逆行妖精譚 (くまはっち)
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序章

とあるエルフ『疾風』と女神によるファミリアミィス。

「出来る限りのことをしよう。この手が届く限り…」

始まります。





 

 

 気がついたら見覚えのある天井が見えた……、と神々の言うところのよく分からないところに来た……というわけではない。辺りは日が沈みかけている為よく見えないが己がよく知っている……過去にいた……場所にいた。

 

 

 ────リュミルアの森の自室に──────

 

(えっと……昨日はミア母さんの酒場で仕事をして寝たはずですが……?)

 

 エルフの少女リュー・リオンは混乱していた。

 

 とりあえず状況を確認しようと寝ている体を起こし、周りを見渡す。

 

(昔使っていた机に本棚、武器まである。それにしても……)

 

 そうこれだけでもイレギュラーな状況なのだがさらにリューを混乱させる出来事が起きた、というより起きていた。

 

(見た目6~7歳程なのですが? 何故……?)

 

 そう以前より手足が小さく身長も小さくなって見た目子供になってしまっていた。そして……

 

「おーいリュー! ご飯の時間ですよー降りていらっしゃいー!」

 

 何年も聞いていなかった母の声が聞こえた。

 

「はい! 今行きます」

 

 とりあえず返事をしないと後々面倒な事になる事は昔からわかっているのでしておいた。

 

(とりあえずはこのまま()()過ごしましょう)

 

 何も解決になっていないが何も力も持ってない少女はこうするしかなかった。

 

 ────────────────────

 

「リュー? どうかしたのですか?」

 

 開口一番母にそう言われた。

 

「……特に何もありませんが……どうしてですか?」

 

「いぇ、何も無いのなら良いのです」

 

 そう言って食事を食べ始めた。

 エルフの料理は素朴で質素なものが多い。森で取れた山菜のサラダや皮で釣った魚の開きなどを主として食べることの方が多い為オラリオで冒険者として食事は物珍しかった。

 

「そう言えばリューは明日は訓練日でしたね」

 

「はい。朝から訓練する予定です」

 

 そして食事中に話すことと言ったら決まってこれである。

 リュミルアの森で森《聖樹》を守る一族の生まれの為生まれてからずっと訓練してきた。閉鎖的なエルフの里では里の住民だけで己の里を守る必要がある。だからそれぞれの里には警備を担当するものがいる。それが護人の役目だ。それでも恩恵を受けた冒険者と戦えばすぐにやられるのだが……それは言わない方がいいのかもしれない。

 

「ご馳走様でした」

 

「はい、お粗末様でした」

 

 そうして母に挨拶をして自室に戻る。そして外套と短刀、保存食を持ち荷物に詰める。もうここに戻ってくることも無い。ここにいても同胞に里の同胞に自分に失望してしまうだけだ。私はエルフの選民主義は苦手なのだから。

 

「さよなら。お元気で」

 

 そう言って里を飛び出した。

 

 ────────────────────

 

「かなりかかりましたね……」

 

 里から飛び出して早数日。目的地に向かって寝る間を惜しんで歩いているが中々きつい。

 

「ステータスが元に戻っているようなので仕方ありませんが6、7歳の体では無理がありましたかね……? ハァー」

 

 そうステータスがレベル4の頃ならこのくらいの旅路はきついとも思わなかっただろうが何せ色々あったのだ。特に何も考えず自分の赴くまま里を飛び出したのが仇になった。里の同胞を撒くために遠回りも余儀なくされた。踏んだり蹴ったりだ。

 

(体の年齢に精神の年齢まで引きづられてしまった)

 

 良くも悪くも決めた事はすぐに行動するリューの事なので仕方ないと言われれば仕方ないのかもしれないが5歳児(中身21歳)の旅路は苦労するだろう。

 それでもオラリオはもう目と鼻の先なのだがらさすがとしか言いようがないが。

 

(もうすぐ検問ですが、検問抜けられますかね?)

 

 前の世界では10歳は超えていたから普通に入れたが何せ今は中身21歳で見た目5歳児だ。

 保護者同伴とかファミリアの団長を呼んできてとか言われたら何もできない。だからリューはとある行動に出た。

 

 

 

「そこのお方少し良いですか?」

 

「ん? ……どうしたの?」

 

 ここはオラリオの隣町。治安はそこそこの普通の町。そこの酒場である。そこでいかにも歳二桁に行かない少女といかにも人間ですという普通の感じを醸し出している女の二人がいた。

 

 そして、リューは耳を寄せてこそこそと呟き始めた。

 

「迷惑は出来るだけ掛けないので貴方のファミリアに入れて貰えませんか?」

 

「は?」

 

 そういかにも人間という感じを醸し出していた()()は神である。肩下まであるくろ髪を一つに纏めて垂らしており、金色の目を持つ、旅人風の格好で可愛い系の神であった。ちなみに背はリューよりやや高い程度なのでかなり神の中では低身長の部類になるかもしれない。知名度はそこそこだけれども……。そこ! なんだぁーと失望しない! 

 茶番は置いておいてその神は正直に言って驚いていた。普段から神威を出来る限り醸し出さないようにして旅を続けていたからだ。主にあの好色じじいのせいだがここでは触れないでおこう。

 さて、神威を出していないため神として認識される事はあまりなく、それこそ人間のように振る舞い旅を続けるこの神ファミリアなんぞ作っていないし作ったところでどうにもならないと考えていた。つい最近までとある処女神の元にいたが何故か自分まで矢の的にされるので逃げた。心の中では『なんでやねん!』とツッコミを入れながらながら旅を続けている。

 だからこの神が最初に少女に思った事は当然のことだが

 

「君って変なやつだな」

 

 この一言である。だってそうだろう? 

 

 神としての威厳も無く、神ではなく人間として生きている私に気づくなんて思わないでは無いか。それに加えて見た目幼女なのでさらに変なやつ認定が上がっている。まだ世の中の情勢なんて知らなそうな歳の少女が『迷惑掛けないから家族にしてほしい』なんぞいうのか? という疑問が最後に残った。

 そして一応事実も言っておこうとするこの神のちょっとした優しさもあった。

 

「はぁ、何で私が神と分かったのかは聞かないが本当に私のところでいいのか? 隣のオラリオでは有力なファミリアなんぞ吐いて捨てるほどあるぞ? それに私はファミリアなんぞ作ってない。他を当たった方が身のためだ」

 

 吐いて捨てるほどは無いのだがこの神はオラリオの地に足を踏み入れたのはかなり前なのでいた仕方ない。好色じじいが去ったから来た、その一言で片付けられるほどの単純な理由で来たのだから。

 

「それならそれで好都合です」

 

「ほぅ」

 

 少女の印象になんとも馬鹿なやつという不名誉な印象もこの神に追加された。わざわざここに来てファミリア探しとかしなくても良いだろうに。

 逆にリューからすれば関わる人間が少ない、あの時オラリオの内部でそれほど名を轟かせていないというちょっと残念な点でこの神のファミリアに入ろうと考えているのはこの神は知らない。

 

 何せ今からやる事は誰の目にも留まらず、誰にも語られず、誰にも気づかれない様に立ち回る必要があるのだから……

 

 これがリューと彼女の新たな主神となる神の出会いである。

 

 それから数日

 

「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

「どうしました? 神様?」

 

 でかいため息を着いた神とその隣で澄ました顔をしているリューの凹凸コンビである。

 あの後何度も食い下がってくるからついに神の方が折れた。ちょっと脅迫まがいの事をされました。それでオラリオの方に向かっているのだが神の頭を悩ませているのはこの澄ました顔をしたエルフの少女の事である。

 

「どうしました? じゃぁねぇよ! 何でガネーシャが検問してんだよォ〜」

 

 そうこの神前にオラリオにいた頃に衝動的に(まぁ好色じじいが悪いところ多々あるが)とあるファミリアに神に単体で嫌がらせをして反感買って追放されている。その頃は特に検問なんて無かったからまた帰ってくれば良いや〜とタカを括っていた。

 

「今のオラリオは治安最悪です。検問があるのも当然かと」

 

「まじで?」

 

 なんとも頼りがいのない神である。天界にいた頃は神罰として色々それはもう色々人間に対してやってて(主に人間が思い上がったから)頼りにされる事もあったが、下界では形無しらしい。

 正直リューの方がオラリオの事に詳しい。その事に疑問は持てど深く追求しないのはリューにそういう話を振ると黙り込むからである。まぁ話したく無いこともあると考えて特に何も追求はしない。時間の無駄である。

 

「仕方ないことです。二大派閥であるゼ……ゴホン、ヘラファミリアともう一つのファミリアらが黒龍退治に失敗して以降、ずっと治安が悪い……と聞いてます」

 

「あぁーそうなの? というかエルフの里は閉鎖的なのによくその年で知ってるよなそんなこと」

 

「えぇまぁ」

 

 そうこんな感じで黙り込むのでこういう時は放置するというのが1番良い。下手に聞き出す方がこいつ相手だと難しい事はもう知っていた。

 

「あーしょうがないなぁ。ガネーシャからは色々聞かれるだろうが適当に返して入れてもらう事にするよ、それからは頼むぞ?」

 

「えぇ任せてください」

 

 そして二人の番が来た。

 

「ほぅ前回追放したはずだが?」

 

「いや〜色々ありまして帰って来ちゃいました」

 

「うーむまた、時期が悪い時に帰ってきたものだ!」

 

「あのじじいが居ないだけマシだろう?」

 

「あはは(乾)」

 

 その後も入れてくれ! だめだ! 入れてくれ! だめだ! と会話が進まない。そして切れた神が

 

「あーもう! 追放した本人がいねぇんだから良いだろうが! 別に他の奴らにちょっかいしねぇよー!」

 

「むぅぅ……分かった。ただし監視はつけさせてもらうぞ? いいな?!」

 

「上等だぜ」

 

 どうにも熱くなると口が悪くなる主神の様だと再確認したリューであったが無事に? オラリオ内部まで入ることができそうだ。

 

「その子は君のファミリアの子か?」

 

「ん? あーそうだよ」

 

「正直君はファミリアを作らないと思っていたぞ!」

 

「私も作ろうとなんて思ってなかったよ」

 

 ゲンナリげっそりした神とアッハッハっと笑っているガネーシャの姿があった。

 

 ちなみに監視にはシャクティがきた事は余談である。(リューは少し微妙な顔をしていた)

 

 




ほぼ初小説なのですが楽しんでいただけたのなら幸いです。
 ここでは本編で載せられなかった裏事情を書こうかな? と思っていますが作者は浮気性の為急にいなくなります。その時は申し訳ありません。
 さて作者の推しはリューさんの為推しの無双が本編以外でも観たかったという邪な気持ちで手を出したのがこの作品です。この後は逆行リューさんが頑張って未来を変えようと奮闘することになるはずです。多分……! 
 現在のリューさんの主神の名前は一回は何かの拍子に聞いた事があると思います。女神様です。
 あのリューさんがアストレアファミリアに加入するとは思えなかったので他のファミリアに加入してます。勿論アストレアファミリアの方々出すつもりですが。
 リューさんは本編軸では丁度戦闘遊戯の後に飛ばされてます。理由は作者が原作持ってないからです。
 以上! 作者からでした。ここまで読んでいただきありがとうございました。


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第一章ファミリア
第一話とりあえず拠点決めようぜby神


前の続きです。スローぺースの為投稿するのすごく遅いし少ないですが楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ。


(マジで治安悪いなー)

 

オラリオに入ってリューの主神が一番に思ったことはこの一言であった。そこら中にいる人間は疲れてた様子で落ち込んでいる。「キャー」という悲鳴は入って数分でもはや三回は聞いた。警邏しているファミリアとも数えるのが面倒になるほど遭遇した。極めつけはさっき目の前で盗みの現場に遭遇してリューがひねり上げた事である。犯人は連行されて行った。おかげでもう大分疲れた。

さっきから嫌な視線も向けられて気分も急落下中である。自分が思っていたより酷い現段階ではもう逃げたいとも思っていた。今だけはガネーシャの所の眷属がいて良かったと感じた。

後ろから見張るように自分たちを見る女性を一瞥し、ため息をはく神であった。

 

──────────────

 

「は~~~~~~~~~~~」

 

「大丈夫ですか?」

 

「何でリオンは平気なんだ?」

 

オラリオに入ってとりあえず安全な場所で気を抜きたかった為シャクティに安全な場所を聞いて今はとある酒場にいる。勿論監視は同伴しているが。各々注文をして今に至る。

 

「まさかここまでとは……」

 

「すまないが今のオラリオは我々の力不足でもあるが治安は悪い。鴨として入国してきた者を狙う輩もいる」

 

「神に悪戯するとかロキとか悪戯好きの奴だけかと思ってたけどなぁ」

 

イラついて神威使って黙らせようとしたのがリューにばれて力技で投げられたのはのは余談である。

 

「とりあえず拠点を探しましょう」

 

今まで黙っていたリューが急にしゃべりだした。

 

「拠点ねぇ……」

 

モグモグと運ばれた飯を食べながらこれからどうするか考え始めた。

拠点は大事である。安心安全はもちろんのことファミリア(零細だけど)の活動拠点の中心の為利便性も重要である。ただもはや安心安全が約束されているところが無いというのが目下の課題である。

 

「もし見つからないようならガネーシャファミリアのホームでも構わないとガネーシャが言っていた」

 

「それはありがたい像神の杖(アンクーシャ)

 

像神の杖(アンクーシャ)とはシャクティの二つ名である。天界の神々のお遊びでレベルアップすると面白可笑しくつけられる。たまにかわいそうと思うほど酷いものもある。

あくまで保護という形なのだろう。こんな零細ファミリアすぐに潰れてしまうだろうという考えだとは思うが今はそれがありがたかった。

 

「しかしガネーシャファミリアにいつまでも迷惑はかけられません。できれば早めに決めてしまいましょう」

 

「もう外の方が安全では?」

 

「却下です」

 

自分の意見は即刻切り捨てられた。意外と容赦の無い眷属である。

 

「外から毎回入るのは面倒です」

 

全く反論はできなかった。正論にはいくら何を言っても切り捨てられるだけである。

 

「少しいいだろうか?」

 

とシャクティがいぶかし気な様子で尋ねてきた。

 

「はい。何でしょうか? 像神の杖(アンクーシャ)?」

 

「シャクティでいい。それで質問なのだが、お前たちは何をしにオラリオに来たのだ?」

 

「……」

 

これ正直に言っても良いの? という視線をリューに送った私は悪くない。

 

「ダンジョンでレベル上げをしに来ただけだよ」

 

無難な答えをしておいた。ここで変に警戒されるのも面倒である。嘘は言ってない嘘は。真の事も言ってないが。

そういうとさらにシャクティが不思議がるように尋ねてきた。

 

「ダンジョンに一人で行くのはやめておいた方がいいと思うぞ? 特にリオンはまだ幼いのではないか?」

 

「それに関しては大丈夫だと思うけどなぁ」

 

リューは普通の子供より大分強い。エルフの里で訓練していた。と聞いていたがたった6歳程度の子供がする戦闘とは思えないほど駆け引きがすごかった。でなければ盗人を退治できる訳はないのだ。それはシャクティも見たはずだが、ほっとけない性分なのだろう。将来あのガネーシャの扱いに苦労しそうだなぁと感じた神であった。

 

「先ほどの手際は見事だったが、力や基本的な能力はまだ未熟だ。それに付け加えるとダンジョンは危険な場所だ。まだこんな歳の子を一人で行かせようなど正気ではないと思うが?」

 

これにも一理ある。ダンジョンが危険なことなんぞこの神は知っている。昔いたころに死亡者が大量にいた。

しかし、リューのスキルを知ってる手前あまりパーティを組むのも得策とも言えない。

そして、そのことをまだあって間もない他のファミリアの眷属に言うのもはばかられた。

 

「……」

 

「特に策が無いなら無暗やたらとダンジョンに潜るのはやめた方がいい」

 

「貴方は昔から変わりませんね」

 

「は?」

 

リューが思わずといった感じにつぶやいた一言に反応を示したシャクティだがそのあとすぐに何でもありませんと言ったリューが追及してくれるなという雰囲気を出していたのでシャクティも追及はしてこなかった。

まあつまるところ

 

「シャクティはお節介なんだな」

 

「は?」

 

シャクティは困惑した。シャクティは自分がお節介だとは思っていなかった。自分の妹の方がお節介である。監視対象からお節介などと言われるなんて思ってなかったので驚いたのである。

 

「じゃあお節介お姉さんや」

 

「おい、誰がお節介お姉さんだ」

 

「まぁまぁ、心配してくれたんだよな自分たちも大変なのにありがとう」

 

「はぁ、貴方も不思議な神だな」

 

何故自分がそんな不名誉なことになったのかわからないが、自分でも天界に居たころより性格は変わったと感じていたからまあいいかということにした。人から見たら不思議な性格なのだろう。よくわからないけれど。

 

「こんなにも人間っぽい神は初めて見た」

 

「私そんなに人間っぽいかなぁ?」

 

「まあな今のオラリオでは貴方のような神の方が少ない」

 

「私の主神大丈夫だろうか?」

 

「オイ、どういうことだ!」

 

こいつら(特に自分の眷属)ひどくないですかねぇ。こちとら人間に怖がられた事の方が多いはずなんだが。

 

「はあ、とりあえずシャクティの言う事を今は聞いておくよ。ダンジョンにはしばらく行かない。それで良いよな? リオン」

 

「……」

 

「分かりました。後シャクティ、そんなに心配しなくとも大丈夫ですよ。私はそこらにいる冒険者よりは強いので」

 

そう自身満々に言うリューと納得できていないシャクティが子供の我儘に困り果てる母のようで微笑ましいと思った事は二人には内緒だ。

それからは拠点探しも兼ねた町の探索に繰り出した。

シャクティの案内の元東西南北の危険エリアや一応安心エリアに目星を付ける。

そしてそれが終わるころには既に日が陰っていた。拠点となりそうな場所が無かった為今日はガネーシャの所にお邪魔する事になった。

 

「ただいま戻りました」

 

「おかえり! お姉ちゃん。大丈夫だった?」

 

「ファミリア内でその言い方はやめろアーディ」

 

そういって奥からシャクテと同じ青い髪をしたリューと同じかそれより年上らしき少女が出てきた。出て来た途端リューがが目を見開いていたがすぐに無表情に戻った。ついでにガネーシャも出て来たので世話になる、と言い来客用の部屋に案内された。

二つのベッドと机といす、クローゼットまで付いていた。

 

「やったぜ、フカフカベッドだ」

 

「子供ですか貴方は」

 

自分の眷属は呆れた様子で旅支度を解いている。

私も風呂入ろうと思い旅支度を解いた。初日から疲れた。

 

「そういえば」

 

といい聞いてみたかった事を聞いてみた。

 

「私まだリューの目的知らないんだけど教えてはくれないのか?」

 

「……」

 

また黙り込んだ。こいつは自分にとってもやましい事なのかしゃべりたがらない。まあそれはいい、喋りたくないこともあるのはわかっている。だが自分も神で一応主神なのだ。たった一人の眷属が抱えている事が気になるのは無理もないだろう。できれば話してほしいがこの調子だとだめだろう。今回もダメか……とあきらめかけた時

 

「……詳細は言えませんが、とある方達を守ることとあるファミリアを壊滅させることです」

 

「お~随分物騒だなぁ」

 

まるでさっきの奴と別人のようになってしまった自分の眷属を少し哀れんだ。ただそれを表には出さないようにはしたが。

 

「じゃあ一つだけ答えろ」

 

一応私は下界では物騒なものを司る神として(本当は違う)復讐者のようになった眷属に聞いた。

 

「その行動に義はあるのか?」

 

「……」

 

沈黙が辺りを支配した。重苦しい空気が立ち込めそういう雰囲気が苦手なこの神はこうなることが分かっていたかがこれだけはハッキリさせたいと慣れないことをした。

その言葉に対して詰まっているのはリューの方だ。いずれにしても言う事にはなってただろうからそれが早まっただけだ。しかし、昔自分がやった行動に義があったと言えば違うだろう。私怨で暴れまわり無実の人も巻き込んだ。今回だってそうなるかもしれない。

___それでも足掻くだけ足掻こうと時間が戻ってきたときに決めた_____

 

「義があるかと言われれば恐らく無いと思います。それでも……」

 

そこで一旦言葉を区切った後恐ろしい程危ういと思うほどまっすぐな意思の籠めた目を向けて自らの眷属はこう言った。

 

「どれほど辛くとも傲慢でも私は変えたいと思ったんです」

 

「……」

 

我が眷属ながら危なっかしい奴だ。主神としては周りに頼れと言うべきなのだろう。一人で抱え込むなというべきなのだろう。でも私は善の神でも無い。それにそれを言うのは私の役目ではない気がした。

 

「分かったよ。話しにくい事話してくれてありがとな」

 

「いえ、今まで黙っていてすみません」

 

「いいっていいって、気にしないよ。すまなかったな、答えにくい質問した」

 

はい、これでおしまいとばかりに手を叩いて、重たい空気を追い払う。せっかくゆっくり休めるのだ、休める時に休む、旅の基本である。だが

 

(おまえにも遠慮とか建前とか取り繕う事なく真に信頼できる仲間ができるといいな)

 

そう考えてしまうこの神も大概甘い神である。

そして、

 

(私はコイツの背中を押していけば良い。それで良いよな)

 

神としてファミリアの主神としてそう決めた神であった。

 

 

 

 




主神の名前いつ出そうかなと考えている作者です。
わかっている方も多いと思います。出来るだけ早く出します。
ガネーシャのところは都市の憲兵としての役割があるためどうでも良いことで追放された主神でも警戒して見張りぐらいはつけると思いシャクティをつけました。まあまあガネーシャとの仲は良い方です。シャクティはまだ団長では無いという設定ですがまぁいずれは団長となり引っ張っていってくれるでしょう。
リューさんの復讐については本人がすごく悔やんでいた描写があった為義は無いと答えてます。しかし、不謹慎ながら作者的には人間らしいと思うし、色々収束したのだから良くね?とも思ったのですがね…。義憤といえば義憤だし。まぁやり過ぎたわけですが今回はどうなるのか?
シャクティが会ったばかりなのに馴れ馴れしく無い?とか心開き過ぎじゃない?とか考えないでください。リューさんは馴染みがあったし、主神は細かいこと気にしないタチなので。シャクティもまだ若かったということで。まぁ大きかったのはリューさんが盗人を捻り上げた事ですが。
今回も読んでいただきありがとうございます。次回があったらまた読んでくれると嬉しいです。


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第二話どうしてこうなったのでしょうbyリュー

ついに拠点決定か!?


