シャンフロ恋愛異聞譚 (戯れ)
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ヒロインちゃんが胸部装甲にラーの翼神竜―球体形を2積みしているってマ?

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ……!
Twitterで、ヒロインちゃんが胸部装甲にラーの翼神竜―球体形を2積みしているとの爆弾が投下されて、休日を迎えた俺は4時間掛けて1万字のサンラク×ヒロインちゃん物を書いていた……!何が起こったのか(ry

勢いで書いたものなので推敲も何もしていない
それでもおk?



追記
ドチャクソ誤字だらけの状態は修正いたしました。報告を下さった方、ありがとうございます
勢い最重点で書いていたとは言え、ヒロインちゃんの名前間違えてたのは我ながらショックだったよ……

追記2
誤字報告受けて修正したけど、レジストの効果って展開と逆じゃね―か
元々はタブーと間違えてたし、タブーの印象がアクセルの効果とレジストの名前でごっちゃになってましたね……
えー、本文に出てくる飲料は斎賀印の極めて特殊な飲料でレジストの効果が逆転したということで文章を修正しました
あと改めて読み直してちょいちょい手直ししました。ちょっとでもマシになってれば幸いです……



「こ、こんにちは、陽務君! いい天気ですね!」

 

「あ、斎賀さん。こんにちは」

 

 いつの日かぶりに、普段使いしているコンビニで斎賀さんとエンカウントする。

 こうしてコンビニで斎賀さんと偶然出会うのも、随分と久しぶりな気がする。具体的には丸三年くらい時間が経っているような……いやそこまでじゃねーよ、なんでそんな気がするんだ?

 

「斎賀さんは何しにコンビニまで?」

 

「え、それはもちろん陽務君に会……いえ!!! そうです!!! 気分転換のお散歩です!!!」

 

「え、うん」

 

 何故にただの散歩に対してそこまで全力なのかはわからないが……いや、何気ないことにも全力で取り組むその意識の高さこそが、シャンフロにおいてトッププレイヤー足り得る理由のひとつなのかもしれない。

 さすがはシャンフロで最高火力の称号を獲得したプレイヤー、斎賀玲。

 さり気なく人としての格の違いを見せつけられた気分だぜ。

 

「日差しも落ち着いて、随分と過ごしやすくなってきたよね」

 

「はい、今が一番過ごしやすい時季、という気がします」

 

 のんべんだらりと、散歩の一貫なのかごく自然に俺の隣を歩く斎賀さんと談笑しつつ、新たに買い込んだエナドリの重みを感じながら帰路を歩く。

 

「そういや、今日はゲリラ豪雨が降るとか予報で言ってたっけ。こんな快晴の中いきなり雨が降るとか信じられ」ゴロゴロ……「嘘でしょ?」

 

 不穏な音を響かせる空を仰ぎ見れば、そこには結構な速度で流れてくる分厚い雲が見えて……

 

 直後、バケツを引っくり返したような雷雨が降り注いだ。

 

「うぇ!?」

「ひぁ!?」

 

 あまりに予想外。俺の発言がフラグになったかのようなタイミングで、尋常でない土砂降りが襲いかかってくる。

 

「ちょ、ま、マジで? こんな事ある? と、とりあえず斎賀さん、どっか適当に雨宿りでき……いや、ここからなら俺ん家が一番確実か。とりあえず俺ん家まで案内するから! 止むまで家で雨宿りしていって!」

 

「へあ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 ◇

 

「ふいー、いや参ったね。まさか本当に降られるとは……大丈夫? 斎賀さん」

 

「ひゃい!!! わらひは元気れす!!!」

 

「え、はい。それは何よりです」

 

 バグり方がやや酷目な斎賀さんを尻目に、自宅へと上がる。

 

「ただいまー……あれ、誰もいないのか。まぁ割といつもの事だけど」

 

 母は森、父は海、妹はバイトだろう。心配すべきは海に出ているであろう父がゲリラ豪雨の被害にあっていないかどうかだが……いや、「これくらい海が荒れてるほうが引きがいいもんだ!」とか言って大物釣り上げてきそうな気がするな。まぁ、筋金入りの釣りキチだけあって水泳力もそこそこあるから、仮に海に放り出されても溺れることはないでしょ。ウチの父に限って。

 

「新品のタオルとかどこにおいてあったかな……ごめん、ちょっと待っててくれる? 今なにか拭くもの……」

 

「い、いえ! そんな! ご迷惑おかけするわけにはいきませんから! ……家に電話して、迎えを寄越してもらいますので、どうかお構いなく……」

 

「そう? 別にそれくらい気にしなくてもいいんだけど……」

 

 流石に、雨に濡れた知人をそのままにしておくつもりはない。風邪でもひかれたら心も痛むし。

 目の前にいるのが仮に外道共であってもまぁとりあえず世話は焼くだろう。隙あらば煽り合う関係とはいえ、リアル健康事情に響くような悪質な行為をする気はない。やっていいこと悪い事の区別はちゃんとつけないとね。

 ましてや、なんやかんや仲良くしている、普通に友人と呼んでもいい間柄である斎賀さん相手ならなおさらだ。

 

 とはいえ、他人に世話になりすぎることの後ろめたさというのも理解できる。

 斎賀家のパゥワーを使えばなんとかなるという彼女の言を信じるとしよう。

 

 

(は、早くこの場から離れなければ……!)

 

 まさか、こんなにも突然に陽務君の家に上がることになるとは……!

 余りにも急であったがために、心の準備も何もできてない。今にも心臓が爆発しそうな緊張感……千載一遇のチャンスではあるが、無闇にこの機会に飛びついてしまえば待っているのは……

 

(死……!!!)

 

 いや、その理屈はおかしい。

 と突っ込む理性も既に斎賀玲にはない。

 

震える手を酷使して、携帯端末を取り出し家の番号を呼び出す。

 

『はい、斎賀ですが』

 

「せ、せせせ仙姉さんですか?」

 

『……玲? 一体どうしたのですか?』

 

「で、でで、でかけた先、で、あ、雨に降られて、しまって……その、今は、と、もだちの家に、上がらせて、貰ったのですが……か、体も濡れてしまったので、車を一台……」

 

『………………ふむ』

 

「あ、あの。せ、仙姉さん……?」

 

『そのお友達というのは、以前お招きした玲の懸想する相手ですか?』

 

「へけっっっっっ!?!?!?!?!?」

 

『成程』

 

「せ、仙姉さん? 一体何を考えて……」

 

『玲。実はたった今、車を運転できるものが全員出払いました』

 

「仙姉さん!?」

 

『そのため、今迎えに出せるものが居ません。心苦しくはありますが、そのお友達のお世話になりなさい。体調を崩しては一大事ですからね』

 

「ちょ」

 

『それと、私からの『贈り物』、使うならば今が良いでしょう。改めて言っておきますよ、玲。……既成事実です』

 

「まっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 ガチャ。ツー、ツー、ツー……。

 

 

「あの、斎賀さん?」

 

「………………その、運転の出来る者が、折り悪く全員出払っているそうで」

 

「あー、そうなの?」

 

「お、お世話になっても、よろしいでしょうか……?」

 

 

 ~~……♪

 

「あれ」

 

