貰った力で世界最強? (大庭慎司)
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第1章
01 プロローグ


|注意事項|
・ありふれた職業で世界最強:白米良先生の作品を使って、小説を書く練習を致します。
・あくまで練習であり、書き手初心者としては、情景描写が上手ではないため、世界観を感じやすい作品として、ありふれた職業で世界最強を題材としていきます。なので、ほぼオリジナルストーリーを展開して行きます。
・練習のため、書き直せる所は作者自身が原作から書き直しをしております。読みづらい理解しづらい所が多々あると思います。
・作者は、書き手としては下手糞な部類に入り、つまらない・ジョークがない・ネタがないとは思いますが宜しくお願い致します。
・南雲ハジメ、ユエ、シア、ティオ、ミュウ、ミュウママ、愛子等々、登場はほぼ致しません。(現在の予定)
・あくまで原作ストーリーを重視して、主人公側にユエ、シア、ティオ等の戦闘狂達が付くというストーリーではありません。
・登場するステータス、スキル関連はオリジナル設定も取り入れます。
・登場するオリジナルキャラクター達は、どこかの別の作品に登場しているキャラクターではありません。作者が作ったキャラクターとなります。元ネタはありません。今後、作者が本番用に使うキャラクターとなります。この場合、クロスオーバーなんだろうか。まだ書いていないけど。



主人公(女)は、南雲ハジメが通う高校の同じクラスメイトになります。
               


 今、私の目の間には絶望が広がっている。そう、絶望だ。何が絶望か、そんなもの前を見ればわかる。だって、目の前には、黒い骸骨の群れが迫っているのだから・・・・。

 

 私、鈴木凛は、絶賛絶望中である。レベルは・・・・さん、、、、さんじゅうはち。ステータスの内、魔力だけが3ケタで、それ以外が2ケタで、最弱から数えた方が早いという数値で最弱と謳われた南雲ハジメといい勝負だった。

そんな状況でも、やるだけの事はやるという性格なので、やる事は決まっている。私に出来る事は、今持っているこの武器を振るう事だけだ。

 

 天職は、魔導師であったが、王国の騎士、はたまた高校のクラスメイトからも忘れられた存在である凛に、武器の供与はなかった。それにいくら魔導師だからといえども接近戦が出来なくては鍛えようがないと思った事から、自分で武器を準備をした結果が剣だったのだ。

 

 そして、さらなる絶望が押し寄せた。

 

バキンッ!!

 

持っていた武器、唯一の武器が砕けたのだ。武器が砕けた瞬間、今までの事が走馬灯となって意識下に流れる。

 

これは、私、鈴木凛の身に起こった。SFとかファンタジーとかいう幻想が本当に幻だったと言うには些か辛すぎる世界へと転移させられてしまった不幸なのか幸運なのかわからない話である。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

その日、週の始まりの次の日のこと。それは1週間の中でもっとも辛い日の始まりであり、きっと、全世界の人々が一斉に前の日に戻ってくれと叫びたくなる。きっとそんな日の事だ。

スズキ リン・・・・鈴木という何の変哲もないありふれた苗字に、親はなぜ付けたのかわからないけど、凛という凛とした名前の私、鈴木凛は、学校への登校を実行していた。

だけど、行くのはみんなのいるクラスではない。保健室である。

 

そう、私は、不登校児の烙印を押された生徒の1人だった。

 

ドン!

 

そんな私に、体当たりを決めてくるのは同じ学校の生徒だ。

 

だが・・・。

 

「あれ、今、当たった?」

 

そう、その生徒はキョロキョロと辺りを見回すだけで、自分には気付かないで、ついには、そのまま立ち去ってしまった。

 

私は、親にすら忘れられてしまう事がある影の薄さだった。

 

当然、クラスには新学期が始まってから2~3回しか出席していないのだが、出席簿では一度も出席していない事になっている。正に、いない子状態だ。

さらにはクラスの担任にすら1度も声を掛けられていない。

 

おそらくは卒業は絶望的であった。

 

歩いていくと目の前でクラスで人気・・・・もとい、目立つ子・・・・もとい、名物生徒達が騒いでいる。

 

その中心にいるのは、確か、南雲とかいう男子生徒だ。

そして、絶対に好意を抱いていると思われるクラス、ううん、学年内で一番人気の香織さんだ。どうして、そんな子が暗そうな南雲君に興味を惹かせているのかは謎だけど、自分も香織さんみたく明るくなりたいなっと何度か思ったけど、すぐに無理だなっと思い直して、周囲を観察した。

 

一番目立つのは天之河という男子生徒だ。

 

なぜかいつも香織さんと雫という子の周りにいる、うざい男というイメージだったはず。一度も話をしたこともないし、向こうだって気付いていないだろうからどうでもいいけど、自分が香織って子だったらと思ったら、さすがにうんざりしそうだと思い直す。

 

次に、天之河君よりも少し大きいくらい、身長で言うと190センチメートルくらいかな?そのくらいはあるがっしりとした体形の坂上君、こいつもまた天之河君と兄弟?と疑問符が付いたのが最初の印象。恐らく今も変わっていない。

 

だいたい、いつも、この4人は一緒だなぁ。と、思いつつ、南雲君がなんとか逃げようとしているその横を私は通り過ぎた。

 

やっぱり気付かれないんだ。

私はため息を吐きながら、下駄箱を通り、保健室へと向かった。

 

保健室にいる水野先生は、学校内でも珍しく、私の姿をしっかりと認識してくれる先生だ。水野先生のおかげでこの高校に入れたともいえるから、私にとっては女神様みたいな先生かな。

 

私はしっかりと挨拶をしてから保健室へと入ると、水野先生は留守だった。

書置きがあって、今日は出張とのこと。保険の先生にも出張があるって今日初めて知ったよ。

 

書置きには、続きがあって、お昼からでもいいからクラスのみんなの顔を見に行きなさいと書いてあった。

私は「えー」と心の中で声を出したけど、女神様だし恩人なのだからと、しぶしぶとそれに従う事にした。

 

――――お昼――――

 

私はお昼になるとクラスへと向かった。

すでに早めの昼食は済ませていて、ただちょっとだけクラスのみんなの顔を見たら、すぐに戻るつもりでいたからだ。

 

そして、扉の閉まったクラスの前へと来た。来てしまった。心臓がドキドキと鼓動する。あまりに久々すぎて緊張がヤバいよ。何日か学校を休んでから来るとドキドキしちゃうのは誰でも一緒なのかな?まあ、私の場合は、何十日も来てないんだけどさー。

 

心を落ち着かせるために、目を瞑り、何かをごにょごにょと呟く。それは、私の心を落ち着かせるための謎のおまじない。魔法の詠唱のように唱え終わると自然と心が落ち着く。よし、準備万端だ。

 

 

そして―――。

 

 




主人公は、半不登校児です。作者も幼い頃に不登校になりかけました。
ただし、この主人公は、遠藤君のように影が薄い存在です。
遠藤君はどうやって高校に入ったんでしょうね。試験官も気づかないと思うのですが・・・。

これでいいのだろうか。初投稿なのでわからないが、まあ、問題があるなら運営が何か言ってくるだろう。

今後も改変の可能性はあります。



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02 異世界転移

教室へと入る扉の前で、目を瞑り、心の準備を整えるために自分だけの心を落ち着かせる呪文を唱えて準備が整った所で、目を開いた凛は固まった。

 

そう、どうしようもなく固まったのである。

 

目の前に、ドアはなく、壁もなく、むしろ、漆黒のツヤツヤとした質感の地面と壁を持った部屋の中に居た。

部屋の大きさは大きくはないが、自分の家の部屋と比べたら遥かに大きい。暗いために大きさは実感出来ないが、教室よりも少し広いくらいだろうかと凛は思った事を改め直して思った。

 

そして、唐突に突然に足元からの雷のような電気がバチバチっと光った瞬間、凛自身は光に包まれていた。

 

「キャッ」

 

咄嗟の事に、声を出した折にバランスを崩して尻餅をついてしまった。

 

それと同時に、頭に激痛が走り抜け、「ああ」という声と芋虫が這いずり周るかのような感覚が頭を支配すると「ううぅぅ」と声が漏れ、その突然の感覚に耐えきれず頭を抱えてその場に倒れた。

 

後からわかった事、ううん、知りえた事になるんだけど、この時、異世界転移による強大な魔力に反応して、誤作動という形である物が反応したのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

気が付けば、冷たい壁を舐めていた。

え、語呂が悪い?仕方がないじゃない。実際に地面とキスをしていたのだから。私の初キスが地面なんていうのは黒歴史にして封じておきたい。間違いなく。

そして、立ち上がって、周りを見ると、壁には一面の絵画が飾られていた。

まず、出入り口になっている両扉の上には、人物が描かれている。この人物は、男にも女にも見える中世的な顔立ちの人物が両手を広げて立っているのだ。

そして、その人物が見る先には、自然の絵がこれでもかと言うほどに綺麗に描かれている。

 

左右斜めにも描かれている絵があるが、なんだか歴史の教科書にも載っていたような絵だった。

 

部屋には大理石で作られたのではと思われる巨大な白い見事な装飾の施された柱が16本立っていて、それが軸になって巨大なドームを支えているように見えた。1本1本の柱との間に絵画を配置しているため、とても芸術的な光景になっているため、ここが美術館ではないかと錯覚を覚えてしまうが、そうではないようだ。

 

16本の柱の内側には、丸い円が描かれていて、そこには幾何学模様の線が編み込まれている。一見、ユダヤ教やキリスト教にも出てくる五芒星が頭に浮かんだが、どうもそれらとは違うようだと思った。

 

考えていても始まらないため、頭の片隅へと押しやって、両扉の扉を少しだけ開いて外を確認した。

 

地面には、金糸を使った見事な装飾をした赤いカーペットが敷かれており、壁は一面、1つの大理石から削り出されたのではと思わせる程に繋ぎ目のない白一色の壁と床でできた通路であった。先ほどの絵画のあったホールの柱と比べたら雲泥の差だが、細くなってやはり白一色でできた柱が等間隔で置かれている。

自分の記憶にはない建物に、ここが、やっぱりどこかわからなかった。先ほどの黒い部屋とも違うようだ。

 

「いったい、ここはどこだろう」

 

そんな不安を覚える言葉を独り言に履きながら、凛は、通路を進んだ。

 

建物がかなりの広さと大きさを持っている事がわかった。

それというのも、どこまで行っても同じ通路や両扉があるばかりでどこに行けばいいのかが検討が付かないからだ。

 

「どこかに見取り図はないかな~」

 

そんな愚痴を零しつつ、見つけた部屋に3人の女性がいるのがわかった。

私が見つけた時、丁度その目の前で、扉が開いて、3人の内1人が出て来た所だった。

私は、声を掛けようとしたがその女性が気付かず、そのまま立ち去ってしまったので、中に見えた女性に話しかけようと半開きになっていた扉に頭を突っ込んで、中の女性陣に視線を向けたが、向こうは気づいていない。

 

なので、情報収集もかねて、中へと入り、部屋の隅の壁に背を当てて、少しだけ話を聞く事にした。

 

「ねえ、あんな子供たちで、大丈夫なの?」

「あまり、そういう事は言わない方がいいと思うよーぉ。

でも、確かに心配よね」

「ねね、さっき一番に声を上げた子。たしかアマガエルだっけ?」

「違うわよ、アマノガワゴウキよ」

「そう、そのアマノなんたらって子、見た目は凄くカッコいいのにさ、なんか凄くうざそうな感じがしたのよ」

「たしかにねー、でも、ああいう子でも、周りの子を引っ張ってくれるっていうなら使うべきだと思うわ。」

 

それから、女子会のようなトーク続けていく。

そろそろ別の部屋へ行こうかなと思っていた矢先に会話が出る。

 

「あの子達もかわいそうよね」

「ん、なにが?」

「だって、体のいい誘拐じゃない」

「しっ!!しーーーー!!しっだってば!!誰かに聞かれてたらどうするのよ、ただじゃすまないわよ」

「誰も聞いてないわよ。」

「そうは、言ってもねー」

「だって、あの子達のおかげで人類が勝って、すべてが終わった後って、帰れないんでしょ?」

「ま、まあね」

「その後は、エヒト様への供物になるって話じゃない」

「すべてじゃないわよ。

 国への恭順を示した者は生かし、そうじゃない者達は、送還の儀を行うフリだけして、エヒト様へ捧げるそうよ」

 

なんかとんでもない会話を聞いてしまったようだった。

 

そして、別の会話へと移ろうとしている所へ別の給仕が入ってきて、2人をつまみ出した。

 

その給仕は、さらに上位の存在のようで、2人を睨むとくるっと後ろを向いて、口を開いた。

 

「さあさ、勇者様達が次の目的地である【ハイリヒ王国】へと行きます。見送りしますよ」

 

そのまま、その天之河君の所へ案内してくれるようだったので、後ろを勝手について行くと、丁度よく、自分の知っているクラスメイト達が外へと出てくる所だった。

 

どうやらほとんどのクラスメイト達が巻き込まれたのだと言う事がわかり、凛は、不安からの安心感を持った。

 

私はみんなの最後列に混ざり、後に続く事にした。

 

 




今後の課題は、ネタを入れる事と、面白い文章を書く事ですが、前途多難です。それから、複線の挿入と回収も視野に入れて行きたいですが、これも前途多難です。

今後も改変の可能性はあります。



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03 ステータスプレート

 クラスメイト達の後を追って着いた先は、この建物の正面玄関ともいえる巨大な門の前だった。途中で男子生徒の話している声に耳を傾け、ここが聖教教会という宗教施設であり、その総本山である事を知った。

 

 聖教教会の正面門の大きさは雷門くらい、ううん、違うね。なんて言ったかな。フランスにある雷門くらいの大きさだね。え、フランスに失礼?しょうがないじゃん、思い出せないんだからさ。

 

それは、ともかくとして、その門から出た私とクラスメイト達は目を奪われた。そう、雲海が拡がっていたのだ。雲海があるって事は、ここは山の上という事だと気づく事が出来た。

その見事なまでの雲海を目と心に焼き付けていた。

 

私が、その雲海に見惚れている間に話は進み、いつの間にか空に浮かぶ光る階段をみんなが降り始めていた。

一番煌びやかな衣装を着た老人を先頭にクラスメイト達が降りていく。

最後尾には、神官と思われる人達が続き、光の階段が消え始める。

急いで、最後尾を追い、光の階段が消える前に次の足を乗せるというマ〇オ〇ラ〇ーズでお馴染みの光景となっていた。

およそ、最初の1キロメートルをフルマラソンで、ある程度追いついた所でジョギングとなり、降り階段でだが・・・・とてもいい運動になった。

 

~~~~~~~~~~~~

 

 ・・・・とは行かず、鍛えていない体での命がけ3キロメートルマラソンはさすがにきつく、地上に着いた時にはそこから一歩も動けない状態となっていた。

 

それでも誰も気づいてはくれなかった。ぐすん。

 

 そのため、この後、行われた玉座の間での王の言葉や騎士団長等諸々と全く全てのイベントには参加していない。

 

 その代わり、ある程度の休憩をした凛は、【ハイリヒ王国】の城内を探索していた。聖教教会とは違った内装に心が躍る。

すれ違う騎士、すれ違うメイド達と全く気付いていない。

むしろ、凛は避けるのに必死になるくらいだ。何故かといえば、気付いていないという事は、全力疾走で衝突してくるという事にほからないわけで、そんなので当たったら痛いからだ。

 

 そうして辿り着いた先は王立図書館だった。

そこで、王立図書館が閉館するまで、この世界の事についての本を読み漁ったのであった。

 

 閉館した後は、晩餐が行われている会場に忍び込んで、適当に見繕って食べるという事をしてから、どこかへ帰るクラスメイト達の後に続いて、空き部屋となっている部屋に入り込み床に寝る事になってしまった。

 

 次の日、疲れていたにも関わらず早めに起床した私は部屋を出て、少し城内を歩いていると、メイド達が世話しなく動いている現場に差し掛かった。どうやらクラスメイト達の寸法を昨日の内に測っていて、寸法の合う衣服を倉庫から出している所だったようだ。

 

 どうせ私には配られない事は予想済みなので、メイド達が出て行った倉庫へと足を運び、中にあった衣服を適当に見繕った。必要なのは、シャツと動きやすいズボンを数着と靴である。靴は、城ということもあって、革ひもブーツタイプしかないようだが、動きやすさ重視なのでそれでいいと私も思った。

 

シャツとズボンも男性用女性用というのはなく、一律で同じのしかない。ただ、違うのはサイズで、おおまかに分かれているくらいだ。城には、男の騎士も居れば、女の騎士もわずかながらに居たので、そういう人たち用なのだろうと思う。

 

シャツとズボン、靴とタオルを手に入れた後は、井戸へと行き、体を水拭きであるが洗った。少し寒いです・・・・くしゅん。

 

~~~~~~~~

 

 みんなが起き出して、しばらく経った頃、ついに訓練と座学が始まった。

 

まあ、だいたい、こんな事だろうなと思っていたので、私も素直に参加することにした。だって、知らない土地で何も知識がないというのは死活問題なんだから、当たり前でしょ!

 

 講義は、先日に王立図書館で見た事とは違う内容だったので、楽しめたのだけど、私には座る席がないのね。いや、私だけじゃなくて、確か、遠藤って男の子も座る席がなくて、一番前で地面に座って勉強してた。あの子も影が薄いんだね。でも、私は気づけた。同類だからかな?向こうも気づいてる?

 

 訓練では、十二センチ×七センチくらいの銀色って表現をしていいカードのような物が配られた。配られたプレートをみんな、不思議そうに見ている。

あ、私の分がない。あ、遠藤って男の子もないようだ。余った分は、騎士団長とは別の団員の後ろにある机の上か。貰ってこよっと。

 

 案の定、遠藤が先に持って行って、プレートをまじまじと見つめている。私もプレートを取って、元の位置へと戻った。

 

 「よし、全員に配り終わったな? このプレートはステータスプレートと呼ばれている。文字通りの事だが、自分のステータスを客観的に数値化して示してくれるものだ。これは、最も信頼できる身分証明書でもある。これがあれば、例え迷子になったとしても平気に戻ってくることができる。失くすんじゃないぞ!」

 

 非常に快活で豪快に話す騎士団長。あ、そういえば、騎士団長って名前なんて言うんだろう。私、知らないや。

 

「これから戦友となる者達に対して、敬語など使って、他人行儀に話せるか!」

 

と言って、部下達、騎士団の面々にも聞こえるように話していた。

 

 確かに、それには共感できるなと、私は思う。たしか、父もそんなこと言っていたっけ。「一緒に危険な現場で行動するのに部下も上司もない。そんなことを言っていたら立派な消防・・・」うん、たしか、そんな感じだ。

 

みんなもその方がいい!というような顔をしているなー・・・。

 

「ここの部分に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、プレートと一緒に渡した針を使って、魔法陣に血を一滴垂らすと、それで所持者登録ができる。それからだな。“ステータスオープン”と言葉を発しろ。すると、そこに自分のステータスが浮き上がって表示されるはずだ。

あと、なんでそうなるのか?なんて事は聞くなよな。俺だって知らん。神代のアーティファクトだからできる!そう思っておくことだ。」

「神代のアーティファクトですか?」

「そうだ!」

 

みんなを代表して、天之河君が聞いた所、騎士団長が相槌を返した。

 

「アーティファクト・・・・、単的に言えば、現代じゃ再現も作成もできない強力な力を持った魔法の道具、魔道具のことだ。

だいぶ昔の話だ。この世界に神エヒト様やその眷属達が地上にいたとされる神代と呼ばれる時代に創られたらしい。そのステータスプレートもその一つという事だな。この世界に広く普及しているアーティファクトとしては唯一の物になる。

普通はな。アーティファクトといえば、国家が機密や国宝といった感じに秘蔵するものなんだがな。

このステータスプレートだけは、身分証に便利なんでな。一般市民にも流通させているってわけだ。だから細かい事を聞いても答えられんぞ」

 

 クラスのみんなは、“なるほど”という顔をしながら、指先に針を差し込んで、浮き出た血をプレートの魔法陣へと当てている。すると、パアアァァっと光が漏れ出てステータスが浮き上がっていた。

ただ、他人からは見えないのか、みんなのステータスが見れないでいた。後から知った話になるんだけど、ステータスを外部から見られるようにするON/OFF機能があるようだ。

 

私も・・・・と思ったが、針がない。うーん、悩んだけど、後でいいや。と流す事にした。

 

でも、それで良かったとも思った。みんなのステータスプレートから光が上がっているのだ。ここで同じ事したら、私、気付かれちゃうかもしれないしね。

 

あれ、私、気付かれたくないって思ってる?

 

 騎士団長からステータスの説明がなされた。

 

「 みんな見れたか?説明するぞ。

まずは、最初の所で、レベルがわかる。

レベルは、各ステータスが上昇する時に一緒に上がるんだ。上限は100!!100だ。人間は上限が100で止まる。100以上行ったら人間じゃないからな。そんな奴はいないだろうな?まあ、それが人間の限界であり、能力が全開放された極地にいるということだ。そんな奴は早々いないから安心しろ。

さて、次はステータス上昇についてだが、日々の鍛錬だけでもステータスは上昇するぞ。後は、魔法だ。魔道具を使っても上昇するな。それとな、魔力値が高い者は総じて他のステータスも上昇値が大きくなる。詳しい事はわかっていない、だから俺に聞くなよ。そういうもんだって思っていてくれ。」

 

騎士団長は一旦区切ると、全員を見渡す。その視線は私から外れている事から、気付いていないようだ。同じように遠藤君も外れている。

 

「次は“才能”の欄だな。これは“天職”と書いてあるはずだ。初期状態のステータス欄の末尾に記載されているスキル欄と連動していて、その天職に関係する物には無類の才能を発揮できるとされている。なにせ天職持ちは少ないからだ。戦闘系と非戦系天職という2つに分類されている。戦闘系は、千人、万人に1人というくらいだ。非戦系は戦闘系と比べたら全然多い・・・な。百人もしくは十人というくらいだし、生産職はだいたい持っている事が多い。そういう事だ。ま、勇者諸君は、全員戦闘系だよな。わっはっはっは!」

 

ふう、なかなかと話したな。という感じに騎士団長を腕を動かして、額の汗を拭った。そして、自分のプレートを持ったまま口を開く。

 

なかなかと発破をかけてくれる。これで非戦系だった場合は、いじめの対象ですか?と凛を心の中で思うだけで口には出さない。

 

「ステータスの数値は見たままだ。大体の者達は、レベル1ならステータスが平均10くらいだな。まあ、お前たちは勇者だしな。その十倍くらいはいくんじゃないかと俺は期待している。それとな、ステータスプレートの数値は全員報告をしてくれ。後で訓練の方法を考えなきゃいけないからな。」

 

騎士団長はそこまで言うと、区切った。すると、そこへ後ろに控えていた騎士団員が慌てて、耳打ちをする。

 

「そうそう、言い忘れておった。後でお前ら全員、勇者用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の英雄様御一行だって言うもんだから、国の宝物庫を開放してくださるそうだぞ!」

 

騎士団長は、危なかったという顔で、後ろに控えた騎士団員に謝辞を示して、前に向き直った。

その後は、天之河君を筆頭にステータスを報告していき、南雲君が報告した所で、いじめっ子達が騒ぎ立てた。

 

それを見て、担任が止めようとしているが止まる気配はなく、いじめっ子達はエスカレートしていく。

私は近くに落ちていた石ころを拾うと、放物線を描くように投げた。

 

ゴスッ

 

酷い音を立てて、からかっていた生徒筆頭の子の頭に直撃した。その生徒は気を失ったかのように、プレートを落とすと倒れてしまった。そのプレートを担任が拾い、南雲君へと返すと倒れた子の元へと戻る。

 

すでにその子には騎士団員付きの回復術師によって回復をさせられていた。

意識を取り戻した生徒はすぐに犯人を捜そうとしたが、女子生徒達に「あんたの行為に神様が怒ったんじゃないの?」と言ってからかっていた。

 

その日の夜、自室として、使う事に決めた何もない部屋に布団を持ち込んで生活を始めていた。そして、昼間出来なかった事を始めた。

 

ステータスプレートを配った日の午後は、全員に宝物庫から持ち出された武器が全員に提供された・・・が、自分はステータスを見ていなかったのが仇となり自分にあった武器を貰う事が出来なかった。

 

仕方なしに騎士団員が持つ一般の剣;ロングソードを拝借しておいた。理由は1つ、針がなかったからだ。それでその日は解散となったので、自室の手入れを行ったのである。

 

「いっ」

 

ロングソードの剣先で、指に傷をつけ、それをステータスプレートの魔法陣のある部分に当てる。すると、淡い緑色の光源が発生し、プレートの全面に浮き出るようにして、ステータスが表示された。そこにあった数値は驚くべきものだった。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:1

天職:魔導師

筋力:5

体力:8

耐性:4

敏捷:5

魔力:10

魔耐:10

幸運:10

残りポイント:0

スキル:ゲーム感覚・経験値上昇[+10%]・言語理解・????

===============================

 

「ないわ・・・」

 

私は、空の見えない天井へ向いて、そう口にした。

 

 

 

 

 




誤字・脱字の可能性がありますが、会話に関しては誤字・脱字ではありません。あくまでそういう表現とします。
現実会話でも間違えて言っても、聞き手はある程度、脳内翻訳で会話が続きますよね?そういう感じです。


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04 最弱

 凛が、天職とは関係のないスキルと最弱のステータスを突き付けられてから2週間が経とうとしていた。

 

 現在、凛は、訓練と食事の時間以外のすべてを王立図書館で知識を蓄えようとしていた。寝る間を押して、知識を貯めている。そのためなのか、技能欄に早読というスキルが増えていた。そして、そのためなのか、すでに王立図書館内の本の3分の1を読破しようとしていた。戦闘系を40%、魔法に関する書物を50%、ハイリヒ王国近辺の地図とモンスターに関する記述を10%だ。

 

 そして、その王立図書館には、南雲ハジメという生徒もいた。互いに関わらないように南雲が北なら凛は南の席に座り本を読みふける。そんな南雲は周りを気にしていられないと一心に本を読んでいたため、結局、凛に気付く事はなかった。

 

 なぜ、本を読んでいるのか、それは2人共、ステータスが絶望的なまでに低いからである。凛が南雲ハジメのステータスが低いとわかったのは初日からで、いじめっ子グループが南雲ハジメに対して言っていたからだ。ステータスの内容に関しては声に出していなかったのでわからないが、自分と同じような物だろうと思っている。それ故に、訓練場から離れた片隅で剣を振っていてもそれが訓練になっているか謎だった。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:3

天職:魔導士

筋力:15

体力:10

耐性:4

敏捷:13

魔力:10

魔耐:10

幸運:10

残りポイント:0

スキル:ゲーム感覚・経験値上昇[+10%]・言語理解・早読[+20%]・????

===============================

 

 色々と調べて分かった事だが、このステータスプレートには、スマートフォンと同じように画面をタップ、スワイプするだけで操作が出来、機能には、画面を外側に表示させる機能とさせずに画面内で見る機能がある事がわかった。それからは、プレート内表示だけをさせている。

 

 スキル説明だが・・・・。

 

 ゲーム感覚は、レベルアップ時に手に入れる数値を落とす代わりに一定の数値を任意のステータス数値に割り振るスキルだった。1レベル毎に 10ポイントのステータスポイントが手に入り、割り振る事が出来ると いうものである。

クラスのみんながレベルアップ毎にどんどんと動きが早くなる中、自分 は早くなっている感覚がないという事で、実質、死にスキルだとわかった。

 

 経験値上昇は、何かしらの行動で入る経験値を人より10パーセント増量するスキルだという事がわかった。これは凄まじくレアなスキルだという事がわかったが、ゲーム感覚が死にスキルすぎて使えるかわからない状態だった。下手をしたら、みんなが4桁という数値に達している時  に、自分は3桁もしくは2桁で上限という可能性があるからだ。

 

 言語理解は、どんな言語も解して訳するというものだ。これがあれば、英語だろうが、アラブ語も未開地域言語もペラペラというわけだ。

 

 早読は、字を読むのが早くなるスキルだ。読んでまんまだ。現在は20パーセント程、字を読むのが早くなっているらしい。

 

 ????は、まるでわからない。いや、分かった事が1つだけある。どうやら必要魔力値が足りていないようだった。必要魔力値がどのくらいかはわからないが、それに達すれば自ずと解放されるようだ。

 

 果たして、南雲ハジメ君とどっちが最弱なのかな?