「おはようリュー」

 

「おはようございます」

 

 朝の挨拶を自らの主神とかわし今日も今日とて拠点探しをしに準備する。

 朝の鍛錬もしようと起きたはいいものの何故か自分の主神は朝早い。数日数週間程度の付き合いしかないが、この方より早く起きた記憶が無い。本人は旅をしてると眠りが深く短いものになった、というそうだ。まるで傭兵のようだと思ったものだった。

 

「今日も鍛錬するのか?」

 

「はい、できればダンジョンで試したかったのですが」

 

「やめとけやめとけ。シャクティにバレたら怖いぞ。あの手の奴は優しいし信頼できるが怒るとすこぶる怖い奴だ」

 

 本当に昨日あったばかりなのにシャクティの人間性を理解するのも称賛できると思う。前に経験がある分その点に関しては主神よりはよく知っているのでそうですねと返しておいた。

 ちなみに主神はシャクティの事をよくお節介と呼んでいるのでシャクティに『リオン、お前のところの主神の私の呼び名をどうにかしろ』と言われたが良くも悪くも気が強い所があって未だにお節介と呼ばれている。その後シャクティは悪気は無いようだからタチが悪いなとぼやいていた。まあさっきはシャクティと呼んでいたからからかっているだけかもしれないが。

 そう考えている間に里から持ってきた短刀を腰のあたりに装備して白いシャツに短パンという軽装に着替える。

 ガネーシャの方から庭の方で鍛錬してもよいぞ! と言われたので庭の方に出た。

 鍛錬といっても一人しかいないため反復練習が主となる。前はアルヴィス・ルミナというエルフの里の聖樹からできた太刀を使っていたが今回はまだ持っていない為短刀の反復鍛錬をする。

 

「フッ! ハッ! ヤァ!」

 

 フュン、フュン、フュン、と風を切る音が辺りに響く。

 リューの太刀筋はエルフの里の者から教えてもらった技術からオラリオに来てからも輝夜から太刀の使い方や技術、そして実践経験から学んだ技術など多くを学んでいる。

 それを一つ一つ反復しながらできるだけ早く鋭く刀を研ぐように少しずつ正確に反復していく。

 そしてリューの武器は別に体術だけではない。

 

「今は遠き星の空……」

 

 そう前に使っていたリューの十八番の魔法の平行詠唱である。平行詠唱とは簡単に言えば動きながら魔法の詠唱を行うというもので、できる者は移動砲台と言われる。かなり難しい為できる者は限られるが。

 しかし

 

「あっ」

 

 詠唱が途切れた。今その魔法が発動していたらリューの体は吹っ飛んでいた事だろう。まだ魔法が()()()()()()()()()為助かった。

 何故途切れたのか、それはリューがまだ現在の体の動きと頭で考えている動きが合致せず考えていることに体の方が置いて行かれてしまうからである。まだ6歳程度の体では複数の事を一緒にやるのは難しく、結果的にどちらかが疎かになっている。というのが現状であった。

 

「ハァー、ハァー、ハァー」

 

 そして一回平行詠唱をするだけでこの疲れようである。まだ体が出来あがっていない為こうなってしまっている。

 

(まずは持久力をつけるべきですか)

 

 リューは衰えた(体6歳児でそこまでできたら化け物レベル)と落胆した。

 ──────────────────────────────────────

 

「リオン、ごはんの時間だぞー。町に行こうぜ」

 

「はい、今行きます」

 

 主神からのお呼び出しで朝の鍛錬は終了する。現在朝の8時程。丁度朝早い食事処は開く時刻である。

 鍛錬で汗をかいた服を着替えて緑色の外套と羽織る。ちなみにまだ監視は続くらしくシャクティ同伴である。

 今日も三人で行動か、と思っていたが

 

「お姉ちゃんー、私も行く」

 

 シャクティの妹のアーディが入り口で待ち構えていた。

 

「アーディ、遊びでは無いんだぞ。自分の仕事に戻れ」

 

「えー、だっていつも見回りしかさせてくれないんだよ? ならお姉ちゃんと一緒の方が私は楽しいし、監視対象だって一人よりも二人の方が逃げにくくなると思うよ」

 

 そう曇りのない眼で姉であるシャクティを見つめるアーディと頭を抱えてため息を吐くシャクティの姿があった。

 

「別に逃げる事はしないけどな」

 

 当の監視対象はガネーシャファミリアに追われる方が面倒だと思っているのか逃げるつもり全く無く、それどころか拠点を決めるまではガネーシャファミリアにお世話になると決めている。なんとも図太い神様である。

 

「しかし、このままだとアーディが邪魔をして外に出られませんね……神様さえ良ければ同伴させてもよろしいでしょうか?」

 

「私はいいけど。でもシャクティの方がアーディを仕事に戻そうとしてないか?」

 

 呑気に会話しているエルフと神である。

 するとことらに気付いたのかアーディが此方に近づいてきた。

 

「ねえあのさ私も一緒について行っていい?」

 

「いや待て、アー」

 

「うん、いいよ」

 

 シャクティの抗議なんのその神様が許したことでやったーと喜ぶアーディと疲れた様子のシャクティの姉妹がいた。

 

 ──────────────―———──────―

 

 モグモグモグモグ

 

 あれから結局4人で街へ駆り出す事に(シャクティはあきれていたが)なった。

 リューは懐かしいなあと思いながら食事に手を付けた。ちなみにリューと神様は安い定食、シャクティ達姉妹は日替わり定食らしい。お金が無いので致し方ない。ダンジョンに行ければまだマシになるがシャクティに止めれているし監視下の中で上手く誤魔化してダンジョンに潜る方法も無い。今あるお金でどうにかするしか無い、もしヤバそうなら相談しろとシャクティに言われたが、あまり迷惑になるわけにはいかないのでもしもの時はバイトで稼ごうと考えていた。

 その為にも拠点を決定させなけばならないが現在のオラリオでは無理な条件である。

 

「リオン達はごはん食べた後どうするの?」

 

 アーディがそう聞いてきた。一応監視対象を見失った時に際して自分たちの行動を把握しておきたいのだろう。一応アーディもガネーシャファミリアの一員でありしっかりとしている。

 

「とりあえず今日は拠点探しが主かな? だよな? リオン」

 

「はい、そうなりますね」

 

 何故か人前ではリューではなくリオンと呼ぶ主神に対して肯定する。

 

「ちなみにさ、どこに行くのかは目星つけてあるの?」

 

「昨日行ったところから決めようとは思っていますが、なかなか良さそうなところは……」

 

「まぁ無いだろうなぁ、拠点にふさわしいところは」

 

 うーんと全員が黙り込んでしまった。

 

「まあ、仕方ないでしょう。このご時世です。完全に安全と言う場所は少ないでしょう。このままガネーシャファミリアに迷惑を掛けるわけにはいきません」

 

「私は別にいいと思うけど」

 

「アーディだっけか? 、それはダメだ。他のファミリアに入り浸ればこっちにもそっちにも悪影響がある可能性がある。特にそっちは規模が大きいしオラリオでの影響力が大きいのだろう?」

 

 迷惑かける気満々だった神様にも世のご時世は十分理解しており、口ではああ言いながら恩を仇で返すのは癪なのかできるだけ早く問題を解決したい、と言う思いが強いのだろう。

 ちょっと納得いかなかったアーディも理解したのか悶々と考え込んでいるのか黙り込んでしまった。

 

「まあ心配してくれてありがとな。気持ちだけでも嬉しいよ」

 

 とそう言って神様はアーディの頭をポンポンと撫でた。その行動に照れたように笑顔になるアーディがいた。

 その空気のまま各々他愛のない話をしながら食事を楽しんだ。

 

 ────────────────────────────―

 

「さぁ始めるぞ!」

 

「おお──ー」

 

「……おー?」

 

「何故アーディがやる気満々なんだ?」

 

 食事が終わって早速拠点探し開始である。

 何故か自分のファミリアでは無いアーディがやる気満々で眷属であるがノリが悪い(わかっていない)リューという謎軍団ができた。

 基本的にロキやフレイヤそしてガネーシャなどのファミリアによって安全と言われている処から回ることにした。

 まずは北ロキファミリアの本拠地『黄昏の館』があるところである。

 ロキファミリアの本拠地に近いため犯罪を働く者が少なく安全性なら問題は無いが大派閥の近くになる為後々の事を考えてあまり接触は防ぎたいところである。

 まあそれを言っていたらフレイアファミリア(こっちの方が物騒だとは感じる為ロキの方が安全だとは思っている)の所も同様のことが起きて中々決まらないのでいざという時はその事情は無視するという事で拠点を探す。零細ファミリアなので拠点を一つに決めなくても問題無いよーとか主神は仰っていたがそれでも安心感など精神面の安定ができるのでやはり決めるにこした事はない。

 まあ几帳面であるリューと適当でいいという主神の組み合わせの為リューが納得すればすぐ決まる話ではある。

 そして……

 

「ここが一番良くね?」

 

 そう主神が言ったところが一番この時点では安全と言える場所である。

 

「少し心配ですが仕方ありませんね……」

 

 そこは一言で言えば廃屋である。それに対して難色を示す姉妹がいるがリューとその主神がここがいいと言っているので黙っている。ここは北西(西寄り)地区奥にあるもう使われていない一階建て一軒家である。町にも同化しており派手さは無いがリューの前の記憶では被害が比較的少なかった印象があったためリューが難色を示さなかった所である。他の神ならこんな所に拠点を設けないので隠密で他の神にもバレずに行動できるという利点もある。

 

「ねえお姉ちゃん」

 

 しかし、アーディが何かを言いたそうにしながら切り出した。なんだ? とシャクティが聞き返すと

 

「私リオン達のファミリアの所に来てもいい?」

 

「「はあ?」」

 

 と言い出した。これにはシャクティとリューが困惑した。他派閥(しかも大きな)も者がこんな零細ファミリアに何故来るというのか? と言う疑問と我が妹は一体何を言っているんだ? という疑問が浮かんでいる。

 

「あのさ、リオン達もオラリオに来て久しいし、ホームもこんなボロじゃない? だから落ち着くまでは手伝いに来ようかなぁと思って」

 

「おっそれは助かるかも」

 

「でしょでしょ」

 

 もう決まったことかのように話している一人と一柱に置いてきぼりを食らっている二人である。

 

「まぁそんな解せぬみたいな顔するなリオン。せっかく手伝ってくれるって言ってるんだここまで付き合ってもらったんだから我儘くらい聞かないと失礼だぞ?」

 

「いや、確かにそうですが」

 

「シャクティさえ良ければ君の妹を預かってもいいかい?」

 

 シャクティは最後まで唸っていたが最後には三人のお願いで仕方ないなと首を縦に振った。

 そうして拠点探しは幕を閉じたのだった。




アーディがあそこまですぐ仲良くなったのはリューさんの事が気に入った事とリューさんの主神がガネーシャファミリアにいる時にノリが何故かあって仲良くなってます。リューさんはすぐにアーディの手を握ってます。
拠点場所としては豊穣の女主人の少し奥の方です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。次も見ていただけると幸いです。


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第三話 みんなで鍛錬しようよ!byアーディ

続きです。タイトル通りになってません。話の理解はフィーリングでお願いします。
アストレア・レコードの声が付くのが楽しみです。


 リオンとその主神の拠点が決まり、ギルドにいろいろ申請し終わった次の日。

 ガネーシャ様から許可をどうにか貰って一人と一柱と決めた拠点の掃除から始めました。結構汚れていたのでかなり時間が掛かったが夕刻までにはどうにか住めるほどまできれいになった。

 

「こんなもんでいいだろ。住める住める」

 

「最低限ですが、まぁ今日はここらへんでいいでしょう。アーディもありがとうございました」

 

「どういたしまして。役に立ったようで良かったぁ」

 

 皆色々なところを掃除した為頬や腕などの至る所にススがついているが顔は晴れやかである。

 

「それじゃあ皆汚れてるし、お風呂へ行こうか」

 

「そうですね。行きましょうか?」

 

「レッツゴー」

 

 そういえばリオンはエルフなのに共同のお風呂とか大丈夫なのかな? 

 そう疑問が浮かんだがまあいいかと流すことにした。

 

 ────────────────────────────────―

 

「リーオーン―、まだかー?」

 

「あのすみません、私はお風呂は」

 

「ダメだぞ? 早く風呂の中入って来いよ」

 

 この神様鬼畜かな? エルフの慣習知らないのかな? 

 ……いやニヤニヤしてるからからかっているだけだ。ほらリオンが睨んでいるし、顔赤いし……かわいいなぁ。

 ってそうじゃない。今はこのからかっている神様を止めてあげないと本当にリオンがかわいそうだ。

 

「あの、神様? そろそろやめてあげないとリオンが」

 

 バシ──────ーン!!!! 

 

 すごくいい音がして神様の頭に桶が直撃した。

 そしてひっくり返っている神様。それを怒って顔を赤くし倒れている主神を無視してリオンは個室の方で体を洗いに行きました。

 ひっくり返った神様はしっかり回収しておきました。

 その後は不機嫌になったリオンを宥めるので大変だったそうだ。自業自得なんだけどね。

 

 次の日~

 朝方から拠点に置く生活必需品を少ない予算で買いに来た二人。神様は留守番である。

 

「とりあえずは布団とか歯磨きとかかな?」

 

「はい、お金に余裕が無いので本当に最低限だけですが」

 

 結構シビアな金額だったがギリギリ購入できてほっとしたが

 

「そろそろダンジョンに潜らないときついですね」

 

 そうボソッと呟いた言葉に反応した私は間違いってないと思う。

 

「ダメだよ! お姉ちゃんからリオンが勝手にダンジョンに行くことはダメって言われてるじゃん! 危険だし認められないよ!」

 

 それに私だってまだ一人で潜った事無いのに……とかは飲み込んだ。お姉ちゃん過保護で行かせてくれないんだもん。恩恵は貰っているのにまだ駄目だとか言って見回りしかさせてもらってない。それに対しては不満はあれど見回りも大切だとは思っているから複雑なのだが。

 

「アーディ」

 

「?」

 

 と内緒話をするときのように口を寄せて来たので耳を近づけると

 

「バレなけば大丈夫です」

 

「……」

 

 この子すぐに騙されそうな気がする。実の妹にそれを言うのか普通? それだけ信頼してくれてる事は嬉しいけど。

 ん? それじゃあ

 

「ねぇじゃあリオン」

 

「? 何でしょうか」

 

「その事はお姉ちゃんに言わないでおくからさ、私も連れて行ってもらっていい?」

 

 黙り込んでしまった。そして歳に似合わない難しい顔をした。

 

「アーディ」

 

「なあに?」

 

「ダンジョンは危険な場所です」

 

「知ってるよ」

 

 何を今さら言い出すのか。そんな事はとっくの昔に知っている。自分たちのファミリアだってダンジョンで犠牲が出ることがあるのだ。

 

「並大抵の覚悟ではすぐに死にます」

 

「うん、そうだね」

 

「……………………」

 

 また黙り込んじゃった。そんなに一緒に行きたくないにかな? 私と一緒になら上層位ならお姉ちゃんだって認めてくれると思うけどな。

 そう考えているとリューは何かを決意したのかこういいだした。

 

「分かりました。アーディにはもう何を言っても無駄ですね……」

 

「それじゃあ」

 

「しかし、アーディにはこれから私と一緒に戦闘訓練をしてもらいます」

 

「ん?」

 

 いきなりその様なことを言い出した。

 戦闘訓練? リオンと? 何故? 

 

「そして、シャクティからダンジョンに冒険していいという許可をもらいます」

 

「? え??」

 

 お姉ちゃんに? バレないようにダンジョンに潜るっていう話ではなかったっけ? 

 

「アーディ、貴方はガネーシャファミリアに所属してます」

 

「うん、そうだね」

 

「この都市で憲兵と呼ばれていますよね?」

 

「うんそうだけど、どうしたの? 一体?」

 

 リューの言いたいことがイマイチわからないアーディは困惑顔だ。リューの言葉が足りない事が起因しているが、アーディも幼い為致し方ない。

 それに気づいたのかリューが説明し始めた。

 

 曰く、私のファミリアは大派閥で都市での影響力も大きい。そのファミリアがただのリオンのような零細ファミリアと一緒にいるとどちらにとっても悪影響が起きる。いくら仲がよくても曲解してしまう人はいるから、と言う事だった。

 正直あんまり問題あるのかな? とアーディは思ったが、リューからすれば来たばっかりで波風立てるのは避けたい(隠密にしたい事が多いため)、しかしこのままでは生活も危ういし、レベルアップもできない。折角前より早くオラリオに来た意味がない。その為ダンジョンにはできるだけ早く入ってしまいたいのだ。その後は自らのスキルと経験でどうとでもなる。

 だが、アーディが引き下がる雰囲気は無い。しかも昔の経験からアーディが一度決めた事を変えない事は知っている。だからシャクティ(恐らく今なら副団長くらいだろう)にアーディとダンジョンに行くことを認めてもらえればどちらのファミリアにも影響は少なくなる、と考えた。少なくともこのままアーディとダンジョンに潜るよりかはずっといい。

 

「ん? でもなんでそれで戦闘訓練する必要があるの?」

 

「私はアーディの(現在の)戦闘を見たことがありません。急に連携を取れといわれても無茶があります。それにあのシャクティに話し合いだけで解決できる問題でもありません」

 

「リオンにとってお姉ちゃんの印象ってどうなってるの?」

 

 本当にどうなっているのだろう? そこまでお姉ちゃんも鬼畜ではないと思うし、話も通じると思うのだが。

 

「……それに……………………」

 

「えっ? 何?」

 

「いえ、何でもありません。早速明日からで大丈夫ですか?」

 

「うん! 大丈夫だよ」

 

 そう言って今日のリオン達との日々は過ぎていった。

 

 ──────────────────────────────────────

 

「は? それで一緒に戦闘訓練することになったと? マジで?」

 

「はい……………………」

 

 はあ~~~とため息を吐いているのは自らの主神である。夜の本拠でのことだった。

 ステイタス確認の為に背中だけ服から出して主神の目の前にはまぶしい程奇麗な背中がある。針を取り出し親指にプスっと刺して血を滲ませる。神の血(イコルという)によって自らの眷属に恩恵を刻みステイタスを更新することができるのだ。

 

「どうすんだよ。このスキルを十分使えないぞ?」

 

「分かってます。しかし、仕方無いではないですか」

 

「どうだか。へマしたんじゃないの?」

 

 グッと詰まったので図星だなと結論を出し、リューに背中を軽く小突いた。

 

「まあ仕方ない、そろそろお金もやばかったからな。稼げる機会ができたと思えば安いものか」

 

「はいすみません、ネメシス様」

 

「いいよ、お前の人生だ。やりたいようにやればいいさ」

 

 あぁこの主神の元でよかったなぁとしみじみ感じるリューであった。

 

 まぁたまに揶揄ってくるのはやめてほしいけれど

 そんなことを思いながらステイタスの確認をして眠りにつく。

 いつか来る災厄に備えるため小さいファミリアの物語は始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。
リューさんとアーディ親しくなってます。元々アーディは人懐っこそうという作者の独断ですぐ仲良くなってます。リューさんは言わずもがなです。前の経験からです。
さらっと主神の名前出ました。誤解されないように言うと本来義憤の意味だそうです。(よく復讐と言われる)。おぉピッタリかもしれんと思いセレクトしました。
アーディの年齢分かる人教えてください。第一部の時の親しさからリューさんの方に近い年齢かな?と思いちょっとアーディの方が高いとか思いましたが自身が無いので(´;ω;`)でもシャクティとかなり年齢差ある姉妹になっちゃうんですよね……。って第二部で出ましたね……まぁそこまで問題では無いですね。(本文書いているのは第二部前です)
ここまで読んでいただきありがとうございます。


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第四話 眷属が難しい……byネメシス

続きです。だんだんキャラ崩壊酷くなっていきます。


かれこれエルフの少女であるリューと過ごし始めて数か月。

アーディとの戦闘訓練をして何故かシャクティにダンジョン攻略を半ば無理やり認めさせた我が眷属だが(やり方難ありだし詳しく教えてもらえなかったけど)、困ることというか気になることがある。いや別にご飯を作る腕が悉く無い事は問題だが、何故サンドイッチを作っただけで炭化すんの?しかし、今回はそんな事ではない。ふと気付いた事だ。

 

 

コイツ泣かないんだよなあ……………………。

 

そういえば、恥ずかしがった顔とか少しだけど笑う事はあれど(基本難しい顔してる)泣いた事ってあったか?と言う疑問をふと抱いた。まだ幼児位でしっかりした子だなぁ、と思っていたがそれにしても泣かなすぎでは無いか?まるで泣かないと決めてるみたいに泣かなくてこっちは逆に怖いんだけどなぁ。

 

泣くことは大事だと私は考えてる。感情の吐き口になるし逆に泣かないと色々しんどいと思う事があると思う。泣いたら気持ちすっきりすることもある。まあ考え方なんてそれぞれなんだけど。泣く=弱いとか思ってんのかな?と思ったりもした。聞かなかったけど。 

 

そう言えばアーディとの間ではどうしてるんだろう?と思ってリュー本人に聞いてみたら

 

「ただダンジョンを探索してモンスターを倒してるだけですよ?」

 

うん、そんな事知ってんだよ!知りたいのはそこじゃない。楽しいとか面白いとかきついとか無いのか?と聞いても

 

「?え?……」

 

天然かよ、まさかとは思っていたけど天然か……………………。大丈夫かな、私の眷属?普通は楽しいとかやりたい事があるとか思うからダンジョンとかの冒険をしたがると思っていたのは私の勘違いか?確かにコイツの目的はかなり物騒だったし、詳しい事は教えてくれないけど。ほら色々あるじゃんオラリオに来る理由(金儲けとか名声とか)とかさ。今はこんなに治安悪いけどもしかしたら良くなって明るくなるかもしれないと思ってたんだけど

 

ヤバいぞコイツ

 

マジであの時の物騒な目的のためでしかここにきてないぞ、このままだと。確かにそれでも良いんだけどそれだとあまりに悲しいし寂しいじゃんか。娯楽的なの無いぞ。折角アーディとか仲良くなってるのにそれじゃあつまらない。主にこっちが!

