高校生からの物語 完結 (月島柊)
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第一章 再会と新たな親友
第0話 高校生の時の記憶


「ちょっといい?」

 

急に人から話しかけられた。それは1回も話したことのない女子生徒。俺は高校3年だから先輩なのはまずあり得ないだろう。ということは同学年か後輩ってことだ。何て返せばいいか分からずに多分およそ15秒は過ぎた。俺は後輩かも同学年かも分からないまま返事をした。

 

「あぁ、いいけどどうかしたか」

「今度の文化祭なんだけど……」

 

文化祭は9月第2土・日曜日だ。今年は高校3年だから何か出すものはない。そうなると後輩か?

 

「一緒にまわらない?」

「え?」

 

俺は思わず聞き返す。女子生徒に話しかけられることはよくあったがこんな形で話しかけられたのは初めてだ。

 

「いいけど、君、名前は」

 

名前も知らない生徒とまわるのは少し気まずい。

 

「私は葉元胡桃(はもとくるみ)。高校3年生。君は?」

「俺は月島柊(つきしましゅう)。同じ高校3年だ」

 

俺はいつものような返事で答える。こんな返事で良かったのだろうか。俺はスマホのカレンダーをついでに見た。今日は9月1日。あと2週間だ。

 

そして当日を迎えた。

俺が通っている魔法高校では俺が1番遠距離通学だ。JR高崎線の籠原駅からJR南武線の鹿島田駅までの約1時間50分。朝、籠原を5:41に出発する、上野東京ライン熱海行き。いつも1号車のボックスシートに座っている。もちろん今日も。

これで南武線の乗換駅である、川崎まで向かう。

 

籠原まで家から歩いて10分。準備などで30分と考えて、いつも朝5時前に起きている。まぁ、その分寝る時間は早いのだが。

この電車は籠原始発ではなく新前橋始発で10両。朝早く、早朝だからか空いている。あとで聞いたのだが、葉元さんはどうやら鴻巣が最寄りらしく、この電車に鴻巣で乗ってくる。

途中、熊谷には5:47、鴻巣には6:02についた。その時、俺の頭に1つのことがよぎった。

 

(あっ)

 

そう、乗っている号車を伝え忘れたのだ。

10両だからそこまで長いわけではないが、それでも200mはある。

どうしたものかと思いながら座っていると、1号車の先頭から2つ目のドアから1人乗ってきた。

 

「ここであってたんだ」

 

あってたというのに少し疑問だったが、俺は謝る。

 

「あぁ、ごめん。号車伝えるのを忘れてた」

 

俺は顔を見て謝る。土下座まではいかないが、少し頭を下げる。

 

「うっ、ううん!全然大丈夫。それに」

 

このあとは小声で分からなかったが、何か言っていた。

 

「なんだ?」

「なんでもない!」

 

少し強い口調だった。俺も少し驚いて

 

「そ、そうか……?ならいい……」

 

と、少し戸惑ってしまった。

 

そして大宮6:26、上野6:54、東京7:01、品川を7:10に出発し、川崎に7:19についた。

次は7:23の南武線各駅停車稲城長沼行きに乗り換える。こっちは乗っている時間は短く、約10分でつく。

鹿島田には7:30。ここから5分ほど歩く。

 

「葉元さんはどんな魔法使えるんだ」

 

魔法高校なのだから少しは使えるはずだ。

 

「えぇっと、火炎魔法、水魔法、回復魔法、氷結魔法、シールド魔法。それくらい」

「攻撃系が多いな。俺は火炎魔法、水魔法、回復魔法、氷結魔法、シールド魔法に加えて、風魔法とか、あと氷魔法」

 

俺は使える魔法の一部を言った。

11月に対人戦(PVP)があるため、そこで確認する。

学校には8時少し前。学校に着いて、正門付近で葉元さんとは別れた。

文化祭は9時からなのだが、8時に着いたのは理由があった。

 

「やぁ、三咲ちゃん」

「月島先輩!待ってました」

 

2年生の後輩の七瀬三咲だ。4月に告白され、付き合っている。まだ先輩呼びだが。本人いわく、「まだ学校にいる間は先輩だから」だそうだ。

俺的には先輩付けしなくてもいいのだが、本人がそう言うのだから仕方ないのだろう。

 

「三咲は何のコーナーするんだ?」

「カフェです!パンケーキ、頑張って作りますよ!」

 

すごい意気込みだ。客を喜ばせたいのだろう。これは行かないと損だ。

 

「行ってやるから待ってろ。どこでやるんだ?」

「2年A組です。絶対来てくださいよ!」

「あっはは、分かってる」

 

9時になって文化祭が始まった。

俺は葉元さんと一緒に順番にまわる。サッカーや演劇など、結構あった。

次に、俺と葉元さんはコスプレをした。

 

「ねぇ、どう?これ」

 

試着した葉元さんが聞いてきた。ドレスみたいな感じの服だった。

 

「いいんじゃないか」

「えへへー、よかった」

 

そんなことを話していると、後ろから誰かから驚かされる。

 

「わっ」

 

視界が真っ暗になる。手で目を隠されているようだ。

 

「ちょっ、誰だ!」

「声でわからないかなぁ」

 

声?確かにどこかで聞いたことのある声だ。

 

「もしかして、彩?」

「ピンポーン!正解!」

 

葉元さんだけがポカーンとしていた。確かに知らないもんな。俺は2人にそれぞれ紹介する。

 

「3年B組の丸山彩だよ。こっちは葉元胡桃。何組だっけ」

「C組。よろしく、丸山さん」

「彩でいいよ。よろしくね。胡桃ちゃん」

 

相変わらずすぐに馴染めてる。俺はまだ苗字で読んでるのに。さすがだよな、彩は。まぁ……

 

「彩さーん、始まりますよー!」

「はーい!今いく!じゃあね、柊くん、胡桃ちゃん」

「あぁ、頑張れよ」

「頑張ってね、彩ちゃん」

 

彩が手を振りながら走っていく。

 

「彩ちゃんって何かやってるの」

 

葉元さんが聞いてきた。俺は質問に答える。

 

「あぁ、彩さ、pastel paletアイドルやってんだ。俺も2回目見に行こうかな」

 

ここから先は、何も覚えていない。

唯一覚えているのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三咲と別れたこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだ0話ですからね。それでは、次回もお楽しみに!


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第1話 再会

ついにあの人と再会する!だがまさかの人とバチバチの関係に!?


俺は大学で引っ越したのはいいが、もう知っている人の家にいくことになった。その人はまだ教えてもらってない。誰なのかすら分からないのだ。

 

「柊、行ってきなさい。たまには連絡するのよ」

 

母さんが言う。

 

「分かってるよ。新千歳から羽田まで行くんだろ」

「ANA50便だからね」

 

朝7時30分に出発する始発だ。札幌から5:50発快速エアポート50号新千歳空港行きに乗る。今はもう5時半。

 

「分かった。じゃあ、行ってくるよ」

 

俺は札幌駅に着くと快速エアポート50号に乗る。

新千歳空港には6:28に到着した。

新千歳空港に着くとロビーまで歩き、飛行機に搭乗した。

時刻通り飛行機は離陸した。

7:30、ついに北海道から出たのだ。羽田空港までは1時間と35分。2時間もかからず着いてしまう。

やがて、羽田空港に着く。荷物を取り、しばらく歩くとピンク色の髪をした女の子が俺のことを呼んだ。

 

「柊くん、久しぶり」

 

なぜ俺の名前を知っているのか分からない。

 

「あの、どちら様ですか?」

 

【ある人物の視点】

 

柊くんがもうすぐ着く。少し驚かせて見ようかな。柊くんどういう反応するかな♪

そう思っているとついに時間になった。

 

「柊くん、久しぶり」

 

私は手を振って言う。しかし柊くんは分からないような顔でいる。

 

「あの、どちら様ですか?」

 

本当にわかっていないらしい。でも、こうすればわかるだろう。

チュッ

私は唇を柊くんの唇につける。少し背伸びする形になるが、こっちの方が舌が絡まる。

 

「ん?……んんっ!?」

 

周りから丸見えだがお構いなしに続ける。

 

「んっ、ちゅっ」

 

すると柊くんが私の顔を離す。

 

「な、何するんですか!」

 

まだわかっていない。こうなったら

 

「柊くんのお嫁さんだよ?」

 

 

【月島柊視点】

 

急にお嫁さんなんて言われて俺は立ちすくむ。そりゃあそうだ。俺は必死で思い出す。前に俺にべったりだった奴を全員。そしてピンク色の髪。

 

「彩……?」

「おっ、正解!」

 

彩ちゃんとは大体5年ぶりか。

 

「柊くん、行くよ」

「あぁ!」

 

 

俺は彩ちゃんのお母さんが運転する車に乗った。後ろに俺と彩ちゃんが座る。手をずっと繋いでいるが。

 

「久しぶりねぇ、柊くん」

「はい。5年ぶりで」

 

俺は丁寧に返す。その時だった。何かを踏んだようでいきなり

ガコン

と車が揺れる。中もかなり大きく揺れ、彩ちゃんと俺は向かい合わせになる。彩ちゃんが上にいて俺は何か柔らかいものを触っている。何かと思い指を動かす。

 

「あんっ、柊くん、積極的だねっ」

 

手を見ると俺が触っていたのは彩ちゃんの胸だった。

 

「ご、ごめんっ!」

「うふふ、柊くんになら彩ちゃんを嫁にあげることも考えてるわよ」

 

お母さんまで!何言ってるんだ!

そのまま家に着き、俺が上にいる状態になっていた。

 

「さすがに降りるときは、ね」

「あ、当たり前だろ!」

 

荷物を彩ちゃんの部屋に置くように指示を受けたため俺は彩ちゃんの部屋へ向かう。

 

「彩ちゃん、荷物出すの手伝ってくれないか?」

 

扉の向こうにいる彩ちゃんを呼ぶ。

「いいよ、今行くね」

 

ドアが開く。その彩ちゃんは下着だけの状態で来た。

 

「お、おい!彩ちゃん!?」

「手伝うんでしょ?いいよ」

 

もう放っておくからな、彩ちゃん。

そして俺は散歩がてら外に出た。家から10分歩くと黄色の髪をした女の子がいた。

 

「千聖!」

「あら柊くん、久しぶりね」

「あぁ、彩ちゃんの家にいるんだ」

「へぇ、ついってっていい?」

「へ?待ってな、電話してみる」

俺は彩ちゃんに電話する。

《もしもし、柊くん?》

「彩ちゃん、千聖ちゃん行っていいかな」

《うん。いいよ。早く帰ってきてね、あ な た》

 

 

 




いやぁ、簡単だったかな?彩ちゃんでした!


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第2話 恋人

俺は千聖と一緒に彩ちゃんの家に戻る。

 

「お帰りなさい、あなた」

 

あなたって……

 

「夕飯作ってあるから食べよ?柊くん。千聖ちゃんも食べる?」

「えぇ。ありがとう、彩ちゃん」

 

【丸山彩視点】

 

夕飯に柊くんの分だけ誘惑薬(ゆうわくぐすり)を入れてある。私だけを見てほしいから。

 

「ん?なんか変な味するな……」

「どういう味?」

 

柊くん、気づいたのね。

 

「行っていいのか分からないけど、鉄っぽいな」

「そう?そんなはずないんだけど」

 

私は騙すために嘘をつく。柊くん、私のものよ。

 

【月島柊視点】

 

俺は部屋に戻って横になる。

 

(なんか火照ってるな……)

彩ちゃんが中に入ってくる。

 

「柊くん、どうかした?」

「!」

 

俺は彩ちゃんのことを見るとどうしてもくっつきたくなってきた。俺は思いきってギュッ抱きつく。

 

「彩ちゃん、俺、どうかしちゃったな」

「柊くん、私のこと、好き?」

 

嫌いじゃない。というか、大好きな気持ちだ。

 

「大好きだ」

その時、千聖ちゃんが外から呼ぶ。

 

「彩ちゃん、柊くん、何してるの?」

「なにもしてないよ」

 

彩ちゃんが言う。まさか、俺のことを操るために?俺は彩ちゃんから離れる。

 

「彩ちゃん、何してるんだ」

「何って、なんか味変じゃなかった?」

 

何も変じゃなかったが、1つ言うならスープの味が変だったな。

 

「スープのことか?」

「そうそう、それ!」

 

彩ちゃんが不気味な笑みをする。俺は何が起きているのか分からなかった。

 

「私ね、薬入れたの。惚れ薬って言うんだけど」

「一体なんの為に」

「分かるでしょ、千聖ちゃんに渡したくないの」

「渡したくないって、どういうことだ」

「だから」

 

彩ちゃんが少し溜めて言った。

 

「未来のダーリン、そうでしょ?」

 

俺は意味が分からなかった。ダーリン?そんなこと言ったのか?昔の俺は

 

「そんなこと言ったのか?」

「言ってたよ。北海道に行っちゃう前に」

 

全く覚えてなかった。そんなこと言ったのか。けど、俺自信も彩ちゃんが好きだ。なぜかって?そりゃあ可愛いからだよ。ピンクの髪とかさ

 

「私もね──」

「ごめん、千聖風呂入ってないだろ?ちょっと伝えてくる」

 

俺はドアを開け、1階に降りる。

千聖ちゃんは彩ちゃんのお母さんと話をしていた。なんの話をしてるんだ?

 

「千聖ちゃん、どうした」

「あら、今日は泊まることになったのよ」

 

あらら、俺のいない間に結構話進んでたんですね、そうですか……って、な、何だって!?泊まることになった!?今泊まったら大変だ。

 

「はぁぁぁ!?」

 

俺は思わず叫ぶ。

 

 



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第3話 風呂

俺は思わず叫ぶ。

 

「今日か!?」

「そうよ。なにか悪い?」

 

なんか怖いんだが。

 

「べ、別に大丈夫だけど……」

 

俺は恐怖感を覚えたが少し動揺しながらも言った。

 

さて、今の時間は19時。もうそろそろ風呂に入る時間だ。なんか嫌な予感もするけど。

 

【丸山彩視点】

 

誰が柊くんと入るか、それが1番の問題だった。もちろん私だけど、千聖ちゃんも譲らない。

 

「そうだ、3人で入ればいいのよ」

「……そうだね、3人で入ろっか」

 

と、結構単純に決まった。

 

そして時間になった。リビングから服を脱ぎ、風呂まで行く。千聖ちゃんも全裸、私も全裸だから少しスースーする。私は浴室のドアを開ける。

 

「柊くん、一緒に入ろ?」

 

【月島柊視点】

 

「柊くん、一緒に入ろ?」

 

急に言われて頭の中がこんがらがる。一緒に入ろ?何に?しかも俺と一緒だと色々と不味くないか?だったら俺があがった方がいいんだけど。

 

「俺あがるから、2人でゆっくり入ってろ」

 

俺は立ち上がって出ようとする。

 

「待ってよ!入ろって」

 

彩ちゃんが俺の手を引いて引きずり込む。

 

「うわっ、ちょっ、彩ちゃん!?」

「私もいいかしら?」

 

千聖ちゃんは俺を押す形でやる。引かれて押されてもう限界だ。

 

「2人共、やめてくれ、分かった、入るから」

 

しょうがなく入るしかなかった。

彩ちゃんが俺の後ろに回り込み、俺の前に腕を巻き付けてくる。

 

「彩ちゃん?」

「密着だよ。私の柔らかさ分かるでしょ?」

 

柔らかさとは何の柔らかさでしょうね?

 

「じゃあ私は前から」

 

今度は千聖ちゃんが前から抱き付いてくる。普通に考えたら両手に花だが、今の俺からしたら生き地獄でしかない。だけど少しはうれしい……のかな?

 

「柊くんの背中と胸に当たってるの、何か分かる?」

 

背中と胸に当たってるの?そういえば、前後にクッションのような柔らかみがあるな。はっ、まさか

 

「当てるのやめてくれないかな?」

「んー?何で?」

「だって、その……」

 

言えるわけがない。胸が当たってる何て。

 

「わからないかなぁ?おっぱいが当たってるの」

 

言っちゃったよ!この人!

 

「気づくように当ててたんだけどね」

 

千聖ちゃんまで俺をからかってくる。俺は態度を急変させる。

 

「君らさ、俺の嫁は誰なんだ」

 

真剣な口調で聞く。

 

『もちろん私!』

 

2人同時だ。だったら中学生の時にやってた方法で行くか。

 

「だったらさ、2人で俺をデートに誘ってよ。よかった方を選ぶから」

「けど2人?すぐ終わっちゃうじゃん」

「本当は4人ほしいんだけど、俺の好きな奴がいないからな」

 

好意があるのはこの2人くらい。他には誰も……ん?なんか1人だけメッシュの髪の子が俺のこと好きだったっけ?

 

「蘭ちゃん!」

「蘭ちゃん好きなの?あとは」

「俺的にはましろとかだけど……相手も好きな人だと」

「じゃあそれで決まりね!日にちは10月4日がいい!」

 

土曜日か。休日がいい理由があるんだろう。

 

「じゃあ私10月10日」

 

カレンダーを見て言った。10月10日だと金曜日か。何で休日じゃなかったんだ?

 

「分かった。蘭とましろには俺が聞いとくよ」

「ふふっ、じゃあ続き、シよ?」

「悪意のある発言をするなぁっ!」




もう3話ですね。大体1000文字から2000文字の間で書いてます。さて、次回もお楽しみに!


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第4話 デート 1日目

今回は蘭ちゃんのパートです。


9月28日日曜日、蘭ちゃんのデートだ。場所は近くの駅、豊田から原宿まで行くそうだ。

 

「原宿まで行って何するんだ」

「まだ教えられない。新宿着いたら教えてもいいよ」

 

豊田からは9時6分発東京行き。9時33分まで始発はなく、高尾始発だった。休日なのだが思ったより混んでいて、座席は全て埋まっていた。俺と蘭はドア横の仕切りに寄りかかった。

 

「蘭って、髪短くしてる理由ってあるのか」

「別にない。ただ涼しいから」

 

俺はスポーツ刈りのような短いものではなく、風で少しなびくくらいの長さだ。

三鷹で中央特快に追い越され、一気に空くと思ったが、途中の吉祥寺や荻窪にいく人が多く、豊田の時点より混んでいた。

 

「少し混んでるな。こっち来るか」

「うん・・・」

 

蘭がこっちに寄りかかってくる。って・・・

 

「蘭?なんか近くな――」

「んっ」

 

蘭が少し背伸びして俺にキスする。

 

「んっ!」

「んちゅっ、んっ」

 

30秒くらいキスして、離れると糸のようなものが垂れる。

 

「蘭・・・家でやろうな」

「が、我慢できなかったのっ!」

「せめてバレないように満員電車でやるとかさ・・・」

 

それも問題だが。

新宿には9時50分。次は9時57分発山手線。休日朝なのだが平日帰宅ラッシュ並みに混んでいる。俺と蘭は反対側のドアに押し付けられるようにして押される。

 

「蘭、キス、したいか」

「・・・うん//」

 

ちゅっ

2回目のキス。蘭の方も我慢していた筈だ。

 

「はい、今は終わり。またいつかね」

 

10時1分、原宿についた。若者の町だが、俺はもう23。若者と言っていいのか?

 

「あっ・・・」

 

蘭がパフェを見て止まる。声も出しているのだから相当食べたいのだろう。

 

「食べたいか?」

「べっ、別に食べたくない・・・」

 

グウッ

 

と蘭のお腹がなる。腹減ってるじゃん。

 

「食べてこうか」

「うぅっ・・・」

 

パフェ専門店に入って注文する。店員が来て注文を聞いてくる。

 

「ご注文お伺いします」

 

俺は蘭の分も注文する。

 

「メロンパフェ1つと苺パフェ1つ」

「わかりました。それでは――」

 

店員さんが復唱する。

数分でさっきの店員さんが戻ってくる。

 

「お待たせ致しました、メロンと苺1つずつです。」

 

もらうと店員さんが帰っていく。俺はスプーンを突っ込む。そして口に持っていく。

 

「美味しいな、蘭も、ほら」

 

俺は蘭のスプーンを蘭の口に持っていく。少し恥ずかしがっているが、これがポイントになる。

しばらくして蘭が咥える。

 

「美味しい・・・柊も、あぁん」

 

おっ、のってきたな。俺はそのスプーンを咥える。

 

「蘭、嫁になりたいんだな」

「べっ、別にそうじゃない・・・」

 

ツンツンしてるなぁ。

やがて帰る時刻になる。15時30分に原宿につき、以下の通りで帰った。

原宿15:33山手線

新宿15:37

新宿15:52中央特快高尾行き

豊田16:22

彩ちゃんが出迎えてくれた。

 

「お帰りなさい、あなた」

「ただいま、彩」

 

いつの間にか呼び捨てで呼んでいた。

 

「呼び捨てかぁ、じゃあ私も柊って呼べばいいの?」

「いや、柊くんの方がいいな。」

「りょーかい!」

 

と、ビシッと敬礼した。これで1日が終了した。

 

 




次回は丸山彩編です!今回は美竹蘭編でしたね。今後、白鷺千聖編、倉田ましろ編と続きます。それでは!
( ゚Д゚)ゞ 次回もお楽しみに!(^_^)/~~


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第5話 デート 2日目

予定変更で白鷺千聖編です。


10(がつ)4日、千聖がデートに誘う。しかし場所が・・・

 

「あの、千聖さん?これは一体・・・」

「なにいってるの?ラブホよ」

 

はーい0点!ってか-以下!何でデートでラブホ!?何?デートの場所はラブホなの!?

 

「ラブホで何をするんです?」

「誘惑以外ある?そ、れ、に」

 

それになんだ?

 

「彩ちゃんに渡したくないからね。ウフフ」

 

わー怖い怖い。もう彩ちゃんでいいかな。

 

「それで、俺は何するの」

「横になって。押し倒すから」

 

殺人鬼かな?心はもう殺されたよ。

 

「しょうがねぇな。ほら」

 

俺は横になる。千聖が俺を押し倒す。

 

「これで私のもの――」

「さて、それはどうかな?」

 

俺は無理やり起き上がり、上から俺が押し倒す形になる。

 

「これで俺のもの、だな」

「何するの!って、動けない・・・」

 

手首を掴んでいるのだから動けない筈だ。俺は喋れないように口を塞ごうとする。しかし手はもう話せない。こうなると口を使いしかない。

チュッ

喋れないようにするためのキスをする。別にやらしい気持ちはない。

 

「うふふ、もう負けたわ。好きにして」

 

好きにしてと言われても何もすることないぞ?俺は取り敢えず(とりあえず)千聖を抱く。

 

「別に何もすることないぞ?」

「ずっと抱き締めてキスしてればいいのよ」

 

それはいいのか?俺は抱き締めたままキスをする。

 

「んっ」

「んっ、んちゅっ、くちゅっ」

 

くちゅっ?何の音だと思い、舌で口を探る。

 

「んっ、んっ、んんっ!」

 

少し籠りながらも手を何かというのは聞こえた。自分の手を見ると、俺の手は千聖の胸に当たっていた。けど、ラブホだったらいいんじゃないのかと思い、そのまま揉み始める。

 

「んんんっ!」

 

千聖が俺を押す。同時に胸から手が離れる。

 

「結婚してからにしてよ・・・」

 

可愛すぎる。こんなの抱きたくなるだろ。

 

「ひゃっ」

 

性格が急に変わってくる。こういう一面もあるんだな。

 

「千聖、可愛すぎ」

「ポイントかな♪」

 

ポイントだ。30くらいあげてもいい。

 

「30でどうだ」

「満足。」

 

よかった。俺は30分くらい抱きついていた。

家に帰ってきた俺を待っていたのは彩・・・と言いたいところだが、実際待っていたのは、蘭。

 

「どうして蘭がいるんだ?」

「遊びに来ただけ。」

「そうか・・・」

玄関から彩ちゃんが出てきた。

 

「嘘はダメだよ、蘭ちゃん。柊くんに会いたくて来たんでしょ?」

 

あちゃー、簡単にバレたね。

 

「ちょっ、彩さん・・・」

「なぁに?本当でしょ?」

 

俺は先に中に入る。同時にソファーで寝る。

 

 

 




1006文字!短めだなぁ(;゜゜)
次回は結構長いかも。それでは!
see you next time!


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第6話 デート 3日目




10月10日、平日の金曜日。彩以外は皆休日にデートしていたが、彩だけは平日だった。しかも1番時間の早い6時半。結構遠くまで行くのだろう。豊田駅からは始発の電車もあるが、それほどたくさんはない。しかし5時に出たのにも関わらず、駅前で時間を潰す。

 

「何で5時に出たんだよ」

「ちょっと来てみて」

 

彩が俺の手を引く。俺は身を彩に任せる。

数分歩くと中央線の車庫、豊田車両センターが見えてくる。

 

「朝にここ来るとね、電車がすこしづつ出てくんだ。私、こういうの見るの好きなの」

 

確かに電車がどんどん出ていく。今は5時過ぎのため朝ラッシュの少し前。だから出ていくのだ。逆に9時を過ぎると入ってくる、というのが平日だ。

 

「確かに、気持ちいいよな。それで、どこ行くんだ」

「遠いんだけど、ひたちなか海浜公園ってとこ」

 

ひたちなかってことは茨城だ。茨城に行くんだったらこれほど早くないとダメだろう。

 

6時になって駅に向かう。朝ラッシュ真っ只中のため駅に人が吸い込まれていく。そんななかで俺たち2人は旅行。何か変な感じがする。

 

「ごめんね、こんな早くて」

「いや、別にいいよ。」

 

豊田も通勤ラッシュ時間帯になるとかなり混んでくる。特に今回乗る6時25分の中央特快は大月始発で優等列車のため混んでいるだろう。

ホームにつき、中央特快が15分遅れて到着。八王子で人立ち入りがあったそうだ。遅れていることもあり、普段より明らか混んでいる。しかしまだ空いているスペースはあり、まだマシだ。

 

「乗り換えは大丈夫か」

「うん。本来は新宿から山手線半周で上野まで行く予定だったんだけど、東京まで行けばいいだけ」

 

半周は時間調整だったのだろう。

 

国分寺で前を走っていた快速を追い越し、更に混んでくる。彩がドアに寄りかかっているため、俺がその前にいる状態だ。必死で耐えるが、ドアに手を付けないと少し厳しい。

 

「彩、ドアに手ついていいかな」

「うん。いいよ」

 

俺は右手をドアにつく。次は三鷹に停車する。

 

十数分遅れて三鷹に到着。降りる客もいるが、その大半はもう一回乗ってくる。ホームにも駅員が押して乗るようなかなり混んでいる状態になる。

俺は後ろから押されて少し前に出る。またぶつかられると俺はバランスを崩し、彩にぶつかる寸前になる。焦って俺の手は下にある。ドアも閉まりづらいらしく、何回も開閉している。

 

「ん?なんか股に当たってる・・・?」

 

【丸山彩視点】

 

結構近くなって私も少しドキドキし始める。周りに聞こえてしまうのではないかと思うくらいに大きく鳴る。そこに何か股の部分に固いものが当たってるのに気付く。

 

「ん?なんか股に当たってる・・・?」

 

私は痴漢かと思ったが、前には柊くんしかいない。柊くんの何かが当たっているのだろう。

 

「柊くん、手、何かに当たってない?」

「俺の手か。ちょっと指を動かすぞ。」

 

柊くんが指を動かす。股にやっぱり違和感がある。すると、どうしても声が出てしまう感じになってしまう。

 

「あんっ、しゅ、柊くんっ、股に当たってるから・・・離してぇっ・・・」

「離せって言われても、こっちだって動けないし」

 

後ろにも前にも動けないのは私もだけど、動かないと私、我慢できなくなっちゃう・・・

その時、

むにゅっ

私の股を柊くんが優しく掴んだ。

 

「柊くん!?つ、掴まないでよ・・・」

「ご、ごめん・・・うっ」

 

柊くんが前に急に来る。後ろから押されたのだろう。だけど私の股がもっと強く掴まれちゃってる・・・

 

「彩、少し我慢してくれないか」

「む、無理だよぉ、声出ちゃうもん・・・」

 

電車が揺れる度に股も擦れる。

 

「あんっ」

「彩、静かにしてくれ」

 

【月島柊視点】

 

「彩、静かにしてくれ」

 

俺は口を口で塞ぐ。

 

「んにゅっ」

 

お願いだから静かにしてくれよ

 

「ん、はむん、んっ」

 

キスしてるだけだと思ってるのか?

 

「はぁ、彩、静かにしてくれ」

「どこまで?」

「東京まで。痴漢と間違われる」

「はぁい・・・」

 

そして東京には10分遅れて7時8分につく。このあとは7時13分発山手線に乗車。上野には7時21分につく。

「次は常磐線なんだよな?」

「うん。地平ホームからね」

在来線に乗るのかと思ったら8時丁度発のひたち3号だった。

 

「勝田まで行くんだ。」

 

彩がワクワクしながら言った。

ひたちなか海浜公園につくと2人で漕ぐタイプの自転車を借りる。1日券があり、いろんな所へ行った。

 

「柊くん、みてみて!サークルがあるよ!」

 

先頭は彩だった。後ろからだと見える筈がない。

 

「俺は見えないけどなっ」

 

俺は思いっきり強く漕ぐ。グンと速くなる。

 

「アッハハ、はやいはやい!」

 

子供のようにはしゃぐ彩。俺は思いっきり漕いだままいた。

 

海辺のエリアまで来た。俺は芝生に横になる。

 

「疲れたー・・・無理言うなよ、彩」

「ごめーん、けど楽しかったよ?」

 

そういう問題じゃない。

 

「風気持ちいいね」

 

急に話題を反らしてくる。

 

「あぁ、そうだな。ここにずっといようかな」

「ダメだよ、柊くん。ちゃんと運動しないと」

 

お前に言われたくない。と心のなかで思っていた。

 

 

 

 

 



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番外編1話 デート 3.141526日目

デート3日目の続きです。


俺は彩と手を繋ぎ、空を眺めながら言った。

 

「彩、そういうところあったんだな」

「うん。私ね、こういうところ好きなんだ。1回柊くんを連れてきたくて」

 

そうだったんだ。今までの彩ちゃんと今日の彩、全くと言っていいほど変わっている。

 

「彩、俺の嫁になる覚悟はあるか」

「・・・してくれるの?」

「いや、まだ決まってない。ただ、覚悟はあるのか」

 

覚悟がないと嫁にすることはできない。

 

「うん。あるよ」

 

真剣な口調だ。

 

「そうか。」

 

俺は今までのことを言う。

 

「俺の中では今の状態だと2択なんだ。蘭か彩のどちらか。彩、いや、彩ちゃん」

 

「うん。何、柊くん」

 

俺は唯一のポイント稼ぎを行う。

 

「そこのレストランみたいなとこ行こうか」

「うん」

 

俺が試したかったのは食事しているときどうするか。蘭だったらスプーンをもってきていたが、彩はどうなのか。

 

「彩、食わないのか」

 

一切口をつけていない。何か悩んでいるのだろうか。

 

「柊くん、あぁん」

 

まさかの俺がやっていないのに自分からやって来た。

高得点だな。

 

「いいじゃんか?はむっ、これも美味しいな。ほら」

 

俺があとでやるとは思わなかった。

 

「彩、5年前と違うな」

「うん。5年も前だからね」

 

彩が食べながら言う。俺も、変わったのかな。

 

勝田まで戻り、もう22時半を過ぎていた。前から常磐線我孫子行き最終電車が出発していった。

俺たちは駅前のホテルに泊まることにした。

 

「疲れたか?」

「ううん。楽しかった。ありがと、柊くん」

「いいよ。あとはましろだけだが・・・」

 

その時、スマホの電話がなる。

 

「はい、月島です。」

 

〈柊くん、ごめん。来年じゃないとダメかも〉

 

「あぁ、別に大丈夫だぞ。渋谷で待ってようか」

 

〈うん。ありがと。じゃ〉

 

「うん。じゃあな」

 

【白鷺千聖視点】

 

彩ちゃんです帰ってこないってことはホテルに泊まることにしたのね。私もそうしたらよかったのかしら。

ウフフ♪

「千聖さん、怖いですよ」

「ん?何が?」

少しくらい怖くたっていいじゃない。

 

【美竹蘭視点】

 

私はリビングで寝ることにした。柊くんがいないから私は自慰行為をした。

 

「あんっ、いやっ、あぁっ」

たった一人で喘ぎ声を出す。柊くん、私とエッチしたくないかな?

 

【丸山彩視点】

 

私は柊くんとエッチをしている。なぜかって?それは、ここがエッチをするところ、そう。ラブホテルなのだから。ここでもう私を襲っちゃうのがセオリー。

「柊くん、シちゃおうよ」

「彩、まだ早いんじゃないか」

「もう我慢できない」

 




番外編みたいなものなので1000文字で終わりです。さて、次回もお楽しみに!
see you next time


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第7話 結果

「もう我慢できない」

 

彩がそう言った。俺だって耐えている。しかしまだ早い。23だし。

 

「まだ早いんじゃないか。俺だって耐えてるんだから」

「無理しないで。5分で考えてね。私飲み物買ってくるから」

 

彩が部屋を出ていく。俺はベットに横になる。

 

(はぁ、本当にいいのかよ・・・)

 

俺は横になったまま考える。

 

10分たっても彩は帰ってこない。5分だと言っていたのに、10分は長い気がする。俺は彩に電話する。すると直ぐに

 

〈お掛けになった電話は電波の届かない――〉

 

電源を切っているのか?電話が通じない。

そしてそれからさらに10分たつ。やっぱりおかしい。俺は鍵を閉めて下に降りる。コンビニに行っただろうし、俺は外に出る。丁度土浦行き最終が出発していった。もうすぐ日を跨ぐのだ。

 

「止めて!離して!」

 

ナンパか。と、俺は興味を持たずにそのまま通り過ぎようとする。しかし、少し横を見ると彩だった。

 

「いいじゃねぇかよ。彼氏もいないんだろう?」

 

俺は握りしめて高校以来の魔法を使う。風魔法だったら被害はでない。俺は風魔法を解き、手をナンパの所へ。

 

「ナンパはやめろよ。」

 

そう言い残し、風魔法が発動する。俺は彩を守らなければいけない。そう思った。

部屋に戻った俺たちは結果を話す。

 

「それで、結果は」

「まだ早いと思う。明日まで寝て、始発で帰るぞ」

 

俺は毛布をかぶり、睡眠をとる。明日は始発なのだから早く寝ないと起きれない。

 

翌日、俺は3時半に外に出る。ちょっとした散歩だ。彩も一緒で、3時間くらいしか寝ていない。

 

「眠いー」

 

彩が俺を見て言った。

 

「昨日寝るのが遅かったしな。しょうがないだろ」

「だからって早いよぉ」

 

確かに時間は早い。4時27分上野行きだが、今の時刻は3時47分。もちろん普通は起きていない。

 

「あの、ちょっといいですか」

「え?は、はい。」

 

誰かから質問された。こんな朝早くに。俺が後ろを向くと、茶色の髪の女の子がいた。

 

「上野に行きたいんですけど、何に乗ればいいか分からなくて――って、あれ?」

「えっと、勝田駅から常磐線に――あっ!」

 

俺はその子に見覚えがあった。大体6年くらい前だが、上野に行ったとき、アイドルが歌っていたから見に行った。そのときに出会ったアイドルの子だ。

 

「あーや?」

「つっきーだよね」

 

それから仲良くなった俺たちは、互いにあーや、つっきーと呼んでいたんだ。

 

「久しぶり。何年ぶり?」

「多分5、6年くらいかな。嬉しいよ、会えて」

 

彩だけが不思議そうな顔でいる。そうか、彩だけ知らないのか。

 

「こいつは立川綾香。俺はあーやって呼んでるけど。あーや、こっちは俺と同居してる丸山彩だ。仲良くしてあげてくれ」

「よろしくね、綾香ちゃん」

「よろしくー」

 

あーやは大体こうだ。セクシー担当だが、私生活は結構クール。

 

 

 

 

 




1129文字か。大体このくらいですね。大体って言葉を使いすぎてる気がする()次回もお楽しみに!


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第8話 絢香

4時27分発上野行きに乗り、一旦水戸で降りた。少し飲み物を買いたかったそうだ。次の電車は5時16分品川行き。あと49分ある。

 

「お待たせ、買ってきたよ」

「あ、あぁ・・・」

「どうした?つっきー」

「次の電車さ、5時16分までなかった」

 

俺は現実を言った。

 

「あと1時間くらいだね。ちょっとトイレ行ってくるね」

 

彩が1人で行った。1人で大丈夫だろうか。俺は駅のベンチであーやと待つ。

 

「帰りグリーン車乗ってくか」

「へぇ、成長したね」

 

まぁ、月に100万貰ってたらな。520円×3人くらいだったら。俺はグリーン車券売機に行き、グリーン券情報を入れる。

 

【丸山彩視点】

 

ベンチで待ってると連絡をもらったからベンチに向かったんだけど、柊くんはいなかった。

 

(どこだろ・・・)

「彩!ごめんな」

 

少し遠くから柊くんの声がした。

 

「柊くん!どこ行ってたの?」

「グリーン券買ってきた。結構乗るからさ」

「へぇ、優しいね」

「まぁな。」

 

私はベンチに座って電車を待つ。私を真ん中にして、柊くん、私、綾香ちゃんの順番だった。

 

「どうして私が真ん中?」

「だって隣に知らない人いたら嫌だろ?」

 

やっぱり柊くんは優しい。隣に知らない人が座らないようにしてくれてたんだ。

 

【月島柊視点】

 

5時15分に品川行きが到着した。俺たちは4号車に乗ることにした。2列ずつの座席で、3人だと1つ余ってしまう。

 

「私が余り座ろうか」

 

あーやが言った。隣に知らない人が座ってくるかも知れないのに。

 

「いいのか、あーや」

「いいよ。彩と隣がいいでしょ」

 

隠れて優しいところもあるんだよな。俺は6年前に決めていた「ありがとう」の合図を手でおくる。

 

「彩、窓側座るか」

「いいの?」

「あぁ。」

 

彩が俺の前を通り、窓側の席に座る。上野まで約2時間だ。

 

上野につくと、あーやが言った。

 

「つっきーはどこなの、家」

「豊田ってとこなんだけど、何で?」

「いや。なんとなく?」

 

なんだそりゃと思いながら俺はそのまま東京まで乗る。

東京には7時24分。

 

「・・・///」

 

彩の顔が赤くなる。

 

「どうした?彩」

「早くシたいから・・・」

 

彩が下を向いて言った。

 

「しょうがない、ちょっと手かして」

「うん」

 

俺はまた高校生以来の魔法を使う。転移魔法だ。

 

「転移、ホーム」

 

5秒ほどで家の玄関につく。

 

「ほら、これでできるでしょ」

「柊くん・・・」

 

俺たちは部屋のベットの上で向かい合う。隙だらけだが、まだ押し倒さない。

 

「これで舌出したらどうなるかな」

「出してみろよ、気になるんだったら」

 

俺と彩は舌を出す。長さ的に少しだけ付く。

 

「んっ、ちょっとついた・・・」

 

今だと思い、彩を押し倒す。

 

「あんっ、柊くん!?」

「シたいんじゃなかったのか」

「なんだ、覚えてたんだ」

 

俺は彩の股に手をやる。そしてスカートから中に手を入れ、本当の肌に手をやる。くちゅっと音がした。

 

「もう中に入れちゃったんだ。イっちゃったら柊くん責任とってね?」

「もちろん。まぁ、イかせちゃうけどね」

 

俺は手を穴の中に入れる。人差し指だ。

 

「あぁっ、ほんとに入ってるみたいぃっ」

 

俺はその指を上下に動かす。挿入している感じになるはずだ。

 

「やっ、やめっ、あぁぁっ、イっちゃうぅっ!!」

「イけばいい。ほら、早く」

俺はそのまま上下に動かす。

「もうっ、らめぇぇっ!」

 

 



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第9話 絢香 2日目

綾香ちゃん主役です。彩ちゃんとか千聖ちゃんはあんまり出てこないよ(´Д` )


【立川綾香視点】

 

私はひたちなかに遊びに来ていたのだが、上野の帰りが分からなくて途方に暮れていた。3時半なのだから、外に出ている人は少ない。そこに、男女2人がいたので道を聞いてみた。

 

「あの、ちょっといいですか」

「え?あ、はい。」

 

優しそうな男の人が答えてくれた。

 

「上野に行きたいんですけど、何に乗ればいいか分からなくて――って、あれ?」

「勝田から常磐線に――あ!」

 

その男の人は6年くらい前にアイドルで歌ってたときに会った人だった。名前は、たしか・・・

 

「あーや?」

 

相手も覚えているらしい。ってことは、

 

「つっきーだよね?」

 

やっぱり、つっきーだった。

 

「久しぶり、何年ぶり?」

「多分5、6年くらいかな。嬉しいよ、会えて」

 

水戸からまた電車に乗った私たちは私が1人で座ることになった。通路を挟んで隣につっきーがいる。つっきーは少し眠そうにしていて、やがて友部を出発した辺りでついに寝てしまった。

 

「ふふっ、ねたねた」

 

私は立ち上がり、手を寝ているつっきーの後ろにやる。そして顔を近づける。

 

「何やってるの?綾香ちゃん」

 

彩だった。

 

「襲うとか。」

 

彩がおもいっきり顔を赤くする。

 

「好きなの、つっきーのこと」

「うん。渡したくない」

 

渡したくないって、本気で好きなんだ。けど、私も離す気はない。6年前から好きだったんだから。

 

「私も離す気はないよ」

「ふーん、ライバルね」

 

その時、分岐した電車に揺られて結構近くなってしまう。だけど都合がいい。このままキスしちゃえば・・・

 

「ダメっ!」

 

彩が私の口に蓋をするように手を当ててきた。

 

「だったらすればいいのに。はぁぁ」

 

私も眠く、思わず欠伸(あくび)をする。

 

「キスするんだったらすれば。私も寝るから」

「う、うん・・・」

 

日暮里を出発し、私が降りる準備をしているとつっきーが話かけてきた。

 

「今日もアイドルか」

「うん。上野でライブ」

「頑張れよ」

「もちろん。」

 

つっきーも応援してくれてるんだ。その分まで頑張らなくちゃ。私は上野に着くなり手を振って階段を上がる。動物園の方にある改札を出ていく。前では22/7のみんなが待っていた。

 

「綾香ちゃん、おはよ」

「うん。おはよ」

「さ、全員揃ったから事務所向かうわよ」

 

麗華がリーダーっぽく言った。本当にリーダーだけど。

 

「さすがリーダー」

「もう、行くわよ」

 

私は正直いってこのアイドルが大好きだ。1回解散危機もあったが、それからまた仲が深まった気がする。今思えば、狙って壁が吐いたのかもしれない。エリザベスやクリステル、風紀委員も私があだ名をつけたが、いまはそれでも全く違和感はない。それほど馴染めたのだろう。

 

「馴染めたのかな」

 

私は1人呟く。

 

「なんか言った?」

 

麗華が私の方を振り向いて言った。多分、言わなくても分かってるよね。

 

「何でもない。行くよ」

 

私がアイドルをやってる理由は大して大きくない。けど、こんなグループに入っていられるのなら、私は続けてもいいと思う。

 

 




彩ちゃんは最初の方だけ出てきましたね。まぁ、最初のほとんどは8話や9話のそのまま書いてるので当然ですね。
さて、次回からは柊の新しい仕事が始まります!その仕事、予想しても面白いのではないでしょうか。
(予想したい方は感想を書くところに書いてくれれば嬉しいです。)それではまたお会いしましょう!see you!


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第10話 仕事

また彩ちゃんと千聖ちゃんなどはあんまり出てきません。楽しみにしていた方、申し訳ない
m(_ _)m
次々回は主役の予定です。
さて、今日は綾香ちゃんも出てきますが、どっちかと言うとナナニジ全体が主役かな。
まぁ、いつものように月島柊は出てきます。


「もう行くの」

 

彩が聞いてきた。

 

「あぁ、もう行くよ。行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

俺と彩のこんなやり取り、意外と初めてかもしれない。

俺が就職した仕事はアイドルのマネージャー。ダンスの様子も見に行くそうだ。上野だからまぁ、高校よりかは近いだろう。たしか籠原から鹿島田までだったから。

俺は朝、いや、早朝の快速で東京の1つ手前の神田まで行く。本当なら終点の東京まで行ってもいいのだが、東京の場合、高い位置にある中央線ホームから地上にある山手線ホームまで下らなければならない。しかし神田で乗り換えると、同じ地上に位置するため、わざわざ高いところから乗り換えなくてもよくなる。

乗ったのは4時28分発快速東京行き。なんか2020年までは各駅停車だったらしいが、今考えればどんな経路を通っていたのか気になってくる。俺は10年前の2020年の時刻を調べてみる。豊田出発時刻は変わっていないが東京到着が9分遅くなっていた。別のサイトで調べてみると、三鷹手前の分岐で総武線に転線し、御茶ノ水手前でまた中央線に転線するという状態だったらしい。正直、見てみたい気もしたが。

 

武蔵境を出発し、三鷹手前が近づいてくる。やがて車両センターの横を通過すると分岐器の上を通るガタガタという音が車内に響く。ここだったんだ。何かタイムスリップしたようだった。

 

新宿に着いたのは5時10分ちょっと前。乗客はそんなに乗ってこなかった。

そして御茶ノ水手前でまたガタガタという音が車内に響く。2020年まで中央線に戻ってくるために使っていた分岐器を通る音だ。通過するとすぐに御茶ノ水に到着する。あと1駅だ。

 

神田には5時21分。ここから上野に行くわけだが、2通りある。山手線で行くか、京浜東北線で行くかだ。

電光掲示板を見ると山手線が5時28分、京浜東北線が5時29分とかかれていた。1分の差だったらどっちに乗っても大して変わらない筈だ。

俺は好きな色がラインカラーの京浜東北線に乗った。水色にしか見えないが、正式な色の名前はあるのだろうか。いつも思ってしまう。

京浜東北線が入線してくると、電車のドアとホームドアがほぼ同時に開き、乗れるようになる。途中、秋葉原と御徒町に停車して上野に着く。5時35分だった。

 

事務所の中に入るとエレベーターがあり、それを上に上がる。ドアが開くと映画館の待っているところのような明るさの空間が広がっていた。そして、1人の少女が走って俺のところに来た。

 

「新しいマネージャーさん?」

 

結構元気のいい声だ。

 

「うん。よろしくね。えっと、名前は」

「戸田ジュン!ジュンって呼んでね、マネージャーさん」

「ありがと。わかったよ。ジュン」

 

俺は早速呼べと言われた呼び方で呼ぶ。他にも10人いるって聞いたから、まだいるのだろう。

俺が奥に進むと残りの10人が個人個人自由な格好をして待っていた。

 

「あなたが新しいマネージャー」

 

1番大人っぽい人が俺を睨むように見てきた。

 

「うん。名前は」

「斉藤ニコル。よろしくね」

 

1番クールだった。こういう人もいるのか。

 

「私がリーダーの佐藤麗華です。よろしくお願いします」

「よろしくね。敬語は使わなくていいよ」

 

さて、あと8人か。さすがに1人ずつ聞いてたら時間がかかる。

 

「みんな並んで1人ずつ名前を言ってくれないかな。」

「私柊つぼみ!」

「東條悠希!」

「神木みかみ。よろしく」

 

落ち着いたような口調だ。続いて自己紹介は進む。

 

「藤間桜。よろしく、マネージャーさん」

「滝川・・・みうです・・・」

 

人見知りなのか緊張していた。

 

「河野都や!よろしく!」

 

急なハイテンション。ギャップがすごいな。

 

「丸山あかねです。」

 

やっぱり。ギャップがすごい。ってことは次は・・・と思っていると、まさかの

 

「立川綾香。よろしくー」

 

あーや?綾香の名前が聞こえた。

 

「マネージャーさん、名前は?」

「あ、あぁ、月島柊。柊かマネージャーでいい」

「つっきー!?」

 

やっぱり。あーやだよな。俺は気づいていたからいたって冷静。

 

「よ、あーや」

「つっきーがマネージャー?」

「何?綾香知ってるの」

 

知ってるも何も、昨日会ったもんな。

 

「う、うん・・・昨日会った・・・」

「へぇ、ま、よろしくね」

 

ジュンが言う。話題の転換の速さ、驚くよ。

 

9時になり22/7のダンス練習の時間がきた。俺はレッスンする場所に先回りする。

 

「そこで大丈夫か」

 

ダンスの先生だ。

 

「そんなに気付かれないようにする気もないんで。」

「そうか。誰もいないふりしとこうか」

「はい。助かります」

 

10分くらいたつとドアが開き、11人が入ってきた。

 

「よーし、今日も練習するぞー」

 

ちゃんと気づいていないふりをしてくれている。

 

「はーい」

 

こっちに向かって来るときに俺は乗っていた台から飛び降りる。

 

「はーい、頑張れよ」

「はい、って、マネージャー!?」

「見学だよ見学。気にするな」

 

そう言って俺は床に座る。真剣に見ていると、いつの間にか終わっていた。

 

「麗華、ちょっと来て」

 

俺は麗華を呼び出す。俺だって教えるために来たのだから。

 

「後ろだからって、油断するな。ファンには麗華推しの人だっているんだから」

「はい!」

 

気合いの入っている声。期待できるな。ダンスの先生の方も個人で呼び出して教えている。

そして教え終わったあとの2回目。今度は麗華もしっかり踊っていた。ただ、1つ気になるのが・・・

 

「綾香、ちょっと来て」

 

ここではあーやのことを綾香と呼ぶことにした。

 

「あのさ、疲れるの皆より早くないか」

「漫画家だから――」

「言い訳にならないぞ。ま、それだけだ」

 

俺は3回目、4回目も見て評価した。レッスンが終わったのは11時過ぎだった。

 

「お疲れ様。俺はもう帰るけど、何か足りないことがあったらついてきて」

 

俺はエレベーターで下の階に降りる。後ろをついてきたのはいないだろうと思っていたが、意外と3人いた。

 

「なんか質問か」

「・・・恋に関しての・・・」

 

恋?俺あんまり恋愛には詳しくないぞ?

 

「マネージャーのことが好きって言ったら、マネージャーはどう返しますか?」

「どう返すか、か。そうだな、悩むかもしれない。特に、君たちみたいにあんまり会ったことのない人だと尚更。なんでだ?」

「いや、なんとなく・・・?」

 

なんとなくって・・・

 

「そうか。じゃ、お疲れ様」

「はい・・・お疲れ様でした・・・」

 

俺は上野駅に向かい、豊田に帰る。

 

 

 




2000文字超えました。なんか2000以上になるかもしれないです。これから先。
さて、次回は彩ちゃんがやっと出てきます!(これでも最初にちょっと出てるのは内緒)主役じゃないんだけどね。ちなみに次回の主役は月島柊です。次々回は彩ちゃんが主役だから待っててね。
実を言うと、筆者は中学生なんですね。期末テストがもうすぐなので、投稿頻度落ちるかも。まぁ、気長に待っててくれれば。
では、次回もお楽しみに!


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第11話 ライトソード(光剣)

SAOは関係ないです。


帰ってきた俺は1人で部屋に入り、ベットに横たわる。

 

「はぁぁ・・・」

 

俺は手に持っていたライトソードを眺めながらため息をついた。スイッチを入れないと光の部分が出ないため、今はただの棒。

 

「久しぶりに使ってみるか」

 

俺は久しぶりにスイッチを入れ、ライトブレードを出す。音は結構静かで、空気を切る音も聞こえない。まぁ、ただの光みたいなやつだし。

俺は暫く歩いて空き地に向かう。ここで肩慣らしをするのだ。

コマンドからランダムにターゲットを出し、それを斬っていく。

 

「よっと」

 

次々にターゲットが飛んでくるから結構難しい。当たるともちろん痛い。まぁ、そうでもないが。

 

「あれ?・・・って下か!」

 

下に飛んできたターゲットに気付かず、ターゲットが俺の足にぶつかる。

 

「いって・・・」

「何してるの?」

 

俺が足を押さえているときに来たのは彩だった。

 

「彩?アイドルはどうしたんだ」

「終わったから来たの!それで、足どうしたの」

「あぁ、さっきターゲットが当たってな」

 

俺は事情をすべて伝えると、彩が言い出した。

 

「大丈夫?おっぱい揉む?」

「へ?」

 

衝撃だった。急にそんなこと言われたのだから。だけどやっぱり揉んだ方がいいのかな・・・?って、何想像してんだ俺!

 

「彩?いいのか・・・?」

「そんな大きさはないけど・・・心配だから」

 

俺は手を彩の胸に向ける。すごい緊張するが、このままやっていいのか分からない。俺はそのまま手を出し、彩の胸を揉む。

 

「あんっ」

「やっぱダメか」

「別にいい・・・」

 

俺は再び胸を揉む。

 

「んひゃっ!」

「どこか当たったか!?」

 

俺は焦って聞く。

 

「乳首、当たってる・・・」

「うっ、ご、ごめん・・・」

 

俺はまたライトソードを持ち振る。もちろん人を殺すためではない。助ける為だったら躊躇わず殺すけどな。またブウォンという音を鳴らし、ライトソードを振る。

 

「なんでライトソードなんてやってるの?魔法でもいいだろうに」

「人を守るため、かな。魔法だと物理的に守れないから。」

 

俺はとにかく振る。1番は高校で唯一と言ってもよいほど覚えていた胡桃。俺が大学にいくために引っ越した時、胡桃はすごく泣いて送り出していた。

 

【6年前】

 

俺は胡桃の家に行ってから引っ越した。当日にしか教えてなかったから結構驚いただろう。俺は手を振ってバスに乗った。このときに悪いことをしたと思った。当日にしか教えないで急にいなくなる。悲しかったことだろう。北海道に着いて連絡をしようとするが、通じなかった。1ヶ月、2ヶ月と経ってから見てもやっぱり返事はない。やっぱり、怒っているのだろうか。悲しんでいるのだろうか。俺は謝りたいがためにメールに「ごめん」と1言書き残し、スマホ電源を切る。読まないだろうと思いながらも、少しの期待を抱きながら俺は大学に向かった。

帰ってきてからスマホを見てみても返事、既読はついていない。見ていないんだろう。やっぱり、俺のこと嫌ってるのか・・・?だとしたら、こうやって送ってるのだって迷惑なんじゃ?だったらもう送らないようにしよう。向こうにとってもこれがいい筈だ。果たして、次はいつ会えるんだろう。と、思ってる自分がいながらも俺はスマホの電源を切った。

 

【現在】

 

「・・・会いに行こうかな・・・」

 

ボソッと独り言を言った。

 

「会いに行くって、誰に?」

 

彩が聞いてくる。聞こえてたのか。

 

「6年前の葉元胡桃って覚えてるか、そいつに会いに行こうと思ってさ」

「だったら私も行きたい!」

 

いつ会いに行くかだ。明日も俺はマネージャーの仕事だし、次の休みはまだあとだ。

 

「彩、いつ行くんだ?」

「明日仕事終わってからは?鴻巣・・・だっけ?」

 

何だ、結構彩も覚えてたのか。なら明日の方がいいだろう。

 

「分かった。上野で待っててくれ」

 

 

 

 

 




ども。次回はやっと彩ちゃん主役です。ですが、スペシャル編1話としてやります。結構短いので勘弁してね。それでは次回もお楽しみに!


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スペシャル編1話 来客

柊くんが帰ってくる前日、私は果物などを買い出しに行って柊くんを待っていた。やっぱり甘いのがいいのかな。みかんとかリンゴとかがいいかな。とか考えながら私は買い出しをしていた。

 

家に帰ってから早速調理を始める。とにかく喜んでほしい。そう思って作っている。

 

そして当日、お母さんの車に乗って羽田空港へ向かう。

 

「月島くんとは結婚する気でいるの?彩」

「うん!早くしたいなー」

 

私は隠しきれていないほどに楽しみだった。

 

空港から柊くんを乗せた車の中で私と柊くんはいろんな話をしていた。北海道で何してたとか、逆にこっちが何してたとか。話は絶えることなく続いていた。車が揺れて押し倒すようになっても話続けていた。

 

「へぇ、そんなことしてたんだ。楽しそうだね」

「まぁ慣れなかったけどな。やっぱ東京の方がいい」

「それだけの理由で?」

 

私は「彩もいるし」って言ってもらいたくて聞いた。柊くんは私を近づけて顔の近くで言った。

 

「彩もいるしな。ほら、ハグしないか」

「もう、卑怯じゃないの?」

 

私がそういっても柊くんはハグしてくる。苦しくなくて優しく抱いてくれた。

 

「・・・・・・ちゅっ」

「ん!?」

 

柊くんがキスしてきた。すぐに私はとろけるようにだらりとなってしまう。

 

「んんっ、はぁ、んんっ」

 

キスしたまま5分はいた。

 

部屋に柊くんが戻って、フルーツを出した。

 

「柊くん!来て!」

 

私は聞こえるように叫んだ。柊くんは階段をかけ下りてきた。

 

「うわっ!」

「えっ!?」

 

最後の段を踏むときに踏み外し、バランスを崩していた。柊くんはそのまま私に突っ込んでくるようにぶつかってしまう。それになんか股の下に違和感・・・

 

「ん?柊、くん?この手・・・?」

「あ、ごめん・・・いたっ」

 

柊くんは起き上がれなくなっていた。なんでこんな向こうから見たらラッキースケベみたいな状況になっちゃってるの!しかも頑張って柊くん起き上がろうとしてるから何回も押されてるし、なんか指が入ってるし。何回もやったらくちゅって鳴っちゃうからぁ・・・

 

「あっ!」

「ん?なんか狭いとこ指入ってる?」

「柊くん・・・そこ、膣・・・」

「んなっ!」

 

少し上下に動く。これって、赤ちゃんつくるための練習って考えれば落ち着いていられるかな?

 

「あぁぁっ、むりむり!」

「動かない方がいいか?」

「動かないで・・・」

 

やっと落ち着いた。けどこれをお母さんに見られちゃ・・・その時、私の股からブシャっと・・・

 

「あ、彩・・・」

「出ちゃった・・・」

 

私たちはそこでずっと止まっていた。向かい合わせに座って。



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第12話 胡桃

胡桃のこと覚えてます?0話以来出てきてないですが。また会いに行きますよ!


俺は今日もナナニジのマネージャーだ。レッスンや、もうすぐあるライブに向けて自己紹介の内容を話し合っているらしい。俺は会場の手配や車の手配など色んな手配をしていた。そこに1つ、衝撃の内容が書かれていた。明後日にライブを実施する趣旨が書かれていた。

1回みんなに会いに行き、早くなったライブのことと、自己紹介の内容を聞く。

 

「自己紹介はどうなった・・・」

「完璧!もう明日ライブできるくらい!」

「そうか・・・」

 

俺は言いづらかった。こんな自信に満ちているジュンにあの事を伝える。けど明日にでもできるんだったら、

 

「あのさ、今回のライブなんだけど、明後日になった」

「え?」

 

みんなが黙りこんだ。十分じゃなかったメンバーもいるかもしれない。それなのに、こんな急に伝えられたらどれだけ不安だろう――

 

「大丈夫。やれるでしょ」

「うん!抜き打ちライブみたいで楽しそう!」

 

綾香が言い出した。どうして無理かもしれないことを言ったんだ?

 

「つっきー、来て」

「え?あ、あぁ」

 

綾香が俺の手を掴み、部屋の隅に連れていく。

 

「どうしてあんなことを」

「つっきーさ、いっつも頑張ってるでしょ、だから少しでも安心させたかっただけ」

 

あーや、優しいんだな、やっぱり。

 

上野駅に向かい、彩を探す。改札口にはいると思うが、どこにいるのだろう。

 

「柊くん!こっちこっち!」

 

大きな声で、大きく手を振っている。ホームにかなり響く声だ。

 

「ちょっ、彩、静かにしてくれ。声がでかい」

「あっ、ごめん・・・」

 

少し落ち込んじゃったか?

 

「いや、程よい声量だったら別にいいから、な?」

「うん!」

 

やっぱり彩はこうじゃないと。ぽくないよな。

上野から胡桃の家がある鴻巣まで行くのだが、19時でもう結構遅い。速く行きたいが、大人しく19時9分の始発で鴻巣まで行く。

乗ったのは12号車。led表示盤には、籠原行と書かれていた。籠原か、懐かしいな。

 

「籠原・・・」

「柊くんの住んでたところね」

 

彩も覚えていたそうだ。6年も前になるが、胡桃と会ったのも鴻巣だった。俺にとって鴻巣は出会いの地。胡桃は何をしているんだろう。就職しているのか、バイトをしているのか。全くといってもいいほど6年前から連絡をとっていない。

 

「胡桃、家にいるかな・・・」

「大丈夫。きっといるよ。」

 

 

鴻巣には19時59分。ついに6年ぶりに来たのだ。6年経っても胡桃の家までは覚えていた。

胡桃の家に着き、ピンポンを押す。

 

《はーい》

 

お母さんだろうか。少し甲高い声がした。

 

「胡桃っていますかね。月島なんですが」

《あらまぁ、月島くん?胡桃はなんか9時から帰ってこなくて》

 

帰ってこないって家出かなんかか?

 

「警察の方には」

《行方不明届は出したわ。》

「俺も探してきます。お母さんは家で待っていて下さい。警察が来るかもしれませんので」

 

俺は彩を胡桃の家においていき、1人で探しにいった。9時にいなくなったってことはもう10時間経っている。結構遠くまで行けてしまう筈だ。歩けば東京も行けてしまうし、電車だと在来線だけでも東北は行けてしまう。範囲はかなり広い。しかし、もう一つ考えられるのは、誘拐。胡桃を誘拐した奴がいればまだ遠くにはいないかもしれない。僅かな可能性にかけて、近くの路地裏に入っていく。

人影もなく、とても静かだった。本当にここにいるのかとは思うが、僅かな可能性にかける。

ガタッ

椅子が倒れるような音。少なくとも人はいる。やっぱり誘拐なのか?

 

探しはじめて30分、路地裏を只管(ひたすら)さ迷っていた。すると、急に大きな音がした。

ガッシャン!

色んなものが落ちたのだろう。大きな音だった。立て続けに

ドン!

ぶつかる音。ここに誘拐された人がいるのは間違いないだろう。しかしどこにいるのだろうか。俺はすぐ目の前にあったドアを開ける。

きュイー

と、きしむ音がする。古いドアなのだろう。しばらく歩くと、声が聞こえてきた。

 

「おら!静かにしとけ!」

 

ここにいる。俺はゆっくり進み、ライトソードを取り出す。もう剣の部分も出しておくか。

 

「んんん!」

 

ガムテープを口につけられて動けなくなっている女性、胡桃がいた。

 

「やめろ!」

 

大声で言う。

 

「誰だ貴様。殺されたいのか?」

「その人を離せ」

 

睨み付けるようにガンを飛ばす。

 

「おいおい、舐められても困るぜ。俺らだって無力で来てる訳じゃないんだからよ」

 

仲間を5人ほど呼ぶ。俺も本気だすか。

 

「おらぁっ!」

「ふっ!」

 

ライトソードを振る。

 

5人全員を倒したあと、俺はリーダーらしき奴に移る。

 

「この子は渡さないぜ?だって返事が来なかったんだもんなぁ!」

 

返事が来なかった?何を言ってるのか分からなかった。

 

「柊って奴だっけ?そいつが助けに来ると思ってたのに、来なかったもんなぁ」

 

まさか、メールが来てたのか?一先(ひとま)ずここは犯人を倒す方が先だ。ライトソードを持ち、思いっきり振る。心臓をめがけて、恨みをもって。そして、

 

「俺が柊だ」

と言い残す。

 

「胡桃、大丈夫だったか」

 

ガムテープを口から外しながら言った。

 

「柊くん・・・生きてたの」

「まぁな。すまなかった」

 

俺は全身善意謝った。

 

「ううん、生きてただけで良かった。ね、柊くんの家、連れてって」

「彩の家だけどいいか」

「うん!いいよ!」

 

豊田に帰ってきた3人は6年の間にあった出来事を話していた。俺は北海道に行ってた時、胡桃のメールはなかった

がそれはあとで聞こう。一先(ひとま)()ずはこの時間を楽しもう。



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第13話 選択

同じ家に同居し、引っ越した3人。引っ越した先は神保原。どんな生活が待っている!?


結構広い家に引っ越した俺たち3人は、近くの店調べや、生活用品を揃えたりと忙しかった。スマホを使って場所を調べているが、1番近いのは本庄だろうか。別に近いからいいが。

 

「何調べてるの?」

「家電だよ。洗濯機とかテレビとかもないだろ」

 

家電が売ってるのは本庄くらいだった。車はあるからそんなに時間がかかるわけではない。多分5分ちょっとだろう。

 

「私も行こうか?」

「いや、2人で居たらいいよ。久しぶりだろ」

 

俺は車を出し、窓を開ける。

 

「じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい!気を付けて!」

 

俺はクラクションを返事代わりに走り出す。

 

電化製品は結構売ってたが、4Kのテレビや洗濯機を買って帰る。テレビ、洗濯機共に配達で明日くる。ついでに胡桃の好きなアイスを買って帰った。

 

「ただいま。彩、これ冷蔵庫にしまっといて」

「オッケー。アイス?」

「胡桃が好きなんだ。」

 

俺は車に戻り、胡桃を呼び出す。

5分くらいしてから胡桃が走ってきた。

 

「どうしたの?呼び出して」

「ドライブでも行こうぜ。引っ越した後だしさ」

「やったー!楽しみ!」

 

はしゃいで胡桃が言う。助手席に胡桃を乗せて俺は車を発進させた。胡桃は前を見てボーッとしている。

 

「胡桃は車に乗るの久しぶりか」

「うん。柊くんは北海道でドライブした?」

「まぁ最後の1年だけな。冬の運転は怖かったなぁ」

「楽しかったんだ。北海道」

 

だんだん元気がなくなっていく。表情も暗くなってついに泣き出してしまった。

 

「よかったね。楽しかったんだ。」

「・・・胡桃は楽しくなかったのか」

「誰もいないし、周りからもからかわれた。高校卒業したら楽かと思ったのに、全然そうじゃなかった。だから柊くんが羨ましい。」

 

胡桃は高校のとき、周りから殴られる、蹴られる、隠される、陰口を言われるなどの虐めに遭っていた。だから俺は守りたかったのだが、母親から大学進学を薦められ、俺は北海道の大学に通うことになってしまった。胡桃も本当は寂しかったんだ。俺は拳を強く握りしめ、少し強い口調で言う。

 

「これからたくさんつくればいい。思い出なんて簡単に増やせる。今からやり直せばいいんだ」

「けどもう23だし」

「23だろうが40だろうが何歳だろうが思い出はつくれる。ここには俺も彩もいる。だから、これからやり直そう」

 

俺は前を見たままいった。運転はやらないと。

 

「そうだね。これから1つの思い出を増やせばいいんだ」

 

胡桃が言った。

 

「ほら、ここだよ」

「ここ?」

 

俺が連れていったのは少しだけの高台だった。

 

「ここにどうして連れてきたの?」

「あそこを見てごらん、新幹線の線路が見えるだろう」

「うん、見えるけど、それがどうかした?」

「こんな遠くでも見えるものは見える。俺も北海道から胡桃を見ようとすれば見えた。胡桃は5年間一人じゃなかったんだよ」

 

俺は北海道からでも胡桃のことは忘れなかった。思い出しては高台に登って鴻巣の方向を向いていた。

 

「柊くんはどれだけ泣かせれば気が済むのっ」

 

涙が流れ落ちる。俺は胡桃を抱き締めて言った。

 

「気がすむまで泣けばいい。いけないことなんてないから」

 

胡桃は俺に顔を蹲らせて泣いている。俺は胡桃を守りたくてライトソードを持ったんだけど、必要はあったようだ。

 

それから1ヶ月、すっかり3人の生活が慣れてきた。生活必需品も結構揃って暮らしていた。胡桃のへや、彩の部屋と俺の部屋。それぞれの個室を用意した。

 

「はぁ、通勤も遠くなったもんだな」

 

豊田から上野の前に籠原から鹿島田、札幌から小樽など遠距離の通勤はやって来たが、神保原から上野はなにか遠い気がする。いつもグリーン車に乗ってるが疲れるに決まってる。胡桃も仕事を始めたが胡桃も遠距離だ。神保原から東鷲宮までVの字に通勤しなければいけない。胡桃は通勤ラッシュ時間帯に当てはまるが高崎線内だけだ。今日も俺は仕事に――

 

「高崎線運転見合わせてるけど大丈夫なの?」

 

彩が下から叫ぶ。そう、行けない状況なのだ。

 

「一応行けるとこまでは。じゃ、行ってくる」

「行ってくるね、彩ちゃん」

 

胡桃と一緒に出ていく。

 

普通車に立って乗ってるが、鴻巣で運転見合わせ。1時間くらい経ってから再開したが、結構混んでいるし、指も動かせない。こんな混んでいるのは初めてだ。

 

「痴漢に遭わないよね?」

「多分な。うっ」

 

ドアが開いて人が乗ってくるのが苦痛。押し潰されるようになるから胡桃と密着してしまう。

 

「はぁ、混んでるね」

「あ、あぁ。うっ」

 

ちゅっ

胡桃とキスをしてしまう。ここからどう戻ればいいんだ。俺はずっとキスしていた。

 

「あっ、んちゅっ、ちゅっ」

 

10両なのもありかなり混んでいる。もうすべてが動かせない。

 

「胡桃、好き」

「柊くんっ!しゅきしゅきっ」

 

このまま大宮まで俺たちはいた。

 




書くことがないですが、次回もお楽しみに!


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第14話 帰り

アンケートした新メンバーを入れてみようかと。アンケートの結果リサで決まりました。アンケートのご協力ありがとうございました。


仕事が終わり、山手線で池袋までいく。気分で湘南新宿ラインに乗りたかっただけだが。グリーン車で帰ることには変わらないし、形式も変わらない。

上野から山手線で池袋。田端から先は山手線単独区間だが、駒込手前で湘南新宿ラインと合流する。

駒込を出発し、池袋まであと3駅。俺はドア横の仕切りに寄りかかり、外を眺めていた。

 

「あれー、柊くんだよね!」

 

結構前に聞き覚えのある声。振る向くとリサがいた。

 

「リサ、久しぶりだな」

「まぁね。今なにしてんの?」

「アイドルのマネージャー。リサはRSERIAやってんのか」

「楽しいからね。あっ、そうだ。」

 

リサが少し笑って言った。

 

「私の家、寄らない?」

「まぁ、別にいいけど」

「じゃ、大塚で降りてね。」

 

大塚はあと2駅。4分くらいで着いてしまう。

 

大塚に着いて、リサと一緒に電車から降りた。ここから都電に乗っていく。

 

「どこで降りるんだ」

「早稲田。終点だよー」

 

早稲田に着き、リサと一緒にしばらく歩いていると、横にいたリサから話しかけられた。

 

「ついたよー。」

「え、これって入る系ですかね?」

「もちろん。泊まってく前提だよ?」

 

いやいや泊まってくとは聞いてないんだが?俺も一応事務所に泊まり込みでもいいように1泊分の着替えは用意してあるし、タオルだって1枚だったらある。けど他の人だし女の子の家に泊まるのはいくらなんでもまずい気がする。

 

「どうしても泊まらなきゃか?」

「だってなんも用事無いでしょ?」

 

なにそのパワーワード。もう拒否できないじゃん。

 

「はぁ、わかったよ。」

「そうこなくっちゃ」

 

俺はスマホを取り出して、胡桃と彩のグループに連絡する。

 

〈今日帰れない〉

 

すぐに胡桃から返事がくる。

 

〈どうしたの?〉

〈何かあった?〉

 

彩も同時に来た。

 

〈昔の友達の家に泊まることになった〉

〈あんなこととかシないでね?w〉

 

変換に悪意しかない気がするのだが?

 

〈するわけないだろ〉

〈ほんとかなぁ。ま、明日ね〉

 

俺はOKのスタンプを送った。

 

〈何時くらいに帰ってくる?〉

〈なるべく早く帰る。〉

 

立て続けにもう1つ送る。

 

〈帰るときに連絡するよ〉

 

彩から了解のスタンプが送られてきた。早く帰れるといいけどな。湘南新宿ラインの始発が狙いだけど。

 

もう20時だった。俺はリサから風呂を貸してもらい、うとうとしていた。すると、風呂のドアが開く音がした。

 

「んあ?」

「あれ、入ってたの?」

 

いやいや冷静すぎるだろ!

 

「お、俺あがるから!」

「まって!」

 

手を捕まれてあがれなくなってしまう。

 

「うおっ!」

 

後ろに倒れる。リサは俺を守ろうとして後ろに手をやっている。

 

むにゅっ

 

柔らかいものが俺の顔を包む。しかし息が苦しいから至福ではない。

 

「ふごっ!」

 

息をしようとするとこうなってしまう。

 

「あれ、大胆」

 

大胆?俺には何も見えないせいか何が大胆なのか意味不明だった。

 

「リサ、これどかしてくれ・・・」

 

俺は柔らかいものを手で触って示した。

 

「にゅっ!?」

 

変な声を出して視界が開ける。

 

「何が当たってたんだ?」

「お、おっぱい・・・」

 

俺は思わずリサの胸を見てしまう。昔と比べてかなり大きくなっていた。

 

「大きくなったな・・・」

「やぁっ!」

 

高い声を出して胸を隠す。

 

「あっ、あがるから!」

 

俺はその場の空気を読み、風呂場を出た。

 

就寝時刻になり、リサと同じベットで寝た。結構狭いから顔は近いしいろんなところが当たっていた。俺の息子は結構大きくなっていたが。

 

「リサ、寝れるか?」

「うーん、おっぱい潰れちゃってるからなぁ」

 

俺の体に当たって潰れていた。通りで柔らかいわけだ。

 

「寝れなかったら下で寝るが」

「安心するからいいや。」

「そっか。じゃ、おやすみ」

「うん、おやすみー」

 

翌日6時10分、リサの家を出る。6時37分発三ノ輪橋停留所行きに乗るためだ。池袋7時4分が湘南新宿ラインの始発。

 

「もう行っちゃうの?」

「あんまりいても迷惑だし。あと、これ」

 

俺は家の場所を記した地図を渡す。

 

「ここ俺の家だから。よかったら来てみ」

「うん。じゃあね」

 

俺は再び歩き出す。早稲田停留所までは10分歩く。1人で歩くのは結構少ない。彩とか胡桃、ナナニジのメンバー・・・上野まで戻るときもあーや以外皆上野まで一緒にくるし、上野から神保原まで乗るけど大宮で胡桃と合流するから俺が1人なのは上野から大宮まで。時間は30分くらいだ。彩といる時間が1番短い。もう少し彩と接してた方がいいかな。

 

大塚からは6時53分山手線。時間も時間だが乗客はそれほどいなかった。

池袋には6時56分。7時4分発の湘南新宿ライン高崎線直通高崎行きに乗り換える。グリーン券を買い、5号車1階のグリーン車に乗った。ここから根府川までは約1時間半。8時35分着だ。

俺は胡桃に連絡する。

 

〈帰るよ〉

 

30秒ほどしたあとに既読がつき、それから10秒くらいで返信がくる。

 

〈了解!今どこ?〉

〈池袋出発してすぐ〉

 

ビシッとスタンプがくると、5分後、電車を突き止めて来た。

 

〈池袋7時4分発の湘南新宿ラインだよね。〉

〈そうだよ。それがどうかしたか?〉

〈迎えにいきまーす!〉

〈けど電車は〉

〈次のやつ乗る〉

 

相変わらず俺は1人でいる時間が短いんだな。でも、胡桃や彩、リサにナナニジのメンバーがいる方がいいのかもしれない。そう思っていると、赤羽に到着する放送が流れた。

 

【葉元胡桃視点】

 

7時11分発小田原行きに乗れば、吹上で追い付く。湘南新宿ラインは結構始発が遅いから、先に埼京線が始発で出発する。

乗った上野東京ラインは熊谷、行田と停車し、吹上には7時47分。一旦改札を出て、飲み物を買ってからホームに戻る。電光掲示板には8:00高崎と書かれていた。これの5号車に乗ってるはずだ。グリーン券を持ち、柊くんを探す。前から4番目の席に柊くんは座っていた。

 

「胡桃、待ってたぞ」

「うん!」

 

私は通路側の席に座る。結構空いていて、周囲にも数席空席があった。

 

「彩は何してるんだ」

「まだ寝てる。」

「もう7時半過ぎてんだが・・・あれ、胡桃って車の免許持ってたっけか」

「柊くんが北海道行ってる最中にね。」

 

行田、熊谷、籠原、深谷、岡部、本庄と停車し、神保原には8時35分。

 

「車は私が運転してこっか」

「あぁ、こっちも休みたいし。」

 

私は運転席に座り、助手席に柊くん乗せる。

 

「助手席に大切な人がいるってこんな感じなんだ」

「俺もいつも助手席に座ってる側だからな。」

 

そんなに遠くないから、5分で家に着いてしまう。彩は外に出て私たちを迎えていた。

 

「おかえり、柊くん」

「ただいま。俺は今日休みだから」

 

私は運転席に座ったままでいた。このまま死んでもいいと思ったから。だって、どんなに言っても私には興味ないと思うから。だったら私は、もう――

 

「なにしてんだ。お前も来い」

「私には興味ないんでしょ、だったら、私は――」

 

柊くんは深くため息をついて言った。

 

「そんなわけないだろ全員平等だ」

 

全員平等、か。まだ死ねないかな。あと少なくても1年は生きていていいかもしれない。

 

 

 



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第15話 バレンタインデー

急に日にちがとびます


2月13日夜8時、結構帰りが遅くなった俺は事務所を20時5分に出た。ナナニジのメンバーはとっくに帰っていて、最後の方に出た。

上野には20時10分頃着いたのだが、いつもはナナニジのメンバーと帰るから17時前後に着くから大宮で胡桃と合流できる。しかし今日は3時間程遅く出ている。いつもは17時31分高崎行きだが、今日は20時33分通勤快速高崎行き。通勤快速に乗れたし、15番線からの始発。普通車でも座れた。そのくらい空いていたが、これから混むだろうと思い、グリーン車に乗ることにした。

 

20時33分、定刻通り出発した。尾久、赤羽、浦和、大宮、鴻巣、熊谷と停車し、籠原には21時34分。切り離しは無く、深谷、岡部、本庄と停車。神保原には21時54分。いつもは彩が迎えに来てくれてるが、今日は誰も来ていなかった。

 

(しょうがない、歩いて帰るか・・・)

 

車で7分だが、歩いたら20分かかる。

こんな道を歩いてやっと家に着いた。

 

「お帰りなさい、柊くん」

「帰り遅かったね」

 

2人が出迎えてくれた。これが至福。

 

「あぁ。明日は仕事じゃないんだが、呼ばれたから行くよ」

「何で呼ばれたの?」

「なんか渡したい物があるとか」

 

10連チャンで仕事なんだから休ませてほしいところだが、結局行くことにした。

 

翌日上野に昼頃着いた俺は、待ち合わせのナナニジのメンバーが入ってるシェアハウスに向かう。

 

「確かここだったよな」

 

俺は呼び鈴を押すと、ドアがガチャリと開く。

 

「入って。」

 

出てきたのはニコル。クールに落ち着いた感じだが、俺は気づいていた。中身では恥ずかしがっていることに。

 

「ニコル、中に入ろうか」

 

落ち着かせてから中に入る。そこにはメンバー全員がいた。全員手を後ろにして、何か隠し持っているような感じだった。

 

「マネージャー!きょ、今日、何の日?」

「今日か?2月14日・・・」

 

別にただの平日だと思っていたが、違うのか?

 

「ただの平日じゃ?」

 

メンバー全員が頬を膨らませて怒るようにする。

 

「もうっ、バレンタイン!」

 

バレンタインって、俺にチョコか?

 

「俺にか?」

「うん!いつも頑張ってるから」

 

そう言われると嬉しいな。こっちも仕事をやるかいがある。

 

『ハッピーバレンタイン!マネージャー!』

 

全員が声を合わせて言った。合計11個、結構な数だ。

 

「そうだ、4人くらい俺の家来ないか?」

 

歩いていくには駅から20分かかる。だから車で4人にした。さすがにアイドルに20分も歩かせられない。

 

「全員はダメなの?」

 

ジュンが聞いてきた。

 

「20分以上歩くんだったらいいんだが」

「歩けるわ。ね、みんな」

「レッスンかと思えばどうってことないよ」

 

20分歩く覚悟があるらしいな。

 

「歩くの嫌ってメンバーはいるか」

 

1人だけ然り気無く手を挙げる。みうだ。

 

「分かった。同居してる奴に頼んでもらおう。それ以外にはいるか」

 

誰も手をあげない。

 

「分かった。じゃあ上野まで移動しようか」

 

昼間の電車にのるのは久しぶりだ。

 

神保原に着いた俺は胡桃の車にみうを乗せ、残り10人を連れていく。

 

「本当に行くのか。結構遠いけど」

「なんかあったら!」

 

あーやが背中に乗ってきた。

 

「こうするから大丈夫」

 

軽いから別に余裕だけど・・・

 

「これじゃあ1人だけだろ」

 

そのままあーやは乗っていた。周りは遊びながら歩いたり、話ながら歩いたり。様々だった。

家に着くなりリビングで全員横になった。

 

『はぁー』

 

あーやと俺が同時に息を吐いた。

 

「ホント、仲良いわね。」

「何?昔からの友達なんだから」

 

全然仲良いから恋人じゃないかって疑われるんだよな。正直、確かに少し恋人っぽいが。

 

 

 

 



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第16話 連絡先

あーやはずっと俺から離れなかった。12人はブーブー言っていてとても居づらい。

 

「あーや、なんか食ったか」

「あのチョコ食べたー」

 

そのチョコはアルコールが入っているチョコだった。

 

「あーや、どんだけ食ったんだよ」

「1箱全部?」

 

1箱30個入ってるのにそれを1人で食ったのかよ。ってことは酔ってるってことかよ。

 

「つっきー。だいしゅき」

 

周りのメンバー、胡桃、彩含めて顔がぼっと赤くなる。そりゃあそうか。だって急に「だいしゅき」って滑舌悪くなってるけど言われたんだから。

 

「あーや、1回俺の部屋来ようか」

「えへへー、つっきーの部屋ー」

 

ダメだこりゃと思いながらも部屋に連れていく。部屋に着くなりあーやをベットに座らせる。

 

「あーや、酔ってるだろ」

「酔ってないー」

 

まぁ大体の人はこうか。酔ってる自覚がない。

 

「あのな、あーや。ずっとこうしてるとまずいんだ」

「かわいいって言ってくれたらいい・・・」

 

そう言って倒れるようにベットに横たわる。かわいいって言う必要なかったな。かわいいけど。

 

「綾香どうなった?」

「寝た。」

 

ジュンがドアを開けて聞いてきた。もちろん寝た綾香を見に来たわけではないだろう。

 

「寝かせとこうか。さ、戻るよ」

「はーい」

 

したに戻ってきた俺はみんなと連絡先を交換した。彩と胡桃はともかく、メンバー10人は交換していなかった。まずはニコルから。

 

「これで交換できたはず」

「交換できたわ。よろしく、マネージャー」

《よろしく、マネージャー》

 

別に2つで言わなくてもいいだろ。

「あかねからいくか」

「はい。」

 

交換しおわるとトークの方で連絡が来た。

 

《よろしくお願いします》

《よろしく》

 

さて、あと8人。

 

「ジュン、交換――」

「グループ招待したよー」

 

8人一斉に招待された。承認してナナニジのグループができた。

 

《よろしく、みんな》

《よろしく!》

《( `・∀・´)ノ ヨロシクー》

《よろしく》

《よろしくお願いします。》

《よろしゅう》

 

個性のある挨拶などが連絡される。

 

《綾香はグループ入ってるか》

《入ってると思う》

 

麗華がすぐに返信する。

 

《そうか。だったらいいか》

《そういえば、プール行きたくない?》

 

真冬に何言ってるんだ。まだ2月で気温も14度しかない。プールは25度は必要・・・

 

《だったら今日行くか》

《まだ2月だよ?》

 

言い出したのはお前だろうが。ジュン。

 

《魔法で行けるよ。綾香も呼んでくる》

 

俺は2階に上がり、綾香を呼びに行く。俺の部屋にいるはずだから俺の部屋にいけばいいだろう。

 

「綾香、1回下に降りてこい」

「あ、つっきー」

 

結構落ち着いてるのにベットにいた。毛布を肩までかけて。

 

「水着持ってきてな」

「え、見たいの?」

「そんなんじゃない!プール行くから!持ってこいよ!」

 

俺は下に降りる。水着くらい持ってるはずだ。

 

 

 




最近っていうか明日期末テストなのでこっちは更新しません。10日も期末テストですがそっちだったらするかも。
さて、今回は結構短いですね。1128文字で終わりました。2000文字は気が向いたら超えると思います。
次回は7月10日か11日を予定してます。
それでは次回もお楽しみに!


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第17話 プール

今回の登場人物
月島柊
丸山彩
葉元胡桃
倉田ましろ
二葉つくし
ナナニジメンバー11人
新メンバー1人
以上17人



こんな時期にプール?と思う人もいるだろう。実は転移魔法を使えば仮想空間に移動できる。

今回転移するサンドスペニアは、夏には40度、冬でも30度はある熱帯地域だ。今日は32度あるらしく、プール日和だ。ちなみに、プールは何個かある。近いところだと転移先から歩いて3分。暑いからあまり歩きたくない。

 

「いいか、みんなで手繋いどけよ」

 

俺の手から彩、綾香の順に左側は胡桃がいる。これで魔力は使うが全員一斉に転移できる。

転移すると結構な人がプールに向かっていた。

 

「よう、月島。久しぶりだな」

 

中学の時の同級生、弘康だった。

 

「弘康、お前何してたんだ」

「お前こそ大学北海道いったんだろ?いいよなぁ北海道」

「どこの大学いったんだよ、弘康は」

「別に群馬の大学さ。」

 

2人のトークが弾んでいた。

 

「柊くん、行くよ」

 

彩に手を捕まれた。水着だから胸がいつもより多く当たる。

 

「いいなぁイケメンは」

 

俺は弘康の腹を殴る。倒れるがお構いなしに進む。「熱い」とか言ってるが知るか。

 

「彩、わざと当ててる?」

「わざとだよ?」

 

やっぱりか。すごい柔らかいしこのままで。って、ダメに決まってる!

 

「離す気は?」

「ないけど」

 

いいのか悪いのかわからないけどいっか。

 

至福の時間はずっと続いていた。1人だったのが今は3人。左右と後だ。

 

「あのー、彩、綾香、胡桃?歩きづらいんだけど」

「あと2分だし我慢するの」

「っていうか柊くん暑くないの」

 

俺はボディースーツだったから暑いのは暑い。蒸してるし。

 

「前のチャック外せば?」

 

上のチャックは外せるしそれでもいいんだけど

 

「焼けるからな。俺、焼けるの嫌なんだよ」

「柊くんはそういうとこあるからね」

「あの、柊くん?」

 

横をみていたのはましろだった。

 

「ましろ!久しぶりだな」

「久しぶり。プール行くの?」

「あぁ。ここにいるんだったらそうだろ」

 

他にレベリングもあるかもだが大体はそのくらい。

 

「っていうかましろも水着着てるんだから」

「monicaもいるんじゃない?」

 

彩とましろって知り合いだったっけ?なんか仲良くなるきっかけでもあったか?

 

「あぁっ、ど、どうも!二葉つくしです!」

「あれ、ましろとつくしちゃんだけ?」

「はい。プールは私たちだけで」

「気軽に話してよ。つくしちゃん。俺月島柊。柊って呼んでくれていいから」

 

もう目の前にプールあった。そのままプールに飛び込んだナナニジメンバー。8人くらいは飛び込んだ。あかねと麗華、ニコルはそのままでいたが。

 

「ゆっくり入ろうか」

「はい。」

 

残ってしまった9人はゆっくりプールに入った。安全だし。

 

「ねぇねぇ、あそこまで誰が速いか競争しよ?」

「あそこって、100Mはあると思うんだが」

「私泳げない・・・」

「私も・・・」

 

おいおい・・・泳げない人いるの知ってて言ったのかよ。

 

「じゃあ俺はましろとつくしに教えてるから」

「はーい。麗華ちゃん、あかねちゃん、行こ?」

「はい。いきましょうか」

「そうね。」

 

みんなが本気で泳いでいくが俺とつくし、ましろは俺のところにいた。

 

「えっと、まずはけのびから始めようか。」

「けのび?」

 

けのびも分からない系かな?

 

「壁を蹴って進むんだ。やってみよう」

 

多分仮想空間だから現実より楽なはず。必要な力は大体3分の2くらい。

 

「やってみる・・・」

 

つくしは思いっきり蹴ったからか水しぶきが炸裂する。

 

「ましろ、弱くやってみようか」

「はい。」

 

弱くても7から13メートルくらいだったら進む。つくしはどこに行ったか分からないけど。10メートル前後だったら俺も歩いて追い付ける。

 

「いいね。次は俺の手を掴んでばた足してみようか」

「・・・大丈夫かな」

 

そりゃあ心配するか。だってビート板の方が安定するんだから。俺もなるべく掴みやすくはする。

 

「ほら、やってみ」

「うん。」

 

ましろが俺の腕を掴んでばた足を始める。

 

「進むからな」

 

後ろ向きで歩く。

 

「ぷはっ、どうですか」

「いいよ。その調子」

 

そのときだった。俺がつまづいて倒れる。

 

「わっ、柊くん!」

 

ましろが掴もうとするが掴めるはずがない。そのまま倒れて羽交い締めのようになる。プールの中だからすぐ浮いていくが。

 

「すまん、ましろ」

「うん。大丈夫・・・いやっ!」

「どうした!ましろ」

「む、胸が・・・」

 

俺は水着の中に手を入れてがっつり揉んでいた。

 

「ご、ごめん!」

「うん、大丈夫だけど」

「ん?何だ」

「私のデート、明日だよ」

 

そういえばそうだった。2月15日だったな。

 

「分かってるよ。新宿で待ち合わせよう」

「はい」

 

プールからあがり、転移して家に戻る。着替えてナナニジメンバーを駅までおくり、俺は家に帰るが、胡桃と彩は帰るが胡桃と彩は水着のままだった。

 

「いい加減着替えたらどうなんだ、2人とも」

「色仕掛けはこうじゃないとね」

「そうそう。」

 

そういって俺を押し倒す。胡桃だった。

 

「ねぇ、柊くん、シよ?」

「胡桃、ダメだろ」

「じゃあ私?」

 

彩も上に乗ってきた。

 

「彩、ダメ」

「いいじゃん。そっちがシたんだから」

 

はぁ。ため息をついて俺は身を任せた。

 




2000文字超えたね。それでは次回もお楽しみに!
(1日遅れて申し訳ない)
あとこれからこっちは暫く休止します。「俺の彼女が何人もいるのだが」の方を更新していきます。期末テストも終わったので更新頻度は上がると思われますが、部活時間延長のためまた落ちる場合もあります。ご了承ください。


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第18話 丸山彩

そんなにエッチじゃなくはするから、ね?


身を任せた俺に彩がやって来たのは他でもない、キスだった。

 

「ん!?」

 

俺は驚いて声を出す。そりゃあ急にしてきたら誰だって驚く。

 

「柊くん、私からあんまり離れないで」

 

少し泣きそうな顔だった。

 

「彩、寂しかったのか」

「・・・他の誰かに嫉妬しちゃってたら・・・」

 

俺は強く抱き締める。

 

「!」

「してないよ。今の俺の目には彩しかいない」

「別に私じゃなくてもいいんだよ?」

「ましろとかか?」

「あの子はかわいいからいいよ」

 

そういう問題なんだな。

 

「だったら候補はましろか彩だな。」

「争奪戦だね?ましろちゃん」

 

俺が後ろを見るとましろが顔を赤くして見ていた。

 

「ましろ!?いたのか!?」

「ずっと前からいたんだけど・・・」

 

気づかなかった・・・

 

「存在薄いかな?・・・」

「いやいや、あるから!」

 

正直言うと気付かなかった。って、今までの話聞かれてたってことは!

 

「彩さんのことも好きなの?」

 

やっぱりか!

 

「けど明日はましろとデートするから、な?」

「だったらいいけど・・・」

 

俺はなんかいいと言わせるために頑張っていた。そんな俺が情けないがまぁ、しょうがないだろう。

 

ましろがいえに帰ったあとの家。結構静まり返っていて、何の音もしない。いつもは彩と胡桃と一緒に風呂に入ってるが今日は胡桃が買い物にいってるから入らないでいた。

2人で入ってもいいんだが、胡桃だけ1人なのは可哀想だ。

 

(はぁ、帰ってこないかな)

 

そう思っていると静かだった居間に電気自動車の音が少し聞こえていた。俺の車を借りていってるから帰ってきたはずだ。

俺が玄関に向かうと、丁度ドアが開き、胡桃が帰ってきた。

 

「ちょっと手伝って?」

「別にいいけど」

 

荷物持ちだろう。俺は靴を履いて外に出る。障子は閉まっているため彩が外を見れない。

 

「これもって?」

 

そう言って車のトランクから出したのは大きなレジ袋。思ったより買ってきていた。しかし、中身は食料ではなく花火だった。

線香花火にネズミ花火、ロケット花火などいろんなのがあった。

 

「胡桃って季節外れにやるの好きだよな」

「え?これここでやんないよ?」

「え?」

 

まさか仮想空間でやるつもりかよ。まぁいいんだけど。

 

「仮想空間でやるんだな、いいよ。彩も呼んでこようか」

 

俺はレジ袋を持ち、家のなかに戻る。玄関には全裸になった彩が。

 

「あっ、彩!?なにやってるんだ!」

「お風呂入るんでしょ?」

「その前に全裸になるな」

「だってあとで脱ぐのめんどうだし」

 

彩は胸をアピールしながら煽るように言った。自分の胸を揉み、真ん中に寄せたり離したりしている。

 

「彩!やめてくれ・・・」

「あれー?意識しちゃってるの?」

「そりゃぁそんな大きければ・・・って!」

「ふふっ、おっきい?」

 

彩が寄せたまま手を止めた。

 

「じゃあ私もここで脱いじゃおうかな!」

 

そう言って胡桃も玄関で服を脱ぎ始めた。下着まで脱いだあと、胡桃の手が止まる。

 

「私の胸、ちっちゃい・・・」

 

彩に比べてしまったら小さく見えるだろうが、実際のところはFカップなので大きめなはずだ。

 

「大きい方じゃないか?」

「そうかな?」

 

俺は服を着たまま脱衣所へ向かう。俺がいつも先に入っている。

ドアを開けて中にはいると俺はお湯を出す。湯のところを捻るとまさかの

 

「あっつ!」

 

かなり熱い湯が出てきた。45度は軽くあるだろう。

 

「柊くん!どうしたの!」

「バカ!来るな!」

 

俺は入ってきた彩を止める。

 

「あつっ!」

 

出てきた熱湯が彩に掛かってしまう。

 

「大丈夫か!水で冷やせ!」

「うん・・・こうかな」

 

水のところを捻ると水圧が強くなって出てくる。彩は尻から床に転ぶ。

 

「ひゃっ!」

「待ってろ、止めるから」

 

俺は水を止める。

 

「どこか痛くないか」

「お尻のここら辺が痛い・・・」

 

触って見せたのは膣の少し横。俺が簡単に触れるところじゃない。

 

「薬もって来る。あと胡桃呼んでくるから」

 

俺は薬をもって風呂に戻る。胡桃はいなかったためそのまま戻る。

 

「彩、俺がやってもいいかな」

「いいよ。はい」

 

彩が尻をこっちに向けてくる。膣の周りを少し広げて塗れるようにしてくれる。

 

「じゃあいくぞ」

「うん。来て」

 

俺は薬を塗った手を彩の尻に当てる。

 

「んひゃっ!」

 

冷たかったからか高い声を出す。俺はもう一回塗る。

 

「あぁっ、」

 

喘いで塗られている。俺はまた塗る。

 

「あんっ、柊くん、もう大丈夫っ」

「分かった。じゃあ置いてくる・・・うわっ」

 

俺は床の水に滑って前に転んでしまう。俺の顔は彩の尻の少し前で止まるが俺の手は彩の膣の中にはまってしまう。1回はまるとしばらくは抜けられない。何でと言うと力が入らないから。ずっと押して引いての繰り返しだった。

 

「あぁっ、出ちゃうぅっ」

「彩、イきそうか」

「うんっ、イっちゃうっ!」

「じゃあイこうか」

 

俺は少し早くして指を上下に動かす。

 

「あぁっ、イクイクっ」

「彩、なんか出てないか?」

「イっちゃったの・・・」

 

指には汁のような物がかかっていた。俺は最後に頑張って指を抜き、キスをする。

 

「んんっ」

「好きだ、彩」

 

 

 




エッチなのは女子の従兄弟とやってるのは内緒。
休止明けでなかなか書きづらかったです。


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第19話 ましろ

 翌日神保原6:09発湘南新宿ライン小田原行きに乗車。新宿でましろと待ち合わせるためだ。熊谷6:36、大宮7:19に着く。少し混んできたが、まだ我慢できるくらいだ。1人だから別に気にならない。浦和7:27、赤羽7:36、池袋7:48。

 

【倉田ましろ視点】

 

武蔵浦和7:18発通勤快速新木場行きに乗っていくけど、池袋で湘南新宿ラインに乗り換える。埼京線は赤羽から混み始めるが、通勤快速なので武蔵浦和から潰されるほどの混雑だった。

赤羽には7:28。真ん中にいたため、出発しても揺れない。しかし、発車して10秒すると、お尻に違和感を感じた。触られてる感じだった。

 

(なんか触られてる?混んでるし当たってるのかな)

 

しかし段々エスカレートしてきて、思わず声も出てしまいそう。パンツが濡れてきている。

 

(やっぱり、わざとだよね?あっ、そこは!)

「んっ」

 

声が漏れてしまった。あと十条と板橋の2駅。池袋で乗り換えるのは正しかった。しかしまだ10分ある。我慢しないとかな。

 

 7:34に板橋出発し、あと4分。まだ触られていて、パンツの中にまで入ってきていた。

 

(あと4分…耐えないと…)

 

そしてときは来た。7:37、1分早くついたのだ。私は乗り換えをするために降りる。痴漢も降りてこない…と思っていると、まさかの降りてきたのだ。ついてきてる。

 

「まもなく、2番線に、湘南新宿ライン東海道線直通、快速小田原行きがまいります」

 

7:49発の小田原行きだ。もう混んでいるのは分かるが埼京線よりかはすいてるはず。

電車がついて見てみるとほとんど同じくらいだった。でもこれに乗らないと遅れちゃう。私は覚悟して乗った。痴漢も私にぴったりくっついてくる。気持ち悪い。

 

(また触ってる…)

「へへ…」

 

キモい声を出している。すると

 

「こいつ痴漢だ」

 

男のひとが痴漢の手をつかんで挙げた。

 

「何言ってるんだ!冤罪だろ!」

「どう見ても触ってたろ。証拠だってあるぞ」

「なんだ、見せてみろ」

 

男の人はスマホを痴漢に見せつける。そこには私のお尻を触っている痴漢の手があった。

 

「これでも冤罪か」

「くっ…」

「駅員さん、こいつ痴漢です」

「あっはい。って、またお前か!」

 

常習犯なのか駅員さんもあきれていた。

 

「大丈夫でしたか」

「あっ、はい。」

「ん?あれ、ましろちゃん?」

「え?柊くん?」

 

柊くんが痴漢を撃退していたんだ。優しい…

 

「待ち合わせなくて良かったな。」

「そうですね。」

 

私はドアにもたれ掛かって休んだ。

 

「ましろちゃんは結構かわいいよね」

「えっ、ん!」

 

柊くんは私の唇にキスをしていた。

 

「んにゅっ、柊くん、ダメですよ、こんなの」

「悪い…わざとじゃないんだ。揺れで…」

 

柊くんにされても嫌じゃないけどなんかドキドキする。

 

「柊くん、私を奪って…」

「奪うって、どうやって」

「キスして、動けなくして」

 

なに言ってるんだろう、私。嫌にきまってるじゃいの!好きな人なんていないのに。

 

「ましろちゃん、本当にいいんだね」

「はい。来てください…」

 

しかしすぐに新宿についてしまった。

 

【月島柊視点】

 

 「続きどうする」

「出来ないですね…///」

「どうかしたか。」

「ラブホだったら…」

 

まじかよ。ラブホいいのかよ。ましろとだったら行きたいけど。

 

「いいのか、ましろちゃん」

「はい…」

 

 ラブホについた俺たちはベットで押し倒すようにしてキスした。

 

「んんっ」

「ちゅっ、ましろちゃん、なんか濡れてない?」

「柊くんの膝がパンツに擦れてるからです!」

「ごめん。するけど」

 

俺はキスを続けた。膝は確かに上下していた。なんなら当然か。

 

「あっ」

 

ましろちゃんが声を出す。なにかあったのかな

 

「どうした、ましろちゃん」

「乳首がたってきてる…」

「ノーブラか」

「はい。やわらかいほうがいいと思って」

 

服の上から思いっきりたっている乳首がはっきりと見えた。まるで服がやぶけそうなくらい。

 

「すごいたってるじゃん」

「柊くんのここもたってます…」

「それは言わないやつだ」

 

2つの突起物が見えたらなんかしたくなった。

俺は服を脱がしたあとに、乳首をゆっくり吸う。

 

「あっ、しゅわにゃいでぇっ」

 

まともに話せていない。感じてるのかな

 

「やれって言ったのましろちゃんだろ」

「うぅ…じゃあやめてっ」

 

俺はすぐに立ち上がって言う。

 

「俺はやるとなったら本気だからな」

「うん。分かってる」

 

 俺とましろは新宿駅に戻り、近くの飲食店に向かう。結構前だがここでのポイント稼ぎだ。

 

「柊くん、これ食べますか」

「え?」

 

俺は驚いた。向こうからやってきたのはなかなかいなかったからだ。

 

「あぁ、いいのか」

「はい。その代わり、柊くんのも一口…」

 

ただほしかっただけか?もしかして。交換で得ようとしたのか。

 

「いいよ。えっと、どうあげればいいかな」

「恋人っぽくでしょうか?」

 

そうなのか?やっぱりやりたいのかな

 

「じゃあ口開けろ。」

 

こっちから言うのも変な気がするがべつにいいか。

ましろは口を開けて待っている。焦らしてもいいがかわいそうな気もする。

 

「はむっ…」

 

わざと声だしてない?

 

「辛い…っ!」

「あぁっ、大丈夫か!」

 



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第20話 デート4日目

 「ぷはっ」

俺の食ってるものが辛すぎたらしく、ましろちゃんは水を頼んできた。

 

「無理して食わせたかな、俺」

「いや、食べたの私だから」

 

俺は辛いとか別に平気なんだが、ましろちゃんはダメだったっぽいな。それにしても…

 

「なんかましろちゃん結構食ったな」

 

皿の半分がなくなっている。かなり食った。自分の食えなくないか。

 

「食べれるから大丈夫です。」

 

思ったより食えるのかな?俺は残りを食った。

 

 そして飲食店を出た俺は新宿駅に戻る。新宿駅を中心に動いているため大体新宿駅に戻ってから行く。

 

「もう帰っちゃうの」

「どうかな。今からどこ行く」

「暖かいところ?」

 

そんなところ簡単にあるはずないだろ。この辺も涼しい感じだし。

 

「電車のなか暖かいかな」

「だったらあそこ行きたい!ついてきて」

 

俺はましろと手を繋いで新宿駅の中に向かった。

階段を降りたのは中央線11、12番線。高尾方面の電車が発着するホームだ。

 

「ここからどこ行くんだ」

「遠いけどついてきて」

 

13:37中央特快高尾行き。遠くって言ってたけど多分大月とかそこら辺だろう。

 

 14:18高尾着。3番線に14:28発大月行きの案内が出ていた。

 

「次は14:28大月行きか?」

「ううん、15時発の小淵沢行き。」

 

15時発ってまだ40分以上あるじゃないか。しかも大月行きに乗らないってことは目的地は大月より遠いのか?

 

 15時丁度発小淵沢行き。3両の電車で急に短くなった。

 

「どこまで乗るんだ」

「小淵沢までです。2時間くらいありますかね」

 

調べてみるとこの電車が小淵沢に着くのは17:28だった。あと2時間と28分か。長いな

 

「もうどこ行くか教えてくれよ」

「夜景見に行きたいから」

 

夜景だけじゃ分からないだろうが。有名な夜景の名所か。松本城とかかな。

 

「あ、そうだ。松本城じゃないからね」

 

心を読まれていたかのようだった。松本城じゃないんだったらどこだ?

 

 分からないまま小淵沢に着いた。今度は17:35発長野行き。段々寒くなってきた。標高も新宿より高いからか気温は10℃前後。その時、駅の放送があった。

 

「今度の17:35発普通列車長野行きですが、只今安全確認で15分遅れて運転をしております」

 

折り返しの前に遅れたんだろう。10分くらいは遅れるかな。しかしこの気温で15分は辛いな。

気温計を見てみると3℃を指していた。1桁代でかなり寒い。

 

「うぅっ…」

 

ましろちゃんが唸る。寒いのかな

 

「寒いか?」

「ちょっとだけ…」

 

無理してるんじゃないか。しかも俺だけが上着羽織ってるし。俺は羽織っていた上着をましろちゃんにあげた。

 

「これ着てろ。10分くらいで着くから」

「えっ、柊くんは寒くないんですか」

「10分だったら待てるよ。」

 

さっきの暖かみがまだ残ってるし。

 

 予定より15分遅れて小淵沢駅を出発した。松本で14分遅れた19:18着。しかしここで元々10分停車するため発車は19:19。5分遅れだ。外はもう暗い。冬の19時はもう暗いからな。

 

「あともう少し…」

「どこに行くんだよ。ここら辺でいい気がするんだが」

「まだ待って」

 

 姨捨に4分遅れの20時丁度に着くと、ましろちゃんが立ち上がった。

 

「降りるよ!」

「ここでか?」

 

向かってみた感じただの駅にしか見えないんだが。すると、ホームのベンチが線路とは逆に向いているのに気づく。その向こうは…

 

「すげぇ…ここに連れてきたかったのか」

「うん。1回でいいから来てみたかったの」

 

夜景が1面に広がっていた。ここではずっといれる気がした。

 

「次は21:48だからあと1時間48分か」

「一緒にいれるからね」

 

しかし帰りが気になって俺はルートを調べる。すると

 

「ダメ。今は夜景と私を見て」

「分かった。」

 

夜景と一緒にましろちゃんを見ると、白い髪と夜景が丁度合っていて綺麗だった。

 

「ましろちゃんの髪と合ってるよ」

「そう?ありがとう」

 

 あっという間に時間は過ぎていく。20時に着いたのにもう21:48だった。もう少し居たかったな。

 

「帰ろうか。長野から新幹線は…」

 

見てみると22:08が最終だった。このまま長野へ行くと22:15に長野に着くためホテルか。

 

「長野で1泊だな」

「明日の始発で帰るの?」

「そう言うことだな。」

 

22:15に着くとホテルをとる。駅前のが空いていたためそこに向かう。

部屋に着いた俺は彩にビデオ通話を行う。

 

「彩、明日の始発で帰る」

《わかった。気を付けて》

 

だそうだ。

 

 翌日6:02あさま600号で高崎へ。俺が通路側、ましろちゃんが窓側で座る。

 

「楽しかった?」

「デート、楽しかった…」

 

すっかり浸ってるな。そう言ってもらえると嬉しいな。

 

「疲れてたら寝ていいからな」

「もったいない。」

 

そんなに一緒にいたいのかよ。

乗っているあさまは長野から各駅に停車する最遅達だ。あさま600号は途中の追い越しはないが、停車駅はもっとも多い。ただ、かがやきに乗ってしまうと高崎を通過してしまうためはくたかかあさましか乗れないのだ。

 

 高崎には6:49。次は高崎線で帰ることになる。

 

「ましろちゃんは大宮まで乗らないのか。武蔵浦和だったら大宮まで言った方が早いだろ」

「一緒にいたいから浦和まで乗っていく。浦和から京浜東北線と武蔵野線で帰る」

 

俺もついていきたいけど彩がいるからな。

 

「7:01ですかね?」

「7:12品川行きだよ」

 

俺はわざと1本見送ったのだ。

 

「どうして7:12?7:01の湘南新宿ラインでも」

「混むからな。品川行きの方が空いてる」

 

新宿方面で横浜まで直行だから混む。しかし品川行きだと東京からは空いてるから比較的空いてる。

俺はグリーン券売機に向かう。

 

「suica貸して」

「どこ行くの」

「グリーン券売機だ。グリーン券情報書き込むんだ」

 

俺はグリーン券売機に着くとましろちゃんのsuicaを置き、高崎から浦和までの情報を、俺のsuicaには高崎から神保原の情報を書き込んだ。高崎から神保原は3駅しかないからもったいない気もするが。

 

「やって来たぞ」

「ありがとう。そうだ、柊くん先に帰ってていいよ」

「え?いいのか」

「疲れただろうし、彩さんもいるから」

 

確かに俺は先に帰れる。どうするか。

 

「分かった。じゃあ、7:01で帰るからな」

「はい。浦和着いたら連絡します」

 

俺は止まっていた7:01発湘南新宿ライン快速国府津行きに乗った。外からましろちゃんが手を振っていたが、俺はよかったのか分からなかった。

 



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第21話 ドーム 1日目

夜間モードoffで見てくれた方がいいと思う。


 「ただいま」

 

誰からの返事もない。いつからこんなやつになったんだ。

俺はベットに横になった。

 

彩はいないのかな

「私がどうかした?」

 

思わずベットから滑り落ちる。

 

「彩!?」

「いるのは普通じゃないの?」

 

普通だとは思うがいつからそこにいたんだよ。俺が横になったときにはいなかったはず。

 

「いつからいたんだ」

「ついさっき。いちゃ悪かった?」

 

ちょっと悲しそうな目でこっちを見てくる。そんな目で俺を見ないでくれ。

 

「悪くないけど」

「ダーリンが帰ってきたからなんかしよっかな」

 

嫌な予感しかしないけどそうなったら逃げるか。

 

「これ、触ってみて」

「これか?」

 

俺は渡された板を触る。なにもないただの板じゃないか。

 

「板がどうかしたか」

「それで私を撫でて」

 

俺は触った手で彩を撫でる。なんか変わるのか

 

「なんかあったのか」

「私が嬉しくなった」

 

なんだよ、そんなことか。別に板なんて要らなかったじゃないか。

 

「もっと撫でてー!」

「物足りないかよ」

「すごく!」

 

物足りないんじゃしょうがないか。俺は顎の下を犬のように撫でてやった。「ふふふーっ」といいながら撫でられている。

 

「嬉しいか」

「うん。はむっ」

 

彩が俺の指を咥える。これが狙いか?

 

「んちゅっ」

「彩、離してくれ」

「なんれ?」

 

時間は10:15。遅番のナナニジ事務所いかないとな。

 

「仕事行ってくる。今日は夜遅いかもな」

「もっと遊びたかったのにー!」

「我慢してくれ。それじゃ」

 

俺はドアを開けて神保原に向かう。相変わらずの車だけど。

 

 神保原に着いた俺は10:29発湘南新宿ライン特別快速小田原行きに乗車。上野まで行かないため桶川で乗り換える。

普通車ボックスシートに座っていたが思ったより快適だった。桶川からは向かいのホーム停車中の高崎線普通小田原行きに乗り換え。桶川で追い越すのだ。特別快速は上尾、大宮、浦和、赤羽に、普通は北上尾、上尾、宮原、大宮、さいたま新都心、浦和、赤羽に停車する。

 

 上野には11:59着で7番線。ここから事務所まで歩く。

事務所に着くと職員の人たちが俺を待っていた。

 

「マネージャー、すぐに東京ドームに!」

 

東京ドーム?なんで行かなきゃいけないんだ?

 

「なんでだ。」

「ライブです!早く!」

 

とにかく急ぐため12:13発京浜東北線快速磯子行きに乗車。秋葉原からは総武線に乗り換える。

 

「マネージャー!早く!」

「待ってくれ、なるべく急いでるから。」

 

12:16秋葉原。12:21発中野行きに乗り換える。

水道橋には12:26。

 

「急ごう!」

 

東京ドームの控え室ではナナニジのメンバー全員…ではなくあーやとジュン、麗華しかいなかった。

 

「なんで3人だけ」

「分担で3人ずつ」

 

そういうことか。練習だよな

 

「練習だよな」

「うん。無人になるときがあるから」

「分かった」

 

俺は東京ドームの真ん中に立った。

 

「俺の左が麗華、右にジュンが立って。俺のところに絢香がいてくれ」

「はーい」

 

左に麗華、右にジュン、真ん中に絢香が返事をして立つ。なるべくファンに見えるようにしないとだ。

 

「ちょっと待ってて」

 

俺はドームの端にある壁に手を掛け、足を乗り越えさせる。客席に移るためだ。

客席から見ると正面がしっかり見えた。しかし横に移動すると誰か2人が見えなくなってしまう。

 

「絢香を中心に麗華は前、ジュンは後ろに動いて」

 

少し大きく言った。それぞれ移動すると、全員が見えるようになった。

 

「マネージャー、大丈夫ですか」

「あぁ。ナナニジのためだからな」

 

俺はドームの外に出る。2階席に上がるのだ。

 

「うん。見えるな。モニターは使えるか」

「はい。ドローンの撮影になりますが」

「俺がやろう。じゃあ問題ないな。練習しててくれ。えっと、君の名前なんだっけ」

美鈴(みすず)陽菜(ひな)です。」

 

美鈴さんか。いい名前だな。

 

「いい名前だね。美鈴さん、ナナニジの3人頼んだよ」

「マネージャーはどこ行くんですか」

「事務所戻る。控え室にPC(パソコン)置いとくから、何かあったらリモートで」

「分かりました。」

 

俺はドームの外に出て水道橋から総武線に乗る。13:00発総武線津田沼行き。御茶ノ水に停車し、秋葉原に13:05着。次は13:11発京浜東北線快速南浦和行きで上野。山手線は1分遅くつくから京浜東北線にした。御徒町通過だし。

上野には13:14。事務所には次の3人が待っていた。桜とみう、そしてあかねだった。

 

「もう行っていいの?」

「まだ待ってくれ。練習してるはずだ。」

「分かりました。」

 

 3人と一緒に待っていると、リモートが始まった。順番が来たのかな。

 

「順番か」

「はい。藤間さん、滝川さん、丸山さん来てください」

 

3人はもう外に出ていた。

 

「早いですね…」

「あはは…ガチですからね」

 

15分~20分経つと絢香、麗華、ジュンの3人が戻ってきた。

 

「たっだいまー!」

「ジュン!礼儀正しく!」

「別にいいよ。事務所なんだから」

 

俺は椅子に座りながら言った。

 

「マネージャーが言うんだったら…」

 

俺には対抗できないのかよ。まぁ別にいいけど。

 

「つっきー、あそぼ」

 

絢香が言ってきた。ここでその呼び方やめろって言っただろ。

 

「絢香、その呼び方ここではやめろ」

「つっきーはつっきーでしょ」

「…分かったよ。あーや」

 

この呼び方あんまり呼びやすくないんだよなぁ

 

「明日デートしようね」

「急だな。いいけどさ」

 




次回もドーム編です。
「何してるの?つっきー」
「ちょっ、あーや!入ってくるなよ」
「別に何してるかくらい教えてもいいじゃん」
「分かったよ。次回の予告」
「じゃあやらせて!」
「えっ!?ちょっ!」
「次回は私大活躍だからねー!お楽しみに!」


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第22話 絢香とデート

やっほー、私の出番だよー!


 俺の仕事が終わったのは0時過ぎだった。最終は23時半過ぎのため帰れなくなった。帰れなくなった俺は事務所の絢香の部屋の隣にある個室で泊まることにした。もうみんな帰ってるよな。

 

遅かったな、帰るの

 

ボソッと小声で言った。するとドアが開いて誰か入ってきた。

 

「私も残るよ」

「あーや?帰ればいいのに」

「残しておけないでしょ?」

 

あーやってそんなところあるのか。以外だったな。

 

「あれ、あーやの部屋隣じゃないのか」

「別にここでもいいじゃん」

 

俺まだ仕事するけどな。ドームライブとか聞いてなかったし。

 

「仕事あるの?」

「あぁ。あと15分くらいかな」

 

 仕事をしているときもあーやはすぐ隣にいてくれた。優しい気もしたが何か緊張した。

 

「終わったぁー!」

「おつかれー。寝よっか」

 

もう寝るのか。いや、歯みがきは?

 

「歯みがきくらいさせてくれ。」

「私がしよっか?」

「え?あーやが?」

 

そう言ってもあーやは歯ブラシを持ってきていた。しょうがないのかな。

 

「はい、あーん」

「あー…」

 

口を開けるとあーやは歯ブラシを入れる。なんか懐かしいな。母さんにしてもらってたっけ。何年前だろう。18年くらい前かな。

 

「終わった。つっきーもやってよ、歯みがき」

「俺があーやに?」

「そう。ほら、早く」

 

歯ブラシを渡してきた。やるしかないのか。

 

「口開けろ」

「あーっ」

 

声がやりづらい。歯ブラシをいれて磨き始めると、

 

んちゅっ、あぁっ♥️

 

喘ぎ声を出してくるからとてもしにくい。

 

「声抑えてくれ」

「だってぇ、あっ」

 

なるべく早く終わらせないと俺が死にそうだ。

 

 「終わったぞ」

 

やっと終わった…

 

「つっきー、焦ってたでしょ」

「んなっ、焦ってねぇよ!」

「ふふっ、かわいいっ」

 

かわいいって、からかうなよ。

 

「からかうなよ。さっさと寝ろ」

「はーい。」

 

もう1時を回っている。さすがに眠いな。俺はテーブルに手を乗せて枕代わりにして眠る。

 

【立川絢香視点】

 

 大丈夫なのかな。枕で寝てないし座った状態。私は床にマットレスをひいて枕は持ってきているが、座って固いところで寝るのは気持ちよくない。

 

(つっきー、寒そう…エアコンつけてもいいけどそのまま寝ちゃうし)

 

悩むところだ。どうしようか。

 

(私のをあげてもいいけど私が寒くなっちゃう)

 

人のことを優先はするが自分の身も守らないとだ。

 

(そうだ、私のに2人で入ればいいんだ)

 

私は毛布を自分の部屋から持ってきて、2人でならんで掛けた。私も座ってるけど平等だからいい。

くっついていないと寒いと思い、ぎゅっとくっついていた。

 

(うぅっ、ドキドキする…聞こえてないよね)

 

ものすごい心臓がバクバクしている。あぁ、こんなんになるなんて…

 

「んあ?」

(起きちゃった!?ヤバイヤバイ、見られちゃう…)

「あーや?起きてたのか」

「あっ、う、うん!寝よっかな」

「早く寝ろよ。」

「うん…」

 

バレてないのかな。まさか寝ぼけてたの?それでかな。

 

「寝よ」

 

私はつっきーと同じ格好で寝る。ドキドキしたままだけど。

 

【月島柊視点】

 

 翌日の始発で家に帰る。5:13発高崎線普通高崎行き。6番線から乗ろうとすると突然あーやが

 

「つっきー、今日ライブよ!」

「えっ!マジかよ」

 

俺は降りて京浜東北線ホーム4番線に向かう。5:19各駅停車大船行きだ。ドアが閉まって俺が聞いた。

 

「今日だったか?明後日な気がしたんだが」

「騙されたの。デートするって言ったじゃん」

 

そういえばそうだったな。今日だったか。

 

「どこ行くんだ、デート」

「まずは東京向かうでしょ。カフェでも行こ?」

 

以外と落ち着いてるんだな。遊園地とかじゃないのか。

 

 東京5:27。まだ5時半なんだけど。カフェはまだ早いな。

 

「俺、行きたいところあるんだけど」

「海ってこと?」

 

なんで分かるのかな。そうだよ海だよ。

 

「じゃあ行こうか。」

「待って、ちょっ、トイレ…」

 

ここら辺だと階段降りたらあるか。

 

「階段降りれるか」

「頑張れば…」

 

階段に向かって降りるがあーやは股を押さえている。漏れそうなのか?

 

「漏れそうか」

「うぅっ、おんぶして股押さえて…」

「はあっ!?そんなこと――」

「はやくっ。もれちゃうぅっ!」

 

俺は勇気をもっておぶり、その手であーやの股の下を押さえつける。柔らかい…って、そんなの考えてる暇じゃない!

 

あんっ、やっ

「我慢してくれよ!」

 

 「ふぅ…」

 

トイレを済ませたあーやが出てくる。スッキリしたそうだ。

5:40発東海道線普通沼津行きで根府川まで行く。1番線からの海が綺麗だからだ。

 

「つっきー、あの事誰にも言わないでね…?///

「あっ、あぁ、分かった…」

 

 「つっきー、ごめんね。トイレの中連れてきちゃって」

 

電車のトイレに2人でいた。なんでかって?またあーやが漏れそうになったから。俺がいる理由は怖いからだそうだ。

チョロチョロとトイレをする音が聞こえてくる。耳を塞いでいるが少し聞こえてしまう。

 

あっ、んんっ、んにゃあっ

「なんだよその声」

だってぇ、速く出ちゃうかりゃあっ

 

 7:24根府川。なんか疲れたな。

 

「綺麗…」

「またライブ成功させたら連れてきてあげるよ。」

「全員でね」

「お、成功する気満々だな」

 

これは成功させるんだと自信が見えた。

 




色をフル活用した。


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第23話 ドームライブ

 そして当日。俺は彩、胡桃、ましろちゃん、蘭、千聖と一緒にドームへ行った。俺がマネージャー席だから5人は客席からになった。

 

「始まりましたね」

 

美鈴さんが隣で言った。

 

「そうだな。11人が成功するといいな」

 

頼む。

俺は手を合わせた。成功させたら根府川で別荘貸切だ。

そして曲が始まった。こっちが緊張してくる。

 

【立川絢香視点】

 

ここまで成功してる。あとはもう少し!

その時、頭が急に真っ白になり、めまいがしてきた。バランスを少し崩し、どこを踊ってるか分からなくなった。

 

【佐藤麗華視点】

 

隣の絢香が何か変だった。踊りが変だし、足も動いていない。みんなも気づいてるはずだ。その時、

バタン!

絢香が倒れてしまった。

 

【月島柊視点】

 

バタン!

絢香が倒れた音がした。

 

「絢香!」

「立川さん!」

 

美鈴さんも立ち上がる。スタッフ全員だ。

 

「ファンを場外に!」

「はい!」

 

俺はすぐに絢香のもとへ向かう。スタッフ総勢でファンの誘導をしている。

 

「絢香、立てるか」

「……」

 

ダメっぽいか。スタッフは、余ってるな。2人だけか。十分だ。

 

「おい!担架持ってこい!」

 

担架でそとへ出すのだ。担架は近くにあるはずだ。

 

「持ってきました!」

「よし。絢香を運んでくれ。救急はいるはずだ」

 

俺はファンの誘導に移る。そこにはファンがスタッフを質問責めにしていた。

 

「なんで出したんだ!」

 

俺にまで飛び火が飛んできた。

 

「体調不良です。今回は中止になります」

 

ファンは全員が帰っていく。その中で男1人だけが残った。

 

「なんで中止なんだよ。メンバーはどうでもいいだろうが!」

 

どうでもいいって、DQNかよ。

 

「体調不良なので仕方ないです」

ふざけるなぁっ!

 

男が俺を殴ってきた。丁度ナナニジのメンバーも戻ってきた。俺は倒れてしまう。

 

『マネージャー!』

 

【佐藤麗華視点】

 

 「マネー…月島さんは」

「命に別状はないけれど、後頭部を強く打ってるから、全治3週間くらいね」

「マネージャー…」

 

マネージャー、月島柊さんは殴られて倒れたときに階段から転落し、後頭部を強く打った。意識を失い、絢香と同じ病院に入った。

 

「マネージャーは」

「命に別状はないそうよ。でも全治3週間はかかるって。」

 

マネージャーがいなくなったら私たちを見る人がいなくなってしまう。代わりがいたら別だけど。

 

「代わりの人はいるんですかね」

「いないとできませんもんね。ライブ」

「代わりに2週間入る、」

 

そう言って入ってきた男は、こう名乗った。

 

「柿野今里だ。」

 

 

 



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第24話 パワハラ

佐藤麗華視点ですね


 柿野今里はマネージャーとして落ち着いていたが、なんか厳しかった。

 

「1、2、…なんだ、河野。やる気あんのか!」

 

いつもこんなのだ。柿野今里はなんでなったんだろう。

 

佐藤、なんだその目。文句あんのか!

 

なんなんだこの態度。もう聞きあきた。月島柊さん戻ってこないかな。

 

「言っておくが、俺から見て月島は戻ってこなくていいと思ってる。」

 

衝撃の発言だった。月島柊さんが戻ってこないと死んでしまうのに。

 

「あんな下手な教えのどこがいいんだ。分かりやすく厳しくだろ?」

 

空気は悪くなっていくばかりだった。いつもそうだけど。しかし、今日に限っては違かった。

 

「いいか、この部屋には今、有害な空気が充満している。マスクせずに話したらしぬぞー」

 

一酸化炭素だろう。窓も締め切っている。

 

「なんで!」

 

ニコルが口を開いてしまった。

 

「ニコル!」

 

わたしも開いてしまった。このままじゃ…

 

「バカだなあ。開くなって言ったのに」

 

その途端に苦しくなっていく。窓を開けないと、死んじゃう…私は窓を開けようとする。

 

「開けちゃダメだよ!」

 

蹴り飛ばしてくる。死んじゃう…ダメだ、このままじゃ

 

「ゲホッ」

 

ニコルが苦しさの余り咳き込む。やっぱり、もう…

 

「あぁうぅ…」

 

全員死ぬの?嫌だ、まだ死にたくない!まだ、死にたく…ない…

 

「柿野!」

 

誰かが柿野今里を強く呼ぶ声がした。

 

「月島、どうしてここに」

「全治しなくても来れるさ。」

 

マネージャーだ!

 

「君みたいなマネージャーはいらない。さっさと帰れ」

「お前に命令される立場じゃない!お前が出ていけ!」

 

つらい言い合いだ。私的には柊くんの方が残ってほしい。

 

「いいか柿野、今やっていることはパワハラ、虐待だ」

「これほどしないとみんな分からないだろ?だからだ」

「一酸化炭素中毒にさせようとしてもか。見てたぞ、全てな」

 

防犯カメラがついているからそれで見てたんだろう。

 

「見てたって、見れるわけないだろう?」

「知らないのか、防犯カメラあるの」

「は?」

 

柿野が上を見る。しっかり防犯カメラはついている。

 

「柿野、お前は今日付けで解雇だ。出ていけ」

「ぐっ、覚えてろよ!」

 

走って出ていく柿野。これで安全なんだ。

 

「さて、レッスンを、の前に、ニコル、麗華、都。来なさい」

 

呼び出されて何があるのかと思い、緊張しながらマネージャーのあとを追った。

小さい部屋につくと、私たち3人の背中を触る。

 

「んなっ、何してるんですか!」

「外傷はないそうだな。痛いところはないか」

 

なんだ、傷の確認か。

 

「はい。どこも」

「都も外傷はないな。」

 

都もなかったらしい。これで大丈夫かな。そういえばニコルはどうなんだろう。

 

「ニコル、呼吸荒くないか」

「大丈夫よ。このくらい」

「ちょっと喉見せてくれ」

 

マネージャーがニコルの喉を見る。

 

「なんだ、この白いの」

「レントゲン撮ったらどう?魔法で使えるでしょ」

「なんで知ってるんだ、教えた覚えないが」

 

あっ!言っちゃった。まさかマネージャーのこと1日調べてたなんて言えない!どういう言い訳すればいいの!

 

「たっ、たまたま!」

「そうか…じゃあニコル、動かないでね」

 

レントゲンが出てきてニコルの体内が見える。胃までみると白い塊みたいなのがあった。

 

「なんだこれ。白い飲み物か?」

「けど消化されてるんじゃない?」

 

消化まで10分かからないはずだ。

 

「なんか直近5分くらいで白い飲み物飲んだか」

「飲んでない。最後に飲んだの昨日の牛乳」

 

やっぱりなんか物体が入ってるんだ。

 

「柿野になんか飲まされたか」

「水だって言われて飲んだだけ。でも一気に飲めって言われた」

 

一気に飲むっておかしいと思う。ありえないから。

 

「500mlのか」

「多分550mlくらいの」

 

550mlって多くない?普通のより50ml多いよ。

 

「ニコル、俺の家今日来て。治療する」

「練習は」

「中止だな。今から迎え呼ぶから、ついていって」

 

【月島柊視点】

 

彩に連絡し、上野まで来てくれるよう言った。上野駅までは俺が連れていく。レッスンの先生にでも頼もうか。

 

「10:09につくからそれを狙って行こうか。レッスンは俺がついてるから休もう」

「はい。分かった」

 

素直でよかった。あと1時間半くらいか

 

 10:00。事務所を出た俺とニコルは上野駅に向かった。10:09着の上野東京ライン普通小田原行きを出迎え、彩にニコルを引き渡すためだ。

 

「ニコル、違和感ないか」

「なんかドキドキする」

 

ドキドキ?なんでだ?そんな作用あるのかよ。

10:09上野東京ライン小田原行きが到着した。

 

「この人?」

「あぁ。けど一回みてみてくれ」

 

何が入っているのか分かるんだったら知りたい。

俺はニコルのレントゲンを見せる。

 

「これって、個体の惚れ薬じゃない?」

「惚れ薬って液体じゃないのか?」

「液体より強力なの。柿野はそんなに惚れさせたかったのかな

 

だからドキドキしてたのか。けど個体ってことは角ばってるよな。痛いかも。

 

「消化されないのかよ」

「1日経てば消化されるけど、1日は安静にしてないとだよ」

 

俺は5番線に向かいながら今日のことを考えた。

ニコルと1日一緒なのか?

 

 

 



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第25話 斎藤ニコル

3番目くらいの推しキャラですね。

「ちょっ、3番目!?」
「にっ、ニコル!?」
「1番誰なの」
「あーや…っていや、ちが!」
「むぅぅっ、好きになってよ…」

なんてことがあったらいいなぁ


 家に着いた俺たちはニコルをどこにいれるかについて話し合った。最初は千聖や蘭の家に入れるのも考えたが、急に入れるのも迷惑だし、ニコルも不安だと思い、結局俺の家に泊めることになった。

 

「俺の実家ダメかな」

「今誰かいるの」

「父さんいるんじゃないか。知らんけど」

「ダメじゃん」

 

だったら母さんがいる家か?

 

「母さんいるとこは」

「北海道だろ」

 

結果ここかぁ。ここ以外ないもんなぁ。

 

「ニコル、俺の部屋来い」

「あ、はい」

 

なんで急に改まってるんだ。

 

「ニコル、体調は大丈夫か」

「なんか痛い…」

「腹がか」

「うん。痛いっ!

 

角が当たってるだろう。かなり痛いはずだ。

 

「楽な格好あるか」

「寝てると楽…うぅ…」

 

痛そうだった。うめき、腹を抱え、頑張って話している。

 

「無理するな。隣にいるから」

 

ニコルは床に横になった。俺のベットを使っていいのを知らなかったんだろう。

 

「俺のベット使っていいぞ。」

「じゃあ、失礼します…」

 

ニコルは端の方に横になる。丁度入るスペースがある。俺はニコルの横に寝る。

 

「ニコル、落ち着けよ」

 

【斎藤ニコル視点】

 

 私が横になるとマネージャーも横になった。しかも私の近く。

 

「ニコル、落ち着けよ」

 

落ち着ける訳ないじゃない!近いし、ドキドキするし!

 

「ちっ、近い…」

 

こんなの私死んじゃうよ。緊張っていうか、ドキドキしてるっていうか、不思議な気持ち。

 

「ニコル?赤いぞ」

「だ、大丈夫だから、マネージャー」

「家だったら柊でいいよ。」

 

名前呼び!?もっとドキドキしてくるじゃん!

 

「しゅっ、柊くん…?」

「はい、なんでしょう」

 

使いのように聞いてきた。なんか用事言わないとマズイよね。何かあるかな?

 

「えっと、喉乾いた、かな」

「畏まりました。お嬢様」

 

お嬢様って、なんか偉い気がして嫌だな。

 

「お嬢様ってなに?柊くん…」

「ちょっと遊んでみただけ。じゃあ、とってくる」

 

柊くんが部屋の外に出る。

あぁ、幸せ。これでナナニジのなかで1番柊くんに近い人になった。これからこうするのかな。楽しみ!

 

「ニコル」

 

このままあんなことになったり、ウフフ、想像が膨らんでくる♪

 

「ニコル!とってきたぞ」

「あっ、う、うん。ありがとう…」

「どうしたんだ」

「何でもない」

 

冷静を偽る。

 

「そうか?あと、ウサギいたから捕まえてきた」

「うしゃぎ!」

 

噛んでしまったが、大好きなウサギなんだからしょうがないだろう。

 

「好きだもんな。ウサギ」

「あぁ、かわいいっ!」

 

無我夢中だった。耳や背中がモフモフしていて気持ちいい。目がくるっとしていてずっと触ってたい。

 

「痛みも忘れるだろ」

 

そういえばいたくなくなってる。これを狙って捕まえてきたの?

 

「うん。可愛すぎる♪」

「そっか、よかったよ。」

 

柊くんは何が好きなんだろう。遠回しに聞いてみよう。

 

「柊くんはウサギ好きじゃないの?」

 

「うん」だけじゃないはず。何かもう一言あるはず!

 

「いや、嫌いじゃないんだけど、インコとかカピバラ、猫が好きでね。」

 

猫!カピバラ!インコ!三要素みたいだな。

 

「そうだったんだ。」

「今のニコル、かわいいね」

「えへへーっ、って、えっ!?」

 

一瞬意識がとられた。かわいいって、柊くんから言われちゃった!

 

「かわいいじゃん。」

 

顎の下を柊くんが撫でてくる。くすぐったいけどちょっと気持ちいい。

 

「柊くん、やめてよー」

「いいじゃん。ホラホラ」

んきゃっ

 

顎の下を撫でられてる。そして、顎をクイッとして

チュッ

キスをした。

 

「ん!んん!」

「はぁ、なんだ」

「き、キキキキキス!?」

 

ものすごい焦ってしまう。キスなんてされたことないし。

 

「だったら、こっちも」

 

わたしもキスをする。

 

ふぁっ、ファーストキスなんだからね///

「分かったよ。」

 

ホントに分かってるのかな。いつの間にかいたくなくなってたのは柊くんのおかげだけど。

 

 

 

 

 



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第26話 ニコル

 「ありがとうございました」

「いいよ。いつでも来てね」

 

ニコルは無事に個体が消化され、帰ることになった。彩に見送られ。

俺はこの日は休みなのだが、送っていくことにした。

俺が運転、助手席に胡桃、後ろにニコルの3人だ。大宮までは3人で高崎線で行き、大宮からは京浜東北線に乗り換え、座って上野まで行く。いつもよりかかるため、少しはやめ。

 

「早めなのか空いてるね」

「座れないけどね。」

「高崎線最近遅れてばっかだよな。今日は両毛線内安全確認、昨日は鴻巣~北鴻巣間の踏切安全確認だし。今日はそこまで遅れてないけど。」

 

今日は遅れてても数十分くらいだった。今日の6:59発上野東京ライン平塚行きも15分遅れで7:14発。影響はないが。

 

「ドアにでも寄っ掛かってろ。」

 

つり革に捕まるより楽なはずだ。

 

「深谷が少し乗ってくるかな。いつも乗ってくるよね?」

「そうだね。深谷で結構乗ってくる…って、前に熱海行きいなかったっけ」

 

本当だったら6:47に上野東京ライン熱海行きがいるはずなんだけど、前にいないな。湘南新宿ライン平塚行きはいるんだけど。

 

「柊くん、それ前橋始発じゃない?」

「そうだね。あぁ、そういうことか」

 

前橋~高崎で両毛線に入るから運休か。湘南新宿ラインは高崎始発だからね。

 

「ってことは籠原7:09が運休だろ?じゃあ13分発と17分発がいるから混まないだろ」

「7:13発の湘南新宿深谷始発よ」

 

運休か。ってことは、7:05上野行きの次が7:17上野行き、次が7:22平塚行きだ。6:57以降に上野東京ラインがないわけだから、25分間東京に行けない。そうすると、6:57を逃すと殆ど全員が平塚行きに乗り込んでくる。俺だったら、上野行きでさいたま新都心から宇都宮線に乗るけど。

 

「深谷がもっと乗ってくる…」

 

そうしていると、深谷が近づいた。これじゃあ、進行方向右にいたら潰されるじゃん!

 

「2人とも、中寄に――」

 

ピンポーンピンポーン

ドアチャイムがなる。間に合わないか?

ドン!

ニコルがドアに壁ドンされるようになってしまい、胡桃はニコルの横にいた。

 

「間に合わなかったかぁ。まだ動けるから出すもの出せ」

「分かった。スマホ出しといた方がいい?」

「そうだな。」

 

 所定7:22発平塚行きは17分遅れて7:39に籠原を出発。15両だが深谷の客が10両に乗ってるため10両と大して変わらない。

7:30、15分遅れで鴻巣に到着。特急も止まる駅だからか結構乗ってくる。

 

きゃあっ

「んぐ、ごめん、胡桃、ニコル」

大丈夫…///

 

胡桃がなぜか下を見て顔を赤くしている。

 

「どうかしたか?」

「むっ、胸!」

 

胸?俺が胡桃の胸を見ると俺の手が触っていた。

 

「うわっ!」

「柊くん!静かにしてよ。恥ずかしいから」

「ごめん。けどさすがに…」

 

離れた方がいいよね?すると、

キィィッ

 

「んっ!」

「うわあっ」

 

急停止した。なんでだろう?

 

「柊くん、両方マズイよ…」

「胸を触ってるのは知ってる。ニコルもか」

「痴漢プレイじゃないんだから。」

 

俺の手は胡桃の胸、ニコルの股の下にあった。痴漢プレイじゃないけど。

 

「悪い。違うんだ、わざとじゃなくて」

「分かってるけど、なんか、その」

「ムズムズするっていうか」

 

ムズムズ?なんで。そんなのしないだろ。

 

「感想、聞きたい…」

「感想?」

 

なに言ってるんだ?痴漢プレイだぞ?感想言えって…

 

「胸さわってどう?柔らかい?」

「ズルい!私だってもうイっちゃいそうなんだから」

 

イっちゃいそうって、やめた方がいいんじゃないのか?

 

「えっと、柔らかい。大きくなったな」

「///エッチ」

 

何でだよ!言われる筋合ないわ!

 

「イっちゃいそうなんならやめる。イきたいのか」

「スカート濡れなかったら」

 

難しくない?俺の手も濡れそうだし。

 

「じゃあ、イかせるぞ」

 

どうすればいいか分からずに、パンツの中に手をいれ、手を上下させた。ニコルはビクッと体を震わせる。

 

「上手、けど、気持ちいい…」

「イけるか」

「うん。あっ!」

 

俺の手が濡れてくる。ビュッとなにか出てくる。

 

「はぁっ、はぁっ、イっちゃった…電車の中なのに…あうん、!」

「あんっ、!」

 

俺は2人を抱き寄せ、ニコルにキス、胡桃は胸をつかんだ。

 

「絶対離さない。かわいい2人」

「気づかれちゃうよ…」

「大丈夫。今見えてないから。」

 

魔法で見えてない。別の人になってるはずだ。

 

「柊くん、あと30分だよ」

「動いてるけど大丈夫。30分やってるから。ん」

 

ニコルもキスしてくる。のってきたな。俺も片手をニコルの顔に触れ、ニコルの顔を近づける。もう片方はイかせるために胡桃の胸に。

 

「あぁんっ!」

「イクぅっ、イっちゃうぅっ!」

 

いくら声を出しても気づかない。俺たち3人だけの空間だ。

 

 大宮7番線のところを6番線に変更させられ、24分遅れでついた。京浜東北線で上野まで行くだけだ。

 

「じゃあっ、気持ちよかったよ」

「帰ったらしてやる」

 

胡桃は宇都宮線9番線に向かった。俺たち2人は京浜東北線2番線へ。始発で座れる。これじゃあエッチできないか。

 

「ニコル、疲れただろ。寝ていいぞ」

「うん。おやすみ」

 

 京浜東北線で蕨まできた。発車した揺れでニコルが俺の肩に寄りかかる。

 

(ニコル、疲れてるんだな。ってか、)

 

下を見ると…

 

(スカート濡れてる…)

 

 上野は9:30。俺とニコルはここまでだが、最後に確認だ。

 

「ニコル、パンツとスカート少し濡れてるから気を付けて歩け。じゃあ」

「うん。じゃあね、柊くん」

 

 




試しに最初だけ明朝体にしてみたんですがどうですかね。


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第27話 滝川みう

今回から22/7中心になります。


 「マネージャー、みんなとデートしてくれないか」

 

あれから約2ヶ月後だった。4月を迎え、桜が舞い散る時期。まさかのデートだった。俺は前に妻はいないと言ったが、デートするなんて思わなかった。1人ずつでいいらしい。そんな問題じゃないが。

 

「まずは、みうちゃんから」

「えっ…私ですか…」

 

みうだったか。楽しそうだから今回はいいか。

 

 そして当日4月17日土曜日。俺が5分早めにきた。

 

〈ごめんなさい、10分遅れます…〉

 

申し訳なさそうなline。そんな迷惑じゃないのに。

 

〈大丈夫だよ。俺もまだ着いてないから〉

 

安心させるための嘘。あと15分か。

と思っていたら、10分で来た。5分前を基準にしてたのか。

 

「ごめんなさい!」

「い、いやいや、大丈夫だから。お花見だよね」

「あっ、はい…」

 

みうちゃん、暗いからな。

 

 上野公園に着くとレジャーシートを張り、その上に座った。日陰で涼しかった。

 

「私…ミニスカートあんまり着てなくて…変かも知れないですが…」

「変じゃないよ。」

 

持ってきた椅子に座ってるから少しパンツが見えてるのは内緒にしておこう。

 

「なにか…」

「いや、何でもない」

 

知られたら俺がどう思われるか。

 

「桜好きなのか」

「あっ、はい…」

 

ヤバイ…なかなか話が弾まない。どうすればいいんだ?

 

「……」

「…マネージャー…?」

 

どうすればいいんだ。なにか話すこと…

 

「マネージャー?」

「あっ、どっ、どうした」

「いえ…なにか考え事ですか…?」

「あぁ、いや、なんでもない」

 

みう、何回も呼んでたのか?

 

「みうは、俺と何したい」

「えっと…一緒にいれれば…あと、人混みは…」

 

なんかいろんなこと知れたな。じゃあ混んでないところか。

 

「私の家、来ますか…?」

「えっ、いいのか」

「はい…静かなので…」

 

早速みうと俺は歩きだした。どこが最寄りか聞けばいいのか?

 

「最寄り駅って、」

「みずほ台ってところです…」

 

みずほ台か。池袋まで行って東上線か?ひとまずみうについていった。

9:31発山手線池袋・新宿方面に乗った。多分池袋までだろう。

 

「みう」

「…はい…」

「…俺でいいのか」

「マネージャー…」

 

デートって俺を選んだ。なんでか気になってたんだ。

 

「はい。マネージャー、頼りになるので」

 

頼り、か。俺がそう思われたの初めてだ。

 

「そうか。」

 

頼り。俺なんかが頼りになるのか。高校の時は…俺だって大学行っても頼りにされなかった。

弱いから、何も出来ないから、信頼できないから、たくさんの証拠、根拠のないことを言われ、頼りにされなかった。

 

「…マネージャーが、たくさん教えてくれますし…」

 

みうだけが頼りにしてくれた。1番信じられる。

 

「そうか。ありがとう」

 

 池袋には9:48。今度は東上線か。って、降りないのか!?

 

「みう?」

「あ、すみません。ボーッとしてて」

 

少しして降りた。なんだろう?

9:53発東武東上線急行森林公園行き。みずほ台って急行止まったっけか。

 

「志木で乗り換えます」

「あぁ。分かった」

 

急行止まらないのか。

志木には10:12。5分後の各駅停車川越市行きに乗る。

 

「みう、もうすぐ着くな」

「はい。私の家、何もないですが…」

 

 みずほ台には10:21。家まで歩くか。

 

「ここです」

 

もう目の前だった。

 

「あ、失礼します…」

 

人の家に上がるの久しぶりだな。こんなんでいいのか?

