異世界から時の魔王も来たようですよ? (じおー)
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プロローグ

 

 

「ーーー今ボクたちの間ではさ、何故かは知らないけど既存のアニメや漫画の世界に別世界の人を転生させてそれを眺めるって『遊び』が流行ってるみたいなんだよね〜。 だからボクも暇つぶしを兼ねてその流行りに乗ろうと思ったわけなんだよ、うん」

 

「……暇つぶしなのか」

 

「暇つぶしだね」

 

 

何もない真っ白な空間に、迷彩服姿の青年と黒いワンピースの少女の声だけが響く。

 

 

「自称神の暇潰しに使われるとか、ロクなことにならない気しかしないけど……まあ、良っか。どうせ、特に夢も希望も目標もなく惰性で生きる毎日だったし」

 

「本当かい? いやーそれは良かった良かった……とか言いつつもまぁ、断っても無理やり転生させるつもりだったんだけどねー」

 

 

ケラケラと笑うそんな少女の言葉を聞き、青年は疲れたように溜息をついた。

 

 

「はぁー……それで? 俺はいったいどんな世界に転生させられるんだ?」

 

「あぁ、それは今からくじ引きで決めるからちょっと待ってね。 …………ふむ。 えーっと厳正なるくじ引きの結果、キミの転生先は『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』の世界に決まりました! やったね!」

 

「『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』、ねぇ?…うん、知らね」

 

 

少女から告げられた自分の行き先を聞いた青年だったが、どうやら心当たりがないのかうーんと首を傾げる。

 

 

「はは。まぁ一応アニメ化とかもされた作品だけど一期しかやってないし、そこまでメジャーな作品じゃかいからねー。キミが知らないのも無理ないかもね。……大まかなあらすじの説明とかいるかい?」

 

「うんにゃ、イラネ。異世界モノなんて大抵どれも似た様なもんだろうしそれに、そう言いつつもどうせ教えてくれないパターンなんだろ?」

 

「ハハッ!その通りさ!知識がない方が観る側としては面白いからね!」

 

「はいはい、全く良い性格をしていらっしゃることで」

 

 

ケラケラと笑う少女の姿を見て、青年は再び溜息をついた。

 

 

「ははは……さて、それじゃあそろそろ、キミに与える『特典』を決めようかな?」

 

「『特典』か。まあお約束だな」

 

「まぁ、今からキミが行く世界風に言えば『恩恵(ギフト)』なんだけどね。説明とか要らないよね?まあ、するつもりもないけど!」

 

「はいはい、それで?その特典は俺が決めたり出来るのか?」

 

「いいや、それはもう決めてあるよ。君に与える〝恩恵(ギフト)〟は……コレさ♫」

 

「っ!?」

 

 

少女が言い終わると同時、青年の真上から黄金の光の柱が差し込んだ。少しして光の柱が消えると先程までの青年の姿はどこにもなく、代わりに青年の面影を持つ少年が立っていた。

 

 

「あ、言い忘れてたけど、〝恩恵(ギフト)〟を与えるついでに少し身体を若返らせるから。まぁ、君あんまし身長とか変わってなかったみたいだし別に問題無いからいいよね!」

 

「そんな事よりお前、これから行く世界がどんな世界かは知らないけど正気か?『仮面ライダージオウ』が特典、〝恩恵(ギフト)とか?」

 

「さっすが男の子、やっぱり仮面ライダーは知ってたね。心配しなくても大丈夫さ。だって、そのくらいの力がないと多分直ぐ死んじゃうからね」

 

「直ぐ死ぬってお前、それはどういう「それじゃあバイバーイ♫」おわっ!?」

 

 

少年となった元青年の言葉を遮った少女が指を鳴らした瞬間、突如足下に現れた大きな穴の中に少年が落ちる。少年が落ちて少しして穴は塞がり、真っ白な空間には黒いワンピースの少女1人だけが残った。

 

 

「ははっ、君には期待してるよ暮合(くれあい)零明(れいめい)。その力を使って僕を存分に楽しませてくれたまえへ」

 

 

 

 



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第1章【NO!? ウサギは呼んでません!?】
大蛇と魔王と金髪と


「ーーーこの本によれば、ごく普通の青年・暮合(くれあい)零明(れいめい)。彼にはごく普通に暮らし、ごく普通の家庭を持ち、ごく普通に生涯を終える未来を辿る筈()()()。だが彼は自称『神』を名乗る謎の存在の気まぐれでライトノベル、『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』の物語の舞台となる世界、〝箱庭〟へと旅立つ事となる。自称『神』を名乗る謎の存在から授けられた〝恩恵(ギフト)〟、〝ジオウ〟を手にした彼は異世界へと旅立って早々、『トリトニスの大滝』の近辺に住む水神の眷属である蛇神と戦い勝利するわ……おっと、先まで読みすぎました」


 

「---ぅ…うん……」

 

 

目を開けると、澄み切った青空と生い茂った木が見える。顔だけ動かして周りを見る。どうやら、どこか森みたいな所で寝っ転がっているみたいだ。

 

 

「……あー、やっぱりさっきの夢じゃなかったのな」

 

 

今自分がおかれているこの状況と身体の中にこの『力』を感じる事から、どうやら俺は本当に異世界に来てしまったようだ。

 

 

「色々考える事は多いけど、とりあえず先ずは起き上がるか」

 

 

地面から起き上がって身体全体を軽く伸ばしたりしてみる。とりあえずどこも痛めてないっぽい。

 

 

「……さて。確か森で迷った時は川を探して川沿いに歩けばいいんだっけな?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーー

 

ーーーー

 

 

『…………』

 

「……うそん」

 

 

川を探して森を彷徨う事約1時間後、俺は馬鹿でかい大蛇に睨まれていた。

ことの始まりはそう、なんとか川を見つけた俺は川の水で喉を潤した後、童心に帰って休憩がてら水切りを始めた。すると、投げた石の1つがどうやら川辺で寝ていたこの蛇に当たったらしく現在に至るわけだ。

 

 

『……答えよ人間、如何なる理由があってこの私に石を投げつけた?』

 

「うぉっ!?へ、蛇が喋った!?」

 

『ふん。()()()()()であり()()・この私が人間の言葉を介する事など造作もない。……今一度訊くぞ人間。何故私に石を投げつけた?』

 

 

『水神の眷属』に『蛇神』。どうやらこの世界には元いた世界と違い()()()()()()()がまだ存在する世界のようだ。

 

 

「えーと、すいません。この川で水切りをしていたんですけど、偶々その内の1つがあなたに当たってしまったみたいです」

 

『……ほう?故意ではなく、偶然とな?』

 