 私は、必死に書物を読む南雲ハジメ君に視線を移し、そして戻した。

 

 そして、現在のステータスからわかっている事だが、私に魔法の才能はないようだ。なぜならスキルに魔法の関係が一切ない事。それが尤もらしい理由だった。

 天職には、魔導士とある。なのに、スキルには魔法関係が一切ない。これは完全に詰んでいるのではないかと思うに至るには十分だった。故に私は、実技訓練は剣を振っているわけだ。ステータスの割り振りも筋力重視である。

 

 魔法適正とは、魔法を扱う上で最重要事項の事だ。この適正があるとないとでは、注ぎ込める魔法のバリエーションに差が出る事を意味する。

 この世界における魔法は、体内に蓄積されている魔力という媒体を詠唱により魔法陣へと移し、魔法陣に組み込まれた魔法式を持って発現へ至るプロセスを持つ。魔力を直接操作する事は人間には出来ないとされているため、空気中に魔力があるのかないのかは未知の領域なのだ。そのため、魔法を発現させるためには正しい知識を元に魔法陣を構築する必要に迫られる。魔法陣を構築するに当って、発現するための言葉もある程度、決まっているため、効果の複雑さや規模を変えるだけで書き込む式もおのずと増えるのだ。

 

―――――それは魔法陣の巨大化を意味する―――――

 

 例えば、見た目ファイヤーアローという魔法を放っている生徒がいるとする。

 この生徒に適正がなければ、属性・威力・射程・範囲・体内からの魔力吸収という式が必要で、それを魔法陣に組み込むと直径十センチ程のサイズとなる。これに、誘導や持続時間などの追加要素を入れれば、さらに魔法陣は大きくなる。

 

 これに対して、適正というものがある。適正に火があれば、最初に属性の項目が消える事になる。次に威力や射程という適正があれば、その項目は消え、魔法陣はさらに小さくなる。もしくは追加の要素をそこに注ぎ込めるという具合だ。

 魔法を発動する時は、その属性や射程といったイメージを頭に浮かべるだけでいいという事なので、それほど難しいことではないだろう。

 

 この世界の人たち、人間に限る、人間と亜人しか調べられていないが、何らかの適正を持っているのが普通らしく、ない者は珍しい部類なのだそうだ。

 凛の場合、ステータスプレートを見る限りは適正が全く不明だったため、適正なしとなり、全部の式を書き込むと直径2メートル程の魔法陣となるため、実践では役に立たないという状況に至ったのだ。

 

 とりあえず、天職が魔法系という事なので、城内を勝手に漁って、特殊なインクを使った紙に魔法陣を書いて、魔力を込めると発言する使い捨てタイプの紙に穴を開けて多層構造とする事で2メートル程の魔法陣を6枚に分けて重ねて使用する事で魔法を使うという荒業を編み出したものの、所持する紙がメモ帳の厚さになってしまうので、どうしたものかと頭を抱えている所である。所持する魔法はすべて雷属性の貫通型である。とにかく速度と貫通と射程重視の物にした。速度と貫通が高ければ、自ずと攻撃力は高くなるという認識の元でだ。

 後は鉱物に書き込んで使用するタイプだが、こっちは身体強化をする魔法を選択した。とにかく体だけでも動けば、この危険な世界でもなんとかなると思ったからだ。

 

 と、思いつつもため息は尽きない。

 

 反対側の席で読む南雲ハジメに向けて、独り言をつぶやく。

 

「南雲君も、空気になれたらいいのにね」

 

 その向けられた南雲ハジメもため息をつきながらステータスプレートを覗き込んでいたからだ。

 

 南雲ハジメ君と私で決定的に違うのは、影の薄さかもしれない。

 そういえば、遠藤君は見ないな。と、ふと思ったのである。その遠藤は、スキルにて隠蔽系を持っている事など露として知らないのだが。

 

 そして、2人して、同じ事を考えているとは凛と南雲は露と知らないのだ。

 

「「(いっそ、旅にでちゃおうかなー)」」

 

なんて・・・・。

 

 だけど、ここでも違うのは、南雲ハジメは、先のことをある程度思い老けて考えているのに対して、凛は行き当たりばったりで特に何も考えていなかった。

 

~~~~~~~~~

 

 少し早いが、南雲ハジメ君よりも先に王立図書館を後にした私は、訓練場へと辿り着いていた。そこで見たものは、何やら良からぬことを相談しているいじめっ子達の姿であった。

 

「で、南雲が来たら、あそこの裏に誘い込んでな。ボコボコにしてやろうぜ」

「ああ、あそこならわからないだろうしな」

「それにな、戦力にならないアイツを潰したとしても王国からは感謝されっぜ。だってよ、俺たちは戦力になるからいいとしても、1人当たりにどんだけの訓練費用をつぎ込んでっだって話よ」

「ああ、うん、なるほど、確かにそうだな」

 

 なんて会話をしているのを聞いた。そこで私は、南雲君に知らせ・・・・いや、ダメだ。一度も会話したことないし、男の子には話しかけづらいな~。いやいや、そうじゃない。話しかけるんじゃなくて、メモ用紙にあいつ等が待っているって事を書けば・・・・。うーーん。でも、ダメか。

 

「よし、決めた」

 

 私は行動した。それがどんな結末を生むかも考慮しないで、動いたのだ。

 

 いじめっ子が南雲君を待ち伏せしてて、訓練場の裏手へ連れて行こうとしている事をメモ用紙に書き、それを紙飛行機にする。そして、それを香織がいる場所へ向けて飛ばした。

 

 残念ながら香織に紙飛行機は当たる事はなかった。

 香織の大親友にしてボディガードである八重樫 雫によって香織に当たる前に取られたからだ。

 雫は、紙飛行機を取るとすぐに犯人捜しをしようとしたが、香織が紙飛行機を取り上げた事で視点が紙飛行機へと移った。そして、表面に文字が書いてある事を見つけた香織によって紙飛行機を広げられると、そこには私の文字があって、それで、香織と雫は頷き合うと訓練場へと向けて走って行った。

 

 私は見送る事しかできなかったけど、きっと・・・大丈夫だよね。

 そう、私は心に付け足した。

 

~~~~~~~~~

 

 その日の訓練は一段と厳しかったらしく、みんな・・・もとい、一部のステータスが低い者達は、みんな屁立っていた。この後は自由時間で、夕食があるはずである。

 私は、気付かれていない事をいいことに離れようとしたが、どうにも状況がおかしい事に気付いた。

 

 騎士団長は全員を集めると、活気のある声で発した。

 

「明日からだが、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。講義でも言ったが、大迷宮は非常に危険な場所となる。必要な物は此方で用意しておくが、今までの訓練とは一線を画すと思ってほしい。

まあ、要するにだ。気合いだ。気合いを入れ直せってことだ!今日はゆっくり休んで明日に備えろ!では、解散!」

 

 伝える事を伝えると騎士団長は、その場を離れた。

 残されたのは、友人たちと会話を始める生徒達だ。私もすぐにその場を離れた。おそらく移動は、馬車だと思う。

 この世界での移動手段は、車やバスや飛行機といった物はない。なので必然的に馬かそれに類似した物となる。よって、馬車しか考えられない。

 

 そうなると、私に席があるのか?という疑問がまず頭に浮かんだ。

 

 

―――――移動手段を考える必要がある―――――

 

と。

 

 



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05 トラップ

【オルクス大迷宮】

 まず、大迷宮とは、この世界における有数の危険地帯をいう。

 

 これは大前提である。その中の1つにオルクス大迷宮と呼ばれる場所がある。今回の目的地はここだ。

 

 確認は取れておらず憶測だけではあるが、全100階層で構成されているとされている大迷宮だ。この世界における大迷宮は後に知る事になるのを合わせて全部で7つあるらしい。その内の1つということだ。

階層が浅ければ、大して強くもない魔獣が出現し、逆に深くなれば、なるほど強力な魔獣が出現する典型的な男子の言う処のダンジョンである。

 

 だが、危険にも関わらず、この迷宮だけは冒険者や傭兵に新兵と、とにかく訓練をするのに非常に人気があるのだ。その理由としては、2つが挙げられる。

 

 1つ目、階層によって魔獣の強さが変わるために、自分の力量が測りやすいということ。

 2つ目、出現する魔獣が地上世界にいる魔獣と比較して、遥かに良質で魔力を含んだ魔晶石を体内に抱えているからだということだ。

 

 魔晶石とは、魔獣を魔物たらしめる力の核だという話だ。強力な魔獣ほど良質で大きな核を保有しているというのが定説。そして、この魔晶石は、魔法陣を作る上で非常に重要な材料となる。魔晶石は粉末にしてから染料として、使用した場合、最大でも3倍の効果を発揮するそうで、かなり重要な資源となっているようである。

 

 つまり魔晶石を使った方が魔法が効果的に使える。という事だ。その他、日常生活でも魔晶石は原動力として使われている。魔晶石を使う道具で最たる例は、魔法具である。

 魔石は、官民問わず必要とされるために、需要が高く、常に不足気味である。故に高価なのだ。そして、さらに良質な魔晶石は高価だという事であるが、それは、固有魔法が原因である。

 優秀な魔晶石を持つという事は、強力な固有魔法を扱う魔獣が居たという事にもなっている。

 

 固有魔法とは、魔獣のみが扱う事が出来るとされている詠唱いらず、魔法陣いらずの唯一の魔法を扱う魔法である。1つの魔法しか使えない代わりに即座に放つことができる魔獣が危険たる理由である。