 

「誰もいないので。」

 

言う必要なかった?なんだ。

 

…あの、デートしてみたかったこと、してみていいですか

「え?あっ、あぁ」

 

俺が座っていると、みうが膝にのってきた。そして手を後ろにやって、俺を柔らかく抱いてきた。

 

「みう?」

「私、嘘をつく大人は嫌いなんです。でも、マネージャーだったら信じられる。それに、暖かみがあるので」

 

嘘をつく大人か。いるもんな。

 

「俺はいいと思うんだ。みうは。」

「どういうことですか?」

「みうは優しいと思うから。そういう人とだったら結婚してもいい」

結婚…//

 

嫌だったか?って、俺結婚とか言ってた!?ヤバイな。

 

「私も!しても、いいです…

 

だんだん小さくなっていくみうの声。

 

「みう…」

「マネージャー…」

「柊でいいさ。」

 

これでみうも候補か。たくさん候補がいるな。ってか、22/7のメンバーとデートするんだったら+11人か。みうはしたからあと10人。

 

「みう、抱きついてるといいか」

はい。私も、抱いてください…///

「おっ、いいぞ。」

 

俺はみうに手を伸ばし、みうを抱く。

 

あっ//

「みう、まさかかと思ったか?」

「いえ…ただ、手がお尻に…」

 

俺の手は抱こうとして、尻に言っていた。

 

「んなっ!ごめん!」

いえ、大丈夫です///

 

 俺が帰る時間になる。埼玉県内だからそこまで遠くないか。

 

「あの、柊くん、朝霞まで送ります…」

「ありがとう。」

 

16:41発東上線準急池袋行き。朝霞台まで乗る。

 

「いつでも来てください、歓迎します」

「あぁ。」

 

16:47着。朝霞台からは北朝霞まで歩く。

 

「じゃあ、また明日」

「はい!」

 

笑顔で見送ってくれる。俺は北朝霞に向かって歩き始める。

16:54発武蔵野線南船橋行き。南浦和には17:04。京浜東北線各駅停車大宮行きに乗り換え、隣の浦和まで行く。浦和からは17:24発高崎線高崎行きに乗り換え、神保原に帰る。

浦和は17:09。時刻通り。17:24発高崎行きに胡桃が乗ってるはずだ。

17:24高崎行きに乗っていると、大宮で胡桃が乗ってきた。今日はグリーン車だった。

 

 外が薄暗くなった18:36、神保原に着いた。車は近くの駐車場に止めてある。

 

「帰ろうか」

「うん」

 




次回の登場人物は…
「呼ばれたから来ました。」
麗華ちゃん、よろしくね
「はい。次回は私の回なんですよね」
そうだね。よろしく
「はい!精一杯頑張ります!」
自信満々な人でよかったよ。楽しみにしててね
「はい!」


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第28話 佐藤麗華

原作名変えました。読んでくれる人減るかな


 そしてみうとデートしてから1週間後、今度は22/7の寮で待ち合わせだった。今日のデートは誰かな。なるべくうるさくない人がいいな。

そう思っていると麗華個人トークのLINEに通知がきた。

 

〈ごめん、新橋まで来て〉

 

謝っているスタンプと一緒に送られてきた。新橋か。まぁ近いからいいか。

 

〈オーケー。すぐ行く〉

 

寮からだったら御徒町の方が近い。10:00発山手線東京・品川方面に乗り、新橋まで行く。

新橋には10:10。麗華が待ってるはずだ。

 

(麗華、どこだ?)

「あれ、月島か?」

 

後ろから話しかけてきたのは中学の時の…

 

「月島!久しぶりじゃないか!中学以来だな!」

「…あぁ…」

 

1週間前、あんなことを思い出したから。今…

 

「月島さ、俺に会うときだけ話さないよな。」

「そりゃあ…」

「なんだよ、話せないってか!」

 

殴ってくる。あぁ…これで、よかったんだ。俺なんて、こういう人間なんだから。

 

「はぁ…」

 

春なはずなのに、なぜかすごく寒い。足から手の先まで、どこの感覚もなくなってくる。元から喧嘩は弱いし、すぐ倒れる。

 

(麗華、どこにいたんだ)

「マネージャー!」

 

 

 「マネージャー、大丈夫ですか」

「あぁ、大丈夫…」

 

麗華が近くのネットカフェに連れていってくれていた。

 

「すぐ戻るから、あと30分は。」

「分かった。」

「柊って気軽に呼んで。じゃあ、おやすみ」

 

【佐藤麗華視点】

 

 柊くん…私が救うからね。

 

 「んんっ、はぁ、おはよう」

「あっ、おはよ」

 

私は膝枕をしていた。

 

「なんで膝枕?」

「こっちの方がいいかなと思って」

 

男の人ってこういうの好きじゃないかなって思ったから。好きなのかな?やっぱり

 

「麗華、夢に出たから言うんだけど、デート泊まりでいいかな」

「うん、喜んで!」

 

泊まり込みって結構攻めてるな。

 

「ちょっと明日の娘とも行きたくてね」

 

明日の娘って誰だろう。ニコルとか、絢香とか?

 

「今日は2人でいれるから。」

 

さすが、分かってる。

 

「じゃあ、ネカフェいよっか」

「ここでいいのか?」

「うん。ちょっと教えてもらいたくて。柊くんのこと」

 

もっと柊くんのことを知りたかった。出身とか、大学とか、誕生日とか。

 

「えっと、誕生日は4月25日。あとなんだ」

「出身とか、大学とか」

「埼玉県熊谷市籠原出身。大学は北海道。ちなみに高校は神奈川の魔法科高校。」

「北海道なんだ。年齢って23とか?」

 

大学4年生で22歳だからそれくらいだろう。

 

「22だよ。今日が7月24日だから明日」

「そう。」

 

【月島柊視点】

 

 今日行くところは秋田の鶴の湯温泉。上野から車で行く。同行するのは、みうと麗華、ニコル、絢香、ジュンの俺含めた6人。車で7時間かかるため、朝の集合は5時半とはやかった。

高速は扇大橋から首都高、川口料金所から東北道、盛岡から盛岡横手線だ。

運転は蓮田SAまで俺、蓮田SAから黒磯PAまでみう、黒磯PAから福島松川PAまで麗華、福島松川PAから長者原PAまでニコル、あとは最後まで俺がやる。疲れたら絢香かジュンに交代する。

 

「よし、出発しますよー」

 

助手席はみう、1つ後ろに麗華とニコル、1番後ろにはジュンと絢香が座った。

 

「じゃあ行こうか」

『おーっ!』

 



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第29話 旅行

 車で鶴の湯温泉に向かっていると、いろんな場所を通りすぎる。首都高では交代はないが、東北道から交代だ。

 

「もうすぐ蓮田だな。交代だ」

「トイレ行ってきていい?」

 

ジュンがバックミラー越しに手を挙げているのに気づく。

 

「いいぞ。トイレは今のうちで」

 

俺だって行きたいから。

蓮田SAに着くと、俺とジュンは車を出る。みうは運転席に座る。

 

「行ってくる」

 

そう言って俺はトイレへ。

トイレを済ませると、先に電話しておく。

 

「彩?蓮田着いたよ」

《オッケー。次ってどこで交代?》

「黒磯。じゃあ、黒磯で連絡するよ」

《分かった。気を付けて》

「ありがとう。彩」

 

彩との電話だった。

 

「柊くん!早く行くよ!」

「分かった。今行く」

 

早く行かないとみうもストレスたまるか。

 

「俺が後ろ行けばいいんだな。あーや、隣失礼するぞ」

「どうぞー」

 

クールだった。みうが運転し、麗華が助手席、ニコルとジュンが1つ後ろ、俺とあーやが1番後ろだ。

 

「行きますね…」

 

不安だったがしっかり出来そうだ。

 

 あーやとはずっとくっついていた。誰もこっちを見ない。羨ましいから。

 

「なにくっついてるの?」

「あーやがくっついてきたんだろ」

「私ね、今日、下着着てきてないんだ」

 

着てないのか!?っていうか、なにこの出っ張ってるの。まさか…

 

「これ気になってる?これね、乳首」

「何言ってるんだ!言わなくていい!」

 

全く、何言ってるんだ。

 

 黒磯に着いて、みうから麗華に交代する。少し休憩してから。

 

「彩、黒磯着いたぞ」

《無事みたいね。次も連絡頂戴ね》

「分かった。大好きだ、全員」

 

 黒磯を出発し、次の福島松川PAを目指す。電車だと郡山を少し過ぎた辺り。

 

「麗華って免許持ってたんだな」

「うん。最近運転してなかったけどね」

 

運転してないのが1番不安だよ。

 

「柊くん柊くん、ゲームしよ!」

「ゲーム?なんのゲームだ」

「あっち向いてホイ」

 

子供かよ!思わず心のなかでつっこむ。すると、前にいるあーやが言った。

 

「子供だね」

「子供じゃない!」

「あっち向いてホイやる時点で子供だろ」

 

俺もあーやにのる。

 

「いいの!絢香もやろ!」

「しょうがないなぁ。」

「いくよ!」

 

俺じゃんけん強いけどいいのかな?

 

「じゃんけんポイ!」

 

案の定俺が1人勝ち。あーやとジュンは負けた。2人でじゃんけんして負けた方がさせられる。

 

「じゃんけんポイ!」

 

あーやがチョキ、ジュンがパーだった。提案者が負けてるじゃないか。

 

「あっち向いてホイ」

 

俺が左を指すと、ジュンも左を向く。俺の勝ちだな。

 

「俺はやめるからな。勝ったし。音楽でも聴くかな」

「あっ、私も」

 

あーやが前の席から言った。そういえば、あーやとジュンは運転しないもんな。

 

「ワイヤレスだからいいよ。ニコルも聴くか?」

 

助手席のニコルに聞いた。

 

「聴く!」

 

俺はワイヤレスイヤホンをもう1組取り出す。設定は俺のスマホだ。

 

「じゃあなんの曲がいい」

「22/7の曲がいいんじゃない」

 

やっぱりそうだよな。俺は22/7「理解者」を流した。

 

「理解者にしたんだ」

「俺の好きな曲だし」

 

4分くらいだから少しは稼げるだろ、距離。

 

 理解者とか循環バスとか聴いて20分が経った。

 

「下りは空いてるね」

「そうだな。あと何キロくらいだ」

「あと10kmくらいじゃない」

 

10kmか。だったらまだいけるな。計算になるが、仮に70km/hで進むとすると、10kmだと、1/7。すると、およそではあるが、8分34秒になる。曲の長さが1曲大体4分から5分。2曲聴けることになる。

 

「あと何聴く」

「理解者とか」

 

2回目に入ってくるよな、やっぱり。

 

「じゃあ再生するな。」

 

再生させると、ニコルは口ずさんでいた。

 

(かわいい…)

 

 福島松川PAに着き、俺はエコノミー症候群にならないように外に出る。ニコル、かわいかったな。

 

(もう9時か。早いな)

 

上野を出たのが5時半だからもう3時間半経っている。

 

「柊くん、今日行く温泉ってどんなの?」

「温泉だけじゃないからな。えっと、評価は4つ半だな」

 

5つ星はなかったからしょうがない。

 

「そうなんだ、楽しみ!」

 

ジュンが跳び跳ねて喜んだ。

 

「楽しみにしてろ。俺今度助手席だよな」

 

俺は車に戻る。ニコルが長者原PAまで運転する。1時間半だ。

 

「空いてるからはやいかもな」

「そうね。さ、行こっか」



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第30話 疲労

 長者原SAには10時半頃着いた。岩手に入ったのだ。ここから鶴の湯温泉までは2時間40分。少し長い。俺の上野駅から蓮田SAが短かっただけだが。

 

「10:45出発な。来なかったらおいていく」

「はーい」

 

10:45発だと13:25前後に着けるはずだ。ここまで休憩が出来ないため15分休憩をとった。

 

「ニコル、いいのか。2時間半以上休憩ないぞ」

「大丈夫。」

 

 そして10:43になった。もう全員揃っていたため2分早く出発した。まずは盛岡で高速から降りる。

 

「マネージャー先生!到着何時ですか!」

 

修学旅行のようにジュンが聞いてきた。楽しみにしてたもんな。

 

「13:23前後。あと2時間40分。」

 

結構時間がかかる。俺の隣、助手席にはあーや。念のため疲れたときの救済だ。1つ後ろにはジュンと麗華、1番後ろはみうとニコルだった。

 

「まだ疲れてないか」

「大丈夫。柊くんも気をつけてね」

「了解」

 

 盛岡から東北道から降りる。盛岡横手線に入った。これから雫石バイパス、橋場バイパス、仙岩道路を通り、鶴の湯温泉へ行く。

 

「一般道入ったぞ」

「あと少し?」

「まだ岩手だから、まだかかるな」

 

盛岡横手線からは途中で雫石バイパスに入っていく。今回は田沢湖線に沿って走行する。

 

「ふぅ、疲れたな」

 

 「なんかトンネル多いね」

「秋田との県境だからな。峠越えるんだよ」

 

 しばらくしてトンネルから抜ける。交差点で曲がり、山の中へ入っていく。

 

「あーや、運転できるか?あと30分」

 

疲れてきたのだ。2時間運転してたから。

 

「分かった。そこ止まって」

 

コンビニの駐車場に止まる。あーやに交代し、助手席に移る。

 

「ごめんな」

「大丈夫。気にしないで」

 

山のなかは道路がいりくんでいる。酔うかも知れなかったが、誰も酔わなかった。

 

 13:32、予定より9分遅れて鶴の湯温泉に到着した。約7時間半の運転が終わったのだ。

 

「もう予約してるから部屋行こうか」

 

本当は7部屋とりたかったが、2人部屋を3部屋にした。

 

「7人の予約なのに6人なの?」

「あとから1人来るから。新幹線で来るって」

 

もう1人は来てからのお楽しみ。まずは部屋に誰が入るかだ。俺が先に入り、そこに何号室に俺がいるか当てるのだ。

 

(231号室でいいか)

 

231号室に俺は入った。誰が来るんだろう。1人だけだけど。外からはどこ行くか話し合っていた。

 

「230号室いそうじゃない?」

「233号室だよ」

 

どれも外れてる。しかし1人だけ当たっていた。

 

「231号室だと思うから私ここ」

「絶対違うよ、230だって」

 

ニコルが当たっていた。

 

「けど231かもしれない。つっきーE231系好きだから」

 

なんで知ってるんだ。あーや。だから俺はここを選んだ。2人入ってくるか?

 

「せーのっ」

 

ドアが開く。1人だけだった。ニコルだけ。

 

「やった!当たった!」

 

跳び跳ねて喜んでいる。そんなに嬉しかったか。よかった。

 

「ニコル、荷物そこ置いといて。俺電話する」

 

相手は東条悠希。

 

「悠希、久しぶり」

《久しぶりだな!いま仙台駅向かってるから》

「分かった。気を付けろよ」

《分かってるさ。待っててな》

「おう、待ってるから」

 

悠希は元気一杯だった。性格の関係もあるが。

 




30話までいきました!目指すは500話!


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第1長編作品 第31話 旅行

はじめての長編作品ですね


【東条悠希視点】

 

 仙台の単独ライブが終わり、柊くんたちが待っている鶴の湯温泉へ向かう。電話があったが、仙台駅に向かっていた。

のる電車は13:54発こまち23号秋田行き。17号車の1番A席。こまち23号は盛岡、田沢湖に停車する。田沢湖から鶴の湯温泉は田沢湖からかなりの距離がある。歩いて1時間かかるため、田沢湖に柊くんが待っている。車で連れていってもらうんだ。

田沢湖15:09着。柊くんどこだろう?

 

「悠希!ここだ」

「柊くん!」

 

いたいた。車ちゃんとあるね。

 

「悠希、疲れたろ。俺の部屋空いてるから入ったらいい」

「ありがとな!」

 

【月島柊視点】

 鶴の湯温泉に着くと悠希は俺の部屋に行く。ニコルもいるけどベットは3つあるから問題ないだろう。

いまの時刻は16:45。風呂に入るのもあと少しだな。18時くらいに入ろうかな。

外から見てみると、脱衣所は男湯と女湯で分かれている。俺と6人は一緒に向かうでよさそうだ。俺の部屋からも遠くはないから大丈夫だな。さて、位置の確認でも行くか。

 

「あ、柊くん」

「おう、麗華。場所の確認か」

「えぇ。非常口とか」

 

ちゃんとしてるな。麗華は。俺はひとまず自販機や裏口の確認だ。そうして俺はすぐに自分の部屋に戻る。

 

「柊くん、お風呂どうだった」

「結構広めだと思う。脱衣所は分かれてた」

「気持ち良さそう。」

 

ニコルに頼まれて行ったんだ。悠希はもうベットにいるっぽい。

 

「ニコルは寝ないのか」

「お風呂入りたいから。」

 

風呂目当てじゃないんだけど。

 

「俺は疲れたから少し寝ようかな。18時になったら起こしてくれないか」

「分かった。おやすみ」

 

俺は目を瞑った。今日は運転だったり確認だったり疲れたな。明日はどこに連れていこうか。

 

【斎藤ニコル視点】

 

 柊くんが寝てから私は部屋の真ん中に座った。柊くんが何を好きか考えるのだ。気も合った気がするし、なんか私が1番知らない気がしたから。どう思ってるんだろう。

 

(柊くん、東条さんの横で寝てる…)

 

東条さんの方がいいのかな。私なんて、

 

「ニコル…おいで…」

うん…

 

寝言だとは分かっていたが、なんか近づきたくなった。

 

「ニコル…」

 

柊くんは寝ぼけながら私を抱いた。なんか安心する。私は柊くんにこう思われてるんだ。

 

「ニコル、一緒に寝よ…」

「うん。一緒に」

 

私は柊くんの横に寝た。抱きつきながら。

 

【立川絢香視点】

私の部屋にはジュンが同じだった。つっきーの部屋はエリザベスにあげた。一緒が良さそうだったし。

 

「絢香、何してるの」

「見れば分かるだろ、漫画描いてる」

 

PCを持ってきてるのは漫画を描くためだった。つっきーにも手伝ってもらいたかったけど。まぁしょうがないか。

 

【丸山彩視点】

 

なかなか電話が来ない。もしかしてなんかあったのかな。そうだったら緊急だ。

 

「柊くん、電話来ないね」

「そうね。大丈夫かな」

 

秋田の鶴の湯温泉だったはず。私も行きたいけど、遠いからな。

 

「福島松川できたのが最後かな」

「うん…」

 

柊くん、生きてるよね。死なないでね。16:56、もうすぐ暗くなっていく時間だ。お願い、無事で…いて。

 

「彩ちゃん、大丈夫だよ。柊くんだったら」

「そうだよね。柊くんだったら」

絶対、生きてるはず。

 

【月島柊視点】

 

 「ふわぁぁっ、結構寝たな」

 

16:50とかに寝たのに気づいたら17:55だった。ニコルは…

 

「うわっ!」

 

すぐ横に寝ていた。寝顔が…

 

「ニコル、起きろよ。18時だぞ」

「うぅん、分かった…」

「悠希も。起きろ」

「うぅあ?あぁ、分かった」

 

みんな忘れてたんかい。

 

「風呂の準備してロビーで待っててくれ」

「分かった。」

ニコルが返事をする。悠希はまだ寝ぼけている。

俺は他の人たちを呼ぶために、230号室、232号室にも呼びに行く。

 

「みう、麗華、風呂の準備してロビーで待ってて」

「はーい」

 

次に232号室。

 

「あーや、ジュン、風呂の準備してロビーで待ってて」

「分かった。」

 

これで全員気づいただろ。忘れるなよ。

俺は部屋に戻って、バスタオル、パジャマなどの替えを持ってロビーに向かう。いたのは先に言ったニコルと悠希だけだった。

 

「早いな。まだ待ってようか」

 

やがて230号室、232号室の順で集まった。

 

「行くぞ、多分俺1人だけど」

「なに、女湯入りたかった?」

「そんな変態じゃないです。じゃあまたここで待ってて」

「はーい」

 

俺は脱衣所に向かう。服を囲いにいれ、小さいタオルを持ち、ドアを開けようとすると、ドアの横に警告があった。俺が見るとそこには「混浴ですのでご了承下さい」と書かれていた。混浴!?何でだよ…

俺はゆっくりドアを開け、中に入るが、まだ来ていなかった。来たら来たで大事件だけど。

俺は体を洗い、すぐに湯船にはいる。

 

「おっきいねー!」

 

やべっ、入ってきた!

って、あれ?ニコル達じゃないな。そこには蘭、つぐみ、モカの3人がいた。

 

「あーっ、柊くんだぁ」

 

モカが俺に気づく。もうどうしようもないか。

 

「や、やぁ、モカ」

「えっ、混浴なの!?」

 

そりゃあ俺だって知らなかったし。

 

「1回体洗お。それから」

「混浴って、だったら…」

 

あの6人も入ってきた。

 

「やっぱり…」

 

俺の人生終わった…

 

「知ってたの?混浴だってこと」

「知らない!知らないから!」

「怪しいなぁ」

 

あーやがこっちをジロジロ見てくる。なんだよ、怪しいか?

 

「怪しくないだろ。」

「先入っちゃおうか」

 

俺が上がればいい話か?

 

「柊くん入っててね。」

 

ダメだった。何でだよ。あがっていいだろ。

 

「色々話したい…」

 

みうまで!はぁ、俺はどうしようもないな。

 

「えっと、まず、これはたまたまか?」

「たまたまよ。それで、柊くんは」

「俺がどうしたんだ」

「見たいの?」

 

見たいって言えるわけないよね?

 

「見たいって訳じゃないけど…」

「じゃあいいや。みんな、抱きつくよ」

「はぁっ!?なに言って――」

 

もう遅かった。全員抱きついていた。やれやれ、勘弁してくれよ。

 

 そして暫くして、6人は出ていき、Afterglow3人だけになった。

 

「柊くんはどうしてここに?」

「22/7の旅行。そっちは」

「プライベート旅行ー」

 

モカが言った。マイペースだな。

 

「旅行で来てたんです。明日は大館に行って、白神山地を見て戻ってきて、明後日は山形まで行って赤湯の温泉に行って泊まるんです」

「そうだったんだ。俺たちは明日函館行って青函連絡船見て、東能代経由で戻ってくる。明後日は酒田の方通って海を見て、山形で泊まる。」

 

山形は結構似た感じだったな。明後日で帰る方向だから、明日は電車だが、明後日はまた車。酒田から山形が不安だけど。

明日の青函連絡船は新幹線だから盛岡までこまちで行って、盛岡からははやぶさで函館。帰りは新青森まで行って、奥羽本線で秋田まで下ってくる。そしてこまちで田沢湖来て終了。

明後日はここから車で酒田へ行き、酒田から山形まで車で行く。山形からはお昼を仙台で食べる。山形から仙台は電車だ。仙台から山形に戻ってきて、予定はそこで終わり。

明明後日は山形から福島まで車で行って、東北道で上野まで帰る。

 

「山形で迎えようか?」

「ありがとうございます。お願いします」

「分かった。じゃあ上がったらLINE交換しよう」

「はい!」

 

つぐみが積極的に来てるけど、蘭は喋らないな。どうかしたのか?

 

「蘭?」

「なっ、なに?」

「黙ってたからさ」

「あぁ、ごめん。LINE交換だよね。いいよ」

 

なんだろう、なんか違和感感じる。いつもの蘭じゃないっていうか、なんか不思議。

 

 風呂から上がって、LINE交換をする。つぐみ、モカ、蘭の3人だ。

 

 さらに翌日、田沢湖から6:53発盛岡行きに乗って盛岡へ。7:41盛岡。

盛岡7:59発はやぶさ95号。こまちと分離する。

 

「こまちって秋田行くんだよね」

「あぁ。俺らが乗るのははやぶさ95号な」

 

はやぶさ95号は新函館北斗行きで、終点まで乗る。

奥津軽いまべつを過ぎ、青函トンネルに入っていく。30分ほどだ。

 

「わっ」

「青函トンネルだな。」

「光見えるよ」

「竜飛海底と吉岡海底のことだな。」

 

竜飛海底と吉岡海底は青函トンネル内にある駅だったのだが、廃止された。

 

 新函館北斗には10:01。10:11発函館本線はこだてライナー函館行きに乗車。10時半に函館には着く。

 

「青函連絡船だっけ、どれくらい歩くの?」

「400mだから10分くらいかな」

 

青函連絡船は青函トンネル開通に伴って廃止になったが、今も旧函館桟橋、旧津軽桟橋に残っている。今回は函館桟橋の方に行く。

 

「これが青函連絡船?」

「そう。昔はこれで青森から函館まで寝台特急とか運んでたんだ。俺が生まれた2007年にはもう廃止になってたけど」

 

青函連絡船。1度乗ってみたかった。

 

「柊くん、これ乗れるよ!」

「本当か!?」

 

テンションが上がってくる。乗れるなんて。

俺は青函連絡船に足を踏み入れる。鉄の音が鳴る。

 

「すごいな…」

「また来たいね、柊くん」

 

本当にそう思った。今度はいつ来れるかな。

 

 函館から青森まで戻る。12:02発はこだてライナー新函館北斗行き。今度は逆に秋田へ向かう。

 

「柊くん、また来ようね」

「今度は22/7全員で!」

「北海道まわりたいな」

「またいつか、ね」

 

 

 新幹線に乗ってから寝てしまい、起きたのは青函トンネルを抜けた新青森手前だった。

 

「もう、寝ないでよ、柊くん」

「ごめんごめん。さ、降りようか」

 

今度は奥羽本線。14:10発弘前行き。すぐ終点だ。といっても35分乗る。

 

「久しぶりにこんな電車乗ったなぁ」

「なんかワクワクするな!」

 

悠希がにこにこ笑って言った。人によってはワクワクするか。

 

「まだ乗るからな。弘前まで行っても」

 

弘前では弘前城の桜を見に行く。まだ東北だから桜は残っている。ただ、まだ教えていない。サプライズだ。

 

「柊くん、もうすぐ?」

「あと30分」

 

 14:45弘前。次の電車は14:50発の秋田行きだが、弘前城にいくため16:32発つがる6号に乗る。

 

「弘前城行くんだ」

「弘前城って、桜の!?」

 

知ってたのか。

 

「そう。桜満開だぞ

 

俺は6人を連れて弘前城へ向かう。

 

 弘前城に着くと、みんなが歓声をあげた。

 

『うわぁぁっ!』

「どうだ、これを見せたかったんだ」

「すごい!」

「ずっと見てられる…」

 

みうもこう言っている。みんなが喜んでくれた。

 

「よかった。暫く見ているといい」

 

 次は16:32だから1時間半ある。

 




キャラの色分けもしてみた


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第32話 旅行 2日目

 弘前からは16:32発奥羽本線特急つがる6号秋田行き。秋田まで行ったあと、こまちで田沢湖まで向かう。

つがる6号の所要時間は2時間8分。9駅に停車し、途中、大鰐温泉、碇ヶ関、大館、鷹ノ巣、二ツ井、東能代、森岳、八郎潟に停車し、終点秋田。

途中大館には17:09、東能代17:51、八郎潟18:16、終点秋田には18:40に到着する。

 

 東能代まで来た俺たちは、到着したホームを見る。すると、今日白神山地に行ってきたAfterglowの3人がいた。俺はデッキへ向かい、1分の停車時間で急いで話した。

 

「つぐみ、今帰りなのか」

「うん。19:09発秋田行きで」

 

19:09だと弘前17:40発と同じかな。

 

「そうか。じゃ、またホテルで」

 

そう言ってドアは閉まった。17:52、時刻通り出発した。次は森岳に停車する。

 

 八郎潟18:16。時刻通り。八郎潟は停車時間も短い。すぐに出発する。

 

 秋田18:42。若干遅れて到着した。こまちは19:10発こまち48号東京行き。東京まで行く最終電車だ。この次、20:14発こまち96号は、仙台行きで仙台で終点。東京まで行くにはこまち48号が最終になる。

 

「蘭ちゃんだっけ。その人達間に合うかな」

「どうだろう。間に合わなかったら迎えに来るか。秋田まで」

 

 大曲でスイッチバックして、田沢湖20:07。鶴の湯温泉に戻り、時間を調べる。

 

「20:07に秋田着くから、大丈夫だろ」

「20:14発だもんね」

 

俺は一応蘭にLINEする。

 

〈いまどこいる〉

 

少し間が空いて返信が来た。

 

〈追分だって〉

 

今が20:09なのに追分はおかしくないか?

 

〈遅れてるよな〉

〈16分ね〉

 

ってことは、間に合わなくないか?

 

〈秋田に着いたら連絡してくれ〉

〈分かった〉

 

蘭っていつでも落ち着いてるからな。

 

 20:33、蘭から連絡が来た

 

『21:00発あるんだけど、乗っていい?』

「あるんだったらいいよ。」

『分かった。戻るんだけど――』

「つぐみとかいないのか」

『うん。あの、戻ったら…』

「なんだ、周りに誰もいないぞ。こっちは」

『戻ったら、私と寝てくれない!』

「えぇっ、一緒にか!?」

『うん…どうなの!』

「あっ、あぁ…分かった…」

 

そうして電話は切れる。えっ、マジで?蘭と一緒に寝れるの?しかも自分から?

 

(マジか…蘭が自分から…)

 

蘭って自分から言ってくるような人だったっけ?嬉しいけど。

 

「蘭達大曲までは来れそうだ」

「大曲まででしょ。その先は」

「田沢湖線が終わってるかどうかだな。」

 

田沢湖線終わってるかな、最終。終わってたらどうしようか。

 

 21:51、蘭から電話が来た。その内容は

 

『田沢湖線終わってる』

「やっぱり?今から大曲駅前まで行くから待ってて」

『分かった。』

 

ここから大曲って結構遠いか。俺は1人だけで鶴の湯温泉を出ていった。21:58、鶴の湯温泉を出た。調べると1時間16分と書かれてるから、23:14に着くんだろう。俺は車を出し、走っていった。

 

【美竹蘭視点】

 

 柊くんに待っててって言われたから私たち3人は大曲駅東口に向かった。多分東口だから。

 

「柊くん、遠いのにいいのかな」

「大丈夫だよ。信じよ?」

 

つぐみが私を慰めてくれる。

 

「そうだよね。」

 

 23:05、待ってから1時間と少しが経った。まだ着いていないが、とおくから光が見えた。周りは車など通らないのに。もしかして、

 

「柊くん!」

 

私は手を思いっきり振った。気付くかな。

 

「おぉ、蘭、柊くんのこと好きだねぇ」

「ふふっ、いいんじゃない?好きなのは」

 

その車は私たちの方向に近づいてくる。やっぱり柊くんなんだ。

 

「おぉ、蘭、乗れ」

 

後部座席や助手席には誰もいない。1人で来たんだ。

 

「1人だから寂しかった…」

「あはは…柊さんもそういうのあるんですね…」

「そりゃああるさ。夜に1人で車運転するの怖いし寂しいぞ…」

 

柊くんもそういうのあるんだ。意外だったな。いつも冷静なのに。

 

「どうした、蘭」

「ううん、なんでもない」

 

【月島柊視点】

 

 行きは寂しかったが、帰りは全くだった。みんなで話していると、0時を過ぎてるのになぜか暖かかった。

 

「着いたぞー。ゆっくり寝たらいい」

「はーい、おやすみなさい、柊さん」

「おやすみー。グーグー」

 

モカ、寝たふりしない。

 

「行こう、柊くん」

「あぁ。」

 

 

 




停車駅のところだけ明朝体に。しっぽり明朝を使用してます。


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第33話 10人

 結局寝たのは0時半。起きたのは早くないといけないため、蘭に置き手紙を置いて、俺は4時半、外に出て、みんなと集合した。今日は海を見ながら山形まで行く。酒田の近くで海が見えるため、酒田経由で向かう。

高速は協和ICから秋田自動車道、河辺JCTから日本海東北自動車道に移り、象潟ICで高速から降りる。そのあとはJR女鹿駅で海が見える。そのまま酒田のコンビニに行って、休憩。そのあと山形まで向かう。

 

 4:32に鶴の湯温泉を出て、酒田へ向かう。

 

「運転士は交代するの?」

「予定だと酒田までしないかな。」

 

3時間かかるが、酒田からジュンに交代するから問題ない。

 

「ほら、高速乗るぞー」

 

秋田自動車道だ。すぐに抜けるけど。

 

「眠いー!寝ていい?」

 

そんなに眠いんだったら昨日よく寝とけよ。

 

「いいぞ。高速降りたら教える」

 

 

 次は日本海東北自動車道。河辺JCTから入っていく。

 

 女鹿を過ぎて海が広がる。

 

「うわ、すごい…」

「綺麗ね」

「綺麗…」

 

みんなが言葉を失っている。当然か。

俺は少し速度を落とす。見やすいように。

 

「今から山に入ってくからな。今のうちに見とけ」

「うん。泳げそうね」

「泳ぐなよ。ほら、行くからな」

 

俺はもう疲労困憊だった。2時間半運転してるから。

 

 酒田に着き、コンビニで運転を変わる。俺は1番後ろの席で横になった。麗華の隣だ。

 

「疲れたねー」

「あぁ。って、なんで膝枕を」

「疲れたでしょ?」

 

そうだけど…

 

「よしよし、休んでね」

 

麗華は俺を思いっきり養ってくれるが、なんか子供っぽくなってない?

 

「柊くん、おいで」

 

起き上がっても抱きついてくるのを勧めてくる。しかしなぜか断れない。なぜかって?そりゃあかわいいし、なんかしたいから。

 

「うふふ、柊くん、甘えてる」

「麗華、実はさ」

 

俺は言っていなかった事実を話す。これは全員に話していないことだ。俺が…

 

「俺さ、10人兄妹なんだ」

「10人!?多くない!?」

「そう。俺は1番上で、1番下は中学1年生に今年なったんだ」

 

10人兄妹で、男は俺と1つ下の暁依だけで、それぞれ、

 

「上から俺で――」

 

大学4年に暁依(あきより) 22歳

大学2年に冬菜(とうな) 20歳

大学1年に香奈(かな) 19歳

高校2年に藤花(とうか) 17歳

高校2年に風那(ふうな) 17歳

中学3年に沙理華(さりか) 15歳

中学2年に瑞浪(みずな) 14歳

中学1年にかりな 13歳

中学1年に彩夏(さやか) 13歳

そして25歳の柊

以上10人だ。

 

「そうだったんだ。そういえ誕生日って――」

『あぁぁっ!』

 

急に周りが叫ぶ。何が起きたんだ!?

 

「麗華ちゃん、まだ…」

 

なんなんだ…何も分からないんだが。

 

 山形につくのも9時半でまだ早かった。日の出見たかっただけだし。だったら…

 

「なぁ、妹たち連れてこようか」

「えっ、北海道じゃないの!?」

「そうだけど、札幌だから。ちょっと調べてみる」

 

札幌までのルートはさすがに遠かった。その時、俺の後ろから俺の首を甘噛みしてくる人がいた。

 

「いてっ、なんだよ…」

「お兄ちゃん、久しぶり」

 

高校2年の沙弥香だった。他にも同じく高校2年の藤花、中1の瑞浪がいた。

 

「お兄ちゃん、会いに来たの」

「なんでいるところ分かったんだ」

「お兄ちゃんの場所だったら勘で分かる」

 

勘じゃ分からないだろ。藤花。

 

「本当は追いかけてきたの」

「酒田で会ったから電車で先回りした」

 

なんだ、そういうことか。っていうか、こいつらSだから俺嫌なんだよ。さっきから沙弥香は俺の指咥えてるし。

 

「沙弥香、いい加減にしろ」

「なんで?いいじゃん」

「柊くん、こういう人たちしかいないの?」

「違う。他の6人は…」

 

後ろから「6人がどうしたって?」と声がした。まさか…

 

「6人はちゃんとしてるの?」

「んなっ、冬菜!」

 

冬菜はツンデレだから俺の好きなタイプなんだけど、少し怒らせるととんでもないことになる。

 

「怒るなよ、冬菜」

「冬菜、お前怒りやすいんだから喋るな」

 

暁依はまとめ役みたいだ。俺の1つ下で、1番しっかりしてる。力も1番だ。

 

「あきにいが言うんだったら…」

 

兄が2人いるから俺のことは「お兄ちゃん」、暁依のことは「あきにい」で呼んでいる。俺は全員名前で呼んでる。

 

「そうだ!さっきね、面白いの見つけたの!ついてきて!」

 

香奈が言った。香奈は狭いところよく入ってくからまた狭い路地かなんかかな。

 

「いいけど」

 

ナナニジのメンバーに悪くないかな?と思っていると…

 

「なになに!どんなの!」

 

ジュンは食いついてるな。他はみうを除いてついていってるか。

 

「みう、俺についてこい」

「はい…」

 

ついていくと、案の定狭い路地を入った場所だった。

 

「狭くない?」

「大丈夫!入って!」

 

俺たち17人は狭い路地に入っていく。体が壁に密着している。なんか物音がしたが、いつも通りか。

 

「なんか壁迫ってない!?」

 

まさか…トラップか!?

 

「暁依!出ろ!」

 

指示すると、すぐに路地から抜ける。俺たちは壁から逃げることしか出来ない。

 

「潰される!」

 

悲鳴が聞こえるが、壁はまだ迫ってくる。

 

「奥まで行け!」

 

奥まで先に行ったら考えられるはずだ。

奥にたどり着くと、少し広くなっていた。人2人分はある幅だ。壁は後ろの人たちを押してこっちに迫ってくる。

 

「うわっ!」

 



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第34話 密着

 押された俺たちは反対の壁と迫ってきていた壁に挟まれるようになったが、潰されずにすんだ。しかし、密度が高く、身動きがとれない。

 

「もっと詰めないと…」

「ちょっ、もう無理よ!」

 

詰めようとしているためどんどん人で潰されていく。

 

「動かない方がいい!」

 

俺が叫ぶとみんなが止まる。

 

「ごめんね、その…胸が…」

 

麗華が狭いせいか胸を俺に押し付けている。柔らかくて気持ちいいけど。

 

「大丈夫。それより、みう、近くないか」

「ごめん…こうしかなくて…」

 

キスしてしまいそう。周りは俺にくっついている。

胸を押し付けているのは麗華だけでなく、ニコル、あーやもだった。

 

「あっ、ごめん…離れるから…」

 

ニコルが上下に動くが、全然離れられない。むしろ、俺の肩になんかたってる物が当たるんだけど?

 

「あっ、乳首たってきた…」

「動かない方がいいな。あっ」

 

俺はバランスを崩してしまう。そのまま前に倒れ、みうとべったりくっついてしまう。

 

「んっ!」

 

抱きながら俺はみうとキスをしていた。抱きついていると起き上がれない。

 

「あれ、柊くん、みうちゃんと…」

「んはっ!うるさい!お前もするか」

 

俺は麗華を抱き、みうと一緒に抱く。みうとキスはするが、麗華には胸を揉む。

 

あっ、いやっ

 

 

 山形駅に戻ったのが12:40。昼飯がまだだったため食べてから移動する。10人の暁依と妹はホテルのチェックインを先に済ませるそうだ。しかし7人で押しかけるのは迷惑だと思い、3つに分かれた。俺の班はニコルとあーや、ジュンの班はみう、麗華の班は悠希を連れていった。

俺の班は日本食のべにはな亭で済ませることにした。

 

「俺そばでいい」

「あっ、私も」

「じゃあ私もかな」

 

全員ざるそばで決定した。店員が来て、俺が「ざるそば3つ」と言って店員はお辞儀をして去っていった。

待っている間、俺たちは妹の話で持ちきりだった。

 

「あの、中1の…」

「瑞浪のことか?」

「うん。あの子、裏がある…?」

 

裏があるって、俺も知らないんだけど。

 

「裏って…一応聞いてみるか」

 

俺は母さんに電話する。しょうもないことだけど。

 

「母さん?ちょっといいかな」

《あら柊。どうしたの?》

「瑞浪ってさ、裏があったりする?」

《瑞浪ちゃん?どうして?》

「そういう気がしたから」

《そうね。表では明るいけど、裏では暗い。こんな感じかしら?》

「裏って、家ってことでいいのか」

《そうね。そっちでは今いるの?》

「ホテルの予約とってくるとか言って今いない」

《そう。そうだ、今度帰ってきなさい、父さんが帰ってきてほしいって言ってるわ》

「分かったよ。今度帰る」

《よかった。じゃあね。》

「あぁ。じゃあな」

 

電話がつい長くなってしまう。家族とだからかな

 

「みう、瑞浪に裏あった」

「滝川さん、よく分かったわね」

「うん。なんか偽ってそうだったから…」

 

みうって、人の隠れたところ探すの得意なのかな。

 

「みう、俺の隠してること分かるか」

「え…えっと…心配してる…?」

 

正解だ。っていうか、なんで分かるんだ

 

「多分、家の人たちとか、事務所のメンバーとか?」

「図星だ。よく分かったな」

 

そんなことをしていると、注文したざるそばがやってきた。

 

「さっさと食って出ようか」

 

人混みが嫌なみうからしたら嫌で仕方ないはずだ。

 

 10分くらいで出てきた。ちょうど12時45分だった。

 

美竹蘭視点

 

 朝6時半、私が起きると、首に何か張られていた。私がそれを取ると、そこには

 

「蘭、先に俺は出るからな。気をつけて行ってこい」

 

とかかれていた。そっか、先に行ったんだ。

 

 田沢湖まで歩いていくだけで疲れたが、田沢湖からは9:32発田沢湖線大曲行きで大曲、11:15奥羽本線新庄行きで新庄、14:19奥羽本線山形行きで山形。以上の行程。

 

 山形15:32。ホテルに向かって荷物を置く。

 

「疲れた…寝ていい」

「蘭ちゃん、ダメだからね」

 

ダメなの?私疲れたんだけど。

 

月島柊視点

 

 「疲れた…寝ちゃダメか」

「まだダメだよ、私も眠いけど」

「ってか部屋別にしたんだからいいだろ」

「それ言っちゃったら…」

 

部屋を別にしたのはゆっくり寝れるように。狭いと寝にくいからだった。外はまだ明るく、暑くはないが汗ばむ程度だった。

 

「俺は寝る。おやすみ」

「私も寝よっかな」

 

全員がいなくなって静かになった。誰もいないのだ。

 

(実家いつ帰るかな…明後日とか空いてるな。)

 

俺は眠くなりながらもその事を考えた。

 

 寝ているとなぜか重みを感じた。誰もいないはずなのに、なんでだろう?俺は重い目を開ける。すると、茶色い髪の誰かが毛布の中の俺の上に乗っていた。

 

「はぁ!?」

 

すっかり眠気も覚めた。だってあーやが上がってきてたのだから。

 

「あ、起きちゃった?」

「あーや、どうしてここに」

「会いたくなっちゃった」

「会いたくなったじゃないんだよ。」

 

あーやってこんなに俺に懐いてたっけ?

 

「つっきー、していい?」

「するって、何を」

「恋愛系漫画のネタ作り?」

 

恋愛系って、俺とやるのか?

 

「俺と?」

「うん。つっきーが1番近い男の人だからね」

 

そうなの?

 

「手伝いだったらやってやろう。何するんだ」

「えっとね、手繋いで街中歩く」

 

早速そこからやるのか!?デートじゃないか…




この続きはスペシャル編でありますのでお楽しみに!


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第35話 帰宅

 「蘭、お帰り」

「…ただいま…」

「どうした?蘭」

「…ちょっと来て」

 

蘭が俺を呼び出す。なんだ?俺何かしたか?

 

「蘭、何かした――」

「私と会ってないのに」

 

会ってない?どうして

 

「もっと一緒にいたかったのに」

「蘭、いつでも会えるからさ」

「会えないじゃん!」

 

蘭が大声を出すのはあまりないのに、今日だけは真剣だった。

 

「蘭、来ればいいだろ」

「でも!迷惑だって言うかなって…」

「蘭」

 

俺は抱き締めて言った。

 

「そんなことない。来ればいい」

「柊くん…分かった」

 

蘭は歩いて改札を出る。俺は少しあとに改札を出た。蘭はもう見えなかった。

 

 翌日朝7時、妹たち10人は先に新幹線で、蘭たちは上野で会うのを条件に少し後に出ていく。

 

「帰ろうか。楽しかったか」

「うん!楽しかった!」

 

ジュンは相変わらず1番に話し出す。帰りは山形蔵王ICから山形自動車道、村田JCTから東北自動車道、川口料金所から首都高川口線、江北二町目付近から高速から降りて、一般道で上野駅前まで。交代は蓮田の1回のみ。俺はと言うと、前日3時間半の運転で、疲れすぎて運転がまともに出来ないと言うことで運転はなかった。

そして、俺の状況は…

1番後ろで横になっている!

なんで?こんなんにされないとダメなの?とにかく落ち着こう。

 

「はぁぁぁ」

 

深いため息。眠くなってくるしさ。

 

「しょうがないでしょ。前あいてないんだから。今でも2人席のところに4人ぎゅうぎゅう詰めでいるんだから」

「苦しいんだよ」

 

別に俺を横にさせなければよかった話じゃない?

 

「私…きつい…」

「入れるんじゃない?右」

 

5人が左右に分かれる。真ん中がちょうど空く。

 

「あの、この間に入れと?」

「そ。はやく入らないと詰めちゃうぞー」

「入っていいんですかね?」

「いいって。はやく」

 

俺は前に移動してその間に入る。

右があーや、左がニコルで挟まれている。肩の柔らかさがよく分かる。

それに、俺が静かにじっとしているとあーやとニコルの心臓の鼓動が伝わってくる。

横はかなり狭いけど、俺の体はみんなと比べて太さは変わらない。

 

「狭くない?」

「あと何時間だっけ」

「あと4時間半くらい」

 

4時間半この状況なの?地獄でしかないじゃないか。ニコルの心臓の鼓動が伝わってくる。速い鼓動だ。

一方あーやは等間隔な鼓動。落ち着いてる。

 

「ニコル、大丈夫か」

「うん…」

 

斎藤ニコル視点

 

 柊くんがとなりに座ってきてから最初は大きくゆっくりだったが、ずっといると、小刻みになって速くなってしまう。死んじゃいそうだった。ドキドキしすぎて。

 

(肩が触れてる…シートベルトも狭いからしてないし…)

 

キスできそう…って、なに考えてるの!?私!

 

「ニコル、大丈夫か」

「うん…」

 

顔でも赤くなってたの!?恥ずかしい…やめてよ…

 

「なんか緊張してる?」

 

柊くん…そう言われるの嫌…分かってるでしょ

 

「分かんないの」

「分かってる。ただ――」

 

私は柊くんを強く締める。怒りとツンツンしてるような気持ちで。

 

「ぐっ、ニコル…死ぬ!死ぬ!」

「死んでよ…っ」

 

思わず泣き出してしまう。

 

「ニコ…ルやめてくれ…」

 

いつの間にか話しづらくなるほど締めていた。私はすぐに離す。

 

「ニコル、嫌われたのか、俺」

 

今まで何を思ってきたのか急に分からなくなった。私、何してたんだろう。

 

【月島柊視点】

 

 嫌われたのかも分からずに俺は寝た。なんでだろう、勘違いかもしれないが、本当かもしれない。本当だったら、俺はどうするんだろう。自殺かな、それとも…



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第36話 絢香

 俺が起きたのは行くときに通った黒磯らへん。相変わらず3人席に5人だから起きてみるときつかった。俺はよく寝れたと思った。交代の蓮田まではJR宇都宮線をたどっていくだけ。もう所属路線まで来たのだ。

 

「ニコル、すっかり俺に懐いたじゃないか。」

 

ニコルは俺の肩に頭を乗っけて寝ていた。黄色い髪が俺の肩を包むように広がっていた。ニコル髪長くしたからツインテールしてるんだよな。

 

「ニコルって髪切らないのか」

「なんか時間がないとかでね」

 

時間がないって、今度俺が切ってやろうかな。髪。

 

 蓮田SAに着いて、麗華からみうに交代した。その時に何か相談していた。

「カーナビ使っていい?」

「あぁ。別にいいけど」

麗華は車のカーナビを出した。何に使うんだろう。あとは上野駅まで行くだけなのに。

11:05、蓮田SAを出発し、大宮方面に走り出した。

岩槻ICに差し掛かると、高速を抜け、ループを下っていった。岩槻料金所を抜け、ついに一般道、東大宮バイパスに入った。

起きていたニコルは高速を抜けたことに気付き、みうと麗華に指摘したが、麗華はうなずいてそのままみうを止めなかった。

東武アーバンパークラインの線路を越え、さらには宇都宮線の線路も越えた。

 

「どこ行くんだ。原市駅の横も通りすぎたけど」

「もうすぐよ」

 

そして11時半頃、車は駐車場に入った。看板を見ると、花咲の湯と書かれていた。

 

「温泉か。」

「疲れたから入ろうかなって。タオルはあるから入ろ。」

 

準備がいいな。

7人は温泉に入るために中に入り、そのまま風呂に向かう。鶴の湯温泉とは違い、男女別々だった。

 

 俺が先に上がってしまい、椅子などがある休憩スペースで待っていた。俺は密かに髪をほどいているニコルを楽しみにしていた。どんな髪なんだろう。

 

「あれ、柊くんだけなの」

 

ニコルだ。黄色い髪をバスタオルで拭きながら現れた。髪が肩を越え、いい匂いがする。

 

「ニコル、かわいい…」

「そう?髪ほどいといた方がいいかな」

 

俺の隣に座ってニコルは言った。

 

「ほどいておいてもいいかもな。」

「じゃあそうしようかな。」

「あと…下着が…」

 

白い服で透けて見えてる他に、首もとから少し見えている。

 

「きゃあっ、見ないで!」

「おい!そんな急に立ったら」

 

バランスを崩してニコルは俺の方に倒れてくる。

 

「あっ!」

 

顔が近づき、俺とニコルはキスしてしまっていた。

 

「んちゅっ」

「気持ちよかったー。って、ニコル!?柊くん!?」

 

ヤベー、バレる。ってか見られてるよな。

 

「ズルいーっ!私も!」

 

はぁ!?なに言ってるんだ!ちょっ、今来るな!

 

「んんっ、ん、ちゅっ」

「ぎゅーっ」

 

1人がキス、5人がハグ、みうだけが口を押さえていた。

 

「はっ、みう!んっ」

 

ダメだ。キスしてくるから話せない。

 

「私もかな…」

 

みうもバグしてきた。きついけど、なんか幸せ。いい匂いがするし。

 

「んんっ!はぁ、はぁ、んっ」

 

ニコルはずっとキスしては離れ、またキスするという繰り返し、6人はずっとハグだけだった。

 

 結構買い物をして、後ろは入らなくになってしまった。

俺とあーやはトランクで2人いることになり、3人席に3人の定員になった。

トランクも荷物があるため、自由に動けない。開く心配はないが、ずっと密着していることになる。

あーやは着替えるものがなく水着でいた。車の中は暖かいから問題ないが、肌の露出が多いため、俺には柔らかい胸がずっと当たっていた。今どこにいるかも分からないし。

 

「狭いな…」

「トランクとはね…」

 

むにゅっとあーやの胸が俺の体でつぶれてしまう。

 

「あっ、胸…」

「しょうがないから、許してくれ…」

 

なんか言われそうだったから俺は許してくれるように言った。

 

「別になにもしないけど…」

 

その時、車が縦に揺れ、俺とあーやがバランスを崩し、そのまま倒れてしまう。

 

「あっ」

 

床にあーやを押し倒すようになり、俺はあーやを羽交い締めにしていた。それと同時に、ドンと音がして、後ろのものが崩れてくる。

 

「後ろ大丈夫?」

 

聞かれても当然だが、こんなところを見られたらただじゃすまない。

 

「大丈夫だ。」

「そう?ならいいんだけど」

 

あーやが小声で少し怒った口調で言った。

 

「なんでそう言ったのよ。正直に言って」

「言えるわけないだろ。ここを見られてもいいのか」

「うっ、分かった。黙っておくから」

 

よかった。ここで大声出されたら見られてたと思うから。

 

「つっきー、辛くないの」

「辛いけど、しょうがないだろ」

「肘くらいだったらついていいんじゃない」

 

手のひらから肘に移すだけで結構近くなる。

 

「近くなるけど、いいのか」

「私はいいけど。あ、もしかして気にしてるんだ」

「ちっ、ちが!」

 

俺は恥ずかしくなって少し戸惑った。

 

「ほら、おいでっ」

 

あーやは俺の背中を抱き、あーやのところに引っ張る。荷物も一緒にのし掛かってくる。

 

「うわっ、あーや!」

「こんなことしてもいいんだよ。」

 

ダメに決まってる。だけど荷物が背中に乗っているため起き上がれない。

 

「早くやめてくれ!」

「ひゃっ」

 

耳元で囁くような声で言ったんだが。もしかして、囁いて言ったからか、息が多く、耳に息をかけたようになったか?俺はまた息を吹く。

 

「ふっ」

「ひゃぁっ、やめて…」

「声出すとバレるぞー」

「分かってる…」

 

我慢できなさそう。俺はあーやにキスする。

 

「んっ、ちゅっ、ちゅく」

「大丈夫。バレないから」

 

 

 

 

 

 

 

 



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第37話 行方不明

 あれから何分乗ってたんだろう。いつの間にか上野の駐車場に着いていた。

 

「トランク狭いんだよ…」

「あはは、ごめんね。」

 

わざとだろ。

 

「じゃあ、俺今日休みだから。帰るからな」

「はーい。じゃあね」

 

俺は引き続き車を走らせた。上野駅から家までだ。

 

 家に着くと、音に気付いたのか彩と胡桃が出てきた。こっちに走ってくる。そういえば、連絡とってなかったな。

俺は車の窓を開ける。

 

「ただいま。」

「お帰り。中で待ってる?」

「そこで出迎えたいんだったら移動しなくてもいいけど」

 

俺がそう言うと、彩は「じゃあここにいる」と言って車から少し離れて立ち止まった。

 

「んんっ!」

 

誰か女の子の声。胡桃か彩か。なに伸びてんだよ。

 

「ふぅ…着いたの?」

 

着いた?彩は外にいるし、胡桃も外にいる。じゃあ誰が乗ってるんだ?ナナニジは全員降ろしたつもりだし、誰も乗ってないはず…

俺が恐る恐る後ろを振り返ると、そこには

 

「もう上野駅着いたのね」

 

あーやだった!なんでいるんだよ!

 

「なんでいんの?」

「寝過ぎちゃったかな」

 

寝過ぎてるよ!ってかなんで俺気付かなかったんだ!?

 

「ここ俺の家なんだけど」

「ふーん、寝過ごしちゃったか。」

 

反応薄っ!

 

「だったら泊めてよ」

「は?なんで」

「来ちゃったから?」

 

そういう問題じゃないんだけど。

 

「女の子のパジャマ姿、見れるよ?」

 

もう間に合ってます。彩と胡桃のパジャマ姿毎日見てるし。

 

「女2人いるけどいいのか」

「あれ、未婚者って言ってなかった?」

「あぁ。今は知り合い。彼女でもあるけど」

「じゃあいいよ」

 

なにそれ。いるのはいいけど妻だったらダメなの?

 

「じゃあトランク開けるから出てこい。」

「はーい。」

 

俺は外に出てトランクを開ける。なんで気付かなかったかな。

 

「出てこい。開けたから。出たら閉めとけよ」

 

俺はトランクを開けて彩と胡桃のところへ行った。

 

「おかえり。お腹すいたでしょ。」

「あぁ。昨日から何も食ってないな」

 

昨日の夕食からか。よく運転できたな、俺。

 

「ご飯作っとくね。」

「ありがと。」

 

あーやは彩が行ってからこっちに来た。泊まるって、部屋俺のとこしかないんだけど。

 

「俺の部屋でいいのか、泊まるの」

「いいよ。」

 

俺の部屋そこまで広くないんだけど。3人で結構狭いんだけど。

 

「分かった…事情説明してくるから待ってて」

 

俺は家に入り、彩に事情を話す。

 

「今日昼ごはん4人分作れるかな」

「ん?もう作ってるよ。もう1人泊まるんでしょ」

 

なんで知ってるんだ。話した覚えないのに。

 

「なんで知ってるんだ」

「トランクから1人出てきたから」

 

そこ見てたのか。じゃあいいってことでいいのかな。

 

「じゃあいいんだな」

「いいよ。でも…」

 

少しためて彩が発したのは意外な言葉だった。

 

「襲わないでねっ♪」

「はぁっ!?おっ、襲うわけないだろ!」

「ふふっ、どうだろうね」

 

信用されてないのかな?俺は。

いいって言ってたから俺は外にいるあーやを呼びに行く。外は春だからかあまり暑くはないが、ずっといると汗ばむ。

 

「ほら、入ってこい」

「エアコンある?」

 

今の季節エアコン聞くって暑がりなのか?

 

「あるけど、どうした」

「涼しくないと漫画書けない」

 

そういうことか。だったらリビングでいいかな。

 

「リビングでいいよな」

「いいから、早くいれて」

「はいはい。分かったから」

 

俺はドアを開けてあーやをいれる。誰も来ないけど。いつの間にか昼ごはんの匂いが漂う。

 

「食べたい…」

「食えるから。彩、皿あるか」

「6つあるから大丈夫。えっと、誰だっけ」

「立川絢香。よろしくー」

 

そう言って絢香は出されていた焼きそばを美味しそうに頬張る。よっぽどお腹がすいてたんだろう。

 

「美味しい?絢香ちゃん」

「うん。」

 

俺も食べるか。

 

 食い終わった俺はもうおやすみモードに入る。いつも使っている空き部屋だ。声が全く聞こえない部屋だ。聞こえないと言っても誰かが叫んだり、大声を出したら聞こえる。

今日は格段と静かだった。いつもは笑い声などがたまに聞こえてくるが、今日はなかった。

俺がゆっくりと目蓋を閉じ、寝ようとした、その時だった。急に下から大声が聞こえた。

 

「ああああぁぁぁっ!」

 

あーやの声だろうか。なんかすごい叫んでいる。俺の斜め向かいの部屋にいた彩も聞こえて部屋を出ていた。胡桃は1階のゲーム部屋にいるはずだけど、出てるようすがないってことは音ゲーか。

 

「何?さっきの」

「絢香だ。何かあったのかね」

 

俺たちが1階へ降りると胡桃はキッチンの冷蔵庫を漁っていた。ヘッドホンをしてるから気付いてないのかな。

 

「あーや?どこだ」

「絢香ちゃーん、どこいるのー」

 

呼んでも出てこない。家にいるのか?本当に。

 

「何してるの?私は暁依と一緒にゲームしてたんだけど」

 

なんで暁依いるの?まぁいいか。

 

「胡桃さん、ここにコントありました?」

 

コントって…俺たちがゲームやるときの省略じゃないか。分かるのか?

 

「どこにあるって?」

「廊下ですよ」

 

廊下にコントあるの?おかしいだろ明らか。

 

「コント私椅子の上置いといたよ?」

 

コントの意味知ってるんかい。ってか椅子の上に置いたんだったら尚更だ。

 

「なんでだよ。コント置いたんだろ?」

「誰かが蹴ったとか?」

「俺と彩は上にいたし、暁依と胡桃はゲームしてたろ」

「蹴ったって、まさか泥棒?」

 

いやいや、人のいる家に入ってくる泥棒なんているかよ。

 

「リビング鍵かけてた?」

「開けといたよ?」

 

まさか!

 

「あーやがいないんだろ?」

「それで鍵開けてたんですか…」

 

だったら。暁依も同じことを思ってるんだろう。

 

「だったら」

「でしたら」

『リビングから入ったっていうのは』

 

リビングから入ったんだったら上にもゲーム部屋も通らない。誰も気付かないのも納得できる。

 

「あーや、そこら辺にいるか」

「いや、考えづらいだろ、柊」

 



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第38話 救出

更新頻度はかなりあるかと。
さて、今回の話は絢香がどこか行ってしまい、柊たち4人で探す話です。


 俺はその線を考え、すぐに外に出る。だが誘拐したとしても時間が経ってしまっている。

 

「一回家の裏も含めて家の敷地全体を捜査するぞ」

「分かった!」

 

俺も1人で探しに行く。表も裏もどこもくまなく探す。

 

【丸山彩視点】

 

 まずは裏から見つかりづらいから探し始めた。裏は草が生い茂り、草丈は膝の上辺りまで生えている。

 

「絢香ちゃーん、どこー?」

 

呼んでも全く反応はない。ここにはいないのかな。道路から行ったとすれば、表なのかな。でも一応探しておこう。

 

【葉元胡桃視点】

 

 私は屋根の上から何か人影を探していた。1番よく見えるはずだったから。

 

「絢香ちゃーん、いるのー!」

 

聞こえないかな。やっぱり上からだと無理かな。だけど、まだ諦めないから。仲間のために。

 

【月島暁依視点】

 

 俺は表を重点的に探した。道路に出ていったから表が1番見つかりやすいはずだった。

 

「大丈夫か!いるか!」

 

返事はないか。やっぱり探しかた変えた方がいいか?いや、もう少しこのやり方でやってみよう。

 

【月島柊視点】

 「あーや、どこだ!」

 

みんなもまだ見つけてないんだろう。報告には誰も来ない。

裏の隅の方へ行くと、少し崖のようになってるが、少しだったら行ってみよう。

 

「あーや!どこだ!」

 

いないか。やっぱり戻ろうかな。俺が足を踏み出すと、間違って崖に歩きだしていまい、崖から落ちる。

 

「うわっ!」

 

下に叩きつけられると、なんか声が聞こえる。

 

「誰かいるのか。」

 

声が急に途絶える。やっぱり誰かいるのか。しかも出てきたくない誰か。

声のしたほうに歩きだすと、あーやがスカート、服がめくられた状態で放置されていた。

 

「あーや!」

「つっきー…っ」

 

あーやが泣きながら抱きついてくる。怖かったよな。

 

つっきーっ…ひくっ、怖くて、ひくっ

「あーや、落ち着いて。」

 

過呼吸になって事情を説明しようとするあーやがかわいそうだった。

 

「どんな人だった?」

太ってて…ひくっ、男の…人…ひくっ

「分かった。一緒に戻ろうか」

 

俺はあーやを連れて家に向かう。探している人たちに向けて合図を送って中に入る。

 

「なんか飲もうか。」

「うん…」

 

ぎゅっと抱きついて離れない。よっぽど怖いんだろう。俺は暖かい飲み物をあーやに渡した。

 

「無理して飲まなくてもいいけど、少し温くしてる」

「ありがと…」

 

ゆっくり飲み、過呼吸を治そうとするが、全く治る気がしない。

 

ひくっ、ひくっ

「絢香ちゃん、落ち着こ?」

「あーや」

 

俺はいつもより弱いが、強めのハグをした。安心できるはずだ。さらに俺は耳元で囁いた。

 

「大丈夫。俺がいるよ」

 

俺がそう囁くとあーやはまた強く抱き締める。

 

「つっきー…」

 

 あーやがナナニジで1番クール。ただ、俺の中では1番人から助けてもらいたい娘だった。

 

 




感想書いてくれると嬉しいです!
さて、次回は実家に帰りますよ!またあの11人兄妹全員揃いますね。僕自信も全員の名前は覚えてないので。唯一覚えてるのは冬菜と藤花くらいですかね。覚えなくてもいいですが、人数くらいは。
それでは!また次回!


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第39話 2人きり

 俺は旅行しているときに言われた帰省を今日する。北海道の札幌までの帰省だが、大宮から新幹線で行き、帰りは新千歳空港から飛行機だ。

彩と胡桃も誘ったが、胡桃は「家の警備しておきます!」と言って出てこようとしなかった。ただゲームやりたいだけだとは思うけど。

一方の彩は喜んでついてきた。前に抱きつかれていて、少し歩きづらいけど。しかし、ピンクの髪が風でなびくと、彩専用のシャンプーのいい匂いがする。風が唯一の至福だった。

彩は恥ずかしくないのかミニスカートで来ていた。だっこしているのだからスカートの中が見えないのか心配だった。けど、全く気にしてないんだったらズボンも履いてるんだろ。

スカートと髪が風で揺れる。またシャンプーの匂いがした。スカートは完全にめくれている。やっぱりズボン履いてるんだろう。

そして集中をそらすと俺の体に柔らかいものと少し固い出っ張っているものが当たっている感触があった。俺は歩いてるからか体が上下に動いている。

すると彩の顔があかくなる。スカートか?

 

「あんっ」

 

違うっぽいな。スカートで喘がないもんな。

 

「あぁっ」

 

何で喘いでるんだ。何もないはずだけど。

 

「胸がぁっ」

 

胸?確かに俺にくっついてるけど、だっこしてたら普通だろ。

 

「あっ、擦れ…あぁん」

「だっこしてるんだから普通だろ」

「そこじゃなくて、ココ…あんっ!」

 

そう言って彩が触ったのは自分の胸の先。胸の先…あっ!

 

「うわあっ、ごっ、ごめん!って、あっ」

「あっ、ちょっ、柊くん!」

 

俺は前の石にこけて道に倒れる。そしてそのままの勢いで彩に激しいキスをする。

 

「んんんんん!」

「んあっ!ちゅっ、しゅうく、んっ」

 

他の道端から家族に「お母さんあの人たちちゅうしてるー」と言われている。しょうがないだろ!お母さんが「こら見ちゃダメよ」と言ってるのも聞こえてるからな!

 

「柊くん…こんなところで」

「わざとじゃない!違う!」

 

俺はすぐに立ち上がった。そして駅まで全速力で走る。彩はもう置いていっていた。

 

 「早いよぉ柊くん」

「うぅ…見られるとは…」

 

高崎線5:39発普通小田原行き。大宮まで乗車する。

 

 大宮6:45。次は6:58発はやぶさ1号新函館北斗行き。途中仙台、盛岡、二戸、八戸、七戸十和田、新青森、奥津軽いまべつ、木古内、新函館北斗に停車する。このはやぶさは盛岡から各駅に停車するパターン。中には仙台、盛岡、新青森、新函館北斗と最速達の電車もいる。俺たちは遠いのでグリーン車に乗った。後ろの2席だ。

 

「なんで後ろ?前じゃダメなの?」

「前で自由にできなくて、後ろだと自由にできることは?」

「後ろだと自由?……あっ!リクライニング!」

「そう。遠いから少しでも楽なようにね。リクライニングが自由な席を選んだんだ。」

 

 グランクラスでもよかったけど、あそこは逆に疲れそうだから。

 

「柊くん優しいっ!」

「このくらい普通だ。」

 

照れ隠しで少し口調が変わる。

 

「じゃあ私は通路側かな?」

「窓側の方がいいと思う。通路側だと他人と近いから」

「ふうん、柊くん私を他の人に触らせたくないんだ」

「そっ、そんなこと!」

 

彩は俺の口に人差し指を当ててくる。

 

「優しいからいいよ」

 

その言葉に俺は固まってしまった。

 

「ふふっ、何顔赤くしてるの?」

「え、赤い?」

「真っ赤だよ。」

 

なんで赤くしてるんだ俺!相手は彩だ。ただの恋人!

 

「ふわあっ、私眠いからちょっと寝るね」

「あぁ。おやすみ」

 

彩は目を閉じてしまった。そのときには小山駅を通過していた。

 

 

 「くぅ…くぅ…」

 

彩は犬みたいなかわいい鳴き声で寝ている。気持ち良さそうだ。たまに「んにゅ」とか「くぅんにゅ」とかかわいい声を出すから段々恥ずかしくなってきた。「んにゅ」と声を出すときは俺に体を寄せてくる。「くぅんにゅ」で戻すみたいだった。

 

「んにゅ…」

 

体を寄せてくる。今までだったらすぐ戻るんだが、今回は全く離れない。

 

「んん」

 

声を少し出しながら寝ている。起きてるのか?

俺は彩の頬を優しくつついてみる。

 

「…くぅ…」

 

起きない。寝てたのか。だったらかわいいな。

 

「彩…」

 

俺は少し恐れながらも彩にハグした。

 

「んんっ、にゅう…」

 

起きないのか、こんなことしても

 

「ちゅっ」

「んんっ」

 

ちょっと反応したかな。終わりにしてやるか。

 

 新函館北斗10:53。ここからスーパー北斗9号札幌行きに乗車。札幌まで行くラストバッターだ。

 

「あと何分くらい?」

「210分」

「要するに何時間!」

「3時間半」

 

ちょっといじわるしてみただけだ。

 

「最初からそれで言ってよ」

「ちょっと意地悪してみたくて」

「もう、意地悪…」

 

かわいいのになんでダメなんだ。

 

「そう言う彩もかわいいよ」

「もうっ!」

 

彩は両手で俺を叩いてきた。優しくだけど。

 

「あはは、ごめんって。」

「かわいいって言ってくれたから許すけど…」

 

彩はそう言って叩くのをやめた。

このスーパー北斗9号は途中、大沼公園、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別、東室蘭、登別、白老、苫小牧、南千歳、新札幌、札幌に停車する。単線のことや、ディーゼル、駅間の長さもあり、結構時間はかかってしまう。着いたら何しようかな。



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第2長編作品 第40話 実家

10話おきに長編やろうかなと。目安は4000文字以上10000文字以下です。今回は5000~6000を目標に。
さて、今回は札幌につきます。さらに実家で両親、10人の弟、妹に会い、妹とあんなことやこんなこと…はないですけど、内容は濃いめです。
なんか長い前置きでしたね。それでは本編へどうぞ


 札幌に着いた彩と俺は俺の実家まで歩いていく。内緒できてるからバレたくないんだ。

 

「柊くん♪」

「ホントに乗ってる間に変わったな」

「うん。恋人、だからね」

「恋人、か」

 

高校で作ればよかったのかな、彼女。つくらなかったから今まで引きずってきたんだもんな。だけど、今は彩がいる。もう、1人じゃないんだ。

 

「うん!一緒にいようね」

「あぁ。そうだな」

 

 

 実家に着き、ドアを開けると、妹3人が丁度目の前で立っていた。彩夏とかりなだ。

 

「あ、お兄ちゃん。」

「彩夏、母さんどこいるかな」

「2階にいるんじゃない?」

「分かった。ありがと」

 

俺は2階に上がっていく。彩も後ろをついてきている。

 

「お母さん?」

「あぁ。ここかな」

 

俺はドアをノックする。母さんがいるはずだ。

 

「母さん?いるか」

「暁依?入っていいわよ」

 

俺暁依じゃないんだけど。まぁいいか。声似てるし。

 

「彩も来るといい」

「はい」

 

俺はドアを開ける。母さん変わってるかな。変わってないとは思うけど。

 

「あきよ…柊!?」

「帰ってきた。3日泊まらせてくれ」

「いいけど、妹たちの部屋になっちゃうわよ?あと、彩ちゃんもどうしたの?」

 

彩のことか。それ以外にいないし。

 

「柊くんとは引っ越して同居してます!」

「あら、引っ越したのね。どう?新居は」

 

新居って言っても結構経ってるけどな。

 

「普通だよ。あ、父さんいつものとこか」

「えぇ。お父さんずっとそこいてね」

 

俺は彩を置いて父さんの部屋に向かった。相変わらずシンプルなドアだな。

 

「父さん、帰った」

「おぉ、柊、久しぶりだな。1年半ぶりか?」

「父さん去年忙しかったからな。1年半だな」

 

去年何あったんだ

 

「去年何あったんだよ」

「ちょっと倒産寸前までな。父さんだけに」

 

父さんは笑ってるが笑い事じゃないからな。

 

「そうだったのか。今は仕事どうなんだ」

「月1だ。明日なんだよ。GW中なのにな」

「母さんも明日は仕事だろ。暁依は教授の手伝いだし」

「明日は柊だけだな。頑張れよ」

 

嫌なんだけど、妹たちといるだけの実家って。嫌なんだけど。

 

「はぁ、分かったよ」

 

俺はため息をついてドアを開ける。彩を連れて昔俺の部屋だったところへ向かう。誰も使ってないだろ。

 

「彩、ここ使おうか」

「この部屋は?」

「元俺の部屋。使われてないっぽいからな」

 

俺が1年前に使っていた部屋だ。しかしもう使われていないらしいが、かりなの部屋になっているらしい。かりなは今日に限って妹たち10人と同じ部屋で寝るらしい。俺もだけど。

 

「ねぇ…」

 

手を繋いできたのは彩だった。

パンッ!

思わず手を繋ぐのを拒否してしまう。手を繋ぐのは…

 

「…なんで…」

「あっ、いや、それは…」

 

彩は部屋の外に出てしまう。俺、悪かったな。だけど、手を繋ぐことだけは…

 

 俺は高校で三咲と別れた。別れた原因としては相手に彼氏が出来たから。俺はそれから誰もつくらずに、俺自身も気にしないでいた。三咲のいるところも知らないし、女にも興味なくなった。手を繋ぐのを拒否したのも三咲と手を繋いだから。だから嫌になった。

 

「はぁ」

 

俺も諦めよう。彼女なんて、別に要らない。ってか、あっちにいる必要なんてなかったんだ。こっちに戻ってこよう。

 

「お兄ちゃん?いるの」

「入っていい」

 

全く棒読みだった。

 

「何してるの」

「何も。」

 

妹になんて話すわけないだろ。

 

「そ。じゃあね」

 

この部屋には誰もいなくなる。俺1人だ。誰も入れない。1人でいたいだけだ。三咲、俺よりいい人を彼氏にしてるんだろう。俺よりいい人なんて何百人、いや、何千人といるはずだ。

 

「お兄ちゃん、こっちに戻ってこない?」

「いいよ。あっちにいる理由もないし」

「…そっか。じゃあかりなと2人――」

「元の部屋あげるさ」

 

俺の部屋には一切構わない。ただ、かりなとは2人でいたくない。

 

 俺は札幌駅に向かった。コンビニに寄るためだけに。このまま戻って荷物取って来ようと思ったが、帰れないだろう。

コンビニに寄って帰ろうとした時間は22:50。もうすぐ23時だった。俺1人でなんか飲むか。酒は得意じゃないし、だったらジュースぐらいしかない。

 

「しょうがないか…」

 

嫌になった。自分がいることを。何も出来ない俺がいてなんでいいんだろう。魔法科高校卒業で何も使わない。意味ないじゃないか。何が、いいんだよ。

 

「何が…」

「先輩♪」

 

先輩って、会ったこと…

 

「三咲…っ!」

「黙って。殺すから」

 

殺す前提って、やめてくれよ。

 

「殺すって、なんで」

「イラつくから。」

 

ふざけるな。殺すって…いや、いっか。殺すんだったら殺せ。要らないから

 

「そうか。」

「じゃあ…」

 

グサッ

刺さる音と振動と共に心臓の近くを突き刺さる。周りには23時を回っているからか人がいない。さらに防犯カメラもないからか全く気配がない。

やっと、死ねたのかな。これで世界の全員が幸せになった。

 

ありがとう。

 

さようなら。

 

【月島かりな視点】

 

 なかなかお兄ちゃんが帰ってこない。22:20に出ていったからもう帰ってくるはず。なんで帰ってこないの?

 

「かりな、お兄ちゃんどこいる?」

「帰ってきてないよ?」

 

藤花だった。

 

「なんで帰ってこないんだろう?」

「知らなーい。迎えに行こっか」

「そうね。行こっか」

 

私と藤花は彩夏を呼びに行ってお兄ちゃんを迎えに行った。札幌駅にいるはずだ。

 

「あ、あそこに寝てるのお兄ちゃんじゃない?」

「お酒でも飲んだのかな?お兄ちゃん!起きて!」

 

お兄ちゃんは起きる気配がない。どんだけ飲んだのよ。

 

「もう、起きて――」

 

お兄ちゃんが少し寝返りを打つとお兄ちゃんから血が出てきた。

 

「お兄ちゃん?」

「お兄ちゃん!」

 

動かない。まさか、いや、そんなこと…

 

「起きてよ…お兄ちゃん!」

 

 

 

 [3ヶ月後…]

【月島柊視点】

 俺がいたのは埼玉県内のプールだった。今日は8月2日。今日は家族の両親以外の妹10人と暁依と来ていた。彩と胡桃は俺と別居が開始した。結局俺が籠原で暮らす、っていうか戻った。

 

「着替え終わったら波のプールで待っててくれ。」

「はーい。」

「柊、少しいいか」

 

暁依が俺を呼んだ。

 

「どうした、暁依。脱衣所でもいいか」

「あぁ。大丈夫」

 

更衣室に入った俺と暁依は端の方で着替えていた。話ってなんだろ。

 

「それで、なんだ」

「柊、お前さ、別居したのか」

「したっていうか、俺が戻ったんだ」

「それは分かる。だけど」

 

何が話なんだ。

 

「柊、1人暮らしだろ。かりなとか彩夏が寂しくしてた」

「あいつらも1人暮らし始めるさ。冬菜は来月から始めるんだろ?」

「知らないのか、彩夏とかりな、1人暮らししない気だぞ」

 

1人暮らししない!?なんで急に。しないとずっと実家暮らしなのに。

 

「本当か?」

「あぁ。…もう一回考えてみろ」

「あぁ。分かった…」

 

1人暮らししないか。何が嫌なのか聞いてみようかな。それと、かりなには1人暮らししてほしい。あいつにだけは。

水着に着替え終わるが、暁依は普通の下半身しか隠していない水着だが、俺は全身を覆っている水着だ。日焼けもあるからな。

 

「女は着替えるの遅いからな」

「俺らにとってはなんでか分からないけどな」

 

話していると1人出てきた。1番最初に出てきたのは瑞浪だった。

 

「瑞浪。中学生でビキニか」

「だって…お姉ちゃんたちに勧められて…」

 

胸だってそんなに大きくないのに…

 

「お兄ちゃん?変、かな」

「あ、あぁいや、いいと思う」

 

次に出てきたのは藤花。ビキニだけど。藤花が妹の中で1番胸大きいか?

 

「ちょっとキツかったかな。胸のとこ…」

「ブーッ!」

 

思わず吹いてしまった。男子の目の前で言うな!

 

「んな、なにいってるんだ!」

「ふふっ、2人とも変態さんだー」

「うるさい!そんな話するな!」

 

次は彩夏。かりなと一緒に来てた。

 

「丁度いい。これ」

 

ビキニじゃなかったのは妹だと彩夏だけだった。俺に似たような感じ。かりなはビキニだったけど。

 

「お兄ちゃん」

 

かりなが俺に胸を押し付けてきた。

 

「あ、そうだった。お兄ちゃん」

 

彩夏も思い出したように水着で胸を押し付けた。

 

「な、なんだ?」

 

意味が分からないがやらなきゃいけなかったのか?

 

「藤花ちゃん!」

 

藤花を呼ぶと、3人で俺を囲んだ。みんなぎゅっと抱きついている。

 

「なんだよ」

「色仕掛け」

 

ここでやるなよ。あと彩夏、どさくさに紛れて俺の指をしゃぶるな。

 

「ペロペロ」

「彩夏がやめてくれ」

「なんれ?ん」

 

彩夏俺の指フェチだったの?

 

「な、何してるのよ!」

 

冬菜たち残りの5人が来た。

 

「色仕掛け」

「なんでここなのよ!」

 

ホントだよ。なんでここなんだよ。

 

「お兄ちゃん嬉しそうだよ?」

「お兄ちゃん!」

 

嬉しくないとも言えないけど。

 

「いやいや、普通だよ、別に」

 

こう言うしかなかったんだ、許してくれ。

 

「じゃあ行こう?お兄ちゃん」

 

プールに早速向かった。俺は入らないけど。なかなか。暁依もあんまり好きじゃないらしい。彩夏はオレから離れてすっかり泳いでいた。

 

「暁依も入ったらどうだ」

「柊もだろ」

「じゃあ入りに行くか?」

「いいぞ」

 

俺は暁依と一緒にプールに入った。冷たいからすぐ上がりそう。

 

「あ、お兄ちゃん!」

「ん?なんだって」

 

俺の顔面にビーチボールが当たる。

 

「いって!」

「ごめーん。こっちパスして!」

「しょうがないなぁ。ほら!」

 

俺は思いっきりボールを投げる。

 

「ありがと!」

「柊、これ何時間いるんだ?傷もまだ残ってるんだろ?」

「1時間くらいだ。あいつらには悪いが」

 

だったら今聞いてみるか。どこが嫌なのか。

 

「彩夏、かりな、ちょっといいか」

「はーい!今いく!」

「いいよー」

 

2人はプールを泳いで来る。

 

「1人暮らしどこがいやなんだ」

「怖いし。少し、ね」

 

少し何かあるのか?

 

「何かあるのか?」

「他のみんなと別れたくない」

「俺が同居しようって言ったらどうする」

 

ここが本命だ。

 

「したい。同居」

 

したいんだ。だったら準備しておこうかな。

 

「今度の土曜日にこっち来て。準備しておく」

「え?いいの?」

「いいよ。日付けは、8月29日な」

 

俺が言うと自由に遊んでこいと言って俺は上がった。冷たいから。

 

「柊、同居したんだな」

「するんだよ。暁依はしないのか」

「するよ。来週から、所沢に」

 

所沢か。同じ埼玉だけど結構遠いな。

 

「そうなのか。頑張れよ」

「柊もな」

 

 

 1時間経った12:30。昼ごはんは各自でとるように指示した。10人はホテル、俺は家に帰った。最寄りは一応原市駅だが、結構遠い。

 

「じゃあまた明日大宮で」

「はーい。じゃあね」

 

俺は着替えてプールを出た。

 

 13:00発大宮行き、13:20発高崎線快速籠原行き乗る。ニューシャトルは途中、吉野原、今羽、東宮原、加茂宮、鉄道博物館、大宮に停車。

高崎線は途中、宮原、上尾、北上尾、桶川、北本、鴻巣、北鴻巣、吹上、行田、熊谷、籠原に停車する。

13:12大宮。高崎線は籠原まで乗る。最寄りだ。

 

 14:03、籠原に着いた。家まで歩いて10分。彩とは他人になったのだ。

家はまぁまぁ広い。もともと13人で暮らしてたから。そこを1人で暮らすのだからそりゃあ広いはずだ。

プルプルプルプル

電話だ。何が起きたんだ。

 

「はい、月島です」

《柊くん、ごめんなさい…》

「彩、何してるんだ?」

《今2人で寂しいの。戻って――》

「戻らない。もう暮らしてるから」

《気が向いたらね》

「向くかも分からないけどな」

 

俺はそう言って電話を切った。彩、悪かったな。

俺は仕事を土日以外している。平日は毎日出勤だ。ナナニジのマネージャーだけどな。いつも胡桃には会っている。胡桃とは仲いいから。いつも満員電車でぎゅうぎゅうだけど。

 

【葉元胡桃視点】

 

 私は満員電車に乗って大宮に向かう。籠原でも乗れないほど混んでるが、しょうがない。

 

「胡桃…乗れない…」

「こっち」

 

ぎゅうっと柊くんを抱き寄せる。ドアが閉まる。

 

「ありがとう…近いね」

「うん…柊くん…」

 

満員電車は毎日乗っても慣れない。痴漢はされないけど毎日潰される。柊くんも辛いだろうな。上野までこれだから。

 

「熊谷って向こうだよな」

「うん。あっ」

 

反対のドアから人に押される。ぎゅうぎゅう押されてくる。柊くんに胸を強く押し付けてしまう。

 

「ごめんね。つらいなぁ」

「疲れるからな。キツい」

 

あっ、胸が苦しい。私も胸大きくなったから。EからFに。

 

「あぁっ、無理ぃっ」

 

押してくるのは止まらない。

 

「胡桃、ドアの方行って」

 

私はドアに胸をつける。柊くんは後ろに行った。

 

「痴漢されるから。キツいかな」

「大丈夫…むにゅう」

 

身動きが取れない。動けないのだ。

 

「次って、こっち開く…」

 

ドアが開くと柊くんが押さえてくれる。

 

「あっ、おっぱい…」

 

おっぱいを押さえられてたのだ。

 

「あっ、ごめん」

 

1分押さえるとドアが閉まる。

 

 大宮に着くと私は降りようとする。しかし出口は逆。

 

「降りまぁす…降りれない…」

「胡桃、頑張れ」

 

しかし乗ってくる人に押されて柊くんとキス。降りれなかった。

 

「ごめん。降りれなかった」

「大丈夫。キスする?」

「うん。したい」

 

柊くんと、我慢できなかった。

 

「ん」

「んっ」

「ちゅっ、ちゅっっちゅっ、ちゅく、んちゅ」

 

口の中で舌が絡む。粘液みたいなのが2人を繋ぐ。

 

「はぁ、はぁ、我慢できなかった」

「俺も。かわいすぎたから」

 

私と柊くんはずっとキスしていた。上野まで。

 



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スペシャル編2話 蘭

11.5話以来のスペシャル編です。
内容は第32話の蘭視点と第34話の蘭視点の2つです。一部つぐみ視点もあるけど。今回はバンドリ主役だね。主役は蘭ちゃんです。


 私たちは田沢湖6:38発田沢湖線大曲行きに乗って大曲まで行き、奥羽本線で弘前に向かう。

田沢湖線は刺巻、神代、生田、角館、鶯野、羽後長野、鑓見内、羽後四ツ屋、北大曲、大曲に停車。

 

「海ー」

「モカちゃん海好きだっけ?」

「夕焼けじゃないの、目的」

「せいかーい」

 

やっぱり。Afterglowは夕焼け空からとったからそれが目的だろうと思ったんだ。

 

「盛岡経由で行かなかったの?」

「あ、うん。」

 

柊くんと会いづらいから、何て言えるわけない!冷静になるのも大変なのに。

 

「大曲まで行きたかった」

 

なにこの言い訳。自分でも変だと思った。

 

 大曲7:27。奥羽本線普通秋田行き神宮寺、刈和野、峰吉川、羽後境、大張野、和田、四ツ小屋、秋田。秋田は8:22。8:35発つがる1号青森行き。特急で弘前まで行く。

つがる1号は八郎潟、森岳、東能代、二ツ井、鷹ノ巣、大館、碇ヶ関、大鰐温泉、弘前。

 

 弘前には10:38。もう昼近い。柊くんたちは今頃北海道かな。

 

「海だね。今から」

「おー」

 

モカ、海じゃないでしょ。

 

「ごのうせん?」

 

読み方は分かるけどなんか不思議だったから。

 

「奥羽本線で東能代まで行ってから五能線だね」

 

11:29発秋田行き普通電車。

 

 東能代12:55。12:58岩館行き。13:43岩館予定。

 

「うわぁぁっ、すごい!」

「きれい…夕日じゃないけど」

「いいもーん、別にー」

 

目的じゃなかった?そんなことないか。

 

 東能代についた私たちは次の普通を待つためにいた。夕食を済ませて19:09発秋田行きに乗る。その前に特急1本停車する。

特急つがる6号が先に着く。

 

(あれ、あそこにいるの柊くん?)

 

私は窓をよく見た。やっぱり柊くんが乗っていた。

 

「つぐみ?帰りか」

「はい。19:09発で」

 

私も話したいけど話しづらい。

結局話さずに電車は出発した。20:33、16分遅れて到着した。

 

 柊くんと寝ることになって、私は同じ布団に寝た。こんなに近いの始めてだった。

 

「明日俺早いからもう寝るよ?」

「あ、うん。おやすみ」

 

一緒に寝た意味あったの?自分のせいだけど。

 

「待って」

 

私は知らないうちに柊くんが寝るのを止めていた。

 

「なんだ」

「…気をつけて」

「?あぁ、分かった」

 

何て言おうとしたの?それとも何も言いたくないのに止めた?私はなんで止めたの?寝てほしくなかった?まだ話したかった?寝顔を見たくなかったから?幾つもの予想が思い浮かぶ。自分を攻めてる訳じゃないけど、何でだろう、疑問がどんどん浮かんできた。

 




次回43話は彩が柊に帰ってくるように求めます。しかし柊は予定より…
この続きは次回をお楽しみに!


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第41話 同居と激務

どうも。明日から学校再開なのでちょっと更新頻度落ちるかも。
さて、今日は洗脳されます。彩が。
それでは本編へ


 8月29日、早速かりなと彩夏は同居を始めた。俺は来月から忙しくなるが構わないらしい。今月は平日だけだったが、来月は休日も週に2回。4日出ることになる。

 

「お邪魔しまーす…」

「きれい…」

「今日から俺たちの家だ。自由に使え」

 

俺はそう言い残して仕事に行った。土曜日だがちょっとした仕事があるのだ。なにかと言えば今度22/7で新幹線1編成貸切するのだ。そのための手続き。

 

 いつもとは違く、胡桃はいない。休日だから通勤しないのだ。休日は時刻が若干違う。今回乗る6:50発上野東京ライン熱海行きも、平日は湘南新宿ライン国府津行き。全く行き先が違う。休日は籠原始発、平日は高崎始発の違いもある。

主な駅の到着時刻は

熊谷6:56

鴻巣7:12

上尾7:26

大宮7:36

上野8:03

東京8:09

品川8:18

大船8:54

小田原9:42

熱海10:05

以上だ。上野で降りるため8:03に着くのだ。

 

 上野には若干遅れた8:04に到着。すぐ出発していった。ここから歩いて向かう。途中で美鈴さんに会った。

 

「マネージャー、お疲れ様です!」

「まだしてないけどな。」

「来るのに疲れてないんですか?」

「ボックスシートで座ってきたからそこまでは」

 

籠原始発だったから座れたんだ。

 

「そうですか。私は錦糸町からずっと立ってて…」

 

大変そうだな。錦糸町からだと結構かかるだろうに。

 

「美鈴さんは休んでるといい。」

「けど手配が」

「大丈夫。俺の仕事大してないから」

「ありがとうございます」

 

礼儀正しくて堅苦しくもない、緩やかな敬語だった。

事務所に着くなり静かなデスクで仕事をする。予定日、人数、行程、車両、何個もの項目を当てはめていく。

 

「マネージャー、予定日は」

「9月15日~17日。16日にライブ」

「はい。分かりました」

 

9月の16日にライブがあるのと、9月は30日にもライブがある。

今日は22/7のメンバーはいない。休日だからな。俺が休日出勤の日は大体22/7メンバーがいなく、午前だけで帰る。今日出るのは11:30。あと2時間半。

 

「マネージャー、JR東日本に問い合わせたところ、長野のE7系が空いてると」

「分かった。こっちから12号車の乗車を禁止しよう」

「なぜです?」

 

グランクラスに乗るのは向こうからしてもいやなはずだ。

 

「グランクラスだから」

「了解です。あとは行程ですが」

「俺が決めよう。休みなさい」

「はい。失礼します」

 

行程か。そういえば、根府川連れてくって言ってから行ってないな。連れていってやるか。じゃあ東京集合で全員揃った始発から行って帰ってくる。そのあとに新幹線貸切か。だったらわんこそば?ずんだとか…まずい、食物しか思い付かない。

 

「行程って決めました?」

「あ、まだ」

「奇跡の一本松ってどうですかね」

 

奇跡の一本松か。宮城だったか。確かに仙台から行けるからいいかもしれない。

 

「いいな。それにしよう」

 

【丸山彩視点】

 ピンポーン

呼び鈴がなった。私は玄関に向かった。

 

「はい…」

「あなた、柊って男に見捨てられたでしょ」

「っ!なんでそれを」

「当たり前よ。仲間だもの。それで、協力しない?」

 

協力しないって、何を手伝うの?

 

「柊を殺したいのよ」

「殺すって、冗談ですか」

「冗談じゃないわ。本気よ

 

嘘でしょ、私に殺すのを手伝えって言うの?いやに決まってるじゃない!

 

「手伝ってくれたらその分の品は渡すわ。」

「品って」

「まだ教えられない。ただ」

 

そのあとにこの女の人は言った。

 

「手伝ってる途中に殺さなかったら、あなたを殺すわよ」

「…やります」

 

殺されるかもだけど、裏切らなきゃいいんだ。

 

「いい子ね。じゃあ明日よ」

「明日、どこで」

「そうね、柊の家の最寄りはどこ?」

「籠原です」

 

教えてしまった。後戻りできない。

 

「そう。そこでいいわ。じゃあ8時に籠原ね」

 

いいのかな。でも悪いのは柊くんだ。私は悪くない。

 



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第42話 作戦

スペシャル編より先の投稿は気にしないで下さい。並び替えるので。
さて、今回は長編ではなく超短編になります。彩が出てくるので楽しみにしていてください。彩と柊の関係どうなるんでしょうね。それでは本編へどうぞ


 俺は上野11:45発高崎線高崎行きで帰る。

籠原13:00。

 

「ただいま」

「おかえり、お兄ちゃん」

 

帰った瞬間に呼び鈴が鳴った。俺はそのまま玄関にいた。

 

「はい、彩?どうした。一回上がるか」

「いいの?」

「俺の部屋だったら空いてるから」

 

俺の部屋に彩を連れていった。何のようだ。

 

「用件はなんだ」

「ごめん、殺さないと私が死んじゃうの」

 

死んじゃうって、じゃあ殺したくないのか。

 

「殺したくないのか」

「うん。けど、死んじゃう…」

「分かった。」

 

俺は防護シールを体に貼った。そのあとに作戦を伝えた。

 

「いいか、部屋から出て20秒の間にスマホのバイブ鳴らせ。電話でもメールでも構わない」

「分かった。向かって部屋を見えなくなったらね」

「理解が速くて助かるよ。そういうことだ」

 

俺は防護シールを指差す。ここに刺さないと本当に死ぬからな。

 

「この上に刺せ。死んだふりだ」

「分かった…」

「これ意外には絶対に刺すな。死ぬから」

「分かった。…えいっ」

 

彩は丁度防護シールの上にナイフを刺した。痛くもないけど俺は倒れて死んだふりをする。

 

「柊くん…」

「大丈夫。痛くない。親分の元に行け」

 

彩は親分の元に向かった。しかし親分はすぐに彩と一緒に来た。

 

「ふふ、死んでる死んでる」

 

バッチリ生きてるけどな。死んだなんて失礼だ。

 

「じゃあ、帰りますか?」

「そうね。」

 

彩、もうすぐバイブ鳴らせよ。あと20秒。

20、19、18、17、16、15

俺は心のなかで数える。

14、13、12、11

なかなか鳴らないな。速度が遅いのか?

10、9、8、7、6

ヤバい、間に合うか、これ。

5、4

あと3秒。これ本当に間に合うか?間に合わないと…

3、2、1

もう時間がない!速くならせ!

0

ブーッブーッブーッ

やっとバイブが鳴った。俺は音を立てずに背後から親分のところに向かう。立てないように。

無言で後ろから口を手で押さえる。

 

「んぐっ!」

「お前、遼子(りょうこ)だったな。こんなことして何がいいんだ」

「柊を殺したかった。それだけ!」

「っ…」

 

俺は片手に力が入る。なんで、彩を巻き込んでまで。

 

「……死ね……」

「柊?いや、ちょっ、代償はあるから!ね?離し…て」

 

もう遅い。俺の力が入ったときには遼子は玄関から外向きに倒れていた。大丈夫、一瞬意識をなくしただけだから。

 

 遼子のことは救急で運んでもらった。

 

「彩、話がある。上がれ」

「あ、うん」

 

俺は部屋のなかに入る。今度はリビングだ。

 

「彩、まず…」

 

俺は床に正座し、頭を床につく寸前まで下げ、深く土下座した。

 

「ごめん。」

「え…なんで謝るの」

 

分かってる。俺が手を繋ぐのを拒否したからだ。それがなかったら今も一緒にいたはずだ。

 

「俺のせいだ、拒否したから…」

 

彩は自分が悪いと言い張った。

 

「ううん、悪いのは私。あんなことで逃げ出しちゃったから」

「違う…その原因も俺なんだから、全部俺が悪い」

「私、嫌じゃ――」

 

俺は少し大きな声で言った。

 

「だから、俺が彩を不幸にしたんだよ!今更戻れないだろ!」

「柊くん…」

「俺はまだ戻らない。ただ、そっちが望むんだったら考える」

 

 

俺は少し気が変わったが、まだ要望がないと戻らない。

 

「じゃあ彩、またいつか」

「うん。またね」

 

彩は部屋を出ていく。俺1人だ。

 

 




1279で終わってます。次回までの間にスペシャル編を投稿するので本編少し空きます。1~2日ほどだとは思いますが、1週間以上投稿がなかったら死んだと思ってください(笑)本気で死ぬのはないかと思いますが。
さて、次回第43話では22/7が主役になります。彩も電話で最後の方に少し出す予定。
それでは次回をお楽しみに!


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第43話 帰還

今回は久しぶりの2000超えです。
胡桃が寒い部屋で1人ぼっち。だが胡桃には…
続きは今回と次回で!あとがきは今回ないです。


 俺が仕事から帰ってきた23:05、俺は風呂から上がっていた。妹2人は22:30に寝ていたらしく、テーブルの上に紙が置かれていた。夕食は冷蔵庫の中だと。しょうがない、食わないと悪いから食うか。もう23:10だから食う気はなかったんだけどな。献立は…ハンバーグか。得意料理だったっけ。俺はハンバーグをレンジにいれ、2分程暖める。2分経って取り出し、レーブルに向かって食べる。心のなかで「いただきます」と言って。

食べ終わったら15分程休んでから寝に行く。その間に歯磨きも済ませておく。明日は平日だが、始発で行く。始発じゃないと間に合わない。俺が帰ってきた理由としては、妹2人が起きてると思い、わずかな可能性だが一か八か帰ってきた。彩と胡桃も寝てるんだろうな。俺は紙の空いていたスペースに「美味しかったよ」と書き残して洗面所に向かった。

歯磨きが終わると自室へ向かい、寝る支度をする。もうそろそろベット買ってもいいかもな。月100万収入あるんだし。魔法科高校ので。俺はそう思いながら敷いた敷布団に横たわる。明日も早いからな。アラームを朝4:35にセットした。

 

 翌日朝4:35、アラームが鳴って俺は起きた。妹2人はまだ起きていないらしく、家は静かだった。リビングのテーブルの上にある紙に「4:50、行ってきます」と書き残して俺は事務所に行った。ケータイを持つと、バイブが鳴り、電話が掛かってきた。画面を見ると丸山彩と書かれていた。

 

「どうした」

《帰ってこれる?》

「…今日は無理だけど、休みの日帰れるよ」

《じゃあ、帰ってきてくれない?》

「いいけど、なんか急用か?」

《胡桃ちゃんが最近昼から夕方くらいまで泣いてて、柊くんがいないからって言ってるの》

「分かった。今日の夜8時くらいに神保原で待っててくれ。向かうから」

《分かった。熱中症気をつけて》

「分かった」

 

今日は少し早く切らないと間に合わないかもな。事務所は18時半くらいには出たいな。

 

 事務所についた俺はまず予定を確認した。今日は22/7のレッスン様子見だけか。だったら3時くらいには帰ってこれそうだな。

 

「柊くん、レッスン行くわよ」

「あぁ。分かった」

 

「柊くん」と呼ぶのは第1期旅行メンバーだけ。第2期はまだ俺と旅行してないから。

 

「今日は前の続きだからね」

 

続きとか俺知らないけど。見てればいいか。

 

「月島さん、仕事の方は」

「貸切の方は問題ないです。前の休日出勤の時に決めました」

「そうだったんですか。それではレッスン見ましょうか」

 

両者ともに敬語を使うのは俺とレッスンの先生はレッスンの先生の方が年下だが、俺の方が後輩に当たる。だから微妙なラインになっている。それで両方敬語なのだ。

 

「麗華、もう少し右行けるか」

「はい!」

「藤間さんも左」

「はい!」

 

2人揃って指示を出していく。すると、桜は右に動き始めた。

 

「桜、それ右。逆だよ」

「あ、すみません!」

 

天然なところもあるのかな?

 

「ストップ。じゃあこれでやってみよう」

『はい!』

 

いい返事だ。中学のときの吹奏楽部に似てるな。

 

「吹奏楽部みたいな返事がいい。これからもこの返事を続けよう」

『はい!』

「月島さんって吹奏楽部だったんですか?」

「中学3年間ね」

 

 

 16:37、予定より1時間遅く終わった。 18:36発新幹線あさま625号長野行きだから先に切符とっておくか。すぐだから自由席でいいよな。俺はタッチパネルの自由席と書かれた欄を押した。18:36あさま625号。あと2時間くらいか。暇になったな。

 

「柊くん、どこ行くの?」

「ん?あぁ、帰るんだけどあと2時間くらいあってな」

「だったらちょっと来て」

 

麗華が連れていったのは上野駅近くのカフェ。

 

「どうしたんだ」

「私、ダンス下手かな」

「どうして」

「今日注意されたから…」

 

始めてだったんだし普通だと思うけど。

 

「初めてだったんだから普通だ」

「でも、困るんじゃないの」

「困んないよ。教えがいがある」

「そう、なんだ。じゃあ下手じゃない?」

「下手じゃない」

 

俺は安心させようとした。

 

「そうなんだ。よかった。じゃあまた明日!」

「あぁ。また明日」

 

 

 18:36、地下からあさま625号に乗った。高崎までいって神保原まで移動する。

 

 20時丁度、神保原に着いた。彩が暗い中1人で待っていた。ピンクの髪も暗闇に飲み込まれるように黒く見えた。

 

「柊くん、胡桃ちゃんが」

「分かってる。さっさと行くぞ」

 

暗闇のなか俺と彩は2人で走っていく。稀に街灯で明るいところはあるが、7割暗闇だった。道は暗くても分かってる。何百回も通った道だ。

 

「胡桃、リビングいるか」

「多分、ゲーム部屋に1人でいる」

 

ゲーム部屋に1人か。あそこ確かにエアコン付いてるけど、つけると寒いんだよな。って

 

「何時間いる」

「もう15時からだから5時間」

「エアコンの設定温度は」

「わかんない」

 

入れないのか、設定温度は分からないらしい。5時間だと、もう気温は…

俺はドアを急いで開け、左側のゲーム部屋のドアを開ける。冷たい冷気が俺を包んでくる。壁の温度計には3℃と書かれていて、胡桃は半袖。どれにエアコンは10℃設定。扇風機も2台ついている。外が20℃だから17℃もの差がある。

 

「胡桃」

「……」

 

黙り込んでいる。息をする音もしない。胡桃?俺は胡桃の腕を優しくさわる。氷をさわったかのように冷たかった。

 

「冷たっ、胡桃、大丈夫か!」

 

俺はエアコンの電源を切り、扇風機の電源も切る。部屋の温度は少しづつ上がっていくが、まだ5℃はある。

 

「胡桃、寒いだろ」

「………」

 

相変わらず返事はない。寒すぎたんだろうか。

  to be continued…



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第44話 低体温と風邪

今回は第43話の続きで胡桃を低体温の状態から救う場面になります。風邪ってなんででしょう。しかも胡桃は…
それでは本編へどうぞ!


 俺は寒い部屋から彩を大きな声で呼んだ。できる限りの大きい声。寒いからか思うように声がでないが、命がけと言っても過言ではなかった。

 

「彩!」

「柊くん!どうしたの!」

「そっちに胡桃持っていく!」

「分かった!気をつけて!」

 

俺は胡桃の後ろに手をやって、お姫様抱っこの形で運ぼうとする。しかし寒さから自分の体温が奪われている。そのためか全く力が入らない。やっとの力で持っても、持つことに精一杯になり、歩くことができない。彩はあっちで待ってるから来れないはずだし。そう思っていると彩がこっちに走ってきた。

 

「柊くん、手伝う!」

「…彩…」

 

彩が反対側を持ったことで力が分散される。俺も中学で少しは保健の授業は受けたが、知らないことが多かった。

 

「行くよ、せーのっ!」

 

掛け声と共に胡桃のことを持つ。胡桃は全く応答しない。声が出せないんだろう。

 

「あと少し。」

 

彩しか声を出していないが俺も死にそうなほどに力を出して運んでいる。

運び終わると俺はすぐにあの作戦のために外に出ようとする。

 

「柊くん、どこ行くの」

「その辺」

「胡桃ちゃんがこんな状態なのに」

「必要なんだ。」

 

俺は玄関から靴を履いて外に出る。真っ暗だが、家の前200mを何度も走って往復する。目標は自分の体が暑くなるまで。4往復ほどだろう。

 

「はあっ、はあっ」

 

400m走ってきたところで段々息切れしてくる。それでも耐えて走り続ける。普段だったらこんなことはしない。胡桃がこんな状態だからするんだ。

 

「はあっ、はあっ」

 

600m。1往復半だ。まだ冷たいところがある。

1km。2往復半。疲れてきた。でも、胡桃のためだったら。

1600m。ようやく体が暑くなってきた。俺は家のなかにはいる。冷めないうちに。

 

「柊くん!なんで――」

「今から俺が抱くから、胡桃のこと」

「なんか変だよ!」

「変じゃない。やらなきゃいけないんだ」

 

俺は胡桃に抱きつく。まだ冷たいところがあるが、俺の体温があれば、少しは暖まるはずだ。俺が走ってきたのはこれが理由だったのだ。体を温め、その体温で胡桃を暖める。

 

「柊くん、それが目的で?」

「そうだ。必要だったって言ったろ」

 

俺は胡桃のことを見ながらずっと抱いていた。

 

「ん…?」

「胡桃、起きたか」

 

胡桃はやっと起きてくれた。俺の目的はこれだ。

 

「胡桃、なんか飲めるか」

「うん……少し、暖かいのだったら」

「彩、ホットココア作ってくれるかな。あとストロー」

「はい。分かった」

 

いいチームワークだと思う。戻ってくる理由が出来た。胡桃だって寒いのによく耐えた。

 

「胡桃、まだ寒いか」

「うん…けど、収まってきた」

 

よかった。その時、胡桃はムズムズしたような顔で俺の顔から顔をそらす。

 

「どうした」

「くちゅん!」

 

くしゃみだった。風邪でもひいたか。

 

「くちゅっ、くちゅん!」

 

かわいいなんて今思っちゃいけないんだろうけど思ってしまう。

 

「胡桃ちゃん、ココアだよ」

「うん、ありが…くちゅん!」

「風邪?」

 

分からないけど多分そうだろう。この部屋にはエアコンがない代わりにストーブがある。暖めようとしたら暖まる。

 

「ストーブ炊くか。彩、胡桃頼んだ」

 

俺はストーブの薪を持ってきた。当然だが、中には火が灯っていない。寒いから。俺は薪と屑を中に入れ、チャッカマンで火をつける。火傷には気を付けるけど。

 

「よし、10分くらいで暖まるから」

「ありがとう…くちゅっ!」

「寒そうじゃん」

 

俺は妹2人に連絡する。

 

〈今日帰れない〉

〈どうして?〉

〈仕事長引く〉

 

このやり取りだけ。分かったはずだ。

 

「今日は俺と一緒に寝ようか。胡桃」

「風邪うつったら」

「別にすぐ治る。俺にうつしたほうが胡桃は楽だ」

 

俺が風邪引こうと関係ない。もしうつったらかりなか彩夏に任せるし。

 

「じゃあ少し休もうか」

 

  to be continued




また続きますからね。


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第45話 看病

今回は短いかもしれない。短編かも。
さて、彩ちゃんが最近多く出てきてますね。
もうすぐでなくなりますけど。()
今回は胡桃が風邪を引いて柊が一緒に寝るところからです。一旦風邪の場面は今回で終わります。
それでは本編へどうぞ


 ストーブの前に胡桃、彩、俺でいると暖かくなってきた。しかし段々冷めてきた気がして、結局は涼しい感じだった。胡桃は暖まったらしく、もう、うとうとしていた。

 

「寝に行くか。」

「そうしよっか」

 

彩も賛成だった。先に歯磨きは終えているためあとは寝るだけ。廊下が寒いけど。

 

「夜がここ寒いからなぁ。」

「17℃くらいだしね。毎日」

 

寝室にはエアコンはついていない。夜は涼しいから。今日は寒いくらいだけど。

 

「じゃあおやすみー」

「おやすみ。胡桃、行くよ」

「はーい…」

 

眠そうだな。くしゃみとか咳はしてないけど一応見ておくか。ドアを開けると真っ暗な部屋が広がり、冷気が俺を覆ってくる。胡桃も同じ。

 

くちゅん!

 

かわいい…

 

「くしゃみ大丈夫か…」

 

まぎらわすように俺はそんなことを聞いてしまう。

 

「大丈夫…くちっ!

「…かわいい…」

 

ついに言葉に出てしまった。なんで言ったんだ俺は。

 

「かっ、かわいいって…くちゅん!

「いや…事実だけど」

「もう!からかわないで!…くちゅっ!

 

くしゃみ3連発。

 

「もう寝ようか」

「うん…」

 

女の子のくしゃみってかわいいの?なんかそう思うんだけど。

 

くちゅん!

「寒い?」

しゃむい…

 

噛んだ。でもかわいいから許す。

 

抱きついていい…?

 

胡桃が自分の前に手を合わせながら言った。少し下を向いてるようにも見えるけど恥ずかしいんだろう。

 

「いいよ。おいで」

 

胡桃はゆっくりぎゅっと抱きつく。顔が俺の肩の上辺りにあり、横を見たらキスできそう。なんて考える自分がいた。

 

暖かい…ずっとこうしてたい…」

「寝るときには手を離した方がいいと思うけど。」

 

胡桃が痛くなったら困るから。胡桃は目を頑張って開けようとしているが睡魔が勝ちそうだった。

 

「寝な、胡桃。俺も横にいるから」

「うん。おやすみ」

 

胡桃は手を離して俺の横で目を瞑った。笑顔で寝ているわけではなく、気持ち良さそうに寝ていた。俺も寝ないとかな。

 

【葉元胡桃視点】

 

 少し寝てから目が覚めてしまった。体が少し火照ってるから体温でも測ろっかな。下に降りて測ってみると38.4℃だった。確かに火照ってるからそのくらいあるかも。私は上に上がって柊くんの横で少し躊躇う気持ちもあったが横になった。ちょっと火照ってるからか柊くんのことがなんか愛おしく思ってきた。なんでだろう、いつも会ってるのに。どうして。私の体は勝手に意識が奪われて、柊くんの体の上に乗っかっていた。柊くんの顔の上に私の顔を近づけて、それ以外は柊くんに押し付けるようにべったりくっついている。胸も柔らかいのに苦しいほど押し付けた。

 

「ん?胡桃?どうした」

 

柊くんが起きてしまった。私はますます体温が恥ずかしくて上がっていった気がした。

 

「熱いんじゃないか。」

 

柊くんは私のおでこと柊くんのおでこを当てた。体温を測るためなのは分かるけど、さすがに緊張しちゃう。

 

「やっぱり熱いよ、水持ってくるから、ちょっと待ってろ」

 

私を横に下ろして柊くんは立ち上がった。そしてドアから出ていこうとする。私は耐えきれなくて柊くんの服の袖を優しくくいっくいっと引っ張った。

 

「どうした、胡桃」

連れてって…?

 

赤くなりながら私は言った。1人にしてほしくなかったから。柊くんは少し黙って言った。

 

「…分かった。」

 

了承してくれた。私は柊くんの服を掴んだまま階段を降りて1階に行った。

 

「水はペットボトルの方がいいよな」

「……」

 

黙り込んでしまった。悩んでた訳じゃない。話しづらくなっちゃった。なんでか分からないけど、なんでだろう。

 

「そっちの方がいいよな。」

 

柊くんはコップに水を盛った。ストローは私が夜に使ったものを洗ってコップに入れた。

 

「胡桃、ここ置いとくから。」

「…うん…」

 

私はテーブルに向かって座った。なんか、柊くんに目を合わせたくない。私は髪をほどいて目にかかるようにして物理的に目が合わないようにした。

 

「胡桃、ん?どうしたんだ」

 

柊くんが私の前に顔を近づけた。やだ、近づけたら、私が壊れちゃうから、やめて…

 

「髪で目が見えない」

 

髪を寄せてきた。目がハッキリ見える。

 

「……柊くん……」

 

私は柊くんの名前を小さく呼んだ。なにこれ、今まででなったことない感情。私は柊くんの肩を無意識に掴んだ。

 

「胡桃?どうしたんだ」

「柊くん…」

 

私は柊くんを床に押し倒した。もう、我慢できなかった。

 

「私、なんか変。どうして」

「胡桃、一回落ち着け。」

 

答えてよ、どうしてこんな感情になるの。私が壊れちゃうの、なんでなの?

 

「治らないの。なんで」

「…知らない…」

 

チュッ

私は柊くんの口に私の口を、優しく、一瞬、当てる。

 

「これでも…?」

「胡桃、なにして――」

 

私はまたキスをする。今度は少し強く、長くだった。

 

「ん。私、分かったかも」

「分かったって、なにがだ」

 

私は柊くんの目を見て言った。

 

「私、柊くんのことが」

 

「好き」

 




長かったな、意外と。
次回予告
少し遠くになった22/7のメンバー達がバスに乗って向かい、そこのライブでは、少人数しか出れなくて…
次回までの間隔も狭いですのでお楽しみに!


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第46話 ライブ

今回は22/7主役です。ちょっと楽しみかな?


 

 俺は上野駅で22/7メンバーと集合してから8時に日比谷公園でライブが始まるため第1期メンバー(麗華、みう、ニコル、悠希、ジュン、絢香)で日比谷公園に向かった。これからはこのメンバーを中心に動いていく。

 

「今日って平日だよね?」

「しょうがないからな。さ、さっさと行こう」

 

京浜東北線各駅停車大船行き。秋葉原で総武線に乗り換え、信濃町へ行き、バスで新宿御苑前、丸ノ内線で四ッ谷、四ッ谷からはバスで日比谷まで行く。

 

「6時くらいだったら混んでないから」

 

6:27発京浜東北線大船行き。座席には座れないが、2駅だけだから。

 

 少し遠回りだったが、四ッ谷からバス。もう結構並んでいた。

 

「バスは混むからしょうがないよな。」

「あんまり混まないでほしいけどね」

 

7:22朝ラッシュ真っ只中。混んでるに決まってるが、少しくらい空いていてほしかった。乗ってみるともうかなり混んでいた。しょうがなく、ドアの近くに立っていた。

 

「キツい…」

「10分くらいだから、我慢だな」

 

俺を囲むように6人は俺にくっついていた。

 

「あ、後ろから押されて」

 

6人は俺にもっとくっついてくる。絢香はいつもからかうようになっているのに、今日だけは黙って俺を見つめていた。

 

「あ、全員とキスって今したら?」

「は?いいけど、じゃあまずは」

「私、したい」

 

俺は言ってきた麗華とキスをする。その時、揺れで俺と麗華が舌までくっつくほど強くキスした。

 

「んんっ!」

「ずるいー!濃厚すぎ!」

 

俺もわざとやってる訳じゃないんだよ!麗華だって顔赤いし。

 

「ん!ちゅっ」

「私たちも横から!」

 

俺の四方から全員の口が接する。

 

「ちゅっ」

「ちゅっ」

「ちゅっ」

 

俺は周りから残りの10分、キスされたままだった。

 

 ライブ会場、日比谷公園に着くと、2期メンバーも同じ時間についていた。これで11人が揃った。

 

「すみません!」

 

日比谷公園の担当者だろうか。こっちに向かって走っている。

 

「はい、どうされました」

「今回の特設ステージなんですが、人数が4人までしか耐えられなくて」

「4人ですか。分かりました」

 

だったらドームので大丈夫だろう。

 

「みんな、ドームのグループでやってくれるか」

「はい。問題ありません」

 

よかった。

 

「じゃあそれでお願い」

 

俺はステージから離れる。あくまで俺はマネージャー。ここにいる必要はない。しかし、俺のなかでは

マネージャーはメンバーのことを守る人であり、守らなければ俺がいる意味がないと思う。もしもメンバーの誰かが怪我をしたら、スタッフが全てをすることになる。

 

 麗華、絢香、ジュンのグループのライブになった。麗華は最初、緊張していたが、俺が励ますとすっかりとけたようで、自信をもってステージに上がっていった。ライブが全グループ終わると俺は11人全員を呼び出した。

 

「絢香、俺さ、性交したら行こうって行ってた場所あるだろ」

「うん。」

 

本当は旅行で行こうかと思っていたがもう思いきった。

 

「それ、今日行こうと思うんだ。昼ごはん食ってから」

「今日?時間は」

 

今は12:57。昼ごはんで13:50までとって、東京駅から行けば丁度日の入り時刻になる。

 

「大丈夫。丁度いい」

「それって、どこなの?」

「海が見える駅、かな。」

 

海が見える駅は東京都に「海芝浦」、神奈川県の鎌倉に「鎌倉高校前」がある。しかし、この2駅どちらにも当てはまらない、無人駅だ。

 

「やったー!海!」

 

桜と都が跳び跳ねて喜ぶ。

 

「じゃあお昼は…」

「各自で別々って計画したんです。どこ集合がいいですかね」

「東京駅10番線、1号車付近で」

 

東海道線ホームになる。

 

 俺が昼ごはんとして選んだのは秋葉原駅構内にある「tokyo food bar」だ。秋葉原駅1Fの京浜東北線ホーム1番線京浜東北線5号車付近の階段を降りて、左に曲がってすぐだ。山手線でも2番線から行ける。

歩いて有楽町まで行ったあと、山手線に乗り換える。

 

「どこ行くの?私たちは日比谷で済ませるけど」

「アキバまで行ってくる。東京には着くからさ」

 

俺は22/7メンバーと分かれ、有楽町まで歩いた。13:12発山手線東京・上野方面に乗車し、秋葉原まで行く。途中、東京、神田、秋葉原に停車する。京浜東北線に乗らなかった理由は快速で有楽町を通過するから。東京で乗り換えても、停車駅は変わらない。

13:18秋葉原。2番線に着くため近い。俺は1階に降りて、tokyo food barへ歩く。着いたらいつものカツ丼を頼んで食べる。いつも、小学生の頃から秋葉原に来てお昼はここだった。

食べ終わったら東京駅に向かう。上野まで行って上野東京ラインにした。京浜東北線快速南浦和行きは御徒町を通過する。1駅で上野に着く。14:04に着いたら上野東京ラインに乗り換える。14:16東京。ナナニジはもう全員来ていたため、東京で後続の熱海行きに乗り換える。

 

「お帰り、柊くん」

「ただいま。」

「さっさと行こうや!」

 

小田原行きだと小田原で熱海行きに乗り換えることになる。だったら東京から熱海行きに乗っていった方がいい。

 

「熱海行きまで待って。」

 

今日は夕暮れ時に着くようにしている。

to be continued…

 




まだまだ続きますけど、次回が終わったらナナニジは1回終わりです。彩と胡桃、かりな、彩夏中心になります。
「え、終わり…?」
み、みう!?
「私、ダメでしたか…」
いやいや、そんなんじゃなくて、物語の進行上ね!
「そうなんですか?ならいいですけど…」
ふぅ…進行上そうなっちゃうからしょうがないんだよね。


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第47話 海と日の入り

海を見にいく場面からの続きです。
次回からは彩、胡桃、かりな、彩夏の主役になります。新メンバーは俺のリア友。


 俺たちは結局16:57発東海道線普通熱海行きに乗って行った。4号車グリーン車の平屋席で座った。ここは6シートが2つある12人定員の部屋だ。12人席に11人座るため1席しか余らない。丁度いいかもしれない。

 

「みう、そこでいいのか」

 

みうは1番後ろの進行方向右側、通路側に座っていた。

 

「はい…1番隅っこな気がするので…」

「そう考えたらとなりにいる桜は大丈夫なのか」

「仲良いから…」

「イェーイ!みうちゃんうれしいっ!」

 

ほんとに大丈夫かよ。俺はというと余った1席の通路側にいた。俺の隣は誰もいない。通路を挟んでニコルがいるけど。

 

「根府川って駅だからな。寝てたら起こして」

 

俺はメンバーに言うと目を瞑った。疲れは溜まっていないはずだけど急にねむくなったからだ。

 

 そして俺は自然に自分で起きた。起きた時にはLED掲示板に「次は早川」と書かれていた。危ない危ない。あと1駅じゃないか。早川の次が根府川になる。

根府川駅は無人駅で、JR東日本の東海道線では珍しい無人駅だ。ナンバリングはJT17。熱海駅から3駅目、東京駅から16駅目だ。

 

「まもなく、根府川、根府川、お出口は左側です」

 

自動放送が近づいてなった。あと少しだ。

 

「マネージャー、着くよ。」

「起きてるから気付くさ、桜」

 

俺は荷物をもって降りる準備をした。そんなに時間がかかってないような気もするけど。

 

「降りるぞー」

 

根府川駅に降り立った時刻は18:28。日の入りまであと21分。18:49が日の入りだ。

 

「海だ…オレンジ…」

 

もう夕日でオレンジになっているが、目的はこれじゃない。

 

「あと20分くらいですごいのが見れるから」

 

なにこの自分の語彙力。

 

「20分かー。」

 

 

 18:49、日の入りだ。水平線に陽が沈む。オレンジ色から紫に近い感じになる。

 

「こんなに変わるんだね…」

「ライブ成功を祝ってるみたいですね」

 

俺たちは静に沈む太陽をみていた。

 

「また来たいね」

「今度は何を成功させるんだ」

「ライブ?たくさんしよ」

 

ライブで成功したら毎回来るか。俺は心の中でそう思った。

 

「あれ、月島?」

「ん?」

 

またヤンキーみたいなやつにあったのかと思ったら、実際にあったのは高校時代一緒だった佐々木碧だった。碧って女の子っぽい名前だと思ってたけど意外と男も使ってるんだ。碧は俺と同じくいじめられていたのに、ヤンキーを倒したことがある、俺の恩人だ。ちなみに俺の1つ先輩。今は25だったはず。

 

「佐々木先輩!」

「もう先輩じゃなくていいから。久しぶり、月島」

「今も同じとこ住んでるんですか?」

「引っ越してないからな。」

 

そうだったんだ。っていうかまだ鉄道好きなんだな。

 

「鉄道好きなんですね」

「あぁ。もう俺次の上りで帰るけど、君らも帰るか」

「え?いいんですか」

「俺1人だからいいよ。別に」

 

マジか!佐々木先輩と帰れるのか!?最高!

 

「是非!」

「おう!えっと、君たちは」

「22/7です。11人で」

「そうだったか。じゃあ俺の秘密の席教えよう」

 

秘密の席?気になりながらも俺は佐々木先輩…碧についていった。

 

「15号車が先頭なんだけど、実は1号車が1番空いてるんだよ。東京までは」

「そうなんですか!」

 

地元路線の形式はおなじなのに知らなかった。

 

「さて、じゃあ俺はロングシートでいいから。大船で降りるし」

「はい。じゃあ俺はここで」

 

ボックスシートをとった。

 

「あれ、どこ行きだっけこれ」

「黒磯行きとか言ってましたよ」

「そうなの!?じゃあ東大宮まで乗ってく。これね、1日1本の最長距離電車なんだよ」

 

熱海始発黒磯行きは知っている。たしか2019年くらいまで昼にもあったはずだ。

 

「それで昼にあったのが折り返し通勤快速ってやつですよね」

「そう。」

 

 

 神保原についた俺はそのまま家に直行した。もう22時を過ぎていた。上野でナナニジメンバーと別れてから、大宮で碧と別れ、籠原でかりなと彩夏が合流した。彩とは2回目なはずだ。

 

「失礼します…」

「大丈夫よ。これからは暮らすから」

 

俺は今日からこの家に戻ってきたのだ。

 

「じゃあ胡桃のところ行こうかな。胡桃の部屋にいるよな」

「多分ね。」

 

俺は胡桃の部屋に向かった。風邪でまだ寝込んでいるはずだ。俺は部屋の前に着くなり部屋の中に入った。胡桃は外にはいなかった。どこいるんだ?

 

「胡桃、どこいるんだ」

 

返事がない。下にでも降りたのか?でもすれ違わなかったし。

ドンッ

後ろから急に誰かから押され、ベットの上に倒れた。

 

「胡桃!?んぐっ」

 

口を塞がれて話せなくなる。なんで押さえられないといけないんだよ。俺なにもしてないだろ。

 

「静かにして。バレちゃいけないから」

「バレるって、誰にだよ」

「元カレ」

 

元カレって、彼氏いたのかよ。ってかなんで家に入ってきてるんだよ。

 

「なんでいるんだ」

「分かんない。裏から入ってきた」

 

明らか不審者じゃん。警察に言わないとじゃないのか。

 

「警察には」

「ケータイ下だから」

 

俺は自分がいつも身に付けているスマホが入っているポケットを触った。

 

「あれ、入ってない…」

 

周りをみてみるとベットの下にスマホが落ちていた。さっきの衝撃で落ちたんだろう。

 

「あそこか…ちょっと取ってくる」

「うん…」

 

俺がベットから降りると、外から足音がした。重い音で彩や妹だとは思わない。元カレか。

 

「柊くん!来て!」

 

胡桃に手を掴まれて俺はベットに逆戻りしてしまった。「ここかな」と声がすると、元カレが入ってくる。俺たちは布団の中で黙っていた。状態としては胡桃が俺を抱いている状態だった。

 



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第48話 胡桃

今日は胡桃と彩、彩夏が中心です。そういえば、柊ってなまえのひといるんですか?


 俺と胡桃は布団の中でくっついて黙っていた。俺は無心でいたが、胡桃はみるみる顔が赤くなっていく。

 

「いないのか…?」

 

そのまま出ていってくれ、頼むから。

 

「柊くん…固い…」

 

胡桃が触ったのは俺の指だった。俺の手は胡桃の体に触れていたが、仕方なく黙ってたんだけど、さすがにダメだったか。

 

「我慢してくれ、出ていくまで」

 

しばらくこのままでいたが、出ていったのを確認すると、俺と胡桃は布団から出ていった。

 

「ふぅ…警察呼ぶか」

「そうして…」

 

俺は部屋から出て元カレの腕を掴む。手首を強く掴んだ。警察に電話をかけて。

 

「お前、どういうつもりだ」

「は?なにもしてないだろ」

「不法侵入。あ、もしもし、あの神保原の――」

 

俺は警察を呼んだ。元カレは少し焦っているが腕からは離れなかった。

15分で警察が来た。

 

「この人俺知らないんですが、勝手に入ってきたんです」

「君、本当かい」

「…だって元カノいるんだからいいだろ」

 

許可出してないのに来るのは勝手に入ってきてるのと同じだろ。

 

「許可してないし、連絡ないし。俺知らないし」

「ちょっと署で話し聞くからね」

 

警察は元カレを連れていった。あとで知ったことだが、不法侵入で罰金5万、隠れて殺人未遂をしていたため懲役5年が課せられたそうだ。

 

「胡桃、おいで」

 

胡桃はぎゅっと俺を抱き締めた。ニコッと笑って俺を見てくれた。

 

「風邪は治ったな」

「おかげさまで。」

 

それにしても俺には信じられないことがあった。普通気温が3℃で半袖でも倒れるほど寒くはならないと思ったのだ。まだ震えて風邪をひくぐらいだったら分かるが、いくらなんでも倒れはしないと思った。

俺は下に降りるとゲーム部屋のエアコンを10℃、扇風機を2台動かした。丁度あの時と同じ状況。窓はたしか全部しまっていた。俺はあの時と同じように5時間立ち入り禁止にした。今はもう23:50。明日の4:30にみんな起こして、4:50に様子を見る。

 

 そして翌日4:45、みんなでゲーム部屋の前に行った。外からでは感じないが、木のドアをさわると冷たかった。

 

「じゃあ開けるぞ4:52、解放」

 

4:52、ドアを開けた。温度計は3℃を指している。しかし別の温度計では氷点下まで下がっていた。-26℃。29℃の差があったのだ。

 

「壁の温度計、壊れてたのね」

「そうだな。3℃以下に落ちないから」

「胡桃ちゃん、どうして寒くしたの?」

 

俺もそれは気になった。なんで倒れるほど寒くしたんだろう。

 

「柊くんが、私を嫌ったのかって思って」

「嫌ったって…そんなことない」

「そうなの?だって、電車も合わないから…」

 

そういうことか。確かに早く出るようにしたから会わないよな。

 

「早く出てたから。仕事で」

「そうなの?じゃあ、私の…////」

 

胡桃は顔を赤くした。勘違いなのが恥かしかったんだろう。

 

「なんだ、勘違いか。そういえば、明日から戻るから。時間」

「私も明日からお兄ちゃんと一緒に行くから、みんな一緒だね!」

「私は鴻巣なんだけどね」

 

それぞれ彩夏の仕事の最寄り駅は、俺とかりな、彩夏は上野、胡桃が小山、彩は鴻巣だった。彩夏、かりなは高校にいくのがもったいないと俺が教えることになった。

 

「じゃあ少し休もうかな。」

「じゃあ私も休もうかな」

 

みんなでストーブの効いたリビングで休んだ。俺だって出ていくまでまだ時間がある。休日に乗った籠原6:50発を平日にした電車に乗る。確か湘南新宿ライン東海道線直通快速国府津行きだったはず。神保原は6:28発だった。

 

「あれ、彩は鴻巣でなにするんだ」

「言ってなかったっけ、先生だよ」

 

そんなの聴いてない。教員免許いつとったんだよ。

 

「教員免許は」

「社会。」

 

よりによって社会か。俺も教員免許持ってるけど。まぁだから引き受けたんだけど。

 

「俺、数学と理科、音楽の免許」

 

3教科だけ。理数系と音楽だけ。

 

「胡桃って確か国語と英語得意だよな」

「I have a specialty in English.」

 

彩と彩夏は「へ?」となに言ってるか分かってないっぽい。たしか「私は英語が得意です。」だったっけ。俺はまぁまぁ分かる。返事は…

 

「I thought so」

 

自分もそう思ったという意味。

 

「Thank You」

 

これくらいだったら分かるだろ。まぁ難しい単語は全く分からないけど。

 

「じゃあ家では彩が社会、胡桃は国語と英語だな」

 

それ以外は…まぁ大丈夫か。

 

 6時丁度、俺たちは家を出た。家が誰もいなくなるのは久しぶりだった。今回は妹もいて普通車でキスするところは見せられないからグリーン車の平屋席。12席で5人。半分くらいだった。

 

「あ、今日は普通車じゃないんだ」

「混んでるし、彩夏たちが満員電車に慣れてないから」

「北海道の時も通学で乗ったよ?」

「そっちとは比べ物にならない。」

 

あっちは乗車率105%あったら混んでた方だけど、こっちは大宮過ぎて185%超えてるから。その中でいつもキスを…

 

「はぁ…」

「なに?嫌じゃないでしょ?」

 

嫌じゃないけど、よく考えたらさすがに混んでたんだ。

 

「俺たち遠いんだよな。」

「うーん、鴻巣も遠いからね」

 

そういえば、胡桃の会社はどんなのなんだろう。行ったことないから行ってみたいな。




久しぶりのあとがき。今度は胡桃視点になります。また、50話なんですが、長編作品の代わりにスペシャル編をやるかもしれません。まぁ気分しだいですね。
それでは、次回もお楽しみに!


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第49話 胡桃 3日目

3回目の場合は3日目と書きます。
今回は胡桃の会社についてです。小山だってこと覚えてますかね。結構パート数もあるので忘れてるんじゃないかな。まぁ、覚えていないかたは何となくでいいので読んでみてください。
あと今回は胡桃視点になるため、最初から胡桃視点です。柊の時にはちゃんと【月島柊視点】と出しますからね。
それでは本編へどうぞ。




 私は大宮で湘南新宿ラインを降りた。7番線に到着だから結構珍しいかも。ここからは宇都宮線に乗り換える。下りだからここからは空いている。7:43発宇都宮線普通宇都宮行き。10両に挟まれた15両だから結構空いていた。座席も空いてる日があるが、今日は空いてなかった。私はドア横の仕切りに寄りかかって電車に乗っていた。

次の土呂までは住宅の近くを通っていく。東大宮を過ぎても全く変わらない。でも電車が道路の下を通ると急に田んぼが広がった。うっすら学校も見えた。そしてここを通りすぎるとまた建物が多くなり、蓮田につく。

久喜まで来ると線路が一気に増してきた。東武伊勢崎線だ。これが線路が増す理由だった。

東鷲宮は、いつも通ってるから慣れたけど、上下線でホームの高さが違う。めずらしいのかな。

 

 小山には8:32。ゆったりは来れてないけど。会社は小山駅から15分歩いたところにある。結構遠い。時間によっては両毛線で来た方が早かったりする。いつも宇都宮線で来るけど。

 

「葉元さん、おはよ」

「おはよー。風邪で休んじゃってごめんね?場所とるの大変でしょ。次ってたしか芸能プロダクションだから」

「そうだよー、まだ半分残ってるからね」

 

そりゃあそうか。私が休んでたからね。って、芸能プロダクション来るのって!

 

「芸能プロダクション来るのって今日じゃないよね」

「今日だったっけ。見てくるね」

 

私は軽く会釈をして仕事に取り組んだ。確かに半分残ってた。けど楽なところだけ。

 

「葉元さん、今日の午後だって」

「やっぱり?この量終わるかな」

「ムズいところはやっといたから、頑張って」

 

まぁありがたいか。やっておこ。

 

 

 「おぉ、葉元ちゃん、仕事早いねぇ」

 

出たセクハラ上司。私のことをとことん触ってくる。

 

「いえ…手伝ってくれたので」

「そうかいそうかい。頑張ってくれ」

 

肩を撫でながら上司は言った。そのまま離れていく。セクハラでしょ絶対。

 

「あのー!芸能プロダクションの方が」

 

やばっ!まだ終わってない!あと15分あれば…

 

「失礼します。上野の者じゃないのですが、今日の会場は何処でしたっけ」

 

よかった…これで上野の人たちが来たら私の人生終わってたよ。厳しいって噂だし。昔聞いた話だと。

 

「葉元さん、危なかったね」

「ホントだよ。殴られるかと思った」

 

私は作業を終わらせるために張り切ってやった。上野の人たち、怖そうだよなぁ。

 

 13:45、芸能プロダクションの上野の人が来た。怖い人たちかな。って、あれ?3人なんだ。結構少ないな。てっきり10人くらいで来ると思ったのに。

 

「お疲れ様です。葉元さんが会場に必要だと」

「あ、はい」

 

私になんのようだろう。いけないことしちゃった?会場に着くと、さっきの3人は離れていった。何が必要なの?そう思っていると奥の方から機械工事をしていた人が来た。

 

「ごめん、葉元さん。ここのセットのライトなんだけど」

「はい、もう少し左ですね。」

 

なあんだ、そんなことか。悪いことしたかと思ったじゃん。

 

「あと胡桃、俺には気付こうか」

「はい!すみません…」

 

なんで知ってるの!

 

「今日してないから」

 

柊くんは私の顔の後ろを持ち、柊くんの顔に近づける。ここでしちゃうの?

 

「柊くん…ここで、しゅるの?」

 

緊張すると噛んじゃうな。

 

「胡桃、しよう」

 

ちゅうぅ

強いキス。その分短いけど。

 

んはぁっ、好き…

「今日はよろしく、胡桃」

「うん…よろしく」

 

【月島柊視点】

 

 俺は上野の事務所からライブのために午後、小山に着くために行った。今回は葉元胡桃が用意するらしいから、胡桃のことだろう。

午後に小山に着くと会場に胡桃がいた。

 

「胡桃、しよう」

 

今日の朝してないから。ここは今誰もいないし。

ちゅうぅ

舌を絡めさせてキスをした。

 

んはぁっ、好き…

 

胡桃はピンク色にして言った。好きなのは知ってる。俺は話を変えた。

 

「今日はよろしく、胡桃」

「うん…よろしく」

 

胡桃は俺から離れようとしない。こんなにベッタリなのは久しぶりだ。

 



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第3長編作品 第50話 胡桃と彩と千聖と俺

長編作品になったとさ。
今回は家にいる気がする。彩は結婚したいし、胡桃も好き。千聖ちゃんは最近出てきてなかったね。


 12月で俺はたまたま2連休があった日に家にいた。今日は一段と寒く、今の気温もストーブなしで5℃だった。それにしても、なんでこんなことになってるんだ。どんなのかって?見れば分かるけど、千聖が俺の膝で寝てるんだ。こんなことになったのには、約1時間前に遡る。

 

みんなが出ていってから俺は1人になった。すると裏からドアが開いた音がした。

 

「柊くん!いたのね」

「いるの分かってたろ」

「ふふっ、まぁね。」

 

千聖は俺に近づいてきた。あぁ、嫌な予感がする。

 

「疲れたから寝ていい?」

 

あれ、思ったのと違う。てっきり早速ハグとかキスとかするかと思ったんだけど、違うのか。

 

「いいけど、俺のベットでか」

「ううん、柊くんの膝で寝たい」

 

やっぱりヤバイこと言い始めた。膝枕とかさ。

 

「え?なんで」

イイデショ?ダレモイナインダカラ

 

こわいこわい。やるしかないか。

 

「おいで、千聖」

「ふふっ、いい子でよろしい」

 

千聖は俺の膝の上で目を瞑った。

 

 こんなことがあってこうなっている。あぁ、なんでしてしまったんだ。

 

「スー、スー…」

 

千聖はいびきを掻かずにスースーと呼吸する音だけだった。かわいいけどこれはやめてほしい。

 

「柊くん…来てぇ」

「は?っておい!」

 

俺は千聖に掴まれて俺は千聖を羽交い締めにするようになってしまう。

 

「スー、スー…」

 

まだ寝てる、のか?寝ながらやったってことでいいんだよな。千聖は俺が羽交い締めにしても寝ていて、全く起きる気配はない。

 

「俺が動ける立場じゃないからなぁ」

 

彩は学校だし、胡桃は小山行ってるし、かりなと彩夏は事務所で勉強中だし。まだまだ帰ってこないだろうな。

 

「んんんっ、あら、ちゃんとしてくれて――」

 

千聖は押し倒されているのを見て言った。

 

「我慢出来なかったのかなぁ?」

「違う!千聖が寝ぼけて抱いてきて」

「したかったんでしょ?でも」

 

なんでこんなに攻めてくるかな。

 

「したくない!」

「ふふっ、焦ってる」

 

からかうなよ、千聖。

 

「もういいか、俺やめたいんだけど」

「いいわよ。やめて」

 

俺はゲーム部屋に向かった。しょうがないんだよなぁ、大体胡桃やってるからこういう時しかないんだよ。

 

「やるか」

 

俺は音ゲーの譜面作成を開始した。意外と時間かかるんだよな、これ。

 

「私がついててあげる」

「千聖?まぁお前しかいないか。」

「ふふっ、はい」

 

むにっと俺の手に感触があった。むに?って、まさか!

 

「うわぁっ」

「胸揉みたいでしょ?」

 

俺は無関係だと心の中で思っていた。しかし掻き消せない。

 

「あとにしてくれ、そういうのは」

「じゃあパフパフする?」

「なんだ、それ」

 

俺は知らないまま千聖にパフパフされた。柔らかいし、胸だし。何やってるんだこいつは。

 

「柔らかいでしょ。おっきくはないけど」

「進まないんだけど。譜面作成が」

「あ、ごめん。楽しかったから」

 

俺はまた譜面作成を開始した。

 

 あれから5時間が経過した。千聖は俺には飲み物を持ってきてくれる。やっぱり秘書っぽいかな。

 

「柊くん、大丈夫?」

「大丈夫。」

 

俺は5時間続けていても全く眠くもならない。夜になったら胡桃迎えに行くか。時間的には妹、彩、胡桃の順番だろ。彩の方先の可能性もあるけど。

 

「あと3時間で終わりそうだな」

「じゃあ遊ぼ?終わったら」

「あぁ、いいぞ」

 

俺は千聖と遊ぶことを約束した。

 

 あれから3時間半、少しかかったけどどうにか終わった。千聖は全裸で…はぁ!?全裸!?なんでそんなことになるんだよ!

 

「お風呂、入ろ?」

 

遊ぶんじゃないんかい。まぁ拒否はしないけどさ。こっちにも作戦はあるんだ。

 

「いいけど、そっち先に入ってきていいぞ」

「じゃあ、お先失礼します。」

 

微笑んで千聖は風呂場に歩いていった。なんだ、さっきの笑みは。俺はリビングでコーヒーを入れて風呂を待った。そろそろ彩の帰ってくる時間か。妹ももうすぐだな。胡桃はまだ帰ってこないだろう。

それから暫くして千聖が俺を風呂場から呼んだ。作戦は今のところ成功してるな。俺は風呂場に向かった。千聖が出ていった跡はある。床に足跡がついていた。ガラガラとドアを開けると、風呂の蓋がしまっていた。ここまでするか。

 

(千聖、どこ行ったんだろう)

 

俺がそんなこと思っていると風呂の中から手が延びてきて、俺を連れ込んだ。ホラーじゃん。誰もいないといないと思ってたのに。

 

「って空!?」

「ふふっ、騙されたわね」

 

千聖だった。ここに連れ込んで何するんだ。

 

「ん!?」

 

キスだった。もう慣れたけど。

 

チュッ

 

いつまでするんだ。けど覆われて離せないし…

 

「柊くん?」

「あ、彩!」

 

声だけで分かった。せっかくだし英語で言ってみるか。

 

「help me!!」

「OK.」

 

彩は少し位だったら分かったらしい。俺を引っ張り出した。

 

「Thank You」

「どういたしまして」

 

そこは英語で言おうよ。

千聖も上がって、俺1人になった。俺ももう上がろうかな。

 

「じゃあ俺上がるから。彩しか帰ってきてないか?」

「寒くてくるまってるよ。妹さん2人」

 

くるまってるって、ストーブあるんだからな。

 

【丸山彩視点】

 私は家にはいった。もう全員帰ってきてるかな…ってそんなわけないか。私は柊くんの妹さん2人と一緒に帰ってきた。たまたま同じ電車だったのだ。私は家のくつを見る。柊くんのだけだった。休みだったんだ。

私が家の中に入ると風呂場から柊くんと女の子の声。浮気とか?そんなわけないか。私は風呂場に向かった。柊くんのパンツと服、あとは黄色の女の子のパンツ。やっぱり誰かと入ってる?

 

「って空!?」

 

柊くんの叫び声がした。誰かに襲われてるのかな。

 

「ん!?」

 

お風呂のキュッという音と共に柊くんが何かに塞がれた声がした。

 

「チュッ」

 

キスのリップ音。私は恐る恐る風呂場に入った。殺人鬼とかだったらどうしよう…

 

「柊くん?」

 

少し怖がった声で言った。

 

「あ、彩!」

 

押し倒してたのは千聖ちゃん。なんで来てるの?

 

「help me!」

 

え、英語!?けどヘルプミーぐらいだったら分かる。

 

「OK.」

 

私も英語で返した。私は千聖ちゃんをどけて、柊くんを引っ張りあげた。2人とも全裸だった。

 

「Thank You」

 

返事ってなんだっけ?英語分からないから忘れちゃった。

 

「どういたしまして」

 

日本語で返した。よかったかな。

 

「じゃあ俺上がるから。彩しか帰ってきてないか?」

「寒くてくるまってるよ。妹さん2人」

 

私は上がっていった柊くんを見届けて、千聖ちゃんと話をした。

 

「なんで来てるの?家知ってたの」

「知ってたわ。柊くんを奪い取ろうかなって、なーんて」

「冗談じゃなくて、なんで?」

「だってかっこいいし、キスも拒まないし」

 

そんな問題じゃないのに。私だってキスぐらいしてくれるもん。頼んだら。

 

「私だってキスしてくれるもん!」

「ふふっ、じゃあ私は帰るわね。柊くん、取られたくなかったら取り返してね」

 

悪魔のような笑みを浮かべて千聖ちゃんは全裸でお風呂を出ていった。パンツ、か。見せたことないよね、そういえば。

 

【月島柊視点】

 彩に言われて俺はストーブの近くに行った。リビングの中ではかりなと彩夏が体を震わせて2人でくっついていた。なんでストーブつけないんですか?

 

「かりな、彩夏、ストーブつけないのか」

「怖いんだもん…火傷とか…」

 

そういうことか。それだったらやんなかった方が懸命だったかもしれない。

 

「そっか。じゃあつけるからまってな」

 

俺はストーブにチャッカマンで火をつける。15分くらいで暖まるからな。

 

「じゃあ15分くらいで暖かくなるから。それまで俺に抱きついてていいぞ」

「じゃあ遠慮なく」

 

彩夏は抱きついてきたが、全くかりなは近づいても来ない。

 

「かりな?来ていいぞ」

「嫌…いやぁ…」

 

嫌?なんか病んでるのかな。

 

「かりな?」

「やめて…やめてよ…」

 

やっぱりなんか考え込んでる。悩みとかあるのか、嫌なこと言っちゃったかな。

 

「かりな!」

「あぁぁぁっ!」

 

かりなは俺に突っ込んできた。力強く倒れるほどに。俺も床に倒れる。

 

「かりな、どうした」

「お兄ちゃん…うぅあぁ…」

 

泣き出してしまいそうだ。

 

「うぅぅっ、どうして…」

 

急に甘えていたかりながネガティブになり始めた。

 

「殺したいのに、殺せない…」

 

彩に似たような悩みか。だったら本人に聞いた方が早いだろう。俺は彩を呼んだ。すぐ来て、彩は俺の話を聞いた。

 

「どうしたの?」

「かりなが殺したいのに、殺せないとか言ってて、彩もそういうのあっただろ。だから話し聞いてくれないかって」

「なるほどね。いいよ。聞いてあげる」

 

よし、作戦成功。なった人に聞いた方がいいだろ。

 

「かりなちゃん、大丈夫なの?」

「多分。お前は思ったことないのか、殺したいって」

「ないよ?大好きだから」

 

大好きって、お兄ちゃんにいいこと言ってくれるじゃないか。我が妹よ。

 

「嬉しいよ。じゃあ待ってようか」

 

【丸山彩視点】

 

 私は柊くんに頼まれて2階の私の部屋でかりなちゃんと話をした。

 

「かりなちゃん、どうして殺したくなっちゃったの?」

「無意識に…目があった瞬間に… 」

 

私よりかは軽いけど、もしかして気持ちを出しきれてないのかも。出し切れないと焼きもちみたいに相手をなぜかイラついて殺しいたい、死んでほしいと思ってしまう。出し切れば問題は解決できる。

 

「気持ちを出しきれてないのかも。出し切れば問題は解決できるよ」

「気持ちを、出し切る…?」

「うん。好きっていう気持ちを出すの。」

 

私はアルコール入りのチョコを棚から取り出した。

 

「これを下で食べて。全部」

「これ食べたらどうするの?」

「眠くなると思うからソファで寝ていいよ」

「分かった。」

 

かりなちゃんは階段を下る。私もその後ろについていく。柊くんは下にいなかった。胡桃ちゃんを迎えに行ったのかな。

 

「じゃあ食べてみて。飲み物は飲まない方がいいよ」

「うん、分かった」

 

やってることが詐欺っぽい気がする。けどしょうがないよね。

食べ終わってもすぐに効果はでない。10分くらいしてからだ。

 

「あれ…眠い…」

「寝ていいよ」

 

私はかりなを寝かせて、リビングの外に出た。

 

【月島柊視点】

 

 意外と出てくる時間がかかって、時間が19:00を過ぎてしまった。胡桃を迎えに行くか。多分駅で待ってれば来るだろう。俺は神保原まで車で行った。暫く待つと胡桃が駅から出てきた。

 

「お帰り、胡桃」

「ただいま。ね、合図は?」

 

合図?そんなの決めてないんだけど。

 

「なんだそれ」

「このこと」

 

胡桃は助手席に座って一瞬の短いキスを頬にした。キスするってことなのか。

 

「じゃ、今日からこれね」

 

今日からやる前提だったのか。まぁ、胡桃とだったら嫌じゃないからいいや。

 

「分かった。」

 

俺はシートベルトをして車を走らせた。家に着いたらかりなと彩夏は何してるかな。

19:50に家に着いたら、彩夏は風呂、かりなはストーブの前にあるソファでぐっすり寝ていた。俺を待つ気はなかったらしい。彩は夕食の支度。胡桃が帰ってきたから。

彩夏は少ししてから戻ってきたが、かりなは起きない。起こさないとダメだよね。

 

「かりな、起きろ」

「んん?お兄ちゃん…」

 

かりなは寝ぼけながら俺を見た。

 

「夕飯だ。起きて――」

「お兄ちゃん…ぎゅう…」

 

かりなは俺を抱き締めた。なんか寝ぼけてると言うより酒に酔ってる感じがするんだけど。全く匂いしないけど。何でだ?