 映像で見ているときは気にならないけど音声だけで聞くとちょっと残念さが際立つよね、と言われた永遠様ボイスの着信音を聞いて首を傾げる。

 この曲を設定しているのは確か……

 

「お兄ちゃん? なんだろう、珍しい……はい、もしもし?」

 

『あぁ、瑠美か。突然で悪いんだが、お前の服で借りていいやつってあるか?』

 

「は? 何、お兄ちゃん女装にでも目覚めたの? それなら私が完璧にコーディネートしたげよっか!?」

 

『馬鹿違うわそんなわけねーだろ俺じゃねーよそしてなんでちょっと乗り気なんだよ……友達に貸したいんだよ。ゲリラ豪雨に降られちまって……』

 

「え、お兄ちゃんの友達に女装癖がある人いるの?」

 

『んなわけ………………いや、いま家にいるのは普通に女子だよ。つか、いくらそのへん無頓着な俺でも妹の服男に着せるつもりはねーよ』

 

「女装癖のある友達は居るんだ……」

 

『不本意ながら二人ほど心当たりがある』※片方は風評被害

 

「へー……まぁいいや、どうでも。で、貸していい服だっけ。……お兄ちゃんが私の部屋漁るの?」

 

『いやまぁ不快な気持ちもわかるが……こっちもちょっと緊急事態なんだよ。女子に風邪引かせるわけにもいかんでしょ』

 

「うーん……あ、じゃあその女友達さんに代わってもらえる?」

 

『ん? あぁ、そうか。俺入るよか同性の方がまだマシか……わかった。……ごめん斎賀さん、妹と直接話してもらっていい?』

 

 ……

 

『は、はひれましれ! さいがれいともうひまひゅ!!』

 

 やっべ何だこの面白い人。

 

「……あーはい、初めまして、斎賀さん。陽務楽郎の妹の瑠美です」

 

『ひゃ、ひゃい。あ、あの、陽務君にはいつもお世話になっておりまして……』

 

「いえいえ、一先ずそういった挨拶はまた今度ゆっくりということで。雨に降られて大変だったんですよね? 気の利かない兄のことですから、シャワーもまだなのでは?」

 

『そ、そんな! そこまでお世話になるわけには……』

 

「まぁまぁまぁ、別にそんなに気にしなくていいですから。こちらのおもてなし不足で風邪を引かせてしまうほうが心苦しいですし、どうか遠慮なく兄に甘えてください」

 

『ひ、陽務君に、甘え…………!?!?』

 

「………………んふ」

 

 おっといけない、心の声がちょっと漏れてしまった。

 今までのやり取りだけでも、声からしておそらくはかなりの美少女であろうこの人物が、兄に想いを寄せているだろうことは丸わかりだ。

 けどまぁ、あの脳みそをゲームに侵されている愚兄は何にも気づいてないんだろうなぁ……。

 それが、突然の豪雨で体の濡れた状態で家に上がり込むことに……こんな面白い状況はない。

 他人の恋路は応援すべしという永遠様からのお告げもあるし……うん、ここは可能な限り、緊張しいなこの年上の少女のサポートをしてあげるとしよう。

 

「一先ず、斎賀さんのスリーサイズを教えてもらえますか?」

 

『ふぇっ!?!?』

 

「数値次第では、着れる服も限られてきてしまうので。大丈夫です、私口は硬いですし、兄にも絶対言いませんから!」

 

『そ、その……』

 

 コショコショと、おそらくは兄に聞かれるのを恐れてだろう、こっそりと告げられた数値は……かなりのパラメータだった。もし告げられた数値がなんの嘘もないのなら、才覚があれば即日モデルになれてもおかしくない……いやむしろ大きすぎて逆にモデルになれないレベルである。読モとはいえきっちりモデル業をやっている私が言うのだから間違いない。

 

 ていうか……

 

「斎賀さん、ここで残念なお知らせがあります」

 

『は、はい?』

 

「斎賀さんにお貸し出来る服がありません」

 

『え?』

 

「ウェストはそう変わらないようなので下はスカート類を選べばどうにかなるでしょうが……上はちょっと。どんな生活をしたらそんなおっきなモノに育つんですか?」

 

『え、そ、それは、その……』

 

「おっと、今はそんなこと言ってる場合じゃありませんでしたね。まぁ上に関してはちょっと今思いついたことがあるので、置いておいてください。それで、スカートなんですけれど……」

 

 ※少女説明中

 

「見つかったようで何よりです」

 

『本当に、何から何まで申し訳……』

 

「大丈夫ですって。気になるようでしたら、今度兄にご飯の一つでも作ってあげてください。浮いたお昼代で今度は私が兄になにか奢ってもらうので」

 

『ひ、陽務君に、お弁当……!?』

 

「そのあたりは後の楽しみということで……ちなみにですが」

 

『はい?』

 

「そのスカート、既に流行が去ってしまってフリーマーケットに売る予定のものなので、折角ですからそのまま差し上げます」

 

『え、いえそんな! きちんとお洗濯して返却を……』

 

「後で返す品、と思ったら気を遣ってしまうでしょう? だから大丈夫です。どうしても気になるのでしたら、兄へのお弁当一週間で手を打ちましょう。その分兄から私への奢りを豪華にさせる事ができるので、私はそれで全然構いませんよ?」

 

『一週間、毎日……!?』

 

「これで下については解決ということで。あとは上なんですが……」

 

 

 

 

 

 

「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーー………………」

 

 今私は、陽務君の家のお風呂に居る。

 

 もう一度言おう。

 

 今私は、陽務君の、家の、お風呂に……居る。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー………………」

 

 深呼吸してもバクバクと鳴る心臓が一向に収まる気配はない。

 いや、別に何も特別なことなどなにもない。

 単に、ゲリラ豪雨に降られて雨に濡れたから、ただの緊急避難として家で過ごすことを提案してくれた。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 陽務君には、なんの下心もないだろう。

 だから私だって、ここから、もしも『何か』あったら、なんて期待はしていない。

 

 

 

 期待はしていない。

 

 

 

 けれど、ここは陽務君が普段から使っているお風呂場で、つまりはここで陽務君は衣服を脱いで、裸体を晒し、シャワーに打たれ……

 

「はっふっ!!!!!!!」

 

 脳裏をよぎった光景をブンブンと頭を振るって払い除ける。

 

「平常心……平常心です、玲」

 

 何度も何度も、自分自身に言い聞かせる。

 間違っても仙姉さんの言うような既成事実なんてものを目指してはいけない。

 陽務君はきっと、私の事を純粋なゲーム友達としてしか見ていないだろう。

 私の価値は、同じシャンフロをプレイする同志で、最大火力としての能力を持つ、よく役に立ってくれる知人。

 その現実に、少しだけ寂しさを感じてしまう気もするけれど、顔を合わせて会話をすることすら出来ていなかった以前に比べれば随分と前進している。

 欲を出し、一時の感情に流されて強引な手段に出て、全てをおじゃんにしてしまうわけにはいかないのだ。

 岩巻さんからは、もっと焦るべきだというアドバイスを受けてはいるが、即日押し倒せなんて言われてはいない。むしろそんなことはすべきではないと押し止められた。そんな極端なことを言っているのは私と血の繋がっている姉だけだ。

 

「平常心……平常心……」

 