たった一人の眷属だしな。ファミリアの主神がどのくらい干渉していいかはわからないが一肌脱ごうと決意した。

 

っとは言っても

 

「リュー、たまにはダンジョンに潜るだけじゃなくて私と遊ぼう!」

 

慣れていない遊びに誘うと

 

「いえ、私はいいです」

 

断られた。

 

「リュー、一緒に買い物行こう!」

 

親睦を深めようと武器を一緒に見ようと誘うと

 

「お金もありませんし、まだ使えるので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

 

といっちょ前に断ってきた。

もうこうなったらと

 

「一緒に寝よう!」

 

「ネメシス様の寝る邪魔になるので遠慮します」

 

これを全部(しかも真剣な)真顔で言いやがった。正直一つ位乗ってくれても……とか思った。こっちのライフもうゼロよ?

 

正直信頼はしてくれていると思う。これは明らか。リュー自体は優しいし義理堅い、この都市にいるアストレアとか前に世話してもらっていたとある処女神とかに近い。まっすぐすぎる所があるが、それもリューの性格であり、いい所だ。困っている人を無視できないという所も美点だ。正直なんでこんないい子が私のファミリアに本気で入ったのか不明だが………。主従関係は悪くないと思う。

 

でも距離があるんだよなぁ。私だけではなく、他人にも。

まだアーディやシャクティとかはまだマシである。ひどいときは相手を背負い投げとかひねり上げるからこっちがヒヤヒヤする。エルフの慣習だとしてもやばいと思う。いつかやり返されそうだぞ、アレ。

自分の過去とか言わないから家族ともすごく仲良しという訳ではないだろう。前に里の事聞こうとしたら渋い顔された。リュミルアの森だと教えてくれたがそれ以外は教えてくれなかった。確かに全部話す必要ないけど少なすぎる。

 

そんなこんなで朝っぱらからダンジョンへ行った眷属見送ってホームで思案していると、そろそろオラリオの神々が集まる神の集会であるデナトゥスが開催されるそうだ。今オラリオ物騒だけどな、一応フレイアとロキそして、ガネーシャのファミリアから護衛がつくらしい。正直憂鬱なんだけどなぁ、休んでいいかな?仮病とか使えないのかな?……………………無理でしたね、そう言えばホームも登録してしまったからすぐにバレると感じたネメシスは憂鬱だが行くことにした。面倒臭いと思いつつでかい溜息を吐いた。

 

そして当日

 

「久しぶりやな、元気やったか?」

 

「ロキか……………………」

 

「おぉえらいテンション低いなぁ」

 

「ただ憂鬱なだけだろう?ただでさえ治安悪いのにわざわざ開く必要あったの?これ」

 

「う~~んせやなぁ、まぁええやんか、かわいい子供の為や」

 

「恥ずかしい名前を面白おかしく付けるだけだろ」

 

「それは言わんお約束や、それに情報交換としての場でもあるんやから文句は言わへん方がええで?」

 

「勝手にやっててよ」

 

正直もう面倒だ。まだ掃除とか洗濯とか終わってないんだけどな、とおもいながら集まった神々の面を見る。前にいた時とちょっと違う顔ぶれだが知り合いもいる。こっちからは接触しないけど。

 

そうしているとガネーシャが出て来た。

 

「よし!では始めるぞ!俺がガネーシャだ!」

 

「「「はやくやれ!」」」

 

神の声がはもった瞬間だった。

 

「ええではデナトゥスを始める。まずは今回から出席している神、ネメシスだ」

 

「どうも」

 

「うむ、テンションが低いぞ!」

 

「私の事はいいので本題へどうぞ」

 

「まぁコイツこんなもんだからはよ始めよかぁ」

 

こうして始まったデナトゥス。ランクアップした子供たちの二つ名を決めたりしていたがまだオラリオに来て日が浅い私がその子供について知っているわけなく傍観していた。つまりはボーっとしていただけである。神ってもの好きだなぁと思いながらぼーっとしていると名前付けがおっわたのか、情報交換に移っていた。

 

「さて二つ名はこの辺でいいな!次はイヴィルスの事だ。この頃というよりゼウス、ヘラのファミリアが黒龍に敗れて以来イヴィルスの活動は激化している」

 

「せやなぁ。前も襲撃されとったし」

 

「うむ!盗みも多発しているさらなる警邏が必要となる」

 

「ガネーシャの所だけで回ってるの?それ」

 

私が質問すると

「それがあまり回っていない!」

 

だろうな。いくら大派閥だと言っても人員なんぞたかが知れてる。それも第一級冒険者なんてロキとかフレイアとかのファミリアしかいない。ほとんど二級か三級だろう。他のファミリアからも見回りする子供たちがいたとしてもこれほど治安悪いと大変だなぁと思う。私の眷属も自分で進んでやってたからなぁ。それで「やり過ぎました」とか言って傷作って帰ってくるからなぁ。今日は……大丈夫だよな?

 

「子供たちも必死になって頑張っている!応援したいが神には見守ることしかできないからな」

 

「せやなぁ、うちらは子供たちが無事に帰ってくるのを祈るしか出来ひんかもしれんなぁ」

 

ロキは……丸くなった。天界にいた頃は悪戯ばかりで手を焼いていたイメージがあった。主に問題起きたらコイツのせいみたいなところがあった。それが自分のファミリアを持っていい方向に変わったようだ。元の悪戯好きなところとか頭の切れ具合は多分変わってないけどな。でなければロキのファミリアがここまで大きくはなってないだろう。

 

「そうねぇ、確かに大変よねぇ」

 

子供たちの本質を見抜くような目をしてバベルから見下ろしている女神、フレイアである。現在都市最強がいるところだ。猛者だったような気がする。それに加えて数多くの第二級以上の冒険者を有している。正直私はフレイア好きになれないんだけど好みの問題なので悪い奴では無いと思う。多分。だよな?まさか他のファミリアにちょっかい出したりしてないよな?まさかな。あの癖はもう無くなったと信じたい。

 

「そう言えば、ネメシスの所もファミリア作ったのでしょう?」

 

……なんでこっちに話を振るんですかね?

 

「ん?うん、ソウデス」

 

「なんで片言やねん」

 

だって探るような目をしてるんだもんあの女神。怖いでしょ。ちょっと不安だなぁ。まぁアイツはまだレベル低いし大丈夫だとは思うんだけど、あの女神の目は侮れない。収集癖が抜けてなさそうだ。しかもここにいる男神全部食べてるからなぁ。まさか女まで手は出さないよな?

 

「フレイアからすれば全然弱小なんだけどなぁ」

 

ぼそっとそう呟いた。

 

「あら?そうかしら?確かに人数も大切だけれど、一人で何人もの敵を返り討ちにしてしまう子供だっているんだもの。それに貴方は天界ではよく人間に罰を下していたから、ファミリアを作るのは意外だったのよ」

 

「あーなるほどやっぱそういうことなのね……」

 

やっぱり天界にいたときのことに起因していた。まぁ役目だったし、ちょっと人間たちの態度が荒くなっていた時期だったから罰を下していただけなんだけどな。そんなに怖いかな?私?

 

「まぁその話はここまでにしよう、とにかくこれからどうするの?みんなで警戒してもここまで被害があるというのはきついものだぞ?」

 

さらっと他の神の言う通りこのままではやはりまずいと思う。神は下界にて神威を使うことはできない。つまりは恩恵を刻んで、ステータスの更新をしてあげることぐらいしかできないのだ。だから冒険者が頑張るしかないのだが、やはり拙い。第一級冒険者が役に立っていない訳ではないが、行動を起こしてからのこちらの行動つまり後手に回る。今大きな襲撃があっても一応の対応ができると私は考えているが、どれほどの犠牲が出るかは分からない。これはロキのところの勇者しだいだが。頭の回転はこのオラリオでトップ指揮官としてもピカイチ。正直勇者の読みにも期待はしている。だが、それだけではもし、読みが外れたときにやばい、もちろん勇者のことだ、考えはいっぱいあるのだろう。だけど何だろう?

 

 

今のままだとなんかやばい気がする

 

 

変な勘が働いてその後の会議はほぼ聞いていなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あーーやっぱりお前は無事に帰ってくることないよなぁ」

 

「すみません、やり過ぎました」

 

「うるせぇ、そう言えばなんでも済むと思ってるだろ?ポンコツ」

 

「ポンコツ?!」

 

そうだポンコツだろ、また厄介事に頭から突っ込みやがって……。何度傷つくってくんな!と言ったら理解するのやら。女の子なのに。綺麗な顔してんのに。いつも外では隠しているけど、致し方ない。人攫いだってあるのだ。用心に越したことはない。エルフはただでさえ容姿が整っているものが多いからなぁ。ってかポンコツに反応する?そこに反応するのかコイツ。不満そうな顔しているがそれは後回しだ。傷の手当てしないとな。

 

消毒と絆創膏を棚から取り出す。今回は腕とか足とかの切り傷が多い為ちょっとほっとした。まぁそれでも問題なのだが。前は……まぁ顔にこさえてきたからびっくりした。

 

「はーい染みるぞー」

 

「あの?ネメシス様自分でできます」

 

「いいのいいの、このくらいしか出来ないんだからやらせろよ」

 

半ば無理やり納得させて椅子に腰掛けさせた。やっぱりまだ小さい。考えてみたら、不思議なもんだ。まだ会って数か月なのに感情移入しているとは。自分がこれほどまで眷属を気にかけるとは思っていなかった。

なんとも不思議なもんだ。としみじみと思うなんて昔は考えなかったもんな。……なんかしゃくだな、ちょっと意地悪しよう。そして、消毒液をたっぷりつけて傷口に塗りたくった。ちょっと痛がってんな。

 

なんとも不器用な神である。素直に大切だと言えばいいのに。と周りに他の神がいたらほぼ全柱そう思うだろう。

慣れていないから仕方ないと言われればそれまでだが。

 

「ネメシス様、怒ってますか?」

 

「ん?ああまぁ眷属が全然言う事聞いてくれないからな。もうちょっと聞いてほしいとは思ってるよ。ねぇリュー?」

 

怒ってらっしゃる、そう感じたリューだったがどうすれば良いかわからず黙り込んだ。

その様子を察したネメシスは深い息をふぅぅぅぅぅぅぅと吐いた。もうこのポンコツが意思を曲げる事はないのかもしれないと末恐ろしい事も頭に入れた。しかし、ファミリアの子供の背中は主神が押してあげるもんだ、たとえどんな道行きになるとしても。

 

 

答えを教えてしまってはつまらない、子供たちの道は子供たちが決めることだ。私たち神はその道行きを見守るだけだ。少なくとも私はそれしかできない。だから

 

 

「思いっきり楽しめよ!」

 

「?」

 

こう言うしかなかった。そして、いつか教えろよ?お前の人生はどうだったのかを。そしてその顔が満面の笑顔だったらすごく嬉しいなぁと思った。

 

不思議そうな顔をした眷属と満足した顔をした主神がいた

 




読んでいただきありがとうございます。
シャクティに半ば無理やり上層までダンジョンに潜っていいという許可をもらっています。朝から夕方までリューさんとアーディで潜っています。本当は戦わせて認めさせようかな?という事も考えましたがシャクティにボロボロにされると思いやめました。その代わりといってはなんですがアーディとリューさんのコンビネーションが上がりました。シャクティは凄く渋い顔をしてました。
ネメシスは他の神様たちに対しては大体こんな感じです。考える頭が弱い自分が作戦会議とか参加していいの?とか思ってます。歴史的にも最近とか言われてるので。でも結構現実を見ていると思うのではないかと思います。しかし、作者が馬鹿なのでどうしようもなくなってます。すみません。
長いあとがきを読んでくださりありがとうございます。次話も読んでくれると嬉しいです。
それではまた。


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第五話 眷属の日常

視点がいり乱れて読みにくくなっております。
それでも見ていただける方はどうぞ。


 ネメシスを主神に構えるネメシスファミリア。

 団員一人という零細ファミリアであり、一癖ある主神とエルフの少女が主と言うか全てだ。

 そんなファミリア具体的に何をしているかと言ったら、ほぼ探索である。

 オラリオにあるダンジョンに潜ってお金稼ぎや強くなるためにモンスターを倒す。簡単に言うとこんな感じだ。

 治安が悪いオラリオなので実際はもっと複雑化している。ダンジョン内でのパスパレードとか酷いもんである。闇派閥もいるからさらに状況が悪化する。死亡者も多発していて、せめて治安が良くなるまでとは言っているがギルドの豚からも圧力が掛かり結局あんまり変わらない。悪循環である。まぁ豚が黙ればいいのだが、ダンジョンを管理しているのはギルドなのでこっちも協力しないといけない。バカバカしいがどうにもならないのだ。

 

 まぁ詰まるところダンジョンがさらに危険度が上がった訳ではあるのだが。それを冒険するのが冒険者である。

 

 さぁ今日も今日とてダンジョンに潜ろうとしているリューとアーディだが、今回は秘密裏に進めていることがあった。

 

 それは上層エリア五階層の突破である。

 

 流石に何日も何日もずっと同じところをグルグルグルグル回っていたらいくら我慢強くても飽きる。というか飽きた。その為二人はちょっと頑張ってシャクティが決めた5階層からちょっと下の六から七階層辺りを目指すことにした。結局シャクティの事は裏切っているがバレなきゃいいのだ。まだ幼い二人である。

 この日のためにポーション類や武器などの手入れもこまめにやっていた。ヤバそうだったら流石に逃げるが、行けそうならそこら辺で経験値稼ぎである。なおネメシスも何か張り切っているなぁぐらいしか知らない。うまく隠してきた二人であった。

 

「よし、行きましょうか、アーディ」

 

「うん! 行こう!」

 

 レッツゴーとダンジョンに向かった二人であった。

 

 ダンジョンには上層、中層、下層、深層などに分かれている。詳細は省くがダンジョン内にもボス的なポジションである階層主がおり、逆に全くモンスターの発生しない安全地帯もある。

 そのようなダンジョンではタカを括っているとすぐにやられるので二人は慎重に慎重行動していた。

 

 常に周りに気を配りモンスターだけではなく人の気配も感じ取っていた。特にリューはこのような事は朝飯前である。何せ前はお尋ね者であった。アーディが疲れるからリューが基本的な気配を感じ取って進んでいく。このまま進めば予定より早くに5階層を超えられる。

 

 まぁダンジョンではイレギュラーだらけなのだが。

 

 ザシュッ! バギッ、

 

 そう音を立ててアーディはゴブリンを倒した。自分が五体倒しているその間にもリューはもうゴブリンの群れを蹴散らしていた。正直もう差が開いている気がする。そんなに年齢変わらないし、オラリオに来たのは私の方が早いはずなんだけどなぁ。と疑問に思うアーディだが年二桁いってないのにゴブリンに対応できていたら十分化け物である。リューが規格外なだけで、アーディもかなりの使い手である。

 

「リオンはすごいなぁ」

 

「? いえ、アーディも見事な剣捌きだ。きっともっと強くなります」

 

「ありがとう」

 

 リオンのこういうとこは無意識なんだろうなぁ。何だろう信頼が厚いというか掛け値なしの賞賛というかなんというか。こそばゆいものがある。

 

「ここら辺はもう出ませんね。では休憩した後早速六階層に行きます」

 

「いよいよだね」

 

 ゴクリと唾を飲む音が妙に大きく聞こえた。それだけ緊張しているという事だ。それを察したリューが

 

「アーディ、無理していつも以上に頑張ろうとしないで下さい」

 

「ん? なんで?」

 

「そう気を張っているといつもより疲れるのが早くなりますし、何より動きが硬くなる。私も経験がありますから。頑張ろうとするのは良い事ですが、肩の力を抜いてください。大丈夫です、いつもの調子なら次の階層も抜けられます」

 

「……うん、分かった」

 

 経験ってなんの? とか思ったけど何も言わないことにした。今の言葉のおかげで余分な力が抜けた気がする。何かリオンはこう断言するんだよなぁ。それが安心するから不思議だ。まるで歴戦の戦士みたい。

 まぁ間違ってはいない予想を繰り広げているアーディであった。

 

「よっし! 行こう」

 

「はい!」

 

 そう言って下って行った二人をとある冒険者が見ていた。

 

「あんな子供がダンジョン内に何でいるんだ?」

 

 エルフ特有の長い耳と緑色の綺麗な長髪を後ろに束ねた。エルフの王族、リヴェリア・リヨス・アールヴ、二つ名は九魔姫(ナイン・ヘル)。その名の通り多種多様な魔法を用いることができる都市最強の魔導師と謳われている人物だ。

 

「さぁ分からん。だが一人は儂どっかで見たことあるぞ?」

 

 顔の半分を覆う髭を持つドワーフの男である。ドワーフの戦士であるガレス・ランドロック、二つ名は重傑(エルガルム)。その名の通りドワーフらしく力と耐久に優れた冒険者だ。

 

「ガネーシャファミリアのシャクティの妹のアーディだね」

 

 少年のような顔立ちをした好青年。小人族の復興を願いに掲げるフィン・ティムナ、二つ名は勇者(ブレイバー)勇者。小柄で子供みたいだが、指揮官としの指揮能力やもはや予知と言われるまで物事の奥深くまで考えている。戦闘能力も申し分ない。

 

「おお、そうじゃそうじゃ」

 

 そう、ロキファミリアの最高幹部である。

 では何故いるのか。

 それはダンジョンで怪しげな行動をしている奴がいるから調べてこい、ついでにダンジョン内の治安を見てきてくれとギルドからの強制任務である。正直もっと他の方に集中したい。遠征とか。しかし、強制なので行くしかない。幸いこの3人ならいくら強力な敵が来てもどうにかなるだろうという事でこんな戦力の高いチームができあがってしまった。

 

 まぁ戦力があることに越した事は無いし、この3人の連携はオラリオ随一だから、この3人で解決できないとなったらもうお手上げである。ギルドも必死である。

 

「うーんでも僕でも見た事ないなぁあの覆面の子はね」

 

「儂もじゃ、誰じゃ? あの覆面の子は?」

 

「耳がとんがっているのが見えたから恐らく同胞だ。というかそんなことよりだ。何故あのような年端の行かない子供たちがダンジョンにいるかだ。何故主神は止めていない」

 

 主神の顔が見てみたいと零すリヴェリアである。その頃主神は薄寒さとくしゃみをこさえていることだろう。何か凍らされそうだとか思っているに違いない。

 

「さぁな色々あるんじゃろうて、なんじゃ他派閥の心配か? リヴェリア?」

 

「他派閥だろうが何だろうが、あのような子供をこんなところに来させていい訳ではない。少なくとももう少し待つべきだ」

 

「まぁリヴェリア、落ち着こう。多分だけれどあの子たちの独断ではないかな? ガネーシャやアーディの姉のシャクティがそう簡単に認めるはずはないと思うよ」

 

「しかし」

 

「そこまで気になるならちょっと様子を見て行こうか。何、もしかしたらターゲットが釣れるかもしれない。それに治安も見てこいとのことだからね。ちょうど良い」

 

 親指が疼いているというフィンに首を縦に振るリヴェリアと、少しため息をついたドワーフがいた。そうして二人に気づかれないように付いていくことに決めた3人であった。

 

 その頃リュー&アーディ

 

「やぁ! ハッ! てやぁぁぁぁ!」

 

 だんっ! ザシュッ! バン! という音を立ててモンスターを倒していく。1階層下に行ったくらいだがモンスターの生まれる速度は上よりやはり早い。二人掛かりでコバルトやゴブリンを蹴散らしていく。

 

(凄い、リオンまだ早くなるんだ)

 

 アーディはただただ驚いていた。何せ5階層の戦闘よりもリューの速さが上がっているし正確に魔石部分を壊していく。正確無慈悲と言えるほどだ。アーディも頑張って倒しているがまだそこまでには達してはいない。

 

「そろそろですか」

 

「えっ? 何が」

 

 コバルトとゴブリンを蹴散らした辺りからリューがほぞっと何か言っていた。必死すぎて何も聞こえなかったけどそろそろって? 