 

「はいはい、早く起きてくれー」

「うん…あったかーい…」

 

ダメだな。なんか食わせたか?

 

「どうしたの?お兄ちゃん。」

「かりながおかしくてさ。」

「チョコ食べてたの関係ある?」

「ないだろ。」

 

彩が上から降りてくると、俺に話しかけた。

 

「アルコール入りのチョコ、だったら?」

「確かにあったけど…!」

 

俺はやっと気づいた。かりなが間違って食ったんだったら酔ってるはずだ。自分から食ったのか?

 

「私が食べさせた。」

「え?彩が?」

 

何やってるのこの女は。

 

「だからか…って、わっ!」

 

俺はかりなに引っ張られてかりなとキスしてしまう。なんでこんなにキス多いんだよ。

 

「お兄ちゃん…しゅきぃ…」

「かりな?ん」

 

キスすればなおるかと思って俺は舌をかりなにいれた。

 

「んんっ!!」

「ん?」

 

顔真っ赤にしてるってことは治ったかな。

 

「かりな、覚めた?」

「覚めた!」

 

俺はキッチンのテーブルに行ってご飯を食べ始めた。つくるのは彩と胡桃。いつも美味しいから助かってる。

 

「彩、千聖はどうしたんだ」

「帰ったよ?」

 

そうだったか。だから静かなんだな。

 

「お兄ちゃん、ご飯食べさせて?」

「俺がか?いいけど」

 

俺は彩夏にご飯を食べさせた。俺のスプーンでいいだろ。

 

「間接キス。」

「んなっ!」

 

そういう意味かよ!妹だからそういうのないかと思ったのに。

 

「仲いいのね。」

「兄妹だからね。彩夏も」

 

何その言い方は。俺だって知らなかったし。

 

「じゃあさっさと食い終わろっかな」

 

俺は少し急いでご飯を食べた。喉には詰まらせないように。

 

 胡桃が音ゲーを始めると、俺が呼ばれた。なんかあったかな。俺もつくってるくらいだから得意だけど。

 

「どうした、急に」

「勝負しない?スコア勝負」

「いいけど、負けちゃうぞ」

「いいもん!勝つから」

 

俺はコントを持った。曲は俺がつくってない曲。まずは胡桃の番だった。

スコアは285820。285821以上で俺が勝てる。まぁ大体の曲で400000超えるし大丈夫だろ。

俺のスコアは458716。

 

「なんでそんな出るの!」

「デッキ編成って自分でやってるだろ」

「スコアアップのデッキだけど…」

「アイテムで総合力でかくするんだよ。」

 

総合力とスコアは比例して値が大きいほどスコアは高くなる。これを踏まえてもう一回。

 

胡桃のスコアは448210

 俺のスコアは452710

さっきより差は縮まった。あとは成績だけ。

 

「頑張れ、いつでも相手するから」

「分かった!」

 

俺は2階の俺の部屋に向かった。今日は何人も相手して疲れたな。明日も休みだし明日はゆっくりしよう。明日が終わったらまた満員電車地獄だ。




久しぶりの長編でした。今回は5552文字。なかなか長かったです。
次回は胡桃が休みで2人で音ゲーをやる話です。短編で1000前後で終わりますが、お楽しみに!


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第51話 勝負

今回は短め。1000くらいですかね。
次回予告もしておきます。次回は12月24日でクリスマスイブですが柊は大甕出張です。日帰りですが始発で行って終電で帰る感じになります。
それでは本編へ!


 12月23日、クリスマスイブの前日。俺は当然の如く仕事だった。水曜日で電車は混んでいた。そりゃあいつも通り胡桃とはキスしたし、ってかするしかないし、上野まで妹2人と一緒だった。

 

「じゃあいつも通りそこの部屋で」

「はーい。じゃ、がんばってね!」

 

言われなくとも。俺はレッスン部屋に向かった。後ろにいるかりなに後ろ向きにならずに手を振った。頑張るか。

 

「あ、マネージャー。今来たんですか」

「いや、妹を連れてっただけ」

「そうですか。レッスン部屋一緒に行きますか」

 

あかねが珍しいな。1人で行くの毎日だったのに。

 

「あぁ。いいよ」

 

レッスン部屋は3階で少しエレベーターに乗る。階段は疲れるし。エレベーターの中では他に誰もいなく、あかねと俺で2人きりだった。

 

「……」

「………」

 

話が思い付かない。何話せばいいの。

 

「……」

「……?」

 

なぜかあかねが胸元を隠した。なんで急に。

 

「…どこ見てます?」

「ファッ!?いや、どこも……」

 

ボーッとしてたからどこ見てたのか分からなかった。まぁ、胸は見てないだろう。

 

「ほんとですか…?ならいいんですが」

 

なんとか乗りきった。3階までの2分ほどが長く感じた。

レッスン部屋に2人で着いてもまだ誰もいなかった。いた方がどう思われたか不安だったけど。手つないで入ってきてたし。……って手つないでる!?

 

「あ、あかね?」

「はい」

「なんで手つないでるんだ」

「何となくです」

 

返事が短い。何となくですって、そんなわけないだろ。

 

「まぁ、離してくれないかな」

「…分かりました」

 

あかねが俺の手を離す。これで入ってきても問題ないだろう。

 

 いつも通り家には21時半過ぎに帰ってきた。夕飯は先に食っていて、胡桃はゲームしていた。俺も食い終わると胡桃のところに行った。ゲーム中じゃ悪いから俺は無言で静かに入った。

 

「あ、500000いった…」

「おめでとう」

 

俺が声を出すと胡桃は椅子から飛び出した。

 

「ひゃっ!?柊くん、いたの?」

「最後だけ見てた」

「ってことは50000超えたのも?」

「見てた」

 

胡桃は俺に微笑んでいった。

 

「じゃあ勝負しよ?スコア勝負」

「いいよ。やろうか」

 

俺だけが今からやる形だった。胡桃は50000出してるから。

 

「50万超えればいいんだな」

「正確には500894」

「分かった」

 

500895以上で勝ちか。結構厳しいな。けどリザルト見た感じ5回くらいmiss出てたからフルコンじゃなくても行けるか。

結果は558248。

 

「どうやったの!?」

「ちょっと本気だした」

 

俺の平均スコアが485870なんだから50万は本気出せば超えられる。

 

「これ見て」

 

俺は必死で計算した紙を見せた。これで50回目までのスコアが載っている。

 

「最低が305858、最高が685780。同じ曲だ」

「成績が問題なの?」

「まぁ簡単に言えばそうだな。明日夜に練習しよう。俺はもう寝るから…ふわあっ」

 

あくびをして言った。俺は居間のストーブを消して2階に上がった。俺の部屋は誰も使ってなくてぐっすり寝れた。そういえば、明日は出張だったっけ。

 




1235文字で終わった。あと1少なければ1234でしたね。あとがきっぽくないですがこれが俺のクオリティーw
低クオリティーで申し訳ない。なるべくネタは考えてるんですが、学校もあってあんまり考えられないんです。それでも頑張りますからね!次回もお楽しみに!


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第52話 クリスマスイブ

今回はもとに戻って2000です。だから最初も少し前からです。そういえば、登場人物ってやってましたね。再開しますか。
今回の登場人物
月島柊
葉元胡桃
スタッフ 2名
22/7 11名
以上15名
こんな感じでしたよね?覚えてないや。
それでは本編へ!


 翌日始発電車で上野まで移動する。5:24発上野東京ライン小田原行き。上野で特急ひたち1号いわき行きに乗り換える。上野は6:53。次のひたちは品川始発で向かい側の8番線から7時丁度発。上野東京ラインは7番線に到着した。7時丁度発ひたち1号いわき行き。5号からは上野の次は水戸になるが、3号までは土浦に停車する。

取手を越えると田んぼが広がって速度も上がってくる。

土浦では1番線に到着し、すぐに出発する。平日この時間は朝ラッシュ真っ只中。いつも乗ってる高崎線は混んでるんだろうな。

友部を通過するときにガタンとたくさんのジョイント音がする。水戸線からの線路だ。

水戸には8:10。水戸駅で通過する駅へは向かい側3番線の常磐線いわき行きに乗り換える。大甕はいわき行き普通に乗り換えた。

8:18に出発し、大甕には8:40。歩いて数分移動して、ビルの中に俺は入る。今度の年越しライブは勝田にあるひたちなか海浜公園の海側でやることになった。その打ち合わせだ。日時は12月31日23:40~1月1日0:50までの約1時間。

 

「衣装はオレンジドリームズですね」

「はい。お願いします」

「12月26日に伺いますね」

「分かりました」

 

次に入ってきたのはライブ会場確保の人。

 

「臨時、時刻の変更として、23:50開始に変更、品川駅、東京駅、上野駅、いわき駅、小山駅にライブ最終電車を記載したポスターを設置、」

 

臨時バスは勝田駅から

20:00発 普通電車勝田止まりからの乗り換え

20:30発 普通電車高萩行きからの乗り換え

21:00発 ときわ79号勝田止まりからの乗り換え

21:33発 普通電車いわき行きからの乗り換え

22:00発 ときわ83号高萩行きからの乗り換え

22:20発 ひたち29号いわき行きからの乗り換え

22:27発 普通電車水戸行きからの乗り換え

22:35発 普通電車大津港行きからの乗り換え

22:44発 普通電車勝田止まりからの乗り換え

23:04発 ときわ85号勝田止まりからの乗り換え

23:16発 普通電車高萩行きからの乗り換え

以上11本の増発。電車からの接続を取る。

 

「じゃあ、ポスターの内容を」

「はい。品川、東京、上野は、品川20:24発が最終電車のことを、小山駅では21:05が最終電車で、友部で22:25発高萩行きに乗り換え。いわき駅は20:55発が最終電車です」

「了解。12月26日までにはっておいてくれ」

「分かりました」

 

これで今日会う人たち、年越しライブの準備は終了。あとは帰るだけだけど、お土産でも買ってくか。

 

 勝田に着いた俺はNewDaysに向かった。中には、「ほっしぃ~も」があって、どうもパイらしい。胡桃と彩夏が喜ぶな。パイが好きだから。俺はほっしぃ~もを買った。ホームに戻ると14:24発上野行きが停まっていた。これでいいか。俺は上野行きに乗った。

 

 特急よりも時間がかかって上野には16:29。ぐっすり寝れた。俺は事務所に向かう。

 

「やってきたぞ、打ち合わせ」

「お疲れ様。パーティーしてたの」

「パーティーか。俺もやろうか」

 

俺も一緒にパーティーをやった。

 

 終わったのは23時半。最終で帰ることになった。家に着いたのは1:45。もう1時も過ぎていた。胡桃は悲しんでるだろうな。俺と夜やるって言ったのに。

 

「ただいま」

 

誰も迎えることはない。電気はどこにもついていない。夕飯はパーティーで食ったからいいか。だったらもう寝ようかな。俺がゲーム部屋に静かに行くと、胡桃がうとうとしながらテレビ画面を見ていた。easyをしていたが、起きようと頑張っていた。

 

「胡桃…」

「柊、くん…」

 

胡桃は近づいた俺にもたれ掛かった。眠かったのに、どうして起きてたんだ。

 

「なんで起きてたんだ」

「やるって言ったから。でも、できない…」

「ごめん。なんかほしいのあったら言ってくれ」

「ほしいの、じゃないんだけど、」

 

胡桃は何回か区切って言った。

 

「クリスマスデートしたい…」

「クリスマスデート?」

 

俺には関係ないと思っていたがあるとはな。

 

「デート。お詫びに」

「……分かった。いつから――」

「明日」

 

眠そうだけど明らかに早い返事。行きたかったんだな。

 

「いいよ。明日の9時出発な」

「うん。待ってるからね」

 

俺は2階に上がるのも面倒くさくなって居間で寝転んだ。

明日はどんなことが起こるんだろう。胡桃だから何か楽しいことするんだろうな。

そういうことを思いながら俺は目を瞑った。

 

 翌日12月25日クリスマス。今までのクリスマスは何もないクリスマスだったが、今日だけはデートできる。胡桃と一緒に。どこに行くかはまだ教えてもらってない。

 

「柊くん♪行こ!」

「あぁ」

 

俺は胡桃についていった。車ではなく歩いて駅に向かう。

 

「柊くん、手繋がないの?」

「繋ぎたい?」

「恋人だし?」

 

俺は胡桃の手を自分の手で握る。自分からこうするときが来るんだな。

 

「あ…結構あったかい…」

「胡桃が冷たいんじゃないか。暖めるぞ」

「そうかな?じゃあそうして?」

 

俺は手を繋いだままでそこを歩いていった。

 




2032まで行きました。次回は2人だけですね。もしかしたら22/7出てくるかも?
それでは次回もお楽しみに!


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第53話 クリスマスデート

今回の登場人物
月島柊
葉元胡桃
店員
以上3名
今回は少し進みますが、次回は急展開になります。ラストにヒントがあるので予想してみてね。
先に次回予告をしちゃうと、次回は胡桃と柊の関係がああなる。これしか教えられない。


俺と胡桃は東京駅に向かうため電車に乗っていた。もう朝ラッシュは過ぎたが、全然混んでいた。遅れているのもあるんだろう。いつもの満員電車とほとんど同じくらい。

 

「柊くん、恋人、だからね」

「分かってる。だから」

 

俺は胡桃の唇に俺の唇を当てる。

 

「ん、ちゅ」

 

胡桃の口の中へと舌を入れる。いつも通りって言っていいのか分からないがいつものだった。

 

「あぁんん、ちゅうっ」

 

声を少しだした胡桃。俺は出したときに終わりにした。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、好きぃ…」

「俺もだ。大好き」

 

胡桃の体に俺は抱きついた。胡桃も対抗せずに俺を抱き締めた。

 

「柊くん、好き。大好き」

「胡桃、絶対離れない。大好きだから」

 

俺は胡桃の目を見る。キラキラ輝いているようにも見えて、恥ずかしそうな目をしているようにも見えた。

 

柊くん、目、見ないで…恥ずかしい…

「どうして、かわいい目してるよ」

「そうじゃなくて、好きな人に見られるとドキドキしちゃうから…

 

俺は胡桃の顔に手を添える。

 

「結婚したら毎日だぞ」

「練習、ってこと?」

「そう。胡桃だって俺の目見てるじゃん」

 

胡桃も俺の目をさっきからずっと見ていた。そのとき、ガタンと電車が揺れて俺と胡桃は再びキスしてしまう。

 

「んん!?」

はぁっ、柊くん、キス、もう…らめっ、チュッ

 

胡桃はダメって言いながらもキスしてしまう。

 

「全然ダメじゃないじゃん」

バカァ…

 

本気じゃないバカが聞こえた。多分ツンツンしてるだけだろう。

 

 尾久に到着するときには車内はもうすいていた。ゆったり立てる程度だった。次が上野、その次が東京だ。どこで降りるかはそろそろ決めないとだ。

 

「次は、上野です」

「the next station is Ueno.JU02.」

 

英語放送とともに鳴った。上野までの間に複々線外側に向かう分岐を曲がる。少しだけ揺れた。

 

「まもなく、上野、上野。お出口は左側です。新幹線、山手線、京浜東北線、常磐線、地下鉄銀座線、地下鉄日比谷線、京成線はお乗り換えです。」

「the next station is Ueno JU02.the doors on the left side will open.please change here for the Sinkansen,Yamanote Line,Keihintohoku Line,Joban Line,Ginza subway Line,Hibiya subway Line,and keiseiLine.」

 

さすが上野駅、乗り換え放送が長い。神保原や熊谷と比べて倍はあった。まぁいつも聞いてるけど。そのあとには肉声放送があった。

 

「お乗り換えのご案内です。常磐線快速勝田行きは6番線から10:52の出発です。」

 

ここが短いんだ。

7番線に到着し、ドアが開く。胡桃は降りる気配がない。東京で降りるんだ。発車メロディーが鳴って、もうすぐ出発の時刻になる。その最中、胡桃が俺の手を引いた。

 

「降りるよ!」

 

胡桃は俺の手をつかんで階段を上る。俺も合わせて上がっていく。

 

「柊くん、ここのボート一緒に乗ろ?」

「ボート?」

「うん。私について来て!」

 

胡桃は改札を出て、外に出た。不忍口だった。ここからだと不忍池とかかな。ボートって言うくらいだから池だろう。胡桃が手を引いて走っていくかと思ったら、ゆっくり手を繋いで歩いていた。

 

「恋人みたいだな」

「今日だけでも恋人だからね」

 

今日だけでも、か。俺も決めないとだからな。

 

「そっか。」

 

胡桃は目的地に向かって俺と一緒に歩き続ける。

5分ぐらい歩いてから着いたのは不忍池。スワンボートがずらっと並んでいた。

 

「あのピンクのがいいな。柊くん、乗ろ!」

「あぁ。」

 

俺はスワンボートに胡桃と一緒に乗った。中は思ったより狭い。

 

「あ、ごめん…」

「狭いからくっついちゃうね」

 

胡桃と俺がスワンボートの中でぶつかってしまう。くっつくのも無理はないが。

 

「真ん中あたりだね」

「あぁ。」

 

俺はふと思い浮かんだ。胡桃と俺、もしかして気が合うんじゃないか。だったら考えていた彼女、いや、結婚相手は胡桃でいいんじゃないか。俺は胡桃に戻すように指示して、胡桃が1人でこいでいる感じになった。俺は近くの指輪専門店へ向かった。歩いて12分とかかれていた。ここにしよう。

ここについて、指輪を選ぶ。胡桃なら何が似合うだろう。シンプルな方がいいかな。俺は奥にあったシンプルだが輝きのある指輪を選んだ。

 

「14万5千円です」

 

月100万のやつに比べたら軽い出費だ。5万円札を3枚だし、5千円さつ1枚が返ってくる。「ありがとうございました。お幸せに」と店員さんが言ってきてくれる。俺は「はい」と一言返事をして店をあとにした。

胡桃がスワンボートをこいでから30分以上が経過した。疲れたし飽きているだろう。

 

「胡桃、戻って」

 

俺が指示すると胡桃が乗ったスワンボートゆっくり戻ってくる。

 

「なに?」

「いいから俺も乗るからな」

 

蓋のついているポケットに入れてある、指輪の入った箱にはまだ気づいていない。このま真ん中まで行けば。

真ん中についた俺と胡桃は、その場に止まった。

 

「胡桃」

 

俺はポケットから指輪を取り出そうとする。しかし、俺は伸ばした手をまた戻す。

 

「夜に話がある。」

「え?あ、うん」

 

不思議な感じだった胡桃は俺に肩を寄せた。

 



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第54話 指輪

 その日の夜20時、東京駅丸の内口から出た道にいた。あたりはクリスマスカラー一色だった。

 

「話って?」

「胡桃」

 

俺はポケットから指輪の箱を取り出した。そして胡桃の前で箱を開ける。

 

「胡桃、結婚してくれないか」

「…私と…?」

「あぁ。ダメかな」

 

胡桃は下を向いてくらい表情に見えた。あぁ、ダメだったか。すると胡桃が俺の耳に口を近づけて言った。

 

「いいよ。結婚」

「いいのか、俺でも」

「いいよ。前から一緒だったし」

 

俺は胡桃の右薬指に指輪をはめた。ピッタリよりほんの少し緩いくらいで丁度よかった。

 

「わあっ、指輪…ありがとう!柊くん!」

「仕事で会えないかもだけど、なるべく早く帰るから」

「絶対ね!柊くん、私もね」

 

胡桃は指輪を俺の右薬指にはめた。俺の方も少し緩いくらいで丁度いい。

 

「胡桃…」

「お揃いじゃないけど、指輪は2人しないとねっ」

「胡桃、ありがとう。」

 

俺たちは夜だからかホテルに入っていた。なにもしないがなんか雑談しかしていなかった。

 

「指輪いつ買ったの?」

「スワンボート俺が降りてから」

「それで思ったんだけどさ、真ん中に行ったときに渡そうと思ってた?」

「なんだ気づいてたか。けど夜の方がいいだろ?雰囲気とかさ」

 

夜だったら雰囲気もよくなると思っただけだ。それ以外の理由はなにもない。

 

「柊くん、寝よ。来て」

 

指輪を渡してからかただの恋人じゃなくなった気がした。なんと言うか、夫婦?みたいな感じで。

 

「私の旦那さん♪」

「まだ式もあげてないけどな。」

「明日婚姻届出すんでしょ?柊くんの事だから」

 

なんだ、分かってたか。俺の性格まで胡桃にはバレていたらしい。

 

「よく分かったね。じゃあ、寝ようか」

「うん。ぎゅっ」

 

胡桃が言ったと同時に抱きついてくる。しかし、もう恥ずかしい気はしない。胡桃はもう俺の妻だから。

 

「胡桃、かわいい」

「柊くんこそ、かっこいいよ」

 

そういって、俺たちは目を瞑った。明日は朝から忙しくなりそうだ。

 

 翌日、神保原まで行くと、町役場に向かった。婚姻届を出すためだ。名前のところに、月島柊、葉元胡桃と書いて提出した。ここで俺と胡桃は正式に結婚したのだ。12月26日だった。

 

「柊くん、家帰ろ?」

「え、まだ終わってないけど」

「もう大丈夫。これで私は幸せだから」

 

俺たちは家に帰った。今は誰もいないんだろうな。時間も10時を過ぎてるし。

家に着くと居間で俺と胡桃は寝転がった。2人で抱きついて笑い合っていた。

 

「柊くん…」

「胡桃…」

 

俺たちは抱きついたままで2人見合っていた。

 

「柊くん、キス、しよ」

「あぁ。しよう」

 

結婚してからはじめてのキスだ。いつもしているキスとはなにかが違う。

 

「柊くん、好き」

「俺も。」

 

俺と胡桃は抱きついたままでいた。

 



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第55話 吹奏楽部

今回の登場人物
月島柊
葉元胡桃
丸山彩
姫川杏
桃瀬心春
美海零
有栖柚
先生2人
以上9名


 俺と胡桃の結婚式は年明け1月7日にやることに決まり、今日は12月29日。ライブは31日であと2日だ。彩が鴻巣の中学校に、16時くらいに来てと言われたため俺は彩が先生をしている学校に向かった。神保原15:07発上野東京ライン小田原行きで鴻巣に向かう。

熊谷15:34

鴻巣には15:49。胡桃は冬休みに入っていたため一緒に来た。来校者扱いで2人とも来ていた。

 

「あ、柊くん。音楽室4階にあるから来て」

「あぁ。」

 

音楽室?なんで音楽室なんかに行かないといけないんだ。俺は音楽室に向かう。音楽室の中には男性女性それぞれ1人ずつがいた。

 

「柊くん、入って」

 

俺は彩に押されて音楽室に入った。先生の名前はそれぞれ、女性の先生が谷中先生、男性の先生が夜冝先生だった。俺は2人の先生に挨拶をする。

 

「こんにちは、月島柊っていいます」

「早速なんだけど、吹奏楽部の顧問だけをしてくれないかな」

 

吹奏楽部の顧問?急だな。

 

「いいですけど、なんで急に」

「うちの学校、人数、楽器共に多いんだけど、先生だけが少ないの。だから人数を増やしたくて。そのときに丸山先生から月島さんがいいと聞いて」

「なるほど、俺も中学は吹奏楽部ですが、ユーフォニアムくらいしか教えられないですよ?その他は基本のことしか」

 

俺は中学の時だけ吹奏楽部だった。そのときの担当楽器がユーフォニアム。どうやらこの学校のユーフォニアム担当生徒は4人。全員女子生徒だった。男子生徒も全体で数人いるが、パーカッションや、チューバに寄っていた。

 

「大丈夫ですよ。ユーフォニアムは2年生までいるんですが、1人なので」

 

俺が入ってたところは1楽器あたり3人だったかな。

 

「じゃあ、始めようか」

 

俺は吹奏楽部を始めた。1年生から2年生まで、3年生は引退済みだ。

 

「……」

「……」

 

点々が4人から浮かんでくる。

 

「みんな?まず自己紹介いいかな」

「…1年、3組…姫川(ひめかわ)(あん)です…

 

段々声が小さくなっていく。デクレッシェンドみたいだった。

 

「…1年2組…桃瀬(ももせ)心春(こはる)です…」

 

少し区切りが多いけど音量は保っている。

 

「1年4組…美海(みうみ)(れい)です…」

 

今までで1番よかったけど、もう少しかな。人見知りかもしれないけど。最後に2年生の先輩が自己紹介する。

 

「2年1組、有栖(ありす)(ゆず)です。」

 

全員人見知りか。けどまずは演奏を聞いてみないと分からないな。胡桃は俺の背中によじ登っていた。

 

「あの…背中…」

「あぁ、俺の妻」

「葉元胡桃でーす!」

 

背中に乗った胡桃が言った。おりてくれないかな。

 

「おりてくれない?」

「重いとでも?」

「いや、そんなんじゃなくて」

 

4人は見合ってクスクスと笑っていた。俺が笑って見ていると、4人は我に返ったように笑うのをやめた。

 

「ごめんなさい…」

「いや、これでいいんだよ。笑っていい」

 

俺は吹奏楽部の準備室脇にあったユーフォニアムを1つ持って戻った。

 

「みんなで吹いてみて。1、2…」

 

4人一斉に吹き始めると思ったが、アタック(音の始め)が4人バラバラだった。テンポを設定しなかった俺も悪いが、入部から8ヶ月たってるはずだ。

 

「ストップ。俺は吹くから聴いてて」

 

俺はさっきと同じ、B♭(低いシ)からB♭(高いシ)までを1拍ずつ吹いた。指番号は、B♭から

B♭ 0

C  1,3

D  1,2

E  1

F  0

G  1,2

A  2

B♭ 0

の順番。4番ピストンで4つ管があるが、教えるために使うのは3番まで。吹き終わると、4人は俺をずっと見ていた。

 

「これが手本だ。あと、俺の方針を確認しておこう。」

 

俺は黒板に書き始めた。1~3までの3箇条だ。

 

「1つ目は、俺が厳しすぎる練習はしない。例えば、16拍4拍のロングトーンを今すぐやれとかは言わない。2つ目は笑って部活を行う。無表情でするより、さっきみたいに笑って部活をやろう。たまにふざけたり、ボケたりするから。最後は俺が来れない日だ。俺にも他に仕事がある。来れない日があるが、そのときは4人だけで練習しよう。先生はいらない。自分たちだけでやる貴重な時間だ。以上のことが俺の方針だ。」

「先生、厳しくしないと、上手くならないんじゃないですか?」

「厳しくしすぎると相手との信頼がなくなってしまう。俺は「厳しいけど分かりやすい先生」より、「優しくて分かりやすい先生」の方がいい。言うんだったら、「優しくて面白いけど、少し分かりづらい」でも構わない。俺は、面白い、優しいと思ってくれればいいんだ。楽器はそれでよくなる。」

 

俺は別に熱血先生ではない。分かってもらえればそれでいい。それで、俺は笑ってもらいたい。こんな堅苦しい話だけを聞いてても飽きるだろう。

 

「胡桃?いつまで乗ってるんだい?」

「部活終わるまで?」

 

そうじゃないんだけど。ネタじゃなくて本気で。

 

「先生の奥さん、面白いですね。」

「そうか?全くふざけてるだけだけど」

「ふざけてるってなによ!」

「あはは!」

 

4人が笑ってくれる。偽装じゃないだろう。そういう笑いかたじゃない。

 

「じゃあ、吹いてみて。こういう風に…」

 

俺はわざと息が抜けたhiBをならした。ピーッと音がする。

 

「あ、間違えた。まぁ、吹いてみて。低いB♭から」

 

俺は指示して準備室に向かう。胡桃は背中に乗っている。

 

「胡桃、ありがとう」

「ふふっ、気づいてたか。」

 

狙ってやってくれたのにはちゃんと気づいていた。

俺がライブ準備で忙しくなるときにはどうなってるだろう。楽しみだ。

 




次回はライブの話になります。12月31日ですね。次回も胡桃は出てきますよ。


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第4長編作品 第56話 年越しライブ

今回はついに年越しライブなのでナナニジが多く出てきますね。
国営ひたち海浜公園は実際に勝田からバス出てますので、是非行ってみてください。聖地巡礼にもなりますからね。
あと今回は結構長い長編作品です。年越しライブを今回で終わらせるので。
それでは登場人物のあとに本編へ!
今回の登場人物
月島柊
葉元胡桃
月島かりな
月島彩夏
ナナニジ11名
丸山彩
以上14名


 俺は朝6:04発上野東京ライン小田原行きで上野まで行く。上野でナナニジメンバーと合流して勝田まで行くが、第1期メンバーは俺たちと一緒に、第2期メンバーは佐々木先輩と一緒に小山経由で勝田まで行く。俺たちは上野からひたち3号。佐々木先輩たちはずっと在来線だ。来ている人は俺の妹、胡桃、彩で来ている。

 

「平日なのに空いてるのね」

「大晦日だから夜が混むんだろ。」

「初詣だよね」

 

大晦日は終夜運転をするが、夜は結局混んでくる。

 

 上野には7:38。ナナニジメンバーはlineで「17番線で待ってる」と言っていた。俺たちは17番線に向かった。ひたち3号は8時発だ。

 

「柊くん、勝田でなにするの?」

「ホテルに泊まるけど、1回休む。ファンの誘導でね」

 

ファンの誘導も俺がやることになった。なんでもやるから俺は万能とか思われてるか。

 

「だったら私もする!」

「いいよ。」

 

 勝田には9:24着。ここでホテルに移動する。ナナニジは車で先に国営ひたち海浜公園に移動。俺と胡桃、彩、かりな、彩夏はホテルで休んでいる。

 

「ふぅ、20時から誘導開始だから、胡桃、よろしくね」

「うん!柊くん」

「そういえば、結婚したんだっけ。おめでとう」

 

彩が祝ってくれる。かりなと彩夏も拍手で祝ってくれている。

 

「ありがと。嬉しいよ」

 

20時発臨時バスが最初になるから、そこから整理することになる。混み始めるのは22時を過ぎたあたりからだろう。

 

 20時になってバスが出発していった。乗車率は30%ほどであんまり乗っていない。次は20時半。しばらくはない。駅でも人はあんまりいなくて、電車から降りてくる人しかいない。

20時半発のバスまで残り3分、改札から人が少し出てくる。まだ多くはないが、40%は乗っていた。21時発からは少し乗ってくるかな。

21時発は特急からの接続のせいかあまり乗ってこなかった。乗車率は少しあがって45%ほど。21:33発はいわき行き普通電車からの乗り換えだから乗ってくるだろう。

21:30、電車が到着した。無線で出発を1分遅らせるように指示した。

 

「また来ないんでしょ?人」

「多分なぁ。」

 

そんなことを胡桃と話していると、改札の向こうから大群が押し寄せてきた。普通電車だと人乗ってたのか。

 

「21:34出発でーす、走らずにお歩きください!」

「21:34出発でーす、お歩きくださーい!」

 

混雑した人の群れを整理する。これでバスは…バスを見ると乗車率は100%を越えていた。

 

「すごいね、21:33発はたくさんだ」

「そうだな。次は22時発だけど」

 

 

 22時発は空いていたが、22:35発は混んでいた。22:44発に俺たちは乗って国営ひたち海浜公園に行くから22:44だけは空いていてほしい。

22:40、電車が到着した。10両編成でたくさん乗れる。まさかだけど、混んでたりは…

 

「うわっ、すげー混んでるし」

「乗れるかな…?」

 

移動する必要もなく、押されるようにしてバスのところへ向かった。彩、かりな、彩夏もこれに乗ってるはずだ。

 

「柊くん!こっち!」

 

後ろから声がした。彩、かりな、彩夏も押されてこっちに来ていた。俺はバスに飲み込まれた。バスのドア付近でギリギリ乗れるほどで、俺は彩とかりなを、胡桃は彩夏をバスに引いた。どうにか乗ることができた。

 

「お兄ちゃん…きついよぉ…」

「しょうがないだろ、身動きとれないし…」

 

前にいたのはかりなだった。妹だから問題ない。

 

「あっ、顔…」

「キスしたいんだったらするよ」

「ばっ、バカじゃないの!?するはず……」

 

黙り込んでしまった。何かあったのかな。

 

「したい…キス…」

「え?マジで?」

「はやく…っ!」

 

俺はかりなを口で奪っていた。かりなの全てを吸いとるように俺はキスをした。

 

ん、ちゅっ、あぁっ、んんっ

「なんか濡れてる…?」

「あっ、ちょっ!」

 

俺は濡れてるところを触る。確かにグッショリ濡れていた。

 

お兄ちゃん…そこ、お尻…んっ

「えっ!ってことは…」

 

反応しちゃってるのか?かりな。お兄ちゃんに。

 

「ごめんっ!あぁ、えっと」

「いいよ。別に。きゃっ」

「きゃっ」

「きゃ!」

 

3人がバランスを崩す。俺にもたれ掛かってくる。

 

「お兄ちゃん…きつくない?」

「大丈夫…ドア開くから、こっち来て」

 

後ろのドアも開くバス停だ。客は10人以上は乗ってきた。また俺に3人が近づく。俺は女子に囲まれて柔らかかった。

 

「お兄ちゃん、くるちい…」

「柊くん…」

 

再びバスは動き出す。次は市民球場入口。また乗ってくるのだ。後ろも開く。

 

「あっ!」

 

客が大量に乗ってきてドアからはみ出てしまう。外にいた通行人がはみ出た乗客を押して中にいれようとする。

 

ちょっ、ダメぇ…

「柊くん、ごめんね」

 

俺はドア脇から押されて動かされる。きつい中3人を抱き寄せてこっちに引っ張る。

 

「ここしかあいてないか。まだバス停あるから気を付けて」

 

あと2駅。次はジョイフル本田西。また乗ってきた。

 

「つめてくださーい」

 

乗る人が言った。通行人3人が押して入れようとするが、全く乗れない。俺たちも1歩も動けない状態だった。

 

「ぎゅうぎゅう詰めだね…柊くん、ごめんね」

 

3人が俺にまたくっついてきた。胡桃が一回ずつ言ってくっつく。

 

あぁっ、ダメ、押さないで…

 

胡桃が何か苦しそうにしている。そのとき、胡桃のところからブチッとなにかが切れた音がした。

 

「あっ…」

「どうかしたか?」

「ブラが…壊れちゃったかも…」

 

ブラが壊れたって、この中じゃ直せないし。

 

あんっ

 

胡桃の胸が俺に当たる。むにっと感触が伝わる。柔らかかった。って、そんな暇じゃない!どうする、壊れてることは確定だ。

 

「胡桃、透けてないか?服」

「白だし、ブラ壊れちゃったし」

 

ピンクの乳首がうっすらと浮かび上がっている。

 

「俺にくっついてて。乾くまでこのままでいよう」

「うん…優しいね、柊くん」

「君の夫だからね」

 

俺は国営ひたち海浜公園につくまで俺はくっついていた。

 

 国営ひたち海浜公園に着くと、俺は胡桃の服を確認する。少し俺の服は湿ってるか。俺の服が湿るくらいどうってことない。この後着替えるし。スタッフは黒の服に着替える。

 

「胡桃、服乾いたか?」

「乾いた。ありがと!」

 

胡桃の服は乾いたか。俺は3人を連れて海沿いに向かう。時間的には余裕がある。

 

「じゃあ行こうか。」

 

俺は胡桃と手を繋いで歩いた。彩は俺の妹2人と手を繋いで歩いていた。

 

「柊くん、手繋げるようになったんだね」

「あぁ。」

「サイクリングあるんだ。それで行こ?」

 

今日だけは24時間やってるからサイクリングもやっていた。結構距離あるしいいか。

 

「いいよ。じゃあ2人乗り俺と胡桃がのって、妹同士も2人乗りでいいだろ。彩はどうする」

「1人だけで乗るからいいよ。胡桃ちゃんと一緒に楽しんで」

 

俺は2人乗り2つと1人乗り1つを1日分チケット買った。ここからP18の、砂丘エリアまで行く。

 

「じゃあ、漕ぐぞ」

「うん」

 

俺と胡桃は自転車を走らせた。その後ろに妹2人、その後ろに彩がついていく。

 

「胡桃、楽しい?」

「たのしいっ!」

 

俺は少しはやく漕いだ。胡桃はそれにつられてはやく漕ぐ。

 

「わあっ、はやーい!」

 

子供みたいにはしゃぐ。彩は後ろでクスクス笑っていた。

 

「胡桃、俺ライブの間いないけどいいよな」

「え…柊くん、いなくなっちゃうの…?」

 

胡桃が泣き出しそうになる。急に漕ぐ力も俺に強くかかった。

 

「ライブの間だけだから、ね?」

「約束だよ?帰ってきてね?」

「あぁ。約束だ」

 

俺は胡桃のことを落ち着かせた。ライブの間はナナニジについていなければいけない。マネージャーだし。

 

「じゃあ行こ!」

 

胡桃が力一杯漕いだ。俺の力が急に抜けた気がした。

 

「あっ、お兄ちゃん!」

 

かりなが俺を呼んだ。それほど速かったんだろう。

 

「柊くん!あそこ!」

 

胡桃が指差した方向には海が見えた。明かりがついていてライブのステージも準備できていた。

 

「よし、行こう!」

「おーっ!」

 

 

 俺たちはライブのステージ前についた。俺はステージの袖に向かう。ナナニジのメンバーが俺を待っていた。

 

「柊くん!遅い!」

「ごめんね。ここまで遠くてさ」

 

23:48、あと2分だ。年明けまでもあと12分。

 

「じゃあ準備して上がってくれ。いつも通りでいいからね」

「分かってる!じゃ、行ってきます!」

 

みんながステージに上がっていった。

 

 23:59、カウントダウンが始まった。ナナニジがステージの上でファンとしゃべっている。俺が端にいたあーやに合図を送った。ちゃんと伝わったらしく、あーやが5秒前からカウントする。そしてカウントが終わると後ろから花火を打ち上げた。演出も派手にしないと。

0:00になって、2035年を迎える。最初の曲など、メンバーはネタを考える。0:50終了だ。

 

 0:50、無事にライブが終わった。今日の臨時バスは1:20発勝田駅行き。30分間はバスがない。ファンは1万と言うほどに来ていた。

 

「一回勝田に帰らないとな。自転車はP18に置いといて、俺たちはバスに乗ろうか」

「うっ、また激混み…」

 

そうか。来たときはすごい混んでたっけか。帰りは1:20~1:23までに6本連続だから大丈夫。混まないはず。

バス停に着くと1:20発のバスを待つ長い行列があった。ここでも整理しないとだ。1:15、1:20発がやってきて、乗客がバスに流れ込む。そのあと1:17に1:20の30秒後のバスが入ってくる。

 

「勝田行きは6本連続です!分かれてご乗車ください!」

「1:20発は大変混雑しております。1:21、1:22発もご利用ください!」

 

1:18に1:21発、1:20に勝田行き出発と同時に1:21の30秒後のバスが入ってくる。そしてラスト1:21に1:22発が入ってくる。1:21の30秒後のバスが出発して、残りの乗客が1:22発に乗る。今までで1番混んでるバスになった。1:20が空いてたな。

 

「柊くん、歩いていく?」

「いや、乗ってこう」

 

俺は1:22に乗った。帰りのバスには押し屋がいて、はみ出た乗客15人ほどを押して中にいれる。前のドアギリギリまで客がいて、後ろにも一杯だった。だから乗客同士がくっついて乗るしかなかった。これを逃したらバスはない。俺たちはバスの中程に3人立っていた。胡桃はノーブラで白い服だった。

 

また透けちゃう…あんっ、ダメぇ…

 

胡桃が喘ぎ声をだす。後ろにいく客が胡桃のお尻と肌に触れているそうだ。

 

「胡桃、こっち来な」

「行けないし…身動きが…」

 

俺だって一切動けない。八方を人で囲まれてるから。胡桃は俺に胸を押し付けて見えないようにしていた。

 

「暑い…蒸れてる…」

「胡桃、汗拭こうか」

「柊くん、服の中…」

 

服の中に汗をかいているそうだった。俺は胡桃の服の中に手をいれて、汗を拭く。しかしどこにも汗をかいていない。

 

「どこかいてるんだ?」

「胸の下…気持ち悪い…」

 

俺は胸の下を拭いた。

 

んっ

 

胡桃が声を漏らす。拭いた手が少し胡桃の胸に触れてしまった。俺も段々汗をかいてきた。

 

「発車しまーす」

 

運転手が放送した。待て、今動いたら…俺の手は胡桃の服の中にある。ってことはこれで発車したら胡桃の胸を揉んでしまう。案の定バスは大きく揺れ、俺は胡桃の胸を掴んでしまう。

 

あっ、柊くんっ…

「我慢してくれ。外すから…」

 

俺は胡桃の服の中から手を取り出そうとする。ぷにっと胡桃の胸に手が触れてしまう。

 

あぁっ

 

俺が外そうとしても正しい位置が分からなかった。

 

んっ、ちょっ、待って…乳首がぁ…

 

胡桃の乳首に俺の手が当たっていた。

 

「我慢してくれよ。あと少し…」

 

胡桃の乳首に当たってるのは分かってる。しかし我慢しないとずっとこの状態だ。

 

あぁっ、んあっ、んっ

「胡桃…声が…」

しょうがない…あっ、でしょ…あぁっ

 

所々に喘ぎ声が入っている。

 

柊くんんっ!

 

胡桃の乳首が起っている。けどもうすぐ手が抜けるはずだ。

 

あぁぁっ!

 

俺の手が抜ける。胡桃は過呼吸になって唇の間にピアノの線のようなものが垂れ下がっている。

 

「はぁ、はぁ、柊くん…はぁ、すきぃ…」

「胡桃?急になにいってるんだ」

 

胡桃は顔を赤くしてはぁはぁいいながら言い続けた。

 

「はぁ、はぁ、柊くん…好き…しゅきぃっ」

「胡桃、なんか暖まってるっていうか、息が熱いぞ」

「きのしぇい…」

 

胡桃は俺に抱きついた。なんか彩もこんな感じになっちゃってる。

 

「柊くん、結婚してにゃいけど、一緒にいよ」

「彩?一体どうしたんだ」

「私はこうしてみただけ。胡桃ちゃんはガチじゃない?」

 

焦るんで冗談はやめてもらいたい。胡桃は俺の頬をペロッと舐めてくる。

 

「うわっ!」

 

【葉元胡桃視点】

 

ペロペロッ

 

「うっ、胡桃、やめてくれ…」

 

やめない。ペロッ

 

「ううぅ…」

「柊くん、いろんなとこ舐めるよ」

 

私はほっぺたの次は唇を舐めた。キスとは違う感覚だと思ったから。

ペーロッ

ちょっと舌の奥から舐めた。

 

「ん!?」

「あ、気持ちいい…」

 

私は柊くんの首も舐める。

ペロ

 

「ひゃあっ!」

 

かわいい反応♥️柊くんかわいいとこあるからね。

 

「柊くん、かわいい…♥️」

「胡桃?舐めるな…」

 

柊くんが私の顔を押さえてしまう。舐めれないじゃん。

 

「舐めるのはこっちだ」

「えっ?いやっ」

 

私の頬を柊くんが舐める。もうっ、柊く…あっ、やっ、やめてぇ…

 

「声出さないんだな。出していいんだよ。キスするから」

「キス…あんっ」

 

私は柊くんから舐められて声が出ちゃう。

 

「まもなく勝田です。」

 

放送があった。柊くんは私の口に人差し指を当てていった。

 

「今はしない、ね」

「う、うん…」

 

気になっちゃうし、なぜか私もはやくしたくなっちゃってる。早くホテル行こ。

 

「柊くん、早く行こ?」

「え?けど部屋全員バラバラだよ?」

 

部屋バラバラ?嘘…できないじゃん…けどこれで「じゃあいいや」なんて言ったら違和感感じるに決まってる。

 

「う、うん…」

 

少し動揺しちゃった。しょうがない。だって柊くんとしたかったのに、バラバラなんだもん。

 

「彩、先に2人を連れてホテル行ってて」

「うん。分かったけど、どうかしたの?」

「コンビニで飲み物買ってきたい。」

 

柊くんが言った。飲み物なんてホテルが出してくれるはずなのに。

 

「…胡桃、来て」

 

柊くんは私をおんぶしてどこかにつれていく。コンビニだろうけど、方向にコンビニはない。

 

「柊くん、どこ行くの」

「もう少し」

 

柊くんは走ってある建物の前にとまった。

 

「ここって…っ!」

「ラブホテル」

 

柊くん、もしかして狙ってた?私のこと分かってたとか。

 

「入ろうか」

 

柊くんが私をおんぶしてラブホテルの中に入っていった。

 

「柊くん…さっきの…」

「分かってる。」

 

柊くんは部屋の中に入って私をベットに押し倒す。私は両手を柊くんに押さえられて動けない。けど、嫌じゃない。柊くんだから。柊くんは私のほっぺたを優しく舐める。なんで?私、ほっぺたなのに感じちゃってる。キュンキュンいってる。

 

ああっ!柊くん!イク!

「胡桃、ほっぺだけだけど?」

 

感じちゃってる!我慢できないほどに。

 

柊くん!ああっ!

「じゃあイかせるか。」

 

柊くんは私の服をたくしあげた。ノーブラだから服をたくしあげられると乳首が丸見えだ。

 

「あ、柊くん…まさか…」

 

柊くんは私の胸に顔を沈め、乳首を吸い始めた。やっぱりだった。

 

あぁぁっ!らめぇっ!イくぅっ!

 

私は大きな声を出してしまう。そして同時にお尻から汁が勢いよく出てくる。

 

「イっちゃった…柊くん…私も…足りないから…」

 

私は柊くんにキスをした。

 

んっ、ちゅっ、くちゅっ

 

口の中で舌と舌が絡め合う。口からは汁が漏れている。

 

ん、くちゅちゅくちゅ

 

すごい舌が絡め合ってる。私は柊くんの後ろに手をまわす。

 

「胡桃、大好き」

「私も、好き!」

 

 

 普通の泊まるホテルに戻って、私は自分の個室に入った。私は柊くんの写真を探した。そういえば、集合写真とか、2人の写真って撮ってないよね。柊くんの顔を24時間見てたいけど、写真がないと仕事中見れない。電車の中であんなことはしてるけど、会ってる時間はまだ短く感じてしまう。今度写真撮ろっと。

 

【月島柊視点】

 

 俺は1月1日朝8時、胡桃に呼ばれて俺はバスに乗った。彩はまだ寝ていたらしく、2人だけだった。前日のバスとは違く、通勤客もあまり乗っていなかった。だから俺たちは席に座っていた。

8:27に着き、年明けに着いていたP18に歩いて向かった。自転車に乗るかと思ったら、海の近くまで歩いた。

 

「胡桃、どうしたんだ」

「2人の写真、撮ってないでしょ?だから撮るのっ!」

 

写真か。そういえば最近撮ってないな。胡桃はカメラをタイム設定にして走ってこっちに来る。こういう撮影か。胡桃が俺の肩に寄りかかり、俺は力を抜いて直立していた。カシャッと鳴って写真が撮れる。胡桃は写真を確認して、俺に見せてくれる。

 

「いい写真撮れた!」

「そうだな。」

 

俺と胡桃は昨日の自転車で走った。

 

「胡桃、今日はスカートなんだな」

「ミニスカだけどタイツしてるから寒くないよ」

 

胡桃は前に乗って、俺が後ろだった。そして一斉に漕ぎ始める。

 

「柊くん!前たのしいっ!」

「よかった!そっちがハンドルきってくれよ」

 

胡桃は左右に曲がって楽しんでいた。こんな楽しいの、久しぶりだな。

 

「胡桃、高校生の時のこと、思い出したよ」

「あっ、思い出した?じゃあ…」

「誰かからラブレターもらったな」

「そっか。じゃあ話そっかな。」

 




6955!多分1番長い。次回は胡桃の高校時代ですね。登場人物少ないかも


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第57話 高校生

前半が胡桃の高校時代、後半は柊と2人でいます。
今回の登場人物
葉元胡桃
月島柊
以上2名
本編へどうぞ


 私が高校生のとき、文化祭に柊くんを誘った。なんでかっていうと他に誰もいなかったから。それから私は柊くんのことを段々思い始めていた。友達からは「知らないの、あの人彼女いるのよ」とか言われたけど、私の思いは変わらなかった。

ある日学校に行くと、柊くんが彼女と話していた。喧嘩みたいな口調だった。

 

「三咲!いい加減にしろよ」

「そっちでしょ!私のこと知ったのは!」

 

何かあったのかな。私は三咲ちゃんのところの仲裁に向かった。

 

「どうしたの?柊くん」

「うるさい!邪魔よ!」

 

三咲ちゃんが私を叩こうとする。私がガーデンすると、柊くんが私を守っていた。

 

「三咲!」

「なんで助けるのよ!もういい!別れましょ!」

 

三咲ちゃんが走り出していった。柊くんは拳を握りしめて突っ立っていた。

 

「柊くん…」

「胡桃、ごめん」

 

柊くんも昇降口に向かって歩き出した。

 

 私は告白をするためにいつもより早く学校にきた。ラブレターを家で書いてきて下駄箱にいれる、ベタな方法だがこれしか思い付かなかった。私は柊くんの下駄箱を開けて、ラブレターを入れた。まだ来てない。

教室に着いてからも渡しはずっと柊くんのことを考えていた。見てくれたかな。好きだったこと、気づいてたかな。私はずっとワクワクしていた。

 

 全てが終わって学校を卒業する日、私は柊くんに話しかけた。

 

「ねぇ、気づいた?」

「?なにがだ?」

 

気づいてない。伝わらなかったのかな。名前書いてなかったのが間違いだったかな?

 

「…なんでもない。ごめんね、帰りたいのに」

「…何かあったら言ってくれ」

 

私は柊くんのことを隅の方で思い出した。私は頭の中で柊くんの顔、口調、声、手、足までくまなく思い出した。私の目には暖かい水が垂れていた。涙だ。

 

「柊くん…」

 

 

 それから6年、やっと会えて嬉しかった。

 

「柊くん、思い出したよね」

「あのラブレター、胡桃だったんだな。」

 

私のことを思い出した柊くんは少し泣いていた。

 

「柊くん、泣かないで。」

「胡桃…ごめん…俺…」

「大丈夫だよ。柊くん、悪くないから」

 

悪かったのはあの三咲ってひと。あの人は柊くんを嫌い、恨んだ。柊くんの心に傷を負わせたのも三咲のせい。

 

「胡桃…俺…っ」

「柊くん…ハグ、する?」

「…っ」

 

柊くんは私とハグをした。柊くんは私の服に顔を埋めた。

 

「胡桃…胡桃、胡桃」

 

私の名前を連呼する。もしかして、あの事まで…?

 

あの事とは私がヤンキーに絡まれていたときのこと。柊くんが助けてくれた。

 

 私がヤンキーに絡まれていたとき、私は断ったことで叩かれ、殴られていた。そのときに柊くんはヤンキーを殴った。柊くん自信は壊れた機械のように止まっていた。

 

「柊くん…」

「胡桃、怪我は…」

「ない。」

 

柊くんは地面にうずくまった。私を助けられなかったと言って。

それを思い出した私は柊くんの頭を撫でた。灰色の黒寄りの色をした柊くんの髪は柔らかくて、サラサラしていた。流石柊くん。と感じたが、柊くんの気持ちは暗いんだろう。

 

「柊くん、今は今のこと考えて。大好きな人がいるんだから」

 

柊くんは泣き出した。けど悲しくて泣いてるんじゃないんだろう。

 

「胡桃、俺を励ますの得意だな」

「そう?私はいつでも一緒にいるよ?」

 

3が日は休みだけど、1月4日はみんな仕事に行く。けど、私は柊くんのことを待つために待つために大宮でいっつも待っている。

 

「じゃあ、胡桃、お願いがある」

 

柊くんは1つお願いを言った。私もドキッとしたことだった。その内容は、「2月になったら2人で暮らそう」だった。1月中はみんなと暮らすけど、2月からは別のところで暮らしたいと言ったのだ。

 

「うん!喜んで。」

 

私と柊くんの会話は家の話になった。どこら辺がいいだろう。とか、神保原の近くがいいねとか話は弾んだ。

結局は最寄り駅が深谷駅の新築一軒家になった。神保原にも近く、時間も大して変わらない駅だ。

 

「柊くん、P18戻らないと彩ちゃん心配するよ」

「それもそうか。分かった。」

 

私と柊くんはP18まで自転車で戻った。

 




1600から2100くらいで終わりますね。今のうちに区別しておくと、
1000~1599…短編小説・スペシャル編
1600~2100…通常小説・スペシャル編
2101~6000…長編小説
6000以上……映画風
一部例外もありますが、こんな感じです。
次回は思ったことやります。まだ決めてません。まぁ楽しいように作りますね。
それでは次回もお楽しみに!


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第58話 誘拐

第60話の長編小説ですが、第56話でやってるので次は第70話になる予定です。あと、今回は柊が主役です。
今回の登場人物
月島柊
月島かりな
月島彩夏
葉元胡桃
丸山彩
誘拐犯2人
以上7名


 

 P18に戻るとかりな、彩夏が自転車に乗って待っていた。彩だけがいない。

 

「彩は?」

「彩ちゃんだったら、さっきレイクサイドカフェ行ってくるとか言ってたよ」

「私たちも行く?かりなちゃん、彩夏ちゃん、行きたい?」

『行きたい!』

 

2人が元気よく返事をした。ってことは俺たちが前にでない方がいいな。妹2人が後ろの方がいいだろう。

 

「分かった。じゃあ前で走っててくれ。」

 

レイクサイドカフェまではP4で降りると1番近い。道はサイクリングセンターに戻る感じだから分かるだろう。

 

「じゃあ胡桃、行くぞ」

「うん。キャッ」

 

胡桃が後ろに落ちそうになる。俺は延長防護魔法で胡桃を救う。

 

「俺に捕まってな。」

「うん。柊くん暖かいから好き。」

 

もうこういう会話も慣れたもんだ。2人はもう先に行っている。

 

「行くぞ。せーのっ」

 

俺たちも動き出す。途中で彩夏たちの背中が見えて、道を確認する。みんなは行く間、楽しんでいた。朝で寒かったが、俺は元から暖かいし、胡桃はそれに抱きついているから暖かい。彩夏たちは彩夏が厚い上着を着ていて暖かいからかりなはそれに抱きついている。暖かいんだろう。

P4に近づくと、彩夏たちが駐輪場に入った。会ってることを確認し、俺たちも駐輪場に停める。

 

「あそこじゃない?お兄ちゃん」

「あぁ、あそこかもな。」

 

俺がレイクサイドカフェに向かい、席に近づくと、彩のバックだけが置かれて彩がいなかった。

 

「なんか取りに行ってるのかもな」

「うん。何持ってくるかなぁ」

「アイスとか!」

 

彩夏が手を挙げていった。俺はその手を下げながら言った。

 

「朝からかよ。どうせコーヒーとかだろ」

 

俺たちは席について待っている。1分、2分と時間だけが過ぎていく。

 

「1人じゃ持てないとか?」

 

時間がかかりすぎているのに違和感を覚えたのだろう。かりなが心配そうに言った。

 

「そうかもしれないな。彩夏と胡桃は残って、俺とかりなで行こうか」

「はーい」

 

俺とかりなは店が並んでいるところを全て見て回った。しかしどこにも彩の姿はない。

 

「彩の写真とかは」

「調べれば出るかも。アイドルだし」

 

かりなは彩の写真を調べる。写真が出て俺に見せる。しかしアイドルの衣装を着ている時のだけ。俺もフォルダから探す。そういえば、デートしたとき写真撮ったっけ。

 

「これとかは」

「いいんじゃない?それ見せよ!」

 

かりなの了承を得て、俺は店員さんに写真を見せた。

 

「この人来ませんでした?」

「来てないね。隣だったら来てるかもだけど」

「ありがとうございます」

 

俺は隣の店に同じことを聞いた。「来てない」と言われてまた隣、「来てない」と言われてまた隣の店に向かうの繰り返しだ。

 

「この人来ませんでした?」

「ん?えっと、薄茶色のバッグ持ってたかい?」

「はい!持ってます!」

 

これは来たか?と思いながら店員さんを見る。

 

「多分、この人かな。ちょっと待っててね」

 

俺はカメラの写真を見に行った。

少しして店員さんより先にかりなが来た。

 

「店員さんは?」

「今カメラ見に行ってる」

「お待たせしました」

 

店員さんが奥から戻ってくる。

 

「この人だよね」

 

俺は店員さんが持ってきた写真を見る。確かに彩だった。

 

「はい!そうです!どこ行きました?」

「誰かと一緒に勝田の方向行ったはずですよ」

「ありがとうございます!」

 

俺とかりなは胡桃と彩夏が座っているところへ向かう。誰かとってことは彩が危ないはずだ。

 

「胡桃、彩夏。彩が誰かと一緒に勝田向かったって」

「勝田駅?どうして…」

「分からない。でも危ないかもしれない」

 

緊迫とした空気が俺たちを包む。彩が誰かと一緒に行った。多分だが勝田駅にまだいるはずだ。まだそんなに時間が経ってないはず。

 

「行こう、俺に掴まって」

「え?けど急がないと」

「俺の出身校を忘れたか」

 

胡桃が分かったような顔をする。俺の出身校は魔法科高校。飛行魔法くらい使える。

 

「安心して。死なないようにするから」

 

みんなが俺の肩、手に掴まる。俺は魔法を唱える。

 

「マジックフライ」

 

俺の周りが緑色の光に包まれ、俺は50度ほどの角度で飛行する。速度は最高110km/h。今の速度は多分70km/hくらい。勝田駅まで大急ぎで行く。

 

「はやーい!」

「高いし怖いけど…」

「先に言っておくと、離すと落ちるからな。ちゃんと捕まってな」

 

俺はひたすら加速を続ける。彩…ごめん、ホテルに置いていって。俺が連れていけばこんなことにはならなかったのに。絶対救うから、絶対に死なないでくれよ。救ったらまた一緒に旅行しよう。みんなで遠くにでも。

そう思っている胡桃が背中から声を出した。

 

「柊くん!あのピンクの髪の人!」

 

俺は急減速する。止まって確認すると黒い髪の2人組に連れてかれている。間違いない、彩だ。

 

「彩だ。」

 

俺は地面にゆっくりと降りる。彩が下にいる。

 

「誰だ貴様!」

「俺は」

 

俺は彩を誘拐した男たちに力強く言った。

 

「月島柊だ」

 




次回は彩を救うだけで終わるので短編小説ですね。登場人物も今回と同じです。


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第1短編作品 第58話 救う

何も書くことないですが、短編作品は始めてですね。今回から整理としてできたので。


 俺が彩をこっちに寄せようとすると、誘拐犯は俺を蹴り飛ばす。腹を蹴られるくらい、中学の時に慣れている。今さら痛くも痒くもない。

 

「柊くんっ!」

 

胡桃が俺を助けようとする。俺は胡桃が助けるのを拒否した。

 

「大丈夫。」

 

俺は立ち上がって男を殴る。俺は彩を救うために来た。それ以外のためには来ていない。

 

「反省しておけ。バカどもが」

 

俺はまた飛行魔法を使って空に飛ぶ。俺は彩に謝った。

 

「ごめん、彩。俺が置いていかなければ」

「大丈夫だよ。もう平気だから。」

 

俺は国営ひたち海浜公園に向かいながら彩と話していた。

 

「俺、彩を置いていかないようにするよ。絶対に」

「そうしてくれるとありがたいな」

 

俺は国営ひたち海浜公園のP18に連れていった。彩は自転車で行くため俺は魔法で彩の横をゆっくり飛んだ。

 

「あれ、なんかからだが軽い…」

「よし、体が覚えたらしいな。俺から離れてみろ」

 

胡桃が俺の体から離れていく。しかし胡桃はちゃんと速度を合わせて飛んでいた。

 

「私…飛んでる!」

「胡桃も魔法科高校卒だから使えたんだよ。彩夏とかりなも魔法使えるように頑張ってな。」

「うん!頑張る!」

「彩ちゃんは途中入学だっけ」

 

彩はもともと花咲川女子学園で、途中から鹿島田魔法科高校に入学してきた。だから魔法は少しだけ使えるんだ。

 

「途中だね。柊くんが先輩なんだ、実績的には」

「確かにそうだな。けど、魔法使えるから同等だろ」

 

 

 俺は彩の自転車に速度を合わせて、彩夏とかりなを乗せて飛行する。俺は彩と少し話していたが、ちょっと話が脱線してしまうところがあった。

 

「あっ、P4着いたよ」

「オッケー。胡桃、下りれるか」

「えっと、イメージ…」

 

胡桃は目を閉じて地面に下りた。ちゃんと下りれるほどの能力を持っていたのだ。

 

「よくやった。さて、じゃあサイクリング再開しようか」

「待って、私、レイクサイドカフェで何も買ってないから、みんなで食べよ?朝ごはんまだでしょ?」

 

確かにまだだった。しかもずっと起きてるからなおさらお腹が減っている気がする。

 

「いいのか、だったらもっといいところを知ってるぞ」

「ふふっ、分かってる。あそこよね。じゃあ、行こっか。」

 

俺たちは自転車でP20に向かった。ここにはみはらしの丘があるが、その横にある屋台エリアはいろんな食べ物がある。ここは結構前に来たことがあったから知っていた。全員が自転車に乗って、魔法は一切使わない。前が俺たち、胡桃と俺だった。1番安全だから。

 




1000ジャストです。


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第59話 帰宅

今回は通常小説ですね。特に面白いところは、あるっちゃある。最後のほうだったと思う。
今回の登場人物
月島柊
月島かりな
月島彩夏
葉元胡桃
丸山彩
ナナニジメンバー11名
佐々木碧
以上17名


 俺はP20を目指して自転車を漕いだ。俺の後ろは彩夏とかりな、1番後ろが彩だった。今の時間は多分7:40位だと思う。朝食にしては遅い時間だ。

P20に着いたときには8:15を過ぎていた。もう食べないと限界だな。そうしていると、かりなが俺の背中に乗ってきた。

 

「お腹空いた…おぶって…」

「かりな?少しは我慢しろよ」

「無理ぃ」

 

かりなは俺の肩に顔を乗せる。耳がすごく近い。

 

「あそこだよね」

「あぁ、そうだ」

 

俺はかりなを肩に乗せてるから走らずに少し遅れて向かった。先に注文してるかな。俺が席につくと、他の席にも何人か座ってきた。団体客のように11人まとめて座ったところもある。

 

「お兄ちゃん、焼きそば」

 

かりなが背中から言った。朝からかよ、とつっこみそうだったが、今は食えればいい。

 

「焼きそばだけでいいか。昼は予定だと小山とかで食うけど

「大丈夫。食べよ!」

 

彩夏が言った。

一方の彩と胡桃は別のテーブルでだらんとしていた。彩は疲れたし、胡桃も俺に付き合ってて疲れただろう。

 

「マネージャー」

「ふえっ!?」

 

俺は焦って椅子から転げ落ちた。俺の上からあかねが俺を覗き込んでいた。

 

「どうしたんですか。私たちはあそこにいるんですが」

 

あかねが指差す方向には11人の団体客みたいな人たちが座ってたテーブル。ナナニジメンバーだったのだ。

 

「あ、そうだったのか…」

「一緒に食べます?」

「いや、少し話して終わりにしよう」

 

俺は立ち上がってナナニジのところに向かった。あーやが俺の前から抱きつく。

 

「おう、あーや。みんな、お疲れ様」

「ありがと!」

 

俺は立ったまま言った。

 

「今度はしばらく休みだから、ゆっくり休んでくれ。」

「うん。分かった。柊くんも無理しないでね」

「あぁ。分かった」

 

俺は自分達のテーブルに戻る。みんなが焼きそばのふたを開けて食べていた。

 

「予定だと、勝田10:12発上野行きだからな」

「分かった。柊くんも食べな?」

 

俺もみんなと同じようにして食べる。

 

 予定通り10:12発上野行きに乗車できた。小山経由じゃなくなったけど、問題ない。昼ごはんは時間があまりなかった。

4人掛けボックスシートに5人が座る。どっちかに3人が座ることになるんだが、俺が3人座る方に俺は座った。両隣は胡桃がよかったが、じゃんけんの結果妹2人になった。

 

「おっ、柊、モテモテだね」

「あっ!佐々木先輩!ってか俺結婚してるし。その人と」

「あ、そうなのか」

 

すると胡桃が思い出したように言った。

 

「そういえば、佐々木さん、私たちの結婚式来てくれませんか?」

 

そうだった。結婚式に家族12人は来るし、彩も来るから少なくとも13人は来る。しかし30人入れるところに13人は少ない気がしてた。

 

「ん?結婚式か?いいけど、いつ」

「1月7日なんですけど…」

 

胡桃が佐々木先輩に聞く。空いてたら来てほしいな。

 

「1月7日か。空いてるぞ。行ってもいいけど、どこでやるんだ」

「熊谷で。」

 

佐々木先輩だったら電車で来るんだろうな。電車好きだし。俺は佐々木先輩を誘ったあと、佐々木先輩と話していた。

 

「俺の嫁も連れてっていいかな」

「え?結婚してたんすか?」

「あぁ。えっと、3年…いや、4年前か」

「そうだったんですね。もちろんいいですよ」

 

俺は佐々木先輩に許可した。言い方がどうかと思うけど、語彙力ないからしょうがない。俺も国語苦手だったし、国語が得意なの胡桃くらいじゃないか?俺は理数系と音楽だし、彩は社会だし、1番語彙力あるの胡桃だろう。彩夏は…なんか国語と社会ハマってきてるし、かりなは理科だ。数学は難しいから分かるけど、文字もそうだが、分かれば簡単なんだ。

 

「かりな、勉強しようか」

「数学?」

「そう。じゃあまずこの問題」

 

少し学習が遅れてるから挽回しないとだ。最初の問題は

5x×4

この問題を解かせる。

 

「えっと、(5×4)xってことだから、20x?」

「正解。じゃあ、この式をまとめてなんて言う?」

 

答えはもちろん一次式。一次の項と数だけの項でできてるから。ちなみに彩夏も遅れてるが、彩夏は雑学まで行っている。

 

「彩夏、最大公約数って覚えてるか」

「公約数の中で1番大きい数だよね」

「そう。それで、素因数分解を今からやるからね。」

 

 

 佐々木先輩が横で聞きながら、1時間にわたる勉強は幕を閉じた。佐々木先輩も大宮までは一緒に来てくれることになった。上野駅から始発に乗れるから。12:21、上野に着くと、15番線からの高崎行きに乗った。ここから神保原まで帰る。お昼は食べていない。

 

 大宮で佐々木先輩が降りて、家に着いた俺たちは、胡桃と俺はゲーム部屋に、彩は料理、彩夏とかりなはリビングで暖まっていた。胡桃は音ゲーの成績あげ、俺はそれを見守っていた。

 

「458200!」

「あと50000だ。頑張れ!」

 

胡桃が目指すスコアは500000。俺に追い付きたいのだ。胡桃もgreat判定は減ってきた。しかし、狙うがばかりに、missやbadが増えている。休んだらなおるかもだけど、胡桃は熱心で俺に止められる気は無さそうだった。




少し疲れてきたので更新頻度落ちるかも。まぁ、失踪はしないのでご安心を。
次回はまた音ゲーです。結婚式もあと少しですね。


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第60話 ご褒美

今回のエッチな部分は最後だけです。今回の長編作品は56話に移動になったので無しになりました。次回の長編作品はスペシャル編を1回挟んだ70話を予定しています。休日の更新頻度が極端に高いのは気にしないでね。
あと、今回から登場人物のところに(主)とかかれている人は、主役を意味します。こっちのほうが分かりやすいと思いまして。それでは今回の登場人物を挟んで本編へどうぞ。
今回の登場人物
月島柊(主)
月島かりな
月島彩夏
葉元胡桃(主)
丸山彩
以上5名


 今日は1月1日。結婚式まであと6日だ。俺と胡桃は少し寒いゲーム部屋でずっとゲームしていた。昼御飯になったら彩が教えに来てくれるだろうと思い、止める気はなかった。胡桃もついにヘッドホンまでしてやり始めた。俺には何も聞こえないから、俺だけで胡桃のスコアを記入していた。それぞれ

1回目が428210、2回目が443220、3回目が458200、4回目が448310、5回目が458500、6回目が468520、7回目が458710、8回目が469320、9回目が478210。そして今から10回目だ。目標は500000。最高値は478210。最低値は428210。平均は456800。10回目のスコアがどれだけかだった。

胡桃が10回目のリザルトを出すと、スコアは498210。平均は460941。

 

「柊くん、休んでいい?」

「あぁ。休め。」

 

胡桃は俺の膝に頭を乗せて横になった。胡桃の手は赤く、コントをどれだけ握ってたかが分かる。

 

「胡桃、コツ教えようか」

「うん。教えて」

 

コント系の音ゲーは親指の器用さが求められる。だからずっと最難関をやっていると飽きてきて、13回目辺りからスコアが落ちてくる。だから簡単な曲をやったり、休んだりするんだ。俺もスコアが落ち始めたら休むようにしている。

 

「たまに休む。それだけ。あとは慣れる」

「うん。だったら休むときには柊くんの膝の上だ」

 

胡桃は俺の膝を撫でた。そして胡桃は自分の頭の下に手を合わせて置いた。

 

「柊くん♪」

「胡桃、500000出せそう?」

「出せそう。柊くんがいれば」

 

胡桃は俺の膝の上で10分くらい横になっていた。やがて胡桃がゲームを再開した。11回目のスコアは498270。あと10000もいかないで500000に到達する。

 

「胡桃、次だ」

 

胡桃は同じ曲をやり始める。スコアは段々と上がってきている。これで…

12回目のスコアは――俺は思わずペンを落とした。スコアが衝撃的だったのだ。

 

「548250…」

「54万!?」

 

俺は信じられず、リザルトを二度見した。しかし、本当に548250と書かれていた。

 

「柊くん…やったよ、私」

「あぁ。よかったな!」

「あの、柊くん、その、私ね、あの…ご褒美みたいなのが、欲しくて…」

 

ご褒美か。確かに頑張ったからな。

 

「いいよ。なにが欲しい」

「欲しいっていうか、したいっていうか…」

 

したい?なにか俺としたいことでもあるのか?

 

「内容は」

「お風呂…一緒に入ったことないから、入りたい…」

 

お風呂か。それくらいだったら。

 

「いいぞ。じゃあ時間になったら呼んでくれ。」

「うん!って、柊くん何かするの?」

「あぁ。」

 

俺は胡桃と一緒に居間に向かった。途中通る廊下は寒く、床がかなり冷たかった。居間には、彩夏とかりながストーブの近くで寝ていて、彩が昼ごはんの準備をしていた。彩夏とかりなは両者共に抱きついて寝ていて、仲の良さが伝わってくる。

 

「お昼だよ。夕飯いる?」

 

彩がキッチンからこっちに歩いてきた。

 

「要らないんじゃないか。もう16時過ぎてるし」

 

今は16:15。もう夕飯を食べても遅い気がした。

 

「分かった。ね、妹さん起こしてあげて」

「分かった」

 

俺は彩夏とかりなを揺らして起こす。

 

「彩夏、かりな。起きろ」

「ん?お兄ちゃん?ごはん?」

 

寝ぼけてるな。まぁどうせ寝ていても関係ないけど。

 

「あぁ。そうだよ。早く起きろ」

「うん…お兄ちゃん」

 

ちゅぷっ

かりなが俺の指を咥えてきた。かりなは口の中で俺の指を舐めまわす。

 

「かりな、寝ぼけるな。これご飯じゃないぞ」

「んん?っ!//」

 

気付いたそうだな。

 

「ごっ、ごめん!お兄ちゃん!」

「いいけど、かりながしてくるとはな」

 

指フェチは彩夏だと思ってたんだけど。彩夏はよく舐めてくるし。

 

「お兄ちゃん…嬉しかった…?」

「まぁまぁ?」

 

かりなは恥ずかしくなりながら椅子に座った。彩夏は先に座ってたけど。

位置は俺がリビング側の左側、そのとなりに胡桃、俺の向かい側にかりな、胡桃の向かい側に彩夏、先端に彩が座った。日によって場所は変わるけど、今日はこうだった。

 

「いただきます」

 

16:27だった。

 

 19:50。そろそろ胡桃呼んでくるかな。お風呂に入る約束をした俺は胡桃が呼びに来るまで待っていた。20:05、胡桃が呼びに来たが、姿は上半身裸、下半身はパンツだけ履いている姿で来た。

 

「胡桃!?なんで裸で…」

「面倒だったから。脱いじゃって」

 

俺はゆっくり胡桃についていった。胡桃は下にもパンツしか履いていなくて、胡桃がいつも以上に色っぽく見えた。

 

「どうしたの?柊くん」

「あぁ、いや…」

 

女の人が感じる男の人の視線は絶対分かるって本当だったのか。いや、そんなはず…

 

「まぁいいや。見られても良いとこしか見せてないし」

 

胸は明らかに見られちゃいけないところだと思うんですが?

 

「は、はぁ…」

 

呆れたようなため息をついた。お風呂に着くと俺は胡桃を外に待たせて_のパンツ以外を脱いだ。男性だったら上は見られていいだろ。俺もあんまり見せないけど。

 

「柊くん、入っていい?」

 

エコーがかかったような声でドアの向こうから胡桃の声が聞こえた。

 

「あぁ。俺がそっち出ようか」

「分かった」

 

どっちからしてもエコーがかかってるんだろう。俺はドアを開けて胡桃のところへ行った。胡桃はドアの左側にいた。

 

「柊くんの上半身が裸なの初めて見た…」

「あぁ、そういえばそうか。」

 

胡桃は俺の胸と腹をゆっくり触った。

 

「意外と固い…」

 

胡桃は俺を抱く。胡桃の胸が俺の腹と胸の中間あたりに当たった。むにゅっと胡桃の胸が俺の体で潰れている。俺は気付いていない振りをしてその場をしのいだ。

to be continued…




次回61話はスペシャル編か通常編か悩んでいます。スペシャル編だと胡桃視点、通常編だとこの続きになります。どっちがいいですかね。


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第62話 お風呂

結局同時に投稿することにしました。
今回の登場人物
月島柊(主)
月島かりな
月島彩夏
葉元胡桃(主)
丸山彩


 風呂の中に入った俺は胡桃の少し後ろで髪を洗っていた。胡桃が髪を洗うのは見えなかったが、俺が先に風呂に入っていた。

 

「柊くん、入るからね」

 

胡桃も入ってくると、中は窮屈になった。俺の足が胡桃の柔らかいところに当たっていたり、胡桃の足も俺の下にあったりして窮屈さが伝わってくる。あれ、足に当たってるのって、まさか…俺は体勢を変えようとする。

 

「体勢直そうか」

 

俺が動くと胡桃がバランスを崩す。俺は諦めて上がることにするが、胡桃も同時に上がっていた。上がった先で胡桃の足に俺が引っ掛かって、俺は胡桃を押し倒していた。

 

「胡桃…」

 

俺は押し倒していた胡桃の髪を触る。体重が全て左手にかかるがあんまり力は入れていなかった。

 

「髪長いんだな」

「うぅ…恥ずかしいよ…っていうか、まだ髪洗ってない…」

 

洗ってないのに入ったのか。

 

「じゃあ今から洗おうか」

「うん!」

 

俺が立ち上がって、胡桃はシャワーのところに向かう。俺はシャンプーを手に取り、胡桃の濡れた髪を洗う。

 

「胡桃、床に髪付くんだな」

「髪長くて…あんまり切りたくないのもあって」

 

切りたくないか。無理に切る必要はないな。俺は下の方から髪を洗っていった。

 

「なんか髪触られてるの感触違う」

「そうか?まぁ俺も長いんだけどね」

 

俺だって髪は男にしては長い。よくフサフサしてるとか言われるけど、俺からすればこれが普通だった。

 

「ねぇ、柊くんがDカップくらいが好きってホントなの?」

「あぁ、ホントだぞ」

 

俺は勢いで答えてしまっていた。え?Dカップ!?ってかなんで知ってるの?言ったのは…彩か…ばらしたな。もう言い逃れ出来ないか。

 

「でかいのは俺嫌いだから。小さすぎのも嫌だけど」

「私、ちっちゃくないの?」

 

こんな質問にまともに答える俺もバカだと思うけど、もういいか。

 

「AとかBだろ、小さいって。CとかD辺りだな」

「柊くん…」

 

俺は髪を洗い終わった。流すのにも時間がかかるから、これで上がるのが遅いんだろう。

 

「じゃあ出るか」

 

俺と胡桃が風呂場から脱衣所に行くと、胡桃はもう髪を結び始めた。

 

「もう結んじゃうのか。乾かなくないか」

「可愛くないから。」

 

俺は全裸の胡桃を抱き締めた。

 

「そんなことない。ほどいてる方が俺は好きだ」

「柊くん…分かった。」

 

胡桃は結ぶのを辞めた。

 

「柊くん、替えの着替えあるの?」

「俺はもう置いてあるけど。まさか」

 

俺は着替えのところを見た。俺のしかない。

 

「胡桃、ないのか」

「うん…忘れちゃって」

 

マジかよ。寒いのに胡桃裸で行くのか?凍え死ぬぞ。

 

「俺に抱きついてて」

 

俺は着替えてから胡桃を抱いた。この時間に居間には誰もいないはずだ。俺は胡桃を抱いたまま居間に入った。

 

「あれか」

 

俺は胡桃を誰からも見えないところに止めて、パジャマを取った。

 

「ほら、着替えろ」

「うん」

 

胡桃が下からパジャマを着る。といっても胡桃はいつも下はスカートだから時間かからないんだけど。

 

「キャッ」

 

胡桃がスカートに引っ掛かり、長い髪をなびかせて俺の方に倒れてきた。俺は胡桃を抱え止める。

 

「胡桃、だいじょう――」

 

胡桃は俺にキスしてきた。

 

「ん!?おっ、おい!胡桃!何してるんだ」

「柊くん…かりなちゃんがしてたことしていい?」

 

かりながしてたこと?何かしてたっけ。

 

「かりなが何してた」

「ゆ、び」

 

胡桃がゆっくり間を空けて言った。指?かりなが指…あっ、そういえば、かりな、指咥えてたっけ。俺が思い出していると、胡桃はもう俺の右人差し指をぱくっと咥えた。

 

「胡桃?この事か」

「そ。」

 

胡桃は俺の手首を掴み、右人差し指を咥えて舐め始める。

 

「私と1つになるの…」

 

胡桃は俺に見えないように唇を指に密着させて、そのなかで俺の指を舐めていた。

 

「ん、柊くんの指…」

「胡桃、あんまり舐められても困るからあと1分」

「うん。」

 

したいのは分かるけどこっちも大好きな訳じゃない。俺は1分で辞めるように言った。

 

「んはぁっ」

「1分経ったな」

 

声をどうにかして欲しいのは俺だけだか?俺は胡桃から解放され、夜の和室に向かった。和室は長い廊下を通って行く。彩夏の部屋が横にあり、俺は少し寄っていった。

 

「彩夏、今――」

 

彩夏は1人でパンツだけになっていて、股に手を当てている。慰めてたの?

 

「彩夏?なんでしてるの」

「だって…お兄ちゃん最近胡桃ちゃんとか彩ちゃんとかかりなちゃんとばっかり接してるから…」

 

胡桃とは結婚相手だからともかく、彩夏ともなるべく話したりするようにはしてるけど、どうしても片寄ってしまう。

 

「彩夏、おいで」

「お兄ちゃん…またかりなちゃんのところ行くんでしょ?」

「本当は今から和室行くつもりだった。」

 

和室には誰もいない。というか和室だけは利用時間が決まってる。俺は20:00~21:30の1時間半。それ以外は入れない。

 

「かりなちゃんは」

「まだいい。早くおいで」

 

彩夏はゆっくり歩いてきた。すると、後ろから彩が部屋のなかに飛び込んできた。

 

「柊くん!って、あれ?」

「彩…踏むな…」

「わっ、彩ちゃん」

 

彩は俺から退く。踏まれると俺でも痛いんだよなぁ。

 

「柊くん、彩夏ちゃんとなにするの?」

「え?いや、ただ寄せようとしただけだけど」

 

彩は俺の前に立って言った。

 

「柊くん、彩夏ちゃんと終わったらこっち来て。2階の私の部屋いるから」

 

 




次回の63話どうしようかな。まだ決めてないけど、続きにするかなぁ。


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スペシャル編3話 胡桃

今回の登場人物
葉元胡桃(主)
丸山彩(主)
月島柊(主)


 私が50万越えを達成したあと、私は柊くんに、一緒にお風呂に入るようにお願いした。そして私は2階の自分の部屋で横になっていた。柊くんより先に行かないとなんだよね。じゃああと少し。作戦は…

 

(色仕掛けしたいなぁ、なにがあるかな)

「胡桃ちゃん」

 

私の部屋に入ってきたのは彩ちゃんだった。彩ちゃんだったらアイドルもあるから色仕掛けとか分かるかな。私は彩ちゃんに色仕掛けを聞いた。

 

「彩ちゃん、色仕掛けって何あるかな」

「色仕掛け?そうね…裸だったら出来るかな」

 

はっ、裸!?私、そんなに色っぽい体してないし、胸も、ちっちゃいし…

 

「そうだ、胡桃ちゃん、バスト測ってみよ?」

「バスト?いいけど、ちっちゃいよ?」

「いいからっ!上脱いで。」

 

私は上半身の上着、服、ブラジャーを外して、胸をさらけ出した。

 

「うぅっ、恥ずかしいよ、いくら女の子同士だからって…」

「いいじゃんいいじゃん、測るからね」

 

私は彩ちゃんが持ってきたメジャーで胸が締め付けられる。乳首の先端にメジャーが置かれて、彩ちゃんは測った。少しはあるから乳首を中心にメジャーを胸が少し囲むようだった。

 

「えっと、トップとアンダーの差が17,5cmだから、Dカップね」

「Dって、おっきい?」

「普通じゃない?あと、ここだけの話…」

 

彩ちゃんが私の耳に口を近付けた。

 

「柊くんね、巨乳ってあんまり好きじゃないの」

 

小声で彩ちゃんが言った。私も小声になっちゃう。

 

「本当に?小さい方がいいの?」

「Aとかは反応薄いけど、CとかD辺りだと好きっぽいよ」

 

ってことは、私のDカップって柊くんの好きなサイズ?

 

「だから、柊くんを色仕掛けするんだったら裸が1番ね」

 

なんか恥ずかしくなくなってきた。Dカップが好き。私を好きだったんだ。

 

「ありがと、彩ちゃん」

「いつでも呼んでね」

 

私は裸で行ったときの言い訳を考えた。暑かったから?今は寒いからそれはないよね。1回間違って脱いじゃった?間違ってが怪しいかな。1回脱いじゃったから?これが1番いいかも。私は下に降りて脱衣所で裸になろうとする。しかし上はともかく、下は…脱いじゃったら恥ずかしすぎちゃうな。私はパンツだけを残して脱衣所から出た。寒いけど柊くんのためだ。成功するかな。

 

「胡桃!?なんで裸で…」

「面倒だったから。脱いじゃって」

 

言い訳も少し変わっちゃったけど大丈夫だった。

 

 柊くんも上半身を脱いで出てきた。男の人の体だった。私は柊くんの胸とお腹を触った。固くて男の人っぽかった。

 

 私は脱衣所でパンツを脱ごうとした。

 

「ホントに入るのか」

 

柊くんが聞いてきた。ここまで来たら入るしかない。

 

「うん。入るけど…」

 

私のパンツは少し濡れていた。脱ごうとして少しパンツが離れると線のようなものがパンツと股にくっついていた。

 

「胡桃、下も脱がないとだ。我慢しよう」

 

柊くんも脱いだから、私も脱ぐ。パンツの股に当たっていた部分は湿っていた。

 

「柊くん…恥ずかしいよ…」

「俺もだよ。けど、洗えないから」

 

私と柊くんはお風呂の中にはいった。同時にシャンプーと体を洗って、お風呂の中に入る。

 

「うぅ…狭い…」

 

2人が入るともう動けないほどだった。柊くんの足が私の股に、私の足は柊くんの股の下にあった。

 

「体勢直そうか」

 

柊くんが動き出すと私の股が柊くんの足で持ち上げられた。

 

「んっ」

 

私は声が漏れてしまう。そして柊くんも気付いたのか外に出ようとした。私も重なってしまったせいか、柊くんは私を押し倒した。

 

「胡桃…」

 

柊くんは濡れた私の髪を触る。私の髪は普段ポニーテールにしていて、短く感じている人もいるが、実際にほどくとお尻の辺りまで髪が伸びてる。

 

「髪、長いんだね」

 




この後は第62話で見てね!


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第63話 かりな 1日目


今回はかりながどこかへ行ってしまいます。結婚式はどうなる!?
今回の登場人物
月島柊(主)
月島かりな(主)
月島彩夏(主)
葉元胡桃
丸山彩
以上5名


 俺は彩が出ていったのを確認して、彩夏のことを見た。彩夏の下からは液が垂れている。フローリングの床に水が少しこぼれている。

 

「彩夏、結構したな」

「うぅ…でちゃってるぅ…お兄ちゃん、おしゃえてぇ」

 

押さえてと言おうとしたんだろう。恥ずかしくてかまともに話せていない。

 

「自分で押さえろ。あと、7日の結婚式、5日に彩夏たちの休み取ってくるから、待ってて」

「お兄ちゃん、ハグ。」

 

俺は帰り際に彩夏を抱いた。そして持ち上げる。彩夏が5歳くらいの時(俺が17歳の時)はこうして幼稚園で持ち上げていた。

 

【追憶】

 

 たまに俺が彩夏が通っている幼稚園の迎えに行く日があったが、たまにと言っても高校があるから休みの日だけだった。

 

「彩夏、帰るぞー」

「おにいちゃん!ぎゅーっ」

 

この頃の彩夏は俺に飛び込んでくるような積極的な子だった。今もあんまり変わらないけど。

 

「おにいちゃん、あのね、きょうおとこのこにたたかれて…」

「……誰だい、その子は」

「おんなじへやのげんきなこ」

 

当時の彩夏は可愛くて、積極的だったが、いじめられっ子でもあって、俺は毎回助けていた。

 

「戻るからな、今から」

 

このときの俺は彩夏がいじめられているのが許せなかった。彩夏みたいなかわいい子がいじめられる。こういうのが俺は許せなかった。

 

「ひよこ組に彩夏をいじめた人がいるって聞いたんですが」

 

俺だっていじめられてるが、何も感じなかった。

 

「あぁ、また亜野田君ですか。こっちから注意しておきますね」

「お願いします」

 

俺は彩夏が妹として見ていた。かりなのことをこのときはしっかり見ていなかったと、今になって後悔する。このとき、かりなは俺がいるのにも関わらず、待機クラスに預けていた。

 

「彩夏、行くよ」

「うん!」

 

こう考えたら、かりなはどう思ってるんだろう。

 

【現在】

 

 俺は急に胸が苦しくなった。心臓が急に締め付けられて、縛られている感じだった。

かりな かりな かりな

俺はかりなの名前を心のなかで呼び続けた。どう思ってるんだ。かりなは。

 

「お兄ちゃん、かりなちゃん…」

「分かってる。」

 

一瞬でも別のことを考えると苦しさはなくなるが、またすぐに苦しくなる。やめてくれ、神様。頼むから、俺を苦しくしないでくれ。そう願っても俺の心臓は締め付けられる。そして俺は彩夏の部屋で倒れた。倒れても俺は自分の心臓部を握っていた。服の左胸付近を強く握った。

 

ちゃ

 

俺の頭のなかでかりなの「見捨てないで」といった声が聞こえてくる。これによって彩夏が言った言葉は打ち消される。

 

「かりな…」

 

見捨ててなんかいない。ただ、俺は幼稚園でかりなを忘れてただけで。

 

 かりな、幼稚園の頃は、少し忘れてただけで、ごめん。見捨ててないんだ。分からなくて

 

(嘘だよ。本当はどうでもよかった。)

 

そんなことない。本当に、見捨ててなんか…

 

(分かってるんだよ。お兄ちゃんが私を放っておいたこと)

 

放っておいたって、かりな。分かった。俺が悪かった。だから、お兄ちゃんを許してくれ

 

(いいけど、お兄ちゃん。私、もう信頼できない)

 

信頼…

 

(お兄ちゃん、じゃあね)

 

かりな、行かないでくれ。頼むから、かりな、かりな!

かりなが俺の視界から消えていく。霧がかかって薄いと思うと、もういなかった。

 

「っ!」

 

俺は目を開けた。俺は彩夏のベットに寝ていた。横には彩夏、胡桃、彩が寄り添ってくれていた。

 

「柊くん、ひどくうなされてたけど、大丈夫?」

「あぁ、ごめん…」

「なんか悪い夢でも見た?」

「彩…なにも、見てない…」

 

嘘だった。悪い夢しか見ていない。

今の時刻は夜中の2:10。みんなは寝てる時間なのに、俺のために来てくれている。いないのはかりなだけ。まさか、夢じゃなくて、本当に…

俺は1人で立ち上がった。

 

「柊くん!無理しないで!」

 

俺は制止を振り切り、玄関に走った。靴は外に出てるはずだ。かりなの靴は、なにも外に出てなかった。もっと言うと、かりなが脱ぎ捨てた靴が車の前にあった。

 

「かりな…」

 

俺は裸足のまま外に出た。痛みなんて感じなかった。

 

「柊くん!」

 

叫ぶ声も今の俺には関係なかった。みんな、かりなの事は忘れてなかったのに、俺だけ忘れていた。

 

ごめん

かりな

俺が

ダメ

だったから。

俺が

いなければ

君は

困らなかった

のに

ごめん

 

俺は道に出たところで転んだ。立つ力すらなく、俺は地面にへばり付くようにずっといた。ここの道をかりなは通ったのか。だったら、俺だだってここを通りたい。だけど。

 

(いいか、柊。家族が倒れたら、お前が助けるんだ。例え柊が転んでも、立ち上がって、助けるんだ。じいちゃんとの約束だ)

 

じいちゃんの言葉を思い出した。俺が助ける。転んでも立ち上がる。俺は残っていた力を全て立ち上がるために使った。話さず、無心で、足以外は動かさずに、俺は前に進んだ。1歩、2歩、3歩と俺は1歩づつ歩く。俺は坂の上の、かりながいつも1人でいた場所に向かった。普段だったら3分で着くが、今日だけは倍以上にかかりそうだった。

 



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第64話 かりな 2日目

今回はかりなが行方不明になった続きです。直感で書いてますが面白いかな。
今回の登場人物
月島柊(主)
月島かりな(主)


 俺は裸足のまま畑の横にある坂道を上った。かりなと俺が2人でいつもいた場所はこの坂を上った右側にある。

 

【追憶】

 

 かりなと俺はいつもここに来ていた。なにか困ったり、悩んだりするとここで話したり、2人きりで話したいことも全部ここで話していた。

 

「それでね、今日彩夏ちゃんが――」

 

懐かしいな。このときはまだ神保原に来たばっかりの頃か。いつもこういう風に話していて、楽しかった。

 

「そうそう!やっぱり――」

 

2人で草むらに寝転がったりして、かりなはこれを楽しみにしていた。

 

「お兄ちゃん、聞いてる?」

 

少し疑われても笑って返す。いつもそうで、かりなも笑っていた。

 

「お兄ちゃん、好き」

 

よく好きだなんて言ってた。俺も妹だから嬉しかった。そんなかりなが、1人で行くなんて。

 

【現在】

 

 「くっそ…」

 

足の痛みが伝わってくる。多分傷だらけなんだろう。でも、下を向くんだったら前を見た方がいい。俺はゆっくりと坂を上がっていく。

坂を上がり終わると、俺はいつも2人でいるところを見た。かりなは

 

「かりな…かりな!」

 

俺はかりなの名前を叫ぶ。かりなからの返事はない。俺は力尽きて地面に音を立てて倒れる。これで俺はすべての力を出し切ったのだ。誰かがかりなを見つけてくれればそれでいい。

 

【月島かりな視点】

 

 「かりな…かりな!

 

小さく、遠くからお兄ちゃんの声がする。私がいる場所はいつもお兄ちゃんと一緒に来ているところで、お兄ちゃんが来るのを待っていた。声の方向に私は後ろを振り返る。振り向いても誰もいない。木しかない。

バタン

倒れる音が横からする。私は横に向かって走った。お兄ちゃんの声、倒れる音。まさかだけど、お兄ちゃんが私を探してくれてた?じゃあ、倒れる音って…

横にある道にはお兄ちゃんが倒れていた。外は真っ暗で、気付きづらかった。私はお兄ちゃんの首もとに手を当てる。まだ脈はある。生きてる。

 

「お兄ちゃん!起きてよ!ねぇっ!」

 

お兄ちゃんに聞こえるほどの大声で叫んだ。車で彩ちゃん、胡桃ちゃん、彩夏ちゃんが乗ってきた。

 

「お兄ちゃんが!」

 

全員が降りてきてお兄ちゃんを触る。

 

「連れていこ。家だったらどうにか出きるかも」

「分かった。彩夏ちゃん肩持って」

 

私はふくらはぎを持つ。裸足で足は傷だらけだった。傷だらけどころか、裏には血が流れ出ている。

 

「後ろに乗せよ。私と彩夏ちゃんの膝に乗せる」

「分かった。行くよ」

 

せーのっの掛け声でお兄ちゃんを持ち上げる。落ちないように膝に乗せたあと、手で押さえる。

 

「お兄ちゃん、生きててね」

「かりなちゃん、どうして1人で出たの」

「お兄ちゃんが来ると思って」

 

半分はそうだけど、本来の目的は違う。私は…

 

 家に着くとすぐに足を洗った。血が流れて、足から垂れる。水も赤くなった。

 

「うぅっ…」

「お兄ちゃん!」

 

お兄ちゃんが声を出した。そして目を開けた。

 

「かりな?いたのか…」

「ごめんね、私が気付かなくて…」

「大丈夫…いっ」

 

お兄ちゃんが目を強く閉じ、歯を食い縛った。

 

「痛い?」

「あぁ、裸足で出ていったからか…」

 

お兄ちゃんの足を水洗いしたのを確認し、私はお兄ちゃんの傷だらけの足に口を近付けて、舐めようとする。

 

「かりなちゃん、舐めたらバイ菌が入って悪化しちゃうよ!」

「ならない。なったら私が責任取る」

 

私はならない自信があった。理由は…

 

           ◇

 

 私はお兄ちゃんが来ることを信じて、お兄ちゃんから前に教えてもらった魔法を試した。攻撃的な魔法ではなく、きれいな魔法。花火みたいにピンクとか光る火花、いろんな色に光るライト、1番の見せ所は治癒魔法だった。これで私やお兄ちゃんが傷ついても治せるから。治癒魔法まで成功しても、お兄ちゃんは来ない。いつ来るんだろう。私は魔法で出したライトを横に置き、周囲を明るく照らした。

 

           ◇

 

 治癒魔法は自分でしか試してないけど、血液型も同じ、血も繋がってるからいけるはず。私は口から小さく舌を出す。

 

「かりな、責任取るのか」

「うん。絶対」

「柊くん、本当にいいの、悪化したら」

 

お兄ちゃんは少し間を空けて言った。

 

かりなの事だから、信じる

 

お兄ちゃんは誰も見ずに、彩ちゃんと胡桃ちゃんに持たれているまま上を見て言った。

 

妹を信じない兄がどこにいる。俺はそんな奴がいたら許さない。

 

お兄ちゃんは私に許可した。

 

「かりな、いいよ」

 

私は魔法を込めてお兄ちゃんの足を舐める。かかとから爪先まで舐めた。そして中指辺りまでを私の口のなかに入れる。咥えた上で舐めた。爪先の傷がひどかったから。

 

「ん」

 

私は爪先を舐めたあと、足の表側も舐めた。そんなに傷はないけど、一応だった。

 

「すごい…治ってる…」

 

一瞬の間光り、その後に見えたのは傷が消えたお兄ちゃんの足だった。私が目を離すと、お兄ちゃんの口元から血が出ているのに気付く。

 

「お兄ちゃん、顔にも傷ある…」

 

私はお兄ちゃんの顔も舐める。あんまり、というかキスしたことは私はない。彼氏もいないし、付き合ってる人もいない。だからキスをしないように口の周りを舐めた。

 

「かりな、キスしないんだな」

「だっ、だって!したら、ファーストキスだし…」

 

私は恥ずかしくなった。舐めるのをやめると、お兄ちゃんは降りて、私を抱き締め、キスをした。

 

「ん」

「んんっ!?」

 

私は頭のなかが真っ白になった。あれ、なにすればいいの?

 

「かりなの初めて奪ってみた」

「もう…柊くん…治ったからって…あっ」

 

私はお兄ちゃんではなく「柊くん」と呼んでいた。

 

「あっ、ごめん!」

「あはは、いいよ。柊くんでも」

 

お兄ちゃん、いや、「柊くん」は笑っていった。私は柊くんから離れずにいた。

 




唐突な記号説明
「」…会話文
()…思っていること、夢の中の会話etc.
《》…電話時の相手の会話。自分のは「」
〈〉…メール上のやり取り。自分のもこれになる
【】…視点が変わる時、回想シーンetc.
◇…少し(1日ほど)遡るとき
◆…少し(1日ほど)遡り、視点も変わる時
このくらいですかね。『』って使ってましたっけ。使ってたら教えてね!Twitterでもいいから。何話か教えてね!


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第65話 関係 前編

今回の登場人物(前後編合わせて)
月島柊(主)
月島彩夏
月島かりな
月島暁依
葉元胡桃
姫川杏
桃瀬心春
美海零
有栖柚
丸山彩
滝川みう
みうのお母さん
ナナニジメンバー10人
以上22名


 俺は1月3日まで休み、1月4日は俺だけ仕事で、電車には俺と彩だけ乗った。俺の今日の目的地は上野ではなく、みずほ台だった。みうの家に用があって、大宮で埼京線に乗り換え、武蔵浦和で武蔵野線乗り換え、北朝霞で朝霞台まで歩き、朝霞台から東武東上線。彩はいつも通り鴻巣で降りていまい、俺は今満員電車で1人だった。久しぶりで、前に人がいないのには違和感を感じた。

宮原を出発し、大宮に電車は向かう。大宮では客が一気に入れ替わる。俺みたいに埼京線に乗る人はあまりいないけど。唯一と言ってもいいほどいたのは俺より年下っぽい女性だった。うん。間違いなく年下だ。

7:43発埼京線通勤快速新木場行きは20番線から出発する。いつもではないが、大宮の埼京線ホームは独特な匂いがすると思う。俺だけかな、そう思うのは。通勤快速新木場行きは新木場まで途中、武蔵浦和、赤羽、十条、板橋、池袋、新宿、渋谷、恵比寿、大崎、大井町、品川シーサイド、天王洲アイル、東京テレポート、国際展示場、東雲、新木場に停車する。大崎からはりんかい線に入り、新木場まで行く。しかし俺は1駅先の武蔵浦和で降りる。俺は5号車から乗り、座席が空いてなかったためドア横の仕切りに寄りかかる。今回の乗車電車は東京臨海高速鉄道の70-000形だった。

 

「20番線新木場行き通勤快速ドアが閉まります」

 

通勤快速新木場行きのドアが閉まった。少し年下の女性は俺とは反対側の仕切りに寄りかかったいた。俺が女性の方を見ると、一瞬目が合う。俺たちは軽くお辞儀をして、2人で見合わせて笑い合った。知らない人なのに、なんで楽しいんだろう。

 

「あの、お名前、うかがってもいいですか?」

 

女性の方が俺の名前を聞いてきた。俺は鞄から名刺を取り出した。

 

「芸能プロダクションのマネージャー。月島柊です」

「あ、名刺。私、LAWSON北朝霞の、姫川阿奈です」

 

姫川?なんかどこかで聞いた覚えがあるな。まぁいいか。北朝霞って事は北朝霞駅までは一緒かな。

 

「あの、芸能プロダクションって上野のですか」

「はい。今日はみずほ台に用事があって」

 

女性の肩は急に上に上がった。

 

「どうしました?」

「あ、いや、ゴウダさんって人が怖かったと聞いて」

 

前のマネージャーだったっけ。だからいいイメージがないのかな。

 

「今のマネージャーは俺ですから、怖くはないかと」

「そうでしたか。すみません」

 

埼京線通勤快速は混んでいるイメージがあったが、大宮~武蔵浦和はそんなに混んでなかった。

武蔵浦和に着くと、向かい側に各駅停車新木場行きが止まっていた。通勤快速を待っている人は各駅停車に付きそうなほどたくさんいた。俺は人混みのなか、武蔵野線ホームに向かった。

 

「武蔵野線って混んでますよね。意外と」

「まぁ、両数が短いのが原因でしょうね。」

 

埼京線は10両、武蔵野線は8両だ。まぁそのせいだろう。俺は車内の奥の方まで入った。阿奈さんも俺についてくる。

 

「武蔵野線は毎日使うんですが、慣れませんね」

「こっちも慣れないですよ。湘南新宿ラインの混雑はひどいですから」

 

そう話していると、電車は出発した。俺は阿奈さんとキスした。わざとじゃない。たまたまだ。電車が揺れたから…

 

「すいません…」

「えっ、あっ、いえいえ!気にしないで下さい」

 

阿奈さんは優しくフォローしてくれた。北朝霞までは2駅で、8分で着いてしまう。

8:02、北朝霞に着いた。ここで阿奈さんとはお別れだ。

 

「阿奈さん、頑張ってくださいね」

「はい。柊さんも、頑張ってください」

 

俺と阿奈さんは北朝霞駅から出て、俺は朝霞台まで、阿奈さんはコンビニまで歩く。コンビニの裏に行く阿奈さんを見送り、俺は朝霞台まで歩いた。

5分もかからずに着き、8:11発東上線準急森林公園行きに乗ることができた。みずほ台まで3駅。みうが駅前で待ってくれているはずだ。

みずほ台には8:18。9分かかった。

 

「柊くん…久しぶりですね…」

 

1月1日から会ってないけど、そこまで久しぶりじゃなくないか?今日が1月4日だし、3日会ってないだけだ。

 

「3日ぶりだな」

 

みうに合わせた。今日俺がこっちに来た理由は、各自の家からリモートで繋いでもらうためだった。俺もどこかの家から繋ぎたく、みうの家からにした。

 

「じゃあ、みんな見えるかな」

《うん、聞こえるよ》

 

桜の声だった。画面にも桜だけが大きく映る。

 

「他のみんなは」

《あ、繋がってる?》

 

麗華だった。それに続くように残りの9人が来た。

 

《みんな聞こえてるよね?》

「あぁ。聞こえてる」

 

俺は左薬指を見せた。指輪はほとんどしている。しないときだと風呂に入るときぐらいかな。

 

「ほら、指輪」

《結婚したの?》(ジュン)

「あぁ。胡桃って人と」

《ああ、私だと思ったのに》(絢香)

「どう言うことだ。というか、本題はこれじゃないんだよ」

《本題を教えてください。》(あかね)

「1月7日に、結婚式をやるんだけど、来ない?」

《みんなで?》(桜)

《ラッキー!人の結婚式行きたい!》(つぼみ)

《鳥さんいるかなぁ》(みかみ)

「みんな来るのか。」

《あぁ、うち無理かも》(都)

「なんかあるのか」

《7日やろ、うち実家帰るんや》(都)

「そうだったのか。じゃあ10人だな」

《うん。じゃあ、7日に会いましょ》(麗華)

「あれ、俺明日も上野行くんだけど」

《そうだった…まぁ、今日はこれだけ?》(麗華)

「あとは雑談だけかな」

 

俺たちは雑談だけで3時間を終えた。

 




前編なので中編もお楽しみに!メンバ色分けはペンライトの色で分けてます。


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第66話 関係 中編

前編に引き続き、中編になります。登場人物は前編に載せてあります。前編からナナニジメンバー10人、滝川みう、滝川みうのお母さんを引いた登場人物になります。一応載せておきますと、
月島柊
月島暁依
月島かりな
月島彩夏
葉元胡桃
丸山彩
姫川杏
桃瀬心春
美海零
有栖柚
姫川阿奈
以上11名


 俺はみずほ台から13:01発東上線池袋行きに乗って北朝霞まで行った。そういえば、昼飯まだだったな。みずほ台で食ってくればよかったが、まぁしょうがない。この後学校だからあんまり派手なの食えないからコンビニで済ませるか。俺は北朝霞駅前のコンビニに入った。何にしようか。軽すぎても嫌だし、カップラーメンは電車の中で食えないし。そうなるとおにぎりしかないのかな。俺はおにぎりを1つ片手に持ってレジに行こうとした。しかし、途中で立ち止まった。制服のままじゃん。名札は張ってないけど。まぁ、ただの会社員だろ。端から見たら。

 

「110円で…す…」

「あぁ、ジャストで」

 

店員さんの手は人形のように動かない。口もあんぐり空けている。

 

「あの、店員さん――」

 

店員さんの名札には姫川阿奈と書かれていた。

 

「あ、阿奈さん?」

「なんでいるんですか!?」

「いや、昼飯を…」

 

俺はお金を持った右手を出す。

 

「じゃあ、俺帰るから」

 

俺はコンビニから出ていく。日差しが俺を照らし、俺は手で隠す。

 

 13:14発武蔵野線南船橋行きで南浦和。朝とは違うように、結構すいていた。まぁ昼間の高崎線よりは混んでるけど。

13:24に着くと、2分の乗り換えで13:26発京浜東北線大宮行きで浦和まで行く。浦和からの高崎線で昼飯食うか。

13:28浦和。13:33発高崎線籠原行き。胡桃と鴻巣で合流とか言ってたけど、俺が着く予定の時刻は14:06。追い付けるのかな。鴻巣までは

大宮13:42

上尾13:51

桶川13:57

北本14:02

鴻巣には14:06。胡桃はもう着いていた。胡桃は俺の背中の上に飛び乗った。

 

「胡桃、来てくれたんだな」

「当たり前じゃん!ずっと一緒にいたいし」

 

俺がゆっくり歩き始めると、胡桃は俺の背中で寝そうになる。こくん、こくんと胡桃の顔が地面に足が着くと同時に揺れる。こうしてると、彩夏とかりなが1年生だったときを思い出すな。

確かあのときは俺が17歳で、俺はかりなたちが帰ってくると決まって2人を背中に乗せて籠原駅前を散歩していた。周りがかりなや彩夏をからかうと俺はその人たちを本気で怒った。それから俺は怒った人から「籠原の鬼」とか呼ばれてた。俺のせいじゃないだろと思ったけど。

俺が昔の事を思い出していると、胡桃はいつの間にか眠っていた。

 

「あちゃー、寝ちゃったか」

 

学校に着いたときには14:20だった。あと1時間くらいか。俺は音楽室まで向かった。誰もいないが、俺は置いていったユーフォニアムを持って演奏を始めた。胡桃は背中にいたままだけど。

 

「こんにちはー…」

 

チャイムも鳴り、5時間目の授業が始まった。俺はユーフォニアムをしまう。

 

「胡桃、起きろ」

「んんんっ、柊くん…あれ、授業中?」

「あぁ。ここで待ってよう」

 

俺たちが準備室にいると、音楽担当の谷中先生が準備室のドアを開けた。

 

「月島さん、ここ鍵閉めていいですよ」

「あ、分かりました」

 

俺は鍵を閉める。こっちに入っていかないようにだろう。そして胡桃と2人きりになる。

 

「柊くん、覚えてる?高校の修学旅行。京都で私、告白したでしょ?」

「あぁ。覚えてるよ。あれから好きだったのか?」

「うーん、少し違うかな。班が一緒になってから。」

 

胡桃は俺に突っ込んでくる。しかし、その顔は少し濡れていた。泣いていた。

 

「胡桃?なんで…」

 

胡桃は髪を思いっきり揺らすほどに顔を動かし、俺に勢いよくキスした。胡桃の涙は俺の目の近くに落ちる。

 

「柊くん、私、柊くんのキスが好き。他の人のキスとは違う感じがする。締め付けられたり、私の口の形に合ってたり。」

 

俺もそれを意識してキスしてるからな。胡桃は俺を上から押さえつけてキスをする。胡桃は疲れるまでずっとキスしていた。

 

 部活の時間になり、俺はユーフォニアムを持ち、音楽室に戻った。胡桃は昔していたトロンボーンを学校のを借りて吹いた。

 

「あ、久しぶり。杏、心春、澪、柚。」

「覚えててくれてたんですね。」

 

記憶力がいいのは俺の取り柄だからな。人の名前とかはよく覚えられる。

 

「杏、ちょっと来て」

 

俺は姫川杏を呼び出した。俺は今日もらった名刺を見せた。

 

「姫川阿奈って、君のお母さんか?」

「あ、お姉ちゃんです。結構年離れてて、お姉ちゃん、今年成人で…」

 

そういうことか。通りで姫川を聞いたことがあると思った。俺は杏を3人のところに戻した。

 

「みんな、休み中の成果を見せてくれ」

 

俺は4人にユーフォニアムを吹いてもらう。音色、音程、音量共にいい感じで、休み前とは明らかに変わっていた。

 

「よし、いいね。じゃあ、今日は楽器片しちゃおうか」

「え…終わりですか?」

「あぁ。みんな円になって座ってくれ」

 

俺はユーフォニアムを片付けに行った4人を見送り、椅子を円にした。

 

「えっと、円にして、どうすれば…」

「今回はみんなの事を知ることと、笑い合う」

 

楽しんでもらいたいだけだけど。俺はみんなの事をじっと見る。

 

「あの…月島先生…」

「先生じゃなくて、胡桃が呼んでる呼び方でいいよ」

「柊くん♪って呼べばいいの♪」

 

弾ませなくてもいいんだけど。

 

「柊、くん?」

「そうそう、それでいい。質問は」

「質問じゃないんですけど、柊くんって、籠原の鬼って呼ばれてたんですか?」

 

結構有名だから多分兄とかに聞いたんだろ。

 

「うん。高2くらいの時だね。それがどうかしたか」

「あの、今日、家に来てもらっていいですか?」

 

俺が家に行く?俺は構わないけど、そっちは大丈夫なのかな。

 

「そっちはいいのか」

「はい。出来るだけ早く…」

 

出来るだけ早く?なんか俺がいないといけない理由でもあったのかな。胡桃はこの話を終わらせるように杏の話にそらせた。

 




柊の年齢は今25歳ってことで。暁依が出てこないのは気にしないで。


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第68話 関係 後編

今回の登場人物
月島柊
月島暁依
月島彩夏
月島かりな
姫川杏
桃瀬心春
美海零
有栖柚
以上8名


 俺は胡桃を連れて澪についていった。公立だから歩いていくのが普通。歩いて20分くらいだった。外で待たされて、「窓から合図があるまで待ってて下さい」と言っていた。

 

「年明け早々、何なんだろう」

「さあ。柊くんは何だと思う?」

 

俺だって知るか。

しばらく待っていると、窓から澪の手が見えて、叩いている。俺は玄関から家の中に入る。リビングでは澪が父親から暴力を受けていた。

 

「やめろ!」

「なんだい君は!勝手に入ってきて!」

 

父親は俺を殴ろうとしてくる。これに反撃しても正当防衛だ。俺は父親を蹴り飛ばした。

 

「よく言うよ。虐待しておいて」

「お前には関係ない!」

 

俺を蹴り、ナイフでかすった。暁依が俺を引っ張り、かりなが舐めて治癒、彩夏が父親を取り押さえ、澪の事を胡桃が守った。

 

「暁依、来たのか」

「あぁ。」

 

彩夏が取り押さえと警察の通報を同時に行った。忙しかったな。

 

 澪は母親と2人で暮らすことになり、俺たちは家に帰った。暁依がなんでいるのか不思議だったけど。

 

「大学はどうしたんだ」

「冬休みだよ。あと2ヶ月だけど」

 

今は17:50。夕食の時間か。

 

「みんな、今日は居間で食べよ。大勢いるし」

 

彩が言った。皿などを持ってきて、女は正座、俺と暁依はあぐらをかいていた。

 

「柊くん、ああん」

 

胡桃が箸を俺に向けてくる。俺は箸にあった回鍋肉を食べる。

 

「美味しい」

「よかった。」

 

彩が俺に言った。彩夏は俺の前で座り、俺の隣は胡桃と暁依。彩は1番端だった。

 

「柊くん、こっち来て」

 

彩が俺を呼んだ。俺は立ち上がって彩のとなりに行く。

 

「なんだ」

「違う食べ方したい?」

 

違う食べ方って?まぁ興味はあるな。

 

「あぁ。興味はあるな」

「じゃあ口開けて」

 

俺が口を開けると、彩がご飯を食べる。なんだ、焦らしたかっただけか。そう思っていると、彩が俺にキスをする。彩が食べていたご飯が俺に移ってくる。彩の唾液によって少し濡れていた。

 

「彩!?」

 

俺はご飯を飲み込んだ。とても意外な食べ方だった。口移しだとは思わなかったから。

 

「彩ちゃん!口移しってこういうのじゃないの?」

 

彩夏がお茶を口に入れ、俺の口に流し込んだ。

 

「ゲホッ」

 

咳き込んだ。急に入れられたら咳き込むだろ。

 

「食べ物でもいいのよ。覚えておくといいよ」

「変なことを教えるな!!」

 

俺は大きな声を出した。

 

 風呂は男女別で入ることになり、暁依と俺で入った。

 

「柊、いつからハーレムなったんだよ」

「なったつもりはないが!?」

「冗談だよ。受け止めるなよ」

 

何なんだ。暁依ってこんな性格だったっけ?

 

「それで、指輪はどこに置いたんだ」

「洗面所の下にある棚に入れた」

 

いつも置いてあるところだ。なくならないし。暁依も7日の結婚式には来ることになっている。

 

「大事にしろよ」

「言われなくとも。」

 

俺は先に上がった。指輪を左薬指にはめ、パジャマに着替えて外に出た。ドアを開けて角を曲がると、胡桃と出くわした。

 

「あ、柊くん。」

 

俺は短く胡桃の頬にキスをした。

 

「行ってきます。」

「行ってらっしゃい」

 

俺は2階の俺の部屋に行き、ベットに横になった。

再び1階に降りたのは1:35。高崎行きがあと2分で終着駅につく。そんな時間に何をするかと言えば、暁依が来たときには毎回やる、ゲームだった。参加者は胡桃、俺、暁依。3人で毎回やる。

 

「負けたらなにするんだ」

「そうだな、明日札幌まで迎えに行くのは」

「遠すぎだし、明日は無理よぉ」

 

同点だったら行かなくていいんだし、普通だろ。俺と暁依は10分間敵を倒し続け、両方ともスコアは10000ジャスト。胡桃が10000だと俺たち誰も行かなくていい。

 

「あれ、10000だっけ」

「あぁ。」

 

胡桃は最後の1体を倒す。結果、10004。俺たち2人が負けた。

 

「……いいよな、行かなくて」

「……あぁ。仕事あるし」

 

 

 翌日朝、いつもの国府津行き。神保原では珍しく座れて、上野まで快適通勤だった。ボックスシートを取れたし。

 

「珍しいな。ボックスシート取れるなんて」

「うん」

 

元々の俺の高校時代は籠原始発でいくらでも座れたけどな。まぁ言わないでおこう。

 

「じゃあ、おやすみー。大宮についたら教えて」

 

胡桃は俺の肩に頭を寄せて寝た。宮原についたら起こしてやるか。結婚式まであと2日だ。

 

 

 

 




後編まで終わりましたね。次回から69話までは普通に戻ります。結婚式の時には長編作品で70話ですね。


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第69話 前日

前日というよりかは前々日からです。
今回の登場人物
父さん
母さん
月島柊
月島暁依
月島冬菜
月島香菜
月島藤花
月島風那
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
月島彩夏
葉元胡桃
姫川阿奈
ナナニジ10人
計24人


 国府津行きが上尾を発車し、胡桃を起こす宮原が近づいてきた。彩は鴻巣で予定どおり降りていき、今乗っているのは俺と胡桃、彩夏、かりなの4人。座れてるからかいつもより楽だった。

 

「胡桃、起きろ」

「にゃぁっ!」

 

猫みたいな声。胡桃はゆっくり目を開く。

 

「おはっよ!」

「1回起きてるから違うけどな」

 

胡桃は窓の外を見る。胡桃は大宮で降りるから、正直言うと大宮で胡桃が降りていくときが寂しい。

 

「あぁ、また着いちゃうね。今日も大宮で待っててね」

「あぁ。分かってる。」

 

胡桃は大宮7番線に降りていった。席が1人分空く。

 

「あ、1席空いた…」

「あ、ここいいですか?柊さん」

 

そう声をかけてきたのは阿奈さんだった。

 

「阿奈さん!?埼京線じゃないんですか!?」

「あはは、たまにこっちでも来るんですよ。浦和で降りちゃいますけど」

 

浦和で降りるんだと南浦和から武蔵野線か。俺は今日からルートを変え、池袋から山手線にした。みうが池袋で東上線から降りてくるから。

 

「柊さんはどこで降りるんですか?」

「池袋まで乗ってきます。」

 

湘南新宿ラインは浦和~池袋で結構混んでくる。まぁ今回は座ってるから関係ないが、立っていることになると地獄でしかない。

浦和には7:45。阿奈さんがここで降りていく。

 

「じゃあ、またいつか」

「はい。」

 

国府津行きは出発した。次は赤羽だ。

荒川を渡ると、すぐに赤羽に着く。ここから池袋に行くには埼京線か湘南新宿ライン。上野方面は上野東京ラインか京浜東北線。ここで目的地が別れる。湘南新宿ラインは池袋までノンストップ。埼京線は、十条、板橋に停車する。上野東京ラインは上野まで尾久に停車、京浜東北線は東十条、王子、上中里、田端、西日暮里、日暮里、鶯谷に停車する。

池袋には8:05。降りるときは乗客が変わるからか大変じゃなかった。みうと合流し、上野まで山手線。みうは東上線ホームから来る。

 

「あ…」

 

みうが俺の後ろから声をあげた。

 

「あぁ、みう。行こうか」

「はい…満員電車は苦手ですけど…」

 

みうはまず人混みが苦手だから満員電車なんて尚更なんだろう。8:12発上野・東京方面行きは3分遅れて運転していて、先に8:09発上野・東京方面行きが3分遅れて来た。待っている人たちは階段の上、コンコースまで広がっていて、湘南新宿ラインで赤羽に行き、京浜東北線に乗ろうとしているのか湘南新宿ライン北行も混雑していた。

 

「みう、乗れる?」

「…頑張ってみます…」

 

俺は7番線山手線ホームで8:09発予定の電車に乗った。やってきた電車の車内は池袋まで空いていた(といっても座席は全て埋まっている)が、池袋で一気に混雑した。

 

「あ、押される…」

「柊くん!」

「俺に掴まって」

 

3人は俺の腕や腹に掴まった。ドアとドアの間に止まった。乗客が全員乗ったからだ。

 

「柊くん…狭い…」

「柊くぅん、どこまで乗るのぉ」

 

上野には8:26到着予定だが、遅れてるから8時半くらいかな。

 

「我慢して。あと30分」

「出来ないよぉ。」

 

かりなは俺に潰されるようになっている。みうだってそうだけど。

 

「あの…柊くん…顔…近いです…」

「みう、嫌だったら退くけど…」

「嫌、じゃないです…」

 

嫌じゃないんだったら離れなくていいか。

 

「まもなく、大塚、大塚、お出口は――」

 

大塚に近づく。都電の乗り換え駅だったら空くかもしれないな。

 

「乗り換え出来るから空くかな」

 

王子まで行けば空いてる京浜東北線に乗れるし。しかし予想とは裏腹に、車内はもっと混み始めた。

 

「みう、俺の腹掴まって。彩夏も腕とかに掴まって」

 

俺はみんなに俺のどこかに掴まるよう言った。

 

「むぎゅぅ、柊くん…くるちい…」

「潰れてるし。巣鴨まで1回我慢だな」

 

みんなが俺の体と後ろの押してくる人たちによって潰される。

 

 8:26上野。みうは満員電車でフラフラになりながら事務所に向かっていた。彩夏とかりなは俺と手を繋いでないと落ち着かなくなってしまった。

 

 

 翌日になって泊まり込みの仕事が終わった。結婚式で休みにしたからしょうがない。俺は上野駅に彩夏とかりなで向かった。前日の通り、手を繋いでないと安心していられなかった。彩夏は俺の手をがっしり掴み、かりなは俺の手を優しく包むように掴み、俺と話していた。

 

「柊くん、明日結婚式だよ!」

「あぁ。胡桃も楽しみにしてたよ」

 

6時丁度発高崎線高崎行きに乗車。胡桃にも6:20までに8番線にいるように連絡した。

途中到着時刻は

赤羽6:10

浦和6:18

大宮6:26

上尾6:35

鴻巣6:48

熊谷7:04

籠原7:14

本庄7:29

神保原には7:32に到着。家には父さん、母さん、暁依を含めた妹たち8人がいた。挨拶だろう。

 

「おう、柊。結婚おめでとうな」

「まだ式あげてないから。早とちりするなよ」

「いいじゃない。息子の結婚なんだから」

 

母さんと父さんが俺に向かって微笑んだ。全く変わらない。

 

「お兄ちゃん、おめでとう」

「しょっ、しょうがないから――」

 

冬菜は相変わらずとがっている。しかし暁依が言い切った。

 

「よく言うよ。家では早く会いたいーとか言ってたのに」

「ふにゃっ!いっ、言うなぁ!」

「ありがと、冬菜」

 

冬菜は顔を赤くさせている。ついに式は明日だと言う雰囲気が漂っていた。




2100でギリギリ通常編です。あと1多かったら長編小説でしたね。次回に長編小説はやりたかったので。


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第6長編作品 第70話 結婚式

ついに結婚式ですね。今回は登場人物も全員名前出しますが、父さん、母さんの名前はみんなで考えてみてね。感想とかでも受け付けるから。
今回の登場人物
父さん
母さん
月島柊
月島暁依
月島冬菜
月島香菜
月島藤花
月島風那
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
月島彩夏
葉元胡桃
丸山彩
白鷺千聖
美竹蘭
倉田ましろ
斎藤ニコル
佐藤麗華
滝川みう
立川絢香
戸田ジュン
藤間桜
丸山あかね
神木みかみ
東条悠希
柊つぼみ
佐々木碧
佐々木百合花
姫川杏
姫川阿奈
桃瀬心春
美海零
有栖柚
松島晴菜
以上35名
35名とか多いな。


 当日、俺は参加者より早く式場に向かった。胡桃と俺はいつもの普段着で式場に向かう。始発の5:24で熊谷へ向かった。

 

「いい匂いするな」

「シャンプー変えたからね。それじゃない?」

 

胡桃からはいつも以上にいい匂いがした。エアコンの風でたまに匂う。いい匂いだった。まるで花畑にいるような、そんな感じだった。

熊谷には5:47に着いた。俺と胡桃は別々の部屋に連れていかれ、それぞれの部屋で着替えをした。8:30からの式だ。

黒いスーツのような服がなん着かあり、俺は真ん中のを選んだ。胡桃はドレスを着るからか時間がかかっているようだった。俺は個室で自分の服の手入れを始めた。髪のセットや髭剃りなどを全て済ませたりもする。

 

「月島さん、葉元さんが呼んでおります」

 

男性のスタッフが俺を呼んだ。胡桃のことか。

 

「今行きます」

 

一言俺は返して外に出ていく。待っているところは胡桃が使っている個室。ドレスが後ろにたくさんあるなかで、胡桃は純白のドレスに身をまとっていた。

 

「胡桃、どうした」

「うん。声だけでも聞きたいと思って」

 

顔は見せなかった。白いカーテンのような物で隠れている。

 

「今日は緊張するか」

「ううん。幸せな気持ち。ありがと、柊くん」

 

お礼を言われる立場ではないと思い、俺は言った。

 

「こっちこそ。」

 

俺は8時になるまで顔は見れないが、ずっと胡桃のところにいた。

 

 そして8:30、俺と胡桃は結婚式の式場のドア横に立ち、入場を待った。先に新郎の入場で、俺が先だった。

 

「新郎の入場です。」

 

アナウンスが流れ、俺は式場の中に入る。佐々木先輩や、ナナニジメンバー、俺の家族が暖かい拍手で迎えてくれた。

 

「柊、俺の妻連れてきたからな」

 

横で小さくお辞儀をする人が見えた。佐々木先輩と同い年くらいだった。

 

「柊も、幸せにな」

「はい。ありがとうございます」

 

俺がステージの上に立つと、次は新婦の入場。白いカーテンのような物で隠しながら、歩いてくる。胡桃の家族もいたようだった。胡桃が俺の横に立つと、俺は向きを変え、カーテンのような物を上げる。

 

「胡桃、綺麗だよ」

「ありがと。柊くん」

 

 

 式が終わっても、俺と胡桃はみんなに祝福されてばかりだった。今日は俺の家族、次の土曜日は胡桃の家族だった。

 

「柊くん、胡桃ちゃん、ちょっと上で待ってて」

「え?下じゃダメなのか」

「いいから!」

 

俺と胡桃は風那と瑞浪に押されて2階に上がった。俺と胡桃は2階で何をするか話していた。

 

「柊くん、もう、しちゃお?」

「あぁ。しようか」

 

俺は胡桃にキスをした。結婚式が終わったらちゃんとしたキスをしようと約束していた。

 

んっ、んぐっ、ちゅっ、んっ

 

胡桃は力を抜く。フラフラになったように体が揺れる。

 

ふぅ、んっ、はぁ、んっ、ふうふん、ふいぃ

 

なんて言おうとしたのかも分からないほどに話せていない。けど、多分最初の「ふうふん」は「柊くん」だろう。じゃあ最後の「ふいぃ」はなんだろう。

 

「ふいぃ、ふいぃっ!」

 

なんか言うことか。母音に合わせて、「ういぃ」?最後の小さいおとを消して「うい」。さ行から、「さい」「しい」「すい」「せい」「そい」?なんか「すい」が怪しいから、いをか行にして、「すか」「すき」…好き!?

 

「胡桃、さっきなんて言ったんだ?」

「はぁ、はぁ、好きぃ、好きって言った…」

 

胡桃は俺にくっついていた。くっついているのを求めるかのように。

 

「柊くん!」

 

胡桃は俺に抱きつく。しかもかなり強い。

 

「もう、離れない!私、私、離れないぃっ!」

 

胡桃は俺の体に密着する。ぎゅうぎゅうと強く抱き締められる。

 

「胡桃…」

 

胡桃は1階から風那が来てもやめなかった。

風那が俺を呼び出し、家の横に行った。そこには、みんながBBQのセットを囲むように座っていた。数人は帰ってしまったそうだが、妹8人、暁依はちゃんと座っていた。父さん、母さんは暁依が帰したらしい。酔うと酷いからだろう。

 

「お兄ちゃんそこで、胡桃ちゃんそこね」

 

藤花が言った。そして俺は指示された椅子に座った。俺が座ると後ろから目隠しされた。

 

「誰でしょう」

「えっと、声は…心春か?」

「正解…」

 

杏、心春、澪、柚が俺の後ろにいた。

 

「誰が呼んだんだ」

「はーいっ!」

 

彩が思いっきり手を挙げた。

 

「言ってくれよ、呼んだんだったら…」

「いいじゃん、それより、火付けよ?」

 

俺は家の中からチャッカマンを持ってこようとした。しかし、暁依に手を掴まれ、俺は引き戻された。

 

「柊、魔法でやっとけ」

 

俺は戻って、金網をめがけて火炎魔法を使った。あんまり大きくならないように弱めだった。

 

「さすがだな、柊」

 

佐々木先輩も一緒にいた。式場で会ったあの人の名前はなんなんだろう。

 

「佐々木さん、柊くん、あの人の名前何かなって思ってますよ」

 

胡桃が俺の代わりに言った。胡桃には思ってることはお見通しだった。

 

「あぁ、えっと、旧姓白水――」

「百合花です。旧姓は白水。」

 

百合花さんか。なんか佐々木先輩にあってるような感じがする。

 

「そうでしたか。」

 

俺は自分の席に戻った。そして暁依を中心にみんなで結婚を祝うパーティーが始まった。

 

「それじゃ、結婚を祝して乾杯!」

『乾杯!』

 

俺はみんなと一緒に乾杯した。俺と胡桃のためにこんなことをしてくれて、嬉しかった。

 

 パーティーが始まってから何時間経っただろうか。俺は1人で玄関の前に出た。

 

「あ、いたいた」

 

ましろ、蘭、千聖の3人が夜だと言うのに来てくれた。

 

「柊くん、おめでとう」

「おめでと」

「おめでとうございます」

 

3人が俺を祝ってくれた。

 

「ありがと。ちょっと待ってて。」

 

俺は皿の数、箸の数を確認するために一旦戻った。数にあまりはまだあるし、紙皿、割り箸だから尚更だった。

 

「来ていいよ。BBQしてるから」

 

俺は3人を招き入れ、俺は玄関の前でそのままでいた。今度の来客は俺の…

 

「姉ちゃん!?」

「柊くん、久しぶり」

 

俺の義理の姉、松島(まつしま)晴菜(はな)だった。俺が5歳くらいの頃に、母さんが藤花を出産するため、1年間俺は姉ちゃんの家にお世話になった。

 

「あ、あきくんいる?」

 

「あきくん」とは暁依のこと。「あきより」の「あき」からとって呼んでいる。

 

「いるけど」

 

姉ちゃんは俺を差し置いて暁依の元へと走った。

 

「あ、あきくん」

「姉ちゃん!?」

 

全く俺と同じ反応の暁依の声がした。そりゃあそうだろ。急に来たんだから。

 

「姉ちゃん!いい加減にしろよ!」

「あ、そうだった」

 

俺の発言を無視する。

 

「柊くん、結婚おめでと」

「あぁ、ありがと。さ、姉ちゃんは帰った帰った」

「何よぉ、もう大学も卒業したんだしぃ」

『仕事はどうした』

 

俺と暁依が同時に聞いた。姉ちゃんは北海道で仕事してるはずなのに。

 

「うっ」

『帰れ!』

 

俺と暁依、冬菜が姉ちゃんに向けて言った。暁依は姉ちゃんが一緒だったときには3歳、冬菜は1歳だった。

 

「はーい…」

 

俺は自分の席に戻った。胡桃が俺をずっと待ってたから。胡桃は俺の腕をテーブルの下で掴んでいて、俺を離さないというのが伝わってきた。

 

 翌日朝、俺はいつも通り胡桃、彩夏、かりな、彩と一緒に電車に乗った。この日の電車も空いていて、ボックスシートが4席分空いていた。時間帯は群馬からすればラッシュ時間帯。なのに、今回の2号車はガラガラだった。

 

「じゃあね」

「あぁ、頑張って」

 

彩が鴻巣で降りていった。

 

「柊くん、上野まで一緒に行っちゃダメ?」

「なんで?」

 

急に胡桃から言われて少し驚いた。胡桃は大宮で降りるのに、どうして…

 

「私、言ってなかったんだけど、会社でセクハラに遭ってるの。毎日体触られて、気持ち悪いから…」

「やめてほしいってことだよな」

 

俺は大宮である作戦を実行することを決めた。

 

 大宮につくと、俺は席を立った。彩夏とかりなは池袋でみうが心配するから2人で行くように言った。胡桃と大宮で降りて、小山まで俺と一緒に行くのだ。

 

「柊くん…いいのに…」

「胡桃が心配だった。」

 

俺は9番線に向かった。宇都宮線ホームだ。俺は電車に乗り、小山まで向かった。少し立ち客もいる。俺は誰もいない号車を探した。15号車が誰もいなかった。

 

「胡桃、誰もいないから」

 

俺はキスした。胡桃は最初驚いていたが、すぐにピンクになりながらもニコッと笑っていた。

 

「柊くん…んっ」

 

胡桃も俺とキスした。電車の中なのに、誰もいないから、キスしていた。

 

「柊くん、ありがとう。大好きだよ」

「俺も。大好き」

 

俺は胡桃とずっとくっついていた。土呂に着いても誰も乗ってこない。俺はボックスシートに胡桃と座り、隣り合わせでキスした。

 

「柊くん…こんなとこでも」

「大好きだからかな」

 

俺は胡桃を抱き寄せ、人が乗ってきてもバレないようにハグしていた。髪はほどいている状態で立っていると尻の辺りまで髪がのびているが、座ると完全に付く。胡桃は今回はポニーテールにしていたが、それでも背中の真ん中辺りは過ぎる。

 

「柊くんっ」

「なんだ」

 

俺が振り向くと、胡桃が俺の頬を人差し指でつついた。

 

「えいえいっ」

「何してるんだ」

「ツンツン?」

 

それは分かってるんだよ。なんでしてるかだ。

 

「なんでしてるのかだ」

「暇だったし、横にいたから」

 

俺は怒った振りをして拳を胡桃の斜め上にやった。

 

「ごっ、ごめん!」

「胡桃」

 

俺は途中まで勢いよく下ろすと、急にゆっくりにして、優しく胡桃を包む。そして離れたかと思ったときに胡桃の頬を優しくつついた。

 

【月島胡桃視点】

 

 

 私は窓の外を見ていても毎日通ってるからか全く楽しくなかった。暇すぎる。

 

(うぅん、なんか楽しいことないかな…)

 

私は周囲を見た。柊くん相手にしか出来ないけど、キス?けどもう人乗ってるからしずらいよね。じゃあ何しようかな。柊くんを触りたい。

 

(あ、そうだ!)

 

私は柊くんを呼んだ。

 

「柊くんっ」

「なんだ」

 

柊くんは振り向いてくる。作戦通り。作戦は柊くんを振り向かせて、柊くんのほっぺをツンツンする。どんな反応するんだろう。

 

「えいえいっ」

 

私は柊くんのほっぺをツンツンした。結構柔らかい?固めかな。

 

「何してるんだ」

「ツンツン?」

 

私は楽しみながら言った。

 

「何でしてるかだ」

「暇だったし、横にいたから」

 

すると、柊くんが私に拳を向けてきた。

 

「ごっ、ごめん!」

「胡桃」

 

柊くんは拳を振り下ろす。叩かれる。許してっ!お願い!私はガードした。すると、柊くんは私を優しく包み、ほっぺをツンツンしてきた。

 

「むーっ」

「かわいい。」

 

笑いながら柊くんは言った。何が面白いのよ…柊くん、仕返しなんて…私もいつの間にか笑っていた。

 

 小山に着くと、柊くんは外で待ってると言った。セクハラされているところを動画に撮り、訴えるそうだ。

 

「今日はポニーテールなんだね、葉元さん」

 

私と同時期に入社してきた女性社員だ。

 

「もう葉元じゃないよ。」

「あ、そっか。月島、だっけ。」

 

忘れてたのかな。私は仕事に移った。

 

「おっ、葉元…月島ちゃん、ポニーテールかい」

 

来た!セクハラ上司だ。

 

「今日もかわいいねぇ、背中もいいライン」

 

私はセクハラに耐えながら柊くんに手で合図を送った。小指を動かすだけでいいって言ってたけど、気付くのかな。

 

「おっと、すみませんね。胡桃の上司ですか」

「あぁ、はい。どうされました」

「いやぁね、この動画を見てほしいんですよ。確認なんですが、この人はあなたですね」

 

柊くんが動画を見せた。上司は返事をした。

 

「はい。そうですが」

 

言った!これでもう後戻りはできない。もう私たちの勝ちだ。

 

「あのですね、これ、今時なんて言うか分かりますか」

 

柊くんは動画を見せ終わって上司に問いかけた。反応はなかった。

 

セクハラって言うんですよ」

 

セクハラの部分だけ大きくして柊くんは言った。周りがこそこそ言っている。「きもっ」とか「セクハラしてたのかよ…」などと聞こえてくる。

 

「違う!俺じゃない!」

「さっき自分だって言いましたよね」

「証拠がないじゃないか!」

 

柊くんは録音機を出した。録音していたのは私だって知らない。

 

《この人はあなたですね》

《はい。そうですが》

 

録音機に完璧に録音されている。柊くんは最後の質問を始めた。

 

「警察に言うしかないですよ。」

「見逃してくれ!頼む!」

「出来るわけないだろ!」

 

柊くんが大きな声で言った。柊くん、怒ると怖いんだ。

 

貴様が胡桃にしたこと、本当に分かってるのか!

…分かってます…

ちゃんと言えよ!聞こえねぇよ!

「分かってます!」

 

年は柊くんの方が20くらい下なのに、怒れている。

 

「わかってるのか。じゃあ何でやったんだろうなぁ。まぁ、分かってても警察は呼ぶぞ。被害届出させてやってもいいんだが」

「今回だけは…見逃してくれ!」

 

その時、柊くんと上司は紫色の竜巻のような物で囲まれる。2分くらいで消えてくる。

 

「胡桃、今日は帰ろう。」

「上司は…」

 

上司は「自首」とブツブツ言っていた。私はパソコンを閉じ、外に出てから柊くんに聞いた。

 

「なにしたの?」

「洗脳魔法。今は自首しか頭にないぞ」

 

柊くんは上りの9:34発上野東京ライン東海道線直通熱海行きに乗った。私も柊くんの背中に掴まって乗った。

 

「上野まで?」

「胡桃も来るか?」

「行きたい!」

 

私も柊くんの職場に行ってみたかった。私も上野まで行くことにした。車内はまぁまぁ混んでいたが、まだゆとりがあった。しかし、柊くんは見えるかもなのにキスした。

 

「ちょっ、見えるよ…」

「大丈夫。体で隠してるから」

 

うぅ…恥ずかしい…柊くんは胸を触ってきた。

 

「きゃっ、ちょっ」

「ちょうどいい…とか言ってほしい?」

 

言ってほしい。なんて言えるわけないじゃん。しかし柊くんは読み取ったかのように言った。

 

「ちょうどいいよ」

 




5451で終了。35名はさすがに多かった…


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第71話 酔い

熟語が段々被ってくるなぁ。もう71話目だもんね。けど全部で75話とかだったかな。
今回は胡桃が主役なのかナナニジが主役なのか分からないと思います。一応胡桃主役です。
今回の登場人物
月島柊(主)
月島胡桃(主)
月島暁依
斎藤ニコル(準主)
準主って準主役ってことで。


 俺は上野に着くなり、早速ニコルに話しかけた。昨日の結婚式は来ていたが、パーティー来てなかったから。俺は何かあったのかと思い、ニコルがいるところに向かった。多分大型待ち合いルームにいるんだろう。

大型待ち合いルームには10人がいる…と思ったんだが、俺のグループしかいなかった。麗華、みう、ニコル、悠希、絢香、ジュンの6人。

 

「あ、柊くーん」

 

ん?ジュンの割には変じゃないか?

 

「柊くん、なんか変じゃない?」

 

胡桃が囁き声で言った。胡桃も気付いたそうだった。

 

「柊くん…はむっ」

 

麗華は俺の指を膝で歩きながら咥える。酔ってるよな。絶対。

 

「胡桃、水持ってきて」

「うん…」

 

胡桃が出ていくと、残りの5人が俺を舐めまわす。頬や手、首など様々だった。

 

「柊くん、ちゅっ、ちゅうっ」

 

首を吸っているのはみう。丁度胡桃が水を持って戻ってくる。

 

「みんな、これ飲んで!」

 

胡桃が6人全員に水を飲ませる。

15分すると全員の酔いが覚めた。みんな平常心に戻った。

 

 帰りは上野から高崎線。帰宅ラッシュ時間帯真っ只中で、昨日パーティー出来なかったからとニコルは俺について来た。乗った電車は、発車1分前に14番線からの高崎線通勤快速高崎行き。停車駅は、尾久、赤羽、浦和、大宮、鴻巣、熊谷、籠原、深谷、岡部、本庄、神保原、新町、倉賀野、高崎。上野駅の時点で発車1分前のも関係し、座れる席はなかった。俺は反対側のドアに寄りかかり、電車は出発した。

赤羽18:53

大宮19:09

鴻巣19:26

熊谷19:36

本庄19:59

高崎には20:17の到着予定だ。

大宮で彩に連絡をとる。

 

〈彩、今日は鴻巣19:26くらいの通勤快速〉

〈オッケー。〉

〈あと、ニコル行く〉

〈襲わないようにねw〉

〈襲うわけないだろ!〉

 

誰か来ると言うと大体こんな感じになる。大宮で高崎線方面最速電車と案内され、急に混雑した。

 

「無理しないで、俺にくっついていいから」

「うん。」

 

胡桃は真っ先に俺にくっついた。ニコルもそれに続く。次は鴻巣まで止まらない。しかも、10両でもっと混んでいる。

 

「ぐぅ…押されるぅ…」

「ニコルちゃん、頑張って。あと15分くらい」

 

ニコルは満員電車に慣れていないらしく、苦しそうだった。確かに関東は混んでいる。これが日常化してるけど、北海道とは比べ物にならない。

 

「あっ、柊くん…髪ほどけちゃう…」

 

俺は胡桃を両手ドア側に寄せ、俺は胡桃の周りを手で囲んだ。これがないと苦しくなってしまう。

 

「柊くん…髪、ほどいちゃダメでしょ?」

「巻き込んじゃうから。」

 

俺は胡桃を壁ドンしていた。毎日だけど。

 

「柊くん…私も…」

 

ニコルも俺の手の内側にいれた。胡桃とニコルはかなり近い。俺も広げようとするが、うしろが身動きとれずに黙っていた。

 

「柊くん…近づいて」

 

俺は胡桃とニコルに近づく。俺は胡桃の胸を触る。朝の続きだ。ニコルにはキスで我慢してもらった。

 

「柊くん、私のおっぱい大好きだね」

「胡桃の全体が大好きだよ」

 

胡桃の胸は俺の手に丁度フィットした。Dカップの胡桃。ちょうどいいサイズだと思った。

 

 神保原には20:03。暁依が車で迎えに来てくれていた。俺は暁依が運転してきた車に乗ろうとする。

 

「あ、運転は柊だぞ」

「え?そうなの?」

「疲れたし」

 

なんだよ、俺だって疲れてるんだよ。俺は運転席に座り、車を走らせた。

 

「で、明日って胡桃の方のお祝いだよな」

「あぁ。その予定だけど」

「集合場所は鴻巣の家ね」

 

胡桃が元々住んでいた、鴻巣でやるそうで、明日は鴻巣まで彩と一緒に向かうことにした。

 

「明日も空いてるといいね」

「帰りは通勤快速だから混んでたけどな」

 

最近は神保原から空いてるけど、深谷でやっぱり乗ってくる。座っていても周りは1歩も動けないほど混んでいる。

 

「鴻巣まで立ってるのは…」

「まぁな。ほら、家着くぞ」

 

俺は家に着くと歯を磨き、すぐにベットに直行した。風呂は明日の朝だ。

と思っていたのだが、ベットでニコルが俺を押し倒した。

 

「柊くん…まだ酔い覚めてないの…」

「え?覚めたんじゃないの?」

「ぜんぜーん。だからぁ、覚まして?」

「あのなぁ…」

 

どう覚めさせればいいんだよ。涼しくさせれば覚めるかな。俺はニコルを抱き寄せた。ニコルは顔を少し赤くさせて俺の背中に手をやった。

 

「ニコル、正気に戻れ」

 

俺の体全体から浄化魔法を出した。浄化魔法で効くかは知らないけど。

 

「柊くん………」

 

ニコルは正気に戻ったようで、俺から急にはなれようとする。

 

「ニコル、もう少し」

 

俺はニコルを離さなかった。見られちゃまずいけど、来るまではしていたかった。

 

うぅ…恥ずかしいから…

「やめてほしい?」

「…いいけどぉ…」

 

ニコルは黙って抱かれていた。俺は30分くらいニコルを抱いていた。

 

 結局寝たのは23:00過ぎで、起きたのは4:00と早かった。俺はシャワーを浴びに行った。胡桃が中にいる影が見えた。しかし、なんのためらいもなく、俺は中に入った。

 

「あ、起きたんだ」

 

胡桃も普通の反応。なにも恥ずかしくないんだろう。

 

「柊くん、髪洗うの手伝って?」

「あぁ。いいよ」

 

俺は長い胡桃の髪を上から洗った。長くてサラサラ、綺麗な胡桃色をしている胡桃の髪は触っていても、見ていても飽きない。

 




ギリギリ2100行かずに、2099で止まりました。7:15に書き終わってますが、9月9日夜に投稿するので最終確認を学校から帰ったら行います。また、中間テストが10月中旬にあるので9月下旬からは投稿頻度が低下します。


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第72話 病院

今回は急に物語が変わります。あと、感想からいただいたアドバイスで、登場人物紹介を今回から1人ずつ書いていこうと思います。アドバイス下さった方、ありがとうございます。今回の登場人物のあとに書いていきます。最初は柊からです。
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島彩夏
月島かりな

登場人物紹介
月島柊
3年前に大学を卒業した25歳の男性。1月7日には月島(旧姓葉元)胡桃と結婚し、丸山彩、月島彩夏、月島かりなと同居している。大学は北海道で、高校時代の記憶が最近まで思い出せなかった。しかし胡桃と結婚したことで思い出せるようになった。自分では分かっていないが、周りからは「優しい」と感じられているらしい。

「ほへ?なんか言ったか?」
げっ、柊…なにも言ってないよ
「そうか?ならいいけど」

なんか長くなりましたね。それでは本編へどうぞ



 俺は1月の後半になって深谷に引っ越し準備をし始めた。小さいものから自分で持っていけるものはもう持っていった。胡桃は仕事に行っていたが、俺はひたすら神保原と深谷を電車で往復していた。神保原から御徒町までの定期があるからいくら往復しても問題ない。

 

「ふぅ…あと3日か」

 

俺は独り言を呟いた。今日は1月29日。結婚から22日、引っ越しまであと3日だ。

 

「少し休んでくか…」

 

俺はまだベットを置いていない寝室の床に寝転がった。俺だってこれで6往復半だから疲労が溜まっている。俺が寝転がっていると、彩から電話が来た。

 

「はーい、休んでる柊でーす」

 

俺はだらけて電話に出た。しかし、彩は緊迫とした声だった。

 

《胡桃ちゃんが!》

「まず落ち着いて。胡桃がどうしたんだ」

《今電話あったんだけど、病院で――》

 

俺はすぐに電話を切って家を駆け出した。鍵だけ閉めて、ケータイだけをもって深谷駅に走った。定期区間なんて全く無視してとにかく最初に来た12:42発特別快速小田原行きに乗った。高崎線内は最速で抜けられる。問題は大宮から小山。ルートを条件無しで選ぶと、大宮で13:38発東北新幹線なすの259号(E5系)に乗り換えられると出ていた。普通電車だと17分遅くなってしまう。俺は高崎線の車内で、なすの259号の切符をとった。大宮13:38と書かれている。決定し、俺は大宮到着時刻を調べる。13:26と書かれている。

鴻巣を出発しても、俺は遅い気がしてならなかった。いつもだったらもう池袋まで来ているように感じた。もし、俺が病院に着くのが遅れて…

頭のなかで心拍数が書かれているモニターの1番上が0になったのが浮かんだ。同時にピーッと音がなる。こうなったら、胡桃は死んでしまう。俺はどうなるだろう。大事な人が俺のいないところで死んでしまう。俺も自殺するかな。俺が思う胡桃がいなくなるのはどれだけ嫌か、今知った。

 

【丸山彩視点】

 

 私は彩夏ちゃんとかりなちゃんを連れて、私は13:29発湘南新宿ライン特別快速小田原行きに乗った。胡桃ちゃんが病院に搬送された。大宮からは新幹線って書いてあるけど、さすがに…

 

 鴻巣を過ぎて、私は階段に近い号車に向かった。6号車から7号車を通ると、ロングシートに柊くんがうつむいて座っていた。

 

「柊くん」

 

返答はない。というか、目を開けてるのかも分からない。目開けてる?私は彩夏ちゃんとかりなちゃんと一緒に柊くんを囲むように座った。

 

「柊くん」

 

かりなちゃんが呼んでも反応はない。

 

「柊くん!」

 

私が耳元で呼ぶと柊くんは生き返ったかのように私たちに気付いた。

 

「あっ、あぁ…」

「柊くん、胡桃ちゃんの病院行くんでしょ」

「あぁ…大宮からは新幹線で」

「そうなんだ。私たち宇都宮線で行かないと」

 

柊くんは新幹線で行くそうだった。しかし、私は無理に一緒に行こうとすることはしなかった。柊くんが気付かなかったのは多分胡桃ちゃんのことを心配していたから。

 

「そうか…」

 

私は柊くんにはあまり離しかけずにずっといた。

 

【月島柊視点】

 

 俺は6番線に降りて、新幹線ホーム17番線に向かった。JREチケットで切符を買っているからスマホを改札に当てて17番線に向かった。

 

「17番線に、なすの259号郡山行きが到着します」

 

駅員による放送があった。俺は3号車自由席に座った。1駅しか乗らないが、意味はある。

 

 13:53に小山に着いた。徒歩5分のところにある病院に胡桃は入っているそうだった。俺は面会の許可を得て、胡桃の病室に行った。

 

「胡桃!」

「大丈夫ですよ。意識はあります」

 

よかった。胡桃はベットに横になり、布団を肩までかけていた。

 

「柊くん…ごめんね、引っ越しの途中なのに」

「何言ってるんだ。俺は胡桃のためだったらどこにでも行くよ。」

 

俺は胡桃に近づき、胡桃の手を握った。

 

「遅くなったな。なるべく急いだんだけど」

「ううん、大丈夫。」

 

胡桃から俺の手が握られるが、胡桃の手に力は入っていない。緩かったのだ。

 

「胡桃…力が…」

「あれ……言わないとね」

 

胡桃は布団を少し下げて、腹部を見せた。そこには包帯が巻かれていて、血が滲んでいた。

 

「仕事先でね、通り魔にあって。刺されちゃった」

「胡桃…」

 

胡桃は笑顔を作っているが、明らかに無理している。

 

「胡桃、無理しないで」

「…柊くんには分かっちゃうか」

 

胡桃から笑顔が消える。いたそうな顔こそしなかったが、俺は分かっていた。胡桃を刺したのは通り魔じゃないことを。

 

to be continued…




続きが気になりますねぇ。明日の夜か明後日の朝を目指すのでお楽しみに!


