参謀風の男が言った。

「であるならば、作戦は決まりましたね。我々はこの好機を逃すこと無く、カーペンタリアを叩きます。

なに、敵は要塞戦の攻略が大の苦手です、戦訓から言って向こうは数で押せないのですから、長期戦を覚悟して挑めば一月は持ちこたえられます。

その間に別口からカーペンタリアを攻め落とし、この地上から追い出してしまいましょう。」

 

そう彼らはこの時を待っていた、現在オーストラリアを中心に展開されている、ザフトのボズゴロフ級更に言えばMS達。

それらは全てカーペンタリアで運用されていた。

度重なる敗北に、ザフト地上軍は既に死に体であるがそれでも水陸両用MSは脅威であった。

そこで敵が攻勢に出るまで我慢していたのだ、攻撃が来る場合真っ先に宇宙から来るであろうが、それでも海上戦力を出し渋る訳もない。

 

何せ連合軍の最重要基地であるのだ、それ相応の戦力を持って対応してくるだろう。それゆえにカーペンタリアは薄くなる、後は数を揃えて殴れば良い。

 

「それに、我々のMSは奴等よりも優れている。各地に空挺降下させ、敵を分断しつつ効率良く狩りをしていきましょう。」

 

 

そんな事を連合が考えているとは梅雨とも知らずに、ザフトは降下作戦の準備を着々と進めていった。

 

 

 

~コゼット~

 

また洋上を航行する私たち、でも船員は変わり最近になって入ってきた人達に、色々と艦内を案内しつつ時間が過ぎていく。

私たちが向かう先は、オーブ首長国。キラ達の故郷、カガリのお家。

 

だけど、そこはザフトの根拠地カーペンタリア程近い、洋上の島国である。それゆえにザフトの潜水艦が出てくるかも知れない、そこでスカイグラスパーの出番が出てきた。

 

スカイグラスパーは多目的用に造られていたようで、今まで行われた戦闘ではそれを如何無く発揮して、私たちの縁の下の力持ちになってた。

けれど、ストライクの電源がバッテリーから核融合炉に変わって、配達する意味がなくなってしまった。

 

そこでその拡張性をもって、スカイグラスパーの後部に簡易レドームを取り付けられるようになり、洋上の金属物及び水中に対する磁気探知システムが取り付けられて、偵察能力を向上させる《ディテクションパック》なんてものが搭載された。

 

これ、勿論ストライクにも搭載できて、これとアグニを併用することによってより遠距離の目標を狙撃出来るようになったらしい。でも、M粒子のせいで精度は悪いみたいだけど、低高度での比較的近距離なら使えるみたいな。

 

因みにパイロットは、トールとなんとフレイ。トールは実は5番目の成績で、フレイが四番目だったの、フレイの方が腕が良いのね。元々運動神経は良かったからそこが出たのかもっと。いつのまにやら休憩室に来てたけどあれ?カガリが黄昏てる。

 

『どうしたの?カガリさま』

 

「様ってつけるな!そんな他人みたいに、そう言うの嫌いなんだよ。」

 

『そう。それで何でこんなところで黄昏てるの?なんか嫌なことでもあった?』

 

「今度はなんで保護者みたいなんだよ、ったく。別に大した事じゃない。」

 

『当ててみようか。スカイグラスパーのパイロットに立候補したけど、あなたの正体のせいで載れなかったから、こんなところでいじけてたんでしょ?』

 

本当に解りやすい子だこと、顔が赤くなってるし眼も大きく見開いてるし。

 

「ど、どうして解ったんだ!」

 

『あなたの考えることくらい、お見通し!なんてね、貴女の性格から解りやすいのよ、特に顔に出てる。将来上に立つ人間なんだから、ポーカーフェイス身に付けた方が良いわ。』

 

それを聞いて更に落ち込んでる。

 

「やはり私に一国の代表など無理なのだろうか?昔からそうだ、良く顔に出すなと言われていた。」

 

あらぁ、もっとナイーブになっちゃった。

『でも、そこが良いところなのかもしれない。流石に建前と本音の区別はつけた方が良いけど、でもそれだってまだまだ練習しだいだと思うなぁ。だって私たちまだ16だよ?人生経験だって少ないんだし、まだまだ進歩するって、だからさクヨクヨしてないでいつもの無鉄砲娘にもどって。』

 

「あ、ありがとう。」

 

少し頬を染めて、こういうところ可愛いなぁ。

 

『あ、そう言えば。キラの事どう思ってるの?』

 

「あいつの事?」

 

『ホテルにいたときずっとキラの事見てたから、もしかして好きなのかなぁ?ってね、でどうなの?』

 

おやおや、この感じは好きではないと言うことか?

 

「あいつは好きとかじゃなくて、なんかこう他人に感じないような、そんな気がすると言うか。断じて好きではない。」

 

『そう、つまんないの。』

 

それを聞いた瞬間また、噛みついてきた。ほんとからかうの面白い子、でもそれも後数日で終わりかぁ。

 

 

~オーブ~

 

オーブ首長国、そこは最後の中立国。南の島でありながら、日系人が多く住みその文化形態は、日本と言う国に根差したものだと言う。

五大氏族から選出されたものが国家元首となる、変わった政治形態をしている。

 

そして、今そこは表面上の冷静さとは裏腹に、内部では蜂の巣をつついたように意見の衝突が起きていた。

事の発端はへリオポリス崩壊事変、当時代表であったウズミの対応からだった。

 

当時国民はこの事に対して、非常に頑強な精神で賠償を行わせるべき、と大多数の意見が占めていた。ところが蓋を開けた途端に、そんなものはしない等とウズミが言ったのだ。

 

ウズミの最大の弱点である、他国の兵器を開発したことによる、中立違反であった。これに関しては、前例である第二次世界大戦時におけるスイスと連合・枢軸双方との貿易と言う観点を攻撃されるも、おとがめ無しであった事から、限度を踏み越えていない。

との声が専門家から上がった所で、国民に火が着いた。

 

連日に次ぐ連日ストライキやデモが起こり、ウズミは泣く泣く代表から降りたものの、今は影から弟を操り国を操縦している始末。

それに対して、残り四つの氏族の内、サハク家・トキノ家が反発を示し、マシマ家はアスハ家に付きキオウ家は中立となる。

 

綺麗に別れたのだが、中立のキオウ家をどちらとも抱き抱えようと、謀略を計っていた。

そこにある情報が入る、地球軍の艦艇がオーブを慰霊の為に訪問する。

 

これは、見方によれば砲艦外交とでも言える代物で、更にそこにはウズミ家の令嬢である。カガリ・ユラ・アスハが同乗していると言うではないか、これも見方のよれば人質とも取れるものだ。

 

これにより、キオウ家が反アスハに傾き。強行路線が国内を纏めることとなる。それに伴い、アスハ家特にウズミの発言力は急激に低下、オーブは今3つの氏族が舵を握っていた。

 

だが、彼らは知らない。連合が意図していたこと、それは連合にとって都合の良い基地を提供してくれる、協力者となること。即ち今大戦に首を絶対に突っ込まず、少しでも中立性を緩和する政治形態となること。

彼らは知らずの内に、連合の掌の上でダンスをしていた。

 

 

~プラント~

 

彼らもまた、連合に踊らされようとしている。

自らの諜報員が持ち帰ったデータ、それを元に立案した作戦は初めから筒抜けであった。

そう、プラントは自分の諜報員すら連合に取り込まれたのだ。つまりは二重スパイ。

 

この点流石としか言いようがないだろう、嘗てCIAやMI6等のスパイ組織を保持していた二ヶ国の名は伊達ではない。更にそこにユーラシアのKGBが付くのだから最早敵無しだ。

 

それによりプラントの内情は常に筒抜けで、次に何処へ進攻し何処を重点的に防御するのか、そしてどれ程の情報がプラントに入り対策しているのかそれら全て連合に逐次報告された。

 

そして、連合の主攻勢がどこで行われるのかと言う、最も重要な内容を偶然を装い手に入れさせ、今回の攻勢を計画させられた。

全くと言って良いほどプラントは諜報戦において、連合に惨敗していた。

 




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第41話 理念と現実

公式に武装艦艇が大西洋連邦からオーブへと入国する。

一応の武装解除としてミサイルセルや主砲等を格納し、交戦の意思の無いことを表明。

更に簡易的に設置されたポールには、K旗が掲げられていた。風で靡くそれはきちんと見えるかはわからない、だが通信したいのは確かであろう。

 

その後通信が行われたのであろうZ旗が掲げられた、だが良く見るとそれはポールではなく、ホログラムとでも呼ぶべきものかそれに鮮明に映し出されているものだった。

 

ほどなくしてオーブに一隻の艦艇が入港する、その姿はお世辞にも船には見えない。着水と言うのだろう、それを行い港へ入ったときタグボートの船員はそれを見てこう思った。

『どうやって動かせば良いんだ?』と、もろに水の抵抗を受ける形状ゆえにタグボートもエンジンを吹かして動かさねばならない。

 

四苦八苦の末になんとか接岸させるのに成功するが、今度はタラップの形状が合わない。

そりゃそうだろう、元々水上艦艇ではないものが海に浮いているのだ。設計国であり、発注者である大西洋連邦や、その同盟国ならいざ知らず。第三者の国だ、それ専用のものを造らなければ、いちいち船員を降ろすのさえ一苦労。

 

それが港で仕事をするものたちの、アークエンジェルへの評価だ、正直入港してほしくないのだ。

 

 

~コゼット~

 

ここがオーブ想像してたのと違う、もっと肌の色が濃いのかと思ったけど東アジア系?の感じの人が多い気がする。

へぇ、サカキさんが軍服着てるよなんか似合わない、もっとこうランボーって感じの方が良い。まあ、彼よりもランボーな博士いるけど。

 

結構色彩鮮やかな軍服なんだ、海軍だからかもしれないけど、こんな色彩にお金使うよりもっと他の方にお金使った方が良いと思うんだけどね。

 

下船すると何にもの人達が待ち構えていた、けどその服装は軍人には見えなくて民間人。そうか、そう言えばアークエンジェルのクルーって四分の一くらい、オーブからの志願兵だったんだよね。そりゃ家族ぐらい来ても当たり前か。

 

そう言えばカレッジ組は私とフレイ以外はオーブ出身だし、何よりカガリはお貴族様。そうか、私って結構少数派だったんだなぁ、皆と違って大西洋連邦出身者。一緒に分かち合う事はできないし、間に割って入る訳にもいかないなぁ。

 

キラの方を見るとやっぱり両親にハグされてた、と言うか本当に愛されてるんだろうな。

そんなものを見ていたら、キラが手を振ってこっちに来るように私を誘った。

 

仕方なく行く。次いでに手ぶらなフレイも一緒に、と言うかあんた羨ましそうにしてるじゃない、なに?パパが恋しいの?それとラクスが勝手に付いてきて、なんか大所帯に。

 

「紹介するよこちらが僕と一緒にMSパイロットをやってくれてる」

 

『コゼット・スパロウです。キラには、いつもお世話になってます。』

 

「まあ、私たちもいますのに。私はラクス・クラインです、キラ様のお父様とお母様ですね。これからもよろしくお願いいたします。」

 

「ちょっとぉ、なんで私まで行かなきゃならないの、それよりもサイの方に行きたかったんだけどぉ。」

 

『自分で行かないのが悪いの、この子はフレイ・アルスター。サイの婚約者です、一応パイロットやってます。』

 

そしたら、キラの両親は大変驚いて?私を見た。

うん?ラクスじゃなくて私?なんで、そんな事になるの?

 

「私はカリダ・ヤマトよ。キラが長い間お世話になっています。所で貴女のお父様は、マイケルと言うお名前ですか?」

 

どうしてそこで父さんの名前が出てくるのか、もしかして知り合いだったのかな?

 

『マイケルは、私の父ですが何か心当たりが?』

 

「いいえ、良いの少し昔を思い出しただけなの。そうね、知り合い程度の間柄よ。」

 

なんか不穏、まさか元カノとか?そんなわけ無いか、昔の父は無機質だったって皆言ってたから、その時の私にとってはいまでも充分無機質だ、と思ったけれども。

 

「どうかしら?今晩家に泊まりに来ません?」

 

ラクスは即答、フレイはサイの家に泊まる事を言ってあっちに行っちゃった。

 

『ありがとうございます。まだ艦長たちとの連絡会もやっていませんし、何より私は戦闘隊の隊長ですので、事務仕事が沢山あるんです。ですので、もし良ければですが、今夜からと言う事でもよろしいですか?』

 

それを聞くと納得したのか、また後でお会いする運びとなった。

 

 

 

~カガリ~

 

アークエンジェルから自分の家に帰るのが、これ程嫌な事になるなんて誰が想像できるだろうか?

もしも、もしもの話だが私が家に帰ったとき、お父様がいたらどうなるだろうか?

 

勝手に家を飛び出して、挙げ句の果てに地球軍の艦船で帰って来るなんて色々と言われるだろうな。そう思っていた。

 

送迎車から降りて最初に目に入ったのは、人気が少なくなった我が家であった。

いったい何があったのだろうか?使用人達の数は少なく、今まで共に暮らしていたものたちの影はあまり無い。

古くからの我が家のものが、私を出迎えるがその顔は不安に満ちたものだった。

 

『いったい何があった?』

 

「お嬢様。それが、わからないのです。ウズミ様は帰ってくるなり、我ら使用人を解雇しだしたのです。無論拒むものたちもおりました、私もその一人ですが。今ここにいるのはご恩の為です。今は自室にとじ込もっております、嫌な事があったのでしょう。」

 

お父様が塞ぎ混むなんて、そんな事今まで見たこともないいったいどうしたと言うのだ。

ドアをノックする。返事がない…

 

『お父様、カガリです。帰って参りました。婆やから聞きました、いったいどうしたと言うのですか?使用人たちを解雇したと、私に話してください!』

 

応答なし…しょうがない。ドアをぶち破るか、そう思ったのも束の間後ろから甲高いモーター音が聞こえた。

 

「カガリ様は下がっていてください、婆やが開けてしんぜましょう。」

 

次の瞬間チェーンソーが扉扉の木材を粉砕していく、呆気にとられた私と扉の奥で私と同じように目をひん剥いて驚いている、お父様がいた。

 

「いったい何をしたのかわかっているのか?」

 

「はい、お嬢様の願いを従者である私が叶えただけにございます。それに、今の私はカガリ様の従者であってあなた様の従者ではございません。」

 

たじろぐ姿に昔の面影はない、オーブの獅子は何処に行った?

 

『お父様、いったい何があったのですか?こんなところにとじ込もって、これでは幽閉されているみたいに』

 

「そのまさかだとしたらどうする?最も幽閉と言うよりかは、村八分とでも行った方が良い。今の私はオーブには邪魔らしいからな。侵略せず、侵略を許さず、介入せず。いったい何がいけなかったのか…」

 

『それは外に目を向けずに、意固地にそれを主張し続けたから、だと私は思います。オーブのその理念は確かに、綺麗なものです。ですが、それは理想で、現実追い詰められたプラントは無差別潜水艦作戦を行い始めています。

最早単独で、国民の命を守ることは困難です。

それに、国民の多くはへリオポリスの復讐に燃えています。それが、いけなかったのでしょう。時勢にそぐわない、それが致命的だったと。』

 

「では、国民が争いに参加し多くが死んでも構わないと?そう言うのか?」

 

『プラントは無差別に攻撃をする、国とも呼べないものたちです。最早話し合いは通じません、ですが連合はそれでも交渉をしようとしています。どちらが理性的か言うまでもありません。

それに、戦いようはいくらでもあります。物資の融通だけの協力でも良いではありませんか、連合は部隊に困っている訳ではありません。通商破壊を阻止する為だけでも構わないのです。』

 

「だが、それでも曲げられないものはあるのではないか?」

 

『理念よりも実利です、どれ程の理念があろうとも利が無ければそれは害悪でしかありません。』

 

例えそれが悪魔の道であろうとも。

 




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第42話 金獅子。開封された指令書

いつも、誤字の訂正ありがとうございます。


オーブの氏族は、5つだけではない。大小あるが、それでも比較的大きな力を持っているのが、五大氏族と呼ばれるものたち。

 

今五大氏族の一つであるウズミ氏の牙城が崩れようとしていた。氏族同士で話し合いをする氏族会議が開かれ、そこにはオーブの財界人や、政治家。果ては軍人に等さまざまな名が連なる。

 

ざわざわとひしめき合う中、ウズミ氏の後釜に我先にと飛び付くものたち、だがそんな連中が果たして代表に相応しいか?いや、相応しくないだろう。こう言う保身だけのものたちに、国の運営は任せられない。その為、密かにウズミ以外の五大氏族は、それらに圧力を掛けていく。

そんな中、扉を叩くものがいる。誰だと皆がそれを見ると、淡い緑色をしたドレスを身に纏う金髪の麗しき少女がそこにいるではないか。

果たしていったい誰なのか、誰もそれに気が付くものはない。一挙手一投足、その動きが洗練され見るからに社交界に慣れている、ふと一人が呟いた。

 

「カガリ・ユラ・アスハ?」と

 

だが誰もがその眼を疑った、あんなにもガサツでおおざっぱで男勝りと言える彼女、それがあんなにも清楚で女性らしくしている。

だが、同時にそれは自分の武器を自覚しそれを有効活用しているのだと気が付く。侮れない、誰もが思った。もし、歳不相応にスーツでも着てくれば容易かっただろうにと。

 

彼女が踏みしめる度に、道が切り開かれていく。そして対峙するは、五大氏族その内の4氏族。

深く息を吸い良い放った。

 

「私はアスハ家家長カガリ・ユラ・アスハだ。皆と今後のオーブの事に付いて話し合いの場に参上した。」

 

そして会議は踊り、オーブの方針は決まる。氏族達は思う「まだ、アスハは終わっていない」と。

 

 

 

~ナタル~

私の目の前にあるのは、開封時期を定められた指令書だ。あまりにもアナログなそれは、紙媒体で製作された極秘のものだろう。きっと各方面の司令官等にもこれと同じものが、直々に手渡された事だろう。

 

オーブに到着後速やかに開封せよ、それが私に与えられた指令。そして今、その内容が明らかになった。

 

《アークエンジェルは、オーブに寄港後オーブで補給を行われたし。

後6月13日未明赤道連合へ向け出港せよ。

同時に、囮となり敵潜水艦隊を引き付けよあわよくば撃沈されたし。

また、その後敵を振り切った後反転、そのまま安全高度をとりカーペンタリアへと向かい本隊と合流せよ。

貴官等の武運長久を祈る。》

 

これが意味することは、ザフトの地上での最後の根拠地を破壊すると言うことか?

ならば、反抗作戦の第二段階へと入ったのか?それは解らないが、それでもこの作戦が成功するならばザフトは干上がるだろう。

 

それにしても後3日、中立国故に我々に対する補給は民需品ばかりではあるが、これも金で買っているのだろう。私の懐には小切手がどんどんと貯まっていく、NJとM粒子の影響で通信が出来ないから、電子的なものは使いようがないが、この量を保管するのか…。

 

昔の軍人はこういう時どうしていたのだろうか?私には皆目検討も付かない。学校ではこんなことは教えてくれないからな、小切手なんて前時代的なもの。

 

「艦長失礼します。どうしたんですか?」

 

『いや、何でもない。副長艦内の見回りご苦労、君も休暇を楽しんで良いのだぞ?何故行こうとしなかった?』

 

「自分は艦長といるのが楽しいので、ですのでこうして隣に並べた事を嬉しく思っています。」

 

『ノイマン中尉気持ち悪いことを言うな。』

 

私が艦長となって、大尉に昇格し副長はノイマンとなった、彼の昇格は異例のスピードだった。いったい誰の差し金なのか、前日に少尉となったと思ったらいつの間にか、中尉に昇格していた。

 

正式に軍属となった、キラとコゼットも同じく少尉であるが、それでも曹長からあの速度で昇格するものはそうそういない。

その操艦技術を買われたのか、副長兼操舵手であるから彼の仕事は大変だろうに、何故か私の顔を見てニコニコしている。

 

「それで、指令書にはなんと」

 

『ああ、3日後オーブを出立しクジラを釣れと書いてあった。』

 

「釣るですか、言うのは簡単ですがやるのは難しいですね。」

 

『そこで、策を練りたいんだが良いか?』

 

「勿論、貴女のためなら例え地の中マグマの中ですよ。一番簡単な方法はありますよ、敵の無限潜水艦作戦を利用します。」

 

そして、私たちはそれを実行するために色々と考え始めるのだった。

 

 

 

~コゼット~

 

あーもぉ遅くなっちゃった、マードックさんからの説明が長すぎてもお7時過ぎちゃったじゃない。

まだ、食べ始めてないかなぁと、キラの家に付いたのでドアを叩く。

 

はあいと言って出てきたのはカリダさんだ、

 

『遅くなりました、まだお夕飯食べてませんか?』

 

「ええ、これからよ。さっ入って!」

 

凄く平凡な家庭…なのだろう。私には解らない、一家の団欒だとか父親がいるだとかそう言うのは無縁だったから。今だってそうだ、大西洋連邦に帰ったときも殆ど家にいなかった。唯一、アークエンジェルの中だけは家族らしかったかもしれない。

 

他愛ない話をしながら、将来の夢を語らい合いながら食べる、他人(ひと)の家の料理。母が造る料理は薄味で、栄養バランスをかなり理論的に詰め込んだものだったから、美味しい?と言うか不味くないものだった。

 

でも、ここの料理は違う。確かに栄養バランスは良いものばかりではないが、これがこの味が美味しいと言うものなのかと、家庭的な味と言うものに舌鼓を打った。

皿洗いとかをやって、情報交換も行う。

 

そうしていると、時間が過ぎていってもう就寝の時間か、軍に入ってからは非常にコントロールされた就寝だからか、私たちは非常に眠くなる。だからラクスとキラはもう寝てしまったけれど、私は朝の父の話を聞こうと二人と違いカリダさんとハルマさんと話を始めた。

 

『朝、父の名前を聞いたときいったい何を考えていたんですか?』

 

「カリダ、話しても良いと思うんだ。あの人の娘だ、きっと敏い、それにいずれ知らなきゃならなくなる。」

 

「そうね…貴女のお父さんマイケルは、私の姉夫婦と同僚だった時期がある、いや敵対していたの方が正しいかしら。」

 

『敵対ですか?いったい何故…』

 

「コゼットくん、昔最高のコーディネイターを造ろうと躍起になった学者がいた、その学者はある存在に言われた。《非生産的で無意味な事だ。そんなことするよりも、医学の方に努力したらどうだ?》

それが君の父、マイケルが言ったこと。それから彼はおかしくなった、マッドサイエンティストと言うほどに。」

 

『でもそれは、今は関係ない事ですよね。嫉妬は醜いだけです。』

 

「別に責めている訳ではないのよ、ただそれだけ。貴女のお父さんは、非常に影響力があったって事。

それでね、本題に入るけど良い?キラの事よ。」

 

それから聞いたのは、キラの出生の秘密。キラはこの家の本当の子供ではない、だけど愛されている事は間違いないのだから、大丈夫だろう。

例えキラがそんな感じで生まれていても、父よりはよっぽど現実味があるしね。

 

 

 

~ニコル~

 

足付き発見の報告が上がってはや、3日が経過した。僕らはオーブの近海に身を潜め、足付きの出港を今か今かと待ち続けている。だけれどもうそろそろ、潜水艦の行動時間の限界かもしれない。

 

ボズゴロフ級はそもそもこんなに長い間、潜水してでの戦闘は不可能だ。それでも無理を承知でいるのは、数日前に届いた僕らはザラ隊への命令書。本国への期日付きの帰還命令、そしてラクス・クライン捜索の中止及び殺害命令だ。

 

これに対して僕らは拒否をした、まだ諦められない他でもないアスランがわがままにも似た思いで僕らを突き動かした。

カーペンタリア基地の司令も同意見のようで、僕らは後ろ楯を得た。

 

基地司令曰く「あんな子供の言った事で揺れ動くなら、いっそ戦争なんて止めちまえってんだ。だから議長達は馬鹿だってさんざん言われてんだよ、俺たちにな。」

と、僕らはその時初めて知った。この人達は全員反プラントいや反評議会の集まりだと言うことを。

それでも、僕らに協力するのは何故なのか?

きっとプラントに家族がいるから…彼等にとっては体の良い人質だと言うことだ。

 

それでも、僕らを見る眼は復讐とかそう言うのではなく寧ろ、自分の子供を見るそんな眼をしている。

だが、今はそんな事どうでも良い、一刻も早くラクス・クラインに本心を問いただす。そこで、こうやって潜伏しているのだがにっちもさっちも行かないの。

 

そこで、アスランが提案した。

「自分達がオーブに潜入します。」

 

「顔が割れているヤツが行くのか?馬鹿言うんじゃない、若いの。良いか?お前達には帰還命令が出てるんだ、俺たち捨て石と違ってな。それなのにどうして戻ろうとしない?」

 

「ラクスに真意を聞くまで、プラントに戻ると言う選択肢はあり得ないのです。」

 

「そうか、わかった。ヨシじゃあ少しだけ手を貸そう、ザラ隊へ出撃命令を出す、ただしMSの運用はご法度だ。生身でオーブ領海を泳ぎきるんだ、ボズゴロフは領海に入った瞬間破壊されても文句は言えないからな。その点生身ならなんとかなる。」

 

僕らはウェットスーツを着込み小型のパルスフィンを一人一人がつかみ、音の無い海へと進んでいった。

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

パルスフィンと言うものは現実にはありません、ですが原理は非常に原始的なものでありながら、スクリューよりも優れたものです。
ガンダムは架空ですからたまには少しSFをいれたいなぁ。


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第43話 潜入なんて直ぐばれる

TENET見てきましたぁ。
いやぁ、やっぱりノーランの作品は難解ですね
ε-(´ー`*)

時間の逆行それ自体は昔からあるものですが、ああいうタイプのものは始めてみました。アクション映画としても良いものですが、CGをほとんど使ってないであれなので、どんだけ手間隙がかかってるのかと。とにかく面白いので、是非是非見に行ってください。

さて、ノーランの作品を見てしまったので何か影響が出るかもしれません。そこのご理解をお願いします。


オーブ本島に到着したザラ隊、彼等はパルスフィンを海中アンカーで固定してウェットスーツを脱ぐ。

すると中からは今風の若者が好みそうな服が出てくる、アクセサリーの類いを装着して小さなバックを肩に担ぐ。容姿は観光客と見えるだろう。

 

この時勢に観光に来るものなどいるかは解らないが、それでも不審者には到底見えない。寧ろ何か掃除業者の格好をした美青年達の方がよっぽど目立つと言うものか?