 無茶を言うなと、己の心臓がロックバンドを思わせる抗議の音を奏でているが、それでも私はどうにか落ち着けと何度も言い聞かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーー………………」

 

 今、家で斎賀さんがシャワーを浴びている。

 

 もう一度言おう。

 

 今、家で、斎賀さんが、シャワーを、浴びている。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー………………」

 

 ゲリラ豪雨に端を発した今日の事件は、ふと冷静になってみるとかなりやばい状況ではないかと思う。

 学校において高嶺の花である斎賀さんを家に連れ込み、衣服を剥いてシャワーを浴びせている。

 悪意ある言葉のチョイスではあるが、実際それほど間違ってはいないのが困りどころだ。

 『付き合っているかも』疑惑であれだけ沸き立っていたクラス連中にこの事実が知られれば、吊し上げを素通りして極刑に直行しても何もおかしくはない。

 

 しかし、俺に一切の邪心はない。

 雨宿りするために自宅へと招いた。

 濡れたままでは風邪を引いてしまうので着替えを勧めた。

 冷えた体を温めるためにシャワーを浴びることを提案した。

 それらは全て、純粋に斎賀さんの体調を案じればこそだ。そこになんの下心もない。

 

 ………………いや、正直に言おう。

 

 なんの邪心も下心も、なかった(・・・・)

 

 改めて、少なくとも全校生徒が認める美少女である斎賀さんが、自宅でシャワーを浴びているという状況に、薪としてクソゲーにくべたはずの、俺の青春回路とでも言うべき思春期の少年特有の情動が激しく稼働しているのを感じる。

 もし。まさか。ひょっとして。

 

「いやいやいや」

 

 馬鹿な。

 斎賀さんと俺は、極めて純粋なゲーム友達だ。

 JGEにも一緒に行ったりしていることから、まぁ貴重な友人くらいの立ち位置には立てているんじゃね? というくらいの自負はある。

 とはいえ、だからといってそれがすぐさま恋愛につながるかと言えばそんなことはない。

 男と女で一緒にプレイしていて、ナイスなコンビネーションを披露できたからと言って、調子に乗って「リアルで会いません?」なんて言えば「ごめんなさい直結厨はちょっと……」と断られてフレ登録を抹消されることすらあり得る。

 それが人間関係というものだ。友人として仲良くなれたからと言って、じゃあ恋愛関係にまで発展するかと言えばそんなことはない。男女間であっても友情というのは成立するのだ。

 

「あの、シャワー、ありがとうございました……」

 

「ん、あぁ、どういたしま……」

 

 

 

 絶句。

 俺は、目の前に現れた光景を前に固まってしまっていた。

 

 下に履いているのは、瑠美から貸してもらったスカートである。

 しかし瑠美よ、なんでよりにも寄ってこんな膝上までしかない丈のミニスカートを貸し出したんだ。おかげで斎賀さんの健康的な太ももが半分くらい露出してしまっているじゃないか。

 

 そしてそれ以上にマズイのが上半身だ。

 サイズがないから、という理由で瑠美の服を借りることが出来なかった上に関しては、仕方がないので俺の持っている中から新品の白シャツを貸し出すことで応急処置とした。

 男物なので丈が足りないということはなかったが、大きすぎて若干ずり落ち気味で、上から覗き込めばその双丘の谷間が非常によく見えてしまう。

 しかも斎賀さん、肌着までぐっしょり濡れてしまったのだろう、現在は下着をつけておらず、心なし胸部体積が増加して……いや絶対気のせいじゃねぇよこれ嘘だろ斎賀さんにはキャストオフ機能が搭載されていた!? たたでさえ美少女だったというのに装甲解除で戦闘力が桁違いに増大している!?

 

 というか、その、下着をつけていないせいで胸部の双丘の頂点にそれぞれ小さな………………

 

 

 

 そこまで頭を駆け巡ったところで、ミラーボールに照らされる増殖したディプスロがSNF(サタデー・ナイト・フィーバー)のポーズで「「「「「Foooooooo!!!!!!」」」」」と叫んで居る光景が脳裏に過り、すん……とテンションが落ちる。

 

「さ、斎賀さん? とりあえず服が乾くまで適当に寛いでてくれる? あ、そう言えば乾燥機の使い方大丈夫だった?」

 

「あ、はい。特に問題なく……」

 

「それなら良かった。じゃあ、俺もシャワー浴びてくるから……」

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 思わず、斎賀さんを邪な目で見てしまったことに自己嫌悪。

 俺も所詮は思春期の少年ということなのだろうか……本能的な反応なのだから仕方ないと自己弁護したくもあるが、それでも自分に『ディプスロと同じ素養がある』という一点が思った以上に精神にダメージを刻んでいる。

 『こっちに来なよぉ……サンラク君ぅん?』 と手招きするディプスロの幻影を水晶巣崖に叩き込み、マブダチ達にミンチにして貰うことで心の平静を保ちながら、グッショリと濡れた衣服を脱ぎ捨てる。

 

「シャワー浴びて落ち着こ……」

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 やっぱり、下着まで外したのはまずかったでしょうか……。

 

 まだ秋口ということで薄着にしていたのがまずかったのか、先程の豪雨は下着まで侵食していた。

 だからシャワーを浴びる前に濡れた服一式を乾燥機にかけさせてもらい……そして、シャワーを終えた後で流石に下着は借りていなかったと気づいたのも後の祭り。まるで痴女のような格好で陽務君の前に出ることに。

 彼は何も言っていなかったけれど、少しばかりの逡巡の後にストンとテンションが落ちていた辺り、きっと碌でもない印象を与えてしまっていたのだろうと思う。

 

「やっちゃったなぁ……」

 

 もしこれで、「斎賀さんがそんな人だとは思わなかったよ」などと言われて絶縁を申し出られたらどうしよう。

 そんな不安が頭を過り、ぐるぐると嫌な想像ばかりが頭を占める中で……

 

「あ」

 

 ふと、その存在を思い出す。

 家を出る直前、「想い人のところに行くのですか? では、これを持ちなさい、玲」と仙姉さんから手渡された水筒。

 ちなみに、確かに陽務君に会えたらいいなーという思いを抱いて散歩に出はしたものの、特に約束をしていたわけではなかったので仙姉さんの推測はやや的はずれだったわけだが……ともかく。

 『もうひと押しの勇気が欲しいときに飲みなさい。グイッと』という言葉と共に渡されたこれには、嫌な予感しかしなかったので力を借りるつもりはなかったのだが……

 

「起死回生の一手となるならば……!!」

 

 仙姉さんから手渡された物品がそんな都合のいいものであるわけがないのに、どうしても現状を打破したいという思いに支配されて冷静な判断力を失っていた私は、中身もよく確認しないままにその液体を飲み干した。

 

「………………あれ」

 

 濃厚なカフェインの独特のエグミを孕んだ風味……それに、この舌を焼くような味わいは、まさかアルコー…………。

 

 そこで、私の意識はぷっつりと途切れた。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

 手早くシャワーを浴びてさっぱりとした俺は、斎賀さんを待たせている居間へと戻る。

 戻り際に乾燥機を確認してみれば、乾燥機が終わるまでもう一分となかった。正直あの状態の斎賀さんと長く一緒にいるのはちょっと色々マズイと思っていたところだったので、慌ただしくて悪いが彼女には早々に着替えてもらうことにしよう……。