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第73話 知りたい

今回の登場人物
月島柊(主)
月島胡桃(主)
月島彩夏
月島かりな
丸山彩(準主)
以上5名
登場人物紹介
葉元胡桃(25)
柊と同じ高校の同級生で、高校2年生の頃から好きだった。胡桃は誘拐されがちで、第12話も誘拐されているところを助けていた。落ち着いている感じで、焦るときや、急いだりすることはあまりない。第70話以降は苗字が「月島」になった。
それでは本編へどうぞ



 俺がなんで刺した人を知っているか。それは、なんとなくで、可能性も高いとは言えないが、俺を刺した人と同じじゃないかと思った。俺が三咲に刺された(詳しくは第40話)から、胡桃も刺しておきたいと思ったんだろう。三咲がすんでいるところは分からないが、この近くの可能性も0ではない。俺は胡桃にこの事を伝えた。

 

「そうだったんだ。三咲って、後輩だよね」

「1つ下。だから、そうかなと思ってさ」

 

俺は三咲の話をした。胡桃も三咲のことは知っている。

 

「まぁ、今は治療に専念しよう。」

 

俺は横の椅子に座って胡桃の手を握った。まだ力は十分に入らないんだろう。

 

「胡桃ちゃん」

 

彩たちが数分遅れて病室に来た。胡桃の周りは4人がいることになる。

 

「みんな…ありがとう。三咲は?」

「三咲?後輩じゃないの?」

「そうだけど、会わなかった?」

「うん。会わなかったと思うけど…」

 

胡桃は三咲のことを必死で考えていた。胡桃は刺されて痛いのに。その時、俺の頭のなかをあることがよぎった。

 

「あれ、かりなって舐めたら回復できるよな」

「うん。しようか?」

「よろしく」

 

かりなは胡桃の腹を舐める。胡桃の傷口は、最初は大きく、深かったのに、2分もしないうちに跡形もなく消えていた。見事だった。

 

「さすがだな、かりな。胡桃、動けそう?」

「えっと…」

 

胡桃がベットから立ち上がる。すっかり傷も消え、痛みもなくなったそうだった。

 

「動ける!もう帰る!柊くんと家にいたい」

 

胡桃は病院の人に言って、その日のうちに胡桃は俺と一緒に帰った。

 

 家に帰ると、三咲の身元を調べた。しかし、分かったのはたった1つ、年齢だけだった。24だというのは分かっているのだ。

 

「つかれたぁっ、柊くんキスぅ!」

 

俺は胡桃にキスした。胡桃はお返しにと俺は頬にしたのに胡桃は口にした。

 

「はぁ、眠い…寝ようかな」

「まだ4時半だよ。」

 

彩が俺に笑いながら言った。まだ16:30か。疲れたなぁ。なんか飲むか。

 

「あ、お兄ちゃん。これ胡桃ちゃんに渡してー」

 

彩夏がコップに入ったジュースを俺に渡した。

 

「俺のも盛っておいて。」

「オッケー」

 

俺は居間に戻り、胡桃にコップを差し出す。

 

「胡桃、飲むか」

「うん。」

 

胡桃はコップを持った。俺はコップが渡ったのを確認すると、キッチンに向かった。

 

「お兄ちゃん、グレープジュース」

「あぁ。ありがと」

 

俺は居間に再び戻った。今日も少し寒いくらいだったが、雪は降っていなかった。

 

「ん…なんかおかしい…」

 

胡桃がボソッと呟いている。おかしいって、何がおかしいんだ。

 

「何か入ってたか?」

「うぅん、味が変…」

 

俺がいれた訳じゃないから、彩夏がなんか入れたか?

 

「彩夏、なんか入れた?」

「え?何も入れてないけど…」

 

彩夏は驚いたように言った。じゃあ気のせいなのかな。そう思っていると、胡桃の顔が段々ピンクに染まっていった。

 

「柊くぅん、なんか火照ってる…」

「胡桃?一回部屋行こうか?」

「ありがとー。」

 

胡桃は俺の背中にのって階段を上がった。胡桃は揺れに合わせてこくこくと揺れている。

 

「胡桃、着いたぞ」

「うん…っ」

 

胡桃が俺の目を見た瞬間、胡桃は俺にゆっくり手を伸ばしてきた。

 

「柊くん…どうしてだろう、胸がキュンキュンする…」

 

胡桃は俺をゆっくり抱き締めた。胡桃は抱き締めると、俺の頭を撫でた。

 

「よしよし。」

「胡桃?どうしたんだ」

 

胡桃は撫でていた手を少しづつ下ろしてきて、俺の頭を胡桃に寄せてきた。

 

「なんか、柊くんを見ることしか出来ない…」

 

胡桃はキスこそしなかったが、俺の顔を近くでじっと見た。

 

「かっこいい…」

「ありがとう」

 

胡桃はまた抱き締めた。胡桃は力を少し抜いて、俺を優しく抱き締めた。

 

「柊くん…離れないでね?」

「うん。」

 

胡桃はベットに横になった。

 

 夜になり、俺と胡桃はすぐ横に寝ていた。胡桃のことはたくさん聞いていたが、俺のことは全くと言っていいほど話していなかった。

 

「柊くんのこと、知りたい。」

「…分かったよ。話そうか」

 

【追憶】

 

 俺は小学校高学年から今みたいな性格だった。落ち着いていて、今は段々治ってきたが、人とも話さない子だった。それもあってか、周りから「友達いなそう」とか言われていた。事実だったけどな。

俺の生活がガラッと変わったのは中学校に入ってから。中学校ではたくさんいじめられるし、知らない子もいる。苦痛でしかなかった。しかも、俺へのいじめはエスカレートしていって、ついには不登校。月に1回行けばいい方だった。中学校でも俺のことを守ってくれた人はいたけど、女子で、「女子より弱いのかよ」と笑われて言われたりしていたため、結局不登校は変わらなかった。

俺は受験の時も学校には行かなかったが、家で猛勉強したお陰で、遠距離の高校に行くことが出来た。中学校だけは、一生なってほしくない人生だった。あの子は、今何してるんだろう。中学校の頃、俺を守ってくれた女子は。もう一度会ってお礼を言いたいな。

 

【現在】

 

 俺は10分かけてこの話をした。胡桃も飽きずに聞いてくれていた。

 

「名前って覚えてる?」

「ああ…っと、覚えてないかな…」

 

もう12年も前のことだ。しかも、中学2年で転校してしまい、俺は14歳から会っていない。同窓会もまだしてないし。

 




2100でジャスト終わらせた。2101から長編小説になっちゃうから。
次回は彩夏の紹介を前書きでやるので、楽しみに待っててね。あと、スケジュールは
前日20:30から22:30まで小説書き
当日6:40から7:29まで小説書き
当日7:30から18:30まで学校・夕食
当日18:45から19:30まで最終確認・小説書き
19:30を目安に毎日投稿
という感じです。休日(部活あり)は
前日20:30から22:30まで小説書き
当日6:40から7:18まで小説書き
当日7:20から12:50まで学校・昼食
13:00から14:00まで最終確認・小説書き
14:15を目安に第1回投稿
14:20から14:35まで小説書き
14:35から17:00まで休憩
17:00から18:00まで小説書き
18:00から18:30まで夕食
18:40から20:00小説書き・最終確認
20:10を目安に第2回投稿
こんな感じですかね。


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第2短編作品 第74話 追憶

今回の登場人物
月島柊
月島彩夏
月島かりな
名前不明の人物
以上4名
人物紹介
月島彩夏(13)
柊の妹で、かりなと双子。見た目では判断が難しく、唯一の見分け方がヘアピンの色。彩夏が青、かりながピンクになっている。しかし、柊からすれば別の見分け方があるらしい。柊はヘアピンをしていない風呂を上がってすぐでも分かり、呼び方を統一させても分かる。最近になってかりなが「柊くん」と呼ぶようになり、呼び方でも区別がつく。




 俺が彩夏やかりなと同い年の時、俺には友達もいないし、周りは「好きな人いる?」とか話しているが、俺には全く関係なかった。

俺は母さんにも反対し、最後に髪を切ったのは1年前。髪は前に垂らすと目が隠れるほどに長かった。いかにも陰キャみたいな感じで、運動神経がいいのも隠していた。

部活が終わっても俺はすぐには帰らず、音楽室に15分ほど残り、みんなが帰ったあとに俺は帰っていた。学校のなかも全く人影はなく、稀に3年生の先輩が帰っているくらいで、週4は誰もいないときに帰っていた。

しかし、この日だけは音楽室の清掃があって、残れたのは5分だけ。俺はなるべくゆっくり歩いて校舎を出た。

俺が1人で帰っているのは会いたくないのもそうだが、それ以外にパルクールで帰りたいから。

俺は学校から出て柵によじ登り、そのまま低い家から高い家に乗り移り、帰っている、人間じゃない人間だった。

俺は周りに人がいないのを確認してパルクールで帰った。

 

 翌日、俺は同じクラスの女子に話しかけられた。目元は見えないが、多分鋭い。

 

「月島くん、ちょっと来て」

「え…」

 

俺なんかしたか?と思うようにして俺は女子に呼び出された。廊下はまだ夏で暑かった。

 

「昨日、なにで帰った」

 

ヤバイ、見られてた。どこにいたんだ。俺は今すぐに死にたい気分だった。

 

「……」

「答えて!」

 

俺は眩しい世界に包まれた。学校の壁をまともに見たのは何か月ぶりだろう。

 

「…言えない…」

「なんで!」

「嫌いなんだ、人が。」

 

俺は女子を振り切って教室に入った。

 

 それからその女子はずっと付きまとってきた。部活の帰りも一緒に帰ると言ってきた。仕方なく話さずに帰ってたけど。

 

「…名前…」

 

俺は女子に話しかけた。初めてで、女子もビックリしていた。

 

「私?白雪――」

 

【現在】

 

 「白雪……」

「苗字?あの子の」

 

俺は思い出している途中に一ヶ所名前を聞いた場所があり、その名前を必死で思い出した。

 

「そう多くないから、転校先ってどこ?」

「…そっか…会えないか…」

 

転校先は…

 

「新潟…」

 

まだ新幹線の駅の近く、越後湯沢、長岡、燕三条、新潟駅周辺だったらいいが、最寄りだって新幹線の駅から離れている。

 

「まつだい…」

「まつだい?どこ?それ」

「北越急行。内陸部だよ」

 

俺はこれしか思い出せないなか、夜に俺は女子のことを思い出した。

今もいてほしい。もう一度会って、お礼を言いたい。俺が生きれている理由はその子に会えたから。もし、俺がその子に会ってなかったら、今は死んでいた。胡桃とも出会ってなかったかもしれない。

 




1日2投稿できました。短編作品だったからかな。次回は一旦その日の女子のことはお休み。胡桃の話しに戻ります。76話からはしばらくナナニジが主役、80話の長編作品からはまた女子のことを再開します。


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第75話 準備

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島彩夏
月島かりな
丸山彩
ナナニジ11名
以上16名
人物紹介
月島かりな(13)
彩夏と双子。見た目ではほとんど判断できない。かりなは夜に柊と外で話すのが大好きで、毎日の日課になっている。性格は落ち着いていて、家族、彩、柊にしか話しかけない。


 俺が仕事終わりに家に帰ると、いつも通りかりなが玄関で待っていた。俺はすぐ行く、と言って中に入った。

 

「おかえりなさい」

「ただいま。明日も遅いかも」

 

今は23:50。胡桃とも帰れない日が続いている。俺は荷物を置いて、かりなのところに行った。

 

「おまたせ」

「行こっか。今日もたくさん話そ」

 

かりなは俺と手を繋いでいつもの場所に向かった。かりなは髪を結びながら歩いていた。しばらくしていつもの場所に着いた。真夜中にいるから真っ暗だった。

 

「ライト付けるね」

 

かりなが明かりを置いて明るくなった。

 

「ねぇ、柊くんは、この時をどう思ってる?」

「俺がか…楽しいってよりかは嬉しいかな」

 

1人じゃなくなったから。それしか理由はなかった。

 

「そっか。柊くん、私ね、こっちの生活が好き。」

「急にどうした。」

「学校じゃなくて、柊くんとか彩ちゃんに教えてもらえるから。」

 

俺はかりなの兄。しかし、俺はいつの間にか妹として見ていなかった。俺の娘として見ていた。

 

「かりな、おいで。」

「…柊くんも、か…」

 

かりなは俺の肩に頭をのせてくる。俺はかりなの頭を撫でる。感触はなんか懐かしかった。

 

「最近ね、新しい能力見つけたの」

「なんだ?能力って」

「近い人の思っていることを当てる。柊くん、懐かしいとか思ってるでしょ」

 

本当に当たっていた。

 

「ただ気持ちが合うだけだろ。俺だって分かるさ」

「本当に?じゃあ言ってみて」

 

俺は能力ではなく魔法があるから。俺は透視魔法を使って、かりなの気持ちを読み取った。

 

「かりな?好きって思ってるのか…?」

「分かっちゃったか…私、お兄ちゃんとして見れなくなってて、結婚したいって思ってた。けど、私はまだ13だから諦めた。」

「かりな……俺とずっと一緒にいたいか」

 

俺はまだ話していなかったことをかりなに話した。

 

「俺と胡桃、2月から深谷に引っ越すんだ。」

「えっ、じゃあ、私と話せない…?」

「そこでだ、俺と一緒に来ないか。こっちには2人残すんだけど、彩夏と彩は最近仲いいからその2人を残したい。」

 

かりなの目はライトで光っていた。その正体は目でとどまっている涙だった。

 

「かりな、嫌だったら来なくていいんだ」

「行く。」

 

かりなの目から涙が流れ落ちる。

 

「もう、一緒にいよう…?」

「かりな……分かった。2月1日からだからな」

 

俺はかりなの涙を拭いて言った。2月1日はたまたま俺と胡桃の会社が休みで、その日に引っ越す。新しい新居はかなり広く、リビングにもエアコンがついていて、7人分の個室がある。4部屋は使わなそうだけど、誰かの保護や来客があったときに泊める部屋でいいだろう。

 

 翌日1月30日。引っ越しまで48時間を切った。こっちから持っていくものはあまりない。向こうで買うことになるし。お金には問題ない。魔法科高校卒で月100万もらってるし、仕事でも月20万貰ってるから月120万入ってくる。エアコンはついてるし、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、ベットは通販で新居宛に注文した。全てが今日到着する。俺は胡桃と一緒に、俺が車を運転して新居に向かった。彩夏とかりなは彩に社会を教えて貰っている。

 

「駅にして何駅だっけ」

「3駅。そこまで遠くないさ」

 

 

 新居に着くと、俺はベットのまだない寝室であの時のように寝転んだ。

ゴロゴロと胡桃が左右に転がっている。まるで子どものように。

ピンポーン

呼び鈴を鳴らす音が聞こえた。

 

「はーい」

「テレビですね。サインを」

 

俺はサインをして、テレビを受け取った。早速俺一人で設置を行った。

ピンポーン

また音がなった。

 

「私出るよ」

「あぁ、ありがと」

 

胡桃が玄関に走っていった。胡桃はサインを「月島」としたらしく、持ってきたのは洗濯機。

 

「重くないか」

「強化魔法かけてるから大丈夫」

 

胡桃は風呂場のところまで洗濯機を持っていく。俺はLANケーブルなどを繋いでから胡桃のところに向かう。

 

「胡桃、って、もう設置終わったのか!?」

 

もう洗濯機は試運転していた。しっかり稼働していて、あとは木工工事や電気担当の俺だった。

 

 ベットは胡桃と一緒に設置して、冷蔵庫は俺だけで設置した。ベットは俺と胡桃、かりなが入れる3人ベットと一人で寝たいとき用の2段ベット。下の段には本棚がある。

 

「これでいつでもできるね」

「あぁ、あれか」

 

俺はベットの上で胡桃と横になった。そして胡桃と顔を見合った。

 

「んっ」

 

一瞬のキス。俺はベットから出た。

 

「また明後日にかりなと来ような。」

「うん。絶対」

 

俺は胡桃と約束した。胡桃はそのあとにハグする。了承した合図だったんだろう。

 

 




いつもより1時間くらい遅れましたが、書き終わりました。


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第76話 大雪

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島彩夏
月島かりな
丸山彩
人物紹介
月島暁依(22)
柊の唯一の弟であり、妹、弟の中では1番の年上。力は柊に続いて2番目で、妹たちを抑えられる。学校でも、「苗字は読みやすいのに名前が読めない」とも言われるらしく、本当の名前は「つきしまあきより」。



 今日は1月31日。今日は大雪で、首都圏の鉄道各線は午前中に東京都乗り入れを中止。高崎線は大宮駅で折り返し、本数を5割程度に、湘南新宿ラインは午前中の運転を取り止めた。宇都宮線も大宮駅で折り返すが、本数は5割程度に削減された。そのため、胡桃は高崎まで高崎線で出て、両毛線を通って小山に行った。混んでいないところを狙ったらしい。俺は会社が東京都内のため、午後2時からの仕事になった。彩の学校も大雪で休校。俺たちにも大きな影響を与えた。

 

 10:30ごろになると、雪が少しづつ止んできた。10:40に山手線が運転を再開し、10:55には宇都宮線、高崎線が上野まで運転再開。11:20に中央線、総武線、京浜東北線、東海道線が運転再開、11:50に首都圏各線(上野東京ラインを除く)が全て運転を再開した。俺はいつもの池袋経由は困難だと思い、上野まで高崎線で行くことにした。12:00だとまだ混んでいるため、12:30頃に家を出た。外は真っ白で、雪もまだ降っている。俺はかりなと彩夏を連れて外に出た。

 

「寒い…」

「ちゃんと上着来てろよ。」

 

神保原に着いても、いつもは人のいない神保原が今日に限ってはホームに人がびっしりだった。乗る予定にあった電車は4時間遅れ、来たのは神保原8:38発予定小田原行きだった。4時間遅れで運転していた。行き先も小田原ではなく、上野に変更されていた。

車内は明らかに混んでいて、座席はもちろん、つり革も余っていなかった。

 

「俺がドアに手つくから、両手の間にいて」

「うん。分かった」

 

かりなが俺の腕に入ってくる。彩夏もそれに続く。

熊谷駅でも人が大量に乗ってくる。いつもより混んでいた。

上尾駅でも乗る人が多く、彩夏とかりなを押し潰していた。

大宮駅では降りる人もいたが、それ以上の人たちが乗ってくる。

 

「柊くぅん、らめぇ…」

「おにいちゃあん、胸はぁ…」

 

胸を掴んでいたのは俺だった。しかししょうがなかった。

上野には4時間半遅れて14:40に着いた。雪はほとんど止んでいたが、まだ少しだけ降っている。

 

「マネージャー、雪掻きを」

「オーケー。」

 

俺はシャベルを持った。しかし、かりなが俺をじっと見る。

 

「魔法は?」

「あ、そっか」

 

俺は火炎魔法を使って雪を一気に溶かす。ナナニジメンバーは雪が溶けた直後に来た。

 

「おっはよー!」

「もう3時近いけどな。」

 

時間を思い出すと、今日は泊まりかぁ。と思ってしまった。

 

「寒いから中入ろ」

「あぁ…あっ、あーやそこは!」

 

俺が言ったときにはもう手遅れだった。ドアの前にあった、凍っている水溜まりに滑って転んでいた。

 

「いったー…」

「おいおい、大丈夫かよ」

 

もうみんな入っていた。入ってないのは俺とあーやだけ。

 

「入るぞ。」

「はーい」

 

俺は今度のナナニジメンバー旅行で計画を決めた。宮城に行って、奇跡の一本松を見たあと、新潟に行くことにした。

 

「マネージャー、天気が」

 

俺は天気予報を見た。東京都の天気予報には、

2月1日大雪

2月2日大雪

2月3日雪

2月4日雪のち大雪

2月5日曇り

2月6日雪のち曇り

2月7日曇り

となっていて、ほとんど1週間雪が降っていることになる。なぜ急に雪が降るようになったのか、全く分からなかった。

 

「柊くん、雪大丈夫?」

 

麗華だ。

 

「多分。あ、そうだ。麗華、おいで」

「え?うん。」

 

俺は麗華を俺のデスクに呼び出した。麗華は少し力を抜いて立った。

 

「ここ座っていいよ」

 

俺の膝を指さした。

 

「え、重くない?」

「どんだけ俺力弱いんだよ。」

 

麗華は俺の膝にゆっくり座った。こうしたのはなんとなくだけど、話すことはあった。

 

「麗華、俺と今度付き合ってほしい」

「えっ!?何言ってるの!?結婚してるでしょ!」

 

俺には訳が分からなかった。結婚してるけど、付き合ってくれるだけでいいのに。

 

「何言ってるんだ?ただ引っ越しの手伝いに付き合ってほしいだけなんだが」

 

 泊まりになることはなく、最終で帰ることができた。かりなと彩夏はすっかり寝ている。車内は昼の混雑が嘘のようにすいていた。

神保原には1:21。かりなと彩夏を寝室に寝かせて、俺は胡桃の部屋に向かった。

 

「寝てるか…」

 

さすがに1時を過ぎたら寝てるよな。俺は彩の部屋にも立ちよった。さすがに…

 

「あ、柊くん。お帰りなさい」

「あぁ。…って、え?」

 

起きてるんかい。俺は彩と少しだけ話した。

 

「柊くん、最近遅いね」

「今日は大雪で仕事が遅れたから。明日はオンラインで行うって」

 

さすがに大雪で行けないことが分かったのか、明日は東京都外を対象にオンラインになった。北は栃木、南は静岡の熱海からオンラインが繋がる。

 

「オンラインだと短い?」

「あぁ。1時間くらい。10時半から」

 

明日は何が止まるんだろうな。

 

 翌日も朝から大雪で、今日は群馬や新潟が大雪になった。両毛線が桐生~高崎で運転見合わせ、高崎線は高崎~籠原で運転見合わせ、信越線、上越線は全線で運転見合わせ。胡桃は会社に行けない孤立状態になり、全員が仕事を休んだ。

 

「柊くん、寒いなぁ」

「はぁ…」

 

遠回しに抱いてって言ってるか?

 

「おいで」

「わあい!」

 

胡桃は俺に飛び込んでくる。やっぱりこれが目的か。居間の気温もストーブなしで3℃を下回っていた。

 




13:42最後まで終了
13:45題名作成、その他変更
13:46第77話作成開始
14:15投稿


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第77話 胡桃の秘密

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島彩夏
月島かりな
丸山彩
以上5名
人物紹介
月島冬菜(20)
ツンデレで少し乱暴な言葉遣いな時もあるが、内心では柊や暁依が大好き。酔うと本心を出し、ツンデレからデレデレになる。地元が埼玉だからか、北海道より埼玉が好きだったりする。


 テレワークが終わり、ストーブもだんだん効いてきた。気温も10℃を超え、暖かくなってきた。雪は相変わらず止む気配はなく、俺は駐車場の雪かきをするため外に出た。

 

「寒いなぁ」

 

皮膚が痛くなるほど寒かった。俺は火炎魔法を弱めに使って雪を溶かす。

 

「お兄ちゃーん」

「あ、彩夏。どうした?」

「あのねあのね、裏に雪だるま作ったの!」

 

彩夏は元気があって寒さなんて関係なさそうだな。俺は彩夏についていった。裏には5つならんだ雪だるまがあった。

 

「一番右がお兄ちゃん、2番目が胡桃ちゃん」

 

それだと3番目が彩夏、4番目がかりな、5番目が彩なんだろう。俺は彩夏の頭を撫でた。

 

「上手だね。」

 

その時、家に中からガッシャーンと音がした。俺は急いで家の中に入った。

 

「なんだ、って…」

 

胡桃の頭に乗っているものがピクッと動いた。俺が喋るとそれがピクピク動く。

 

「胡桃?なにそれ」

「耳かな?」

 

ピクッと動く。

 

「触っていい?」

「いいよ…」

 

胡桃が俺に頭を近づけた。俺はピクピク動いている耳を優しく触った。猫耳みたいな感覚で、柔らかかった。

 

「んひゅっ、くっ、くすぐったいぃ」

「くすぐったいのか」

 

俺は人の耳を舐めた。

 

「?」

 

胡桃は不思議そうだった。こっちに感覚はないのか。次は猫耳を舐める。

 

「あぁっ、舐めるのらめぇ…」

 

胡桃の猫耳に感覚がいったのか。俺は猫耳をモフモフした。

 

「くしゅぐったい!りゃめてぇ」

 

胡桃は恥ずかしがっている。俺は胡桃の猫耳がかわいいと思いながらも、治す方法を考えた。

 

「回復魔法かな、それか浄化?」

 

俺は浄化から試した。胡桃の顔が光り、猫耳は消えていた。少し悲しい気もしたが、胡桃は居間に戻っていった。

 

「柊くん、来て」

 

彩が廊下で俺を呼び出した。

 

「なんだよ」

「胡桃ちゃんね、実は…」

 

彩が言ったのと雪が屋根から落ちたのが同時だった。俺は彩から言われたことに驚いた。驚いたというより、衝撃だった。

 

「え…嘘だろ…」

「今度、行ってみれば?」

「あぁ。分かった」

 

胡桃と俺の間に亀裂が入ったわけではないが、胡桃がされていたことを、俺が理解してなかった。

 

「あと、柊くん」

 

彩がもう一言いった。

 

「胡桃ちゃんは、柊くんのこと大好きだよ」

 

俺はうなずいて廊下に留まっていた。胡桃をドア越しに見ていたが、そんなことはなにもなかった。そういえば、最近お風呂を拒否してたっけ。ずっと深夜に入ってたな。

 

「胡桃…俺が気付かなかったのか。」

 

 

 翌日は弱い雪で、前日の大雪で遅延が発生しているだけだった。俺たちはやっとのことで、2日ほど遅れて引っ越しをした。かりなははじめての新居にワクワクしていて、俺は運転していて、胡桃は俺のことを察したのか後部座席で黙っていた。

 

「ねぇ、どうしたの?」

「運転に集中しないと。初めてだから。ここ通るの」

 

俺は運転を言い訳にした。

 

「……」

 

胡桃はくらい表情。やっぱり自分でも分かってるのか。

 

 家に着くと俺は遅れている高崎線に乗って仕事に行くふりをした。胡桃は相変わらず両毛線方面に向かっている。俺はその後続に乗って高崎へ行き、1両後ろの号車で胡桃を見守った。

 

「次は、新前橋です」

 

新前橋手前に来ても、胡桃の周りには人が全くいない。

 

「まもなく、新前橋です。上越線はお乗り換えです」

 

新前橋で人が1人だけ乗ってきた。俺の知らない女性だった。声は聞こえないが、なにか向かい合って話している。その時だった。胡桃は上半身を自分から脱いで、女性が胡桃を殴った。俺は思わず胡桃のところに走った。

 

「胡桃!」

「っ!来ないで!」

 

俺はその声を無視して胡桃を俺がいた号車へ連れていった。貫通扉をロックし、俺は胡桃を守った。しかし、俺の意識は段々となくなっていった。

 

 俺が起きたのは伊勢崎にあるラブホテルだった。しかし、そんなの今の俺には関係ない。

 

「胡桃…無事か」

「何してたの!私を助けるためだけに!」

「だからだよ。」

 

俺は静かに寝たまま言った。

 

「胡桃が可愛そうだった。それでもダメだったら、悪かった」

「…なんでいたの」

 

胡桃は俺に少し低い声で言った。いつもの胡桃じゃないことは分かってる。

 

「彩から聞いた。1週間暴力受けて痣があるって」

「そっか。」

 

俺はベットに横たわった。

 

「柊くん、痣がある人、嫌いじゃないの。」

「痣がある人が嫌い?だったら」

 

俺は自分の背中を脱いで見せた。俺の背中には大きな痣が今でも残っている。

 

「俺は自分が嫌いってことになる」

「…じゃあ嫌いじゃないの?」

 

胡桃は俺の横に座って言った。

 

「嫌いじゃない。普通の痣だったら治るし」

 

胡桃は俺に抱きついた。

 

「柊くん、もう内緒にしない。柊くんには全部話す」

 

俺は胡桃を抱き締めた。柔らかい体が俺にくっついてくる。

 

「そっちの方がいい。胡桃、俺、なんで倒れたんだ」

「柊くんの体に害がある濃度の塩素があったの。」

 

塩素か。理科でやったな。俺、薬品を使うときにはなんか起こるから、教員試験の時には苦労したな。今ではなんともないけど、少しダメな気体もある。

 

「塩素か。危険物質だから使うなよ」

「はーい!柊せんせ!」

 

胡桃は俺の上に乗っかった。

俺と胡桃は仕事の休みを取った。2月2日から2月15日までは暇になるから。まぁ、2月10日に旅行があるけど。

 




製作過程
17:21暫定で終了
17:23題名決定
17:33第78話製作開始
20:44最終確認終了
20:45投稿


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第78話 旅行前日

今回の登場人物
月島柊
立川絢香
以上2名
人物紹介
立川絢香
柊とは柊が高校生の時からの知り合いで、それぞれ「あーや」「つっきー」と呼んでいる。絢香はメンバーに「だろ」等を使って少し口調が悪いが、柊に話すときにはすごく可愛く、普通の口調になる。


 俺は休みの中、プライベートとしてあーやの家に行った。

 

【3日前】

 

 あーやに2月4日に家に来るように言われ、俺は予定を全て空けた。

 

「おっ、つっきー本気なんだぁ」

「本気じゃないけどな。」

 

【現在】

 

 ということで、俺は昼の10時頃に深谷駅を出た。尾久駅から少し歩いたところで、絢香の家はある。

尾久には11:09。絢香は私服を着て改札口で待っていた。

 

「やっほー、つっきー。」

「あーや。て、うおっ」

 

あーやは俺に抱きついてきた。可愛くて、茶色い髪が大きく揺れた。

 

「お願いがあったから。行こ?」

 

あーやは俺を家に招待した。

あーやの家に着くと、あーやは俺をくるっとした目で見た。

 

「ナナニジ全員で旅行行くでしょ?」

「行くね。それで、どうした」

「つっきーと2人で、1日でいいから旅行したくて。いい?」

 

2人きりで旅行か。楽しそうだ。そう考えたら、胡桃と2人で旅行行ってないな。

 

「いいけど、いつだ」

「2回旅行行くの手間だから全員旅行の前日?」

「いいよ。」

 

2人で旅行か…胡桃は来ない方がいいから、悪いけどあーや以外のナナニジメンバーについていってもらおう。

 

「あーや、新潟でいいんだよな」

「うん。」

 

だったら、まつだいに行きたいな。

 

「じゃあ、行こっか」

「え?けど、あと6日あるよ?」

 

あ、そうだった…

 

「つっきー、そういうとこあるんだぁ」

「一応人間だから」

 

魔法使える時点で人間離れしてるけど。俺はあーやの家で特になにもしなかったが、旅行の打ち合わせだけで終わった。2月9日に行くから。

 

 すっかり疲労が溜まって、帰る気すらなくなった。俺は楽な飛行魔法で空を飛んだ。120km/hで飛行するため、30分ほどで着ける。自動飛行モードにして、俺は飛行中に寝た。物凄く楽だった。120km/hは高崎線が出せる最高時速。その速度を保っている。鳥が飛ぶ高さより高いため、ぶつかるものはない。ぶつかったとしても、保護魔法を同時使用しているためけがはしない。鳥は死ぬかもだけど。

胡桃は深谷の家のところで待っていた。ブレーキ力は6m/sで、止まるまでに20秒かかる。今回は完全停止ではなく、段々降りて、3m/sくらいのブレーキで止まることにした。

 

「オーライ!down、down!」

 

胡桃が俺を誘導する。俺は誘導にしたがって降りる。

 

「オッケー!」

 

空中に30cmほど浮いている時に降りる。こうした方が安全だ。

 

「お帰りなさい、あなた」

 

あなたって呼び方にはなんか違和感感じるな。今まで柊くんって呼ばれてたから。

 

「柊くんでいいよ」

「じゃあ、柊くん♪」

 

俺は家に入って、かりなをリビングに呼び出す。胡桃もリビングに来て、みんな揃った。引っ越したことだし、各自のカラーを決めたくなった。

 

「何色が好きなんだ、かりな」

「青、とか?」

「私緑!」

 

じゃあイメージカラーはかりなが青、胡桃が緑でいいな。じゃあ俺は?

 

「俺の色なんだと思う?」

「黒?」

 

闇に包まれてないです。

 

「紫?」

 

闇からはなれて?お願いだから。

 

「髪の色から白?」

 

俺の髪灰色なんだけど。どこが白髪なんだよ。しかも灰色の中でもかなり濃い方だし。

 

「灰色!」

 

やっぱりそうなるんだ。

 

「分かった。青、緑、灰色な」

 

俺はベットに向かった。胡桃とかりなもついてくる。

 

「柊くん、一緒にいるって言ったでしょ」

「そうだった。じゃあ、俺を囲むか」

 

俺が真ん中で寝て、胡桃が左、かりなが右に寝た。かりなは俺を撫でてくれて、胡桃は俺を舐めている。しかも、舐めているところは俺の口。俺が少し口を開くと、舌が入ってくる。

 

「んぐ」

 

胡桃は舌が取れなくなって戸惑っている。かりなはずるいと言わんばかりに胡桃の口と俺の口の間を舐める。っていうか、かりなが舐めたら!

ピカッと光り、回復と同時に胡桃の舌と俺の口、かりなの舌がくっついてしまった。

 

「んんんんんんんっ!」(どうするんだよっ!)

「んんんん!」(知らない!)

 

まずい、全く伝わらない。俺は指で浄化魔法をかける。光って、かりなは取れた。俺たちも少し動いたが、キスして取れなくなった。

 

「おうううんあお!」(どうするんだよ!)

「うぅん、無理やり離す?」

 

かりなは俺と胡桃の顔を離そうとするが、全く取れない。というか、胡桃は調子にのって舌を絡めさせてる。

 

「取れないっぽい?」

「あぁぁぁぁ!?」(はぁぁぁぁ!?)

 

俺は今日1日、胡桃とキスしただけで終わった…

 




20:44暫定終了
20:45最終確認終了
20:46投稿
20:47第49話製作開始


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第3短編作品 第79話 2人きりの旅行

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
立川絢香
以上4名
人物紹介
白雪??(25)
柊と中学校が同じで、中1から仲が良かった。しかし中2で白雪さんが転校してしまい、どこにいるかも分からなくなってしまった。しかし、25歳になった柊は、白雪さんを探しに行くことにした。


 俺は家を1人で出ていった。あーやとの旅行で大宮の待ち合わせだった。胡桃とかりなは不安そうに俺を見送ってくれた。俺は手を振って家をあとにした。

大宮駅についても待ち合わせの18番線までは距離があった。俺は18番線に向かい、あーやを探した。端から端まで見て回ると、熊谷よりのホームの端にあーやはいた。

 

「あーや、ここにいたのか」

「あ、つっきー…聞いて…」

 

やってきた新幹線に俺たちは乗った。あーやと俺は1番後ろの席を取っていて、あーやを窓側にさせた。

 

「話はなんだ」

「ごめん。昔を思い出しちゃった」

「昔、か。」

 

あーやは自分の過去を話し出した。

自殺しようと思ったことがある。だとか、今もそうなっちゃってる。など、俺に相談してきた。

俺は自殺しようと思った、ではなく、自殺しようとした。今回探そうと思ってる白雪さんがいなくなって、俺が1人になってから。でも、これは違うと思った。だって、

白雪さんに悪いから。悲しむから。会えないから。

俺はこう言った。そして、

人には「自殺」と言う言葉がいつかは浮かんでくる。俺の中では、1回でも「自殺」が思い浮かばない人は本当の人間じゃないと思ってる。でも、ここで分かれるんだ。自殺してしまう人と、自殺しようとしただけで終わらせる人。してしまったら後戻り出来ない。俺は自殺しようとしただけで終わらせた。

こう言うと、あーやは泣き出した。俺はあーやが心配になり、抱きしめた。

 

「あーや、大丈夫。俺は信じてる。自殺する人じゃないって」

「うん…落ち着く…」

 

あーやは俺の腕にしがみついて深呼吸をし、やがて眠った。

 

 越後湯沢は雪が降っていて、電車の本数も7割程度に減っていた。今度乗る予定だった8:20発北越急行犀潟行きは運休となり、9:14発北越急行超快速スノーラビット新井行きに乗ることになった。

 

「雪すごいなぁ、つっきー」

「あぁ。」

 

9:14発超快速新井行きは12分遅れて越後湯沢に入線した。その後、12分遅れた9:26に出発した。

 

「あーや、本当に俺に合わせてくれて良かったのか」

「いいよー、別に。」

 

六日町には11分遅れた9:41に到着、十日町には11分遅れた9:51、まつだいには10分遅れた9:59に到着した。

 

「一回ホテル取ろうか。」

「はーい」

 

俺は近くのホテルを予約した。歩いて10分のところにある。

 

「じゃあ、明日胡桃が来たら探すから、今日は休もう」

「私はみんなをまとめる。クリステルとか迷いそうだし」

 

 




21:59「うん…落ち着く…」まで終了
22:12再開
22:25「9:59に到着した」まで終了
22:34再開
22:48暫定終了
22:49最終確認終了
22:50投稿


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第7長編作品 第80話 凪沙

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島彩夏
月島かりな
白雪??
ナナニジ11人
佐々木碧
白水百合花
以上18名


 俺はあーやと分かれてから、大雪のなかまつだい駅で胡桃たちを待った。胡桃も、秘密を全て話すと言ってから、俺と同じ中学で、白雪さんのことも思い出したと言う。特徴は白い髪で、サラサラしているらしい。

カタン、カタン

電車の音が遠くから聞こえてきた。胡桃たちが乗っている電車だ。大雪のなかで、少し徐行してやってきた。ホームに電車が入ってきて、ドアが開く。

 

「やっほ、柊くん」

 

右手を開き、俺に手を向ける。その背中からかりながひょこっと顔を出した。

 

「柊くん♪」

 

電車から降りて、胡桃とかりなは右手を開き、俺に向けた。そして後ろからまた誰かが顔を出した。

 

「来ちゃった。柊くん♪」

 

彩夏だった。かりなが2人出ているような光景で、ヘアピンなしだから胡桃からすれば見分けがつかない。

 

「えっと、どっちがかりなちゃん?」

「はーいっ!」

 

嘘つけ。お前は彩夏だろ。声の高さが違う。

 

「違うだろ、彩夏」

「ブーッ、バレたか…」

「なんで分かるの?」

「声の高さかな。」

 

3人は俺を先頭にしてホテルに向かった。胡桃が俺の後ろ、彩夏とかりなは横並びだった。

 

 そして14時を過ぎ、4人で白雪さんを探しに行った。俺は白雪さんの家を回りに聞いて探した。結構珍しい苗字だから分かるはずだ。しかし、何人に聞いても知らないと答えられ、俺は路地裏に入った。

 

(俺もこういうとこいたな…)

 

俺は路地裏からまた出ていく。

調査を進めると、駅から500m離れたところにある家だと分かった。俺はその家に向かった。家では「家出した」と言っていて、俺は周りを探した。

 

「柊くん!見つかった?」

「まだ。家出したそうだ」

 

かりなと途中で会い、また別々に探し始めた。

 

 探し始めてから2時間、もう暗くなってきた。俺たちはまつだい駅で集合して、情報交換した。

 

「家出したって」

「私もそれくらい」

 

全員家出のことしか知らなかった。見つからずに、今は17:15。電車が遅れて入線してきた。

 

「見つかってないの?」

 

声がした。その方向を見るとそこには…

 

「みんな!?」

 

ナナニジのメンバー全員がいた。みんな懐中電灯を持ち、探す気合いがあった。

 

「探してあげる」

「…ありがとう。この周辺をくまなく探してくれ」

『おーっ!』

 

俺たちは15人で探し始めた。

 

 真っ暗な中、別の路地裏に俺は入っていった。その路地裏はかなり狭く、人一人入れるくらいだった。その時、奥の方から銃弾が飛んできた。

 

「っ!」

 

俺はギリギリで交わす。俺は前に進みながら警戒していた。

やがて、真っ暗な闇の中から奥には銃を震えた手で持った女性が見えた。

 

「何してるんだ」

「来ないで!」

 

よく見ると、白い髪の若い女性。白雪さんっぽかった。

 

「白雪さん…」

「誰…私を侮辱しに来たんでしょ」

 

白雪さんは俺を睨み付けるように言った。

 

「月島だよ。一回、落ち着こ?」

「嫌…嫌…いやあぁぁっ!」

 

白雪さんは近くにあった少し尖った石を俺に向け、そして振り下ろした。俺はその手を止めた。

 

「白雪さん、落ち着いて!」

「もう嫌!月島くんでも、もう!」

 

俺は白雪さんを抱きしめた。同時に手も取り押さえた。

 

「何が嫌か、言ってみろ」

「…性格が…」

 

白雪さんは自分の性格が嫌だと言った。

 

「ちょっと呼びづらいから、名前教えて」

「凪沙…性格、相談いい…?」

 

【白雪凪沙視点】

 

 私はいつからか、悩んだり、抱え込んだりすると雪が降るようになった。夏や秋でも雪が降る。そんなことになっていた。私が悩み始めたのは中学2年生。月島くんと分かれ、転校してしまったときから。だから、嫌だった。もう一度会いたいと思って。

私がこう言うと、月島くんは私から離れた。

 

「今日と明日あいてるか」

「うん。空いてるけど…って、まさか!」

 

月島くんは路地裏から私を連れ出した。そして私の手を掴み、駅の方に飛んだ。

 

「柊くん!」

 

下の方から誰かが月島くんを呼んでいた。月島くんは地上に降りた。

 

「見つかったよ。あと、旅行、みんなで行こう」

「うん!」

 

みんなで行けるんだ。私は月島くんに再会して、よかったと思った。

 

【月島柊視点】

 

 翌日、俺は新幹線の貸し切りをやめ、飛行するための台を大きめに出した。これで飛んでいく。俺と胡桃とかりなが円盤を出し、16人が3つに分かれる。1つ5、6人くらいだ。俺の方には第1期メンバーの内、絢香、麗華、ジュン、悠希、ニコルを乗せた。目的地は仙台だ。

 

「じゃあ行くよ。自動運転モードになってるね」

「うん。」

 

ってか、言うの忘れてたけど、胡桃とかりなは俺への追跡モードにしないとダメじゃん。

 

「俺への追跡に変えて」

「えーと、ほい!」

 

したことはこっちで確認できる。前の透明な画面に「karinaが追跡しています」と「kurumiが追跡しています」とテロップが出る。俺は仙台まで自動運転モードにして出発した。18:42発だった。4m/sの加速だから、120km/hまでおよそ75秒で到達する。120km/hまで来ると、避けられることが低くなるため、オートにしている1番後ろのかりなにテロップで指示した。

 

〈胡桃の追跡にして〉

分かった

 

俺の透明な画面に「karinaが追跡を終了しました」と表示された。胡桃の方にテロップが出てるんだろう。

速度計に115km/hと表示され、胡桃とかりなの列は俺を先頭に1列になった。

 

柊くん、あれやりたい

あれって?

じゃあ上行って?

 

これ以上行くと結構な高さなるけど。まぁやるか。俺は上に上がった。

 

じゃあいくよ!速度50km/hまで落として

分かった

 

6m/sで速度を落とす。30秒ほどだ。

50km/hまで落とすと、胡桃に教えた。

 

落としたぞ

オッケー。

 

胡桃は暗い空で円盤を緑色に光らせた。かりなも青色に光らせた。俺は濃い灰色に光らせる。

 

「きれい…」

「俺たちが決めたイメージカラーなんだ」

 

俺は50km/hでずっと飛行していた。色も後ろを見ればきれいに見える。

 

「下からもきれいに見えてるんだろうな」

「そうね。」

 

236kmの距離があった。

 

 仙台までは、まつだい駅から約3時間かかり、22:50頃に到着した。

 

「みんな、先にホテル行ってて」

「はーい」

 

俺は凪沙だけを残し、みんなだけを先に向かわせた。

 

「凪沙、悩んでないんだな」

「うん。もう、会えたから」

 

凪沙は俺に微笑んだ。良かった。俺は凪沙への目的を果たすため、俺も言った。

 

「ありがとう、凪沙」

「どうして?何も…」

「俺を明るい世界に導いてくれた。」

「そっか。月島くん、地味だったもんね」

 

地味なのは事実だけど、いざ言われると傷つくな。

 

「月島くん、私ね、決めた」

「決めたって、何を」

 

凪沙は俺の顔に手を触れて言った。

 

「結婚はしない。月島くんと一緒にいる」

「え?家は」

「あそこ行くとまた悩んじゃう」

 

凪沙はそう言ってホテルに向かった。俺は真っ暗な空を見上げた。その真っ暗な空に手を伸ばす。

 

「やったよ、俺。」

 

俺はあいつに言った。周りには誰もいないのに、俺たった一人で喋った。空から返事が来たような感じがして、見守ってくれている感じがした。

 

 ホテルは一人一人の個室で分かれた。俺は一人でベットに寝た。1人でいる時間は大嫌いと言うわけではない。まぁ、胡桃といた方がいいけど、あんまり嫌いじゃない。俺は部屋の電気を消し、カーテンを開けた。外は新幹線の最終が出発していく時間だった。丁度最終の新幹線が出発し、仙台駅は静まり返っていた。

 

「柊くん」

 

俺はその声を無視した。ドアは開き、かりなが入ってくる。かりなはワクワクしたような顔で入ってきた。

 

「柊くん、こっち来て」

「え?ここじゃダメなのか」

「別にいいんだけど、雰囲気?」

 

俺はかりなの部屋に入った。かりなの部屋はオレンジ色の暖かいライトがついていて、カーテンを閉めていた。

 

「柊くん、キス、しよ」

「魔力は抑えろよ」

 

かりなが魔力を消し、かりなは俺とキスした。

 

「んっ、んんんっ、」

 

かりなは10分間に及ぶキスを堪能していた。俺が外に出たときには、もう静まり返っていた。

 

「もしもし、先輩?」

《おぉ、柊。どうした》

 

佐々木先輩だ。今ごろは小山の基地で仮眠してるんだろう。

 

「今って小山ですか」

《あぁ。明日の5:24発上野行き520M常務だ》

「次の休みっていつですかね」

《休み?えっと、明後日は休みだね。》

「じゃあ今度来てくれませんか?深谷駅いるんで」

《いいよ。あ、もう俺寝るわ。じゃ》

 

佐々木先輩は電話を切った。俺も寝ようかな。俺はベットに横たわって眠った。

 




テロップ部分の色分けは前回決めたカラーで行ってます。
人物紹介は時間を割けないため一旦休止です。
明朝体が1ヶ所変わってたことに気付きましたかね?
製作過程
20:17暫定終了
20:23最終確認終了
20:24一部変更
20:24投稿


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第81話 急用

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島彩夏
月島かりな
丸山彩
白雪凪沙
以上6名


 俺は翌日朝、急用が出来てナナニジを置いて先に関東に帰った。胡桃、かりな、彩夏も一緒だ。ここから行くのは鴻巣の病院。すぐ横の駐車場の空きスペースに降りる予定。彩が急に倒れ、救急車で搬送されたという。俺は凪沙、彩夏、かりな、胡桃を円盤の上に乗せ、飛行した。鴻巣までは2時間50分ほどで到着できるはずだ。

 

 ついたのは2時間45分後の10:50だった。彩の面会に俺は向かった。彩は病室のベットに横たわっていた。

 

「彩…」

「毒を盛られたそうですね…毒は抜いたんですが、意識が戻らなくて…」

 

毒を盛られたか。あるんだったら学校の職員室で盛られたんだろう。俺は彩の近くに行った。

 

「彩、守れなかったな…ごめん……」

 

俺は泣きながら言った。彩を助けられることもあったはずなのに。いつもそうだ、俺が守れないのは。人を守ったことなんてないのに、俺のせいで傷ついていく。

だから、俺は胡桃を守るために生きているのに。君かよ、彩。1つのことしか出来ない俺には到底無理じゃないか。

 

「柊くん…ついてきて」

 

胡桃は俺を病室から連れ出した。

 

「なんだ、胡桃」

「飲み物買いたいから、ついてきて」

 

俺は胡桃の後ろについていった。何回か階段を降りて、自販機の前に胡桃は止まった。

 

「ありが――」

 

俺の背中に弱い風が当たる。俺が後ろを向くと、注射器を持った男がこっちに走ってくる。俺が動いたのは男が通り過ぎてから。手の先が男に触れただけだった。

 

「胡桃!」

 

俺は胡桃に刺さった注射器を抜いた。注射器の中には毒が入っていたが、満タンから少し減っているだけ。致死性のある毒じゃない限り胡桃は死なない。

 

「なんだよ、急に」

「っ!」

 

男は走り去った。胡桃は俺に倒れた。手で抱え、一旦円盤を置いたところに運んでいった。

円盤のところに着くと、俺は刺された胡桃右腕を見た。注射痕があり、少し腫れ上がっている。

 

「胡桃、痛いけど、我慢できるか」

「柊くん!」

 

かりなが走ってきた。

 

「彩は」

「彩夏ちゃんに任せた。胡桃ちゃんは」

「毒が入った。少量だけど」

 

俺は空の注射器をもって言った。

 

「抜くの?」

「それしかないから。」

 

俺は胡桃の腕に注射器を近づけた。

胡桃に針を刺す…胡桃の血…人の血…見えるんだよな…しょうがないんだ、毒を抜かないと、胡桃が死ぬんだから。

 

「柊くん、落ち着いて」

「…かりな…」

 

かりなが俺の手を持つ。

 

「胡桃ちゃんが死ぬのと、注射して生きてるの、どっちがいい?」

「……っ」

 

そんなこと考えなかった。そうだ。死んだら元も子もない。

 

「胡桃、我慢してくれ」

 

俺は胡桃の腕に注射器を刺す。ゆっくりポンプをあげ、最初の2秒は透明な液、毒が出てきた。残りは全て赤い液、血だった。俺は吸うのをやめた。

 

「全部抜けたよな」

「うん。」

 

胡桃は円盤の上で眠ったままだ。

 

「生きてるよな…」

「起きれば…」

 

胡桃は起きる気配がない。本当に、死んだのか?

 

「胡桃…」

 

その時、胡桃が急に起き上がり、俺を抱きしめた。

 

「柊くん!驚いた?」

「不安になるからやめてくれ…」

「ごめんね?あ、彩ちゃんはどうなったの?」

「私だったらここだよ」

 

彩が病院から出てきた。彩夏の肩を借りながらも歩けている。

 

「よかった。みんな無事だね。じゃあ、彩夏。魔法使ってみろ」

 

彩夏にも魔法は使えるはず。だって、俺と血が繋がってるんだから。

 

「出来た!」

 

彩夏が俺より一回り大きい円盤を出した。

 

「いいぞ。じゃあ、かりなは胡桃が操縦する方に、俺はこっち操縦してから帰る」

 

免許は要らないけど、経験のない人には危険だから。

 

「じゃあ、帰るよ」

 

ゆっくり70km/hほどで飛行した。深谷までは胡桃と一緒に。そこからは操縦した。

 

 俺が神保原の家を経由して、深谷の家に帰った時間は12:00。胡桃はキッチンで昼ご飯を作っていた。

 

「柊くん、ご飯よ」

「柊くん遊んでー!」

 

久しぶりの家族らしい家族だった。凪沙はもう個室に向かったらしい。俺はかりなを抱き上げ、テーブルに向かった。

 

「いただきます」

 

かりなは俺の手からぴょこっと降りた。かわいい…

 

「いただきまーす!」

「かわいいね、かりなちゃん」

「そう?ありがと!」

 

かりなは実際にかわいいけど。胡桃だってかわいいけどね。俺は先に食べ終わると凪沙の個室に向かった。凪沙も昼ごはん食べるだろ。

 

「凪沙、ご飯食べないか」

「食べる!ちょっと待ってて」

 

凪沙は少ししてから部屋から出てきた。凪沙の服はすっかり着替えられている。

 

「ご飯♪ご飯♪」

 

凪沙はスキップしながらリビングに向かった。俺は凪沙の部屋に入る。

 

「ん?なんだこれ」

 

白い布製のものが俺の足元に落ちていた。俺はそれを掴む。感触はちょっと湿ってる?

 

「って、はぁっ!?」

 

パンツだった。マジかよ、隠すか?いやけど同じところに置いとかないとか。俺は同じところに置いて外に出た。凪沙のパンツ見てしまった…

 

「柊くん?どうしたの?」

 

かりなが俺を見つめた。

 

「なんでもないよ。」

 

冷静を突き通す。

 

「そう?だったらいいけど」

 

パンツ見たなんて言えるはずないだろ。

 




9月13日22:02「搬送されたという」まで終了
9月14日6:37再開
9月14日7:30「食べるだろ」まで終了
9月14日18:59再開
9月14日19:24暫定終了
9月14日19:29題名終了
9月14日19:30投稿


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第82話 休み

今回の登場人物
新メンバー登場!


 俺は今日1日休みだった。というか、久しぶりの連休で少しラッキーだった。今日は曇りで、気温は5℃だからか冬らしい天気だった。俺は暖房の効いた部屋で寝転がっていた。凪沙は猫のようにくるまっていたり、胡桃はお腹を天井に向けて寝ていたり、かりなは俺の上に乗ったり。様々だった。

 

「寒い…毛布持ってくる…」

「あ、俺も」

 

俺は凪沙と一緒に途中まで行った。そして俺の部屋に毛布を取りに行ってリビングに戻った。

 

「あっ、暖かそー!」

「一緒に入る?」

「うん!」

 

かりなは俺が持ってきた布団に一緒に入った。

 

「俺は眠いから寝るぞ。おやすみ」

「おやすみー」

 

俺は昼間にも関わらず寝た。

 

 俺が起きたのは12:40。昼ごはんはまだいいか。俺は気分転換に胡桃と上野まで出掛けた。仕事に行ってる気分がしたけど、俺は気にしなかった。

 

 上野に着くと、あーやが俺を待っていた。待っていたというのもなんか引っ掛かるが、7番線で俺を待っているっぽかった。

 

「あーや、どうしたんだ。」

「うん、この子紹介してなかったなって。事務所まで来て」

 

あーやの横にいたあーやと同じくらいの身長の子はあーやにしがみついていた。

 

「あーや…不思議な子を…」

「無口っぽかったね」

 

俺は事務所に向かった。もう本当に仕事行ってるじゃん。気にしないのはもう出来ないな。

事務所に着くとあーやがいつもの大広間で待っていた。あの横にいた人もいた。

 

「絢梨、自己紹介」

「……立川(たちかわ)絢梨(あやな)…」

 

絢梨ちゃんか。

 

「私の従姉妹。私とは仲いいんだけど、人には無口なんだよね」

「あぁ…そんな感じはした」

 

俺は絢梨ちゃんのところに近づいた。

 

「絢梨ちゃん、俺、柊。よろしく」

「……絢香ちゃんとは…どんな関係……」

「どんな関係って…アイドルとマネージャーだよ」

 

絢梨は俺を敵対するようなことはなかったが、あーやから離れない。

 

「つっきー、気に入った?」

「気に入ったって?ってかお前の従姉妹だろ」

「いいじゃん」

 

いいじゃん?何が。あーやどこも行かないだろ。

 

「何が」

「今日から2週間だけ引き取ってくれない?」

「あぁ、そんなこと。って…」

『えーっ!』

 

胡桃、俺、絢梨は驚いて大きな声を出した。

 

「いや、待て!なんだよ急に!」

「だって、こっちも忙しいし」

「…なんかされる…」

 

なんもしねぇよ。と思いながらも俺はため息を深くついて結局帰ってしまった。

 

 家に着くと俺は絢梨の部屋に案内した。話しづらいんだよなぁ、初対面だし。

 

「……なんかするんですか……」

「しないよ。」

 

俺は絢梨を送り届けるとリビングに戻った。絢梨とはなるべく近づかない方がいい。俺がリビングに戻ると、凪沙がようやく起きていた。

 

「凪沙、ちょっと電話いいか」

「うん。いいよ」

 

俺は暁依に電話をした。暁依に彩と彩夏の面倒を見てもらうためだ。あいつも3月で大学終わりだし、3月末からは見てもらおう。

 

「暁依?」

《あぁ、柊か。どうした》

「大学卒業したらさ、こっち来てくれないかな。」

《いいけど、何かあったのか》

「いや、彩と彩夏の面倒を見てもらいたくてさ」

《あぁ、いいぞ。けど、俺怖いとか言われるけど大丈夫か》

「俺の方が怖いだろ。じゃあ、よろしくな」

《はいはい。じゃあな》

 

暁依の方が確かに怖いかも。10人の中だと2番目だし、あいつ護身術使えるんだっけな。あとは俺と同じく魔法科高校卒業とか?100万は月で稼いでるよな。そう考えたら意外と力強いかも。俺には及んでほしくないけど。

 

「どうだった?」

「いいって。彩たちも不安だしな」

 

俺は凪沙と話していた。そういえば、俺なんか凪沙って呼んだことないよな。

 

「俺、何て呼んでたっけ」

「なぎ?確かそう」

 

なぎ、か。思い出した。

 

「そうだった。」

「私は月島くんって呼んでたでしょ?」

「あぁ。多分そう呼んでる人1人だけ」

 

みんな「柊くん」だとか「柊」などと名前の呼び捨てで呼んでいる。あーやは特殊だけど。

 

「じゃあ何て呼ぶ?」

「柊とかでいい」

「でも、呼び捨てだとなぁ。柊くんでいい?」

 

やっぱりみんなと同じなんだ。俺は首を縦に振り、なぎを抱いた。

 

「ほら、行くぞ」

「あっ、ちょっ!やんなくても…」

 

なぎは足をゆっくり揺らして抵抗している。けど、抵抗するんだったら強くやるか。俺の宿題だな。




「俺の宿題だな」のところ、感想欄に書いてみてください。正解はないので、道徳です。
製作過程
9月14日21:30「12:40。」まで終了
9月14日21:32再開
9月14日22:02「大きな声を出した」まで終了
9月15日6:53再開
9月15日7:22「不安だしな」まで終了
9月15日7:28再開
9月15日7:30「思い出した。」まで終了
9月15日18:49再開
9月15日19:55暫定終了(現時点20:30投稿予定)
9月15日20:55題名決定(現時点21:00投稿に変更)
9月15日21:00投稿


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第83話 目の血

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
立川絢梨
立川絢香
新メンバー1人


 俺は最後の休みから2日前、2月13日になり、絢梨の部屋に少しお邪魔しに行った。

 

「絢梨、今――」

 

絢梨は木刀を縦に振り、剣道の仕草をしていた。

 

「……」

 

絢梨は木刀を止め、俺の方をじっと見た。

 

「剣道でもやってるのか」

「…見たの…」

「あぁ…見た…」

「……いいけど、その分の代償はあるよね……」

 

代償って…そんな大きいことじゃないだろ。別にそんな過酷じゃないだろうからいいけど。

 

「代償、なにすればいい」

「…相手…」

 

相手って、剣道の練習相手?俺、やったことないんだけど。

 

「やったことないけど、いいのか」

「受け止めだけでいい。上野に練習場あるから」

 

絢梨は上野に向かい始めた。なんだ、毎日上野は行くのか。

 

 上野に着くと絢梨は練習場に向かっていた。俺も後ろについて行く。すると、あーやがヤンキー(?)に絡まれていた。絢梨はヤンキーに突っ込んでいく。

 

「あっ、絢梨!」

 

絢梨は俺を振りきって行ってしまった。ヤンキーに腹部を殴られ、絢梨は咳き込む。

 

「絢梨!」

 

俺は絢梨のところに走った。絢梨は腹部を押さえながらヤンキーを睨んでいる。

 

「おいおい、そっちが来たのに。俺たちは悪くないだろ――」

 

俺は1人のヤンキーの腹部を強く殴った。

 

「なんだ貴様!」

「いやいや、そっちが来たから俺が何しようと悪くないよな?そっちと同じ考えさ」

 

俺は目に魔力を溜め、俺はヤンキー3人に向かって魔法を使った。洗脳魔法だ。

 

「今すぐに、学校に行って自白しなさい」

 

ヤンキーたちは、自白、自白、と呟きながらゆっくり歩いていく。なるべくはこれだけで済ませたい。

 

「柊くん…何したの」

「洗脳させた」

「目、見せて…」

 

俺は絢梨に俺の目を見せた。洗脳魔法を目でかけたから水色かな。

 

「水色…きれい…」

「つっきー、目の色変えれるんだよ」

 

俺は雰囲気を察して、水色からもとの色に戻し、緑色にさせる。魔法としては回復魔法。治癒魔法はピンク色になる。

 

「あ、目…」

「ん?どうした」

「見えてる?」

 

急に聞かれて俺は左目を閉じた。

 

「赤い…」

「血、出てる。痛そう」

 

痛みはなぜかない。なにも。目の前が赤のセロハンを貼ったかのように赤く染まり、世界全体が赤く見えた。

 

「何でだろう」

「帰った方がいい……」

「いや、行くよ」

 

俺は左目を再び開く。左目はなにも影響はない。痛くないのは当たり前だが、視界も赤くない。

 

 練習場に到着すると、俺は木刀を受け始めた。手で全て受け止めていたが、ついに限界だった。右目に痛みを感じ始めたのだ。俺は近くで眼帯を買ってきて、すぐに右目に眼帯を付けた。

 

「柊くん……痛いんじゃん…」

「今痛くなった。」

 

俺は先に飛行して帰った。途中で目が痛く、自動運転にして俺は横になった。

 

 痛みが増してきて、俺はかりなに回復を頼んだ。かりなが舐めると俺の目に影響するから、指で触るだけで回復してもらった。

 

「はい、血は自分で拭く?」

「あぁ。ありがとう」

 

俺は水道で目を洗った。血の色がついた水が俺の手に垂れる。

 

(はぁ、俺、何で血なんか)

 

俺は目を水で洗いながら思った。目からの血が段々薄れてくる。

 

(神様が俺にバチでも当てたか)

 

俺はリビングに歩いた。もう痛みもないが、多分目の周りには血の跡がついてる。俺は鏡を見て傷口を探した。目の、下辺り。切り傷みたいなのがあるな。ここからか?いや、でも切った覚えはないし。

俺はこの日、眠くなってすぐに寝てしまった。

 

【??視点】

 

 よし、ぐっすり寝てる。

自分は他の2人を呼んだ。柊の血は止まっていて、傷口もそんなにのこってない。

 

「今日は足にしよう」

「YES」

 

足にナイフを近づけ、ナイフを当てた。柊の足首からは血が流れ出す。

 

「退散」

 

【月島柊視点】

 

 俺は痛みを感じて起き上がった。まだ5時にもなってなくて、4:45だった。俺は自分の体を隅々まで探した。足首、赤い液体。血だ。

 

(またか…俺、寝る場所変えようかな)

 

俺は家の外に出て、家の屋根の上に上った。まだ暗かったが、真っ暗ではなかった。

 

(闇、かぁ。)

 

俺は空を見上げ、闇を思い浮かんだ。下の道路からは誰もいない、と思ったが、1人だけ俺を見つめていた。

 

(げっ、誰だ、こんな時間に)

 

俺が下をみると、1人が手を振った。なんだ?俺は屋根から飛び降りた。まるで椅子から降りるかのように。

 

「誰だ、こんな時間に」

「彩ちゃんは!」

 

すっげぇ明るい。闇が嘘みたいだ。

 

「まだ寝てる。というか、今の時間分かってるか」

「6時くらい?」

 

どんだけ時間感覚ないんだよ。まだ5時にもなってない。

 

「まだ4時台だ。」

「そうなの?じゃあここで待つ!」

「はぁ!?家には入るなよ」

「入んない!」

 

じゃあいいか。というか、名前聞いてないな。

 

「名前は」

「丸山春菜!彩ちゃんの従姉妹!」

 

従姉妹?なんか従姉妹の関係多いな。

 

「そうか、よろしくな」

 

俺は屋根の上に再び上った。今度からここに防護魔法張って寝ようかな。固いけど。

 

 




7:29「絡まれていた。絢梨は」まで終了
17:25再開
17:35「済ませたい」まで終了
18:26再開
21:29暫定終了(21:30投稿予定)


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第84話 バレンタイン

 俺は彩が起きた音を聞き、春菜を家の中に入れた。俺はこのままいるからな、と目で合図を送り、俺は屋根の上にいた。暫くしてから胡桃が下から跳躍魔法で飛んできた。俺を探してたんだろう。

 

「ここにいたんだぁ」

「あぁ。外だと涼しいし。」

 

今日は晴れていて、涼しかった。胡桃は俺のとなりに座ってくる。

 

「ね、久しぶりに見せて?あの剣」

「あぁ…あの剣の役目は、もう終わったんだ。一応、今愛用してる剣は見せてもいいけど」

 

俺は便利系魔法、ストレージを開き、愛用している剣を胡桃に見せた。名前はDarksword。日本語に訳すと、暗黒剣になる。

 

「相変わらず真っ黒か」

「そうだな…最近剣作ってないから作ろうかな。胡桃もどうだ」

「作る!私もLightblueswordしかないし。」

 

それぞれ攻撃力は428。これ以上の力がいいんだが、誰も剣製造の知り合いはいないし、この剣も高校の卒業祝いでもらったやつだから。作れるには作れるが、攻撃力は最大250までしかいかない。

 

「かりな、結構意外なこと多いよな」

「うん。…あっ!」

 

胡桃も気付いたか。そう、ワンチャンかりなが剣を作れるんじゃないかと思ったのだ。けど…

 

「剣?無理無理!」

 

だよなぁ。あとそれっぽい人…

 

「拒否覚悟で聞いてみるか」

「誰?」

「絢梨に」

 

俺は絢梨の部屋に向かったただ剣道やってるだけで選んだけど、無理だろ。俺は無理だろと思いながらも絢梨に聞いた。

 

「絢梨、剣、作れるか」

「作れる…作りたかった…作っていい…?」

「あぁ。是非作ってくれ」

 

絢梨は普通の顔よりも少し口角をあげて笑っていた。

 

「要望は…」

「攻撃力428以上の剣。胡桃のは軽く、俺のは少し重くしてくれ」

「……作り概がある」

 

絢梨は俺と胡桃を見ずに、笑っていた。

 

「今日の22:00までには出来る」

「ん?時間かかるんだな」

「……ただ真剣に作りたいだけ…//」

 

少し顔を赤くした。俺は不思議に思いながら絢梨の部屋を後にした。胡桃も思い出したかのようにキッチンに走り出した。俺も後に続いてキッチンに入ろうとすると、ドアの鍵をかけられた。別のところからも入れなかった。

 

(なんなんだ…)

 

2月14日。明日から仕事なのに、俺は休んでいない気がした。俺はリビングでゆっくり横になった。

 

(足痛いし、筋肉痛かな。やらかした…)

 

俺は明日からの仕事を思い浮かばせた。あれ、というか電車で行く必要ないんだよな?だったら上野まで飛んじゃえばいいじゃん。

 

(楽になったな。)

 

俺はそのまま目をつぶった。起きるのは何時だろうか。

 

 結局二度寝してしまい、起きたのは14:40。あ、昼ごはん食ってないや。俺はキッチンに向かおうとする。あ、鍵かけてあるんだっけ。面倒だな…俺は仕方なくリビングに戻り、テレビを見始めた。テレビではチョコの作り方ばかりやっている。なんで急に。

 

「柊くん!来て!」

 

胡桃が呼んだ。胡桃の個室からだ。俺は胡桃の部屋に向かった。

 

「なんだ、胡桃」

「ハッピーバレンタイン!」

 

胡桃はハート型の包みを渡してきた。そうか、バレンタインデーか。じゃあ中はチョコだろ。開けると、ハート型のチョコが入っていた。

 

「胡桃…抱きついていい?」

「うん。」

 

俺は胡桃に抱きついた。

 

「食べていいんだよな」

「食べて!」

 

胡桃は俺に積極的に言ってくる。俺はハートの先端部分から食べていく。

 

「あ、美味しい。」

「やったぁ!食べてね!」

 

俺が全て食べ終わると、胡桃は俺の肩に手を置き、ぐいっと胡桃の方に引いた。

 

「口にチョコついてる。とってあげるね」

 

胡桃は小さい舌で口についたチョコを舐めた。

 

「はい。とれたよ」

「柊くん、こっちもいいかな」

 

またですか。俺はなぎの部屋に向かった。

 

「チョコじゃないからね?」

「あ、違うんだ。じゃあ何」

「ジュース」

 

なぎは俺にコップを差し出した。

 

「オレンジジュース。果汁100%だよ」

「あぁ。」

 

俺がオレンジジュースを飲むと、なぎは笑った。なぎは小悪魔みたいだった。

 

「それ、オレンジの味する?」

「しないんだが。何入ってるんだ」

 

なぎは俺にくっついて耳元で言った。

 

「それ、中に…」

 

俺は急に意識が乗っ取られた。

 

「惚れ薬入ってる」

 

俺はなぎと目があってしまい、なぎに抱きついた。

 

「なぎ、俺、好きになったかも」

「効果抜群ね。2時間したら切れるから、2時間私と一緒よ」

 

俺はなぎにくっついたまま2時間を過ごした。

 

 




7:00「涼しかった」まで終了
16:41再開
19:33現在、20:00投稿予定
19:53現在、20:30投稿に決定


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第85話 魔剣

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
立川絢梨
以上3名
久しぶりの人物紹介
立川絢梨(24)
絢香とは従姉妹の関係で、絢香に悪いことをする人のことは絶対に許さない。最初は柊のことも疑っていたが、最近になって柊のことも信じてくるようになった。みうやニコルと気が合いそうだと、柊は思っている。


 俺は2時間経って絢梨のところに行った。もう剣は出来てるかな。

 

「絢梨、剣は」

「先に出来たものある…来て…」

 

絢梨は俺を部屋の中に入れた。剣は未完成なのか剣立てに立て掛けてあった。

 

「チョコ。食べて」

「あぁ。」

 

今日2つ目のチョコか。1番食べてる日だろうな。絢梨のチョコは普通で、中にも何も入っていない。

 

「剣は胡桃ちゃんの出来た…これ」

 

絢梨は胡桃の剣を俺に渡した。俺の剣より明らかに軽い。けど胡桃にはちょうどいいだろう。

 

「ありがとう、チョコも美味しかった」

「うん。21:00にもう一回来て」

 

絢梨は来る時間を決めて俺に言った。俺はリビングに戻って胡桃に剣を渡した。

 

「ほら、剣出来たって。」

「おっ、緑色かぁ。名前は…Lightgreenswordか。」

 

ライトグリーンだったら黄緑に似てる感じかな。風魔法とか使えそう。

 

「俺のは黒なのかな、やっぱり」

「絢梨ちゃんが知ってたらそうだね」

 

黒の剣は俺好きだけど、強さは実は水色が1番高い。胡桃が結構強かったんだ。俺が強くなるか分からないけど。

 

 21:00になり、俺は絢梨の部屋に行った。どんな剣だろう。楽しみにしながら向かい、ドアを開けた。

 

「時間通り。これ…柊くんの、剣」

 

黒を基調にした剣で、薄く紫色が入っている。

 

「魔剣。魔法使えば色変わって、魔法の能力がそのまま剣につく」

「へぇ、すごいの作ったな」

「あと、暇だったから私のも作った。」

 

暇だったって…こんなの作って暇だったの?

 

「私のも魔剣。能力はそっちと同じ」

「そうなのか。胡桃のも魔剣か」

「違う。あれは緑の剣って書いてるけど、本当はライトソードなだけ。攻撃力は560あるけど」

 

それでもすごいんだけど。じゃあ早速斬りにいこうかな。

 

「絢梨、ありがとう。今から試しに行くけど、来るか?」

「うん…!」

 

絢梨の笑顔はすごくかわいく、女神のようだった。胡桃だってかわいいけど、みんな笑顔はかわいい。

 

 俺が仮想世界(ワールド)に転移が終了すると、早速スポーンした敵に剣を向けた。何でも攻撃魔法だったらいいんだよな。だったら…

 

「ふっ」

 

俺は火炎魔法を込めて敵に向かって走り出した。敵は燃えて灰になり消えていった。こういう感じか。

 

「いいな、この剣」

「…ストレージ、1つ剣入ってる」

 

気付かれたか…まぁ、隠すつもりはなかったし、教えるだけだったらいいだろう。

 

「昔使ってた剣なんだけどね。」

「見せて……?」

「見せないでおく。役目は終わったから」

 

捨てられない理由もあるんだが、今説明する必要はない。俺は絢梨の試し斬りが終わると、現実世界に戻った。時刻は21:46。明日から仕事だからもう寝るか。

 

「絢梨、仕事一緒に来るか?あーやいるぞ」

「行く…!……けど、電車、混んでる…」

 

電車で行った方が安心するか。じゃあ、最寄りの深谷から出てる、1日2本の始発乗ってくか。6:33と7:07は当駅始発で、6:33が上野行き、7:07が新宿経由小田原行き。上野だから6:33でいいだろう。

 

「座れちゃえば楽だよ。安心して」

「良かった…」

 

本当は飛んで行こうとしたけど、絢梨が来るんだったら違う方がいい。高所恐怖症だったらかわいそうだし。

 

 翌日6:10、家を出ていった。胡桃とかりなは違う時間に出ていったため、俺と絢梨2人だった。6:33は深谷駅に来る15両でもレアな電車。2本を除いて、全て籠原から先に行く場合は10両以下になる。

俺と絢梨は余裕で座れて、上野まで楽に通勤できる。

 

「俺の隣座りな。通路側は俺行くから」

「うん…絢香ちゃんとは、マネージャーとアイドルの関係?本当に」

 

なんだ、急に。マネージャーとアイドルの関係以外にあるはずがない。

 

「そうだよ。」

「私と、それ以上の関係になれる…?……」

「夫婦は無理だけど、一緒に暮らすくらいだったら」

「じゃあ、それがいい」

 

絢梨は俺に目を合わせずに言った。

 

「一緒に暮らす…それがいい」

「…分かった。あーやにも伝えようか」

「うん…」

 

俺は絢梨の肩に手を乗っけた。俺はそのまま眠気が襲ってきて寝てしまった。

 

【立川絢梨視点】

 

 上野の少し手前で、私は寝ている柊くんの肩を優しくトントンと叩いた。柊くんは起きる気配すらない。私は柊くんを揺さぶって起こした。

 

「柊くん、起きて」

「ん?絢梨…?」

「もう上野つくよ」

 

柊くんは寝ぼけているのか、頭の上に泡が破裂するようなものが見えそうだった。

 

「あぁ…降りないと…」

 

柊くんは上野駅に着くとドアから降りた。少しふらついている。外に出ても倒れそうなくらい。

 

「柊くん、気をつけて…」

「あぁ…絢梨、肩貸して」

 

柊くんに言われて、私は肩を柊くんの方に傾けた。柊くんは肩に手を乗せてバランスを取った。

 

「あれ、人いない…」

「もうみんな行っちゃった…」

 

私が柊くんに言うと、柊くんは前に来て、私の顔を柊くんに寄せた。

 

「え…柊くん…?」

 

柊くんは私の唇を奪った。

 

「誰もいないから。行こう…」

 

寝ぼけてる柊くんは何かがおかしかった。けど、嫌じゃなかった。

 

【月島柊視点】

 

 俺が事務所に着くと、11人がもう集まっていた。早く、俺からしたら助かったけど。絢梨の顔が何かピンク色になっていた。

 

「どうかしたか、絢梨」

何でも、ない…//

 




製作過程
9月17日20:31開始
9月17日20:38~21:53休憩
9月17・18日21:58~6:45就寝
9月18日7:30~19:59学校
9月18日20:43現在、20:45投稿予定
9月18日20:47現在、21:00投稿予定に変更
9月18日20:48題名決定
9月18日20:49、21:00投稿に決定
9月18日20:50投稿予約小説に追加


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第86話 立川絢梨

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
立川絢香
ナナニジ10名(絢香は除く)
立川絢梨
以上4名


 俺が事務所に着くと、11人はもう集まっていた。早くきたから俺からしたら助かったけど。

 

「みんな、久しぶりだね。あーやは話があるから後で来てくれ。それ以外のみんなはレッスンを」

『はーい!』

 

あーやだけが面倒くさそうだったけど、拒否権はないからな。だって同居したいのを伝えるんだから。俺は個室に絢梨とあーやを呼び込む。

 

「あーや、絢梨が――」

「同居したいって言ったんでしょ」

 

俺が言いたいことを分かってたのか。あーやはそのまま話を続けた。

 

「拒否はしない。けどね、1つだけ条件がある」

「条件は…」

 

絢梨が緊迫とした雰囲気で聞いた。あーやは声の大きさを変えずに言った。

 

「私も一緒に行く。というか、そのつもりだった」

 

まさか……あーや、このために…

 

「知らなかった?絢梨が同居したいって言うと思ってしたんだもん。いい?」

 

拒否できないからしょうがないだろ。

 

「いいよ。来な。」

 

俺はあーやに許可して話を終わらせた。みんなはもうレッスンを開始していた。

 

 今日は結構帰る時間が遅くなり、20:33発通勤快速で帰ることにした。下りで、帰宅ラッシュ時間帯はピークを過ぎた。一方の絢梨と俺の仲はよくなった。絢梨が仲良く出来る人には制限があるが、あーや、俺、かりな、胡桃とは話せるようになった。それ以外は話しづらいらしい。俺と絢梨はあーやから笑われながらもくっついていた。

 

「いつの間に仲良くなったのよ。つっきー」

「知らないよ。気付いたら」

 

絢梨は俺のところで気付いたら眠っていた。本当に、絢梨は「気付いたら」が多いな。

 

「絢梨、仲良くなった人とはべったりだからね」

 

絢梨は仲良くなった人とはべったりくっつく性格だとあーやが言っていたが、本当にべったりだ。それだけ単純なんだろう。

 

「すごいくっつくから、気をつけて」

 

え、そんなに?胡桃以上にくっつく人みたことないんだけど。

 

「くっつくって、物理的な意味で?」

「そうでしょ。長い時だと、私に2時間くらいくっついてたよ」

 

2時間って結構長いんですが?しかも2時間だと家帰ったらずっとじゃん。まぁけど、長くてだから短いと10秒とかでしょ?多分。俺は不安を抱えながらも絢梨を起こさずに座っていた。

 

 家に帰った後、少し不安な気分だった。何か事情をつけて外に出たい…

 

「かりな、2人で話すところ探さないか」

「いいね!行こ!」

「あ…私もいい…?」

 

そういう手があったか…拒否できないから連れてくか。俺は絢梨も連れて外に出た。

 

「少し高いところだよね、やっぱり」

「そっちの方がいいな。じゃあ、そことかは」

 

かりなと俺でいいところを探していた。そこに絢梨が言った。

 

「そこは…」

 

絢梨は少し丘になっているところを指差した。

 

「いいんじゃないか。絢梨、手柄だな」

 

俺は2人を連れて高台に向かった。俺はここに拠点の旗を立て、家に帰った。絢梨がくっついてくるなんて、そんなことないじゃんか。そう思いながら俺は風呂に入った。

 

(俺には絡まないんじゃないか?異性だし)

 

そう思っていると、ドアの向こうからエコーのかかった声が聞こえた。

 

「柊くん…上がったら私の部屋、来て…」

 

絢梨か。

 

「分かった。」

 

これでくっつくんだろうな。

俺はいつもより早めに上がり、絢梨の部屋に向かった。どんな感じなのか少し楽しみだった。

 

「来たぞ」

「ぎゅっ」

 

絢梨の女の子っぽい、柔らかい体が俺の全身に当たった。苦しくないのに、全身にくっついている。不思議な気分。

 

「柊くん、聞いた…?」

「くっつくってことか」

「そう…癖になっちゃって」

 

癖なんなんだったらしょうがないか。俺が離れようとすると、絢梨はまた力を入れてぎゅっと抱きしめた。

 

「だめ…くっついてないと…」

「…分かった…」

 

絢梨は俺の足を絢梨の足で囲もうとするが、バランスが崩れ、ベットの上に倒れてしまう。

 

「あ…絢梨、これは…」

「事故、って言うんでしょ。わざとの癖に」

 

絢梨の目がオレンジ色に光る。

 

(っ!オレンジ色は…!)

 

俺は止める間もなく目からの魔法を使ってしまった。

 

「柊くんは私と絡みたい」

 

俺の意識はいつの間にか乗っ取られていて、体は勝手に動いていた。

 

「絢梨…このままでいいかな」

「いいよ。」

 

俺は何でか、思ってもいないのに手が動く。これが洗脳魔法か。

 

「んっ、大胆…」

 

俺の手は絢梨の胸にかかっていた。こんなこと、望んでもいないのに、勝手に動いた。

バンッ!

後ろからドアを蹴って開けるような音がした。入ってきたのはあーやだった。

 

「絢梨!」

 

あーやは俺を退かし、絢梨を壁に寄りかからせて俺を向いた。

 

「洗脳されてたんだよね」

「あ、あぁ…」

 

俺はようやく正気に戻った。今までやっていたことが分からなくなるほどに俺は忘れていた。

 

「こっちから注意しておくから、気分転換でもしてきて」

「あぁ…悪いな」

 

俺は家の屋根に登った。定位置になりつつあったが、かりなもここにいた。

 

「話すの、ここでもいいかもね」

「あぁ、そうかもな」

 

かりなは俺に最近の悩みなどを相談する。同時に、俺も絢梨のことに関して相談した。

 




今回から投稿は19:30に一回投稿します。今週は日、月、火と3日連続で1日2回以上の投稿、3日間で6回以上の投稿になります。
また、人物紹介のことについて、誰をやってほしいか感想に書いてくれれば嬉しいです。
製作過程
9月18・19日22:00~6:38就寝
9月19日6:38~7:29製作
9月19日7:29~17:44学校
9月19日17:44~18:02製作
9月19日18:02現在、予定通り19:30投稿予定
9月19日18:12一部変更
9月19日18:13題名決定
9月19日18:13投稿予約小説に追加


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第87話 過去

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
月島暁依
人物紹介
滝川みう(24)
22/7メンバーの1人。センターを努めているが、後ろ向きで、人とのコミュニケーションが苦手。同じメンバーの絢香からは「クリステル」と呼ばれている。実はピアノの腕もあり、耳コピで全て弾けてしまう。コミュニケーションは苦手だが、自分の大切なものを守るためだったらとんでもない行動も…


 かりなが聞いてきたのはこれからの自分達について。これ以上はこの家にいる人数は増えないが、もう扱いに偏りができていて、不安だと言った。俺は偏りのことについてかりなに話した。

 

「正直に言うと、言い訳はない。偏りが出来ている」

「やっぱり。じゃあ、今1番話したいのは」

「俺は時によって話したい相手が変わる。今はかりなだけど、さっきまではあーやだった。」

 

俺は別に好きな人がたくさんいるような人間じゃない。ただ、俺の家に入ってきた人はみんな好きになる。だから、偏りが出来る。

 

「かりな、絢梨はともかく、自分から話しかけてくれれば俺も反応するよ」

「うん…私から、ね」

 

俺はかりなに相談をした。かりなだったら、伝えてもいいと思って。

 

月島かりな視点

 

 私が柊くんから相談されたのは、絢梨のことに関してだった。柊くん自身も、くっつかれるのはあんまり好きじゃないことは知っている。だから絢梨をどうしたらいいか、らしい。

 

「魔法でどうにか出来ないかな」

「洗脳魔法ってことだろ。すぐ切れるし」

 

魔法じゃあだめだったら、私がよくやってることでいいのかな。

 

「人に頼ればいいんじゃない?絢梨ちゃんだったら絢香ちゃんとか」

「人に頼る、か…頼りづらいからな…」

 

確かに私も頼りづらいけど、自分で抱え込むよりかは楽になる。

 

「抱え込むより楽だよ?」

「…俺さ、まだ他人を信用できなくてさ…」

 

まだ?昔になんかあったっけ?10年前の柊くんから知ってるけど、そんなのなかった気がする…

 

「お、柊。そこにいたのか」

 

下から見上げていたのはあきにい。柊くんを呼んでいるようだった。あきにいは屋根の上に登り、柊の横に座った。

 

「あきにい、柊くんが昔あったこと、知ってる?」

「昔か。お前が生まれる前だったかな。俺が小4の頃に――

 

柊の過去

 

 柊は、今よりも明るい時期があったんだよ。俺よりも2倍くらい明るくて、柊に影響を受けて元気になった人も数人いた。もちろん、柊にも人生で一回はある「病み」はあった。この「病み」は普通の人とは違う。言い方を変えれば「重度な病み」だったんだ。なんで病んでたかは柊本人に聞けば分かると思うが、柊はその「病み」を中学校半ばまで続いた。かりなは多分聞いただろうけど、柊が今の状態に戻ったのは凪沙がいたからなんだ。えっと、多分柊がなんで人を信用できないかだよな。病んでから人を信用したらまたこうなるって思ったんだ。だから、中2の時までは家族も信用してなかったんだ。かりなのことも、信用してなかった時代があったんだ。でもな、凪沙のお陰で俺たちを信用してくれるようになったんだ。凪沙には俺も感謝してるよ。

 

現在

 

 私は隣にいた柊くんになんで病んだのか聞いてみた。

 

「なんで病んだの?」

「学習支援教室で、15人くらい来るはずなのに俺しかいなかったことかな。」

 

1人でいたんだ。それで、自分がどうでもいいのかと思ったんだろうな。もう聞かないでおこう。

 

「そっか。今はいいんだよね」

「病まないからな。」

 

だったらよかった。私は柊くんの肩を枕代わりにして、屋根の上で眠った。いつもより、気持ちよく寝れた気がする。柊くんのことを知れたからかな。

 

月島柊視点

 

 暁依が俺のことをずっと話してると少し気まずかったが、嫌ではなかった。

 

「暁依、俺のことそんなに知ってたっけ」

「母さんに聞いた。」

 

母さんも母さんだけど、暁依も悪いだろ。俺はかりなの頭を撫でながら暁依をみた。

 

「俺は神保原の家行くからな。大学に許可もらって卒業した」

 

俺は左手を振って見送った。

 

「かりな、ぐっすり寝てるんだな」

「んんんん…好き…」

 

全く、かりなは相変わらず俺のことが好きなんだな。兄としても嬉しいよ。

 

 かりなを起こさないように俺は屋根の上を歩く。ここに防護魔法を張って寝ることにする。怪我もしないだろうし。いつもどこかに怪我をしてたらやがて貧血になってしまう。俺はかりなを起きないように撫でた。

 

(なんか、すごいかわいく見えてきた…)

 

寝顔は笑顔で、目も瞑りながら笑っているようで、かわいく見えた。風でかりなの髪がなびいて、ふわっと髪が揺れる。

 

「んん…柊くん…?いたの…?」

「あ、起きちゃったか。今日はここで寝る」

「私もいい?」

 

かりなはここにいさせたくなかったけど、仕方ない。

 

「いいよ、じゃあ寝ようか」

 

俺はかりなを守るために俺の方に抱きつけた。何かに刺さったりしたら危険だから。

 




10:46~12:35休憩
14:44暫定終了
14:46現在、15:00投稿予定
14:49一部変更
14:50投稿予約小説に追加
14:50、15:00投稿に決定


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第88話 夢

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
ナナニジ10名
立川絢香
以上13名
人物紹介
佐藤麗華(25)
22/7のリーダー。絢香からは「風紀委員」と呼ばれていて、リーダーシップのある頼もしいリーダー。しかし少し抜けているところもある。また、納得しないことはとことん反発する。少しポンコツなところもあり、ジュンからメスゴリラと言われたのにも気付かなかった。


【夢】

 

 「ねぇ、おいで」

 

女性の声が聞こえて俺はその声がした方向へ向かった。真っ暗で、所々に紫色のライトが光っている。そんな中を俺は1人で歩く。

 

「そうそう、もう少し」

 

最後にエコーがかかっている。そんなに広いのだろうか。真っ暗で広さも全くわからない。

 

「止まって」

 

俺がその場に止まると、俺の指先に冷たいなにかが触れた。かりなの手か?いや、こんなに冷たくない。じゃあなんだ。

 

「来て」

 

さっきの冷たい物体が俺を下に引っ張る。下は地面なはずなのに、どうして…

 

「速く」

 

引っ張るスピードが速くなる。なんだ、これは。

 

「誰なんだ、君は」

 

俺は引っ張られるのを抵抗しながら叫んだ。

 

「おい!ぐはっ」

 

苦しさのあまり吐き出すように咳き込んだ。口からは血が吐き出される。

 

【現実】

 

 「…!」

 

俺が目を開くと、青空が広がっていた。そうか、外で寝てたんだ。かりなは横でまだ寝ている。

 

「かりな、朝だぞ。起きろ」

「うう…ううああ…」

 

魘されている。俺と同じような夢を見てるんだろう。俺はかりなを揺さぶって起こす。

 

「かりな、大丈夫か」

「う、柊くん…私、怖いよ…」

 

聞きたくなかったが、俺はかりなや自分のためにも聞いた。

 

「どんな夢だった」

「柊くんが…私と別々になっちゃう夢だった…」

 

別々になる夢、か。血も繋がってるからそうなると嫌だな。義理だったらともかく(だめだけど)、俺がかりなと別々になることを考えたことがなかった。まず、一緒にいる前提で考えてたし。

 

「かりな…」

「だから!……」

 

かりなは大きく言った後に黙ってしまった。

 

「いっ………い…ね」

 

口元でモゴモゴ動くかりなの口からはたまに声が聞こえるだけだった。

 

「ん?なんだ」

「いっしょにいてね」

 

あぁ、なんだ。一緒にいてほしかったのか。

 

「あぁ。いいよ。」

 

かりなはパァッと明るくなった表情でニコッと笑った。

 

「絶対だよ!私と胡桃ちゃん、柊くんの3人で、ずっと一緒にいようね!」

「あぁ。絶対だ」

 

俺がスマホの時計をみるともう7:30だった。俺は電車に乗ってる暇じゃないと思い、あーやを呼び出して飛行した。

 

「早くしないと遅刻するぞ」

「はーいっ!」

 

かりなが手を挙げた。あーやは黙って円盤に飛び乗った。これで全員だ。俺は円盤を前に飛行させた。

 

 事務所につくとちょうど10人が入っていくところだった。あーやは俺より先に降りて、10人と一緒に入っていった。俺は直接俺が止まるときに使う部屋の窓に円盤を近づけ、止めた。窓を開けて俺は部屋に入り、かりなも俺について来る。

 

「なんかスパイみたい」

「ここ俺の個室だけどな」

 

俺は個室のドアを開けて廊下に出る。白い壁の少し明るい廊下で、ホテルのようだったが、1つ通路を曲がるとパソコンがたくさん並んでいる部屋に着いた。俺はいつもここではなく、もう1つの「準作業室」で仕事をしている。「準」とついているのは、作業室の裏方だから。立場は準作業室の方が上の傾向がある。準作業室は学校で例えると職員室みたいな感じだ。

俺みたいなマネージャーや、他社の社長、出張できているマネージャーなどがこの部屋を使うのだが、今月は俺しか使わないため普通の社員も交代で来ている。今日は男性社員2人。俺は真ん中の席で仕事をしている。

かりなはこの部屋に入れないという決まりがある。関係者ではない他、緊急時以外はなにもない部屋だからだそうだ。だからいつも外で待っていてくれる。

俺はかりなと廊下で分かれて、それぞれの仕事に移った。もう暇な時期なんだが、今度の団体ライブで準備が少しある。あとは特になにもない。

黙々と作業を続け、やがて昼休憩に入る。俺が休憩しようとすると、廊下からドアを2回ノックする音が聞こえた。俺が椅子から立ち上がり、ドアの方に向かうと、みうが両手をあわせて待っていた。

 

「あ、みう。どうした」

「あの…今度のライブ…演奏を…」

 

繋ぎが細かく整理しづらいが、要するに、今回のライブの演奏を?

 

「私にやらせてくれませんか…?」

 

演奏ってことはピアノかなんかかな。別にいいけど、外したらどうするんだ。

 

「音を外したら」

「外しません。やらせてください…」

 

やる気はあるな。じゃあ、試しにやらせてみるか。

 

「いいよ。」

 

俺が許可すると、みうは頭を下げて廊下を歩いていった。

 

 

 




19:20暫定終了
19:25一部改良
19:27、19:30投稿に決定
19:28投稿予約小説に追加


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第89話 咥える

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
立川絢梨
白雪凪沙
姫川杏
桃瀬心春
美海零
有栖柚
以上9名
人物紹介
姫川杏(12)
誕生日が3月のため12歳。吹奏楽部でユーフォニアム担当。地味な性格だが、柊の前だけではすごく積極的。元気な性格を見せる。姫川阿奈と姉妹で、阿奈が22歳の社会人。ちなみに、性格は真逆。


 俺は少し早めに事務所を出て、吹奏楽部に向かった。いけない日が多いが、果たしてうまくなっているか。

学校について音楽室に向かった。ここに来るときは毎回胡桃と合流してから行く。

 

「こんにちは」

『こんにちは』

 

俺が今回教えるのは楽器ではない。何を教えるかというと、呼び方、話し方についてだ。

 

「呼び方なんだけど、1年生にももうすぐ後輩が出きるね。だから、今まで敬語を俺にも使ってきたけど、ため口で話してみよう」

「あの…先生には敬語をって…」

 

俺はここで先生をやってるわけじゃない。ただのおまけ顧問だ。

 

「先生じゃないから。先輩にはため口っぽいからいいけど、俺と胡桃にもな」

『はい!』

 

まだ堅苦しいな。もう少し柔らかく返事、話してくれれば楽器を吹くときも楽だと思う。

 

「柔らかく話すために、じゃあ雑談しようか。」

「じゃあ私ね!」

 

胡桃から順番にただ話していくだけ。意識するのは敬語を使わないことだけ。

 

「最近、柊くんが私をおいてねー」

「仕事だろ。お前違うだろ、会社」

「けど、一緒に行った方が幸せかと思います」

 

敬語使っちゃったな。杏は口を押さえて慌てた。

 

「ため口な。」

「はい。けど、1人で行った方がいいんじゃないの?」

 

いい感じだな。雑談っぽいし、話し方もいい感じだ。

 

「やっぱそうだよな!心春!」

「うん。今度、会社行ってみたいなぁ。日曜日とか!」

 

心春はもう慣れたな。もうお願いまできたからな。

 

「日曜日か。いいぞ、来ても」

「私も!」

 

澪が手を挙げていった。

 

「あ、私も…」

 

杏もか。じゃあ全員まとめて連れてっちゃうか。性格も俺には開くようになったし、演奏にも支障はないだろ。

 

「じゃあ2月21日に、鴻巣駅で待っててくれ。あと、今日は帰っていいぞ」

「はーいっ!」

『お疲れ様です!』

 

 

 俺が家に帰ると、かりなとなぎで協力して夕飯を作っていた。いい匂いが漂ってきて…って、焦げ臭いな…

 

「ああっ!凪沙ちゃん止めて!」

 

なんだ!?しかも教えてたのなぎじゃなくてかりななのかよ!

 

「どうした!」

「火強すぎて焦げちゃったぁ…」

 

真っ黒な卵焼きになっていた。菜箸で掴んでみてもとても美味しそうには見えない。

 

「しまったなぁ、俺の料理スキルはないし、家庭科も苦手だから料理分からないなぁ」

「だよねぇ。」

 

誰か料理スキルを上げているやつがいないかな…家庭科得意だったり。俺が悩んでいると、今度はいい匂いがしてきた。

 

「焦げちゃったのね。大丈夫」

「気にしないで…出来るから」

 

胡桃と絢梨だった。2人で焦げた卵焼きを退かし、また新しく作り始めた。

 

「うぅん、濃いかな、味」

 

胡桃が味見しながら言った。

 

「じゃあ少し薄くする…」

 

絢梨が卵焼きを動かしながらも味を薄くしている。いいチームワークだ。俺じゃあ出来ないかもな。

 

「ん!ちょうどいい!」

「じゃあこれくらいにしておくね」

 

絢梨が焦げないように慎重に作る。胡桃は別の料理を作っている。俺はいると邪魔かと思い、自分の部屋に戻った。

 

(はぁ、つかれたなぁ。)

 

仕事に行くと毎回おもってる。ブラックではないんだが、遠いからか疲れる。

 

(なんかかりなのこと抱きたいなぁ。けど、嫌がられるか。)

 

俺はそんな欲望を自分のなかで打ち消し、ベットに飛び込んだ。

 

(あぁ、なんかいいことないかなぁ)

「柊くん♪どしたの?」

 

かりなだった。抱きたい、なんて言ったら殺されるよな。

 

「かりな、今なにしたいって思ってる」

「え?うーん、柊くんを楽しませたいかな」

 

楽しませたいか。どうやってか気になるけど、かりならしい考え方だな。

 

「そうだ!私、今したいって思ってたの。」

「何を」

「柊くんの口甘噛み!」

 

とんでもないこと言ってきたな。甘噛みとか、しかも口?口のどこだよ。

 

「口のどこを」

「唇。私の唇で甘く噛んであげたいの。楽しいでしょ?」

 

楽しいかはともかく、かりなといられるからいいのかもしれない。

 

「じゃあ、いくね。」

 

かりなは少し口を開けて、俺に近づけた。

 

「はむっ」

 

かりなは唇で、俺の唇を咥える。甘噛みじゃなくて咥えてるじゃないか。

 

「はむ、はんっ」

 

パクパクと口を動かしてかりなは俺を楽しませる。

 

「本気噛みじゃないんだな」

「してみる?」

 

俺が返事をする前にかりなは歯を使って唇を噛む。本気で痛い!

 

「痛って!」

「やっぱり?治すね」

 

舐めることになるが、すぐに痛みはなくなった。しばらく唇を咥えるのを続けていると、かりなは言った。

 

「もっといいもの見つけた!」

「いいもの?」

 

咥えるためにいいものなんてこの部屋にあったかな。アイス棒もないし。そう思っていると、かりなは俺の人差し指と中指の先端を咥えた。

 

「んっ、太くていい…キスも…」

 

今度はキスをしてくる。

 

「んんっ、んちゅ、しゅごい、気持ちぃ…」

「それだったらいいんだが…」

 

かりなはまた指を咥える。しかし、寸前で止めた。

 

「ふぅぅっ」

 

俺の指に息を吹き掛けたのだ。

 

「どう?だんだん近付いていくから、暖かくなるよ」

 

その通りにだんだん湿って、暖かい息になってくる。そして、2回ほどしたあと、奥の方までかりなは咥えた。舌で指を舐め回す。

 

「ん、んふぅっ」

 

かりなはピンク色の顔をして俺に言った。

 

「柊くん、ごちそうさまぁ」

 




19:28開始
21:45暫定終了
21:49、22:00の投稿に決定
21:50投稿予約小説に追加



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第8長編作品 第90話 不幸

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
月島暁依
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上7名
人物紹介
美海零(みうみれい)(13)
吹奏楽部メンバーの1人で、吹奏楽部1年生の中では積極的な方。全体的に静かだからまだ元気な方。2年生までいて4人がユーフォニアム担当。その内の1人。ユーフォニアムは得意な方。楽器の経験はほとんどない。


 俺はかりなから咥えられたあと、夕飯を迎えた。献立はご飯、卵焼き、回鍋肉。座った位置は俺が端に、時計回りに胡桃、あーや、絢梨、なぎ、かりなの順番。胡桃からご飯は食べさせてもらっている。なんでかって?そりゃあ俺だって自分で食えるさ。でも、かりなが早めにご飯食べ終わって、俺の両手の指をしゃぶってるから使えないんだよ。なぎも下いるしさ。

 

「はい、柊くん、あーん」

「はんっ、あぁっ

 

なんで喘いでるの?と思いながらも俺は胡桃からのご飯を頬張った。

 

【月島かりな視点】

 

 私が下から柊くんの手を舐めていると、私のお尻になにかが当たった。一瞬後ろを向くと、凪沙ちゃんの足が当たっていた。気付いていないらしく、下を向かない。

 

(気付いてよ…あっ)

 

何回も触れて、少し気持ちよくなってきちゃった。だけど柊くんの手舐めたい…

 

(いつになったら離してくれるの。早く、離して…)

 

足がずっと当たっていて、舐めるのもやめてしまった。

 

(んっ、力が…入らない…このっ!)

 

私は凪沙ちゃんの足首を掴んだ。そしてテーブルの下へ引きずり込む。

 

「んぐっ!な、何?かりなちゃん」

「足、当たってたの!」

 

私が小さく鋭く言うと、凪沙ちゃんは小悪魔みたいな笑みを浮かべた。

 

「ここに?」

んあっ!

 

手で触ってきた。絶対分かってる。

 

ちょっ、やめて…

「分かった。けど、何してたの、ここで」

 

そうだ、忘れるところだった。私は柊くんの指を触った。

 

「舐めてたの。する?」

「うん!する!」

 

私は凪沙ちゃんと一緒に柊くんの指を咥えた。

 

「ん、いい…」

「ん、でしょ」

 

私は凪沙ちゃんのほっぺと触れながら柊くんの指を舐めた。

 

【月島胡桃視点】

 

 私が柊くんにご飯を食べさせていても、嬉しいのは嬉しいが、舐めたいっていう思いもあった。隣には絢香ちゃんがいて、少し気まずいし。

 

「これで最後ね」

 

私が柊くんに食べさせるのが終わると、柊くんは私に向かってきた。

 

「どっ、どうしたの!?」

「あぁ、羨ましそうに見てたから。」

 

分かったんだ。柊くんにとって、私の思っていることを考えるのは簡単だったんだ。

 

「んっ」

 

指を舐めさせてくれるのかと思ったら違かった。口を直接くっつけた。

ちゅっ、ちゅくっ

口のなかで舌が触れあっている。

 

「はぁ、終わりだな、今は」

「ん。気持ちいぃ…」

 

 

【月島柊視点】

 

 通勤時は飛行していくのが当たり前みたいになり、最初はかりなだけを乗せていたのが、いつの間にかあーや、胡桃も乗せて飛行していた。絢梨は「剣道がある日もあるから」と言って一人で通勤している。俺は家の屋根の上から飛行し、事務所の入り口まで行く。

いつも通り青空を飛び、いつも通り雲のなかを飛んでいく。少し高度を落とし、雲の下になると、少し建物が見えてきた。そんな中を100km/h前後で飛行する。

自動運転でもいいんだが、せっかくだから自分で運転している。だから速度が一定じゃないんだ。98km/h~102km/hの間で飛行している。だけど一気に4km/h上がったりはしないから乗ってて違和感はない。

目の前になにかがあったりする高さじゃないし、飛行機より低い位置を飛んでるから、何もぶつからない。強いて言うんだったら鳥。けど防護魔法で人にはぶつからないようにしてるし、大丈夫だろ。今までぶつかったことないし。

 

「柊くん!前!」

 

俺が前をみると、5mほど先に黒と紫の混じった円形の物があった。空にそんなものあるのかと思い、俺が左に曲がろうとするが、102km/hで飛行中なのに5m先の障害物を避けられるわけもなく、そのまま暗闇のなかに突っ込んでいく。

 

「揺れないな…」

 

てっきり振り落とされるほど揺れるのかと思ったのだが、全く揺れない。普通に飛んでいても変わらないくらいだ。

 

「暗いから前見えないし…」

「あ、私円盤出すから止まって!」

 

止まるにもどこが壁なのかも分からないから、急ブレーキをかけた。胡桃が円盤を出し、そっちに乗った。

 

「私先頭行くから、後に続いて」

 

胡桃はライトを光らせた。黄緑色の光で、1番明るかった。そういうことか、俺は灰色で意味ないし、かりなは青で暗い色だから1番明るい黄緑にしたんだろう。

 

「30km/hで進むからね」

「分かった。」

 

自動運転じゃないから29km/hから31km/hになる。けど、速度正確だなぁ。

 

 30分が経っただろうか。ようやく胡桃の速度が落ちた。俺も速度を落とすと、胡桃が下に落ちていった。俺も下に落ち、かりなとあーやを抱き抱えた。

 

「うわあぁぁっ!」

 

下に落ちて、俺はかりなとあーやを上にして、俺は肩から落ちる。

 

「いってぇ…大丈夫か」

「うん。」

 

胡桃が横から寄ってくる。

 

「大丈夫?手貸すよ」

「あ、悪いな」

 

俺は胡桃の手を掴み、起き上がった。かりなとあーやは先に起き上がっていた。

 

「どこ?ここ。」

「知らない。暗くはないな。」

 

明かりがあって暗くはない。というか、チートっぽいけど、転移魔法で会社自体行けるよな。

 

「みんな、手繋いで」

 

4人の輪が出来ると、俺は

 

「転移、上野」

 

と言って、転移した。

転移した場所は上野の公園内。歩いて10分もかからずにつく場所だ。しかし、外はもう夕焼け空が広がっていて、時刻は16:40。もう行っても意味ないか。

 

「帰ろう、時間も時間だ」

「そうね。」

 

俺が飛行しようとすると、エラーが発生し、動かなかった。パネルには「充電不足です。70%になるまで充電してください」と出ていた。なんか過ぎるの早いな。

 

「電車になるなぁ。定期あるから問題ないけど」

「始発?」

「いや、高崎線上野始発は30分前後にしか出てないから5番線からだ」

 

次の上野始発は17:31発高崎行き。17時台だったら空いてるし、17:05発高崎行きでもあんまり変わらないだろう。

 

「グリーン車取ってくるから、先行ってて」

「はーいっ!」

 

ビシッとかりなが敬礼する。あぁ、幸せだな。こんな妹を持てて。

グリーン券売機でSuicaにグリーン券情報を書き込み、15両編成4号車に向かった。5両は籠原で切り離すが、1~10号車までは高崎まで行く。

 

「4人だから向かい合わせにするか」

「どっちでもいいよ!1階でも2階でも」

 

じゃあ1階だろ。俺は進行方向反対でもいいけど、なるべく酔わない方がいい。

 

「1階だな」

 

俺は1階に向かう階段を降りて、1番後ろの座席2列に座った。座席を回し、2人づつの向かい合わせにする。

 

「私、反対側に…」

「いや、俺が行くよ。俺のとなり誰座る」

「じゃあ私」

 

あーやだった。かりなと胡桃は進行方向に向かって座っていた。

 

「柊くん、今日何なんだろうね」

「ホントだよ…どうなってるんだ」

 

かりなは尾久を過ぎてからもう寝た。胡桃とあーやも寝ちゃったけど。

 

(やれやれ…まぁまだ時間あるしいいか)

 

俺は起こさないようにしていた。

 

 家についてからかりなと胡桃の顔に近づいた。キス寸前の近さだ。

 

「ちょっ、ち、近い…」

 

やっぱり。なんか傷あると思ったら、頬の下らへんに切り傷があった。血は止まったらしく、痂が出来ていた。2人とも同じだ。

もしかしてとは思ってたんだが、あの不思議な空間であったんじゃないかだ。胡桃とかりなは先頭を歩いてたからなったんじゃないかと思った。

ブーッブーッ

俺のスマホがなった。会社からの電話だ。

 

「はい、月島」

《マネージャー、絢梨さんが、マネージャーが巻き込まれたかもと》

「何にだ」

《真っ黒なブラックホールみたいなもの》

 

絢梨が電話に代わった。

 

《当たったでしょ。》

「あぁ。それがどうかしたか」

《それね、》

 

絢梨が少し間を空けて言った。緊迫とした空気が俺の周りに漂っている。向こうだってそうだろう。

 

《先頭を歩いてた人、危険かも》

 

前を歩いてた人って、かりなと胡桃のことか。

 

「前を歩いてたって、円盤が落ちてからか」

《そう。それから1番前を歩いてた人。誰》

「かりなと胡桃が横並びだったが」

《2人?》

「そうだよ。それがどうしたんだ」

《前を歩いてた人、いつも風邪引くって噂で、そのあとは》

 

絢梨が声を太くして言った。

 

《すぐに死ぬって》

 

死ぬ…?冗談じゃないんだよな?

 

「冗談じゃないのか」

《真面目な話。》

 

マジかよ…かりなと胡桃が、死ぬ?

 

《大体風邪が治って1週間後。》

「死なない方法は」

《凪沙ちゃんだったら知ってるかも》

 

俺はスマホをソファに投げ捨てて、なぎの部屋に走った。

 

「なぎ!」

「わっ、柊くん。どうしたの?慌てて」

 

落ち着いてる暇なんてないんだ!早くしないと!

俺が事情を説明すると、なぎは真剣な眼差しで俺をみた。そして、1つ間をおいて言った。

 

「そのブラックホールは自然現象じゃなくて、人工的に作られた物体なんだ。だから、その本人を殺せば病気はなおる。死ななくなるよ」

 

本人を殺す、か。けどどこにいるんだ。

 

「どこにいるんだ」

「分からない。知ってる人でもいるんじゃない?」

 

やっぱりそこは知らないか。知ってたらよかったんだけど。俺は自分の部屋に戻り、鍵を閉めた。

なんだよ、胡桃ばかり。俺が守る?ふざけるな。全く守れてないじゃないか。むしろ俺がいない方がいい生活してたんじゃないか。

 

「柊くん!開けて!」

 

なぎの鋭い声。しかし俺はがっつり無視した。誰の声も聞きたくない。ここで俺のことを理解している「理解者」はいないんだから。

 

 俺が30分近く1人でいると、窓から暁依が顔を出した。

 

「柊、聞いてたんだけど、あのブラックホールの本人。仮想世界の奴だ。調べたら、風邪が治った2日後にしか行けないらしくてさ」

「じゃあ、行かないとな。2日後に」

 

俺は薄い反応で言った。暁依は少し大声で言った。

 

「そんなんでいいのかよ。かりなや胡桃が死ぬんだぞ」

「俺には何も出来ない。出来るはずはない。」

 

暁依は俺の部屋に入ってきた。暁依は俺の肩を掴んだ。

 

「誰が柊1人だって言った。全員が協力するに決まってるだろ。俺がなんのために残りの妹全員に魔法教えたと思ってるんだ」

「暁依?魔法教えたって、こんな短時間で…」

「柊がこっち来てから進めてたんだよ。」

 

なんだ、俺はなんで1人だって決めつけてたんだ。味方なんて何十人もいたじゃないか。自分が情けなかった。

 

「決行日2日前に大宮で集合しようぜ。妹9人と」

「あぁ。11人で戦うのか。絢梨に剣を作ってもらわないと」

「忙しくなりそうだな。」

 

俺は絢梨に剣の依頼を言いに向かった。

 

【月島暁依視点】

 

 全く、柊は機嫌が戻るの早くていいな。剣を10本か。大変そうだけど大丈夫かな、絢梨って人は。

 




9月20日21:51開始
9月20日・21日22:21~8:32就寝
9月21日9:37~15:19休憩
9月21日15:46~16:03休憩
9月21日16:32~16:36休憩
9月21日16:41~17:03休憩
9月21日17:15~17:20休憩
9月21日17:28~18:09休憩
9月21日20:19暫定終了
9月21日20:26一部改良
9月21日20:27現在21:00投稿予定
9月21日20:28、20:50投稿予定に変更
9月21日20:30、20:45投稿に決定
9月21日20:31投稿予約小説に追加



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第91話 決戦の日前日

今回まではいつものメンバーが主役ですが、次回の第92話は彩たちの生活なので彩たちが主役になります。
第93話、第94話、第95話は決戦の日当日を前編、中編、後編の3つ繋げて行います。
そのあと、第96話は今回に繋がる暁依たちの視点なのでまた柊は主役から外れます。
第97話は調整用の短編、第98話は一般的に
第99話は短めの長編小説
第100話は長めになります。
おっと、前書きが長くなりましたね。それでは登場人物のあと本編へ!
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
妹9名
月島暁依
立川絢梨
立川絢香
白雪凪沙
以上15名


 俺は絢梨が剣を作っているのを待ってる間、かりなと胡桃のところに行った。早いと今日治るかもしれないし。俺はまず胡桃の部屋に向かった。

 

「胡桃、大丈夫か」

「柊くん…ちょっと来てぇ」

 

俺が胡桃に近付くと、胡桃は俺をギュッと抱いた。

 

「あ、いいな。これで、死んでもいいかも…」

「っ!死んじゃだめだ!」

「ん?冗談だよ」

 

俺は胡桃が言った言葉に大きく反応した。

 

「そうだよな…」

 

俺は部屋から出ると、あることに気付いた。

「死ぬ」という言葉に敏感になっている。これじゃあ、かりなのところに行ってもこうなるに決まってる。俺は1階に降りて、椅子に座った。

 

「柊くん、気付いたんだけど」

 

なぎが俺に寄ってきた。何に気付いたんだ?

 

「敏感になってない?死ぬって言葉に」

 

合ってた。俺はなぎを抱いた。

 

「なぎ、頼むから、しばらくこのままで…」

「いいよ。なんか柊くんのお母さんみたい」

 

なぎは俺の頭を撫でている。そんなことまですると、本当のお母さんみたいだな。

 

「辛いよね。」

 

背中を優しくポンポンと叩いた。保育園とかでよくあるやつだ。これ、昔から眠くなるんだよなぁ。

 

【白雪凪沙視点】

 

 私が柊くんの背中をポンポンと叩いていると、柊くんは私の肩に頭を乗せて寝てしまった。子どもみたい。私は自分の部屋に連れ帰ろうとした。誘拐みたいだけど、いいよね。

 

「柊くん、どうしたの」

 

絢梨ちゃんが絢梨ちゃんの部屋から出てきた。

 

「寝ちゃったから、連れてこうかなって」

「ちょっと貸して」

 

私が起こさないように柊くんを持って、絢梨ちゃんに渡した。

 

「私、剣も渡さないとだから寝かせとくね」

「うん。ありがとう」

 

絢梨ちゃんは柊くんを抱き抱えて絢梨ちゃんの部屋に連れていった。絢梨ちゃんだったら柊くんを寝かせられそう。安心して渡せた。

 

【立川絢梨視点】

 

 私は柊くんをベットに寝かせると、私は剣を作り始めた。最後の1本だった。

1本が作り終わると、私は寝ている柊くんの上に乗っかった。柊くんは仰向けで寝たまま私は顔を近付けた。

 

「柊くん…かっこいい…」

 

私は柊くんの口を触った。気持ちいい感触だった。

その時、ドアを開けて、絢香ちゃんが入ってきた。

 

「絢梨!やめなさい」

「はーい…柊くん起こしていい?」

 

絢香ちゃんは首を縦に振った。私は柊くんを揺さぶった。柊くんは少しして起き上がった。

 

「あぁ…おはよう。」

「朝じゃないよ。もう10時」

 

私は剣立てにあった剣12本を柊くんに見せた。

 

「10本は妹さんたちの。あと1本は柊くんの」

「ん?俺のはもうあるぞ」

 

違う。私の気持ちがこもった剣を2本作ったのだ。

 

「気持ちを混めた剣。2本あるから使って。あと」

 

私は柊くんの肩に拳を当てて言った。

 

絶対に勝ってきて

 

柊くんは私の拳を掴んで言った。

 

「勝つよ。胡桃とかりなを救うんだから」

「勝って、祝わせてよ」

 

横にいた絢香ちゃんも勝つように言った。柊くんは少し笑った。

 

「盛大に祝おう。みんなで」

「絶対ね」

 

私は柊くんを部屋の外に出した。もうそろそろ柊くんは戦場に向かうのだから。最後くらい、見送りたい。私は隣の凪沙ちゃんも呼んで、玄関に行った。胡桃ちゃん、かりなちゃんは呼ばなかった。柊くんが行きづらいと思って。

 

「頑張って。」

「あぁ。パーティーの準備しとけよ」

「うん!」

 

柊くんは玄関のドアを開けて外に出ていく。歩いて深谷駅まで行くんだ。

 

「じゃあ、行ってらっしゃい!」

 

みんなで手を振った。柊くんは右手を挙げた。あれが柊くんの返事だったんだろう。

柊くんは角を曲がり、見えなくなった。帰ってくると、私は信じている。

 

「絶対、帰ってくる」

「うん。絶対。」

 

みんなも信じていた様だった。

私たちは胡桃ちゃんとかりなちゃんの様子を見ることになった。多分あと1日で体調が急変するから。

 

【月島柊視点】

 

 俺はみんなに送られて家を出ていった。深谷駅からは10:42発湘南新宿ライン特別快速小田原行き。これで暁依たちが待っている、大宮に向かう。

 

(気持ちを背負って、勝たないとな)

 

電車は時刻通りに深谷駅を出発した。途中、籠原、熊谷、鴻巣、北本、桶川、上尾、大宮に停車する。所要時間は約45分。普通列車より8分早く着く。

途中熊谷には10:56

鴻巣11:07

上尾11:19

大宮には11:26に到着した。6番線に着いた電車から俺は降りた。改札口で10人が待っていて、暁依が手を挙げていた。俺は改札を出て、暁依の方に向かった。

 

「気合はあるな」

「もちろん!」

 

彩夏が言った。

 

「家族を救うんだからな。」

 

そういえば、彩夏がいるんだったら彩はどうしてるんだ?

 

「彩はどうしてるんだ」

「春菜に任せた。行こうぜ、柊」

 

俺は改札から歩き出した。作戦会議で廃ビルに集まるのだ。まずは、どうするかを考える。

 




どうだったでしょうね?少しいつもより長い1902文字でした。次回は1600かもしれませんが、お楽しみに!
多分製作過程を書いてるのは俺ぐらいかな?
製作過程
《font:315》8:53開始
9:06~9:20休憩
10:10午前中投稿に決定
10:42暫定終了
10:45第1回一部改良
10:53前書き、後書き、題名決定
10:54、11:20投稿に決定
10:55投稿予約小説に追加
予定
11:00第92話製作開始


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第92話 彩

今回の登場人物
丸山彩
丸山春菜
月島暁依
月島彩夏
以上4名
人物紹介
丸山春菜(25)
いつも明るい少女。かなりの天然でたまにとんでもない行動をする。空手の選手でかなりの実力者。彩とは従姉妹で、彩のよき理解者。彩を振り回す人物でもある。


 私は柊くんと胡桃ちゃん、かりなちゃんがこの家を出ていったあと、彩夏ちゃんと2人だけになった。結構仲は良いし、楽しい。

 

「彩ちゃん!聞いて聞いて!」

 

ある日、彩夏ちゃんが私を大声で呼んだ。彩夏ちゃんは携帯を持っている。

 

「どうしたの?」

「これ!」

 

その画面にあったのは柊くんとの個人チャット。柊くんからのふきだしにはこんなことが書かれていた。

 

今度からそっちに俺のは弟、暁依行くから、楽しみにしててな

 

暁依?誰だっけ。なんか聞いたことあるなぁ。

 

「あきにい来るんだよ!柊くんにすごい似てるんだぁ」

 

柊くんに似てるかぁ。というか、弟ってことは血繋がってるんだよね?じゃあ似てそうだなぁ。

 

「楽しみだなぁ、あきにい来るの」

「ふぅん、暁依くんのこと好きなの?」

「うん!好き!優しいし、お兄ちゃんっぽい!」

 

兄妹ねぇ。やっぱりお兄ちゃんとか好きになるのかな。

 

 そして数日経った日に、暁依さんは私たちの家に入ってきた。来て早速何するのかと思ったら、彩夏を高く上げた。

 

「にゃはーっ!」

「相変わらず変わらないな、彩夏」

「あきにいも!」

 

仲良さそう。千聖ちゃんとか来ないかな、私も早く仲いい人と話したい。

 

「彩さん、でいいんだよな」

「え?あ、うん…」

 

暁依さんは私の肩に手を掛けた。

 

「仲良くなれそうだ。なぁ、彩って呼んでいいか」

「え?うん…」

 

なんだろう、この親近感。なんかすごい親しまれてる気がする。

 

「なんかやってるのか」

「うん…中学校の先生を」

 

暁依さんはもっと私の肩を暁依さんの方に寄せた。

 

「もっと馴れ馴れしく話してくれていいんだぞ」

「でっ、でもぉ…初めてだし…」

「あきにい、優しいから大丈夫だよ!」

 

彩夏ちゃんが言うんだったら大丈夫かな。怖い人は嫌だからね。

 

「じゃあ…お願い…!」

「あぁ。よろしく」

 

暁依さんは私の手を掴んだ。挨拶代わりなのかな。私も抵抗せずに掴まれていた。

 

 暁依さんが来てから、最初のご飯、お昼ごはんをどうするか、私は悩んでいた。まず、何が好きかも分からないし、どうすればいいんだろう。

 

「あきにい!抱っこして!」

「おう。」

 

暁依さんと彩夏ちゃんが2人で遊んでいる。邪魔しちゃ悪いけど、どうしても聞きたいことだ。私は勇気を出して暁依さんに聞いた。

 

「あのっ!暁依さん」

「ん?なんだ、彩」

「お昼ごはん、何がいい?」

 

私は勇気を振り絞って聞いた。

 

「暁依でいいよ。好きなもの分からない?」

「うん。初めて会ったし」

「ヒント、柊に似てる」

 

そう言って暁依は去っていった。柊くんに似てる?じゃあ…!私は柊くんのことを思い出してごはんを作った。

私が思い出した料理は回鍋肉。柊くんが大好きで、私と胡桃ちゃんでよく作ってた。

 

「暁依、彩夏ちゃん、ごはんよ」

「回鍋肉だ!」

「…分かってんじゃん」

 

暁依も笑っていた。合ってたんだ。私は暁依の横でごはんを食べた。

 

「美味しい?」

「あぁ。美味しい」

 

私は内心、跳んで喜んでいると思う。暁依に美味しいって言ってもらえたから。

 

「あきにい、柊くんどうしてた?」

「あぁ、元気だったよ」

 

柊くん元気だったんだ。よかった。

 

 それから数日経って、また賑やかになった。なんでかと言うと、私の従姉妹、春菜が来たからだ。たまにとんでもない行動するから、危ないんだよね。

 

「へぇ、いい家だね」

「誰だい、この人は」

「私の従姉妹。」

「勝負しよ!」

 

いきなり何言うの!?私が止めようとすると、暁依ものってきてしまった。

 

「いいけど、何もなしで大丈夫か」

「大丈夫!いくよ!」

 

ああ、始まってしまった。春菜、空手の選手だから強いんだよなぁ。

私が見ていると、春菜が倒れて足をピクピクさせていた。

 

「あ、ごめん。本気出した」

「つ、強い…」

 

やりすぎではあるけど、暁依ってこんなに強いんだ。なんか頼もしいな。

 

「春菜、大丈夫?」

「ちょっと休む…」

 

暁依は「悪かったな…」と手を合わせている。春菜は手を横に振って、「大丈夫だよ」と言っている。暁依、自分がやったら謝るんだ。当たり前だけど、柊くんに似てるなぁ。

 




11:09開始
11:17~11:31休憩
14:35暫定終了
14:36一部改良

14:37、15:00投稿に決定
14:38投稿予約小説に追加


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第93話 決戦の日当日 前編

今回の登場人物
月島柊
月島暁依
月島冬菜
月島香菜
月島藤花
月島風那
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
以上9名
人物紹介は第101話までお休みします。


 俺が廃ビルで作戦会議をした内容は、

1前衛、後衛などの分担

2回復、攻撃、防衛の分担

3それぞれの呼び名

以上の3つ。この内、それぞれの呼び名はいつも呼んでいる呼び方で決まった。一方の分担は、回復は後衛、攻撃が真ん中、防衛が前衛になることが決まった。

攻撃が俺とあと2人

回復が彩夏とあと2人

防衛が冬菜とあと2人

それぞれ3人ずつの合計9人。

 

「攻撃は誰やる」

「私!」

 

風那か。攻撃的ではないけど、確かに力はありそう。

 

「私、回復がいいな」

 

瑞浪だ。じゃあ今のところまとめると

攻撃が俺、風那とあと1人

回復が彩夏、瑞浪とあと1人

防衛が冬菜とあと2人

まだまだ足りるはずがない。暁依はどこに入るんだ。

 

「俺攻撃だな。柊と風那のサポート入るよ」

「頼もしいよ。じゃあ、防衛が足りないんだが」

「防衛、私入っていい?」

 

藤花だ。だけど1人足りない。確かに防衛は大変だが、盾もあるからよっぽどなことがない限り痛くはないはずだ。

 

「防衛、私入る」

 

香菜だ。じゃああとは回復だけだ。1番後ろだから、攻撃は受けないはずだ。

 

「沙理華、回復でいいか」

「うん!喜んで!」

 

これで全員が決まった。俺は転移魔法陣を描き、みんながここに乗るように指示した。

 

「先に言っておくけど、ダンジョン系だからな。」

「知ってるさ。最上階にいるんだろ」

 

俺は魔法陣を発動させた。行く場所は転移で行ける限界、第20層だ。

 

「ここから歩いていくぞ。」

「何階層ぐらい?」

「あと40層だな」

 

第60層に目的の相手がいる。そこまで手下が大量にいるんだろう。

20階層を歩いていても、敵とは出くわさない。俺は次の21階層への階段を上がる。階段での待ち伏せもなく、21階層にいた敵は1人だけで、風那が倒してくれた。

 

「おかしいな、ダンジョンにしては」

「敵の数?」

「あぁ。俺と柊で別のダンジョン行ったことがあるんだが、そのダンジョンと似てる。そのダンジョンと同じ系統だと…」

 

俺は暁依とあわせて言った。

 

『第57層から急激に増える』

「57層から?」

 

沙理華が不思議そうに言った。大体ダンジョンの85%辺りからだから、57層ぐらいからだ。

 

「今はサクサク進もう。55層から気合いれるぞ」

『おーっ!』

 

21階層もすぐに終わり、第22層、第23層と進んでいった。

 

 第27層に到達すると、後ろから足音が聞こえた。8人より明らかに早い足音だ。俺は仲間にしか聞こえない連絡網で指示した。

 

〈止まれ〉

 

俺たちは9人揃って止まった。1つだけ音がずれて止まった。敵がいる。俺は9人の上を跳び、1番後ろに着地する。やはり、1人だけ敵がいた。俺は風魔法で相手を吹き飛ばした。

 

「28層に早く行こう!」

「うん!」

 

前衛が進み始める。後ろからの不意打ちもあるのか。俺は後ろにいたままだった。

また後ろから気配がした。俺は火炎魔法で後ろの敵を殺した。

 

「やっぱり。」

「お兄ちゃんかっこいい!」

 

俺は手を挙げてありがとうの合図を送った。

 

 第30層に到達し、少しずつ敵も増えてきたが、まだ前衛の2人で殺せている。まだ余裕な数なんだ。今のうちに進んでおかないと、57層に着いてから時間がかかる。

 

「あそこ31階層の階段だよね!登ろ!」

 

俺が確認すると、それは31階層への階段ではなく、罠の騙し階段だった。あのダンジョンと同じ構造だとそれを登ると崩れ落ち、第20層まで落とされる。

 

「登るな!」

 

全員がピタッと止まる。封印していた魔法、時間停止魔法だ。チートすぎるから封印してたんだが、危険だと思い使った。

俺は全員の向きを変え、床の方に向かせた。時間を動かすと、風那が不思議そうに止まった。

 

「あれ、階段は?」

「罠だったんだ。気を付けよう」

「うん。ありがとう、お兄ちゃん」

 

31階層の階段はその奥にある。しかし、暁依は急に言い出した。

 

「もう1つ奥の階段にしようぜ。」

「?あぁ、そういうことか」

 

俺にも意味が分かった。他の人には分かってないけど。

 

「ショートカット階段だよ。34層までカットできる」

「いいね!通ろ!」

 

俺が先頭で階段を登り始めた。罠ではないから、構造はやっぱり同じか?

 

「暁依、34階層への階段にある、踊り場で止まる」

「どうしたんだ、そこで止まって」

「あのダンジョンと同じなら、あそこだけ転移魔法が使えるエリアがあるんだ。そうすれば、50階層までは移動できる」

「分かった。止まるよ」

 

俺は暁依に指示して後ろをついていった。

to be continued…

 




15:17開始
16:35暫定終了
16:37一部改良
16:38、17:00投稿に決定
16:39、16:50投稿に変更
16:40投稿予約小説に追加


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第94話 決戦の日 中編

今回の登場人物
第93話と同じ
人物紹介
第101話まで休止


 俺が31層に続く階段を上ると、途中の踊り場で暁依が止まった。俺が止まるように言ったからだけど。

 

「待ってな、魔法陣描く」

 

俺が魔法陣を書くと、みんなはその上に乗った。50階層まで転移できる。俺は9人一斉に50階層へ転移させた。

 

「ここからは俺が後ろにつくから、前は2人に頼んだぞ」

「オッケー!」

 

風那が返事をして、俺は後ろの回復メンバーの後ろについた。不意打ちを防ぐためだ。

 

 51階層に上がり、残りは9階層。まだ敵はあまりいない。あのダンジョンと同じだ。俺は注意しながら52階層の階段を探した。

 

「お兄ちゃん、あそこ」

 

瑞浪が呼び指した方向には上へ向かう階段があった。ここにある階段に罠はないな。俺はその階段に向かい、上がった。52階層だ。残り8階層だ。

 

 56階層から57階層に上がり、急に敵の数が増えてきた。

 

「暁依!前は頼んだ!」

「あぁ!任せとけ!」

 

俺は後ろの敵を火炎魔法で一掃した。前は暁依が剣で斬っている。俺は先に58階層への階段を探した。58階層に向かう階段の下に休憩できるスペースがある。そこで休憩しよう。

 

「柊、終わったぞ」

「お疲れ。階段の下で一回休憩しよう」

 

俺は58階層への階段をまず始めに探した。階段は戦った場所から少し前に歩いたところにあった。

 

「ふぅ、疲れたぁ。あと2階層?」

「そうだな。みんなここで休めよ」

 

俺は地面に寝そべった。ダンジョンではこれが普通だ。

 

「かりなちゃん、大丈夫かな」

「それは俺たちによるぞ。」

 

かりなと胡桃が無事であることを願うのではなく、自分たちが勝つことを願うだけだ。

 

「さて、行こうか?そろそろ」

「あんまり長居してもしょうがないからな」

 

俺たちは58階層への階段を登り、58階層へ。58階層では上がってくる人たちを待ち伏せしている敵がいた。俺は前で火炎魔法を使い、相手を倒す。

 

「いこう、あと2階層だ」

 

以外と敵がいて、少し時間がかかった。少し傷ついたりもしたため、回復メンバーも役立った。あと2階層でボスに挑める。そいつを倒せば、死ななくてすむんだよな。俺は急いで59階層への階段を探した。階段の位置も覚えておけばよかった。

59階層の階段はすみの方にあり、59階層へ登った。59階層は他のところより広い気がした。敵もまばらだった。

 

「階段あるか」

「ないよ?どこだろ」

 

端の方までしっかり隈無く探そうとするが、視界に何も階段はなかった。

 

「どこだ?」

 

全く柱しかない。俺が柱までよくみると、柱に何か突起物があって、上れそうだった。上は穴が空いている。

 

「はしごか…」

「1人ずつで、最初は俺が行く」

 

暁依は梯を上っていき、無事に床についたらしい。

 

「じゃあ、俺先行くからな」

 

俺も先に上に上った。60階層は真っ暗で、まともに戦えそうにない。俺は火炎魔法で周囲を照らした。

 

「来たんだね、君たち」

「あぁ、仲間を救いにな」

 

敵が暗闇の奥から歩いてきた。暗くても見えてるのか?

 

「仲間思いな奴らだ。でもな、もう救えないさ。ここで君たちが死ぬからね!」

 

敵は剣を俺たちに向けて、走り出した。

 

「っ…」

 

剣が肩に触れて、血が出てきた。

 

「はぁっ!」

 

暁依が剣を突き出して相手に刺す。

 

「暁依!」

 

暁依は敵に刺されてその場に倒れた。しかしちゃんと剣は右胸に刺さっている。

 

「暁依、無駄にはしないからな」

 

俺は剣を1本取り出して、突き刺す。

 

「まだだ」

 

俺は足で蹴飛ばされる。床に叩きつけられて息が一瞬止まる。

 

「柊くん!ヒール…」

 

彩夏が回復してくれる。相手だってそんなに力は入らないはずだ。

 

「風那、行け」

「うん!」

 

風那は剣を前に突きだし、相手に突き刺した。風那は刺してすぐに戻ってこようとする。しかし、背中を刺されて倒れる。

 

「みんな弱いなぁ。あとはお前だけか?」

 

なんで、みんなを刺して。俺は怒りと共に、信じられる剣を思い出した。

 

「絶対に勝って」

 

その言葉を思い出した。そう、あの2本は絢梨が勝つように作ってくれたんだ。俺はその2本を手に取り、相手を斬る。

ありがとう、絢梨。

 

「はぁぁっ!」

「ぐああっ!」

 

俺は剣でガードした。ガードの力には、絢梨の力も入ってるような気がして、誰かに手伝われているようだった。俺の目には、絢梨の姿も見えた。

 

「たああっ!」

 




《font:315》17:17開始
20:39暫定終了
20:40、21:00投稿に決定
20:41投稿予約小説に追加


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第95話 決戦の日当日 後編

今回の登場人物
前回に加えて
月島胡桃
月島かりな
以上11名


 俺は相手に剣を突き刺し、俺にも剣がかするように当たった。服が切れ、血が服に滲む。敵は音を立てて消えた。人間じゃなかったんだ。俺は血が出ているのにもかかわらず、暁依と風那を持って、7人で転移した。転移先は籠原駅前。ここが限界の距離だった。

 

「じゃあ、みんな休めよ。あと、暁依、風那は頼んだ」

「うん。任せて」

 

俺は深谷にある病院まで走った。胡桃とかりながいるはずだ。道を走りながら、俺の頭の中ではこんなことがよぎった。

俺がついた瞬間に、病院の中にピーッという音が鳴り響き、胡桃とかりなは…

おっと、思っちゃいけないよな。俺は病院に向かって全速力で走った。

 

 病院に着くと、早速胡桃とかりなの安否を確認した。

 

「胡桃さんは203病室で、かりなさんは先に、柊くんには胡桃ちゃんが最初に会ってほしいと言って、先に帰りました」

 

かりな、こんな時に思いやりを使わなくてもいいのに。

 

「あと、かりなさんから伝言が」

 

そう言ってナース服を着た女性の方は言った。

 

「守ってくれてありがとう、だそうです。何かあったんですか?」

「あ、はい。俺が本人を殺さないと胡桃とかりなが死ぬっていうのを知ったんだと思います。」

「そうでしたか。ご苦労様です」

 

俺はお辞儀をして203病室に向かった。203病室は病院の3階にあり、端から3番目だ。

俺はドアを開けて中に入った。中には胡桃が座って待っていた。

 

「柊くんっ!」

 

胡桃はもう大丈夫だというように俺に抱きついた。俺の胡桃は可愛いい。

 

「私、生きてるよ!柊くんのお陰で」

「よかったよ。じゃあ、帰る?」

「待って、んっ」

 

胡桃からキスをしてきた。俺は無抵抗でキスされていた。抵抗する必要はない。

 

「好き、大好き。くっついて帰ろ?」

「歩きづらそうだけどな」

 

俺は病院の人に許可をもらい、病院を退院した。歩いて20分かかるところなのに、なぜかすぐに家の前まで着いてしまいそうだった。

 

「私ね、信じてたよ」

「ん?何を」

「絶対に勝って来るって。私、死ぬんだったら柊くんと一緒だよ」

 

嬉しい気もするし、どこか悲しい気もした。

 

「そうか。」

 

俺は胡桃の背中を優しく押して歩くのを支えた。

 

 家の近くにきて、角を曲がると、家に残っていたあーや、絢梨、なぎと、先に帰っていたかりなが手を振っていた。もうパーティーの準備は万端で、逆三角形の旗と、その一部に「2人を守った英雄柊くん」と書かれていた。ここくらいは柊でよかったのに。

 

「お帰り!柊くん!」

「ただいま。」

 

俺は玄関のドアを開け、家の中に入る。中にはパーティーの装飾がたくさんあった。

 

「柊くん、もう休めるんでしょ?」

「あぁ。そうだ、かりなと胡桃呼んでくれるかな」

「いいよー!」

 

なぎがかりなと胡桃を呼んだ。胡桃はすぐに走ってきて、かりなはスキップしながら来た。何をするかは分かってるんだろう。

 

「柊くんでしょ、なぁに?」

「ちょっと俺の部屋来てくれ」

 

3人でじゃないと出来ないことだ。俺は2人を俺の部屋に呼んだ。部屋のドアに鍵を閉めて、3人だけの空間になった。窓もカーテン、鍵共に閉めてある。

 

「柊くん、したいから、いい?」

「あぁ、なにしてもいいよ」

 

かりなは俺を押し倒し、キスをし始めた。んんっ、と苦しそうだったが、嬉しそうだった。

 

「ずっ、ずるい!私もっ!」

 

胡桃も空いていた隙間にキスできなくても、舐めるくらいはした。俺の前と横に、チュッという音と、ペロペロという音が混ざっている。

 

「柊くん…もう一回キスしたい…」

 

俺は胡桃を抱きしめた。かりなの口から離れ、胡桃の口に移った。

 

「交代ね」

 

かりなが舐めて、胡桃がキスする。これが何回も続いた。だけど俺がやりたいのはこれじゃない。しかし、やめろとも言えないから俺は終わるまで待った。

 

 10分後、やっと終わった。俺は2人とハグしながら言った。

 

「俺のこと、知ってたのか」

「うん。絢香ちゃんから聞いた」

 

あーや、いつもはそんなことしないのに、やるときはやってくれるんだな。

 

「さて、もう20時過ぎたけど、寝るか?」

「お願いあるんだけど、いいかな」

 

胡桃が珍しく俺におねだりしてきた。

 

「あのね――

 




20:44開始
22:01~6:34就寝
7:29~19:02学校
19:06暫定終了
19:08、19:30投稿で投稿予約小説に追加


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第96話 一緒にいる

最初の10行だけ明朝体にしてみます。
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃


 「あのね――」

 

俺は胡桃のいう言葉にドキドキしていた。結婚してからこんなことで緊張するのもどうかと思うが、俺はなぜか心臓が飛び出そうなほどバクバクしていた。

 

「一緒に、寝てほしいのと、パーティー参加しよ?」

 

そうだ。パーティーがあったんだ。俺は外に向かおうとした。って、待てよ?一緒に寝る!?

 

「まずはパーティー行こうか」

 

一緒に寝るって、まさか胡桃の横で?同じ布団で?俺は嬉しくもあり、ドキドキしていた。

 

パーティーの場面は第2章のスペシャル編で

 

 パーティーが終わると、もう22時を過ぎていた。俺はいつもとは違う、俺の部屋ではなく胡桃の部屋に歩いた。胡桃は「先にベットで待ってるね」と言って先に行ってしまった。

本当にいいのだろうか。結婚してるからいい気もするが、よく考えてみろ。女子と同じ布団で一緒に寝るんだぞ?血も繋がってない人と。何年ぶりだ?小学5年の林間学校で女子と一緒に寝た時からか。

俺は想を静まらせて胡桃の部屋に向かった。胡桃の部屋のドアを開けると、胡桃がベットの上にもう寝そべっていた。

 

「早く、ここ」

 

胡桃がポンポンと叩いた場所に俺は横になった。同じ布団で、少し間を空けていた。

 

「ふわぁ、おやすみー」

「あぁ。おやすみ」

 

俺より先に胡桃が寝たが、俺は離れたくなかったのか、そのまま寝てしまった。

 

翌日起きたのは早く、まだ3:50だった。まだ4時にすらなっていない。俺が胡桃の方を向くと、俺の腕に胡桃がしがみついた。なんかあったんだろうか。

俺は起こさずにしておくと、胡桃は4時を少し過ぎた時間に起きた。

 

「あぁ。胡桃。起きちゃったか」

「夢…?生きてる…?」

 

泣いた後のような声だった。いや、違う。泣いてるんだ。俺は胡桃に事情を聞いた。

 

【月島胡桃視点】【夢】

 

 私は、なぜか真っ暗な空間にいた。多分私の部屋。まだ夜中なだけだろう。私が起き上がって動くと、何かにぶつかった。それは…

 

「きゃぁっ!」

 

柊くんだった。私の横で寝てたはずの柊くんが、床に倒れていた。ぶつかっても反応しない。死んでる?