「あ、はい」

 

『……わかった。人間、お前の言葉を信じよう』

 

「っほ。ありがとうござ『だが』?」

 

『強力なギフトを持つ多くの幻獣が住むここに、たった1人で来るようなお前には少し興味がある。人間、お前の〝力〟を試させてもらうぞ!』

 

「おわっ?!」

 

 

そう言い終わるや否、俺に勢い良く向かってくる蛇神の突進を転がって慌てて避ける。川辺で下が小石ばかりだから普通に痛い。

 

 

「〜〜〜ッ!異世界最初に戦うのが蛇神とか冗談じゃねー!」

 

『ジクウドライバー』

 

『ジ・オウ』

 

「……変身ッ!」

 

『ライダータイム!カメーンライダージ・オウ!』

 

 

自称神に貰った特典で『ジクウドライバー』と『ジオウ』の『ライダーウォッチ』を具現化し、『仮面ライダージオウ』に変身する。この特典を貰った時に変身出来るとは解っていたけど、やっぱり憧れの『仮面ライダー』に変身出来たのはめちゃくちゃ嬉しかった。

 

 

『姿が変わった? それがお前のギフトか』

 

「あぁ。当然、ただ見た目が変わっただけじゃないぞ?」

 

『ジカンギレード!ジュウ!』

 

「はぁッ!」

 

『っく!』

 

 

ジカンギレードをジュウモードにし、蛇神に向かって引き金を引く。身体が大きい分狙いは簡単だ。

 

 

『ふんッ!』

 

「っふ!」

 

 

銃撃を受けながらも尻尾で攻撃してくる蛇神の一撃を躱しながら銃撃を続ける。巨体な分、そこまで大きなダメージは与えられないようだ。

 

 

「これならどうだ?!」

 

『タイムチャージ! 5…4…3…2…1…ゼロタイム!!スレスレ撃ち!!』

 

 

ドドドドドドッ!

 

 

『ぐぁあっ!?』

 

 

ジュウモードの必殺技、『スレスレ撃ち』をまともに受けた蛇神が川の中に勢い良く倒れこむ。ライドウォッチなしでもかなりの威力だ。

 

 

『中々やるではないか人間!次は我が一撃、受けてみるがいい!!』

 

 

直ぐに川から起き上がった蛇神の雄叫びに応えるように、川の水が竜巻の様に巻き上がり3本の水柱となって蛇神の周りに現れた。川の水がかなり減ってるし、かなりの水量だ。

 

 

「いやいや、そんなの普通に受けたら死ぬから!」

 

『フォーゼ』

 

『カメーンライダー!ジ・オウ!アーマーターイム!3・2・1フォーゼ!』

 

 

ジオウのままでは少し心配だった為、ビルくらいの隕石も余裕で貫通する『仮面ライダージオウ・フォーゼアーマー』に変身する。貫通力特化のこれならあの水量相手でもいける筈だ。

 

「宇宙に…行くーっ!かーらーの〜」

 

『フィニッシュタイム!フォーゼ!』

 

『リミットターイムブレイク!』

 

「ロケットきりもみキーック!!」

 

『なッ?!ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 

1本にまとまった巨大な水柱と一緒にそのまま蛇神の巨体を貫く……と危ないので直ぐ真横を通り抜ける。余波で川に叩けつけられてるけど多分大丈夫だろう。

 

 

「ふぃー」

 

『……み、見事だ人間。私の一撃を防ぐどころか、それ以上のものを見せてもらった。あのまま受けていたら、正直危なかった』

 

 

フォーゼアーマーを解除してただのジオウに戻ると、川の中から若干ボロボロになった蛇神が起き上がってきた。無事?で何よりだ。

 

 

「えーと、とりあえず満足して貰えたって事で良いのか?」

 

『あぁ、これ程までに強い人間と出会ったのは久し振りだ。……人間、名は何という?』

 

「零明。暮合(くれあい)零明(れいめい)だ」

 

『零明。水神の眷属であるこの私、『白雪(しらゆき)』に〝力〟で勝利したお前にこのギフトを授けよう。受け取るが良い』

 

 

俺と蛇神、白雪の間にそこそこ大きな木の苗が現れた。ぱっと見、ただの木の苗にしか見えないが『神』を冠する存在からのギフトだ。それなりのものなんだろう。

 

 

『〝水樹の苗〟だ。〝水龍の瞳〟には劣るが、それなりに大きい()()()()()()なら余裕で賄える程の水源となるぞ』

 

()()()()()()?……なあ、白雪さん。その()()()()()()ってのはいったいーーーっ!?」

 

『ぬぅっ!?』

 

 

俺と蛇神から十数m程離れた場所に空から()()が落ちて来た。余りの衝撃に砂煙が上がって乱入者の正体が分からない。

 

 

「ーーーおいおい、何だか面白そうな事してるな?俺も混ぜてくれよ」

 

『……何者だ?』

 

「ん、俺か?俺はーーーー」

 

「……学生?」

 

 

砂煙がはれたそこには、金髪頭にヘッドフォンを首にかけた学ラン姿の少年が両手をポケットに入れて立っていた。

 

 

「おう。通りすがりの男子高校生だ、覚えとけ」

 




「かくして、暮合零明は蛇神、白雪から〝水樹の苗〟を得た。彼の異世界での旅はまだ始まったばかり。しかし、次の戦いは直ぐにおとずれた」


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魔王と金髪と黒ウサギと

「ーーーこの本によれば、ごく普通の青年・暮合(くれあい)零明(れいめい)。彼にはごく普通に暮らし、ごく普通の家庭を持ち、ごく普通に生涯を終える未来を辿る筈()()()。『トリトニスの大滝』の近辺にて、水神の眷属である蛇神と戦いに、『仮面ライダージオウ・フォーゼアーマー』の力で勝利をおさめる。そして、この世界で最初のギフト、〝水樹の苗〟を手に入れたのだった。蛇神に勝利を収めた暮合零明の前に、金髪学ランの問題児逆廻(さかまき)十六夜(いざよい)と〝箱庭の貴族〟の黒ウサギが……おっと失礼。ここから先はまだ皆さんにとっては未来の出来事……でしたね」


「それで?その通りすがりの高校生が俺たちに一体何の用なんだ?見ての通り、俺たちは戦った後で疲れてるんだけど?」

 

「あぁ。最初は〝世界の果て〟とやらを見に来たんだが、なにやら面白そうな事してたみたいだから、是非混ぜてもらおうと思ってな」

 

『……?何だ人間?』

 

「ん、いやなに。最初はお前の相手でも()()()()()と思ったんだが、その感じじゃあこっちの特撮ヒーローみたいな奴の相手の方が面白そうだと思ってな」

 