 

 そんな思いを抱いて居間へと戻った俺が見たのは、床に倒れ伏す斎賀さんの姿だった。

 

「斎賀さん!?」

 

 慌てて駆け寄り状態を確認すれば、普段から血色のいい斎賀さんの顔が尋常でなく真っ赤に染まっている。

 すわ何かの病の前兆かと焦るが、そこで目の前に倒れている水筒の存在に気づく。

 やけに嗅ぎなれた覚えのあるその匂いに引かれてすんすんと嗅いでみれば……。

 

「……ライオット・ブラッド?」

 

 それも、このエグ味の強さからして恐らく、短時間ながら即効性と効力に定評のあるリボルブランタンだ。

 それに、何か他の匂いが……っていうかこれ間違いない。俺はロクに飲んだことはないけど、親父や母さんが嗜んでいたから知っている。アルコールだ。

 つまりこれはレジスト? だがライオット・ブラッドである以上は合法……馬鹿野郎未成年の飲酒はどうあがいても違法だよ!! なんでこんなものがここに!? ていうか斎賀さんこれ飲んだの!?

 

「うっ……」

 

「斎賀さん? 大丈夫?」

 

「は、れ……? 陽務君?」

 

「斎賀さん、とりあえず……これ、何?」

 

「それは……仙姉さんから……何かあったら、飲めと……」

 

 風雲斎賀城で出会ったあの人か……なんでこんなものを妹に預けたんだ?

 まぁ、そのへん詳しく聞くのは後にしよう。

 

ライオット・ブラッドスレで見たレジストの効果はアルコールの効能を無効化するという話だったが、酒のほうが特別なのか最近発売されたリボルブランタンが例外なのかそれともドリンク同士の相性なのか……ともかく、今の斎賀さんは深く酒に酔っているように見える。

この状態では、冷静な判断ってのは期待できそうにないし……。

 

「なんで、陽務君が、うちに……?」

 

「いや、ここ俺ん家……うん、とりあえず水を……」

 

「あぁ、わかったぁ……これは、夢、ですね?」

 

「違うよ!?」

 

 なにやらやばい目つきをした斎賀さんには、俺の言葉は届かないらしい。

 くすりと、妖艶な笑みを浮かべた斎賀さんはそっと手を俺に向けて伸ばして……

 

「のわっ!?」

 

 気づけば視界が旋転する。

 酔っぱらいとは思えない鋭い動きで投げられたのだと気づくのは、背中がソファーへと叩きつけられ、その上から斎賀さんに馬乗りになられたあとだった。

 

「さ、斎賀さん!? ちょ、何して……」

 

「玲」

 

「へ……」

 

「玲って、呼んでくらさい……この前は、そう呼んでくれたじゃないれすか……折角、二人きり……なんれすから」

 

「い、え?」

 

 言っている意味がわからない。

 レジストの影響なのか時々呂律の回らない言葉を吐きつつ、「私は不機嫌です」と主張するムッとした表情で見下ろしてくる斎賀さんを前に、逆らうという選択肢は思いつかなかった。

 

「れ、玲さん?」

 

「玲」

 

「…………玲」

 

「……はい、楽郎くん♪」

 

 表情が一転し、むふふとだらしのない笑みを浮かべながら、甘ったるい声で名を呼ばれる。

 まるで恋人のようなやり取りだ……という意識をどうにかこうにか振り払い、せめて俺だけでも正気にならなければと叱咤する。

 

「あの、玲さん」

 

「むー!」

 

「……玲」

 

「うふふ……なんですか、楽郎くん♪」

 

「その、玲は今ちょっと正気じゃないんだ……だから、な? 一旦水でも飲んで落ち着こう?」

 

「そんなことより楽郎くん、聞いてくらさい」

 

「お願いだから話を聞いて!?」

 

 そんな俺の願いも無視して、馬乗りになった斎賀さんはその上体を倒して……ガッチリと、俺の体に密着してきた。

 

「ん“っっっっっ!!!!」

 

 まつげの本数まで数えられそうな程に近い、視界いっぱいに広がった斎賀さんの顔とか。

 シャワーを浴びただけなのに、脳髄の奥をしびれさせるような匂いを醸し出す斎賀さんの体とか。

 蛇のように絡みつかれているせいでどうしようもなく感じてしまう、押し付けられた太ももや胸部の質量兵器の柔らかさとか。

 今まで意識して排除してきた、斎賀さんの女の子として要素が、俺の心を右ストレートで殴り飛ばす。

 

「はぁ……♪ 楽郎君の、体……うふふっ、思ってたより、がっしりしてます……♪ すぅ……」

 

「ちょ」

 

「楽郎君の、匂いぃ……♪ はぁ……ずっと、ずっとこうしたかった……♪」

 

「さ……れ、玲ちょ、すとっぷ……」

 

「ん……れろ♪」

 

「ひゃん!!!!」

 

 喉元を通った、熱く湿った、ざらついた感触に思わず女の子のような悲鳴を上げてしまう。

 己の許容限界を第二宇宙速度で吹き飛ばす出来事の連続に、視界はぐるぐると周りただでさえ破損していた判断力がゴリゴリと削られていくのを感じる。

 

「楽郎君の、あ、じ……んふふふぅ♪」

 

 

 

 

 

※これ以上はR-18になりそうなので自主規制※

 

 

 

 

 

 目の前に、土下座してる美少女がいる。

 ちょっと倒錯した趣味を持っている紳士諸君であればこの光景に滾る思いもあるのだろうが、極めて一般的な性癖しか持たない俺としては、純粋に心苦しいだけである。

 

「本当に……! この度は、本当に申し訳ありません……っ!!!」

 

「いや、その……」

 

「かくなるうえば腹掻っ捌いてお詫びを……!!!」

 

「いやいやいやいや、そんなことしなくていいから!? あーとにかく、難しいかもしれないけど、お互い落ちつこう? な? 土下座もしなくていいから」

 

「ぅぅぅぅぅぅぅ…………」

 

 ちらり、と顔だけ上げて視線を合わせる。

 そして、恥ずかしさからどちらともなく視線を外す。

 

「その、れ……あ、いや、斎賀さん」

 

「はぃ……」

 

「なんで、なんだ?」

 

「その、仙姉さんから貰ったあれを飲んでから、意識が朦朧として、その……」

 

「いや、そこじゃなくて……なんで、俺なんだ?」

 

 ことここに至っては、流石に自覚せざるを得ない。

 斎賀さんは、俺に対して好意的な感情を持っている。

 それも、ただの友人ではなく、明確に、男女としての特別な感情を。

 酒に酔っていたとはいえ、斎賀さんがなんの好意を抱いていない相手に対してあんな行為に及ぶような人物だとは思えないのだから。

 

 だが、俺は別に異性に好かれる方じゃない。

 というかそもそも、他人との交流に関してそれほど積極的な方じゃない。

 一応、それなりに社交性はある方だと自負しているが、新規に発掘したクソゲーでもあれば交友関係よりもそっちを優先するくらいには、自分で言うのも何だがまぁまぁ人でなしだ。

 