 

「他のみんなは…」

 

私は部屋から出て、かりなちゃんや絢香ちゃんの部屋に向かう。どこも血を流さずに倒れている。

 

「どうして…私も…」

「何だ、死にたいか」

 

私が後ろを振り向くと、倒れてるのを確認した柊くん、かりなちゃん、絢香ちゃんが立っていた。

なんで…嫌…怖いよ…

 

「じゃあ、後ろ向きな」

 

私は従うしかなかった。

 

「3、2、1」

 

悪魔のカウントダウンに聞こえてしょうがなかった。

 

「さよなら。こっちの世界へ」

『ようこそ』

 

不気味な声でみんなが言った。死ぬの、まだ、嫌なのに。

 

「いやぁぁっ!」

 

私は叫んだ。これしか方法が思い付かないから。だけど私は首を絞められ、窒息した。

 

【現実】

 

 私が目を開くと、そこは少し暗闇がかった私の部屋。壁が見えている。横向きになってるんだ。私が握っていたものは柊くんの腕。柊くんは仰向けになって目を開いている。

 

「あぁ、胡桃。起きちゃったか」

 

柊くんはこっちを向く。柊くんの顔は下の方が少し暗く、グラデーションみたいだった。

 

「夢…?生きてる…?」

「生きてるし、夢じゃない。一回外出るか?」

「そうする…」

 

 

【月島柊視点】

 

 俺は胡桃と手を繋ぎながら外に向かった。胡桃が俺の腕にしがみついて、泣くなんてそう多くないから。俺は玄関のドアを開け、外に出た。まだ薄暗かった。

 

「うぅ…柊くん…話いいかな」

「あぁ。なんだ」

 

胡桃は俺にくっついて言った。そして俺の心臓がある左側の胸部にさわった。

 

「誰かを殺したいって、思ったことある?」

 

殺したい、か。

 

「殺さないと胡桃が死ぬってやつ。今回のは本気で殺したいと思った。けど、なんで」

「軽く人を殺せるのかなって。例えば、私が死にたいって言ったら柊くんは私を殺せる?」

 

なんか重い決断だな。死にたいって言ったらか。でも、殺さないかもしれないな。

 

「殺さない。胡桃を殺せないよ」

「そうだよね。じゃあ、ぎゅってして」

 

俺は胡桃を優しく抱きしめた。

 

「うん、優しいハグ。柊くん、大好き」

「俺もだよ」

 

俺と胡桃は2人で抱き合っていた。

そういえば、胡桃と2人だけで旅行行ったことなかったな。事務所で空いてる日探すか。

 




22:12開始
22:32~7:20就寝
7:29~17:21学校
20:43暫定終了
20:44、21:00投稿に決定
20:47一部改良
20:48投稿予約小説に追加


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第97話 新人

新メンバー2人登場!
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
立川絢香
立川絢梨
佐藤麗華
斎藤ニコル
新メンバー2名
以上9名


 俺は事務所の予定を見に行くのもあり、仕事に行った。飛行は怖いと言って絢香とかりな、胡桃が言ったので電車になった。俺と胡桃が起きたのは4時台だが、かりなが起きたのは…

 

「ごめんなさい!遅刻しちゃう!」

 

なんと6:30だったのだ。6:33発上野行きだったら座れたのに、遅刻だ。一応、7:07発新宿経由小田原行きも深谷始発だが、赤羽で8:22。もうその時点で遅刻確定だ。俺たちはなるべく走って深谷駅に着いた。着いたときには6:37発東京経由大船行きが出発していた。

 

「6:41発湘南新宿ライン国府津行きか」

 

予定より8分遅い電車だった。なんか6:41って聞いたことある時刻だったが、まぁ放っておこう。

前の電車とは4分しか空いてないが、ホームには身動きが取れないほどの人だった。何でかというと、今日運用にはいる付属編成(5両)が故障し、基本編成(10両)だけになったのだ。深谷駅でも10号車にのって付属に籠原で乗り換える人もいるんだが、今日はなかったため混雑していた。

 

「6:41発国府津行きは終点国府津まで10両での運転です」

 

駅の放送でも案内された。俺たちはホームの線路寄りにいたため乗れそうだ。でも、かなり疲れそう。

 

「柊くん、分かれよ?3人と2人で」

「そうだな。絢香と絢梨、俺と胡桃とかりなで分かれよう」

 

そっちの方がよかったんだろう。

 

 6:40、電車が入ってきた。俺たち3人は後ろに押されて中に入った。後ろのドア近くまで押された。

 

「あ、すみません」

 

俺はぶつかってしまった、ドア近くにいた人に謝った。

 

「あ、いえいえ。って、柊くん!?」

 

俺が顔を見ると、そこには彩夏と彩がいた。久しぶりに電車が被ったんだ。

 

「久しぶり。」

「彩。久しぶり。今日は1段と混んでるな」

 

彩を両手で壁ドンしながら俺は言った。わざとしている訳じゃない。不可抗力だ。

 

「柊くぅん、苦しいよぉ…」

「こっちおいで。俺の腕の間にでも入れ」

 

胡桃とかりなは2人それぞれを向いて俺の腕の間に入ってきた。胡桃はこっちを向いて、かりなは彩の方を向いた。

 

「キスはぁ、しよっか」

「あぁ。」

 

俺は胡桃からのキスを抵抗せずに受けた。かりなは大人しく立っているように見えた。

 

「はぁ、はぁ、しゅきぃ…」

「苦しくないか」

「大丈夫…」

 

かりなは彩と向き合っているのに、何してるんだろう。俺はかりなの肩を見た。

そこには彩夏と彩が交代したらしく、彩夏がかりなを抱いていた。

 

「かりなちゃん、今度どこか行こ?」

「いいよ、行こ。」

 

久しぶりに会ったから話してるのか。彩は…

 

「くるちい…つぶれる…」

 

ドアに押し付けられていた。かわいそうだからこっちに寄せてやるか。俺は彩をこっちに寄せた。

 

「大丈夫か、頑張れよ」

「うん。ありがとう」

 

俺は胡桃と彩を近くに近づけながら鴻巣まで乗っていた。

 

 池袋で山手線に乗り換え、上野に着いた。神保原から通っていたときと変わらない時間だった。無事にあーやと絢梨とも合流し、事務所に入った。丁度麗華が入るところで、赤髪の人がもう1人いた。

 

「麗華、この人は」

 

俺が麗華に聞くと、その人が答えた。

 

「佐藤麗波(れいな)です。麗華ちゃんの従姉妹です」

 

従姉妹かぁ、みんな連れてくるなぁ。俺は麗波を事務所の中に招待した。麗華も後ろをついてくる。

 

「麗華の部屋はここだ。麗華、あとは頼んだよ」

「うん。さ、麗波、行くわよ」

「うん」

 

麗華は麗波を連れてレッスン場に行った。俺は出欠をとった。麗華は来た。あと来てないのは…ニコルか。

 

「ごめんなさい、遅れたわ」

「斎藤白雪(しろゆき)です」

 

また従姉妹なんだろう。ニコルはこの人の紹介に移った。

 

「私の従姉妹で、今日から私と暮らすことになったの」

「あぁ、そうか。ゆっくりしてくれ、白雪」

「はい。お願いします」

 

ニコルと白雪も2人とも黄色い髪の短めな髪。よく似ている。俺は出欠にニコルを丸して、俺はレッスン場に向かった。

レッスン場ではもう練習が始まっていた。麗波と白雪は脇の方で黙って見ている。

 

「2人とも、どうだい」

「かっこいいです。すごく」

「ニコルちゃんがあんなにかっこいいなんて…」

 

みんな喜んでくれている。俺は2人に俺のことを話した。

 

「俺はマネージャーを勤めてる月島柊。柊くんとか呼んでもらっていいよ」

「はい。柊くん」

 

麗波は早速俺の名前で呼んでくれた。白雪は

 

「柊くん♪」

 

敬語まで外し、気軽に話しかけてきた。いい感じだな。俺は2人に名前を教えたから、もう練習を見ていた。

 

 練習が終わると、あーや、ニコル、麗華がこっちに向かってきた。

 

『柊くん』「つっきー」

 

3人が俺の名前を同時に呼んだ。なんだ、この圧は。

 

「2人がなんかしてない?」

「あぁ、大丈夫だよ。楽しかったよ」

 

俺は少しホッとして立ち上がった。

 




22:24~6:41休憩・就寝

18:09暫定終了
18:10、19:30投稿に決定
18:11投稿予約小説に追加


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第98話 日常

今回の登場人物
月島柊
東条悠希
佐藤麗波
斎藤白雪
藤間桜
新メンバー1名
以上6名
人物紹介
藤間桜(24)
22/7のメンバーでロサンゼルス育ちの帰国子女。天真爛漫で誰にでも優しい性格。しかし言い争いの仲裁が苦手だったりする。みうとは仲が良く、あだ名は「らんらん」で、主に都から呼ばれている。


 俺は事務所にいるメンバーたちを練習させたままで、俺は昼ごはんの買い出しに行った。

 

(面倒だな…食いに行っちゃうか)

 

俺は12:43発京浜東北線快速蒲田行きで秋葉原へ向かった。いつものところだ。

12:46に着くと、早速向かい始めた。平日昼間だが、席は7割近く埋まっていた。俺は端の席に座り、カツ丼を頼んだ。

 

「よっ、柊くん」

「あ、悠希。悠希もここで食べるのか」

 

俺の横に座ったのは、紫色の髪でツインテールの悠希だった。悠希は1段のざる蕎麦だった。

 

「あ、出来たっぽいな。持ってくる」

「おう!」

 

俺はカツ丼を持ってきた。悠希も交代するようにざる蕎麦を取りに行った。

 

「一緒に食べよう!折角会ったんだしさ」

「勿論そのつもりだ。」

 

俺は悠希のすぐとなりで食べ始める。昼ごはんはここでもいいかもしれないな。定期区間御徒町から伸ばそうかな。秋葉原までで。

 

「柊くん、1口くれないか?」

「え?じゃあ悠希のも1口いいか」

「おう!いいよ!」

 

悠希は自分の箸を持ち、蕎麦を掴んだ。

 

「え?俺じゃないのか」

「ん?あーん」

 

あ、俺が悠希の箸を…って、いやいやそれは無いだろ!いくらなんでもメンバーと間接キスとか…

 

「早く、女の子なんだから…緊張するよ…」

「あ、あぁ…すまん…」

 

俺は悠希の箸に口を当て、蕎麦を食べた。蕎麦の味よりも、悠希からの間接キスの方が気になってしまった。

 

「ほ、ほら!柊くんのもだろ!」

 

そうか…俺もやるのか。俺は自分の箸を悠希に向けた。

 

「はむっ…美味しい!」

 

よかった。気になっていないらしい。

 

「その飲み物なに?」

「あ!それは!」

 

俺が止めようとするときには悠希がもう1口飲んでしまっていた。アルコール入ってるから弱い悠希が飲んだら…俺は酒には強い方なんだけど、悠希やニコル、麗華は弱いんだ。あーやもそんなに強くなかったかな。

って、そんなこと言ってる場合じゃない!悠希は…

 

「ん?なんか火照ってる」

 

ヤバイ。早くどこか人のいない場所に…

 

「悠希、もう食い終わったな!返してから行くぞ」

「あぁっ、待ってよ。」

 

俺が急いで片付け、悠希をおぶって秋葉原の小さい路地裏に入っていく。人2人が向かい合って入れるか入れないかぐらいのギリギリなスペースだ。そこに向かい合って入った。

 

「うぅ…狭い…」

「酔いが覚めるまでじっとしてろ」

「いやぁ…なんかしたいぃ…」

 

全く、なんかしたいつったって何もないんだよ。路地裏だし、普通人来ないし。

 

「狭いよぉ…っ!」

 

悠希が横に動こうとする。出れないのに。

 

「動くな、出れないんだから。」

「うぅ…キス…」

 

キス?間接キスしたばかりだろう。

 

「間接キスしたろ。」

「本当のキス…」

 

本当のキスってなんだよ。俺は悠希を抱きながら酔いが覚めるのを待った。

 

 酔いが覚めると、俺が動いた。もう出ないと苦しい。俺が左右に動くと、悠希が止めた。

 

「動くな…」

「どうして」

「胸がぁ、擦れるから…あんっ」

 

悠希のそんなかわいい声始めて聞いた。悠希も普段そう言う声出さないし。

 

「出れないだろ。動かないと」

 

俺は出ることだけに苦労した。ついでに、定期券の更新の際に御徒町までの定期を秋葉原に延長した。少しだけ定期券の内訳でも話そうか。

定期券は、神保原からの場合、上野まで行っても御徒町まで行っても値段は変わらない。だから遠くの御徒町を基準にする。秋葉原、神田、東京は値段が違うから変えていなかった。今回は秋葉原まで。神田まで行くと値段が上がるから。

さて、俺は悠希と同じ電車に乗って事務所へ戻った。玄関で麗波と白雪が待っていた。

 

「おかえり、柊くん」

「Hello.mr.Tsukisima.」

 

へ?なんだ?英語?なんで、というか誰か外国人がいるのか?

 

「Sorry.」

 

桜が奥から出てきた。黄色い髪ではあるけど、あ、妹とか?

 

「ごめんね、柊くん。この子私の従姉妹。」

「藤間(のぞみ)です。」

 

桜の従姉妹かぁ。結構クールな顔つきだな。実際にもクールなのかな。

 

「のぞみちゃんはね、会社の社長なんだよ!」

「ちょっと桜ちゃん…」

「へぇ、すごいんだな。」

 

会社の社長か。流石だな、流石ロサンゼルスのお嬢様だ。

 

「桜も頑張ればなれるんじゃないか」

「私はアイドル一筋だから。柊くんと一緒にね」

 

そうか、桜はアイドルのことしかないんだったな。

俺は望を事務所の休憩スペースに連れていって、みんなに挨拶するように言った。年は俺より1つ下なのに、社長ってすごいなぁ。俺でもマネージャーと部活顧問のダブルでやってるのに。

 

「おっと、もう14:00か。行かないと間に合わないな」

 

俺は少しレッスンを見て、先に上野駅に向かった。

 




製作過程は書き忘れました…申し訳ない…一応、
14:23、14:30投稿で投稿予約小説に追加


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第9長編作品 100話目前! 第99話 疲労感

ついに99話です!101話は第2章第1話になります。
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
姫川杏
桃瀬心春
美海零
有栖柚
吹奏楽部部員1名
以上8名


 

 俺は上野を14:30に出発する当駅始発の高崎行きで鴻巣まで乗った。胡桃は先にいつも着いてるから多分もう着いてるだろう。15:20到着だから部活が始まる大体5分前に着くと思う。

15:20時間通り着くと、胡桃が改札を出た先で待っていた。

 

「よっ!」

「よっ!」

 

笑い合って手を挙げた。意気投合しているそうで、なんでも同じことをする。

学校に着くと、杏、心春、澪が音楽室で待っていた。音楽室の椅子は全てが出されていた。

 

「椅子なんで出てるんだ」

「ワックスかけるとかで」

 

ワックスか。音楽室にもやるんだな。まぁ、だからヴァイオリンとかも準備室にあるんだろうけど。

 

「じゃあ今日は立って演奏する練習だな」

「ユーフォって立って出来るの?」

 

立って演奏するのはあんまり多くないけど、外でやる場合には立ってやることもある。力は座ってやるより使うが、練習も必要だ。

 

「じゃあ…腕立て120回」

「ひゃ、120!?無理だよ!」

 

さすがに冗談だ。立ってやるだけでそんな過酷なことはしない。

 

「冗談だよ。することは、外に出て外周1周だけ歩いてきて」

「歩くの?走らないで?」

「走ってもいいよ。その後すぐ楽器吹くけど」

 

3人は外に出た。柚がいなかったけど、生徒会かなんかだろう。俺は他の楽器を演奏している人たちにも会いに行った。

 

「こんにちは、月島先生」

「こんにちは。俺は空気として吹いててくれ」

 

胡桃が後ろでクスクス笑っているが、これも中学校の頃の先生が言ってた。

音を聴いていると、この楽器は上手だった。ただ、スタッカートやアクセントが出来ていない。

スタッカートは短く切る、アクセントはすぐに弱くすることだ。

 

「スタッカートとかアクセントに意識しよう。」

「はい!」

 

俺はそう言って外に出た。3人は丁度外周から戻ってくるところだった。

 

「歩いたけど、なんか意味あるの?」

「立つ時の力かな。あと、音楽室戻ったら腕立て10回」

 

120回するよりかだったらいいだろう。3人は仲良く階段を上っていった。俺も魔法を使って一気に音楽室に戻った。

 

「じゃあ、俺がカウントするからやってくれ」

「はーい」

 

俺が「1」とカウントすると、3人は腕立てを1回やった。「2」とカウントすると2回目、「3」とカウントすると3回目と、どんどんやっている。

10回終わると、3人は俺に抱きついてきた。

 

「柊くぅん…疲れたぁ」

「お疲れ。」

 

疲れすぎてくっついてきたんだろう。俺は楽器を持ってくるように指示した。

 

「これで立って吹くの?」

「まっすぐ向いて吹くといいかな」

 

俺はそう言って、胡桃と一緒に座っていた。座っていたと言っても床に座っている、ホームレス状態だ。

 

「おっ、上手く吹けるようになったな」

「おかげさまでね」

 

接し方などを変えて、暗かった性格を少しでも明るく出来たらいいと思った。これで、4人でコンクール出れるな。俺も休み取らないと。

 

 そして16:30、日の入り時刻の関係で部活は終了した。俺は帰り際、3人に聞いた。

 

「家ってみんなどこにあるんだ」

「私はここから5分くらい歩いたところ」

 

杏はここから結構近いみたいだ。

 

「私30分くらい。北鴻巣駅の方が近かったりするよ」

「私も、心春の近くだから。」

 

澪と心春は北鴻巣の方が近いのか。だったら…

 

「心春、澪。北鴻巣まで電車で行こう。俺が金は出す」

「いいの?柊くんの分もあるし…」

「俺は定期券あるから平気。どうする、乗ってくか」

「うん!」

 

俺は2人と胡桃を連れて鴻巣駅の券売機前に立った。俺が切符を3人分買えばいいんだよな。俺は切2枚を手にとって、2人に渡した。

 

「切符、ここでいいんだよね?」

 

そうか、ほとんどICで通るから切符使わないか。

 

「あぁ。そこに入れて、出てきたの取ってね」

 

子どもに教えるおとなみたいな感じだった。俺は4人を深谷方面のホームに連れていく。今度の電車は16:53発普通高崎行き。次の3人が降りる北鴻巣までは3分。俺は2人を電車に乗せた。

 

「電車、久しぶり…」

「そっか。今度の日曜日乗れるからな。」

 

日曜日に、俺の事務所に行きたいと約束していたのは忘れていない。胡桃と旅行に行くのは春休みになりそうだな。

 

 北鴻巣で2人と別れ、深谷まで帰った。17:23に深谷駅に着くと、2月半ばということもあり、17:30ではもう薄暗かった。俺が改札を出ると、前から2つの見慣れた明かりが見えた。いや、見慣れたライトなのに、見えたナンバーが違う。

俺が乗っている車のナンバーは熊谷512、「し」の2512。一方、今回の車は同じ車種で、熊谷710、「ゆ」の2512。ナンバーが一致している箇所がある。

 

「なんだ、あの車」

「さぁ…あっ!あの人!」

 

胡桃が指差した方には、なぎがいた。車のガラス越しに手を振っていた。そして車は止まる。

 

「柊くん、乗って」

「え、免許と車は…」

 

引っ張られて俺は助手席に乗せられる。話はこの中でか。車が発進したあと、俺はなぎに聞いた。

 

「免許と車は」

「免許は持ってたよ?車は買った。ナンバー合わせて」

 

免許持ってたのか。結構以外だった。なぎは車の運転も安定していて、久しぶりだとは思えなかった。

 

「ふわあっ、俺、帰ったら寝たいから、風呂先でいいかな」

「いいよ。お湯張ってあるから」

 

風呂入って、歯磨いて、もう寝ていいだろう。夕食は…みんな食べてるだろう。今日はなんか疲れたんだ。いつもと同じことしかしてないはずなのに。

家に着くと、俺は疲れというか、ふらつくようになった。風呂まで耐えれば。俺は風呂場のドアを開け、シャワーを浴びた。

 

(なんか、冷たく感じる…)

 

湯なはずなのに、弱く、冷たくするように俺にかかった。すぐ風呂のなかに入って、落ち着いた。だが、水に入っているような冷たさと、ちょっとした痛みがあった。

 

(なんだ…俺の体が変なのか?)

 

今までそんなことなかったんだから、今日なったんだろう。

 

(上がる力がない…だけど、上がらないとな)

 

俺は力を限界まで使い、着替え、廊下に出た。2階まで直接上がった。なんでか分からないまま、俺は自分の部屋に入り、眠りについた。歯は明日の朝磨くことにしよう。

 

 翌日も体調は治らなかった。事務所に「体調不良で休みます」と連絡して、今日はずっと部屋にこもっているつもりだった。俺自身も、外に出れないほど力がなくなっていた。

 




14:26開始
15:59~16:30休憩
17:58~21:48休憩
22:50翌日6:30投稿に決定
22:57、4:18投稿に変更
22:59投稿予約小説に追加


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第10長編作品 第100話記念! 第100話 猫

第一章最終回です!第二章はまた1話から始まります!
今回の登場人物
月島柊
白雪凪沙
立川絢香
ナナニジ10人
以上13名



 俺は具合が悪い「患者」として、あーやに見てもらっていた。絢梨はあーやと俺のことを伝えるため事務所へ、なぎは薬を買いに行った。胡桃はどうしてもキャンセルできない仕事があったらしく、仕事に行った。かりなは彩のいる中学校の相談室で授業中。みんなそれぞれ。胡桃は早く帰ってくると言っているから、18:30くらいには帰ってくるだろう。かりなは多分17:00くらい、絢梨はもう10:10くらいには帰ってくるか?なぎは分からないが、11:30までに帰ってきてくれればいいな。苦しいし。あーやは俺の心臓近くに手を当て、心拍を確認したり、飲み物を持ってきてくれる。吹き抜けの2階にあるから叫べば聞こえるんだが、叫ぶことすら無理に等しい。辛い。

 

「つっきー、無理しすぎたんだよ」

「あぁ…そうかもしれない…」

 

だるさ等が俺の全身を襲ってくる。今から俺が死ぬみたいに。

 

「無理しないでよ、つっきー」

「分かった。」

 

俺は自分の部屋でもう起きてから3時間だ。俺は前々から仕事熱心で、高校のバイトも毎日欠かさず行っていた。だからか。仕事熱心な俺に天罰が下されたんだ。

 

「つっきーはさ、どうなの」

「どういうことだ」

「生きるか死ぬか。」

 

生きるか死ぬかのどっちがいいなんて言われたら、生きる方に決まってる。

 

「そりゃあ生きる方だろ」

「ふーん。つっきーらしい」

 

いつもの、普通の顔で答えた…かと思ったら、違かった。あーやは泣き出し、俺に顔を埋めていたのだ。

 

「なんで泣いちゃうのかな、私」

「あーや…」

 

あーやは声まで出して泣く。今、俺の心の中以上にあーやの心は不安定なんだ。

 

「あーや、俺、生きて――

「生きてほしいよ…当たり前じゃん…」

 

いつものあーやじゃなかった。いつもの少しからかう時のあーやじゃない。人を思っている。

 

「あーや、俺は、人の望まない方には行かない」

「絶対に?」

「絶対だ」

 

絶対と俺は言い切った。生きるだろうと、自分を信じたんだ。

 

 夕方になって、かりなも帰ってきた。なぎも10:50くらいに帰ってきていた。俺は3人の看病を受け、ようやく自由に話せるまでになった。

 

「柊くん、仕事、片方に専念しな」

「それか、交代で入れるとか」

 

それだと、どちらかが悲しむ。いなくて、不安になる。だから俺は1日に2つ行ってるんだ。

 

「片方私が行くとか」

 

そう言ったのはなぎだった。片方なぎが行く、か。確かに、俺が学校行ってる日はなぎが代わりに事務所行って、逆の時は逆にすればいい。

 

「なぎはいいのか」

「いいよー。柊くんの役に立てるから」

 

俺の家に住んでる人たちは、どれだけ優しいのだろう。俺がいたところは、世界の、いや、この家の一欠片だったんだ。周りにはこんなにも優しい、人思いの人たちがいる。俺も理解しなければいけなかったんだ。

 

 19:00を過ぎ、俺は看病の成果もあり、歩けるようになった。しかし、まだ不安ならしく、3人のうち、なぎが風呂までついてきた。一緒に入るそうだ。

 

「よろしく!」

「こっちが言うんだろ、それは」

 

なぎが服を全て脱いでも、なぎは前を隠さない。恥ずかしくないのか?

 

「ちょっ、柊くん…あんまりじっと見ないでよぉ…恥ずかしいんだから///

「あ、あぁ…ごめん…」

 

俺はシャワーを浴びた。なぎに肩を借りながらで、結構楽だった。なぎはボーッとしてるみたいで、鏡をずっと見ている。

 

「なぎ」

 

なぎは全く動じない。というか、ピクリとも動かない。

 

「なぎ」

 

少し声を大きくした。なぎはまだ鏡を見つめている。なにかあるわけでもないのに。

 

「なぎ」

 

また声を大きくする。返事はないし、動かない。生きてるのか不安になるが、呼吸はしているし、瞬きもしている。俺はついになぎの顔に手を当てて言った。

 

「なぎ」

「ひゃっ!」

 

なぎはやっと気づいたが、今まで気づいていなかったらしく、ビックリして壁に頭を打った。

 

「痛っ…」

「おいおい…大丈夫か。」

 

なぎは頭を擦りながらこっちを見る。

 

「どうしたの、急に呼んで」

「生きてるか不安になった」

 

俺は本当のことを言った。しかし、なぎは俺を抱きしめる。裸のこと忘れてません?

 

「むぎゅーっ」

「なんだよ、なぎ」

 

俺に苦しいほどにくっついてくる。俺は苦しいが言葉を発した。

 

「急に抱きつくな」

「だって、ハグしたら生きてるか分かるでしょ?」

 

なんだよ、俺をからかってるみたいじゃないか。

 

 風呂から上がり、自分の部屋まで1人で戻った。階段が少し怖かったが、どうにか上れた。どこか一部が冷えることもなくなったし、疲れも少しはあるがもうほとんどない。明日は午前半休で仕事行くか。俺は事務所に連絡した。事務所と言うより、メンバーなんだけど。ナナニジ11人が入っているグループだ。

 

〈明日は午前半休で仕事行く〉(柊)

〈オッケー。無理しないでね〉(麗華)

 

相変わらず麗華は人思いで、いつもこう言ってくれる。

 

〈なるべく無理はしない〉(柊)

〈待ってようか?〉(麗華)

〈大丈夫。大体14:00には着いてたい〉(柊)

〈やったー!〉(ジュン)

 

ジュンが会話に入ってきた。それと同時に既読が2から11に増えた。全員がみたんだ。

 

〈無理ダメ!〉(桜)

〈14時に待ってるからな!〉(悠希)

〈私も〉〈ニコル〉

 

みんな待ってくれるのか。じゃあそのくらいに着くやつ乗っていこう。

 

〈じゃあ、明日14時で。〉(柊)

〈はーい〉〈10人一斉〉

〈私一緒に行くからね〉(絢香)

 

直接言いにこいよ。とも思ったが、別に関係ないだろうと思い、そのままでいた。俺は歯磨きをしに洗面所に向かった。風呂には胡桃が入っているらしく、指輪が透明な引き出しに入っている。

俺が磨き始めると、風呂の中から声がした。

 

「柊くんいるのー?」

 

エコーのかかった声。というか歯磨きの音だけで当てるってすごいな。俺のことどんだけ分かってるんだよ。

 

「あぁ。よく分かったな」

「なんか歯磨きの音の高さが違うから」

 

音の高さなんかで分かるのか。まぁそうか。俺だって胡桃の匂いで分かるし。俺は2分から3分くらい磨いてうがいをして、胡桃が上がるのを待った。せっかくだから会いたいし。

やがてガラガラと音がして、胡桃が出てきた。

 

「あれ、待ってたの?」

「一緒に出たくなった」

 

すごく単純な理由だった。

 

「柊くん♪」

「胡桃」

 

俺は服を着た胡桃をハグした。

 

「ん、いい匂いするなぁ」

「シャンプーの匂いかな。もっと嗅いでいいよ?」

 

髪の匂いを嗅ぐってただの変態じゃないかよ。俺はそんなことしないよ。

 

「変態じゃないんだけど」

「ふふっ、冗談よ」

 

俺は胡桃をハグしていた。歯を磨く時間より長くハグしていた。

 

 そして俺はまた具合が悪くならないように自分の部屋のベットに入った。まだ20:58だったのに、俺はもう眠かった。明日は午前半休だし、ゆっくり寝たいな。俺はぐっすり眠れた。

 

【夢】

 

 俺の周りはみんな俺ばかり話しかけてくる。昨日までそんなんじゃなかったのに。俺が時計を見ると、10:50。あと2時間くらいで準備しなきゃいけなかった。

 

「柊くん、仕事行ってくるね」

「あぁ。行ってらっしゃい」

 

なぎは仕事に出ていった。仕事なんてやってたか?

 

 俺が仕事から帰って、家に着いたのは19:40。何故か外はまだ明るかった。夕方のような夕焼けも見えた。俺はなぎの帰りを待った。

 

「凪沙ちゃん遅いね」

「あぁ。何もないといいけど」

 

なぎから電話があった。俺は電話に出る。

 

「もしもし、なぎ。どこにいるんだ」

《今、甲府いる》

 

甲府?山梨じゃないか。なんでそんなところにいるんだ。

 

「なんで甲府なんかにいるんだ」

《それは――

 

【現実】

 

 俺が目を覚ましたのは10:58。なぎが帰ってこなかったけど、いるかな。と思って周りを見渡すと、なぎが俺のところで眠っていた。

 

「むにゅ…柊くん…」

 

寝ぼけているが、夢の中で俺のことを思い出しているんだろう。 なぎは俺のところに抱きついてまだ寝言を言っている。

 

「柊くぅん…だいしゅきぃ」

 

大好きって…結婚してる相手に言うことかよ。俺は部屋でじっとしていた。なぎを起こさないするのも目的だ。

 

 11:20を過ぎると、なぎがゆっくり起きた。なぎは俺に向けて猫のようなポーズで「にゃーん」と言って俺から離れた。

 

「にゅーん」

「に、にゅーん…?」

 

何を言ってるか意味不明だった。猫みたいだけど、そんな鳴き声だったっけ?

 

「柊くん、猫好き?」

「猫?好きだけど」

 

そう言うと、なぎは手を「パンッ」と鳴らした。その後5秒くらいすると、あーやが猫耳と猫の尻尾をつけて入ってきた。

 

「にゃーん」

 

あーやが猫の手のようなポーズで俺を見る。さっきのなぎとは違う何かがあり、可愛かった。今にも頭を撫でたいほどだ。

 

「どう?絢香ちゃんの猫耳姿!」

「昨日凪沙と話してさ、決めたんだ」

 

あーやは俺に抱きついてきた。俺の好きなものがたくさんある福袋のようだ。今の俺は天国にいるみたいだ。俺は我慢できずに、あーやの頭を撫でた。

 

「撫でられたぁ。つっきー猫耳好きなんだ」

「猫が大好きだから。」

 

俺はあーやから離れないと言わんばかりに離れなかった。あーやはいやがらず、むしろ積極的に来ていた。あーやは元からかわいいが、もっとかわいくなった。

 

 俺は深谷を12:51に出発する上野東京ライン小田原行きで上野まで向かう。今日は2月19日金曜日。電車は昼間のこともあってかあまり混んでいない。深谷発車時点でも座席が全て埋まり、つり革も8割程度埋まっているくらいだった。普通に考えたら混んでる方かな?普段座席、つり革共に埋まっている状態だから空いてるように感じた。

 

「うぅん、混んでる…」

「空いてる方だよ。俺にくっついてて」

 

そうすればあんまり混んでるように感じないはず。あーやは俺に抱きつく。

 

「これでいる。」

「あぁ。いいよ」

 

俺はあーやがくっついたままつり革に掴まった。正直言うと、あーやがかわいすぎて緊張してる。俺は緊張を書き消すため、あーやのことを見た。

 

 上野には14:09。ナナニジメンバー全員が改札前で待っていた。嬉しかった。

 

「やっほー、行こ?」

「あぁ。行こう」

 

俺は事務所に入った。

 




0:22開始
0:28~6:39就寝
7:10~12:58学校
13:07~14:04休憩
16:10~16:56休憩
17:29暫定終了
17:31、19:30投稿決定
17:32投稿予約小説に追加


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第二章 仲間
第1話 旅行


第二章第1話です!通し番号は101話です。
第二章の説明を軽くしておきますね。
第二章は、第一章の物語から飛びます。先に第一章を見てからご覧になると、物語が分かるかもしれません。
第二章は、新メンバーを多くはいれませんが、リクエストがあった場合、20話までは受け付けます。しかし、20話以降の場合、使わなかったりする場合があります。ご了承下さい。新メンバーを入れたい方は、第20話が終わるまでに、感想欄へ書いてください。
また、第二章では人物紹介を募集します。まだしていない人物、紹介してほしい人物などがあれば、感想欄へ書いてください。
それでは第二章始まります!
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙(序盤のみ)
立川絢梨(序盤のみ)
以上4名
人物紹介
戸田ジュン(23)
22/7のメンバー。1番年下で、さらに1番低身長。それもあってか、メンバー内では子供扱いされている。昔は呼吸器に問題があり、明るくなく、暗い性格だった。しかし、ある友達のおかげで前向きに、明るくなった。


 俺は胡桃との旅行を計画したため、俺は今日、4月2日から、4月9日まで旅行することにした。胡桃と2人きりの旅行で、初めてだった。胡桃も3月から楽しみにしていて、毎日のように「あと何日!」と俺に元気よく聞いてきて、俺も「あと2日だよ」などと答えていた。こうすると、胡桃は「やったー!あともう少し!」と元気に答えた。

今日の天気は晴れ、旅行初日にして1番いい天気だ。俺は家の車と電車で旅行するため、まずは家から新潟まで車で出る。その後は、新潟で少し遊んで、また車で沿岸部を通り、日本海を堪能する。これが今日の工程。今日は秋田駅前のホテルに泊まる予定だ。

朝は丁度いい時間に出発することにして、大体9時くらいを狙っていたが、胡桃は早く起きて、俺も早く起きた。この日はみんなが早起きで、全員が起きた時間は6:10くらい。1番に起きたのは胡桃で、4:30。2番目が俺で、4:50。3番目があーやで5:30。4番目が絢梨で5:50。そして最後に起きたのがなぎで、6:10。みんな、いつもは1番早くても6:30とかなのに今日は早かった。俺は朝ごはんを家で食べて、外に出た。外にはなぎと絢梨がいた。

 

「柊くん、胡桃ちゃんを大事にね」

「楽しませなければ剣作らない」

 

うわ、結構ハードだな。だけど、胡桃を楽しませればいいのだ。俺の1番大事な役割。

 

「わかった。楽しませるよ」

 

俺は外にいたからついでと思い、先に胡桃を走らせた。電気がどれだけ溜まってるか確認するのもあるし、運転は久しぶりだから慣れるのもあった。

折り返してきて、俺は車から降りた。丁度7:00になり、胡桃が荷物を持ってこっちに歩いてくる。俺もその荷物を半分くらい持ち、自分の荷物を家の中から取ってきた。俺の方が重かったりする。

 

「よーし、行くぞ!胡桃」

「おーっ!楽しむぞっ!」

 

楽しむ気しかなさそうだ。俺は運転席に座り、シートベルトをした。

 

「胡桃さーん、シートベルト大丈夫ですか」

「大丈夫でーす!」

 

俺は胡桃にシートベルトを確認して車を走らせた。まずは新潟方面に向かう。ひたすら関越道を辿っていくのだ。

 

 俺は関越道に入り、胡桃は横で俺の運転をずっと見ていた。何か言いたそうだ。

 

「なんか言いたいのか」

「うん。あのね、どこか寄っちゃダメ?」

 

寄り道か。誰がダメだなんて決めた。というか、旅行なんだからどこに行ってもいいんだ。

 

「もちろんいいぞ。どこだ」

「内緒にしたいから、赤城高原SAに着いたら運転変わって?」

 

なるほどな、俺を直前まで楽しませたいのか。

 

「赤城高原だな。」

 

俺は赤城高原SAの看板を探しながら運転していた。

 

 何かの線路の上を通り(多分上越線だ)、俺は関越道をひたすら走行していた。渋滞もなく、事故もない。平和な道のりだ。

ブーッブーッ

連絡網の着信だ。今は出れないから、胡桃に任せるか。

 

「胡桃、連絡なんて書いてある」

「えっとね、ライブ成功!だって」

 

ライブ成功か。そういえば、昨日ライブあったんだっけ。行ってないから知らないんだよなぁ。けど、成功したのか。

 

「じゃあ、100点だって返信して」

「オッケー!」

 

運転しながらスマホ見ちゃいけないから、胡桃に返信は頼んだ。

 

「やったーとかきたよ」

「既読スルーしてくれ」

 

こういうのは俺返さないんだよ。しばらくしてから返すんだ。

 

「よし、次も頑張れよって送ってくれ」

「はい!」

 

胡桃は俺の秘書のように張り切って働く。

 

「無理はしないよ。これで一回終わり」

「あぁ。お疲れ。SAでアイスでも買ってやるからな」

「わーいっ!」

 

胡桃は大喜びだ。アイスってそんなに好きだっけ?胡桃にそんなイメージないんだけど。周りと比べれば胡桃は落ち着いてる方で、俺の中では1番かわいい。昔の俺と性格が似てたからいいと思ったんだ。

 

 関越道を走っていると、緑色の看板に白い文字で赤城高原と書かれていた。俺はウィンカーを出し、左に曲がった。ここで胡桃に交代するんだよな。その前にアイスを買わないとな。胡桃が怒ってしまう。

 

「よし、アイス買ってる」

「私も行く!」

 

胡桃が車から降りてきた。じゃあ鍵締めないとな。俺は鍵を締め、SAの中に入った。アイスはいろんなのがあった。

 

「何がいい?」

「あのバニラ!」

 

目をキラキラさせながら胡桃は言った。よっぽどバニラが好きなんだろう。

 

「バニラ2つで」

「400円です」

 

以外と安かったな。俺は500円出して、100円のお釣りを貰う。そして、バニラアイス2つを一回胡桃に持って貰う。

 

「車の中でね」

「早く早く♪」

 

待ちきれなさそうに胡桃が鍵が開くのを待っていた。俺は鍵を開け、胡桃は中に一目散。

 

「こぼすなよ」

「分かってる」

 

胡桃は嬉しそうな顔でバニラアイスのクリームの部分を舐める。

 

「冷たーい!」

(ぬる)かったらアイスじゃないだろ」

「そっかぁ。」

 

胡桃はテヘッという顔をして、またアイスを舐める。胡桃は舐める人なんだな。俺は食うんだよなぁ。上から咥えて食べる。

 

「運転免許入れないとだ!」

「これだろ。」

 

俺は胡桃の免許を渡した。

 

「ありがと!じゃあ、食べ終わったら出発!」

 

胡桃は気合いを入れて言った。こういう胡桃が好きなんだよ。




17:59開始
19:43、20:00投稿決定
19:44投稿予約小説に追加


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第2話 旅行 2日目

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
以上2名


 俺は胡桃に運転を任せ、俺は後部座席で横になっていた。俺もまだ疲労が残っている。

 

「山上るよー」

 

そんなに高いところにあるのか。俺は胡桃の運転を、寝ながら、斜め下から見ていた。

 

「なんかエッチなアングルだなぁ」

 

何もエッチな気はないんだが。ただ寝てたらたまたまなっただけだ。俺は胡桃と話す。

 

「まだ先か」

「酔わないでね。」

 

胡桃は山道をひたすら登っていく。

 

 やがて駐車場につくと、俺は胡桃に掴まりながら起き上がった。1人じゃ立てなかったのだ。なんでかというと、ぐっすり寝てたから。

 

「もう、柊くん寝ちゃったの?」

「ごめん。眠かったから」

 

正直に言った方がいいよな?怒られたりは…

 

「めっ、だからね!」

 

かわいく怒ってくる。かわいいから怖くないや。俺は怒った胡桃の手を掴み、園内に歩いていく。看板に「たんばらラベンダーパーク」とかかれている。

 

「デートっぽいでしょ?」

「へぇ、いいじゃん」

 

俺は胡桃と手を繋いで中に入る。中に入って、まず目についたのはラベンダーが広がっている丘。紫色に染まっている。

 

「綺麗だな」

「でしょ。」

 

胡桃は俺に顔を向けて、「撫でて撫でてー」と言っているような顔をした。俺は胡桃の頭を優しく撫でた。

 

「むふー、撫でてもらえたー」

 

胡桃は気持ち良さそうに言った。撫でてばっかりだな。俺って。

 

 丘を一周してきて、やがてスタート地点に戻った。俺は胡桃と一緒に店に向かう。なんかお土産とかないかな。

 

「あ、これ!絢香ちゃん喜ぶんじゃない?」

 

ラベンダーの匂いがするスプレーか。枕に掛けるんだな。

 

「いいね。それでいいか」

「他のところでも買うし、いいんじゃない?」

 

そうか。俺は胡桃と車の方に戻り、今度の運転は俺が担当することになった。胡桃の後ろで寝てしまったこともあるし。俺はしょうがなく運転することにした。関越道まで戻り、そこからは新潟に向かって走行する。胡桃と俺は車の中でどうして好きになったかの話になった。

 

「どうして好きになったかか…単純にかわいくて、地味だったから」

「それ、誉めてるの?」

 

地味っていうのは確かに褒め言葉ではないか。

 

「昔の俺に似てた。だからだよ」

「昔は地味だったからね。私が柊くんを好きになったのは、多分高校入ってから」

 

高校の時には、俺の中に恋愛なんてあんまり無かったんだよな。

 

「柊くんが私と同じ班になったとき、私が一目惚れしたの」

「なんか照れるな」

 

俺のことを言われるとなぜか恥ずかしくなる。

 

「柊くんは、学校内でも1番の魔法使いで、何を取っても1番だったでしょ?」

「いや、運動面だけは学校最下位…」

 

高校の時から運動音痴で、それもあって取り残されたんだろう。

 

「まぁ、大体1位でしょ。だから、どんな人なんだろうって気になったの」

 

好奇心じゃないか。気になったからって。

 

「そしたら、声もかっこよくて、優しい人だって気づいたの」

 

あぁ、たまに練習してるときに感じた視線はそれか。俺は照れ隠しに前の景色を見る。

 

「ほら、さっさと行くぞ」

「照れてるなぁ!」

 

げっ、バレてるのかよ。俺は返事代わりに手を挙げた。

胡桃は後部座席で寝ていて、俺のことを俺が見てたときのように見つめている。こういうことか、視線って。

 

 俺は長岡JCTの近くに来て、胡桃に言った。ここからは関越自動車道ではなく、北陸自動車道に変わるんだ。北陸自動車道で新潟西ICまで行って、高速から降りる。その後は新潟西バイパスで駅前まで行き、新潟駅に着く。

 

「北陸自動車道入るよ」

「ほいほい」

 

胡桃はドアと座席の隙間から顔を覗かせた。胡桃は目だけをこっちに見せている。フロントガラスに反射して見えている。

 

「何時くらいに着く?」

「14:20とか。昼はどうしよっかな」

 

今の時刻が12:00を過ぎているんだから、俺だって腹が減ってくる時間だ。

 

 新潟駅前に着くと、胡桃は空腹で倒れたかのように後部座席に横になっている。

 

「お腹空いたぁ。動けないぃ…」

「俺がおぶるから、乗って」

 

胡桃は力を抜いたように俺に乗った。

 

「さて、車はここに置いてくから、駅で食べていこうか」

「蕎麦!」

 

はやっ!即答かよ。確かに蕎麦の方が楽だったりするけど。

 

「じゃあそれでいいよ。」

 

俺は胡桃が背中に乗っているのにも関わらず揺さぶって歩いた。

 




22:39開始
22:53~6:46就寝
7:17~19:14学校
19:36暫定終了
19:37、20:30投稿決定
19:38投稿予約小説に追加


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第3話 旅行 3日目

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
以上2名


 俺と胡桃は新潟駅で蕎麦を食べ、ホームに降りた。今度乗る14:57発いなほ7号秋田行きは2階の5番線から出発する。途中停車駅は、豊栄、新発田、中条、坂町、村上、府屋、あつみ温泉、鶴岡、余目、酒田、遊佐、象潟、仁賀保、羽後本荘、秋田。3時間40分ほどで秋田駅に到着する。秋田駅にホテルが取ってあるため、秋田駅まで電車で行くのだ。

 

「14:57発いなほ7号秋田行き、発車します」

 

駅にアナウンスが鳴り響く。俺も車内に入った。胡桃は席でだらけている。

そして出発した。主な駅の到着時刻は

新発田15:21

村上15:46

余目17:02

酒田17:12

秋田には18:41に到着する。

 

「寝ていい?」

「いいぞ。俺も寝ようかな」

 

俺は1番後ろの席なのもあって、自由にリクライニングできる。胡桃は限界まで寝た。一方俺は限界の半分でやめて寝た。

 

【月島胡桃視点】

 

 私はリクライニングを限界まで倒し、寝た振りをする。ある作戦があるためだ。丁度、豊栄駅を発車したとき、私は目を開けた。寝る気はないのだ。柊くんはもうぐっすり寝ているようだった。

 

(寝てる…)

 

私は作戦そのまま、柊くんの膝の上に乗っかった。顔との距離は20cmくらい。もうほとんど無い。

 

(今日、くっついてないから、くっつこうかな)

 

私は柊くんの近くまで体を倒し、キスはしないで肩に頭を乗っける。それ以外は全て密着させる。

 

(温かい…)

 

私は柊くんから離れたくなかった。温かいし、気持ちいい。

 

「きゃっ」

 

電車の揺れでバランスを崩してしまった。

 

(危なかったぁ。ちゃんとした体制でいないと)

 

私は柊くんを両手で壁ドンするようにして、キス直前まで近づく。柊くんとの距離は1cmも無いかもしれない。

 

(さすがに近いかな…けど、離れちゃまた崩すし…)

 

私は柊くんにドキドキしながらも、心を落ち着かせる。

 

(キスしたら、柊くん起きちゃうよね。)

 

人はいないからいいけど、柊くんが起きちゃう。

キィッ!

一瞬だけ急ブレーキがかかった。その弾みで、私の右腕が耐えきれずに、間接で曲がった。

 

「んんっ!」

 

したくなかったキスをした。起きちゃうのに、早く離れたいのに、離れられない。どうして…

 

「んぐっ」

 

柊くんが起きてしまった。目を見開いている。しかし、すぐ戻した。そして、私を離す。

 

「ハグ、するか」

「…うん」

 

私は柊くんにハグされる。密着して、全てが柊くんにくっついているみたいだった。

 

「大好き…柊くん…」

「俺もだよ、大好きだ、胡桃」

 

私は柊くんの背中に手をつける。私もハグしたのだ。

 

【月島柊視点】

 

 羽後本荘を出発し、新屋駅を通過すると、車掌による肉声放送が入った。

 

「まもなく終点秋田です。」

 

乗り換えの案内で、以下の電車が説明された。

奥羽本線湯沢行きは6番線から18:46

男鹿線男鹿行きは1番線から18:47

奥羽本線快速秋田行きは8番線から19:25

秋田新幹線こまち48号東京行きは12番線から19:10

以上4路線。

秋田には定刻通り18:14に到着。駅前のホテルで宿泊する。俺は胡桃と手を繋いで出た。改札は中央改札から。階段を登り、右側の在来線改札から出る。左側は11、12番線の新幹線ホーム。改札も新幹線専用だった。

 

「眠いなぁ。ホテル行こ」

「部屋は別々じゃないけど、いいか」

 

部屋は別々に取りたかったんだけど、部屋が空いてなくて1部屋だけだった。

 

「うん!というか、柊くん寒くないの?」

「あぁ…保温魔法つけてるから。」

 

外の気温はこの時期、この時間だと10℃前後か。

 

「なぁ、行きたいところあるんだけどいいかな」

「近いの?」

 

うーん、遠いって訳じゃないけど、そんなに近くないかな。

 

「そんな遠くもないかな」

「じゃあ行く!」

 

俺は改札をもう一回通り、6番線に向かった。放送でもあった18:46発奥羽本線湯沢行き。この電車で大張野まで行きたかったのだ。

 

 

 18:46に出発し、19:04に到着する。単線の線路にある棒線駅だ。

 

「真っ暗…」

「ここなんだ。懐かしいなぁ」

「懐かしいって、どうして?」

 

言ってなかったっけ。俺が元々、

 

「秋田出身なんだ」

 

ってことを。俺の実家はここから車で30分、歩いて2時間くらいかかる。

 

「ちょっと待ってて」

 

俺は無人の改札を出た。駅前は何もなく、シャッターが閉まった店が1つある。

 

(変わってないな。実家は1人で来ようかな)

 

実家は結構な山奥にある。歩くと熊が出るような山道だ。俺は大張野駅に入り、跨線橋を渡る。蜘蛛の巣がところどころにあり、古い感じがしてくる。

 

「電車いつ?」

「20時くらいじゃないか」

 

奥羽本線は本数が少なく、上下線それぞれ1時間当たり1本しかない。朝なんて、深谷駅は6:18の次が6:23。大張野は6:02の次は6:50。48分空くんだ。

 

「まぁ、寒かったら俺に抱きついていいから。寝ないでね」

「はーい。」

 

胡桃は早速俺に抱きついた。寒いのを我慢していたんだろう。

 




失敗したためなし…


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第4話 旅行 4日目

さて、第4話が始まる前に報告です
人物紹介ですが、第6話から行います。感想欄では、ナナニジは全員完了しています。それ以外でお願いします。
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
美鈴陽菜(画面内のみ)
以上3名


 やがて、18:52発秋田行きがやって来た。秋田まで戻り、すぐにホテルに向かう予定だ。

 

 秋田駅を出て、ホテルの中に入ると、ベットが2つある洋室の部屋が俺たちを迎えてくれた。この部屋にはエアコンがついていたが、あまり気温は高くなかった。外の気温が低いこともあるだろう。

 

「毛布…寒い…」

 

胡桃は厚い毛布を首まで掛け、俺は先にリモートの仕事を行った。30分くらいで終わるが、内容はかなり濃い。

 

「柊くん…寒い…」

「30分待ってくれ」

 

俺はパソコンに向かってタイピングを始め、資料をまとめた。パソコンの中では6人が同じ仕事を行っている。もちろん俺が仕切っている訳じゃないが、みんなが考えて見やすいように作っている。その中に、俺へのメッセージを送る人がいた。

 

「旅行どうですか、マネージャー」

 

美鈴さんだ。最後にやり取りしたのはドームライブ(第一章第21話参照)だったよな。

 

「いい感じだよ。」

 

仕事とは無関係だから、俺は個人チャットで美鈴さんと会話した。

 

〈今どこにいるんですか〉

〈秋田のホテル〉

〈明日の行程は〉

〈秋田から新潟方面戻って、海を見る。その後は新潟から車運転して山形の方行くよ〉

 

整理すると、

秋田→越後寒川→新潟→酒田→山形

になる。山形で泊まり、明後日は車で盛岡まで行き、盛岡からまた田沢湖線と奥羽本線で秋田へ戻り、リゾートしらかみ。青森から第3セクターを通り盛岡。盛岡で泊まる。整理すると

山形→盛岡→大曲→秋田→東能代→深浦→青森→八戸→盛岡

になる。東北を中心とした旅行だ。

 

〈帰ってきたら、少し相談したいですが〉

〈あぁ。分かった〉

 

俺は個人チャットを閉じた。胡桃が肩まで毛布を掛けて、こちらをうるうるとした目で見ている。

 

「胡桃、どうしたんだ」

「寒い…」

 

胡桃は寒がりなのかな。俺もだけど、保温魔法を覚えちゃったから大変じゃない。

ぎゅっ

ギシッとベットの軋む音がして、俺は胡桃の横に寝た。

 

「暖かいか」

「うん。こうしてて」

 

俺は胡桃から離れないように抱きしめた。まだ19:30だからか眠くはない。でも、このままだと胡桃が寝ちゃいそうだな。

 

「胡桃、眠くない?」

「眠くない。」

 

胡桃は俺の耳元で言った。囁き声で俺に言う。

 

「柊くん、私の心臓、どうなってる」

 

俺は胡桃の左胸を触る。すると、とくん、とくん、と、少し早い鼓動が俺に伝わってきた。触っている間に、とくん、とくんから、とく、とく、とく、に変わっていき、テンポだと78から120に上がったみたいだった。

 

「ドキドキしてるの。」

 

俺は胡桃にまた近づき、胡桃の頭を撫でた。胡桃は顔を真っ赤にして、下を向いた。

 

【月島胡桃視点】

 

 柊くんがますます近づいてきて、私は恥ずかしさとドキドキで暑くなってしまった。こんなにドキドキしたこと無いのに。

 

(近い…うぅ…心臓が飛び出そう…)

 

ものすごく早い心臓の鼓動。破裂してしまいそうなほど激しく、早かった。

 

(胸くっついてるよね。伝わっちゃってるかな)

 

少し不安だった。柊くんにこれが伝わってしまったら、こんなことでドキドキする私を嫌うのではないかと。

 

「胡桃、心臓の鼓動速くないか」

 

まずい…もう私は柊くんといれないのかもしれない。

 

「俺も速いからさ…無理すんなよ」

 

私の心臓の鼓動が少し落ち着いた。共感してるの?柊くん。

 

「え、そうなの?」

「…こんな長い時間2人きりで抱きついてたこと無いから…緊張するだろ…」

 

なんだ、私だけじゃなかったんだ。

 

「柊くん、克服しよ?一緒に」

「…あぁ。そうだな」

 

私と柊くんはいろんなことをして、ドキドキしないようにとか、慣れるだとかしていた。いつの間にか私の心臓の鼓動はゆっくりになっていた。

 

【月島柊視点】

 

 2人で緊張しないように練習していると、いつの間にか鼓動がゆっくりになっていた。そして、時間も21:20。もう21時を過ぎていたんだ。

 

「柊くん…大好き」

「じゃあ、最後にするか」

 

俺は胡桃とキスした。緊張しないための最後に行うことだ。

 

「んっ、んちゅっ」

 

胡桃は壊れたかのように、「柊くんっ、大好き!大好き」と言おうとしていたのか、少し暴れていた。

 

「はぁ、はぁ、大好きぃ」

 

胡桃は全ての力を抜いてベットに寝た。

 

 ベットが2つあり、別々で寝れるのにも関わらず、俺と胡桃は同じベット、同じ毛布で寝ていた。俺はなかなか寝付けずにいて、胡桃はすぐに寝てしまった。今はもう4時過ぎ。一回は寝たが、再び起きてしまったのだ。

 

「すー、すー…」

 

いびきをかかずに、胡桃は静かに吐息だけが聞こえて眠っている。俺は胡桃の寝顔を見る。

 

(かわいい…頬って触ったら柔らかいのか)

 

俺は胡桃の頬に指を近づけた。いや待て、胡桃が起きちゃうだろ。俺はその場にとどまった。すると、胡桃が寝ぼけているのか知らないが、俺の指を掴み、頬に当てた。

 

(自分から!?って、柔らかい…)

 

高級なクッションのような柔らかさだ。今までこんなに柔らかいものを触ったことがないほどだ。俺は夢中になって頬をつついていた。

 

「柊くん、気付いてるよ。柔らかい?」

 

なんだ、起きてたのか。

 

「すごく柔らかいよ」

「よかった。ピチピチな女の子のほっぺなんて触れないでしょ」

 

確かにそうだ。やる人がいないし。

 

「私だったらいつでもいいよ。」

 

胡桃は俺を少し笑って見つめて言った。

 




21:48開始
22:48~6:45就寝
7:25暫定終了


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第5話 旅行 5日目

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
以上2名


 俺は胡桃を揺さぶって起こし、秋田駅に向かった。3番線からの6:50発羽越本線酒田行きに乗車する。

この6:50発酒田行きは、6:32に秋田駅に入線する。この電車は奥羽本線東能代駅を始発とする電車。だから早く入線する。越後寒川まで行くため、終点酒田まで行ったあと、酒田で9:36発羽越本線村上行きに乗り換えて越後寒川まで行く。

秋田駅は時刻通り出発。次は羽後牛島だ。胡桃はロングシートに座り、俺は胡桃の前でつり革に掴まっていた。

 

「一応通勤時間帯なんだね」

「関東に比べれば少ないけど」

 

座席は胡桃の隣が空いていて、俺がそこに座るのも考えたが、窮屈だと思ったから座らなかった。

 

「海が駅から見えるの?」

「逆方面のホームからだけどね」

 

胡桃にはまだ場所を教えてなかったのだ。楽しみにさせたかったから。

 

 酒田には8:44。次の電車までは45分時間がある。ここで朝ごはんでも食べていくか。この後は越後寒川まで行ったあと、新潟まで行ってしまう。

 

「朝ごはん食べていこうか」

「軽いものだよね」

 

胡桃が行ったあと、俺は魔法結晶を出した。保温魔法が切れるからだ。けど、これ使ったら胡桃が寒いな。

しばらくして、胡桃が俺の分も買って戻ってきた。

 

「なに、それ。」

「あぁ…じゃあ、これあげるから強く握って」

 

胡桃に魔法結晶を投げ渡して、胡桃は思いっきり握った。すると、結晶はパンッと音をならして消えた。

 

「きゃっ」

 

胡桃は驚いて右足を後ろに下げた。

 

「もう体温は変わらないよ。寒いか」

「寒くない…」

 

魔法結晶の内容は保温魔法。急いでたから覚える暇がなかったんだ。

 

「へぇ、保温魔法ってこうしてたんだ。あ、柊くんサンドイッチでいいよね」

「あぁ、大丈夫。」

 

胡桃がエコバックに入ったサンドイッチを見せる。合計で2つあり、飲み物は胡桃が多分オレンジジュース。俺はカルピスだった。今までで俺がカルピス好きなのを知ってるのは多分家族と胡桃だけ。濃いカルピスが1番好きなんだ。

 

「カルピスでしょ」

「分かってるじゃないか」

 

俺はペットボトルを取り出し、早速飲んだ。

 

「9:10かぁ。まだ20分くらいあるね」

「…そうだな。」

 

俺は蓋を閉めて酒田駅2番線に向かった。

酒田駅は見た感じ、

0番線が陸羽西線

1番線が羽越本線秋田方面の本線

2番線が待避と当駅始発・折り返し

3番線が羽越本線新潟方面の本線

となっていそうだった。9:36発も2番線から出発するから、そう考えてよさそうだ。

 

「なんか本数少ないよね」

「デットセクションがあるからかな」

「でっとせくしょん?」

 

胡桃がちんぷんかんぷんに聞いてきた。佐々木先輩からしたら常識かな。

 

「交流と直流の間にある、電気が通ってないところ。」

「交流と直流を繋げたらパーンッってするんでしょ?」

 

それは分かってるんだ。だったら結構近い。

 

「そう。だから電車じゃなくて気動車なんだね」

 

その影響もあってか、酒田駅の新津方面は始発から2本は特急、普通列車の始発は7時台に入ってから。

 

「眠い…目的地着いたら教えて…」

「分かった」

 

朝早かったし眠いのも無理はない。俺だって眠いから。だけど越後寒川までは耐えとかないと起こせないから、俺は起きたままでいた。

 

 越後寒川には11:11。胡桃を起こしてから2分くらいで着いた。降りたホームは山側で、反対の酒田方面のホームからよく見える。

 

「ほら、海見えた」

「近いね。海、私好き」

 

胡桃が海を見ながら言った。

 

「どこまでも続いてる気がするから」

「そうか。じゃあ、次の列車なんだけど」

 

胡桃が不思議そうに首をかしげてこっちを見る。そう、次の列車の時間は…

 

「14:28」

「え?今11:13だよ?」

「だから、14:28」

 

次の列車までは3時間15分。12時台、13時台には電車がない。衝撃の少なさだ。

 

「待つか?」

「飛んじゃう?」

「じゃあ俺に掴まって」

 

胡桃は俺にギュッと抱きつく。最近覚えた新しい飛行スタイルだ。円盤じゃなく、体だけで直接飛べる。

 

「きゃあぁぁっ!」

 

胡桃はかなりのスピードに驚いていた。最高時速は120km/hどころか、180km/h。円盤より60km/hも速い。急加速でき、2秒ほどで180km/hに到達する。

 

「速い!」

 

俺は新潟駅を目指して全速力で飛行した。

 

 新潟までは23分で着いた。海の上を通ったりした方が短かったからそうした。

 

「ふーっ、楽しかった!次ってどこ行くの」

「次は山形だよ」

 

俺が言うと、胡桃は運転席に座った。運転してくれるのか。

 

「柊くんは助手席にいて。」

「あぁ。分かった」

 

俺は助手席に座り、山形に向かい始めた。

 



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第一長編小説 第6話 旅行6日目

長引いてるので長編です。
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
新メンバー1名
以上3名
人物紹介
神木詩音(23)
みかみとは従姉妹で、しっかり者のお姉さん的存在。礼儀も正しく、真面目な性格。周りからは料理の天才と呼ばれ、料理だったら何でも作れる。みかみとも仲が良く、実はみかみの方が年上である。


 俺は胡桃の運転する車を助手席で見ていた。胡桃は予定通り高速に入り、やがて米坂線の横を通っていた。高速はしばらく無く、次は山形に入ってからだ。途中の運転交代もなく、そのまま走り続けていた。

 

「胡桃、大丈夫か」

「大丈夫!まだ行ける!」

 

元気よく言うが、俺にはもう分かっていた。我慢していることを。

 

「胡桃、コンビニ寄って」

 

胡桃は米坂線越後大島駅を過ぎた辺りのコンビニに寄った。胡桃を駐車場に止め、俺は外に出る。

 

「胡桃は待ってて」

「はーい」

 

俺はコンビニに行く振りをして運転席どドアを開けた。胡桃を落ち着かせたいためだ。

 

「胡桃」

 

俺は胡桃を抱きしめた。胡桃は驚いたような顔で俺を見る。しかし、視線をうまく合わせられていない。

 

「無理するなって。俺が運転するから」

「でも、それだと柊くんが楽しくない…」

 

優しい気持ちが裏となったか。

 

「一緒にいるだけで嬉しいよ。俺が1番悲しいのは胡桃が疲れ果てることだ」

「…じゃあ、交代して…?」

「あぁ。いいよ」

 

胡桃は運転席から出てくる。胡桃は足を押さえている。ずっと同じ体勢だったらエコノミー症候群か?

 

「胡桃、一回後部座席に横になって」

 

エコノミー症候群の時は力を抜き、楽な姿勢をするといい。血が流れにくくなっているから流れさせることが必要だ。

 

「エコノミー症候群だと思うから、少し休もう」

 

俺も車は走らせずにいた。車の揺れとかで座っちゃうとまた悪化し始めるから。

エコノミー症候群は、軽度なものだと痛くなるだけだが、悪化すると胸が苦しくなったり、呼吸困難に陥る。

 

「胡桃、大丈夫か」

「うん…筋肉痛みたいに痛いけど」

 

疲れすぎたんだ。新潟からずっと運転してたらそうなるよな。

 

「安静にしてて。先行かないから」

 

俺は胡桃の腹を優しくポンポンと叩きながら言った。まるで―――

そんな俺が嫌いだった。

 

 胡桃が俺を見つめていて、俺は胡桃の方に少し視線を向けた。胡桃は普通の顔でこっちを見ている。俺は少し不安になって言った。

 

「どうした…?」

「治った。行こ」

 

ん?話し方違くないか?そういう話し方なのは絢梨とか、昔の杏、心春、澪ぐらい。胡桃は明るかったのに、今はなぜか人見知りのように無口だった。

 

「胡桃、なんか――」

「早く」

 

俺は胡桃の圧に負けて、「あ、あぁ…」となって胡桃を走らせた。胡桃は横になったままだ。

 

「胡桃、性格変わったか」

「…あぁぁ、気付かれちゃったかぁ」

 

胡桃は息を強く吐くようにして言った。

 

「だって、いつものじゃバリエーションないでしょ?」

「あのなぁ、いつものでいないと不安だから」

 

胡桃は「ごめーん」と言って、運転中の俺をつついた。胡桃はニコニコ笑っていて、楽しそうだ。

 

 山形駅に着くときにはもう16:00を過ぎていて、とても腹が減っていた。昼ごはんは先に済ませたい。俺は蕎麦屋に行って昼食とした。

 

「美味しいー」

「腹減ってたからな。」

 

俺がご飯に夢中になっていると、あることを思い出した。

 

「あれ、ホテル取ってない…」

「え、ホテルないと…」

 

俺は試しにナナニジのグループに助けを求めた。誰かホテル知ってるかもしれないし。

 

〈誰かホテルしらない?〉

〈知ってるよー!駅前で待っててね〉

 

みかみだった。みかみが知ってるなんて意外だったな。俺は食べ終わると山形駅前に向かった。山形駅前に来たって、ホテルを知らないんだから話にならない。

 

〈17:30まで待っててね〉

 

17:30って、あと1時間じゃないか。胡桃はあとからやってきた。

 

「ふぅ、食べた食べた」

「あと1時間どうする」

 

胡桃は手を顎に着けて悩んだ。あと1時間もあるんだから、何かしたいことは…

 

「図書館!」

 

胡桃ってゲームが好きなんじゃないのか?本も好きなのかな。

 

「図書館?」

「あ、違う。ネカフェ…」

 

図書館とネカフェをどう間違えたんだよ。俺は近くのネカフェに向かった。みかみが部屋で俺と胡桃が同じ部屋。

ネカフェでは、俺と胡桃で協力音ゲーや、対戦ゲーをしていた。あっという間に17:10になり、俺と胡桃は山形駅前に戻った。

 

「それで、もう17:20だけど…」

「知ってる人が来る気配もないね」

 

なんで駅前なんかで。俺がそう思っていると、17:27着の奥羽本線がやってきた。階段から人々が降りてくる。その中にはピンクの髪の女性がいる。

 

「君が月島くん?」

 

話しかけてきたのはそのピンクの髪の女性だった。

 

「え、あ、はい。」

「ホテル探してるんだって?」

 

事情も知ってるのか。なんで知ってるんだ。

 

「みかみから聞いたよ。」

 

みかみからってことは、従姉妹かなんかの関係か?

 

「従姉妹とか?」

「そう!私の家泊まってってよ。いま一人だからさ」

「え、いいの!?」

 

胡桃が前のめりになって聞いた。

 

「ちょっと遠いんだけど、乱川ってとこ」

 

乱川?どこだろう。ここからそんなに遠いのか?

 

「私、先に駅まで電車で行ってるから、駅で待っててね!」

 

そう言ってみかみの従姉妹は行ってしまった。えっと、とりあえず車に戻ってカーナビで調べるか。

 

「とりあえず乱川まで行こう」

「うん。明日北に行くんだったら近くなるね」

 

明日は確かに北に向かう。盛岡だからな。俺はカーナビで乱川駅を調べた。ここから東北中央自動車道で天童ICまで行くようだ。

 

「よし、行くか」

「おーっ!」

 

右手を挙げて胡桃は言った。俺は車を走らせた。

 

 やがて30分ほどで乱川駅に着いた。電光掲示板には18:19新庄行きと書かれていた。多分この電車だ。いまの時刻は18:07。電車より早く着いた。待ち時間の問題もあるけど。

そして18:18、予定通り新庄行きがやってきた。みかみの従姉妹がこっちを見ている。みかみの従姉妹はドアを開け、ホームに降りてきた。

 

「早かったね。」

「高速使ったし」

 

みかみの従姉妹は無料駐車場にあった車を取りに行き、俺のところに戻ってきた。

 

「私についてきてね」

「分かった」

 

俺は車に戻って、胡桃を助手席に乗せ、車を走らせた。みかみの従姉妹が乗っている白い車は道をそれなりのスピードで走っていく。俺もその後ろをついていく。

 

「集落あるんだね」

「確かにな。この辺だろ」

 

乱川駅を出発してから5分、みかみの従姉妹を乗せた車は止まった。みかみの従姉妹がこっちに向かってくる。

 

「着いたよ。」

「えっと、名前ってなんていうんだ」

 

まだ「みかみの従姉妹」だと考えづらいし、名前で呼べないから呼びづらい。

 

「神木詩音。よろしくね」

 

詩音か。だったら呼びやすいな。

 

「よろしく。だったら、俺はなんか食ってこようか」

「あ、作るよ。」

 

料理作るって、なんか申し訳ないし、というか、人に作ってもらうって、なんか不安だし。

 

「あ、怪しいとか思ってる?」

「あ、あーいや…」

「中入って待ってて」

 

詩音はキッチンで料理を作り始めた。テーブルに胡桃と向かい合わせになって座っていた。

 

「なんか、不安じゃない?」

「だけど、そんな悪い人じゃないだろ」

 

俺が胡桃と話して待っていると、詩音がこっちに来た。

 

「出来たよ、余り物だけど」

 

献立は茶色でもなく、緑も結構入っている。バランスよく作られていた。

 

『いただきます』

 

時間はもう19:00に近づいていた。

 

 今日は借りていることもあり、風呂は全員別々に入ることになった。寝るところも別々で、胡桃は21:30ごろに寝た。俺はみかみにもお礼を言うため、PCを開いた。

 

「みかみ、聞こえてるか」

《うん。聞こえてるよー》

 

みかみとオンラインで繋いだ。

 

「今日はありがとな。」

《いいよー。詩音も迷惑してないって言ってたから》

 

みかみはいつも通りおっとりしていた。他のみんなはもう部屋に数人いる程。みうや麗華、あかねはもう帰ってしまっている。画面に、帰る用意をしているあーや、つぼみが写っていた。

 

《もう帰るねー!》

 

つぼみがPCに向かって言った。

 

「ゆっくり休めよ」

《はーい!》

《楽しんでねー、つっきー》

 

あーやとつぼみは画面から出ていった。写っているのはみかみだけ。

 

「じゃあ、また明日」

《うん。》

 

みかみが通話を終了し、俺はPCを閉じた。もう22:10だ。寝よう。

 

 翌日朝、詩音の家で朝ごはんを食べて、7:10に詩音の家を出た。次の目的地は盛岡駅だ。ルートは仙台まで抜け、盛岡駅まで北上する。3時間2分で着くと案内されていた。

 

 休憩もあり、10:20に盛岡駅に着いた。ここから車を駐車場に車を止め、田沢湖線に乗り換える。

 

「旅行3日目か」

「どう?楽し?」

 

胡桃から聞かれて俺は言った。

 

「最終日になったら話す。」

 

俺はそう言って田沢湖線の時刻を調べた。次の田沢湖線は14:12大曲行き。俺は券売機で秋田までのこまち9号の指定席券を購入した。あと30分ほどで到着する。席は17号車4番Aと4番Bだった。

 

「新幹線かぁ。」

「在来線があんまりないからしょうがないよ」

 

10:57発こまち9号秋田行きだ。

 

「えっと、4番だから…」

「そこだ」

 

胡桃が窓側、俺が通路側に座った。胡桃は窓の景色を見て、俺は通路側で、背もたれに体重をかけて寝た。

 

 俺が起きたのは大曲でスイッチバックをして、後ろに引っ張られるようになってしばらくした、秋田車両センターの横で起きた。

 

「あ、起きた?」

「眠い…もう青森行くのか」

 

秋田駅まではあと10分もない。

秋田に着くと、急な肌寒い空気が俺を包んできた。寝起きの俺を起こすようだった。

 

「次って何時って書いてある…」

「13:58だよ。ちゃんとしてよ?」

 

まだ寝ぼけてるんだよなぁ。もういっそ…

 

【月島胡桃視点】

 

 (まったく、ちゃんと起きてないと)

 

柊くんに少しあきれた。ちゃんとしてよ?本当に。

 

「胡桃…」

「んへっ!?」

 

私は驚いて変な声が出た。柊くんは私の後ろから抱きついてきたのだ。

 

「眠い…リゾートしらかみまで連れてってくれ…」

「もう…お返しはしてもらうからね!」

 

私は柊くんを後ろに乗っけたままリゾートしらかみが来る2番線に向かった。全車指定席で、五能線経由だと聞いていた。全部柊くんからだけど。

指定席は4人用の個室。座席を平らにして、私は柊くんをおろした。柊くんは起きずに眠っている。私はドアを閉め、柊くんの上に乗っかった。

 

(起きないかなぁ)

 

私は柊くんの上に乗っかったままうつ伏せになった。

 



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第7話 旅行 7日目

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
新メンバー1名
以上3名
人物紹介
月島紅葉(24)
柊の従妹。落ち着いているが、無口なわけではないし、普通の性格。しかし、たまにすごいことをして、柊に驚いた顔をされたり、誉められたりしている。



 俺は気付いたらリゾートしらかみの車内にいた。乗ったときの記憶もないから、さっぱり寝ていたんだろう。胡桃はこの個室にいないから、トイレとか行ってるのかな。それより、今どこなのか調べないと。俺が車窓を見ると、ちょうど驫木を通過した。もう青森も近いなぁ。

 

「おはよ」

「うわぁぁあっ!」

 

俺は思わず大きな声を出して退いた。俺の足の方から胡桃が出てきたのだから。

 

「なに?私だよ」

「そうじゃなくて…なんでここにいるんだ」

「ずーっといたよ?寝顔堪能してました」

 

「寝顔堪能してました」って、俺が起きたときもいたのか?

 

「俺が起きたときもいたのか?」

「うん。むくって起きてたね」

 

やっぱり。下にいたからか俺が気付かなかったんだ。

 

「もう、私が乗せたんだからね!」

「あぁ…ごめん」

 

すごい眠かったから何をしたのかも覚えてない。

 

「俺、なんかした?」

「えっとね…」

 

胡桃が指を折りながら言う。

 

「私にいじられてたり、ほっぺツンツンしてたり…」

「それは胡桃がしたことだろ。というかそんなことしてたのかよ」

 

胡桃は「うーん」と考えて胡桃は言った。

 

「寝ぼけて私の胸揉んだり」

「ああああっ!」

 

俺は叫んで頭の中に入らないようにする。しかし、頭の中に入ってくる。胸を揉んだ!?

 

「私がお返しにキスしたけどね」

 

お返しにキスしても俺は起きなかったのか。よく起きなかったな、俺。

 

「柊くん、胸どうだった?」

「寝てたのに分かるかよ…」

 

胡桃は「ふふっ」と笑って俺から離れた。離れたとき、俺は少し名残惜しかった。

 

 リゾートしらかみが青森に着いたのは19:40。もう外は暗かった。次は19:44発大舘行きで新青森、新青森からは20:40発はやぶさ96号仙台行きに乗車した。俺ははやぶさ96号の中で胡桃と話していた。ちょうど降りる準備をしているときだった。

 

「明日どこ行く?」

「なんか私の事ばっかり聞いてもらっちゃってるから、柊くん行きたいところない?」

 

俺の行きたいところか。特には…

 

「したいことでもいいよ」

 

俺の今したいこと…秋田の実家で、従妹と会いたい。従妹は今俺の実家にいるはずだから。

 

「従妹に会いたい…実家にいる…でも、俺だけで行くから、今じゃなくていいよ」

「ふーん…」

 

俺は新幹線から降りてホテルに向かった。

 

【月島胡桃視点】

 

 柊くんは実家の従妹に会いたいって言ってた。柊くんの実家ってどこだろう。せっかくだったら連れていってあげたい。

 

「あっ」

 

私はふと思い出した。大張野に行ったとき、柊くんが実家の最寄り駅と言っていたのを。私は柊くんのPCをわきから覗き込んだ。ちょうどマップを出していて、明日の行程を考えてるようだった。星マークがついていたところがあり、そこは柊くんの実家だった。

 

「私ちょっと車行ってくる」

「え?あぁ。分かった」

 

私はカーナビに柊くんの実家を読み取らせた。ルートが表示され、私はルートを保存した。これで明日は決定した。

 

 翌日、私は柊くんに言った。

 

「今日は私が連れてく!」

 

車の後部座席に座らせて、窓をカーテンで隠し、前も見えないようにした。

 

「胡桃、そんなに内緒なのか」

「うん!絶対!」

 

私は柊くんの実家にむけて車を走らせた。

 

 実家の近くで窓のカーテンを開けるように柊くんに指示した。柊くんがカーテンを開けると、私は柊くんに言った。

 

「どこだと思う?」

「そんなの知らな――

 

柊くんは口を開けたままだった。気付いたんだ。

 

「胡桃…まさか、連れてきてくれたのか」

「来たそうだったし。」

 

柊くんは嬉しそうだった。

実家に着くと、柊くんは真っ先に車を降りていった。私もそれに追い付くように走った。

 

【月島柊視点】

 

 俺が実家に入り、従妹の紅葉(もみじ)を探していた。紅葉は2階の元俺の部屋にいた。

 

「紅葉、帰ったぞ」

「柊くん…?」

 

少し驚いたようだった。俺は紅葉を撫でた。

 

「久しぶり。たくさん、したかったことしような」

「あのね、柊くん。私、あるものつくったの」

 

紅葉について行くと、そこには俺の写真が飾られた部屋があった。

 

「どう?」

「すごいじゃないか。」

 

俺の目には、棚の上に置かれた花火が目に入った。

 

「あの花火は」

「柊くんが高校生の頃に買ってたやつ」

 

高校生の頃に買ったやつって、今から8年も前じゃないか。

 

「いつかしたいなって、思ってて…」

 

紅葉は座り込んで泣き始めた。

 

「どうした、紅葉」

「柊くんが…来てくれたから…」

 

嬉し泣きか。俺は紅葉を抱いた。

 

「よーし、高いたかーい」

「柊くんっ、もう、私24だよ」

 

まるでまだここで暮らしていた小学校や中学校の時みたいだった。紅葉は小5くらいまで俺に高い高いされてたし。俺も小6までしてた。

 

「むかしに戻ったみたい」

「だな」

 

俺は紅葉を高く上げたまま言った。

 



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第8話 紅葉

旅行編ですが、別のタイトルです。旅行編は第十数話で終わりです。
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島紅葉
以上3名


 俺は中学3年で魔法科高校に入るために埼玉へ引っ越した。神奈川に引っ越してもよかったが、何を言っても都会じゃない方がいい。そんな理由だった。

俺は高校2年の夏休みを利用し、秋田へ帰省した。秋田の実家には俺の従妹、紅葉を残して出ていったから、今もいる。この時、俺は紅葉と遊ぼうと思い花火を買った。ネズミ花火や線香花火など、色んなのを買った。

家に帰って紅葉と2人で花火を見ていた。紅葉が「早い内にやろうね!」と言って、俺が何と答えたかは覚えていないが、結局…

俺は実家に帰ってわずか3日、急用で戻ることになった。内容は1年生の魔法を教えるためだった。紅葉は泣いて俺に抱きついてきた。それだけは覚えている。俺が何て言ったか、紅葉が何て言ったかも覚えていない。花火も持っていけるはずもなく置いていった。遊んでくれるだろうと思って。

 

 それが今帰ってきて、まだ残っていたのだ。なぜ残ってるか、俺は分からなかった。

 

「なんで残ってるんだ?」

「覚えてないの?柊くん、自分から『またいつか帰ってくるからそのとき遊ぼう。』って言ってたじゃん」

 

まずい、何も覚えてない。そんなこと言ったのか?

 

「覚えてない…」

「柊くん、あとこんなことも言ってたよ」

 

紅葉は俺を見てクスクス笑いながら言った。

 

「私のこと大好きだって」

「従妹だから普通だろ」

「ふーん、キスもしたのに?」

 

ブーッ

 

俺は思わず吹き出した。え、なに、キスした!?紅葉と、2人で!?

 

「マジで?」

「ホントだって。」

 

紅葉は言った。マジかよ、全く記憶になかった…

 

「まぁいいけどさ、夜になったら花火しようよ」

「そうだな。8年間放置してたからな」

 

8年間放置されていた花火を俺が取ると、紅葉が急に俺の前で両手を広げた。まるで俺を守るようだった。

 

「誰かいる…!」

 

ああ、なんだ。誰かいるって不審者じゃなくて胡桃じゃないか?

 

「う、撃たないでぇ」

 

胡桃が演技をして部屋に入ってくる。紅葉は睨んだような目付きで見ている。

 

「あの人、俺の妻だよ。胡桃って言うんだ」

「どうも。不審者じゃないよ」

 

紅葉は睨んだような目付きをやめて、優しい目にかわった。

 

「月島紅葉です。柊くんの従妹で、1つ下」

「よろしく。さっき、花火とか言ってた?」

「あぁ。8年前のだけど」

 

胡桃は小走りで外に出ていった。そして、車の中から袋を持ってきた。

 

「花火!」

「やったーっ!」

 

花火の話で盛り上がってるけど、まだ10:20だからね?

 

「お昼ごはん作らないの?」

「うっ…」

 

なんか当たるところでもあったか?俺がここにいたときは母さんや冬菜が作ってたけど、今はどうなんだろう。

 

「ちょっと失礼するよ」

「あ、ちょっ!」

 

紅葉が俺をキッチンに入らないようにする。別にいいだろ。俺が棚を開けるとそこからドコドコと音がしてカップラーメンが大量に落ちてきた。

 

「うわっ」

「柊くん大丈夫!?っていうかカップラーメン!?」

 

紅葉は「あはは…」と笑って言った。

 

「料理できないからさ」

「何ヵ月くらいこれなの」

「大体4ヶ月くらい、3食全部…」

 

俺はカップラーメンを退けて言った。

 

「嘘だろ!?4ヶ月もかよ…」

 

まぁ俺も1人暮らししたらそうなりそうだけど。

 

「じゃあ私が作ってあげよう!あとなんかしたいことある?」

「えっと、2階のテレビ…壊れてるから…」

「電気回路は柊くんだね」

 

昔っから理数系だし、電気回路は取り扱える。他にも、危険物取り扱い免許も持っている。俺は紅葉と一緒に2階に上った。テレビの蓋が開いている。

 

「うーん、ここの回路切れてるから新しいのに交換するか。じゃあそのくらいで」

「うん、ありがと。あと、花火の話なんだけど」

 

紅葉は花火を持って言った。

 

「今日晴れるけどさ、どこでやる?」

 

周り何もないし、別に駐車場でいいんじゃないか。となりの家までも10mくらいあるし。

 

「駐車場でいいだろ」

「じゃあどうする。」

 

俺からもお願いできるかな。俺は紅葉に話した。

 

「一緒に寝れないかな、今日」

「ん?いいよ」

 

結構すんなり許可してもらえた。俺だったらいいみたいな感じなのかな。

 

「柊くん、あったかそうだし」

 

あ、そんな理由だったの?確かに4月の秋田の夜は雪も降るほど寒い。

 

「じゃあいいんだな。」

「うん。あ、何日くらいいるの?」

 

そうだな…最低でも4日はいたいよなぁ。

 

「4日くらいは最低でもいたいかな」

「じゃあまだ時間あるね」

 

なんか言い方に引っ掛かったけど、気のせいかな。俺は1階に降りて胡桃のごはんを待った。

 




行数は少なかったかなと思いました。次回ですが、ついにみんなで花火するんですが、長くなりそうだったら前後編で分けたいと思います。
7:09開始
7:29~19:18学校
21:59~6:59就寝
7:14投稿予約小説に追加
次回「花火」もお楽しみに!


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第9話 花火 前編

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島紅葉
以上3名


 下に降りると、キッチンの方からいい匂いが漂ってきた。胡桃が昼ごはんを作り終わったんだ。

 

「美味しそう…」

「毎日はやめろよ。冷凍でもいいんだから」

 

紅葉は「はーい…」と言ってキッチンのところにあるテーブルに向かった。

 

「余るものだけど大丈夫?」

「うん!」

 

久しぶりのご飯だろう。いつも麺類っぽいし。それなのに体型を維持できてるのはすごいな。胡桃がお盆に乗せて持ってくる。

 

「いただきまーす!」

 

紅葉と胡桃は食べ始めた。しかし、俺はしばらく考え事をして食べなかった。紅葉って、俺がいない間一人で何してたんだろう。

 

「どうしたの?」

「あ、紅葉が俺がいない間何してたんだろうって」

「私のことかぁ。えっとね…」

 

紅葉は思い出したかのように言った。

 

「柊くんの部屋作ったり、熊の対策したり」

「くっ、熊!?」

 

ああ、そういえば出るんだっけか。そう考えたら来るときに会わなかったの珍しいな。

 

「出るよ?この辺。花火の時どうしよっか」

「そうだな…今日は熊の対策会議でもするか。夜までに」

 

俺は悩みが晴れたのか分からないまま食べ進めた。

 

 そして夕方の15時頃になった。熊は俺がいるときだと裏山から来てたけど、多分変わらない。電気柵もあったが、どうやらあまり意味がないらしい。

 

「俺が魔法で焼いてBBQとか?」

「ふふっ、面白いね。いいんじゃない?」

 

火炎魔法をかけて熊を焼けば美味しい焼き肉だ。熊肉だけど。

 

「けど、裏に行ってる柊くんだけ花火出来なくない?」

 

確かにそうだ。俺が行くと悲しいけど俺だけ見れない。けど他の人に頼むのも違う気がするし…

 

「じゃあ裏までの間に柵作っちゃおう!」

 

俺と胡桃が「へ?」と言うが、紅葉は本気だった。多分だけど、家の角と木の間に木の柵を設置して、そこに扉を作る。ってことだよな。

 

「いっそ壁にしちゃう?」

 

紅葉は面白いな。壁にするって、まぁけど、できないことじゃない。やるか。

 

「よし、やろう。」

「木はどうするの?」

 

俺は仮想世界への転移魔方陣を出し、その間に俺が入った。

転移先は森林。木が大量に置いてあるところを知ってるからだ。俺が森林の中に入っていくと、大きな木が100個ほど並んでいた。俺はその内の3つをストレージに入れた。

 

 現実世界に戻ると、紅葉が準備万端で待っていた。紅葉は俺がストレージから出した木を持った。1辺が6mほどある。合計で36㎡だ。紅葉は辛そうにもって、木を縦に置いた。穴が掘られていて、そこに差し込むんだ。

 

「もう1個だな」

「はい、もう一個」

 

胡桃はストレージに入れたまま持ってきた。重量は感じないから紅葉より楽だ。

 

「壁ができたけど、扉は」

「残り一枚から作る」

 

俺が一枚を持ってくると、紅葉が電動のこぎりで木を切り始めた。板に細い穴を空け、ドアの方に細い鉄の棒をはめる。そして鉄の棒を穴に入れて、ドアは完成だ。後はボンドで取手をつければいいだけ。

 

「結構すぐ終わったね」

「もう17時だけど」

 

紅葉は舌を少し出した。「テヘッ」という感じだった。その舌は小さく、可愛かった。女性の舌はあんな感じなのかな。

 

「もう花火しちゃお?」

「そうだな。」

 

俺は家の中に戻って4袋ほどある花火をもって外に出た。俺は玄関から出ようとするとき、自分のPCが視界に入った。せっかくだし見せてやるか。俺はPCを開き、リモートにした。あーやだけの画面に8人が写る。あーや、ジュン、麗華、あかね、ニコル、みう、悠希、つぼみだ。

 

《どうしたの?》

「花火を見せたいなって。」

《花火っ!》

 

喜んだような声だ。PCは俺が持っとくか。俺は外に出て、早速花火を置いた。

 

《ロケット花火?》

「あぁ。」

 

俺はチャッカマンを持ってきて火をつけようとする。だけど、少しやりづらいな。

 

「私持ってるよ」

 

胡桃が言った。

 

「ありがと。紅葉、おいで」

 

俺は紅葉を呼ぶと、火を近づけた。

ヒューッ

音が鳴って花火は飛んだ。

 

「次何やる?」

「ネズミ花火!」

 

ネズミ花火か…あ、あの紅葉が面白いことする花火か。今もするのか分からないけど、俺はネズミ花火を出した。

 



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第10話 花火 後編

 俺がネズミ花火に火をつけると、紅葉はネズミ花火をじっと見ていた。来るぞ…俺は胡桃の耳元で囁いた。

 

「多分見ながら回るぜ」

「回る?」

「見てれば分かるよ」

 

俺はPCを持っている胡桃に言った。もうすぐだ。

やがてネズミ花火が激しく音を立てて回り始めた。紅葉は首をネズミ花火に合わせて回した。

 

「ふふっ、面白い」

《わぁ…速く回ってる…》

 

ネズミ花火が止まると、紅葉は目が回ったようにフラフラしていた。

 

《大丈夫?》

 

つぼみが紅葉に聞いた。

 

「大丈夫!」

 

紅葉はピースするが、まだふらついている。俺は1人でラストの花火を取り出した。線香花火だ。本数は4袋あるから大体30本くらい。1人10本はいける。

 

「線香花火やるぞー。」

「はーい!」

 

俺と胡桃、紅葉の3人は石に座った。バケツを用意して、この中に捨てる。

 

「誰が1番長いか勝負しよ」

「いいよ。」

 

俺は左に胡桃、右に紅葉を座らせて、ライターでつけた。今度は小さいし。

 

「スタート!」

 

俺は別に勝っても負けてもいいと思い、ボーッとしながら線香花火を持っていた。

 

(なんかBBQしたいなぁ。)

 

俺が実家に帰ってくると大体BBQやるからしたくなった。買ってくるかなぁ、肉。肉売ってる場所遠いんだよな。秋田駅前まで行かないとだし。まぁしょうがないよな。

 

「柊くん落ちたよ」

「え?あ、ホントだ」

 

俺は2本目を持った。もう18時も過ぎたのか。俺は線香花火を微妙に振って早く落とした。

 

「あ、ちょっと俺明日の計画立ててる」

 

俺はそんな振りをして家の中に入った。なぜか不思議な気持ちになった。なぜか、帰ってきたような感じじゃない。元々ここにいたような、そんな感じだった。

明日は俺一人か。肉買いにいって、3人だけのBBQだ。俺は秋田駅前の肉屋を調べた。まだあるらしい。

その時だった、突然外から2人の叫び声がした。何かと思い、俺が外を見ると、そこには…

 

(…っ!)

 

言葉を失った。熊が2人の所に向かっていたのだから。俺は助けようと力を入れた。

 

(あれ、動かない…)

 

俺の足は動かなかった。俺は前のドアを開けて靴下のまま外に飛び出た。もう熊は2人から2mほどの近さで、2人は追い詰められていた。

 

「freezingsorcery」

 

氷結魔法だ。熊の動きを止めるため、俺は氷結魔法を使った。熊は手を振り上げた状態で停止した。

 

『柊くん!』

 

紅葉と胡桃は俺に抱きついてきた。「うわぁあ」と泣いている2人を俺は2人を撫でた。

 

「よしよし、怖かったな」

 

俺は2人を撫でながら言った。固まっている時間はわずか3分。あと1分2分くらいだ。俺は召喚魔法を使ってハンドガンを出した。

 

「summon Hand gun」

 

日本語に直訳して「召喚、ハンドガン」だ。ハンドガンを持つような手の形をすると、それに合わせてハンドガンが召喚された。右人差し指で優しくタッチすると、データが表示された。

 

「弾数は20発か」

 

名称は「scale3 Hand gun」。ハンドガンの中だと5番目の強さだ。強い順に

scale NO.1 Hand gun

scale1 Hand gun top

scale2 Handgun

scale spaciality Hand gun

scale3 Hand gun

で5番目だ。弾数は全て20で変わらない。俺はハンドガンを構える。片手で溶けかけている熊に向ける。

 

「大丈夫?怪我しないでね?」

「任せろ」

 

俺は1発熊に銃弾を当てた。熊の心臓部に当たり、熊は声を出して倒れた。

 

「fire」

 

熊を火で燃やして、熊はいなくなった。紅葉と胡桃はまた泣き出して強く抱きついてきた。思わず俺もバランスを崩すほどだ。

 

「よかった…柊くん」

「ありがとう、助けてくれて」

 

2人は顔を俺にくっつけたまま言った。

 

「大丈夫。守るから」

「やっぱり、昔からそう」

 

紅葉が言った。そうか、小学校の頃は紅葉を守ってたっけ。俺の1つ下だから、同学年からだと守れたんだ。

 

「ねぇ、今だから聞くんだけど、なんであの時は年上でも守ってくれたの?」

 

そう、俺は1回だけ当時中学2年の時、3年から苛められているところに俺は立ち向かった。

 

「あれは…2人で話そう」

「え、うん」

 

俺は紅葉を部屋に連れていった。胡桃は居間にいるように指示した。

 

「それで、どうして?」

「紅葉が傷つくと思った」

 

あの時、俺は暗い性格で、紅葉が周りから苛められていることをどうしても許すことができなかった。

 

「許せなかった。紅葉の体を触るのが」

「じゃあ、今触る?」

「いいのか?」

「うん!」

 

俺は紅葉の髪を触った。サラサラしていて、少しの風でなびくような髪だ。

 

「サラサラしてる」

「毎日リンスしてるし」

 

紅葉は髪を手でなびかせた。

 

「匂いもいいでしょ?」

「あぁ、確かに」

 

シャンプーの匂いとリンスの柔らかさが両方あった。いい髪だ。

 

「おいで、柊くん」

「あぁ」

 

俺は紅葉に抱きついた。俺の体にフィットして、柔らかく俺の体に合った。

 

「包み込むからね」

「安心するよ」

 

年下に安心させられたのは久しぶりだな。

 

「絶対、私も守るから」

 




20:18開始
22:54~6:43就寝
7:07~18:24学校
20:02終了


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第11話 バーベキュー

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島紅葉
以上3名


 俺は紅葉の部屋でそのままベットに横になった。紅葉は風呂上がりで髪がほんの少し湿っていた。紅葉がベットに座ってドライヤーをかけている。俺は先に仕事を済ませてもう寝る準備ができていた。

 

「紅葉、乾きづらいか、やっぱり」

「うん。女性の悩みだよ」

 

髪が長いから乾きづらいんだな。紅葉は結構平均的な髪の長さだけど。

 

「ふぅ」

 

紅葉が疲れたように息を吐いた。そして、紅葉はいたずらっ子のように俺を見た。

 

「疲れたなぁ」

 

遠回しに何かしろって言ってるよな。何すればいいんだ。

 

「安心できるところに包まれたらなぁ」

 

抱いてほしいんだよね?多分。

 

「分かったよ。おいで」

「分かったか」

 

紅葉は横になっている俺に横から抱きついた。

 

「柊くんが家として行ったのってどこ?」

「えっと、ここから籠原行って、札幌、豊田、神保原で、今は深谷」

 

5回引っ越した。俺は中学卒業までここにいて、高校は魔法科高校に通うために籠原へ、今度は北海道の大学に通うため北海道へ、俺が彩に呼ばれて豊田へ、同居として神保原へ、そして結婚して深谷。こんな理由だった。紅葉とは秋田で分かれた。そういえば、紅葉は何してたんだろう。

 

「紅葉はどうしてたんだ」

「柊くんと分かれてから、高校は大曲の高校通ったよ。大学は秋田駅の近く。実は暁依くんが結構来てたんだよ」

 

暁依が来てたのか。だったらたまにカップラーメン以外も…

 

「あ、ずっとカップラーメンだよ」

 

エスパーか!俺は突っ込みを入れて紅葉に言った。

 

「暁依は作ってくれなかったのか」

「いつも早く帰っちゃって。」

 

だから作ってくれないのか。暁依自身もご飯作れないし。

 

「ずっとカップラーメンだと太っちゃうから、走ってたんだよ。ここら辺」

 

走ってたから体型維持できたのか。それでも問題はあるけど。

 

「柊くん…そんなことより…キス、しよ」

「…何言ってんの?」

「キス!」

 

キス!じゃないんだよ。何がキスだよ。したくないわけじゃないけど、こんな時間にか

 

「だめ?」

 

潤った目でこっちを見てくる。断りようがない。というか断れない。

 

「分かったよ」

「やった!んっ」

 

紅葉は言った瞬間にキスした。俺は抵抗なくキスされていた。

 

「ふぅ、私、かわいいかな」

「かわいいよ。」

「ありがと。柊くん」

 

そう言った紅葉はパタンと倒れた。疲れて寝てしまったらしい。俺もその横で寝ることにした。明日はBBQだから。

 

 俺は朝6時半に起きた。紅葉は俺の腕にしがみついて寝ている。起こすのはかわいそうだし、起こしたくない。けど買いに行けないからなぁ。転移魔法も一緒に転移しちゃうし…

 

「ごめん、起きなくていいからな」

 

紅葉の腕から俺は手を抜いた。紅葉は「んにゅ…」と声を出したが起きていない。俺は部屋から出て一階に降りた。胡桃はまだ部屋にいるらしく、まだいなかった。

 

(もう行くか…)

 

俺は車を出した。久しぶりにここに置いてった車使うか。俺は車の鍵を持ち、車のドアを開けた。

 

(あれ、なんか入ってる)

 

そこにあったのは紅葉と俺が写った2ショットの写真。なんであるんだろう。

 

(ああ、そういうことか)

 

もう一つあったのは紅葉の免許。この車を紅葉が使ってたんだ。けど、俺が最後に使ったときから一切変わっていない。大切に扱ってたんだ。俺は車庫から車を出した。

 

 25分ほど運転し、精肉店に着いた。その後、BBQの材料を買って家に帰った。

 

「おかえり」

「ただいま」

 

胡桃が降りてきていた。準備しないとだな。

 

「準備するよ。前みたいに熊が来ないように結界張っとく。半径50m以上は出れないからな」

 

俺は結界を張って熊などが入らないようにした。胡桃は炭を持ってきて、俺は土台を持ってきた。

 

「何時くらいからする?」

「18時くらいからにしよう」

 

俺は家の中に戻った。紅葉は廊下で、上半身を脱いで寝そべっていた。下もスカートで、なんか色っぽい。

 

「あ、おかえり」

「何してるの?」

「え?冷たくて気持ちいいから」

 

あ、そんな理由?俺は紅葉の横に寝そべった。

 

「裸でいると風邪引くから気をつけろよ」

「はーい」

 

俺は2階に上って昼寝した。紅葉が俺についてきて、平坦な場所に来るとペンギンのような歩き方をした。

 

「幼い時みたいだな」

「甘えてるだけ。」

 

紅葉は俺に飛び込んでくる。後ろから押されて少しバランスを崩したが、すぐに取り戻した。

 

「寝るの?」

「あぁ。疲れてるから」

「じゃあ私も」

 

紅葉は俺の腕にしがみついてベットに連れてきた。

 

「どう?」

「嫌じゃないけど…」

 

俺は紅葉を抱きながら目を閉じた。紅葉もぐっすりだった。

 




20:55開始
22:51~6:55就寝
7:19~12:45学校
13:52終了


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第12話 仮想ワールド

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島紅葉
以上3名


 俺が起きたのは17:30。あと30分で始まるか。俺は外に出て胡桃の準備を手伝った。

 

「おはよ、柊くん」

「おはよう。チャッカマン持ってくるか」

「もうあるよ。準備は大体終わった」

 

早いな、仕事終わるの。俺は紙皿を3つ置いた。色んな肉があるけど、野菜もいくつかある。

 

「紅葉ちゃん起こしてくる?」

「起こそうか」

 

俺と胡桃は屋根に飛んで、窓から紅葉の部屋に入った。

 

「紅葉、起きろ」

「んんっ、んにゃ?」

 

猫じゃないんだからさ。さっさと起きろよ。

 

「早く降りてこいよ。夕飯できてるから」

「はーい…」

 

紅葉は「眠いなぁ」と呟きながら階段を降りていった。俺と胡桃は屋根から降りた。

キッチンに紅葉がいるのが見え、俺は外から手を振った。紅葉はこっちにゆっくり歩いてくる。まだ眠いんだろう。

紅葉は外に出て来ても寝ぼけていた。

 

「よし、食うぞ」

「紅葉ちゃん、口開けて」

 

紅葉は思い口を開いた。胡桃はその中に焼き肉を入れた。紅葉が急に叫び、水をのんだ。

 

「熱い!というか、BBQじゃん」

「やっと気付いたか。」

 

俺が紅葉にコップに入っていた飲み物を渡した。紅葉はそのコップの飲み物を思いっきり飲んだ。

 

「あっ、それまだ割ってないウォッカ!」

「えぇっ!?紅葉!」

 

ウォッカを割ってないのにコップ半分とかおかしいだろ。というか、原液そのまま飲んだら…

 

「熱い…喉が焼ける…」

 

紅葉は首をおさえた。焼けるような痛みと熱さがある。しかもすごい酔いやすい。ほんの少しだったらまだ酔う程度だけど、こんな量飲んだらベロベロだ。

 

「火照ってる…」

 

【月島紅葉視点】

 

 私の身体全体が一気に火照った。意識を奪われるようだった。

 

「あぁ…柊くん…」

 

私は柊くんを押し倒した。そして柊くんを舐め回す。

 

「紅葉!?ちょっ、酔ってると…」

「いいれしょぉ?あしょぼぉよぉ」

 

なぜか遊びたくなって言った。私は柊くんの所にくっついた。

 

「ほらぁ、2人でぇ、遊ぼ」

「胡桃、水持ってきてくれ…」

「分かった…」

 

胡桃ちゃんは水を入れるために戻っていった。これで私と柊くんの2人だけ。

 

「ぎゅうぅ」

「もっ、紅葉…苦しい…」

 

私は柊くんを思いっきり抱いた。苦しくても私は知らない。私は柊くんを抱きしめた。何でだろう、こうしてると楽。段々力が抜けてきた。

 

「柊くぅん、離れないで…こんなに甘えてるの、寂しかったからだよ…」

 

私は酔った勢いで言ってしまった。やっと酔いが覚めたのはいいけど、言ったことを思い出すとボッと熱くなる。

 

「あぁっ、べっ、別に寂しくなんか…」

「紅葉」

 

柊くんは私を抱いた。

 

「ごめん。長い間帰らなくて。これから少なくとも年に一回は帰るから。」

「うん…絶対だからね」

 

すると胡桃ちゃんが戻ってきた。片手には水の入った紙コップがあった。

 

「なっ、何してるの!?」

「胡桃ちゃんも一緒にしよ?」

「胡桃、いいからおいで」

 

柊くんも招待していた。これで来ないはずはない。

 

「じゃあ…しよっかな」

 

胡桃ちゃんは押しくらまんじゅうのように私にぎゅうっとくっついて、柊くんにハグされた。体重がそっちに寄って、椅子から倒れ、地面に横たわっていた。横向きで、私が下になった。

 

「眠い…」

「寝たらつぶれるよ」

 

胡桃ちゃんが言った。寝ないようにはするけど…

 

【月島柊視点】

 

 俺が気付くと、紅葉は眠っていた。どんだけ早く寝るんだよ…

 

「紅葉が寝たんだけど…」

 

胡桃の反応もない。胡桃も寝てたんだ。女性は寝やすいのかな?

 

「全く、俺が持ってかなくちゃいけないのにさ」

 

俺は2人を肩に背負って2階に上がった。紅葉は紅葉の部屋に寝かせて、胡桃は俺の部屋に寝かせた。それだと俺は空き部屋で寝るか。

 

 もう夜中になったのにも気付かずに、俺はPCをいじっていた。もう2:30だった。ここまで起きたら徹夜でいいか。俺は暇になり、テレビをつけた。もうやってないのが多いから、すぐに消した。暇だなぁ。仮想世界に行けばなんかあるかな。

 

「転移、サンドスペニア」

 

俺は仮想世界に転移した。友達の家にでも行くか。俺は久しぶりに仮想世界の友達の家に向かった。もう2年以上会ってない。

 

「あ、柊。久しぶり」

 

話しかけてきたのは仮想世界の剣使い、ミナトだった。

 

「よう、ミナト」

「相変わらずイケメンなのにモテないよな」

 

結婚してるのにモテないとか言われたくない。しかもミナト未婚者だし。未婚者にモテないって既婚者に言わないでほしい。

 

「結婚してんだよ」

「いいよなぁ、いい女に会えてさ」

「イケメンが会えないのかよ」

 

俺はミナトと別れて友達の家に再び向かった。

俺が家の前に着くと、ドアが開いた。

 

「あ、柊。」

「久しぶり、イザナミ」

 

相手はこの仮想世界1番の銃使いだ。俺は1番の魔法使いで、1番同士で仲良くなった。

 

「何よ、scale3 Hand gunで撃たれたい?」

「何だ、freezingでやられたいか」

 

俺たちは目を合わせた。俺とイザナミは笑い合った。

 

「中入って。久しぶりなんだし」

「あぁ。」

 

俺はイザナミについていった。家の中にはハンドガンや狙撃銃などがたくさんあった。

to be continued…



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第13話 帰れない

今回の登場人物
月島柊(柊)
イザナミ
ミナト
以上3名


 前までこの部屋はただのリビングだったのに、銃の置き場と化していた。

 

「ちゃんと分けててね、上側一帯が狙撃銃、中間ら辺が一般銃、下側が小型銃ね。愛用してるのは…」

 

イザナミは上側の銃をとった。じゃあ狙撃銃か。

 

「sniper rifle NO.1。半径80m以上の標的を撃てるの。」

「80mか。俺が使ってる魔法のIce attackと同じくらいだな」

 

Ice attackは半径82m。合計で約160mの範囲。スナイパーライフルも同じくらいだ。

 

「それぞれの特徴って言えば、銃は槍以上魔法未満の距離、魔法は銃以上の性能かしら」

「魔法だって近接もあるさ。Fire attackは半径10mもないんだからさ」

 

火攻撃のFire attackは半径5m~10m。火炎魔法はそれ以上、7m以上70m未満。

 

「そんな魔法もあるんだ。あ、そうだ。あの、ミナトさん?実はね、あの人…」

 

妙に区切りが多い。何かあるのだろうか。

 

「この世界NO.1になったのよ」

「へぇ、ミナトが」

 

イザナミが俺の口をふさいだ。何が、というかなんで塞ぐんだ。

 

「なに呼び捨てで呼んでるの!」

「だって俺の友達だし。なんなら呼んでもいいよ」

「呼ぶ!?ミナトさんを!?」

 

俺はミナトにチャットを送った。

 

〈来てくんない?〉

〈分かった。1分で着くからな〉

 

ミナトはもう出発したのか1分だと言った。イザナミが不思議そうに見る。

 

「本当に来るの…?」

「あと20秒くらいで…」

 

そう言っていると、ミナトが家の中に入ってきた。ミナトは模擬剣を持っている。

 

「あ、イザナミか」

「本当に来た!?」

 

驚くことでもないのに。というか、こいつリアルでも仲いいし。最近は会ってないけど。

 

「ミナトだ。よろしく、イザナミ」

「え、あ、はい!」

 

そんなに驚くかよ。たしかにNO.1剣士は驚いたけど。

 

「剣はなに持ってるんだ」

「えっとな、black swordと、あとfreezing swordもある」

 

氷結剣か。なんか強そうなの持ってるな。

 

「魔法使いなんて、女がなるもんじゃないんだな」

「それは魔女。この世界じゃ魔法使いは1番上の存在だし」

 

そう。この世界では魔法を使える人たちの中でも数種類の地位がある。1番下から

魔法使い受験生

魔法使い見習い

魔女・魔男

魔法使い助手

魔法使い

大まかに分けるとこの5種類。細かく分けると、魔法使いの中にも

初心魔法使い

五級魔法使い

四級魔法使い

三級魔法使い

二級魔法使い

一級魔法使い

魔法使い教員

神魔法使い

以上8種類。俺はNO.1何だから当然神魔法使い。弟子はまだ持ってないが、来ないのには理由がある。

 

「柊は目付きが怖いからな。弟子なんて来ないだろ」

「目付きの問題か、やっぱり」

 

目付きが異常に怖いらしい。俺は怖くしてる感じはないんだが、昔からそう言われている。

 

「そんなことない!柊は優しい!」

 

イザナミが大きな声で言った。

 

「えぇっ!?イザナミ!?」

「ははん、もしかして、柊のこと気にしてるのか?」

 

ミナトはからかうように言った。イザナミは反発するように言った。

 

「気にしてない!」

 

その時、突然高い音が鳴り響き、俺は倒れてしまった。

 

 俺が目を覚ましたときには、何も変わっていないようだった。しかし、ずっと起きていた2人は俺に状況を話してくれた。内容は、「内側からリアルに戻れなくなった」らしい。外側からは入ってこられるため、実質

入ったら戻れない世界

状態になっている。

 

「死に戻りは」

「死んでもこっちの世界に復活(リスポーン)するから無理」

 

じゃあ、紅葉や胡桃とは…会えないのかよ…

 

「クリア条件はちゃんとある」

「何だ」

「魔術塔の完全クリア」

 

魔術塔のクリアって、全部で500階層あるっていう所に行くのかよ。

 

「まだ魔術塔は封鎖されてるから、今まで通り」

「そうか…」

 

俺は話題を変えたかった。

 

「それで、さっきの話の続きだけど、イザナミ、柊に気があるんじゃないのか」

「だからないってぇ…」

 

イザナミは困ったように言った。

 

「イザナミ、いいんだぞ。俺を好きになったって。リアルと仮想世界は別に結婚できるって決まりなんだから」

「う~…じゃあちょっと来て」

 

俺はイザナミについていった。そこは防音の効いた個室だった。

 

「まず、私の本名ね。私は琴葉。織音(おとね)琴葉(ことは)

 

琴葉、か。俺の名前は本名そのまま使ってるから別に分かるだろうけど。

 

「俺は月島柊。本名そのまま使ってる」

「へぇ、分かりやすくていいね。それでね、ここにつれてきた理由は」

 

イザナミ…いや、琴葉はこの部屋の説明をした。

 

「ここは普段私が銃の試し撃ちやってる部屋。柊くんの魔法と私の銃。どっちが強いか確かめたかったの」

「なるほど。じゃあ本気だすからな」

 

俺は「freezing」と言って氷結魔法を発動させた。先についたのは、

と思ったその時、銃を撃っていなかった琴葉が俺を押し倒した。

 

「私、柊くんのことが大好き。出れなくなるのは悲しいけど、柊くんといれるんだったら嬉しい。だから、ここにいる間だけでも、私と一緒にいて?」

「いいよ。一緒にいてやる」

 

俺は琴葉の肩をさわりながら言った。

 



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第14話 襲撃

今回の登場人物
月島柊
ミナト
織音琴葉
新メンバー1名
以上4名


 その日は琴葉の家で泊まり、翌日はレベリングに外へ出た。俺1人で行くことにして、琴葉は俺を見送った。

 

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

俺はドアを開けて外へ出た。その時、目の前に俺に銃口を向けた人々がやってきた。そして、俺はドンと撃たれ、肩に当たった。

 

【織音琴葉視点】

 

 私は柊くんが撃たれる瞬間を見ていた。柊くんは撃たれて倒れた。HPが128000あったのに、今は15700しかない。私は助けたい気持ちで銃を取ろうとした。えっと、こういうときは狙撃銃じゃなくて…あれ。なに使うんだっけ?私は焦って考えられなくなった。

 

「大丈夫。俺が行く」

 

ミナトさんが行ってくれた。剣を取り出し、剣を柊くんを撃った人たちに振った。

 

「柊くん!」

 

私は倒したのを確認して、柊くんに駆け寄った。

 

「うぅ…回復魔法は…使えないか…」

 

柊くんは血を流したまま倒れていた。起き上がれないんだろう。

 

「あの、月島柊くんってここにいますか?」

 

そう言って女性の方1人だけが訪ねてきた。

 

「あ、うん。ここに…」

 

私が指し示すと、女性の人は柊くんに回復魔法を使った。

 

「あ、かりな。いたのか」

「知り合い?」

「俺の妹」

 

柊くんは紹介してくれた。妹なんだ。

 

「月島かりなです。魔女だよ」

 

魔女ランクなんだ。柊くんより1つ下だ。

 

【月島柊視点】

 

 俺は起き上がって、琴葉、ミナト、かりなと一緒に外に出かけた。さすがに1人だけじゃ危険だと感じたからだ。俺は琴葉と手を繋ぎ、かりなをおぶり、ミナトは後ろからついてきた。

しばらく歩くと、森林にたどり着いた。ここで(モンスター)と戦い、レベル上げをするのだ。俺は遠くから無術式魔法、偵察を使用し、敵の様子を伺った。

 

「近距離系。LVは70」

「了解。ここは私の出番ね」

 

琴葉が俺の前に立つ。俺は位置を伝える。

 

「ここから20度くらい左向いたところ」

「このくらいね」

「あぁ」

 

琴葉は地面に寝る姿勢になり、狙撃銃を構えた。後ろからだとスカートの中が見えるから俺は横に行った。3秒のカウントが終わると、琴葉は銃を撃った。

 

「どう?」

 

俺がスキル、偵察で見ると、かすっただけのように見えた。端にちょっとした切り傷がある。

 

「ダメだな…俺が行こう」

 

俺は今いる場所から偵察スキルと魔法を同時に使用した。

 

「freezing sorcery」

 

結構な距離届くけど、どうだろう。俺が偵察スキルで見ると、まだかすっているだけだった。じゃあ最終手段だな。

 

「ミナト、頼んだ」

「よし、任せとけ」

 

ミナトは敵の方向に近づいていった。この時が、1番暇なんだよなぁ。

 

「なんかしない?」

「何するんだよ」

 

誰も思い付かない。遠距離だとこの場にいるから楽なんだけどな。

 

「倒したぞー」

『はやっ』

 

行ってから2分も経ってないのに。なんでこんな早いんだ。

 

「スピードに極力当ててるからね。」

 

そういうことか。俺は魔法だからそんなの必要ないんだ。

 

 森林を出ると、1人の少女が俺の方を向いて叫んだ。

 

「あのっ!」

「あ、俺かな」

「どう考えてもそうだろ」

 

自分のことを指差すと、少女は顔を縦に振った。やっぱる俺を呼んでるんだ。俺は少女の方に向かった。

 

「どうしたんだい?」

「神魔法使い様ですか!」

 

そう呼ばれたの初めてだし、様って…

 

「まぁそうだけど…」

「あの、私を弟子にしてくれませんか!」

 

弟子!?いやいや、俺が教えられるわけ…いやけど俺も神魔法使いか。できるにはできるのか?

 

「……」

「こいつだったらいいって言うから、いいんじゃないか」

 

ミナト!?何を言ってるんだ!

 

「ありがとうございます!」

「はぁ…」

 

俺はため息をついた。なんで俺がこんなことに…

 

 少女を連れて俺はレベリングをして、琴葉の家に戻った。もう帰れなくなってから2日か。この少女も帰れなくなっているのに、俺はなんて呑気だったんだ。

 

「えっと、魔法ランクはどれくらいだ」

「魔女見習いです」

 

魔女見習いってことは、魔女のひとつ下か。魔女試験は俺少しズルいことしたから、それ教えようかな。

 

「まずは飛行からだな。飛ぶイメージをして、真上に跳んでみて」

 

俺は飛行して見せた。少女は俺をずっと見ている。

 

「飛んでいいよ」

 

俺がそう言うと、少女は真上にピョンと跳んだ。少女はすごい勢いで上がっていってしまった。最初はこんなもんだ。

 

「君!」

 

俺は少女が落ちてくるのを腕を広げてキャッチした。

 

「大丈夫か」

「はい。」

 

俺は少女を空中に置くように離した。もうできるはずだ。

 

「きゃぁっ!」

 

少女は一瞬怖がったが、すぐに空中に立った。浮遊魔法だ。

 

「怖いか」

「怖いですよぉ…」

 

俺は少女のことを抱いた。俺が浮いているから落ちることはないはずだ。俺は少女に聞いた。

 

「君、名前は」

「さおとめまなかです。よく読みづらいとかって言われるんですけど」

「どういう字なんだ」

 

まなかは記述魔法で自分の名前の漢字を書いた。

 

「五月の女って書いてさおとめで、舞うに菜の花の菜」

 

五月女(さおとめ)舞菜香(まなか)か。珍しい苗字ではないけど、普通は早乙女って書いてるから珍しいのかな。

 

「タメ口で気軽に話しかけてくれ」

「うん!」

 

舞菜香は俺に優しげな笑みを見せた。笑顔が天使のようだった。




15日から17日は休止します


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第15話 再会

今回はあの人物が出てきますよ!誰でしょうねぇ。しかし意外な感じで再会します!
今回の登場人物
月島柊
月島かりな
織音琴葉
ミナト
五月女舞菜香
再会する人物1名
以上6名


 俺は琴葉の家にずっといたが、もちろんなにもしていなかった訳じゃない。琴葉と一緒日トークしたり、リアルの話もした。

 

「へぇ、そんなところから転移してきたんだ」

「あぁ。琴葉はどこから」

「東京の都心部。うるさくって、静かなこっちに来たの」

 

そういう理由でも来れるのか。なかなか有効活用も出来るものだな。

ブーッブーッ

俺のポケットの中からバイブ音が聞こえた。俺はスマホを取り出すと、メッセージを見た。胡桃からだった。

 

〈たくさん楽しんでる?なるべく

 すぐ行きたいんだけど、

 けど、努力はし

 てるよ?早く

 柊くんに会いたいから。はや

 く行けないかなぁ。うー

 ん、ちょっと考えてみるね!

 こっちではね、紅葉ちゃんと一緒に

 うた歌ったり、流し

 そうめんも食べたよ。柊

 くんも来れたらなぁ、って、

 さっきから紅葉ちゃんも言ってる。

 れんらくしなくてごめんね。

 てがみは無理かもだけど、家にちゃんといる。

 るすじゃないからね。〉

 

なんだろう。やけに長い長文。それに、改行するところが変なところもある。俺は琴葉にこれを見せた。

 

「なんか変じゃないか」

「うん……柊くん、縦読みしてみて。一番左を」

 

俺は言われた通り一番左の列を縦読みして、音読した。

 

「たすけて柊くんこうそくされてる…」

 

俺は頭のなかで変換させた。要するに、

 

「助けて柊くん、拘束されてる」

「そう。この世界のどこかで拘束されてるんだと思う」

 

そうか…気づいてほしくて送ってきたんだ。だけど、拘束犯に見つからないように…俺は胡桃のGPSを確かめた。

 

「柊、どこにいるんだい、胡桃は」

「胡桃ちゃんどこ!」

 

かりなとミナトも来た。表示されたのは

 

「砂漠のど真ん中か」

 

ミナトが言った。胡桃はここで拘束されているんだ。

 

「俺が転移する。みんなが掴まって」

 

俺たち3人はミナトの手を掴んだ。

ミナトが転移した先は砂漠のど真ん中。胡桃が砂の上に拘束されている。

 

「胡桃!」

「!んんんんっ!」

 

何を言ってるか分からないが、助けてほしいのは動きだけで分かる。手足をじたばたさせて、俺に伝えている。

 

「待ってろ、今助けるからな」

 

俺が胡桃のところへ向かうと、拘束犯が出てきた。

 

「あれ、居たんですか。」

 

拘束犯が話した瞬間、胡桃を助けることに成功した。見た感じ、魔法は使えなさそう。俺は胡桃をカプセルの中にいれ、周りを結界魔法で固めた。

 

「柊、胡桃を守ってろ!」

「わ、分かった」

 

俺はカプセルの中に入った。やっと、胡桃と近づくことが出来た。何日ぶりだろう。こんなに離れていたことはない。

 

「柊くん…怖かったよぉ…」

「よしよし、怖かったな」

 

胡桃は泣いて俺に抱きついた。涙が止まらずに流れ出ている。俺は撫でながら胡桃の情報を見た。LV1なのは当たり前だが、役職だ。そこには、Unknownと出ていた。

 

(不明…?なんだろう…)

 

俺が不思議に思っていると、胡桃は俺の肩でもぞもぞし始めた。

 

「んぐぅっ、柊くん…うあああぁ」

 

胡桃は号泣し始める。よっぽど怖く、寂しく、辛かったんだろう。拘束されているときは怖く、俺に会えなくて寂しく、拘束されて、会えなくて、生死も分からなくて辛い。全ての気持ちが入り交じっているんだ。

 

「胡桃、落ち着いて」

「落ち着けないよぉ…だって…1週間だよ?会ってないの」

 

そうか。もう一週間も経ってたか。こっちの時間は現実世界(リアル)の1.5倍で進んでるからな。こっちでは3日だが、現実世界(リアル)では7日経っている。

 

「寂しかったか?」

「うん…」

 

その時、カプセルの中に「ボオォン」と低い音が鳴り響いた。外でなんかあったんだ。俺が外を覗くと、3人がピースサインをしていた。勝ったんだな。

 

「胡桃、寂しさを消すために、楽しいことしようか」

「楽しいこと…?」

 

俺はカプセルにかかっていた浮遊魔法をといた。カプセルは急降下していく。地面にドンと着くと、転がっていく。

 

「ふにゃあぁっ」

 

胡桃は目が回っている。そして上り坂に到達して逆に回り始める。

これが何回か続き、やがて止まった。

 

「ふぅ…目が回るぅ…」

「大丈夫かよ、胡桃」

 

俺は胡桃の肩を掴んで言った。俺が悪いのもあるけど。

 

「そうだ、舞菜香が待ってるから行くからな」

「行ってらっしゃーい」

 

俺は飛行して家に向かった。

 

 空中で、舞菜香が飛んでいた。もう準備いていたらしい。

 

「舞菜香、今日はテストをしよう。ここから20kmの位置に俺が飛んでるから、そこまで全速力で来て」

「全速力って、時速何キロ?」

 

確か全速力だと180km/hだっけ。

 

「180キロ。6分40秒を基準に誤差±15秒で着いたら合格。今日の練習は終わりでいい」

「出来なかったら?」

「段々甘くしていくけど、7分20秒を超えるとなると永遠に繰り返す」

 

180km/hで20km飛行すると、加速含めて6分40秒から6分45秒で着くはずだ。

 

「じゃあ、スタート」

 

俺は先に20m地点まで先回りした。

タイムを測り、20mラインを通過したときには8分20秒。単純計算で100km/hで飛行したことになる。

 

「遅いな。今度は戻ろう。」

 

次は来たところを戻っていく。



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第16話 紛らわしい

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
月島胡桃
織音琴葉
ミナト
五月女舞菜香
琴葉の父親
以上7名



 2回目で戻ったときのタイムは7分。171km/hで飛行したことになる。

 

「まぁ、いいか。」

 

俺は舞菜香を置いて下に降りた。

 

「え、私は…?」

「帰ればいいさ。今日は終わり」

 

俺は地面に降りて、琴葉の家の中に入った。その時、耳を貫くような激しい音が聞こえてきた。

 

「何をやっている!」

 

男性の声だ。父親か何かだろう。怒られてるのかな。

ドンッ

床に叩きつけられるような音。俺は急いで部屋の中に入った。そこには、無惨に投げ捨てられていたたくさんの銃と、それを守ろうとしたのか、琴葉が床に倒れている。さらには俺の妻や妹の胡桃とかりなにまで被害が及んでいた。

 

「なんだ、これ…」

 

ミナトはまだ帰る前なのか、ミナトだけがいなかった。倒した本人もその場にはいなかった。なぜだろう。逃走でもしたか。今はそんなことより胡桃たちの救護が先だ。

 

「大丈夫か、琴葉」

「銃…」

 

かなりの打撃を受けたか。じゃあ胡桃はどうなんだ。

 

「胡桃、痛いとこあるか」

「…背中…」

 

話すことがままならないほどか。

 

「かりなも、痛いとこあるか」

「背中から首にかけてかな」

 

かりなは自分の回復魔法で治っていた。それ以外は全くだ。

 

【織音琴葉視点】

 

 父親に叩かれ、銃を捨てられるとき、私は咄嗟に体を動かした。しかし、重い系統の狙撃銃が頭に直撃し、床に倒れこんだ。私の意識が朦朧(もうろう)としていると、気づかぬうちに父親はどこかに行っていた。

 

「大丈夫か、琴葉」

 

柊くんに話しかけられた。私は「銃…」と答えるだけだった。話す力がなくて。柊くんは他の2人も状態を確認していた。すると、隠れていた父親が出てきて、柊くんの後ろにナイフを突きつけたのだ。

 

「柊くん、後ろ」

 

私はありったけの力で言った。柊くんは後ろを向いたが、それと同時に父親が柊くんを刺した。HPゲージがみるみる減っていく。そして、カーソルがグリーンからブルーに変わる。父親のカーソルはイエローからレッドに変わる。

カーソルは、何も犯していない、HPも正常値だとグリーン、HPが半分を切るとブルー、HPが残り2割でピンク、HPが10%を切ると消える。柊くんは半分以下2割以上の状態。

父親は、人を怪我させたためイエローカーソル。そして、今は刃物で刺し、殺人未遂のためレッドカーソル。レッドカーソルは3日以上残ると、普段は強制送還。しかし、今は仮想世界の刑務所へ送られる。

柊くんのHPはまだ減っていく。やがてピンクカーソルになった。柊くんのMAXHPは148210。2割を切ったから残りは29642。

父親は逃げ出した。あとで警察に通報しておこう。私は柊くんに寄った。

ピンクカーソルの点滅だ。あと15%くらい。

 

「ヒール」

 

かりなちゃんが私に治癒魔法をかけた。私が「なんなら柊くんにも!」と言うと、かりなちゃんは首を横に振った。

 

「ランクが合わない。無理なの」

 

じゃあ、どうすればいいの…カーソルが消え、14821に減る。もう、出来ない。

 

「柊くん…最後くらい、抱いてあげるから…」

 

私は生きてほしいという気持ちで柊くんを抱きしめた。

 

「生きてよ…」

 

すると、抱きしめていた柊くんがゆっくりと動いた。

 

「んぐ?まだ眠いから…」

「へ?」

 

眠い?何が?

 

「あぁ、俺さ、寝てる間HP減るんだよ。大丈夫、500で止まるから」

「はああぁぁぁ…」

 

私は思いっきりため息をついた。なんだ、寝てただけかぁ。

 

「じゃ、じゃあお父さんに刺されたのは?」

「あれは防護魔法で弾いた。眠いから寝た。以上!」

 

「以上!」じゃないの!

 

「もうっ、心配させないでよ…私、本気で心配したんだから」

「ごめん。じゃあ、みんな。お詫びに、ハグしてあげるよ。おいで」

 

俺はみんなを呼んだ。ミナトは「ハーレムになっとけ」と言って外に出ていった。ハーレムって…そんなんじゃないし…

胡桃は俺にゆっくりと優しく包み込むようにハグしてきた。かりなは走ってきて、俺に飛び込んでくる。ばふっと音がしそうなくらい強い。

 

「柊くん、言うことは?」

 

みんなは納得したようだったけど、俺には分からなかった。言うことだと、あのくらいかな。

 

「ごめん」

「それじゃなくて、ハグして言うことは」

 

ハグして言うこと?そんなのあったっけ。

 

「もう、私たちは言えないからね」

「え?」

 

ヤバイ…何を言えばいいんだ…あ、そうだ

 

「大好きだよ」

「分かったか」

 

これだったの?というか欲しがるっておかしくない?俺はそう思いながらもハグしていた。

 



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第17話 理由

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
織音琴葉
ミナト
新メンバー2名
以上7名


 俺は翌日、魔法搭の攻略へと向かった。500階層まであるから今日はざっと10階層くらい行くか。俺は1人で向かい、早速1階層を突破した。2階層は結構みんなが苦戦していた。

 

「俺に任せろ。」

 

俺は火炎魔法で周り一帯を焼き尽くした。3階層への階段はすぐに終わり、3階層へ向かった。

 

 俺は5階層まで行ったあと、一か八か飛行してなるべく上の階層へ垂直飛行した。

 

「行けるか…」

 

俺は行けるところまで行った。しかし、途中で飛行が消えた。同時に浮遊魔法をかける。その階層は…

 

「489階層!?」

 

俺はもう少し行けるかと思い、浮遊魔法で少しずつあがって行った。しかし、490階層を過ぎた瞬間、魔法が無効になり、下に落下した。

 

「うあああっ!」

 

 

【????視点】

 

 私が魔法搭に向かっていると、上からなにか男の人の声が聞こえてきた。待って、なんで上から?

 

「うあああっ!」

「え?」

 

私は咄嗟に手を前に出した。男の人が上から強い風の音と共に落ちてきた。

 

「あの…大丈夫ですか?」

「あ、あぁ…ありがとう」

 

男の人は立ち上がった。私は男性が苦手だ。女性に対して変なことしかしない。だけど、この人はかっこいい。いやけど、見かけによらず変なこと考えてるかも。

 

「名前は…」

「月島柊」

 

結構シンプルに答えるなぁ。タイプかも。

 

「私、ゆかり。」

「ゆかちゃん?その人誰?」

 

横にいたのは私の親友、柚木(ゆずき)。柚木も私と同じように魔法搭の攻略に来た。

 

「さっき落ちてき――

「あー、君の名前はなんだい?」

「柚木です」

 

口を塞がれた。言っちゃいけないことだった?

 

「攻略だったら、ちょっと話したいことがある。俺についてきてくれ」

 

柊さんは私たちをつれていった。攻略は確かにするけど、なにも500階層までは…

 

【月島柊視点】

 

 俺は家に戻り、たまたま出会った2人と、家にいた4人を集め、魔法搭の話を始めた。

 

「今日行ってみたんだけど、489階層までは魔法が使えるらしい。」

「490階層からは?」

 

まだ全部は試してないからなんとも言えないが、少なくとも、飛行や浮遊魔法は使えない。

 

「飛行系は使えない。予想だけど、ミナトが持ってる魔剣も490階層からは使えない。」

 

琴葉の銃は影響ないだろうけど、ミナトとかりな、俺には大きな影響がでる。

 

「ゆかりは何の担当なんだ」

「少数派なんですが、細剣(レイピア)です」

 

レイピア担当か。たしかに選ぶ人は2割ほどって聞いたな。

 

「柚木は」

弓使い(アーチャー)です」

『アーチャー!?』

 

俺を含めた5人が同時に声をあげた。アーチャーなんて始めて聞いたし、する人なんていないと思っていた。

 

「じゃ、じゃあ試し撃ちする?」

「はい」

 

俺と琴葉、柚木は防音の聞いた部屋に行き、俺が1番奥、真ん中が柚木、1番手前が琴葉で立った。

 

「3、2、1、GO!」

 

全員一斉に的に向かって撃った。柚木の矢はまさかの…

 

「ど真ん中じゃないか。なんかみんなすごいなぁ」

 

俺は部屋から出た。すると、片手剣vsレイピアで勝負をしていた。デゥエルだから問題ないか。レイピアは早すぎて剣先が見えない。片手剣も残像がうっすら残っている。

 

「ねぇ、柊くんはなんで銃使わないの?やってみてよ」

 

琴葉が言った。俺が銃なんて、何年ぶりだろう。俺はさっきの部屋でハンドガンを撃った。的の真ん中どころか、的にも当たっていない。

 

「うーん、なんでそんな出来ないの?」

「なんだよ、悪いか」

 

琴葉は俺に聞いた。

 

「正直に言って。なんで」

 

しょうがない、言うしかないよな。今まで秘密にしてたけど。

 

「今から4年前。この仮想空間、know worldの前身、DieForeverWorldで起きた事件があった。」

 

DieForeverWorldは2029年から2031年まで続いた仮想ワールド。Dieは直訳して「死ぬ」、Foreverは「永遠」。最初は何を言ってるのか分からなかった。しかし、2030年。俺が22歳のとき事件は起きた。

DieForeverWorldは大文字だけを呼んだ略称で「DFW」と呼ばれていた。このDFWでは、今のような魔法は存在しなかった。そのため、俺はスナイパーになった。2030年の11月。このDFW内に閉じ込められるという事件が発生した。当時のルールは、再度アナウンスされ、内容は

 

「この世界で死んだら現実世界で死ぬ」

 

というデスゲームだった。俺は死なないように攻略を始めた。しかし、そんな中で俺が遠距離から攻撃した時、前に飛び込んできた剣士を銃で撃ってしまった。当然HPはゼロになり、現実世界に戻ってから、死亡が確認されたというのを知っていた。俺はこれが原因で、銃を一切使わないようにした。当時の俺は的中率も98%と高かった。しかし、使わなくなってから減っていき、今はほとんどたまたま当たるレベル。10%だ。しかし10回撃って1回当たる程度。当時は50回撃って49回当たる精度だった。今は50回撃ったら5回しか当たらない。

 

「そういうことがあったんだ」

「その後、DFWは倒産。今は別の会社がやってるんだけど、安心は出来ないな」

 

俺はそう言った。いつこの世界のルールが変わるか。そんなのこの世界の誰も知らない()()だ。

 



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第18話 出来事

今回の登場人物
前回と同じ
第一章では彩ちゃんの主役回でしたね。


 俺は銃を使わない理由も話したことだし、家の中でゆっくりしていた。友達同士っぽい二人も話している。男性が苦手なのか、俺とミナトには頑なに近寄ろうとしないけど。

 

「俺とかりなはともかく、489階層までどうやっていく」

 

俺がミナトに聞いた。ミナトはこういうときに役立つ。

 

「俺も魔法は使えるけど、そんな上位魔法は使えないからね」

「転移魔法だったら使えるんじゃないか」

「柊達が行ってからってことだろう?それだったら行けるだろうけど、胡桃さんはどうするんだい」

 

それが一番の課題だ。何も使えないし、役職も不明だと何をしたらいいかも分からない。

 

「それなんだよ、置いていくわけにはいかないし」

「魔法を教えていたら時間がかかるしね」

 

どうするかをミナトと話していると、後ろから琴葉が話しかけてきた。

 

「胡桃ちゃんをどうするかね。」

「あぁ。今のところは何も出来ないし」

 

俺は言った。ミナトは琴葉に向けて言った。

 

「置いていくわけにはいかないだろう?」

「そうね。どうにかしてつれてきたいね」

 

どうするかなぁ。

 

「なんかいい方法ないの?」

「うーん、最悪カプセルに入れて無理やり連れてくのはあるけど」

 

さすがに辛いだろ。暑苦しいし。

 

「壁よじ登るのは?」

「凹凸のない壁だよ。出来ないよ」

 

ミナトが言った。

 

「今は保留にしようか?」

「そうだね」

 

俺はミナトとは反対方向の部屋に向かって、ベットに寝た。

今日は一歩進んだかな。あと1ヶ月で現実世界に戻りたいよ。君はこっちに来る必要はない。俺たちでなんとかするから。

 

有希

 

 俺は翌日、もう一回魔法搭へ向かった。どうやって上るかだ。人数はいた方がいいのだから、一番いいのは全員まとめて489階層に行ってしまうことだ。だが、どうするか。全員が飛行魔法を使えるとは限らない。

 

「あの、なんで私だけ…」

 

俺は連れてきたのは柚木たった一人だけ。他のみんなは家に置いてきた。

 

「なんとなく」

 

本当に理由なんてない。ただ連れてきたかったから。それより、ここからもう一回飛んでみようかな。

 

「落ちてきたら掴まえて」

「はい」

 

俺は垂直に飛んだ。489階層まで行けるはずだ。俺は限界まで飛んだ。

 

「着いた!」

 

その瞬間に、飛行魔法が解除された。それと同時に、俺は火炎魔法を火炎魔法を発動させた。489階層に見えない壁があり、全てが弾き返された。全ての炎は俺に当たった。

 

「熱っ」

 

HPが急に減少した。これほどひどい魔法だったんだ。俺はHPが下がっているまま落下した。柚木が拾ってくれるはずだ。

 

「おっと」

 

柚木が俺をキャッチした。

 

「ナイスキャッチ」

「HP減ってます…」

「空中でやったから大丈夫」

 

俺は柚木を抱き抱えた。俺とは反対方向に抱いた。

 

「へ?」

「行くよ」

 

俺は柚木と一緒に489階層まで上がって行った。ギリギリ488階層で止める。

488階層で俺は上がるのをやめた。

 

「どうだ、柚木」

「こんな景色を見てるんですか、柊さん」

 

こんな景色というか、いつもはこれより10m以上低いところ飛行してる。ざっとここの高さは2256m。俺がいつも飛んでいる平均高度は100mから200m。これより2000m以上低い。

 

「結構低いところだよ。」

「飛べるって、楽しいですか?」

 

楽しいって、考えたことないな。多分楽しいのかな。

 

「多分。じゃあ、降りるよ」

「帰りはゆっくりお願いします…」

 

だろうな。俺はゆっくり地面まで降りた。

 

 地面に到達すると、俺は柚木と分かれた。柚木は先に帰り、俺はある用事があったから一回店に寄って、家に帰った。家ではかりなが俺の帰りを待っていた。

 

「おかえり、お兄ちゃん」

 

お兄ちゃんって、かりながそう呼ぶの久しぶりだな。

 

「どうした?」

「久しぶりに呼んでみたかったの。」

 

へぇ、だったら俺も久しぶりにしたいな。

 

「胡桃呼んできて。」

「分かった!」

 

かりなは胡桃を呼びに行った。2人に伝えることがあったんだ。かりなは胡桃を横に連れてきた。

 

「どうしたの?」

「あぁ、いつまでも借りてるのも悪いと思ってね」

 

俺が寄ってきた店はログハウスの店だった。場所はサーリートの真ん中より。サーリートはサンドスペニアの北西に位置する。サンドスペニアは砂漠だが、サーリートは湖などもある自然豊かな場所だ。

 

「来てくれ」

 

まだ誰にも教えていない。知っているのは俺と琴葉だけだった。琴葉とは昨日話した。

 

【昨日の深夜】

 

 俺は琴葉に話しかけた。ログハウスに引っ越すことを話すためだった。

 

「明日!?」

「あぁ。長くいるのも悪いからね」

「そっか。気をつけてね」

 

琴葉はそう言って戻っていった。内心では寂しく思っていたはずだ。

 

【現在】

 

 俺はログハウスに向かい始めた。ログハウスは湖から少しはなれた場所にあった。立地もいい感じだ。

 

「ベットは1つで大きいんだね」

「だな。かりなは真ん中に挟まれるか」

「安心だね」

 

安心設計ではないけど、たしかにかりなは安心かもしれない。俺はログハウスの中に入った。ベットはうっすら見えていただけだ。

 

「木のいい匂い」

 

胡桃が鼻をくんくんさせた。

 

「森の中に続く木製の道もあるんだな」

「今度行こっか」

 

俺はベットに倒れ込んだ。胡桃もとなりに来て、みんなで寝転がった。

今日も色々あったな。早く来ればいいのにさ、

 

有希

 



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第19話 サーリート

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
おじいさん
以上4名


 俺はその日はかなり早く寝た。確か仮想世界での時間は20時半くらいだったかな。現実世界では22時くらいだと思う。俺は翌日俺一人で起きて、森の中に出掛けた。胡桃からのお願いで、この付近の敵の調査だ。いないとは思うが、一応確かめる。

2時間くらいたったか、敵一人といない。やっぱり安全なんだろう。

 

「どうしました?」

 

そこにはおじいさんがいた。釣り人っぽいから、釣り人だろう。

 

「あ、この辺の敵の調査に」

「この辺はいませんよ。もうずっと出てないね」

 

ずっと出てないのか。だったらやっぱり安全か。

 

「そうでしたか。ありがとうございます」

「いやいや、頑張ってくださいねぇ」

 

おじいさんが優しく手を振ってくれた。優しい世界だ。

俺が帰路に着くと、誰かの叫び声がした。

 

「うわああっ」

 

さっきのおじいさんかもしれない。俺は急いで戻った。

 

「どうしました!」

「この湖に、でっけぇ魚が!食おうとしてた」

 

でかい魚、食おうとしてたってまさか!またザバーンと音がして、その正体は姿を露にした。

 

「うああっ!」

 

そう、でかい魚というのは、魚ではなく殺人機械だったのだ。魚の形になっている。

 

「freezing!」

 

魔法が効かない。もう一度だ。

 

「剣の舞!」

 

やっと効果が出てきて、動きが弱まった。おじいさんは逃げてどこかにいってしまったが、俺は戦うために残った。しかし…

 

「あああぁぁっ!」

 

倒れてくる勢いで俺の右側に機械が当たった。とがっていたところに当たると、血が出てきた。

 

「いって…かりなに頼もう…」

 

俺はなるべく急いで家に歩いた。

 

 家に着くと、かりなに俺の傷を頼んだ。

 

「かりな、頼む」

「任せて」

 

かりなは俺の傷口をペロペロと舐めてくれる。傷が治っていくことや、舐められることが気持ちいい。あ、決して舌フェチじゃない。

 

「はぁ、はぁ、終わったよぉ、はぁ…」

 

いつも終わると顔をピンクに染めている。

 

「ありがとう。」

 

俺は胡桃のところへ向かった。胡桃は何をしてるか分からないが、なんかキッチンでじっとしていた。

 

「どうしたんだ、胡桃」

「柊くん、私の役職知りたい?」

 

役職は知っとかないと損する場合もある。

 

「知りたい」

「そっか。私はね、剣士なの」

 

剣士か。なんならなんで隠してたんだ。

 

「どうして隠してたんだ」

「怖いの、敵が」

 

敵が怖いのはみんなそうだ。一番のミナトだって敵が嫌いだ。

 

「胡桃、俺だって怖いよ、敵は。」

「じゃあなんで殺せるの」

「守りたいから。それだけ。それに」

 

俺は胡桃を抱きしめた。胡桃は急なことであたふたしている。

 

「待って、大事な話してる…」

「俺が怖いか」

 

俺は胡桃にささやくように聞いた。

 

「怖くない。これ好き」

 

胡桃はこれしか答えられない。だって、俺に抱きしめられたんだから。

 

「同じだよ。これが怖くないと、敵は怖くない」

「待って、このまま、いたい」

 

胡桃の方が抱きついててほしかったんだ。胡桃は俺の肩に頭をのせ、俺に言った。

 

「私、柊くんとくっついてたい」

「いくらでもくっついてな」

 

胡桃は俺から離れないようにずっと抱きしめていた。胡桃は俺の首元の匂いを嗅いでいる。

 

「いい匂い。」

「よかった」

 

 

 かりなは森の方に出掛けている。少しぐらいなら攻撃魔法も使えるから大丈夫だろうと思った。俺は胡桃の後ろで料理をみていた。

 

「料理スキルあげないとね」

「現実世界より楽だろ?」

「そうね。」

 

胡桃からゆっくり俺は音を立てずに離れようとする。すると、胡桃は料理を電子レンジの中にいれて言った。

 

「離れないの!」

 

ぎゅっと抱き寄せられた。俺の気配には気づくようだ。俺は「ごめん」と一言いって胡桃に抱きついた。

 

「安心する。」

「邪魔じゃないか」

 

料理を作っているのだから邪魔な気がした。

 

「大丈夫。もっとぎゅってして」

 

俺は胡桃を強く抱きしめた。

 

「ふふ、本気だぁ」

 

胡桃は俺の方を向いた。いたずらっ子のような口をして俺を見ている。すると、持っていたニンジンを胡桃が振った。俺は後ろに飛んだ。

 

「油断大敵」

「そっちじゃない?」

 

俺は胡桃の後ろに無術式魔法、拘束を発動させた。胡桃は見えないなにかに動けなくなった。

 

「んんっ、動けないぃ…」

「油断大敵って言ったじゃん」

 

胡桃は必死で動こうとするが、腕と足が拘束されて動けない。拘束しているところは俺にしか分からない。

 

「外してぇ」

「かわいいからどうしようかな」

 

俺は仕返しのように笑みを浮かべた。

 

「ごめんなしゃい!」

「何についてだ」

 

俺は胡桃に聞いた。

 

「もう調子のらにゃいからぁ…」

「じゃあいいか」

 

胡桃を抱いて、拘束をといた。

 

「むぅ…」

 

頬を膨らませて胡桃は怒っている。かわいすぎる。

 

「かわいい」

「何してもそう言うじゃん」

「本当のことだよ」

「…嬉しいからいい…」

 

少し恥ずかしがっている。胡桃は照れ隠しに電子レンジから料理を取り出した。

 



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第20話 現実世界と仮想世界

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
月島暁依
丸山彩
新メンバー1名
以上5名


 しばらくしてかりなが帰ってきた。疲れはてたそうで家に着くなりベットにバタンキューだ。かりなはかなりの間顔を枕に埋めていた。

 

【月島暁依視点】

 

 俺は彩、春菜と一緒にいつも通勤していた。知り合いだと言う絢梨という人から、「いない間マネージャーお願い」と言われて、俺は朝の電車で通勤を始めた。北海道でもなかなか混んでいたが、こっちの電車はぎゅうぎゅう詰めだった。よくこれに柊が乗ってたな。

 

「いつもこれなのか?」

「うぅん、今日は少し混んでるかな。いつもはもう少し空いてる…」

 

最後にちょっとした余韻が残った。

熊谷に着くと、急に人が増えてきた。俺は後ろから押され、彩を守るようにして彩の少し上に手をついた。

 

「彩、辛くないのか」

「いつもは潰されて苦しい…」

 

やっぱりなんか余韻が残る。なんか思ってるのか?