『っ、小僧ォ!!……ガァッ!!』

 

「さっきやってた大量の水を使った攻撃ならともかく、何の捻りもないただの突進じゃあ俺には効かねえぞ?」

 

 

白雪の突進を躱して懐に潜り込んだ少年の脚が、白雪の巨体を難なく蹴り上げた。蹴り上げられた白雪の巨体は重力に従って川へと落ち、そのまま動くことはなかった。

 

「白雪!」

 

「さて、前座も片付いた事だしそろそろメインディッシュといくかっ!」

 

「ッ!?」

 

 

腕を組んで少年の繰り出した拳を受け止める。白雪の巨体を難なく蹴り上げただけあってかなりのパンチ力だ。

 

 

「ヤハハッ!やっぱりこの世界に来て正解だな!元居た世界じゃ、俺の拳に耐えられる奴なんて居なかったからな!」

 

「っく!……ハァッ!」

 

「ぐっ!……中々いいパンチするじゃねえか……よぉ!」

 

「うっ!」

 

 

腕でガードするが少年の回し蹴りを殺せず川辺を転がり回る。この少年、生身で仮面ライダー並みかそれ以上の身体能力をもっている。

 

「速くて重い……なら!」

 

『フォーゼ』

 

『カメーンライダー!ジ・オウ!アーマーターイム!3・2・1フォーゼ!』

 

「お、さっきの奴か」

 

「ハァッ!」

 

『フィニッシュターイム!フォーゼ!リミットターイムブレイク!』

 

 

ロケットモードになって少年の周りを高速で飛び回る。4,900km/hのこのスピードには流石について来れまい。

 

 

「ロケットなだけあって中々のスピードだな……だが!」

 

「っな!?」

 

「まだ俺の方が…速い!」

 

「ぐぁっ!」

 

 

難なく俺を捉えた少年にぶん殴られ、地面を転がりながらフォーゼアーマーが解除される。このスピードより速いとかあの少年、絶対に人間辞めてるに違いない。

 

 

「フォーゼでも駄目ならこれだ!」

 

『カブト』

 

『カメーンライダー!ジ・オウ!アーマーターイム!Change Beetle! カブト! 』

 

 

本編ではついぞ使用されなかった、『仮面ライダージオウ・カブトアーマー』になる。『仮面ライダーカブト』の力を持つこの姿なら、あの少年の速さにも余裕で対応出来る筈だ。

 

 

「お、今度はカブトムシか。次はどんな面白いもんを見せてくれるんだ?」

 

「悪いな少年、残念だけどその希望には応えられない。何故ならーーー」

 

「がぁっ!?ぐっ!?がはっ!?」

 

「ーーー今の俺とお前では、時間の流れが違うからな……っふ!」

 

 

再び『クロックアップ』し、動きが遅くなった少年に次々と拳や蹴りを繰り出す。いくらこの少年が速いとはいっても、流石に『光速』ではないだろう。

 

 

「ゴホッ!?……オラァッ!」

 

「無駄だよ少年。お前がどれだけ速く動こうが、今の俺には止まって見える」

 

「……やはは、こりゃあ幸先良いな。来て早々、ここまでの奴とやり合えるなんてな。……なあ、この世界にはオマエみたいな奴がワンサカいるのか?」

 

「さあな?生憎と俺もお前と同じでこの世界には来たばかりだからな」

 

『フィニッシュターイム!カブト!クロックターイムブレイク!』

 

 

ほぼ停止した時の中を進み少年に背を向けて立ち止まる。カブトの必殺技と言えば、やっぱりこれだ。

 

 

「……ライダーキック。………ハァッ!」

 

「ガァッ!?」

 

 

カブトアーマーのフィニッシュタイムを受けた少年は、川辺を勢い良く突っ込んだ。流石の彼もしばらく満足には動けない筈だ。

 

 

「……おいおい、マジかよ」

 

「……ヤハハ。今のは、かなり効いたぜ?……ッベ!」

 

 

だが俺の予想とは裏腹に少年は起き上がった。吐き出した唾に血が混じってるから確実にダメージはあるのだろうが、だとしてもこれは予想外にも程があった。

 

 

「……なぁ少年?お前ももう充分楽しんだだろうし、ここらでお開きにしないか?俺の負けでいいからさ」

 

「何言ってやがる、いい感じに盛り上がってきたばかりじゃねぇかよ!!……それに、俺もオマエもまだ全然本気じゃねーしな?」

 

 

これ以上は俺も()()()()()()()()から終わりにしようと提案したが、見事ばっさり断られてしまった。むしろ、この一言で少年に俺がまだ本気を出してないと気付かれてしまった。

 

 

「……仕方ない、か」

 

 

ただのアーマータイムのタイムブレイクじゃあ彼を戦闘不能には出来ない。なら、()()()()()()ならばーーー

 

 

「ーーース、ストップ!ストップなのでございますよ御二方!?」

 

「ウ、ウサ耳?」

 

「お。思ったより早かったな黒ウサギ……って、その髪の色はどうしたんだ?」

 

 

カブトアーマーを解除した直後、俺と少年の間に桜色の髪にウサ耳を生やした少女がどこからともなく割って入って来た。どうやら、この少年の知り合いみたいだ。

 

 

「黒ウサギの髪については後です!それよりも十六夜さん!この状況は一体全体どういう事ですか!?」

 

「〝世界の果て〟を見にいく途中にこの特撮ヒーローもどきとデカい蛇がやり合ってたのを見つけて面白そうだったから乱入した。んで、先にデカい蛇をのしてコイツとやり合ってた。OK?」

 

「OK♪……ではございません、このおバカさま!」

 

 

黒ウサギと呼ばれた少女がどこからかハリセンを取り出し少年、『十六夜』の頭をスパーンっと叩いた。成る程、どうやら彼女はツッコミポジションらしい。

 

 

「……とりあえず、終わりって事でいいよな?」

 

 

目の前でまだコントを続ける2人を眺めながら、俺は変身を解除した。




ウォズ「かくして、暮合零明は1人目の問題児、逆廻十六夜と〝箱庭の貴族〟黒ウサギと出逢った。この出逢いこそ、彼の物語の始まりを告げる祝福の鐘である。そして、次なる問題児達との出会いはすぐそこに・・・」


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お嬢様と無口少女と少年リーダー……あと三毛猫

「ーーーこの本によれば、ごく普通の青年・暮合零明。彼にはごく普通に暮らし、ごく普通の家庭を持ち、ごく普通に生涯を終える未来を辿る筈()()()。突如現れた問題児、逆巻十六夜に対し『仮面ライダージオウ・フォーゼアーマー』。そして『仮面ライダージオウ・カブトアーマー』の力を使うも、残念ながら引き分けに終わる。そして、次に暮合零明と出会う問題児は2人。キーワードは……平たい」