一人は一眼レフを首から下げて、一路アークエンジェルが寄港している港へと足を進めるのである。暫く進んでいた。

 

だが、そこでアクシデントが起きた進む途中に迷子の少女がいたのだ。人の良いアスランとニコルは妙な罪悪感からそれを放置することが出来ず、ついつい声を掛けてしまう。

彼女の名前を訪ねると、マユ・アスカと言った。どうやらミリタリーオタクのお兄さんと一緒にアークエンジェルを見に来たのだが、艦に夢中になった兄はマユちゃんを置いて何処かへ行ってしまったと言う。

 

ディアッカは閃いた、これは実にグレイトな作戦が出来ると、人質ではなく合法的に艦に接近するのが可能だと。だから、共に探してあげようと目配せしながら言った。

 

一方その頃アークエンジェル元学生組は、艦へと呼び戻されそこからの帰路に付いていた…。

 

 

 

~コゼット~

 

もう急に呼び出しだなんて聞いてない、出港は明日の夕方の筈でしょどうしてこんな急に…?あれって誰だろうなんか名前を呼んでるけど、マユ?妹かな?

はあ、どうしてこうお節介なんだろう。

 

『ねえ君どうしたのかな?』

 

少年はこちらを向いて警戒しつつも困ったように言った

 

「妹を見失ったんです。一緒に連合の艦を見ようって言ってここまで来たんですけど、はぐれてしまって。」

 

『ふぅん。そう、じゃあお姉さん達が手伝ってあげようか。一人で探すよりも皆で探した方が効率良いでしょ、皆もそれで良いよね?』

 

全会一致だ、彼の名前はシン・アスカくん。妹の写真を見せてもらっていざ、出撃!

したものの既に30分は探してるんだけど、一切音沙汰なし何処にいったんだぁマユちゃん…おっ?あれは、マユちゃんらしき子が見知らぬ人と一緒に、こっちに来ている。

 

『すいませぇ~ん。マユちゃんだよね?シンくん、お兄さんが探してたよ?』

 

「お、お姉さん誰?」

 

『ア、ごめん。私の名前はコゼット、コゼット・スパロウ。マユ・アスカちゃんで間違いないよね?』

 

「うん!お兄さん達がお兄ちゃん探すの手伝ってくれてたんだぁ!」

 

この人達が…誘拐してた訳じゃないのね。

 

『そうなの、よかった。ちょっと待ってね今から電話するから、…もしもし私、うん見つかったから集合場所で待機で、うん了解!さ、待ち合わせてるからそこにいきましょ!皆さんもどうです?見た限り観光のようですけど、出来る限りお教えしますよ?(パンフレット丸暗記だけどね)』

 

集合場所である軍港近くの公園に歩き出す、彼等の歩みは規則的な歩みまるで訓練されたかのように。

軍人だろうか?だけどアークエンジェルにはそんな人はいない、オーブの人か?でも日焼けが少ない、だとするとひとつしかない。

 

到着した、二人は抱きついてシンくんはありがとうございますと、何度も何度も頭を下げていた。

 

『シンくん、お兄さんなんだからもうマユちゃんの手を話しちゃダメだよ。お姉さんとの約束ね!』

 

二人は手を振って去っていく、さて残ったのは私たちと眼を大きくしてこちらを見ている四人組だけ。

 

『それで、貴方達は何者なんですか?ザフトの兵隊さん?』

 

 

 

~ニコル~

 

こちら側と睨み合う形になった彼女達はいったい…それに帽子を深く被っている人、彼女は間違いなくラクスクラインだろう。いつでも銃を抜けるようにしないと、

 

「キラ、君はキラ・ヤマトだよな。」

 

「久しぶりだねアスラン、へリオポリスでの一件以来かな?」

 

「どうして、お前が地球軍なんかに」

 

「色々あったんだよ、本当に色々とね。それにアスランだってあんなに戦争が嫌いだったのに、どうしてザフトにいるの?」

 

勝手に話を始めないでください、いきなりそんな情報が出ると余計にややこしくなるじゃないですか。

 

「皆さま、こんなところでお話をするよりも、お昼を食べながらした方がよろしいのではないでしょうか?」

 

そして、ラクス・クライン。彼女は現状を見て食事に誘ってくる、と言う事を平然と言っている。

そして、そこに賛同する彼等に兵士としての自覚は在るのだろうか?

 

「つもる話もあると思うし、行きましょ!気楽に話せる場所へ。」

 

そう言うと、それなりに遠くのファミリーレストランへと連れていかれ、そして大きなテーブルへ座らされた。

そこから何故か自己紹介が始まったのだ、何を言っているんだと思うかもしれないけど、そんな事が目の前で起きている。

 

『僕らがここで暴れる心配とか、そう言うのしなくて良いんですか?これでも軍人ですよ?』

 

「なに?民間人に手を出す気?そんなことしたら、プラントの味方今度こそいなくなるよ?」

 

『やはりそうでしたか、嫌に警戒していないと思いました。僕らをどうするつもりですか?』

 

「別に?どうやったってここはオーブ、私たちは地球軍貴方達はザフト、ここで争ったって意味ないでしょ?それよりも、今は親睦を深める時かなって。」

 

「貴女は、結構変わっていると言われませんか?」

 

その日僕らは知った、僕らの戦う相手を知ってしまった。例え少しの時間でも共に遊んだ同じ年齢の人達。互いに住所を交換し、もしも生き残ったら会いに行くと言う。それが僕らには選択できない、何故なら僕らは彼女等の艦を沈めなければならないから。

 

 

 

~ナタル~

 

『総員乗艦完了したか?ハウ伍長』

 

「はい、総員乗艦しました。いつでも出港できます。」

 

『よし、艦内放送を入れる。…各員各々の休暇は取れただろうか?取れたのなら幸いだ。

さて、本艦はこれより赤道連合へと進むこととなる。ただし、これは作戦の一部に過ぎない、本来の目的はザフトの潜水艦ボズゴロフの撃沈にある。

現在、オーブ軍からの情報に寄ればオーブ近海に潜水艦らしきものが展開しているという、領海に入っていないがそれでも我々を待ち伏せているのは確かだ。

 

しかし、それは我々にとっては千載一遇のチャンスであろう、敵は我々が領海を出るまで攻撃不可能である。

そこで、オーブの対潜網を我々は飛行して横切る、連中は遠回りすることになるため、我々よりも遅いだろう。そこを叩く。

 

急制動や急加速等があるくれぐれも転倒に注意してくれ、以上だ。

 

回線ストライクに繋げてくれ、』

 

「了解しました。」

 

『ヤマト少尉聞こえるか』

 

「何ですか大尉」

 

『ストライクは今回水中戦を想定した、正規量産型のマリンパック装備で出てもらう。勿論今すぐにとは言わないが、アークエンジェル単独での戦闘が困難と判断した場合頼む。アーガイル曹長は艦の対空戦闘を担当してくれ、ミサイルが来るとも限らない。

コゼット少尉制空権の確保と、新人連中を頼む。特にアルスター伍長、くれぐれも無茶は止めてくれ、私の心臓に悪い。

ケーニヒ伍長、機体に振り回されるなよいつも通りやってくれ。

 

発艦順はスカイグラスパー、ゲイル、マッド、ストライクの順番だ。ストライクは出撃準備でとどめておくように。』

 

敵は必ず出てくる、後はノイマンお前の肩にかかっているぞ。

 

『離水まで10…5・4・3・2・1 あげろ!』

 

艦が浮かび上がると同時にミノフスキークラフトを低出力で起動、エンジン出力を押さえながら領空を飛行する。

 

『下方イーゲルシュテルン展開用意…』

 

領海を出るまであと少しか…よし!

領海を出て80浬ほど進んだ頃だろうか、海がざわめきだした。来るか

 

『作戦通り行く、スレッジハマー座標修正急げ、無誘導で攻撃する。今だ撃ち方始め!イーゲルシュテルン展開!』

 

対艦ミサイルが水中に潜っていく、領海を出てすぐに敵のMSが顔を出す。

そこへ弾幕が形成され、直ぐに顔を隠す。

 

『全機発進せよ!』

 

今ここにオーブ沖海戦が始まった。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第44話 魚雷は当てるより、自爆させよ

アークエンジェルとボズゴロフ艦隊の戦闘が始まる、双方水中と空中により、決定的打撃の無いまま時間だけが経過していく。だが、焦りが見えるのはボズゴロフ艦隊の方だ彼等の艦は潜水艦、いつまでもノコノコ戦闘をしていてはいずれバッテリーが上がるか、酸素が欠乏する。

持久戦に徹していては不利は覆せない。

 

艦長は不可思議に思っていた、アークエンジェルはどうして最初の一撃時、対艦ミサイルを水中に突撃させたのか、どうしても腑に落ちない。

その疑問はモラシムも同じであった。

 

こちらを満足に観測しないうちに攻撃を始める、まるで規定事項であるかのように振る舞い、決まった動きで我々を攻撃しているようだと。

そこで、頭に電流が流れた。

急いで先程のミサイルを捕捉させる、だが音探で音を聞いても突発音はしない、音がしないのはおかしい。爆発音がしないとは、反響すらないと言うのはまだ信管が作動していないのだ。

 

そこでソナーを使った、顔から血の気が引いていく本来負の浮力により沈降するはずのそれは一本が艦体の真下20メートルの場所にあるのだ。誘導された、全てを察し、全艦放送を入れた。ただ一言のためだけに。

 

『総員衝撃に備えよ!』

 

次の瞬間突き上げられるような強烈な衝撃が艦を襲い、艦尾から悲鳴が聞こえ艦が比喩になく曲がる。

亀裂が生じ、そこから大量の水が流れ込む、直ぐ様隔壁を閉じるが1割のものが閉じ込められ死んだだろう。

 

「艦が傾斜します!」

 

「艦尾浸水区画を切り離せ、予備推進に切り替える。」

 

衝撃は立て続けに三回起こった、真下ではなく横から凄まじい圧壊音と共に、間違いなく何隻か沈められたに違いない。

戦力の半数以上が一瞬にして消滅、艦尾を損傷して彼等は退却する事すら出来ない。

 

だが、幸いな事にボズゴロフの格納庫の被害は少なく、MSは出撃出来る。

 

『MS全機発進せよ!これより浮上戦闘を開始する!』

 

決死の戦いが始まるだろう。

 

 

 

~ナタル~

 

海に気泡が浮かび上がり、大爆発を見る。

 

『トノムラ、敵の索敵を行え。あれで沈められたとは思うな。ヤマト少尉発進準備に取り掛かれ。』

 

「音探雑音だらけで何も拾えない!威力が高過ぎです。」

 

『それで良いどうせ浮上してくる。』

 

ミサイルにワイヤーをくくりつけ、目標の周囲に網の目のように付ける。

マイナス浮力によっての沈降と、潜水艦の前進による浮力によって下部に集まってくるか回転するよう小細工されたそれによって、徐々に距離を詰める…最初に聞いたときは信じられなかったが、まさか成功するとは。

だが、一度きりの奇襲だ、そう何度も成功するはずがない。

 

「熱源感知、敵のMSと思われるもの多数接近中!」

 

『万事予定通りに行く、敵に上をとらせるな。グラスパー隊が鍵だ。』

 

数秒後に水が噴気し、そこからGシリーズを中心としたMS群が現れる。

 

『ストライク、発進せよ!』

「闇鍋の中に突っ込ませるんですか!」

 

『いいや、敵の母艦を破壊してもらう。ゲイル、マドロック攻撃を開始せよ、ただし敵MSの足を止めるだけで充分だ、深追いはするな。敵MS群周囲に円を描くようにスレッジハマーを着弾させろ、中心に対空榴散弾をたっぷりお見舞いしてやれ。』

 

実際の戦闘は案外遠いもので、実に8キロ程離れている。それでもかつての戦争での距離より遥かに近い、いやこの距離では一次大戦くらいの砲戦距離と言えよう。

 

アークエンジェルは逃走時どうしても後方へと指向可能な武装が限られる、故に敵に向かうよう指示した。

もはや偽装の必要はない、後は連中を叩きのめすだけだ。

 

『第一目標の達成を確認、直ちに敵潜水艦隊の撃滅に移行する!』

 

 

 

 

~カガリ~

 

私は会議室で大人達の中に混じり、今後のオーブの身の振り方を検討していた。

むつかしい言葉が飛び交う中、必死にかじりつき議論のなかで穴がないかと探しつつ、修正案を出していた。

 

その時、臨時ニュースが入った。オーブ近海において今日出港したアークエンジェルが、ザフトの潜水艦隊と戦闘を行っていると言うものだ。

 

私にとって戦闘はつい昨日の出来事のように、振り返られるが、国民にとっては違うようでその映像を食い入るように見つめるものが、会議室の中にもいた。

 

アークエンジェルの中央の弱点部に仁王立ちする一機の機体、それが空から降ってくるミサイル群を、肩に背負ったビーム砲を拡散にさせて迎撃し、ピンポイントに来るものには折り畳まれた大型のビームライフルが狙撃している。

 

周囲の眼は多勢に無勢の形しか写っていないだろう。私はあるものに目が行っている、ビームの色それが今までのものよりも濃く映っている。

それは映像のせいかもしれないし、私の見間違いかもしれない、ただその射程は今まで見たもののなかで、アグニ以上のものかもしれない。

 

そう思っていたら、映像に閃光が走った。また一隻沈んだのだろう。ストライクはきっと縦横無尽に海中を駆け巡り、それをサポートしているグラスパーは役目を果たしているとみた。だが、そろそろ議題に戻らねば。

 

『うっうん!皆戦闘映像を見るのも良いんだが、これから我々はこの戦闘に頭を突っ込むつもりでいるんだ。その前に、色々と決めなければならない。そうではないですか?』

 

私の言葉に我を取り戻したのか、再び会議室にガヤガヤと言葉が戻ってくる。

 

「まず始めにだが…現在我々の開発しているMS、アストレイ。あれの進捗状況だが、芳しくない。と言うのが本音だ。」

 

サハク家の次期当主がそれを言うと、周囲からは「矢張か」だとか「それ程までか」など絶望視する声が聞こえた。

 

「状況は更に悪いものとなっている。現在連合の機体は新規量産機は全て、核融合炉を搭載しており継戦能力は推定でも数ヶ月無補給状態で駆動が可能、と言う試算を出した。対して我々やザフトの機体はバッテリー駆動…出力も継戦能力も連合に遅れをとる。」

 

更に沈鬱な雰囲気となった。

 

『そこで我々は手に入らなかった技術ならば、手に入るようにすれば良いと逆に考えた。そう、連合への加盟それしか方法はない。』

 

これまでのオーブの方向とは180度違う方向を向いていることに、驚くもの達はいない。

寧ろそれが当然であるように受け止めている。

 

『既に最も信頼のある大西洋連邦に、打診をした。我々の立ち位置は非常に不安定だった、ここで我々は戦う術を持った。これにより父ウズミの行っていた事を破棄し、連合のオーブとして地盤を磐石なものとする。これにより、何の利益も生んでいないこの戦争の早期終結を目指し、今後のオーブの発言権をより向上させる!』

 

拍手は起きない

 

『我々の連合への加盟は現時刻を持って行われる!まず手始めに連合の艦艇、アークエンジェルの救援を行う!以上総員解散!』

 

軍があわただしく動き出す、出撃まで凡そ1時間は必要か?間に合うか、間に合わずとも出撃した記録が残る、それによって私たちの信頼を少しずつ勝ち取らなければ。

 

 

 

~ニコル~

 

僕たちが母艦から出撃して15分程経った頃だろうか、ボズゴロフ級の艦隊は既に2隻ほどしか残っていなかったかと思う、その時僕らはどうしていたか。

それはMSの残骸と漏れでた油に濡れていた。

 

浮上した時、まるで出てくる場所があらかじめ解っていたかのようにミサイル群が降ってきた、僕らの機体はフェイズシフトで護られたけれど、グーン等の機体は損傷し継戦能力が落ちた。

 

その数分後、今度は空からの攻撃が続き身動きが取れず、これでは戦争ではなく狩りとでも言える。

更にストライクが出てきた時、データに無い装備で僕らを翻弄していった。

 

ゴボゴボと沈み行く機体、それでも母艦は破壊されていく。僕らには帰る場所が失くなってしまうのではと、それを心配した。

そんな一方的な戦いは唐突に終了した、センサーには何も映らずあるのは機関を完全に破壊された母艦だけ。

 

幸いだったことはここがカーペンタリアから程近い場所だったことくらいだろう。僕らは大敗した。

 

その日救出された日、全世界へ向け連合は映像を流したきっと航空機に搭載されていたカメラが撮った映像なのだろう、僕らを一方的に倒す。

そんなものが映っていた、宣伝工作。これで大洋州の中の僕らに敵対する勢力に、力を付かせようとしたのかもしれない。

 

数日後、僕らは予定通に地球からプラントへ帰還することとなった。

その後、地球軍に対する最後の攻勢が行われる、オペレーション・スピットブレイク。

 

最後の攻勢…そして最大の敗北を喫する作戦。このときにはもう、僕らは防戦一方となっていく。

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第45話 Operation Remains

平和記念公園そこは前大戦の兵器の置場所、特別展示場のような場所だ。

大西洋連邦には、そんな場所がある。それは幾つもの場所に点在し、その威容を今なお誇っている。

 

そして、その場所には奇妙な程に大きな砲台があった、指向性の台座に固定され、ストーンサークルのようにかつての合衆国の重要拠点。更に隣国の盾となるように、各地に設置されている。

 

アラスカ州のど真ん中にも設置され、その防空範囲は宇宙空間まで伸び、落下軌道をとっている小惑星の迎撃にも使用された事があった。

それが今再び、空を見上げている。小さな光がゴマを振りかけたように広がってアラスカ基地へと降下している。

砲台が照準を定め撃つ、衝撃は突発音となり周囲の建物の硝子は吹き飛んだ。

飛翔体が落下物に接近すると一定距離で炸裂した、瞬間落下物に着弾し次々と破壊されていく。

 

正確無比な射撃は続き、あるものはとてつもなく硬い金属音を出しながらバラバラになっていく。

恐らくはPS装甲を物理的に貫通したのだろう、金属隕石破砕用のそれはあまりにも強力だ。

 

幾つかは降下に成功しているだろうが、それでも地獄は終わることはない。着地地点にはもれなく、リニアガンタンクの射撃の雨が降り注ぐ。

既に着弾分布は把握されている為、何処にどの角度でどのくらいに着弾するなんてのは、連合にとっては当たり前となっている。

 

それでもその中を潜り抜ける猛者は存在する、一機のシグーが砲撃を突破した。

だが、そこに立ち塞がるのは連合の量産機ダガーしかもウンカの如くの数である。

 

例え実戦経験が少なくとも、5対1ならば地上なら容易く撃破出来るだろう。

シグーの射撃を盾で受け流しつつ、ビームライフルで牽制しその内の一発が命中シグーは爆散する。

 

形勢は明らかだ、ザフトの投下したEMP兵器は地表付近に到着するとその機能を完全に停止し、ただの落下物へと成り下がる。

M粒子が造り出した、電子兵装を破壊する戦争。連合はレーダーから光学センサーに頼った飽和する迎撃網へと変化していた。

弾幕による迎撃、大きな的へはそれで充分であった。

 

完全な敗北を喫するザフト、だが悲劇はそれで終わりではない。全てはこの時の為に。

同時刻カーペンタリア基地には砲弾の雨が降り注いでいた。

 

 

~コゼット~

 

潜水艦隊を退けた私たちは赤道連合で一旦補給を行い、再度カーペンタリア方面へと足を進めた。

指定されたポイントに付くと、そこには既に多数の連合艦艇が集結しミサイル群を発射しているところだった。

ブリッジに連絡が入り、私たちも直ぐ様集められた。

 

「任務ご苦労」

 

画面の向こうには見知らぬ人がいたけれど、階級は中将と余りにも高い位だ。

 

「ここで休暇をとらせたい所だが、そうは行かないのが現状だ。見ての通り、そして通達の通りカーペンタリアを攻略中なのだ。そこで、君達には今攻撃中の北部方面への主攻勢へと加わってもらう、拒否権はない。

なに、支援射撃は充分に行わせてもらうよ、兵器も人もタダではないのだからね。」

 

なんかムカつく、もっと他に言い方無いのかなぁ?

 

『それでバジルール大尉、どうします?』

 

「拒否権はない、だがこうは言ってない。何時如何なるときに攻撃せよとは、つまり自由裁量で動けと言うことだ。であるならば、我々は我々のすべき事をするまでだな。」

 

「と言うと?なんです?」

 

「ああ、全力で敵戦力を攪乱する。もっとも、作戦の範囲内でと付くがな。」

 

そこから私たちの戦場は始まった。

攻勢の最前線で、味方が立ち往生している場所に行っては敵を攻撃し、傷ついた味方あらばアークエンジェルが収容していく。

 

戦艦と言うよりもなんか揚陸艦みたいな働きをして行った、もっとも本来の揚陸艦であるペガサス級みたいに、格納庫が低い位置に無いから、収容能力は低いけどそれでも大勢救出したし、大勢敵を殺した。

 

勿論初めてじゃなかったけど…人そのものを…MSで押し潰す、なんて事もしたけど…もうあんなことはしたくない。

それでも戦いは続く。

 

けれども違和感があった、そう余りにも敵の戦力が少ないことそれにつきる。

MSだってディンやジンがいるだけで、他の機体は見当たらない、歩兵だって見当たらない。

 

そして、攻勢開始から僅か3日でカーペンタリアは降伏した。そして、それに便乗してか大洋州も事実上降伏、政府を軍の管理下に置かれた。

 

後から聞いた話によれば、カーペンタリアの反撃が散発的に見えたのは事実で、どうやらアラスカを囮に敵の大部隊を誘引するのに成功したらしい。

そのアラスカも、古い超兵器を使用して完封したんだとか。

 

たぶんあの公園のでっかい大砲なんだろうなぁ、とは思うけどあんなオンボロ、よく動いたなぁ。

この二つの戦いで地上でのザフトの勢力圏は、事実上消滅した事になるらしい。

 

この段階で交渉団の派遣を行うそうで、交渉場所はザフトの勢力圏のど真ん中、L5宙域。

交渉団は命懸け、アズラエルさん自らが交渉の席に座るみたい。

 

一応政府高官だけど、民間出身者でもあるからもしも殺すものなら全面戦争やむ無し。

正直心配になるし、誰か止めなかったのかなと思うけれど。それでも彼の敏腕に掛けるしかないのかも。

 

 

 

~アズラエル~

 

『ですから、この講和文書にサインして頂きたいのです。悪い話ではないのでは?』

 

彼等の目の前で提示するのは、講和文書。

(我々は彼等の独立を認めるが、その変わりにプラントの建設費と移住に際し使われたマスドライバーの移動費、滞納していた家賃を払えと書いてあるもの)

を提示した。

 

「確かに我々はこの内容ならば、独立できるでしょうが、ザラ派と言うか急進派はこれでは飲みません。」

 

何故でしょうか、彼等のご希望の通りの品物であるのに。

 

『ですから、それを説得するのが貴方ではないのですか?何より、もしもこのまま戦いを続けても、最早貴殿方に勝ち目はありません。

遂先日、オーブから正式に連合へと加盟する文書が提示されました。

これで、貴殿方に味方をするもの達は誰一人いなくなったのです。

次第に資源も枯渇していくことでしょう、国民を餓死させたくないでしょう?』

 

「それは承知ですですが先程も言った通り」

 

埒があきませんね

 

『では率直に言いましょう。我々には貴殿方と講和するメリットは一切無いのですよ。我々は無駄な血は流したくない、とおもっています。ですが、これを蹴ったら最後無条件降伏してもらうまで、我々は戦いますがよろしいですか?』

 

顔が強張っている、判断が出来ないんでしょう?