 

~~~~~~~~~~

 

 現在、クラスメイト達は、【オルクス大迷宮】の入り口に集まっていた。

 その遥か後方のさらに街外れにあるに木の根元に私は寄りかかりながら粗い息を吐きながら座っていた。

 事の顛末は、【ハイリヒ王国】の王都を早朝にみんなは出発したのだが、私は、さらに早くに出発していた。

 前日までに騎士団の用意してあった魔力回復薬を、城内にあった誰かのリュックへと詰め込み、みんなが出発するよりも早くに出発したのだ。

 身体強化の魔法を使用して、ひたすら走った。だが・・・・ただ走るというのは想像以上にハードな事だった事に後から気付いた。

 この世界では、道路の舗装等されてはおらず、ホルアドの街へと来るまでに馬車には抜かれ、1日遅れで到着というわけである。

 

 そして、走っている途中である事に気付いた。

 今までは安全な場所でステータスを割り振っていたので気付かなかった事なのだが、ステータスを振っている最中は時間が止まる。

 自分の体も動かなくなるが、頭と目、腕は普通に動いたのだ。つまり、レベルアップがうまい具合にハマれば、時間を停止させて状況の確認が出来るという事を意味していた。

 

 そして、さらに発見する。

 レベルが上がると、体力と魔力が全回復するようだ。これにより、なんとか【オルクス大迷宮】のあるホルアドの街まで来ることが出来ていた。

 

 だが・・・・。

 

「もう、さすがに走りたくないな~」

 

 そう、呟きながら、自分のステータスを確認する。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:13

天職:魔導師

筋力:27

体力:22

耐性:16

敏捷:17

魔力:125

魔耐:22

幸運:11

残りポイント:0

スキル:ゲーム感覚・経験値上昇[+20%]・強歩[+20%]・聞耳・言語理解・早読[+20%]・????

===============================

 

 レベルが10を越して、レベル11になった所で、割り振りポイントは10から15へと増えたようだ。この分なら、レベルが20を超えたら割り振りポイントは20へ増えるのだろうかと期待してしまう。

 

 また、全体ステータスの内、魔力値の最大値が10増える度に他のステータス値が1づつ増える事に気付いたため、現在、魔力値にしか振っていない。

 

強歩は、歩く時、走る時に足の速度が上がるスキルのようだ。最大上昇幅はよくわかっていない。

 

聞耳は、読んで字の如く。聞耳を立てるスキルである。おかげで遠くの人たちの会話が隣で会話しているかのように聞こえた。此方は最大効果範囲がわからない。

 

 なんかもう、魔法とは全然関係のないスキルに項垂れるしかないが、私は、この世界で生きていけるのかと疑問に思うくらいだった。

 

 みんなのステータスはどうなっているのか本当に気になるわ。

 

「今までいなかった人が目の前に急に現れたら、きっと、いい気はされないだろうな~」

 

 そんな独り言が漏れていた。

 と、そんな事を考えていたら入場が始まったようである。クラスメイト達が続々と入場していくようだ。私も急いでみんなの最後列に続いて中へと侵入した。

 

 本来は受付にてステータスプレートを見せて入場登録をする必要があるのだが、今日、この日は、勇者様御一行とあって、先に受付を済ませていたという事もあり、話を聞いていなかった凛は登録をせずに入場してしまっていた。

 

 入場を管理する担当官も凛の姿を認識出来なかった事も大きい。

 

 大迷宮の中は、外の喧騒とは打って変わり、静寂が支配していた。

 私個人の感覚としては、縦横とも相当に広い。乗用車横に3台分以上はある通路、それに明かりもないのに緑色の発光体が当たりを照らしており、松明や明かりの出る魔道具がなくても十分な程の明るさだった。

 

 騎士団の人と会話している生徒の話では、これは、緑光石という異世界ならではの特殊な鉱石が多数埋まっていて、それが光源となっているようだ。【オルクス大迷宮】というのは、そんな鉱石が沢山埋まっている場所を掘って出来上がっているらしい。

 それに、この緑光石の光はどことなく明かりの出る魔道具の光に似ている気がした。恐らく、材料はこれなのかな?と疑問符を浮かべている間にもクラスメイト達は先へ先へと行ってしまっていた。

 

 私は、急いでその後を追うが、、、、絶賛、見失っていた。

 と、そんな時、壁に空いた隙間から灰色の毛玉のような生物が這い出てきた。

 よく見れば、その灰色の毛玉に見えたのは背中の部分で、上半身はムキムキとした筋肉の塊というイメージが強いネズミだった。目は赤黒いし、ちょっと怖い。でも、図鑑で見たのと違い、だいぶ可愛く見えた。

 

「あー、触りたいな~。でも、ダメなんだよね。ごめんね。」

 

 私は、そう言いながら、ネズミ型魔獣ラットマンのすぐ脇まで来て、携帯していたロングソードを引き抜いて、ラットマンの急所である首の付け根に剣を振り下ろした。

 

 ラットマンは一撃で絶命し、音もなく倒れた。

 剣に伝う血の感触、初めて獲物を切った感触に感慨に浸る。初めは切ったらもう、現実に戻れないのではないかとか、絶対嘔吐する。とか、そんな事を思っていたけど、意外と普通だった。

 

「これが命を奪う感覚・・・・講義では、魔獣は、生き物ではないから殺したとしても生殺与奪には当てはまらないと言っていたっけ」

 

 ふと、気が緩んだその時・・・・。

 

ピピッ

 

システムメッセージ:「レベルが上がりました」

 

というメッセージが耳に聞こえた。

 

 そう、これも新たに発見したスキル:ゲーム感覚の一部だ。

 レベルが上がる度に、このメッセージが流れるのだ。もっと前から気付いていても可笑しくはないが、気付かなかった。しかも、強制的にステータス割振の画面へと移行するのだ。どこかでこの強制を止める事が出来そうだけど、わからない。

 

「うわ、レベルが2も上がってる」

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:15

天職:魔導師

筋力:29

体力:24

耐性:18

敏捷:19

魔力:155

魔耐:24

幸運:11

残りポイント:0

スキル:ゲーム感覚・経験値上昇[+20%]・剣術・必殺・強歩[+20%]・聞耳・言語理解・早読[+20%]・????

===============================

 

「あ、スキルが増えてる。でも、魔法じゃないな」

 

 ステータス割振ポイントは、魔力に一点振りだ。

 これは、魔力が増えれば増える程、周りのステータスも上昇するためだ。魔力が10増える度に、周りのステータス、筋力や体力等が1上がる。だから、魔力に割振れば総じてステータスが上がる事がわかった。また、魔力が100に到達する度に、恐らくは幸運値が1上昇するようだ。まだ1回しか上がっていないので、なんとも言えないのだけれども。

 

 その後も、みんなと逸れながらもラットマンを狩り続けた。

 

 そして、みんなと会えないまま、20階層へと到達する。そこでやっとみんなの後ろ姿を確認するに至った。

 

 大分レベルも上がり、みんなと遜色はない・・・・いや、まだ全然って感じがするな、と毒気を吐く。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:38

天職:魔導師

筋力:82

体力:77

耐性:71

敏捷:72

魔力:680

魔耐:77

幸運:16

残りポイント:0

スキル:ゲーム感覚・経験値上昇[+40%]・剣術[+強打]・必殺[[+博打][+幸運]]・強歩[+30%]・観察・聞耳・言語理解・早読[+20%]・????

===============================

 

 スキルも追加要素がどんどん増えている。当初から比べれば、もう別人と言われる程であるが、まだ、クラスメイト達とは雲泥の差があるのではないかと心は思っている。

 

スキル:観察によって、離れた所にいるクラスメイト達の後ろ姿を確認する事が出来たが、明らかにみんなの方がステータスが高く見えるのだ。

 

 観察スキルは、隠蔽した者を発見したり、相手が強いか弱いかを判別できるスキルだが、絶対ではないと書かれており、確実には信用できないスキルのようだ。

 

 あと少しで、みんなにも追いつくし、今日の到達限界点である空間があるはずだが、ぶるりと震えが来た。恥ずかしくて言えないのだけど、〇〇です。

 

 また、みんなとは違う道へと行き、お花を摘みに行く。ダンジョン内に生えているわけではないけど。

 

 用を済ませた私は、みんなの後を追った。

 最後のホールとなる空間に到達した私は、みんなの姿を確認しようとするが、そこには誰の姿もなかった。

 予定を変えて、次の階層へ向かったのだろうか。それともみんな、もう帰還した?でも、確か、現在の魔法技術では帰還魔法はなかったはず。じゃあ、どこへ?

 

 そんなことを思っていると、スキル:観察が働いた。

 

 岩と思っていたのは岩石に化ける能力を持ったロックゴブリンだった。 体被はそんなに硬くないはず。

 

 それにロックゴブリンは、私に気づいてはいない。今なら殺れる!

 

「えい!」

 

 ロックゴブリンの急所に剣を突き立て、トドメを刺す。

 すると、仲間が気付き、そのロックゴブリンが此方を見るが、当然のように、私には気付かず、絶命した仲間を不思議なように見ている。

 

 そして、続けざまに殺していく。全部で36匹。多すぎでしょ。岩だと思っていたほぼすべてがロックゴブリンだった。

 

 倒した死体は、一定時間で剥ぎ取り行為を行わなければ、迷宮に吸収されてしまう。そして、新たな魔獣として復活するのだ。

 

 実際に剥ぎ取りをせずに待っていると、ロックゴブリンの死体は、迷宮に吸収されてしまった。とても不思議な光景だ。

 

 これが、人間だった場合は、何週間か死体がその場に残されるのだという。全くもって不思議な話だ。

 

 レベルが上がり、スキルが追加された。気配感知と気配遮断というスキルだ。ますますと剣士に寄っている気がする。

 

 ふと、見上げると綺麗な水晶が輝いていた。たしか、グランツ鉱石だったかな。特別な効能や効果があるわけではないが、とても高価な鉱石だったはずだ。その理由は、王侯貴族達に大人気!というくらいに装飾に気を使うご婦人方に人気があるからだ。確かに、加工したらすごく綺麗そうだもんね。でも、なんであんなに輝いているんだろ?さすが異世界だね。

 

「今の私のステータスなら、あそこまで登れるかな」

 

 そう、独り言ちると、崩れかけていた岩山を登りだした。

 そして、手が触れた瞬間、体が軽くなった気がした。

 

「へ?」

 

 そんな言葉が漏れていたと思う。目の前が明滅し、そして、白一色の世界へと誘われた。発光現象が収まると同時にバカンという音と共に壁が開き、坂上龍之介を筆頭に、男子生徒、次に女子生徒と殿だった天之河が出てきた。

 

「帰ってきた!?」

「戻った・・・・の・・・か!」

「帰れたの・・・・うぅ、戻ってこれたよー」

「おら、おまえら!地上に戻るまでが探索だ。ぜったいに気を緩めるんじゃない。おら、戻るぞ!おい、そこ座るんじゃない!」

 

 騎士団長の叱責が飛ぶ。そして、ぞろぞろと疲れた顔をしたクラスメイト達は地上へ帰るための帰途についた。その中には、気を失った高校のアイドルでもある白崎香織の姿もあった。

 

 




変更点:

・魔物→魔獣
・魔石→魔晶石
等々、色々と変更しております。

この先はオリ主だけのRPGとなります。
南雲ハジメ、ユエの登場は、だいぶ先になります。
天之河光輝達生徒達の話は変更点ないので省きます。


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06 トラウムソルジャー

質問は受け付けます。
しかしながら、どのような答えでも怒らない大きな心の方に限らせて頂きます。
大きなネタバレになるような質問の場合はスルー致します。


ありふれた職業で世界最強の白米良先生のステータスの増え方が謎のため、独自設定にて計算しながら増やしておりますが、当方計算が苦手なので間違っている可能性もありますが、割愛してください。
あと、スキル漏れもあるようです。


 発光現象の終わりと共に、視界に映る物が変わり、先ほどまでいた緑光石の淡い光に包まれた場所と打って変わり、暗闇が支配する場所となった。目が慣れてきた所で、絶望が映る。

 

 目の前で蠢く大量の黒い骸骨の群れ。群れ。群れだ。

 

 その奥には階段があり、その階段の上からも黒い骸骨が無数に蠢いている。そのまま視線を上に移せば、その先に明かりがあり、クラスメイト達の一部と騎士達が殿となって黒い骸骨と戦っていて、今、まさにその入り口を閉めようとしている所だった。

 

 つまり、自分は置いてけぼり・・・・いや、違う。非常にタイミングの悪い所で同じ罠に嵌まったという事だった。

 

 そして、背後にも危険を知らせるその視線からゾクリという感覚が背中から襲った。背後を見れば、巨大な亀のような四つん這いのモンスターが構えている。

 ただし、石の橋は真ん中で割れており、その巨大な亀は此方には来れないでいるようだった。

 

つまり・・・・。

 

 

「目の前の黒い骸骨を倒せば、逃げれるってわけね。・・・・いやぁ、無理でしょ」

 

 

 1VS100とか、そういう話をしているわけだ。

 自分がレベル100で相手がレベル50だったら、それも可能だろうとは思うけど、こっちの方がレベルが低い上での100匹以上ってかなりの無茶ぶりである。どうみても、どう考えても死しか待っていない。待ったなしだ。

 

 そういえば、魔獣図鑑の最後の方に書いてあったな。確か、トラウムソルジャーだったかな。人類最大到達階層にて戦ったと記されてたはず。それに後ろの亀型魔獣も、ベヒモスとかなんとかって、無理すぎる。

 

 とりあえず、方針:とにかく生き残る!絶対に生き残る!そして、ハッカ糖をまた食べるんだ!決定!!

死ぬなんていうのはナンセンスなのだから。

 そうと決まれば、前向きにとっとと行動に移す。

 

 幸いトラウムソルジャーは、未だに階段上層部にいる殿達を目標としているのか、そちらばかりを見ていて、私には気付いていないようだ。

 

 腰につけていたポシェットから、騎士団から拝借した魔法陣を記した鉱石を取り出し、自分に身体強化の魔法を掛ける。

 

 次に、魔法陣を書いてある紙を取り出して、魔法詠唱を開始する。

 

 

「来たれ雷光、一閃にて、すべての物を貫け、ライトニング!!」

 

 

 手の平から放たれた貫通特化の雷撃は、前方の黒い骸骨、トラウムソルジャーを貫き、さらに後ろへと貫いていく。

そして、壁へと当り、壁の岩を弾く程の爆発を起こした。

 

 

システムメッセージ:「レベルがあがりました」

 

 

 ステータスが自動的に開いて、魔力値へと割り振る。スキル欄は見ていられない。

 そして、また雷魔法攻撃、そして、また、レベルアップ。

 事前に魔法陣の書いてあった紙が無くなるまでそれを繰り返す。

 予定では、後1回で魔法陣の書いてある紙が底を尽き、魔法陣の書いていない紙になるはず。

 そしたら、今、雷魔法で壁に穴をあけた所へ入り込む事を画策する。

 丁度良い具合に人一人分というか、ライトニングで掘られた歪な穴は女性だったら入れるくらいの大きさがあって、1VS1を行うには適した凸凹な形となっていた。

 中に入り込めば、外側から剣で斬るという事が難しくなるし、多方面からの攻撃も凌げるわけで、攻撃手順の一本化が出来るはずである。

 その分、脱出は困難になるけど、この数を相手にするならタイマンに持ち込まないとどうにもならない。範囲攻撃が出来るか空を飛ぶ程の跳躍力があるならまだしも脱出出来そうな感じである。

 

 そして、最後の雷魔法を唱えた後、魔法と共に駆ける。

 

 途中、トラウムソルジャーの足による妨害が入って躓いて転びそうになるけど、そのまま、洞窟となった所へとダイブして、地面を滑りながら、穴の中へ入り込むと、すぐに起き上がって、腰に兼帯していた剣を引き抜いた。ここからは持久戦だ。

 

 この時、橋の両脇にある魔法陣から続々とトラウムソルジャーが沸いているという事はついぞ知らなかった。だって、余りに数が多く周りを見ている余裕はなかったのだから。

 

 トラウムソルジャーの大きさは大人の男性よりも少し大きいかなくらいの大きさがあり、自分の開けた穴は、それよりも小さいため、トラウムソルジャーは満足に手持ちの武器を振るう空間もない。

 それに、背後から続々と押し競饅頭を繰り返すため、トラウムソルジャーは、さらに満足に剣を振るう事が出来ない。それらを利用して、どうにか1匹を倒した所で、またレベルが上がった。

 

そこで、左右・背後から襲われる事のない状況になる事で、ようやく一息尽き、ステータス欄を確認する。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:48

天職:魔導師

筋力:111

体力:106

耐性:100

敏捷:101

魔力:970

魔耐:106

幸運:19

残りポイント:0

スキル:ゲーム感覚・経験値上昇[+50%]・雷魔法全適正・剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い]]・必殺[[+博打][+幸運][+的中率上昇]]・強歩[+30%]・観察・気配感知・気配遮断・聞耳・言語理解・早読[+20%]・????

===============================

 

ん!! やった。魔法の適正がついに入った!・・・・でも、なんで入ったんだろう。

 

もしかして。

 

 腕を動く範囲で動かして、魔法陣の書いてない魔法紙を取り出して、魔法式を魔法陣へと書き出していく。残りの用紙を使って、全属性分の簡単な魔法をすべて書き上げた。

 

 そして、時間停止中にも関わらず、魔法を発動させる言葉を紡ぐ。威力はない、射程もない、あるのは属性をその場に瞬間的に留めてだけなのと魔力吸収だけが書かれたシンプルな魔法だ。

 

すると、、、、、

 

===============================

スキル:ゲーム感覚・経験値上昇[+50%]・全属性適正・時間魔法適正・剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い]]・必殺[[+博打][+幸運][+的中率上昇]]・強歩[+30%]・気配感知・気配遮断・聞耳・言語理解・早読[+20%]・????

===============================

 

 ん、んんん?思った通りに全属性を覚えたけど、思った通りじゃない適正も手に入った。

 どうやらこの時間停止も魔法の一種だったのかな?かな?

 魔法を使っているという印象はなかったのだけどね。まあ、貰える物は貰っておこうという軽い気持ちで考えることにした。

 

 それからもレベルアップを繰り返して、トラウムソルジャーを狩り続けるという途方もない作業が続いている。

 レベルが50を超えた時点で経験値上昇の効果が100%を超えた。

 

 どういう順序にて経験値上昇の上昇効果が増えていくのかはさっぱりなのだけれど、つまり、実質、通常の経験値の2倍以上は貰ってる計算になるのだ・・・・が、トラウムソルジャーに終わりは見えない。

 

 

「なんで、これだけ倒しているのに終わらないの!?」

 

 

 悲痛で悲壮な愚痴が漏れ出すのは当たり前。

 愚痴が出ない人間は、人間じゃありません。と愚痴りたくなるレベルで愚痴を連呼し続けながらも腕は動かす。

 

 それだけ狩り続けているのだ。

 経験上昇スキルによって、かなりの速度でレベルアップを繰り返しているおかげで、疲れは見えないが、集中力が続くかはまた別の問題だ。無為に上から振り下ろした剣は、トラウムソルジャーの盾に当たり、そして・・・・。

 

 

バキンッ!!

 

 

 乾いた音を立てて剣が耐久の限界を超えて折れてしまった。

 王国のお城で勝手に拝借して、今まで私の相棒となって一緒に汗を流してくれたロングソードだ。いや、今まで耐えてくれた方が奇跡なのだと私は感謝をしたい・・・だけど、今はそんな時間はなかった。

 

 集中力が切れた時、それは勝負において敗北を意味する時である。

 

 と、テレビの中に出てくる誰かが言っていた。そんな言葉が頭の中を流れていく。なんで、そんな言葉が今、思いつくのかと私は焦りから必死に考えを纏めようと藻掻くがそんなことはお構いなしと言わんばかりにトラウムソルジャーの武器が動く範囲で振り下ろされた。

 

 

「あっ!」

 

 

 トラウムソルジャーの剣が振り下ろされた事に反応したからなのか、そんな声が漏れていた。

 たまたまなのかそれともスキルの影響なのかはわからないが、腰が落ちへっぴり腰のような体形になって、トラウムソルジャーの剣が胴の前を横切っていくのを遅くなった世界で私はそれを目で追い、今の状況を認識する。

 

 尻餅をつくのがわかっている。だからといって何もしないなんて行動はない。だけど、尻餅をつくのはわかっているのだからと、そこで行動してもたかだかコンマ数秒の世界だ。分かっているからといって体が動く訳もない、何が出来るわけでもないはずだったが、予想以上の速度で、折れた剣を持っていない手が動いた。ほとんど無詠唱だったはずで、いきなり魔法が発動した。

 

バッシュゥゥゥン

 

 そんな音だったと思う。トラウムソルジャーを何体も貫き何体も巻き込み、奥の奥まで消えていく一本の極太の雷光・・・・いつも以上に太いライトニングだ。

その瞬間・・・・。

 

 

システムメッセージ:

「レベルが上がりました。

 レベルが100に到達しました。転生ができます。実行しますか?」

 

 

「へっ!?」

 

 

 そんな間抜けのような声が出ていた。

 

 

 




戦闘パートは練習中です。他の作者様がアクロバティックな戦闘描写を書いておりますが、あれが羨ましすぎます。

質問がありましたので、ここに書きます。
Q:ベヒモス戦は省略ですか?
A:いいえ、あります。予定では、9話目に登場予定です。
今悩んでいます。予定なので、8話目になる事もあります。

オリジナル設定登場でベヒモスと戦います。この主人公が!


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07 変異ーレベリングー

原作では、1話につき1万5千文字から2万4千文字を書かれている白米良先生。全く以ってすごいです。尊敬します。
自分はそんなに書けなくて、悩みの種です。


 暗闇が支配する暗黒の空間を1本の極太の雷光が通り抜けた。

 巻き込まれたトラウムソルジャーは十数体に及び、さらにはその奥にいたはずの巨大な亀すらも易々と貫いていた。

 巨大な亀は何もする事が出来ず、ただ、その光を見た時には体を貫かれていた。実際には、貫いたわけではない、ないがその電流は後方へと抜けたことで、貫通したかのように見えたのだ。その体には多量の電流が流れた事により、表面上の鎧がない場所には無数の火傷を負い、そして脳を焼かれてしまい、絶命にいたったのだ。

 ただ、その光景を見れたのは凛ではなくその周囲にいるトラウムソルジャー達だ。凛は未だに狭い洞窟内であり、その視界は酷く狭い。

 

 レベル90台だが、魔力値は人間の持つ通常の魔力値を大きく上回っており、その電流はいくら初歩魔法といえども効果は絶大であった。

 それにより、経験値上昇の効果が合わさり、レベルが100に到達したのだった。

 

 そして、ゲーム感覚という名のスキルの効果によって、転生が行われようとしていた。

 

転生:

割り振られたステータスはそのままに、レベルだけを1に戻して、再度訓練する事ができます。転生した際に、ボーナス特典として、1000ポイントが付与されます。上限:10回

と、あった。

 

 正しくゲーム感覚! え、そんなのいいの?と疑問に思っちゃうくらいなスキルだったのだ。

 

 迷いなくイエスだ。

 そうしないと生き残れないと思ったからに他ならない。

 だけど、まずはステータスを割り振ってからだ。いくら継続されるとしても、本来割振れた分が消失しないとは限らないわけだからだ。

 

そして、転生が開始される。

 

 転生している間は、、、、ステータスを開いていて操作を行っている間は、時間が停止しているはずだ。そう願う。

 体が光に包まれ、視界が遮られた。そう、これ・・・・で!!ぎ!!

 

 

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 体が激しい、激しい、激痛に魘された。それはもう、この世の物と思えない程の激痛だ。全身の骨という骨が、筋肉という筋肉が軋み、激痛が走る。幸い体は時間魔法の影響下で固定されていて動かす事はできない、しかし、腕と頭、目は動かせる。それだけを動かすだけでも体が折れんばかりに動かす。

吸った息は、叫び声と共に抜け落ち、すぐに窒息しかける。次第に、意識が抜けてくるが、体の痛みで強制的に覚醒させられ、意識を失う事を赦さない。

 そんな痛みがどのくらい続いたのかわからない。だが、痛みが引いてくることで意識もしっかりしてきた。

 

 

システムメッセージ:「転生特典として1000ポイントが付与されました」

 

 

 まず、自分の体形が変わっている事に気付く。

 たとえ体が動かないとしても、それはすぐに気づく事ができた。例えば、身長が150センチメートル程度だったのが、この世界の平均身長である170センチメートル程度へと上昇した事で腰の位置が変わった事で目線の位置が変わっている。

 全体的に筋肉質へと変わった事で、体の持ちが軽くなったように感じた。

 

 そして、漲る魔力が体全体に伝わる感覚がわかるのだ。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:1

天職:魔導師

筋力:336

体力:331

耐性:325

敏捷:326

魔力:3225

魔耐:331

幸運:42

残りポイント:1000

===============================

スキル:

戦闘補助系:

ゲーム感覚・経験値上昇[+1000%(MAX)]・観察・気配感知・気配遮断・先読・必殺[[+博打][+幸運][+的中率上昇]]

魔法系:

全属性適性[[+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下]]時間魔法適性・魔力感知・高速魔力回復

近接系:

剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い][+カウンター][+無拍子]]

その他:

強歩[+30%]・聞耳・早読[+20%]・言語理解・????

備考:

転生1回目・転生者

===============================

 

 ついでだから、並び順も変更した。

 やはりスマートフォンのように色々と自由に出来るようだった。

 そして、これだけのスキルとステータスとなった事がわかった。

 

 

「うん、若干、見やすくなったかな? 後は、どうやって戦うかよね」

 

 

 未だ、自分の魔法がこの場でかなりの実力を持つ事を理解していなかった。

 

そう、そうなんだよ、わざわざ手から飛ばさなくても、炎の剣とか雷の剣にして、なんとかできないかな。これだけ適性があるわけだし、出来ないことないと思うのよ。

 

 

「よし、やってみよう!」

 

 

と、とにかくイメージよ。ぐぬぬぬぬ・・・・。

 

 

魔法を手に集束して、それを剣の形に・・・・・。

キュイイイイイイン

まずは、雷の剣を作った。バチバチと弾けさせつつも物理的に切れそうな剣だ。

 

 

「よーし、いぃくよぉー!」

 

 

 ステータス画面を閉じて、時間が動き出す。

 試しにトラウムソルジャーに剣を当てる。

 まるで、紙を割くかのような手ごたえでトラウムソルジャーが真っ二つになる。だが、その背後に控えていた別のトラウムソルジャーが突きを放ってきた。それを慌てて、上へと弾く・・・つもりだった。

 

 

「がっ!!」

 

 

胸に激痛が走る。何気に初めての負傷だった。

 

 

「なぜ・・・」

 

 

そんな言葉が漏れていた。確かに雷の剣で上へ薙ぎ払ったのに、疑問は尽きなかった。

 

 

「はあああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 声を荒上げ、トラウムソルジャーを雷の剣で叩き切る。

 トラウムソルジャーが持っていた剣と盾もトラウムソルジャーを倒すと、一緒にバラバラになってしまうため、回収は出来そうにない。無理だと思う。

 

 

システムメッセージ:「レベルが上がりました」

 

 

 もう、何度となく聞いた、この声が有難く感じる。

 この声を聞く度に余裕が生まれるからだ。この時間停止中に自分を治療するために魔法陣を横の壁に描く。

 知識としたのは、連日の【ハイリヒ王国】の王立図書館に通った事で、治癒魔法の知識も手に入れている。ただ、発動したことはなかった。ただ、それだけだ。

 

 治癒の魔法陣を描き、手をついて、詠唱を開始する。そして、自分を治癒した。すると、ステータス欄に回復魔法適性が追加された。

 

そして、気付く・・・・。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:2

天職:魔導師

筋力:436

体力:431

耐性:425

敏捷:426

魔力:4225

魔耐:431

幸運:52

残りポイント:20

===============================

スキル:

戦闘補助系:

ゲーム感覚・観察・気配感知・気配遮断・先読

経験値上昇[+1000%(MAX)]

必殺[[+博打][+幸運][+的中率上昇]]

魔法系:

全属性適性[[+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下]]時間魔法適性・魔力感知・高速魔力回復・回復魔法適性

近接系:

剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い][+カウンター][+無拍子]]

その他:

強歩[+30%]・聞耳・早読[+20%]・言語理解・魂魄魔法

備考:転生1回目・転生者

===============================

 

 

「ん?・・・・魂魄魔法?」

 

 

 今までハテナになっていた所がついに解禁された。

 

 

その名も魂魄魔法。

 

 

一体なんぞや?と思ってしまうのも無理はない。

 

 どうやら、魂を補完するような魔法らしい。

 一度に消費する魔力が4000程消費するので、つまりステータス上の魔力値が4000に達するまで解禁されなかったんじゃないかっというのが私の推論だ。

 確証はない。確認の取りようもないし。

 

 

「ただ、ここで、すぐに使うわけにはいかないかな~」

 

 

と、独り言を口に出して、呟く。どうもよくわからない魔法だしね。

 

 

 

ならば、まずは、検証!

 

 ステータス画面を閉じて、トラウムソルジャーの攻撃を誘う。

 そして、トラウムソルジャーが剣を振り下ろした所を身を躱して避けつつも、その剣に雷の剣を当てると、思った通り「スカッ」と透過した。雷の剣には物理ではない。あくまで魔法による幻のようなな剣だと認識する事ができた。この1匹は倒し、次に来た2匹目も同じように躱しつつも、雷の剣をわざと当てて検証を行う。

 

しかし、疑問ね。

 

トラウムソルジャーの体自体は難なく切れるのに、なんで盾や剣は、切れないんだろう。

 

 

「うーん、わからん!」

 

独り言ちるのに、数秒だった。

そのことに気付くのはもう少し先の話になる。

 

 

システムメッセージ:「レベルが上がりました」

 

 

こうしている間にも敵を倒すために腕を動かして、レベルが上がる。

ステータス画面が開き、時間が停止する。

 

 そして、思案する。

 なら、物理の硬さを持ちつつ、相手を斬るにはどうしたらいいのかと。 それでいて、威力も出さないといけない。・・・・それらを両立できる武器はない。それが現在の結論だ。

 私だけの頭ではわからなかった。

 だから、物理の硬さを持った剣を作る事にする。

 だから、魔法陣を描く。どうしてそれを剣にしようと思ったのか、それは謎だ。だけど、出来るんじゃないかと思ったのが最初の答えだ。

 

後から、別に土魔法で良かったんじゃね?と言われたかは定かではない。

 

 

魔法陣を描き、魔法を発動する。

 

「絶!!」

 

 丸いラウンドシールド状で半透明な板が出現した。それをイメージの力で形を変えていく。そして、1本の棒に変えた。まだ剣の形にするにはイメージ不足であることは否めない。

 だけど、今はこれでもいいと思った。

 戦闘を開始した。

 今までと違って、各段に殲滅力が上がる。防御魔法の剣で相手の剣を受け止め、雷の剣で屠る。

 最初こそは、拙い二刀流であったが、戦いの中でそれらは磨かれていく。あまりに楽しく、ついに時間を忘れてしまった。そのくらい長い間、戦闘は続いていた。

 遠くでじっとしている巨大な亀にも復活する度に、雷の剣を投擲することでその寸胴な胴体が災いして、動けず直撃し絶命する。これを繰り返していく。

 

 

 

そして、、、、、

 

 

 

 

システムメッセージ:「レベルが上がりました。 レベルが100に到達しました。転生ができます。実行しますか?」

 

 楽しくて、すっかり忘れてたよ。おけー。もう、じゃんじゃんしちゃおう。痛いのは嫌だけど。まだ、この楽しさは続けたい。

 

 時間は止まっているけど、絶叫は響き渡る。ええ、とっても痛い。痛すぎて、涙がでちゃう。だって、女の子だもん。(てへ)

 

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:1

天職:魔導師

筋力:755

体力:750

耐性:744

敏捷:745

魔力:7420

魔耐:750

幸運:83

残りポイント:2000

===============================

スキル:

戦闘補助系:

ゲーム感覚・気配感知・観察・気配遮断・先読・見切り・縮地・舞踏

経験値上昇[+1000%(MAX)]

必殺[[+博打][+幸運][+的中率上昇]]

魔法系:

全属性適性[[+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下][+消費魔力軽減][+発動速度上昇][+高速詠唱]]

結界術適性[[+発動速度上昇] [+消費魔力軽減][+耐久化]]

時間魔法適性・魔力感知・高速魔力回復・回復魔法適性・複数同時構成

近接系:

剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い][+カウンター][+無拍子]]

二刀剣術[[+刺突][+パイリング][+カウンター+1][+強打撃][+スタミナ軽減][+斬撃速度上昇][+投擲]]

物魔一体型戦闘術[[+発動固定維持][+連続発動]]

その他:

強歩[+30%]・聞耳・早読[+20%]・言語理解・魂魄魔法

備考:転生2回目・転生者

===============================

 

 

システムメッセージ:「転生特典として2000ポイントが付与されました」

 

 

 う~ん。スキルがどんどんと増えていく。これはやりがいがあるな~。

 それからも狩り続けた。もう、時間の感覚はない。あれからどれだけの時が経ったのか、もう、わからない。

 

 そんな事はもう、どうでもいい。

 

 今は、もっと、もっと、もっと強くなるんだ。

 

 そして、終わりは来る。

 

システムメッセージ:

「レベルが上がりました。レベルが100に到達しました。転生ができます。実行しますか?」

 

 

 

 

 




巨大な亀はベヒモスですが、名前を忘れているため巨大な亀と表記されております。

勇者ステータスを上回る魔力値を誇るため魔法攻撃力は群を抜いて高い事を凛は知りません。ついに実力が発揮された形ですね。

ゲーム感覚で言えば、転生があるゲームの方が少ないかもですね。ただ、自分のプレイしたことのあるゲームでは転生があったので、そういう物も入れております。

魂魄魔法に関して、原作ではどの程度の燃費かについてですが、ティオがかなり苦しい事を言っていた記憶があるので、かなり燃費が悪いと解釈し、ハジメ基準で3分の1程度以上の魔力が必要としました。

次回、ベヒモスが登場します。(嘘は言っていない)



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08 親ボス

あ、暑くて、文章を打っていられん。
連日、昼間の室温38度を突破!!・・・・しておりまして、、、、

自分の部屋にはエアコンはありません。換気扇くらいは付けたいこの頃・・・。

毎日、水だけは飲む生活です。収入源があれば、エアコンつけたいな。


 

 転生が終わり、目を開く・・・・。

 

もう、痛みには慣れた。もう10回も行ったのだ。これだけやれば慣れる。

 

え、10回?これが最後か。

 

ステータスを改めて確認をする。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:----