「ーーー初めまして。私、〝ノーネーム〟の『黒ウサギ』、と申します。この度はこちらの彼が大変ご迷惑をおかけしてしまったそうで、誠に申し訳ございませんでした」

 

「申し訳ございませんでした」

 

 

コントを終えた十六夜と黒ウサギちゃんの2人から頭を下げられる。その際、両手を前に深々と頭を下げる事で強調される彼女の()()()()()につい視線がいくのは、男として仕方がない事だろう。

 

 

「初めまして、暮合零明です。えーと、黒ウサギさんと十六夜くんだったかな?確かにいきなり襲いかかられて驚いたけど、俺も彼に一撃入れてるからそれでノーカンって事で大丈夫。白雪…あの蛇神からの試練も終わってたし」

 

「寛大な対応をして頂きありがとうございます。後日、こちらのリーダー共々改めて謝罪をさせて頂きたいと思いますので、貴方様の()()()()()()のお名前を教えて頂けますでしょうか?」

 

 

『コミュニティ』。多分、ゲームとかでいう『ギルド』的なものなんだろう。白雪もそうだったけど、なんで俺がその『コミュニティ』ってのに所属している前提で話が進むんだろうか?

 

 

「えーと黒ウサギさん。実は俺、この世界には来たばかりだから、その『コミュニティ』ってのには所属してないんだ」

 

「そ、それは本当でございますかっ!? 」

 

「うおっ!?」

 

「零明さん!零明さんさえ宜しければ、是非とも黒ウサギ達の〝ノーネーム〟に入「STAYだ黒ウサギ」うみゃっ!?」

 

 

後ろから近づいていた十六夜に、両方のウサ耳を上に引っ張られて黒ウサギちゃんが変な声を出す。お約束通り、ケモノ娘の耳や尻尾は敏感みたいだ。

 

 

「い、十六夜さん!何故に()()、いきなり黒ウサギの素敵耳を引っこ抜こうとするのですか!?」

 

「『また』って、一回やられてるんだな……」

 

「いきなりソイツに襲いかかった俺が言うのもアレなんだが、ちょっと落ち着け黒ウサギ。いきなりそんな事言われても混乱するだけだろ?それと今のお前の態度を見て確信したんだが……オマエ、何か決定的な事をずっと隠してるよな?」

 

 

飄々とした表情から反転、十六夜の顔が真面目になった。どうやら、今の黒ウサギちゃんの行動が彼に()()を気づかせたみたいだ。

 

「……なんのことです?箱庭の話ならお答えすると約束しましたし、

ゲームの事もーーー」

 

「違うな。俺が聞いてるのはオマエ達の事……いや、核心的な聞き方するぜ?黒ウサギ達は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーー

 

ーーーー

 

 

さて、俺にはあまり関係ない(?)話だったわけだが、要するに黒ウサギちゃんは自分達のコミュニティが壊滅寸前だという事を黙って十六夜とここに居ない2人に黙っていたらしい。まぁ、言い出すタイミングとか難しいもんな、そういうのって。

 

 

「しかし〝魔王〟、か……」

 

「?何か気になる事でも?」

 

「あぁいや、単に興味深いなぁって思ってさ」

 

 

今、俺のギフトが『最高最善』、或いは『最低最悪』の『魔王』の力だって言ったら、この2人はどんな反応をするだろうか。まぁ、しないけど。

 

 

「おっ、なんか音が聞こえてきたな。これは……滝の音か?」

 

「だな」

 

「YES♪もう間も無く十六夜さんの目的地〝世界の果て〟、でございますよ♪」

 

 

『滝』に『世界の果て』、この世界は平たいのかな?

 

 

「うぉっ!」

 

「お……!」

 

 

数分後、俺達の目の前に壮大な景色が広がった。あまり景色とか見ても感動しない方だが、これは別次元だ。この景色を見て何も感じない奴がいるとしたら、ソイツはきっと心がない人形だ。

 

 

「ふふ、如何でございますか御二方?これこそがこの箱庭の〝世界の果て〟、〝トリトニスの大滝〟でございます。横幅の全長は約2800m、これ程の滝は御二方の故郷にもないのでは?」

 

「……あぁ、素直にすげぇな。ナイアガラのざっと2倍以上の横幅ってわけだな」

 

「!……十六夜は何でも知ってるんだなぁ」

 

「何でもは知らねーよ。知ってる事だけだ」

 

 

……感無量。十六夜が知ってるとは思わないけど、このネタがリアルで出来て満足だ。

 

 

「なぁ黒ウサギさん。この滝のスタートってどんな所なのかな?」

 

「お力になれず申し訳ありませんが、黒ウサギは箱庭の外の事はあまり存じ上げませんので。ですが、箱庭の上層に本拠を構える事が出来れば、そういった資料を閲覧する事が出来るかもしれません」

 

「そりゃあ、知りたければそこまで協力しろってことか?」

 

「いえいえ。ロマンを追求するのであれば、という黒ウサギの勧めでございますヨ?」

 

 

黒ウサギと十六夜の2人が互いにニヤリとし合う。案外この2人、お互い馬が合うのかもしれない。

 

 

「……その話し、俺も乗せてもらおうかな。分からないまま放置するのって気持ち悪いからな」

 

「ッ!……はいっ!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーー

 

ーーーー

 

 

「ーーージン坊っちゃーン!お待たせしました!」

 

 

黒ウサギに連れられて街の中に入ってしばらく歩いていると、目当ての人物を見つけたのか黒ウサギが大声でぶんぶんと腕を振り始めた。

多分黒ウサギの声に反応した、噴水の前で()()()()()()()()あの緑髪のローブっぽい服を着ている少年だろう。

 

 

「お疲れ様、黒ウサギーーーってあれ?確か、居なくなったのは1人だけだった筈じゃ?」

 

「実はですね?なんと、十六夜さんを連れ戻す途中に偶然、もう1人勧誘する事が出来きたのですヨ!しかも!なんと蛇神様の〝力の試練〟をクリア出来る程の実力をお持ちです♪」

 

「えっ、それは本当ですか!?」

 

「YES♪ その証拠にほら!こーんな大きな〝水樹の苗〟を手に入れられたのですヨ♪」

 

 

驚く少年に黒ウサギは抱き抱えていた〝水樹の苗〟を見せつけていた。……勘違いしてもらっては困るが、あれは俺が黒ウサギに持たせたわけじゃなく、黒ウサギが自分が持つと言って譲ってくれなかっただけだ。