持ち帰っても良いんですよぉ?交渉の先伸ばしと受け取ってあげますから、どうぞ

 

「すいませんが、私の一存ではどうすることも出来ません。また後日、ご連絡させてください。」

 

『ええ、結構ですよ?それでいったいどれ程前線が前進するか見物ですよ。』

 

交渉テーブルから立って急いで車に乗る

 

『急いで艦に戻りましょう。嫌な予感がします。』

 

私が車に載った後、建物が爆破された。こんな事して何になるのか、全くもってわからない。私を殺したいのなら、正々堂々と目の前に現れてくれれば良いものを。

 

 

~パトリック~

 

『何だとっ!?奴を殺そうとした?お前達はいったい何をやっているんだ、そんな事をしてみろプラント内部からも不満が出るぞ!…私が命令したと言うのか?何時?』

 

電話から語られた言葉を私は信じられなかった、既に敗けが混んでいる事は重々承知だ、責任を取る覚悟もできている。

だが、ここで降伏しては今まで死んでいったものたちに、顔向けできない。

 

だが、この事件はなんだ?何故アズラエルを殺そうと…

 

その時彼の部屋の中で足音がした、誰も侵入した覚えの無いその場所に。

 

『誰だ!姿を見せろ!』

 

「ほ~いぃ、いぃいでぇすよ。」

 

視界の中に突如として、青いスーツを身に付けた男が現れた。まるで最初からそこにいるかのように、自然にだが余りにも不自然だ。

 

「あぁの人を殺そうとしたのは、私。ふひはひ?そう私、私が命令したんだぁ~。」

 

『貴様に命令権など無い!どうやって!』

 

「あぁら、覚えてらっしゃらない。気の毒ねぇ、私は貴方と契約したのに、忘れちゃったのぉ?」

 

ニタニタと笑いながら近付く顔が、ゾッとするような動きとなる。よく見れば、顔を形造っていたのは、無数の蝿それがウゾウゾと動いて、人の顔になっていた。

 

『私がお前と契約しただと?』

「そう、独立したいって言いましたよねぇ、ほら今こうして独立国として連合と戦ってる。いいきぶんぇしょう?」

 

こいつは何を言っている。

 

「奥さんのエキスは実に美味しかった、あの苦痛実に美味だった。」

 

『何だと貴様今何と言った!!』

 

「おやおや?聞き逃しました?私は契約と引き換えに、奥さんの命を頂いたんですよぉ?」

 

頭が沸騰した、その言葉が事実であればこの戦争は初めから目の前のヤツが仕組んだものだ。

懐にしまった銃をヤツに向け発砲した。

 

バンバンと言う音が鳴り響く

 

カランと最後の一つが落ちたとき、ヤツの体に傷はなかった。

 

「その表情実に良いですねぇ」

 

奴は人でも動植物でもない得体の知れない化け物なのかもしれない。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

謎の存在です、まあ容姿はジョーカー(バットマン・ダークナイト)のですかねぇ


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第46話 再びの宇宙

宇宙から降下した6隻の天馬、それがカーペンタリアを流用した施設で気密性チェックを受けている。

そして、その隣にはアークエンジェルが並んでいた、その姿は遠目から見れば同じように見えることだろう。

 

しかし、実際のところかなり大きな違いがある、何より全長が違うのだ。

ペガサス級(グレイファントム)は全長270m程に対してアークエンジェルは400mはある。伊達に戦艦ではないと言うことだ。

 

強襲揚陸艦は大きすぎると的になる、故にアークエンジェルは揚陸艦としては《使えない》のだ。

それを今回の戦闘で、揚陸艦として使ったが為に少々弾痕等が出来ていて、修復に多少の時間がかかる。

そして、乗員は全ての艦が半舷休息となった。たった3日の戦闘ではあるが、されど戦闘。精神的な疲弊はあるだろう、何より昨今の戦闘は余りにも短時間で行われる、そのために短時間で強烈な疲労が蓄積される。

 

矢面に立って戦う兵士は勿論の事、敵の眼を自らに釘付けにするパイロット達も疲弊するのだ。

そんなわけで、調整の間に今後の作戦に対するブリーフィングと、艦と艦の交流会が行われていた。

 

 

~コゼット~

 

ああ、夢を見ているんだ。夢の中で意識があるなんて不思議な感覚。なのに周囲は宇宙で、見たこともない星々が輝く。青い?緑?色の大型MAとストライクに似た機体、赤い見知らぬMSが戦っている。

けど、様子がおかしいMAとストライク?がまるで、言葉を交わすように、旋回している。

 

「ララァ!奴との戯れ言をやめろ!」

 

誰かの言葉が宇宙に木霊して目が覚めた。

 

 

起きると船内のベッドで、一緒に何故かラクスが寝てる。そういえば、交流会があってジュースを貰ってから記憶がない。

あれはお酒だったんだ、きっとそうに違いない。

 

だってこんなに頭が痛いんだ、っくそ。そういや昔、おじさん達が言ってたっけ、父さんは酒が飲めないって。もしかして、遺伝?ふう、とにかく水、水。

 

「う、ううん。あら、お早うございますコゼット様、お加減いかがですか?」

 

『最悪よ。そういうあんたはピンピンしてるじゃない。』

 

「私、実はこういう会席の時に酔わないよう調整されているらしく、全く酔いませんの。そのせいで、皆さんと一緒に酒盛り出来ませんでした。そのお陰で、コゼット様をここまで運んでこれてるのだから、良いことです。」

 

『ありがとね、ところで皆は?』

 

「それなら廊下で寝ています、スヤスヤとそれはもう。ちなみに朝礼まで残り10分くらいですが、どうします?」

 

『え?』

 

もうそんな時間?不味い、どうしよう今から言ってもまにあわない。

 

 

そして20分後皆揃ってバジルールさんに怒られましたとさ。

ちなみに今回の功績でバジルール少佐に昇格したみたい、正式にアークエンジェル隊の隊長になったみたい。

それにしても、話に聞く限りでは一番お酒を飲んでた割にはピンピンしてるんだから、本当に個人差ってあるんだなぁ。

 

「さて、お説教はここまでだこれよりブリーフィングを始める。もっとも、我々は単独行動だがな。」

 

新しくなった3D投影機でボアズが示される。

 

「連合全体での作戦目標はボアズ、新星の奪還だ。もっとも東アジアは現在進行形で内乱中で、本隊は来ないらしいが。」

 

内乱ってこんな時にやることかなぁ。

 

「どうやら、無理矢理併合した国々が反旗を翻して戦国時代なのだそうな、ザフトもいないから悠々自適に独立戦争しているのだろ。」

 

これだから、東アジアは。

 

『それで、私たちは単独行動ってなってますけど、ルートが違うんですか?』

 

「そうだ、我々のアークエンジェルは敵によく発見される。マークされているから仕方がないが、そこで我々は新規に連合へと加盟することとなったオーブへと入港し、そこでオーブの艦隊の打ち上げと共に宇宙へ上がる。そしてオーブ艦隊とボアズを目指す。」

 

また、オーブ。まあ良いけどね、今度は観光とかは出来ないけど、いつか必ず出来る筈。

オーブも連合入りしたから東アジアの穴埋めはきっちりしてくれる筈、と言うか東アジア今宇宙艦隊いないんだっけ?

大西洋連邦にレンドリースで使わせて貰ってた分、きっちり持っていかれたと。内乱やってるから仕方ないね。

 

オーブの艦隊はどんなもんか拝見させて頂こうじゃないか!

 

 

 

~カガリ~

 

アークエンジェルが再びオーブの港へやってきた、今度は盛大な歓迎のもとの入港となった。

私たちは連合の一員として戦うことを決意した、勿論戦うのは兵士たち。

 

だが、彼等だけでは駄目だ。私も宇宙へ上がろうと思っている、彼等だけを宇宙へ上げて私はのうのうと椅子に座っているだけでは、提案者として示しがつかない。

 

それに、もし行かなかった場合氏族としての面子が今度こそ地に堕ちるだろう。

「カガリ様、支度が終わりました。」

 

『ああ、今から行く。父様行って参ります、オーブの事よろしくお願いします。』

 

「わかった、艦隊を頼む。…カガリ。」

 

『はい。』

 

「必ず帰ってこい、一人でこの家に住むのは寂しいからな。条約等は私に任せろ、強引にでもオーブの為となるものを通して見せる。」

 

父様に笑顔を向けて別れを告げた。

車に乗り、マスドライバーへの道を急いだ。

もうクサナギの準備が完了している、横にいるのはアークエンジェル。

 

マスドライバー無しでの、単独離脱。本当に科学に大きな水を開けられたと実感できる、設計図事態はモルゲンレーテにあったが、肝心のミノフスキークラフト。

あれは別グループ、それこそ筋肉マイケルが組み込んだようでその部分だけ、完全にブラックボックスだ。

 

連合に加盟した事によって、それの整備資料が少しだが受け渡された。少しではあるが、全貌を把握するにはなかなかにシビアな内容だが、それでも技術部門は頑張っている。

どうも数式で戸惑っているようで、私にはあまり良くわからないが既存の量子力学が破綻する可能性が見えていると言う。

あの筋肉達磨、本当に頭が良いんだな。

 

そんな前途多難な中でも、前に進まなきゃならない。勝ち馬に乗る、いかにも小人ものがやりそうな事だがオーブは小国。誰も非難しまい、されたとしても回避の仕方は外交に長けたセイラン家が何とかするだろう。

 

考えているうちにマスドライバーに到着したようだ、車を降りた途端に兵が皆私に向けて敬礼を行っている。

壮観なものだが、果たして私に彼等を率いるだけの器量があるだろうか?

 

台の上に立ち深呼吸。

 

『皆良く集まってくれた、我々は今日より連合へと加盟する日付となった。これは、我々氏族がより集まり決めた事だ。不満を持つものもいる事だろう。

私はその事の発端でもある、ヘリオポリス崩壊の日私はそこにいた。

そして、彼等ザフトの暴挙をこの眼で見、世界を回った。

そして、一刻も早くこの戦争を終わらせなければならないと、結論した。

それゆえの決断が連合への加盟だ。

 

私と共に戦ってくれるだろうか?

異議あるものはここで申し立てよ、さもなくば我々は宇宙(そら)へと上がる。

 

すまないがみんなの命をくれ。』

 

整列して艦に乗り込んでいく、こちらに誰か来るようだ。あれは、バジルール艦長か?

 

『数日ぶりです、バジルール艦長。これから行動を共にする仲間としてよろしくお願いする。』

 

「いえ、こちらこそ。我々は単艦行動が多かったからか、あまり連携と言うものが取れない。すまないがあなた方が我々には合わせて頂くと、こちらとしては助かる。」

 

『いや、こちらこそ実戦経験が少ない故に至らぬことがあるとおもう。そのときは援護頼みます。』

 

艦長の後ろを見るとキラ達がいた。

 

『おーい、お前らも頼りにしてるぞぉー!』

 

聞こえてるかはわからないが、手を振っているからきっと伝わっているだろう。

 

「では、また宇宙で会いましょう。」

 

クサナギの艦橋へと到着し、シートベルトを着ける。暫くすると加速Gがかかりシートに背を預ける。

 

そして、浮遊感が現れ私は再び宇宙(そら)へとやってきたのだ。

アメノミハシラからやってきた一番艦イズモ、スサノヲ、ツクヨミと合流して艦隊を編成した。

 

我々はゆっくりと、アークエンジェルと共にボアズへと向かう。




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第47話 アルキメデスよ見ているか?

現在
バジルール少佐
コゼット中尉
キラ中尉
フレイ曹長
カズィ軍曹
サイ少尉
ミリアリア少尉
以下艦橋クルーは軒並み原作よりも一つ上です。
メカニックマン達も尉官が多くなりました。


広大な宇宙空間、それは無限にも続くように見えることだろう。

そんな中に多くの白亜の艦隊があった、地球連合軍ボアズ攻略艦隊。

 

その内の第1、2、3艦隊は最短ルートをゆっくりと進んでいる。艦艇の形状がだいぶ変化しており、全ての艦に外付けでなにやら、箱付けのものが取り付けてある。

恐らくはハンガー兼カタパルトであろう。その艦隊に球形で護られているのは、輸送船改造型のMS母艦かその姿はまさにただ運ぶだけのキャリアーだ。

 

その艦隊とは距離をおき、別ルートで進む艦隊第4~6艦隊同じような姿であるものの、なにやら曳航しているような感じがするが、その後ろ姿には何も映っていない。

勘違い等もあるだろうが、それでも何か曳航しているのは確かであろう。

 

更にそこから離れた対称の位置で進むのは、新造艦艇が中心となって結成された機動艦隊。

ペガサス級とアークエンジェル級を中心に編成されたこの艦隊は、他の艦隊よりも早い速度でボアズへと向かっている。

 

一番遅れて地球から進むのは、オーブ軍の主力艦隊とアークエンジェル。及び東アジアの内乱を早々に片付けて復古を宣言した極東管区の宇宙艦隊所属の、MS搭載能力を付与されたドレイク級が10隻。

それが最後尾だ。

 

この動きを察知して、プラントからも防衛艦隊から精鋭部隊を抽出してボアズへと艦隊を派遣している。

恐らくボアズへ先に到着するのはプラントの派遣艦隊であろう。

 

だが、プラントに艦隊戦をするほどの艦は無い、よって要塞に立て籠るのが基本となるだろう。

この場合包囲陣を展開する連合は必ずと言って良いほど、後方を警戒しなければならない。

最悪の場合、一つの正面が敵の挟撃に合いそこから戦線の穴を穿たれ乱れた戦列を一気に破壊される恐れが出るからだ。

故に、連合は完全な包囲をしない。半包囲状態で尚且つ、敵の逃走ルートを敢えて確保する。

 

こうすることにより、敵が増援や逃走を図る際集中砲火を浴びせる事が可能となる。しかし、敵も百も承知だ。

そう易々と引っ掛かるものではない、だからこそそれを行わせる為の兵器が必要となる。

 

艦隊後方若干包囲の薄い場所に、あるものが設置されようとしていた。

 

 

 

~マイケル~

 

『コロイド粒子の分布はどうだ?』

 

ドレイク級を改造して造られた艦の中はコンピュータで敷き詰められ、武装も外されあっても対空用のイーゲルシュテルンしか存在しない。

 

「現在均一に拡がっています、この分なら」

 

『後20分程で屈折レンズが出来るか…』

 

「はい、そうです。」

 

円型に配置されたコロイド粒子発生装置によって、周囲にコロイド粒子が散布され、ここの景色は外からではわからない。

 

『ミノフスキー粒子は、きちんと円筒型に配列しているな?』

 

「はい、さながら望遠鏡ですね。」

 

『後方の集光用の鏡は?』

 

装置の後方には更に、十字に並べられた直径100m程の薄っぺらい膜のような鏡がづらりとならび、ここのリングを中心に集光させている。

 

おっと、やあ皆。マイケルだ、今俺が何処にいるのか気になるものもいるだろう。

俺はボアズを包囲する艦隊の後方4000キロに位置する地点にいる。ちなみに装置の全幅は60キロにも及ぶ、撃てばボアズに到達する頃には、直径2キロまで収束していることだろう。

 

今回の要塞攻略の鍵になる兵器、ソーラーシステム。それを設置しているんだ、ガンダム無印のあれとはまた違ってね、ミノフスキー粒子とコロイド粒子を使ってより発展したもの、要するに鏡の光を虫眼鏡で増幅するだけの簡単な装置を組み立てているところだ。

 

もっとも、この装置だがデカイ割に脆くてね、一番安価に短期間で準備するにはこれしか方法はなかった。

まあ、どうせ使った後はコロニーの資材になるんだし、遠慮なくぶっぱなそう。

 

『射撃の準備が整ったら連絡頼む、試射はないからな。ぶっつけ本番、各艦隊に射線から出るように再度確認してくれ、巻き込んだら洒落にならん。』

 

艦隊から送られてくる回光通信。それによって、敵の重要施設や防御施設が徐々に明るみになっていく。

勿論要塞の中にはスパイがいて、その情報も入って来るが、彼等が帰ってこられるかはわからない。

 

何はともあれ、この作戦が失敗することはあり得ない、それほどこの作戦は前々から準備されていたのだ。

 

 

~コゼット~

 

私たちが到着したとき、既に攻略戦の布陣が完成していた。私たちはその中の左翼上面からの攻撃を指示されて、配置された。

要塞周囲を埋め尽くすその姿は、砂糖に群がる蟻のようにごちゃごちゃとしつつも、綺麗なボックス体形に整列していて秩序を持った動きで包囲している。

 

一方のザフトはそんな動きとは正反対で、グデグデだ。要塞に立て籠るんだから、艦艇を有効に置く方法をいままで模索してたらしいんだけど、今の時代そんな戦術ないから手探りな筈、だからなのか本当に艦艇の動きが目立つ。

 

そんな時だ、連合の包囲網の後方から光が来た。そして、ボアズを文字通り焼いていく。

要塞表面を削り、融解させ蒸発させていく。

次第に光は移動して防御システムをどんどんと破壊して、終いにはボアズのこちら側を向いている兵器は綺麗さっぱり破壊されていた。

 

《飽和攻撃用意、撃ち方を始めよ!》

 

各艦艇から無誘導のミサイルが発射され、メガ粒子砲が放たれる。

残存していたザフト艦が見るも無惨に破壊されていく中、小さい筋が複数輝きを放ってこちらに近づいて来る。

 

《MS隊発進準備、各艦MS発進後援護射撃三秒。その後、包囲網を形成しつつ現在地を維持せよ。》

 

「コゼット聞こえた?準備良い?」

 

『OK?いつでも良いわ。』

 

「アークエンジェル、MS隊全機発艦始め!」

 

まず始めに、私の機体が出る。

シートにGが掛かり、暫くすると少しの浮遊感が感じられる。宇宙そこでの久々の戦闘だ。

 

私の後にストライクが発進、その後マドロック。そして、ガンバレルパックを背負ったダガーが現れる。あれは、フレイ。コスモグラスパーの配備が間に合わないから、あれを渡されたって。

それでもカズィはコスモグラスパー、MAは不安だなぁ。

 

MS母艦から多くの機体がボアズに向かって行く、

 

『各機聞こえますか、こちらアークエンジェル隊戦闘隊長のコゼット中尉です。

取り付くまで宇宙での戦闘に慣れている、我々の誘導の指示通りに進んでください。

出来るだけ乱戦を控え、偶発的戦闘でも最低2体1で戦闘すれば必ず勝てます。

それを守ってください。』

 

彼等はまだ訓練を終えたばかりの兵士、無茶な機動は出来ないし、戦術も机上と訓練でしかやったことがない。

宇宙で溺れないだけましだけど、地上とはかってが違う。

かくして私たちは戦闘を開始する。

 

 

 

~シーゲル~

 

カツカツと誰もいない筈の廊下から、誰かの足音が響いてきている。

だが、そんなものはどうでも良い、どうせ私はここから出られないのだから。

 

『少し痩せたか…』

 

鏡に映る私は痩せこけ、まさしく病人といった具合だろう。

 

「失礼する」

 

聞きなれた声だ、嘗ての戦友パトリックだ。

 

『今更私に何のようだ、どうせ戦争には勝てないというのに。』

 

「久しぶりだな、どうだ?体の具合は。」

 

何を気にしているのかと思えば、私のからだか?

 

『気色の悪い事を言うな、本題に入ったらどうだ?』

 

奴を見据えると、ふと違和感に気付いた。こいつはこんなにも顔の色が悪かったろうか?真っ白だ、今の私も充分に白いが奴程ではない、まるで死人のような。

 

「ああ、そうだな。では、君に報告をしようと思っていたんだ。ジェネシス、あれを直接地球に撃ち込むことにしたよ。」

 

なんだと?

 

『そんな事をすれば地球がどうなるか、わかっているだろ!そこまで狂気に見いられたかパトリック!!』

 

こいつの眼は狂ったようにあらぬ方向を向き、こちらなど見ていない。何に見いられた!

 

「ハハハハ、では君の願いは何かな?この戦争を終わらせることか?それとも、ラクスを取り戻すことかな?ここから脱出することかな?」

 

扉の向こうからスーツ姿のピエロが現れた、こいつは何だ人に見えるがいったい。

ピエロは私が自分を見ているのに気が付いていないのか?

 

『私の望みは、いや夢は子供達の揺るぎない成長。今はそれだけだ、それ以外にない!』

 

「ほう、ほうほう。わかった、ありがとう。だけど困ったな、これでは私の理想と反する。そうだ、シーゲル良いことを思い付いた。今から精を、摘出しよう。そうすれば、君に新たな子が産まれる。そうだろぅ?」

 

『そんなもの、お断りだ。用が済んだらとっとと帰れ!そして、二度と来るな!』

 

「ああ、ああ、わかったわかった。退散しよう退散しよう。夢、夢、旨そうなものはナイモノカ?あ?あ?」

 

そう言うと、パトリックとピエロは部屋から出ていき屋敷は再び静けさを取り戻した。

だが、気がかりだ。ジェネシスを地球に向けて撃つだと?常識外にも程がある、伝を頼りに止めなくてはならないな。

 

久しく動かしていない受話器を手に取り、同志に電話をかける。

パトリックよ、すまないがそれだけは止めさせてもらう。

 




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第48話 甲斐が有る生き方

融解し赤熱したボアズ、その周囲では数々の閃光があった。

一機のジンが射撃をし、一機のダガーへとそれが迫り来る。だがどうだろうか、そのダガーは拝む事なく盾を正面に構え射撃を受け流しながら、急接近する。

 

ジン(ハイマニューバ)はそれに気を取られて、横合いから一気に胴体を切り裂かれる。

2対1の戦い、それでも少なく。他には3対1や4対1の戦いになるところもちらほら見受けられる。

 

多勢に無勢、それどころか画一化された戦法によってザフトは狩られていく。

獣はどんなに強くとも、人間の卑劣な戦いに対応出来なかったように、慣れている奴等を正面から戦って勝つ通りはない。

そうやってザフトの機体はどんどんと減っていく、後退しつつ戦い、決して一人ではなく隊で戦闘を行うもの達だけが生き残り。それ以外の単独のもの達は、エースや一般兵等関係なく絡め取られて落とされる。

 

そんな中で、一機だけ孤軍奮闘する奴がいた。彼は一人、無名のパイロット。他のコーディネイターと違うのは、調整が免疫能力だけと言うことだ、つまり身体能力はナチュラルと同じであり遺伝子上殆どナチュラルだ。

 

にも拘わらず彼一人、生き続けている。それは偶然かそれとも必然だろうか、彼の脳裏には何か良くわからないが直感のようなものが生まれ始めており、それを頼りに何とか凌いでいる。

 

更に連合のMSがボアズに取り付く、名もなく名声もない彼はそれを止めるために動き出す。

彼はそして、感じるだろうコーディネイターとは全く違未知の領域を。

 

 

~コゼット~

 

第3陣がボアズに取り付くのも時間の問題ね、寄ってくる敵も数が減ってきたし一段落かな?

その時、思考に電流が走った。

何かこちらに向かって来る!

 

『全機散開!貴方たちはボアズに向かって。サイ!誘導お願い。』

 

誰、私たちに向けてくるのは…アレか!

 

それはボロボロで今にも崩れ落ちそうな程になっている、ただ一機のジン。でもそれからまるでオーラのような力を感じ、私はそれに畏怖した。

だけれど、それに怖がっているだけでは駄目、どんな相手でも勝てないという通りはない!

 

そう身構えた瞬間、銃口がこちらに向くビジョンが浮かぶ、だから私はそれから避けようとした…そう避けようとしたのだ。でも、銃口から射出された弾は私を掠めるように飛んでくる。

 

まるで私の動きを詠んでいるみたいに、それでも変則的にしていくとどうしたことだろうか、あの機体では反応速度に限界があるらしく上手く動けないでいるようだ。

 

〈動きが鈍いな…このままでは!!〉

 

しめたとばかりにライフルを撃つが、それを相手も縫うように避けていくそして互いにすれ違う瞬間、サーベルを展開して切り結ぶ。

 

サーベル同士がぶつかりスパークが発生する、相手が力を弱めた。急に力がなくなるために、前傾になるところをスラスターで制御して逆に反動を利用して蹴りを入れる。そこで、声が聞こえた。

 

〈子供か、連合も俺たちと同じなのか〉

 

まただ、また頭の中に言葉が走った。この人、私たちと同じように言葉を発せずに会話出来ること、を知らないんだ。

 

『私たちは貴方達なんかと違う!私たちは、この戦争を終らせるためにやってるんだ!戦争の拡大なんか、絶対に阻止する!』

 

彼の機体は軋み、パワーで圧倒サーベルの柄を切り裂き、次の瞬間サーベルがその機体のコックピットを貫いていた。

 

〈すまない…ミーア〉

 

誘爆もない、でもこれは

 

「コゼット大丈夫か!さっきのあの感じは何だったんだ。」

 

「ありがとうカズイ…何だったんだろう私にもわからない。それに、これは悲しみ?それとも哀れみ?」

 

そんなものを気に掛けつつ最終防衛線を突破して、私たちはボアズを攻略した。

その時間は実に7時間という短さだったと言う、だけれどこの悪寒はなんだろうか。冷や汗が出てくる、これは憎しみ?