 そんな自分が、学校全体の憧れの的、良家のお嬢様で成績優秀スポーツ万能な完璧超人である斎賀さんから思いを向けられる理由がまるでわからない。

 

「………………きっかけは、ある雨の日のことでした。

 その時、私はとても憂鬱で。それは、他のみんなも変わりありませんでした。

 そんな中で……楽郎君、貴方だけは違ったんです。

 貴方は、本当に楽しそうに、満面の笑みを浮かべて、雨の中を走っていきました

 

 それから、貴方のことを目で追うようになりました。

 いつでもどこか憂鬱だった私には、いつもどこか楽しげな貴方の生き方が、とても鮮烈に写ったんです。

 ずっと憧れていて。いつまでも、見ていたくて。少しでも、近づきたくて。

 それで、ロックロールに足を運んでいるのを知って……この思いが恋なのだと、岩巻さんに教えてもらって。

 だから……」

 

 俺は、顔を覆っていた。

 全くの予想外。完全な不意打ち。

 まだレジストの影響が残っているのか、遠くを見るような瞳で、訥々と自らの心中を語る斎賀さん。

 今の今までこんな風にまっすぐ好意を向けられるというのは、少なくとも現実では初めての経験であり、らしくもなく耳まで真っ赤になっているであろうことを自覚する。

 

「……ごめんなさい」

 

「え?」

 

「迷惑ですよね、私なんか……」

 

「なんで!?」

 

 いやいやどう考えても『私なんか』じゃないでしょうに。

 

「なんでそんなに自信がないのさ……」

 

「そんなの……だって、こんな、恋愛下手な女なんて……らく……楽郎君の前では、不甲斐ない姿を見せてばかりで……」

 

 がっくりと項垂れる斎賀さんは、全身から『やってしまった』オーラを醸し出しており、今にも泣き出しそうな程に落ち込んでいた。

 それを見て、俺は――

 

「………………すぅ」

 

 深く深く、深呼吸をする。

 湧き上がる決意を、自らの内に根付かせるように。

 

 

 

「斎賀さん」

 

「へ、あ、はい! なんでしょうか」

 

「俺は、何かとクソゲーにばかりかまける人でなしで、今までも斎賀さんの気持ちにかけらも気付かずにいた碌でもないクソ野郎だ」

 

「そ、そんな……楽郎君は、何も」

「けど」

 

「そんな俺でも、そうして、まっすぐに好意を向けて貰えるのは、嬉しい」

 

「………………へ」

 

「……斎賀さんさえ、よければ……これからも、俺と一緒にいて欲しい。今までとは、違う形で」

 

「そ、れは……!」

 

 

 

「斎賀玲さん。俺と、付き合ってください」

 

 

 

「………………………………はぃ」

 

 

 

 絞り出すように。

 掠れるような声で。

 けれど、確かに。

 

 彼女は、了承してくれた。

 

 なんとなく気恥ずかしくなった俺は恥じらいで火照る体を誤魔化すように、すっと片手を差し出す。

 

「その、これからよろしくおねがいします……楽郎、君」

 

「あぁ、こちらこそ……玲」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっふっっっっっ!!!!!!!!!!」

 

「斎賀さん!?」

 

 俺と斎賀さんの交際は。

 幸せの許容限界を超えた彼女の鼻から迸った赤い情熱とともに幕を開けた。

 

 




 ウワバミだって一発ノックアウト!
 ヒロインちゃんだって勇気を出せる!
 そう、ライオットブラッドならね。

 この一杯は、あなたの『人生』を『加速』させる―――!

 ライオットブラッド・リボルブランタン

 平行世界にて好評発売中!



※R-18※な部分に関しては、もし要望があったら書こうかな







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月下氷人のチャンピオン:エンダアアアアアアアアアアアア!!!

アンケートの結果、「要るゥ!」とのことだったのでR18部分を書こうとしたけど、モチベが沸かなくて書けなかったので続きを投稿して誤魔化す姑息ハンド


 

「さ、さぁ大変なことになって参りました!

 EスポーツGHC世界最強決定杯、決勝戦!

 その対決は、一度の黒星をつけられつつもさらなる進化を遂げて復帰後、再度無敗記録を打ち立て直したシルヴィア・ゴールドバーグに対し!

 怒涛の勢いを見せるかつての覆面プレイヤー・ノーフェイス改め、サンラクとの対決となりましたが……」

 

「大方の予想を覆し、サンラクはカースドプリズンを選びませんでした。

 プリズンブレイカーを使用する動きや、サブキャラとしてランゾウやティンクル・ピクシーなどを使うことから、そちら(・・・)のタイプの方が本職なのではという考察はされていましたが……」

 

「よりにもよってリアル・ミーティアスとの呼び声の高い全米一(ゼンイチ)、シルヴィア・ゴールドバーグを相手にして、サンラクの選択キャラクターは、まさかまさかのミーティアス(・・・・・・)!!」

 

「シルヴィアを相手にしてのミラーマッチは、カースドプリズンとのマッチング以上に今まで見ることはありませんでした。

 キャラ性能に差がない以上、その結果は純粋な腕に依る所になります。

 この選択は、何かの勝算あってのものなのか、それとも……」

 

「おっと、もうゲーム開始のお時間となりました! それでは皆さんご一緒に……」

 

 

 

 ―――BATTLE START!―――

 

 

 

「っ!?」

 

 試合を見ていて何となく感じた違和感は、直接相対して確信に変わる。

 今までの彼は、勝つことと楽しむことを両立していた。

 否、勝つことを求めれば結果的に楽しむことになっていた。

 自分と同じ、テンションがプレイヤースキルに直結する彼のプレイスタイルは、本気で楽しむ程に、ゲームにのめり込む程にパフォーマンスが上がる。

 

 だからこそ、彼は笑いながら、時に非効率とも思える動きを織り交ぜながらも、ゲームを全力で楽しんで、勝つために本気で戦っていた。

 

「チィッ……!!」

 

 しかし、今は違う。

 

 彼の顔に笑みはなく、また見るものを魅了するようないつもの派手さもそのプレイには伴っていない。

 

 けれど――

 

「いっ」

 

 側頭部を掠めた鋭い蹴りに思わず悲鳴がこぼれ出そうになる。

 今はゲームのプレイ中、流石にそんな無様は晒さないが、いつもとは異なる、しかしいつも以上の実力を発揮する彼の鬼気迫る様子に、たらりと仮想空間(ヴァーチャル)の中では流れない筈の冷や汗が流れる感覚を味わう。

 

 動きは冷静。プレイは冷徹。思考はクール。

 

 

 

 それでいてきっと――心には、煮えたぎるような『何か』が燃えている。

 

 

 

 いつもの彼が100%の力を出して戦っているとすれば、今の彼はまるで100割の力を出し尽くして戦っている。そんな気がする。

 

「今日のアナタは何か違うわね!」

 

「あぁ!?」

 

「何が、アナタをそうしたの!?」

 

 戦いの合間、針の糸を通すような思いで、どうしても気になった私は彼に向けて問いを投げる。

 そこで今日初めて、彼はニィっと唇を釣り上げて笑みを浮かべた。

 

「そうだな……人を未来()へと駆り立てるのは」

 

 

 

「古今東西、愛と正義と相場が決まってんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 俺は、端的に言ってクソ野郎だ。