 

 

「初めまして、暮合零明だ。宜しく」

 

「あ、は…初めまして。()()()()()()()()()()()()()()()()『ジン=ラッセル』です。()()()()()()()()()()の若輩者ですが宜しくお願いします」

 

 

11歳。『魔王』にコミュニティを壊滅寸前までやられたとは聞いていたが、まさかこんな子供がコミュニティのリーダーをしているとは予想外だ。

この少年が大人顔負けな程優秀なのか、もしくは黒ウサギ達のコミュニティには()()()()()()()()のかもしれない。

 

 

「こちらこそ宜しくジン君。それと、そっちの2人も初めまして。暮合零明だ」

 

「『久遠飛鳥』よ。宜しく」

 

「『春日部耀』。このこは『三毛猫』」

 

『ニャーオ』

 

 

ロングヘアーで赤いリボンを付けた久遠は少し気の強い感じ、もう1人の三毛猫を抱いている少女は大人しげな感じがした。……つい黒ウサギと比べてしまったのは反省しなければいけない。

 

 

「ーーーあ、そうそう黒ウサギ。()()、〝フォレス・ガロ〟と()()()()()()()()()()()()()から」

 

「……は、はいぃぃぃぃっ?!」

 




「かくして、コミュニティ〝ノーネーム〟への加入を決めた暮合零明は2人の問題児、久遠飛鳥と春日部耀との出逢いを果たした。さて、どうやら彼は大きい方が好みのようです。2人の成長については、今後に期待ですね」


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自称美少女白髪ロリ魔王

「ーーーこの本によれば、ごく普通の青年・暮合零明。彼にはごく普通に暮らし、ごく普通の家庭を持ち、ごく普通に生涯を終える未来を辿る筈()()()。黒ウサギ達の居ない間に決まってしまったコミュニティ、〝フォレス・ガロ〟とのギフトゲームを翌日に控えた〝ノーネーム〟一同。各人の持つギフトを鑑定する為に向かったとあるコミュニティの支店で、まさかの魔王と……おっと、少し読み過ぎました」


「ーーー改めて自己紹介しておこうかの。私は〝サウザンドアイズ〟幹部の白夜叉だ。4桁の門、三三四五外門に本拠を構えておる。そこの黒ウサギとは少々縁があってな。ちょくちょく手を貸してやっている器の大きい美少女である」

 

 

久遠達が明日急遽ギフトゲームをする事を知った俺達は、自分達のギフトの事を知る為に大手商業コミュニティ、〝サウザンドアイズ〟の支店に来ていた。店に着いた当初、閉店準備をしていた店員と黒ウサギが揉めているところに突然この自称美少(幼)女が現れたのだが、まさかの〝サウザンドアイズ〟幹部だった。

 

 

「その外門、って何?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若い程都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです。ちなみに、私達のコミュニティがあるのは一番外側の階層、7桁の外門ですね」

 

「……超巨大玉ねぎ?」

 

「どちらかと言えば、超巨大バームクーヘンじゃないかしら?」

 

「そうだな。どちらかと言えばバームクーヘンだ」

 

「バームクーヘンか、そういや最近食ってないな」

 

「み、皆さま……」

 

 

俺達の言葉にガックリとなる黒ウサギ。まぁ、確かに例え方はアレだけど身近なモノに例えた方がイメージしやすいから仕方ない。

 

 

「そして私が居る4桁以上が上層と呼ばれる階層だ。その水樹を持っていた白蛇の神格も()()()()()()()なのだぞ」

 

「へぇー……て事は、貴女は白雪よりも強いって事ですね?」

 

「当然だ。私は東側の〝階層支配者(フロアマスター)〟。この東側にある4桁以下のコミュニティに並ぶ者がいない、()()主催者(ホスト)だからの……うん?」

 

「最強のホストか、そりゃあいいな」

 

「ええ。是非ともお相手願いたいわね」

 

「……うん」

 

 

白夜叉の『最強の主催者(ホスト)』に反応して逆廻達が立ち上がる。どうやら3人ともやる気満々みたいだ。俺も今は若返ってるけど、やっぱり若いって凄いなぁ。

 

 

「ちょ、ちょっと皆さん!?」

 

「よいよい黒ウサギ。私も遊び相手に窮しておる故のう」

 

「ノリがいいわね。そういうの好きよ?」

 

「ふふ、そうか。ーーーじゃが1つだけ確認しておく事がある。おんしらが望むのは〝挑戦〟かーーーもしくは、〝決闘〟か?」

 

『ーーーっ!?』

 

 

そう言いながら白夜叉が懐から取り出したカードが眩く光り、あまりの眩しさに思わず腕で目元を覆う。程なくして光りが収まったのを感じ、一体何が起きたと思い腕をどかした俺は目の前の光景に頭が追いつかなかった。

 

 

「……は?何処だ、ここ??」

 

 

ついさっきまで〝サウザンドアイズ〟の支店にある白夜叉の私室の和室に居た筈だった俺達は、いつのまにか見た事もない全く別の場所に居た。周りを見渡すと白い雪原に凍りついた湖畔、高い山脈ーーーそして()()()()()()()()()()()

 

 

「驚く事はない。ここは私が持つ()()()()()()()だ」

 

「この土地全てが、ただのゲーム盤ですって!?」

 

「私は〝白き夜の魔王〟ーーー太陽と白夜の星霊・白夜叉。箱庭に蔓延る()()()()()よ」

 

「ま、魔王!?」

 

「……マジか」

 

 

ただの幼女じゃあないとは思っていたが、まさか『魔王』だったとは思わなかった。『蛇神』といい『魔王』といい、初日からぶっ飛ばしすぎにも程があるだろ。

 

 

「今一度問う!おんしらが望むのは、試練への〝挑戦〟か?それとも対等な〝決闘〟か?」

 

 

白夜叉の問いに場の空気が凍りつく。3人の様子を見ると久遠と春日部の顔からはさっきまでの勢いがなくなっており、逆廻に関しては顔を伏せていてよく分からない。さて、逆廻がどう答えるかが楽しみだ。

 

 

「……っふ、参った。やられたよ。降参だ白夜叉」

 

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」

 

「ああ。こんだけのモンを見せてくれたんだ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

「く、くく……してら他の童達も同じか?」

 

「……ええ。私も、試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

「ん?何だ、皆んなやらないのか?なら、俺がやらせてもらうとするかな」

 

『っな!?』

 

「零明さん!?」

 

 

俺の言葉に黒ウサギ達が驚く。なんだか空気が読めてない奴みたいになってるが、勿論ちゃんとした理由があっての発言だ。

 