 

そう思った時、目の前を極大の光の束が直進して私たちの秘密兵器の半分をもぎ取って行った。

不幸中の幸いだった事は艦隊には何の損害もなかったこと、それ以上に危機的状況にあることには変わりなかった。

 

 

 

~パトリック~

『何?ジェネシスが命中しなかった、だとぉ?』

 

この男は私の肉体を操りながら、そう話した。机に手を思い切り叩きつけ、血が滲んでいるにも拘わらず人の身体をなんだと思っているのか。

 

「そ、それが電波での照準が定まらず目視でのみの砲撃を行ったのですが、ボアズが二つに分裂しまして。その後片方が消えてしまい、泣く泣くそれを撃ったのです。」

 

『それで、粉砕できたのは高々数千枚の薄っぺらい鏡だけか…下がれ。』

 

情報を持ってきたものが下がり、奴は息をついた。

 

〈どうやら、お前の目論見は成就しなさそうだな?Mr.X〉

 

『黙れ、まだ自我が残っていたのか?脳波が感じられなかったから、てっきり死んだのかと思ったが?』

 

〈この程度で私が死ぬと思ったか?それよりも、まさかダミーを掴まされるとはな。ハハッ良い気味だ、私の身体を返してもらっても良いかな?〉

 

私の顔で苦虫を噛み潰したような表情で鏡を睨んでいる。

 

『因果を誰かがコントロールしている、俺のコントロールが効かなかった。』

 

こいつが何かそれはわからないが、人ではないのは確かだ。そして、願いを歪曲して叶えその願いに絶望した心を食す、という変わった食事の仕方をする。

そこから見るに、地球上の生物ではないもっと別の惑星から飛来したものだろう。

 

こう思考するが、私の体の主導権は今はない。こいつ自体に実体は存在しないのか、はたまた何か依り代があって…まさかジョージ・グレンが持ち帰ったアレか?だが、アレに生体反応はなかったが。なにより宇宙は広い、こういう奴がいてもおかしくはない。

 

『ハハッ、だがお前の望みは叶えてやろう。地球を壊せば、お前たちは独立出来るのだからな。』

 

こいつを止める術は有るのだろうか?

 

 

 

~ニコル~

 

僕は父に呼ばれ実家に帰ってきていた、だけれどいままで暮らしてきた雰囲気とは違い何かピリピリとしている、そしてその元凶は直ぐに現れた。

 

「初めましてになるかな?ニコル君」

 

『貴方はシーゲル・クライン前議長。』

 

「クラインで良い、もはやプラントも末期だ今更そんな畏まった言い方はしないでくれ。」

 

困ったような顔をしていた。

 

『なぜ貴方が、確か外出禁止令を出されていた筈では?』

 

「ユーリに少し手伝って貰った。監視も今やお粗末なものだからね、それよりも私は今反乱を企てていてね。」

 

いきなりそんな物騒な事を言い出すなんて、誰が想像できるだろうか?

 

「我々にはもう時間がない、今やプラントは外部からの侵略の尖兵となり始めている。出鼻を挫かなければ、地球は滅ぶやも知れない。」

 

『な、何をいってるんですか?そんな地球外の知的生命体なんて、そんなもの来れる訳ないじゃないですか。』

 

フン、と鼻で笑われた。

 

「私はね昔とんでもない存在を知ってから、この手の存在に疑問を感じないのだよ。確実にパトリックはアレに囚われている。信じるも信じないも君次第だが、私は信じてほしいと思っている。」

 

「ニコル、シーゲルさんの言葉信じてほしい。父さんも最初聞いた時は遂に頭がおかしくなったのかと思ったんだが、最近のパトリックの言動を鑑みて合点が行ったんだ。」

 

『父さんまで…ですが、それを僕に話して何になると言うのですか?』

 

少し考えた素振りをして僕を見た。

 

「君にはアスラン君の説得をして貰いたい、彼には黒い事だが政治的に利用させてもらう。こっちは独房内のクルーゼ君を説得しようと思う。彼の友人であるデュランダル君の協力の下に、時は一刻を争うこの通りだお願いしたい。」

 

僕に頭を下げているのは、プラントの頭脳の一人それが危機を憂いている。やるしかないじゃないか。

 

『わかりました、迅速に事に当たらせて頂きます。これで借り一つですよ。』

 

「ありがとう、君らには甲斐の有る人生を送らせたかった。」

 

『何が甲斐が有るのかは僕らが決めることです、それに僕たちはまだ若いですので。』

 

僕らの最後の戦いが始まった。




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第49話 分裂のプラント

ジェネシスの反射板それは非常に巨大かつ、精密な計算の下に造られる工芸品。

一つ一つが高価であり、それの量産は決して簡単なものではない。

 

ジェネシスが兵器として駆動する以前、この反射板の生産にプラント内のプラントでは一部騒動が巻き起こった。連戦連敗の妥協策を造るという名目で、労働者達には給料の大部分が支払われずにいる。

 

それに反旗を翻したものたちが、パトリックに対するデモ活動を行った。これらは武力による鎮圧により、速やかに解散させられた。

だが、それだけで諦めるもの達ではない。

抑圧された感情は熟成され、風船にガスが溜まり破裂するのではないかという程に、膨れ上がっていた。

そこに現れたのは失脚した筈のシーゲル・クライン、労働者達に此度の事の謝罪を目の前で行い、それに心討たれたもの達は彼への協力を惜しみ無く行う。

 

この工作活動、実に3ヶ月もの間行われていた。シーゲル・クライン、彼は道化である。宗主国を欺き続けたその手腕は現在進行形で輝いているのだ。

そして、それは実を結ぶ。

 

ジェネシスの反射鏡の交換その作業中、問題が発生した。些細な機械的トラブル、だがそれは徐々に大事に発展する。パネルの反射、それの屈折率が変化し使い物にならなくなったのだ。

 

一つ壊れればやはり交換しなければならない、しかも発射体勢を解除して、再度取り付けるという面倒くさい作業。更に作業員達は給料不払いから来る怒りで、一時作業をボイコットした。これによって、連合はボアズ攻略で消耗した戦力を回復する時間が稼がれたのだ。

 

そして、交換作業に入るため防衛艦隊?が現れる。しかし、様子がおかしい。ジェネシスの基部を中心になにか行っている。さながら解体作業をするように。

 

暫くすると第2射用反射鏡に艦隊が随伴して現れる、そしてそれに対して防衛艦隊?は即座に攻撃を開始する。ここにザフト内乱が勃発した。唯でさえ、ザフトに余裕は無いというのに。

 

連合との戦力比は15対1、必敗が約束された戦い。普通であれば総力戦をし敗北をもってして降伏やむ無し。

だが、プラントが各地で行った蛮行、それを受けたもの達が果たして、それを良しとしないだろうことは考えるに難しくない。

 

 

一方その頃連合側はどうなのかと言うと、部隊の再編が完了し艦隊を4つに分散して別々の航路でプラントへと進攻を開始した。

それぞれの艦に合わせたその動きは、まるで水中の小魚のように綺麗に纏まった一子乱れぬものだった。まさしく《美しい》と言う言葉が似合うものだろう。

 

さて、その進攻ルートにはプラントの最終防衛線ヤキン・ドゥーエ要塞が待ち受ける。しかし、如何な要塞と言えど飽和攻撃を潜り抜けるのは並大抵のものではない。最も参謀本部では如何にして戦力の消耗を最小限にするか、というのが一番の議題となっていたのだが。

それは、簡単なものであった。

 

 

~コゼット~

 

『ヤキンを無視してそのままプラントへと殴り込む?』

 

「そうだ、司令部はそれが最も損害が少ない方法だと結論付けたらしい。」

 

艦長席からくるりと回りつつそう話すナタル艦長。

どういう事だろうか、もしもヤキンを素通りすれば挟撃されるのは確定的に明らかな筈。誘い出すつもり?でも、それで上手く行くの?

 

「皆の考えていること、充分に理解できる。ただ、どうやら事態は意外にも我々に味方しているようだ。」

 

『と言うと』

 

「ザフトが分裂したのだそうだ講和派と継戦派で。」

 

今更仲間割れなんてしてる時じゃ無いでしょうに、ここまで来ると流石に末期状態って奴なのかな?

 

「それはおそらくクライン派とザラ派では無いでしょうか、であるならば私もご協力可能だと思います。」

 

ラクスがいつの間にかいた、どうやら艦長が呼んだらしい。政治とか大嫌いだ!とか何とか言いそうな見た目してるのに、ナタル艦長ってこんな人だっけ?

「その点はクライン上等兵が気にする事ではない、既に手は打ってあるそうだ。コゼット少尉、君のお父上。マイケルが部隊を率いてプラント本国に突入する。あえて言おう、我々や他の艦隊は大規模な囮だと言う事だ。」

 

父さんが…研究に没頭するんじゃなかったの?

 

「詳しいことはわからない、だが我々には我々のやるべき事があるそれをやり遂げるのが、今の我々の使命だ。」

 

どうして研究者が突入するのか解らないけど、まああの身体能力だからと納得する自分がいるのも事実。

それでも心配なことに変わりはなかった。

 

 

~シーゲル~

今私は戦争犯罪人や捕虜を収容している施設へと踏み入った。

中の保安はお世辞にも優秀とは言えず、このプラントも末期なのだと実感する程には人手不足のようだ。

 

『ここに収容されているものの8割はクライン派か…、これ程収容されているとは、見知った顔もあるね。

デュランダル君、彼は何処に?』

 

「収容所の最奥です。ですが、こうも保安に穴が空いているとは準備が無駄になってしまいました。」

 

奥の方へと進んでいくと談笑が聞こえてくる、いったい誰が喋っているのだろうか?一人の声には聞き覚えがある、特につい最近。

どうしてデュランダル君の声が聞こえてくるのだろうか?彼は私の後にいるというのに。

 

「ほお、では君は矢張ナチュラルなのだな。そこまでの地位に到達するまで、どれほどの努力の積み重ねをしたのか想像するに、難しい。」

 

「貴様もナチュラルだろうに、その年齢でそれほど元気であるなら隠居など考えるな。それにこれは私の実力ではない、素体がよかっただけだろう。」

 

「たとえ君がクローンであろうとも、肉体は訓練の賜物だ。それを誇りに思った方がいい、それにだそれを公表すればどれだけの事が出来ただろうか?悪知恵が働かないのかな?」

 

一人はクルーゼで間違いないが、少し嗄れたデュランダルの声が聞こえる。いったい誰なんだ…

 

『お話し中失礼するよクルーゼ君。』

 

「これはこれは前議長閣下私に何用で?」

 

あの仮面の男がなにやら憑き物が落ちたように、スッキリ爽やかな顔で私を見てきた。

 

『君の力を借りに来たのだが…何やら話し込んでいたようだが?それに、君はナチュラルなのかな?』

 

「ええ、そうです。最も私はアルダ・フラガのクローンですが。」

 

クローンであれ、何であれあの男がいるならそれくらいいるだろう。

 

『だからなんだね、それと返答は?』

「協力しても良いですが、この御仁も共にと言うのであれば。」

 

その男、金髪で昔はさぞや美男だったのだろうと思える男。額に傷があるのが印象的で、どこか胡散臭さがあるような。

 

『協力してくれるならそれでも良い、それで貴方のお名前はなにかな?』

 

「そうだな、私の名はエドワゥと言うしがないパイロットとでも思って頂ければ幸いだ、よろしく頼むよクラインさん。」

 

果たしてこの男は何者なのだろうか?

 

 

~イザーク~

 

『なに?連合がここを素通りしただと?』

 

ザラ隊の解散後、俺は一個の隊を任される事となりここヤキン・ドゥーエの防衛の任に付いていた。

だが、当初の予想とはまるで違い連合がここに来ることはない。

 

『それで、司令部はなんて言ってるんだ?挟撃する…か。』

 

「ですが、それは罠の可能性も有るのでは?」

 

そう考えるのは当たり前だろう、いったい何が待ち受けているのか全くと言って良い程、背に冷や汗が浮かぶ。

それでも、やらなけりゃならない。それが、軍人になった俺の運命か。

 

『全員出立の準備をしておけ、直ぐに指令が来る筈だ。それまでに、艦に荷物を載せておけよ。』

 

俺は果たして隊長として振る舞えるだろうか?連中には強く言うことは出来たが、それでも不安がないと言えば嘘になる。

俺たちよりも強いMS、そして優秀なパイロットそれが一定数以上いることは俺の自信を砕きかねない。

それでも隊長として出来ることは何か、少ない頭で考えているとき、一つの情報が入った。

 

《クライン派の武装蜂起》だ。

 

これが全体に伝わった時、ヤキンの内部でも分裂が始まった。誰かが扇動している、そうとしか考えられない程に、その伝播速度は異常だ。

俺の耳に入る頃には、内乱が起きていた。

 

各地で武装奮起するもの、艦で逃げるもの、連合を追うものどれもが存在し、俺たちは連合を追い本国との挟撃体勢を整えていた。

もはや軍としての体裁すら存在せず、ただ護ろうとするだけだった。

 

決戦兵器であった筈のジェネシスは、これにより事実上無力化していた。

 

 

~名も無き側近~

 

「何!ジェネシスが使用不可能な状況だと?」

 

また驚いてらっしゃる、自分でヤキンに行きたいだの、やれジェネシスを撃てだの言って、現場を混乱させてきたつけだろうなぁ。

今や国内の問題だけでも手一杯なのに、こりゃもうプラントもおしまいだな。

 

『はい、反乱者共は勢力を拡大しており尚も増大中、このままでは戦争継続すら難しいかと…。』

 

これで、戦争が終わればまだ良いんだけどなぁ。端から勝てないと思ってたよ、だいたいもっとスマートなやり方有ったんじゃないか?

やはりコンピューターで選別された奴等なんて、理想しか掲げないんだな。

 

それに、最近議長はおかしい。喋っているときも同じ言葉をまるでリピートするかのように喋るんだ、端から見れば恐怖でしかない。

 

そう考えていたのが2日程前の事…いま、私の目の前には筋骨隆々な男がいて、炎の中議長と対峙している。

 




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第50話 古くそれは分割された

連合艦隊が集結し、ザフトを今か今かと待ち受ける。その形は古く、そして海戦では見えることのない魚鱗という陣形であった。

 

ただし、かつてのそれとは違い正面が非常に厚くZ軸にも艦艇が並んでいることだろう。

艦艇はネルソン、ドレイク、アガメムノンという形態で配置されており火力が最も高い艦艇が一番の正面を担当した。

 

これはMSを騎兵と見立て、艦の砲火力を前方へ。高速艦艇が空いた穴埋めをしていき臨機応変に移動し、敵の撹乱をMSが担当するという構想の下に造られた。

それをプラント本国、ヤキン、その両翼に向ける事により敵の同士討ちをも狙った作戦。

 

ザフトには余裕がなく、こんな軌道、今更戦術本にすらマニアックなものにしか記載されていないもの、対応に困った。

 

バラバラと艦隊運動をするザフトに対して、傷ついた艦艇を後方へ移動させ応急処置すら行ってみせる連合艦隊、だがその側面を狙いザフトはMSを放つ。

 

それを探知出来ない連合ではない、まず対空ミサイルの飽和攻撃を行いそこにMS部隊が投入される。両軍の部隊は文字通り激突し、火花を散らす。

 

中世の戦場のように至近距離での斬り会い、ライフルで仕留めるもの腕をやられ後退するもの。

それぞれに被害が拡大していく、ザフトは新鋭機であるゲイツを出すも数が圧倒的に足りず、結局やはりダガーに押し負ける。

そこで、新鋭機フリーダムが投入されるとダガー隊の動きは遅くなる。突然の出来事に対処が追い付いていないのだろう、誰が動かしているのか躊躇の無い火線が続く、それどころかまるでGを感じていないかのような動きに、人間味を感じられない。

 

そこにキラが駆るストライクが割って入る、機動力を強化されたそれに載り、フリーダムの苦手とする接近戦を挑もうとすると赤い機体ジャスティスが現れ、それを阻む。

 

そこにコゼットの駆るゲイルが現れ2対2の激しい攻防が繰り広げられていく。

しかし、コゼット並びにキラはその動きに徐々に翻弄されている。

 

その動きはコゼットの動きに近く、寧ろもっと原型があるのだろうそれに近い。サーベルでの接近戦に際し、確実に致命傷とならない蹴りや殴りを入れることにより、NT能力の危機回避を反らすような戦い方。

 

または、Sコーディネイターであるキラ、その反射を逆手にとる嫌らしいフェイントを掛ける。

なまじ反応速度が早いがために、それに気をとられ危うい戦いを行っている。

 

ゲイルのCPUであるCRDはコゼットが時間を稼ぐなか、それを記録し解析をする。そして、擬人化は驚愕した。自らと同じデータから造られ、人殺しを可能としたリミッターを外された存在であることに。

 

 

~コゼット~

 

何なのこいつ等、動きがおかしいんじゃないの?

こっちの動きを読んでる、ボアズのあいつの比じゃないくらいに。それに、この動きどこかで見たことがあるような…

 

『っく、CRD敵の解析できた?!』

 

格闘技すら織り交ぜてくる動きに、MSはこんなにも滑らかに動くものなのかと、心底感心しつつ劣勢に立たされている現実に、慌てている。

 

「もう少しだ、だが妙だこの動きは私の動きと同じ、そればかりか私の制約である対人戦闘を可能としている?いや、自ら思考し動きを視ているのか?」

 

CRDと同じシステム?でも、どうやって父さんは普通こんなもの売るような人間じゃない。

第一プラントにそんなもの売ったって、いったい何になると言うんだ。

 

「こいつらは寧ろ、オリジナルに近い?戦闘データとフレームの断片を内蔵したのか?であるならばこの反応速度も頷ける。」

 

『そんな事言ってないで、何かアドバイスは!』

 

イライラと苛立つも打開策無し、くそっ!サーベルのパワーは劣ってないのにどうして…そうか

 

『CRDリミッター解除お願い』

 

「身体を壊しても知らんぞ!」

 

『死ぬよりはましよ!っく』

 

機体の反応が一挙に引き上げられ身体がシートに縛られる、それでも意識は手放さない!

それでも、奴は追従する。いったいどんな性能で!

 

「奴は脳波を感知して行動している、それもサイコフレームを媒介に察知している。」

 

なにそのシステム聞いたことない。

 

「オリジナルのパイロットの戦闘データ、赤い彗星。彼から収集されたデータによって、彼の全盛期程ではないものの擬似的にNTの戦闘を可能とする。

サイコ脳とでも言えよう、疑似人格。それをあれは持っている。」

 

無人機であんなの出してくるなんて…もしも量産されたら…確実に負ける。

だから

 

『ここで、仕留める!』

 

機体に慣れていく、次第に奴の動きが鮮明になっていく。次に何処に動くのか、どういう攻撃をするのか。

戦場で散っていく声、それらを振りほどきただ奴のみ見つめ引き金を引く。

 

やはりというか、動きに無駄がない。

イメージするのはリディア大佐の動き、あの動きさえ出来れば、

 

機体が交差しサーベル同士が激突し、プラズマが発生する。太陽を背に、位置関係を大切に、一つ一つ丁寧に

眼前に広がるガンダムフェイス。

次に蹴りが来る…なら右足の蹴りをわざと受け止め、タックルするように機体の推力を上げる。

 

慣性に従い、向こうは急激な動きに付いてきていない。その場その場の戦い方が、勝敗を握るのかも知れない。

 

 

~サイ~

 

艦隊の防空任務とは攻勢に出た者達の家を護るためのもの。

今、俺たちの前には抜けてきたザフトの機体群が出現した。

 

M粒子のデメリットを付いてきた連中はそれほど多くはないが、実戦経験の少ない防空隊にとって非常に厳しい戦闘となった。

 

『敵はM粒子の特性を良く知ってる手練れだ、充分に用心して事に当たってほしい。訓練を終えたばかりの者には荷が重いかもしれないが、堪えてくれ。』

 

敵の先陣はあれか、

 

そこでミリアリアから情報が入った。

 

「旧IFFに反応あり、機種バスター、デュエルを確認しました!」

 

あいつ等かしつこいな、この艦ばかり狙って来やがって。

推力を上げる、この機体は接近戦はお世辞にも強いという訳じゃないが、出来ないわけじゃない。デュエルに真っ向勝負だ。

 

牽制でライフルを撃ってくるが、最早出力が違う。ビームコーティングを貫通することすら叶わず、こっちのシールドに攻撃が吸収されていく。

 

そして、俺は奴を殴打した頑丈さはこちらにあり、まず直撃した顔面は首のジョイントが砕け散り無惨にもケーブルで繋がっている。

 

「貴様、貴様なんぞ援護MSに負けてたまるかぁ!」

 

接触回線から聞こえる声は、焦りなどなくただただ機体の性能を乗り越えようと必死に戦う声だった。

それでも負けてやる通りはない、がしかし凄い気迫だこれ程気押されるとは、死兵とでも言うのか?

 

『久しぶりだな、確かイザークだったか。潔く投降すれば手厚い保護が約束されるぞ?』

 

「貴様等に投降するくらいなら死んだ方がマシだ!」

 

『だが、あんたはそうだが味方はどうなんだろうなぁ?』

 

「なんだと!」

 

突撃を慣行した連中はチラホラと武装解除するものが現れていた、寧ろ戦いを続ける奴等の方が少ないのかもしれないが。

 

『バスターのパイロット、ディアッカだったか?そいつなんて、死ぬかも知れないぞ?フレイは宇宙では俺より強いからな。』

 

そう言いバスターの方を見れば、ガンバレルによって八つ裂きにされていた。

 

 

 

 

~リディア~

 

『各隊、敵を分断して一つ一つ潰して行け、無理はするなよ。』

 

目の前のガンダムに相対しながらそう指示を出す、こいつは何だか懐かしい雰囲気がするのだが、それでも違和感がぬぐえない。生命の脈動がないのか?

動きは確かに、彼のものにシャアに似ている。それでもどこかでぎこちなく、正直言って拍子抜けだろう。

 

『YMF-X000A…何かの試作機か。それは良いか、鹵獲を試みるか?だが、それで損害が出るのもな。良し、なら武装を剥ぎ取って達磨にすれば良いか。』

 

動きはヤツの癖通り、それも随分と緩やかだ。そんな動きでは、有線式のガンバレル?そんなものではなあ。

動きにあわせて照準し、引き金を引くだけの簡単な仕事。

慢心はならないが、これの相手をするならばまだ新兵を相手にした方が不確定要素が多くて危険だ。

こいつらは何の為に作られたのか…人の気配を感じないが意識を少し感じられる。

ライフルでこちらを狙うか、なら撃たせる前に撃つそれだけだ。

 

やはり、こいつは鹵獲の方が後々良いような気がするな。謎が多すぎる。

 

奴の武装を剥ぎ達磨にした、自爆の危険性はないようだな。

 

『マティス少尉、帰還するついでにこいつを持ち帰ってくれ。』

 

「何でですか?」

 

『私の杞憂なら良いのだが、何か秘密がありそうだ。頼むぞ。それと、私は暫くここを離れる。少しでも敵を減らしてくるとするよ。』

 

「大佐まってくだ…自由な人だ。」

 

 

彼女の動きは全体に波及した、膠着状態となった戦線に現れては掻き乱し、連合優勢へと流れを作っていく。

そんな彼女は、コゼットの近くまで後少しというところだった。

 

 

~マイケル~

 

しん、と静まり返ったこの小さくも充分な空間に俺たちは並んでいる。パワードスーツに身を包み、20㎜対物機関砲ドラムマガジン式を肩に装着したもの達が10人程、その他通常装備が60名。

そして、パワードスーツを着込んでいないにも関わらず

同じものを銃床付きにしたものを肩に担ぎ、更にアサルトライフルを左腕で持っている男がいる、俺だ。

 

「諸君、我々はこれより敵の首都であるアプリリウスに対して奇襲攻撃を行う。議会の占拠が目的だが、それよりも大切な事がある。

非戦闘員への攻撃はこれを一切禁止する、たとえそれが敵の真ん中にいようともだ。

無理を承知であるが、これを行っていただきたい。

もし、参加を拒否するものあれば此処で名乗りでよ、誰も責めはしない。」

 

名乗り出るものはない。

 

「今作戦には最高戦力としてマイケル・スパロウ氏にも参加していただいている。皆も知っての通り桁違いの胆力を持った御仁である、くれぐれも怒らせないように、スーツが破壊されてしまうからな。

揚陸に抜かり無きようにせよ!」

 

数分後艦艇に衝撃が走る、どうやらプラントの外壁を喰い破ったようだ。身体に重力がかかり、扉が開く。

 

『では行こうか、この戦争を終わらせに。』

 

 

 

 

~シーゲル~

 

フリゲート艦カルマ、それはエターナルのミーティアの取り外しを不可能とし、個艦戦闘能力を上げたもの。

我々はそれを旗艦として、放たれようとしているジェネシスを攻略中だ。

 

あの御仁エドワゥは、この施設の詳細図を知っていた。嘗て私も設計に携わっていたが、いったいどこでそんなものを知ったのだろうか?教えてはくれないだろう。

 

『もしこれが地球に放たれれば、地上の生命は甚大な被害を被る、破壊は容易ではないが…』

 

「今ならアムロの気持ちがわからんでもない、この世界の人類を私はこの50年もの間見続けてきた。身体が老い自由が効かなくなった今でも、この世界に希望という花があると信じる。だからこそ協力しよう。」

 

アムロ…いったい誰なのだろうか?いずれ聞こうそれよりも、

 

『このサイコフレームと言ったか?は本当にこんな事が可能なのか?』

 

「ああ、小惑星を押し返すほどの力を可能性を力に変えたのだ、この程度可能だろう。」

 

艦艇を覆う薄い緑色の膜、それは敵となった同志の攻撃を弾いているかのように作用している。

あまりにも不可思議な現象だ。

 

『今はそれどころではないか…貴方は前線にでないでください?もう90を越えてるのですから。』

 

「アドバイス程度させてくれ、伊達に長生きはしていないからな。」

 

『クルーゼ君、機体の調子は良いか?』

 

 

ノイズが走る映像を見て言った。

 

「ええ、少しのブランクはありますが、やって見せましょう。私も人の可能性とやらの話をまだきちんと聞いていませんので。」

 

後は彼に任せるか。

さあ、パトリック君が作ったこの悪魔、しっかりと叩かせて貰うよ。

 

 




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第51話 勝敗は決するも、戦は終わらず

たった数時間の戦闘、だがそれで全てが決していた。

内部崩壊を始めていたザフトは、その影響から抜け出すことが出来ず、ジリジリと数を減らし開始時の凡そ半数にも届かないものとなっていた。

 

虎の子であったフリーダム、ジャスティス、ドレットノートの内既にドレットノートは破壊され、ジャスティスとフリーダムはストライクとゲイルに釘付けにされていた。

一方で早々にドレットノートを退場させたリディアは各地を転戦し、中盤戦にリードを広げるとザフトの艦隊中央にいる特徴的なピンク色の旗艦を攻撃し破壊。

すると統制が崩れたザフトは戦隊が崩壊し、兵士が各個で動き始める。

 

逃亡するもの、投降するもの、交戦を続けるもの、錯乱し敵味方関係無く殺すもの、一貫した動きの取れないそれらはプラント、いや人そのものの縮図なのかもしれない。

その一方で果敢にもジェネシスを止めようと戦い続けるもの達がいる。

同胞と袂を別ち、それでもなお地球全体の為に戦おうとするもの達がいる。

 

彼等は数量をものともせず進み、後一歩までたどり着いている。そこへ新たにプロヴィデンスが加わり、ジェネシス陥落は最早時間の問題であろう。

 

一番苦戦するであろうものは評議会の占拠で、特殊部隊と言えど所詮は人間の歩兵主体の部隊編成。

一部例外を除けば、コーディネイター中心のザフト近衛歩兵に勝てるかと言えば疑問符が出るであろう。

 

だが、それを補うために過剰とも言える火力を配備し、入念にルートを選択していく。

スーツが盾となり前進を続ける、が一人だけ別のルートを通るものがいる。

 

片腕に20㎜をぶら下げて悠然と歩く様は、まるでそれが当たり前かの如く戦場を気にしていない。

彼に当たる弾はその悉くが弾かれ、それを見たものは後退しながら何とか動きを止めようとする。

しかし、対人用のものでは彼を止める術へはならない。

 

ここはプラント、対戦車用の兵器なんて置いちゃいない、なにせ対戦車戦を想定した兵器等MS以外無かったのだから。

故に彼を止める術はない。

 

~マイケル~

 

硝煙の匂いが充満する建物内部、内部構造は把握していた筈だがどうやら見取り図とは、大分異なっているようだ。まるで日本の城のように複雑な造り、これでは迷路ではないか?おかしい、感覚を狂わされている?