 

「今は暁依に守られてるからいい…」

 

いつもの彩じゃない。いつもはアイドルを家でも振り撒いてるのに、今は暗い女の子。

 

「なんかあったか――

 

その時、俺は耐えきれずに彩に強く密着した。すべての柔らかさが伝わってくる。

 

「ひゃっ」

 

彩が反応して普段出さない声を漏らした。

 

「ごめん…彩…」

「あ、ううん。大丈夫…」

 

彩は相変わらず余韻が残る。俺は思いきって聞いてみた。

 

「なんかあったか?」

「……好き……」

 

何が。満員電車が好きなわけないし。

 

「暁依くんが、好き」

 

俺を?俺のどこを、なんて聞くのは経験上ダメだよな。俺は彩に言った。

 

「ありがとう。じゃあ」

 

俺は彩にキスした。

 

「あぁんっ、んっ」

 

彩はいやらしい声を出している。キスしても抵抗はしない。嫌じゃないんだろう。

 

「ん、ふわぁ…暁依くん、結婚して?」

「俺でよければ」

 

まさかの状態、場所で結婚の告白をした。

 

【月島柊視点】

 

 俺はまた1人で外に出た。今回はサーリートの中ではなく、外の周辺も散策してみることにした。と言っても飛行してるからそうでもないけど。俺はひたすら飛行し、サーリートのとなり、ミセシアへたどり着いた。

 

「おーいっ!」

 

下から誰かが呼んだ。名前なんて知らないけど。俺は地面に降りた。

 

「えっと、Ena?」

 

そう書いてあったからそのまま読んだ。

 

「はい。エナって言うんですけど、サーリートから来ましたよね?」

「うん。サンドスペニアからサーリートも通ってる」

 

エナは「でしたら!」と言って俺にしがみついた。

 

「助けてください!殺人ギルドに追われてて!」

 

殺人ギルドって、ミセシアからかなり離れてるところにしかないけど。

 

「ヨタニスのところから追われてて!」

 

ヨタニスって、ここから15km以上離れてる。

 

「そこから走ってきたのか?」

「はい。もう限界で…」

 

俺はエナを背中にのせて草原を走り出す。普通に走ったとしても40km/h前後だったら出せる。相手が何に乗ってるかによるけど。なるべく本気のスピードは出したくない。俺も最近速度向上したし、一瞬で逃げれてしまう。

 

「っ!」

 

俺は言葉にできないほど驚いた。相手はまさかの円盤に乗ってきていたのだから。120km/hなんてすぐに追い付いてしまう。

 

「エナ、しっかり掴まってて」

 

俺は地面を思いっきり蹴って飛んだ。速度向上だから今までの180km/hから210km/hに上げた。一瞬で追い越せる。

 

「良かった…」

 

エナと俺が安心していると、目の前に転移してきた。

 

「しつこいな…やりたくなかったけど」

 

俺は火炎魔法を発動させる。

 

「Fire」

 

俺も無術式でできるようにしないとな。相手を火で包んだ。

 

「エナ、上がるぞ」

 

俺はほとんど垂直に上がり始めた。高度は今は20m前後。一気に340mまで上がる。それと同時に、かりなへ「Y座標345」とチャットを送った。高さの345mだ。

 

「エナ、落ちたら即死だぞ」

「はい。」

 

俺は340mまで上がると、かりなを探した。俺のことを探しているようだった。

 

「柊くん!どうしたの?」

「殺人ギルド殺人しようぜっていう面白い発想」

 

俺は簡潔に面白く言った。

 

「殺人ギルド殺人するのね。じゃあ無効化魔法でいい?」

「使えるんだったら」

 

俺は無効化魔法を許可した。無効化魔法はすべての魔法、効果(バフ)が全て消滅する魔法だ。使用者以外の魔法は全て消える。俺が早くかければいい話だ。かりなは無効化魔法を発動させ、全てをおとした。俺も素早く飛行魔法を使用し、空中に浮いた。

 

「使えたんだ」

「一応魔女だから」

「美魔女の間違いかな」

「嬉しいこと言うね」

 

俺はかりなと会話していた。そこにエナが入ってくる。

 

「魔法使いですか」

「あぁ。ほら」

 

俺は証明書を見せた。納得したようで、俺と握手した。

 

「ありがとうございます。」

「ああ、いやいや。大丈夫だよ。じゃあ、俺は帰るから。用があったらこれで」

 

俺は個人チャットを教えて家に帰った。



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第21話 惚れ薬 前編

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
おじいさん
以上4名


【月島胡桃視点】

 

 私は2人が出ていった家で帰りを待った。かりなちゃんは柊くんに呼ばれ、その柊くんはただどこかに行っただけ。そんなに時間はかからないと思い、私はゆっくり待っていた。

すると、ドアを叩く音が聞こえ、私はすぐにドアを開けた。そこには、関わるなと言われていた殺人ギルドがいた。

 

「え…」

「動くなよ」

 

私は家のなかで両手を掴まれて動けなくされた。少し足を動かすと、手首をひねられる。

 

「サーリートにはいないと思っていたが、いたんだなぁ」

「どんどん減らしちゃいましょうぜ」

 

ある人が上の人に話しかけ、上の人は了承した。私は怖くて声がでなかった。出そうにも、出ない。

 

「待て、知ってるか、ここで死んだら現実世界に帰れないって」

「っ!」

 

現実世界に帰れない…?嘘でしょ?みんなとは?柊くんとの結婚生活は?数々の問いが生まれてくる。

 

「俺たちはそれを狙ってるんだ。これだけ伝えた。じゃあ殺せ」

 

まだ、死にたくない。柊くんとは現実世界でやり残したことがまだある。たくさん、山ほど。お願い、助けてください。柊くん。言っちゃダメなのは分かってます。ただ、お願い。今回だけでいいから…

バタン

殺人ギルドの全員が倒れた。私が反対側を見ると、そこには柊くんがいた。私は殺人ギルドの全員が消えてから、すぐに柊くんに抱きついた。目からは温かい水が出ている。

 

「ごめんなさい、私がドア開けたから…っ」

「大丈夫。胡桃が無事で良かった。」

 

柊くんはそう言って私を撫でてくれた。私は少しずつ落ち着きを戻していった。

 

【月島柊視点】

 

 俺は胡桃をゆっくり撫でながら言った。胡桃だってまだ怖くて泣いている。

 

「大丈夫。怖かったね」

 

胡桃はおとなしく動かずに撫でられていた。妹たちが小さいときはこうして慰めてたな。彩夏やかりなも泣いて帰ってくるといつもはこうだった。

 

「よしよし。怖かったね」

「…柊くん…落ち着いてくる…」

 

だいたい撫でられると安心して落ち着いてくる。かりなだってそうだった。

 

「胡桃、ぎゅうってしてごらん」

 

胡桃はまだ入らない力で俺をなるべく強く抱きしめた。

 

「柊くん、やめてほしい?」

「ずっとしててほしい」

 

胡桃はそのままの力で抱きしめていた。殺人ギルドの本当の目的は俺たちだった。サーリート周辺のエリアに結構いるらしかった。警備に回っていて、次々と退治していっているらしい。

 

「すー、すー…」

 

胡桃は泣きつかれたのかすっかり眠っていた。かりなは俺に寄りかかって寝ている。あと起きているのは俺だけだった。

コンコン

ドアをノックする音が聞こえた。ドアが開き、前に会ったおじいさんが顔を出した。

 

「おや…私がそっちに言った方がいいね」

「あ、すみません…」

 

おじいさんは向かい側に座った。

 

「二人は夫婦かい?」

「はい。結婚しまして」

「そうかい。ずいぶんと疲れているようだね」

「多分休みがあまり無いからだと」

 

おじいさんは俺に優しく話しかけてくれた。

 

「この世界だと結構な高齢でね、大変だよ」

「このかりなも中学生なんですよ。まだ中2で」

 

今年は2年生だ。彩の中学に夏から通うことになる。

 

「そうかい。私はサーリートの南西に家があるからね。暇だったら来ればいい」

「はい。ありがとうございます。」

 

おじいさんはドアを開けて帰った。俺の家のなかは急に静まり返った。

 

「胡桃」

 

俺はまた胡桃を撫でた。この世界に閉じ込められて今日で1週間。7日目になる。その間にあーやや絢梨は何してるんだろう。そういうのを考えたのは今回が始めてだが、なぜか急に気になった。

 

「んんっ、柊くぅん…」

 

胡桃が喋ると、なんかアルコール臭い匂いがした。酒を誰かのんだかな。

 

「あぁん、柊くぅん…」

 

胡桃から匂いがする。なんか飲んでたのか?いやいやそんなわけ…

俺がそう思っていると、かりなが俺を見てきた。起きてたのだ。

 

「お酒飲ませたの私よ。お酒っていうか、薬なんだけどね」

 

薬?なんか病気にでもなってたのかな?

 

「惚れ薬なんだけど――」

 

その時、胡桃が起き上がって、かりなの下から小さな瓶を取り出した。

 

「あっ!」

「仕返し♪」

 

胡桃は中身を全て飲ませた。かりなは一瞬のうちに顔がピンクになり、俺にスリスリしてきた。

 

「ふふ、つめたーい」

「ぐがっ!」

 

かりなはじたばた暴れて、置いてあった水を胡桃にこぼしてしまう。

 

「きゃっ!」

「ああ、かりな、何してるんだ」

「ごめーん」

 

胡桃は白いワンピースから身体が透けている。お腹も透けている。胸も透けてるのは気にしない。

 

「冷たいよぉ…」

「じゃあおいで」

 

to be continued…



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第一短編小説 第22話 惚れ薬 後編

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
以上3名


 俺は2人が惚れ薬に効いてしまったため解除薬を探すことになった。大きければいいんだが、惚れ薬で長さが6cm前後。解除薬もそのくらいだろう。結構時間がかかりそうだ。何て言ったって、後ろから胡桃やかりなが俺に甘えてくるんだから。冬菜だったらどうだったんだろう。甘えん坊になるのかな。なんて、そんなこと考えてる場合じゃない。とにかく探さないと。

 

「ねぇ柊くーん、構ってよー」

「探してるから待ってくれ」

 

俺が何回も言ってもこの繰り返しだ。そんなとき、俺の下に惚れ薬に似ている容器を見つけた。

 

「これか」

 

俺は解除薬の半分をかりなに飲ませた。胡桃は…かわいいからもう少しこのままでいてほしい。

 

「あ、柊くん、私解除された?」

「あぁ。胡桃は残しといたけど」

 

胡桃は今まで以上にべったりくっついている。磁石かなんかかな?

 

「んにゃーっ」

 

胡桃って酔ったりすると猫みたいになるよなぁ。原因は分からないけど。

 

「ふがーっ」

 

胡桃は俺に飛び付いてきた。本当の猫じゃないか。

 

「にゃぁっ」

 

俺の腹部に胡桃は頬をスリスリする。猫以外に考えられないだろ、ここまで来たら。

 

「猫?」

「猫」

「猫か」

 

俺とかりなは短い会話を繰り返していた。「にゃ?」と胡桃が首をかしげる。

 

「猫だな」

「猫だね」

 

かりなは苦笑いしている。これじゃあ俺がただ変態なだけじゃん。

 

「ふにゅーっ、ふかぁ」

 

胡桃は俺の膝に寝転んだ。胡桃が「してー」と言うから、俺は胡桃の頭を優しく撫でた。

 

「ふふふーっ」

「解除薬飲ませるか?」

「もう少し待ってみよ」

 

俺はまたしばらく待つ。胡桃は俺の膝でぐっすりだった。

 

「かりな、彩夏とは話してるか」

「メールのやり取りはしてるよ。私より先に中学校行ってるって。部活は今日決まるって」

 

部活は吹奏楽部がいいな。俺が帰ったら顧問としてできるから。けど、あと何日か。

 

「魔法搭攻略まであと4日だからね」

「え?そうなのか?」

 

4日だったら覚えられるか。俺は胡桃を優しく床に寝かせて、かりなと一緒に外に出ていった。鍵は俺以外開けれないようにしておく。

 

 俺が行ったのは魔法搭。ここで周辺の地面を上げ、地面ごと489階層に運ぶ。地面が大きな振動をたてて上がっていく。

 

「これで行けば全員行けるよな」

「すごい…」

 

そして俺とかりなは489階層の真横に着いた。ここから魔法禁止エリアになる。

 

「ここからはミナトたちが主役になる。俺たちはタンクに移ろう」

「一回作戦会議する?」

「そうしよう」

 

俺は次に琴葉の家に向かい始めた。俺は持ち上げた地面から飛び降りた。一回してみたかったんだ。俺が使えずにかりなが使える、羽での飛行だ。かりなはもう慣れているが、俺は初めてだ。

 

「あ、柊くん上手いね!」

「まだ慣れてないけどな」

 

俺はそのまま空を滑空した。



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第23話 作戦会議

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
織音琴葉
ミナト
ゆかり
柚木
以上7名


 俺は琴葉の家に久しぶりに戻り、作戦会議をした。テーブルを俺とかりな、琴葉、ミナト、ゆかり、柚木の6人で囲んだ。この中で魔法系を使うのは俺とかりな、ミナトの3人。ミナトは魔剣を外せば普通に使えるが、俺とかりなは魔法しか使えないため、489階層で盾を召喚させてから490階層に向かう。

 

「遠距離は狙いづらいか?」

「はい。広さもないですし、弓も無理です…」

「銃は一応使えるけど、場所によるかな」

 

遠距離は簡単じゃないな。じゃあ近距離のミナトやゆかりになるのか。

 

「ゆかり、レイピアはどういう風にする」

「近距離だから特には…」

「俺は喜んでするけど」

 

当然だろうね。ミナトはやる前提で考えてるし、やらなかったら俺がすることになるけど。

 

「じゃあ、大丈夫だな。えっと、489階層まで一気に行くのはメリットでもあり、デメリットもある。例えば、1階層からだと段々レベルが上がっていくけど、489階層からやると急に強い敵に当たる」

 

十分なレベルが必要だ。俺は注意を言って、みんなに緊張感を持たせた。

 

「今回は自分達だけじゃない。世界がかかっている。真剣に、絶対勝とう」

『おーっ!』

 

こうして俺たちは4日後の魔法搭攻略まで待機することになった。俺とかりな以外は琴葉の家で、俺とかりなは自分の家で待機することになった。それまでは安静にすることが条件だった。

 

 俺は家に帰ると、胡桃が玄関の前で俺を待っていた。未だに惚れ薬の効果は切れていない。胡桃は帰ってきた俺にバッと飛び付いた。

 

「お帰りにゃ」

「ただいま」

「夕飯作るけど、食べるにゃ?」

「あぁ。頼むよ」

 

語尾に「にゃ」をつけて話している。胡桃は料理しているときも「にゃ、にゃっ」と言いながら料理している。俺はどうしても胡桃とキスしたくなってしまった。

 

「ちょっと休憩――

 

俺は胡桃を抱き寄せ、顔を押さえてキスした。結構強く、舌も入れてキスした。

 

「はぁ、はぁ、柊くぅん…急にはらめぇ…」

「かわいいよ、そうしてる胡桃も」

 

俺はもっと胡桃を恥ずかしくさせた。あと4日で胡桃とはしばらく分かれることになる。一週間で帰ってきたいが、帰ってこれるのは絶対だが、現実世界に帰れるかは分からない。

 

(胡桃を連れていくつもりだったが、しょうがない…)

 

俺は心のなかで自分に言い聞かせ、俺は胡桃を撫でた。かりなは分かっているそうで、心配そうに見ていた。

 

「柊くん」

 

かりなは俺の耳元で言った。

 

「胡桃ちゃんはやっぱり連れてかない?」

「しょうがないから…」

 

俺はそう返事した。胡桃は気づいていないため、普通に撫でられている。恥ずかしがってるけど。

 

「胡桃、言うことがある」

「うん。なぁに?」

 

俺は拳を握りしめて言った。

 

「4日後、1週間会えなくなる。」

「え…どうして…」

「魔法搭の攻略に行く。生きて帰っては…」

 

胡桃は俺の顔に優しく触れた。

 

「生きて帰ってこなかったら私、現実世界で死ぬよ。」

「っ!」

 

俺はその言葉に身体全体が撃たれたようだった。衝撃的な言葉で、俺にはとても考えられなかった。

 

「分かった。生きて帰ってくる」

「命がかかってるからね。」

 

俺は胡桃の手をつかんだ。胡桃は微笑んで、俺を見つめた。魔法搭攻略まであと4日。あの時(第一章第90話参考)みたいな緊張感に包まれた。

 

「4日はあるんでしょ?」

「3日くらいかな、前日は琴葉の家に泊まるから」

 

俺は自分の個室に向かった。1辺が6mくらいしかない狭い部屋だ。ベットがあって、少しの幅で小さい机がある。俺は狭い部屋が昔から好きだった。

 

(おやすみ)

 

俺は暗くしてゆっくり眠った。枕が柔らかくて俺はぐっすりだった。

 

 翌日、俺は作戦会議もなく、今日はずっと家にいようと決心した。俺は胡桃が寝ているところに向かって胡桃を起こした。もう8時半だし。

 

「ほら、早く起きろ」

「んんっ、おはにょー」

 

胡桃はゆっくりと起き上がった。全く、胡桃は相変わらず朝に弱いよなぁ。

 

「かりなちゃんは?」

「偵察だよ。俺は休む」

 

俺は床に座った。胡桃の作った料理を食べたいからだけど。




10月23日22:24開始
10月23日、24日22:50~6:52就寝
10月24日7:19~21:25休憩・学校
10月24日22:29投稿予約小説に追加


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第24話 出発

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
以上3名


 今日の朝ごはんも胡桃が作ってくれる美味しいものかと思ったら、出てきたのは目玉焼きとベーコンだけ。胡桃が作ったことにかわりないが、いつもと違かった。

 

「ごめんなさい。頭痛くて作れなかった…」

「頭痛いって、大丈夫か?無理しなくても」

「大丈夫。無理はしないから、ね?柊くん」

「ならいいんだけど、何かあったら言って」

 

俺はそう言って目玉焼きを食べた。胡桃の惚れ薬効果は昨日の夜切れたが、頭が痛いのか頭を押さえ、顔がほんのり赤くなっている。

 

「胡桃、やっぱいいよ。空いてる時に食うから、今は看病がしたい」

「いいよ…柊くんは食べてて――

 

俺は鋭い声で、少し大きく言った。

 

「ダメだ。今は胡桃のことが優先だ」

 

胡桃は頭を押さえたままだったが、苦しそうに笑った。笑うことも辛いんだろう。胡桃だって俺がいない間は何もできずにいるんだ。

 

「まずベットに行こう。ゆっくり寝てて」

「ねぇ…柊くんの昔はさ、モテてた?」

 

急にどうしたんだろう。俺の昔のことなんて。

 

「全く。小6くらいまではただのヤンチャな少年、中学からは陰キャだったから」

「そうなんだ…私は中学の頃すごいモテててね、ラブレターを何枚ももらってた。」

 

胡桃は笑っていってたが、俺には分かっている。胡桃が内心では嫌だったこと。

 

「けど、貰ったラブレターは持ち帰って捨ててたの。」

 

分かってはいたけど、俺はわざとのように言った。

 

「どうして捨ててたんだ」

「好きな人がいたの。」

 

それが誰なのかまでは分からないが、多分…

 

深知(みち)くんって言ってね、その人はすごい暗くて、周りから避けられてたんだけど…」

 

やっぱり。深知とは俺が使っていた偽名だ。みんなに名前がバレたくなかったから。

 

「私が少し遅れて帰ったときに深知くんの長い髪の下が見えたの。その人の顔が格好よくて…」

 

あの、まさかだけど本人の目の前で言ってるとは思ってないよね?というかあの時後ろに感じた気配って胡桃か。

 

「それから好きになったんだけど、話しかけづらくて…片想いみたいになっちゃって…」

「へぇ、今は両思いなのに」

 

ちょっと気づかせるために言った。気づくかな。

 

「なに言ってるの。あれから会ってないよ」

「今いるじゃん。胡桃から半径1m以内に」

 

胡桃は首を左右にふって周りを見た。周りには俺しかいないぞー。

 

「…なに冗談言ってるの?頭痛くても冗談は分かるよ」

「……じゃあこれで思い出すか」

 

俺は上げていた前髪を前に垂らした。目の下辺りまで髪がかかる。あの時とほとんど同じ長さだ。

 

「深知くん…」

 

やっぱりその名前が最初に思い浮かぶんだ。

 

「その深知って奴、俺だよ」

「え、だって、柊くんでしょ?」

「そうなんだけど、本名知られたくないから偽名使ってた」

 

偽名使ってたのは俺だけだと思う。なぎだって偽名じゃないし。

 

「なぁんだ、あの時からだったかぁ」

「気付かなかったのか。」

 

胡桃は俺を強く抱いた。深知くんと知っても好きの気持ちは変わらないらしい。

 

「なんか頭痛も忘れちゃった」

「よかったじゃないか。」

 

俺は胡桃の頭を撫でた。胡桃は俺の頭にスリスリさせた。胡桃は大して大きなことはできない。ただ、俺にとってはとても大きな存在だ。いるかいないかだけで大きく変わってくる。

 

 そしてやってきた当日。現実世界では4月23日の午前5時半。こっちでは4月23日の午前7時。ついに俺とかりなは琴葉の家に行くときだ。

 

「胡桃、また現実世界で会おうな」

 

俺は胡桃と約束したんだ。

 

【昨日】

 

 俺は胡桃に呼ばれて、ベットの上に行った。

 

「胡桃、どうしたんだ」

「あのね、次の集合場所は現実世界の柊くんの実家にしよう?」

 

集合場所を実家にしようか。

 

「魔法搭クリアで帰れるから、それと同時に私は帰る。柊くんが帰ってきたら思いっきり抱きつく。帰ってこなかったら死ぬ」

 

過酷すぎる気もしたが、俺が勝てばいい話だ。

 

「いいよ」

「じゃあ、おやすみ」

「あぁ、おやすみ…」

 

よかったのだろうか。勝てるかも分からないのに…いや、勝ってくるんだ。俺は胡桃に言われてそう意気込んだ。

 

【現在】

 

 俺は玄関のドアに手を掛けた。もう出発の時間だ。

 

「行ってきます」

 

俺はドアノブをひねる。もう、行かなくちゃいけないんだ。すると、胡桃が俺の腹に巻き付いた。

 

「絶対、現実世界でハグして、キスしようね」

「…あぁ、待ってて…」

 

俺は外に出た。俺はなぜか雨も降っていないのに目から下に温かい水が流れていた。

 



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第25話 前日

今回から戦闘回になります。今のところ、今回の25話、次回の26話、長編の27話、そして28話の4話構成です。
今回の登場人物
月島柊
月島かりな
織音琴葉
ミナト
ゆかり
柚木
以上6名


 俺は琴葉の家に向かった。かりなは泣いていた俺の涙を拭いてくれて、かりなの家までは立場がすっかり逆転していた。俺は琴葉の家に着くと、早速挨拶に行った。

 

「琴葉、久しぶり」

「久しぶり!待ってたよ」

 

琴葉は相変わらず俺を笑顔で迎えてくれた。優しくて、琴葉に俺は「親切」な心を持っていた。

 

「ゆかりは」

「今レイピアの練習行ってる。ミナトも一緒だから心配ないって」

 

ミナトが一緒だったら確かに心配は要らないな。俺は琴葉を持ち上げた。

 

「わっ、ビックリしたぁ…どうしたの」

「なんか持ち上げたくなった」

 

琴葉は俺に持ち上げられても抵抗なしに、むしろ喜んでいた。

 

「これが最後にならないように…」

 

琴葉はそう言って俺を落ち着いた目で見た。

 

「……」

 

俺は黙り込んだ。そうか、俺が魔法搭で死んだら、これが最後になるんだ。魔法搭489階層より上は魔法が一切使えない。そうなると、蘇生もできないんだ。

 

「あ、言っちゃ悪かった?」

「…いや、大丈夫…」

 

俺が行って大丈夫なんだろうか。今回は俺が何かすることもないが、俺が行ったら、誰かが帰れなくなるんじゃないのか。

 

「…ちょっと1人にさせて…」

 

俺は自分の使っていた個室に向かった。誰も使っていないらしく、あの時のまま時間が止まっているようだった。

あ、そうだ…俺が銃を使わない理由。人を殺したからだ。俺はあの言葉を思い出した。

“ただの人殺し”

人を殺してから、一部の人物からはそう呼ばれた。

“歩く殺人鬼”

着ていた服が黒いからか

“悪魔の黒”

とも呼ばれた。ただ、たった1人からは真逆のことを言われた。

“俺たちの光”

理由を聞くと、前から栄光の光のように優しかったからだそうだ。

しかし、この言葉もこれによって無くなった。

“闇になった男”

光と言ってくれた人も、いつの間にか“闇”を言ったグループに入っていた。

そうだ、俺はそうだった。周りから信用されずに生きてきた。今回だって──

 

「柊、今回はよろしくな。ゆかり、直接は話せないからって言って、俺に言ったんだけど、ゆかりは柊を一番信用してるって」

「俺を…?」

 

とても意外だった。俺を信用するなんて。

 

「当たり前だろ。今回の主役は柊だ。俺じゃない」

 

主役は俺か。俺が主役。俺がみんなの中心なんだ。中心だったら人を殺さなくていいんだ。いいじゃないか。

 

「柊、ゆかりが向こうで待ってるから、行ってやれよ」

「分かった。ありがとう」

 

俺はミナトが出ていってから少しだけ部屋にいた。俺はなんて小さな事で悩んでたんだ。今回やり直せばいいんだ。

 

「行くか!」

 

俺は自分に言い聞かせて、勢いよくドアを開けた。

 

 ゆかりは床にちょこんと正座で待っていた。誰かを待っていると言うより、なんか悪いことをしたかのようだ。

 

「…私、前衛をお願いしたいです…」

 

前衛?一番忙しいところだし、1番HPも減りやすい。

 

「どうしてだ」

「守りたくて」

「HPは減りやすいぞ」

「死んでも、いいので…」

 

俺はゆかりを見つめた。俺には能力として、相手の心を読みとれる。死んでもいいは本当らしい。俺はゆかりに言った。

 

「ごめん、前衛はいっぱいなんだ。後衛は空いてるぞ」

 

こうして安全なところに誘導する作戦だ。本当は前衛なんてミナトしかいない。

 

「そうですか…じゃあ後衛で…」

「そうしてくれ」

 

俺はそう言って先に外へ出た。魔法搭に向かうのだ。

 

 魔法搭はいつも通り人が大勢いた。俺はそんな中、489階層へ上り、ある“コマンド”を言った。

 

「システムコマンド、magucal limit altitude rescission」

 

俺がこのコマンドを言ったのにはかなり重大な理由があった。まぁ、当日に分かるからまだ言わなくていいか。俺は試しに魔法を使ったあと、琴葉の家に戻った。

 

「柊さん!」

 

俺を呼んだのは柚木だった。俺は家に帰る途中だったが、一回柚木に寄った。

 

「どうした」

「私、攻略の前に男性に慣れたくて」

 

そうか。男性が苦手何だもんな、柚木とゆかりは。

 

「なるほど。それで、なにしたいんだ」

「一緒に帰ったりとか?」

 

敬語もやめて、結構なれたいって言う気持ちが伝わってくるな。

 

「じゃあ帰ろう。」

 

俺は飛行せずに一緒に家まで帰った。途中でも柚木はたくさん話してくれた。

 

「柊さんは現実世界でも髪灰色の黒寄りなの?」

「そうだね。染めてないんだけど、生まれつき」

 

染めたこともあるけどな、黒に。

 

「そうなんだ。結構かっこいいね」

「ありがとう」

 

俺は柚木と一緒に手を繋いで帰っていた。そんなことには気付いてなかったけど。

 

 家に着いたときにはもう夜だった。俺はかりなにさっきのコマンドを教えたあと、ミナトにも教えた。

 




胡桃が登場しない回でしたね。しばらく出てきませんが。


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第26話 当日 1日目

当日の回になります。序盤から柊とかりなが行きますよ!
今回の登場人物
前回にプラスして新メンバー1名
以上7名


 俺は翌日、朝6時(現実世界は4時半)に起きて魔法搭に向かい始めた。1列にならび、先頭からはミナト、かりな、琴葉、ゆかり、柚木、俺だ。遅れないように俺が最後尾についた。

 

「あと2分くらいだぞ」

 

ミナトが俺たちに呼びかけた。俺はかりなにチャットを送った。

 

〈コマンド覚えてるよな〉

 

しばらくして返信が来た。

 

〈magic limit altitude rescissionだよね〉

 

結構長い英文だが、実際は、

マジック リミット アルティチュード リセクション。

日本語に直訳すると、“魔法限界高度解除”と漢字が多い文になる。

ここまで来れば分かっただろう。magic limit altitude rescissionは、魔法の限界高度をなくすコマンドなのだ。仮想世界でもチートと呼ばれているコマンドだが、今回は使いたかったから使用する。

俺は次にミナトにチャットを送った。

 

〈ミナトもコマンド大丈夫だな〉

〈magic limit altitude rescission〉

 

言えてるってことは大丈夫だな。

そして魔法搭の目の前までたどり着いた。俺はしたの地面を持ち上げ、489階層まで上がった。直前で止まらないとコマンドを言う前に落ちてしまう。

 

「みんな、今回は死なずにクリアだ。この魔法搭自体が600以上の階数があるから全クリはいかない」

「500までいったら帰ろう」

 

俺は489階層でちょうど止めた。そして、3人で同時に言った。

 

『システムコマンド、magic limit altitude rescission』

 

ゴーンと耳に響くような音が聞こえたかと思うと、魔法は空に向けて自由に使えるようになっていた。

 

「魔法の限界高度じゃないの?」

 

琴葉が俺に聞く?ミナトが俺の変わりに答えた。

 

「さっきのシステムコマンドで限界高度を無効にしたんだ」

 

後付けて俺は言う。

 

「俺とかりなはできないと困るし、ミナトは魔剣が使えないからな。だからつけてある」

 

489階層から入ると、誰もいない、何もない空き部屋のような大広間が広がっていた。中は薄暗いが、まだ奥が見渡せるほどだ。一歩あるくと足音が響く。

 

「敵に会ってもそう大きなことは起きなさそうです」

 

ゆかりがみんなの横で小さく言った。それでも響くんだ。

 

「とりあえず490階層目指そう。」

「そうだな」

 

俺とミナトは2人で490階層に向かった。女の4人はなにか話していた。そんなことを思っていると、もう490階層の階段を見つけた。俺はこの階段を上った。ミナトは別のところへ行った。

490階層もにたような雰囲気だったが、少し狭かった。俺は敵を探したが、何もいなかった。俺が491階層へのきだんを探そうとしたとき、横から俺が呼ばれたような気がした。

 

「助けてください…」

 

横には黒髪の少女が座っていた。こんなところに少女なんているのかと思いながら、俺は事情を聴いた。

 

「どうしたんだ」

「489階層に降りたいんです…」

「えっと、だったらここを──」

 

その時、俺は自分の首になにか冷たいものが当たった。さらに、歯で噛むように…ちがう。歯が刺さってる。吸血鬼か?

 

「みんなちょろいなぁ」

 

俺から血がどんどん抜かれていく。HPはそんなに減らないが、首もとが冷たくなっていく。

 

「柊くんの血美味しい。」

 

ん?さっき俺の名前呼んだよな。なんでこいつが俺の名前を知ってるんだ。

 

「HPが減らないとか思ってるでしょ」

「別に君を倒すことだってできるさ」

「魔法使いでしょ?倒せるわけないじゃん」

 

俺は風魔法で後退する。吸血鬼(?)は驚いたような目で見ている。

 

「魔法限界高度解除」

「うっ、そんな…」

 

俺は拘束魔法で吸血鬼(?)を動けなくする。吸血鬼(?)は動こうと必死になって動くが、外れるわけがない。人間じゃ外せないんだから。

 

「さて、君はどうしたんだい」

「血吸って意識を失わせようとしたの…」

「名前は」

 

俺は顔をちかづけて言った。少女は顔を真っ赤にして言う。

 

木葉(このは)…近いよ…」

「あぁ、悪かったな」

 

その後、女グループの4人が来た。

 

「ん?浮気?」

「そんなわけないだろ」

 

俺は木葉を引っ張って491階層に向かい始めた。

 

「え、私を連れてくの…?」

「残しといてもしょうがないだろ。仲間になれ」

 

俺はそう言って491階層へ上った。



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第二長編小説 第27話 当日 2日目

  俺は血を吸った木葉を掴み、491階層に入った。489階層や490階層とは違く、薄暗いどころか真っ暗で何も見えなかった。ライト魔法でミナトが照らしてくれたが、付近しか照らせない。

 

「これで敵とか出てきたら怖いね」

「そうだな」

 

俺は敵の関知レーダーを見た。491階層の高さには敵がたくさんいた。

 

「うわぁ…俺が先頭で行くよ」

 

俺は先頭に変わり、ミナトは俺の後ろから照らす。

 

「ぐがぁぁっ!」

 

敵が俺に飛び込んでくる。俺は「Firemagic」と唱え、敵を焼き尽くした。

 

「柊くん、右!」

 

俺が右を向いた瞬間、柚木の方から矢が飛んできた。柚木が撃ってくれたんだ。

 

「私も参戦するよ」

 

柚木はもう俺には慣れたそうだった。俺はうなずいて前に進む。右側は柚木、前は俺、左は琴葉が担当した。

バンッ

ヒュッ

結構な勢いで銃声や矢の音が聞こえてくる。前には恐れをなしたか全く来ない。

 

「地雷!」

 

俺はそう避けんで咄嗟に地雷魔法を唱えた。急に前に出てきたためビックリした。

 

「柊くん大丈夫?」

「多分」

 

すると、琴葉が俺に抱きついた。地雷魔法は発動者に電気が流れるのだ。

 

「ビリビリしてない?」

「あ、あぁ…」

 

俺は少し恥ずかしくなった。ミナト以外のみんなが俺をジーッと見ていたんだから。

 

「いくよ」

 

ちょっと機嫌を損ねたようにかりなが言った。

 

「大丈夫っぽいね。じゃあ行こ」

 

琴葉は俺からはなれて前に走った。そのところについていこうとすると、木葉とゆかり、柚木、かりながそこにいた。隠れてるみたいだった。

 

「柊くん、私たちにもハグさせて」

「私…色っぽくないですが…」

 

ゆかりが遠慮気味に言った。俺は4人をまとめてハグした。

 

「好きだよ、みんな。」

 

柚木が俺の頬をつついた。

 

「どうした」

「ぺとーっ」

 

柚木が俺の頬と柚木の頬を当ててくる。俺は焦って柚木を離した。

 

「なんで離すの?慣れたいの、男の人に」

「私も…慣れたいです…」

 

ゆかりと柚木が男性を嫌っていたのは分かるが、なんで俺なんだ…

 

「ぺ、ぺとっ」

 

ゆかりが俺にゆっくりと頬を当てた。柚木も同じように頬をつける。

 

「ふふっ、満員電車みたーい」

「じゃあしちゃお!みんなぎゅうぎゅうにくっつけー!」

 

琴葉の指示に、俺の四方八方を塞ぐようにくっついた。

 

「むにゅーっ」

 

柚木とゆかりは頬をつけたまま、それ以外は俺の身体に自分の身体をピッタリくっつけている。

その時、地面が急に揺れて壁が俺たちに近づいてきた。俺たちのすぐ後ろは壁だ。

 

「きゃーっ!」

 

逃げようにも逃げられずにいると、潰されることはなかったが、満員電車よりピッタリくっついているようになった。

 

「うっ、うごけないぃ…」

「キツいな…抜け出さないと…」

 

俺は爆発魔法を使い、全てのダメージを俺に受けるようにした。

ドンッ

爆発して、壁が全て消え去った。俺は全員を連れて出ると、ミナトが待っていた。

 

「柊、出てくるときもう少し安全に出てこいよ…」

「面倒だからさ。」

 

俺は492階層への階段の目の前でかりなに回復をたのみ、その場で動かずにいた。俺が動かなかった理由は、回復中なのもあるし、492階層の階段の前だったことから、492階層の風が身体に当たる。それがやけに冷たく、みんなに上着を羽織るように指示したからだった。

 

「寒くない?」

「なんか階段の真ん中あたりから急に見えなくなるし」

 

女の3人くらいが言っていたが、ミナトに俺は耳打ちした。

 

「覚えてるよな」

「あぁ。環境が変わるやつだろ」

 

この階段を上ると環境が急に変わるはずだ。今回は氷河地帯かな。

 

「俺とミナトが先に行こう」

「気をつけて」

 

俺とミナトは階段を上った。

急に寒い空気が俺たちを覆い、身体全体が凍えた。気温は18℃から-5℃まで下がった。

 

【月島暁依視点】

 

 俺は上野駅で降りると、絢梨に言われた通り上野公園の方に歩き、事務所に入った。事務所では柊のことを知っていると言う絢香と麗香がいた。

 

「髪の色を変えた柊くんみたいな感じかなぁ」

 

髪の色が灰色から黒に変わっただけか。柊も黒に染めてた時期があったんだけど。

 

「よろしく。絢梨から聞いてるから、もうレッスン始めていい。ちょっと見せてくれ」

「うん。いいわよ」

 

麗香がレッスン部屋に案内してくれた。レッスン部屋にはもう全員揃っていて、先生もいた。

 

「レッスン始めるよ。暁依さんは脇で見ててね」

「あぁ。わかった」

 

俺は部屋のすみに座ってレッスンを見ていた。

レッスンが終わると、桜がこっちに来て言った。

 

「どのくらいマネージャーするの?」

「あぁ、大体柊が戻ってくるまで」

「ねぇねぇ暁依くん、昔の話とかないの!」

 

つぼみだ。明るい系のメンバーから「確かにないの?」と聞かれ、俺は仕方なく自分の過去を話すことにした。

 

「じゃあみんな集めて。大広間で話す」

 

俺は先に大広間に向かった。俺の過去か。柊とは3つ下なことぐらいかな。

 

 全員揃って、俺は話し始めた。

 

「柊とは3つ違いの弟なんだけど、これでも10人の兄妹だと1番上でね。一応柊を入れれば2番目なんだけど、俺のひとつしたの冬菜は今年大学卒業なんだ。」

「大学は柊くんと同じ?」

 

ニコルが聞いてきた。俺は少し空けて言った。

 

「あぁ。しかも俺と柊が結構似てるんだ。理数系で音楽出来るから。ただ、冬菜を仕切るのは俺になってて、柊は仕切らないんだ」

 

続きはスペシャル編で!

 

【月島柊視点】

 

 -5℃の492階層は普通の世界のように見えたが、全てが凍っていて、地面や水面は氷に覆われていた。

 

「呼んでくるか」

「柊行ってきて」

 

俺はミナトに頼まれて俺は女たちを呼びに行った。俺がさっきまでいたところと琴葉たちがいたところは気温の差があって、結構つらい。

 

「早く来て。寒いから気をつけて」

 

俺はすぐに戻った。寒いのに慣れてしまったからか寒く感じない。俺は琴葉たちが来るまで待っていた。

その時、横から敵がやってくる。倒そうと思うが、寒くて魔法が使えずに、ミナトも剣が動いていなかった。

 

「ミナト!」

 

俺とミナトは遠くのスケルトンから弓で撃たれた。HPがどんどん減っていき、俺はHP減少で動けなくなった。

 

「柊くん!」

 

琴葉が助けに来てくれた。すぐにみんな来て、スケルトンを銃で倒した。

 

「大丈夫!?」

 

琴葉が俺のところに来る。

 

「あぁ、大丈夫…493階層の階段は」

「あそこ。早く寒いところ抜けよ」

 

琴葉は俺を背中にのせて493階層への階段を上った。一段上る度に上下に揺れる。少し眠くなってきて、俺はゆっくりと目を閉じた。

 

【織音琴葉視点】

 

 私は493階層にたどり着くと、柊くんを下ろそうとした。柊くんは私の久比に手をまわして離れようとしない。

 

「柊くん、着いたよ」

「…………」

 

降りようとしない。何してるんだろう。私は柊くんのことを見た。目を瞑って私の肩に顔を乗せていた。

 

「ああ、柊くん…」

「こんなところで寝たかよ」

 

ミナトもちょっと呆れたっぽい。そう言えば柊くん寝顔見たことなかったなぁ。ちょっとかわいいな。

 

「494階層に行っちゃう?」

「そうするか」

 

私は先頭に立って494階層に向かった。落とさないように気を付けないと。

 

「琴葉ちゃん、494階層なんだよね、次」

「そうだよ。なんかあった」

「いや、まだ半分も進んでないから」

 

それもそっか。じゃあちょっと急ごうかな。

 

「じゃあ急ご。」

 

私はちょっとペースを上げた。ゴールは500階層。あと6階層だ。

 

 結局強い敵もいなくて、ペースを上げると結構あっという間に498階層。次は499階層だ。私は499階層への階段の前で柊くんを起こした。

 

「柊くん、もう499階層よ」

「あ……なんだ、琴葉か…」

 

柊くんはゆっくりと起き上がった。かりなちゃんと木葉ちゃんが周りを警戒している。

 

「あ、寝てたからHP減った…」

「かりなちゃん、警備変わるから回復お願い」

「オッケー!」

 

かりなちゃんは柊くんの回復をした。私は木葉ちゃんと一緒に警備していた。ミナトは499階層の偵察だ。

 

「ミナト遅いね」

「呼んだか」

 

私の後ろにはミナトがいた。もう偵察から帰ってきてたんだ。

 

「帰ってきてたのね」

「あぁ。遅いと時間かかるからな。もうルートの確保はできてるから行けるぞ」

「分かった。じゃあ行こう」

 

 

私は柊くんにその事を言いに行った。ここまで誰も被害になってないし、死んでいない。

 

「柊くん、499階層行ける?」

「悪い…少し休ませてくれ」

「HPの回復が間に合わなくて。なんかHP減少のデバフがついてるらしくて」

 

じゃあここでまってよう。私がこれを言おうとした瞬間、柊くんは言った。

 

「先に行ってていい。あとから追いかける」

「え…いいの?」

「行っててくれ」

 

私は柊くんをおいて先に進んだ。499階層にミナト、木葉ちゃんがいるから。

 

「柊くんは後から来るって。先に500階層行っちゃおう」

 

498階層から「500階層のボス倒しちゃっていいぞ」と柊くんの声が聞こえた。

 

「だって。行こう」

「うん」

 

私たちはミナトが引いてくれたルートの上を歩いて500階層の階段の前に向かった。

 

 500階層の手前で、私たちは改めて準備した。回復が使える人はこの3人だといない。少ないダメージで済ませないとすぐにゲームオーバー。現実世界に帰れなくなってしまう人が出てくる。

 

「なるべく攻撃受けないでね」

「大丈夫。自信はあるから」

 

そっか。自信があるんだったら大丈夫だ。

 

「じゃあ行くよ!」

『おーっ!』

 

私たちは500階層に入った。

 

【丸山彩視点】

 

 私は今日、満員電車の中で告白して、キスしてしまった。この事を思い出す度に私はボッと熱くなる。学校に着いて、私は今年1年生の担任として授業することになった。私のクラスは1年5組だ。

「みんなおはよう!今日から担任を勤める、丸山彩です!よろしくね」

 

私は生徒に挨拶した。1クラス約50人の学年で、今年は1番多く、7クラスになった。7クラスの教室に、49人から51人の生徒が入っている。

1年1組が50人

1年2組が50人

1年3組が50人

1年4組が50人

1年5組が51人

1年6組が51人

1年7組が49人だ。合計で…

 

「今回の人数は1から4組が50人、5、6組が51人、7組が49人。合計は何人かな」

 

すると、たった一人の男の子が手を挙げた。まだ名簿も配ってないのに。

 

「50×4+51×2+49で、351人です」

 

すごい、合ってる。私は平常心で続けた。

 

「正解。教室は去年も50人クラスだったので。頑張りましょう」

『はい』

 

去年も50人クラスだったが、クラスが4だったため教室が3クラスだけ3階ではなく4階になっている。

今年は1年生が7クラス、2年生が4クラス、3年生が5クラスだ。3年生は1クラス35人と少ないが、去年まで3クラスだった。1クラスは2クラス58人の、1クラス59人で175人。今年は受験があるため5クラスだ。

 

「私は社会を担当するからね」

「最初って地理ですか」

 

地理だよね。教科書はみどりの教科書からだし。

 

「地理からだよ。じゃあ、1時間目の数字も頑張って。おわります」

 

中学校の頃の先生がやってた風にした。

 

 私は1時間目に授業はなく、2時間目に6組である。

2時間目に6組

3時間目に5組

4時間目は3年2組

5時間目は5組で道徳

6時間目は3組。

今日の5組の時間割は、数字、英語、社会、体育、道徳、国語。7組は臨時時間割で明日1時間目と4時間目にある。

 

「彩先生、月島さんはまだですか」

「はい。今年から先生なんですがね」

 

柊くんも今年から音楽と数字の先生として来る予定だったのだ。

 

「江山先生も大変ですしね」

 

1年生の数字の先生だ。授業数があるから大変だろう。

 



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第28話 帰還

最初は織音琴葉視点で始まります。
仮想世界編最終回です。次回からは…まぁふつうに
今回の登場人物
月島柊
月島かりな
織音琴葉
ミナト
ゆかり
柚木
月島紅葉
新メンバー1名
以上8名


 私は500階層に足を踏み入れた。すると、温い風が私たちを包み込む。ここの敵は普通の人間。人の心理を考えなければならない。私は1番遠い場所から銃でヘッドショットを狙った。

 

「あ、外した…」

 

私はただ挑発しただけになってしまった。

 

「大丈夫。俺がやる」

 

ミナトが走り出して剣で斬った。ミナトは敵に飛ばされて私に突っ込んでくる。

 

「きゃっ」

「私が!」

 

ゆかりちゃんがレイピアを構えて走り出す。レイピアの方が軽くて、速く移動できる。

 

「ぐっ」

 

初めて敵に剣が当たった。しかしHPは900000ある内の1500減っただけ。残りは898500。同じダメージだと600回以上繰り返さないと倒せない。回復はいないし、倒せるのはほとんど0に等しい。

 

「やっ!」

 

柚木ちゃんが矢を放った。遠距離で命中率も高いから、一回で2000減った。だけどまだ896500残ってる。

その時、敵が投げナイフを投げて私たちに刺した。

 

「痛っ」

「隠れよう、このままじゃ俺たちが死ぬ!」

 

私たちは全員で見つからないところに別々で隠れた。

 

(うぅ…残りHPが100しかない…)

 

私は動くのが怖くて動けなかった。外で投げナイフが飛ぶ音が聞こえる。怖い、死んじゃう。

 

【月島柊視点】

 

 俺は回復が終わって500階層に走った。かりなも後ろをついてくる。500階層には琴葉たちはいない。隠れたんだ。

シュッ

投げナイフだ。俺は構えておいた剣を持った。

 

「かりな、行くぞ」

「うん!」

 

俺は敵に突っ込んだ。攻撃されそうになったら避けて、ひたすら近づく。

 

「たあぁっ」

 

俺は地面を蹴って敵の心臓部に突き刺す。HPが10000減る。886500が残る。

 

「助けてこい。俺がどうにかしよう」

 

俺は魔法を使った。

 

「Fire」

 

俺は火炎魔法で敵を火だるまにした。その上で俺の愛用している剣で斬った。

 

「未来、か」

 

俺は胡桃と旅行にいく前に渡された剣を手に持った。この剣の名前は「futuresword」。意味は…“未来の剣”か。未来を開くってことか。俺はその剣を構え、右手には絢梨が最初に作ってくれた剣、左手には絢梨の未来の剣を持った。敵のHPは8000を切った。

 

「これで終わりだ」

 

俺は足に力をいれ、思いっきり突っ込んだ。二刀流で、全力で、魔法を込めて俺は振った。未来の剣で切り開き、魔法で今と未来を繋げる。

 

「なんで…俺が…」

「お前に足りなかったのは強さでも、速さでもない」

 

俺は少し強めに言った。俺が1番気にしていることだ。

 

「仲間を思う気持ちだ」

 

敵はすぐに白く光って消えていった。すぐに外ではアナウンスが流れた。

 

《魔法塔の攻略がされたため、ゲームクリアです。現実世界へはサンドスペニア北西部から帰れます》

 

エコーがかかった大きなアナウンスだ。隠れていた琴葉たちも出てきて、みんなでハイタッチ。

仮想世界で3週間、現実世界では4週間と半分。やっと仮想世界と現実世界の行き来が再開した。今まで霞んでいた空はいつの間にか真っ青なきれいな空に変わっていた。ゆかりと柚木は早く帰らせて、ミナトは送るついでに帰った。残されたのは俺とかりな、琴葉の3人だけだった。

世界が戻ってきてから空気も変わった気がした。たぶん気のせいだけど、実際に変わったのかもしれない。

 

「琴葉も帰ったらどうだ、かりなも」

「柊くんは?」

「用事済ませてから帰る。」

 

俺は琴葉とかりなを帰して、俺は魔法塔から飛び降りた。途中で飛行魔法を使ってサーリートに飛んだ。俺が残った理由は胡桃が帰ったか確かめるためだ。ログハウスはもぬけの殻。もう誰もいない。俺は鍵を閉めてログハウスを後にした。

 

 久しぶりもサンドスペニアも、今日は結構人だかりが出来ていた。もう帰れるようになってから4時間近く経過しているのに、まだ帰る人で混雑している。俺も帰ることができ、帰った先は俺の実家の裏。

 

(久しぶりだな…)

 

俺がボーッとしていると、裏にあるドアの向こうから声がした。

 

「それで、今柊くんはいないの」

「えーっ、大丈夫かな」

「分かんない。じゃあ私ナス取ってくるから待ってて」

「分かった」

 

そういう話し声が聞こえて、ドアは開いた。俺のことを知っていて、ずっと現実世界にいる人。ある1人以外にあり得ない。

 

「ふぅ…あ、ごめん」

「よっと」

 

俺はその人を持ち上げた。紅葉なんだから。

 

「にゃっ!?柊くん!?」

「ただいま」

「おっ、おかえり!」

 

紅葉はなぜか目の奥が潤っていた。

 

「柊くんっ」

 

紅葉は俺に抱きついた。紅葉は涙ぐんでいる。ドアの向こうからさっきの話し相手が出てくる。

 

「どしたの?もみじっち。って、柊くん!」

 

そこには俺の小さい頃よく遊んでいた幼馴染み、時沢(ときざわ)ユウキがいた。

 

「え、ユウキ?」

「久しぶり!」

 

ユウキの名前なのはたまたまだが、ナナニジの悠希に性格や話し方が似てる気がする。僕っ子だし。

 

「僕も3時間くらい前に帰ってきたんだ!仮想世界から」

「行ってたのか」

「内緒でね」

 

ユウキは笑って俺に言った。俺はユウキと一緒に部屋の中に入った。胡桃もいるはずだから。

 



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第29話 事務所

人物紹介
織音琴葉(年齢不明)
仮想世界での知り合いで、かつ柊のパートナー。仮想世界では遠距離を担当し、近距離と遠距離で分けている。現実世界にいるのは当たり前だが、いる場所をお互い知らない。そのため現実世界で会ったことがない。
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島暁依
時沢ユウキ
ナナニジメンバー11名
以上15名



 俺が居間に行くと、ストーブの横にいる胡桃が外を見てうつ伏せで寝ていた。

 

「あったかーい…」

「胡桃ちゃん、柊くん来てるよ」

「横来てー」

 

胡桃は俺を横に来るように言った。全く、どれだけ俺が苦労したか分かってるのかよ。

 

「お疲れ様。ずっと映像で見てたよ」

「あれ、浮いてたカメラって胡桃が見てたのか」

「そうだよ。キメ台詞流石だね」

 

俺は「うるさいな…」と言いながら横にうつ伏せで寝た。

 

「今日って何日か聞いたか」

「4月30日とか言ってたよ」

 

4月30日か。俺マネージャー休んじゃってるな。ホントは4月24日からだったんだけど。

 

「俺明日から仕事行く」

「ここから?」

「迎えに来てくれよ、秋田駅まで」

 

俺は計画として、秋田から6:08発こまち6号で東京まで行って、上野東京ラインで上野まで戻る。終わりは20:16発こまち45号。秋田には23:53。これで行こう。

 

 俺は翌日胡桃に車で送ってもらった。秋田駅前で俺を降ろし、改札の前まで胡桃が来てくれた。

 

「行ってらっしゃい。絢香ちゃんに伝えてね」

「分かった。じゃ、行ってきます」

 

俺は12番線のホームに向かった。17号車で最後尾の車両で、指定席。窓側が空いてなかったため通路側。しかし1番後ろだからリクライニングは自由。俺は入線してすぐ乗車。もう窓側には人が座っている。俺は通路側のとなりに座り、リクライニングを少し倒して寝た。大曲までは寝てたい。反対方向だし。

 

「柊くんもこの電車なんだ」

「んあ?ユウキか…どこ行くんだ」

「田沢湖。コンビニ店員やってるんだー」

 

コンビニ店員か。みんなそういう職業だもんなぁ。なんか俺だけおかしいな。

 

「柊くん何してるの」

「アイドルのマネージャーと今年から中学校の教諭」

 

1年数学と2年音楽、そしていつも通り吹奏楽部の顧問。今年は吹奏楽部の顧問が俺と新しく入ってきた先生の2人だ。3年生が進学したから、今までの2年生が3年生になって1人、1年生が2年生になって、新入生が何人かだな。

 

「教諭かぁ。数学なんでしょ、やっぱり」

「なんで分かった」

「だって小学校の頃理科と算数大好きだったじゃん」

 

そこから考察したのか。コンビニ店員にしては勘が鋭いな。

 

「俺東京までだから。じゃ、おやすみ」

「おやすみ~」

 

俺は秋田駅を出て2分くらいで眠った。現実世界の居心地は悪くない。決して100ではないけど。

 

【時沢ユウキ視点】

 

 僕が降りる駅は次の大曲。こまち6号は田沢湖を通過しちゃうから。僕は柊くんに話しかけようとしていた。

 

(ありゃ、寝ちゃってたか…)

 

僕は紙の切れはしにメッセージを書いた。柊くんと一緒に帰りたいからな。僕は書き終わると、紙を4等分に折って、柊くんのポケットにいれた。

 

「見てくれるよね」

 

僕は柊くんのポケットをポンポンと叩いて、席を立った。

 

「じゃあね。また大曲で会おうね」

 

私は大曲でこまち6号を降りた。20分以上の乗り換えで7:01発盛岡行きに乗り換える。

田沢湖には7:40に到着。僕はコンビニに向けて歩いた。私も含めてみんな女性店員。男性店員は最近別のところに行った。

 

「おはよ。シフト入ってたんだ」

「うん。明日はないから休みー」

 

僕は着替えながら言った。僕っ子でもちゃんとした女性。胸だってある…Bだけど…

 

【月島柊視点】

 

 俺が起きたのは田園風景を高架に上がって高速通過しているところだった。盛岡は過ぎたか。2分後、駅を通過した。ドア上のLEDにくりこま高原駅を通過中と出ていた。くりこま高原だともうすぐ仙台か。

仙台到着は8:15。すぐに出発する。次は大宮。9:24に着く。上野は通過して、終点東京には9:47到着予定。上野通過はちょっと面倒。降りたいのが上野だから。ただ、大宮から行くよりかは東京からの方が早いと思っただけ。

 

 大宮は予定通り9:24。東京には9:47。両駅共に時刻通りだ。7:51発高崎行きで上野まで行く。7番線から出発し、5番線に着く。上野には9:56。1分遅れた。俺は事務所に急ぐ。暁依が先に着いていた。

 

「柊くん!」

「お久しぶりで。絢香、麗波…?」

 

麗波がそこには絢香と一緒にいた。

 

「風紀委員が来るまでは私がしてるだけ。」

 

誤解するなと言うようにあーやが俺に言った。俺がポケットの中に手を突っ込むと、紙があった。その紙は折られていて、読むと「こまち43号の17号車1番に座ってて」と書かれていた。43号だったら上野止まるしいいか。

 

「どうしたの」

「いや、今日もいつも通り出てく」

 

俺は暁依のところに行った。レッスン部屋にいて、メンバーのレッスンを見ていた。

 

「暁依、お疲れ様」

「柊くん!」

 

暁依は帰る支度をした。そうか、代わりに入ってたから終わりか。

 

「また来てね!」

「ありがとう」

 

暁依は外に出ていった。他の仕事もあるだろうし、しょうがない。

 

 久しぶりに俺と会ったからか、みんな俺に甘えていた。普段くっつかない、あかねも今日だけは俺とたくさん話していた。

 

「疲れてないの」

「疲れてるさ。昨日帰ってきたばっかりだし」

 

雑談が多く、今日はこれだけで終わってしまいそうだった。

 



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第30話 あかね

今回の登場人物
月島柊
ナナニジメンバー11名
以上12名


 俺は久しぶりに会ったナナニジのみんなと話していた。あかねも俺にくっついてきて、いつの間にか俺の肩で寝ていた。あーやは俺の足と足の間に座り、スマホをみている。

 

「あんまりのんびりするなよ」

「いいじゃん。AIなのに寝てるし」

 

そういう問題じゃない。俺は呆れながら時計をみた。というかもう11時か。俺は事務所に来ていたときに昼ごはんを食べに行くところに向かう。だけど、あかねが寝てるからな…

 

「連れてくか…」

「拉致?」

「違うわ!」

 

人聞きの悪いこと言うなよ…拉致だなんて。

 

「起きないから連れてくんだよ」

 

俺はあかねをゆっくり背中に乗せた。あかねは全く起きる気配がない。俺は上野駅に向かった。

公園では周りからの視線が気になったが、構ってたら着くわけがない。俺は視線を無視して駅の構内へ。まず1つめの問題は改札だ。切符二枚買って通れば行けるか。俺は二枚買って、一応有人改札に行った。

 

「あの、この人起こしたくないんですけど、このまま通れますかね。切符は二枚あるんですけど」

「あぁ、はい。どこまでですか」

「秋葉原です」

 

俺が駅員と話していると、ちょっと動いた。起きてないけど。

 

「それでは秋葉原でこの切符見せてください。有人改札でお願いします」

「分かりました」

 

俺は有人改札を通って構内に入った。4番線からの11:38発快速大船行きで秋葉原まで。平日のため御徒町は通過する。

秋葉原には11:41。まずは出るか。有人改札にまた向かい、さっきの切符を見せた。

 

「上野駅から二枚お願いします」

「分かりました」

 

赤いスタンプみたいなのを押して回収した。俺は次もすぐ入るため一言いった。

 

「次もここ通るのでお願いします」

「はい」

 

俺は改札を出て券売機で上野までの切符二枚を買った。同じ改札を通り、いつもの昼食をとるところに向かう。どう座ろうか悩んだが、あかねをとなりに座らせた。するとあかねは目を開く。

 

「おはよう」

「おはようございます。ここどこですか」

「アキバ。昼食一緒に食おう」

「はい、いいですけど…」

 

一緒に選びにいって、俺はカツ丼、あかねはざるそばを頼んで席に座った。食べ始めると、あかねは俺に聞いた。

 

「どうして私も」

「寝てたじゃないか。起こすの悪いと思ってさ」

 

俺は時間を見ながら昼食を食べた。

早めに食べ終わって、こまち43号の時間を調べた。停車駅は、上野、大宮、仙台、盛岡、田沢湖、角館、大曲、秋田。上野の出発は19:26。上野に着いたら指定席券買っとかないと。17号車1番A~Dのどこかか。俺はあかねが食べ終わったのを確認して、12:11発山手線上野・池袋方面に乗車。上野には12:14。改札を出て、俺は指定席券売機に向かう。

 

「あかねは先に戻ってていいぞ」

「何するんですか」

「切符買うだけ。帰りの」

「一緒にいます」

 

あかねは俺のそばから離れない。こまち43号の切符を買っても、絶対に離れまいと30cmより近い範囲にいた。

 

「なんかくっついてるね」

「離れた方がいいですか」

 

そう言われると離れてほしくない。というか離れてほしいって言うと嫌われそう。

 

「いいよ。くっついてて」

 

俺は事務所に入った。みんな昼休憩の途中だった。唯一いたのは桜くらい。

 

「昼休憩は終わったか」

「YES!」

 

英語で言われても俺は知らんからな。

 

「終わったよ!私ちょっと休憩してくるね」

 

終わってないじゃん。俺は桜を見送って個室に向かった。もちろんあかねは連れていかない。1人だけでいられる好きな場所だ。俺はここで休憩する。マネージャーと言っても仕事は新幹線の中でやる。もうただ寝るだけ。

 

「おやすみ」

 

俺は床で眠った。固いけど、俺にはちょうどいい。

 

 起きたのは挨拶の直前の18:10。18:15に挨拶だからギリギリだった。俺は寝ぼけながらも大広間に向かった。途中でふらついたりしながらもどうにか辿り着いた。

 

「みんなおはよう」

「もう6時ですが」

 

夜の6時で、もう外は暗い。流石4月後半。

 

「明日、みんなは午前半だ。俺とは午後挨拶しよう。あと、今日からまた再開した。けど、先生も始めたからちょっと休みが多くなる。だけど、休みのときには今まで来てた暁依が来るから安心してくれ。パワハラ体質はないから」

 

俺は明日の予定を伝えた。みんなはメモ用紙は持っている。

 

「明日はここに14:30集合。その後、15:00~16:30までレッスン、16:30~17:30が休憩、そして今日と同じ18:15に挨拶。以上だけど、間に合わない人は」

 

俺が言うと、誰も手を挙げなかった。じゃあみんな来るんだな。

 

「じゃあ14:30挨拶。解散!」

 

みんなは次々と帰っていく。あーやも1人になっちゃうけど帰っている。彩夏とかりなも今年からは学校だ。ここには来ない。

上野駅に18:30に着いた俺は不忍口から入り、アトレ上野の中にあるスタバで時間を潰した。19:26発で、ホームには19:10にはいたいから、あと30分くらい。俺はコーヒーを飲んだりして30分時間を潰した。

30分くらい経って、俺は中央改札から構内に入り、新幹線乗換改札を通ってコンコースへ。そこから20番線へ降りた。その時には19:10で、あと15分だった。

 




ポッキーの日なんでなるべく1で揃えた


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第31話 帰り

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島紅葉
時沢ユウキ
以上4名


 上野駅の新幹線ホームについてから最初に来たのはやまびこ157号とつばさ157号。19:22発で、こまち43号と4分差がある。そのため、宇都宮で追い越される。俺は発車して空いている隙にこまちの17号車乗車口に立った。俺が取ったのは1番B席。そこしか空いてなかったし。1番B席はデッキのドアから1番近い。

19:25、こまち43号が入線。俺は車内に入った。窓側には誰もいなかった。次の大宮まで俺は黙って座っていた。

日暮里駅付近で地上へ上がり、やがて高架になった。速度はそこまで速くない。赤羽駅から埼京線の隣を走り、大宮駅に着いた。19:45だった。

19:46に出発し、新幹線らしい速さで走る。宇都宮からはさらに速くなる。

 

 仙台に20:53、20:55に出発し、盛岡21:34。はやぶさ43号と分かれ、在来線に入った。大宮~仙台の間で仕事は終わらせた。50分近くあったから余裕だった。

田沢湖に停車したのは22:05。俺の隣にはまだ誰もいない。俺は出発まで待っていた。すると、俺のところに人が来て、俺の膝の上に座った。ユウキだ。

 

「よっ」

「隣だろ」

 

ユウキはむーっと頬を膨らませて隣に座った。

 

「ただいま」

「おかえり」

 

ユウキは結構リラックスしたような感じだった。

 

「きゅっ」

 

ユウキは俺の腕にしがみついた。

 

「何してるんだ」

「疲れたからさ」

 

ユウキは離れないように強くしがみつく。別に離す気はないけど。

 

「ねぇ、女の子に見える?」

「急にどうした。見えるけど」

「ホントに?」

 

信用してなさそう。

 

「えいっ」

 

ユウキは胸を触らせてきた。ないと言うより、意識したことがない胸だったが、結構あった…

 

「壁じゃないでしょ」

 

壁?……あぁ、そういうことか。

 

「壁じゃないな。ちゃんとあるよ」

「じゃあ女の子だよね」

「そうだな。ユウキ」

 

俺はユウキの背中を撫でた。電車は次の角館を目指して走行している。

 

 秋田には23:02。11番線に到着した。俺は胡桃が来るまで改札を出てすぐの待合室で待った。NewDaysと直結している。

 

「もうすぐ最終も終わっちゃうな」

「人いないしね。胡桃ちゃんも早く来ないかなぁ」

 

胡桃を待ってる間は結構暇だった。ユウキは先に紅葉から送ってもらってたから、胡桃が来るまで帰れない。

15分くらいして待合室に入ってきた。

 

「帰るよー」

「あぁ、胡桃…って、紅葉?」

 

来たのは紅葉だった。胡桃が来るかと思ったんだけど、どうかしたのかな?

 

「胡桃はどうしたんだ」

「久しぶりのストーブから離れたくないって。柊くんの分の床も温めとくって」

 

嬉しいことしてくれるじゃないか。ストーブ、そんなに気に入ったか。

 

【月島胡桃視点】

 

 ストーブの横で柊くんがドキッとするような格好。どんなのがいいんだろう。私はまず普通に気持ち良さそうに寝そべった。

 

(普通すぎるよね)

 

ダメだ。次に私は色仕掛け出きる身体、胸を使った。服の上から床で潰れてる胸を見れば。

 

(いやいや、苦しいし)

 

結局自分で却下。そうすると、全裸かな。私は上だけをためしで脱いだ。

 

「うぅ…」

 

寒くて震える。耐えられないや。私は結局最初の格好で柊くんを待った。いや待って、私が温めてるんだよね。じゃあ頑張って温めてればドキッとするよね!私は頑張って温めた。

 

【月島柊視点】

 

 俺は車の中で今後のことについて話した。いつ帰るのか等のことだ。

 

「いつ戻るの」

「来週、かな」

 

もう帰らないといけない時期だもんな。絢梨も心配する。

 

「来週かぁ。1日休むの?会社」

「あぁ。そうしないと着けない」

 

俺は来週の帰る日の事を伝えた。車はもう山奥に入ってきて、すぐ実家に着いた。

 

「じゃあ今のうちに」

 

紅葉は俺にキスしてきた。少しして紅葉は離れて言った。

 

「今じゃないと、胡桃ちゃんに拒否されそうだから」

「じゃあ僕もっ」

 

ユウキは後ろから抱きつく。だんだん強くしていって、やがて柔らかい感触、胸が当たってきた。

 

「当たってる!もういい!」

「はーい」

 

ユウキは俺から離れ、自分の家に帰っていった。紅葉は自分の部屋へ、俺は胡桃がいるストーブの横に行った。

 

「胡桃」

 

胡桃はストーブの横で寝ていた。俺はなんかドキッとした。寝顔がとてつもなく可愛かった。俺は寝顔を近くで見たいと思って、胡桃の横に寝そべった。

 

(かわいい…何この寝顔。反則だろ…)

 

俺は最後に眠くなって寝てしまった。

 

【月島胡桃視点】

 

 私は寝てしまっていた。しかも、身体が重い。具合が悪い訳じゃないのに、すごく重い。私は天井を見た。仰向けだったんだ。

 

「顔…?柊くん…?」

 

帰ってきてたんだ。私は我に返った。なんで柊くんが私の上に?まさか、寝返りで?けど、このままだとキスしちゃう!いつもはキスしてもドキドキしないけど、今は寝てるし。

 

「んちゅっ!?」

 

柊くんと私はキスしていた。あああ!やっちゃった!私の心臓はものすごく速い。

 

(ああ、気持ちいい…キス気持ちいい…)

 

すると、柊くんが目を覚ました。私は急に恥ずかしくなった。

その時、私の口の中に液体が流れ込んだ。柊くんも同じだろう。それは、柊くんの唾液だ。どうすればいいのか。返す?いや、ダメでしょ。私はこの決断だった。

ゴクッ

飲み込んだ。柊くんも飲み込んでいた。柊くんのが中に入ってきた。

 



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第32話 家の中

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島紅葉
時沢ユウキ
以上4名


 俺は翌日朝4時半に起きた。その時、俺のケータイに電話がなった。事務所からだ。止まり当番からだろう。

 

「どうした」

《マネージャー、今日午前半っすよ》

「あれ、メンバーだけじゃないのか」

《マネージャー自身もっすよ。》

「出勤何時がいい」

《昨日なんて言ったんすか》

「確か14時半」

《じゃあ14時くらいに着いてていいんじゃないすか?》

「じゃあ14時にそっち着くから」

《分かりました。言っときますね》

 

電話は切れた。俺はこまちの時刻を調べるために、キッチンへの扉の横にあるこまち時刻表を見た。10:07発こまち18号だったら上野に13:59。これで行くか。

 

「おはよー。早いね~」

「起きる時間ミスった。寝ていい?」

「だめ。起きたらずっと起きてる!」

 

俺は「はーい」と返事をした。

 

「今日は何時に行くの」

「9時くらいかな。」

「遅いね」

「午前半休だから」

 

午前半休でも9時に出てくからあまり変わらない。

 

「じゃあ明日は?」

「学校ある。けど、20:14のこまち96号乗って仙台で泊まる」

 

8時半までに鴻巣に着くには仙台を6:36に出発するはやぶさ2号に乗らないと間に合わない。だから前日20:14こまち96号仙台行き。

 

「帰りは多分22:07着のこまち41号」

「なるべく早くね」

「明後日休みだから」

 

俺は少し準備をしてから居間に向かった。まだ5時半で、紅葉が朝食を作っていた。

ピンポーン

俺は玄関のドアを開けた。ユウキだ。

 

「朝ごはん手伝いに来たぞ!」

「助かるよ。紅葉!ユウキが手伝いに来た!」

 

キッチンから「ありがとー!」と聞こえた。俺はユウキ中にいれた。

 

「柊くんストーブつけといてー」

「あいよ」

 

俺は薪をもってきてストーブの中にいれた。そして火をつけ…

 

「熱っ!」

 

ライターの火が8割程度手に当たった。当たった部分がヒリヒリ痛む。

 

「どうしたの!?」

「火傷かも…」

「冷やす?」

 

確か仮想世界に行けばかりないるよな。

 

「仮想世界行ってくる」

 

俺はかりなに会うために仮想世界へ。HPも早くしないとゼロになってしまう。

 

「かりな、いいかな」

「いいよ。どうしたの?」

「火傷した。回復頼むよ」

 

かりなは回復魔法で俺の火傷した手を治す。ヒリヒリした痛みがあっという間に退いていく。

 

「今日は午前半休?」

「あぁ。かりなは学校か」

「うん。確か英語、数学、技術、技術、国語、理科」

 

音楽はないってことは俺の役目は結局ないか。

 

「ありがとう。助かった」

「気をつけてよ」

 

俺はかりなに手を振って現実世界に戻った。戻ったのは6:15。胡桃はまだ起きていない。どれだけ寝坊助なんだ。

 

「朝ごはん食べよ」

「胡桃は」

「起こしてきて」

 

俺は2階に胡桃を起こしに行った。胡桃はベットの上でぐっすりだった。

 

「ご飯だぞー。」

「寒い…あと1時間…」

 

長いわ!

 

「今すぐだ」

「くるまっていい?」

 

布団にくるまって下に降りてこれるのか?

 

「降りてこれるんだったら」

「…じゃあ行く」

 

俺は先に降りた。胡桃も布団にくるまって出てきた。俺が下に降りると、階段からドンドンドンドン尾登がした。そして最後には

ゴンッ

壁にぶつかったような音。まさか

 

「胡桃!?なんで転がり落ちてるんだ!」

「くるまって降りれるように」

 

胡桃は立ち上がってキッチンのテーブルに向かって座った。久しぶりの朝食だ。

 

「柊くん休みぃ?」

「午前半休。あと2時間半くらいでいく」

 

6:35だから、大体2時間半。俺は朝食を食べ終わると、居間に寝そべった。

 

「9時まで寝る?」

「そうしたい」

 

帰りは43号じゃダメだから、16:26になるか。こまち35号。けど、だったら秋田まで来なくていいか。なんなら21:50のやまびこ223号でもいいな。仙台ではやぶさ2号に乗れればいいんだし。

 

「じゃあ9時までおやすみ」

「おやすみー」

 

俺は出発する9時まで床で寝た。固くて寝れない人もいるらしいが、俺はそんなことない。どのでも寝れるくらいだ。

こっちに帰ってこないで仙台直行か。最後までどころか残業できるな。

 



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第33話 泊まる場所

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
美女
白雪凪沙
月島かりな
ナナニジメンバー11名
以上16名


 俺は9時頃に胡桃が運転する車にのって秋田駅まで行った。もう大して休んでないけど。

 

「なんか寂しいな」

「2日だけだろ。我慢しろ」

 

今日出発してから、俺は仙台に泊まることを決意した。だから実家には2日間帰らないことになる。

 

「あと、俺その翌日休みだから。その日はたくさん遊ぼうな」

「うん。絶対だからね!」

 

俺は頷いて改札の向こう側に行った。12番線からのこまち18号。13号車4番A席。当然窓側は空いてないと思ったが、秋田駅で買った9:32時点で俺の隣には誰も乗ってこない。時間的に空いてるんだろう。

10:07、こまち18号は時間通りに出発した。途中停車駅は、大曲、角館、田沢湖、盛岡、仙台、大宮、上野、東京。主な駅の到着時刻は

大曲10:39

盛岡11:47

仙台12:29

大宮13:38

上野13:58

終点東京には14:04。

事務所入りが14:05目安だから、多分間に合う。

 

 大曲に10:39、予定どおり着き、10:41に出発した。進行方向が戻ったのだ。また、大曲からは秋田美人と言ってもいいほどの美女が乗ってきた。しかも、俺のとなりに座った。胡桃には劣るが、結構な美女。

 

「こんにちは」

 

笑顔で話しかけてくる。俺は冷静を装って言った。

 

「こんにちは」

 

これしか無理。というか始めて会う美女に話しかけるとか無理。

 

「お仕事ですか?」

「はい。上野まで」

「疲れません?私は仙台なので」

 

仙台でも十分遠いと思う。気のせいかな。

 

「疲れてそうですから、私の手触ってみてください」

「え、あ、はい…」

 

俺は美女の手を触った。少し冷たくて、肉球のようにほどよい柔らかさがある。

 

「どうですか?」

「いいですね。疲れとれました」

 

俺は外を眺めた。美女は俺の肩からひょこっと顔を出して見ている。可愛い。すごく可愛い。

 

「可愛いって思ってます?」

「はい」

 

美女は少し笑った。

 

「あなたもかっこいいですよ」

 

 

 俺は気づくと上野駅の直前だった。俺はすぐに降りる支度をしてホームに降りた。美女はいなかった。俺は少し早歩きで事務所の中に入った。

 

「こんにちは」

「こんにちは。今日はみんな揃ってたな。」

「時間ないからいくわよ」

 

麗香が全員をまとめてレッスン部屋に連れていった。俺は残っていた仕事を済ませる。ゴールデンウィークの臨時ライブ、6月の単独ライブ、7月の夏休みに入ったあとの22日にある「22/7ライブ」の名前決めや会場。5月4日のライブは準備できている。5月1日でも7月まで予定が詰まっている。

 

「6月の単独ライブって名前なんでした?」

「気の抜けたサイダーライブじゃないか」

 

みう、みかみ、桜の3人だ。

 

「スケジュール終わったか?」

「8月の途中なんで、7月22日までは大丈夫です」

 

俺はスケジュールをこっちに転送するように指示した。転送されてきたスケジュールは予定が全て入れてあった。

 

「細かく入れてあっていいな。見やすいし」

 

俺はついでに帰りの時刻、俺の休みの日を入れた。明日は学校、明後日は両方休み。学校って言っても部活の顧問だけ。ゴールデンウィークだから。

 

「5月4日は仕事なんですか」

「こっちでね。ライブの観覧も行くさ」

 

俺は椅子の背もたれに寄りかかって時計を見た。15:20。もうそろそろレッスンも終わるか。俺は大広間に行った。レッスンがちょうど終わったメンバーが戻ってくる。

 

「お疲れ。休んどけ」

 

メンバーはソファーに寝たり、座ったり、俺の上に乗るメンバーまでいた。まぁ上に乗ってるのは予想通りあーや。

 

「重い?」

「普通」

「重いって言えないか」

 

そりゃそうだろ。相手はアイドルだし、あーやだし。

 

「つっきーは今日も帰るの?」

「一応泊まってきたい」

「じゃあ家に泊まれば?凪沙も会いたがってるよ」

「じゃあそうするかな。」

 

俺は仙台ではなく深谷の自宅で泊まることに変更した。そっちの方が凪沙たちも安心だろう。

 

 そして、俺はあーやについていく形で家に帰った。家ではあーやを待っているかりなたちがいた。

 

「なぎ、ただいま」

「柊くん!」

 

なぎは俺に飛び込んでくる。

 



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第34話 家

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上5名


 なぎは俺に飛び込んできて、俺は少しバランスを崩した。絢梨とかりなは横で「おかえりー」と言って見ている。

 

「泊まるだけだからな」

「それでも嬉しいっ!今日一緒に寝よ!」

 

なぎは俺を強く引いてお風呂に連れていく。行動と発言が矛盾してるんだが。

 

「久しぶり。剣の修理やる」

 

絢梨が脱衣所で服を脱ぎながら言った。いや今言うかよ。

 

「あ、じゃあ渡していいかな」

「うん。何本ある」

 

使ったのだから、2本かな?

 

「2本。よろしくな」

「分かった。一回置いてくる」

 

絢梨は全裸のまま自分の部屋に剣を置きに行った。全裸で行くって、風邪ひきたいの?

 

「私たちも入ろっ」

「あぁ」

 

俺となぎは服を脱いで風呂場のなかに入った。なぎは先にほどいた髪をシャワーで洗った。

 

「なぎは髪切ったのか」

「最近切ってないなぁ。長い?」

 

胡桃と比べたら短いけど、平均よりちょっと長い?

 

「もともとショートだったよな」

「やめたんだ。伸ばしてるんだけど、床屋さん行くと何て言えばいいか分かんないから」

 

そういうことか。だったら俺が切ってあげようかな。

 

「俺が切ろうか?」

「うん。ありがとう」

 

なぎはシャンプーで髪を洗った。俺は先に湯船に浸かっていた。

 

「そろそろ絢梨ちゃん入ってくるかな」

「そうかもな」

 

俺がそう話していると、ガラガラと音がして風呂場のドアが開いた。入ってきたのは絢梨…だけでなく、あーやとかりなも入ってきた。

 

「みんなで入る。狭いかな」

「交代で入ればそうでもないんじゃない」

 

なぎが洗い終わるまで3人は端の方で待っていた。なぎは洗い終わると、俺と交代で湯船に浸かった。

 

「俺も洗っちゃうからな」

 

俺も身体を洗った。すぐ終わるけど、寒そうな3人。

5分以内で終わらせて、上がれないなぎと俺は一緒に湯船に入っていた。まだ余裕がある。足も伸ばせるし。

 

「私も入るからね」

 

あーやが入ってきて、一気に狭くなる。両端を女の子に挟まれて、普通に気まずい。

 

「狭いかなぁ」

「ちょっと狭いね」

 

そこに絢梨やかりなが入ってくる。もう身動きがとれない。なぎと俺は上がりたいが、上がれない。

 

「なぎが先に上がってくれ」

「じゃあ手伝って」

 

俺はなぎの足を持って上に上げた。

 

「んあっ、ちょっ、見ないでぇ…」

「み、見てないから!上がってくれ!」

 

なぎは先に上がっていった。少しスペースができて、俺も上がった。

 

「今日みんなでリビングで寝ない?」

 

かりなが提案した。

 

「みんな一緒に寝たい。だから」

「あぁ。いいぞ」

 

俺はドアを開けて風呂場から脱衣所に戻った。パジャマに着替え、俺はリビングに行った。

 

「あ、上がったんだ」

「あぁ。それなんだ?」

「持ってきた毛布」

 

それは分かってる。どうして毛布があるかだ。あ、けどみんなで寝るんだっけ。

 

「みんなで寝るんだよな」

「うん!だから準備」

 

なぎの毛布は俺の毛布のすぐ隣。俺の上隣が枕を俺の頭の方にしてかりな、反対は絢梨、あーやは俺のもう片方の隣。

 

「寝よ!」

「そうだな、歯磨いて来ようか」

 

俺は歯を磨きに行った。磨き終わったらすぐに寝る感じになるんだ。

俺は明日鴻巣まで行って、時間割りを見ると1時間目は1年5組で数学、2時間目は1年6組で数学、3時間目は2年3組で音楽、4時間目は1年3組で数学、5時間目は1年7組で数学、6時間目は2年1組で音楽。部活は丁度仮入部最終日らしい。誰が入ってくるんだろう。

 

 歯を磨き終わって、俺は時間割ばかりを見ていた。脇からかわいくなぎとあーやが見てくる。

 

「来週の月曜日全部数学じゃん!」

「火曜日は4時間目まで音楽だよ」

 

数学と音楽だけで、音楽は俺一人、数学は1年生だけで二人いる。授業数とクラスが多いから。

 

「明日は…あれ、ゴールデンウィークだから…あ、これ6月か。明日は午前だけだ」

 

俺はあーやに「間違えるなよ」と言われて、少し悔しかったが、事実だし、

 

「じゃあ全員揃ったから寝よっか。おやすみー」

「おやすみ」

「おやすみー」

「おやすみなさい」

「おやすみー」

 

全員が「おやすみ」と言って電気は消えた。

 

 多分真夜中で、真っ暗な部屋。俺の隣にいるあーやや、かりな、なぎは寝ていた。絢梨は俺の頬を人差し指でツンツン。俺は寝たふりをしていたが、ついに起きた。そして、小声で行った。

 

「何してるんだ」

「……したい……」

 

したい?何を。

 

「何を」

「…ベロチュー…」

「いいよ。しても」

 

絢梨は無言で俺と反対向きでキスした。舌の向きが逆だから絡め合ってベロチューは成立。これを狙ったんだろう。

話すと粘液みたいな細い線が口と口を伝っている。

 

「どうだった」

「すごかった…」

 

意識を取られるようだった。もう少しで暴走しそうだったし。

 

「剣の修理する気出た。明日朝からやる」

「頑張ってくれ」

 

と俺は言ったが、結局暴走は止まらなかった。俺は絢梨の頬をさわっていた。

 

「柊くん?なんでほっぺ揉んでるの」

「柔らかいからかな」

「…やわらかいの?」

「すごく」

 

俺は絢梨の頬をずっと揉んでいた。絢梨はちょっと顔をピンクにした。

 

「今は終わりにして。明日午後からしていいから」

「分かった」

 

俺は絢梨の頬を触るのをやめた。手には柔らかい感触が残っている。

 



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スペシャル編 第35話 蒼

初めてのコラボ作品です!
今回の登場人物
「離れて近づいて」メンバー2名
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上8名


 俺はその日、学校からの帰りだった。鴻巣で人から待っててと言われ、俺は駅で待っていた。

 

「やっほー、柊くん」

 

胡桃だった。なんで胡桃がここに…

 

「胡桃?荷物は」

「かりなちゃんが魔法で持ってきてくれたー」

「かりなに感謝だな」

 

俺は次の電車を待った。電車は結構すいていて、席も結構空いていた。13時の下り15両だからかなり空いている。俺はロングシートに座って胡桃を隣にした。胡桃は俺の肩に頭を乗せて寝そう。

 

「んーっ、らくー」

「楽々ー」

 

隣で同じことをしている3人の男女がいた。

 

「ん?名前は?」

「影山蒼。手をついてるのは咲希。君は」

「月島柊。妻は胡桃な」

「俺の妻は有希」

 

同じくらいの年に見えた。それだとすると、25前後かな。

 

「年齢は」

「25で今年26」

「あ、じゃあ俺と同じじゃん」

 

全部が同じ。結構気が合いそうだ。蒼の妻は蒼の肩ですっかり寝ている。

 

「どこか行くのか」

「新婚旅行なんだけど、ホテルがね」

 

見つかってないのか。なんなら俺の家に泊まっても問題ないな。

 

「じゃあ俺の家泊まっていけよ」

「あ、サンキュー。」

 

俺は蒼に胡桃のことを紹介した。有希は寝てるから紹介できない。

 

「にゃむい…」

「猫っぽいのか?」

「ああ、胡桃、気抜くと猫みたいなんだよ」

 

蒼にも早く知られたか。けど別に知られたくなかった訳じゃないし別にいいや。胡桃自身もそうだろう。

 

 俺が家に着くと、かりなが少し怪しそうな目でみた。女を連れてきたんだから浮気かと思われてる?いやけど蒼もいるから違うよな。

 

「柊くん、胡桃ちゃんどうしたの?」

「え?」

 

俺は胡桃の方をみた。胡桃は俺にしがみついて座っていた。

 

「胡桃、どうした」

「疲れた…」

 

胡桃は床で倒れた。なぎとあーやでリビングへ運ぶ。かりなも回復で一緒に行った。俺は蒼たちを案内する。

 

「そこの部屋使っていいから。」

「じゃああそこだけ使う。ありがとう」

 

俺は蒼、有希、咲希を部屋に連れていって、胡桃の様子を見に行った。さっきは疲れ果ててる様子だったけど、今はどうだろう。

 

「柊くん待って!」

 

ドアを開けた瞬間にそう言われた。何が起きたんだ?

 

「どうしたんだよ」

 

胡桃のことをなぎとかりなが必死で押さえている。

 

「胡桃ちゃんが、飲ませた薬の副作用で猫耳が生えようとしてるから押さえてるの!」

 

猫耳かぁ。かわいいからいいかも。

 

「手離してみて」

 

2人は手を離す。すると、胡桃の頭の上からぴょこっと猫耳が出てきた。

 

「ニャー」

 

鳴き声までしなくても…あ、そっか。気抜くと猫になるんだった。

 

「よしよし、いい子だな」

「みゃうー」

 

猫なのかよ。もう本当の猫じゃん。

 

「一応副作用だから切れるよ」

「ずっとはキツいだろ」

 

俺は蒼の部屋にも行った。廊下で蒼に会って、蒼が言った。

 

「有希に猫耳出来てるんだけど」

「胡桃もだ。何が起きたんだ」

「さあな。けど、かわいいよな」

「そうなんだよ。治るまで待とうか」

 

俺はリビングに戻った。治るまで待つことにした。俺は胡桃の猫耳を触ってみた。

 

「柔らかい…」

「ふにゃぁっ!あっ、反応しちゃうぅっ!」

 

結構苦手な場所なんだ。じゃあ抱き締めるだけでいいや。俺は胡桃を両手で抱きしめた。すると、猫耳は消えた。

 

「大好きなんだ。私のこと」

「あぁ。大好きだ」

 

俺は胡桃に言った。

 



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スペシャル編 第36話 魔力

2回続けてのコラボになります。短編になるけどね。
今回の登場人物
前回と同じ


 俺は胡桃に猫じゃらしを振って遊んでいた。胡桃はすぐに猫の真似をすると分かったらしく、猫耳がついていた時のように遊んだ。

 

「にゃっ、にゃっ、にゃっ!」

「柊くん、私がやっとこうか?聞きたいことあるんだし」

「あ、じゃあよろしく」

 

俺は猫じゃらしをかりなに任せて廊下に出た。蒼に聞きたいことがあったんだ。あったときから有希と咲希に強い魔力が感じられた。それが気になったんだ。

俺は蒼がいる部屋のドアの横で待っていた。中ではUNOかなんかやってるのか結構楽しそう。5分くらいしてから蒼が出てきた。

 

「蒼、魔法って知ってるか」

「あぁ、使える魔法は少ないけど、使えるっちゃ使える」

 

蒼も魔法は使えるんだ。結構以外だったな。

 

「有希と咲希から魔力が感じられる。あの2人も使えるのか」

「さぁ…聞いたことはないな」

 

蒼は言った。人の魔力って感じづらいから当たり前だ。

 

「そんなの感じなかったけどな」

「一応聞いてみてくれないか?強すぎると暴走し始める」

「分かった。聞いてみるよ」

 

蒼は有希に聞きに行った。ドアを開けていて、有希たちの会話が聞こえてくる。

 

「有希、咲希、魔法使える?」

「うん。結構使える」

 

結構使えるんだといつ暴走するか分からないな。だったらちょっとでも蒼といた方がいいだろう。

 

「…だそうだけど、柊」

「分かった。辛くなかったら、咲希と有希になるべく一緒にいるようにしてくれ。離れてるときに暴走されちゃ困るし」

 

蒼がいるとしても、守れる力は皆無だし、一応強力な防護魔法と拘束魔法は教えとこう。

 

「蒼くん♪」

 

有希は蒼に抱きついていた。

 

「ま、頑張れよ、ハーレムさん」

 

俺の方がハーレムな気もするけど。

 

「蒼、ちょっと来てくれ」

 

有希たちに聞かれちゃ困るし。俺は2人で部屋に入った。

 

「今から強力な防護魔法と拘束魔法教えるから」

「あぁ。授業か」

 

俺は蒼に魔法を教えた。

 

 俺は教え終わると、胡桃が遊んでいるリビングに行った。胡桃は未だに猫じゃらしで遊んでいる。

 

「にゃぁっ、にゃぁっ…」

 

疲れてきてるかな。かりなも少しバテてきている。

 

「お疲れ様。胡桃、おいで」

「にゃーっ」

 

胡桃はこっちに飛びついた。頬を俺の頬にすり付けて来て、猫の真似をやめた。

 

「柊くん♪」

 

なんか似たフレーズをさっき聞いた気がするけど、気のせいかな。

 

「ふぅ…眠くなってきちゃった」

「ここで寝ていいよ。おやすみ」

「おやすみ…」

 

胡桃は俺の肩で寝た。俺が持ち上げたままだったが、結構軽いから何も構わなかった。






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第37話 ライブ

今回の登場人物
ナナニジ11名
離れて近づいて2名
月島柊
美鈴陽菜
以上15名


 俺は蒼もいることだから、早めに寝た。明日は内緒にしているそうだが、6:28発の高崎行きに乗りたいらしい。土合に連れていって、もぐら駅を体感させたいとか。その時刻が、水上8:28発長岡行きが始発だったため、それに間に合うように7:11発水上行き。これに間に合うのが6:28発高崎行き。土合に行ったあとは長岡まで上越線で行き、富山方面に行くそうだ。特急、普通のどちらかで。俺は寝る直前の21:15にプリントアウトした。土合までのルート、土合から長岡のルートだ。土合から長岡は土合9:54発長岡行き。12:06発直江津行き、14:29発泊行き、16:20発富山行き、17:16発金沢行き。金沢は18:18に着くはずだ。一応長岡までは決定してあるが、そこから先は蒼の自由だ。俺はその後すぐに寝た。深谷まで車で送ってあげよう。明日はライブ会場に直行だから。

 

 翌日5月4日、俺は6:00ちょっと前に起きた。起きたのは最後の方っぽい。

 

「おはよう。深谷までは送る」

「あ、よろしく」

 

車で久里浜あたりまで行くからついで。俺は蒼たち3人を乗せて深谷駅へ。

 

 深谷駅に着くと、蒼たち3人は降りていった。6:28高崎行きまであと8分だ。

 

「じゃあ、行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 

俺は見送りを済ませて、高崎行き出発後の6:29頃に深谷駅を出発した。関越道、首都圏中央連絡自動車道、東名高速道路の順番で走っていく。くりはま花の国まで行く。

 

 俺は途中から自動運転モードに変え、久里浜にいる社員たちと連絡を取った。

 

「どうだ、照明とか」

〈照明、ステージ強度並びに確認中です〉

 

美鈴さんだ。今回のライブ担当代表。今回から取締役、代表、副代表、書記・庶務、セッティング、計画、確認、照明、ステージ強度の役職を与えた。今回の人は、俺の記録に載っているのだと、

取締役 月島  代表 美鈴  副代表 恋浜

書記・庶務 福田  セッティング 福田、恋浜

計画 美鈴、福田、恋浜  確認 月島、美鈴

照明 西野  ステージ強度 西野

以上。

「わかった。俺もそっちに着いたら確認する」

〈分かりました〉

 

俺が看板をそこは横須賀。もうすぐだ。

 

 俺が会場に着くと、美鈴さんが俺を案内した。会場はすっか出来ていて、照明角度、高さ共に完璧だ。

 

「うん。えっと、あとはステージ強度か。メンバー1人少し盛って80kgと考えて、11倍だから880kgか。880kgに耐えれたら合格」

 

俺をオブジェクト召喚魔法で1つ400kgある石を2つと、俺が乗る。そうすると400kg2つと80kgだから880kgになる。

 

「行くぞ」

 

俺はステージに乗った。きしむ音もしないし、下からの振動もない。大丈夫だな。俺は石を消し、ステージから降りた。

 

「これで大丈夫。メンバーは1人あたり重くても75kgくらいだと思うから、大丈夫だろ」

 

俺はメンバーを呼びに行った。ステージから少し離れたところに11人固まっていた。

 

「ステージ袖行くよ」

『はい!』

 

メンバーはステージ袖に向けて歩き始めた。開始まであと1時間。14:00開始だ。

 

 13:50、残り10分のところで俺はステージ袖に入った。横から見るのだ。

 

「柊くん、応援しててね」

「もちろん。頑張れよ」

 

メンバーはステージの上に行った。俺の出来ることはここまでだ。あとはメンバーたちがステージを利用してライブをするだけだ。

 

「柊さん、私先帰りますね」

 

美鈴さんが言った。なんか用事でもあるのか。

 

「分かった。お疲れ様」

「お疲れ様です!」

 

美鈴さんは帰り、ステージ袖は俺だけだった。ステージからきれいな歌声が聞こえてくる。さすがアイドルだ。

約15分に及ぶライブがおわり、ステージの撤去が始まった。特設ステージだから使い終わると片付けるのだ。

 

「柊さんって明日来ます?」

「いや、明日は休みだから」

 

5月5日だけ休みで、5月6日は教諭。暁依が代わりに入る。予定は

5月6日 教諭   暁依休暇   凪沙出勤

5月7日 教諭   暁依出勤   凪沙休暇

5月8日 部活   暁依休暇   凪沙出勤

5月9日 出勤   暁依休暇   凪沙休暇

5月10日出勤   暁依休暇   凪沙休暇

5月11日教諭   暁依休暇   凪沙出勤

5月12日教諭   暁依午後半休 凪沙午前半休

5月13日教諭   暁依午前半休 凪沙午後半休

5月14日教諭   暁依休暇   凪沙出勤

5月15日休暇   暁依出勤   凪沙休暇

5月16日休暇   暁依休暇   凪沙出勤

5月17日出勤   暁依休暇   凪沙休暇

5月18日教諭   暁依出勤   凪沙休暇

5月19日教諭   暁依休暇   凪沙出勤

5月20日出勤   暁依休暇   凪沙休暇

5月21日教諭   暁依出勤   凪沙休暇

5月22日出勤   暁依休暇   凪沙出勤

5月23日休暇   暁依休暇   凪沙出勤

5月24日教諭   暁依出勤   凪沙休暇

5月25日午前教諭 暁依午後半休 凪沙休暇

5月26日教諭   暁依休暇   凪沙出勤

5月27日教諭   暁依出勤   凪沙休暇

5月28日教諭    創立記念により休暇

5月29日振替休暇 暁依休暇   凪沙出勤

5月30日出勤   暁依休暇   凪沙出勤

5月31日教諭   暁依出勤   凪沙休暇

以上。教諭が結構占めていて、凪沙も出勤することになっている。俺はこの予定表を渡して家に帰った。

 



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第38話 学校

今回の登場人物
月島柊
白雪凪沙
丸山彩
以上3名


 俺は家に帰った。時間もまだ16:30になったばかりで、家にいたのはなぎだけ。絢梨は剣の修復材料を調達に、胡桃は仕事。

 

「おかえり。柊くん」

 

俺は急に申し訳なくなってなぎに抱きついた。

 

【白雪凪沙視点】

 

 私は柊くんが帰ってくると、「おかえり」と笑顔で言った。そして、柊くんは私に抱きついた。

 

「ごめん、なぎ」

「柊くん、どうしたの」

 

私は柊くんに聞いた。

 

「俺が仕事入れたからなぎも通勤することになったから」

 

その事かぁ。確かに、ぎゅうぎゅうの満員電車で痴漢とか不安だけど、謝ることじゃないよ。

 

「大丈夫。ただね、1つだけお願い」

 

私は柊くんにたった1つのお願いをした。

 

「出来るだけ、一緒に乗ろ?痴漢とか怖いから」

「あぁ。いいよ」

 

柊くんは私から離れた。明日からもう私の出勤だ。

 

【月島柊視点】

 

 そして翌日、俺となぎは同じ電車に乗った。深谷7:24発上野行き。平日だが、今回は前日車両交換で大宮まで10両の運転。大宮で7番線の15両に接続し、車両交換。

 

「端の方行こう。混んでるけど、俺が守るから」

「あ、うん…ありがとう…」

 

俺はなぎの両方に手をついて、なぎを守った。

乗っていた号車が10号車というのもあり、15両だと思っていた人たちがどっさり乗ってくる。俺は手で押さえられなくなり、肘で押さえた。

 

「柊くん…したい…」

「何をだ」

「…女の子から言わせないでよ…」

 

その時、後ろから急に押されて俺はなぎに強くぶつかる。押し付けられるようだった。

 

「うわっ」

「きゃっ」

 

なぎは目を閉じ、俺も閉じた。そして、唇に何か柔らかい感触。まさか

 

「ふぐっ!」

 

キスしていた。なぎは落ち着いたような感じだった。

ツンツン

なぎは俺の頬をつついた。そして、手で俺の顔を離す。

 

「柊くん、これがしたかったの」

「じゃあ続ける?」

「嫌じゃなければ」

「泣いたとき用にハンカチ持っとけ」

 

俺の半分使いかけ。ちょっとしか使ってないから渡した。なぎは俺を抱きしめるようにしてキスした。

 

 やがて離れると、身動きがとれないほどに混んでいた。なぎも力を入れて動こうとしている。

 

「動けないっ!んんっ!」

「なぎ、力抜いて。俺にくっついて」

 

なぎは言われた通りにした。あと2駅で鴻巣だ。

 

「なぎ、俺が降りたら隅に背中を後ろにしていて」

「うん。分かった」

 

痴漢されないためだ。

 

「なぎ、帰りは連絡して」

「分かった。ありがとう」

 

俺は返事がわりにキス。

 

「もう鴻巣だ。じゃあ、頑張って」

「うん」

 

俺は電車から降りて、学校に向かった。今日は

1年1組数学

1年3組数学

2年1組音楽

1年5組数学

2年3組音楽

2年4組音楽

担任は1年6組。副担任が江山先生で、1年生の数学を俺と共同で行う。2年生の音楽は1クラス週1時間で、4クラスだから週4日2年生に行く。1年生は週4で7クラスだから4×7で28時間。江山先生が週に13時間、俺が週に15時間。今日で3時間終了だから残り12時間だ。

杏と心春、澪は何組だろう。俺は楽しみだった。

 

 学校では1年5組担任の彩、1年3組担任の上西先生が俺を迎えていた。

 

「よろしくね、月島先生」

「柊くん、よろしくね。隣だから気軽にね」

「分かった。じゃあ、6組ですよね」

 

俺は1年6組に入った。人数は51人の内23人が男子、28人が女子。女子の方が若干多い。351人の全体だと、男子は177人が男子、174人が女子。ほとんど同じくらいの人数。

 

「みんな、おはよう。江山先生は担任じゃないよー」

 

クラスから「え、違うの」「担任かと思ってた…」などと声が聞こえる。

 

「名簿見てみろよ。担任のところに月島柊って書いてあるだろ」

 

みんな後ろを向いて確認した。

 

「簡単に自己紹介すると」

 

俺は英語で言った。

 

「My subject is mathematics.」

 

クラスから「何て言ったの?」「英語の先生?」と声が聞こえたため、俺が翻訳しようとすると、1人が言った。

 

「私の担当教科は数学です」

「正解。英語じゃないぞー」

 

頭のいい人がいるな。いいクラスだ。

 

「じゃあ1時間目から頑張ろう!以上!」

 

号令が済むと、俺は荷物を1年1組に運ぼうとした。すると、クラスの数学係が俺に聞いた。

 

「荷物持ちます。どこですか」

「えっと、1年1組。ありがとう」

 

俺は教科書だけをもって1年1組へ。1年4組では江山先生が数学らしい。3組は彩で社会、2組は上西先生で理科、1組は俺の数学だ。

 

「ありがとう。楽だった」

「どういたしまして」

 

数学係は帰っていった。今の単元はどこだろう。

 

「どこまで進んだ?」

「正負の数のまとめからです」

 

正負の数のまとめだから、36ページか。

 

「じゃあ36ページ全部。制限時間は15分な。号令」

 

号令が済むと、みんな36ページを始めた。次は文字と式か。xとyのやつだな。

 

「あと10分」

 

俺は6組の自主学習をチェックした。中には俺のことを書いてる人もいる。担任誰だろうなぁ。って書いてあった。俺は赤ペンで「月島柊でーす!」と書いた。時間を見ると、あと4分。答え合わせだ。

 

 俺が3時間目まで授業して、やっと2年生の授業だった。場所は音楽室。2年1組が音楽の授業に来る。杏と心春、澪はいるかな。俺は入ってくる生徒たちを見た。50人入り終わると最後の人がドアを閉めた。そのなかに杏と心春、澪はいなかった。

 

「始めます」

 

2年生は50人で4クラス。全員合計で200人だ。号令が済むと、俺は音楽について話し始めたが、内心では、杏と心春、澪はどこだろうと考えていた。

 



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第39話 痴漢

 俺は4時間目が終わって、6組に戻った。給食の時間だ。俺は1から10班の番号を横に書き、あみだくじで引き当たったところの班に俺が行くようにした。下は紙で隠してある。各班が赤のチョークで書くように指示し、俺は音楽室に荷物を置きに行った。5時間目は2年3組音楽だ。

 

「さて、紙開くぞー」

 

俺は紙を一気に撮った。みんなが黒板に殺到する。1班は×、2班も×、3班も×、4班も×、5班も×…

そして俺の班にあたった班は8班。全員女子だから、正直言うと当たりたくなかった。

 

「よろしくお願いします」

「うん。自己紹介お願いできるかな」

「私、浅雛(あさひな)由月(ゆづき)

「浅雛ちゃんは“ひなちゃん”って呼ばれてるんだ!」

 

ある女の子が言った。

 

「私夢川(ゆめかわ)菜晦(なつ)。菜の花に晦日のみそで菜晦。」

「なっちゃんね。私葉野(はの)香苗(かなえ)。かなちゃんって呼ばれてるよ」

花菜野(はなの)三久(みく)。普通に三久ちゃんって呼ばれてて、環境委員入ってるよ」

音奏(おとかな)風奈(ふうな)。ふうちゃん!」

 

全員にあだ名がついてるんだな。結構いいあだ名だし、いいと思う。

 

「月島先生はどこの学年行ってるの?」

「2年生行ってるよ。今年は1年生が多いから、主要5教科は先生が二人いるんだ。理科は暇だったら受けるけど、中旬までは余裕ないかな」

「中旬からはなんで余裕あるの?」

 

中旬からは新しい先生が3人入ってきて1年生数学は2人から4人になり、2年生音楽担当が1人から2人になる。だから余裕ができ、理科にも入ることができるのだ。

 

「3人先生が入ってくるから」

「次ってどこなの?」

「2年3組で音楽だよ。6組はなんだっけ」

「国語。6時間目は数学。月島先生が良かったぁ!」

 

しょうがないだろ、俺だって数学は入れなかったりするんだから。

 

「江山先生が悲しむぞ。明日の2時間目の数学、3時間目の道徳は6組だから」

 

俺は給食を食べた。

 

 6時間目は2年4組。音楽室で待っていると、3人の女子が1番早く来た。そして、3人同時に言った。

 

『お願いします!』

「はい、よろしく」

 

俺はPCに今回の授業メニューを出した。2年4組とは始めての授業だから自己紹介から。

 

「柊くん!」

 

さっきの女子生徒だ。なんで先生つけないんだろ?俺が見ると、それは杏、心春、澪だった。

 

「みんなで4組だったんだ!」

「おぉ、そうか。良かったね」

 

俺は3人のところに行って話した。

 

「今年から先生なんだね!」

「部活も行くぞ」

 

3人はハイタッチした。

 

 部活の終了時刻が迫ると、杏は俺に抱きついて言った。

 

「明日も学校来る?」

「うん。音楽の授業はないけど」

「部活も来るよね!」

「時間によるけど来ると思う」

 

俺は音楽室に並ばせて挨拶をした。今年から1年生も入ってきたんだが、2年生、3年生のコンクールで1年生は練習を1人でやっている。

 

「じゃあ、今日も18時まで残り練習頑張って。俺は連絡あったから帰るけど、明日の朝練でどれだけ上達したか聞くからな。以上」

 

俺はそう言って音楽室を出た。

 

【白雪凪沙視点】

 

 私は柊くんに言われた通りお尻を後ろにして動かずにいた。痴漢には遭ってないから良かった。

すると、大きな揺れがって私はドアに押し付けられた。お尻は人々の方を向いている。痴漢されちゃう…私が向きを変えようとすると、お尻に手の感触があった。痴漢?いやいや、けどたまたまかもしれないし。私が黙っていると、お尻を何回も触ってくる。痴漢だ。私は怖くて動けずに、声も出なかった。大宮までは耐えて、京浜東北線にでも乗り換えよう。すると、私が履いていたスカートの中に手が入ってきた。

 

(いやぁ…)

 

私は次の停車駅放送を聞いた。

 

「次は、大宮です」

 

よし、あと3分くらいで着ける!耐えないと…

 

「んんっ!」

 

お尻を揉まれた。怖い、気持ち悪い、恥ずかしい。私はドアに息を吐いていた。

 

「あぁっ、やめ、て…」

 

私はすごく怖かった。こんな怖い思いしたの始めてだった。

 

 私は普通より1時間早く終わらせて空いてる上野始発で座った。

 

(怖い、電車、乗りたくないよぉ…)

 

私は柊くんに連絡した。高崎行きで待っててって。

 

 鴻巣に着くと、柊くんが乗ってきた。柊くんは私を見るなり心配そうだった。

 

「なぎ、なんかあった?」

「え…何も…」

「そうか…ならいいんだけど」

 

嘘だ。痴漢のことをずっと気にしてる。私は家に帰った。

 

 家に着くと、私は柊くんに泣いて抱きついた。怖かった。私は思いを柊くんに全部ぶつけた。

 

「柊くん、私、痴漢された…」

「どうして」

「揺れでドアに押し付けられちゃって、そのときにお尻揉まれた…」

 

私は泣きながら答えた。もう電車がトラウマになっちゃいそう。電車乗りたくない。

 

「怖かったな、なぎ。今度からは俺も一緒に行くから、安心して」

「柊くん、怒んない?」

 

柊くんは言った。

 

「どうして怒らなきゃいけないんだ。なぎは悪くないよ」

「でも、私が手すり掴んでおけば」

「急にできないよ、そんなこと」

 

俺はなぎを安心させた。

 

「…なんで、心配?」

 

俺は考えていたことだったが、思いきって言った。

 

「…か、かわいい凪沙だから…」

「!……お風呂入ってくるから、待ってて」

 

なぎは俺から離れた。ショックだったかな…

 



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第40話 凪沙の不運

今回は最初から最後まで凪沙視点です。久しぶりな方式ですね。今頃、現実世界の俺はテスト勉強に追われてるんでしょう。
今回の登場人物
白雪凪沙
月島柊
月島胡桃
月島かりな
立川絢梨
以上5名


 私はお風呂の脱衣所に入り、髪をほどいた。結んでるから気づかれてないだろうけど、私の髪は結構長い。肩は余裕で越えている。私は髪をほどくと、服を脱ぎ始めた。下からスカート、パンツ、上着、長袖、ブラジャーの順番で脱いだ。そして、中に入る。かりなちゃんが入ってたから床は水で冷たい。私はシャワーを出してお湯を浴びた。

 

(かわいいって、私が?柊くんだってカッコいいのに、そんなこと言われたら壊れちゃうじゃん)

 

私は頭の中で焦っていた。髪を洗いながらも焦って、やがてボーッとしてしまった。

 

「ああっ、流さないと」

 

私はシャンプーを流した。リンスをして、ボディーソープをつけた。身体を洗うとき、自分の胸に手を当てて揉んだ。

 

「大きさ…普通かな。柔らかいといいな」

 

私はシャワーで流した。よく考えると、ちょっと寒い。早くお風呂入ろっと。

 

「ふぅ…あったかーい…」

 

その時、向こうから柊くんの声が聞こえた。エコーがかかってるみたい。

 

「なぎ、明日休みだよな」

「うん。休みー」

 

リラックスして最後がちょっと伸びた。

 

「そっか。俺明日も学校だから、留守番よろしくな」

「かりなちゃんは2年何組?」

「会ってないから2年2組だと思う」

 

そっか。柊くんももう私たちの先生なんだ。私も教員免許持ってるけど、使うところないし…大体、技術、社会なんて使うはずない。

 

「頑張ってね」

「あぁ。そうだ、なぎがしてほしいことってないか?」

 

してほしいこと…あ、そうだ。添い寝とか。まだあの事覚えてるし…

 

「添い寝…」

「ん?なんだ?」

「…上がってから話す!」

 

私はお風呂から出た。私が急いで脱衣所のドアを開けると、柊くんはもういなかった。ああ、遅かったか。私はパジャマを着た。パジャマはワンピース系のパーカー付き。薄いピンクの柔らかいパジャマ。

 

「柊くーん、どこ行ったの?」

 

柊くんからの返事はない。しかも、どこからも足音すらしない。

 

「えぇ…怖いじゃん…」

 

私は家の中を歩いた。真っ暗な家で、風もない。うっすら外の明かりで床が見えるけど、なんか不気味。

 

「柊くーん、かりなちゃーん、どこー?」

 

私は本気で怖くなってきた。本当にいないの?

 

「絢梨ちゃんだったら外でないしいるよね」

 

私は絢梨ちゃんの部屋に向かう。吹き抜けの2階だが、暗くて壁を触って歩く。

 

「ここだよね」

 

私はドアを開けた。絢梨ちゃんはベットに眠っている。私は絢梨ちゃんの肩を揺すって起こそうとする。

 

「絢梨ちゃん、起きてぇ」

「……凪沙、どうしたの」

「みんないないの。どこ行ったか知ってる?」

「…探そ。私と」

 

絢梨ちゃんはむくっと起き上がって私と探してくれた。良かった。絢梨ちゃんがいて。

私は1階に降りた。絢梨ちゃんは私を引っ張って外に出る。外にいるの?

 

「絢梨ちゃん、外にいるの?」

「分かんない。中にいないと外でしょ」

 

絢梨ちゃんは裏に行った。みんなは当然いない。どこ行ったんだろ。

 

「あ、凪沙って魔法使えないよね」

「うん。それがどうかした?」

「屋根の上。梯子で登ろ」

 

絢梨ちゃんと私は倉庫から梯子を出してきた。下には少し穴を掘って梯子を固定した。

 

「先絢梨ちゃん行く?」

「うん」

 

絢梨ちゃんは梯子を登って屋根に登った。そして、屋根から頭を出してこっちを向いた。

 

「来て」

 

私は梯子を登って屋根の上に行った。ちょっと揺れてたけど、どうにか登れた。

 

「いた?」

「いた。寝てる」

 

柊くんとかりなちゃんは屋根の上で寝ていた。

 

「胡桃ちゃんは?」

「さあ。まだ帰ってないんじゃない」

「そっか。まだ19:15だもんね」

 

でも電気まで消していかなくてもよかったのに。どうして消していったんだろう。私は柊くんの横で寝た。

 

 私が起きたのは22:00のちょっと過ぎ。胡桃ちゃんは屋根の上にいない。下かな。私は梯子から降りた。

その時、梯子が後ろに倒れ、私は梯子に捕まったまま背中から地面に叩きつけられた。

 

「うぐっ…いったー…」

 

私は動こうとするが、私のお腹の上に梯子があったり、背中が痛かったりして起き上がれなかった。

 

「ええ…私ここで倒れたままなの?」

 

私は不安だったけど、もちろん願ってどうにかなることじゃない。

 

「なに?って、凪沙ちゃん!大丈夫!?」

 

そう言って中から出てきたのは胡桃ちゃんだった。

 

「胡桃ちゃん…梯子退けて…」

「う、うん!待ってね」

 

胡桃ちゃんは梯子を退かそうとした。しかし、梯子は鉄製。長さだって10m以上ある長い梯子。女性1人じゃとてもじゃないけど持ち上げられない。

 

「かりなちゃんと柊くんは?」

「屋根の上で寝てる…」

「起こそ」

 

胡桃ちゃんは屋根の上に向けて大きな声で叫んだ。

 

「柊くん!かりなちゃん、起きて!」

 

胡桃ちゃんは言い終わると、小さくため息をついた。

 

「ふぅ…起きるかな」

 

そう言っていると、柊くんが屋根の上からこっちを見た。

 

「どうした、胡桃」

「凪沙ちゃんが梯子の下敷きになっちゃって」

「え、わかった。今行くから、そこ退いて」

 

胡桃ちゃんは避けた。何するの?

 



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第41話 凪沙の怪我

 胡桃ちゃんは避けた。何するの?私は不安だったけど、下に柊くんが飛び降りてきた。

 

「なぎ、今助けるからな」

 

柊くんは私の上にある梯子を持ち上げようとした。ちょっと浮いた隙に、私は足に力を入れた。しかし、そこまで時間がなく、梯子はまた戻った。

 

「さすがに2人じゃ難しいか」

「だよね。じゃあかりなちゃんと絢梨ちゃん呼んできて。私は絢香ちゃん呼んでくるから」

 

柊くんは上に、胡桃ちゃんは家の中に入っていった。なんか申し訳ない。

 

「お待たせ!」

 

柊くんは上から絢梨ちゃんを抱えて降りてきた。胡桃ちゃんは絢香ちゃんを連れて出てきた。

 

「みんなで持とう!そうじゃないと持ち上がらない!」

 

柊くんは私の梯子を持ち上げる指示を出した。なんか、私が怖がらなければ。私はふと声が漏れた。

 

「ごめん、もう、諦めても──」

「諦めない」

 

柊くんはこわばった声で言った。

 

「俺は、ひとり人を殺してる。その時、俺は今まで以上に怖かった。人を殺した感覚、人を殺した感触。だから、俺は自分が人の死に関わらないように、目の前で死なせないようにした。だから、今はなぎを守る番だ」

 

柊くんはみんなと力を合わせて梯子を持ち上げた。軽々持ち上がり、私は梯子の下から出れた。

 

「痛っ」

「なぎ、どこが痛いんだ」

「お腹と、肩…とか…」

 

話すとちょっとお腹が痛む。力を抜くと楽だった。

 

【月島柊視点】

 

俺はなぎの背中を持って、胡桃がなぎの足を持つかたちでなぎを家の中に入れた。

 

「柊くん…」

「無理に話さなくていい。歯磨いてやるから」

 

俺は脱衣所の手前にある洗面所でなぎの歯ブラシを持ち、なぎの歯を磨いた。

 

「あう…うぅ…」

「…久しぶりだな、人の歯磨くの」

「あが…いいああ!」(いいから!)

 

何言ってるの?俺はなぎの歯を磨き続けた。

 

「いうんえいあえう!」(自分で磨ける!)

 

もう磨き終わっちゃったし、うがいは自分でさせるか。

 

「うがいは自分でやって」

「うう…」

 

なぎはうがいが終わると、俺のところに来て言った。

 

「…緊張した…」

「そうですかい。ほら、寝に行くぞ」

 

なぎを持ち上げて、2階のなぎの部屋に連れていった。なぎは手を伸ばしてベットに眠った。

 

「じゃあ、ゆっくり休めよ」

「うん…」

 

なぎは残念そうに言った。何が残念なのか、俺には分かっていた。風呂で、なぎが添い寝したいって言ってたことを俺は知っていた。

 

「胡桃、お願いがある」

「ん?なぁに?」

 

俺は今の状況を全て話した。胡桃は「そういうことならオッケー。絢梨ちゃんと一緒に寝よっかな」と言ってくれた。俺は歯磨きを済ませ、あーやに明日の報告をして、明日の部活休暇届もだした。俺はすぐに2階のなぎの部屋に行った。

ドアのところで3回ノックした。中から「入っていいよー」となぎのかわいらしい声がした。俺は部屋の中に入る。

 

「ああ、柊くん?この足音は」

 

なぎは上を向いて寝ていた。横を向くと肩を圧迫してしまうから痛いんだろう。

 

「そうだよ。隣、失礼するよ」

 

俺は隣に仰向けで寝た。なぎと同じ状況だ。

 

「添い寝、したかったんだろ」

「知ってたんだ」

 

なぎは言った。そして、次に順を追うように言った。

 

「理由はね、柊くんに話したいことがあったの」

「話したいことって、なんだ」

 

俺はなぎに聞いた。なぎはちょっと笑って言った。

 

「焦らないでよ。私ね、柊くんとどうにかして結婚したいって思ってたんだけど、現実世界じゃあさすがに非現実的じゃん」

 

まずこのところまででもかなり違和感がある。結婚したかった?なんで。そう思っていても、話は進んでいく。

 

「だから、仮想世界だったら結婚できるかなって思って」

「いやいや、そんなこと言うけどさ」

 

そう、仮想世界では織音が結婚しようと告白してきている。二重結婚は成立するのか、そんなこと考えたこともなかった。でも、これを言うとショック受けるだろうなぁ。

 

「どうしたの」

「いや、なんでもない。ただ、心の準備がね」

「分かった。仮想世界に行って考えてみたら」

「そうするよ」

 

俺は仮想世界に入った。あの事件から数日が経ったが、そこまで変わった気はしなかった。

 



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第42話 学校 2日目

今回の登場人物
月島柊
白雪凪沙
音奏風奈
以上3名


 俺はサンドスペニア北東部にちょっと歩いたところにあるイースト草原に向かった。草むらの中に堂々とインフォメーションセンターがある。

インフォメーションセンターはイースト草原の他に

ウエスト森林

freezing mountain

合計3ヶ所。その中で、ここは住居、人関係専門のインフォメーションセンター。俺は受付の人に聞いた。

 

「すみません、仮想世界って二重結婚可能ですか」

「二重結婚ですか。ここイースト草原と、ウエスト森林を除いた地域にお住まいでしたら可能です。お住まいはどちらですか」

 

住まいまで聞かれるのか。結構面倒だな。

 

「サーリートです」

「でしたら1人あたり5人までの結婚は認められてますよ。あなたみたいな方、見たの初めてですよ」

 

それほど少ないのか?結婚を二重ですることは。

 

「少ないんですか」

「はい。仮想世界人工の約15%が二重結婚以上をされております。ざっと、15%が二重結婚、65%が結婚、10%が同居生活、5%が交際中、そして5%はその他になります」

 

同居生活も結構いるなぁ。ということは、既婚者が80%、未婚者が20%だな。

 

「わかりました。ありがとうございました」

 

俺はサンドスペニアに戻って現実世界に帰還した。なぎは上を向いて目を瞑っていた。

 

「なぎ、寝てるじゃないか…」

 

俺はそっと毛布を被せた。邪魔しないように俺の部屋で寝るか。

 

「おやすみ、なぎ」

 

俺は自分の部屋のベットを起き上がらせた。今は22:05を過ぎていた。

 

 俺は翌日、なぎの看病を絢梨に任せ、早く帰ってくる条件で学校へ行った。なるべく遅く出たいため、今日は飛行で行った。学校に着くと、俺のボードに「5時間目帰宅」と書いた。5時間目が終わってから帰るという意味だ。俺は6組に入り、黒板に書いた。

“おはようございます。今日は家族の怪我で5時間目に帰ります。帰りの会は近くの先生に任せてください。”

多分5組の彩とかがやってくれるかな。今日の1時間目は1年7組数学。2時間目は6組数学、3時間目は6組道徳、4時間目は5組数学、5時間目は2年2組音楽。

 

「先生!今日は2時間連続で6組ですよね!」

 

昨日の給食班だった風奈だった。あだ名はふうちゃん?一応呼んでみるか

 

「ふうちゃんか」

「覚えてたんだ!うれしっ」

「覚えてるさ。2時間目と3時間目な」

 

俺は教卓の椅子に座った。朝の会は俺がやるし。

8:20、朝の会が始まった。1時間目は8:45から。

 

「先生の話だね。今日は家族の怪我で5時間目に帰るから、帰りの会は隣のクラスとかの先生に任せてくれ。以上。1時間目も頑張って」

 

8:35に終了。1時間目は9:35まで。10分休んで、2時間目は9:45から10:35。俺は1時間目の7組に向かった。

 

 7組は1番奥だが、授業は早かった。もうすぐ文字式だ。

 

「じゃあ今日は正負の数のプリントやってて。終わったら先生が丸つけする」

 

俺はプリントを渡して自主学習のチェックをした。風奈のノートはピンク色を背景に水色のハート。かわいいノートだ。内容は国語、社会。完全に文系。

文系だったかぁ。数学は苦手かな。俺は少し不安だった。

 

 10:30、終わっていない人も集めて採点を開始した。5分経って号令をして、俺はすぐに2時間目の6組数学の準備をした。

 

「帰ったぞー!」

『月島先生!』

 

昨日の班の5人が言った。

 

「月島先生祭りだぁ」

「なんだよそれ。数学はプリントやるだけだぞ」

 

俺は椅子に座った。7組のプリントの採点を始め、号令をした。クラス全員がプリントを始め、中間テストに向けてやり始めた。中間テストは6月15日。あと1ヶ月と少し。範囲は数学からは正負の数と

 

(7組は80点台が多いな)

 

正負の数は結構簡単なところなんだけど、7組平均点は83点。最高得点が98、最低が27。6組には超えてほしい。

 

「7組の平均点は83点だ。6組は超えような」

 

みんなはプリントに集中する。俺は黒板に書き始めた。そう、7組の平均点より10点以上下の人は個別指導をする。

 

「73点以下の人は個別指導な」

 

みんなは見直しをして、早い人はやってきた。

 

「お願いします」

「はい。」

 

俺は採点をその場で始めた結果は94点。結構高めだな。

 

「おめでとう、90点以上だね」

「俺もお願いします」

「分かった。ここに出してて」

 

平均が83点を超えるといいな。

 

 6組結果は最高が100点満点、最低が65点の平均は95点。全然上だった。

 

「おめでとう、6組平均は95点。えっと、73点の人はいないけど、72点の人から65点の人までは昼休み個別指導」

 

言いたくないけど、その人は風奈、由月の2人だった。俺の給食班だったのに…

 



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第43話 緊急

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
白雪凪沙
姫川杏
以上4名


 2時間目の数学が終わり、4時間目の数学が始まるとき、俺はクラスの5組に行った。丁度道徳が終わった彩が職員室に行くときだった。

 

「お疲れ様」

「おつかれ。今日の帰りの会、俺いないからよろしくな」

「オッケー。じゃ」

 

俺は5組に入った。5組は昨日、江山先生によってプリントは終了。俺が平均点を求め、みんなに知らせる。

 

「よし、じゃあちょっと待ってね」

 

俺は全員の点数を見て平均を求めた。89点、かな。

 

「えっと、5組の正負の数平均点は」

 

みんなはドキドキしている。心臓に手を当てている人もいれば、祈っている人もいる。

 

「そんなに大袈裟にやるなよ。平均点は、89点だ」

 

俺は平均点を言った。みんな結構喜んでいた。

 

 5時間目は2年2組の音楽。かりながいる、音楽室で授業だ。

始まる前にかりなが耳まで赤くして俺の前に走ってきた。そりゃあ不安だし、心配。

 

「どうした」

「電車で痴漢に遭って、パンツがぐちょぐちょなの」

「…分かった。準備室で話そう」

 

俺は準備室の鍵を開け、かりなを中に入れた。パンツがぐちょぐちょって…俺にどう解決しろと。俺は準備室の鍵をまた締めた。

 

「どうしようかな。一回脱ぐか」

「うん…」

 

かりなはパンツを脱いだ。そして、パンツを俺に渡した。

 

「家に帰ったら替えがあるから…今日は部活休んで帰ってこい。ノーパンでいることになるけど」

「…分かった」

 

女子の制服はミニスカート。ノーパンじゃあ椅子に当たってしまう。だからしたくないんだけど、しょうがない。俺は準備室から出て、授業を始めた。

 

 5時間目が終わり、職員室に行って、挨拶を済ませたあと俺は家に帰った。家ではなぎが絢梨の膝で寝ていた。

 

「おかえり。早いね」

「まぁな。それで、なぎは何してるんだ」

「膝枕で寝てる」

 

なんで寝てるんだ。

 

「なんで寝てるんだ」

「疲れたからって言ってた」

 

それだったら仕方ないか。

 

【月島かりな視点】

 

 私は6時間目が終わるまでノーパンだった。椅子に座ると、お尻に直接当たって喘ぎ、立っていると風でスースーして喘いでしまう。

下校中はとにかく座りたいから電車もすいてる号車を選んだ。駅に着いてもまだ油断できない。風で捲れちゃったら私の心は耐えれない。

そしてついに家の前まで来た。私はドアを開けて中に入った。

 

「ただいまー」

「おかえり」

 

柊くんが迎えてくれた。持っていたのは私のパンツ…じゃなくて凪沙ちゃんだった。

 

「なぎ、ここから離れなくて。痛みはもうほとんどないらしいんだけど、まだ痛いからって」

「そうなんだ。凪沙ちゃん、大丈夫かな」

 

私は自分の部屋に替えを取りに行き、替えのパンツを履いた。

うーん魔法で行った方がいいかな。痴漢にも遭わないし、そっちのほうがいいかも。

 

「疲れたな。寝よ」

 

不貞寝じゃないけど、私はベットに飛び込んだ。枕に顔をうずめて私は寝た。

 

「ふーっ」

 

ため息をついた。

 

【月島柊視点】

 

 明日は俺も部活に行くから、なぎの出勤になる。休日だから空いてるとは思うけど、俺はなぎについていくことにした。まだ怖いだろうし。

 

「なぎ、仕事行けそうか?」

「がんばる!」

 

がんばる!じゃないんだよな。無理してもしょうがないし。

 

「午前だけにしたらどうだ。俺も午後は行くし」

「大丈夫。私が行く」

「無理しちゃダメだからな」

「分かってる!心配しないで」

 

心配だけど、そんなに行きたいんだったらいいのかな。許可してもいいだろう。

 

「…分かった。無理するなよ」

 

俺はなぎに許可した。

 

    このときは、大丈夫だと思っていた

 

 俺は翌日、朝になぎについていくようにして上野までなぎを送り、俺は鴻巣までトンボ返りした。

 

「おはよう」

『おはよ!』

 

杏、心春、澪が俺に挨拶した。俺は先に音楽室の鍵を開け、中で待っていた。今日は2年生、3年生の臨時部活で、1年生は休み。

 

「コンクールまであと1週間か」

 

杏たちの3回目であるコンクールが1週間だ。

 

「おはよ!柊くん」

「おはよう。11時までだからな」

 

俺は時間を指定して練習を開始させた。

 

 3時間して、合唱練習が終わった。杏たちは疲れて帰っていく。

 

      その時、不幸は起こった

 

 電話がかかってきたのは俺のスマホ。まさかの家族でもない事務所からだった。

 

「はい、月島」

《あ、あ、し、白雪、さ、さんが…》

 

結構焦っている。

 

「落ち着いて。どうした」

《白雪さんが!倒れて!》

 

白雪さんって、なぎ?倒れた?俺は電話を切るのを忘れたまま窓から外に出て事務所まで飛んだ。

 

(なぎが…倒れたって…嘘だろ…)

 

俺はなるべく速く飛行した。

 






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第44話 無理

今日から12月ですね!寒くても俺は暖かく書いていきますよ!休止が少なかったですが、12月はまぁまぁ多いです。
今回の登場人物
月島柊
月島かりな
月島瑞浪
白雪凪沙
美鈴陽菜
ナナニジ11名
以上16名


 スピードメーターは200km/h。30cm/sで加速するから、大体MAXスピードには30分で到達する。47kmの内、45.9kmはMAXスピードで飛行できる。

 

 鶯谷駅上空で減速を始め、上野駅では停止できるようにした。停止すると、ナナニジのメンバーが走ってきた。

 

「柊くん! 白雪さんが!」

 

「あぁ。事務所にいるか」

 

「うん! 休憩室で寝てる」

 

 俺は走って事務所に入った。休憩室は普段ナナニジメンバーが休憩として使っている部屋。入口からはそう遠くない。俺は入口のドアを魔法で遠くから開け、空いた状態で入る。

 

 休憩室ではなぎが並べてある椅子に腹を上にして横になっていた。

 

「なぎ…」

 

「柊くんか…」

 

 俺はなぎの近くに寄ってなぎの手を持った。

 

「私、もういいかな…正直に言って」

 

「正直に? どういうことだ」

 

「…私、前から病気になることが多くて、病院通いが多かったの。そんなときに、梯子の下敷きに、なって、呼吸がしづらくなっちゃって、もう、死んじゃってもいっかって思ったの」

 

 死んじゃってもって、まだそんな歳でもないのに。しかも、話してくれたら俺だって解決できた。

 

 ただ、仕事に行かせたのは俺の責任だけど。

 

「じゃあ、生きる方法があるんだったら、生きてたいか」

 

「うん…けど、あるの?」

 

「あぁ。あるさ。この世界に」

 

 俺はなぎの手を持って言った。

 

不可能はないよ

 

俺は近くの窓から空を飛んだ。バスケ部の部活動も終わっているはずだ。かりなの。帰りは加速を30cm/sから25cm/sに落とし、最高速度も200km/hから160km/hに落とした。円盤だから自動運転。

 

 深谷駅前でかりなに会い、同じ円盤で2人の魔力を合わせ、最高速度は200km/hの倍。400km/hだ。ただ、2倍の加速時間がかかるため、1時間で最高速度になる。47kmの内、35.9kmは最高速度で飛行する。

 

「凪沙ちゃん、無理しないで、そのまま寝ててね」

 

「うん…お願い…」

 

かりなは回復魔法の達人。仮想世界の回復単位、Tを利用すると、1時間あたり一般の人は158700。158700T/h。一方かりなは、798500。798500T/h。ちかみに俺は…98700。98700T/h。平均以下だ。

 

「痛みはどうだ」

 

「うん…段々和らいできたかも…」

 

そんなとき、俺が呼んでいた彩夏と瑞浪が来た。決戦の日の回復担当の2人だ。

 

「柊くん、久しぶり」

 

「お兄ちゃん、久しぶりだね」

 

着いて俺に挨拶すると、早速回復を始めた。

 

「あ、効いてる感じする…痛みもないし、苦しくない…」

 

「よかった。一応異常効果(デバフ)ないか見とくからな」

 

俺はウィンドウを開き、なぎのデバフを確かめた。デバフの一覧は、肺活量減少、出血の2つ。バフは治癒効果。肺活量減少は戻りつつあるけど、出血は戻ってない。

 

「なぎ、血出てるのか?」

 

「うん。お腹にあった嵩がとれたんだと思う」

 

俺はなぎの服をまくって腹を見た。確かに服に滲んだような血の跡があった。まだ少し周りをさわると血か出てくる。

 

「痛いよ…柊くん…」

 

「悪かった。かりな、いけるか?」

 

「うん」

 

かりなはお腹の血を吸い始めた。かりなの唾液には魔力があって、治癒をできる。

 

「ひゃうっ!」

 

「なぎ、落ち着いて。治るから」

 

なぎは我慢して治癒されていた。

 

かりなが終わると、血は全てとまっている。それどころか、傷も一切残っていない。

 

「くすぐったかったぁ…」

 

「傷治ったんだからいいだろ。もう苦しくないだろ」

 

「そういえば…苦しくないかも…」

 

なぎは休憩室の椅子から立ち上がった。もう16:10。今日は早めに帰ってもらおう。

 

「なぎ、今日はもう帰れ」

 

「え、あ、けど、1人だと…その…不安っていうか…」

 

「じゃあかりなと瑞浪が行ってあげればいいだろう」

 

「凪沙ちゃん、行こ!」

 

かりなは瑞浪を連れて凪沙を帰らせた。といっても仕事自体があと2時間ほどで終わる。もうレッスンも終わってるだろうし、次のライブに向けた準備だけど、気の抜けたサイダーのライブか。

 

「みんな、役割決めちゃいたいんだけど、美鈴さん、来てくれないかな」

 

「はい」

 

美鈴さんは前回代表を務めていた。今回も代表にしようかと思ったんだが、どうも俺の都合が合わない。

 

学校を午後から行くとしても、ライブ終了が11:20。

 

上野駅の近くだから走って5分だとして、そこから10分と考えると、電車は11:35以降。

 

すると、必然的に11:45発高崎行きになる。

 

鴻巣には12:35。学校までは走って10分。12:45となる。

 

じゃあ、その後は。

 

荷物を置いて、プリント印刷、クラスへの掃除指導。

 

これだけで20分はかかる。

 

13:05にはなるだろう。

 

授業開始は13:45。結構ドタバタだ。

 

だから今回は確認役が2人必要になってくる。

 

「美鈴さんはなにやりたい?」

 

「代表とか、書記・庶務とかやりたいです」

 

「分かった。代表と書記・庶務は美鈴さんに任せよう」

 

前回より小さいから、人数もそんなにいらない。最低限ですませたいから、副代表はいらないだろう。セッティングと照明、ステージ強度はいるかも。

 

「西野さん、照明とステージ強度頼めるか?」

 

「はい。喜んで」

 

「じゃあ恋浜さん、セッティング頼むよ」

 

「はい」

 

全員が承諾した。これで役割分担は終わりだ。

 




普段、加速などの式はこうやって求めてます。
今回は例として最高160km/h、加速25cm/sとします
最高速度に達する時間
160÷3600=0.444444444… 約0.4km/s
0.4×100000=4000 4000cm/s
4000÷25=160 160秒
160÷60=2.66666666… 約2.7分
2.7×60=162 約162秒
ということで162秒で最高速度になります。
また、何mで最高速度になるかは
1秒で25cmなので、2秒で50cm。そのため、比例する。比例の式で25×162=4050で、約4050cm。
4050÷100=40.5。約40.5mとなる。
応用として、上野駅前~深谷駅前は約69km。
40.5×2=81 約81m
69×100=6900 約6900m
6900-81=6819 約6819m
6319÷100=63.19 約63.19km
63.19km最高速度で飛行できる。


さて、今回はいかがでしたか?今回から会話文の間に空白を入れて見やすくしてみました!感想は感想欄にて待ってます!
それでは、次回もお楽しみに!アディオス!


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第45話 変更

 俺は学校に行って、朝早くに結構来れた。俺は誰もいないだろうと思い、教室の中に入った。その時

 

「きゃぁぁぁっ!」

 

耳をつんざくような悲鳴が教室内に響いた。俺は教室中を見渡す。端の方で、大地が由月にカッターを向けて脅していた。

 

「大地!何してるんだ!」

「げっ、いたのかよ…」

 

俺はすぐに大地を取り押さえた。周りの先生も気づいたらしく、すぐに6組は騒然とした。

 

「大地、カッターを置け」

「あああっ!」

 

大地はカッターを振り回した。由月に向かって刃先が動く。

 

「由月!」

 

俺は由月の前に来るカッターの刃先を手ではらった。

 

「大地くん、職員室まで来ましょうか」

 

彩が大地を職員室まで連れていく。由月は俺をずっと見ている。周りの先生はみんな彩についていった。

 

「先生、その傷…」

 

俺は今さら傷に気づく。手の甲にある新しい切り傷。そこからは血が今にも垂れそうなほどの量の血が流れている。

 

「あぁ、さっきカッターに当たったからか」

 

俺はタオルを当てて応急措置をする。痛みが後から来て、少し痛む。

 

「由月は怪我ないか?」

「うん。でも、先生が…」

「大丈夫。ちょっと2年生の教室行ってくるね」

 

俺は2年2組に向かう。かりながもうついているはずだ。別に傷に関することではなく、今日の授業に関してだ。

 

「柊くん?どうしたの?」

「今日の3時間目の技術なんだけど、音楽に変わる。そのかわり、金曜日5時間目の音楽が技術に変わるから」

「分かった…」

 

すると、かりなが俺のところに近づく。

 

「おトイレ来て…?怖いの…」

「?あぁ、分かった」

 

俺はかりなについていった。トイレは教師だったら掃除もあるため入っても平気。

 

「怪我してる」

「うん?あ、あぁ…」

「どうしたの?傷」

「さっき、ちょっと切った」

 

大事にはしたくないけれど、多分大事になるだろう。

 

「そうなんだ。タオル取って。治すから」

「え?いいのか?」

「いいからっ、早くしないとみんな来ちゃうよ?」

 

俺はタオルを取ってかりなに傷を見せた。かりなはペロペロ舐める。

 

「月島先生授業すくなくなーい?」

「分かるー、けどイケメンだからその代償じゃない?」

 

女子たちの話し声。入ってきたのか。かりなは急いで近くの中に入った。

 

「かりな、なんでロッカーなんだよ」

 

トイレの中にあったロッカーだった。中は空で、2人ぐらいだったらギリギリだ。

 

「柊くんがどうにかしてよ。先生でしょ?」

「隠れたら出れないだろ」

 

俺は小声で話し続けた。生徒はもう少しで出ていくか?

 

「1時間目なんなの」

「数学。1年3組の」

「朝の会まであと10分。間に合うかな」

 

中学校だがスマホは持ち込み可能。今は8:20。8:45から1時間目。

 

「柊くん、いい作戦があるから、音立てて出るよ」

 

かりなはカウントをして、ロッカーのドアを強く叩いて外に出る。俺も後ろをついていき、ロッカーは閉めた。これでビックリして見れなくなるようだった。

 

「柊くん、昼休み、校庭の隅で待ってて」

「分かった」

 

俺は6組に向かった。6組では由月は泣いていて、周りの同じ班の人や、友達から心配されていた。

 

「月島先生、いいですか」

「はい」

 

俺は上西先生の話を聞いた。

 

「大地くんなんですけど、今日は早退させました。停学にはならないとは思いますが…」

「分かりました。浅雛さんはこちらでどうにかします」

「お願いします。あと、こちら今日の時間割変更です」

 

今日の6組時間割は次の通りだったが、体育の先生が大地の様子を見るため、体育が少し変わった。

  変更前 変更後

1時 国語→国語

2時 理科→社会

3時 体育→理科

4時 社会→英語

5時 数学→数学

6時 英語→数学(江)

数学が2時間続くことになるが、6時間目は江山先生、5時間目は俺が担当。あとは、臨時で3時間目の理科に俺が入ることになり、3時間目にあった1組数学は理科に変更し、上西先生が担当する。そのかわりに1組は6時間目に国語が入っていたが、数学に変更。俺が入る。

 

「みんな、時間割変更です。2時間目の理科が社会、3時間目の体育が理科、4時間目社会が英語、6時間目英語が数学に変わります」

 

こう言うと、やっぱり行ってくる人はいる。

 

「先生、2時間連続で月島先生なんですか?」

「ふっふっふ、6時間目は江山先生になってるぞー」

 

クラスからは「えーっ」の惜しむ声。江山先生どんだけ嫌いなんだよ。

 

「じゃあ1時間目は国語。以上!」

 

俺は3組に向かった。数学の授業だ。明日からは楽になる。今まで数学教師は2人入ってくる予定だったが、廃校になった学校があるためそこから3人数学として入ってくる。2年生音楽ももう1人入ってくる。だから俺は1年生の音楽担当になったんだけど。明日からは休みの時間がある。

 

「おはよう!気持ちが楽になる先生です!」

「明日から先生新しくなりますもんね!」

「そう。俺虫苦手だから、理科は植物担当な」

 

俺はそういって、授業を始めた。文字式の始まりだ。

 

 4時間目まで終わって、俺は給食班のアミダくじを始めた。今日の班はどこだろう。

 

「5班か」

「………」

 

結構大人しい班だな。ここは1人だけ男子がいるけど、どうやら給食時は男女で分かれるらしい。俺はそこに座った。



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第46話 優しさ

今回の登場人物
月島柊
立川絢梨
ミナト
以上3名


 俺は家に帰ったあと、ゆっくり休もうと思っていた。今日は1人で帰ってきたため、誰か外で待っている。

 

「おかえり」

 

絢梨だった。なんであんなにひきこもっている絢梨がここに。

 

「どうした、外に出て」

「…一緒にねy…勝負しよ」

 

何を言いかけたのか分からないけど、勝負か。

 

「いいよ。仮想世界だよな」

「うん。絶対勝つ」

 

俺は仮想世界に転移した。サンドスペニアの真ん中で行う。

 

「スタート」

 

2人同時に突っ込んだ。強い力で弾き返されるが、お互い様だった。俺は地面を蹴って絢梨に向かった。絢梨が来たから無理だと思い、俺は止まった。絢梨の剣が当たると、俺は後ろに飛ばされた。絢梨の剣には残像が残る特徴があった。残像にも機能があり、その剣によって変わる。火の剣だったら火が残る。

 

「うっ…」

 

俺はすぐに立とうとするが、絢梨がもうすぐ目の前にやってきていた。

 

「私の勝ち」

「どうだろうな」

 

俺は絢梨から離れた。股の下を通り抜けたのだ。

 

「私が勝つ」

 

絢梨は俺より速く突っ込んでくる。まずい、このままだと…

 

「やぁっ!」

 

絢梨の剣で俺のHPは減っていった。

 

「俺の負けか。強かったよ、絢梨は──」

 

俺は絢梨にキスされた。茶色の髪がふわりと柔らかくなびいた。

 

「キスしてるとこ悪いんだけど、茶色の髪の人、戦わないか」

 

ミナトだった。絢梨は最初、結構余裕そうだったが、急に弱気になって俺に抱きついた。

 

「無理。強そう。怖い」

「大丈夫だよ。何かあったら助けるから」

「…じゃあやろう」

 

ミナトは微動だにせず、絢梨はいきなり突っ込んでいく。ミナトはギリギリで回避してジャンプ。絢梨が下に転ぶ。

 

「痛い…」

 

ミナトが上から剣を下ろそうとする。絢梨は力を入れて剣を剣でガードした。

 

「なかなかやるなっ!」

 

ミナトが力強く剣を下ろす。絢梨の剣は折れてしまい、剣が中に進む。俺は魔法でいかないようにする。

 

「シールド」

 

ミナトの剣をガードし、絢梨に当たらないようにした。

 

「ミナト、やりすぎ。剣を破壊するシステムとか使うなよ」

 

武器破壊システムコマンド。使用する人は少ない。

 

「ごめんよ、本気になっちゃった」

 

絢梨は黙って俺にぶつかる。絢梨は俺の腹に頭を当てて何か言っている。

 

「私、弱かった」

「え?」

 

絢梨が弱音を吐くなんて珍しかった。

 

「私、弱かった。これじゃ、柊くん守れない」

 

守るために強くなったんじゃないだろう。

 

「本当の目的はなんだった」

「…強くなって、絢香とかに見せたかった」

 

でも、強くなくなったと。

 

「これが私の実力。もう、剣を使うのやめる」

「え、嘘だろ?」

「本気。やめる」

 

絢梨は現実世界に帰っていってしまった。剣を作ってもらえなくなるのは辛い。

 

「…やめる、か」

 

俺はその言葉がどれだけ重要か思い知らされた。俺は絢梨に頼ってばかりだった。そんなこと、分かっていた。でも、俺はやめなかった。あの時気付いていたらどうだっただろう。俺が剣を作らせたから絢梨は強いと思い込んでいたんだ。

 

「ごめんよ、絢梨」

 

俺は空に魔法を放った。

 

【立川絢梨視点】

 

 私は自分が弱いのを知って、帰ろうとした。サンドスペニア北部の帰還装置から帰ろうとしたそのときに、私は思った。逃げたら弱い。弱者に成り下がる。

 

「戻らないと」

 

私は来た道を引き返した。その途中、空に上っていく何かが見えた。

 

「なにあれ…柊くんの魔法?」

 

位置的にあっていると思う。どうして空に魔法なんか。色は…赤?火の魔法。体に当たると現実世界に影響を与えるけど、空に?

 

「落ちてきてる!」

 

柊くん、もしかして自殺しようとしてる!?