天職:魔導師

筋力:8511   [+全身強化時:12766]

体力:8506   [+全身強化時:12756]

耐性:8500   [+全身強化時:12750]

敏捷:8501   [+全身強化時:12751]

魔力:93478   [+最大値上昇:8498]

魔耐:8506   

幸運:100(MAX)

残りポイント:0

===============================

スキル:

戦闘補助系:

ゲーム感覚・観察・気配感知・気配遮断・見切り・縮地・舞踏

経験値上昇[+1000%(MAX)]

必殺[[+博打][+幸運+][+的中率上昇Ⅴ][+会心]]

先読[+時間遅延Ⅲ]

魔法系:

全属性適性[[+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下][+消費魔力軽減][+発動速度上昇][+高速詠唱][+範囲強化][+イメージ強化]]

全身強化適性[[+発動速度上昇][+発動時間+100%][+発動時間永続化][+強化増加値+50%]]

結界術適性[[+発動速度上昇] [+消費魔力軽減][+耐久化]]

時間魔法適性・魔力感知・高速魔力回復・回復魔法適性・複数同時構成・魔力最大値上昇[+10%]

魂魄魔法

近接系:

剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い][+カウンター][+無拍子]]

二刀剣術[[+刺突][+パイリング][+カウンター+1][+強打撃][+スタミナ軽減][+斬撃速度上昇][+投擲][+抜刀速度上昇] [+無拍子]]

物魔一体型戦闘術[[+発動固定維持][+連続発動][+連続投擲][+連続攻撃][+舞踏補助]]

その他:

成長限界突破・強歩[+30%]・聞耳・早読[+20%]・言語理解

備考:

転生10回目・転生者・遅老

===============================

 

 

「いろいろ増えたな~」

 

 

 これが一番初めの感想だった。

 レベルが表示されなくなり、代わりにその他に成長限界突破というスキルが追加された。効果は、レベルが上がらなくなる変わりに、レベル100分の経験値を獲得する度に500ポイントが付与されるというものだ。一見、残念な感じに見えるが、実はかなりお得で、実質レベル120分のポイントがレベル100で獲得できるということなのだ。これはお得だろう。

 

さーて、ここをキリもいいし脱出するとしますか!

 

 ステータス画面を閉じて、時間停止をやめる。と、途端に、体が浮き上がった。

 

 

「え、え、えええええ!!」

 

 

 どうやら、最後の転生をする直前、トラウムソルジャーの剣がボロボロで、先っぽが返し刃のようなっており、それが服に引っかかっていたようだ。それに気付かず、時間を解除したため、それがそのまま不意打ちとなってしまったようだった。

 

 波打つ形の穴から綺麗に外へと投げ出され、空中を浮遊する形になり、空から地面を見下ろす形となる。レベルとかステータスの都合上なのだろうか、すごくゆっくりと時間が流れているように見えて、周囲の状況確認が出来る事に自分自身が驚くが、こうしてみると、トラウムソルジャーは剣と盾を持った物がまだまだ無数にいて、終わりがない事を感じる事となった。

 

 視線を動かして、周囲を見渡すと橋の付け根の両端からトラウムソルジャーが湯水の如く、魔法陣が光っては垂れ流しのように沸いているのが確認できた。

 

 自分が生存するためだったとはいえ、洞穴を作って、生存戦略を整えたつもりだったが、それが甘かったと痛感する事となった。

しかも、空中に投げ出された事ですべてのトラウムソルジャー達の視線が私に集中している。その空虚な目がじっと此方を睨んでいるのだ。明らかにこれから何かしますと言われているかのような顔つきだ。ちょっとだけ影を作れば怪しい影が・・・・。

 

 不意に1体のトラウムソルジャーが持っていた剣を投げてきた。

 

 

「んな、くそーう!」

 

 

 はしたない声だが、そんな声を上げて、身を捻った事で回避を行う。それで安心していると、他のトラウムソルジャー達がこぞって同じことをするかのように振りかぶった。

 

 

「ちょ、ちょちょちょちょ・・・」

 

 

 手に持っていて持続している結界魔法の棒状の剣を、壁となる形で展開して身を守ると同時に空いている方の手を使って魔法を放つ。

 

 

「ファイヤーボール!」

 

 

 とにかく魔法はイメージが重要だ。掛け声はおまけに過ぎない。使っていてそう感じた。

 あくまで掛け声は、これから行うぞっていう意思表示なのだ。だからといって、相手にこれからこの魔法を使いますなんて宣言してどうするんだ?という疑問符が付くが、あくまでイメージなので、イメージが出来ていれば、ファイヤーボールと言いながら、アイスボールだって放てるはずなのだ。

 

だけど、今は、ファイヤーボールを使う。

 

 火球はトラウムソルジャーが展開する中心に落ちていく、但し、その数は1つではない。

凛が想像した魔法というのは、現代兵器である機関銃の掃射シーンであった。何時か見たニュースでの一コマ、そんな風景の映像が、夜間に発射されている時、それは火の玉が何十という弾で駆け抜ける。そんなイメージがファイヤーボールと類似しているように思えたのだ。

それに、今の凛であれば、魔力値的にもそれなりの余裕はあるのだが、本人は自覚していなかった。

 

 よって、ファイヤボールのマシンガンのような機関銃のようなファイヤーボールの玉が数十、数百まではいかないが、散弾状に発射され爆発した。

 爆発の余波によって、トラウムソルジャーの集団が吹き飛ばされて、両脇に空いている谷の底へと落ちていくトラウムソルジャーの群れと、反対側の壁に叩きつけられてバラバラに砕けるトラウムソルジャーの群れが出来上がるという絨毯爆撃のような光景が出来上がった。

 

 よし、これで、一旦、反対側に着地して、元の位置へ戻れば・・・・。

 

 途端に背中側に寒気を感じ、首だけでも振り向くと、そこに巨大な顔があった。

 自分の身長と同じサイズ、いや、それ以上の顔が目の前にあるのだ。それはもう、驚く。

 

 ついでをいえば、兜をつけた亀の顔なわけだが。

 

 あの巨大な亀が頭を赤熱化させてジャンプしてきたのだ。

 今まで散々、一方的に殺してきた――凛は倒して来たという自覚はない。見えなかったわけだし――ことへの恨みを一心に清算するかのようなジャンプだが、ただ単に届く距離だったからなのかはわからない。

しかし、確実に、幻ではないアイツがそこにまで迫っていた。

 

 

「んな!」

 

 

ファイヤーボールを撃ち終わった手を亀の方へと向けて、結界魔法を張る。

 

・・・・が、そのまま、亀は体当たりはそのさらに斜め上からするように一度大きく顔を上へ背けると、一気に振り下ろして、私は下敷きとなって橋の下へと落下してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くと、そこは緑光石の仄かな光が差し込む泉の畔だった。

 落ちてくる最中に、体をあちこちぶつけたようで全身が酷く痛むが、すぐに気配感知が発動し、一瞬にして覚醒すると同時にうつ伏せの状態から尺取虫ではないが、そんな感じに一気にその場から満足とはいえない体で、飛びのいた。

 

と、半歩遅れて、そこに先ほどと同じ巨大な亀の無数の体当たりが襲った。地面に大穴を開けて、岩石が飛び散る。

 その内の幾つかが私に向かってきたので、結界魔法を剣の形にして弾き飛ばして、その反動を持って泉の中心にそそり立つ岩山になんとか着地する。

 

 そして、周囲を警戒すると、泉の対岸には自分を取り囲むようにして、巨大な亀と無数のトラウムソルジャーが居ることに気付く事ができた。

 

 とりあえず、体に回復魔法を掛けて、治療を行おうとした所で、再び気配察知が反応し、超反射したかのようにその場から飛び退くと同時に、そこへ赤白い極太のビームが直撃した。一瞬でも反応が遅れていたら死んでいただろう。

 

やっぱり、ステータスにはまだ不安がある。

 

 真上へとステータスに裏付けされた身体能力のみで飛んだ跳躍中に姿勢制御と軌道修正のためにファイヤーボールを連発して、着地位置の変更を図ると共に、放物線を描いて落ちる都合上、治癒魔法を自分にかけつつ、跳躍先にいる亀を乗り越えてその先に着地を決めると、すぐに真後ろへ自分の得意になっている魔法ライトニングを放った。

 

 本来は細いイナズマが真っ直ぐに向かっていく魔法であったが、凛のステータスに裏付けられた魔力:93478という9万を超える魔力によって過剰ともいえる魔力供与を無意識に行った事で、太いイナズマが亀を襲った。

 

 魔法「ライトニング」に襲われた亀は、爬虫類に相応しくない悲鳴のような声を上げて崩れ落ちた。

 それに気をよくした凛は、続けざまに変なポーズを取りながら極太ライトニングを放ち、次々とトラウムソルジャーと亀を薙ぎ払っていく。

と、そこへ今度は岩の岩塊のような物が複数飛んできて、それを即座に作成した結界魔法の剣で薙ぎ払って受け止めつつ、間に合わないのはスキル:舞踏を使って、戦場をダンスを踊っているかのような軽やかな動きで避ける。

 

 避け切った所の合間に相手を視認すると、そこには背中がゴツゴツと噴火口のような物が多数ついた巨大な亀が居た。正しく巨大な亀の親分的な存在だと思う。大きさも・・・・他の亀と比べて一回り程大きくみえる。

 

 口を開き、口内に白い光が見え始める。どうやら、先ほどの極太赤白レーザーの主はアイツのようだ。

 

 

「ライトニング!!」

 

 

 特に意味はないが無拍子にて手を上げる。それは途中経過のない動作だった。あるいはステータスに差があったからそう見えたのかもしれない。

 しかし・・・・。

 親ボスの頭付近に命中したはずのライトニングは当たると同時に何かに弾かれたかのような現象が起こる。いや、実際に弾かれたのだ。よくわからない膜のような物に。

 

 

「にゃろう!結界かぁ? さすが、親ボスってところかな」

 

 

 最も使用率の高い魔法「ライトニング」を弾かれたという事は、どの魔法を撃っても効果がないような自信があった。

 

 実際に、何発か、火、水、風、土の魔法を放ってみたが、親ボスに届く前に何か結界のような物に弾かれてしまった。

 

 一応、放てる全部の属性魔法を弾かれるって事は、もっと高位の魔法じゃないとダメって事だよね。でも、私、練習で初歩魔法しか使ってないんだよね。いくら撃っても適性を得なかったし。もっと高位なんて勉強しているわけないじゃん。どうしよっか!?

って、そんなことを考える場合じゃな~い!!

 

 親ボスの口内から赤白いレーザーの熱がどばぁっと溢れ出し、危険を感じて回避しようと動いたが、それを回避させまいと無数のトラウムソルジャー達がその行く手を妨害する。どこで知恵を付けたのか、横からだけではなくトラウムソルジャーが跳躍をしたのかは謎だが、上からも降ってくるかのように襲ってくる。

 それらを薙ぎ払いながら、スキル:舞踏を使って逃げるが、数の暴力という波に襲われてそんなに移動が出来ない。

 

 ついに放たれた赤白いレーザーが道中にいた無数のトラウムソルジャー達をも薙ぎ払って迫ってくる中、近くにいた亀型魔獣を盾にするように跳躍をし、その影へと入ると、赤白レーザーもそれを追うようにいして、私の隠れた亀型魔獣に命中した。

 

 赤白レーザーが命中して数秒も立たない内に亀型魔獣の体が大きく膨れ上がり、膨張して爆発した。「ひぃぃぃ」なんて声も口から洩らしながら目に涙を浮かべて結界魔法の初歩である「絶」を唱えて身を守ったので、内臓等の湯だった血を浴びずには済んだが、むせ返るような死臭を嗅ぐ事になり、両手で地面を着いて嗚咽を漏らす事となった。

沸騰した血の匂いは、最悪だった。

 

 嘔吐している最中にも敵である親ボスは手加減等してはくれず、親ボスの背中から放った無数の質量弾が洞窟の中に聳え立つ鍾乳洞の柱に激突して不規則の軌道を描いて、弾け飛ぶ。

 

その内の1発を本来の私を狙っていたであろうその1発が命中した。

 

 悲鳴のような声は出ず、ひたすらに大きく吹き飛ばされ、何度か地面と鍾乳石の柱に体をぶつけて止まった。

 

・・・・ガハッ・・・・

 

 体を起こした時、胃から上がってくる気持ちの悪い物。それが口から出た時、それは血だとわかった。

 内臓をやられたようで、吐血が止まらない。

 

 そうこうしている間にも親ボスではなく複数の亀型魔獣の頭が赤熱化し、跳躍タックルを仕掛けてきていた。

 

 ああ、意識が・・・・落ち・・た・・・・。

 

 私の意識はそこまでだった。

 

 

 

 




遅れて申し訳ありません。

暑さで、書く気力、想像する気力がなくなっております。

親ボスはオリジナルモンスターになります。某MO-RPGに登場しているガメラっぽい亀にそっくりですが(笑)


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09 変異その2


今回は、オリジナルモンスターの名前が判明します。

そして、オリジナルキャラクターも登場します。このキャラは、元ネタはありません。今後、書く予定の小説で主人公となる予定の子です。
構想自体は、約20年前に作った子です。


 倒れた少女を前にして、親ボスこと巨大な亀はその場から動かない。他の亀達もまるで足が動かなくなってしまったかのように動く事はなかった。そこには、今まで、いなかった者がそこにいて、まるでずっといたかのように自然体な形で存在していた。

 

 今まで、そこにはいなかった者、いや、気付かなかったというべきだろうが、今そこに目の前にいて、嫌でも見えてしまうのだから警戒は当然する。

 しかし、警戒をする以上にベヒモス達には震えが来ていた。

 なぜ、その震えが来るのかは当のベヒモス達にはわからないでいるが、これは、魔力波を呼ばれる物だ。それが、濃厚で濃密な圧を放っているのだから、ベヒモス達は必至に踏ん張るしかなかった。

 少しでも、力を抜けば、この平べったい体とて、軽く転がってしまうのではないだろうかという圧を受けていた。

 

 その者は、先ほどの少女に比べれば、なんてことのない程のサイズで、、、単的にいえば小さいのだ。

 だが、その少女から発するオーラを浴びれば浴びる程に、先ほど戦っていた者とは比べるべくもない程に強者であり、決して戦って良い相手ではないのだという事を感じ取っていた。

 

 今ならベヒモス達から見て後ろを向いている事から、背後からなら襲える。そんな事はわかっているはずなのに、ベヒモス達は、身動き一つ取らない。まるでガクガクと震えるだけの石像になってしまったのかと言うほどに静寂が支配していた。

 

 

「おい、生きたいか?」

 

「だ・・・れ・・・・?」

 

 

倒れていて体を起こしてもいないはずなのに、何時の間にか自分は漆黒のような闇の空間に立っていた。ただ、違うのは、目の前にフランス人形のような容姿をした少女なのだが、エルフのように長い耳と額から天を貫くようなすらっとした長い悪魔のような角を生やした少女が立っており、その者からはただならぬ気配を発しているという事だけだった。

 

 

「もう一度だけ、聞く。 生きたいか? 生きたいならば力をやろう。 もっとも、それは人ではなく人の理から外れた化け物になる力だ。 だが、それがあれば、結果的には生き残る事ができるかもしれない。 どうする、生きたいか?・・・あ、これじゃ、3度目ね」

 

 

 どのくらいだろうか、長かったのか短かったのかわからない、だけど、私は1つの答えを持っている。とにかく生きる事。それが私の親との約束。私の姿を見失ってしまうようなどうしようもない親だけど、それでも、そんな私だからと、親と1つだけの約束をした。それがどんな状況でも生きる事。それが第一方針。それは変わりのない只1つの答え。

 

だから、私は、答えに時間はかかっていないはず。

 

 

「生きたい・・・・です」

 

 

一拍の時間が流れる。少女は口を開き、言葉を繋ぐ。未来の道しるべとなる言葉を。

 

 

「ならば、これを飲みなさい。 大丈夫、体が安定するまでは、私はここにいてあなたに危害が加らないように見ていてあげる。

そこからはあなた自身が道を開けばいい」

 

 

差し出された水を飲んだ途端、体に異変が起こった。

 

 転生時に起こったかのような痛みが全身に走・・り・・・・そんな痛さではなかった、体が端から崩壊していくような、神経を下ろし金ですり下ろされているような壮絶な痛みという名の激痛が体を襲う、体が一から作り替えられていく。

 

 

「う゛・・・・がっ・・・あああああ・・・・ああぁぁぁぁーーーあーーーー」

 

 

息を吸っているはずなのに、肺の空気はすぐになくなってしまう。

 

 それに自分が溶けて自分が自分では無くなってしまう。そんな感情が溢れてきて、目から感情的な涙なのか痛みによる涙なのか、わからない物が溢れてきていて、顔がぐしゃぐしゃになっていて、ダメ、わけわからなくなる。

 

 

「強く・・・・強く・・・・自我を持ちなさい。

でないと消えるわよ。

生きたいのでしょ。なら・・・・がんばらないとね」

 

 

そんな声が痛みで朦朧とする頭に対して鮮明に直接、響いてくる。

 

 こんなに痛いなんて・・・聞いてないよ。と愚痴を零したかった。

 目の前の少女をぶってやりたくなった、抗議したくなった、だけど、口が動かなかった。声も出ない。腕も動かない。足も動かない。体も・・・。

 痛みだけを残してすべての感覚を捥ぎ取られたかのように、動かなくなった。

 

 長い時間が過ぎたような気がする。

 

 そして、私はふと目が覚めた。

 どうやら、気を失っていたのだろうか、疲れて寝ていたのだろうか、わからない。

 けど、何時の間にか立っていた。起き上がらせて貰った記憶はない。自分で立ち上がろうとした記憶もない。なぜ、立っているのかもわからない。頭が働かない。

 ただ、1つ言える事は、体が疲れ切っているという事だけだった。

 

 意識がはっきりとしてくる、しかし、私の目の前には、全身を見る事が出来るくらいに大きな鏡のような物があって、それは水で出来ていて、凄く透明度が高いはずなのに、私の全身を映し出している。

 

 黒くショートボブだった髪は、長く長く腰に届くのではという所まで長くなっており、白銀のクリーム色の髪へと変化して、所々に赤みが入った毛の束が混じった異色の髪へと変化を遂げていた。

 体は、身長は変わらないのに足がだいぶ長くなって、東洋人の体格というよりは、西洋人のような体格という感じに、腰の位置がだいぶ高くなったように感じられた。

 胸の大きさはCカップくらいだろうか、元がBカップだったから若干大きくなった感じがする。

 形は、ラウンド型と呼ばれる一番形のいいタイプの物だ。元々がスレンダー型だったから、これは貰い物かもしれない。

 

 

「これがあなたよ」

 

 

そう、答えたのは、あの少女だ。

 

 私が、その鏡に写った自分に見惚れていたのを、今の言葉で正気へと戻してくれる。

 残念だけど、私の顔の輪郭は、まったく変わっていなかったが、目だけは、黒から灰色へ変化していた。

 

 

「あなたは、私の眷属となったわ。

 

恐らくだけど、私と同じだから、力を使うと、体に赤いラインが浮かび上がると思うから、開ける衣装を着る時は注意なさい。

 

それと、もしかしたら、目も赤くなるかもしれないわね。輝く事はないと思うから、安心なさい」

 

「あの、眷属って、どういう?」

 

「私は吸血の姫よ。まあ、王様とか帝とか言われているけど。

ただし種族は、不死族ではなく魔神族。

いわゆる神様よ。 つまりあなたは亜神となったわけ。

だからといって、御伽噺に出てくるような力が使えるわけではないわ。

神にも色々あってね。 だから力はあなた自身が磨く必要があるわけ。

私はこれ以上の協力はしない。ま、がんばりなさい。

あ、それと、これは、選別よ」

 

 

そう言うなり、手元に放って来たものは、ピアスだった。

 

 

「え、え、ええ?

 あの、それって、ここの神・・・」

 

 

私は焦る声を上げて放り投げて来たピアスを受け取りつつ、疑問となった事を口に出してしまうが、それがわかっていたかのようにクスリとわざとらしく笑うと、説明をしてくれた。

 

 

「まずは、そのピアスはジュビという種族。高位異性生命体が作り出したインターフェースユニットであなたの視覚サポートをしてくれるわ。

 

例えば、

あなたと対峙する魔獣の弱点や部位の弱い場所。

調べて予め情報を持っていれば剥ぎ取りした方がいい場所等を指示してくれる。

他には、疑似戦闘シミュレーションをして、あなたの勝率を上げてくれる機能等がある。尤もこれも、あなたの運動能力次第で、出来るとは言わないから、参考程度にしておいた方がいいわね。

 

すべて、あなたの脳を介して行うから、外では瞬きをしているかのような時間しか経たないから、便利なはずよ。

 

それと、神様の件は、私はこの世界を管理している神ではないわ。

神にも色々と種類があって、私は旅行者なのよ」

 

 

 この世界を管理している神ではないことを聞くと、特に重要でもないと、軽く考えて、自分の耳にピアスを取り付けた。人生初のピアス穴なわけだが、なぜか痛くなかった。

 このピアスはイヤリングのように挟むタイプになっており、挟まれると自動的に穴を開けて、互いが繋がって外れなくなるのだ。

 

 一瞬、ぐらっと来るがすぐに脳がクリアになったかのような感覚に囚われて、視界に何やら色々と表示された。

 

 まず、左上に、自分の魔力値が数字とグラフバーで表示された。

無意識下では、魔力を用いるスキルとその使用魔力量が一瞥でわかるようになった。

 その下に、今自分の状態を示すアイコンが並ぶ、そのアイコンの意味もなぜかわかってしまうのだから不思議な感覚を覚える。

 

 左下に自分のステータス詳細を見るボタンが、右下に自分の持ち物を見るボタンがある。

 習ってもいないのにどうすればいいのかがわかるのも、やはり不思議だ。

 

 

「あるじさま~!!」

 

「へ?・・・・・・わわわわっ」

 

 

 いきなりの事に対処できずに慌ててしまう。飛び出てきたのは、エルフに羽を生やしたような少女。いわゆる妖精とか精霊とかそういう感じの姿をした子だった。それを外で見ている少女はクスクスとやっぱり笑っている。

 

 

「言い忘れてたわ。それにはマスコットが付いているのよ。あなたをサポートしてくれるわ。名前をつけてあげると懐くわよ」

 

「え、え、ええーーー、そ、そんな急に言われてもぉ~」

 

 

 私は、突然、マスコットに名前を付けろって言われて、焦った。うーんとうーと、考えに考え抜いて出した答えは、家で飼っている犬の名前を付ける事にした。当然といえば、当然であるが、その犬も私を見失う・・・・というか、居ない物として見ていたから、家族優先順位から見たら最下位だった。なんか無性に腹立たしいけど。

 

 

「じゃぁ、スーキーで」

 

 

鈴木だからスーキー、超安直な名前です。

 

 

「わーい♪あるじさまぁ、名前登録ありがとうございますぅ~。これから私はスーキーです」

 

「いいんじゃない?」

 

 

 視覚ユーザーインターフェース内の妖精は、目をウルウルとされて喜んでいる。そして、目の前の少女は相槌を打った。

 

 だが、そこで、洞窟が揺れて、私は、現実へと引き戻される。

 

 そして、目の前の人・・・いや、主様の名前が表示されていた。

 

 

「ゆ・・・み・・・る・・?」

 

「ああ、私の名前、わかっちゃいましたか。これは失策」

 

 

 目の前の少女:ユミルの疑似ステータスが表示されるが、ほとんど文字化け状態で見る事が出来ていない状態だった。視覚内に映る予想される予想体力値も予想魔力値も出鱈目な数値を示していて、嘘か本当かなんてわからない。

 すべての数値が9桁以上で振り切っている状態なのだ。それが本当なら、私は、ここでこうやって話していてもいい存在なのか、いや話す事自体がおこがましい事だとすぐにでも気付く存在だった。

 

 

「だいぶ、力を抑えているんだけどね。 やはりこの惑星(ほし)には悪影響が出ているかな。場所柄、大丈夫だと踏んだのだけどな。

 

 そうそう、そのピアス型インターフェースには、異空間に物を収納できるイベントリが内臓されているから、使うといいわ。便利よ。

 いわゆるアイテムボックスってやつね。

 

それから、もし、壊れた時は、一定時間で修復されるから安心なさい。それと・・・まあ、これはいいわね。なんでもないわ」」

 

「まあ、それよりも、上手くいって良かったわ」

 

「え、、、、、上手く?」

 

「ええ、あなたに施した施術は、失敗する可能性もあったのよ。本来は私が直接、噛みついて転生させるんだもの。

簡易的な方法でも成功すると分かって安心したわ」

 

 

 混乱する私に、笑顔で話しかけてくるユミルという名の少女は、徐々に体が薄くなっていく。

 

 

「当たり前じゃない。私に利益のない事を誰がすると言うのよ?ふふふふ・・・・」

 

「ちょっ!!」

 

 

 私は声を上げた途端、完全に現実に引き戻された。

 

 少女は何処かへと消えていて、私の体にはいつの間にか回復魔法がかけられたかのように、なんの痛みもなければ、なんの疲れも残っていなかった。

 

 最後に言葉を残していたらしく頭の中には、「また、どこかでね」という言葉だけが残っていた。恐らくはまた、どこかで会えるという意味だろう。

 

 そして、目の前で固まっていたかのように、、、、いや、実際に固まっていたのだろうけど、巨大な亀の親子達の名前が表示されていた。

 親ボスこと口からレーザーを吐いてきた亀の名前は「ベヒモス変種」と書かれている。

 一回り小さい、自分をここまで落としてくれたジャンプしてくる亀の名前は「ベヒモス」と書かれていた。

 

 ベヒモス達は、謎の少女であったユミルが去った後、やれやれと交互に首を振りながら安堵の表情を浮かべた後、私の方へ顔を向けてきた・・・と、私には見えた。

 

 

 




前回は、すいませんでした。
緊急の入院です。
病名:夏バテ
暑さでバッタんきゅ~しました。
この頃は毎年の恒例行事になっております。1週間の入院で10万円が飛んでった。

室温40度はさすがに無理でした。2リットルの水(塩分込)を何回飲んでもトイレに行かない日が続きました。生活できるとは思えない。

※庭先に室温計を置いた所、50度まであるメモリを振り切りました。実際は何度なのでしょうか。


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10 勝利者は〇〇!

〇〇には、何が入るでしょうか。
読者様にお任せします。


 ベヒモス変種・・・アイツの正式名称だろう。

 

 ここで、男の子ならベヒモスの親玉なんだからグレートベヒモスでいいじゃんとか思う所なのだが、凛には、その命名は思いつかなかった。変わりに何が変なのかを考えてしまう所だ。

 

 ユミルという少女いや、魔神から頂いたジュビ人という異星文明人が開発したというピアス型インターフェース。

 これのおかげで今、私は大いに助かっている。

 と、いうのも、この機械のおかげで、アイツの情報が駄々洩れ状態にあるのだ。

 

 

「いったいどうやって調べているんだか・・・・」

 

 

 全く以って疑問に思うが、考えてもわからないので、すぐに頭から外した。途端に、スーキーがその疑問を解いてくる。

 

 

「私に不可能はないのです!(えっへん)」

 

 

だそうです。私は、言葉に困る。とりあえず、横にどけて置こう、、、、、。

 

 

 

 まず、あのベヒモス変種の変の部分は、全身に雷系のバリアのような物を前面に張っているため、遠距離系等の射撃関連は、攻撃が反らされてしまって効果が薄いらしいようだ。

 もっとも、そのバリアの出力を超える攻撃が出来れば何の問題もないらしい。あと、後ろからの攻撃も有効。

 

 次に背中の噴火口のような出っ張りから撃ち出す塊は、土系の固有魔法で、ベヒモス変種とは別の魔獣が寄生・・・・共生かな?しているだけのようだ。

 

 ちなみに、噴火口のような物は、スターラという名の魔獣だそうだ。

 

 読んで字の如く、ゴツゴツしたヒトデがくっついてます。

 

 口から吐き出すレーザー兵器のようなのは、アイツの固有魔法のようだが、ベヒモス変種の固有魔法は、他にも重量軽減を持っているようだ。

 という事は、普通の魔獣は固有魔法は1つなのに対して、2つ持ち。

 

 

 例外・・・・なんだろうか。

 

 

 周りにいる巨大な亀ことベヒモスは、頭の赤熱化してのジャンプ突撃という固有魔法がある。名前は、「ヒートチャージ」というらしい。

 

 そのベヒモスもグレートベヒモスも弱点箇所は一緒で、お腹の下が弱い。

 そこの皮膚だけは、他に比べて脆いと書いてありスーキーがバンバン調べてくれているようだ。

 どうも私が所持しているスキルや出来る事を調べてスーキーが模擬戦闘シミュレーションをしてくれているようだ。

 

 次に攻略法だが、色々な攻略順序が頭の中で構築される。

 色々な倒し方が考案されているが、恥ずかしい話ながら、自分の弱さ、技術力の無さからは選り好みをしている場合ではないと判断する。

 

また、死ぬ思いをして誰かが助けてくれるとは思えないからだ。

 

さすがに偶然は1度起これば十分だ。

 

 どういう魔法を撃つかは、疑似戦闘シミュレーションにて、どういう形にしたらいいかの脳内イメージは出来ているので割と簡単に魔法を発動する事ができる。

 やはりイメージが重要のようだ。そして、発動キーとなる言葉を口にする。

 

 

「ウォーターホース!!」

 

 

 本当ならタイダルウェーブというのが正しいのかもしれないが、そんな言葉は知らないので、かなり適当な名前を付けている。

 

 言うなれば、横向き火炎竜巻の水版といった形だろうか。

 

 凛のバカ魔力を用いた魔法で具現化した大量の水を超圧縮しコンクリートのような硬さの水をぶつける魔法となった。

 

 テレビゲーム等のゲームをプレイした事のある人間にはさして難しい単語ではないが、ゲームをやった事のない凛には難しい言葉だった。

 大量の水がベヒモスとグレートベヒモスに向かっていき飲み込まれる、いや、ぶつかる。

 その場にいたベヒモス達にウォーターホースを、その都度ぶつけていく。

 ぶつけられたベヒモスは、悲鳴のような声を上げて壁へと叩きつけられる。

 

 しかし、濡れたベヒモス変種は焦っていたかのように巨大な咆哮を浴びせて来た。

 

 空間がビリビリと痺れるような激しく大きい音に私は両手で耳を抑え目を瞑り、その場で中腰になって屈んでしまう。

目を閉じていても、真っ暗な視界には、視覚ユーザーインターフェースのアイコンが見えていて、左上には状態異常アイコンが点灯した。

 

 

 硬直と麻痺

 

 

 この2つが点灯している。効果時間はどれも十秒程度だが、致命傷を貰うには十分な時間だった。

 

 スーキーが勝手な作業を開始しているのを私は見ていることしかできない。

「なぜ、そこで大工の姿になっているの!?」と、ツッコミをしたい感じに、スーキーは大工の格好で、私の視野内では、私を模したデフォルメキャラを金槌で叩くモーションをしていた。

 

 そして、デフォルメキャラの上部分にある文字が点灯すると、祝うような感じに花火と花びらが舞う。が、すぐに右端にその文字とキャラが移動して、文字だけ表示となる。

 

『オートダメージコントロール!』

 

 回復魔法の派生スキルが自動的に追加されて機能し、硬直と麻痺が解けた。

 

なにこれ!便利すぎる!!

 

と、心の中から声が出てくるが、誰も聞いていないし、聞こえない。

 

 素直に感想を持ちつつ、ベヒモス達の頭が赤熱してからのヒートチャージを後方に飛んで避けつつ、そこへライトニングを乱発して、そのすべてをベヒモスの頭部に突き刺す。そして、着地をすると、そこへ赤白レーザーが突っ込んでくる。トドメを刺したベヒモスが簡単に蒸発する程の威力が目前に迫る。

 

 

「絶!!」

 

 

ピキーーーーンッ!!

 

 絶は、私が使える最大級の防御スペルだ。

 最高峰の聖絶と比べれば、天と地程の差があるスキルで、最大級というと語弊があるが、結界師が最初に覚える事が出来るのが、絶であるから、完全初歩魔法である。

 

 その防御魔法である「絶」を疑似戦闘シミュレーションであるスーキーが自動で絶妙な角度をつけてくれて、「絶」で防御しうるようにレーザーの斜光板とする。

 赤白レーザーが結界魔法に当たった衝撃で幾つかに分裂して、さながら流星雨のように後方へと着弾して、クレーターを作り上げていく。

結界魔法が砕けないのは、赤白レーザーが弱いわけではなく、私が絶に込める魔力が通常のそれを超えているためと、通常の絶とは思えない程の厚さを有しているため、それとスーキーによる支援のおかげだ。

 

 私は、絶を二つ折りへと変化させて凸の形を作り、レーザーを2つに割る。

 そうすると、レーザーは二つに分かれて互いに壁へと突き進んでいく。

 絶を2つ折りにした事で、折った部分を集中強化する事でなんとか防ごうとしていた。が、レーザーの威力が高すぎるため、絶が砕け散る瞬間に上空へと跳躍をする。

 

 すると、遅れてレーザーも追尾してくる。

 

 

「ウォーターホース!!」

 

 

 大量の水とレーザーが合わさり、私とベヒモス変種の中間で大爆発を引き起こし地面が揺れ、空気が揺れ、空間が揺れる。

 

 そして、空間全体に水蒸気の霧が立ち籠った。

 

 爆発の爆風で吹き飛ばされるが、空中で態勢を整えつつ、ダメージを防ぐためにスケボーの要領で地面側に結界魔法を発動させて滑るように着地する。

 

 

「っとっととぉー、なんとか上手く着地できたかなー?」

 

 

ふと、私、こんなに運動神経高かったっけ?と疑問に思うが、とりあえず、ステータスを・・・・いやいや、そんな事をしている場合ではない、スルーだ。

 着地と同時に転びそうになりながらも、爆発の影響で霧が立ち籠っている間に鍾乳石の岩陰へと走り込みながら、トラウムソルジャーの集団と対峙する。

 

 気配感知をスーキーがフルに使って、脳内に三次元立体映像処理が施された敵配置地図が投影されて、トラウムソルジャーを駆逐していくのだが、トラウムソルジャーは目で見ているわけではないというように適格に襲ってくる。だが、此方も自分が思っている以上に敵の動きがわかった。

 

 それが、スーキーのおかげなのであるが・・・・。

 

「右です。」「左です。」「前です。」「右です。」「右です。」「後です。」

 

うるさい・・・・。

 

 そして、スーキーの一部でもある疑似戦闘シミュレーションが働き、魔法のイメージを伝えてくる。氷の剣を薄く薄くして固めた剣、鋭利な刃物状態だ。今までの雷のこん棒とはわけが違う。

 

 ひたすら切り裂く。縦横無尽に動き、時には八双飛びを繰り返して舞踏無双を続ける。ケガを負っても動けなくなるレベルの傷なら『オートダメージコントロール』が自動発動して、勝手に治癒される。

 

 ある程度のトラウムソルジャーを片付けつつ普通のベヒモスをも掃討する。

 粗方、掃討が終わった所で、ベヒモス変種に移る。

 

 ベヒモス変種は相変わらず、この霧の中で立ち往生しているようで、音のする方向を向いたりしていて、位置が掴めていないようであった。

 

 それもそのはずで、舞踏スキル等を駆使した動きは、ベヒモス変種をぐるりと一回りする形で掃討作業を行っていたので、

 

なので、まずは魔法で。

 

「とんがり!!」

 

 土系の魔法で、本来は「グレイブ」という名前が正しいと思われる魔法で、槍状の物を大地から生やす魔法を亀の右脇腹を持ちあげバランスを崩させた所へ「ウォーターホース!!」を叩き込み、泉へと落とそうとするが、そこは特殊個体の魔獣。

 

 まるでわかっていたかのように、頭を此方へと向けて、口からレーザーを吐いて、ウォーターホースに当ててきた。

 

 またまた冷たい水と高温とが接触して大爆発を引き起こし、地面と空間が刺激を受ける。さすがに持ちそうにないよ、この空間。

 パラパラと崩落も始まっているようだ。

 

 

「これだけの爆発を直で浴びて何ともないなんてすごいな親ボス!」

 

 

 対する私はというと、咄嗟に結界魔法で防御する。ただし、面としての防御力はそんなにないため、自発的に結界魔法を傾斜して威力の分散を行っている状況だ。

 スーキーの援護なしに行えたのは奇跡かもしれない。

 スーキーも「おお!」とか感嘆の声を上げている。そこ、うるさいよ!

 

 

 そうしていると、僅かに残っていたトラウムソルジャーが襲ってくる。

 

 

「もう、いったい後何匹いるのよ!」

 

 

 愚痴に愚痴を重ねるしかないが、もう、かなり倒したはずだ。なのに、未だに戦いを挑んでくるトラウムソルジャーがいる。数はかなり少なくはなっているが、それでもやっぱり、面倒くさい事に変わりがない。

 

 

「主様、残り64体です」

「そんなにぃ!?」

 

 

 私は、むむむ・・・と唸りながら、疑似戦闘シミュレーションを使って、新たな魔法を工作する。

 その場に停止して、ひたすら敵を照準して、追尾誘導して撃破する形の・・・・「主様のスキルでは、現状の技術では無理ですよ」という結果に、戦闘しながら私はがっくりと項垂れながら、トラウムソルジャーを斬った。

 

ならば、視認した相手に対して誘導攻撃をする・・・・これもダメ。