 

 女の子に対して気の利いたことの一つも言えないし、喜んでくれるようなプレゼントも思いつかない。

 これがクソゲーであるならある程度パターンというものもあるが……いや、そういうパターンをあえて外してしまうからクソゲーと呼ばれるものも割とよくあるが、ともかく……現実の女の子相手に、どうすればいいかなんて正直なところよくわからない。

 イベント事がある度に、知り合いのゲーム屋の店主に泣きついてどうにかこうにか凌いでいる……俺は、そんな男だ。

 

 こんな俺の事を、好きだと言ってくれる女性(ヒト)がいる。

 

 けれどそんな彼女に対して、俺は何も返せてはいない。

 

 今ではプロゲーマーとしてそれなりに名を上げた自負はあるし、彼女もそれを我が事のように喜んではくれるけれど、彼女が捧げてくれた想いに応えられているとは思っていない。

 所詮は、今までクソゲーに浸る人生をひたすらに過ごしてきただけのクソゲーマー。

 俺からゲームを取れば、そこにはきっとただのクソしか残らないのだろう。

 

 だから、せめて。

 

「お」

 

 たった一つ、どうやら才能に恵まれたらしいゲーム(これ)において。

 

「お、おおおお……!!」

 

 彼女の想いに応えるために。

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 

 

 

 

 ――世界最強を以て、彼女への想いを証明するッ!!!

 

 

 

 

 

「ガッ!?」

 

 ほんの一瞬。

 俺の意識が、目の前の相手の思考を凌駕する。

 その刹那を、俺は見逃さなかった。

 

超必殺(ウルト)発動!!!」

 

 僅かに、だが確実に自分の劣勢で進み続けていたダメージレース。

 しかし、逆境を打ち破ってこそヒーロー。

 極限まで達した俺の集中が、そのハイキックを直撃させ、全米一を相手に怯み・大を取ることに成功する。

 

 

 

「ミーティア……」

 

 

 

「私が、負ける……!?」

 

 驚愕に目を見開いたその顔面へ向けて――

 

 

 

 

 

「ストライクッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「決まったああああああああああああああああああああ!!!

 巨星、墜つ!!! とうとう、あのシルヴィア・ゴールドバーグの無敗記録が!! 

再度!! 真正面からっ!!! 破られましたああああああああああああああ!!!!!」

 

 大歓声が会場を包む。

 D.K.Oを成し遂げたいつかを思い出す、地面を揺らす大音声を受けながら、朦朧とした意識をどうにか奮い立たせて勝利者インタビューにと駆け寄ってきた人物からマイクを受け取る。

 正直このままぶっ倒れたいくらいの疲労具合だが、まだ倒れるわけには行かない。

 

 最後の仕上げが、残っているのだから。

 

「サンラクさん! 今のお気持ちをお聞かせください!」

 

「あー……とりあえず一個だけ」

 

 

 

 自分が渡したプレミアム席に座って……いや座ってないな。立ち上がって拍手をしている彼女をまっすぐに見据える。

 

 俺から見られていることに彼女も気付いてくれたようで、ビクッと一瞬驚いた後に、泣きそうな顔で見つめ返してくれる。

 きっと、俺が世界最強の称号を獲得したことに、同じくらい……いや、自分以上に喜んでくれているのだろう。

 

 「おめでとうございます」と、唇の動きだけで伝えてくれた彼女の姿を視界の中心に捉え、マイクを片手にたっぷりと息を吸い込む。

 

 

 

 

 

「レェェェェェェェイ!! 俺だぁぁぁ!!! 結婚してくれぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!」

 

 

 

 しん、と。

 

 あれだけ湧いていた会場内が、一気に静まり返った。

 時が止まってしまったかと錯覚する中で、どうやら出来る人間だったらしいカメラマンの一団がマイクを携えて玲の元へと素早く駆け寄る。

 

 でかいディスプレイにドアップで映される羽目になった玲は、真っ赤になった顔で、すこしばかりの逡巡の後――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!! 喜んでっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 満面の笑みを、返してくれた。

 

 彼女の答えに満足した俺もまた、負けじと心からの笑みを浮かべて……。

 

 

 

 そのままバタンとぶっ倒れた。

 

「ぎゃー!? サンラクさん!? 大丈夫ですか!?」

 

「メディック! メディ―ック!!」

 

「救急車もう一台! 嫁さんの方も鼻血吹いてぶっ倒れたぞ!!」

 

 

 

 意識が遠のく中で、さっきとは別の理由で騒がしくなる会場の阿鼻叫喚の様子を聞いたのだった。

 

 

 



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第三者達の祝辞




 姑息な手を……(二度目)

 割と掲示板回が書きたくて前回の話書いた所ある
 スレのPart数は某時空竜から適当に取りました




 

 

【スターレイン】GH:Cワールドカップ実況会場Part107【爆薬分隊】

 

 ただの一般モブ

 いやー終わってみれば最後に全部持っていかれたね

 

 ただの一般モブ

 まさか全世界が注目する中で堂々プロポーズするとは思わないでしょ

 

 ただの一般モブ

 これは伝説に残りますわ

 

 ただの一般モブ

 サンラクって意外と顔悪くないから女性ファンとかも魚臣程じゃないにしろいるらしいけど……ここまでされたら文句のつけようもないでしょ

 

 ただの一般モブ

 むしろ全力で応援するわ

 

 ただの一般モブ

 今はただおめでとうの言葉を贈りたい

 

 ただの一般モブ

 じゃあ俺は神父呼んでくる

 

 ただの一般モブ

 じゃあ俺はケーキ入刀用の包丁作ってくる

 

 ただの一般モブ

 じゃあ俺は式場になってくる

 

 ただの一般モブ

 ケーキ作りは俺に任せてもらおうか

 

 ただの一般モブ

 勢いで建造物を目指すな

 

 ただの一般モブ

 大丈夫。俺、将来の夢に『がい戦もん』って書いたことあるから

 

 ただの一般モブ

 何が大丈夫なのか

 

 ただの一般モブ

 それ怒られて終わりだろ

 

 ただの一般モブ

 ついでに言うと漢字が間違ってる

 

 ただの一般モブ

 ええい話がずれてる

 ともかくサンラク結婚おめでとうって話だろ?

 

 ただの一般モブ

 しかもあのシルヴィアに勝ってだし

 結婚指輪に「世界最強」の付加価値ついてんのやばいわ

 

 ただの一般モブ

 「世界最強」って彫ってある指輪って強そうだな

 

 ただの一般モブ

 いや別に結婚指輪にンなアホな装飾施さないでしょ。……ないよね?

 

 ただの一般モブ

 大丈夫でしょ。サンラクってゲームでははっちゃけるけど現実では割と小市民っぽいし

 

 ただの一般モブ

 世界大会で優勝して勢いそのままプロポーズする小市民……?

 

 ただの一般モブ

 あんな小市民がいるか定期

 

 ただの一般モブ

 いやしかし、伝説の三人の中じゃ一番若かった筈のサンラクが最初にゴールインしたか

 

 ただの一般モブ

 伝説の三人?

 

 ただの一般モブ

 サンラク、魚臣と今女優やってる天音永遠の三人のことだよ

 

 ただの一般モブ

 なんでいきなり女優の名前が……?

