やはり俺のバレンタイン作戦はまちがっている。 (Ameba)
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第1話

3学期が始まってから約1ヶ月が過ぎ立春とは名ばかりの寒くて布団から出るのに苦労する季節がやってきた。

去年は、凍えて震えている女子に、男子がコートをかけてやっている姿を見て殺意の湧く毎日だったが、今年はそんな感情は湧き上がらない。

なぜなら、奉仕部は居心地がいいからだ。多分それは、何をしていても何も言われないことと、静かな環境が、ぼっちを落ち着かせるのだろう。

まさに平和そのものだ。

そんなことを考えながら自分の席に座り、楽しみにしていたラノベのページを開いた。

その時だった…

バタン‼︎

 

材「ケンゴウショウグン材木座義輝参上‼︎」

 

暖かくなっていた部室に冷気が立ち込める…

 

 

比「うるせぇな。何しに来たんだ。そして、暖気が逃げるから早くドアを閉めろ。」

 

 

材「今日は八幡に重要な話があってきたのだ。」

 

 

材「悪いが男同士の話なのでそこのお二人には退室願おう‼︎」

 

 

雪「言われなくても出て行くつもりよ。同性愛者二人の会話には耐えられないから。」

 

 

由「しょうがないなぁ。そしたらさぁ、ゆきのん今日一緒にスターボックスコーヒーに行かない?新作が超美味しいんだよ」

 

 

雪「そうしましょう」

そう言って二人は出て行ってしまった。何?展開早過ぎない?

 

 

比「ったく…なんだよ男同士の話って」

 

 

材「八幡よ?今は何月だ!?」

 

 

比「2月だろ。それがどうかしたか?」

 

 

材「2月といえば重大なイベントがあるであろう。」

 

比「学期末考査か?」

 

 

材「ちがう!!1年の中であのいまいましいリア充共がウハウハしながら待っているあの…」

 

 

比「バレンタインだろ!」

 

 

材「そうだ八幡!現実から目を背けるための狸寝入りはやめるのだ!見苦しいぞ!!」

 

 

比「材木座…俺だって分かってたよ!2月って聞いただけで…」

 

 

比「あれは中学の頃だった…」

 

 

材「では本題に入ろうぞ!!」

 

 

比「まてコラ!人のトラウマを掘りおこしておいて何が本題にはいろうだ!

俺の話を3分でもいいから聞いてくれよ!」

 

 

比「あれは、放課後女子二人と掃除当番をさせられていた時、女子がバレンタインについて話

していたんだ。

チョコレートを他人から一度ももらったことのなかった俺は淡い期待を抱きながら言って

しまったんだ。」

 

比「俺はGODEVAのチョコでいいよ」

 

 

比「そしたらなんて言ったと思う?半分ジョークで言った俺に対してヤツらはなぁ 何期待し

ちゃってんの?マジキモいわ〜って言われたんだぞ!

狸寝入りしたくなる気持ちもわかっただろう!!」

 

 

材「そうか…八幡済まなかったなぁ…ではそろそろ本題に入ろうぞ!」

 

 

比「切り替えはえーな!俺の話もう一回聞かせてやろうか?」

 

 

材「まぁ、簡潔に言うとなぁ…我はモテたいのだ!」

 

 

比「材木座さん…寝言は寝て言うのがこの世界の常識ですよ?」

 

 

材「うるさい!黙れ!! 我だってなぁ… 我だってなぁ…」

 

 

比「なんで泣きそうなんだよ…」

 

 

比「とりあえず話は聞いてやるよ。」

 

 

材「いいだろう。」

 

 

比「だからお前切り替え早すぎるだろ!!後なんで上から目線何ですかね…」

 

 

材「八幡よ。貴様には影武者になってもらおう」

 

 

比「どういう意味だ」

 

 

材「ズバリ!我の代わりにとなりバレンタインデーチョコレートをもらってくるのだ!」

 

 

比「ただの実験台じゃねーか!」

 

 

材「まさにその通りだ‼︎」

 

 

比「しかしなぁ、母さんや妹からさえチョコをもらったことのない俺のそんなことを任せても

結果は見えてるんじゃ…」

 

 

材「ニヤリ…心配するな… 我のとっておきの作戦があるのだ」



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第2話

毎年やってくる、二人とは無縁の悲しい残念なバレンタインデー。しかしそんな残念なバレンタインデーから脱出するべく、材木座から驚きかつ過酷な作戦が告げられた…
今年こそは残念なバレンタインデーに、別れを告げることができるのか⁈



唯一変わっていることといえば、葉山の席をさっきから凝視していることだけだろう。

 

 