 

「……ほぅ?てっきりお主は興味がないのかと思っていたのだが?」

 

「冗談。なんか面白い展開になりそうだったから様子見してただけだよ。それに、いずれは黒ウサギ達のコミュニティを壊滅させた魔王とやり合うんだ。こんな機会、逃すなんて勿体ないだろ?」

 

 

それに、ジオウの力を色々試すには『東側最強の主催者』であり『魔王』である白夜叉はもってこいだ。

 

 

「……く、くく。面白い奴だのう。小僧、お主名は何という?」

 

「暮合零明。何処にでもいる、ごく普通の人間だ」

 

「良かろう零明!ならばこの〝白き夜の魔王〟の力、存分にその身で味わうが良い!!」

 

 

 




「かくして、〝白き夜の魔王〟と決闘をする事になった暮合零明。『魔王』と〝魔王〟、果たしていったいどちらの力が上なのか……ご期待いただこう」


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『魔王』対〝魔王〟

「ーーーこの本によれば、ごく普通の青年・暮合零明。彼にはごく普通に暮らし、ごく普通の家庭を持ち、ごく普通に生涯を終える未来を辿る筈()()()。様々なレジェンドの力を使い〝白き夜の魔王〟・白夜叉と闘う彼だったが、〝魔王〟の強大な力の前には通じなかった。そして彼は次なる力、『仮面ライダージオウ・ディケイドアーマー』で……おっと、これは皆さんにとっては未来の話…でしたね」


「ーーー良かろう零明!ならばこの〝白き夜の魔王〟の力、存分にその身で味わうが良い!!」

 

「ああ、望むところだ!」

 

 

ジクウドライバー

 

ジ・オウ

 

 

「な、何か出て来ましたよ!?」

 

「これは……時計かしら?」

 

「腕時計みたい」

 

「………」

 

 

黒ウサギ達が居る位置から少し前に出て変身準備をする。多分大丈夫だとははないとは思うけど、変身の瞬間に俺を一気に包み込むし一応だ。

 

 

「……変身ッ!」

 

 

ライダーターイム!カメーンライダージ・オウ!

 

 

「あら、見た目が変わったわ」

 

「へぇ?ああやってあの姿になってたのか。見た目といい変身方法といい、マジで特撮だな」

 

「……格好いい」

 

「他に注目するところありますよね!? 今一瞬、零明さんの周りの空間が反転してましたよね?!」

 

「な、何じゃそれは!?カッコ良すぎではないか!!」

 

 

黒ウサギと白夜叉の反応は予想通りとして、春日部は予想外だ。この感じなら、仮面ライダーだけじゃなくてプリキュアとかも好きそうだ。

 

 

「待たせたな。じゃあ、先ずはーーー」

 

 

ジカンギレード!ジュウ!

 

 

「ッハ!」

 

 

ドドドドドドッ!

 

 

「ふむ」

 

 

白夜叉に向かって連射するが、扇子を軽く振っただけで全て逸らされてしまう。射撃に難なく対応する白夜叉にも驚いたが、銃弾逸らすとかあの扇子、一体何で作られてるんだ?

 

 

「それは銃だな。私の知ってるものとは些か異なるが、まあこの程度は造作もないの」

 

「銃が駄目なら、次は剣だ」

 

 

ジカンギレード!ケン!

 

 

「おおぉぉぉ………ハァッ!」

 

 

ギャインッ!ギャインッ!

 

 

 

連続して斬りかかるが、これまた平然と扇子で防がれる。あの扇子、変身状態だから腕力とかかなり上がってるはずなのに歪むどころか傷1つ付いてない。

 

 

「ふむふむ、人間にしては中々の膂力だの。そのスーツの能力か?」

 

「ハッ!フッ!まぁ…なっ!」

 

 

電・王

 

カメーンライダー!ジ・オウ!アーマーターイム!ソードフォーム! 電王!

 

 

バックステップで距離を取りながら〝電王ウォッチ〟をはめてベルトを回し、『仮面ライダージオウ・電王アーマー』に変身する。『剣』と言えば『ブレイド』なんだが、

 

 

「ーーー俺、登場ッ!」

 

 

これが言いたかった。一応『()()()()()()()』だし無関係ではないな。

 

 

「おお!別の姿にも変身出来るのか!?」

 

「『登場』って、もう登場してるじゃない」

 

「行くぞ行くぞ行くぞぉぉぉぉぉ……おらぁっ!!」

 

「む?先程より力が上がったの?」

 

 

久遠の冷たいツッコミを聞かなかった事にして『モモタロス』の様に荒々しく白夜叉に斬りかかるが、さっきと同じで扇子で防がれたり避けられる。一発くらい当てたかったが、このまま続けても無駄そうだし『次』に行く事にする。

 

 

カブト

 

カメーンライダー!ジ・オウ!アーマーターイム!Change Beetle! カブト!

 

 

「おぉ、次はカブトムシかの?こんなか弱い美少女相手に力勝負でもする気かの?」

 

「何が『か弱い』だ……っよ!」

 

「ッ!……ニヤッ」

 

 

ギンッ!ギャンッ!

 

 

「なっ?!」

 

「たわけ、驚いておる場合か!」

 

「がっ!ぐぅっ!がはっ!!」

 

 

白夜叉に扇子で殴られ蹴飛ばされて地面を転がる。まさかのクロックアップが通じない!

 

 

「っく、まさかクロックアップが通じないなんてな。流石〝魔王〟、正直甘く見てたよ」

 

「なに、そう悲観するものでもない。下層クラスの〝魔王〟であれば十分通用する速さだ。ついて来れたとしてもほんの一握り程であろう。……まぁ、中層から上は〝魔王〟に限らず〝空間跳躍〟のギフトを持つ者も居るからその限りではないがの」

 

「おいおい、中層でそれだと上層とかヤバ過ぎだろ。ブルッとくるな」

 

「何だ?怖気ついたか?」

 

「まさか。武者震いだよ!」

 

 

ディ・ディ・ディディケイド

 

 

「第2ラウンド……いくぞ?」

 

 

アーマーターイム!カメンライド、ワーオッ!ディッケーイディケーイディッケーイード!

 

ファイナルフォームターイム!カ・カ・カ・カブト!

 

 

『ディケイドウォッチ』と『カブトウォッチ』を使い、『仮面ライダージオウ・ディケイドアーマー・カブトフォーム』に変身する。

本来なら各ライダーの『中間フォーム』になるが、カブトは中間フォームがないから自然と『最強フォーム』である『ハイパーフォーム』となる。

 

 

「……ふむ、さっきのと似ておるの」

 

「さっきのやつの『強化バージョン』ってとこだ。……まぁ、これの場合『強化バージョン』と言うよりはーーー」

 

 

カ・カ・カ・カブト!ファイナルアタックターイムブレイク!

