闇竜バルボロスを知ってるだろうか。
ドラゴンクエストIXに登場し『光のグレイナル』と対の竜。
ムービーでの強キャラ感はどこへやら、実際に戦うと全く強くない相手。
ライトフォースとドラゴンぎり使えば余裕。
ストーリーボスの堕天使エルギオスの変身の時間稼ぎとも取られる。
姿はすごくかっこいい。
そんな『闇のバルボロス』に魅せられた男がいた。
突然のログイン通知オンにモモンガは反応する。
浮かぶプレイヤー名は『バルボロス』
アインズ・ウール・ゴウンに所属するプレイヤーである。
モモンガは実に1年ぶりの彼のログインに嬉しさを隠せないでいる。
「すみません…遅くなりました」
少しだけ疲れを感じさせる声は懐かしい彼の声だった。
バルボロスは勤め先の倒産によりゲーム、ユグドラシルから一時離れていた。
戻ることなどなかったが、今最後のこの時に彼が来てくれたことが純粋に嬉しかったのだ。
「そんなことないですよ。まだ時間はあります。…色々大変なのに無理して来ていただいてすみません」
久しぶりの会話なのにお互いペコペコと謝ってばかりだ。
椅子に座っていたのは
スケルトンの姿をした大魔法使い。
バルボロスはと言うと、DQIXの竜戦士装備を黒くしたような装備を着ている。
種族は竜人。
基本剣を使っているが別形態である『闇竜バルボロス』の変身し戦うこともある。
「今は仕事の方どうですか?」
「またピンチですよ。いつ倒れてもおかしくないです」
うわっまたですか、と驚く。
バルボロスの務めている会社はグラグラとしており、いつ倒産しても可笑しくないのだという。
このご時世珍しい話でもないのだが、こんな短期間で2度の倒産はそうそう経験できないだろう。
「明日になったらまた職探しですよ…」
トホホ、と言いながら泣き顔の絵文字を送るバルボロス。
「どうします?残り少ない時間玉座でも行きますか?」
「そうしましょう!明日のことなんか知らん。今はこっちのが大事ですからね」
あっギルド武器持ってきてくださいね!とバルボロス。
モモンガはあはは、と笑いながら玉座へと移動する。
そして後に続くバルボロス。
ついでにプレアデス達も連れていくようだ。
「久々にプレイするなら竜形態になりたいなぁ。」
ボソッと呟いたはずの一言をモモンガは聞き漏らさない。
勢いよく振り向きバルボロスを見つめると。
「いいじゃないですか!やりましょうよ。玉座の間でそれでスクショでも。」
随分と興奮気味だ。
「いいんですか…?…今更言うのもなんですが長い間アインズ・ウール・ゴウンを捨てていたようなもんですよ?…なのに──」
「関係ありません。今を楽しめばいいんですよ」
「…そうですね」
バルボロスには振り向いた彼の表情がスケルトンを通して見えた気がした。笑顔で優しく笑うモモンガ本人の顔が。
「さて!着きましたよ。…いつでもOKです」
よし、とバルボロスはモモンガから離れ変身する。
そこに現れるは蛇のような体を持つ前足と爪のような部分を持った翼を持つ巨大な竜。
『闇竜バルボロス』が降臨した。
竜は大きく咆哮をする。
それからはスクショを撮ったり、プレアデスを眺めたりとゆっくり時が過ぎるのを待った。
途中モモンガが守護者統括アルベドの設定に手を加える事態があったが最後なのでバルボロスは何も言わなかった。
そして終わりが来る。
「モモンガさん…本当にすみませんでした。…こんな俺を今も受け入れてくれてありがとうございます…」
「気にすることないですよ。実は今日来てくれた人全く居ないんです。…大変なのに来てくれただけですごく助かりました。」
頬をかく動作をしながら告げるモモンガにそれでもバルボロスは礼を言う。
また一緒にゲームがしたい。
また遊んでください
と。
──楽しかったなぁ──
どちらの呟きかは分からない。
だがその言葉を最後に2人は目を閉じる…。
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