先に断っておくが、海老名さんが喜んでしまうようなゲスな感情が沸き起こって葉山を凝視しているのではない。全て昨日の、材木座の一つの提案が引き起こしたものだ。

 

 

昨日の回想

 

 

比「で、材木座さん。それ本当にやるんでしょうか?」

 

 

材「当たり前であろう。何事も成功者から学ぶのは基本であるからな。」

 

 

比「だからって無理があるだろう!俺が葉山を尾行するなんて」

 

 

材「八幡よ。男にはやらなきゃならない時があるんだ。勝利の先には、女子からのチョコレ

ー トという最高の品が待っている!」

 

 

比「ぐぬぬ…分かった。戸塚のチョコレートのためなら俺は闘おう」

 

 

現実

 

比「ふざけんなよ葉山こんな時に限ってまだ登校してないなんて…」

 

 

すでにHRが始まっている。カゼで休まれたらどうなることやらと考えたら、ガラガラっとドアが開く音がした。 葉山だ。

 

 

葉山「あっ。ヒキタニくんおはよう。」

 

 

「あっ」て言われたぞ。今。俺そんなに影薄いですか?バスケやったら大活躍できるんじゃね ぇか?

 

 

葉「おはようー戸部 ー 優美子ー 目覚まし時計セットしてくるの忘れちゃったよ。」

 

 

戸部「隼人くん遅いじゃーん 今日休みなのかと思ったわw」

 

 

三浦「葉山くんきてくれてよかったー 葉山くんいないとつまんないしー シラけちゃうしー」

 

 

平塚「葉山HR始まっているぞ。以後気をつけるように。」

 

 

やっぱりな。予想していた通りだ。忘れないうちに、材木座への報告ノートに書いておこう。

 

 

比「葉山は、みんなから遅刻しそうになって、イジられて場の空気をなごませていたと…」

 

 

そして、次の尾行の方法について考えていると、ホームルームが終わっていた。

次の授業は、体育でサッカーをやるために、グラウンドに行かないといけなかった。

 

 

材「どうだ。八幡よ。計画は進んでいるかね?」

 

 

比「一応、朝の観察は成功したぞ。予想通りの結果だ。

リア充は違うよな〜 良く大きな声でおはようなんて、フレンドリーに挨拶できるよな。

リア充共は、アメリカ人の血でも流れてるのか?」

 

 

比「俺なんかがHRに遅れたら平塚先生の腹パンが…」

 

 

材「よし!では次なる作戦に移ろうぞ!」

 

 

比「おまえ…マジで話聞けよ…悲しくなるだろうが。」

 

 

材「八幡よ!ついに我無しでは生きていけなくなったのか?しかし残念ながら、我は男には、 興味がないのだ。だから八幡の気持ちには答えられない…」

 

 

比「材木座さん…リアルに気持ち悪いのですが…」

 

 

材「まぁ冗談はさておき次の作戦を発表する。」

 

 

なんだ?こいつ意外にコミュニケーション能力あるじゃねーか。

 

 

材「今日の授業はサッカーであろう。多分我たちはDFをやることになる。

この、機会を活かしてスポーツをしている時の葉山を観察しようではないか!」

 

 

こうして材木座の提案に従うことにした

ラッキーなことに葉山と同じチームになった。

しかも戸塚まで…やはり戸塚かわゆす。

さすがマイラブリーエンジェルなだけある。

 

 

そんなことを考えていると試合が始まった。

 

 

戸部「葉山くんパス!」

 

 

葉山「サンキュー」

 

 

葉山は、難しい体制でパスを受けながら、と相手の守備網をズタズタに切り裂くようなドリブルでゴールまでボールを運んで行く。

 

 

大岡「隼人!決めてくれ!」

 

 

葉山「任せろ!」

 

 

葉山はそういうと、絶妙なコントロールでボール押し込んだ。

 

 

戸部「葉山くん、マジぱねぇー」

 

 

大岡「さすがサッカー部のエース。」

 

 

その後も、ボレーシュートや、ミドルシュート、コーナーキックからのヘディングゴールなどで得点を量産して行った。

 

 

三浦「葉山くん、マジカッコよくない?」

 

 

葉山「ありがとう由美子。だけどこれは、このチームだからこそできたことなんだ。」

 

 

比「報告書に葉山は、スーパープレーを連発して、女子にカッコいいと言われていた…と」

 

 

体育の授業も終わり、次は社会の授業だ。まぁ、俺は文系だし、社会は嫌いじゃないけれど、

体育後ということもあり、ダルイ。

 

 

教師「えーと、では、この日本が、ロシアと結んだ講和条約の名称について答えてくれる人」

 

 

すると、葉山がすかさず挙手をする。

 

 