自身の保有スキルの関係上、誘導関連は全部ダメなようだ。

 

なら、その場に浮かべて、ひたすら敵を照準して、直線的な攻撃をするだけのオプションなら・・・・ダメでした。

その場に浮かべるためには、魔力を外部にて補完するための技術が必要になるため、自身のスキルではどうにもならないようだ。

 

自分の技術不足を泣きたくなる。・・・・と、そんなことをしている場合ではなかった。なんとかしてベヒモス変種の動きを止めないとね。

Aパターンダメ。Bパターンダメ。疑似戦闘シミュレーションを使ったからといって、そう、簡単には行かない。なにせ相手は魔獣。・・・とはいえ、生き物なのだ。

それに、雑魚ではないわけだし。当然、周りの個体よりは遥かに知能があるはずだ。・・・・ごめん、今のはなし。怪しいし、自信がないから。

 

とりあえず、レーザー攻撃は傾斜させた絶でなんとかなる。次は、煙幕を作って、懐にまで潜り込む。先ほどの霧の中でも、私は普通に動けた。という事は、スーキーの援護があっただけではなく、霧の中でも動く事の出来るスキルか何かを身に着けているはず。それに賭ける。

 

土魔法と風魔法の応用で、土埃を立てるイメージを浮かべる。疑似戦闘シミュレーションでも、出来ると一応のお墨付きを貰っている。

 

 

「もくもく!!」

 

 

きっと原理は違うのだろうけど、そんなことは気にしない。

辺り一面に水蒸気がまだ舞っている中、砂埃が舞い上がり、2重で視界を塞ぐ。

 

ベヒモス変種は、気配が動いたのを焦ったかのように、岩塊とレーザーを交互に放ってきたが、その前に私は、風魔法で「エアーボム」という魔法を地面へと放ち、高くジャンプした。すると、その直後に、その今までいた場所にグレートベヒモスの攻撃が直撃していた。

この広大な空間を誇る鍾乳洞の天井付近まで飛び上がると、再度、エアーボムを使って放物線を描いて自由落下で、ベヒモス変種のいる手前まで、一気に跳躍する。

 

その間はとにかく何もせず、隠蔽を特化させるように気配を消すように着地して、それと同時にベヒモス変種の頭部、顔に向けて魔法を放った。

 

 

「しゃぼんだま!!」

 

 

水を濁らせて視界を奪った水を張り付けるというAパターンのベヒモス変種の討伐方法その1でシミュレーションを立てていた魔法を放つ。

とりわけ口ではなく視界を奪うような形にしている。と、いうのも、スーキーによると、魔獣全体に言えるかは不明だが、このベヒモス変種は、鼻から呼吸をしているわけではなくて、背中に張り付いている藤壺のような寄生兼共生生物であるスターラから酸素を貰っているようなのだ。だから酸欠になる事がないとか・・・・ほんと、どうやって調べているの?

 

 

「とんがり!!」

 

 

両前足の真下に土魔法で、槍状の物を突き上げる魔法を使って、ベヒモス変種を倒立させようとするが、すぐに対応して、そこから降りようとする。

その後方に穴を掘る魔法を使った。

 

 

「穴!!」

 

 

まんま、そのまんまのネーミングだが、とてもわかりやすい。穴はグレートベヒモスの体を半分ちょい埋まる程度の穴なので、ベヒモス変種は穴から出る事が恐らくできないだろうという感じになった。

脚を引っ込めて、噴射とかされない限りは大丈夫なはずだ。

 

このグレートベヒモスの弱点は、お腹。

お腹には、口からレーザーを放つための冷却機関のような物があって、ここに熱攻撃を受けると、自壊するそうだ。って書いてある。

 

ほんと、どうやって調べたの。スーキー君!

 

 

「私は女の子なので、君はやめてください、主様!」

 

 

と、スーキーから抗議が来たが、それの相手をしている暇はないので、次の行動に移った。

 

 もう1度、「グレイブ」である「とんがり!」を唱え、巨大な壁をベヒモス変種と私とを隔てる壁を作り上げた後、私は、両手を突き出し、魔力を集束を開始した。

 目の前では、グレートベヒモスがジタバタと暴れているが、穴が丁度いい大きさのため、身動きができないでいる。

 

 今の内である。そのためには、とにかく集中をして、一点に集束をしなければ、高度な魔法を扱う事ができないのが現在の状態である。それほどまでに私には天性の欠片もないのだ。

 天職が魔導師なのに、魔法の才能が欠片もないとはこれ如何に。

 

 魔力が集束し、火魔法と風魔法を合わせ、複合魔法へ、そして、空気を取り込み赤い火の玉から、青い火の玉へ、そして、白い火の玉へと昇華していく。

 

 

 

 

そして、

 

 

 

――――無色透明――――に。

 

 

 

 

「いっけぇーーーー!!ファイヤーストーム!!」

 

 

 みんなが知っているファイヤーストームではない。もはや別物といって差し支えないだろう。

 それは極度の高温となり、透明な火の塊は、ベヒモス変種とを隔てる土の壁を悠々と溶かし、ベヒモス変種のお腹に直撃した。

 

 

ビイイイイィィィィィィーーーー!!

ズっゴオォォォォォ・・・・・!!

 

 

 そんな音が聞こえ、私の横を赤白いレーザーが通り過ぎていく。

 ベヒモス変種の最後の悪あがきだ。

 顔は「しゃぼんだま」が覆っているので、膨大な熱量に反応して、その辺りへと撃ち込んだのであろう。

 

 その赤白いレーザーは私の左手を融解させた。

 

 対して、私の放ったファイヤーストームは、空気摩擦でなるようなズゴーという音が鳴り響きながらベヒモス変種の胴体を軽々と撃ち抜き、鍾乳洞の壁を融解させて奥の奥へとその姿を消していった。

 

 

 

・・・・はぁはぁはぁ・・・・。

 

 

 

 私の粗い息が鍾乳洞内に木霊している。

 トラウムソルジャーは全滅。普通のベヒモスも全滅したようだ。

 

「ここにいるのは、私だけ・・・・。くっうぅぅぅ」

 

鈍い痛みが体に走る。

 

 

「あの野郎、勝ち逃げかよー」

 

 

 あの野郎とはベヒモス変種こと親ボスの事である。

 腕の事はいい。それよりも大事な服を燃やして行きやがった。

 あの熱量だ。とても服は無事ではない。度重なる戦闘によってすでにボロボロに近い状態ではあったが、グレートベヒモス戦の時も服の形は保っていたのであるが、今のレーザーによって完全に燃え尽きてしまっていた。

 おかげ様で、私は今、裸である。

 体の半分以上を火傷で赤くなっているが、全裸であり、髪の毛で胸が隠れているだけだ。

 

なぜ、髪は燃えなかった?

 

 

「はぁ~・・・・」

 

 

どうすんのよ。これぇ・・・・とため息と声にならない感想を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘方法や戦闘による書き方などは試行錯誤中です。
なんとかわかっていただけると嬉しいのですが、難しいですね。


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11 鍛錬

遅れた理由:

新しくゲームを買って、書くのも忘れるくらいにゲームに夢中になっております。
現在プレイ中のゲーム:真三〇無双7Empires、エルダースクロールオンライン


前回までのはなし:

ベヒモス変種と戦い、服を燃やされた。



今回は4000字程度。




 ベヒモス変種を倒した後、ステータスを確認したら、さらにしょげた。なんとスキルが減ったのである。

 

成長限界突破・・・・このスキルが消滅した。理由は、人間ではないから成長はしないという物だった。全く説明がなく消えるよりかは優しいが、なぜか目から涙が出る。

 

 本当に亜神となっており、人ではなくなっていた。

 

 ついでに吸血鬼としての能力として、血力変換というスキルで、血を吸収する事で、体力と魔力を回復させる事が出来るようだ。だが、このスキルには、もう1つ効果があった。相手の血を、乾いた状態からでも血であれば、吸入が出来て、それらからスキルを獲得できるというものだった。

 

 他としては、人ではなくなった事を彷彿とさせる物として、魔爪変化というスキルが増えた。実際に試して見た所・・・。

 

 

「わお!!」

 

 

驚きだった。

 

 自分の手の先、指に意識を向けた所、爪が伸びて、鋭利な刃物へと変化していた。

 実際に斬ってみて、さらに驚きの声を上げながら、石をサクサクとバターをいや、紙を斬る程に鋭利だった。ベヒモス変種の甲羅もサクサクと斬れる。

 

「ごめん・・・・私」片手と両膝を着いて、動けなくなった。

これを知っていればもっと簡単で早く倒せていたんじゃないかなと。

 

 

 

・・・・うん、立ち直るのにちょっと時間がかかった。

 

 

 

 試しに、ベヒモス変種・・・・は、もうカリカリに焼けていて、中身は煤だらけだ。唯一魔晶石が残っているだけだった。魔晶石かてぇ~。

 

 なので普通のベヒモスの死体に魔爪を差し込んでみて、血を啜ってみる。ベヒモスは、雷の魔法攻撃であるライトニングによって脳を焼かれただけなので、血はたっぷりと残っているのだ。

 爪刀の反りと言えばいいのか、背の部分が赤みを帯びて登ってきて、指先から血を吸うという不思議な感覚に戸惑うが、これは、味とか関係ないから嫌悪感が来なくて、なかなかいいかもしれないとさえ思った。

 

 ちょっと心臓を締め付けるような感覚があった後、すんなりとシステムメッセージが流れたのを見て、キョトンとしてしまった。

 

 

「固有魔法:重量軽減を獲得しました」

 

 

 ふむふむ、任意に体を軽くできるのであれば、跳躍や高低差を利用した重量増減による攻撃にも効果があるはずだ。なので、これはお得なスキルを手に入れたかもしれないと、気分はウキウキとしていた。

 

 あと、遅老が不老になっていたが、これは亜神効果ではなく、魔力値が10万を超えた事による効果だそうだ。5万で遅老、10万で不老の大台に乗るらしい。

 

 今回の戦いで私の技術不足がかなーり目立った。スーキーも視覚の邪魔になる所でウンウンと頷いている。・・・・私の考えを読んでる?

 

 剣の腕だって素人に毛が生えた?ううん、きっと、そんなのでもないと思う。魔法の腕もまだまだ全然で、天職が魔導師なのに、天性の才能も糞もないんだけどさ。もしかして、魔力値が才能とか?いやいや、絶対に違うでしょ。あれは、レベルアップポイントを自分で振った結果だし。

 

 しばらくここで、鍛錬を積むのがいいのかな?と、周りを見渡す。

 

 幸い、ここには無数の巨大な亀ことベヒモスの死骸がそこら中に横たわっている。まるで王〇が突撃して死んでしまったかのようだ。

 

 また、トラウムソルジャーの死骸も無数に転がっていた。まあ、トラウムソルジャーの死骸が幾ら転がっていたとしても、何も嬉しくはないんだけどね。だって、食べれないんだもの。魔晶石がたぶんあるんだろうけどさ。

 

魔晶石を食べる?それはないでしょう。

 

 

 

 通常、大迷宮内で死んでしまった魔獣は、数時間と経たずに、大迷宮に吸収されてしまう。しかし、ここでは常識が違うのか、吸収されて消滅していなかった。

 

 そして、私は、食事をしばらくはとらなくても血液さえあれば、生きていけるようだ。

 

 ん?

 

 視覚内ユーザーインターフェース内の所で右端の所に「!」マークがついている。そこに視線でアイタッチをして開きくとメールが入っていた。

 

 

「なんなの、このメールは?」

 

「あ、それは、主様の主様が残していったお手紙ですよ!」

 

 

と、スーキーは返答をくれた。そして、手紙にはこうあった。

 

 

 

「親愛なる我が眷属の娘。

おまえがこれを読んでいるという事は、無事に倒せたのだという事だろう。

さて、私が何者なのかについては、多くを語らない。余分な知識はもしもの時に、この世界の模造の神を喜ばせるだけとなるからだ。

次に、亜神となった体でも食事は必要とするので適時取るように。

それから、体を欠損していた場合は、適時、その場所を認識すれば、多量の魔力を利用して再生が行われるので、過信しないように。

あくまでその体は不老というだけであり、不死ではない。

あくまで吸血鬼の能力があるというだけで、吸血鬼自身ではない。

おまえは、今、人と吸血鬼と亜神という特性を半々で繋いでいる状態にすぎない。よって、食事は必要とするが、血液だけでも一定量、搾取できれば生活は一応できるだろう。そして、血液に頼り切った生活を行えば、おまえは屍鬼へと落ちるかもしれない。ゆめゆめ気を付けたまえ。

 

追伸~おまえのその体は人間ではなくなった故に子供を授かる器官は封じられている。必要に迫られれば自動的に授かる器官の封印は解除されるようになるだろう。神族とはそういうものだ。

それから、予備の服をアイテムバッグに入れてあるので使うように。」

 

 

 

なん・・・・ですってーーーーーー!!

 

自分の股に恐る恐る手をやって確認すると、、、、、

 

 

 

 

 

ありませんでした。

 

 

 

 

 

また、自分は、両膝と片手を地面に付きそうになったが、、、、、。

 

あれ、2枚目がある。

 

「また、いつか、会う事もあるだろう。それまで生き残る事を切に願う。逆に探してくれてもいいよ。」

 

と、書いてあった。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

長い沈黙が流れた。もう、どう言っていいかわからず、項垂れるだけだった。

 

 

「ああ、もう!とりあえずアイテムバッグ、その後は・・・・練習だ。練習」

 

 

割とさっぱりした性格だった。

 

 いや、考えていても解決策は見つからないと思ったのだ。実際にいくら考えても見つからないだろうし。

 

 イベントリという名のいわゆる亜空間型アイテムボックスは、意識すれば、自分にだけ見えるアイテム欄のような物が空中に投影されて、そこにアイテムをセットできるようになっていた。そこには、魔法効果付の衣服が入っていた。

 魔法効果はサイズ調整機能・防汚・自動修復機能がついていたので、便利なのでありがたく使わせてもらう。

 

 

「う~ん、まさかブラキャミまで入っているなんて、まさか現代人じゃないよね?う~ん、疑問だ」

 

 

さて、考えていても仕方ない。今は、生き抜く術を磨くだけだ。

 

 この後、実際に[再生]を試してみた。腕が本当にニョキニョキと生えてきた。

 それに余りに痛くなさすぎて忘れそうになるくらいだった。

 それについては、スキルにあったので、スーキーの協力の元に弄る事で、痛みレベルを変動できる事がわかった。

 

 態々スキルをステータスプレートで直接弄って感触を掴むよりもピアス型ユーザーインターフェースであるスーキーを介して行った方が遥かに楽だった。

 

 鍛錬についても同様だった、基本的には何もせずに瞑想を行う。瞑想は、魔力そのものを回復するために必要な事だ・・・が!

 それと並行して、スーキー協力の元、疑似戦闘シミュレーションを使って、ひたすら脳内で疑似的な敵となる的を作り、それを元に戦闘を繰り返す。

 

魔爪を使った戦闘方法

 

魔法剣を使った戦闘方法

 

魔法剣を瞬時に出して投擲して相手を倒す方法

 

魔法単体又は、複数の魔法を掛け合わせる複合魔法の錬成度上昇

 

それは1日22時間続け2時間睡眠を取り、1週間が経過した。

 

驚くべき事にこの体は、睡眠をあまり必要としなかった。

 

 実際には1週間だけど、もう、脳内は3カ月以上は鍛錬した気でいた。それだけこのピアス型ユーザーインターフェースが使い勝手が良すぎたのだ。

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:----

天職:魔導師

筋力:8511   [+全身強化時:12766]

体力:8506   [+全身強化時:12756]

耐性:8500   [+全身強化時:12750]

敏捷:8501   [+全身強化時:12751]

魔力:84980   [+最大値上昇/+30%:+25494/=110474]

魔耐:8506   

幸運:100(MAX)

残りポイント:0

===============================

スキル:

戦闘補助系:

ゲーム感覚・気配遮断・見切り・舞踏・重量軽減・魔力感知

経験値上昇[[+1000%(MAX)]]

必殺[[+博打][+幸運+][+的中率上昇+][+会心]]

先読[[+時間遅延][+反射速度増加]]

気配感知[[+効果範囲][+感知強化]]

聴力強化[[+効果範囲]]

血力変換[[+スキル奪取][+体力変換][+魔力変換][+乾血吸収]]

跳躍[[+大跳躍]]

縮地[[+爆縮地][+縮影]]

再生[[+手動再生][+痛覚操作]]

高速反応[[+反射神経+][+電気信号]]

魔法系:

全属性適性[[+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下][+消費魔力軽減][+発動速度上昇][+高速詠唱][+範囲強化][+イメージ強化][+誘導][+超高圧縮]]

全身強化適性[[+発動速度上昇][+発動時間+100%][+発動時間永続化][+強化増加値+50%]]

結界術適性[[+発動速度上昇] [+消費魔力軽減][+耐久化]]

複数同時構成[[+複合魔法]]

時間魔法適性・高速魔力回復・回復魔法適性・魔力最大値上昇[+30%]・魂魄魔法

近接系:

剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い][+カウンター][+無拍子]]

二刀剣術[[+刺突][+パイリング][+カウンター+2][+強打撃][+スタミナ軽減][+斬撃速度上昇][+投擲][+抜刀速度上昇] [+無拍子]]

物魔一体型戦闘術[[+発動固定維持][+連続発動][+連続投擲][+連続攻撃][+舞踏補助]]

魔爪変化[[+血液吸収][+麻痺追加][+硬化]]

魔爪格闘術[[+斬撃][+刺突][+発動速度上昇][+高速解除][+舞踏]]

その他:

強歩[+50%]・聞耳・早読[+20%]・言語理解

備考:

転生10回目・転生者・不老・亜神

===============================

 

 ステータスプレートには書かれないが、必殺技も考えた。

 

 現時点で発射には、8秒程かかるが及第点ではないだろうか。

 必殺技は、ベヒモス変種を殺ったあの魔法だ。

 名前は、「フレイムストーム」とした。

 ファイヤーストームでは、スーキーから猛抗議があったためだ。技が全然違うと何度も映像を脳内に流されるため、やもえず名前変更である。が、やっぱり抗議は消えなかった。

 

なんでだろう。

 

 

 

 

 

 

 




ステータス表記・・・今後どうしようかな。見やすくしようとすると、かなりの縦長になってしまう。原作ではまとめて書いてあったのを思い起こすと、それなりの訳があったと理解できる。

全身強化に関しては、常に魔力が続く限り全身強化を行っております。基本的に効果がなくなる事はありません。


亜神効果はなし。単に人種が変わった程度の認識でOK。人間⇔白人種、ドワーフ⇔黄色人種、エルフ⇔黒人種、このくらいの差

補足:
亜神になった事での体の成長はないというのは誤解で、ユミルという子の人種では、神、亜神でも成長します。成長に関しての種別が違うというだけです。身長に関しては打ち止めの年齢。技術は成長します。ステータス値のみ生まれ持ったステータス値という事で、変化がないというだけです。

※元々ベヒモス変種はグレートベヒモスとしておりました。なので変更されていない文章があるかもです。
※元々、幾つかの文を書いてあり、それらを合成(コピペ)して1つの文にしております。なので、合成に時間がかかっております。


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12 誰か・・・いる?


今回の話は、脱出するという話です。


 ベヒモスという魔獣を倒してから、1週間と数日が過ぎていた。

 この世界に召喚された勇者様が大変な思いをして倒すはずの魔獣をすでに倒してしまったというのも本人が知れば、

 

 

 しかしながら、凛の移動が遅々として進んではいない。それもそのはずで、脱出に関する事には、だいぶ苦労をしていた。

 

なにせ、上に上がるという選択肢が乏しかったからだ。

 

 強靭になった足腰に物を言わせて、壁から壁へ八双飛びの要領で跳躍スキルも併用して、上に上がるという選択肢もあったが、実際にやってみると、ちょっと足りなくて、落っこちてしまうのだ。

 もちろん、風魔法であるエアーボムを連続使用して上がるという選択肢もなくはないし、氷魔法や土魔法で土台を作りながら進むという選択肢もなくはない、がっ、天井が見えない程に高くて、頑張って登ろうか悩むくらいだ。・・・素直に諦めたが、いざとなればやるしかないだろう。選択肢として残しておく。

 

 なので、次の手段として、この大空間である鍾乳洞内を探索していた。 だが、あれだけの数のトラウムソルジャーやベヒモスが溜まっていたのをみると、つまり、それは、あの罠にかかって、下に落ちた冒険者がそれだけ居た。ということに他ならない。落ちた冒険者を追って、トラウムソルジャーとベヒモスもまた落ちていたという事だ。

 実際に、私も落ちて来た穴の下にあった湖には、冒険者の物と思われる装備や白骨化した死体が沈んでいるのが確認できた。

 

 実際に、あの量の前門のベヒモス、後門のトラウムソルジャーに襲われたら脱出は困難であろう。私も無理だと思ったし。

 

 

「出口はなし・・・・か」

 

 

 もう、慣れてしまった独り言。

 どの道、外に出られたとしても、元来の影の薄さでどの道、気付かれないだろうし。と、その時。

 

 

ピコーン!

システムメッセージ:「『光と闇』を習得しました。」

 

 

「な、な、なに!?」

 

 

 光と闇・・・・戦闘には役に立たないが、元来の影の薄さを強制的に光に変えて、目立つようにするスキル。元の影の薄さに戻すこともできる。これで君もアイドルだ。やったね!

 

と、書いてあった。

 誰だよ、こんなお調子のいいスキルとスキル説明を考えたの!?まあ、この迷宮を抜けたら使うかを考えるとして、今はね。ここの脱出が先だよ。

 でも、気になる事もあるんだよ!

 

 

「でも、今はいいか」

 

 

と、私は顔を上げて、ある方角を向いてから口に出してみる。

 

 

「一応、あそこを進んでみようかな」

 

 

 視線を送る先、そこはベヒモス変種との闘いの終幕に開けてしまったファイヤーストームの後だ。膨大な熱量により岩壁が融解して穴が開いてしまったわけだが、絶妙な角度から見ると薄っすらと光も見えていた。

 

実際には見える方がおかしいと後から気付く事になる。

 

 ファイヤーストーム・・・もといフレイムストームで開けたトンネルを進む。

 地面はカチカチのコチコチに固まっており、一部の地面はガラスのようにツルツルしていて、本当にガラスのようだ。

 実際に、スーキーが補足を入れてくると、膨大な熱量により土中に含まれている硝石が固まってガラス化しているようだ。

 

 そんな道を、もう、どれだけ歩いたのかがわからないほど歩いている。実際には暗いはずだが、眷属の影響により暗闇が昼間のように見えるため足場はそんなに困っていない、困っていないが、同じ風景のために距離感が掴みにくいのが問題がある。

 それでも1キロ、2キロの単位ではないはずだと思っている。思っているだけだろう。

 

 

「もう、私の魔法なのに、どんだけ長さがあるのよ」

「はい!直線距離にして12キロメートル程あります!」

 

 

 別に聞いたわけではないが、スーキーの返答により口に出さなければ良かったと思ったが、すでに遅し。

 とにかく倒さなきゃと思っての無意識に力を込めて発射した魔法だっただけにかなりの高威力だったようだと改めて認識を変えた。

 

 そして、実際に行き止まりに達し、僅かに光が漏れていた。

 そこを砕き、少しだけ外をみると、何処かの地底湖のような場所で、高めの壁際に居る事がわかった。安全を確認した後、壁に穴を開けて外へと飛び出す。

 

 まずは、この場所で浅い地底湖を探索し、壁の畔で魔法陣を見つけた。

 

 

「これは、火の魔法陣だね。誰かここで暖を取ったという事かな。」

 

 

 この魔法陣から読み解ける事は、火に関しての適性を持っていない事がわかる。約1メートル程の巨大な魔法陣には、火を起こすための属性や威力、射程、魔力吸収等の記述が施されていた。

 

 

「と、いう事は、ここに誰かいるのね」

 

 

 付近には、1人分の足跡が発見できた。後は魔獣と思われる物の足跡が3種類は発見できる。少なくともこの場所には3種類の魔獣がいるという事は確実のようだ。

 

 また洞窟と思われる場所へと足を踏み入れる。危険な場所へと足を踏み入れるようなコソコソとした姿ではなく、堂々と歩いていくと、すぐに接敵した。ウサギ型の魔獣である。後ろ脚が凶悪なまでに発達し、その洞窟に対して保護迷彩を施したような色合いに対して、赤黒い線がお尻から頭に向けてドクンドクンと脈打っていた。

 

 耳をピコピコと動かして、此方の出方を伺っているようだ。

 そして、一旦後ろへ跳躍した後、空中で何かに着地したかのような動きを見せた後、空気が爆ぜるような音が響いた途端、此方に向かって突っ込んで来た。

 

 

「絶!!」

 

 

 絶は、防御系魔法で最弱の初歩魔法だ。四角の半透明の壁を出す魔法だが、凛の場合は、その魔力の高さ、魔力の詰め込みからあり得ない程に硬い。

 

それ故に・・・・。

 

 

ガン!!

 

『絶』とは思えない程の硬さを有し、ウサギ型魔獣の攻撃に凄まじいまでの衝撃音が出ながらも防ぐ事が出来ていた。

 

 咄嗟という事ではなく、余裕を持ったタイミングで発動が出来た。

 これはステータス的に見ると、その高さから相手の動きがスローで見えたからだ。それと、スーキーによる予測演算によりこうやって動いてくるだろうという行動パターンがある程度、予想がされて事前にわかっていたというのも大きい。

 

 ウサギ型魔獣は、攻撃が防がれたという事実をすぐさまに飲み込み、その場から離れようと足に力を加える。

 

 しかし、その力を込めたタイミングを凛の動体視力とスーキーの判断力が見逃さなかった。

 

 跳躍のために力をかけたタイミングで『絶』を消され、宙を泳ぐ形となったウサギ型魔獣は、無防備な状態を空中に晒すこととなった。

 

ここからは一連の動作でしかない。

 

 爪に意識を集中させ、爪を延ばし、魔爪とし、宙に浮いたウサギを掻っ切ると同時に血を抜き取る。

 

 血を抜き取られたウサギは、未だにその場に止まっている。

 

 これは、そんな時間の中の話だ。

 

 回し蹴りをそのまま決める。

 

 ウサギは、吹き飛び地面を何度かバウンドして、周囲に林立する岩山に体をぶつけて止まった。

 

 

ピコーン!

システムメッセージ:「天歩を獲得しました。」

 

 

さっそくスーキーに頼んで脳内で疑似戦闘シミュレーションにかけてみると、空中に足場を出して、走り回る事ができるスキルだという事がわかった。

 

 脳内で動きを確かめた後、実際に体を使って試す。イメージ通りな感じで、空を泳ぐ?いや、歩くかな?感じで準空中浮遊ができた。

 

 

「これは、面白いスキルね。あ、そうだ。確か、ウサギの肉はおいしいって聞くけど、どうなんだろ」

 

 

すでに三枚おろしとなっている・・・・いや、四枚おろしか?それにぐちゃっと・・・・そんなことはどうでもいいか。

 

 おいしそうな部位を切り取って、魔法:ファイヤーを当てて、じっくりと炙ってかぶりついた。

 

 

「ん!!あ、あー、おいしい~♪ん~、久々の肉だ~。もぐもぐ」

 

 

ピコーン!

システムメッセージ:「魔力操作を獲得しました。」

 

 

「ほへ?」

 

 

魔力操作・・・・魔力を直接、扱うことが出来るようになります。

 

 

 ふむふむ、意味わからん!

 用は、魔法が扱いやすくなるって事でいいのかな?

 スーキーに聞いて見ると、魔法を詠唱要らずで使用する事になるのだが、すでにスーキーが代行しているので、あまり意味はないそうだ。なので、恐らくは扱いやすくなると、そういう事でいいのかと思った。

 

 肉を食べながら歩いていると、6匹程の狼と出くわした。やはり、普通の犬ではない。赤黒い線が走り凶悪そうだ。

 

 6匹全部が尻尾を高々と上げて、放電を開始する。

 そして、多量の雷撃が私を中心とした場所にバリバリと降り注いだ。

 

 

「ウォーターシールド!!」

 

 

 電撃は私の周囲の水を伝って、地面へと流れて、全くダメージを与えられない。

 『しゃぼんだま』魔法の発展型で、張り付くという部分から進化した形であるが、最初は常時発動型で考えていた魔法だが、現在の私の熟練度から常時発動型は無理との結論から通常発動型へと変えた魔法で、常時としたい理由としては遠距離系攻撃を水のバリアで弾く、または反らすという事がこのバリアで可能な事だ。大規模な熱量であっても、不意の一撃に対してコンマ数秒を稼ぐ事ができるのであれば、致命傷となり難い事を想定してである。

 

 狼たちが予想の出来ない相手に遭遇したと判断して手をこまねいていると、突然、左端に居た狼が絶命する声が響き渡る。

 

 全員が此方を見る。そして、また、私が元居た場所とを交互に見ている。すると、倒された狼の元に私が居て、元々居た場所の私は薄っすらと消えていくのが見えた。

 

 そう、これは『縮影』というスキルを使用した移動技で、質量を持った残像をその場に残すという移動技で、鍛錬にとった1週間で身に着けたスキルだ。

 

 そこからは一方的な蹂躙だ。

 私は社交ダンスのような舞踏を1人で寂しく披露しながら『縮影』で私の質量を持った分身を残しながら、次々と飛び掛かってくる狼が私の分身を攻撃する横を切断していく。

 気付けば、そこには、色々な姿にポーズを構えた私の蜃気楼が浮かんでおり、狼はパニックの一言だ。

 魔爪、結界の剣による打撃、そして、最後は、ファイヤーボールが剣の形になった投擲、狼たちは瞬く間に全滅した。

 

 ファイヤーボールを剣の形にして、それを投擲し、刺さった相手にもれなく爆発に見舞われるという魔法である。あくまでイメージで作ったので、名前はないが、見た目から惑わす魔法となっている。

 

 

ピコーン!

システムメッセージ:「雷撃を獲得しました。」

 

 

複数又は単体に雷撃を飛ばす事ができる固有魔法らしい。

 

 

「そうだ、固有魔法は固有魔法で欄を作った方がいいかな?」

 

 

 1人で勝手に発言して、勝手に納得する私、傍から見たら、ちょっとかわいそうな子である。

 

 疑似戦闘シミュレーションでも、認識した相手に電撃を飛ばして、麻痺させる構図として浮かび上がっている。現状はこういう使い方しかできないようだが、ゆくゆくは・・・・とか、そんなことを考えていると、スーキーが索敵した地形に妙な点が見つかった。

 

 それは、岩と岩肌に隠すようにある洞穴を見つけた。

 入り口となる洞窟が不自然な形に曲がっており、地面には隠したと思われる足跡の形が見えた。

 

 屈んだ人が一人、もしくは子供が1人だけ侵入出来るかどうかという程度の大きさの穴だ。それは、恐らく周りに棲息している魔獣のサイズから計算したのかもしれない。確かに、このサイズならあのウサギや狼の大きさでは抜けられないだろう。

 周囲に人の気配はない。単に自分の気配感知距離外にいるだけなのかもしれないが、未だ、意識しないと気配感知が出来ないのが私の不安点で、この辺りはスーキーも助けてくれない。

 

 中へ侵入するため、少し魔法で穴を開けて入った。

 そこには肉が少しだけついた骨や誰かが寝ていたであろう場所、乾いた血液、それに何かよくわからない光を放つ色の水が少しだけ溜まっていた。

 

私は、乾いた血液を擦り取って口に含んだ。

 

 

「う゛!!?!!?」

 

 

まっずっ!!

 

 急いで近場に溜まっていた光を放つ色の水を掬ってすすると、今度は体の中が焼けるような熱さに襲われた。

 

 

「う゛、う゛わあああああ!!」

 

 

 喉を抑えて藻掻き苦しむ。喉が焼けるように痛い。まるで、体がまた変質しているかのような痛さが喉と水が流れ込んだ所を襲っているかのような痛さだ。

 

 

・・・・ぴちょん・・・・ぴちょん・・・・

 

 

 水の滴る音が妙に響く。妙に体が軽くなったように感じた。そして、体を起こす。

 妙に体が落ち着いているような。そんな感じだ。

 

 

ピコーン!

 

 

空気を読まないシステムメッセージが流れる。

 

システムメッセージ:「毒耐性を獲得しました。」

システムメッセージ:「劇毒耐性を獲得しました。」

システムメッセージ:「完全毒耐性を獲得しました。」

システムメッセージ:「麻痺耐性を獲得しました。」

システムメッセージ:「石化耐性を獲得しました。」

システムメッセージ:「毒耐性、麻痺耐性、石化耐性を獲得し、完全耐性を獲得しました。」

システムメッセージ:「錬成を獲得しました。」

システムメッセージ:「風爪を獲得しました。」

システムメッセージ:「夜目を獲得しました。」

システムメッセージ:「遠見を獲得しました。」

システムメッセージ:「気配遮断を強化しました。」

 

一度に色々なスキルを獲得したようだ。

 

 毒に関しては、先ほど飲んだ水の効果らしい。吸血種としてなのか、それが亜神としての体に反応し強化された結果、完全な毒耐性となったようである。

 他は、乾いた血液から搾取した事により、色々な魔獣や此処にいたであろう人の血からのスキル獲得になる。どうやら、ここにいる人物は相当な化け物である可能性があった。

 

 

「できれば会いたくはないかな」

 

 

 そんな事を呟きながら、私はもう一度、この狭い空間を見てからこの場を去った。

 

 私が去った後、さらに来訪者が来るのだが、それは別のお話。

 

 

 

 




やっと、原作に追いついて来ました。

今後は、原作主人公を追いかけるという話になります。

ユエは原作主人公とくっつくのは当然です。

主人公に仲間が出来るのは第2章に入ってからの予定ですが、現在妄想中で構想中で執筆しておりません。

第2章へ入るのは、まだ先ですが、気長にお待ちください。

オリ主人公のラストはすでに考えてあります。


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13 全部、鶏肉!

今回の話は、原作主人公の後を追って大迷宮探索になります。


 時期は、南雲ハジメと呼ばれる最弱と謳われた少年が、ユエという名の少女を助けてから、50階層に作ってあるハジメの秘密基地へと戻ろうとしていた頃の話だ。

 

 私は、この奈落の底といわれる場所とは知らずに上への道を探してこの大迷宮を探索しつつ、片手間に、有り余る魔力を使って、固有魔法の練習も合わせて行っていた。

 

 凛はまだ、ここが奈落と言う場所である事、奈落の中で最上層に位置している事、

 また、あの洞窟を作って住んでいた人物が南雲ハジメである事を知らずにいたが凛自身は、何事も気にした様子はなく探索を行っていた。

 

気にしても仕方がない・・・というのが最もな理由だからだ。

 

 スキルである気配遮断[+強化]を使う事により、効率的に魔物を寄せ付けず、進行上邪魔になるのだけを掻っ捌いて進んでいく。その際に、攻撃系の固有魔法の練習台としてもいた。

 

 特に風爪は相性がよく、魔爪だろうと、魔法剣だろうと、斬ればそこを中心に相手に対して風爪というカマイタチのような追加効果が発生するという状態にまで持ってきていた。本人はあまり気にはしていないのだろうが、事実上のオーバーキルである。

 

 しかしながら、その探索は困難を極めた。

 迷宮という環境上の事かもしれないが、太陽が常にあるわけではない空間において、自分の方角を知る事は困難であるといわざる得ない。

 ここで非常に効果を発揮したのは、ピアス型ユーザーインターフェースであるスーキーだ。

 これによって、常に北がわかる・・・・はずなのだが、凛は迷っていた。

 方向がすぐにわからなくなるという典型的な方向音痴だった。

 

 方向音痴なのに、王都からホルアドへよく行けたな。と疑問に思う者もいるだろうが、そこまでの道は割と有名で、道路標識なり、地図なり、コンパスを使ったりしていたのだが、現在はベヒモス変種戦にて失われているという状況である。どこで失ったと思った方もいるかもしれないが、ベヒモス変種戦でラストのレーザーによって、ポーチ事消失していたのである。ステータスプレートは、穴を開けて、首から垂らしていたので無事だった。若干は焦げたが正常に機能した。

 

 また、マッピングの方法・やり方がわからないのだから仕方のない事だ。

 現代人でまっさらな地図にマッピングを出来る方はどのくらい居られるのだろうか。つまりそういう事である。

 

 え、ピアス型ユーザーインターフェースを使えばいいって?使ってるよ。当然ですよ。こんな便利な物は使わないとダメでしょ。

 もちろん、スーキーとも会話しながら進んでいる。只、本人が迷っているという自覚が現在はない。

 なぜなら片手間の固有魔法訓練が仇になっているのだ。

 

 つまり片手間にやっているせいで集中が疎かになっていて、通った道をまた通っても気づいていないのだ。まあ、それだけ周囲の地形や壁の形が似ているという事だが。

 

それでも、さすがに迷っている自覚が出てきた。

 

 原因は、他者が見れば一目瞭然なのだが、それがわかるかは本人次第であった。