 

「アーディちょっと強敵がきます。いつものようにお願いします!」

 

「うっうん! 分かったよ!」

 

 気合を入れ直す。リューがそこまで言うのなら凄い奴が来る。そう確信していた。何せずっと二人でダンジョンに潜ってきたのだ。今更疑う余地もない。

 

 そして壁から影が生まれた。

 

「えっ! 何あれ?」

 

「アーディ、落ち着いて、あれはモンスターの一種です。一見影のように見えますがしっかり魔石部分もあります。いつものように動きを見て冷静に対処してください」

 

「了解! リオン!」

 

 そう言うことならとまずは頭の方に剣を突き刺す。手応えはあったが恐らくかすっただけだ。すぐに剣を引き、距離を取る。チラッとリューの方に目を移すと速さで翻弄して魔石を一突きだ。流石! リオンとか思ったが影がその爪で攻撃してきたので前転して避ける。ちょっと腕にかすったなぁ。ピリッとした。

 

「ふっ!」

 

 そして影の後ろに周り精一杯の力で影の体を縦に切り裂いた。よし! 次と標的を移す。そうしているうちにあらかた倒したのか影が居なくなっていた。必死すぎて見えてなかった。

 

「アーディ、お疲れ様でした。良い動きでした」

 

「……ふぅ、ふふん、でしよ! でもリオンすごいねまだ速くなるんだもん」

 

「まぁ速さは取り柄の一つですからね」

 

「うふふ、そうだね!」

 

 そう言っているとリオンが包帯を取り出して私の腕に巻いた。

 

「怪我をしています、応急措置ですが」

 

「ありがとう! リオン」

 

 忘れてた。というかリオンは無傷かぁやっぱ凄いなぁ。

 

「まぁ大丈夫ではないか?」

 

「あの歳で何であんな戦闘慣れているんだ?」

 

「うん、駆け引きも仲間のカバーもうまかったね」

 

 そう話しているのはロキファミリアの幹部3人である。戦闘の一部始終を見ていた3人の感想がこれだ。アーディの方はまだ改善点はあるが六階層くらいなら潜れるくらいの戦闘能力はある。

 

 覆面のエルフの方はすごく駆け引きも上手で、仲間のカバーもうまい。正直この子がいなければアーディの傷もあの程度ではなかっただろう。さりげなくアーディに向かって行ったモンスターを蹴散らしていたり、狙いやすくしていたりととにかく歳の割には色々うますぎるとしかいえなかった。

 

「あぁしかし、エルフの里にあんな戦闘民族みたいな一族は居なかったはずなのだがな?」

 

「まぁ外から来た場合もあるじゃろう?」

 

「二人共雑談はここまでだ何か来る」

 

 その瞬間ダンジョンの地面が揺れた。

 いや、正しくは何かを生んだ。

 

「えっ何?!」

 

「落ち着いて!」

 

 そうして揺れが治まった時壁から無数のモンスターが発生した。

 

 コロシアムである。

 モンスターが無尽蔵に生まれる。いわばモンスターのごった煮状態。

 見たものから殺していくいわば殺し合いの場。それがコロシアムである。

 

「おいおい、ここは六階層だそ? 何故コロシアムが発生しているんだ」

 

「ダンジョンだからね、イレギュラーぐらい起こって当然だけどこれはおかしいね?」

 

「とにかくあの二人を守る、詠唱に入るぞ!」

 

 そうして詠唱に入るリヴェリア。その間に飛び出していたガレスは二人のもとに駆け寄る。フィンはリヴェリアに敵が行かないように足止め。六階層くらいのモンスターなら素手でも事足りる。

 

「おい! 大丈夫か?」

 

「えっ?! ガレスのおじちゃん」

 

「おじ……まぁ良いわい、そんなことよりここから逃げるぞ! お前たちではすぐにモンスターに殺されるわい」

 

「だよね! 行こうリオン?」

 

「……」

 

 リューはその場から動かない。アーディが腕を引っ張ってもびくともしない。

 

「どうしたの? リオン?」

 

「おい! そこのエルフの子供早くせんか!」

 

「……来る」

 

「えっ?」

 

 そして、壁から何か生まれた。身体中に茶色の毛が生えて目が赤い。そして、頭にツノがある、そうミノタウロスだ。

 

 そして、さらに

 

 緑色のモンスターが生まれた。芋虫みたいな体に赤い模様や黄色の模様が入った見たことも無いモンスターだった。

 




読んでいただきありがとうございます。
ソード・オラトリアのあの人がいつ頃からいたのか良く分かっていませんが、オラリオ暗黒期の頃には(死の七日間の頃)もういてレベルもある程度あったのでこの頃にはもういたのではないか?という作者の独断です。それでも芋虫がいるかどうかは五分五分ですが。


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第六話 危機一髪by冒険者

お気に入り登録などありがとうございます。タイトル詐欺っぽくなってしまいました。もうオリジナル感があります。原作中心でやりたいんですけど難しいですね。書ける方尊敬します。それではどうぞ


 芋虫状のモンスターが発生する、6階層。それに加えて本来ならいないはずのミノタウロスやほかのモンスター達が大量発生する闘技場(コロシアム)。今真っただ中そこにいる魔物を一掃している五名の姿があった。レベル4三人とまだランクアップしていない2人である。

 

 第2級冒険者3人がいる時点でそれほど苦労はしないんだが。

 

「詠唱そろそろ終わるぞ、ガレス!」

 

「よし、そこの子供らあのエルフの魔法陣まで下がれ!」

 

「「はい!」」

 

 そう言ってフィンの合図で後退した。

 現在突如とっして発生した闘技場に少し四苦八苦していた。勿論5人が頑張っているおかげでモンスターがほかの領域に行く事は無い。しかし、頭を悩ましているのはそれでは無い。

 

 芋虫モンスターが問題である。

 数自体は他の雑魚モンスターの方が圧倒的に多い。しかし、コイツ倒した後が問題なのである。ロキのファミリア幹部が積極的に倒した後、溶解液を吐き出すのである。かといってほっとくと口からその液を吐き出す。炎系統の魔法で応戦すると爆発するかもしれない、でも物理武器で攻撃すると武器が液によって溶けた。だからリヴェリアの氷系の魔法で凍らせることにした。

 

「ウィン・フィンブルヴェトル!」

 

 辺りに吹雪が吹き荒れる。あっという間に全モンスターが凍り付く。例のモンスターも沈黙した。

 

「よし! 二人はここを離脱してくれ、ここは僕たちが処理してく。リヴェリア、魔法でここの道を脱出後に塞げ!」

 

「あぁ、分かった」

 

「分かりました、リオン行こう」

 

「えぇ、助けていただいてありがとうございました」

 

 そう言ってアーディとリューは戦線離脱、フィンら三人は少し遅れて離脱しリヴェリアの魔法『レア・ラーヴァテイン』で焼き払い通じる道を塞ぐ。ついでにモンスターの頭上の天井も落とす。

 

「ギィィァァァァ」

 

 と絶叫が響いた後絶命していった。

 

「ふぅ、これで大丈夫そうだ」

 

「すみません、危険な所を助けていただいてありがとうございます」

 

 ふぅと息を吐いたフィンに対して、お礼を言うアーディ。

 

「いや、無事でよかったよ」

 

 そうやってホッとそていると一人だけ納得いかない表情をした者がいた。リヴェリアだ。

 

「アーディとリオン? だったか? 少しいいか?」

 

「? 何ですか?」

 

「お前たちはまだダンジョンに潜るには幼いと思うのだが、主神の許可は取っているのか?」

 

 そうリヴェリアはこの二人の事で疑問に思っていたのだ。同胞のリオンについてはわからないが、ガネーシャファミリアのアーディはあの主神のことだからもう少し経ってから許可をだすと思っていたのだ。まぁこちらも良くは知らないが。

 

「許可は貰ってますよ。安心してください、無茶はしていません。リヴェリア様」

 

「同じ冒険者だ。敬称は不要だぞ」

 

「そういう訳にはいきません」

 

「はぁ~、まぁいい。そうか」

 

「リヴェリア、お主母親のようになっているぞ」

 

「誰が母親だ。私は別に……」

 

 と考えたところでふとここで否定しても意味なくない? という考えになった。何か己の主神からママと呼ばれる未来を幻視して首を左右に振って思考を戻した。

 

「まぁまぁ、無事だったのだから良かったよ、二人だけでここより奥には行かない事だ。ダンジョンはイレギュラーだらけだ。二人では対処しきれない事もある。今回みたいな事も起こりうる可能性もあるからね」

 

「はーい」

 

「それでは私たちはこれで失礼します。ありがとうございました」

 

「あぁ、気を付けてね」

 

 そう言って二組は分かれていった。

 

 それでこの二人がさらなる下に行くことをやめるか? と言ったらNo(特にリューは)なのだが、そんな事あったばかりの三人はわかるはずもなくこの後と言ったら

 

「七階層は今日はやめておきます」

 

「そうだね。疲れたし、早めに今日は上がろうか」

 

 そう言って今回は素直にダンジョンから出た二人である。

 

 ────────────———―

 

 現在午後三時という微妙な時間である。いつもなら夕刻まで潜っている二人だがあのイレギュラーのせいで早めに上がってきてドロップアイテムの換金も終わった。結果としてはその歳で稼ぎすぎというほど稼いだ。普段よりもかなり多い。これなら新しい武器も買えるだろう。エリクサーは難しいかもしれないけど。

 

「暇になっちゃったね」

 

「仕方ありません。集中力が低下した状態でのダンジョン探索の方が危険です」

 

 

 まぁそうなんだけどね。今日はもう色々疲れたけど今寝ると夜寝れなくなるから、パトロールと称して毎中をプラプラしているだけである。まぁ歩いているだけでお金取られそうになる。さっきから盗みを働く不届き者が数人いたが全員地面を舐めることになった。(主にリューがぶっ飛ばした)

 

「はぁ、碌に休めもしませんね……」

 

「今ファミリアの人に受け渡してきたよ。でもリオン吹き飛ばしすぎだよ……。相手の人だって何か事情ががありそうだったよ?」

 

「アーディは本当に変わりませんね……」

 

「? どういう事??」

 

「いえこちらの話です。気にしないでください。確かにやりすぎましたね」

 

「そうだよ。今度は気を付けてね!」

 

 少し反省したリューである。そして、昔から変わらないアーディにほっとした。そう言えば前にも盗みを働いた人を逃がしたというか不問にしていた事があったなぁとしみじみ思った。それを思い出すとあの後の記憶が鮮明に思い出しそうなので無理やりその思考を終わらせる。ちょっと思い出して泣きそうになっていたのは秘密だ。

 

(これでは輝夜にまた青二才と呼ばれてしまいますね)

 

 会うかどうかもわからないけど。と深い思考に沈んでいた。

 

「おーい、リオン? おーい、戻ってきてー」

 

「あっすみません。考え事をしてました」

 

「しっかりしてよ~。でさこれから買い物行かない?」

 

「?」

 

 いやいつの間にその様な話に? しかも買い物ってどこにいくのだろう? そうして混乱しているとアーディは私の手を握りバベルの方に引っ張っていった。半ばアーディにリューが引きずられている状況であるとも言う。

 

「ちょっとアーディ! 待ってください。まだいいとは言ってないです」

 

「良いの良いの早く行こう!」

 

 全然話を聞いてくれない。というか聞く気あります?! 

 リューのステイタスならアーディを振り払う事もできるが、それをしない。リューも満更ではないのだ。前はあまりできなかったこういう事をしても罰はあたらるまい。それにアーディがここまで乗り気なのに断るのも気が引けた。少し微笑んでいるのは本人も気づかなかった。

 

「うわぁやっぱでかいなぁ」

 

「えぇそうですね。ところでどこに行くんですか?」

 

「え? 特に考えてないよ?」

 

「……ん?」

 

「たまにはこういうのもいいと思うよ! ほらほらヘファイストスファミリアの武器とかさディアンケヒトファミリアとかの回復薬みたりしてさ。折角暇なんだしさ、少しくらいみていこうよ!」

 

「えぇ……」

 

「もうそんな顔せずにさ! 行こ行こ!」

 

 微妙な顔をするリューをまた引っ張られて連行していくアーディの姿があったとさ。

 ちなみにその後アーディは武器を見たりして目を輝かせ、リューはそのアーディを見て楽しそうに笑いながら自分も武器を見て目を輝かせていた。

 その二人の事を見て何人かのファミリアの団員が色々な商品を値引きしてくれた。

 

 ──────────────────────────────

「色々くれましたね……なんか申し訳ないです」

 

「まぁいいんじゃない? 折角の好意に甘えちゃお? それに私たちがあそこの人たちの物を買えば恩返しにもなると思うよ!」

 

「それもそうですが」

 

「もぉ、リオンは難しい事考えすぎだよ」

 

 ちなみにあまりに値引きをしてくるので半分逃げてきた。稼ぎの半分は使ってしまったがそれでも向こう数日はどうにかなる金額はある。値引き様様である。

 その頃には帰る時間に丁度良くなっていたので二人はいつも通りに帰ることにした。

 

「じゃあね~また明日ね~」

 

「はい、また明日」

 

 手を振って別れた二人はそれぞれのホームに戻ってきた。

 

 ──────────────────────────―

 

「さぁ説明してもらおうか? アーディ?」

 

「……はい」

 

 なおガネーシャファミリアについた途端にアーディの帰りを待っていたらしきシャクティに今回の事は筒抜けだったらしくこっぴどく怒られて危うくダンジョン禁止令が出そうになった。

 アーディはもう姉は怒らせまいと覚悟した。怖い怖い。

 

「あっ明日リオンを連れてここに来るように」

 

「えっ?」

 

「あいつも共犯だろう?」

 

 ……………………。

 ヤバい明日リオンがお姉ちゃんに私以上に怒られる未来が見える。まぁ今のアーディにはどうしようもない事である。

 

 次の日何故かまた怒られたアーディとそれよりさらに怒られた(主神からも怒られたから)リューの疲れた姿があった。

 

「でも何でバレたの? お姉ちゃん」

 

九魔姫(ナイン・ヘル)から報告を受けたからだ」

 

「なるほど」

 

「もうこんな事してくれるなよ? 命がいくつあっても足りんからな」

 

 そう釘を刺された二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んでくださりありがとうございます。
アーディがちょっと強引ですがこれも作者の独断と偏見です。まぁ幼いということで許してください。
値引きしてくれたのは顧客になる可能性があったというのとただ単にあの二人が純粋に武器や防具、回復薬などを楽しくそして、評価してくれたからです。こういう子たちには値引きしたくなります。あくまで個人的な意見です。
ロキファミリアの幹部3人第一部時点でレベル5だったのでレベル4位だと思ってレベル4にしています。

ここまで読んでくださりありがとうございます。次回もみていただけると嬉しいです。


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第七話 ステータス更新&レベルアップ

ここまで読んでくださりありがとうございます。
今日はついにリューさんの〇○○が見れるかもしれません。
それではどうぞ


 二人がそれぞれ怒られてから早数日。

 その間にも二人はダンジョンに潜っていた。あの日からシャクティが監視として一緒にダンジョンに探索に出た日もあったが、二人の連携と戦闘と索敵能力を見て、第8階層まで認めてくれた。シャクティ本人からすればどうやって数か月でレベル1がここまでいけるんだ? と疑問を持たれた。アーディのスキルやステータスは姉であるシャクティも知っているが、リューのスキルなどは知らない為レベルに似合わない強さに気づいてはいなかった。駆け引きがうまく、戦闘慣れしすぎているという認識しか持っていないためはっきりとした実力は分かっていなかった。只者ではない程度に思ってはいたが。何らかのレアスキルを所持しているのか? とも思ったが他派閥の人間には教えるはずもない。それにそういうやつは良く神々の玩具にされやすい。流石にそれはかわいそうだ。知らない仲ではないわけだし。だからこれは自分の胸の内にしまっておこうと決めた。

 

 ────────────────────―

 

「さぁステータスの更新するぞー!」

 

「お願いします」

 

 そう言って神様と寝室で寝る前にステータス更新がリューの日課である。……怒られてから何日間はネメシスも無理させないように更新しないときはあり、リューが「もうしない」と謝ったことで事なきを得た。

 

 背中を出してステータスの更新を行う。マークは天秤と神罰を下すときの剣である。何故か炎も描かれている。

 

「う~~~~ん、にしてもこれはヤバいかもなぁ」

 

「? どうしてですか」

 

「いや、もうレベル2に()()()()()()してる事隠してる訳だけどさ、もうリューはレベル3くらいにランクアップすることができるんだよねぇ」

 

 そうネメシスがここまで困っているのは己の眷属の急成長である。神は元々天界が暇になったから娯楽を求めて制約あれど下界に降りてきた。

 そこでファミリアなどを作り始めて現在に至る訳だ。

 まぁつまり面白そうなネタがあるとこぞって玩具にしたがる訳で……。

 

「やっぱりまだランクアップは見送りだし、この事は隠す他ないよなぁ」

 

 面倒ごとには関わらないほうが身のためである。将来自分の眷属がその厄介ごとに片っ端から突っ込むことになるなんてこの頃のネメシスはまだ知らない。まぁ問題はコイツ自身のスキルの訳である。

 そう思って初めて眷属のランクアップをしたときの事を思い出した。

 

 一言で言うと凄かったとしか言えない。

 恩恵刻んで二か月と半月でステータスがカンストしていた。その頃はダンジョンに潜っていたとは言え6歳でランクアップとか神々の玩具になるのと同義である。だからせめて1~2年程はレベルを誤魔化す事にした。しかもオラリオは面倒な神々が多くいる為この判断が正しい。どうせこんな零細ファミリアに対して警戒するような者もいないと判断したという事もあった。しかしそれから三か月も経ってないのにステータス限界突破してる。どうしよう。困ったな……。

 それに加えて私リューのスキルの表記分からないのあるんだよなぁ。

 スキルなどは神聖文字で書かれており、神聖文字を学んでいない奴らには読めない。神々は普通に読めるが。しかし我が眷属のスキルの一部が私には読めなかった。いや分からなかったと言った方が適している。だって見た事ないんだもん。あんな形の文字、旅していた頃にも見た事が無かったから暗号かな? とも思ったが尚更分からなかった。まぁそのままコピーして渡したんだけど、どうやらリューには読めているのか特に何も言ってこなかった。一回教えてと頼んだけど「大した事書いてないですよ」とか言われて教えてくれなかった。神が読めない文字で書いてある時点で大したことなんだけどなぁ。

 まぁそんなこんなで今に至るわけだが。

 

「何かすみません」

 

「ん? 別にお前のせいではないし、前みたいに約定を破るみたいな事しなければわたしは見守るだけだから思いっきりやればいいさ。神々の事はどうにかするからさ」

 

 そう言って今回もステータスの伸びが凄い眷属にステータスをコピーした紙を渡す。俊敏だけ他と比べて伸びが凄かったなぁと思った。

 

 リュー・リオン

 

 Lv 2

 

 力:S978

 耐久:A890

 器用:SS1099

 俊敏:SSS1858

 魔力:S956

【発展アビリティ】

 耐異常G

 

<魔法>

 ???????? ド

 ? 、? の???? 撃? 法。タ?? ・???? 発動?? 使用?? 。

 詠?? 

【今???? の? 。?? の? 天?? む?? の星? 。? か? 我? 声に応じ、? 一度??? 加護? 。汝? 見??? 者?? の?? を。来? 、さすらう? 、?? の旅人。? を渡??? を駆け、何? よりも???? 。?? の光を?? し??? て】

 

 ??? ヒ? ル

 ??? 法。??? ない。?? 補正?? 。? イ?????? 発動? に???? 。

 詠?? 

【今???? の歌。懐?? き生? の? べ。? を求め? 者? 、ど?? 癒しの???】

 

 

『スキル』

【??者】(?? ム・トラ??)