教師「では、葉山くん。この答えはなんですか?」

 

 

葉山「ポーツマス条約です」

 

 

教師「正解です。さすが葉山君」

 

 

俺は、葉山と近くの席だから、葉山の行動がよく観察できる。

 

 

さっきも、女子が落とした消しゴムを葉山がすかさず拾い上げるという仕草が見えた。

 

 

葉山「消しゴム落ちたよ」

 

 

女子「ありがとう\\\葉山くん…」

 

 

クソ…これがリア充と非リアの格差なのか… もうマジでリア充税を徴収しろよ。

 

 

こうして午前中の授業が終わり昼食の時間だ。

 

 

比「今日も、指定席の屋上に行くとするか。」

 

 

弁当を持ったまま階段を昇ろうとすると俺は材木座の依頼を思い出す。

 

 

比「ったく。何で俺が昼休みまで居心地の悪い教室で、リア充グループを眺めてなくてはな

らんのだ…」

 

 

周囲をここで見渡してみる。どこにも、一人で居るやつはいないのだ。もう、ランチタイムの教室は、リア充の聖域と化している。もう、ここに居座るには、空気と化すしかない。

 

 

イヤホンをはめ音楽に浸っているフリをしていると、教室の後方から、華やかな声が聞こえてきた。まぁ、俺には大嫌いな雑音でしかないが。

 

 

三浦「そーいえばさー今日の放課後どぉするー」

 

 

戸部「カラオケ行こうよー」

 

 

三浦「またカラオケー?もう、あーし飽きたんだけどー」

 

 

葉山「そうだなーダーツでもしに行く?やり方分からない人いたら、俺教えるから」

 

 

三浦「それよくなーい?さすが隼人くーん」

 

 

葉山はやっぱり周囲に合わせるのが相変わらず得意だ。それはリア充というより、クラスで孤立しないためには身につけないといけない最低限のスキルだからな。超絶リア充の葉山が習得していないはずがない。

 

 

葉山「昨日、サッカーの日本代表の試合見た人いる?」

 

 

三浦「あーしみたよー 金髪のかっこいい人ゴール決めてたじゃん?」

 

 

葉山「本田選手だな。俺ポジション同じだから、参考にしておきたいんだ」

 

 

戸部「葉山くんマジでぱねぇー 未来の日本代表候補じゃね?」

 

 

予想していた通りだ。リア充に入るための必須スキルは、協調性のみならず、場の空気の創造性も求められる。さすが王様だ。まさに、クラスでの立ち位置もホンダさんそっくりじゃねーか

 

 

比「葉山は、まさに本田状態っと…」

 

 

こうして、授業が終わり、帰宅の準備をする。今日は、部活は無しだから自宅直行コースだ。

 

 

比「さてと帰るとするか…」

 

 

材「おっ。八幡偶然ではないか」

 

 

本当に偶然かよ。オレら変な運命で結ばれてんじゃね?気持ち悪りぃ…

 

 

材「その後の作戦はどうだったかね?」

 

 

比「まぁまぁだ。これから家に帰って資料の整理をする。」

 

 

材「しょうがないな。ヒマだし、八幡の家で資料整理をやってもいいぞ。」

 

 

比「謹んでお断りだ。このツンデレやろう。」

 

 

あたりまえだ。初めて俺が自宅に入れる相手は、戸塚だけと心に決めている

 

 

そうして、帰宅後資料の整理に取り掛かる。

 

 

比「結構データは収集できたな。まずは、葉山の行動を簡略化したものをリストにしよう」

 

 

1 クラスでイジられる

 

1 体育のサッカーで大活躍

 

1 授業で挙手

 

1 消しゴムを女子に拾ってあげる

 

1 自分で話題を提供する

 

 

比「次は自分にできることは…」

 

 

比「これは…」

 

 

言葉を失うも当然だ。普通に観察していただけだから、感じなかったがどれも、俺にはレベルが高すぎる。

 

 

比「しかも、女子に消しゴムを拾ってあげるとか、双方にデメリットしかないだろ…」

 

 

俺は昔、親切心で消しゴムを拾ってあげたのだが、女子は最悪とか言って大泣きするし、男子は、比企谷菌がに触られたとかマジで可哀想だわーとかいうし…

 

 

比「はぁーもうヤダ…」

 

 

何で過去のトラウマを思い出さなくてはならんのだ… もう泣いてイイですか?

 

 

比「どれもできること無いじゃねーか…」

 

 

俺は全部に罰のマークをつける。我ながら悲しくなるぜ。

 

 

比「はぁ…現実って残酷なんだな。」

 

 

小町「お兄ちゃんどうしたんだろう…大丈夫かなぁ…」

 

 

 

 



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