 

兵は退き最早目の前にはいない、逃げたか?足がフラつく、これは…酔い?そうか、エタノール。それも発酵エタノールが充満した部屋か、火花が散れば大爆発だな。

 

しかし…頭が割れるように痛い。周囲が歪んでいる。腕に力が入らない。

 

「やっと止まってくれたか…酒が弱点とは楽しみが少なそうですねぇ。」

 

『貴様は何だ!その性格、パトリック・ザラではないな!』

 

「貴方こそ何者ですか?化け物ですか?」

 

こいつはパトリック、彼の肉体をのっとた何かであろう事は別っている。

たった数ヶ月で人間の性格がねじ曲がるなど、余程の精神疾患でもない限り起きることじゃない。だいたいそういうのは、復讐にいきるヤツに起きるものじゃない、これでは愉快犯だ。

 

ではこいつはいったい何か?恐らくはクジラであろう、嘗てあれを見たとき少しであるが悪寒を感じたことがあった、あれに寄生していたものか或いはあれそのものか?

 

何にせよ、現状を打破する唯一の方法は

 

『火をつけることだ』

 

引き金を引く、火花が散りエタノールに引火する。辺りは炎に包まれたが、奴は平然としまるでこれは予備の殼だからどうでも良い、そんな風体でいやがる。

エタノールが身体から抜けるには少し時間がかかるだろうが、身体を起こし対面する。

 

若干だが奴は焦げている、もしも意識が生きているのなら苦痛でもがき苦しんでいる事だろう。

 

『一つ大事な事を教えてやる、お前の本体だが爆破が決定したよ。さあどうする?』

 

そのとき扉が開いた

 

「議長ここにいましたか、先程の爆音は…これはいったい」

 

それと同時に、奴の気配が消えこの男パトリックの気配が現れた。どうやら移動したようだ。

 

『初めまして、マイケル・スパロウだ。大人しく投降すれば命は保証しよう。』

 

不味いな動き出すか。ダニィの言った通りに成りそうだ。

 

 

 

~コゼット~

 

はぁはぁはぁ、宇宙服の中で汗が水滴となって宙を舞う。次第に私の動きはキレを増し、少しずつだがフリーダムを押し始めている。

奴は基本的に多と戦うことを想定したような、そんな武装配置だからここまで善戦出来ている。

でも、早くキラのところへ行かなければ、相性が悪すぎる。

 

「やはりか、こいつらの学習速度は人間以下か、下手に学習して弱くなることを恐れたか。」

 

『なら勝機は意外と直ぐに来そうだね!!』

 

急速制動とスラスターの噴射による縦横無尽な動き、こいつは私に気をとられ付いてくる。

戦局はどう見ても関係ないと言わんばかりだ、もっとも生き物じゃないからそんな事関係ないか。

 

そんな時だチラリと遠方にプラントの首都コロニーが見えた、その下にいる巨大な生き物のようなものも。

無意識下にそれを意識した。

フリーダムのサーベルの柄の部分を切り落とし、近接戦闘において奴を無力化したら、必要に逃げ回るようになった。

遠距離の火力は向こうの方が上であるから、それは正解なのかもしれない。

 

それでも機動性はこちらの方が上、味方の部隊も次第に集まり、奴を置い初めて包囲網が出来上がった。

そこからは一方的だった、皆エース級の実力者ばかり。私が送ったデータによって簡易的に戦術を作り出したのだから凄い、フリーダムはからめとられ呆気なく撃墜された。

 

「お嬢さんあんたのお陰でこの戦闘ももう終わる、ありがとな。」

 

キラの方へはどうやらリディアさんが間に合ったようだ、ジャスティスを圧倒してバラバラにしてる。

ストライクは片腕を失っているところを見るに、そうとうギリギリの戦いをしてたみたい、だった。

 

そこまでして、周囲は静寂に包まれ自分達が勝利したと誰もが確信を持っていた。

そして、私は視界の端にあったものがなんだったのか気になり、それを見た。

 

プラントが喰われている何やら得体の知れない巨大な生物に…同化しているのかな?

 

『ナニアレ…』

 

どうやら戦争の後はアレとの戦いになりそうだ。

 

 

 

~アズラエル~

 

『何ですか?アレは…』

 

私は説明を求めた、望遠鏡からの映像は何なのかと。プラントのアプリリウスから何やら触手のようなものが伸び、コロニーを覆い尽くそうとしているように見える。

 

それが兵器ではないことは明らかだろう、だが理解に苦しむのだあんなにも巨大な生物が果たしてあり得るのだろうか?

 

『アレじゃあ、昔のスーパーロボットとか言うのに出てくる敵見たいじゃないですか。』

 

物理法則もあったものじゃない。

 

『それで軍司令部の方々はアレにどう対処するおつもりですか?』

 

「対応しようにもデータが少なすぎますからねぇ、下手に刺激して地球にこられたら最後滅びますよ?

まあ、手は一応あります。現在クライン派が抑えたジェネシス、アレを照射すれば或いは…。」

 

そこに宇宙物理学の学者が声を出していった。

 

「ですが、あれがもし太陽系外から来たものだった場合、あれは銀河宇宙線を突破しているのです。

たかだかあの程度のγ線で果たして焼ききれるでしょうか…。」

 

生物学者も同意見のようだ。

 

「やるのであれば、内部からですね。どんな生物も内側は弱いと相場が決まっています。」

 

この場にマイケルがいれば、何か腹案が出てきたのだろうが…

 

「そう言えば、スパロウ氏は確かフェルミ縮退を人工的に行う方法を見つけたと言っていましたね。

M粒子が問題を解決する糸口になったと、そういってました。

もしかするとその兵器、既に有るのではないのでしょうか?」

 

フェルミ縮退かれはとんでもないものを造ろうとしたのか?

 

『直ぐに研究所に連絡をとってくれ、もしそれがあるのならそれを直ぐにでも使用する。解決策がそれしかないのならな。』

 

その前に、プラントの住民を避難させなくてはな…戦後を見据えて

 

 




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後5~10話くらいで終わりかな?
シンとステラはちょっとお待ちを、戦後になります。


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第52話 食物とは名ばかりに…

周囲に散らばる残骸、その中に有るのは人であったもの。膨張して破裂したものや、凍結して死んだもの、太陽光によって焼かれたもの。様々な遺体が存在し、プラントで起きたことがどれ程のものであったのか、それを見れば明らかである。

 

残骸はそこかしこに散乱し、今もなお拡大し続けている。その元凶は巨大な生物、エヴィデンス01。その姿形が似てはいるが大きさが桁違いに膨張し、コロニーを呑み込もうとする。

 

連合軍は投降したザフト並びに、新生ザフト(クライン派残存勢力)との共同戦線を張ることを決意した。

その前段階として、近接コロニーに居住しているもの達を一挙に強制疎開させる。MS MA問わず様々なものが投入された。

参謀では兵器の分配を開始し、使用可能なものとそうでないものの選別を行った。

先の戦闘で弾薬の凡そ半数を使い、残りはエネルギー兵器であるメガ粒子砲だけだ。

 

それがどの程度あの生物に効果があるのか、それは誰にもわからない。ただ言えることは、あの生物は放射線に対して非常に強いと言う特性を持っていることは確かであろう。よって核兵器等多少大きな爆弾である。

 

やるのなら反物質と物質を対消滅させ、完全なエネルギーに変換させる方が効率的だ。だがそれがどの程度効くのだろうか?また、それほどの反物質を確保するにはどれほどの時間がかかるだろうか?

 

学者達は時間の許す限り考える。マイケル・スパロウ、彼の考えを元に造り出された縮退炉の試作品。あまりにも危険すぎたが為に、戦争が終わるまで実験すら行われずにいたもの、太陽系の外縁部での実験を行おうとすら考えられていたそれを使うべきか。

 

果たして結論は出た、縮退炉のリミッターを解除し暴走させることによりブラックホールを造り出す。

一点ものでただ一度きり、失敗は許されないものだ。

そしてそれは、占領されたヤキン要塞へと運び込まれる、クラウン博士と共に。

 

 

 

~コゼット~

 

移送も何とか完了して、ヤキンに寄港した。腕を破損したストライク、推進材を使い果たしたゲイル。ガンバレルを一機落とされたフレイのダガーガンダムヘッド。

弾の尽きたマドロック。

 

アークエンジェル隊は既に戦力としての価値が低かった。もっとも、もう戦争どころの話じゃないのが現実で、未曾有の危機と言うものが映像で確認できる。

 

M粒子の干渉によって一部見えないけど、大分大きな事は確かだ。

あんな生物は見たことない、羽クジラのレプリカを見たことあるけどそれには?少し似てるのかな?

それでもあんな触手みたいなのは無かったけど…やっぱり化石なんて想像を昂らせるものでしか無いのかな?

 

なんて、考えつつヤキンの大型ドックにパイロットが集められた。

 

お偉いさんが先の戦闘での勲章の授与を行い、場違いなほどの祝辞を読んでそこで話は終わらなかった。

 

「さて、諸君等も知っての通り巨大な生物が発見された、それも宇宙空間で突然コロニーを呑み込むかたちで。

我々はあれに対してとある兵器を用いての戦闘を画策した、この任務は非常に危険なものである。

勿論君たちが精鋭であることは知っているが、今回だけは志願制としたい。

成功するとも言えないものだと、本官は判断した。もし志願者がでない場合、本官が責任を取る。

 

誰か志願するものはいるか?それでもいるのならば、一歩前へと進み出て欲しい。」

 

最初に一人前に出た、リディア大佐。お偉いさん、いや中将の後ろで前に出た。そして、13独立機動艦隊の面々も。それは波のように広がり、連合の全パイロット。士官、下士官問わず。

 

旧ザフトの面々はそれに呆気にとられた。

恐怖するのは当然の事、だが目の前の者に立ち向かうからこそその恐怖は克服できる。それをプラントのコーディネイターは知らない、井の中の蛙まさしくその通りであろう。

 

そして、作戦の説明が始まった。

かいつまんで言えば、艦隊による援護射撃を行ってアレを釘付けにしてその間に、炉を敵の内部へと運び暴走させる。その部隊は第一部隊と呼称される。

 

全5部隊編成となり、残りの四つの部隊は可能な限りの生存者の捜索を行う事とされた。これが成功するか誰にも神にもわからない。

だから、父さんを救出できるかもわからない。

 

 

 

~マイケル~

 

特務部隊の面々とやっとこさ合流したものの、果たしてここから出られるかどうか、わからん。

 

「スパロウ博士、これはいったい何なのか貴方にはわかりますか?」

 

『これか?これは…そうだなとある巨大生物の体内だな、あまり刺激するなよ?免疫細胞みたいなのが出てきたら洒落にならないからな。最悪分解されるかもしれん。』

 

隊員は冷や汗を流しているが、それでもパニックにはなっていない。特殊任務に付く連中は、こう精神が強いから良い。だが、このパトリックの秘書官?はそうも行かないようで、さっきからガタガタと震えて縮こまっている。

 

『秘書官はこうなのに、あんたは意外とタフだな。』

 

「そうかね?諦めが付いている分悟っているだけかもしれん。」

 

意識を取り戻したパトリックは、意外なことに精神を害していない。寧ろこの巨大生物への憎悪のようなもので、ここまで持っているのか?

 

「この戦争、そもそもは我々の無知から始まった…それを奴につけこまれて。だからこそ償いをしなければな。」

 

『憑依されていたのなら、こいつがいったいどういう存在かある程度予想できるんではないか?』

 

隊員が一斉に彼の方へ向く、その眼差しを受けて口を開いた。

 

「アレは単なる動物だ。思考するな。あれは、人の心を喰らって大きくなる、故に人を殺す事は間接的以外には行わなかった。我々は利用され奴の食事の為だけに、戦争をしている。」

 

何やらおかしな生命体のようだ、そんなものを食べるとは実体はこちらの世界に無いのか?だが、現にこうやって体内にいるのだからここにはいるのだな。

 

『さて、諸君これからどうする?私はこいつの心臓部を探索しようと思うのだが…』

 

「確かにそれは必要だと思いますが、それは我々の仕事です。貴方はあくまでも民間人ですから。」

 

『いや、私よりも生存者を運び出して欲しいんだが…』

 

これからどうするか。

 

 

 

~アズラエル~

 

密航という形でヤキン要塞に到着して早々に見つかり、vip待遇でこの貴賓室に入れられた。

将校は顔に手を置きやれやれと言った感じだ、だが話してみたかったんだ。目の前に座っている金髪のこの伝説の男と。

 

『初めまして、ムルタ・アズラエルと言います。キャスバル・レム・ダイクンですね?貴方の事は祖父から聞いております。こちらの世界へ航ってきた人物だと言うことは。』

 

「ほお、では君はあの環境保全団体の首領だった男の孫か。私の願いを聞いてくれたことは礼を言う。だが、その孫が何故今ここに?」

 

部屋にいる皆に目配せをした。

 

『はい、あの生物に関して聞きたいことがありまして。』

 

映像を見せる、あの巨大生物の

 

「こいつは私も良く解っていない、正直このように動くとは想像もしていなかった。」

 

『何故、ジョージグレンはこれを持って帰ってきたのですか?あれがなければ、今のこの戦争も起こらなかったでしょう。』

 

映像を少し見て、下を向いたあと僕の目を見た。

 

「声を聞いたのやも知れない、若しくは何かを見させられたか。であれば、私があの牢に閉じ込められることも無く、プラントで隠居出来ていたのだから。」

 

『声?』

 

「そう、あれからは微かだが声がした。腹が減ったと、気づいた頃には私は牢屋にいたよ。それ以外に知ることは無い。」

 

『そうですか、こんな時でなければもっと長く話をしてみたかった。これ以上はお身体に障るでしょうから、私はこれで。』

 

ドアに手を掛ける。

 

「もし、アレを攻撃するのなら用心することだ。あれは、幻覚を見せる。それもかなり強力な、ニュータイプでなければアレを振りほどくのは難しい。」

 

廊下へ出ると直ぐに連絡を入れた。

 

『艦隊による攻撃を一時中止させろ…なに?もう始まっている?まだ後20分は残っているんだぞ!』

 

気がついた頃には遅いことも有るのだ。

 

 

 

 

 

 




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第53話 体内へ…

すいません投稿遅れました。風邪ってつらいですね。


ヤキンにいるアズラエルが攻撃の開始を知ったのは、本来の攻撃命令の20分程前であった。

だが、これには語弊がある。確かにアズラエルの時間は20分前である、だが攻撃を開始した当人たちにとって、その開始時間を間違っているとは到底考えていなかった。

 

彼等に作戦開始時刻が伝達されたとき、その文章が電波を書き換えられた。つまりは、《上書き出来ない筈のそれを上書きした》と言うことである。

 

果たして動物にこんなことが可能なのだろうか?だが、人類よりも遥かに巨大で、全く違った思考回路を保有する生物だ、もしかするのかもしれない。

さて、そんなものとの戦闘は非常に困難なものとなった。パイロット達だけでなく、艦員等にも幻覚にも似た作用が起きた。

パイロット達は周囲の味方が敵に見え、自らを襲おうとするように見えるが為に反撃をする。

 

その流れはまるで濁流の如く、戦場を飲み込み敵味方の区別が出来ないものたちは次々と殺し殺され、悲劇は拡大していく。

もしも、この映像があるのであればきっとそれはあまりにも不可解に映った事だろう。

 

だが、そんな中でも正気を保っていたものたちがいた。全体から見ればそれは少数であったが、空間認識に優れている。所謂ガンバレル適性があるもの達、彼等はそれを受け付けなかった。

 

故に味方を戦闘不能にしていく作業が始まるが、それを見越してだろうか?彼等に攻撃が殺到するようになる。360度様々な方向からの攻撃は、如何に彼らが優れていようとも避けられるものではない。

幸いだったことは、エネルギー兵器であるビームライフルがエネルギーパックであり、再装填に少し時間がかかったことだろう。それにより、次第に戦局は好転していく。

 

そんな中内部へと突入していくものたちがいた、リディア率いる爆破隊だ。

その後ろを護衛兼捜索隊が入る、そこにはゲイルの姿があった。

 

ではこんな状況の中アークエンジェル隊はどうなっていたかと言えば、キラ及びサイに関して言えば二人とも単なる人であるから、勿論幻覚を見ていたが両者ともMSに深刻な問題が発生していた為に出撃しなかった。

 

フレイが中心となり戦力が抽出され、それによって他の隊とは違い比較的安定したものとなった。

彼女は比較的に強い力を持っていたのだろう、違和感を感じて直ぐに対処に動いた。独断専行ともとれるものだが、そのお陰であろう。

 

 

 

~マイケル~

 

よお、其処らじゅうがベタベタしてきている、侵食が思ったよりも早い。

弾装の中身を確認してこのコロニーの構造上最も脆い部分に向かい歩いている。

 

本当に砂時計型コロニーは非効率的な形状をしている、こんなもの不便でしょうがないだろうが、こういう有事の際直ぐに別の場所へと移動することも出来ない。

なにより、脆すぎるだろう。

 

『機体に付いている風向計はどちらに向いているか?』

 

「ここからだいたいそうですね、私の正面から見て2時の方角です。」

 

まあ、今回はその脆さに助けられている。空気の流出が始まっているのだ、要するに外、宇宙に出られる。ま、その前に隊員分のスーツが必要だが、偶然にもここは首都機能を持ったコロニー。そういう時の為のものがマニュアル通りあるはずだ。

 

『生体反応は…無理かそこかしこにあれからの反応があるから確認は出来ないか?』

 

「はい、ですがこの中での生存は」

 

絶望的、例え生きていたとしても逃げられるものではない。なにより、嫌な予感が適中したようだ。

 

『総員安全装置を解除しろ、何か来るぞ。』

 

そこから現れたのは住民だったもの達、身体がただれ膨れ上がり今にも破裂しそうであったり、崩れそうなほど崩壊しているものもいる。

なるほど、そうかこれが同化か。

 

ゆっくりとした動きしか出来ないそれらを引き離すように出口に向けて進んでいくが、数は次第に増えていく。

きっと彼等もこれから逃げ出そうとしていたのだろう。

 

『ああなったらもう助からんな…』

 

亀裂へとたどり着く空気が薄い、流出口が瓦礫である程度埋まっているが、爆薬を使えば進路を確保できるだろう。だが、あの人だったものたちもこちらを追って外に出るだろう。

 

果たしてあれらは宇宙空間で死滅するのか?恐らくしない、何故なら主が宇宙空間で生きていけるのなら、その子分が生きていけないと言う確証が選られないのだ。

ならばどうするか?ここで押し止める必要がある。

 

では誰が残るのか?勿論決まっている、特注品のスーツでなければ着ることが出来ない、私だ。

だからそっと後に下がり後から彼等を押した。

 

『すまないが、皆とはここでお別れだ。今までありがとう。』

 

亀裂に吸い込まれていく姿を後に、化物共を見据えて銃を構える。

 

『掛かってくるが良い、相手になってやる。』

 

 

 

~リディア~

 

『各機気を付けろ、こいつはコロニーを飲み込んでいるが一応生物だ。どんな機能が身体にあるか、わからない。慎重に行け。』

 

「了解」

 

内部は非常に赤い、内臓の内側なのだろうか?胃カメラ等で見ることが出来るそんな映像に近い、胃壁とでも言うべきか、そんな独特の形状をしている。

 

入り口から1キロもない場所、そこでこれなのだから内部はきっといりくんでいるに違いない。

内部では人の思念が渦巻き、何処がどこなのか見当が付かない程である。

 

吐き気を催す悪意、純粋な子供の心、動物達の無知な意識。それら全てがこの空間に充満し今にも決壊するのではないか?そう思わせるほどに、圧力を醸し出す。

そんなものを感じているとセンサーが動いた。

 

『熱反応?MSかっ!』

 

目の前にこっそりと歩みだしてきたのは、肉がベットリとくっついてそれが脈打っている肉の人形。

ザフトから提供されたIFFによると、近衛と言われていた部隊。その部隊のジンハイマニューバ2という機体であった。

 

それが、多数接近してくる。歩行速度は速くはない、問題はその数だ。

生産されている数よりも遥かに多い、ざっと50機はいるだろう。

 

あいにく我々は現在、《炉》を運搬中だ相手をしている暇はないのだ。

 

『私が時間を稼ぐ、その間に内部にセットしてきてくれ、セットしたら直ぐに脱出する事良いか?』

 

「了解。」

 

残念だが、近接武器しかない。ビームサーベルと言ったって、エネルギーには限界がある。

もし帰ることが出来たなら、省電力モードを入れることを提案してみようか?

 

相手に思考する頭はどうやら無いようだ、木偶の坊なら話は早い。ようはバラバラにするのが一番なのだろう。

こんなことも有ろうかと持ってきてよかったよ。

 

盾の裏からジャラジャラ鎖が落ち、鉄球が地面に衝突する。

 

ガンダムハンマーでミンチにしてやるよ。

 

 

~コゼット~

 

生命体の中に入って爆破隊と別れた後、私たちは三人一組で3隊に別れた。

生命体の中はいり組んでいたけれど、肉は柔らかく簡単に道を切り開くことが出来た。

 

暫くすると急に広い空間へと出る、そこは飲み込まれたコロニーの内部、だだっ広い地面だけがそこにある。

父達は今頃立ち往生しているのではないだろうか?

 

音波探知機が周囲の軋みのなかから、一つだけ特徴的な音を拾う。とても大きな銃声、対人用ではない。パワードスーツを破壊するための専用ライフル程の波形だ。

反響しているものを、角度から割り出しそれをとらえた。

 

何かと戦っているのだ、このコロニーに生存者などほぼいないと言って良い。空気は薄くなり、気圧はエベレストほどしかなく急激な運動では気を失うだろうこの空間。

 

それでも動けているのならそれは、奴等の仲間かとれとも

 

『父さんがまだ戦っているか…ブラボー、チャーリー発信源とらえた?』

 

「はい、このまま突き当たったコロニーがまだ取り込まれていない場所です、」

 

「ですが、後数分もすればコロニー内の空気は0になります。急ぎましょう!」

 

待っていて、今助けに行くから!

 

 




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第54話 一番怖いもの

投稿遅れて、
ホントウにモウシワケナイ
仕事がきついです、執筆もおぼつかない。本当正月前って嫌だなぁ。


閉鎖された空間、そこに響き渡るのは銃声?いや、もっと大きく鈍い音。

ボゴゥと言う射撃音と共に射出された20㎜の鉛玉は、人形に命中するとそれらをミンチに変え、後に控えた同じものに命中すると、内部の信管が作動し火薬が炸裂する。

グチャグチャと原型を留めるものはなく、辺りを肉片が覆う。

 

だが、普通の生物であるのならこれで終いとなるが、敵は良くわからないものである。肉片は次第に動きだし、一つの塊となって原型へと戻ろうとする、だがミックスされたそれは原型を形造る事はなく、手足が生えた肉団子。(「Zygote」と言う映画の怪物のような見た目)

一つ一つの細胞が生きているのだろう、焼かなければ殺すことなど出来ないのだろう。

そういう意味ではメガ粒子砲は一番の解決策である。

つまりは、この生物メガ粒子砲が効果抜群なのだ、地球に降下等出来ない、断熱圧縮に曝されれば間違いなく焼死する。

実に呆気ない普通の生物である。

 

唯、人はそれを得体の知れないものであるが故に恐れる。確かに気色悪い見た目に、強烈な幻覚を見せてくる正直言って対話なんか出来るかと言えば、まあ無理だと9割の人間が考えるだろう。

そして、それはリディアもまた同じ意見を持っていた。

 

 

~リディア~

 

破壊しても破壊しても次から次へと現れる機体、ただの木偶の坊ではあるがそれでもサーベルのエネルギーは有限だ。意図的にスイッチの入り切りを行ってそれを行っているが、それでも心配ごとである。

 

「我が体内から出ていってもらいたいものだな」

 

コイツ意識があるのか?