 そのまま?? を戻ってきている。

 ?? のある?? についてのステータス大幅上昇。

 なお?? していない見聞きした?? についても????? 度合いにより全ステータスに補正がかかる。

 一人のみの時に任意で発動。複数人いる場合(パーティを組んでいたりする場合)は発動できない。

 ?? 保持??????? や?? につ??? このス?? 発動?????? 。(【????】、【????】、【????】等々)

 なお?????? 度??? を? る、本???? した?? でこ? ス?? は?? する。? た、????? し、?? と?? を????? がで??? 。

【正義妖精】(ライト・アベンジャー)

 闇派閥や悪行に対する戦闘の際のステータスや経験値に補正がかかる。相手のレベルや悪行の質や数に依存。

 精神状態に左右される。負の感情の方が補正がかかる。

 

 読めるのは本当に一部だけである。ネメシスは相変わらず自分には読めんと落胆した。特に魔法の欄とスキルの欄はほとんど読めない。唯一読めるのはスキルの一つだけである。何じゃこれ? と最初は意味もわからずに眷属の背中を思いっきり叩いた事は余談である。

 

「相変わらず私には読めないんだよなぁ」

 

 ボソっと愚痴を零す。ネメシスであった。

 

 

 一方リューはほとんどの内容を読めているので問題はない。それに前にはなかった成長補正のスキルのおかげでかなりのスピードで成長できている。普通にやれば一年から二年の期間を要するレベル2までの壁をたったその半分以下でランクアップ出来たことがスキルの凄さを示しているであろう。まぁクラネルさんの事もあるのだが。今回はご助力することは叶わなそうだ、と少し感慨に浸った。それに目立つ訳にもいかない為この事は私とネメシス様との約束である。正直神様にもあまりバレたくは無い物なのだが、ステータス更新のためだ。どうしようもない。

 

(このままいけば大抗争辺りではレベル6に届くかもしれないが……)

 

 そうは問屋が卸さないだろうなぁと思うリューであった。何故ならダンジョンに潜らないといけないのに人の目を気にしてあまり奥に行けていない。前に闘技場遭遇したが、ロキファミリアの幹部らによって事なきを得た。その時は怪しまれないように能力を悟らせる事はしなかったが、勘が良ければ気付くかもしれない。ミノタウロス数体をぶっ飛ばした事もあったから。それにここ数日たまにシャクティとも探索をともにしている。

 

 どうしたものか……。

 

 そう考え込んだ。この頃こんな風に考え込むことが増えたなぁと感じた。

 

(ゼウス、ヘラファミリアの生き残りの事もある。高い能力を持った者をあの神はマークしている事だろう。それに)

 

『リオン、()()()()()()

 

「……」

 

 私を()()()()()。生贄としてアストレア様を狙ったともあの後に聞いた。邪神エレボス、かの神をこの時期に葬り去っておきたいがこのレベルでこの能力で闇派閥で単身で攻め込んでも返り討ちに遭って終わる。しかも私が復讐を決行した時の闇派閥の拠点にあの神がいるかどうかも分からない。かと言って放っておけばまたあの事件が起こる。

 

(せめてゼウスとヘラの生き残りさえどうにかなればあそこまでひどくなる事は無い。アーディがあのような事になる事もアリーゼ達が……)

 

 いや不毛だ。それはもう前に終わった事だ。今更考えたところであの事実は変わらない。問題は今をどうするかだ。このまま強くなる事は変わらない。でなければアレには敵わない。

 

「はぁ〜、いけないいけない。深みにハマってしまった」

 

 事実を変えるのは自分では難しいと疲れた顔で自嘲したリューであった。

 

 ────────────────

 

「おーい! リオンー! おーい!」

 

「ん? 何ですかぁ?」

 

「寝ぼけてんじゃねぇ! 今日は炊き出しだ!」

 

「…………?」

 

 炊き出し? って何のことだ? 今日はまたダンジョンに潜ろうとしてたのに……。

 そう疑問に思っていると布団を剥がされた。

 

「はい! リオン準備して! 早く早く!」

 

「ちょっ?! 、何でアーディまでいるんですか?!」

 

「何でって……まぁ良いじゃん良いじゃん! 今日はダンジョンお休みして炊き出しのところに行こうよ〜」

 

「そうだぞ! 今日はデメテルファミリアの子供達主催で町中に美味しい特産物で作った料理を提供してくれるだってさ!」

 

「……は?」

 

「急遽決まったんだって! ねぇ? 皆で行こうよ!」

 

「いえ私は別に……」

 

 断ろうとした瞬間横からなんか割り込んできた。主神だ。私の服を持ってきて着替えさせようとしている。一応受け取って着替えたけど、(勿論二人は追い出して着替えたけど)何かいつもの戦闘する際の服装じゃなくて他所行きの綺麗な服なのだが、何故? 

 

「やっぱ清楚系な服似合うよなぁリオンは!」

 

「あの服にして正解でしたね! ネメシス様」

 

 服は白を基調にしたワンピース状のもので、裾はレースがあしらわれている。そして、髪も結い直された。所謂ポニテと呼ばれるものだ。こんな格好でどこに行くというのか? だから

 

「えっと? 一体何でこんな服で行くのですか?」

 

 そう質問すると

 

「今日デメテルとフレイアの所の神会(デナトゥス)に参加するから」

 

「……」

 

 ん? 何でわざわざ神会(デナトゥス)に私が参加しなければいけないのか? そう思って元の服に着替えようとすると、

 

「待って待って! 脱ごうとしないで! 一応デカイ集会だし、戦闘服だと味気ないんだよ! それに各ファミリアの眷属達で参加してとのことだからお前きてくれないと私が困るんだ!」

 

 いや、知らないです。そんなこと。

 不服そうな顔で主神を睨み返すが、土下座し始めたので諦めた。どうせ数時間で終わるはずだ。でなければ適当なところで抜け出そう。

 

「あっ! 抜け出そうとはするなよ? 私フレイア達に目をつけられたくないからな」

 

「時間はどの位掛かるのですか?」

 

「今日1日だけど?」

 

「……」

 

 もうダメだ。今日の探索は諦めよう。主神の顔に泥を塗る訳にはいかなだろう。

 

「ちなみに今日はほとんどの人が集まるからそれなりの人数になるぞ!」

 

「尚更行きたくありません」

 

「まぁまぁリオン、折角だしさ行こうよ。美味しいものもあるし、こんなこともうないかもしれないからさ。皆で良い思い出作りだと思ってさ」

 

「ハァ〜〜、分かりました。行きますから行きますから」

 

「「ありがとう、リオン!!」」

 

 この二人は息ぴったりだ。話を聞いてくれないところとかも似ている。

 

 相変わらず仲が良いなぁと思いながら神会(デナトゥス)が開催される会場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。
?は文字が入ります(漢字も含みます)。わかりますかね?結構チートスキルになってます。
実はリューさんは闘技場時点でレベル2だったので余裕といえば余裕でした。バレるわけにいかなかったのでアーディと一緒に潜ってます。本人はもうちょっと刺激が欲しいと思う気持ちとアーディと一緒に潜りたいという気持ちがあります。6歳児なんで誰かと一緒に遊びたい気持ちが存在しているのでもうしばらくアーディと潜ると思います。
アーディは、しっかり(団員と一緒に)警邏してます。リューさんと毎日ずっと潜っているわけではありません。ほぼ毎日一緒にダンジョンですけど。シャクティも友人関係は大切と考えているので二人でダンジョンに行くことが多いです。
アーディが警邏の時はリューさんはたまにダンジョンに無断で潜ってました(バレてない)。バレたら怖い奴です。基本は闇派閥の情報を前の記憶だよりに調べてます。
なんか凄い矛盾を起こしそうで怖いです。なにせ書いてる時はまだ一部だけしか公開してなかったので。
ここまで読んでいただきありがとうございました。また次回読んでいただえると幸いです。


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第八話 厄介な神に目をつけられた気がする…byネメシス

はい、厄介な神様と言ったらあの方です。収集癖の…。
実はこれを書いているのはダンメモ のアストレアレコードの第一部と第二部の時点で書いているのですが、一番驚いたのはアーディとシャクティの年齢差でした。倍くらい違うのですが。
まぁ色々あったのでしょうと思ってます。
それでは楽しんでいただけたら幸いです。どうぞ〜。


 そんなこんなで乗り気ではなかった、リューを連れて中央の広場まで来た。今回の参加者は各ファミリアの眷属という事でもう大賑わいである。ここで製造系ファミリア達が各々武器やポーションなどを出店を開いて売買していた。ちょっとしたお祭り騒ぎだ。これは、警邏しているファミリアは大変だろうなぁと思って都市の憲兵であるガネーシャファミリア所属のアーディを見ると、至るところに目を輝かせている。まぁ年相応の反応だ。逆にリューの方がおかしなくらい反応薄い。

 半分かそれ以上アーディに連れまわされた。楽しかったけど。神々も暇なのかそれぞれはっちゃけている。特にロキなんて酒樽を飲み漁っていた。信じられるか? アイツ都市最強派閥の一角を担う主神なんだぞ? 流石にあそこまで私ははっちゃけなかったけれど。

 他にも色々なファミリアの主神や眷属がそれぞれ楽しんでいた。デメテルの所の子供達が忙しそうに炊き出ししてて大変そうだったから手伝ったり、武器を見たりして楽しかったぁ。

 

 でもまぁお祭りって言うのはトラブルもあるわけで……。

 

(さっき程から変な視線を感じますが……)

 

 リューはお祭りを楽しんではいた。しかし、何というのか変な視線(探る様な)を感じていた。二人はまだ気づいていない。自分しか気づいてはいないようでなんか不気味だ。悪意は感じないからできるだけ無視はしていた。それでも正体が知れないから警戒している。

 

「リオン? 大丈夫?」

 

「……えっ?」

 

「なんか楽しんで無いのかなぁと思って。無理やり連れてきちゃったから内心で本当は嫌なのかなあと思って」

 

「いえ! そんな事はないです。私なりに楽しんでいます」

 

「……そっか。それならいいんだけど」

 

 いけない微妙な雰囲気にさせてしまうところだった。

 折角楽しんでいるのにシリアスな空気にしてはいけない。それでも舐めまわすような視線は途切れないんだが……ん? さらに粘着質になってきているような

 すると

 

「あの収集女神が」

 

 そうボソッと主神が呟いた気がした。

 

 ネメシスからすると眷属がおかしいなぁと思ったのがきっかけで美神の視線に気が付いた。まぁあれだけ粘着質なら気づく。ついでにそこら中にあの女神の眷属がいるのはどうしてかなぁ? と思ってはいた。(主催とはいえ多い)あの女神の指金ではなく、警備としているのだと思っていた。しかし、それだけではなさそうだ。少し面倒事が増えたなとげんなりした。でも何であいつを狙ってるんだあの女神は? 

 

 と内心大変な状況である。まぁ唯一の眷属が狙われれば守ろうとするのは当然である。

 それに加えて自らの眷属との約束もあった。

 面倒だが早いうちにお話しする必要がありそうだ。

 

(私、あの女神苦手なんだけどなぁ)

 

 まだロキの方が話が分かる、と折角のどんちゃん騒ぎなのに気落ちしたネメシスであった。

 その間アーディはと言うと

 

(二人とも何か気になることでもあるのかな? さっきからチラチラと視線を動かしているけど)

 

 と結構勘づいていた。それが何なのかまでは分からなかった。それが当たり前である。普通は気づかない。この一人と一柱が規格外なだけである。リューの方は誰かとは特定できなかったが。

 

「まぁいいや、リオンその事は任しくれて大丈夫だから、今日は思いっきり楽しめ!」

 

「はい……」

 

「よし! 次へ行こうか二人とも」

 

 そう言ってお祭りを巡り始めた三人であった。

 

 ──────────────────────―

 

 その頃バベルの塔では

 

「あらネメシスに気づかれたようね」

 

 意外と早かったわと思い美しく笑っている神がいた。美の女神としてその名を知らない男神はいないと言われるフレイアである。ちなみにネメシスは出身が違うし、ほかの神と比べて遅く神として成立した為そこまで詳しく知らない。こちらも現在都市最強と言われるファミリアの一角である。まぁこの神とある悪癖があるのだが。

 

「仕方ないわ。だってあんな色をした子見た事無いんだもの」

 

 殆ど真っ白なのにそれに黒が混ざり合っているような両極端な色。それに今まで見たことないような形容しがたい色が混ざっている。伊達に長くは生きていない神が見た事ないような色だからよほど珍しい色をしているのだろう。

 

「でも、ネメシスはあの子しか居ないのよね。流石にこの時期にたった一人の眷属を頂戴するのは忍びないわ」

 

 どこまでが本気だか分からないような雰囲気でそう話す神である。

 ちなみにこの神何故地上のお祭りの主催のファミリアなのに参加してないかと言うと簡単に言えば狙われるからである。現在闇派閥の影響で無暗やたら地上に出るとすぐ狙われてしまう。主にこの神は魅了の効果がえぐいので主にこれによって即座に殺される、キルリストに入れられている。まぁだから今現在すごーくこの神様は暇なのである。

 だから子供たちの観察を主にやって気を紛らわせていた。そのお眼鏡に適ってしまったのがリューという訳である。なんとも傍迷惑な話だけれど神フレイアの娯楽の一つなのだから仕方ない。後はどうやって守るか、である。

 

「まぁ仕方ないわね。今は引きましょう」

 

 珍しい事に今、厄介事を自らのファミリアに持ち込む気はないらしい。眷属たちの事を考えていたり、いなかったりする気まぐれな神なのだ。

 

「それにそんな風に育つのか見ものねぇ」

 

 いや、もっと面倒くさい方向になっただけである。侮れない神である。いずれほかの神と大々的に喧嘩しそうである。まぁこのままだとネメシスの方が返り討ちにしそうな雰囲気だが。どうなる事やら。

 まぁネメシスの頭痛の種が増えたことに変わりはないのであった。

 

 ────────────────────────―

 

 お祭り騒ぎ真っただ中である。

 

 そこらかしこに神やその眷属が飲み干したであろう酒樽に食器、食べ物が散乱していた。

 

 それを片しているのはデメテルのとこの眷属であるのだが、皆、無礼講の為潰れていた。勿論警戒を取ったうえでのお祭りだからできることであって、普通ならありえない光景である。元々ギクシャクしていたオラリオの空気をどうにかしようという目的であったため、結果としては大成功である。恐らくすごく苦労して、他のファミリアと連携を図ってきたのであろう。ご苦労様である。まぁその主催した眷属殆ど潰れてるけど。

 

「おぅ皆潰れてんなぁ。周りだけでも清掃した方がいいな」

 

「えぇ、主催ファミリアとして頑張ったのでしょう。私達もこの位はしないといけませんね」

 

「よし! 始めようか!」

 

 ネメシスら三人は掃除を始めた。その間にリューとネメシスは

 

「リュー、今日、変な視線を感じただろ?」

 

「えぇ、悪意は無いと思ったのですが」

 

「ん~悪意ではないんだろうな、アレは」

 

「? ネメシス様は分かったんですか?」

 

「目星はついたよ、気にすんな、リューの目的が達せられるまでは手は出させないようにするよ」

 

「助かります。ありがとうございます」

 

 そう言っていると大体終わった。まぁ狭い範囲だけしかできなかった。人数が少ないため仕方ない。

 

「ここら辺でお暇しようか。アーディはこの後ガネーシャの所かえるんだろ?」

 

「はい! それじゃあ!」

 

「えぇ」

 

 そう笑顔で別れを告げた3人であった。

 

 

 ──────────────────────

 

 ガネーシャのホームにて

 

「ただいまぁ~」

 

「あぁ帰ったかアーディ、楽しかったか?」

 

「うん! 凄く楽しかったよ。お姉ちゃん達もお疲れ様。疲れたでしょ?」

 

「まぁいつもの事だ」

 

 トラブル解決のために都市も憲兵と名高いガネーシャファミリアはお祭りに参加しつつ警邏していた。まぁこんな縁日のような日にも悪事を働く者がいる為休みはほとんどない。仕方ない治安が良くなればもっと過ごしやすくなる。それまでは辛抱するしかない。まぁ平和になっても悪事を働く輩はいるだろうけど。

 

「あっお姉ちゃん話があるんだけどさ」

 

「ん? 何だ」

 

「しばらくリオンとダンジョンに潜れななくなったから、警邏たくさんできるよ」

 

「えっ?」

 

 これにはシャクティは驚いた。いや元々アーディはガネーシャファミリアだから前の状態に戻ったと言えばそうなのだが。喧嘩でもしたのかと思ったのだ。だって二人は一日中ダンジョンに籠っているから凄く仲が良かった(ほかにも理由はあるが)筈だ。

 それが少し顔に出ていたのかアーディが喧嘩じゃないよと答えた。

 ……さらに謎である。あんなに年がら年中仲良くダンジョン探索してそうな二人が急にいかなくなれば心配もする。

 

 一体どうしたというんだ……。

 

「何かお姉ちゃん顔が百面相だけどうしたの?」

 

 主にお前たちのせいなのだが! わかっているのか? 

 

「……ちなみにだが何故急にダンジョンに探索しに行かなくなったんだ?」

 

「ん~? それがリオン達の事情だから良く分からないんだよねぇ。今日急に言われたから」

 

「今日?」

 

 あの几帳面なリオンがそんな事を急に言うのか? そもそもこの二人は前にこっちの約束を守らずに6階層に行ったじゃないか。何故今さら行けなくなったという必要がある? 

 さらに謎が深まるシャクティである。というか喧嘩以外でこの二人が言い争っていることなど無かったから喧嘩じゃないといった時点で当ては外れているのだが。

 

「何か厄介事? になりそうだってネメシス様は言ってたよ」

 

「……」

 

 聞かなかったことにして良いか? 何だ? あの主神は以前に追放されてまた何かするつもりなのか? ……いやリオンの主神が追放されたときはゼウスファミリアが最強派閥でそれに単身嫌がらせしてた程度だけど。理由はしっかりしてたけど。やる事は少しバカっぽいからなぁネメシス様は。

 シャクティもネメシスの事を都市に来た時に少し調べたので知っている。まぁその頃と今では結構性格の違いが大きいのは分かるはずもない。ネメシス曰く、人の若気の至りと同じだ! らしい。

 

 そんなことは置いておいてシャクティが気になっているのはその厄介事というワードだ。

 厄介事を好む神には見えなかったんだけどな。リオンが力技で問題解決するやりすぎエルフだから少し意地悪でもされているのか? 