 右上にマップが表示されており、行った場所は常に明るく表示されている。なのに、迷うのだ。

 典型的な迷う原因としては、マップが常に北を差さず、グルグルと回転する事にある。

 そのために方向感覚が狂わされて、どこをどのように進んでいるのかわからなくなるのだ。

 経験として1度くらいはみんなあるはずだ。

 地図と体を同時に回して街を歩いた事が。この時、地図を回さずに、自分の体だけを動かして進むと非常にわかりやすいのだ。

 それと同じ事が現在進行形で起こっていた。

 

 まあ、それでもいつかは辿り着けれる物だ。実際に、凛が迷っているのを自覚をした時には、この階層のマッピングは終了したのだから。

 

 おいしかったため、ウサギ型の魔獣をフライドチキンの形に加工した物を頬張りながら、視覚ユーザーインターフェース内に映るこの階層の全体マップを見ながら独り言ちる。

 

 

「おっかしいわね。下へ行く階段はあるのに、上に行く階段もなければ、なんらかの手段すらも見つからないなんて」

 

 

 いつかの南雲と同じような感じの言葉を吐いている。というか、この言葉は、ここを知らない人にとっては、世界万国共通なのではないだろうか。

 

 上階に上がるために一応の事はすでにしているのだが、どうしてか穴が開かなかった。その一応というのは、グレートベヒモスを倒すために使用した。ファイヤーストームとはもう言えなくなっているフレイムストームの事である。フレイムストームというのもなんか違う気もするのだが。もはや、レーザー兵器といって差し支えのない程の超超高温魔法である。土が融解して何も残らない程に蒸発してしまう程の威力なのだ。魔法ではなく兵器だろう。

 

それでも、穴は開かなかった。

 

 

「ここは、仕方ないわね。下層へ向かいましょうかね」

 

 

 下層への道はすでに発見しているため、フライドチキンを食べ終わった後、ウォーターの魔法で手を洗った後、スーキーに道案内を頼み、楽々と下層への入り口へと到達した。

 

「階段は~・・・なしね。ないというより、砂利道の坂って感じかな」

 

そこは、上の階層と変わらぬ空間だった。

 

 いや、実際の所は真っ暗闇で、上の階層のような緑光石を使った仄かな温かみのある薄緑の色が支配する階層ではなかったはずだが、あの洞窟に住んでいた人のスキル:夜目と種族特有の夜間でも昼間のように見えるが働いており、暗闇が普通の空間に見えたのだ。

 

 そうして、階段という名の砂利道を降り切った所で、1体目の魔獣がジッと伏せて石像のように体を膠着させて待ち伏せをしていた。

 

 ただのトカゲだね。そう言うのも語弊があるが、実際にでかいオオトカゲというのが私の抱いた最初の感想だ。これが世に聞くバジリスクと呼ばれる物かは、私にはわからない。視覚ユーザーインターフェースには、トカゲとしか名前は書かれていない。

 

 弱点はなし。動きは速いようだが、私並のステータスがあるなら問題ないレベルらしい。固有魔法はっと。

 

 トカゲの目がギンッという音を立ててフラッシュのように焚かれるが、何も起こらない。だが、視覚ユーザーインターフェース内の左上の状態異常アイコンには、石化マークとそれを解除するアイコンが点灯していた。

 

 

「なるほど。あの洞窟に住んでた人のがんばりがここで発揮されたわけね。ありがとうございます。石化対策」

 

 

 トカゲを前にして、私はそう言って、相槌をポンと打った後、どこかに向けて手を合わせて合掌する。

 

 と、している間に、トカゲは、「何しているんだこいつ」みたいに頭を傾けてジッとしていた。

 

 

「爆縮地!!」

 

 

 縮影ばかりを繰り返していたら、いつの間にか追加されていた縮地の派生技、「爆縮地」・・・・この技は、縮地のさらに高速版と思っていいだろう。

 そんな彼(トカゲ)の心情を流して二刀流スキルの[+無拍子]からの[+爆縮地]で、一気に突っ込むと同時に体を捻りながら、首を掻っ切って、そのまま通り抜けると、その数秒後にドチャと生々しい音を立てて、トカゲの首が落ちた。

 

 

「おし!!」

 

 

 見事な動きにガッツポーズをする。切り抜けた際に血を抜き取っているのだが、追加スキルの獲得はなかった。

 「残念」と小さく呟くと、次の獲物を探して、動き回りながら探索をしようとするとスーキーが割り込んだ。

 

 

「ちょっと待ってください!」

 

 

 スーキーが言うには、ちゃんと肉を食べて見てください。という事らしい。

 肉を食べる事で追加が得られるかもと予測を立てていた。

 

 肉を切り分け、魔晶石を取り出して、イベントリへぽいっしながら、肉に魔爪を差し込んで持ちあげて、ファイヤーで焼く。すごく簡易的な焼き鳥ならぬ焼きトカゲだ。

 

 

「はむ。ん~、もぐもぐ、ん~ん~。あ、おいしいかも♪」

 

 

 肉は鶏肉の味だった。塩があればベストだけど、そんな物はないのでちょっと焦げ目を作ってから食べる。なかなかに美味だ。そして、食べ終わると、スキルを獲得した。

 

 

システムメッセージ:「微石化を獲得しました。」

 

 

微石化・・・・微石化は、即効効果はないものの、戦いの中で相手に傷をつければつけるほどに石化効果が増していくというスキルだった。つまり、相手が強ければ強い程、戦闘時間が伸びて効果が高くなるという事だ。相手には目に見えない石化が侵攻してくるという恐ろしい物である。

 

 次に出会ったのがフクロウ型の魔獣だ。なかなかと厄介な羽を飛ばす遠距離攻撃を実行してきた。

 

 八双飛びと天歩を使って空中に地面を作り出すという方法を利用した三次元立体機動で回避をしながら、此方からもライトニングを放つ。しかし、単発ではなかなか当たらない。

 

 疑似戦闘シミュレーションが新たなイメージを作り出す。そして、それを脳内で私にイメージ図を見せる。

 

 

「え、散弾タイプなら当たるかもって。うん、わかったやってみる」

 

 

 避けながら、疑似戦闘シミュレーションが作ってくれたイメージをそのままに浮かべて、形を整える。

 

 

「ライトニングブレッド!!」

 

 

 「なんか形が違う」とスーキーがぼやいた。ライトニングで出来た無数の鎖のような物が大量に飛んでいく。フクロウを取り囲むような形で展開され、それに触れた途端。

 

 

アギャギャギャギャギャギャギャギャ!!

 

 

「てりゃー、フレイムランス!!ライトニングランス!!ウォーターランス!!ウィンドランス!!」

 

 

 数々の射撃魔法が大挙して、避ける行動が取れないフクロウ型の魔獣は、次から次へと魔法が体に刺さり、簡単に粉々になって地面へと落ちた。

 

その後、サクッと魔爪で斬って手ごろなサイズのお肉と血液を奪う。

 

 

システムメッセージ:「超音波を手に入れました。」

システムメッセージ:「再生が重なったため、再生にかかる魔力を低減致しました。」

 

 

超音波・・・・微細な魔力波を飛ばして、周囲の状況を三次元で認識できるようになる。いわゆるレーダーのようなスキルだった。

 

 

 超音波スキルは非常に便利で迷宮探索に一役を買ってくれている。

 現在は、範囲が狭く自身を中心に50メートル程度であるが、角を曲がった先に何がいるかという事を教えてくれるのだ。ただ、初めて見つける物に関しては何かがいる程度しかわからないのが玉に瑕ではあるのだが、便利には違いない。他にも洞窟探索で壁面の凹凸や下への階段等もすぐにわかるので、使い勝手がかなり良くなっていた。

 

 その後もフクロウ型魔獣を同じ方法で倒していくのだが、その度に、スーキーと意識のないはずの疑似戦闘シミュレーションからの泣きが入った。何が問題だっていうのよ、まったく!

 

 

「問題大ありですよ!まったくぅ」

 

 

とスーキーがダメ出しするが、ちっともわからない。だってイメージ図通りだもの。スーキーがさらに説明をすると、今やっている魔法はブレットではなくてネットだと言う。ブレットは、単発の玉が沢山飛んでいくんです!ネットは鎖状の物を飛ばすんですよ!と息を粗くして説明してくれた。

 

 

「つまり、私が今まで放ってきた魔法は、ライトニングブレッドではなくライトニングネットだという事ですか」

 

 

 両膝と両手を地面について項垂れた。恥ずかしい。でも、ここでは誰も見ていないから黒歴史だ。そう、黒歴史なんだ。

 

 その後は、猫型魔獣1匹と戦闘になった。

 地球上の三毛猫をそのまんま大きくして、赤黒いラインが入っている点だけが違う愛くるしい姿の猫魔獣だ。鳴き声までが「にゃぁ~」と、かわいい。

 

 

「うぅぅぅ・・・・ごめんね」

 

 

 後ろ髪を引かれる思いでの討伐となった。が、意外と手こずった。今までに遭遇した魔獣とはわけが違う程にすばしっこく、洞窟内を巧みに動いて襲ってくるのだ。さすが猫ですね。

 

 

「誰よ。こんな可愛いのを魔獣にしたのは!」

 

 

システムメッセージ:「身軽を手に入れました。」

システムメッセージ:「先読を獲得しましたがすでに所持していたため、時間魔法適性と合わせて、未来視を獲得しました。」

 

 

身軽・・・・体の柔軟性を上げて、バネを強化するスキルだ。

 

つまりは、回避や攻撃に補助的に効果を発揮するスキルという事だろうか。

 

 未来視は、重要なスキルとなった。自身の危険だけだが、自分の3秒手前の姿を見ることが出来るスキルだ。達人ともなれば、3秒あれば、致命傷を避け相手に有効打を与える事は十分にできるし、カウンターと合わせれば、ほぼ決まるのではないだろうか。

 

 道すがらの鍛錬も欠かしていないが、手に入れた中で一番役に立っていないのが、錬成スキルだ。何をどうしたらいいのかがわからない。錬成スキルってつまり鍛冶師が持っているスキルだよね。どう、使うのよ。これ~。

 使用用途がまるでわからないのだからどうしようもない。あくまで戦闘だけをメインにやってきた凛にとっては、戦闘に関連しないと思っているために役に立ってはいなかった。

 だが、とりあえず、出来る物をという事で、この洞窟内で手に入る鉱石・・・・ガラスを作り出して、ヒヨコ、カラス、ネコといった置物を作る事に精を出していた。作っては、ポイッとアイテムボックスへ投げ入れ、また次を作るという繰り返しである。

 やっていて、1つ分かった事がある。それは、イメージ力が上がるという事だ。物を作り出すという事は、それだけイメージ力が必要になるので、これはこれで悪い事ではないと思い始めていた。

 

と、次の階層だね。

 

 次の階層は、ドロドロネバネパした液体が充満している地で、体が汚れるのを嫌って少し躊躇うが、その場から踏み出そうとした処で、スーキーに止められた。

 

 

「な、な、なに、なんなの?」

「ちょっとお待ちくださいね。この匂い、それにネバネバ、もしかすると、発火するかもしれませんね。なので、燃える系の魔法の使用は控えてくださいです」

 

 

 え、マジ?とか思ったけど、スーキーが言うなら仕方ない。氷系で攻めますか。

 

 それよりもスーキー、今、匂いって言ったよね。なんで匂いがわかるの!?

 

 それに対する返答はなかった。華麗にスルーされて、私は洞窟内を進む事になった。

 

 洞窟内で上に1メートル程の所にスキル:天歩を使った地面を作りながら進むという超荒業である。魔力にゆとりのある凛だからこそ出来る芸当で地面に付随する環境ダメージ類の一切を無視するという高等テクなのかもしれないそれは、ある意味のチートであった。本人にその気はない。

 

 空中を歩くという動作を続けて、洞窟内を歩いていると、ふと思ったことが口に出る。

 

 

「こう、空中を飛べたらもっと楽なのにね」

 

 

 空中を歩けるなら飛ぶ事も出来るのではないかというのがその発想の原点である。

 しかしながら、飛ぶ事と歩く事は動作においては全然別物と言っても可笑しくはない事なのだが、凛にはわかっていなかった。

 

それに対してスーキーは、会話の1つとして返答する。

 

 

「それは、ユミル様ならやってますけど、たぶん、主様には無理ですね」

「え、あの神様ってそんな事できるの?さすが神様ね」

「いえ、そうではなく、本人が言うには、サイコキネシスという特殊な力だそうですよ」

「魔法で、サイコキネシスあればな~」

「ありますよ」

「え、ほんと!?」

「はい、闇魔法の中にそういうのを扱う魔法があったはずです。ただ、この世界にも同じ物があるかはわかりません。それに、主様が扱えるかは未知数です」

 

 

 うーん、そこがあったか。確かに私に使えるかは未知数だ。そういえば、まだ、光と闇の魔法は使っていなかったっけね。とりあえず、その辺に書き込んで1度使ってみるかな。と、思っていると、先読みに反応があった。先読と言っても未来視にだ。

 

 

「3秒後に真後ろから何かが来る!」

 

 

 本当に何かが真後ろの地面、ネバネバの水溜まりから飛び出て来た。

 後ろ脚が魚の尾鰭とカエルのような足のついたサメだった。

 うわ、キモっと思いつつも、そのサメの口攻撃を[縮影][舞踏]を使って、質量を残しつつ流麗な動作で真横へと移動すると、サメの体を縦に氷の剣で体を薙ぐ。

 

 

ガキンッ!!

 

 

 硬質の音が洞窟内に響き渡り、氷の剣が折れるが、そのままに下へと振り抜くと追加効果の風爪が入り、サメの体は輪切りになって、体と頭部が分かれた。

 そのすぐ後に同じ工程をして、尾っぽの部分も切り落としてから、空中で三枚おろしへと加工してドロドロネバネバの水の中に落ちる前に、魔晶石と肉をアイテムボックスへと入れた。

 

 この加工作業が出来るようになったのも人間離れしたステータスによる影響のせいなのか、スキルにある[高速反応]による影響なのかは理解出来てはいない。

 

ただ、出来ると思ってしまったからやってみたら出来ただけである。

 

 その後、近くにある陸地で光魔法と闇魔法の実験を行って、どちらも適性を獲得したので、後は鍛錬あるのみだった。

 

その後、あまり複雑ではなかったこの階層を抜けて、下の階層へと入った。

 

 次の階層は打って変わって、水が滴る水源の層だった。水が大半を占めていると見た通りに、湖が拡がっていた。

 

 そこを、やはり天歩を使って進んでいく。

 しかし、そんなに甘くはなかった。前方から鳥の大群がやって来るのが見えた。嘴に歯が並んでおり、とても凶悪そうな面だ。羽にもキラリと光る物が付いていて、それが刃物ではないかと思う程だった。実際に刃物でした。

 

 

「魔力集束!!」

「いっけぇ、これが正真正銘、ダブルファイヤーストーム!!」

 

 

 それぞれの片手から放たれたファイヤーストームは、広範囲にその熱波をまき散らしながら空中を駆けるワニガラスを薙ぎ払う。

必殺技のフレイムストームはとは訳が違い、炎らしさの揺らめきが残っていて、尚且つ熱量は、外がカリカリ、中は半熟程度になるくらいの火力のフレイムストームだ。やっと、手加減が出来るようになった。

 

ポチャポチャと落ちるワニガラスの1匹を掴むと、そのまま齧り付いた。

 

 

「うーん、残念ですね。すでに持っているスキルです。強化もできないですね」

 

 

とスーキーによる分析だった。残念です。

 

 下を覗くと、湖の中心に島があり、そこに何かがいるのが見えたので、そこへと向かう、近づいてみれば、それは、リザードマンと言われる2本足のトカゲ魔獣だった。

 

 何やら会話をしているようなので、会話できるのかと話しかけようとしたが、すでに槍を構えていて、非常に警戒しての臨戦態勢だった。

 結局、話をする事すら出来ず、攻撃をしてきたので、此方も対応する。

 

 

「縮影!!」

 

 

 その場に質量ある残像を残しつつ、突いてきたリザードマンを雷の剣で切りつける。今度はこん棒ではない。ちゃんとした剣だ。斬りつければ、剣と同じ切断と雷系魔法が持つ微麻痺効果と微石化と風爪が襲うという凶悪無比の攻撃力だ。

 もちろん、斬られたリザードマンは、一瞬にして小間切れ肉である。剣では1度しか斬っていないのだけどね。

 

 

「はぁ~。数が多いね。ま、トラウムソルジャー程じゃないけどさ」

 

 

 縮影と舞踏スキルの併用により、戦場には私の実態ある影が無数に生まれ、リザードマンはパニックだ。それでもひたすら槍で突いてくるが、その尽くを舞踏で回避する。

 

 

ピコーン!

システムメッセージ:「舞踏スキルの派生スキル「遅滞分身」を得ました。」

 

 

遅滞分身・・・・縮影の実態ある影がさらに自動的に分裂するスキル。

 

 

 縮影が生み出した質量ある残像がさらに数を増し、ひたすら戦場を漂う。

 フェイントさえも分裂し、戦場は遅滞分身が生み出した分身だらけとなる。

 もちろん、自分には見えないので、相手からの視点のみになるわけなのだが、最後は分身と本体がわからないほど、戦場を埋め尽くす。

 

 もう、リザードマンは大混乱だ。

 自分が何と戦っているのかすらわかっていない。互いが互いを傷つけあって共に負傷していくのだ。

 そんな私は、戦場の外からその様子を見ていた。残念ながら、自分には縮影の影も遅滞分身の影も見えていないので、相手は、互いに互いを傷つけあっているようにしか見えていない。

 

 ただ、スーキーによる視覚付与によって、どんな状態になっているのかをオンオフによって見る事が出来る。

 

 

「じゃ、締めと行きますかー!」

 

「魔法力増幅!!」

「雷撃!!」

 

 

 初めて使用する魔法も入れた。

 [魔法力増幅]は、空気中にある魔力をさらに掃除機で吸うイメージの魔法だ。これによりこれから使用としている魔法を50%くらいの威力まで底上げする魔法となる。

 そして、本来は殺すことのないアババババするだけの雷撃をしようしてみた。どこまで威力が上がるのか見物である。

 

 雷撃は、手を上げないでも、どこからともなく体から雷撃が飛び、戦場となっている場所すべてのリザードマンへと降り注いだ。

 

結果は・・・・静かになった。

 

 どれどれと近づいてみると、すべてのリザードマンからは湯気が立ち上っており、白目で絶命していた。

 予想以上の威力に満足であった。

 しかし、肉の味はまた鶏肉だっただけにガクッと項垂れる結果となった。

 

 

「もう、ここは鳥肉しかないわけーーーー!!?」

 

 

私の叫びは、その階層に響くのであった。

 

そして、システムメッセージが流れて、魔力視覚を手に入れたのであった。

 

 




地図の見方に関しては、偏見が入っております。ご了承下さい。

サメカエルの肉も鶏肉の味でした。
実際に、カエルの肉は、鶏肉の味と言われております。

リザードマンが厳戒態勢だったのは恐らく原作主人公が通った後だからでしょう。たぶん・・・。

オリジナル魔獣:
三毛猫魔獣
ワニガラス
リザードマン

魔獣の名前に関しては、恐らく外の人類が目にして記録した物しか名前はないと思われるので、真大迷宮では、名前がないと思われる。

===============================
鈴木凛 17歳 女 レベル:----
天職:魔導師
筋力:8511   [+全身強化時:12766]
体力:8506   [+全身強化時:12756]
耐性:8500   [+全身強化時:12750]
敏捷:8501   [+全身強化時:12751]
魔力:84980   [+最大値上昇:93478]
魔耐:8506   
幸運:100(MAX)
残りポイント:0
===============================
スキル:
戦闘補助系:
ゲーム感覚・見切り・魔法力増幅
経験値上昇[[+1000%(MAX)]]
必殺[[+博打][+幸運+][+的中率上昇+][+会心]]
先読[[+時間遅延][+反射速度増加][+未来視]]
気配感知[[+効果範囲][+感知強化]]
聴力強化[[+効果範囲]]
血力変換[[+スキル奪取][+体力変換][+魔力変換][+乾血吸収]]
跳躍[[+大跳躍]]
縮地[[+爆縮地][+縮影]]
再生[[+手動再生][+痛覚操作][+消費魔力軽減]]
高速反応[[+反射神経+][+電気信号]]
完全耐性[[+毒耐性][+劇毒耐性][+完全毒耐性][+麻痺耐性][+石化耐性]]
気配遮断[+強化]
舞踏[+遅滞分身]
魔力感知[+魔力視覚]

固有魔法:
重量軽減・魔力操作・遠見・夜目・超音波

天歩[+縮地]
雷撃[[+範囲攻撃][+無拍子]]
風爪[+武装付与]
微石化[+武装付与]
錬成[[+イメージ力強化][+消費魔力軽減]]

魔法系:
時間魔法適性・高速魔力回復・光魔法適性・闇魔法適性・魂魄魔法

全属性適性[[+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下][+消費魔力軽減][+発動速度上昇][+高速詠唱][+範囲強化][+イメージ力強化][+誘導][+超高圧縮]]
全身強化適性[[+発動速度上昇][+発動時間+100%][+発動時間永続化][+強化増加値+50%]]
結界術適性[[+発動速度上昇] [+消費魔力軽減][+耐久化]]
複数同時構成[[+複合魔法]]
魔力最大値上昇[+30%]
回復魔法適性[+自動修復]

近接系:
剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い][+カウンター][+無拍子]]
二刀剣術[[+刺突][+パイリング][+カウンター+2][+強打撃][+スタミナ軽減][+斬撃速度上昇][+投擲][+抜刀速度上昇] [+無拍子]]
物魔一体型戦闘術[[+発動固定維持][+連続発動][+連続投擲][+連続攻撃][+舞踏補助]]
魔爪変化[[+血液吸収][+麻痺追加][+硬化]]
魔爪格闘術[[+斬撃][+刺突][+発動速度上昇][+高速解除][+舞踏]]

その他:
強歩[+50%]・早読[+20%]・聞耳・光と影・言語理解

備考:
転生10回目・転生者・不老・亜神

必殺:
フレイムストーム:超超超高温をビーム上にして撃ち出す魔法。炎は無色透明蜃気楼のよう状態となり土すらも融解蒸発させる魔法。
===============================

全身強化は常に強化状態で解除は寝ている時くらいです。

派生技能について、この子の場合は、すべて経験値上昇+1000%が関与しております。


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14 最奥に潜むもの?

前回のあらすじ:食べる物、すべて鶏肉の味だった。





今回の話の中で、戦闘シーンに関しては書き直し予定です。納得いかん!


 南雲ハジメとユエという一組のカップルが反逆者オルクスの住処でイチャイチャラブラブウフフをして1週間程が過ぎようとしていた頃の話だ。

 

 今日も今日とて朝からベッドの上でユエの甘い声が部屋に響き、それに相槌を打つかのようにハジメの声が部屋に響き渡る。

 オルクス大迷宮のオルクスの住処へと来てからわずか数日で、年上の貫禄を色々と見せつけられてしまってから、色々と吹っ切れてしまったハジメは、ユエによる念入りのマッサージを受けていた。

 このマッサージは、失くしてしまった左腕や重傷を負った体を解すのにとても役立っていた。

 ハジメはこの後の予定を頭に思い浮かべながらもマッサージの心地よさに思わず甘い声が漏れる。そして、此処にずっと住んでもいいかな?なんて考えも頭の片隅に思いつつもあった。

 

 

しかし・・・・。

 

 

 突然の轟音が轟いた。オルクスの住処をも揺らせる激しい衝撃音ととんでもない魔力の反応を感知したハジメとユエは、すぐに用意出来るだけの武器とあり合わせの身支度を整え出した。

 

 

「な、なんだ?」

「ん・・・わからない。でも、これほどの魔力は只事ではないのは確か」

「方角はどっちだ?」

 

 

とハジメはユエに聞くと、「ん・・・」といつも通りな感じで、指を差した。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 あれから、色々な魔獣と戦いながら、ついに100階層へと辿り着いていた。

 南雲ハジメが潜った速度を超える速度で、1つ1つの階層を制覇していった。

 中には魔獣が2~3匹しかいない階層もあった。

(ハジメが美味い、美味すぎるとリンゴのような果実のなる木型魔獣を狩りつくした場所です。)

 

まあ、そんな場所もあったが、ほとんど素通りでここまで来たのである。途中、50階層にあったハジメが作った秘密基地も超音波スキルで発見し、立ち寄って来ていた。恐らく刈り取って来たものを置いたと思われる平な石の上に血が固まっていたのを削り取って舐めたため、金剛などのスキルも獲得できていた。

 

 

「やっぱり、乾いている血はまずいわね。それとも乾いているのは口から摂取しているからまずいのかしら」

 

 

と、思いつつも考えを流して、先へと進んでいった。

そして、辿り着いた神聖なる場所。そこは、巨大な石柱が並ぶ、とても荘厳なる地だった。

柱の1本1本が非常に太く、それが何本も、この階層全体を支えているかのような光景だった。1つの柱をまじまじと見つめると、そこには遺伝子配列のような感じに螺旋を描いて蔓が巻き付いたような装飾が施されているのを目にした。これだけの物を作るのにどれほどの時間がかかるものなのか。とても想像する事はできない。

天井は、30メートルくらいかな?50メートルあるんだろうか。ここでスーキーにどのくらいあるの?とは聞かない。別にわからなくても困らないわけだしね。

 

 

「これは、すごいなあ、地面もよく作ったわね」

 

 

そう、地面も蔓が巻き付いたような装飾が施されていてそれが何十枚、何百枚と地面を石畳が覆っているのだ。壊れた場所は1つもない。綺麗な物だった。そんな場所に足を踏み入れて、歩いて行く。

 

 

「ああ、こんなところを、ドレスを着て歩きたいな」

 

 

願望を口にしながら歩いていく。

 

 

「どの道、今でも十分にドレスっぽいですけどね」

 

 

と、スーキーが答えてくれた。

 そう、私の姿は上から、ノースリーブシャツに、フィンガーレスアームカバーグローブ、下はパンツルックにオーバースカートを付けている。靴はもちろんブーツだ。

オーバースカートには、途中、錬成の鍛錬にと適当に作った刀を両側に携帯していた。ただし、突くだけの効果しかない鈍器のような状態だ。

 

私は、感知や超音波を使って敵がいない事を確認すると、そこを舞踏会の会場のように1人でダンスを、舞踏スキルを使って披露する。右へ左へそして、巨大な石柱を使ってターンをする。そうして、200メートルほど進んで行き、最後の柱を超えた所で、フィナーレとなり、ポーズを取って、手を差し出した。

 

すると、それを祝うかのように、または、それを受け取るかのように、差し出された手の前を魔法陣が描かれ始める。それは、映画のワンシーンで見るかのような魔法陣が描かれていくという光景に少し驚きを隠せない。しかし、見事な魔法陣であった。

 そして、赤黒い魔力が溢れ出す。

 良すぎる耳が空気がドクンドクンと鼓動をしているかのような音を、この聖殿に反響しているかのように伝えてくる。

 

 そこに描かれたのは直径30メートル程の大きさを持った巨大な魔法陣だった。そして、そこから現れるのは、巨大な頭を持った蛇の頭が上がってくる。

 1、2,3、4、5,6、それに巨大な体。

 視覚情報には、ヒュドラと命名されていた。

 

 

「なんだ。ただのヘビじゃん」

「ぶっぶー、違います。蛇じゃありません。神獣といわれるヒュドラです。解析しますのでしばらく時間をください」

 

 

という、スーキーだったが、私は構わず、魔法力増幅を行い・・・・。

 

 

「フレイムストーム!!」

 

 

凄まじい魔力の高まりが起り、超超超極限に圧縮された魔力が超超超極限に火力を引き上げられた火が真炎になって、一気に放たれた。狙う場所は6本の首の付け根である胴体だ。

透明になり、現像がゆらゆらと揺れる不可思議な可視光線がヒュドラへと向かうが、膨大な熱量と身の危険を感じたヒュドラも黙ってやられるわけではなかった。

 

黄の頭が前に出て盾になったのだ。

 

 

ピキイィィィィィィィィン!!

 

 

 激しい音が鳴り、弾けたフレイムストームが四方へと散っていくが、黄の頭が泣き叫ぶかのような声を上げた途端、一瞬にして溶解した。そして、その背後にあった胴体を守るように、赤の頭が動き、口から火炎を放つ。そして、緑の頭が此方に風の魔法を放ってきた。

 

 

「やばっ!」

 

 

技の途中だが切り上げて、私は側転とバク転をして近くの柱の後ろへと隠れる。と同時に、スーキーから抗議が入った。

 

 

「だから言ったじゃないですか、少し待ってくださいって」

「まぁまぁ・・・」

「まあ、そのおかげで解析は簡単に終わりましたけどね。 あれは、各種の頭が役割を持っているのです。黒頭:精神攻撃、白頭:回復、黄頭:盾、緑頭:風魔法、青頭:近接、赤頭:火炎魔法って感じですね。で、最後に尻尾にも頭があるようです。他に蛇としての能力として熱源感知を持っているようです。お気をつけください」

 

 

 スーキーからの助言が入ったわけだが、先ほどの「フレイムストーム」により、ヒュドラの黄の頭は白による再生を受けていた。そして、その他の場所も「フレイムストーム」の影響により体のあちらこちらが火傷のような傷を負っている。

 

 特に作戦があるわけでもないが、この好機を逃すまいと、とりあえず飛び出して、「縮影」と「舞踏」を使い、赤と緑の攻撃を避けつつ、接近する。

すると、青頭が牽制とばかりに、攻撃するフリをして、引っ込むと、そこへ赤と緑の攻撃が着弾する。だが、ある程度、接近してしまえば。

 

 

「ウォーター・ガム!!」

 

 

 ベヒモスの顔を覆ったあの魔法で、まず、青蛇の目の部分だけ覆ってあげる。次は、赤、次は緑と、順々に覆っていこうとしたのだが、1度見ればその攻撃方法は通用しないとばかりに避けたり燃やしたりと妨害をするようになったため上手く行かなくなった。なので、「ウォーター・ガム」を散弾状にして撃ち出す。命中精度は悪いがそれを万発で当てられたら、巨大なヒュドラでは太刀打ちできない。

 一応、他の頭からの視覚も繋がっているようで、ある程度はその都度、攻撃をしてくるが、ずれているのか「ウォーター・ガム」が顔に張り付いた頭の攻撃は、先ほどまでは居たという場所を襲ってきていた。

 

 もっとも、縮影の質量を残す残像のせいで、熱量もそこに残っているために誤認していたというのも大きいのかもしれない。

 

 

「ウォーターホース!!」

 

 

クゥルルルルン

 

 

巨大な蛇にしては可愛い鳴き声をしながら、水を浴びた。そして、そこへさらに魔法を叩きこむ。

 

 

「ファイヤーボール!!」「ファイヤーボール!!」「ファイヤーボール!!」「ファイヤーボール!!」

 

 

濡れた場所は、聖殿とヒュドラであるそこへ大量の火炎弾を叩き込み水蒸気を発生させて、自分の熱量と姿を隠した。

 スーキーからの解析もあるが、ヒュドラは蛇であるはずだし、蛇であるなら、熱サーチを行っていても不思議ではないというのが、昔やった夏休みの課題研究からの知識だった。尤もその課題研究も提出したにも関わらず、話にも出てこないから忘れられたのだろうけど。別に悔やんでないしー。

 

 膨大な熱量と弾けた「ファイヤーボール」の断片から水蒸気がモクモクと発生し、自分とヒュドラを隠す。

 まだ、自分には範囲系の攻撃をするには技術練度が足りていないので、多種多様な事が出来ないのが痛恨の極みではあるが、今出来る事だけを考えて行動する。

 

 隠れている時間はそんなにない。舞踏と縮影を活かして、再び接近し、黒頭を根元から斬る。

 雷の剣を二刀持ちして、根本に当てる度に風爪が発生しズバズバズバと音が鳴り響きながら攻撃が来るまで切り刻む。

 攻撃力が高すぎる故か、5回程斬り込むだけで、首がポロリと落ちた。

 

 すぐさま、白頭が黒頭を回復させるために動くが、今度は白頭の首元へと移動して、斬り刻む。そして、黄の頭へと・・・。

 

 

「黄色、かったぁ~い!!」

 

 

同じように5回斬っても、傷がつく程度だった。なので、次へと飛ばす。赤と緑の首を斬り落とし、残りは青と黄か。

さすがに動きがばれて来たのか、黄が青の首回りへと援護に入るが、私は縮地を使って、黄の頭の目玉に向かって、一気に詰め寄り、腰に携帯していた剣という名の槍をぶっ差した。黄の眼球を潰した事でその痛みに反動で浮き上がるが、その前に、剣を通して雷撃を黄の頭に直接流し込む。

 

と、そこへ青色の攻撃が来た。

 

 

ガキンッ

 

 

鋭い牙が迫ってきたため、咄嗟に牙を掴み、顎を支える形となった。

 

 

「主様、気を付けて、最後の首が上がっています!」

「え、やばっ」

 

 

 伝えて来た時には、もう、最後の銀の頭が持ち上がっており、口から白い息が漏れていた。

 

 

ガバッ

 

 

口が開いた途端、白き閃光が私を飲み込んだ。

 

 

「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」「絶!!」

 

 

ピコーン!

システムメッセージ:「多重結界を獲得しました。」

 

 

「連絶!!」

 

 

 一気に、10枚の絶を連続発動した。1枚1枚は普通の絶と変わらないので強度はないに等しい。

 しかし、あくまであの白いレーザーを防ぐための物ではない。コンマ数秒を稼ぐ事ができれば、それでいい。

 なにせ、私を拘束している青頭の蛇の顎を開いて置く物だからだ。

 

 

「最後の銀の頭は、極光という毒素を含んだ熱量攻撃をしてくるようです。連続の発射が可能なようです。気を付けてください」

 

 

 スーキーの会話を聞きながら、青の頭から離脱すると同時に絶を解除した。そして、絶を途端に解除され強く固定するように支えていた物を失った青の頭は顎をガチンと閉じてしまい、極光がジュッと命中してしまい、青の頭は消し炭となった。

 

 

「ねぇ、あれを試してみたいんだけど、今の残り魔力で使えると思う?」

「あれですか。無理ですね。」

 

 

 ここまでの道中で考えてきた私の必殺技は、魔法であった。なので、今回も魔法を構築していた。それは極度に魔力を消費するため、現状をなんとかしない限りは放てそうになかった。

 

 

「だけど、相手の魔力を利用するならどお?」

「それなら行けるかもしれません。あの極光はどうやら魔力で出来ているようですので、恐らくは行けるでしょう」

 

 

 失敗すれば、2度目は出来るかはわからない。これは掛けだ。だけど、私には必殺のスキルがある。博打も幸運でハズレを極限にまで回避できるはず。ならば、やるしかないでしょ!

 

 柱から飛び出ると、すでに向こうは、私を追っていたらしく、準備万端で此方に顎を開いて待っていた。そしてすぐにでも極光を放ってきた。

 

 

「ドレイン・フィールド!!」

 

 

ドレイン・フィールド・・・・攻撃魔法を強制的に吸い上げて自らの魔力とする。

 

 

 フィールドと名前を付けているが、実際の範囲は、自分を僅かに遮る盾のような物だ。少しでも外に出れば極光の餌食になるくらいの小さな物であるが、効果は覿面だった。

 「ドレイン・フィールド」に直撃した極光は、凄まじい勢いで魔力へと還元され、私の魔力値は全開に達し、さらに余分に魔力が吸収されていく。

 

 

「リミッター、かけ忘れたー!!」

 

 

 「ドレイン・フィールド」を展開しながら、体に貯めきれない程に還元された魔力は体から溢れんばかりで、すっごく気持ち悪い。直ぐにでも吐きたいくらい。だけど、その溜め込んだ魔力を「絶」へと置き換えつつもその必殺の魔法を放つための詠唱へと入った。

 

そして、その時は、30秒程で訪れた。

 

 

「ヴァーミリオン・です・トラクション!!」

 

 

それは一瞬だった。

 

 

 

 

 

 

              ピカッ!!

 

 

 

 

 

 

 一瞬の閃光が部屋を満たす。いや、世界を、空間を満たす。何もかもを白く白く染め上げた。ただの一撃。それだけで、何が起きたのかを誰も説明できなかった。

 

 なにせ、ピアス型ユーザーインターフェースであるスーキーですら視覚不能な速度の一撃、光よりも速いといわざる得ない一撃を浴びたのだ、タダで済むわけがなかった。

 

 自分より前にあった、この部屋を支えるためだと思われた支柱がすべてが粉々に砕け散り、ここより先に行くためのドアだけが無事でその周りはヒュドラの輪郭を残して全面皹だらけで、いつ、倒壊してもおかしくはない状況となった。

 

 

 

 

 

 

          どおぉーーーーーーん!!

 

 

 

 

 

 

 大分遅れてから、砲撃のような音が部屋全体を木霊し、すべての終了を物語るには十分であった。

 当のヒュドラは、すべての首が砕け散り、胴体である甲羅に覆われた体も半分以上が煤へと変色していた。残ったのは魔晶石のおかげだといわんばかりの状態であった。

 

 

「はぁはぁ、なんとか、勝ったかしら・・・」

 

 

ほぼ全魔力放出である。残り魔力10・・・・あまりに圧倒的な燃費の悪さである。とても現実的には使えない魔法であった。

 

 よろよろとその場にへたり込み、粗い息を上げて、もう、これ以上は動けませんといった感じで、ついには、寝転んでしまった。

「ああ、冷たい床が気持ちいい~♪」と、声も上げたくない状態で寝転ぶ。そんな時間が数分だろうか、数十分だろうか、流れた時、自分の未来予知が反応して、体が勝手にそれを避けた。

 

 

ドパンッ

 

 

 聞きなれない音がした時には、その場所にいなかったのだが、自分の寝ていた場所には斜めに入る弾痕の後が残されており、自分が危なかった事を痛感させるものだった。

 

 