 

『なら、このコロニーいや地球圏から出ていってもらいたいんだが?』

 

「それは無理な話だ、ここには美味しそうな夢がたくさんある。それを食う、その後ならかまわない」

 

コイツ食事をするだけして帰る、だが夢が食事ならば地球上のあらゆる生物の精神を喰らうと同義ではないか?

 

『それは許容できない。お前が食事を終えたとき、それは地球の生命の危機となるからだ。』

 

「オマエ、あの巨神と同じ事言った。あいつも言った、可能性の為にオマエは邪魔だと、だから隠れたそして眠ったアレが去るまで。」

 

アレとは何なのか良くわからないが、だからと言ってここに居座られて良いものじゃあない。

 

『では、交渉決裂だな!』

 

「隊長!セット完了しました、時間まで凡そ15分です!」

 

『全機撤退を開始せよ、平文を打て!粒子下でもわかるようにな!』

 

目印の通りに通路を逆に遡る。そして、外に出て第一に入ったのは艦隊からの攻撃により、表皮が焼け爛れたエヴィデンス01の姿であった。

 

 

彼女達の行ったことはあえて言おう、無駄であると。そんなものを使用しなくとも、この生物は簡単に死滅する。彼女はそれに直ぐに気がついた、と同時に機体のスラスターを吹かし再度生物内部へと突入する。

 

「どうしたんです!」

 

『我々はとんでもない勘違いをしていた、説明している暇はない。君たちは脱出しろ!』

 

 

~マイケル~

 

弾が尽きるのが先か、奴等が死ぬのが先かどちらにせよ帰る道はない。

一発一発を性格に急所へ命中させるが、奴等は肉塊となってこちらへ寄ってくる。

 

それでも次第に動きは鈍くなっている。なるほど、不死身ではなく単に生命力が異常に高いだけか、しかも放射線に非常に強い。サンプルに持って帰りたいくらいだが、こんな巨大な生命体の中だ。コイツの本体から切り取れば良い、どうせビーム砲に抵抗する力等無い筈だからな。

 

そんな時だ、MSの小隊が現れた。あれは、ゲイルだな。

俺が襲われてるのかと思ったのだろう、ビームサーベルで呆気なく蒸発させている。

 

『どうした、こんなところに来て。』

 

「もしもの事が無くて良かった。さ、この子に載って!もうすぐここは無くなるから!」

 

無くなる?どういう事だ。

 

「重力爆弾、父さんが作ったジェネレーターを暴走させて小型ブラックホールを…」

 

『まて、今なんと言った?あのジェネレーターを暴走させるだと? 

今すぐそこに行くんだ!早くしろ、取り返しの付かないことになる。』

 

「いったいどういう『早くしろ!』」

 

載せて貰っているのにと思うだろう、だがあれはまずい。

 

『他の機は脱出しろ、コゼット良いか?全力で行くんだ!』

 

ブースターが加熱していく、感覚でわかり始める。この生物は死に体だ、構造が手に取るようにわかる。

あれは、リディア君の感覚か?

 

『聞こえるかリディア君。』

 

「この声はマイケル博士、無事でしたか。」

 

『状況は最悪のパターンへと突入した、今すぐ時限装置を停止させ、速やかに解体作業を行わなければならない。』

 

どうやら向こうも向かっているようだ。

 

「解体は誰が…」

 

『私がやろう、私しか内部構造を把握しきれていないからな』

 

「避難させると言う選択肢は、無いのですか?」

 

『何故コイツの実験を行わなかったかわかるか?コイツの重力は最低でも、木星まで到達する。そうしたら地球は重力に引きずられ、公転軌道からずれる。そうなったらおしまいだ。若い頃の私が憎いよ。』

 

最悪のパターンはなんとしても止めなければな。

 

『私の居場所は解るだろう?そこまで何とか道を切り開いて欲しい、良いか?』

 

「了解した。コゼット少尉、頭の中に直接声が響いているのに驚いているかもしれないが、私の位置が解るか?解るならこちらへと向かって欲しい、最短距離だ。出来るかい?」

 

「は、はい!」

 

苦もなくやろうとする姿は正しく皆の支柱だな。

 

『頼むよ、到着したら俺を置いて脱出してくれ最悪の場合を想定して、あるものを起動できるようにする。それに巻き込まれないようにするために、たのむよ。』

 

 

 

~キラ~

 

『う、うぇ。気持ち悪い…』

 

目の前がチカチカする、何か無理やり頭のなかを掻き回されたかのようだ。掻き回されたこと無いけど…どうやらこの症状は僕だけではないらしく、コーディネイター、ナチュラル問わず無差別に起こっているらしい。

でも、フレイやカズィはケロッとしていて、いったいぜんたい何が原因なのか見当も付かない。

 

ブリッジに行き状況を聞くに、何やら集団催眠のようなもので、連合艦隊全体で同士討ちをしていたらしい。ただ、僕は機体の修理に時間が掛かっていたから出撃してなかったけど、それでもどうやら暴れたようだ。サイも同様に。

 

それで、眠っていたのだけど時間にして戦闘開始から3時間にしてやっと混乱が収まった。それもこれも13艦隊の面々の活躍で、どうやら他にもガンバレルを装備した機体とか、後はザフトのクルーゼ。彼はまともに協力してくれたとか。

 

そして、艦隊を精神攻撃してきたのはあの巨大な生物、今はかなりズタズタで艦砲射撃の的になっている。もしかすると、特別任務なんていらなかったんじゃないだろうか?でも、それでも作戦の中止は行われない。少しでもリスクがあるなら続けると言う。

 

そんな時、ある一報が届いた。生命体の体温の急激な低下が観測されたと、それと同時に生物の体内から戻った部隊が報告したようだ。艦隊を出来うる限りあれから遠ざけることと。

 

どうしてか、それを説明したのはある数値の情報だった。どうやらあのジェネレーター、自壊した場合の予測を遥かに上回る出力のものだそうで、データには無い有り得ない出力だったそうだ。

 

コゼットと、リディアさんがそれを止めに行っている。でももしも失敗すれば、人類は絶滅いや、地球自体が生命の永久に住めない星になる。壊すことも、ましてや動かしても時間の足りない。もう、僕たちには祈る事しか出来ないのだった。




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第55話 過去の思想 時の流れ

人と言う生き物は何のために生き、何のために社会を形成し、何のために戦争をするのだろうか?

私には全くと言って良い程理解できない。

 

子孫の繁栄のためと言うものもいるだろう、だが、それだけならば文明と言うものは必要ではない。

ただ、強い肉体と異様なほどの繁殖力が有れば良い、そうすれば頭等不要であろう。

 

だが、人と言うものは便利な脳を持っていた。握力が強い訳でもなく、速い足があるわけでも。ましてや厚い皮膚等持たない彼等は、それを圧倒する脳を持っていた。

それでも初期はそれを活用すること等出来なかった盧であろう。

彼等は生存権から追い出され地を這うしかなかった、それこそが人間に進化するに必要なプロセス。

逃走と闘争、これにつきる。人は逃げるために頭を使い、徐々に脳は肥大していき、同じようなものたちで自らよりも頭の弱いものたちを罠にはめ、自らの脳をアイデンティティとした。

 

ならば、この地球と言う揺りかごの時間が永遠ではないことを知った人類は、きっとここからも逃げ出すだろう。この哀れな逃亡者達は多くのものを犠牲とする、ならその手伝いをしても構わんだろう?

 

コーディネイターだナチュラルだのと言う、愚かな下等なものたちは私の言うことを理解すらしない。私の設計を見ても何も理解できない。故に恐れるか、だが私は貴様らの生きる道を整備するありがたく思えよ。

 

 

~マイケル~

 

骸となった者の内部を切り取りながら進んでいくと、急に辺りが開けるところに出た。

そこにはアルバがいて、我々をまっていた。

 

「こっちです、後に続いてください。」

 

『わかった、コゼット慎重にな。死ぬ寸前の生物は硬直と痙攣をする、何かしらの衝撃があればな。

だからこそ危険なんだ、予測なんて出来ないからな。』

 

暗い道を進む、道にはザフトの機体の残骸が散乱しここで何があったのか連想できた。

 

『これだけの機体を相手に良くもまぁ、やはり君の腕は一番だな。』

 

「こんなことを得意になって得することなど、僅かしかありません。軍人は産み出すことが出来ないので…そろそろ到着します。」

 

そこは巨大な空間と、訳のわからない機関が備わった部屋だった。

奇妙なほどに開けたそこは、きっと何かが納められていたのだろうに違いない、軍人には全く関係の無いものがあったに違いない。興味はそそられるが、今はそのときではない。

 

機関を置くのに好都合な台座の上に座すは、私の考えた縮退炉。

現在M粒子の力場から解かれ、暴走一歩手前だ。止める方法は少ないが、無いわけではない。

 

 

『コゼットちょっとシートの後ろを外すぞ』

 

「え?」

 

シート後部に存在する点検用ハッチそれを開きゲイルの炉前の装甲をパージする。

 

『大佐…娘の事を頼みます。』

 

パイロットスーツに付属する気圧調節機能をマイナスに設定して、娘の肺を叩く。直ぐに息を吸えずに気絶する。

 

「良いんですか?」

 

『自分の事は自分でけりを付ける。例え死のうとも。』

 

さあ、時間との勝負だ…。昔の設計、何処まで覚えているかな?

 

 

 

《2年後・地球連邦(・・・・)軍高等訓練校》

 

今日この日諸君らはこの学校の記念すべき一号生として、入学した。我等はかつての戦争と外宇宙生命体との戦闘により疲弊した、嘗ての地球連合加盟国軍並びにザフトを解体再編した軍となる。

 

国家としての規模それも、地球圏と言う広大な範囲を守護する。そのための地球連邦軍である。

諸君らは国家という垣根の無くなったこの地球圏の守護者となるべく、こうして我が校に来たことを快く思う。

 

明日から訓練が始まるだろう、諸君らの健闘を祈る。

 

 

 

~シン・アスカ~

 

俺はシン・アスカ。オーブから遥々ここ、元大西洋連邦軍。現地球連邦軍の基地に来ている。

俺が14の時に戦争が終わって、早いことにもう二年の月日が流れた。

 

今でもその戦争の名残が地球の各地に点在していて、アフリカやオーストラリアには今でもザフトのMSが埋まっていたりするらしい。

 

そして、宇宙には今も安定軌道を保っているユニウスセブンと、巨大な生物が絡み付き同化したアプリリウスがある。今はその大部分がIフィールドによって守られていて、ちょっとやそっとのビーム攻撃じゃビクともしない研究施設が出来上がっている。

 

その映像が俺たちの教室の正面で説明されながら授業が進む。

教師は嘗ての戦争で活躍し、負傷により道を断たれた元連合軍人や、元ザフトの出身者ばかりだ。

俺たちは士官候補生としての授業を受ける。

 

実体験を聞く以外の学習は、基本睡眠学習だ。凡そ半日で、今まで数年間を要した学習を行い、後は基礎訓練と他校との交流。

これから色々な方向に解れていくんだ。

 

時が経つに連れて、候補生は絞り込まれ俺はパイロットへの道を進む。憧れたあのアークエンジェル隊のような、そんな存在になりたいと。

 

だけど壁というものはいつもそこにある、模擬戦が行われて一番成績の良かったものは。《ステラ・ルーシェ》いつも何を考えているのか良くわからない不思議な子、彼女が誰よりも強かった。

 

ニュータイプそういう言葉が前大戦で真しやかに語られ、医学的にも生物学的にも立証された昨今。彼女はそのニュータイプだった。

俺も正直半信半疑だったけど、彼女の有り様を見て、記憶の中にある、年老いた金髪の老人の言っていた言葉が脳裏をよぎった。

 

 

 

~コゼット~

 

『ステラ候補生良く頑張った、貴様が一番の成績だ。褒美として、この食堂のデザート券を進呈しよう。

だが、くれぐれも実戦と訓練は別物だ、くれぐれもそれを胸に刻んでくれ。』

 

あの日私が父に気絶させられてから、二年の月日が流れた。父からの連絡もなく、脱出した形跡もなく月日だけが流れていった。

 

妹は私が通っていたカレッジに留学し、私はあの時から変わらずMSのパイロットをしている。殆どがアグレッサーとして各地を転々としている。

 

今年に入ってからは、新設された学校。そのパイロット候補生達の教官としてここに着任し、早くも一月が流れた。元アークエンジェルクルーの多くが軍から離れていき、今軍に残っているのは、私とキラ、サイの三名と育休中のナタル中佐くらいだ。

 

それは置いといて、報告書を提出しなければな。

報告書を提出した帰り、少し時間に余裕が出来たので久し振りに食堂へと足を向けた。普段は使わずに自室でとっているのだが、たまには良いだろう。

 

そう思い行ってみれば候補生たちが食事をとっている。必要の無い敬礼を制して空席で一人、食事を取る。

こんな寂しい食事にも慣れてしまった、周囲は学生気分が残っているものたちばかりか。

 

「あの、お隣良いですか?」

 

そんな私に声をかけたのは、紅色の髪をした学生。確かホークと言っていたか?

 

『いや、構わない。それよりも、私は邪魔ではないか?』

 

「いえ、寂しそうに食事をしていたので。お節介でしたか?」

 

彼女の後ろを見れば、候補生の上位メンバーがズラリと顔を出している。

 

『いや、では一緒に食べようではないか?』

 

こうやって食べるのは何時ぶりだろうか?久しく食べていなかったと思う。

そこから彼女達の会話は弾んで、私の事をよく知っているものが聴いてきた。

 

「スパロウ教官はアークエンジェル隊にいたって言うのは本当なんですか?」

 

『どうしてそんなことを聴いてくるんだ?』

 

「シンが昔あった人だって言うもんだから…。」

 

やはりあの時妹を探してた子か。

 

『ああ、そんな事もあったな。妹さんは元気なのか?』

 

どうやらマユちゃんは元気なようだ。

 

『それで、アークエンジェル隊にいた、と言う話だが。確かに私はあの時、アークエンジェル隊にいた。昔話でも聞きたいのか?』

 

皆が真剣な目でこちらを見ている。

 

『そうだな、アレは私がまだへリオポリスで学生をしていたときの事だ。』

 

昔話が始まる、まだ父が生きていた。初めて父の仕事を見たときの話を。

 

 

 

~マイケル~

 

重力の影響なのだろうか?周囲への電波の送信が不能となってから早いことに10時間、未だに応答無しか…やはり一般相対性理論。あれが一番厄介な相手だな。

それと、縮退炉。コイツの一番の問題がわかったぞ?

どれ程分厚くしたとしても、空間自体に干渉する重力。これによって時間が引き延ばされてしまう、と言うことだ。

 

いったい外でどれ程の時間が経過したか定かではないが、まあ良い経験ではないか?こうやって時間が引き延ばされた状態で、長時間生命活動を行った生物の前例はない…当たり前だがな。はて、世界最初の時間遅滞者とでも言うべきかな?

 

計算上では2年と少し、そのくらいは引き延ばされている筈なのだが…観測のしようがないのはこうももどかしいとは…。

後だいたい一時間程か?ブラックホールが自然消滅する筈だ。それまで、アルクビエレ・ドライブの構想でも練っておくか?ま、一時間程度じゃ解くことは愚か書き出すのも難しいだろうが。

 

だが、極短時間でもブラックホールを完全に作り出すことが出来るのならば、可能である筈だ。仮想の物質の証明もこの方法ならば可能であろう。

実験するには時間という生け贄が必要だがな。

 

ともあれ、早いことに自然消滅してくれないかなぁ。




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戦後〜
第56話 時は動き出す


二年前。マイケル・スパロウが生物の体内で縮退炉の暴走を止めたとき、生物から冥王星レベルの重力が発生した。

 

惑星として見たときのそれは強いとは言えないが、それでもコロニー群が機能を麻痺するには充分すぎる力であった。

 

プラントのコロニー群はその重力に引かれ、歪みを生じた。その結果プラントはその機能を停止させなければならず、大量の難民が発生したのだ。

 

彼等難民を受け入れる。そんな心に余裕があるものは、民間人のなかには、地球上ではいなかった。地上の人々にとって、彼等は人殺しも当然の存在。もしも、難民として受け入れられたとしても、歴史上のユダヤ人のように多くの地域で迫害されるのは、明らかだった。

 

一人一人を見るには連合ですら手に余る、先の生物のせいで連合各国は疲弊していた。

 

そこで、連合各国は思いきった行動に出る。彼等を企業が職員として雇用すると言うものだった。

企業側からしたらたまったものではない、だがそこは巨大国家連合。のらりくらりと絡めとり、遂には企業側を丸め込んだ。

 

暫くの間、彼等は簡易的な社宅となったがそれでも、生きていくには充分であった。

二年と言う歳月は戦争を過去のものとする。

 

ほとぼりも覚め始め、人々は次第に冷静に事を見始めた。戦争の根本的な原因、次にどうすれば戦争が起こらないようになるのか?分裂した東アジア。疲弊したユーラシア。

混沌とした宗教の沼、中東。

考え始めればキリがない程に。

 

そこに一つの光が射した、世界の再構築。それはこの混迷のなか、始まった。

唯一余力があった大西洋連邦は、他の国が楯突く暇も与えずに、強引に連合各国を吸収していく。

 

再独立を果たしたばかりの国々は大西洋連邦の比類無き国力により飲み込まれていく。

 

最初は不満もあったであろう、だが一月、二月と時が経つと状況は一変した。

吸収された国々は発展と言うものが、目に見えるように進んでいく。

 

そんな中で反対しても旨味がないと、誰もがそれを感じ、そこで最後の選択肢が出てきた。

このまま豊かな暮らしをしながら、新しい組織に組み込まれるか。

貧しく、苦痛に満ちた道を進むか…。

 

9割の国々が新しき組織を受け入れる。

その年、連合は解体再編成され地球圏を一つの国家とする、地球連邦が樹立された。

連邦憲章は何時誰が造ったのか謎に満ちたものである、一説によれば一人の老人が書き記したものが元となっていると言う。

 

(その老人は連邦が樹立されて10年後他界した。)

 

憲章は発効され即日効力を持った。中でも他の物と明らかに異なった部分、新人類の定義と議会への参画。

それは非常に難しくも、画期的なものであった。

 

その当時既にニュータイプと言われるものたちが、戦争下で現れていたこと。

彼等の染色体が通常とは異なっていたこと、そしてそれは遺伝しやすいこと。

 

それらが証明されていたことにより、新人類と言う定義は固定化され強固なものとなる。

そして、議会の席に座るものたちは嘘を見抜き、物事の真実を見抜く彼等に恐怖し、議会は少しずつ浄化されていっている。

 

そんな中、プラントにある生物の死骸。そこから発せられていた重力場が消失する。

それは、何かの合図か?それとも良からぬ事の前触れか、連邦政府は生物の内部への探索を軍に命令を下した。

 

 

 

~コゼット~

 

『召集命令?』

 

「はい、大尉には隊を率いて内部調査を願いたいと…内部に入ったもので現在軍にいるのは、貴女だけですから。」

 

またあそこへ行くのか…こんなことなら軍を辞めておくべきであったか?

リディア准将はその階級のため、もはや前線に出ることはなく、政治の道に行ってるし。

 

メビウスパック隊は、宇宙にいるがそれでも彼等が内部に精通している訳ではない。

要は心臓部である、あの部屋に行きたいのだろう。

 

『わかった、だがきちんとMSは用意してくれ。あの生物の体内では何が起こっても不思議ではないからな。

後、人員だが出来るだけ少なめにして貰いたい、護衛するのも苦労するからな。』

 

行くことは既に決定しているのなら、今は目の前のこの書類を何とかしなければな。

それに、上からの連中との模擬戦もやりたいからな。

 

〈数日後〉

 

『これより模擬戦を行う。私が教導するのは今日で一旦終了となる。今から呼ぶものはMSに搭乗し、全力で私と戦うこと。良いか?いいな!』

 

練習機はエールストライクダガー。

この数年でもはや型落ちとなった機体、それを駈り所定の位置に付く。

想定は市街地戦、模擬用のビル群はMS搭乗訓練で組み立てられたもの。

いくら壊しても、また廃材を再利用して造り直されるテーマパーク。

 

『何時のってもコイツの機動は遅いな、ゲイル(あいつ)の足元にも及ばない。

 

っくるか!』

 

フットペダルを踏み込み一気に滑るように移動すると、先程までいた場所にビームが叩き込まれる。

 

『狙いは正確だな、故に読みやすいか。私をそっちに誘導してどうしようと言うのかな?』

 

ビームは正直言えば狙いが分かりやすく、こちらを何処かへ誘導する為のものだ。

であるならだ…

 

『3・2・1 今!』

 

ちょうど遮蔽物が無くなったところを、赤いランチャーダガーが狙い撃ってきた。

もっとも、バレバレだから余裕を見せて華麗に空中一回転ひねりをして避けてやった。

ここでバカにされたと思って突撃して来ると思ったのだが、どうやら違うようだ。

 

本当に入り組んでいる、ハンデとして空を飛ぶことが出来ないからこそ、こうやって全体を見るが。

明らかに提出されていた見取り図と形状が違う。

誰か細工をしたなぁ?

…どうやら二人来たようだ。

 

私の前後を取るように白色とトリコロールのダガーがサーベルを片手に構えている。

 

 

「おとなしく投降した方が良いんじゃないか、教官!」

 

『あぁ、そうだな。蛆虫共が集まったところで、登校するのが関の山か?』

 

そう言ってやれば直ぐに飛び掛かってくるのが、シンと言う人間だ。

私の背面から正直に突っ込んでくる、振り上げられたサーベルに対して盾を斜めに構え。瞬間、それを押し出す。

 

すると、機体表面を滑りシンの機体は空中に浮かんだ。

こうなるともうどうしようもない、自動的に姿勢制御を取ろうとするから、動きが一瞬硬直する。

そこをやるのだ。

 

そうはさせまいと白色が来る、がそれにシンを盾で押し当てる。

それを避けるがそこにライフルを置いて撃てば、一機撃墜だ。

 

遅れて黒い機体と、赤がやってくる。

 

『何をやっていたんだ?随分と遅いじゃないか。』

 

本来動きは良いんだ、彼等に足らないのは格上との戦闘か…少しは勉強になれば良いかな?

 

 

数分後彼等は全機撃墜判定を出される。これが私の教官としての最後かも知れない。

 

『皆知っての通りあの生物から発せられていた重力が、消失した。

私は数日後それの探索メンバーとして向かうことになっている。

私が戻ってくるまで、今日の戦闘で獲たものを研究し己の糧としてくれ。』

父さん今迎えに行くよ。

 

 

~マイケル~

 

止まったな、やっと止まった。これで時間の進みかたは外と同じようになる筈、だけどまあどうやって帰ろうか?

数年経ってる可能性もあるのなら、救助では来ないだろう。

 

もっともここは最深部、来れるのは道を知っている奴だけか。

さて、エネルギーが少ないが…ゲイル何処まで持つか。

 

ふと、目の端に人影が現れた。見知った顔。

 

『よおダニィ久し振りだな、こんなところに現れるなんて、どういう風の吹き回しだ?』

 

「ああ久し振りだな。こんなところにまで来られるなんて、僕自身驚きだよ。

君が行方不明になって、二年と6ヶ月の時間が流れた。」

 

そんなに経ってないんだな。

 

『てっきり10年位経ってると思ったんだが、なるほどこりゃ観測しなければわからないな。それで、それだけ伝えに来たのか?』

 

「いいや。君の娘がここに向かってる、生存を信じて。」

 

そうか…

 

『ありがとう、少しでも長生きするよ。』

 

それじゃ出発するかいゲイル。

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第57話 戻って来たぞ!

数機のMS(ジン・ハイマニューバ)が生物の骸の周囲を飛び回る、その後に小型のMSが付いていく。

小型の機体には武装らしい武装も見えない、どちらかと言えば探索用なのだろう。

 

遠目から見ればピクニックに行く子供と、保護者程の体高の違いである。

狭い場所に入るのなら使用がない、と割り切るのなら良いのだが、せめて武装をした方が良いと言うのが本来だろう。

だが、戦争から二年。この生物の危険性も記憶から薄れて久しく、〈もう大丈夫だろう〉なんて言葉を口にするパイロット。

だが、彼等はこれが宇宙生物と言うことを忘れている。こういう生物がいるのであれば、こう言うものを蝕む寄生虫のようなものもいると言うことを。

そんな連中が侵入してから数刻が経ち、警戒網を何者かが抜けた事を軍が把握したのはあまりにも遅かった。

職務怠慢と言うものか、はたまたこんな場所に来るものなんていない、なんて思っていたのか?