 

 ただの一般モブ

 ご存知、ないのですか!?

 

 ただの一般モブ

 2年前、天音永遠自身が「私が名前隠しです」って公表して、それを魚臣とサンラクが保証した事件。しばらくゲーム界隈が騒がしくなってたのを知らない?

 

 ただの一般モブ

 名前隠しって?

 

 ただの一般モブ

 ウッソだろお前

 

 ただの一般モブ

 まぁ現れたのはGGCの時の一回だけだし、知らんやつは知らんだろ

 

 ただの一般モブ

 名前隠し(ノーネーム)

 GGCにおけるGH:Cの初プレイの時に、当時まだ顔隠しだったサンラクと一緒に、魚臣のプライベートな友人としてゲームをプレイしてた覆面プレイヤー

 スターレイン相手に2連勝を勝ち取った強ゲーマー……だったが、衝撃的だったのはそのプレイ内容で、

 ・開始直後に幼女を人質にその母親を人間爆弾に

 ・タクシーの運転手も人間爆弾に

 ・パイロットを容赦なく突き落としヘリを奪取

 ・ビルドミノによる大量虐○を考案

 ・勝てないと見るやリアルをど突き回してヴィランロールを封じにかかる

 etc,etc……

 と、顔出ししてないのをいいことに見る者を戦慄させるド外道プレイをやりまくって、

 「ヴィランのお手本」「これは酷い」「真性の畜生」「原作より邪悪」などなど視聴者から言われたい放題だったプレイヤー

 

 ただの一般モブ

 こうしてみるとただの天音永遠じゃねーかっていうね

 

 ただの一般モブ

 あの人元トップモデルだったけど、女優になってからはっちゃけだしたよね

 

 ただの一般モブ

 悪役が板につきすぎている

 

 ただの一般モブ

 演者:天音永遠 の黒幕感

 

 ただの一般モブ

 配役の時点で犯人がわかるからミステリーには絶望的に向いてない

 

 ただの一般モブ

 ミステリーで被害者の友人役やったことあったろ!

 

 ただの一般モブ

 あぁ、スタッフロール流れても「まだ天音永遠が裏切ってないからCパートあるのでは?」って視聴者からずっと疑われ続けてたやつか

 結局最後まで第三者で終わったやつ

 

 ただの一般モブ

 天音永遠の「私の悪役としての美学に反するんです!」って監督に言って台本変えさせた話好き

 

 ただの一般モブ

 俺はニチアサに出てきた天音永遠が好きだったよ。突き抜けた悪役感あって

 

 ただの一般モブ

 「子供泣くから演技もうちょっと抑えめにしてくれる?」って言われたってやつな

 

 ただの一般モブ

 お茶の間の良い子号泣シリーズ

 

 ただの一般モブ

 サンラクから「素を出してないでちゃんと演技しろや」って突っ込まれてたの笑ったわ

 

 ただの一般モブ

 サンラクが実質結婚済みで、魚臣も秒読み段階。最年長の天音永遠だけが置き去りに……

 

 ただの一般モブ

 ていうか今天音永遠の歳って……

 

 ただの一般モブ

 言うな

 

 ただの一般モブ

 アラサーにもなって結婚してないとか色々終わってるよなwww

 

 ただの一般モブ

 うるせぇ

 

 ただの一般モブ

 黙れ

 

 ただの一般モブ

 ぶっ○すぞ

 

 ただの一般モブ

 ひぇ、ごめんなさい……

 

 ただの一般モブ

 流れ散弾が次々ヘッショになってるの草

 

 

 




裏タイトル:結婚できない女への罵倒


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無自覚右ストレート、自覚式パイルバンカー

シャンフロコミカライズおめでとう!!!!!

(おせーよホセ)
(大体オリガミと戦っていたせい)
(HF三章は良いぞ)
(R18版も同時投稿してます。作者ページから飛んでね)


「「あ」」

 

 お互いの存在に気づくと同時にその場で硬直する。

 朝出発する以前から幾度となく頭の中でシミュレーションを行ったが、RTAがそうであるように実際に体が思い通りに動いてくれるとは限らない。

 なんと声をかけるべきかということを自分の頭が思い出すだけで数秒もの時間を要してしまう。これが本当にRTAだとしたら即リセ案件だろう。

 

「お、おはよう……玲」

 

「お、おはようございます! 楽郎くん……っ」

 

 何となく気まずくて目を合わせることすらできず、けれど気恥ずかしさを伴うそれは決して嫌なだけの感情ではなかった。

 

「と、とりあえず行こっか。遅刻したら大変だし」

 

「あ、はい! そうですね!」

 

 どうにか歩き出しはしたものの、会話は弾んでいるとは言い難く、対人戦で互いの最適な距離を測っている時のような探り探りの会話にもどかしさを感じる。

 

「そういえば」

 

 そんな空気の中で、一つ決めて置かなければならないことがあったのを思い出す。

 

「その、学校ではどうしようか?」

 

「どう、というと……?」

 

「いや、その、俺達のこと、オープンにするかどうかって、さ。やっぱり、悪目立ちすると思うし……」

 

「あ……私は、どちらでも構いませんけれど。楽郎君は、どう思いますか?」

 

「うーん、絶対面倒なことになるし……ていうかなってるし……できれば、秘密にする方向のほうがいいかなぁ」

 

「う、ご、ごめんなさい……私のせいで」

 

「いやいやいや、玲のせいじゃないって。アイツらが阿呆なのが悪いだけだから、そんな顔しないで」

 

 いやホントにね。

 ていうか考えてみたら、アイツらって精々『同じ学校の生徒』ってだけで玲の友達でもなんでもないんだよな。

 そんな奴らが、誰々と付き合ってるだのなんだのを詮索するのって結構なプライバシー侵害なような気が……。

 まぁ、校内の恋愛事情なんてものには全く興味なかった俺にはよくわからないけど、そういうのに興味津々な男子高校生諸君にはどうしても気になってしまう事柄なのだろう。

理解できないからと否定したりせず、寛容な心で受け入れてやるべきなのかもしれない。どさくさ紛れに雑ピを煽り倒してた俺だって社会モラル的に考えれば同レベルの人間と言えるし。

 

「やぁ! 斎賀さん!」

 

 どうにか平時の6割位までなめらかに会話ができるようになった辺りで校門へとたどり着き……それを待ち構えていたかのように、生徒会会長……じゃなくて副会長だっけ……のい……い……そう、石動だとかいう男子生徒が俺達へと向かって、正確には俺の隣に居る玲へと向けて歩いてきた。

 

 ……今更になって気づいたけれど、こいつ絶対玲のこと狙ってるよな。

 

 そう思ったときには、俺は無意識に玲と石動某氏との間に割り込んでいた。

 

「何か用?」

 

「っ……君に用はないんだ。どいてくれるかな?」

 

「こっちもアンタには用はないんだよ。……行こう、玲」

 

「え、あ、はい!」

 

 あからさまに玲の事を呼び捨てにして、これ見よがしに彼女の手を取ってずんずんと校舎へと向けて歩き出す。

 校内中の視線が徐々に自分達へと集まる感覚をひしひしと感じるが、それを無視して、むしろ更にしっかりと玲の手を握って校舎へと足を踏み入れる。

 