 

 そんな事を思ったシャクティであった。

 

 まぁ実際はもう少し面倒くさい事情があるがまだ知る由は無かった。

 

 

 ──────────────────────────

 

「さて! あの色ボケ女神の対策を考えるぞ!」

 

「任せろって言ってませんでした!?」

 

 そう任せろと言ったのに肝心の作戦は全く考えてない。

 

「だって恐らくと言うほぼ確実にその視線はフレイヤなんだもん。今の自分たちのファミリアじゃあ無理だ」

 

「えっ! 何で神フレイヤがわざわざ……」

 

 そこでリューはふと前もフレイヤファミリア他ファミリアの眷属を奪っていた気がする。と思い出した。

 

「フレイヤは元々気まぐれで収集癖と言う傍迷惑なモノを持ってるんだ。だからリューはフレイヤのお眼鏡に適っちゃったんだよ」

 

「あまり嬉しくないですね。それ」

 

 全く嬉しくないんですが! 何故その大派閥から目を付けられなければならないのか……。

 

「面白いんだろうなぁ、あの女神からしたら」

 

「いくらフレイアファミリアでもこの時期に零細とはいえ仕掛けてくるとは思えないのですが」

 

「それも一理あるがあの女神諦めだけはそれなりに悪いからなぁ」

 

 この時期つまり治安最悪期に仕掛けてくると言う事はフレイア自身の警備を薄くすると同義だ。しかもリューは成り行きだがガネーシャファミリアの(幼いとはいえ)アーディと一緒にいた。少しガネーシャファミリアと癒着(してないよ!?)位疑うかもしれない、とも考えた。今は様子見を決め込まれるとリューの秘密にしている事もバレる可能性もある。

 

(厄介ですね、別に私を手に入れたところですぐに使い物にならなくなるのに)

 

「話し合いで解決が一番いいけどなぁ」

 

 あまり好きではないフレイアとどっかで話し合いをして解決しようと最初は考えていた。でもふとあの神が話し合い程度で引き下がるはずない! と考えた。それに何か要求されたときこっちが出せるモノなんてハッキリ言って、無い。

 

「ほっといてくれるのが一番良いんだけどなぁあの女神の場合は」

 

「しかし、もしかしたらフレイアファミリアでは無い可能性だってあります。私が吹き飛ばした盗賊風情もいますし」

 

「あぁいつもやり過ぎるやつね。あれもマジで大概にしとけよ? いつか刺される。でも、ほぼフレイヤ確定してると思うぞ?」

 

 それにリューは頭に? マークを浮かべる。

 前にも他のファミリアの眷属を引き抜いたとか奪ったとか物騒な事があった筈だが、リューの記憶は闇派閥の時に頼りになったという印象の方がまだ強いため、フレイヤの悪癖については特に気にしていなかった。まぁ前の時はアストレアの子供だったから引き抜かなかったという理由があるのだが、アストレアはそういう事は眷属に話さないのでリューは知らないままである。まぁ二人は知らないがフレイアも空気を少しは読む。特にこの様な緊急時には聡明な判断を下すだろう。本人も危険なのにここで動く事も無いので、この状況が続く限りは手は出してこない。二人はそんな事知る由もないのが。

 

「ハァ〜〜〜どうしようかなぁ?」

 

「一対一で勝負するのはどうですか?」

 

 何をこいつは急に言い出すんだ。という抗議の視線を送ったネメシスであった。だって平和的な解決になってない。さらに面白おかしく追及されるだけである。主に他の神々に、私が! それに秘密にしておきたいことがあるのにわざわざ知らせに行く様なものだ。

 

「いえ、話し合いなどはお互い苦手なら避けるべきかと思いました。そして、現在の私はまだレベル1と認識されているなら相手も油断して低レベルな冒険者を出してくると思って」

 

「一つの手ではあるけど、却下だ。そしたら相手にお前のレベルを誤魔化している事がバレる。あっ、ちなみに話変わるが今でも視線は感じるか?」

 

「? そう言えば感じ無いです」

 

 話に熱中しすぎて注意が散漫になっていた。

 

「そうか、じゃあこの話は保留で大丈夫だ。あの女神様は手に入れたい眷属には目を離さないからな」

 

 そう言ってしばらくはほっといても大丈夫そうだぁとか言って寝る準備を始めた。置いてきぼりを食らったリューである。

 

「は? え? この話ほっといて良いんですか? 下手すればフレイアファミリアと抗争という面倒な事になりますが?」

 

 全くその通りである。だが呑気な様子に戻ったネメシスは確信を持って答える。

 

「目線を外しているって事は今は関与してこないよ。言ったろ? 目を離さないはずだって」

 

「それはそうですが」

 

「今は狙って来ないんだったらこっちとしては好都合だろ? それにこんな事で一々悩んだりする方が体に毒だ」

 

 こんな事で済ませられる様な問題では無いと思うんですけど。神様の考え方って人と違って読みにくい。特に気まぐれと分類される神様は。とリューは自らの主神も結構気まぐれと自分の中で分類した。目をつけられたがまだ大丈夫そうだ。できれば自分の目的が果たされる時まで大人しくしてもらいたいなぁと思うリューであった。

 

「あっ!!!!!!」

 

「うわぁー! どうした急に大声出して?」

 

「アーディにしばらく一緒にダンジョン探索行けないと言ってしまいました……」

 

 話が一応大丈夫という事になったので、別に厄介ごとに巻き込まれる可能性は低くなった。その為現在ダンジョン探索を一緒に行ってもガネーシャファミリアに迷惑は掛からないのだ。(元々迷惑が掛かると思って遠ざけようとしたという理由があった)

 

「ん? 別にしばらくの間一人で潜れば良いんじゃ無い? リューはもうレベル3程度はあるからシャクティに認められている第八階層より深い階層も一人で大丈夫だろ?」

 

「まぁ確かに」

 

「それに、アーディは元々ガネーシャの眷属だから長くこちらに置いておくのも悪いしな。アーディもガネーシャファミリアとしてのパトロールとかあるしな。だからしばらくリュー一人でダンジョン入って怪我なしで帰ってこい! 私はそろそろバイト先探すから」

 

「はあ、分かりました」

 

 と納得しかけた時ん? と気にかかる事があった。

 

 今、この主神はバイト先を探すと言わなかったか? 

 

 さぁさぁ寝るぞ〜と一足先に布団に潜ってしまった主神を驚いた顔で一瞥するリューであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




楽しんでいただけたでしょうか?楽しんでいただけたら幸いです。
ベルが視線に気づいたから警戒心強い人なら気付くのでは無いかというガバガバ推理です。
実はもうこの時点で最後らへんの話を過程の話を飛ばして書いてます。
あんまりシリアス書けないのに、手を出してしまったので頑張って書こうとは思ってます。
それではまた次回も見てくれると幸いです。


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第九話 …逃げますbyリュー

めっちゃテンポが悪くて申し訳ないです。そろそろ数年後に飛ばさないと話が無い…。どうしよ(作者はプロット建てるのが下手)
それではどうぞ


 さてと、一人でダンジョンに潜る事になりました。

 本当はアーディを誘おうか? とも考えましたが元々違う派閥の為誘いにくかった。まぁ行けないと言った手前もあるし、アーディは元々の仕事に戻るだけだから元に戻っただけだが、良く今まで団員を好きにさせていたと思う。アーディがあの性格というのもあるけど、シャクティも良くあんないい子を貸してくれるもんだなぁとは私の主神が言ったことである。

 

「さてと一人で潜れるなら、できるだけ深く潜りましょう。遠征しているファミリアもいませんし」

 

 そう思っていざ入ろうとすると。

 

「ん? あの時エルフか?」

 

「…………」

 

 なぜリヴェリア様がここにいるんでしょう? ロキファミリアは遠征に行く予定では無いはずですが。

 

 そう不思議に思っていると

 

「何故一人でいる? ……まさかダンジョンに一人でいこうなんて考えていないはずだが」

 

「武器を少々見に来ました。それでは失礼します」

 

「っておい! 待て」

 

 失礼だけれどそそくさと去ってしまおう。どうせただの同胞の一人と会っただけだ、すぐに忘れて______

 

 何で付いてくるんでしょうか?! 

 

「待てと言っているだろう? そそくさと逃げようとするな。他派閥だからと言ってダンジョンに単身で乗り込もうとしている者を放っておけるか」

 

「ダンジョンに行こうとは」

 

「じゃあその装備はなんだ?」

 

 もう逃げ場はないですね……。今日は諦めるしかなさそうだ。そう思い逃げるのはやめた。

 

「はぁ~。リオンだったな。主神がまだ幼い者を一人で送り出すのか?」

 

「あのそこまで心配して頂かなくても大丈夫d」

 

「何が大丈夫だ! ダンジョンを甘く見すぎている」

 

 こんなに過保護だったかな? 剣姫もこの年齢でダンジョンに入ってたと聞いていたのですが? それに正直年齢は関係ないのでは? 

 それが顔に出ていたらしく。

 

「一人で行くなという話だ。どれほど強くとも一人では数多くのモンスターに対処できない、大規模な魔法を使うにしてもそれなりの詠唱がいるだろう?」

 

 とリヴェリア様は答えた。

 

「平行詠唱ならもうできますが?」

 

「そういう話では……ん? 今なんと?」

 

「いえあの魔法の平行詠唱ならもうできます。不思議なら実践してみますが?」

 

「……」

 

 この年の子が平行詠唱ができる? どういうことだ? そんな高度な技術並大抵の事では習得できないはず。

 それをこんな幼い子が? にわかには信じられないが、嘘を言っているようには見えない。少し確かめてみたい気はする。試してみるか? 

 

「あぁ少し実力は見ておきたい」

 

「えっ? あぁはい、分かりました」

 

「どうした? 歯切れが悪いが」

 

「いえ、リヴェリア様はお急がしいと思っていたのでこんなくだらない事を承諾してくれるとは思っていなかったので」

 

 あぁそう言う事か。確かにロキファミリアは大派閥ゆえにやる事も多いが今日は久しぶりの休日だ。たまには散歩をしようと思って出歩いていたらちょうどこの馬鹿物を見つけたので声をかけた。正直私はこの子の主神の事は知らないがこの子の性格からして、悪いものでは無いのと思っている。まぁ単身で乗り込ませようなんて正気の沙汰では無いが。

 

 という事で、ダンジョンの上層の少し広いところに来た。まぁ何をやるかというとただの戦闘である。リューからすれば早く一人でとっととダンジョンの奥に行きたいため手っ取り早く決着のつく一対一の模擬戦をする事にした。まぁリューのレベルだとまだリヴェリアには及ばない。だから今回は力を見せて見逃してもらおうと考えた。

 

「じゃぁ始めよう」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 そう言って自らの木刀状の武器を構える。エルフの丈夫な木から作ったものだ。しかし、あまり人に魔法を放ちたくはないし、それがエルフの王族なら尚更傷つけたくはないが、こうでもしなければダンジョンには入れない。幸いなことに私よりリヴェリア様の方が強い。だから傷は付かないはずだ。多分……。

 

 一瞬の内に近づく、まずは武器を奪うために横なぎに武器をふるう。それを杖で受け止めたリヴェリア様に向かって失礼ながら足蹴りを放つ。それも体を後ろへずらすことで交わされる。流石はロキファミリアの冒険者だ。自分よりもレベルが高いからというのもあるが、判断能力がやはり高い。年の功というのもあると思う。と少し失礼なことを思った。恩恵故の若返りっていうのは本当に不思議だ。

 

 そこまで考えているリューの相手をしている傍らでリヴェリアは驚いていた。まずは初速が早い。元の俊敏が優れているのか判断能力が年の割に合わないのか、恐らくどっちもありえるが。駆け引きもなかなか良い。まるで熟練した冒険者と対峙しているみたいだ。人とやるのを慣れているのか油断も隙も無い。エルフにしてはブラフも多少はできると来た。しかし、まだ本命の平行詠唱をやっていない。まだ様子見ということなのか? ならこちらから仕掛けてみるか。

 

「ふっっっ!」

 

 リヴェリアが自分の杖をリューに力任せに振り下ろす。

 

「くっっっっっっ!!」

 

(さすがに素のステータスは未熟だな。いやここまでできれば十分すぎる程強い)

 

(力任せにやってきた! リヴェリア様は魔法メインだと思っていましたが、中々接近戦もこなす。うかうかしてたら一気にやられるッ!)

 

 そうしてリューは距離を取る。前に行けば元のステータスの差でやられると分かったからだ。

 そして、

 

「今は遠き星の天……」

 

「させるか!」

 

 リューが平行詠唱をし始めた。それを阻止するかのようにリヴェリアが高速でリューに迫る。リューからすれば魔導士に接近戦を持ち掛けられた方が楽である。何故なら魔法より接近戦の方が性に合う。接近戦ができないなら自分は魔導士になっている。でも、強力な魔法が発現したのなら、それを使わない手はない。使えるモノは何でも使え、昔の悪友の言葉である。だから平行詠唱をできるように鍛えた。輝夜に何度急所に刀を撃ち込まれたことか。しかも足技も使ってきたから苦労した。

 

 そして縦横無尽に杖と木刀が当たる音が続く。もうこの時点で第二級冒険者では目に負えないほどの速さで打ち合っている。まぁリューは高揚しているのか気づいてないし、リヴェリアもわざわざそれを指摘するようなことはしない。

 

「星屑の……光を宿し……っ!」

 

「やっと隙を見せた」

 

 リューがリヴェリアの足技に気を取られ体勢を崩し、詠唱が一瞬途切れた。しかし、リューはそれで止まることはなかった。即座に後ろに転がり体制を整える。転がる寸前にリヴェリアの足技が脇腹に当たったがそれも後ろへ出来るだけ衝撃を逃す。

 

「ッ……敵を討て! ……ミ……ウィ……ド!」

 

「くッ!」

 

 光と風の広域攻撃魔法がリヴェリアを襲う。少し声が小さかった為最後の方は聞こえにくかったが、しっかり詠唱できたらしい。しかしこれでやられるはずもなく全てかわし切る。この時点でまだリヴェリアは魔法を一つも放っていない。リューの魔力量がまだ少ないため光弾が少なかった為少しかすったが大体かわされる。

 

(流石ですね、今の私では魔法で傷つけることも叶わない)

 

(無理やりつなげて来たな……。しかし、下手したら自爆していたな。にしても末恐ろしい奴だ)

 

 そうリヴェリアは思い、魔法が()()()()所(血が滲んでいる)を見るリヴェリア。恐らくアイツ自身はレベル2だがレベル4しかも上位の耐久を抜ける程の魔法の威力だ。直撃したら只ではすまないな。

 この時点ではギルドに報告していないレベル詐欺の事がバレた。流石リヴェリアである。

 

「うむ、平行詠唱に少し難はあるが、駆け引きも申し分ない……か。その歳で凄いな」

 

「いえ、まだまだです。リヴェリア様にそういってもらえて光栄です」

 

 そう言って警戒は解かない、こちらが武器を構えているからかもしれないが、不意打ちを最大限警戒している。正直ここまでできれば将来有望だ。

 

「ふぅ、分かったダンジョンに潜れる程の実力はある」

 

「じゃぁ」

 

「だが一人で行くのはやめろ、やはり危ない」

 

「ムぅ……ゴホン、大丈夫です! そんなに深くは潜りません」

 

「いや、そういう問題では……」

 

「それじゃあ、失礼します」

 

 そして三十六計逃げるが勝ちである。持ち前の足の速さを生かして、戦線から離脱。とっととずらかる。勝てない勝負はする必要はない。話も長くなりそうだった。

 

「早い……もう逃げられた……」

 

 見失ったリヴェリアであった。何故逃げるのか? ちょっと注意(という名のお説教)しようとしただけである。それなのに一目散に逃げられた。

 

「……はぁ、仕方ない。あっち側は出口方面だからもう入ることは無いかもしれない。……入らないよな? 流石に……」

 

 少し不安になるリヴェリアであった。

 

 一方でリューはと言うと

 

「引いてくれましたね」

 

 流石に本気で追いかけられたらヤバかったけれど。

 現在ダンジョン第一階層。あまりわき目を振らずに走ってきてしまったから、かなり上まで来てしまった。それでもまだ10階層ぐらいには行けるはず。

 

「よし! ダッシュで行けば今日はたくさんの経験値が得られる」

 

 そう言って奥まで潜るリューだった。ちなみに尊敬するエルフの王族のリヴェリアの言葉は全く聞いていないのであった。

 

 ────────────────────────―

 

 10階層_そこは霧が立ち込める草原地帯。新たにオークなどが出現する区画。詳しい事は不明だがモンスターパーティも発生する。まぁ6階層のは例外中の例外である。何があるのかわかったもんでは無いのがダンジョンである。

 

 それらを全て一掃している一陣の風がある。

 囲まれないように逃げ道は確保しつつ、オークやインプの群れを目に留まらぬ早業で蹴散らし、自らの魔法で一帯のモンスターを文字通り破壊する。そしたらすぐに別の所に移動したまに囲まれた冒険者の助けをしつつ、経験値を貯める。正直木刀で出る音ではないような音が発生している。

 

「ふぅ、物足りない」

 

 本人は物足りなさが勝っているが、これまでで倒したモンスターは優に50は超えている。格の違いを思い知ったのかモンスターも先ほどより攻めてこない。暇だ。

 

「もう少し骨のある奴と戦いたいですね」

 

 実質レベル3に届くリューにとってみれば18階層くらいまで行きたい。ただ帰りの時間を考えると厳しい。思いっきりはしゃぎすぎて絶対一日で帰らない気がする。でも行きたい。

 そううずうずとしている。はたから見れば幼女なので場違い感が半端ない。

 

「ムゥどうしましょうか?」

 

「そこで何をやっている?」

 

「えッ!」

 

 すぐさまその場から退避し、距離をとる。見覚えのある声というかさっきまで聞いていた声である。

 

「一人で行くなと言ったはずだが? この馬鹿者!」

 

「……うっ痛いです」

 

「当たり前だ」

 

(最悪だ……まさかここで会うとは……)

 

 拳骨を落とされた。本気で落とさなくともいいではないですか。ミア母さん並みに痛い。

 

「なぜこんなところにいる?」

 

「いけるかなと思いまして……」

 

 怖い……なんというか後ろに鬼のような般若が見える。馬鹿正直に答えてしまった。ここで虚偽を言った方がさらに怖い。

 

「何がいけるかな? だ馬鹿者! 全然話を聞いていないではないか!」

 

「……ここまで潜るのは今日だけです。もう上がりますからっ! そのっ! さらに拳骨を落とそうとしないでください!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 どうにか怒りの矛は収めてくれたようだ。それにしても大きなため息でしたね。お疲れなんでしょうか? 

 本人は全く気付いていない。自分の事でここまで怒られているのだが知らぬは本人ばかりなり。

 

 逆にリヴェリアは何故こいつは困惑気味なのだろう? と疑問に思っていた。まさか自分の事で怒られていることに気づいていないのか? ちょっといや凄く心配するリヴェリアであった。

 

 その後は言うまでもないが、リヴェリアに散々怒られた挙句何故か自分たちのホームに来たリヴェリア様にネメシス様まで怒られた。ネメシス様は「何で私まで!?」と憤慨していた。それもリヴェリア様の鶴の一声的なものですぐ黙ったけど、なんかかわいそうになってきた。それでも小さいのにさらに一回り小さくなった神様を横目に見ながら長くなりそうだと思った。

 

 予想通り小一時間近くお説教は続いた。残念ながら怒られている本人であるリューは半分近く聞いていないが。そんなリューを見てあきれ顔をしたネメシスである。

 

 そして、夜になったのでリヴェリア様は帰っていった。まだ何か言いたそうだったけど、ロキファミリアは、忙しいだろうから帰ってもらった。

 

 何か疲れたなぁ。お風呂へ入って寝ようとすると、

 

「おい! 待て寝る前にお話しだ! リュ────!!」

 

 これは主神からもお説教コースである。

 

「お前今度はリヴェリアに見つからないようにダンジョンに潜れ!」

 

「はい……」

 

 恐らくそれをしたらもっと怒られるだろうが、知ったこっちゃない。全く反省してない主神と眷属である。正直なんの解決にもなっていないが、リューの実力が確かなのはネメシスが1番知っているのでリヴェリアが去った後反省することも無い。本当ならもっと深くまで行くことだってできる。まぁ強い戦力を現段階で育てない手はないわけで。反省することも無くどうやって入ろうかと考えている。それに目的もあるから潜らない手は無い。

 

「でもまたお前は面倒な奴に目を付けられたなぁ」

 

「? リヴェリア様は心配してくださっただけかと……だからあそこまで怒ったのでは?」

 

「…………まぁいいか。今のコイツにあの子(リヴェリア)の苦労を説くのは苦労しそうだ……」

 

「? はぁ?」

 

 ほら何で怒られていたのか多分気づいていない。ぽかんとしている。いや、一人で行くことに怒ったことは分かっているんだろうけど、何でロキの子が私を巻き込んでまで怒ったのか分かってないんじゃないかなぁ。少し危ない目をするときがあるから私は心配だよ……。それに気づいていた様子があったからなぁリヴェリア。目はつけられてるぞリュー……。

 

「はぁリヴェリアも絶対にシャクティと同じタイプでいろんな意味で苦労しそうだな」

 

「は?」

 

 さっきから話の流れが分かっていないリューは頭の中は? だらけである。

 まぁ数年後にはこのネメシスの予想が当たることになるが今はまだ知らないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
リヴェリア様は作者内でアスフィ同様の苦労人枠の為こんな感じになりました。正直あんまり関わらないかもとは思いましたが、二次創作の為許してください。
もう作者しか得しないような作品ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
ではまた次回があれば読んでくださると嬉しいです。


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第十話 アストレアファミリア

はい、タイトルにもありあすが、あの方が出てくるはずです。
それではどうぞ!


 リヴェリアに凄く怒られてから、早数日。

 リューは結構隠密行動が得意なのか、あれからバレずにダンジョンに入れているようだ。自分の眷属ながらどうやって入ってるんだろう? とたまに疑問に思う。何か聞いちゃいけないような気がするけど。だってこう言っちゃなんだがアイツみたいな幼女をギルドが見逃すはず無い。まぁ今は昔と違ってどんな奴でもダンジョンに入ってはいるけれど。それでもアドバイザーが存在する理由がないからなぁ。……どうやってるんだろう? 