それでも簡単に破られるなど、恥以外の何者でもない。

 

それが本国に直ぐに知れ渡ると、司令官は更迭され直ぐに副官がその権限を握った。

内部へと侵入した奴等の身元を確認し、確保ないし射殺するために。

 

だが、数日経っても連中は出てこない。だが、内部から熱を探知した。それは推進材の燃焼を一気に行った時のようなそんなものが。

 

 

 

~コゼット~

 

『それで、内部に入った連中は死んでる可能性が高いと?』

 

「ニュータイプなら解るんだろう?思念とかそう言うのがさ。」

 

そんな便利なものだったら、今頃父は平和に研究してる筈。あの時、あんな犠牲にならなかった筈。

 

『そんな都合の良いものじゃないよ。

 

捜索隊の準備が整い次第、出撃。

私たちが4時間以内に戻ってこなかった場合、あれに総攻撃をかけるように、心すること。

皆も良い?気を引き締めて!』

 

そこから時が流れ、出撃した。

私たちは最小限の携行火器、ビームサーベルと小型のビームガン。

火器の選定は私が行った、あの中では銃身長のあるライフルでは使いがってが悪いのを覚えていたからだ。

拳銃くらいに掌にフィットするのがちょうど良い。

バックパックのユニットは一切付けないノーマル仕様。

ウィングが邪魔だからいらない。

そして、あの骸に入る。

 

奥へ奥へと進んでいくうちに、次第に空気のようなものが滞留し始める。おかしい、MSが並んで入れる程に大きな穴であるにも関わらず、真空でないのは余りにも不自然だ。機体表面の電気信号を調べてみるとやはりあった、なにやら膜のようなものが張り付いている。

 

『機体に何か張り付いている、互いに確認するんだ。』

 

しかし、じめじめとしていてまるで死んでからそう時間が経っていないような…まさかね。

「隊長」

 

『どうかしたか?』

 

「腐敗の仕方がおかしいのです。空気があるならばこんなにも進んでいないのは、余りにも遅すぎます。まるでさっきまで生きてたみたいだ。

それに、各所進行具合もバラバラなのです。まるで、外部から何かしらの応力がかかっていたような場所は、特に腐敗が進んでいません。」

 

あの重力の影響か?だとしてもこんなにも疎らになるのか…いや、まだ実証されていない分野だ。こう言うこともあろう。

 

『データに保存しておけ、後で学者連中はそれを見てどう思うかだな。』

 

妙な感覚がある、まさかこの中にまだ生存者がいるとでも?あの不法侵入者以外にも。

暫くMSでも通れる道(恐らくはコロニーの中だと思われる)を進んでいく。あの当時のまま、侵食され肉塊となったものがところ狭しと並び、高々と…おかしい。

あの時潜ったとき、こんな突起物なかったまさか…

 

それを壊す。中からは恐らくは不法侵入者の肉体だろう、それが肉漬けにされ埋もれている。

 

「オェ」

 

『いったい何が…何か来る。円陣防御!』

 

よくよく見れば、辺りには肉に覆われた機械部品が、落ちている。

ここでやられたのか…。

 

肉から現れたそれらは、真田虫に良く似た姿をしている。元来コイツは宿主を犯すものだが、どうやらコイツら私達を宿主が食したものだとでも思っているのだろうか?にしてもデカイ、胴周りが5m、全長は20mか…大きすぎるだろ。

 

ジンにはビーム兵器が無かったからやられたか、奴等からなにやら溶解液のようなものが滴っている。あれで細胞を溶かしてここまで来たか。

真田虫みたいなくせに、えげつない。

 

武器を取りそれらを焼いていく、所詮は生物。この骸の主もビーム砲の前に死体を曝したのだ、この寄生虫達も同じ末路。

数十分格闘し、僚機の機体の節々が強烈な酸によって腐食している。

 

いかなPS装甲であっても、酸というものには通常の金属と同じく腐食した。

 

周囲を警戒していると更に奥の方からMSの歩行音が近づいてくる。

それを見たとき愕然とした、そこにはボロボロになりながらも歩くゲイルと、見知らぬ人々そして開け放たれたコックピットには父がいた。

 

 

~マイケル~

 

最初聞こえた音はビームライフルの音だった。もっともメガ粒子ビームというよりは、前身のコロイド粒子のものだったが暫くするとそれも止んだ。

 

何かが近付いてくる音は、一人の宇宙服を着たものがこっちに逃げてきた。

何か言っていたが周波数が違うためにまったく聞き取れない。

 

奴の後ろを見たら、気持ち悪い生物が来るじゃないの仕方がないからビームサーベルで焼き払ってやった。

真田虫、切っても動いてる。まあ口の部分を切ってしまえば当分来ないから、それで手をうとう。

 

逃げてきた奴を気絶させ、後退する。どうやらあの心臓部にはいなかった、いやわざと近付かない性質のようだ。

しかし、どうやって出ようか?わざわざ食われに行きたくはないが…

 

「あっあんたいったい何なんだ。こんな奴の体内でどうやって…」

 

『私か?私はただ少し前に入ってきて、これから出ようとしていただけだ。』

 

数日待ってみるか?

 

 

〈数日後〉

 

そろそろ食料も心もとなくなってきた、一人分を二人で分けてるんだコウもなるか。

強行手段に出るしかあるまい。

 

そう思った時再び音が聞こえた、今度はメガ粒子ビームの音が、今度こそ大丈夫そうだ。

そう思い出口へと向かうことにした、密閉された空間に悪臭漂う中、それが連合の機体だと直ぐにわかった。

 

国際チャンネルで話しかけてみよう。

 

『あ~こちら、地球連合所属のマイケル・スパロウだ。貴機は味方か?』

 

「こちらは地球連邦軍所属、内部探索準備隊のものだ。失礼だが、貴方の生年月日を聞きたい。」

 

当たり障りの無い事を話したが、何を聞きたいのだろうか?

 

「こちらで照合を行ったのだが、まさか本当に?マイケル・スパロウなのですか?」

 

『ああ、そうだが?何か可笑しなことが?』

 

無線の向こう側で息が荒くなっているのがわかった。

 

「ええ、お帰り父さん。」

 

 

 

~アズラエル~

 

その日私は娘イスラフィルと遊んでいた。

勿論執務をちゃんとやり終わってからだ、そうだなだいたい2時間くらいで終わらせたんじゃないかなぁ。

 

遊んでいたらだ、なんと邪魔が入った。私は怒りながら、一体なんだと言うと〈マイケル・スパロウの生存が判明した〉と返答があった。一瞬嘘だろと思ったが、その後直ぐに彼ならあり得るかと直ぐに切り替えて、再び遊びに没頭した。

 

〈後日〉

 

『それで、彼の容体は?』

 

「それが、最後に出ていったときとまったく同じ格好でして、更に言えばピンピンしていると…」

 

さすがに駄目だと思っていましたが、そんなにも頑丈でしたか…。

私が学生の頃からああだったのだからおかしくはないが、やはり人をやめているな。

 

『わかりました。後日会談を開きましょう、英雄の凱旋です丁重に迎えましょう。もっとも、彼の場合直ぐに何かしらの研究に没頭するかもしれませんが。』

 



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第58話 ミノフスキー物理学のその先へ

無事生物の体内から生還したマイケル・スパロウ。彼を待ち受けていたのは、執拗な程にまでたかれたフラッシュとマスメディアの質問であった。

 

マイケル・スパロウ。学会ではよく名を聞くものも多く、大学院等になると彼という存在を知らぬものはいない。

だが、彼の姿は意外な程に知られていないなぜか?

 

論文を発表するとき、彼はいつも代理を立てた。時間が勿体ないからだ。どうせ論文の整合性を検証するには発表から数ヶ月かかる、なら他のものを書いた方が時間の節約になると思っていたからだ。

 

それゆえに、彼がマスメディアの前に始めて現れたのは意外なことに、プラントとの会談であったりする。

それゆえに、彼という人物がこの度広く世間に知れ渡った。

天才、そんな人物が二年間の行方不明から無事に帰還した。しかも、現在の数々の船舶で使用されているミノフスキークラフト、それの開発者であること。

発電用核融合炉や旧地球連合のMS開発に深く関わっていたことが拍車をかける。

 

執拗な質問責めが彼を襲う、だがどんな質問をしても彼が答える内容が聴衆の頭では理解が出来ない。

理解できるのは、同じような研究者達で専門知識もない一般人に彼の思考は理解不能だ。

 

次第に彼等の間にはある種の恐怖に似たものが現れる、未知のものへの探求心が、次第に理解不能のものへの反応へと変わっていくのだ。

故に彼は理解されないであろうが、周囲の人々がそれを和らげる。

家族や友人はそれほど大切なものであろう、でなければとっくの昔にこの世界が滅んでいる可能性だってあったのだ。

 

そんな事もあり彼は始めて世界の人々が見る討論番組、へと出演することになる。視聴者参加型のそれは、西暦で言うところのニコニコのように画面にコメントが流れ、より多い質問をAIが集計するそんなものだ。

 

 

~マイケル~

 

どうしてこうなった…あれか?あの生物から出たら二年経ってたとかそう言うのか?

別に俺は内部で数日過ごしただけだから、正直なんでこんなにも報道されるのかまったくわからん。

 

落ち着いてきているから、日常が戻ってきたからそんなものがここに満ちているのはわかっている。

だが、俺をそれに巻き込んでもらいたくないものだ。早く、あれを書き始めなければ、人類の進歩は止まってしまう。そう、頭の中では出来ているが出さねばな…

 

「…さん、スパロウさん大丈夫ですか?」

 

『うん?あ~えぇ、だいじょうぶですよ?少し考え事をしていまして。』

 

他愛もない質問が続くなか、あるものについて質問された。

 

「サイコフレームというものを、知っていますか?現在、各地の研究所内から発掘されているという未知の物体だそうなのでが…」

 

サイコフレームか、そうだなぁ。

 

『あれはまあ要するにだ、ナノマシンの一種だと思ってくれ。厳密に言うと少し違うのだが、まあそう言うものだと思ってほしい。』

 

「ナノマシン…ですか。あれは、私たちの先祖が作り出したロストテクノロジーだということですか?」

 

『いや、違う。あれは、我々とはまた違う技術体系の星から流れ着いたと考えるべきだ。基礎技術自体は私の作り出した、ガンバレルの脳波による補助システムあれと同じだろう。だが、出力が桁違いだ。

簡潔に言おう、あれを造るに我々は後100年はかかる。そう言う代物だ。

ちなみにだが、私があれの研究をやるつもりは毛頭無い。ああ言うものに特化した奴等に任せた方が、人類全体の底をあげるに役に立つ。』

 

周囲が私の発言にざわめいている、ナノマシンの一体何がそんなに驚くことだろうか?

それにだ、一人の人間に全てを背負わすことの愚かさを忘れている。とてもリスキーで、やってはならぬことだ。

 

『私のやるべきことはただひとつ、私の探求心を満たすこと。今、私は私の残っている時間を全てを注ぎ込み、私は人類のもう一つの夢を叶えよう。

ミノフスキー粒子、あれの可能性を私は再認識したあれは素晴らしいものだ。』

 

「夢とは…」

『それは君達が考えることだ。さて、私は行かせてもらうよ、こう言う場所で話をしていては時間の無駄だ。』

 

退室させてもらおう、そう思い座席を立つ。皆呆然としているが、何とか止めようと私の前にスタッフが来るが、その程度の力で私を止められると思うなよ?

周囲からどう思われようが知るか!そんなことよりも、研究だ私には後50年程しか時間がないのだ、一行でも多く計算しなくては。

 

 

 

~アズラエル~

 

彼の出演した番組を見ていたら、突然彼は席を立って何処かへ行ってしまった。

生中継中の放送事故だな、彼らしいと言えばらしいか。軍隊でももってこなけりゃ彼を止めることは出来ないだろう。それは良いのだが、彼はいったい何の研究を始めるつもりだ?

 

それだけが問題だ。恐らくは彼は寿命の限り、何かに取り組むのだろうが、それが人類の発展に最重要な事なのだろうか?

であるならば余計に出資者として、気になるじゃないか。

 

『済まないが予定を変更しても良いだろうか?彼に何を創るのか聞きたい。出来るね?』

 

大統領との会食会はいつでも出来ますからねぇ、あの方には私の書類を押し付けておけば、向こうの仕事が増えて私のせいではなくなります。

 

 

〈5日後〉

 

久々の研究所、というのは彼も同じな筈なのだが、これはどう言うことだ?

 

目の前の研究所の入り口となっているホテル、そこは人の出入りなど皆無であった筈なのに、この二年間僕が目を離していた間何があったのか、観光客が大勢いる。

これじゃあ本当にホテルじゃないか。

 

車を降りてフロントで話を聞かねば。

 

『やあ、特別ルームで予約をしていたアズラエルだ。』

 

フロントには見知った顔の人物がいない、それどころか本当に彼等はフロントマンか?

その筋肉の付き方にヒットマンだとか、そう言う名前がちらついている。

 

そう言えば周囲の人間も堅気の人物とは考えられないような…こんなにも物騒だっただろうか?

 

「これはアズラエル様。お待ちしておりました、料金は引き落としとなっておりますので、どうぞこちらの部屋をお使いください。エレベーターで地下4階でございます。」

 

『ありがとう。』

 

エレベーターを降りた先はやはり研究所だった、出迎えてくれるのは恐らくはロボットであろうもの達。

一年ほど前に私に見せてくれたときよりも遥かに、人と同じ仕草をするようになった。

本当にロボットか?

 

「アズラエル君、彼等はロボットだよ?」

 

聞こうとしたことを言われた。

 

『クラウン博士、お久しぶりですね。マイケル博士を訪ねてきたのですが、本人が来てくれません。』

 

「彼は到着してからこの3日間部屋に籠っているよ、それほど急いでやらねばならぬことがあるらしい。昔に戻ったようだよ、周囲の事など気にもしない。」

 

どう言うことだ?

 

「それでも家族のことは気にするだろうがな。」

 

 

 

~コゼット~

 

父が研究所に付いたと連絡が入り、私には数日の間休暇が言い渡された。

長い間あっていなかったのだからと、どうやら政府が介入したようだ。

 

それを母に連絡した後に私はあの研究所に向かった。

さすがに非番であるからMSで行くわけにも行かず、大陸横断鉄道(リニア新幹線)を使用してでの帰郷となる。

 

駅に母が迎えに来た。

 

「お帰り。」

 

『た、ただいま。』

 

「あの時から一度も帰ってこないなんて、思わなかった。ちゃんとご飯食べてるよね?軍人なんだから。」

 

『父さん帰ってきてるよね?』

 

…沈黙?なんで?

 

「あの人 私たちに連絡してくれてないもの、怒りにいかなきゃね !」

 

『は、はい。(--;)』

 

研究所に付いたら真っ先に父の研究室の前に立ち、ロックを直ぐ様解除した母。その後ろ姿には鬼神がいた。

 

近くでアズラエル財務大臣がいたことに気が付いたが、気にもしなかった。

 

「アナタ!どうして連絡してくれないの? 心配したんだから、それくらい入れるのが当然でしょ!」

 

「ア、アイナなぜ。多重に施した電子ロックとダイヤル式をどうやって解いた!ビームサーベルでも持ってこないと開かない筈だ!」

 

「アナタの思い付く番号なんて直ぐに解るし、単語なんていや程知ってる。それに、生体認証は私のも入れてあるじゃない?それで、どうして私に連絡してくれなかったの?」

 

あの父が、母に気圧されている。こんなの見たこと無い。

 

「いや、君達に迷惑がかかるんじゃないかと…それに、これは私が始めて感じた使命、それを全うするものではないのかと思ってね…いけなかったかい?」

 

「まったく、昔から変わらないのね。使命に邁進するのは良いことよ。でもね、せめて家族で一緒にご飯くらい食べないと、狂ってしまうわよ?一度知った温もりをアナタは忘れられない筈だから。」

 

そう、研究者は狂気とのせめぎ合いを行うという。母はそれを言っているのだろう。

 

「そうだろうか?」

 

『だから、私たちと一緒にご飯たべよ?妹も待ってるから。それと、アズラエルさん。話は後でも良いですか?』

 

その日私たちは父を連れて帰宅し、母の手料理を食べた。きっとこう言うのが本当は良いのだろう、私は軍人でなかなか帰ることが出来ないが、せっかく戦争が終わったんだからたまにはこう言うのも良いよね?

 

 

 

 



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第59話 目指すは光

人の夢、それはいつも不可能という言葉を可能というものに塗り替えてきた。

人は不可能というものが極めて嫌いな生き物であり、出来ることならば全てを可能にしたいという欲がある。

 

だが、人という生き物は不完全なもので、一人ではそれを乗り越えることは不可能である。

一人で乗り越えることが不可能という事象は、結局のところ最後に解決される難問であろう。

 

であるがゆえに、人というものは共に手を携え前へと進んでいく。それは横へもそうだが、縦。即ちバトンのように続いていく技術もそうであろう。

積み重ねがあるからこそ、それは前に進む。

では、積み重ねが存在しない技術…例えば最初のコンピューター、それはどうして出来たのだろうか?

恐らくは面倒臭がりが、面倒臭い仕事(計算)をしないために作り出したのだろう。

0から創り出すというのは非常に難しいことだ、それこそ0という概念が出来る前の計算と同じくらいには難しい。

 

 

さて、マイケルが行おうとしていることは要するにそう言うことだ。

その理論は言ってしまえばオカルトで、フィクション上にしか登場せず。実現しようとすれば、宇宙を揺るがすほど莫大なエネルギーを必要とする。どれをとっても不可能に近いもので、正直に言えば無理なものが殆どだろう。

 

ここまで来ていったい何を言っているのだろうか?と思う読者もいることだろう、実際そうだ。

〈なんでそんな話をするのか?さっさと物語を進めろ!〉

と思う方もいるでしょう。しかし、私がなぜこれを記すのかと言えば、マイケル・スパロウ。

彼が当時どういう発想でその理論に至ったのか、今ですら謎に満ちている。

 

彼がやろうとしたことは、現代の我々にとっては極当たり前となった、恒星間航行の技術。

その最初に必要となった技術。空間への干渉とワームホールの発現及び安定化。

 

彼はその数式を一人で解き、そしてそれを元に巨大なリングの建造計画を始めた。その直径は凡そ6.4キロ、全長170mの、直径だけは旧時代の円筒型コロニーの基本サイズと同じものである。

今となれば船単体に存在しているそれは、今では超長距離用に使用されている大型のワープゲートの構造であり。ワープ装置の原器。

 

彼がどういう仮定でそれを思い付いたのか、我々には到底理解出来ないであろうが、ブレイクスルーであったのは間違いない。

それと、時を同じくして亜光速航行技術であるミノフスキードライブ原器が開発されていたのだから、正しく現在の我々の勢力図の拡大に最も貢献したものだろう。

 

 

〈帰還から二年後〉

 

~マイケル~

行き詰まっている…ここはどうすべきか?閃きが必要か?斬新な発想か?う~ん、こう言うときは別のことをやっていればいいのかな?さて、じゃあサイコフレームの解析あれの手伝いにでも行くとしようか?

 

材料開発部はこっちだったな、おおいたいた皆気難し顔をしてサイコフレームの解析、どこまで行ったのだろうな?

 

『やあ、解析は順調かな?少し資料を見せてもらいたいな。』

 

「これは所長、それが順調とは言い難いですね。」

 

『ほお』

 

これがサイコフレームね、金属粒子並みに小型化されたコンピューター素子。我々の技術体系に無いものか…古い記憶の中で、確か…UCの技術だった筈だ。

向こうはクローン技術でも我々とは大差無い場所まで言っていた筈なのだが、どうしてこちらはこんなにも遅れているんだろうなぁ。

 

『それで、何がどうして解らないんだ?』

 

「それがですね、これ造り出すには先ずはこの素子と同じ効果のものを創らなければならないんですが、何より意味が解らないのは…かってに発光するんです。」

 

『かってに発光する?というと?電気を通さないにも関わらず化学反応の類いでもなく、発光するのか?』

 

ええ。

 

と言って再びそれに目を向ける。

確かにほんのりとエメラルドグリーン色に輝いている。

 

『美しいな…だが君達は先にこれの原器を造った方が良いその後でも解析する時間はある筈だ、たとえそれが20年30年後だとしても、人類の進歩に変わりはない。近道は遠回り、急ぐほどに足を取られる。なに、私も考えてみよう気分転換にね。』

 

発光現象の理由は正直いってわからない、だが厄介なものではあるな。だが、逆に言えばこれを上手く利用できれば、よりNTというものの立証をやり易くなるし、何よりMSの強度は増す。技術の応用によって。そうだ。

 

『もしかすると人の思念だとか、脳波に反応しているのかも知れないな。だとすると。ガンバレルの技術は確かドラグーンというものに置き換わっているそうだね、あれは確か脳波コントロール技術だったか?

だが、確か負担が大きかった筈だ。共同研究してみてくれ、何かわかるかもしれない。』

 

「あ、そう言えばお嬢さんが来てますよ?仕事で忙しそうですと言ったら、夕飯で話をすると言ってました。

何やら込み入った事情があるようです。」

 

あの娘が、軍に勤めていても最はこの街に近い基地にいるから、月に一度帰ってきてくれる。そんな貴重な時間に何を言うのだろうか?

 

『ありがとう、励めよ!』

 

そうか、今日は早めにあがるとしようか。

さて、古風な黒板に書く訳にはいかないからな、ホワイトボードの方へ少し仮説とそれに伴う計算式でも書いて、行くか暇つぶしに。

 

 

 

~コゼット~

 

 

は~やっぱり我が家は落ち着く。

そう思ってリビングのソファーにドカッと座る、テーブルの上に置いてある小包に入ったお菓子を手にとって包みをクルクルと取った所で気が付く。私が家に招待した人が、ものすごく緊張していることに。

 

『ほら、そんな緊張してたら父さんが帰ってきたときには、気絶しちゃうよ?』

 

「そ、そうなんですけどこんなに寛いでしまっても良いものなんでしょうか?」

 

まだ母さんも帰ってきてないし、妹はカレッジに行っていて家にはいないし、暫くはのんびり出来るかなぁ~。

 

『そう言えば、父さんとあった事無かったっけ?母さんとはピアノの話で盛り上がってたのは知ってるけど。』

 

「はい、アイナさんは凄い人ですね。ショパンの舟歌をあんなにも美しく弾けるなんて、正直感動しました。コンクールでも優勝出来そうなのに、どうして本職にしないのか疑問に思うほどです。」

 

私には到底不可能な事ね、料理は父に似ず料理人顔負けの腕はある筈だけど、音楽は父に似て機械的だからなぁ。

 

『本職と趣味は分けた方が良いって言ってたから、よっぽど研究が好きだったから二番目って感じでやってたけどね。でも、私はアナタの方が好きだけどねぇ。』

 

頬を紅く染めちゃって、かわいい。

 

 

「ただいまぁ~」

 

母さんが帰ってきた、

 

『お帰り、父さんは?』

 

「車を置いてくるって駐車場にいってる。この靴誰の?」

 

『それは父さんが来た後で!』

 

母さんがリビングに来ると、直ぐに誰か解ったように挨拶を始めた。そして、玄関のドアが開く。

父がリビングへとやってくる。

 

「ただいま、君は誰だ?」

 

「は、初めまして。コゼットさんと、同じ職場に勤めています。ニコル・アマルフィと言うものです。いつも、コゼットさんにはお世話になっております。」

 

『ニコル…ニコルはね、私の彼氏なの。』

 

急激に空気が冷え込んでいく、父の後ろから何やらオーラのようなものが見える。

 

「ニコル君と言ったか、少し二人で話をしよう。母さん、コゼットがこちらにこれないようにしておいてくれ。」

 

とてつもない威圧感だ…ニコル大丈夫かな。

 

「心配しなくても良いと思うよ?ただ、確かめたいだけだと思うから。」

 

『何を?』

 

「命の大切さを。」

 

数分後帰ってきた二人は何かあったようだが、互いに笑い話をするような感じで意気投合していた。

 

それから数ヶ月後私とニコルは結婚した。

それから子供も出来て、長い長い時間が流れる。そんな中でも、父は研究に没頭し人生で始めて自らその理論を発表する時が来た。

 

 



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第60話 時代の節目

最終話


段を囲むように多くの学者達が集まるそこは、論文を発表するとき良く使われる場所である。

そんな場所へと所狭しと、群がる姿は獲物に群がる蟻の如し。

 

そんな中その壇上へと登る男が1人、初老に突入しているがその鍛え上げられた肉体はそのままに、多少の衰えを見せるものの、その姿は研究者とは程遠い。

その男が壇上から周囲を見下ろし、話を始めた。

 

先ずは相対性理論から始まったこの論文。昨年発表された、ミノフスキードライブ関連の論文等で補われたそれは、時間が進むにつれより難解な方向へと発展していく。

 

そして、彼は結論を出した。実に5日を要したそれは、光というものを凌駕する為に編み出された理論。

簡単に言うならばワープというものだ、彼はミノフスキー粒子のあるものに着目していた。

それはミノフスキー粒子が何処へと行くのか?というものだ。

 

元来ミノフスキー粒子はそれが拡がった後、何処へとも解らぬ場所へと消えていく。

質量保存等なく、文字通り存在が消えていくかのように。

 

勿論、地球内や宇宙空間で一定の濃度で漂うことはあるものの、時間が経つにつれこいつはエネルギーに変換されること無くただただ消えていく…。

 

では、消えていった先に何があるのだろうか?