 

「ばかっ!」

 

私は全速力で走った。お願い、間に合って…

 

【月島柊視点】

 

 俺は絢梨のことを信じて真上に有害使用警戒魔法、通称NBMを使用した。NBMは魔法使いのみが使用を許可される魔法。現実世界に影響を及ぼす魔法。

 

「来るよな、絢梨」

 

俺はそのまま放っておいた。すると、水色の水剣が頭上を通り抜け、水の残像が残った。と言うことは絢梨か。

 

「柊くん、危ない」

「そう来るとは思ったよ。絢梨は優しいな」

 

俺は絢梨を抱き上げた。

 

「わっ」

「ほら、飛ぶぞ」

 

俺は飛んだ。絢梨は普段いない高さに驚いている。

 

「普段いつもこの高さなの?」

「ほとんどね。さて、絢梨。楽しいとこ行こうか」

 



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第47話 計画

今回の登場人物
月島柊
月島暁依
月島冬菜
月島香奈
月島藤花
月島風那
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
月島彩夏
立川絢梨
佐藤麗波
以上12名


 俺は絢梨が楽しみそうな場所に連れていった。といっても、まだ準備中なんだけど。エリアはサーリートから北西に進んだところにあるエリア、「アベントネッドシティ」。日本語で「廃都市」。このエリアを対人戦(デゥエル)エリアに変更する。

 

「え、何ここ…!」

「対人戦専用エリア。もう少しで出来るんだけど、まだ結界を張っている途中だな」

 

多分明日には出来ているだろう。今のうちにメンバー召集やっておきたいな。妹は行けるだろ。

 

「じゃあ、今度の土曜日にでも来ようか」

「うん。速く戦いたい」

 

俺と絢梨は現実世界に帰った。帰ってすぐ、俺は妹8人に連絡を取った。

 

〈土曜日あいてるかな、今度の〉柊

〈空いてるよ。なんかするの?〉瑞浪

〈仮想世界で対人戦のパーティ組んでほしい〉柊

〈え、お兄ちゃんのパーティ…?〉冬菜

〈私は行くよ!〉瑞浪

〈私も〉かりな

〈Mee too〉彩夏

〈行くよ。冬ねえ行かないの?〉香奈

〈みんな行くと思うよ〉藤花

〈私行く。楽しいと思うし〉風那

〈ということで、冬ねえも行くよね〉沙理華

〈しょうがない…行ってあげるわよ〉冬菜

〈ったく、冬菜。素直じゃないなぁ〉暁依

〈んなっ!ってか何であきにいが居るのよ!〉冬菜

〈いちゃ悪いかよ〉暁依

〈そうだよ。いてもいいだろ〉柊

〈うぅ…それで、今度の土曜日ね!〉冬菜

 

俺は暁依のコチャで連絡を取り合った。

 

〈話題変えたよな〉柊

〈だよな〉暁依

 

俺はまたグループチャットに戻った。

 

〈土曜日どこ集合?〉沙理華

〈君らって今どこいるの〉柊

〈山形県山形市?〉沙理華

〈私と冬ねえ、それに香奈も同じだよ〉風那

〈私大宮にいるよ〉瑞浪

〈中3が大宮にいていいのか〉暁依

〈別にオンライン授業受けてるし、それに警備の人もいるから大丈夫〉瑞浪

〈VIPみたいだな〉柊

〈そお?〉瑞浪

〈それで、どこ集合なのよ〉冬菜

〈山形と大宮の間取るんだけど、彩夏遠くないか?〉柊

〈柊くんもでしょ〉彩夏

〈私同居だし〉かりな

〈じゃあ一緒に行くか?〉柊

〈俺の存在は?〉暁依

〈あ…〉柊 彩夏 かりな

〈忘れてましたかそうですか〉暁依

〈違うよ!じゃあ、一緒に行こ!〉彩夏

〈そうだね。分かったよ〉暁依

〈これでパーティ10人な訳だけど、周りは多分200人とかいるぞ〉柊

〈知り合い全員呼ぼ!〉かりな

〈俺が知らないとダメだろうが〉柊

〈中学校の2年生!〉かりな

〈たしかに知ってるか。何人くらいだ〉柊

〈多分3人は呼べる〉かりな

〈じゃあ呼んでおいてくれ〉柊

 

あとは誰呼ぼうかな…胡桃となぎ、それに絢梨もいて、あーやは無理かな。じゃあ16人か。

 

〈16人になるけど、あと84人はほしいよな〉柊

〈彩ちゃんと春菜ちゃん呼べばいいじゃん〉彩夏

〈82人余るじゃないか〉柊

 

あ、紅葉。あいつも呼べば…あと織音!ミナトと柚木、ゆかりもいけるから、77人余る。

 

〈柊くん!土曜日友達10人来れるって!〉かりな

〈えっと、こっちも5人呼べる。だから残り70人か〉柊

 

30人いたら十分なのかな。そういえば、あそこのエリア定員何名?

 

「絢梨、さっきのエリア定員何名って書いてた?」

「1グループあたり100人まで」

 

100人か。半数はほしい。

 

〈悪いな、100人までしか入らないから、あと20人でいいと思う〉柊

 

その時、電話が鳴った。相手は麗波だった。

 

「麗波?どうしたんだ」

《ごめんね、こんな時間に。絢梨ちゃんから土曜日仮想世界行くって聞いたから、私もって思ったの》

「いいよ。是非来てくれ」

《やった!じゃ、土曜日ね》

 

麗波も来るのか。結構調子よく集まってるな。

 

〈柊くん〉絢梨

 

絢梨とのコチャだった。

 

〈望も来たいらしいんだけど、いい?〉絢梨

〈いいよ。あと18人〉柊

〈私も入れた?〉絢梨

〈もちろん〉柊

 

18人だったら簡単に来るだろう。

 

 そう思っていたが、全く集まらない。まだ18人余っているのだ。もう知り合いなんていないし。

 

「あ、浅雛たち…」

 

浅雛たちはまだ呼んでなかったな。明日学校に行ったら話してみよう。俺はそう考えて、今日はもう眠った。

 



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第48話 冬ねえ

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
月島冬菜
浅雛由月
夢川菜晦
葉野香苗
花菜野三久
音奏風奈
新メンバー3名
以上11名


 俺が学校に来ると、2年生の3人が俺を取り囲んできた。全員女子。1人はたしか2年4組、もう1人は2年1組?じゃああと1人は…

 

「私、佐々木(ささき)(すずめ)です。2年4組何ですけど、覚えてますか?」

「私は氷河(氷河)刹那(せつな)っていいます。2年2組で、かりちゃんから誘われました」

月野(つきの)ゆい。私たち、かりなちゃんに誘われて、今回会いに来たんです」

 

そうだったのか。じゃあこの3人は一緒に行くんだな。

 

「よろしくお願いします!」

「よろしくね」

 

俺は教室にもどり、由月たちに聞いた。

 

「今度の土曜日、仮想世界来れる?」

「柊くんといれるの?行く行く!」

「私も行く!」

 

三久と由月はすぐに言ってくれた。あとは菜晦、香苗、風奈だ。

 

「行くよ!みんな」

「ありがとう」

 

みんな俺に飛び付いてくる。俺は周りに気づかれないように数学資料室に行った。

 

「ぎゅーっ」

「あ、私課題残ってるから。じゃあね!」

 

残されたのは三久と俺だけ。静かな室内だ。

 

「ぎゅーっ!」

「戻ったよ。ぎゅってしよ」

 

風奈と三久は俺にハグする。

その時、ドアが開いて、話し声が聞こえた。

 

「コンパスどこあったかな」

 

2年生の数学の先生だ。気付かれてはまずいと思い、俺は後ろのロッカーに2人と俺は入った。

 

「ぎゅうぎゅう詰めだねー」

「そうだな。嬉しいか」

「すっごく!」

 

俺は静かに会話した。さっさと出ないとまずいな…

 

「出たか…」

 

俺たちはロッカーから出た。今は8:05。1時間目は

「あれ、今日の1時間目なに?」

 

水曜日だから…英語か。

 

「英語だろ。数学は2時間目」

 

1時間目は1組数学、2時間目は6組数学。

 

 全ての授業が終わり、18:00に部活が終了。俺は正門を出る生徒を見送り、18:10、最後の吹奏楽部が出て完全終了。俺は職員室に戻り、完全下校時刻を記入した。

 

「18:10か。昨日より5分早いな」

 

俺は学校内の電気を全て確認しに行った。ついているのは音楽室と、音楽室側の階段くらいだろう。

 

「電気消灯」

 

音楽室側の階段も電気を消した。懐中電灯を持って1階から5階まで見て回った。

 

「全部消えてるな」

 

俺は学校を出て、鴻巣駅に向かった。学校を出たのは19:10で、鴻巣駅には19:25。俺は次の電車を待った。2番線からの19:17発普通籠原行き。2分前に19:15発特急スワローあかぎ3号本庄行きが出発するため、3番線ではなく2番線から。

 

「まもなく、2番線に、普通籠原行きがまいります」

 

19:12、電車が入選してきた。俺は7号車に乗った。深谷駅で1番階段に近い号車が7号車1番ドア。進行方向1番後ろのドア。

俺が席に座ると、目の前で女性が転びそうになっていた。

 

「ひゃっ」

「おっと」

 

俺は咄嗟に手を出した。

 

「大丈夫ですか」

「ありがとうございます」

 

女性が俺の顔を見たとき、俺はハッとした。

 

「え」

「あ」

 

その女性は俺を見て少し顔を赤くした。

 

「お兄ちゃん!?」

「冬菜…なんでここにいるんだよ」

「かりなに言ったよ!今日お兄ちゃんの家行くよって」

「聞いてないぞ、そんなの」

 

かりな…教えてくれてもよかったじゃないか…

19:17に出発し、冬菜と俺はロングシートに隣り合って座っていた。

 

「…お兄ちゃん…トイレ…」

「トイレ?隣の号車にあるぞ」

「そうじゃなくて…歩けないから…おんぶして…」

 

もう大学も卒業だろ。ほとんど行ってないらしいけど。俺は6号車まで冬菜をおぶっていった。

 

「覗かないでよ!」

「鍵閉めればいいだろ」

 

俺は7号車に戻った。ロングシートでたった1人で座っていた。ずっと座っていると、疲れで眠くなってきて、俺は寝てしまった。

 

【月島冬菜視点】

 

 私がトイレから出るともうお兄ちゃんはいなかった。まだ目的地についてないから降りてないはず。私は7号車に戻った。そこではお兄ちゃんが寝ていた。

 

(そっか…平日に家にいなかったってことは仕事だもんね。疲れてる時におぶってもらっちゃってごめんね、お兄ちゃん)

 

本音は声に出せない。だって恥ずかしいし。私はお兄ちゃんの隣に座った。

 

「お兄ちゃん、疲れてるよね」

 

私は深谷駅に着いたら起こすしかないけど、それまではゆっくり寝かせておいた。

 

 私は深谷駅の少し手前でお兄ちゃんを起こした。

 

「お兄ちゃん、起きて」

「ん?あぁ…冬菜…」

 

私はお兄ちゃんの少し後ろを歩いていた。そして、改札外のベンチに座らせた。寝ちゃうはず。私はコンビニで飲み物を買って戻ってきた。予想通り、お兄ちゃんは寝ていた。

 

「よいしょっ」

 

私はトイレに連れてってくれたお礼にお兄ちゃんをおんぶした。

 

(結構重い…けど、太ってる訳じゃなくて、筋肉なんだよね。たくましい)

 

私はちょっと大変だったけど家まで運んでいった。

 

(お兄ちゃん…待っててね)

 

私は少し急いだ。

 

 家に着くと、ドアを開けて、かりなに言った。

 

「冬ねえ!着いたんだ!」

「うん。それで、お兄ちゃんを寝かせてあげたいんだけど」

「だったら冬ねえの部屋でいいじゃん」

 

ええ…私が使う部屋に?

 

「じゃあ連れていくから、案内して」

 

かりなは前を歩いて部屋に招き入れた。

 

「お兄ちゃん…失礼しまーす」

 

私はお兄ちゃんの布団の中に入った。

 

「あれ、眠くなってきちゃった…」

 

私はお兄ちゃんに抱きついて寝てしまった。

 



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第49話 就任

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
以上2名


 俺は駅前のベンチで寝てしまい、その後はずっと寝てしまっていた。俺が目を覚ますと、そこは見たことのない部屋だった。横には俺を抱き締めている冬菜がいて、冬菜が家まで運んできてくれたんだろうと思った。時間はまだ21:00。俺は胡桃を呼んで、歯を磨かせた。動けないからしょうがない。

 

「全く、こき使っちゃって」

「しょうがないだろ?動けないんだから」

「はいはい。じゃあ私の言うことも受け止めてよ?」

 

歯磨きが終わると、ゆっくり冬菜の手を胡桃が退け、うがいしに行った。胡桃はそれが終わると、「おやすみ」と言ってキスした。

 

「おやすみのチュー」

「じゃあ俺もだな」

 

お返しのキス。そのあとハグしてしばらくいた。

 

「なかなか寝に行かないねぇ」

「胡桃とハグしたら離れられなくなった」

「柊くんったら♪最近話さないなーって思ったら、急に甘えるんだから」

「いいだろ、別に」

 

急に恥ずかしくなって俺は言った。

 

「いいよぉ」

 

まだしばらくハグしていた。

そして、気づくと15分以上ハグしていた。

 

「じゃあ寝に行こっか。私と寝る?」

「そうしようかな」

「じゃあ行こっか」

 

俺は胡桃と一緒にベットに入った。ベットでは一緒にハグしあったり、たまにキスしたりした。

 

「柊くん、私のこと好き?」

「嫌いって言ったら?」

「泣いちゃうよ?」

 

胡桃は目をうるうるさせた。泣いてもらっちゃうと困るし、嘘ついて泣かせたくないし。

 

「大好き」

「そっか。じゃあ伝えれる」

 

胡桃は俺に顔を寄せて言った。

 

「私、最近帰るの遅かったじゃん?」

「そうだね。どうかしたのか」

「お仕事辞めたの。その変わり、柊くんの学校の先生に、1週間前からなってるの」

 

学校の先生?俺の学校の?なんでそんな。しかも会ってないし。

 

「ただ休暇してただけなんだけど、江山先生、副担任大変って言うから、柊くんのクラスの副担任になったの」

「へぇ、担当教科は」

「1年数学。柊くんのお手伝い」

 

胡桃は俺の頬をペロペロ舐めてくる。

 

「明日から一緒に通勤か?」

「そゆこと!大好きな柊くんのとこにいれるよ!」

 

俺はとても嬉しかった。俺の人生に胡桃は不可欠だから。胡桃のような人がいてくれれば俺はいい。

 

「にゃーお」

「胡桃?猫のまねしなくてもいいぞ」

「?してないよ?」

 

いやいや、さっき猫の鳴き声したし。

 

「にゃーっ」

 

小さな舌が俺の頬と首を舐める。胡桃の舌の大きさじゃない。俺が舌を見ると、そこには

 

「ねっ、猫!?」

 

本物の猫だった。黒猫で、ピンクの舌と、ほんのり白とピンクの耳。

 

「んぐにゅぅ…」

「どうしたんだ?」

 

俺が撫でていると、急に煙が出て、煙が止むとそこには全裸の美女がいた。全裸だが、恥じらいは何もないし、なんか猫耳がある。

 

「ええっ!」

「久しぶりですー」

 

いや誰だよ。俺は突っ込みそうになった。

 

「えっと、どちら様で」

「新幹線の中の美女ですよ」

 

新幹線?あ、もしかしてあの時の

 

「手が柔らかかった人?」

「そうそう!久しぶりだったね。私、猫と人間のハイブリット?みたいなんだ」

 

肉球みたいな柔らかさって、本当の肉球だったのか。

 

「あ、服着るね」

 

美女は持っていた黒のパーカーを着た。すぐにフードを被って、俺をペロペロ舐めた。

 

「なんか眠い…」

「その前に、離れるのと、名前は」

「美沙。猫塚美沙」

 

胡桃は俺の片方に潜ってくる。美沙は床で寝ることになったらしい。

 

「あ、そうそう、俺、月島柊な。なんか魔法使えるか?」

「大得意!仮想世界ではケットシー魔術師って呼ばれてたよ!」

「じゃあさ、土曜日に宇都宮駅前来てくれ。それまではホテルに泊まってなさい」

 

美沙は窓から猫になって出ていった。胡桃はやっと出ていったかのように俺に抱きついた。

 

「胡桃、あの──」

 

胡桃はもう寝息を俺にかけて寝ていた。もう疲れてたか。

 

「おやすみ。頑張ろうな、明日から」

 

俺は胡桃に抱かれたまま眠った。

 

 俺は翌日、混んでいない少し早めの電車で鴻巣に向かった。いつもは6:54平塚行きだが、少し早い6:37発大船行きに乗った。座れこそしなかったが、熊谷に着いてもドアに壁ドンするくらいで済んだ。

 

「空いてるね」

「時間が早いし。そういっても上野には8:05だからラッシュの電車だぞ」

 

俺は胡桃の両方に手をつきながら言った。

熊谷から先で乗ってくる駅はなく、混雑は変わらないまま鴻巣に着いた。

 

「学校行くぞ」

 

俺は胡桃と手を繋いで学校へ。学校に着くと、俺は早速6組に入った。胡桃もやってきて、木曜日の時間割を見た。

 

「1時間目は1組数学だな」

「1番最初の生徒が来る時間って何分くらい?」

「大体早い人は7:45とかに着くから、あと10分」

「そっか。じゃあ…密着できるね…」

「何を言ってるんだ、黒板に挨拶書いてないじゃん」

 

胡桃と俺で書き始めた。そして、2人で分担して進めることにした。今週からは1年数学が5人いるから結構楽。

 

「1時間目は俺が行く」

「2時間目は休んでて。私が行くから」

「3時間目は6組だから俺が」

 

3時間目までと、6時間目が7組。せっかくだったら2人で行くか。

 

「2人で行こうか。6時間目」

「そうしよ!」

 

俺たちは話し合いが終わると、すぐに各自のところへ向かった。



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第50話 対人 1日目

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島暁依
月島冬菜
月島香奈
月島藤花
月島風那
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
月島彩夏
白雪凪沙
浅雛由月
夢川菜晦
葉野香苗
花菜野三久
音奏風奈
佐々木雀
氷河刹那
月野ゆい
織音琴葉
ミナト
柚木
ゆかり
ユウキ
猫塚美沙
以上26名


 俺は胡桃から先に帰っているように言われ、先に家に着いた。冬菜が起こった目付きで俺を見つめている。

 

「どうして寝てくれなかったの!」

「あ、寝た方がよかった?…兄だから好きなのか」

「はぁ!?バカじゃないの!そ、そんなわけないでしょ!」

 

もう好きなのがバレバレだよ。そんなに赤くなって言うことじゃないし。

 

「じゃあ寝れないな」

「うぅ…じゃあ今ハグしてくれたら許してあげる」

 

俺は冬菜に抱きついた。冬菜は頬をつけてくる。絶対わざとだ。

 

「はい!終わり!」

 

冬菜が俺を突き放した。そして、部屋に走って行ってしまった。

 

「柊くん、ほっぺた触る?」

「いいや、別に」

 

なぎが言ってきたことを拒否するのは悪いけど、頬を触りたい訳じゃない。

しばらくして、胡桃が帰ってきた。胡桃はまるで迷子の子どものように泣いて帰ってきた。

 

「どうした!胡桃」

 

胡桃はゆっくり頭を俺に当てる。

 

「ごめん…私、こんな体質になってるみたい」

「…どんな」

「柊くんがいないと、泣いちゃう…」

 

だったらそばにいればいい話だ。俺は胡桃の頭を撫でた。

 

「胡桃、大丈夫だよ。俺がいるから」

「でも…寝たりとか…」

「一緒に寝よう」

 

胡桃は泣き止み、俺をぎゅっと抱き締めた。

 

「お願いね」

 

 

 土曜日、俺は運転見合わせ明けの高崎線で大宮へ。大宮からは宇都宮線だ。7:15発が5分遅れ。前の電車が運休なのもあり、平日以上に混んでいた。俺と胡桃ははぐれないように抱き合い、冬菜は手を繋ぎ、かりなと彩夏は俺に抱きついていた。

 

「混んでる…満員電車だぁ…」

「けどもう慣れたろ?」

「うん」

 

俺は大宮まで乗っていた。

 

 宇都宮には10:00、7番線に到着した。西口に出て、俺は妹たちを探した。

 

「お兄ちゃん!こっち!」

 

いたのは瑞浪。1本前の電車で着いてたんだろう。あとは由月たちと、5人の妹たち。暁依も来てないし。それに、美沙も来ていない。

 

「にゃーっ」

「美沙か」

 

俺は歩いてきた猫を持ち上げた。すぐに人間に変わり、黒い猫耳フードの女性になる。

 

「おはよ?」

「微妙な時間だよな」

 

約20分後、4人を乗せた新幹線が着き、4人が外に出てきた。

 

「お兄ちゃん」

「あと9人か」

 

すると、階段の下から1年生5人が上がってきた。となりにいるのはお母さんだろうか。

 

「お世話になります」

「はい。任せてください」

 

お母さんは観戦するようで、一緒に待っていた。そこに、雀、刹那、ゆいがやって来た。

 

「こんにちは、先生。あとかりちゃん」

「頑張ろうね!」

 

これであとは暁依だけだ。

10分待っても来ないと思っていると、後ろから暁依が走ってきた。

 

「ごめん、東武宇都宮線乗ってきた」

「JR宇都宮線乗ってこいよ…」

 

俺たちは仮想世界に転移した。そして、アベンドネッドシティに向かった。水色の結界が張られていて、火炎魔法でもいいことになっている。

 

「よし、今回は妹10人、なぎ、絢梨、胡桃、美沙、学校8人、あとはそこにいる琴葉とミナト、柚木、ゆかりの合計26人。他のグループの人数は分からないが、勝てるように。あと、全員の名前をタメ口で、名前の呼び捨て、もしくはちゃん、くんづけで呼ぶ」

 

そうした方が分かりやすいし。俺なんて尚更だ。双子もいるし、声も似てるから「お兄ちゃん」で呼ばれると何がなんだか分からない。ただ、「柊くん」で呼ばれると、人それぞれ音程が違うから分かる。

 

「はーい!じゃあ、武器準備しよ!」

 

魔法担当は月島家が多い。暁依は魔法、銃、剣の両立だけど。学校8人は武器をもう決めていて、グループ名まで決めていた。

 

almighty(オールマイティー)28(トゥエンティーシックス)!」

「オールマイティーな26人って意味で」

 

結構しっくりくるグループ名だ。もう織音も合流してるし、始めるか。

 

「えぇ…と」

 

俺は少しためて言った。

 

「almighty26行くぞ!」

『おーっ!』

「待って!」

 

後ろから俺を呼び止める声。それはユウキだった。

 

「ユウキもするか?」

「するさ!もちろん」

 

ユウキを含めた26人は結界のなかに入って行く前に、ルールを確認した。

 

「俺たちのリスポーン位置はここになる。一回死ぬとリスポーンはするけど、そのあとすぐに透明化して観戦になるから気をつけて。攻略中は別拠点を置くのは可能。ただし、妨害するようなものは不可。じゃあ行くぞ」

 

almighty26は結界の中に入っていった。

 



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第51話 対人 2日目

今回の登場人物
月島柊
月島暁依
月島冬菜
月島香奈
月島藤花
月島風那
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
月島彩夏
浅雛由月
夢川菜晦
葉野香苗
花菜野三久
音奏風奈
佐々木雀
氷河刹那
月野ゆい
織音琴葉
ミナト
柚木
ゆかり
月島紅葉
以上27名


 俺たちは中に入り、まず飛行できる人だけ飛行した。飛行できるのは俺とかりな、胡桃くらいだ。

 

「周りに敵はいないな」

「この辺に取っちゃう?」

「そうしようか」

 

俺は下に降りて伝えた。

 

「この辺に拠点置いちゃおう。仮拠点でいいから小さくね」

 

みんなは元々ビルだった場所を拠点にして、旗を立てた。仮拠点はこれで完成。

 

「できたな。じゃあ早速攻めに行くか」

 

26人全員でまず1つめのグループを探した。探知機によると、150m先にいるらしい。

 

「琴葉、いけるか」

「任せて!」

 

銃を構える。最初の1発は予測線がでない。

バンッ

銃弾が飛んでいく。探知機の敵マークは1つなくなった。

 

「いいぞ。当たった」

 

俺たちは先に進んだ。探知機には複数の敵マーク。すると、予測線がこっちに50以上が向いてきた。

 

「伏せろ!」

 

俺は前にいた瑞浪を押し倒して伏せた。

 

「柊くん…ありがとう」

「いいよ、別に」

 

しばらくすると、銃弾が無数に飛んできた。

 

【月島瑞浪視点】

 

 私はお兄ちゃんの柊くんに押し倒されて、なんかドキドキしていた。ドキドキというか、ムラムラ?なんか抱きたくなってきちゃった。

 

(今戦闘中だもんなぁ。ダメかな…)

 

けど私はどうしても我慢できなかった。

ぎゅぅっ

私は柊くんを強く抱き締めた。

 

「瑞浪!?どうしたんだよ!?」

「当たっちゃうから。くっついてて」

 

ホントは違う。ただ抱きついて、密着したかっただけ。

 

「そうか。なら助かる」

 

柊くんは私に抱かれたまま伏せていた。

しばらくすると、離れてしまった。もう前に進んでいった。私は後ろをついていった。

 

【月島柊視点】

 

 俺は1番先頭を歩いていく。本拠地を建てた方が効率がいいだろうし。けど、この先に敵がいるっぽい。

 

「琴葉」

「ん?」

「いい作戦がある。暁依も」

 

俺は琴葉と暁依に耳打ちした。この作戦はうまくいくだろう。

 

「さて、全員止まって」

 

俺は静かに待った。人数的にだれか2発目を打つはずだ。2発目からは銃弾予測線が出る。

2分くらいして、銃弾予測線が出た。すぐに避けて、作戦開始。

 

「襲撃!」

 

暁依と琴葉は銃を連射し始める。弾数は無限。どんどん連射していく。

 

「そういうことね!」

 

柚木が弓をいり、魔法が俺以外の8人から発動させる。そして、全員が発動させたのは、火炎魔法だった。

 

「襲撃完了!やめて進もう」

 

みんなが進むと、そこには焼け果てた土地が広がっていた。

 

「これで俺たちもけっこう有利だな」

「本拠地作ろう!」

 

由月が言った。そうだな、もうそろそろ作る時期か。

 

「作っとこうかな。じゃあ警備は俺と誰やる」

「俺がやっとくよ。悪いんだけど、ユウキもいいか?」

 

暁依が言った。ユウキも「いいよ」と言って、警備は3人になった。それ以外は本拠地の建築に取りかかっている。

 

「警備って言っても来ないしな」

「そうだよな。暇でしょうがない」

 

誰か来るんだったらいいんだけど、来ないし。

こっ こっ

誰かの歩く音。通に敵が来たか。俺と暁依は戦闘準備をした。ユウキは裏の警備。

 

「ふぅ…あれ、柊くんいたーっ!」

 

紅葉だった。俺は構えていたのを戻した。

 

「なんだ、紅葉か。なんでいるんだ」

「なんでって…呼んでたじゃーん!」

 

あれ、そうだったかな?覚えてないな…

 

「悪かったな。忘れてたよ」

「もう、忘れないでよ」

 

俺は紅葉を横に立たせて、警備を続けた。拠点も出来上がると、俺は早速拠点の中に入った。3階建てで、3階に上がった。

 

「ここから狙撃できない?」

「さぁ?俺銃使わないから射程距離とか知らん」

 

一応ここから狙うことはできるはずだ。下に敵がいたら上から撃てる。俺が窓から外を見ると、光っているものが見えた。

 

「へぇ…ん?なんだ、あの光ってるの」

「ん?どれどれ?」

 

琴葉が外を見た。琴葉は銃を使っていることもあって視力はかなりいい。

 

「対物狙撃用銃M24 SWSかな。射程は800m。ここから多分距離600だから全然届く」

「作ってるときからいたんかな」

「多分ね。あ、M40もある。1000mだから…」

 

琴葉は小さな声で言う。よく見ると、剣だって複数ある。blackswordが主体の、合計で剣士が15人、スナイパーが10人。

 

「柊くん、予測線来ないから気をつけて」

「分かった」

 

俺は琴葉に言われて警戒していた。

その時、下から声が聞こえた。

 

「来ないで!いや!」

 

俺は螺旋階段の真ん中から飛び降りた。下では襲撃が起きていた。襲撃されていたのだ。

 

「freezing!」

 

俺は氷結魔法を発動させた。そのあと、動けなくなったところに琴葉がハンドガンで撃つ。

 

「どうしたんだ、みんな」

「急に奇襲かけてこられて…」

 

多分あのグループだ。この辺を囲んでいるんだろう。

 

「早めに倒さないとな」

「そうね」

 

俺と琴葉はニヤリと笑った。

 




almighty27に変更ですね


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第52話 していいこと

月島柊
月島暁依
月島冬菜
月島香奈
月島藤花
月島風那
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
月島彩夏
浅雛由月
夢川菜晦
葉野香苗
花菜野三久
音奏風奈
佐々木雀
氷河刹那
月野ゆい
織音琴葉
ミナト
柚木
ゆかり
月島紅葉
以上27名


 俺と琴葉がニヤリと笑った理由。それは、さっきの場所から狙撃するからだった。射程は琴葉が教えてくれたおかげで、800m~1000mの範囲が届くことが分かった。

 

「あ…」

 

琴葉は唖然としていた。俺がその先を見ると、そこには張り紙が大量に貼られていた。内容は、血の色で「死ねばいいのに」「早く諦めろよ」などだった。力勝負でなく、精神的に削っていくパターンだ。俺はこんなことはされたことがない。ただ、気持ちは分かる。

 

「琴葉…分かるよ、気持ちは──」

「嘘つけ…」

 

琴葉は低い声で言った。

 

「え?なんて」

「嘘つけ。分かるはずがない」

「どうしてそう思うんだ」

「実際に書かれたことそのままだから」

 

琴葉はその場に立ち尽くしたまま動かない。

 

「俺にも少しくらい分かる」

「分かんないじゃん。もう辞めてよ」

 

俺は琴葉が持っていたハンドガンで撃たれた。仲間同士の攻撃もありになっている。だけど、こんなことで。

 

 俺は瑞浪とかりなの回復によってどうにか生き延びた。琴葉はそのあと1人でグループに挑みに行ったらしい。20分前に出ていってから、一切連絡はないらしく、みんな心配していた。

 

「大丈夫か、琴葉」

「生きてるとは思うけど」

 

その時、入口から琴葉が入ってきた。入ってきてからの第一声は「ただいま」ではなかった。

 

「ごめんなさい」

 

琴葉は深々と謝った。

 

「待て待て、謝ることなんてあったか?」

「私…柊くんを撃ったから…」

 

琴葉はこれまでにないほど深くお辞儀をした。

 

「いいって。俺が気に障ることしたんだから」

「でも、柊くん…じゃあ、これで晴らす」

 

琴葉は正座で俺を見た。え、土下座ですか?いやいや、そんなことしなくても…

 

「こっち来て」

 

膝枕ってこと?いやいやなんでそうなったの。俺はそう思いつつも膝に頭を乗せた。

 

「これで気分晴れたから。あと、私、もう1つ謝んないと」

「なんだ」

「敵が逆上しちゃって、こっちに向かってきてる」

「戦いがいがあるってことだろ?」

 

俺は立ち上がって窓から外を見た。なるほど、走ってこっちまで来てるのか。って、ん?あれ確かに敵は敵だけど、スナイパーと剣士がいるグループじゃない。

 

「あのグループじゃないよな」

「うん…逃げてる?」

 

そのグループはこっちに走ってくる。逃げてるのかな。

 

「一応下に行ってみる?」

「そうしようか」

 

俺と琴葉は1階に降りてドアを開けた。すると、さっきのグループが土下座して頼んできた。

 

「お願いします!攻撃しませんから!」

「ここは柊くんね」

 

琴葉は小声で言って中に戻った。

 

「落ち着いてくれ。敬語もいらない。どうしたんだ」

「はい、先ほどからスナイパーと剣士のグループが追ってきておりまして、逃げてきた」

 

やっぱり逃げてきたか。確かに無理はない。

 

「そして、助けを求めに来た」

「なるほど。いいよ、助けよう」

 

俺は中に入ってみんなを呼び出した。

 

「戦闘だぞ」

「はい!」

 

みんなは外に出ていく。グループは俺たちを待っていて、礼儀正しかった。

 

「えっと、申し訳ないんだけど、倒しちゃうかも」

「え、あ、いいよ」

 

俺はみんなに手で指示を送り、敵の襲来を待った。

5分で急な襲来が来た。俺は魔法で弱い敵を先に倒した。全員強く平等だからか、あんまり倒せなかった。

 

「があぁっ」

 

敵が剣で斬ろうとする。俺はシールド魔法で防ぐ。

 

「こいつら…狂ってやがる…」

「たあぁっ!」

 

暁依が敵を倒しに行った。前衛メンバーだからか攻撃力は高い。

 

「暁依!気を付けろよ!」

「分かってる!」

 

暁依は次々と倒していく。俺も魔法で次々に倒す。

 

「柊くん!回復!」

 

俺のHPが回復する。剣士はほとんど全滅だが、スナイパーでもない奴が1人いた。その1人はなんらかの瓶を開け、煙が出た。

 

「が…っ!」

 

俺は息を止めた。暁依も息を止めている。そんな中で、彩夏とかりなだけが止めていなかった。

 

「暁依、大丈夫か」

「吸ってないから大丈夫。ただ、彩夏とかりな吸ってるよな」

 

俺と同じことだった。俺はスナイパーに気を付けつつ彩夏とかりなのところに向かった。

 

「彩夏、大丈夫か」

「かりな、大丈夫か」

 

同時に聞くと、彩夏は俺に飛びかかり、かりなは暁依に飛びかかった。

 

「柊く~ん、行かないでぇ…」

「どこか行ったら死んじゃうよぉ」

 

彩夏とかりなは離れようとしない。俺は彩夏の顔を見た。

 

「顔、赤いな。なんか熱いし」

「そお?気のせいじゃにゃい?」

 

酔ったときのようだった。さっきの煙が影響してるんかな。

 

「彩夏、一回落ち着こう?」

「なんりぇ?何もないのに」

「いいから、落ち着けって」

 

俺は彩夏を座らせた。暁依はかりなを外に連れ出していた。

 

「彩夏、本当に何も症状ないか?」

「にゃいって。心配しないで?」

 

まずまともに話せてないところが気になる。彩夏、どんどん照れてきてるっていうか、赤くなってる。

 

「琴葉!柚木!戦闘頼んだ!」

 

俺は遠くにいる琴葉と柚木を戦闘させた。このままだと戦えないし。遠距離がいるだけで有利に進むし、あとスナイパーしかいないだろうし。

 

「柊くん…私、おかしくなっちゃってる…」

 

吐息混じりの声。少しセクシーに思えてくる。

 

「私、柊くんのこと、兄じゃなくて、異性として見ちゃってる…」

 

異性としてか。俺と彩夏は年こそ13離れているが、れっきとした血の繋がっている兄妹。

 

「彩夏、兄妹でできないことは結婚。だけど、できることはあるだろう?」

「できること…なに?」

 

俺は彩夏の頭の後ろに手を当て、そのまま俺の方に引き寄せた。

 

「ハグだよ」

「……もっとしてて…何て言ったら怒る?」

「怒らないよ。してな」

 

俺は彩夏のハグに抵抗しなかった。

 



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スペシャル編 クリスマスイブ

今回の登場人物
月島柊
旅行のパートナー
以上2名


俺は胡桃とはまた別の人と旅行した。当然旅行は全員と──ではなく、この人とだった。

 

「楽しい?」

 

俺はその人の名前を呼んだ。

 

、一緒に旅行しに来たのは絢梨だったのだ。絢梨は俺と話している内に、「一緒に旅行に行きたい」と言っていたから、クリスマスの今日、一緒に旅行に行くことにした。

 

「楽しい。私、北行ってみたかった」

 

雪は深谷でも降ることはあるが、実際に行ってみたかったらしい。そして、今いるのは宮城県。仙台空港アクセス線仙台空港駅。飛行機で仙台まで来たのだ。

 

【約30分前】

 

 俺は飛行機のなかで、もうすぐ仙台空港につく頃だった。絢梨は窓にへばりついて外を見ていた。何を楽しみにしてるんだろう。

やがて地面が見えるようになると、絢梨は頬を窓につけて外を見た。しかし、少ししてから俺の方を向いて言った。

 

「雪、ない」

「え、雪見たかったの?」

 

絢梨はこくりと頷いた。マジすか…

 

「まだ都心部だから降らないよ。ただ、これから行くところは降ってるかもな」

「仙台って雪降らないの」

「降るときは降るけど、そこまでじゃないぞ」

 

絢梨は少し残念そうだった。これから行く山間部は大雪かもしれないな。

飛行機から降りて仙台空港駅の券売機で仙台までの切符を買った。絢梨も買ったのを確認すると、俺は改札をくぐった。

 

「絢梨、今度の電車何分?」

「11:39発仙台行き普通。というか、後ろからハグしないでよ、恥ずかしい…」

「いいだろ、旅行なんだし」

 

俺は絢梨をもっと強く抱きしめた。絢梨はいつもの剣道と同じように手で俺の腹を打ってきた。

 

「ぐはっ」

「許可無しに、過激にくっつかないんだったら許す」

「くっつかないから、許してくれ…」

 

絢梨の力忘れてた…こんなことされるだったな、そういえば。

 

【現在】

 

 11:39発普通仙台行きは、途中、美田園、杜せきのした、名取、南仙台、太子堂、長町、仙台に停車。名取からは仙台空港アクセス線から東北本線に入る。美田園、杜せきのしたからは人が乗ってきて、名取では関東の通勤ラッシュ並みの混雑になっていた。電車は2両編成。過激にくっつかないと言ったそばから強制的にくっつけられた。

 

「んっ」

 

絢梨が色っぽい声を出した。俺は満員電車で起こり得ることを片っ端から考えた。痴漢、痴漢冤罪、騒ぎ。ほとんどが痴漢関係。俺は絢梨のスカートを見た。そこにはシワのある手があった。俺ではない。誰か痴漢してるんだ。俺はその手をたどった。そこには、気持ち悪い顔をしたおじさんがいた。年齢は70代後半くらい。俺はすぐに動画を撮り始めた。証拠を残すためだ。そして、手を掴んだ。そして、捻る。

 

「いってぇな!なんだ貴様!」

 

おじさんが怒鳴り声をあげた。俺は落ち着いた様子で言った。

 

「痴漢してる奴が何を言う」

「痴漢?証拠はどこにあるんだい」

 

俺はさっき撮った動画を見せた。顔まで撮っていてよかった。動画内に、「次は南仙台です」と放送が流れているし、この路線だということは分かる。顔まで映っている時点でこいつだ。

 

「な…」

「次の南仙台で降りてもらおう。駅員さんとお話ししような」

 

俺は11:53、南仙台につくとおじさんの手を掴んだまま駅員のいるところに向かった。

 

「こいつ痴漢です」

「あ、はい」

「証拠これです。転送するんで、見ておいてください」

 

俺はそういって駅員から離れた。駅員は事務室につれていった。俺は後続の電車に乗ることにした。12:02発、常磐線からの仙台行き。南仙台は東北本線、常磐線、仙台空港アクセス線、一部阿武隈急行線も入ってくる。昼間の高崎線くらいの本数はある。

 

「柊くん」

 

絢梨は俺を寄せた。

 

「なんだ、絢梨」

「ごめん。あと、ありがとう」

 

並ぶことのない2つの言葉が並んだ。

 

「どうして」

「くっつかないでって言ったこと。あと、痴漢から守ってくれた」

「別にいいよ。くっつかない方がいいだろ?」

「ううん。なるべく近くにいて」

 

なんだろう、一瞬遠ざかった思いがまた近づいた気がした。俺は12:02発仙台行きで仙台まで向かった。



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スペシャル編 クリスマス

今回の登場人物
月島柊
立川絢梨
以上2名


 仙台に着いたのはまだ昼間。今日は仙台で一泊し、明日の25日深夜に深谷へ帰る。帰りも飛行機だ。俺はとりあえず仙台駅の構内で絢梨と話し合った。

 

「昼飯何食いたい?」

「仙台だと…牛タンとか」

 

牛タンかぁ。弁当でも売ってたかな。いやけど、別にここから急ぐところないし。

 

「じゃあ食いに行くか。たしか10分くらい歩けばあるか

ら」

 

結構前に在来線だけで行ったとき、仙台で牛タンの店を探してたから分かる。俺と絢梨は仙台駅を出て牛タンの店に向かって歩き始めた。

 

「絢梨は牛タン食べたことあるのか?」

「ない。食べてみたい」

 

ないんだったら食べさせてあげたいな。俺も2回しかないけど、牛タンは俺の好物。固さがなぜか好きになってしまった。

 

「ぎゅうらんって、ういおいあなんれしょ」

 

なんて言ったのか分からないんだけど。少なくとも、最初の「牛」と聞こえたから、「ぎゅうらん」は牛タンかな。「ういおいあなんれしょ」がさっぱり分からん。

 

「何て言ってるんだ」

「牛タンって、牛の舌なんでしょ」

 

牛の舌?そうだけど、聞こえないんだけど。

 

「そうだよ。普通の牛肉より少し固い」

「タンだから?食べたい」

 

絢梨はすごい食べたそう。早くつれてこう。

 

 俺は絢梨を牛タンの店にいれた。注文はそりゃあ牛タン。絢梨は出てきた牛タンに興味津々だった。絢梨は牛タンを少しずつ食べた。

 

「美味しい…牛タン」

「よかった。ゆっくり食べな。次の電車までまだ全然余裕あるから」

 

次は仙山線にのりかえるんだが、2時間余裕があるため昼飯だけで1時間とれる。

 

「ゆっくり食べてろよ」

「うん」

 

絢梨は牛タンをゆっくり食べていた。

 

 俺と絢梨は仙台駅に戻ると、絢梨のもうひとつの目的である、東北の雪を見に行った。仙山線の14:04発快速山形行き。快速山形行きは途中、北仙台、国見、陸前落合、愛子、作並、山寺、羽前千歳、北山形、山形に停車する。乗り換え駅は山寺。山寺から逆方面普通に乗り換える。

 

「雪見えるかな」

「見えるには見えるよ。ただ、触ってみよう」

 

見るだけだったら快速で面白山高原を通過すれば見える。ただ、せっかくだし触ってみるのだ。

 

 山寺には14:25。逆方向の電車は15:14発普通仙台行き。面白山高原で下車する。俺は絢梨をつれて面白山高原で降りた。すると、雪が積もっているところに絢梨が飛び込んだ。

 

「関東と違う」

「そうなのか?やっぱり雪質とか──」

 

すると、絢梨は俺に飛びついた。寒かったらしい。

 

「柊くん…暖めて」

「飛び込まなくても…」

 

絢梨は俺の首もとにすり付けた。暖かかったんだろう。

 

「雪楽しかった。戻る」

「早いね、もう大丈夫か?」

「大丈夫」

 

俺は次の仙台行きを調べた。17:23普通仙台行きだそうだ。俺は駅の柵に寄りかかって待った。

 

「よいしょ」

 

絢梨が座ってきた。やっぱり乗ってくるよな。

 

「じゃあ、このまま待つか」

 

絢梨をのせたまま俺は眠った。

 

 仙台で夕食を済ませると、すぐにホテルへ。まだ寒かったのか、こごえている。俺はホテルの毛布の中に絢梨とくっついて入った。

 



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スペシャル編 クリスマス

今回の登場人物
月島柊
立川絢梨
以上2名


 俺は仙台のホテルにつくと絢梨と同じ布団に入った。距離は結構近くて、多分間は15cmくらい。絢梨は恥ずかしい感じがなくて、普通に入ってたけど、話しかけてこない。

 

「絢梨」

「なに」

「楽しかったか?」

「楽しかった」

 

絢梨は落ち着いた感じで返す。俺はそういう絢梨が好きなんだけど。俺はどうしても耐えれなくなり、絢梨の髪を撫でていた。

 

「…さらさらしてる?」

「…してる。綺麗だ」

 

俺は撫でながら少し近づいた。間は5cmくらいまで縮まった。

 

「え…ちょ…近い…」

「絢梨、かわいい」

 

そういうと、絢梨はわざとのように震えたあと、俺に強く抱きついた。

 

「さ、寒いから…」

「そうか。じゃあ暖めないとな」

 

俺は絢梨をガッツリと離れないようにする。力を強めにいれたが、苦しくないように加減してある。抱きつくことによって、少し近くなった。もう1cmもない。

 

「柊くん…クリスマスイブだからいいよね」

「何を──」

 

絢梨がしたことは濃厚なキスだった。絢梨は背中を寄せれば離れられるところを、頭の後ろを絢梨の方に寄せた。

 

「んっ」

「!?」

 

絢梨は俺の閉じている唇に無理やり舌を入れた。俺は少し意地悪をしたくなって、舌は出さなかった。

 

「んん…んっ」

 

絢梨は俺の唇を舐めてくる。俺はもうしょうがないと思い、絢梨の舌を舐めた。

 

「んんっ」

 

舌が絡め合うと、そこから「くちゅっ」と音が聞こえてくる。

 

「はぁっ」

 

俺は絢梨から離れた。ブラウンの服を見ていると、俺は気になった。あと、服買ってあげたい。

 

「絢梨、服のサイズ何だっけ」

「急にどうしたの。だったら柊くんのも知りたいけど、XLだよ。そっちは」

「なんか絢梨の服見てたらサイズ気になった。俺はLLだよ」

 

見てたらサイズ気になったんじゃなくて、買いたいからサイズ聞いたんだけど。XLか…いい服あるかな。

 

「じゃあ寝ようか?まだ早いけど」

「さすがに早い。ちょっと買ってくる」

 

絢梨は飲み物をどこかに買いに行った。俺はベットに横になった。俺は絢梨に贈るプレゼントについて考えた。絢梨がいない間だったため、俺は小さいメモ用紙に書き始めた。

 

「たしか、剣を作りたいけどネタがない。って言ってたよな」

 

だったら剣の制作本でも買ってやるか。いや、けど服も買ってやりたいな。どうしようか、両方買うか、片方にするか。

 

(こういうときに絢梨の従姉妹のあーやがいればな)

 

あーやがいれば助かるのに。

 

(両方にしてもいいんだけどな)

 

俺は服の店と、剣の制作本が売っているところを両方調べた。やっぱり両方にしようか。俺は2つの店に行くことを決めた。

 

 しばらくして絢梨が戻ってきた。俺は何もなかったかのようにしていた。

 

「柊くん、カルピスでいいでしょ」

「あぁ。よく分かってるな。絢梨はオレンジだろ」

「うん。柊くんも分かってる」

 

俺は今まで何をしていたのかも聞かれないように絢梨と話していた。

 

「絢梨、あーやと同じ部屋になっただろ、家で」

 

絢梨とあーやは従姉妹だからと、今まであーやが使っていた部屋と絢梨が使っていた部屋の間に部屋があり、そこが家で3番目に大きい部屋で、各部屋の2倍と少しの大きさがある。絢梨の使っていた部屋は剣の倉庫として、あーやの使っていた部屋はあーやの個人部屋として使うことになった。

 

「うん」

「どうだ、従姉妹だから仲良いか」

「うん。絢香も私とよく話してくれる」

 

あーやもセクシーで大人っぽいと思っていても、結構優しいところもある。

 

「そうか。よかった」

 

俺は安心してそのままベットに眠った。明日はクリスマス当日だ。

 



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スペシャル編 クリスマスプレゼント

 俺は絢梨と同じ布団の中で眠った。翌日、7:30ごろに起きたんだが、絢梨が提案してきた。

 

「クリスマスプレゼント、お互いの買お」

 

なんとなく分かってるんだが、知ってた風に言いたくないから俺は聞いた。

 

「どういうことだ?」

「私が柊くんのプレゼント買う。柊くんは私のプレゼント買って」

「いいけど、集合場所は」

「ホテルの部屋の中」

 

じゃあ俺は昨日決めた剣の制作本と服でいいかな。昨日サイズまで聞いておいてよかった。俺は早速買いに行った。

服はXLだったから、薄い水色のXLでも選ぼうかな。

 

「ワンピースか…長袖か…」

 

俺は2つで悩んでいた。絢梨、どっちが似合うかな。部屋着として使ってほしいのもあるし、外出するときに使ってほしいのもある。どうしようか…

 

「よし、部屋着にしよう」

 

俺はワンピースを買った。店員さんはもう分かっていたらしく、プレゼントの包みに入れてくれた。

 

「ご友人ですか」

「え、ああ、まぁ…」

 

どういう風に説明したら良いか分かんないけど、とにかく友人。

 

「ありがとうございました」

 

俺は店から出て、剣の制作本のところに向かった。種類は200以上って聞いてるから、大丈夫だろう。

俺は制作本の店につくと、早速本を手に持ち、レジに向かった。

 

「お願いします」

「えっと、620円です」

 

結構安いんだな。俺は制作本を買い、ホテルに戻った。

 

【立川絢梨視点】

 

 私は柊くんのプレゼントに悩んだ。どうしようか。何もらったら嬉しいかな。まずは普段着とかかな。柊くんは……黒しか来てるイメージがないから黒にしよ。ワンポイントで灰色が少し入ってるやつがいい。

 

「これ……これにしよ」

 

サイズもLLで丁度。私はこの服を買った。あと何かプレゼントあるかな…私はレジの支払い中に考えていた。

 

「プレゼントの包みに入れますか?」

「あ、お願いします」

 

私は次に何を買おうか悩んでいた。魔術本とかだって、柊くん結構覚えてるだろうし、なんかないかな…

 

「あの、プレゼントに向いてるものってないですか」

 

店員さんだったら結構知ってると思った。

 

「そうですね、魔術館にある魔術本は結構有名ですよ」

「上位のものまで載ってるんですか?」

「もちろん。回復系から攻撃系まで、たしか95000種類だったと思います」

「分かりました。行ってみます」

 

店員さんは手を振って見送ってくれた。95000種類だったら柊くんが使えないのも数種類はあるはずだ。

魔術館は薄暗くて、少し不気味だった。けど、柊くんのためだから、私は中に入った。魔術本は直接店員さんに頼むそうだ。

 

「魔術本ください」

「はいよ」

 

魔女っぽい人はそこから動かずに、高いところにある魔術本を取った。魔法かな。

 

「ありがとうございます」

「お金は95217種類だから、950円ね」

 

私は950円丁度出した。そして、私はホテルに向かった。柊くん、帰ってきてるかな。

 

【月島柊視点】

 

 俺がホテルに戻ったのは絢梨と同時だった。両方がプレゼントの包みを2つ持っていて、先に俺に渡す方からになった。

 

「この服、部屋着だから」

 

絢梨は包みを渡した。俺がその包みを開けると、そこには黒の服があった。

 

「絢梨、これ…」

 

俺は驚いた。この服…

 

「俺のほしかったやつだ。ありがとう、絢梨」

「そうだったの?あと、これ」

 

形的には本か。なんの本だろう。俺は包みを開いた。

 

「魔術本か。確かに知らないのあるし。ありがとう」

 

次は俺の方か。

 

「これ、部屋着で着てくれ」

 

俺は包みを渡した。絢梨はそれを開ける。絢梨はワンピースに驚いた。

 

「これ、着てみたかったやつ。ありがとう」

「あとこれ」

 

俺は直接制作本を渡した

 

「前に、ネタがないって言ってただろ。だから買った」

「これ…」

 

絢梨はくらい表情をした。あ、嬉しくなかったかな?

 

「作りたかったやつある!しかもこれ、聖剣もあるし!何この本!」

 

普段の絢梨とは全く違う。興奮して俺のことなんて気にしてなかった。

 

「お、おう、嬉しいか」

「うん!」

 

そのあと、絢梨は黙り込んだ。我に返ったんだろう。

 

「ごめん」

「ああ、いや、帰ってから読もうな」

「うん……」

 

俺は赤くなった絢梨の顔を擦って落ち着かせた。

 



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スペシャル編 クリスマスプレゼント

今回の登場人物
月島柊
立川絢梨
以上2名


 俺は仙台から深谷に向かう、深谷22時頃に着けるような電車を選んだ。飛行機も予約しようと思ったが、成田空港行きが2本しかいないし、最終が13:50だから電車にした。

 

「20:30発はやぶさ46号かな。深谷に22:42だから」

「じゃあ切符取ってくる?」

「そうだね。お願いできるかな。大宮までのはやぶさ46号で、2人分グリーン車ね。17000円あれば足りるだろ」

「じゃあ、行ってくる」

 

絢梨に17000円を渡して向かわせた。スマホも持ってるし、メモしておいたから大丈夫だろう。

 

 絢梨は15分ほどで戻ってきた。はやぶさ46号9号車グリーン車、1番C席と1番D席を取ってきていた。

 

「CD取ったのか。前に取ってこいって言ったらBC取ってきたやついたから安心したよ」

「BC取るって、通路側だよね」

 

BCは両方通路側。ADが窓側だからだ。絢梨はグリーン車でBCを取るようなことはしない。したら笑ってたけど。

 

「じゃあ、20:30までは仙台にいれるね。20:00には仙台駅着いてるように、土産とか買っておこう」

「絢香にも牛タン食べさせたい」

 

牛タン好きになったよなぁ。だったら、ひもを引っ張ると暖かくなるタイプの駅弁買ってくか。

 

「あと胡桃にも牛タン弁当買ってくか。全員分買ってっちゃうか?俺、月に100万貰ってるから」

 

7つ買っても大体10000円くらいしかしないだろう。

 

「じゃあ全員分買お。美味しいし」

「7人分でいいのか」

「柊くん食べるんだったら7」

 

食べないんだったら6なんだろ。じゃあ俺も買っちゃおうかな。

 

「じゃあ7買いにいこうか。俺もいくよ」

 

俺は仙台駅の駅弁屋に向かった。どうせ後で来ることになるけど、今のうちに勝っておきたかったから。

 

「牛タン弁当7個ください」

「え、7ですか?……11000円です」

 

俺は12000を出して、1000円のお釣りをもらった。

 

「なんか行きたいところあるか?」

「……魔法禁止の勝負……」

 

クリスマスに何を言ってるんだ。確かにいいけど。

 

「また後でだな。他は」

「…世間話…」

 

話したいだけじゃないの?俺はまたホテルに戻った。

 

「あーやがいない時は何してるんだ?」

「いろんなことしてる。自慰もしてる」

 

それは聞きたくなかった。でも、自慰だけじゃないだろう。

 

「あとは剣のネタ。たまに仮想世界で練習する」

「偉いな、絢梨は」

 

俺なんてなにもしてないのに。胡桃がいないとなにもしないからなぁ。

 

「柊くんは1人で何かしないの」

「しない。胡桃とだったら何でもするけど、1人だとなにもしないな」

 

絢梨は細い目で俺を見てくる。おいおい、なんだよその視線は。

 

「意外。柊くんだったら魔法覚えてると思った」

「魔法は全部胡桃がいるときとか、高校で覚えてるからそこまで今になって覚えないんだ」

 

けど、あの本で結構覚えそうだな。便利系とか、攻撃系もあるだろうし。

 

「あの本で覚えそうだけどな」

「また互角で戦おう」

 

絢梨はニコッと笑って俺に言った。今は10:40。あと9時間くらい仙台にいる。

 

 20:00になり、俺は仙台駅に戻った。20:30発はやぶさ46号東京行きに乗るため。はやぶさは固定の停車駅で、仙台と大宮に停車する。46号は上野に停車するが、一部電車で通過する電車がいる。

一方の俺と絢梨は、仙台の街にお別れを告げ、仙台駅の新幹線ホーム13番線に立っていた。はやぶさ46号が出発する30分前、13番線からはやまびこ66号東京行きが出発した。やまびこ66号は、福島、郡山、宇都宮、大宮に停車する、やまびこでは一般的な停車パターン。一方のはやぶさ46号は、さっきも言った通り大宮までノンストップ。大宮には、はやぶさ46号が21:38、やまびこ66号が21:34。仙台では30分差だが、大宮では4分差。26分縮めている。

俺と絢梨ははやぶさ46号が来ると9号車1番CDに座った。俺が通路側、絢梨が窓側だった。

20:30、はやぶさ46号が定刻通り出発。絢梨は窓の外を見ている。

 

「どうだった?仙台は」

「また来たいって思った」

 

それが普通だと思う。俺も来たときにはまた来たいと思った。

 

「今度はみんなつれて来ようか」

「みんなは厳しくない?席の数とか」

「じゃあ別々に来て合流かな」

 

もう次来るときのことを考えていた。早かったな、まだ。

 

「絢梨、またクリスマス、祝おうな」

「うん。絶対」

 

俺は絢梨を撫でながら言った。

 



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第53話 異常

月島柊
月島暁依
月島冬菜
月島香奈
月島藤花
月島風那
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
月島彩夏
浅雛由月
夢川菜晦
葉野香苗
花菜野三久
音奏風奈
佐々木雀
氷河刹那
月野ゆい
織音琴葉
ミナト
柚木
ゆかり
月島紅葉
立川絢香
以上28名


 麗波と琴葉で煙を使っていた人は倒した。あとスナイパー。スナイパーは結構厄介。

 

「琴葉、行けるか?」

「うーん、射程がギリギリかも。M40さえ突破できればそうでもないんだけど」

「麗波も手伝ったらどうだ?」

「私もそこまで届かないから…」

 

誰も無理だったらどうするか…じゃあもう強行突破しちゃおうかな。

 

「暁依、あれね」

「あ、オッケー」

 

かりなも聞いていて、一緒に来た。彩夏も一緒だ。妹にしか興味がないわけじゃないけど、妹は最高。(シスコン?)

俺は4人を引き連れて敵のもとへ。

 

「あれー、スナイパーしか居ないからって来ちゃった?」

 

結構遠かったが、スナイパーしかいなかった。

 

「まぁそんなとこ」

 

俺は余裕な風に言った。だけど、余裕じゃないっぽい。

 

「そんな、力で解決しなくても、色仕掛けでいいじゃん?」

 

ある一人が俺にくっついてきた。

 

「たわわなおっぱい、揉んでもいいよ?」

 

よし、チャンスだ。俺は指の間からナイフを出す魔法を使った。発動ギリギリまで溜めておいた。

 

「じゃあお言葉に甘えて」

 

俺は相手の左胸(俺から見たら右)に手をのばした。そして、すぐに指の間からナイフを出した。そのまま突き刺す。左にした理由、それは心臓があるからだ。一人にしか通用しないが、効果はある。

 

「ぐがっ」

 

敵は死んでいった。すぐにナイフを閉まって証拠隠滅。

 

「私の方がおっきいよ。Fだもん」

 

いや学習しろよ。死んでんだぞ。

 

「分かったよ」

 

俺はさっきと同じ方法で揉んだ。すぐに刺したけど。

 

「…………」

 

静かに死んでいった。2人いなくなったか。あと6人。

 

「さて、殺ろうか」

 

3人でスナイパーに立ち向かっていった。かりなは回復で待機。

 

「彩夏、避けて」

 

近距離なのにも関わらず銃を撃ってくる。関係なしか。

 

「たぁっ」

 

俺は剣で敵を倒した。もう一人は火炎魔法。

 

「あと1人か」

 

俺が向かうと、銃で撃ってきた。体に当たったが、びくともしない。

 

「暁依、とどめ頼んだ」

 

俺はとどめを任せ、彩夏とかりなのところに戻った。

 

「ぎゅっ」

 

かりなは抱きついた。妹って天使だよなぁ。

 

「撫でてー」

「よしよし」

 

かりなは「ふふー」と言って撫でられていた。しかし、すぐに離れた。

 

「指される…」

「え?あぁ、このことか」

 

俺はナイフを出した。多分1番引っ掛かりやすいトラップ。

 

「大丈夫。出さないから」

「柊、投げナイフ使えないのかよ」

 

とどめを刺し終わった暁依がやって来た。

 

「使えるけど、あんまり上手くないよ」

「やってみて!」

「えぇ、マジかよ…」

 

俺はそこら辺を見たが、少しいたずらしてみたくなった。俺は当たらないようにギリギリで彩夏にナイフを投げた。

 

「うぎゃっ!」

 

彩夏は微動だにしない。やり過ぎたかな…

と思っていたが、すぐに駆け寄ってくる。

 

「怖いよ!柊くん!」

「悪いな、ちょっといたずらしたくなった」

「もう、ダメだよ!」

「はいはい」

 

妹に説教されるとはな…歳の差13だけど、思春期とかないのかな?反抗期とか来てもおかしくない気がする。

 

 俺は最強だと思われるグループを倒したあと、暇になった。助けを求めに来たグループを倒すのはどうかと思うから、同率1位の方法を探していた。

 

「同時に死ねばいけるかな」

「同時って、何で死ぬんですか」

「例えばグレネードとか」

 

そこでユウキが名乗り出た。

 

「じゃあ時間切れまで待つのは?」

「あと2日と10時間だぞ、長すぎる」

「じゃあグレネードなのかなぁ」

 

やっぱりそうなるよな。どうしようか、グレネードで一気に吹っ飛ぶか。

 

「じゃあ全員集めよう」

 

俺は外に出ている助けを求めに来たグループとユウキ以外の25人を呼び出した。

全員来ると、俺は近づいたのを確認してグレネードを爆発させた。

 

 転移先はフィールドの外。俺たちはみんなで帰ることにしたため、お母さんたちは各自で帰ることになった。

 

「じゃあ、またいつか会おうね」

「うん。またいつか会お」

 

宇都宮駅で妹の冬菜、香奈、藤花、風那、沙理華は北に行くためお別れ。この5人は宇都宮17:31発やまびこ147号仙台行きに乗車したあと、仙台で18:54発はやぶさ39号新函館北斗行きに乗り換えるらしい。新函館北斗には21:49着。

一方、暁依、瑞浪、かりな、彩夏、由月、 菜晦、香苗、三久、風奈、雀、刹那、ゆい、絢梨、麗波、胡桃は大宮方面18:41発快速ラビット上野行きに乗車。15人ということもあり、ロングシートは俺たちだけで独占。向かい側にも少し座っている。途中停車駅は小山までの各駅と、古河、久喜、蓮田、大宮、浦和、赤羽、上野。瑞浪は大宮で改札外のマンション、それ以外は高崎線に乗り換える。

 

「遠いんだよねー」

 

快速と言っても、大宮まで64分。快速ラビットは、大宮までの所要時間を調べてみると

宇都宮18:41の3554Mが64分

宇都宮19:43の3556Mが67分

宇都宮20:36の3558Mが65分

今乗っている3554Mが最速。下りの大宮~宇都宮は結構多いが、

大宮7:13の3620Eが65分

大宮8:26の3622Eが64分

大宮18:54の3551Mが63分

大宮19:53の3553Mが63分

大宮20:52の3555Mが70分

大宮21:55の3557Mが68分

大宮22:45の3559Mが74分

最速は3551Mと3553Mの63分。最遅は3559Mの74分。原因は、小山の5分停車。そう考えると、3555Mの70分。この電車も小山で5分停車。1分停車と考えると66分。3557Mは小金井で5分停車。1分停車だと64分。結構早い。しかし、普通と比べよう。

乗っている3554Mが追い越さない普通電車は

宇都宮18:04の1621E。大宮までの所要時間は74分。差は11分だ。早朝の1521Eは66分。そう考えれば、普通より遅い快速もいるのだ。ただ、本数の多い時間を走る528Mは85分。時間によって変わってくる。

話がそれたが、この電車は比較的速い方。遠いのには変わらないけど。

 

「まぁ少し我慢すればね」

「イチャイチャできたらなぁ」

 

胡桃が言った。何を言ってるんだ。

 

「家に帰ってからしてあげるから。今は我慢だ」

「はーい…」

 

胡桃は残念そうに天井を見上げた。さすがに公共の場ではね…

 

 大宮についたのは19:45。瑞浪がお別れ。高崎線は19:48発快速アーバン前橋行き。途中、上尾、桶川、鴻巣、熊谷と、熊谷からの各駅に停車する。

 

「あともう少しね」

「20:28着だからな」

 

誰も待ってなくても結構な人数いるし大丈夫だろう。

 

 鴻巣で由月たちが降りて、深谷で俺たちが降りた。若干遅れた20:30に着いたが、影響はない。冬菜たちは今頃青函トンネルに入ってるのかな。外は誰もいないため静まり返っていた。そんな中に人間の気配が後ろからした。それが怪しいため、俺は言った。

 

「みんな、先帰ってて。胡桃も」

「うん。どうしたの?」

「いや、遅くなるから」

 

俺は先に胡桃たちを帰らせた。後ろの気配はまだある。誰か俺を見てるのか?視線も感じるし。俺は後ろを振り向いた。

 

(いないのか…?じゃあ聞いてみるか)

 

俺は誰もいない暗闇で後ろを向いたまま少し大きく言った。

 

「誰かいるんだろ、いい加減出てこいよ」

 

返事はない。足音もしないし。やっぱり誰もいないのかな。

 

「おい、出てこいよ」

 

俺は怖い口調で言った。すると、壁の間から1人が出てきた。

 

「バレちゃってたかぁ」

 

そこにいたのはあーや。なんであーやがいるんだ。

 

「なんでいるんだ」

「だって…心配だし」

 

そうか…俺、人の心配を考えてなかったな、そういえば。

 

「悪かったな、あーや」

「つっきーは怖くないの?」

「何が?」

「そういう世界?」

 

どういうことだろう。俺が考えていると、次の瞬間、右胸付近が痛くなった。まるでずっと切りつけられているようで。刺されている感じもする。

 

「いっ」

「つっきー?」

 

あーやが近寄る。俺の心臓の鼓動はみるみる内に速くなっていく。最初は、どくん、どくんといった音だったが、今はどくどくどくどくと細かく速いテンポだ。

 

「ねぇ、つっきー、どうしたの

 

俺の意識はどんどん遠ざかっていき、やがて声も聞こえなくなり、視界も真っ暗に染まっていた。

 



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スペシャル編 帰宅

今回の登場人物
月島柊
立川絢梨
4人
以上6名


 俺は大宮に着くと高崎線に乗り換えた。通勤快速で、深谷に帰る。グリーン車で帰るため、俺と絢梨のsuicaにグリーン券情報を書き込んだ。2人合計で1560円。自由席だから座れるか分からないけど。

外は寒かったが、雪は降っていなかった。白い息が出て、寒さを証明していた。

 

「早く来ないかなぁ…」

「寒いの」

 

絢梨は俺の方を見ずに言った。

 

「まぁ、この服結構薄いし」

「じゃあ着て」

 

絢梨は着ていた上着を俺に被せた。絢梨の服の厚さが急に薄くなる。

 

「寒くないのか」

「すぐ電車来るし。大丈夫」

 

そう言った5分後、電車は入線してきた。俺が上着着させてもらったの久しぶりだな。

 

 俺は4号車1階席の1番後ろの席に座った。絢梨は俺のとなり。絢梨は暖かくしたいからか手首をぐるぐる回している。

 

「絢梨、やっぱり悪いよ」

「柊くんまだ寒いでしょ。借りてていい」

 

絢梨は頑なに返されることを拒んだ。絢梨の上着、なんかいい匂いするし…

 

「…柊くん、なんか考えてる」

「は!?か、考えてないよ…」

 

いい匂いがしたなんて言えるはずがない。けど、確かなことだ。シャンプーの匂いかな、フードから匂ってくる。

 

「匂いじゃない?」

「……やめてくれ……」

「そうなんだ」

 

からかわれてるよな。というか、わざと匂いつけてるんじゃないか?

 

「もっと嗅いでいいんだよ?」

「だから変態じゃないって」

 

絢梨は俺の膝の上に、俺の方を向いて乗っかってきた。

 

「絢香と同じシャンプー使ってる」

「だからそれがなんだって…」

 

いい匂いが俺の周りを循環していた。どこかで嗅いだことがあると思ったらあーやもか。

 

「嗅ぎたいでしょ」

「うっ」

 

嗅ぎたくないとも言えないし、嗅ぎたいとも言えないこの状況…どうすればいいんだ…

 

「ほら」

 

絢梨は髪を手で靡かせた。さっきより匂いがする。濃くなったんだ。

 

「ちょっとくらいいいでしょ。甘えても」

「……」

 

俺は今までの我慢に耐えきれなかった。

 

「近づいていいかな」

「うん」

 

俺は絢梨に手をまわして抱きついてしまった。けど、後悔じゃない。よかった決断だったと思う。

 

「いい匂いする」

「当たり前でしょ」

 

絢梨と俺は大体吹上駅を通過するまで抱き合っていた。

 

 しばらくして、電車は深谷駅に近づいた。俺と絢梨は降りる準備をしてそのままデッキに立っていた。

 

「もう終わりだね」

「牛タン持ってるしいいだろ」

 

俺と絢梨は一緒に降りた。ホームには誰も降りなかったが、ただ4人だけがホームにいた。高崎行きが出発すると、ホームには4人と俺と絢梨しかいなくなった。その4人とは…

 



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スペシャル編 サンタ

ラストのクリスマス編です!
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
立川絢梨
立川絢香
佐藤麗波
佐藤麗華
以上8名


 その4人は胡桃、かりな、なぎ、あーやだった。俺はあーやにハイタッチしてみんなにただいまの挨拶をした。

 

「ただいま」

「おかえり!」

 

なぎが言った。かりなは俺のことを犬のように嗅いでいる。

 

「な、なんだよ」

「なんかお肉の匂いがする…」

 

あ、もしかしてあのことか。まだ内緒にしておきたいから、あとにしようかな。

 

「あ、気のせいじゃないかな?」

「そうかなぁ?」

 

俺は振り切って改札を出た。胡桃たちは入場券で入っていたらしい。

 

「あ、柊くん。車あるよ」

「あ、じゃあ頼む」

 

俺は運転席に座ろうとした。すると、なぎが俺のことを防いだ。

 

「柊くん休んでて。旅行で疲れたでしょ?」

「あ、じゃあ…」

 

俺は後部座席に座った。後ろは3人乗りだから6人の内なぎが運転、胡桃が助手席だと、4人座ることになる。かりなは中学生だからともかく、あーやと絢梨、俺は入らない。

 

「どうする?」

「トランク入るか、だれか」

 

トランクにも荷物あるからなぁ…無理かな。

 

「それか少し詰めるか」

「かりなちゃん、つっきーの上でいいじゃん」

 

ああ、確かにいいな、兄妹だし。

 

「じゃあかりな、上おいで」

「うん」

 

俺はかりなを膝の上にのせた。あーやと絢梨は隣り合わせで座るようにした。運転がなぎ、助手席は胡桃、後部座席は俺とかりな、あーや、絢梨。俺の隣はあーやだ。6人で乗るとだれか潰されるか、上に乗るかする。

 

「柊くん、サンタさん来たんだよ。かりなちゃん」

「うん!欲しかった本置いていってくれたの!」

「良かったな、かりな」

 

サンタか。多分誰かがやってくれたんだろう。なぎとかその辺り怪しい。

 

「柊くん、着くよ」

 

俺は降りる支度をした。かりなのことをずっと撫でてたけど、気にしていなかった。

 

 家に着くと、俺はあーやを降ろさせて、かりなから順に降りた。家はどこか懐かしかった。多分久しぶりだから。俺はテーブルに買ってきた。

 

「みんな、まだ夕飯食べてないだろ」

「え……」

「だって、みんな腹鳴ってたし」

 

4人は赤くして黙っていた。

 

「暖かいからさ」

「けど、これ、駅弁…あれ?紐ある」

「紐引っ張ったら暖かくなるからさ」

 

胡桃は出ていた紐を引っ張った。シューッと音がすると、湯気が出てきた。みんなも一斉に引っ張った。俺は少し遅れて引く。

 

「触らないでね。火傷するから」

 

俺は警告してしばらく待った。

3分して、俺は5人に指示した。

 

「食べていいよ。中身はなんだろうね」

 

胡桃はふたを開けた。中身は、分かっている通り牛タン。そういえば、まだ1つ余ってるんだよな。

 

「あと1つは誰が食べるんだ」

「麗波」

 

麗波?今いないのに、どうやって食べさせるんだ。

 

「やっほ!」

 

ドアが開いたと思うと、そこには麗波がいた。後ろから麗華が遅れて付いてくる。

 

「麗波!走らないの」

 

いつもの説教か。

 

「私が呼んだ。余ったから」

 

だから麗波の分か。

 

 みんなが食べ始めると、麗華が羨ましく見ていた。

 

「麗華ちゃんも食べよ。私の分けるから」

 

あの2人、仲悪そうに見えて仲良いんだよな。

食べ終わった人から、2階に上がっていった。俺はすぐにソファに座った。

 

「麗華、麗波のこと大変じゃないのか」

「大変じゃないよ」

 

従妹だとやっぱり大変とは思わないのかな。

 

 みんなが2階に上がっていった理由、それはサンタの衣装に着替えに行っていたらしい。胸元が白い毛で覆われていて、ギリギリ見えないくらいの露出。全体を見ると結構暖かそうで、裏が羽毛になっていそう。

 

「柊くん♪」

 

みんなが抱きついてきた。柔らかい感触があったりして嫌じゃなかった。ふかふかしてるし。

 

「よーし、みんな俺が相手しよう」

 

俺は抱きついてきた全員と麗華と遊んで楽しんでいた。

 



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第54話 大雪

今回の登場人物
立川絢香
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
以上4名


 俺が起きたところは家ではなかった。見覚えのない場所で、周りを見るとそこは近くのホテルであることが分かった。

 

「あ、起きた」

「あーやが運んでくれたのか?」

「そう。ちゃんと健康管理してね」

「分かった。ごめん」

 

あーやはそう言ってベットに横になった。俺のとなりだ。

 

「今日は泊まっちゃおっか」

「あ、泊まるか」

 

俺は起き上がろうとした。起き上がろうとすると、あーやが俺のことを止めた。

 

「まだ痛いと思うから、寝てて。あと、痛みなくなったらたまにはメンバーに顔見せてね」

「あぁ、分かったよ。考えておく」

 

とりあえず痛みを治しておかないとか。なんか右胸に湿ってる感じがあるし、薬でも塗ってくれたんだろう。俺はあーやを見た。

 

「なに」

「いや…ありがとう」

 

あーやは「なんの事やら…」と言っているが、多分分かっている。だって少し赤くなってるし。それに、あーやの愛情があった気がした。

 

 俺とあーやはホテルで寝た。翌日になるとあーやはすぐに事務所へ向かっていった。俺はあーやと別れて帰ることにした。

 

「おかえり!待ってたよ!」

 

胡桃だった。なにか後ろに隠したようだったから、俺は聞いた。

 

「なんか持ってるのか?」

「持ってない。なんで?」

「いや…なんでも…ない…」

 

白い切れ端のような、小さい紙に赤い文字が裏にうっすらうつっていたのが一瞬見えた気がしたんだが。

 

「本当になにも持ってないか」

「持ってない!」

 

慌てる様子はない。やっぱり俺の幻覚かな。多分疲れているんだろう。

 

「あ、胡桃。風呂入りたいんだけど」

「じゃあ一緒に入る?朝風呂もいいし」

「じゃあそうしようかな」

 

俺は胡桃と一緒に脱衣所に向かった。胡桃は着替えを取ってきて、俺は自室にタオルと服を取りに行った。

 

「あれ、タオルない」

「もう持ってるよ!」

 

胡桃がタオルを高く投げた。俺は吹き抜けの2階からタオルを取った。

 

「サンキュ」

 

俺は吹き抜けのところから下に飛び降りた。よい子は真似しちゃダメだぞ。

 

「柊くん、行こ」

 

俺は胡桃と脱衣所に入った。もうお互いの裸を見るのは恥ずかしくない。

 

「あ、先湯船に入ってな」

「うん。じゃあ遠慮なく」

 

俺はシャワーを浴びた。いつも通り洗うと、外から寒い風が入ってきた。

 

「雪?」

 

胡桃が外を見て言った。雪なんて5月に降らないだろ。俺が胡桃の横から外を見ると本当に降っていた。

 

「マジか…」

「柊くん、寒いからシャワー浴びる…」

「ああ、分かった」

 

俺は交代で湯船に浸かった。寒いから結構降ってるんだろうな。

 

「もしかして、なぎかな」

「ああ、気持ち抑えれないと雪降らせちゃうから?」

「そう。それだったらまだ安心なんだけど」

 

違かったら少し不安になる。異常気象のレベルじゃないし、もう雪積もってる。

 

「胡桃、髪長いよな」

「うん。洗うの慣れてるけどね」

 

確かに慣れた手付きだった。雪のことは上がるまで忘れていた。

 

 上がってリビングに行くと、なぎが外を見ていた。悲しそうだった。

 

「どうした」

「あ、雪見てたら、私のせいかなって」

「どうして、何かあったのか」

「さっき、1人で外見てたら悲しくなっちゃって。だから大雪なのかなって」

 

悲しくなるだけで大雪になるのかよ。

 

「いいよ、責めることじゃない。じゃあ、俺事務所の除雪行ってる来るけど、なぎと胡桃も行くか?」

「うん」

 

なぎは頷くだけだった。

 

 俺は深谷駅から高崎線に乗った。大雪で深谷~本荘間が運転見合わせ、上野東京ラインの直通中止、本荘~高崎間、籠原~深谷間で運転本数減少、上野~籠原間で大幅な遅延、及び一部運休、湘南新宿ライン高崎線直通は新宿で折り返しなどと結構あった。俺が乗る10:50発小田原行きは28分遅れで岡部を出発。そして、行き先も小田原行きから上野行きに変更。

10:22普通熱海行き→10:42普通上野行き(+20)

10:42特快小田原行→運休

10:50普通小田原行→11:08普通上野行き(+28)

11:19普通熱海行き→運休

11:42特快小田原行→12:03快速新宿行き(+21)

11:50普通小田原行→運休

のように、大体20分程度の遅延に、1時間1本の運休がある。籠原の発車予告を見ても、

11:05普通上野行き→11:32普通上野行き(+27)

11:13快速平塚行き→運休

11:27普通熱海行き→運休

11:41普通小田原行→運休

11:50特快小田原行→12:06快速新宿行き(+27)

11:58普通小田原行→運休

1時間に4本運休。1時間に2本の間隔で、毎時32分が上野行き、6分が新宿行き。湘南新宿ラインは大宮以南でも3本、高崎線は宇都宮線と合わせても5本。日中の時間より少ない。宇都宮線は平常運転だが、高崎線との接続もあり10分程度の遅れはある。

 

「あれ、空いてる…」

「平日で遅れてると混んでるけど、今日は外出する人いないだろ。しかも当駅始発だし」

 

電車のなかには俺たち3人しかいなかった。

 

 電車に乗っている途中にも遅れの情報は入ってくる。京浜東北線が大宮~南浦和駅間一部運休。どうやら大宮始発の内、2本が運休らしい。山手線は1時間に6本の運転。中央線は1時間に7本から9本程度。総武線は1時間に7本東海道線は東京~平塚駅間で一部運休、平塚以南で平常運転。

乗っている高崎線も宮原で時間調整。宇都宮線湘南新宿ラインからの接続のため。4分止まって出発し、大宮には32分遅れで到着。上野には34分遅れ。12:43到着。

 

「こっちも雪すごいな」

「うん。寒いね」

 

なぎの機嫌は戻ってくれた。悲しい感じもなくなった。

 

「早く行こうか。遠くないから」

 

俺はなぎを掴んで走った。胡桃が後ろを走ってついてくる。

 

「きゃっ!」

「胡桃!」

 

俺は胡桃が転ばないように支えた。滑って転びそうになった胡桃はホッと安心したようだった。



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第55話 雪掻き

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
佐藤麗華
佐藤麗波
斉藤ニコル
以上6名


 俺は雪が人によって踏み固められた道を歩いていった。滑りやすくなっていたが、雪国にすんでいたことがある2人だと滑ることはない。胡桃は関東生まれ関東育ちだから雪には慣れていなかった。

 

「うわっ」

「ゆっくりでいいから。行こう」

 

俺は胡桃と手を繋いだ。転んでも俺と道連れだし。それに、すぐ助けられる。

 

「きゃっ」

 

俺は転びそうになった胡桃を抱いた。

 

「気をつけて。まっすぐ地面に足をつける感じで」

 

胡桃は言われた通りに歩いた。滑ることは格段と少なくなった。

 

「そうそう、いいじゃん」

「慣れてきたね」

 

なぎは胡桃を撫でた。お母さんみたいだった。

 

「もう少しだよ。頑張れ」

 

胡桃はラストスパートを歩いた。そして、10分くらいかかってついに到着した。

 

「じゃあ、俺は職員たちに報告してくる」

 

俺は中に入って職員たちに報告しにいった。メンバーとはすれ違わなかった。

 

「雪掻きしに来た。メンバーも手伝うか聞いといて」

「え、あ、はい!」

 

少し驚いているようだった。今日は休みなんだから普通はいないはずだったのにいるんだから。俺は外に戻って胡桃たちと雪掻きを始めた。

 

「じゃあ、俺は職員たちに報告してくる」

 

俺は中に入って職員たちに報告しにいった。メンバーとはすれ違わなかった。

 

「雪掻きしに来た。メンバーも手伝うか聞いといて」

「え、あ、はい!」

 

少し驚いているようだった。今日は休みなんだから普通はいないはずだったのにいるんだから。俺は外に戻って胡桃たちと雪掻きを始めた。

 

「寒い…」

「なぎは慣れてるよな」

「うん!よく雪掻きしたよ!20歳超えてからは屋根上の雪掻きもしたなぁ」

 

屋根上は危険だから子どもにはやらせなかったもんな。

 

「今日は俺が屋根上やるから、胡桃となぎは下やってて」

「はーいっ!あ、絢香ちゃん来た!」

 

中からあーやが出てきた。後ろにはニコルや麗華、麗波がいた。

 

「麗華、麗波どうしたの」

「勝手に柊くんのところに行ったから注意してたの」

「麗華、ちょっと厳しいよぉ」

 

麗波が泣いて抱きつく。麗華は注意したあともすぐに優しくする。麗華は麗波の背中を撫でた。

 

「あ、そうだ。雪掻きしない?」

「寒い?」

「当たり前だろう?雪掻きが寒くなかったら苦労しないさ」

 

寒くない雪掻きがどこにあるんだ。あるんだったらしてみたいな。

 

「麗華はやるか?」

「えぇ。事務所の手伝いだもの」

 

さすが麗華さん。事務所のためだったらなんでもやるんですか。

 

「じゃあ私もやる。教えて」

「えぇ、火炎魔法で溶かす…」

「できないでしょ!」

 

ナイスツッコミ。できるのは俺となぎ、胡桃だけ。

 

「じゃあスコップで地道にやるか」

 

俺はスコップで地道に雪掻きを始めた。アスファルトなんだから火炎魔法で焼き払いたかったな。

 

「そうだ、次いつ来る?」

「来週とかかな」

 

学校があるし。けど、先生も大幅に増えたから胡桃と俺は楽になった。

 

「柊くん、今度学校行っていい?」

「え、いいけど、俺多分話せないよ?」

「授業してるところだけでいいからさ」

 

ええ、ホントに来るのか?だったらいつ来るかくらい教えてもらえるかな。

 

「いつ来るんだ」

「水曜日とかいい?」

 

水曜日か。1時間目は1組数学、2時間目は6組数学、3時間目は5組数学、4時間目は3組数学、5時間目はなし、6時間目は2組数学。だったら授業も多いし大丈夫かな。

 

「いいよ。俺5時間目は職員室いるから」

「じゃあ1時間目から押し掛けるよ」

 

迷惑なんだけど?俺は口と手を同時に動かしながら言った。

 

「押し掛けるのはやめてくれ。まあ来るのはいいけど」

「じゃあ行くね!」

 

もう来ることは分かってるけど。俺は雪掻きを済ませた。

 

 俺は雪掻きが終わると、臨時ダイヤで運転中の電車に乗った。14:09着の国府津行きが上野行きに変わったため、上野7番線で14:15発籠原行きに折り返した。遅れはなくなり、運休だけになったが、大きく影響が出た。

 

「今度の高崎線は7番線から出発です」

 

駅のアナウンスがずっと鳴っている。高崎線の運休についてばかり。宇都宮線も上野で折り返すため、14:19着が14:25に折り返す。14:19が所定小田原行き、14:25が所定小田原始発。上野で全て折り返す。7番線到着だったが、今日は15番線に変更された。

 

「14:15発深谷行き出発しまーす!」

「深谷行き?」

 

俺も不思議だった。所定では籠原行きだから深谷まで行かないはず。しかし、すぐに分かった。

湘南新宿ラインが新宿で折り返した。湘南新宿ライン特快は快速新宿行きに変わったため、14:20発特快高崎行きになる。この電車は前を走るこの電車との間隔調整で新宿で20分待機。14:40発で出発する。深谷~本庄は運転見合わせのため、深谷行きになるのだが、こうすると籠原~深谷が1時間以上空いてしまうことになる。そのため、籠原行きを深谷行きに延長しているのだ。

 

「まぁ乗ってれば着くさ。じゃ、俺寝るから」

 

俺はクロスシートで寝た。他の2人も同じシート座ってるし。

 



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第56話 脅迫文

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
立川絢梨
立川絢香
佐藤麗波
以上7名


 俺が家に帰りドアを開けると、上から何やら紙が落ちてきた。胡桃は寄るところがあるとかでどっか行ったし、なぎは気分転換したいって家の近くうろついてるし。そうすると、誰からだ?

俺は恐る恐るその手紙を開けた。そこには、血の色で、血が垂らされたような文字でこう書かれていた。

 

5月25日、月島柊から離れなければ、胡桃、柊を殺す

 

どこかからのいたずらか?だとしたら相当たちの悪いいたずらだな。しかし、すぐに打ち消された。俺の過去があったからだ。

 

【約10年前】

 

 俺は小6の時に言ってしまった「自分良ければいいじゃん」という言葉によって、中2の当時は全員から無視されていた。先生からも「うるさい、耳障りが」と怒鳴られ、生きているだけなのに廊下に座らされ、やがてコミュニケーション障害になり、話せなくなった。そんなときに話せたのが、なぎだったが、いじめはエスカレート。手紙は毎日脅迫、時には全校に晒される放送でされたりした。結果、全校が俺を標的にする立場になった。

 

【現在】

 

 こんなことになるなんて、思っていなかった。俺はすぐに大きな荷物だけ置いて走った。雪が降る中、俺はひたすら走った。なぎは帰ってくるが、胡桃だ。怖いから逃げたんだ。なぎは知らないはずだし。

 

「どこ行ったんだよ」

 

俺は胡桃に電話した。しかし、すぐに機械音がした。

 

「お掛けになった電話は、現在電波の届かない場所にあるか──」

 

繋がらなかった。電源を切ってるか、電池切れか。

 

「ったく、都合悪いな…」

 

俺はとりあえず深谷駅に向かった。

 

 深谷駅から線路沿いに沿って岡部駅方面に行くと、脇道があった。俺はそこを歩いて中に入っていった。そこには、胡桃が寒そうに凍えていた。

 

「胡桃、帰ろう」

「来ないで!殺される!」

 

胡桃は大声で叫んだ。俺はすぐに絢梨と麗波に電話した。絢梨はすぐ出てくれた。

 

《なに》

「JSK」

《オッケー》

 

絢梨はそう言って電話を切った。ちなみに、JSKとは、

Jitaku Shuhenkeibi Kaishi

自宅  周辺警備 開始

の略。緊急警備になると、JSKKとなる。絢梨などの仮想世界戦闘部隊にしか分からない略称だ。麗波は最近いれた。

麗波もしばらくして電話に出た。

 

《なあに?》

「JSK」

《……オッケー》

 

麗波が最初黙ったのは分からなかったか、麗華がいたからだろう。

 

「胡桃、俺は無理にでも連れていく」

「殺されたいの?」

「何を言ってるんだ。早く行くぞ」

 

俺は走って家に帰った。転移とかで麗波も警備に付いてるだろう。

 

 俺が家に着くと、そこは修羅場だった。絢梨が傷ついているあーやに対して怒り、傷つけたやつをナイフで切っている。警察からも許可得てるしいいんだけどさ、なんかグロい。

 

「絢梨、もう死体消すぞ」

「……絢香のこと傷つけた」

 

絢梨は最後に蹴り飛ばした。俺は回廊魔法で仮想世界の牢獄へと送り飛ばした。

 

「絢梨、あーやのこと守りたかったんだな」

「……絶対恨む……」

「柊くん!裏の敵も送り飛ばした!」

 

笑顔で言ってるけど、普通に考えたら怖いんだよなぁ。

 

「お疲れ。じゃあもう全滅かい?」

「うん。かりなちゃんも私と殺ってたから」

 

ああ、じゃあもう胡桃は殺されずに済むな。

 

「胡桃、殺されずに済んだな」

「うん。ふわぁ、なんか怖いのから解放されたら眠くなっちゃったにゃぁ」

 

胡桃は一人で家の中に入っていく。

 

「あ、胡桃、そこ!」

 

絢梨が慌てて止める。胡桃があるところで止まると

ガッシャーン

何かが落ちてくる音がした。

 

「胡桃!?」

 

俺は中に入った。すると、そこにはロープで縛られた胡桃がいた。きつく縛られていて、胸の形、手首まで分かるほどだった。

 

「何これ!?」

「トラップ。入らないように」

 

全く、トラップとか作るなよ、物騒だから。

 

「んじゃあ」

 

俺は剣の舞いでロープを切った。

 

「ちょっと当たるけど我慢しろよ」

「え!?」

 

俺は胡桃の皮膚ごと切った。ごめん、少し我慢してくれ。

 

「痛いぃ!」

「悪いな。ほら、落ちるぞ」

 

胡桃はすぐに体制を立て直した。

 

「うぅ…」

「ごめんって、俺が回復してやるから」

 

完全に治したいんだったら自然治癒しかないけど。俺は大きな傷だけ治した。

 

「ほら、十分か」

「痛いけど…」

 

いやまぁ、治癒魔法も強くないけどさ…俺は自分の魔法に後悔した。

 



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第57話 麗華と麗波

今回の登場人物
佐藤麗華
佐藤麗波
以上2名


【高校生時代】

 

 私の名前は佐藤麗波。

銃が好きな普通の女の子……銃が好きな女の子は普通とは言わないよね。自分でもそう思うから。私は気付いた時には銃が好きで、銃の本ばかり読んでいた。

そんな私には幼馴染がいる。名前は佐藤麗華。私の従姉妹で、見た目も私と似ている。瓜二つだ。

その麗華ちゃんはお母さんを亡くしている。麗華ちゃんのお母さんは体が弱く、麗華ちゃんを出産してしばらくして亡くなったらしい。

麗華ちゃんのお母さんの願いは麗華ちゃんが清く、正しく、素敵な子に育ってほしい。それが麗華ちゃんのお母さんの願いだったらしい。願い通りに、麗華ちゃんの性格は真面目な性格。清く正しく生きる。お母さんとの約束を守っているんだと思う。

麗華ちゃんは自分のお父さんにも厳しくしてたと思う。麗華ちゃんは私にも厳しかったと思う。

 

「麗波、起きなさい!遅刻するわよ!」

 

麗華ちゃんが私を起こそうとしてきた。だけど不思議だった。

 

「なんで麗華ちゃんが私の家にいるの?」

「麗波のこと迎えに来たらお母さんがまだ寝てるって言ってたから起こしに来たのよ!」

 

えぇ…なんで起きなきゃいけないの…眠いし…

 

「私はまだ眠い。麗華ちゃんは先に学校行ってていいよ。おやすみ…」

「寝るな!遅刻は絶対許さないからね!」

 

いつも何かで麗華ちゃんに怒られたのは今でも覚えている。

高校生になってから私は日本で行われる銃の大会で優勝していた。さすがに日本だと本物の銃は使えないけどね。銃刀法違反になっちゃう。麗華ちゃんからは危ないことしないでって言われてるから、危ないことはしてない…はず。

麗華ちゃんは高校生になってからは男子に告白されたらしいけど振ったらしい。その振った理由が勉強する時間が無くなるから。麗華ちゃんらしいと思った。この時の麗華ちゃんの目標は少しでも社会貢献できる。仕事に就いてお父さんを楽させる。それが麗華ちゃんの目標だった。

麗華ちゃんはお父さん大好きだからね。それが麗華ちゃんのいいとこだと思う。真面目すぎでたまに心配になるけどね。

 

「麗華ちゃんは相変わらず真面目だね」

「大丈夫。無理はしてないから。それより、麗波はちゃんと勉強してる?」

 

うげっ、こうなったら…あれしかないかな。私はその場から走って逃げ出した。

 

「麗波!逃げるな!」

 

こういう風なおいかけっこが毎日だった。

 

 それからしばらくして、麗華ちゃんをアイドルにスカウトする手紙が届いた。その時は驚いたな。麗華ちゃんは迷ってたらしいけど、お父さんは麗華ちゃんがアイドルになることに賛成してたらしい。麗華ちゃんのお父さんは麗華ちゃんを心から愛していたからね。どんな道を進んでも麗華ちゃんを応援してたと思う。

 

「麗華ちゃんがアイドルになるのかぁ。想像できないな

ぁ」

「私も想像できないわよ。自分がアイドルになるなんて」

「麗華ちゃんは面白いアイドルになりそうだよね!」

 

真面目で、ポンコツなアイドルもいいと思った。ちょっとくらいポンコツでも面白いし。

 

「今、変なこと考えなかった?」

 

麗華ちゃんにはいつもバレちゃう。だけど、気付かれたくない。

 

「考えてないよ!麗華ちゃんはどうするの?」

「麗波は私が東京に行って大丈夫なの?」

 

質問返しか。そうだなぁ、麗華ちゃんが東京に行ったら…

 

「さびしいけど、麗華ちゃん自身はどう思ってるの?大切なのは麗華ちゃんの気持ちだよ」

 

それから麗華ちゃんは東京に行き、22/7として活動を始めた。

 

 麗華ちゃんがアイドルとして頑張っている頃、私は銃の勉強をしていた。銃の大会でも勝ち続けていた。それから高校生卒業してからは私は海外で活動していた。大変な事もあったけど、楽しかったと思う。麗華ちゃんにはあぶない事をするなと説教されたけどね。私はあぶない事をしているつもりはないんだけどね……たぶん。

 

【現在】

 

 「麗波、何してるの?」

 

私が昔の事を思い出していた時に麗華ちゃんが声をかけて来た。

 

「昔のこと思い出してたの」

「どんなことを思い出してたの?」

「私や麗華ちゃんのことだよ」

 

麗華ちゃんのお母さんが今の麗華ちゃんを見たら

喜んでくれると思う。清く、正しく、素敵な人になったからね。たまにポンコツだけど。

 

「ポンコツなところも麗華ちゃんの魅力の一つだよね」

「何の話よ!?」

「なんでもないよ!」

 

麗華ちゃんは頑張ってるよ。だからこれからも麗華ちゃんを見守ってあげてね。麗華ちゃんのお母さん。それともう少しだけ麗華ちゃんは私を甘やかしてくれるといいなと思う。麗華ちゃんのお母さんから麗華ちゃんに言ってくれないかな。もっと優しくしてって……無理ですよね〜〜、すいません。

 




次回は絢梨の回になります!その後は意外と知られていない、柊と冬菜の関係です!年末年始なので投稿ラッシュが始まります!


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第58話 絢梨

今回の登場人物
月島柊
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上4名


 俺たちがもう仮想世界に行く用事もなくなり、1月に入って俺と胡桃の教師活動が休止になった頃、絢梨は部屋で何かをしていた。

 

「絢梨、まだ寝てるのか?」

 

あーやがなぎに聞いていた。確かに、何してるんだろう。

 

「絢梨ちゃんなら家の手伝いとか終わってから出てないね」

「また剣でも作ってるんじゃないか」

 

俺がその話に入った。なぎはビックリもせずに続けた。

 

「もう部屋いっぱいだから、もう作ったら歩くスペースなくなっちゃわない?」

 

「絢梨、気付いたら作れるようになっててさ」

 

どうやって作れるようになったかくらいあるだろ。

 

「誰かに教えてもらってたのか?」

「知り合いにね」

「その知り合いもすごいじゃん」

 

俺たちがそんな話をしていると、絢梨が眠そうな顔をして部屋から出てきた。片手には剣が握られている。

 

「新しい剣作ったのか?」

 

俺は絢梨に聞いた。クリスマスに贈った製作本かな。

 

「やっと完成した」

「今度はどんな剣なの?」

「この剣は全魔力を宿した剣」

「とんでもない剣を作ったな…」

 

あーやがあきれたように言った。まぁ確かにそうなんだよな。

 

「攻撃力は10000。あらゆる能力を消す力も持ってる」

 

一般的な攻撃力は3000~4500程度。俺が持ってる絢梨が作ってくれた剣だって5500程度。10000は桁違いだし、それに倍近くある。あらゆる能力を消すなんて、魔法を発動させる剣はあるが、消す能力はない。

 

「その剣チート過ぎないか…」

「時間かけて作ったから」

 

そんな問題じゃないんだよなぁ。

 

「名前はあるの?」

 

なぎが剣を見ながら言った。

 

「ない。無名の剣」

「柊くんがそれ使ったら最強かもね!」

 

俺次第ってことか。というか、聞きたいことがある。

 

「それ、製作本に載ってたのか」

「最後のページにあった。No name swordって一覧で」

 

名前のない剣か。本当に強すぎないか?これ。

 

「しばらくは絢梨が持っててくれ。俺、今度破壊系魔法覚えたい」

「柊くんもチートじゃないの…」

 

なぎが言った。確かに人のこと言えなかった。

 

「じゃ、頑張って」

「あざっす」

 

俺は外の空き地に向かった。破壊しても大丈夫だから。俺だって絢梨にもらった魔法書を使うようになった。あんまり増えてないけど。

 

「よし、今日は地形破壊魔法か」

 

地形破壊魔法は地形の一部を煙を出さずに破壊する。簡単に言えば、煙のない爆発みたいなもの。ただし、少し違うスペルを思い浮かべると、地形破壊魔法ではなく、ただの破壊魔法になってしまう。破壊魔法は自分の足元で発動させると自分もろとも吹っ飛ぶため危険だ。地形破壊魔法も真下に発動させると結構な高さ落下するけど。

 

「地形破壊魔法のスペル…Terrain destruction」

 

Terrain destructionって何の英語だよ…んなもん知るか。まぁいいか。読めればいいんだ。

 

「Terrain destruction」

 

スペルを唱えると、前方の地面にヒビが入り、下に沈んだようにきれいな直方体の穴が空いていた。

 

「こりゃすごい。現実世界でやったらまずいけど」

 

仮想世界だったら大丈夫だろう。俺は家にまた戻った。この魔法は暫く封印だな。

 

 家に戻ると、絢梨の部屋のドアが開いていた。誰か入ってるのかな。

 

「絢梨、なんで開けて──」

 

そこには倒れている絢梨、なぎ、あーやがいた。周りには落ちている剣が数本あった。

 

「おい!どうした!」

 

俺がそう言うと、絢梨が眠そうな目をしてムクッと起き上がった。

 

「何…?ああ、落ちてる剣?」

 

絢梨は落ちていた剣を軽く持ち上げた。

 

「ちょっと見せてたら寝落ちしちゃった。もしかして、心配した?」

 

なんだよ、心配したじゃないか…殺人現場かと思った…

 

「はぁ…心配させないでくれ…」

「ごめん」

 

絢梨は剣を片付けた。その片付けている剣の中には見たことのない剣もあった。

 

「…結構あったんだな」

「この内柊くんにあげたの4つくらいだよ」

 

おいおい、そんだけなのにまだ50…いや、100以上はあるぞ。

 

「何本くらいあるんだ」

「多分250くらい。数えてない」

 

250ある時点ですごいんだけど。

 

「種類は少ない。多分100前後しかない」

「100でも結構あるな。1種類あたり約2本か」

 

絢梨は結構普通みたいな顔をしていた。普通じゃないんだけど、絢梨にとっては普通なのかな?

 

「絢梨、剣、もっと作りたいか」

「作りたい」

「……わかった……」

 

俺はすぐに手配した。剣を置く倉庫を建てる土地をとっていたんだ。倉庫が出来るまでは半年。今年の夏には完成する。

 

「絢梨、剣を作ることはいいことだ。俺にも分けてくれるし」

「うん……」

 

怒ってるようになってる?

 

「悪いんじゃないさ。みんなに分けてやってくれよ」

「うん」

 

またいつもの顔に戻った。絢梨は1つ剣を手に取って複製を始めた。

 



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第59話 冬菜と柊

 私は月島冬菜。兄が2人いて、暁依と柊。暁依の方は「お兄ちゃん」だと柊も反応しちゃうから、「あきにい」って呼んでる。柊のことは「お兄ちゃん」で通じてる。

あきにいとの関係はただの兄妹。仲も良いとも悪いとも言えない普通の状態。でも、お兄ちゃんとの関係は複雑。私はお兄ちゃんのことが大好きなのに、お兄ちゃんは嫌いって言うか、あきれてる感じがする。原因は私の態度だとは思ってる。だって好きなのを伝えられなくてついツンツンしちゃうんだから。デレデレするときもあるから、「ツンデレ」って感じなのかな。

10人が一緒に暮らしてたときの家は北海道にあって、かなり田舎だった。今の最寄り駅は札幌駅だから都会だけど、前の家がある安足間(あんたろま)駅は田んぼと畑だらけ。安足間駅から歩いて15分のところに家があり、今は私たちの従姉妹が使ってる。

その時は柊くんがまだ大学生で、私は3つ下だからまだ16歳。高校生だった。その時はお兄ちゃんと私で同じ部屋を使ってた。だから好きになっちゃったんだと思うんだけど。

お兄ちゃんは大学を卒業して関東に引っ越した。今は深谷にいる。たまに帰ってくるけど、私も実家暮らしを続ける訳にはいかない。もう1人暮らしを始めるのだ。お兄ちゃんの近くで、だけど最寄り駅は違うところ。場所は岡部駅になった。岡部駅から15分歩いたところの新築一軒家。私は明日からそこに住むことになった。お兄ちゃんといつでも会える。こんなに幸せなことはない!

 

 私は翌日の始発電車で岡部駅に向かった。6:02発千歳線普通新千歳空港行きに乗車。新千歳空港には6:51。新千歳空港からANA50便…ANA50便?なんか聞き覚えがあった。

 

【2年前】

 

 「母さん、飛行機何便だっけ」

「ANA50便よ。ちゃんと乗ってね」

「分かったよ。ANA50便だな」

 

【現在】

 

 そうだった。ANA50便はお兄ちゃんが関東に来るときに乗ってた飛行機。これで羽田空港まで行ってたんだ…

私はANA50便に乗った。お兄ちゃんもこういう景色を見てたのかなぁ。とか考えていたらあっという間だった。9:10、時刻通りに羽田空港に到着。実は100分も乗ってたんだ。ここからは電車に乗っていく。

羽田空港からは京急線。9:42発エアポート快特成田空港行き。さすが東京だなぁ。空港から空港に1本で行けるんだぁ。品川まで行って上野東京ライン上野行きかぁ。

 

 品川についてから10:05発上野行き。新橋、東京に停車して降りようとする。

その時、すれ違ったのは、見覚えのある人影。

 

「冬菜?」

 

私の名前を呼んだ。その声も聞き覚えがある。私が後ろを見ると、そこにはお兄ちゃんがいた。私はからだが勝手に車内に戻った。お兄ちゃんに引かれたようだった。

 

「お、お兄ちゃん…」

「冬菜、どうしてここに。しかもなんだその荷物」

 

ヤバイ、ここでバレちゃったら内緒で家に着けない…

 

「い、いや、何でもない…」

「何でもない訳はないだろ?話してみろよ」

 

お兄ちゃんは私を車いすスペースで少し空いていたところの壁に壁ドンした。

 

「お兄ちゃん…やめ…」

「だったら話せよ。何してるんだ」

「……引っ越し。岡部に」

 

私は言ってしまった。もう内緒にできなかった。

 

「お兄ちゃん、いつになったら離すの。変態」

 

またツンツンしちゃった。デレデレしたいんだけど、出来ないんだよね。

 

「ああ、悪い…」

 

お兄ちゃんは何か言いたそうだった。

 

「…なんか言いたいことあるの」

「ああ、あのさ、冬菜、俺のこと好きじゃない?」

 

ええ!?なんで知ってるの!?というか言った覚えないし!

 

「べ、別に!」

「分かってるんだよ。お前さ、俺の部屋にラブレター置いてくなよ」

 

あ、そういえば少し前にお兄ちゃんの家に言ったときにお兄ちゃんへのラブレター持ってた。え、置いてってたの!?

 

「うぅ…」

「妹がラブレターなんて初めてだよ」

「うるさいなぁ、いいでしょ!好きになったって!」

 

別にダメなんて言われてないし…

 

「いいさ、かりなとか彩夏もそうだし」

 

かりなと彩夏も?じゃあ告白後になっちゃったってこと?

 

「え、越された?」

「まぁな。いつか会いに来いよ。俺仕事戻るからさ」

 

お兄ちゃんは上野駅で降りていった。私はお兄ちゃんの後に上野駅に降りた。

 



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第60話 事実

明けましておめでとうございます。2021年も「高校生からの物語」をよろしくお願いします!
さて、新年一発目の小説は事実を知ることになります。どんな事実でしょうねぇ?それでは登場人物紹介のあと、本編へどうぞ!(登場人物紹介のフォントもお正月のため落ち着いた明朝体にしてあります)
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上6名


 俺が家に帰ると、みんなはもう寝ていた。俺も寝ることにして、自分の部屋に入った。

 

 翌日、俺もみんなも休みで、久しぶりに全員が家にいる日になった。俺はみんなと同じ部屋に入った。

 

「柊くん!おはよっ!」

 

かりなが俺に微笑んだ。

 

「おはよう」

「柊くん、どれか剣使う?」

 

なぎが剣を指差して言った。いや、俺もう剣要らないし、それに俺剣士じゃなくて魔法使いだし。

 

「俺魔法使いなんだけど」

「剣士いないかなぁ」

「胡桃剣士だろ?」

「えぇ、私…?」    

 

胡桃しか剣士いないんだからしょうがないだろ。なぎもアーチャーになったし、かりなは回復系魔法使いだし。剣士は絢梨と胡桃しかいないんだから。一応暁依もそうだけど、遠いし、あいつだって剣持ってるし。

 

「持っとけよ。いずれか役に立つさ」

「ホントに?じゃあ一応持っとこうかな」

 

胡桃は絢梨から剣を受け取った。いずれか仮想世界戦闘部隊とかで役立つかもしれないし。

 

「柊くん、どうなった?」

「ああ、あの事だな」

 

俺は自分の部屋からPCを持ってきて、コードをTVに繋いだ。俺は専用アカウントにログインし、テレビに写した。

 

「仮想世界戦闘部隊からの警告によって一時期は姿を消したらしいな。ただ、ある場所を拠点にして現実世界で人殺しを行っているらしい」

 

今までの犯行現場は関東北部から東北南部にかけて行われていて、直近1週間だと

12月27日 栃木県宇都宮市

12月30日 群馬県伊勢崎市

12月31日 群馬県前橋市

12月31日 群馬県みなかみ町

1月1日 群馬県桐生市

1月1日 栃木県栃木市

1月1日 栃木県那須塩原市

1月2日 福島県白河市

以上の8件。1日1回以上発生していることになる。1ヶ月周期で宇都宮市に戻ってくる。毎月27日だ。

 

「やっぱり、決まってるよね」

「あぁ。今のところ、南で栃木県小山市、北で福島県泉崎村か」

 

群馬、栃木、福島の3県で起こっている。

 

「ここには来ないだろうけど、心配だよね」

「いつ来るか分からないしな」

 

俺たちは担当から外れたが、心配じゃないとは言えなかった。

 

「やっぱり俺たちも作戦練ろうか」

「うん。そっちの方がいいよね」

 

作戦を練ると言っても、結局はこの付近に来るのを待つしかない。あとは、この付近で潜伏できそうな場所の調査か。だったら学校と事務所に休みの連絡を入れておかないとな。胡桃には学校に行ってほしい。6組が先生いなくなるし。

 

「胡桃、1人で先生行けるかな」

「え…柊くんは…?」

「この付近で潜伏できそうな場所の調査」

 

胡桃は少し不安そうだった。じゃあ、最近仲の良い先生に手伝ってもらえばいいだろ。

 

「だったら仲の良い先生と一緒にやればいいだろ」

「う~ん、分かった」

 

確かに胡桃は俺と長くいたいからって入ったけど、こういうのも分かってたはずだ。

 

「悪いな」

「ううん、しょうがないから」

 

胡桃は1人で部屋に行ってしまった。悪かったかな、結構ショック受けただろ。俺がそう思っていると、胡桃が座っていた場所に何か落ちていた。俺が拾い上げると、そこには胡桃の予定表が書かれていた。学校のもので、胡桃が行くクラスが書かれていた。

 

「月曜と水曜、俺と一緒ってところにハートマーク…」

 

それだけ嬉しいことだったんだろう。

 

「火曜、木曜、金曜は胡桃だけの授業があるもんな」

 

次の学校は…俺は衝撃だった。次の学校は

 

「1月12日火曜日」

「火曜日なんでしょ?胡桃ちゃんだけの授業あるじゃん」

「え…嘘でしょ…?」

 

かりなは分かっているようだった。そう、この一週間は学校開始したばかりの一週間のため

1月12日(火) 月曜日課

1月13日(水) 火①②+水④⑤⑥

1月14日(木) 木①②+月②④⑥

1月14日(金) 水曜日課

この4日間。胡桃の授業が

火⑤、木②、金③

俺と一緒の授業が

月①、水①~④⑥、火②③⑥、木①③⑥、金⑤⑥

だから、胡桃だけの授業が

月①、火②~⑥、水①~④⑥、木①~③⑥、金③⑤⑥

で結構な量あった。

 

「水曜日課だと結構授業あるんだよ。俺が中心の時はまだ楽なんだけど、胡桃だけってなると結構過酷」

 

それが分かってるからこそショックを受けたんだろう。俺と一緒の時間が1番長いのが水曜日だったから。

 

「しょうがないよ。柊くんが悪いんじゃないんだし」

「その分役立てば大丈夫。頑張って」

 

絢梨とあーやが励ましてくれた。

 

「ありがとう。俺、明日から行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」

 

俺はあーやに早くも見送られた。

 




新年一発目の小説はいかがでしたか?1月1日は気が向いた時間に投稿と、19:30に投稿しますのでお楽しみに!


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第61話 パスワード

今回の登場人物
月島柊
月野かりな
白雪凪沙
以上3名


 俺は翌日になって早速準備を始めた。便利系の魔法を出発前に覚えておくのだ。「spider's thread magic」と言う魔法で、直訳すると「蜘蛛の糸の魔法」。唱えると蜘蛛の糸のようなものが出て、壁などに張り付けて飛ぶ魔法だ。続ける場合には飛んでいる途中に外し、別のところにつける。これが結構難しかった。

この魔法を覚えてから、俺は前日に調べておいた潜入しやすそうな場所に向かった。まぁ、深谷駅近くの骨組みがある場所なんだけど。行きは飛行魔法で飛んでいった。そんなに遠くはないが、5分くらいかかった。俺が骨組みのところにつくと、俺は鉄骨に掴まった。

 

「へぇ、結構高いな…ひとまず1番上まで上がるか」

 

俺は鉄骨を蹴って飛行した。1番上につくと、俺は中を見下ろした。空洞になっていた。

 

「なるほどな」

 

俺は透視魔法を使って奥の方を見た。そこには鉄の板が張られていた。

 

「そこに乗れるか。一応カメラを設置しておこう」

 

俺はその鉄の板に向かって跳んだ。鉄の扉もあって、そこには茶色くなった暗証番号が書かれている板もあった。茶色くなった原因は触ってみたところ、サビではなく薄く塗られたペンキであることが分かった。俺はそれをスマホで撮り、直径2cmほどの小さなカメラを張り付けてその場を後にした。

帰りはspider's thread magicを利用して家に帰った。家の前に着地してドアを開けると、かりなが電話をしていた。

 

「うん……あ、じゃあ12:30ね……うん……オッケー……じゃあね」

 

時間の約束か。今日はかりなが俺たちの手伝いで俺の許可を得て休んでいる。出席停止扱いになっているから大丈夫。

 

「かりな、誰と電話してたんだ」

「ひゃぅっ!しゅ、柊くん居たの!?」

「少し前から。それで、どうしたんだ」

 

かりなは少し間を空けて落ち着いてからスマホを俺に見せた。

 

「拠点にして場所るが分かったから、行動予測と場所のPCをハッキングしたかったの」

「おお、ナイス判断だな。それで、誰に電話してたんだ」

 

それが問題なんだよな。

 

「ゆいちゃん。覚えてる?月野ゆい」

「ゆい?……あぁ、あの2年2組の」

「そうそう!あの子ね、ハッカーだから任せよっかなって」

 

ハッキングか。良い考えだな。正直、ハッキングした方が作戦がうまく行く。

 

「じゃあ、それが12:30なんだな」

「うん!柊くんはどうだった?潜伏場所」

「ああ、それっぽい場所は見つかった。ただ、俺たちが行くのが困難だな」

 

あんなところ、俺たちで行けるかどうかなんだ。ロープを垂らせば行けないことはないけど、速達性が失われる。

 

「やっぱりあそこの機械ハッキングした方がいいよな」

「機械?」

「ああ、写真撮ってある。ほら」

 

俺はスマホの写真を見せた。かりなは目を凝らして見ていた。

 

「これ、暗証番号?ちょっと錆びてて見にくい…」

「これ、サビじゃないぜ」

 

もう見ているから分かるが、ペンキを薄く伸ばしただけ。

 

「茶色いペンキ。わざと暗証番号を見にくくしてるんだろうね」

「うわぁ…ん?けど、これ少し見えるところもあるよ?」

「俺が擦って消した部分だな」

 

見えているところは、1●●●5●PRN●●32のここだけ。英語も混ざっていて分かる気がしない。

 

「うーん、浮き出てるところからすると、左から3番目はTかな」

「見えるのか?」

「かろうじてね」

 

そうすると、1●T●5●PRN●●32か。見たことないパスワードだな。

 

「1番右から3番目、上半分しか見えないけど、2か3」

 

やっぱり見えないよな。目良いやつがいたら話が速いんだが…アーチャーとかスナイパーとか…ん?アーチャー?

 

「ちょっと持ってて」

 

俺はなぎを呼びに行った。なぎはアーチャーだから分かるはずだ。

 

「なぎ、ちょっとおいで」

「にゃ?」

 

俺は手招きをして呼んだ。なぎはぴょんぴょん跳び跳ねながら来た。

 

「なぁにー?」

「ちょっと頼みたいことがある」

 

俺はなぎをかりなのところに連れていった。

 

「写真?」

「このパスワード、解読できるかな」

「この番号だよね。えっとね、1PT456PRN4232」

 

速くない?読むの。

 

「分かったのか?」

「うん。凹凸で読めた」

 

やっぱアーチャーなだけあるのかな。けど、なぎも結構真剣な目してたな。

 

「柊くん、このパスワード、何に使うの」

「え?扉の解除──」

「このパスワード、壁の封鎖じゃない?」

 

壁の封鎖?一体なんだ、それ。

 

「なんだそれ」

「柊くん、このパスワード、中に入った人を潰すように狭くなってくやつだよ。あの、山形であったやつ」

 

ああ、山形であったやつって、迫り来る壁のやつか。たしかにあれは自分が入ったら大変だが、相手だったらいいだろ。

 

「一応解除しちゃうよ。相手が入るんだし」

「あ、相手が入るの?じゃあ大丈夫」

 

俺はゆいが来るのを待った。時間は12:15。あと15分くらいだ。

 

 12:30、ゆいが俺の家に着き、ハッキングを始めた。相手の入力を遮断し、こちらでできるようになった。

 

「先生、これでいいですか」

「あぁ。ありがとう、ゆい」

 

俺はゆいにお礼を言って、家に泊まっていくように言った。俺は胡桃の帰りを待っていた。

 



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第62話 夜

 俺はゆいを部屋に寝かせると、胡桃となぎ、かりなを連れて外に出た。俺は久しぶりにこの3人だけで飲もうと思ったんだ。俺はもう夜なのにも関わらず缶のお酒を持ってきた。

 

「柊くん!そこの高台にしよ!」

「あぁ、いいよ」

 

俺は胡桃の走っていくところに向かった。ってあれ、ここら辺って確か…

 

「胡桃!止まれ!」

「え!」

 

胡桃は落ちていく。ここら辺、俺が地形変更魔法とか地形破壊魔法をしたところだから凹んでたりした。俺はすぐにSpider's thread magicで胡桃を宙に浮かせた。

 

「きゃぁっ!」

「悪い!怖いよな!」

 

俺は大きな声で胡桃と話した。多分高さ10m前後。俺が手を前に突き出すのをやめる、もしくは魔力を解放すると胡桃は落ちていく。多分背中から落ちて即死だろう。

 

「柊くん!助けてぇっ!」

「今ゆっくり降ろすから!待ってて!」

 

俺は糸状のもので胡桃をかこんだまま下にゆっくり降ろした。

 

「柊くん!」

「あ、わりぃ」

 

俺は糸状の物を胡桃に囲ませたままだった。

 

「胡桃、降りてこい」

「降りてこいって言ったってぇ、これ、ネバネバしててとれないだもぉん」

 

胡桃はネバネバした糸から離れようとする。

 

「分かった。手は付いてないな。俺に抱きつけ」

 

胡桃は俺にハグした。俺はspider's thread magicを解いた。

 

「にゃう!?」

「お任せください、お姫様」

 

俺は少し冗談混じりで言った。お姫様のようだっていうのは本当だし。

 

「ふふ、じゃあお任せしちゃおっかな。王子様♪」

 

なんか会話おかしくないか?まぁいいか。俺は胡桃を抱き上げてなぎのところに歩いた。

 

「あ、またイチャラブしてる!」

「いやいや、夫婦でこれくらい良いだろ」

「嫌だったら凪沙ちゃんもすれば良いの。私も拒否しないから」

 

それもそれで困るんだけど。というか、まだ今日の目的果たしてないし。

 

「後でな。とりあえず飲もうぜ」

「1月8日に12日にどうしてこんな?」

「元日は忙しかったからその代わり」

 

俺は少し離れた高台で便利系魔法、Constructionを使ってテーブルと椅子を置いた。Constructionは建設という意味で、今回はテーブルと椅子を建設した。

 

「じゃあ雑談でもするの?」

「それしかないよな。」

 

俺はかりな以外に缶の酒をあげた。かりなにはただのジュース缶。飲めないし。

 

「柊くん、今日の偵察、どうだった?」

「ああ、収穫はあったな。トラップも分かったしな」

「あれトラップでいいの?柊くんが引っ掛かったらダメだからね?」

 

引っ掛かるほどどんくさくないし大丈夫だろ。

 

「大丈夫。カメラもあるしさ」

「私も一緒に行きたい!」

「危険だからだめ」

 

胡桃は「えーっ」と不満げに言った後、缶の酒を一気に飲み干した。というか、度数高いからそんなに一気に飲んだら…

 

「あ、私も!」

 

なぎも一気に飲み干した。いや、もう酔うどころじゃないだろ…

 

「あれぇ…なんか、暑い…脱ぐ…」

「私もぉ、あつぅい…」

 

2人は上に着ていた服を脱いだ。胡桃は白い服、なぎは水色の服だった。

 

「胡桃!?ちょっ、汗で透けてる!」

「えぇ?あぁ、ほんとだぁ」

「胡桃ちゃんのおっぱいおっきー」

 

なぎが胡桃の胸を揉んでいた。この場に居づらいのが俺なんだけど?

 

「お兄ちゃん、来て」

 

そう言ったのはかりなだった。

 

「なんだ、というか呼び方変えなくても」

「柊くんって言ったら反応しちゃうから、あの2人」

 

そういうことか。

 

「それで、何の用だ」

「お兄ちゃん、一緒に散歩しない?」

「え?いいけど、あの2人は」

「放っておいて良いんじゃない?酔ってるし」

 

それもそうか。俺はかりなから手を繋ぐように招かれ、手を繋いだ。

 

 少し歩いたところで、かりなは急に足を止めた。

 

「どうした、急に止まって」

「…私さ、怪しかったんだ」

 

怪しかったって何が怪しかったんだ。

 

「何が怪しかったんだ?」

「気付いてるでしょ…私たち、血繋がってるんだったら血液型も繋がってるはずだよね」

 

確かにそうだ。俺の血液型は母さんがA型、父さんがB型だったが、母さんの血液型が強く、俺はA型。

 

「そうだよ。だからかりなだってAが入ってるはずだろ?」

「……ホントに、気付いてない?」

 

気付いてないって…あ、そういえば、彩夏の血液型A型だったよな?それでかりなの血液型は…あれ、Aにならない。

 

かりなと彩夏は一卵性なはずだから同じ血液型になることが多い。というかなるはずだ。だから彩夏がAだとかりなもAなはずだ。なのに、かりなの血液型はO。AどころかBも入ってない。俺は母親の血液型であるA。彩夏もA。暁依がAB、冬菜がB。それなのに、唯一AもBも入っていないのはかりなだけ。

一応、従妹の紅葉もAだけど、俺の祖母が双子を産み、両方A。だけど、祖母が産んだもう1人の人がO型の人と結婚。子供を産んだ結果、父親の血液型が入ったが、O型が弱くなり、A型になった。だから血が繋がっていると言える。要するに、

 

       祖母A┳祖父A

      柊母A━┻━紅母A

   柊父B┳┛     ┗┳紅父O

      柊A     紅葉A

     暁依AB

     冬菜B

      :

      :

    かりなO?

 

という形。かりながO型ってことは…

 

「かりな、もしかして」

「分かったでしょ。私、血液型不思議なの。だから、この家の子じゃないんだって。だから、もう、私」

 

かりなは俺の肩に手をつけて言った。

 

「バイバイ、柊くん。またいつか会えたら会おうね」

 

かりなは俺の肩につけていた手に力を入れ、俺を倒した。俺が立ち上がっている内に、真っ暗な暗闇にかりなの姿は飲み込まれていた。

 

「かりな、かりな。どこだよ、かりな!」

 

俺はくらい森に向けて叫んだ。

 



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第63話 償い

今回の登場人物
月島柊


報道陣?
以上8名


 俺は翌日の作業をゆいに任せて俺は朝の始発電車で新橋へ向かい、京浜東北線、東京モノレールに乗り換えて羽田空港からJAL505便で新千歳空港へ。両親に直接聞きに行くのだ。

新千歳空港には9:55。そこから10:18発快速エアポート103号札幌行きに乗る。両親にはまだ伝えていないため突撃だ。

札幌には10:57。走って家に向かい、ドアを開けた。

 

「おぉ、柊。帰ってきたのか」

「かりなは!」

 

俺は父さんに聞いた。

 

「かりながどうかしたか」

「あいつ、本当の妹じゃないって言って、俺を倒してどっか行ったんだけど」

 

父さんは不思議そうな顔をした。

 

「かりなは本当の妹だろう?」

「は?だって血液型あいつA入ってないじゃないか」

「血液型あいつA型だろう?O型だと思ってたのか?」

「だってあいつO型だって言ってたし」

 

俺は父さんと話していた。すると、母さんが2階から降りてきた。

 

「かりなの血液型、証拠あるわよ」

 

そう言って持って来たのはかりなの血液型証明書だった。それには 月島かりな A型 と書かれていた。

 

「え、じゃあかりなは…」

「勘違い…あ、まさか!」

 

俺と父さんはどういう状況に陥っているか分かったらしい。

 

「かりな、ケータイ持ってるか」

「家に寄ってないんだったら持ってないはずだ」

「じゃあGPSも無理じゃないか」

 

ヤバイ、GPSもダメで、どこに行ったかの手がかりすらない。

 

「ひとまず俺のGPSは起動させておくから。かりな見つけたらGPS起動させる」

 

俺の父さんと母さんは25歳の時に俺を産んだ。俺が今26歳の、数え年は27。つまり、父さんと母さんは52歳ってことになるんだが、周りから見ると年齢は40代前半。下だと30代後半か半ばに見えてもおかしくないほど若い。それに、魔法だって使えて、父さんは機械類が得意。GPSなんてお手の物だ。

 

「分かった。あっちについたらかりなのスマホにもGPS付けておきなさい」

「分かったよ。じゃあ、俺急ぐから」

「気を付けて帰ってね」

 

俺は家の前まで出た。

 

「柊、札幌駅まで送ろう。早く帰るんだ。魔法使うんだろう?魔力削減さ」

「悪いね、父さん」

 

俺は父さんの円盤に乗って札幌駅上空まで飛んだ。

 

「父さんも遅くなったよな」

「昔は日本最速だったんだぞ。たしか270km/hだったかな」

「速かったんだな。今は90km/h前後か?」

「大体な」

 

父さんの昔は知らなかった。270km/hか。俺も出してみたいな。

 

「120km/hの俺にはほど遠いな」

「大丈夫さ。父さんだって270km/h出したのは30歳の時だからなぁ」

 

まだ俺だって出せるってことか。俺は父さんの円盤にしばらく乗っていた。

 

「ありがとう、助かった」

「気を付けろよ。かりなの事もよろしくな」

「はいよ」

 

俺は自分の円盤に乗り換えて深谷駅まで飛んだ。7時間くらいで着くはずだ。

俺は途中で眠くなって、自動運転モードに切り替えて寝た。

 

 俺の家のテレビが速報を流していた。

 

「ただいま速報が入りました。昨日から行方が分からなくなっていた14歳の月島かりなさんが、先ほど18:30ごろ、埼玉県深谷市の雑木林に遺体となって発見されました。状態は──」

 

かりなが遺体になって見つかった?そんなの嘘に決まってる。デタラメだ。俺はそう思ってニュースをもう一回見た。

 

「かなり痩せていて、かりなさんの胸元のポケットから、『バイバイ、柊くん。大好きだよ』と書かれたメモ用紙が入っていたそうです」

 

かりな…俺はそのニュースが終わってもテレビを見続けていた。

俺はしばらくして気分転換で外に出た。

 

「あなたが月島柊さんですね!」

「え?あ、はい」

「どうしてかりなさんを見捨てたんですか!」

 

見捨てた?いや、もしかしてニュースの報道陣か。

 

「いや、見捨てたんじゃなくて、かりなが勝手に家族じゃないって言って──」

「なんて言い訳なんだ!お前も死んで償えよ!相手が死んでるんだから、命で償えよ!」

 

奥の方から若い男性の叫び声が聞こえた。確かにそうだ。かりなが勝手に行ったとしても、止めなかったのは俺の責任だ。命で償うのは当然だ。

俺は家のキッチンに行って料理であまり使っていない包丁を1本持った。そして、持ったまま外に出た。あまりにもショックを受けたせいか、無心だった。

 

「ちょっ、何してるんだよ!」

「先ほど言われた通り、俺はここで自殺します」

 

俺は包丁を自分の方に向けた。街頭で包丁の刃先がキラリと光る。俺は自分の左胸、心臓をめがけて包丁を素早く突き刺した。

 



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第64話 守る人、守られる人

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
美竹蘭
羽沢つぐみ
青葉モカ
宇田川巴
上原ひまり
以上8名


 「っ!」

 

俺は眠りから覚めた。俺がいたのは円盤の上。そうか、さっきのは夢だったのか。

今飛んでいたのは仙台上空。父さんからの連絡があったらしく、かりながO型だと思っていたのは、かりなが5歳くらいの時に引き取った親が血液検査を行ったとき、A型と病院から出たんだが、引き取った親の方が「これはうちの娘だ!」と言って、O型と詐称したらしい。

 

「かりな、俺がいないと…」

 

かりなは中2で、力が弱いというほどではないが、少なくともかりなは体育系じゃない。長距離走だって40人中35位(俺は40人中2位)。とてもではないが遠くまで行く体力はないし、行ったとしても耐える力もないはずだ。ケータイも家においてあるし。

 

「急がないとな」

 

俺は今持っている全ての魔力を出し切った。

 

 家の前に着いたのは結局19:00を少し過ぎた時だった。俺はすぐに家の周辺を探した。しかし、そんなに探さなくても良かった。

 

「かりな!」

 

いたのはすぐ近く、というか家の裏にあるかなり急な斜面。もう崖だった。

 

「おい、何してるんだよ」

「もう家族じゃないから」

「それは嘘だ」

 

俺はスマホにあった証拠を突きつけた。

 

「お前の血液型はA型だ。O型じゃない」

「でも、私の記録には…」

 

確かにO型と書かれているはずだ。しかし、さっき送られてきたやつを見れば分かった。

 

「それはかりなを引き取った親が書いたデタラメの記録書だ。こっちが親に送られた記録書」

「じゃあ、私は…」

「妹だ。俺たち家族の」

 

かりなは斜面からこっちに歩こうとした。しかしそこは足場が悪く、斜面につられて落ちていきそうになった。

 

「かりな!」

 

俺はかりなの右腕をつかんだ。

 

「助け…て…」

 

かりなは急な斜面の下にある地面に吸い込まれていくように下がっていく。

 

「かりな、お前、俺がいなきゃ何もできないんだからさ、俺に頼れよ」

 

そう言って俺はかりなの手をつかんだ。かりなの手の平は冷えきっていて、寒い日の冷たい水のようだった。しばらく掴んでいると俺の熱が奪われ、感覚がなくなるほどに冷たくなった。

 

「お前、手冷たくないか」

「だってもう24時間くらい外にいるんだもん」

 

俺の手の感覚がなくなったとき、俺はかりなと一緒に落ち始めた。

 

「うがっ!」

「柊くん!」

 

かりなは俺の名前を呼んだ。下は少し地面があったあとすぐに川。この時期の川はとんでもなく冷たい。1時間でも入ってれば凍傷にかかってしまう。

しかし、そんな事も知らずに重力は俺たちを川に導く。

 

「かりな…」

「柊くん…!」

 

俺はかりなを落ちている途中に突き放した。草むらで少し衝撃が強いが、凍傷にかかるよりかはいいはずだ。かりなと俺だったら俺が傷つく方がいい。

 

「あっち運んで!私こっち持つ!」

「私もそっち行く!」

「行こー」

「あぁ。行くぞ!」

「開けとくね!」

 

5人の声が聞こえた。俺が川に一瞬だけついたとき、すぐに地上に上げられた。

 

「……誰だ……?」

「私だよ」

 

そう言ったのは、黒髪に赤いメッシュの入った女の子。クールな感じで、もう1人は茶色の髪だった。どこかで会ったことのある2人。

 

「…!蘭とつぐみ!?」

「そう。久しぶりだね」

 

蘭は結構前に会って以来一切会ってなかったし。つぐみも同じくらい会ってない。

 

「蘭…」

「柊くん、私のこと覚えてたんだ」

 

俺は蘭に向けて右手を伸ばした。蘭は俺の手に優しく触った。

 

「待って。痛いところないの」

「痛い…?あぁ、さっきから左手は痛い」

「左?何も傷ないよ?」

 

なんで蘭はそんなこと聞いたんだろう。俺は蘭の目をじっと見た。

 

「右。傷だらけ」

「右が?」

 

俺は蘭の触っていた右手を見た。確かに、血が腕に流れるほど流血していた。だけど、痛みは一切感じない。左手がますます痛くなっていくばかりだ。

 

「……なんでだ……」

「一回家の中入ろう。もう泊まるって言ってあるから」

 

蘭とつぐみは俺を2人がかりで持って家に運んでくれた。右手の痛みはないのに、流血がある。まるで反比例しているようだった。傷が多ければ痛みは少なくなり、少なければ大きくなる。そんな感じだった。

 

「柊くん!その血!」

 

胡桃が大きな声で言った。俺は胡桃に心配されないようにして答えた。

 

「あぁ。痛くないんだがな…」

 

俺は蘭とつぐみの手から降りた。

 

「ありがとう。つぐみはもう部屋に行ってて。蘭は…話がある。俺の部屋に案内するからついてきてくれ」

「うん」

 

蘭は大人しく俺について来た。俺は血が垂れないように手を床と平行に向けたまま移動した。

 



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第65話 考えたこと

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
月島胡桃
美竹蘭
以上4名


 俺は自分の部屋に蘭を連れ込み、蘭と話をしていた。いろいろ聞くことはあったが、まずはこれからだ。

 

「蘭、どうしてここにいる」

「…柊くんの、家に…みんなで、行こうって、なって…」

 

みんなで俺の家に来るようになったのか。そう言うことだったのか。別に誰かに脅迫されたんじゃなくてよかった。

 

「えっと、じゃあ、蘭は今どこに住んでるんだ」

「東京の三ノ輪」

 

やっぱりそこら辺だったのか。

 

「そうか。じゃあ蘭、あともう一つだけ」

 

俺は蘭の肩を掴んで言った。

 

「蘭は、俺といなくてもいいか」

 

この質問は、今日夢で見たことからだった。自分から死ぬなんて考えたこともなかったが、あの夢によって考えさせられた。何かがあったら死んでしまうのではないか。そう思ったから。

 

「…いなくてもいきれるとは思う。ただ、悲しいかな」

 

蘭はそれだけ答えて部屋から出ていった。

 

(誰でもそう言うよな…)

 

俺はベットに飛び込んだ。左手の痛みはまだ治まっていない。右手の出血は少し治まったか。

 

「寒いな…」

 

俺は毛布を被った。すると、急に苦しくなって、呼吸も過呼吸になり始めた。

 

「っ…!」

 

俺は急いで毛布を取った。しかし、苦しさは治まらない。何のせいだ…こんな苦しいのは…とにかく誰かに助けを…

俺は床を拳でなるべく強い力で叩いた。下まで届いているはずだ。来なかったらこの下にだれもいなかったんだろう。

3分くらいたっただろうか。そのときに胡桃がやってきた。

 

「どうしたの?すごい響いて──」

「くる、み………」

 

俺は呼吸ができなくなった。

 

「柊くん!」

 

胡桃が駆け寄って来たが、もう遅かった。俺はもう目を開けているのがやっとまで来てしまったんだから。

 

「ダメ!死なないで!」

「……………………」

 

俺は目で訴えるしかなかった。俺は呼吸が出来ない状態でそのままだった。胡桃、かりなを呼んで回復魔法かけてほしい…

 

「……分かった。呼んでくる」

 

胡桃と俺の間だ。通じ合ったんだろう。

 

「柊くん!呼んできたよ!」

「回復だよね」

 

かりなは俺の全体を回復し始めた。徐々に呼吸もできるようになり、完全にできるようになったら俺は話した。

 

「かりな、呼び方、お兄ちゃんにしてくれないかな。あと、2人共なんだけど、ありがとう」

 

かりなは笑顔になりかけたが、胡桃と同じように少しくらい表情を浮かべた。

 

「俺、少し暗い話になるんだけど、考えたことがあるんだ」

 

俺は暗い話になることを分かっていても話した。

 

「仮に100歳で死ぬとしよう。そうすると、あと俺たちは73年で死ぬことになる。じゃあ、この73年はどれくらいか」

「半世紀以上もあるんだから長いんじゃないの?」

「考え方によってはな。ただ、73年を27年で割ってみ」

 

俺は2人に計算させた。答えが出てきたのはかりなだった。

 

「2.7くらい…」

「そう。今まで生きてきた年の3倍も生きれない」

「………」

 

2人は黙り込んだ。そう、あと73年は短いのかもしれない。

 

「あと、死んだあとはどうなる。天国と地獄があるなんて、誰も分からない。見てないんだから。だったら、死ぬときはどんな感情なんだ」

 

結構重い話になってきた。

 

「それを考えると、いつ死んでも感情は変わらないんじゃないかって考えることがある」

 

かりなは俺に寄ってきた。

 

「そういう夢をさ、今日見たんだよ」

 

俺はかりなに向けて言った。

 

「かりなの責任を持って俺が死ぬ。これが良いって思う人と──」

「ダメ!絶対」

 

って、思う人がいる。

 

「って、思う人がいる。それ、考えてたんだよね」

「……柊くん、私たちは一緒だよね?」

 

胡桃が聞いてくる。俺は微笑んで答えた。

 

「そうだね」

 

俺はその後にためた後に吐き出した。

 

「あと数十年は」

 

俺は胡桃に言って部屋を出た。やっぱり寝るのはやめよう。右手からはまだ血が流れ続けている。痛みは左のまま。俺はどちらを押さえればいいか分からなくなり、放っておいたまま階段を降りた。階段はいつもより急に感じたが、降りれないほどではなかった。手すりをなしに降りて、バランスを崩した俺は、壁に肩を寄りかからせた。



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第66話 暁依

しばらくは彩とかの方に移ります。なので暁依視点ですね
今回の登場人物
月島暁依
丸山彩
丸山春菜
月島柊
月島かりな
以上5名


 俺は家で彩の作るご飯を待っていた。結婚式、そろそろ挙げたいな…柊に言っておかないとだよな?さすがに。一応親族なのもあるし。あ、だったら…誰だっけ、あの秋田の実家にいる従妹…あいつも呼ばないといけないのか。人数多いなぁ。

 

「暁依、なぁに考えてるのっ!」

 

春菜だ。そうか、春菜はまだ知らないのか。

 

「いや、俺と彩結婚して、婚姻届出したのはいいんだけど、いつ挙げようかなって。結婚式」

「結婚式?だったら家の前で挙げちゃおっ!」

 

相変わらずすごい提案してくるなぁ。けど、家の前でかぁ。

 

「装飾はどうするんだよ」

「借りるの!式場から!」

 

だったら式場でやればいいじゃん。けど、面白そうだよな…家で結婚式。

 

「じゃあ計画進めるか。電話で連絡しておくから」

「はーい」

 

春菜は彩のところに行って料理を見ていた。あんな春菜だけど、口は固く、内緒事は言わない。そこは安心できる。

俺は自分のスマホから式場に連絡し、明日の昼届くことを確認した。

 

 彩はたまたま休みで、授業が無かったそうだ。明日は学校に行ってるから昼につくとちょうどいい。俺は彩が作った昼飯を頬張ると、外に出た。いや、電波が悪いんだよ、中だと。繋がるっちゃ繋がるんだけど、なんというか、弱い。

 

「暁依、よく外いるよね」

「寒い訳じゃないし。彩も来ればいいさ」

 

彩は俺のとなりに座った。それから倒れるように俺の肩に寄りかかった。

 

「ぎゅってしない?」

「したいんだったらどうぞ」

 

彩は横から俺に抱きついた。抱きついてから彩は言った。

 

「暁依は自分からハグしたりしないの?」

「いや、だって恥ずかしいだろ…言うの…」

 

彩は少し笑って俺を下から潤んだ目で見た。

 

「暁依とだったら私恥ずかしくないよ?」

「っ…」

 

俺はその目に耐えきれなくなって、恥じらいを捨てて彩を抱き寄せた。

 

「わっ」

「我慢できる訳ねぇだろ、そんな目されたら」

「ふふ、結構上手。体全体がくっついてる」

 

俺は彩のピンク色の髪を撫でた。

 

「彩、今度さ、学校に言っちゃダメかな」

「え!?い、いいけど…」

 

彩は少し驚いたが、すぐに嬉しそうな顔をした。学校だったら柊だっているし安心できる。

 

「彩はどんな教え方してるのか見てやるよ」

「なんか緊張するなぁ」

「嬉しいんじゃなくて?」

「嬉しいよ?ただ、あんまり見られると恥ずかしいじゃん」

 

あぁ、そう言うことか…

 

「まぁ、1時間だけだから」

「それくらいだったら…」

 

彩は渋々オーケーした。俺は彩を抱いたまま家の中に入った。

 

 そして数日して、俺は彩の後に続いて学校に入った。前に許可を取っていたため楽に入れた。

 

「へぇ…彩は1年5組か…火元管理者…数学資料室が月島?柊のことか」

 

学校を彩に見つからないように歩いていると、柊に会った。

 

「あれ、暁依。どうしたんだ」

「言わないでくれよ。彩に内緒で来てるんだよ」

「ああ、なるほど。6組も来てくれよ」

「空いてたらな」

 

俺は下の階に降りた。降りてすぐ左にあったのは理科室。階段を降りて右側が廊下で、理科準備室があったあと、隣が調理室。家庭科の調理実習で使うんだろう。

 

「そうだ、行かないとな」

 

俺は2階の1年生の教室に向かった。最初は2年2組にいた。

 

「えぇ、今日この授業を見に来ている」

「月島暁依です。よろしく」

「あきにい!」

 

女子が一人大きな声で俺を呼んだ。まぁ、それはかりなだったんだけど。

 

「かりな?ここだったのか」

「あ、お知り合いですか?」

「妹です」

 

俺はかりなの席の横に膝立ちした。

 

「授業始めちゃって下さい」

「はい」

 

先生は授業を始めた。

 

 俺は2年2組の次に1年4組に向かった。月曜日2時間目は彩はいないはず。

 

「あれ、いないのか」

 

時間割は音楽。音楽室にいるのか。3時間目は美術、4時間目は理科。ずっと移動教室の可能性があるのか。

 

「待ってるか」

 

俺は教卓の椅子に座って待っていた。

 

 2時間目が終わったあと少し戻ってきて、3時間目のあとはみんなが座った。教室で理科なのか。

 

「誰ですか?」

「月島暁依。柊先生の弟」

「よぉし、みんな座ってるか?あれ、暁依が座ってるってことは、授業ほったらかすか」

 

入ってきたのは柊だった。いやなんで?ちゃんと授業やってよ。

 

「柊、授業やれよ」

「はいはい。えっと、火山のドカンのプリント配った?」

 

クラスは笑いに包まれた。笑わせ方が上手いな。

 

「配ってあるね。えっと、じゃあメントスコーラしに行くから昇降口前集合」

 

あぁ、柊は授業面白くやる先生なんだ。というか、数学の先生って聞いたんだけど理科なの?