 

 

「ーーー『最強バージョン』だな」

 

 

ーーースンッ……

 

 

ほぼ静止した世界の中でゆっくりと白夜叉に近づく。流石の白夜叉も『ハイパークロックアップ』状態の俺を認識出来ないのか、ピクリともしない。

 

 

「上層はともかく、少なくとも中層では通用しそうだな。まぁ、〝空間跳躍〟と違ってこれはいつ攻撃されたかも分からないしな」

 

「………」

 

「……ライダーキック。………ッハァ!!」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

白夜叉をライダーキックで地面に叩きつけた直後、『ハイパークロックアップ』が終了する。観戦している黒ウサギ達は当然、蹴られた白夜叉本人でさえも何が起きたのか分からないだろう。

 

 

「ーーーゴホゴホッ!……零明、お主まさか()()()()()()()()!?」

 

『ッ!?』

 

「まさか。ただ、さっきより速く動いただけだ」

 

 

ただし、ほぼ止まってるに等しい速さでだけど、な。

 

 

「………っく、くくく。……謝罪するぞ零明。正直、ここまでやれるとは思わなんだぞ?」

 

「ッ!?」

 

 

思わず白夜叉から距離を取る。地面に寝そべる白夜叉の雰囲気がガラリと変わったのを感じる。どうやらこれからが本番のようだ。

 

 

「……はは、これが所謂プレッシャーってやつか。結構ズッシリ来るな」

 

「これでも『東側最強の主催者(ホストマスター)』を名乗っているからの。流石にこのままやられっぱなしという訳にはいかぬのでな」

 

 

のそりと起き上がった白夜叉の周りを巨大な炎の蛇がうねり始める。あまりの高熱に離れていても熱気を感じる。

 

 

「……もしかして、『プロミネンス』…か?……そういや、〝白夜〟と〝()()〟の星霊だったけ」

 

「いかにも……とは言え、諸事情で私も()()()()()()()()()のでな。これでも()()()()()だ」

 

「ふーん?だけど温度は変わらないんだろ、それ?」

 

「なーに、ほんの数万度だ。太陽の中でもかなり低い方だぞ?……さて、今からこれをお主に向かって放つ。見事凌いでみせればお主の勝ち、出来なければ負けだ」

 

 

どうやら白夜叉は本気を全然出してなかったみたいだ。まぁそれでも白夜叉は上層クラスらしいから、多分今の状態でも下層クラスの〝魔王〟と同じかそれ以上な筈だろう。

 

 

「ーーー零明さん!」

 

 

振り返ると、黒ウサギをはじめ久遠と春日部の2人が心配そうな表情をしていた。逆廻だけはどこか期待するような視線を俺に向けていた。

 

 

「……ここで勝たなきゃ『漢』じゃねーな。それに……」

 

 

フィニッシュタイム!

 

 

()()()()()()に、平成ライダーが負ける訳がない!」

 

 

ヘイッ!カメーンライダーズ!ヘイッ!セイッ!ヘイッ!セイッ!ヘイッ!セイッ!ヘイッ!セイッ!ヘ・ヘ・ヘイッ!セイッ!ヘイッ!セイッ!ヘイッ!セイッ!ヘイッ!セイッ!……

 

 

『ライドヘイセイバー』に『ディケイドウォッチ』を嵌め、時計の針を逆方向に3回転して構える。これでこっちの準備は完了。後はただ、お互いの一撃をぶつけ合うだけだ。

 

 

「………」

 

「………」

 

「「………はぁっ!!」」

 

 

ディ・ディ・ディ・ディケイド!

 

平成ライダーズアルティメットタイムブレーク!

 

 

迫り来る炎の蛇に向かって横薙ぎに1回、『ライドヘイセイバー』を振るう。半分程消し飛ばしたが、依然炎は向かって来る。

 

返す刀の2回目の横薙ぎで、完全に炎を消し飛ばす。炎の先に立つ白夜叉の顔はどこか満足していた。

 

 

「おおおおぉぉぉぉぉ……!!」

 

「ーーー来るがよいっ!!」

 

「ーーーハァッ!!」

 

 

ドゴォォォォォンッ!!!

 

 

最後の一撃を受けた白夜叉を中心に盛大に爆発が起きる。……ついノリで直撃させてしまったけど白夜叉は無事だろうか?

 

 

「ーーーゲホッ!ゴホッ!……ま、まさか爆発までするとは思わなかったぞ。せっかくの美少女が台無しではないか」

 

 

少しして、巻き上がった土煙が晴れ始め白夜叉の姿が見えてきた。

最後の爆発で身体中所々がススで黒くなっていたり着ている着物がボロボロになっていたり髪が若干チリチリになってはいたが、目立った外傷は見当たらない。

 

 

「いやいやいやいや、何であの爆発でその程度で済んでるんだ?頑丈にも程があるだろ」

 

「ふっふっふ、頑丈さにはそこそこ自信があるからの。……コホン。見事だったぞ零明よ。私の一撃を凌いでみせるどころか打ち破り、逆に私に一撃を入れてみせた。文句なしにお主の勝ちだ」

 

「えーと、ありがとう?」

 

 

色々思うところは有るが、取り敢えず当初の目的だった〝魔王〟の実力ってのをおおよそ知る事が出来たから良しとしよう。……まぁ、明らかに手加減されてたみたいだけど。

 

 

「さて。正規のギフトゲームではないとは言え、私との勝負に勝ったお主には何か賞品を渡そうと思うのだが……まぁそれはあの小僧共とのゲームが終わってからにでもしようかの」

 

 

白夜叉につられて逆廻達の方を見てみると、最初の自信満々な表情どころかこのゲーム盤に来た時以上に真剣な表情をしていた。多分今の俺と白夜叉の戦いを観て、自分達が受ける〝試練〟も生半可なものじゃないと思ってるんだろう。

 

 

「了解。それじゃあ俺は疲れたし、のんびりと観戦でもさせてもらうかな」

 

「うむ、そうすると良い。……今度は()()()本気で手合わせしてみたいものだ」

 

「……ははは、その時はお手柔らかに」

 

 

隣を歩く白夜叉にそう言われた俺は、引きつった笑顔でそう答えながら黒ウサギ達の所に戻った。

 




「かくして、見事〝白き夜の魔王〟に勝利した暮合零明。この結果が、今後の彼の立場を確立するものとなる!……まぁ、どうやら互いに本気ではなかったようですがね」


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ギフトネーム〝魔王(ジオウ)