「あの、楽郎くん?」

 

「ごめん、突然こんなこと……」

 

「い、いえ! それは構わないんですけれど……らく」

「陽務ィェア!!!」

 

 やけにノリノリな感のある呼び声で俺のことを呼ぶクラスメイトへと玲の手を握ったまま方向転換する。

 

「お、おま、お前……それ……!」

 

「えー」

 

 

 

「自分達! 付き合い始めました!!!」

 

 高々と繋いだ手を掲げて、ヤケクソ気味に宣言したのだった。

 

 

 

 

 

 

「本当にごめん……」

 

「その、本当に、私は気にしていませんから……」

 

 昼休み。

 俺はがっくりと項垂れたまま、人気(ひとけ)の少なくなった教室の隅で玲と向き合う。

 なお人気が少なくなったのは俺達の周囲二席分程だけで、そこから先はむしろ普段よりも人口密度が増え、談笑をするふりをして此方の様子を伺う生徒たちが犇めいていることを追記しておく。

 クラスメイト達に、他人の恋路を詮索する好奇心はあっても、邪魔をしようとする悪意まではないことに安堵しながら、玲に改めて朝のことを謝罪する。

 

「いやでも、俺の方から秘密にしておこうと言った矢先にあんなことしちゃったから……」

 

「私は、もとよりどちらでも構いませんでしたから……でも、どうして突然?」

 

「……あー」

 

「?」

 

「その、玲がちょっかい掛けられそうなのを見て、我慢できなくなったと言うか……」

 

「ちょっかい?」

 

「ほら、朝の石動だかいう副会長。アレ、どう見ても玲のこと狙って近づいてきてたし……」

 

「………………え? あ、あの方ってそういうつもりで近づいてきてたんですか?」

 

「気づいてなかったの?」

 

「全く……」

 

 ……そう思って改めて見てみれば、俺からすらわかるくらい結構あからさまだった気がするけど……それでも全く意識されない石動氏ェ……。

 まぁ、同情する気はないけどね。石動氏が玲のことを諦めないとなれば、敵対以外の道はないわけだし。

 

「うん?」

 

「どうかした?」

 

「いえ、その、つまり、楽郎くんは……嫉妬していたんですか?」

 

「………………まぁ、はい」

 

 嫉妬……というか、この場合は、独占欲と言ったほうが正しいけれど。

 今まで欠片もそんなつもりはなかったくせに、はっきりと恋人関係になった途端そんな感情を発露させるのは……どうにもかっこ悪い気がするが、それでもどうしても我慢できなかったのだ。

 とりあえず外道鉛筆辺りに知られたら「えー!? マジー!? キモーイ☆」と雑に煽られることは確信できるくらいには、ウザさの極まった彼氏面ムーヴだっただと思う。

 

「そ、そうですか……」

 

「うん……」

 

「……」

 

「……」

 

「そ、そうだ! 私、楽郎くんにお弁当を作ってきたんでした!」

 

 途切れてしまった会話を繋ぎ直すように、玲が懐から弁当箱……というかお重を取り出した。

 どすん、と結構な重量を感じさせるそのお重は、どうやら俺と玲二人分の量が入っているらしい。

 

「ごめんね、手間を掛けさせちゃって……」

 

「いえ、妹の瑠美さんとの約束ですし……先日、楽郎くんのお家では、お世話になりましたから。

 それに、仙姉さんからも、『花嫁修業に丁度良いから、しっかり勉強し直しなさい』と言われましたので」

 

「はなよ……!?」

 

「?………………はひゅっ!!!!!!」

 

 唐突に出てきたパワーのあるワードに思わず赤面し、彼女も自分の口にした言葉の意味に気づいたのか耳から湯気を出して慌てふためく。

 

「あ、あの!!! 決して!!! 深い意味があったわけでは!?!?!?」

 

「あぁ、うん、落ち着こう? まだそこまで話すには色々と段階をすっ飛ばしすぎてるから」

 

「は、はい……そうですよね」

 

 高校生の身で、それも付き合い自体はともかく正式に付き合い始めてからは数日と経たない身空で、流石に結婚()の話題は重すぎる。

 

「……けど」

 

「はい?」

 

 ……が、こうまであからさまに意気消沈されると、どうにかしたいと思うのが男心というもので。

 

 

 

「できれば、その……これからもずっと、玲と一緒にいられるなら、俺は嬉しい」

 

 

 

「……………………こひゅ」

 

「……」

 

 恥ずかしすぎて、対面にある玲の顔をまともに見れない。

 俺は一体何をさせられているんだろうか……。

 

「じゃ、じゃあ、頂くよ! お弁当!」

 

「はい、ろうぞ」

 

「いただきます」

 

 初めて口にした玲の手料理はとても美味しくて、彼女の努力の垣間見える味だった。

 

 

 

 なお、無意識にプロポーズしていたと思ったら逆プロポーズされていた彼女が、しばらく仮死状態に陥っていたことに気づくのは、数分の時が過ぎてからのことだった。

 

 

 

 

 

 

「やぁ、来てくれて嬉しいよ。斎賀さん」

 

「手早く済ませて頂けませんか? 楽郎くんを待たせているので」

 

 放課後、石動さんに呼び出された私は、人気の少ない校舎裏へと足を運んでいた。

 正直、楽郎くんから言われた通り、彼が自分に好意を持っているというのなら、あまりこうして二人きりで話すべきではないと思うけれど……。

かと言ってあからさまに無視するというのも人として褒められた好意ではないし、ならばいっそこれを良い機会と思って直接的に自分の気持ちを告げて諦めてもらうのがいいのではないか? と思ったのだ。

 

「っ、なら、単刀直入に言うけれど、あの男とは別れて、僕と付き合う気はないかい?」

 

「ありません」

 

「……交際相手を持ったということは、恋愛に興味がないというわけじゃないんだろう? なら僕のほうが」

 

「ありえません」

 

「っ……」

 

 うーん、どうしよう……思っていた以上にしつこい。

 どうすればきっぱりと諦めてくれるだろうか……?

 思案する私に向けて、石動さんがもう一度口を開きーー

 

「あんな低レベルな男(・・・・・・)、君には釣り合わな」

 

 

 

 

ズガンッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

ぶっ殺すぞこのやろう(私を怒らせないでください)

 

「ぴえん」

 

「……失礼します」

 

 そうして。

 座り込んでしまった石動さんと、拳の形にめり込んだ樹木と、踏み込んだ拍子に砕いてしまった大地から逃げるようにして、私は楽郎くんのもとへと戻ったのでした。

 

 

 

 

 

 




ルビの使い方があってるかどうか不安になる今日このごろ
作者は言葉の意味(発生した音声)っていう感じで使ってるんですが、なんか逆の形で使ってるのも最近の作品だとちょくちょく見るんですよね……
どっちが正しいんでしょう?

それと、この二人をゲーム内デートさせようと思ったのですが……
・常時彫り物半裸に奇面
・三分置きに要お着替え。うっかり忘れると爆発四散
・全身から黒い煙を沸かせながら時間延長
・性転換して全身真っ黒ドレスに身を包む
と、有名人であることを差し引いても、主人公のスタイルが不審者過ぎて街歩きに向いてないことに気づいて諦めました




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