「あれは、ライフリングを用いた銃創であると思われます」

 

 

とスーキーが予測した情報をくれる。

 

 そんな私は、それを放ってきた「敵」を探すが、気付いた時その視界には、銃口が此方を向いていて、光の中心を黒い点のような物が見えていて。

 

 

ドパンッ!!

 

 

撃った者は、その者の頭を吹き飛ばしていた。

撃たれた者は物へと置き換わり、その場に倒れ伏した。

そして、静寂が流れる中、撃った者はその場から背を向けて立ち去った。

 

 

 

 




魔法名:「しゃぼんだま」は、リアル女友達からの指摘を受けて「ウォーター・ガム」へと変更になりました。

「ヴァーミリオン・です・トラクション!!」:現在、名前は超適当です。今後、変更になります。
「ヴァーミリオン・です・トラクション!!」は、雷系の魔法で、炎の白の威力の物を超多数の雷撃で放つ魔法になるロマン魔法です。


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15 化け物との邂逅!

前回のあらすじ:ドパンッを持った者に凛は頭を吹き飛ばされた。



 

「ハジメ!!」

 

 

 そう、声を掛けたのは、若干身長140センチくらいのロリ吸血鬼であり姫様でもあったユエ様だ。俺の天使だー。

 

 そのユエは、オルクス大迷宮の最後のボスと戦って勝ち取った門からオルクスの住み家へ入って来たハジメに抱き着いた。

 ハジメも何の違和感もなく抱擁すると、事の経緯を話した。

 

 

「もう、大丈夫だ。ユエ。俺達の邪魔はさせないように殺して来た」

 

 

「ハジメ!!」

 

 

 ユエは、もう一度、強く抱きしめる。

 それに応えるようにハジメも抱き合い桃色空間が生まれる。

 そして、互いの温かさを確認し合うと、ハジメは、マッサージの続きを乞い、それを受け入れてユエは、ハジメを先導して、部屋へと戻って行った。そして、背後からユエの動向を確認したハジメはいつもの言葉を続ける。

 

 

「ユエさんや、今、舌なめずりしたろ」

「ハジメのえっち」

「どして、そうなる?」

「フフフ・・・・」

 

 

妖美は顔がそこにはあった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

スゥゥゥゥハ~~~~ァ・・・・ゴホゴホゴホ

 

 

 どのくらいの時間が経っただろうか。凛は、大量の空気が肺に入り蒸せるような感覚を覚えて目を覚ましたが、蒸せた後は寝転んで装飾の施された天井を見ている。

 

 

「綺麗だなぁ~」

 

 

 そんな声が口から洩れていた。

 そして、体が何かの冷たい感触に甘い声を出した。

この頃の経験としては、随分とマシな方の感触で、この頃は湿っぽい地面や、ガチゴチの地面、パサパサの地面、生暖かい地面と色々な経験を積んできた。

しかし、この冷たい地面の感触はなかなか、、、、、

 

 

 

イイ♪

 

 

 

火照った体には気持ちが良すぎた。はぁ~もう少し寝ていたい。

 

 

(はて、私はなんで寝ているんだっけ?)

 

 

と、疑問に思う程に頭が動き出していたが、意識は未だ夢と現実の中間である。

 

 手をあちらこちらに動かして、状況を確認する。だが、どこへ動かしても平な地面だった。

 その平という所に疑問を抱き、はっとなった。自分は今、誰かに狙われていたのではと。そして、急いで起き上がった。

 

 そこにはヒュドラの死体と魔法の衝撃でボロボロになった聖殿ではなく、若干の修復が行われている聖殿の姿があった。すでに地面の傷はほとんどが修復されている。

 

 

「スーキー、あれからどのくらい経ったのか教えて」

「はーい、スーキーですよー。っと、あれから1日は経過していますね」

 

 

 なるほど、あれから1日は経過していたのか・・・・ってそうじゃなくて、私、なんか狙われてなかった!?

 

 

「はい、主様を攻撃した男は、主様の頭を吹き飛ばされて、安心したのか、そこの両扉の先へ帰って行かれましたよ」

「ふ~ん、私を攻撃してきた人は、男の人だったんですね。それでその先に行ったと・・・・」

 

 

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・・・・」

「?」

「・・・・・・・・・」

「?」

 

 

「今、私の頭を吹き飛ばしたとか言わなかった?」

「はい、言いますたよ」

「な、なんで、そんな冷静なわけ?」

「私は、凛様のサポートAIですからね。冷静なのはモットーです」

 

 

「ああ、はい、そうですか・・・」スーキーの機械のようなまともな回答を貰い、納得できないけど、納得するしかない状況に、私は拳を握って耐えるしかなかった。

 

だって、機械だし!!

 

 

「それで、なんで私は生きているわけ?」

「え?」

「え??」

「何を言っているのですか?」

「え、まさか!?」

「亜神が頭を吹き飛ばされたくらいで死ぬわけないじゃないですか」

 

「そっち!?」

「どっちだと?」

 

 私は、亜神であり、吸血族の再生の力があるため、死ななかったようだ。

 だが、魔力がほぼ空っぽであったため、再生と魔力回復力との綱渡りにかなりの時間を使い、危険な状況にあったのは確かだった。

 スーキーによるサポートがなければ、亜神の体といえど確実に死んでいたらしい。

 

 そんなこんなで、立ち上がった私は自分の倒れていた所を見るが、そこに血溜まりのような物はなく、綺麗な床があるだけだった。

 血液に関してはかなり強いらしく、自分の血液は飛び散ったりしたとしても、主の元へと自動的に戻ってきて、体へと吸収されるといった事が自然現象として起こるので、確実に人間からは離れて来ている。

 

 埃を落として、魔力を確認して、衣服を確認して、装備を確認する。

 そして、目の前の両扉を視界に納めた。

 

 

「やっぱ、行くしかないよね」

 

 

 自分にそう言い聞かせたつもりだが、スーキーに言ったと捉えたのか、返事が返ってくる。

 やっぱり、行くしかないようだ。

 

 しかし、自分を見つけるなり、いきなり発砲するような危険極まりない人物である。正直に 言ってかなり怖い。また出会うなり発砲されたりとか、今度はもっと攻撃力の高い物で攻撃されたりしたら、今度こそ終わりな気がしてならない。

 

だけど、ずっとここで屯していても仕方がないので、足を踏み出す事にした。

 

 

 

 時間は経過した・・・・そう、おおよそで先ほどから10時間程が経過していた。

 凛は、未だに両扉の前にいた。

 凛が躊躇した理由が視界内の左上にあるバーにあった。残り魔力の残量だ。再生したとはいえ、その残り魔力の値が半分以下だったために、全回復まで時間を費やしていたのだが、それは理由半分である。実際にはただ単に躊躇していただけだ。

 

 しかし、魔力も全快になり、躊躇う言い訳が消失してしまったのだから、もう進むしかなかった。

 左上の魔力値を視線を向けて満タンなのを確認する。いや、バーの下にある魔力の残り残量値と最大魔力値が前回見た時より少し上昇しているのを確認した。

 ヒュドラ戦が影響したのかは不明だが、スキルによる最大値の上昇があったようだ。

 でも、これなら何かあっても戦えるな。と心に思いつつも気まずい雰囲気を打開するために両扉に手をつける。

 

 

「はぁ~・・・・」

 

 

 煮え切らない。

 やはり、躊躇ってしまう。

 すると次の理由が出来た。

 お腹の音が鳴り、何か食べてから入ろう。

 そう、理由を作った。

 とりあえず、時間は経っているが、ヒュドラの胴体はすでにカラカラに焼き焦げていたので、斬り落とした首に魔爪を差し込んで少し血を頂く。それと、肉も少し這いでから焼いて食べた。

 

 

 

・・・・これも鳥味ですか。

 

 

 

ここの肉はすべて鳥なのか・・・と思わせる程に鶏肉特有の淡泊な味わいだった。

 

 

そして、思い切って両扉を開けると、そこは別世界だった。

 

間違っても刑事ドラマ等で見る、でんぐり返しとかして入ったりはしない。

 

 ばぁぁぁん、びっくりした?的な感じに勢い良く侵入したのである。

 しかし、それに反応する者はおらず、静かなものであり、少し恥ずかしい思いをした。しかし、それとは打って変わって、両扉の中は、空には青く澄んだ空があり小鳥の鳴き声・・・・聞こえてこないわね。しかし、太陽がある。自分の目が良くなっているのか、その太陽は、望んでいた球ではなく、円錐状の何かが光っているだけだというのが見えてしまったのが残念ポイントである。しかし、その疑似太陽からは、電球から出る無機質な熱ではなく、確かに温かみがあるホカホカとした熱であった。

 

 地面には、草原が広がっていた。外の世界にあるような芝生のような草原で、誰かが手入れをしているわけでもないようだが、一定の高さにまで切り揃えられた芝生は見事としか言いようがない程だ。近くには畑があって、なんか骨が出ているんだけど、誰の骨なのかしら?妙に 骨を見ると反応しちゃうわね。

 それに、これは滝ね。まさか周囲一面全体の壁を全部滝にしているなんて、すごいとしか言いようがない。

 

 そして、この草原の片隅に建つ一軒家・・・ではないわね。壁を繰り抜いて作ったと思われる白を基調とした建物だ。だが、そこからは甘いピンク色の靄が溢れていた。とても近づき難さを物語っていて、なんか足が進まない。

 

 やっとの事で、その家の玄関と思われる入り口の前に辿り着いた。ドア等はなく、入り口からはモクモクとピンク色の煙が漏れて来ていて、声を掛けづらい。だが、意を決して、声を出した。

 

 

「あのー、だれかいませんか?すいませーん」

 

 

すると、中から声が聞こえてきて、1人の少女が現れた。

 

 

「だれ?」

 

 

 そう、問う少女は、麗しい金の髪に赤い瞳を持った人形さんみたいな子だった。

 しかも、裸にシャツ一枚というなんとも破廉恥な姿だ。っもう、お姉さん、抱き着いちゃいそうです。あれ、私、認識されてる?スキル使ってないよね?

と、考えていたら、さらに奥から声と男の姿が見えてきた。

 

 

「ああ、外でぶっ殺した女か、まあ、そこじゃなんだから入れよ」

 

 

 ん、ぶっ殺した女?私を撃ったの此奴か?しかも、殺したのがわかっていながらなんて普通な態度!って言いたくもなるが、ここはグッと堪える。

 ここは、グーで殴ったろうかーともなるが相手の顔を見て、私は少し引いてしまった。

 獲物を射殺すような目をしていたからだ。声色と顔が合っていない。

 でも、顔の形は好みかな。

なら、それでもいいか。いやいや良くない。ぜぇったい良くない。うわー複雑だなぁ。

 

 と、ぶつぶつと考え事をしながらも、その男の後についていく。と、エントランスを抜けて、リビングへと入り、テーブルに水を入れて出してくれた。

 

 

「すまんな。この家は俺の家ではないんだな。それに、まさか誰かが来るとは思わなかったんでな。なにも用意してないんだわ」

「いえ、此方こそって、そうじゃなくて、なんぜ私を撃ったんですか!?」

「ああ、それか、おまえな。あんな馬鹿魔力の攻撃なんかしたら、誰だって刺客じゃないか?って疑うだろうが!こちとら、命を狙われて、穴に落ちたんだぞ。敏感にもなるわ」

「それで、私に今でも、テーブルの下から銃を此方に向けているんですね」

 

 

 ちょっとの間、沈黙が流れた。そして、最初に口を開いたのは男の方だった。

 

 

「銃を知っているのか?」

「え、ええ、知ってますよ」

「どこで知った。この世界にはないはずだ」

「ん、ちょっと待ってください。あなたは、クラスの誰かなんですか?」

 

 

 そこで暫くの沈黙が流れる。お互いに胡散臭い物を見るような目でじっとしていた。そして、今度は凛の方が先に口を開いた。

 

 

「なら、ステータスプレートを見せ合いましょう。その方が早いです」

「そうだな。その方が早い。いくぞ」

 

 

 同時にステータスプレートをテーブルの上においた。

 

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:----

天職:魔導師

筋力:8511   [+全身強化時:12766]

体力:8506   [+全身強化時:12756]

耐性:8500   [+全身強化時:12750]

敏捷:8501   [+全身強化時:12751]

魔力:84980   [+最大値上昇:127470]

魔耐:8506   

幸運:100(MAX)

残りポイント:0

===============================

スキル:

戦闘補助系:

ゲーム感覚・見切り・魔法力増幅

 

経験値上昇[[+1000%(MAX)]]

必殺[[+博打][+幸運+][+的中率上昇+][+会心]]

先読[[+時間遅延][+反射速度増加][+未来視]]

気配感知[[+効果範囲][+感知強化]]

聴力強化[[+効果範囲]]

血力変換[[+スキル奪取][+体力変換][+魔力変換][+乾血吸収]]

跳躍[[+大跳躍]]

縮地[[+爆縮地][+縮影]]

再生[[+手動再生][+痛覚操作][+消費魔力軽減]]

高速反応[[+反射神経+][+電気信号]]

完全耐性[[+毒耐性][+劇毒耐性][+完全毒耐性][+麻痺耐性][+石化耐性]

[+恐慌耐性]]

気配遮断[+強化]

舞踏[+遅滞分身]

魔力感知[+魔力視覚]

 

固有魔法:

重量軽減・魔力操作・遠見・夜目・超音波・威圧・念話・身軽・熱源感知・限界突破

 

天歩[+縮地]

雷撃[[+範囲攻撃][+無拍子]]

風爪[+武装付与]

微石化[+武装付与]

錬成[[+イメージ力強化][+消費魔力軽減]]

金剛[[+部分強化][+接触強化][+強化]]

 

魔法系:

時間魔法適性・高速魔力回復・魂魄魔法

 

全属性適性[[+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下][+消費魔力軽減][+発動速度上昇][+高速詠唱][+範囲強化][+イメージ力強化][+誘導][+超高圧縮]]

全身強化適性[[+発動速度上昇][+発動時間+100%][+発動時間永続化][+強化増加値+50%]]

結界術適性[[+発動速度上昇] [+消費魔力軽減][+耐久化][+多重結界]]

複数同時構成[[+複合魔法]]

魔力最大値上昇[+50%]

回復魔法適性[+自動修復]

近接系:

剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い][+カウンター][+無拍子]]

二刀剣術[[+刺突][+パイリング][+カウンター+2][+強打撃][+スタミナ軽減][+斬撃速度上昇][+投擲][+抜刀速度上昇] [+無拍子]]

物魔一体型戦闘術[[+発動固定維持][+連続発動][+連続投擲][+連続攻撃][+舞踏補助]]

魔爪変化[[+血液吸収][+麻痺追加][+硬化]]

魔爪格闘術[[+斬撃][+刺突][+発動速度上昇][+高速解除][+舞踏]]

その他:

強歩[+50%]・聞耳・早読[+20%]・光と影・言語理解

備考:

転生10回目・転生者・不老・亜神

必殺:

フレイムストーム

ヴァーミリオン・です・トラクション

===============================

===================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:10950

体力:13190

耐性:10670

敏捷:13450

魔力:14780

魔耐:14780

幸運:250

スキル:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

===================================

 

 互いのステータスプレートは正しく化け物の貫禄を見せるかのようなステータスが並んでいる。そして、互いに口を開く。

 

 

「おいおい、こりゃ、すげぇな。お前も魔物を食った口かよ」

「南雲ハジメさんでしたか。確か、王立図書館で見た時とは全然姿が違いますね」

 

 

 互いに沈黙する。それから、一気に放火を切ったかのような互いの情報交換を行い、ヒュドラの間での事を正式に謝罪を頂いた。

 

 

「鈴木凛っていうのはさすがに知らなかった。すまん。だが、その顔立ちなら絶対に見ているはずなんだがな」

「いえ、私、担任の愛子先生にも名前や顔を覚えられていないんです。ですから、気にしないでください。それに、今の姿は昔の姿ではないんです。ほらここに亜神ってあるでしょ。私、変質しちゃっているんで」

「遠藤を超える影の薄さって奴か。だが、俺は今、認識できているぞ」

「そうなんですよ。なぜなんでしょうね。そこが不思議でして。今ならみんなの元へ行けば普通に会ってくれるんでしょうか、一応スキルで、『光と影』というスキルで存在の薄さを調節できるようなんですよ。でも、今使用はしていないんですよ」

 

 

 そんな会話を続ける。それからスキルの話へと移り、会話に花を咲かせる。それをつまらなさそうに見ている少女がいるのかと思えば、楽しそうに聞いて見ていた。

 

 

「あ、鈴木さんも錬成あるんだ」

「あ、いえ、これは途中にあった洞窟。ここから100層くらい上ですかね。そこで乾いた血を舐めたら手に入ったんですよ」

「はっ!はぁぁぁ?それは俺の血じゃねーのか、確かにあそこで大分過ごしたからな。この腕を失ったのもそこだったからな。しっかし、血を啜るだけでスキルが増えるんか。すごいな。なあ、ユエ、ユエも血を啜ったら・・・」

「無理・・・・普通はありえない。凛だからこそ出来た。それに凛を変質させたっていう吸血姫に興味がある」

 

 どうやら金の髪の少女は、ユエというらしい。南雲君とは自己紹介したけど、ユエさんとはまだだったな。どちらも認識してくれているのがとても嬉しいと感じた。

 

 それからも話は続き、この空間に夜が訪れて深夜になり、外が明るくなるまで続けられた。

 




ここでようやく、奈落という場所を知り、落ちたのが南雲ハジメだと知るわけです。

やっと、原作主人公に追いつきました。長かった。

ハジメステータス表記が技能のままだったので、スキルへ変更しました。

ハジメステータスに幸運値を追加。

幸運値の使い道を現在模索中。案があれば、感想にお願いします。



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16 デートへの誘い

前回までのあらすじ:あるカップルの家に上がり込んだ。





今回の文字数は4000字未満です。自分の文章力では伸ばせなかった。


 

「だから、ここはこうやってやるんだよ」

「あ、なるほど、そういう事なんですね」

 

 

 私は今、錬成の勉強をしています。と、いうのも、互いにステータスカードを見せ合った結果、互いに共通するスキルがある事が分かったからです。

 その上で天職が錬成師で錬成の極みへと達している南雲君から教えを乞う事になったのです。

 しかし、私は物覚えが悪く、ここに来て1カ月と少々になろうとしているのですが、未だに南雲君からの厳しい手ほどきを受けています。

 なぜ、ここで錬成の手ほどきかと問われれば、ここは錬成師オスカー・オルクスと言う反逆者が作った迷宮で、ここがその隠れ家と判明したからです。

 それ故に、ここでは、錬成の練習になる物が山のようにあったのです。

 その判明した事の発端となったのは、ここの隠れ家の最上階にあったオルクスの間にある魔法陣です。

 

 

「……我々は反逆者であって反逆者ではないということを……

 ……君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

 

 オスカー・オルクスの立体映像が消え、メッセージが終わると共に、魔法陣が光終えて、頭に何かが刻み込まれる感覚に「う゛」となるが、耐えられない程ではないため、じっと耐えた。

 

 結果的には、生成魔法と呼ばれる物が付与された。

 

 生成魔法は、非常に特殊だと言っていい。

 なぜなら魔法を鉱物に付与する事ができるからだ。普通は、武器等精製した物に付与するためには、付与術師による支援を受けなければならないのだが、それだって永続ではない。それにそれを加工してしまえば効果は消える。

 しかし此方は永続であるし、鉱物という精製していない物に付与してそれを常態化できるのだ。分けが違った。

 鉱物に付与できるという事は、仮に鉄鉱石に飛翔の魔法を付与したら、飛ぶ鉄鉱石が出来たりするってことかな。しかも効果は永続。これは夢のような魔法だね。

 

 

「どうだ、修得できたか?」

 

 

 そう声をかけた主は、壁に背をつけて、私の後方にいる南雲君だった。

 ちょっと顔を斜めにして此方を見る姿は少しキザな感じがしているが姿は生前の物と・・・おっと、私みたいにまだ死んでないや。

 王都で見た時とは全然別物だけど、彼本来の優しさは残っているようだと感じた。

 

 

「なに、じっとこっちを見ているんだ?」

「あ、いえ、昔の南雲君と印象が随分変わったなと」

「また、その話か・・・・」

 

 

 そう、言うなや南雲は頭を掻いてそっぽを向いてしまうが、少しの間をおいて、「ほれ」と何かキラっと光る物を放って寄越した。

 私は、慌ててそれをキャッチすると、そこには指輪があった。

 

 

「あのこれ、、、、、ダメですよ。ユエさんという方がいるんですから」

「ばっ違うわ。ちゃんとその指輪を見ろ!」

「あ、赤くなった、かわい――――」

 

 

ドパンッ

 

 

弾が私のおでこに命中して、そのまま体ごと吹き飛んで壁に激突して止まった。

 

 

「安心しろ。ゴム弾だ」

 

 

 私は、頭の後と前、それに腰と背中を次々と撫でながら抑えて、涙目で南雲君を見るが、彼はプイっとそっぽを向いて此方とは視線を合わせなかった。

 

 

「いやいやいや、普通、女の子の顔を撃ちますぅ?」

「今撃った。謝罪もしない。後悔もない。おまえが悪い!」

 

 

 私は、自分に回復魔法を使って治癒してから指輪を見ると、オスカーの紋章が刻まれた指輪だった。壁に掛けられているエンブレムと一緒だ。

 

 

「オスカー・オルクスの大迷宮を踏破した者の証だそうだ。お前もヒュドラを倒しているんだ。それを持つ権利はあるだろう」

 

 

そう言うと、南雲君は外へと出て行ってしまった。

 

 

「あ、男の子から貰った初めてのプレゼントになるのかな・・・・ふふふふ」

 

 

 物は違うが確かに男の子からプレゼントを貰った事には間違いはなく、表現的には非っっっっ常に問題があるが、人から物を貰った経験は非常に少ないため紛れもなく嬉しいと感じたのだった。

 

 

「南雲君、大事にしま―――」

 

 

ドパンッ!

 

 

 今度は本物の実弾だった。

 オルクスの隠れ家にある硬そうな石の壁を貫いて、私の胸には大きな穴が開いて気を失ったのであった。

 何がどうなったのかは覚えていない。気が付いたら家の前の草原に投げ出されていて、もう夜になっていた。

 

 

「ちょっと、扱い酷過ぎませんかーーーー?」

 

 

南雲クオリティー健在であった。

 

 

 

 それからと言うもの、錬成の特訓が始まった。元々私は物を作るという事に長けた天職でもないし、そういう考えも持っていなかったが、ここまでの道中で、ウサギやネコなどの動物を模ったガラス細工の生成は、何もしないよりは効果的だったようで、南雲君が言っている事がなんとなく理解はできたつもりだ。

 どうやら私は、スキルに頼ってようやく人並みに出来るって程度の実力らしい。

 

魔法の天才で在られるユエ先生に至っては、疑いの目を向けられながら疑心暗鬼になりつつある。

 

 

「凛・・・・本当に天職がまどぉーーーし?」

 

 

と疑いの目を向けられるくらいには才能がないそうだ。

 

 現在、スーキーによる援護は受けていない。あくまで自分の力のみで力量を示すために努力を続けていた。

 私は、ここオルクスの隠れ家にいる間の時間を、寝る時間以外すべてを錬成と魔法の鍛錬に費やしていた。それでも、南雲先生とユエ先生からは、、、、、。

 

 

――――――才能がない(な)――――――

 

 

と言われるくらいには出来ていなかった。

 

 

「とりあえず、凛のスキルの中に、経験値上昇+1000倍って、なんかあり得ないくらい便利な物があるわけだから、それを利用して色々教え込むから後は自分でやれよな。スキルがあれば、人並み程度にはできるようだからな」

 

と、南雲君からご高説とお叱りを受けながらも努力と鍛錬を続けた。

 

 

錬成[[+イメージ力強化][+消費魔力軽減][+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+圧縮錬成]]

 

 

と、いうわけで、南雲君がここ、オルクスの隠れ家にいる間に習う事が出来たのは、これだけになった。残念ながら、複製は自分には出来なかった。

 

 続いて、ユエ先生の講義は、とりあえず、使ってみて慣れろ!って事なので、それを実践する。魔力だけは、ユエ先生のはるかに10倍近くあるため、練習量も10倍ハードになった。

 

 ユエ先生いわく「凛は、人の100倍、努力してやって得られる物がある」だそうだ。

 

 うう、私、自分に自信がなくなってきましたよぉ~。と、涙目で指導を受ける日々である。

 

 

「でも、これだけつきっきりで教えたのは人生初めて。ん・・・・凛は努力家だと思う」

「え、そうですか。(えへへ、褒められちゃいました)」

「ん・・・・調子に乗るな。ばかものめ」

 

 

ちゅどどどどどどどん

 

 

 プチファイヤーボールの連発を貰い、草原を逃げ惑う事になりました。

 連発しているユエ先生の顔はどことなく楽しそうなんですけど。もしかしなくてもドSだったりするんですかね。

 

 

「もう、やめて~!!」

 

 

 結局、ユエ先生が辞めてくれたのは、さらに10分後だった。私は死に物狂いで逃げ回って、避けるのだけは上手くなった気がします。

 

 

「あの、ユエ先生、背中におんぶされながら、私の血を吸うのをやめて貰えます?」

 

 

 そう、逃げ回った後から、「魔力を使い果たした。背負え」って命令されてから、おんぶをしているのだが、それが血を吸うためだったとは・・・。

 

 

「ん・・・・ハジメとは違うけど、此方も濃厚な血。それに同族を思い出す」

「そういえば、ユエ先生の同郷の人たちって、互いに血を吸いあったりとかするんですか?」

「ん・・・・互いに恋を育む時に、互いの血を吸ったりする」

 

 

 なるほど、そういう風習があるんですね。吸血族だけに、血は何よりも神聖な物だったということかな。

 一応、南雲先生からは、ユエ先生の過去を聞いていたので、家族関係はタブーという事で、他の事を聞いていた。

 結局、ユエ先生からの教えにより、スキルはある程度は習う事が出来た。

 

 

全属性適性[+誘導効果]

魔力操作[[+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+イメージ力増加]]

 

 

 ついに念願だった、全属性に誘導効果がプラスされた。ユエ先生ありがとう♪

 すでに魔力放射と魔力圧縮は持っていたので、これだけ揃えばなんとかなりそうではある。残念な事にユエ先生にはステータスプレートがないため、何のスキルを保持しているのかはわからないそうだ。

え、スーキーを使えって、ん~どうしようかな~。

 

 南雲君とユエ先生と何晩か過ごす内に私の酷かった魔法ネームの改善が南雲君のアニメヲタクとしての力量から徐々に改善が起きていた。

 つまり南雲君が夜な夜などんなアニメがあったのかを口々に語ってくれたので、そこからヒントを得る事となった。

 例えば、必殺技としてあるフレイムストーム。

これは、コロナになった。

 そして、もう1つ、ヴァーミリオン・です・トラクション 。

まったく意味不明な魔法名であったものの、南雲君から提案で、グングニルへと変更になった。

 他、魔法名になるものとして色々なゲームの話を教えてもらい、一定の効果をあげたのであった。

 

 その日の夕食時、南雲君とユエさんとテーブルを囲んで食事を一緒に取りました。

 相変わらず、南雲君とユエさんはラブラブイチャイチャで桃色空間が出来ていました。

 

「そういえば、あと3日で、ここから出るんでしたっけ?」

「ん、ああ、そうだな。そろそろかと思ってな。凛のおかげで充実した鍛錬もできたしな」

「え、ん~、お役に少しは立てているなら、嬉しいです。あのですね。ハジメさん、明日、デートしませんか?」

「は?」

「凛・・・・死にたぃ?」

 

 南雲は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして固まり、ユエはドスの効いた重い声を出して、殺気を私に放ってきていた。

 




この話の中で2カ月と半分程の時間が経過しております。

惑星トータスにおける吸血鬼である吸血族の風習はわかりませんので、色々と捏造をしております。ただ、どこの吸血鬼も血を食料とするのですから、神聖な物だったのではないかと思いますね。

フレイムストーム→コロナ
命名はスペー〇ゴ〇ラからです。
時期的からも最強の威力の名前は伊達ではないですね。

ヴァーミリオン・です・トラクション→グングニル
某ゲームである地球を防衛する軍隊にある女性兵士が持つ武器から盗っております。

この話も今後追加を検討しております。できるかわからん。


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17 駆ける戦場

前回のあらすじ:凛が南雲ハジメをデートに誘った。


少し、遅くなりすいません。
書いてて纏めて読み直して追加して纏めて読み直して追加して纏めて読み直して追加して、、、、楽しくなりまして・・・。


「南雲さん、本当に見損ないましたよ!」

 

「ああ、俺もだ。凛、おまえとはやっていけねー」

 

 

ドパン!!

 

 

 ハジメのドンナーが乾いた音を響かせながらその銃口を凛へと捉えて火を噴いていた。

 

 場所は、オルクスの隠れ家の家の前にある元々畑があった場所の近くである草原だ。

 そこで今、凛とハジメは壮絶な戦いが繰り広げられていた。

 

 事の発端は、凛がハジメをデートに誘ったことであった。

 

 

ドパンッドパパパパン!!

 

 

 ハジメは、愛用の銃を1発だけ撃った後、2発目を発射したと思ったら残り5発が同時に飛んできた。それを両手に持っている剣で1発目は弾いたが、残り5発は「いつ撃ったのー?」と叫びながら体を下げる事で回避に繋がったが、実際には凛の周囲に張られていたウォーターシールドの目に見えない程薄い膜によって銃弾は反らされていた。

 このウォーターシールドは、現在は常時展開を可能としている、それはユエ先生との修行に よって成し得た物であり、凛の成果だった。

 凛の膨大な魔力は常時展開をしてもそれを上回る魔力回復力を持って常時展開を可能としたのだ。

 ウォーターシールドは、常に水の流体の流れを維持しており、物質が当たるとそれに反応して反対側へ流れていくという作用が働いていて、これによって銃弾は、水に物体が流されているという魔法的な現象作用によって、現実には反れるという形が見えるとなっていた。

 

 

「ちっ、めんどくせーな。凛のあのバリアをなんとかしねぇと当たらねーのかよ。だが・・・・・・関係ねぇな!」

 

 

ドッパン!!

 

 

 今度は、1発の射撃音が1回だけなのに、6発の弾丸が飛んでくる。

 私は、咄嗟にアイスウォールの盾を張ってそれを防ごうとするが、間に合わなかったが、事前に派生スキル[遠隔操作]にて貼られていたウォーターシールドによって、なんとか直撃だけは防いだ。

 凛としては、ウォーターシールドはあくまで保険で、それ以外の手段でも防ぎたいとも考えていた。

 

 

「うぅ、なんとか、あの弾丸をなんとかしないと・・・・・いや、そうじゃない」

 

 

 凛の脳裏にピンと南雲君からのアニメ情報から閃きが生まれた。

 

 

「反らすだけなら!」

 

 

 確か、南雲君の話していたアニメの話の中に、弾丸を反らすっていう効果を持ったロボットの話あったような。確か、マイル―効果?だっけ、超低温になると金属が超伝導状態になって物体を反らすとかなんとか。

 ならば、超低温の剣なら弾を反らせる?

 

 

「アイス・ソード!!」

 

 

 名前は、いつものまんまであるが、温度は、超超低温の-278℃、持っている部分が霜焼けとか火傷とか起こさないのはイメージによるものなのか、所有者だからなのかはわからない。

 

 

「おいおい、避けてばかりじゃなくて、反撃しないと死ぬぜ!」

 

 

ドパン!!

 

 

チュン

 

 

「あは、反れた」

 

 

 私は、アイスソードを手に、弾の軌道を反らすという荒業で、ハジメのレールガンの弾丸を反らしていく。これは、マイル―効果ではなくマイスナー効果と呼ばれる現象である。原理はよくわからないが、使えるのであるなら使う。それがこの場面で生き残るには必要だ。

 

 

チュインッ!!

 

 

「おいおい、アイツ、まさか俺のアニメの情報からアレを再現してるってか?」

 

 

 ハジメは、舌打ち半分、感心半分をもって凛を見ていた。

 その凛は、手一杯ながらも反撃しなければならなかったので、そのままアイスソードを連続発射したドンナーの弾相手に、ただ魔法を射撃する要領で射撃したのだ。

 ドンナーから放たれた弾がアイスソードに近づくにつれて急速に冷却し、超冷却して超伝導状態になり、弾は勝手にアイスソードに触れることなく反れていく、代わりにアイスソードがハジメに向かっていく。

 

 

「おせぇ・・・・」

 

 

 そのセリフと共に首を少し動かすだけで、アイスソードを回避してしまう。が、超冷却される効果を含んだアイスソードはそれで収まらない。

 回避には成功したものの、ハジメの首から肩には氷が張り付いていた。

 

 

「くそ、あのアイス攻撃にこんな効果が!!」

 

 

 

「ミラージュ!!」

「ウォーターカッター!乱撃!!」

 

 

 ウォーターカッターをミラージュという幻視魔法にて拡大して実際には飛んでいる物と飛んでいない物を作り無数の水の刃をハジメへと射撃するが、あっさりと回避された。

 これには、ハジメが最後のボスであるヒュドラと対戦した時に、今は最愛の彼女となっているユエを守った時に失った右目に義眼として、魔力を視る事の出来る目を入れていた事で回避が可能となったのである。

 

 しかし・・・・。

 

 

「うおっ!?」

 

 

 すんでの所でハジメは首を倒すだけでは足りず、膝の力を抜いてサスを下げる要領で回避をしたが、南雲の頬に傷がスーっと入った。

 幾つか投射したウォーターカッターの内、幾つかは幻で、幾つかが本物が混ざっているという芸当に、感嘆の声を上げた。

 

 

「やるじゃねぇか!!」

 

 

 そう言った時には、すでに閃光手榴弾がハジメの手にはなく、私の足元で炸裂した。途轍もない閃光が凛の目に入り、目の前が真っ白になった途端、変わった銃声がさらに響いた。

 

 

チュン!!

 

 

 ハジメが発射したのが最大にまで力を溜めた最大火力のドンナーの弾である。

この威力ならウォーターシールドでも貫けるだろうとの予測だったが、事もあろうに凛は此方の予想を上回った。

 

 視界が奪われても弾丸はかすりもしない程正確に弾かれた。

ハジメはさすがに「何かある」とは思ったが、予想出来ていない。

 

 これは、超音波スキルによるものだ。

 名前では音と言っているがこれは音ではなく魔力の波であり、説明する事は出来ないが、どうにも音を超える速度で感知する事が出来るようで、実質は弾が飛んでくると、その方角、角度、速度、距離、弾の高低位置が瞬時に判明するため、目という視覚情報をも超える情報媒体となっていた。

 

 では、なぜ、フクロウ型の魔獣がハジメの攻撃を避ける事ができなかったのかといえば(原作参照)、それは反応ができなかったが正解だ。

 

 そのため最初のハジメの弾丸が5発同時に飛んで来ても、6発同時に飛んで来ても、それがわかるのだが、わかるだけである。

 

 ハジメの放つ弾丸は火薬を利用した撃発機構に加えて、電気と磁石の力を利用した超電磁銃・・・・レールガンである。

 その初速は一般の火薬銃の速度を大きく上回るため、見た時、見えた時には当たっているのだ。

 そのため、レールガンを避けるにはステータスが圧倒的に足りていなかったが、凛が避けれているのは、ステータスとスキルがレールガンを避けるのに必要な最低条件を超えているからだ。

 後の問題は、いつまでハジメの攻撃を躱し反らし反撃できるかである。体力の問題は常にあったため、その体力が尽きるのがどちらが早いかといえば、当然、動き回っている凛の方が体力が減るのは早いはずである。

 

 

「アイス・グレイヴ!!」「アイス・グレイヴ!!」「アイス・グレイヴ!!」「アイス・グレイヴ!!」「アイス・グレイヴ!!」「アイス・グレイヴ!!」「アイーーーース・グレーーーーイヴ!!」

 

 

 今だに範囲攻撃ともいえる一度に複数の物を生やすという技術を持たない凛は、主にハジメの足元とその周囲を基点に沢山の氷で作った円錐状の物をいくつも生み出し、そのすべてが超超低温で作られたアイスグレイヴである。そのすべてが超伝導状態となっており、ハジメの弾丸は尽くが反らされていく。

 

 