 

 さて、いつまでも不思議に思っても自分ではどうやっても答えは出ないのでネメシスはバイト先を探す事にした。

 眷属のおかげでまだ余裕があるが、いつか絶対ギルドから面倒ごとを押し付けられるようになる。ミッションというものだ。だから、お金に余裕があって困る事は無い。それにまだ零細だから情報収集系統の任務はあまり向かない。ヘルメス辺りが得意そうだ。それでは何が与えられるかといったら多分ダンジョン探索の任務だ。正直面倒だから、このままレベル1のままで登録しとこうかなぁとも思ったが、それをするとほかの冒険者から怪しまれる。特にダンジョンの奥に進むなら、それは面倒にしかならない。かといってもうレベル3程度の実力だと馬鹿正直に報告することもしないけど。

 

「さぁ、私でもできるバイト先を探すぞぉ」

 

 と言っても何個は目星はつけてある。事前にシャクティに忙しい合間を縫って聞いた。

 

「ジャガ丸君の出店かぁ。……でジャガ丸君ってなんだ?」

 

 この神様はわざわざ調べる事はしないためほぼ知識なしである。それはこんな治安が悪い時期に来たことで分かるだろう。特に下調べなんてしないのである。リューの方がしっかりしているかもしれない。

 

「ここだな!」

 

 ここから始まるネメシスのバイト生活である。

 まぁ覚えは悪くないし、基本的に女神だとバレないように神威を隠している為一目見て女神だと分かるやつもいない。長年にわたり旅を続けてきた癖である。

 

「ネメシス様って人間臭いですね」

 

「アーディ、何してんの? 仕事は?」

 

「休憩中です。今日はリオンは?」

 

「バベルで武器見てるよ。夜までじっくり見てくるって」

 

「そうかぁ~」

 

 何故か仕事場にアーディが来た。ちなみにリューは現在ダンジョン内にいるがそれをアーディが知る由もない。

 というか

 

「人間臭いって。まぁ神威は出してないからそう感じるだけだと思うけど」

 

「見た目無害な子供ですけどね」

 

「ヘスティア並みの低身長だからな。天界に居たころからロリっ子って言われてきたからなあ」

 

 ヘスティアよりも胸はないけれど、何故あのぐうたら女神は体に似合わないほどの胸があるんだろう? 肩こるだろあの大きさは。

 凄く失礼と言うか的が外れた考えをしている。まぁ見た目子供の為店主たちに可愛がられている。客たちもかわいがっているから売り上げもぼちぼち上がっている。こちらのバイト代も増えるし余ったらジャガ丸君のおすそ分けで今晩の夕飯である。つまりwin_winの関係である。なかなかいいバイト先である。まぁ物騒な奴はネメシスが実力行使で捕まえている。ただの一般人ならネメシスでも対処できる。恩恵受けた冒険者は無理だけど。

 

「そう言えば厄介事の件は大丈夫なんですか?」

 

「ん? あぁそれほど」

 

「微妙ってことですか?」

 

「ん、今無理やり片付ける必要はなくなっただけだ」

 

「ふーん、じゃぁリオンとまたダンジョンに行けるのかな?」

 

「まぁその内な」

 

 まぁもう潜れるけど、とは言わなかった。今リューは必死に経験値稼いでいるなんて知らないほうがいいと思ったのだ。嘘をついていた手前色々言いにくい事が出来てしまった。なんか申し訳ない。

 

「それじゃあ、私はもう行きますね」

 

「うん、頑張れよ!」

 

 そう言ってアーディは去っていった。ガネーシャファミリアの子供たちも大変だ。

 さあ仕事だ仕事。働かざる者食うべからずである。まぁその帰り道に顔見知りと会う事となろうとは思ってはいなかった。

 

 ──────────────────────────―

「ふう終わったぁ」

 

 ちょっと疲れたが大分稼いだネメシスだ。店主もホクホク顔でジャガ丸君をくれた。ついてるなぁと思いつつ帰路につく。少しうれしそうである。人間の善意はどんなものでも嬉しいものだ。それに働いた後のご飯はおいしいものである。

 

「あら、ネメシス?」

 

「ん? えっアストレア!?」

 

「ええ久しぶりなのかしら?」

 

 びっくりした。浮かれすぎだろう私。ここまで近くにいた神に気が付かないとは。

 

「久しぶり、来てたんだ」

 

「えぇ、まだファミリアとしての規模はそこまでだけれど」

 

「私も同じようなものだよ」

 

 まぁレベルは高くなってきているけれど。報告しないだけで。

 

「せっかくだし、久しぶりにお茶でもする?」

 

「いいの? 貴方はみていたけれどバイト帰りでしょう?」

 

「まぁ久しぶりにあったし、私の眷属は夜まで帰ってこないし、ひまなんだよねぇ」

 

 てか見てたのね。少し恥ずかしい恰好してたから複雑だ。まぁアストレアは天界に居たころから優しくて少しお天婆だけれど常識はあった神だから私も懐いてた記憶がある。まあ自分の仕事が増えてからは私の問題で距離は置いていたけど。

 

「あら、そうなの?」

 

「ついでに少しジャガ丸君の消費に付き合ってほしい」

 

「えぇいいわよ。私の眷属にも手伝ってもらいましょう」

 

「助かったよ。自分と眷属だけではちょっと難しかったから」

 

 そう言ってとりあえずアストレアの拠点に行くことに。

 その時

 

「えっっ! わざわざ拠点までお邪魔するわけには」

 

「いいのよ、今はあの子達は出ているから」

 

「警邏?」

 

「えぇそうよ」

 

「ちょっとアストレアの眷属気になるな」

 

「あら、じゃあ自分たちの眷属の話を肴にしてお茶でもしましょう」

 

 相変わらず優しいなぁと思う。普通は神友でもこんな治安悪いから拠点に案内することもしないはずなのに。

 それからはアストレアと眷属たちの話をした。いやぁ何というか色々訳ありが多いファミリアだ。まぁ正義のファミリアなのに闇を抱えたやつが多いというか、まぁそういうやつがいないとすぐ潰れてしまうかもしれないが。この時期に来たことから考えても希望の一つとなるファミリアになるんだろうなぁ。聞いた感じリューより歳が上だけどいい子達らしいし。少しあってみたい気もする。……にしてもアストレアの子供たちは主神に話をしているのに自分の眷属は全然自分の話しないんだよなぁ。信頼がないのか? 目的教えてくれただけでもいいとすべきなのかなぁ。

 と少し気落ちするネメシスであった。

 訳ありというならネメシスの所も訳ありなのだが、本人はそんな事気づかない。

 

「ネメシスの所の子はどんな子なの?」

 

「アストレアに似てる」

 

「私に?」

 

「まっすぐな所とか、お天婆の所とかうまく言えないけど色々」

 

「貴方の私の印象を聞いてみたいけれど、貴方の眷属は少しあってみたい子ね」

 

「自分たちの眷属が暇なときにでも合わせてやればいいよ。多分仲良くなると思う」

 

「そうね」

 

 そう言って仲良く談笑していると、アストレアの子が帰ってきたあたりでお暇することにした。話に付き合ってくれたお礼にジャガ丸君をあげたら喜んでくれた。10歳くらいの女の子で赤髪と緑色の目を持つ子が印象的だった。

 まぁ好評そうで何よりだ。さぁ帰ろう。

 

 そうしてホームに帰った。

 ちなみにリューにこのことを伝えると一瞬凄く驚いた顔をした。いや何故だよ! 私だって神様の友達の一人や二人いるわ。

 そんなことにリューは驚いたわけでは無いのだが、その方が都合がいいので何も言及しなかった。

 

 そして、バイト先から貰ったジャガ丸君を食べながら今日の事を話す。基本的にリューは聞き役に徹するので私が主に話す。こいつ全然自分から話振らないんだよなぁ。

 

「っでアストレアに会ってその後赤髪の眷属と会ったよ」

 

「なるほど、でも神様バイトなんてしなくとも稼ぎならありますよね?」

 

 そう聞いてくるから普通にこう答えた。

 

「え? だっていずれ必要になってくるだろ。ギルドからのミッションやダンジョン探索での武器の整備や回復薬の費用だってあるだろう?」

 

「そこまでしなくとも」

 

「まぁファミリアなんだ。持ちつ持たれつだよ」

 

「ありがとうございます」

 

 そう言って嬉しそうに微笑んだ。かわいいもんである。いつも無表情な分こういう時の表情は貴重である。当たり前のことを言っただけなんだけどなぁ。こいつは人の善意に対して大げさと言うほど恩を返そうとする。たまに心配になったりするけどコイツのいい所の一つだよなぁ。

 

 逆にリューからすれば当然の事である。自分がふがいないせいで主神に苦労を強いていると考えているのだ。全くそんな事をネメシスは欠片も思っていない。逆に頼れと思っている。すれ違いの多いファミリアである。

 

(もっと精進しなければネメシス様が安心できるぐらいには。私の目的に付き合わされているだけなのだから。それにしても会うのが早かったですね)

 

 そう思ってたリューである。正直もう少し遅くアストレア様が来ると思っていた。いや前と同じというのならという話だけれど。もしかしたら、変わる場合もありますからね。まだ分かりませんけど。

 リューからすればアリーゼ達とあまり会う気が起きない。前に復讐に走り、私怨で暴れまくった事がまだ尾を引いているが今はそれは関係のない話ではあるが。それとこれとは別問題である。それに加えてだと言ってはなんだがそれのせいでアストレアの眷属になることを無意識の内に避けたし恐れた。絶対にこの暗い気持ちが落ち着かなければ皆と会った時に泣いてしまう。アーディの時は耐えられたが、それでもギリギリだった。

 

「あっ暇なときに会おうと約束しちゃったから、暇なとき教えてよ、リュー?」

 

「…………えっと今月はずっとダンジョンに行こうと思っていて」

 

 だから会いに行く約束をしたという主神の言う事には返答が遅れた。それに気づいたのか、僅かな表情の変化に気づいたのかネメシスは「そうか、分かった」と言って話を切り上げてくれた。声が震えていなくてよかった。

 どうせ将来的に必ず遅かれ早かれ会うことになる。そして、あの地獄を体験することになるのかもしれない。できるだけ頑張るが、自分は弱いから守れるかどうかなんてわからない。

 

 リューの頭の中には仲間たちが次々とあの災厄に一瞬の内にやられるあの地獄の光景や火に焼かれる友の姿がちらついた。それを首を振り、振り払うがどうしてもどこかでちらつくようになった。これではダメだと思っても、頑張って頭の中を整理しようとするが無理そうだ。頭が痛くなりそうだとおもいながら主神の話を聞いていた。

 

 ネメシスはリューがアストレアの話をしてから気分が悪そうだと気づいた。かといってどうすることもできないけど。だから話を早めに切り上げ早く寝ることにした。

 

 

 

 しかし、その夜リューが初めて夜泣きするとは思っていなかったが。

 

 

 真夜中の事、急にリューがうなされ始めた。その魘されている言葉が凄く____

 

 ()()だった。

 

 ただただごめんなさいと繰り返すリューに何をできるわけもなく、ただ抱きしめていた。こういう時自分の小柄な体が嫌になる。自分の眷属を覆えるほどの腕の長さも、ドーンと抱えてやれるほどの胸の大きさも無い。抱きしめているがはたから見るとリューが寄りかかっているだけである。誰に謝っているか分からずに泣き止むのを待った。ひたすら待った。幸いなのはこの子は静かに泣くから周りに泣いたことがバレていない事だ。泣く姿をとことん見せたがらないこの眷属だから近隣の人が心配したらさらに泣かなくなる。そして、落ち着いたのか力尽きるように寝てしまった。目の腫れがひどいから明日はダンジョンに行けないかな。まぁ行くと言っても認めないけれど。

 タオルを水につけて絞り、リューの目のあたりに当てた。これで腫れは少しは良くなる。こいつは何を抱えているんだろうとずっと思っていた疑問がさらに深まった。

 

(アストレアファミリア、か…………)

 

 恐らくコイツの目的に関係しているだろうと思われる気高い神アストレアの派閥の事を考えた。まぁすぐに寝たけど、眠かったし。

 その朝はリューがダンジョンに行くのを止めて夜起きていた分眠くなったから寝た。リューもいつの間にか寝ていた。その日は穏やかに過ぎていった。

 

 Psバイト先の店主に連絡してなくて心配されてしまった。凄く申し訳なく思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
アストレアファミリアがどのくらいからでてきたか分からないので憶測です。現在半年ほど過ぎている設定です。だから本編の14年程前です。だから平均10とかなのかなぁ?ファミリア全員の情報ないので厳しいですね……。

楽しんでくれたなら幸いです。また次回もよろしくお願いします。


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第十一話 思わぬ接触

ついにあの方たちが……。
お気に入り登録、評価ありがとうございます。それではどうぞ


 その日も変わらずダンジョンに入っていた。独自の方法で。

 12階層ぐらいならもうほとんど苦戦はしなかった。スキルのおかげであることも関係があるけど。かなりの補正が付くらしい。しっかり確かめた事はないけど。でも、単独行動でしか使えないからそれだけは面倒な面のあるスキルだ。

 

「ふぅ~階層主くらいならいけるますね」

 

 ここから一番近い階層主は17階層にいるゴライアスである。前は神様(ヘスティア様)の神威で黒いゴライアスが発生していたが、アレの方がイレギュラーの為今存在するのは、ただのゴライアスだろうけど。一応ゴライアスのレベルは4と言われているがかなりの補正ゆえに行けるのではないかと考えていた。というかそろそろ偉業を成しえないとレベルアップに行き詰まる。ステータスも敏捷はもう限界突破の分もカンストしてしまっている。ほかも限界突破している項目が多いので、偉業を成さないといけない。

 

「いまなら、遠征しているファミリアはいない、それに加えて最後の討伐からかなり経っている。そろそろ復活するはず」

 

 そう考えて無理なら引き返すと決め偵察程度にゴライアス討伐に繰り出す。ポーションなどの回復アイテムがあるのも大きい。

 

 そうしてさらにダンジョンに幾つか存在する縦穴を使って下に降りて行った。下に行くたびにモンスターに囲まれまくったがそれを難なく蹴散らす。ミノタウロスもヘルハウンドもたまにインファントドラゴンに遭遇した。それも魔法で粉々にしてやり過ぎていたが。そうやって進みながらついに第17階層に就いた

 

 迷宮の孤王(モンスターレックス)と呼ばれる最初のモンスター、ゴライアス。『嘆きの大壁』と呼ばれる一面真っ白な空間に存在する。灰黒色のモンスターである。

 

(確かゴライアスは接近戦での殴ってきたり顎から光線のような物を使っていましたっけ)

 

 まぁやってみましょう、と言わんばかりガンガン進んできた。この世界では初階層主戦である。

 

 17階層に足を踏み入れる。

 

 でかい巨人がそこにはいた。

 

 こちらに気づいたらしい巨人は即座に

 

「うおおおおおおお」

 

 という相手を威嚇するように吠えた。

 

「意気がいい。まぁやれるところまでやりましょうか!」

 

 今一度いう、この時点でリューは()()()().つまり格下である。普通なら勝機は無く無様に殺されて終わり、となるはずだがリューの目には闘気が宿っていた。それでも冷静になっている部分もあり、つまりは油断も隙も無い。

 この時点ではモンスターも相手を格下だと思い、侮っていた。当たり前だ。何故なら前に立っているのは吹けば飛んでいくだろうと予想できる小さい子供だ。しかし、それでもどこかで油断ならないと勘が働く。

 

 何故かここで自分の方が倒されると錯覚しそうになった。

 

 そんな両極端な感情を抱きながら対峙する。そしてリューが飛び出した時点で戦闘が開始した。

 

 早い動きで翻弄し、それから力強い木刀での攻撃が続く。これに認識を即座に改めたゴライアスが即座にその巨体でタックルを仕掛ける。リューはそれを横に転身することで交わす。殴れど踏みつけてもそれらを全てかわされる。その間にもリューは目に負えないような速さでその巨体の足を攻撃し体制を崩させる。そして、体制を崩されたゴライアスは床に尻もちをついた。

 

「今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々……」

 

「ぐぅぅぅぅぅ」

 

 魔法の詠唱を始めた途端ヤバいと思ったのかうなって起き上がるゴライアス。そして拳を振るう。その攻撃をいなし木刀で肘に思いっきり一撃を繰り出した。そうするとゴライアスの肘は普段とは反対向きに曲がる。リューの素のステータスではここまでのダメージを与える事なんてできない。

 じゃぁなぜできたのか? 

 それはリューのスキルの一つが原因である。

 詳細は省くが、あの読めないスキルには前に所持していたスキルを()()()()()()()()使()()()()という事が記されていたのである。つまりスキル5つもち(一つは対人に特化しているが)と言う反則的な強さになるのだ。それにくわえてステータスの大幅補正も加わる為このような強さに至る。速さによって力の補正が付くスキルと精神力消費で力が上がるスキルを保有していた為それをフルに使いこのような力が出せた。それを試してゴライアスの様子を見て逆に少しびっくりしたリューであった

 

(思いっきりやりましたけど、まさかこれほどとは)

 

「ぐォォォォォォォォォォォ」

 

「空を渡り、荒野を駆け何者よりも疾く走れ」

 

 詠唱も終盤に入り、魔力も跳ね上がる。ゴライアスは肘の様子を見て困惑していたがまずいと思い足で踏みつけようとした。しかし、冷静さを欠き、焦った攻撃など交わすのは楽である。サラッとかわしさらに近づき、口をまた思いっきり木刀で叩いた。これにより顎が変形するほどのダメージを負った。その顎から光線を放とうとしたがこれによりできなくなった。

 

「ギィァァァァァァァァ」

 

「星屑の光を宿し敵を討て! ルミノス・ウィンド」

 

 数は少ないがスキルにより威力が増した光弾がゴライアスに襲い掛かる。体表を砕き、足や腕を粉々にした。だが絶命には至らなかった。しぶとい。

 

(なかなかにしぶとい)

 

 正直マインドダウンギリギリなのでここからは素の殴り合いとなる。ボロボロの状態で立ち上がったゴライアスと未だに無傷のリュー。しかしいくら無傷と言ったもこちらははもうほとんど魔法を打てない。

 

「ギィァァァァァ」

 

「行きます!」

 

 そうして一人と一体が交差する。少しリューも疲れて来たのか被ダメージが多くなってきた。しかしそれでも着々とゴライアスの体力を削っていく。しかし決定打にはならない。だから勝負に出ることにした。

 

 リューが思いっきり上に上がり天井から自らの魔法を足に放ち、天井を蹴る。その魔法の威力が乗った一撃をゴライアスに放つそれを防ごうと使えない腕でガードしようとするがそれを貫通して魔石を破壊した。リューの勝ちである。足は犠牲となったが。

 

「ふぅ、一応勝ちましたね。魔法によりマインドダウンギリギリですがどうにかですね……」

 

 そう言ってリューはカバンからポーションを取り出し自分の足にかける。シューという音が聞こえそうな位湯気があがり傷は見かけ上治ったかのように見える。まぁ骨にひびは入っただろうけどすぐに治りそうだ。上に上がるだけの足はある。ついでにマジックポーションも飲んでおく。

 

「少し痛みますが、後でディアンケヒトファミリアに寄って診てもらいましょう」

 

 そう言ってダンジョンから出たリューであった。ちなみに後々ディアンケヒトファミリアの団員からどうしたら其の歳でこんなケガ負うんだ? と不思議がられた。そんな不思議なことではないと思うのですが? 

 

「だから団長はお前がやればあたしはいいと思うぞ?」

 

「ええ!そうね! そういわれちゃうとさらにやる気になっちゃうわね」

 

「おぅおぅやってくれ。正直面倒なことはあたしはごめんだ」

 

「ライラがやりたくないだけでしょ?」

 

「そんなことねぇぜ、あたしは団長なんて玉じゃないからな」

 

 壁越しだが聞き覚えのある声が聞こえた。というか前にきいていた声よりも幼いがそれでももう聞くことも叶わないと思っていた声が聞こえた。

 

「……ッ!」

 

 治療の途中で駆けださなかった自分を褒めたい。今ここで駆けだしたら接触するところだった。いやあっちはこっちの事を知らないから別に何も知らない顔で通り過ぎればいいのだが、絶対に平常な判断ができないと思った。会えることは勿論嬉しい。前は志半ばで、自分の魔法でアリーゼ達を殺した……。

 正確にはアノ災厄のせいだがリューの中では仲間を自らの魔法で殺してしまったという事実の方が堪えた。だからこそ今彼女たちに会えば性懲りもなく泣いてしまう。でもここにいても出たら遭遇する可能性があった。リューは終わるな終わるなと思いながら初めて足の治療を長引くように祈った。まぁ足のけがは数日経てば全快するらしい。それ以外の注意点は全く聞いていなかった。

 

「聞いてますか! リオンさん!」

 

「ッ! はい聞いてます!」

 

「じゃぁ今こちらが言ったことを正確に言ってみてください」

 

「……明日は絶対安静ですよね」

 

「明日のみではなく絶対安静は最低二週間です。全治はそれ以上の期間を要しますよ?全く、複雑骨折に筋肉損傷に肉離れに筋も少し痛めたというのに……。 しっかり聞いてませんでしたね?」

 

「……」

 

 ダラダラと冷や汗が背筋を伝った。医者を怒らせるほど怖いものはない。背後にゴゴゴゴゴという擬音が聞こえそうだ。これは期間中に怪我したらお説教程度で済まない気がする。嫌な勘が働いた。自分の勘は良く外れるから大丈夫だと思いたい。それからはまた同じ説明をするのも時間の無駄だと言われ申し訳なく思いながら注意点をまとめたメモを貰った。お説教が無くてよかったと変なところで安心したのは秘密である。一応歩けるなら大丈夫だと思うけど。

 

 さて、そろそろ帰らないと心配させる。現在は日の傾きからしてそろそろ夕刻となりそうな時間であった。アーディたちには見つからないように帰らないといけないけど。

 結果的には見つからなかった。ホームには主神が働いているジャガ丸君が鎮座していたが。結構な量である。

 

「おっまた怪我したの? リュー」

 

「ネメシス様ただいま帰りました。ええまぁ。そんなことよりこのジャガ丸君はどうしたのですか?」

 

「子供たちと食べろって押し付けられた」

 

「あぁなるほど」

 

 中身はともかくはたから見れば愛くるしい姿してますからね私の主神。納得してしまうリューであった。

 

「一人しかいないのにな……」

 

「これは一日では無理ですね」

 

 結構な量を貰って来た、主神も他のファミリアに消費を手伝ってもらっていた。リューもそれほど大食いという訳ではないので、困ってしまった。でもロキやフレイアのファミリアのような大所帯では少なすぎる。というか主神はあまりそこのファミリアの主神のことを好きではないから自分たちと同じようなファミリアへおすそ分けと言う形になる。主神が親切な方をバイト先に選んでよかったと安心した。あまり下調べとかしない結構ずぼらな所があるから。

 

「いまちょっと失礼な事を思ってないか? リュー」

 

「いえ何も。ただバイト先の方々が親切そうで良かったと思っただけです」

 

「あっそう」

 

 怪しまれたけどどうにか誤魔化せたようだ。

 

「しょうがない、またアストレアの所に行ってくる」

 

「そんなに頻繁に行って迷惑なのでは?」

 

「いつでもいらっしゃいと言ってたよ?」

 

「そんなに頻繁に来るとは思ってないと思いますが……」

 

「リューも行く? あいつら良い奴だぞ」

 

 その様なことは昔から知ってます、とは言えなかった。

 

「……どのような方達なのですか?」

 

「おっ興味出て来たか?」

 

「えぇまぁ」

 

 無難に聞くことにした。

 

「会ってみるのが早いと思うぞ」

 

「足のケガのせいで絶対安静です」

 

「おい、またなんかしたな、帰ってから事情は聴くよ。それじゃあ行ってくる」

 

「はい、気を付けて」

 

「おぅ」

 

 そう言ってそそくさと出て行った。帰ってくる頃には夜だけど大丈夫だろう。アストレア様が神様一人で返すとも思えません。それにネメシス様も護身術位は扱える。今日はあちらに泊まるかもしれないから帰ってこないかもしれない。

 

「ご飯はジャガ丸君ですね」

 

 もう何日もジャガ丸君である。仕方ない私はお世辞にも料理上手とは言えない。レシピをしっかり見ればできるかもしれないけど。

 そんな事を考えながらお塩を取り出してジャガ丸君に振りかける。慣れてきた味である。でもそろそろ果物を食べたくなる。

 

 一通り食べ終わったので残りは明日の分にしてお風呂に入って寝ることにした。

 

 バ────ン!!! 