「ーーーこの本によれば、ごく普通の青年・暮合零明。彼にはごく普通に暮らし、ごく普通の家庭を持ち、ごく普通に生涯を終える未来を辿る筈()()()。〝白き夜の魔王〟白夜叉の〝決闘〟と〝試練〟をクリアした彼らは、賞品として〝ギフトカード〟を手に入れる。一方、フォレス・ガロ方では何やら怪しい動きが……」


「ーーーよ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

 

黒ウサギからギフト鑑定が目的で〝サウザンドアイズ〟に来たと聞いた瞬間、白夜叉が顔を歪めた。

 

……あの後、このゲーム盤に住んでいた『グリフォン』を呼び出した白夜叉は逆廻達3人にギフトゲーム〝鷲獅子の手綱〟を提示した。

 

ゲームの内容はグリフォンの背中に乗って湖畔を1周するとともに、〝力〟〝知恵〟〝勇気〟を示すというもので、春日部が自分の〝命〟を賭けて挑み、見事ゲームクリアを果たした。

 

その時分かった事だが、どうやら春日部のギフトは動物等の『異種族との会話』や『友達になった生き物から特有のギフトを貰える』といったものらしい。どっちも普通に羨ましいギフトだ。

 

 

「こう……魔王パワー的なのでギフトの鑑定とか出来ないのか?」

 

「な、なんじゃそれは。そも〝魔王〟とは〝主催者権限〟を悪用する者を指しておって、呼ばれる様になったからと言って何かしらのギフトに目覚めるわけではないぞ。〝()・魔王〟の私が言うのだ、間違いない」

 

「……ん?()?」

 

「おっと」

 

「はい。白夜叉様が〝魔王〟だったのはもう何千年も前の話になります。ですので今は〝元・魔王〟という事になりますね」

 

「なん…だとッ?!」

 

「なに、美少女の『お茶目な嘘』だ。そう目くじらを立てるでない。

……さて。〝主催者(ホスト)〟として、星霊の端くれとして試練をクリアしたおんしらには〝恩恵(ギフト)〟を与えねばならん。

〝試練〟のクリア報酬としてはちょいと贅沢な代物だが、〝決闘〟の分を合わせれば丁度良かろう」

 

 

そう言い終わった白夜叉が2回手を鳴らすと、俺達4人の前に光り輝く4枚のカードが現れる。

 

逆廻は青、春日部はエメラルドっぽい緑、久遠は紅色、そして俺はシルバーだ。カードを手に取って見てみると、そこには俺の名前と〝魔王(ジオウ)〟と書かれていた。

 

 

「まさかそれはギフトカード!」

 

「何それ。お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「お盆玉?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!?

これは顕現しているギフトを収納出来るうえに、各々のギフトネームが分かるといった超高価な恩恵です!」

 

 

もしかしてとは思っていたが、やっぱりこの〝魔王(ジオウ)〟ってのが俺のギフトネームだった。

……ギフトネーム〝魔王(ジオウ)〟。このギフトにピッタリな名前だ。

 

 

「顕現しているギフトを収納出来るんだっけ?じゃあ、白雪から貰った〝水樹の苗〟も収納出来るのか」

 

「うむ。〝水樹の苗〟に向けてみるがいい」

 

 

白夜叉に言われた通りにすると、黒ウサギが抱えていた〝水樹の苗〟が光の粒子になってカードに吸い込まれた。

カードを確認すると、溢れるほどの水を生み出す樹の絵と〝水樹の苗〟の文字が追加されていた。

 

 

「おぉー、なんか少しオシャレになったな」

 

「ちなみに、それと一々顕現させずともその状態で水だけを出す事も出来るぞ」

 

「おぉ、そりゃあ便利だな。……ふむ。白雪に何度も挑んで人数分揃えるのもアリだな」

 

「や、やめてあげて下さい!」

 

「冗談だよ冗談。……ん?逆廻、どうかしたのか?」

 

 

逆廻が何やら真剣な表情で自分のギフトカードを見ていたので声をかけてみる。何か問題でもあったのだろうか?

 

 

「ん?あぁ、ちょっとな。……なぁ白夜叉。俺のギフトカードには〝正体不明(コード・アンノウン)〟って書いてあるんだが、これはよくある事なのか?」

 

「なに?……いや、そんな馬鹿な。ありえん、〝全知〟である〝ラプラスの紙片〟がエラーを起こすなど!」

 

 

驚いている白夜叉の横から逆廻のギフトカードを覗き混んでみると、確かに逆廻の言う通りギフトカードには〝正体不明(コード・アンノウン)〟と書いてあった。

……というか今〝ラプラス〟とか聞こえたけど、もしかしてあの〝ラプラスの悪魔〟の事だろうか?

 

 

「なんにせよ鑑定が出来なかったって事だろ。 俺的にはこの方がありがたいさ」

 

「ふーん、変わってるな。まぁ、〝全知〟がエラー起こすって事はそれなりのギフトなんだろうな」

 

「納得は出来ぬがこの件は後回しで良かろう。小僧の件で忘れていたが零明、お主のギフトについても気になっていたのだ。永き時を生きる私でさえ検討もつかぬからの。

まさかお主までエラーということはあるまーーーっ!?」

 

「……成る程な。通りで()()()黒ウサギの言葉に反応してたワケだ」

 

「ははは、まーな」

 

「……零明よ。お主は一体何者なのだ?」

 

「んー、そうだなぁ………。ひょんな事から『最低最悪』・『最高最善』・『最大最強』の魔王の力を持ったごく普通の一般人。ってとこかな?」

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

〜side 〝フォレス・ガロ〟〜   

 

 

 

「ーーーギャ、ガッッッ!??」

 

 

夕日の差し込む〝フォレス・ガロ〟のとある一室。部屋の主である『ガルド・ガスパー』の首筋に、金髪の女性が牙を立てていた。

最初は苦悶に身体を震わせていたガルドだったが、やがて意識を失ったのかピクリとも動かなくなる。

 

 

「……確かに鬼種のギフトを与えたぞ。……それと」

 

 

OOO(オーズ)

 

 

女性は懐から赤い鳥の様な顔が描かれた時計の様な物を取り出すと、意識のないガルドの胸にそれを押し込む。

時計の様なソレは、ガルドの身体を傷つける事なくすんなりと胸の内側へと入りこんだ。

 

 

「さてさて。私にお前達の可能性を見せてくれ、新生〝ノーネーム〟」




「本来、この世界に存在する筈のない、【仮面ライダーOOO(オーズ)】の『アナザーウォッチ』。何故それが存在し、あの女性が持っているのか……ふふ、興味が尽きませんね?」


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