「ちっ、めんどうな!」

 

 

 ハジメは、焼夷手榴弾を放り投げると空中で爆ぜる。すると同時に中から黒い泥がまき散らされて、アイスグレイヴの上へと掛かり、超絶対零度の氷と摂氏3000℃の熱とが混ざり合い小規模な爆発を起こして、全体を水蒸気の霧が覆った。

 と、その中から、ライトニングソードがハジメに向けて飛んできたが、それをやはり軽く避ける。

 

 

「おいおい、こんな水蒸気の霞みなんかで、俺の目は欺けないぞ」

 

 

ドパパパパパン!!

 

 

「そう、みたいですね。ハジメさん!! ならば、これはどうですか?」

『アイス・ソーン!!』

 

「おっとっ!!」

 

 

 ハジメは、足元にゆっくりゆっくりと生えてくる氷の茨に気付いて飛び上がった。と、同時に一気に絡みつこうと蔓を延ばすがそれを逃がしてしまった。

 ハジメは、そのまま空中に天歩を使って立つが、地表はもうもうと水蒸気が霧のように立ち込めていて、視覚では場所がわかりづらい。

 だが、気配感知を使えば・・・・相手、凛は、気配遮断の強化版である気配遮断強化を使用しているのか、場所がわからない。

 

 

「気配遮断の強化版とか、やっかいだな」

 

 

と、魔力感知に反応があった。

 

 

スババババ!!

 

 

 多数の氷の弾丸が真下から迫ってきたのだ。

 ハジメは、天歩の派生である空力を使って、横へと逃れる。

 

 

「あー、ずるいですよ!」

「うるせー、空力の使えないお前が悪い。それにな、空力じゃなくて、天歩で空を、空中を歩くとかどういう発想だよ!ありえねーだろ、普通」

「仕方ないじゃないですか。天歩を使ってどこを歩こうと私の自由だと思いますけど?」

 

 

 その声は、ハジメよりも高い所から聞こえてきていた。いつのまに上がったんだ?と、考えたが、考えるのをやめた。

 無駄だからだ。

 相手は気配遮断の強化版を使っているのだ。いつだって場所を変えられるはずだ。

 

 

「チェストー!!」

「あのなー、攻撃するなら黙ってやれ。奇襲にならんぞ!」

 

 

 ハジメはスッと身を引いて、凛のライトニングソードを躱すと、凛はそのまま、真下の霧の中へと吸い込まれていく。ただ見送るなんて事はしない、ハジメ謹製の麻痺手榴弾と催涙手榴弾がすでに落ちているのだ。なので、、、、。

 

バン、バンバンバン!!

 

と霧の中で爆裂した。

 

 

「おっと、アイツ、麻痺は効かないんだったか。まあ、いいや」

 

 

グハッ

 

 

 ハジメが下に気を取られていると、最初の打撃は、ハジメが貰ってしまった。

 凛がハジメを攻撃した時、上空に待機していた物が落ちて来たのだ。それもかなりの高速で。

 

 

「確か、アイツのステータスでは、遅延効果は付けれなかったはず。ならば、今の攻撃は、ずっと上で回っていたってことか?」

 

「残念!!」

 

 

その声は、あろうことか真上からだった。

 

 

「な!」

 

 

 ハジメは驚いて真上を見上げると、そこに無数のいろんな格好をした凛の姿が幻視となってみえ、その中の1つがウィンクをしたかのように見えた途端、そこから雷の矢がハジメに向かって飛んで来ていた。

 

 

「な!くっ!あれは、確か縮影とかいう技か!」

 

 

 ご名答である。最初のライトニングソードを構えて落ちて来たのも縮影による幻の斬撃であり、当人は最初から上空に居たのだ。

 そして、無数に居た縮影による幻が動き出し、一斉にハジメに向かって突進を敢行する。

 

 最初の斬撃・・・おとり、目の前でウィンク・・・おとり、魔法を放とうとする・・・おとり、おしりぺんぺん・・・いらっ!

 

 

「うぜぇ・・・」

 

 

「ぐあっ!!」

 

 

 いらっとした事で意識の集中が途切れたのか、ほんの一瞬のスキを突かれた事で、ハジメは痛みを貰った。

 なんと真後からの打撃のような痛みである。

 すぐに金剛という硬くなるスキルが働いたため致命的な打撃は防いだようだが、痛みは間違いなく本物だ。

 すぐに背後を見るがそこにはウィンクだけを残した凛の幻だけがあった。

 

 

「こいつはやっかいだ」

 

 

 ハジメは頭を振って、全神経を研ぎ澄ませて、次に来る攻撃を予測した。

 するとすぐにその攻撃はハジメの全身を震えさせるに十分な物となった。

 予測される方向は、上か下かのどちらかと踏んでいたのだが、その攻撃は上からだが、その範囲は桁を超えていたからだ。

 

無数の氷の粒が雨のように降り注いだ。

 

 

「やるじゃねぇか。なら、本気で殺してやらないとな!」

 

 

ハジメは身を縮めると、力を溜めるそぶりをした後、一気に解放した。

 

 

「げ・んかい・と・・・・っぱ!!」

 

 

 限界突破を用いて、その攻撃をハジメは最小限度の動きとドンナーを用いた攻撃で当たる物だけを弾き躱していく。

 ハジメの体から紅の炎のような魔力が溢れ出していて、体に纏われて、身体能力が飛躍的に上昇し紅い深紅の帯が躱した所に後になって現れる。

 と、同時に瞬光というスキルが働いていて、物が遅れて見えるのである。

 それは一種の芸術であった。

 

 そして、最後の礫を回避し終えると同時に、凛の雷の剣とハジメの銃が交差した。

 死角からの一撃は、ハジメによって完全にブロックされた。そして、発砲音が響くと、凛の右脇腹に銃創が開いた。

 

 

「くぅ」

 

 

凛のくぐもった声だけが聞こえる。

 

 ハジメはドンナーしか使っていなかったが、ここで新たにドンナーの対として開発していたリボルバー式電磁加速銃:シュラークを投入したのである。

 凛の苦しい声が漏れたのも束の間、その傷口はすぐに塞がってしまう。

 再生が働いだのだ。まったく面倒な相手であるとハジメは思った。

 だが、限界突破を使っているハジメと限界突破を使っていない凛とでは、ステータスに差があるため、次なる手をハジメは打つ。

 そのまま、空力を使って下がると同時に、凛の剣が的を外れて下がった一瞬で近づき豪脚スキルで蹴りを叩きこむ。

 瞬時だったとはいえ、凛は反射的に腕でガードしたが凛の腕が「凹」の字に曲がり、そのまま横っとびに吹っ飛んでいく。

 当然、追い打ちに、ドンナーとシュラークが火を噴いた。

 

 

「アイス・シールド!!」

 

 

 超超低温によるアイスシールドを展開して、避けれない分をカバーしつつ、腕の骨折も再生を使って治癒すると同時に治癒魔法を同時に行うと、此方も限界突破を使用した。

 限界突破を使った事によって、白い雷光が凛の体を包み込み、白髪の中にある一部の赤髪が中から発光して、全体へと拡散し蛍光灯のような光と共に徐々に紅く神々しく光、紅の赤へと変化した。

 それはまるで戦の神を象徴しているかのようなそんな印象を受ける。

 

 互いに限界突破を使用して、激しくぶつかり合う。

 ステータス上ではハジメの方が基本ステータスで上回っており、凛の方が身体強化分でそれを補っている。

 しかし、魔力値だけでいえば、ハジメよりも凛の方が遥かに優勢であり、魔力を糧に発動する限界突破を先に用いたハジメは、凛よりも不利な状況にあった。

 徐々にではあるが、豊富な魔力を利用した凛の攻撃の手数がハジメを圧倒し始める。

 

 限界突破の影響により、凛のウォーターシールドは強化されたようで、ドンナー、シュラークの弾が横へと反れていくため、完全に接近戦となり、ハジメの場合は、近接戦が主体となる等、本来の即効が生かせない状態となった。

 

 凛は、麻痺効果を持ったライトニングソードを主力として、ハジメからの攻撃で避ける必要性がある物だけをアイスソードに交換して攻撃を弾くという器用な事をしてハジメからの攻撃を捌く。

 対するハジメは、凛の剣に触れないように相手の腕を弾くといった器用さを見せて攻撃を弾いていく。

 

 ハジメは、格闘戦へと移行したことで、銃を防御用の壁として使い出し、徐々に凛優勢へと傾いて行くことに焦りを覚え始めていた。

 

 その中で、さらに凛は近接でアイスバルカン、ライトニングバルカン、ファイヤーバルカンという3種類をマシンガン系連射型魔法を手からではなく、ウォーターシールド部分から掃射してきた。

 

これには、ハジメも『死』を覚悟した。

 

 

「う、うそだろ!?」

 

 

 そうして、時間にして約3分程の熱戦が繰り広げられ、ハジメの渾身の踵落としが凛の肩に決まり、不自然な音が響くと同時に地面へと落とされて何度かのバウンドを繰り返して地面に横たわった。

 

 

「ふう、やれやれだ。しかし、本当に悪口を言い合って、戦闘をすると死闘に発展するな。おかげでいい訓練にはなったが・・・な」

 

 

 体からピリピリと発電しながらも肩を回しながら歩くハジメは若干の麻痺を覚えるが、それを無理やり根気だけで制して地面へと降り立つ。

 

 凛の発したデートが互いで死力を尽くして模擬戦をしようという内容だった時には少し驚いたが、今の自分を知るにはこれほど都合の良い場所と相手がいなかった事から2つ返事で了承したのが、ここまで白熱した物になるとは予想外だった。

 と、ハジメは倒れている凛の顔を見て、手を差し出した。

 その凛は、肩で大きく息をしているものの、スッキリとしていて汗の滲んだ女の顔を向けていて、ハジメは少し顔を赤らめる。

 凛は、ハジメの顔を見てから、差し出されたその手を掴むと・・・・。

 

 

 

ドパンッ!!

 

 

 凛は胸に大穴が開いて、倒れたのだった。

 

 

 

 数分後、目を覚ました凛は抗議する。

 

 

「普通なら死んでますよ!どうみたってこれは死ぬでしょう」

 

「普通ならな。だが、おまえは普通じゃないだろ。それに、だ。これは、俺が教えてやれる最後の事かもしれんしな」

 

「え?」

 

「敵となったら迷わず殺せ!それが俺がここ、奈落に落とされて学んだ事だ。

 この先、こんなシチュエーションはない方がいいに決まっている。だがな。絶対にないなんて言えねーんだよ。

 だからな。もしこの先、敵だって認識した者がいたら迷わずに殺せ。

 それが、凛、おまえを救う事になるんだ」

 

 

凛は、「え?」と続けた。

 

 

「え?じゃねーよ。

 俺たちは、ここから外に出れば、間違いなく異質だ。

 間違いなく、いや、遠からず教会も目を付けてくる。

 そんな時に、自分の考え方と違っていて、敵となるなら情けをかけると間違いなく、洗脳とか色々やってくるぞ」

 

「えっと、なんで教会が出てくるんでしょう?確かに、教会関係者は、もう、私たちが自分たちの世界に帰れないような話をしていましたけど」

 

「ん、それはマジか?俺はそんな話、聞いてないぞ」

 

 

 凛は、ここの世界に来た時の事を掻い摘んで話すと、ハジメを徐に顎に手を添えて考えている姿となった。

 

 

「凛、それは恐らく・・・・本当の事だろうな」

 

 

 そして、ハジメが教会の教皇であるイシュタル・ランゴバルドが、話をした内容をうろ覚えだが凛に話した事で、ようやく内容の摺り合いが完了したのである。

 

 

「あの野郎、やっぱり、騙してやがったか。そんな顔をしていたもんな。凛、お手柄だ」

 

「い、いえ、単に道に迷っていただけですし・・・・」

 

 

 謙遜をしている凛の所へ、ようやくユエが帰って来て、ハジメと凛にブーブーと抗議の声を上げた。

 実は、この死闘の本当の功労者は、ユエである。ユエがこの反逆者の住処にバリアを展開していたからこそ、いや、できたからこそ、ハジメと凛が全力で戦う事が出来たのだから。ユエのバリアがなければ、今頃、この反逆者の砦は、ボロボロのオンボロ状態になっていたであろう事を考えると、ユエ様がいないと始まらないのだ。

 そして、そんなユエ様は、ハジメと凛の攻撃力の高さに全魔力を使い果たして今まで倒れていたわけだ。

 

 

「罰として・・ハァハァ・・2人共、、、血を・・・差し出す!」

 

 

 血を差し出せとは、正しく吸血鬼である。だが、疲れ切ったそんな姿に、ハジメと凛はユエを見て、笑ってしまっていた。爆笑である。ユエ様のジト目が怖い。

 

 

「それはそうと、貸し出してある神結晶、そろそろ返せよ。いったい何に使ったか知らないが、ないことはないよな?」

 

「あ、ああ、そうですね。ちゃんと利子をつけて返しますね」

 

 

 凛のアイテムボックスから出された神結晶は、ポンとハジメの手の上へと返されると、ハジメとユエが目を丸くして、凛を見て、神結晶を見て、を繰り返し、凛はまた一人笑ってしまった。

 

 

ゴンッ!!

 

 

 酷く鈍い音が響き、頭にたん瘤を作った凛をよそに、詰め寄る、いや、拷問しようとドンナーとシュラークを凛の頬にゴリゴリと抉っていた。

 

 

「おまえ、これ、どういう事だ。ああん、話せや、こらぁ!」

「ん・・・・・・凛、話さなければ死ぬほど、吸ってやる!」

 

「はなふぇまふぇん、ふうをどぅふぇふぇくらふぁい、あふぉふえはんおはい」

(話せません、銃をどかしてください、あとユエさん怖い)

 

 

 ヒリヒリする頬とズキズキする頭を押さえつつ、凛は目に涙を浮かべて、事の顛末を白状したのであった。

 

 




戦場と書いてデートと読む。読めるか!

ドンナーって6発装填でしたっけ?8発だったか?まあいいや。6発で。

魔法名は、ここから徐々に固定化します。ハジメによるアニメ情報が入手する事になりましたから。

ウォーターシールドの元ネタは、ガン〇スターのイナーシャルキャンセラーから来ています。あれがどのようなシステムなのかは今一ピンと来ないので、魔法ならなんでもありな結論にしました。全部フォトンの力!みたいな感じ。


マイスナー効果自体は、凛にはよくわかっていません。だいたいこうなんだろうなぁという憶測とイメージのみで、後は「魔法がなんとかしてくれる」を用いて具現化しております。
筆者にもwikiを見て、よくわからんかった。

南雲ハジメパワー全開で書いてみたけど、こんな感じじゃなかったか?
まあ、書いてて楽しかったからいいけど。


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18 旅立ち

前回のあらすじ:デートは南雲ハジメの勝利に終わった。(イミフ)


今回で第1章は終わりとなります。

現在、筆者は、風邪で頭がくらんくらんする状態で纏め作業していますので、誤字脱字があるかもしれません。よろしくお願いします。





「なるほど、それで、こうなったわけか」

 

「凛にしてはよくやった。だから、もう1発殴らせろ!」

 

 

 感心するハジメとなんかジャイ〇ンぽくなっているユエが、凛を見下ろしている中、その凛はハジメから貸して貰った神結晶の顛末を説明していた。

 いつの間にか、凛は縄で何重にも縛らており、犯罪者のような扱いを受けながら正座で座らされている。

 

 凛が行ったのは、時間操作適性を使った時間の巻き戻しという練習である。

 実は、時間操作において、凛は2つの事を試していた。

 それは、時間の先、未来に向かって時間を進める時間加速と時間を戻す、過去に向かって時間を進める時間逆行である。

 

 ただ、時間を進める物は魔力消費がとても大きく、逆に時間を戻す物は魔力消費が極端に少なかった。

 これには、スーキーによる1つの仮説を立ててくれている。

 スーキーのピアス型ユーザーインターフェースの主人であるユミルが扱う魔法の中に死者蘇生「リジェネードリザレクション」があるが、それが時間逆行型の蘇生魔法を使うという理由から、時間を戻すという方向において適性が高いのではないかという物だった。

 

 それと同時に魔力を扱った圧縮訓練として、濃縮を訓練していた。

 これは、凛の魔法適性において必要とされる物で神結晶を扱う事が訓練に役立つ物だった。

 特に魔力の圧縮は、必殺技である魔法名:コロナ、通称コロナビームなる物を適切に適確に高速で使用するためになくてはならないものであるし、他のファイヤーボールやライトニングに関しても常に魔力を圧縮して放出するという行為を行うため、念入りに練習をする事ができた。

 

 凛とハジメ達が出会ったのがオルクスの隠れ家であり、そこで様々な情報の擦り合わせとハジメが生き残った経緯を説明された時に出て来た神結晶の話から、それを見せて貰えたため、魔力を溜めるという性質と魔力を圧縮するという性質が似ていたため、その練習台にと貸し出されていた。

 

 凛は、ここオルクスの隠れ家に滞在する2か月と2週間を有意義に過ごしている。

 そのほとんどがハジメとユエによる訓練であるが、その行ない時間を凛は神結晶を用いての魔力圧縮に努めた。

 本来は、たった2カ月程で元の瑞々しい神結晶の神水が滴り落ちる状態にまでなる事はないのだが、時間逆行と圧縮されて注ぎ込まれる魔力量が常人では考えられない程の濃厚さと量であったがために、神結晶の成長へと繋がっていたのではと思われる。

 その結果、神結晶はキラキラと、ハジメが窮地を救われた時よりも多い量の神水を垂れ流しており、活性化していた。

 

 実はこの時点で、ハジメは神結晶の大部分を使っており、その大部分はハジメの装備であったり、ユエの装備であったりと使われて残りも僅かとなっていた。

 それが使ってもいない状態で、いや、前よりも大きくなって戻ってきたのが、これは、嬉しい、嬉しすぎる誤算であった。

 

 

「ううぅ、わたし、悪いことはしてないはずなんですが、おかしいな~、ああーーー」

 

 

 そう言う凛は今や、ユエにカーペットのように踏みつけられていた。ユエの額には、十字マークが刻まれている。どうやら妬まれているようだ。

 

 

「ああ、なんだ、その、ありがとうな。凛!」

 

「ああ、なんかいいですね。もう1回お願いしますよー・・・

 

 ぎゃああああ!!

 ユエさん、たんまたんま、首が折れる~~」

 

 

ボキッ

 

 

凛の絶叫は、反逆者の隠れ家全体に響き渡っていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 場所変わって、出立の準備となった。

 

 その日は、朝から、ユエとハジメの声が部屋に響いている。

 

 

「・・・・・・ハジメ、どう、気持ちいい?」

 

「ん~、ああ、気持ちーいーいいぞ~」

 

「・・・・・・ふふ。じゃあ、こっちは?ここは?」

 

「あ~、それもいいな~ あ、ここもいいな」

 

「・・・・・・ん。じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるね・・・・・・」

 

 

 もう、この頃は、ユエが年上の貫禄を見せつけハジメが色々な意味で吹っ切れてしまった事から、毎日の恒例となっていて、凛は聞こえないふりをして作業に勤しんでいる。

 現在、凛が行っているのは、ハジメが使う銃の弾の制作である。

 弾の制作が錬成の技術向上に最適であるとハジメが凛に提案し、それを凛に覚えさせた結果、人並みにできない凛には、これを毎日続けてさせていたのだ。

 それでも複製は未だに派生技能として覚えていない。元々派生技能などは、一朝一夕で覚えれる物でもないため、普通といえば普通なのだが、経験値1000倍で覚えれないのが不思議であった。

 

 

「ハジメさん、弾、1000発が出来ました。見てください!」

 

「ん、ああ、いいじゃないか。弾の大きさも揃っているし、「鉱物鑑定」・・・・うん、調合もOKだ。完璧だ」

 

 

 そして、マッサージを終えると、ハジメが作り上げた、特製アーティファクトである義手を装着して着け心地を確認している。マッサージはこのために行っていたのだ。

 

 どうして、ユエがハジメの手をマッサージしているのかといえば、ユエがハジメに対してゾッコンだからであるが、始めはハジメもある程度は幼女には抵抗していたらしいのだが、ユエの方が年上であり、その猛烈なアタックには、太刀打ちできなかったため、ハジメは開き直って受け止めたらしい。

 

らしい・・・というのは、私がここオルクスの隠れ家に来るまでの間に起こった事なので、私自身も詳しくは知らされていないのだが、ハジメが錬成を教えてくれる過程で知りえた事だった。

 

 なんでも50層にあった、あの異質な神殿に封印されていたのをハジメが助けたのが始まりという事で、ユエは自分を助けてくれたハジメの優しさに惚れたのではないかと私は見ている。それ以降の話は、元の世界に帰れたら一緒に連れていくとか約束したらしい。がんばれーヒューヒュー。どうせ私は美少女じゃないですからね。

 

 そう、凛は、美女でもなければ、美少女でもない。いわゆる一般人である。いや、一般人よりも劣るかもしれないとそのくらいに思っている。

 だが、本人は知らない。

 黒毛から白毛になった事で認知出来れば、かなり目立つ存在になっていることに。

 しかし、現在の所は未だに不明なのが、ハジメとユエは自分を普通に認識出来ている事である。認知度を上げるスキルは一切使用していないにも関わらずだ。

 もしかしたら、人種が変わった事で認識できるようになったんじゃないかなと淡い希望も抱いている。

 

 と、まあ、そんな事で、ハジメは義手を取り付けた後、凛の作った弾丸を確認したり、銃を触ったりして、感触を確認しているのだ。

 この義手は、ハジメの作ったアーティファクトであり、魔力の直接操作というスキルを用いて、本物の腕と同様に動かす事ができるようになっていた。疑似的な神経が備わっており、魔力を通すという行動を取る事で、触った感触が脳にまで伝達されるかどうかを毎日確認しているわけである。

 また、この義手には装備としての一面も持っており、所々に魔法陣や何らかの文様を刻み込んであって、多数のギミックを仕込んであるのだ。

 

 だが、この義手の元となったのはオスカー作である事を凛は知る由もない。実際に凛がここへ辿り着く前の出来事であるからだ。

 しかしながら、この設計図は凛も見せて貰っており、ノウハウだけは学んでいる事から、必要になれば、きっと作る事が出来るであろうが、世に出れば間違いなく国宝級のアーティファクトであるが故に厳重に保管されるか、命を狙われかねない代物であった。

 もっとも、魔力操作というスキルがなければ、只の義手でしかないのだが。

 

 そして、ここからついに外へと出立する時間が差し迫っていた。

 ハジメとユエは、文字通りの化け物ステータスとなっており、その2人に鍛えられた凛もかなりの化け物ステータスとなっている。

 

 特に凛のステータスプレートはまとめて表示ではなく、分類毎に分けるという仕様を取ったため、非常に長くなっており、見るのも面倒であった。

と、まあ、こんな感じである。

===============================

鈴木凛 17歳 女 レベル:----

天職:魔導師

筋力:8511   [+全身強化時:12766]

体力:8506   [+全身強化時:12756]

耐性:8500   [+全身強化時:12750]

敏捷:8501   [+全身強化時:12751]

魔力:84980   [+最大値上昇:178458]

魔耐:8506   

幸運:100(MAX)

残りポイント:0

===============================

スキル:

戦闘補助系:

ゲーム感覚・魔法力増幅

 

経験値上昇[[+1000%(MAX)]]

必殺[[+博打][+幸運+][+的中率上昇+][+会心]]

先読[[+時間遅延][+反射速度増加][+未来視]]

気配感知[[+効果範囲][+感知強化]]

聴力強化[[+効果範囲]]

血力変換[[+スキル奪取][+体力変換][+魔力変換][+乾血吸収]]

跳躍[[+大跳躍]]

縮地[[+爆縮地][+縮影]]

再生[[+手動再生][+痛覚操作][+消費魔力軽減]]

高速反応[[+反射神経+][+電気信号]]

完全耐性[[+毒耐性][+劇毒耐性][+完全毒耐性][+麻痺耐性][+石化耐性]

[+恐慌耐性]]

気配遮断[+強化]

舞踏[+遅滞分身]

魔力感知[+魔力視覚]

見切り[+超反応]

 

固有魔法:

重量軽減・遠見・夜目・超音波・威圧・念話・身軽・熱源感知・限界突破

 

天歩[+縮地]

雷撃[[+範囲攻撃][+無拍子]]

風爪[+武装付与]

微石化[+武装付与]

錬成[[+イメージ力強化][+消費魔力軽減][+鉱物系鑑定][+精密錬成]

[+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+圧縮錬成]]

金剛[[+部分強化][+接触強化][+強化]]

魔力操作[[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収][+イメージ力増加]]

 

魔法系:

高速魔力回復・魂魄魔法・生成魔法

 

全属性適性[[+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下][+消費魔力軽減][+発動速度上昇][+高速詠唱][+範囲強化][+イメージ力強化][+誘導][+超高圧縮]]

全身強化適性[[+発動速度上昇][+発動時間+100%][+発動時間永続化][+強化増加値+50%]]

結界術適性[[+発動速度上昇] [+消費魔力軽減][+耐久化][+多重結界]]

複数同時構成[[+複合魔法]]

魔力最大値上昇[+110%]

時間魔法適性[[+属性強化][+魔力吸収低下][+消費魔力軽減]]

回復魔法適性[[+自動修復] [+属性強化][+貫通属性][+射程強化][+魔力吸収低下][+消費魔力軽減][+発動速度上昇]]

近接系:

剣術[[+強打][+刺突][+斬撃速度上昇][+薙ぎ払い][+カウンター][+無拍子]]

二刀剣術[[+刺突][+パイリング][+カウンター+2][+強打撃][+スタミナ軽減][+斬撃速度上昇][+投擲][+抜刀速度上昇] [+無拍子]]

物魔一体型戦闘術[[+発動固定維持][+連続発動][+連続投擲][+連続攻撃][+舞踏補助]]

魔爪変化[[+血液吸収][+麻痺追加][+硬化]]

魔爪格闘術[[+斬撃][+刺突][+発動速度上昇][+高速解除][+舞踏]]

その他:

強歩[+50%]・聞耳・早読[+20%]・光と影・言語理解

備考:

転生10回目・転生者・不老・亜神

必殺:

コロナ・ビーム

グングニル

===============================

 

 ステータスは、亜神となった事で成長がストップしてしまっているが、魔力値だけはスキルの影響を受けており、魔力が約18万まで達している。

 これは、すでに異常な数値であり実力が伴っていれば、魔法の天才であるユエを凌ぐ領域なのであるが、残念な事に実力が伴わない見た目だけの数値となっている。まったく残念な子だ。

 

 ちなみに、みんなの希望であり勇者であり、期待の星である天之河光輝の限界は、全ステータス1500程度といったところであり、限界突破を加算してもまったくの赤子レベルであった。

 

 一応、比較をすると、普通の人族の限界は100から200であり、天職持ちで300から400なのが普通である。

 魔人族や亜人族は、その種族的な一部の特性から、300から600あたりが限度と言われている。

 勇者が期待の星なら、凛は何に当たるのだろうか。

 ちなみに、凛の精神は、亜神へと変化した事で、肉体の変化は気づいても精神が変質している事に、対象がハジメとユエであった事から、まだ気づいていないのだ。

 

 ハジメ達は、新装備を手に入れているが、凛は装備を手に入れていない。

 この理由は、凛が一般の魔法師ではないからだ。

 一般の魔法師であるならば杖を持つ所だろうが、凛の場合は魔法を剣として使ってしまっているので杖は逆に邪魔になるという状態だった。それ故に作っていなかったのだ。

 

 

「凛」

 

「ん、なに?」

 

「これをやるよ。それと・・・・」

 

 

 ハジメは、凛に、ブレスレットとアンクレットを2つづつ渡してきた。

 装飾のない真っ黒なやつだ。

 それと、移動手段用の車とバイクを1つづつ、それと漆黒の剣を2本、ドンナー・シュラークと同じ形の銃を1つ、それと新武器を渡してきた。

 

 

「いろいろと考えたんだがな。ユエと相談して、凛の装備にはこれが一番なんじゃないかって思ったんだ」

 

 

 黒のブレスレットとアンクレットは、盗賊用対策として黒で目立たず、また壊れないようにアザンチウム製であり、取り付けるには錬成を用いて収縮させて取り付ける仕様である。

 世に出回れば国宝級アーティファクトであるだけに、盗むには腕を切り落とすくらいしないと盗めない仕様になっている。

 そして能力は、高速魔力回復と魔力圧縮、魔力放射を付けていた。

 いわゆるブースト装備であるので、これで魔力をかなりの規模で消費しても補給される増量分が増えるので、凛にとってはありがたい装備だった。

 

 

「高速魔力回復は、実験段階で上手く行く保証が出来ない。だからすまん」

 

「あはは、いいですよ。使い心地はその都度、教えますからね」

 

 

 高速魔力回復は実験段階であり、その特性は空気中に散らばる魔力を集めて装備者に還元するという物である。

 魔力を視認できるという事は、魔法使用時に使った魔力がどうなるのかが見れるという事である。と、いう事は、使用された魔力と分散してしまった魔力の使われていない魔力を集めて装備者に還元できるのではないか?という考え方から作った実験装備であった。 

 

 次に渡してきた物は、漆黒の剣が二振りだ。

 これは両腰に兼帯する刀としての装備だろう。

 これもアザンチウム製で整備不要の剣だ。

 アザンチウムとは、この世界における最高の硬度を持つ鉱石で、雑な扱われ方しても壊れないという程に硬い鉱石だ。これを農具にすれば一生涯使い続けれるという代物だが、その加工には、それ相応の練度が必要となる。

 そのアザンチウムを極限にまで圧縮する事で、超硬度な上に超イイ切れ味を実現している。

 他にも魔力操作を行う事で、最大で六十センチほどの風の刃が延伸したり、さらに刀身の両サイドに二本の魔力刀を形成したり、その魔力刀を飛ばすといった事までが刀身の機能だった。

 刀全体の機能としては、持ち主登録機能だ。

 持ち主以外の者がこの刀を持った場合、魔力を抜き取るという機能がつけられている。抜き取った魔力は一時的に保管した後、本来の所持者に還元するという形を取るようだ。これは神結晶を凛が再生させる前に作った物のため、神結晶の魔力を内包するという特性を与えた紛い物を使用している。

 

と、私が二振りの剣に夢中になっていると、ハジメは唐突に銃の話を切り出して、私は銃の方へと視線を移した。

 

 

「その銃には名前はまだないから出来るなら付けてやってもいいかもな。

 それと、その新武器だが、対物ライフル:シュラーゲンを改造して、実弾と魔力弾を撃ち出せるようにした狙撃砲だ。

 凛、おまえになら使いこなせるだろう」

 

 

と、対物狙撃砲として改造され3メートル程となったシュラーゲンのような大砲を渡された。

 

 実際にはハジメも凛に使いこなせるとは思っていない実験兵器であるが、それはあえて言わない。

 どちらも名前はまだないので、使う時になったら名前をつけようと思う。

 

 ハジメはオスカー・オルクスの遺産である宝物庫を手に入れたため、持ち運びの手段を手に入れる事となった。

 そのため、持って運ぶという問題が解消されたため、実用限度を超えた装備を色々と作ったのだった。

 その1つが強化型のシュラーゲンMK-Ⅱである。他、ロケットランチャーであったりガトリング砲といった物も拵えていたりするのだ。

 

 凛は、自前でアイテムボックスを所持している事をハジメにも後から伝えており、その際に、頭をぐりぐりされたが、今は事なきを得ている。

 そのため、それを前提にハジメより魔力駆動二輪のバイクと四輪のジープタイプを渡されたのである。

 

 次に、ハジメは魔力駆動二輪と四輪について説明を始めた。

 どこにどのような資源が使われているのかはパッ見わからないが、タウル鉱石を基礎にアザンチウムで薄くコーティングして耐久性を主軸に凛とハジメのような化け物が乗る前提で作られた乗り心地無視の車だった。

 いわゆるハジメがユエと乗る事が前提ではない車という事だ。

 また、ハジメが乗る方の車と違う特徴として、魔力を補完しておく神結晶が使われておらず、凛自身のみの魔力駆動しかできない。

 速度は魔力量に比例するものとなっている。

 武装はハジメならしそうな物だが、此方の車には武装はなく、代わりに、凛が扱える錬成スキルを使用して、最高速度でもある程度は整地しながら走る事が出来るように錬成機能を高めた仕様となっている。

 その分、魔力も大きく消費するが、凛なら問題ないだろうという気持ち仕様だ。

 

 そこからは、ハジメがユエにプロポーズ用品を送ってイチャイチャラブラブを思いっきり凛に叩きつけ、凛は涎と鼻血を出しながら、ほっぺをホクホクとさせた光景が出会ったが、それは原作の話だ。

 

 

「そういえば、まだ聞いてなかったが、これだけの物を上げちまった後なんだが、俺達と一緒に来るか?」

 

 

 そう言う、ハジメは少し頬が赤らみ照れていた。目も伏せているのかその表情は、伺い知れない。しかし、ハジメの背後にはユエの姿があり、ジッと私を見つめてきていた。

 

 

「ん~、そうですね。

 初めは、少しだけ1人で動こうと思います。

 外での自分の力量を知っておきたいですし、恐らくですけど3人で動くとすごく目立つと思うので、一旦分かれてからまた会いましょう。

あ、そだ。これを持っててください。私の自信作なんです」

 

 

 そう言って、渡したのが念話石のイヤリングだった。私自身も錬成や生成魔法が使えるのであるから、作れて当然である。使用魔力の強度によって念話が通じる距離が変わるというトランシーバーであった。

 

 とりあえず、2人分を渡した。これが後に、ハジメによって複製錬成と改造がされて、ハジメ一行達に渡されるのは別の話だ。

 

 「そっか」と「お、おう!」というハジメの声を聞いた後、ユエの「凛にしては上等」という言葉も聞こえたがスルーしておくはずだったのだが、ユエが実力行使で殴りに来たので、ハジメの周りを周ってハジメを盾にする動きで逃げ回る事になった。

 

その後、ゴンッ!!という音が2回響いたのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 それから1日後、遂にハジメとユエ、凛は地上へ出る日がやってきた。

 

 出口にある魔法陣を起動させながら、ハジメはユエと凛に聞いたようなセリフを静かな声で告げる。

 

 

「ユエ、凛・・・・・・俺の武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

 

「ん・・・・・・」

 

「そうですね」

 

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

 

「ん・・・・・・」

 

「うん」

 

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

 

「ん・・・・・・・」

 

「そうだね」

 

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

 

「今更・・・・・」

 

「はは・・・・・・」

 

 

 ユエの言葉に思わず苦笑いするハジメ。

 真っ直ぐ自分を見つめてくるユエのふわふわな髪を優しく撫でる。気持ちよさそうに目を細めるユエに、ハジメは一呼吸を置くと、キラキラと輝く紅眼を見つめ返し、また、桃色空間が作られていて、凛は端っこで小さくなっている。邪魔をするとパンチが飛んできそうだからだ。

 

 

「俺がユエを、ユエが俺を守る。それで俺達は最強だ。全部なぎ倒して、世界を越えよう」

 

 

 ハジメの言葉を、ユエはまるで抱きしめるように、両手を胸の前でギュッと握り締めた。

 そして、無表情を崩し花が咲くような笑みを浮かべた。返事はいつもの通り、

 

 

「んっ!」

 

 

あの~・・・私が居る事を忘れないでくださいね。

 

と、凛の言葉が聞こえたような気がするが、その時には魔法陣が激しい光を発しており、ハジメは聞こえなかったフリをした。

 




はい、第1章は終わりです。

この後の話は現在制作中です。すでにラストはこんな話にしたいと決めてありますが、中間が全く未知です。

この後の話はオリジナルストーリーとなり、ハジメ達ともまた戦う予定になっております。

出来れば半年以内を目途に投稿し出したいですが、リアルが忙しいので忘れられない内に投稿したいと思います。


登場人物が少ないので第1章分の人物設定図鑑必要なのかどうか。いらないだろうな~。

蘇生魔法:リジェネードリザレクション:
吸血神族の吸血姫である姉のユミルが扱う魔法で、元生体を過去に戻って再生する魔法。そのため蘇生という概念ではなく、過去に戻って生体を現代へ持ってくるという変わった魔法である。これを使うためには、制約があり、髪の毛1本もしくは生物の垢が残っていなければならない。残っていれば100年前だろうと1万年前だろうと蘇生ができる。

原作改変:
神結晶が大きくなった。かと言ってこの先、変化はないと思う。
人族、獣人、魔人族のステータス数値は、明確な表記がないため推測です。

この後、原作でもステータス表記はほとんど出てこないため、推測の域が大きくなります。


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