 

「リューお泊まりだー!」

 

 急に帰ってきて大声出さないでください。そしてやっぱりお泊まりだ。恐らく、アリーゼ辺りに勧められたのだと思う。私が怪我してるから神様の警備も十分にできない事もあるかもしれない。主神がどのくらい話しているかによるが。

 

「……神様が、ですか?」

 

「リューもいかない? 絶対安静の期間、私がバイトしている間暇だろ? アストレアの話し相手にして貰えばいいじゃん!」

 

「何を勝手に……それに急にそんなことを言われてももう寝るところだったのですが?」

 

「じゃぁ今から行けばいいな」

 

 こんな無理やりな神様だったかな? もっとプライバシーというものを守る方かと思ったのですが? 

 微妙な顔をしていたら駄々を捏ね始めたので結局行くことになった。もう少し待って欲しかった。大丈夫かな? 私……。

 そんな事を考えながら神様に引きずられながら連行された。

 

 ────────────────―

 

「いらっしゃいゆっくりしていってね」

 

「……」

 

 連行されてさっそくアリーゼ達が歓迎してくれました。神様は凄くなじんでいて驚きました。どれほど入り浸っていたのでしょう? 

 

「ねぇ貴方名前は?」

 

 前よりも当たり前だが幼さの残る顔立ちをしたアリーゼ達だ。こんな状況でなければ嬉しい事に変わりないが、なにぶんこのような状況の為あまり喜べない。だから自分の顔はかなり微妙な表情をしている訳ですが、仕方ない。

 

()()()()()リオンと言います」

 

「リオンね、よろしくね! 私はアリーゼ、アリーゼ・ローヴェルよ!」

 

「よろしくお願いします」

 

 そう言って他の団員とも自己紹介をした。こちら側が一方的に知っている自己紹介とはかなり不思議な感覚がしますねとか思いながら自己紹介をした。懐かしい感じに泣きそうになった。

 

 その頃神様同士では眷属の話に花を咲かせていた。

 

「ネメシスの子は気難しい子なのね」

 

「結構表情豊かなときあるぞ? いつもはあんな無表情だけど……」

 

「でも、いい子ね」

 

「私にはもったいない程いい子だぞ。たまに遠慮ないけど、年相応の物だし逆におとなしすぎる所あるかからなぁ」

 

「あらあら、本当に子供たちは色々な子がいるわね」

 

「神様も色々いるけどな……」

 

 ネメシスは自分の血縁である複数の神の神格を思い浮かべた。うん、碌な奴はいない。

 

(アストレアみたいな神が増えればいいけど、神様っていうのは問題児しかいない)

 

 神様を問題児と言えるネメシスも大物である。すべての神がろくでなしという訳ではないが、ネメシスの血縁関係者たちの癖が強かったのである。その為全然自らに与えられた神殿から家族の為に帰らなかった。一番は与えられた仕事がブラックすぎて帰るのが(精神的にも)面倒だったからという理由だが。

 

「でも今日は穏やかだな」

 

「えっ?」

 

「いつもリオンはどこかで気が張ってるけど今日はそれが無い感じ」

 

「……」

 

「おい、何でそんなに驚いてんだよ、アストレア」

 

「気をわるくしたのなら謝るわ。でも貴方がそんなに子供達の事を考えているのが珍しくて」

 

「下界でも色々あったんだよ。こっちも。と言ってもリオンは全然自分の事は話そうとはしないけど」

 

「あら、それなら私の娘たちも変わらないわよ?」

 

 アストレアの子よりもタチの悪い事をして話を断ち切られるのですが、それはどうなんですかね? 流石にそこまで言おうとはしない。

 アストレアの所も色々あるようで大変だ。

 

 その間リューはアストレアの子供(主にアリーゼ)にからかわれていた。あんな表情もするんだなと少し驚いたネメシスであった。

 

 

 ちなみにいじり倒されたリューは終始不機嫌だったが、柔らかい表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
今のところ輝夜はまだ合流してません。極東での面倒ごとに巻き込まれてから紆余曲折あってオラリオに来たと言う事の為少し遅かったという解釈です。副団長だから初期から加入している可能性もあります。
今の所アストレアファミリアではリューさんが一番新参者ということらしいので基本的に全員年上なのかな?と思っています。もしかしたら違うかもしれないので二次創作と言う事で平にご了承を。
正直もっと遅くアストレアファミリアができたと思います。でも絡ませたかった欲に勝てませんでした…。
ここまで読んでいただきありがとうございました。また読んでいただくと嬉しいです。


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第十二話 お泊り会よ!byアリーゼ

こんばんは、作者です。
実はこれ書いているのは第二部時点の為第三部の時点で矛盾が見つからないか少しびくびくしてます。もし、矛盾したら二次創作として温かい目で見てください。
それではどうぞ。


 ネメシス様のファミリアの子、エルフのリオンと今日は一緒に私たちのホームで過ごすことになった。でもどうやら足に怪我をしているらしい。らしい、と断定できないのはリオンがその事を心配させたくない為か自分から言わないから。だけど殆どの団員が(と言ってもまだ2、3人)分かっていると思う。皆荒ごとにはそこそこ慣れている方だ。このご時世だもの、警邏して、盗みなどの行為に対する武力行使だって少なくない。やりたくはないのだけど。

 

 それでもみんなの笑顔のために! 正義の剣と翼に誓ってがんばるわ! 

 

 とは張り切ってはいるけれどまだまだ弱いのよね。ダンジョンにも入るけど前線張れるような子はうちにはいない。自分がやれれば良いが指揮を取る役目もこなす為二つをこなすのは困難であまり前線に立てないのが難点だ。

 

(誰か前線はれる子が一緒にダンジョン探索に同行してくれると楽なんだけどなぁ)

 

 そう思わずにはいられなかった。

 

 そんなことを思いながら全員が寝室に向かう。お泊まり会と言えば恋バナとか怪談話とか色々な話をして盛り上がるというのが一応の定番である。でもこのメンツでそんな華々しい話が出るはずもない。しかも一人は堅そうなエルフである。……警戒しているのか全然話さない。皆困惑しているし、どうにかしなきゃ。けどどうしよう。

 

「とりあえず、布団を引きましょう! リオンは足のケガがあるからそこに座っていてね」

 

「ありがとうございます」

 

 そう言って人数分の布団を出す。礼を欠かさない子だなぁ。後は何か何処かで会った事あるのかな? そう不思議なことを思ったが、まぁいいかと切り替えた。さぁ楽しいお泊り会はこれからよ! 

 

 そんなこんなで今に至る────────どうしてこうなった? 

 

 ────────────────────―

 

「へぇリオンって超前衛向きな戦闘スタイルなのね」

 

「可愛い顔して恐ろしい子ね」

 

 馴染むの早くない? いや私が言えた義理ではないけれど。何故こうなったと言えば、リオンが見た目生真面目で堅そうだけど(実際にはそうだけど)割とポンコツなのだ。それに優しくて誠実な子なのだ。でも団員を(恐らく手加減していた)投げ技で投げ飛ばす事はしなくてもいいと思う。最初見た時は驚いたわ。まぁエルフの慣習を知っていて手を出したこちらにも問題はあるのだけれど。でも私は平気なのね。何故なんだろう? それにこの子本当に7歳なのかな? 

 と不思議に思っていると子供たちの話し合いに混ざりにきたのかアストレア様とネメシス様が寝室に入ってきた。

 

「楽しそうにしゃべっているなあ。私らも混ぜてよ」

 

 そう言ってネメシス様は新しく布団を取り出し隣に敷いた。それに続いてアストレア様も布団を取り出した。

 

 それからはみんなでたくさんの事を話した。と言っても主に私達が話していただけでネメシス様たちはあまり話さなかったけど。特にリオンとかそんなにしゃべっていた記憶はない。そして、だんだんと眠りに落ちていったらしい。

 

「ふわぁぁぁぁぁ」

 

 大きなあくびが出た。

 

「おはようございます」

 

「うわぁ! びっくりしたぁ」

 

「すみません。驚かせるつもりは無かったのですが」

 

「いいっていいって」

 

 少しシュンとした様子のリオンにちょっと申し訳なくなってきた。結構わかりやすいのよねぇ。

 

「リオンは起きるのが早いのね~」

 

「今日はたまたま早く起きただけですよ? ネメシス様の方が早起きしてますし」

 

「えッ! あっ本当だ布団がもぬけの殻だわ」

 

「バイト先で仕込みの手伝いでこの頃早めに出ていくことがこの頃多いんです。アストレア様や皆さんには『寝床化してくれたのに朝ごはん作ることもせずにすまない』とか言って出かけていきました」

 

「そんな事気にしなくていいのになぁ~」

 

 なんとも変なところで律儀な神様もいたものだ。適当にくらしていそうでしっかり者だ。旅をしていたとも話していたし今度ゆっくり話してみたいなぁ。

 

「ん? リオンはなんでこんなに朝早くから起きているの? しかもなんか着替えているし」

 

「いつもの鍛錬ですよ?」

 

「は?」

 

 いやいや怪我してるって話では無かったか? いやいや流石に怪我してる状態で鍛錬なんてしないよね? 

 

「え~っとリオンは確か足怪我しているはずなんだけれど」

 

「もう痛くないので」

 

「そういう問題じゃぁ無い!」

 

 ダメだこのポンコツエルフ……。天然も入ってそうだ。

 

「リオンはポンコツなのね……ダメだからね! 絶対安静でしょ!」

 

「しかし……」

 

「でもも何で? もしかしも無いわ! 怪我しているときに無理する方が大変よ! 早く治るものも治らないわ」

 

 ムーと不満そうな顔をしたリオンを引っ張って布団まで連れていく。足が治ってないのになぜ歩けたのかという疑問も出て聞いてみたら

 

『もう痛くはないので慣れさせようと思って』

 

『何でそうなるの!?』

 

 戦闘狂? いや雰囲気的に全然そんな感じはしないんだけど、私は気に入っているから悪い子じゃない筈なんだけど、どこか危うい子だなぁ。心配をよくかけさせるような子だ。

 

「変わらないですね」

 

「え? 何?」

 

「いえこちらの話です」

 

「気になる言い方するわね」

 

 たまにリオンは一方的にこちらの事を知っているかのような様子を見せる。確証はないけれど只の勘である。

 

(何でそんなことを知っているのだろうと思うようなことをたまに言うからびっくりするのよねぇ)

 

 リューの只の油断である。まぁそれほど心を許していると言う事になるのだが。いくら勘が鋭いと言ってもそんなことは露にも思わないアリーゼである。

 

(いけないいけない、また気が緩みました)

 

 リューもそう自覚はしているが、いくら注意していてももう会えない旧友との再会には思うところがあるのも事実だ。しかも前は自分が主神を都市外に行かせてしまった。今では関係ないがそれも尾を引いて最初はどんな顔をして会えばいいか分からなかった。皆が当たり前だが前の記憶を誰一人持っていない事に孤独感も感じたが、それよりも安心感の方が勝ったほどだ。自分のやったことを知られずに済む。

 

 とほっと息を吐いていると

 

「そう言えば話変わるけど、リオンは前衛で戦えたりできる?」

 

 今まで目の上のたん瘤だったものを聞いた。

 

「? 一応できますが」

 

「じゃあ、少し一緒にダンジョンに探索してくれないかな?」

 

 勿論リオンの怪我が治ってからだけど、と付け出す。

 

「…………」

 

 やっぱりダメかなぁ。そうだよね、急に他派閥から言われたら困るよねぇ。いくら仲が良くなったとはいえ強引だったか。少し落ち込んでいると

 

「……少しだけなら」

 

「えッ本当!」

 

「えぇ」

 

「やった──ー! じゃぁ怪我が治ったらよろしくねリオン!」

 

 そう言ってリオンの手をブンブン振った。リオンは驚いていたが、少し微笑んでいた。

 

 ────────────────────―

 

 数か月後~

 

 なんやかんやで仲良くなったリオンと初ダンジョン! 命の危険性を含むけど皆リオンと一緒に冒険できると浮足立っているわ。しかもこの数か月でリオンの鍛錬風景を見た皆は、

 

「「「「うますぎる……(呆然or見惚れる)」」」」

 

 の一言。自分たちが一気に斬り掛かっても平気そうだ。と言うか実際に平気なのだろう。そのくらい凄かったのだ。語彙力皆無になるほどだった。たった一人でダンジョンに行っていると聞いた時は半信半疑の者もいたが、それを見て納得するほどだ。

 

 と言う事でダンジョンの入り口でリオンと待ち合わせ。

 少し遅れてリオンは来た。何故か顔を覆っているけど。あれじゃ誰だか分からない。まぁ皆察して何も言わなかった。リオンは美人だから良からぬ輩に目を付けられる可能性というか絶対に人さらいの標的になる。まぁ盗賊崩れ位ならリオンは簡単に捻り上げるだろう。

 

「すみません、遅れました」

 

「ううん、大丈夫よ! 今日はよろしくね。それじゃあ行きましょうか皆」

 

「「「おぉぉぉ!!」」」

 

 皆張り切っている中静かに見つめている目は眩しいものを見るかのように細められていた。

 

 ダンジョン5階層

 

「はぁぁぁ!」

 

「もう少し引き付けてからの方が一気につぶせます。構成員が少ないなら少ない手数で敵を倒し、できるだけ囲まれ無いような動きを心がけてください」

 

「おぅ了解!」

 

 リオンのスパルタ教育である。元々ダンジョンに行ったことがあるというリオンに自分たちの戦闘を見てもらおうという話になってから、ダンジョンに入ってからずっとこんな感じである。おかげで危なげなく進んでいける。リオンがこちらが危なければフォローしてくれているおかげでもあるけれど流石すぎる。

 

「アリーゼは指揮に集中してください。指揮を執るものが少しでも判断が遅れれば強敵と出くわした時やられます」

 

「えぇ分かったわ!」

 

「中衛の者は出すぎないようにして下さい。前で戦う人の邪魔にならない距離でのフォローをして臨機応変な対応を」

 

「「「おぅ! わかった」」」

 

 こう指摘をしながらもリオンの周りの敵はリオンが全滅させていた。私たちがゴブリンやコボルトの大群と戦闘中に逃げ道を確保してくれている。それに私達の実力を伸ばすために自分はこちらの戦闘に関与しない。できた子である。

 

 と思いつつ何とか蹴散らしそのまま8階層に。

 

「お疲れ様です」

 

「リオンは全然疲れてないんだな……ふぅ~」

 

「慣れですね」

 

「慣れってどれだけ潜ってんだよ……」

 

 慣れだけでこの歳の子が全然物怖じしないのもすごいわね……と内心思った。だって何回も言うけれどリオンは最近まで足を怪我していたのだ。まぁ本人は治りかけの時に普通にダンジョンに潜らないだけで鍛錬はしていた。いくらこちらが止めてもやるから無理はしないと言う事でしぶしぶ了承した感じであった。あれではあの子の主神は苦労する事になるだろう。いやもう苦労と言う意味ならあの主神は限界突破の真っ最中でした。

 

「このまま行けば今日は10階層まで行けるか?」

 

「えぇ少し厄介な敵が多くなるので気を抜かないでください」

 

「「「了解!!」」」

 

「さぁ休憩終わり! 行こう!」

 

 猛スピードで階層を降りていく。そして10階層。

 

 オークの群れとの遭遇である。

 

「大きな敵は力は強いですが動きが遅い者が多いです。攻撃をしっかりと読めばかわせます。かわしたら急所に思いっきりの一撃を打ってください。力が足りなければ絶命には至りませんがそれでも体制を崩せればこちらの有利です」

 

「オラァァ!」

 

 オークのこん棒のような武器を横なぎに振り回す。それを全員かわして中衛はオークのこん棒の射程の外に前衛はオークの足元にそれぞれ陣取る。前衛が自分の武器でオークの脚を攻撃して体制を崩す。

 

「新しい炸裂弾だ。食らいやがれ!」

 

 ライラが夜の間に作っていた炸裂弾がオークに被弾して、オークは灰になった。

 

「よっしゃ次行くぞ」

 

「「「おぉぉ!」」」

 

 そのまま10階層のモンスターをどんどん倒していく。

 

「ライラいつの間にあんな高威力の炸裂弾作ったの?」

 

「警邏の休み時間に少しな。でも威力に比べて重量あるし射程も小さいからまだ改良が必要だな」

 

「あれはあれで使い道ありそうだな」

 

 そんな事を話しながら、只今休憩中~。10階層は霧が立ち込めている為敵に見つかりにくい。逆に言えばこちらも敵を見つけにくいと言う事にはなるがリオンが危険が迫ったらすぐわかると言う事でできるだけ見つかりにくい場所で休憩だ。ダンジョンは下に行けば行くほどモンスターも広さも構造も複雑化したり広くなったりする。階層主の所は一概にこうなるとは言えないらしいが。

 

「いつか私達も強くなれるのかなぁ」

 

 誰かのちょっとした呟きがこだました。

 

「どうした? 突然?」

 

「リオンはこんなに強いじゃん? 私達とおんなじ位の歳なのにさ」

 

「…………」

 

「だからちょっと不安になったというか何というか」

 

 弱気になってごめんとネーゼが謝る。確かにリオンの強さを見たら少し落ち込むかもしれない。ちょっとの嫉妬もあるかもしれない。何せ自分と同じかそれ以下の子の方が何倍も強いっていうのは少し風雑な心境なのかもなぁとおもっていると

 

「? あなた方は強くなりますよ? 絶対に」

 

 リオンがまっすぐ言ってきた。これには全員「へ?」みたいな間抜けな顔をした。

 

 

「まず強さと言うのはただの力だけではありません。貴方達は心の底で腹をくくっています(覚悟を決めています)。それを私は(完全に)できないのだからその時点で私はあなた方より数段弱い」

 

 正直に言うと話している半分は理解できても残りの半分は全員理解に及ばなかったらしい。ますます皆首をかしげている。

 

「まぁつまり、リオンは精神面ではまだ子供ってことか?」

 

「こっ! ……いえまぁそう言う事になりますかね……」

 

 何故か今度はリオンが解せぬみたいな納得していない表情になったが反論できる要素がなかったのか即刻に諦めた。

 

 それよりもリオンがこちらの事を強くなれると断言してくれたことの方が嬉しかったなぁ。

 

 と少しほっこりとした空気になりつつ、リオンとのダンジョン探索は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでくださってありがとうございます。
だんだん文字数が多くなったし、タイトル詐欺も起こしています。申し訳ないです。
この時点でアリーゼ、ライラ辺りはアストレア・ファミリアに入ってます。かなり若いです。9歳とか10歳とかですかね。もう少し遅い方が良かったかもしれない。
リューさんはこの階層は余裕です。ステータスも限界突破カンストしてしまっていますがこれ以上ランクアップすると周りからバレるので保留してます。(公にはレベル1の為)その為ランクアップは遅くともあと数か月は保留です。スキルも発現しているからもはやチート…。誰やこんなチート考えたやつ……←(作者)
アストレアファミリアの団員達も今回お世話になったのでそれは目をつむります。少なくともレベル2程度だと考えている者がおおい。(勘が鋭い方は違和感抱く程度)

ここまで読んでいただきありがとうございます。次も読んでくれると幸いです。


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