 



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第67話 授業

今回の登場人物
月島暁依
丸山彩
月島柊
月島胡桃
以上4名


 俺は5組の子どもたちと一緒に昇降口前に向かった。メントスコーラをするらしく、柊は2Lのコーラと、メントスを糸に通した物を両手に持っていた。

 

 

 

「先生、靴置きましょうか?」

 

「ああ、鈴鹿。悪いね」

 

 

 

鈴鹿さんっていうのか。女子生徒が柊の靴を置いた。柊は靴を履いて外に出た。俺も後に続いて外に出た。

 

 

 

「えぇっと、見えるか分からないんだけど、このキャップに直径が糸と同じ大きさの穴が空いてるんだ」

 

 

 

みんながキャップを見る。多分直径0.5mmくらいじゃないかな。そこに音が通してある。

 

 

 

「これに蓋するとメントスがコーラに付くから吹き出す。さて、吹き出させようか」

 

 

 

柊はメントスの通ったキャップで蓋を閉めた。少しすると、みるみるうちに泡が上がってきて、吹き上がった。

 

 

 

『おぉっ』

 

「これが火山と同じ原理。教室に戻って解説しよう」

 

 

 

柊とみんなは教室に戻った。俺も後ろに続いて教室に戻る。

 

教室に戻るとみんなが静かに座っていた。そこに柊が入ってきて、さっきの解説を始める。

 

 

 

「コーラの炭酸は二酸化炭素であることは知ってるね」

 

「シュワシュワのやつですよね」

 

「そう。その炭酸の二酸化炭素がメントスに触れると、二酸化炭素が反応して吹き出すんだ。これも同じで、火山のマグマが耐えきれなくなると火口から吹き出る。だからメントスコーラをやったんだね」

 

 

 

メントスコーラか。やったことないからどこかでやってみたいな。

 

 

 

「あ、メントスコーラは今回細い穴でやったから高く狭かったけど、空けてからメントス入れると一気に吹き出すから気をつけてね」

 

「他のクラスではやるんですか?」

 

「俺の担当が来たらね。大体上西teacherだからここだけかも」

 

 

 

あれ、じゃあたまたまだったのかな。

 

 

 

 50分の授業が終わってから俺は柊に聞いた。

 

 

 

「数字じゃなかったのか?」

 

「たまに理科も入るよ。あとは2年音楽」

 

 

 

音楽も入るのか。結構忙しい先生だな。

 

 

 

「無理するなよ」

 

「何人かに手分けしてるから大丈夫。休みの時間も出来たくらいだし」

 

 

 

だったら大丈夫か。えっと、次は給食か。だったら彩にネタバレするのもいいかもしれないな。

 

 

 

「じゃあ俺このまま5組にいるかな」

 

「彩にネタバレか。驚かせろよ」

 

「分かってる」

 

 

 

柊は1つ隣の6組に戻っていった。俺は1番後ろの席の横に膝立ちしていた。

 

「少しだけよろしく」

「はい」

 

男子は優しく受け答えた。落ち着いてる男子だな。将来モテるかも。

 

「落ち着いてるな。将来モテるぞ」

「そんなことないですよ。話すの苦手なので」

「そうか。俺も小・中学校の頃はそうだったぞ」

 

挽回も出来ることを俺は伝えた。顔と性格が良ければどうにかなる。

 

「さーて、給食食べますよー」

「先生!今日の給食51人分あります!」

 

おぉ、この中学校は俺の分まで用意してくれるのか。

 

「月島って書いてあります」

「じゃあ6組と間違えたのかな」

「けど5組って書いてあります」

 

確かにマーカーで「5」と書かれている。

 

「彩」

「うん?なに?」

「俺どこで食えばいい?」

「自分の席で食べるの」

 

そんなに常識が分からない人じゃないし、ダウン症じゃないんですが。

 

「じゃあこの床で食うか」

「席で食べるって──」

 

彩は固まった。後ろがつまり始めている。

 

「暁依!?」

「だからどこで食うんだって。床で食うぞ?」

「じゃあ教卓の横の机使って!」

 

彩は机を指差すと、そそくさと給食を取って教卓に置いた。

 

「暁依さん、給食よそっておきました」

 

さっきの男子だ。

 

「おっ、サンキュ」

 

俺は彩の横の机に給食を置いた。

 

「それで、なんで暁依がいるの」

「前に言ってたろ。いつか行くって」

 

今日だとは言ってなかったけど。彩は不機嫌そうに頬を膨らませ、口を尖らせた。

 

「ダメだったか?」

「別にいいもん…」

 

彩は給食を食べ始める。俺も横で食べ始めた。

 

 5時間目は6組に行った。数学の授業だが、黒板に

「5時間目の数学は胡桃が来るよ By柊」

と書かれていた。音楽の授業でも行ってるんかな。音楽もやってるって言ってたし。

 

「やっほー!」

「胡桃先生は音楽行かないんですか?」

「残念ながら免許持ってないの。暁依くんだったら──」

 

俺に降るのかよ、胡桃。

 

「持ってない」

「ありゃ。まぁ今日は私が担当するからね」

 

そう言って胡桃は授業を始めた。

 



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第68話 最近の日常

柊の回に戻ります。
今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
うさぎ
以上4名と1匹


 俺は家で戦いに向けた準備をしていた。今回は手伝いということから資料作成のみだった。

まずは魔力制限。仮に魔力制限をかけられる魔法を使われない限り、制限は24150~25200。25300を使ってしまうと侵入するドアをロックしてしまう。

次に移動手段。移動手段は魔法を使わずに公共交通機関を使うことになる。一発で見つかることからだ。

最後は戦闘時間。正直制限しなくてもいいのだが、制限してしまった方が戦いやすくなる。時間は3時間未満。それ以上いると敵の仲間が加入してしまうため困難となる。

以上の事を資料を作る。PCのソフトを利用し作成するが、面倒だ。最初はプログラムしてやろうかと思ったが、それをするくらいだったら作った方が楽だと思った。それが凶となった。プログラムも俺だったら3時間前後で終わるし。プログラムが完成したら10分もしない内に終わったと思う。大失敗だったな…俺は地道に作業を進めた。人数50人で押し掛けるとか無駄だろ…と愚痴を思いながらも俺は作業を進めた。

全てが終わったのは作業開始から4時間後。新幹線なら東京から秋田までとっくに着いている。俺は就寝時間も含めて約10時間ぶりに廊下に出た。そこには置き手紙と共にコーヒーが置いてあった。置き手紙には

「お仕事頑張って。ファイト!」

と書かれていた。嬉しい。書いたのは1人だけじゃないだろう。書体や書き方が違う。「お仕事」がかりな、「頑張って。」がなぎ、「ファイト!」が胡桃だろう。

 

「お疲れ様。お腹空いてない?朝もお昼も食べてないでしょ?」

「今何時?」

「もう4時半だよ。あと2時間で夕飯だけどどうする?」

「じゃあ夕飯まで我慢しようかな」

 

俺は階段を降りた。空腹で少しふらつくが、今さえ乗りきれば夕飯だ。すぐに座れるし。

 

「柊くん?顔色悪くない?」

「何も食べてないからかな」

「大丈夫?なんか飲も?」

 

なぎは冷蔵庫から飲み物を持ってくる。俺のためなのか。

 

「これ飲んどいて」

「あぁ、ありがとう」

 

俺は水を飲んでコップをテーブルの上に置いた。

 

「柊くん、無理し過ぎなんだよ。そんな無理しないで、ゆっくり休んで?」

「今回は俺の決断ミスだから。自業自得だよ」

「そうでも、休むことは大切!」

 

母さんもそう言ってたっけな…俺はなんかなぎのことが母さんに見えてきた。

 

「分かった。ごめん」

「分かってくれればいいのっ。柊くん、体大事にね」

「分かったよ。気を付ける」

 

俺はなぎに返事してソファーに座った。

 

「柊くん、そこ定位置だよね」

「癖で座っちゃうんだよ」

「じゃあ私隣!」

 

なぎは俺のとなりに座った。ソファーは3人掛けで、あと1人が座れる。

 

「お兄ちゃん、そこ座っていい?」

 

かりなが頭の上にうさぎを乗っけてきた。なんでうさぎ?と思ったが、もう廊下の脇にゲージがあった。結構前に飼っていたうさぎのゲージだ。北海道にいたときからずっと持っている。それを使っているのか。

うさぎはかりなの頭の上でじっとしていて、結構懐いていた。

 

「あぁ、いいぞ。もう懐いてるんだな」

「うん!もふもふしててかわいいよ」

 

毛は真っ白で丸っこい。

 

「名前は付けたの?」

「小雪!いい名前でしょ」

 

雪っぽい色だからだろう。結構単純だけど、いい名前だ。

 

「いい名前だな」

「でしょー。小雪ちゃんね、持つと指が毛に包まれるみたいなの」

 

かりなは小雪を持って膝の上に乗っけた。確かに毛で指が隠れている。

 

「大人しいから楽なんだ!」

 

かりなは小雪を撫でながら言った。小雪はかりなの膝の上で眠った。

 

「寝ちゃったね」

「あったかーい…」

 

かりなは小雪の下に手を置いて言った。

 

「体温高いのかな」

「どうだろ?」

 

かりなは幸せそうな顔で小雪を見ていた。

 

「柊くーん、疲れたぁ」

 

胡桃が疲れはてて帰ってきた。胡桃は2時間くらい前に暁依の手伝いに行っていた。

 

「お疲れ」

「もう座るとこない?」

 

確かにもう座るところないかな。すると、なぎが俺に耳打ちした。

 

「膝の上空いてるじゃん。喜ぶよ」

「分かったよ」

 

俺はなぎに言われたことを胡桃に言った。

 

「俺の膝の上空いてるけど座るか?」

「いいの?重くない?」

「軽いさ。俺と比べれば」

「そう?じゃあお言葉に甘えて」

 

胡桃は俺の膝の上に座った。

 

「おぉ、ちょうどいい高さ…」

「なんでこれがちょうどいいんだよ」

「膝が大体110度ぐらいの角度になるからかな」

 

胡桃は楽そうに俺に座っていた。俺はさっきかりなが小雪を撫でていたのを思い出して、胡桃を撫でた。

 

「ふにゃっ!?」

「反応かわいいっ」

 

なぎが言った。

 

「胡桃、どうだ?」

「気持ちいいよ」

 

俺は胡桃を撫でたまま話していた。

 



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第二短編小説 第69話 何か

今回の登場人物
多いので省略しますが、月島家の彩夏以外の12人、千聖、彩です。


 俺は暁依に呼ばれて暁依の家に行った。行ったのは暁依と関係がある人物。というか、俺とかりな、冬菜、香奈、藤花、風那、沙理華、父さん、母さんと紅葉、千聖の合計11人。俺とかりな、冬菜、瑞浪、千聖以外は新幹線から来るから一緒に来て、俺とかりな、瑞浪、千聖は深谷で待ち合わせ一緒に行く。

香奈、藤花、風那、沙理華は次の電車に乗ってくる。

札幌   6:00発北斗2号函館行き

     ↓

新函館北斗9:13着

新函館北斗9:35発はやぶさ18号東京行き

     ↓

大宮   13:38着

大宮   13:51発特別快速高崎行き

     ↓

神保原  14:48着

紅葉は次の電車。

秋田   10:07発こまち18号東京行き

     ↓

大宮   13:38着

大宮   13:51発特別快速高崎行き

     ↓

神保原  14:48着

紅葉ははやぶさ18号の増結相手、こまち18号に乗ってくる。一方、俺とかりなはこの電車。

深谷   14:36発特別快速高崎行き

     ↓

神保原  14:48着

瑞浪はこれ。

大宮   13:51発特別快速高崎行き

     ↓

神保原  14:48着

最後に冬菜はこれ。

本庄   14:45発特別快速高崎行き

     ↓

神保原  14:48着

みんなが一斉に着くようになっている。本庄14:48に乗れるようにみんなが到着する。

俺は胡桃が作った昼御飯を家で済ませ、14:10に家を出た。家から胡桃となぎ、あーや、絢梨が手を振って見送ってくれた。俺は手を振って返した。

時刻通りやってきて、俺は9号車から電車に乗った。9号車に乗ると、会ったのは瑞浪だけ。他のみんなは多分他の号車だろう。

 

「瑞浪、他のみんなは」

「1号車のボックシートに座ってたり、10号車にいたりするよ。神保原でみんな降りるから大丈夫だって」

「へぇ、瑞姉もみんなといればいいのに」

「たまにはくつろぎたいじゃん?」

 

いつも家に引きこもってる奴が何を言う。瑞浪は中学オンライン制で、時間は早朝。話を聞くからに、4:30~10:35くらい。

瑞浪の中学は4:30~10:35、11:00~17:55、18:15~0:50のどれかでオンライン授業。

話がそれたが、今日は暁依のイベント。大きなイベントだからなにか楽しみだ。

 

 みんなが暁依の家に着くと、春菜に従って家の前に用意されている椅子に座った。白いステージがあり、何かの式のようだった。

 

「さて、みんな揃ったね。じゃあ、これから結婚式を始めます」

 

結婚式?暁依と誰かだろうけど、一体誰とが結婚するんだろう。

 

「あれ、あのピンクの髪の人!」

 

そこには白いウエディングドレスを来たピンクの髪の女性と暁依がいた。

 




大学4年に暁依あきより 22歳

大学2年に冬菜とうな 20歳

大学1年に香奈かな 19歳

高校2年に藤花とうか 17歳

高校2年に風那ふうな 17歳

中学3年に沙理華さりか 15歳

中学2年に瑞浪みずな 14歳

中学1年にかりな 13歳

中学1年に彩夏さやか 13歳


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最終回 第70話 結婚式

今回の登場人物
月島柊
月島暁依
丸山彩
月島冬菜
月島藤花
月島風那
月島香奈
月島沙理華
月島瑞浪
月島かりな
月島紅葉
父さん
母さん
白鷺千聖
以上14名


 ピンクの髪の女性は、紛れもない彩だった。新郎新婦は暁依と彩らしい。同居していた人同士の結婚か。俺は拍手をしながら暁依とアヤを迎えた。ウェディングケーキを2人で切ったり、春菜が司会で誓いの言葉などを言ったあと、自作結婚式ならではの、1人ずつのお祝いの言葉があった。最初は母さん。

 

「暁依、結婚おめでとう。素敵なお嫁さんを持ったわね。大切にするのよ」

「分かった。ありがとう、母さん」

 

母さんの次は父さん。年の順番だと思うが、同い年だったらレディーファーストなんだろう。

 

「暁依、結婚おめでとう。名前も間違われたよな、暁依は」

「あ、あれは俺の漢字の読み方が当て字だからだろ」

「そうだな。そんなことがあっても、暁依は結婚できたんだ。こんなかわいい嫁と。逆境を乗り越えてよく頑張ったな、暁依」

 

父さんは少しネタ混じり。次は俺の番になる。俺は春菜に呼ばれるのを待った。

 

「白鷺千聖さん」

 

俺じゃないんだ。年齢順でも、あ、けど同い年か。

 

「彩ちゃん、結婚おめでとう。旦那さんを幸せにしてね。しなかったら盗っちゃうわよ」

「うぎゃっ。幸せにしないとなぁ」

 

千聖は比較的短かった。俺も結構短いけど。

 

「月島柊さん」

「はい」

 

俺はその場に立ち上がった。

 

「結婚おめでとう。水素と酸素が結び付くように、くっついてるといいな」

 

俺は科学の例えをした。みんな分からなそうだったから、俺は説明した。

 

「Hの水素、O2の酸素。2つが結び付くとH2O。水になる。これと同じように、暁依と彩が結び付いて、世界に一つだけの何かを作り出せるようにね。子どもじゃなくてもいい。愛情でも、家事でも。頑張れよ、暁依」

「分かりにくい例えをありがとう」

「うるさいな、俺にはこれぐらいしかネタがないんだよ」

 

俺は椅子に座った。冬菜が立ったのもそれと同時だった。

 

「あきにい、結婚おめでとう」

 

冬菜はそれだけ言って座った。最速で済ませなくてもいいんだけど。次は紅葉だった。

 

「暁依くん、結婚おめでとう。言うことないし、あんまり会ってないからこれくらいで」

 

紅葉は座った。

全員が立って暁依と彩に祝福のメッセージを送ると、未成年の人たち(18歳に繰り下げられた後)は別のところに行った。彩夏と同じ場所だ。18歳を超えている俺と暁依、彩、千聖、冬菜、香奈、藤花、風那は暁依と一緒のところに行った。残りは全員彩夏のところで飲む。俺たちはお酒を飲むために18歳を超えている人たちだけだった。

 

「暁依、結婚おめでとう」

「彩さんも」

「ありがとう!じゃあ乾杯する?」

「ここはあきにいでしょ?」

 

香奈が言った。暁依はジョッキを高く上げて言った。

 

「なんか俺になっちゃって悪いけど、乾杯!」

『乾杯!』

 

みんな一斉に声が揃うと、みんな一斉に飲み始めた。

 

「お兄ちゃんは彩さんに恋愛は抱いてたの?」

「ふっふっふ、まぁ、昔はね」

 

昔って言っても2年くらい前なだけなんだけどね。

 

「へぇ、私もいい人探したーい」

「自力で探せよ。俺は高校の同級生だぞ」

「うーん…」

 

藤花は考えていた。俺は暁依の顔を見て言った。

 

「俺のお陰だよな、結婚できたの」

「少しはな」

 

暁依は笑って言った。みんなは酒をずっと飲んでいて、俺と暁依、彩も飲むことにした。

 

「あきにい、来て」

 

未成年グループから誘いが来た。彩も一緒に行ったから多分乾杯したかったんだろう。

 

「お兄ちゃん、あきにいいって呼ばれるのと区別できてるの?」

「出来てる。さて、みんな、思う存分飲もうぜ?」

 

俺たちは酒ばっかり飲んでいた。

そして、暁依が戻ると写真撮影が始まった。暁依と彩が当たり前だが真ん中。俺と冬菜が真ん中よりの端2人。写真を撮ると、みんな殺到してきた。

 

「みんなで撮ろ!」

「いいぜ。ほら、みんな寄って」

 

暁依はみんなを中央に寄せた。俺は笑って寄った。

 

「年齢順に前からな」

 

みんなが並び替え、暁依と彩が中心に行った。俺は1番端。撮影は春菜がタイマーをかけて撮る。春菜は俺と反対の端だ。

 

「10秒ね~」

 

春菜がタイマーをかけ、撮影場所に着く。すると、みんなが大体の10秒を計っていたらしく、3!2!1!とカウントした。

その瞬間に撮影された。みんな不満はなかった。

 

 その後も俺たちは暁依の家で飲んで、酔いつぶれた人は彩夏に合流しての繰り返しだった。俺は酒に強かったし酔わないと思っていたが、少し酔ってしまった。それだけ飲んでいたんだ。話も盛り上がってたし。暁依もこれまでにない笑顔で楽しんでいた。俺は暁依と一緒にたくさんの事を話し、結婚後についてもたくさん話した。

そんなことをしていると、もう18:30。俺とかりなは帰ることにした。

 

「じゃあな、暁依、彩」

「あぁ。気を付けろよ」

「あきにいこそ、幸せにね」

「柊くん、気をつけてね」

 

彩も見送ってくれて、俺は帰路についた。

 




成人が18歳に繰り下げられた後の世界です。
第三章は少し空いて、1/29からになります。
第二章、いかがでしたか?第三章では男性キャラの受付をスタートします。是非感想欄に書いてくださいね!
それでは!


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第三章 恋愛と仮想世界と
第1話 久しぶりの人


今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
丸山彩
田島広田
新メンバー1名
以上6名


 俺は暁依の結婚式が終わると、家に帰った。玄関でくつを脱ごうとすると、何やら1組多い。見た目男性の靴だろう。俺は端の方に脱いで、家に入った。

 

「ただいま。誰かいるのか」

「あ、ああ、えっと…」

 

なぎは何をしたらいいか分からないようだった。

 

「あれ、龍夜じゃないか。どうしたんだよ」

「あぁ、柊。久しぶりだね。3年くらい会ってないか?」

「もっとだろ。5、6年くらいじゃないか?」

 

それは上杉(うえすぎ)龍夜(りゅうや)だった。龍夜は俺と昔から仲が良く、一緒に行動していた。しかし、俺がこっちに来てからは一切会うことがなくなり、龍夜とは話していなかった。

 

「2人とも知り合い?」

「あぁ。自己紹介終わってるか?」

「終わってる」

 

だったら話は早いな。俺と仲が良いことは言ってないらしいけど。

 

「龍夜、なんでここにいるんだ?」

「いちゃ悪いか。ただ柊に会おうと来たんだよ」

 

龍夜には引っ越し先の住所も教えてあったからだろう。

 

「相変わらず元気そうで良かった」

「龍夜もな。あ、そういえば、覚えてるか?蒼真のこと」

 

蒼真は父さんの方が関係してるが、蒼真の父親と俺の父さんが同じ学校に通っていて、親友だったから俺も仲が良い。ちなみに、22/7の戸田ジュンの従兄。ジュンより2つくらい年上かな。俺と同い年だから。

 

「蒼真?あぁ、ジュンの従兄の」

「そう。龍夜は一回だけ会ったことあるっけ」

「柊がいない間にも一回会ってるから2回だ」

 

龍夜と蒼真の性格は真逆だからなぁ。それが引っ掛かる。

 

「蒼真、今何してるんだろうな」

「さぁな。ジュンと一緒に居るんじゃないか」

 

やっぱりそうなんだろうな、ジュンと性格似てるし。

 

「明日会いに行くか?」

「明日柊は学校だろ」

「そうだな…胡桃、吹奏楽部だけ任せていいか?」

「うん。いいよ」

 

吹奏楽部の時間に行けばいいだろう。明日月曜日だし、俺の授業もそんなにないだろう。

 

「じゃあ、鴻巣駅に16:00な」

「了解」

 

俺は明日の準備をしている途中に龍夜は車で帰っていった。車で来てたのかよ。だったら明日も俺車で行くか。

 

「胡桃、明日朝から来る?」

「うん。どうしたの?」

「車で行こうかなって思ってさ」

 

満員電車も疲れるし。学校だったら車の方が楽だ。起きるのが憂鬱だけど。

 

 俺と胡桃は朝を少し早めに出て、車で学校に向かった。俺は運転しながら胡桃と話した。

 

「帰りは車俺が使うから、電車で帰ってくれよ」

「うん。それにしても、なんで車?」

「龍夜が車で来ると思ってさ。来なかったら乗せればいいし」

 

龍夜が車で来る方が多分確率は高いし、龍夜の事だから車だろう。

 

「胡桃は吹奏楽部行ってて」

「オッケー」

 

俺は学校まで車を走らせ、6組に入った。俺が1番なことはそれほどない。早い生徒が何人も居るから。

 

「おはよう」

「おはようございます!」

 

それと同時に2つ隣のクラス担任の田島先生がやってきた。俺を呼んでいるそうで、俺は田島先生のところに向かった。

 

「どうしたんですか」

「今日、1年生時間割変更が急遽ありまして、3組の技術が2時間両方なくなったんですよ」

 

3組の技術は何時間目だったかな。

 

「何時間目ですか」

「2時間目と3時間目です」

 

そこの時間は3時間目は2年1組で音楽があるけど、2時間目だったら空いてるな。

 

「じゃあ2時間目は行きますよ」

「ありがとうございます。あと3時間目は誰か空いてませんか」

 

3時間目は俺も空いてないし、彩はどうだろう。ちょっと聞いてみるか。

 

「じゃあ丸山先生に聞いてみますよ」

「お願いします」

 

俺は5組の彩に聞きに行った。彩は結婚してから間もない。

 

「彩、3時間目空いてるかな。3組の授業頼みたいんだけど」

「うん。けど、3組の人嬉しいかな。1時間目も社会なの」

「だったら1時間目の社会貰うよ。1時間目を3時間目に移して、1時間目と2時間目数学にするから」

 

2時間俺だったら喜ぶ人もいるだろうし、連続だから楽だ。胡桃には普段俺が入る4組数学に行ったあと、2時間目は俺と合流する。

 

「じゃあそれでお願いね、柊くん」

「じゃあ胡桃にも言っておくから」

 

俺は職員室にそのまま向かい、胡桃に今日の時間割について話をした。PCにも書き込んで公開事項にしないといけない。

 

「胡桃、今日の1時間目4組1人だけで行ってくれ。3組に2時間連続で入ることになった」

「えぇ…分かった…」

「ごめんな」

 

俺は胡桃の隣の自分のデスクに座り、PCから今日の時間割変更について書いた。3組の数学、どこか削らないとな。じゃあ、水④の数学を削るか。代わりは入れなくていいかな。

 

「水④削?」

「水④の数学を削ったから」

 

普段だったら、今回みたいなのだと「水④削木①入」と記入するのだが、代わりに入らないから削除だけ。

 

「じゃあ俺は教室行ってる」

「後から行くねー」

 

俺は先に教室に向かい、健康観察を行った。

 



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第2話 向かう

今回の登場人物
月島柊
上杉龍夜
上西博人
立川絢梨
立川絢香
白雪凪沙
以上6名


 俺は給食の時間が終わり、すぐに俺は生徒たちと遊んでいた。その時、放送が鳴った。

 

「ただいま、関係者の対応をしています。生徒は教室で過ごしなさい」

 

関係者の対応。それは不審者の侵入を告げる暗号。生徒は全員知っている。

 

「みんな、落ち着いて行動して。避難訓練通りに」

 

俺は廊下に出た。生徒は全員机をドア前に並べた。俺は平然と音楽室に向かった。音楽室には2年3組の生徒が少しいた。

 

「みんな、ドアのところを椅子で固めてくれ。高さ3列、厚さは2列で並べて。授業は対応が終わってから」

 

俺は対応に向かった。不審者は1階で取り押さえているそうだった。俺は1階に降りた。

 

「上西先生、あと3秒耐えてくれ」

「はい」

 

俺は拘束魔法で不審者の両腕を手錠のように拘束した。

 

「このまま警察に護送する。到着後すぐに引き渡して下さい」

「はい。分かりました」

「5時間目理科のところありますか」

「ないです。ありがとうございます」

 

俺は音楽室に戻った。4階まで上がるから結構遠い。ドアは椅子で固められ、俺は第二音楽室からベランダに出て、外から入った。

 

「みんな、よく頑張った。あと10分だったら合唱練習だな」

 

俺は号令なしで合唱練習を始めさせた。

今は1月。かりなももうすぐ3年生。卒業だ。俺は来年もこの学校にいるが、2年生の担任となり、担当は2年数学、全学年音楽。かりなも俺から離れることになる。俺は不安もありながら、期待もあった。かりなは高校を卒業したら1人暮らし。俺から完全に離れることになる。そう考えると、どんどんいなくなっていく気がして悲しくなる。なぎも新居が見つかったため、一足早く1月30日に1人暮らしを始める。家にはあーや、俺、胡桃、かりなだけになる。

 

「どうしました?先生」

「いや、先のことを考えててね…」

 

俺は生徒に話しかけられて正気に戻った。まだ先のことだ。まだ。

 

 6時間目までが終わり、俺は車で鴻巣駅に向かった。その後すぐに龍夜が車でやってきた。

 

「よう、龍夜。蒼真の家までの道分かるか?」

「最寄りの西川口まで行けば分かる」

「じゃあ先行頼むよ」

「分かった」

 

俺は龍夜の車に付いていくようにして車を走らせた。俺は車を前の車のナンバーに従うようにして、俺はなぎと連絡を取り合った。

 

「なぎ」

《ん?あ、試す?》

「よろしく」

 

俺はなぎにお願いして、試験段階だがあるものを頼んだ。

それは、テレビ電話とは異なり、実際にそこにいるかのように写し出せる。スマホを下に置くと、そこからその人の映像がリアルタイムで写し出される。プロジェクションマッピングに似てる感じだ。ただ、3Dで出てくるから少し違う。

5分くらいして、なぎの映像が俺の前に写し出された。

 

「おぉ、すごいな」

《でしょ。声の質も現実っぽい?》

「あぁ。すごいな」

 

俺はすごいとしか言えなかった。なぎは俺に近づくような動きをした。

 

《けど、実際に会わないと出来ないこともあるよ》

「そうだな。なぎ、助手席座ってれば」

《じゃあそうする!》

 

俺はスマホを助手席に置いて、自動運転モードを解除した。

 

《今どこ行ってるの?》

「友達の家。夜には帰る」

 

俺は龍夜の車が信号で止まると、俺は龍夜の車の後ろに止まった。龍夜が運転席からこっちを向く。龍夜も俺と同じことをしていた。助手席にバーチャルの人がいた。

俺が前を指差すと、青になり、俺と龍夜は走り出した。それと同時に俺は自動運転モードにもどした。

 

「なぎは今何してるんだ」

《絢梨ちゃんとトランプ》

「絢梨暴走してないか」

《暴走って何?別にしてないよ》

 

いや、負けたら剣を振り回したりしてないかと思っただけ。絢梨だったらやりかねない。

 

《まぁいいや。あ、絢香ちゃんもする?》

《あぁ、してもいいかなー。ん?誰と電話してるんだ》

「俺だよ」

 

あーやはなぎの横から顔をひょこっと出した。あーやの髪が少し揺れる。しかし、あーやの肩や首もとに服が見えない。

 

「あれ、あーや、もしかしてだけどさ」

《うん?》

「今裸?」

《そうだけど》

 

平然としてるけど、なぎも驚いてない。多分なんかあったんだろうけど、裸で歩かなくても…

 

《今つっきーとか男の人いないからさ》

「そういう問題じゃない。風呂上がりか」

《そう》

「今の時期。まだ寒いから風邪引くぞ。服着てこい」

 

あーやは渋々服を着るためなぎの横から消えた。

 

《いまどの辺なの?》

「さぁ…次の信号で聞いてみる」

 

俺は次の信号で赤に引っ掛かるまで待っていた。

赤信号に引っ掛かると、俺はチャットで龍夜に聞いた。

 

〈今どの辺〉

〈さっき上尾の案内出てたから多分上尾〉

〈おけ〉

 

俺はチャットで聞いたことをなぎに言った。

 

「上尾だってさ」

《上尾?じゃあまだかかりそう?》

「今17:00くらいだから、多分帰るの21:30くらい」

《胡桃ちゃんにも伝えとくね》

 

なぎはそういうところで気が利く。

 

「よろしく頼む」

 

俺はバーチャルの画面を開いたままリクライニングを限界まで倒して楽な体勢になった。

 

「18:00になったら教えて」

《オッケー。ちゃんと起こしてあげる》

 

俺はその場で眠った。自動運転モードだから出来ることだ。

 



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第3話 久しぶり

今回の登場人物
月島柊
上杉龍夜
戸田蒼真
白雪凪沙
以上4名

登場人物紹介

上杉龍夜(27)
誕生日:11/9
血液型:B型
つぼみの幼馴染。
普段からクールな性格で、普段からは無表情な人物。
根は優しく、友達思い。総合格闘技の世界王者でもある。実は彼の両親は月島家と昔から交流があるため、柊とは子供の頃からの親友である。
つぼみとは仲がよく、つぼみの家の事情は知っているためかなり心配している。つぼみが彼氏と住んでいるという嘘も唯一知っていた人物である。


























月島柊(27)
誕生日:7/24
血液型:B型
月島胡桃(旧姓は葉元)と結婚していて、2つの仕事を掛け持ちする。大学卒業後すぐに教員免許を3つ所持していて、中学数字、中学理科、中学音楽の3つ。ただ、理科の授業は滅多に入らず、月に2度程度。
もう1つは22/7のマネージャー。こちらは月に3度しか行かない職業。それ以外の日は弟の暁依や、親友の凪沙が行っている。
友達は男子の方が多く、関わりがかなりある。龍夜や蒼真たちとも関係があり、たまに会うことがある。ちなみに、この3人の中で既婚者は柊のみである。


























戸田蒼真(27)
誕生日:7/20
血液型:B型
ジュンとは従兄弟の関係。年齢はジュンより明らかに上。ちなみに、天才と呼ばれている医師である。
いつも笑っており、人見知りはしない性格。医師をやっているからか、誰かを助けたい気持ちは誰にも負けない。
ジュンの兄のような存在。実は蒼真の父親が柊の父親と学生時代からの親友だったため、柊とは昔からの友達である。











 《柊くん!18時だよ!》

 

俺はなぎの声に起こされた。俺は起き上がって外を見た。いつの間にか龍夜の車は家の前に止まっていた。そう、そこは蒼真の家だった。

 

「着いたぞ」

「おう、サンキュー」

 

俺は蒼真に挨拶しに行った。蒼真は結構ポジティブ思考で、俺たちと真逆。

 

「蒼真、久しぶり」

「久しぶりだね、何年ぶりかな」

「俺と蒼真は4ヶ月くらいだな」

 

龍夜が言った。結構ここの2人は会ってるんだな。俺だと、北海道行く前だから、9年10年くらいか。

 

「多分10年くらい?」

「10年か。もう昔だね」

「そうなるな」

 

会っていない間に結構変わった。性格はジュンに相変わらず似てるけど。

 

「ジュンとは会ってないのか」

「会ってるさ。最愛の妹みたいなもんさ!」

 

いや、お前実の兄じゃないし、それに従兄弟だろ。

 

「気持ち悪いほど溺愛してるからな」

「気持ち悪いとはなんだ、かわいいジュンだぞ!」

 

ああ、はいはい。そうでしたね。その血を受け継がなかったのが蒼真だ。

 

「蒼真は医師のこと以外、一般人だからなぁ」

「医師なだけいいだろ、龍夜は無職なんだろ?」

 

え、27にもなって仕事してないのかよ。お金とかどうしてるんだ。

 

「お金とかどうしてるんだよ」

「そこはJRの方から月10万あるんで大丈夫。だってすごいだろ、もう12年西川口~池袋往復だぜ?感謝金みたいなもんだ」

 

たしかに、27歳で12年間、定期なしで西川口~池袋はすごいな。

 

「リアルな話、口座何万くらい入ってるんだ」

「未婚で、1人暮らしで、料理できないから1日300円しか食費で費やさないから、今は多分70万前後あるだろ」

 

そうか、俺もそういう生活だったな。短かったけど、カップラーメン120円、飲み物300円。食費は420円だった。今は胡桃が美味しいご飯を作ってくれるから俺の支出は深谷→鴻巣の交通費か深谷→上野の交通費、これの2倍と、飲み物500円分くらい。1012円+500円か、2684円+500円だから、大体1512円~3184円。結構減った。

 

「今蒼真はどんくらいなんだ」

「俺は結構遅くまでいるし、外食だから1日で食費は600円ちょっと」

 

結構安かった。けど、外食だからそんなもんか。

 

「あれ、蒼真、付き合ってる人いないのか」

「いるわけないじゃんか。一般人だし」

 

医師と結婚するなんて結構ありそうな話だけどな。

 

「あ、俺帰る。多分つぼみ心配するから」

「あれ、つぼみと付き合ってんじゃないか」

「んな訳あるか。ただの従兄弟だから」

 

従兄弟でもそんな関係に…いや、蒼真なってたか。妹のこと溺愛してたし。

 

「じゃあ俺も帰る。妻が心配するから」

「あいよ。気を付けろよ」

 

俺は車で家まで帰った。1時間半くらいかかるんだが、今は18:30。そうすると家には20:00前後の到着だ。早く帰りたいな。胡桃やなぎ、かりな、あーや、絢梨が首を長くして待ってるだろう。

 

「俺もあいつらに近いのかもな」

 

妻や妹を溺愛し過ぎてるかもしれない。正直、胡桃たちみんなかわいいし。うさぎの小雪も忘れてない。

俺は車が赤信号で止まったとき、来る時と同じようになぎにバーチャルの通話をした。

 

《お、あれ、自動運転モード使わないの?》

「帰りは使わない。自力で帰りたいし」

《そっか。気をつけてね、絢香ちゃんと絢梨ちゃん以外はお風呂入ってないから》

 

要するに待ってるってことだよな?ああ、もう。誰と入るかなんて選べないって。

 

「分かった。考えとく」

《ふふっ、楽しみにしてる》

 

俺は車を走らせた。俺は運転しながら思い浮かんだ。俺が留守番させてるのに、なんかさせてるの悪いな。

 

「なぎ、家に帰るの待っててね」

《はいよん。まってるにゃ》

 

なぎは画面を閉じた。俺はスマホを閉じ、浦和のプリン専門店に向かった。ここのプリンは美味しくて、俺も始めて食べたときは驚いた。俺はここに向かって車を走らせた。

 

 専門店に着き、俺はプリンを人数分6つ買った。1つ600円で、思ったより値がする。でも、あと数日で100万入るしいいと思い、3600円支払った。600円の価値はあるだろう。俺は家に向かったが、ここからだと高速に乗りづらいため、全て一般道で帰ることにした。時間はかかるがしょうがない。

 

「ありがとうございました」

 

店員さんから言われ、俺は頭を下げた。そして、車を加速させた。大宮を経由して、高崎線の少し北東寄りをひたすら進んでいく。

 



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コラボ 長編小説 第4話 計画

結構長めになっています。


 俺は家に近づくと、車のライトをハイビームにした。家のなかにいる胡桃たちに見えるようにだ。俺が車で家の前に来ると、かりなが出てきた。

 

「おかえりなさい、お兄ちゃん」

 

天気はいつの間にか雷を伴った大雨。かりなは傘を身に寄せて差していた。

 

「お兄ちゃん、傘ある?」

「いやぁ、ないんだよ。入れてくれないか?」

「うん!喜んで!」

 

かりなは喜んで入れてくれた。俺も、もう1つ、なぎのの作戦を考えていた。だから傘を忘れた。かりな、胡桃、あーや、絢梨も知っている。それに、ナナニジメンバー、影山蒼、影山有希ともなぎは交流があるから知っている。ただ、なぎにバレたくないから黙っている。

 

「かりな、俺の持ってる袋分かるか」

「えぇ?匂いも雨の匂いしかしなーい」

 

だろうな。けど、見ようとしないところは成長したな。昔の彩夏とかりなは意地でも見ようとしてたし。

 

「みんなでね」

「なにー?分かんなーい」

 

かりなは傘に俺を入れながら言った。

家の中に入ると、あーやと絢梨以外はリビングに集合していた。

 

「おかえり、柊くん」

「おかえりなさい、あなた♡」

 

胡桃となぎが迎えてくれた。俺は2人にキスしたあと、あーやの事を聞いた。

 

「あーやは」

「絢梨ちゃんと一緒にいるよ、2人の部屋で」

 

俺はその部屋に向かった。多分あーやが雷苦手だから、絢梨も雷が苦手なんだろう。

 

「あーや、開けるよ」

 

俺はドアを開けた。すると、あーやと絢梨が抱き合って怖がっていた。

 

「つっきー…」

「柊くん」

 

絢梨とあーやはこっちを見た。

 

 案の定、あーやと絢梨のことを俺は抱きながらリビングに戻った。雷が鳴る度にあーやと絢梨は同時にぎゅっと強く抱き締めた。

 

「そんな怖いかよ、あーや、絢梨」

『怖い!』

 

二人同時に言った。俺は「はいはい」と納得したように言ってリビングに入った。

 

「…柊くん、周りにいるのは猫3匹?」

「へ?2匹じゃないか」

「小雪が絢梨の頭の上に乗ってるよ」

 

胡桃に言われてようやく気付いたようだった。小雪はかりなが持って膝の上に、俺は抱きついていた2人を座らせた。

 

「小雪も雷苦手なのかな」

「どうだろ。うさぎって雷苦手なのか?」

 

調べてみると、どうやら雷が苦手らしい。ただ、寿命は1年から2年。このうさぎは生後3ヶ月で飼ったらしいが、短いとあと9ヶ月。しかし、この事実は言えなかった。

 

「苦手みたいだよ。ほら、かりなのお腹に突進してる」

「あはは、くすぐったーい」

 

かりなが楽しんでいるのをみていると、俺がする事を忘れそうだった。

 

「これ、留守番のお礼」

 

俺はプリンをあげた。みんなは入っていたスプーンで食べ始める。

 

「食べ終わったらなぎ以外の人たちに話がある。21:00にプライベート仮想ワールドで待ってるから」

 

「プライベート仮想ワールド」これは、仮想世界とは異なり、指定した人しか入れない世界だ。しかし、上限人数は5人。結局入れない。

 

 みんなが食べ終わると、もう21:00になった。俺はプライベート仮想ワールドに転移してみんなと話し合った。話し合う内容はなぎのお別れ会についてだ。

 

「まず、曲を決めたい。どういう決め方する」

「曲名がお別れ会に関係してるもの?」

 

やっぱりそうなるよな。それが一般的。

 

「そうだ、気付くか微妙だけど、曲名の頭文字が『な』『ぎ』『さ』の曲は?」

「要するに、『な』だと難聴系男子が倒せないとか?」

「『ぎ』だと銀河鉄道999だよね?」

「『さ』とか一番ありそう。桜ノ雨でいいんじゃない?」

 

銀河鉄道999で、そのあと桜ノ雨だと、俺が言った一曲目変えるか。

 

「『さ』のやつさ、変える?」

「ラスト3曲これでさ、前に数曲持ってきてもいいかも」

 

意見が飛び交う。前に数曲入れるのがいい案だとは思う。ただ、別の曲を選ぶとなると…

 

「じゃあ別の曲追加しよう。というか、あーや、ナナニジの曲入れれるだろ」

「入れれるけど、クリステルがセンターだとさ」

 

そうか、みう自身は俺とも話すの苦手っぽいし、なぎためだって言っても…

 

「みうがいない曲は」

「絞られるだろ。蛍光灯再生計画はいないけどさ、出れるの最大で4人だけだし、タトゥーラブしか歌えないよ」

 

それもそうか…あんまり関係ない人を歌わせても戸惑うだけだし。

 

「だったら、俺とかとコラボしてカバーするのは」

「カバー?それだったらいいけど、絢梨がな」

「大丈夫。歌好き」

 

絢梨はいつも通り冷静すぎるほど冷静に言った。

 

「じゃあ曲決めちゃうか」

 

俺は蒼と有希にバーチャルの画面で写し出し、俺たちと同じところにいるかのようにした。

 

「蒼はなんかやりたい曲あるか」

《え、柊と一緒だと思うんだけど、フラジールやりたい》

 

フラジールか。俺もやりたかったし許可するか。

 

「いいぜ。じゃあパート分けだな」

 

周りは胡桃を中心に曲を決めていく。俺は蒼と一緒にパート分けを進めた。

 

「えっと、まず歌詞からだよな」

《あぁ。たしか、「くしゃくしゃになった診察券を持った」からだよな》

 

そうか。というか、表を作るときにイメージカラーもいれておいた方がいいだろう。

 

「蒼のイメージカラーってなんだ」

《なんだろうな…紺じゃないか》

「やっぱそうなるよな。じゃあ紺で書いてくか」

 

俺はとりあえず歌詞を書いていった。胡桃、有希で妻同士として歌うことになったらしく、曲目は知らないが歌詞を書いていた。

 

 

 

 

くしゃくしゃになった診察券を持って簡単な想像に日々を使っている

単調な風景にふと眠くなって回送列車に揺られ動いている

看板の照明が後ろめたくなって目を落とした先で笑っていた

通りを抜けて路地裏の方で屈託(くったく)もなく笑っていた

 

映画の上映はとうに終わっている 叱責(しっせき)の記憶がやけに響くから

できれば遠くに行かないでくれ 出来るなら痛くしないで

 

構わないでないで 離れていて

軋轢(あつれき)にきゅっと目をつむって

報わないでないで 話をして

窓越しにじっと目を合わせて

 

退廃に暮れた劇場の角で眠らなかったはずが眠っている

アラベスクには触れなかったんだ 火がついたように街が光った

 

無頓着なあの子が傘を差したら それで救われるくらい単純でしょ

左手の指輪 右手に隠して 戸惑ってるふうにしてた

 

捜さないで いつの間にか

消えたことに気づく距離ならば

許さないで 最初だけは

悲しくもないはずにしたくて

 

構わないで 離れていて

軋轢にきゅっと目をつむって

報わないで 話をして

窓越しにじっと目を合わせて

眠らないで 言葉にして

照らした光に目を細めて

笑わないで 君に咲いた執着よ、僕を飲み込んでくれ

 

 

 

こっちの作業はこれで終わり。あとは蒼となぎを親しくさせるために、学校を胡桃に任せ、(まかな)いきれない場所は他の数学担当の先生にしてもらったり、授業交換をしたりして対処する。

一方の俺は何もしない訳じゃない。今までなぎと暁依でやらせていたナナニジのマネージャーを、なぎの代わりと一部暁依の分を行う。学校は忙しくなるがしょうがない。

 

「じゃあ、しばらく有希といていいよ」

《はいよ。また呼んでくれ》

 

俺は蒼を解放した。そして、胡桃の手伝いに行った。

 

【月島胡桃視点】

 

 私はみんなと曲決めをしていた。私だって、かりなちゃんだってやりたい曲はない。ただ、いいと思ったらパート分けするだけ。ここには数学に強い人は1人しかいない。かりなちゃんだ。そのため、一旦任せた。

 

「何通りできる?」

「6人だと6通りでしょ。分けないんだから」

「平等に分けれるのだと?」

「3:3が含まれるから7通り」

 

そんなにあったかぁ。じゃあ2で分けよ。

 

「2人で分けたいから、絢梨ちゃんと絢香ちゃんは同じで、かりなちゃんも一緒か。じゃあ有希ちゃんとか」

《はーいっ!なにやる?》

「女子っぽい歌だよねぇ」

 

女子っぽい歌。アイドルみたいな歌かな。

 

「柊くんとか」

《蒼くんに》

『見せたいなぁ』

 

目的が違ってきちゃってる。まあいいけど。

 

「えっと、じゃあ2人でできるアイドルっぽい歌!」

《ボカロだとして…メランコリック!》

 

あの曲か。確かになぎも知ってそう。

 

「じゃあそれがグル曲で」

《グル曲ってなに?》

「グループの曲ってこと」

 

私は3人の方のグループに話しかけた。

 

「そっちはどう?」

「柊くんにちょっと頼んでいい?」

 

そう言うと、柊くんがこっちにやってきて、私たちに聞いた。

 

「なんか手伝うことある?」

「あ、じゃあちょっとかりなちゃんのとこ手伝って」

 

柊くんは了解してかりなちゃんの事を手伝った。私と有希ちゃんはメランコリックの歌詞作りを始めた。イメージカラーは私が緑、有希ちゃんがピンクだった。

 

 

 

 

 

全然つかめないきみのこと

全然しらないうちに

ココロ奪われるなんてこと

あるはずないでしょ

 

それは無愛想な笑顔だったり

それは日曜日の日暮れだったり

それはテスト∞(ばっか)の期間だったり

それはきみとゆう名のメランコリンニスト。

 

手当たり次第強気でぶつかっても

なんにも手には残らないって思い込んでる

ちょっとぐらいの勇気にだって

ちっちゃくなって塞ぎこんでる

わたしだから

 

全然つかめないきみのこと

全然しらないうちに

ココロ奪われるなんてこと

あるはずないでしょ

 

全然気づかないきみなんて

全然知らない×知らないもん

「ねぇねぇ」じゃないわ この笑顔

また眠れないでしょ

 

明日も おんなじ わたしが いるのかな

無愛想で無口なままの カワいくないヤツ

 

あの夢にきみが出てきたときから

じゃないの だって

 

全然つかめないきみのこと

全然しらないうちに

こころ奪おうとしてたのは

わたしのほうだもん×××

 

そういう時期なの

おぼれたいのいとしの

メランコリー

 

私は有希ちゃんと相談して振り分けを決めた。私は絢香ちゃんたちの様子を見に行った。

 

【月島かりな視点】

 

 私たちはまず最初に曲決めをした。曲は候補で決まっていて、恋愛裁判、Love so sweetのどちらか。

 

「Love so sweetはなんか男子のイメージあるな」

「じゃあ恋愛裁判だね。えっと、それでお兄ちゃんを呼んだ理由だけど」

 

お兄ちゃんは音楽の先生。だったらピアノくらい余裕で弾けちゃうと思った。実際、音楽の授業でも弾いてたし。

 

「ピアノ、お願いできる?」

「ピアノ?あの弱いやつ?」

「それpのほうね。そうじゃなくて、楽器の」

 

こういうところでお兄ちゃん天然なんだ。意外だった。

 

「ああ、いいよ」

「やってくれるの?ありがとっ!つっきー大好き」

 

絢香ちゃんがお兄ちゃんに飛びかかる。普段と性格変わりすぎでしょ。

 

「んじゃ、パート分けはゆっくりつっきーとやるかぁ」

 

全部お兄ちゃんに任せたりとかしないよね?お兄ちゃんも大変だよ?

 

「えっとぉ、Oh! No! No! No! ちょっと魔がさしたんだ そう、僕は君だけが全てさ ねえ、情状酌量をください 僕独りじゃ生きてけない のところは誰歌う?」

「私。そこ歌う」

 

絢梨ちゃんが歌う一部は分かった。えっと、カラーは何がいいんだろう。絢香ちゃんのペンライトがピンクだから、薄いピンクかな。

こうして、1時間以上かけて行われた。

 

Oh! No! No! No!

ちょっと魔がさしたんだ

そう、僕は君だけが全てさ

ねえ、情状酌量をください

僕独りじゃ生きてけない

 

Oh! Jesus!

そんな眼で見ないで

もう、金輪際(こんりんざい) 心入れ替えるよ

ねえ、だから執行猶予で

一度だけ見逃して

 

計画的な犯行のこのアリバイ工作も

君だけは騙せない

小手先の手品じゃ No! No! No!

 

まさに恋愛裁判

君は僕にどれくらいの罪を問う?

最終弁論 涙の後に君から告げられた

僕は「有罪(ギルティ)

 

Oh! No! No! No!

最悪の事態だ

そう、君にフラれるくらいなら

ねえ、いっそ君の手で僕を

暗闇に突き落としてよ

 

Oh! Jesus!

論より証拠だ

もう、僕は取り繕わないよ

ねえ、 ずっと君の監獄に

閉じ込めてもいいから

 

性格的な問題と一度だけの過ちで

君はもう戻らない

口先の弁護じゃもう許されない

 

どこが完全犯罪?

君も僕も同じだけの悲しみを

愛した人 愛された人

互いを裁き合う宿命(さだめ)だから

 

有罪判決

君は僕にどれくらいの罪を問う?

終身刑で償う覚悟

死ぬまで君だけを守るよ

 

恋愛裁判

君が僕に教えてくれた真実

偽りの涙の後で

密かに微笑んだ小悪魔

そう、君も「有罪(ギルティ)

 

 

 

ピアノはお兄ちゃんだから安心。一応2人パートが全通りできている。一部少ないところもあるけど。

 

「えっと、あとは自由?」

「それは明日でいいんじゃないか。みんな休みだし、蒼も来れるだろ?」

《あぁ、来れる》

 

いつの間に蒼くんいたの!?手伝いの時に付いてきたのかな…

 

《私も来れるよ》

 

有希ちゃんまで…いつの間にが多すぎ。

 

「じゃあまた明日。なぎにも会わせとこうぜ」

「はーいっ。じゃあまた明日!」

 

私たちは現実世界に戻った。

 

 戻ったときにはもう23:00を過ぎていて、凪沙ちゃんはもう寝てしまっていた。会わせたい人って、誰だろう?と思いながら私も寝た。

 

 

 

 




月島柊パート
影山蒼パート
月島柊、影山蒼パート
月島胡桃パート
影山有希パート
月島胡桃、影山有希パート
立川絢梨パート
立川絢香パート
月島かりなパート
立川絢香、立川絢梨パート
月島かりな、立川絢香、立川絢梨パート
月島かりな、立川絢梨パート
月島かりな、立川絢香パート


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第5話 計画 2日目

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
上杉龍夜
戸田蒼真
白雪凪沙
以上6名


  俺は翌日、蒼真と龍夜を招待して、最近会った男も全員集めた。蒼、龍夜、蒼真の3人と俺で4人だけだが、俺からしたら多いほう。

 

「よっしゃ、ルマ入れようぜ」

 

もう曲の追加の話になっていて、俺はなぎが出掛けたところを見計らって話を進めた。

 

「ルマかぁ、炎と森のカーニバルとかもJPOPでいいじゃないか」

 

男だけで決めた曲は結構ダイナミックなものばかり。まぁ、「花」がないってのもあるだろうけど。

 

「じゃあ珍しい組み合わせでやってみるか。蒼と龍夜は知り合いなんだよな」

『知り合いって言うほど知り合いじゃない』

 

二人同時に言った。そこに蒼真が言った。

 

「よく言うさ。龍夜、蒼と同じ部屋に寝泊まりしてたろ」

 

結構仲良いじゃないか。じゃあペアは決定かな。

 

「じゃあ龍夜、蒼ペア、蒼真、柊ペアで決めてこう」

「じゃあルマからで行こうか」

 

まずカラー決め。俺と蒼は灰色、紺。あかとかいいんじゃないのかな。

 

「じゃあ俺赤で行くわ」

 

蒼真が手を挙げてこっちに来た。じゃあ龍夜だけか。

 

「じゃあ薄めの赤」

 

龍夜は言った。俺は曲の進行を行った。

 

「んじゃ、まずは1番だけ決めよう。歌わない人いるかな」

 

すると、龍夜が言った。

 

「4人いるんだろ、だったら2人ずつでいいだろ」

「なるほどな。じゃあ1番は柊、蒼真ペアだな」

 

俺は早速分け始めた。決め方は変わるところで止めたりする。その時、2人くらいで俺を止めた。

 

「私も歌う!」

 

胡桃とかりなだった。

 

「え、だって結構歌うだろ」

 

俺は胡桃に言った。しかし、胡桃は

 

「いいでしょ?…柊くん、一緒にいたくないの?」

 

と、瞳を潤わせていた。もう、そこまで言われるとしょうがないな。

 

「じゃあ2番頼むよ。龍夜と蒼はラスサビな」

「じゃあ炎と森のカーニバルは多く取れよ」

「分かったよ」

 

気を取り直して、俺たちは振り分けに入った

 

 

 

満点な人生も秀才な解答もございません

有害な評論も見え透いた同情も聞きたくはないな

 

壮観な表彰も平凡な真っ当もございません

暗転な将来も傲慢な快晴も見たくはないな

 

はいはい 俯うつむいちゃって

ヤンヤンヤン

クラクラリ

彷徨さまよって

正答 失っちゃって

わーんわーんわーん

だって!心は満たされない!

 

愛を頂戴

感情熱唱メッタッタッタ声枯らせ

全然わかんない

×点(ばってん)喰らい尽くせ

心臓血漿ラッタッタッタ踊り舞え

正解なんてバイバイ提唱だダダダダ

ワオーン!

 

満点な答案も優秀な成功もございません

後悔な人生も停滞の殺到も見たくはないな

 

毎回 躓つまずいちゃって

きゃんきゃんきゃん

フラフラリ

悴んで

正答 無くなっちゃって

わーんわーんわーん

待って!出口も見当たらない?

 

愛を頂戴

感情熱唱メッタッタッタ声枯らせ

断然止まんない ×点笑い倒せ

心臓血漿マッカッカッカ踊り舞え

正解なんて無い無い提唱だダダダダ ワオーン!

 

 

愛を頂戴

感情裂傷メッタッタッタ詩うた歌え

全然染まんない 「我が」貫き通せ

心境全焼落下ッカッカ這い上がれ

正解なんて曖昧立証だダダダダ

 

感情熱唱メッタッタッタ声枯らせ

全然わかんない ×点喰らい尽くせ

心臓血漿ラッタッタッタ踊り舞え

正解なんてバイバイ推奨だダダダダ

正解なんて無い無い提唱だダダダダ

だダダダダダ ワオーン!

 

 

 

 「ワオーン!」の部分をどういう感じで言うか結構悩んだが、男はかっこよく、女はかわいく。というので決まった。最初はソロで歌おうとしたが、物足りないということから2人以上で歌うことになった。

 

「お兄ちゃん、小雪連れてきていい?」

「おう。ホントに好きだな」

「ペットだもん」

 

かりなは部屋から出た。俺たち3人は部屋から出ないで待っていた。

 

「あれ、そういえば、なぎって買い物行っただけだよな」

「うん。あ、まさか…」

 

すると、かりなが小雪を持って、慌てて部屋のなかに入ってきた。

 

「凪沙ちゃん帰ってきた!」

 

やっぱりそうだった。けど、この紙さえ隠せばどうにかなるはずだ。

 

「その辺に隠しとけ。自然なように振る舞うから」

「分かった」

 

蒼真は書いていた紙を隠す。俺は隠したのを確認してなぎが来るのを待った。

 

「柊くん?入るよ」

 

なぎが部屋の中に入ってくる。俺はなにも起きていないように言った。

 

「帰ったのか。ちょっとはただいまくらい言えよ」

「言ったよ?」

「聞こえなかっただけか。だったらいい」

 

俺はなぎと抱き合った。自然な感じを装ってるが、少し不安だった。

 

「あれ、龍夜、蒼真。知り合いなの?柊くんと」

「え、ああ、なぎって凪沙の事だったのか」

 

こっちのほうが不思議なんだけど。

 

「知ってるのか」

「あぁ。つぼみがよく話すから」

「こっちもジュンがよく話すから」

 

ナナニジのメンバーが原因か。やっぱりあそことは関係深いんだな。

 

「じゃあ3人で遊んでな」

 

俺は部屋からかりなと小雪と一緒に出て、小雪とふれあっていた。




戸田蒼真パート
月島柊パート
影山蒼パート
月島胡桃パート
影山有希パート
立川絢梨パート
立川絢香パート
月島かりなパート
立川絢香、立川絢梨パート
月島かりな、立川絢香、立川絢梨パート
月島かりな、立川絢梨パート
月島柊、戸田蒼真、月島胡桃、月島かりなパート
月島かりな、立川絢香パート
月島胡桃、月島かりなパート
月島胡桃、影山有希パート
月島柊、影山蒼パート
月島柊、戸田蒼真パート


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第6話 釣り

今回の登場人物
月島柊
上杉龍夜
戸田蒼真
以上3名


 俺と龍夜、蒼真で釣りに行っていた。なぎは蒼に預けて、マネージャーは暁依、先生は胡桃に任せた。男子3人だけの釣りで、なんか暑苦しくも感じたが、慣れると爽快だった。

 

「なんで野郎三人で釣りなんてしてるんだ?」

 

龍夜がド正論を言った。それ言っちゃあおしまいだ。

 

「たまにはいいんじゃないか。男だけで釣りも。それに、龍夜は無職だから暇だろう?」

 

蒼真がうまく話題を変えてくれた。しかし、龍夜はこれに対抗した。

 

「無職呼ばわりするな!これでもバイトはしてるんだぞ!」

 

そこで対抗するかよ。子どもじゃないんだからそのくらい冗談で流せよ。俺は仲裁に入った。

 

「はいはい、喧嘩はよせ。三人で釣りしてるんだから仲良くしようぜ」

 

俺は2人の間に入って言った。

 

「そうだな。お、俺引っ掛かったぞ」

 

蒼真が釣りざおを高くあげる。すると、川の中から何かが出てきた。しかし、シークレットは小さい。

 

「小さくね?」

 

俺は蒼真に言った。

 

「つーか、生き物でもないぞ、これ」

 

そう、蒼真がつり上げたものは捨てられていたフルーツの缶詰。

 

「魚釣れよ」

「いいだろ!別に!」

 

蒼真は恥ずかしくなったのかすぐに川に釣りざおの先を下ろした。

 

「なんか話さね?」

 

龍夜が提案した。蒼真は提案で言った。

 

「結婚話とか」

 

俺はともかく、2人は結婚すらしてない。どうやって話すんだよ。

 

「いいじゃないか。でも、まさか柊が結婚するとは」

 

龍夜が釣りざおを触りながら言った。なんか言い方が気に障るが。

 

「まさか柊に先越されるとはね~」

「お前らもいつか結婚するんだろ?というか、龍夜とつぼみは付き合ってないのかよ」

 

つぼみと龍夜は仲いいし、血も繋がってないから結婚できるとは思うが。

 

「あいつはただの幼馴染だ。それに、あいつはアイドルだろ」

 

そんなもんなのか?俺だってアイドルと同居してる身だから、そうでもないんだけど。

すると、蒼真が口を開いた。

 

「アイドルの前に、つぼみは女の子だ。つぼみも20代なんだから結婚してもおかしくない」

 

しかし、龍夜は意見を曲げようとしない。

 

「つぼみとは本当にただの幼馴染。そういうお前はジュンとどんな関係なんだよ」

 

蒼真は自慢げに言った。どうせ、かわいい妹だ。とか言うんだろ。

 

「ジュンは俺のかわいい妹だからな!恋愛感情はないかな!」

 

やっぱりそういうと思った。蒼真だったらそうだろ。

 

「蒼真は相変わらずだな…」

 

俺はあきれたように言った。

 

「ジュンももう20代なんだからさ、いい加減子ども扱いはやめたらどうだ」

「俺にとってジュンはいくつになってもかわいい妹さ!」

 

やべ、俺もこうならないといいけどな。かりなに対して、というか、8人の妹にこんな感じで接したくないよな。

 

「お前、さすがにキモいぞ……」

 

龍夜が少し引いて、俺の方に釣りざおを持ちながら近づいた。

 

「キモい言うな!?」

 

蒼真が口を大きく開けて言った。

 

「俺の気を付けよ…」

「そうだな。柊も妹いるし。蒼真みたくなるなよ」

 

龍夜は小声で俺に言った。あんな感じにはなりたくないな。

 

「おっ、引っ掛かった」

 

俺は釣りざおを引き上げる。

 

「どうせ柊も空き缶だろ」

 

俺は釣りざおを引き上げた。先にはちゃんと魚が付いていて、結構大きかった。

 

「川魚にしてはでかいな」

「だな。蒼真みたくなってなくてよかった」

 

さっきの話を聞くと、2つの意味に聞こえてくる。

 

「よし、じゃあ1人2匹釣ったら自分の家に持ち帰って調理してもらおうぜ」

「してもらうっていうか、俺たちは自炊なんだよ」

 

それもそうか。俺しかいないもんな、妻がいるの。

 

「つぼみとかジュンとか作れないのか」

「いや、ギャルが無理だろ」

「子どもがやったら危ない」

 

2人とも偏見だった。意外と作れると思うけど。

 

「まぁ、それだったら自炊だな。作れるだろ」

「俺は作れるさ。1人暮らしだし」

「…ジュンに任せるか…」

 

みんな釣りに集中し始めた。もう何を話しても反応しないほどだった。

 

「おっしゃ」

 

龍夜が釣り上げた。俺と同じものだった。それと同時に、蒼真も俺とは違う大きな魚を釣った。

 

全員2匹釣り終わり、俺はなぎの迎えで藤沢へ向かった。

 



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第7話 心配

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
立川絢梨
影山蒼(チャットのみの出演)
以上5名


 俺は神保原を14:39に出発する伊東行きに乗り、藤沢までなぎを迎えに行った。

途中30駅以上停車し、藤沢には17:04。もう暗くなり始めている。

 

「柊くん!」

 

俺が改札の前に行くと、なぎが俺に突進してきた。嫌な訳じゃないよな?蒼が。

 

「はは、本当に仲いいんだな。俺たちも遊んでやったよ。凪沙、またおいで」

「うん!柊くん、帰ろ!」

 

蒼はまるで親戚の人みたいだった。実際は血も繋がってないし、関係もないし、同級生でもない。たまたまだったのに、今は親戚みたいだ。

 

「蒼たちと何したんだ」

「人生ゲームとか、カードゲーム!」

 

結構楽しそうだな。俺も…混ぜてもらえるわけないよな。

 

「柊くんともやりたかったなぁ。学校だった?」

「いや、釣り行ってた。明日火曜日だっけ」

「うん。明日は家にいるもんね」

 

月曜日だから、どこかの曜日から授業持ってきたな。5時間目が数学だったから、どこかの授業と交代したな。

 

「柊くん、1人暮らししないの?」

「ああ、昔はしてたよ。一時期ね」

「寂しかった?」

 

なぎがこういうことを聞いてくるってことは、不安なんだろう。

 

「いや、寂しくはないかな」

「会いたいって思わなかったの?」

「思ったさ。だけど、永遠の別れじゃないから」

 

俺は横にあったなぎの手を握った。

 

「大丈夫。いつでも来ていいよ」

「うん!なんか軽くなった気がする!」

 

それでいい。4月からなぎは1人暮らしなんだから。実行日は決めないとな。チャットでいっか。多分なぎが1人暮らし始める4/2に合わせるんだろうな。

 

「そっか。なぎの部屋は残しておくから。家ら辺に用があったら泊まっていけよ」

「うん。柊くんともお別れかぁ」

 

しかし、言い出したのは、なぎだった。俺が言うまもなく、すぐ言った。「柊くんにいつまでもくっついていられない」って。なぎはそういうところがしっかりしている。けど、不安なところもある。

 

「…やっぱり寂しいよ…」

「どこだっけ?引っ越し先」

「本厚木。郊外の方だよ…」

 

本厚木か。どこら辺だったかな。蒼だったらしってるか。

俺は蒼にチャットを送った。

 

〈本厚木って深谷からどういうルート?〉17:28

〈深谷→新宿→本厚木〉17:29

〈小田急?〉17:29

〈YES〉17:30

 

蒼からYESと送られるとき、電車は大船に停車した。俺は出発してから送信した。

 

〈藤沢からだと?〉17:32

〈藤沢→相模大野→本厚木〉17:32

〈JR使う?〉17:33

〈使わない〉17:33

〈全部小田急〉17:34

 

二回連続で送られてくる。

 

〈サンキュ〉17:35

〈Anytime please〉17:36

 

俺はチャットを閉じた。そして、なぎに言った。

 

「大丈夫。すぐいけるよ。俺も、蒼も」

「本当?週一でも?」

 

ちょっと厳しい状況だなぁ。でも、休日だったら。

 

「行けるよ」

「だったら安心」

 

電車は次の戸塚駅に着こうとしていた。

 

 深谷に着くと、俺はクーラーボックスに入れてあった魚を胡桃の前に出した。

 

「胡桃、調理頼む」

「え…こんなん釣ったの…?」

「無理そう?」

 

俺は胡桃に聞いてみた。しかし、胡桃は魚を両手で持って言った。

 

「できる!」

「そうか?無理しなくていいぞ。他の誰かとやってもいいし」

 

胡桃は魚をまな板の上において、包丁を持って目を光らせた。怖いっすよ、胡桃さん。

 

「あ、そうだ。5時間目の数学なんだけど、火曜4時間目の学活に変えたから、明日の4時間目変えてね?」

 

学活入れたのか。まぁ確かに入れやすいのそこだよな。

 

「了解」

 

それだと、1組数学を社会の授業にして、金曜1時間目の社会を数学に変えれば戻る。

 

「お風呂入ってていいよ」

「あぁ。わかった」

 

俺は自分の部屋に荷物を置き、着替えとバスタオルを持って風呂場に行った。途中で絢梨に会い、俺は廊下で話していた。

 

「おかえり」

「あ、ただいま」

 

絢梨の背中には剣が2本掛けられていて、綺麗に輝いていた。磨いて来たんだろうけど、それにしても、剣掛けまで作ったってすごいな。

 

「剣掛け作ったのか」

「作ってもらった。胡桃に」

 

へぇ、胡桃が作ったのか。黒っぽい鉄か?

 

「素材はなんだ」

「知らない。というか、仮想世界で作ったって言ってた」

 

なんだ、じゃあ多分ブルーストーンかブラックグリッターオアーだろうなぁ。

 

「そうか」

「うん。戻るよ」

「オッケー」

 

絢梨は自分の部屋に戻っていった。相変わらずの無表情だったが、なんとなく、感情は分かっていた。

 



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第8話 あーやと一緒に

 俺は絢梨から分かれ、脱衣所で服を脱ぎ始めた。浴室への扉を開けようとした瞬間、俺の手足は止まった。今さらだったかもしれないが、胡桃、なぎ、かりなのではない、スカートと長袖、ブラジャー、パンツが俺の脱いだ服のしたにあった。そう考えると、当てはまる人物は1人しかいない。

 

(あーやか……いっか、今さら戻ってもしょうがない)

 

俺はそのまま浴室へのドアを開けた。湯気の中に、髪を洗っている最中だったあーやがいた。

 

「だれ?」

「オレオレ」

 

オレオレ詐欺みたいな感じだったが、あーやは対処法を知っているらしかった。

 

「触るよ?」

 

あーやは俺の太ももを触る。すると、あーやは瞬時に言った。

 

「つっきーでしょ」

「なんだ、バレたか」

 

俺はあーやの後ろに行って、出ているシャワーのお湯を頭から浴びた。

 

「つっきー、最近どう?」

「ああ、ぼちぼち。変わらない」

 

俺がシャワーから離れると、あーやがシャワーを使い始めた。

 

「忙しい?せんせ」

「どうだろうな……多分忙しいかな」

 

俺は確証がつかめないまま言った。確かに最後に事務所行ったのは2ヶ月くらい前だ。

 

「今はクラス替えの準備もあるし……あ、そういえば上がったら資料作らないと」

 

1年6組の51人を来年の1~7組で変えないとだ。

 

「手伝おっか?」

「何を手伝えるんだよ」

「癒しくらいだったらできるからさ」

「じゃあ、お願いしていいかな、あーやに」

 

俺はさっさと上がった。

 

 上がると、少し休んでから資料を作り始めた。名簿順に並べてあり、1番左が出席番号、真ん中が氏名、1番右が来年度のクラスだ。表は以下の通り

 

新井(あらい)寛也(ひろや) 3

嵐野(あらしの)(りゅう)  3

石田(いしだ)流星(りゅうせい) 1

井上(いのうえ)修二(しゅうじ) 4

稲垣(いながき)昇大(しょうだい) 7

上嶋(うえしま)大地(だいち) 6

上杉(うえすぎ)康則(やすのり) 5

宇津(うづ)弘毅(こうき) 1

鵜原(うばら)修也(しゅうや) 7

10江島(えのしま)皓大(こうだい) 4

11大塚(おおつか)剛史(つよし) 5

12大野(おおの)隆太(りゅうた) 7

13木下(きのした)壮真(そうま) 6

14黒本(くろもと)広谷(ひろや) 7

15斎藤(さいとう)春秋(しゅんじ) 4

16坂本(さかもと)信次(しんじ) 2

17佐藤(さとう)博樹(ひろき) 2

18佐藤(さとう)陽生(ようせい) 2

19鈴木(すずき)勝谷(しょうや) 2

20関合(せきあい)忠也(ちゅうや) 1

21蘇我(そが)(しゅう)  1

22田中(たなか)大輔(だいすけ) 4

23土屋(つちや)善太(ぜんた) 1

24中本(なかもと)(ばん)  1

25西本(にしもと)(しゅん)  4

26山本(やまもと)樋代(ひだい) 6

 

30浅雛(あさひな)由月(ゆづき) 6

31阿部(あべ)波奈代(はなよ)

32糸井(いとい)陽南(ような) 5

33上野(うえの)佳奈(かな) 4

34江本(えもと)有理(ゆり) 4

35小石(おいし)心晴(こはる) 1

36音奏(おとかな)風奈(ふうな) 6

37勝田(かつた)夏海(なつみ) 1

38木下(きのした)恵名(えな) 2

39小山(こやま)佐織(さおり) 3

40佐々木(ささき)江浪(えな)

41清水(しみず)春夏(はるか)

42瀬原田(せはらだ)結花(ゆいか)

43立野(たての)春風(はるかぜ) 7

44津田(つだ)理子(りこ) 5

45手塚(てづか)(はる)  2

46戸田山(とだやま)挿花(そうか)

47中澤(なかざわ)理花(りはな)

48七里(ななさと)木佐名(きさな)

49西枝(にしえだ)友香(ともか) 3

50絖川(ぬめかわ)柊柰(しゅうな) 6

51猫塚(ねこづか)輪廻(りんね) 4

52花菜野(はなの)三久(みく)

53葉野(はの)香苗(かな) 5

54夢川(ゆめかわ)菜晦(なつ)

 

 

これまで作るのに1時間以上かかった。まだ夕飯はできてなかったが、もう19:00を過ぎていた。

 

「あれ、整理しないと…」

「手伝おっか?」

 

あーやが言った。

 

「いいかな」

「いいよ。疲れてるし、つっきー」

 

俺はあーやに仕事を1~3だけ任せ、俺は4~7をやった。

 

2年4組 男子 (元1年6組)

井上(いのうえ)修二(しゅうじ)

10江島(えのしま)皓大(こうだい)

15斎藤(さいとう)春秋(しゅんじ)

22田中(たなか)大輔(だいすけ)

25西本(にしもと)(しゅん)

 

2年4組 女子 (元1年6組)

33上野(うえの)佳奈(かな)

34江本(えもと)有理(ゆり)

47中澤(なかざわ)理花(りはな)

51猫塚(ねこづか)輪廻(りんね)

 

2年5組 男子 (元1年6組)

上杉(うえすぎ)康則(やすのり)

11大塚(おおつか)剛史(つよし)

 

2年5組 女子 (元1年6組)

31阿部(あべ)波奈代(はなよ)

32糸井(いとい)陽南(ような)

44津田(つだ)理子(りこ)

54葉野(はの)香苗(かな)

 

2年6組 男子 (元1年6組)

上嶋(うえしま)大地(だいち)

13木下(きのした)壮真(そうま)

26山本(やまもと)樋代(ひだい)

 

2年6組 女子 (元1年6組)

30浅雛(あさひな)由月(ゆづき)

36音奏(おとかな)風奈(ふうな)

50絖川(ぬめかわ)柊柰(しゅうな)

53花菜野(はなの)三久(みく)

55夢川(ゆめかわ)菜晦(なつ)

 

2年7組 男子 (元1年6組)

稲垣(いながき)昇大(しょうだい)

鵜原(うばら)修也(しゅうや)

12大野(おおの)隆太(りゅうた)

14黒本(くろもと)広谷(ひろや)

 

2年7組 女子 (元1年6組)

42瀬原田(せはらだ)結花(ゆいか)

43立野(たての)春風(はるかぜ)

46戸田山(とだやま)挿花(そうか)

 

あーやの方も終わったらしく、俺に見せてくれた。

 

2年1組 1~26男子 30~55女子 (元1年6組)

石田(いしだ)流星(りゅうせい)

宇津(うづ)弘毅(こうき)

20関合(せきあい)忠也(ちゅうや)

21蘇我(そが)(しゅう)

23土屋(つちや)善太(ぜんた)

24中本(なかもと)(ばん)

 

35小石(おいし)心晴(こはる)

37勝田(かつた)夏海(なつみ)

48七里(ななさと)木佐名(きさな)

 

 

2年2組 (元1年6組)

16坂本(さかもと)信次(しんじ)

17佐藤(さとう)博樹(ひろき)

18佐藤(さとう)陽生(ようせい)

19鈴木(すずき)勝谷(しょうや)

 

38木下(きのした)恵名(えな)

40佐々木(ささき)江浪(えな)

45手塚(てづか)(はる)

 

 

2年3組 (元1年6組)

新井(あらい)寛也(ひろや)

嵐野(あらしの)(りゅう)

 

39小山(こやま)佐織(さおり)

41清水(しみず)春夏(はるか)

49西枝(にしえだ)友香(ともか)

 

あーやも見やすいように分けてくれた。じゃあ、人数調整だな。その前に、胡桃に夕飯聞いてこないと。

 

「胡桃、大丈夫──」

「痛っ!」

 

なぎが手伝っていたそうで、しかし手を切ってしまっていた。

 

「大丈夫か!?」

「ヒール!」

 

かりながなぎの手を回復魔法で治していた。

 

「ありがとう、かりなちゃん。柊くんもっ」

「あ、あぁ……そうだ、胡桃、夕飯大丈夫か」

「うん。あと1時間くらいかかっちゃうけど」

 

1時間か。調整しても時間が余るな。だったら調節しちゃおう。

 

「わかった。ゆっくりでいいからな」

 

俺はあーやのところに行って調節を始めた。

 



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第9話 思い出してしまう過去

今回の登場人物
月島柊
月島かりな
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上5名


 俺はあーやに手伝ってもらって人数調整を行った。片寄ってるところだと、6組女子、1組男子くらい。

 

「1組入る予定だった中本を6組に移すから、何人?」

「あと、関合くんも、1組から」

 

「5人かな」

 

俺は即答した。女子が5人いるはずだから、男子は2人少ないはずだ。

 

「じゃあちょうどいいね」

「あとは……時間割か」

 

今回の時間割の決め方は1年生の時と変わり、先に先生の予定を入れて、それを元に製作することになった。

来年の俺の担当は2年数学、2年理科(一部)、全学年音楽の3つだ。担任は2年6組。そのまま学年だけ上がっただけだ。

 

「月曜1は6組スタートがいいな」

「ふぅん……つっきーに教えてもらう人、いいなぁ」

 

あーやは羨ましそうに見つめた。

 

「楽じゃないぞ。人気だけどさ」

「柊くんの授業だけ受けたいなぁ」

「そんなこと言うな」

 

俺は2時間目の授業を入れる、全学年音楽担当だから、1年5組音楽、3時間目は胡桃で、4時間目は1組数学、5時間目は4組数学、6時間目は1年4組音楽。結構授業が多くなるが、今年入った人たちが俺の仕事を休みの日はやってくれる。実際、今年度もしてくれた。

ただ、このままじゃブラックだから、返しに一緒に飲みに行ったり、食事、あまりの仕事をやってたりしている。

 

「あーやはなんか得意教科ないのか」

「うーん…美術…とか」

 

そうか、確かに漫画描いてたら美術は得意になるか。美術担当は、江坂先生か。美大卒だから絵は上手い。

 

「江坂先生と勝負したらいい勝負しそうだな」

「江坂先生?」

「美術の先生。美大卒だから」

 

あーやは微笑んで、キッチンに向かった。俺は時間割の確定枠を周りの先生のチャットで確かめた。

 

〈夜分遅くにすみません。2年6組月曜時間割確定してる人いますか〉19:15

〈俺は月曜日だけ確定してるんでいいですよ〉19:17

 

そう言ったのは(あかつき)(みなと)先生。国語担当の先生だ。

 

〈1が1組、2が6組、3が4組、4が休み、5が7組、6が2組です〉19:20

〈了解です。ありがとうございます〉19:21

 

ということは、1が数学、2が国語か。3はなんだろうな。

 

〈江坂です。3時間目6組美術ですよ〉19:22

〈了解です。3時間目だけですか〉19:23

〈はい。別の日に一回入ってますが〉19:24

〈わかりました。いつですか〉19:24

〈水曜日の4時間目です〉19:26

〈ありがとうございます〉19:26

 

だったら3までわかったな。胡桃も俺が音楽やってる時に数学入れてくれてるだろう。

 

「絢香、疲れた」

 

絢梨がこっちに来て言った。俺はあーやじゃないんだがと思いながらも俺はPCを魔法ストレージにしまった。明日は6時間目に魔法教室がある。主役は──まぁ、明日になってからにしよう。

 

「ん?絢梨か。じゃあ一緒に横になるか」

「なる」

 

キッチンの方では忙しさもありながら、楽しそうだった。俺はそんなところを見ていると、どうしても嫌な過去を思い出してしまう。さらに、考えすぎてしまう。

 

俺は何故思い出しているんだろう。

 

俺は何故こんなことを思っているんだろう。

 

世界に何故過去はあるんだろう。

 

そもそも、俺は何故いるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、なぜ生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことは考えてはいけないはずなのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生きている意味を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教えてほしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰でもいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      教えてくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はそう思ってしまった。過去の事なんて忘れられないのだ。中学で苛められていたことなんて、今になっても引きずっている。しかも、俺の方が強いはずなのに、俺が最弱になる。

どうしてだろう。

俺が弱いんだ。

ならどうすれば強くなれる。

過去を捨て去るしかない。

どうやって。

分からない。

自問自答の繰り返しだ。何も分からない、弱い人間なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼び鈴が夜の廊下に鳴り響いた。何回も反響して、まるでホラーのような。謎の冷たい風も当たった。

それに、胡桃は出た。微かにドアの向こうから聞こえる、エコーのかかった胡桃の声。やはり反響している。

そのあと、ノイズのかかった野太い声がした。その声は、反響どころか、俺の耳に直接入った。

 

「月島はいるか。柊だ」

 

聞き覚えはない。だが、声変わりした俺の中学の同級生。

あぁ、もう俺は終わった。俺は気付かれていると思い、呼び鈴から話した。

 

「はい」

「久しぶりだな、柊。お前みたいなやつでも妻はできるんだな」

 

スピーカーでノイズの混ざっている声。しかし、俺には聞こえていた。はっきりと。胡桃は怒って言った。

 

「みたいなやつって、なにその言い方!」

「俺が外に出て話そう」

 

俺は外に出た。胡桃は置いていった。俺の問題だから。

 

 

 



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第10話 ひどい奴ら

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上6名


 俺が外に出ると、そこには予想通り、いじめていたメンバーが2人いた。

昔じゃ確かにぼろ負け。しかし、今だったら勝てるはずだ。昔の俺と違うんだから。

俺は氷結魔法をその2人にかけようとした。

 

「なに、数の暴力って聞いたことあるか」

 

数の暴力。力関係なく圧倒的に多い数で攻めることか。だけど、今は2人しかいない。まず2人を殺れば…

魔方陣でもいいけど、さすがに時間かかるしな…

 

「2対1じゃ負ける。じゃあ、15対1はどうだ」

 

俺は後ろから押されて地面に倒れた。すぐ魔法を発動させようとしたが、手も塞がれた。うつ伏せになり、頭、手、足を3人係で押さえている。

 

「おや、仲間が来たか」

 

そう、仲間は絢梨だった。俺が戻ってこないことを不審に思って、愛用する剣と、追い払うための木刀を持っていた。

 

「殺れ」

 

残っていた内の10人絢梨を倒しにいく。絢梨一人でもさすがに10人は厳しかったらしく、1人に木刀を強く当て、倒れてしまった。

 

「あっはは、弱すぎやしないか?柊、仲間」

 

あーやは来ても魔法使えないし、残りの胡桃、かりな、なぎは料理してるし来ない。

 

「終わったな…」

 

俺は小さくそう呟き、諦めた。

 

 しかし、諦めることはなかった。

 

 胡桃、かりな、なぎの3人が来たのだ。なぎは魔法で前の3人を固め、胡桃は絢梨からもらっていた剣で殺さない程度に当てた。

かりなは魔方陣を唱えていた。魔方陣を見ると、それは円の中にいる人物が仮想世界に転移するものだった。

 

「まだ終わりじゃない」

 

仮想世界は魔力のポイントが回復、殺されると自宅にワープ、力は倍になる。さらに、俺の場合は魔法使いの称号を持っているため、魔力も倍になる。

5分ほどで転移して、周りは驚いていた。あーやもいて、加勢するようだった。

仮想世界に来てからすぐ、俺は押さえられていた中から脱出した。絢梨がおさえられているため、俺は風魔法で3人を飛ばす。

 

「さて、楽しもうか」

 

俺たちにとって、魔法は遊び感覚。自由に使っていいと言われたらいくらでも使う。最近は唱えなくても魔法を使えるようになった。あの魔法本のお陰だ。

 

「胡桃、ちょっと血飛ばそうぜ」

 

俺は少し笑って言った。

 

【月島胡桃視点】

 

 仮想世界に転移されてから、私は柊くんに背中を合わせた。前後で守ることになるから。私は柊くんの方を見てみた。

 

「胡桃、ちょっと血飛ばそうぜ」

 

柊くんは怖い口をしていた。三日月を横にしたような形の口に、目の奥が濃く、怖かった。

柊くんは魔力を掌にためていて、いつでも強力な魔法が飛んでいきそうだった。

 

「もう、怖いよ」

「いやぁ、俺はともかく、絢梨たちを殺そうとしたことにね」

 

柊くんは一気に突き放った。一瞬で飛んでいき、トドメは絢梨ちゃんがしてくれた。

 

「柊くん!」

 

遠くからかりなちゃんが言った。私がそこを見ると、何か赤い液体が散っていた。

 

「柊くん、あれって……」

「おかしい……明らかにここは仮想世界だ。光って消えるだけなはずだ」

 

しかし、その場でさっき殺した人たちが倒れて、赤い液体に染められている。

 

「一回行ってみよう」

 

私は柊くんに付いていく。柊くんは足を震わせていて、柊くん自身も怖がっていることが分かった。

 

「柊くん、これ……」

「……」

 

柊くんは倒れていた人を触った。すると、柊くんは驚きの行動に移った。

 

「えっ!?ちょっ!?柊くん!?何してるの!?」

 

そう、柊くんは自分の剣を使ってその人の心臓付近を刺したのだ。

 

「本当に逮捕されちゃうよ!」

「違う。こいつ、偽物だ」

 

私はその言葉に「?」が浮かんだ。

なんで?偽物?どういうことだろう。

 

「多分、俺たちを焦らせようとしてたんだろうな」

「ひどい」

 

柊くんは厳しそうな目をして言った。

 

「そういう奴らなんだよ、あいつらは」

 

柊くんは火炎魔法で焼き尽くした。跡形もなく消え去った。

 

「嫌だよな……そうだ、胡桃たちは料理に戻ってて」

「うん。柊くんは?」

 

私は柊くんに聞いた。気になるし、夫だし。

 

「俺は仮想世界ちょっと探索してる。30分で戻るからさ」

「そっか。気をつけて」

 

私たちは柊くんだけを残して現実世界に戻った。

 



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短編小説 第11話 家の家庭

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上6名


 俺は仮想世界の琴葉の家に向かった。さすがにいるはずないか。と思いながらもだった。

案の定、琴葉はいなかった。鍵がしまっていて、俺はサーリートのログハウスに向かった。

最後に来たのは多分6ヶ月以上前だが、契約は切れていない。所有者は俺になってるし。

 

「懐かしいな……」

 

俺はログハウスの中に入った。

今は必要なくなってしまったが、ここを使っていた時期は嫌じゃなかった。

 

「また、来たいな」

 

俺は現実世界に戻った。

 

 俺が戻ると、夕飯が並んでいた。刺身やフライなど、たくさんの豪華な食べ物だった。まぁ、資金なんて調味料くらいしかかかってないけど。釣りに行ったので千円いくかいかないかくらいだし。

 

「食べよう、みんな」

 

俺は刺身を一口食べてから言った。

 

「ああ!ズルい!もう食べてるじゃん」

 

続いて胡桃も食べ始め、なぎ、かりな、あーや、絢梨と連鎖していった。

 

「いやぁ、釣った甲斐があったな」

「今度みんなで釣り行きたいね」

「そうだな、つっきーが教えてくれるよ」

 

いやいや、全部俺に任せるのかよ。

 

「そ、そうだなぁ。仕事が忙しくなくなったら行こうな」

 

その前に、なぎが引っ越す時期が来ないといいな。まだなぎとしたいことはたくさんあるから。

 

「この魚なに?」

「さぁ、適当に釣ってきたから知らん」

 

あれ、それだと……いや、さすがに火通してるから大丈夫だろうけど、毒抜きしてないな。

 

「胡桃、毒抜きした?」

「え?入ってるの……?」

「しらない。まさか……」

「してない……」

 

あれ、フライだったら火通してるけど、刺身は?誰か食べた人……

 

「あーむっ」

 

かりなが声を出して食べた。それは、刺身だった。

おい!あれ、というか……ごめん、かりな。毒味お願いします。

 

「おいしいっ!」

「私も食べたい」

 

絢梨がかりなが食べた刺身を食べる。

大丈夫か。かりながなにもないから大丈夫だな。

 

「んぐっ!」

 

絢梨は苦しそうにした。え、まさか……

 

「かりな、お前って、毒消せる?」

「舌に治癒魔法が常時発動してるから消すよ?」

 

だからかっ!俺は絢梨の近くに駆け寄った。どうにかして毒抜かないと。

 

「かりな、毒抜けるか」

「えっと、痛いやり方だけど、一回注射器でちっちゃい穴開けて、そこから私の回復液流せば行けるよ」

 

本当に痛そうだな。けど、しょうがないか。

 

「安全ピン刺す」

 

俺は絢梨の腕に安全ピンを刺した。

 

「行くよっ」

「……」

 

絢梨は痛かったのかなにも言わずに黙っていた。

かりなはしばらくしてから絢梨から離れた。

 

「1時間もすれば完全に治るよ。お刺身は私が食べるね」

 

かりなは刺身を食べた。

 

 家は、何があっても誰かが解決してくれる。結構いい家庭だ。

 



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第12話 魔法教室

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
藤間望
佐藤麗波
6組生徒6名
以上12名


 俺は学校に行き、6組の時間割を書き換えた。チャットで彩と交渉し、4時間目の1組数学を社会に替え、その代わり、金曜日の1時間目の社会を数学にした。そして、4時間目の数学は6組に持ってきた。

しかし、これだと違和感を感じるため、3時間目の道徳を4時間目の数学と入れ換える。こうすると、2時間目にあった数学と連続になる。

 

「おはようございます」

「おはよ。眠いね」

「はい。眠いですね」

 

いつも早く来る江島だ。結構信頼している男子だ。

 

「江島くんはいつも何時に家出てるんだい」

「7:15ですかね」

 

早い……!俺とほとんど同じくらいじゃないか。

 

「早いね」

 

俺は黒板に今日の予定を書いていった。

 

おはよう!

今日は時間割変更があるよん

4時間目は道徳、3時間目は数学だ!

数学2時間だね!やった!

さて、今日は6時間目に魔法教室があるけど

俺は司会だから、胡桃に付いていってね

さて、今日も頑張ろ!

 

魔法教室は俺が司会やるから一緒に行けない。しかも、5時間目音楽だしね。

 

「おはようございます!」

 

由月たちが入ってきた。元気だなぁ。

 

「おっ!今日3時間柊くん!」

「そうだね。今日は代表値の種類分けるよ」

 

俺は1時間目の国語の授業用にプレートを貼っておいた。

 

「せんせ!今日の数学なにやるの?」

「さっき言ったろ、代表値」

 

俺は由月に言った。風那や三久はリュックをロッカーにしまっていた。

 

「月島先生、疲れませんか」

 

江島が言った。確かに疲れてるけどな。2年生になったら時間割整理されるからなぁ。

 

「大丈夫だよ。1時間目はやすみだし」

 

2時間目からはフルで行く事になっている。

 

「せんせ!」

「ん?なんだ」

「来年のクラス決めってしてるの?」

「クラスか。ちょっとだけ。教えないからな」

 

俺は念のため言った。

 

「んなっ!じゃあ、来年は先生いる?」

「いるよ。2年生はまた7クラスだからな」

 

担当はちょっとかわったけど。あと、胡桃と俺の2人の授業が少なくなる。前期時間割は各クラス週二回で音楽があるから、1年生5クラス、2年生7クラス、3年生4クラスで、1年生は10時間、2年生は14時間、3年生は8時間で合計32時間。6時間授業が7日間で、合計42時間で、道徳が1時間、総合が1時間、学活が1時間だから、数学は週に7時間。大半は月曜日だ。

約76%が音楽、約17%が数学、約2%が道徳、道徳、総合。

後期は週一回音楽だから、音楽は16時間、総合が2時間に増える。

そのため、約38%が音楽、約52%が数学、約5%が総合、それ以外は4%。

前期の時間割は残りの83%は胡桃の授業。

 

「結構俺の授業少ないぜ」

「えーっ、やだぁ」

「来年度から全学年音楽を担当するから」

 

俺がそう言うと、放送があった。学年主任の、上西先生からだ。

 

《1年生の先生方、8:00から職員会議を行います。8:00に職員室にお願いします》

 

職員会議っていうか、2年生の時間割整理だろ。俺は黒板に書き加えた。

 

先生がいなくても朝の会は始めてね

 

1行だけだった。俺は職員室に向かって職員会議をしてきた。

 

 

 

 時は進み、5時間目の2年2組音楽が終わった。全学年が校庭で魔法教室を行うため、すぐに校庭に出た。今回の進行役は職員会議で決まったところ、上西先生に決まった。主役は俺だ。何でかはやってみれば分かる。

俺は校庭に出て、1年6組が来るのを待った。胡桃が先頭に来るはずだ。

周りは並ぶことを指示している声が聞こえてくる。そこに、胡桃がこっちに歩いてくる。後ろには並んだ6組の生徒。

 

「柊くん、来たよ」

「おう。じゃあ、背の順で座って」

 

俺は指示して、胡桃と場所を交代した。2列ごとに並ぶことを言って、三久に言った。

 

「楽しみにしててね」

「え、何を?」

「秘密さ」

 

俺は香苗、風奈、菜晦、杏にもオナジコとを言って、ステージの横に行った。

 

「月島先生、今日、ステージ壊さないでくれよ」

 

上西先生だ。俺は上西先生とは仲が良く、司会も俺が任せた。

 

「分かってるさ、上西先生」

 

時間になり、上西先生が上にのぼった。

 

「これから、第一回、魔法教室を始めます」

 

暇だなぁ、こういう時って。

俺がそう思っていると、裏からかりなとなぎがひょこっと顔だけ出した。魔法を使う人たちだけ連れてきたから、あーやと絢梨はいない。その代わり……

かりなが1番下、2番目になぎ、3番目に……麗波、4番目に……望が顔を出した。

……って、望!?

 

「ちょっ、望、どうしてここにいるんだよ」

「どうしてかって?何となくよ」

 

呼んでもいないのに……麗波は呼んだけど……

 

「麗波、今日は危ない銃持ってきてないよな?」

「ハンドガンしかないよ?」

「名称は」

「M1911」

 

マジすか……みんな怖がるだろ……

 

「M1911って、第二次世界大戦のやつだろ」

「あ、知ってた?」

 

俺は魔法ポケットからS204を出した。

 

「これ使え。M1911はダメだ」

「は~い……って、オリジナルじゃん」

 

そう、この銃は、まぁ威力は落ちてるだろうけど、望の知り合いに頼んで少し前に作ってもらったもの。

 

「口径はM1911と変わんない?」

「知らん。威力は落ちてるんじゃないか」

 

麗波はS204を隅々まで見ていた。俺には分からないから自分の判断に任せる。

 

「それでは、今回の講師の方は5名……」

 

俺は上西先生に向けて指で「6」と送る。

 

「6名ですね。いらっしゃいます。暖かい拍手でお迎えください!」

 

俺はステージの階段に向かおうとした。しかし、麗波が抜かして、最初に麗波が上った。次にかりな、望、俺、胡桃、なぎの順番だった。

 

「こんにちは」

 

俺はマイクに向かって話した。すると、3年生までの生徒たちが小声で話す。ざわざわし始めた。

 

「えっと、分かってるだろうけど、1年数学と、2年音楽担当の、月島柊です。今日はね、魔法の実習で来ました」

「1年数学担当、月島胡桃です!」

「親友の、白雪凪沙です」

「2年2組、月島かりなです!」

「知り合いの、藤間望です」

「同じく知り合いの、佐藤麗波です!」

 

今日は以上の6名。俺は続けて話し続けた。

 

「今日は、魔法を主に行っていきます。それでは、まずは俺たちの魔法を見てもらおうかな」

 

俺は手の上に小さな竜巻を作った。

 

「見えるかな。見えないって人手挙げて」

 

後ろの方と、1年生、3年生の端が見えてないらしい。

 

「了解!じゃあ今から回るね」

 

俺は1年生から見せて回った。

「すごーい」「どうやってるの……」など、いろんな感想が聞こえてくる。

 

「今から3年生行くからね」

 

俺は後ろの方にもゆっくり見せて、3年生に見せた。全く同じ反応で、こうなるんだと思った。

 

「みんな見たよね。じゃ、次行くよ」

 

俺はステージに戻って、次の魔法を発動させた。

 

「次はステージからしかできないから、見えない人立っていいよ」

 

後ろの方が立ち上がった。俺は火炎魔法を発動させた。

 

「結構危険だから、触っちゃダメだよ」

 

俺は一応警告しておいた。

 

「みんなー!今度は私がやるよ!」

 

胡桃がみんなに向けて言った。胡桃は側に置いてあった的を持って浮いて見せた。

 

「さぁて、じゃあ胡桃の持ってる的を撃ち抜こうと思います!使う魔法は投石魔法。漢字で書くと、投げる石。その名の通り石を投げる魔法だ。これは今日みんなにやってもらう魔法の内の1つだ」

 

俺は説明が終わると、約15m上にある的に向かって投石魔法を使った。

しばらくしてから、音がボンと鳴り、的の破片が下に落ちてくる。

 

「ああいう感じだ。比較に、銃を使ってみよう。速さとかに注目してね」

 

俺は麗波に合図を送り、麗波に銃の発砲許可を出した。

 

「3、2、1」

 

俺がカウントし終わると、麗波は弾を放った。

放つとほとんど同時に的が割れる。

 

「分かったかな。要するに、投石魔法の方が速度遅いんですねぇ」

 

周りは「え?」と言っているかのような顔をした。確かにそう思う。これだけだとメリットがないんだから。

 

「ただ、メリットだってある。銃弾は一発で死んでしまうことが多い。だから、近距離で、威嚇の為に使うんだ」

 

周りは納得したようで、メモし始めた。

 

「よっしゃ、じゃあ実技いくか」

「今回やるのは、ランクⅠの火炎魔法と、ランクⅡの投石魔法だよ。火炎魔法から始めるね」

 

俺は1年生に火炎魔法のやり方を説明しに行った。

 

「さて、火炎魔法は燃やすイメージを働かせて。熱くないから安心していいぜ」

 

先頭の人たちから始めていく。ランクⅠは小さな火が出たら合格だ。

 

「先生!出ました」

 

少し後ろから声がした。俺はその方向に行った。

確かに火は出ていて、合格だった。

 

「よくやった。じゃあどんどん強くしててね」

 

俺はまた前に戻った。もう前の人も火は出ていた。

 

「よぉし、いいね」

 

俺は安心して後ろに行った。

 



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番外編 筆者から見た 東日本大震災から10年

読む前に、時間を過ぎていても、黙祷してから読みましぉう。




























































さて、今回は私が、震災について語ります。



 

 まず、10年前の東日本大震災で、亡くなられた方には、ご冥福をお祈りいたします。また、被災された方、私たちもお気持ちは分かります。

辛い、怖い。トラウマになっている人もいることでしょう。ですが、みんなで、助け合ってこの世界を乗りきっていきましょう。

 

 この小説については前書きの通り、ただただ、私が東日本大震災について語るだけです。鉄道要素、現在の様子も含め、語っていきます。

 

 さて、本題に入ります。

東日本大震災は、今から丁度10年前、2011(平成23年)3月11日に宮城県沖で発生した、M9.0、最大震度7の地震だ。

また、宮城、福島、岩手などでは、非常に高い津波が押し寄せた。大量の住居、車、電車、駅、建物、そして、人々が流された。

この地震、津波により、死者は2万人以上、行方不明者は今でもいる。10年経った今でも、分かっていない事実はあるのだ。

茨城、福島、宮城の沿岸部を走る常磐線

宮城、岩手の沿岸部を走る仙石線

岩手の沿岸部を走る気仙沼線、大船渡線。

さらには、沿岸部ではない

栃木、福島、宮城、岩手を縦に横断する東北本線、東北新幹線

岩手、秋田の内陸部を走る田沢湖線、北上線

など、さまざまな路線が運転を見合わせた。この原因は、津波だけではない。巨大な地震である。ここでは、常磐線を見ていこう。

常磐線では、津波によって流された電車が存在した。E721系は有名だろう。

だが、忘れてはならない。上野~いわきや、仙台付近。

首都圏である、上野~取手間は被害も少なかったことから、比較的早期に、本数を減らしながらも運転を再開した。しかし、首都圏から離れた郊外、取手以北は運転再開は遅れた。

まずは取手以北の常磐線で1番早く運転再開したのは取手~土浦。3月18日、震災から1週間だった。

常磐線のバイパス路線である、東北本線でも、黒磯~北上は3月18日で運転を見合わせていた。

東北新幹線も、那須塩原から先では運転を見合わせ、高速バスも運休、飛行機も欠航が多数あった。仙台は陸の孤島と化したのだ。

しかし、日本の鉄道は優秀だ。

震災から9日、3月20日には一ノ関~北上駅間約42kmが運転を再開、さらにその2日後、22日には東北新幹線盛岡~新青森が再開。

1週間後の29日、東北本線郡山~本宮が再開し、着々と進んでいった。

しかし、運命は分からない。

4月7日、東北本線岩沼~福島が再開する。しかし、同日深夜に発生した余震により、黒磯~盛岡、岩切~利府が再び運休となった。

しかし、2日後の4月9日、安積永盛~本宮、北上~盛岡が、10日に、本宮~福島、11日に水沢~北上、12日に福島~仙台、15日に一ノ関~水沢、17日に黒磯~安積永盛が再開。

そして、ついに

震災から41日後、4月21日、東北本線は全線で運転を再開した。

次に常磐線だ。

こちらは、年表を作成した。

 

2011年 3月11日 地震発生

2011年 3月12日 上野~取手再開

2011年 3月18日 取手~土浦再開

2011年 3月31日 土浦~勝田再開

2011年 4月 7日 勝田~高萩再開

2011年 4月11日 高萩~いわき再開

2011年 4月12日 亘理~岩沼再開

2011年 4月17日 いわき~四ツ倉再開

2011年 5月14日 四ツ倉~久ノ浜再開

2011年10月10日 久ノ浜~広野再開

2011年12月21日 原ノ町~相馬再開

2013年 3月16日 浜吉田~亘理再開

2014年 6月 1日 広野~竜田再開

2016年 7月12日 小高~原ノ町再開

2016年12月10日 相馬~浜吉田再開

2017年 4月 1日 浪江~小高再開

2017年10月21日 竜田~富岡再開

2020年 3月14日 富岡~浪江再開

2020年 3月14日 全線再開、バス代行廃止

 

 全線再開するまで、9年と2日かかっている。これを見ると、どれだけ東日本大震災が大きかったか分かるだろう。

さらに、2020年の、バス代行廃止は、一見残念に見えるが、実際は鉄道が通ったため、復興の象徴となる。

この再開は、陸の孤島だった仙台に、希望の光を指した出来事でもあるのだ。

 

 今では、仙台駅で「品川」の文字を見ることができている。

 

 この震災は、人々を傷つけ、さらに陸の孤島までにした。しかし、震災から10年、戻っていないところがあっても、元に戻らなくても、震災より良い状態にするために、努力している人がいる。さらに、もう2度とこんなことは起こさないと、堤防工事も始まっている。

 



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第13話 魔法実習

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
佐藤麗波
藤間望
上西博也
佐藤麗華(電話のみ出演)
以上5(6)名


 俺は魔法の実習が終わると、ステージの上に戻り、胡桃たちと一緒に魔法の紹介をした。

 

「えっと、みんなに覚えてほしいのは、魔法の高校があることだ。神奈川県に、魔法科高校があって、実際、俺もそこを卒業した」

 

俺は卒業した魔法科高校について話した。

 

「魔法科高校は、入ると当然5教科の授業や、副教科の授業もある。科目だっていくつかあって、一般的な方だと、普通科、理数科。そして、魔法科高校には、魔法科がある。授業でも週に一回、魔法の実技がある。だから、好きになった人は入るといいね」

 

俺は話し終わると、質問タイムを取った。

 

「じゃあ、質問タイム!質問がある人挙手!俺と胡桃で答えるぞ」

 

手を挙げた人数は結構いて、1学年7割くらい。

 

「じゃあ、3年生の前から6番目の1番右側の人」

 

その人は自分のことを指差す。俺は「そうだ」と言って、質問を聞く。

 

「魔法科高校って、神奈川のどこら辺ですか」

「川崎の近く。結構遠いけど、俺も籠原から通ってたから大丈夫!」

「他には?」

 

胡桃が聞く。俺の前の子が手を挙げた。

 

「えっと、柊くんの前の人」

「はい。魔法を使えると、どんなメリットがありますか」

 

メリットかぁ。俺は胡桃を見た。胡桃も助けを求めるようにこっちを見ている。

 

「例えば、移動するときとか便利だね。ワープできたりとかするから」

 

俺は保加の質問を聞いた。さっきとは違い、明らかに減った。

 

「じゃあ最後にしよう。1年4組大西」

「はい、魔法やって、好きな人ってできましたか」

 

なんちゅう質問だよ……そもそも、胡桃以外に好きな人なんて……いや、琴葉がいるか。

 

「あとでそれには答えよう。さて、じゃあ終わりにする。1年5組は胡桃の指示にしたがって」

 

今日、1年5組の彩は出張でいない。だから、副担任の胡桃が行く事になった。

 

「姿勢を正して、礼」

 

上西先生が言った。俺は最初に言った。

 

「ありがとうございました」

 

そして、生徒全員が「ありがとうございました」と言った。そして、担任の指示にしたがって他のクラスが戻り始める。

俺は下に行って、6組に指示を出した。

 

「静かに戻って。帰りの会は先生の話以外はやっちゃっていい」

 

俺は6組の人たちが戻るのを確認してから、麗波と望のところに駆け寄った。

 

「望ってこの後予定あるか」

「今日は……なかったはず。でも、明日は8:30から会社の朝会ある」

 

麗波なんてどうせ予定ないだろ。一応聞くけど。

 

「麗波は予定ないよな」

「なんでない前提で──」

 

その時、麗波のケータイのバイブが鳴った。

 

「麗華ちゃんからだ。……はい」

《どこにいるの!麗波!》

 

耳元になくても聞こえるほど鋭く大きな声だった。

 

「げっ……だってさ、行くって決まってたし……え、やだ」

 

麗波は電話を切った。絶対途中で切っただろ。

 

「麗波──」

「今日泊めて!」

 

ああ、なんとなく分かった。麗華から逃げるってことだろ。

 

「はいはい。もう好きにしろ」

 

俺は手を振って学校の中に入った。

 

 6組に入ると、帰りの会がもう終わっていた。あとは俺の話だけだろう。

 

「えっと、俺が話せばいいだけか」

「そうです」

「りょーかーい。えー、明日は通常通り授業あります。あと、最近、1年生の下校マナーが良いって言われてるから、続けてね。以上」

 

俺は帰りの会を終わりにした。みんなが帰り始めると、俺は職員室に戻って、胡桃の仕事を手伝った。

 

「手伝うよ」

「あ、ありがとう。じゃあ、こっちの授業表見直してくれる」

「分かった」

 

俺は胡桃の作った授業表を見直した。ミスは……なんか6組だけ1回多くないか?

 

「なんか6組だけ多くないか」

「ホントに?……ホントだ!ありがと!」

 

俺は胡桃に間違えてるところを指差した。

胡桃が直し終わると、俺は帰る用意をした。

 

「帰ろう」

「うん」

 

俺は先に正門から学校を出た。正門の外で麗波と望は待っていた。

 

「胡桃が戻ってきたら帰れるからな。あともう少し待ってよう」

「うん」

 

麗波は麗華が来るのを警戒しているのか、俺の背中に隠れている。

 

「柊くん、桜とは最近会ってる?」

「桜か?あってないな」

 

桜と最後にあったのは確か1か月……いや、それ以上前か。

 

「望は……会えるわけないよな」

「えぇ。だけど、最近は忙しくなくなってきた。桜とも会えるかもしれない」

「そうだといいな」

 

俺が望と話していると、胡桃が後ろから来た。

 

「やっほ、帰ろ?」

「ああ」

「何話してたの?」

「こっちの話だよ、胡桃ちゃん」

 

望はそれっぽく流してくれた。

俺は4人で家に帰った。

 

 麗華には会わなかったが、麗波は家に入ってからもそわそわしていた。

 



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第14話 麗華

今回の登場人物
月島柊
立川絢香
佐藤麗華
佐藤麗波
以上4名+小雪


 俺は麗波を2階にある俺の部屋に入れた。望は少し時間を潰して、30分で帰った。

俺は麗波と隠れながら(隠れられるか不安だが)、2人で雑談をしていた。

 

「今日も麗華に内緒で来たのかよ」

「だって……うるさいし……」

 

麗華に悪いだろ。突き出すぞ。

 

「うるさいじゃない」

 

俺は呆れてものも言えなかった。

 

「けど、麗華ちゃんのこと好きなの?」

「普通。ってか、このままだと俺まで巻き添えにされるんだが」

「あ、そっか。じゃあ隠れてれば問題ないよ」

 

隠れてればって……どうやって隠れるんだよ。

 

「屋根の上とか?」

「勝手に人の家の屋根に乗るな」

 

もう単純に逃亡しちゃうってのもアリだよな。

 

「にげるのは」

「にげる?どこに」

「そこだよなー」

 

俺が考えていると、呼び鈴が鳴った。

 

ピンポーン

 

「麗波はクローゼットの中入ってろ」

 

俺は急いでドアのところに行った。ドアを開けると、そこには麗華が立っていた。

 

「麗華?どうしたんだ」

「麗波来てない」

 

少し食い気味に聞いてきた。いやぁ、白状するかぁ?いやでもここまで来たらなぁ。

 

「来てないな。そうだ、麗華、俺の家で休んでけよ。疲れただろ」

「そうね。じゃあ、お邪魔しまーす」

 

俺はリビングに招き入れ、自然なように自分の部屋に向かった。

麗波はクローゼットの中に隠れていて、俺は少しだけ開けた。

 

「麗波、今麗華がリビングに居るから、鍵閉めて、俺のベットで寝てろ」

「うん。借りるよ?」

 

俺は頷いて、部屋を出た。スマホを持ってないと怪しまれると思い、スマホを手に持った。

内側から閉められる鍵で、外からも鍵さえあれば閉められる。

 

「柊くん、何してきたの?」

「スマホ取りに行ってた」

 

この家にいる誰もが麗波がいることは知っている。ただ、麗華に怒られるところは見たくないのはみんな一緒。誰も言わない。

 

「麗華は最近どうだ、ちゃんとできてるか」

「まぁね。凪沙ちゃんとか暁依にも手伝ってもらって」

 

自然と会話に持っていく。休んでくだけだから、麗華も泊ることにしておけばいい。記憶を失くす魔法もあるけど、失くしすぎると怖い。

すると、衝撃の言葉を放った。

 

「麗波のこと探してるんでしょ」

 

あーやが言った。

 

「柊くんの部屋にいるよ」

 

あーやは本当のことを言った。

 

「へぇ……柊くん?」

 

マジすか……あーや、俺がどうなるか分かってるだろう。

麗華はニヤリと笑った。しかし、目の奥が笑っていない。ものすごく怖い。

 

「どこか教えて」

「はい……」

 

俺は自分の部屋に案内した。

 

 麗波はそのあと激怒され、俺も少しながら怒られた。

 

「ああ……」

 

俺は麗華に怒られたのは初めてで、一度リビングへ戻った。もう怒れたことは根に持ってないが、印象が変わったな。

 

「あれ、誰も居ないのか」

 

俺は1人で床に寝そべった。すると、放し飼い時間(7:00~7:30、18:00~22:00)によって、ゲージの外に出ている小雪が俺の肘に乗ってきた。

 

「なんだ、小雪」

 

小雪は鼻をヒクヒクさせて、匂いを嗅いでいた。

 

「なんか匂いするのか……」

 

小雪はしばらく嗅いでいたが、そのあとは俺の手と手の間に来た。柔らかい毛が顔に当たる。

 

「柔らかいな……」

 

俺は小雪を撫でた。小雪は気持ち良さそうに目を瞑っていた。

 

「小雪も大変だよなぁ」

 

俺は何となく同情を求めたくて言った。うさぎには分からないか。

 

「もふもふ……」

 

俺は思わず声が漏れた。

その時、俺の背中に急に重たいものが乗ってきた。

 

「重っ……」

「誰が?」

 

あーやの声だ。小雪は微動だにしない。

 

「そういうことじゃなくて……なんでそこにいるんだ」

「う~ん……つっきーが喜ぶから?」

 

なんだよその理由。俺は起き上がって言った。

 

「それはそうとして、急にどうしたんだ」

「くっつきたかったんだもん」

 

だったら別の人に……そうか、男は俺しかいないんだ。動物含めたって、小雪もメスだし。男は俺しかいない。

 

「そうか。じゃあおいで」

「つっきーもぎゅってしたいんだ」

「ただ悲しくなるだけだ」

 

俺はあーやのことを抱き締めた。あーやも俺のことを抱き締めた。

 



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第15話 もう少し

今回の登場人物
月島柊
店員
佐藤麗華
斎藤ニコル
以上4名


 俺は学校からの帰り、ペットショップに寄ってきた。ここのペットショップはうさぎを売っている。家にいるのはかりなが飼ってきたのは白いうさぎ。俺は薄茶色のうさぎを見た。生後1年で、ちょっと大きく、人懐っこく、俺にも寄ってきた。かわいい……

 

「何かお探しで……!」

 

俺は店員さんを見た。その店員さんは俺を怖がっていた女子の内の1人だった。

 

「あ、えっと、このうさぎを……」

「……はい」

 

俺は店員さんに頼んでうさぎを飼った。ゲージ、餌、あとは餌の器も見た。ゲージ……魔法で小雪と一緒に飼えるなにか作れないか……

室内だと、部屋を新しくつくるくらいだったら、胡桃とかりながいればできる。じゃあそれでいっか。

 

「餌、器、うさちゃん……」

「うさちゃんって呼ぶのか」

「…っ!……聞かなかったことにして」

「聞いちゃったし」

 

店員さんは顔を赤くして言った。

 

「ゲージは」

「部屋つくるからいらん」

「そう……って、部屋つくる?」

「増築する」

 

俺はそういって家に帰った。

 

 家に帰ると、俺はうさぎを俺の部屋に放った。俺の膝の上に乗ってきた。かわいい!ものすごく!

 

「名前か……メスだったっけか。きなことか?」

 

薄茶色だし。それがいいと思う。

俺はきなこに目線をあわせて言った。

 

「名前、きなこだからな」

 

きなこはヒクッと鼻を動かして、部屋を動き回った。嬉しかったのか。

 

 

 

 

  俺は3月21日(日)、上野の事務所に向かった。

最近は結構行っていて、なぎのお別れ会の準備もしていた。参加するメンバーは

 

滝川みう

斎藤ニコル

佐藤麗華

東条悠希

藤間桜

柊つぼみ

 

以上の6名だ。あーやは個人で出るから7人だけど。それ以外は私用で来れない人がいる。まぁ、6人も居たら十分だけど。

 

「えっと、最終確認だ。歌うのは桜の雨~凪沙送別会Ver.~の1曲。それ以外はなぎと一緒に居てほしい」

 

みんな最後だけ歌う予定でいた。しかし、麗華が言った。

 

「もう少し歌えない?」

「ああ……時間的に難しいかもしれない」

 

もう計画自体結構出来てきてるし……いや、プログラム変えればいけるか?

 

「じゃあ、プログラム見せて」

 

俺はプログラムを見せた。

ニコルは全てを見てから言った。

 

「開始11:30って遅くない?」

「集合とか考えたらそんなもんかなって」

 

龍夜とか蒼真の事を考えるだけだったら、蒼真は川口、龍夜は上野だから速くてもいいけど、有希や蒼が藤沢だから遅くしないとだ。

 

「連絡してみたら?」

「してみるか」

 

俺は蒼に電話してみた。少し呼び出し音が鳴ったあと、蒼は出た。

 

「もしもし」

《あぁ……柊か。どうした》

「なぎの送別会、何時くらいに来れる」

《大体そっちに8時には着ける。どうかしたか》

「開始時刻変えようと思ってさ」

《なるほど、了解。有希にも言っとくよ》

 

俺は電話を切った。じゃあ開始時刻変わるから、プログラムの仕事に移ろうかな。

 

「プログラムの仕事するから、みんなはレッスンしてきていいよ」

「はい」

 

俺は個室に入ってプログラムの変更を始めた。

もとのデータがこれだ。

 

11:30 開始

11:35~11:45 始めの言葉

11:50~12:10 曲歌唱

12:10~12:40 昼休憩

12:45~15:20 曲歌唱

15:25 魔法結界設置

15:30 魔法披露

15:35~17:10 曲歌唱

17:10~17:20 休憩

17:20~17:25 曲歌唱「な」

17:26~17:32 曲歌唱「ぎ」

17:33~17:43 休憩・雑談タイム

17:43~17:48 曲歌唱「さ」

17:49~17:59 終わりの言葉

18:02 見送り準備   18:00 送迎車移動

            18:02 自販機で待機

18:04 準備完了指示  18:04指示確認後出発

18:05 自作カード掲げ 18:05 家の前で減速

18:06 1番奥に「だ」  18:06 「だ」確認

            18:07 車内で「よ」

 

以上の行程だった。18:00からは右側が俺だ。一方、変更後はこれだ。

 

9:30 開始

9:35~9:45 始めの言葉

9:50~11:30 曲歌唱

11:30~11:40 休憩

11:40~12:00 曲歌唱

12:05~12:45 昼休憩

12:45~15:20 曲歌唱

15:25 魔法結界設置

15:30~17:05 曲歌唱

17:05~17:15 休憩

17:15~17:20 曲歌唱「な」

17:21~17:27 曲歌唱「ぎ」

17:38~17:43 休憩・雑談タイム

17:43~17:48 曲歌唱「さ」

17:49~17:59 終わりの言葉

18:02 見送り準備   18:00 送迎の為車移動

            18:02 自販機で待機

18:04 準備完了指示  18:04指示確認後出発

18:05 自作カード掲げ 18:05 家の前で減速

18:06 1番奥に「だ」  18:06 「だ」確認

            18:07 車内で「よ」

 

 ちなみに、最後の自作カードは、参加する人の、俺と有希、蒼、胡桃、絢梨、あーや、龍夜、蒼真、みう、ニコル、麗華、悠希、桜、つぼみの14人に合わせるために、「永遠の別れじゃない!大好きだよ」と掲げるのだ。

 

「終わったぁ……あと一週間ちょいか」

 

今日は3/21だから、決行は4/4。悲しくなるな……

 



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第16話 前々日

今回の登場人物
月島柊
白雪凪沙
立川絢香
立川絢梨
以上4名


 俺は4/2、学校を休んだ。勿論嫌だった訳じゃない。やることがあったからだ。

今日はお別れ会の2日前。最後の平日でもあった。なぎは小雪ときなこと遊んでいる。俺は今家にいるあーやと絢梨を外に出した。

 

「あーや、今のままだと曲数が足りないんだ。ナナニジの曲入れてくれないかな」

 

このままだと1時間以上早く終わってしまう。

 

「いいけど、何人で歌うの」

「7人しかいない……」

 

確かに11人で歌うものだから足りないはずだ。

 

「ふーん……ちょっと事務所行ってくる。他の人今日いるでしょ」

「え!?あ、いるけど……って、おい!」

 

もうあーやは行ってしまっていた。絢梨と俺だけが取り残される。

 

「……なんかする?」

「……することない」

 

確かに。

 

「じゃあ、ドライブでも行く?」

「何のために休んだの」

 

そう言われるとなぁ。じゃあ……ピアノ練習しておくか。なぎにバレないように、平均律クラヴィーアとかの音楽家の曲弾いとけばいい。

俺は早速ピアノのところに向かった。久しぶりに家で弾くから、調律から始めるかな。

俺はファ#の音を鳴らす。

ちょっと違和感あるな。高くしてみるか。

もう一度ファ#の音を鳴らす。

あ、さっきの高かったか。じゃあ下げよう。

この繰り返しで、全ての音の調律を行った。

 

 俺は調律が終わると、平均律クラヴィーアを弾いた。

 

 ♪♪♪♪~~

 

 弾いている途中に、凪が入ってきた。小雪ときなこを連れている。

 

「どうだ、俺だって弾けるんだぞ」

「いい音……」

 

明後日のお別れ会で、恋愛裁判のピアノ演奏を任せられたから、少し位は練習しておきたかった。

 

「柊くん、ピアノ、上手……」

「ありがとう」

 

俺は弾くのを止めた。そして、きなこを抱き抱えた。

 

「なぎ、お別れ会やりたいって言ったな」

「うん。だって、最後に思い出残しておきたいから」

「そうだったか。ごめん、明日俺部活行かないとだから、できないかもしれない」

 

俺はなぎが言った真逆の事を言った。ちなみに、さっき言ったことは全部嘘。お別れ会はやるし、明日は部活じゃなくて事務所と蒼の家に行って最終確認をする。もちろんなぎには何も言っていない。言ってあったとしても、どうにか明後日までは貫き通す。

 

「明後日は何時に出ていくんだっけ」

「え?えっとね、確か20:01発快速アーバン」

「そうか」

 

今のままので大丈夫だった。

本厚木か……週一で会いに行けるかな……

 

 あーやは3時間後に帰ってきた。時刻は12:00。俺はあーやに何をして来たのか聞いた。

 

「何してきたんだ」

「別にー。つっきー」

 

あーやは絢梨との部屋に入った。あーやはベットに座って話した。

 

「『僕が持ってるものなら』の曲、練習してきた」

「だけど、全員が来る訳じゃないだろう?」

「まだ信じてたんだ、つっきー。みんな来るよ」

 

そんなこと、聞いてなかったし……いや、何となくそう思ってたのかな。

 

「それで、練習してきたのか」

「うん。明日歌えるでしょ。エリザベスが交渉したって言ってたし」

 

ニコル……連携してたのかよ……気付かなかった俺も俺だけど。

 

「ああ、交渉されてた。明日の10時くらいだな。なぎには何も言っていないけど」

「言った方がいいでしょ」

「分かった。行ってくるよ」

 

俺はあーやに手を振って部屋を出た。

なぎは冷蔵庫をこっそり開けていた。何かあったか?

 

「なーぎー?」

「ひゃいっ!」

 

いや、別に何も悪いことで言ったりしてないんだけど。

 

「って、おい!これ!」

 

それ、胡桃が作ったやつじゃないか。

 

「美味しかったか」

「うん!美味しかった……!」

 

なぎは気付いたらしく、慌てて口を塞ぐ。もうバレてるんだよなぁ。

 

「そうかそうか。そういえばさ、明後日の9:15に外で待ってて」

「明後日の9:15?いいよ」

 

なぎは気付かずに戻っていった。

 



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第17話 当日

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
月島かりな
白雪凪沙
ナナニジ11名
事務所スタッフ150名
以上165名


 9:15に合わせて、続々と人がやってきた。結構多くなる予定だ。俺はなぎにすぐ別れを告げ、ピアノの運搬を手伝った。

 

「ステージの装飾どうしますか?」

 

事務所のスタッフにも手伝ってもらっている。

 

「かりなが魔法でどうにかしてくれる。今はピアノ運んじゃおう」

「はい」

 

ピアノをゆっくりと運ぶ。その脇では、音響担当の人がスピーカーのチェックをしていたり、ステージ強度担当が骨組みの確認、セッティング担当がマイクスタンド、マイクの設置、俺と一緒にピアノの運搬、リーダーが仕切っている。リーダーは胡桃だ。

 

「ピアノは、ステージの脇の方でいい」

「はい。この辺ですか」

「えっと……胡桃!これでいいか!」

「うん!オッケー!」

 

俺は連携を取りながら設置していく。調律は前々日に終了済みだが、一応。

 

ドレミファソラシド♪

 

大丈夫っぽいな。

俺はステージ装飾のかりなを見に行った。

 

「ありがとうとかって書いてあるよ」

「おう、サンキュ」

 

俺はマイクスタンドを最初の人が歌う位置にセットした。最初は俺と蒼のフラジールだから、その身長に合わせる。

 

「胡桃ってステージ上るか?開会式の時」

「上らない。下で待機だよ」

「あれ、待機だっけ。じゃあ誰も上んないよな」

「うん」

 

俺は胡桃に聞き終わると、なぎのところに行った。

 

「な、なに、この大勢の人」

「9:30になれば分かるさ」

 

 

 俺は9:30になると、大声で伝えた。もう防護フィールドや⁉️防音フィールドは俺が張った。

 

「時間だ!全員戻れ」

 

はじめの言葉担当の俺がステージに上る。さっきセットしたマイクで話す。

 

《これから、白雪凪沙お別れ会を始めます。なぎは、今日の午後7時半、この家から卒業します。その前に、みんなで、楽しく!送りましょう!》

 

俺はこれだけ言うと、なぎの隣に戻った。

なぎの近くのいくつもあるテーブルには白いテーブルクロスがかけられ、バイキング形式で食事が並んでいる。

 

《というわけで、5分後、最初の歌が始まります。凪沙ちゃんは食事取ってていいよ!みんなもいくらでも食べてね!いくらでもあるから!》

 

仮想世界の無限食料庫を貸しきっただけだけどな。24時間無限に入ってくる。同じ品だ。来る場所は仮想世界の俺の家に繋がるプライベート転移装置の横。防護フィールドによって他からは取られない。

ただ、今日の手伝い役である、事務所のスタッフが毎回なくなると持ってくる。

 

「さて、なぎ。次俺歌うから、聴いてて」

「うん。頑張って」

 

俺はステージの横に立った。蒼はもう隣にいた。

 

「行くか」

「おう」

 

俺と蒼はフラジールを歌うため、ステージに上った。

 

くしゃくしゃになった診察券を持って簡単な想像に日々を使っている

単調な風景にふと眠くなって回送列車に揺られ動いている

看板の照明が後ろめたくなって目を落とした先で笑っていた

通りを抜けて路地裏の方で屈託(くったく)もなく笑っていた

 

映画の上映はとうに終わっている 叱責(しっせき)の記憶がやけに響くから

できれば遠くに行かないでくれ 出来るなら痛くしないで

 

構わないでないで 離れていて

軋轢(あつれき)にきゅっと目をつむって

報わないでないで 話をして

窓越しにじっと目を合わせて

 

退廃に暮れた劇場の角で眠らなかったはずが眠っている

アラベスクには触れなかったんだ 火がついたように街が光った

 

無頓着なあの子が傘を差したら それで救われるくらい単純でしょ

左手の指輪 右手に隠して 戸惑ってるふうにしてた

 

捜さないで いつの間にか

消えたことに気づく距離ならば

許さないで 最初だけは

悲しくもないはずにしたくて

 

構わないで 離れていて

軋轢にきゅっと目をつむって

報わないで 話をして

窓越しにじっと目を合わせて

眠らないで 言葉にして

照らした光に目を細めて

笑わないで 君に咲いた執着よ、僕を飲み込んでくれ

 

5分くらい歌ったかな。次は胡桃たちが歌う曲だったかな。「メランコリック」だったはずだ。

俺はそんなことを考えながらなぎの横に戻った。なぎは小さく拍手して、笑っていた。

 

「どうだった」

「すごい!上手だった!」

 

俺はなぎの隣に座った。次は「メランコリック」だ。それが終わると「恋愛裁判」、その次は俺のソロ、「Lemon」だ。その後は一人ずつソロを歌っていく。

 

「なぎ、自由に取ってきていいんだぞ」

「うん。あの、柊くんが一人暮らしした時って、どんな生活だった?」

 

一人暮らし始めるから不安な気持ちがあったんだろう。

 

「なぎは料理作れるから俺とは違うだろうけど、共通する点でいえば、あんまり人に会ってないと、精神がボロボロになっていく」

 

俺だってそうだった。1人でいると、コミュニケーションが取りづらくなり、会いたくなくなる。

 

「どういう風に?」

「会いたくなくなるっていう感じだな」

 

俺はなぎに険しい目をして言った。

 

「……」

「……そう黙るなよ、俺が会いに行くからさ」

「……」

 

なぎは俺を強く抱き締めた。なぎは俺の胸で泣く。

 

「柊くん……」

「大丈夫だから」

 

そうだ、歌う曲変えよう。ソロ曲は変えても俺にしか影響はない。あの曲に変えよう。

 




さて、何ていう曲になるんでしょう?ヒントはRADWIMPSの曲ですね。本編中に曲名が載ってますよ!最後の方に。
それでは!正解発表は次回の本編で!


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第18話 お別れ会

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
立川絢梨
以上4名


 歌うことにしたのはRADWIMPSの「大丈夫」だ。曲名しか当てはまらないが、この次に励ます曲を歌う人がいる。まぁ、絢梨なんだけど。

 

「じゃあ、聞いてくれ。大丈夫」

 

この曲の伴奏は胡桃が担当する。一部を除いて、スピーカーからの伴奏が流れる。

胡桃は俺の合図に合わせて弾き始める。

 

 時の進む力は あまりに強くて

足もつかぬ水底 必死に「今」を掻く

 

足掻けど未来は空っぽで いつも人生は

費用対効果散々で 採算度外視、毎日

 

僕はただ 流れる空に横たわり

水の中 愚痴と気泡を吐いていた だけど

 

世界が君の小さな肩に 乗っているのが

僕にだけは見えて 泣き出しそうでいると

 

「大丈夫?」ってさぁ

君が気付いてさ 聞くから

「大丈夫だよ」って 僕は慌てて言うけど

 

なんでそんなことを 言うんだよ

崩れそうなのは 君なのに

 

 安い夢に遊ばれ こんなとこに来た

この命の無目的さに 腹を立てるけど

 

君がいると 何も言えない 僕がいた

君がいれば 何でもやれる 僕がいた

 

世界が君の小さな肩に 乗っているのが

僕にだけは見えて かける言葉を捜したよ

 

頼りないのは 重々知っているけど

僕の肩でよかったら 好きに使っていいから

 

なんて言うと 君はマセた

笑顔でこの頭を 撫でるんだ

 

 取るに足らない 小さな僕の

有り余る今の 大きな夢は

君の「大丈夫」になりたい

「大丈夫」になりたい

君を大丈夫にしたいんじゃない

君にとっての 「大丈夫」になりたい

 

世界が君の小さな肩に 乗っているのが

僕にだけは見えて 泣き出しそうでいると

 

「大丈夫?」ってさぁ

君が気付いてさ 聞くから

「大丈夫だよ」って 僕は笑って言うんだよ

 

何が僕らに降りかかろうとも

きっと僕らは 大丈夫だよと

僕は今日から君の 「大丈夫」だから

 

 

 大丈夫が終わると、次は絢梨が歌う曲。俺は絢梨に耳打ちした。

 

「前置きは俺がしておく。合図送ったら始めろ」

 

絢梨はうなずくだけだった。俺はなぎの横へ。

 

「なぎ、1人暮らしでネガティブにならないか」

「分かんな──いや、なる」

 

なぎは何かにつっかかったのように言った。

 

「私、1人が苦手だった。留守番でも……ダメだった……」

「あぁ、それでもいい。まず、あの曲を聞いてくれ」

 

俺は絢梨に合図を送った。今回の伴奏は、続けて胡桃がする。しかし、俺との連弾だ。2番に入ってから俺が入る。そして、3番だけ連弾だ。

 

        月島胡桃伴奏

 

 窓の外はモノクロの世界

変わりのない日々は退屈

生きる事がわずかに重たい

飛び降りたら 軽くなるかな

 

心の天気予報 アシタ晴天デスカ?

瞳に映る毎日(けしき)

また、どうせ、同じでしょ

 

果てしない道のどこかに

落ちてるかな 探しモノ

明日になればきっと見つかるから

今、目を覚まして

 

        月島柊伴奏    

 

 僕に何があるの? 問いかけて

白いページだけがありました

多分それは

自分の絵具で

描くための

最初のページ

 

見上げた青い空が 鮮やかに映った

できればこんな風に

色 染めてみたいから

 

果てしない空の向こうに

待ってるかな 探しモノ

昨日より少しだけ前を向き

今、手を伸ばして

 

      月島柊・月島胡桃連弾

 

人間がここに生まれてきた意味なんて、無いよ

だからみんな見つけ出すんだ

 "生きる理由" を……

 

果てしない道のどこかに

落ちてるかな 探しモノ

明日になればきっと見つかるから

今、目を覚まして

 

果てしない空の向こうに

待ってるかな 探しモノ

昨日より少しだけ前を向き

今、手を伸ばして

 

さぁ、今、手を伸ばして

 

俺と胡桃も少し歌っていた。ピアノ弾いてるだけじゃないし。

 

「じゃあ、次スピーカーよろしくね」

「オッケー。なんだっけ」

「天ノ弱だよ」

 

 僕がずっと前から

思ってる事を話そうか

友達に戻れたら

これ以上はもう望まないさ

君がそれでいいなら

僕だってそれで構わないさ

嘘つきの僕が吐いた

はんたいことばの愛のうた

 

今日はこっちの地方は

どしゃぶりの晴天でした

昨日もずっと暇で

一日満喫してました

別に君のことなんて

考えてなんかいないさ

いやでもちょっと本当は

考えてたかもなんて

 

メリーゴーランドみたいに回る

僕の頭ん中はもう

グルグルさ

 

この両手から零れそうなほど

君に貰った愛はどこに捨てよう?

限りのある消耗品なんて

僕は 要らないよ

 

僕がずっと前から

思ってる事を話そうか

姿は見えないのに

言葉だけ見えちゃってるんだ

僕が知らないことが

あるだけで気が狂いそうだ

ぶら下がった感情が

綺麗なのか汚いのか

 

僕にはまだわからず

捨てる宛てもないんだ

言葉の裏の裏が見えるまで待つからさ

待つくらいならいいじゃないか

 

進む君と止まった僕の

縮まらない隙を何で埋めよう?

まだ素直に言葉に出来ない僕は

天性の弱虫さ

 

この両手から零れそうなほど

君に渡す愛を誰に譲ろう?

そんなんどこにも

宛てがあるわけないだろ

まだ待つよ

もういいかい

 

 

 なぎは気付くとステージの目の前にいた。俺は腰を下ろして、なぎに近寄る。

 

「なぎ、近いぞ」

「……あ、ごめんっ!」

 

気付いてなかったのか。夢中になるのもいいけど……

 

「いいよ。ほら、戻るぞ」

 

俺はなぎと一緒に元の位置に戻った。次はあーやのソロだ。あのナナニジで歌ってた曲だ。

 

 




立川絢梨パート
月島柊パート
月島柊、月島胡桃パート


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第19話 2日目

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
戸田蒼真
上杉龍夜
立川絢香
以上6名


 Moonlight

 

 そう誰にも 見せていない

私の顔が あるのよ

おとなしそうな 性格だと

思ってくれてるなら 期待ハズレかも…

 

Moonlight

窓に射す光のせいで

Moonlight

今夜はちょっと違うかもね

 

 風に(なび)く 無粋(ぶすい)な雲が

空の景色を 邪魔する

甘い言葉 並べたって

そんな簡単には 優しくしてあげない

Don't touch!

 

Blue Moon

わざと冷たくしているのは

Blue Moon

あなたの気を惹きたいだけよ

 

 他の星が (まぶ)しくても

美しいのは どこの誰?

天邪鬼って 言われて来た

生まれてからずっと 素直じゃないのよ

 

Moonlight

そうよ 自信はあるけれど

Moonlight

ホントの願いは一つでしょう?

 

 あなたに この気持ちをそう

伝えようとしたけど まるで全然

私のこと 興味がない

You're the moon

 

Moonlight

窓に射す光のせいで

Moonlight

今夜はちょっと違うかもね

 

Full Moon

今は こんなに大きくても

Full Moon

そのうち 欠けてしまうのが愛

 

 

 色っぽい声で全体を歌っていた。あーやだったらそうだと思った。

 

『あわわ……』

 

なぎと胡桃は色っぽい声と色っぽい振る舞いにあたふたしていた。

 

「あれぇ、胡桃、なぎ、ドキドキしてる?」

 

あーやが誘惑するように言った。俺は誘惑を阻止した。

 

「あーや、やめろ」

「はーい」

 

胡桃となぎは未だに口を開けていた。俺は胡桃となぎを慰めながら、次の曲の指示をした。

 

「蒼真、先に行ってろ」

「分かった。歌うのは待機か」

「そうだな。また指示を送る」

 

俺は胡桃となぎの頭を撫でていた。胡桃は「色気……」と呟き、なぎは「大丈夫なのかな……色気なくて……」と不安そうに呟いた。

 

「あーやが歌うだけでこんなんになるとは……」

「色気……ない……」

 

胡桃がテーブルを指でなぞりながら言う。もう元気失ってるし。けど、進めないと時間がなくなる。

 

「蒼真、始めてくれ。龍夜と一緒に」

「おう。龍夜、来い」

「はいよ」

 

俺は胡桃を慰める。

 

「色気……あるから。大丈夫」

「どういうとこ!」

 

げ、そう来たか……色気を思うとき、ぶっちゃけ言うと無いからなぁ。

 

「えっと……」

「ないじゃん」

「それでも!胡桃は、あーやと違ういいところあるから!」

「じゃあどこ」

 

それだったら……

 

「髪が長いし、俺の事ハグしてくれるし、あと、一緒にいてくれるだろ?どんなときでも」

「言われてみれば……」

 

俺はなぎにも言った。

 

「なぎだって、俺に優しくしてくれるから。それだけで十分だ」

「柊くん……」

 

2人は俺の前後を挟むように包み込んだ。そして、2人同時に言った。

 

『柊くん、大好き!』

 

俺は思わず笑顔を浮かべる。色気がなくても、これがあるから最高だ。

 

「胡桃、連弾お願いできるかな」

「うんっ!任せて!」

 

 何度失ったって 取り返して見せるよ

雨上がり虹がかかった

空みたいな君の笑みを

例えばその代償に 誰かの表情を

曇らせてしまったっていい

悪者は僕だけでいい

 

本当はいつでも 誰もと 思いやり合っていたい

でもそんな悠長な理想論は

ここで捨てなくちゃな

 

遥か先で 君へ

狙いを定めた恐怖を

どれだけ僕は払い切れるんだろう

半信半疑で 世間体

気にしてばっかのイエスタデイ

ポケットの中で怯えた

この手はまだ忘れられないまま

 

 何度傷ついたって

仕方ないよと言って

うつむいて君が溢した

儚くなまぬるい涙

ただの一粒だって

僕を不甲斐なさで溺れさせて

理性を奪うには十分過ぎた

 

街のクラクションもサイレンも

届きやしないほど

 

遥か先へ 進め

身勝手すぎる恋だと

世界が後ろから指差しても

振り向かず進め 必死で 君の元へ急ぐよ

道の途中で聞こえたSOSさえ

気づかないふりで

 

 バイバイイエスタデイ ごめんね

名残惜しいけど行くよ

いつかの憧れと違う僕でも

ただ1人だけ 君だけ

守るための強さを

何よりも望んでいた

この手に今

 

遥か先へ進め 幼すぎる恋だと

世界が後ろから指差しても

迷わずに進め 進め

2人だけの宇宙へと

ポケットの中で震えたこの手で今

君を連れ出して

 

         裏ボーカル

 未来の僕は知らない

だから視線は止まらない

謎めいた表現技法

意味深な君の気性

        裏ボーカル終了

 

アイラブユーさえ 風に

飛ばされそうな時でも

不器用ながら繋いだ

この手はもう 決して離さずに

虹の先へ

 

大体裏ボーカル担当で入る。胡桃にも協力してもらったが、連弾は片手だけを使って、2人でやっていた。

 

「次はナナニジか。ピアノ俺だから、胡桃はなぎのところに行ってて」

「オッケー。柊くん、頑張って」

 

胡桃が戻ると同時に、11人はステージに上がった。曲は「何もしてあげられない」だ。




月島柊パート
月島胡桃パート
立川絢香パート
立川絢梨パート
戸田蒼真パート
上杉龍夜パート
戸田蒼真、上杉龍夜パート
月島柊、月島胡桃パート


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第20話 告白

これで通算190話目です!もう思ったよりやってますね。第一章第1話が、2020年6月16日なので、約9ヶ月続いてます。
1年目指して頑張ろう!と思ってます。
さて、「いつまで続くんだ!」と言われそうですが、今回もお別れ会です。朝早いので投稿してすぐ見る人はあまりいないでしょうけど。
ですが、あと5話以上続くと思います、お別れ会。気長に待っていてください。

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
ミナト
上杉龍夜
戸田蒼真
ナナニジ11名
以上17名


 一枚の枝の葉が 吹き抜ける 風に揺れ

ひらひらと宙を舞い 舗道へと落ちて行く

そう僕は偶然にその場所に居合わせて

知らぬ間に罪もない他人(ひと)のこと踏んでいる

誰かの嘆きや痛みに

耳を傾けることなく

傲慢(ごうまん)に生きて来て

ごめんなさい

 

何もしてあげられなくて

遠巻きに見るしかなくて

涙どれだけ流しても()(にん)(ごと)だろう

僕が生きてるその意味を

ずっと考えてみたけど

ただ一つ願ってた君のことさえ守れなかった

 

 人混みを避けながら 今までは歩いてた

ぶつかってしまったら 悪いって思ってた

でもそれは 本当のやさしさと違うんだ

気づかずに傷つけることだってあったはず

 

意識してるかしてないか

人間(ひと)は迷惑かけるもの

友達は欲しくない

いけませんか?

 

何も望んでなどいない 愛なんて面倒だった

だってきっと愛されたら愛すべきだろう

僕が拒否してた世界 ドアを頑なに閉めてた

そう助け求めてた君を孤独に突き放したまま

 

 残酷なアスファルトに

消えた君のその叫び

どこかから聴こえるよ

踏んでしまった運命よ

 

ちゃんと目を見ていたら

気づいてあげられた

誰かの悲しみを

置いていけない

 

何もしてあげられなくて

遠巻きに見るしかなくて

涙どれだけ流しても他人事だろう

僕が生きてるその意味を ずっと考えてみたけど

ただ一つ願ってた君のことさえ守れなかった

 

 

 あーやも歌い方がセクシーじゃなくなった。なぎと胡桃もほっとしている。

 

「次は小休憩挟むから、何か持ってきて──」

 

なぎと胡桃の前にはポテトや唐揚げが山盛りに積まれていた。高さ……大体、ポテトが10cm、唐揚げが30cm。たけぇ。

 

「多くね?」

「こんなもんでしょ。柊くんも食べよ?」

「まぁ食うけどさ」

 

俺はポテトを2本食べる。全く減らないし。

 

「次は……」

 

順番結構変わったからなんだろう。多分俺はしばらくないな。

 

「俺はなぎと一緒にいるよ。しばらくないし」

「じゃあ、唐揚げ追加っ!」

 

なぎは唐揚げを慎重かつ大胆に乗せていく。

 

「多いだろ、いくらなんでも」

「いいの!1m超える!」

『高いわ!』

 

胡桃の声と俺の声がハモった。

 

「1mは高いだろ……」

「食べるもん!」

「体重は」

「50しかないもん!」

 

なぎの身長って170超えてるよな?軽くね?

 

「ちょっと持ち上げるぞ」

 

俺はなぎを持ち上げる。やっぱり軽い。片手でいけそう。

 

「これは食った方がいいな」

「でしょ!体重65目指す!」

 

増やすのに努力してる人初めて見た……

 

「頑張れ~」

 

胡桃が応援する。しちゃダメな気もするけど。

 

「まぁ、がんばれ」

 

俺は次の予定を見た。次は龍夜とつぼみか。だったら、無理やり繋げちゃうか。

 

「龍夜、準備しろ」

「あぁ。というか、ニアって、つぼみと一緒に歌う必要あるか?」

 

恋愛っぽかったから。なんて言ったら雰囲気ぶち壊し。そんなことは言わない。

 

「仲良いだろ」

「そんな理由かよ……」

 

そう言いながらも、龍夜はステージに上がっていった。つぼみは元からステージの上に残ってたし。

 

「次なんて曲?」

「ニア」

「にゃ?」

 

なんでそう聞き間違いしたんだよ。

 

「ニ、ア」

「ニア?」

 

なぎは猫化してないのにずっと……

 

「にゃんにゃ~ん、にゃんにゃん♪」

 

と言っている。俺はなぎの頬を両手で引っ張る。

 

「ふぎっ」

「な~ぎ~?」

「ご、ごめんなひゃい、もうひまひぇん……っ!」

 

なぎは猫の真似をやめた。そして、ニアが始まる。

 

 

 

 

 ねえニア 誰かを笑い飛ばさなきゃ

自分を許せないような

くだらない人間のこと キミはどう思う?

 

ねえニア 他人の歩幅を眺めて

意味もなく駆け足になる

つまらない人間のこと キミはどう思う?

ねぇニア

 

 Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

 

 ねえニア 笑顔で過ごす日々を

当たり前と思うような

傲慢な人間のこと キミはどう思う?

 

「カタチのないフタシカナモノはいつだって

ケイサンをクルワセテしまうの」

 

だけど

 

ああ 僕はまだ 信じてる

ココロないキミに問いかけたのは

キミの手が僕よりも

あたたかかったからさ

 

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

 

 ねえニア 子供のころに見てた

あの夢の続きがこんな

未来につながってたこと キミはどう思う?

 

I am always by your side NEAR

 

ああ 僕はまた 勘違い?

明日のない暗いこの宇宙(そら)の下

キミの手が僕よりも

ふるえていた気がした

 

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

Hello Hello I'm NEAR Who Are You

 

ねえニア 誰かを笑い飛ばさなきゃ

自分を許せないような

くだらない僕たちのこと

キミはどう思う?

 

ああ 僕はまだ 期待してる

ボロボロでもう見る影もないけれど

キミが居るこの地球(ほし)

忘れたくはないんだよ

 

ああ 僕はまだ 信じてる

ネムラナイキミに問いかけたのは

 

キミの手が僕よりも

あたたかかったからさ

 

あたたかかったからさ

 

Hello Hello I'm NEAR I love you

Hello Hello I'm NEAR I love you

Hello Hello I'm NEAR I love you

Hello Hello I'm NEAR I love you

 

 

 そして、龍夜はつぼみに言った。

 

「つぼみ!好きだ!付き合ってくれ!」

 

手を前に出し、頭を下げる。つぼみは出された手を、音が鳴るほど強く掴む。

 

「うん!もういっそ結婚しちゃお!」

 

意外と軽い。メンバーからは、「付き合ってたんじゃないの」と声が聞こえる。

 

「良かったな、龍夜」

「おう」

 

俺はつぼみを降ろし、やっと到着したミナト、蒼真と一緒にステージの上に上がる。ミナトの本名は、

竜野(たつの)湊翔(みなと)らしい。これから湊翔と呼ぶことにした。




佐藤麗華パート
神木みかみパート
柊つぼみパート
河野都パート
東条悠希パート
滝川みうパート
戸田ジュンパート
藤間桜パート
斎藤ニコルパート
立川絢香パート
丸山あかねパート
ナナニジ全員パート
上杉龍夜パート
上杉龍夜、柊つぼみパート


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第21話 お別れ会

今回の登場人物
月島柊
月島胡桃
白雪凪沙
戸田蒼真
上杉龍夜
竜野湊翔
影山蒼
影山有希


 12時を少し過ぎる頃

(Oh No!)

残酷なMonster

月明かり草木眠る頃

(Oh No!)

甦る(よみがえ)

 

君の叫びで 僕は目覚める

今宵の闇へ 君をいざなう

Monster

 

凍りつく夜が創り出す

(We are)

君の後ろ Who?

気付いたときはもう閉じ込める

(Monster)

逃げ場は無い

 

(Just One)

君の手を

(Two)

愛の手を

(Three, Four & Five)

抱いて眠りたい

あなたがいたから生まれてきたんだ

()が明けるまで近くにいよう

 

僕の記憶が全て消えても

生まれ変わったら また君を探す

見かけじゃなくて 心を抱いて

満月の夜 君を見つけた

Monster

 

 ドアの無い部屋に迷い込む

(No way)

誰か見てる Who?

足音がじょじょに近くなる

(Runaway)

でも動けない

 

(Just One)

このスリル

(Two)

止められない

(Three, Four & Five)

怖がらせたい

だけど本当は君が好きなんだ

朝が見えるまでとなりにいよう

 

一万年の愛を叫ぼう

生まれ変わっても また君を探す

Monster……

 

12時を少し過ぎる頃……

月明かり草木眠る頃……

 

君の涙で 僕は目覚める

今宵の闇へ 君を連れ出す

 

僕の記憶が全て消えても

生まれ変わったら また君を探す

見かけじゃなくて 心を抱いて

満月の夜 君を見つけた

Monster

 

Monster

Monster

 

 

 ダンスをしながら歌う。初めての経験だったが、結構うまくいった。

 

「龍夜、おめでとう」

「あぁ、ありがと」

 

龍夜はステージから降りた。もう次はメランコリックだ。俺もステージから降りる。

 

「柊くん、かっこよかったよ」

「サンキュ。胡桃も頑張れよ」

 

胡桃と有希がステージに上る。そして、歌い始めた。

 

全然つかめないきみのこと

全然しらないうちに

ココロ奪われるなんてこと

あるはずないでしょ

 

それは無愛想な笑顔だったり

それは日曜日の日暮れだったり

それはテスト(ばっか)の期間だったり

それはきみとゆう名のメランコリンニスト。

 

手当たり次第強気でぶつかっても

なんにも手には残らないって思い込んでる

ちょっとぐらいの勇気にだって

ちっちゃくなって塞ぎこんでる

わたしだから

 

全然つかめないきみのこと

全然しらないうちに

ココロ奪われるなんてこと

あるはずないでしょ

 

全然気づかないきみなんて

全然知らない×知らないもん

「ねぇねぇ」じゃないわ この笑顔

また眠れないでしょ

 

明日も おんなじ わたしが いるのかな

無愛想で無口なままの カワいくないヤツ

 

あの夢にきみが出てきたときから

じゃないの だって

 

全然つかめないきみのこと

全然しらないうちに

こころ奪おうとしてたのは

わたしのほうだもん×××

 

そういう時期なの

おぼれたいのいとしの

メランコリー

 

 結構合っているだろう。成功した後だし。胡桃もかわいくて、アイドルと見間違えるくらいだった。

 

「胡桃、アイドルみたいだった」

「わぁっ、嬉しい!」

 

有希は1人とぼとぼ歩いていく。俺は肩を触る。

 

「ぽんぴゃぁっ!?」

「な、なんだその声……」

「ビックリしたから……」

 

俺は有希から手を離して言った。そうじゃないと、蒼に怒られる。

 

「君ら、結構息ぴったりじゃないか」

『そうかな?』

 

ハモってる。俺と胡桃くらいじゃないか。

 

「あ、蒼くんが呼んでる」

「え?声しないけど……」

 

なぎが言う。確かにそうだ。蒼の声なんて聞こえなかった。

 

「呼んでるのっ!じゃあね!」

 

有希は蒼のところに行った。場所わかってるし、ホントに蒼が呼んでたっぽい。

 

「テレパシー?」

「何だろうな。分からん」

 

なぎと俺は一緒に首をかしげる。胡桃はそんな俺たちを見て笑った。

 

「面白~いっ!」

『何が!』

 

たまたま被った。俺となぎは顔を見合わせて言った。

 

「なぎ、気が合うな」

「うん!」

 

俺は唐揚げをひとつ食べた。

 

「うん?あれ、次って──」

「んあ?」

 

俺は次の曲を思い出した。あれ、そういえば、次って恋愛裁判だよな?ってことは……

 

「うがっ!げほっ」

 

俺は喉をつまらせた。

 

「俺ピアノ担当じゃねぇか!」

「焦ってる柊くん始めてみたぁ」

 

なぎが小さく拍手する。

 

「行かねぇと!」

 

俺は急いでピアノのところに行った。

 




戸田蒼真パート
月島柊パート
影山蒼パート
上杉龍夜パート
竜野湊翔パート
戸田蒼真、月島柊、上杉龍夜、竜野湊翔パート
戸田蒼真、影山蒼、上杉龍夜、竜野湊翔パート
戸田蒼真、月島柊、影山蒼、上杉龍夜パート
月島柊、影山蒼、上杉龍夜、竜野湊翔パート
戸田蒼真、月島柊、影山蒼、竜野湊翔パート
戸田蒼真、月島柊、影山蒼、上杉龍夜、    竜野湊翔パート
月島胡桃パート
影山有希パート
月島胡桃、影山有希パート


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