その鍵はサイコフレームであった、あれが何なのか世界のあらゆる学者が研究を行い、結果解ったことはあれがナノマシーンの一種であること。

異常なまでの硬度と柔軟性を持ち合わせていること、脳波に反応があったりと謎の多いものであった。

 

だが、マイケルだけは失われた前世を呼び起こしつつ、これの力を知っている。

過去、そして未来すら見ることが出来る。

 

そして、過去を見ることが出来るということ、それ即ち光速を超えるヒントが入っていたのだ。

彼はその特性を可能な限り人工的に発現出来ないかと考えに考えた、そしてたどり着いたのがバイオ脳という代物だ。

 

それにより、サイコフレームの共振現象は擬似的に行われるものとなる。

そして、共振現象によってミノフスキー粒子の観測に利用された。結果、粒子は逆転した世界へと移動していた。

 

速ければ速いほど質量が減る世界。

 

勿論減りすぎても困るもの、寧ろ減らない方が望ましい。そこでサイコフィールドとIフィールド二つが役に立つ。サイコフィールドが卵の殻として、Iフィールドが緩衝材の役割を果たす。これによって自分たちの世界の物理法則を保ちながらも、光を超える術を手に入れた。

 

尤もこれは短距離用である、本命は長距離用の巨大リング型のワープ装置。

ブラックホールを使用したワームホール。

球体の穴が覗くそれは、重力によって空間そのものを歪曲させ、別の場所と繋げる。

 

空間を曖昧な物として繋げるため、始点0と終点Pとの距離は実質1となる。

しかし、近い距離に使用する場合不安定に成りやすいという特性から、主に1000光年以上~使用するためのものだ。

 

彼は二つの異なる理論を20年の間にほぼ同時に仕上げた、それは人類史に残るであろう偉業である。

 

しかし、これを利用するには更に数十年の歳月が必要となる。これが完成したのは、彼がこれを発表してからゆうに60年かかった。

 

 

~コゼット~

 

あれから何十年という年月が流れた、今にして思えばあの戦争もただ一時の騒動のように思えてくる。

 

あれから大規模な戦争は無くなった、勿論小規模なもの。例えば、ジャンク暴動という武装解除に反対したジャンク屋軍団の殲滅戦や、ブルーコスモスから独立した過激派たちとの清掃戦争。

 

それでも今はこうして平和を謳歌できている。

今日スペースゲートの除幕式が行われる。父が最後に設計した、この巨大なもの。場所は太陽から凡そ70天文単位離れた、無星空間。

 

父の理論によりここまで来るのに凡そ3時間、光速の3倍の速度でここまで来れる。重力の影響と、太陽風、星間物質を鑑み最適とされた場所。

 

私たち人類はこれから星という大海原へと旅立つ、そこに待つのはなんであろうか?きっと苦難が待ち受けているに違いない。それでも前に進んでいこう。

 




本編はこれで終わりとします。

なお、シン、キラ、リディア、コゼットのその後を書いていきます。


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その後
リディア・パヴリチェンコ


一人事務机に向かい、ひたすらにモニターへ文章を書き記し続けている女性がいる。

それは美しく、金色掛かった髪をしていながら決して、コーディネイターではないとわかる自然な美しさだ。

 

だが、その眼差しは非常に強く、一部の変態達はその目で見られただけでこう言うだろう。「もっと罵ってください」だとか「それは我々の業界ではご褒美です。」だとか言うだろう。

 

そんな彼女が身に付ける士官服は、嘗ての連合のものから少しアレンジされていた。生地は暗青色で染められ、まるで宇宙を体現したかの色である。

〈連邦宇宙軍の服装はこれで統一されており、儀礼用のみ白の礼装を着る事となっている。〉

 

コンコンと扉にノックをするものが現れる。

 

『入ってくれ。』 

 

「失礼します。」

 

『なんだ、ムウじゃないか。どうしたんだ?急にこんな所に来るなんて。』

 

「いえ、こちらに寄ったので挨拶をと思いまして。」

 

『そんな硬い口調じゃなくて良い、昔みたいに部隊にいた時と同じでいいよ。』

 

彼女がそう言うと、彼は口調を崩して話を始めた。もっとも内容は愚痴のようなものだ。

彼がラミアス技術少佐と結婚し、夫婦仲は非常に良好であるが如何せん彼も男である。女の気持ちがわからないとき、こうして聞きに来るのだ。

ただ、リディアに結婚した女性の気持ちがわかるものではない。

 

彼女は結婚していないのだから。

 

 

『そんな事か、直接言えば良いだろ?』

 

「そこを何とか、階級で捻じ伏せてさ。」

 

呆れ顔だ。

 

『それに、私に子供の面倒を見て欲しいと?育てた事も、ましてや今後できる訳もない者なのに、そんな事出来るとでも?』

 

彼女に子供は居ない、それどころか恋人すらも。彼女は顔は良く正直美しい類の女性だろう、だが彼女は自分に構うなど時間の無駄だと言って断り続け、40も半ばである。

それに、彼女に子供が出来ることは未来永劫訪れない。

 

パイロットとして、数々の戦いを経験してきた彼女の肉体は、戦闘と言うものによって蝕まれ、子供を作る機能を失っていた。

医師からそれを言われたとき、彼女は取り乱すことなくいずれはそうなる事を知っていたかのように、達観していたという。

 

『私が子を成せないから、そのかわりか?心配しなくて良いさ、自分で選んだ道だ私が一番理解している。』

 

そう言うと席を立ち、窓を見つめる。

 

『もう時間だろ?行かなくていいのか?』

 

「あぁ、お前も身体気をつけろよ。」

 

フラガが出る、窓を眺める彼女の肩には少将の階級章が煌めいていた。彼女が見つめる先は庭か、はたまた未来か。

 

 

 

リディア・パヴリチェンコ

 

 

CE43年11月4日〜CE122年12月31日

享年79歳 

 

最終階級中将(常設軍において最高位)

 

 

CE43年当時の大西洋連邦保有のL1コロニー郡の一画で生をうける。

その後すくすくと成長し、小中とコーディネーター顔負けの成績で主席卒業。

CE59年卒業後、大西洋連邦の士官学校へと入学する。

 

教官等から神童と言われるほどの成績を残し、その類まれな身体能力と動体視力からMAパイロット候補生コースへと進む。

MAの適正は教官等の見立て以上のものとなり、座学に至っては既に教えることすらなくなる程であり、更に言えば未だ研究の余地ありとされていたMAの運用方の論文を執筆するなど、その才能は多岐に渡った。

 

士官学校後期になり、宇宙空間での模擬戦等は教官を置いて行くほどの実力を示すこととなり、このときから大西洋連邦最高のパイロットとして名を馳せるようになる。

 

候補生でありながらも実戦に参加していた姿から、〘殺戮者〙等陰で言われていたようであるが、真っ直ぐな姿勢を見せることにより次第に周囲から一目置かれた存在へと至っていく。

 

そんな中彼女の乗機であるメビウス・ゼロは、彼女の戦闘機動に追従出来なくなる、そこでかのマイケル・スパロウと交流を持った。

 

なお余談であるがこの時、マイケル・スパロウは彼女を実験体にしたのでは等という伝説があるが、それは間違いであるとここに記す。

 

 

その後、主席で卒業し第2艦隊へと配属となる。

ユーラシア連邦との模擬戦のおり、MA隊一個師団相当を一人で相手取り、撃墜判定をもぎ取った記録は今尚破られていない。

 

その後その実力からプラント駐留艦隊へと配置転換される。

プラントによる宣戦布告宣言の2ヶ月ほど前になると、M粒子研究所内のMSテストパイロットに選抜される。この時、階級は大尉であった。

 

プラントの宣戦布告後、ミノフスキー粒子技術実験艦隊へと転属となる。

世界樹攻防戦のおり、数多くのMS及び艦艇の撃破ないし撃沈する。

 

世界樹攻防戦での功績から少佐へと昇進する。

実験艦隊は、規模が拡大され第13独立機動艦隊として活動を開始する。

 

数々の戦線を転戦し、大戦中に撃破した数はプラント軍の部隊に対して5%分であったという。

 

戦後、地球連邦軍設立に伴い軍の統合計画の作成や、各地域を周り連携を強化するように取り組む。

60歳で退役し、当時の常設軍の最高官位である中将で退役する。

 

退役後、政治活動を行い議会への選挙へと立候補し、アズラエル閥内でのストッパーとして、常に冷静な判断で物事を導く。

 

75歳で政治の世界から足を洗い、後進の育成のためニュータイプ能力に悩む者たちの学校を設立。

享年79

 

 

彼女の戦闘能力

 

パイロットとしての技量は他の追従を許すことなく、不動の存在として現在でもその戦闘機動は教科書に乗る程である。

また、現在パイロット候補生やパイロットが行うシミューレターにある特別コース、それのA・RというAIと唯一互角に渡り合い相打ちとなったパイロットでもある。

 

なおA・Rは通常パイロットが出現後数秒後には撃破される程度には、強いもので並のパイロットでは認識すら出来ない。

 

同じくエースであり、ナンバー2とすら言われたコゼット・スパロウですら10分が限界であった。

もっともCRDパイロット支援システムは、人間の負荷を顧みなければ、5分ほど持ち堪えることが出来る。

 

彼女曰く、もっと反応速度が早ければ相打ちにならなかったのに、という事だ。

 

 

 

家族構成

 

父母弟との四人家族であったが、高負荷での戦闘のしすぎにより彼女には子供を産めるような身体ではなくなっていた。

そのため、彼女は一切の交際関係を持つことなく生涯独身を貫いた…筈である。

 

噂ではあるが、彼女はバイ・セクシャルであった可能性があり、女性との間に何らかの手段により子を設けたというものもある。

もっとも、もしそれが可能であるのなら革命的な遺伝子技術であるが、出来る人間が当時、まだ存在していなかった筈である。

 

しかしながら、もしも噂通りであるならば恐らくはマイケル・スパロウか、それに近しいもの達によって作り出された可能性はある。

 

なお、彼女が35歳の時にそのような論文を発表したギルバート・デュランダルなる、遺伝子工学の学者がいた事は確かである。

 

 

 

搭乗機

 

リディア専用メビウス・ゼロ

 

αガンダム

 

新造戦艦アーガマ(UCネェル・アーガマ準拠)

 

 

 



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キラ・ヤマト

オギャーオギャーと言う泣き声が部屋に響き渡り、一人の青年が赤ん坊を抱えてあやす。

いったい何故泣き止まないのか、全然わからない…

 

『ラクス、助けて。この子泣き止まないんだ!』

 

焦りを覚え助けを求める、ああ子供って全然わからない。どうして、こんなに泣くのだろう。

ラクスが直様飛んで来て、抱っこをすると直ぐに泣き止んだ。

 

「ふふ、キラ。あなたの事誰だかわからないみたい、昨日帰ってきたばかりでいつも家に居ないものね。」

 

『ラクス…ごめんいつも』  

 

フンッと言って後ろを向く彼女。

彼女と結婚して早、5年。子宝にも恵まれて、家族として理想的なものを目指したつもりだった。

それでも、僕自身の仕事。軍人として、パイロットとしての仕事により、中々帰ってくることが出来ない。  

 

勿論最初は彼女も解っていてくれていた、でも次第に状況が変わっていく。

戦争も終わって、大規模な紛争も一段落してきたとき、軍縮が始まった。

 

軍の再統合とでも言うべき、大きな事業。僕はその時、退役する筈だった。だけれども、友人たちから辞めないでくれと言われ断りきれずに、僕はそれを了承してしまった。

彼女はそれに怒った、当時妊娠中だったこともあって気が立っていた事もあるのだけれど、二人で決めたことを破った僕を罵った。

 

そこから夫婦仲は次第に悪くなっていく、今ではこうして嫌味を言われる毎日だ。それでも彼女は、僕の事を心配してか帰ってくると、最初に体調を聞かれる。

 

そんな日々が続いていたとき、休日ふと、バーに寄り道をした。こんな所にあっただろうか?

何となく立ち寄ったところで、少しだけ休憩がてら一杯頼んだ。

 

「私にも同じものを。」

 

横に聞いたことがある女性の声がした

 

『フレイ・アルスター?』

 

「お久しぶりね、随分酷い顔じゃない。」

 

フレイは、婚約通りにサイと結婚した。だけど、何故こんな所に来たのか、サイに対する愚痴を僕に言ってきた。

要約すれば、サイが自分に構ってくれないだとか、夜も共にしたことが無いだとかだ。ちょっと待った、もう10年は経つのに未だにそこまで到達していないのか?

 

グチグチと互いに不満を言い合っていた、ようなのだ…が気が付くとキングサイズのベッドで二人で、しかも裸で眠っていた。

あの後いったい何が…

 

「キラ…昨日はありがとう♡」

 

何故だろう冷や汗が止まらない。

 

 

 

 

キラ・ヤマト

 

誕生日

CE55年5月18日

 

性別

 

最終階級少佐

 

享年119歳

 

CE55年5月18日に同地にてカガリ・ヒビキとともに誕生した。それを本人達が知ったのは戦後、ラウル・クルーゼによる二人への独白であった。

 

S2型インフルエンザが猛威を振るい、人々の反コーディネイター感情が高まっていた同時代にG.A.R.M. R&Dがブルーコスモスのテロに遭い、情報を事前察知していたヴィア・ヒビキの手によりカガリとともに彼女の妹であるカリダ達ヤマト夫妻に引き取られる

 

その後は月面都市コペルニクスに家族で移住し、キラはCE61年に同地に留学していたアスラン・ザラと出会う。

そしてC.E,68年には戦争機運が高まる世界情勢の悪化からヤマト夫妻とともにオーブ連合首長国のコロニー・ヘリオポリスへと移り住んだ。

 

CE71年1月ヘリオポリスがザフトの軍事行動によって崩壊すると、当時に地球連合軍がモルゲンレーテに対し発注していたアークエンジェルとG兵器通称ガンダムストライクのパイロットとして、戦闘へと参加する。

 

その後地球連合勢力圏へと辿り着く為に、地球へ降下するも各地を転戦。

後に地球連合軍のエースの一人となる。

 

終結後、アグレッサーとして各基地を飛び回る。また、ニュータイプと唯一張り合えた、数少ないコーディネイターであった。

 

 

実生活では、当時差別的な扱いを受けていた元プラント在住者の代表であるシーゲル・クラインの娘ラクス・クラインと親密となり、後年入籍する。

 

二児の父親となるも夫婦仲は、それほど良好ではなかったようだ。

また、この時期一度だけホテルでの密会が確認されているが、当時の資料が何者かの手によって破棄されており、詳細は未だ闇の中である。

 

40代となった後に軍を退役し、ラクス・クラインと孤児院を経営する傍ら、一流のプログラマーとして活動を開始する。

当時のソフトウェアの欠点を改善するようなものを開発し、それに対して特許を取得しており、孤児院の収入はそこから8割捻出されていたという。

 

 



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シン・アスカ

「おーい、シン今度こそ勝ってくれよ。俺たちお前に賭けてんだからさ。このままじゃ、スカンピンになっちまうよ。」

 

『俺たちで賭けるからだろ!』

 

まったく、どうしてこうあいつは直ぐに賭けを始めようとするんだ。教官連中に知られたらどうなるか…俺は庇えないぞ。

 

『ステラ、今日こそは勝つ!』

 

俺はMSでの組手を行っていた、相手はステラ・ルーシェ。皆の言う不思議ちゃん、二重人格者だとか呼ばれている彼女。

座学ではいつも上の空で、何を考えているのかさっぱりわからない。だが、MSに搭乗すれば俺たち同期の中でも一番で、レイよりも遥かに強い。

俺が勝てるかどうかでは賭けをするのは、別に良いさ。だけど、これは俺の未来を賭けた戦いなんだ!

 

そう、それは数週間前。俺は、俺はステラに告白した。好きですと、付き合ってくださいと真っ向から。

いつもふわふわしてるステラは、そのときあることを言ったんだ。

 

「私より強い人となら付き合ってもいいよ。」と

つまりだ、今連戦連敗中の俺は何がなんでも諦めきれないから、こうやって模擬戦をやってる時にいつも挑戦してるわけだ…誰に説明してるんだか。

そして、今日もまた土を付けられる…心が折れそうだ。

 

 

 

〈4年後〉

 

そんな事があった。今は訓練では当たらない、何より配属先が違うのだ儚き恋であった。

そう思うのも束の間、戦後長らく行われなかった軍事演習が行われる事となった。

 

俺は攻撃側、そして彼女は守備側。宇宙要塞の攻略。

バランスブレイカーなあの方は戦闘に参加することはない。それによって、戦力に均衡が保たれた。

 

演習であるから勿論無誘導ミサイルが発射されるような事もない、ビームもセンサーに引っ掛かるようにされたモードでロックされている。

もしかすると、これが最後のチャンスかもしれないと一念発起した。

 

迫りくるは黒い機体、黒い稲妻と呼ばれる彼女の部隊。俺は最後の願いと共に突撃した。

 

 

 

 

シン・アスカ

 

 

誕生日

 

CE57年9月1日

 

享年64歳

 

最終階級中佐

 

オーブで研究者の両親の間に産まれる、すくすくと成長し国立の小中一貫校へと入学。

オーブ本土が戦火に巻き込まれなかったため、先の大戦で家族を失ったりなどはしておらず、妹さんであるマユ・アスカを含めた四人家族である。

 

戦後夢であったMSパイロットになるべく、新設された連邦軍へと入隊希望し、好成績の元入学する。

入学後、後に名を残すであろう人物たちと共に鍛錬の日々を送る。

 

ニュータイプに対する執着心が発現したのもこの頃だと思われ、後に対ファンネル戦闘法を確立する。

 

パイロットの腕としては上の中程度であり、激昂しやすい性格であったようで、40代の頃上司と折り合いがつかず予備役に回されたのはそれが原因と言われている。

 

また、ステラ・ルーシェ予備役少佐と結婚をし、二児の父となった。

しかし、その後ルナマリア・ホークとの間にも1児の子を儲けるなど、節操がない人物であったようだ。(一節には当時未婚であったルナマリア・ホークが彼を襲ったと言われている)

 

予備役編入後、民間の船団所属の小型MS隊へと所属し、突発的な海賊行為を行う者たちと戦闘を行うなど、腕は落ちなかった。

 

夜の生活がたたったように64歳の年齢で亡くなるも、終始彼は笑顔の絶えないものであった。

 



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コゼット・スパロウ

『よしよ〜し、良い子ですねぇ。さ、オネムの時間ですよ〜。』

 

あぁなんて幸せな時間なんだろうか、こうやって子供も産まれて、静かに暮らせるなんて…あの時は考えられなかった。

明日はこの子の誕生日、あの人が帰ってくる筈なんだけど、あっ来たきた。

 

「ただいまぁ〜」

 

帰ってきた、

 

『お帰りなさい、先にお風呂にして。プレゼントは?』

 

「ちゃんとあるよ。」

 

ニコルは、私と結婚したあと軍を退役して研究所で働く事になった。私は産後の育休でこの子が3歳になるまでは、偶にシミュレーターでの模擬戦や受講をすれば良い事になっている。

 

『美味しい?』 

 

「ええ、とても。そう言えばお義父さん達はまだ帰ってきてないのですか?」

 

『確か今日は二人で狩りに出掛けて来る、とか言ってたから今日中には帰ってこないわよ。』

 

「また…ですか。本当にいつの時代に生きているのか、解らなくなりますね。もっとも、鹿が増えすぎるのを抑えて頂いているので、文句も言えませんが。」

 

研究所の博士だとか、父に近い世代の人達はとにかく活発的だ。コーディネイター顔負けの身体能力だとか、あとは根性でなんとかしちゃう人だとか、学者とは思えない人たちばかり。

 

食事の後、二人でソファーに座ってテレビを見るすると彼が言い出した。

 

「コゼット、もうそろそろ軍を抜けても良いんじゃないかい?もう、争いが途絶えて5年。この子の教育上、やはり母親が近くにいた方が良いと僕は思うんだ。」

 

『そうね…でも、後5年はやらなくちゃならないと思うの。だってそうでしょ?未だに世界で燻っているものを、今私達の世代が消さなくちゃ、あの子が大人になったとき、また争いが起こるかもしれない。それを黙って見たくないの。』

 

それを聞くと彼は黙って私の手を握る。伝わって来るのは、私が危険な目に合うかも知れないという恐怖と心配する心。

そして、私の変りに自分が軍に残っていればという後悔だ。

 

『ニコル、大丈夫。私は絶対に死んだりしない、絶対に帰ってくる。だからね、後5年私のワガママに付き合って?』

 

眼と眼が合う、自然と顔を寄せ合い口づけをする。

あぁ、今日父さん達が帰って来なくて、本当に良かった。

私達は求め合う、温もりを肌を寄せ合い互いに互いを確かめるように。

 

 

 

 

コゼット・スパロウ

 

誕生日 CE55年7月3日

 

 

性別 女

 

享年107歳

 

最終階級少佐

 

 

CE55年にマイケル・スパロウの長女として生を受ける。父親であるマイケルは、幼少期から彼女と接する時間をあまり設けていなかったため、彼女は教育のその殆どを母親であるアイナ・スパロウの元、成長する。

そのため、父親との軋轢は酷いものがあり、まるで他人のように接していた時期がある程である。

 

父、母、両名からの遺伝であろうか頭脳明晰、運動神経も良好で学校では頭脳だけならコーディネイターすら置いて行くほどの成績を残す。

カレッジ入学後、ロボット工学の分野で目覚ましい成績を残すも、直後にコロニーが破壊され戦争へと身を投じる。

 

パイロット適正が高かったのか、その操縦テクニックはリディア・パヴリチェンコ当時大佐に勝るとも劣らないものとなる。

撃墜数は連合内で、3位であった。

 

戦後もパイロットとして第一線で戦う傍ら、嘗ての敵であったニコル・アマルフィ当時と結婚。

三児の母となる。

第一線に留まるために階級を少佐以上に上げなかった人物で、第一子産後6年間軍務を行い、その後退役する。

 

父親の伝を頼り、テストパイロットとして様々な機体のテストを行う職に付く。

娘たちはすくすくと成長し、彼女は幸せな日々を送る。

 

彼女が98歳のころ、父親であるマイケルスパロウが理論を発表し、設計していたワープ装置の除幕式に故人である父の変りに参列。その際旧友との再開を喜ぶ。

 

107歳という年齢でこの世を去る。

 




今までご愛読ありがとうございました。

今回でこの作品は終わりとなります。

次回作に関しては未だ未定でありますが、一応2つのアイデアがあります。


原作 無職転生 

クロス ダークソウルorターミネーター


原作 オリジナル 
  
架空戦記?大日本帝国帝国もの


のどちらかです。

気長にお待ち下さい。


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ああ、我らの勇者よ永遠なれ

ちょろっと


棺が運ばれていく、それを見守る人々の目には涙がこぼれ多くの参列者によって、道は溢れかえり何処もかしこも人ばかり。

そればかりか、テレビでもその映像は流れ多くの人達が悲しみの中、その棺は遺言通り宇宙へと旅立っていく。

 

彼の名は ムルタ・アズラエル 地球連邦第6代首相であり、コーディネイター、ナチュラル、ニュータイプ。

全ての人種に対して、別け隔てなく接した漢だった。

 

彼を一言で表すのなら、勇者 この一言に尽きる。

 

彼は自らの給与の凡そ9割を世界の発展の為に使い、貧困者の救済やスラムの子供への教育へと、注ぎ込まれた。

 

時には強引な手で、地域の争いへと介入し力でねじ伏せるなど、行うがそれでも世界は着実に平和へと向かっていっていた。

 

嘗てはブルーコスモスの盟主として先頭に立ち、過激な者たちを抑え込む安全装置として、自ら手腕を奮ったこともある。

 

そんな彼の最後は、突如として訪れた。死因は急性心筋梗塞、激務が祟ったのだろう。妻と娘は急な死に崩れ落ちた。

 

彼の死後アズラエル姓は途絶える事となる。娘には別の名字を、名乗らせようとしていたからだ。

自らの汚れ仕事を継がせないために、自らの道を進んで欲しいと願いを込めて。

 

彼の葬儀には、かのマイケル・スパロウも出席した。柄になく、涙を浮かばせていたとも、普段と変わりなくサングラスをかけていたとも言われている。

 

 

 

 

そして…マイケル・スパロウもまた死ぬときが訪れる。

マイケル・スパロウ、かれの業績は非常に多く、その論文の数は多く、オイラーに勝るとも劣らない数であったと言われている。

ジャンルを問わないその万能性は、他の天才と呼ばれていた者たちよりも、遥かに優れていたと言う。

 

だが、人格と言うものに一つの欠陥を抱えていた。少年期、青年期には一言『何故理解できない、お前達はミジンコか?』等、人間を人間として扱わない言動が見られていた。

 

そんな彼は恋人が出来ると、まるで人が変わったように愛想が良くなったという。(もっとも中身が完全に変わったわけではない)

 

晩年の彼は脳腫瘍に悩まされ、最後は言葉すら発せなくなる程になった。彼の癌細胞はどんな薬も効果がなく、次々と転移していき文字通り、身体を蝕んだ。

彼の死因は餓死、苦しみもがいた末の決断。

 

最後の言葉は『not returning』帰らないという言葉であった。

死後彼の肉体は遺言通りに小分けにされ、世界の人体構造学者に贈られた。一部のみ、墓へと埋葬される。

 

彼の死後、最初のワープゲートにはスパロウ・ゲートという名がつけられた。

 




これにて終了


最新作投稿しました。
最新作の名称は
Mercenary Imperial Japan
です。


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